ふたりはプリキュアMax☆Star (鳳凰009)
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第一話:伝説の戦士再び!

              第一話:伝説の戦士再び!

 

1、新たなる敵!?

 

 ジャアクキングとの戦いを終え、無事にベローネ学園女子高等部に進学した、美墨なぎさと雪城ほのか、中等部二年に進級した九条ひかり、新たなる出会いに胸躍らせる少女達の前に、新たなる敵が動き出そうとしていた・・・

 

 

 なぎさとほのかは、藤田アカネの店TAKO CAFEで、たこ焼きを頬張りながら、高等部の話で盛り上がっていた。

 

「いやぁ、高等部でも同じクラスで良かったよね!志穂や莉奈、ユリコ達も一緒だったし、まあ、何か高等部に進学したって気はイマイチ薄れるけどね」

 

 そう言うと、なぎさはたこ焼きを口の中に入れ、モグモグ食べる。ほのかもなぎさの言葉に頷き、

 

「うん!嬉しい反面、新鮮さには欠けるよね」

 

 ほのかも、たこ焼きをフウフウ冷ましながら、口の中に入れモグモグ食べる。二人の側には、光の園の住人メップル、ミップルもイチャイチャしながら居た。

 

「あんた達も相変わらず仲が良いわねぇ・・・平和になった証拠かな!?」

 

「そうかも知れないわね」

 

 なぎさとほのかは、二人を見て微笑んだ。手元のジュースをカラカラ振り、ストローで喉の渇きを潤したなぎさは、

 

「ところでさ、ほのかは部活どうするの?やっぱり私は、ラクロス部に入ろうと思ってるんだ!弓子先輩も居るしね・・・ほのかはやっぱり科学部?」

 

「そうね・・・私は実験とか大好きだし、科学部に入ろうと思ってるの!でも、これじゃ二人共、ますます中等部の頃と変わらないわね」

 

 ほのかの言葉に、笑い合う二人だった。

 

「お二人共、高等部はどうですか?お二人が卒業しちゃって、私はちょっと寂しいですけど・・・」

 

 休憩時間になり、エプロン姿のひかりがなぎさとほのかの会話に加わった。なぎさとほのかが中等部を卒業し、寂しい思いでは居るが、ひかりにも沢山の友達が出来ていた。

 

「まあ、こうして、TAKO CAFEでは会えるんだし、ひかりも何だかんだで、最近楽しそうに学校の事教えてくれるじゃない」

 

「そ、そうですか?」

 

 少しはにかむひかりの姿に、なぎさとほのかは顔を見合わせ微笑んだ。

 

その時・・・

 

「なぎさ、ほのか、嫌な気配がするメポ」

 

「二人共、用心するミポ」

 

「ひかり・・・嫌な気配を感じるポポ」

 

「怖いルル」

 

 光の園の妖精達が、何かの気配を感じたのか、一斉に騒ぎ始めた。予期せぬ出来事に、なぎさ、ほのか、ひかりに緊張感が走った・・・

 

 ジャアクキングを倒し、平和を勝ち取った筈なのに・・・

 

ジャアクキングは生きていたのか?

 

なぎさと、ほのか、ひかりの心は不安に駆られた・・・

 

 辺りを見回す一同の視線が、腰を激しく振りながら、こちらにやって来る、妙な出で立ちをした人物を見付け、一同は眉根を曇らせる。

 

「な、何!?あの変な人?」

 

 なぎさの言葉を聞き、慌てて隠れるメップル達妖精陣の姿を見て、腰を振りながら近づく妙な男の口元が、ニヤリと微笑んだ事に、なぎさ達は気付かなかった。

 

 まるで躍るように腰を振り振りしながら、チャッチャと発しながら近づく人物、出来れば関わりたくない一同ではあったが、男はまっしぐらになぎさ達の方に近づいて来る。

 

「チャチャチャ!ヘイ!!俺の名は、モエルンバ!セニョリータ!ちょっと聞きたい事があるんだが?お前達・・・太陽の泉の在処を知ってるかい?」

 

 踊りながらポーズを決めた男は、モエルンバと名乗った。

 

モエルンバは、なぎさ達に太陽の泉の在処を知っているか聞いてくるも、当然ながらなぎさ達も、メップル達妖精達も知る訳は無く、

 

「何!?その何とかって泉って?私達が知る訳無いでしょう!」

 

 放課後の楽しいティータイムを邪魔されて、少し不機嫌そうにするなぎさを無視するように、再び踊り始めるモエルンバ、

 

「そうか・・・だったら、そこに隠れている、泉の精霊共に聞くとするか・・・お前達、正直に答えろ!返答次第じゃ・・・俺の炎でチャッチャって燃えちまうぜ!!」

 

 隠れているのがバレて居るのを知り、妖精達が姿を現わすも、モエルンバから発せられる邪悪な気配に表情は険しかった。生意気なとばかり、モエルンバは指に炎を点し、メップル達を威嚇するように睨み付ける。

 

「太陽の泉何て知らないミポ」

 

「大体、知ってたって、お前みたいな邪悪な気配がする奴には、絶対に教えないメポ」

 

 メップルとミップルは、モエルンバが二人を泉の精霊と言った言葉を聞き逃していた。メップルとミップルに白(しら)を切られたモエルンバは、益々顔付きが険しくなり、

 

「おいおい、人が優しく言ってる間に、素直に白状するものだぜ?」

 

 身の危険を感じた一同、なぎさはメップルを、ほのかはミップルを、ひかりがポルンとルルンを抱き上げると、その場から逃げるように走り出す。この場所では、アカネに迷惑が掛かる配慮からだった。

 

 

「何なのよ、あいつは?」

 

「なぎさ、ほのか、ひかり、変身するメポ」

 

 走りながら逃げるなぎさのボヤキに、メップルはプリキュアになれと進言すると、

 

 メップルとミップルがハートフルコミューンに変身し、なぎさはメップルを、ほのかはミップルを手に取った。三人は走るのを止めると、モエルンバに向き直り、

 

「わかってる!いくよ、ほのか!ひかり!」

 

「うん!!」

 

「はい!ポルン!!」

 

 ひかりの言葉に頷いたポルンが、タッチコミューンに変化する。

 

 なぎさとほのかは互いを見つめ頷きあうと、ハートフルコミューンに手をかざし、互いの手を取り合って同時に叫ぶ!

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 キュアブラック、キュアホワイトがモエルンバに名乗りを上げる。それに続くように、

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共に、ひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共に、シャイニールミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスの出現は、モエルンバの予想外の出来事で、口をアングリ開けたモエルンバは呆然とするも、首をブルブル振って正気に返ると、

 

「プリキュアだとぉ!?お前達は一体?泉の郷の精霊に、こんな力があったのか?ゴーヤーンの奴、そんな事一言も言ってなかったぞ?まあいい、お前達の実力、試させて貰うぜぇ・・・ウザイナー!!」

 

 モエルンバが両腕を高々と上げると、嘗てのザケンナーのような生物が現われる。公園のベンチを、怪物化したような姿をしたウザイナーの出現は、一同を驚かせる。

 

「あれは、ザケンナー?」

 

「チッチッチ!ザケンナーじゃない、ウザイナーだ!!」

 

 ブラックの言葉に、モエルンバは右手の人差し指を左右に振り否定するも、ブラックは少し頬を膨らまし、

 

「似たようなもんでしょう・・・行くよ、ホワイト!ルミナス!」

 

「だから違うって言って・・・エッ!?エェェェ??」

 

 ブラック、ホワイトの怒濤のパンチ、キックの連続攻撃を受け、ウザイナーが劣勢になる姿に、モエルンバの表情が驚愕する。

 

「こ、此奴ら、戦い慣れてる・・・ウザイナー!もっと、チャッチャと張り切れ!!」

 

 ウザイナーに更に檄を飛ばすモエルンバだったが、ブラック、ホワイトの攻撃の前に、一方的な展開になると、イライラしたモエルンバが指に炎を点し、ブラック、ホワイトに攻撃を加えるも、

 

「お二人に手出しはさせません!」

 

 ルミナスがバリアーを張り、モエルンバの炎を完全に防ぐと、モエルンバの額からタラリと汗が滴り落ちる。

 

(俺の攻撃を防いだだと・・・何なんだ、此奴らは!?)

 

 動揺したモエルンバの隙を付き、ルミナスに礼を言ったブラック、ホワイトが、両手を握り合い、ブラックは右手を、ホワイトは左手を高々と上に上げると、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人から放たれた強烈な一撃に、側に居たモエルンバが大きくジャンプして躱すも、ウザイナーは、マーブルスクリュー・マックスを受け倒される。倒されたウザイナーからオレンジ色をした無数のおたまじゃくしのような物体が現われ、何処かに消え去った。

 

「な、何なの、あれ?」

 

 思わずポツリと上空を見て呟くブラック、呆然と見つめるホワイトとルミナスだった。

 

(あれは、もしかしたら精霊ミポ?)

 

 確信は持てなかったが、ミップルは、あれが精霊ではないかと思うのだった。

 

「な、中々やるじゃないか・・・プリキュアと言ったな、これはほんの挨拶代わりだ!次こそは太陽の泉の在処を、チャッチャと聞き出してやるからな・・・アディオス!!」

 

 驚愕する一同の隙を付き、モエルンバは一同に捨て台詞を吐くと撤退する。

 

「だから、太陽の泉何て知らないって言うの・・・あいつ・・・何だったんだろう?」

 

「さあ?・・・新たなる敵・・・そう考えるのが妥当見たいね!あら?・・・見て、ブラック!」

 

 ホワイトに促されたブラックが上空を見上げると、オレンジ色のビー玉程の球体が、ゆっくり降ってくる。思わず手に取ったブラックは、色々弄くり回すも、何の事か分からず首を捻りながらホワイトに渡すと、ホワイトも小首を傾げた。

 

「でも、綺麗ね・・・」

 

 ホワイトから渡されたルミナスも覗いてみると、何か不思議な力を感じるのだった。

 

「この球体から、不思議な力を感じます・・・何かまでは分かりませんが、暫く手元に置いておいた方が良さそうですね」

 

 ルミナスから再び渡されたブラックが、興味深げに再び見るも、

 

「何か飴玉にも似てるよね・・・食べれるのかな?」

 

「や、止めて置いた方が良いわよ」

 

「わ、私もそう思います」

 

 呆れながら忠告するホワイト、引き攣った笑みを浮かべながらホワイトに同意するルミナスの二人だったが、

 

「エッ!?そうかな・・・美味しそうだけど」

 

 名残惜しそうなブラックの言葉に、目を点にしながら無言になる一同だった・・・

 

 

2、誕生!新たなるプリキュア!!

 

・・・ダークフォール・・・

 

 鍾乳洞の中のような薄暗い場所の中、池とも湖とも取れるような水面の正面の岩場には、緑色をした炎が揺らめいていた・・・

 

 何処か不気味さを漂わせるその場所で、二つの声が聞こえてくる・・・

 

「それは興味深いお話ですなぁ、モエルンバ殿・・・プリキュアですか?泉の郷に伝わりし、伝説の戦士と聞きます。古来より、泉の郷を手に入れようとする者現われる時、必ずや現われると言われる二人組の戦士!精霊の力を借り、立ち向かうそのパワーは、侮りが足しと言います。その者共がこの時代に甦っていたとは・・・」

 

「知っていたのか、ゴーヤーン!だったら、始めから俺に知らせればこんな不覚は取らず、チャチャチャと倒したものを・・・」

 

 踊りながら会話をするモエルンバと、丁寧な物腰のゴーヤーンと呼ばれた背の低い、緑色の身体をした人物が立って居た。

 

「おやぁ、言ってませんでしたかぁ?それはスイマセンでしたねぇ・・・モエルンバ殿、是非その報告をアクダイカーン様に仰せられては如何ですか?」

 

 何処かモエルンバを小馬鹿にしたように、ゴーヤーンは、ダークフォールの支配者、アクダイカーンに今回の事を報告するようにモエルンバに進言すると、

 

「お前に言われる迄も無い!アクダイカーン様!!」

 

 ゴーヤーンの言葉に少しムッとしながらも、モエルンバがアクダイカーンに呼びかけると、目の前の巨大な物体から声が響き渡る。

 

「モエルンバよ、その報告確かだろうな!?伝説の戦士だと・・・我の邪魔をする者は、排除しろ!滅びの力の前に、敵など居らん!!そして、太陽の泉を探し出すのだ!!」

 

「ハハァ!アクダイカーン様!!」

 

 モエルンバが畏まって一礼すると、ゴーヤーンはニヤニヤ含み笑いを浮かべ、

 

「あっ、そうそう、あなた様が手こずって居られるようなので、木の泉を管理する、カレハーン殿にも救援をお願いしておきましたよ!」

 

「カレッチに!?余計な真似を・・・」

 

「もう、緑の郷に出向いてらっしゃる頃だと思いますがねぇ」

 

 ゴーヤーンが不敵な笑みでモエルンバを見つめた・・・

 

 

・・・海原市夕凪・・・

 

 山には深い森が生い茂り、海に浮かぶ瓢箪(ひょうたん)のような岩、街中を走る路面電車が特徴の自然に囲まれた街・・・

 

 一人の少女が、自転車を思いっきり漕ぎながら、街中を疾走していく。目的の場所は、トネリコの森の奥に生い茂る、大空の樹と呼ばれる古い大樹である。

 

 大空の樹に付いた少女は、袋から棒アイスを取りだし、美味しそうに食べ始めた。

 

「う~ん、やっぱり目標を遂げた後のアイスは、最高なりィ~!!」

 

 少女の名前は日向咲!

 

夕凪中学校2年生で、ソフトボール部のエースとして鳴らすも、夕凪中学ソフト部は県下ではイマイチの知名度であったが、今年は去年の雪辱を果たす為、猛練習に明け暮れていた。この日咲は絶好調で、10人連続三振を達成し、仲間からアイスを奢って貰い、ご機嫌だった。

 

「アイスも美味しいけど・・・此処に来るとやっぱり落ち着くなぁ」

 

 咲は目を瞑り、風の匂い、草の匂いを味わう、不意に草を踏む誰かの足音が聞こえ、思わず上体を起こした咲を見て、

 

「ゴ、ゴメンなさい!人が居るとは思わなくて・・・」

 

「ううん、気にしないで!見掛けない娘だけど・・・この街の人なの?」

 

「ええ、今日この街に引っ越してきたの!もっとも、5年前迄はこの街に住んで居たから、戻って来たって言う方が正解かしら?」

 

 少女がクスリと微笑む、少女の名は美翔舞!

 

舞の言うように、元々この街に住んでいた舞だったが、両親の都合で再びこの街に戻って来たのだった。

 

 互いに見つめ合った咲と舞は、不思議な感覚を共に持つに至った。

 

(何だろう・・・この娘と会うの、初めてじゃないような?)

 

(不思議だわ・・・初めて会った筈なのに、初めてじゃない気がするわ?)

 

 互いに同じような感想を持った二人が、言葉を発しようとしたその時、鳥がざわめきながら飛び立ち、木々が震えるように揺れた。上空から何かが振ってきたのを見た咲と舞が目で追うと、水色のような物体は地面に激突した。

 

「着地に、失敗したラピ」

 

 続いて振ってきた白っぽい球体が激突すると、

 

「チョッピも・・・失敗したチョピ」

 

 水色の生物の上に落ちた白っぽい生物が、申し訳なさそうに呟く、二つの物体がピョンと地上に飛び上がり、咲と舞の目の前に立つ姿に、咲と舞は目を点にしながら呆然とする。

 

「ね、ねえ、あれ見えてるの・・・私だけじゃないよね?」

 

「だ、大丈夫よ、私にも見えているから」

 

「「一体、あれは、何なのぉぉ!?」」

 

 二人は顔を見合わせると、ハモッたように思わず絶叫した。二人を見た二つの物体は、嬉しそうに顔を見合わせると、

 

「君達は・・・間違いないラピ!これもフィーリア王女のお導きラピ・・・泉の郷の花の精フラッピラピ!」

 

 身体は水色で、耳は細長い渦巻状になっている生物が自己紹介すると、身体は白っぽい色で、耳は横にたれてカールしている生物が、

 

「チョッピは、鳥の精チョピ」

 

 二人はフラッピとチョッピと名乗り、咲と舞に微笑み掛ける。

 

「あっ、ご丁寧に、私は日向咲!」

 

「私は美翔舞って言うの!」

 

「「って言うか、あなた達、何者なのぉぉ?」」

 

 再び驚きハモる咲と舞に、フラッピは今自己紹介したと言うも、二人は目を点にしながら、訳が分からないと首を振る。

 

「僕達は、前に会った事があるラピ」

 

「二人共、思い出して欲しいチョピ」

 

 咲と舞に会った事があると語ると、再び光の球体になって浮遊し始める。その姿を見ながら、精霊達の言葉を繰り返した二人は、共に5年前の事を思い出した。夏祭りのあの日、不思議な光の球体に誘われた咲と舞は、光の球体の後を追いかけ、この大空の樹に来た事があった。その時咲と舞は、互いに一人の少女と出会っていた・・・

 

「じゃあ、あの時の球体は、あなた達だったの?って事は、あの時大空の樹で会ったのは」

 

「あなただったの?」

 

 咲と舞は互いに指差し、驚愕の表情を浮かべると、やっと思い出してくれたと、二人の精霊は互いを見て微笑むのだった。

 

だが・・・

 

「これは・・・あいつらが来たラピ」

 

 上空を見上げた精霊達に釣られ、上を見上げた二人は、上空に佇む怪しげな人物を見付け驚愕する。

 

「な、何あれ?人が、人が空に浮かんでる!?」

 

「あれは人じゃないラピ!あいつらこそ、フラッピ達の故郷、泉の郷を滅茶滅茶にした、ダークフォールの奴らラピ」

 

「二人共、お願いチョピ!プリキュアダイアを使って、プリキュアに変身して欲しいチョピ」

 

 精霊達の尋常じゃない様子に戸惑う咲と舞、上空からゆっくり下に降りてくる異様な姿をした男が腕組みしたまま、

 

「ようやく追いついたぞ!我が名はカレハーン!偉大なるアクダイカーン様が忠実なる下僕(しもべ)だ!さあ、太陽の泉の場所を答えて貰おうか!」

 

「誰がお前達何かに」

 

「絶対教えないチョピ」

 

 必死の形相で言い返すフラッピとチョッピ、咲と舞は、どうしたら良いのか分からず戸惑うも、咲は確認するように、

 

「ね、ねぇ?あの人が、あなた達の故郷を・・・」

 

「そうラピ!あいつらが泉の郷を滅茶苦茶にしたラピ」

 

「泉を、泉を元に戻してチョピ」

 

「二人共逃げるラピ」

 

 咲と舞を庇うようにカレハーンに立ち向かうフラッピとチョッピだったが、一方的に痛めつけられる。その凄惨な場面に、顔を背ける咲と舞、二人の心に沸々と怒りが沸き上がり、拳を握った。

 

「「もう、止めて!!」」

 

 二人の言葉に、咲と舞を見たカレハーンの口元に笑みが溢れる。

 

「お前達が教えてくれぬようなら、あいつらに聞いてもいいんだぞ?ウザイナー!!」

 

 カレハーンが両腕を上げ、ウザイナーを召喚すると、木の姿をしたウザイナーが現われた。その姿に思わず後退る咲と舞だったが、痛々しいフラッピとチョッピの姿を見るや、勇気を振り絞り、

 

「その子達に手出ししないで!」

 

「今度は、私達がその子達を」

 

「「絶対に守ってみせる!!」」

 

 咲と舞の言葉に、涙を流しながら感動したフラッピとチョッピが、球体に変化し、二人の下にフラフラ飛び続ける。

 

「あぁ、貴様ら、逃げやがって・・・ウザイナー、そいつらを捕まえろ!!」

 

 カレハーンの命令に、一同に近づいて来るウザイナー、フラッピとチョッピは二人の側に来ると、携帯電話のような容姿になり、咲の手にフラッピが、舞の手にチョッピが握られる。驚く二人にフラッピは、

 

「今の僕達の姿は、ミックス・コミューンと言って、プリキュアに変身する為のアイテムラピ」

 

「ミックス・コミューンに、二つのプリキュアダイアを差し込んで、ミックススピンしてプリキュアに変身するチョピ」

 

 大体の説明を聞いた咲と舞は、半信半疑ながら、言われた通りにミックス・コミューンに二つのプリキュアダイアをセットし、ミックススピンすると、二人は手を握り合い、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、気合いを込めた二人が着地すると、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えた二人が、カレハーン、ウザイナーに対して啖呵を切った。

 

「って、私達、何言ってるの!?」

 

「何でこんな姿になってるの?」

 

 互いを見つめ、身に付けた姿を見て、驚愕するブルームとイーグレット、

 

「その姿こそが、泉の郷に伝わる伝説の戦士プリキュアラピ」

 

「プリキュアの力で、あいつらから泉を取り返して欲しいチョピ」

 

 まだ理解出来ない二人ではあったが、目の前に居る怪しげな男と、怪物をこのままにしておくことも出来ず、二人は敵の攻撃に備え身構える。変身を終えた二人を見て驚くカレハーンだったが、

 

「成る程、これがゴーヤーンが言っていたプリキュアと言う奴らか・・・モエルンバを苦戦させたという実力・・・見せて貰おうか!ウザイナー!!」

 

 ウザイナーはプリキュア目掛け突進すると、触手を繰り出し二人に攻撃を加えると、思わずジャンプして躱した二人は、大空高くジャンプし、大空の樹どころか、海原市夕凪さえも上空から見下ろせる程ジャンプしてしまう。

 

「す、凄いよ?私達、こんなに高くジャンプしてる・・・」

 

「ええ、でも、こんなに高く飛んで、私達・・・大丈夫なのぉぉ!?」

 

 頂点に達したブルームとイーグレットが、悲鳴を上げながら落下してくる。

 

「な、何てジャンプ力だ?確かに侮れん力のようだが、それにしてはあいつら、まるで素人のようで、モエルンバの言っていたように、戦い慣れているようにはとても思えんが・・・」

 

 カレハーンは、思わず不思議そうに小首を傾げる。その目の前に勢いよく落下したプリキュア達が、コホコホ咳き込みながら姿を現わすも、隙が出来た二人に、ウザイナーの触手が攻撃して来るも、二人は咄嗟にバリアーを出し、攻撃を防いだ。

 

「す、凄い!私達、バリアーまで出せるんだ・・・」

 

「でも、防御しているだけじゃ・・・」

 

 イーグレットの不安に答えるように、

 

「両手を前に突き出すラピ」

 

「二人の心を合わせるチョピ」

 

「プリキュア!ツイン・ストリームをスプラッシュするラピ」

 

 フラッピとチョッピの言葉に戸惑いながらも、ブルームとイーグレットは互いを見つめると、頷きあい目を瞑った。

 

(何だろう・・・分かる、私分かるよ!)

 

(ブルームの心が、私にも伝わってくる!)

 

 目を開けた二人は、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今、プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を、解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦がウザイナーを飲み込む。ウザイナーは砕け、緑色の無数の精霊が、泳ぎ始めて戻っていく。

 

「捕らわれていた木の精霊達が、元に戻ったラピ」

 

 フラッピとチョッピは、嬉しそうに精霊達を見て微笑んだ。

 

「これがプリキュアの力か・・・だが、プリキュア恐れるに足りず!」

 

 不適な笑みを浮かべたカレハーンが撤退すると、上空からなぎさ達が手に入れたような、ビー玉のような球体が落ちてきて、ブルームがキャッチする。

 

「これ・・・何だろう?」

 

「さあ?」

 

 覗き込んだイーグレットも訳が分からず小首を傾げるも、妖精姿に戻ったフラッピとチョッピは、嬉しそうに球体を見つめながら、

 

「これは、奇跡の雫ラピ」

 

「泉の郷を元に戻す為に、必ず必要チョピ」

 

「これを7つ集めれば、奪われた泉の一つを取り返せるラピ」

 

 大喜びで踊り合うフラッピとチョッピを見て、自分の事のように喜ぶ咲と舞であった。

 

 

3、深まる絆

 

・・・ダークフォール・・・

 

戻って来たカレハーンに対し、ゴーヤーンは成果がどうだったか聞くと、カレハーンの顔に汗が滲みだす。それを見たモエルンバはニヤリとするも、

 

「フン、今回は様子を見た迄だ!モエルンバ、貴様がゴーヤーンに言っていた通りとはとても思えんがなぁ・・・プリキュアと言ったか?確かに侮れん力を持っては居たが、あいつらの戦い方・・・あれは、まるで素人だ!!」

 

 カレハーンの言葉に、モエルンバは右手の人差し指を左右に振りながら、

 

「チッチッチ!アミーゴ、それはお前の見方が悪いのさ!あいつらの戦い方を見てピンと来た!あいつらを侮ったら、痛い目を見るぜ!!」

 

 モエルンバの言葉に、カレハーンは「何だとぉぉ」と、顔を近づけ食って掛かると、モエルンバは、

 

「カレッチ、そう怖い顔をするなよ!」

 

「誰がカレッチだ!!大体、俺は前から貴様が気に入らなかった!!」

 

「そう言うなよ・・・アミーゴ!仲良くしようぜ!!」

 

 カレハーンに抱きつくモエルンバ、カレハーンの身体が、モエルンバの炎の所為で焦げ始めると、慌ててモエルンバを突き飛ばし、

 

「抱きつくな!身体が燃えるだろうが!!」

 

「お止めなさい!!全く、あなた方は仲が良いのか悪いのか・・・」

 

 再びモエルンバに文句を言うカレハーン、ゴーヤーンは、呆れ返りながら二人を宥めるも、

 

(しかし、プリキュアの評価が、二人の間でこうも違うのは気になりますね・・・)

 

 ゴーヤーンは、顎を撫でながら何かを思案していた。

 

 

・・・翌日・・・

 

「お姉ちゃん・・・そろそろ起きないと遅刻しちゃうよ!今日から学校始まるんでしょう!!」

 

 まだ小学校低学年ぐらいの、妹みのりに起こされた咲は、起き上がると昨日の事を思い出す。

 

(あれは・・・夢だったのかなぁ?)

 

 ボーとする咲に、下から母沙織の、早く支度して朝食食べちゃいなさいと呼ぶ声が、咲の耳に聞こえてくる。

 

「咲、フラッピもお腹減ったラピ!お世話して欲しいラピ」

 

「ウワァァ!じゃあ、あれは・・・本当の事だったんだ・・・」

 

 あれは夢だったんじゃと思った咲の考えは、一瞬に崩れ去った。咲は、フラッピに言われるままお世話して、ふりかけご飯を与えると、フラッピは美味しそうにガツガツ食べ始めた。そんな姿を見ても、咲の心に不安が沸き上がる。昨日の事が本当なら、自分はこれから、あんな化け物と戦わなければならないのかと・・・

 

「アァァ!いけない・・・私、あの娘の住んでる場所とか知らないや!ど、どうしよう!?」

 

 咲は、昨日出会い、共にプリキュアとして戦った舞に付いて、詳しい事を聞くのを忘れていた。

 

「あの娘・・・この街に引っ越して来たばかりって言ってたよね?何とかまた出会えますように・・・」

 

 咲は、再び舞と出会えるようにとお祈りをするのだった。

 

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

 転校初日で、舞が緊張していると思っていた舞の家族、父、美翔弘一郎、母、美翔可奈子、兄、美翔和也の三人は、顔を見合わせ微笑んだ。

 

「舞の奴、楽しそうだな・・・何か良い事でもあったのかな?」

 

 妹、舞の様子に安堵すると、和也も高校へと登校していった。

 

 

「ドヒャァァ!何とか間に合ってぇぇ!!」

 

 ボーとしながら朝食を食べた咲は、支度にすっかり手間取り、慌てて家を飛び出たものの、丘の上にある、自分達が通う夕凪中学校に向かい、変顔になりながらも、必死に走り続けた。校庭に入るとチャイムが鳴り始め、益々慌てた咲は、猛ダッシュで教室に直走り、咲が教室に入ると、クラスメート達が笑いながら、セーフとジェスチャー混じりに咲に声を掛けると、咲はどうも、とペコペコ頭を下げながら自分の席に着く。

 

「日向!全くお前は、新学期早々・・・今度からもっと余裕をもって家を出ろ!じゃあみんな、ホームルームを始める!その前に・・・今日からみんなの仲間になる、転校生を紹介する」

 

 咲のクラスの担任で、ソフト部の顧問でもある篠原先生は、見掛けは体育教師のようだが、担当科目は英語だった。咲は、厳しさもあるが、篠原先生が大好きだった。

 

 篠原先生に呼ばれ、中に入ってきた生徒を見て、思わず咲は立ち上がると、

 

「美翔さん!?ヤッホ~!!昨日はどうも!」

 

 嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら、咲が舞に両手を振る。篠原先生も、クラスメート達も呆気に取られる中、舞も咲に気付き、

 

「あなたは・・・この学校の人だったのね?知っている人が居て良かったわ」

 

 舞も嬉しそうに咲に微笑むと、呆気に取られた篠原先生が二人の顔を交互に見比べ、

 

「何だ!?お前達知り合いだったのか?でも、日向!授業中だぞ・・・それと、美翔!再会の話は後にして、黒板に名前を書いて、みんなに自己紹介して!!」

 

「は、はい、すいません!」

 

 慌てて黒板に名前を書き始める舞に、クラスメートからクスリと笑い声が漏れると、書き終わった舞は正面を向くも、恥ずかしそうに俯く、

 

「美翔さん、ファイト!」

 

 咲が大声で舞を励ます声に、再びクラスから笑い声が起こる。

 

(もう、日向さんったら・・・でも、何だか勇気が湧いてきた気がする・・・)

 

 咲の声援を受け、勇気を貰ったかのように、舞がクラスメートに自己紹介を始める。聞いていて好感を持てる自己紹介に、クラスメート達は、心から舞を受け入れた・・・

 

 

 放課後、咲は舞を誘うと、再び大空の樹の前に向かった。ここなら滅多に人が来ないので、フラッピ、チョッピ、そしてプリキュアに付いての話題を話せると思ったからだった。

 

「では、改めてフラッピとチョッピに聞くけど・・・訳分らないよ!襲ってきた奴らは何者なの?」

 

 咲の質問に、フラッピは、またかといった表情になり、溜息を付くと、

 

「昨日も教えたラピ!あいつは、ダークフォールの支配者、アクダイカーンの下僕、カレハーンラピ!」

 

「7つの泉を手に入れ、世界樹を枯れさせ、泉の郷を滅ぼして、永遠の滅びの世界を手に入れようとするのが、ダークフォールの目的チョピ」

 

「それだけじゃ無いラピ!既に6つの泉を手に入れて居るダークフォールの奴らが、もし太陽の泉を手に入れる事があれば、この緑の郷も滅びるラピ」

 

 フラッピ、チョッピの話を聞いていた咲と舞だったが、

 

「ねえ、ひょっとして、緑の郷と言うのは・・・私達が住むこの世界の事何じゃ?」

 

「エエッ!?」

 

「舞は賢いラピ・・・その通りラピ!だから、これは二人に取っても、大変な事何だラピ」

 

「これを救うには、プリキュアの力が絶対に必要チョピ!一緒に泉を取り返して欲しいチョピ」

 

 不安そうにしながら、二人を見るフラッピとチョッピを、優しく抱き上げた咲と舞は、

 

「私達に何処まで出来るか分からないけど、出来る限りの事はするわ!」

 

「任せて!!でも私達、二人揃わなければプリキュアになれないんだよね?」

 

「そうラピ!プリキュアは、二人揃わないと駄目ラピ」

 

 顔を見合わせた咲と舞は、互いになるべく単独行動は控えなければ駄目かと思うのだった。

 

「そうだ!ねえ、美翔さん・・・これから家に来ない?家、パン屋何だ!ケーキもあるし、良かったら親睦を深める為にも、ささやかな持て成しでもしたいなぁと思って・・・」

 

「ありがとう!でも、今日はちょっと・・・今度のお休みの日でも構わないかしら?」

 

 舞の言葉に、咲は嬉しそうにニッコリ微笑み、次の休日に親睦会を開く事を決めるのだった。

 

 

そして、休日・・・

 

咲は、舞に内緒で、クラスの何人かを親睦会に招待していた。同じソフト部でもある仲の良い、伊東仁美、太田優子、咲の幼馴染み、星野健太、クラス委員をしている宮迫学と安藤加代、皆、咲の申し出を快く快諾してくれて、舞に内緒で、朝早くからケーキ作りや、料理作りを手伝っていた。

 

「あらぁ、みんな上手よ!これなら美翔さんの所の舞ちゃんも、きっと喜んでくれるわ!!」

 

 みんなの手際良さを、微笑みながら褒める咲の母沙織、沙織の言葉を聞いて、咲は意外そうな顔で、

 

「お母さん、美翔さんを知っているの?」

 

「知ってるわよ!舞ちゃんの所はお得意様だったもの、小さい頃は、お母さんと一緒に舞ちゃんもよく買いに来てくれたものよ」

 

「そ、そうだったの?」

 

 意外な事で、舞と共通点があった事に驚く咲だったが、ちょうどそこに、舞が店の中に入ってきた。みんなが居る事を内緒にしていた咲は、大慌てで舞に話し掛け、誤魔化そうとする。

 

「み、美翔さん、早かったね?ちょうど今お母さんに、美翔さんが家の店のお得意様だって聞いた所だったの・・・ねぇ、お母さん!」

 

 咲に突然話を振られた沙織は少し驚くも、舞を見て懐かしそうに目を細める。

 

「舞ちゃん・・・大きくなったわねぇ!最後に見たのは、9歳の頃かしら!?お父様やお母様はお元気?また何時でもお店の方にも来てね!!」

 

「はい!!」

 

「じゃ、じゃあ、美翔さん、テラス席で待ってて!直ぐに準備して行くから!!」

 

 急かすように舞をテラス席に連れて行った咲は、大急ぎで中に戻り、みんなとケーキ作りの仕上げをしていた。一人取り残された舞は、テラス席の近くで、気持ち良さそうに寝ている咲の飼い猫コロネを見付けると、目を細めながらスケッチブックを取り出して、コロネの絵を描き始めた。真剣に集中しだした舞が、熱心にコロネを描き続ける。コロネは、そんな舞に気付いているのか居ないのか、気持ち良さそうに眠り続けた。

 

「美翔さん、お待たせ!!・・・美翔さん!?」

 

 ケーキを持った咲達一同がテラス席にやってくるも、舞は、一同に気付かぬように、熱心に絵を描き続けていた。覗き込んだ一同は、その絵の上手さに驚きの声を上げ、ようやく気付いた舞がキャッと驚き、一同に気付くと照れ笑いを浮かべ、

 

「ゴメンなさい!私、絵を描いていると、つい夢中になってしまって、周りが見えなくなってしまうの・・・でも、驚いたわ!日向さんだけかと思ったら、クラスのみんなも・・・」

 

 一同が舞の為に、手分けしてケーキなどを作ってくれたと聞き、舞は嬉しさのあまり目に涙が浮かんだ。

 

「みんな・・・ありがとう!」

 

「「「「どう致しまして!!」」」」

 

「美翔、俺からは特別に、この日の為に練習した、とっておきのギャグを・・・」

 

「はいはい、健太のギャグ何か聞いたら、美翔さん風邪ひいちゃうでしょう!」

 

 賑やかな雰囲気に、舞も笑顔を浮かべながら、この一時を楽しんでいた。

 

舞との親睦会は、こうして始まった・・・

 

 

 親睦会も終わり、クラスメート達は、お土産を貰い先に帰った。舞は、後片付けを手伝いながら、

 

「日向さん、今日はみんな迄呼んでくれてありがとう!とっても楽しかったわ!!」

 

「喜んでくれて、私も嬉しいよ!でも、日向さんって堅苦しいからさ、私の事は・・・これから咲って呼んで!クラスのみんなもそう呼んでるし、私も舞って呼んでも良いかな?」

 

「ええ」

 

「よろしくね、舞!」

 

「こちらこそ、ひゅ・・・咲!」

 

 互いを見つめ合い、微笑み合う二人だったが、おとなしく寝ていたコロネが急に飛び起きると、低い声で唸り声を上げる。驚いた咲と舞はコロネを見ると、普段おとなしいコロネの尋常じゃない様子に、

 

「コ、コロネ、どうかしたの?」

 

「咲、舞、気をつけるラピ」

 

「嫌な気配が漂ってるチョピ」

 

 フラッピ、チョッピが騒ぎ始め、咲と舞はコロネが見つめる方向を、緊張した面持ちで見つめると、春なのに枯れ葉が辺りに舞ってくる。

 

「俺は、カレハーン!カレッチと呼んでくれ!!」

 

 二人の会話を盗み聞きしていたのか、カレハーンが二人を揶揄するように、自分もあだ名で呼んでくれと言うも、

 

「あんたは、カレーパン!!」

 

「そう、中辛、辛口、色々取り揃えて・・・って何言わせるか?俺は、カレハーンだ!!今日こそ、太陽の泉の在処を教えて貰おうか?」

 

「イ~だ!誰があんた何かに教えるもんですか!」

 

「そうよ、あなた達こそ、チョッピやフラッピに泉を返しなさい!!」

 

 咲と舞がカレハーンに抗議するも、カレハーンは薄ら笑いを浮かべ、

 

「痛い目を見なきゃ分からんらしいな・・・ウザイナー!!」

 

 カレハーンが両手を高々と上げると、ウザイナーを召喚する。ウザイナーはテラス席のパラソルに取り憑くと、傘のような怪物へと変化する。

 

「咲、舞、変身するラピ」

 

「もう、家のお店のパラソルを・・・舞!」

 

「うん、咲!」

 

 咲と舞がアイコンタクトして頷くと、ミックス・コミューンに二つのプリキュアダイアをセットし、ミックススピンすると、二人は手を握り合い、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えた二人が、カレハーン、ウザイナーに対して啖呵を切った。

 

「昨日のようにはいかんぞ!ウザイナー、プリキュアを吹き飛ばしてしまえ!!」

 

 カレハーンの指示を受けたウザイナーが、言われるまま身体を回転させると、突風が二人を巻き込み、海岸まで吹き飛ばした。ブルームは顔面から、イーグレットは宙返りして着地するも、直ぐにカレハーンとウザイナーが追ってくる。体勢を整えた二人が、ウザイナーに攻撃を仕掛けるも、まだ何処かぎこちなかった。

 

「やはり、まだまだ戦いに素人らしさが出ているようだな・・・モエルンバの奴、ビビリやがって・・・」

 

 劣勢になった二人が、精霊の力を借り、バリアーを張って攻撃を耐え凌ぐ、距離を取った二人は、反転してそのままウザイナーにパンチ、キックの連続攻撃で押し、転倒させると、二人はチャンスとばかりに、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今、プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を、解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦がウザイナーを飲み込む。ウザイナーは砕け、緑色の無数の精霊が泳ぎ始めて戻っていく。

 

「チッ!次はこうは行かんぞ!!」

 

 捨て台詞を残し、カレハーンは撤退した。再び咲と舞は、奇跡の滴を手に入れるのだった・・・

 

 

 ダークフォールに戻ったカレハーンが、しくじったのを知ったゴーヤーンは、カレハーンに嫌みを散々呟く、それを聞いていたモエルンバは、

 

(カレッチには悪いが・・・今なら油断しているプリキュア共を・・・)

 

 含み笑いを浮かべたモエルンバは、踊りながら何処かに姿を消した。

 

 

・・・TAKO CAFE・・・

 

「ほのか、昨日のあいつ、何だったんだろうね?」

 

「新たなる敵なのは、間違いないと思うけど、敵の目的がイマイチ理解出来ないわね!?」

 

 昨日の敵に付いて語り合うなぎさとほのかだったが、メップル、ミップルが騒ぎ出し、何かが出たと二人に告げる。辺りを見回した二人は、昨日の敵、躍りながら近づくモエルンバに気付き、溜息を付いた。

 

「またあいつが来た・・・全く、飽きもせずよく踊ってるよね?」

 

「見てるだけで、疲れてくるわねぇ・・・・」

 

 うんざりしたような表情を見せるなぎさとほのか、モエルンバはそんな二人の表情に気付かず、

 

「セニョリータ!油断していただろうが、このチャンス、利用させて貰うチャチャ!ウザイナー!!」

 

 モエルンバがウザイナーを召喚すると、空き缶に取り憑き、缶のウザイナーが姿を現わす。

 

「別に私達、油断何かしてないけど?」

 

 なぎさとほのかは首を傾げながらも、ハートフルコミューンに手をかざし、互いの手を取り合って同時に叫ぶ。

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 ブラック、ホワイトに変身した二人が、ウザイナーを連打でTAKO CAFEから遠ざけると、モエルンバの額から汗がタラリと流れる。

 

(あれ?此奴ら、カレッチと戦って疲れてる筈なのに・・・ピンピンしているような?)

 

 昨日同様ウザイナーを圧倒するブラックとホワイト、転倒させたウザイナーを見ると、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人から発せられた、マーブルスクリュー・マックスを受け、ウザイナーは倒され、精霊達が解放される。

 

「な、何だとぉぉ!?カレッチと戦った筈なのにぃぃ!アンビリィィバボォォ!!」

 

 信じられないといった表情で、モエルンバがあっさり撤退すると、変身を解除したなぎさ達も、奇跡の滴を手に入れる。そこにひかりが息せき切って駆け寄って来ると、

 

「なぎささん、ほのかさん、遅れてすいません!新たなる敵は?」

 

「ひかり!大丈夫、追い返したから!!」

 

「でも、敵の目的を知るチャンスを、また失っちゃったね・・・」

 

 三人は、手に入れた奇跡の滴を見つめながら、太陽の泉を捜す敵の目的が分からず、複雑な表情を浮かべていた・・・

 

 

              第1話:伝説の戦士再び!

                   完

 



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第二話:邂逅!二組のプリキュア

           第二話:邂逅!二組のプリキュア

 

1、噛み合わない会話

 

・・・ダークフォール・・・

 

 不気味な雰囲気のあるこの場所で、罵りあう声が響いていた・・・

 

「カレッチ!あれだけ大口叩いて、プリキュアは素人だとか言ったくせに・・・あいつらピンピンしてたぞ!」

 

「知るかぁぁ!大体俺の直ぐ後に戦いに出掛け、あっさり負けて帰ってくるお前に言われたく無い!!」

 

 顔を突き合わせ睨み合う二人、思わずモエルンバの頬が赤く染まり、照れ隠しのダンスを始め、その不気味さに動じるカレハーンだった。ゴーヤーンは、そんな二人に呆れかえりながらも、

 

「お二人共、アクダイカーン様の御前ですぞ!!お見苦しい真似は、お止めなさい!!」

 

「カレハーン、モエルンバよ!一体どうなっておるのだぁぁ!!」

 

 目の前に居る巨大なアクダイカーンの一喝を受けた二人は、大いに恐れおののきひれ伏すと、

 

「も、申し訳ありません!プリキュアという邪魔者共、以外と手古摺(てこず)らせまして・・・」

 

「つ、次こそはチャッチャと片付けますので、どうかご安心を!」

 

「チャンスはそうは与えぬぞ!二人共、分かっておるだろうなぁ?」

 

 アクダイカーンの気迫の前に、カレハーンとモエルンバは只怯え、平伏し、

 

「「ハハァ!必ずや太陽の泉の在処を、聞き出して参ります!!」」

 

 二人は、慌てふためきながら、何処かに消え失せた。ゴーヤーンは何かを思案するように考え込むと、

 

「これはそろそろ、次の手を考えなければいけませんかねぇ?」

 

 カレハーンとモエルンバに成果がない事に、ゴーヤーンの目が怪しく輝いた。

 

 

・・・TAKO CAFE・・・

 

 この日、TAKO CAFEに訪れたなぎさとほのかは、店のテーブルを掃除する二人組の後ろ姿を見て小首を傾げた。チビとノッポの二人組で、チビの頭にはアカネ同様バンダナを巻き、タキシードを着た妙な出で立ちの二人組を・・・

 

「あれ!?ひかりの他に、誰か働いてるよ?」

 

「本当だわ!アカネさん・・・アルバイトでも雇ったのかしら?」

 

 なぎさとほのかが、不思議そうに小首を傾げていると、ワゴンからひかりが顔を出し、苦笑を浮かべながらなぎさ達の側に近寄って来た。

 

「なぎささん、ほのかさん、いらっしゃい!」

 

「ひかり!アカネさん、アルバイトでも雇ったの?」

 

 不思議そうにひかりに訪ねるなぎさ、二人組の後ろ姿を見て、何処かで見た気もすると言うほのか、二人組も気付いたのか、

 

「いらっしゃいませザケンナー・・・アッ!?」

 

「どうした?お客様には笑顔で、いらっしゃいませザケンナー・・・エッ?」

 

 ノッポがなぎさ達を見て驚き、チビも愛想良く接客しようとするも、なぎさ達を見て、同じように驚愕する。なぎさとほのかも、二人組を見て目を点にしながら指をさし、口をパクパクさせて呆気に取られる。

 

 それもその筈で、この二人はドツクゾーンのザケンナーで、嘗てベルゼイ達やひかる、バルデス達の執事をしていた、人間の大きさぐらいのザケンナーだったのだから・・・

 

「あ、あんた達が何でアカネさんの店に・・・!?」

 

「ひかりさん、これは一体!?」

 

 呆然とするなぎさとほのかに、ひかりはどう話そうかと苦笑を浮かべると、ワゴンから出てきたアカネが、なぎさとほのかに近づいて来る。

 

「あれ、なぎさとほのか来てたんだ?そういえばあんた達に紹介してなかったね。この人達は・・・エェェと、私の遠い親戚で、ひかりとひかるを心配して、様子を見に来て、そのまま家で一緒に暮らしてるのよ!中々家事とかもこなしてくれるし、あたしも助かってるんだぁ!!まあ、あたしが知らない間に、随分親戚増えてるなぁとは思うんだけどさぁ・・・アハハハ」

 

 豪快に笑い飛ばし、ワゴンの中に戻ったアカネを、目を点にしながら見ていたなぎさとほのかは、

 

「アカネさん・・・親戚というか、ザケンナー何ですけど?」

 

「アカネさんも苦労するわね・・・」

 

 思わずアカネに同情して、生活大丈夫何だろうかと不安になるなぎさとほのかだった。

 

「アハハハ・・・でもこの人達のお陰で、私もアカネさんも助かってるんですよ!ひかるの面倒もちゃんと見てくれてるし、ひかるも二人に懐いているし・・・」

 

 苦笑を浮かべたひかりから、ザケンナーコンビが意外に役に立っていると聞いたなぎさとほのかは、なら良いけどと思いながらも、

 

「あんた達、また悪い事でも考えて無いでしょうねぇ?」

 

「め、滅相もないザケンナー」

 

「坊ちゃまの様子を、見守りたいだけザケンナー」

 

 なぎさの疑惑の視線に、両手を振って違うと答えるザケンナーコンビを見て、そのコミカルな様子に、思わず笑いだす一同だった。

 

 だが・・・

 

 邪悪な気配がTAKO CAFE近辺に漂い始める。メップル、ミップル達妖精が騒ぎ始め、ポルン、ルルンが怖がり始めると、なぎさ達一同に緊張が走った。一同の視線の先に、躍りながら現われたモエルンバを見て、またかという顔を浮かべるも、

 

「なぎさ、油断するなメポ」

 

「何時もと様子が違うミポ」

 

 メップル、ミップルの忠告通り、現われたモエルンバの様子は、何時もと違っていた。

 

「セニョリータ!今日こそは太陽の泉の在処を聞き出してやる!!今度は油断しない!!こちらも、それ相応の戦力で行かせて貰うぜ・・・ウザイナー!!」

 

 両腕を上げたモエルンバが、ウザイナーを召喚する。TAKO CAFEのテーブルと椅子に取り憑いた、二体のウザイナーを召喚したモエルンバは、更に炎を操り、なぎさ達に攻撃を仕掛けてくる。

 

「あんた達、アカネさんを頼んだわよ!ほのか、ひかり、行くよ!!」

 

 表情を引き締めたなぎさが、アカネの事をザケンナーコンビに託すと、ほのか、ひかりと共にプリキュアへと変身しようとする。

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共に、ひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共に、ルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスが現われると、モエルンバの口元がニヤリと笑み、

 

「さあ、パーティーの始まりだ!踊れ、プリキュア!!」

 

 モエルンバが指を鳴らすと、ブラック達三人の周りを炎が囲み、その熱さの為に、三人の顔が苦痛に歪む、

 

「どうだい、セニョリータ!俺の炎はお気に召したかい!?」

 

 ニヤニヤするモエルンバだったが、ルミナスが発したバリアーが徐々に広がり、炎の輪を消し去る。炎を消し去ったルミナスの力に、一瞬怯んだモエルンバ、その油断を見逃さず、すかさず飛び出したブラックとホワイトが、モエルンバに対し怒濤の連続攻撃を繰り出すと、

 

「チッ!お前達の相手はウザイナーだ!ウザイナー、プリキュア共を倒せ!!」

 

 モエルンバの指示を受け、丸いテーブル型のウザイナーが、炎の輪となって車輪のように転がり、ブラック達を攻撃すると、椅子のウザイナーが、まるで馬のように四本足で闊歩し、三人を踏みつぶそうとする。

 

「確かに、何時もと違うね・・・」

 

「ええ、でも私達は・・・」

 

「はい、絶対に負けません!!」

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスが決意を述べると、ルミナスが自分達の周りにバリアーを張り、攻撃を遮断する。虚を突かれ、隙が出来たウザイナーに、ブラックとホワイトが飛び出すと、ブラックはテーブルのウザイナーを連打で殴り続ける。

 

「ダダダダダダ!ハァァァ!!」

 

 最後に蹴りを浴びせ吹き飛ばせば、ホワイトは椅子のウザイナーの足を取り、相手の力を利用し、テーブル形のウザイナーの側に投げ飛ばした。合流した三人が頷き合うと、ルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込む。

 

「漲る勇気!」

 

 手を回転させながら、ブラックが構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように、手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く絆とともに!」

 

 ハーティエルバトンを構えたルミナスが、そして足を広げ踏ん張るブラックとホワイトが気合いを込め、ブラックとホワイトの前方に、巨大なハートが浮かび上がると、

 

「「エキストリーム!!」」

 

「ルミナリオォォ!!」

 

 ブラックとホワイトの叫び声がハモリ、気合いを込めたルミナスの叫びが響き渡る・・・

 

 強烈な虹の光が発せられ、一瞬の内に二体のウザイナーを消し去る。その凄まじき力を目の辺りにしたモエルンバは呆然とし、改めて見せつけられたプリキュアの強さを知る・・・

 

「アンビリィィバボォォ!?何て力だ・・・だが、パーティーがこれで終わったと思うなよ!アディオス、アミーゴ!!」

 

 空中に浮遊したモエルンバが、捨て台詞を残しながら撤退すると、青と黄、二個の奇跡の滴が、ブラックとホワイトの手の中に落ちてくる。

 

「これで四つになったね・・・」

 

「そうね、何か重要な物な気がする。まだ、保管しておきましょう!」

 

「そうですね・・・敵の必死さを見ても、何かが動き始めそうなのは間違いないですね」

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスも、妙なノリのモエルンバの今回の必死さを見て、表情を引き締める。

 

「でも、クイーンがルミナスに、ハーティエルブローチェやハーティエルバトンを残してくれて助かったね」

 

「ええ、今回の戦いでも、ルミナスの力は必要不可欠だと思う」

 

「はい、私もお二人の力になれるように頑張ります!!」

 

 クイーンは、この事を見通して、ルミナスに再び力を与えたのか?それは三人にも分からなかったが、三人は、新たなる敵との戦いに、決意も新たにしていた・・・

 

 

 

・・・海原市夕凪・・・

 

 夕凪中学校のグラウンドで、咲達ソフト部は、篠原先生に扱かれながらも、猛練習をしていた。グラウンド10周後、一人づつ100本ノック、咲は投手という事もあってか、自ら進んで、キャッチャーを勤める優子相手に、投球練習に励んでいた。舞はそんな咲の姿を、芝生に座りながらスケッチしていた。咲から預かった、ミックス・コミューン姿のフラッピとチョッピは、咲の頑張りを見つめていた。

 

「咲達、頑張ってるラピ」

 

「でも、あんなに練習して、ヘトヘトになった所を襲われたら、大変チョピ」

 

「確かに・・・でも、あんなに頑張ってる咲に、プリキュアの事を優先しろ何て・・・言えないラピ」

 

「二人共、ありがとう!咲もその事は分かっていると思う・・・私も咲をフォローするから、温かく見守って上げて」

 

 舞の言葉に、フラッピとチョッピは頷きながら、再び視線を練習している咲に向けた。

 

「なるほど、特訓か?金の泉に居る、キントレバカのあいつが知ったら、大喜びしそうだな・・・どうせ滅びの力に飲み込まれるものを・・・」

 

 何時の間に現われたのか、舞の側にカレハーンが現われ、舞とフラッピ、チョッピを見てニヤリと笑んだ。

 

「そんな事無い!あなた達の好きにはさせないわ」

 

「此処で俺がウザイナーを呼べば、どうなるかは分かって居るよな?」

 

 舞が毅然とカレハーンに対し異議を唱えるも、カレハーンの脅しを受け、立ち上がった舞が後退りすると、一目散に校舎裏の方に走り出した。咲達や他の生徒達に、なるべく被害が被らないようにする、舞の優しさからだった。

 

「フハハハ!いいのか、相棒から離れて?さあ、太陽の泉の在処を教えろ!そうすれば、大人しく退散してやるぞ!!」

 

 まるで獲物をいたぶるように、ゆっくり舞の後を追いかけるカレハーン、ようやく練習を終えた咲は、仲間達と談笑していたが、芝生にいた舞の姿が消えている事に気付くと、妙な胸騒ぎを覚えた。

 

(舞・・・もしかして!?)

 

 咲は、仲間達に先に帰っているように伝えると、舞が座っていた芝生に行く。芝生には、舞が大事にしているスケッチブックと、鉛筆がそのまま置かれていて、益々咲の心を不安が蝕んだ。

 

「舞、フラッピ、チョッピ、無事で居て!!」

 

 咲は、舞を捜して走り出した・・・

 

 

「どうした!?鬼ごっこはもう終わりか?さあ、太陽の泉の在処を言え!!」

 

「そんなの知らないわ!」

 

「惚けるな!泉の精が知らん筈あるまい!!惚けるなら・・・」

 

 顔を強張らせたカレハーンが、両手を挙げウザイナーを召喚すると、モエルンバ同様、手柄を焦るカレハーンは、二体のウザイナーを呼び出した。

 

 側にあった花のウザイナーと、如雨露(じょうろ)のウザイナーが、舞達の前に姿を現わす。思わず引き攣る舞の顔を見て、カレハーンの口元が笑みを浮かべる。

 

 だが、その時・・・

 

「舞!フラッピ、チョッピ、大丈夫?」

 

 息を切らしながら、咲が一同の前に現われる。咲を見て、自然と嬉しそうな表情を浮かべる舞、フラッピとチョッピの瞳も輝いた。カレハーンは、不適な笑みを浮かべると、

 

「ようやく来たか、もう一人のプリキュア・・・ウザイナー!!」

 

 カレハーンの指示を受け、二体のウザイナーが、咲に攻撃を仕掛けた。咲は、如雨露のウザイナーの攻撃を、何とかかいくぐったものの、花のウザイナーの触手を足下に食らい、転倒した拍子にスケッチブックを落としてしまう。

 

「アァ・・・舞の大事なスケッチブックを・・・よくもぉぉ!!」

 

「咲・・・」

 

 自分がスケッチブックを大事にしている事を、咲が知っていてくれて、舞は心から嬉しく思うのだった。風でパラパラスケッチブックが捲れ、それを見た咲、フラッピ、チョッピ、カレハーンの目が点になる。

 

 それもその筈で、スケッチブックに描かれていたのは、全て咲の絵だったのだから・・・

 

「ぜ、全部私の絵?ど、どうして!?」

 

「咲が私の大事な物を知っていてくれたように、私も気付いたら、咲の絵を描いていたの・・・そして、思ったの!私、咲の事もっと知りたいって!!」

 

「舞・・・私も、舞の事もっと知りたい!舞ともっと仲良くなりたい!!」

 

 手と手を取り合い、見つめ合う咲と舞、まるで自分達の世界に浸っているような咲と舞に、呆気に取られていたカレハーンは、

 

「いや、それ以上仲良くなると、モエルンバのような、危ない世界に足を踏み込むぞ?」

 

 顔に汗をかきながら、妙な雰囲気を醸し出す咲と舞に、カレハーンは、敵である筈の二人に忠告するも、フラッピは首を振ると、

 

「二人には、聞こえてないラピ」

 

「エェェ!?聞けよ、お前ら!!・・・何だろう、今なら土の泉で何時も孤独に過ごす、彼奴の気持ちが少し分かる気がする・・・」

 

 フッと心に寂しさが沸き上がるカレハーンだったが、直ぐに我に返り、

 

「って場合じゃない!ウザイナー、あいつらを倒せ!!」

 

 戸惑っていた二体のウザイナーが動き出すと、フラッピとチョッピが咲と舞に呼びかけ、二人を我に返させると、

 

「もう、舞と絆を深めてたのに・・・舞、行くよ!!」

 

「分かったわ、咲!!」

 

 咲と舞が頷き合うと、ミックス・コミューンに二つのプリキュアダイアをセットし、ミックススピンすると、二人は手を握り合い、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えたブルームとイーグレットは、何時も以上の力を感じていた。二人のプリキュアの下に、精霊の光が集まっていく。

 

「凄いラピ!」

 

「二人の気持ちに、精霊達が応えてるチョピ」

 

 フラッピとチョッピが嬉しそうに話す。二人が身構えると、ブルームは花のウザイナーを、イーグレットが如雨露のウザイナーと戦い始める。

 

「いかに何時も以上の力を出そうとも・・・この俺も居るのを、忘れるなぁぁ!!」

 

 先程無視された怨みもあってか、カレハーンも直に動き、ブルームとイーグレットを枯れ葉の舞で攻撃した。二人の視界を悪くさせると、ブルームは触手に捕らえられ、イーグレットは、如雨露から放たれた、水のシャワーを浴び続け苦戦する。

 

「どうだ、プリキュア!この俺が本気を出せば、お前達など相手にならん!!」

 

 勝ち誇るカレハーンだったが、互いに手を伸ばしたブルームとイーグレットが、手を握り合った時、凄まじい光が二人を包み、二体のウザイナーを弾き飛ばした。

 

「何だとぉぉ!?」

 

 動揺するカレハーンを余所に、見つめ合ったブルームとイーグレットが、笑みを浮かべ合うと、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦が二体のウザイナーを飲み込む。ウザイナーは砕け、緑色の無数の精霊が泳ぎ始めて戻っていく。

 

「おのれぇぇ!こいつら、着実に力をつけてやがる・・・これで勝ったと思うなよ?」

 

 カレハーンは、怒りの表情を浮かべながら撤退した。変身を解いた二人、咲はスケッチブックを拾い、埃を払って舞に手渡すと、舞は嬉しそうにそれを受け取った。二人の絆が、また一歩深くなったように感じる、咲と舞だった・・・

 

 

・・・ダークフォール・・・

 

 戻って来たカレハーン、モエルンバに対し、ゴーヤーンは、相変わらずの嫌みを二人に吐き、二人を苛立たせる。苛立ちを紛らわすように、モエルンバは踊り始めながら、

 

「今回はあと一歩だったんだ・・・二人だけなら勝っていた!三人目のあいつの強力なバリアーが無ければ・・・」

 

「フン、俺だってそうだ!二人を分断したまでは成功したのだが・・・」

 

 モエルンバ、カレハーンが共にあと一歩だったとゴーヤーンに語るも、ゴーヤーンは首を傾げ、モエルンバの言葉を心の中で繰り返すと、

 

「二人共、お待ちなさい!今モエルンバ殿は、三人目と仰いましたなぁ?プリキュアは、三人居るのですか?」

 

「三人だ!」

 

「二人だ!」

 

 モエルンバは三人だと言い、カレハーンは二人だと、互いに違う事を言い合った。再び互いに顔を近づけ、三人か二人かで口論するカレハーンとモエルンバ、ゴーヤーンは二人を黙らせると、

 

「お二人の話を聞くと、私には、認めたくない一つの可能性に突き当たるのですが・・・ひょっとして、カレハーン殿、モエルンバ殿は、互いに違うプリキュアと戦って居たのではないのですか?」

 

 再び顔を見合わせたカレハーンとモエルンバは、ゴーヤーンの顔を見ると、一呼吸間が開いた後、

 

「「何だとぉぉ!!」」

 

 思わず声をハモらせ驚きの声を上げる。だが、二人にもゴーヤーンの予想通りだとすれば、納得出来る事が多々あった。素人か戦い慣れているか、連戦の筈なのにピンピンして居た事など・・・

 

「俺が戦ったプリキュアは・・・黒と白、黄色い衣装を着ていた!」

 

「俺が戦ったプリキュアは・・・ブルーム、イーグレットと呼ばれていた!確かに・・・そう考えると、俺達の話が食い違うのも当然だな!」

 

「アミーゴ、それならカレッチが戦った後に、俺が攻撃を仕掛けても、疲れなど有る筈が無いな・・・」

 

 二人は頷き合い、これなら負けた事も言い訳出来ると言うも、ゴーヤーンは、それとこれとは別ですと二人に釘を刺し、二人は不服そうな表情になる。

 

「これは、少し作戦を変えねばなりませんねぇ・・・もし、プリキュア同士で手でも組まれたら、我々にとって最大の脅威となる事でしょう!!お二方、プリキュアに攻撃を仕掛ける前に、互いの戦ったプリキュアの情報をお話頂きましょうか?」

 

 ゴーヤーンの言葉に、渋々ながら二人は頷き、互いが戦ったプリキュアの情報を知らせ合うのだった・・・

 

 

2、人質作戦

 

 月日が流れた・・・

 

 ダークフォールの戦士達が沈黙を貫く中、時は過ぎ、ゴールデンウィークも終わり、母の日が近づいて居た・・・

 

 

 母の日前々日の夜・・・

 

「最近、あいつら現われないよねぇ?こう静かすぎるのも、何か不気味だよね・・・」

 

「何かよからぬ企みを企てて居そうメポ」

 

「そうだよねぇ・・・でも、暫く何も無かったんなら、ラクロス部に・・・入れば良かったかな!?」

 

 なぎさは、自分の部屋でメップルと会話していた。

 

 なぎさとほのかは、新たな敵が現われた事で、部活に入るのを中断していた。嘗てのように、部活の仲間に迷惑を掛けないようにしようと決め、新たなる敵との決着が付くまでは、動きやすいようにお互いしておこうと、ほのかと相談して決めていた。

 

 その時、部屋をノックする音が聞こえ、メップルは慌ててハートフルコミューンに変化した。

 

「お~い、なぎさ!お土産買ってきたぞ!!」

 

 ドアをガチャリと開け、なぎさの父、岳が顔を覗かせ、ニコリと微笑む、

 

「お帰りなさい!どうしたの、お父さん?ニコニコして!?」

 

「なぎさに良い物買ってきてやったぞ!居間においで!みんなで食べよう!!」

 

 岳に呼ばれたなぎさは、居間に向かうと、そこには母理恵、弟亮太が既に座っていた。なぎさも席に着くと、岳はニコニコしながら、

 

「実は、今日出張で出掛けたんだが、昼に買ったパン屋が、実に美味しくてね!みんなにも食べさせて上げたいと思って、仕事が終わった後に買ってきたんだ!ほら、なぎさも好きだろう?チョココロネ!!なぎさはチョコが大好きだからなぁ・・・チョコっと食べてみろ!!」

 

「イヤだ、お父さんったら、最高!!」

 

 相変わらずのオヤジギャグを言う岳、理恵は大笑いし、なぎさと亮太は、引き攣った笑みを浮かべ呆れていた。呆れながらも貰ったチョココロネを、一口食べたなぎさの表情が幸せそうになる。

 

「本当だ・・・美味しい!こんなに美味しいチョココロネ食べたの、ぶっちゃっけ初めてかも?」

 

 そう良いながらパクパク食べるなぎさを見て、岳や理恵は微笑みを向け、亮太はそんななぎさを見て呆れながら、

 

「お姉ちゃん、そんなにバクバク豚見たいに食べてると・・・太るよ!!」

 

「誰が豚だぁぁ」

 

 立ち上がったなぎさが亮太を捕まえると、プロレス技を掛ける。高校生になったなぎさは、中学生になった亮太に対し、コブラツイストから卍固めへと、亮太へのお仕置きもグレードアップしていた。

 

「イテェェ!バカなぎさ、止めろよぉぉ!お母さ~~ん、なぎさが虐めるぅぅ」

 

「なぎさ!おとなしく座って食べなさい!!」

 

「ハハハ、なぎさ、卍固めを覚えたのか?」

 

 和やかな団欒をする美墨一家だった・・・

 

 

「ほのか、ほのか」

 

 廊下から、祖母早苗に声を掛けられたほのかが返事をすると、早苗から、ほのかの母、文から電話だと伝えた。ほのかは、嬉しそうに電話口へと向かった。

 

「もしもし、お母さん!ほのかです!!」

 

「ほのかちゃん!何時も寂しい思いをさせてゴメンね・・・」

 

「ううん、この間の誕生日にも来てくれたし、大丈夫よ!お母さんも、お父さんも、お身体大丈夫?お仕事忙しいんでしょう?」

 

「ええ、相変わらずよ・・・でも、今回一週間程休養も兼ねて、日本に帰れる事になったの!お父さんも帰るつもりだったんだけど、どうしても外せない商談が出来ちゃって・・・」

 

 母、文が日本に帰ってくると聞き、ほのかの顔が嬉しそうに綻んだ。父、太郎は帰れないものの、一週間も一緒に居られる何て、何時以来だろうかと思うほのかだった・・・

 

 

「いやぁ、あんた達悪いねぇ?料理まで作って貰ってさ」

 

「いえいえ、これぐらいお世話になってるから当たり前ザケンナー・・・って、お前も手伝えザケンナー」

 

 料理の支度に精を出す、チビのザケンナーに対し、ノッポのザケンナーは、ひかるとトランプをしていて全く手伝う気を見せず、チビザケンナーを苛立たせる。

 

「ひかるの面倒を見て貰ってるし・・・私が手伝いますから」

 

 ひかりがエプロンをして、チビザケンナーを手伝い、料理を始める。敵対していた間柄なのに、今は共に暮らし、アカネという大黒柱を中心に、家族の有り難みを知り、心から今を楽しむひかりだった。

 

 

 なぎさ、ほのか、ひかり、三者三様にこの日を送る三人に、闇夜に浮かぶ炎は、嘲笑うように浮かんでいた。

 

「精々楽しむが良いさ!お前達のラストダンスは近いぜぇ!!」

 

 炎から姿を現わしたモエルンバは、不敵な笑みを浮かべると、その姿を消した・・・

 

 

 時を同じくして・・・

 

「お姉ちゃん、母の日のお母さんへのプレゼント、どうするの?」

 

「う~ん、どうしようか?別々にプレゼントするのも良いけど、二人で何か作って、お母さんにプレゼントっていうのも有りかなぁって思うけど・・・」

 

 母の日に、沙織へのプレゼントをどうするか考える咲とみのり、咲の提案を聞き、みのりもそれが良いと返事を返すと、咲とみのりは色々考え、二人で手作りケーキでもプレゼントしようと決めるのだった・・・

 

 

「おい、舞!そろそろお風呂入っちゃえよ・・・ン?何描いてるんだ!?」

 

「あっ、お兄ちゃん!うん、ちょっとね・・・お兄ちゃん、先に入っちゃって!もう少し描いておきたいから」

 

 舞が描いている絵が気になるのか、和也はヒョイっと覗き込みながら、

 

「そうか、悪ぃな・・・おっ、母さんの似顔絵か・・・これなら母さんも喜ぶぞ!」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

 和也に褒められ、頬を少し赤らめながらも、舞は黙々と可奈子の絵を描き続け、チョッピは興味深そうにそんな舞を見つめていた・・・

 

「精々、今の内に楽しんでおくのだな・・・」

 

 不適な笑みを浮かべたカレハーンが、枯れ葉の舞と共にその姿を消した・・・

 

 

 母の日・・・

 

 なぎさとほのかは、ひかりも誘い、母の日への買い物でショッピングに出掛けていた。

 

「ひかり、お店大丈夫だったの?」

 

「はい、あの人達が私の分まで働くので、出掛けて良いと言ってくれて」

 

「そうなの?・・・ひかりさんには悪いけど、何か複雑な気もするわね・・・」

 

「でも、根は良い人達ですよ!」

 

「人と言うか、ザケンナーだけどね」

 

 そんな会話をしながら笑い合う三人だった。

 

 なぎさは理恵に、ほのかは文に、ひかりは、母親代わりとも呼べるアカネに送るプレゼントを、三人は真剣に選んでいた。そんな三人に声を掛ける者が居た。街中でも踊り歩く目立つ男・・・モエルンバである。

 

「セニョリータ!久しぶりだなぁ・・・ちょっと俺と付き合わないかい?」

 

「ハァ?今あんたに構ってる暇は無いの!プレゼント選びで忙しいんだから」

 

 なぎさは、手でモエルンバにシッシとどっか行けとジェスチャーするも、

 

「おやおや、冷たいねぇ!お前達の返答次第では、そのプレゼントが無駄になっちまうぜぇ?」

 

 不適な笑みを浮かべるモエルンバ、なぎさはモエルンバの言っている意味が分からなかったが、ほのかの脳裏に最悪な事態が過ぎった。

 

「あなた・・・まさか!?」

 

「おやおや、察しがいいな!そういう事・・・大人しく俺に追いてきて貰おうか・・・チャチャ」

 

 勝ち誇ったように、追いて来いと言うモエルンバに、何か言おうとするなぎさを制したほのかは、自分達の家族や、アカネが、モエルンバによって捕らわれたかも知れないと言い、なぎさもひかりも表情が険しくなる。

 

 廃工場に連れて来られた三人、そこにはほのかの予想通り、捕らわれていた理恵、文、アカネが居た。

 

「お母さん!?ちょっとあんた、お母さんやアカネさんは関係無いでしょう?離してよ!!」

 

「関係無い?いや、大有りだね!セニョリータ、俺も手荒な真似はしたくないが、お前達の返答次第だ・・・太陽の泉は何処だ?」

 

「そんなの知らないわ!!」

 

 ほのかも感情的に太陽の泉など知らないと答えるも、モエルンバは忌々しそうな表情を浮かべ、

 

「知らないだと!?なら、捜してこい!!それが出来なければ・・・ウザイナー!!」

 

 モエルンバは、三人を捕らえている、ベルトコンベアのようなウザイナーに指示を出すと、ベルトで巻き付かれた三人の人質が、宙に浮かべられる。それを見たなぎさ達から悲鳴が漏れる。ハートフルコミューン姿のメップル達が、変身するように促すも、

 

「おっと、変身したらどうなるかな?さあ、太陽の泉の在処・・・チャッチャと捜してきて貰おうか!」

 

 表情を強張らせたモエルンバの脅迫を受け、なぎさ、ほのか、ひかりの顔が苦悶に歪む、太陽の泉の在処など、わかるわけが無かった。だが、言う通りにしなければ、三人の大切な家族の身が危うい、どうすれば良いのか、三人は戸惑っていた・・・

 

 更に急かすモエルンバの前に、手も足も出せないなぎさ達だったが、物陰から二つの陰が、このやり取りを見ている事に、誰も気付く者は居なかった。

 

「よ、ようやく、見付けたザケンナー」

 

「プリキュア達も、手が出せないザケンナー・・・アカネ様、ひかり様には、坊ちゃまをお世話して貰ってるし・・・何とか助けるザケンナー」

 

 チビとノッポのザケンナーが頷き合い、理恵、文、アカネの側にそっと近づいていった。

 

「早くしろ!セニョリータ、こうでもしなければ動けないかい?」

 

 モエルンバの指示を受け、ウザイナーが、捕らえていた三人を空中高く放り投げると、なぎさ達から悲鳴が沸き上がった。

 

「今、ザケンナー!!」

 

 咄嗟に飛び出したザケンナーコンビは、ノッポザケンナーが理恵と文を、チビザケンナーがアカネをキャッチすると、一目散に逃げ出し始める。

 

「アァァ!待てぇぇ・・・ウザイナー、あいつらを捕まえろぉぉ!!」

 

 モエルンバの指示を受け、ザケンナーコンビを追いかけようとするウザイナーに、

 

「あんた達、出来した!そのまま逃げて!!」

 

「お母さん達を利用するなんて・・・」

 

「「「絶対に許せない!!」」」

 

 ザケンナーコンビの活躍に喜びながらも、三人はモエルンバを見ると、険しい表情を見せ、絶対に許せないと啖呵を切った。

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 三人がプリキュアへと変身し、ルミナスはザケンナーコンビのフォローに向かい、ウザイナーからの攻撃を防ぎ、ブラックとホワイトは、鬱憤を晴らすように、モエルンバに対し、コンビネーションで責め続ける。ブラックの怒濤のパンチの連打が、ホワイトの投げ技が、モエルンバを圧倒する。

 

「クッ、人質など居なくても・・・グハァ、ウ、ウザイナー、プリキュア共を先に片付けろ!!」

 

 怒りに燃えるブラックとホワイトの力は強く、モエルンバは思わずウザイナーに命令して、プリキュアから距離を取るも、ブラックは、ウザイナーの攻撃を右手で受け止めると、ギュッと力強く握り、ウザイナーが苦悶の表情を浮かべる。

 

「許せない・・・私達に攻撃してくるのは、覚悟してる。でも、お母さん達を、アカネさんを巻き込むのは・・・絶対に許せない!!ダダダダダダ!!!」

 

 鬱憤を晴らすように、ウザイナーにパンチの連打を浴びせるブラックが、ウザイナーの巨体を宙に浮かべる姿に、モエルンバは驚愕する。

 

「私達は、太陽の泉何か知らない!でもあなた達に、絶対に渡してはならない物だとは、理解したわ・・・ハァァァ」

 

 モエルンバに突っ込んだホワイトに、モエルンバは指を鳴らし炎で攻撃するも、ホワイトは華麗に躱し、瞬時に出したモエルンバのパンチを回転しながら捌くと、モエルンバを投げ技で吹き飛ばす。

 

「ガハァ・・・こ、此奴ら・・・い、何時も以上の力だ!」

 

 倒れ込むモエルンバの上空にウザイナーが降ってきて、モエルンバを押しつぶし、モエルンバが悲鳴を上げる。ホワイトの側に来たブラックは、ホワイトと頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

「ヒィィィ・・・ど、退け、ウザイナー!!」

 

 何とかウザイナーから離れたモエルンバ、二人から発せられた、マーブルスクリュー・マックスを受け、ウザイナーは倒され、精霊達が解放される。ブラック、ホワイトは表情を緩めずモエルンバをキッと睨み付けた。その迫力の前に、モエルンバは思わず仰け反り、

 

「セニョリータ・・・次こそは、必ずお前達のラストダンスにして見せるからな!アディオス!!」

 

 二人の視線から逃げるように、モエルンバは慌ててその姿を消した。

 

 変身を解いたなぎさとほのかは、五つ目の奇跡の雫を手にすると、捕らわれていた母達の下に向かい、何処も怪我が無い事に、安堵の表情を浮かべ涙目になる。

 

「あいつ、母の日にお母さん達を、よくもこんな目に・・・」

 

「私達が勝てたのも、あなた達のお陰よ!ありがとう!!」

 

 なぎさとほのかは、ザケンナーコンビを見て笑顔を見せながらお礼を言うと、戸惑いながら見つめ合ったザケンナーコンビは、慌てて両手を振って、

 

「と、とんでもないザケンナー」

 

「お世話になってる皆さんの役に立てて、良かったザケンナー」

 

 なぎさとほのかに感謝され、どう反応して良いか戸惑うザケンナーコンビの表情に、なぎさ、ほのか、ひかりも笑い合うも、

 

「なぎささん、ほのかさん、私達・・・まだプレゼント買って無いですけど、このまま顔を合せても、大丈夫でしょうか?」

 

 フッと気付いたように、ひかりがなぎさとほのかに言葉を掛けると、二人も思い出したのか、

 

「あっ、そうだ!このまま顔を合せるのも・・・」

 

「そうね・・・二人共、お母さん達をお願い!直ぐに買って戻って来るから!!」

 

 慌てて外に飛び出すなぎさ、ほのか、ひかりに、声を掛ける暇も無く、顔を見合わせ困った顔をするザケンナーコンビの背後で、理恵、文、アカネが目を覚ました。ザケンナーコンビを見た理恵と文は、二人を変質者と勘違いし、二人の悲鳴が、廃工場の中に響き渡った。

 

 身を寄せ合い怯える理恵と文に、アカネは、自分の親戚ですから安心して下さいと二人に声を掛け、買い物を終えたなぎさ、ほのか、ひかりが戻り、必死に、ザケンナーコンビが倒れていた三人を介抱していたと取り繕い、その場を乗り切るのだった・・・

 

 

3、運命の出会い!

 

・・・ダークフォール・・・

 

 アクダイカーンの御前に引き出されたカレハーン、モエルンバの表情は怯えきっていた。その側では、二人を見たゴーヤーンがニヤニヤし、二人を苛立たせる。

 

「貴様ら、よくもおめおめ、我が前に姿を見せれたものだなぁ?カレハーン!モエルンバ!最早貴様らの顔など・・・見たくは無い!!この場で消し去ってくれる!!!」

 

 怒りが頂点に達したのか、ダークフォールに地響きが鳴り響く、二人は益々怯え、必死に弁明するも、アクダイカーンの怒りが静まる事は無かった。

 

「お待ち下さい、アクダイカーン様!カレハーン殿も、モエルンバ殿も、何の作も無く、おめおめアクダイカーン様の御前に現われますまい・・・そうですよね、お二方?」

 

「む、無論だ!」

 

「アクダイカーン様、次こそは我らの身命を掛けて、太陽の泉のありかを白状させます!!」

 

 ゴーヤーンの含みを残す助け船に乗り、カレハーン、モエルンバが、アクダイカーンに、次こそは身命を掛け、太陽の泉の在処を突き止めると宣言し、その姿を消した。

 

「モエルンバ、貴様の所為だぞ!貴様がしくじった所為で俺まで・・・」

 

「カレッチ・・・そう言うなよ!もう、こうなれば手段は選ばない!!カレッチ、俺もお前の作戦に協力する。お前が戦って居るプリキュアを倒し、太陽の泉の在処を・・・」

 

「貴様の協力など受けん・・・と言いたい所だが、背に腹は代えられん!今回ばかりは共同作戦に同意してやる!!」

 

 追い詰められたカレハーン、モエルンバが手を握り、咲と舞に危機が迫ろうとしていた・・・

 

 

・・・夕凪中学校昼休み・・・

 

 昨日の母の日に、咲は、妹みのりと協力して作った、沙織への感謝の気持ちを込めて作ったケーキを手渡し、沙織は、二人からの心の籠もったプレゼントのケーキを、嬉しそうにその味を味わった。一方の舞も、可奈子への似顔絵プレゼントを、可奈子は心から喜び、寝室に飾っていた。

 

「そうか、舞も喜んで貰えて良かったよね!」

 

「うん、咲も、みのりちゃんと作ったケーキ、美味しそうに食べて貰えて良かったね」

 

 共に昨日の出来事を語りあう咲と舞だったが、突然フラッピが騒ぎ始め、二人は慌てて物陰に隠れる。

 

「もう、フラッピ、突然話し出さないでよ!」

 

「感じるラピ!奇跡の雫の力が、強くなっているラピ」

 

「チョッピも、感じるチョピ」

 

「これも咲と舞が、奇跡の雫を集めてくれたお陰ラピ」

 

 改めて咲と舞に礼を言うフラッピとチョッピに、咲と舞は微笑むのだった。だが、反応が強くなったのは咲と舞だけのお陰ではなく、なぎさとほのか、ひかりも手にしている事も影響していた。なぎさ達が火の泉を戻す奇跡の雫を5つ、咲達が木の泉を元に戻す奇跡の雫を4つ集めていた事が影響していた。

 

 この事をまだ一同は知らない・・・

 

「咲、舞、今ならフェアリーキャラフェを見付けられる筈ラピ!」

 

「フェラーリー?何か高級そうな名前だね!?」

 

「咲・・・フェアリーキャラフェラピ!奇跡の雫を保管するアイテムラピ」

 

「キャラフェの中に、泉の雫を7つ入れると、それぞれの泉への扉が現われるチョピ」

 

 フラッピとチョッピの言葉を聞いていた咲と舞は、重要なアイテムである事を知り、キャラフェを捜す事を決意し、早速放課後に探しに行こうと二人で決めるのだった。

 

 

「なぎさ、中間テストで早く終わっただけなのに、出掛けて良いの?おまけにひかりさんまで・・・」

 

「まあまあ、ほのかとひかりにも食べさせてあげたくてさ・・・お父さんにお店の地図書いて貰ったし、ちょっと遠いけど、来れない距離じゃ無いし、勉強は、食べながらでも出来るじゃない!」

 

「・・・なぎささんがそう言うんでしたら、私は構いませんよ!でも、アカネさんに知られたら、怒られちゃいそうですけど・・・」

 

 なぎさ、ほのか、ひかりは、中間テストで学校が半日で終わった事を利用し、この間岳が土産に買ってきたパン屋に、電車で向かっている最中だった。ほのか、ひかりはテスト期間中なのに良いのかなと思いつつも、なぎさの誘いを無碍(むげ)にも出来ず、共に向かうのだった。

 

「最初お店の名前聞いた時、またお父さんのオヤジギャグかと思ったよ!何せ、PANPAKAパンだもん」

 

「確かに、変わった名前よね・・・」

 

「でしょう?でも、味は最高何だぁ!!」

 

 まるでピクニックに向かっているように、ウキウキするなぎさを見て、微笑むほのかとひかりであった・・・

 

 

 放課後・・・

 

 フェアリーキャラフェの探索に向かった咲と舞の二人は、フラッピ、チョッピ達が感じるキャラフェの気配を頼りに、林の中を突き進んだ。深い林の中を進んで行く二人は、

奇跡の雫が反応しだした事に気付き、

 

「ねえ、舞、奇跡の雫が動いているよ?」

 

「本当だわ・・・ひょっとして、私達を導いてくれるのかしら?」

 

 顔を見合わせ綻んだ笑顔を見せる咲と舞だったが、

 

「ああ、そうだ、導いてやるさ!!」

 

「セニョリータ!地獄って奴にね!!」

 

 咲と舞の前に、カレハーンとモエルンバが姿を現わすと、咲と舞は、初めて見るモエルンバに動揺する。モエルンバも初めて二人に会ったのを思い出すと、

 

「おっと、紹介が遅れたな・・・俺は、モエルンバ!まあ、今日で消えるお前達には、覚える必要は無いチャチャ」

 

 モエルンバを見た咲と舞は、嫌そうな表情を浮かべるも、咲と舞が頷き合うと、ミックス・コミューンに、二つのプリキュアダイアをセットし、ミックススピンすると、二人は手を握り合い、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 ブルームとイーグレットが、カレハーン、モエルンバを指差し、啖呵を切った。

 

「今回こそ・・・全戦力を掛け、お前達を葬ってやる!だが、お前達には特別ステージを用意してやろう・・・」

 

 カレハーンの枯れ葉が、ブルームとイーグレットを包み込むと、二人は強制的にその身を移動させられる。解放された二人が目にした場所、それは大空の樹だった。

 

「初めてあった此処が、お前達の最期の地だ!」

 

「覚悟しろ、プリキュア!!」

 

「「ウザイナー!!」」

 

 険しい顔を浮かべたカレハーンは、昆虫、鳥、の二体のウザイナーを出し、尚且つ木のウザイナーを再び出現すると、自ら同化し現われる。一方のモエルンバは、キノコ、栗鼠の二体のウザイナーを出現させ、自らも二人のプリキュアと睨み合った。包囲される形になったブルーム、イーグレットに焦りが生じる。四体のウザイナーと、ウザイナーと同化したカレハーン、モエルンバ、これだけの人数に果たして勝てるのか?二人の心を不安が蝕むのだった・・・

 

 なぎさ達は、遂にPANPAKAパンに到着し、なぎさは涎を垂らしそうな表情で、チョココロネだけを大量にお盆に乗せていた。

 

「なぎさ・・・他のパンも美味しそうだよ!違うのも買ったら?」

 

「そうだけどさ・・・今回は、チョココロネだけを食べようと心に決めて来たんだ!」

 

 なぎさの執念にも似たチョココロネへの情熱に、呆れながらも苦笑するほのかと、ひかり、それを見て微笑むレジに居た沙織だった・・・

 

「そう、態々遠くから買いに来てくれた何て・・・嬉しいわぁ!」

 

 なぎさを見て娘咲を思い描いたのか、沙織の表情が、自然と柔らかく三人を見つめていた。

 

「良かったら、外にテラス席あるから、家で食べていっても構わないわよ?」

 

「本当ですか?ヤッタァ~~!ねっ、ほのか、ひかり、食べながら試験勉強も出来るでしょう?」

 

「う~ん、それは、結果オーライじゃないかしら?」

 

「いいから、いいから!」

 

 早く食べたいなぎさは会計を済ますと、ほのか、ひかりを急かすようにテラス席へと連れて行った。

 

 だが、その時・・・

 

「ひかり、向こうの方で嫌な気配を感じるポポ」

 

「ルルンも感じる・・・怖いルル」

 

「二人共、どうしたの?向こうの方に何かを感じるの!?」

 

 ひかりの問い掛けに頷くポルンとルルン、メップル、ミップルも異変を感じたのか、

 

「ポルンの言う通りメポ!あそこから、邪悪な気配が漂っているメポ」

 

 妖精達の言葉に、表情を引き締め、邪悪な気配がする方向を見つめるほのかとひかり、名残惜しそうに、テーブルに置いてあるチョココロネを見つめるなぎさ、

 

「なぎさ!!」

 

「エッ!?わ、分かってるよ・・・おばさん、後で必ず、必ず食べに来るから、そのままにして置いてぇ~~!!」

 

 沙織に言伝すると、走り出す三人の姿に、沙織は小首を捻るのだった。

 

 

 ブルーム、イーグレットは、絶望的な戦いを続けていた・・・

 

 何度も地面に叩き付けられ、二人の悲鳴が沸き上がった・・・

 

 最早戦いとは呼べない、一方的な虐待だった・・・

 

「ハハハ、これだけの戦力差では、流石のお前達でも、手も足も出ないようだな!滅びの力の前では、所詮この程度よ!!」

 

「セニョリータ!これ以上痛い目に遭いたくなかったら・・・太陽の泉の在処を教えろ!」

 

 二人を見下すカレハーン、モエルンバに対し、ヨロヨロ立ち上がった二人は、

 

「嫌・・・あんた達何かに、私達、絶対負けない!フラッピや、チョッピの故郷を、滅茶苦茶にしたあんた達何かに・・・」

 

「ブルーム・・・」

 

 ブルームの言葉に涙を流すフラッピ、

 

「ブルームの言う通りよ!私達は、最後まで戦う!!二人の故郷を取り戻すんだからぁぁ!!」

 

「イーグレット・・・」

 

 イーグレットの言葉に涙を流すチョッピ、そんな光景を見下し、大笑いするカレハーンとモエルンバは、

 

「泉の精よ、良いのか?お前達の所為で、こいつらは苦しんでいるんだぞ?」

 

「セニョリータ、もっと痛めつけなければ分からないかい?ウザイナー!もっと、もっと、痛めつけろ!!」

 

 キノコのウザイナーが胞子を放射し、ブルームとイーグレットがゴホゴホ咳き込み、カレハーンが触手で二人を締め付ける。涙を流しながら必死に左手をイーグレットに伸ばすブルーム、右手を必死にブルームに伸ばすイーグレット、あと少しで届きそうになると、

 

「おっと、お前らの行動はお見通しだ!」

 

 カレハーンにより引き離される二人、今までの鬱憤を晴らすように、弄ぶカレハーンとモエルンバ、

 

 その時・・・

 

「アッ!あんたは・・・またあんたかぁ?全く、私達が行く先々で悪さして・・・」

 

「ゲッ!?セニョリータ・・・何故お前達が此処に?」

 

 大空の樹に駆けつけたなぎさ、ほのか、ひかりは、モエルンバを見付け嫌そうな顔をするも、ウザイナーの集団を見て表情を引き締める。苦悶の顔を浮かべたブルームは、

 

「に、逃げて・・・私達の戦いに巻き込まれちゃう」

 

 自らのピンチよりも、なぎさ達の身を案じるブルームに気付き、なぎさ、ほのか、ひかりの顔色が変わる。

 

「あの娘達・・・私達に似てるね?」

 

「ええ、事情は分からないけど、あいつが居る以上、このままには絶対出来ない!!」

 

「はい、彼女達を助けましょう!!」

 

 三人が変身アイテムを取り出すと、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 カレハーンとモエルンバ、そして、ウザイナーを指差し二人が啖呵を切る。

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共に、ひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 絶対的なピンチの中で現われた、自分達に似た戦士を見て、ブルームも、イーグレットも、驚きの声を上げた。初めて見る三人に驚いたカレハーンは、

 

「おい、あれがお前が戦って居たプリキュアか?」

 

「そうだ・・・だが、こっちが有利なのは変わるまい!行くぞ、アミーゴ!!ウザイナー!!!」

 

 標的をブラック、ホワイト、ルミナスに変えたウザイナーに対し、ブラックはルミナスに、

 

「ルミナスはあの娘達を援護してあげて!行くよ、ホワイト!!」

 

「ええ・・・決着を付けましょう!!」

 

 キノコのウザイナーに正面から突撃したブラックとホワイトは、思いっきり助走を付けたダブルキックを浴びせ、キノコウザイナーを瞬殺し、ブルームとイーグレットを守るようにウザイナーの前に立ち塞がった。その強さに、呆然とするブルームとイーグレット、そしてカレハーンだった。

 

「あなた達も・・・プリキュアなの!?」

 

「私達以外にも、プリキュアが居た何て!?」

 

 驚くブルームとイーグレットに、微笑み返したブラックとホワイトは、

 

「私らも驚いたよ・・・でも、今はこいつらを倒すことに専念しよう!」

 

「二人共、大丈夫!?戦えそう?無理はしないでね!!ルミナス、彼女達をフォローしてあげて!!」

 

「はい!お二人は戦いに集中して下さい。彼女達の守りは私が引き受けます!」

 

 頼れる仲間の登場で、顔が綻んだブルームとイーグレットに、精霊達が集まり力を貸していく。

 

 まるで今まで受けていたダメージが薄らいでいくように、力が漲ってくるブルームとイーグレット、四人のプリキュアが頷き合い、同時にウザイナーに突撃する。

 

 鳥のウザイナーをブルームとイーグレットが、栗鼠のウザイナーをブラックとホワイトが、攻撃しようとするカレハーンとモエルンバの攻撃を、ルミナスが完全に防ぎきる。

 

 鳥のウザイナーを、地面に叩き落としたブルームとイーグレット、栗鼠のウザイナーを蹴り飛ばしたブラックは、昆虫のウザイナーを投げ飛ばしたホワイトと背中合わせになり、二人はアイコンタクトすると、必殺技をウザイナーに放とうとする。

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラックとホワイトの攻撃の前にウザイナーは倒され、火の精霊達が解放される。

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦が二体のウザイナーを飲み込む。ウザイナーは砕け、緑色の無数の精霊が泳ぎ始めて戻っていく。

 

「畜生、こんな筈じゃ・・・」

 

「プリキュアァァァ!!」

 

 逆上したカレハーン、モエルンバが、強大な力で一同を追い詰めていく、

 

「闇の力が暴走してるメポ」

 

「このまま攻撃を受け続けるのは、不味いラピ」

 

 メップル、フラッピのアドバイスに頷いた五人が頷き合うと、ルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込む。

 

「漲る勇気!」

 

 手を回転させながらブラックが構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く絆とともに!」

 

 ハーティエルバトンを構えたルミナスが、そして足を広げ踏ん張るブラックとホワイトが気合いを込め、ブラックとホワイトの前方に巨大なハートが浮かび上がると、

 

「「エキストリーム!!」」

 

「ルミナリオォォ!!」

 

 ブラックとホワイトの叫び声がハモリ、気合いを込めたルミナスの叫びが響き渡る・・・

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出した。

 

 虹色の凄まじい光が、螺旋の渦が、カレハーンとモエルンバを飲み込んで行く・・・

 

「バカな!?こんな、バカなぁぁぁ???」

 

「アンビィリィィバボォォ!!」

 

 飲み込まれた二人は、自分達が敗北した事を信じられないように散った・・・

 

 上空から枯れ葉が、火の粉が散っていった・・・

 

 

 上空から落ちてきた、奇跡の雫を手にするブラックとブルーム、大喜びで踊り合うフラッピとチョッピに、メップル達も近づき踊りあった。フラッピ、チョッピから大体の事情を聞いたなぎさ達とメップル達は、

 

「ダークフォールメポ?クイーンなら何か知っているかも知れないけど、メップル達は聞いた事が無いメポ」

 

「でも、ジャアクキングと同じように、闇に関係しているのは、間違いなさそうミポ」

 

「奇跡の雫なら、なぎさ達も持ってるメポ!でもなぎさは、アメ玉と間違えて食べようとしたメポ」

 

 メップルにばらされ、動揺するなぎさを見て、フラッピとチョッピが涙目になりながらなぎさを見つめると、

 

「ち、違うわよ!食べて無いわよ!!美味しそうだなぁとは思ったけどさぁ・・・メップル、余計なことは言わない!!」

 

 なぎさに拳骨され、メップルは痛そうに頭を撫でていた。咲と舞も、そんなコミカルななぎさを見て笑っていると、真顔に返り、

 

「さっきは助かりました・・・一時はやられると思っちゃった」

 

「なぎささん、ほのかさん、ひかりさんは、私達がプリキュアになる前から戦って居たんですね・・・通りでお強いと思ったわ」

 

「ううん、あなた達こそ凄いわ!まだプリキュアに成り立てなのに、此処まで戦える何て・・・昔の私達以上だと思う!!」

 

「そんなぁ・・・煽(おだ)てられたら、照れるなりィ!」

 

 頭を掻く咲を見て一同は笑い合った。舞は笑いながらも咲をたしなめ、

 

「もう、咲ったら・・・でも、此処で私達は始めてプリキュアになって、この場所でプリキュアの仲間に出会えたのも、何か不思議な力を感じるわ」

 

「そうだね・・・舞に初めて出会ったのもこの場所だし、なぎささん、ほのかさん、ひかりちゃんに初めて会ったのもこの場所・・・」

 

 感傷に浸る一同だった・・・

 

 その時、遊び歩いていたポルンとルルンが、大空の樹から見えるある一点が光輝いている事に気付き、騒ぎ始める。集まった一同も気付き、見つめていると、光輝く物体に反応するように、木の泉と火の泉の計14個の奇跡の雫が輝き始めた。 

 

「これは・・・フェアリーキャラフェラピ!!」

 

 嬉しそうに話すフラッピの言葉通り、光が近づき、一同は遂にフェアリーキャラフェの姿を目にした。ガラスの水差しに似たような容器を、嬉しそうに手にしたフラッピとチョッピは、嬉し涙を流した。

 

「さあ、この中に奇跡の雫を7個入れるラピ!先ずは、木の泉からラピ!!」

 

「分かったわ!こうで良いの?」

 

 回転しながらキャラフェの中に転がり落ちていく、木の泉の奇跡の雫、7個全てが治められた時、突然空間が割れ、なぎさ、ほのか、ひかり、咲、舞、そしてメップル達、フラッピとチョッピが、悲鳴を上げながら、その中に吸い込まれていった・・・

 

 

            第二話:邂逅!二組のプリキュア

                   完

 



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第三話:謎の転校生、満と薫

            第三話:謎の転校生、満と薫

 

1、フィーリア王女

 

 カレハーン、モエルンバを倒し、木の泉、火の泉の奇跡の雫を、全て手に入れたなぎさ達と咲達は、キャラフェに導かれ、荒れ果てた地に送られた。

 

 だが、枯れ果てた木々、生命を感じさせない不気味な雰囲気に、一同は眉根を曇らせた・・・

 

 此処が、フラッピやチョッピ達が暮らしていた世界なのか?・・・

 

 この現状に、涙を流すフラッピとチョッピを見た一同は、ダークフォールから、必ず泉を取り戻す事を、心の中で誓うのだった・・・

 

 

「ここが木の泉ラピ」

 

「咲、舞、キャラフェに入っている奇跡の雫を、この場所で使うチョピ」

 

 フラッピとチョッピに促(うなが)された咲と舞が、奇跡の雫を言われるまま大地に注ぐと、奇跡の雫が地面に溶け込み、少しすると、ゴォォと地下から物凄い音が響き渡り、地下から溢れ出す泉の水が、噴水のように沸き上がり、一同がパニック状態になった。

 

「みんな、急いで此処から離れるラピ」

 

「木の泉が甦るチョピ」

 

「そ、そう言う事は先に言ってよねぇ!」

 

 咲はフラッピに文句を言うも、泉の勢いを見て、一同は大慌てで安全地帯まで避難した。

 

 何とか逃れた一同は、ハァハァ呼吸し、息を整えた。木の泉が甦ると、枯れ果てた地に草木が蘇り、木の精霊が集まってきた。一同は、その素晴らしい光景に見とれていると、泉から舞い上がったかのように、光の柱が現われると、泉の上にうっすらと人影が見える。それを見たフラッピ、チョッピの目に涙が溜まった。

 

「あれは・・・フィーリア王女ラピ!」

 

「フィーリア王女!チョッピチョピ!!」

 

 二人の声が聞こえないのか、フィーリア王女は微笑みを浮かべ、その姿は徐々に消えていった。フラッピとチョッピの悲しそうな顔を見た一同は、顔を見合わせると頷き合い、なぎさとほのかが二人に近付くと、なぎさは二人を励ますように声を掛けた。

 

「まだ火の泉が残ってるよ!二人共、元気出して!!」

 

 なぎさが、ほのかが、ひかりが、持っている火の泉の奇跡の雫を、フラッピとチョッピに見せて元気づけると、

 

「そうだったラピ!なぎさ、ほのか、ひかり、キャラフェに奇跡の雫を入れるラピ」

 

 フラッピに促され、なぎさ達がキャラフェに奇跡の雫を入れると、再び一同は亀裂に吸い込まれ、悲鳴を上げた・・・

 

 

「着いたラピ!此処が火の泉ラピ!」

 

 フラッピの言葉を受け、辺りを見回した一同は、先程の木の泉同様、枯れ果てた火の泉を見て心を痛めた。

 

「早く奇跡の雫を使ってチョピ」

 

 チョッピの言葉に頷き、今度はなぎさ達が、雫を泉があった場所に零すと、溶け込んだ雫が広がり、再び地下からゴォォと轟音が聞こえ、その場を離れる一同、木の泉と同じように、火の泉も元に戻り、フラッピとチョッピは嬉しそうに舞い踊った。

 

 泉の上にフィーリア王女が再び姿を見せると、彼女の言葉が聞こえてきた・・・

 

「フラッピ、チョッピ、ありがとう!そして、伝説の戦士達よ!ありがとう・・・あなた達のお陰で、奪われていた木の泉、火の泉を、取り戻す事が出来ました!!でも、用心して下さい。敵は新たなる力を差し向ける事でしょう・・・あなた達なら必ず・・・」

 

 力が足りなかったのか、途中でフィーリア王女の姿が消えた。

 

「フィーリア王女・・・もっと、もっとお声を聞きたかったチョピ」

 

 しょげ返るフラッピとチョッピに近づいたメップル、ミップルが二人を励ます。二人も嘗て、ドツクゾーンによって、平和に暮らしていた光の園の半分を、闇に浸食された事を思い出すも、なぎさ達なら、きっと泉を全て取り返してくれると笑顔を向けた・・・

 

「メップル達の言う通りだよ!私達もこうして咲や舞、フラッピ、チョッピと知り合えたのも何かの縁だし、力を貸すよ!!」

 

「なぎさの言う通りよ、だから泣かないで、フラッピ、チョッピ」

 

 なぎさとほのかも、フラッピとチョッピに声を掛け、協力すると約束をする。ひかりは、二人の頭を優しく撫でながら頷いた。

 

 再び亀裂に吸い込まれた一同は、大空の樹を介し、元の場所に戻って来たのだが、まるで大空の樹から放り出されるように、元の世界に戻って来た。

 

「イタタタ・・・もうちょっと優しく戻して欲しいよねぇ!!」

 

「本当だよね・・・取り敢えずみんな無事に戻れて良かった!」

 

 咲となぎさは、顔を見合わせ微笑んだものの、なぎさは食べ損ねていたチョココロネの事を思い出し、

 

「アァァ!PANPAKAパンに戻って、チョココロネ食べなきゃ!」

 

「エッ!?なぎささん達PANPAKAパンに居たの?家の店ですよ!!」

 

「そうなの?咲の家のパン美味しいよね!私達が此処に来たのも、チョココロネが目当てでさぁ!」

 

「それはなぎさでしょう!ねぇ、ひかりさん」

 

「アハハ、そうですね!」

 

 すっかり打ち解けた一同は、共にPANPAKAパンへと戻って行った・・・

 

 

 

 翌日・・・

 

 ダークフォールでは、アクダイカーンが、木の泉、火の泉を奪われた事に怒り狂っていた。滅びの力が敗れた事が信じられないように、ゴーヤーンを詰問するアクダイカーンであった。

 

「ゴーヤーン!一体どうなっておるのだぁぁ!!」

 

 ゴーヤーンは、アクダイカーンの怒りに身を竦めながら、

 

「お~怖い、怖い・・・全くカレハーン殿も、モエルンバ殿も、だらしがないですなぁ・・・ですが、ご安心下さい!既に土の泉を守護する、ドロドロン殿がもうお見えになられている筈・・・ドロドロン殿!」

 

 辺りを見回すも、それらしき人物が見当たらず、更にドロドロンの名前を呼ぶゴーヤーンに対し、

 

「僕ならさっきから此処に居るよ!」

 

 地中から顔を出した男、ボソボソ喋り、中々言葉が聞き取りにくかったのか、ゴーヤーンは耳に手を当てると、

 

「はい?何ですって!?」

 

「だからぁ・・・僕なら、さっきから此処に居たってば!」

 

「居るなら声を掛けて頂かなければ、私も分かりませんよ?」

 

「さっきから喋り掛けてたのになぁ・・・」

 

 不満そうにしながらも、地中から飛び出した、覆面レスラーのような体格をしたドロドロンが、全身を露わにした。ゴーヤーンは、心の中で不気味な奴だと思いながらも、

 

「早速ですが、泉の精と共に居るプリキュアの方を倒して頂きたい!あわよくば、太陽の泉の在処もお願い致しますよ!」

 

「分かってるよ!僕が行けば、チョチョイさ!」

 

「ご油断致しませぬよう・・・もう一組の三人のプリキュアが、援護に現われるとも限らない・・・二組のプリキュアの凄まじい力によって、カレハーン殿、モエルンバ殿は倒されたのですからな」

 

「僕はカレッチ達とは違うよ」

 

 ゴーヤーンは再び耳に手を当てると、

 

「はい?何か仰いました!?」

 

「言ってませぇぇん!!」

 

 ムッとしたように、ドロドロンは地中の中にその姿を消した・・・

 

 

2、謎の転校生

 

 その日の放課後、ソフト部の練習をする咲の姿を、スケッチブックに描く舞の背後から、一人の少女が覗き込むも、舞は、それに気付かないように、熱心に咲の姿を描き続けていた。

 

「上手いのねぇ・・・確か、美翔さんだったわよね?」

 

 舞は少女の言葉に気付かないのか、絵を描き続ける。少女が舞の耳元で、ワッと声を出すと、キャッと悲鳴を上げた舞が、ようやく少女に気付いた。

 

「脅かしてごめんなさい!私は、美術部の竹内綾乃!あなた、絵が上手いのね・・・もし良かったら、美術部に入らない?」

 

「エッ!?そうねぇ・・・でも私、好きな絵を描くのが楽しくて描いているだけで、テーマを決められて描くのは、あまり好きでは無いの・・・ごめんなさい」

 

「そう・・・無理にとは言わないわ!良ければ考えておいて!何時でも歓迎するから!!」

 

「あ、ありがとう!!」

 

 少女はそう言い残すと、その場を去っていた。舞も絵は好きだが、美術部に入ってまで描こうと考えた事は無かった。

 

(美術部か・・・確かに此処で咲の練習を終わるのを待っているよりは、有意義かも知れないけど・・・)

 

 舞の心に、どうするべきか迷いが生じていた。

 

 練習を終えた咲が、舞の下に来ると、舞はその悩みを咲に相談した。

 

「う~ん、そうだねぇ・・・私は、ソフト部でみんなと一緒に居ると楽しいんだ!キツイ練習で何度もヘコタレそうになったけど、その都度仲間達が励ましてくれた!一人ではそうはいかなかった・・・もちろん、プリキュアの時もそう!舞が居てくれるから、私は戦える!!」

 

 咲の言葉に、ハッとしたように舞は何かに思い当たった。

 

(咲の言う通りだわ!絵を描いているのは楽しい・・・でも、それを見て褒められるのは、もっと嬉しい!それが絵を描く励みになる・・・プリキュアもそう、咲が居てくれるから!!)

 

 舞は咲に笑顔を向けると、

 

「ありがとう、咲!あなたのお陰で、迷いが吹っ切れそうだわ!!」

 

「どう致しまして!よく分からないけど、役に立ったようで良かった・・・絶好調なりィ~」

 

 咲も舞に笑顔を向けるも、何かボソボソ声が聞こえ始め、咲と舞は首を傾げた。

 

「僕は道に迷って、到着するのが遅くなっちゃったけどね」

 

「舞、今何か言った?」

 

「エッ!?言わないけど・・・」

 

 変ねぇと、互いに首を傾げる咲と舞に、フラッピとチョッピが、ダークフォールの気配がすると注意を促した。辺りを見渡す咲と舞だが、一向に姿が見えず、顔を見合わせ、二人はまた首を傾げた。

 

 突然花壇の土の中から現われたドロドロン、それを見た咲と舞は、妙な出で立ちの大男を見て状態を仰け反らせる。ドロドロンは、二人に無視されてると感じたのか怒っていた。

 

「お前達、僕をさっきから無視するなぁぁ!さっきから話し掛けてるのにぃぃ!!」

 

 行き成り現われ、行き成り怒られた咲と舞はポカンとするも、

 

「知らないわよ!あんた誰?」

 

「ムフフ!僕は、ドロドロンで~す!カレッチやモエルンバのようには行きませぇぇん!!」

 

「はい?」

 

「よく聞き取れなかったんだけど・・・」

 

 咲と舞に、何を言ってるのか分からないと言われ、その場でドロドロンは地団駄を踏んで悔しがると、

 

「カッチィィン!もう、怒っちゃったからなぁぁ・・・ウザイナー!!」

 

 花壇に取り憑いたウザイナーが現われ、それを見た咲と舞は見つめ合うと、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 プリキュアの姿を初めて見るドロドロンは、

 

「あれが、プリキュアかぁ・・・何かムカツクな・・・ウザイナー、泥まみれにしてやって!」

 

 ドロドロンの指示通り、口から泥を連射して吐き出すウザイナーに、二人は躱しながらパンチ、キックを繰り出すも、触手が二人の手と足を捕らえ、振り回し放り投げる。空中でクルクル回転して、体勢を整えた二人が地上に着地する。

 

 二人の一瞬の油断を見逃さず、ドロドロンは蜘蛛の糸のようなネットで、ブルーム、イーグレットを捕らえ勝ち誇った。

 

「フフフン!どんなもんだい!!さあ、太陽の泉の在処、教えなさぁぁい!!」

 

 鼻歌交じりに、太陽の泉の在処を聞くドロドロンに、舌を出すブルーム、更に締め上がるドロドロンに、ブルームとイーグレットは手を握り合い、力を込めると、ネットを弾き切った。

 

「うっそ~~!?」

 

 動揺するドロドロンの隙を付き、今度はブルームのパンチが、イーグレットの蹴りがドロドロンを吹き飛ばす。二人はウザイナーに向き直ると、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦がウザイナーを飲み込む。ウザイナーは砕け、茶色の無数の精霊が泳ぎ始めて戻っていく。

 

「今日は・・・撤退です!!」

 

 地面に潜ると、ドロドロンはその姿を消した。

 

「また新手が出たね!」

 

「ええ、なぎささん達にも、知らせた方が良いかも知れないわね」

 

「そうだね・・・じゃあ、帰ったら連絡入れてみるよ!」

 

 変身を解いた咲と舞は、新たなる敵の出現に身を引き締めるのだった・・・

 

 

 

・・・ダークフォール・・・

 

 まるで、ゴーヤーンの顔のような巨大な石像の中に、茶室のような部屋で茶をすするゴーヤーンが居た。ドロドロンがしくじったのを知り、やはり一人では無理だったかと思ったゴーヤーンは、自分の部屋で、今後の事を思案していた。

 

「やれやれ、ドロドロン殿お一人では、無理なようですねぇ・・・」

 

 ゴーヤーンは、目の前の水晶を、手で何度も行き来させると、

 

「ミズ・シタターレ殿!ミズ・シタターレ殿!!」

 

 水晶が輝くと、徐々に水晶に人の姿が浮かび上がってくる。水晶に映ったのは、見た目は貴婦人風の女性だった。ゴーヤーンが再び名を呼ぶと、

 

「オ~ホホホホ!あら、ゴーちゃんじゃない!?このあたくしにご用?」

 

「ゴーちゃんって・・・私はゴーヤーンです!それより、ミズ・シタターレ殿、あなたのお力を是非お借りしたいのですが?」

 

 ゴーヤーンが呼び出したのは、水の泉を守護するミズ・シタターレ、その強さは、ダークフォールの戦士の中でも1、2を争うと言われている手練れだった。

 

「オ~ホホホホ!このあたくしの力を借りたい何て・・・ゴーちゃんたら正直者ねぇ」

 

「はい、あなた様程のお力をお借りする程でも無いと思ったのですが、ドロドロン殿だけでは心許なく・・・お力をお貸し頂けますか?」

 

「嫌よ!」

 

「ハッ!?」

 

「嫌って言ったの!他の奴らなら兎も角、あたくし、あいつ嫌い何ですの!!」

 

 そう言い残すと、一方的にゴーヤーンとのコンタクトを止めるミズ・シタターレ、ゴーヤーンは溜息を付くと、再び水晶に手を翳しはじめ、

 

「キントレスキー殿、キントレスキー殿!」

 

 次に水晶が浮かび上がらせた人物、全身金色に輝くモヒカン刈りの男が、片手腕立て伏せを、汗まみれになりながら行っていた。

 

「9887、9888、9889・・・」

 

「キントレスキー殿!呼んでるのが聞こえませんか?」

 

「9900・・・何だ、ゴーヤーン!私は忙しいのだ!!・・・あっ、数が分からなくなったでは無いか・・・全く・・・1、2、3・・・」

 

 次にゴーヤーンが呼び出したのは、金の泉を守護するキントレスキー、ミズ・シタターレと1、2を争い合う、ダークフォールの戦士である。だがこの男、自らの鍛錬が何より大好きで、トレーニングの邪魔をされるのを、極度に嫌がる戦士だった。

 

 ゴーヤーンは溜息を付き、手を広げて駄目だコリャとジェスチャーする。

 

「やれやれ、困りましたねぇ・・・出来ればあの方達に頼むのは気が引けますが、仕方がありませんねぇ・・・気まぐれな二人故、扱いに苦労するんですよねぇ・・・」

 

 ゴーヤーンはそう愚痴ると、何処かへ姿を消した・・・

 

 

・・・翌日・・・

 

 一緒に登校する咲と舞、咲は、昨日の新たなる敵の事をなぎさに報告すると、なぎさは、もっと詳しい事を聞きたいから、ほのか、ひかりと一緒に、咲達の街に来ると言ってくれていた。咲は、なぎさ達との待ち合わせ場所を、大空の樹と決めた事を舞に知らせる。

 

「私達に仲間が居てくれるって、心強いよね!」

 

「そうね!咲が居てくれて、なぎささん、ほのかさん、ひかりさんが居てくれて、こんなに心強い事はないわ!ところで・・・ねぇ咲、私、美術部に入ることにしたの!決心が付いたのも、咲のお陰よ!ありがとう!!」

 

「エッ!?私、何かしたっけ?・・・でも、舞の絵の上手さが、益々みんなに知れ渡って、私もちょっと鼻高々!!」

 

「もう、咲ったら・・・ウフフフ」

 

 笑い合いながら登校する咲と舞の姿を、丘の上から眺める二人組の少女達が居た。

 

「満、あの二人が日向咲、美翔舞、プリキュアなのね?」

 

「ゴーヤーンの話ではそう・・・どうする薫?もう一組のプリキュア、美墨なぎさ、雪城ほのか、九条ひかりも見に行く?」

 

「どうでも良いわ・・・でももう少し、彼女達の様子を見てみましょう・・・ドロドロンが、今日も攻撃しようと張り切っていたし・・・」

 

「そうね・・・プリキュアのお手並み、拝見するとしましょう!」

 

 赤色のショートカットが満、青い髪のロングが薫、共にお揃いのねずみ色の上着と、黒っぽいスカート、紫色のズボンを履いていたが、違うのは、満は赤い水晶のペンダントを、薫は青い水晶のペンダントをしていた。彼女達は、咲達の姿が見えなくなると姿を消した・・・

 

 

 

・・・放課後・・・

 

 咲と舞は、部活を終えた後、待ち合わせ場所の大空の樹に向かっていた。新たなる敵との戦いに備え、今は部活をしていないなぎさ、ほのか、ザケンナーコンビのお陰で、前よりTAKO CAFEを手伝わずにすむひかりは、既に大空の樹の前で談笑していた。

 

「なぎささん、ほのかさん、ひかりちゃん、遅くなってスイマセン!」

 

「気にしないで、私達もさっき着いた所だから!」

 

 謝る咲と舞に、なぎさ達は笑顔を向け、今着いたばかりだと返事を返すも、

 

「で、新たなる敵が現われたって事だけど?」

 

 ほのかの問いに、頷く咲と舞が何かを言おうとした時、

 

「そう、それは僕で~す!」

 

 地中からひょっこり顔を出し、自分だと名乗ったドロドロンだったのだが、一同には聞こえておらず、スルーされる。

 

「いいんだ、いいんだ、僕何てさ・・・」

 

 大きな身体を縮め、大空の樹の角で、体育座りをしながらイジケルドロドロンの姿に、ようやく気付いたひかりが指を指しながら、

 

「ひょっとして、咲さんや舞さんが言ってたのは、あの人じゃ?」

 

 ひかりの指さす方を見た四人は、ようやくドロドロンを見付ける。

 

「あっ、そうそう・・・って、何で体育座りしてるんだろう?」

 

「さあ?この前もいきなり怒ってたわね」

 

 咲と舞が首を捻ると、なぎさは、うんうん頷き、

 

「今回の敵は、変わった奴らが多いよね!何時も踊りまくってる奴も居たし・・・」

 

「あだ名で呼んでくれって、言ってたのも居ました」

 

 なぎさと咲が互いに戦ったカレハーン、モエルンバの事を思い出し笑い合った。

 

「なぎさ・・・咲さん・・・一応、目の前に敵が居るんだけど?」

 

 笑い合うなぎさと咲に呆れ、目を点にしたほのかが二人を注意する。

 

「あなたもそこで体育座りしてないで、用があるなら、何か言いなさい!」

 

 ほのかに注意されたドロドロンが、ほのかの方に振り向くと、

 

「僕は話し掛けてました!無視してたのは、君達で~す!!」

 

「エッ!?そうなの・・・聞こえなかったわ?」

 

「お前ら~、僕をバカにしてるだろう?もう、怒ったからな・・・ウザイナー!!」

 

 バカにされてるように感じたドロドロンは怒り出し、ウザイナーを呼び出す、

 

「これだけの人数相手じゃ・・・出し惜しみはしません!!」

 

「はい?何か言った!?」

 

 耳に手を当てて聞き返すなぎさと咲に、地団駄踏んで悔しがるドロドロンは、足下に倒れる大きな石、地上を歩く蟻をウザイナーに変えた。

 

「行くよ、ほのか、ひかり、咲、舞」

 

 なぎさの言葉に頷いた一同は、変身アイテムを手に取り、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 ドロドロンの前に勢揃いする五人のプリキュア達、ブルーム、イーグレットも、幾多の戦いを経験し、戦士の風格を醸し出し始めていた。

 

「何人居ても・・・僕には勝てませぇん!」

 

「だから、はっきり言ってくれなきゃ、聞こえないでしょう?」

 

 ドロドロンの小声にイライラしたのか、ブラックがドロドロンを指差し、シャキッとしろと文句を言うと、

 

「うるさ~い!僕をバカにするなぁぁ!ウザイナー、ギタギタにしてやっちゃえ!」

 

 ドロドロンの合図を受け、攻撃を開始する二体のウザイナー、ブラックとブルームが突っ込み、石のウザイナーに右パンチを浴びせるも、

 

「「い、痛ぁぁい!」」

 

 硬い石のウザイナーには、パンチも効果が無く、二人の右拳がジンジン響き、二人は右手に息を吹きかけ、右手を振って痛みを和らげる。

 

「僕をバカにするからで~す!」

 

 フフフンと勝ち誇ったように笑むドロドロンを見て、悔しそうな表情を見せるブラックとブルーム、

 

「ブラック、ブルーム、大丈夫?どうやら石だけあって、あのウザイナーは硬いらしいわね」

 

 一方、イーグレットは上空に舞うと、加速を付けて急降下し、蟻のウザイナーにかかと落としを繰り出すも、ウザイナーは両手をクロスして耐えると、イーグレットの右足を掴み振り回す。

 

「キャァァァ!」

 

「イーグレット!このぉぉ!!」

 

 ブルームが渾身の左ストレートでウザイナーを吹き飛ばし、イーグレットを救い出す。

 

「どうやら、今度の敵は接近戦を得意としているようね・・・みんな、距離を取って戦いましょう!ブラック!!」

 

 ホワイトの合図を受け、近寄ったブラックがホワイトとアイコンタクトを取ると、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラック、ホワイトの必殺技、マーブルスクリューマックスが、石のウザイナーに炸裂し、見事に打ち倒せば、ドロドロンの不意打ちを、ルミナスに救われたブルーム、イーグレットが、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦が蟻のウザイナーを飲み込む。

 

 解放された土の精霊達が嬉しそうに泳ぎ回っていた・・・

 

「ウゥゥ・・・今回も、負けちゃいました・・・トゥ!!」

 

 地中に潜ったドロドロンは、ゴーヤーンにどう言い訳しようか考えながら撤退する。変身を解いた少女達が、大空の樹の前で今後の事を話し合う・・・

 

 

「フィーリア王女が言っていたように、新たなる力・・・油断できないわね!」

 

「そうですね・・・私達には、敵の情報を知る術がありません・・・」

 

 ほのか、ひかりの言葉に舞も頷くが、なぎさも同意するものの、何処か楽観視しているようで、

 

「そうだね・・・でも、頭は悪そうだしさ!何とかなるんじゃない?」

 

「ダークフォールの奴らも、なぎさには言われたく無いと思うメポ」

 

「んだとぉ!こら、メップル!!」

 

 忽ち和やかな雰囲気になる一同、咲と舞は、大空の樹の言い伝えを思い出すと、

 

「この街には、言い伝えがあるんですよ!大空の樹は守り神!!」

 

「この樹の前で出会った人達は、強い絆で結ばれているんですって・・・」

 

 咲と舞の言葉を受け、なぎさ、ほのか、ひかりも二人に笑顔を向けながら、

 

「そうだね・・・こうやってプリキュアの絆で結ばれた私達が出会ったのも、偶然だけとは思いたくないね!」

 

「ええ、科学的じゃ無いけど・・・神秘的な何かを感じるわね」

 

「はい、なぎささんやほのかさんに出会えたように、咲さんや、舞さんと出会えたのも、運命的な何かを感じます」

 

 なぎさ、ほのか、ひかりの言葉を聞き、咲は、

 

「運命の出会い・・・本当に有るのかも知れないね・・・」

 

 その時、一同の会話に加わる者が現われた。

 

「それは面白い話ね!」

 

「そう?私は言い伝え何て、馬鹿馬鹿しいと思うけど・・・」

 

 赤い髪の少女は興味深そうに、青い髪の少女は関心無さそうに会話に加わってくる。少女達の冷めたような視線に、一同は見とれていたが、なぎさとほのかは、何処かでこんな感じがあったようなと思うのだった・・・

 

「私は結構好きよ・・・運命の出会い何て、素敵よね!私達が此処で出会ったのも・・・運命の出会いかも知れないわね?」

 

 赤い髪の少女の言葉に呆然とする一同、少女達がフッと笑んだその時、強風が大空の樹の周りに吹き、一同が目を瞑った間に、二人の少女は消え去っていた。

 

「い、居なくなっちゃった!?」

 

「何か不思議な人達・・・でも、何か気になるよね?」

 

 一同は二人の少女が消え去った後も、呆然と少女達が居た場所を見つめていた・・・

 

 

 

 翌日・・・

 

 登校した咲と舞は、このクラスに転入生が来ると聞き驚いていた。

 

「4月に舞が来たばかりなのにね?」

 

「だよな?」

 

 ざわめくクラスに、篠原先生が入ってくると、

 

「席に着け!これからホームルームを始める!その前に、二人の転入生を紹介する!霧生、入ってこい!!」

 

 篠原先生に呼ばれ教室に入ってきた人物を見て、咲は立ち上がり二人を指さすと、二人は微かに口元に笑みを浮かべた。

 

「何だ日向、またお前の知り合いか?」

 

「いやぁ、知り合いって言うか、昨日見掛けただけと言うか・・・」

 

「まあいい、霧生、黒板に名前を書いて自己紹介しろ!!」

 

 篠原先生に促され、名前を書き始める二人、赤髪の少女は霧生満と書き、青い髪の少女は霧生薫と書いた。クラスメート達が、小声で色々話し合う。二人共美人ねとか、二人は双子の姉妹なのか?などなど・・・

 

「二人は、昨日この街に越してきたばかりだから、みんな、色々教えてあげるように!」

 

 篠原先生の言葉を受け、席に座る満と薫、席順はドア側の一番後ろに薫、その前に満が座る。

 

 咲の脳裏に、昨日の満の言葉が浮かんでくる。私達が此処で出会ったのも、運命の出会いという言葉が・・・

 

(うん、そうだよ!なぎささん達と出会えたように、霧生さん達との出会いも、運命の出会いだったんだよ!!)

 

 咲は嬉しそうな表情で、満と薫を眺めていた・・・

 

 

3、戸惑い

 

 嘗ての舞のように、クラスメート達から満と薫に、質問攻めが浴びせられる。二人は興味無さそうに、薫は小声でうっとうしいと思わず漏らすも、満が薫をフォローする。だが、満も本心では薫と同じように思っているようで、

 

「私達、あまり指図されるの、嫌いなの!」

 

 満の言葉を聞き、静まりかえるクラス、咲が咄嗟に機転を利かせて、

 

「ほら、みんなが質問攻めするから・・・霧生さん達、困ってるじゃない!」

 

「ええ、みんな、程々にしましょう!」

 

 舞も咲の気持ちに気付いたのか、満と薫をフォローする。クラス委員の二人、宮迫学と安藤加代も、咲と舞の言葉に同意して、その場を取り繕った。満と薫は、咲と舞を見ると口元に笑みを浮かべ、

 

「ねえ、私達この学校の事詳しく知らないの!案内してくれないかしら?」

 

「うん!喜んで!!私は日向咲、私の事は咲って呼んでね!その代り、私もあなた達の事、満と薫って呼んで良いかな!?名字が同じだとややこしいからさ」

 

 満から学校を案内して欲しいと言われた咲と舞、咲は快諾し、満と薫の事を名前で呼んで良いか問うと、満は頷きながら、

 

「ええ、構わないよ!ねえ、薫?」

 

「どうでも良いわ!あなた達の好きなように呼べば良い」

 

「薫!・・・ゴメンなさいね!」

 

「ううん、私は美翔舞です!よろしくね、満さん、薫さん」

 

「じゃあ、お昼休みにでも案内するね!」

 

 咲と舞が、笑顔を二人に向け自分の席に戻って行った。

 

 授業が始まる・・・

 

 数学の教科書を読み始めた二人は、速読で読み終えると、教師の出す問題を楽々答え、クラスメート達を呆然とさせ、体育の授業のバレーボールでは、最初こそルールが分からず呆然としていたが、ルールを覚えるや否や、満と薫は、咲も顔負けする程の運動神経を見せ、これまたクラスメート達を驚かせた。

 

 昼休みになり、咲と舞は、満と薫を連れ学校を案内していた。

 

「満、薫、二人共凄いよねぇ!勉強は出来るし、運動神経も抜群、みんなも凄いって驚いてたよ」

 

「そう!?あれが凄い事なの?」

 

「別に、どうでも良いわ」

 

 満と薫が、勉強も運動も出来るのを知った咲と舞が、二人を賞賛するも、満はあれが凄い事なのか、逆に不思議そうに咲と舞に問い掛け、薫は、全く興味無さそうに歩み続ける。少し困った顔をして、互いに顔を見合わせた咲と舞は、話題を変えるように、

 

「ところで、今度の日曜に、家で二人の歓迎会をしたいんだけど・・・どうかな?」

 

「歓迎会?私達の!?何故?」

 

 不思議そうに顔を見合わせ、首を傾げる満と薫だったが、咲の誘いを承諾する。

 

 

 夜になり、満と薫は、ひょうたん岩と呼ばれる、ひょうたんの形をした岩の上で、背中合わせに座っていた。

 

「人間って不思議ね・・・」

 

 満は、学校での出来事を思い出し、人間の不思議さを考え込むと、薫はそんな満をチラリと見て、

 

「不思議?くだらないだけよ!くだらない話に喜び、くだらない遊びを楽しむ!そして、群れていないと不安がる・・・アクダイカーン様の言う通り、滅びて当然の生き物よ!!」

 

「そうね・・・でも、少し人間って生き物に、興味が出来たわ」

 

「そう?私は、興味が無いわ!私が興味有るのは、プリキュアの強さの源が何なのか知りたいだけ」

 

「そうね・・・日向咲、美翔舞、二人の強さの原因・・・じっくり見させて貰うわ」

 

 満と薫は、空に浮かぶ月を見上げ、口元に笑みを浮かべていた。

 

 

 日曜になり、咲の家で満と薫の歓迎会が開かれていた。前回の舞の歓迎会の時と同じメンバーが集まっていたのだが、主役の筈の満と薫は、終始興味が無さそうにしていて、一同をヤキモキさせていた。

 

 そこに、咲の妹みのりが、ヨロヨロしながらも差し入れのケーキを持ってくるも、よろけた拍子に、薫の服にケーキを零してしまった。満と薫を除く一同から驚愕の声が漏れる。

 

「みのり!何やってるの!!薫、ゴメンね・・・今布巾持ってくるから」

 

 慌てて店に行く咲、みのりは大粒の涙を流し、号泣しながら薫に詫びるも、

 

「何を泣いているの?あなたは別に、私に謝る程の事はしてないわ」

 

「でも、お姉ちゃんのお洋服汚しちゃったもん・・・」

 

「そう?外を歩けば汚れるものよ」

 

 一同は思わず、薫の懐の深さに感嘆の声を上げるも、薫には何故みんなが自分を称えるのか意味が分からず、首を捻った。戻った咲が、慌てながら布巾で薫の服を拭こうとするも、薫はこのままで構わないと言い、みのりは、自分を庇ってくれた薫の存在に、親近感を抱くのだった・・・

 

 ひょんな事からクラスメート達と親睦を深めることになった満と薫、公園のベンチに座り、歓迎会の事を思い起こしていた。

 

「人間って、やっぱり不思議・・・」

 

「そうね、飲んで食べて、くだらない遊びを楽しみ・・・何がそんなに面白いのか理解出来ない」

 

「でも、不思議と嫌な気分にならなかった」

 

「そう・・・ね」

 

 咲と舞と共に行動する満と薫の中で、何かが生まれようとしていた・・・

 

 

 PANPAKAパンでは、歓迎会の後片付けをする咲と舞、さっきの失敗を取り返そうと手伝うみのりが居た。

 

「薫には悪い事しちゃったなぁ・・・みのり、ちゃんと謝ったんでしょうね?」

 

「大丈夫よ、咲!みのりちゃんもちゃんと謝ってたし、薫さんも、全然気にしないで居てくれたから・・・ね、みのりちゃん」

 

「うん・・・あのお姉ちゃん、みのり、大好き!!」

 

「もう、みのりは単純何だからぁ・・・でも、満と薫、あんまり楽しそうじゃ無かったね?」

 

「まだ、この街になれないのもあると思うわ」

 

「僕も、全然楽しくないでぇす」

 

 咲、舞、みのりの会話に、ボソボソ何か聞こえた気がした咲と舞の脳裏に、ドロドロンが浮かび上がる。

 

「みのり、ここはもういいから、家に入ってなさい!」

 

「ブー、またお姉ちゃん、みのりをお子様扱いするぅ・・・」

 

「いいから!舞、場所を変えよう!」

 

「そうね!急ぎましょう!!」

 

 駄々を捏ねて、家に入るのを嫌がるみのりをその場に残し、咲と舞は場所を移動する。なるべく人通りのなさそうな所を選んだ咲と舞は、偶然にも満と薫が居る公園にやって来た。

 

「あれは、咲と舞!」

 

「慌てているようね・・・」

 

 満と薫は身を潜め、咲と舞の様子を伺うと、芝生からドロドロンが現われ、咲と舞の前に立ち塞がる。咲と舞は、やっぱりあんたかと思いながらも、ミックス・コミューンを手に取り変身を始める。

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 ドロドロンに対し、啖呵を切るブルームとイーグレットに、ドロドロンは街灯(がいとう)をウザイナーに変えて攻撃し始める。ウザイナーの口から、光の粒子が吐き出され、二人はバリアーを張り攻撃を耐え凌ぐと、一気に上空に飛翔し、ウザイナーに対しパンチ、キックの連携技で、ウザイナーに攻撃を当てていく。

 

「僕も居るのを、忘れない事だねぇ!」

 

 ドロドロンが放つネットが、イーグレットを捕らえ振り回し始めると、イーグレットは悲鳴を上げる。

 

「イーグレット!このぉ、イーグレットを離してよ!!」

 

 飛び込んだブルームが、ドロドロンにパンチを浴びせて体勢を崩すと、その間にイーグレットに近づき手を握り合った瞬間、ネットを切り裂き、二人は雄叫びを上げる。

 

 近づいて来るウザイナーを見た二人は、頷き合うと、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦がウザイナーを飲み込む、解放された土の精霊達が嬉しそうに泳ぎ回っていた・・・

 

「何であいつら、僕を助けに来ないんだよぉぉ!!ん?」

 

 向こうに満と薫が居るのを見付けたドロドロンは、地下に潜り二人に近づいて行くと、地中から顔を出し、満と薫を恨めしそうに見つめた。

 

「満、薫、何で僕を手助けしないんだよぉぉ!?酷いぞぉぉ、僕を手助けする為に、緑の郷に来たんだろう?」

 

 満と薫は、グダグダ文句を言うドロドロンをキッと睨み付けると、

 

「私達は、アクダイカーン様以外、誰の指図も受けない!」

 

「さっさと報告に行けば?プリキュアには勝てませんでしたってね」

 

「ウゥゥ・・・ゴーヤーンに言いつけてやるからなぁぁ!」

 

 半べそかきながら、地下に潜ったドロドロンが撤退すると、戦いを終え、立ち去ろうとする咲と舞を見つめる二人、

 

「薫、ドロドロンでは、プリキュアには勝てそうも無いわね!」

 

「そうね、でもそうすると次は・・・」

 

 満と薫は、そう言うと沈黙したまま、その場を離れて行った・・・

 

 

 満と薫が現われてから、一ヶ月が経とうとしていた・・・

 

 失敗続きのドロドロンも、中々姿を見せなくなり、時が過ぎていく・・・

 

 梅雨の季節が始まった・・・

 

 この間にも、咲、舞、満、薫の四人は、親睦を深めていった。咲の提案で、夏の花、ひまわりを四人で植えたり、満は、咲の店の手伝いを舞と一緒にしたり、薫は、咲の妹みのりの相手をしたり、だが、このような日常の何気ない出来事が、満と薫には新鮮に映っていた。

 

 満と薫の二人は、次第に緑の郷を好きになっていった・・・

 

 

 

 ・・・ダークフォール・・・

 

 不気味な鍾乳洞のような場所で、ゴーヤーンの隣に居るドロドロンは、大きな身体を縮みこんで居た。

 

「おやおや?どう致しました、ドロドロン殿!?・・・それはそうですよねぇ、プリキュアには勝てず、太陽の泉の在処も聞き出せない・・・アクダイカーン様が、お怒りになるのもご尤もですよねぇ?」

 

「だって・・・満と薫、僕の手助けしないんだもん・・・」

 

「黙れ、ドロドロン!!」

 

 アクダイカーンの一喝を受け、思わず尻餅を付き驚くドロドロンに、アクダイカーンは、

 

「これが最後のチャンスだ!これにしくじれば、お前には帰る場所が無いと思え!!」

 

「は、はい・・・」

 

 大慌てで、逃げるように後にするドロドロンを見たゴーヤーンは、心の中で次の手を考え始めて居た・・・

 

 

 

 そんなある日、満と薫は咲と舞に誘われ、なぎさ達が居る街に遊びに来ていた。朝方降った雨も止み、咲と舞は、雨が止んで良かったと嬉しそうにTAKO CAFEにやって来る。

 

「咲、舞、久しぶり!霧生さんだっけ?あの時以来だね!」

 

「まさか、咲さんと舞さんのクラスメイトだったとわねぇ」

 

 なぎさ、ほのかが、笑顔で咲と舞、そして満と薫を迎え入れた。ひかりは、満と薫から不思議な感じを受け、戸惑いを覚えていた。彼女達が、昔の自分のように、何かに目覚め始めているように・・・

 

(何だろう・・・あの人達から、何か不思議な感じが伝わってくるみたい?)

 

 それは、ザケンナーコンビも感じていた。

 

「おい、あの二人から、何か不思議な感じがしないかザケンナー?」

 

「確かに、何かありそうな気がするザケンナー」

 

 チビとノッポのザケンナーが首を捻る中、咲と舞は、噂に聞くザケンナーコンビを見て驚いていた。なぎさに顔を近づけ、小声で話し合う咲となぎさ、

 

「あの人達がザケンナーですか!?随分大胆に行動してますね?」

 

「でしょう?不思議と他の人が見ても、人間同様に見えるみたい」

 

 満と薫に聞こえないように、小声で会話をする二人だったが、満と薫には筒抜けであった。

 

(ザケンナーと言えば、ドツクゾーンの!?)

 

(何故プリキュアと仲良くしているの?)

 

 満と薫の思考が混乱したその時、メップル達、フラッピ達が騒ぎ始め、

 

「ダァァ・・・満、薫、ちょっと待ってて!」

 

「直ぐ戻って来るわ!!」

 

 満と薫に直ぐ戻って来ると告げた咲と舞は、なぎさ、ほのか、ひかりと共に邪悪な気配がする方に駆けていくと、珍しく最初から姿を現わしたドロドロンが待っていた。

 

「ムフフフ!お久しぶりでぇす!!今日の僕は・・・無敵です!!」

 

 自信満々なのか、何時ものボソボソ声は何処へやら、はっきりした口調で、今日の自分は無敵だとプリキュアに宣言するドロドロン、

 

「みんな、用心して!何か罠が有るかも知れない!!」

 

 ほのかの忠告に頷いた一同が、変身アイテムを手に取ると、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えた戦士達が、ドロドロンに臨戦態勢を整えると、ドロドロンは、濡れた地面から泥を吸い上げ、自分と同化させていく。見る見る巨大になっていくドロドロンに、一同は困惑した。

 

「何?泥を吸収してるの!?」

 

「気をつけて!何をして来るか油断出来ない!!」

 

 ブラックが驚き、ホワイトが一同に注意を促すと、頷く一同だった・・・

 

 

「ドロドロンが現われたようね・・・」

 

「ええ、こんな日のドロドロンは要注意・・・プリキュア達は勝てるかしら?」

 

「分からない・・・」

 

 一瞬苦悩の表情を浮かべる満と薫が立ち上がると、一同の戦う場所へと駆け出していた。満にも、薫にも、何故自分達がそんな行動を取るのか分からなかった・・・

 

 

 五人は劣勢だった・・・

 

 ルミナスのバリアーが、一同を守り続けるも、ドロドロンの猛攻は凄まじかった。巨大な泥の波が、一同を飲み込もうとするも、プリキュア達は避けようとせず、ルミナスに加勢するように、ブラックとホワイトが手を握り合い、ブルームとイーグレットが手を握り合い五人から発せられる巨大なバリアーで泥の波を耐えていた。到着した満と薫は、瞬時に身を隠し、この戦いを見守る。

 

「プリキュアは・・・何故避けずに、ドロドロンの攻撃を耐えているのかしら?」

 

 満の問い掛けに、薫も訳が分からないと言うも、五人の口から、彼女達を驚愕させる言葉が次々発せられる。

 

「あそこには、アカネさんの店が、TAKO CAFEがある!」

 

「私達に取って大切な場所・・・失わせはしない!」

 

「あそこにはアカネさん、ザケンナー達」

 

「そして、満が居る」

 

「薫さんが居る」

 

「「「「「みんなを、私達は守って見せるぅぅ!!」」」」」

 

 巨大なバリアーは益々大きくなり、泥の波を押し返していった事に、驚愕するドロドロンだが、

 

「今日の僕は、一味違うんです!!」

 

 そう言ったドロドロンは、ネットを二本出し、ブルームとイーグレットを網漁のように捕らえ、引き吊り寄せる。

 

「二体のプリキュア・・・捕まえた!大量だぁぁ!!」

 

「「キャァァ!」」

 

「ブルーム!イーグレット!」

 

「待ってて、今助けに行くわ!!」

 

 網に捕まったブルームとイーグレットを、助けに向かおうとするブラックとホワイトに対し、ドロドロンは泥にウザイナーを召喚し、ブラックとホワイトを足止めする。

 

「邪魔はさせないよ!さあ、解放されたかったら、太陽の泉の在処・・・教えなさぁい!!」

 

「イ~だ!誰があんた何かに教えるもんですか!」

 

「あなた何かに、私達は負けないわ!!」

 

 ブルームが、イーグレットが、ドロドロンに負けないと言うと、ドロドロンはお仕置きとばかりに、網を一本づつ片手で持つと振り回し、二人の目を回させる。ウザイナーから発せられる、マシンガンのような泥の連射から、辛くも避けまくるブラックとホワイト、ルミナスの援護を受け、体勢を立て直すと、振り回されるブルームとイーグレットを見て、

 

「ブルーム、イーグレット・・・ホワイト!」

 

「ええ!」

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 マーブルスクリューがウザイナーを飲み込み、辛くも勝利した二人は、ブルームとイーグレットの援護に向かおうとするも、網は更に萎まれ、二人から絶望的な声が響き渡る。

 

「太陽の泉の在処を教えないからいけないんだよ・・・ミンチになっちゃいなさい!!」

 

「止めてぇぇ!!」

 

「駄目、間に合わない!ブルーム!!イーグレット!!」

 

 ブラックの、ホワイトの声が空しく辺りに響いた。ネットがブルーム、イーグレットの五体をバラバラにしようとしたその時、突如ネットが切り裂かれ、ブルームとイーグレットが解放された。

 

 

 満と薫は、プリキュアを助けた自分達の行動に、呆然としてその手を見つめた。

 

「プリキュアは、私達やあの店の人を助ける為に、その身を盾にしていた」

 

「理解出来ない・・・そう思っていた」

 

 顔を見合わせた満と薫は、再び自分達の両手を見つめながら、

 

「私達・・・勝手に身体が動いていた・・・」

 

「咲と舞の悲鳴を聞いた時、心の中で何かが張り裂けそうだった・・・」

 

「「私達、一体!?」」

 

 再び互いの顔を見つめ困惑する満と薫だった・・・

 

 

「ウッソ~~!?何で?どうして?今の僕のネットを破れるなんて・・・」

 

 困惑するドロドロンを、ダブルパンチで吹き飛ばすブラックとホワイト、ルミナスがブルーム、イーグレットに近づき介抱すると、意識を取り戻す二人、

 

「あれ、私達・・・無事なの?」

 

「ルミナス・・・あなたやブラック、ホワイトが助けてくれたの?」

 

 イーグレットの問い掛けにルミナスは首を振ると、

 

「いえ、ブラックもホワイトも間に合わなかったんです・・・でも、その時突然ネットが切れて、お二人は解放されたんです。」

 

 ルミナスの言葉に驚く二人は、切れた網を見つめるも直ぐに立ち直り、ブラック、ホワイトに加わり、ドロドロンを攻撃する。絶対的自信を持っていたドロドロンだったが、動揺したことでペースを乱し、防戦一方になる。

 

「畜生、あいつらが加勢しないからぁぁ」

 

 堪らず愚痴りだすドロドロンに、ブラックとホワイトが、ブルームとイーグレットが、互いに頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 マーブルスクリューが、ツインストリームが、ドロドロンを飲み込んでいく。

 

「満と薫さへ協力してくれれば・・・はい、お別れです!!」

 

 奇跡の光に包まれ、ドロドロンは消滅した・・・

 

 変身を解きホッとする一同の中、ほのかは妙な顔を浮かべ、ドロドロンの最期の言葉が引っ掛かっていた。

 

(満と薫さへ協力してくれれば・・・あの敵はそう言ってたような!?まさかね?)

 

 二人に疑惑が浮かんだほのかだったが、この事は胸に締まっておこうと決意するのだった・・・

 

 ドロドロンを倒した事で、ドロドロンが持っていた、残りの土の奇跡の雫を手に入れた一同は、キャラフェに七つの奇跡の雫を入れると、嘗てのように亀裂が現われ飲み込まれて行った。

 

 

 二つの泉を解放した時のように、土の泉を開放した一同に、現われたフィーリア王女が礼を言うも、

 

「ですが、次にあなた方にとって、試練とも呼ぶ出来事が起こるでしょう・・・でも、今までの事を思い出し、決して挫けないで下さい!!」

 

 そう言い残しフィーリア王女はその姿を消した・・・

 

 

 TAKO CAFEに戻った一同は、改めて親睦会を開き、遊びに来た咲、舞、満、薫を歓迎し持てなした。なぎさ、ほのかを見ていると、何処か咲と舞を彷彿させ、次第に心を開いていく満と薫だった・・・

 

 

 ひょうたん岩に背もたれ合いながら月を見た満は、

 

「良い月ね・・・」

 

「ええ、風も悪くないわね」

 

「何時からだろう・・・私達が緑の郷を、悪くないと思えてきたのは?」

 

「もし、もしも、こんな形で咲や舞、なぎさやほのか、ひかりと出会わなければ・・・」

 

「止めて、薫!ドロドロンが倒れた今・・・次は私達の番」

 

「ええ・・・心の何処かで、そんな日が来なければと思うようになってきた」

 

「私もそう・・・咲や舞と植えた、ひまわりが育つのも楽しみになっている」

 

「「でも、私達が存在する理由・・・それはアクダイカーン様の為」」

 

 寂しそうに夜空を見つめる満と薫だった・・・

 

 

4、悲しき戦い!ブラック、ホワイトVS満、薫

 

 ひょうたん岩に背持たれて座る満と薫の下に、ゴーヤーンが姿を現わした。

 

「満殿、薫殿、アクダイカーン様の命を伝えますぞ・・・ドロドロンに変わりプリキュアを討ち、太陽の泉の在処を手に入れろと・・・出来ますかな?」

 

「アクダイカーン様の命は絶対・・・私達はプリキュアを倒し」

 

「太陽の泉の在処を、手に入れて見せる!」

 

「これは、これは、心強いお言葉・・・では、吉報をお待ちしておりますぞ!!」

 

 手揉みをしながら姿を消したゴーヤーンの姿を、満と薫は嫌な者を見たといった顔をする、満と薫は、ゴーヤーンが嫌いだった。

 

 

 その日の放課後、満と薫は咲と舞と共に下校しようとしていた。その日、満と薫は何度も咲と舞を攻撃しようとするも、その都度咲や舞が笑顔で話し掛け、二人は攻撃するのを躊躇してしまっていた。

 

(これはチャンスかも知れない)

 

 そう考えた二人だったが、振り返った咲が笑顔で、満と薫をひまわりの種を埋めた場所に行こうと誘い、満と薫も同意した。ひまわりは大分育ち、花がもうすぐ咲くかもと喜ぶ咲と舞に、

 

「咲きそうだからって、何故そんなに喜ぶの?」

 

「咲けば枯れる・・・それだけ・・・無駄な事じゃないの?」

 

 満と薫の言葉に、舞は少し戸惑うも、咲は笑顔を向けながら、

 

「ううん、どんなお花だって、生まれた事に意味があるんだよ!無駄なお花や葉っぱ何て無いよ・・・ひまわりの芽が出た時、私、本当に嬉しかった!舞や、満と薫と一緒に植えたひまわりが、元気に育っていくのを見て、本当に嬉しかった!ひまわりが咲いた時、私達の絆が、一層深まる気がするんだぁ!!」

 

 満面の笑顔で一同に語る咲、薫は如雨露を持つと、ひまわりに水を上げ始め、それを見た満は驚き、咲と舞は笑顔を向けた。満も釣られるように如雨露を手に持ち、ひまわりに水を上げ始めると、

 

「何時咲くの?本当に咲くの!?」

 

「絶対に!?100%咲くの?」

 

「エッ!?あっ、100%とは・・・そのぉ・・・」

 

 満と薫の突っ込みに、困惑する咲であった・・・

 

 この日、満と薫は結局咲と舞と戦う事が出来なかった・・・

 

 

「咲と舞の顔を見ると・・・戦う事を躊躇してしまう」

 

「でも、アクダイカーン様の命に逆らう何て出来ない・・・」

 

「薫・・・今日こそ・・・良いわね?」

 

「満・・・分かっているわ」

 

 心を鬼にし、遂に咲と舞と戦う事を決意する満と薫、二人は登校中の咲と舞を見付けるや、側に落ちていた野球ボールをウザイナーにして、二人に差し向けた。突然現われたウザイナーに驚愕するも、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えた二人が、ボールのウザイナーと戦いを開始する。高所から転がり、攻撃してくる軌道予測が難しいウザイナーの動きに苦戦する二人、

 

「この動き・・・まるで計算しているように、ブルームとイーグレットを狙ってるラピ」

 

「二人共、気をつけてチョピ」

 

フラッピ、チョッピのアドバイスを受け、瞬時に行動する二人、

 

「私にボールで戦いを挑む何て・・・ドォォリャァァ!!」

 

 激しく回転したブルームは、自分の足をバット代わりに、ウザイナーを弾き返すと、

 

「ブルーム!ナイスバッティング!!」

 

 瞬時にイーグレットが、ブルームに声援を送った。落ちてくるウザイナーに対し、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 螺旋の渦がウザイナーを飲み込み消滅させ、奇跡の雫を手に入れるも、

 

「おかしいラピ・・・ウザイナーが単独で現われる何て・・・」

 

「そうチョピ、こんな事無かったチョピ」

 

 不思議がる妖精達の言葉を受け、辺りを見回したイーグレットは、二つの陰が動いたように見えた。

 

(あれは・・・女の子!?)

 

 イーグレットは小首を傾げ、消えていった影を見つめ続けた・・・

 

 

 

 翌日、ベローネ学園女子高等部・・・

 

「なぎさ、なぎさ、なぎさ、いい加減ラクロス部に入ろうよ!」

 

「そうだよ、弓子先輩も心配してたよ」

 

「ほのかも・・・何で科学部に入らないの?」

 

 なぎさとほのかは、クラスメートの志穂や莉奈、ユリコから何故部活を未だにやらないのか問い詰められ、困惑する。

 

「いやぁ・・・色々あってさ・・・ねぇ、ほのか?」

 

「うん・・・その内必ず入るから・・・ねぇなぎさ?」

 

「なぎさ、雪城さん、お主達、何か隠してるな?・・・言え、言え、言え」

 

 志穂に突っ込まれ、躙り寄られ苦笑する二人は、何とか誤魔化しその場を乗り切った。

 

 

 放課後、なぎさとほのかは、ひかりと合流し、咲達の街へと向かっていた・・・

 

 夕べに咲からの報告を受けたなぎさが、ほのかとひかりにその事を伝えると、ほのかの表情が曇った。

 

「なぎさ、明日咲さん達の街に行きましょう!咲さんには私から連絡入れるわ・・・私、満さんと薫さんに確かめたい事があるの!」

 

「どういう事?」

 

「あのドロドロンが消える直前、こう言ったのを聞いた気がしたの・・・満と薫さへ協力してくれればって」

 

「それって・・・まさか、満と薫がダークフォールの人間だって事?」

 

「まだ確かにそうだとは言い切れない・・・だからこそ確認したいの!」

 

「確かに私も、満さんと薫さんからは、不思議な感じを感じていましたが」

 

 ひかりも心当たりが微かにあるようだった。

 

「私は、プリキュアの先輩として、咲さんや舞さんには、私達と同じ悲しみを、味わって欲しくないの・・・」

 

 ほのかの脳裏に浮かんでくる人物、それはキリヤだった。闇の人間として生まれ、光の生き方に憧れ、闇と光の間を苦悩した彼は、プリキュアの勇姿に励まされ、自らの意思で闇の呪縛から解放された事を・・・

 

「仮に彼女達がダークフォールの人間だったとしても、私は、あの娘達なら、キリヤくんのように、自分の意思で闇に立ち向かえると、信じてる!!」

 

 ほのかの思いになぎさも頷き、ほのかの考えに同意した。

 

「ひかりさん、悪いけど咲さんと舞さんを引き留めて置いて、彼女達には、辛い事になるとも限らない・・・」

 

「はい、分かりました!」

 

 こうしてなぎさとほのかは、待ち合わせ場所を大空の樹と決め、満と薫を呼び出すのだった・・・

 

 

「私達に用って何?」

 

「下らない用事なら、直ぐ帰るわよ!」

 

「やれやれ、あんた達も相変わらずだねぇ・・・でも、前より活き活きしてるよ」

 

 相変わらずの態度ながら、嘗てのような氷のような印象は消え、人間味を醸し出すように感じるなぎさだった。

 

「担当直入に聞くけど・・・あなた達、何者なの?」

 

 ほのかの言葉に、思わず顔色を変える満と薫の表情が曇るも、

 

「そう、あなたは気付いて居たようね・・・」

 

「薄々とはね・・・やはり、あなた達は・・・」

 

「そうよ、私達は・・・ダークフォールの戦士!!」

 

 風が、光が二人を包み込むと、この場所で最初に会った時の衣装に替わる満と薫、

 

「待って!あなた達は、まだ自分の存在意義に迷っているんじゃない?咲さんや舞さんを悲しませないで!あなた達なら・・・闇の呪縛をはね除けられる!!」

 

 ほのかの問いに戸惑う満と薫だったが、首を振り、

 

「私達だって、この緑の郷が好き・・・でも、私達を産み出してくれたアクダイカーン様に逆らう何て出来ない!!」

 

「アクダイカーン様の意思は、私達の意思でも・・・」

 

 満と薫の言葉に頭を振るなぎさは、

 

「ううん、違うよ!最初はそうだったかも知れない・・・でも、あなた達は、咲と舞と出会い、この世界を好きになった!」

 

「それは・・・でも、無理よ!アクダイカーン様に逆らうなんて・・・私達の使命はプリキュアを倒し、太陽の泉の在処を調べる事・・・あなた達を倒す事も私達の使命」

 

「咲と舞と戦う前に・・・あなた達を此処で倒す!!」

 

 身構える満と薫、苦悩の表情を浮かべるなぎさとほのかは、見つめ合うと、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 互いに見つめ合うブラック&ホワイトと、満&薫、共に苦悩の表情を見せるも、今激突しようとしていた・・・

 

 

「咲、舞、大空の樹から、妙な気配が漂ってるラピ」

 

「でも、何か何時もと違うチョピ」

 

「大空の樹?なぎささん、ほのかさんが、満と薫と待ち合わせした場所じゃない?」

 

「た、大変だわ!私達も行きましょう!!」

 

 慌てて出掛けようとする咲と舞に、ひかりが待つように促すと、

 

「ひかりちゃん・・・何か知っているの?」

 

「どういう事なの、ひかりさん?」

 

「それは・・・」

 

「お願い、教えて!私達、なぎささん、ほのかさん、満と薫が心配なの!」

 

「ひかりさん・・・」

 

 咲と舞の心が、ひかりにも痛い程伝わってくる。ひかりは、心の中でなぎさとほのかに詫び、咲と舞に、ほのかから聞いた事を話し始めた・・・

 

 

 互角の戦いを繰り広げるブラック&ホワイトと、満&薫、互いに決定打を欠くものの、お互いの強さを実感する。

 

 だが・・・

 

「ブラック、ホワイト、あなた達の力は、こんなものじゃ無い筈でしょう?」

 

「何故戦いに躊躇するの?」

 

「それはお互い様でしょう?」

 

「さっきの攻撃、あなた達、わざと外したでしょう?」

 

 戦い合いながらも、何処か本気では戦う事が出来無い、四人の戦士だった・・・

 

 

「止めて!満、薫、ブラック、ホワイト、駄目だよ、友達同士で・・・」

 

「満さん、薫さん、止めて頂戴!」

 

 息せき切って駆けつけた咲と舞、そしてひかり、四人は二人を見つめ、憂いを帯びた表情を見せる。両者の間に入った咲と舞が、両手を広げこの戦いを止めさせようとする。

 

「満、前に言ってくれたよね・・・運命の出会い何て素敵よね!って、私達が此処で出会ったのも・・・運命の出会いかも知れないわねって・・・私、あの時凄く嬉しかった!!」

 

「あれは・・・あなた達に近付く為の・・・」

 

「薫さん、みのりちゃんも喜んでいたわ・・・薫お姉さんとお話しするのが楽しいって、みのりちゃんと約束したんでしょう?動物園にみんなで行こうって!!」

 

「それは・・・みのりちゃんの笑顔を見ていたらつい・・・」

 

 咲と舞の言葉に、戦意を無くす満と薫を見たホワイトとブラックは、

 

「やっぱり、あなた達なら変えられる!嘗て、あなた達と同じような苦しみを持った闇の少年と、私達は出会った!彼は、あなた達のように、闇の使者としての使命と、人として生きる事の素晴らしさに気付いた。彼は、闇の呪縛には逆らえないと、一度は私達と戦った。でも彼は、自らの意思で闇の呪縛と戦う事を決心した!」

 

「満、薫、あなた達なら、きっと乗り越えられる!あなた達には、咲も、舞も、私達も付いている!!」

 

 ホワイト、ブラックの言葉に続くように、ひかりも二人に話し掛け、

 

「私も嘗て、自分の存在意義が何なのか、分かりませんでした・・・でも、なぎささん、ほのかさん、そして多くの人達に触れ、自分が何なのか知りました!あなた達も、咲さんや舞さんと出会い、変わった筈です!!」

 

 咲の、舞の、ブラック、ホワイト、ひかりの言葉に、呆然とする満と薫、咲は笑顔を浮かべながら二人に近付くと、二人の手を取り一同の側に連れて来る。舞が、変身を解いたなぎさとほのか、ひかりも手を重ねる。

 

「ねぇ、前に私達がドロドロンによって窮地になった時、救ってくれたのは満さんと薫さんだったんじゃない?」

 

「本当、舞?・・・ありがとう、満、薫!」

 

 戸惑いを浮かべながら動揺する満と薫、咲と舞は、動揺したままの満と薫の手を引っ張り、

 

「わ、私達は敵同士でしょう?」

 

「なのに・・・あなた達は何故!?」

 

「違う!そんな風に思えない!!満と薫は・・・私達の大切な仲間だよ!!!」

 

 満面の笑顔で満と薫を見た咲は、そのまま満と薫、舞と共に大空の樹の前に移動すると、戸惑う満と薫を、大空の樹に触れさせた。樹から発せられる暖かな気持ちに、満と薫は安らぎを覚えるのだった。そんな四人を、少し離れた所で笑顔を見せながら見守るなぎさ、ほのか、ひかりだった。

 

 だが・・・

 

「おやおや、満殿、薫殿、何をグズグズしておられるのですかな?」

 

「「ゴーヤーン!?」」

 

 突然現われたゴーヤーンに驚く一同、満と薫は特に動揺していた。ゴーヤーンは、攻撃しない満と薫に顔を顰めると、

 

「仕方がありません・・・アクダイカーン様に叱って頂きましょうかねぇ!」

 

 満と薫の手を強引に引っ張り、闇の中に引き吊り込むと、咄嗟に咲と舞が満と薫の身体を掴み、そのまま闇の中に、共に連れ浚われてしまう。

 

「咲、舞、満、薫・・・クソォ、油断してた!」

 

「みんな、無事で居て!!」

 

 追いかける手段が見つからず、途方に暮れるなぎさ、ほのか、ひかりは、何とか四人が無事であるように祈り続けた・・・

 

 

5、救えなかった・・・

 

 悲鳴を上げながら、ゴーヤーンによって吸い込まれた四人、着いた場所を見た時、満と薫は怯えるように思わず身を竦め、咲と舞は、不気味な感じがするこの場所に、眉根を曇らせた。

 

「此処は一体!?」

 

「さっきの敵の姿が見当たらないわ?」

 

 キョロキョロするも、ゴーヤーンの姿が見当たらない事に、得体の知れない不安を覚える咲と舞、

 

「此処は・・・ダークフォール!」

 

「私達が・・・生まれた場所よ!」

 

「此処が、満と薫の・・・」

 

 満と薫の言葉に驚き、もう一度辺りを見ました咲と舞、その時、

 

「アクダイカーン様、満と薫を連れて参りました!もっとも、二人のおまけも一緒のようですがねぇ・・・さあ、満殿、薫殿、ご自分達の口から、アクダイカーン様にご報告なさい!!」

 

「満、薫、これは一体どういう事だ!?」

 

 目の前の泉のような場所に佇む、巨大なアクダイカーンを見て、満と薫は怯え、咲と舞は驚愕し、その圧倒的姿に畏怖を覚えた。

 

 満と薫は、覚悟を決めた表情になると、咲と舞に微笑みを向け、アクダイカーンの前に進み出た。

 

「アクダイカーン様、私達は、アクダイカーン様への忠誠を忘れては居ません!」

 

「ですが、一つお願いがあります・・・」

 

「私達は、緑の郷で多くの事を学びました。世界の美しさ、人々の暖かさを知りました」

 

「私達を産み出してくれた、アクダイカーン様には大変感謝しています!でも、お願いです!!」

 

「「この世界を、咲や舞、なぎさやほのか、ひかり、みんなが居るこの世界を、滅ぼさないで下さい!!」」

 

 満と薫の言葉を聞き、思わず笑みが浮かんでくる咲と舞、満と薫は、自分達の事を大切な存在だと思っていてくれたと、だが・・・

 

「自惚れるなぁぁ!!!」

 

 アクダイカーンの一喝が響き渡り、満と薫に向け、アクダイカーンから強烈な闇の力が浴びせられ、二人が悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

 

「満!」

 

「薫さん!大丈夫!?」

 

「あんたかぁ!?あんたが満と薫を、苦しめて居るんだね!」

 

「許せない・・・」

 

 拳を振るわせ、満と薫を庇うように前に出た咲と舞、

 

「アクダイカーン様、この者達が伝説の戦士プリキュア!」

 

「プリキュアだとぉぉ!?」

 

 アクダイカーンから再び発せられる闇の力に、一瞬怯む咲と舞だったが、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 アクダイカーンの目の前で変身を遂げたブルームとイーグレットが、アクダイカーンに啖呵を切ると、

 

「駄目よ、ブルーム」

 

「イーグレット」

 

「お願いです、アクダイカーン様!」

 

「私達の話を聞き入れて・・・」

 

 ブルームとイーグレットを止め、必死にアクダイカーンに訴え掛ける満と薫だったが、

 

「黙れ!お前達は、我が目的を達成する事だけに存在している事を、忘れるなぁぁ!!!」

 

「違う!!満や薫は、あんたの道具じゃない・・・彼女達には、私達と同じ心がある!!!」

 

「二人を恐怖で縛り付け、自分の道具のように操ろうとする何て・・・絶対許せない!!!」

 

 アクダイカーンの言葉を、真っ向から否定したブルームとイーグレットは、キッとアクダイカーンを睨み付けると、

 

「私達の大切な友達を!満と薫を!!」

 

「「絶対に守って見せる!!」

 

「咲・・・」

 

「舞・・・」

 

 ブルームとイーグレットが、自分達の為にアクダイカーンと戦おうとする姿に、呆然とする満と薫、

 

「大切な友達だと!?満と薫は我が下僕、我の為に存在すればいいのだぁぁ!!」

 

 アクダイカーンの右手に持つ水晶が、黒い稲光を発し、力を溜め始めるのを見たブルームとイーグレットは、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 二人から発せられた螺旋の渦と、遅れてアクダイカーンから発せられた黒い禍々しいエネルギーが激突する。必死に力を込めるブルームとイーグレットだったが、ツインストリーム・スプラッシュは掻き消され、二人は、アクダイカーンの攻撃を受け吹き飛ばされる。

 

「ツインストリーム・スプラッシュが効かないラピ!」

 

「もう、もう、駄目チョピ」

 

 フラッピが、チョッピが、絶望の声を上げ始める。

 

「我がダークフォールに足を踏み入れ・・・無事で帰れると思うなぁぁ!!」

 

 アクダイカーンの強大な攻撃が、再びブルームとイーグレットに迫る。その時、雄叫びを上げた満と薫が立ち上がり、バリアーを張ってブルームとイーグレットを守った。

 

「満・・・」

 

「薫さん・・・」

 

「バカね・・・あなた達が、アクダイカーン様に適うわけ無いのに・・・」

 

「無謀にも程があるわ!」

 

「だって、大切な友達が侮辱され、傷付けられる何て・・・」

 

「見ていられる訳ないわ!」

 

「フフフ、私達だってそうよ」

 

「今まで、暗い闇の中を生きてきた私と薫に取って、信頼できるのは、私達だけだった・・・」

 

「でも、そんな私達を本気で励まし、心配してくれる友達に出会った!」

 

「「私達がこんな風に思ったのは・・・大切な友達を信頼したから」

 

 見つめ合った四人が笑みを浮かべ合った・・・

 

「満殿、薫殿、まさしくあなた方は裏切り者です!」

 

「何とでも言えばいい・・・」

 

「私達は、大切な仲間をこれ以上・・・」

 

「「苦しめさせない」」

 

 満と薫の言葉に、ブルームとイーグレットの目に涙を浮かんだ。二人は満と薫に手を差し伸べると、

 

「満、薫、帰ろう!私達の世界に!!」

 

「なぎささん達も、首を長くして待っているわ!」

 

「帰るだとぉぉ!?許さん・・・滅びよ!!!」

 

 怒りに燃えるアクダイカーンが、更に力を加えると、満と薫の顔が益々苦悶に歪んだ。

 

「咲、舞、あなた達に出会えて良かった!」

 

「一緒に、ひまわりの花が咲くの、見れなくて・・・ゴメンね」

 

 見つめ合った満と薫が、手に持っていた6個の奇跡の雫を、ブルームとイーグレットに託すと、

 

「これ、空の泉を甦らせるのに必要何でしょう?」

 

「私達は見れないけれど・・・きっと素晴らしい所何でしょうね・・・」

 

「そうだよ、だから一緒に、一緒に行こう!」

 

「満さん、薫さん!」

 

 満と薫は、最後の力を振り絞ると、ブルームとイーグレットを次元に歪みに逃がす、

 

「嫌だよ、満ぅぅ!」

 

「薫さん!!」

 

「「咲、舞・・・ありがとう!」」

 

 次元に消えていくブルームとイーグレットは、満と薫が残してくれた奇跡の雫を握りしめて涙を流していた。フラッピも、チョッピも、掛ける言葉が見当たらず涙を流していた。

 

 

 

 大空の樹で、咲、舞、満、薫の帰りを、今か今かと待ち続けるなぎさ、ほのか、ひかりの下に、上空から切り裂かれた空間から、咲と舞が降ってきて、思わずホッとするなぎさ達だったが、満と薫の姿が見当たらず、表情を曇らせる。

 

 起き上がれず、座り込んだまま泣き続ける咲と舞の姿に、なぎさ、ほのか、ひかりが近付き、優しく声を掛けると、咲はなぎさに、舞はほのかに縋り付き号泣し続けた。

 

「私達を庇って、満と薫は・・・」

 

「私達、満さんと薫さんを救うどころか、救われて・・・」

 

「咲、舞・・・」

 

「私達が居ながら・・・彼女達に同じ思いをさせる事になる何て・・・」

 

 やりきれない思いを抱きながら、優しく咲と舞の頭を撫でるなぎさとほのか、ひかりも、メップル達、フラッピ達も涙に暮れた。

 

 大空の樹に、少女達の泣き声が響き渡った・・・

 

 

             

               第三話:謎の転校生、満と薫

                     完

 



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第四話:強敵登場!?

               第四話:強敵登場!?

 

1、悲しみの中の希望

 

 満と薫は、咲と舞を救う為、ダークフォールで自分達の力の全てを解放し、咲と舞をこの世界に戻した。救う事が出来なかった咲と舞、そして、なぎさ達、妖精達は、やるせない思いを抱きながら悲しみ暮れていた・・・

 

 大空の樹の下、泣き疲れた咲と舞が落ち着いたのを受け、フラッピとチョッピが話し出す。

 

「満と薫は・・・空の泉の奇跡の雫を、全て咲と舞に託してくれたラピ」

 

「舞、咲、彼女達の思いに応える為にも・・・空の泉を解放して欲しいチョピ」

 

 フラッピにも、チョッピにも、今こんな事を咲と舞に頼むのは酷な事だとは分かっていたのだが・・・

 

「咲、舞、何なら私とほのか、ひかりで空の泉を解放してくるけど?」

 

 咲と舞、二人の心の傷を労り、自分達が代わりに空の泉を解放して来ようか聞くなぎさに、

 

「なぎささん・・・ううん、大丈夫!満も薫も、私達に託してくれたんだもん」

 

「私達が、空の泉が解放される姿を、見届ける義務があると思うの」

 

 ゆっくり立ち上がった咲と舞が、涙を拭いそう言うと、なぎさ達も、フラッピ達も頷くのだった。

 

 キャラフェに奇跡の雫を入れた咲と舞、キャラフェが輝き、一同は大空の樹から、空の泉へと送られて行った。

 

 

 空の泉も、今まで解放してきた泉のように、枯れ果てていた・・・

 

 そんな中、ポルンは枯れ果てた木々の中に、蠢く物体を見た気がして、後を追いかけ始める。走り出したポルンを見たルルンが、その後をチョコチョコ追う。

 

「ポルン、ルルン、何処に行くの?」

 

「全く、あの子達ったら・・・ひかりは二人を追って!こっちは私達が解放するから」

 

 ひかりはなぎさの言葉に頷くと、ポルン、ルルンの後を追い走り出した。

 

「咲、舞、奇跡の雫を此処に零すラピ」

 

 フラッピの言葉に頷いた咲と舞は、互いに手を持ち、二人で雫を零していく。嘗てのように泉は復活を果たし、木々が甦り始めた。

 

「満、薫、あなた達が託してくれた奇跡の雫が・・・空の泉を、こんなに素晴らしい姿に甦らせてくれたよ!」

 

「満さん、薫さん・・・一緒に、一緒に見せて上げたかった・・・」

 

「咲・・・舞・・・」

 

 満と薫にも見せて上げたかったと言う咲と舞に、なぎさもほのかも言葉を失う・・・

 

「待つポポ!一緒に遊ぶポポ!!」

 

「風船ルル?」

 

 再び戻って来たポルンとルルン、その直ぐ後にひかりが戻って来ると、

 

「なぎささん、ほのかさん、咲さん、舞さん、この泉に・・・何か居ます!!」

 

「エェェ!?」

 

「まさか、ダークフォールの新手?」

 

 ひかりの言葉に顔色を変える一同、なぎさとほのかは、ダークフォールの新たなる刺客かと顔色を変える。今の咲と舞を戦わせるのは酷だと、自分達が、彼女達の分も戦おうと心に秘めるも、

 

「でも、邪悪な気配はしないメポ」

 

「何だか、知ってる気配ラピ?」

 

 メップル、フラッピが、敵では無い気がすると言うと、なぎさとほのかはホッと安堵した。

 

 その時、泉が輝き、フィーリア王女が姿を現わした!

 

「咲、舞、なぎさ、ほのか、ひかり、メップル、ミップル、ポルン、ルルン、そして、フラッピ、チョッピ、空の泉を解放してくれてありがとう!満、薫の事は・・・辛い困難でしたね・・・」

 

 フィーリア王女が、満と薫の事を知っている事に驚く一同、フィーリア王女は尚も言葉を続け、

 

「ですが、諦めないで下さい!希望を失わず、その強い気持ちを持ち続ければ・・・満と薫、二人にもきっと届く筈です!!」

 

 フィーリア王女の言葉を聞き、ハッとする一同、

 

「フィーリア王女、満と薫を知ってるんですか?」

 

「満さんと、薫さんは・・・生きているんですか!?」

 

 取り乱しながらも、フィーリア王女に問う咲と舞に、

 

「私は、この地に居ても、あなた方を見守っています!二人の命は・・・まだ完全に失われた訳ではありません!!」

 

 満と薫、二人の命はまだ失われてはいない・・・

 

 フィーリア王女は、そう断言した・・・

 

 フィーリア王女の言葉を受け、表情が明るくなる一同、その時、甦った木々の中で、一同の様子を伺っていた二体の生き物が、満と薫と言う言葉に敏感に反応する。

 

「今、満と薫って言ってたムプ」

 

「満と薫は、フープとムープを助けてくれたププ」

 

 二体の生き物は、もっと詳しい事を聞きたいのか、フワフワ浮かびながら一同の周りに近づいて来る。二体共似たような姿をしていて、その姿は、オバケ屋敷にあるような火の玉に見えなくも無い、前に小さな手があり、尾には尻尾のような物が生えていた。黄緑色をした者がムープ、薄いピンク色をした者がフープ、二体は警戒しながらも、一同の前にやって来た。

 

「な、何、あの子達!?」

 

「さ、さあ?」

 

 なぎさと咲が、二人を見て驚きの声を上げる中、フラッピとチョッピは懐かしそうに二人を見ると、

 

「あれは、フープとムープラピ」

 

「二人共、無事だったチョピ!」

 

「ムプ?・・・フラッピムプ」

 

「ププ?・・・チョッピププ」

 

 フラッピとチョッピ、そしてムープ、フープが、再会を喜び合うように踊りあった。

 

 フィーリア王女は、微かに口元に笑みを浮かべるも、直ぐに表情を引き締め、先程の会話の続きを話し出した。

 

「ですが、彼女達は深い闇の底で眠りに付いています・・・でも、あなた方が希望を失わず信じ続ければ・・・その思いはきっと、彼女達に届く事でしょう!!そして、みんなが力を合わせた時、あなた方に新たな力が生まれる事でしょう・・・」

 

 フィーリア王女はそう言い残し姿を消した。

 

 再び狭間に吸い込まれた一同は、大空の樹を通して、自分達の世界へと戻って来る。転げながら外に出た一同、逆さまのままなぎさは、

 

「何時も戻って来る度に思うけどさ・・・もっとまともに戻る方法無いの?」

 

「本当・・・もうちょっと何とかして欲しいね?」

 

 苦笑を浮かべ合うなぎさとほのか、咲と舞の表情は行く時とは違っていた。

 

「フィーリア王女は、希望を持ち続ければ、満と薫にまた会えるって言ってた!」

 

「ええ、私達は信じるわ!満さんと薫さんに、また必ず会えるって!」

 

「そうだね・・・ところで、あの子達も一緒に来ちゃったみたいだけど?」

 

 なぎさが指さす方向を見ると、ムープとフープが、目を回しながら横たわっていた。フラッピ、チョッピが直ぐに駆け寄り介抱すると、ムープ、フープは気付くものの、一同を見付けるや、慌てて木の間に隠れた。

 

「ムープ、フープ、大丈夫ラピ!」

 

「みんなはプリキュアチョピ!みんなの力で、泉は元の姿を取り戻してるチョピ」

 

 フラッピとチョッピの言葉を聞いた二人は、顔を見合わせると、

 

「プリキュアムプ?満と薫を知ってるムプ?」

 

「満と薫は、フープ達を助けてくれたププ」

 

「満と薫が?どういう事!?」

 

 咲の問いに対し、話し始めるムープとフープ、空の泉は、ダークフォールの襲撃を受け枯れ果てた。何とか逃げ延びたムープとフープは、隠れるように空の泉で暮らし続けていた。

 

 そんなある日、何時ものように、荒れ果てた木々の中を彷徨っていた時、枯れた大木が倒れ出し、二人に直撃しようとした瞬間、満と薫が大木をへし折り、二人は助かった。怯えるムープとフープをチラリと見るも、二人は興味無さそうにその場を後にした。ムープとフープは、それからというもの、満と薫を、隠れるようにしながらも慕っていたと告白した。でも怖くて、中々お礼を言いに行けず、今に至っている事を話した。直に会って、二人にお礼が言いたいと・・・

 

「そんな事があったんだ・・・大丈夫!フィーリア王女が言った言葉を信じて、希望を持ち続ければ、また会えるよ!」

 

「うん、咲の言う通りよ!!」

 

 咲と舞の言葉を受け、笑顔を見せるムープとフープだった。

 

「ねぇ、あそこに転がってるのって・・・私達と一緒に、空の泉から現われたのかなぁ?行く前には無かったと思ったけど!?」

 

「そうね、確かにあんな物は置いてなかったと思うわ」

 

 なぎさの言葉にほのかも頷く、近付いた一同がじっくりと見てみると、ピンク色をした小型のパソコンのような形をしていた。

 

「ゲッ、パソコン!?私、分からないや!」

 

「私も・・・」

 

 なぎさと咲が苦笑を浮かべながら言うと、

 

「う~ん、確かに似てるけど・・・パソコンとは少し違うようね」

 

 少し触っていたほのかが、パソコンとは違うと話した。

 

 今後の事を話し合う一同、ムープとフープ、パソコンのような物は、咲が一先ず預かる事になった。

 

「じゃあ、私達は帰るけど・・・咲、舞、何か遭った時は知らせて!」

 

「私達も、あなた達の力になるから!」

 

「咲さん、舞さん、それじゃ、また!」

 

「うん、みんな、ありがとう!」

 

「さようなら!」

 

 なぎさ達は自分達の街へと帰って行った。

 

 咲と舞に取って、永い、永い一日はこうして終わった・・・

 

 

2、水の魔術師とキントレ紳士

 

 ダークフォール・・・

 

 アクダイカーンの前に、ゴーヤーンと共に二つの人影があった。胸元の開いた水色の衣装を着たミズ・シタターレ、上半身金色のモヒカン姿のキントレスキー、ダークフォール最強を争う二人が、遂に召喚された。

 

「ミズ・シタターレ殿、キントレスキー殿、お二方をお呼びになった理由は、既にお分かりですよね?」

 

「オ~ホホホホ!もちろん分かってるわよ、ゴーちゃん!」

 

「ウム、プリキュアを倒し、太陽の泉の在処を調べろと言うのであろう?」

 

「仰る通りでございます!まあ、お二方に掛かれば造作も無い事は、私も重々承知しておりますが、既にカレハーン殿、モエルンバ殿、ドロドロン殿が倒されました。まあ、裏切り者の満殿と薫殿はさておき、プリキュアの力、中々侮れないようです!!」

 

 ゴーヤーンの言葉に同意するように、アクダイカーンが二人に更に命令する。

 

「ミズ・シタターレ、キントレスキーよ!木の泉、火の泉、土の泉に続き、空の泉まで取り戻された。これ以上の失態は許されん・・・」

 

「お任せ下さい、アクダイカーン様!」

 

「プリキュアを必ず倒してご覧に見せましょう!」

 

「期待して居るぞ!両名共!!」

 

「「ハハァ!!」」

 

 ミズ・シタターレ、キントレスキーが、アクダイカーンに頭を垂れた。ゴーヤーンは揉み手をしながら、

 

「お二方なら、単体でプリキュア共に当たられても大丈夫でございましょう・・・そこで、ミズ・シタターレ殿には、泉の精の力を持つプリキュアを、キントレスキー殿には、三人のプリキュアの方をお任せしたいのですが・・・よろしいですか?」

 

 二人は顔を見合わせると、互いにライバル心を表情に浮かべながら同意をした。今、ダークフォール最強の戦士達が、なぎさ達、咲達に迫ろうとしていた・・・

 

 

 

 梅雨も明け、夏休みになった・・・

 

 この日もひかりは、アカネの手伝いで、朝早くから店の開店準備をしていた。ザケンナーコンビの内、チビザケンナーは、アカネからたこ焼きの作り方を教わっていた。

 

「あんた、中々センスあるよ!もうちょっと練習すれば、十分お客さんに出せるよ!」

 

「本当ですかザケンナー?」

 

 チビザケンナーは、嬉しそうに自分の作ったたこ焼きを見つめる。ひかりも、そんなやり取りを微笑ましく見ていた。一方のノッポザケンナーはといえば、ひかると共に鬼ごっこをして遊んでいた。アカネは苦笑を浮かべながら、

 

「あっちもあんた見たいに、もうちょっとやる気を見せてくれると、良いんだけどねぇ・・・」

 

「め、面目ないザケンナー・・・おい、お前も遊んでばかり居ないで、ひかり様の手伝いでもしろザケンナー」

 

「今忙しいザケンナー」

 

「何処が忙しいザケンナー!お前はただ、坊ちゃまと遊んでるだけザケンナー!」

 

 相変わらずコミカルなやり取りをするザケンナーコンビに、ひかりもアカネも笑っていたのだが、ノッポザケンナーから逃げ回っていたひかるが、三人組のガラの悪い男達にぶつかり倒れる。一人は黒い帽子を被り、黒いドクロのTシャツに、黒い短パンの背の高い男、もう一人は、体格の良いスキンヘッドの男、三人目は、短い金髪で耳にピアスをした男、

 

「何だ、このガキ!」

 

「おい、ぶつかって挨拶ねぇのかコラァ!」

 

 ひかるを威嚇するドクロシャツとスキンヘッドの男に、慌ててひかりが駆け寄り、

 

「す、すいません・・・私の弟何です!許して上げて下さい!」

 

 ひかるを後ろに庇い、必死に三人組に謝るひかりの姿に、三人組は顔を見合わせニヤニヤすると、

 

「お嬢さん、可愛いねぇ・・・じゃあ、弟の詫びの代わりに、俺達と付き合ってよ!」

 

 ひかりの手をドクロの男が強引に掴み、その場から連れて行こうとする三人組、ひかりは止めて下さいと言うも、男達はお構いなく尚も腕を引っ張る。

 

「ちょっとあんたら!いい加減にしなよ!!」

 

 顔色を変えたアカネが、男達の側に駆け寄り、ひかりを抱きしめるとひかりは震えていた。

 

「おっ、こっちのお姉さんも良いねぇ!」

 

「この街に遊びに来たかいがあったな!二人共、どっか、遊びに行こうぜ!!」

 

 金髪男とドクロ男が、アカネを見て更にニヤニヤする。

 

「あいにくあたしら、店があって暇じゃないの!あんた達と違ってね・・・ひかり、ひかるを連れて向こうに行ってな」

 

 駆け寄ってきたザケンナーコンビが、ひかりとひかるを車の中へと避難させると、二人もアカネの下に駆け寄る。

 

「お前達、いい加減にしろザケンナー」

 

「アァ!?ざけんなぁだと?喧嘩売ってんのかテメェ!」

 

「おい、お前はさっきの女、車から引き摺り出して来い」

 

 チビザケンナーの言葉に切れたドクロ男、スキンヘッドが、金髪男にひかりを車から引き摺り出して来いと命じると、金髪男はニヤニヤしながら車に向かおうとした。

 

 その時、彼は現われた・・・

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ」

 

 ねずみ色のパーカーを着た大男が、ランニングに精を出していた。大男は、TAKO CAFEの側まで来た時、このやり取りと遭遇する。

 

 当初は興味無さそうに、その場を通過しようとした大男だったが、車に向かおうとした金髪男が、自分の行く手を遮るように、突然現われると表情を変え、金髪男の肩をムンズと掴むと、

 

「退け!トレーニングの邪魔だ!!」

 

 大男は、ほんの軽く退かしたつもりだったが、金髪男は、遙か遠くに悲鳴を上げながら飛ばされた。

 

「な、何だ、テメェは!?」

 

「テメェも俺達に喧嘩売ってんのか?アァ!!」

 

 スキンヘッドの男が、大男のボディにパンチを浴びせるも、大男は何事も無かったように立ったままだった。ドクロの男が、持っていたナイフを取りだし、大男に切りつけると、アカネも、車の中から見ていたひかりも思わず悲鳴を上げる。だが、へし折れたのはナイフの方だった。唖然とする男達と、アカネ&ひかり、大男はドクロ男からナイフを奪い、まるで紙を丸めるように、ナイフを丸めてポイすると、スキンヘッドとドクロが思わずたじろいだ。

 

「何だ、今のがパンチか?おまけに武器に頼るとは・・・成っておらん!成っておらんぞぉぉ!!パンチとは・・・こうするものだぁぁ!!」

 

 側に合った大木を、右ストレートでへし折り、ギロリと男達を一睨みすると、男達は恐怖の余り失禁し、そのまま腰も抜けんばかりに、慌ててその場を逃げ出した。

 

「フン、軟弱な奴らめ!練習台にもならん!!」

 

 再びランニングしようとする大男を、我に返ったアカネが慌てて呼び止めた。

 

「あ、ありがとうございます!お陰で助かりました!!良かったら、お礼をしたいので、そこに座ってお待ち下さいませんか?」

 

「礼になど及ばん!トレーニングの邪魔者を、懲らしめただけだからなぁ・・・だが、折角の行為を無にするのも失礼だな・・・待たせて貰おう!!」

 

 大男がテーブル席にドカっと座ると、アカネはワゴンの中に引っ込み、たこ焼きを作り始め、代わりにひかりとひかるが外に出て、大男の側にやってくると、

 

「あのぅ・・・ありがとうございました!あなたが居られなければ、私達、どんな目に遭わされていたか・・・」

 

「おじちゃん、ありがとう!」

 

 ひかりが、ひかるが大男に深々と頭を下げる。大男は二人を見渡し、

 

「フム、そう畏まるな!私はトレーニングの邪魔をされるのが、大嫌いでな・・・礼には及ばん!だが、少年!お前も男なら、トレーニングを怠っては行かんぞ!!」

 

 ひかるの頭を撫で回し、トレーニングするように促すと、

 

「うん、僕もおじちゃん見たいに、お姉ちゃん達を守れるように強くなるよ!」

 

「オオ!その息だ!!見上げた心掛けだぞ!!!」

 

 ひかるの返事に、何度も頷きながら、嬉しそうな表情を見せる大男だった。

 

 たこ焼きが出来上がり、アカネがたこ焼きを持って大男の下にやって来ると、

 

「はぁい、お待たせ!たこ焼きどうぞ!!」

 

 大男は、目の前のたこ焼きに首を傾げながらも、

 

「フム、たこ焼きと言うのか?中々食欲を誘う匂いだな・・・どれ、頂くとするか」

 

 爪楊枝をたこ焼きに刺し、一口で口の中に放り込んだ大男が、モグモグ食べると、

 

「ンマァイ!何だこれは・・・このような美味い物があるのか!?」

 

 たこ焼きの美味しさに、パクパク食べて、一分持たず完食した大男は、

 

「実に美味い!このような美味い物は、初めて食べた・・・ご主人、悪いが後10箱程頂けるか?」

 

「嬉しいねぇ・・・あいよ、今大急ぎで焼いてくるから、ちょっと待っててねぇ!!」

 

 アカネがワゴンに戻り、汗だくになりながらもたこ焼きを焼き続ける。ひかりとチビザケンナーも手伝い、ようやく10箱出来上がり、大男の下に持ってくると、

 

「ご主人、いくらだ?」

 

「エッ!?いえいえ、お代は結構ですよ!先程のお礼もあるし・・・」

 

「嫌々、先程のお礼なら頂いた!これは私が勝手に注文した物、お代はちゃんと払わせて頂く!!」

 

 体格と違い、紳士的な振る舞いをする大男に、好感を持つ一同であった。大男はアカネにたこ焼き代を払うと、

 

「馳走になった!また伺わせて貰おう!!」

 

 軽く手で合図し、また来ると告げると、大男は、再びランニングをしながら去って行った。

 

「イヤァ、あんなに家のたこ焼きを喜んでくれる何てねぇ・・・また来るって言ってたし、常連さんになってくれると有り難いんだけどねぇ!」

 

 アカネは嬉しそうに、大男の後ろ姿を見送ると、ワゴンに戻っていった。ひかりは大男の後ろ姿を見送りながらも、大男が発する、妙な違和感に戸惑うのだった・・・

 

 

 

 海原市夕凪・・・

 

 この日は、夕凪でフェスティバルが開かれていた。色々な出し物が有り、賑わっていった。そこには、みのりを連れて、浮かない表情をした浴衣姿の咲と舞の姿もあった・・・

 

「お姉ちゃん!みのり、金魚すくいがしたい!」

 

「はいはい、どうぞ!」

 

 咲がOKしてくれて、みのりは嬉しそうに金魚すくいを始めて居た。

 

 咲と舞が、浮かない表情なのには訳があった・・・

 

 フィーリア王女から、満と薫は生きていると教えられ、元気を取り戻した咲と舞だったが、次の日、教室には満と薫が座っていた席は空いていたのだが、クラスメートも、担任の篠原先生も、誰一人、満と薫の存在を知っている者が居なかったのだ。家に帰った咲と舞が、家族に満と薫の事を話して見るも、誰一人覚えている者は居なかった。

 

 一体どうして覚えていないのか?まさか、なぎさ達も覚えて居ないのでは、そう危惧した二人は、なぎさ達に連絡すると、なぎさ達はちゃんと覚えて居て、二人はホッと安堵するのだった。

 

 ほのかの話しによると、嘗てひかりが居なくなった時も、今回と同じような事があったと告げる。恐らくは、満と薫の何らかの力が働いていたものが、二人が居なくなった事で、効果が無くなったのでは?という事だった。

 

 折角二人が生きていると知った喜びも、自分達となぎさ達以外覚えて居ないという現実に、二人の心に悲しみが広まっていた。

 

「うわぁ、おばちゃん凄い上手!みのりにも教えてぇ!!」

 

「オ~ホホホホ!あたくしに掛かれば、この程度朝飯前よ!でもね・・・おばちゃんじゃないでしょう?」

 

 みのりの隣で、水色の浴衣を着た女性が、大量に金魚をすくい上げ、みのりは目を輝かせ、教えてとせがむ、女性は褒められ高笑いを浮かべるも、おばさんと言う言葉には、敏感に反応していた。みのりが女性に失礼な事を言ったようだと悟り、我に返った咲と舞は、慌てて女性の下に赴き詫び始める。

 

「みのり、何やらかしたの?すいませんでした・・・その娘、私の妹何です!」

 

「ブー!みのり、何も悪い事してないもん!」

 

 咲に注意され、みのりは頬を膨らますと、女性は再び高笑いを始め、

 

「オ~ホホホホ!そうよねぇ、悪い事はしてないわよねぇ・・・ただ、おばさんはね・・・こんなピチピチしたお姉さんを捕まえて・・・おばさんはねぇ?」

 

「ゴ、ゴメンなさい!綺麗なお姉さん・・・みのりちゃんを許して上げて下さい!」

 

 さり気なく、舞が綺麗なお姉さんとフォローすると、女性の機嫌はたちまち直り、

 

「オ~ホホホホ!良いのよ、分かって頂ければ・・・はい、お嬢ちゃん!取り過ぎちゃったんで、お裾分けするわ!」

 

 女性が金魚をみのりにプレゼントすると、みのりが大喜びする。女性は高笑いを浮かべながら、その場を去っていった。

 

「今の人・・・凄い上手かったね!」

 

「ええ、金魚すくいのプロ・・・って言った所かしら!?」

 

 咲と舞は、去っていった女性の後ろ姿を見て、思わずポツリと呟いた。

 

 

「咲、舞、フラッピ達も、お祭りで遊びたいラピ」

 

「お祭りムプ」

 

「楽しいププ」

 

 フラッピ達が騒ぎ出し、慌ててみのりに此処から動かないように伝え、物陰に行った咲と舞は、フラッピ達に、見つかっちゃうから絶対に巾着袋から出ないように釘を刺した。フラッピ達は、不満そうに頬を膨らますが、

 

「絶対に・・・駄目!!!」

 

「ゴメンね・・・これだけ大勢居たら、何時あなたたちが見つかっちゃうか分からないし、今回は我慢してね!」

 

 咲は、怖い顔をして絶対駄目だと釘を刺し、舞は、フラッピ達の気持ちは分かるが、今回は我慢してと申し訳そうな顔をする。

 

 みのりの下に戻り、再びフェスティバル内をブラブラする三人は、三人組の男達に絡まれる健太を見掛け、慌てて駆け寄った。

 

「オラオラ、テメェの詰まらない駄洒落を聞いてやったんだ!」

 

「さっさと聞き賃払いな!」

 

 三人組の男達・・・

 

 ひかりとアカネにチョッカイを掛け、大男に追っ払われた男達である。這々の体(ほうほうのてい)でTAKO CAFEから逃げ出した男達は、そうそうとなぎさ達の街から逃げ出し、この街でフェスティバルが開かれていると知り、憂さ晴らしに来ていた。

 

 コメディアンを目指す、咲の幼馴染みである健太は、人が多いフェスティバルを利用し、自らのギャグを披露していたのだが、相変わらずのつまらなさで、その場に立ち止まる者は居なかった。三人組は、いいカモを見付けたと、ニヤニヤしながら健太に近づき、健太の駄洒落に茶々を入れながら絡み、おまけに金まで集(たか)っていた。

 

「健太、どうしたの?」

 

「大丈夫!?」

 

 突然現われた咲と舞を見た三人組は、ニヤニヤすると、スキンヘッドが健太に腕組みすると、咲と舞に話し掛ける。

 

「何だ、君の知り合いか?紹介しろよ!初めまして!お嬢さん達、可愛いね・・・ちょっと、俺達と付き合ってよ!!」

 

 ひかりにしたように、黒い帽子の男が咲の手を、金髪の男が舞の手を強引に掴むと、みのりは恐怖で泣き出す。

 

「ピィピィ五月蠅ぇぞ、ガキ!」

 

 スキンヘッドがみのりを威嚇し、みのりの手を払いのけると、手に持っていた金魚が飛ばされ、袋が破けたのか水が零れだし、金魚がその場でピチピチ跳ねる。みのりが益々大泣きするのを見た咲と舞は、

 

「みのり!ちょっとあんた、私の妹に何するのよ!」

 

「あんな小さな子に・・・みのりちゃんに謝って!!」

 

 顔色を変えた咲と舞が、男達に文句を言うも、男達は知った事かとせせら笑う。健太も止めるように言うも、五月蠅いとばかりにスキンヘッドに突き飛ばされる。

 

 そんな場面に、再び彼女は現われた・・・

 

 

「あらぁ?さっきのオチビちゃんじゃない!?」

 

 泣いているみのりを見た女性は、側でピチピチ跳ねている金魚を見るや、帯に差していた扇子を取り出し、サッと振りかざすと、再びビニールに水が溜まり、穴も塞がっていた。金魚は何事も無かったように再び泳ぎ始める。まるで魔法のような女性の行為に、泣いていたみのりは、思わず呆気に取られ泣き止んだ。

 

 男達は、新たに現われた女性を見ると口笛を吹き、

 

「ヒュゥ~、こっちにも良い姉ちゃんが居るぜ!おまけに胸の方も・・・たまらねぇな!」

 

 スキンヘッドの男が、女性の胸元を凝視し、涎を垂らすのを見た女性は、不快そうに顔色を変え、

 

「あたくし、ボソボソ喋る奴と、あんた達のような下品な男は、大嫌いですの!」

 

「そう言うなよ・・・お姉さん、仲良くしようよ!」

 

 スキンヘッドが女性の身体に触れようとした時、女性がパンっと扇子を叩くと、扇子の先端から水が飛び出し、スキンヘッドを水浸しにする。

 

「テメェ、何しやがる!」

 

「オ~ホホホホ、水に濡れれば、少しはマシになるかと思ったら、下品な顔は下品なままだ事」

 

 怒るスキンヘッドを、翻弄して嘲笑う女性は、咲と舞の手を掴んでいる帽子と金髪の二人を見ると、

 

「一人じゃ相手に成らないようね・・・良いでしょう!このあたくしに三人掛かりで触れる事が出来れば、付き合って上げても良くってよ!」

 

 女性が挑発するように男達を見ると、咲、舞の手を掴んでいた男達が、咲と舞の手を離し、スキンヘッドに合流する。

 

「ふざけやがって・・・その浴衣、ひん剥いてやる!」

 

 三人の男達は、女性を取り囲むようにジリジリ女性に近付いて行く。顔色を変え、この事態を見つめる咲と舞は、

 

「あんた達、卑怯よ!」

 

 咲が文句を言うも、女性は扇子を振りながら、

 

「お嬢ちゃん達、心配には及ばない事よ!こんな唐変木(とうへんぼく)共に触られる程、あたくし、柔じゃなくってよ・・・オ~ホホホホ」

 

 女性が笑いながら扇子を撫でると、女性の周辺に靄(もや)が掛かり、視界が見えにくくなる。だが、頭に血が上った男達は、そんな事に気付かず、

 

「嘗めやがって・・・おい、一斉に行くぞ・・・せぇぇの!!」

 

 スキンヘッドの合図に従い、三人の男達が女性に一斉に飛び掛かるも、男達は、頭をゴチンと当て合い、同士打ちをすると、男達の背後で女性の笑い声が響き渡った。

 

「オ~ホホホホ!鬼さんこちらぁ」

 

 嘲笑う女性を、何度も、何度も、捕まえようとするも、男達は一切女性に触れる事が出来なかった。

 

「畜生、どうなってやがる?」

 

「こっちは三人だぜ?」

 

「何てすばしっこいんだ・・・あの女!?」

 

 疲れてきたのか、男達の息が上がってくると、女性は飽きてきたのか、扇子をパンと叩き、

 

「もう、飽きてきたわねぇ・・・さあ、あたくしに挑んだ報いを、受けて頂こうかしらねぇ?」

 

 女性が華麗に扇子を振り回し、扇子から水が飛び出すと、まるで生きているように蠢き、虎、龍、獅子のような姿をした水が、三人の男達を追いかけ回した。

 

「ウワァァ!な、何だこれは!?」

 

「もう嫌だ、もう嫌だぁぁ」

 

「来なきゃ良かったぁぁ」

 

 半べそかいた男達が、這々の体で逃げて行った。それを見ていた人々は、女性が放つイリュージョンに驚き、盛大な拍手が巻き起こった。女性は目立って嬉しかったのか、高笑いを浮かべ続けた。

 

「舞!それに咲ちゃんじゃないか!?一体どうしたの?」

 

「あっ、お兄ちゃん!うん、変な人達に健太くんが絡まれちゃって・・・」

 

「和也さん!あのぅ・・・私達も無理矢理連れて行かれそうだったんですけど、あそこで高笑いしているおば・・・お姉さんに助けられて・・・健太も大丈夫見たいで良かったです」

 

「そう・・・でも、みんな無事で良かった!」

 

 友人と一緒に来ていた舞の兄和也は、人集りが気になり見に来ると、妹である舞や、咲がその中心に居た為、慌てて駆けつけたのだった。和也の顔を見て、和也に気がある咲が、顔を赤くして照れながら説明している姿に、良い所を見せられなかった健太は、複雑そうな表情で咲を見つめた。

 

 

 上機嫌で再びフェスティバルを散策していた女性は、ある店先前で呼び止められ、その店を見ると、まるで商売をする気が垣間見れない、不気味なゴーヤだけぶら下げた店と、その主人を見て思わず仰け反り、

 

「ゲッ!ゴーちゃん!?どうしてゴーちゃんが此処に?」

 

「私はゴーヤーンです!いえね、お二方が中々仕事をしてくれないので、ちょっと様子を見に来たんですが・・・いやいや、驚きました!ミズ・シタターレ殿、プリキュアを倒すどころか、助けてどうするのですか?」

 

「ハァ?このあたくしがプリキュアを助ける!?」

 

「そうです!先程あなたが助けた二人組こそが、日向咲、美翔舞、プリキュアですぞ!!」

 

「ゲッ!?」

 

 ゴーヤーンの言葉に、思わず仰け反り、しまったといった表情を浮かべたミズ・シタターレだったが、

 

「オ~ホホホホ!あれがプリキュアですって!?男に絡まれ泣きそうになっていたあの二人組がねぇ・・・あれじゃ、あたくしの相手など務まりませんわ!」

 

「そうでございましょう・・・では、そろそろプリキュアを片付けて頂きたいものですなぁ!?」

 

「それは何時でも出来る事!折角緑の郷に来てるんだから、滅びる前に堪能しなくちゃ・・・それより、ゴーちゃん・・・あんた、センス無いわねぇ?これじゃあ、お客なんて寄りつきやしないわよ!では、ご機嫌よう!オ~ホホホホ」

 

 高笑いしながら去っていった、ミズ・シタターレの後ろ姿を見つめながら、溜息を付いたゴーヤーンだったが、自分の店を改めて見つめると、

 

「確かに・・・一人もお客さんが寄りつかないですねぇ?」

 

 素通りしていく人々の群れに、首を傾げるゴーヤーンだった・・・

 

 

3、特訓何て・・・ありえなぁ~い

 

「アカネさん、ひかり最近元気無いけど・・・何かあったの?」

 

「私達が聞いても、何も無いですって言って、作り笑いを浮かべてるんですけど・・・」

 

「ひかり、あんた達に言ってなかったんだ?実は・・・」

 

 アカネがこの間の出来事をなぎさとほのかに伝えると、なぎさとほのかは、心配そうにテーブルを拭いているひかりを見る。ひかりの下に向かったなぎさとほのかは、優しくひかりに声を掛け、励まそうとすると、

 

「ゴメンなさい心配掛けて・・・でも、それだけじゃ無いんです・・・」

 

 表情を曇らせ見つめ合い首を傾げるなぎさとほのか、そこに、ねずみ色のパーカーを着た大男が再びやって来た。大男は、チラリとなぎさとほのかを見て笑みを浮かべるも、アカネの下に向かいたこ焼きを5箱買っていた。

 

「あの方が、私とひかる、アカネさんを助けてくれたんです!」

 

「エッ、そうなの?私達からもお礼言った方がいいかなぁ?」

 

「そうねぇ・・・大切な仲間を助けてくれたんだし、一言お礼を言おうか?」

 

 なぎさとほのかは、男が座って食べている席に行くと、

 

「あのう、この間はひかりやひかる、アカネさんを助けてくれたそうで・・・」

 

「ありがとうございました!私達からもお礼申し上げます!!」

 

 なぎさとほのかが、大男に頭を下げると、大男は手を振り、

 

「前にも言ったが、トレーニングの邪魔者を懲らしめただけだ!しかし、まさか助けた相手が・・・プリキュアだったとはなぁ!ハハハハハ」

 

 大男が豪快に笑いだすと、なぎさとほのか、そして聞こえていたひかりの顔色が変わる。

 

「まさか!?」

 

「あなた、ダークフォールの!?」

 

「そうだ、私は・・・キントレスキーだ!此処ではお前達も本気を出せまい?追いて来い!!」

 

 たこ焼きを平らげたキントレスキーが、なぎさとほのかに一緒に来いとその場を後にする。なぎさとほのかは表情を引き締めるも、チラリとひかりを見ると、

 

「ひかり、あなたは此処に居て!」

 

「いくら敵とは言え、恩人相手に戦うのは気が引けるでしょう?此処はなぎさと私に任せて!」

 

 ひかりに笑顔を見せながら、なぎさとほのかは、キントレスキーの後を追った・・・

 

(なぎささん・・・ほのかさん・・・)

 

 二人の後ろ姿を、心配そうに見守るひかりだった・・・

 

 

 なぎさとほのかがちゃんと来た事に、腕組みしたまま満足気に何度も頷いたキントレスキーは、

 

「ウム、見上げた心意気だ!では、お前達の実力・・・試させて貰おう!さあ、プリキュアに変身するがいい!!」

 

「ほのか!」

 

「うん!」

 

 キントレスキーの言葉に、見つめ合ったなぎさとほのかが頷き合うと、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 ブラック、ホワイトがキントレスキーに対し啖呵を切る。キントレスキーは頷くと、腕組みを解き、

 

「では、行くぞ!!ヌゥゥゥン!!」

 

 構えたキントレスキーがブラック、ホワイトに向けて突進すると、二人も迎え撃ち激しい肉弾戦の応酬をする。

 

「フム、中々やるな・・・だが、まだまだ甘い!ヌゥゥオォォ!!」

 

 キントレスキーの強烈な右ストレートを浴び、悲鳴を上げながら吹き飛ばされるブラック、ブラックに気を取られたホワイトには、左ストレートを浴びせ吹き飛ばした。たった一撃食らっただけでも、かなりのダメージを受けた事に二人共驚愕する。

 

「あいつ・・・強いね?」

 

「ええ・・・でも、負けない!」

 

 立ち上がったブラックとホワイトが、再び正面からキントレスキーに挑んで来ると、キントレスキーは益々嬉しそうな表情を浮かべ、

 

「姑息な手段を用いず、この私に正面から戦いを挑むとは・・・お前達、気に入ったぞ!!」

 

 再び激しい肉弾戦を繰り広げる三人、

 

「ダダダダダダダ!!」

 

「タァァァァ!」

 

「ヌゥゥオォォォ!!」

 

 拳と拳が、蹴りと蹴りがぶつかり合う激しい攻防、再びキントレスキーの攻撃を受け、吹き飛ばされたブラックとホワイトが頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人の必殺技、マーブルスクリューが発射されると、キントレスキーは両腕を突き出し、マーブルスクリューの威力を受け止める。

 

「いいぞ!中々の力だ!!だが・・・この程度では・・・私は倒せん!!ヌゥゥゥオォォォ・・・ハァァァ!!!」

 

 気合いを更に込めたキントレスキーが、両手で押し返すと、キントレスキーの気合い砲が、マーブルスクリューを掻き消した。

 

「そんなぁ!?」

 

「マーブルスクリューを・・・」

 

「「掻き消すなんてぇぇ!?」」

 

 マーブルスクリューを掻き消され、ブラックとホワイトが激しく動揺すると、

 

「どうした?その程度で呆然とするとは・・・まだまだ鍛えてやらねばならんようだな!ウザイナー!!」

 

 キントレスキーは、自身が持っていた鉄アレイをウザイナーに変えると、

 

「さあ、プリキュア共をもっと鍛えてやれ!!」

 

 現われたウザイナーに対し、身構えるブラックとホワイト、攻撃を始めた二人は、このウザイナーが、今までより強くなっている事を、その身を持って知らしめられた・・・

 

 

 ひかりは心配そうに、戦いに行った二人の帰りを待っていた。自分も行きたい、でもキントレスキーは、敵とは言え自分やひかる、アカネを救ってくれた恩人でもある。ひかりの胸中は複雑だった。

 

「ひかり、プリキュラが危ないポポ」

 

「ポルン・・・そんな」

 

 ポルンの言葉に動揺したひかりは、一同の下へと走り出した・・・

 

 

 鉄アレイのウザイナーによって、無理矢理手足に拘束具を嵌められた二人、力を加えるも拘束具の所為で動きを制限されていた。

 

「さあ、その拘束具を付けても、自在に動けるように鍛錬するが良い!当然私もハンデを付けよう・・・ウザイナー!!」

 

 ウザイナーに命じ、自分にも拘束具を付けるキントレスキーの行為に、ブラックもホワイトも目を点にする。

 

「こんなのありえなぁ~い!何なのよ、あいつ!?」

 

「鍛えるなら自分だけにして!私達まで巻き込まないで!!」

 

 何処か自分の美学に酔いしれているようなキントレスキーに、ブラックもホワイトも呆気に取られるも、動きを制限されている二人に取って、ウザイナーとの戦いも大苦戦する。

 

 

「ブラック!ホワイト!もう、もう止めて下さい!あなたは悪い人じゃ無い筈です」

 

 駆けつけたひかりは、苦戦するブラック、ホワイトを見て心が痛んだ。自分の所為でブラックとホワイトに迷惑掛けている。そんな気がするひかりだった。

 

 ひかりは、自分を救ってくれたキントレスキーが、悪い人とは思いたく無く、キントレスキーに必死に訴えかけるも、

 

「ようやく現われたか、三人目のプリキュアよ!だが、私が悪い人では無いだとぉ!?甘ったれるなぁぁ!私にとって、戦いこそが生き甲斐!アクダイカーン様の行う滅びの力こそ、我が正義!勝手にこの私を美化するとは笑止!!さあ、変身しろ!!!」

 

 キントレスキーがひかりに詰め寄り、変身しろと促す。ひかりは後退りしながらも嫌々をする。だが、目の前でウザイナーの攻撃を食らい、苦戦するブラック、ホワイトを見て表情を引き締めると、

 

「分かりました・・・ポルン!」

 

「分かったポポ」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 ルミナスが姿を現わすと、キントレスキーは満足気に頷き、三人揃ってこそ倒しがいがあるとニヤリと笑んだ。

 

「ルミナス、大丈夫なの?」

 

「はい、ご迷惑をお掛け致しました。私も一緒に戦います!!」

 

 ブラックの言葉に、ルミナスは共に戦うと言うと、ブラックもホワイトもルミナスに微笑みを向けた。ルミナスにも攻撃を仕掛けようとするウザイナーに対し、咄嗟にルミナスはハーティエルバトンを構え叫ぶ。

 

「光の意思よ、私に勇気を!希望と力を!!」

 

 バトンがクルクル回転すると、弓状に変形する。

 

「ルミナス!ハーティエル・アンクション!!」

 

 ルミナスがハーティエル・アンクションを放つと、虹の力がウザイナーの動きを完全に封じる。その力にキントレスキーは思わず驚きの声を上げた。

 

 その隙を逃さず、ブラックとホワイトが手を握り合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 動きを止められたウザイナーは、マーブルスクリューを受け倒される。嵌められていた拘束具が取れ、思わず三人は、顔を見合わせ嬉しそうにした。

 

「良いぞ!それでこそプリキュアだ!!次の勝負も楽しみにして居るぞ!!」

 

 キントレスキーは、上空高く飛ぶと撤退した。ひかりは複雑な胸中を浮かべながらも、キントレスキーと戦う事を決意した・・・

 

 

4、浚われたフラッピとチョッピ

 

 8月に入り、秋のリーグ戦に備え、ソフト部は連日の猛練習を繰り広げていた。咲の家PANPAKAパンでは、ソフト部への差し入れにパンを届けようとしたものの、お客が途切れず、大介も、沙織も困惑していた。

 

「あらぁ、この店繁盛しているようねぇ?」

 

 人間姿のミズ・シタターレは、プリキュアなど何時でも倒せると、緑の郷での生活を満喫していた。店から漂う香ばしい匂いに惹かれ、ミズ・シタターレは思わずPANPAKAパンに入り、パンを眺めていると、

 

「アァ、あの時のおばちゃん!あの時はありがとう!!」

 

 突然声を掛けられたミズ・シタターレが、声の主を見ると、それはみのりであった。直ぐにあの時の子供だと思い出したミズ・シタターレは、

 

「あぁ、あの時のお嬢ちゃんじゃない!オ~ホホホホ、いいのよ、お礼何て!でもね、そろそろおばちゃんは止めて、お姉ちゃんって呼ばなきゃ駄目よ」

 

 みのりの頭を撫でながらも、おばさんと呼ばれる事だけは避けようと必死なミズ・シタターレ、みのりの言葉を受け、大介も沙織も、ミズ・シタターレが、フェスティバルで娘達を救ってくれた恩人だと知り、二人でミズ・シタターレの前に慌ててやって来ると、お礼を言い始める。

 

「咲やみのりから話しは伺ってます。男達に絡まれていた娘達を、助けて頂いたそうで、何とお礼を申したらよいか」

 

「本当にありがとうございました!娘に成り代わってお礼申します!」

 

 大介と沙織が、ミズ・シタターレに深々と頭を下げると、満更悪い気はしなかったのか、高笑いを浮かべながら上機嫌になる。

 

「オ~ホホホホ、大した事じゃございません事よ!それより、これは何かしら!?」

 

 ミズ・シタターレが、興味深そうにパンの数々を指さすと、大介と沙織がパンに付いて色々ミズ・シタターレに教え、良かったら食べていって下さいと薦める。ミズ・シタターレは、大介お薦めのチョココロネやクリームパンを貰うと、テラス席で食べ始める。一口食べ、もう一口食べ、口内に広がるチョコやクリームの蕩ける美味しさ、パンの食感に幸せそうな表情を浮かべる。

 

「美味しいわねぇ・・・さっさとプリキュアを倒さなくて正解だったわ!もうちょっと満喫すれば・・・」

 

「もうちょっと満喫すれば何ですか?」

 

「ゲッ!ゴーちゃん!?相変わらず神出鬼没だ事・・・」

 

 パンの美味しさに、まだプリキュアを倒さないで、この世界を満喫して居て良かったと思うミズ・シタターレの前に、ゴーヤーンが姿を現わす。ゴーヤーンは、そろそろアクダイカーンも痺れを切らしている事を、ミズ・シタターレに告げると、さしものミズ・シタターレも激しく動揺する。

 

「だ、大丈夫よ!プリキュア何て何時でも倒せるから・・・そろそろ、あたくしもプリキュアを倒そうと考えて居た所よ!」

 

「なら良いんですけどね・・・じゃあ、お願い致しましたよ!」

 

 そう言うと、ミズ・シタターレの食べ掛けていたチョココロネを奪い、ゴーヤーンは姿を消す。

 

「ゲッ!?チョコがたっぷり残ってた方を・・・ゴーヤーン!食べ物の怨みは、恐ろしい事よぉぉぉ!!」

 

 不機嫌そうな顔を浮かべ、悔しがるミズ・シタターレ、そのミズ・シタターレに、咲の飼い猫コロネが唸り声を上げて威嚇していた。

 

「あら、このあたくしにそのような態度を取る何て・・・お仕置きが必要かしらねぇ?」

 

 ミズ・シタターレが、コロネに対し表情を変えた時、目の前を舞が通り過ぎ、店の中に入っていった。ミズ・シタターレは、コソコソしながら店の中の舞の様子を見る。

 

「あら、舞ちゃんいらっしゃい!咲ならソフト部の練習に出掛けてて居ないわよ」

 

「はい、これから私も、ソフト部の練習を見に行こうと思ってたんです」

 

 舞が学校にこれから行くと知ると、大介は申し訳なさそうにしながらも、

 

「それはちょうど良かった・・・舞ちゃん、悪いけど咲達に差し入れを、届けてやってくれないかなぁ?」

 

「あなた、これだけの量を舞ちゃん一人に持たせたら・・・」

 

「大丈夫!みのりも舞お姉ちゃんと一緒に行くぅ」

 

「みのりには無理よ・・・」

 

 舞は大丈夫ですよと言うも、沙織は、それでは舞が大変だろうと困った表情を浮かべる。

 

「オ~ホホホホ、何ならこのあたくしが、そのお嬢さんと一緒に運んで上げてもよろしくてよ!」

 

 再び店に入ってきたミズ・シタターレに気付いた舞が、この間の礼をする。当初は恩人にそんな事は頼めないと言った日向夫妻も、ミズ・シタターレに遠慮しなくてもいいと言われ、ミズ・シタターレの行為に甘えるのだった。

 

(これで、労せず二人に出会えるって訳ね・・・お礼にあたくしもパンを食べれるし、一石二鳥じゃない)

 

 舞は、ミズ・シタターレがダークフォールの人間だと気付かず、ミズ・シタターレと共に学校に向かった。

 

 

 ソフト部の練習も終わり、差し入れのパンを食べ終えた一同、咲も舞と共に帰ろうとするも、

 

「あら、まだ帰るのには早いんじゃなくって?」

 

 ミズ・シタターレに呼び止められた咲と舞が、首を捻りながら、

 

「でも、もう練習も終わったから、学校に用は無いし、明日に備えて休養も取りたいし・・・」

 

「ゴチャコチャ言わない!さあ、ここからがメインイベントの、始まり始まり・・・」

 

 早く帰りたがり、戸惑う咲と舞に、焦れたミズ・シタターレは、周りに水柱を巻き起こすと、シタターレが真の姿を露わにする。咲と舞は驚愕し、気付かなかったフラッピ達も動揺する。

 

「オ~ホホホホ!あたくしは、ダークフォールのミズ・シタターレ!さあ、プリキュアに変身なさい!」

 

 恩人だった女性が敵だったと知り、咲と舞に激しい動揺が巻き起こる。敵なのに、何故あの時自分達を助けてくれたのか?

 

 咲と舞は理解に苦しむも、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていく、

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えたブルームとイーグレットが、ミズ・シタターレに対し啖呵を切った。だが、何時もと違い、戦う事に消極的なる二人だった。

 

「あなたが、ダークフォールの戦士だった何て・・・」

 

「何故、あの時私達を助けてくれたの?」

 

 不思議そうに首を捻るブルームとイーグレットの二人に、頬を少し赤くしたミズ・シタターレは、あの時は知らなかっただけだと、知っていたなら助ける訳が無いと必死に弁明する。

 

「さあ、お話しは終わりよ・・・ウザイナー!!」

 

 ミズ・シタターレが水を操ると、水はまるで生きているように蠢き、鮫のような姿に変わった。

 

「痛い目に遭いたくなければ・・・太陽の泉の在処をおっしゃい!」

 

「嫌、いくら助けてくれたからって教えない!」

 

「そう・・・ウザイナー、プリキュアを噛み砕いておやり!」

 

 ミズ・シタターレの命を受けたウザイナーが、空を泳ぐようにしながらブルームとイーグレットに攻撃を開始する。空を自在に泳ぎ、攻撃するウザイナーに、二人は翻弄され苦戦する。

 

「こっちの攻撃が全然当たらない!」

 

「動きを止めない限り勝負にならないわ」

 

 動揺するブルームとイーグレットに、ミズ・シタターレは高笑いを浮かべる。こんな所で負けていたら、満と薫に会えないのに・・・

 

 ブルームとイーグレットに焦りが生じ、益々敵の術中に嵌っていく。何度もウザイナーの体当たりを受け、吹き飛ばされるブルームとイーグレット、

 

「プリキュア達がピンチムプ」

 

「大変ププ」

 

 プリキュアの戦いを見守るムープ、フープは、劣勢のプリキュアを見て不安そうな表情を浮かべていた。勝ち誇ったミズ・シタターレは、

 

「一つ教えておいてあげるけど、もう一組のプリキュアの救援を期待しても無駄よ!あっちにも、あたくし程では無いけど、腕は確かな奴が戦いを仕掛けているから、あんた達の援護には来れないわよ・・・オ~ホホホホ」

 

 一同になぎさたちの救援を望んでも無駄だと話し、希望を砕こうとするも、ヨロヨロ起き上がるブルームもイーグレットも、

 

「なぎささん達なら、ダークフォール何かに負ける訳無い」

 

「私達も、諦めない・・・」

 

 手を握り合ったブルームとイーグレットの力が一気に膨れ上がると、ミズ・シタターレに動揺が起きる。再び二人目掛け突進してくるウザイナーを見つめると、

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今プリキュアと共に」

 

「奇跡の力を解き放て」

 

「「プリキュア!ツインストリーム・スプラッシュ!!」」

 

 腕で円を描くように回転させた二人が、両腕を前に突き出すと、螺旋の渦がウザイナーを飲み込む。ハァハァ荒い呼吸を繰り返しながらも、辛くもウザイナーを打ち倒した二人に、

 

「何なの、この力は!?これがプリキュアの絆の力・・・まあ、いいでしょう!今回はこのぐらいにしておいて上げるわ・・・オ~ホホホホ」

 

 高笑いを浮かべながら上空に消えていくミズ・シタターレ、何とか追い返し、ホッとしたその時、背後から不意打ち攻撃をモロに食らい、変身が解けた咲と舞がその場に倒れ込むと、フラッピ、チョッピが精霊姿に変化し、二人に駆け寄った。

 

「咲、大丈夫ラピ?」

 

「舞、しっかりしてチョピ」

 

「おやおや、ミズ・シタターレ殿と戦ったばかりとは言え、随分呆気なかったですねぇ・・・さあ、太陽の泉の在処教えて頂きましょうかねぇ?」

 

 二人に不意打ち攻撃をしたのは、ゴーヤーンだった。不意打ちを食らった咲と舞は、為す術も無くその場でもがき続ける。フラッピとチョッピが、二人を守るようにゴーヤーンに絶対に教えないと言うと、

 

「じゃあ、仕方がありませんねぇ・・・じっくり聞かせてもらいましょうかねぇ?」

 

 そう言うと、ゴーヤーンから発せられた黒い光が、フラッピとチョッピを包み込む。

 

「フラッピ!」

 

「チョッピ!」

 

 ヨロヨロ起き上がりながら、フラッピとチョッピの名を呼ぶ咲と舞、ゴーヤーンは嘲笑するように咲と舞を嘲笑うと、

 

「これでお別れですなぁ・・・精霊達が居なければ、プリキュアにも成れますまい・・・では、ご機嫌よう、プリキュアのお二方!ホホホホホ!!」

 

 消えゆくフラッピとチョッピに、手を伸ばす咲と舞だったが、フラッピとチョッピの姿は、無情にもゴーヤーンと共にその姿を消した・・・

 

「そんなぁ・・・フラッピ」

 

「いやぁ!チョッピ・・・」

 

 崩れ落ち涙を流す咲と舞、ムープとフープも、泣きながらフラッピとチョッピが消え去った場所を、クルクル浮遊し続ける。

 

 そんな一同の心を現わすように、夕凪中学校に日が落ちようとしていた・・・

 

 

               第四話:強敵登場!?

                   完

 



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第五話:卑劣なるゴーヤーン

              第五話:卑劣なるゴーヤーン

 

1、フラッピとチョッピを救え!

 

 なぎさ達、咲達の前に、強敵キントレスキー、ミズ・シタターレが現われ一同を苦戦させる。そんな中、シタターレの攻撃を何とか撃退した咲達だったが、現われたゴーヤーンに、フラッピとチョッピを浚われ、咲と舞は窮地に陥っていた・・・

 

 満と薫に続き、フラッピとチョッピまで浚われた咲と舞の心は、悲しみに暮れていた・・・

 

 咲と舞の悲しみを知ったなぎさ、ほのか、ひかりが、咲と舞の下に駆けつける。大空の樹の下、一同は、ゴーヤーンの居るダークフォールに向かう手段を見付けられず、困惑していた・・・

 

 

「どうしよう!?フラッピも、チョッピも、今頃どんな目に遭わされているか」

 

「私達が不甲斐ないばかりに・・・」

 

 落ち込む咲と舞に、なぎさ達も表情を曇らせるも、自分達は何の力になれなかった事に落ち込んでいるムープ、フープを見ると、

 

「咲、舞、そんな表情してたら、ムープやフープが不安がるよ」

 

「何か方法が有る筈!みんなで考えましょう!!」

 

 なぎさとほのかは、何か方法が有る筈だと二人を励ますも、咲と舞の表情が晴れる事は無かった。ひかりの頭の中に、ある人物の事が思い描かれる。敵とはいえ、卑怯な事を嫌うあの男の事が・・・

 

「あのう・・・敵に頼るのはどうかと思いますが、キントレスキーなら、教えてくれるのでは!?」

 

「そうか!あいつ、トレーニングを邪魔されたり、卑怯な事は大嫌いとか言ってたっけ?」

 

 ひかりの提案に、なぎさもキントレスキーの性格を思い出し、その案も有りかも知れないと思うも、ほのかは首を捻り、

 

「確かにそうだけど・・・何時現われるか分からない敵に頼るのも、どうかと思うわ」

 

 ほのかの言葉も尤もだと思うと、一同に沈黙が続いていた・・・

 

 

 ダークフォール・・・

 

 勝手にゴーヤーンに手を出され、ミズ・シタターレは不機嫌だった。

 

(ゴーヤーン・・・泉の精とプリキュアの事は、このあたくしが任されているのに!!)

 

 ゴーヤーンに、一言文句を言わなければ気が済まないと感じたミズ・シタターレは、地下水の中に浮かぶ、ゴーヤーンの顔に似た巨大な岩の中にある、ゴーヤーンの隠れ家を訪れる。やって来たミズ・シタターレは、相変わらずセンスが無いと思いながらも、ゴーヤーンが居る茶室のような部屋に来ると、ミズ・シタターレは不満を爆発させていた。

 

「ちょっとゴーちゃん、どういう事よ?泉の精の力を持ったプリキュアは、あたくしに任せた筈でしょう?何でゴーちゃんが、泉の精霊を浚ってる訳?」

 

「これは、これは、ミズ・シタターレ殿!イヤァ、すいませんでしたねぇ・・・ですが、私の身にもなって下さいまし、アクダイカーン様にお叱りを受け、早く太陽の泉を見つけ出せと、それは、それは・・・」

 

「ウッ!だ、だから、それはあたくしが必ず・・・」

 

「それはそうでございましょうが、折角の好機を逃すのも惜しかったものですからねぇ・・・ですが、見て下さい!何れどちらかが白状するのも、時間の問題でございましょう」

 

 ゴーヤーンは、ミズ・シタターレに捕らえたフラッピとチョッピを見せつけると、フラッピも、チョッピも、酷い拷問を受けたように瀕死の状態だった。それを見たミズ・シタターレは、ゴーヤーンの行為にドン引きしながら、

 

(ゲッ!ゴーヤーンったらえげつないわねぇ・・・あたくしの美学とは掛け離れてます事)

 

 ミズ・シタターレは眉根を曇らし、その場を去った・・・

 

 

 大空の樹の下で途方に暮れる一同に、高笑いの声が聞こえてくる。聞き覚えのある咲と舞の表情が険しくなると、一同の前にミズ・シタターレが姿を現わす。

 

「オ~ホホホホ、お嬢ちゃん達!あらぁ、もう一組のプリキュアも一緒だったとわねぇ」

 

「あんたは・・・ハナミズターレ!」

 

「あらやだ、あたくしとした事が鼻水だ何て・・・って違~~う!あたくしはミズ・シタターレよ!!」

 

 何処かボケと突っ込みのようにする咲とミズ・シタターレの行為に、なぎさ、ほのか、ひかり、舞は目を点にするも、なぎさとほのかが、変身出来ない咲と舞を庇うように一歩前に出ると、

 

「咲と舞には、私達が手出しさせない!」

 

「フラッピとチョッピを浚う何て・・・卑怯だわ!」

 

 顔色を変えたなぎさとほのかが、ミズ・シタターレに抗議すると、

 

「別に、それはあたくしじゃなくて、ゴーちゃんが勝手にやった事ですし、あたくしに文句を言われてもねぇ・・・あっ、そうそう、此処からはあたくしの独り言ですけど、あの泉の精霊達、ゴーちゃんに大分痛めつけられてたわねぇ・・・」

 

 ミズ・シタターレの言葉に動揺する咲と舞、ほのかは罠かと一瞬怯むも、そんな少女達を見ながら、ミズ・シタターレは更に言葉を続けると、

 

「あのまま痛めつけられたら、あの泉の精霊達・・・命は無いでしょうねぇ?さてと、これからゴーちゃんの所にでも遊びに行こうかしら?何時もなら、空に次元の狭間を作るんですけれど、今日は地上から行こうかしらねぇ」

 

 そう言うと、ミズ・シタターレの足下に丸い黒円が現われると、ミズ・シタターレの身体が吸い込まれるように地面に消え始める。

 

「では、お嬢ちゃん達ご機嫌よう!あっ、そうそう、これはあたくしが通ったら、10秒で消えてしまうんですけど・・・オ~ホホホホ」

 

 ミズ・シタターレの言葉に動揺する一同、罠かも知れない、だが、例え罠でも、フラッピとチョッピの下に行ける手段があるのなら、それに掛けてみるしかない。一同の心は一つになり、黒円に飛び込んで行った・・・

 

(フフフ、来たわねぇ)

 

 背後を見たミズ・シタターレは、後を追いてくる一同を見て、含み笑いを浮かべながら先へと進んでいく。

 

 

 

「随分しぶといですねぇ・・・まあ、あなた方が死んだら、もう一組の泉の精霊に聞いてもよろしいんですけどね?」

 

 瀕死のフラッピとチョッピが、ゴーヤーンの目の前で倒れ込んでいた。ゴーヤーンは二人を浮かべると、邪魔とばかりに部屋の隅に投げつけて、茶を啜り出す。そこに高笑いを浮かべたミズ・シタターレが、上空から空間を開き現われ、ゴーヤーンはさっき来たのにと首を捻りながら、

 

「これはミズ・シタターレ殿、先程いらっしゃったのに、またおいでになられるとは、如何致しました?」

 

「オ~ホホホホ!いえね、ゴーちゃんに会いたいって言ってた子達が居たもので、連れて来て差し上げたのよ!じゃあ、あたくしはこれで!!」

 

 そう言い残し、ミズ・シタターレが姿を消すと、入れ違いに上空から悲鳴を上げたなぎさ、ほのか、ひかり、咲、舞、メップル、ミップル、ポルン、ルルン、ムープ、フープが降ってくる。体勢を崩して落下した一同に、ゴーヤーンは顔に汗を滲ませながら、

 

「全く、ミズ・シタターレ殿にも困ったものですなぁ・・・プリキュア達を連れて来るとは・・・おやおや、下着丸出しで現われるとは・・・で、私に何かご用ですかな?」

 

 下着丸出しでと言われ、慌ててほのかがスカートを抑え、顔を赤らめながら、

 

「ふざけないで!フラッピとチョッピを、咲さんと舞さんに返しなさい!!」

 

「チョッピやフラッピを返して!!」

 

 ほのか、舞がゴーヤーンに文句を言うも、ゴーヤーンはせせら笑うだけだった。だが、

 

「良いですよ!お返し致しましょう・・・その代り、そちらの二人の妖精を頂きましょうかね?」

 

 ゴーヤーンに見つめられ、怯えながらなぎさと咲の後ろに隠れるムープとフープ、なぎさ、咲が表情を険しくすると、

 

「誰があんた何かに、ムープやフープを渡すもんですか!」

 

「フラッピもチョッピも、私の大切な仲間なの・・・返してよ!!」

 

 辺りを見渡していたひかりが、何かに気付き指を指しながら、

 

「咲さん、舞さん、あそこにフラッピとチョッピが・・・」

 

 ひかりの指さす方を見た一同の顔色が青ざめる、ピクリとも動かず、部屋の隅で倒れているフラッピとチョッピを見て、泣きながら咲と舞、ムープとフープがフラッピとチョッピの下に駆け寄ると、必死に起き上がろうとするも、起き上がれない二人が、

 

「さ、咲・・・ゴメン・・・ラピ」

 

「舞・・・チョッピ達の所為で・・・」

 

「フラッピ・・・」

 

「チョッピ・・・酷い!二人をこんな目に遭わせるなんて!!」

 

「ホホホホ、そんな死に損ないの精霊など、返して差し上げますよ!ですが、代りは頂きますよ・・・」

 

 ゴーヤーンがムープとフープに視線を移すと、二人は怯え震え始め、咲と舞は、ムープ、フープを後ろに庇った。そんな咲や舞達を、なぎさ、ほのか、ひかりが間に割って入りゴーヤーンを睨むと、

 

「あんたは絶対に許せない!ほのか、ひかり、咲達を守るよ!!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 なぎさの言葉に頷いたほのかとひかりが、メップル達を見ると、メップル達も頷きコミューン姿へ変化する。三人がコミューンを取り出すと、ゴーヤーンは驚きの声を上げ、

 

「ほう、あなた方からは、光の力を強く感じますねぇ!成る程、もう一組のプリキュアとは・・・光の園のクイーンの力を得た戦士の事でしたか!」

 

 ゴーヤーンは、コミューンを手に持ったなぎさ達から感じるクイーンの気配に、これならば、今までの幹部達が敗れた事にも納得する。

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 変身を終えたブラック、ホワイト、ルミナスを見つめ、含み笑いを浮かべるゴーヤーン、

 

「ですが、あなた方は勘違いをしておられる。此処を何処だと思っているのですか?ダークフォールの中では、如何にあなた方の力が強かろうが、制限されるのですよ・・・」

 

「そんなの・・・気合いでカバーするわよ!ルミナスは咲達を守って上げて!行くよ、ホワイト!!」

 

「ええ、ハァァァ!!」

 

 ゴーヤーンに突っ込み、攻撃を開始するブラックとホワイト、ゴーヤーンは手にエネルギーを蓄え、闇の球体を作り上げ、ブラックとホワイトを攻撃する。その威力の前に、ブラックもホワイトも躱すのがやっとの状況だった。ゴーヤーンは含み笑いを浮かべながら、姿を消すと、辺りにゴーヤーンの不気味な笑い声だけが響き渡る。一同が辺りを探っていると、突然現われ不意打ち攻撃を加えるゴーヤーンに、益々劣勢になっていくブラックとホワイト、

 

「ルミナス、私達は大丈夫だからブラックとホワイトの援護に行って!」

 

「でも・・・分かりました!」

 

 頷いたルミナスがブラックとホワイトの下へと駆けつけ、三人が背中合わせになりながらゴーヤーンが現われるのを待つ、

 

(これを待っていましたよ!)

 

 咲達の背後に現われたゴーヤーンが攻撃を加えると、咲達が吹き飛ばされ、持っていた荷物が中から飛び出す。その中には、まだ使い方の分からない、ピンクのパソコンのような物も含まれていた。ゴーヤーンは、ムープとフープを捕らえ、フラッピ達にしたような拷問を加えだし、太陽の泉の在処を聞き出そうとする。

 

 裏を掛かれたブラックとホワイトが、ムープとフープに近づき二人に触れると、まるで電気に感電するような衝撃を受ける。

 

「ブラック!ホワイト!」

 

 咲が絶叫し、舞が悲鳴を上げる。ブラックとホワイトは、ムープとフープに微笑み、必ずそこから助け出して上げると伝えると、雄叫びを上げながらブラックはムープを、ホワイトはフープを救うも、その場に倒れ込む。

 

「全く、邪魔しないで頂きたいものですなぁ・・・ですが、そのダメージではまともに戦えますまい・・・さあ、今度こそ太陽の泉の在処を教えて頂きますぞ!!」

 

 再びムープ、フープを捕らえようとするも、今度はルミナスが立ち塞がり、バリアーを張ってゴーヤーンからムープとフープを庇い続ける。

 

「ええい、しぶといですねぇ・・・いい加減に諦めなさい!!」

 

「嫌・・・私達は・・・」

 

「「「「「絶対に諦めない」」」」」

 

 ゴーヤーンの言葉を咲が否定し、少女達が起き上がる。

 

 その姿を見たムープとフープは互いに顔を見合わせると、瀕死の状態なのに、自分達の事より、助けに来た一同の身を案じるフラッピとチョッピ、変身出来ないのに、自分達を庇おうとしてくれた咲と舞、自らの身を犠牲にしてまで助けてくれたブラック、ホワイト、ルミナスを見て涙を流す。

 

「フィーリア王女は言ってたムプ!みんなで力を合わせれば、新たな力に目覚めるって言ってたムプ」

 

「ププ、フープ達も頑張るププ」

 

 二人は頷き合うと、ピンクのパソコンに似た物体を思い出し、その中に吸い込まれるように入っていくと、

 

「月の力~!」

 

「風の力~!」

 

「「スプラッシュターン」」

 

 ムープとフープが力に目覚めた時、パソコンのような物体が光輝き、スプラッシュ・コミューンへと覚醒する。光が部屋中を包むと、ゴーヤーンは何事が起きたのかと狼狽え、その光の暖かさに触れたフラッピとチョッピは、力を取り戻した。

 

「何か、今まで以上の力を感じるラピ」

 

「チョッピも、感じるチョピ」

 

 二人が新たなる変身アイテム、クリスタル・コミューンへと変化し、咲と舞に変身するよう促すと、戸惑いながらも頷き返した二人、先端に付いているクリスタルのようなものを回し振ると、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 咲と舞の姿をプリキュアへと変えていくも、ブルームのベルトに、イーグレットの左手に、新たなる力、スパイラルリングが宿っていた。

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えたブルームとイーグレットが、ゴーヤーンに対し啖呵を切った。

 

 嘗て以上の力を感じるブルームとイーグレットに、ブラック、ホワイト、ルミナスも加わりゴーヤーンを睨み付ける。

 

(何ですか、この力は!?・・・このままにしておくと後々脅威に成りかねませんねぇ・・・)

 

「プリキュアの皆さん・・・少し私を怒らせてしまったようですねぇ・・・ハァァァ!!」

 

 表情を険しくしたゴーヤーンが、両手に巨大なエネルギーを溜め攻撃するも、ルミナスのバリアーが完全に攻撃を遮断する。飛び出した4人のプリキュアがゴーヤーンに連続攻撃を浴びせるも、ゴーヤーンは見切っているように攻撃を躱していく。

 

 距離を取った四人が頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラックとホワイトが、ゴーヤーンに対しマーブルスクリューを放てば、ブルーム、イーグレットが、ハート形の中心部分にリングを装着し、精霊の力を呼び込み始め、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

 イーグレットが叫べば、

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

 ブルームが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波がゴーヤーンに炸裂した。

 

「こ、これは!?一先ず退散しますか」

 

 プリキュアの力がまた強くなったのを受け、ゴーヤーンは姿を消す。プリキュアの力によって消し飛ぶゴーヤーンのアジト、一同は互いに笑い合うも、どうやって元の世界に戻れるのか分からず困惑する。

 

 その時、ゴーヤーンのアジトがあった付近の地下水の底が、輝きを見せると、上空に次元の亀裂を見付ける。あそこから戻れると思った一同は大ジャンプを行ない、闇の世界から無事、フラッピとチョッピを救出する事に成功するのだった。

 

 だが、彼女達はこの時気づかなかった・・・

 

 闇の底に沈む二つの影が、暖かな光を受け、その思考が再び動き始めようとしていた事に・・・

 

 

2、戦士の誇りと決勝戦

 

 アクダイカーンの招集を受けたミズ・シタターレ、キントレスキーだったが、アクダイカーンは、ダークフォールにプリキュアを連れて来た行為を裏切りと見なし、ミズ・シタターレを処刑しようとしていた。必死に弁明するミズ・シタターレであったのだが・・・

 

「お、お待ち下さい!アクダイカーン様、あたくしは決して裏切ったりなどしておりませんわ!あれは、ゴーヤーンが・・・」

 

「黙れぇ!最早貴様の帰る場所は無い・・・消えろ!!」

 

「お、お待ちを!アクダイカーン様!!アクダイカーン様!!!」

 

 ゴーヤーンは、動揺するミズ・シタターレを見てニヤリとする。そんな姿を不愉快そうに見つめるキントレスキーであった。アクダイカーンの水晶が発光し、今まさにミズ・シタターレを処刑しようとした時、キントレスキーは、まるでミズ・シタターレを庇うように前に出ると、

 

「お待ち下さい、アクダイカーン様!今一度、ミズ・シタターレに最後のチャンスをお与え下さい!仮に私が彼女より先に知っていれば、当然同じ行動を取った事でしょう・・・ゴーヤーンの行ない、正に戦士とは呼べぬ愚劣な行為!もし、彼女に最後のチャンスを与えぬと言うのなら・・・この私も共に処分して頂きましょう!!」

 

 キントレスキーの思わぬ行動に、思わず頬を赤くしたミズ・シタターレは、

 

「あ、あんた何言ってるの?こんな行動すれば・・・」

 

「分かって居る!だが、互いに最強を争い合ったお前とは、このような形で決着など付けたくないからな・・・アクダイカーン様、お願い致します!!」

 

 キントレスキーも加わり、もう一度チャンスをくれと頼み込む二人、アクダイカーンも、この上キントレスキーを失う事だけは避けたかった。呻きながら考え込むアクダイカーンだったが、

 

「・・・よかろう!ミズ・シタターレ、そして、キントレスキー、お前達に最後のチャンスを与えよう!これにしくじれば・・・」

 

 アクダイカーンの言葉に二人は頭を垂れ、必ずやプリキュアを倒しますと誓いその場を後にした・・・

 

 

 この日、地区大会決勝戦に進んだ夕凪中学ソフト部の試合が行われると知ったなぎさ達は、咲の応援に行こうとしていた。だが・・・

 

 TAKO CAFEで開店準備をするひかり、この日はアカネの許可を貰い、咲達の試合の応援に行くのだが、開店準備だけでも手伝うひかりだった。

 

 そこに、フードを被ったキントレスキーが現われる。キントレスキーに気付いたひかりは動揺し、アカネは笑顔を向けるも、まだ準備中だと告げると、残念そうにするキントレスキーがひかりの下に赴き、

 

「安心しろ、此処でどうこうしようとは思わん、この手紙を預ける。後ほど他の二人にも必ず来るように伝えてくれ!」

 

 そう言い残し、キントレスキーは去っていった。何時もと違うキントレスキーの態度に、ひかりの中に不安が沸き起こるのだった。

 

 

 TAKO CAFEにやって来た、なぎさとほのかを手招きしたひかりは、キントレスキーから預かった手紙を渡す。手紙を見たなぎさとほのかは、果し状という文字に、微妙な表情を浮かべ顔を見合わせた。まだ封を切っていないようで、受け取ったなぎさが封を切り、手紙を読み始める。

 

・・・拝啓、三人のプリキュア殿!貴殿らとの戦いは実に清々しく、もっと戦いたかったのだが、所用により、貴殿らとの勝負の決着を付けたいと思っている。私も全力を持って貴殿らと戦う事を誓おう!!噴水前で待つ・・・キントレスキー!!・・・

 

「ゲッ!?あいつ意外と達筆だし・・・最後の自分の似顔絵も・・・似てる」

 

「なぎさより才能あるようだメポ」

 

「うるさい!で、どうする?」

 

「咲さんの応援に行けないのは残念だけど・・・行くしかないわね!!」

 

「はい、今までと覚悟が違ってました!」

 

 三人は顔を見合わせると、噴水前へと向かった。

 

 噴水前では、パーカーを着たキントレスキーが腕組みしながら待っていたが、三人を見ると口元に笑みを浮かべ、パーカ―を脱ぎ捨てて、全身金色をした逞しい肉体美を披露する。

 

「よくぞ来た!私との勝負を受けてくれた礼だ!受け取れ!!」

 

 キントレスキーは、自身が持っていた奇跡の雫を6個全てなぎさ達に渡した。キントレスキーの予想外の行為に、顔を見合わせた三人は動揺するも、

 

「私が勝てば、当然それは取返させて貰う!さあ、変身しろプリキュアよ!!」

 

「分かった・・・受けて立ってあげるわよ!ほのか、ひかり、良い?」

 

 なぎさの問い掛けに頷き返す二人、メップル達から、凄い気迫を感じるから気をつけるように言われた三人は頷くと、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 変身を遂げた三人に対し、頷くキントレスキーは、

 

「では、約束通り私も全力を持って戦おう!だが、力を解放した私は、力の加減が出来ぬから、そのつもりで居ろ・・・ハァァァァァ!!」

 

 力を解放し始めるキントレスキーに、大気が震え始める。キントレスキーの筋肉が増大し、身体が一回り大きくなる。さらにトレードマークのモヒカンは、まるでニワトリの鶏冠(とさか)のように逆立ち、髭までも上向きに逆立つ、金色の身体はほのかにピンク色に変わり、キントレスキーの身体から、蒸気が発せられた。

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスの三人は、思わず目を点にしながら呆気に取られるも、キントレスキーから発せられる凄まじい気に、直ぐに表情を引き締めた。気を抜けば、一瞬でやられる。そんな気がする三人だった・・・

 

「待たせたな・・・では、行くぞ!!ヌゥゥゥン!!」

 

 地面をパンチするキントレスキーの攻撃、一瞬何をするのだろうと戸惑った三人は、直ぐに自分達の甘さを知る。地面はまるで溶岩に熔けるように辺りを飲み込み始めた。呆気に取られた三人に、キントレスキーが空中に飛び上がり、強烈なパンチを繰り出すと、咄嗟に躱した三人だったが、拳圧だけで吹き飛ばされ木々に激突した。

 

 本気を出したキントレスキーの前に、ブラック、ホワイト、ルミナスは追い詰められるのだった・・・

 

 

「どうした!?お前達の力はそんなものだったのか?まだ、力を隠していると言うのなら・・・出さざるおえない状況にしてやろう・・・ヌゥゥゥン!!」

 

 キントレスキーが一層力を込めると、激しく拳を地面に打ち付ける。地面はひびわれ、マグマが辺りから吹き出し始める。

 

「さあ、早くしなければ・・・この辺一体が・・・マグマに沈むぞ?」

 

 ガムシャラに地面を叩き続けるキントレスキーに、ブラックとホワイトが止めさせようと攻撃するも、キントレスキーは五月蠅いとばかりに弾き返す。その強烈な一撃を受け大ダメージを受けるブラックとホワイト、ルミナスは力を解放し、バリアーを張ってこれ以上の被害が広がらないように必死に抑え続ける。

 

 ヨロヨロ立ち上がったブラックとホワイトは頷き合うと、手を握り合い、目を閉じた・・・

 

「私達の目の前に、希望を!」

 

「私達の手の中に、希望の力を!」

 

 ホワイト、ブラックの言葉を聞き入れたように、まるで生命の息吹を感じさせるような金色の光が、ブラックとホワイトの下に集まってくる。ブラックの右手に、ホワイトの左手に、スパークルブレスが遂に装着される。

 

 漲ってくる力を現わすように、腕を回しながら構えたブラックとホワイトが、一気にキントレスキーに向かうと、キントレスキーの巨体を連打で吹き飛ばす。

 

「フフフ・・・ハハハハハ!やはり、まだこのような力を隠しておったか・・・良いぞ!この状態の私を吹き飛ばすとは・・・ウゥゥオォォォォ!!」

 

 雄叫びを上げたキントレスキーとブラックが、拳と拳で激しく殴り合いを始める。

 

「ダダダダダダダダダ!」

 

「オラオラオラオラオラ!!」

 

 互いの拳圧によって吹き飛ぶ両者、飛ばされたキントレスキーの腕を掴んだホワイトが地上に叩き伏せる。その強烈な一撃で地面にめり込むキントレスキーだったが、何処か満足気だった。

 

「いいぞ!お前達と戦えて良かった・・・だが、この一撃で終わりにしてやる・・・ハァァァァァァ!!!」

 

 上空に巨大なエネルギーを帯びた球体を作り出すキントレスキー、それを見たブラックとホワイトは手を繋ぎ合い、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人の必殺技、マーブルスクリューがキントレスキーに発射される。キントレスキーの攻撃が発射され空間でぶつかり合う技と技、キントレスキーの攻撃に徐々に押され出すブラックとホワイトだったが、更に力を込めて押し返すとキントレスキーは更に嬉しそうに、

 

「良いぞ!もっとだ、お前達の力は、まだまだこんなものでは無い筈だ・・・見せてみろ!!」

 

「ハァァァ!!」

 

「ヤァァァ!!」

 

・・・負けない、こんな所で負けられない!フラッピ達の、フィーリア王女の住んでいる世界を、救って見せる!・・・

 

・・・みんなで誓ったの!フラッピ達の故郷を元に戻すって・・・

 

「「私達は・・・絶対に負けない!!」」

 

 二人の闘志に応えるように、スパークルブレスが激しく回転し出すと、虹色の光が稲光のようにマーブルスクリューに加わっていく。

 

「「スパークゥゥゥ!!!」」

 

 二人の掛け声と共にどんどん威力を増し、オーロラを纏ったマーブルスクリューを受け、キントレスキーの放ったエネルギー弾は消え失せ、両手でマーブルスクリューを押さえたキントレスキーが、どんどん後ろに押し返される。

 

「ヌゥゥオオ!す、凄まじい力だ・・・フハハハ!貴様らと戦えた事・・・誇りに思うぞぉぉぉ!!!」

 

 正面からマーブルスクリューの直撃を食らったキントレスキーだったが、その最期は満足気だった・・・

 

 変身を解いたなぎさ、ほのか、ひかりは、手に乗せた奇跡の雫を見つめていた・・・

 

 

 

 咲は緊張していた・・・

 

 初めての地区大会決勝戦、そして、自分達を引っ張ってきてくれた、泉田キャプテン達三年生達に取って、負ければこの試合が最後となる。

 

 絶対に勝たなければ・・・

 

 咲は知らない間に、自分自身にプレッシャーを与えすぎていた事に気付かなかった・・・

 

 試合が始まった!

 

 一回表の相手チームの攻撃が始まる。だが、咲は無意識の内に何時もの調子を出す事が出来ず、連打を浴びたり、四球を出し、ノーアウト満塁の大ピンチを迎える。

 

(どうして?私の調子は悪くない筈なのに・・・)

 

 泉田キャプテンの励ます声も咲には届かない・・・

 

 次のバッターにもヒットを浴び、あっさり先取点を奪われる。

 

 咲の心に焦りが生じる・・・

 

 このままじゃ、大量点を取られてしまう・・・

 

 自分の所為で、先輩達の最後の試合になってしまう・・・

 

 客席から見守る舞を始めとしたクラスメート達も、この大ピンチに言葉を失った。

 

「あ~らら、これじゃボロ負けねぇ・・・」

 

 突然舞の横で話す女性に、舞はムッとしながら、そんな事ありませんと言うも、女性の顔を見つめて驚愕する。舞が驚くのも当然で、隣に座ったのは、人間姿のミズ・シタターレであった。ミズ・シタターレは、舞を見ると口元に笑みを浮かべ、

 

「まあ、このまま攻撃しても良いんですけど・・・プリキュアになれないあなた一人を痛ぶるのは、あたくしの趣味じゃありませんし・・・もう少し、待って差し上げるわ!」

 

「ど、どういうつもりなの?」

 

「さあ、どういうつもりなのかしらねぇ?」

 

 舞を見つめるミズ・シタターレの目が怪しく輝いた。

 

 

 タイムを取った泉田キャプテンは、球は走っているから、気持ちの問題だと咲を激励する。咲にも分かっていたが、どうすれば良いのか戸惑う咲だった。

 

 次のバッターに投げた初球、思いっきり引っ張った打球が三塁線にライナーで飛ぶ、大量点を取られる!咲の顔は真っ青になるも、サードのキャプテン泉田が横っ飛びで取り1アウト、飛び出していたサードランナーは戻れず2アウト、素早く二塁に投げ、飛び出していた二塁ランナーも戻れず3アウト、トリプルプレーの立役者、泉田の活躍で何とか1点で抑えた夕凪中、だが、咲の心は晴れることが無かった・・・

 

 ベンチに下がると、奥に引っ込み落ち込む咲、そんな咲を、顧問の篠原先生が、泉田キャプテンが、去年の事を交えながら咲を励ました。

 

 自分も去年、今の咲と同じようになり、自分のエラーで負けたのを後悔し、この1年を頑張って来たと、咲には自分と同じ思いをして欲しくないと叱咤激励する。

 

 二人の励ましが、咲を何時もの調子に戻させた!

 

 だが、相手の投手も絶好調で、立ち直った咲と激しい投手戦を繰り広げる。スコアボードに並ぶ0の山、夕凪中はランナーを出すも、一度も三塁まで進めず、遂に最終回最後の攻撃を向かえていた・・・

 

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

 最終回は1番からの好打順だったのだが、先頭バッターはピッチャーゴロ、次のバッターは三振と、夕凪中学は後一人まで追い込まれる。だがここで、勝利を確信した相手ピッチャーの油断を、3番泉田キャプテンは見逃さなかった。見事にセンター前に打ち返し、4番の咲まで繋いだ。

 

(打つ!必ず打つ!!)

 

 気合いを込めてバッターボックスに入る咲、長打が出れば同点、観客席も最後の攻撃に大声援を送り続ける。初球ボール、二球目空振りで向かえた三球目、相手投手の失投を見逃さず、咲の一打が快音を響かせた。懸命に追いかけるレフトとセンター、走る泉田キャプテンと咲、抜ける、抜ける、抜ける、夕凪ソフト部の関係者、誰もがそう思った・・・

 

「あらあら、残念だったわねぇ・・・」

 

 舞の隣に居たミズ・シタターレの言葉通り、ダイビングしたレフトが辛うじて捕球し、夕凪中ソフト部の戦いは幕を閉じた・・・

 

 見届けたミズ・シタターレは、この後に決着を付けましょうと舞に言い残し、その姿を消す。だが舞の心は、戦いより、初回の自分のミスを責め続けている、咲の事が気がかりだった・・・

 

 

 泉田キャプテンは、一同を集めると感謝の言葉を述べた。負けたとはいえ、自分の全てを出し尽くせたと語り、その表情は満足気であった。

 

 咲は、泣いた・・・

 

 自分でも分からないが、涙が止め処なく溢れてきた・・・

 

 泉田キャプテンは、咲の肩を組み、頭を付けると、

 

「咲、泣かないで・・・負けたのは悔しいけど、私はそれ以上に、みんなが団結して戦えた事が凄く嬉しいの!弱小と言われ続けた夕凪中ソフト部が、篠原先生の指導の下、今年は準優勝という輝かしい実績を残せたのは、みんなのお陰よ!キャプテンとして礼を言います!!ありがとう!!!」

 

 泉田キャプテンの言葉を受け、三年生達も泉田の横に来ると、共に後輩達に感謝の言葉を述べた。

 

「この続きは・・・あなた達に託します!!」

 

 泉田キャプテンと三年生達の思いは、後輩達へと受け継がれる・・・

 

 仲間に促された咲だったが、しばらく一人にして欲しいと言い、ただ一人ベンチに座っていた。初回の自分の不甲斐なさを思い返す咲の下に、舞がやって来て隣に黙って腰を下ろした。沈黙が続く空間、咲は、舞を見る事が出来なかったが、

 

「負けちゃった・・・」

 

「あと少しだったね・・・試合に勝つことは大事だと思う。でも、今日咲達の戦い振りを見て、それだけじゃないって思ったの!咲や、みんなが、毎日頑張ってるのを知ってるから・・・だから私、すごく感動したの!私は、それはとても・・・」

 

 舞の言葉を遮るように、咲は、分かってると声を荒げるも、

 

「でも・・・先輩達には・・・優勝して欲しかった・・・」

 

 そう言うと、咲は泣き続けた・・・

 

 日が落ち始める中、舞はその姿を黙って見続けていた・・・

 

 

「あんた達、遅いわよ!何時まであたくしを待たせるのよ?」

 

 静寂を打ち破るような、苛立った女性の声がグランドに響き渡った。舞は、すっかりミズ・シタターレの存在を忘れていた・・・

 

「あんたは・・・ハナミズターレ!もう、こんな時に・・・」

 

「ちっが~~う!あたくしはミズ・シタターレ!あんた、態と間違えてない?そんな事だから試合に負けるのよ!ましてやあのキャプテンは、負けたのにみんなが力を出せて満足何て・・・オ~ホホホホ!甘ちゃん過ぎて笑えて来ます事、戦いは勝ってこそ意味があるのよ!!」

 

 さり気なく咲に心理的ダメージを与えるミズ・シタターレだったが、舞が反論するのを咲が遮り、

 

「私の事はいい・・・あんたが言うように、確かに勝つことも大切かもしれない。でも泉田先輩は、勝ち負けよりも、試合で全力を出しきれた事が大切だって言ってた。全力を出しきったけど後一歩 力が足りなかったのと、最初に自分がしたミスを、私は悔しがった。でも、試合には負けたけど、意味が無い何て事は絶対無い!勝つ事よりも大切な事があるの!大切なのはチームの皆と一つになって・・・大きな目標に向かって、一生懸命頑張る事!!」

 

 咲は涙を拭ってミズ・シタターレに自分の思いをぶつけると、なら、戦ってそれを証明してみなさいと咲と舞を指さした。咲と舞は見つめ合うと、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 ブルームとイーグレットが、ミズ・シタターレに対し啖呵を切った。

 

「さあ、遊びの時間は終わりよ・・・ウザイナー!!」

 

 扇子を開き、迸る二本の水の激流が形を変えた。

 

 龍と虎・・・

 

「あんた達との戦い・・・決着をつけて上げるわ!!」

 

 何時もと違うミズ・シタターレの迫力に、表情を引き締めるブルームとイーグレット、水龍がイーグレットを、水虎がブルームを攻撃する。

 

 だが、パワーアップを果たしたブルームとイーグレットの前では、最早ウザイナーで太刀打ち出来る事は無かった・・・

 

 リングを装着したブルームとイーグレットは、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波が二体のウザイナーに炸裂した。ウザイナーはその圧倒的力の前に倒された・・・

 

(噂には聞いてましたけど、これ程とは・・・)

 

 二つの奇跡の雫を手にするブルームとイーグレット、

 

「オ~ホホホホ!それで勝ったと思わない事ね・・・今度は、あたくしが相手よ!滅びの力・・・見せて上げるわ!!!」

 

 険しい表情を浮かべたミズ・シタターレの目が怪しく光と、一瞬で近辺が枯れ果て始める。まるで、砂漠の世界に居るように・・・

 

 思わず目の前の状況に呆然とするブルームとイーグレット、

 

「あたくしがその気になれば・・・この程度朝飯前よ!今頃は、キントレスキーがもう一組のプリキュアを倒している筈・・・プリキュアの伝説も、今日で終わるのよ!!」

 

 更に水を自在に操り、ブルームとイーグレットを攪乱し、巨大な水のエネルギーを受けて吹き飛ばされ、倒れ込むブルームとイーグレットだったが、二人の目から輝きが失われる事は無かった。

 

「大切なのはチームの皆と一つになって・・・大きな目標に向かって一生懸命頑張る事!!」

 

「なぎささん達が全力で戦って、負けたりしない!私達は、チョッピ達の大切な泉の郷を甦らせると誓い合ったの!!」

 

「私達は、その目標の為に戦う・・・例え何度も叩き付けられても・・・プリキュアは、何度でも立ち上がってみせる!!」

 

 ブルームが、イーグレットが、ヨロヨロしながらもキッとミズ・シタターレを見つめると、ミズ・シタターレは忌々しそうに、

「あらそう!?でもね、これで止めよ!!」

 

 さっきよりも巨大な水の球を作り出したミズ・シタターレ、ブルームとイーグレットは、もう一度リングを装着すると、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波がミズ・シタターレ目掛け放たれる。巨大な水のエネルギーと、スパイラルハートスプラッシュがぶつかり合った。空間上で激しい激突を繰り返す技と技、水球は弾け消され、ミズ・シタターレは、スパイラルハートスプラッシュの直撃を受ける。

 

「こ、これ程とは!?あたくしの負け・・・のようね」

 

 螺旋の渦に飲み込まれ、ミズ・シタターレは散った・・・

 

 砂漠化した状態は元に戻り、上空からは水滴と共に、残りの奇跡の雫が降ってくるのを手に乗せるブルームとイーグレット、二人は互いを見て笑顔を浮かべた。

 

 二組のプリキュア達は、遂に全ての泉を取返した・・・

 

 

3、奪われたキャラフェと、甦る戦士達

 

 ダークフォール・・・

 

 アクダイカーンは荒れ狂っていた・・・

 

 カレハーン、モエルンバ、ドロドロン、そして、ミズ・シタターレ、キントレスキーまで倒され、満と薫は裏切り、プリキュアに奇跡の雫を渡す・・・

 

 この不甲斐ない状況に、アクダイカーンは怒り狂っていた・・・

 

(やれやれ、このままではダークフォールが持ちませんね・・・仕方ありません!最後の手段を使って見ますか・・・)

 

「アクダイカーン様、私に策がございます!しばし、ご猶予を・・・」

 

 そう言い残し、ゴーヤーンは姿を消した・・・

 

 

 翌日・・・

 

 大空の樹の下、なぎさ達、咲達に感謝の涙に暮れるフラッピ、チョッピ、ムープ、フープの姿があった・・・

 

「みんなの、みんなのお陰ラピ」

 

「泉の郷が・・・甦るチョピ」

 

 メップル達も、自分の事のように喜び、フラッピ達とはしゃぎ回っていた。

 

 先ず咲達が、水の泉の奇跡の雫を入れると、再び一同は次元の狭間に飲み込まれ水の泉へと飛ばされた。

 

 奇跡の雫が水の泉を甦らせると、フィーリア王女が姿を現わす。

 

「ありがとう・・・水の泉もあなた達のお陰で甦りました!そして、あなた達の思いは満と薫に届いたようです・・・」

 

「満と薫に!?」

 

「届いたってどういう事ですか?」

 

 フィーリア王女の言葉に一瞬惚けるも、直ぐに嬉しそうな顔になる一同、咲と舞は思わず、フィーリア王女に尋ねるも、時間が来てフィーリア王女の姿は消え去った・・・

 

「エェェ!?もう、これからって時にぃぃ」

 

 頬を膨らませ変顔になる咲に、なぎさとほのかは、お楽しみは最後に取っておこうと咲を宥め、自分達が持つ金の泉の奇跡の雫をキャラフェに入れる。

 

 一同は最後の泉、金の泉へと召喚されると、なぎさ、ほのかは皆を呼び、

 

「最後はみんなでやろう!!」

 

 なぎさの言葉を受けメップル達、フラッピ達もキャラフェに触り奇跡の雫を一つ零す事に、一同が数を数え出す。全てを注ぎ終え、一同は安全地帯まで急いで下がると、金の泉も甦った。

 

「遂に、遂に、全ての泉を取り戻したラピ」

 

「みんなの、みんなのお陰チョピ」

 

 フラッピ、チョッピ、ムープ、フープは泣きながらも大喜びをする。一同はそんな精霊達を微笑ましく見守っていると、泉が輝き、フィーリア王女が一同の下へと近づいて来た。

 

「咲、舞、なぎさ、ほのか、ひかり・・・ありがとう!光の園のメップル、ミップル、ポルン、ルルン、ありがとう!そして、フラッピ、チョッピ、ムープ、フープ、ご苦労様でした!!あなた方のお陰で・・・泉の郷は甦る事が出来ました!!」

 

 フィーリア王女の言葉に、嬉しそうに拍手する一同、フィーリア王女も微笑んだ。咲と、舞は、先程のフィーリア王女の言葉を聞き返した。

 

「フィーリア王女!さっき言ってた言葉はどういう事ですか?」

 

「満さんと薫さんに届いたって、一体!?」

 

「咲、舞、思い出して下さい!浚われたフラッピとチョッピを助け出した時の事を・・・」

 

 フィーリア王女の言葉を受け、思い返す一同、ムープとフープが新たなる力に目覚め、フラッピとチョッピもまた二人の力を得て覚醒し、新たなる力に目覚め、なぎさ達と共に、自分達がパワーアップしてゴーヤーンの住処を破壊した・・・

 

「そうだ!その後私達は、元の世界に戻る手段が分からず途方に暮れていると・・・」

 

「泉が輝き、出口が現われたのよねぇ?」

 

「「まさか!?」」

 

「そうです!あの力は、満と薫があなた方の新たなる力に呼応した結果、生まれた奇跡とでも呼べるでしょう・・・」

 

 満と薫が自分達と呼応した・・・咲と舞の表情が輝くも、

 

「じゃあ、あそこに満と薫が居たって事ですよね?」

 

「あんな近くに居た何て・・・」

 

 少し落ち込む咲と舞を励ますなぎさ達、フィーリア王女も頷き、

 

「私も全てを見通せる訳ではありません・・・ですが、あなた方の絆は、闇に眠る彼女達を必ず目覚めさせると私も信じています!!」

 

 フィーリア王女の言葉に力強く頷く一同、フィーリア王女も頷き返すと、

 

「闇の力を弱める為にも・・・世界樹を復活させましょう!!」

 

「世界樹?」

 

 聞き慣れない言葉を聞き、思わずほのかがフィーリア王女に聞き返すと、王女は頷き、

 

「そうです!世界樹が甦る時、滅びの力は弱まります!アクダイカーンが泉の郷を滅ぼそうとするのは、世界樹の力を恐れるから・・・キャラフェをこちらに!」

 

 なぎさがフィーリア王女にキャラフェを手渡すと、フィーリア王女がキャラフェに泉の力を注ぎ込み始めるとキャラフェが輝きを放った。

 

「これを太陽の泉に注げば、世界樹は復活します!!・・・そこに隠れているのは誰です?」

 

 突然表情を変えたフィーリア王女は、ある一点を凝視して発した言葉に、表情を険しくして辺りを伺う一同は、聞き覚えのある不気味な声を聞いた・・・

 

「ホホホホ、もう少しお話しを伺いたかったのですがねぇ・・・バレてしまっては仕方がありませんねぇ・・・」

 

 一同の目の前に、フワフワ浮かびながらゴーヤーンが現われると、なぎさ達、咲達が、フィーリア王女を守るように前に出る。

 

「フィーリア王女、太陽の泉の在処、教えて頂けませんかねぇ?でないと・・・あなたもそこの精霊達のように、少々手荒な目に遭って頂かなければならなくなりますよ?」

 

「ゴーヤーン・・・あなた達などに教える事は何もありません!此処から立ち去りなさい!!」

 

「そうですか・・・では、実力行使と行きましょうかねぇ」

 

 フィーリア王女は、手の持ったキャラフェを胸にギュッと押しつけ、ゴーヤーンに此処から出て行くように言うも、ゴーヤーンが聞く耳を持つ筈も無く、逆にフィーリア王女を脅し始める。ゴーヤーンの言葉を聞き身構える少女達は、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

 変身を終えた一同が臨戦態勢を取りゴーヤーンと睨み合いになる。

 

「ホホホホ!そう言えばあなた方には、私の住処を壊された借りがありましたねぇ・・・少々本気で行きますよ!!」

 

 ゴーヤーンの邪悪な気が膨れ上がる・・・

 

 今までの敵達とは違うその不気味な力に、プリキュア達の顔に冷や汗が流れ始める。恐怖を振り払うようにゴーヤーンに突撃した少女達、ゴーヤーンはニヤリと笑うと、

 

(掛かった!)

 

 ゴーヤーンの身体が、プリキュア達の視界から完全に消え去り、プリキュア達は辺りを見渡し始めた時、背後のフィーリア王女から悲鳴が沸き起こった。振り返った一同の目に、フィーリア王女を押し倒し、キャラフェを奪ったゴーヤーンが、ニヤリとプリキュア達を見返す。

 

「しまった!最初からキャラフェを狙っていたのね・・・」

 

「キャラフェを返して!!」

 

 裏を掛かれたホワイト、ブルームの表情が歪む、ブラックは単身ゴーヤーンに突っ込み取返そうとするも、ゴーヤーンの発したエネルギー弾の直撃を受け吹き飛ばされるのを、ルミナスとイーグレットが辛うじて受け止める。ゴーヤーンはせせら笑うと、

 

「最早あなた方相手に、ウザイナーでは勝ち目がありませんからねぇ・・・キャラフェの力、利用させて頂きますよ!!」

 

 光輝くキャラフェに、ゴーヤーンが念を込め滅びの力を注ぐと、キャラフェの中は不気味な色へと変色していった。ゴーヤーンは先ず枯れ葉を取り出すと、

 

「これが何か分かりますかな?これを入れまして、よく振ります!」

 

 ゴーヤーンは、シェイクするように上下に激しく振ると、地面にドロリとした液体が注がれた。呆然と見守る一同の目の前で液体は人形になり、それを見たブルーム、イーグレットは驚きの声を発する。

 

「あんたは・・・」

 

「あなたは・・・」

 

「「カレハーン!?」」

 

 甦ったカレハーンが、不適な笑みをブルームとイーグレットに向ける。更にゴーヤーンは再びシェイクし出し、再びドロリと地面に零すと、今度はブラックとホワイトが驚きの声を上げる。

 

「あんたは、何時も踊ってた奴!?」

 

「そんな、二人とも私達が倒した筈なのに?」

 

 動揺するプリキュア達を余所に、甦ったカレハーン、モエルンバは、自らの身体を確かめるように手を動かし、足を動かした。モエルンバは特に腰を激しく左右に動かしていたが・・・

 

「さあ、カレハーン殿、モエルンバ殿、甦ったあなた方には・・・以前以上の力があります!プリキュア達に借りを返していらっしゃい!!」

 

「フン、言われる迄もない」

 

「カレッチ、久しぶりだなぁぁ!!」

 

 嬉しそうに抱きつくモエルンバ、カレハーンは嫌そうに慌ててモエルンバを引き離すと、

 

「だから、俺に触るなと言ってるだろうが!お前が触ると俺の身体が燃えるんだぞ!!」

 

「連れない事言うなよ、カレッチ!」

 

 どこか嘗てと同じようなやり取りをする二人に、プリキュア達は、ゴーヤーンが言うように本当にパワーアップしているのだろうかと首を捻った。

 

「ゴーヤーン、キャラフェを返しなさい!!」

 

「と言われて返す筈ありませんよ!太陽の泉の在処をお教え頂ければ、考えてあげてもよろしいですがねぇ・・・ホホホホ」

 

 フィーリア王女の表情が益々険しくなる。

 

「油断でした・・・」

 

 このタイミングで仕掛けてくるとは思わなかった・・・

 

 フィーリア王女は、自分の迂闊さに悔恨するも、プリキュア達はまだ諦めては居なかった・・・

 

「私達が取返して見せる!ルミナスはフィーリア王女を守って!行くよ、ホワイト、ブルーム、イーグレット」

 

 ブラックの合図を受け、カレハーンを攻撃に向かうブルームとイーグレット、モエルンバに攻撃を仕掛けるブラックとホワイト、激しい肉弾戦を続ける二組の戦士達、

 

「では、後は頼みましたよ!カレハーン殿、モエルンバ殿!」

 

 ゴーヤーンはそう言い残し、足下から消えるように姿を消した・・・

 

 みすみすゴーヤーンを逃がす結果になったプリキュア達に焦りが生じる。ブルームとイーグレットは頷き合うと、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波がカレハーン目掛け放たれる。だが、カレハーンは口元に笑みを浮かべたまま、スパイラルハートスプラッシュを受ける。

 

 勝った!

 

 ブルームとイーグレットはそう確信した。

 

 だが・・・

 

 カレハーンは生きていた!

 

 ブルームとイーグレット、二人の技をまともに食らっても生きていた。ブルーム、イーグレットは呆然とする。

 

「さあ、今度はこっちの番だな・・・ハァァァァァ!!」

 

 カレハーンから発せられた、強烈なエネルギー波が二人を襲う。直撃を受けた二人は、咲と舞の姿に戻り気を失った・・・

 

「咲!舞!そんな、二人の力が・・・」

 

「全く効いていなかったわ・・・どういう事?」

 

 ブラックが、ホワイトが、ブルームとイーグレットの攻撃が効かなかった事に激しいショックを受けた。

 

 あの凄まじい力に耐えられるとは、ブラックも、ホワイトも、もちろんルミナスも想像だにして居なかった・・・

 

「それはおそらく、泉の力が関係しています。キャラフェの力で甦った二人の身体は、いわば精霊の衣を纏っていると言えるでしょう・・・精霊の力のプリキュアである咲と舞の二人だけでは、その力を剥ぐ事は・・・不可能です!!」

 

 フィーリア王女の言葉に、呆然とするブラック、ホワイト、ルミナスの三人は、気を失っている咲と舞を見た。

 

「そんなぁ!?クッ、だったら私達が咲と舞の分まで頑張るわよ・・・ホワイト!」

 

「うん!ルミナス、咲さんと舞さんをお願い!!」

 

「はい!フィーリア王女と共に、お二人をお守りします!!」

 

 ブルームとイーグレットの力だけでは、甦った戦士達は倒せない・・・

 

 フィーリア王女の言葉に動揺するブラック、ホワイト、ルミナスだったが、彼女達の分まで戦う決意をする。一同を嘲笑うように並び立つカレハーン、モエルンバに対し、ブラックとホワイトは手を握り合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラック、ホワイトのマーブルスクリューが、カレハーンとモエルンバへと発射されるも、二人は腕組みし、余裕を浮かべながらその場に立ち尽くした。

 

 地面から現われたゴーヤーンは大慌てで、

 

「二人共、調子に乗らないで下さいまし!あっちのプリキュアは、クイーンの力を得し者達、このまま攻撃を食らえば、再び闇に舞い戻りますぞ!!」

 

 慌てたゴーヤーンは、カレハーン、モエルンバを無理矢理連れ、ダークフォールへと帰って行った。

 

 何とか追っ払う事は出来た・・・

 

 だが、キャラフェは奪われ、精霊の力を得た咲、舞だけでは甦った戦士達には勝てないと知り、なぎさ、ほのか、ひかりは沈黙する・・・

 

 意識を取り戻した咲と舞だったが、自分達の攻撃が効かなかった事にショックを受けていた。更なる追い打ちで、自分達だけでは、甦った敵を倒す事は不可能だと聞かされ、更なるショックを受ける。なぎさとほのかが励ますも、咲と舞の受けた衝撃は大きかった・・・

 

 私達だけでは、敵に勝てない・・・

 

 一体どうしたら良いのか?・・・

 

 咲と舞は途方に暮れた・・・

 

 フィーリア王女は、そんな二人を見ながら何かを思案していたが、

 

「皆さん・・・私もあなた方の住む緑の郷に参りましょう!太陽の泉を手に入れようとするゴーヤーンが、緑の郷で何かしようと企んでいるようです!太陽の泉は・・・緑の郷にあるのですから!!」

 

 

 フィーリア王女の言葉に、一同は激しく動揺した・・・

 

 自分達が住む世界に、太陽の泉はある!

 

 だがそれは、自分達が住む世界に危険が迫る事にもなる!

 

 守らなきゃ、守らなきゃ・・・

 

 でも・・・

 

 戸惑う一同を余所に、フィーリア王女は両手を広げ、泉の力を吸収すると、目の前に光のゲートが姿を現わした。だが、フィーリア王女は先程キャラフェで使った力のせいか疲れていた。一同は悲鳴を上げながら、光のゲートへと吸い込まれて行った・・・

 

 

                第五話:卑劣なるゴーヤーン

                      完

 



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第六話:花鳥風月

                第六話:花鳥風月

 

1、人間爆弾の脅威

 

 フィーリア王女に導かれ、一同は再び大空の樹を通り戻って来た。相変わらず、戻って来た時は体勢を崩していた。だが、それに付いて文句を言う余裕は、一同には無かった・・・

 

 咲と舞だけでは、甦ったカレハーンやモエルンバを倒す事は出来ない!

 

 だが、なぎさ達にも生活がある・・・

 

 この街にずっと居る訳にも行かない・・・

 

 どうするべきか・・・

 

 一同に沈黙の時間が続いた・・・

 

「ムプ?フィーリア王女の姿が見えないムプ」

 

「ププ!本当ププ・・・フィーリア王女は何処ププ?」

 

 辺りをフワフワ浮かびながら、フィーリア王女を探し回るムープとフープだったが、フィーリア王女の姿は何処にも無かった・・・

 

「一体、フィーリア王女は何処に行ったんだろう?」

 

「さあ、でも緑の郷に行くとは行っていたから、何処かに居るのは間違いないとは思うけど・・・」

 

 なぎさの問いに、ほのかも何処かに居るのは間違いないとは思うと言うものの、心の中では、咲と舞の身を心配していた。何か方法が有る筈、そうは思うのだが、今具体的な妙案が浮かぶ事は無かった。

 

 そんななぎさ達の心を察してか、

 

「大丈夫!これまでだって、いろんな困難を乗り越えて来たんだもん」

 

「うん、だからなぎささん、ほのかさん、ひかりさんも、私達の事は心配しないで!」

 

 なぎさにも、ほのかにも、ひかりにも、それが二人の空元気だとは直ぐに分かる。

 

 だが・・・

 

「そう・・・分かった!でも、何かあったら必ず私達を呼ぶ事!」

 

「なぎさの言う通りよ・・・咲さんも、舞さんも、もちろんフラッピ達も、私達の大切な仲間何だから!」

 

「はい!お二人共、必ず駆けつけますから・・・」

 

「うん!ありがとう・・・」

 

「もしもの時は・・・必ず連絡します!」

 

 後ろ髪ひかれる気はするものの、なぎさ、ほのか、ひかりは帰って行った・・・

 

 なぎさ達が帰った後も、咲と舞は、中々大空の樹から帰ろうとはしなかった・・・

 

 フラッピ、チョッピ、ムープ、フープは、そんな咲と舞を心配し、ただ黙って二人の側に居るのだった・・・

 

 

 PANPAKAパンの看板横は、咲の飼い猫、コロネの指定席であった。コロネは気持ち良く眠っていたのだが、コロネの目の前に光輝く球体が現われる。

 

「あなたからは、咲への思いが強く感じられます・・・咲と舞の為にも、あなたの身体を、私に貸しては頂けませんか?」

 

 光の球体からの声に、コロネはニャっと一声鳴くと、光の球体はコロネの中へと消えていった・・・

 

 

 

 ダークフォール・・・

 

 アクダイカーンとゴーヤーンの目の前に、ゴーヤーンの力によって甦った戦士達が集結していた。カレハーン、モエルンバ、ドロドロン、ミズ・シタターレ、キントレスキー・・・

 

 そして・・・

 

「皆さん、お久しぶりです!皆さんを甦らせた理由・・・お分かりだと思いますが、泉を取返され、フィーリア王女が復活致しました。あなた方には、フィーリア王女を浚うか、もしくは太陽の泉の在処を手に入れる事、そして、プリキュア達を倒す事を最優先して頂きます。今のあなた方ならば、泉の精霊の力を持つプリキュアなど、何の脅威も感じない哀れな戦士!しかし、クイーンの力を持つプリキュア達と組まれては、こちらの計画が大幅に狂う恐れがあります・・・そこで、二組のプリキュアを倒す為、陽動作戦と行きましょう!」

 

 ゴーヤーンの言葉に真っ先に反論したのはキントレスキー、だが、ゴーヤーンの命令は、我が命令だとアクダイカーンに言われ、渋々ながら同意する。

 

「では、クイーンのプリキュア達は、カレハーン殿とモエルンバ殿にお任せ致しましょう・・・そして、あなた方に取って置きの策を授けましょう!よいですか、三人のプリキュアとは戦わなくて結構!あの者達の力、侮りが足し・・・そこで、三人には罠を仕掛け、消えて頂く!!カレハーン殿とモエルンバ殿は、あの三人が心を許す人物を見つけ出し・・・爆弾を持たせ、一気に三人のプリキュアを・・・ドカァァンと消し去って頂きたい!!」

 

 含み笑いを浮かべながら、楽しそうに語るゴーヤーンの姿に、キントレスキーは不快そうに眉根を曇らせた。指示されたカレハーンとモエルンバも不服そうに、

 

「待て、ゴーヤーン!俺達ではあいつらには適わないと思っているのか?」

 

「見くびるなよ、ゴーヤーン!俺とカレッチのコンビなら、あいつらなど・・・」

 

 ゴーヤーンの卑劣な策に、異議を唱えたカレハーンとモエルンバだったが、ゴーヤーンの一睨みを受けると、二人は沈黙する・・・

 

「先程、アクダイカーン様は仰いましたよねぇ?私の命令は・・・アクダイカーン様の命令だと!!逆らうならば・・・今直ぐ消えて頂いても、宜しいんですがねぇ?」

 

 カレハーンも、モエルンバも、ゴーヤーンから発せられる得体の知れぬ脅威に、顔中から冷や汗が沸き起こる。以前は、こんな感覚を持った事は一度も無かった。アクダイカーンに媚びを売る存在、そう思っていた二人だったが、今のゴーヤーンに逆らう事は、死を意味する事を、一同は改めて思い知らされた。

 

「そして、精霊の力を持つプリキュアですが・・・既に自分達の力が、あなた方に効かない事は気付いて居るようですが、二度と刃向かう気持ちを起こさぬように、徹底的に痛めつけて上げようと考え、ドロドロン殿、そして・・・満殿と薫殿にお任せ致します!!」

 

「うん、分かったよ!でも、満と薫は裏切り者だよ?何でまた!?」

 

 ドロドロンの言葉に、キッと冷たい視線を浴びせた満と薫は、

 

「私達が裏切り者?何を言っているの!?」

 

「私達は、アクダイカーン様の忠実なる下僕!邪魔者のプリキュアは・・・敵よ!!」

 

「ホホホホ、これは頼もしい!満殿、薫殿、お頼み致しましたぞ!!」

 

 満と薫は、プリキュアと言う名前を聞くだけで、憎悪を募らせた表情を見せた。そんな満と薫を見て、ゴーヤーンは頼もしいと不気味に笑い、他の幹部達は、驚きの表情を浮かべるのだった。

 

 満と薫はどうしてしまったのか?・・・

 

 

 

「カレッチ、どうする?」

 

「どうするって・・・言う通りにする以外あるまい・・・不本意だがな!」

 

 カレハーンとモエルンバは、ゴーヤーンから授かった、滅びの力を凝縮させた漆黒のペンダント爆弾を見ながら、渋々ながらも言われた通り、なぎさ達の身近な存在を監視していく・・・

 

 なぎさの家族、岳、理恵、亮太、ほのかの祖母さなえ、愛犬忠太郎、ひかりの家族、アカネ、ひかる、ザケンナーコンビ、そして友人の志穂、莉奈、ユリコ、奈緒、美羽、藤P先輩と候補者をどんどん割り出していった。

 

「大体こいつらで良いだろう!」

 

「そうだな・・・だが、三人のプリキュアを纏めてとなると・・・此奴はどうだい?俺が初めて会った時も、あいつらはこの店に居た!」

 

 カレハーンと共に候補を絞り込み、更に絞っている時、モエルンバは腰を振りながら閃き、ある人物を指さした!

 

「藤田アカネ・・・TAKO CAFEとかいう店の主か・・・確かにお前の言う通り、利用出来そうだな・・・よし、この女にしよう!」

 

「ああ、では、この女を浚い・・・悪く思うなよ、プリキュア共、次に会う時が・・・お前達の最後チャチャ!」

 

 今、アカネに危機が迫ろうとしていた・・・

 

 

 

 TAKO CAFEでは、ザケンナーコンビが、アカネからたこ焼き作りの指導を受けていた。チビザケンナーの腕前は、アカネから合格を貰って居たが、ノッポザケンナーの腕前はまだまだのようで、歪(いびつ)な形をしていた。チビザケンナーが作った物と隣り合わせると、その出来映えは歴然だった。

 

「う~ん、あんたはまだまだ練習が必要だねぇ・・・でも、前よりやる気になってくれたし、何とかなるでしょう!さて、もうすぐひかりもひかるも学校から帰って来るし、その前にちょっと買い物済ませてくるから、開店準備しといてねぇ!」

 

 アカネはザケンナーコンビに後時を託し、買い物へと出掛けて行った。その姿を見つめる四つの目に気付かず・・・

 

 買い物を終え戻る途中、アカネは急に立ち眩みを起こした。朦朧とする意識の中で、何者かの声が聞こえてくる。

 

「さあ、お前にこれを授ける・・・美墨なぎさ、雪城ほのか、九条ひかり、三人が揃った時、お前はこの漆黒のペンダントの中心部を押せ!分かったな?」

 

「なぎさ、ほのか、ひかりが揃ったら・・・ペンダントの中心部を・・・押す?」

 

「そうそう!アミーゴ、上手くやってくれよ!!」

 

 アカネは、カレハーン、モエルンバの暗示に掛かり、なぎさ、ほのか、ひかりが揃ったら、爆弾のスイッチを入れるよう命を受ける。モエルンバが指をパチリと鳴らすと、アカネは我に返り、

 

「あれぇ?私、何でこんな所でしゃがみ込んでるんだろう!?急いで帰らなきゃ!!」

 

 アカネは慌てて駆け出してTAKO CAFEへと向かった。

 

 

 

「ただいま帰りました!」

 

「「お帰りなさいザケンナー!」」

 

 ひかりが学校から帰って来たのを、先に帰って居たひかると一緒に遊んでいたザケンナーコンビが出向かえる。ザケンナーコンビは、アカネが買い物に出掛けていると伝えると、ひかりは頷き、ワゴン車の中で何時ものように手早く着替え、エプロンを着けると、開店準備を始めた。

 

「二人共、今日もたこ焼き作りの練習をしてらっしゃったんですか?」

 

「見て下さいザケンナー!アカネ様に褒められましたザケンナー!」

 

「まだまだ練習しろと言われましたザケンナー・・・」

 

 チビザケンナーは嬉しそうに、ノッポザケンナーはまだまだだと言われた事をひかりに教えると、ひかりはチビザケンナーには、凄いですねと笑顔を向け称え、ノッポザケンナーには、直ぐ作れるようになりますよと励ました。

 

 

「ひかり、たこ焼き頂戴!三つねぇ!!」

 

「ひかりさん、私は一つでいいわ!」

 

「なぎささん、ほのかさん、いらっしゃい!今アカネさんが買い物に行ってますので、もう少し待って貰っても良いですか?」

 

 何時ものようにやって来たなぎさとほのかの姿に、ひかりは微笑みながらも、アカネが留守なのでもう少し待ってくれるように頼むと、ひかりはアカネが戻るまでの繋ぎで、なぎさとほのかにオレンジジュースをサービスし、同じテーブルに座った。顔色を変えたひかりが、小声でなぎさとほのかに話し掛ける。

 

「咲さんと舞さん、大丈夫でしょうか?」

 

「そうだね・・・何も連絡来ない所を見ると、今はまだ敵の攻撃は受けていないようだね!」

 

「ええ、でも油断出来ない・・・特に、あのゴーヤーンとか言う者は、要注意だと思う!」

 

 ほのかの言葉に、頷くなぎさとひかり、大空の樹の下で、ダークフォールで、そして金の泉で出会った危険な雰囲気を持つゴーヤーンに、ほのかは特に警戒心を持っていた。

 

 

「あれ!?なぎさとほのか、もう来てたんだ?ちょっと待っててねぇ・・・」

 

 ひかりも帰って来ており、なぎさとほのかも店に来ていた・・・

 

 アカネの脳裏に、先程の暗示が響いてくる・・・

 

 美墨なぎさ、雪城ほのか、九条ひかり、三人が揃ったら、ペンダントの中心部を押せと・・・

 

(三人が揃ったら・・・)

 

 アカネの目から光が消えていた・・・

 

 

「お帰りなさ・・・おい、アカネ様って・・・買い物行く前にあんな飾りしてたかザケンナー?」

 

 あかねが胸に掛けて居る、黒いペンダントを見たチビザケンナーが、首を捻りながらノッポザケンナーに問い掛けるも、

 

「さあ?覚えてないザケンナー」

 

「よく見ろザケンナー!あの飾り物・・・何か嫌な感じがするザケンナー!」

 

「・・・特に何にも感じないザケンナー・・・あれ?」

 

「どうしたザケンナー?」

 

 ノッポザケンナーが何かに気付き、指を指した。チビザケンナーが、ノッポザケンナーが指さしている方を見て、思わずアッと声を出す。二人の視線の先に、物陰に隠れて様子を伺う二つの影があった。その内の一人に、二人は見覚えがあった。

 

「あいつは、アカネ様や、プリキュア達の母親を人質に取った踊るアホザケンナー!」

 

「何でこんな所に居るザケンナー?」

 

 カレハーンとモエルンバが、何かを企んでいそうだと感じたチビザケンナーは、気付かれないように、そっと二人に近付くのだった・・・

 

「よし、そうだ!そのままプリキュア共にバレないように近づけよ・・・」

 

 カレハーンの視線の先に、ゆっくり三人に近づいて行くアカネの姿があった。

 

「良いぞ!よし、そこでボタンを押せ!!」

 

 モエルンバの合図に頷き、アカネは、黒いペンダントの中心部のボタンを押した。ピーピーピーと、何かの機械音のような音が辺りに響いてくる。

 

「あれぇ!?何の音だろう?」

 

 急に鳴り響く機械音に、なぎさも、ほのかも、ひかりも、首を捻る。

 

「よし!これで後1分後に、プリキュア共はあの女と共に・・・ドッカ~ンだ!!」

 

「上手く行きそうだな、アミーゴ!・・・悪く思うなよ、プリキュア・・・それがせめてもの俺達からのレクイエムさ!!」

 

 カレハーン、モエルンバの言葉を聞き、思わず声を出しそうになったチビザケンナーは、自分の口を塞ぎ、慌ててノッポザケンナーの側に戻ると、手短に状況を説明した。

 

「そ、それは大変ザケンナー!!」

 

「もう時間が無いザケンナー・・・アカネ様、ひかり様が居なくなったら・・・坊ちゃまは悲しむザケンナー・・・」

 

 チビザケンナーとノッポザケンナーは、何も知らずに車の中で遊んでいるひかるを見た。ザケンナーコンビが頷き合うと、一気にアカネ目掛け駆け出し、チビザケンナーがアカネに飛びつくと、黒いペンダントを引き千切って転倒する。転倒したチビザケンナーをノッポザケンナーが小脇に抱え走り出す。一瞬唖然としたなぎさ達だったが、直ぐに我に返ると、

 

「コラァ!あんたら、やっぱり悪事を・・・それはアカネさんの・・・」

 

「ひかり様!坊ちゃまを頼みますザケンナー!!」

 

「お願いしますザケンナー!!」

 

「エッ?あなた達・・・一体何を!?」

 

 なぎさの言葉を無視するように、ザケンナーコンビがひかりに後時を託し走り出すと、ひかりは戸惑い、物陰に隠れていたカレハーン、モエルンバが大慌てで飛び出してくる。

 

「貴様らぁ!何してくれてるんだぁ!!」

 

「何てこった・・・」

 

 状況が読めない、なぎさ、ほのか、ひかりは、突然現われ頭を抱えるカレハーン、モエルンバに臨戦態勢を取るも、ザケンナーコンビが走り去った方角から、爆発音が聞こえ、ザケンナーが倒された時に聞こえる、ゴメンナーと言う言葉が響いてくる。

 

「何?一体何が起こったの!?」

 

「わ、私にも何が何だか・・・」

 

 戸惑い困惑するなぎさとほのか、ワゴン車の側で、ひかるの泣き声が聞こえだし、ひかりは慌ててひかるの側に行き宥めると、ひかるは落ち着いたのか、ひかりが再びワゴン車から出てきて、なぎさとほのかの下に駆け寄る。

 

「クソォ・・・あいつらの所為で、プリキュア共を始末しこなうとは・・・まあいい、貴様らを爆発に巻き込んで消す事は失敗したが・・・」

 

「これで堂々と、お前達と戦えると言うものだ!!」

 

 カレハーン、モエルンバの言葉を受け、なぎさ、ほのか、ひかり、そして、メップル達の思考が目まぐるしく回転していく。

 

「じゃあ、あの二人は・・・私達やアカネさんを庇って!?」

 

「身代わりになってくれたって言うの?・・・そんな!?」

 

「酷い・・・何でこんな酷い事するんですか?」

 

 なぎさ、ほのか、ひかりの目に涙が溜まる。自分達を庇ってくれたザケンナーコンビは・・・もう居ない!

 

 お礼を言う相手は、もう居ないのだ!!

 

 俯いたなぎさの全身が震える・・・

 

 顔を上げたなぎさが、鋭い視線をカレハーンとモエルンバに浴びせると、

 

「私達を狙ってくるのは構わない!覚悟は出来てる・・・でも、関係無いアカネさんを巻き込む何て・・・それにあの二人は、ひかりに取って家族同然だったんだよ!それを・・・それを・・・あんた達だけは・・・絶対許さない!!」

 

 なぎさの言葉に同意するように、カレハーンとモエルンバを睨み付けるほのか、ひかるに車から動かないように指示したひかりも、険しい表情を浮かべる。コミューンを手に取った三人は、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかをプリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

 ひかりの掛け声と共にひかりの身体を光が包み込んでいく。神々しい光と共にルミナスがその姿を現わす。

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

 変身を終えた三人、ブラック、ホワイトは、ルミナスにアカネ達を守るように伝えると、ブラックはモエルンバに、ホワイトはカレハーンに攻撃を仕掛けた。憎しみではなく、悪への怒りに燃える二人は強かった・・・

 

「ダダダダダダダダダダ・・・ダァァァ!!」

 

 雄叫びを上げ、モエルンバにパンチの連打を浴びせ続け、強烈な右ストレートでモエルンバをぶっ飛ばすブラック・・・

 

「ヤァァァァァァァ!!」

 

 気合いを込めながら連続蹴りをカレハーンに浴びせ、投げ飛ばすホワイト・・・

 

「な、何だ!?どうなっている?」

 

「俺達はパワーアップしているんだぞ!?此奴ら・・・」

 

 甦った自分達は、強さを増して居る。だが、ブラック、ホワイトは、嘗て以上の力で自分達を圧倒する現実に、カレハーンもモエルンバも驚愕する。

 

 体勢を立て直すべく、ブラック、ホワイトから距離を取ったカレハーンとモエルンバは、枯れ葉の舞をホワイトに、炎の渦をブラックに浴びせると高笑いを浴びせた。

 

「どうだ!調子に乗りやがって」

 

「俺達が本気を出せば、チャチャチャと片付くのさ!今頃、もう一組のプリキュアもドロドロン達にやられているだろうさ!あの世で再会するんだな!!」

 

 だが、ブラックもホワイトも、二人の攻撃に怯むことなく、一歩、また一歩近づいて来る。カレハーン、モエルンバは驚愕の表情を浮かべ、

 

(何故俺達の攻撃が・・・)

 

(な、何なんだ・・・こいつらの力の源は!?)

 

 動じないブラック、ホワイトの行為に、思わず一歩後退った。

 

「こんな炎・・・あの二人が受けた痛みに比べれば・・・何とも思わないわよ!」

 

「ええ、こんな枯れ葉の舞何て・・・今の私達には意味が無い事を、教えて上げるわ!!」

 

「そして、咲と舞も・・・」

 

「「必ず救って見せる!!!」」

 

 手を握り合ったブラックとホワイトが頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を、打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人から放たれたマーブルスクリューが、カレハーン、モエルンバの攻撃を打ち消していく。二人は慌てふためきながらも、何とかマーブルスクリューを躱した。ブラック、ホワイトにルミナスが加わると、ルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込む。

 

「漲る勇気!」

 

 手を回転させながらブラックが構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く絆とともに!」

 

「「エキストリーム!!」」

 

「ルミナリオォォォ!!」

 

 ブラックとホワイトの叫び声がハモリ、気合いを込めたルミナスの叫びが響き渡る・・・

 

 ハーティエルバトンを構えたルミナスが、そして足を広げ踏ん張るブラックとホワイトが気合いを込め、ブラックとホワイトの前方に巨大なハートが浮かび上がると、虹の輝きが照射され、一瞬の内にカレハーンとモエルンバを飲み込んだ。

 

「ウゥゥオオォォ!」

 

「アンビリィィィバボォォォ!」

 

 ルミナリオの凄まじき威力に、為す術もなくカレハーンとモエルンバは消滅した。甦ったカレハーン、モエルンバを打ち倒したブラック、ホワイト、ルミナスだったが、敵を倒しても彼女達に笑顔が溢れることはなかった・・・

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスは、チラリとアカネを見るも走り始める。

 

 これ以上、大切な仲間を失う訳にはいかない・・・

 

 咲と舞は、必ず守って見せると誓いながら・・・

 

 

「ウ・・・ウ~ン・・・あれぇ!?私、何でこんな所で寝てたんだろう?なぎさやほのかが来てた気がするんだけどなぁ!?」

 

 辺りをキョロキョロ見回すも、なぎさ達の姿が見えず、夢だったのかなぁと首を捻るアカネだったが、車の中から響き渡る、ひかるの泣き声に気付き、慌てて駆け寄ると、

 

「ひかる、どうしたの?今、アカネさん特製たこ焼き焼いて上げるから、ちょっと待って・・・あれ!?何でこんな所にたこ焼きが!?」

 

 アカネは、ザケンナーコンビが作ったたこ焼きを見ると、自分でも分からなかったが、止め処なく涙が溢れてきた。

 

「あ、あれぇ・・・おかしいな・・・この二つのたこ焼きを見てると・・・涙が止まらない・・・」

 

 アカネから、ザケンナーコンビの記憶は消え失せていた。だが、アカネの心の奥底には、二人の存在が確かに残っていた・・・

 

 

 

2、悲しみの中で

 

 咲と舞、互いに普段の生活をしていても、何処か考え事をする事が多くなっていた。

 

 新キャプテンに選ばれた咲だったが、今はソフト部の事より、ダークフォールが何時襲撃してくるのか、それが不安でしょうがなかった。舞も同じように、大好きな絵を描く気にもなれず、二人は最近放課後になると、大空の樹に行き、ボーとする事が多くなっていた。

  

 そこにコロネがやって来る。

 

 コロネが大空の樹にやって来るなど、咲が知る限り初めてだった。

 

「コロネ!?どうして此処に・・・あんた、こんな場所まで来てたの?」

 

「いや、此処はさすがに遠いからな・・・今回はお前達が心配だったから、様子を見に来た!!」

 

「な~んだそうか・・・って、エッ!?」

 

 咲は、コロネと会話しようと思って話し掛けた訳では無い、だがコロネは、人の言葉を喋り、咲に答えた。顔を見合わせた咲と舞は目を点にし、

 

「ま、舞、夢じゃないよね?」

 

「え、ええ・・・」

 

「「どうなってるのぉぉぉ!?」」

 

 思わず、コロネが喋ってる事に驚いた咲と舞は、ハモリながら驚きの声を上げた。

 

 なぎさ達の身に起こった事も、この時の咲と舞は気付かない・・・

 

 そして、自分達がこの後味わう苦しみの事も・・・

 

 咲と舞、そしてフラッピ達は、コロネの話しに聞き入っていた・・・

 

 

「フィーリア王女は・・・コロネの中に居るラピ?」

 

「そうだ、何でも力を使いすぎた為、こっちの世界で実体化するには、力が足りないらしい・・・力を蓄えるまで、身体を貸して欲しいと頼まれてな、すると不思議な事に、この俺も、人間の言葉を喋れるようになったって訳だ!・・・ところで、大丈夫なのか咲?」

 

 今の落ち込んでいる咲を見かねて、声を掛けたコロネだったが、自分の家の飼い猫、コロネに心配されるという状況に、変顔になった咲は戸惑いながら、

 

「コロネは、私より年下なのに、何か偉そうに説教される何て・・・最悪~」

 

「でも、動物の年齢は、人間の年齢より高いって言うし、コロネは5歳だから・・・人間の年齢で言えば、十分大人じゃないかしら?・・・」

 

「そ、そうなの?・・・でも、何か釈然としないなぁ」

 

「おいおい、大人の意見は聞くもんだぜ!」

 

 猫に説教されるという、不可思議な出来事に、咲と舞は思わず顔を見合わせ、吹き出して笑い合った。

 

 

 その時、ボソボソ何かが聞こえたような気が二人にはした。思わず互いに何か言ったか聞くも、咲も舞も、コロネもフラッピ達も、誰も何も言わないと答える。

 

「またかよ、何で僕を無視するんだよぉぉぉ!トォォ!!」

 

 土の中から飛び上がり、ドロドロンが姿を現わす。フラッピとチョッピは慌ててクリスタルコミューンに変化すると、受け取った咲と舞は、表情を引き締め頷き合い、先端に付いているクリスタルのようなものを回し振ると、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

 ブルームのベルトに、イーグレットの左手に、新たなる力、スパイラルリングを付けた二人が舞い降りる。

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさいっ!!」

 

 変身を終えたブルームとイーグレットがドロドロンに対し啖呵を切った。

 

 だが、二人は戸惑っていた・・・

 

 果たして自分達の攻撃は、ドロドロン相手では効くのか?効かないのか?

 

 戸惑う二人に対し、ドロドロンは自信満々に二人に攻撃しようとした時、

 

「待ちなさい、ドロドロン!」

 

「プリキュアは、私達が倒す・・・」

 

 二つの人影が、ブルームとイーグレットに近づいて来る。ブルームとイーグレットは、現われた二人の少女を見て、心の底から喜びが沸き上がってきた。

 

「満!!」

 

「薫さん!!」

 

 何時も付けていた水晶のペンダントは、二人共身に付けては居なかったが、確かにその姿は、満と薫であった。

 

「あれは・・・間違いないムプ!満ムプ!!」

 

「ププ!間違いなく薫ププ・・・でも、何か変ププ?」

 

 ムープとフープは、満と薫が放つ、悪意にも似た力に怯えながら戸惑っていた・・・

 

 嬉しそうに駆け寄るブルームとイーグレットだったが、満と薫から、闇のエネルギー波が二人に浴びせられる。

 

「キャァァァ」

 

「み、満、薫、止めて!」

 

 吹き飛ばされたブルームとイーグレットは、地面に叩き付けられるも、信じられないといった表情で、満と薫に呼びかけ続ける。

 

「満、薫、私達だよ!咲と舞だよ!!」

 

「満さん、薫さん、止めて!止めて頂戴!!」

 

 そんな二人の言葉も、耳障りに聞こえるかのように、満と薫の刺すような視線が、ブルームとイーグレットに向けられた。

 

「ど、どうなっていやがる?あいつらは・・・咲と舞の友達だった筈じゃ!?」

 

 目の前で繰り広げられる光景に、コロネは呆然とするも、コロネの心にフィーリア王女が語り掛ける。

 

「詳しい事は私にも分りませんが・・・彼女達の記憶は、何者かによって弄られたようです!今の満と薫に取って、咲と舞は・・・自分達に刃向かう倒すべき敵、とでも思い込まされて居るようです・・・」

 

 フィーリア王女の言葉を受け、心配そうにブルームとイーグレットを見るコロネだった。

 

「な~んだ、一方的じゃん・・・これじゃあ、僕の出番は無いよ」

 

 自分も攻撃に参加したいものの、ゴーヤーンに、満と薫を優先させて戦わせるように指示されているドロドロンは、退屈そうにその場に座り込み見物を始める。

 

「どうしたの?そんな所で座り込んだままで!?腰でも抜けたのかしら?」

 

「じゃあ、無理矢理にでも起こして上げる・・・」

 

 再びエネルギー波を放つと、ブルームとイーグレットは、衝撃波で宙に飛ばされるも、何とか回転をしながら地上に着地する。

 

「あなた達、プリキュア何でしょう!?何故攻撃してこないの?」

 

「私達に怖じ気づいたのかしら!?」

 

 一気に加速を付けると、上空高く飛び上がった満と薫が、ブルームとイーグレットに跳び蹴りを食らわし吹き飛ばす。思わずコロネが絶叫するも、二人はヨロヨロ立ち上がり、

 

「こ、攻撃何か・・・出来る訳無いじゃない!満と薫は・・・私達の大切な仲間だもん!!」

 

「満さん、薫さん、思い出して!私達や、なぎささん達との事を・・・」

 

 必死に満と薫に呼びかけるブルームとイーグレットの姿に、満と薫は顔を見合わせると、戸惑いが生まれる。

 

「薫・・・私、前にもこんな事があったような気がするわ」

 

「満・・・私もそんな気がしてた・・・でも、思い出せない!何故こんな不快な感情が沸き上がるの?お前達は一体・・・何だ!?」

 

 自分達が感じだした苛立ちを発散させるように、ブルームとイーグレットを再び攻撃しようとするも、二人の顔を見ると、思わず躊躇してしまう。

 

「こ、これは・・・咲!もっとだ!もっと二人に話し掛けろ!!」

 

 コロネは、満と薫に戸惑いが生まれた事を見抜き、ブルームとイーグレットに、もっと話し掛けろと檄を飛ばす。ブルームとイーグレットは頷くと、

 

「満、薫、あなた達と一緒に植えたひまわり・・・大きい花を咲かせたよ!!二人にも見せたかったなぁ・・・今度はさ、別の花も植えよう!!」

 

「満さん、薫さん、あなた達が私達に託してくれた奇跡の雫で、空の泉は開放されたの・・・そこで私達は、あなた達に救われた、ムープとフープに出会える事が出来たの!」

 

 ブルーム、イーグレットの言葉に同意するように、フラッピが、チョッピが、ムープ、フープも満と薫に語り掛ける。特にムープとフープは、自分達が此処に無事で居られるのは、満と薫のお陰だと涙ながらに礼を言った。

 

 満と薫の脳裏に、一同が言っている通りの光景が、フラッシュバックされてくる。

 

「こ、これは一体!?」

 

「プリキュアが言っている事は・・・本当だとでも言うの!?」

 

 戸惑う満と薫は、呆然とその場に立ち尽くすのだった・・・

 

 

「満殿、薫殿、何をなさっておいでです?さあ、プリキュアを倒しなさい!!」

 

 突然地面から現われたゴーヤーンが、満と薫にプリキュアと戦うように命令を下す。ゴーヤーンの右手には、二人が首から掛けていた、赤と青の水晶のペンダントが握られていた。

 

 ゴーヤーンの命を受け、再びプリキュアに攻撃しようと腕を上げるも、満も、薫も、振り上げた手をそのまま下げ立ちすくんだ。

 

「またあんたか!あんたが満と薫を苦しめてるんだね!!」

 

「許せない!!」

 

「「私達が二人を・・・助けてみせる!!」」

 

 ゴーヤーンを指差し、満と薫を救って見せると誓うも、ゴーヤーンは薄気味悪く笑い始めると、

 

「ホホホホ、出来ますかな?ドロドロン殿、お待たせ致しましたねぇ・・・プリキュアを倒して下さいまし」

 

「良いの?やったねぇ!」

 

 嬉々としたドロドロンが、満と薫に代わるように、ブルームとイーグレットに攻撃を仕掛ける。二人は先程とは違い、ブルームは正面から、イーグレットは上空からドロドロンに攻撃を開始する。ブルームの連続パンチが、イーグレットのかかと落としがドロドロンにヒットするも、そのままドロドロンは、二人の足を掴むと、振り回し放り投げた。

 

「「キャアァァ!」」

 

 悲鳴を上げながら、木々に激突して倒れる二人、それを見る満と薫の心が痛み出す・・・

 

「プ、プリキュア達の悲鳴を聞いたら・・・」

 

「ええ・・・胸が苦しい・・・何なのこの感情は!?」

 

 戸惑う満と薫を見たゴーヤーンは、軽く舌打ちし、

 

「おやおや、洗脳が解け始めているようですねぇ・・・あなた方と戦うのに利用出来ると思ってたんですけど・・・もう使い物になりませんかねぇ?」

 

 ゴーヤーンの言葉を聞き、ヨロヨロ立ち上がったブルームが、イーグレットがゴーヤーンを指さすと、

 

「あんた、満と薫を何だと思ってるのよ!許せない・・・絶対許せない!!」

 

「満さんと薫さんは・・・あなたの道具じゃないわ!!」

 

 顔を見合わせたブルームとイーグレットが頷き合うと、ブルームはリングをベルトに、イーグレットはリングを左手に装着すると、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラルハート・・・」」

 

 力を込めたブルームとイーグレットが一旦腕を引くと、

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 一気に力を解放し、両腕を突き出した二人から、凄まじいエネルギー波が、ゴーヤーン目掛け放たれも、

 

「ドロドロン殿!」

 

「うん、任せてよ!!」

 

 ゴーヤーンの合図を受け目の前に現われたドロドロンが、スパイラルハートスプラッシュの直撃を受ける。だが、ドロドロンは何とも無さそうに、顔を掻き笑いだした。

 

 やはり自分達の攻撃は効かない・・・

 

 ブルームとイーグレットは激しく動揺する・・・

 

 勝ち誇ったドロドロンは、嘗てのようにネットを繰り出し、ブルームとイーグレットを捕らえ、締め付けていく。

 

「アァァァァ」

 

「キャァァァァ」

 

 ブルームとイーグレットから、絶叫が巻き起こる。

 

 コロネが叫ぶ・・・

 

 フラッピとチョッピが悲鳴を上げる・・・

 

 ムープとフープが泣き叫ぶ・・・

 

「わ、私は・・・こんな状況を知っている・・・」

 

「ええ、満、私も・・・知っている・・・」

 

 満と薫の記憶が、次々に甦って来ると、満と薫の目から涙が零れ出す。

 

「私達は・・・何故忘れていたんだろう・・・」

 

「咲と舞を・・・大切な仲間を・・・再び苦しめる何て!」

 

 覚醒した満と薫が頷き合うと、上空高く飛び、鋭利なエネルギー波を放ち、ドロドロンのネットを引き裂いた。ブルームとイーグレットを庇うように、目の前に降り立った二人は、後方を振り返り、涙ながらの顔を一同に見せると、

 

「咲、舞・・・ゴメンね!またあなた達を苦しめてしまって・・・」

 

「こんな形で再会する何て・・・でも、私達も一緒に戦うわ!!」

 

「ううん・・・二人に、二人にまた会えただけで、私、私・・・」

 

「お帰りなさい!満さん、薫さん!!」

 

 立ち上がったブルームとイーグレットも、満と薫の横に並びドロドロン、そして、ゴーヤーンを鋭い視線で見つめた・・・

 

 

3、満ちる月、薫る風、そして・・・

 

「ホホホホ、これは計算が違いましたねぇ・・・ですが、それで勝ったとは思わない事ですねぇ・・・満殿、薫殿、あなた方は勘違いなさっているようですねぇ?あなた方の命は、この私の手中にある事をお忘れ無く」

 

 薄ら笑いを浮かべたゴーヤーンが、記憶を取り戻した満と薫をせせら笑った。自分達の命が、ゴーヤーンの手中にあるとはどういう事なのか?満と薫には理解出来なかった。

 

「下らない挑発には、私も薫も乗らない!」

 

「咲や舞と一緒に、ゴーヤーン・・・私達は、お前を倒す!!」

 

 満と薫が臨戦態勢を整えると、戸惑ったドロドロンがゴーヤーンの方を見ると、

 

「ゴーヤーン、満と薫がまた敵になっちゃったよ・・・」

 

「ご安心なさい、ドロドロン殿!満殿と薫殿が、我々に攻撃を加える事など、不可能なのですよ!何故なら・・・」

 

 ゴーヤーンは、右手に赤い水晶ペンダントを、左手に青い水晶ペンダントを握ると、力を込め始める。水晶は不気味な音を響かせながら、ミシッミシッと亀裂が入っていく・・・

 

「「アァァァァ!!」」

 

 それと同時に、胸を押さえ苦しみ始める満と薫、その尋常じゃない苦しみように、ブルームとイーグレットは戸惑い、満と薫を介抱し始める。

 

「お分かりになりましたか?この二つの水晶は・・・あなた方の命なのですよ!赤い水晶は満殿、青い水晶は薫殿のねぇ・・・さあ、水晶を粉々にされたくなければ・・・プリキュアを倒しなさい!!」

 

 非情なるゴーヤーンの命令が、再び満と薫に命じられるも、

 

「じょ、冗談じゃ無いわ!お前の命令など・・・聞く筈無いじゃない!!」

 

「例え、この命尽きようとも・・・二度とお前の命令など、満も私も聞きはしない!!」

 

「満・・・」

 

「薫さん・・・」

 

 満と薫は、ブルームとイーグレットを見ると、ニコリと笑みを浮かべた・・・

 

 守らなきゃ、二人を・・・

 

 ブルームが、イーグレットが、フラッピ達が、コロネが・・・

 

 一同の心は一つになった!!

 

 

 ブルームは地上から、イーグレットは上空からゴーヤーン目掛け突撃するも、ブルームの前にドロドロンが立ち塞がり、行く手を阻んだ。ならばと上空から急降下したイーグレットの攻撃を躱したゴーヤーンが、エネルギー波を放ちイーグレットを吹き飛ばす。

 

「やれやれ、あなた方が攻撃する度に、満殿と薫殿は苦しむ事になりますよ?」

 

 両手に力を入れると、二人の命の水晶が再び亀裂を起こす。

 

「止めるラピ!」

 

「そうはさせないチョピ!」

 

 フラッピとチョッピがゴーヤーンの腕にしがみつくも、邪魔だとばかり振り飛ばされる。隙を付いたコロネが、まるでボールのように丸まりながらゴーヤーンの顔面に一撃食らわせるも、逆にコロネを弾き飛ばす。

 

「全く、しつこいですねぇ・・・でも、もう無駄ですよ!此処まで亀裂が走っては、どうせ満殿と薫殿は息絶えます!!ですが、あなた方の絶望に歪む顔は、一興ですからねぇ・・・さあ、見なさい!!二人の最期の時を!!!」

 

「止めてぇぇぇ!!!」

 

「イヤァァァァ!!!」

 

 ゴーヤーンの両手に力が込められると、水晶は深くひび割れ、ブルームが、イーグレットが絶叫し、満と薫から絶望的な呻き声が響き渡った・・・

 

 その時・・・

 

 

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を、打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 手を握りながら、全速力で駆けつけるブラックとホワイトが、上空高くジャンプすると、ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラックとホワイトが発した、意表を突いた走りながらのマーブルスクリューの攻撃は、ゴーヤーンをも脅かし、慌てて避けたゴーヤーンの手から、満と薫、二人の命の水晶が飛ばされる。ドロドロンが素早く水晶を取ろうとするも、

 

「ルミナス!ハーティエル・アンクション!!」

 

 ルミナスがハーティエル・アンクションを放つと、光の力がドロドロンの動きを完全に封じる。

 

「あれぇ!?身体が動かなく・・・」

 

 動きを封じられたドロドロン、その隙を逃さずムープとフープが空中でキャッチすると、満と薫の下へと届けに向かう。

 

「ブラック!ホワイト!ルミナス!」

 

「三人共、来てくれたのね!」

 

 頼もしい仲間、ブラック、ホワイト、ルミナスの出現に、思わず顔が綻ぶブルームとイーグレットだったが、何処か三人の表情は険しかった。三人はゴーヤーンをキッと睨み付けると、ゴーヤーンも忌々しそうに睨み返した。

 

「やってくれましたねぇ・・・全く、あなた方が生きてらっしゃるとは・・・カレハーン殿も、モエルンバ殿も、しくじったようですなぁ・・・」

 

「黙りなさい!私達は、尊い仲間のお陰で救われた・・・彼らの無念、私達プリキュアが、晴らして見せる!!」

 

 ザケンナーコンビの事を思い出しながら、ホワイトがゴーヤーンを指差すと、ブラック、ホワイト、ルミナスは戦闘態勢を整えた。

 

「満、薫、ブラック達が来てくれたよ!」

 

「しっかりして!満さん、薫さん」

 

 横たわる満と薫の胸に、泣きながらムープとフープが水晶を乗せると、

 

「ありがとう・・・あなた達の事は、私も薫も覚えて居るわ・・・」

 

「今度は・・・私達が助けられたのね・・・」

 

 ムープの頭を撫でる満、フープの頭を撫でる薫、ムープとフープは、次第に弱まっていく満と薫に縋り付き、泣き続けた。

 

「咲、舞、ゴメンね!なぎさ、ほのか、ひかり、ゴメンね!」

 

「折角会えたのに・・・私達、何の力にもなれなかった・・・」

 

 どんどん弱まっていく満と薫に、ブルームとイーグレットは、手を握り必死に呼び掛け続けた・・・

 

「嫌だよ、満・・・薫・・・」

 

「気を、気をしっかり持ってぇぇ!!」

 

 背後の尋常じゃない様子に、ブラック達三人も駆けつけるも、今にも消えゆくような満と薫の姿に目に涙が浮かぶ、

 

「クッ・・・私達、間に合わなかったっていうの?」

 

「また、また、仲間を失うなんて・・・」

 

 今、消え去ろうとする二つの命・・・

 

 泣き叫ぶ一同に、フィーリア王女の言葉が聞こえてくる・・・

 

 最後まで諦めないでと・・・

 

(はて、変ですねぇ!?フィーリア王女にも、この状況は分かってらっしゃる筈・・・いまだに姿を見せないとは・・・もしや、王女はまだ完全に力を取り戻して居らぬのでは?)

 

 ゴーヤーンは、いまだに姿を見せないフィーリア王女は、力を取り戻していない事を見破り、此処でプリキュアと雌雄を決すべく動き始めた・・・

 

「ホホホホ、お別れは済みましたかな?では、あなた方には更なる絶望を味わって頂きましょう・・・キントレスキー殿、ミズ・シタターレ殿、お出で下さいまし!!」

 

 ゴーヤーンに呼ばれた、二人も大空の樹の前に姿を現わした。このタイミングで強敵キントレスキー、ミズ・シタターレが現われた事に、一同に緊張が走る。

 

 ブラック、ホワイトが、キントレスキー、ミズ・シタターレと睨み合いになる。

 

「悪く思うなよ!これもアクダイカーン様の為ならば・・・恥を承知の上、ゴーヤーンに組みする・・・行くぞ、プリキュア!!」

 

「クイーンのプリキュアの力・・・見せて貰おうかしら?」

 

 ブラックとホワイトが二人と戦闘に突入すると、ドロドロンもブルームとイーグレットの側に近づいてくる。ルミナスに満と薫の事を頼んだ二人は、ドロドロンと戦闘に突入した。だが、二人の必殺技はドロドロンに破られ、劣勢になっていた・・・

 

 ムープとフープは、消え始める満と薫を見つめると、顔を見合わせ合い頷くと、スプラッシュ・コミューンへと突入する。

 

「月の力~!」

 

「風の力~!」

 

「「スプラッシュターン」」

 

 嘗てのように覚醒したムープとフープの力に導かれるように、精霊達が集まってくる。精霊達は、まるで満と薫を助けたいと願う、一同の心を汲み取ったように、水晶に突入していくと、水晶の亀裂が埋まり、徐々にその姿を元の姿へと復元していった。復元した水晶は、満と薫の心臓付近へと吸い込まれて行った・・・

 

 ドクン、ドクンと動き出す鼓動、満と薫の目がゆっくりと見開いていった・・・

 

「な、何事ですか?ドロドロン殿、今の内に満殿と薫殿に、止めを刺してらっしゃい!!」

 

 満と薫の異変に気付いたゴーヤーンが、ドロドロンに命じる。ドロドロンは言われた通り、満と薫の下に赴こうとするも、そうはさせまいとブルームが、イーグレットが、ドロドロンの足を持って動きを封じた。

 

 満と薫が再び目を覚ました・・・

 

 ブルームが、イーグレットが、ブラックが、ホワイトが、ルミナスが、フラッピ達、メップル達一同から、歓喜の声が沸き上がる。

 

「何ですって!?そんなバカな?」

 

 驚愕の表情を浮かべるゴーヤーンだったが、直ぐに冷静さを取り戻すと、

 

「まあいいでしょう・・・満殿、薫殿、精霊の力で甦ったあなた方には、もう闇の力は残っていない!折角生き返っても、何の力にもなれませんねぇ・・・」

 

 ゴーヤーンの言葉を聞き、二人でエネルギー波を出そうとするも、ゴーヤーンの言うように、満と薫は、闇の力を使う事が出来なかった・・・

 

「そんな・・・私達はみんなの力になる事は出来ないの?」

 

「みんなは、必死に私達の為に力を尽くしてくれたと言うのに・・・」

 

 目の前で戦うプリキュア達を、只此処で眺める以外出来ないのか、満と薫は苦悩の表情を浮かべた。そんな二人を見たムープとフープも、悲しげな表情を浮かべるも、フィーリア王女の声がムープとフープを励ました。

 

「ムープ、フープ、あなた達はまだ・・・真の力に目覚めていません!満と薫と力を合わせた時、あなた達は、真の力に目覚める事でしょう・・・」

 

 フィーリア王女の言葉に励まされた二人は、頷き合い満と薫の側に行くと、

 

「満・・・みんなを助けてムプ」

 

「薫・・・フープと一緒に戦うププ」

 

「あなた達、どうしたの?何か方法があるとでも言うの?」

 

「一緒に戦いたいのは山々だけど・・・今の私達には・・・」

 

「大丈夫ムプ!満と薫は、咲や舞と同じ心を持ってるムプ」

 

「フィーリア王女は言ってたププ!満と薫、フープとムープが力を合わせたら、真の力に目覚めるって言ってたププ」

 

 ムープとフープは顔を見合わせ頷き合うと、

 

「月の力~!」

 

「風の力~!」

 

「「スプラッシュターン」」

 

 ムープとフープの容姿が変化した。フラッピとチョッピのクリスタルコミューンのような形になるも、先端は星形の姿をしていた。

 

「そうです!それこそがあなた達が真に覚醒した姿、スターライトコミューンです!!満、薫、さあ、スターライトコミューンを手に取り、新しい力で、ブルームとイーグレットを救って上げて下さい!!」

 

 心の中に響いてくるフィーリア王女の言葉に、満と薫は見つめ合うと頷き、スターライトコミューンを軽く振ると、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワー!!」」

 

 星の輝きが二人を包み込むと、咲と舞のように、二人の身体を光が覆い、満と薫をプリキュアへと変えていく・・・

 

「未来を照らし!」

 

「勇気を運べ!」

 

 満の髪は更にボリュームを増し、薫の髪は、ポニーテイルのように束ねられる。そして、二人の姿が完全にプリキュアへと変化する!!

 

「天空に満ちる月!キュアブライト!!」

 

「大地に薫る風!キュアウィンディ!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「あこぎなマネは、おやめなさい!!」

 

 満は黄色を主体とし、緑のラインが入った衣装を着たキュアブライトに、薫は、薄いブルーを主体とした衣装を着て、両肩にはまるで天女の羽衣を纏ったようなキュアウィンディに変身を遂げた・・・

 

「満、薫、その姿は・・・」

 

「二人共・・・私達と同じプリキュアになったのねぇ!」

 

 ブルームが、イーグレットが、満面の笑みを浮かべブライトとウィンディを見た。

 

「満と薫が、プリキュアに!?」

 

「凄い・・・二人から力が溢れてるわ!」

 

「はい!こんなに心強い事はありません!」

 

 ブラック、ホワイトは驚きながらも、二人に笑顔を向ければ、ルミナスも嬉しそうに二人を向かえた・・・

 

「な、な、何ですとぉぉ!?何故、満殿と薫殿がプリキュアに?」

 

 驚愕するゴーヤーン、闇に生まれたものが、プリキュアになるなど、ゴーヤーンの思考では理解が出来なかった・・・

 

 ブライトとウィンディは、苦戦するブルーム、イーグレットの側に向かうと、

 

「風よ!!」

 

 ウィンディの突風が、ドロドロンのネットを切り裂き、

 

「光よ!!」

 

 ブライトの光の光弾が、ドロドロンを怯ませる。上空からウィンディの凄まじい連続蹴りが、地上からブライトの連続パンチがドロドロンに浴びせられる。吹き飛ばしたドロドロンを見たブライトとウィンディは、ブルームとイーグレットの側に降り立つと、四人の精霊のプリキュアが微笑み合った。

 

ブルームはベルトに、イーグレットは左手に付いているハート形の中心部分にリングを装着し、ブライトはベルトに、ウィンディは左手に付く星形の中心部分にリングを装着する。

 

「「精霊の光よ!命の輝きよ!」」

 

 イーグレットとウィンディが叫べば、

 

「「希望へ導け!二つの心!」」

 

 ブルームとブライトが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「「「スプラ~~ッシュ!!!!」」」」

 

 四人のプリキュアから発射された強大な光が、ドロドロンを飲み込んでいく。自信満々にほくそ笑んでいたドロドロンだったが、

 

「フフン!君達の攻撃何て、効きま・・・したぁぁぁ!!」

 

 その強大な力の前に、ドロドロンは為す術もなく倒された・・・

 

「そうです!花、鳥、風、そして月、花鳥風月が揃った今、精霊のプリキュアは、滅びの力にも負けません!!」

 

 コロネの体内から見つめるフィーリア王女も、四人の勇姿に微笑みを浮かべながら見届けた・・・

 

「キャラフェで甦りし者をも一蹴するとは・・・四人合わさった精霊のプリキュアの前では、効果は無いという事ですか?」

 

 ゴーヤーンは、歯軋りしながら怒りに耐えていた・・・

 

 このまま此処で戦い続けるのは不利だと見極めると、プリキュア達を分散しようと行動を起こした。

 

「キントレスキー殿、ミズ・シタターレ殿、こちらはお任せ致しましたよ!!さあ、あなた達をダークフォールにご案内して差し上げましょう!!」

 

 キントレスキーとミズ・シタターレにこの場を任せると、ゴーヤーンは、ブルーム、イーグレットの足下に、次元の亀裂を起こし飲み込んだ。

 

「「キャアァァァ」」

 

 闇に落ちていくブルームとイーグレットを追うように、ブライトとウィンディがその後を追う・・・

 

「ルミナス!あなたも行って!!」

 

「こっちの二人は、私達が食い止める!!」

 

「はい、分かりました!!」

 

 ホワイト、ブラックの指示を受け、ルミナスも四人の後を追って亀裂の中に飛び込んだ。亀裂は塞がり、元の姿を取り戻す。

 

「我ら相手に、二人で挑もうとは・・・」

 

「オ~ホホホホ・・・その思い上がり、後悔させて上げてよ」

 

 険しい顔をブラック、ホワイトに向けるキントレスキー、ミズ・シタターレの二人に、

 

「あなた達こそ・・・今の私達の前に居る事を、後悔させてあげるわ!」

 

「私達は、負けない!あの娘達が帰ってくるこの場所を・・・絶対に守って見せる!!」

 

 ブラックが、ホワイトが、キントレスキー、ミズ・シタターレと正面から激突した・・・

 

 

 大空の樹の下で・・・

 

 ダークフォールで・・・

 

 今、決戦が幕を開けようとしていた!!

 

 

 

                第六話:花鳥風月

                    完

 



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最終話:絆は永遠に!星空の仲間達!!

           最終話:絆は永遠に!星空の仲間達!!

 

1、必ず戻って来る!

 

 大空の樹の下では、ブラック、ホワイトと、キントレスキー、ミズ・シタターレの死闘が続いていた。ブラックはキントレスキーと、ホワイトはミズ・シタターレと戦う姿を、コロネと、コロネに宿っているフィーリア王女が戦いの行方を見守り続ける・・・

 

「ダダダダダダダ」

 

「オラオラオラオラ」

 

 嘗てと同じように、拳の殴り合いを続けるブラックとキントレスキー、ブラックは、本気で戦わないキントレスキーの行為に戸惑っていた。拳と拳が交差し、互いに空中でクルクル回転して地上に着地する二人、

 

「いいぞ!貴様らとまた戦えるとは・・・よくぞゴーヤーンの企みを打ち破った!!」

 

「うるさい!あんた達の所為で・・・ひかりは、大切な家族を失ったんだからね!!」

 

「そうか・・・それは済まなかった!この私も、不本意ながらアクダイカーン様の命令により、あの非道な行為を黙認したのだからな・・・申し訳ない!!」

 

 キントレスキーは、素直に深々とブラックに頭を下げ詫びた。キントレスキーに謝られ、大いに戸惑うブラックだったが、

 

「な、何言ってるのよ・・・詫びられたからって、あの二人が帰ってくる訳じゃない・・・だけど、あのゴーヤーンって奴と仲間のあんたを・・・私は倒す!!」

 

 ブラックとキントレスキーの両者が大きくジャンプし、拳と拳が激突する・・・

 

 

「オ~ホホホホ!さぁさぁ、どうしたのかしら?逃げてばかりじゃ、このあたくしには適わない事よ」

 

 ミズ・シタターレが操る、水の魔力に苦戦するホワイト、中々懐に入り込むチャンスが伺えず、防戦一方であった。

 

(さすがに大口叩くだけある・・・でも、その慢心があなたの弱点でもある!!)

 

 ホワイトは、逃げ惑うように見せ、ミズ・シタターレを木々の生い茂る中に誘い込むと、木々が攻撃の邪魔をし、ミズ・シタターレはイライラしたように、

 

「全く邪魔な木ねぇ!?面倒ですわ・・・全て滅ぼして差し上げるわ!!」

 

 上空に、巨大な水球を作り始めるミズ・シタターレが油断したその時、ホワイトは突進し、懐に入るや、回転しながら回し蹴りを当てると、ミズ・シタターレが体勢を崩し、ホワイトはそのまま投げ飛ばした。投げ飛ばされたミズ・シタターレは、キントレスキーの側まで飛ばされ、キントレスキーにお姫様抱っこで受け止められる。互いに顔を見合わせ、思わずお互い頬を赤くするも、

 

「ちょ、ちょっとぉ、あたくしを降ろしなさい!」

 

「おお、スマン!つい条件反射でな・・・苦戦しているようだな?」

 

「ば、馬鹿おっしゃい・・・そういうあんたこそ、手こずってなくって?」

 

「うむ・・・確かにあの時より気力が充実している!それでこそ倒しがいがあると言うものだ!!」

 

 ブラックに合流したホワイト、その二人を見つめるキントレスキーとミズ・シタターレ、二人の気迫がより一層高まる。だがブラックは、キントレスキーを見て小首を傾げると、

 

「あいつ・・・何でこの前のように、私達と本気で戦おうとしないんだろうね?」

 

「そう言えばそうね・・・本気を出したあの男は、恐ろしく強かったのに・・・」

 

 ブラックとホワイトの言葉が聞こえたのか、顔から汗が滲み出すキントレスキー、ミズ・シタターレは何の事だか分からず、プリキュア、キントレスキーの顔を交互に見比べた。

 

「何よ、本気出して戦わないって?キントレスキー・・・このあたくしも知らない力を、あんた、隠しているとでもいうのかしら?だったら、さっさと見せなさいよ!!」

 

 少しイライラしたミズ・シタターレが、キントレスキーを問い詰めると、戸惑いながら困惑するキントレスキーであった。

 

(成る程・・・あのミズ・シタターレって人に、あの姿を見られたくないのね・・・)

 

 ホワイトは、思わずクスリとキントレスキーを見て笑むと、ホワイトに心を読まれた気がしたキントレスキーは、更に狼狽えた。ブラック、ミズ・シタターレには何の事か理解出来ず、ミズ・シタターレのイライラは頂点に達したのか、

 

「全く・・・良いでしょう!このあたくし一人で、プリキュアを倒して上げてよ!あんたはそこで見物でもしてらっしゃい!!ハァァァ!!!」

 

 上空に、巨大な水の球体を作り始めるミズ・シタターレ、大気を振るわせるその力に、直ぐにブラックとホワイトも表情を引き締める。あの攻撃をまともに受ければ、この一帯は、壊滅的被害を受けるだろう。咲と舞達が愛するこの場所は、何としてでも守らなければ、だが、今のままでは、あの攻撃を防ぎきる力は自分達には無い・・・

 

 ブラックとホワイトの気持ちは一つになり、目を瞑り、手を握り合うと、

 

「私達の目の前に、希望を!」

 

「私達の手の中に、希望の力を!」

 

 ホワイト、ブラックの言葉を聞き入れたように、まるで生命の息吹を感じさせるような金色の光が、ブラックとホワイトの下に集まってくる。ブラックの右手に、ホワイトの左手に、スパークルブレスが装着される。漲ってくる力を現わすように、腕を回しながら構えたブラックとホワイトを見たキントレスキーの表情が変わった。

 

「私も力を貸す!あの力のプリキュアは侮れんぞ!!ヌゥゥゥゥン!!!」

 

 キントレスキーも力を溜め始めると、ミズ・シタターレは、憎まれ口を叩きながらも、何処か嬉しそうな表情を見せた。ブラック、ホワイトも険しい表情を浮かべると、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 それと同時に、ミズ・シタターレ、キントレスキーの両名も、上空に集めた巨大な力を両手に集めると、

 

「さあ、滅びの力の前に消え去りなさい!!」

 

「行くぞ!プリキュア!!」

 

 二人から放たれた、滅びの凄まじき力が、ブラックとホワイトに迫る。それに合わせるように、ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す。

 

「「マックス~~!!」」

 

 二人の必殺技、マーブルスクリューが、キントレスキー、ミズ・シタターレに発射される。互いの攻撃が発射され、空間でぶつかり合う技と技、滅びの力の凄まじい攻撃に、徐々に押され出すブラックとホワイトの表情が歪む、

 

「オ~ホホホホ!さあ、滅びの力の前に消え去りなさい!!」

 

「プリキュア!覚悟ぉぉ!!」

 

 更に気合いを込める、キントレスキーとミズ・シタターレ、この戦いを見守るコロネの表情に、焦りが生まれてくる。

 

「不味いぞ・・・このままじゃここら一帯は・・・」

 

「信じましょう!彼女達の力を!!」

 

 コロネの体内に宿るフィーリア王女は、ブラックとホワイトならば、この窮地をも跳ね返すだろうと信じていた。

 

「私達は、負けない!!」

 

「滅びの力に、屈したりしない!!」

 

「あの娘達が必ず帰ってくるこの場所を・・・」

 

「「私達は、守って見せる!!」」

 

 ギュッと握り合う手と手に、力を込めた二人の闘志に応えるように、スパークルブレスが激しく回転し出すと、虹色の光が、稲光のようにマーブルスクリューに加わっていく。

 

「「スパークゥゥゥ!!!」」

 

 二人の掛け声と共に、どんどん威力を増し、オーロラを纏ったマーブルスクリューを受け、キントレスキー、ミズ・シタターレの放ったエネルギー弾は消え失せた。その凄まじき力に驚くミズ・シタターレと、満足気なキントレスキーは、

 

「こ、これ程までの力とは!?あたくし達も力を合わせるわよ!ハァァァ!!」

 

「うむ!ヌゥゥゥゥン!!」

 

 マーブルスクリューを両手で止めようとする二人、だが、その威力は凄まじく、二人は後ろに押しやられた。限界を向かえたミズシタターレが、虹の光に飲み込まれそうな時、ミズ・シタターレの背後に回ったキントレスキーが、彼女を分厚い胸板で庇いながら、マーブルスクリューを両手で耐え続ける。思わず見つめ合い、頬と頬を染めた二人を、マーブルスクリューは飲み込んでいった・・・

 

 

「やったぞ!あの二人が勝った!」

 

 見事に勝利したブラックとホワイトを見て、思わずコロネが喜び、強敵の二人を何とか倒したブラックとホワイトが、荒い呼吸を続ける。その場にしゃがみ込み、互いを見て笑むブラックとホワイト、

 

「何とか勝てたね!」

 

「ええ、でも強敵だった・・・」

 

 そこにコロネが近寄り、二人を激励した。

 

「お前達、よくやってくれたなぁ!一時はどうなるかと冷や冷やしたけどな」

 

 そう言うと口元に笑みを浮かべるコロネを見て、ブラックとホワイトは、変顔になりながら激しく動揺した。

 

「ホワイト・・・私、疲れてるのかなぁ?猫が喋ったような・・・」

 

「私にも聞こえたわ・・・咲さんの家で飼ってるコロネよね!?」

 

「ああ、そうだ!フィーリア王女の力のお陰で、こうしてお前達と会話している」

 

 俄には信じられない出来事に、二人は引き攣った笑みを浮かべるのだった・・・

 

 真顔になった一同の脳裏に、ダークフォールに向かった五人が浮かんだ、

 

「後は、あの娘達が無事に帰ってくるのを待つだけだね!」

 

「うん!ルミナス、ブルーム、イーグレット、そして、ブライト、ウィンディの五人なら、必ずダークフォールから無事に帰ってくるわ!!」

 

 ブラック、ホワイト、コロネは空を見上げ五人の勝利を信じる・・・

 

 

 

2、決戦!アクダイカーン!!

 

 その頃、ゴーヤーンによって、ダークフォールに強制的に移動させられたブルームとイーグレット、二人を追ったブライト、ウィンディ、ルミナスの五人は、静まりかえったダークフォール内に居た。

 

「何か不気味だねぇ・・・ゴーヤーンの奴の姿も見えないし・・・」

 

「ええ、何か企んでいるのかも知れないわね」

 

 辺りを警戒しながら歩を進めるブルームとイーグレット、その後に続くブライトとウィンディは複雑な気持ちで歩を進める。

 

 アクダイカーンの手により、自分達はこのダークフォールで生まれた。そして今、プリキュアとなって、二人はダークフォールに戻ってきた。そんな二人を労るように、ルミナスがその後に続いて歩いて行くと、

 

「ブルーム、イーグレット、ルミナス、其処から先には・・・アクダイカーン様が居る!!」

 

「私とブライトに・・・アクダイカーン様と話しをさせて!もう一度、もう一度だけ、アクダイカーン様に、緑の郷を滅ぼさないでくれるように頼んでみるわ!」

 

 思わず不安げに顔を見合わせるブルームとイーグレット、嘗て訪れた時、アクダイカーンは、満と薫を、自分の目的を果たす為に存在する者、そう言っていた事を思い出したのだった。だが、ブライトとウィンディの気持ちも理解出来る二人は戸惑うも、ルミナスが、二人に任せましょうと言う言葉に頷くと、

 

「分かった!ブライト、ウィンディ、無茶はしないでね!」

 

「直ぐに駆けつけるように、此処で待機しているわ!」

 

 ブルーム、イーグレットの言葉に頷いた、ブライト、ウィンディだけが先に歩を進める。

 

 見知った場所、嘗て自分達の命以上に大切な存在、アクダイカーンの居る場所に・・・

 

 泉の前の炎が燃え上がる先に、アクダイカーンは聳え立っていた・・・

 

 何者かの気配を感じたアクダイカーンが、辺りに闘気を発しながらそこに居た・・・

 

「何者だ!?」

 

「アクダイカーン様!私達です・・・満と薫です!」

 

「アクダイカーン様!私と満の話しを聞いて下さい!!」

 

「何!?満と薫だと?・・・その姿は何だ!?」

 

 現われた二人が、満と薫だと名乗った事に、アクダイカーンに戸惑いが生まれる。目の前に居る者は、嘗て見たプリキュアのような容姿をしている。その二人が、満と薫と名乗った事にアクダイカーンは混乱する。

 

「お前達はドロドロンと共に、プリキュアを倒しに向かった筈だ!それを、プリキュアのような容姿で戻って来るとは・・・何事だ!!!」

 

 アクダイカーンの一喝を受け、天井の一部が崩落する。慌てたブライトとウィンディが必死にアクダイカーンを説得に掛かる。

 

「アクダイカーン様、私と薫は、ゴーヤーンの策略によって、命を失いましました・・・」

 

「ですが、プリキュア達が、精霊達が、私達に新たなる力を与えてくれて、私達は再び生を受けました!!」

 

「私達は・・・プリキュアとして生を受け、生まれ変わったのです」

 

「アクダイカーン様、お願いです!緑の郷を!!」

 

「私達が大切な、命溢れる素晴らしい緑の郷を!!」

 

「「滅ぼさないで下さい!!」」

 

 必死にアクダイカーンに訴え掛ける二人だったが、アクダイカーンの唸り声と共に、再び天井が崩落し始める。尚も話しを続ける二人が、命の大切さ、素晴らしさをアクダイカーンに説く、

 

「生命は、何れ無に帰す儚い物です・・・何れは必ず滅ぶ、弱きものかも知れない・・・ですが、生命には限りがある!」

 

「だから生命は精一杯生きて、精一杯生きるから強いのです!!」

 

「黙れ!全てのものは無に帰る!!全ては無となり無こそ滅び、滅びこそ絶対なのだ!!」

 

 怒りの咆哮を上げるアクダイカーンに、ブライトとウィンディが問い掛けた。

 

「一つだけ教えて下さい!あなたは全ての命を滅ぼすと言う・・・」

 

「ならば何故、私達に命を与えたのですか?」

 

「「私達二人をお生みになったのは・・・アクダイカーン様、あなたです!!」」

 

 ブライトとウィンディが、同時にアクダイカーンを指差し問うと、アクダイカーンの思考が混乱する。全てを無にする筈のアクダイカーンが、生命を生む。無を、滅びを絶対と説きながら、有を作り出したアクダイカーンの行動は、確かに矛盾していた・・・

 

 我が、生命を産む・・・

 

 我が・・・

 

 アクダイカーンは、苦悩に耐え切れないかのように、力が暴走しだすと、怒りの矛先を、目の前のブライト、ウィンディへと向ける。

 

「黙れ、黙れ、黙れ!!満、薫、まさか、貴様らがプリキュアになるとは・・・許さん!我の役に立てぬのならば・・・貴様達も、滅びるがいい!!ヌゥゥゥゥン!!!」

 

 アクダイカーンは、右手に持つ水晶を黒い稲光で発光させると、前方に黒い滅びのエネルギーが集まっていく。アクダイカーンの目に炎が点った時、強大な滅びの力が、ブライトとウィンディに向かってくる。必死にアクダイカーンに訴え掛けるも、最早話しは決裂した事を、ブライトもウィンディも悟る。

 

 自分達はどうすればいいのか・・・

 

 戸惑う二人に、容赦なく滅びの力が迫る・・・

 

 二人の目の前に三つの影が現われ、強大なバリアーを張り、滅びの力を防ぎきる。

 

「ブライトとウィンディに、手出しはさせない!」

 

「私達が、守って見せる!!」

 

「ブライト、ウィンディ、あなた方は下がっていて下さい!プリキュアになったとはいえ、アクダイカーンと戦うのは、本意でないのでは?」

 

 ブルームが、イーグレットが、そして、ルミナスが、バリアーを張ってブライトとウィンディを庇った。ルミナスは、二人がアクダイカーンと戦うのは気が引けるのではないかと心配し、声を掛けるも、二人は首を振り、

 

「いいえ、私達も戦うわ!!」

 

「プリキュアとして、アクダイカーン様が、緑の郷を滅ぼすと言うのなら・・・私達は、全力で阻止するわ!!」

 

 三人の横に並び立つブライトとウィンディ、五人のプリキュアが、アクダイカーンと睨み合いになる。

 

「前に来た時は・・・私達は、アクダイカーンの力の前に敗れ去った・・・」

 

「ええ、でも今は違う!ブライトが、ウィンディが、ルミナスが居てくれる!!」

 

 ブルームとイーグレットが、仲間達を見て微笑みを向けた。ルミナスは初めて見るアクダイカーンの巨大さに驚くも、アクダイカーンに妙な感覚を覚えるのだった・・・

 

(あれが、アクダイカーン・・・でも、あの者からは生命を感じないのは一体!?)

 

「無こそ絶対!!我に仇為す者共・・・滅びよ!!!」

 

 アクダイカーンの力が暴走する。アクダイカーンの攻撃は、がむしゃらに発せられ、洞窟が崩壊を始める。

 

「皆さん、もう此処は持ちません!」

 

 ルミナスの叫びに頷いた四人が、アクダイカーンの居る洞窟から脱出する。アクダイカーンが居た洞窟は、巨大な地響きと共に崩壊した・・・

 

 外に出た一同、ブルームは灰色がかった空を見て、驚きの声を上げる。

 

「あの洞窟の外には・・・こんな景色があったなんてね」

 

「暢気に眺めている暇は無さそうよ・・・見て!」

 

 ブライトが指さす先に、巨大な影が聳え立っていた・・・

 

 アクダイカーン・・・

 

 暴走したダークフォールの主が、五人のプリキュアを睨み付けると、

 

「滅ぼす!滅ぼす!全ては滅びよ!!」

 

 暴走したアクダイカーンが、ダークフォールさえも滅ぼそうとするように、空間に亀裂が走る。その強大な力に、一瞬五人は怯むも、

 

「止めて!それ以上破壊を続けると言うのなら・・・」

 

「私達が・・・あなたを倒す!!」

 

 上空に舞い上がり、風の力と月の力でアクダイカーンに攻撃を加える、ブライト、ウィンディであったが、アクダイカーンの凄まじい攻撃力の前に、全て無効化される。

 

「ルルンは岩陰に隠れていて!ポルン、あなたも一緒に居て上げて!」

 

 ルミナスは、恐怖の余りミラクルコミューンから妖精の姿に戻って泣くルルンをあやし、ポルンと共に岩陰に隠れているように伝えると、アクダイカーンの強大ながむしゃらな攻撃から、バリアーを張って一同を庇い続ける。

 

「ホホホホ!その程度の攻撃では、アクダイカーン様に通じませんよ」

 

 五人の戦い様を、岩場の上から静観するゴーヤーンは、キャラフェを側に置き、含み笑いを浮かべる。

 

「あれは、プリキュラ達から奪った・・・こ、怖いけど・・・みんなの役に立つポポ!ルルンはここに居るポポ」

 

 ゴーヤーンに気づかれないように、チョコマカ移動するポルン、その後を、同じようにチョコマカ追いて行くルルン、二人の行動に気付いたブルームとイーグレットが頷き合うと、ゴーヤーン目掛け突撃してくると、ポルンとルルンの援護をする。

 

「ゴーヤーン、今までの借り、纏めて返してやるぅぅ!!ダダダダダ!!」

 

「ヤァァァァ!!」

 

 ブルームのパンチを、イーグレットの蹴りを、余裕で躱すゴーヤーンだったが、キャラフェから距離が開いたその時、

 

「今よ!ポルン!ルルン!!」

 

「ポポポポポポ」

 

 一気に岩場を駆け上ったポルンが、キャラフェを取返すと、そのまま勢い余って転がり落ちるものの、涙目になりながらも泣くのを我慢して、ルルンと共に逃げ始める。

 

「何ですとぉぉ!?小癪な真似を・・・ハァァァ・・・ハァ!!!」

 

 手にエネルギーを集めると、ポルンとルルン目掛け攻撃するも、

 

「二人には手出しさせません!ハァァァ!!」

 

 ルミナスが巨大なバリアーを張り、ポルンとルルンをゴーヤーンの攻撃から守る。ゴーヤーンは忌々しげな表情になるも、

 

「まあ良いでしょう・・・あなた方如きに、アクダイカーン様は止められますまい!後でじっくり取返すとしましょう!!」

 

 ゴーヤーンはそう言い残し、地中に消えるように姿を消した。

 

「ポルン、ルルン、ありがとう!良く頑張ったわね!!」

 

 ルミナスはしゃがみ込むと、ポルンとルルンの頭を撫でて上げると、二人は嬉しそうにニコニコ微笑んだ。ブルームとイーグレットも、キャラフェを取り返せて嬉しそうな表情を見せるも、

 

「あいつ・・・何でアクダイカーンに協力しないんだろう?」

 

「あの男には何かありそうね・・・ブルーム、ブライトとウィンディの援護に向かいましょう!」

 

 二人は飛翔し、アクダイカーンと戦うブライト、ウィンディの援護へと向かった。

 

 

 ブライト、ウィンディの連係攻撃をものともせず、アクダイカーンは、咆哮を上げながら二人を払いのける。吹き飛ばされたブライトをブルームが、ウィンディをイーグレットが抱き止める。肉弾戦では効果が無い事を悟った四人は頷き合うと、

 

「風よ、切り裂け!!」

 

「光よ!!」

 

 ウィンディの突風が、ブライトの巨大な光球がアクダイカーンにヒットしたのを見ると、ブルームはベルトに、イーグレットは左手に付いているハート形の中心部分にリングを装着し、ブライトはベルトに、ウィンディは左手に付く星形の中心部分にリングを装着する。

 

「「精霊の光よ!命の輝きよ!」」

 

 イーグレットとウィンディが叫べば、

 

「「希望へ導け!二つの心!」」

 

 ブルームとブライトが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「「「スプラ~~ッシュ!!!!」」」」

 

 四人のプリキュアから発射された強大な光が、アクダイカーン目掛け発射されるも、アクダイカーンからも強烈な滅びの力が照射され、空中でぶつかり合う技と技、互いに雄叫びを上げ、力を込めるも、アクダイカーンの威力が勝り、四人が吹き飛ばされる。

 

「ブルーム!イーグレット!ブライト!ウィンディ!」

 

 吹き飛ばされた四人に駆け寄るルミナス、更なるアクダイカーンの攻撃からバリアーを張り、懸命に四人を守り続けた。

 

「ありがとう、ルミナス!負けない・・・あんたに何か、滅びの力に何か負けない」

 

 歯を食いしばり、立ち上がるブルームに刺激されたように、イーグレットが、ブライトが、ウィンディが立ち上がり、

 

「「「「私達は負けない!!」」」」

 

 四人の魂の叫びに応えるように、フラッピが、チョッピが、ムープ、フープが、それぞれのパートナーの脇に並ぶと、

 

「月の力!」

 

「風の力!」

 

「大地の力!」

 

「大空の力!」

 

 四人の精霊の力が、プリキュアへと集まっていく・・・

 

 四人のプリキュアは、目を瞑りその力を受け入れると、

 

「精霊の光よ!」

 

 イーグレットが、

 

「命の輝きよ!」

 

 ウィンディが、

 

「希望に導け!」

 

 ブライトが、

 

「全ての心!」

 

 ブルームが、

 

 力を受け入れた四人の全身が金色に輝くと、

 

「「「「プリキュア!スパイラル・ハ~~ト」」」」

 

「「「「スプラッシュ・スタ~~!!」」」」

 

 花鳥風月・・・

 

 四人の精霊のプリキュアから放たれた、強大な光のエネルギーと、アクダイカーンの放った強大な滅びの力が、再び激突した!!

 

「滅びよ!滅びよ!滅び・・・グオォォォォ!!」

 

 四人から発せられた、強大な光のエネルギーは、アクダイカーンの攻撃を貫き、アクダイカーン本体をも光の輝きの中に包み込む。断末魔の悲鳴を上げるアクダイカーンであったが・・・

 

 

「まさか・・・アクダイカーン様を打ち倒すとは!?計算が違いましたねぇ・・・」

 

 再び姿を現わしたゴーヤーンが、アクダイカーンを戦闘不能に追い込んだプリキュアの凄まじき力に驚くも、どこか余裕を浮かべていた。

 

「ゴーヤーン!アクダイカーンは私達が倒したわ!」

 

「次はあなたの番よ!!」

 

 ブルームとイーグレットがゴーヤーンを指さすと、ゴーヤーンは笑い声を上げ、

 

「やれやれ、所詮はカラクリ人形という事でしょうかねぇ?良いでしょう!お相手して差し上げますよ!!」

 

 ゴーヤーンが五人の前に降りて来るも、ボロボロのアクダイカーンが動くのを見て、驚愕する一同、

 

「あの攻撃を受けて、まだ動けると言うの?」

 

「皆さん、見て下さい!アクダイカーンの中身は・・・空洞になっています!!」

 

 ブライトが驚き、ルミナスは、アクダイカーンの中身が、何も無い空っぽの状態を指さすと、一同は困惑した。

 

「これは・・・」

 

「一体どういう事なの?」

 

 ブライトが、ウィンディが、生みの親であるアクダイカーンの姿を見て混乱すると、

 

「ホホホホ、先程申し上げたでしょう?カラクリ人形だとね!アクダイカーンとは・・・この私が作り上げたのですよ!!」

 

 ゴーヤーンの言葉に一同が凍り付く、ダークフォールの支配者アクダイカーンは、ゴーヤーンが作り上げた存在だと言う・・・

 

 一同にとって、俄には信じがたい話しであった。ゴーヤーンは愉快そうに笑いながら、

 

「でしたら、証拠をお見せしましょうか?満殿と薫殿はご存じでしょう!アクダイカーンの前に、常に炎が揺らいでいた事を・・・あれこそが、アクダイカーンの命なのですよ!!命の炎をこのように・・・揉み消せば・・・」

 

 ゴーヤーンは、揺らめく炎を一気に握り潰し消滅させると、アクダイカーンの巨体は、瓦礫が崩れるように粉々に朽ち果てた。

 

「どんなものでも、いつかは滅びる。例外はありませんよ?ホホホホ!!」

 

 アクダイカーンの最期を、愉快そうに笑い続けるゴーヤーンの姿に、怒りの咆哮を上げたブライトとウィンディが、ゴーヤーンに突進するも、ゴーヤーンは素早く躱し、逆に二人にエネルギー波を浴びせ、二人を吹き飛ばす。直ぐに体勢を整えたブライトとウィンディの側に集まる、ブルーム、イーグレット、ルミナスだったが、尋常ではない事態に、ルミナスは、ポルン、ルルンをコミューン状態にして、その身にしっかり装備し、フラッピ達も再びコミューン姿になり、それぞれのパートナーに治められた。

 

「やれやれせっかちですねぇ・・・とは言え、アクダイカーンの馬鹿者が、派手にダークフォールを壊してしまいましたからねぇ・・・あなた方との戦いの場は、変更致すとしましょう・・・ヌゥゥゥン!!」

 

 ゴーヤーンは、両手に強大な滅びの力を加え、天井高く一気に発射すると、ダークフォールを完全に消滅させる。

 

 一同は、次元の波に飲まれ姿を消した・・・

 

 

3、ゴーヤーン、その真の力!

 

 悲鳴と共に地上に落下する五人のプリキュア達、顔面から落下したブルームの上に、次々落ちてくる他の四人、その都度ブルームは悲鳴を上げる。

 

「ウゥゥ・・・潰れるかと思った・・・此処は一体!?って、あれは、ひょうたん岩?」

 

「私達、緑の郷に戻って来たの?」

 

 一同が驚いたように辺りをキョロキョロすると、海の上からゆっくり一同の下に近寄って来るゴーヤーンを見て、表情が険しくなる。ゴーヤーンは口元に笑みを浮かべながら、

 

「そうですよ!どうせなら、太陽の泉のある・・・緑の郷で決着を付けるのも良いと思いましてねぇ・・・ですが、あなた方のその体力で、この私と戦うのは無謀だと思いますがねぇ?」

 

「黙りなさい!私達は負けない!!」

 

「ゴーヤーン、アクダイカーン様までも利用するお前を・・・私達は絶対に許さない!!」

 

 ゴーヤーンの言葉に、ブライトとウィンディが叫び、ブライトはベルトに、ウィンディは左手に付く星形の中心部分にリングを装着する。

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 ゴーヤーン目掛け放たれるブライト、ウィンディの必殺技だったが、ゴーヤーンから放たれた滅びの力が、二人の攻撃を飲み込み、二人を吹き飛ばした。

 

「「キャァァァ!」」

 

「ブライト、ウィンディ、よくもぉぉぉ!!」

 

 二人を攻撃され、雄叫び上げたブルームと、上空に舞うイーグレットがゴーヤーンに肉弾戦を仕掛けるも、二人の攻撃は完全にゴーヤーンに見切られ、隙を見せた所を、ゴーヤーンのエネルギー弾の直撃を食らい、堤防に激しく激突する。

 

「ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディ、みんな大丈夫ですか?」

 

 四人を心配するルミナスが間に入りゴーヤーンと睨み合いになるも、

 

「ホホホホ、あなたの守りの力は、たいしたものですよ!ですがね、アクダイカーンの攻撃を防ぎ続けた疲労は、隠しきれませんねぇ・・・これでお仕舞いにしましょうかね?」

 

 ゴーヤーンは、右手の人差し指に力を込めると、黒い塊はどんどん巨大化していき、

 

「さあ、止められるものなら・・・止めてご覧なさい!!」

 

 ゴーヤーンから放たれた巨大な黒い塊が、五人のプリキュアへと迫る。何とかバリアーを張ろうとするルミナスだが、ゴーヤーンの攻撃を完全に塞ぐのは難しかった。五人の顔から冷や汗が垂れる。

 

 だが・・・

 

 

 

「ハァァァァァ!!」

 

「ヤァァァァァ!!」

 

 雄叫びを上げながら、上空から飛来した二つの人影が、稲妻を纏った蹴りで、黒い塊を突き抜け粉砕し、五人を守るようにゴーヤーンの前に現われた。

 

「お待たせ!みんな、良く無事で帰ってきてくれたわね!!」

 

「海岸の辺りから、あなた達と邪悪な気配を、ミップルやメップルが感じ取って、駆けつけて来たの!」

 

 一同を振り返り、右手の親指で合図を送りながら、みんなが無事に帰ってきたのを喜ぶブラックと、一同の気配を感じてやって来たと語るホワイト、五人は、頼もしき仲間の出現に、思わず顔が綻んだ。ブラックは再び正面を向くと、忌々しそうな表情を浮かべるゴーヤーンを見て、表情を険しくする。

 

「あいつは、ゴーヤーンだよね!アクダイカーンはどうなったの?」

 

 ルミナス、イーグレットが、大体の説明をブラックとホワイトに伝えると、二人も驚愕し、再びゴーヤーンを険しい表情で見つめた。

 

「やれやれ、またあなた方ですか?まあ、あなた方がキントレスキー殿やミズ・シタターレ殿を倒す事は予想していましたがね・・・あの二人は、言わば捨て駒!あなた方を分断する程度には、役に立ってくれましたがね・・・アクダイカーンが、そこの五人さへ始末していれば、私もあなた方をゆっくり葬る事が出来たのですがねぇ・・・全く、どなた様も役に立たない者ばかりで、私もホトホト困ってしまいますねぇ」

 

 苛立ちを抑えるかのように、ゴーヤーンは、ブラックとホワイトを挑発するように話し出すと、仲間を道具のように扱うゴーヤーンに、ブラックも、ホワイトも怒りを覚えるのだった。

 

「あんた、あいつらの仲間何でしょう?何でそんな酷い事言うのよ!敵とは言え、あの二人は死力を尽くして私達と戦った!」

 

「あなたの発言・・・許す訳には行かない!!」

 

「誰も許してくれとは頼んで居ませんよ!プリキュアの皆さんが勢揃いした事ですし、あなた方に一つ、お話しをして差し上げましょう・・・遙か昔の事です!私は、あなた方が戦って居た、ジャアクキングとも戦った事があるのですよ!あの時は、痛み分けに終わりましたがねぇ」

 

 ゴーヤーンは、ブラック、ホワイト、ルミナスを見て、口元に笑みを浮かべた。

 

 ゴーヤーンがジャアクキングと戦って居た?

 

 一同は、ゴーヤーンの言葉を呆然と聞き入っていた・・・

 

 

「ジャアクキングとの再戦に備え、私は、力を蓄える為この姿になった。私の代りを勤める者が必要になりましてね、私は、ダークフォール、並びにアクダイカーンを作り上げた!アクダイカーンの命の炎から、カレハーン、モエルンバ、ドロドロン、ミズ・シタターレ、キントレスキーが生まれた。皆当初は、ジャアクキングとの戦いに備えて組織したのです。ですが、ジャアクキングは別の者達との戦いに明け暮れた・・・クイーンの力を受け継ぐ者、伝説の戦士プリキュア!つまり、あなた方ですなぁ!!」

 

 口元に笑みを浮かべたゴーヤーンが、ブラック、ホワイト、ルミナスを見る。

 

「お陰で助かりましたよ!こちらの戦力を消耗する事無く・・・この世界を滅ぼす為の行動を起こせたのですから・・・まあ、アクダイカーンが、満殿と薫殿という存在を、自ら作り上げたのは驚きましたがね」

 

 ブライト、ウィンディの脳裏に、ダークフォールに居た頃の記憶が走馬燈のように流れた。自分達は、アクダイカーンの行ないこそが、全てだと思い込んでいたあの頃を・・・

 

 二人は、五人の頼もしい仲間達を見ると、

 

(私達には、大切な仲間達が居てくれる!命の尊さを教えてくれた、大切な仲間達が!!)

 

(ええ、ブライト!私達には、咲や舞、なぎさやほのか、ひかり、ムープ達が居る)

 

 ゴーヤーンは、更に言葉を続けると、

 

「そして私は、全ての生命を司ると言われる世界樹、世界樹を潤わす為に必須な泉の郷、太陽の泉、フィーリア王女の存在を突き止めた。全く不愉快ですよねぇ?生命など・・・私の静寂の邪魔者でしかありませんからねぇ!ですが、もういいです・・・この私自ら、全てを滅ぼす事にしましたから・・・さあ、見なさい!この私の真の姿を!!ハァァァァァァァァ!!!」

 

 ゴーヤーンの体内から、力が溢れてくる・・・

 

 地球は、その力を恐れるかのように、大気を振るわした・・・

 

 徐々に増大していく黒き邪悪なオーラが、ゴーヤーンの姿を変えていく・・・

 

 キントレスキーすらも凌駕する屈強なる体軀、額からは巨大な一本の角を生やしたその姿、邪悪の権化のようなその容姿に、七人のプリキュアに緊張が走った・・・

 

 

「な、何だ?海岸の方で禍々しい力が・・・」

 

「これは・・・緑の郷が危ない!私達も海岸に向かいましょう!!」

 

 コロネはフィーリア王女の言葉に頷き、大急ぎで海岸へと走っていった・・・

 

 

「お待たせしましたね!これが、真の私の姿です!!待たせた代わりに、あなた方にハンデを与えましょう・・・3分間、私は腕組みしたまま、一切の攻撃を仕掛けない事を約束しましょう!!では、始めましょう!!!」

 

 ゴーヤーンは、プリキュア達をコケにしたように、口元に笑みを浮かべ勝負を開始すると、

 

「馬鹿にするなぁぁ!!ダダダダダダダダ!!!」

 

 真っ先に突撃したのはブラック、ブラックのパンチがゴーヤーンの顔面に炸裂するも、ゴーヤーンは微動だにしなかった。加勢するようにブルーム、ブライトも連続パンチをゴーヤーンのボディに加えるも、

 

「さあ、1分過ぎましたよ!これがあなた方の力ですか?」

 

 尚も挑発するゴーヤーン、ホワイト、イーグレットも加わりパンチ、キックの連打を浴びせるも、微動だにしなかった・・・

 

「みんな、離れて!風よ、切り裂け!!」

 

「光よ・・・闇を打ち抜け!!」

 

 強烈な突風が、強大な光のエネルギーが、ウィンディ、ブライトから発せられるも、ゴーヤーンは腕組みを解こうとはしなかった・・・

 

「さあ、2分過ぎましたよ!」

 

 プリキュア達に焦りが浮かぶ、顔を見合わせた一同は、頷き合うと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて前に突き出す。

 

「マックス~~!!」

 

「「精霊の光よ!命の輝きよ!」」

 

 イーグレットとウィンディが叫べば、

 

「「希望へ導け!二つの心!」」

 

 ブルームとブライトが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「「「スプラッ~~シュ!!!!」」」」

 

 渾身の力を込めたブラック達、ブルーム達の攻撃がゴーヤーンに直撃する。

 

だが・・・

 

 

「3分!!さあ、今度はこちらから参りますよ・・・」

 

 連携技さえ、全くダメージを与えられない一同は呆然とするも、遂に3分が過ぎ、ゴーヤーンが攻撃を開始する。

 

 その圧倒的スピードに、目を奪われた瞬間、ブライトとウィンディの悲鳴が響き渡り、慌ててそちらを見る一同は、ゴーヤーンの右手にブライト、左手にウィンディの頭を鷲掴みにし、今にも二人の頭を潰そうとするゴーヤーンの姿があった。

 

「止めろぉぉぉぉ!!」

 

「二人を離してぇぇ!!」

 

 ブルーム、イーグレットが突撃するも、ゴーヤーンは二人を掴んだままブルームとイーグレットに強烈な蹴りを浴びせて海中に蹴り飛ばす。このままでは、ブライトとウィンディが殺される・・・焦るブラックは、ホワイトを見ると、

 

「クッ・・・ホワイト、もう一度さっきの技・・・行くよ!!」

 

「ええ・・・これ以上好きにはさせない!!」

 

 スパークルブレスが回転しだすと放電し、ブラックとホワイトの身体を包んでいく。上空高くジャンプしたブラックとホワイトの足下が、凄まじき放電を浴び、

 

「「ヤァァァァァァ!!」」

 

 ブラックとホワイトが、その勢いのままゴーヤーンに急降下の蹴りを放つと、ゴーヤーンの手は弾かれ、ブライトとウィンディはそのまま地上へと落下して行くのをルミナスが抱き止める。何とかブライトとウィンディを助けたものの、

 

「全く・・・忌々しい奴らですね・・・消えろ!!」

 

 瞬時に放ったゴーヤーンのエネルギー弾の直撃を受け、波打ち際に吹き飛ばされるブラックとホワイト、追い打ち攻撃をしようとするゴーヤーンに、海中から飛び出したブルームとイーグレットのパンチを受け、ゴーヤーンは攻撃を外すものの、ブルームとイーグレットを腕で払いのけて、防波堤に叩き付ける。

 

「何・・・何なの、あいつ!?」

 

「ゴーヤーンが・・・あんなに強いなんて・・・」

 

 ブルームが、ブライトがゴーヤーンの強さに驚愕するも、その顔に諦めは見られなかった・・・

 

 

 7人のプリキュアは、顔を見合わせると・・・

 

 ルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込む。

 

「漲る勇気!」

 

 手を回転させながらブラックが構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く絆とともに!」

 

「「エキストリーム!!」」

 

「ルミナリオォォ!!」

 

 フラッピ、チョッピ、ムープ、フープがそれぞれのパートナーの横に並び立つと、

 

「月の力!」

 

「風の力!」

 

「大地の力!」

 

「大空の力!」

 

 四人の精霊の力がプリキュアへと集まっていく・・・

 

 四人のプリキュアは目を瞑りその力を受け入れると、

 

「精霊の光よ!」

 

 イーグレットが、

 

「命の輝きよ!」

 

 ウィンディが、

 

「希望に導け!」

 

 ブライトが、

 

「全ての心!」

 

 ブルームが、

 

 力を受け入れた四人の全身が金色に輝くと、

 

「「「「プリキュア!スパイラル・ハ~~ト」」」」

 

「「「「スプラッシュ・スタ~~!!」」」」

 

 七人のプリキュアから発せられた、強大な光のエネルギー波は、ゴーヤーンが発した衝撃波をものともせず、ゴーヤーンの身体を包み込んだ。

 

「グゥオォォォォォォォアァァァァ」

 

 断末魔の悲鳴を上げるゴーヤーンに、全ての力を使い果たしたプリキュア達が、膝から崩れ落ちるも、互いを見て笑顔を向けた。

 

 だが・・・

 

 ゴーヤーンは生きていた・・・

 

 今のプリキュア達が放った、最強の技を食らいながらも、ゴーヤーンは生きていた・・・

 

「この俺が・・・一瞬とはいえ、死を、死を思い浮かべるとは・・・許さん・・・絶対に許さんぞぉぉぉ!!!」

 

 海岸で膝を付いたまま呆然とする一同に、ゴーヤーンは、連続光弾を浴びせ続けた。光弾が止んだ時、変身を解除された少女達が其処には横たわっていた。

 

 もう少女達に、ゴーヤーンと戦う力は残っては居なかった・・・

 

 

4、伝説を超えた少女達

 

 ゴーヤーンの前に、プリキュアは敗れ去った・・・

 

 変身を解除された少女達は、意識はあるものの、起き上がる力さえ残っては居なかった・・・

 

「死に損ないとはいえ・・・止めを刺してくれる!!」

 

 ゴーヤーンは力を溜め始めると、一気に少女達目掛け、強烈なエネルギー波を発した。その時、ひかりが持っていたキャラフェが光輝くと、バリアーを放ち少女達を守った。

 

「ゴーヤーン、これ以上好き勝手にはさせません!」

 

 駆けつけたコロネの背から力を解放し、緑の郷で実体化したフィーリア王女が姿を現わす。

 

「ほう、ようやくお出ましですかフィーリア王女?ですが、あなたの希望の戦士は、そのような無様なままですよ!それに、今更キャラフェなど・・・何の役にも立たない!!」

 

 ゴーヤーンはそう言うと、連続光弾を浴びせ、キャラフェを吹き飛ばすと、キャラフェはクルクル回転しながら海へと落下した。

 

「しまった!?」

 

 動揺したフィーリア王女の姿を訝しむゴーヤーン、背後が輝きを発したその時、海は金色に輝いた。

 

「あれは・・・まさか?」

 

「そうです・・・緑の郷に広がる生命の源、海こそが、太陽の泉そのものだったのです!」

 

 咲の問い掛けに、苦渋を満ちた表情のフィーリア王女が答える。

 

「フハハハハハ!こんな場所に隠してあったとは・・・王女もお人が悪いですなぁ?では、太陽の泉と共に・・・滅びて貰いましょう!!」

 

 ゴーヤーンの手から、絶望的な一撃が太陽の泉に発せられた・・・

 

 海は枯れ果て・・・

 

 地上は、生命の息吹を感じさせない、静寂なる無と変わり果てた・・・

 

 少女達は、世界の終焉を目の前にしながら、何も出来なかった事に対し、悔し涙を浮かべた・・・

 

「そんなぁ、太陽の泉が枯れたら・・・世界樹も完全に枯れ果て、緑の郷も、泉の郷も・・・」

 

「もう、もう二度と元には戻せないチョピ」

 

 フラッピとチョッピが涙ながらに一同に語った・・・

 

 もう、緑の郷を、泉の郷を、救う手段は無いのだろうか・・・

 

 

 

「良いですね!これこそが私が待ち望んでいた世界!!何と素晴らしい!!ですが・・・まだ、邪魔者が残っていますねぇ!!」

 

「ゴーヤーン!彼女達にこれ以上手出しはさせません!!」

 

 ゴーヤーンの攻撃を防いだフィーリア王女は、少女達と妖精達を大空の樹の下に強制移動させるも、力を使いすぎたのか苦しそうな表情を浮かべる。

 

「コ、コロネ・・・ゴメンなさい!あなたを守る力は、私にはもう・・・」

 

「気にしなさんな!咲達を命懸けで守ってくれたあんたを・・・俺が守って見せる!!」

 

 全身の毛を逆立ててゴーヤーンを威嚇するコロネ、ゴーヤーンは、そんなコロネを鼻で笑い、消し去ろうとしたその時・・・

 

 

 

「私達・・・守れなかった!」

 

「もう私達には、ゴーヤーンと戦う力は残って居ないの?」

 

 なぎさが、咲が、今の無力な自分達を嘆き悲しむ、大空の樹も枯れ果て、一同の心を悲しみが覆った・・・

 

 花も、鳥も、風も、光も無い、無の世界・・・

 

 その時、フラッピとチョッピがある事に気付き、思わず言葉にした。

 

「土が・・・土があるラピ!」

 

「空が・・・空があるチョピ!」

 

「「「「「「「エッ!?」」」」」」」

 

 フラッピとチョッピの言うように、地上には土が、どんより淀みながらも空が確かに存在した・・・

 

 花を咲かせる事ができる土が、鳥が飛べる空が、雲の向こうには月が、きっと風も吹くだろう。そしてその先から、希望の光は必ず差すだろうと言うフラッピ達四人の言葉を裏付けるように、今、天空から光が舞降りた・・・

 

 

 

「馬鹿な!?あなたはクイーンか?」

 

 驚愕するゴーヤーンの目の前に、巨大なる光の園のクイーンが降臨する。クイーンの聖なる力は、再びフィーリア王女に力をもたらした・・・

 

「あなた様は・・・光の園のクイーン!」

 

「はい、虹の園は、私にとっても大切な場所・・・あなたの好きなようにはさせません!そして、彼女達の心は、完全に折れては居ません!再び立ち上がり、最後には必ずあなたを倒す事でしょう!!」

 

 クイーンは、穏やかな表情で枯れ果てた大空の樹を見つめた・・・

 

「これ以上、虹の園をあなたの好きにはさせません!!」

 

 クイーンが、フィーリア王女が、力を解放し、滅びの力を抑えに掛かった・・・

 

 

 

「ほのか、ひかり、クイーンが、クイーンが来てくれたよ!」

 

「ええ、私達の希望は、まだ絶たれていない!」

 

「はい、まだこの身を動かせる限り」

 

 なぎさが、ほのかが、ひかりが、クイーンの登場に勇気づけられたように、ヨロヨロ立ち上がる。

 

「そうだよ、全てのものに生命は宿る」

 

「この星に残っている全ての精霊達よ!」

 

「全てのモノに宿る精霊達よ!」

 

「お願い!私達に・・・」

 

「「「「力を貸して!」」」」

 

 大空の樹が、少女達の叫びに応えるように光輝くと、

 

 咲が、舞が、満が、薫が立ち上がる!

 

 フラッピ達四人は、緑の郷に残って居るだろう精霊達を取り込み始めると、

 

「月の力!」

 

「風の力!」

 

「大地の力!」

 

「大空の力!」

 

 眩しい光が七人の少女達を包み込んでいく。暖かな光の中で、徐々に力を感じる少女達、メップル達が、フラッピ達が、コミューン姿になると再び少女達が叫んだ・・・

 

 

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!」」

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「花ひらけ大地に!!」

 

「はばたけ空に!!」

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワー!!」」

 

「未来を照らし!」

 

「勇気を運べ!」

 

「天空に満ちる月!キュアブライト!!」

 

「大地に薫る風!キュアウィンディ!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

 七人の少女達が、再びプリキュアへと変身する。光の園のプリズムストーンは、彼女達の思いに感応したかのように、天空から七色の虹が舞降り、一同を包み込んだ。力を受け入れた少女達の背に黄金の翼が、そして、光輝く衣装を身に纏った・・・

 

「力が・・・溢れてくる!」

 

「今まで感じた中でも、桁外れな力が・・・」

 

 ブラックが、ホワイトが、ゆっくり目を開けて呟く、

 

「精霊達が、プリズムストーンが、私達の思いに応えてくれました!」

 

 ルミナスの言葉に一同が頷くと、ブルームは、ゴーヤーンの居る海岸をキッと睨むと、

 

「行こう!みんな!!」

 

 今、ゴーヤーンとの決着を付けるべく、伝説の戦士を超えた、七人のプリキュアが飛び立った!!

 

 

「クイーン、フィーリア王女、如何にお二人が揃おうとも・・・滅びの力の前には、無力なのですよ!」

 

 両手を掲げ、力を込めたゴーヤーンの頭上に滅びの力が集まってくる。巨大な負のエネルギー体が、クイーン、フィーリア王女に放たれようとした時、

 

「「ヤァァァァァァァ!!!」」

 

 ブラックとホワイトの凄まじいダブルキックを受け、負のエネルギーは跡形もなく打ち消された。

 

「な、何だとぉぉ!?」

 

 驚愕するゴーヤーンに対し、上空で静止したイーグレットと呼吸を合わせるかのように、

 

「風よ!」

 

 ウィンディの発した風に乗るように、イーグレットがその勢いのままゴーヤーン目掛け急降下の蹴りを放つと、その身体は稲妻のようにゴーヤーンを吹き飛ばす。更に地上に居たブライトが、

 

「光よ・・・ハァ!」

 

 ブライトが発した巨大な閃光弾がゴーヤーンにヒットし、すかさず懐に飛び込んだブルームが、パンチの連打を浴びせ続ける。

 

「ダダダダダダ!」

 

 ブラックも加わり、怒濤のラッシュを決めるブラックとブルーム、先程息も絶え絶えだった一同が、この短期間に、さっき以上の力を付けている事に驚愕する。

 

(グッ、何故さっき以上の力が・・・)

 

「調子に乗るなぁぁぁ!!」

 

 雄叫びを上げたゴーヤーンが、二人の手を取り投げ飛ばすも、二人は空中でクルクル回転し体勢を立て直す。上空から入れ替わるように連続蹴りを浴びせるホワイト、イーグレット、ウィンディ、ゴーヤーンは、腕をクロスして何とか耐えると、雄叫びを上げて三人を吹き飛ばし、瞬時に一同に先程浴びせた連続エネルギー弾を浴びせるも、ゴーヤーンの攻撃は、ルミナスによって完全に光の壁で防がれた。

 

 ゴーヤーンの表情が驚愕する・・・

 

「お前達・・・たった数分の間に!?認めん、認めんぞぉぉ!滅びの力こそ、絶対なのだ!!」

 

 逆上したゴーヤーンが、一同を一人づつ吹き飛ばすと、

 

 上空に舞い上がったゴーヤーンが、全ての滅びの力を集めるように、ゴーヤーンの頭上に巨大な暗黒の球体が出来上がる。

 

「もう・・・いい・・・この星ごと、何もかも消えてなくなれ!!!」

 

 ゴーヤーンから放たれた強烈な一撃、地球など一溜まりも無いような一撃が振り下ろされる。七人のプリキュア達は頷き合うと、後方に下がったルミナスのハーティエルバトンから、凄まじい虹の光が一同に浴びせられた。

 

「漲る勇気!」

 

 ブラックが、

 

「溢れる希望!」

 

 ホワイトが、

 

「この星に宿りし!」

 

 ブルームが、

 

「全ての生命よ!」

 

 イーグレットが、

 

「今、プリキュアと共に!」

 

 ブライトが、

 

「全ての力を解き放て!」

 

 ウィンディが、

 

「光と生命の思いを込めて!」

 

 ルミナスが、

 

「「「スターライト!!」」」

 

 ブラック、ホワイト、ルミナスが、

 

「「「「スプラ~~ッシュ!!」」」」

 

 ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディが、

 

 今、究極の虹色の星の輝きが、究極の滅びの力と激突した・・・

 

 空間で激しくぶつかり合う力と力・・・

 

「馬鹿な、この攻撃を止めるだと!?ふざけるなぁぁ!!!」

 

 激高したゴーヤーンが、更に力を込めると、再び押され出すプリキュア達、スパークルブレスが、スパイラルリングが激しく回転し出すと、虹色の星の輝きは滅びの力を打ち消しゴーヤーンを完全に飲み込んだ。

 

「こ、こんな馬鹿な!?だが、私だけ死にはしない・・・貴様らも・・・」

 

 朽ち果てていく身体から、必死に手を伸ばすゴーヤーン、

 

「ゴーヤーン!確かにあんたは強いよ!」

 

「でも、どんなに強い滅びの力でも」

 

「絶対に消せないものがある!」

 

「私達の心から、希望を消す事は出来ないわ!」

 

「私達の未来を!」

 

「皆の希望を!」

 

「あなたに何か」

 

「「「「「「「絶対に渡さない!」」」」」」」

 

 ブラックが、ホワイトが、ルミナスが、ブルームが、イーグレットが、ブライトが、ウィンディが、一人一人ゴーヤーンに語り掛ける。七人の咆哮が一つになった時、

 

「「「「「「「マックス・スタァァァー!!!」」」」」」」

 

 七人のプリキュア達が、雄叫びを上げながら咆哮すると、ゴーヤーンの身体は完全に消滅した・・・

 

 

 精霊が解放され、滅びた世界は元の世界へと戻って行く・・・

 

 人々の笑顔が・・・

 

 生き物の鳴き声が・・・

 

 そして、泉の郷の7つの泉が輝きを発し、蘇る世界樹・・・

 

 大空の樹も、生命溢れる安らぎの樹として甦るも、その姿は別な樹と重ねて見えた・・・

 

 その樹こそ、世界樹・・・

 

 全ての生命を司る樹・・・

 

 世界樹・・・

 

 それは、私達の住む身近にあるのかも知れません・・・

 

 

 

5、絆は永遠に・・・

 

 大空の樹の下、変身を解いた少女達を、クイーン、そして、力を取り戻し実体化したフィーリア王女が称えていた。フィーリア王女が離れた事で、コロネは再び元の猫に戻っていた。咲はコロネを抱きながら、

 

「いえ、私達だけの力だけでは、ゴーヤーンには勝てませんでした!」

 

「そうね、みんなの力が、全ての生命が、私達に力を貸してくれたからの勝利だと思う」

 

 舞も咲の言葉に同意するも、

 

「いえ、その力を引き寄せたのは、間違いなくあなた達のお陰です!なぎさ、ほのか、ひかり、そして、咲、舞、満、薫、ありがとう!!あなた方は、伝説の戦士プリキュアを超えた、正に究極の戦士・・・ですが、その力を二度と使う日が来ない事を祈っています!!」

 

 クイーンはそう言い残し、再び光の園へと帰って行った。なぎさ、ほのか、ひかり、そして、メップル達は名残惜しそうに、光が消え去るまで手を振り続けた。

 

「フラッピ、チョッピ、ムープ、フープ、メップル、ミップル、ポルン、ルルン、あなた方もご苦労様でした!皆さんのお陰で・・・世界樹は完全に甦る事が出来ました!!」

 

 そう言うと、フッと暮れ落ちた空に浮かぶ星を眺めたフィーリア王女は、

 

「綺麗ですねぇ・・・かつて世界は、生命が存在しない暗黒だったそうです・・・しかし、ビッグバーンと共にそこに生命が生まれました。クイーンも、私も、その中の一人

!無数の星も生まれ、暗い世界をお互いに照らし合った。そんな星達のように、あなた方も、互いを大切に想う心で照らし合い、輝いているのですねぇ・・・星空の仲間達、あなた方にピッタリな言葉だと、私は思います!!」

 

 フィーリア王女の言葉に頷くように、笑い合う一同、フィーリア王女も微笑み返すと、

 

「ありがとう、皆さん・・・二度と世界樹を枯らさないように、私もあなた方のように見守っていきます・・・」

 

 フィーリア王女は、大空の樹に吸い込まれるようにその姿を消した・・・

 

「フィーリア王女は、世界樹の精霊ラピ」

 

「そ、そうだったの?」

 

 フラッピの言葉に驚く咲、一同は、もう一度大空の樹を眺めた・・・

 

 フラッピは、チョッピ、ムープ、フープを呼ぶと、何かを相談し合うも、

 

「嫌ムプ!満と離れる何て・・・嫌ムプ!」

 

「フープだって、嫌ププ」

 

 泣きながら満と薫の胸に飛び込むムープとフープ、満と薫は、突然泣き出したパートナーの頭を優しく撫でて上げた。

 

「ムープ、フープ、これはしょうが無い事ラピ!フラッピだって、フラッピだって、本当は・・・咲と別れたく無いラピィィ」

 

「チョッピだって・・・舞と別れるのは、辛いチョピィィ」

 

 コロネは空気を読んだのか、咲から飛び降りると、その直ぐ後で、フラッピが咲の胸にしがみついて泣き、チョッピも舞の胸にしがみついて泣き出した。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!?どうしたの、四人共?咲達と別れるって!?」

 

「フラッピ達は、泉の郷の精霊ミポ」

 

「メップル達は、この虹の園で生涯暮らすと決めたけど、精霊達には使命があるメポ」

 

 なぎさの言葉に、ミップルとメップルが、フラッピ達の心を代弁するように語り出す。

 

「精霊は・・・万物を見守る存在ミポ、フラッピ達も・・・自分達が守護する物を見守る必要があるミポ・・・」

 

「そんな、じゃあ、泉の郷に帰っちゃう・・・って言うの?」

 

 フラッピの事を、ジッと見ながら咲が問うと、フラッピは唇を噛みしめ頷いた。咲の脳裏に、フラッピとの出会いの日々が、走馬燈のように流れ込む、見る見る涙に暮れる咲、舞も、満も、薫も、涙に暮れた・・・

 

「私だって・・・嫌だよ!フラッピと別れる何て・・・」

 

 咲の言葉に、なぎさとほのかは、メップル、ミップル、ポルンが永遠の眠りに付くと別れた出来事を思い出す。あの時、自分達もどれ程悲しんだ事か、咲達四人の心を思うと、胸が痛んだ・・・

 

「咲・・・笑って送り出して欲しいラピ!」

 

「フラッピ・・・そうだね、フラッピ達には、新たなる使命が待ってるんだし・・・でも、これだけは覚えておいて・・・私達は、あの空に浮かぶ星空の仲間達何だよ!例え離れていても・・・絆は永遠だからね!!」

 

「咲ぃぃ!」

 

「フラッピィィ!」

 

 互いに抱き合い、涙を流す咲とフラッピ、舞とチョッピ、満とムープ、薫とフープ、なぎさ達も、そんな一同を涙ながらに見つめていた・・・

 

 四人の精霊達は、涙を拭い大空の樹から、泉の郷へと帰って行った・・・

 

 そんな四人の姿が消え去っても、少女達とメップル達は手を振り続けた・・・

 

 また再会出来る日を信じて・・・

 

 

                  エピローグ

 

 月日は流れる・・・

 

 なぎさ、ほのかは、ダークフォールとの戦いを終え、念願だったラクロス部、科学部にようやく入部する・・・

 

 ひかりは、前以上にアカネの店TAKO CAFEの仕事を頑張っていた。そして、弟のひかるも、ザケンナーコンビの意思を引き継いだかのように、幼いながらも店の手伝いを頑張っていた。

 

 舞の絵に刺激された薫は、美術部に入部し、その才能を開花させていた。

 

 咲は、新キャプテンとしてソフト部を引っ張る中、満が入部し、夕凪中学ソフト部は、投の咲、打の満を中心に、前回以上の強さを持って更なる上へと目指す・・・

 

 

 

 そして・・・大空の樹の前で、再び勢揃いした仲間達・・・

 

 ユニフォーム姿の咲と満を中心に、咲の隣に舞が、満の隣に薫が、四人の後ろになぎさ、ひかり、ほのかがにこにこ笑い合う、その前では、メップル達、久しぶりにやってきたフラッピ達が、優勝トロフィーを嬉しそうに抱え、はしゃぎ回っていた・・・

 

 大空の樹は、そんな一同を見守り続けた・・・

 

 

           ふたりはプリキュアMax☆Star

                  完結

 




 ふたりはプリキュアMax☆Star如何だったでしょうか?
 なぎさ達と咲達の世界が繋がっていたら、なぎさ達はどう動くか?
 そんな事を思いながら書き始めたのがこの作品でした!
 読んでくれた皆さん、お気に入りして下さった皆さん、ありがとうございました!!


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