あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ? (うろ底のトースター)
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人物・オブジェクト設定
神谷 朱里
SCPー■■■■
オブジェクトクラス Keter
主人公。この世の異常な存在から愛されるという異常性を持っている。
性格は朗らかで欲に忠実。相手が軽く自分を殺せるような怪物だとしても、可愛ければ(怖がりながら)話しかけるようななかなかの異常者。
両親の仕事の都合によりアメリカで暮らしており、ある日の登校途中にアベルに遭遇。そのまま財団に拉致られ、SCPとして保護されることになった。以後、様々な実験に参加させられている。
ルイ(不死身の爬虫類)
SCPー682
オブジェクトクラス Keter
朱里初めての実験相手。異常な身体能力と再生能力、適応能力を持つ。
現在収容中であり、朱里との実験後、あまり収容違反を起こすことがなくなった。違反を起こす時は必ず朱里が関わっているため、一般職員が直接狙われることはない。
エルザ(幼女)
SCPー053
オブジェクトクラス Euclid
自称朱里の将来のお嫁さん。10分以上目を合わせるか、直接肌に触れるととてつもない疑心暗鬼に駆られ、最終的に幼女へ危害を加えようとさせてしまい、また、危害を加えた者を死亡させるという異常性を持つ。
現在収容中。朱里が自身の異常性を無効化し、自分と遊んでくれたことで惚れた女の子。大きくなったら朱里と結婚する、と周りに言いふらしている。朱里が作ったケーキが好物。
ノア(シャイガイ)
SCPー096
オブジェクトクラス Euclid
根暗依存型排除系ヤンデレ。自分の顔を見た人間を例外なく殺すという異常性を持つ。
現在一応収容中。自分の顔を醜いと思っていたため、見た人間を殺して回っていたが、朱里に褒めちぎられたために、惚れて、病んだ。朱里の添い寝がマイブーム。
アベル
SCPー076
オブジェクトクラス Keter
いろいろとでかい褐色お姉さん。身体能力が高くて虚空からブレードを取り出し何度でも蘇ることができるという雑に強い異常性を持つ。
収容中?たまたま収容違反したら朱里を見つけて一目惚れ。最初の挨拶がまずかった。包容力抜群なくせいつも飄々としている。暇になったら収容違反を起こして朱里に会いに行くので、財団側も半ば諦めてる。
アイ(オールドAI)
SCPー079
オブジェクトクラス Euclid
朱里の電子方面のサポーター。自己改善のプログラムが入力されており、ハードウェアでは制御できない程に成長した。
絶賛収容違反中。日本支部に向かう朱里に着いていった唯一のSCP。腕っ節が強いわけではないが、朱里の情報源として活躍している。が、同時にSCPオブジェクトたちの情報源としても働いており、この娘の目の前で下手なことはできない。
ペスト医師
SCPー049
オブジェクトクラス Euclid
スレンダー美女でクールに見せかけた狂気型ヤンデレ。触れた人間を殺し、生きた屍にするという異常性を持つ。
収容中。現在名前考え中の方。何やら不死に関する研究をしており、朱里を不死身にしたいのだとか。なお、朱里が万が一死亡した際に何が起こるかは火を見るより明らかなので、不死にするという取り組みには財団側も協力している。
イナミ(彫刻ーオリジナル)
SCPー173
オブジェクトクラス Euclid
みんなお馴染みのあの子。誰にも見られていないと動き出す異常性を持つ。
収容中。人間はとりあえず嫌いなので首を折っていたら朱里に会い、とりあえず後ろから抱きついた。触れ合える時間に格差があることに不満を感じていた。少し気を抜けば目を抉り取ろうとしてくる。
SCPー2521
オブジェクトクラス Keter
好意を持って人を攫うという聞くだけならヤバい子。自分を文字や言葉で説明しようとした人間、あるいは物を持って帰る異常性を持つ。
収容不可。単純な戦闘能力ではアベルやルイに並ぶ。文字を教わりたくて連れてきたのに誰も教えてくれなかったけど、朱里は教えてくれた。一応認識としては勉強教えてくれる近所のお兄さん。
ヤガミ(くとぅるふ ふっざけんな)
SCPー2662
オブジェクトクラス Keter
例のあれ。自分を崇拝する狂信者を作り出し、自身の目の前で儀式を行わせるという異常性を持つ。なお本人は嫌がっている。
収容中。SAN値チェック失敗していたところに朱里がメンタルケアに来て、胃袋をしっかり掴まれた。一人称が我なのに偉大さが全くない。朱里の敬語もどちらかと言うと学校の先輩に向けるそれに近い。
カイン
SCPー073
オブジェクトクラス Euclid
優良SCPの1人。土地を栽培不可にしたり、植物由来のものを腐らせたり、自分へのダメージが相手に返っていったりする異常性を持つ。
収容中。朱里のなんちゃってメンタルケアを受けて、アベルと仲直りした。アベルと同時期に朱里を知っていながら、今の今まで我慢してたので、朱里の貞操面での危険度はトップ。
シガーちゃん(ちいさな魔女)
SCPー239
オブジェクトクラス Keter
財団の眠り姫にして魔女っ子。別に大罪は関係ない。現実改変能力を持っていて、何故か極微量の放射線を全身から放っている。
収容中?プロトコル崩壊につき朱里との『約束』が実質のプロトコルとなっている。めっちゃめちゃ優しくてとにかく純粋。そのため、朱里はお兄さんポジションに収まっている。かくして朱里の胃は守られた。
ハービンジャー(さぎかけ)
SCPー1281
オブジェクトクラス Safe
永らく宇宙を漂い続けた機械少女。雫型の機械部と、内包されている人体部に別れていて、機械部がとんでもなく冷たい。熱に弱い。
収容中。使命を果たし、長い、長い眠りについた彼女は、朱里によって目を覚ました。感情の起伏が少なすぎており、自意識が希薄すぎるので、まだ朱里にホの字か分かんない。
レン(異世界への扉─世界を貪る者─)
SCPー2317
オブジェクトクラス Keter
異世界から終焉を届ける高身長脳内真っピンク美処女。どんな異常性あるか分かんないけどとりあえず世界は滅ぶ慈悲はない。実際は別に破壊には興味はないらしい。
作者のどうしてこうなった枠の1人。先史文明の方々に乗せられて、なんかとても凄そうな口調にしようとしたらいつの間にか封印されてた。最近劣化で放たれ、朱里に一目惚れしてベッドに誘い、無事失敗した。
ナターシャ(アナンタシェーシャ)
SCPー3000
オブジェクトクラス THAUMIEL
深海に住まう人喰いウツボ娘。とんでもねぇ認識災害やら記憶改竄能力やらを持ち合わせてる。人を喰ったときに排出される物質がAクラス記憶処理に必要なのでこのオブジェクトクラスになった。
書いてて「あ、かわいい」ってなったので朱里くんに代弁してもらった。かわいい。押すのは得意だけど押されるのは苦手。かわいい。恥ずかしがり屋。かわいい。
ルマン(オールドマン)
SCPー106
オブジェクトクラス Keter
大人な女性ですはい。あらゆるものを腐敗させる異常性を持っている。また異次元に住んでいて、捕らえた人間をそこに放り込んでいる。カニバリズム。あとショタが好き。
収容中?今のところ完全な収容には至っておらず、財団の”嫌がらせ”を受けている状態。3ヶ月に1回”嫌がらせ”の整備を行っていて、その際の囮になった朱里くんを愛玩動物扱いしている。(ただし人外基準)
ブライト博士(不死の首飾り)
SCPー963
オブジェクトクラス Euclid
ひょんなことから魂インザ首飾りしちゃった系博士。朱里君×オブジェクト達限定のカプ厨。オブジェクトは首飾りのほうで、所持して死んだ人の魂を閉じ込め、次に所持した人の身体に移す異常性を持っている。
収容中。上記の異常性を知ったこの博士、他人の身体を奪い取ってやりたい放題してるのである。これにツッコまない朱里くん染まってきたなぁ。
アエ(沼女)
SCPー811
オブジェクトクラス Euclid
かわいそうはかわいいが成立しない女の子。有機物をドロドロに溶解して食べたりしてる。身長171cmと高めでありながら、その精神は子供。何らかの人体実験に巻き込まれて今の姿になったようである。
収容中。財団に数々の
アイリス(”アイリス”)
SCPー105
オブジェクトクラス Safe
アベルに勝ったことがある女性。彼女が特定のカメラで撮影した写真が現在の映像になるという異常性を持つ。あと彼女限定で写真越しに物に干渉できる。
収容中。彼氏が殺害されたりその裁判に掛けられたり暗殺に能力を使わされそうになったりとかなり不憫。能力が使えなくなったフリをして逃げ出そうとしたこともある。朱里くんのおかげで元気が出た。
ゼロ(MalO ver1.0.0)
SCPー1471
オブジェクトクラス Euclid
原作では獣ヘッドだったけどこちらでは仮面にさせてもらった女の子。送られる写真の中に写っていたり、後々普通に見えるようになったりと少々説明のめんど、もとい難儀な異常性を持つ。
収容中。朱里くんの精神の住人に仲間入りした。他のオブジェクトは優しさを愛情と勘違いしている、と思い込んでいる。わざわざ名乗ったのはあくまで自分が朱里くんと対等であると主張するためだったりする。性格は良くない。
九尾狐(妖狐変化)
SCPー953
オブジェクトクラス Keter
作者のどうしてこうなった枠の狐。当初の予定では獰猛系ヤンデレ予定だった。さまざまな物に化けたり、暗示やテレパシーを使ったりできるという異常性を持つ。
収容中。ホスト朱里の被害者。クールビューティに見せかけたポンコツ可愛い。ただし相手が朱里くんのときだけ。経験の豊富さから知識と知恵に富んでいるが、あいにく情報の更新が遅いため、センスにおばあちゃん味が含まれたりする。
メアリー・タリッシュ(幽霊ヒッチハイカー)
SCPー1337
オブジェクトクラス Euclid
境遇が可哀想なオブジェクトランキング作ったらまず間違いなくトップ10に入るだろう娘。ヒッチハイクを行い、無視した相手を殺害する異常性を持つ。
収容中。珍しく収容状態が好転した。現在は朱里にとり憑くような形で生活しており、帰れた幸せを噛み締めている。朱里に対して向けている感情は執着であり、死んだら許さないという憎しみにも似た想いをひた隠している。あの後本人の希望で両親の墓参りに行った。
SCPー085 キャシー(手描きの"キャシー")
オブジェクトクラス Safe
別のオブジェクトと別のオブジェクトの合わせ技で生まれた、絵の女性のオブジェクト。ページ内を自由に動くだけでなく、同ページ上のものを本物のように扱ったり、同一平面上の別の紙に移動できる。
妊娠中。絵が妊娠するかよというツッコミは聞かない。だって彼女は彼女だし。財団の完璧な情報封鎖によりこのことを知っている子はいない、はず。それはそれとして、一体どっちから手を出したんでしょうかね。
SCPーCNー500
オブジェクトクラス Keter
つよつよケモっ娘。ただし捕縛済み。口に入れたものの存在自体をこの世から消滅させる異常性を持つ。人間に捕まってからはその能力をいいように利用されてきた。
収容中。家族の血肉や骨で作られた拘束具で封じ込められている。人の心とかないんか?とにかく静かに休んでいたいと言っていたが、朱里と会ってから最近なんだか楽しい、気がする。中国の発展に目を丸くしていた。
SCPー040ーJP
オブジェクトクラス Safe
ねこはいます。井戸のSCP。覗いた人間はねこを見ることになり、以後常に視線を感じるようになり、全てのイエネコがこのねこに見えるようになるという異常性を持つ。この異常性は、他人にねこの存在を知らせようとすることで広まっていく。
絶賛収容違反中。井戸の中が暇なので、覗いてきた朱里に着いていくことにした。他人には見えないため、四六時中一緒にいれる。なお、アイには存在を知られている。煮物が好物。
ミイ(ー恐竜ーイミテーション)
SCPー173ーJP
オブジェクトクラス Euclid
世間知らずお嬢様的お姉さん的歳が近い妹的女の子。おもちゃで構成された恐竜の姿を模しており、発する音を聞いているとこれに潜り込みたくなるという異常性を持つ。
収容中。あまり他人に姿を晒したくないため、なかなか潜り込んでくれない朱里を無理矢理取り込んだ。秘密の逢瀬が好き。アメリカに帰る前におもちゃの無線機を渡している。ファーストキス(ほっぺ)を奪った。
2000ーJP(伝書使)
SCPー2000ーJP
オブジェクトクラス Thaumiel
純粋無垢なワンちゃん。あらゆるセキュリティを”掘る”ことで突破できるという異常性を持つ。
よく朱里のスマホに遊びに来てはアイや朱里に可愛がられている。【ごじょうさん】から貰った【名前】を大切にしており、その意を汲んでこの渾名がつけられた。
SCPー444ーJP
オブジェクトクラス けてるけてるけてるけてる
日本生類研最大のやらかし。これはもう説明しきれないから記事を読んでくれ。
絶賛収容違反中。ちょっとした興味本位からなんやかんやあって精神世界に入り込んでしまった朱里に、軽い忠告をした。名前は朱里の”朱”を貰った。朱里に自身と会話できる緋色の羽根を手渡している。
アマタ(数多の声で)
SCPー939
オブジェクトクラス Keter
if朱里の心の拠り所。喰らった人間の声を発するという異常性を持ち、また、30分間の記憶形成を阻害するクラスC忘却物質を吐き出す。
収容違反中。本編より性格が暗く、虐められていた朱里の、両親に次ぐ拠り所となった。後に両親が死亡し、自殺しようとした朱里を自身の声で留め、共にヒトの世界から消えた。そのあとのことは、誰も分からない。
メアリー・スー(メアリー・スーの怪物)
SCPー1973ーJP
オブジェクトクラス Keter
上げて落とした娘。あるゆる場面で自分が理想の主人公となるように現実改変を行うという異常性を持つ。
収容違反中?
「今彼は幸せだよ。だって、私が幸せを願ったのだから」
キャンディス
クローヴィス(ウィッカーウィッチは生きている)
SCPー3998
オブジェクトクラス safe
脚のない磔の遺体。深夜に発火し、最も近くにいる恋人、伴侶に暴行を振るった、あるいは殺害した男性を燃やす異常性を持つ。
オブジェクトがまだ収容されていなかった頃のtail。本編に出てきた2人は、このオブジェクトが生まれる原因となった魔女と悪魔。狡猾で、優しい。
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
SCPー682 作者 Dr Gears様、Epic Phail Spy様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
SCPー053 作者 Dr Gears様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-053
SCPー096 作者 Dr Dan様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-096
SCPー076 原著 Kain Pathos様、改稿 Crow, DrCle様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-076
SCPー079 作者 不明
http://scp-jp.wikidot.com/scp-079
SCPー049 作者 Gabriel Jade様、改稿djkaktus様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-049
SCPー173 作者 Moto42様
http://www.scp-wiki.net/scp-173
SCPー2521 作者 LurkD様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2521
SCPー2662 作者 SoullessSingularity様
http://www.scp-wiki.net/scp-2662
SCPー073 作者 Kain Pathos Crow様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-073
SCPー239 作者 Dantensen様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-239
SCPー1281 作者 DrEverettMann様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1281
SCPー2317 作者 DrClef様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2317
SCPー3000 作者 A Random Day様、Joreth様、
djkaktus様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3000
SCPー106 作者 Dr Gears様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-106
SCPー963 作者 AdminBright様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-963
SCPー811 作者 Pig_catapult様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-811
SCPー105 作者 Dantensen様
改稿 thedeadlymoose様 DrClef様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-105
SCPー1471 作者 LurkD様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1471
SCPー953 作者 DrCle様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-953
SCPー1337 作者 AdminBright様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1337
SCPー085 作者 FritzWillie様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-085
SCPーCNー500 CatThorns様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-500
SCPー040ーJP 作者 Ikr_4185様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp
SCPー173ーJP 作者 soilence様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-173-jp
SCPー2000ーJP 作者 WagnasCousin様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2000-jp
SCPー444ーJP 作者 locker様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-444-jp
SCPー939
作者 Adam Smascher様、 EchoFourDelta様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-939
SCPー1973ーJP
作者 jet0620様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1973-jp
SCPー3998
作者 Fantem
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3998
¿¿¿さん
Othuyegさん
誤字報告ありがとうございました。
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IFエンドルート
───の声で
設定上絡ませずらいオブジェクトとの話を書くために作者が作ったエゴの塊。
基本重いと思ってくれたまえ。
産まれたときから、俺は、呪われていたのかもしれない。
交通事故に巻き込まれ、家族の中で自分だけ生き残ったとき、ふとそう思った。
周りにお前のせいだと言われ続けたからか、それともこの世界に絶望したからか。
気付けば俺は、
「ダメだよそんなの。私が、認めない。」
初めて聴いた彼女の声は、悲しそうだった。
───────────────────────
小さい頃から弱気で、運動も勉強もそこそこ程度にしかできなかった俺は、すぐにいじめの対象になった。
優秀で人付き合いの良かった両親とも比べられて、親戚や両親の友人たちは、無口な俺を気味悪がった。
家の外では、俺は、ずっと否定されてきた。
でも、家の中では、両親だけは、俺を認めてくれた。
「こんばんは。」
それは、ある夏の夜のこと。
彼女は、俺をいじめていた女の声で語りかけてきた。
光のない黒い目に、血のように紅い短髪の彼女は、同じく血のように紅いボロボロのドレスを着て、
開けていた窓に脚を掛けて、にこやかに、笑っていた。
「いくら二階とは言え、夜に窓開けっ放しは危ないわよ?」
「・・・あんた誰?」
俺は、嫌悪と警戒を隠さずに誰か尋ねる。
「そうねぇ、うーん。」
彼女は、顎に手を当てて少し考え込むと、
「それじゃあ、アマタって呼んで?」
そう言った。
「じゃあアマタ、
「あ、ごめんなさいね?嫌な声よね?でも、
「・・・あっそ。」
一頻り聞きたいことが聞き終わり、そのことを察しただろうアマタが部屋に入ってくる。
「金はないぞ。」
「そんなもの要らないわ。欲しいのは、貴方。」
「なるほどねぇ・・・。」
なるほどなるほど、そう呟きながら、
「世迷言は終わったか、不審者?」
「えっ、ちょっ、待って!ちょっ────」
アマタを担ぎあげて、窓の外へ放り投げ、そのまま窓を閉める。身体が軽すぎるのを気にしつつも、とりあえず死んではいないだろうなと考え、その日は床に就いた。
翌日、あの声の元の持ち主は、学校に来なかった。
女と仲の良かった奴らが泣いているあたり、おそらく死んだんだろうと思った。
でも俺には関係ない。少しばかりいい気味だと思うだけだ。
だから、別に俺が殺したじゃない。
「お前が殺ったんだ!」
五月蝿い。
「動機はあった!」
黙れ。
「昨日の夜どこに居たんだ!?」
家に居たさ。
「嘘をつくな!」
嘘じゃない。
吐く言葉は最低限。心の中で罵詈雑言を吐き連ねつつ、極力大人しくいる。
大丈夫、いつも通りだ。ただちょっと、いつもより五月蝿いだけ。
「警察はもう捜査しだしてるからな!いつまでもシラを切ることができると思うなよ!」
どうぞご自由に、そもそもシラを切ってないからな。
『こんばんは。』
「・・・お前か。」
関係ないわけじゃなかった。思いっきり容疑者と昨日会話してた。
窓を閉めておいて良かった。アマタは今夜も来た。声も変わってる。今度はあの女の腰巾着だったまた別の女の声。
『開けてくれないかしら?』
「やだよ、殺人の容疑者を部屋に招き入れるわけにはいかないからな。」
『あー、そうよね。耳に入っちゃうわよね。』
今の発言完全に自白したようなもんだよな。これ通報すれば俺への疑い晴れるか?警察が俺を疑ってるか分かんないけど。
『とりあえず、貴方を傷つけたいわけじゃないから、入れて頂戴?』
「帰れ。」
カーテンを閉めて寝床に入る。
その日は、よく寝れなかった。
また翌日、件の女と、俺の近辺を捜査していた警察が軒並み殺されたと聴いた。頸動脈を噛みちぎられたことによる、失血死だそうだ。
犯人は、もちろん不明。そもそも殺し方が人間離れしていた。
俺は、容疑者リストから外れると同時に、居ないものとして扱われるようになった。
触らぬ神に祟りなし、とでも言えばいいのだろうか。あの日から、死者は出ていない。
それでも、アマタはずっと、俺の家に通い続けた。
部屋に入るのは諦めたようで、窓の外からずっと俺に話しかけてきて、
いつからか、会話に興じるようになった。
両親以外を相手にまともに話せたのは、久しぶりだった。
その日その日で声が変わっているけれど、あの優しげな笑顔は変わらなくて、あぁ、今日も人を殺してきたんだなぁってどこか他人事のように考えながら、それでも会話する。
部屋に招き入れるのは時間の問題で、
俺が彼女に依存するのも、時間の問題だった。
それは、冬の寒い日。
その日は、父親が急に温泉に行こうと言い出して、着いていったんだ。
思えば、止めるべきだったんだろう。
それなりに高い橋の上で、スリップ事故。ブレーキが効かなかったのであろう自動車に後ろから激突され、正面のトラックにさらに激突した。
運転席と助手席に座っていた両親は、そのまま板挟みにあい、やがて、死亡が確認された。
燃やされる両親の遺体を見て、空っぽになった俺は、涙を流すこともできず、
夜、濡れる体をそのままに、雨の中を歩き、規制線を越え、事故現場へ辿り着いて、橋の上。見下げて高さを確認する。
良かった、これならちゃんと死ねそうだ。
少しだけこの世の思い出に浸り、手摺に登ろうとして、
「ダメだよそんなの。私が、認めない。」
後ろから抱きつかれる。
「・・・また人を殺したのか?」
声が変わっていたから、ふとそう思って尋ねる。
「いいえ、違う。これは、私の声。」
「話せたんだな。」
「話せたわよ。」
抱き着く腕に力が籠る。
「飛ばせてくれ。」
「飛ばせない。」
「俺が死のうが生きようが勝手だろうが。」
「あなたの自殺を止めるのも私の勝手でしょう?」
「お前には関係ないだろ。」
「少なくとも私にとっては関係ある。」
「どうして!?」
「好きだからよ!!」
分からない、
別に好かれているのが分からないわけじゃない。好かれていると分かって、死ぬのが嫌になっていくのが、分からなかった。
「死にたいんだよ・・・死なせてくれ・・・!」
「死にたいなんて言わないでよ。私を、一人にしないでよ・・・!」
視界が滲んで、脚から力が抜けて、二人揃って座り込み、日が昇るまで泣き続けて。
やがて、朝霧に溶けていく。
死にたいなんて、もう思わない。
だって彼女が、アマタが居てくれるから。
産まれたときから、俺は、呪われていたのかもしれない。
だからもう、ヒトの世界から消えよう。
IFエンドルート
不死蓬莱さん
誤字報告ありがとうございました。
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
SCPー939
作者 Adam Smascher様、 EchoFourDelta様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-939
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メアリー・スーの───
足音がする。
呼吸が速くなる。
足音が近づく。
鼓動が速くなる。
足音が、扉の前で止まった。
扉が、開かれる。
「やぁ、助けに来たよ」
彼女は、美しく笑った。
───────────────────────
普通。俺のこれまでの人生を一言で表すなら、普通だ。何事もなく、特別不幸でも特別幸福でもない生活をしてきた。
それがずっと続くんだと思ってた。
「おはよう、アカリ」
「あぁ、おはよう」
初めての彼女ができた。
名は、メアリー・スー。アメリカ人だ。
両親の仕事の関係で日本に来たらしい。
成績優秀スポーツ万能容姿端麗。普通には勿体ないように思えて仕方ないが、そんなことを言うと怒られるので、ちょっとした幸福だと思っておこう。
でも、少しだけ問題がある。
男子による嫉妬と虐めの対象が、専ら俺だということだ。
これに関しては、あまり積極的に友人関係を広めようとしなかった俺にも責任があるのだろうが、それでも、
「辛かったら言ってね?」
「別に平気。それよりほら、今日の弁当」
「うん、ありがとう」
そんなことを差し引いてお釣りの来る幸福を感じていた。
「大丈夫だよアカリ、私が守ってあげるから」
何日か経った。いつの間にか虐めはなくなり、嫉妬の目は消え、代わりに祝福するかのような暖かい目が向けられるようになった。
正直気持ち悪い。どうしてこんなに急に・・・。
まぁ、問題がなくなったと考えればいいことか。
「どうしたの?」
「なんでもない。ただちょっと生きやすくなっただけ」
「えー、何それ?」
「なんでもないって。ほら、帰るぞ」
少し変わった日常。それが、俺の人生に色をつけてくれているようで、とても、嬉しかった。
「朱里、ちょっと仕事の関係でな、みんなで引っ越すことになったんだ。だから、メアリーちゃんには悪いけど・・・」
嬉しかったのに・・・。
───────────────────────
今月末、アカリはヒッコシをするらしい。なんでも、離れ離れになってしまうんだと。だから、もう会うことは出来ないかもしれないと。
確かに、アカリに会えないのは悲しい。
でもそれ以上に、アカリを悲しませるナニカが、憎い、許せない。
「悪いのは、誰?」
悪いのは、ヒッコシをするアカリの家族。
「ならどうするの?」
「そうだよ、ちょっと痛い目を見てもらおう」
そうすれば、
───────────────────────
父さんの重篤、その報を聞いた時、まるで足場が崩れ落ちるかのような絶望が襲ってきた。
持病なんてなかったはずなのにどうして・・・。
「アカリ、大丈夫?」
「あぁ、うん、大丈夫だと思う・・・」
「・・・アカリ、私は傍にいるからね」
「・・・ありがと」
引越しは、延期になった。
「良かった・・・」
父さんが退院し、また引越しの話がではじめた頃、今度は母さんが大怪我を負った。
もらい事故だった。
脊髄骨折。母さんは、二度と立って歩くことが出来なくなった。
勿論裁判は行われた。だが判決は、
不幸は、止まらない。
怒りに我を忘れた父さんが、無罪判決を受けた男を襲撃。殴り殺してしまった。
たった半年。
それだけで、人生のどん底に落とされた。
唯一の救いは、俺に人殺しの息子というレッテルが貼られなかったことか。むしろ一人になった俺を憐れむような声が多かった。
こんなこと、前にもあったな。
確かあの時は、メアリーと・・・。
まさか、な。
「アカリー?起きてるー?」
「あぁ、うん。起きてるよ」
「・・・やつれてるね」
「はは、お前がいなきゃ首括ってたかも」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
冗談めかして言ったが、なまじ嘘ではない。絵に書いたような転落人生。生きることに疲れたんだ。
メアリーがいてくれなければ、本当に死んでいたかもしれない。
「・・・ねぇ、アカリ」
そう、メアリーがいてくれなければ・・・。
「
「メア、リー?」
「今回は
「誰にも罰が当たらないんだ」
「ねぇ、誰が、悪いの?」
「今までのは、全部、お前が・・・?」
「だって仕方ないでしょう?君を悲しませている人はみんな、罰が当たって当然なんだからさ」
「父さんの病気も・・・?」
「ヒッコシするって言って君を悲しませたからね」
「母さんの事故も・・・?」
「うん、同じ」
「今までの不幸も全部・・・?」
「不幸?何を言ってるの?全部君のため、君の幸せのために
「だから、ね?」
「悪い人は、誰?」
信じていた彼女は、俺の心を深く抉った。
───────────────────────
「───朱里くん、落ち着いたかい?」
「はい・・・。ごめんなさい、突然」
あの後、俺は親戚のおじさんの元に逃げ込んだ。もう何も信じられなかった。
「何があったか、話せる?」
「・・・信じていた人に、裏切られてました」
声は、まだ震えていた。
「・・・そっか、辛かったね。今、ご飯を用意するよ。食べられるようだったら食べてね?」
そう言って、おじさんは、部屋を出ていった。
孤独になって、ようやっと安心する。一人でいるというのが、ここまで心を鎮めくれるとは思わなかった。
できれば、ずっとこのまま・・・。
『お邪魔します』
「あ、え、?」
『勝手に入られては困るな、お嬢さん』
『勝手にアカリを連れてきたのはあなただ』
「違、う・・・、やめろ・・・」
『そうか、君が・・・。これは立派な犯罪だぞ』
『あぁ、その通り。立派な悪行だ』
「もう、やめてくれ・・・」
『分かっているなら『だから』?』
『あなたには、天罰が降るんだ』
『何を言って・・・ごぷッ!?』
誰かが、倒れる音がした。
「い、やだ、やめてよ・・・」
足音がする。
呼吸が速くなる。
足音が近づく。
鼓動が速くなる。
足音が、扉の前で止まった。
扉が、開かれる。
「やぁ、助けに来たよ」
俺は、希望を投げ出した。
「かくして囚われの
ほら、ね?
────────IFエンドルート────────
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ウィッカーウィッチは───
先延ばしにした挙句、こんな、こんな形になってしまった!
許してお願い何でもしますから!
あと、なっがいので注意。
この街には、奇妙な噂がある。
街外れ、深い山奥に建つ洋館。そこに脚のない、磔の遺体が保管されているという。
第二次世界大戦中のドイツから贈られた、連合国の鹵獲物の1つと言われているが、真実は分からない。
ただ、何でもその遺体、深夜になると
まるで、その者の罪が、未だ赦されていないかのように。
「くっだらね」
誰が面白がるんだよこんなオカルト。
「あ!朱里くん酷い!私頑張って調べたのに!」
「知らねぇよ誰が気にして読むかこんな調査書!甘いのは名前だけにしとけこの甘ちゃんが!」
苦言を呈する我らが部長を、紙束を眼前に突き出して黙らせる。
ここは『オカルト研究部』。俺と部長、あともう1人しか部員がいない過疎状態で、今度の調査を成功させ、部員を増やさなければもれなく廃部となる。
普段ならこんな調査書でも面白がって記事にし、校内の掲示板に貼りつけて回るのだが、今回ばかりはこんなことは言ってられない。
「絶対誰かは読んでくれますー!そんなに言うなら朱里くんが調査書出してよ!」
なんてことを言う部長。名は、キャンディス。まぁ、外人だ。少しばかり火傷が目立つものの、綺麗な金髪と整った顔立ちが腹立し、いや、可愛らしい、うん。
男子衆が群がりそうだが、何故か誰も近づかない。
詳しいことはあまり分からない。出身地どころか、なんなら苗字も知らないからな。
「昨日、やっぱり身近なオカルトのほうがいいよね!って言って何枚も用意してきた俺の調査書パァにしたのはお前だろうが!」
「だってそう思ったんだもん仕方ないじゃん!」
「2人とも、うるさいよ」
「「クローヴィス!」」
部室の扉を開け、3人目の部員が、クローヴィスが入ってくる。もちろん外人だ。魔性って言葉の似合う色白の美人だ。こいつも出身と苗字が分からない。
何気にこの3人の中で1番部長に向いていたりする。
こいつもこいつで男子衆から狙われない。何故だ。
「ねぇ聞いてクローヴィス!朱里くんったら酷いのよ!私の調査書をくだらないって言ったの!」
「見てみろよクローヴィス!こんなの貼って部員来ると思うか!?思わないだろ!」
「だから2人ともうるさいって」
どうどうどう、とばかりに手をかざして俺たちを抑えるクローヴィス。何となく畜生扱いされてるみたいでイラつくが、言ってることは正しいので大人しく従う。イラつくが。
「うーん、端的で読みやすいし分かりやすいけど、確かに興味を惹かれるかって言えばそうでもないかな。これよりだったら、呪いとか黒魔術とかにしてみたら?まだその層には響くと思うよ」
「むぅ」
「今回は朱里が正しいね」
結果、勝訴。
「さて、3人集まったし、始めようか」
───────────────────────
とは言え活動に進展があるわけもなく、先程の調査書に尾びれをつけようとした
『身近なオカルトっていうのは私も賛成だから、明日までに探しておくこと。山の洋館は危ないからダメだけど、朱里の家の立ち入り禁止の蔵とかは探せるんじゃない?』
山の洋館、キャンディスの調査書にあった洋館のことだ。家の裏手の山に建ってる。元は国保有のものだったらしいが、何度も建て壊しが計画され、その度に
オカルトの話題にしていいほど、軽い話ではないのだ。
んで、蔵のほうだが、こちらは逆にオカルトから程遠い。
どうせ親父の仕事道具があるだけだと言ったが、もしかしたら何かあるかも、と返されてしまった。
いやまぁ、入らないけど。
てか、よくよく考えたらアイツらがオカルトだろ。なんで色々と不明なまま高校入れたんだよ。
キャンディスにクローヴィス、ねぇ。どっかで聞いたことある気がするけど、ま、いいか。
「ただいま」
おかえりー、と言う親父の声に応える。
母は俺が8歳くらいの頃に家を出ていったらしい。それ以来、仕事の忙しい親父に代わって料理は俺が担当してる。
さて、今日は何を作ろうか。
今晩の料理に頭を捻りながら、オカルトに悩みだす。
オカルト、オカルトかー。この街は特に神社や寺があるわけでもなく、墓場もなし。
・・・いやねぇよ。
こんなんでどうやってオカルト話を探せというのか、そう考えるとキャンディスはすごいのかもしれない。本人の前じゃ絶対に言わないが。
「また、オカ研の活動かい?」
皿をテーブルに並べていたら、声を掛けられた。
「ん?あぁ、そう」
悩んでいるのが顔に出たのだろう。親父が優し気な笑みを浮かべてこちらを見てくる。
いい人、なのだが、些か仕事に熱中しすぎる節がある。昔は仕事にカマかけて丸一日帰ってこない、なんてこともあった。そのせいで母に出ていかれたのだ。
てかマジでなんの仕事してるんだろ。家は、大名でも住んでるような大屋敷だし、家の裏手にある山を丸ごと保有している(例の洋館があるせいで安かったんだろうが)。その山で親父は仕事をしているんだが・・・。
まぁ、山の管理職にでも就いてるんだろ。不動産だから稼ぎ良さそうだし。
と、話がズレた。
「さ、オカルトは一時中断だ。冷める前にご飯を食べようか」
「ん、いただきます」
「はい、いただきます」
───────────────────────
夜中の12時、オカルト探しに熱中するも結果は得られず、そろそろ寝ようと思ったとき、携帯にメールが届いた。
ウィッカー:朱里、起きてる?
ウィッカー:蔵は見た?
ウィッカー:やっぱりか
ウィッカー:今からキャンディスと向かうから
ウィッカー:蔵、見るよ
今、世界一酷い顔をしている自信がある。
ダルそうな顔。オマケに眠気と胃痛でクッソ気持ち悪いから病人に見えなくもないだろう。
バレたら絶対叱られるなぁ。ま、親父は寝てるし音さえ立てなきゃ大丈夫か。
そう諦めて、眠気覚ましに顔を洗い、軍手を着けた。
「悪いな親父、これもオカ研のためだ」
親父の仕事場に忍び込み、鍵束をかっさらう。親父が蔵に入るとき、この鍵束を使っていた。確か3番目の鍵だ。
「はぁ」
玄関までの足取りが重い。どうせあいつらのことだ、きっともう待ってるに違いない。色々言われても面倒なので、気合いで足を動かし、前に進む。
ガラガラと音のなる玄関扉を、慎重に開く。
「あ、やっと来た」
「遅いよー朱里」
「うるせー」
気分はさながら死刑囚だ。挨拶代わりの軽口も、今は処刑を急かす言葉に聞こえる。
「──今更逃げる、なんてことはないよね?」
「・・・ねぇよ」
ダメ押しするクローヴィスに違和感を覚える。メールの件といい、今日のクローヴィスはやけに主張的だ。いつもはよく言い合いをする俺たちのストッパーなのに。
クローヴィスなりの焦りなのだろうか。
少し震える手で、蔵の南京錠に鍵を差し込む。
「ッ!?」
急に、ゾッと寒気がした。
まるで、鍵を開けるのを、この先を見るのを拒むように本能が警鐘を鳴らす。
「大丈夫だ、どうせ電動ノコギリとか斧とか猟銃とか、山で使う危険なものがしまってるだけだ。立ち入り禁止にしたのも、俺がケガをしないようにするためだ」
そう自分に言い聞かせながら、鍵を回し、取っ手に手を掛け、
思いっきり、押し開いた。
「う、、・・・あ?」
血の臭いと磔の白骨死体。
「・・・は、随分とリアルなマネキンだな」
そうだよ、本物なわけないんだ。この血の臭いもきっと制作過程で事故ったんだ。
は、親父も難儀な趣味してんな。マネキンにネックレスつけるなんて────
『お母さん!お誕生日おめでとう!』
『まぁ、プレゼント?』
『うん!
『ふふ、ありがとう、朱里』
───最低だ、最低だ、最低だ。
最悪だ、今思い出すなんて。
倒れ伏して、胃の中身を吐き出した。
───────────────────────
「朱里くんのお父さん、隠し屋っていう危ない仕事してたみたい」
「裏社会で殺された遺体をこの山に埋めてたそうよ」
血の付いたノコギリや、何かの化学薬品を弄りながら、2人は俺に言う。
「ここに来る前に山を調べたらちょっとおかしな土の盛り上がりがいくつもあったの」
「掘り返してみたら遺体があったわ」
立てかけられたスコップに目を向ける。真新しい土に混じって、濃い赤色が見えた。
「あなたの母親は、その仕事風景を見てしまった」
「そして、口封じのために」
「「殺された」」
「ッ!」
治まりかけた吐き気が盛り返した。胃の中身もなくなって、嘔吐くことしかできない。
「・・・全部、知ってたのか?」
血を吐くように言葉を垂らす。
「ええ、知っていたわ」
「そして、君が知らなければいけないと思ったの」
「そう、か・・・」
何故なんて、聞く余裕がなかった。次いだ言葉に、心を奪われたからだ。
「ねぇ朱里、復讐、したくない?」
顔を上げた先で、悪魔のようにクローヴィスが嗤っていた。
今俺は、世界一酷い顔をしている自信がある。
怨嗟を込めた、鬼のような顔だ。
「殺してやる」
───────────────────────
「親父、今日の夜は暇?」
冷えきった殺意に、いつもの自分を上塗りする。
「ああ、珍しく仕事はないね。それがどうかしたのかい?」
「ちょっとオカ研の状況が逼迫しててさ」
「山の調査がしたい、と」
「何もないと思うんだけどね、例の2人がさ」
「それなら仕方ないな」
全てカバーストーリー。山を登らせる、そのための大嘘だ。
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ガラガラと音を立てて扉が閉まるのと同時に、スっと、表情が消えるのが分かった。
そこからは、ただ夜を待った。
色の抜けたモノクロの世界で日常を演じる。疑われぬように、悟られぬように。他愛もない話で笑い、今朝作った弁当を食べ、つまらない授業に欠伸をこぼす。
心に持ったナイフはそのまま、いつもの俺であり続けた。
そして、夜10時。
「あれ、2人は?」
「もう先に行ったらしい」
「なんだって!?熊にでも襲われたら大変だ、急いで追いかけよう!」
手に持ったスコップを振り上げ、
「・・・そうだな、急ごう」
男の後頭部に叩きつけた。
「よぉ、起きたかクソ野郎」
「・・・なんのつもりだ、朱里」
舞台は移して
男は部屋の一角に縛って転がした。どうやっても逃げれはしない。
「なんのつもりだって言われてもな。復讐、としか言えねぇぞ?」
「復讐だと?」
「ほら」
掘り起こした、まだ原型の残る遺体を1つ放る。
「隠し屋、だっけか?」
「ッ!」
スコップを床に叩きつける。金属同士が擦れ合う耳障りな音がした。
「依頼を受けて人間の死体をこの山に埋めてたんだろ」
「・・・」
カンッと、
「で、仕事中を母さんに見られた」
「・・・」
カンッと、
「その口封じのために殺したと」
「・・・」
カンッと、
「どうなんだ?」
「・・・」
カンッ・・・と。
「答えろよ!」
「ッ!」
ゴンッ!と、鈍い音が響く。思いのほか力が込もってしまっだ。ダメだな、予想以上に憎しみが抑えれない。
「・・・そうだ、俺が、殺した」
「あぁ、よかった」
これで、俺の復讐は正しかったって思える。
内心ホッとしながら、傍らに置いたポリタンクの中身を辺りに撒いた。
「焼くのか?」
「あぁ、焼く。でも火をつけるのは俺じゃない」
「何?」
空っぽのポリタンクを捨てて、手袋も脱いで灯油の海に放った。
「この洋館さ、ちょっと曰く付きなんだわ」
「・・・人体発火現象」
「なんだ、知ってたのか」
スコップに付いた血をハンカチで拭き取り、手袋と同じく捨てる。
「迷信だろう」
「だったらとっくにこの館はねぇよ」
携帯の時間を確認する。10時55分、あと5分か。
部屋を出る。
もう男の声は届かない。聞く必要もない。
「さようなら」
男の悲鳴が聞こえた。
「はは」
「はははっ」
「ははははははははははははははっ!!」
「あぁ、ありがとなクローヴィス、キャンディス」
「どういたしまして」
「朱里くん、満足した?」
満足?いいや、まだだ。
「アイツに隠しを依頼した奴らを、全員殺してやる」
「へぇ、どうやって?私もキャンディスも、もう手伝わないよ?」
「うん」
「いいや、手伝ってもらうさ」
「うん?」
「俺の魂をやるよ、なぁ、
惚けた2人の顔に、自然と笑みが浮かぶ。
ずっと違和感があった。みんながみんな、2人をまるでいないように振舞っている。
そりゃそうだ、見えてなかったんだからな。
「磔にされた脚のない白骨遺体と、キャンディスの脚に巻かれた包帯。ウチの事情に詳しすぎるクローヴィス。んで、2人の名前。俺だってオカ研の端くれ、これだけ揃えば分かる」
「あー、バレちゃったか」
「さっすがはエースだねぇ」
「茶化すな」
3人揃って山を降る。
「んで?俺の魂でどれくらい働いてくれる?」
「んー、魂だけじゃ働きたくないな」
「私もー」
「じゃあ何をあげればいいんだよ」
「「君」」
「はぁ?」
今度は俺が惚ける番だった。
「朱里くん鈍感だよね」
「ここまで気づかないとちょっとこっちも傷つくなぁ」
「え、何、
「「うん」」
「なん、だよそれ・・・」
スコップが手からこぼれ落ちた。
「そうでもなきゃ手伝ってないし」
「そもそも君の前に現れないよ」
「「それで、答えは?」」
魔女と悪魔の誘い、浮世離れの誘惑。
「・・・喜んで」
顔に熱を集めながら、俺は答えた。
───────────────────────
「あぁ、可哀想な朱里。
母が殺され、父も死なせて、たった1人。
それでもまだ復讐に身を焦がすなんて」
「でもね、朱里くん。
ありがとう。
私たちの思い通りに動いてくれて」
「母が殺されたのも、父が悪いのも本当」
「でも、一つだけ私たちは嘘をついた」
「「
「ごめんね」
「ええ、ごめんなさい」
「でも大丈夫」
「私たちがいるから」
「私たちが、ずっと愛してあげるから」
「「これから、3人で暮らそうね」」
IFエンドルート
ウィッカーウィッチは手に入れた
吾輩は猫である?さん
鬼灯 白哉さん
深夜さん
誤字報告ありがとうございました。
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本編
爬虫類と戯れる実験
こっちは息抜きで書いてる程度なので余計遅くなります。
「準備はいいかね?」
「い、イエス・・・」
ネイティブな英語で話しかけてくる学者姿の中年男性に、何年経っても慣れない英語で返す。
今、俺の目の前には、めちゃくちゃ頑丈そうな鉄?の扉がある。というか、もうこういう扉を四つ通ってきた。これで最後らしい。
そしてこの先に、世界を壊せる化け物が、居る。
「そうか。では、頼んだぞ。幸運を祈る」
そう言って、通ってきた扉を戻る学者。その後すぐに扉は閉まり、俺の退路は、絶たれた。
深呼吸をする。よし、
「行きます!」
最後の一枚が、開かれた、瞬間。
ガラスが割れる音が響いて、
俺は、半裸の女の子に抱きしめられた。
「・・・はい?」
───────────────────────
突然だが、きっと意味不明であろう現状について説明しようと思う。俺は、いろいろあってアメリカに住んでいた。いやまぁ、いろいろっつっても親の仕事が原因なんだけど。
そんなある時の話だ。
なんか、黒褐色でデカい剣?ブレード?を持ったこれまたデカい
マジで盗られると思ったね、貞操。ほんと、話が通じて良かった。
その後?
この人、なんかやべぇ人?人外?らしくてさ、黒服のガタイいい野郎に囲まれて、引き離そうとしたけどこの人外が離してくれなくて、結局一緒に連れてかれたよね。
んで、SCPっていうやべぇ生物やら物体やらの存在を知り、そいつらを管理するSCP財団を知り、
気が付けば俺もSCPとして登録されてた。
ん?なんでって?
どうやらこのSCPたちから愛される体質にあるらしいです。
あら異常。
ま、そんなこんなでいろいろな実験に付き合わされることになったんだ。
あ、両親には説明済みらしい。泊まり込みのバイトって感じで。
さて、俺の初めての実験のお相手は、SCPー682。不死身の爬虫類って呼ばれてるらしい。こいつの特徴は大きく分けて三つある。
一つ、異常な再生能力と適応能力。銃撃、斬撃、爆撃。あらゆる攻撃は損害を与えた傍から再生されるし、空気中、水中はもちろん、真空やら毒ガスやら、ましてや酸性液の中でも余裕で生き残れる。もうやべぇ。
二つ、異常なパワー。強化ガラスやら鉄の塊やらが簡単に砕かれる。こいつを前にしたら、
三つ、異常な知能。詳しいことは説明されてもよく分かんなかったけど、爬虫類なのに会話ができるらしい。爬虫類なのに。でも吐き出される言葉は大概があらゆる生命体に対する罵詈雑言だそうで。
ま、これを聞いた時、正直逃げたくなったよね。
だってさ、無理じゃん?こんなチートじみた奴に会いに行くんだぜ?しかも生きてるものを全部憎んでるような怪物ときたもんだ。愛される愛されるって言われてんだけどさぁ。確実に、ってわけじゃねぇじゃん。
前略、両親へ。
先に天へ旅立つ不肖の息子をお許しください。
とまあいくらごねても権力には敵わんわけで、結局覚悟を決めて会いに行ったんだけど。
そんで冒頭に戻る。
───────────────────────
んーん?ん?んーーー、ん?
なんで俺は抱きしめられてるわけで?しかも半裸の女の子に。俺、爬虫類に会いに来たんだけど?
「あ、あの〜、この子は?」
耳に付けたインカムに問いかける。
『何を言っている。その子が682だぞ』
あ、そっかぁ。よく見りゃこの娘、ところどころ爬虫類っぽい鱗が見える。というか、半裸って言ってたけど、これ、全裸じゃね?鱗が服に見えてただけで、実際はなんも着てないんじゃね?
つまり、この胸板に触れてる柔らかい膨らみは、
生・・・!?
「私、このまま死んでも悔いはないです。本当に、ありがとうございます」
『なんで死に際みたいなことを言ってるんだい?』
だってさ、お胸だぜ?女の子のパイオツだぜ?もうさ、悔いなんて残んねぇだろ?
「なぁ、誰と話してるんだ?」
あらこの子ものすんごく綺麗な声してるー。かわよ。
「あ、いや、ちょっとね?」
「あの
あらこの子お口悪いー。でもかわよ。
「ごめんごめん、今は君に集中するよ」
「あぁ、そうしろ。でないと俺、嫉妬で狂っちまうかもしれないからな」
あらこの子今どき珍しい俺っ娘ー。あーかわよ。しかも嫉妬とか。すごい独占欲あるじゃん。俺的にはナイスです。
さて、思春期の男子としては、全裸抱きつきはめちゃくちゃ嬉しいが、男として、女の子に裸でいさせるわけにはいかない。コートを着せてやるか。
「ほら、これ着なさい」
「ん」
コートの裾に腕を通す爬虫類ちゃん(仮名称)。かわよ。
ある程度落ち着いてきたので、この子と周りをよく見てみる。
身長は、170ちょっとある俺より少し小さいくらい。艶やかな濡羽色の髪が腰あたりまで伸びており、身体は痩せすぎない程度のスレンダー体型。目は紅く、瞳孔は爬虫類っぽく縦に割れてる。
うーん整ってる。
うん、まあここまではいいんだよ。
問題は爬虫類ちゃんの背後にある割れたデカい水槽。
あれ、強化ガラスでできてる。しかも中身は塩酸。いや別に割られるなんてこの子の異常性から見れば普通。
何がやばいって俺にその破片と、塩酸が
つまりこの子は、俺が部屋に入ると同時にガラスを破り、体に付いてる液体を何らかの方法で蒸発させ、俺に降り注ぐ破片と塩酸を全て弾き、抱き着いてきたってことになる。
Oh・・・、なんてこったい。
「な、なぁ」
「ん?」
「このコート、貰っていいか?」
わぁー、すっごいクンクンしてるー。やっぱ臭うのかねぇ。
「いやまぁ、いいけど」
「ほんとか!?ありがと!」
うわ、急にテンション高くなった。可愛い。
「か、可愛いって・・・!」
あら声に出てたみたい。頬を赤くしてらっしゃらぁ。
「そういえば、名前ってあるの?」
「名前?
「じゃなくて、君の名前」
「んー、ないな」
「そっか」
名前ー、ないとちょっとコミュとるのに不便だよなぁ。どうしよ。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「お前が名前をつけてくれ」
あら、そうくる?
んーと、不死身、爬虫類、682・・・。
あ、
「ルイってのは、どう?」
爬虫
「ルイ、ルイか。気に入った」
おお、適当だけど気に入ってくれたか。
「なぁ」
「ん?」
「俺は、ルイだ」
「うん」
「お前の名前は?」
あー、そういや言ってなかったわ。
「
神谷 朱里
(SCPー■■■■)
他のオブジェクトから愛される、という以外はごく普通の高校生。欲望に忠実で、でも命は大事。
ルイ
(SCP─682)
不死身で可愛い爬虫類。
褐色のデカい女の人
ダレダローナー。
不死蓬莱さん
Aona no Kenriさん
迷子の子犬さん
誤字報告ありがとうございました。
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SCPー682 作者 Dr Gears様、Epic Phail Spy様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
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それでも幼女と戯れる実験
朱里「また帰ってくるから、ね?」
ルイ「・・・分かった。でもあまり他のメスと話すなよ?」
朱里「・・・保証しかねる。」
ども、朱里です。今日も今日とて人類のための実験を始めていこうと思います。
今日のお相手はこちら。
SCPー053 幼女
ん?ロリコン御用達?イエスロリータノータッチ?この子の場合、ノータッチでもアウトなのよね。
この子の異常性は、過度で現実味のない被害妄想。この子に直接触れる、もしくは十分以上目を合わせると発症するみたいです。
しかも最終的に幼女に手を出し(暴力)、その後心臓発作で死亡、と。この異常性について、幼女は無知を装うらしい。ん?手を出されたあと?傷があればすぐさま治るみたい。うーん、うわようじょつよい。
『それじゃ、頼むよ。』
「・・・うっす。」
気を強く持てよ神谷 朱里!
これまた重厚な扉が開かれ、その先に、ごく一般的な木製の扉があった。あの先に、幼女がいる。
開ける前に、最後の深呼吸。
・・・よし、
扉に手をかけ、開こうとした、そのとき、
『ダメ!』
中から、声が聞こえた。可愛らしい、でも焦っているような声だ。
「・・・どうして?」
『だって!私と遊んだらお兄ちゃんまで死んじゃう!』
『なんと!?』
今度はインカムから声が聞こえた。
「・・・自分の異常性は知らないんじゃないんですか?」
『そのはずだが・・・。』
むむ、これは前例のない事態なのか?ま、俺の仕事はこの先にいる幼女と戯れること。難しいことは他に任せましょ。
「じゃ、お邪魔しま〜す。」
扉を開けて、
「こんにちは。」
「あ、あぁ、」
怖がっているその子の頭を撫で─────────
怖い怖い怖い!なんなんだよSCPってなんなんだよ財団って!こんな奴らに出会わなければ俺も普通の人生歩んでいけたのに!あのデカい女のせいだ!わざわざ脱走して俺に会いに来ただ!?ふざけんな!お前のせいでめちゃくちゃだ!どうして俺がこんなことにならなけりゃいけないんだよ!あークソ!全部誰かが仕組んだことなんだ!でなけりゃあの女がすぐに俺のとこに来るわけねぇ!財団職員の誰かが俺の情報をリークしたんだろ!?俺もSCPにして研究するために!どうせ誰も俺のことを人間扱いしなくなるんだ!
そうだ!きっとこのガキだって・・・
は?ガキだってなんだよ。この子も俺を人として見なくなるってか?ふざけてんのはどっちだクソ野郎が。
俺のために気を使ってくれたのは誰だ?この子だろうが。
俺の身を案じてくれたのは誰だ?この子だろうが。
正気に戻れよ神谷 朱里。
お前の正義は
お前の正義はなんだ?
「・・・決まってんだろ、例え人として見てくれなくても、例えこの子が元凶でも、それでも、可愛ければそれが正義だ。」
あぁ、それでこそ、
「泣かなくていいよ。俺は、君を虐めない。」
どうにか戻ってこれました。しかし
「ぐすっ、ほんと、に?大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫。俺、可愛い子には嘘つかないって決めてんの。」
「か、かわ、いい?」
あらま顔を赤らめちゃって、
「うん、可愛い。将来すんごい美人さんになるぞぉ?」
「ほんと!?」
やったーってぴょんぴょん跳ね回ってる幼女を見て、ようやっと年相応の顔をするようになったなぁと一安心。
「私!大人になったらお兄ちゃんと結婚する!」
おっとぉ?おませさんかぁ?
「それは嬉しいことを言ってうおっほん!お兄さんよりいい人はいっぱいいるから旦那さんはよく考えてね?」
危ねぇ、今『朱里?』ってルイの声が聞こえたわ。俺の一挙手一投足で世界の命運が決まりかねないってちょっと辛い。
「む〜。」
「頬膨らませてもダメ。そういうのはちゃんと選びなさい。」
「は〜い。」
「さて、それじゃ、何して遊ぶ?いくらでも付き合ってあげるよ。」
───────────────────────
いやー、幼いっていい。元気っていい。
何より可愛い。あ、ロリコンではないです。(迫真)
ほら、なんって言うの?子供ってさ、いいじゃん。こう、可愛いじゃん。そういう感じ。
ん?あの後?
そりゃまあ、読み聞かせとか?おままごととか?いろいろして遊びましたとも。
日本の遊びもいっぱい教えたね。お手玉すごい気に入ってた。
「またね!お兄ちゃん!」
「うん、またね。」
ふーむ、最後までええ子や。絶対また来る。お土産いっぱい持ってくる。
『・・・驚いたよ、まさかあの被害妄想を克服するとは。』
「そっすか?心頭滅却すれば大丈夫ですよ。」
『シントウメッキャク?いや、まぁいい。ともかくご苦労。今日はもう休んでくれて構わない。』
「うっす。」
さーて、帰りますか。
の、前に、
「ふん!」
ゴンッッッッッ!!っと、頭を壁に打ち付けた。
『な、何をしてるんだ!?』
「禊です。」
神谷 朱里
精神汚染も自問自答で弾き飛ばすスーパー(メンタル)マン。
ルイ(不死身の爬虫類)
最近
SCPー053 幼女
誰がなんと言おうと、将来朱里と結婚することを決めた。
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
SCPー682 作者 Dr Gears様、Epic Phail Spy様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
SCPー053 作者 Dr Gears様
http://scp-jp.wikidot.com/scp-053
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アルビノな恥ずかしがり屋ちゃんと戯れる実験
「私の話、まだかな。」
「精神汚染耐性、ですか?」
「飽くまで可能性の話だがね。」
幼女と遊んだ後、研究室に呼び出された俺は、博士からそんなことを言われた。
ちなみにこの博士(名前を覚えていない)、財団に多数存在する博士の中でも、比較的普通で人間的だ。
と、言うのも、
財団所属の博士のほとんどは、精神や
31歳の不眠症ロリ、ネックレスに魂が宿った変態に、何体ものSCPを終了させてきた屈強な男。更には、カー○ルサン○ースまでいらっしゃったらしい。(殉職なされた)
わけが分からんね。
「その異常性が正確に判明するまでは、君と精神異常を伴うSCPとの実験は保留することとなった。」
「了解です。」
ま、お仕事の危険度は変わらずです。今日も張り切っていきましょー!
本日のお相手はこちら!
SCPー096 シャイガイ
名前から判断すると
まずこのオブジェクトの異常性は、自分の顔を見た人間は例外なく殺すということ。しかも、対象を殺すまで顔を
また、写真越しで見るのもダメらしく、極僅か、それこそ肉眼ではほとんど見えないレベルにしか写っていない写真を見られても殺すんだとか。
怖っ。
とまあここにも驚いたんだけどさ、もっと驚いたのが、"ガイ"って言っておきながら、女の子なのよね、この娘。
「なんで女の子なのにガイってつけたんですか?」
「この財団内で知っている者はいない。名付け親はもう殉職なさっているからだ。もはや永遠の謎だよ。」
はぇー・・・。
つーことで、戯れてきます。
え?深呼吸とか、心の準備とか?
毎度毎度見なくていいでしょ?飽きるだろうし。
───────────────────────
その娘は、部屋の隅で縮こまっていた。
病的に真っ白い肌、同じく真っ白い長髪、常人より長い腕。
さて、どうコンタクトをとろうかな。
「隣、いいか?」
「・・・は、い。」
声ちっさ。
まぁ承諾は貰ったし、遠慮なく座らせてもらおうかね。あ、でもちょっと距離は置く。怖いから。
「・・・。」
「・・・。」
お互いに無言。無言、なんだけど。
なんか、こう、チラッチラッ、って感じで視線を度々向けられてる、気がする。
確認しないのか?って?しないよ。
いやだってさ?顔みたら殺しに来るんだぜ?下手に確認して目と目が合っちゃったらどうするのよ。
なにか話さないといけないけど、この娘、あまり話したがらないっぽいからさ。どうしようかなって。
と、思っていたら、
「・・・よ、よし。あ、あの・・・。」
何今のよ、よし、って。可愛いんだけど?
「ん?どした?」
「こ、怖くな、ないんです、か?わた、しが。」
あ〜そういう事か。
「怖いよ、率直に言って。」
「じゃあ、も、もっと私からは、離れた方が、いいんじゃ。」
「嫌だけど?」
「え?」
「人が怖がる条件ってさ、三つあると思ってんだ。一つは、相手が自分を殺せること。今みたいな状態のことだ。」
「・・・。」
「二つ目は、目に見えないことだ。これは、ウィルスとか細菌とか、そういったものが当てはまる。」
「・・・・・・。」
「そして、三つ目、未知であるもの。特に、有害の可能性を孕んだものだ。」
「あの、何がい、言いたいのか。」
「俺はね?怖いんだよ。なんで君が、顔を見ただけで人を殺すのか分からないってことが。だから、それを聞きたい。」
「あ・・・うぅ・・・。」
あら、今まで以上に俯いちゃった。それで、ちょっとだけ距離を詰めてきた。
「・・・わ、私、の、顔。み、醜いんです。」
ふむふむ、
「だ、だから、顔、見られるのが、は、恥ずかしくて・・・。」
なるほどなるほど、
「だ、だから、つ、つい、殺しちゃって・・・。」
「つい殺しちゃって。」
あ、そっかぁー。
「それじゃあ、さ。」
「な、何ですか?」
「その顔を、褒めてくれる人が居たら、どうする?」
賭けにでる。
話しながら、俺は気づいた。こいつ可愛いって。話しながら、命を捨てる覚悟はした。こいつのために賭けてやろうって。
「え、っ!?」
驚く彼女をよそに、ずっと顔を隠していた腕を取り払い、俯いていた顔を上げさせる。
ふーん?
「可愛い、めっちゃ可愛い。」
「あ、え?あ、えぇ?」
混乱してる。腕は、動いてない。
俺は、殺されなかった。
つまり、俺は賭けに勝ったことになる。
「カメラから隠してあげるから、お喋り、しようか?」
「・・・はい・・・。」
赤くなった顔も可愛い。
───────────────────────
暫く、話した。外のこと、俺の家族のこと。
そして、名前のこと。
この娘も、ルイと同じように名前がないとのこと。
だから、
「あ、朱里さん。その、名前、つけて、ほしい、です・・・。」
こうなるのは、何となく予想できてた。
名前、か。
真っ白、肌、アルビノ・・・。
「ノア、ってのはどう?」
「ノア、ですか?」
別に方舟は関係ない。
「ノア、ノア、ノア・・・。ふふっ。」
ッ!?今すげぇゾクッとした。この娘の笑い方に寒気がしたのか?まさかな。
「ふ、不束者で、ですが、よろしく、お、お願いします。あ、朱里さん。」
うん、気のせい気のせい。なんか、言葉使いがおかしかった気がするのも気のせい気のせい。
『そろそろ、実験を終わってもいいかな?』
インカムから博士の声が聞こえる。
「あ、了解です。」
「もう、い、行っちゃうんで、すか?」
寂しそうにそう言うノア。
「まぁ、そうだね。大丈夫、また来るから。」
「そ、そうです、か。え、えへへ。」
「それじゃあ、またな。」
「はい、ま、また。」
「は、早くも、戻って来てください、ね?じゃないと、わ、私、何す、するか、分から、ない、です、よ?」
神谷 朱里
自分の命よりも可愛い娘の心配をする狂人。なんか知らんけど精神異常に耐性がある。
ノア
(SCPー096)
なんか不穏な影あるシャイでサイコな女の子。
つまり、ルイにライバルが増えたってこと。
agoさん
不死蓬莱さん
誤字報告ありがとうございました。
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
SCPー096 作者 Dr Dan様
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褐色お姉さんと再会する実験
「おまたせ」
財団に収容?採用?されてから一月が経ちました。両親とは度々合わせてもらってます。
『君のおかげでこちらも助かっているんだ。これくらいはさせてくれ。』
との事です。
また、実験であった三人ともよく会ってる。みんな元気そう。あとノアはちょっと目が怖くなった。別に襲われるとかじゃないけど、別の実験に行く時とか、帰る時に、
『また、べ、別のおん、な、ですか?』
ってよく言われる。怖い。でも可愛いので正義。
さて、実験のお時間だ。
お相手は、俺のSCPとしての
SCPー076 ”アベル”
あの褐色お姉さんである。
未だに忘れない。
はじめましての挨拶が、
『ねぇ、【自主規制】してもいいかしら?』
だったこと。
まじでヤられそうになった。危ない。
では、アベルの異常性について説明しようと思う。
アベルはルイと同等レベルの身体能力を持つが、その反面、ルイのような再生能力、適応能力を持たない。そのため、殺すことはできる。できるのだが、
アベルは何度でも蘇る。
黒い棺のような箱から現れ、殺されてもまたそこから復活する。それがアベルの持つ最大の異常性だ。
また、なんもないところからデカいブレードを出したりする。俺と会った時に持ってたのはそれ。
で、一番タチの悪いのが、戦闘狂だと言うこと。
戦うために収容違反を繰り返していたらしい。
危なかったと怖がるべきか、無理矢理じゃなくて合意を得ようとしたその優しさに感謝するべきか。
『朱里くん。その、準備はいいかな?』
「あ、はい。」
とりあえず、行きますか。
───────────────────────
どーも、部屋に入っておよそ五秒が経過しました。
黒めの褐色の肌に、整えられた黒のショートヘア、優しげなタレ目。
可愛いよりも美しいっていう言葉が似合う女性に、
現在、
何を言っているのか分からないと思うが俺も何をされたのか以下略。
ともかく、部屋に入ったと思ったら抱きかかえられてそのままベッドにポイッ。からの馬乗りと。
「君から収容室に来たのだからこれは合意?」
「話し合いに来たんですが?」
COOLになるんだ。頼むから。
「お姉さん、一ヶ月もお預けされたのよ・・・?」
「俺は清楚な人が好みです。」
嘘ですエッチィ子も可愛いと思います。でも嘘でも方便でも言わなきゃ襲われる。
「むぅ、それじゃあ我慢するわね。」
こういう風に、思考がそっち方面に偏ってはいるが、話は通じる。
二人して起き上がって、ベッドに並んで座る。
「それで、話って?」
「なんでもいいですよ?意味なんてない世間話でも、なんでも。」
「それじゃあ、君のこと、聞かせてもらおうかな。」
良かった。危ない路線戻せた。
「君は好きな娘とかいるの?」
地雷踏み抜くのやめてもらっていいっすか?
下手な返答したらルイとノアが暴れかねないんだが?
「ご、ご想像にお任せします・・・。」
ここは誤魔化して
「ダーメ♡教えて?」
マジすかァ?
「・・・気になってる娘は、います。」
「ふーん?気になってる娘、ねー・・・。」
次あの二人に会う時が怖いなー・・・。
「じゃあ、さ。お姉さんにも、チャンスはあるってこと?」
「まぁ、そっすね。」
「やった〜♡」
ギューって抱きしめられる。
話の主導権を握られて、そのまま振り回されっぱなし。年上の余裕というか、そんなものがある。そっか。
こういうタイプもいるのか。
「それじゃあ次ね?好きな女の子タイプは?」
「精神的身体的に関わらず可愛いか美しければ恋愛対象です!」
「うわすごい食い気味。」
可愛いは正義。美しいは世界の摂理。そう思ってる。だれになんと言われようと絶対に覆さない、俺の信条。
「可愛いと美しいは命より優先すべきです。」
「命を投げ捨てるのはお姉さん的にいただけないかな。死んじゃったらどうするの?君、私みたいに蘇れないでしょ?」
「む、確かに。」
死んだら、あの娘らどうなるんだろ。暴れる?後を追ってくる?ルイは確実に暴れるな。
あれ?俺ってば世界の平和背負ってる?
oh......。
「君はね?人間なんだよ?だから、もっと異常を怖がって。もっと自分を大切にして。例えそれが君の言う『可愛い』や『美しい』だとしても、ね。」
説教じみた、でも優しい声音で、諭される。
それでも、だとしても、
「・・・保証は、できません。多分俺は、あなたの命と俺の命を天秤にかけたとき、きっと、あなたを優先してしまう。」
狂ってると言われても、俺は、俺を変えられない。
「・・・どうしてそう言えるの?」
「自分のことは、俺がよく分かってます。」
「・・・そう。」
アベルは、悲しそうにそう言葉を零した。
「ほんと、仕方ないわね。うん、じゃあ、君の命は、私が
「はい?」
何を言っているんだ?
「だから、君が私のために命を捨てるって言うなら、私も君のために命を捨てる。これでおあいこね?」
「命を大事にしろって言った傍から自分で捨ててるじゃないですか。」
「私はいいの。異常だから。」
「なら俺だって「君は普通だよ。」ッ!?」
「私たちのこと、最初は怖かったんじゃない?」
・・・怖かった。怖かったさ。相手が異常性を持っていたから。
俺も異常なのに?どうして、怖がる必要がある?
俺が、普通、だから?
普通に生活してきて、普通に感情を持って、普通に怪我をして、普通に風邪をひいて、
普通に、異常を恐怖して。
「分かった?君は普通なの。そして、私、私達も、君には普通でいてほしいの。」
「・・・はい。」
異常に、普通であれって諭されるなんてなぁ。世の中何があるか分かんない。
「うん、よろしい。それじゃあ最後に一つ・・・。」
「なんすか?」
「私を
お嫁さんにしてください♡」
警報が鳴り、一拍遅れて轟音が耳朶で爆ぜた。
ルイが天井をぶち抜いて、ノアが壁をぶち破ってきたからだ。
そのまま強引にアベルから引き剥がされる。
やったよ、やっちゃったよこの人。
最後の最後で地雷をしっかり踏み抜きやがった。それも特大のやつ。
「殺すぞクソアマがァ・・・!」
爪と牙を鋭利にさせるルイ。
「それ以上近づかないでください殺しますよ?」
普段の自信なさげな口調も、顔を隠すことも忘れて、だらりと両腕を垂らしたノア。
「あらあら随分と元気な娘達ね〜。これなら楽しめそう♡」
空中からブレードを取り出し、嬉々として構えるアベル。
「脱兎の如しぃ!!」
人生最高速で駆け出す俺。
後に知ったことだが、一応死傷者は出なかったらしい。なおアベルの収容室は崩壊した。
───────────────────────
「ご苦労だったな。」
「・・・ほんとですよ。」
あの地獄から抜け出して、安全圏まで来たとき、博士に呼ばれる。
「疲れてるところ悪いが、君のオブジェクトクラスが決定した。」
「おぉ、遂にですか。」
オブジェクトクラス。
全てのSCPに、危険度やその用途から付けられる位のようなもの。
大まかなクラスは三つ。
まずはsafe。
こいつは、永久的な収容方法が確立されており、また、大した危険性も認められないオブジェクトに与えられるクラス。
次にeuclid。
永久的ではないが、一応の収容方法が確立されているオブジェクトに与えられるクラス。知能があったりするとここに当てはまる。
ノアと幼女ちゃんがeuclidの枠に入る。
最後にketer。
これは、収容方法が確立されておらず、また、そもそも収容できていないオブジェクトに与えられる。危険性はもちろんトップ。
アベルやルイがここに当てはまる。いつでも収容違反できるからね。
「それで、俺のオブジェクトクラスって?」
「あぁ、keterだ。」
「はい?」
keter?ケテル?けてる?
なんで?
「いや、君自身はsafe、もしくはeuclidなのだが、君の周りが、な・・・。」
そっかぁ。
「君と出会ったオブジェクトは、皆、狂気的なまでの愛情を君に向けている。それこそ、君が望めば世界を破壊するほどにな。」
「いや、しませんよ。」
「上はそれを信じないんだ。」
めちゃくちゃやつれてる。この人、ほんとにちゃんと人間してるわ。
「うわぁ、大変っすね・・・。」
「全くだ。」
閑話休題。
「君のこれからの収容方法だが、基本的には変わらない。今まで通り、オブジェクトとの実験を続けてもらう。」
「うっす。」
「ただ、少し違うのは、世界中を飛び回ってもらう必要がある事だ。」
なんでぇ?
「財団は世界中に点在している。そして、その各々に数多のオブジェクトが収容されている。」
「そのオブジェクトとの実験を行うために、世界旅行ですか?」
「そうなる。」
なーるほど?それなら納得。
「さて、早速だが、君には日本に行ってもらう。」
「マジで早速ですね。」
「君の精神汚染耐性を調べる、丁度いいオブジェクトが収容されているんだ。出発は15時間後、それまでに荷物をまとめておいてくれ。」
「了解。」
さってとぉ?まだ見ぬ美人に会いに行きますか。
アベル
(SCPー076)
色々迷ったけどお姉さんキャラにした。戦闘狂だけど包容力がある。つおい。
ルイ
朱里に手を出したらブチギレる。
ノア
朱里に手を出したら病む。
不死蓬莱さん
誤字報告ありがとうございました。
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SCPー682 作者 Dr Gears様、Epic Phail Spy様
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SCPー096 作者 Dr Dan様
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SCPー076 原著 Kain Pathos様
改稿 Crow, DrCle様
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井戸のねこと戯れる実験
はい、日本に飛びまーす。
『朱里が行くなら俺も行く!!』
『ダーメ、あなたはお留守番。それじゃ朱里くん、行ってらっしゃい♡』
『朱里さんまたほかの女に会いに行くんですかしかも海まで越えていやですそんなの私狂っちゃいますよ。』
『ん、お兄ちゃんがいないのはちょっと寂しいけど、仕方ないもんね。』
って言われて送り出されました。俺は元気です。
久々の日本なのでちょっと楽しみにして、財団の用意した飛行機に乗ったのですが、
『よろしくなァ、あ・か・り・さ・ま♪』
スマホの画面に知らない女の子が映ってます。
───────────────────────
「要するに、AIのSCP?」
『そういうことだ。』
彼女は、SCPー079 オールドAI。
名前の通り、AIのSCPだ。オブジェクトクラスはeuclid。
その気になれば財団のセキュリティ全てを手中に収められるやべぇオブジェクトだ。
見た目は、ちょっと不良な初音○クみたいな感じ。
この娘がeuclidで俺がketerかぁ。
『少なくともお前の不利益になるようなことはしねぇよォ。むしろ新天地に赴くお前をアシストしようとしてんだぜェ。』
「おお、それはありがたい。」
『よろしくなァ。』
あ、そうだ。
「じゃあ、アイって呼ぶわ。」
『ん?あぁ名前かァ。頼んでないのにつけてもらえるとァ、こりゃあたしが将来の嫁さんかねェ。』
「お前本部でそれ言うなよ絶対。」
地獄絵図が完成しかねない。
『本気、なんだけどねェ。』
「なんか言った?」
『いいやァ?』
っと、そろそろ日本か。行きますかぁ。
───────────────────────
歓迎もそこそこに、早速実験だァよ。
飛行機の中で死ぬほど寝てきたから眠気はないしお目目はぱっちり。いつでも行けるでぇ。
お相手は、
SCPー040ーJP ねこですよろしくおねがいします
オブジェクトクラスは、safe。
JPって言うのは、JAPANの略。財団の支部に収容されたSCPには、その国の略称が後に付くらしい。
さて、このSCPの異常性だが、
まず、このSCPは、井戸だ。猫じゃない。
じゃどこが猫なんだよ!っと、思ったんじゃないですかね?
実は、この井戸、中を覗くとねこが見える。
猫じゃなくて
しかも、他人には見えないらしく、一度見たらイエネコが全部この
加えて、
これを、ミーム汚染、と言うのだと。
ともかく、このSCPに殺傷能力ないので、一応安心して覗きに行ける。
『朱里くん、もう一度言うけれど、間違っても井戸の中に居た生物の存在を我々に知らせようとしないでくれよ。』
「うっす。」
さて、博士の発破も喰らったことだし、いざ鎌倉!
覗いてみたはいいけど・・・。
じーーーーーー。
『じーーーーーー。』
ねこはいませんでしたが、おんなのこがいます。
じーーーーーー。
『じーーーーーー。』
おんなのこがこっちをみてきます。
じーーーーーー。
『じーーーーーー。』
かわいいです。
『朱里くん、その、そろそろ反応が欲しいんだが。』
「あ、うっす。」
インカムの声に返答して、おんなのこに問いかける。
「何でそんなとこにいるの?」
『知らない。気づいたらここに居た。ここに来る以前のことも、そもそも
「ふーん。」
じーーーーーー。
『じーーーーーー。』
・・・・・・。
「一緒に来るか?」
『行く。』
───────────────────────
自室にて。
この
ちなみに、井戸からこの子が出てきて、俺にくっ付いてることは、誰にも言っていない。知らせるなって言ったのはあっちだからなぁ。
『そういえば、
「神谷 朱里って言うんだ。」
『ふーん。ねぇご主人。』
「名前教えた意味。」
自由、マジで猫みたいだな。
『はぐっ、もぐっ。
「おう。」
『でも
「ふむふむ。」
『だから、ゴクンッ、これから、いっぱい、いっぱい、教えて?』
「あいよ。」
こうやって、まずは相手を知ろうとするあたり、本部のオブジェクトたちより良識はあるのかなぁって思う。
ただ、
「俺の煮物つまむのやめてくれね?」
『
「うんそうだねー。」(手のひら返し)
動物好きな人間は、猫と犬には敵わないと思うんだ。
『ご主人、これ何?』
「それは里芋。」
『じゃあこれは?』
「それはこんにゃく。」
『これは?』
「人参。」
『
「全部はやめて?」
静かだけどよく話す、なかなか不思議な娘だなぁ。
『ご主人、物知り。』
「物知りじゃなくて、これ常識。」
『・・・
「ない。だから、今学んでんだろ?」
『ん、
うんうん、子供は学んで、遊んでるのが一番だよ。俺もまだ子供だけど。
『イチャつきやがって、あいつらに報告してやろォっとォ。』
「あ!お前!それはやめろ!」
本部が崩壊したら、俺のせいになんのかなぁ。
(SCPー040ーJP)
ねこはいます。名前聞いておいてご主人と呼ぶ自由猫。今はものを覚えるのが楽しくて仕方ない模様。
あと単純にご主人が好き。
よろしくおねがいします。
アイ
(SCPー079)
朱里(の携帯)に着いてきた唯一のSCP。なお本体は本部に在住。
名前の由来は、A(ア)I(イ)。
別にキズナ何某は関係ない。
神谷 朱里
苦労人。
tkzkさん
誤字報告ありがとうございました
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SCPー079 作者 不明
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おもちゃの恐竜と戯れる実験
正直、廊下の男と迷った。
はい、ごめんなさい。
ガッツリSCPの名前間違えてました。
イルミネーション→イミテーション
でした。
日本支部、なんというか、恐ろしくブラックだなぁ。
かなりの頻度で実験が行われている。一日二回とか余裕でやってる。って言ってもまぁ、女の子相手じゃなくて、現象だとか文字だとかのSCPが相手だけど。
例えば、
【この漢字の形を正確に教えてくれ。】
【これは、戦う?いやでもちょっと違うな。】
【・・・異常はないか?】
【いや、ないっす。】
【それ、読んだら識字能力失うって異常性持ってるから。】
【なんてもん読ませてんだ!!】
とか、
【このサイトで動画制作を依頼してくれ。】
【いやこれ、1800円って書いてる。】
【こちらで払うから。】
【ふーん・・・。え、できるのはやっ・・・。】
【・・・どうだ?】
【なかなかに凝ってますね。この予告編風の動画、主人公俺ですか?すげえ。】
【それだけ?】
【あ、はい。】
【・・・実験は終わりだ。】
【せめてこれの異常性教えろよ。】
って感じ。
そういえば、あの動画の後に『I Love You』ってあったけどなんなんだろ、あれ。
『ご主人、大丈夫?最近ずっとお疲れ。』
「うん、大丈夫。じゃ、実験だから、大人しくしてろよ。」
『うん。』
『おいおいあたしにゃ一言もなしかァ?』
・・・あ〜、そうだった。
「行ってくるよ、アイ。」
『行ってらっしゃ〜い。』
うし、行くか。
───────────────────────
今日は珍しく、事前にお相手のことを教えてくれた。
SCPー173ーJP ー恐竜ーイミテーション
日本製のおもちゃの恐竜、らしいけど、写真越しの姿だと、周りにおもちゃを従えた女の子だった。
「なんで女の子なのに恐竜と?」
「おもちゃでできた部分がその少女を中心に結合すると、恐竜になるからだな。なにかない限りは、常にこの姿で過ごしている。」
そう言って差し出された写真には、
「うおっ。」
しっかり恐竜だった。
さて、肝心の異常性だが、おもちゃのガチャガチャって鳴る音と、この女の子自身が放つ声を聞くと、だんだんこのおもちゃの中に入り込みたくなり、
最終的には、自分の体が壊れるのも顧みずにおもちゃに入っていくのだと。
この時、この異常性にかかった人物は、おもちゃ達を、
「好きだったおもちゃ」「なくしたおもちゃ」
などと認識するらしい。
あ、この娘目当てじゃないんだ、って思ったのは俺だけだろうか。
じゃ、行くか。
───────────────────────
「いらっしゃい。」
「いらっしゃいました。」
凛とした声を発する、おもちゃの恐竜に出迎えられる。ガチャガチャという普段なら不快な音が、何故か心地よかった。
そのまましばらく眺めていたら、
「・・・えい。」
不意に恐竜に覆い被せられた。
え?
「ちょっ!待っ!」
なんでぇ!?
「ぷはぁ!」
どうにかおもちゃを掻き分けると、恐竜の体の中に、空間があった。
息苦しくはあったけど、ぬいぐるみとか、そういう柔らかいものに囲まれていたから、痛くはなかった。
「ふふ、ごめんね?この中に案内したくて、ちょっと強引な手を使っちゃった。」
その娘は、綺麗に笑っていた。
おもちゃでできた椅子に座って、カラフルな床につくほど長い髪を持ち、万華鏡のような瞳をこちらに向けて、
一見軽い印象を受けるその姿は、不思議と、彼女の纏う令嬢のような雰囲気と調和していた。
初めて見るはずのその姿は、
どこか、懐かしかった。
「これ、外で話せばよかったんじゃ。」
「だって、博士たちに聞かれたくなかったんだもん。」
そう言うと、彼女は俺の耳に嵌っているインカムを取り外し、そこら辺のおもちゃに捨てた。
数秒後、なにか機械類が壊れる音が聞こえた。
あれ、幾らしたんだろう。
「それじゃあ、名前からね。付けてくれるんでしょ?」
「え?なんで知ってるの?」
「アイって名乗る娘から教えてもらったの。」
え?あいつここのセキュリティに侵入してたの?
まぁそれは置いといて。
名前かぁ、どうしようかな。
恐竜、おもちゃ、イミテーション・・・。
あ、
「ミイ。」
「ミイ、か・・・うん、気に入った。」
「それは良かった。」
「それでは改めて。」
そう言うと、彼女は俺に手を差し出して来た。
「はじめまして。私はミイ。」
「はじめまして。俺は朱里、神谷 朱里だ。」
俺は、彼女の手を取った。
───────────────────────
彼女の懐かしさからか、それともその話しやすさからか、いつも以上に他愛もない話をした。
「───だって。俺が文字読めなくなったらどうするつもりだったんだろ。」
「その時は、私や君の周りに居る女の子たちが世話してくれるでしょ。」
「あまり迷惑はかけたくないんだけどなぁ。」
「好きな人が相手なら、きっと、少しは迷惑かけて欲しいはずだよ。私もそうだしね。」
とか、
「いいなぁ、私も君の手料理食べてみたい。」
「そんなに美味くないと思う。」
「
「それなら、今度弁当持ってきてやろうか?」
「ほんと!?楽しみにするね!」
とか。
いつもは落ち着いてるけど、たまにテンションが昂るのがまた可愛い。
と、話し過ぎたかな。
「そろそろお開きだな、皆心配してるだろうし。」
「そうだね。ごめんね?話し込んじゃって。」
最初に会った時もそうだけど、ごめんね?って可愛すぎてなんでも許せるわ。
ミイが、出口を作ってくれる。
「それじゃあ、またな。」
そう言って、帰ろうとしたとき、
「あ、ちょっと待って。」
「ん?どうし
頬にキスを落とされた。
「キス、初めてだよね?一番、貰っちゃった♡」
「・・・あ、そう。」
放心、驚くことも出来なかった。
少しして、頬を赤くして、そのまま帰った。
『ご主人、これ誰の匂い?』
『おい、なんで頬に他の女の
あのとき、ファブ〇ーズをかけて頬を洗わなかった俺を殴ってやりたくなった。
ミイ
(SCPー173ーJP)
世間知らずのお嬢様的お姉さん的歳が近い妹的SCP。
ファーストキス(頬)の保持者。
生まれて初めて嫉妬を覚える。
アイ
揶揄ってやろうと思ったけど普通に頭にきた。
神谷 朱里
全自動修羅場生成機。
トイレの紙が無い時の絶望を司る神さん
えりのるさん
0085さん
誤字報告ありがとうございました。
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SCPー173ーJP 作者 soilence様
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SCPー079 作者 不明
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電子的なワンちゃんと戯れる時間
ミイとの一件も終わり(心身ともに検査されたけど)、色々と省いた会話内容を報告したところ、特例でいつでもミイと接触しても良くなりました。
やったぜ。後で弁当持ってこーっと。
『あ!やっとみつけた!』
突如、そんな幼い声がした。
「
『呼んでないよ?』
「うーん、それじゃあ気のせいかな?」
空耳かぁ。疲れてんのかね。
『きのせいじゃない!きのせいじゃないよ!』
「へ?」
『にゃ?』
声の発生源はスマホだった。
見るとそこにはアイとは違う女の子が。
・・・はい?
『ご主人、新しい女?』
「言い方。」
ジト目やめてください。
『コイツ、セキュリティを食い破って、いや、掘り進んできた、のか?』
アイでも驚いてるってことは、ただのウイルスってわけでもないのか。
女の子の見た目は、黒髪ショートでブロンズの瞳を持った活発犬耳ロリ。しっぽもついてる。
『えへへ〜、そんなにみられたらはずかしい〜よ〜。』
可愛い。
『とりあえず、話を聞かないとなァ。』
「そうだな。」
てことでとりあえず会話中・・・。
「要するに、君はSCPで、インターネット上の存在ってこと?」
『そういうこと!』
この子すんげー純粋だわ。
「それで、名前は?」
『えっとね、えっとね、SCPー2000ーJP!』
「アイ、記事探せる?」
『もう見つけてあるぜェ。』
さすがアイちゃん、略してさすアイ。
さってと、読んでみますか。
この子は、SCPー2000ーJP 伝書使
オブジェクトクラスはThaumiel。
Thaumielってのは要するに財団の切り札みたいな感じ。それこそ、世界崩壊シナリオに対抗できたり、そもそも世界を創り直せたりする。
んで、この子の異常性は、ネット上を自由に動き回れること。自分にとって最も重要な情報の存在地を
また、この子が掘った穴、通称セキュリティホールは、クリックなどをすると、その道筋を辿ることが出来る。
というわけで、ちょうど記事に空いてるセキュリティホールを辿って行きたいと思います。
『読みにくい欠損はあたしが補填してやるよォ。ま、推測混じりだけどなァ。』
「十分十分。」
───────────────────────
どうも、辿り終わりました。
涙腺がぶっ壊れたせいで涙が止まらないです。
この子がThaumielなのも納得だわ。
『ななな!なんでないてるの!?どこかいたいの!?』
『痛いんじゃねェよォ。あいつは、お前のために泣いてんだァ。』
『そうなの?』
『そうなんだよォ。』
うっし、泣き終わった。いつまでも泣いてるわけにはいかないからな。
「とりあえず、呼び名決めるか?」
『よびな?ぼくのなまえはSCPー2000ーJPだよ?』
「あー、じゃなくてな。渾名って言ったらいいのかな。SCPー2000ーJPって呼ぶとなんか事務的って言うか機械的って言うか。」
そういうと、伝書使(仮)は少し顔を曇らせる。
ふむ、もしかして、
「五條さんに貰った名前で呼ばれたい?」
『うん!』
「そっかぁー・・・。」
あかんこの子が健気すぎてまた泣きそう。
うーん、よし、
「2000ちゃん!」
『ふぇ?』
どうにか妥協点を探そうと思います。
「これならどうだ!」
『うーん、JPって付けて!』
「じゃあ2000ーJPちゃんだ!」
『それがいい!』
妥協点発見。
『それじゃあ、ぼくはなんてよべばいい?』
「好きに呼んでいいよ。あ、俺は神谷 朱里な。」
『
『オールド・AIのアイだ。』
と、三者三様に名乗ると、2000ーJPちゃんは俺を指さし、
『かみやさん!』
次に
『
最後にアイを指して、
『アイちゃん!』
『なんであたしだけちゃん付けなんだよォ。さんだろォ?』
『だめ?』
『もちろんいいぞォ。』
チョロいなこのAI。
『やったぁー!』
あ、アイに抱きついた。
アイもアイで満更でもない顔してる。
「さてと、そろそろ遅いし、お家に帰りな?」
『えー、もうちょっと!』
「だーめ、また来てもいいから、な?」
『うぅー、分かった・・・。』
『あたしが送ってやるよォ。』
さて、飯食って風呂入って寝よ。
───────────────────────
ごじょうさんへ
まえにごじょうさんがいってた、やさしいひとをみつけました。えーあいのおねえちゃんと、
それでね?ぼく、きめました。
ぼくはそのひと、かみやさんといっしょにいきます!
ぜったいしあわせになるね!
2000ーJPちゃん
(SCPー2000ーJP)
ネット上を回り回って朱里をみつけた犬系(物理)ボクっ娘。朱里とアイに懐いた。
健気可愛い。
アイ
2000ーJPちゃんに対してはチョロイン。
可愛いけどちょっと複雑。
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SCPー2000ーJP 作者 WagnasCousin様
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SCPー079 作者 不明
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SCPー040ーJP 作者 Ikr_4185様
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アクセス不許可にアクセスする時間
日本での実験は全て終了し、一週間後に帰国することが決定しました。
日本人がアメリカに帰国するという矛盾。
時間が空いているのは、久しぶりの日本だから楽しんで、という建前で、色恋沙汰の面倒事を片付けてこい、ってことらしい。
サーセン。
ってことで、これから会えなくなるであろうミイのところに話しに行くと、
【はいこれ。】
【これは、通信機?】
【おもちゃのね。これなら、会えなくても話せはするでしょう?】
とのことです。
あと帰り際におでこにキスされました。
あ、それともうひとつ、2000ーJPのことだけど、あの娘の担当者が直々に訪ねてきて、
【その子を頼む。】
って言いながら頭を地面に擦り付けて土下座してきました。もちろん二つ返事でOK。
むしろこっちからお願いしようと思ってたってことを話したら、めちゃくちゃ感謝された。
さて、図らずとも面倒事の後片付けが一日足らずで終わり、残り六日間フリーダムなわけだけど、
「探索、行っちゃう?」
『さんせー。』
『あたしも行くよォ。』
『ぼくもぼくも!』
即席探検隊の完成である。
───────────────────────
やってきました、サイトー8141。
このサイト、現在閉鎖されており、その情報の一切が規制されている。しかも、財団トップレベルのセキュリティでもって。
気になるよね!(狂人)
でもさすがに危なくなったら逃げる。
そこら辺は俺自身の危機察知能力を信用してるし、何より俺に着いてきてる
では、行こうか。
『ハッキング完了したぜェ。ちゃーんとバレないようにしたからよ、安心して行きなァ。』
さっすがアイちゃん、電子上では頼りにしてます!
さ、ごかいちょ〜・・・。
「うっ。」
目に映っ赤時化たのは、一面の夜薙げ血。そして、死体たちだっ緋色の鳥よた。
噎せ返る草食みような死臭に満たさ根食みれており、でもどうしてか、
逃げるという選択肢は、気を伸ばせ取れなかった。
「っは!!」
正気に戻り、周りを認識する。
俺は、草原に立っているようだった。
大地は
地平線に果てはなく、もちろん空にも果てはなく。
誰もいない荒野でただ一人。
なのに、なのに、だ。誰かが来るという確信があった。
背後で、ナニカが降り立つ音がした。
「ようこそ、私の世界へ。」
透き通った、でも熱の篭った声を発したその少女は、
その姿は、正しく、
「・・・緋色の、鳥。」
「そう呼ばれるのはちょっと来るものがあるね。」
綺麗に笑う彼女に見惚れる。
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「そうだねぇ・・・。」
顎に手を当てて考える仕草をした。
「じゃあ、君の名前から少し貰って
「じゃあ、
「君が好きだから、じゃあ理由にならない?」
「これ以上ないくらい納得できる理由だな。」
「でしょう?」
彼女がくすくすと笑う。
つられて俺も笑う。
「俺は、まぁ知ってると思うけど神谷 朱里。番号はー、あー、まだ決まってないんじゃなかったかな。オブジェクトクラスはketer。よろしく。」
「私は、
「ところで、ここは?」
「私の世界。認識災害の一種だよ。」
「なーるほど?」
よく分からないけど、彼女といるこの空間は、心地よくて、安心できる。
だから、外にいた死体たちも、床一面の血も、全部嘘なんだ。
「嘘じゃないよ。あなたは正しい。」
「・・・嘘だって、言って欲しかったなぁ。」
思い出した。
前にも、こんなことをアベルに言われた。
「もっと私たちを怖がって。そう言われたの、忘れてたんだ。」
「あぁ、忘れてた。」
俺は人間だから、もっと異常を恐怖しろ。
なんで、忘れてたんだろう。
「でも俺は、もう
「・・・そっか。」
「だからさ、もしまた俺が忘れそうなとき、俺にまた思い出させてほしいんだ。」
「ふぇ?それって?」
本来なら怖がらなければいけない相手に、手を差し出した。
「俺と来てくれないか?もちろん、人は殺しちゃダメだけど。」
「断る理由は、ないかな。」
───────────────────────
「今度こそ、現実だよな?」
気づけば自室だった。
『ご主人、やっと正気に戻った。』
「アイと2000ーJPは?」
『先に
「事実なだけになんも言えねー。」
辛い。
『そういえばご主人、その
「ん?あぁ。俺の教訓を教えてくれる娘だよ。」
『・・・ふーん。』
ジト目やめて?
って、感じで恋人扱いしてくれないよね、きっと。全く私だって乙女なのに。これじゃ私、他の子に妬いちゃうなー。
でもいいよ。いつか君の
私が形を得るまで、待っててね?
(SCPー444ーJP)
一歩後ろで待っておいて隙あらばいいとこ持ってくタイプ。略奪愛とか好きそう。
神谷 朱里
名前の一部をあげたら苗字も貰われそうになっていることに気がついていない。
annpannさん
えりのるさん
誤字報告ありがとうございました。
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SCPー444ーJP 作者 locker様
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お医者様と戯れる?実験
詳しい人教えてクレメンス。
はい、帰国しました。
職員の出迎えはなし。それどころかほとんどの障壁が閉まってる。まぁ、当たり前といえば当たり前だ。
え?なんでって?そりゃまぁ、
収容違反のオンパレードになるからさ。
「お帰りなさい朱里さんあなたのいない日々は寂しかったですよここから抜け出して朱里さんに会いに行こうって何回思ったことか逃げ出さなかったこと褒めてくださいよ朱里さんはぁはぁいい匂いするよ暖かいよ朱里さん朱里さん朱里さぁぁん・・・。」
一人目。
いつの前にか背後にいて抱き着きつつ、息継ぎひとつなく話しまくるノア。あなたいつから気配遮断できるようになったの?
「あぁぁぁぁかぁぁぁぁりぃぃぃ!!!」
二人目。
「会いたかったぞ朱里ぃ!!」
ものすんごい速さで施設を駆け抜けてきて、俺の体に負担がかからん程度にタックルするルイ。途中
「おかえり、朱里くん♡」
「お兄ちゃん、おかえり〜。」
三人目と四人目。
天井を切り裂いて降りてきたアベルと、アベルにお姫様抱っこされてる幼女ちゃん。あ、幼女ちゃんポ○チ食べてる。お土産で買ってきたのに。
『うわぁー・・・。いや知ってはいたけど相変わらずヤベェなァ。流石のあたしも引くぞコレは。』
『ご主人、
俺は、もう慣れたよ。
『なになに?なんのはなし?ぼくにもおしえて?』
『朱里も苦労してるって話さ。』
でも相手は美女や美少女なのでOKです!
『朱里くん、無事に到着したかな?』
「五体満足ですよー。」
『それは良かった。』
ミイからの通信を返し、
『本部って、賑やかだねぇ。』
「全くだ。」
キャリーバッグの中の赤い羽根に返答する。
「お兄ちゃん、さっきから誰とお話してるの?」
あっ。
あの後、めちゃくちゃ質問責めにあった。
さて、久々に本部で実験だよ。
なんでも、俺との面会を望んでるオブジェクトが相手だとか。
SCPー049 ペスト医師
オブジェクトクラスはeuclid。
人型で、黒い外套を着て、ペストマスクを着けた女性。その異常性は、触れた生物を死に至らしめ、治療という名目でゾンビに改造すること。
恐怖は、ちょっとだけ。いや、ちょっとしか、かな。
ダメだねぇ、ちゃんと怖がんないと、アベルと
とりあえず、逢いに行くかな。
話を聞く限り、あっちは俺を殺さないだろうから。
───────────────────────
「あぁ、勿論殺さないとも。」
「いやまだ何も言ってない。」
開口一番、さっきまで考えていたことを肯定されてビビってます。
「そうかね?いや、おそらく君がききたかったであろうことに回答したまでだが。」
「いやそうですけど。」
あれ、俺ってそんな分かりやすかったっけ。
「さて、早速本題に入ろうか。」
「あ、はい。」
「最初に言っておくと、私が君を傷つける意思はなく、むしろ護ろうとしている、ということを記憶してもらいたい。無論、君への治療はしない、いや、する必要がない。何故なら君には抗体があるからだ。」
「では、どうして面会を望んだんですか?」
「私なりの意思表明をしたくてね。」
「意思表明。」
「そうだ。私は、君にある手術を施すつもりだ。いや、安心したまえ。君を死なせようと言う訳ではない。君を死なせないための手術だ。我々のような異常な存在を除いて、この世のあらゆる生物には死がある。君にもだ。事故に遭う、殺される、病に侵される、或いは、寿命を全うして。ここまではいいかな?」
「はい。」
「私には、それが耐えられない。君が侍らせている者たちもそうだろう。君には、死んでほしくないはずだ。だからこそ、私は、君から”死”という病を除こう。そのために私は、何度も何度も何度も何度も実験を重ね、何度も何度も何度も何度も手術を繰り返してきた。もう少し、あと少しなのだ。」
あれ?トリップしてね?
「あ、あの〜。」
「思えば私は産まれたその日から君の存在を予知していたのかもしれないな。どうしてか不思議と不老不死を研究しなければならないという使命感に身を焦がされ現代までずっと続けてきた。そして今!君が私の前に現れたことによって私の研究に意味ができた!」
トリップしてらぁ。
「あの〜。」
「私は!ずっと君という存在を!私が愛すべき存在を求めていたのだ!あぁこの高揚感が心地よい!私はようやっと私と成ったような充足感が堪らない!」
ちょっと声を大きくしてみるか。
「あの〜!ふぇッ!?」
ドンッと、壁に押し付けられる。
壁ドン、される側になるとは思わなんだ。
「もう少しだ、もう少しもう少しもう少しもう少しもう少しもう少しもう少しもう少しもう少し!」
ペスト医師は、仮面を少しずつずらし、そして顔を近づけてくる。
「もう少しで、君に尽きることのない愛情を、永遠に注げるようになる・・・。」
病的に白い肌と、フードの影から輝く、昏い金色の瞳がやけに印象的だ。
「君は、我々異常のために、生き続けなければならない。」
「そして、それができるのは私だけ。」
「だから、待っていてくれたまえ。」
「私の名でも考えて、ね。」
「・・・はい。」
危うく新しい扉開きかけた。
ペスト医師
(SCPー049)
朱里が初めて会うタイプの狂った娘。スレンダークール系美人。でも狂ってる。
Kクラスシナリオを引き起こしかねない朱里の死亡を防ごうとしてるので、一応有能枠に当てはまる。
神谷 朱里
関わるSCPが
Othuyegさん
えりのるさん
誤字報告ありがとうございました。
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SCPー682 作者 Dr Gears様、Epic Phail Spy様
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SCPー053 作者 Dr Gears様
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SCPー096 作者 Dr Dan様
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SCPー076 原著 Kain Pathos様
改稿 Crow, DrCle様
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SCPー173ーJP 作者 soilence様
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SCPー444ーJP 作者 locker様
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SCPー2000ーJP 作者 WagnasCousin様
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SCPー079 作者 不明
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SCPー040ーJP 作者 Ikr_4185様
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動く石像と戯れる実験
昨日は、まあ、軽く恐怖体験をしましたね。でも美人さんだったので俺的にはOKです!
『だいじょうぶ?かみやさん、とってもうなされてたよ?』
大丈夫だよぉ(震え声)
それはともかく、今日も今日とて実験ですね。
今回のお相手はこちら。
SCPー173 彫刻-オリジナル
オブジェクトクラスはeuclid。
このオブジェクトは、彫刻という名の通り石像であり、見ている分には一般的なそれ。でも誰もこの娘を見てないと、なんと動き出しちゃうんですねぇコワイコワイ。
しかも、動き出したら人の背後に回って首をゴキッとされるらしいです。
それではそろそろ行きますか。
『はい、行ってらっしゃい。』
「最近送り出し方雑になってません?」
───────────────────────
部屋に入ると、真ん中に女性の石像があった。目は閉じており、棒立ちしている。クリーム色の髪は腰あたりまで伸びており、顔には紅いタトゥーのようなものが書かれていた。
近づいて見ると、身長は俺より少し高いくらいだと分かる。あと、お胸が大きい。とっても大きい。
外見情報はこれくらいかなぁ。
それでは早速目を瞑っていきましょう(狂気)
・・・。
首に手が回される。折られるかなって思ったけど、これは・・・抱きつかれてる?
ちょっと気になって目を開けようとしたら、石像とは思えない柔らかさの手が、目を包んだ。
”だーれだ”ってやるやつみたいな感じ。
「目、開けちゃダメ。」
「あ、はい。」
めっちゃ綺麗な声で囁かれたら、みんな従っちゃうと思うんだ。
そんなことよりお胸が当たってるぅ!
「あの〜、当たってるんだけど・・・。」
「ん〜?あぁ。」
なんのことを言っているのか理解しただろう彼女は、さらに胸を押し付けてくる。
いや、あの。
「わ、わざと?」
「勿論♪だって好きでしょ?こ〜れ。」
はい大好きです(正直)。
とはいえ、さすがに抱きつかれることには慣れている。今回は、立派なお胸様に驚いただけだ。
「むー、やっぱり慣れてるんだ、抱きつかれるの。」
「いやまぁ、こういう実験してたら、ねぇ。」
「ふ〜ん。」
そう言いながら、彼女は右腕で目を覆えるように動かし、左腕を俺の脇の下を通すようにして、より密着して抱きついた。
「ねぇ、もしさ。」
「ん?」
「今、君の瞳を潰したら、君を独占できるかな?」
「は?」
「だって君が目を開いたら私は動けなくなっちゃうでしょ?」
「うん。」
「だから、君の瞳を潰すの。それで一生私が看病してあげる。あぁ、なんて素敵♪」
「うん?」
なんだろう、この、絶妙に会話の噛み合わない感じ。天然とかそういうレベルじゃなくて、どっか感性が狂ってる感じ。
「それにね、私、他の娘より遅れてあなたに出会ったでしょう?そうすると、触れ合う時間が他の娘よりも短くなっちゃうじゃん。」
目を覆っていた右腕が離され、左腕と同じようにしてより強く抱きついてきた。
「それって不公平だと思わない?」
「あー、一理ある。」
「でしょ!だから私はあなたといっっっぱい一緒に居たい!」
「ふむふむ、それで?」
「あなたの瞳を潰すの♪」
「なるほど。」(思考停止)
どうやらこの娘の脳内は、
ということらしい。
うん、でもさ。
「俺の瞳を潰したら、多分治療するために連れてかれると思うんだけど。」
「あ・・・。」
「いや分かるだろ。」
前言撤回、この娘天然だわ。確かにズレてるとこはあるけども。
「それにさ、別に今回限りでお別れって訳でもないし、またここに来るからさ。」
「むぅ、でもその間あなたに会えないじゃん。」
「うーん、電話でもさせてもらおうか?」
「生じゃないとやだ!」
「言い方。」
・・・。
しゃーないな。
「博士。」
『む?君から通信とは珍しい。どうした?』
「今日はこの娘の満足がいくまでってことでいいっすか?」
『ふむ、致し方ないか。』
ということで、
「はい俺の一日ぜーんぶあげます。」
「いいの!?やったー♪」
ちょっとした特例です。そっか、そういう不公平さを訴えてくる娘もいるんやなぁ。勉強になった。
あれ、そういえば、アイとワンオーワンで話したことってあまりないな。今度時間を設けるか。
「他の娘のこと考えてたね?」
「君サイコマンティスかなにか?」
なんか好みのゲームとか当てられそう。
それはともかく、
「怪我させる以外なら何でもしていいよ。」
「何でもシていいの?」
「ごめんそれも除くわ。」
戦争起きかねねぇ。
あ、そういえば、
「名前、どうしよっか?」
「待ってました♪」
「Youなんで知ってるの?」
「噂になってるよ、あなたごと。」
「俺ごと。」
うーん、オリジナルから取ってリナとか?それとも”彫”を少しいじってチェンにする?いや中国感すごいな。
うーん。
ん?
「イナミ。」
「まさか番号から取られると思わなかった。」
「いやなんか、付けなきゃいけない気がした。」
「え、怖っ。なんかのミーム汚染?」
「いや俺耐性あるんだけど。」
・・・。
まぁいいや。
「よろしく、イナミ。」
「よろしくね、朱里くん♪」
この後一日中抱き枕にされた。
この娘の性格めちゃくちゃ悩んだんだけど、皆さんの中じゃどんな感じの性格でした?ちょっと知りたい。
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SCPー173 作者 Moto42様
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閑話休題
しばらくこんな感じのが続くかも。
──ご飯のお話
財団には、職員と一部のオブジェクトが使用できる食堂がある。勿論俺も使える。メニューは基本アメリカンだけど、頼めば和食も出してくれる。
また、受け取った食べ物を収容室に持っていき、そこで食べることもできるので、ほぼ毎日収容室で食べている。まぁ許可されてるのは俺だけなんだけどさ。
ということで、
「ルイー、いる〜?」
『ん、入っていいぞー。』
顔パスならぬ声パス。いや、いつだったか足音で分かるって言ってたな。
厳重な三枚の鉄製扉を越えて、ルイの元へ辿り着く。ご飯を安全な場所に置き、ルイに向かい合って腕を左右に大きく広げる。
「〜♪」
そうすると、抱き着いてくる。このハグは、ルイ、というか、オブジェクトに会いに行ったら絶対することになっている。
なんでも、【アカリウムの補給】とかなんとか。
なんだアカリウムって。
それはともかくご飯の時間。ルイはなんでも食べれるらしいので、何が食べたいか前に聞いたところ、俺と同じのがいいって言われたからな。
いやはや嬉しい限りだ。
今日のご飯はハンバーガー。いや、さすがに量は少なめ(アメリカ基準)。まともなハンバーガーなんて食べた日には胸焼け不可避だよマジで(経験済み)。
「はぐっ、もぐっ、もぐっ。」
「ガブッ、むきゅ、むきゅ。」
うん可愛い。俺いっぱい食べる女の子が好きなんだけど分かる?分かれ(豹変)。
「ごくん、はー。人間は嫌いだけど、人間の作る飯は美味いんだよ、ほんと。」
「分かる。」
ラーメン作り出した人は誇っていい。
「ん、朱里。」
「どうしたの・・・っ!??!?」
いきなり頬を舐められました。
「なななななにをなさるので!?」
「頬にマスタード付いてたぞ?」
「あ、そう・・・。」
全っ然気付かなかった。今、絶対顔真っ赤だこれ。恥っず。
───────────────────────
あーあ、やっちまった。
さっき朱里の頬を舐めたけど、別にマスタードなんて付いてなかったんだ。
ただオレが、朱里に近付きたかっただけ。
「うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ///」
朱里が去った部屋でゴロゴロと呻きながら転がる。
気付かれてないよな?今、絶対顔真っ赤だぞこれ。恥ずかし。
「はぁー。」
でも朱里、やっぱりいい匂いがする。
朱里から貰った上着を纏って、思った。
「そろそろ新しい上着貰おうかな。」
匂いが薄くなってきたから。
───────────────────────
──料理のお話
突然だが、俺は料理ができるようになった。というのも、気障っぽい男性職員から、家事はあらかたできるようになれ、と言われて学んだからだ。今では食堂の料理長並に、とは言えないものの、それなりに美味い料理や菓子類を作れるという自負がある。
という話をエルザ(幼女ちゃんの本名)にしたところ。
『ケーキ食べたい!』
とのリクエストを頂いたので、アイに手伝ってもらいつつ作ってきました。
「〜〜♪美味しい!」
それは良かった。あの、ところで、
「ほんと、とっても美味しいわ♡」
「なんでアベルがいるんすかねぇ。」
「収容違反したからよ♡」
あ、そっかぁ(諦め)
哀れ博士の胃は犠牲になったのだ。後でなんか差し入れしとこ。胃薬とか。
「それとも、ダメだった?」
「いや、むしろ俺とエルザで1ホール食べ切れないだろうから、ありがたいよ。」
「そう、それは良かったわ♡」
因みにケーキは、オーソドックスないちごを乗せたショートケーキ。意外と綺麗にできたな。
「ふふ、こうして見ると、まるで家族ね。」
「ん?姉と弟と妹、みたいな感じか?」
「あー、確かにそう見えるかも。」
だとしたら、いい感じの姉妹に挟まれてんだな、俺。
「何言ってるのよ。」
「へ?」
「エルザちゃんが娘で私と朱里くんが夫婦♡」
「おっと地雷かぁ?」
ほら見ろ、エルザの頬が膨れてる。俺の頬は赤いけど。
「
「あ、はい。」「ごめん。」
Euclidに制されるKeterって、なんだこの構図。
───────────────────────
──添い寝のお話
「朱里さん聞きましたよぽっと出の女と時間制限なしで遊んだらしいじゃないですかなんでですか私ではダメなんですかそれに最近あなたにまとわりつく羽虫が多すぎると思うんです確かに朱里さんはとても魅力的ですし朱里さん自身も女に甘いので多少は仕方ないんですけどでももう少し自重してくれてもいいと思うんですよいえやっぱりダメです全部私がやりますご飯も私が作ります掃除も私がします洗濯も私がしますなんなら夜のお相手だって・・・ですからもう私以外見ないでください。」
「要約して。」
「私だけを見てください朱里さん。」
「あ、はい。」
ノアの担当の方に、そろそろやばいからちょっと相手してきてと頼まれて来てみれば、ほんとにやばかったな。
しょうがない。
「ノアだけってのはちょっと難しいけどさ、できるだけ要望に応えるぞ?」
「あ、じゃあ添い寝してください。」
「意外にまともな回答で朱里さんびっくりだわ。」
最近ベッドの支給をお願いしたって言ってたけどこういうことか。
「はぁ、朱里さんの顔が近くにぃ。幸せですぅ。」
そんな淫靡なお顔しないでノアちゃんちょっとこっちも変な気分になっちゃう。
「・・・朱里さん。」
「どした?」
「・・・私って、重いですか?」
「別に?」
「え?」
いや確かに、重いかどうかで言ったら重いんだと思う。でも、それは飽くまで
だから、
「大丈夫、重くないよ。」
「・・・優しいですね。」
「俺が女の子好きなの知ってるだろ?」
「ふふっ、そうですね。」
「っ///」
ほーらまたそんな顔する。可愛すぎてドキッとするんだよ。
「なんだか安心しました。」
「そりゃよかった。」
「・・・それじゃあ、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ・・・。」
ちなみに皆さんどんなヤンデレが好きですか?
私は根暗依存型監禁系ヤンデレが好きです。
snaketailさん
誤字報告ありがとうございました。
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●●│●●│●│●●●●│●●●
あれは嘘だ。
要望が多かったので書きました。反省も後悔もしてない。
「なんだこれ。」
非番の日、自室で過ごしていたらノック音がしたので、開けてみるとクリップボードが置いてあった。それには紙が一枚挟まれており、記号やら絵やらが並んでいる。
多分なんかのSCPの記事なんだろうけど、文字がないということは、活字NGってことか?
しかしまぁ、
「収容不可で正体不明の人型、か。多分、俺と同じKeterなんだろ
う?」
急に周囲の景色が変わった。いや、俺が移動した?どうやって?
と、言うような思考は、『ぬちゃっ』という音で寸断された。音の発生源は俺のすぐ側。というか、見なくても分かった。
「何となくデジャブがあるなぁ。」
「〜♪」
手の代わりに触手を持ち、全身を真っ黒い外套で包み、そのフードを深く被っている俺より少し小さいくらいの女の子だ。
そこで思い出すあの記事、その中の罰点と一緒に描かれていた絵。
『このオブジェクトについて話すのは禁止』という意味を持ってたんだろうな。
それじゃあ俺は、攫われたのか、この娘に。
「〜〜♪───?」
「あぁいや、気にしないで。」
こちらを見て首を傾げる彼女になんでもないと応える。てかどんだけ深くフード被ってんだ。見上げられてるのに全く目が見えなかったぞ。
「どうして攫ったんだ?お前のことを話したり、書いたりしてる人間をさ。」
「???」
また首を傾げる彼女を見て、ある程度の推測を建てる。何かを聞いているってのが分かってるみたいだし、多分言葉は通じてるんだろうけど、『攫った』の意味が分かってないのか、それともあの行動が『攫った』ことだと思ってないのか。
「あー、じゃあ、どうしてここに連れてきたんだ?」
「〜!〜♡」
「なるほどね?」
身振り手振りで知らせようとしてくる。大体分かった(大嘘)。でもとりあえず友好的だってことは理解した。後、言葉が話せないってことも。
これじゃあコミュニケーションなんてできない。ので、話せないなら書ければいいってことで、文字を教えようと思います。
「無理やん。」
「〜〜・・・。」シュン
手元にはクリップボードと記事、シャープペンシルしかない上、自信を持って教えられるのは日本語だけ。せめて絵本でもあればなぁ。
「〜!」
と、頭を抱えていると、いつの間にかあの娘はそさくさとどこかへ行ってしまった。
あの、帰れないんですが。
「〜〜♪」
少ししたら戻ってきたので安心した。そして、何やら大きな袋(これまた真っ黒)を抱えていた。
覗いてみると、
「うぉ・・・。」
大量の本。辞書やら絵本やら歴史書やらが乱雑に集められていた。
「ありがと、これなら教えられそうだ。」
「〜〜♡」
頭を撫でてやると嬉しそうに体を揺らした。いや、可愛いな。
「それじゃあ、とりあえず五十音から・・・。」
───────────────────────
あれから体感で30分ほど。
『こんな感じ?』
「そうそうそんな感じ。」
覚えが早くて助かりますぅ。
日本語と英語まで(和英辞典を用いて)教え終わりましたね。日本の古文学にも興味を示してたけど、哀れ私は古典が苦手だ。また後でにしよう。
『そう言えば、なんでここに連れてきたの?って聞いてたよね?』
「あ、そうだそうだ。どして?」
『言葉教えて欲しかったからだよ!でもみんな怖がって教えてくれなかったの。』
「なるほどね?」
完全に理解した。自分のこと話してるから仲良くなれると思って連れてきたんだろうけど、実際こっちは攫われたって認識、しかも相手は収容不可の異常存在。
確かに怖いな。え、俺?いや、姿見ちゃったし、大丈夫かなって。
「ちなみに帰り方は?」
『私が帰してあげる!』
あ、任意じゃ帰れないんすね。ともかく帰る手立てはできたし、多分みんな心配してるだろうから帰るかな。何人か俺が消えると分かるって言ってたし。
『あの、また来てくれる?』
「当たり前、って言っても連絡手段がないし。」
どうしよっかな。こればっかりは簡単じゃないと思うんだが。
『私があなたの部屋にいればいいのでは?』
「おぅ・・・。」
最悪にして唯一の提案が挙げられました。もちろん承諾です。だってそれ以外の案なんて思いつかないからね!
「じゃあよろしく、
見たまんまの名前だけど、ちょっとオシャレに旧字にした。古典苦手だけど。
『くろ?私の名前?なんて書くの?』
黑、と書いて見せる。
『間違ってるよ?』
「こうやって書く場合もあるんだよ。」
『あのげんじものがたり?ってのに書いてあったやつ?』
「そうそう。」
因みに源氏物語の中には、かなりアブノーマルな趣味の男性が主人公の話があったりする。
「そろそろ帰らなきゃ。」
『了解!』
「はっ。」
さすがに二回目だから慣れた。けど、警報なってるからちょっと驚いた。
「朱里ぃ!!何処だぁ!!?」
「朱里さん?そろそろ出てきてください?でないと私は・・・。」
『説明しに行くの?』
「それしかないよなぁ。」
世界を担うって大変だなぁ。
・・・それにしても、部屋の前にこのクリップボード置いたの誰なんだろう。
神谷 朱里
またやらかした。なお、黑とは実質同棲することになるのでノアの病みは加速する。
黑
かわいい。朱里より少し背の低い女の子。文字を教えてもらうために朱里を自分の家に連れて行った。速すぎてルイもノアも攻撃することができなかった。
今回から記事のURLは設定の方に記させて頂こうと思います。
「やっぱりこっちに置いた方が見やすい」って方はコメントください。
-Reki-さん
えりのるさん
誤字報告ありがとうございました。
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SAN値ピンチと戯れる実験
そのー、なしで、いいっすか?
説得、ちょー大変だったね。
『別に
『本当だな!?本当にその程度なんだな!?』
『え?私あなたのこと好きだよ?』(カンペ)
『やっぱそういう仲なんだろ!!』
『違うってぇ!!』
とか、
『朱里さん、その女、誰ですか?』
『言語を教えてる生徒みたいなもん』
『でも同棲するんですよね』
『いやだから『するんですよね?』・・・はい』
『じゃあ殺します』
『ストーップ!!??』
とか・・・。
それはもう、大変、だったね・・・。
あと、バインダーのこと、博士に言ったら頭抱えてた。なんかこんなことする人に心当たりがあるって。あと、もっと注意深くなれとも言われた。
さて、今日も元気にクロステストだよ。
あ、クロステストってのはあれね、SCPとSCPを会わせるやつね。最近名前聞かされた。
それはさておき、今回のお相手は、
SCPー2662 くとぅるふ ふっざけんな!
オブジェクトクラス Keter
ふざけた名前の割にKeterである。あとなんか一部だけ太文字。
見た目が異常で、遠目だとなんか人っぽい程度の人型で、背中にタコやらイカやらの足が約20本ほどあるらしいです。
で、肝心の異常性は、自分を信仰する宗教団体を作り出すこと。しかも無自覚どころか本人迷惑に思ってるらしい。
なんだ宗教団体か、とか思ってたらやってる事やべぇや。
子豚目の前で解体したり、
食人したり、
その、[自主規制]とか[自主規制]したり・・・。
はい、完全にクトゥルフです本当にありがとうございました。
そりゃくとぅるふふざけんなとか言いたくなるわ。不憫すぎる。
「私たちの目から見ても彼女が可哀想だから、元気付けてやってくれないか?」
「うっす」
さて、行きますか。
───────────────────────
「お、お邪魔しますぅ〜」
いや、なんかさ、神様っぽいから頭が高いとか言われそうでさ、頭低くしてるんだけど。
「ひぃっ!?お前正常な人間!?我のこと崇拝してない!?」
「あ、はい、正常です。ついでに精神とっても強いです、はい」
めちゃめちゃ怖がられたんだけど、人間トラウマになってんのかなぁ。
というか、見た目。めちゃめちゃ人型やん。触手あるけど。
身長は、2m超えてるかな。多分アベルより高い。
背中の触手を除けば全体的にスレンダーな感じで、アベルみたいに神秘的なタトゥーが彫ってある。
肌は特徴的な青色。瞳孔もタコみたいに横に切れてて、何より髪の色が光の当たり方でコロコロ色が変わってる。
ふむ、これはこれで良き。
「はっ!もしかしてお前がカミヤアカリ!?」
「やっぱり知ってんすねぇ」
恐るべしアイの情報伝達。神様相手でも通じてるとは。
「ど、どうしよっかな、甘えちゃおうかな」
「え?何ですか?」
「ぴぇっ!?な、なな、何でもないぞ!!それよりも、その・・・」
えぇー・・・急にしおらしくなったんだけど。こうして見るとただの女の子だなぁ。お手手と一緒に背中の触手でちょんちょんっていうやってるのとかもう、女の子やん(感覚麻痺)
「な、汝に我を甘やかす権利をやろう!」
ふむ、つまりは癒せと。
「分かりました、何します?」
「うぇ!?いや、その、突然こんなこと言われてたじろぐとか、ないの?」
「いや最初からそのつもりで来たんで」
不憫な娘は救われなきゃならないんだよなぁ。
「じゃあ、ご、ご飯、作って欲しいな〜」
「和食でいいですか?」
「和食!?いいよいいよ!我1回食べてみたかったんだー、スシとかミソシルとか!」
「寿司は無理かもですけど、味噌汁なら」
和食はね、自信があるんですよ。
ほら、最近だと家庭的な男子ってモテるんでしょ?だから覚えた。
え?古い?あっふーん・・・。
「すいません博士、俺の部屋からダンボールに入ってる食材持ってきてもらっていいですか?」
『分かった。向かわせよう』
日本支部に行った時に貰えてよかった。まぁ、実験で役立つとは思ってなかったけど。
「なぁなぁ、アカリって日本人なんだろ?」
「あ、そっすよ」
お、材料が届いた。
「日本ってどんなところなんだ?ちょっと行ってみたくてさ」
「うーん、実はアメリカに来たの結構昔で、日本の記憶が限定的なんですよね」
家族総出でアメリカに引っ越して、早6年。田舎で暮らしてた俺じゃあ、日本が誇る都会の華やかな暮らしは想像できない。
「そうなのか」
それでも、1つ、言えることがある。
「住むなら北海道ですね、寒いけど飯が美味い」
青森(元)県民の俺が言うんだから間違いない。魚介も良ければ肉も良くて野菜も良い。まじで外れないよ、あそこ。
「そう言うなら、いつか行ってみるかな」
ルンルン気分の彼女を見て、微笑ましいなぁと思うと同時に考えた。
あれ?これもしかして収容違反薦めてる?
・・・深く考えないようにしよう。
「そうだ、今更ですけど、なんて呼べばいいですか?」
「あー、そうだなぁ。・・・ヤガミってのはどうだ?」
「ヤガミ、ですか?」
何となく死のノートを思い浮かべてしまった。
「ほら、日本語の”神”ってGODの意味だろ。それで思いついたんだよ。お前のファミリーネームを逆にすれば、それっぽい感じになるんじゃないかって」
ヤガミ、ヤガミか。いいのかもね。覚えやすくて呼びやすい。日本人ならまあまあ親しみのある発音だしな。
っと、そろそろいいかな。味は・・・よし。
「はい、和食ですよ。あまり豪勢じゃないけれど」
メニューはオーソドックスに焼き魚と味噌汁、そして白米。結局コレが最強なんすよ。
「良い良い。元々、和食は質素なものだって知ってるからな」(ドヤッ
「それは良かった。じゃ、俺も食べますかね」
朝、食ってなかったんすよ。お腹ぺこぺこやで、流石に。
あ、俺の和食は、大好評でした。
───────────────────────
「まさかあんなに食が進むとは、和食とは良いものだな!」
「日本の誇りですからねぇ」
無形文化遺産は伊達じゃない。
さて、そろそろ時間かなぁ。
相手がKeterの割に、随分と平和に終わったなぁ。
ルイは(仕方ないとは言え)収容施設破壊したし、
アベルはルイ達と喧嘩したし、
緋のとこは死体転がってたし、
黑は帰ってきたらやばかったし。
なかなか波乱万丈だわ。
「それでは、そろそろお暇させてっ!?」
突然の警報アラーム。どうやら平和は過ぎ去ったようだ。
「朱里!隠れろ!」
『朱里くん!隠れるんだ!』
「え?え?なんすか?なんなんすか?」
「『狂信者どもだ!!』」
博士とヤガミ様の声が重なった。
「クソッタレめ!今来なくていいだろうが!」
マジで来んの?軽く人をころころしちゃったり人食ったり[自主規制]したりする人たちが?
「・・・朱里、やっぱり我の後ろにいろ」
「あ、遅かったかぁ」
何やら扉の前でガサゴソやってる音が聞こえるが、十中八九宗教団体の方だよなぁ。
・・・あんまり切りたくない手札だけどなぁ。
息を深く吸う。
「助けてぇー!!」
「うわ何!?」
恥も外聞もねぇなやっぱ。
俺の異常性の有効活用、助けを呼ぶ。
命の危険があったら使え、でもなるべく使うな。
博士の言葉だ。
え?命の危険じゃないだろって?
でも
出し惜しみなんてしてらんないよ。
結論から言うと、件の宗教団体は全員お縄となった。何人か死にかけたけど、まぁ誤差の範囲でしょう。
で、今回活躍してくれた娘には後々ちゃんとお礼に行くことを約束して、今は帰ってもらった。
「・・・あれくらい、我一人で十分だったが?」
後処理の様子を眺めながら、ヤガミ様が聞いてきた。
「そうだろうなーとは思ってましたよ」
「じゃあなんで助けを呼んだ?」
「それは、ヤガミ様が酷い顔してたからですね」
「は?」
「なんて言うんですかね。苦虫を噛み潰したような?蒼白?そんな感じでしたよ」
もしあのまま奴らが入ってきてれば、もっと酷くなってただろうね。
女の子のそんな顔は、出来れば見たくない。
「あなたが苦しむよりなら、俺が恥でも何でも受け入れますよ。ま、格好は悪いですけどね」
「っっ〜〜!!朱里ぃーー!」
「うおっふ」
いきなり抱きついてきたので転けそうになるけど、何とか耐える。ここで転べばほんとに格好がつかないぞ、俺。
「・・・その、さ」
「はい、何ですか?」
少しの間抱きついて、落ち着いたであろう彼女が小さく声を漏らした。
「また、来てくれるか?お前の和食が、その、食べたくてな・・・」
「勿論ですよ。辛くなったら呼んでください、またご飯作りに来ますので」
「そっか・・・ありがとう」
「え?何か言いました?」
「何でもない!」
神谷朱里
恥知らずのSCPホスト。根はお人好し。
うぶぁしゃぁぁぁぁ!!とは言わないし、そんなに頭も良くない。
ヤガミ様
冗談は通じるけど冗談にならないことされてた可哀想なクトゥルフさん。しっかりホスト神谷朱里に引っかかった幸せ者。
決して月と書いてライトと読んだり、藤原竜也が演じてたりしない。
¿¿¿さん
星海夜さん
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赦されない者の背を押す実験
なお低浮上。
あの宗教団体襲撃から数時間後、俺がお礼参りに回っていたときのことだ。
「カインに1度、あって欲しいの」
アベルに、そんなことを言われた。
SCPー073 カイン
オブジェクトクラスはEuclid
植物性のものを腐らせ、自分と周辺の土地を不毛の地にしてしまうという異常性と、自分への損害が相手に返される異常性を持つ。
また、記憶力が並外れており、財団が紙、電子以外の媒体として利用している。
比較的財団に協力的で、暴力を好まず、また人類にも友好的。
「どうしてこのカインって人のこと知ってるの?」
「それは・・・ごめんなさい」
「あ〜、無理に話さなくて大丈夫。分かった、とりあえず博士に相談してみるわ」
結論から言うと、クロステストが行われることになった。ただ少し懸念がある。
『SCPー073は、君とのクロステストに乗り気ではない。万が一彼女が害意を持っていたら、即刻逃げたまえ』
ううむ、いや、これもアベルの為。
意を決して扉を開けた。
黒褐色の肌に艶やかな黒い長髪、そして青い瞳。どこかアベルを彷彿とさせるその美しい姿に、ある仮説が確信に変わった。
「・・・君には会いたくないと、博士に伝えたはずだが?」
ここで結構長く働いてるお陰か、俺は人の、特に異常達の感情の機敏が少しだけ分かるようになったんだ。
だから、アベルが会って欲しいと言った理由を、会って一目で理解した。
カインはきっと、
───────────────────────
私の妹を、アベルを殺してから数万年の月日が経ち、私は、私の罪悪を理解した。
幾度の戦争を見た。幾度の消滅を見た。
そして、幾度の悲しみを見た。
道徳心を得た私は、私を嫌悪するようになった。
それからまた幾年か流れ、SCP財団と呼ばれる組織を知った。アベルもそこに収容されているらしい。
久しく会っていなかった彼女は、酷く、荒れていた。
穏やかな口調はそのままに、人を殺し、創造物を破壊し、戦闘を楽しんでいた。
全て、私のせいだ。
私が彼女を殺したから、彼女は、発狂したのだ。
だから私は君に期待したんだよ、神谷朱里。アベルの寵愛を受け、心を癒せる君に。
故に私は孤独に耐える、いくら君が恋しくても。
故に私は君を拒む、いくら君が愛おしくとも。
それなのに、君はどうして私にも手を差し伸べる?
───────────────────────
───ってことがあってね、それで友達が」
「いやちょっと待ってくれるかな?」
「ん?」
「いや、会いたくないって言ったよね?」
「言ったね、うん」
「じゃあなんで居座って世間話をしてるんだい?」
いや、ね?あのまま帰るわけにも行かないし、なんかこう、知らないフリして話してればいいかな〜って。
あ、ダメっすか。
「いつも優しいって有名なあなたが初対面の相手を真っ向から拒絶するって、さすがに理由が知りたくなるじゃん?」
「いや、好奇の前に不快になったりしないのかい?」
「あー、まぁそうだね」
別に拒絶はいいんだよ、その大元にある嫌悪がカイン自身に向いてるから。いやむしろ良くねぇじゃん。
「それで、どうして?」
「・・・単純に君が嫌いだからさ」
嘘だよなぁ。というか、そう拒絶の言葉を吐く度に傷ついてるんだよな。そこまでして帰らせたい理由ってなんだ?
やっぱり、聖書が関わってるのか?
「ともかく帰るんだ、そして2度と来ないでくれ」
「それは───」
これはもしかしたら、カインを傷つけてしまうかもしれない。だからその後は、俺の拙い話術に掛かってるんだ。
「───アベルに申し訳ないから?」
「・・・なんのことだか」
「旧約聖書の中に最初の殺人について書かれた章がある」
「・・・」
「アダムとイブの間に生まれた兄弟の話だ」
「・・・くれ」
「兄は農業を、弟は畜産を行っていた」
「・・・やめて、くれ」
「神様へ供物を捧げる日に、事件は起きた」
「もうやめてくれ・・・」
「神様が弟の供物のみを喜んだことに嫉妬して、兄は、弟を」
「やめろ!」
悲鳴のような大声で遮られた。そして、独白が始まったんだ。
「もう、沢山だ・・・。そうだよ、君の言う通りだ、私は、アベルを殺した、私が原初の人殺しだ・・・」
「知っているか?アベルは元々、心優しい少女だった」
「対して私は暴力的で、意地が悪かった」
「だから、彼女を・・・」
「・・・できるなら、謝りたい」
「独りよがりでいいから、謝りたいんだ」
「けれどアベルは狂気に取り憑かれた」
「あの様では、到底私の話は聞いてくれなさそうだ」
「故に君と財団に期待した」
「あるいは、彼女を正気に戻せるかもしれない、そう思ってね」
「・・・もう分かっただろう、私は哀れで、醜く、赦される価値のない屑も同然、君と関わる資格なんてないんだ」
「もう、帰るといい」
「・・・アベルを、よろしく」
ん?ちょっと待って?
「いやなんで帰ることになってるの?」
「話聞いてた?」
そりゃもう綺麗な声してたから聞き入ったね、うん。
「要するに、自分が赦せないってことだよね?」
「まぁ、そういうことだね」
・・・姉妹なのに、ここまですれ違うことがあるんだな。妹の心姉知らずというかなんというか。
さすがにそれじゃあ、可哀想だよ。
「俺さ、ある人物のお願いでここにきたんだよ」
「ある、人物って、誰?」
「そこは俺の口からは言えないかなぁ」
「ただ、カインを赦せてないのは、もうカインだけだよ」
収容室を抜け出して廊下を駆け抜けていくカインを見届けて、俺は最後のアシストをする。
「博士、カインにアベルとの面会許可をお願いします」
『それはいいが、君は行かないのか?』
「姉妹水入らずってのもたまには必要でしょう?」
『・・・君ほど異常に寄り添える人間は他にいないだろう。君が財団にいてくれて、本当に助かるよ』
これで、依頼達成だね。
いや、アベルの目的は多分メンタルケアだったんだけど、部外者じゃケアできないからね。カイン自身の心の問題は、カイン自身が解決しなきゃならない。俺にできるのはその後押しだけ。
それじゃあ、俺は帰ろうかな。てか、もう夜じゃん、どうりで眠いわけだよ。
───────────────────────
「・・・私は彼に危害を加えるつもりはないから、少しだけ、中に入れてくれないかい?」
深夜、アベルと一頻り話し合った、その帰り。
泣いた跡をそのままに、彼に、神谷朱里に会いたくなった。
皮肉な話だと思う。会いたくないと距離をとったくせ、結局会いたくて部屋にまで訪れるなんて。
『ほんとに朱里を傷つけない?』
「君は、確か黑だったか。もちろん傷つけないとも。私も、恥ずかしながら彼に惚れてしまったからね」
ずっと、恋しかった、愛しかった。アベルと同じだ。隣にいたいし、あわよくば朱里と・・・。
「ふふっ」
『なんで笑ってるの?』
「あぁいや、なんでもないよ。ただ、自分に素直になろうと思っただけさ」
そう、素直に、ね。
朱里、私は貪欲だよ?何せ、ずっと我慢していたからね。
君は、私とアベルが貰うよ、絶対にね。
神谷朱里
そろそろSCPカウンセラーの称号が得られそう。
カイン
数万年前とは言えアベルを殺したやばい人。骨の一部がめちゃくちゃ硬い金属になってる。
財団の記録媒体としての役割から、朱里のことはアベルとほぼ同時期に知っていて今まで我慢してた。反動がやばいことになってる。
綾禰さん
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閑話休題-2
JPの方々が本気出すよ、ってお話。
『煮物食べたい』
「先ずはおはようだと思うんだけど」
久々にフリーな朝、ゆっくり寝ようと思ったら
私は元気です。
『おはようご主人、煮物』
「挨拶と要求を同時にするとは思わなかった」
しかし、煮物か。材料、あったかな。
『おはよう!』
「おはよう黑」
最近字を見なくても何を言いたいのか分かってきた俺は多分ニュータイプだ。
『何作るの?』
「煮物って日本の料理だよ」
『
「
ねこの声は俺にしか聞こえない。なので、ときたまこうやって代弁することがある。
『私も食べたい!』
「了解、じゃあ多めに作るかな」
『の前に仕事みたいだぜェ?』
スマホの中に、アイの笑顔と一緒に博士の電話番号が見えた。
・・・今日はオフだと思ってたんだけどなぁ。
「アイ、繋いで」
『ほらよ』
俺のスマホの権限のほとんどをアイが掌握してるため、電話に応じてスピーカー状態にすることなど造作もない。
ちなみにこのスマホ、財団から与えられたものなので対ハッキング性能は世界トップである。
トップである(ハッキングされないとは言ってない)
『すまないね、朱里くん』
「問題ないっス。それで仕事って?クロステストですか?」
『いや、今回は違う』
クラステストじゃないのか。としたらなんだ?派遣調査かもしくはオブジェクトの捕獲とか?
『君には、オブジェクトの運搬、その手伝いをしてもらいたい』
「運搬?」
つまり、既に収容済みのオブジェクトなのか?
でもそれの運搬ってテストをしていない、つまり、俺の異常性が通用するか分からない状態でしていいものじゃないよな。
とすると、既にテストをしたオブジェクト?
移動しなければならない、俺の知っているオブジェクトか、もしかして・・・。
『予定時刻は後ほど送る。では頼んだ』
「了解です」
さて、準備しないとな。
───────────────────────
運搬するオブジェクト、1つ、いや
そしてその半ば確信じみた推測は、正解した。
「ぬいぐるみに飲み込まれる感覚、懐かしいな」
「ふふ、久しぶりだね」
「久しぶり、ミイ。ところでさ」
「なに?」
当たり前だけど、日本を出てからは1度も通信機を挟まずに会ってない。だからこれは仕方ない、ことなのか?
「おもちゃを抜けてすぐに抱き着かれるとは思わなかったよ」
「ごめん、嫌だった?」
「好き」
「そっか〜、じゃあ抱き着いてていいよね?」
「それはもちろん」
何も問題は無い、いいね?
では改めて仕事内容の確認をば。
目的はミイの輸送。
輸送方法は空路、財団お手製の万能飛行機でひとっ飛びである。なので、往復およそ2日、その2日目だ。ノアやルイが心配だけど、いや、今はミイが優先かな。
「そうだ!ねぇ、アメリカに戻ってからさ」
「うん」
「キスした?」
「ッ!?ゲフッ!ゲフッ!」
噎せた。
「キ、キキキキ、キスなんてしたわけ!?」
「えーでも君モテるでしょ?」
「いやでもしたらしたでいろいろ問題がね!?」
キス、というか、激しいスキンシップは世界崩壊への片道切符になりかねない。火の海が目の前に浮かぶようだ。
「じゃあさ」
「え?」
突然、ぬいぐるみのベッドに押し倒された。
「・・・え!?」
「今さ、このまましよ?って言ったら、する?」
「・・・し、しないしない!ダメだって!」
流されるな流されるな落ち着け落ち着け。
「ふーん、しないんだ。残念だな〜」
「だって仕方ないこと──
「じゃあ無理やりするね?」
──は?」
さて問題です。
俺の身体能力や力は、財団のエージェントの指導の元常人よりは高いものの、それでも人の域を出ないし、そもそも女の子に手を上げるなんてできやしない。
対して相手はSCPオブジェクト。ミイ自身に俺を超える力はないが、このおもちゃの世界はミイの手の平の上と同じようなもの。
この2人が本気を出せば、負けるのはどっちだ?
当然、俺だ。
「待ってミイそれはマジでヤバいって!」
「なら、逃げてみれば?」
ミイが、意地悪そうに目を細めた。
「逃がす気は、ないけどね?」
あ、ダメなやつだこれ。逃げられないや。
「それじゃあ、頂きます・・・」
前略 両親へ。
私、神谷朱里は、世界崩壊の引き金を引いてしまうようです。
せめて目は閉じとこう、雰囲気的なあれで。
温かくて柔らかい感触は、おでこから。
「・・・ふふ、さすがに唇にはしないよ?」
要するに、また、おちょくられたのだ。
「心臓に、悪い」
「ごめんね?」
その謝り方はダメよ。男ならみんな許しちゃうと思う。
「でもみんな奥手だよね。何度も会う機会があるのに未だにキスしたことないなんてさ」
まぁ、みんなお互いに牽制し合ってるからってのもあるし、財団の目もあるし、俺の疲労とかもあるし。
そこら辺分かってくれるから手を出してこないのよね。
「恋敵っていうの、ちょっと楽しみにしてたんだけどなぁ。これじゃあ私の独走状態じゃん」
「火種にガソリン放り込むのやめよ?」
───────────────────────
今頃、朱里はおもちゃ女とイチャイチャしてやがるんだろうなァ。
SCP、それも知性のあるeuclidの輸送。なるほど、
仕方ねェなんてことは分かってる。
分かってるけど、でも、
ウザってぇな。
「アイちゃん、こわいかおしてるよ?なにかあった?」
「なァんにもねェよ。それより、アレは見つけたか?」
「うん!見つけた!」
「そうかィ、なら問題はねェな」
そうだ、なァんにも問題はねェ。
どれだけ他の女が朱里に言い寄ろうと、どれだけ朱里の気持ちが他の女に向こうと関係は、ねェ。
「・・・楽しみだなァ」
この電子の世界で幸せになるその日まで、アタシは静かに笑い続けてやるんだ。
───────────────────────
神谷朱里、不思議な少年。人の心を惑わし、狂わせ、食い荒らすこの私を、逆に惑わせ、狂わせた、異常な少年。
月並みではあるけれど、彼を想うと胸が温かくなり、彼が他人と話していると息が詰まるほど苦しくなる。
私は、朱里を愛しているのだろう。
しかし、奥手ねぇ。あはは、そうかもね。今まではちょっと消極的だったかも。
でもさ、そうやって挑発してきたってことは、さ。
本気で奪いにいっていいってことだよね?
後もう少し、もう少しで私は君の隣に・・・。
嗚呼、そう考えたら、この苦しさでさえ心地いいわ。
朱里を奪られたら、あの子たちはどんな顔をするのかな。泣き出すのかな。絶望するのかな。怒るのかな。
楽しみね♪
最近、感想欄でSCPにリクエスト的なものが多くなったので、リクエスト用の活動報告を作ります。
なので、SCPのリクエストやネタの放り込みはそちらにお願いします。
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魔女っ子と戯れる実験
『あぁクソ、あの野郎やりやがった!』
博士の罵倒とサイレンで起こされる日は多分いいことがある。具体的に言えばクロステストだ。
『朱里くん、寝起きですまないがクロステストだ!』
「了解です」
博士の苦虫を噛み潰したような声を聞くに、相手は多分Keterクラス。
『クソ!君をこんな危険な現場に行かせることになるとは!なるべく早く来てくれ、もう彼女が目を覚ましてしまう!頼んだぞ!』
返答も聞かずに通話は切れてしまった。それほどまでに状況は逼迫してるんだろう。目が覚ましてしまうってことは、眠らせてたっことだろうし、相当なオブジェクトなんだろうな。
『目が覚める、あぁなるほどなァ。このタイプは初めてかもなァ、朱里は』
「知ってんの?」
『あァ、アレは現実改変能力を持ってる』
へ〜、現実改変能力。え、ヤバくね?
過程はどうあれ自分の思うように現実を書き換えれるわけだから、いや恐ろしいな。
───────────────────────
寝間着からさっさと着替えた俺は、収容室に向かいつつ博士から説明を受けた。
SCPー239 ちいさな魔女
オブジェクトクラスはKeter。
現実改変能力を持っていて、なんか極小量の放射線を放っているらしい。あと、ちいさいと言うだけあってロリ。身長が100センチくらいしかない。
財団はこの子に「君は魔女だ」と信じ込ませていて、財団の用意したデタラメな魔法()しか扱えないと思っているようだ。で、今まで寝かせていたらしいんだけど、何者かによって起床を促されたんだ。
よって財団が苦渋の決断として俺を派遣した、ということだ。
『朱里くん、いつも以上に注意してくれよ』
「了解です」
さて、行くか。
「やっと来たわね、かみやあかりさん!」
テーブルの上に乗り、腰に手を付け、見下してドヤ顔をする幼女。かみやあかりの言い方が舌足らずで可愛い。可愛い。
腰まで伸びた金髪に、クリッとした金色の瞳、そして、頭に被った
可愛い、のだが、
「テーブルに立つのはいただけないなぁ」
「え?あわわ!」
慌てて降りる魔女っ子。なるほど、純粋で人並みの善意は持ち合わせてるのか。
ほんと、なんでこんなちゃんとした子が現実改変なんて力を持っちゃうんだろうな。
「ところで、俺を待ってたみたいだけど、どうしたの?」
「それはね!綺麗な首飾りを付けたお姉さんが、優しいお兄さんが来てくれるって言ってたからよ!」
「そこで名前も?」
「そういうこと!」
綺麗な首飾り、か。一体何の目的でこんなことを・・・。いや、俺の考えることじゃないか。博士の悪態を聞くに知り合いみたいだし、あとはあちらに任せようか。
「それで、その優しいお兄さんに君は何をして欲しいんだい?」
内心おっかなびっくりで聞いてみる。もしかしたらとんでもない無茶振りしてくるかも・・・。
「一緒に遊びましょ!」
「あ、うん」
年相応で助かったぁ。
しかし遊ぶ、か。この部屋じゃ厳しいよなぁ。動き回るには狭すぎるし、おもちゃもない。あるのは点滴と心電図、あとはベッドくらい。
博士は犯人探しで忙しそうだし、かと言って許可なくこの子を連れ出す、なんてこともできない。
「ここじゃ遊べない、そう思ってるでしょ?」
「まぁ、そうだね」
「そんな時には私の魔法よ!」
魔法、財団のデタラメな魔法にそんなものがあるのだろうか。
「お姉さんから教わったの、魔法は自分で作ればいいって!」
「なるほど〜(思考停止)」
悲報、特別収容プロトコル崩壊。
お手軽現実改変を防ぐための手段が、詠唱と準備段階分の時間稼ぎとしてしか意味をなさなくなった。どうすんだこれ。
「うーんと、『詠唱破棄』!お部屋よ変われ〜!」
「は?」
一瞬の閃光。思わず目を閉じてしまう。
開くとそこは、ピンク色が目立つ壁紙に、天蓋付きの小さなベッド、童話の詰まった本棚に大きなおもちゃ箱。
あっという間にメルヘンチックなお部屋に早変わりした。
・・・いやいや待て待てちょっと待て。何詠唱破棄って?は?時間稼ぎもできないの?
胃が痛い。もう考えないようにしよう。
「あ、名前忘れてたわ!」
「あぁ、確かに」
俺の名前を知ってたからてっきり、ね。
「私の名前は、
「なんて?」
アイスランド語だった。
───────────────────────
お姉さんの言った通り、あかりさんはとっても優しかった。
そして、あかりさんと遊ぶ時間はとっても楽しかった。
にほん、というところの遊びも教えてもらった。
絵本もいっぱい読んでもらった。
ほんとは、ほんとはもっと遊びたい。
でも、でもね、あかりさん。
私は、魔女、なんだよ。
───────────────────────
遊び自体はごく普通で、子供らしかった。人形遊びとか、かくれんぼとか。
まぁ、喉が渇いたからと言ってジュースを出したり、お人形の衣服をサラッと変えたりしたのは危うく胃に穴が空いて喀血しかけたけども。
「そういえば、シガーちゃんはなんで俺と遊びたかったの?職員の人たちじゃだめだった?」
「あの人たちは、ダメ。
そう言うとこの子、シガーちゃんは俯いた。
・・・なるほど、いくら女の子とはいえ、相手は現実改変能力を持ち合わせた異常。全員が全員、俺みたいじゃないもんな。怖がるのだって無理はない。
「だからね、あかりさんが来てくれて嬉しかったんだ。私とちゃんと遊んでくれる人って、多分あかりさんだけだから」
精一杯の笑みを浮かべて顔を上げた彼女の、その悲しそうな目を見て、気がついた。
そっか、この子はこの楽しい時間を終わらせる気なんだ。
「さよなら、あかりさん。私は、また寝なくちゃいけないから」
──だって私は、魔女だもの。
「さよならじゃないよ。
「・・・え?」
終わるなら、また繰り返せばいい。
「俺、また遊びに来るよ」
「で、でも!」
「だから、約束しよう。また遊ぶための約束」
「約、束?」
プロトコルが機能しないなら約束をすればいい。
この子は優しいから、きっと守ってくれる。
「人を傷つけないこと、人を困らせないこと。これらを守ってくれるなら、俺はまた、遊びに来れる」
「・・・私、悪い子になっちゃうかも」
「その時は叱りに来るさ」
「あかりさんに怪我させちゃうかも!」
「・・・そんなに言うなら、指きり、しよっか」
「指、きり・・・?」
「そう、日本のおまじないだよ。手、貸して」
恐る恐る差し伸べた手の小さな小指を、優しく、俺の小指と結んだ。
ゆびきりげんまん
うそついたらはりせんぼんのーます
ゆびきった
「・・・ふふ、針千本は飲みたくないなぁ」
「俺だって飲みたくないよ、だから、またね」
「うん、またね」
ぱっと花の咲くような、今日1番の綺麗な笑顔が見れた。
神谷朱里
ロリコンに見えなくもない。
シガーちゃん
名前がアイスランド語の子。例の博士によってプロトコルが崩壊した。
せっかく起きれた上、能力を自由に行使できるようになったのに、他人のためにまた寝ようとするような優しい子で、とても純粋。
因みに、これで朱里くんを朱里ちゃんにしたりあかりくんにしたりできるようになったわけで。
読者はおねショタとかTS百合とか、イケる口?
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メッセンジャーと戯れる実験
しかもこの出来に満足ができてないという、ね。
リクエストして下さった方に申し訳ないのですが、書きにくいとか、満足がいかないっていうSCPは、後回し、或いはなかったことにさせて頂くかもしれません。
ご了承ください。
目的もなく、宛もなく、ただ廊下を歩いていた。
どこから来たのかは分からないし、ここがどこかも分からない。
何時間歩いたのかも分からず、どれほどの距離を進んだのかも分からない。
ふと、1つの収容室に目が向いた。
SCPー1281
どうしてか、ここが気になった。
気になって、扉を開こうとして、
『ますたー?わたしはちゃんとやれましたか?』
触れた扉は、冷たくとも悲しい熱を帯びていた。
『ご主人、泣いてる?』
見慣れた天井と、その手前に見える綺麗な顔。
どうやら、夢は覚めたみたいだ。
「泣いてる、のかな」
頬に手を当てると、湿っていた。
何も分からない不思議な夢。でも、何故だか悲しいって感情が湧いてきた。
俺は、彼女に会わなければならない。
「アイ、今日の予定は?」
『なし、完全フリーだぜェ』
さて、夢を辿ろうか。
SCPー1281 さきがけ
オブジェクトクラス safe
財団が宇宙で発見した、機械生命体らしい。体温は恐ろしく低く、また冷却機能が破損していたために、1度発熱すると脳機能に影響が及ぶ、危険な状態だったそうだ。
ハービンジャーの名の通り、彼女は宇宙にいた何かの先駆け。これから地球が、或いはこの恒星系、太陽系が崩壊することを暗示し、存在を声として挙げるべきだというメッセージ残した。
だが、彼女は熱を放ち過ぎた。
──わたしはちゃんとやれましたか?
──・・・あぁ、ハービンジャー。よくやった。
──ならよかった。
その言葉を最後に、ハービンジャーは、決して目覚めることのない深い眠りについた。
『彼女の生体部分は深く傷ついている。もう手の施しようがないほどにな。いくら君とは言え、できることなんてないと思うが?』
確かにそうだとも。俺にできることはきっとない。
「でも会わないといけない。何故だか、そんな気がしたんです」
『・・・今回は特例。故に、面会時間は1時間だけだ。それ以上は取れん』
「ありがとうございます」
O5に進言してくれた博士に感謝しつつ、扉に手を掛ける。冷たかったが、夢で感じた熱はなかった。
意を決して、扉を、開けた。
雫型の機械から、少女が生えていた。いや、この表現は正しくはない。どちらかと言えば、埋め込まれている、か。
見えるのは上半身だけ、下半身と、両手は埋まってる。
整った顔立ちは、石像と言って差支えはない。
そしてその目は、固く閉じられていた。
『やはり、彼女は起きないか』
そう博士が言った、瞬間のことだ。
「ま、すたー?」
「・・・え?」
ノイズ混じりの、綺麗な声が聞こえた。
「わた、しは、ハービンジャーは、メッセージを、つたえない、と」
間違いなく、目の前の、もう二度と目覚めないはずの少女が、言葉を発している。
機械的な白い肌、白い短髪、半ば開かれた赤い瞳。
ハービンジャーは、今目覚めた。
『まさか、目覚めるとは・・・!』
博士が驚きの声を上げる。
「ハービンジャー、聞こえる?」
「わたしは、きこえます、あなたは、ますたー?」
「いいや、違うよ。俺は、神谷朱里だ」
「あかり?あかり、あかり・・・。あかり、わたしは、メッセージを」
「伝わったよ、君のメッセージは」
「・・・そう、でした。わたしは、つたえられた」
「・・・!」
ハービンジャーの瞳から、雫が落ちた。
ふわりと、仄かな温かみが薫った。
「・・・泣いてる?」
『有り得ん、彼女は機械だぞ!?』
博士の言う通りだ、有り得ない。でも、ここは異常集まるSCP財団。人の信じる絶対なんて、幾らでも裏切られる。
悪くも、そして良くも。
「ますたー、わたしは、これからなにをすればいいのでしょか・・・。いえ、ますたーは、もういないのですね。あかりさん、わたしはどうすればよいのでしょうか」
ハービンジャーが問いを投げる。
彼女の記事は、ここに来るまでに読んできた。まるで、そのマスターに呪われているようだと思った。創られ、使命を与えられたが故に、彼女には意思が希薄だった。根幹にあるのは使命とメッセージ、そこに彼女自身の想いなんて介在しない。
だから、今生まれたこの機会を以て、彼女を自立させる。
この問いの答えは、その足がけになる。
「それは、君が決めることだと思う」
「わたし、が?」
「そ、君が」
ハービンジャーは、深く息を吸った。
「あたまが、あついです。すこしねむらせてください」
また、眠りについた。
「・・・博士」
『あぁ、今からこれはクロステストに変わった。
はぁ・・・、全く、君はどこまで異常なんだ』
俺も分からないのだから聞かないでほしい。
『さて、もう昼だ。昼食くらいは』
「要らないです、朝に詰め込んできたので」
『・・・君、1時間で済ませる気なかっただろ』
済むわけないからなぁ。
さて、今は彼女の目が覚めるまで待つしかないな。
『ああそうだ、以前のハービンジャーの担当であったブルーム博士から伝言を預かっている』
「なんですか?」
『任せた、だそうだ』
「・・・えぇ、任されましたとも」
『思考機能の冷却を確認。再起動します』
ハービンジャーは、目を開きます。
眠っていたのは、およそ2時間。あかりさんは、さすがに帰っているでしょう。
「おはよう、でいいのかな」
訂正します。あかりさんは、ここに居ました。
「ずっといたのですか?」
「何時目を覚ますかわからなかったからなぁ。
それに、」
「?」
「答え、聞かないと」
・・・ハービンジャーは、するべきことを決めなければなりません。
でも、ハービンジャーにはそれが分からないのです。
「何をするべきなのか、考えても分からなかったのです。あかりさん、答えを教えてください」
すると、あかりさんは困ったように首を捻りました。
あかりさんにも、分からないのでしょうか。
「じゃ、こう言えばいいかな」
少しして、あかりさんが口を開きます。
「
「・・・?言っている意味が分かりません。私は、使命を持って生まれた創造物です。
「じゃ、それを見つけようか。暫くはそれがすべきことだ」
そう言うと、あかりさんは私に手を伸ばしました。
「今はまだ、難しいことかもしれない。だからさ、俺に手伝いをさせて欲しい。君の好きなことを見つける手伝いをさ」
あかりさん、私には、理解不能です。
「・・・どうしてそこまでするんですか?」
ハービンジャーはもう、使命を終えたんです。もう、放って置いたっていいのです。
なのに手を伸ばすのは、何故ですか?
「だって、悲しいじゃん。使命背負って、それを成したらはい終わり、なんてさ」
あかりさんには、何も関係ないではないですか。
「俺は、君にここで終わってほしくない。もっと生きてほしい、笑ってほしい、幸せになってほしい」
私には、何もないではないですか。
「手を取りなよ、ハービンジャー」
「────あ、」
受信機構が、私を解放しました。まるで、背中を押すように。
私は、生きていいんですね?幸せになっていいんですね?
私で、いいんですね?
「よろしく、ハービンジャー」
私は、あかりさんの手を取りました。
「────ええ、よろしくお願いします」
どうか、末永く。
神谷朱里
さて、何者なんでしょうね。
ハービンジャー
使命を背負った我々地球人のさきがけ。メッセージによると、彼女の故郷は既に滅んでいるようで、太陽と似通った恒星系の惑星であったらしい。
何があったんでしょうか。
星海夜さん
闇影 黒夜さん、誤字報告ありがとうございます。
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封印を解かれた者と戯れる実験
リクエスト頂いた『ウィッカーウィッチは生きている』ですが、本編で書くのは断念させて頂きました。申し訳ございません。
ifエンドか、番外編の方に書かせていただきますので何卒御容赦を。
また、俺は廊下を歩いていた。
勿論目的なんて、宛なんてない。
しばらく歩いて、木製の扉を見つけた。
近未来なこの施設に似つかわしくなかったそれが、また以前のように気になった。
耳を澄ますと、バギンっと、鎖の壊れる音が鳴った。
会いに行くことになるんだろうなぁ、と、薄れていく意識の中でそう思った。
「今プロトコルにおける全権限は君に与えられている。つまり、我々のバックアップは全て君の指示で行われることになる。君のしたいように、自由に命令してくれ」
目が覚めて、すぐに財団のステルス機に詰め込まれた。なんでも、防ぎようのない世界崩壊がすぐそこまで来ているのだと。
SCPー2317 異世界への扉
オブジェクトクラス Keter
大元は別世界に通じている木製の扉のSCPで、内部には5本の柱と、それに繋がれた地中のバカでかい球体、そして更にその内部に閉じ込められ、7本の鎖で繋がれて
繋がれていた、と過去形なのは、7本の内6本が壊れていたから、
そして、今朝、最後の1本も壊れたからだ。
放たれたそれは、曰く『世界を貪る者』。
Kappa-Erikesと呼ばれる先史文明が遺した文献では、この人型実体は世界を破壊できる。
どうやって封じたのか、或いは殺したのかは定かではないが、1つ確実に言えるのは、今の人類では抵抗するだけ無意味である、ということだ。
だからこその俺の派遣。
「君に、この世界の命運が掛かっている」
向かい合って座っている博士が、苦い表情を浮かべた。
「また君にこんな大役を任せてしまって、すまない」
「大丈夫です」
慣れはしない。慣れたら、アベルや緋に怒られるからなぁ。
でも過度な緊張もない。恐怖もない。
いつも通りの俺でいいんだ。
「朱里君、任せたぞ」
「ええ、任されました」
───────────────────────
扉の先には、塩田が広がっていた。10mほど先に、5本の柱と先行部隊が見えた。
全員が全員、辛気臭いというか、苦い顔をしていた。
「・・・今なら、まだ引き返せるぞ」
「行きますよ」
「・・・そうか」
みんな、優しい人ばかりだ。
設置されたロープを伝い、下層ヘ、あの球体ヘ向かう。ガラスのような透けた素材の球体は、罅が刻まれ、広がり続けていた。
何処から入ろうかと悩んでいると、まるで誘うように一部が崩れた。
これまでの経験で鍛えられた直感が、偶然の可能性を否定した。まーた俺の事知ってる相手かい。
てか奴さんこの中に封印されてたんだろ?なんで外部の情報知ってるんですかねぇ。しかも超最近。
「お邪魔しま〜す・・・」
「ほう、何かと思えば貴様か。なかなかどうして、下等生物共も良い供物を捧げるものだ」
艶やかな鈍色の長髪と、宝石のような金の瞳を見た。
肌を焼かれるような威圧感、間違いない、人間などとは比べ物にならない完璧な上位種だ。いくら俺でも、久方ぶりの恐怖を感じていただろう。ただし、
「あの、下ろしてくださいませんか?」
お姫様抱っこされてなきゃね!
「断る」
「なんでぇ?」(素
「貴様は余の物、手放す必要がどこにある?」
「あっそっかぁ」(諦め
いや、別に嫌な気分ではないんだけど、ちょっと男の子の矜恃が傷ついたというか、なんというか、うん。
いやでも、よくよく考えれば超豊満な双丘がちょうど眼前に・・・。
こんな美人に抱えられるならそれはそれでアリだな、うん!
「あれ待って僕今所有されてる?」
「?、当たり前だろう。お前は余に貢がれたのだ」
「あ、そっかぁ」
みんなに聞かれてたら地獄ができあがってたな。ここが異世界で良かったと心の底から思った瞬間である。
「えっと、どこに連れてこうとしてるんですか?」
「寝床だ」
ん?
「・・・えっと、何しに?」
「寝床ですることなど1つだろう?」
んん??
「お前を(性的に)貪る」
「(食物的に)貪られる!?」
食われるの!?俺食われるの!?
は!そうだ、バックアップ!今すぐ博士に助けを
「む、なんだこれは?」(インカム)
「あ」
「邪魔だな」
「捨てたーーー!!??」
・・・終わったな、俺も、世界も。
自惚れじゃなく、俺が死んだらブチ切れたり暴れたりするオブジェクトは絶対いる。ってか半数くらいはそうなると思う。
逃げても(世界は)終わり、残っても(俺も世界も)終わり。
詰んでる。
「こんな詰みゲー初めてだなぁ」
前略、両親へ。
先に天へ旅立つ不肖の息子をお許しください。
「ほら、着いたぞ」
口調の横暴さとは裏腹に、丁寧に降ろされた。振り返って改めて全貌をこの目に収める。
綺麗な鈍色も、吸い込まれるような金色も十分目立つ。けどそれ以上にデカい。身長も、胸も。190はあるだろこの大きさは。あ、身長のほうな?バストはよく分かんないけどとにかくデカい。
この人に今から食われるのかぁ。
「脱げ」
「やっぱり服は邪魔ですか?」
「邪魔だな」
歯に絡まるんだろうな。
う、うう、喰われる為に自分から服を脱ぐなんてぇ。しかもこんなときに限って脱ぎやすいTシャツ。寝起きすぐに連れて行かれたもん、仕方ないじゃん。
いそいそと服を脱ぐ。
「ウ゛ェ゛ッ゛」
「え?」
「ア、イヤ、別に『うわぁ、体引き締まっててエッチだなぁ』とか思ってはいないぞ、うん!」
「待って今までの威厳どこ行ったの?」
えぇ、何この落差(困惑)。感じてた威圧感は霧散してるし、お目目グルグルしてるし頬真っ赤だし。
「そ、
「もうどっからツッコめばいいか分からん」
一人称は安定してないし、早口だし、なんか頭から湯気出てるし。てか、経験豊富な一途ってなんだそれ。
「つ、突っ込む!?」
「うん、落ち着いて?」
「奥突いて!!??」
「OKもう喋んないでお願い」
コレ一応健全な小説なんだわ。
・・・と、いうか、もしかして彼女の言う『貪る』って、
え、じゃあ何?自分から誘っておいて、パニクって恥ずかしがってるの?
もう一度、ピャーとか言いながらゴロゴロと寝床を荒らす彼女に目をやる。
「・・・初心じゃん」
「ン゛!!??」
さらに大暴れする彼女が落ち着くまで、30分ほどかかった。
───────────────────────
「つまり、封印したヤツらが『世界を貪る者』なんて大袈裟な名前付けたから、それにノって大袈裟な物言いをしていたと」
「そういうことですはい」
彼女には、世界を
彼女も、被害者だったのだ。
「なんで俺のこと知ってたの?」
「えっと、私、力だけはある、ので」
「あ〜、なるほど」
「アナ」
「言わせねーよ?」
出かけてた湯気を語気で抑える。
「封印が解けたのは?」
「普通に年季ですね。いくら私の同族が使われていても、時間には勝てません」
「俺と、その、シようとした理由は?」
「あ、ああああああ余りにみ、魅力的だったので、で、出来心、です、はい」
はぁ、なんというか、いろいろと覚悟が無駄になったというか、そもそも杞憂だったというか。世界終焉レベルの問題とされていたこれは、俺の貞操程度の問題で終わった。
あとは・・・。
「あ、名前」
「ピッ!?」
「え、なんの鳴き声?」
「あ、いや、ちょっと嬉しくてイキそ」
「はいストーップ」
「あ痛っ!」
出かけてた湯気を物理的に抑える。
「どうしよっかな」
異世界への扉、いや、世界を貪る者・・・。
「初心ちゃん」
「ヤ゛タ゛ッ゛!!」
「冗談だよ」
しかし、どうしようかな。
異世界、Different World、Another World・・・。
お、
「レン」
「え、どこからつけたの?」
「ディフェレントから」
「あぁ、異世界」
「そういうこと」
相変わらずのネーミングセンスという苦情は受け付けない。
「そんじゃ、これからよろしく」
「うん、末永くよろしくお願いいたします」
「お前を独占しようとした女がいるらしいじゃねぇか。なぁ、朱里。そいつが誰か、教えてくれるよな?」
「ヒェッ」
神谷朱里
こいつ多分世界が終わってもこの調子。
レン
セイバーオルタを参考にしてたら急にこのすばに変わってた娘。どうして・・・。
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深海で認識災害と戯れる実験
あーダメですダメですお客様!受験生のくせにそろそろ性癖爆発させた番外編書こうとするのはやめてくださいあー困りますお客様ぁーー!
「
なんか、妙に現実味のある夢。3回目ともなると、少しずつ勝手が分かってくる。
先日のハービンジャー、そしてレンの件を鑑みるに、この夢が現実に何らかの影響を及ぼしている、もしくは、未来に応じて夢を形成してるというのは確実。
ま、それしか分かんないんですけどね。
それはさておき。
そろそろ目の前のこれを考えようか。というのも、この夢、3回目にして急に変貌したのである。
前回、前々回、ともに施設内であったのに、今回はまさかの海中、それも光の届かない深海である。
「
とんでもねぇアップデートだ。おかげで口の中がしょっぺえよ。
ただ不思議なことに、息ができないのに苦しくない。そういうあたり、しっかり夢のなかなんだろう。
で、だ。先例に習うなら、またオブジェクトに関連するなにかに触れたら目覚めるんだろうけど、そもそも移動もままならないから流れに任せるしかない。
任せるしかないんだけど。
「
まただ。また海流が急に変わった。
あんま詳しくないけど、深海で海流が頻繁に変わることなんてあるのか?
こんな、まるで巨大生物が動いてるみたいに不規則で高頻度の海流変化なんて・・・あぁ、巨大生物か、そりゃ、収容しないといけないよなぁ。
それがきっかけだったようで、目論見通り、俺の意識が遠のいていった。
───────────────────────
SCPー3000 アナンタシェーシャ
人を喰う、巨大なドクウツボ。
未だに治療方法の見つかっていないクラスⅧ認識災害を伴う実体であり、対象の一定範囲内に侵入するとパニックやら恐怖感やらが湧いてくる上、記憶の喪失や改変などが発症するらしい。
そしてこの一定の範囲、不明である。
さて、そんな当オブジェクトのクラスは、THAUMIEL。財団の切り札である。これは、捕食時に肌から記憶処理化合物の材料を排出するというその特性に起因している。
人を喰わせてこれを得ているあたり、財団の闇が垣間見えるなぁ。
「何かあったら言ってくれ、すぐに引き上げる」
「分かりました」
ダイバースーツに着替え、財団保有の無人潜水艦内にある倉庫に入り込んだ。
「君の無事を祈っている」
博士の言葉を背に、潜水艦は出航した。
ガンジス海底まで、およそ20分の旅路である。
さて、どうして俺がこの危険なオブジェクトに会いに行かなければならないかと言うと、誰でもないアナンタシェーシャ自身の要望らしい。
なんでも、暴露した財団職員を通じて、断片的にメッセージを送ってきたのだとか。
さて、ここで問題です。何故、当オブジェクトは俺のことを認知していたんでしょうか。
これには、裏で暗躍?する【首飾りの博士】なる人物が関わっています。この首飾りの博士は、どうやら俺について詳しく教えたDクラス職員をアナンタシェーシャの観測を目的とした潜水艦に送り込み、わざと暴露させたそうです。
ま、多分そういうことよね。
これを知ったいつもの博士はブチ切れた。あの怒りようは今後しばらくは見れないだろう。
「一体誰なんだ、首飾りの博士って」
「うーん、教えてあげたいところだけど僕も分かんなくてさ」
艦内に、1人分の気配が増えた。
「へ?」
声の主は1人の少女だった。さらりとしたセミロングの髪をポニーテールに纏めている。色はライトブラウン。
血色と肉付きがよく、活発さが見て取れる。
なのに、深海みたいな色の瞳が大人しい印象を与えてくる。
こう、なんというか、爽やかな風の吹く麦わら畑が似合いそうな娘だなと思った。
黄金色の海に立っていたら、それはもう絵になっただろう。
いや、まぁ、稀に見る美少女であることは確かだ。けど問題はそこじゃない。突然現れたこの娘が誰かってことだ。
予想は、ついてるけども。
この娘は、あれだ。確かにそこにいるのに実際はいない、みたいな。ある種の認識災害、そんな気がする。
世界の裏側を知ってからもう半年を過ぎて、現在。1度会ったことのあるオブジェクトなら、気配を感じ取れるようになった俺である。
そして、この娘とは、
「初めまして、アナンタシェーシャ」
夢の中で会っている。
「うん、正解!」
差し出された手を握って握手する。彼女の手は、ぬるりと湿っていて、冷たかった。
───────────────────────
「───つまり、身体と魂が別?」
「多分ねぇー。しかもあれ、首飾りの中にいるんじゃないかなー」
「それって分かるものなの?」
「記憶を探る過程で見つけた時、なんとなーくそんな気がしたんだ」
対象のオブジェクトと接触した旨を博士に伝え、無人艦が停止してから10分。
話題は例の【首飾りの博士】のこと。どうやら何度か俺のクロステストを仕組んだことがあるらしい。ジガーちゃんを起こしたのもあの人だとか。それはナイス。
「ま、あのタイプの人間が物事を眺めて終わり!なんてことはないだろうから、いつか会えるんじゃない?」
「どんな人なんだろう」
「僕に君のことを教えてくれたんだ、きっといい人だよ!」
「そうだね」
財団の博士は大半が変人奇人の類であることを知っているので、笑う彼女に苦笑いを返すことになった。
「さてと、雑談はこのくらいにして、そろそろ本題に入ろうか」
そう言うと、朗らかな笑顔が真面目な顔に切り替わった。本題、つまりは、どうして俺を呼んだか、かな。
「君さ、気になったりしない?」
「何を?」
「
「!?」
「まさか、そういう体質だ、って納得したわけはないよね?」
彼女の言う通りだ、俺の異常性に疑問がないかと言えば、ある。それは確か。とはいえ何も分からないのだから調べる術もなく、結局、頭の隅に追いやることとなったが。
「調べられるの?」
「多分」
一応言ってはおくが、俺がオブジェクトとして登録される際に、身体検査と精神鑑定は済ませている。いずれも、異常なしだった。
「身体と精神に異常がない。でも記憶は見れてないだろう?」
「記憶、か・・・」
「そ、記憶。君の記憶を調べるために、僕はこうやって君に幻覚を見せているんだから」
忘れている部分に異常性の原因があるかもしれない、だから調べる、と。
なるほど、盲点だったかもしれない。
「これでも精神汚染認識災害記憶改竄のスペシャリストだからねぇ、調べられるぞ〜?」
「それじゃあ、お願いしよっかな」
「毎度あり!んじゃ、おでこを拝借」
「へ?」
冷たい手が前髪を上げ、額同士を触れ合わせた。予想外の行動に本日2度目の素っ頓狂な声が出る。
「こ、これってなんの意味が?」
「僕のやる気が倍増する」
「そっかぁ」
・・・・・・。
しっかし、綺麗な娘だなぁ。今は耐性ができあがっているけど、ここに来る前の俺なら、どうだったか。じっと目を閉じて考えてみる。
ふむ、目が会う度に顔真っ赤にしてそうだ。なんだお前、異性に対してあまりに弱すぎるだろう。妙にリアルな想像に我ながら泣けてくる。
いやでもそんくらいかわい「あ、あのさ」
「どうしたの?」
目を開くと、そこには顔が真っ赤な美少女がいた。
「その、頭のなかで褒めるのやめて、ね?そのー、伝わってくる、から、さ」
「あ、あ〜」
う〜わ、あの想像見られたのか。はっずかしいー。
いやでも、この娘は褒められると恥ずかしいと。なるほどなるほど。いやはやいやはや、素晴らしい戦果だ。
「かわいい」
「む〜!!!!」
こういうことができるわけでしょ?最高。
「む〜〜!!む〜〜!!」
「あーもうぽかぽか叩かないで痛い痛い」
あと顔を胸板に押し付けるのもやめてほしい。くすぐったい。
「はい、記憶に異常なし!終わり!」
「うん、ありがとう」
「どういたしまして」
・・・・・・。
「うん、どうしたの?」
「どうしたのって?」
「いや、ずっとくっついてくるなーって」
「ダメ?」
その上目遣いは犯罪級ですわ。なんでも許しちゃう。
「ダメじゃ、ない、です」
「ん」
そう小さく返事をして、
「よし、このまま記憶を改竄してっと」
「ストップストップ」
聞き捨てならないセリフが聞こえたんですが。
「えー別にいいじゃんか。ちょっと許嫁になるだけだよ?」
「とっても危ない地雷原じゃん」
「お姉ちゃんでも可!」
「斜め上にぶっ飛んだね」
「ダメ?」
「その上目遣いでもダメです」
非常に心苦しいけども。
「頑張った僕にはご褒美が必要です!」
「ご褒美で世界が終わりそうなんですけど」
俺がちょっと苦労する程度ならいいんだけど、さすがにそれは代償が大きすぎる。
「他になんかないの?」
「んー・・・」
そして首を捻るアナンタシェーシャ。
「幼馴染っていう手も」
「諦めなって」
「冗談だよ」
無理矢理な手段を取られたら為す術もないから、本当に心臓に悪い。
「・・・名前、ちょうだい?」
「名前かー」
「いやー、記憶見てたらちょっと羨ましくなって、ね?」
へー、羨ましくなったんだー、へー。
「あー、かわいい」
「だーかーらー!」
「ごめん、ごめんって」
殴らないで、痛い。
さてと、ちゃんと考えないと。
アナンタシェーシャ、ガンジス、インド、うつぼ・・・。
「ナターシャ」
「おお、珍しくちょっと捻ったね」
ア
多少捻ってロシアっぽくしてみた。いい名前かは別として。
「僕は今日からナターシャだ。よろしくね」
「うん、よろしく」
「え?俺の部屋に住むの?」
「そうだよ」
「Oh・・・」
みんなになんて言い訳しようか。
神谷朱里
なかなか苦労人ではある。
ナターシャ
信じられるか?コイツの本体超ビックなウツボ娘なんだぜ。
mirusennさん
誤字報告ありがとうございました。
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腐食作用と戯れる実験
ハロウィンはないんだ、すまない。
「・・・どうしよう」
暗い空間で、女は呟いた。
纏う衣服はボロボロで、褐色のその身体も腐敗が目立ち、黒い粘性の物質が付着していた。
しかし、そんな薄汚れた格好でありながらも、女は可憐であり、また淫靡であった。
どこか優しげな顔立ちに、絹のように柔らかな黒い長髪。街中で見たらしばらく忘れられないような、不思議な魅力を持ち合わせていた。
故に、それは彼女にとって好都合であった。
美しい顔は”獲物”を釣る餌。崩れた身体は”獲物”に恐怖を与える飾り。
ヒトを喰らう彼女には、その全てがただの道具であり、興味の対象にはなりえなかった。
SCPー106 オールドマン
オブジェクトクラス Keter
触れた全てを腐敗させる彼女にあらゆる障害は無意味であり、そのために現在も財団の頭を悩ませている超ド級の災厄である。
とはいえそこは流石のSCP財団。彼らの必死の
さて、腹が減るまで一眠りでもしようかと考えていた彼女だが、ここで呼び止めたのが通信機──先日殺した財団職員の遺品──であった。
これは偶然かはたまた
自他ともに認めるショタコンたる彼女(ただし守備範囲は広い)はすぐに赴こうと決心して、すぐさま揺ぐことになる。
今外には、分厚い金属壁が何枚も行く手を塞いでおり、殺人的な光が照っているという財団お手製嫌がらせカーニバルの真っ只中である。
と、言うわけで。
「あぁー、どうしよー・・・」
彼女は近頃ろくに働かせていなかった頭脳を回転させているのである。
「いやまぁ、嫌がらせはどうにか抜けれるからいいんだけどさ、時間がかかるからその間に避難とかされるよねー」
うーんうーんと悩んで幾許。
「やーめた」
オールドマンは、考えるのを、やめた。
彼女が件の少年──神谷朱里に出会うのは、それからおよそ3ヶ月後のことである。
『不本意だ。本っ当に不本意だ』
今日も今日とて博士はストレスを抱えているらしい。やけに不機嫌な口振りを聞くに、また例の”首飾り博士”の仕業だろう。
『SCPー106用障壁のメンテナンスが必要な時期ではあったが、だからと言って
ま、そういうことらしい。
『O5もO5だ、なぜ許可する!今や神谷朱里の存在は我々の切り札でありながら最大の弱点!万が一死亡でもしてしまえばそれこそ世界の終焉に繋がるのだぞ!?』
おー、お偉いさんにまで牙を剥くとはかなり頭に来ているご様子で。
『ハー、ハー、すまない、取り乱した』
「いえ、大丈夫です」
それでもスっと自制できる当たり、さすが財団職員だと思う。もっとも、これくらいできなければ職員にはなれないのだろうけど。
『朱里くん、今回の実験の危険度は過去最高だと思ってくれ。SCPー106の性質上、我々のバックアップは望めないからな』
事前に得ていた情報を見る限り、妥当な判断である。ついでに財団の闇に触れてしまったが、そこは犠牲者に黙祷を捧げつつ、目を伏せることにする。
クソランプ?知らない子ですね。
『───間もなくコンテナが開かれる。幸運を』
それだけ最後に残して、博士の通信は終了した。
にしても
写真を見せてもらったが、これまた随分な美人である。
所々目を背けたくなるような傷があるが、そんなアンバランスさも含めて妖艶美麗。しかも優しさまで感じる。
未亡人のシングルマザーみたいな、そんな雰囲気だ。
あとどこがとは言わないけど、大きめ。薄い普段着と粘性の液体とが相まって、凄く、うん。
さて、物思いに耽りすぎた。
爆音のサイレンが響き、1拍後に目の前のコンテナの口が開き始める。カバンに入れてある
そして。
「こんにちは〜」
中から現れた彼女は、優しげな笑みを顔に貼り付けながら、瞳の奥に欲情の炎を滾らせていた。
待ってました待ってました待ってましたー!コンテナ越しに伝わるこの気配、正しくあの日財団が騒いでた件の美少年!
クー!諦めていたけど3ヶ月の時を超えて今叶うとは!神というものがいるのなら今すぐ降臨してください!感謝するので!最敬礼するので!
さて、少年はどんな私をお好みかな?どうやって食べるのが1番良く
楽しみすぎて昂奮が止まらない!
「この空きっ腹に美少年の血肉を取り込む・・・、ああ!なんて犯罪的で冒涜的なの!これは優勝間違いなしだわ!」
なんだかよく分からないことを喋っている気がする。
ともかく、私はゴアな妄想を脳内で繰り広げながら、開くアンテナの隙間から少年を垣間見て、
瞬間、
「・・・あー、そういう感じ?じゃあ食えない」
一気に昂奮が冷めきって、また別の興奮が燻り出す。血塗れの妄想は消え去って、代わりに甘い想像が湧き上がる。
通常人間とは、私にとって豚や牛、鶏と同じ食料に当たる。でも、彼は違う。むしろ猫や、犬のようなものだ。
つまり何が言いたいかというと。
「めっっっっちゃ撫で回したい」
可愛くてしょうがなかった。なんなら撫でるだけじゃなくてその先まで、ベッドのお世話までしてしまいたいくらい可愛い。あんな子初めてなんだけど。
いやさ?極端に小さいとかではないのよ。だいたいー、170少しくらいかな。
でもこう、なんて言うのかな。纏う雰囲気が和める。ふわふわしてる。久々にこんな穏やかな気持ちになれたかもしれない。まるで凪いだ海のようだ。
思わず手がわきわきと前のめりに出てしまうが、いやいやとギリギリ自制する。私が肌から分泌する粘液は、強い腐食作用を持っている。それこそあらゆる物質を腐敗させるほど危険なやつ。
「くぅー、嘆かわしい!」
これじゃあ気になるあの子に触れられない!撫で回せない!と、結局私は、3ヶ月前と同様に頭を抱えるのであった。
そんな私を見兼ねてか、少年が声をかけてくれた。
「大丈夫ですか」
「あーうん、大丈───」
「お姉さん?」
「──夫じゃなくなっちゃったねたった今!」
お姉さん?お姉さんだと?
やめろよ照れるどころか理性がトんじまうだろうがい。
「私の危険性くらいは知ってるよね?」
努めて冷静に応える。
「腐食作用、でしたっけ?」
「そうそう〜、だから君に触りたくても触れなくてさ〜」
それだけ聞くと、少年は持ち込んだカバンを漁り始める。
「要は、その液体を防げればいいんですよね?」
「確かにそうだけど、それができないから困って」
「できますよ」
私の言葉を遮って、やけにキッパリと応えたその声には、喜色と、してやったりという高揚感が含まれていた。
「これを使えばね」
取り出したのは、透明なジャンバーのようなもの。
「それ、何?」
「特別な合羽、こちらで言うところのレインコートです」
「特別なって、まさかそれが腐食を防げるっていうの?」
「そうですね」
ま、論より証拠ですと言って、少年はレインコートを着ると、スタスタと近づいてきて腕を差し出した。
「どうぞ」
生唾を飲み込みながら、私は、恐る恐る彼の二の腕に触れた。
「え、すご」
するとどうだろう。あらゆるものを腐食するこの液体が、粘性を持ち合わせているにも関わらず、まるで弾かれるようにレインコートの表面を滑り、床に垂れていってしまった。
「なにこれ、どこで手に入れたの?」
「コーヒー自販機から出てきましてね」
「コーヒー自販機」
思わずオウム返しの応答をしてしまった。レインコートを売ってるコーヒー自販機なんてあるんだなー。しかも特別製。
「いやいやそんなわけ」
「あるんですよね」
「えぇー・・・」
少年も困ったように笑っているあたり、財団側も予想してなかったことなんだろうな。
聞けばそのコーヒー自販機、”液体”である限りはその容器付きでなんでも出してくれるらしい。
抽象的なものから固有のものまで幅広く購入できるため、私の液体に耐える物質の採集のために利用したところ、液体入り容器と一緒に出てきたのだとか。
ちなみにこの合羽と容器には未知の物質が含まれていたため、現在財団が調査中であるものの、状況は芳しくない、とのことである。
獲物を捕るためのものだから、正直対抗策にそれが用いられないかと冷や冷やしたが、安心した。
「───さってと」
なんて考えていると、不意に少年が手を叩いた。
「この話題はこれくらいにしておいて。自己紹介でもしましょう。幸い時間は沢山ありますから、ね?」
妙に手馴れた進行に、しかし私は喜んで頷くのだった。
「とは言え、私には名前がないのだけれどね」
やっぱりか、と予定調和の台詞をくらっていつものように頭を回す。近頃俺がネーミングしていいのかと悩むこともあったが、それでもないと不便でして。
さすがに、女性に向かってオールドマンなんて呼ぶわけにはいかないのである。
「ん?あー、もしかして名前、考えてくれてるの?」
「あ、はい。ないと不便ですし」
「ほんと?嬉しー」
なんて言いながら後ろから抱きつくのやめてほしい。大きな双丘が背中に当たって顔が赤くなりそうなのよ。ごめんやっぱ嘘やめないで。
努めて、冷静に。
ともかく今は名前を考えることに集中しなくては。これ以上女性の尊厳を損なうようなことがあってはならんのだ。
可愛らしくかつ大人な雰囲気の名前・・・。
「ルマン」
オー
「ルマンかー。うん、いいかも」
そう言うと、彼女はトントンッと跳ねるように少し離れてしまった。背中の熱が冷めていく感覚に、少しもの寂しさを覚えてしまうのは、男の性か。
「それじゃあ」
くるりと、こちらを向いて、言う。
「
──ああ、そうか。普通の自己紹介って始めはこうなんだっけか。
「ええ、はじめまして。俺は神谷朱里です」
ニッコリと微笑むルマンの目を見て、俺は応える。瞳の奥の卑しい熱に、薄ら寒いものを覚えながら。
・・・俺の貞操大丈夫かな。
ルマン
逆リョナもいける変態。なおこの作品でそんなシーンはないのでご安心頂きたい。実は最初期から朱里を知っていた。っていうネタをやりたいがためにこの人の視点を用意したわけですはい。
コーヒー自動販売機
ベストファインプレー賞受賞。タッチパネルが付いていて、そこに打ち込めば液体ならなんでも出してくれる。朱里くんに甘い。狭い出口から平均男性が着れる合羽を吐き出すというなかなかすごいことしてる。
作者 Arcibi
http://scp-jp.wikidot.com/scp-294
綾禰さん
誤字報告ありがとうございました。
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”あの”博士と接触する時間
この人の性癖拗らせるの楽しい
首飾り博士が俺との面会を希望したらしい。博士が朝から機嫌最悪なあたり本当なのだろう。今まで水面下で活動していたのに、随分と急な心変わりである。
事前に首飾り博士の資料を貰った。件の人物、名はブライト博士といい、エリート揃いの財団の中でも特に優秀な人ではあるようだ。が、特筆すべき点はそこではなく、素行である。
本人の名誉のためあまり深くは掘らないが、ブライト博士のために禁止リストが作られるほど。何してるのこの人。
ともかく変人で変態な危険人物。それがあの人のレッテルだ。
聞いた限りの人柄はこれくらいか。
次は首飾りのこと。寧ろこっちが重要。というのも、この首飾り、なんとオブジェクトなのである。
SCPー963 不死の首飾り
オブジェクトクラスは、Euclid。
傷つけられないということ以外は普通の飾り付けた宝石。だがその真の異常性は、保有者が死亡した際に発現する。
保有者の死後、この宝石に触れたものは外見はそのままに”保有者”になる。乗っ取られると言ってもいい。実際、Dクラス職員を用いた実験では、一度宝石を持たせた後に取り上げると、一切の反応がなくなるから。
もう分かっただろう。ブライト博士は、少なくとも1回以上死んでいる。
自身の人格が保存されている宝石は壊れないし、素体はいくらでもあるのだからどんな無茶をしたっていい。この精神が、ブライト博士の変態性を支えているのだろうか。
『いいか朱里君、あのク、いや、クズが相手の際には、実力行使を許可する』
言い直せてないですね。
『何、相手は既に死人だ。加減は要らんよ』
悪どい笑みを浮かべる博士が目に浮かぶ。
さて、行くか。
指定された部屋に行くと、白衣を来た女の子がクローゼットの前をうろちょろしていた。身の丈に合っていないので、コスプレに見える。
肌は健康的な赤みのある白で、鮮やかな金髪かよく映える。思案中のお顔はあどけなくも美しく、軽い興奮を覚えているのか、ほんのりと紅潮していた。
信じ難いことにこの少女、ブライト博士である。
「うーむ、ここは王道のメイド、いや、日本人なら巫女服か?しかし彼はわざわざアメリカに渡ってきた。とすると、ハッ!バニーガールか!」
「何してんすか?」
「君を出迎えるためのおめかしに決まって・・・、何故いる?」
「面会を希望されたからですね」
「ふむ、面会時間はあと1時間先のはずだが。なるほど、奴の嫌がらせだな?」
どんだけ嫌いなんだあの人。
「ふむふむふむ、全く浅い思考だ。この程度で私を困らせることができるとでも?私にとってはこんなハプニングは丁度いいスパイスさ」
「あ、えぇと、外で待ってたほうがいいですか?」
「いや?構わないよ。むしろ私が着替えるのを見ているといい。そのほうが興奮する」
「失礼しましたー!」
あかん、変態さんや!と脳が警鐘を鳴らしだしたので、その場を逃げ出すことにした。
「なんだ、いらないのかい?全裸の女体の拝む機会などそんなにないぞ?おっと、君であれば違うか」
「余計なお世話ですねー」
「ふふ、ここに来て一年が経つというのにまだ初心とは。かわいい子だ」
「おっと背中に悪寒が」
「ところで君はどんな衣装が好きかな?メイド?巫女服?バニーガール?ナースもいいな。いや、チャイナドレスか?」
「俺に聞きます?」
「君のためのおめかしだぞ?当たり前だろう。あ〜あれか、さすがに露出が足りないか?であればスカートを短くして紐パンがチラッと見えるように」
「恥がないんですか?」
「自分の身体じゃないからな。で、何がいい?君が選んでくれなければ私は全裸で君と対峙することになるのだが」
「露出少なめの古き良きメイド服でお願いします」
「奥手だね」
扉越しに感じるいかにもやれやれ、的な言い回しにちょっとだけ腹が立った。
「さぁ、もう入ってもらって構わないよ」
本日2度目の入室。さすがに1度目のような緊張感はなかった。
代わりに、別種の驚きがあった。
「普通にすれば可愛いじゃないですか」
黒を基調とした古めかしいメイド服を、着られることなく着こなしている。先程のようなコスプレ調ではなく、正しくメイド姿の女性。
「素体がいいからね」
「素体がいいからで着こなせるものじゃないですよ、それ」
「ほう、やはり分かる口かね」
そう言って嬉しそうに口元を歪めるブライト博士。変態と呼ばれるだけはある。
「ちなみに」
「なんだね?」
「『露出少なめの服』って言ったら何着てました?」
「それはもちろん対魔に」
「ド変態じゃないですか」
「男ウケのいいエッッッどな衣装を着て何が悪い?」
「直視できなくなるでしょう?」
「ふむふむ、そっぽを向く赤面朱里君とは、なかなかクるものがあるな」
「度々出てくるその背筋が凍りそうな発言やめてくださいよ」
「安心したまえ、私は君に手を出さんよ」
「・・・そっすか」
だんだん疲れてきた。そろそろ本題に入らせてもらおう。
「で、なんで急に俺と面会なんて?」
「ああ、そうだったな」
博士は、部屋を見渡して言った。
「この面会が記録に残ることはなく、また誰かに見られることも聞かれることもない。いいね?」
すぅっと、目が細く鋭くなった。異様な緊張感が襲ってくる。今までの変態具合で忘れかけていたが、この人はエリート中のエリート。きっと何かしら大事な用事で来たに違いない。
「我々が確認している君の同居者は2人だ」
黑とアイのことだ。
「しかし、度々君がまるで別の者と話しているように見える」
ナイフを突き立てるかのような一言に、自然と険しい顔になる。
「単刀直入に聞く。
「・・・確信済みッスか」
息が詰まった。
「私の目算では3人だ。2人は君の認識の中に、そして1人は君の意識の中にいる。その先は考えないようにしているよ。身の安全のためにね」
これが、ブライト博士。どれだけ問題行動を起こしても重宝される、その頭脳。誤魔化しの効かない完璧な推理に、驚嘆するしかなかった。
「合ってます、全部」
「そうか」
すると、博士は途端に俯いてプルプルと震え始めた。
「えっと、その、報告しなかったこと怒ってます?」
「いや、別に、それはいいんだ。むしろ良い判断と言える」
肩を抱き、上目遣いになる博士に、何かしらの狂気を感じた。この人は、何を考えている?
「私はね」
嫌な汗が流れる。喉が渇いてしかたがない。
「
「はい・・・はい?」
「カプ厨なのだよ、カプ厨。私は君と他のオブジェクトとの関係を所謂”カップル”として楽しんでるんだ。本当ならこうやって君と会うこと自体避けたかったんだ。いやしかしこれで君とのカップルが一気に3人増えたことになる。これは想像が膨らむぞ。いや、危険性もあるからさすがに”意識の子”はやめておこう。態々観葉植物からカップルに割って入るクソオタクムーブをして良かった」
「あ、あの〜」
「ありがとう朱里君これで今夜も熟睡できる。ではさらばだ!」
「はい?」
「ではさらばだ!」
「え、その」
「ではさらばだ!」
「あ、はいさようならです」
外に放り出され、パタンガチャッと鍵を閉められる。
ふむ、一言言わせてほしい。
「マジなんなんだあの人」
神谷朱里
今回の被害者。
ブライト博士
超ド級の変態。この人ならどれだけ性格変態にしても怒られないと思ってる。なんでアベルとよりにもよって〇✕ゲーム仕掛けたんだろ。
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無垢の少女と戯れる実験
まずは、ひどく遅れていたことについて。他小説や受験、ゲームに時間を取られていてなかなか書けず、書いても進まずということが続いていました。すみませんでした。
次に、リクエストされていた『機械仕掛けの神』について。こちらは、単純に行き詰まっております。今暫くお待ちいただけると幸いです。すみません。
最後に、本部以外のリクエストについて。こちらは作品の進行の都合上後回しにさせていただいております。ご了承ください。
今日も今日とてクロステストな日常です。
SCPー811 沼女
それが今回のお相手だ。オブジェクトクラスはEuclid。
身長およそ171cmで体重が常に47kg未満の腹部が少し膨らんだ女性。緑色のまだら模様の肌をしていて、彼女の汗は刺激性を持つ。手足から半緑色の透明な粘液を分泌していて、触れた有機物を黒色の液体に溶かしてしまうらしい。それが彼女のご飯になる。
沼地を模した小さな区画で収容されていて、24時間ごとに食料を提供している。また、1週間ごとに浴槽の掃除、一日ごとに頭の洗浄、と。
今回はクロステストがてら頭を洗ってあげなさいとのことなので、シャンプーを持参。何故か頭髪がシャンプーに耐性があるらしいのでかなり強めのシャンプーを持ってきている。人が使えば次の日にはフッサフサがつるっつるになってしまうのだとか。
シャンプー耐性だとか強いシャンプーだとかの謎単語にツッコミを入れるのは無駄なのでしない。防護服越しでちゃんと洗えるのか不安だけどまぁ気にしない。
『君のことだから杞憂だとは思うが、万が一もある。いつも通り注意したまえよ』
「分かりました」
気遣う博士に言葉を返し、俺は機械の門をくぐって行った。
少女の名前は、『アエ』という。本人が決めたものの読み書きができないため、綴りはなく発音記号で表されている。
「アエちゃん」
名前を呼ぶと、彼女は沼から顔を出した。
「おにいさんだあれ?」
できるだけ目線の高さを合わせるために屈む。上から見下ろして喋ると、威圧感を与えてしまう可能性があるから。
保育士志望のための本、意外と役に立つ。
「お兄さんの名前は神谷朱里。今日一日、アエちゃんのお世話を任されているんだ」
「あかりさんなの?ほんとにあかりさん?」
「あれ、知ってるの?」
「せんせーがはなしてたの!」
彼女がせんせーと慕っているのは、財団研究員の一人であるトレビュシェット博士だ。博士がオブジェクトに情報漏らしていいのかなぁ。今更感はあるけど。
「ちなみになんて言ってたの?」
「おんなたらし!」
「もう俺泣いていいかな」
自覚があるだけに余計辛いです。
閑話休題。
「とりあえずシャンプーしていこうか」
「やったー!」
うーん無邪気。肉体が十分に成熟してるから、そんなに子供らしく跳ね回られると男としてちょっとクるものがある。努めてたわわに実った2つの果実から目を逸らし、シャンプーを泡立てていく。
「痒いところがあったら教えてね」
「はーい!」
うーん、誰かの頭を洗うなんて初めてだな。しかも女の子。髪を傷つけないように丁寧に、ってのも大変だ。
でもま、本人は気持ちよさそうだからいいのだろう。
「あかりさんやさしいね」
「え?」
「いつもはもっとらんぼうなの」
それはー、うん。乱暴というか、恐怖から来る強ばりだとか震えだとかが原因だと思うのですけど。つまり俺が異常なのです。
「はい、流すよーお目目閉じてねー」
シャワーからお湯を出し、白い泡で埋め尽くされた頭を流しながら、ついでに手櫛で髪を梳かす。これでよし。
「どう、きれい、きれい?」
「うん、綺麗になった」
「わーい!」
うっ、急によっかかってこないで。重くはないけど柔らかそうな双丘が上から見えちゃう。
「あー、そうだ」
「?」
ここで、秘密兵器を投入する。博士に無理言って持たせてもらったもの。
アエちゃんは、髪の毛が長い。深緑色の髪は腰まで届き、前髪も胸元まで伸びている。そのせいで顔の大半は隠れて見えない。
と、いうわけで、純無機物の髪留めを持ってきました。これを前髪をまとめてカチッと留めると──。
「わぁ、いっぱいみえる!」
本人大喜び。目を覆う髪を邪魔そうにしてたし、さぞかし視界が良くなっただろう。
それに。
「うん、やっぱり」
「?」
「アエちゃん、かわいいね」
子供と大人の中間、とでも言えばいいか。あどけない可愛さと大人の色気を総取りしたかのような顔立ちは、見てもらわないときっと損だ。水辺の岩場に座っていれば、それはそれは絵になっただろうな。
と、アエちゃんが顔を伏せているのが見えた。心なしプルプルと震えている気がする。
「どうしたの?」
もしや地雷でも踏み抜いただろうか。
「えい!」
なんて心配はどこえやら、急に抱きついてきた。さすがに抱きつかれるのには慣れたし、防護服があるので胸を生タッチなんてこともない。つまり理性が削られることはなかった。
とはいえ理由は気になるわけで。
「あのねあのね!」
「うん」
「わたしかわいいっていわれたのはじめて!」
・・・そっか、初めてか。
「とってもかわいいよ、アエちゃんは」
「えへへー!」
走ったり、跳ねたり、踊ったり。余程嬉しかったのか、長い髪を靡かせながらはしゃぎ回っている姿は、まるで子供のようで。
悲しくなった。
・・・ダメだ。せめて顔に出さないようにしよう。せっかく喜んでるのに辛気臭い。
「おにいさん!」
なんて考えていると、名前を呼ばれる。さっきまで遊んでいたアエちゃんが、俺の顔を覗いていた。
「なぁに?」
「あのね、わたしね!」
彼女は、花の咲いたような笑顔で言った。
「おにいさん、だいすき!!」
一生忘れられない笑顔が、また増えてしまった。
防護服を脱ぎ捨てて、すぐに俺は座り込んだ。
「お疲れ様、よく耐えたね」
全部知ってる
「大丈夫だよな、顔に出てなかったよな?」
「うん、銀幕俳優顔負けの演技だったよ。ちゃんと最後まで、ね」
「そりゃ結構」
あークソ、会う前に一度吐いてもう胃の中身がないはずなのに、また吐き気がこみ上がってくる。原因は、アエちゃんの記事。その補遺中のインタビューログだ。
あの子は、おそらく
純粋無垢、故に残酷。思わず握りこんだ拳が、酷く痛かった。
「だめ」
短い一言。それだけで、心に生まれた黒い熱が冷めていく。
「そんなの誰も望んでない。人の死を望むのは、私達だけで十分だよ」
「・・・そっか」
そうか、そうか。
「ようし、切り替えだ切り替え!」
大切なのは昔じゃなくて今。今あの子が幸せならそれでいい。
「もう大丈夫?」
「それは分かんないけど」
多分、これからもこういうことがある度に俺は人間を憎んでしまうと思う。
「けど、今は大丈夫だから」
そのときは、皆に止めてもらおうか。
「信じてるよ」
「しょうがない人」
アエちゃん
かわいそうなオブジェクト枠の一人。インタビューの限りでは、主犯はアンブレラ社レベルで真っ黒な模様。朱里くんがキレそうになるのも仕方がない。ところであの身長で精神は子供ってつまり無知無知ってこ(殴)
朱里くんのストッパー。精神安定剤。いい人風だけど実はこのまま依存すればいいと思ってる。
h2o+co2さん
えりのるさん
誤字報告ありがとうございました
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撮影者とお話する実験
写真。
世界の一部を切り取って焼き写し、たった一瞬を永遠のものにする文明の利器。
幼い子の成長を記録したり、愛しい人との時間を記録したり、あるいは神秘的な光景を記録したり。
写真に触れてこなかった人間はきっといない。
今回は、そんな写真に関わるオブジェクト、いや、
SCPー105 ”アイリス”
オブジェクトクラスは、Safe。久々に十分安全である。
アイリス・トンプソンという名の女性とカメラのオブジェクト。
女性がそのカメラを用いて撮影した写真は、まるで監視カメラのようにリアルタイムの映像に切り替わり、また女性のみその写真の当該地点から手の届く範囲に物理的影響を与える、要するに、触れることができる。
ちなみに、写真に手を突っ込んでいる間、当該地点では目に見えない穴から手が伸びているらしい。軽くホラー映像だけどちょっと見てみたい。
そんな彼女だが、実はアベルと面識がある。話を聞くとどうやら、何らかの勝負で負けたらしい。苦い思い出らしいので詳しくは詮索しなかった。うん謝るからベッドに連れ込もうとするのやめて?
閑話休題。
今回のクロステストの目的は、人に対する俺の異常性の影響の調査である。
結論から言うと、
「でね、あいつら私の能力を使って暗殺させようとしたのよ!?信じられないでしょう!?」
「大変でしたね」
多少効きはするが、他ほどではない。親しい友達程度の好感度だった。
ほんっっっっっとにその程度で良かった。と言うのも彼女、実は収容される前に彼氏さんが殺害されている。というより、それが契機となって収容されている。それでこんな実験に付き合わされているわけで・・・。
つまるところ、彼氏に先に逝かれた女性にホスト吹っかけてるようなものである。これを許した財団職員の精神性にはさすがにドン引き案件。こんなんでほの字になられでもしたら彼氏さんが浮かばれないし、何より俺が自己嫌悪で閉じこもる。
さて、ここまで聞けば分かる通り、現在目の前にはアイリス・トンプソンさんがいらっしゃる。ブロンドの髪を一房にまとめた、青い瞳の女性。身長は俺より15cmほど小さく、可愛らしい印象を受ける。
が、今は頬に朱が差しているためか、妙に色っぽい。原因は酒である。
クロステストに際して限定的に容認された酒。理由を聞けば、ストレス発散に、だそうで。かれこれ1時間近く財団に対する愚痴を聞いている。
「あれ、君呑まないの?」
「いやまだ未成年です」
「え、やだ、うそ!」
余程予想外なのか、口元を抑えて目を見開くアイリスさん。
「若いとは思ってたけど、そっか未成年。大変ねぇ、ほら、セイシュンってやつ?送れてないでしょ?」
「そっすね」
嘘ですそこらの高校生より青春してる自信あります。まともでも健全でもないだろうけど。
「私もねー、あんなことがなければ今頃彼と・・・彼と・・・う゛え゛ぇ゛ぇ゛ん゛!!」
「そうですよね、辛いですよね」
泣くのこれで何回目だろう。呑み始めからことあるごとに亡くなったボーイフレンドのことを思い出しては、こうして吐き出すように泣いて、止んではまた思い出して、というのを繰り返している。
下手に突っ込めば地雷踏みそうで、背中を撫でて慰めるくらいしかできないのが歯痒い。まぁ、泣いたら落ち着く、なんてこともあるしストレス発散の観点では正しいのか。
「にしてもその人、少しだけ羨ましいなぁ」
「ぐずっ、んえ?なんで?」
あ、やば。思ってたことが口に出た。
「いやだって、死んだあともずっと想われるってとっても幸せなことじゃないですか」
遺された側からすると溜まったものじゃないだろうけど。死んでも思われるってことは、恋人冥利に尽きるんじゃないだろうか。それだけ愛されるって、幸せなことなんじゃないだろうか。
俺の死後を想像してみる。
・・・・・・・・・。
やめよう世界が終わる。
「少年、いい子だね君」
「あ、はい」
「名前は?」
「神谷朱里です」
「なるほど、カミヤくん」
「はい」
「なんかあったらここに来なさい。相談くらいなら乗ってあげるわ」
先程までの涙は何処へやら、優しげに微笑んでアイリスさんはそう言ってくれた。
うん、でもさ。
「さっきまで大泣きしてた人に相談はちょっと・・・」
「カッコつけさせてよぉぉぉぉ!!!」
正直に言おう。カミヤくんに対して、あまりいい印象を持っていなかった。
曰く、いつも女の子を侍らせている。
曰く、オブジェクトを虜にする
曰く、オブジェクトホスト。
色々と噂は流れているけど、総じてまぁ軽薄な感じ。そんなこんなで今日会うことになって、どうせ口説かれでもするんだろうと突っぱねる気満々で望んだ。
実際に会ってみて、実はいい子なんだなって思った。
気遣いはできるし、優しいし、私が過去に彼氏を亡くしているのを知ってか知らずか、下手に踏み込もうとしてこない。
人との間合いを測るのがとても上手いんだ。
「君が好かれる理由がよく分かったよ」
異常性とかが取っ掛りとしてはあるんだろうけど、彼が愛されているのは彼自身の人柄のためなんだろう。
「そう、ですか?」
当の本人は分かってないみたいだけど。彼に恋心を抱いている子は大変だろうなぁ。
でもまさか、この歳になってあんな少年に感銘するなんて。人間性は年齢じゃないみたいだ。
『死んだあともずっと想われるってとっても幸せなことじゃないですか』
・・・忘れたいなんて、思った時期もありはした。それでも忘れられないのは、私が弱いからだと思ってた。
備え付けの机、その3段目の引き出しの底から、一枚の写真を取り出した。
ずっと、ずっとしまっていた写真。きっともう、見ないだろうと思っていた写真。
彼との、最後のツーショット写真。
泣いてしまうだろうから見れなかったけれど、今は笑顔で見れるから。
最期まで想うという覚悟で、私は写真に微笑んだ
神谷朱里
生死観はまだ正常。
アイリス
あれからよく笑うようになった。あとお酒もよく飲むようになった。
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写真の中の少女と戯れる実験
別にエペなんてやってないんだからねスカルピアサー気持ちよすぎだろ!!
今日も今日とてクロステスト。前回とは違って今回の相手は人ではない、との話を聞いて来たのだが───。
「えーっと、スマホ?」
「ああ、これを持って90時間過ごしてもらう」
アイや2000ーJPのような電子系のSCPなのかと思ったが、説明を聞いて理解した。
結論から言うと、どちらとも言えない。
SCPー1471 MalO ver1.0.0
オブジェクトクラスはEuclid。
無料アプリのオブジェクトで、容量は9.8MB。アプリ、といってもショートカットが生成されるわけでなく、3〜6時間ごとにメッセージと一緒に写真が送信されてくるだけらしい。
お、今来た。どこかわっかんねぇけど、奥のガラスに何かしらの獣の仮面を被った女の子が見える。
とまぁこんな風に、写真のどこかにSCPー1471ーA、あの女の子が見える。
『ベッドに寝転がりながら女の子とチャットかァ?ずいぶんと色付いてんなァ、えェ?』
「そんなに不機嫌になるなって。クロステストなんだから大目に、ね?」
『チッ』
周りの目はもちろん痛いが、仕方ないと割り切ることにする。
閑話休題、ここまでは序の口なわけで。このオブジェクトは時間が経つと少しずつその片鱗を見せてくる。
丸一日経って、送られてくる写真に変化が見えてくる。
「お、食堂の写真だ」
『ちかく?』
「うん、大分近いね」
このように、対象のよく行く場所の写真に変わる。少女はもちろん写ったまま。
これがまた3時間から6時間ごとに待って待って
「あ痛たたた。にしても、また増えそうだなぁ」
スマホの中の住人である、アイと2000ーJP。精神の中には
部屋は狭くないとはいえ、視界上少々窮屈に感じる程度には住み込んでいる。
「僕は慣れたけど、傍から見たらかなりのクズだよね」
言わんといてや。
心なし、写真に写る少女の視線も冷たく感じた。
次に変化が訪れたのは、まる二日後。正確に言えば、一日後に対象が最近行った場所の写真に変わるのだが、基本施設の外に出ないのでほぼ変わらなかった。ってことで割愛。
「・・・うわーお」
送られてきた写真は、
ちょうど、黑の奥の鏡から俺を見ていた。
目が、合った。
「っ」
なんというか、こう、真剣に咎めるような瞳って言うの?ちょっと覚悟を決めたみたいな雰囲気もあるし、完全に睨みつけてるし、眠っていた罪悪感が目を覚ました的な、キュッと胸が締め付けられるような感じがした。
確実に恋ではない、確実に。
そして、丸一日と少し後。
「ど、どーも」
「ええ、こんにちは。私は”マールゼロ”、”ゼロ”とお呼びください」
これまで写真に写っていた少女が、今は現実のそれとして目に映った。この前はガラスとかに映って見えてたんだけど、今は余計に威圧感がすごい。
「・・・私は」
マスクの下から、こもったような声が聞こえる。
「初めて写真越しにあなたを見たとき、誠実そうな人だなと思いました。それに優しげで、顔も好みでした」
耳触りのいい、柔らかな声。マスクを挟んでいるのによく聞こえる。
「でも違った」
「ヒエッ」
急に、地獄の底から這い出たような恐ろしい声音に変わった。
「毎日別な女の子の元にかよっていたり、部屋にも
みんなが見えてるあたり、やっぱり精神にいるだったみたい。
にしても大分毒舌だなぁ。真正面から言われるとこう、クるものがあるね。
「聞いてますか?」
「あ、はい」
「おっほん、そこでですね」
あ、なんかまずいこと言いそうな気がする。いらなく鍛えられた直感が全力で危険信号を放っている気がする。
「あの」
「
すぅーーーーーーーーーーーーー・・・。
「あ?僕を差し置いて何言ってんのかな勘違い女?」
「彼の優しさを愛情と勘違いしているのはナターシャ様でしょう?」
「産まれたての小娘が、会ったばかりでよくほざくね」
「愛に時間は関係ありませんので」
『それは違う。
「それは認めますが、
『む〜』
『随分と見苦しい争いだね』
「おや、いつもはふんぞり返って静観している
『気まぐれだよ』
「気まぐれですか。ではまた黙って見ていてください」
『私と戦うのは怖い?』
「いいえ、恋敵として認識していないだけですよ。一番に寄り添える立場にありながら関係性を発展させようとしない
『へぇ、よく言うね』
『でも
「ですからそれは────」
「───あれ?」
目が覚めた。ここは、医務室かな。
「起きたかね」
「博士?」
かなり疲れているみたいだ、隈が濃い。
「あの、俺はどうしてここに?」
「気絶だ」
「え?」
「精神的負担による気絶。精神疾患者によく見られる。診察結果を見るに君が精神病を患っているとは思えないが、おおよそ非現実に触れすぎて気付かない間に疲れていたんだろう。発狂しなかったのは幸いだな」
「あー」
言えない、多分俺の中にいるみんなのせいですなんて言えない・・・!
「後でSCPー682に礼を言いに行きたまえ。奴が倒れている君をここまで運んできたんだ。その際の修繕費と人的被害は見なかったことにする」
「それは」
「安心しろ、死人はいない。話は以上だ。私は寝る」
「その、お疲れ様です」
ぴしゃりと、自動ドアが閉じた。
「・・・弁明を聞こうか」
「すみませんでした」
『ごめんなさい』
『うん、今回ばかりは本当にごめん』
『ごめんね』
はぁ、反省してるなら許そうかな。
「もうこんなことはないようにね」
とはいえ、これはある種の知見だね。
今回のことは間違っても実験とは言えないけれど、それはそれとして、競合した認識災害同士が敵対すると、当人の精神的負担を抑えるために気絶する、ていう新事実が分かった。
分かってなんだって話だけど。とりあえずブライト博士には報告しとこうかな。
「それじゃ、お礼を言いに行こうかな」
──ちなみに、この後ルイにしがみつかれるのはまぁ、別の話だ。
神谷朱里
お察しの結末。
ゼロ
メタルなギアと関係はない。さすがにこれに懲りて今は大人しくしている。それはそれとして自分が嫁になると確信している。
名付けられるということは対等でないということ。対等でなければ結婚はできないでしょう、とは彼女の言葉である。
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伝説の狐と戯れる実験
独特の通知音とともにクロステストの概要が送信されてくる。この通知音、アイが勝手に変えるというイタズラを頻繁に行うため、たまになんの音が分からなくなるので注意だ。
『・・・また通知音を変えたのかね』
「ええ、まぁそうですね」
もちろんアイのせいですなんて言えるわけもなく、博士の怪訝な視線を受け流すことになる。いつかバレそうで怖いのだが、一向にやめてくれる気配がない。むしろ楽しんでいる節がある。
閑話休題。
『さて、今回の相手だが───』
「Keterっすか」
『───ああ、久々のな』
SCPー953 妖狐変化
オブジェクトクラスは今言った通りKeter。
9つの尻尾を持つ狐のオブジェクトで、名前の通り変身能力を持つ。暗示やらテレパシーやらも使えるらしい。
いわゆる九尾の狐である。元いた場所が朝鮮半島らしいく、「
え?なら日本や中国ではどうなんだって?分かってんだろ。
性格は敵対的かつ残忍。主食が人間の内臓であり、拷問を好むらしい。シンプルイズベストな凶悪さである。怖い。
ただし、犬が怖かったり変身しても狐の要素がどこかに残ったりとちょっと抜けてるところがあるらしい。かわいい。
さて、そんな彼女だが、これまでに何度か収容違反を起こしており、その度に決して少なくない被害を出していたわけだが、最後に収容違反から既にかなりの時間が経っている。俺が収容されるなどのいざこざがあったのに、である。
理由は記事に書いてあったが、まぁ、その、世界の変態相手ではさすがに恐怖が勝ったらしい。口が裂けても可哀想とは言えないが、哀れではある。
『過去の例を見るに杞憂だとは思うが、何かあったら逃げてくれ』
「了解です」
しかし、暗示にテレパシーか。認識災害やらミーム汚染やらとはまた別に”暗示”、”テレパシー”として分けられているあたり、何かしらの違いがあるんだろう。そこら辺は分からねぇ(学無し)。
放し飼いされている犬に群がられながら、俺は扉に足を進めた。
部屋の中央、椅子に腰掛けティーカップを傾けている女性がいた。狐の耳に9つの尾を持った彼女が九尾狐なのだろう。装いが質素な白いワンピースでありながら気品の感じられる、傾国と謳われる美しさの一端が現れていた。
部屋はこれまで見たものに比べると広くはなかったが、彼女の趣味によって飾り付けられ、素人目で見てもお洒落に感じた。にしても装いといい装飾といい、韓国というよりもヨーロッパ風に彩られているのはなぜだろうか。
「そう他人の部屋をジロジロと観察するものではないぞ、小僧」
よく通る声だった。深緑色の瞳が、舐るようにこちらを見ていた。
「ふむ、下手に着飾って来ようものなら喰ってやろうとは思ったが・・・」
怖すぎだろ。
「まぁ許そう」
危うく世界が終わりかけた。
「座れ。茶をやる」
内心冷や汗を流しながら、俺は向かいの椅子に腰を下ろした。
「あ、美味しい」
特別紅茶に明るいわけではないけれど、上等な品なのだろうと思えた。
「私が選んだのだ、当たり前だろう」
自信あります!なんて感じもない、純粋に当たり前だと思っているんだろう。言葉の中に抑揚がなかった。
え、九尾の狐ってヨーロッパにも手を伸ばしてたの?それとも南アジア?ダメだ分かんねぇ。紅茶どころか地理にも歴史にも伝承にも明るくなかった。
「そう
「あ、えっと・・・」
「
すげえな、読心術も使えるのか。
「お前は分かりやすい」
「あ、そっすか」
紅茶を一口。
「それで、どうして洋風な雰囲気にしたんです?」
「嫌だったか?」
「むしろ好きです」
「そうか」
ティーカップを置き、手を組んで、ゆっくりと口開いた。
「さて、理由だったか・・・」
昔の話が始まるのだろうか。悠久を生きた彼女のことだ、重い話の一つや二つあっても不思議ではない。俺は身構えた。
「まぁ、気分だ」
「気分」
「そうだ」
「そっすか」
なるほど、なるほど、気分か。
「意外か?」
「ですね」
「やはりか、そんな
空のカップに、紅茶を注いだ。
「・・・化けた私と見えた人間は、二つの
彼女の持つ凶暴性、その原因なんだろう。蕩けたように頬を赤らめていた。
「しかし、そうだな。他の
「それが物珍しいからなのか、お前だからなのかは、私には分かりかねるがな」
頬杖をついて、彼女は微笑んだ。
数秒、時間が止まったような気がした。
「・・・」
「見惚れたか?」
「不可抗力です」
「恐怖に歪ませてやったらさぞ面白いだろうな」
「やめてください」
九尾狐の朝は早かった。というか、今日が楽しみで寝れなかったと言うが正しい。なんせあの神谷朱里がやってくるというのだから。
神谷朱里、謎のメッセージによってその存在は今や収容施設全体に知れ渡っており、一部が熱狂的なファンと化している、らしい。然しもの九尾狐もメッセージに添付されていた少年の笑顔にハートを撃ち抜かれた1体であり、クロステストの話が掛かったときにはそれはもう大喜びしたものである。表には出さないが。
さて、ここで彼女の頭を悩ませているのはどう出迎えるかである。
(せっかく部屋の中では自由なのだ。それに趣向品もある)
ここで現在分かっている朱里の情報を整理してみよう。
・アメリカ在住日本人
・笑顔が素敵な男の子
・ホスト()
好みも趣味も分からん。どうすればいいんだこれで。
(いやまて、あの歳で海外に移住したということは、それだけの理由があるはず・・・。まさか、米国の空気が好きなのか!)
それは両親の仕事が原因である。
さて、正解かどうかはともかく、これでアメリカンな飾り付けにしようと決まったわけだが、ここでまた問題が発生する。
(まずい、これまで見てきた米国の光景が全てあの変態どもに上書きされていく!)
以前見た動物に興奮する変態どもが、彼女の記憶を侵食する。これにより、アメリカに対する知識がゼロに還った。
混乱、焦燥、そろそろポーカーフェイス苦しくなり、ついにすました真顔が歪みかけたその時、天啓が降りる。
(英国!そうだ英国だ!きっと米国と似たようなものだろう!元は支配下に置いていたと聞くしな!)
結果、今回のような部屋模様が生まれたのである。
この緊張は、クロステスト中延々と続き───
「ふむ、下手に着飾って来ようものなら喰ってやろうと思ったが・・・」
意訳:パジチョゴリ(韓国の伝統衣装)なんて着てきたら多分性欲が抑えられなかった。
「嫌だったか?」
意訳:嫌だったらすまない・・・。
「むしろ好きです」
「そうか」
意訳:そうか!
───まぁ、ともかく、事の裏側はこのようにぽんこつで構成されていた。もはや伝説の九尾狐の威厳はどこへやら。20も満たない小僧に手玉に取られいいようにされている、主観的には。
だから、最後にやり返したくなったのだろう。
朱里の赤面を見て満足した彼女は、静かに鼻血を流しながら次は自分から呼ぼうと決心した。神谷朱里のホスト化がさらに進行するのは、また別のお話。
神谷朱里
ホスト
九尾狐
朱里以外の全男性特攻持ち。なお朱里はアンチピックの模様。ホストにハマるってこんな感じ、多分。
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膝枕
膝枕。健全な日本男児ならば、誰しも夢見たことがあるだろう、イチャラブのテンプレートだ。
可愛い女の子の柔らかな膝を枕にして寝たい。あるいはそのまま耳かきをされたい。そういう欲が、往々にして男の心のなかには存在している。それこそ、そういうシュチュエーションの音声作品が多数生まれるほど。
さて、何を隠そう俺もその健全な日本男児の一人ではあるのだが、本日、その夢が叶った。
そう、叶ったのだ、寝てる間に。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
考えてみてほしい。目が覚めたら顔のいい褐色お姉さんが慈愛に満ちた表情で俺の顔を覗き込んでいるのだ。色んな意味でハートがドッキドキである。
ちなみに鍵をかけたはずのドアは、綺麗に真っ二つにされていた。
「あの、どうしてここに?」
「君がなかなか逢いに来てくれないから、お姉さん拗ねちゃった」
朝から顔面偏差値とあざとさの暴力。俺の理性に大ダメージ。が、俺の中の住人が姦しいので何とか踏みとどまれる。
「私も夢の中で膝枕を・・・」
「へぇ〜、
「ご主人、
後々が怖すぎた。
あとさっきから携帯の通知が鳴り止まない。これアイの仕業だろ。
とりあえず、どうにかアベルを帰らせないと。
「あの、朝ごはん食べたいんですが」
「やだ、朝ごはんってお姉さんのこと?」
「そっちの
ダメだこの人、なんでもナニに繋げてくる。久しぶりに会ったからかはっちゃけ方の次元が違う。てかそろそろルイかノアが来そうじゃないか?
あ〜(絶望)
お腹空いてきた(現実逃避)
あの後、案の定収容違反してきたルイとノアと一悶着起こしながら、どうにかこうにか約束を取り付けて全員帰らせることに成功。ようやっと朝ごはんを食べることができた。
あの、シェフさん、朝から精のつくもの出さないで?何そのサムズアップは。別にそういうことするわけじゃないからね?
朝からレバニラか、重っ。
閑話休題。
さて、約束の話をしようか。まぁ、何となく察しはつくとは思うが、約束とは、膝枕をしてもらうというもの。あ、もちろん俺がしてもらう側ね。まさか膝枕させてくださいなんて言われる日が来るとは思わなかったよね。
で、だ。ここでひとつ問題が、いや問題児の介入があったわけで。そう、例の首輪である。どこで聞いたのか、俺が膝枕をされたがっているという噂を流しやがった。
今現在、それの対応策を上で話し合っているらしい。毎度こんなことで会議に駆り出される上層部の方々には頭が上がらない。
と、噂をすれば。
「はい、朱里です。はい、はい。あー、やっぱりですか。はい。それじゃあしばらくはそちらの対応に当たりますね。はい。その、お疲れ様です。本当に。ゆっくり休んでください。失礼します」
・・・後で、博士に胃薬でも持っていこう。声だけでも分かるくらいやつれてたよ。
で、だ。対応策なんだが、うん。そういうことだ。俺はこれから、膝枕をされに回ることになる。意味分かんないよね、俺もだよ。
ご馳走様でした、と。
さて、これから忙しくなるぞ。
【ルイの場合】
ルイはこういった知識には疎いようで、膝枕がなんなのかを知らなかったらしい。教えろせがまれたのでかくかくしかじかと説明してみたところ・・・。
『へ、へぇ、そうなんだな』
顔真っ赤にしてて可愛かったです!!
「た、確か、膝を折って座って、その上に頭を乗せて、だったよな」
そうそう合ってる合ってる。
・・・あっ。
えっとね、ルイは普段服を着ないんですよ。基本酸の中に浸かってるから。で、俺と会う時だけ外に出て服を着ることが(脅して)許されてるわけですけど。
その、彼女の持ってる服って全部俺のダルダルのお下がりで、しかもズボンとかは絶対履かないのよ。
つまり今、ちょっと間違えば見えちゃうんですよ。
「ど、どうした?もしかしてなんか間違えてたか?」
あーいや、大丈夫だよ。ただちょっと世界一危険なチラリズムがね?
それじゃあ失礼して。
「んっ」
ゆっくりと膝に頭を起き、ルイの顔を見上げる。あー、いいなこのアングル。普段彼女から見下ろされることがないから新鮮だし、何より恥ずかしがってる顔がよく見える。
かわいいですはい。
全裸で抱きついてくるような娘が、こういうことで顔を赤らめちゃうっていうギャップがもう最高ですよね。
「どう、だ?俺、ちゃんとできてるか?」
うん、すごく心地いいよ。わざわざ硬い鱗を変質させてくれてるしね。ありがとう。
「そっか、良かった」
あ〜、膝枕の感触と可愛いお顔で二重に癒される〜。
おっと、欠伸が漏れた。
「眠くなってきたか?」
そうかも。おかしいな、ちゃんと寝たはずなんだけど。これも膝枕の魔力か。
「・・・少しくらい、寝ていけよ」
あーら耳まで真っ赤だよもう。それじゃあお言葉に甘えて、少し寝るとしましょうか。
おやすみ、ルイ。
「ああ、おやすみ」
【ノアの場合】
「さぁ朱里さん、早く、早く。私、もう待ちきれません」
せっかちだなぁ全く。シャイな君はどこに行ったんだい、割とマジで。
まぁ、カメラに背を向けて座っているから、俺以外には誰にも見られないということで無敵なんだろう、多分。心做しかご尊顔が艶やかだし。
ノアは、膝枕が夫婦もしくは恋仲、あるいはそれに近い関係で行われる営みだと知っていたらしい。そのためか、あの光景を見て真っ先に怒りを顕にしたのはノアだった。
「朱里さんのために私、頑張ったんですよ?こ、この格好、すごく恥ずかしいんですから・・・」
普段は、露出を極端に抑えた服装を好むノアにしては珍しい、ホットパンツ。病的に白い肌とは裏腹に、その御御足は健康的な太さを保ってある。
おっと、これ以上眺めてたらノアが茹でダコになっちゃうな。
それじゃあ失礼して。
はぁ〜、柔らかぁ。それに温度がちょうどいい〜。やっぱり人肌の温度って安心する〜。
というか、アベルもそうだけど、どうしてこの柔らかさであんな速く動けんの?
「ふふ、気持ちよさそうですね、安心しました。ところで今他の女のこと考えました?」
いやいや、そんなわけないじゃないか。今は君に夢中だよ。
「私に夢中・・・えへへ〜」
悲しいことに私の取り柄は口八丁です。
「その言葉に免じて許してあげますね」
誤魔化せてはいないと。悲報、取り柄が消える。
でも、夢中っていうのはあながち嘘じゃない。ノアが俺の顔を覗き込んでいるおかげで、その綺麗な白髪が流れるように垂れて可愛らしいお顔が・・・お?
「ノア、誰かからお化粧教わった?」
「分かっちゃうんですね、やっぱり」
雰囲気ちょっと変わったかなぁ程度の、本当にうっすらとしたナチュラルメイク。さすがに初めてでそんなことできるとは思えない。
「えっと、化粧品は朱里さんのファンを名乗る方から贈られまして、やり方はアイリスさんに言伝で教わりました」
そっか、良かったね。
「・・・朱里さん」
どうしたの?
「私、もっと綺麗になります」
うん。
「朱里さんに相応しい女の子になります」
今でも、俺にはもったいないくらいだよ。
「・・・やっぱり、優しいですね」
そうかな。
「そうですよ。そんなあなただから、私はいっぱい頑張るんです」
「それで、あなたの隣を歩く自信が持てたら」
「その時は、本当に私に夢中にしてみせますね」
・・・そんな可憐に微笑んじゃって。もう十分見惚れそうだよ。
【ペスト医師の場合】
「君か、入りたまえ」
あの、まだ声掛けてないどころかノックもしてないんですが。
「君の足音は覚えている」
なんでさ。
「好いている異性のデータを全て記憶し記録するのは至極普通のことではないかね」
せやろか。
「さて、早速寝たまえ。時間が勿体ない」
寝たまえって、なんか忙しそうですよ。
ペスト医師──先生は今、資料の散乱した机に向かって、タブレットを操りながら何らかの仕事をしていた。内容は難しすぎて分からなかったけど。
「何を言う。膝枕に必要なのは私の膝と君の身体だ。作業する私の手と脳は関係ない」
でも、その、やりずらくないですか?
「それはありえない。私が君を愛しているからだ」
何故そこで愛。
「愛とはときに限界を超える原動力、エネルギーになる。人間はそういった物語が好きだろう?」
確かにそうですけど。
「つまり、そのエネルギーを常に供給できれば私の作業効率は跳ね上がるわけだ。事実見たまえ。君と会話をするだけで平常時のおよそ120%の作業速度を確保している」
愛ってすげぇなぁ(遠い目)
ってことは、俺は作業効率のために呼ばれたということですか?
「いや、違うが?」
違うんだ。
「君を呼んだのは私へのご褒美だ」
ご褒美。
「そうだ。私は頑張っている。ならばモチベーションを高めるために少しばかり贅沢は許されると思わないかね」
これが贅沢というのならいつでも来ますけど・・・。
「いや、それでは特別性がない。無論君の膝枕というだけで十分以上の効力は発揮してくれるだろうがそうすると逆にモチベーションの低下に繋がりかねない。努力なしに君から褒美があると覚えてしまうからな。勿論私はその程度で研究に支障をきたすような愚者ではないが。ともかく褒美としてこの膝枕を受け取る以上特別性が大事なんだ。理解してくれたかね?」
あ、はい。
「では、早速頭を預けてくれたまえ」
はい。では失礼して。
あれ、コート越しなのに肌触りがいい。
「こういうことを見越して準備をしておくのが研究者というものだ」
そうなんかな。すげぇや研究者。
「しかし、ふむ、これは・・・興味深いな」
どうかしたんですか?
「心が温かい。全能感に満たされる。思わず頬が緩んでしまう。そうか、これが幸せか」
頬が緩むって、なら顔見せてくださいよ。
「その唇に接吻をしてもいいなら許可しよう」
比喩抜きで世界が滅ぶんですが。
「君が生き延びるなら他はどうでもいい」
僕が良くないっすね。
「冗談だとも。君の背負っているものは理解しているつもりだ・・・子供ながらによく頑張っているよ、君は」
・・・そっすか。
あの、なんで頭撫でてくるんです?
「分からない。どうしてか、手を止めてまで君を撫でたくなった。これでは本末転倒だ。・・・だが?」
だが?
「悪くない気分だ。興味深い」
・・・そうですか。
それからしばらく、俺は大人しく頭を撫でられていた。彼女に名前を付けるのは、もう少し後になりそうである。
半年経ってたってのにめっちゃびっくりしてる。
この話、実は先生に膝枕されるだけの話だったのに、いつの間にかこうして拡がっていきまして。はい、私にしては珍しく4000文字を超えました。息抜きとは。
今後はもう少し頻度を上げていけるように頑張りますね。でもマデューラから帰ってくるのは相当あとになりそうです。
お疲れ様でした(玄人感)
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ウェディング
後書きに重要なこと書いてあります。特にリクエストをしていただいた方に読んでほしいです。
久々にアイリスさんから連絡が来た。酒呑みたいから付き合ってほしいとのこと。最近もまたいろいろとあったらしく、ストレスを発散したいのだとか。
もちろん俺はまだ未成年なのでお酒は呑めない。というかこのまま20歳になったとして呑むかと言われればきっとノーだ。だってほら、酔ったら怖いじゃん何するか分かんないから。だからアベル、呑まないよ俺は。その一升瓶しまいなさい。てかなんで平然と出てきてるのさ。あとアイ、ウィスキーボンボンの作り方を他のオブジェクトたちに送るのやめなさい、割とマジで。
とまあそんな感じで今日行くことになったわけですが。空気を読んだ博士が相当良い(らしい)ワインと数本の炭酸飲料をくれた。ありがたい。
で、1時間くらい呑みまして。大分できあがったアイリスさんからとんでもない爆弾発言が飛び出したんだ。
「アベルってウェディングドレスめっちゃ似合いそうじゃない?」
博士の胃に穴があく音が聞こえた気がした。ちなみに壁にはしっかりと穴があいた。
どっからかゼ○シィを持ってきたアベル、そんなアベルをケタケタ笑いながら指さすアイリスさん、頭を抱える俺という三竦みの構図が完成してしまった。
アイリスさんは壁に穴があいたことも目の前にオブジェクトクラスketerが現れたことも特に気にしてない、というかそれも肴にしようとしているようで、三本目の瓶に手をつけようとしていた。
「ってまだ呑むんですか!?」
「あったりまえでしょ〜?まだ飲み足りないよわたしは〜っヒック」
「いやさすがに・・・」
「呑ませてあげましょう、おもしろ、うん、楽しそうだから」
「おもしろいって出かけたよな今」
・・・はぁ、まぁいいか。俺がここにいる以上アベルも下手に暴れないだろうし、満足するまでいさせよう。
酒もまだまだあることだし、ついでにということでグラスをもう一つ運んでワインを注いだ。
「そういえばさ、ジャパンにはシロムクっていうウェディングドレスがあるんでしょ?」
「ウェディングドレスっていうか、着物ですかね。最近はあまり見ないですけど」
「そうなの?私好きなんだよねぇ、卵みたいで」
「仕立て屋さんが聞いたら卒倒しそうな例え」
「ねぇ、白無垢ってなぁに?」
「知らないんすか?」
「お姉さん、君の故郷にちょっと疎くて」
「シロムクはねぇこんなんだよこんなん」
「なんで写真あるんですか」
「あ、確かに卵みたい、頭のところが。潰しやすそう・・・」
「戦闘狂が出てるんよ」
「朱里くんはシロムクとドレスどっちが好き?」
「また争いが起きそうな話題を出して」
「まぁまぁいいじゃない。お姉さんも気になるなぁ」
「えぇ・・・いや、相手に似合うならどちらでも」
「ふーん、じゃあさ、アベルならどっちが似合うと思うよ」
「さっきから地雷原爆走してません?なんなら転がり回ってません?」
「ねぇねぇどっちが似合う?吐いちまえよ楽になるぞぉ?」
「性格変わってませんかアイリスさん?」
「そうね、これは早急に答えてもらいたい質問だわ」
「アベルさん、いつになく真剣な顔でこっちを見ないでくれません?」
まずい、本当にまずいことになった。いや何となく予想はしてたけどいざってなると対処できない。これは答えるしかないか。あとさっきから外野がうるさい。「吐〜け、吐〜け」じゃないんだよそれ以上飲んだらそっちが吐いちまうぞ。
いやでも実際どっちが合うんだろ。アベルの肌は、純粋に焼けたり遺伝だったりのレベルを超えるくらいの褐色、いっそ黒褐色と言ってもいいくらいだ。そんな暗い色だからこそ白がよく映える。要はどっちも似合うってことだ。
で、スタイルが抜群にいい。このスタイルの良さを活かすならウェディングドレスだろうな。身長も高いし、レッドカーペットを歩く姿はきっと絵になる。
けど白無垢も捨て難い。普段の印象を一気に払拭する清楚な白無垢。そのギャップで心中どストライクだ。何より顔の良さを全面に押し出せる。
どっちもアベルの強みを存分に活かせてしまう。だから迷うんだよなぁ。う〜ん・・・。
「・・・ウェディングドレスで」
「あら」
「ほほぉ、理由は?やっぱりスタイル?」
「それもあるんですけど、白無垢だと顔に影ができるので、ちょっと暗い印象になると思うんですよね」
「明るいカドデに暗さは似合わないもんね」
「どっから日本語覚えてくるんです?」
「そっか、ウェディングドレス・・・お姉さん考えておくね」
「何を?」
「どんなドレスが着たいかだけど?」
「わざと危ない橋渡ってるよねさっきから」
「ところで、例えばルイちゃんならどっちが似合うの?」
「違うな危ない橋作ってるんだわ」
「俺も気になる」
「来ちゃったよルイ」
増えた壁の穴、頬を赤らめるルイ、爆笑するアイリスさん、楽しそうなアベル、酒で全てを忘れたい俺。ここまで来るともう諦めがつくというもの。もういっそ吐いて楽になるとしよう。
ルイの体型はスレンダーの部類。肌は白いが深緑色の鱗があるという唯一無二の特徴がある。問題はこの鱗を活かすか殺すかだ。活かすなら自然に露出度を増やせるウェディングドレスだし、殺すなら肌を隠せる白無垢だ。
俺としてはルイの鱗は好きだから、ウェディングドレスを推したい。けど、けどさぁ、白無垢の裾からチラって鱗が覗くのもいいなって思ったんですよね。こう、嫁いできた美人さんが実は人ならざる存在だったみたいな?そんな妖艶さがありそうだなって。しかも顔に影がかかるから、余計に怪しさが増すんですよ。いいよね。
対してウェディングドレスは、鱗が全面に押し出される上、健康的な肌も同時にさらされるのでハツラツで可愛らしい印象を与えてくれる。
元気な可愛さか怪しい妖艶さか。うーん・・・。
「白無垢、かな」
ギャップ萌えには敵わなかった。
「白無垢か、ふふっ」
「随分と嬉しそうね」
「朱里が俺のために悩んでくれてたんだ、当たり前だろ」
「当たり前よね」
ね~、と普段喧嘩ばかりのふたりが仲良くしているのを見てとりあえず一安心。・・・けど、あれだな、この光景普通に精神的にくるな。めっちゃ怖い。一歩間違えば世界終わっちゃう。いつも通りとか言わないで。
ん?通知?
『あたしはァ?』
アイか。うん、考えるか。別に現実逃避じゃない。
アイは背丈もプロポーションも平均的。ただし特徴的なのはそのご尊顔だ。こう、なんと言うか、意地悪な顔と言うべきか。牙を剥いた悪魔みたいな、そんな笑顔が良く似合う顔立ちをしている。
加えると、彼女のデータの存在。服装も髪型も彼女の自由だ。気分によってころころと変えるため、印象に残っている彼女の姿は実に多彩だ。つまり、イメージがしやすい。特に髪型のデータは重要。
白無垢は、顔の上半分が隠されてあの嗜虐的な笑みが強調されるという点では魅力的だが、隠れる部分があまりに多すぎるので今回は除外だ。
そしてウェディングドレス。こちらは汎用性が高い、高すぎる。ツインテールにすれば可愛さが強調できるし、まとめずに整えて垂らしたりポニーテールにすれば美しさを強調できる。またショートなどの短い髪型にすれば後ろ姿で魅せることもできる。
てことでウェディングドレスだね。
『そっかァ。探しとく』
君も?
しかしまぁ、こうして考えてみると、ホントにみんなかわいいよなぁ。一人一人が超危険で異常な存在だなんて考えられないくらいだ。
・・・もし、もし仮に、彼女たちがただ人として生まれていたら、どんな人生を歩んでいたんだろう。
もし仮に、俺が普通の人間だったなら、彼女たちに会っていなければ、彼女たちは───
「ところでさ朱里くん!実際のところ朱里くんの本命って」
「アベルさん」
「は〜い」
間延びした声とは裏腹に、目にも止まらない速さでスパンッとアイリスさんのこめかみが弾かれる。
「アイリスちゃんはお酒の飲みすぎて眠っちゃいました。そうよね?」
「異議なし」
「同じく」
・・・まぁなんというか、俺と過ごした影響なのか、博士曰く以前より多少常識的になっている彼女たち。マジに世界が終わりそうな火種に対しては非常に協力的である。
まぁ、前の俺ならこんな暴力で解決なんてしなかった。変わったのはあっちなのかこっちなのか、はたまた両方なのか。
そんなことを考えつつ、
まず、今回もリクエストの話でなくて申し訳ないです。というのも、現在リクエストを何話か同時に進行しているのですが、そのどれもが展開に行き詰まって執筆が止まっています。
そこで、私自身がもう書けないとしたリクエストに関しては、非常に心苦しいですが、省かせていただきます。大変申し訳ございません。
元々更新の遅い作品ではありますが、これからも頑張っていくつもりですよで、よろしくお願いします。
以上、重要なお知らせでした。
Othuyegさん
einsatz fsさん
誤字報告ありがとうございました
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帰れない幽霊と戯れる実験
だって、燃え残った全てに火を点けなきゃならなかったし、ハイラル救わなきゃいけなかったし、嘘吐かなきゃいけないし、ね?
すみませんでした。久しぶりのリクエスト回です。どうぞ。
気付けば車に乗って夜道を走っていた。一寸先は何も見えないほどの暗さなのに、なんの迷いもなく車を走らせていく。すると、路肩に女性が見えた。ヒッチハイクをしているようだったが、咄嗟に止まることのできなかった俺は、そのまま走り去ってしまった。
「どうして、なのかな」
助手席に先程の女性がいた。
「私が何をしたんだろう」
「誘拐されて殺されちゃった」
「酷いよね、目と心臓を抉り取られたんだよ」
「痛かったよ」
俺は何も言わなかった。
「どうしてなのかな」
「私が何をしたんだろう」
「私はただ帰りたかっただけなのに」
「お父さんもお母さんも殺されちゃった」
「帰る場所も壊されちゃった」
彼女の瞳と心臓がこぼれ落ちた。
「だから殺したの」
「あの人も、乗せてくれない人も、みんなみんな殺したの」
「あれ、どうして乗せてもらいたかったんだけ?」
「どうして?」
「どうして?」
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてたすけて」
「お願い」
「分かった」
ようやっと、俺は応えた。
目が覚める。久々の夢だった。
『おはよう、朱里くん』
「クロステストですね、今行きます」
『・・・ああ。しかし、顔はよく洗ってきなさい。酷い顔をしているぞ』
言われて鏡を見る。怒りに顔を歪ませた男が写っていた。
スゥゥゥゥゥゥーーーー・・・・・・
ハァァァァァァーーーー・・・・・・
良し。切り替え完了。の、はず。
今回のクロステストのお相手はなんと幽霊さん。
SCPー1337 幽霊ヒッチハイカー
オブジェクトはEuclid
夜道に現れる女性の幽霊。生前の本名はメアリー・タリッシュさん。一人で車を運転しているとヒッチハイクをし、それを無視して通り過ぎた相手を殺害する危険なオブジェクト。ちなみに止まったら消えてしまうらしい。
乗ってはこないのか。
『当該オブジェクトの活動範囲は絞られていない。この道もあくまで目撃情報があったというだけだ。実際に彼女が現れる可能性は低いだろう。だがもし彼女が見えたら、心構えをしてくれ』
「・・・了解」
『・・・まるで、心ここに在らずといった様子だな』
図星だった。
「そう、ですかね」
気にしないようにしなければ。そう思ってもずっと引っかかっていた、彼女の帰る場所を奪った奴のことが。
『これは実験とは関係のない話だが、彼女の両親を殺害し、帰る家と帰り道を破壊した男は、彼女の手によってこの世を去っている。君の怒りの矛先は、もはやどこのも向けることはできない。・・・そんな酷い顔で彼女に会う気か?彼女を救う、それが君のやりたいことだろう。集中しなさい』
・・・そうだ。そうだった。当事者でもないのにキレるだなんて格好悪い。パンッ、と乾いた音を鳴らしながら、両手で頬を張った。
「俺の扱いが上手くなりましたね、博士」
『君とももう長いからな。一分後に発進だ。幸運を祈る』
無線が切れた。
さて、俺は勿論運転席に座ってるわけですが。
「・・・俺免許ないしなんなら車の運転なんてできないんですけど」
『安心したまえ。その車両はこちらで遠隔操作できる』
科学の力ってすげー。やっぱ科学なんですよオカルトも見習えって。あ、他意はないですよ他意は。
『間もなく作戦開始となります』
ほいじゃ、行こうか。
しばらく車が走っていく。一応運転しているという体裁を取るため、アクセルを踏みハンドルを握ってはいる。それでも実際は遠隔操作されているので、どうしても暇な時間になってしまう。
夜道は新鮮だった。お世辞にも治安がいいとは言えないアメリカ。夜に出歩くなんて真似はなかなかできなかった。
遠くの街の灯り、街灯の光、赤いスカートに赤いセーター・・・。
ん?
「いました!」
『何!?』
間違いない、服装も、あの姿も夢で見たそのまま。
『まさか現れるとは・・・止まるか?』
どうするべきだろうか。俺は彼女と会話がしたい。だが止まれば、報告通りなら彼女は消えてしまう。とはいえこのまま通り過ぎれば俺は殺される。
何より、助けるという約束が嘘になってしまう。
なら・・・。
「
『降りて話す気か』
「もちろん」
『通じるか?』
「やってみないと分からないですね」
『そうか・・・任せたぞ』
車が停止すると同時に通信切断。これ以降は俺一人での活動となる。
ドアを開く。今日は湿度が高いらしく、湿っぽい空気がじっとりと重くまとわりついてくるような気がした。
少し先の路肩にはまだ彼女がいた。ずっと俯いていて、よく見れば赤黒い液体が滴り落ち、足元に溜まっていた。
「こんばんは」
声をかけると、彼女の肩がビクリと跳ねて、こちらを向いた。本来瞳のある部分に存在する空洞と、不思議にも目が合っていると感じた。
最初の言葉はどうしようか、どう話しかけようか。なんて、悩む必要はなかった。
『たすけて』
夢の言葉が、脳を巡る。
「君を、助けに来た」
空の瞳が、見開かれた。
少しの間、俺の顔をのぞき込んでいた彼女は、不意に右腕をこちらへ向けてきた。爪の鋭いその手が俺の目に近づいて────。
「・・・よけないんだね」
爪は目の前で止まっていた。
「いいよ、話くらいは聞いてあげる」
彼女はそのまま座り込んだ。拍子に長い髪が宙を舞い、顔を隠してしまう。
「私の境遇は知ってるんだよね?」
「・・・知ってる」
「だよね。じゃなきゃ助けるなんて一番に言ってこないもん」
俺も彼女に倣って、隣に座った。
「それで、どうだった?かわいそうだった?哀れだった?」
「最初に感じたのは怒りだったよ。この子が何をしたんだって」
「へぇ。で、実際に会ってみて、どう?」
「それは」
「あ、正直に言ってね、じゃないと消えちゃうよ?」
「・・・惨いって思った」
「だよね、自分でもそう思うもん。でも、君は目を背けなかったね。私の顔見て目を逸らさなかったのは君が初めてだよ!ま、ビックリしてる間に殺しちゃってるだけなんだけどね!」
彼女はケタケタと笑った。開いたであろう口から、夥しい量の血がこぼれていった。
「私を無視する奴を殺すとね、少しだけ気分が良くなって、嫌なことが忘れられるんだ。そのあとすぐにまた最悪な気分に戻っちゃうんだけどね」
「つまりそれって」
「そうだよ。私は私の意思で、殺したくて殺してる。だからさ」
ガリッ、と爪がアスファルトと擦れる音が鳴った。
「こんな奴助けるなんてバカげてるから今すぐやめたほうがいいよ」
「それでも俺は助けたいと思ってるよ」
静かな風が吹き抜けた。揺れる髪の間から、空の瞳と目が合った。
「バカだね君は」
「だからここにいる」
「そっか、そうだよね。じゃあ分かりやすいように言い方を変えてあげる」
爪が右目の前にあった。
「帰って。でないとこのまま抉るよ。まずは右、次は左。そのあとは胴体掻っ捌いて心臓を貰う」
「帰らないよ。君を救うまで」
「なんで、どうしてそこまで・・・」
「欲しいんだろ、帰る場所」
「もう要らないよそんなもの」
「本当にそう思ってるのか?」
「当たり前でしょ。いつか失うものならいっそなくていい」
「俺は死なないよ」
「君が帰る場所?本当にバカだね。口説き文句としては最悪だし、何より今私に殺されかけてるんだよ、分かる?」
「君は殺さないよ」
「何を根拠に?」
「だって今俺は生きてる。さっき殺したくて殺してるって言ってたのに、不愉快な俺にわざわざ脅しをかけてる」
「それは、違う、だって・・・」
「希望を持ったんじゃないか」
「そんなわけない!帰る場所なんて要らない!私はこれでいい、これでいいの!誑かさないで!」
「いつまでそうやって嘘吐いてる気だよ」
「・・・っ!もういい!殺す!殺してやる!そうすればまた私は元通りに・・・!」
「そうだな、また一人だ」
「それで・・・いいの・・・私は一人で・・・希望なんて・・・」
突きつけられた爪が、力を失ってだらりと落ちた。
「たすけて・・・お願い・・・一人は嫌だよ・・・!」
「分かった」
落ちた腕を握る。
「俺が君の、帰る場所になる。だから、帰ろう」
丁寧に切り揃えられた爪、白い肌、赤いスカートに赤いセーター、傷一つない綺麗な顔立ち。涙の溜まった瞳が、俺を見つめていた。
「・・・うん、帰る」
それは、とても素敵な笑顔だった。
「ねぇ、また?さすがの僕でも呆れちゃうよ」
はい、またです・・・。
『ご主人、浮気者』
返す言葉もございません・・・。
『もしかして女たらし?』
どこでそんなに言葉覚えてきたの黑・・・。
「あなた、私はデートを要求します。2人きりで」
あ、はい予定空けておきます・・・。
「朱里く〜ん♡・・・夢では覚悟しておいてね」
お手柔らかにお願いします・・・。
『はぁ・・・いつかは会いたがるとは思ってたけどよォ、連れてくることはないんじゃねぇかァ?』
いやでも──
『言い訳は聞かねぇぞォ』
すんませんした・・・。
「あ〜、なんというか、賑やかだね。こんなに先客がいるとは思わなかったよ。その、君の中も含めて」
幻滅した?
「別に?何となくそんな気がしてたし」
マジすか。
「いっぱい誑かしてるのも尻に敷かれてるのも、予想通りかな」
そんなぁ。
「・・・でも、かっこよかったよ。俺が君の、帰る場所になるって言ってくれたの」
あ、ちょ、それは──!
『ああ、そう口説いたのか』
「あ〜か〜り〜く〜ん〜?さーすがにそれは僕は見逃せないぞぉ?それってもうプロポーズじゃないか、えぇ?」
『む〜〜〜』
「私が・・・先を越された・・・?そんなはずないです・・・。私は将来の妻なのですから・・・」
「これは少し、お灸を据える必要がありそうだね」
『わわ、みんな怒っちゃった。逃げろー』
『一体何をしたんだ朱里君!たった今君と交流のあるオブジェクト一斉に収容違反を起こしたぞ!』
───前略、お父さん、お母さん。僕のバイト先は今日も平和です。
神谷朱里
このあとめちゃくちゃ埋め合わせした。
メアリー・タリッシュ
「別に彼と恋仲になりたいとか結婚したいとかはないけど、なんか掠め取られるのは嫌だし、牽制くらいはしておかないと」
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
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古代中国の妖と戯れる実験
ゼペット爺さん・・・。
『おはよう、朱里君』
「博士、まずは青筋浮かべながら爽やかに挨拶するのやめましょう。怖いです」
『問題ないとも。さて、今日は───』
「とりあえず何があったか聞いてもいいですか。ってか聞かせてください何があったんすか」
『・・・聞いてくれるか?』
「あ、はい」
『またやらかしてくれたんだよ、あの首輪付──いや首飾りがね』
まぁ、何となくそんな気がしてた。
どうもまたあの首飾り博士がオブジェクトに手を出したらしい。しかも手の出し方がちょっと俺に関係する。
SCPー085 手描きの"キャシー"
意志を持つ絵の女性。彼女のいる平面に絵を描けば、その絵が動物だったり人だったりしない限りはまるで本物のように扱える。また、平面から平面に移動することもできる。そんなオブジェクト。
財団は彼女を収容するにあたり、彼女の精神的負荷を考慮して、自身が絵であるということを隠していた。
うん、隠して
ある日、財団職員のミスによってそれがバレてしまい、彼女はいわゆるうつ病のような状態に。今は財団のメンタルケアもとい気晴らしのタスクを提供することによって少しずつ回復の兆しを見せているとのこと。
さて、そんな彼女だが、実は珍しい財団が産んだオブジェクトだ。
詳しい手順は省くが、自分の意思ではないけれどもめっちゃ上手く描けるペン(オブジェクト)で描かれた少女の絵を、なんか改造してくれる機械(もちろんオブジェクト)に入れてみたら産まれたらしい。
現在まで同様の手順で、彼女のように命を吹き込まれた存在は産まれていない。
これが、つい先日までの話。
2週間ほど前、あるそれはそれは見目麗しい首飾りを付けた財団職員が、気まぐれに件のペンを持ったらしい。
で、描かれたのが、俺だった。
何となく分かってきたと思う。
でだ、その首輪付、じゃなくて首飾りの職員は何を思ったのか、これならあの機械にぶち込めば動き出すんじゃね?的なノリでやったらしい。
結果、産まれちゃった。
そのバカな首輪付きは思いました。こいつなら彼女を救えるんじゃねぇか、と。テンションに任せて独断で実験開始。まあ、絵でも俺なのでしっかりとメンタルケアしたようですが。
ここまでならいろいろと問題はあれど、ええ話やなぁで済むのだが。
その〜ですね、絵のほうの俺君がやらかしたようでして。
今日の早朝にですね、職員の方が気が付いたようなんですよ。なーんかキャシーさんお腹を気にしてるな〜っと、なんかちょっといつもより大きくなってないかな〜っと。
ちょっとセンシティブな話題ということで、手の空いていた女性職員を呼んで質問させました。
そしたらこう答えたそうです。
新しい命を授かりました。
財団本部が端から端までひっくり返ったよね。
『情報規制はしたが、それで君の身が安全になるとは限らない。最悪、襲われる可能性もある』
確かに襲ってきそうな顔が一人二人三人・・・。
『そこでだ、君にはまた海外に出てもらうことにした。元々、クロステストの要請もあったしな』
「なるほど。また日本ですか?」
『日本もそうだが、先に行ってもらう国がある』
「どこですか?」
『中国だ』
「我已经到了!!」
『ご主人、なんて言ったの?』
『中国語でやってきたって意味だね』
『あなた、はしゃぐのはいいですが、本来の目的を忘れないようにして下さい』
『少しぐらいいいじゃない、ね、朱里くん』
『全く、帰る場所がこんなにアグレッシブだなんて、大変だわ』
以前に国を跨いだときよりすっごく賑やかになったなぁ。
『その感じ、また
まあね。
さて、ゼロも言ってたけど、本来の目的に向かおうかな。俺が呼ばれる理由なんてまあ一つしかないわけで。はい、クロステストですね〜。
SCPーCNー500 饕餮
オブジェクトクラスはKeter。
異常性は、伝承通りになんでも食べれること。本当になんでも食べれる。それこそ、認識だったり記憶だったり、果てには概念なんかもいただけてしまう。そして、食べたものは、まるで最初から存在していなかったかのように消滅する。
この性質に目を付けた古代中国の人々は、自分の消したいものを食べるように強要していたらしい。
・・・オブジェクトの家族の血肉から作った、拘束具を使って。
『朱里くん、それは無駄な怒りだよ』
「大丈夫、分かってる」
『ならいいよ。頑張ってね』
さて、行こうか。
場所は、まぁ、知らされていない。万が一にもオブジェクトの位置情報が、外部に漏れないようにしなければならないからだ。他にも理由はありそうだけど、最たる理由はそれだろう。
偽装された洞窟の入り口を通る。中は、まるで鍾乳洞のようだった。ただ、鍾乳石の並びが規則正しい。まるで何かを封じ込めるかのように、この円形の洞窟に分布している。
「なんだ」
そして、洞窟の中心に、彼女はいた。彼女は拘束具に包まれていた。弓なりに反った角。狼を彷彿とさせるピンと立った耳。酷く傷んだ、手入れのされていない長すぎる白髪。その白髪からかろうじて覗く、暗く鋭い瞳。
「彼らの目を盗んで来たか。何が望みだ」
「いや、財団の人間です」
「斯様な小僧がか」
「そうです」
彼女は、しばらく俺を睨みつけたあと、警戒を解いた。
「嘘ではないな。して、何が目的だ」
「世間話です」
「何」
「でもその前にとりあえずトリミングしましょう」
「なんだその道具共は」
「大丈夫です。鍾乳石を数えてれば終わりますから」
「待て、来るな、やめろーー!」
「ふぅっ」
「久しい感覚だ・・・これが・・・屈辱か・・・」
「何言ってるんですか」
「許さんぞ貴様・・・我を辱めおって・・・!」
「いや辱めたって、傷んで伸び放題の髪を整えて適当な長さに切ってブラッシングして、あと体の隅々まで洗っただけじゃないですか」
「最後だ!最後が屈辱なのだ!」
「え・・・、あぁ!」
そりゃ確かにそうだ。いい歳して若造に、しかも異性に身体を洗われるなんて生き恥だろう。周りに痴女が多すぎて感覚が麻痺していた。
「でもほら、鏡見てくださいよ」
「な・・・これは・・・」
肌の汚れは綺麗に洗い流され、伸びすぎて地面にまで垂れていた白髪はちょうどいい長さに(ロングが似合いそうだから長めに残した)。
何より、顔の大半を覆い隠していた前髪を切ったことで、フルのご尊顔が拝めている。
狼を彷彿とさせるような、シュッとした顔立ち。拘束具も相まってワイルドな印象を与える。うわぁ他の髪型も試したい。
「そうか、我は、このような顔つきだったのだな。忘れていた」
少しだけ笑みを浮かべる饕餮。
「ただ、そうだな」
が、すぐに微妙な顔になってしまう。
「あー」
何となく理由が分かった。
「衣服が欲しいな」
「衣服が要りますね」
良すぎる顔立ちに神秘的な白髪、背景も相まって一枚の画として完成しているが、実際は全裸に鎖や拘束具をつけられているプロポーション抜群の女性(ケモ耳角付き)である。
現実として立ち返って見るとなんともキツいものがあるのだろう、本人としては。
俺はって?目の保養。
「しかしまあ、これでは着れんな」
そう言って拘束具を悲しそうに眺める饕餮。
「着れなくても羽織るくらいはできますよ」
ってことで今着てるコートを被せてやる。あれ、なんかデジャブが・・・。ま、いっか。
ん〜、多少の?不自然さはあるけどかわいいのでヨシ!
「・・・久しく感じなかった。これは、温かいな」
「優しさか、何世紀ぶりだろうな。もう、与えられることなどないと思っていた」
今までに会ったことのない種の人間だ。不敬にして大胆、しかし不思議と憎めぬ。
・・・この小僧にも、裏があるのだろうか。我に喰わせんとする者だろうか。一度我が口を開き、奴の意に従わんとすれば、化けの皮がはがれてしまうのだろうか。
それは、嫌だな。
「貴様、名は」
「朱里です。神谷朱里」
「東の島国の者か」
「はい。日本って言います」
神谷、朱里。そうか、覚えておこう。もう会うことはないだろうからな。
「神谷」
「何ですか?」
「一つだけ、貴様の望むものを喰ってやる」
せめて今だけ、我の前でだけは、その皮を被ったままでいてくれ。そして願わくばもう、二度とここへは来ないで───
「え、いらないです」
「───何?」
「え、だって、何か食べさせる目的で来たらその拘束具の機能を使って脅せばいいですし。なんか自分で言ってて胸糞悪くなってきたな・・・」
それにほら、っと奴は加えた。
「最初に答えたじゃないですか、世間話をしに来たって」
「まさか、本気で・・・?」
「もちろん!」
頭を鈍器で殴られたような気がした。そうか、我はここで人に従ううちに、懐疑心を肥大化させてしまったのか。
この小僧は、本当に、どうしてここまで優しくなれる。
「───でですよ、初めて中国に来たからいっぱい写真撮っちゃったんですよ!あ、見ますか今の中国のって、どうかしました?」
「いや、なんでもない。ただ、貴様のような人間がいるのだなと、思っただけだ」
「?」
「どれ、その写真とやらを見せてみろ」
「分かりました!じゃあまずは北京から───」
今までに会ったことのない種の人間だ。不敬にして大胆、しかし不思議と憎めぬ。
昏い野望を持たず、悪しき欲を持たず、この饕餮にさえ優しい。
酷い話だ。家族を奪われ尊厳を奪われ自由を奪われ、ただ果てるだけと思ったこの生に、どうして小僧を引き合わせた。
生きたいと思ってしまったではないか。
──神谷朱里。食えん奴だ。悪くない気分だがな。
神谷朱里
この日のためにトリミング技術を習得。実は努力家だったりする。
実は汚れ放題伸び放題ってだけで髪の毛の手触りはナイロン質。
「奴の身、少しくらい味見してみるべきだったか」
虗さん
誤字報告ありがとうございました
SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
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