第3次スーパーロボット大戦J (YSK)
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第01話 宿敵再び

 

──プロローグ 紫雲統夜──

 

 

 ワーワーワー!!

 

 

 大歓声がスタジアム内に響いている。

 あまりの音量に、地面が揺れていると錯覚しそうになるほどだ。

 

 裏の催し事だというのに、よくこんなに人が集まるものだ。

 なんて俺は、場違いのことを思ってしまった。

 

 

甲児「どうした、ボーっとして」

 

統夜「ん? ああ、ちょっと場の空気に飲まれたみたいだ」

 

甲児「おいおい。乗らないお前がそこまで緊張してどうするんだよ」

 

宗介「安心しろ。俺達なら問題ない」

 

 

 隣にいた兜甲児(マジンカイザー/人物)と相良宗介(フルメタルパニック/人物)の二人がくすりと笑う。

 

 

統夜「むしろ応援しているだけの方が気が気じゃないんだぞ。こっちの気持ちも考えてくれ」

 

甲児「そんな心配はいらねえって。それに、整備はお前も手伝ってくれている。一緒に戦っているも同然だ」

 

統夜「ああ。整備の方は完璧にできたと思ってる。まあ、ボロットはホントにこれでいいのか正直自信が持てないけど」

 

ボス「大丈夫。完璧だわさ!」

 

ヌケ「その通りでしゅ!」

 

ムチャ「僕達のボロットに整備なんて必要ないので!」

 

ボス「だから、安心していってこい、兜!」

 

甲児「ああ!」

 

統夜(なんかおかしい気がするけど、おかしくない気もする……)

 

宗介「行ってくる」

 

統夜「優勝までもう少しだ。二人ならやれる!」

 

甲児「任せろ!」

 

 

 そうして、ボス達と俺は、二人を機体に乗せ、スタジアムへ送り出した。

 

 俺(紫雲統夜)、甲児、相良軍曹、ボス、ヌケ、ムチャの六人は今、東南アジアのある都市で行われているアームスレイブ(フルメタルパニック/機体の総称)による闇バトルトーナメントの格闘大会に出場している。

 

 闇。というだけあって、そこでは非合法な賭けが行われ、優勝賞品も表では出せないような代物が掲げられている。

 

 俺達の目的は、その優勝賞品。

 

 それは、世界を危機に落としかねない強大なエネルギーを秘めた、謎の物体。

 少し前に突然発見された『それ』の回収だった。

 

『Qパーツ』

 そう名づけられた物体の危険性を重視したGGG(ガッツィー・ギャラクシー・ガード/ガオガイガー用語/組織)はそれの回収を決定。

 この地で賞品として掲げられたそれの回収のため、GGGから要請を受けたミスリル(フルメタルパニック用語/組織)より歴戦のアームスレイブ乗りだが顔の売れていない相良軍曹に白羽の矢があたり、ついでにボロットならアームスレイブと十分言い張れると言い出した甲児とボス。そしてある理由をもとに、素人同然の俺とがこの優勝賞品の回収を任されたのである。

 

 甲児はボスから強引に借りたボロット。相良軍曹は型落ちのサベージを補修しただけの機体(いわゆるアル二世)だというのに、トーナメントを順調に勝ち進んでいる。

 流石、じかに彼なら大丈夫とテスタロッサ大佐に太鼓判を押されるだけある。

 

 今回は準決勝。

 あと2回勝てば、任務完了というところまできた。

 

 

 あの二人ならばきっとどちらも勝ってくれるだろう。

 

 俺はそう確信していた……!

 

 

 ──ちなみに、このチーム戦でのトーナメント準決勝はボスボロットとアル二世の2機対敵3機との戦いとなる。

 ゲーム中で言えばここはプロローグ。いわゆるチュートリアル戦闘なので、相手がどれだけ多かろうとこの二人が負けるわけがないのである!

 

 

──第1話 宿敵再び──

 

 

甲児「よし。あとは優勝するだけだな!」

 

宗介「ああ」

 

 

 準決勝も危なげもなく勝利し、拠点に戻った甲児達は、明日の決勝のため機体を整備していた。

 

 日も落ちはじめ、統夜とボスは必要な物品と夕飯の買い出しに出ている。

 

 

甲児「にしても、買い出しにいつまでかかってんだあいつら……」ぐー(腹の音)

 

 

 腹を鳴らした甲児が、時計を見上げる。

 

 そこへ……

 

 

ボス「たっ、たたたっ、大変だわさー!」

 

ヌケ「でしゅー!」

 

 

 慌てたボス達が転がりこんできた。

 

 

甲児「どうした!?」

 

ボス「と、統夜が、統夜がさらわれた!」

 

甲児「なんだって!?」

 

ボス「買い物を終えて帰ろうとしたんだが、その途中、襲われて、あいつは俺達を逃がすために!」

 

 

 この事態を甲児達に知らせるために、統夜は囮となり、ボス達を行かせたのだ!

 

 

宗介「……囲まれている。皆、機体に乗れ」

 

甲児「ああ。どうやら、ボスを逃がしてなりふりかまわなくなったみたいだな!」

 

 

 ボスの様子を見てあたりを警戒した宗介にうながされ、甲児とボス達はボロットへ飛び乗った。

 

 直後、拠点の壁を破壊して現れたのは、M9と呼ばれるアームスレイブ。宗介の所属するミスリルでも使われ、最近軍でも採用の決まったくらいの最新鋭機である!

 

 それをふくめた一団が宗介と甲児に襲い掛かる!

 

 次から次へと襲い来るアームスレイブを返り討ちにし、甲児達は明日決勝の会場となるはずだった闘技場へと走る。

 殴り倒した襲撃者から、そこへ連れ去ったと情報を得たからだ。

 

 アリーナの入り口を破壊し、アル二世とボスボロットが闘技場へ突入する。

 

 日は沈み、すでに夜のとばりもおりていた。

 

 

甲児「統夜、どこだ!!」

 

 

 天井の開けたスタジアムに、甲児の声がこだまする。

 

 

???「慌てなさんな。囚われのオヒメサマなら無事ここにいるさ。カブトコウジ君」

 

 

 パッパッパッと客席にスポットライトが集まり、人影が現れた。

 

 

甲児「お前っ!」

 

宗介「お前は!」

 

ガウルン「そうさ。俺だよカシムゥ!」

 

宗介「ガウルン!」

 

 

 後ろ手に縛られた統夜に銃を突きつけつつ現れたのは、かつて自爆して消えたはずのガウルン(フルメタルパニック/人物)だった。

 

 

ガウルン「いやー、嬉しいものだな。こうして祭りを企画すれば、お前は釣れると思っていた。そうしたらお前だけじゃなく、カブトコウジ君。さらにもう一人と、あの時の二人までついてきた。因縁てのはまわるものだな!」

 

 

 ガウルンが楽しそうに笑う。

 

 

 因縁。

 幼少のころガウルンと戦場でやりあってから縁のある宗介。

 さらに統夜と甲児もかつてガウルンがあしゅら男爵(マジンカイザー/人物)と組んで引き起こしたかなめ誘拐事件(第1部発生)にまきこまれたことで、ガウルンと対峙した過去がある。

 

 彼等やかなめの活躍により、その誘拐事件は失敗。そして敗北したという、三人はガウルンにとって因縁の相手であるのだ。

 

 この催しは、ガウルンが宗介をここに呼び出すための餌だったのである……!

 

 

宗介「因縁? むしろお前が俺を誘き出すためこれをしかけたのだろう?」

 

ガウルン「ああ。その通りさカシム。せっかくあの自爆から生き残ったってのに、この前の祭りはリハビリに忙しくて参加できなかったからな。こうして動けるようになった今、自分で開催しないと損だろう!」

 

甲児「相変わらずしぶとい奴だ」

 

ガウルン「そうはいっても、今だってまだまだ本調子じゃない。だから、人質ってヤツをとらせてもらった。優しいお前達は見捨てることはできない。お前達の欲しいブツだってどこにあるかもわからん。どうしようもなくつんでいるなぁ!」

 

 

 統夜に銃を突きつけ、ガウルンは笑う。

 

 

甲児「……」

 

ガウルン「素人同然の奴を連れてきたあげく、単独で行動させるたぁ、えらく平和ボケしたみたいだな。今回こそ、俺の勝ちだな。カシムゥ」

 

宗介「いや、そうでもない」

 

ガウルン「なに?」

 

宗介「そこにいる紫雲統夜を素人の足手まとい。人質にできるなどと考えているのなら、間違いだ」

 

ガウルン「ほう? つまり、戦士だから、覚悟はできているってことか」

 

宗介「違う。紫雲を捕まえたということ自体が思い違いということだ。紫雲統夜は、捕まってなどいない」

 

甲児「釣れた。っていうなら、それはむしろお前の方ってことだ。ガウルン!」

 

ガウルン「な、に?」

 

 

 それは、一瞬のことだった。

 宗介と甲児と会話するため、ガウルンは統夜から視線を外していた。

 

 ほんの一瞬。

 

 それが、致命的な隙となった!

 

 

ガウルン「っ!」

 

 

 視線を統夜へむける。

 

 銃を向けられた紫雲統夜は笑っていた。

 それは死の恐怖に怯えたわけでも、自棄になったわけでもない。むしろ恐怖すらねじ伏せ、勇気と自信をもって自分を見ている。

 

 それは、勝利を呼びこむこのタイミングを待っていた瞳だった!

 それが、ガウルンにははっきりと感じられた。

 

 統夜からガウルンの意識がそれていたその瞬間。

 統夜は心の中で念じていた。

 

 勝利の鍵となる存在を。

 その、名を!

 

 

統夜(こい。グランティード!)

 

 

 カッ!!

 

 

ガウルン「やべえ!」

 

 

 次の瞬間、ガウルンは統夜から手をはなし、その場から飛びのいていた。

 

 これまでを生き抜いてきた長年の勘だろう。

 それを信じ、とっさに逃げ出したガウルンの動きは流石としか言いようがなかった。

 

 ここで下手に引き金を引こうとしたり、統夜を力ずくでどうにかしようと動いていたなら、次の刹那に光と共に現れる鋼の巨体に圧し潰され、客席を彩る赤いシミとなっていたのだから。

 

 ガウルンは、見る。

 

 統夜の意思に応え、なにもないところから光と共に現れた、グランティードの姿を。

 

 グランティードが現れるのと同時に、統夜は光の帯に包まれ、コックピットへと吸いこまれてゆく。

 

 周囲に銃を持った伏兵も配置されていたが、これでは無意味。

 鋼の巨人相手に生身の兵では勝ち目はない。

 

 

統夜「Qパーツはもらっていく!」

 

 

 動き出したグランティードが、さらわれる最中聞きだしていたQパーツのありかへ手をつっこみ、回収する。

 

 

 ちなみに、コックピットにはサブパイロットである五人娘全員(紹介はラストに)が乗っている。

 

 これはグランティードが今、この場に呼ばれることを知っていたからである。

 

 なぜ、素人当然の統夜がこの地についてきたのか。

 それは、こうして狙われた際、あえて捕まり、逆転の一手を放つためであった!

 

 足手まといであることを逆手にとるため、危険を承知で統夜はあえてついてきていたのだ!

 こうして、いざという時を対処するために!!

 

 

ガウルン「こんなラムダ・ドライバにも匹敵する隠し玉を持っていやがったか……!」

 

甲児「それだけじゃないぜ!」

 

 

 ボスボロットが空を指さす。

 

 きらりっ。

 

 闇夜を切り裂き、闘技場に二つの流星が降り注いだ。

 激しい轟音と共に、巨大な土煙が闘技場内に舞い上がる。

 

 

ボス「さあ、いってこい兜!」

 

甲児「ああ!」

 

 

 流星の落下に合わせ、ボスボロットの腹の中から兜甲児の乗ったカイザーパイルダーが飛び出す。

 

 

ガウルン「あのオンボロロボットの腹の中からだと!? いつの間に仕込んだ!」

 

甲児「そりゃ最初からだ!」

 

ガウルン「あんなところにずっとだぁ!? 一体それは、どうやって動いているんだ!」

 

 

 流石のガウルンも驚きを隠せない。

 腹の中が空っぽだったということは、どこに動力源がある!

 

 

宗介(わかる)

統夜(わかる)

 

 

 その驚きに二人も同意したが、それは表に出さなかった。

 ある意味、ボロットこそが一番謎なロボットかもしれない……

 

 

甲児「いくぜカイザー! パイルダーオーン!!」

 

 

 闘技場に落下した鋼の巨人にカイザーパイルダーがドッキングし、魂を得たマジンカイザー(カイザースクランダーなし)が土煙の中から立ち上がる。

 

 同時に……

 

 

アル「時間。場所ともに狂いはありません。いつでもいけます」

 

宗介「ならば、十分だ。いくぞ、アル」

 

 

 サベージから、闘技場に降り立ったレーバテインに乗りかえた相良宗介も愛機を起動させる。

 ちなみにだが、宗介のレーバテインは海上で待機していたトゥアハー・デ・ダナンより射出されここに。マジンカイザーは宇宙からの自由落下でここに到着したことを伝えておく。

 

 立ち上がった二体のところに、Qパーツを回収した統夜のグランティードも降り立った。

 

 

統夜「よし。『パートナー選択』、行くぞ!」※パートナー選択は前作、第2次のセーブデータがある場合で、初めての場合は伝統でテニアがサブパイロットとなる。

 

カティア「任せて!」(カティアを選択した場合)

テニア「任せて!」(セーブデータがない場合、もしくはフェステニアを選択した場合)

メルア「はい!」(メルアを選択した場合)

ロゼ=リア「お任せですわ!」(ロゼ=リアを選択した場合)

クド=ラ「うん!」(クド=ラを選択した場合)

 

 

 ボスの乗るボスボロットをふくめた4機のスーパーロボットが、闘技場にて戦いのかまえをとる。

 

 

ガウルン「……まんまと誘き出されたのは俺の方だったってわけか。素人のガキと侮った。一年前のガキとは違うんだな!」

 

宗介「その通りだ。そして、大佐の方がさらに上手だったということだ」

 

ガウルン「ちっ。前は船も奪えた甘ちゃんだったってのに、今回は見事にやり返されたってわけか」

 

 

 大佐。というのはトゥアハー・デ・ダナン艦長、テレサ・テスタロッサのことである。

 彼女もかつて、ガウルンに手玉にとられ、その艦を奪われ、かなめと共に奪還したことがある。

 

 今回のこの一件、彼女は相良宗介を誘き出す罠であると読み、そこにあえて乗り、逆に罠を仕掛けるという方法をとったのだ。

 それが、統夜というジョーカーの参加であり、ガウルンという大物を釣り上げる釣果につながったのである。

 

 

宗介「観念しろガウルン。お前との因縁もこれまでだ!」

 

ガウルン「そうはいかねえさ。まだ本調子じゃないんでね。今回は逃げさせてもらうぜ」

 

 

 ガウルンがさがるのと同時に、闘技場へアームスレイブがなだれこんできた。

 

 元々は統夜を人質にし、この伏兵アームスレイブで宗介達をなぶり殺しにする予定であったのだが、形勢逆転された今、この戦力がガウルンを逃す最後の砦となった。

 

 マジンカイザー、レーバテイン。グランティードと戦力の整った統夜達を相手にするには役不足(誤用の方)な相手であったが、ガウルンとて歴戦の猛者。それだけでも逃げるには十分な戦力だった。

 

 バッタバッタとなぎ倒される味方を尻目に、ガウルンは宗介達の追跡をかわし、この場からの逃走に成功する。

 

 

ガウルン「あばよカシム。決着はまたつけようぜ」

 

 

 そう言い残し、ガウルンはその場から逃げ出した。

 

 

甲児「ちっ。逃がしたか」

 

統夜「どうやら、安心して暮らせるようになるのはもう少し時間がかかるみたいだな」

 

甲児「ったくしぶとい野郎だぜ」

 

宗介「それでも、当初の目的通り、目標は確保した。作戦は成功だ」

 

甲児「ああ」

 

宗介「だが、ガウルンはどうにかしなければならない。あとは、俺の役目だ」

 

甲児「なに言ってんだよ。乗りかかった船だ」

 

統夜「ここまできて放っておけるわけないさ。それに、俺達にだって因縁の相手だ。最後までつきあうよ」

 

宗介「……助かる」

 

 

 こうして、地球を揺るがす可能性はあるが、大きくはない戦いの幕が上がった。

 

 しかし、誰もが予感している。

 これが、新たな争乱の幕開けであることを……

 

 

 第3次スパーロボット大戦Jが、はじまる。

 

 

 第1話 終わり

 

 

 

──登場人物紹介──

 

 

 主にオリジナルの紹介をしておきます。主人公からヒロイン、その他、機体を五十音順で。

 

 

『紫雲統夜』

 グランティードのメインパイロットにしてこの物語の主人公。

 

 

『カティア・グリニャール』

 ヒロイン。統夜と同じくフューリーと地球人のハーフ※

 ※フューリーとは40億年ほど前星間戦争に敗れて生まれたての地球にたどりついた異星人のこと。

 黒髪でしっかり者。みんなのまとめ役。

 統夜の呼び方は「統夜君」

 

『クド=ラ・ダルービ』

 ヒロイン。純フューリー。かつて統夜に兄のジュア=ムを殺されたと思い強い憎しみを持ち、復讐しようとしていた少女。

 今はそのわだかまりもとけ、統夜達の後輩として同じ高校に通っている。

 統夜の呼び方は「シウン・トウヤ」

 

『シャナ=ミア・エルテナ』

 ヒロイン。純フューリー。元フューリーの皇女で統夜の幼馴染。

 統夜の呼び方は「トウヤ」

 

『フェステニア・ミューズ』

 ヒロイン。フューリーと地球人のハーフ。愛称はテニア。

 赤髪のムードメーカー。いっぱい食べるけど背はそんなにおっきくない。

 統夜の呼び方は「統夜」

 

『メルア・メルナ・メイア』

 ヒロイン。フューリーと地球人のハーフ。

 金髪で少しおっとりしているが、芯は強い。甘いものが好き。

 統夜の呼び方は「統夜さん」

 

『ロゼ=リア・エルテナ・フューラ』

 ヒロイン。かつて星間戦争を勝利した側のフューリーの姫。

 シャナ=ミアの気を強くして赤髪にしたような感じ。

 統夜の呼び方は「トーヤ」

 

 

『アル=ヴァン・ランクス』と『カルヴィナ・クーランジュ』

 第1次地球圏争乱時のライバル枠とそのお嫁さん。

 現在地球圏のどこかで幸せな新婚生活を満喫中のため、今回登場の予定はありません。

 下手に幸せの邪魔をすると、大変なことになるので……

 

『ジュア=ム・ダルービ』

 クド=ラの兄。

 だれもゆくえをしらないらしい。だいじょぶ。イキテル。

 

 

『グランティード』

 統夜の乗る機体。複座型であり、ヒロインからサブパイロットを一人選んで操縦する。

 

『バシレウス』

 ヒロイン達の乗る機体。同じく複座であり、ヒロインの中からメインパイロットとサブパイロットを選んで操縦する。

 一応メインパイロットはロゼ=リアだが、ヒロインなら誰がメインに乗っても問題はない。

 

 二体が合体することで『グランティード・ドラコデウス』となる。

 バシレウスは第2話から出撃が可能で、統夜の気力が120を超えるとグランティード・ドラコデウスへの合体が可能となる。

 

 

※補足

 エンディングについて。

 今回追加ヒロインはありません。

 個別エンディングへのポイントはグランティードのサブシートに何回乗ったかのみになります。

 条件を満たしたヒロインが複数いる場合、選択が可能。

 前作の個別エンドデータがあれば、ポイントに関係なく条件達成となる。

 

 お話は第2次ノーマルエンドからの続きだよ!

 



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第02話 ビルドアップ! 鋼鉄ジーグ

 

──統夜──

 

 

 東京。Gアイランドシティ。

 

 俺達は闇バトルで回収したQパーツをGGG(ガッツィ・ギャラクシー・ガード/ガオガイガーファイナルの組織※)の研究室へ引き渡すため、一度日本に戻ってきた。

 もちろん、すぐにでもガウルンを追いたかったわけだけど、回収したQパーツは危険と判断されるほどのエネルギーを秘めている。それを無防備に持ったまま安易に行動するわけにはいかなかった。

 

※GGG(ガッツィ・ギャラクシー・ガード)

 スリージー。またはトリプルジーと読む。

 この世界においてはEI-01の襲来だけでなく、他宇宙からの危機に備え結成された旧GGG『ガッツィ・ジオイド・ガード』をルーツに原種が現れ、Gアイランドシティが一度崩壊した際新生した防衛組織。

 やることは旧時代とは変わらない。

 初代長官は大河幸太郎である。

 

 

大河長官「ご苦労だったね君達。テスタロッサ君が予測していた通りとはいえ、学生である君達に負担をかけてしまった」

 

甲児「いえ。俺達も自分で志願したわけですから」

 

大河長官「なにより、あのガウルンが生きていたとはね……」

 

 

 やれやれと、GGGの大河長官がかぶりをふった。

 直接会ったことはないようだけど、いろんなところでテロを行ってきたというガウルンのことは知っているようだ。

 

 

大河長官「相良君の因縁だけでなく、君達との因縁も聞いている。となれば、ここで手を引けとは聞けない問題だね?」

 

統夜「はい」

 

甲児「このまま俺達が手を引いたとして、そのまま見逃してくれるような奴じゃありませんからね」

 

宗介「下手に放置すると、今度は学校が狙われかねません。今のうちに対処するべき相手であります」

 

大河長官「君達なら、そういうと思っていたよ。とりあえず、奴が今身を寄せていると思われる、あの闇バトルを開いていたコネクション※(ブライガー用語/犯罪組織の総称)がなにかは判明した」

 

 

※コネクション

 裏社会に大きな影響力を持っていたロゴス(機動戦士ガンダムSEED DESTINY/組織名)。そしてその後継であったアマルガム(フルメタルパニックシリーズ/組織名)が滅びたことにより、裏社会の秩序も崩壊した。

 強大な力を持った悪の柱が消えたことにより、各々が好き勝手に動き、悪を働く大小様々な犯罪組織が生まれたのだ。

 そうして生まれた新旧様々な組織を、人々は新たに『コネクション』と総称したのである。

 

 

大河長官「そのコネクションの名は『バイオネット(ガオガイガーファイナル/組織名)』。ガウルンが相良君を狙い、あの闇バトルトーナメントを開催させていたところを見るに、ここの一員となっているのは間違いないだろう」

 

甲児「つまり、この組織を追ってもガウルンにたどりつける可能性があると」

 

大河長官「その通り。だが、気をつけなければならない」

 

統夜「なにをですか?」

 

大河長官「この『バイオネット』というところとは、我々も因縁があってね。厄介な相手なのだよ」

 

 

 そう言い、長官はバイオネットについて簡単に説明してくれた。

 いわゆる『死の商人』達の組織であるが、高い技術力を保有しており、Gストーンの技術を盗み、GSライドの模造品であるフェイクGSライドの開発に成功しているのだという。

 その戦力はGGGの勇者ロボでなければ対抗できないほどの脅威となっている。

 

 

大河長官「それほどの技術力を持つところだ。君達を苦しめたというヴェノムと呼ばれる機体をコピーしていても不思議はない。ひょっとすると、君達(ミスリル)の切り札に匹敵するものさえ用意している可能性がある」

 

宗介「……」

 

甲児「あのヴェノムがそのまま修復されていたりすれば、確かに厄介だな……」

 

 

 相良軍曹のレーバテインと同じくラムダ・ドライバを搭載した機体。

 それがまた出てくるとしたら、厄介極まりない。

 

 ひょっとするとあの時ガウルンが逃げたのは、それがまだ準備しきれていなかったからかもしれない。

 

 

大河長官「その可能性はある。次は出てくる可能性を考慮しておくんだ」

 

宗介「了解しました」

 

大河長官「そして、バイオネット、およびガウルンの追跡の方だが、それについてはうちやミスリルの専門家の方に任せておいてくれたまえ」

 

統夜「いいんですか?」

 

大河長官「ああ。バイオネットとの戦いには勇者ロボに匹敵する君達の力が必要だろうが、奴等を見つけるまでは別の者の仕事だ。捜索は捜索のプロに任せたまえ。なにより、君達にはすぐ行ってもらいたいところがある」

 

甲児「行ってもらいたいところ?」

 

大河長官「ああ。九州にあるビルドベース(鋼鉄神ジーグ/基地)だ! そこで、異変がはじまっている!!」

 

 

──統夜──

 

 

 大河長官にうながされたまま、俺達は九州にあるビルドベースへむかっていた。

 

 そこは50年前に現れた邪魔大王国の戦いにより、ゾーン※と呼ばれる不可侵領域に覆われた場所を監視し、再び邪魔大王国が現れた時、防衛の最前線となる場所である。

 

※ゾーン

 50年前の邪魔大王国との決戦のおり発生した謎の結界。表面は暗雲のようなものに覆われ、中を観測することも、入ることもできない場所となった。

 原作鋼鉄神ジーグでは九州の全土が覆われていたが、ここでは阿蘇山を中心とした南九州の一部のみが覆われている(佐世保など北九州の一部は第1作の時に登場しているから)

 

 

統夜「歴史の授業でならったことはあったけど、実際に行くことになるとは思わなかったな」

 

甲児「ああ。五十年も昔の話じゃ、俺達とはあまり縁がないからな。おじいちゃんはなにか知ってたかもしれないな」

 

 

 50年も昔になると、俺達の恩人である弓教授さえ実際にかかわっていない。

 争乱で一緒に戦った仲間でさえ、実際に知っている人はほとんどいないだろう。

 

 だから、昔邪魔大王国の襲撃があった。ということしかわからない。

 

 

 ここ数日、そのゾーンに異変が感じられ、警戒が増していたのである。

 ビルドベースが近づく。

 

 

クド=ラ「異変を察知した。つまり、50年の時を経てそいつらがまた出てきたってことなのかな?」

 

 

 その時だった。通信機がけたたましい音を立てる。

 

 

カティア「大変。ビルドベースからの救援要請よ。どうやら大河長官の心配が当たったみたい」

 

甲児「なんだって!?」

 

統夜「急ごう!」

 

 

──ビルドベース──

 

 

 統夜達が救援要請を受けたころ、ビルドベースではゾーンから現れた邪魔大王国(鋼鉄神ジーグ/組織)の手先。ハニワ幻神(鋼鉄神ジーグ/敵総称)に襲撃を受けていた。

 そこには、危機を察知し先入りしていたグレートマジンガーの剣鉄也とそのパートナー炎ジュンと弓さやか(マジンカイザー/人物)が。

 

 さらに鋼鉄ジーグに乗りこんだ草薙剣児と、珠城つばきと美角鏡の乗るビッグシューターが守りについていた。

 

 

鉄也「草薙。まだ乗ったばかりで無茶するな。ここは俺とグレートに任せておけ」

 

剣児「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえだろ! うおぉぉ!」

 

鉄也「こいつ!」

 

さやか「まるで甲児君みたい」

 

 

 雄たけびと共にハニワ幻神の集団へ突撃する剣児の駆るジーグを見て、弓さやかがやれやれとあきれた。

 

 統夜達が日本へ戻る直前、突然の地震により崩れた山からハニワ幻神が目覚める事件が起きた。

 その日近くで友人の美角鏡とバイクレースで勝負していた草薙剣児は、雷鋼馬というバイクを授けられ、鋼鉄ジーグとなった。

 

 鋼鉄ジーグを開発した司馬博士に「お前はこの地を守る防人となるのだ!」と言われ、わけもわからず戦うことになり、がむしゃらにそれを撃破していた。

 

 この一件がきっかけとなり、邪魔大王国の復活が迫っていると予測した各方面は、グレートマジンガーを、さらに統夜達を派遣したのである。

 

 その予測は見事的中し、50年ぶりに現れたハニワ幻神との戦いがはじまったのである!

 

 

剣児「うおおおぉぉ!!」

 

つばき「こら剣児。もう少し剣さんの言うことを聞きなさい!」

 

鉄也「今はかまわん。やれるだけやってみろ。サポートはしてやる! お前の才能を見せてみろ!」

 

 

 剣児の戦い方は、向こう見ずで危なっかしいもので、ところどころ危ないところはあったが、すかさず鉄也のサポートが入り、大きな危機には発展しなかった。

 

 

つばき「すごい。これが、今まで日本を守ってきたグレートマジンガー……!」

 

 

 剣児と鋼鉄ジーグの強さに目も行くが、それをあっさりサポートする鉄也の腕前に思わずつばきが声を上げる。

 きっと今まで同じように無茶をする人をいっぱいフォローしてきたんだろうなあ。というのも見えてしまったりしたが。

 

 

鉄也(まだ戦い慣れしていない分危なっかしいが、恐れず突っこんでいけるところは逆に感心する。こいつは鍛えがいのある男だ)

 

 

 まだまだでこぼこした原石であるが、その才能を感じさせるだけの動きは十分にあるものだった。

 

 鉄也が剣児の才能を見極めたところで、統夜達もビルドベースに到着する。

 マジンカイザーとグレートマジンガー。さらにグランティードとバシレウス。そしてレーバテインとボスボロットがそろった今、指揮官もいないハニワ幻神の軍勢ではひとたまりもなかった。

 

 ビルドベースに現れたハニワ幻神をすべて撃退し、統夜達も邪魔大王国を警戒するため、しばらくビルドベースに滞在することになる。

 

 

──特訓! マッハドリル──

 

 

 ビルドベースに到着した統夜達は、その指令、珠城美和(たましろみわ)の歓迎を受け、ジーグを開発した司馬博士、ジーグのサポートを行う美和の孫娘である珠城つばき、ビルドベースの研修生でもある美角鏡(みすみきょう)。そしてジーグのパイロットである草薙剣児の紹介を受けた。

 互いに自己紹介を行い、ジーグの特性を説明される。

 

 鋼鉄ジーグとは、サポート機であるビッグシューターにより様々な武器やパーツをシュートされ、交換して臨機応変に戦える機体だった。

 

 しかし、剣児はそのパーツチェンジはまだ不慣れ。

 ということで、鉄也が先生となりパーツチェンジの特訓がはじまることとなる。

 

 ロボットに乗り、対峙する剣児と鉄也。

 それを見物する統夜達。

 

 

剣児「さあ、いつでもいいぜ!」

 

つばき「随分と素直ね。普段ならこういうのやだってダダこねるのに」

 

剣児「さっきの戦いで思い知ったからな。何度も何度もフォローしてもらって、俺はまだ、弱いってな!」(鉄也の撃墜数が剣児より下の場合)

剣児「さっきの戦いで思い知ったからな。何度も何度もフォローしてもらって、結局倒した数もあっちの方が上だった」(鉄也の撃墜数が剣児より上の場合)

 

つばき「気づいてたんだ」

 

剣児「俺だってバカじゃねえ。これくらい気づくさ。だからせめて、先輩に認められるくらいにはなりたいからよ!」

 

つばき「いい心がけね」

 

剣児「だから鏡、パーツシュートの速度をがんとあげてくれ!」

 

鏡「いいだろう」

 

剣児「さあ、いくぜ先輩!」

 

鉄也「いいぞ、さあこい!」

 

 

 今回は、パーツチェンジで武装を交換し、目標であるグレートマジンガーに一撃を与える訓練である。

 これはビルドアップによるパーツ交換の速度を上げ、隙を減らし、被弾を減らすため重要なことである!

 

 

つばき「いくわよ剣児。パーツシュート!」

 

剣児「うおおぉぉぉ!」

 

鉄也「遅い!」

 

剣児「まだまだー!」

 

鉄也「動きが単純だ!」

 

剣児「どりゃー!」

 

鉄也「遅い! それではマトになったのと同じだ!」

 

剣児「ち、ちくしょう」

 

 

 ビッグシューターから射出されたジークバズーカやドリルが宙を舞い、ジーグの腕と交換される。

 この合体攻撃ができるかできないかで、ジーグの性能を十二分に引き出せるかが決まると言ってもいい。

 

 何度も何度も挑戦する中、ついにバズーカがグレートの肩を捕らえた。

 

 

剣児「はあ。はあ。どうだ!」

 

鉄也「悪くない。バズーカは合格としてやろう。だが、ドリルはまだまだだな」

 

 

 ジーグバズーカ。

 それは腕をバズーカとチェンジし攻撃するものである。

 そしてマッハドリルは、腕をドリルと交換し突撃する必殺の一撃だ。

 

 バズーカは遠距離攻撃であるゆえ敵と離れてチェンジし攻撃を放つことが可能だが、マッハドリルは突撃の一撃。パーツの交換は相手の間近でなければ有効活用できない。

 それゆえ、換装速度の小さな違いが、大きな差となってしまうのだ。

 

 当然、鉄也の要求が厳しいというのもある。

 だが、そのタイミングで成功できないのなら、逆にジーグがやられる未来しかない。

 

 剣児の命がかかっているのだから、厳しくて当然なのである。

 

 

鉄也「だが、このマッハドリル。身に着ければ強力な力となる。必ず身に着けろ。休んでいる暇はないぞ!」

 

剣児「くそっ。言ってくれるぜ。いいだろう。やってやろうじゃないか!」

 

 

 その時、訓練場に警報が響く。

 

 邪魔大王国のハニワ幻神が再び攻めてきたのだ。

 今回はそれを率いる邪魔大王国の幹部、壱鬼馬(いきま)の姿もあった。

 

 彼は新たなジーグを排除し、その内に秘めた銅鐸を奪うためやってきたのである。

 

 

 警報と共にロボットへ乗りこんだ統夜達が現れたハニワ幻神と対峙する。

 

 

 次々とハニワ幻神を撃破してゆく中、統夜達の攻撃は壱鬼馬の乗る大火焔偶に命中する。

 だが、その一撃に対し、大火焔偶は無傷だった。

 

 

甲児「なんだ!? 攻撃が効いてない!?」

 

壱鬼馬「フフフッ。これぞ我等が凶の力。貴様等の攻撃など通用せんわ!」

 

鏡「くっ」

 

鉄也「いわゆる強力なバリアか」

 

アル「それならば軍曹」

 

宗介「……いや、ここは俺達の出番ではない」

 

統夜「確かに」

 

甲児「みたいだな」

 

壱鬼馬「余裕ぶっても無駄なことだ。この凶の結界は破れはしない!」

 

鉄也「そんなことはない。鏡、マッハドリルとジーグの力ならば、どうだ!?」

 

鏡「いけるだろう。ジーグの銅鐸の力をマッハドリルにこめればな」

 

つばき「無理よ。特訓の時でさえ成功していないのよ!」

 

鉄也「ここで成功できなければ、この先戦い続けるなど無理だ!」

 

甲児「そうだぜ剣児。お前ならできる!」

 

剣児「へっ。甲児に言われるまでもねえ。来い。つばき!」

 

つばき「……わかったわ。マッハドリル。セットアップ、シュート!!」

 

剣児「うおおおおぉぉ!!」

 

壱鬼馬「そのようなドリルで、我が結界が……!」

 

 

 射出されるマッハドリル。

 この時、見事合体を成功させたジーグが、大火焔偶をバリアごと貫く!

 

 

壱鬼馬「破られるだとおぉ!?」

 

剣児「やったぜ! あいつの結界も消えた!」

 

 

 こうして壱鬼馬の乗る大火焔偶にもダメージが与えられるようになった。

 あとはハニワ幻神を全滅させるだけである!

 

 

──戦闘前会話──

 

 

剣児VS壱鬼馬

 

壱鬼馬「新たなジーグよ! 貴様を倒し、銅鐸を妃魅禍様に献上させてもらう!」

 

剣児「なんだよ、銅鐸って! ワケのわからねえこと言ってんじゃねえ!」

 

壱鬼馬「ならばなにも知らぬまま、死ぬがいい!」

 

 

──勝利条件達成──

 

 

 ハニワ幻神を全滅させ、壱鬼馬に致命的なダメージをあたえることに成功する。

 

 

壱鬼馬「これが新たなジーグの力。侮っておったわ。覚えていろ!」

 

剣児「へっ、いちいち覚えてられるかって!」

 

 

 現状でビルドベースを落とすことは不可能だと感じた壱鬼馬は撤退してゆく。

 

 撤退後、現状を報告された妃魅禍は、ジーグ以外の戦力も考慮し、うかつに攻撃するのは逆効果と考え、しばし準備をすることを決めた。

 少なくとも、復活直後では戦力が足りないと感じたのである。

 

 ある程度のハニワ幻神が復活するまで、しばし静観の構えとなる……

 

 

剣児「どうだ、見たかよ鉄也先輩!」

 

鉄也「ああ。合格だ。最低限の強さに届いたようだな」

 

剣児「ちぇっ。辛口だぜ」

 

美和司令「皆、ご苦労様。報告ついでに指令室まで来てもらえるかしら。GGGの大河長官が、あなた達に伝えることがあるみたい」

 

甲児「ひょっとして……」

 

宗介「ああ」

 

 

 ビルドベース指令室。

 

 

大河長官「ビルドベースに来てすぐのところですまないが、バイオネットに関しての情報が入った。やはりスイスの研究所からQパーツを奪取したのはバイオネットだったようだ」

 

甲児「Qパーツをだって!? まさか俺達が回収した奴が盗まれたのか!?」

 

宗介「いや、違うだろう。Qパーツは世界で4つ確認されている。それぞれが高いエネルギーを秘めているため、世界各地の研究所に分散して研究が進められていたはずだ。そのどれかだろう」

 

統夜「それに、俺達が回収したのは日本の研究所に引き渡したばかりだからな。その前になにかあったのじゃないか」

 

甲児「あ、別のか」

 

テニア「甲児、慌てすぎだよ」

 

甲児「うっせえ」

 

さやか「甲児君たら」

 

大河長官「ともかく、今その犯人を我々と協力関係にある対特殊犯罪組織シャッセール(ガオガイガーファイナル/組織名)のルネ君(ガオガイガーファイナル/人物)が追っている。敵は説明した通り手ごわい。君達にその捕縛に力を貸してほしいと思ってね」

 

甲児「もちろんだぜ!」

 

統夜「もちろんです。その犯人は、今どこに?」

 

大河長官「フランスだ。こちらからも凱君(ガオガイガーファイナル/人物)を行かせる。現地で合流してほしい」

 

メルア「凱さんと? でも今、ギャレオンは護君と一緒に宇宙へ旅立ったんじゃ?」

 

カティア「いえ。ついに完成したんですね?」

 

大河長官「うむ」

 

 

 大河長官は大きくうなずいた。

 読者の皆様はもうなんのことか察しはついているだろうが、ここはまだあえて伏せておこうと思う。

 次回を待て!

 

 

鉄也「……」

 

 

 剣鉄也が、ビルドベースの指令である珠城美和に視線を送る。

 彼女もその視線に気づき、無言でうなずいた。

 

 

鉄也「草薙、お前も一緒に行ってこい」

 

剣児「ええっ!? つったら、邪魔大王国の連中はどうすんだよ?」

 

鉄也「奴等とてバカではあるまい。今回の一件で俺達は手ごわいと知ったはずだ。ここには50年前と違い、ジーグ以外のロボットがいるのだからな。ゆえに奴等は戦略を見直し、次は戦力を増強してから攻めてくる」

 

つばき「そんな……」

 

鉄也「だからその時のために、お前はさらなる戦いの経験を積まねばならない。より強くなるためにな」

 

剣児「……実戦こそが、最大の経験てわけか」

 

鉄也「そういうことだ。なに。日本は俺とグレートに任せておけ。慣れている」

 

甲児「確かに鉄也さんには世話になりっぱなしだよな」(しみじみ)

 

ジュン「もちろん、鉄也のサポートは私がするわ」

 

剣児「でもよ……」

 

鉄也「ふっ。心配などいらん。それに、早く強くならんと俺がすべて片付けてしまうぞ」

 

剣児「言ってくれるぜ。いいだろう。乗ってやる! 俺も一緒に連れて行ってもらおうか!」

 

統夜「いいんですか?」

 

美和司令「かまいませんよ。むしろ、経験を積むのはよいことですからね」

 

美和司令(それにこの先、戦わざるを得ないのは邪魔大王国だけとも限りませんし)

 

統夜「わかりました。じゃあ、行こう。フランスへ!」

 

 

 こうしてグレートと鉄也。ジュンを留守番とし、新たにジーグとビックシューターを仲間に加え(ビルドベースにはもう一隊、ビルドエンジェルスというのがいるが、それは鉄也と共に防衛に残る)、統夜達はガウルンの手がかりを得るため、フランスへと飛ぶのだった!

 

 

 第2話 終わり



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第03話 決着、壊滅、バイオネット!

 

──勇者王新生!──

 

 

 フランス。

 

 Qパーツを盗んだコネクション・バイオネット(ガオガイガーファイナル/組織名)の一味は季節外れの雪が舞い散るパリのハイウェイを激走していた。

 それを追うのは、GGGと協力関係にあるフランスの対特殊犯罪組織シャッセール(ガオガイガーファイナル/組織名)

 サイボーグからエヴォリューダーに進化した獅子王凱の従兄妹である特別捜査官ルネ・カーディフ・獅子王(ガオガイガーファイナル/人物)が所属し、二機の新たな勇者ロボ、光竜、闇竜を所有する国際機関である!

 

 彼女達は巧みなコンビネーションで、Qパーツを盗んだ犯人を追い詰める。

 

 

ギムレット「いけませんね。これは」

 

ルネ「いい加減、観念するんだね」

 

ギムレット「そうはいきません」

 

闇竜「こいつっ!」

 

 

 追い詰められたバイオネットの幹部、ギムレット(ガオガイガーファイナル/人物)は自身の正体であるメタルサイボーグ(バイオネットがゾンダーを疑似的に再現したもの)の体に高いエネルギーを秘めたQパーツをとりこみ、ギムレット・アンプルーレと化した。

 さらに周囲に潜りこませていたメタルサイボーグやAI操作されたモビルスーツを繰り出した。

 

 逆に囲まれてしまうルネ達。

 

 

ギムレット「ギョギョギョギョ。これで形勢逆転ですね」

 

ルネ「ちっ」

 

???「そうはいかない!」

 

 

 そこに現れたのは、機界新種との戦いを経て超進化人類エヴォリュダーとなった獅子王凱(ガオガイガーファイナル/人物)だった。

 

 彼は地球製のガオーマシン、ファントムガオーとフュージョンしガオファーへと。

 さらにそのガオファーを中核とし、ライナーガオーⅡ、ドリルガオーⅡ、ステルスガオーⅢとファイナルフュージョン。

 

 ここに、あらゆる脅威から人類を守るため新生したファイティングメガノイド。新たな勇者王の鎧。ガオファイガーが姿を現した!!

 

 

凱「ガオ、ファイ、ガー!!」

 

炎竜「もちろん!」

 

氷竜「私達も」

 

甲児「俺達も」

 

剣児「いるぜ!」

 

凱「覚悟するんだな、ギムレット!」

 

ギムレット「これはいけませんねえ。だが、数の上ではまだまだこちらの方が上。いかようにもなります」

 

 

 あくまで抵抗する気を納めないギムレット。

 こうして、バイオネットとの戦いがはじまった!

 

 

──戦闘前会話 VSギムレット──

 

 

VS甲児

 

ギムレット「その機体、マジンカイザーではありませんか。どうやらガウルンはしくじったようですね」

 

甲児「やっぱり知ってるのか。なら、ガウルンの居場所を教えてもらうぜ!」

 

ギムレット「ギョギョギョ。ガウルンからあなたのことは聞いていますよ。彼の居場所が知りたいのなら、力づくで聞きだしてみるがよろしい。できるならばね!」

 

甲児「いいだろう。覚悟しろ!」

 

 

VS宗介

 

ギムレット「君のことも聞いていますよ。たしか、カシムゥでしたか?」

 

アル「あの男の真似をされると虫唾がはしりますね」

 

宗介「ここで奴の居場所を吐くとは思ってはいない。しかるべき場所で、話したくしてやる」

 

ギムレット「いけませんねえぇ。ぜひ、お断りしたい」

 

 

VS統夜

 

ギムレット「き、君は……!」

 

統夜「俺を知っているのか!?」

 

ギムレット「いえ。あなたのことは特段耳にした覚えはありませんね。誰ですか君は?」

 

統夜「……」

 

ギムレット「……」

 

統夜「い、いや、まあ、いいんだけどね。別に」(それだけ俺はガウルンにとって注目されてなかったってことか)

 

ギムレット「……いや。あなたを知らなかった。これは、いけませんねえ」

 

 

──決着──

 

 

 ギムレットの脇を固めた雑魚はすべて倒され、追い詰められたギムレットはガオファイガーのゴルディオンハンマーにてその巨体は消滅(疑似ゾンダーなので対処法は同じ)

 ギムレット本人はコックピットごと摘出され、捕縛されることになった。

 

 

甲児「さあ、居場所をはいてもらおうか!」

 

ギムレット「ギョギョ。いけませんねぇ。いけません。こうして生かしておく。それは悪手ですよ!」

 

 

 瞬間、ギムレットの体からぶしゅーと煙が噴き出す。

 煙幕だ。

 

 煙が消えると、そこにギムレットの姿はなかった。

 

 

ルネ「煙幕なんて古典的な手を!」

 

剣児「逃げやがった!」

 

宗介「いや、予定通りだ。このままアジトまで案内してもらう」

 

凱「そういうことだ。あとは任せたぞ、ボルフォッグ!(ガオガイガーファイナル/勇者ロボ)」

 

ボルフォッグ「はい!」

 

宗介「クルツ、マオ!(両名ともフルメタルパニック/人物)」

 

クルツ「あいよ。せっかくフランスで合流したってのに、合流も端折られて消えっぱなしだったからな。忘れらて放置されるかとひやひやしたぜ」

 

宗介「なにを言っているんだ?」

 

マオ「今まで隠れてなきゃいけなかったのがストレスだったのよ。気にしなくていいわ」

 

クルツ「そういうわけだ。ここからは俺達に任せておけ」

 

ボルフォッグ「行ってきます!」

 

 

 そう言うと、ボルフォッグとクルツの乗るM9は透明になってその場から姿を消した。

 両機とも姿を背景と同化させ、消えたように動くことのできる機能を持っているのである。

 

 

ルネ「わざと逃がしたってのかい?」

 

凱「ああ。このままアジトへ案内してもらう。うまくいけば、ガウルンもいるだろうし、そこを調べれば他のアジトの手がかりもつかめるだろう」

 

甲児「どうせ居場所をはくわけないと思っていたからな」

 

ルネ「追いかけて、追い詰めて一網打尽にするってわけか」

 

凱「そういうことさ」

 

ルネ「逃げられるなんてことはないだろうね?」

 

凱「どちらもプロフェッショナルだ。心配はないだろう」

 

ルネ「一応信頼はしておくよ」

 

凱「というわけだから、しばらくは逃げられたという体でいこうか」

 

甲児「くそー、にげられたー!」

 

剣児「ちくしょー」

 

ルネ「……あんたら二人は黙ってた方がいいわ」

 

二人「なにをー!」

 

 

 しばらくして連絡が入った。

 

 ギムレットの逃げこんだ秘密のアジトを発見。

 そこに、ガウルンもいると!

 

 決着の時は、近い!

 

 

────

 

 

 ミスリルとGGGの諜報力により、ギムレットの逃げこんだバイオネットの秘密基地は暴かれ、さらにそこにガウルンがいると確認された。

 その情報をもとに、急遽移動しながらのミーティングが行われた。

 

 

大河長官「バイオネットの秘密アジトをつかんだのはいいが、ガウルンがいるということは、君達が追っているということをギムレットから知らされるはずだ。ここは逃げられる前に確保に動いた方がいいだろう」

 

 

 あの勘のいいガウルンのことだ。ギムレットが追われているということにも気づく可能性さえあるからだ。

 

 

宗介「ヤツのことだ。むしろ来るとわかって我々を罠にかける可能性もありえます」

 

甲児「確かにな。だが、行かないわけにはいかない。だろ?」

 

宗介「ああ」

 

テッサ「ならば、ガウルンの想定にもない存在を送りましょう」

 

 

 通信に割りこんできたのは、宗介の上官でもあるテレサ・テスタロッサだった。

 

 

宗介「大佐殿!?」

 

テッサ「相良さん……いえ、今は任務中ですからね」

 

 

 ちょっとむすっとしそうになったテッサだったが、すぐ改めた。

 実は学校に通うようになった彼女は、宗介に大佐殿などの他人行儀な呼び方はやめてほしいとお願いしてあった。

 実際、学校に通っている間の彼女は大佐などではなく学生だからだ。

 

 だが、ミスリルに復帰した今は学生気分でいていい場ではない。ゆえに、それを指摘するのは思いとどまったのである。

 

 それはさておき……

 

 

 ミーティング後、基地を掌握するための陸戦隊が到着するのと同時に、テッサの言ったガウルンの想定にない存在が合流する。

 

 それは、ドモン達シャッフル同盟の五人と医師のレイン(機動武闘伝Gガンダム/人物)だった。

 

 ドモンを除いた四人が陸戦隊と共にアジト基地へ突入し、そこにある情報を根こそぎとってくるというわけである。

 ドモンは統夜達と共にロボットで暴れそちらに注目を集めるという役目がある。

 

 これほど心強い援軍はないだろう。

 

 

レイン「実は私達が合流したのは、あなた達を手助けするためだけじゃないの」

 

統夜「どういうことですか?」

 

ドモン「非活性化されたデビルガンダム細胞(Gガンダム/用語)をどこかのコネクションが手に入れたという情報がある。俺達はそれを追っているんだ」

 

メルア「まだ残っていたんですね」

 

カティア「確かにそれなら、高い技術力を持つバイオネットが手に入れていても不思議はありませんね」

 

ジョルジュ「それを確かめるためにも、私達がやってきたというわけです」

 

甲児「なら下手すると、ガウルンのヴェノムだけじゃなくデビルガンダムも出てくる可能性があるってことか!?」

 

レイン「可能性はあるわ。だから、気をつけて」

 

宗介「出るという情報があるだけで十分だ。万一の時対処が可能になる」

 

剣児「確かにな」

 

 

 ドモンがゴッドガンダムで戦いに加わるのも、万一デビルガンダムが出てきた時のためでもあるのである。

 

 

 作戦が決まり、ガウルンに逃げる暇を与える間もなく統夜達はバイオネットの秘密アジトへ攻めこんだ。

 

 基地は地下にまで広がっており、ロボットが飛び上がっても問題のないくらいの広さはあった。

 

 突然の襲撃に、基地は大混乱。

 白兵戦もロボ戦も奇襲は成功である。

 

 しかし。

 

 

ガウルン「いよう。待ってたぜカシム」

 

 

 慌てずに現れたのは、ガウルンの乗るだろう赤いカラーが特徴的なヴェノムであった。

 

 

ガウルン「やっとこいつの修理も終わってな。今日ならお前の相手をしてやれるぜ」

 

 

 現れる、基地の所属機。メタルサイボーグやアームスレイブなど、AIで動く機体がガウルンの周囲へ姿を現した。

 数そのものは基地の規模にすれば少ない。

 

 ガウルンが待っていたと口にすることから、罠である可能性も十分考えられたが、ここにヴェノムが現れた以上下がるわけにもいかなかった。

 

 統夜達は、先へ進むことを決断する。

 

 最初に現れたヴェノムふくめた機体の壊滅はあっさりと成功した。

 

 

 赤いヴェノムが倒れるのと同時に、基地の奥と入り口から敵の援軍が現れる。

 最初に現れたヴェノムは声だけを機体からだした影武者であり、奥に姿を現した新たなヴェノムこそが、本物のガウルンの乗る機体であった。

 その隣には、メタルサイボーグギムレットの姿もある。

 

 初期の混乱は、統夜達を奥に引き込んで叩くガウルンの策であったのだ。

 

 今度は逆に挟み撃ちとなる統夜達。

 

 

剣児「挟み撃ちがどうしたってんだ! なにかあるのはこっちも予測済みなんだよ!」

 

甲児「ああ。どっちも倒せば問題ない!」

 

ドモン「本物が出てきたのなら話が早い。行くぞ!」

 

 

 しかし罠があることは予測済み。

 士気は崩れることなく、前後の敵を迎え撃つ。

 

 

ガウルン「さあ、最後のパーティーだ。派手に行こうぜ!」

 

 

──戦闘前会話 ガウルン──

 

 

VS宗介

 

宗介「ガウルン!」

 

ガウルン「よう、カシムゥ。これが最後の祭りだ。いい加減決着をつけようぜ!」

 

宗介「そんなの言われるまでもない! 今日こそ、お前との因縁も最後だ!」

 

 

VS統夜

 

ガウルン「この前は後れを取ったが、今回はそうはいかねぇぜ、カシムのお友達君よぉ!」

 

統夜「今回こそ、お前の最後だ。ガウルン!」

 

ガウルン「いい。いいねぇ。その調子だ。俺を楽しませろよ!」

 

 

VS甲児

 

ガウルン「カブトコウジ。お前ともここまでの因縁になるとは思わなかったよ」

 

甲児「それはこっちのセリフだ。いい加減今日で終わりにしてやる!」

 

ガウルン「そうだな。今日で終わりだ。どちらにせよな!」

 

 

VS剣児

 

剣児「なんだ!? こいつもよくわからねーバリアを!?」

 

鏡「通用するかはわからん。だが、やるしかない。わかっているな剣児?」

 

剣児「ああ。特訓の成果、見せてやる! つばき、マッハドリルだ!」

 

つばき「いつでもいけるわ!」

 

 

VSドモン

 

ドモン「貴様、デビルガンダムの行方を知っているか!?」

 

ガウルン「デビルガンダムだと? あれを手に入れられていたのなら、もっと別の祭りを開催しているだろうさ。あの嬢ちゃん(千鳥かなめ)をコアにするとかな!」

 

ドモン「ならば貴様に用はない!」

 

 

──戦闘前会話 ギムレット──

 

 

VS統夜

 

ギムレット「聞きましたよ。ガウルンの策が失敗した理由を。覚えましたよ。紫雲統夜君。君を侮ることは、もうありません」

 

統夜「今更覚えてもらっても遅い。お前達はここで終わりだ!」

 

 

──さらなる助っ人──

 

 

 この時のガウルンは恐ろしいほどに手ごわい。

 なぜなら彼は、この戦いにすべてをかけた状態だからだ。

 

 実はガウルンは病に侵されており、残りの命はわずかだったのだ!

 

 この戦いが自分の最後の時間と悟っており、この地を自分の終焉の地であると決めて、最後の戦いを仕掛けてきたのである。

 

 

ガウルン「だからわざわざこの基地で待っていたんだぜ! さあ、俺を楽しませろよ、カシムゥ!!」

 

 

 このような決死の相手はとても厄介である。

 ゲーム的に見ても、まだ序盤も序盤なのにいきなりクライマックス相当の相手なのだから苦戦は必至。

 

 そんな中、誰かが大ピンチ(HPが半分以下になる)になったとき、それは起きる。

 

 

ガウルン「弱っている奴から片付けるのは基本だよなぁ!」

 

 

 動きの鈍った機体に狙いを定め、ガウルンはとどめをさそうとする。

 しかし、その時であった!

 

 

???「まてい!」

 

ガウルン「誰だ!?」

 

 

 逆光を背に突如として現れた謎の男。

 それは、エヴォリューダー凱と同じく鋼の体を持つ青年。

 

 そう。そこにいたのは、剣狼の導きによりやってきたロム・ストール!!(マシンロボ クロノスの大逆襲/人物)

 

 皆が唖然とする中口上を言い切り、しかも名乗る名はないと、そのままケンリュウはおろかバイカンフーへ合身し戦闘に参加する!

 

 統夜達も戸惑うことになるが、戦力としていきなり四段階くらい改造してありそうな強さを見せられては黙って受け入れるしかできなかった。

 

 

──決着──

 

 

 多くの助っ人の力を借り、ガウルンのヴェノムとギムレットのメタルサイボーグ体は倒れるに至る。

 

 しかし、ガウルンを倒したといってほっと一息はつけなかった。

 

 

ガウルン「くくっ。ははは。負け? 俺の、負けか……?」

 

宗介「そうだ。お前の負けだ。これで、終わりだ」

 

ガウルン「いいや。負けじゃねえさ。なぜならお前達も道連れだからな!」

 

宗介「まさか!」

 

甲児「こいつ、また!」

 

ガウルン「ああそうさ。早く逃げた方がいいぜ。でなけりゃ、また俺と心中だ!」

 

 

 なんとガウルンは最後の力を振り絞り、基地ごと自爆して果てようとしていた!

 かつての時と同じく、ちょっとでも自分に攻撃を加えれば爆発する状態として!

 

 それは第一次争乱の最中ガウルンが死んだと思われた孤島の再現。

 

 彼はもう一度宗介達を道連れにしようと手を伸ばしてきたのだ!

 

 

 もちろんそんな酔狂につきあうつもりは統夜達にない。

 

 

 タイムリミットが迫る中、統夜達は基地を脱出する。

 

 伏兵として入り口付近に現れた傭兵達もガウルンにつきあって死ぬ義理はない。彼等も慌てて逃げ出してゆく。

 しかしまだ動けるAI制御のメタルサイボーグやアームスレイブは別だ。

 これから訪れる破壊など考えず、統夜達を外に出すまいと邪魔をして来るのだった。

 

 

クルツ「あの野郎。こうなることを見越してAI制御を多めに出してやがったのか」

 

 

 それらを排除し、なんとか脱出せねばならなかった。

 

 

──脱出──

 

 

ガウルン「楽しかったぜ、カシムゥ」

 

 

 そう言い、彼は光の柱と共にこの世界から消えた。

 

 皆の脱出が成功した直後。

 基地のすべてをのみこんだ光が消えた後、そこにはクレーター以外のなにもかもが跡形もなく消え去っていた。

 

 

甲児「なにもなくなっちまったな」

 

宗介「さすがに前の孤島とは違い、海に沈んで逃げるなんてこともない。間違いなく終わりだ」

 

甲児「ああ。やっと終わったな。うっとおしい野郎だったぜ」

 

統夜「確かに。もう相手にするのはごめんだな」

 

宗介「まったくだ」

 

 

 最初の争乱からガウルンとの因縁深かった三人は、思わず笑いあった。

 

 

 自爆によってできたクレーターの中に、ガウルンの生きた痕跡は存在しなかった。

 完全に消えたのである。

 

 こうして、因縁の戦いは終わった……

 

 

 一方、しぶとく脱出していたギムレットはルネにつかまっていた。

 命乞いをしてまた逃げ出そうとするが、今度は顔面にバズーカ砲を撃ちこまれ、吹っ飛んだ頭部は彼女に踏みつぶされ、その動きは完全に沈黙することとなる。

 

 

チボデー「そういえば、さっきのサイボーグの兄さんはどうした?」

 

剣児「そういえば」

 

 

 周囲を確認するが、すでにロム・ストールはその場にいなかった。

 

 

甲児「なんだったんだあれ」

 

テニア「正義の味方、かな?」

 

宗介「こちらを見ても、知らない存在だ」

 

クルツ「むしろあの姿、そっちの担当じゃないのか?」

 

凱「いや、俺達もなにがなんだか。機械の体のようだが、サイボーグとは違うように見えた」

 

 

 何者だったのか。

 当人が消えた今、その疑問に答えてくれるものは、ここには存在しなかった。

 

 

統夜「また会う機会があった時、改めて聞くしかないんじゃないかな」

 

甲児「そうみたいだな」

 

 

 ただ、一つわかることがある。

 それは、彼は敵ではないということだ。

 

 

 バイオネットの秘密のアジト基地はガウルンの自爆により跡形もなく消えてなくなったが、そこに残されていた情報は突入した陸戦隊が無事回収していた。

 彼等も自爆に対しては色々とピンチだったが、シャッフル同盟が壁を壊したりして道を作ってくれたため、誰もかけることなく脱出に成功していた。

 

 この時得たバイオネットの情報により、その秘密のアジトは次々と暴かれ、そのまま彼等は衰退してゆくことになる。

 

 さらに基地内にあった情報により、ガウルンの言ったデビルガンダムなど持っていないというのも裏付けられた。

 ガウルンの言葉通り、バイオネットはデビルガンダムについてなんの情報ももっていなかったのだ。

 

 

ドモン「どうやら言っていたことは本当だったようだな」

 

レイン「さすがにもう一つのデビルガンダムはデマなのかしら」

 

アルゴ「それならそれでよいだろう」

 

サイサイシー「おいら達が無駄足を踏むだけならむしろいいってことさ」

 

ドモン「そうだな。デビルガンダムがすでにないという方が、世のためだ」

 

 

 こうして、Qパーツをめぐるバイオネットとの戦いは終わりを告げた。

 

 

 ドモン達シャッフル同盟は改めてデビルガンダム細胞の手がかりを探すため、別行動をとる。

 ルネ達シャッセール所属の3名も、取り戻したQパーツをスイスの研究所に戻すため、統夜達とは別れることになった。

 

 残ったのは、日本からやってきた統夜、甲児、宗介達ミスリルの部隊、剣児達ビルドベースの3人とGGGの凱、炎竜、氷竜にボルフォッグ。

 一行は一度、補給のため近くの連合基地へお邪魔させてもらうことになる。

 

 

 そこで、新たな戦いの幕が開くと知らずに……

 

 

 第3話 終わり



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第04話 ガンダム強奪

 

──ガンダム強奪──

 

 

 アフリカに近い某所。

 バイオネットの秘密基地を壊滅させた統夜達は、ビルドベースに戻るための補給を受けようと連合基地を目指す。

 

 そこには今、ホワイトベースを参考にして作られた、アーガマ(機動戦士ガンダムΖΖ/戦艦)という戦艦が寄港しているところであった。

 艦長はブライト・ノア(ガンダムΖΖ/人物)。さらに争乱後軍に復帰したムウ・ラ・フラガ(機動戦士ガンダムSEED/人物)の姿もそこにあった。

 

 統夜達の補給が許可されたのも、彼等がここに来ているから。という理由もあっただろう。

 

 

 今、この基地ではガンダム試作1号機と試作2号機(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY/機体)。さらにZガンダム(ガンダムΖΖ/機体)と呼ばれる可変モビルスーツのテストが行われることになっていた。

 ムウは経験を買われ、このどれかのテストパイロットをする予定でここにきているのである。

 ついでに、テストパイロットの一人として、コウ・ウラキ(ガンダム0083/人物)もいる。

 

 

 さらに基地に隣接するよう作られた街には、ジャンク品を回収しその日を暮らす子供達の姿もあった。

 少年ジュドー・アーシタ兄妹(機動戦士ガンダムΖΖ/人物)と楯剣人(未来ロボ ダルタニアス/人物)、柊弾児(ダルタニアス/人物)等は身寄りのない戦災孤児をまとめ、ジャンク屋を開いてたくましく生きていた。

 

 妹を学校に行かせてやりたいジュドー。子供達にいっぱいのご飯を食べさせてやりたい剣人、弾児の三人は、ふらりと現れた男にそそのかされ、基地に運び込まれた新型ガンダム目当てに基地へと忍びこむ。

 新型を盗み出せば、大金が手に入るからだ。

 

 男の手引きもあり、潜入には成功したが、なぜか潜入がバレ、基地は騒ぎとなってしまう。

 

 それも当然である。

 ジュドー達をそそのかしたのは、ジオンの残党であった。

 

 少年達はアナベル・ガトー(ガンダム0083/人物)が潜入し、ガンダムを強奪するための囮として使われたのだ。

 

 なにが起きたのか三人にはわからなかった。だが、このまま捕まるわけにはいかない。

 なんとかして基地から逃げ出すため、剣人達は三人バラバラとなって逃げることを決める。

 

 バラバラに逃げた結果、剣人と弾児は無事基地から脱出することに成功する。

 とはいえ、結局二人は基地の外に広がる森の中でばったりと出会い、一緒に逃げることになるが。

 

 

剣人「考えることは一緒かよ」

 

弾児「そのうちジュドーも来るかもな」

 

剣人「だといいな」

 

 

 なんて話しながら森の中を走っていると、二人の足元から地面が消えた。

 なんと穴が開いていたのだ。茂みに隠れ、地面があるように見えたが、なかったのだ。

 

 二人は悲鳴を上げる余裕もなく、その穴に吸いこまれえるようにして地面の下へと消えていった。

 

 

 …………

 

 ……

 

 

 一方のジュドー。

 彼の逃げた先ではちょうど、試作二号機の強奪が行われていた。

 

 

ガトー「この機体と核弾頭は頂いていく。ジオン再興のために!」

 

 

 ガトーが試作二号機を動かし、ジュドー達にこれの盗みをささやいた男がZ(ゼータ)ガンダムに乗ろうとしている。

 

 ガトーの言葉と男の動きで、ジュドーは自分達が囮に使われたのだと悟った。

 

 

ジュドー「あったまきた!」

 

 

 Zガンダムによじ登り。

 

 

男「お、お前は!」

 

ジュドー「よくも騙してくれたな!」

 

 

 コックピットに入ろうとする男を蹴り落とし、ジュドーはそのままZのシートに座った。

 

 

ジュドー「このままうまいことやらせてやるもんかよ!」

 

 

 このままやられっぱなしで全部うまいこといくのは気に入らないと思ったジュドーは、Zガンダムを動かしガトーの試作二号機を追うことにする。

 まあ、そのままZを盗んでやろうという下心がなかったわけでもないが。

 

 

ブライト「どうなっている!?」

 

 

 アーガマのブリッジに上がってきたブライトが席に座り基地と通信を続けるオペレーターのサエグサとトーレス(両者ガンダムZZ/人物)に問う。

 

 

トーレス「基地に侵入者が出たようです」

 

サエグサ「あれを!」

 

 

 サエグサが外を指さす。

 そこには、格納庫から姿を現す試作二号機の姿があった。

 

 

トーレス「っ! 今、通信が。試作二号機がジオンの残党に奪われたようです!」(現場にいたキースが報告してきた)

 

ブライト「なんだと!?」

 

サエグサ「Zも出てきました!」

 

ブライト「Zもか!」

 

トーレス「え? そ、それが……」

 

 

 通信を聞いたトーレスが戸惑う。

 

 

ブライト「はっきり言ってくれ!」

 

トーレス「子供です。Zには子供が乗っているそうです!!」

 

ブライト「なんだと!?」

 

 

 格納庫から出たZは、先に出た試作二号機にむかって殴りかかった。

 

 

ジュドー「よくも騙してくれたなー!」

 

ガトー「なんだと!?」

 

 

 乗っているものの経験の差からか、試作二号機はその一撃をかわすことに成功する。

 だが、乗っているガトーさえその動きには戦慄するものがあった。

 

 

ブライト「盗まれた二号機に挑みかかった? 敵ではないのか!?」

 

サエグサ「あの動き。本当に子供か!?」

 

トレース「本当です。15にいくかいかないかくらいのだそうです!」

 

ブライト(はじめてガンダムに乗ったアムロと同じくらいか)

 

 

 逃げの一手をとる試作二号機を捕らえることはできないが、その動きはかつてのアムロを思い出させる動きでもあった。

 本当に、子供が動かしているとは思えない。

 

 

サエグサ「試作一号機も出ました!」

 

ブライト「今度は誰だ!」

 

トレース「コウです。テストパイロット候補のコウ・ウラキ少尉!」

 

ブライト「軍の者か。なら味方だな。ええい、基地からのモビルスーツはなぜ出ん!」

 

ムウ「聞こえるか艦長!」

 

 

 ブライトが声を上げたところで、他の格納庫にいるムウから通信が入った。

 

 

ブライト「大尉か。そっちはどうなっている。なぜ出ない」

 

ムウ「こっちはダメだ。基地にあった機体はなにかされたらしくどれも起動できない。アストナージ(ガンダムZZ/人物)もがんばっているが、すぐには無理だ。最初の侵入者騒ぎは囮だったようだな」

 

ブライト「なんてことだ。では、今戦力はそこに出ているだけということか」

 

ムウ「ああ。そうなる」

 

ブライト「ならば、しかたがない。サエグサ、なんとかしてZに通信をつなげ!」

 

サエグサ「は、はい!」

 

 

 通信をつなげたブライトは、Zに乗るジュドーに協力を要請する。

 侵入したことを不問にするなどのメリットをちらつかせ、こちらへ協力させることを了承させた。

 

 

ブライト「よし。ウラキ少尉聞こえるか? 今からZと共同して二号機を取り戻せ。無理なら破壊してかまわん!」

 

トレース「いいんですか!?」

 

ブライト「核を積んだ機体を野放しにできるか! かまわんと言っている!」

 

 

 派遣された技術者や上層部は色々言うだろうが、被害を最小に抑えるにはそれが一番とブライトは決断する。

 

 基地のモビルスーツが出せないとはいえ、相手は奪われた試作二号機のみ。

 ジュドーの協力で数の上では優位となった。

 

 しかし、その優位もすぐ消えることになる。

 

 

 どおぉぉんっ!

 

 基地に砲撃が撃ちこまれる。

 

 

 ガトーの撤退を支援するためのジオン残党の機体が姿を現したのだ。

 その中には、見たこともない機体も混じっているが。

 

 しかもその狙いは、基地やその近くにある街である!

 こうすれば、ガトーばかりにかまっていられないからだ!

 

 

ジュドー「ふざけるな。街にはリィナや早苗さん達(ダルタニアス/人物)がいるんだぞ!」

 

コウ「くそっ。俺達だけじゃ……!」

 

 

 ……

 

 …………

 

 

 一方、穴に落ちた剣人と弾児の二人は、地球の物とは思えない基地の中にいた。

 二人は知らないが、そこはアダルス(ダルタニアス/宇宙船)という宇宙船が眠っている場所だったのだ。

 

 二人はそこで、アール博士(ダルタニアス/人物)と出会う。

 

 何者かと自己紹介をする前に、地上ではガトーを逃がすためジオン残党の攻撃がはじまり、その振動は地下にあるこの宇宙船も揺らす。

 何事かとアール博士が地上を確認すると、モニターには街を襲う機動兵器の姿があった。

 

 

アール博士「あれは、ムゲ帝国(超獣機神ダンクーガ/組織名)のザール艦隊(ダルタニアス/艦隊)……?」

 

弾児「なに言ってんだ爺さん。あれはジオンの残党だ。それが街を襲ってるんだ!」

 

剣人「軍の奴等はなにをやってんだよ!」

 

弾児「くそっ。あの二機以外に動きがない。まさか、あれしか出れない? だとすれば、俺達が忍びこんだこととなにか関係あるのか……?」

 

剣人「あの騒ぎのせいか!?」

 

アール博士「……このままでは、ここも危ない。ならば、しかたあるまい。おぬしたち、戦う覚悟はあるか?」

 

剣人「っ! なにかあるのか!? なんとかできる力があるなら貸してくれ。あそこには、俺達の家族がいるんだ!」

 

弾児「そうだ。街の奴等を、家族を守りたいんだ。俺達がしでかしたことでもあるからな」

 

アール博士「……よかろう。だが、次はワシに力を貸してもらうぞ」

 

剣人「もちろんだぜ!」

 

 

 二人はこの宇宙船に積んであったミライマン、アトラウスとミライマシン、ガンパーに乗せられ、博士の助言を受けながら戦いに挑む。

 

 

 …………

 

 ……

 

 

 街に侵入されれば終わりと感じたジュドーは試作2号機捕縛などする余裕はなく、現れたジオン残党の方へとむかう。

 コウだけは食い下がろうとするが、数的有利もなくなった今ではエースパイロットのガトーを抑えておけるはずもなかった。

 

 多勢に無勢。そう感じた時、基地近くの森から謎の宇宙船が姿を現し、中から二機の機体が現れた。

 

 それは街を襲おうとするジオンの機体を攻撃し、街と基地を守ろうと動く。

 

 戸惑うブライト達であったが、現れた宇宙船からの通信により街を守るため力を貸してくれるということがわかった。

 前争乱の経験もありジュドーを引き入れたブライトは、その提案をあっさりと信用する。

 

 ガトーを逃がすため街を襲おうとする敵をとめるためにはそれしかなかったからだ。

 

 その豪胆さに、協力を申し出たアール博士の方も驚いたそうな。

 

 

剣人「誰が乗ってるか知らないが、援護するぜ!」

 

ジュドー「あんた、剣人さんか!?」

 

剣人「ジュドー!? お前、ホントにガンダム奪ったのかよ!?」

 

ジュドー「なりゆきだよ。でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない!」

 

弾児「ああ。そうだな。俺達で街を守るぞ!」

 

 

 だが、有利だったのはほんの最初だけ。

 アトラウスとガンパーが増えたところで、それでもジオン残党の方が数が多い。

 

 すぐに態勢が立て直され、その部隊が街へと迫ろうとする。

 

 逃げる試作二号機。迫る敵部隊。

 どちらも対処するにはこれでも数が足りない。

 

 その時である。

 

 補給を受けるため基地にむかっていた統夜達が到着する。

 

 

甲児「いったいなにが起こってんだこれ?」

 

ブライト「甲児達か、ちょうどいい。手を貸してくれ。ジオンの残党だ!」

 

統夜「地上にジオン、まだいるのか」

 

甲児「しぶとい奴等だ。いいぜ!」

 

 

 こうして統夜達が加わり、数の面でも敵に並ぶ。

 

 街と基地を攻めるジオン残党は、統夜達が到着したことによりすべて撃退された。

 基地はともかく、街は守られた。

 

 しかし、ガウルンとの死闘を終えたばかりで補給も受けていない状態では、逃げの一手を打ったガトーを捕らえるのは難しかった。

 

 あと一歩までは追い詰めたものの、間一髪のところで試作2号機には逃げられてしまう。

 

 

 戦いは終わり、街は救われた。

 だが、統夜達はのんびりしている暇はない。

 

 逃げた試作2号機を追わねばならないからだ。

 

 それは当然、軍の仕事ではある。だが、先の基地を狙った砲撃で、起動できなかった基地の機体のほとんどが吹き飛んでおり、パイロットも皆大怪我を負ってしまったのだ。

 無事だったのは不死身のフラガ大尉とコウと一緒に試作機の格納庫にいたチャック・キースくらいであった。

 

 アーガマは動かせても、追撃のため展開するモビルスーツとパイロットがいないのだ。

 

 ゆえにブライトはGGGとミスリルに協力を求め、統夜達の力を借りることにした。もちろんジュドーと剣人にも。

 事態を把握したGGGとミスリルはそれを了承し、さらにGGGはジャンク屋三人が協力する報酬として、その家族を日本に戻れるよう援助し、念願の学校へも通わせてくれるというのだ。

 

 生活の保障だけでなく今回の一件の不問も追加され、軍を嫌っていたジュドー達もGGGという民間からの協力ならと、それを承諾する。

 

 もっとも、機密の塊であったZガンダムを動かしたジュドーだけはあつかいが少し違うが。

 ジュドーだけは、アーガマ預かりとなり、その所属となった。

 

 

ジュドー「全部不問じゃなかったのかよ!」

 

ブライト「勝手に乗ったのは不問にしたが、秘密を知ったのは別問題だ」

 

ジュドー「なんだよそれー!」

 

 

 こればかりは仕方のないことである。

 とはいえ、軍人になることを強制されないだけマシだろう。

 

 そのかわり、その才能を見こまれ、Zガンダムに乗ることを許可された。

 

 他の者達は、モビルスーツに触れないよう、厳重に注意されることになる。

 ぶっちゃけゲーム的に剣人とかが乗り換えできない理由づけのためなのは秘密である。

 

 

 正体不明の宇宙船に隠れていたアール博士が何者なのかは一時保留となった。

 自分から正体を明かそうとはせず、必要があれば話すとの一点張り。どうやら博士は連合軍もGGGも信頼せず警戒している。

 

 その警戒を察し、今は信頼を築くことが大切だとブライトは認め、なにも問わないことにした。

 今はアトラウスもガンパーも貴重な戦力だからだ。

 

 アール博士は剣人達とアーガマに乗り、その二機の面倒を見ることとなる(今は他の人に触らせようとしない)

 剣人達と共に生活していた子供達とジュドーの妹リィナは街に残り、GGGの所員が迎えに来るのをミスリルの陸戦隊の者達と待つことになった。

 

 さらにいくら前争乱を駆け抜けた者達が協力するからといって、このままなにもできないのは軍の面子にかかわると感じた基地の者達が奮起し、無事だったパーツをかき集め、ムウとキースの乗る機体を組み上げ戦えるようにしてくれた(キースにジム・キャノンⅡ、ムウにウィンダム)

 さすがアストナージ率いるメカニック集団である。

 

 こうして、統夜達はビルドベースに戻ることを延期し、アーガマと共にガトーが強奪した試作2号機を追うことになった。

 

 

──熱砂の攻防戦──

 

 

 アフリカへと逃げたガトーをアーガマは追う。

 一方のガトーはジオン残党が潜む鉱山基地へ到着し、試作2号機を宇宙へ打ち上げるための準備をしていた。

 

 その打ち上げを阻止すべく、統夜達はその鉱山基地へ攻撃を仕掛ける。

 

 ジオン残党はガトーを宇宙へ行かせるため、必死の抵抗を見せる。

 しかし、統夜達は二度の争乱を生き抜いてきた精鋭。ジオン残党の抵抗を打ち破り、ガトーの乗るHLVへと肉薄する。

 

 しかしその時、ジオン残党へ援軍が現れた。

 ガトー逃亡を助けた襲撃者の中に紛れていた正体不明の機動兵器。

 

 それがジオン残党以上の数をもって襲い掛かってきたのだ。

 

 その圧倒的な物量により、打ち上げの阻止はかなわず、ガトーと試作2号機は宇宙へと逃げ去ってゆく。

 

 

 悔しがる統夜達。

 その中で、アール博士は一人確信する。

 

 ジオンの背後に、ムゲ帝国所属のザール艦隊がいると!

 

 彼は、現れた正体不明の機動兵器群の正体を知っていたのだ!

 

 

 試作2号機が宇宙へ飛び去ったことで、アーガマも宇宙へあがりその追撃を続けることになった。

 

 そのまま統夜達もついていくかと話題になった時、アール博士が口を開いた。

 

 

アール博士「悪いのだが、ワシ等は地上に残らせてもらいたい」

 

ブライト「どういうことです?」

 

アール博士「この地球にはもう時間がない。あのジオンという奴等の背後には、君達でいうところの異星人の一団が控えているのだ」

 

剣人「なんだって!?」

 

アール博士「説明しよう。ワシは元、エリオス星の元老議員であった。そのエリオス帝国は、今から50年前に、ムゲ帝国に滅ぼされたのだ。ワシはいつの日かエリオス帝国の再興をと願い、まだ3歳だったハーリン皇子を連れ、この地球に逃げてきた……」

 

剣人「50年前!? じいさん、それじゃあんた100歳近いのか!?」

 

統夜「いや、異星人なら地球人と同じ歳の取り方をしているとは限らないんじゃないか?」

 

アール博士「肉体としてはワシも地球人も変わらん。ワシは地球に来るとき、冬眠カプセルに入っておった。だが、自動的に再生するはずが、地球へ落下した時の衝撃で故障したのだろう。ハーリン皇子のものだけが先に作動し、ワシはつい最近目覚め、アダルス。ワシがいた宇宙船のことじゃが、その記録からそれを知った」

 

甲児「じゃあ、その皇子様はいないのか」

 

アール博士「その行方を探そうと考えていたところで、お前達が来たのだ。ともかく、先ほど現れたあの正体不明の兵器。あれは、ムゲ帝国に吸収されたザール艦隊のものだ。かつて、エリオス帝国を滅ぼした、な」

 

ブライト「ふむ。異星人と取引していたのなら、まだジオンの残党があれだけの戦力を持っていたのも納得がいく。だが、ならなぜ地球に残りたいと?」

 

剣児「そうだぜ。むしろ早いとこ宇宙に上がらないと大変じゃねえか」

 

アール博士「そうしたいのはやまやまだが、そうもいかん。ワシは科学者でな。ムゲ帝国に対抗するためあるロボットを作った。完成の間際にエリオスは滅んでしまったがな……」

 

剣人「それが、俺のアトラウスと弾児のガンパーじゃないのか?」

 

アール博士「そうだが、そうではない。あと一体、べラリオスというエリオス皇帝に献上された地球のライオンを元にしたミライオンがいる」

 

 

 アール博士はアーガマのモニターにその姿を表示させた。

 

 

凱「ライオンのロボット?」

 

ボス「ギャレオンみたいだわさ」

 

アール博士「この3体が合体することで、巨大戦闘ロボット、ダルタニアスとなるのだ!」

 

甲児「おおー!」

 

剣児「ガオファイガーみたいになるんだな」

 

アール博士「ただ、べラリオスは大気圏突入の衝撃でアダルスとはぐれ、別々に地球へ落下してしまったのだ」

 

ブライト「つまり、そのムゲ帝国に対抗するため、そのべラリオスを探したいということですね?」

 

アール博士「うむ。いずれ現れるムゲ帝国に対抗するため、ダルタニアスの力は絶対に必要となる。そのために、べラリオスをなんとしても探さねばならぬ!」

 

 

 博士の言うムゲ帝国は、今はまだジオン残党を隠れ蓑にしているが、いずれ本格的に地球を侵略しに来る。

 

 そのためにもダルタニアスが必ず必要だと力説したのである。

 

 

ブライト「しかし、そうなると50年も前から行方知れずということになるか……」

 

甲児「機械の獣か。ギャレオンは護と宇宙に行っちまったし……あ、獣戦機隊(超獣機神ダンクーガ/部隊名)がいればなにか知ってたかもな」

 

宗介「残念だが、彼等は今任務で連絡がとれない」

 

ムウ「あいつらなら今行方不明って聞いたぞ。なんだかどこかで爆発にまきこまれたとか」

 

甲児「ホントかよ」

 

ムウ「噂だがな。まあ、連絡がとれないのは一緒だ。なに。あの四人なら死んだりしてないだろ。そのうちひょっこりそっちに帰ってくるだろうさ」

 

ロゼ=リア「いずれにせよ、手掛かりはありませんのね」

 

剣人「50年か。どっかで眠っているにしても、そんな前じゃ手がかりもないだろ」

 

剣児「いや、案外知ってるかもしれないしれないぜ」

 

凱「こちらにも、当時を知っているかもしれない心当たりが一人いる」

 

アール博士「まことか!?」

 

 

 それは、ビルドベースの指令であり、珠城つばきの祖母である珠城美和と、凱の父親である獅子王麗雄博士のことである。

 どちらも70近い年齢で、いまだ現役である。

 

 50年前のことならば、なにか知っているかもしれない。

 

 

 アール博士からの情報は、GGGを通じて各方面に伝えられることとなった。

 ムゲ帝国が本当にせめてくるのなら、人類は力をあわせて戦わねばならない。それらのことは、GGGも連合、ザフトと協議する必要がある。

 

 ゆえに、一部の人員は説明やらなにやらのため一度ビルドベースに戻ってほしいとの要請があった。

 

 つまりは、宇宙へジオンの残党を追うアーガマ隊と地球でべラリオスを探す地上組との二手に別れるということだ!

 

 

──ルート選択──

 

 

『アーガマと試作2号機を追い宇宙へ行く』

 宇宙ルート。

 アーガマ隊(0083、ZZガンダム、SEED DESTINY)

 

『べラリオスを探すため一度ビルドベースへ戻る』

 地上ルート。

 マジンガーチーム、 鋼鉄神ジーグ、ダルタニアス、ミスリル、ガオガイガー

 

 統夜の選択についてくる

 オリジナル

 

 

 第4話 終わり



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第05話 宇宙で試作二号機を追跡するルート

 

──ガンダム星の海へ──

 

 

 奪われたガンダム試作二号機を追うアーガマは宇宙へとあがり、ジオン残党が潜むと思われる暗礁宙域を目指していた。

 

 一方、地球を脱出したガトーも、アーガマの目指す暗礁地域にある彼等の秘密基地。茨の園(ガンダム0083/用語)へと帰還し、次の目的のため動き出していた。

 

 そうして暗礁宙域に近づいたアーガマは、ガトーの仲間であるシーマ艦隊(ガンダム0083/艦隊名)による襲撃を受ける。

 

 ここにガトーがいると確信したコウは、地上用のチューニングしかされていないガンダム試作一号機で無理やり出撃し、機体を大破させることになってしまった。

 

 

シーマ「バランサーがイカレてるのかい、このガンダムは?」

 

ニナ「コウ!」

 

シーマ「とどめだよ!」

 

 

 シーマにとどめをさされそうになる直前、アーガマより飛び出したジュドーとムウにより救われ、コウはアーガマへと帰還することになる。

 

 

ムウ「ウラキ少尉、生きてるか!?」

 

コウ「ニナ、すまない。僕は、一号機を……」

 

ムウ「生きてるならいい。連れて行くぞ」

 

ジュドー「はいよ!」

 

統夜「俺達が援護します。その間にウラキ少尉を!」

 

 

 コウと試作一号機を回収し、統夜達はシーマ艦隊へ反撃する。

 

 数人新人がいるが、統夜達は何度も死線を潜り抜けてきた精鋭。

 数で勝るシーマ艦隊といえど、その勢いを殺すことはできなかった。

 

 

シーマ「聞いてはいたが、これほどとはね……!」

 

 

 シーマ艦隊が劣勢になったところで、暗礁地域とは別方向からジオン残党に援軍が現れた。

 地上の時と同じく、所属不明の部隊が別方向から襲ってきたのだ。

 

 ただ、今回はどこの所属かわかった。

 黒いカラーリングのキュベレイマークⅡとガザCがそれと共に現れたからだ。

 

 アクシズと呼ばれる小惑星へと脱出した、ジオンの兵力である。

 

 

シーマ「アクシズの奴等、もうここまできたのかい……」

 

 

 この援軍は、シーマにさえ予想外のものだった。

 

 

???「さて、地球人の実力のほどを見せてもらうとするか」

 

 

 そして、その戦いを遠い場所から見つめる者がいる。

 一応ここでは謎だが、先に答えを出しておくとムゲ帝国所属、ザール艦隊の司令官であるクロッペン(ダルタニアス/人物)である。

 

 戦いの中、ジュドーは黒い機体(キュベレイ)になにかを感じたが、共鳴や共感をする前に、アクシズの機体もシーマ艦隊も撤退してゆく。

 

 その鮮やかな引き際の理由は、暗礁宙域にあったアジト、茨の園へと到達した時明らかとなる。

 そこはすでにもぬけの空であったからだ。

 

 一行は消えたジオンの残党。デラーズフリートの行方を探るため、ひとまず月へと進路をとった。

 情報収集と、ガンダム試作一号機を宇宙用に換装するために……

 

 

──月面都市──

 

 

 アーガマは補給と試作一号機の宇宙用への換装のため、月に寄港していた。

 第一次地球圏争乱の折、グラドス軍により占拠され、多くの被害を受けたが、今では立派に復興を遂げていた。

 

 その賑わいは、争乱の前とほぼ変わらないと言ってもいいだろう。

 

 換装や補給のため、アーガマに乗る者達は街への上陸を許可された。

 久しぶりの休暇に沸き返るアーガマクルー達だったが、コウは一人、試作一号機を大破させたショックに沈んでいた。

 

 自身のふがいなさに打ちのめされたコウは、月の街をさまよい歩く。

 

 そこで前を見ずに歩いたコウは若者にぶつかり、因縁をつけられぼこぼこにされてしまう。

 

 そこで彼は、ケリィ(ガンダム0083/人物)という男に助けられるのだった……

 

 

 一方、ジュドーは街で不思議な少女と出会う。

 彼女。エルピー・プル(ガンダムZZ/人物)はこの前の戦闘で黒いキュベレイに乗っていた少女なのだが、ジュドーもプルも、それがその時の相手とは気づかなかった。

 

 どこかで会ったことがあるとは感じても、まさかあの戦場に相手がいたとはつゆほどに思っていなかったのである。

 プルに気に入られたジュドーは、彼女に振り回されつつも、一緒に街をめぐってゆく。

 

 共に店をめぐりチョコレートパフェを食べたり(統夜達とバッティングしてメルアと仲良くもなった)、他にも買い物などをした。

 

 ちなみにだが、なぜこの街にプルがいるのかといえば、彼女の気まぐれである。

 彼女はシーマ・ガラハウがガーベラテトラの受け取りとジオンの生き残りに声をかけるため月に降り立った時、勝手についてきて勝手に街中を探索して回っていたのだ。

 

 その中で感じた、どこかで会ったことのある不思議な気配。それが、ジュドーだった。

 

 あと、ガーベラテトラを回収したところでシーマはプルが抜け出したことを知らされ、生き残りの勧誘どころではなくなり、プルを探して回る羽目になっている。

 

 

シーマ「なんであたしが迷子の小娘を探さなきゃいけないんだい!」

 

 

 探せるのが月にいる彼女の隊しかいないのだから仕方がない。

 そしてその子はスポンサーから回された大切な『備品』なのだから、無碍にあつかうわけにもいかなかった。

 相手がムゲだけに。なんつって。

 

 もっともその探し物は、シーマが勧誘にむかうはずだったケリィのところへジュドーと共にいるので、いくら探しても見つかるわけがないのだが。

 

 ジュドーはコウがボコられたところでケリィと出会い、彼の住処に運ぶのを手伝った。

 そして、同じジャンク屋として意気投合したのである。

 

 目を覚ましたコウはジュドーから事情を聞いていたケリィに「逃げるくらいならやめてしまえ」と言われる。

 

 その問いに、コウが反論できずにいると、奥からプルの声が響く。

 好奇心の強い彼女は奥に格納庫を見つけ、そこで修理されようとしている一機のモビルアーマーを発見したのだ。

 

 

プル「うわー、なにこれ!」

 

コウ「これは、モビルアーマー? こいつ、動くんじゃないか……!?」

 

ケリィ「近寄るな! こいつはガラクタだ。俺の道楽のな。おいっ! 近づくなと言ったろう!」

 

コウ「この基盤、熱損耗してます。交換しないと」

 

ジュドー「あとこっちもだな。パーツ探してこないと」

 

ケリィ「一体なんのつもりだ! 俺には人を雇う余裕なんてないぞ!」

 

 

 先ほどやめてしまえと言ったせいか、ここでジャンク屋をやらせてほしいと考えているのかと思ったのだ。

 

 

コウ「いえ。少しだけここにおいてもらえませんか? 少し、考える時間をください」

 

ジュドー「なら、俺も手伝うよ。動かないままこいつをほっておくのも忍びないしね」

 

ケリィ「……どいつもこいつも。勝手にしろ!」

 

プル「わーい。ジュドー。わたしはなにすればいいの?」

 

ジュドー「そうだな。とりあえず、そこの工具を持ってきてくれるか?」

 

プル「はーい」

 

 

 こうしてコウとジュドーは、見つけたヴァルヴァロの修理を勝手に手伝うことにするのだった。

 もちろんプルも手伝うが、彼女の場合はただいじっているだけなので役には立たない。が、楽しそうなのでよしとしよう。

 

 ちなみにだが、コウが艦から降りて頭を冷やしているというのはジュドーからこっそりアーガマに伝えられた。

 出港までには答えを出して戻るからとのお願いは、ブライトとムウのため息とともに認められることになる。

 

 

プル「ねえ、これ直したらどうするの?」

 

ケリィ「どうもしないさ。今のところはな」

 

プル「えー。ならなんで直すの?」

 

ケリィ「こいつは、俺と同じなのさ。俺はまだ終わっちゃいない。そう言っている。だから、直すんだよ」

 

プル「よくわかんない」

 

ケリィ「わからなくてもいい」

 

コウ「わかります。俺も、同じ気持ちです。だから、こいつを直してやりたい。もう一度、飛び立たせてやりたい……!」

 

コウ(そうだ。それは、俺も同じなんだ。試作一号機。お前ももう一度、ニナがきっと直してくれる! 一緒に立ち上がろう!)

 

ジュドー「パーツ持ってきたぞー。って、なにしてんのさ?」

 

プル「わかんなーい」

 

 

 こうしてコウは、答えを得た。

 ヴァルヴァロの修理を終えたコウ達は、宣言通り出港の当日、アーガマへと戻る。

 

 プルの方はいつの間にかいなくなり、ケリィに別れを告げて。

 

 ジュドー達が去った後、シーマがケリィに接触した。勝手に出て行ったプルが、飽きたと言って勝手に帰ってきてやっと本来の仕事に戻れたからだ。

 なんとケリィは、ジオンの残党だったのだ!

 

 ジュドー達の素性を知らないケリィは、修理したヴァルヴァロと共に作戦に参加しようとする。

 だが、機体はともかく、隻腕のケリィは必要ないと言われてしまった。

 

 ヴァルヴァロと共に戦うことを望むケリィは、ヴァルヴァロを発進させ、みずからの価値を示すため、アーガマに決闘を挑むのだった。

 

 

ケリィ「ガンダムを出せ。出さねば街を攻撃する!」

 

 

 その声と、現れたヴァルヴァロの姿に驚いたのはコウとジュドーだった。

 

 ジオン系のモビルアーマー。

 こうなる可能性は十分あり得ると気づいていた。だが、あえて想像から外し、考えないようにしていた。

 

 それでも事実は変わらない。

 ケリィ・レズナーはジオンの残党であり、試作二号機を強奪したガトーの仲間であるという事実は!

 

 戦いたくはない。だが、戦わなければならない!

 

 

 宇宙用に換装し、フルバーニアンとなった試作一号機に乗ったコウと、Zガンダムに乗ったジュドーが出撃する。

 

 現れたガンダムに乗っているのがコウとジュドーと知り、ケリィも驚きを隠せない。

 だが、戦うと決めた彼は、必要の時だと感じたヴァルヴァロは、引くことはなかった。

 

 さらにガーベラテトラに乗りかえたシーマと、プルの乗ったキュベレイマークⅡ。おまけのモビルスーツも姿を現し、月の上は戦場と化す。

 

 戦いの最中、ジュドーはキュベレイに乗るのがプルだと気づいた。

 組みつき、接触会話をはじめると、むこうからも驚きの声が返る。

 

 

ジュドー「プル、そんなところに来ちゃいけない。こっちに来るんだ!」

 

 

 ジュドーの説得に、プルの心が揺れる。

 もう一押しでいけると感じたが、もう一歩のところでプルは無理矢理撤退させられてしまった。

 

 

 戦士としての自分を取り戻したコウとケリィ。

 その二体の戦いは熾烈を極める。

 

 そんな中、シーマ艦隊は他のアーガマ搭乗ロボットに押されはじめる。

 

 ガーベラテトラは受け取ったばかり。状況が劣勢と見るや、シーマは即座に撤退を選択した。

 同時に生き残ったヴァルヴァロにもついてこいと指示を出す。

 

 元々シーマはケリィを拒絶するつもりはなかった。いらないというのは、部下が勝手に言ったことなのだから。

 

 目的を終えたシーマ艦隊は、月から撤退してゆく。

 

 

コウ「ケリィさん……」

 

ジュドー「プル……」

 

 

 新たな力を手に、アーガマの試作二号機追跡は再開される。

 

 

──蒼く輝く炎で──

 

 

 アーガマは今、コンペイトウと名を改めた、旧名ソロモンにむけて進んでいた。

 

 もうじきここで、ある式典が行われる。

 ガンダム試作二号機に搭載された核弾頭が使われるとすれば、ここ以外にないと判断されたからだ。

 

 その式典とは、地球、プラント、さらに和平をとりつけた他の星々との和平が成立したことを記念とする、平和式典のことだ。

 ボアザン(超電磁マシーン ボルテスV/用語)。キャンベル(超電磁ロボ コン・バトラーV/用語)。さらに星はすでにないが、バーム(闘将ダイモス/用語)、フューリー(オリジナル)。そして、グラドス(蒼き流星SPTレイズナー/用語/今回は名前だけ)

 

 それらが手を取り合い、共に歩むことを祝う場。

 

 そんな場所に核が撃ちこまれたとなれば、せっかく積み上げた和平は崩れ、再び太陽系を大混乱に陥れる争いとなるだろう。

 

 それだけは絶対にさけなければならない。

 

 ついでに言うと、ナデシコC(機動戦艦ナデシコ The prince of darkness)やオーブ代表のカガリ(ガンダムSEED DESTINY/人物)もその式典に参加しているので、撃ちこまれたらホントに大惨事である。

 

 ゆえに、その式典を守る護衛の数は、途方もない数であった。

 さらに核が盗まれたことにより、さらなる護衛の強化もされていた。もっともこれは、核が盗まれたというのは秘密で、重要な式典をさらに安全にするためというのが表の理由であるが。

 

 

 式典を守るため、アーガマはガトーを追う。

 

 そして、ついにジオン残党、デラーズフリートに追いつくことに成功する。

 

 

ガトー「なぜこんなに正確に、この位置がわかった」

 

 

 追いつかれたガトーが驚きの声を漏らす。

 アーガマは指示を受けて移動しただけだが、実はその裏にある女の裏切りがあることを、ガトーもアーガマ隊も知らない。

 

 ガトーを行かせるため、アーガマ隊を邪魔するよう、再びケリィとプルを擁する部隊がアーガマ隊の前に立ちふさがる。

 この部隊を突破し、式典会場へ迫るガトーをとめなければならない!

 

 

ジュドー「プル!」

 

 

 邪魔しないでくれと説得しようとするジュドーだったが、プルから返ってきた反応は予想外のものだった。

 

 

プル「ジュドー・アーシタ。お前は、敵だ!」

 

 

 なんとプルは精神操作され、ジュドー達を敵だと思いこまされてしまっていた。

 あの天真爛漫でわがままだった少女は見る影もなく、暴力的な機動でジュドーへ襲い掛かる。

 

 その変わり果てた姿に、ジュドーだけでなくコウも憤る。

 

 

コウ「ケリィさん。これが、こんなことが、あなたが本当にやりたかったことなのか!」

 

ケリィ「っ!」

 

コウ「あんな年端も行かない少女の心をもてあそんで。平和を願う人達を巻き添えにして。こんなことが、あなたのやりたかったことなのか!!」

 

 

 さすがのケリィも、これには動揺が隠せなかった。

 それでも彼は、友のため、戦いをやめることはできない。

 

 しかし、その動揺はケリィに迷いを生み、隙を作った。

 コウはヴァルヴァロの動力部にビームサーベルを突き立て、巨大なモビルアーマーを航行不能にする。

 

 修理を手伝ったのだ。どこが弱点なのか。それを知っているゆえできた芸当だった。

 

 

ケリィ「ヴァルヴァロ。動け! なぜ動かない!」

 

コウ「もう、休ませてあげましょう。こいつも、最後に空を飛べて、満足だったはずです」

 

ケリィ「……」

 

ジュドー「帰って、あの人と静かに暮らしなよ。俺は、戦うことだけが人生じゃないと思うから」

 

 

 一方のプル。

 諦めず、何度も声をかけると、前の反応が頭痛と共に返ってきた。

 

 

ジュドー「プル、忘れたのか? 俺だよ。ジュドーだ。一緒にチョコパフェ食べただろ?」

 

プル「チョコパフェ、食べたい!」

 

ジュドー「っ! そうだ。あの甘くてトロっとした味、思い出すんだ!」

 

プル「ぐっ……なに、を、ふざけたことを……!」

 

 

 走る頭痛に頭を手で押さえ、プルがうめく。

 

 

プル「ふざけ……ううっ、あっ、あの、舌触り。全身に流れる甘さ……うぅ!」

 

ジュドー「そうだ。器いっぱいのアイスクリームとまわりを囲む生クリーム。そこにかかったチョコレートソースを思い出せ!」

 

プル「うぅ。食べたい……違う。お前は、敵……」

 

メルア「敵じゃありません! 一緒にチョコパフェを食べました! 思い出して! あの時のことを! 味だけじゃなく、楽しかったことを!」(グランティードのサブ、もしくはバシレウスに乗っている場合発言)

 

プル「チョコパフェ……美味しい。楽しい……!」

 

ジュドー「そうだ。思い出せ! プル!」

 

プル「ジュドー。お前は……わたしは……っ! 頭がっ!」

 

ジュドー「プル!」

 

プル「やめろ。私の中に、頭の中に入ってくるな!」

 

ジュドー「思い出せプル! 本当のお前をー!」

 

プル「ああっ。あああああー!」

 

 

 プルが頭を抱え、天を仰ぎ見る。

 彼女の頭の中で、光が瞬いた。

 

 

プル「ジュドー……?」

 

ジュドー「俺がわかるのか!?」

 

プル「ふふっ。もちろんだよ。へんな、ジュドー……」

 

 

 というが、彼女はそのまま気絶してしまった。

 そのまま彼女は、機体と共にアーガマへと回収される。

 

 ケリィを無力化し、プルを退けても事態は変わらない。

 むしろプルとケリィは足止めという役割を十分に果たしていた。

 

 ガトーはひたすらに、目的地を目指す。

 

 

ガトー「いける!」

 

 

 と思ったのもつかの間。

 

 むかう式典側の方から統夜達へ援軍が現れる。

 式典の警備をするため集められたエースが現れたのだ!

 

 

豹馬「ここから先は行かせないぜ!」

 

 

 待ち構えていたのは、旗艦をナデシコCとする、コン・バトラーV、ボルテスV、ダイモス、さらにシンとルナマリア(ガンダムSEED DESTINY/人物)、あとカガリ(ガンダムSEED DESTINY/人物)の護衛としてやってきていたアスラン(ガンダムSEED DESTINY/人物)の混成部隊だった。

 

 

ガイ「ここから先は、通さん! くぅ。一度言ってみたかった……っ!」

 

リョーコ「まぁたバカなことを……」

 

健一「お前達が来るのはわかっていた。おとなしく抵抗はやめ、投降するんだ!」

 

ガトー(こっちも我々が来るのを正確に把握している。やはり、情報が漏れていた!)

 

ガトー「だが、ここで散るわけにはいかん!」

 

 

 最初は突破しようと考えたガトーであったが、スーパーロボットをふくめた幾人ものエースパイロットに囲まれ、さらに後続からアーガマ部隊に迫られては、厳しいものがあった。

 

 奇跡的にこの包囲網をかいくぐることに成功できれば、「ソロモンよ、私は帰ってきた!」展開もあり得るだろうが、それが本当に起きるとゲームオーバーでやり直しとなるので、実現はできない。

 

 作戦の失敗を確信したガトーは、部隊に撤退を命ずる。

 ガトーの方も、試作二号機を失うこととなるが、なんとか生存。撤退に成功する。

 

 試作二号機を取り返すことはできなかったが、平和式典に核が撃ちこまれるという最悪の事態を避けることはできた。

 

 あとは、無事式典がはじまれば……

 

 

トーレス「た、大変です!」

 

ブライト「どうした!?」

 

トレース「ネオジオンと名乗る軍勢が、地球、およびプラントコロニーに攻撃を開始したようです!」

 

ブライト「なんだと!?」

 

トレース「アクシズからの勢力のようですが、規模があり得ないほど大きいようです。間違いなく、アール博士の言っていたムゲ帝国と組んでます!」

 

ムウ「まさか、今回のこれ、ここに地球とプラントの戦力を集めさせるための囮だったんじゃないか?」

 

 

 情勢を聞き、ムウが声を上げた。

 

 この推測は当たりである。

 ジオン残党の真の目的は、式典の核攻撃ではなく、地上への降下を邪魔されないため、軍の目をここにひきつけるためのものだった。

 

 情報が洩れていても、問題はなかったのである。

 

 

ムウ「リークされた情報も、戦力をこちらにむけさせるためわざと流されたのかもしれないな……」

 

 

 彼等は知らないが、あとで情報を流した女もその事実に気づき、「やってくれたね」と悔しがり、そのまま姿を消すことになる。

 

 

 こうしてこの式典に戦力と意識がむいている間に、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍は地上への降下作戦を開始。

 前のジオンの時とは違い、物量もあるネオジオン・ムゲ帝国同盟軍により、不意をつかれた連合は大した抵抗もできず、地上は一気に占拠されるかに思われた。

 

 

サエグサ「た、大変です!」

 

ブライト「まだなにかあるのか!?」

 

サエグサ「地球にネオジオンとは別の、正体不明の勢力が現れました!」

 

ブライト「なんだそれは!?」

 

サエグサ「わかりません。今までにない機体群です。ただ、味方ではないようです。我々の方とも、地球に降りたネオジオンとも敵対しているようです。戦っています!」

 

ブライト「地球は一体どうなっているんだ!」

 

サエグサ「わかりませんよ!」

 

 

 わけのわからない情報に、アーガマ内でも混乱が広がる。

 

 

ムウ「こりゃ一度、地球に戻らないとどうしようもないな」

 

 

 唯一わかるのは、こうなっては式典を行っている場合ではない。ということだった。

 地球もプラントも、再びなにものかからの侵略を受けているのだから。

 

 式典は延期され、各星の要人は安全な場所へと避難することになった。

 

 

 地上に降下したネオジオン・ムゲ帝国軍と突如として現れた謎の軍勢。そして連合軍の戦い。

 

 戦いは混乱を極め、ネオジオンが完全に支配下に置けたのは最初からジオンの勢力が強いアフリカ大陸のみだった。

 他は三つの勢力がひしめき合い、混沌と化し、混乱を続けている。

 

 

 連合軍にとって、この謎の勢力の出現は幸運だったのか不幸だったのか。それはまだわからない。

 ただ、一つ言えるのは、こうして混乱した状況を打破できるのは、軍の常識にとらわれず、独自の裁量をもって地球を守る部隊しかないということである。

 

 そう。再びあの分艦隊が再編される運びとなったのだ!

 

 

 第5話 宇宙ルート 終わり



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第05話 地上でべラリオスを探すルート

 

──べラリオスを探せ!──

 

 

 地上に残った統夜達は、アール博士が地球にやってきた時使い、基地の近くに埋まっていた宇宙船、アダスルでビルドベースへ帰ってきた。

 

 無事戻ってきた統夜達を、剣鉄也と珠城美和司令が出迎える。

 

 

鉄也「どうやら少しは強くなったようだな」

 

剣児「当然だろ」

 

 

 戻ってきた剣児の顔つきを見て、鉄也はどこか満足そうにうなずいた。

 

 

剣児「そっちはどうだったんだ、先輩」

 

鉄也「様子見程度のハニワ幻神が現れたくらいだ。むこうもなにか準備を進めているのだろう」

 

剣人「邪魔大王国か。教科書に載ってるようなヤツが甦ってくるなんてな」

 

美和司令「ようこそ、ビルドベースへ。あなた達のことは聞いています」

 

アール博士「ならば、話が早いですな。我々は、五十年前に落下したべラリオスを探したいのです。地球では隕石の落下として観測されていると思いますが、なにか心当たりはありませんかのう?」

 

美和司令「五十年前のあれですね」

 

アール博士「知っておるのか!?」

 

司馬博士「うむ。ちょうど邪魔大王国と戦っている最中、この九州に一つの隕石が落下したという報告があった」

 

アール博士「なんと!」

 

司馬博士「報告はあったが、あの時ここは戦いの最前線。ろくな調査もできず、そのまま放置され忘れ去られたようじゃ。ワシらもふくめて、な」

 

アール博士「それなら見つかっていないのも納得がゆく。さあ、剣人くん。さっそくそこへ行こうぞ!」

 

剣人「今からかよ。少しくらい休ませろって」

 

アール博士「相手は待ってくれんのじゃ。一刻を争う。さあ、行くぞ!」

 

剣児「なら、俺も行くぜ!」

 

美和司令「いえ。邪魔大王国のこともあります。ビルドベース防衛の要であるジーグと何名かはこちらに残ってもらいます。メンテナンスもしたいですしね」

 

剣児「そんなー」

 

 

 戻ってきたのは統夜達グランティード、バシレウス。甲児達マジンカイザー組(甲児+ボス組とさやか)、ミスリル組の宗介、クルツ、マオ。GGGの凱、氷竜、炎竜、ボルフォッグ。

 そして、新たに加わったアトラウスのパイロット剣人、ガンパーの弾児。彼等と共にジャンク屋で暮らしていた白鳥早苗とリィナをふくむ子供達(畑田之介、軽井まなぶ、おちゃめ)である。

 

 勇者チームとミスリル組は、剣児達ジーグチーム(剣児、つばき、鏡)と同じく今回の一件を上に報告するためビルドベースに残ることとなった。

 

 なので、べラリオスの探索はアトラウスの剣人。ガンパーの弾児。統夜&ヒロインズ、マジンカイザーとボスボロット、さやかのビーナスかアフロダイ(乗り換えした場合)で行くことに。

 

 ちなみにアール博士はボロットに乗せてもらっての出発である。

 

 

 落下現場。

 

 

弾児「剣人、崖の下にでかい穴がある。見えるか」

 

剣人「おう。あれがそうか。反応はっと……」

 

アール博士「この反応! 間違いない。そこがべラリオスが落ちた場所じゃ」

 

甲児「おお。やったな!」

 

剣人「なら、さっそく探……」

 

統夜「っ! いや、待て。来る!」

 

???「ふふふふふ」

 

 

 そこに現れたのは、大火焔偶に乗る、邪魔大王国三幹部の一人、阿魔疎(あまそ)だった。

 

 

剣人「お前は!?」

 

阿魔疎「俺は阿魔疎。さっそくビルドベースから戦力をわけるとは愚かなことよ。お前達の命もここまでだ!」

 

 

 大火焔偶からハニワ幻神が吐き出される。

 

 同時にビルドベースから通信が入った。

 あちらも同じように襲撃を受けていると。

 

 先に片付けた方が救援にむかう。

 そういうことになった。

 

 

アール博士「ムゲ帝国以外にも、このような輩が地球にもおるのか。これはなんとしてもべラリオスを目覚めさせねばいかんな」

 

剣人「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ。くるぜ!」

 

アール博士「おお。頼んだ」

 

 

 べラリオス探索はひとまず置いておき、現れたハニワ幻神の相手をする。

 

 現れたハニワ幻神をばったばったとなぎ倒した。

 

 

阿磨疎「ふはは。まだまだいくぞ!」

 

剣人「次から次へと、きりがねえ!」

 

 

 倒しても倒しても阿魔疎の大火焔偶からハニワ幻神が湧いて出る。

 

 

統夜「……おかしい」

 

 

 最初に気づいたのは、統夜だった。

 

 

剣人「なにがだよ統夜さん」(剣人は16歳。今度高校卒業予定の統夜より年下なのでさんづけ)

 

統夜「ハニワ幻神に意思を感じないのは前からだけど、今、周りからもなにも感じない」

 

剣人「ま、まわり?」

 

弾児「どういうことだよ?」

 

統夜「こいつのコントロールシステムは特殊で、俺の意のままに動いて、周囲の状況を教えてくれるんだ」

 

 

 サイトロン。

 

 それは時間も空間も超越し、言葉なく声を響かせ、意思を感じ、互いを通じ合わせるもの。

 知らぬものを知らせ、知るものとして頭に入ってくる。

 

 これを用いることで、自分のやりたいことを機械にさえ寸分たがわす伝えることができるのだ。

 

 同時にそれは、周囲のことも使用者に知らせてくれる。

 時に、未来の情報さえ。

 

 

統夜「そのおかげで、相手がなんなのか。どんなものなのか。そういうのがぼんやりとわかる」

 

弾児「ニュータイプみたいなもんか?」

 

統夜「似ているかもしれないけど、あっちは機械の補助なしに発現する天然ものなので少し違うかな。それはともかく。今、この場でそれを全く感じないんだ。目の前にはいる。でも、ハニワ幻神も、みんなも、ここにいるとは感じられない……」

 

甲児「どういうことだよ?」

 

統夜「ここには誰もいない。なのにいると錯覚している。つまり俺達は今、現実じゃなく夢か幻を見せられているのかもしれない」

 

剣人「なんだって!?」

 

統夜「邪魔大王国のトップ妃魅禍(ひみか)はそういう術も使うって資料にあった。可能性はあると思うんだ」

 

剣人「幻か」

 

弾児「幻ならいくら倒しても減らないわけだな」

 

甲児「でも幻だとして、どうすんだよ。きりがねえぞこれ」

 

ボス「そうだ。幻なら、自分をぶん殴れば目が覚めるんじゃ!?」

 

統夜「いや、相手は俺達を倒そうとしている。意図してでも、自分から倒されるのは危険だ」

 

ボス「でも、やってみないとわからんだわさ!」

 

アール博士「こ、こら、今ワシも乗……」

 

 

 ボス伝統の自爆!

 敵をまきこんで。

 

 ちゅどーん!

 

 

甲児「ボスー!」

 

 

 直後、ボスの自爆に巻きこまれ倒れたハニワ幻神が同じように補充された。

 さらにハニワ幻神と同じようにボスの乗るボロットも現れ、統夜達に襲い掛かる!

 

 

統夜「ボスー!」

 

甲児「ボスがとりこまれたー!」

 

 

 皮肉にも、これでこの場が統夜の言った通りの場所だと証明されてしまった。

 ここは夢か幻であり、倒されると敵の仲間にされてしまう。

 

 

剣人「だからって、どうすんだよこれ!」

 

統夜「そこまでは、俺にも……」

 

 

 流石の統夜も、魔法みたいな術は専門外だった。

 サイトロンが発現しないここでは、その術がどのようなものかも調べられない。

 

 

剣人「くそっ! どうにか、どうにかしねーと!」

 

 

 剣人が強く念じたその時だった……

 

 

???「ガオオォォォ!!」

 

 

 幻の中に、咆哮が響いた。

 

 

────

 

 

阿魔疎「ふふふ」

 

 

 一転現実。

 

 そこでは邪魔大王国幹部阿魔疎が経緯を見守り笑っていた。

 別に幻にとらわれているとわかったところで痛くもない。術を破るには、術を操るこちらをどうにかしなければならないのだから。

 

 

阿磨疎「いいぞいいぞ。このまま妃魅禍様の術に飲まれて魂をとられちまえ。これが成功すれば、俺も褒めてもらえるに違いない!」

 

 

 これは、ジーグ以外に手ごわい敵が現れた故練られた策。

 術により相手の心を殺し、手下としてビルドベースを内部から崩すだけでなく、今後戦うであろう他の勢力を相手にする時の戦力にしようとしたのだ!

 

 そのための準備であり、敵がまた集まるのを待っていたのである!

 

 

阿魔疎「順調順調」

 

 

 そうほくそえんでいたその時だった。

 

 

???「ガオオォォォ!!」

 

 

 そこに、咆哮が響く。

 

 直後、阿魔疎の乗る大火焔偶に衝撃が走る。

 巨大な爆発が起き、ぐらりと揺れた。

 

 

阿磨疎「ぐおぉ! なにが起きた!? このダメージ。これでは、妃魅禍様の術が!」

 

 

 この大火焔偶は妃魅禍の術の中継局として使われていた。

 それが破壊されたとなれば……

 

 

剣人「はっ!」

 

ボス「だわさっ!?」

 

統夜「ボス、大丈夫か!?」

 

ボス「な、なんとか」

 

甲児「あんまり無茶するなよ。心配したぞ」

 

ボス「すまん……」

 

剣人「現実に戻ってきたのか?」

 

弾児「みたいだな」

 

阿魔疎「おのれ!」

 

剣人「誰かがあいつをぶっとばして術を解いてくれたのか」

 

弾児「いったい誰がだ?」

 

アール博士「ひょっとすると!」

 

 

 そう。ここには彼等が探しに来た彼が眠っているはずなのだ。

 ならば……!

 

 

???「グオオォォォ!!」

 

 

 咆哮が響く。

 

 

アール博士「やはり!」

 

 

 アール博士が喜びの表情を見せる。

 そこにいたのは、巨大な虎のような姿をした機械の獣だった!

 

 

弾児「でかくて白い……虎?」

 

剣人「あれがべラリオス? アーガマで見せてもらったのと、形が……」

 

アール博士「いや、誰じゃこれー!?」

 

全員「違うのー!?」

 

 

 みんな驚いた。

 

 確かに博士はべラリオスは地球のライオンを元にしたメカライオンだと言っていた。

 ならば、その姿はライオンに似てなければおかしい。

 

 白い虎ではおかしい!

 

 

???「ガオオォォォ!!」

 

 

 さらに別の方向から咆哮が響く。

 穴の上にあった崖の上。

 

 そこに、もう一体別のメカライオンがいた。

 

 それこそが、阿魔疎の乗る火焔偶を攻撃し、剣人達を幻から救い出した存在。

 

 

アール博士「おお。あれじゃ。あれこそが、べラリオス!」

 

弾児「確かに、ライオンの形してるな」

 

剣人「アーガマで見せてもらったヤツだ」

 

べラリオス「ガオオォォォ!!」

 

 

 もう一度、べラリオスは天にむかって咆哮を放つ。

 すると、空に光の十字が瞬いた。

 

 

アール博士「あ、あれは!」

 

 

 アール博士は知っている。

 天に輝くのは、エリオスの紋章。

 

 エリオス王家の証である!

 その真下にいるのは、剣人の乗るアトラウス。

 

 なぜべラリオスが彼等を救ったのか、アール博士は理解した。

 

 これこそが、その理由に他ならないからだ!

 

 

アール博士「べラリオスの目覚め。あの紋章。剣人くんが、間違いない……!」

 

剣人「どうしたんだじいさん」

 

アール博士「剣人さま。合体を。今こそ合体を!」

 

剣人「け、剣人さまだって!? じいさん頭は確かか?」

 

アール博士「正気です! そんなことより早く合体を! キーワードは『クロス・イン』。そのようにお叫びくだされ!」

 

剣人「ど、どうしちまったんだ、こりゃ」

 

アール「剣人さま、早く!」

 

剣人「わかったよ。弾児、いくぞ」

 

弾児「おう!」

 

剣人「クロォォォス・イィィィィン!!」

 

 

 剣人の叫びと共に、アトラウス、べラリオス、ガンパーの三機が合体する!

 

 

剣人「ダルタァァァァニアスッ!!」

 

カティア「胸にライオン。ガオガイガーみたいね」(カティアサブパイロット時)

シャナ=ミア「胸にライオン。まるでガオガイガーのようですね」(シャナ=ミアサブパイロット時)

テニア「胸にライオン。ガオガイガーみたい」(テニアサブパイロット時)

メルア「胸にライオン。ガオガイガーみたいですね」(メルアサブパイロット時)

クド=ラ「胸にライオン。あのガオガイガーみたい(クド=ラサブパイロット時)

 

阿魔疎「が、合体しただと!? 聞いてないぞ!」

 

剣人「さあ、これでいける!」

 

甲児「現実に帰ってくればこっちのもんだ。覚悟しろ!」

 

阿魔疎「おのれー!」

 

ボス「ところで、あの虎はなんなんだわさ? あれもハニワ幻神なのか?」

 

統夜「いや、違うと思う。あれにはハニワ幻神と違って意思がある。ギャレオンみたいな、意思が。サイトロンがそう教えてくれた」

 

甲児「なら、べラリオスの友達か? まあ、一緒に戦ってくれてるみたいだから、今はいいだろ」

 

 

 統夜達の反撃がはじまる。

 

 数は劣っていても、エリオスの最終兵器が目覚めたのだ。

 術を破られた阿魔疎では勝ち目がなかった。

 

 阿魔疎は負け惜しみを言いながら撤退していった。

 

 

剣児「みんな、大丈夫か!?」

 

 

 阿魔疎撤退後、ビルドベースに残っていた剣児達も駆けつけた。

 

 

剣人「ああ。こっちは片付いたぜ」

 

甲児「そっちも無事だったか」

 

剣児「怪しい術で幻を見せられたけどな」

 

剣人「あっちも同じか」

 

 

 ビルドベースの方も、同じような術がかけられ、剣児は夢の中に閉じこめられたそうだ(鋼鉄神ジーグ原作第5話)

 なんとか夢を抜け出し、ハニワ幻神を撃退してこちらにやってきたというわけである。

 

 

???「ぐるるるる」

 

鏡「あれは……」

 

剣児「なんだ?」

 

剣人「ああ、そいつは……」

 

 

 援軍に現れたジーグに、共に戦った謎の白い虎が近づく。

 さすがに毎回謎の虎と言うのもなんなので、名を先に明かしておこう。この虎の名は、破瑠覇(バルバ/鋼鉄神ジーグ/登場キャラ)である。

 

 

破瑠覇「グオオォォォ!!」

 

剣児「っ!?」

 

 

 有無を言わさず、破瑠覇はジーグに襲い掛かった。

 あまりのことに不意をつかれ、ジーグはその一撃に倒れる。

 

 

剣児「ぐっ……く……」

 

鉄也「草薙!」

 

つばき「剣児ー!」

 

 

 皆が一斉に、破瑠覇へかまえた。

 だが、破瑠覇は他の者に一切興味を示さず、そのまま背をむけて去って行ってしまった。

 

 

剣人「な、なんだったんだあいつ。結局敵なのか? どうする?」

 

統夜「いや。ジーグを攻撃した時、敵意は感じられなかった」

 

 

 だからこそ、この場にいた誰もが反応できなかったのだ。

 先ほどの態度はむしろ、失望。

 

 あの不意打ちにも対処できず倒れるなんてと、がっかりしているようにも感じられた。

 

 

鏡「やはりか……」

 

鉄也「なにか知っているのか、美角(鏡の苗字)」

 

鏡「剣児が目を覚ましたところで話そう。今は、ビルドベースに戻った方がいい」

 

 

 なにかを知る鏡により、気絶した剣児をつれ、一同は一度ビルドベースへ戻るのだった……

 

 

──破瑠覇を従えろジーグ!──

 

 

美和司令「どうやら無事、べラリオスを見つけることができたようですね」

 

剣人「べラリオスが見つかったのはいいんだけどよ……」

 

アール博士「ささ、剣人さま。今までの非礼、お許しくだされ」

 

剣人「だから、なんなんだよ!」

 

アール博士「何度も言っているでしょう。あの時現れた十字の紋章。べラリオスを目覚めさせた事実。あなたさまこそ、私が探し求めていたもう一つのもの。亡きパルミオン皇帝陛下の血を引くお方。エリオス王家の王子だと!」

 

剣人「冗談じゃねえ。俺は楯剣人だし、おやじは船乗りだ。今行方不明だけどよ。それだけだ。みんな、とっとと飯でも食いに行こうぜ」

 

アール博士「ああっ。お待ちくだされ。剣人さま。剣人さまぁ!」

 

司馬博士「まあ、いきなり衝撃の事実を告げられてはのみこむこともできんじゃろうて」

 

アール博士「そうですな。ゆっくりと納得していただくしかあるまい」

 

さやか「剣人君が王子ということは、行方不明のお父さんが博士の言うハーリン皇子なのかしら?」

 

アール博士「そういうことになるのう」

 

おちゃめ「じゃあじゃあ、ひょっとして剣人おにーちゃんにも羽生えるの!?」

 

田之介「いや、つのが出るかも。かっけー!」

 

おちゃめ「羽のがかっこいいでちゅ」

 

田之介「つのだよ!」

 

甲児「いや、どっちも生えない……生えないよな?」

 

統夜「いや、俺に聞かれても」

 

アール博士「我等エリオス人は地球人と全く変わらぬゆえ、生えたりはせんよ」

 

おちゃめ「なんだー」

 

田之介「ちえー」

 

アール博士「……」

 

シャナ=ミア「どうしました?」

 

アール博士「いや、地球は不思議な星だと思ってな。ここは、ボアザン星(超電磁マシーン ボルテスV/用語)とバーム星(闘将ダイモス/用語)とも和平を結べたという。かつてあの二つの星は、何千年もの間いがみあう星であった」

 

シャナ=ミア「……」

 

アール博士「だというのに、この星を通じてその二つは手をとりあい、子供達には彼等を偏見で見る目もない。これは、とんでもないことだ」

 

シャナ=ミア「そうですね。この星は、本当に素晴らしい星だと思います」

 

 

 もちろん。地球も最初はそうではなかった。

 地球至上主義のブルーコスモスが台頭したり、他星といがみ合ったりもした。

 

 だが、それらをすべて乗り越え、力をあわせて戦ってきたからこそ、そうして手を取り合う今があるのだ。

 

 

アール博士「それゆえ、絶対にエリオス星と同じ目にあわせてはならん……!」

 

 

 アール博士は、心の奥でそう誓うのだった。

 

 

 剣児が目を覚ましたことが知らされ、皆がもう一度集まる。

 

 

剣児「それで鏡。あいつは一体なんなんだ? なにか知ってるみたいなこと言ってたって聞いたぜ」

 

鏡「あれの名は破瑠覇。銅鐸を守護する者と考えればいい。主として認められるなら、共に戦ってくれるだろう」

 

 

 銅鐸とは、ジーグのエネルギー源のことである。

 そして妃魅禍達は、この銅鐸を狙いビルドベースを襲っていると言ってもよい代物だ。

 

 

剣児「つまり、あの時の俺は全く認められなかったってことか」

 

鏡「そういうことだ。次に現れた時、素手のジーグで力を示せ」

 

剣児「わかったぜ。次は、ぶっとばしてやる!」

 

甲児「問題は、いつ来るかってことだな。他の奴等と戦っている時に来られたら迷惑ってもんじゃないぜ」

 

剣人「確かにな」

 

べラリオス「ガオオォォォ」

 

 

 そうしていると、外からべラリオスの咆哮が聞こえてきた。

 まるで外に出てほしいと願うような声。

 

 それに従い、統夜達は外に出る。

 

 

剣人「いったいどうしたんだ?」

 

統夜「……べラリオスが来いと言っている気がする。ひょっとすると、案内してくれるんじゃないか?」

 

弾児「そういえば、あの二体は一緒に出てきたな。地球に落ちてきてから、なにかあったんじゃないか?」

 

剣人「べラリオス、破瑠覇ってヤツのところへ案内してくれるのか?」

 

べラリオス「ガウ!」

 

剣人「どうやらそうみたいだ」

 

剣児「なら話は早い。行こうぜ!」

 

美和司令「待ちなさい」

 

剣児「とめてくれるなばあちゃん!」

 

美和司令「あなたが行くことをとめはしません。ただ、行く人数を考えなさいというのです」

 

剣児「……どういうことだ?」

 

美和司令「あなたが動けば邪魔大王国も動くでしょう。破瑠覇との戦いに集中できるよう、それを抑える役が必要です」

 

剣児「ああ、そういう」

 

美和司令「邪魔大王国が動いたらすぐそれを抑えに行くもの。さらにビルドベースを守るため残るものに別ける必要があります」

 

 

 まず、べラリオスと共に破瑠覇のもとへむかうのはジーグチームとダルタニアスチームとなった。

 これは、ジーグ側で万が一があった時のためである。

 

 そしてひとまずともにむかい、邪魔大王国が現れた際剣児達を進ませるため残るのはグレートマジンガーを除いたマジンガーチームと統夜達とミスリルのウルズチーム。

 

 最後にビルドベースに残り、こちらも攻めてきた時のため防衛するのがグレートマジンガーをふくむ勇者ロボチームとなった。

 防衛のためビルドベースに残るチームは、様子を見て抑える側へ援軍としてゆくという流れである。

 

 

 この予測は当たった。

 べラリオスに導かれ破瑠覇のもとへ行こうとすると、邪魔大王国の軍勢が追ってきたのである。

 

 ジーグ潰すべしと邪魔大王国の三幹部すべてが現れ、それを先行した統夜の部隊とビルドベースから出た勇者ロボチームで挟む。

 一大攻勢の様相を呈してきた中、剣児は破瑠覇との戦いへとむかう。

 

 

 べラリオスが案内したのは、彼が落下したところからほど近い、巨大な洞窟だった。

 

 そこでは、まるで待ちわびたかのように破瑠覇が控えていた。

 

 

破瑠覇「グルルルル」

 

剣児「待たせたな。今度はこっちからいかせてもらうぜ!」

 

破瑠覇「グオオォォォ!!」

 

 

 見届け人はダルタニアスチーム。

 

 あとは、剣児が破瑠覇を従えられるかである!

 

 

 破瑠覇は強い。

 しかし、つばきの祈りと、それに応え、彼女を守ろうとする剣児の強い意志が、その強さの上をいった。

 

 幾度もの殴り合いの末、ついに破瑠覇は剣児のことを認める。

 

 

剣児「待たせたなみんな!」

 

 

 新たな力を得たジーグは三幹部がそろう戦いの中舞い戻る。

 

 そして破瑠覇と合体し強大な一撃を放つ『バルバジーグ』を用いて、そこに集ったハニワ幻神達を一掃するのであった!

 

 

壱鬼馬「おのれえぇぇ! 覚えておれー!!」

 

 

 こうしてべラリオスを見つけ、破瑠覇を従えた統夜達。

 

 邪魔大王国の一大攻勢を退け、地上はひと時の休息の時間が訪れた……

 

 ほんの、短い時間の間だが。

 

 

──浮上──

 

 

 べラリオスを見つけ、破瑠覇を仲間にしてしばらく。

 この二体の巨大な獣は仲が良いらしく、その時の拠点となっているビルドベース、アダルス付近で一緒にいるのがよく見受けられた。

 

 邪魔大王国の攻勢がひと段落ついたところで、統夜達は一度GGGのあるGアイランドシティへと戻っていた。

 

 ひさしぶりの、登校である。

 

 

 今の話題は、宇宙で開かれようとしている式典のことだった。

 宇宙では地球、連合、プラント、さらに和平をとりつけた他の星々との和平が成立したことを記念とする、平和式典のことだ。

 ボアザン(超電磁マシーン ボルテスV/用語)。キャンベル(超電磁ロボ コン・バトラーV/用語)。さらに星はすでにないが、バーム(闘将ダイモス/用語)、フューリー(オリジナル)。そして、グラドス(蒼き流星SPTレイズナー/用語/今回は名前だけ)

 

 それらが手をとりあい、共に歩むことを祝いの場。

 

 平和の式典。それが宇宙で開かれようとしているのだ。

 

 

統夜(奪われた核が使われるとすると、ここの可能性が高いよな)

 

かなめ「そういえばさ、シャナ=ミアさん達はあの式典には出ないの?」

 

シャナ=ミア「式典には今のフューリーの代表が出ることになっています。今の私は、ただのシャナ=ミアなので、式に出席する理由はありません」

 

 

 出ないのはそれだけでなく、シャナ=ミアはまだフューリーとしての影響力が高いため、民に選ばれた代表をないがしろにさせてしまう可能性もある。

 そういう悪影響を避けるため、今は表に出ない。というのもあった。

 

 同時にロゼ=リア、クド=ラ、さらにカティア、テニア、メルアも現在政治とはかかわりのない学生としているため、式典への出席予定はなかった。

 これは、統夜もである。

 

 

かなめ「ああ、そうなんだ」

 

シャナ=ミア「そういうかなめさんだって、式典に出るの辞退しているじゃないですか」

 

かなめ「だってわたしが行くとあれも行くのよ。迷惑になっちゃうじゃない」

 

 

 ちゅどーん!

 廊下の方で、なにかが爆発した音が響いた。

 

 

かなめ「あんのバカ。いい加減やらかすのやめなさいっての!」

 

テッサ「元気ですねぇ」

 

シャナ=ミア「そうですね」

 

 

 すっかり日常になったその光景に、二人はくすくすと笑った。

 

 

 そんなひと時の日常の中。

 大きな異変が起きる。

 

 統夜達の通信機が、一斉に鳴り響いた。

 緊急事態を伝える通信。それが入ったのだ。

 

 東京に、正体不明の機体が突然現れたのである……!

 

 

 何事かと統夜達は東京へ急行する。

 

 そこには、バイストン・ウェル※(聖戦士ダンバイン/用語)から追放されたオーラバトラー(ダンバイン/機体総称)とオーラシップ(ダンバイン/戦艦の総称)の姿があった。

 

 アの国の王となったドレイク・ルフト(ダンバイン/人物)のウィル・ウィプス(オーラシップ名)とナの国の女王シーラ・ラパーナ(ダンバイン/人物)のグラン・ガラン(オーラシップ名)。

 その二つと、周囲をとりまくオーラバトラー達が、今にも戦いださんとにらみ合いを続けている。

 

※バイストンウェル

 海と大地の狭間にあるとされる異世界で、その天空は海へと繋がっているという。

 地上での生を終えた魂の行き着くところであり、一種の死後の世界とも言われている。

 中世ヨーロッパほどの科学技術、文化を有しており、オーラ力というあらゆる生物が持つ生体エネルギーで、バイストン・ウェルそのものを支えているとされる。

 

 

甲児「なんなんだこいつら。一体どこから出てきやがった!」

 

 

 相対しているゆえ、この二隊は敵同士というのはわかる。

 だが、わかるのはそれまででそれ以上のことはわからない。にらみ合いをしている状態では、下手に手を出すわけにもいかなかった。

 

 浮かぶその疑問に、オーラシップから現れたある部隊が答えをくれた。

 

 

忍「おう。お前達! ひさしぶりだな!」

 

 

 オーラシップ、グラン・ガランと共に、行方不明になっていた獣戦機隊のダンクーガ(超獣機神ダンクーガ/機体名)がそこにいた。

 

 

統夜「獣戦機隊!?」

 

亮「詳しい事情はあとで話す。まずはあいつらをどうにかするのを手伝ってくれ」

 

甲児「どうにかするって、あいつらは何者なんだよ。せめてそのくらい教えてくれ」

 

雅人「あいつらは海と大地の狭間にあるとされる世界の住人だよ。目の前にいるドレイクって男がその世界を征服しようと戦争を起こしていたんだけど、あまりにひどくて全員がその世界を追い出されたんだ」

 

忍「そいつをどうにかしようとしているのがこっち側だ。このままじゃ地上も同じ目にあう。手伝ってくれ」

 

甲児「そういうことか。わかったぜ!」

 

鏡「いいのか? いきなりあいつらを信用して」

 

甲児「あいつらは俺達の仲間だからな。信頼はできるぜ」

 

忍「新顔か。まあ、俺達を信用できないならあっちの味方をすりゃいい。あんなのが入りこんでいる方なんざ俺はお断りだがな」

 

鏡「なに? どういうことだ?」

 

忍「すぐわかるさ。どうせすぐ出てくる」

 

???「おいおい。ひどい言い草じゃねえか。こっちもこう見えて聖戦士サマなのによぉ」

 

宗介「この声! お前は!」

 

 

 ドレイクのオーラシップ、ウィル・ウィプスから現れた新たな機体。

 それは、新参の鏡ですら知っている男の機体だった。

 

 彼等を大いに苦しめた強敵。

 

 

ガウルン「おう。久しぶりだなぁ。カシム」

 

宗介「ガウルン!!」

 

忍「あの世界。バイストン・ウェルってところはいろんな原因で呼ばれるんだよ。あいつも自爆の瞬間、あっちの世界に呼ばれたのさ」

 

ガウルン「その通り。空気のいいとこは療養にいいってのはホントの話なんだな。おかげで不治の病もこの通り。怪しい広告に出てもいいくらいに元気になったぜ。これでまた、お前と遊べるなぁ」

 

統夜「しぶとい」

 

甲児「まったくだぜ」

 

忍「知ってるなら話がはええ。あいつが平気で仲間入りしている。その意味くらいわかるだろ?」

 

鏡「……ああ。わかった。あれを平気で受け入れるということは、それも同じということか」

 

忍「わかったんなら手を貸せ。あの世界を追い出された今、今度の目的は間違いなく地上だ!」

 

 

 バイストゥン・ウェルから地上に飛ばされ、しばし戸惑っていたドレイクであったが、大体の事態を把握した彼は、地上を掌握することを決定する。

 

 目の前のシーラに組しようとする統夜達も敵と捕らえ、戦いを開始しようとするのだった。

 

 

シーラ「獣の聖騎士達が仲間というのなら、信頼できるのでしょう。お力を、お貸し願えますか?」

 

甲児「もちろんだぜ!」

 

さやか「甲児君。鼻の下伸びてるわよ」

 

 

 ウィル・ウィプスから黒騎士も現れ、グラン・ガランを守るため、ショウ・ザマも迎撃に出た。

 

 

 地上に現れたオーラバトラーはバイストン・ウェルにいた時よりもオーラの出力が上がっている。

 そのオーラバリアは非常に強力であるが、強力なバリアを相手にするのはもう何度目の話。

 

 最初こそ面食らったものの、大きな問題もなく叩くことが可能だった。

 

 むしろ急に出力が上がってしまったオーラバトラー側の方が戸惑うくらいである。

 同じくガウルンも、地上に出てきたおかげかラムダ・ドライバの出力が不安定となる。

 

 改めて機体の調整を行う必要があると判断したドレイク軍は、ある程度剣を交えると東京から去ってゆくのだった。

 

 

 突然の来訪者から、東京は守られた。

 

 

 しかし、この事態が起きていたのは東京だけではなかった。

 バイストン・ウェルすべてのオーラマシン(オーラシップ、オーラバトラー)が地上に追放されたということは、この地球の各地にそれらが出現したということなのだ。

 

 突然現れた正体不明の軍勢。

 

 さらに、宇宙で行われようとしていた式典への襲撃を囮とし、ジオンの残党がネオジオンを名乗り地上へと電撃的な降下作戦を行っていた。

 式典のため戦力や意識をそちらに集中させていたため、手薄となった防御網を軽々と突破されてしまったのだ。

 

 それにより、元々ジオンの影響が強かったアフリカは占拠されてしまうが、同時に現れたバイストン・ウェルの軍勢により、そこ以外の侵攻は不完全なものとなった。

 

 ネオジオンもバイストン・ウェルの軍勢も、互いを正体不明の敵とみなし、各地でぶつかりあうことになる。

 

 

 こうして、地球連合、バイストン・ウェルの勢力。ネオジオン・ムゲ帝国の三勢力+αが入り乱れた、新たな争乱がはじまろうとしていた……

 

 

 この混沌とした事態を再び抑えるため、連合は再びあの分艦隊を再編する。

 

 地球の平和を守るために!

 

 

 第5話 地上ルート 終わり



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第06話 結成、ロンド・ベル

 

──新たな分艦隊の結成──

 

 

 ネオジオン・ムゲ帝国同盟の地球侵攻。

 バイストン・ウェルから突如地上に現れた軍勢。

 その他勢力の活性化。

 

 再び混沌の渦と化した地球の平和を取り戻すため、二度の争乱終結に多大な貢献を果たした分艦隊が再び結成される運びとなった。

 

 連合とザフト。軍と民間の協力だけでなく、異星の者達からも力を借りた、地球のなんでも係。

 

 ここに、独立遊撃部隊、『ロンド・ベル』が設立されたのである!

 

 

 民間からはGGGの勇者ロボ軍団。シャッセールからルネと光竜、闇竜。

 マジンガーチーム、コン・バトラーチーム、ボルテスチーム、ダイモスチーム。

 新たにビルドベースからジーグとビッグシューターにビルドエンジェルが。

 

 ミスリルからウルズチームと獣戦機隊。

 さらに統夜達。

 

 異星枠は、ダルタニアスの面々。バーム関係者からエリカ。ボアザンから剛博士など。

 

 ザフトからはシンとルナマリアの二名のエースのみであるが、コロニー側もネオジオン・ムゲ帝国同盟の侵攻を受け、防衛中という苦しい中からエースを回してくれている。

 ゆえに、この二人だけでも十分な心遣いであろう。

 

 連合軍からは地球に戻ったアーガマ隊とナデシコC。

 ここにはさらに、ZZガンダムとガンダム試作三号機が加わり、それを運んできたルー・ルカと精神操作から解放されたプルも追加で参加登録された。

 

 あとアスランも来たが、彼は一応オーブからの協力者である。

 

 そしてここに、バイストン・ウェルから来た新しい仲間。オーラバトラーとオーラシップが入る。

 

 これらのメンバーで、新たな分艦隊。ロンド・ベル隊が始動したのである!

 

 

 ちなみに、ナデシコCの艦長ホシノ・ルリは先の平和式典が最後の仕事で、その後退役し出店のため屋台を押すテンカワ夫妻に合流する予定だったが、その予定もこの争乱のため退役時期は未定となってしまったようだ。

 

 

 今回、彼等最初の任務は、シーラ王女と同じく、バイストン・ウェルを追放され、地球に放り出されたゴラオンというオーラシップとの合流だった。

 

 女王エレ・ハンムが乗り、ショウ達の仲間でもある彼女達だが、当然地上には不慣れであり、早く保護しなければ戦わざるを得なくなってしまう。

 ゆえに早いうちに声をかけ、無駄な争いを避けようとのことだった。

 

 

──ゴラオン救出──

 

 

 ロンド・ベルがゴラオンと合流しようと動いているころ、ゴラオンはピンチに陥っていた。

 連合軍ともネオジオン・ムゲ帝国同盟ともオーラバトラーとも違う勢力に襲われていたのだ。

 

 その正体不明の敵の名は、宇宙犯罪組織ギャンドラー(マシンロボ クロノスの大逆襲/組織名)

 

 あるお宝を求め地球にやってきた宇宙の無法者である。

 

 自分のコマンダーとしての地位を上げるため、美しい翅(はね)を持つオーラバトラーが狙われたのだ。

 オーラバトラーとオーラシップを奪わんと問答無用で襲い掛かる幹部のデビルサターン6(マシンロボ/人物)とギャンドラー軍団。

 

 地球どころか、宇宙からの洗礼に、バイストン・ウェルからやってきた者達は混乱する。

 

 そんな中、先行してゴラオンと接触し、ロンド・ベルへの参加を交渉していた連合軍の青年将校特使トルストール(ダンバイン/人物)は、ゴラオンとエレ・ハンムを守るため、オーラバトラーボチューン(ダンバイン/機体名)に乗り飛び出した。

 

 しかし、多勢に無勢。

 囲まれ、ゴラオンと共に窮地に陥ってしまう。

 

 救援として、ロンド・ベルはむかっている。

 だが、今の戦力だけではこの猛攻を耐えきれるかはかなり怪しかった。

 

 もはやこれまでか。

 

 ゴラオンの乗員誰もがそう持ったその時。

 

 

???「待てい!」

 

 

 声が、響いた。

 

 

デビルサターン6「こ、この声は!」

 

 

 オーラシップ、ゴラオンの上に立ち、逆光と共に現れたのは、頼れる兄さん。ロム・ストールだった!

 

 

デビルサターン6「お、お前等もきとったんかい!」

 

 

 慌てるギャンドラー軍団。

 どうやらギャンドラーはこの鋼の青年のことを知っているようである。

 

 ロムが彼女達のピンチを救い、時間を稼ぐことに成功し、ロンド・ベルが到着する。

 

 

統夜「あの人は!」

 

忍「知ってるのか?」

 

甲児「前に突然現れて助けてくれたヤツさ。何者かは知らねえ。なにも言わずに去って行ったからな」

 

忍「なんだそりゃ」

 

ショウ「とにかく、敵ではないということか?」

 

剣児「終わっても一応油断しない方がいいぜ。油断させてどかん。なんてあり得るからな」

 

鏡「……破瑠覇にやられたことをきちんと覚えていたか。剣児に学習させるとは。破瑠覇、いい仕事したようだな」

 

つばき「ホントにね」

 

剣児「お前等。俺をなんだと思ってたんだよ……?」

 

つばき「言っていいの?」

 

剣児「いや、聞きたくねえ」

 

デビルサターン6「お前等ワイ等を無視するなー!」

 

剣児「なんだあのハニワ幻神」

 

デビルサターン6「誰がハニワやねん!」

 

 

 ロンド・ベルが到着したことで、形勢が逆転した。

 ゴラオンのピンチは完全に払拭され、ギャンドラーは全員撃退される。

 

 敵がいなくなったところで、ロムも去ってゆく。

 

 

ロム「……どうやら、奴等の目的はこことは違うようだな」

 

忍「なあ、あんた」

 

ロム「今はまだ、話す時ではない。さらばだ!」

 

忍「あ、待て!」

 

 

 初めてロムと会う者達がそのあとを追おうとするが、こちらへ迫る別の反応があることにオペレーターが気づいた。

 そこに現れたのは、エレ達と同じく地上に追放されたオーラシップ、ゲア・ガリングだった。

 ドレイクの同盟相手であるビショット・ハッタが有する特大のバトルシップだ。

 

 ビショットは戦闘で疲弊したところを狙い、オーラバトラーを展開する。

 

 とはいえ、今回はビショットとの顔合わせだけなので、適当に戦ってお帰りいただいた。くらいにしか語るべきことはない。

 

 

 ゲア・ガリングも撤退し、戦いは終わった。

 

 突如現れエレ達を助けたロムが何者だったのか。

 それはまだ、わからないままだった……

 

 

 ともあれ、無事ゴラオンは仲間となり、新たに誕生したロンド・ベルの初仕事は終わりを告げる。

 

 

──アムロ参戦──

 

 

 ゴラオンを仲間に加えた統夜達は、日本へ帰還する通り道にいるアムロ・レイ(機動戦士ガンダム/人物)を仲間に加えるため進んでいた。

 ある筋から、前争乱で活躍したニュータイプのアムロの命が狙われている可能性があるとの情報が入ったからだ。

 

 アムロは今、地上にて自分操縦に足る機体を作り上げるため、その設計からの制作、テストをしているところだった。

 

 

アイザック「……どうやら、危惧していたことが起こってしまったようだな」

 

 

 アムロの護衛として研究所に入っていた宇宙の始末屋、コスモレンジャーJ9(銀河旋風ブライガー/用語)が一人、かみそりアイザックの異名を持つ男(ブライガー/人物)がつぶやいた。

 

 

ボウィー「ま、そのためにぼくちゃん達がいるんだから、当然かもね」

 

 

 同じく、飛ばし屋ボウィー(ブライガー/人物)と呼ばれる優れたドライビングテクニックを持つ凄腕レーサーがうなずく。

 アイザックの言葉を聞き、隣にいたブラスターキッド(ブライガー/人物)とあだ名されるスナイパーが、銃を取り出す。

 

 同時に、敷地内に侵入してきた傭兵と思しき男が撃たれ、倒れた。

 

 その傭兵の手には銃。

 何者かの襲撃であるのは明白だった。

 

 

お町「護衛のお坊ちゃん連れてきたわよー」

 

 

 同時に、部屋へアムロを連れたマチコ・ヴァレンシア(ブライガー/人物)が入ってきた。

 通称はエンジェルお町。

 

 

アムロ「あの、一体なにが?」

 

アイザック「簡単な話だ。君を狙って、この研究所が襲撃されている」

 

アムロ「えっ?」

 

 

 アムロの驚きの声と共に、研究所のどこかが爆発した。

 銃声も響きはじめる。

 

 さらに、地鳴りが。

 これは、なにか巨大ななにか。例えばモビルスーツやアームスレイブのような鋼の巨人が歩いている振動だ。

 

 どうやら敵は、強硬手段に出たようである。

 

 

アイザック「我々はこの研究所の防衛を任された者だ。その中でも君は、最重人物として守れと命じられている」

 

アムロ「だから、僕をここへ……?」

 

アイザック「いいや。君にはもっと相応しく、世界で一番安全な場所を用意してある。そこに入れば、君はおろか、研究所の人間も救えるだろう」

 

アムロ「そんな場所が!?」

 

アイザック「だから、行きたまえ。地下に。そこに君の城がある」

 

キッド「さ、行った行った。ここは俺達に任せておけばいい」

 

アムロ「でも……」

 

アイザック「我々はしばらく、ここで食い止める。ここにいる方が逆に危険だ。行きたまえ」

 

アムロ「わかりました」

 

 

 キッド達にうながされ、アムロは地下に向け走り出した。

 

 そしてその入り口は、コスモレンジャーJ9が固める。

 

 

キッド「さーて、それじゃ、お仕事しましょうかね」

 

ボウィー「あの子だけじゃなく、職員まで守らなきゃいけないのがつらいところよね。お仕事って大変」

 

アイザック「もうしばらくの辛抱だ。そうすれば、彼が出てくれる」

 

お町「ほんとあんたって、悪辣よね。普通護衛対象にそれやらせる?」

 

アイザック「なにを言う。言っただろう。世界で一番安全な城だと。あれ以上に安全な場所を、私は知らない」

 

お町「そりゃ、そうでしょうけどね……」

 

キッド「ははは」

 

 

 やれやれと、三人はあきれた。

 

 そして、地下の格納庫へ走ったアムロも、その世界で一番安全な城を見てあきれていた。

 そこにあったのは、RX78-2ガンダム。

 

 かつての争乱を共に駆け抜けた、アムロの愛機が地下の格納庫にあったのだ。

 

 

アムロ「僕にとって世界で一番安全な城って、人から見れば、そうなるのか……」

 

 

 アムロは悟った。

 これに乗ってアムロが出れば、自然と敵の攻撃はアムロの乗るガンダムに集中する。

 

 最重要人物であるアムロの命や身柄は襲撃者の目的なのだから、優先的に狙われるのは間違いない。

 

 そうなれば、他の職員への被害は減る。

 多くの人を助けることができる。

 

 

アムロ「これを考えた人は、頭が切れる。でも、それ以上に悪辣な人だ」

 

 

 かみそりアイザック。言われるだけはある。

 

 自分の安全を守る。職員の安全も守る。しかも、自分の手で。

 確かにこれは、効率的で、確実な手段だ。

 

 もっとも、やらされるアムロはたまったもんじゃないが。

 だが、それだけアムロの実力が認められているということでもある。

 

 ゆえに、こんなこともあろうかと、アイザックは地下にガンダムを隠しておいたのだ!

 

 

アムロ「わかりました。わかりましたよ。やればいいんでしょう。やれば!」

 

 

 やけくそ気味に、アムロはガンダムへと飛び乗るのだった。

 

 外には、モビルスーツとアームスレイブの混成部隊がいた。

 突然現れたガンダムに驚き、追って現れたJ9の乗機、ブライガーの登場にも驚く。

 

 だが、アイザックがあえてガンダムにアムロが乗っていると話したことで、目の色が変わる。

 ターゲットとしてアムロの抹殺が叶えば、ボーナスが出るからだ。

 

 それを見たアムロは、アイザックの掌の上で踊らされていると、苦笑するのだった。

 

 

 研究所を守る戦いがはじまる。

 

 ちなみに、しばらく防衛を続けると、統夜達ロンド・ベル隊が到着する。

 あとは襲撃者をすべて撃退するだけだ。

 

 

???「……やれやれ、まさかここまでの怪物だったとはな」

 

 

 その戦いを、陰で見ていた男がつぶやいた。

 その男の名は、ガウルン。

 

 

ガウルン「実際見るのと、聞くのじゃ大違いってね」

 

 

 前争乱をベッドの上から観戦しているしかできなかったガウルンであったが、寝ているだけでも聞こえてくる怪談というのは多くあった。

 その中でもひときわ異彩を放っていたのが、白い悪魔と言われるようになった一人のニュータイプの話。

 

 アムロ・レイ。

 

 成長を遂げればとんでもないキリングマシーンにもなりえると、多くの傭兵仲間が噂しあっていた少年の話。

 宗介との決着からの満足した死を望んでいたガウルンは、因縁とはなんの関係もない存在のため無視していたが、あの時と今は違う。

 

 オーラ力により健康になり、ドレイク軍に在籍している今、白い悪魔を放置しておく理由はない。

 むしろ、排除できるときに排除しておきたい対象である。

 

 そんなアムロが、まだ分艦隊と合流せず、単独でいる。

 ならば、その絶好の機会を逃す理由はない。

 

 というが、ガウルンはここで、ドレイク軍を直接使うということはしなかった。

 あえて昔のコネを使い、コネクションのアウトローに声をかけ、傭兵を集め、襲撃するという手段をとった。

 

 こうすることで、連合内部の犯行とも、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍かもともとれ、後々の得となるからだ。

 

 機体にさえ乗せなければただのガキ。

 そう想定していたが、護衛にあのJ9がいたのは想定外だった。

 

 さらにかつての愛機まで用意されていたとは、これではただの傭兵には荷が重い。

 

 たったの二機で傭兵すべてが押し返されかねん勢いだというのに、そこにあの新設された部隊まで合流したのだから、この暗殺に成功の目があろうはずもなかった。

 

 最初から自分が出ていれば結果がかわったかもしれないが、それは後の祭り。

 だが、アムロの動きを自分の目で確認できたというのは大きな収穫だった。

 

 

ガウルン「まあ、この失敗で色々交渉もしやすくなるから、かまわんがね」

 

 

 失敗したら失敗したでアムロのヤバさがドレイク軍にも伝わるし、接触したコネクションにも伝わるので問題はないのだ。

 

 ガウルンがコネクションに接触したのはアムロ暗殺が目的だけではなかった。

 

 バイストン・ウェルから来たドレイク軍は拠点というものが存在しない。

 適当な都市を占拠しているが、補給の面で大きな不安を抱えていた。

 

 そこでガウルンの持つ裏社会へのコネを使い、コネクションから援助をとりつけるため接触に動いたというわけである。

 

 ロゴス、アマルガムが潰え、今や力を失いつつある彼等と、地球での補給路が欲しいドレイク軍。

 これで最終的にドレイク軍が地上の支配者となれば、一気に勢力が逆転と相成る。

 

 これらが裏で手を組むのは当然の流れと言えるだろう。

 

 ここで必要になるのが、敵がより強大であるということである。

 

 

ガウルン「さぁて。これから世界がどうなるか。楽しみだねぇ」

 

 

 新たに生を手に入れたガウルンは、楽しそうに笑うのだった。

 

 

 こうしてアムロが独立遊撃部隊ロンド・ベルに加わる。

 居場所がわかったまま外にいるより、ロンド・ベル内にいた方が安全だからだ。

 

 制作していた新型は、基礎設計などはすでに終わっていたため、宇宙へ送られ、実物の完成を待つばかりとなった。

 

 J9の方は、今回は護衛のみが依頼されたことであり、他にも仕事があるということで去って行った。

 

 

ブライト「彼等も仲間に加わってくれれば、心強かったのだがな」

 

 

 惜しむブライトだったが、それはせんなきことだった。

 彼等の合流には、もう少し時間がかかる。

 

 

──テンカワ夫妻合流──

 

 

 ロンド・ベル隊が発足し、ゴラオンを救出、その帰路にてアムロを回収しているころ。

 ミスリルは、ボソン・ジャンプ※を安定して成功させるのに必須なA級ジャンパーに関して不穏な動きがあることを察知していた。

 

※ボソン・ジャンプ

 簡単に言えば瞬間移動のこと。色々説明するとタイムトラベルだったりなどめんどくさいので、今回の認識はこれで十分。

 さらにA級ジャンパーは、チューリップクリスタルと呼ばれる道具を使えば、そのボソン・ジャンプを安定して成功させられる人間のことである。

 ゆえに、ボソン・ジャンプを活用するならば、このA級ジャンパーが必須なのである。

 

 A級ジャンパーに関して情報を裏に流している者。

 それは調査の結果、先のアムロ襲撃と同じ人間が動いているというのがわかった。

 

 

テッサ「どう考えます?」

 

カリーニン「間違いなく、ガウルンの仕業でしょう」

 

 

 ガウルンはロゴス、改めアマルガムからヴェノムなどの供給を受けていた。

 ゆえに、情報には通じており、ボソン・ジャンプに必要な条件などを知っていてもおかしくはなかった。

 

 

カリーニン「ヤツの生存は私も知らぬことでした。しかし、彼がロゴス。アマルガムの持っていた情報を知らぬとは思えません」

 

テッサ「ですね……」

 

カリーニン「フレサンジュ女史によれば、かのオーラバリアを使えば、ナデシコと同じく乗員を乗せたままのボソン・ジャンプを成功させる可能性は十分にあり得るとのことです」

 

テッサ「可能性はあくまで可能性ですが、念には念を入れなければならないようですね。もう一度彼等には避難をお願いするしかないようです」

 

カリーニン「はい」

 

 

 あのオーラマシンがテレポートを可能にすれば、大変な脅威となるだろう。

 それだけでなく、ボソン・ジャンプはバイストンウェルへ戻る手段として、ドレイクの注意を引いてもおかしくはない。

 

 そうなれば、A級ジャンパーはまた危険にさらされる。

 

 これらの懸念から、ミスリルは再びジャンパーの保護を進めることにした。

 

 しかし、今のミスリルはアマルガムによって壊滅させられた組織を立て直したばかり。前回のように全員を一度に保護するというのは難しい。

 ゆえに今回は連合の上層部。岡長官、イゴール長官。さらに総司令となったミスマル元提督などと協力し、その保護を進めることとなった。

 特に日本の岡長官は忍者でもあり、こういう時とても頼りになった。

 さらに、こんなこともあろうかと、前回保護した時に居場所をしっかりと把握しておいたのも大きかった。

 

 そして、その懸念は当たった。

 A級ジャンパーを拉致しようとコネクションが動き出したのだ。

 

 狙いは、テンカワ夫妻。

 

 実のところ、身内であるテンカワ夫妻の保護が遅いのには理由がある。

 あえて目立つこの二人を表に置き、目をむけさせることによって、他のA級ジャンパーを安全かつ迅速に保護する時間を稼いだのだ。

 

 身内だから真っ先に。でなく、身内であるからこそあえて。そして、二人ならばきっと大丈夫であるという、信頼の元にたてられた計画であった。

 

 これにより、他のA級ジャンパーの保護は成功し、さらに彼等を狙うコネクションも一網打尽にできるというわけである。

 

 日本へ戻るロンド・ベル隊に司令が下る。

 テンカワ夫妻を保護せよと!

 

 

 二人の住むところへ急行するロンド・ベルであったが、コネクションの方が一歩だけ早かった。

 屋台を引いていた二人を、傭兵の乗ったアームスレイブとモビルスーツが強襲する。

 

 これに対し、ミスリルで保管していたエステバリスのテンカワ機カスタムをトゥアハー・デ・ダナンから射出し、ユリカと相乗りで耐えてもらうこととなった。

 

 

テッサ「ロンド・ベルがそちらへむかっています。それまでどうか!」

 

ユリカ「まっかせて! アキトがいるから大丈夫!」

 

アキト「動かすのは俺なんだからあんまり無茶言うな!」

 

ユリカ「アキトなら大丈夫!」

 

テッサ「ナデシコが到着するまでエネルギーの回復はありません。それには注意してください」

 

ユリカ「あまり飛んだりしない方がいいみたい。あとアキト。海の方に行けば援護がもらえると思う」

 

テッサ「はい。ダナンも一時的に浮上していますから、ある程度の援護はできます」

 

 

 引退してもかつては戦略シミュレーションで無敗を誇った逸材。状況の判断に衰えはないようだ。

 

 

ユリカ「だから、大丈夫。がんばれアキト!」

 

アキト「わかってるよ!」

 

 

 こうして、ロンド・ベル隊が到着するまで、しばしの時間アキトは耐えることとなる。

 

 もちろんロンド・ベル隊が到着すれば、敵は烏合の衆。

 あっさりと蹴散らされ、ナデシコCに新たなコック夫婦が加わることになる。

 

 やっぱりここにいるのが、一番安全だからだ。

 

 

 こうして、A級ジャンパーの保護が迅速に行えたことにより、ボソン・ジャンプがドレイク軍にわたるというのはなくなったと言ってよいだろう。

 

 

ガウルン「やれやれ、こっちは後手に回ったか。まあ、使えるかもわからん技術だ。無理に追うこともないだろう。そういう存在がいる。というだけで価値がある」

 

 

 これは、こういう技術があると、ドレイク側に地球からの支援を受けさせるためのカードである。

 コネクション側はドレイク軍が地球を支配した時の利益。ドレイク側はコネクションを受け入れた時のメリットと、双方を結びつけるための口実でしかないのだ。

 

 そしてそれは、うまくいくだろう。

 

 こうして、地球連合、ネオジオン・ムゲ帝国連合、ドレイク軍&コネクションと、三つの大勢力が地球の覇権をめぐる戦いが広がってゆく……

 

 

 第6話 終わり



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第07話 超電磁大戦ビクトリーファイブ

 

──デュナンの子──

 

 

 地球を中心として生まれた、いくつもの星が平和を願う式典は、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍の地球侵攻という大事件により延期となった。

 日程を改めてもう一度とならなかったのは、地球が進行されただけでなく、この時地球に集まっていた他の親善大使の星も同時に襲われていたからだ。

 

 これでは式典をもう一度とは言っておれず、どの星の者も自星を守るため帰らざるを得ず、地球に力を貸せたのは関わりのある少数の者達だけであった。

 

 誰もがこの時、その襲撃はネオジオンと同盟を結ぶムゲ帝国の一斉侵攻だと考えていた。

 それは一部事実である。

 

 しかし、宇宙の敵はムゲ一つだけとは限らないというのを、彼等は知ることとなる……

 

 

 ゴラオンを仲間に加え、アムロを回収してテンカワ夫妻を救い日本に戻ってきた統夜達。

 次の作戦の合間に、ひと時の休息として東京観光をすることになった。

 

 これは、地上に飛ばされ緊張づくしだったバイストン・ウェルの女王達や、かつてはこの付近に住みながら、長い間帰ってこれなかった者達の。そして地球を知らぬ者達へ、この星の良さを知ってもらいたいという息抜き兼案内でもあった。

 

 ショウ達に連れられ、シーラとエレが。

 ボアザン親善大使となったラ・ゴールこと剛博士の護衛としてやってきていたその息子にして健一達の兄。ハイネルを健一達が。

 

 そして、ひさしぶりの帰郷となった剣人達が東京の街を歩く。

 

 ちなみに、元々東京付近にいたマジンガーチームなどは、艦に残って警戒態勢である。

 

 

剣人「やっと帰ってこれたぜ」

 

 

 ひさしぶりの東京に、剣人もうれしさをにじませた。

 前は東京方面に来たと思ったらバイストン・ウェルからの浮上騒ぎがあり、そのままロンド・ベル結成と、のんびり東京を見て回る暇もなかった。

 

 

プル「どうして今まで遠くにいたの?」

 

剣人「最初の争乱のころだったかな。日本も危なくなって、疎開することになったんだよ」

 

 

 それは、統夜達の通う高校も休校になり、多くの若者が危険とされた日本を離れた時期でもあった(戦争だけでなくドクターヘルの襲撃とかもあったから)

 

 

剣人「それで疎開したまではよかったんだが、結局そこで戦闘にまきこまれて散々さ。帰るに帰れず、みんなで力をあわせてジャンク屋稼業ってわけだ」

 

ジュドー「色々あったなあ」

 

ちづる「苦労したのね」

 

剣人「ちゃんと帰ってこれたし、おちゃめ達もまた学校へ行かせられてる。だから、もういいのさ」

 

 

 そう、剣人と弾児は、平和となった東京を見る。

 どこか懐かしいように。どこか遠くを見るように……

 

 

一矢「こうして街中を二人で歩くのもひさしぶりだな」

 

エリカ「ええ。そうね、一矢」

 

京四郎「おいおい。二人きりってわけじゃないだろ」

 

ナナ「その通りよ」

 

一矢「はは。悪い悪い」

 

 

 健一達はハイネルを寿司屋へ連れてゆき、ワサビのからさで悶絶させたり、シーラ達は普段の重圧のことなど考えず、のんびりウインドウショッピングを楽しんだりと、それぞれがひと時の休息を楽しんだ。

 

 

アール博士「……」

 

剣人「どうしたんだ、じいさん」

 

アール博士「これはこれは、剣人さま。はしたないところをお見せしてしまいましたな」

 

剣人「だから、その剣人さまってのはやめろって」

 

アール博士「そうはまいりません」

 

 

 そのままいつものエリオス王家の血を引くのだから、もっとしっかりしてくださいという話の流れになってしまい、アール博士がなにを見ていたかというのははぐらかされてしまった。

 

 その時アール博士が見ていたのは、角を持つボアザンの民と、羽をもつバームの民。そして地球人。それぞれが偏見も持たず自由に歩いている光景だった。

 この奇跡のような光景に、アール博士は羨望と希望を持ったのである。

 

 

 しかし、その奇跡のような星を許さぬ者がいた……

 

 

 突如として、空に暗雲のような影が広がる。

 

 

???「認めない……」

 

豹馬「……なんだ?」

 

???「このような世界、認められない……!」

 

 

 暗雲のように広がったその黒い影は、巨大な人型の影となり、そこから空間を引き裂き、巨大な鋼の怪物が姿を現した。

 

 

???「聞け、宇宙の民よ! 我が名はジュエリオン。デュナンの子。ジュエリオン(超電磁大戦ビクトリーファイブ/人物)だ!」

 

剛博士「デュナンの子!?」

 

アール博士「ジュエリオン?」

 

 

 その名を知る者は、地球の民で一人としていない。

 

 だが、一つだけわかることがある。

 また、東京が襲われようとしている。

 

 無辜の民が傷つこうとしている。

 

 それを許す、ロンド・ベルではなかった!

 

 万一のため待機していたマジンガーチームが東京へ飛び、自動操縦で発進したコン・バトラー、ボルテスが空を行く。

 

 

 突如として空を裂いて現れた集団は、地球を守るスーパーロボットに迎撃される。

 

 

ジュエリオン「なにっ? 馬鹿な。我が軍団がこうもたやすく!」

 

豹馬「どうだ驚いたか!」

 

健一「俺達はお前のような宇宙の無法者を倒すため再び集まったんだ!」

 

ジュエリオン「そうか。貴様等か。余計なことをして、平和などをもたらしたのは。くっくっく。面白い!」

 

 

 空に現れた黒い影が薄くなってゆく。

 

 

ジュエリオン「なにも知らず、身のほどもわきまえず平和を欲する罪深き者ども。貴様等に安寧などはない。すべての人類に生きる意味などない。すべて滅びるがいい。おとなしく、我が前にひざまずき、醜い争いを見せていればまだ生き永らえただろうに! いずれそのことを、後悔するがよい!」

 

豹馬「誰がそんなことするもんかよ!」

 

 

 こうして新たな敵。デュナンの子の宣戦布告は終わった。

 

 東京への被害は、ほぼないと言ってもよかった。

 例えあったとしても、GGGのカーペンターズが直してくれたが。

 

 そんな中、豹馬は一人の少女を保護する。

 記憶を失い、身元もわからぬ彼女は、豹馬にチリと名づけられ、ロンド・ベルで預かることとなった。

 

 

 そして、ロンド・ベル隊は一度、ボアザンの博士にして健一達の父、ラ・ゴールこと剛健太郎によって集められた。

 先ほどホログラムとして空に現れたジュエリオン。それが何者か、ボアザン星の者として心当たりがあるというのだ。

 

 

剛博士「あの名が確かなら、健一。お前達にはつらい話になるかもしれない」

 

健一「かまいません」

 

豹馬「そもそも聞かなきゃそれもわからないわけだしな」

 

剛博士「そうか。ならば、話そう。デュナン。ジュエリオン。その名は、3000年前の昔語りに登場する」

 

京四郎「3000年? えらい昔の話が出てきたな」

 

剛博士「うむ。そのころ、ボアザンとバームは星間戦争を行っていた」

 

エリカ「アール博士も言っていましたね。それほど昔から……」

 

剛博士「そうだ。このころは両星と共に銀河に自分の領土を広げようと躍起になっていた。そんな中、愛と平和を訴え、戦争をやめさせようとした者達もいた。それがデュナンとリオン。戦場でめぐり逢い、愛し合うようになったボアザン星とバーム星の夫婦……」

 

エリカ「……」

 

一矢「……」

 

健一「その人達は、どうなったんです?」

 

剛博士「殺された。いや、殺されたというより、惨殺されたのだ。双方の星の者が裏切り者として連れ帰り、見せしめのために処刑したのだという。それは、後世のボアザン星の学者さえ、あまりの残虐さに正史から抹消し、歴史の闇に消してしまったほどだ……」

 

カティア「そんな……」

 

剛博士「だから、王宮に残されていた古い記録からも、わかることは多くない。ただ、夫婦にはまだ幼い子供が二人おり、妹の名はべリオン。姉の名を、ジュエリオンといったというのだ」

 

健一「っ!」

 

京四郎「つまりそいつは、3000年前から甦り、今更復讐しに来たってわけか」

 

剛博士「子孫かもしれんし、サイボーグ、クローンという可能もある。だが、いずれにせよ、その関係者であると考えるのが妥当だろう」

 

剣人「そりゃ、なんの関係もないヤツがあそこまで憎しみにかられるわけないだろうからなあ……」

 

剛博士「健一。これを知り、お前はどうする? 戦えるのか?」

 

健一「……わからない。でも、戦う前に一つやることがある」

 

剛博士「それは……?」

 

健一「彼女と、一度話し合ってあってみようと思う。両親を殺され、人を憎む気持ちというのは、俺もわからなくはない……」

 

大次郎「……」

 

日吉「……」

 

 

 剛兄弟の母は、ボルテスVがはじめて戦場に出る時、その時間を稼ぐためボアザン軍の前に立ち、命を落とした。

 彼もまた、肉親を誰かに奪われる痛みを知っているのだ……

 

 

健一「ハーフである辛さも知っている。この部隊には、この気持ちを知る人が大勢いる。それでも今まで乗りこえてこれた。俺にどこまでできるかはわからない。でも、話し合いでとめられるなら、とめてあげたい」

 

剛博士「そうか。ならば私は、なにも言わぬよ。お前の好きにやるがよい」

 

豹馬「そういうことなら、俺も手伝うぜ!」

 

ハイネル「もちろん、私もだ」

 

 

 健一の考えに、一矢も、統夜も、部隊の皆が賛同する。

 憎しみによる闘争ほど、哀しいものはない。そう知っている者は多いから……

 

 

チリ「……」

 

 

 その会話を、豹馬に拾われた一人の少女は、じっと聞いていた……

 なにかを、思うように。

 

 なにかを、考えるように……

 

 

──おまけ──

 

 

 デュナンの子の補足。

 原作紹介。

 

 デュナンの子、ジュエリオン、べリオンの登場する『超電磁大戦ビクトリーファイブ』を知っている人はそう多くないと思うので、ちょっと紹介しておく。

 この作品は、コン・バトラーV、ボルテスV、ダイモスが同じ世界の出来事だったらというスパロボヨロシクなクロスオーバーをさせた作品である。

 

 あらすじは地球とキャンベル星、ボアザン星、バーム星は四惑星不可侵条約を締結。平和が約束されたその時、突如現れたジュエリオンと名乗る者が各惑星の指導者を拉致し、他惑星の住人千人を差し出さねば人質を殺すと脅し、惑星同士で殺し合いを強要する。

 だが、この危機にコン・バトラーV、ボルテスV、ダイモスら超電磁ロボチームが立ち上がり、そのさらわれた指導者を救出にむかう。というものだ。

 

 今回はのっけからその不可侵条約の締結に当たる平和式典が中止になり、要人誘拐、他の星の人間千人の首を用意しろという計画はご破算になっている。

 ゆえに、人質救出のため惑星デュナンのある場所へ旅立つという根本が違っているので注意してほしい。

 

 他にも色々クロスオーバーの都合上変化があるので、興味があったら君も『超電磁大戦ビクトリーファイブ』をチェックしてみよう!

 

 

────

 

 

 ジュエリオンと話をする機会はすぐにやってきた。

 

 再び空が暗雲に覆われ、翼と角を携えた女性のシルエットと化し、その影に生まれた空間の裂け目から次々とデュナンの子と称されるロボットが湧きだしたのだ。

 

 この出現は、GGGと敵対したゾンダー達の使ったESウィンドウと呼ばれるワープドアの手法と似ており、その出現が予測できたのが幸いした。

 

 出現にあわせ、迎撃に出るロンド・ベル隊。

 

 湧き出すように現れるロボを次々と撃破し、健一達ボルテスVは空に現れた影。ジュエリオンへと近づいてゆく。

 

 

健一「聞いてくれジュエリオン! 話がある!」

 

 

 ある程度近づいたボルテスは、ゆらゆらと揺れる影に話しかけた。

 すると、形が安定し、一人の女性の姿が映し出される。

 

 角と翼をもった女性。

 彼女こそが、このデュナンの子を統括する、ジュエリオンであろう。

 

 ボアザンとバーム、二つの星の特徴を持つ『その姿』は、『デュナンの子』、『ジュエリオン』の名乗りとあわせ、自身を3000年前に迫害された存在そのものであると主張していた。

 

 ゆえに健一も、そこに現れたのが父に聞かされたジュエリオン本人であると想定し口を開く。

 

 

健一「話を聞いてくれ。俺は、お前と立場を同じくするものだ。二つの星の血を持つ者同士、きっとわかりあえる。共に生きていけると信じている! 憎しみで戦い続けてなにも生まれはしない! だから、一度憎しみを捨て、話し合おう!」

 

ジュエリオン「くくく。憎しみではなにも生み出さない? 話し合おう? ならば、お前達がもたらした平和とは、なんだ?」

 

健一「なに?」

 

ジュエリオン「それは話し合いだったか? お前はボアザンの支配者を憎いと思ったことはないのか? 自分の母を殺し、父を幽閉し、多くの人々を苦しめたボアザン星人を!」

 

健一「っ!」

 

ジュエリオン「一度も憎いと感じずに、お前は戦ったというのか!?」

 

健一「それは……」

 

ジュエリオン「そうだろう! むしろ貴様ならば私の気持ちがわかるはずだ。石もて追われる者の苦悩が! お前は言えたのか? 地球の者達に自分達はボアザンと地球の血を引いていると! 自分から告白できたのか!?」

 

健一「くっ……」

 

ジュエリオン「その反応。言えなかったのだろう! 迫害を恐れ、秘密にした! それでよく言えたものだな!」

 

健一「だが、最終的には皆わかってくれた! 俺を、俺達を受け入れてくれた!」

 

ジュエリオン「受け入れた? 力で受け入れさせたの間違いだろう! お前達は力があった。それがあるからすべてを覆せた。違うか!」

 

豹馬「んなわけねえだろうが!」

 

ジュエリオン「なにっ!?」

 

豹馬「そんなの関係なく、健一達は俺達の仲間だ! 健一達だけじゃねえ。エリカさんだって、統夜達だって、バイストンウェルの人間だろうと関係ねえ! みんな、同じ人間で、仲間なんだよ!」

 

剣人「そうだぜ! よく言ったぜ豹馬さん!」

 

豹馬「力があればなんでもしていい。そんなわけあるか! その力で、同じ哀しい運命を背負った子供達を生み出して、それが本当に正しいと思っているのか!!」

 

チリ「……っ!」

 

ジュエリオン「正しいさ! 正義とはな、常に復讐する者の側にあるのだ! 同じ痛みを思い知れ! お前達が私達になにをしたのか。それをな!」

 

ハイネル「お前の憎しみに、地球の者達は関係ない! 憎むなら、我等ボアザンの者を憎め!」

 

ジュエリオン「うるさい! 同じだ。地球も、ボアザンも、バームもな!」

 

アムロ「なんて暗い心なんだ。憎しみの力が、ここまで感じられるなんて……!」

 

健一(ダメだ。今の彼女に、俺達の言葉は届かない……! なにか。なにかできることはないか……!?)

 

健一「……っ!」

 

 

 その瞬間、健一は思い出す。

 同じく復讐の心に突き動かされた少女を、その憎しみを否定せず、真正面からぶつかり、解決した仲間がいたことを!

 

 

健一「……確かに、そうだ。認めようジュエリオン。俺は、間違っていた」

 

豹馬「健一!?」

 

ジュエリオン「ハハハ。認めたか! ならばわかるだろう! 私の正しさが! お前達の過ちが!」

 

健一「ああ。間違いだった。お前と俺達が同じだと思ったことがな!」

 

ジュエリオン「なにっ!?」

 

健一「お前と俺達は全く違う! 確かに俺は、お前と同じく違う星の二人が愛し合い出来た子だ! だが、お前とは違い、恵まれている!」

 

ジュエリオン「っ!」

 

健一「気を許せる仲間がいる! 憎しみあったはずの者とは手をとりあえた! 許しあえた! お前と違い、幸せだ! こんな俺がお前と同じなど、考えるだけ無駄だった!」

 

ジュエリオン「貴様っ……!」

 

健一「そう。俺はお前ができなかったことをすべて体現した存在と言える。お前が得られなかった、得たかったはずの未来が俺だ!」

 

ジュエリオン「黙れ!」

 

健一「人を憎むべき存在とどれだけ罵ろうと、俺という存在がいる限り、お前の声は否定される! 見ろ! 俺が、お前の否定したい、憎くてたまらない人達の象徴だ! 俺がいる限り、お前の言葉に正統性はない!」

 

 

 そう健一は挑発し、ボルテスは無防備に両手を広げた。

 

 

健一「どうした! 人間が憎いんだろう? 憎くてたまらないんだろう!? その最たる俺は、特に! やれないのか!? それともやらずに他に手を出すのか!? それもいいだろう。目の前の問題から逃げる。目をそらす。中途半端なお前にはお似合いの選択だ!」

 

ジュエリオン「っ! きっ、きっさまぁ! いいいだろう! まずは貴様から殺してやる! 我が父と母の受けた仕打ちよりよりひどく、醜く、無残に殺してやる!」

 

健一「やれるものならやってみろ! 俺は、逃げも隠れもしない!」

 

豹馬「……ったく、そういうことかよ」

 

 

 大きく啖呵を切った健一に、豹馬があきれたような声をあげる。それは、他の仲間も同じく思ったことだった。

 豹馬が代表しただけで、他の者もなにがやりたいのかわかっていた。

 

 怒りに任せ、健一の乗るボルテスを滅ぼすべく命令されたデュナンの子達から、彼を守るため、ロンド・ベル隊は動き出す。

 

 

 もちろん真正面から戦うとなれば、歴戦の勇士がそろうロンド・ベル隊が負けるわけはなかった。

 

 場に現れたすべてのロボは破壊され、ジュエリオンのホログラムも揺らぐ。

 

 

ジュエリオン「おのれ。覚えていろ剛健一! 後悔させてやる。必ずだ。必ず!」

 

 

 ジュエリオンはそう、呪詛のように呟き、この場から姿を消した。

 空は晴天に戻り、戦いは終わった……

 

 

健一「ああ。いつでも来い。俺が。俺達がお前の憎しみを全て受け止めてやる。憎しみという牢獄から、解放されるように……!」

 

一平「いい啖呵を切ったじゃないか。真面目一辺倒のお前にしては上出来だ」

 

健一「前に統夜がやったことを真似ただけだ。あれで俺達だけを狙ってくるようになるなら、対処もしやすくなるだろう?」

 

一平「そいつは言えてるな」

 

豹馬「やっぱりかよ。これからが大変だぜ」

 

健一「覚悟はできている。それに、成功させた前例はあるんだ。勝算は十分にあるだろ」

 

豹馬「確かにな」

 

クド=ラ「……」

 

クド=ラ(彼女もきっと、胸の中の怒りを、憎しみをどこにむけていいのかわからないんだ。本当に憎むべき相手はもういなくて。それでも憎しみは消えなくて。だから、そんな自分にイライラして、また暴れる……)

 

 

 去ったジュエリオンを見て、かつて同じだった少女は思う。

 健一のとった方法は、かつて彼女を救った方法と同じだ。憎しみを否定するのでなく、受け入れるのでもなく、あえてぶつけさせることで、行き場の失った怒りや憎しみを発散させる。

 

 すでに仇もいなくなったこの世界で、くすぶり続ける憎しみの感情を、消すことのできない激情を受けとめ続ける、いつ終わるとも知れない、無謀と言える行為……

 

 

クド=ラ「だから、なんとしても止めてあげなきゃいけない。最悪のことをする前に……」

 

テニア「そうだね。手伝うよ」

 

カティア「ええ。私達も、力を貸すわ」

 

統夜「そうだな」

 

健一「みんな、すまない」

 

甲児「気にすんなよ。二回目だ」

 

 

 そうして、皆笑った。

 

 健一の目論見に一つは、すぐに効果が現れた。

 

 宇宙に広がり、各星を襲っていたデュナンの子の出現がパッタリとやんだのだ。

 それは、他の星を襲うのに力を使うでなく、健一を抹殺することに集中させるためだろう。

 

 デュナンの子が現れなくなった分、ムゲ帝国の方が動きやすくなってしまったが、無差別攻撃はなくなったので、被害そのものは大きく減ることになった。

 

 

豹馬「あとは、俺達がなんとかするだけだな」

 

健一「ああ!」

 

 

 決意を新たに、ロンド・ベル隊は動き出す。

 

 

チリ「……」

 

 

 一連のやり取りを見ていた少女は、一人思う。

 

 

 彼女の正体は、ジュエリオンの妹。べリオン。記憶を失ったとし、ここへもぐりこみ様々な工作をしようとして姉をサポートしようとしていた。

 だが、ロンド・ベルに拾われ、彼等と関わるうちにその憎しみは失われ、迷いさえ生まれてしまっていた。

 

 

チリ(……ダメです姉様。私達では勝てない。この人達には、勝てません……)

 

 

 彼等と共にいた時間は短い。

 それでも彼女は、そう確信してしまった。

 

 自分達のやろうとしていることの先には、破滅しかないと……

 

 

 第7話 終わり

 

 

※注釈

 ちなみにこの後、チリにはあまり出番がありません。

 なんの注釈もない場合は、コン・バトラーチームと一緒にいて彼等に絆を植えつけられてると思ってください。

 



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第08話 出現! さらなる新勢力

 

──使徒出現──

 

 

 新たに現れた第四の勢力により、地球の混乱は、さらなる広がりを見せた。

 デュナンの子の狙いがロンド・ベルに絞られるようになったといっても、混乱がおさまるわけではないのだ。

 

 その混乱の広がりは、まだ終わっていなかった。

 

 

 箱根に建設された新たな東京。

 第三新東京市。

 

 ある日突然、そこを目指して進む、正体不明の怪物が現れた。

 

 それは使徒と呼ばれ、怪物は第四の使徒と呼称される。

 

 それに対抗するため開発されたのが、エヴァンゲリオン。

 

 ロンド・ベル隊は、その初号機と共に使徒の迎撃にあたることになった。

 

 

 夜、第四の使徒を迎撃する。

 

 その時、邪魔大王国から阿魔疎(あまそ)と、ドレイク軍の黒騎士が現れた。

 どちらも使徒の偵察目的でなく、手柄を求めての無断出撃だったようだ。

 

 正体不明の怪物である使徒を見てどちらも戸惑うが、手柄のため利用してやろうと、どれもを利用するためロンド・ベル隊へ戦いを挑む。

 

 

阿魔疎「なんだあの怪物は。不気味な奴だ」

 

剣児「いや、お前がそれ言うのか」

 

 

 邪魔大王国が出したハニワ幻神を見て、初号機パイロット、碇シンジは使徒の援軍が現れたのかと思い驚く。

 

 

シンジ「使徒が、増えた!?」

 

ミサト「いいえ、シンジ君。敵ではあるけどまた別の勢力よ。あっちはロンド・ベルにまかせて目の前の敵に集中しなさい!」

 

シンジ「わ、わかりました」

 

 

 使徒とエヴァンゲリオンを見て、統夜はなにかを感じる。

 

 

統夜「……」

 

豹馬「どうした統夜」

 

統夜「いや、あのエヴァンゲリオンと使徒って怪物。なんだろう。よくわからないんだけど、知っている気がする」

 

豹馬「なんだそりゃ」

 

甲児「むしろいつものサイトロンでなにかわからねえのか?」

 

統夜「今回はうまくいかないんだ。もっと安定して使えればいいんだけど、難しいもんだな」

 

 

 戦闘中使徒にやられそうになった初号機が暴走するというハプニング(?)もあったが、無事撃破することに成功する。

 

 

 この後、様々な思惑もあり、第四の使徒を撃破したエヴァンゲリオン初号機と、そのプロトタイプ、零号機が仲間に加わった。

 もちろん、パイロットの二人&葛城ミサトも。

 

 使徒が何者なのか。なにが目的なのか。それらのことは全く説明されなかった。

 唯一明かされたのは、使徒が目指す先場所に到達した時、未曽有の大災害が起き、人類は滅亡するということだけだった。

 

 その目的が明らかにされるのは、もう少し先の話である。

 

 

────

 

 

 トゥアハー・デ・ダナン。

 ミスリル司令部。

 

 

テッサ「特務機関NERV(ネルフ)ですか」

 

カリーニン「まだ機能していたのですね」

 

テッサ「知っているのですか?」

 

カリーニン「正しくは、その背後。出資している機関の方ですね」

 

 

 カリーニンはかつて一度ミスリルを離れ、敵対した組織アマルガムに所属していたことがある。

 

 そこは地球の裏に潜んでいた巨大な死の商人、ロゴスの後継組織であった。

 そのロゴスが滅ぶ時、多くの甘い汁を吸っていた有力者も滅ぶ。

 

 その中にこのネルフを裏で差配してきた組織、ゼーレもふくまれおり、その構成員も滅びたはずだった。

 

 それゆえ、その下部組織であるネルフも機能不全に陥っていると考えていたようだが、そうではなかったようだ。

 

 

カリーニン「なんとか生き延びていたのか、なんらかの手段で死を偽装したのか。いずれにせよ、ゼーレの方も生きていると考えた方がよさそうですね」

 

 

 ちなみにだが、その死んだと思われた最高幹部達は、身体を捨て、電脳化して生き永らえている。

 

 

テッサ「ネルフの目的は使徒の撃退にあるとして、そのゼーレの目的は?」

 

カリーニン「人類補完計画。というものを考えているとか。私も名前だけで、詳細はわかりません」

 

テッサ「……名前からではどのような計画か判別できませんね」

 

カリーニン「調べてみましょう」

 

テッサ「いずれにせよ、使徒もゼーレも一筋縄ではいかない相手のようですね……」

 

 

──おまけ──

 

 

 セカンドインパクトについて。

 エヴァンゲリオン新劇場版原作において未曽有の大災害を引き起こしたセカンドインパクト。この世界でも、それにあたるものは15年前に発生している。

 

 ただ、被害は地球の環境が激変するほどではなく、南極にあった遺跡が犠牲になったのみにおさえられたようだ。

 そうなった詳しい理由は不明だが、この時期にはすでにフューリーの先発隊である統夜の父、エ=セルダや、狂気の天才、メイオーの木原マサキが全盛期でいた時代なので、環境の激変を嫌った誰かが被害をおさえる行動を起こした可能性は否定できない。

 

 

──その名はギャンドラー──

 

 

 Qパーツ。

 最近突然発見された、高エネルギーを内包したオーパーツである。

 

 今のところ四つ見つかっており、それらは各国の研究所でバラバラに研究されていた。

 

 そのうちの一つ。日本の研究所にて、今回の話ははじまる。

 

 高いエネルギーを持ち、それをとりこむことですごい力を発揮できるとなれば、バイオネットなどのコネクションに狙われた。

 世界情勢が混沌としてきた今、再び狙われる可能性が考えられ、研究所には護衛がついた。

 

 コスモレンジャーJ9。

 

 アムロの護衛を終えた彼等の次の仕事とは、研究所で研究されるQパーツを護衛することだったのだ。

 

 

キッド「暇だなー」

 

お町「暇ねー」

 

ボウィー「おれちゃん達がいるから、むしろ誰も来ないんじゃないのー?」

 

アイザック「それならそれでよいことだろう」

 

 

 J9は裏社会で名の売れた始末屋である。

 その彼等が護衛しているとわかれば、小悪党はおろか大悪党さえ諦めるほどだ。

 

 アムロの時はアムロがそこにいるというのが極秘であったため、J9がいることも秘密であったが、今回は違う。

 逆に彼等の名を前面に押し出し、外へのけん制としているのである。

 

 その名はてきめんで、こうして彼等は暇をしていることになったのである。

 

 

ボウィー「あーあ。このままじゃ腕がなまっちゃうよ。誰か来ないものかなー?」

 

 

 びーっ。びーっ。

 

 侵入者を知らせる警報が鳴り響く。

 

 

キッド「……」

 

お町「……」

 

ボウィー「冗談だったのに……」

 

お町「予想通りとはいえ、今の会話のあとだと、あまりよい気がしないわね」

 

キッド「まあ、気にしてもしかたがないさ。お仕事お仕事」

 

アイザック「……おかしい」

 

お町「どしたの、アイザック?」

 

アイザック「今回の侵入者。一筋縄ではいかんやもしれん」

 

お町「ちょっとやめてよ。仕事の前に不吉なこと言うの」

 

 

 アイザックの予測は当たった。

 

 凄腕の始末屋とはいえ、彼等は人間。

 プロの傭兵にもまけない実力者ではあるが、今回ばかりは相手が違った。

 

 攻めこんできたのは、鋼の体をもつ生命体。

 宇宙犯罪組織『ギャンドラー』だったのだから。

 

 その鋼の体に並の銃は通じず、戦うならば同じ鋼の巨体を持ち出すしかない。

 しかし研究所内でバズーカをぶっ放すわけにも、30メートルを超えるブライガーに乗るわけにもいかなかった。

 

 今この状態でギャンドラーの妖兵コマンダーに対抗するには、人知を超えた修行を積んだ格闘家か、サイボーグでもなければ難しかっただろう。

 

 

アイザック(これはいかんな。Qパーツはともかく、研究所の放棄は視野に入れた方がよいかもしれん)

 

 

 このような存在が来るとわかっていれば、生身でも相応の対処がとれるよう準備をしておく男だが、今回は違う。

 さすがのJ9も、困ることはある。

 

 それでも仕事はきっちりこなす予定なのは流石だが。

 

 最後の手段もやむなし。そう考えたその時だった。

 

 

???「まてい!」

 

デビルサターン1「ま、まさか!」(6体合体してデビルサターン6になる。分離しているので研究所にたやすく乗りこめた)

 

 

 逆光をお供にやってきたのは頼れるあの男。

 ロム・ストール!

 

 さらに今回はロムだけでなく、彼の仲間でもあるブルー・ジェット、ロッド・ドリル。妹のレイナ・ストールとそのお供、トリプル・ジムも一緒だった。

 

 一瞬その登場にJ9も面食らったが、敵ではないと判断し、その助っ人を最大限有効利用する。

 戦力さえ整っていれば、J9も一騎当千の戦士。

 

 ロム達と共に攻勢に転じ、侵入したギャンドラーは研究所の外へとたたき出された。

 

 

 ちょうどその時、襲撃の一報を聞いたロンド・ベルも現れる。

 

 

ショウ「こいつらあの時の!」

 

デビルサターン1「おのれぇ! こうなったら研究所なんぞ破壊して、それからお宝を奪ったるわ!」

 

 

 外で待機していた大型の妖兵コマンダーを呼び出し、さらにデビルサターンも六鬼合体を行う。

 

 

デビルサターン6「ワイ等が合体して、デビルサターン6や!」

 

豹馬「が、合体した!」

 

デビルサターン6「ワイ等は6体。そっちは5体。ワイ等の勝ちやな!」

 

豹馬「ま、負けた……」

 

十三「いや、なにではりあっとんねん」

 

ちずる「豹馬……」

 

 

 さらに研究所からJ9の乗るブライガーと、ケンリュウと合身したロムとその一行が姿を現す。

 

 

忍「あいつは……!」

 

ブライト「今回こそ何者なのか、話を聞かせてもらおう。終わってからな」

 

忍「わかってるよ」

 

 

 ギャンドラーの前には研究所から出たJ9とロム一行。後ろには救援に現れたロンド・ベル。

 すでに挟み撃ち状態になっていたギャンドラー一行に、勝ち目はなかった。

 

 

デビルサターン6「今回は偵察ってやつに来ただけや。覚えとれー!」

 

 

 と、彼等はあっさり撃退されるのだった。

 

 

 戦闘後。

 

 

ブライト「さて、そろそろ君達が何者なのか、話してもらえるか?」

 

ロム「そうだな。奴等も本格的に活動をはじめたようだ。君達にならば話しても大丈夫だろう」

 

ジェット「いいのか、ロム?」

 

ロム「ああ。お前達がここに来るまで、剣狼の導きで彼等とは何度か共闘した。彼等ならば信頼できる」

 

ドリル「お前がそう判断したのなら、いいんじゃないか」

 

 

 まず、ロム達は自分達が何者なのかを語った。

 彼等はクロノス星よりやってきた、鋼の体を持つマシンロボ。

 

 ロムとレイナはクロノス族。

 ブルー・ジェットとトリプル・ジムはジェット族。

 ロッド・ドリルはバトル族。

 

 ロム達は天空宙心拳の使い手であり、先ほど研究所を狙った宇宙犯罪組織ギャンドラーが狙うあるものを守る使命を帯びている。

 そのため、それを守るため地球へやってきたのだという。

 

 

ミサト「そのあるもの、とは?」

 

ロム「無限の命を司るとされるエネルギー源。我々はハイリビードと呼んでいる」

 

ドリル「奴等は伝説を聞きつけ、地球に眠るそれを狙い、この地にやってきたのさ」

 

剣人「なんで地球に眠っているのに、そっちの星で伝説とか、守る使命とかになってんだ?」

 

ジェット「それには理由がある」

 

ロム「かつて、ある星系が死を迎えようとした時、ある水の惑星に眠る力を持ち帰り、その星系を救ったという言い伝えがある。その力の源が、ハイリビード」

 

統夜「地球から別の星になにかを持って帰った……」

 

忍「どこかで聞いたことある気がするな……」

 

マオ「火星の遺跡ね」

 

甲児「ああ、グラドスの!」

 

 

 火星に残されていた遺跡。

 それは何万年もの昔、星の危機に瀕した古代グラドス人が地球にやってきた証であり、地球よりなんらかを持ち帰り、自身の星を救ったという証拠だった。

 

 そのなにかがきっかけとなり、地球とグラドスのルーツが同じということになったのである。

 

 そうして星を救った力。

 それが伝説となり、いつしか宇宙に広まったのだ!

 

 

ロム「それがハイリビードの伝説。奴等宇宙犯罪組織ギャンドラーは、それを手にすることが目的だ」

 

ドリル「もちろんそれが最終目的だが、途中にお宝を手に入れるというのも忘れないだろう」

 

ブライト「なるほど」

 

つばき「でもそれだと、それはもうそのグラドスってところに持っていかれて、地球には残ってないんじゃ?」

 

ロム「そうじゃない。彼等が持ち帰ったのは、その力のほんのひとかけら。それで一つの星系が救われた。ゆえに、ハイリビードの本体を手に入れれば、無限の力が手に入ると言われる理由なんだ」

 

剣児「確かにそれなら、とんでもないことだな」

 

 

 これで彼等が共に戦っても自分達の目的を明かさなかったのも納得ができた。

 下手に事実を知らせれば、今度は知った者がハイリビードを欲する可能性があるからだ。

 

 

ミサト「私達は信頼に値すると判断してもらえた。と?」

 

ロム「ああ。君達なら、共に地球も、ハイリビードも守れる」

 

ブライト「ともに戦おうということか?」

 

ロム「ああ。ギャンドラーの魔の手からだけでなく、それ以外からもこの星とハイリビードを守るには、君達に力を貸すのが一番と感じた」

 

 

 もちろん大歓迎である。

 新たな敵が増えた分、新たな味方は貴重なのだから。

 

 

シャナ=ミア「ハイリビード……」

 

統夜「どうしたシャナ=ミア?」

 

シャナ=ミア「名前は違いますが、私はそれに、心当たりがあるかもしれません」

 

ロム「なにか知っているのか?」

 

シャナ=ミア「はい。その伝承から考えて、それはかつて、私達フューリーが地球へまいた生命の種。新たに命を生み、命を育てる生命の源のことかもしれません……」

 

 

 シャナ=ミアの言葉を聞き、第一次地球圏争乱に参加していた者達はそういえばと手を叩いた。

 

 改めて説明することになるが、シャナ=ミアや統夜が半分属する種族、フューリーは今から四十億年近く前にこの地球へやってきた異星人である。

 まだ溶岩の塊でしかなかった地球に命の種をまき、それが実るまで眠りについていた。

 

 それからの経緯は第一部を改めて読んでもらうか、思い出してもらうかしてもらうが、効果を考えれば、その時地球へまいた命の源。それがイコール、ロム達がハイリビードと呼ぶ不死さえ可能とする無限のエネルギーであっても不思議はないのだ。

 

 

シャナ=ミア「もっとも、地球にそれを降ろしたのはフューリーですが、今、それが地球のどこにあるのか。それはわかりません」

 

小介「もう四十億年以上前の話ですからね。地球の内部もどれだけ動いているか、予測もつきません」

 

ジュドー「でも、ただの伝説ってわけじゃなく、実物がホントにあるのは確かってことか」

 

シャナ=ミア「はい」

 

ロム「どうやら君達に話したのは間違いではなかったようだな。剣狼の導きに間違いはなかった」

 

 

 ロムは大きくうなずいた。

 

 

テニア「ところで、剣狼に導かれたっていうけど、剣狼って、なに?」

 

 

 当然の疑問でもあった。

 

 剣狼とは、ロム・ストールが父キライ・ストールから受け継いだ剣のことであり、天にかざすことによりケンリュウやバイカンフーを召喚し、合身することができるものなのだ。

 この世にただ一刀しかなく、時を超え、次元を超えて存在し、多くの勇者を導き、奇跡をもたらしてきたと言われている。

 

 ハイリビードを守る一族に伝わるものであり、そのために勇者を導いてくれるのである。

 

 ゆえに、ガウルンと戦う統夜達の前に現れ、多くのピンチを救ったのである。

 

 

アイザック「元の持ち主がいるというならば確認しておこう。Qパーツと呼ばれるものとハイリビードは違うものなのだな?」

 

シャナ=ミア「はい。Qパーツも大きなエネルギーを秘めていますが、命を生むものとは性質が違うと思います。それがなんなのかまではわかりませんが」

 

凱「別なのか」

 

ルネ「余計に守らなけりゃならないものが増えたってことでもあるね」

 

アイザック「ならばまだ、研究が必要ということになるな」

 

 

 やれやれと、アイザックは肩をすくめた。

 

 ここで襲われたQパーツは一度、別の場所へ送られることになった。

 ほとぼりが冷めるまで、しばらく隠しておこうということである。

 

 ゆえに、J9がいては逆に目立ってしまうため、その護衛はお役御免となり、彼等はそのままロンド・ベルと合流することになった。

 

 

ミサト(命の源……まさか、ね……)

 

 

 話が終わった後、ミサトはなにかを思う。

 だが、確信もなにもない上、最重要の機密のため、それを口には出せなかった。

 

 

 なにはともあれ、ロム一行とJ9が仲間に加わった!

 

 

──フューレイム──

 

 

シャナ=ミア「そういえばトウヤ」

 

統夜「うん?」

 

シャナ=ミア「ロムさん達が言ったハイリビード。まだそれと同じとは限りませんが、フューリーが生命を生むために地球に降ろしたそれは、元々、グランティードの頭部に納められていた神核なんですよ」

 

統夜「そうなのか?」

 

シャナ=ミア「はい。フューリーの世界を作ったとされる創世神フューレイム。その力そのものと言われる結晶。世界さえ生み出すと言われた命の力。それが、地球におろされた生命の源の正体です」

 

統夜「じゃあ、グランティードを使えば、それを探せるのか?」

 

シャナ=ミア「いえ。グランティードそのものは一度破壊されています。神核は回収したようですが、それ以外はすでに元のものではありません。なにより、地球にはその力が満たされている状態ですから……」

 

統夜「ああ。探そうとしても、地球そのものが反応してしまうってことか」

 

シャナ=ミア「はい。神核が残っているなら、その存在を認識できれば、グランティードの収まるべき場所に、戻すことは可能でしょうが……」

 

統夜「結局見つけないと意味がない。か」

 

シャナ=ミア「そうなりますね」

 

統夜「なら、地道に手がかりを探すしかないな。まあ、見つからない方が平和かもしれないけど……」

 

シャナ=ミア「そうですね。見つかってしまった方が逆に大変かもしれませんから」

 

統夜「そういえば、もし見つかって、それを地球からとったら、この星は大丈夫なのか? これがあるから、本体そのものは残していったのかもしれないし」

 

シャナ=ミア「それは大丈夫でしょう。地球はすでに一つの命として芽吹いています。それが失われても、この輝きが失われることはありません。きっかけとしての役目は、もう終わっていますから」

 

統夜「それを聞いて安心した。何事もないのが一番だけど、いざという時があるからな」

 

シャナ=ミア「そのようなことが起きないよう、努力するしかありませんね」

 

統夜「そうだな。そうならないよう頑張ろう」

 

シャナ=ミア「はい。がんばりましょう!」

 

 

 二人は顔を見合わせ、ふふっ。と笑った。

 

 

──ムゲ帝国所属ザール艦隊登場!──

 

 

 地球連合軍だけでなく、バイストン・ウェルの軍勢にデュナンの子を名乗る軍勢まで現れ、ネオジオン・ムゲ帝国同盟の地球侵略は思うように進んでいなかった。

 アフリカ大陸を得たものの、そこから先は三つ巴の争いとなり、様々な場所で戦いを繰り広げるだけにとどまっている。

 

 それゆえ、地球侵攻を進めるため、ムゲ帝国側も本格的に人員を派遣することを決めた。

 宇宙で情勢を見守っていたムゲ帝国所属ザール艦隊が動いた。

 

 地球へ降下するザール艦隊。

 地球侵略軍総司令官クロッペンがロンド・ベルの前に現れた。

 

 改めて宣戦布告をし、一応の降伏勧告を行うクロッペン。

 もちろん、これに従うとは敵も味方も思ってはいない。

 

 統夜達はその勧告を拒絶し、クロッペンの顔見せとなる戦いがはじまった。

 

 

 途中、第五の使徒と呼ばれる怪物の乱入により、ザール艦隊はロンド・ベルをそこに残し撤退してゆく。

 

 

 使徒という怪物。さらに自分達相手に互角に戦い抜いた戦いぶりを見て、クロッペンはロンド・ベル隊は手ごわい相手であると再認識する。

 

 

クロッペン「宇宙で見た時より、さらに手ごわくなっている。たやすく地球は手に入らぬようだな」

 

 

 彼は、先行して地球に降りたネオジオンも利用し、地球侵略を進めることを決める。

 そこで、ハマーンから新しい道具がクロッペン側に貸し出されることになる。

 

 ネオジオンが作り上げた、巨大モビルスーツ、サイコガンダムマークⅡとそのパイロットとなるクローン兵。プルツーを。

 

 

クロッペン「ふん。クローンか。宇宙でよこしたのはまるで使えなかったではないか」

 

ハマーン「あれより戦闘用に調整してある。それに、サイコガンダムを動かすための駒が必要だろう。そちらに無駄な損失を与えぬためですよ。司令官殿」

 

クロッペン「コックピットに座る戦闘用のパーツということか。まあ、クローンはしょせん道具。よかろう。存分に使いつぶしてくれる。行くぞ」

 

プルツー「……」

 

 

 こうしてネオジオンの戦力も加え、クロッペンは地球侵略に本腰を入れる。

 

 部下とさらにハマーンより預けられたプルツーとサイコマークⅡを使い、連合を粉砕するのだ。

 

 クロッペンもその部下もクローンであるプルツーを道具のようにしか思っていない。いかようなことがあろうと、また生産される生体パーツ程度なのだ……

 

 

 一方。

 

 

マシュマー「地上の制圧、奴等に任せてしまってよろしいのですか?」

 

ハマーン「かまわん。やりたいというのだ。好きにさせよ」

 

マシュマー「これ以上は、我々の立場が……」

 

ハマーン「問題ない。奴等に期待することは、連合軍を消耗させること。勝つことなどはなから求めていない」

 

マシュマー「奴等では、ロンド・ベルには勝てぬと?」

 

ハマーン「そういうことだ。無駄に我々が消耗することはない。しばしの時を待ち、すべてが消耗したところで我等がのみこむ。それまではすべて好きにさせればいい」

 

 

 ハマーンは気づいていた。

 最初の降下作戦で地球を制圧できなければ、あの部隊が再結成されると。

 

 二度の争乱を裏から勝利に導いた一つの部隊。

 

 それを打ち破るのはたやすいことではない。

 

 

ハマーン「せいぜい、我等の露払いとして活躍してもらうとしよう」

 

マシュマー「はっ!」

 

 

 クロッペンが去った扉を見て、ハマーンはにやりと笑った。

 

 しょせんはひと時の同盟。

 いずれは目指すものの違いから対立するのは目に見えている。

 

 それが双方勝手に潰しあってくれるのだ。わざわざ邪魔をする必要もなかった。

 

 

 新たに現れた多くの新勢力。

 

 これより、本格的な戦いがはじまる。

 

 

 第8話 終わり



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第09話 デビルガンダムの行方

 

──託された希望──

 

 

 第六の使徒(ラミエル)が現れたことに対応し、出撃しようとした初号機だったが、地上に現れるのにあわせて第六の使徒から狙撃され、大破する羽目になってしまった。

 

 第三新東京市の防御ビルをあっさり貫き、初号機のATフィールド、装甲をものともせずダメージを与えたそのパワーから、どの機体がくらってもまともに耐えられない威力と判明する。

 超火力&超射程の荷電粒子砲に対処するため、一度作戦を立て直すこととなった。

 

 協議の結果、使徒の射程を上回る距離から、ポジトロンスナイパーライフルによる超遠距離射撃ということになり、日本中の電力を集め、相手の射程外からATフィールドをぶち破り、撃破することになった。

 

 一度はエヴァに乗ることを拒絶するシンジであったが、多くの人の言葉と、戦う理由を知り、再びエヴァに乗ることを決意する。

 

 

剣児「よう、シンジ。ちょっと話いいか?」

 

シンジ「剣児さん?」

 

剣児「ああ。いきなりなにもわからず乗せられた者同士、少し話をしようぜ」

 

シンジ「え? 剣児さんも、そうだったんですか?」

 

剣児「おう。いきなりだぜ。怪物が出たら、神社に来いって言われてよ」

 

シンジ「……」

 

剣児「そうやって、否応なく戦いにまきこまれたのは俺だけじゃねえ。ジュドーも、剣人もそうだ。先輩の統夜だって似たようなもんだって聞いたぜ。それに、お前はまだましかもな。あの人や、アムロはまきこまれる時に、親父がいなくなってる」

 

シンジ「え?」

 

剣児「みんな、いろんなもん抱えて戦っているのさ。でも、乗るのが嫌になるってのは否定しねえよ。お前は優しいからな。辛いのもわかる。だから、強制はしない。あとは俺達に任せてくれてもいい。なに、どうにかなるさ。俺のマッハドリルがあるからな!」

 

シンジ「……」

 

剣児「じゃ、俺は先に行く。待ってるぜ」

 

シンジ「……」

 

シンジ(みんな、勝手だ。でも。でも僕は……)

 

 

 悩み、悩んだシンジは、待つ仲間の前に姿を現し、初号機に乗りこんだ。

 

 

 こうして、ヤシマ作戦の決行時間が迫る。

 

 相手は目的地とされる第三新東京市の地下にあるジオフロントを目指し、下部から突き出したボーリング装置を掘り進ませている。

 それが地下へ到達する前の深夜0時が、作戦の決行時間である。

 

 その瞬間が迫ったその時、空間を引き裂いてデュナンの子が現れた。

 

 

健一「ジュエリオン!?」

 

ジュエリオン「ふふっ。聞いたぞ。それがそのまま進むと、人類は滅亡するのだろう?」

 

豹馬「なにをしに来た! お前は健一から狙うんじゃないのか!?」

 

ジュエリオン「ああ。狙うさ。だが、お前を邪魔した結果、人類が滅ぶというなら願ったりだろう!」

 

豹馬「ちっ。そうきたかよ」

 

十三「そりゃ、人類が滅ぶのみたけりゃ邪魔しない手もないわな」

 

剣人「ええい。こんな時に!」

 

鉄也「いいか、シンジを守れ。俺達がなぜここにいるのか、わからせてやる!」

 

剣児「おう。シンジ。お前は撃つことだけを考えればいい! こっちは任せろ!」

 

シンジ「は、はい!」

 

 

 シンジの乗るエヴァンゲリオン初号機を狙い、デュナンの子が攻撃を仕掛ける。

 それからポジトロンスナイパーライフルを守るため、ロンド・ベル隊はその防衛に入った。

 

 第六の使徒の射程に入れば容赦なく砲撃されるという状況の中攻撃をしのぎ、いよいよ強力な電力を集めた一撃が放たれた。

 

 

 ゴッ!!

 

 

ミサト「や……ってない!」

 

マヤ「外れました!」

 

 

 砲撃同士が干渉したのか、一撃目は使徒からそれ、外れてしまった。

 

 スナイパーライフルは砲身を冷却するため、次を撃つまでしばらくの時間がかかる。

 その短いながらも長いチャージタイムを、敵は見逃してくれない。

 

 デュナンの子がさらなる猛攻を仕掛け、この作戦を失敗させようとする。

 が、それを許す統夜達ではない。

 

 

ブライト「予定を前倒しにする。防御シフトだ!」

 

凱「おう!」

 

 

 万一第一射を外したことも想定済みであった。

 第二射までに、相手が撃ち返してくることも考え、射手であるシンジを守るため、零号機の盾だけでなく、バリアを持つ機体が初号機を守るよう配置されていたのだ!

 

 

凱「うおぉぉぉ! 第一弾、プロテクトウォール!」

 

チャム「いっけー! 第二弾、オーラバリアー!」

 

ショウ(頭の上で言うならまあいいか)

 

アル「第三弾、ラムダ・ドライバにございます!」

 

宗介(なぜ今回だけ無駄に音量を上げる。他と同じく気合を入れたのか?)

 

 

 同じ妖精枠として対抗したからとは言えない。

 迫るデュナンの子からの攻撃に、バリアを重ね防御してゆく。

 

 

シンジ「みんなっ!」

 

凱「大丈夫だ。君は狙いをつけることだけを考えろ! 俺達が、絶対に守る!」

 

シンジ「は、はい!」

 

ジュエリオン「……身をていして守る、だと!」

 

 

 すべての攻撃からシンジを守り、陽電子砲の再チャージが完了した。

 

 

日向「第2射、いけます!」

 

マヤ「射撃用諸元、再入力完了。以降、誤差修正はパイロットの手動操作に任せます!」

 

青葉「目標に再び高エネルギー反応!」

 

ミサト「まずいっ……!」

 

 

 二射目を放とうとした瞬間、第六の使徒からも初号機にむけての砲撃が放たれた。

 バリア担当は予定と違い、周囲からの攻撃を防ぐのに使われている。

 

 そうして広げた分強度が弱まり、威力を軽減はすれど、その一撃は殺しきれず、初号機へ届かん勢いだった。

 

 唯一直接荷電粒子砲から初号機を守れたのは……

 

 

シンジ「綾波っ!」

 

レイ「……」

 

 

 とっさに間に入れたのは、唯一フリーで盾を持っていた零号機だった。

 

 

シンジ「早く、早く!」

 

 

 ぶれる照準を必死に合わせ、シンジは引き金を引いた!

 

 

 激しい閃光と共に、スナイパーライフルから放たれた弾丸は、第六の使徒を貫く!

 

 断末魔と共に砕け散るそれ。

 

 

 第六の使徒殲滅がなった瞬間であった。

 

 

シンジ「みんな!」

 

ショウ「全員大丈夫だ」

 

宗介「よくやった」

 

シンジ「綾波は!?」

 

レイ「大丈夫よ。ダメになったのは、盾だけ……」

 

シンジ「よかった。綾波も、無事だ……」

 

レイ「ごめんなさい。こんな時、どうすればいいか、わからないの……」

 

シンジ「笑えばいいと思うよ。みんなと同じように」

 

凱「ああ。その通りだ」

 

レイ「……」

 

 

 綾波レイは、シンジへ微笑んだ。

 

 

ジュエリオン「……」

 

健一「ジュエリオン。見たか、あの姿を。今の守りあう姿を見て、君はなにも感じないか?」

 

ジュエリオン「……ふん。興がそがれたわ」

 

 

 そう吐き捨てるように言い、新たな兵を出すことはなく、彼女の姿は消えた。

 残ったのは、最初に出したデュナンの子のみ。

 

 それを掃討し、この作戦は終了するのだった……

 

 

──燃ゆるホンコン──

 

 

 ホンコン・シティ。

 ユーラシア大陸の東の端に突き出た天然の深い港湾を抱える自由貿易地域である。

 

 今回統夜達ロンド・ベルはデビルガンダム細胞の行方を追うドモン一行からの連絡を受け、ここに来ていた。

 

 ドモン達の調査の結果、このホンコン・シティで行われる闇オークションにデビルガンダム細胞が出品されるとの話があるとわかり、その摘発への協力と、万一に備えての協力要請があったのだ。

 

 上層部の協議の結果、ホンコンのコネクションが行う違法オークションを摘発する際、シャッフル同盟が協力し、本当にデビルガンダム細胞があった場合の万一に備え、ロンド・ベルが控えるということになった。

 

 

ルネ「摘発というと、私の出番だね」

 

 

 対特殊犯罪組織シャッセール所属のルネにより、国際的な警察権の行使が可能となる。

 そこにシャッフル同盟とミスリルの陸戦隊。さらにウルズチームの三名も加わり、マシンロボの一行も控える万全の態勢と言ってよかった。

 ぶっちゃけ生身だと過剰と言ってもいい。

 

 摘発は、デビルガンダム細胞が出品され、現物が確認された時。

 

 

ブライト「わざわざオークションがはじまるのを待つんですか?」

 

大河長官「理由は二つある。その闇オークションを取り仕切り、デビルガンダム細胞を手にしている可能性があるのは、ホンコン・シティのトップであるウォン・ユンファだからだ」

 

ブライト「ホンコンを取り仕切っている男ですか。それは簡単に手は出せませんね」

 

テッサ「デビルガンダム細胞という目玉商品を出すならば、本人もやってくるでしょう。そこを、捕らえたいそうです」

 

大河長官「明確な証拠を示せなければ、しらを切られる可能性もある。それだけは避けねばならないからね」

 

 

 その上、オークションが開催されればデビルガンダム細胞は確実にこの地に運ばれ、ありかを示される。

 現行犯はもちろんのこと、デビルガンダム細胞がどこに保管されているのかを確認するためでもあった。

 会場ならば現物を見せるだろうし、モビルスーツ形態になっていたとしても、どこかでデモンストレーションを行うはずだ。

 どこにあるのかがわかれば、回収も容易になるというわけだ。

 

 保管場所。もしくはデモンストレーション会場がわかれば、即座に突入だ。

 

 

凱「二つ目の理由は?」

 

大河長官「もう一つは、それほどの代物が出品されるとなれば、コネクションの連中も多く現れるということだ」

 

ブライト「どういうことですか?」

 

アイザック「こちらから説明しよう。どうやらドレイク軍は裏社会にはびこるコネクションの支援を受け、活動を広げているようだ」

 

ブライト「なんだって!?」

 

アイザック「君達と死闘を繰り広げたあのガウルン。ヤツが懸け橋となり、武器や食料などを融通してもらっている」

 

大河長官「そういうことだ。異界よりやってきた彼等が地球を不自由なく飛べるのも、支援者がいるからだ。今回のオークションは、その支援者となるコネクションも参加する。その者達をうまく捕まえることができれば、間接的にドレイク軍も弱体化させられるということなのだよ」

 

ブライト「なるほど……」

 

大河長官「もちろん、一番の目的はデビルガンダム細胞の確保だ。それ以外は、逃がしてもなんとかなる」

 

テッサ「逆に言えば、むこうもデビルガンダム細胞の確保だけは避けようとしてくるでしょう。その気になればあれ一つで、自滅覚悟の大逆転も可能な代物ですから」

 

ドモン「その通りだ」

 

 

 気を引き締めなければならない。

 統夜達は大きくうなずいた。

 

 そして、闇オークションに潜入し、デビルガンダム細胞が出品されたことを外に伝える者が必要である。

 

 その役目は、裏でも名が通るJ9が務めることになった。

 彼等の合図とともに、先ほどの最強摘発チームがなだれこむのである。

 

 

プル「潜入捜査! かっこいい!」

 

 

 一部の子供達に潜入捜査という単語が刺さりまくり、目をキラキラさせたが、遊びではないので連れて行ってもらえるわけはなかった。

 さすがに今回はアーガマにて機体に乗り万が一に備える役回りである。

 

 絶対抜け出していこうとするので、厳重な監視つきで。

 

 

プル「ちえー」

 

ジュドー「オークション、行きたかったな」

 

 

 無事、配置につき、J9がオークションへ潜入する。

 

 その闇オークションにはそうそうたるコネクションの面々がそろう。

 この面子だけで、今回のそれに相応の品物が出品されることがわかった。

 

 オークション会場には、ガウルンの姿もあった。

 

 アイザックからの報告に、宗介は銃の弾数を確認する。

 

 

マオ「やる気?」

 

宗介「ヤツを捕縛することは不可能だ」

 

クルツ「確かにな」

 

 

 最後に現れたのは、このホンコン・シティのトップ、ウォン・ユンファ。

 ホンコンを支配する彼が現れたことで、ここにデビルガンダム細胞が出品されるという話の信憑性がさらに高まる。

 

 こうして、そうそうたる面子をそろえ、闇オークションがはじまった。

 

 

 オークションそのものは、滞りなく進んでゆく。

 

 ついに今回の目玉。デビルガンダム細胞のお披露目となったその時。ホンコン・シティに激震が走った。

 

 

 警報が鳴り響く。

 

 このタイミングで、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍がホンコン・シティに攻めこんできたのだ。

 

 

 ムゲ帝国の機体に混じり、上空より降り立つ巨大な黒いガンダム、サイコガンダムマークⅡ。

 その出現のおかげでオークションは続行不能となり、その時点で摘発チームは突入。参加者の逮捕を優先した。

 

 外の襲撃も気にはなったが、ここで捕らえねばならない者も多かったからだ。

 

 しかし、デビルガンダム細胞のありかはわからず、その所有者とされるウォン・ユンファには逃げられてしまう。

 もちろん、混乱に乗じてガウルンも宗介からの逃走を成功させる。

 

 

ガウルン「あーあ。デビルガンダムが手に入れば、愛しのカナメちゃんを核にしてやろうと思ったのによ」

 

宗介「今度こそ終わりだ」

 

 

 追い詰め、引き金を引こうとしたその瞬間。運悪く二人の間を遮るよう天井が崩れ、通路がふさがれてしまったのだ。

 

 

ガウルン「悪いなカシム。ツキはまだ俺の方にあるようだ」

 

 

 ガウルンの声だけが響き、ヤツはそのまま去ってゆくのだった。

 

 

宗介「くそっ!」

 

 

 そして外では、ニュータイプ達の新たな邂逅が起ころうとしていた。

 

 ホンコン・シティに現れたサイコガンダムマークⅡ。

 それを見た瞬間、ニュータイプの少年達はそこにいる少女の存在を感じとる。

 

 

ジュドー「これは……!」

 

アムロ「この感じは……」

 

プル「え?」

 

ジュドー「プル?」

 

プル「ゾクッとした! 嫌な、嫌なものが、来る……!」

 

 

 ムゲ帝国の機体に混じり、クロッペンと共に現れた巨大なモビルアーマー。

 そこに大きな力を感じるニュータイプの少年達。

 

 特にプルは、なぜか大きな嫌悪感を感じた。

 

 出撃の命令を待たずアーガマを飛び出すプル。

 続いて、ホンコン・シティを守るため出撃するロンド・ベル。

 

 彼女は一目散に、現れたサイコガンダムへと飛び進んでゆく。

 

 ジュドー達は、なかば暴走したプルを追う。

 

 

 ぶつかりあうサイコガンダムマークⅡとキュベレイマークⅡ。

 

 その瞬間、二人のパイロットに衝撃が走った。

 

 

プル「なに、これ!?」

 

プルツー「なんだ、この感じ。このざらつきは!」

 

プル「ねえ。あなたは、あなたは誰なの!?」

 

プルツー「っ!? 誰だ。私の心に触れてくる奴は!」

 

プル「わたし!?」

 

プルツー「わたしだと!?」

 

 

 互いの存在を感じとり、驚く二人。

 互いにクローンという存在であったが、その存在を知るのは初めてのことだった。

 

 

プルツー「気持ちが悪いの、消えちゃえ!」

 

 

 広義の意味で同一人物である二人の攻撃は、互いがどこを狙っているかがわかるかのように、ぶつかりあい、相殺されてゆく。

 

 

プル「なんでわたしのすることがわかるの!?」

 

プルツー「それはこっちのセリフだ! 不愉快な奴め!」

 

ジュドー「なんだこの感じは」

 

アムロ「ジュドー、わかったぞ。あれは、プルだ。もう一人のプルなんだ!」

 

ジュドー「どういうことさ!?」

 

ムウ「そうか。クローンだ! だから、互いの存在がわかる!」

 

 

 通信を聞いたムウが答えた。

 

 そう。彼には同じ人間がもう一人いるという経験があった。

 ゆえに、すぐにわかった。

 

 

プルツー「クローンだって!? あたしの!?」

 

プル「わかった。だからなの。あの子は、わたしのいっとう激しところを持った子だ。聞いて、わたしは、エルピー・プル。あなたは!」

 

プルツー「うるさい! お前の声など聞きたくない! 不愉快だ!」

 

プル「わかるよ。人はね自分を見るのが不愉快なの。でもね、自分自身をやめることはできないの! お願い話を聞いて!」

 

プルツー「うるさい。うるさい! わたしはプルツー。お前じゃない!」

 

 

 巨大な機体の姿が変わる。

 モビルアーマー形態からモビルスーツ形態へ。

 

 本当のサイコガンダムマークⅡの姿が、そこに現れた。

 

 

シン「変形した!?」

 

ルナマリア「なんだ、ガンダム!?」

 

プルツー「サイコガンダムマークⅡだよ!」

 

 

 しかし、動きに精彩を欠き、頭痛を訴えた彼女はホンコン・シティで暴れるだけ暴れて撤退してゆく。

 

 

クロッペン「ちっ。しょせんはクローンか。もう少し役に立つかと思えば。撤退する!」

 

 

 彼女の撤退と共に、戦線が崩れたのを認識すると、クロッペンも隊を下げた。

 

 こうして、ホンコン・シティの戦いは終わる。

 

 

 闇オークションに集まったコネクションの面々を捕らえることには成功したが、その主催者。ホンコン・シティを差配する黒幕、ウォン・ユンファと最大の目的であったデビルガンダム細胞の存在を確認することはかなわなかった。

 

 唯一の収穫は、ここからドレイク軍に新たな兵器が回るということがなかったことくらいだろう。

 

 闇オークション主催の現行犯をおさえられたウォンは国際指名手配されることとなり、その栄光は終わりを告げた。

 追われる身となった彼がなにをするかは……

 

 

 ゴゴッ。

 

 

 戦いも終わり、一息ついたところで、大地が揺れた。

 

 それはまだ、ホンコンでの戦いは、終わっていない証だった……

 

 

──デビルガンダム、再び──

 

 

ブライト「なにが起きた!?」

 

トーレス「異常なエネルギー反応を確認」

 

サエグサ「場所は、ランタオ島です! 反応は、デ、デビルガンダム!?」

 

ブライト「なんだと!?」

 

 

 かつてマスターアジアが地球の自然を癒そうとデビルガンダムを利用し、旧分艦隊と決着をつけた場所。

 その時と同じ場所に、再びデビルガンダムが現れたのだ。

 

 

シーラ「あれが、デビルガンダム……」

 

エレ「なんて禍々しい。まさに、悪魔の姿……」

 

グレート・ウォン「わたしはグレート・ウォン! このままデビルガンダムで、世界を終わらせてあげましょう!」

 

 

 デビルガンダムを起動させたのは、逃げ場を失ったウォン・ユンファだった。

 

 自身は再生させたグランドマスターガンダムに乗り、デビルガンダムの横で高笑いをあげる。

 

 

トレース「どうやら逃げきれないと悟り、イチかバチかの賭けに出たようですね」

 

ブライト「あのデビルガンダムに核の反応はあるか?」

 

サエグサ「どうやらとりこまれた人間はいないようです」

 

シーラ「核、とは?」

 

ブライト「あれの性能を完全に引き出すには強い肉体を持つ人間が必要不可欠なんだ。特に女性の方が適正が高いと聞くが、いないのならば、この戦力でも十分に倒せる」

 

シーマ「では」

 

ブライト「補給が済み次第デビルガンダムを叩く。総員準備を急げ!」

 

 

 ホンコンでの戦いはまだ終わっていなかった。

 ロンド・ベル隊はオークション摘発チームを回収し、急いで補給を済ませ、ランタオ島へとむかう。

 

 

グレート・ウォン「ふふふふふ。はーっはははは!! このまま、世界など。地球など!」

 

 

 高笑いもひと段落し、いよいよホンコン・シティの方へと動き出そうとしたその時だった。

 

 

???「待てい!」

 

グレート・ウォン「誰だ!」

 

 

 逆光と共にそこに現れたのは、鋼の体を持つ青年。剣狼と共に一足先にやってきたロム・ストールであった!

 ケンリュウと合身し、デビルガンダムとグレート・ウォンの乗るグランドマスターガンダムの前に立ちふさがる。

 

 

ロム「これより前には進ません!」

 

グレート・ウォン「ぬう。だが、たった一人で……」

 

???「待てい!」

 

グレート・ウォン「なにぃ!?」

 

 

 別の高台に逆光をもって現れたのは、銀のおさげ髪を持つ格闘家。東方不敗であった!

 マスターガンダムを呼び出し、ケンリュウの隣へ並ぶ!

 

 

東方不敗「デビルガンダム。貴様にそれを使わせるわけにはいかぬわ」

 

グレート・ウォン「ぬぅう。マスターアジア。貴様まで。だが、たったふた……」

 

???「待てい!」

 

グレート・ウォン「またですか!!」

 

 

 高台に現れる五つの影。

 キング・オブ・ハート、ドモン・カッシュ。

 クイーン・ザ・スペード、チボデー・クロケット。

 ジャック・イン・ダイヤ、ジョルジュ・ド・サンド。

 クラブ・エース、サイ・サイシー。

 ブラック・ジョーカー、アルゴ・ガルスキー。

 

 黄金の光と共に、今の世界を守るシャッフル同盟の五人が現れた!

 

 五人で愛機を呼び、ケンリュウ、マスターガンダムと並ぶ!

 

 

グレート・ウォン「シャッフル同盟までも……だが、こちらにはデビルガンダムの軍ぜ……」

 

???「待てい!」

 

グレート・ウォン「もういいかげんにしてください!!」

 

 

 さらに誰かが出ようとしたところを、強引にとめさせた。

 さすがのグレート・ウォンも、これ以上名乗りを聞いている余裕はなかったようだ。

 

 

ブライト「だが、補給までの時間は十分稼いだ。総員出撃!」

 

グレート・ウォン「し、しまった!」

 

 

 無事補給を終えたロンド・ベルの面々が出撃を果たす。

 

 

 いかにデビルガンダムとはいえ、コアに誰もおらず、成長もしていない状態での戦いではロンド・ベル相手に勝ち目はなかった。

 

 勝っているのはデスアーミーの数だけで、それも次々と破壊されてゆく。

 

 

グレート・ウォン「こ、これが地球最強と言われる部隊……!」

 

 

 追い詰められたデビルガンダムに、ドモン達の拳が迫る。

 

 

東方不敗「ドモンよ!」

 

ドモン「はい!」

 

 

 とどめは、ドモンと東方不敗による二人同時の石破天驚拳。究極石破天驚拳だった。

 

 

グレート・ウォン「ばっ、馬鹿な!」

 

ルネ「おっと。あんたはそこまで。これ以上暴れようと思うんじゃないよ」

 

グレート・ウォン「くっ……!」

 

 

 行動不能となったグランドマスターガンダムに乗りこんだのは、警察権を代表してシャッセール所属のルネだった。

 

 

グレート・ウォン「ぐっ……がっ、があぁぁぁ!!」

 

ルネ「なにっ!?」

 

 

 だが、追い詰められたグレート・ウォンは苦しみ、その顔は溶けるように崩れ落ちた。

 その中身はゾンビ兵。これは、ウォン・ユンファのコピーだったのだ!

 

 

ウォン「……ふふふふふ」

 

 

 本物のウォンは、船に乗りホンコン・シティから逃げる最中だった。

 まさかデビルガンダム本体を囮にして逃げるとは誰も思わないだろうとのことで、自身の偽物をデビルガンダムに作らせ逃げたのだ。

 

 

ウォン「まだです。わたしはまだあきらめない。これがある限り、まだやり直せますからね。どうにでもなります!」

 

 

 その手には、デビルガンダム細胞の入ったケースがあった。

 大部分は失われてしまい、再び使えるようになるまでは多くの時間が必要であるが、それでも再起は可能である。

 

 それだけ強力な品物なのだから。

 

 だが、ウォン・ユンファの命運もそこまでだった。

 

 彼は物陰から飛び出してきたコブラにかまれ、悲鳴をあげる間もなく絶命してしまうからだ。

 

 そこに、近づく影が一つ……

 

 

 ホンコン・シティから逃亡を図ろうとしたウォン・ユンファの船は、追ってきた警備艇により発見され拿捕された。

 そこにはすでに息絶えたウォンの死体があり、彼の手元には空になったケースが落ちていたそうだ……

 

 

 デビルガンダム細胞をめぐる戦い。

 それはまだ、終わっていないようだ……

 

 

 そしてもう一つ。

 ホンコンシティでの争いの最中。

 

 

ガウルン「運よくカシムからは逃げられたとはいえ、どうしたもんかね……」

 

 

 宗介の銃から逃げられたものの、ガウルンは瓦礫の山にふさがれた通路からどう出たものか。という状態に陥っていた。

 

 ぼごんっ。

 

 途方にくれていると、瓦礫が崩され、そこから別の誰かが現れた。

 どうやら同じくこの場から脱出するために、瓦礫を破壊したようだ。

 

 

ガウルン「へえ」

 

???「ハハハハハ。これはこれは、ここで君に出会えるとは、これは我が主の導きであろうな……」

 

 

 それはある種、運命の出会いであった。

 

 

 第9話 終わり



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第10話 オーブ攻防戦

 

──ハイパージェリル──

 

 

 オーブ連合首長国(ガンダムSEED DESTINY/国名)

 南太平洋ソロモン諸島に存在する複数の島々からなる国家だ。

 

 現在はカガリ・ユラ・アスカ(ガンダムSEED DESTINY/人物)をトップとして地球連合との関係も悪くない状態となっている。

 

 そのオーブの基地に、ジェリル・クチビ(ダンバイン/人物)はいた。

 彼女はドレイク・ルフトがショウ・ザマ達に続いて召喚した地上人の一人であり、攻撃的な性格でバイストン・ウェルでの戦争をゲームのように楽しむ女性であった。

 ショウ達とは敵対し、地上に放り出されてからは、ドレイク軍本隊とは離れ、単独行動を行っていた。

 

 彼女は地上に来て増大したオーラ力※をもちいてその基地の兵士達をとりこみ、自分が味方であると洗脳し、軍事アドバイザーに収まっていた。

 

 

※オーラ力

 生命体が持つ精神エネルギーの一種。読み方は『おーらちから』である。

 闘争本能の象徴のような一面があり、それに関する感情の激しい動きによって力を増減させる。

 オーラバトラーなどのオーラマシンはこれをエネルギー源とし、バイストン・ウェルの住人より地上人の方が高い傾向にある。

 強いオーラ力は他人に影響を与え、この影響によりジェリルはオーブ軍を洗脳したかのようにとりこんだ。

 

 

 その彼女の耳に、敵対するショウ・ザマ達の行方が入ってくる。

 デビルガンダムとの戦いを終えたロンド・ベルが傷ついたホンコン・シティを離れ、オーブに近い東南アジア側の連合基地で補給を受け、日本へ戻るという情報が。

 

 

ジェリル「ふふっ。どうやら機が来たみたいだねぇ。いくよ、お前達!」

 

 

 それを確認し、にやりと笑った彼女は、洗脳した兵士達をつれ、レプラカーンと共にその基地を飛び出した。

 

 基地一つがまるごと、彼女に付き従い、補給を受けるロンド・ベルのいる場所を目指す!

 

 

 補給を受けるロンド・ベルへ、オーブから連絡が入る。

 

 カガリが慌てて反乱のようなことが起きたと伝えてきたのだ。

 

 一体何事かと防衛に出るロンド・ベル。

 そこで、ジェリルのオーラ力にとりこまれた兵士の姿を目の当たりにする。

 

 明らかに正気を失った彼等を殺すことはまかりならない。

 実質的にオーブの兵士達を人質に取られた状態で、ジェリルとの戦いがはじまる。

 

 

ジェリル「ふふふふ。はははははは!!」

 

 

 戦いの中、ジェリルのオーラ力がさらなる増大を示す。

 邪悪に肥大化したそのオーラは、ジェリルの乗るオーラバトラー、レプラカーンを巨大化させたのだ。

 

 それはのちにハイパー化と呼ばれる現象の発露であり、オーラバトラーのさらなる可能性を示した形でもあった。

 

 

ショウ「巨大化しただと!?」

 

ジェリル「ふふっ。敵が小さく見えるという事は、あたしがダンバインにもビルバインにも勝つという事だ!」

 

 

 強大なオーラ力を操り、手当たり次第に攻撃を繰り返す彼女。

 だが、あまりに肥大化しすぎたその力は、いつしか彼女の体も精神もむしばみ、ビルバインの渾身の一撃を引き金とし、風船が破裂するかのように自滅へといざなうのだった。

 

 彼女のオーラの消失により、その呪縛から解き放たれたオーブ軍は正気を取り戻し、降伏するのだった。

 

 

──オーブ襲撃 ドレイク軍──

 

 

 ハイパー化したジェリルを倒し、オーブ兵士も正気に戻って一息ついたところで、カガリから通信が入った。

 通信に出たブライト達艦長が兵士達は無事だと伝える前に、カガリの「大変だ!」という声が響く。

 

 

カガリ「オーブがドレイク軍に襲われているんだ!」

 

 

 ジェリルによって洗脳され、まるごと部隊が消えた基地。

 戦力がからっぽになり、防衛網に大きな穴が開くことになったそこからドレイク軍が攻めこんできたのである。

 

 

ショウ「ジェリルの暴走。自由にさせてたのは、これが狙いだったのか!」

 

 

 そう。強大な戦力を持つロンド・ベルの足止めと防衛網に穴をあける。一石二鳥の策であった。

 

 このままではオーブの首都さえ占拠されてしまう。

 

 

カガリ「頼む。助けてくれ……」

 

ブライト「わかりました。全力でそちらにむかいます。それまでどうか、持ちこたえてください」

 

カガリ「ああ!」

 

 

 こうして、ロンド・ベルはオーブを救うためあわただしく出発することになる。

 

 

ブライト「補給を急げ。一分一秒を争う!」

 

シン「時間が……くそっ!」

 

ルナマリア「シン……」

 

鉄也「落ち着け」

 

シン「でも、あそこには妹が、家族がいるんです!」

 

ブライト「わかっている。だから先行してもらう。足の速い者と一緒にデスティニーと先行してくれ。少数で相手をかく乱。足止めして時間を稼ぐんだ」

 

シン「ブライト艦長……?」

 

ブライト「かなり危険で難しい仕事だ。それでもやれるか?」

 

シン「は、はい!」

 

ブライト「アストナージ」

 

アストナージ「そう来ると思って優先して整備と補給しておきましたよ。フラガ大尉の方にもオーブのムラサメを整備しておきました。元モビルアーマー乗りなら変形した方もそのまま乗れると思います」

 

ムウ「おお、サンキュー」

 

 

 ムラサメ。

 オーブ軍がM1アストレイの次に量産型として採用した可変モビルスーツ。

 Zガンダムと同じく盾を機首として飛行形態に変形することが可能。

 

 この世界だと、アナハイムはこれを参考にZガンダムを作った可能性もある機体である。

 

 ムウはその原型となったストライクにも乗っていたし、モビルアーマーであるメビウスにも乗っていたので、そのままこれに乗ることが可能のようだ。

 

 これ以外にも、飛行形態に変形しドレイク軍のもとへいち早く到達できる機体が選ばれた。

 まずZZガンダムとZガンダムにガンダムを収納してGアーマーとなったGファイター。ウイングキャリバーに変形可能なビルバインとブライスターになるブライガー。そして、自身が飛行機となるブルー・ジェットだ。

 

 ちなみにGファイターはホンコン・シティに来たところで補充されている。

 

 それらにシンのデスティニーはつかまり、飛ぶ。

 もちろんただ捕まるのでなく、デスティニーも加速させるので無駄ではない(ここで便利なのはオーラバリアである)

 

 

甲児「くそー。カイザースクランダーの調整が終わってりゃ、俺も行くのによ」

 

宗介「ならば、俺がかわりに行くとしよう」

 

甲児「宗介が?」

 

宗介「ああ。基地の方にブースターがあった。それを使い、メリダ島を奪還する時に使ったあの装備をもう一度こしらえることができるだろう。あれなら、可変機にもついていけるはずだ」

 

甲児「お前も無茶するなぁ。けど、任せたぜ。俺達もすぐ追いつく」

 

宗介「ああ」

 

 

 こうして宗介もレーバテインに緊急展開ブースターXL-3装備し、ついてゆく。

 以後、レーバテインはこの形態での出撃が可能となる。

 

 ※ちなみにグランティードとバシレウスの使えるオルゴン・クラウドの転移は、『移動力』という限られた範囲ならば自在に転移可能である。しかし、遠距離となると移動のためのマーカーが必要になってくる。

 それは時に基地の転移カタパルトであったり、サイトロンを使える搭乗者でなければならない。

 ゆえに、むこう側にマーカーがない現状では、グランティードによって一足飛びにその場へ行くというのはできないのである。

 さらにボソン・ジャンプはどうだ? と思われるが、こちらもチューリップクリスタルというものがなければ発動できないため、緊急事態で必要数がそろっていない今は有用ではなかった。

 

 

アスラン「シン、カガリを、オーブを頼む」

 

シン「はい!」

 

 

 大急ぎで高速移動が可能な機体に予備の燃料もつみこみ、シンは先行することとなった!

 家族を、オーブを守るために!

 

 しかし、いくら足が速かろうと、すでに侵攻をはじめたドレイク軍を防ぐには時間が足りない。

 

 ロンドベルから出発した第一陣が届くまで、オーブは蹂躙されてしまう……

 

 

 ……はずだった。

 

 

 防衛網に大きくあいた穴を通りオーブへと侵入するドレイク軍。

 

 その前に、たった一機のガンダムが立ちふさがったのだ!

 

 

キラ「お願いです。これから先に行くのはやめてください!」

 

 

 そこに現れたのは、キラの乗るストライクフリーダム。

 

 戦後変わらずフレイと隠居していた彼が、オーブの大ピンチに立ち上がったのである。

 

 

ドレイク「ふん。たった一機のモビルスーツなど恐るるに足らん。そのまま前進せよ!」

 

キラ「……」

 

 

 もちろん、たった一機と侮ったことを、ドレイクはすぐ改めることになる。

 

 覚悟を決めたキラに、SEEDが輝く。

 開幕ハイマットフルバースト。

 

 これにより無数のオーラバトラーが落ち、脅威を悟った兵達がストライクフリーダムへむかうものの、次々と返り討ちにあう。

 

 それはすでに前進でなく、ストライクフリーダムに群がるハチのようであった。

 

 

ドレイク「バカな。オーブにこれほどのエースがいるとは聞いていないぞ。ガウルンはどこだ!」

 

部下「まだホンコンから戻っていません」

 

ドレイク「襲撃と、あの怪物が暴れた場所か……」

 

部下「死んでいても不思議はないかと」

 

ドレイク「まあいい。相手はたった一機。いずれ落ちる……!」

 

キラ「ううん。僕は、一人じゃない……!」

 

部下「これは……!」

 

ドレイク「っ!」

 

 

 キラの奮闘によりほんの少し足止めされたドレイク軍の横っ腹に、全速力でやってきたシン一行が矢のように突き刺さる。

 

 

ムウ「キラ、よくやった!」

 

キラ「ムウさん!」

 

ムウ「いいかお前達。全部倒す必要はねえ。かき乱してやれ!」

 

宗介「了解した」

 

ジュドー「まかせなよ!」

 

ジェット「ジェーット!!」

 

ボウィー「イエーイ!」

 

ドレイク「ぬぅっ! くっ! おのれ!」

 

 

 少数精鋭での突撃はうまくいった。

 自分達以外は敵しかない。

 

 シン達は目にうつる敵を手あたり次第にうち、反対側へと突き抜ける。

 

 一時的な混乱が、ドレイク軍を襲った。

 

 それを納めるため、ドレイク軍は足をとめざるを得なくなる。

 

 それだけの時間が稼げれば十分であった。

 

 

 第一陣に少し遅れて、ロンドベル本隊も到着する。

 

 さらに、みずからアカツキに乗り軍をまとめてやってきたカガリのオーブ軍本隊も合流する。

 

 数も完全な逆転。

 電撃的な奇襲からの首都占拠は、すでに望めない。

 

 

ドレイク「おのれ。撤退する!」

 

 

 囲まれ、不利であると感じたドレイクは撤退を決めた。

 

 ドレイクがとった策は、決して悪いものではなかった。ただ、相手が悪かった。これがオーブでなければ、この策は成っていただろう……

 

 こうして、オーブに訪れた再びの危機は防がれた。

 勝どきの声が上がる。

 

 そして、現状を把握したキラも、ロンドベルに参加することを決めるのだった(カガリは加わらないがアカツキを貸してくれる)

 

 

──オーブ襲撃 ネオジオン・ムゲ帝国同盟──

 

 

 ドレイク軍よりオーブを救うことに成功したロンド・ベル。しかし、連戦での疲弊は大きなものだった。

 

 今はオーブに滞在し補給、修理を受けているが、次の対処はしばらく遠慮したいというのが本音であった。

 しかし彼等の要望は通らない。

 

 この隙を、ホンコン・シティで敗れたものの見張っていたクロッペンは見逃さなかった。

 

 

クロッペン「サイコガンダムとやらはどうなった?」

 

部下「まだ調整中だそうです」

 

クロッペン「使えぬ奴等だ。奴等も疲弊している中、これを逃す手はないというのに」

 

 

 しょせんはクローンかと、ため息をつく。

 

 

クロッペン「いや、待て。確か奴等の中に、エリオス星系の者がいたな」

 

部下「はい。あのダルタニアスがそうかと」

 

クロッペン「ならば、あれが使えるな」

 

 

 クロッペンは仮面の下でにやりと笑った。

 

 

 オーブにて滞在中のロンド・ベル。

 そこへ、クロッペンが率いるザール艦隊が攻撃を仕掛ける。

 

 

剣人「くそっ。ホンコン・シティで追い返したってのに、もう来たのかよ」

 

弾児「いや、あのサイコガンダムマークⅡってヤツがいない。奴等も無理やり出てきたんだろう」

 

剣児「大方派手にやりあった後だからチャンスと思って無理矢理出てきたんだろ。そうはいかねえ!」

 

鏡(……剣人と弾児のあとに剣児が話すと2人が合体したように見えるな)

 

つばき(そんなことないのに不思議ね)

 

 

 ここに兜甲児が加わるとさらに混乱すること間違いなし!

 文章だと紛らわしいね!

 

 

剣人「さあ、クロッペン! いくらきたってどうにもならねえことを教えてやる! 返り討ちだ!」

 

クロッペン「ククッ! なんの策もなく貴様等の前に現れると思うな!」

 

???「ガオオォー!」

 

剣人「なにっ!?」

 

 

 そこに現れたのは、べラリオスに似たメカライオンだった。

 

 

べラリオス「グルッ!?」

 

アール博士「あ、あれは!」

 

 

 べラリオスとアール博士が驚いた声を上げる。

 

 

剣人「なんか知ってるのかじいさん!」

 

アール博士「うむ。あれはべラリオスと一緒に皇帝陛下へ献上されたべラリオスのつがい。メライアン! 生きておったのか!」

 

剣人「なんだって!?」

 

つばき「それって……」

 

アール博士「うむ。人間でいえば、べラリオスの妻じゃ! 恋人じゃ!」

 

クロッペン「その通りだ。さあ、これを攻撃できるか!?」

 

剣人「バカ野郎。べラリオスの奥さんならこっちの味方だろうが! 逆にやられちまえ!」

 

クロッペン「愚かな。逆らえるわけがなかろうが。その中には爆弾が仕掛けてある。逆らえば死よ!」

 

剣人「なっ!?」

 

健一「卑怯な!」

 

クロッペン「さあ、なぶり殺しにされるか、逆らいこれごと爆破されるか。好きな方を選べ!」

 

剣人「くっ、くそっ!」

 

豹馬「どうする。あれじゃ攻撃できねえ!」

 

小介「待ってください。時限爆弾でなく、任意で爆破できるようにしてあるみたいです。なら、どこかに爆破のスイッチを入れる遠隔の装置があるはずです。それを無効化できれば」

 

 

 コン・バトラーの頭脳担当。小学生小介が味方のみに聞こえる通信で一言申し上げた。

 

 

健一「確かにそれなら、爆弾を取り除かなくとも起爆を阻止できるというわけか」

 

小介「はい」

 

健一「小介、日吉。いけるか?」

 

小介「少し時間をください」

 

日吉「任せて」

 

 

 健一の弟であり、同じく機械が得意な剛日吉が答えた。

 

 

剣人「皆、少しだけ耐えてくれ!」

 

 

 しばし、ロンドベルはムゲ帝国の猛攻にさらされる。

 

 

小介「っ! わかりました。あの母艦(クロッペンの乗る艦)にあるアンテナ。あれから起爆の命令が発せられるはずです。あれを破壊できれば!」

 

剣人「それがわかれば十分だ!」

 

 

 ダルタニアスが敵の攻撃の隙をつき、とびこんだ。

 

 だがっ!

 

 

クロッペン「バカめ!」

 

剣人「なっ!?」

 

 

 クロッペンの乗る移動要塞とダルタニアスの間にベムボーグ・セドラが割りこんだ。

 

 

セドラ「ゴォォー!」

 

 

 ダルタニアスは、その力で氷漬けにされてしまった!

 

 

クロッペン「かかりおったな!」

 

剣人「しまった! 罠だったのか!」

 

クロッペン「粉々にしてくれる!」

 

メライアン「っ!」

 

統夜「っ! ダメだ。メライアン!」

 

 

 その瞬間、メライアンの意思を感じとった統夜が叫ぶ。

 彼女はべラリオスを守るため、クロッペンの艦に特攻をかけるつもりなのだ。

 

 

???「グオオォォォ!!」

 

 

 どがんっ!

 

 

クロッペン「なっ!?」

 

 

 メライアンが飛び出そうとした直前。彼女より早く、クロッペンの母艦に飛びかかったものがいた。

 

 それは一撃でアンテナを破壊し、返す刀で氷を砕く。

 

 

破瑠覇「グオオォォォ!」

 

鏡「破瑠覇!」

 

 

 ライオン達の窮地を救ったのは、その友、破瑠覇であった!

 

 

剣児「やってくれたぜ!」

 

鏡「ああ!」

 

剣人「さあ、これで形勢逆転だ!」

 

クロッペン「おのれ。だが、そこに爆弾があるのを忘れるな! 全軍攻撃! その衝撃で爆破せよ!」

 

ブライト「皆、メライアンを守れ!」

 

甲児「ああ!」

 

 

 クロッペンの猛攻がはじまる。

 その攻撃がメライアンに当たれば、爆弾は誘爆。大きな被害が出ただろう。

 

 だが、それを許す統夜達ではない!

 

 メライアンへの攻撃はすべて防がれ、最終的には、ダルタニアスの火炎剣十字切りが決まり、クロッペンは撤退してゆく。

 

 

剣人「よっしゃー!」

 

 

 爆破を免れたメライアンはアール博士によって爆弾を取り除かれ、無事べラリオスと再会する。

 互いの無事を確かめあう二人を見て、ロンド・ベルの皆も喜びを浮かべるのだった。

 

 こうして、新たな仲間、メライアンが加わった。

 

 

──移動要塞──

 

 

ムゲ・ゾルバドス「ふがいないな。クロッペン」

 

クロッペン「も、申し訳ございません。皇帝陛下」

 

 

 モニターの先にいる者に、クロッペンは深々と頭を下げた。

 そこにいるお方こそ、ムゲ帝国の皇帝。ムゲ・ゾルバドスである!

 

 

ムゲ・ゾルバドス「相手は確か、ダルタニアスといったか?」

 

クロッペン「はっ。エリオス星系から逃れた者が我等に対抗するため作り上げたとか」

 

ムゲ・ゾルバドス「エリオスの皇子か。ならば、よかろう。クロッペンよ。その仮面をとることを許す」

 

クロッペン「こ、この仮面をとることを、お許しいただけるのですか、陛下!」

 

ムゲ・ゾルバドス「そうだ。それがなにを意味するか、わかっておろうな?」

 

クロッペン「はっ。ははー!」

 

 

 もう一度深々と頭をさげると、モニターから皇帝ゾルバドスの姿は消えた。

 

 

クロッペン(ついに、ついにこの仮面を……!)

 

 

 一方、玉座に座るムゲ・ゾルバドス。

 

 

デスガイヤー「よろしかったのですか?」

 

 

 その右腕である、デスガイヤー将軍が口を開く。

 

 

ムゲ・ゾルバドス「くくっ。よいに決まっている。エリオスの王子とそのとりまき。面白い反応が返ってくるに違いなかろう」

 

デスガイヤー「……」

 

 

 皇帝ムゲ・ゾルバドスは、どこか楽しそうに笑うのであった。

 

 

 クロッペンの仮面の下とは。

 その謎が、明かされる時がやってきた……!

 

 

 第10話 終わり



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第11話 クロッペンの秘密

 

──アスカ登場──

 

 

 日本。

 墓地。

 

 シンジは母親の墓参りに来た際、父のゲンドウと顔をあわせ、しばし会話をすることができた。

 ゲンドウはヘリで帰り、自分も連れてきてくれたミサトと共に帰ろうとしたところで、第七の使徒出現の報を受ける。

 

 ネルフ側では初号機を準備し、現場へと運ぶ。

 シンジもそこへ急行することとなった。

 

 先行して第七の使徒迎撃のため隊を展開するロンド・ベル。

 あとは対使徒用となるエヴァが到着するのを待つのみである。

 

 その時、戦場に近づく輸送機と戦闘機の姿があった。

 

 

忍「あれは、アランの野郎のブラックウイングか?」

 

アラン「いけるか?」

 

アスカ「ええ。いつでも」

 

 

 輸送機の扉が開き、そこから赤いエヴァンゲリオン。エヴァンゲリオン2号機が跳び出した。

 同時に、輸送機の護衛も兼ねて随伴していた鷹を思わせる機体が輸送機を離れ、2号機と共に使徒へと滑空する。

 

 

シンジ「赤い、エヴァ?」

 

 

 現場へむかう途中、車の中からそれを見上げるシンジ。

 

 

アラン「これよりエヴァンゲリオン2号機と共にそちらの指揮下に入る。ケーブルの用意を」

 

ブライト「わ、わかった」

 

アスカ「必要ないわよ。あんな使徒くらい、活動限界前に仕留めてみせるわ!」

 

アラン「まったく。このまま攻撃を仕掛ける。そちらも動いてほしい」

 

ブライト「ケーブルの準備を急がせろ。エヴァンゲリオンが到着した。総員攻撃開始!」

 

 

 使徒との戦いがはじまろうとした、その時。

 別の場所から現れた新たな影があった。

 

 

壱鬼馬「くははははは!」

 

 

 そこに現れたのは、ハニワ幻神を率いた大火焔偶に乗る壱鬼馬。邪魔大王国の軍勢だった。

 

 

剣児「壱鬼馬!?」

 

鉄也「こんな時に」

 

壱鬼馬「さあ、やれ!」

 

 

 壱鬼馬の命令で突撃を開始するハニワ幻神。

 

 その攻撃の矛先は、第七の使徒だった!

 

 

剣児「な、なんだ?」

 

つばき「まさか、味方をしてくれ……」

 

壱鬼馬「そんなわけはない!」

 

 

 別のハニワ幻神が、ロンドベルも攻撃をはじめる。

 

 

剣児「いったいなにがしてえんだ!」

 

壱鬼馬「貴様等に妃魅禍様のお考えなどわかるまい。どちらもここで死ぬがいい!」

 

ブライト「ええい。使徒を倒せる2号機を援護しハニワ幻神を近づけさせるな!」

 

一同「おう!」

 

 

 一方アスカは、第七の使徒に一撃を加えたものの、コアを破壊するには至らず、着地していた。

 

 

アラン「さすがにこれだけの数、時間内に殲滅するのは厳しいだろう」

 

アスカ「仕方がないわね」

 

ボス「ケーブルはばっちりよーん」

 

 

 ボロットが用意したケーブルを装着する。

 

 

アスカ「さあ、仕切り直しよ!」

 

 

 その間にも、ハニワ幻神は使徒とロンド・ベルへ攻撃を仕掛ける。

 

 ATフィールドを持つ使徒にハニワ幻神の攻撃が有効打を与えることはない。

 しかし、それでも攻撃の手は緩めなかった。

 

 

鏡「いったいなにを考えている……」

 

 

 その行為に、なにか意味があるに違いなかった。

 だが、その疑問に答えてくれるものはここにはいなかった。

 

 

 邪魔大王国と使徒との三つ巴となった戦い。

 

 それでもきっちり使徒を殲滅するのがロンド・ベルである。

 

 

壱鬼馬「もういい。戻るぞ!」

 

 

 使徒の殲滅を確認した壱鬼馬は、撤退していった。

 

 

剣児「なにがしたかったんだあいつらは……」

 

 

 こうして第七の使徒は殲滅され、エヴァンゲリオン2号機のパイロットである式波・アスカ・ラングレーが仲間になった。

 

 随伴者のアラン・イゴールは他に任務があると、再び隊を離れてゆく。

 

 

──邪魔大王国──

 

 

壱鬼馬「ただいま戻りました」

 

妃魅禍「うむ。どうであった?」

 

壱鬼馬「こちらにございます」

 

 

 壱鬼馬が差し出したのは、先の使徒の欠片であった。

 壱鬼馬が来た目的は使徒を倒すことでも、ロンド・ベル隊を倒すことでもなく、これを手に入れるためだったのである。

 

 ただ、なんのためにこれを手に入れたのか。それは壱鬼馬さえ知らない。

 

 

壱鬼馬「これを、なにに使うのです?」

 

妃魅禍「なにもせぬ。ただ、これのルーツを調べるだけだ」

 

壱鬼馬「ルーツですか?」

 

妃魅禍「うむ」

 

 

 妃魅禍が呪文を唱え、壱鬼馬が持ち帰った使徒の欠片を光が包む。

 

 

妃魅禍「ふむ。そういうことか」

 

 

 妃魅禍はなにか納得したようにうなずき、そのまま使徒の欠片を消滅させた。

 

 

妃魅禍「もうあれは捨て置いてよい。ジーグを疲弊させる程度には役に立とう。我等の狙いは銅鐸のみよ!」

 

壱鬼馬「ははーっ!」

 

妃魅禍(奴等は我等と別種であった。むしろ我等と真逆の生まれ。ヒトと同種の存在。ならば、我等に滅ぼされるべき存在よ!)

 

妃魅禍「ふふっ。ふはは。ふははははは!」

 

 

──ジェットよ、双殺剣を破れ──

 

 

 ある街をギャンドラーが襲撃している。

 どうやらそこに、ハイリビードの手がかりがあると考えているらしい。

 

 出撃するロンド・ベル隊。

 

 そこには、新たな妖兵コマンダー。カルディとグローバインがいた。

 二人は今まで現れたデビルサターン6とディオンドラとは違い、真正面から戦う武人タイプ。

 

 ゆえに、現れたロムとジェットそれぞれに一対一の戦いを挑む。

 

 残った者達は、デビルサターン6の率いるギャンドラー軍団が相手である。

 

 決闘に手出しは無用。

 下手に手を出せば、グローバインの心は決して開かぬことになるだろう。

 

 双方の実力は互角。

 ここでの決着はつかず、デビルサターン6がひたすらボコられたのみであった。

 

 

グローバイン「今決着をつける時ではないようだ。また会おう!」

 

ガルディ「覚えておけ。俺はは剣狼に勝るとも劣らぬ剣・流星を操る事が出来る。次はそれを見せてやろう」

 

デビルサターン6「今日はこれくらいにしておいてやるわ。覚えてろ!」

 

 

──誇り高き反逆者──

 

 

 今、アール博士が地球にやってくる時に使った宇宙船アダルスはビルドベースの隣に置かれている。

 

 そのアダルスのもとに、クロッペン率いる艦隊がゆっくりと姿を現した。

 

 もちろんロンド・ベル側も手をこまねいてみているわけはない。

 部隊を展開させ、相手の出方をうかがう。

 

 いつもならば問答無用で攻撃してくるところだが、今回は違った。

 

 クロッペンの旗艦が前に出て、そこから総司令官クロッペンの姿をホログラフで投影しはじめたのである。

 

 

クロッペン「今日は貴様等に、降伏を勧告しに来た」

 

甲児「なんだって!?」

 

剣人「そんなことするわけねえだろ!」

 

クロッペン「ふん。おとなしく聞くがいい。聞こえているか。エリオスの臣民。アールよ」

 

剣人「なにをしようってんだ?」

 

クロッペン「お前のエリオスへの忠誠心はよくわかった。ゆえに、事実をお前に伝えよう。とくと、見るがよい。余の真実の姿を」

 

 

 そう言い、クロッペンは身に着けていた仮面を取り外した。

 

 

アール博士「なっ!? そ、そんな馬鹿な……」

 

ブライト「どうしました、アール博士」

 

クロッペン「そうだ。よく見ろ。余の顔を」

 

アール博士「パ、パルミオン陛下にそっくりだ。まさか、そんな……」

 

シーラ「では……?」

 

クロッペン「そうだ。アールと共に地球へ逃れたハーリンは、余のクローンである。余こそがエリオス直系の皇子なのだ。余はムゲ帝国皇帝、ムゲ・ゾルバトス陛下と友好を保ちつつ、エリオスを復興させる。アールよ。今なら許そう。そのアダルスとダルタニアスをもって、余のもとへはせ参じるのだ」

 

アール博士「い、いや。顔を似せただけの偽物。偽物に違いない!」

 

クロッペン「信じられぬというのなら、証拠を見せよう。見よ。この腕に刻まれた紋章を!」

 

 

 クロッペンが示したそこには、エリオスの紋章が刻まれていた。

 アール博士は知っている。それが、皇子の証であると!

 

 

アール博士「げ、元老院でも上位の者のみしか知らぬ紋章を、なぜ……!」

 

クロッペン「余が本物の皇子であるからだ。アールよ、これでわかったであろう。下劣な生体部品であるクローンに義理立てし、余に反逆するのか?」

 

アール博士「は、反逆……このわしが、エリオスの血に……?」

 

クロッペン「今ならお前達も許そう。降伏すれば、陛下に口添えくらいはしてやる」

 

剣人「うるせえっ! クローンだかなんだか知らねえが、俺は人間、楯剣人だ! お前達のように多くの人を苦しめることしかしねぇようなヤツに負けるかよ!」

 

弾児「ふん。それにどうせ約束なんて守らねえだろ」

 

クロッペン「愚かな。どうあっても逆らうというのか。アール。お前もそうなのか? 直系の余に反逆するか?」

 

剣人「戦うしかないぜじいさん!」

 

アール博士「……」

 

 

 しかし、アール博士は首を横に振る。

 そのままアール博士はアダルスとダルタニアスの機能を停止させてしまった。

 

 戦わないこと。それが今のアール博士にできる精一杯のことだった。

 

 

アール博士「剣人さま。お許しを……」

 

剣人「じいさん!? くそっ! このままじゃ、地球が守れないだろうが!」

 

クロッペン「アールは正しい判断をしたようだな。残りは必要ない。消えるがいい!」

 

剣人「みんな、すまねえ。なんとか奴等をやっつけてくれ!」

 

 

 ダルタニアスを欠く中、ネオジオン・ムゲ帝国同盟軍との戦いがはじまった。

 

 その中には、サイコガンダムマークⅡに乗ったプルツーもいる。

 

 

プル「プルツー、やめて!」

 

プルツー「うるさい。お前達など知るものか!」

 

ジュドー「あっちはクローンを人と思っていない。こっちへくるんだ!」

 

プルツー「うるさいと言っている!」

 

 

 はじまった戦いの中、打ちひしがれたアール博士は肩を落とし、アダルスの私室へこもってしまった。

 

 そこへ、早苗と子供達がアール博士のもとへとやってくる。

 外で戦う恋人を心配するエリカも一緒だ。

 

 彼女達の説得と、これまでの関わりにより心を動かされた彼は、ついに心を決める。

 

 

アール博士(ああ、そうだ。多くの星の者達が手をとりあえるこの奇跡のような星も、ムゲ帝国に占領されれば失われてしまう。それを許していいわけがない……!)

 

アール博士「剣人さま!」

 

剣人「おう!」

 

アール博士「ダルタニアスの機能停止を解除いたします。わしも戦いますぞ!」

 

剣人「ああ。待ってたぜ!」

 

 

 早苗達が説得に行くと言い出し、彼はコックピットで腕を組み待っていたのだ。

 彼女達が、説得を成功させてくれると信じて。

 

 機能を停止していたはずのダルタニアスが動き出す。

 

 

クロッペン「なんだと!? おのれアール。エリオスを裏切る気か!」

 

アール博士「いかにもその通り。このアール。喜んで反逆者の名を受けよう。直系であろうが、ムゲ帝国に尻尾をふる貴様などに敬意を払う理由はない!」

 

クロッペン「おのれアール。後悔するでないぞ!」

 

 

 こうしてダルタニアスが戦線に復帰し、士気は逆転。

 

 不利を悟ったクロッペンは撤退を開始する。

 同時に、プルツーも。

 

 

プル「待ってプルツー!」

 

プルツー「うるさい! わたしの名を呼ぶな! 心をかき乱すな!」

 

プル「プルツー……」

 

コウ「まだチャンスはあるさ」

 

ジュドー「ああ。その通りだ」

 

 

 こうして勝利をもぎ取ったロンド・ベル一行。

 博士はモニターの前で安堵の息をはく。

 

 

アール博士「これでいい。これでいいのだ。エリオス再興の夢が破れても、わしにはそれに代わる重大な使命がある。この星を、守るという重大な使命が。そのためなら、わしは誇りをもって反逆者となろうぞ」

 

 

 どこか晴れ晴れとしたように、アール博士は思うのだった。

 

 

──ゲア・ガリングへ行こう──

 

 

 ビショット・ハッタの指揮するゲア・ガリングの居場所が判明した。

 しかしそれは、ロンド・ベル隊をおびきよせるため地上の街を人質にした策であった。

 

 ビショットの一軍に占拠された街。

 その街を開放したいが、開放するには街への被害を覚悟しなければならない。

 

 策もなしに攻撃するのは危険。しかし、このまま占拠させたままではロンド・ベルを呼び出すため街が攻撃される可能性もあるという状態であった。

 

 そこで一計を案じたシーラ達は、ゲア・ガリングを揺さぶるべく、仲間割れを装ってショウ・ザマと藤原忍をゲア・ガリングへ投降させる。

 ビショットはショウのロンド・ベル隊との真に迫る戦闘や、「もう戦いはうんざりだ」という発言。そしてビルバインとダンクーガを提供するという態度に納得し、二人を受け入れた。

 

 しかし前線で何度もショウや獣戦機隊と戦った経験のある黒騎士はこの投降に疑いを持った。

 独自に調査を開始し、ロンド・ベル隊との戦いでショウが逃亡する際撃墜させたというダンバインの墜落した場所を調べるが、その地点になんの痕跡もないことで疑惑を確信に変え、投降は偽装であると見抜いた。

 

 戻った黒騎士はその嘘をビショットの前で暴くが、ダンクーガの残りコックピットに乗りこっそり侵入していた残りの獣戦機隊三人とミスリルのウルズチーム(宗介、クルツ、マオ)の工作によりゲア・ガリング艦内で爆発が起き、さらにたまたま乗り合わせていたドレイクの娘、リムル・ルフトの援護を受けゲア・ガリングから脱出するのだった。

 

 艦内で爆発音が響く。

 

 

宗介「これだけやれば十分だろう」

 

クルツ「ああ。あとは脱出するだけだ。あー、帰りは沙羅ちゃんとタンデムしたいもんだぜ」

 

雅人「僕もマオ姐さんがいいなー」

 

沙羅「あんたらは最初と一緒だよ。二人でタンデムしてな」

 

雅人「ちえー」

 

???「君達!」

 

クルツ「やべえ。見つかったか?」

 

宗介「いや、待てクルツ……」

 

クルツ「あんたは……」

 

 

 ショウ達が脱出に成功し、ゲア・ガリングに混乱が広がったのを確認したロンド・ベル隊は街を奪還するためビショットの軍へ攻め入る。

 怒りに任せ地上へ報復攻撃を考えていたビショットであったが、ロンド・ベル隊が迫ってはそんなことをする余裕もなく、そこから撤退することを余儀なくされてしまう。

 

 しんがりに残ったのは黒騎士だったが、彼も頃合いを見て撤退してゆく。

 

 

 こうして作戦は成功し、街は解放された。

 

 それだけでなく、リムル・ルフトが仲間になり、さらにもう一人がゲア・ガリングより脱出してきていた。

 リムルと別に、工作に協力し、脱出してきたもう一人が(リムルはショウと忍の脱出に協力し、こっちは宗介達に協力した)

 

 それは、先日仮面を脱いだクロッペンにそっくりな男だった。

 

 

ハーリン「まさか、アール。アール博士ですか? 間違いない。子供のころだが、かすかに覚えている」

 

アール博士「わしを知っている。やはり、ハーリン皇子!」

 

亮「やはりか」

 

 

 そこにいたのは、ハーリンこと楯隼人。剣人の父親である!

 

 

ブライト「どうした、剣人」

 

剣人「いやよ、急に再会って言われてもよ……」

 

弾児「いきなりすぎて、頭が働いてないみたいだな」

 

ハーリン「無理もない。だが、私は帰ってきた。あとでゆっくりと話をしよう」

 

ムウ「しかし、バイストンウェルにいたのか。それなら見つからないのも当然だ」

 

ハーリン「いや、私はあの異世界だけじゃなく、エリオスの星にも行っていた」

 

剣人「なんだって!?」

 

 

 楯隼人は、アール博士と地球に逃亡してきた際、一人で先に目が覚めた。

 それを剣人の祖父に保護され、船乗りとなる。

 

 船乗りとなった理由は、記憶の底にある故郷を探してのことだった。だが、世界中まわってもそこは見つからない。

 当然である。そこは地球にはないのだから。

 

 今から約12年前。船は遭難し、隼人は死を覚悟するが、エリオスの紋章が輝き、それに気づいたエリオスの近衛隊長の生き残りに助けられたのだ。

 自分の出征の秘密を知った隼人ことハーリンであったが、エリオスへむかう途中ムゲの宇宙船に拿捕され、隼人の身分を知らないまま、ムゲ側は彼等を奴隷のようにこき使っていた。

 その中で隼人は脱出に成功する。

 

 態勢を整えるため地球へ戻ろうとしたが、その途中バイストンウェルに召喚され、今に至ったというわけである。

 

 

アール博士「なんと。なんとおいたわしい。まさかそのようなおつらい目にあわれていたとは……ハーリン皇子がクローンでさえなければ、親子がそろわれた今、エリオス再興も夢ではないものを……」

 

シーラ「これから、どうなさるおつもりで?」

 

ハーリン「むろん。戦う。銀河に平和を取り戻さねば、この命を守るため散った者達に申し訳が立たない」

 

アール博士「では、エリオスの再興を? し、しかし……」

 

ハーリン「クローンなどと、どうでもよいことだ。平和を取り戻すための戦いに、そのような大義名分などいらぬ。エリオスを再興した者が、真の後継者でいい。それは、私でなくてもよいのだ」

 

アール博士「なんとっ。なんというお気持ち。このアール、さらにやる気がわいてきましたぞ!」

 

ブライト「では?」

 

ハーリン「私にどれだけの力があるかはわからない。だが、ぜひ協力させてほしい」

 

 

 こうして、剣人の父、ハーリンが仲間に加わった。

 

 

──暴かれた真実──

 

 

 ハーリンが戻ってしばし。まだ剣人との仲はぎこちないが、同じように離れ離れになった経験もある剛家族のとりなしなどもあり、少しづつ修復されようとしていた。

 そんな中、ハーリンはアール博士にあることを告げる。

 

 

アール博士「なんと、ハーリン皇子の腕にも紋章が!?」

 

ハーリン「剛博士からクロッペンの紋章の話を聞いてな。それなら私にもある。この通りだ」

 

アール「これは、確かに。このアール、うかつでありました。確認させていただくのを、すっかり忘れておりました」

 

 

 しかし、これはこれで困った事態である。

 これが二人の腕にあるということは、どちらがクローンであるかわからなくなってしまったということなのだから。

 

 

アール博士「これは、調べてみるしかないようですな。アダルスの中にはエリオス脱出の際持ち出した宮廷のデータバンクがある。皇族に関するデータはプロテクトされておるが、解析してみる価値はあるかもしれん。学くん、手伝ってくれ」

 

学「はい、博士」

 

 

 こうしてアール博士はアダルスのデータバンクを調べるため、船にこもることとなる。

 

 

アール博士「わかりましたぞハーリン皇子。確かに、クローンにも紋章が焼き付けられたとあります」

 

甲児「なら、どっちについててもおかしくないってわけか」

 

剣人「じいさん、見分ける方法はないのか?」

 

アール博士「お待ちくだされ。ええと、焼き付けられた紋章は同じですが、区別をつけるため、クローンの方は強い紫外線を当てると消えるとのことです!」

 

剣人「じゃあ、親父の腕に紫外線をあてりゃ、本物かどうかわかるってわけだな」

 

アール博士「はい!」

 

 

 そうして実行しようとするが、警報が鳴り響いた。

 またネオジオン・ムゲ帝国同盟が攻めてきたのである。

 

 

剣人「じいさん、学、あとは頼むぜ! いくぞ弾児!」

 

弾児「ああ!」

 

 

 現れたのは、クロッペン率いるザール艦隊。

 今度こそロンド・ベル隊をつぶそうと来たのである。

 

 

クロッペン「今日こそ貴様等の息の根を止めてくれる」

 

剣人「出やがったな、クロッペン!」

 

クロッペン「楯剣人か。下劣なクローンの子が、なぜそこまで自信をもっていられるのか、余には理解できん」

 

ハーリン「あれが、クロッペンか」

 

クロッペン「貴様、ハーリンか。まんまと出てきおって。余の偽物などここで始末してくれる」

 

アール博士「待て、クロッペン!」

 

クロッペン「黙れ反逆者め! 貴様と話すことなどないわ!」

 

アール博士「いいや聞いてもらう。腕の紋章はクローンにもつけられた。だが本物と見分けるため、クローンの紋章は強い紫外線で消えるようになっておる。ハーリン皇子の紋章はこの通り消えなかった。貴様の紋章はどうだ! 本物だと主張するなら試してみるがよい!」

 

クロッペン「裏切り者の言葉など響くものか。エリオスの正当な後継者は私だ!」

 

剣人「ま、俺にはどっちでもいいけどよ」

 

クロッペン「黙れ黙れ! そうか、貴様たちは私を陥れるつもりだな。その手には乗らんぞ! 愚かな奴等め、叩きつぶしてくれるわ!!」

 

 

 話は聞かず、そのままクロッペンは攻撃を開始した。

 ジュドー達は再び現れたサイコガンダムマークⅡの抑えに回る。

 

 戦いの中、アール博士が用意した紫外線照射装置がクロッペンのいる艦橋へと放たれた。

 

 

クロッペン「ぬううぅ!?」

 

アール博士「どうだクロッペン。腕の紋章は、まだ残っておるか!」

 

クロッペン「当たり前だ。この正当な血筋であることを示す紋章は……な、ない!? 紋章が消えている。消えているだとぉお!?」

 

剣人「クロッペン。どうやらお前の方がクローンだったらしいな」

 

クロッペン「お、おのれ。これは陰謀だ。こんなバカなことがあるはずがない!」

 

アール博士「いいや。いずれにせよ本物の証ならばこの程度で消えるはずがない。お前が偽物であるのは明白、反逆者はお前の方だったのだ!」

 

クロッペン「ぐううぅぅ。ぜ、全軍撤退せよ!」

 

 

 クロッペンは大慌てで撤退してゆく。

 

 

アール博士「おお。これではっきりしました。お二人こそが正当な後継者なのです!」

 

剣人「別にそこまで感激することはないだろ」

 

アール博士「いいえ。これでエリオスの再興もあきらめずにすみます。これほどうれしいことはありません!」

 

剣人「へん。まだそれを言うかよ。俺はごめんだぜ」

 

 

 

 移動要塞。

 

 

クロッペン「くそっ。私がクローンだと? そんなはずはない。ゾルバドス皇帝陛下。お聞かせください。お答えください! 私にお言葉を。陛下を信じ、命を投げ出す私に答えを! 疑うわけではありません。どうか、お言葉を!」

 

ゾルバドス「ふむ」

 

クロッペン「陛下! どうか。どうかお答えください。私はクローンではないと。エリオス正統の後継者であると!」

 

ゾルバドス「否。お前はクローンである。あれはすべて事実だ」

 

クロッペン「なっ!?」

 

ゾルバドス「たまたまエリオス攻撃の際に手に入ったゆえ、戦略上の理由で利用したまで。お前はクローン。生体部品に違いない」

 

クロッペン「そんな、そんな! ではすべては偽りだったと!? 私にいつかエリオスを継ぐ者と教え育てたのは、まやかしだったと!?」

 

ゾルバドス「うむ。すべては偽り。我が戯れよ」

 

クロッペン「なっ!?」

 

ゾルバドス「クローンはしょせん道具。それをどう使おうと、持ち主である我の勝手である。なにより、クローンを道具としてしか見ぬ者達が、その道具に使われる。これほど滑稽なものもあるまい」

 

 

 ゾルバドスは、くつくつと笑った。

 ムゲ帝国内におけるクローンはただの生体パーツであり、道具というあつかいでしかない。

 

 そういう価値観だからこそ、あえてクローンをトップに据えた。

 

 

クロッペン「あっ、あ……」

 

ゾルバドス「それだけでなく、クローンがクローン兵(プルツー)を指揮し、それを見下す。どのような気分であった? クローンであるお前が、同じクローンを道具としてあつかった気分は」

 

クロッペン「わ、わたしは……」

 

ゾルバドス「だが、我はお前を認めている。ゆえに地位はそのままだ。クローンと知れ渡ったお前が艦隊を指揮する。どうなるであろうなあ。実に、面白い戯れである。せいぜい励むがいい」

 

 

 そうして、通信は切れた。

 

 直後、がくりとクロッペンは膝をつく。

 

 

クロッペン「あっ。ああああー!」

 

クロッペン(これが、これが幼き頃よりお仕えし、ザール艦隊を率いて帝国の拡大に貢献してきた私に対する仕打ちか……なんだ。なんなのだこれは……!)

 

クロッペン「消えた。消えてしまった。消えぬのは、私がクローンであるという事実のみ。子供の頃より仮面をつけられ、いつかエリオス領の王になるとあの方に言われ続けた私は、ただの操り人形に過ぎなかったのか……!」

 

プルツー「……」

 

クロッペン「ふっ。ハハハ。生体部品と見下した私が、結局はそれと同じだったとは。なんと愚かな。愚かなことだな……! 本当に、愚かな、ことだ……」

 

 

 同時刻。

 クロッペン配下の3将軍が集まり、話をしていた。

 

 一人は花弁のような頭になっている植物型宇宙人。ネシア将軍。

 ついで虫のような顔をしている昆虫型宇宙人、カブト将軍。

 最後は岩石のような顔をしている鉱物型生命体のぼいだー将軍だ。

 

 どれも今まで描写はないが、クロッペンと共に現れ、撃退されていた者達である。

 

 

ネシア「クロッペン総司令の方がクローンであったとはな」

 

カブト「あのうろたえよう。間違いあるまい。我々は下劣なクローンに命令されていたというのだ」

 

ボイダー「なんということだ」

 

ネシア「これでは我が艦隊の立場がない。兵士どもも不満を漏らしておる」

 

カブト「生体部品などに命令されていたのだ。当然だろう。あのような者が司令官など、ありえん」

 

ボイダー「その通りよ」

 

 

 ムゲ帝国所属ザール艦隊の中に、不和が広がってゆく……

 

 

 第11話 終わり



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第12話 ダカール奪還作戦

 

──第八の使徒襲来──

 

 

 クロッペンがクローンであることが暴かれ、司令官としての信頼を大きく損なったことにより、ムゲ帝国側の動きが大きく鈍った。

 地球侵攻の戦力の大多数をしめていたムゲ側が動かなくなったことにより、地球にも余裕が生まれる。

 

 この機会を逃すわけにはいかないということで、ネオジオンが占領するアフリカ大陸を奪還する作戦が発令された。

 大陸の北側と南側からの二手に別れ、ダカールを目指すことになった。

 

 この際、ロンド・ベル隊も二手に別れ、連合軍と共にダカールを目指す。

 つまりは、ルート分岐である!

 

 ……の、前に、使徒の襲来である。

 

 

ミサト「なんでこんな時に。もうちょっとこっちの都合も考えてほしいもんだわね」

 

 

 愚痴を言っても仕方がない。

 次の作戦の準備をしながらも、使徒迎撃を進める。

 

 第8の使徒。

 

 最初に観測した時は光を歪めるほどに強力なATフィールドをまとっており、遠目からでは目のような模様の入った黒い球体のような姿をしていた。

 とてつもない大きさを誇り、その巨大な体にATフィールドをまとわせ、衛星軌道上からネルフめがけて落下してくるのが予測される。

 

 簡単な話をすれば、ATフィールドをまとった巨大隕石が落下してくるようなものだ。

 落下すればジオフロントはおろかセントラルドグマまでも丸裸になるレベルの被害を受けるだろう。

 

 狙撃での破壊は移動&ATフィールド故難しく、倒せたとしてもその巨体の落下はとめられない。

 

 ならば、最も被害を減らせる方法をとることになった。

 

 それが、落下してくる使徒を受けとめるというもの。

 

 エヴァのATフィールドで受けとめ、落下の被害を最小限にしつつ、相手のATフィールドを無効化し殲滅するというものである。

 

 三機しかないエヴァで動く可能性のある第8の使徒を受けとめるのは至難の業。

 その確率を少しでもあげるため、オーラバトラーがサポートにつく。

 

 空を自由に飛行でき、核攻撃にさえ耐えるバリアを持つオーラバトラー。

 

 それらが落下してくるそれにとりつき、ATフィールドにオーラバリアをぶつけ減速させる。

 互いは干渉しあうが無効化はできないので、倒すことはできないが落下の速度を緩めることは十分に可能だ。

 

 とどめにエヴァのATフィールド無効化が必要になるので、完全に受け止める必要はない。

 

 オーラバトラーの役目はエヴァのどれかが落下地点につくための時間を稼ぐことである。

 

 他にもいるバリア持ちも余裕があればその手伝いをする予定だが、そうもいかないだろうというのが作戦本部の見立てであった。

 なぜなら、この作戦を妨害しに来る勢力がないとは言えないからだ。

 

 エヴァが落下予測地点にむかうのを邪魔させないため、その邪魔者を排除する者も必要になる。

 それを相手にしなければならないため、他のバリア持ちも余裕があるとは言い切れないのだ。

 

 そして予想通り、作戦開始と共にデュナンの子が襲ってきた。

 

 この主、ジュエリオンは人類の滅亡を目指している故、この妨害は必然だった。

 

 統夜達はエヴァの進路を確保し、作戦を成功させるため動き出す。

 

 

──ダカール奪還作戦 ルート選択──

 

 

 第8の使徒は無事殲滅され、現れたデュナンの子もすべて排除された。

 

 こうして改めてダカール奪還作戦が開始される。

 

 北ルートはアーガマと共に砂漠を通りダカールを目指すルート。

 南ルートはアフリカ中央を通りダカールを目指すルート。

 

 北側はアーガマとガンダムチームと共にむかう。

 南側はオーラシップと共にむかう。

 

 

『北ルート』

 アーガマ隊(0083、ZZガンダム、SEED DESTINY、νガンダム)、ナデシコ隊、ミスリル、ダンクーガ、J9、エヴァ

 

『南ルート』

 オーラバトラー隊(ゴラオン、グラン・ガラン)、マシンロボ、Gガンダム、鋼鉄ジーグ、コン・バトラー、ボルテス、ダルタニアス、ダイモス

 

 統夜の選択についてくる

 オリジナル、マジンガーチーム、ガオガイガー

 

 

──ダカール奪還作戦 移動中──

 

 

『北ルート』

 ダカール奪還のため、ロンド・ベル隊は二手に別れて進む。

 

 北ルート。砂漠を進んだアーガマはそこで待ち伏せしていたネオジオンのロンメル隊の襲撃を受ける。砂漠における地の利を生かし攻撃するが、砂漠でゲリラ活動の経験のある獣戦機隊、ウルズチームの機転により危機を脱出する。

 

 ロンメル隊を破ったアーガマは、そのままダカールへと進むのだった。

 

 

『南ルート』

 南ルート。アフリカ大陸の中央を横切る二隻のオーラシップ。

 

 アフリカのほぼ中央を通ろうとしたその時。周囲を警戒していた者がギャンドラーがうろついているのを発見する。

 大部隊で移動するこちらを警戒して身を潜めているようだが、なにかを探しているかのようなその挙動に、ロンド・ベル隊は周囲の探索を強化する。

 するとこの近くに古代遺跡があることが確認された。

 

 ダカール奪還も大切だが、ギャンドラーの目的を考えると放っておくわけにもいかない。

 さらに剣狼の導きにより、あの遺跡にはなにかがあると伝えられた。

 

 ロンド・ベル隊は急いでその古代遺跡を探索することにする。

 

 同時に、ギャンドラーの幹部ガルディもこの遺跡を調べていた。

 そのガルディと馬があわないディオンドラは、密かにガルディを始末する計画を立てていた。

 

 この遺跡は、ハイリビードについて記した石板を残した遺跡だった。

 何者がこれを建てたのかはわからない。かつて火星に遺跡を立てた者かもしれない。

 

 それによると、創造の主は、白き月の中に納められ目覚めの時を待っていると刻まれていた。

 

 それを見たミサトは、また、(まさかね)と思うが、口には出さなかった。正しくは出せなかった。

 

 遺跡の探索中、ロムはガルディと出会う。

 一騎打ちをすることになったが、そこへアームスレイブに乗った傭兵が現れた。

 ディオンドラは自分の仕業とわからぬよう、人間の傭兵を雇ったのである。

 

 

ディオンドラ(金のためならなんでもやる。どの星にもいるこういう奴等は便利でいいね)

 

 

 ちなみにこの傭兵は、ヌビアコネクションに所属する者達である。今は明かされないが、先にここに記しておこうと思う。

 

 ロムとガルディ双方を狙ってくるゆえ、2人は一時休戦し、共闘することにした。

 

 しばらくしてロンド・ベル隊もかけつけ、傭兵達は蹴散らされる。

 

 ガルディを助けにグローバインも現れたが、ガルディはここでの戦いは預けるとし、グローバインの肩を借り去って行った。

 

 今倒さねば後々禍根(ハイリビードの情報などで)になるとダイモスチームの夕月京四郎が代表して伝えたが、その時の責任は自分がとると、ロムが決意を見せ、ガルディを見逃すことになる。

 

 ハイリビードの大きな手掛かりを得つつ、彼等はダカールを目指すのだった。

 

 

──ダカール奪還作戦──

 

 

 北と南、双方からダカールを囲むように部隊が集結しつつあった。

 

 作戦開始となる前、ジュドーは仲間と共に偵察のためダカールに潜入する。

 

 そこでジュドーは、単独でハマーンと出会う。

 

 ジュドーの正体に気づきながらもなにかを感じたハマーンは、こちらの味方になれと勧誘する。

 

 同じニュータイプであるジュドーも、ハマーンの奥底にあるものに気づき、その勧誘を断る。

 ならば始末するのみとハマーンが銃を構えるが、共に偵察に入っていたJ9チームによって救われ、窮地を脱したジュドーは部隊へと戻るのだった。

 

 奪還作戦がはじまる。

 

 ここで、工作を終えたアランがロンド・ベル隊に合流する。

 アランのブラックウイングが合流したことにより、ダンクーガはファイナルダンクーガとなることが可能となった。

 

 戦いそのものに大きく語るべきことはない。

 ムゲ帝国という後ろ盾がない今、ダカールを守り切るだけの戦力はネオジオンになかった。

 

 ゆえにハマーンも本気で戦うことはせず、撤退の準備ができ次第あっさりとひいてゆく。

 一応ジュドーと戦った際、もう一度勧誘してきたりなどはしたが。

 

 こうしてダカールは奪還され、ネオジオンは宇宙へ押し戻されるのだった。

 

 

──バイクでレース!──

 

 

 これは息抜き回である。

 

 ビルドベースの近くには、剣児と鏡がしのぎを削っていたレース場がある。

 

 ビルドベースへ戻る途中、それに気づいた甲児が、口を開いた。

 

 

甲児「そうだ鉄也さん、ひさしぶりにバイクでレース勝負でもしないか?」

 

鉄也「ほう、いいだろう」

 

 

 甲児も鉄也も、バイクをたしなむ者同士である。

 二人だけではない。この部隊では、バイクに乗る者は少なくない。

 

 

豹馬「お、バイクに乗るなら俺も混ぜろよ。最近全然乗れてないからな。シンもどうだ?」

 

シン「俺は乗れるだけで、そんなに得意じゃないですよ」

 

豹馬「乗れるなら十分だろ。他に勝負になるようなのいたっけ?」

 

シン「確か、ショウが腕に覚えがあるようなことを言っていた気が」

 

チャム「ショウのこと呼んだ? ショウー。呼んでるよー」

 

ショウ「どうした?」

 

甲児「ちょうどいい。ビルドベースの近くにレース場があるから皆でひとレースしないかって話になってよ」

 

ショウ「俺はモトクロスの方なんだが……まあ、いいか」

 

 

 モトクロス。

 確かにバイクの競技であるが、こちらはクロスカントリー。つまり、未舗装の周回コースを走る方である。

 通常のレースとは違い、丘陵などの不整地や勾配。泥の中を走るなど、自然の地形と戦うモータースポーツである。

 

 

甲児「健一はどうだ? 確かバイク乗れたよな?」

 

健一「すまない。俺達は待機組なんだ」

 

甲児「マジかよ。わりい」

 

健一「気にしないで楽しんできてくれ。でないとせっかくの休息が台無しだ」

 

剣人「バイクなら、ジュドーもいけるぜ。俺とジャンク屋やってる時、色々乗ったからな」

 

ショウ「剣人か。なら、お前も乗れるのか?」

 

剣人「そりゃ乗れるが、レースはやったことないな」

 

甲児「なら、いっちょやってみるか?」

 

剣人「いいぜ。勝ったらなにかおごれよ」

 

甲児「ちゃっかりした奴だぜ」

 

ジュドー「なにか賞品があるなら、乗るしかないね!」

 

鉄也「物につられて出てきたか。現金な奴め」

 

ジュドー「へへっ」

 

甲児「それじゃあ、人数はこれくらいで……」

 

剣児「おいおい。あそこでやるなら、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

甲児「出やがったな!」

 

剣児「もちろん、参加させてもらうぜ。鏡と散々走ったコースだ。ハンデをつけてやってもいいくらいだ」

 

鉄也「ふっ。その自信、いつまでもつかな」

 

剣児「こいつばかりは先輩にも負けねえさ! 鏡はどうする?」

 

鏡「これだけの面子を前に断ってはなにを言われるかわからんな。いいだろう。つきあってやる」

 

剣児「そう来なくちゃよ。それじゃあ、みんな行くぜ!」

 

 

 というわけで、暇な若者を集めてレース勝負が開催されることとなった。

 免許はどうした? というメンツもいる気がするが、今は戦時下だしレースをする場所は私有地なので問題はない! いいね?

 

 一応ビルドベース防衛のため、ブライト達軍の大人、勇者ロボ、J9+ボルテスチームが残ることになり、それ以外の者はレース会場へと足を運ぶ。

 

 レースとくればレースクイーンだ! と雅人とクルツが悪だくみをしようとしたが、もちろん成功することはなかったそうな。

 

 

甲児「統夜はどうする?」

 

統夜「さすがにバイクにはほとんど乗ったことがないから、レースは遠慮しておくよ。他の誰かと、カートか自転車で楽しませてもらう」

 

 

 レース場にはサイクリングコースもカート場もあるため、免許のない人でも安心して楽しめるようだ。

 

 

甲児「いや、甘いぜ。自転車で参加する奴もいる。お前だっていけるさ!」

 

統夜「は?」

 

 

 ふと見ると、自転車にまたがるロムとドモンと一矢の姿があった。

 三人自転車にまたがり、腕を組んで並んでいる。

 

 きっとそれは博士特別製で、ガンダムファイターが全力でこいても壊れないに違いない!

 

 

統夜「いや、無茶言うな!」

 

豹馬「絶対面白いことになるって」

 

統夜「面白いことにはなるだろうけど勝負にはならないだろ!」

 

甲児「まったくだぜ」

 

 

 甲児と豹馬はけらけらと笑った。

 

 

テニア「いや、あれ、ずるくない?」

 

カティア「普通に考えればずるいどころか勝負にならないはずよ」

 

メルア「ですよね」

 

クド=ラ「バイクと勝負できるとか、おかしな話よね……」

 

ロゼ=リア「ハンデがハンデにならない。人間て凄いですわね!」

 

シャナ=ミア「本当に」

 

 

 あはは。と、苦笑するしかない少女達だった。

 

 

 他にも、シンジ達エヴァチームも来ていた。

 とはいえ、日本でずっと育ってきたシンジなどは、免許のこともあり、バイクに乗るという選択肢はなかった。

 

 

剣児「なら、カートはどうだ? あれは免許がいらないからな」

 

シンジ「運転も、ゲームでしかやったことないんですよね」

 

アスカ「へー。おもしろいじゃない。シンジ、勝負よ!」

 

シンジ「えー」

 

アスカ「レイも来なさい。一緒にコテンパンにしてあげる!」

 

レイ「……わかったわ」

 

ミサト「おっもしろそうね。なら、勝った子にはなにかご褒美あげる!」

 

ミサト(アスカ、シンちゃん達の呼び方がナナヒカリとエコヒイキから変わって。お姉さん嬉しいわ!)

 

アスカ「ホント! なら、絶対勝つわ!」

 

シンジ「僕達に拒否権はないんですか……」

 

ミサト「いいからいいから。楽しみましょ」

 

アスカ「さー、いくわよー!」

 

 

 こうして、色々なところでレースが開催されようとしていた。

 

 しかし、バイクが位置につこうとピットから出ようとした時、甲児達の前に六つの影が立ちはだかった!

 

 

甲児「お、お前は!」

 

デビルサターン1「誰かときかれりゃ答えにゃならん! そう、ワイ等は!」

 

 

 ばばーんと、無駄にポーズをつけて現れたのはデビルサターン6。

 合体せずに6体バラバラの登場でついでにポーズもつけてみた!

 

 

ジェット「なにしに来やがった!」

 

デビルサターン1「おおっと、まちーや。今回ワイ等はバトルしに来たんやない。来たのもワイ等だけ。平和でいこうや」

 

鏡「……」(確かに、もっと数がいればビルドベースの者達が気づいたはずだ。それがないというのは、こいつらだけで潜入してきた可能性が高い……だが、なんの目的で?)

 

十三「平和的なんて、どの口が言うんや」

 

デビルサターン1「この素敵な口がや!」

 

十三「そういうこと言いたいんとちゃうわ!」

 

デビルサターン1「まあええ。今からレースをやるんやろ? なら、ワイ等もまぜーや!」

 

剣児「なんだって!?」

 

鉄也「なにを企んでいる」

 

デビルサターン1「くくく。ワイ等も欲しいもんがあるんや。勝ったらそいつをいただこうと思うてな!」

 

ロム「いったいなにが欲しい?」

 

デビルサターン1「そのバイクに入っとるエンジンオイルや! ワイ等が勝ったらそれをいただいてくで!」

 

甲児「は?」

 

ロム「は?」

 

剣児「なんだって!?」

 

デビルサターン1「ちょいと通りかかってみれば、かぐわしいオイルのにおいがするやないか。それだけいいオイル。ガデス様に献上すれば、ワイ等のコマンダーランクもうなぎのぼり! 絶対いただいてくで!」

 

剣児「た、確かにここのエンジンオイルは質がいい。なかなかいいところに目をつけてやがるぜ!」

 

鏡(そういえば、ここは司馬モータースとかかわりがあったな。あの司馬博士も関係がある。そのせいもあるか……)

 

 

 司馬モータースとは、先代ジーグである司馬宙が社長を務めるモータスポーツ&修理店である。その父はあの司馬博士なのだから、なにかとんでもないモノをあつかっていても不思議はないだろう。

 

 

ジュドー「そっちが勝ったらそれを持っていくとして、俺達が勝ったらどうすんだよ?」

 

デビルサターン1「そん時はおとなしく帰ったるわ」

 

剣児「それなら売店で買って帰ればいいんじゃないか?」

 

デビルサターン1「アホンダラ! 地球の金、ワイ等が持ってると思うんか!」

 

剣児「……思わねえな。そいつはすまなかった」

 

デビルサターン1「わかりゃええねん」

 

十三「いや、つっこむとこそこやないやろ」

 

さやか「ここで暴れられるよりましだから、受けてもいいんじゃない?」

 

甲児「確かにな。レースをすれば勝っても負けても帰るんだな?」

 

デビルサターン1「おう!」

 

鏡(レースの間に迎撃の準備を進めてもらえば、万一暴れられた時も十分対処できる。時間を稼ぐためにも、ここはレースをした方が被害が減らせるな)

 

鏡「いいだろう。勝負を受けてやろう」

 

デビルサターン1「話わかるやないか! 勝負や!」

 

ジェット「ところで、お前等どうやってレースするんだ?」

 

 

 クロノス星の者達は、ロボットと同じ体をしている者も多く、ブルー・ジェットは飛行機に。ロッド・ドリルはドリル型の車に変形できる。

 このデビルサターン6体も、合体するだけでなく飛行機のようなものに変形できるのだ!

 

 

デビルサターン1「そりゃ、ワイ等もバイクに乗るんやがな! 正々堂々勝負してこそやろ!」

 

レイナ(変形しないんだ……)

 

カティア(変形しないのね……)

 

アスラン「バイクに乗るのか……」

 

 

 多くの人が思ったそうな。

 

 そして……

 

 

デビルサターン1「うおおっ、やっぱ生身の人間用のは乗りにくい! ノリで乗るんやなかった!」

 

つばき(ノリでやったんだ……)

 

 

 こうして、デビルサターンをふくめたレースがはじまる!

 

 先に結果を言っておくと、レースは途中で中止となる。

 空気を読まずに現れたデュナンの子のおかげで、レースどころではなくなってしまうからだ。

 

 

ジュエリオン「剛健一! 今日こそ貴様に生まれてきたことを後悔させてやる!」

 

健一「まさか俺達が残った意味が出るなんてな」

 

ムウ「なにも子供達が楽しんでいるこんな時に出てこなくてもいいだろうに」

 

 

 デビルサターンが伏兵を連れてきていた時のため出撃準備をしていたビルドベース留守番組がすぐに飛び出す。

 

 さらに……

 

 

デビルサターン1「あともう少しで勝ってるとこやったのに、なにしてくれるんやー!」

 

 

 六鬼合体してデビルサターン6となったデビルサターン6がデュナンの子の前に飛び出す。

 

 

デビルサターン6「続きはあれ倒してからや! ええな!」

 

ロム「あ、ああ」

 

 

 流石のロムも、今回ばかりは押され気味である。

 

 あくまで第三軍としてだが、デビルサターン6が味方に加わり、デュナンの子と戦うことになった!

 

 もちろん第三軍だから自分じゃ動かせないし、勝手に動くのは当然である!

 協力してんだか邪魔してんだかわからないまま、デビルサターン6と共にデュナンの子を撃退するロンド・ベル隊であった。

 

 戦いも終わり……

 

 

デビルサターン6「ちっ。今回はこれ以上無理やな。今日のところはこれくらいにしといたる!」

 

剣児「おっと、待てよ。こいつをもってけ!」

 

デビルサターン6「ん?」

 

剣児「お前等の欲しがってたエンジン・オイルだ」

 

デビルサターン6「誰がほどこしなんているかいな!」

 

ロム「次またレースができるとは限らない。記念の品として受け取っておけ。正々堂々も悪くない。という点もふくめてな」

 

デビルサターン6「……ま、記念品ならしゃーないな。もらっといてやるわ!」

 

 

 そう言い、デビルサターン6は去っていった。

 

 

レイナ「毎回毎回こうならいいんだけどね」

 

ロム「そうもいかないのが悲しいところだな……」

 

 

 しみじみと思うロム達であった。

 

 

 第12話 終わり



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第13話 ネルフの長い長い一日

 

──決戦! 第三新東京市 前編──

 

 

 ネオジオンが地球より撤退したことにより、ドレイク軍との地球支配を目的とした覇権争いの三つ巴は崩壊した。

 その流れのまま、地球連合は、ドレイク軍と決着をつけるべく準備をはじめる。

 

 連合軍の準備が整うまでの間に、ネルフはエヴァンゲリオン3号機の起動実験を進めようとしていた。

 

 大がかりな実験となるため、どこかの勢力からの襲撃の可能性を考慮し、実験場付近はエヴァ2機が護衛(アスカは3号機に乗るので護衛はシンジとレイ)し、他は別の場所で待機ということになり、起動実験は開始された。

 

 杞憂は見事に的中することになり、その実験場へ迫る影が現れた。

 

 ドレイク軍から放たれた刺客。トッド・ギネスとガウルンだった。

 これ以上ロンド・ベル隊の戦力が増強されるのはむこうとて望まないのは当然だった。

 

 その迎撃に出る統夜達。

 

 そこへさらに、ガルディとグローバインのギャンドラーまでもが現れた。

 

 ドレイク軍もギャンドラーもロンド・ベルがいないところで出会ったなら殴りあうくらいの仲であるが、今回はそこにロンド・ベルがいる。

 しかも、現れた大物達の獲物にかぶりはない。

 

 ゆえに、互いの獲物をとりあわない限り、助けもしなければ邪魔もしない。三つ巴の戦いであるはずなのに、実質的にロンド・ベル隊は二対一の戦いをせざるを得ない状態となった。

 

 名だたるライバルが多くそろったこの戦いは、非常に激しいものとなった。

 

 トッドは一度倒れてもハイパーライネックと化し、ガウルンに手加減など一切ない。

 ガルディもグローバインと共に、ロム達を大きく苦しめた。

 

 それでも、全員に手痛いダメージを与え、撃退に成功する。

 

 今までで一番厳しい戦いだったかもしれないが、彼等は勝ったのだ。

 

 

 ほっと一息をついたのもつかの間。ネルフからの緊急通信が入る。

 

 

 なんと3号機の中に潜み、その機体を乗っ取り第9の使徒と化した3号機と、のちに最強の拒絶タイプと称されることになる第10の使徒が同時にネルフを襲撃、ネルフ本部のあるジオフロントにまで侵入されてしまったのである。

 このままでは最深部であるセントラルドグマにまで到達され、使徒により未曽有の大災害が引き起こされてしまう。

 もしくは、ネルフ本部の自爆により使徒をまきこんでの地図を大幅に書き換える事態となるだろう。※万一使徒がセントラルドグマまで侵入された場合、ネルフ本部は敵をまきこんで自爆する設計になっている。

 

 今戦いが終わったばかりとはとても言っている場合ではない。

 

 補給も修理も満足にできないまま、ロンド・ベル隊はネルフ本部のあるジオフロントへと急行する。

 

 

──決戦! 第三新東京市 中編──

 

 

 ロンド・ベル隊がジオフロントへむかった時から、少しだけ前に戻る。

 

 

 第三新東京市。

 警報と共に、そこに住む人達は皆シェルターへと避難している。

 

 そこへ、大きな地響きを響かせながら第9の使徒となった3号機が歩いていた。

 

 その進行を遮るようにして立つ人影が二つ。

 初号機と零号機。

 

 起動の爆発で一時現場が混乱し歩き出した3号機は見逃したが、先回りしてその前に出たのである。

 

 

シンジ「アスカ!」

 

ミサト「ダメよ、シンジ君。エントリープラグは完全に外部からの信号を拒絶しているわ」

 

 

 同じく起動実験場から司令部に戻ってきたミサトがシンジに声をかける。

 

 

ゲンドウ「あれは使徒だ。速やかに倒せ」

 

シンジ「嫌だよ。アスカが乗っているんだよ!」

 

ゲンドウ「かまわん。そいつは使徒だ。我々の敵だ」

 

シンジ「でも、できないよ……! 殺すなんてできないよ!」

 

ゲンドウ「お前が死ぬぞ」

 

シンジ「……っ!」

 

ゲンドウ「……パイロットと初号機のシンクロを全面カットだ。制御をダミーシステムに切り替える」

 

リツコ「しかし、ダミーシステムにはまだ問題も多く……」

 

ミサト「危険です、碇司令!」

 

ゲンドウ「今のパイロットよりは役に立つ。やれ!」

 

リツコ「……はい」

 

 

 シンジが使えぬとみるや、ゲンドウはダミーシステムの起動を強行しようとした。

 

 しかし……

 

 

シンジ「……嫌だ」

 

ゲンドウ「なに?」

 

シンジ「僕が死ぬのも、アスカが死ぬのも、どっちも嫌だ!」

 

マヤ「ダミーシステム、起動しません!」

 

リツコ「違う……! コアユニットがダミーを拒絶しているんだわ!」

 

冬月「初号機になにがおきている」

 

ゲンドウ「……」

 

シンジ「アスカは殺さない。僕が、助ける! みんななら、きっとそう言う!」

 

 

 仲間との交流を経て様々な影響を受けたシンジは、アスカを守るという選択をとったのだった。

 

 

シンジ「エントリープラグを引き抜くよ。少しだけ、我慢してよねアスカ!」

 

マコト「っ! 直上に反応!」

 

シゲル「パターン青! 使徒です!」

 

ミサト「もう一体ですって!?」

 

シンジ「っ!?」

 

 

 第9の使徒が迫り、初号機と格闘をはじめようとしたその時だった。

 

 上空からもう一体、別の使徒。第10の使徒が現れたのだ。

 

 それは現れるのと同時に、目を光らせ、都市を爆撃する。

 

 

 ドゴオォォン!!

 

 

 激しい光と爆音。

 その一撃で地表は吹き飛び、ジオフロントの中にあるネルフ本部、ターミナルドグマはむき出しとなった。

 

 

シンジ「こんな、時に!」

 

 

 第9の使徒と格闘を続けるシンジが苦々しい声を上げる。

 

 第10の使徒は、初号機など無視してターミナルドグマへと降りてゆく。

 

 

ミサト「他のみんなは?」

 

マヤ「現れたギャンドラーとドレイク軍を相手にしています!」

 

ミサト「こんな時に!」

 

???「なら、助っ人が必要だね!」

 

 

 本部の近くに、エヴァンゲリオン2号機が現れた。

 乗っているのは、真希波・マリ・イラストリアス。通りすがりのエヴァパイロットである。

 

 彼女が助っ人に入り、第10の使徒に立ち向かう。

 しかし、圧倒的な強さであるそれに、普通の状態ではかなわない。

 

 ゆえに彼女は、2号機の裏コード、『ザ・ビースト』を発動させる。

 

 さらにターミナルドグマへ降りた零号機が、自爆覚悟の攻撃を行う。

 

 

 それらの決死の攻撃だったが、第10の使徒には通じず、綾波レイは零号機ごと第10の使徒に捕食されてしまうのだった。

 

 

シンジ「綾波ー!」

 

リツコ「まさか、使徒がエヴァを捕食するなんてあり得ないわ!」

 

マヤ「変です! 使徒の識別信号が零号機に切り替わります!」

 

ミサト「やられた! パターンが使徒でなくなった以上、これで奴がセントラルドグマに侵入しても本部は自爆しない!」

 

 

 第10の使徒の咆哮。

 

 その影響でさらに地表は崩れ、初号機と第9の使徒はターミナルドグマへと落下することになる。

 落下の衝撃はATフィールドで緩和することができたが、瓦礫と煙で一時期第9の使徒の行方がわからなくなった。

 

 ケーブルも切れたので、初号機は内部電源へと切り替わる。

 

 このままでは、動けなくなる。

 

 そうなったところで、救援要請を受けたロンド・ベル隊が到着する。

 

 

ブライト「現状は!?」

 

ミサト「第9にアスカが。第10にレイがとらわれてしまったわ」

 

 

 第10の使徒の隣に、第9の使徒が姿を現す。

 

 

ブライト「なんてことだ」

 

剣児「どちらもまだ死んだと決まったわけじゃない。シンジ、取り返すぞ!」

 

シンジ「はい!」

 

 

 戦艦からのケーブルに切り替え、シンジも隊列に加わる。

 ただ、ロンド・ベル隊も先の戦いから回復は不十分である。わかりやすく言えば、精神ポイントは回復したが、HPとエネルギー、弾薬は80パーセントといったところである。

 

 さらにロンド・ベル隊が到着したところで、デュナンの子が現れた。

 

 

ジュエリオン「あれ一機ならばなにもせずとも終わったというのにな。お前達が来たのなら話は別であろう。あのまま、終わっておけばよかったものを」

 

豹馬「また懲りずに送りこんできやがって」

 

 

 こうして、第9の使徒と第10の使徒。

 二つにとらわれた少女を救い出す戦いがはじまる!

 

 

 ロンド・ベル隊は疲弊しているが、それでも二人を助けたいという気持ちは強かった。

 

 特にシンジは、絶対に助けるという強い想いをもって立ち向かった。

 その想いのもと、シンジと初号機は、疑似シン化第1覚醒形態へと覚醒する。

 

 ヒトを超えた状態となったシンジは、第9の使徒からアスカの捕らわれたエントリープラグを引き抜き、第10使徒の中からレイを救い出した。

 

 その変化に人へと戻れるのか心配されたシンジであったが、それは杞憂であった。

 二人を救い出し、自身も無事、帰還する。

 

 使徒二体が撃退されると、デュナンの子も追加なく去っていった。

 

 

トーレス「敵の全滅を確認しました」

 

シンジ「アスカ、綾波!」

 

マヤ「どちらも生命活動を確認。無事です!」

 

ミサト「二人は助かったか。といっても、ネルフは全然無事じゃないけど……」

 

 

 ミサトがため息をつく。

 

 ジオフロントの天井である地表は吹き飛び、大穴が開いている。

 ネルフ本部のあるターミナルドグマもひどいもので、戦いの余波でボッロボロになっていた。

 

 特に第10の使徒の攻撃力はすさまじく、最下層のセントラルドグマへむかうメインシャフトまでむき出しになっている状態だった。

 

 

ミサト「ここでさらに使徒のおかわりなんてことになったら終わりね」

 

マコト「そうですね。流石に今日はこれ以上……」

 

 

 ビーッ、ビーッ。

 

 

ミサト「今度はなにぃ!?」

 

マヤ「ドレイク軍が来ます!」

 

ミサト「なんですって!?」

 

冬月「疲弊したロンド・ベルを叩きに来たか? ここで戦われるのは困るな」

 

マヤ「いえ、狙いはここです! この下にある生命の源を渡せと言っています!」

 

冬月「なんだと!?」

 

 

 通信回線が開かれる。

 

 

カーメン「はじめましてネルフ、そしてロンド・ベルの皆さま。私の名はカーメン・カーメン。ドレイク軍を援助するコネクションの代表にして、ドレイク軍の地球側オブザーバーにございます。今回はドレイク殿にかわり、あなた方への交渉役として選ばれました」

 

アイザック「カーメン・カーメンだと!?」

 

お町「知っているの?」

 

アイザック「最近台頭してきたヌビア・コネクションのトップだ。厄介な相手が出てきたものだ」

 

ゲンドウ「地下にお前達に渡すものなどなにもない」

 

カーメン「ハハハ。腹芸をする必要はありません。私は知っている。そこになにがあるのかを。なぜなら、私も文書(もんじょ)を持っているからだ」

 

ゲンドウ「っ!」

 

カーメン「ゆえに、私はすべてを知っている。そこになにがあるのかを。宇宙でそれが、なんと呼ばれているのかも。渡すのです。生命の源を。『ハイリビード』を!」

 

ロム「っ!」

 

ミサト(やっぱり……!)

 

 

 死海文書外典。

 それが、先ほどカーメン・カーメンの言った文書の正体だ。

 それは、かつてこの地に現れ、火星やアフリカに遺跡を造り、その力に『ハイリビード』と名づけた者達(フューリーでなくグラドスやマシンロボの祖先のこと)が残した文章。

 宇宙に伝説の力を広めた者達が残した遺産。

 

 生命を新たなステージへ至らせる方法を描いた説明書の写本こそが、ゼーレが望む計画のもとである。

 

 それと同じものを、カーメン・カーメンは所有していると言っている!

 

 

ゲンドウ「そこまで知っているのなら、我々がうなずくわけもないと知っているはずだ」

 

カーメン「ハハハ。わかっていても聞かねばならぬ時もある。体面は必要なことは知っているだろう? では、交渉は決裂。あとは力で奪うのみ。そうドレイク殿に伝えておこう。健闘を祈る。ハハハ。ハハハハハハ」

 

 

 高らかな笑い声をあげ、カーメンとの通信は終わった。

 

 

リツコ「使徒の次は人に狙われているというわけね」

 

ゲンドウ「いずれにせよ、ここを渡すわけにはいかん」

 

ブライト「皆、いけるか?」

 

甲児「もちろんだぜ」

 

アスカ「私も行くわ」

 

シンジ「アスカ。大丈夫なの?」

 

アスカ「あったりまえよ」

 

 

 ちなみに零号機はさすがに食われたので、レイは今戦いに参加できない。

 

 

ミサト「じゃあ、徹底抗戦ということ……」

 

ロム「待て」

 

ミサト「な、なに? ハイリビードがここにあったとか、私は知らなかったからなにも言えないわよ」

 

ロム「……剣狼が告げている。何者かがすでに、地下へ侵入していると!」

 

リツコ「なんですって!?」

 

マコト「あ、ありました。セントラルドグマに侵入者です! この反応。なんだこれは。機械? 人間……?」

 

リツコ「いえ。これはロム君達と同じ。ギャンドラーだわ!」

 

ロム「こいつは……!」

 

 

 画面に映し出されたのは、メインシャフトを降りるギャンドラーの集団だった。

 

 その先頭に立つのは、ガデス。ギャンドラーの首領であり、ハイリビードを求める、ロム達の父の仇である!

 

 

冬月「なんてことだ。こうなれば……」 

 

マヤ「駄目です。自爆装置作動しません。破壊された模様です!」

 

冬月「なんてことだ」

 

ゲンドウ「……」

 

 

 上にはドレイク軍。下にギャンドラー。

 

 

ミサト「これは二手に別れるしかないみたいね。どちらに奪われても終わりなんでしょうから。今、ぱぱっと組み分けしたわ」

 

ブライト「それでいきましょう。どちらも厳しい戦いになる。だが、負けてはいられん。ここが正念場だ。総員、ハイリビードを守れ!」

 

一同「おおー!」

 

 

 二手に別れ、ロンド・ベル隊はハイリビードを守るため戦いにおもむくのだった。

 

 そう。この一大事に分岐である!

 

 

──分岐選択──

 

 

『地上にてドレイク軍を迎撃する』

 アーガマ隊(ZZガンダム、ガンダムSEED DESTINY、0083、νガンダム)、オーラバトラー隊、ウルズチーム、ダンクーガ、J9

 

『地下にてギャンドラーを撃退する』

 ナデシコ隊、マシンロボ、Gガンダム、ガオガイガー、鋼鉄神ジーグ、コン・バトラーV、ボルテスV、ダイモス、エヴァ

 

『フリー』

 統夜達、マジンガーチーム

 

 

──決戦! 第三新東京市 後編──

 

 

 ジオフロントに開いた大穴から二つのオーラバトルシップがターミナルドグマへと降下し、オーラバトラーを展開する。

 その数は無数。ここで確実に生命の源、ハイリビードを手に入れんとすべての戦力をかけているかのようだった。

 

 ドレイク・ビショット軍は地球全体の戦力に比べれば決して大きくはない。

 ネオジオン・ムゲ帝国同盟が現れ、地球連合軍と争っていたからこそ、その戦力は拮抗できていた。

 それが今崩れ、ただ待つならば間違いなく滅びる。

 

 覇王たるドレイクには、それは受け入れがたい事実であった。

 

 しかし、地球にはその戦力差を逆転させる力が眠っていた。

 

 生命の源。ハイリビード。

 地球の生命を生み出したとされる、奇跡の力。

 

 オーラマシンは生命の力、オーラ力をエネルギーに変える。不死さえ実現させるというそれが手に入れば、オーラシップもオーラバトラーも無類の力が手に入るだろう。

 それこそ、リスクなしですべての機体がハイパー化さえしうる。

 

 そうなれば、たとえ数で劣っていようともう怖いものはない。地球を得たも同然である。

 

 ゆえに、ドレイク軍はすべての戦力をもってその力を手に入れるつもりでいた。

 

 

 同じ時、セントラルドグマ最奥に、ギャンドラーのボス、ガデスはいた。

 黒き月の中に納められ、目覚めの時を待つ大いなる力、ハイリビードの封じられた赤き十字架にはりつけにされた巨人を見る。

 

 ガデスは薄く笑い、そこに手を伸ばす。

 

 はりつけにされた白き巨人は崩れ、その中から光が現れた。

 

 

ガデス「ククッ。これだ。これが我が望みをかなえる力!」

 

 

 ガデスの中から、年老いた男が現れた。

 巨大な姿。それは鋼の鎧だったのである。

 

 真の姿を見て、驚きを隠せないガルディ、グローバイン。

 ちなみに今回、ディオンドラとデビルサターン6は連れてきていない。信用されていないからだ。

 

 光を受け入れるのと共に、その年おいた男はみるみる若返ってゆく。

 

 

ガデス「なんという力だ。力が蘇る! それ以上に沸き上がる!」

 

 

 ここにきているギャンドラーの数は少ない。一部幹部さえ連れてきていない始末だ。

 

 だが、それでもガデスは勝利を確信する。

 たった一人ですべてを倒せるとさえ思える。

 

 それほどの力が体中にみなぎっていたからだ。

 

 それも当然である。その力は星に命を与える大いなる力。無限のエネルギーを秘め、命の源となる、世界の命と言っていいものなのだから。

 

 

ガデス「これで世界は、ワシのものだ!」

 

ロム「待てい!」

 

 

 そこに現れたのは、ロムとロンド・ベル隊であった。

 

 

 すべてをかけ全軍を展開するドレイク軍と、少数ながらもハイリビードを手に入れたギャンドラー。

 

 対するは、連戦につぐ連戦を乗りこえてきたロンド・ベル隊。

 機体の損傷もエネルギーの補給も補うことはできず、連戦の疲れさえ癒せていない。しかも、戦力は半分。

 

 幾度ものピンチを乗り越えてきた彼等であったが、今回ばかりは厳しいとしか言いようがなかった。

 

 

 ドレイク軍との戦いに多くの言葉はいらず、すぐ戦いははじまるが、地下での戦いは、すぐにははじまらなかった。

 

 

ガデス「来たか、キライの息子よ」

 

 

 ハイリビードを手にし、勝利を確信するガデスは、余裕をもって語りだす。

 

 

ガデス「貴様にいいことを教えてやろう……」

 

 

 そこで語られるのは、衝撃の事実。

 先の戦いで傷ついたままこの場にはせ参じたガルディ。

 

 彼はロムの兄だったのだ!

 

 ロムが幼いころ死んだとされたその人。

 彼は幼いころガデスにさらわれ、ガデスを実の父のように慕うよう洗脳されていたのである!

 

 この事実を告げられたことで、ガルディの洗脳はとけ、彼は真実を思い出した。

 ガデスと同じく彼の体を覆っていた巨大な鎧は砕け、真の姿が明らかとなる。

 

 ガルディ・ストール。

 

 それがガデスの右腕として暴れまわったガルディの真の姿であった。

 

 正気を取り戻したガルディは、ガデスに切りかかる。

 

 しかし、逆にその攻撃を受けとめられ、その体はガデスにとりこまれてしまった。

 

 

ガデス「ワシと共に生き、永遠の命を得ることを許してやろう。光栄に思うのだな!」

 

 

 その非道に、グローバインが吠えた。

 

 元々そりのあわなかった組織であり、ジェットにたびたび勧誘を受けていたことも幸いし、彼はそのままロンド・ベルの味方となる。

 

 

 こうして、地上と地下で、地球を揺るがす戦いがはじまった。

 

 先ほどガウルン達との三つ巴の戦いが一番厳しい戦いだと言ったが、今回はそれを超えるものとなった。

 

 ギャンドラーとドレイク軍の先行隊との戦いにはじまり、第9の使徒と第10の使徒。さらにデュナンの子との連戦。そこから大きく消耗しての部隊分割による決戦。

 これで苦戦しないなどありえるはずもなかった。

 

 エネルギーを自力で回復できる機体はある。

 だが、弾薬の補給や人の疲労は簡単には回復しない。

 

 あれだけの激戦と連戦を重ねては、流石のパイロット達も大きく疲労していた。

 

 わかりやすく言えばHPやエネルギーや精神ポイントは全員半分以下であり、唯一充実しているのは気力のみという状態なのである。

 

 さらに敵はすべての戦力を総員してしかけてきたドレイク軍とハイリビードを得て究極の状態となったガデスと、部隊を分割しておらず万全でも苦戦は必至の相手である。

 

 上下からの猛攻に、戦士達は次々と膝をついてゆく……

 

 

ロム「くそっ……!」

 

豹馬「もう、弾が……!」

 

ジュドー「ライフルのエネルギーがもう!」

 

甲児「くそっ。ミサイルも撃ち尽くしちまったか」

 

 

 最初は弾数99と表示されていたカイザーのギガントミサイルも今やゼロ。

 ここまですっからかんになるのは、さすがの甲児もはじめての経験だった。

 

 上部も下部も、限界が、近づこうとしている。

 

 ドレイクはそのさまを見て、にやりと笑う。

 ガウルンにより連れてこられたカーメンにより聞いた文書の情報通り、使徒の襲撃にあわせた、疲弊を狙った連戦の策は見事にはまっていた。

 

 同時に地下のガデスも自身の勝利を確信する。

 

 

テニア「ど、どうしよう統夜!」

 

統夜「諦めるな! こんなところで。俺達は、こんなところで負けてはいられない! 俺達が倒れたら、誰がみんなを守るんだ!」

 

 

 ──!

 

 

甲児「そうだぜ! こっちにはまだ二本の腕がある! いくらでもぶん殴ってやるから覚悟しやがれ!」

 

 

 ──ッ!

 

 

ドモン「ああ、その通りだ。このくらいのピンチ、今まで何度もあった。俺達はそれを何度も乗り超えてきたじゃないか!」

 

 

 ──トクンッ!

 

 

統夜「その通りだ。みんな、諦めるな!!」

 

 

 ──ドクンッ!!

 

 

 その、諦めない心。

 それに、応えるものがいた!

 

 

ガデス「な、なんだ!?」

 

 

 勝利を確信し、高笑いを上げていたガデスが驚きの声を上げる。

 

 その体が光り輝き、その身に宿した力が抜けてゆくのをガデスは感じた。

 

 ガデスの中から、光が離れてゆく。

 同時に、ガデスに吸収されたガルディも分離される。

 

 

ガデス「ま、待て! それは、ワシのものだ!」

 

 

 手を伸ばすが、光はその手をすり抜け、統夜の乗るグランティード・ドラコデウスのもとへとむかう。

 

 

ドレイク「なんだ、なにが起こっている!?」※

 

 

※ドレイク軍と統夜が戦っている場合、ドレイクの目の前で地下よりハイリビードを召喚し、地下の場合はそのままハイリビードを奪う形になる。

 

 

統夜「おおおおおおっ!!」

 

 

 統夜達の想いに、その光が応えたのだ。

 

 グランティード・ドラコデウスの頭部。そこに、その光が収まった。

 それは、本来これがあるべき場所。

 

 神核と呼ばれる、グランティードのコアであったもの。それがハイリビードと呼ばれる力の正体なのだ。

 

 そこに、本来あるべきものが収まった。

 

 すなわち、この状態こそが、グランティード・ドラコデウスの真の姿。

 そう。

 

 

『シン・グランティード・ドラコデウス』

 

 

 なのである!!

 

 

統夜「その力を、見せろ、グランティード!」

 

 

 シン・グランティード・ドラコデウスを中心に、太陽のようにまばゆい光が輝いた!

 

 光が広がり、壁も大地さえも貫通し、ジオフロントすべてを包み、仲間達を包んでゆく。

 

 

ブライト「なんだ、この光は……?」

 

アムロ「統夜さん……?」

 

ジュドー「なんて暖かい光なんだ……」

 

甲児「傷が、ダメージが消えていく?」

 

健一「エネルギーが、回復している」

 

 

 あたたかな光に包まれ、その機体の傷や消耗が消えてゆく。

 それどころか、疲労さえなくなっているように感じられた。

 

 

剣人「な、なにが起きているんだよこれ?」

 

豹馬「弾の数まで戻ってやがる。まるで、時間が戻ったみたいだぜ……」

 

 

 光が収まる。

 

 それが消えた後、ロンド・ベル隊のすべてがこの連戦がはじまる前の状態であるかのように戻っていた。

 機体の傷も、消耗も、人の疲れも、なにもかもがなくなってしまったのだ。

 

 それは、時間が逆行したと言ってもいいほどに……

 

 

 さらに、セントラルドグマに、零号機が援軍として現れた。

 

 

シンジ「綾波!?」

 

レイ「零号機が直ったわ」

 

アスカ「ええー!?」

 

ロム「これが、ハイリビードの力……」

 

豹馬「ええい。ごちゃごちゃ考えるのはあとでいい。これでまだ戦える。仕切り直しだ!」

 

剣児「ああ!」

 

 

 ちなみに、ゲームではこの戦いに限り、毎ターンHP、エネルギー、SP、弾薬すべてが30パーセントずつ回復する(元からの回復持ちは累計で回復)

 

 

ドレイク「これが、生命の源の力。これがあれば、我が願いもかなう! もうひくことはまかりならん! 全軍、突撃せよ!!」

 

ガデス「おのれ。その力はワシのものだ。返せ。返せー!」

 

 

 ここにきて、疲弊が消えてしまえば、あとは勢いが違う。

 

 それどころか、さらなるダメ押しの追加があった!

 

 

弓教授「甲児君。聞こえるか!?」

 

さやか「お父様!?」

 

甲児「弓教授! ひょっとして!」

 

弓教授「ああ。今、カイザースクランダーの調整が終わった。すぐ、君の元へ送る!」

 

甲児「待ってたぜ!」

 

 

 弓教授の言葉と共に、戦場へカイザースクランダーが現れた。

 

 上部のジオフロントで戦っている場合、太陽を背にして合体する!

 下部のセントラルドグマの場合、シャフトを潜り抜け現れたスクランダーが一直線にカイザーの背中に突き刺さり、下からライトアップされた皇帝の姿を見せる!

 

 

甲児「いくぜ統夜!」

 

統夜「ああ!」

 

 

 完全体となったマジンカイザーとシン・グランティード・ドラコデウスが背中あわせで構えをとった!

 

 消耗の消えた地球最強の部隊に、さらなる力を得た玉座機と、神をもこえ、悪魔さえ倒せる魔神の皇帝。

 ここまでそろった状態の彼等に、勝てるものなどあろうはずもない!

 

 

 すべてを押し返し、ドレイクも、ガデスも、倒れる時が来た。

 

 

ガルディ「ロム!」

 

ロム「ああ。兄さん!」

 

 

 ガデスから分離し、ハイリビードの光によって復活したガルディとロムが、二本の剣を使い、ガデスにとどめをさす(2人の連携攻撃で、運命両断剣ではない)

 

 

ドレイク「……ここまで、か」

 

 

 カーメン・カーメンの旗艦は笑いながら沈み、黒騎士の乗るハイパーガラバも落とされ、最後の抵抗もむなしく墜ちるウィル・ウィスプと共に、ドレイク・ルフトの野望は潰えるのだった……

 

 

 こうして、激闘に次ぐ激闘であった第三新東京市の決戦は終わりを告げる。

 

 

 第13話 終わり

 

 

 

──おまけ──

 

 

『シン・グランティード・ドラコデウス』

 

 元々頭部に納められていた力の源、創世神フューレイムの力が宿る神核を取り戻し、真の力を取り戻したグランティード・ドラコデウスのこと。

 その姿は、エヴァンゲリオン初号機が覚醒した姿にも似ているという(むしろ初号機が似ているというのが正しいのかもしれない)

 

 その力はすさまじく、時間停止どころか時間逆行さえ可能にし、機体の損傷やパイロットの疲労などをすべてなかったことにした。

 

 とはいえ、神核のあった場所には前回の争乱のおり回収された世界を地獄に変える『ジ・ヴォーダ』が眠っていたため、この戦い後それが目覚め、神核となったそれと干渉しあう結果となってしまった。

 ゆえに、覚醒直後のような時間逆行などを自由に使うことは難しくなってしまった。

 

 ただ、どちらかの干渉を少なくし、一方の力を強く出すことは可能となり、『ジ・ヴォーダ』モードと『フューレイム』モードの二つのモードを使うことができるようになった。

 

 サブパイロットの乗せ換えと同じく、インターミッションでモードが選べるようになった。早い話、換装である。サブパイロットとの相性やステージの状況にあわせ、モードを選択しよう。

 

 この『シン』は、真であり、神でもあり、さらに新、心、深、など、様々な意味がこめられているらしい。

 

 

『ジ・ヴォーダ』モード

 これは、統夜達が作り出した新たな伝説。

 破壊を司るジ・ヴォーダの力を強く出したスタイル。射程無限とまではいかなくなったが、時間と空間を超え、その存在の根源までさかのぼって相手を消滅させるインフィニティキャリバー・オーバーワールドの使用が可能となる。

 さらに射程内ならば隣接せずともインフィニティキャリバー・オーバーワールドで援護攻撃をすることができる。

 主に射程と攻撃力が上がるモードである。

 外見的には大きな変化はく、頭部の神核は赤い輝きのままである(シン化エヴァの赤い輝きにイメージが重なる)

 

『フューレイム』モード

 これは、歴史を作った、起源にして古の伝説。

 創造を司るフューレイムの力を強く出したスタイル。毎ターンのエネルギー回復が60%となり、HP回復までも備えて継続戦闘能力は他の追従を許さないほどになる。

 さらに神核に収まったフューレイムの力ことハイリビードを開放することにより、味方のHP、エネルギー、弾数、SPを最大まで回復することが可能となる(気力はそのまま)

 これは統夜のコマンドでなくターン終了などのコマンドに表示され※、1シナリオに1回しか使えないが、行動済みも未行動にすることもできる ※統夜が行動済みでも使えるということ

 ちなみにこちらのモードの場合、修理、補給装置も搭載される。

 外見的には頭部の神核が緑に輝く(Gストーンやサイコフレームの輝きにイメージが重なる)

 



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第14話 反逆のクロッペン

 

──後始末──

 

 

 第三新東京市の長い長い一日の戦いも終わった。

 

 オーラバトルシップは二つとも堕ち、ドレイク軍は壊滅。ギャンドラーもその首領は死に、その野望は潰えた。

 もっとも、あの戦いですべてが終わったわけではない。

 初戦で撤退したガウルンはそのまま決戦で姿を現さなかったし、カーメンは間違いなく死んでおらず、ドレイク軍を援助していたコネクションはそのまま残ったままだ。

 

 ギャンドラーの方も、洗脳されていたガルディと見限ったグローバインはともかく、ディオンドラとデビルサターン6はまだ逃亡したままである。

 

 それでも大きな組織が二つ地球より消えたというのは大きな事実だった。

 

 もっとも、その代償も大きく、ネルフの本部はジオフロントもろとも大破し、これ以後使い物にはならなそうだった(シン・グランティード・ドラコデウスの光で再生されたのは味方のロボと生き物のみで、内部の建造物などは破壊されたままである。ちなみに瓦礫に潰された人がいたとしても光の球に包まれ外に運ばれたので安心である)

 

 ネルフが守ってきた『ハイリビード』も真の覚醒を見せ、グランティード・ドラコデウスの神核へと戻ったことにより、使徒の襲来ももうないとされ、ネルフは事実上の解散となった。

 以後、エヴァンゲリオン3機はGGG預かりとなり、そのままロンド・ベルへと所属することになる。

 さらに通りすがりのエヴァパイロット。真希波・マリ・イラストリアスもエヴァ8号機を手土産に、ロンド・ベルに加わった。

 

 あと、なぜかいつの間にか渚カオルも現れ、マーク6と共にちゃっかり仲間になっている。

 

 

マコト「ネルフも解散か。まあ、使徒が狙うものがなくなったんだから、当然ですね」

 

シゲル「使徒はもう来ないんですかね?」

 

ミサト「みたいわよ。目的のモノが、本当の持ち主のもとに戻っちゃったみたいだから」

 

マコト「使徒って結局、なんだったんでしょうね」

 

ミサト「さあ……」

 

マコト「あと、渚カオルって何者なんですか? いきなり現れて、ちゃっかり仲間になって」

 

ミサト「もう、そのへんはどうでもいいんじゃない? だって、他にも考えてやらなきゃいけないことがあるんだから。過去ばかり考えていても、しかたがないわよ」

 

 

 なにかを吹っ切ったように、ミサトは前をむく。

 その顔は、どこか晴れ晴れとしたようだった……

 

 

──後始末2──

 

 

 一方、戦いの後始末が終わったゲンドウと冬月は別の場所に来ていた。

 そこはネルフの上位組織、ゼーレの幹部がいる場所。

 

 彼等は過去にロゴスが暴かれたあと、その余波で死んだとされていた。

 しかし彼等は、自分達の脳を別に移し、いわゆる電脳化し、モノリスのような四角い箱の中で生き永らえていたのだ。

 

 そうして彼等はネルフをバックアップし、人類補完計画というものを進めていた。

 

 しかしその計画も、その要である命の源、『ハイリビード』があるべき場所に戻るという結果によって頓挫することとなった。

 

 もっとも彼等は、その頓挫の事実を知ることはなかった。

 その報告をしに来た二人に、電源を落とされ、生命の維持を絶たれたからだ。

 

 彼等は夢を見るまま、真実を知らぬままゆっくりと眠りにつくこととなる。

 永遠にかなわぬ夢を見たまま……

 

 

ゲンドウ「……」

 

冬月「これでよかったのか?」

 

ゲンドウ「ああ。最後のシ者も現れたが、ヤツはなにをするつもりもないようだ。もう、我々の願いも、叶わんということだ」

 

冬月「……」

 

ゲンドウ「だが、これでよいのだろう」

 

 

 そしてゲンドウは携帯を取り出した。

 かける先は、息子であるシンジ。

 

 

ゲンドウ「今度一緒に、どこかへ行くか?」

 

 

 電話のむこうで、相手が大変驚いているのが冬月にもわかった。

 

 

ゲンドウ(あの光が瞬いた瞬間、一瞬だけユイにあえた気がした)

 

 

 そして、優しく抱きしめられ、叱られた気もした。

 

 

ゲンドウ(死んだ者は帰ってこない。それを認め、生きた者に尽くした方がいい。それでいいのだろう? ユイ……)

 

 

──クローンとは……──

 

 

 司令官がクローンであったと判明したムゲ帝国地球侵攻軍ザール艦隊は機能不全を起こし、地球侵攻が完全に停滞していた。

 

 

クロッペン「おのれ。なぜ誰も言うことを聞かぬ!」

 

 

 クロッペンは感情のまま自室でテーブルを叩く。

 

 自身がクローンと判明してからも、何度か作戦行動を起こそうとはしたが、どれもがなんらかの理由をでっちあげられ、中止に追いこまれてしまっていた。

 物資がない。作戦の兵器が完成していない。兵士がいない。体調が悪い。どれもこれもが作戦を実行しない理由にならない。これは明らかなボイコットであった。

 

 部下である将軍達は、道具でしかないクローンの命令など聞けるかと暗に言っているのだ。

 

 

クロッペン「私を誰だと思っている! ザール艦隊最高司令官なるぞ!」

 

 

 そこへ、近衛兵が入ってきた。

 

 

クロッペン「なんだ? 入室をゆるした覚えは……」

 

 

 ちゃきっ。

 兵は答えを聞く前に、クロッペンへ銃を突きつけた。

 

 

クロッペン「貴様等、一体なにを!」

 

近衛兵「黙れ、クローン! 俺達は貴様等クローンを手土産に、地球に投降するのだ!」

 

クロッペン「なんだと!?」

 

 

 部屋に侵入してきた兵達の傍らにはプルツーの姿もあった。

 薬かなにかで気を失っているのか、ぐったりとして俵のように抱えられている。

 

 幸いなのは、抵抗する余裕もなかったせいで手荒なことはされていないということか。

 

 

近衛兵「ムゲの軍律では上の失敗は下にもおよぶ。失敗し続けた貴様がクローンとあっては、俺達も巻き添えで処刑される。冗談ではない!」

 

 

 地球での戦いは連戦連敗。

 その地球は異星人も問題なく受け入れている。それならムゲ帝国でこき使われるよりはと判断したのだろう。

 

 こうして彼等は、クロッペンとプルツーを手土産に、地球連合軍へ投降する。

 

 しかし、行った先で近衛兵達は思いがけないあつかいを受ける。

 

 投降した先はロンド・ベル。

 自分達の実力を最も知っている部隊であるゆえ、無碍にはあつかわれないと思っていたのだろう。

 

 しかし、ロンド・ベルはクローンであるクロッペンも自分達と同じ捕虜としてあつかおうとした。

 ムゲにとってクローンは道具でしかないが、彼等にとっては違う。それがわからなかったのだ。

 

 

近衛兵「なんだと、捕虜!? お、俺達はクローンを捕らえてきた。その俺達をクローンと一緒にあつかうというのか!?」

 

剣人「当たり前だ。クローンかどうかなんて関係ねえ。平和を望んで投降するってんなら、当分は我慢してもらおうじゃないか!」

 

シン「異星人だって最初は同じあつかいだ。クローンだからって俺達は区別しないだけだ!」

 

クロッペン(同じ捕虜だと!? すると奴等は、この私をクローンでなく人として見ているというのか……!?)

 

近衛兵「冗談じゃない! 捕虜などにされてたまるか! くそっ。部隊を出せ! こうなったらこいつらを倒し、それを手柄にして返り咲いてやる!」

 

 

 移動要塞の中から、多数の兵器が姿を現す。

 

 

アール博士「投降するといいつつ、武装した戦力をあれほど用意していたとは……」

 

ブライト「つまりはその程度の覚悟だったということですね。総員、応戦しろ!」

 

エレ「悲しことです……」

 

クロッペン(愚かな奴等め。双方の戦力差もわからんとは。このままではこの移動要塞は墜ちる。むっ。あれは私のデスターク。あれを使えば……)

 

 

 クロッペンが推測した通り、自分の保身ほしさに投降した者達と、地球の平和を守るロンド・ベル隊とではまともな戦いにならなかった。

 信念もないその刃は、あっさりと返り討ちにされることとなる。

 

 クロッペンは戦闘による混乱に乗じてプルツーを連れデスタークに乗り脱出。さらに混乱の隙をついて、アーガマにとりついた。

 

 

ブライト「なんだと!?」

 

トーレス「破壊され落下する残骸に紛れて近づいたようです。艦橋にとりつかれました!」

 

剣人「あいつ、クロッペンか!」

 

クロッペン「……待て。お前達に聞きたいことがある。お前達は本当に、クローンの、生体部品として作られた私を、人として見ているというのか?」

 

剣人「当たり前だ! 俺もお前も、お前達が殺した地球人も同じ人間だ!」

 

シン「そうだ。クローンも人間も、生まれてしまえばそこに差異なんてない!」

 

プル「そうだよ!」

 

クロッペン「フッ。そうか。ゆえにクローンの子とわかっても、アールでさえ平然として戦いを挑んできたのは、それが事実であれ、その存在が人間以外の何者でもないと、己も周囲も信じるゆえか。それが地球人だというのだな……」

 

 

 クロッペンはなにかを悟ったのか、アーガマから離れた。

 

 

ブライト「離れただと……?」

 

クロッペン「誰でもよい。この娘を受け取れ!」

 

 

 開いたデスタークの掌の中に、眠るプルツーの姿があった。

 

 

ジュドー「プルツー!」

 

プル「プルツー!」

 

クロッペン「貴様等ならば、この娘を不当にあつかうまい。任せたぞ!」

 

 

 寄ってきたプルのキュベレイにプルツーをわたし、クロッペンはそのまま去って行った。

 

 

クロッペン「この娘に免じ、ここは見逃す。だが、次はないと知れ!」

 

剣人「なんだよあいつ。ちょっとはいいとこあるじゃねえか」

 

弾児「まったくだ。一撃で艦橋をやれたのに、なにもしねえなんてな」

 

 

 医務室へ運ばれたプルツーは、レインの診察を受ける。

 薬で眠らされただけで、身体に異常はなく、しばらくすれば目を覚ますとのことだった。

 

 

プルツー「……ここ、は?」

 

プル「プルツー!」

 

プルツー「あんたは……なぜ、いる……?」

 

ジュドー「ここはアーガマさ」

 

プルツー「そうだ。奴等、クローンを手土産に降伏するって!」

 

ジュドー「みたいだな」

 

 

 ジュドーはなにがあったのかをプルツーに説明した。

 

 

プルツー「……あたしをどうする気だ?」

 

ジュドー「なにもしないさ」

 

 

 プルツーは敵として何度も戦った相手だ、簡単に気を許すわけにはいかない。ゆえに、監視としてジュドーとプルがプルツーにつくことが決まった。

 

 

ジュドー「それって……」

 

ブライト「ちゃんと面倒を見るんだぞ」

 

ジュドー「わかってるよ」

 

プル「よろしくね。プルツー」

 

プルツー「ふん」

 

 

 こうして、プルツーが捕虜として仲間に加わった。

 

 

──文化祭──

 

 

 今回は息抜き回である。

 

 ひさしぶりに、統夜達が学校へ顔を出す。

 この日は、統夜、甲児、宗介達の通う高校で文化祭があるのだ。

 

 統夜達のクラスで行われるのは、メイド喫茶。

 これならば、当日時間さえあれば、統夜達も問題なく参加できる。

 

 統夜ならば厨房で。甲児達は裏方。そして女の子はメイド服で!

 

 ちなみになんでメイドかって、三人娘(カティア、テニア、メルア)にメイドイラストのカードがあるからだ!

 

 

甲児「準備はほとんど手伝えなかったからな。本番では張り切らせてもらうぜ!」

 

クルツ「なんて上の理由をつけて、ホントは綺麗どころにメイド服を着せるのが目的だろ。お兄さん知ってんだから」

 

甲児「さて、なんのことやら」

 

クルツ「とぼけるなとぼけるな」

 

ボス「ひっひっひ」

 

甲児「まあ、準備が手伝えないから、当日参加で十分役に立てるからってのはマジだぜ。これなら衣装さえあればみんな貢献できるからな」

 

 

 例え接客できなくとも、メイド服を着て立っているだけで十分貢献できる。

 だからこそ、反対が多くともこの案が通ったともいえよう。

 

 という建前で、文化祭がはじまった!

 

 

 ちなみに、メイドに不埒な考えを抱くのはお勧めしない。

 なぜかクラスにいるボン太くんにたたき出される羽目になるからだ。

 

 

ボン太くん「ふもっ!」

 

不埒者(モブ)「許してー!」

 

ボス「……このクラスでナンパをするなんて、命知らずな奴もいたもんだぜ」

 

クルツ「まったくだ」

 

 

 クルツはお客でやってきていて、すでに一回たたき出されかけたぞ!

 ついでにボスはさぼりでこのあと裏方に連れていかれるぞ!

 

 

 文化祭ではこの文化に困惑するハイネル兄さんとかシンジと一緒に来ているゲンドウの姿とか、なんか心配になってそれを尾行しているアスカ、レイ&ミサトの姿とかが見れる。

 

 

アスカ「あんたなんで来たのよ?」

 

レイ「よくわからないわ。あなたこそ、なんで?」

 

アスカ「う、うるさいわね!」

 

 

 シンジとまわりたかったなんて言えないので誤魔化すしかないのだった。

 

 

ミサト「青春ねえ」

 

 

 ちなみにカオルは空気を呼んだマリが担当しているので安心だ!

 

 

プル「ジュドー。チョコパフェ。チョコパフェが食べたい!」

 

プルツー「チョコパフェ? なんだそれは?」

 

プル「とっても美味しいよ! プルツーも一緒に食べよ」

 

ジュドー「じゃあ、食べるか! ほら、こっちだプルツー!」

 

プルツー「あ、ああ」

 

 

 捕虜となって捕まったはずのプルツーも、プルとジュドーに連れてこられ、困惑しながらも人の温かさに触れ、なにかを感じているようだ。

 

 

 他の者達も、ささやかな日常を堪能する。

 

 お約束として邪魔大王国がちょっかいをかけてくるが、校庭でのアトラクションということにして、文化祭を中止にさえず片付けるのは決定事項である。

 

 こうして無事ひと時の休息を得た彼等は、再び戦いに戻ってゆくのだった。

 

 

──ショット・ウェポンの野望──

 

 

 戦闘の道具としてでなく、人としてあつかわれることに戸惑うプルツー。

 この心地よい場所にどうにもなじめず、一人考えをまとめるため、彼女は目を盗み、部隊を抜け出してしまう。

 

 いなくなったプルツーを探すプルとジュドーだったが、プルツーはドレイクを排除し、トップに立つことを望んだショット・ウェポン※(ダンバイン/人物)に捕らえられていた。

 先の決戦には登場しなかったトッドと共に、ショットはプルツーを人質とし、残ったバイストンウェル兵&雇った傭兵と共にロンド・ベルへと戦いを挑む。

 

※一番最初にバイストンウェルに召喚された地上人であり、オーラマシンを作った博士。

 地上に出てからは独自に開発したオーラクルーザー・スプリガンを使い、己の思惑でドレイクとは別行動をとっていた。

 ガウルンのヴェノムを使えるよう修理したのもこの人。

 

 

 プルツーは自分に人質としての価値はないと語るが、プルやジュドーはそんなことはないと否定する。それどころか、絶対に助けると言い切ったのだ。

 

 だがその言葉は、プルツーに人質としての価値があると認めることと同じだった。

 

 たった一人のために窮地に陥るロンド・ベル隊。

 その窮地を救うのは、この作戦を気に入らず、決着を望む一人の戦士だった。

 

 トッド・ギネス。

 

 彼の望む決着は、このような人質をとったものではなかった(戦闘の最中プルツーが人質にされているのを知った)

 

 ゆえに彼は反旗を翻し、プルツーを救う手助けをする。

 トッドの手引きを受けたジュドーとプルにより、プルツーは取り戻され、人質という枷はなくなった。

 

 こうなれば、ショットに勝ち目はない。

 

 

 ショットが散り、勝負がついたあと、トッドはショウに戦いを挑む。

 

 正々堂々と、自身のプライドをかけた、最後の戦いだ。

 

 結果、全身全霊をかけて戦い、トッドは敗北する。

 この際、フラグが立っていれば、トッドは死亡せず、潔く負けを認め、傭兵としてロンド・ベル隊に加わることとなる。

 

 そしてこの一件で、プルツーにも心境の変化があったようだ。

 まだ戸惑いはあるが、プルやジュドーの心を受けとめたようである……

 

 

──反逆のクロッペン──

 

 

 これは、先日の降伏騒ぎのあと、クロッペンが拠点へ戻った時のことだ。

 司令部の通信室へかけこみ、ムゲ・ゾルバドスへの謁見を申し出た。

 

 

クロッペン「皇帝陛下、一つお願いがございます!」

 

ゾルバドス「ほう。もうしてみよ」

 

クロッペン「ハーリンを始末するため、奴めと決闘する許可をいただきたく思います! 奴を始末し、エリオスの血筋が私のみとなったならば、私を改めてこの艦隊の司令でいられると認めてはもらえないでしょうか!?」

 

ゾルバドス「ほう」

 

クロッペン(そうとも。私は生体部品ではない。人間なのだ。ならば、奴等にもそう認めさせる。私が司令として座るに値する人間であると!)

 

ゾルバドス「よかろう。見事ハーリンを討ち取り、エリオスの反乱をおさえられるというのならばな」

 

クロッペン「はっ! 命を懸けまして!」

 

 

 こうしてクロッペンは、ハーリンに決闘を挑むべく、みずからの乗騎、デスタークのパワーアップをはじめる。

 

 

 その間に、もう一組が、ムゲ・ゾルバトスへの謁見を求めていた。

 それは、クロッペンの部下であるザール艦隊の将軍達であった。

 

 

ネシア「皇帝陛下。あのものが司令でいることに、我等はもう耐えられません。クローンが司令官であるなど、全体の士気にかかわります」

 

ゾルバドス「……」

 

ボイダー「ゆえに、我等の誰かをヤツのかわりに司令としてご指名ください」

 

カブト「陛下への忠誠心ならば、誰も負けておりませぬ。どうか、どうか!」

 

ゾルバドス「よかろう。クロッペンが帰らぬ場合、その時は三人の中から司令官を選ぼう。クロッペンが帰らぬ場合にな」

 

ネシア「つまりは……」

 

ボイダー「そういうことですな」

 

カブト「にやり」

 

 

 三人は納得したようにうなずき、うやうやしく頭をさげ、皇帝との謁見通信を終えた。

 

 

デスガイヤー「よろしかったのですか?」

 

 

 ゾルバトスの傍らに控えていた直属の将軍。デスガイヤーが声を上げる。

 

 

ゾルバドス「かまわん。この戦い、すべてが余の戯れよ。その気になれば、お前を派遣するだけで終わる。それまでの余興でしかない。ならば、楽しまねば損であろう。くく。くはは」

 

デスガイヤー「恐ろしいお方だ」

 

 

 そうして準備の整ったクロッペンは、デスターク2に乗り、ロンド・ベルの前へとやってきた。

 たった、一機で。

 

 

クロッペン「ハーリン皇子はいるか!」

 

ハーリン「私ならここにいる」

 

クロッペン「ハーリン。私はお前に一対一の決闘を申し入れる!」

 

アール博士「決闘だと!? クロッペン、なにを言うか!」

 

クロッペン「これが最後の勝負だ。それとも、私がクローンだから受けられぬというか? この通り、私は一人で来ている!」

 

アール博士「冗談ではない。そのようなこと受けられるか!」

 

クロッペン「お前には聞いておらぬ。ハーリン皇子、返答やいかに!」

 

ハーリン「……わかった。うけよう」

 

剣人「待てよ! そんなの認められねえな。俺がいる限り、親父を危険な目にあわせるわけにはいかねぇ! どうしても一騎打ちがやりたいというなら、俺が相手になってやるぜ!」

 

クロッペン「私の目的はハーリン皇子だ。お前ではない!」

 

ハーリン「ならば、ダルタニアスが負けたとあれば、私の負けとすればいい。息子を危険にさらすのだ、その時は私も共に殺せ!」

 

アール博士「ハーリン皇子……」

 

クロッペン「いいだろう。私が本気であることを示すため、このデスタークの自爆コードを教えておく。さあ、出てくるがよい、ダルタニアス!」

 

剣人「もちろんだぜ! 絶対負けねぇ!」

 

 

 こうして、クロッペンの乗るデスターク2と、剣人の操るダルタニアスの一騎打ちがはじまった。

 

 しかし、決着はつかない。

 つける前に、邪魔者が現れるからだ。

 

 一騎打ちを続ける二機の周囲に、砲撃が降り注ぐ。

 

 

剣人「な、なんだ!?」

 

アール博士「クロッペン、やはり貴様そういうことか!」

 

クロッペン「違う! 私は知らぬ! 本当だ!」

 

ボイダー「くくく。ここで地球人ごとクロッペンもハーリンも始末してくれる。次の艦隊司令は俺だ!」

 

ネシア「否、すべてを手にするのは私よ!」

 

クロッペン「貴様等、これは皇帝陛下に許可を得ての決闘だ。手を出すな! 退くのだ。皇帝陛下に弓ひくつもりか!」

 

カブト「命令だと? ふん。よく聞けクロッペン。貴様の生存はすでに望まれていないのだ。貴様がここより帰らねば、次の司令は我等の誰かよ! 皇帝陛下は、暗に貴様を処分しろとおっしゃったのだ。貴様はここで始末される。生体部品にもならぬ囮以下ということだ!」

 

ジュドー「なんだって!?」

 

クロッペン「くっ。私がクローンだからか。真のエリオスの皇子でなかったからか! おのれ貴様等。おのれムゲ・ゾルバドス! それが命を盾に戦ってきた私に対する答えか。許さん。許さんぞ、貴様等。ゾルバドス!」

 

 

 クロッペンは、剣人の乗るダルタニアスでなく、やってきたザール艦隊へと攻撃の目標を変えた。

 

 

カブト「おのれっ! 我等に逆らうか!」

 

クロッペン「貴様等が侮るクローンに、人間との違いがないということをわからせてやる! 楯剣人よ、ハーリンよ、この勝負は預ける!」

 

剣人「いいだろう。あんな話聞かされちゃ、こっちだって黙っちゃいられねえ!」

 

ブライト「よし、全機に告ぐ。クロッペンを相手にする必要はない。ムゲ帝国軍を叩け!」

 

一同「おう!」

 

 

 一騎打ちを邪魔した3将軍率いたムゲ帝国軍との戦線が開かれた。

 男の戦いを邪魔するような奴に、ロンド・ベルは容赦しない。

 

 数の面でいくら上回ろうが、士気の高い彼等に勝てようはずがなかった。

 

 

ネシア「な、なぜだ。なぜ今まで戦っていた者と共に戦える! お前達は一体なんなんだ!」

 

剣人「クローンを道具としてしか考えてないお前等にはわからないことだよ!」

 

 

 クロッペンとロンド・ベル隊の怒りを買った三将軍は、ここで散ることとなる。

 これにより、ムゲ帝国所属、ザール艦隊は、ほぼ壊滅と言っていい状態となった。

 

 

アール博士「終わったようですな」

 

ハーリン「クロッペン……」

 

クロッペン「ハーリン、いや、楯隼人。そしてロンド・ベルの者どもよ。もはやこれ以上、私がお前達と戦う理由はない。私には新しい敵が現れた。ムゲ帝国皇帝、ムゲ・ゾルバドスが!」

 

ハーリン「ならば、我々と共に……」

 

クロッペン「否。それもできぬ。私の目的はただ一つ。貴様等と同じ道ではない!」

 

ハーリン「そうか。ならばしかたがない」

 

クロッペン「もう貴様等と会うこともないだろう」(ゾルバドス。貴様に必ずや、一矢報いてくれる!)

 

プルツー「待ちなよ」

 

クロッペン「なんだ?」

 

プルツー「あたしもついていくよ」

 

クロッペン「なん、だと……?」

 

プル「なんで!? その人はプルツーにつらく当たったんだよ?」

 

プルツー「だからさ。あいつの本当の辛さは、あたしだけが知っている。でもあたしは、ここにいる幸せも知っている。それを知れたのは、あいつがここに置いていってくれたからだ」

 

プル「そうだけど……」

 

プルツー「なら、せめてあたしが最後まで見届けてやるべきなのさ」

 

プル「いいの?」

 

プルツー「ああ」

 

プル「わかった。無茶しちゃだめだよ」

 

プルツー「約束はできないな」

 

プル「うん。約束」

 

プルツー「できないと……まあ、努力するさ」

 

プル「危なくなったら必ず助けに行くからね」

 

プルツー「ふん」

 

クロッペン「おい、私は共に来ることを認めたつもりは……」

 

プルツー「あたしが勝手についていくんだ。そっちの許可をとるつもりはないよ」

 

クロッペン「なんなのだこの娘は……」

 

 

 モビルスーツを一機、プルツーに預け、飛び出すことになった。

 

 新たな戦いに出向く二人を、彼等は見送る。

 

 

ジュドー「よかったのか、プル?」

 

プル「いいの。それに、プルツーがいれば安心だよ」

 

ジュドー「確かにそうかもな」

 

 

 ロンド・ベルがなんとしてもとめなかったのは、彼女がいることで逆に無茶しにくくなるからという目論見もあったからだ。

 

 こうして、ザール艦隊司令の裏切りにより、一つの艦隊との戦いに決着がついた。

 

 次に彼等あうのは、一体どこであろうか。

 それはまだ、わからない……

 

 

 第14話 終わり



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第15話 奪われた巫女とQパーツ

 

──銅鐸の巫女──

 

 

 ある日珠城つばきは夢を見た。

 それは邪魔大王国の幹部、壱鬼馬が旧ジーグヘッドを発見し、妃魅禍の元へ運び、銅鐸をとりだそうとする光景だった。

 

 そこには、邪魔大王国の幹部だけでなく、デビルサターン6とディオンドラの姿も見えた。

 

 妃魅禍によるジーグヘッドからの銅鐸取り出しは失敗し、一同が悔しがったところで彼女は目を覚ます。

 

 おかしな夢を見たと考え、その様子がおかしいことに気づいた剣児に問われ、夢のことを話すと、それは実際にあったことだと、司馬博士、および鏡に言われた。

 

 ここでロンド・ベル隊は一度ビルドベースに集められ、邪魔大王国が狙う銅鐸のことを改めて説明される。

 

 剣児の乗るジーグには、銅鐸と呼ばれるエネルギー源が搭載されている。妃魅禍はさらなる力を得るため、その銅鐸と先代ジーグの二つを狙っているのだ。

 そして、つばきは代々銅鐸を守る神社の家系であり、『銅鐸の巫女』として銅鐸の力を操る能力が備わっているのだ。

 

 ゆえに、銅鐸をとりだそうとした妃魅禍の姿が見え、それを夢にみたというのだ。

 

 つまるところ、邪魔大王国は50年前に行方不明となった先代ジーグの頭部を発見し、そこから銅鐸をとりだそうとしているのは今起きている事実なのである!

 

 

ジェット「にしても、まさかギャンドラーの連中も一緒にいるとはな」

 

剣児「ボスがやられたから、行くとこがなくなっちまったからじゃないか?」

 

ジェット「拾われたってことか……」

 

 

 時は少し戻る。

 つばきが目を覚ました時と、同じころ。邪魔大王国では……

 

 

妃魅禍「……なぜじゃ。なぜ、銅鐸をとりだせぬ……!」

 

壱鬼馬「妃魅禍様……」

 

妃魅禍「っ!」

 

壱鬼馬「いかがなされました?」

 

妃魅禍「ここを覗き見た者がおる」

 

阿麿疎「ええっ!? 誰だぁ!?」

 

妃魅禍「あの小娘……そうじゃ。あの小娘の力があれば、銅鐸をとりだせる!」

 

壱鬼馬「では、どうにかしてあの娘を……」

 

???「でしたら、こちらによい策があります……」

 

妃魅禍「ほう。申してみよ」

 

 

 そして時は、再びビルドベースに戻る。

 

 警報が鳴りびびく。

 邪魔大王国の軍勢が、このビルドベースに迫っているというのだ。

 

 防衛のため出撃するロンド・ベル。

 

 

 邪魔大王国の中には、ギャンドラーの残党、ディオンドラとデビルサターン6の姿もあった。

 

 

壱鬼馬「さあ、行くぞ!」

 

ディオンドラ「ったく。なんであたしらがあいつの作戦につきあわなきゃいけないんだい」

 

デビルサターン6「宿なしになってもーたつらさ。身に沁みますわ……」

 

ディオンドラ「まあ、やるべきことはやるさ」

 

 

 その戦闘中、異変は起きた。

 

 

つばき「えっ?」

 

鏡「どうした?」

 

つばき「……」

 

 

 つばきと鏡の乗るビッグシューターの動きがおかしくなった。

 なんとビッグシューターが単機で敵陣に突っこんでいったのだ!

 

 

剣児「な、なにやってんだつばき、鏡!」

 

鏡「俺ではない。つばきだ!」

 

剣児「どうしたんだよつばき!」

 

つばき「……」

 

 

 剣児の呼びかけに、つばきはなんの反応も示さなかった。

 

 だが……

 

 

統夜「っ!」

 

アムロ「これはっ!」

 

ジュドー「な、なんだこの気配……!」

 

チャム「ショウ! これ!」

 

ショウ「ああ。なんだこれは!」

 

 

 この時、サイトロンの導きと、ニュータイプと呼ばれる者。さらに悪しきオーラを感じとれる者は、その違和感を感じとった。

 

 

統夜「あそこに、もう一人別の意識がある!」

 

シーラ「邪悪のオーラをまとったものが、あそこに!」

 

剣児「なんだって!?」

 

ディオンドラ「ちっ。どうやらバレたみたいだよ。さっさとこっちに来な、グルジオス!」

 

グルジオス「バカもの! ここでワシの名を呼ぶな!」

 

ロム「なに!?」

 

ドリル「グルジオスだって!?」

 

一矢「知っているのか!?」

 

ジェット「ああ。こっちに来る前に俺達が倒したはずのギャンドラーの幹部の一人だ。ブラックホールにたたき落としてやったんだが、生きて帰ってきたのか」

 

ロム「ヤツはガデスに与えられたという怪しげな術を使っていた。地球に来るまでに、なにかまた新しい力を得たのだろう」

 

剣児「つまりそいつがつばきを操ってるってことだな。返せ!」

 

グルジオス「返せと言って返すバカがどこにいるか! このまま先に行かせてもらう! 足止めを任せたぞ! 少しくらいは役に立ってはもらわねばな!」

 

ディオンドラ「はいはい。任せな」(いちいち癪に障る奴だね!)

 

壱鬼馬「小娘はもらった! 妃魅禍様はもうひとつの銅鐸よりこの小娘をお望みだ!」

 

アイザック「銅鐸ではなく? ……そうか。巫女としての力が狙いか!」

 

壱鬼馬「これより先は、通さん!」

 

剣児「くそっ! 邪魔をするな!」

 

 

 飛び去ろうとするビッグシューターを止めようとするロンド・ベル隊だったが、それを邪魔大王国とギャンドラー連合軍が阻む!

 敵軍の中を素通りして飛んで行けるビッグシューターと違い、ロンド・ベルの各機は敵に邪魔され、どんどんと差が広げられてゆく。

 そのままビッグシューターは戦線を離脱し、奴等の本拠地となる阿蘇の山中へと姿を消すのだった……

 

 

グルジオス「おっと、中で下手なことをするな。ワシはこれが墜落しても痛くもかゆくもない」

 

鏡「くっ」

 

グルジオス「おとなしくしていれば、生きて妃魅禍に引き渡してやる。そこから先、どうなるかは知らぬがな!」

 

鏡(少なくとも、飛んでいる今では手出しできん。しばし、待つしかないようだな……)

 

 

 逃走飛行中、このような会話もあった。

 

 

ディオンドラ「このくらい足止めしときゃ十分だろ。アタシらも戻るよ!」

 

デビルサターン6「はいな!」

 

剣児「待て!」

 

デビルサターン6「誰が待つかいなー。あーばよー」

 

 

 ある程度時間を稼いだところで、幹部達はハニワ幻神を残して撤退してゆく。

 足止めのため残ったハニワ幻神を排除し、ロンド・ベル隊はさらわれたつばきと鏡を救うため、ビッグシューターがむかった阿蘇山へとむかうのだった!

 

 

──阿蘇山中──

 

 

 阿蘇に到着したロンド・ベル。

 山にぽっかりと開いた洞窟が、邪魔大王国の本拠地であった。

 

 さらわれた二人を救出するため到着したロンド・ベル隊が見たのは、妃魅禍に操られたつばきが旧ジーグの頭から銅鐸をとりだす儀式をしているところだった。

 

 

剣児「あれはっ!」

 

柳生「先代ジーグのヘッドだな。あの中にも銅鐸があると聞いた」

 

アイザック「やはり、そのために彼女をさらったのだな」

 

グルジオス「その通りよ」

 

 

 鋼鉄ジーグの支援部隊である戦闘機ユニット「ビルドエンジェル隊」の隊長。 柳生充子の言葉に、ぬうと現れたグルジオスが答える。

 

 その姿に呼応するように、壱鬼馬ら三幹部とディオンドラ、デビルサターン6のギャンドラー残党も姿を現した。

 

 

壱鬼馬「妃魅禍様の儀式の邪魔はさせぬ!」

 

剣児「つばきはそこに。鏡はどうした!」

 

壱鬼馬「ふっ。すでに死んでいるやもな」

 

剣児「てめえ!」

 

デビルサターン6(……うまいはったりや。実は牢屋に連れてこうとして速攻逃げられましたとは言えんわなあ)

 

鉄也「待て草薙!」

 

 

 壱鬼馬に挑発され、頭に血が上った剣児がそのままつっこもうとするが、鉄也がそれを制した。

 

 

鉄也「一人でつっこむな。相手の思うツボだ。奴等の目的はあくまで銅鐸。お前がこのまま珠城を助けに行くのはカモがネギを背負っていくようなもの。もっと仲間を頼れ!」

 

剣児「ぐっ……た、確かにそうだぜ。少し頭が冷えた。助かったぜ先輩」

 

鉄也「気にするな。お前をフォローしてやるのも教師役の務めだ」

 

剣児「そういうわけだ。お前等の挑発には乗らねえ! つばきを助けるのは俺達全員でやることだ! みんな、頼むぜ!」

 

甲児「ああ。任せとけ!」

 

グルジオス「ちっ。かまわん! このまま押しとどめておけ! 儀式の完了も目の前だ!」

 

壬魔使「てめえが俺達に命令するんじゃねえ!」

 

グルジオス「誰が言ってもやることはかわらんだろうが!」

 

デビルサターン6「そうやそうやー!」

 

グルジオス「それはどっちに同意してるんだ!?」

 

デビルサターン6「さあ、来るでー! 守らんと!」

 

グルジオス「ええい、こいつらは!」

 

 

 阿蘇の山中で再び激突する両軍。

 

 邪魔大王国とギャンドラーの軍勢をなぎ倒し、心強い仲間がつばきのいる祭壇へと到着する!

 

 

妃魅禍「少し遅かったようだな! 儀式は今、終わった!」

 

剣児「なにっ!?」

 

 

 間一髪の差だった。

 つばきを祭壇から助け出す直前に、妃魅禍の両手が光る!

 

 

妃魅禍「どこにいようと、ここに入ったのなら同じよ!」

 

剣児「なにっ!? うわあぁぁぁ!!」

 

 

 二つのジーグが光り、妃魅禍のかかげた両手の先に、銅鐸が現れた!

 

 同時に先代ジーグヘッドは元の司馬宙に。剣児のジーグも合体が維持できずバラバラになり、頭部も雷鋼馬(バイク)に戻ってしまう。

 

 

キッド「くそっ! 間に合わなかったか!」

 

妃魅禍「これだ! これがわらわが求めた銅鐸! ハハハハハハ!」

 

 

 勝利を確信した妃魅禍は笑う。

 

 得た銅鐸の力を開放し、不思議な力でロンド・ベル隊の動きを封じたのだ!

 

 

健一「くっ。機体が……!」

 

ロム「動けん!」

 

妃魅禍「くくっ。貴様等はここで死ぬがよい!」

 

 

 銅鐸の力を使い、動けぬロンド・ベル隊へととどめをさそうとする。

 

 

???「待て!」

 

妃魅禍「なにっ!?」

 

 

 そこに現れたのは、とらわれていたはずの鏡だった。

 

 

剣児「鏡!」

 

鏡「ひさしぶりだな、妃魅禍!」

 

妃魅禍「なるほど。裏にはお前がいたというわけか。だが、今更現れたところでもう遅いわ!」

 

鏡「そんなことはない!」

 

 

 言葉と共に、美角鏡の姿がかわり、巨大化する!

 

 

剣児「なにっ!? 鏡が巨大化した!?」

 

多卦流(鏡)「みんな、隠していてすまなかった。これが私の本当の姿だ。私は古代の地球に降り立った異星人。本当の名は多卦流(タケル)」

 

剣児「なっ!? 何だよ、それ!?」

 

多卦流「もはや話せる時間は残り少ない。剣児! 今こそお前とつばきが手を取り合う時だ!」

 

剣児「待ってくれ、なに言ってんだかわかんねえよ!」

 

多卦流「つばきは我等の血を守り続けてきた麻布都珠勾神社の巫女この世で最も我らが想いを受け継ぐ者。そしてお前は、その想いを守護する力を受け継ぐ唯一無二の者。ふたりの力が合わさる時、奇跡は起こる!」

 

剣児「お前、なにを焦って……? まさか!?」

 

多卦流「銅鐸とはなにか。お前達がその本当の意味を理解した時、必ず血路は開かれる!」

 

妃魅禍「フッ! 今さら無駄なことじゃ! 銅鐸はわらわの手にあるのじゃからな!」

 

多卦流「剣児、ここは俺に任せて行け! つばきと共に! みんな、剣児達を頼む!」

 

 

 多卦流から光が放たれる。

 直後、妃魅禍によって封じられた機体のコントロールが戻った!

 

 

多卦流「これが私の精一杯だ。さあ、妃魅禍! お前の相手はこの俺だ!」

 

妃魅禍「馬鹿め! うぬの相手などするか! わらわはラングーンを呼び起こし、この星を攻め滅ぼす! 貴様等はここで死ぬがよい!」

 

多卦流「待て!」

 

妃魅禍「待たぬわ! 貴様の寿命、そう長くあるまい! ここで戦う必要などない! 最後の輝きなど、この場で使い果たせばよい!」

 

 

 妃魅禍の方も、多卦流の状態をよく理解していた。

 わざわざ無駄に相手にする必要はないと判断し、力を阿蘇の山の方へむけ、この洞窟を崩す作戦に出る。

 

 衝撃が走り、大きな音と共に洞窟の天井が崩れはじめた!

 このままではすべてが崩落し、皆生き埋めになってしまうだろう!

 

 

妃魅禍「ククッ。もうここに用はない! このまま全員潰れてしまうがよい! ゆくぞ!」

 

壱鬼馬「はっ!」

 

デビルサターン6「ワ、ワイ等も!」

 

 

 そうして妃魅禍と幹部達は転移をして消えた。

 残されたのは、足止めのためのハニワ幻神と意思を持たぬロボット達。

 

 

多卦流「くっ……!」

 

 

 多卦流は力を使い、洞窟の崩落を食い止める。

 しかしその力が尽きたのか、徐々に姿が元の美角鏡の姿へと戻っていってしまった。

 

 

剣児「もういい! ムチャはするな! 今はみんなで脱出するぞ!」

 

鏡「剣児……」

 

ブライト「いつまで持つのかわからん。急いで脱出する!」

 

 

 統夜達は祭壇に残された先代ジーグ、司馬宙も回収し、残されたハニワ幻神達を蹴散らして崩れようとする阿蘇の洞窟から脱出する!

 

 脱出後、つばきは無事目を覚ましたが、先代ジーグの宙と鏡は意識を失い続けたままであった。

 生命エネルギーの関係だろうというレインの見立てと共に、それがエネルギー源であり、オーラが満ちるオーラシップへ運ばれ、治療を受けることになった。

 シン・グランティード・ドラコデウスのハイリビードの力も受け、一命はとりとめたが、意識が戻るのがいつになるのかはわからない状態だった……

 

 ビルドベースに戻る途中、司馬博士により妃魅禍や鏡についての説明があった。

 

 彼等は宇宙をラングーンと呼ばれる宇宙船で旅してきた異星人であり、人間が営みをはじめたばかりの地球に降り立ち、地球を滅ぼそうとした妃魅禍達を封印した二人であった。

 

 

ムウ(最初の争乱の時浮上したオルファンも大昔の異星人の船だったな。地球は宇宙人を引き寄せるなにかがあるのかもな。そいつが、あのハイリビードか……?)

 

剣児「封印した二人?」

 

司馬博士「うむ。もう一人は鏡の姉。名を美夜受(ミヤズ)。現代での名は草薙美夜。お前の母じゃ」

 

剣児「……!?」

 

司馬博士「ワシは妃魅禍を封印し、永い眠りについた二人を見つけ、話を聞いたのじゃ」

 

甲児「封印に眠りってことは、鏡達は妃魅禍がいつか目覚めるのがわかっていたってことか?」

 

司馬博士「うむ。元は自分達でどうにかするつもりだったのだろう。なにせ、妃魅禍を生み出したのは多卦流達じゃからな……」

 

剣児「なっ! 妃魅禍を生み出した!?」

 

 

 元々妃魅禍達は、多卦流達の乗った宇宙船ラングーンによって生み出された破滅の先兵。その力は、多くの星を滅ぼすほどのものだった。

 しかし多卦流達はその力を使うことを後悔し、やがてこの地球にたどりつき、地球の民と同化することを選んだ。そうして生まれた血筋の一つが、珠城つばきの一族である。

 

 だが、破壊しか知らぬ妃魅禍はこれに従おうとはしなかった。

 多卦流達に反逆し、そして逆に封印されることになった……

 

 そしていずれ復活するだろう妃魅禍と地球の民を心配し、多卦流と美夜受は他の同胞とは違い自分達を眠らせ、いずれくる妃魅禍の復活に備えたのである。

 

 銅鐸はその宇宙船ラングーンの制御ユニットであり、このラングーンがある限り妃魅禍達は完全に消滅しない。

 銅鐸が奪われた今、彼等の次の目的はこのラングーンの復活であり、地球の支配であろうと、司馬博士は語った。

 

 

剣児「なら、奴等を止めるために次は宇宙に行かなきゃならないってことか」

 

司馬博士「そういうことになるな。詳しいことは一度ビルドベースに戻ってからじゃ。それまで休んでおれ」

 

 

 こうしてロンド・ベル隊は、大きな脅威となる邪魔大王国とギャンドラーを止めるため、宇宙へむかうことになる。

 

 

──Qパーツ強奪事件!?──

 

 

 ビルドベース医務室。

 そこでは阿蘇の祭壇で回収された先代ジーグこと司馬宙(しばひろし)が目を覚ましていた。

 

 

司馬博士「よし、もう大丈夫じゃ。まだ目は見えんじゃろうが心配はいらん。じきに回復し、見えるようになる」

 

宙「親父、変わらないな」

 

司馬博士「おい、あれから50年じゃぞ? 変わらんわけがなかろうが」

 

宙「そうかな。俺には見える。変わってないよ。親父も、それに、ミッチーも……」

 

 

 そこに美和はいた。

 だが、誰がいるとは一言も言っていない。

 

 だというのに、宙はかつて共に戦った彼女のことがわかっていた。

 

 

美和「宙さん、私は……」

 

宙「戻ってきたよ、ミッチー……」

 

美和「やっと、会えた……」

 

 

 涙を流し再会を喜ぶ彼女の姿は、50年前の少女のようであった……

 

 

 宇宙へあがるため一度ビルドベースに戻ったロンドベルだったが、美和と宙の五十年ぶりの再会劇にほっこりする暇もなく、GGGから驚きの報告を受ける。

 

 なんと各国の研究所が襲われ、何者かにQパーツが奪われたというのだ。

 奪った犯人。それは、翼と角を持った女性。デュナンの子の首領。ジュエリオンだった!

 

 どうやら、使徒による人類滅亡が潰えたと知り、別の手段に出たようなのだ。

 

 残るは日本で研究されていたものただ一つ!

 

 このままでは守り切れないと判断したGGGは、世界で最も安全な保管場所。ロンド・ベルにそれを預ける判断をする。

 ゆえにロンド・ベル隊は急いでQパーツの研究所へとむかうこととなる。

 

 おかげでオーラシップで寝ている鏡を降ろす余裕もなかった(まあ、レインが診ているので降ろさなくてもいいわけだが)

 

 しかし、ロンド・ベル隊が到着する前に、研究所は襲われてしまう。

 最大限に警戒していたはずだが、なんと味方と思われていた天海護が帰ってきた体(てい)で研究所に侵入し、Qパーツを奪ったのだ!

 

 デュナンの子を警戒していたGGG側からしてみれば、たまったものではない。

 

 護が研究所を脱出したところで追いついたロンド・ベル隊。

 

 護は凱の話も聞かず、現れた白いギャレオンとフュージョンし、さらに奪ったガオーマシンとファイナルフュージョンして皆の前に立ちはだかった。

 なぜこんなことをという問いかけに答えず、拳を返すことをし、さらに現れたデュナンの子に守られる状況から、戦いは避けられぬ状況となった。

 

 最終的にはとりまきのデュナンの子は排除され、護のガオガイガーと凱のガオファイガーによるヘル&ヘブンの打ち合いとなり、護は倒れることになった。

 護は往生際悪く攻撃をしようとしたが、共に宇宙に行ったはずの戒道が現れ、今消滅した護は偽物であると教えてくれる。

 

 Qパーツを集めることにより完成するパスキューマシンというものにより複製されたレプリジン。それが、今戦った護の正体だった。

 本物はまだ宇宙におり、そのマシンの持ち主、ソール11遊星主と戦っているとのことだった。

 

 さらにそのソール11遊星主とジュエリオンは仲間である事実が戒道により明かされた。

 

 戒道達は旅立った先でそのソール11遊星主とジュエリオンに出会い、目的を達成させぬため、パスキューマシンを奪い、この地球へESウィンドウで送りこんだという。

 それが、いきなりQパーツが地球に現れた真相である。

 

 だが、その時の無茶な転移で戒道はソルダートJとはぐれ、その上怪我でしばらく動けず、今やっと合流できたのだ。

 

 倒した護の正体が本物の護でなかったことにほっと安心するのもつかの間。

 

 そこに突然現れたソール11遊星主により最後のQパーツも奪われてしまう。

 そのままソール11遊星主は、QパーツごとESウィンドウで撤退してゆく。

 

 

戒道「奴等の目的は三重連太陽系※の復元。パスキューマシンは復元装置の中枢であり、様々なものを複製できる。奴等はそのために、地球はおろか宇宙まで滅ぼそうとしている」

 

 

※三重連太陽系

 この宇宙のひとつ前の宇宙に存在した、三つの太陽(実際は一つの太陽と二つの燃える惑星)を持つ太陽系。今の地球に比べ遥かに進んだ科学力を持った緑の星・赤の星・紫の星が存在した。

 卓越した科学力により宇宙の寿命に気づき、それを避けようと様々な方策を尽くしたが、宇宙が滅びる前に紫の星が生み出したZマスターの暴走により機界昇華され、滅亡する。

 その後宇宙は寿命を迎え、再びビッグバンを起こして生まれたのが現在の太陽系を持つ宇宙であり、三重連太陽系と同じ位置にあるのがこの地球のある太陽系である。

 ソール11遊星主は、消滅の危機に瀕した三重連太陽系を再生するために赤の星の住民が生みだした一種のセーフティプログラムであり、この星系を再生するため存在する集団なのである。

 

 

 衝撃の事実が告げられる。

 パスキューマシンのエネルギーは宇宙の暗黒物質。それを使えば、今ある宇宙はしぼんで存在できなくなり、三重連太陽系の復元と共に消滅してしまうのだ!

 

 さすがにそれを認めるわけにはいかない。と、宇宙にてもう一つの使命がロンド・ベルに追加された。

 

 邪魔大王国にソール11遊星主。どちらも放っておくわけにはいかない!

 

 

──宇宙へ──

 

 

 皮肉にも残っていた大勢力はすべて地球を飛び出した。

 

 ロンド・ベル隊もそれを追うため、宇宙に出ることとなる。

 

 宇宙に行くための中継点となるオービットベースに到着したロンド・ベル。

 

 彼等はそこで、新たな力を受け取ることになる。

 まず、戦艦アーガマより新たな艦、ネェル・アーガマへ。

 宇宙にて組み立てられたアムロの新たな機体、νガンダム。さらにZZガンダムのフルアーマーパーツ(同時に強化型へ改修)、試作三号機の強化ユニット、オーキス。アキトのブラックサレナへの換装パーツ。

 さらにダルタニアスのパワーアッププランもここで実行され、超空間エネルギーによってのパワーアップがはたされた。

 

 そして、コン・バトラーVをコン・バトラーV6(ブイシックス)にするためのパワーアップパーツ、バトルアーマーと、ボルテスVをボルテスVII(セブン)とする追加アーマー。それとダイモスの2号機、裂将フォボスが届けられた。

 

 この2号機、パイロットはバーム星人が乗るとは決まっていたが、正式なパイロットはまだいない状態である。

 誰が乗るかと上が選定している最中、オービットベースに警報が鳴り響く。

 

 補給の途中を見計らい、デュナンの子が襲撃を仕掛けてきたのだ。

 換装中や調整、乗せ換え中などにより、いくつかの機体が出ることができない。

 

 その時間を稼ぐため、エリカはダイモスの2号機、フォボスにより出撃する。

 

 

エリカ「私も一緒に、一矢と戦いたい。だから!」

 

 

 慣れない戦いに苦戦を強いられるが、彼女はあきらめず、時間をしっかりと稼ぎ、オービットベースへの被害をおさえきった。

 

 あとは、遅れてやってきた新たな力のお披露目である。

 

 さらにエリカとの愛の力で、1号機のダイモスもパワーアップを果たした。合体攻撃と共に、フォボスをよろしくお願いします!

 

 

 こうしてデュナンの子を撃退したロンド・ベルだったが、そこに新たな情報が舞い降りた。

 

 なんとネオジオン・ムゲ帝国同盟がコロニーを動かし、地球にむかってきているというのだ。

 かつてジオンが行おうとして成功はしなかったコロニー落とし。

 

 それを再び行おうとしているのだ。

 

 これを放置すれば、コロニーは地球に落ち、未曽有の被害が出てしまうだろう。

 かといってラングーンも放置しておくわけにもいかない(ソール11遊星主は調査中。暗黒物質の集束具合から、まだ余裕はある)

 

 つまりは、二手に別れ、両方どうにかする。

 ルート分岐であった!

 

 

──ルート選択──

 

 

『コロニー落とし阻止ルート』

 ネェル・アーガマ隊(0083、ZZガンダム、νガンダム、SEED DESTINY)、ナデシコ隊、Gガンダム、ガオガイガー、J9、ダルタニアス、ダンクーガ

 

『ラングーンを追うルート』

 鋼鉄神ジーグ、マシンロボ、ダンバイン、エヴァンゲリオン、コン・バトラーV、ボルテスV、ダイモス、ダンクーガ、マジンガーチーム

 

主人公の選択についてくる

 統夜達、ウルズチーム(トゥアハー・デ・ダナンつき)

 

 

 第15話 終わり



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第16話 ラングーンを追うルート

 

────

 

 

 宇宙へあがり、ラングーンを追うため別れたロンド・ベル分隊は月を目指していた。

 銅鐸の巫女として力を増した珠城つばきがそちらから力を感じると言い、さらにその周辺の空間で怪し動きが観測されたからだ。

 

 どうやらそのあたりの空間に、ラングーンは隠されていたのだろう。

 

 月にむかう途中、ロンド・ベルはこちらへむかってくる巨大な影を発見する。

 

 巨大な宇宙船、ラングーン。

 船を掌握した妃魅禍も、ロンド・ベル隊を粉砕しようとむかってきたのである!

 

 ロンド・ベル分隊を粉砕しようと姿を現す邪魔大王国三幹部とデビルサターン6率いるギャンドラー軍団。

 

 対するロンド・ベルは決戦より前に剣児とつばきをラングーン内に突入させ、銅鐸の奪還を優先する作戦だった。

 これが成功すれば、敵の戦力は大きく減り、味方の戦力が増えることになる。

 ゆえに、最初の目的は敵の殲滅でなくラングーンへの侵入。

 

 二人は初代ジーグ(磁偉倶)である司馬宙の操縦するビッグシューターに乗り、隊員はそれを侵入可能な入り口まで護衛するのだ!

 

 新たな力を得てロンド・ベルを殲滅しようとする邪魔大王国と、その力をそぐためラングーンへ侵入しようとするロンド・ベル分隊との戦いがはじまった!

 

 

宙「さあ、いくぜ。剣児、つばき、しっかり掴まってろよ!」

 

剣児「ああ!」

 

 

 激しい攻撃を潜り抜け、入り口を守るハニワ幻神を撃破し、ビッグシューターはラングーンの中へ突入する。

 

 

一矢「よし! あとは彼等を追わせないように入り口を守れ!」

 

シンジ「はい!」

 

壱鬼馬「おのれ! 貴様等なにをするつもりだ!」

 

 

 一気に攻守が逆転し、外に出た邪魔大王国の者達を内部に入らせないようにするのが統夜達の役目となった。

 

 侵入し、ビッグシューターから雷鋼馬(ジーグの頭部となるバイクのこと)で飛び出す剣児とつばき。

 そこにハニワ幻神がわいて出るが、その前に司馬宙が立ちふさがる。

 

 

宙「貴様等など、俺のこぶしで十分だ!」

 

 

 銅鐸を奪われ、サイボーグにもチェンジできない宙だが、そんな状態関係なく、現れたハニワ幻神をバッタバッタとなぎ倒すのだった。

 

 

つばき「す、すごい」

 

宙「ここは俺に任せて先に行け!」

 

剣児「ああ!」

 

 

 背後を宙に任せ、つばきの指示により銅鐸の反応する方向へと突き進む。

 

 しかし、あともう少しというところで、待ちかまえていたディオンドラとグルジオスにより、前をふさがれてしまった。

 雑魚ならばともかく、幹部相手。しかも二人では銅鐸の力の使えない雷鋼馬では分が悪い。

 

 

ディオンドラ「くくくっ。無駄だよ。ここでお前達も終わりさ!」

 

剣児(どうする? このまま頭を飛び越えていけるか?)

 

 

 なんとか突破しなければと考えを巡らせたその時。

 

 

???「待てい!!」

 

ディオンドラ「だ、誰だい!」

 

グルジオス「貴様は!」

 

 

 そうして現れたのは、頼れる我等のロム兄さんだった。

 

 口上を語り、ディオンドラ達の注意が彼にひきつけられている間に、剣児はその隙をついて先へ進む。

 

 

ディオンドラ「あっ、こら、ずるいじゃないか!」

 

ロム「お前達の相手はこっちだ!」

 

 

 先へ進む剣児達を追おうとするも、それを遮るようロムが立ちふさがった。

 

 

ディオンドラ「くそー!」

 

 

 こうなっては立場は逆転である。

 

 さらに先へ進んだ剣児達は、ついに妃魅禍のいる神殿部にたどりついた。

 

 

妃魅禍「勝算もなく来るとは愚かにもほどがある! 二つの銅鐸は大銅鐸の強力な力をわらわのものに書き換えてくれたわ!」

 

 

 妃魅禍と対峙する剣児とつばき。

 

 

妃魅禍「すでにこの黄泉平坂はわらわの世界。なにができよう!」

 

 

 妃魅禍より、雷のような光が剣児へ放たれる。

 

 

剣児「ぐわああっ!」

 

つばき「剣児!」

 

妃魅禍「うぬらは銅鐸がなんたるものかも知らずに死んでゆくのじゃ!」

 

剣児「負けねえ……! 俺達は負けねええ! てめえを倒して帰るんだ! つばきと一緒に、俺達の地球へ!」

 

つばき「そう、私達は負けない! この想いが剣児と私の胸にあれば、道は開ける!」

 

妃魅禍「ほざくな! その道は地獄への一本道ぞ!」

 

 

 もう一発!

 

 

剣児「ぐはぁっ! 俺とつばきは……! 俺達は地球を守ってんだ! 死んでたまるかってんだよおおっ!!」

 

つばき「負けない……っ! 想いを形にする力、それが私の受け継いだ力よ!」

 

 

 その時……

 

 

妃魅禍「ぐっ! な、なんじゃ!?」

 

 

 二人の諦めない心に、銅鐸が反応した。

 二人の意思に応えた銅鐸は、妃魅禍の手元を離れ、剣児と宙の元へと舞い戻る!

 

 

剣児「……! 銅鐸が……雷鋼馬に戻った! これでジーグになれるぜ!」

 

つばき「やった……!」

 

妃魅禍「馬鹿な……!? 呪いの力……憎しみ、恨み、負の情念が渦巻くこの黄泉平坂で……!?」

 

 

 銅鐸が戻った。

 とはいえ、今ここにあるのは雷鋼馬。ジーグの頭のみ。さすがにこのままでは戦えない。

 剣児達は一度ラングーンの外へ出てジークへビルドアップし、サイド妃魅禍と対峙する道を選ぶ。

 

 来た道を引き返し、ロムと合流。さらに力を取り戻した宙と共に、ラングーンの外へと飛び出した。

 

 

剣児「みんな、戻ったぜ!」

 

美和司令「よろしい。反撃の開始です!」

 

つばき「おばあさま!?」

 

鏡「剣児、つばき! 大丈夫か!?」

 

剣児「鏡! 目を覚ましたのか!」

 

鏡「ああ。もう多卦流の姿に戻るほどの力はないが、美角鏡としてこれからも戦い続ける!」

 

 

 彼等を出迎えたのは、旧ビッグシューターに乗ったつばきの祖母。美和司令と目を覚ました美角鏡だった。

 

 そのまま彼女は、往年のコンビネーションそのままにパーツシュートを成功させ、現役のつばきも驚かせる。

 

 負けじと剣児もビルドアップし、ここにダブルジーグが並び立つ!!

 

 

壱鬼馬「銅鐸を取り戻したか! だが、貴様等がここで滅びるのは同じ! 覚悟しろ!」

 

剣児「それはこっちのセリフだぜ。次は、お前達の番だ!」

 

 

 ここに改めて、邪魔大王国との決戦がはじまった!!

 

 激しい激闘の中、邪魔大王国の幹部も次々と撃破されてゆく。

 

 

壱鬼馬「フフフ! ハハハハハ! 妃魅禍様のためならば、我が命など惜しくはないわああっ! 人間ども! 先に黄泉の国で待っているぞおおおっ!!」

 

 

 3人の幹部すべてが倒れた時、ラングーンに異変が起きた。

 

 ラングーンより光が放たれ、宇宙空間に衝撃波が走ったのだ。

 それは空気の振動などではなく、ラングーンより漏れ出た大銅鐸のエネルギーが空間そのものを揺るがしたのだ。

 

 そうして空間をゆがめながら、ラングーンの形が変わってゆく。

 

 

剣児「なんだあれは……?」

 

 

 そこに現れたのは、大きな銅鐸としか言いようのない代物だった。

 名前もそのまま『大銅鐸』!

 

 ラングーンの真の姿である!

 

 

妃魅禍「フフフフフ。ハハハハハハ!」

 

 

 妃魅禍が高らかに笑う。

 真の力を取り戻したこれに、勝てるものなどないと思っているからだ。

 

 

妃魅禍「さあ、この大銅鐸の力を見せてやる!」

 

チャム「なに、これ……!」

 

シーラ「悪しきオーラが。憎しみの感情が、悪意が集まっていく……」

 

 

 シーラの言う悪意が、収束する。

 

 そこに現れたのは、巨大な人型の怪物だった。

 

 

ショウ「まるで、ハイパー化のようだ……」

 

つばき「感じるわ……! 宇宙中から邪悪な気があいつに集まってきてる!」

 

妃魅禍「そう! これが我等が源! ハイリビードとは真逆。貴様は正を司り、我等は負を司る大銅鐸の力より生まれた! ならばそこに生まれた貴様等と、我等が相容れるはずがない!」

 

 

 妃魅禍も最初使徒がどんな存在かはわからなかった。

 だが、観察することにより、決して自分達に益となる存在にはならないと悟ったのだ。

 

 

カオル「……」

 

剣児「邪悪な魂の集合体ということか……!」

 

鏡「剣児、奴等は憎しみ、恨みなど、負の情念を具現化して力に変えている」

 

剣児「へっ、あいつららしい。辛気くせえ燃料だな!」

 

磁偉倶「銅鐸を取り戻したお前達ならきっと大銅鐸すらも封じることができる!」

 

美和「頼みましたよ、つばき、剣児……!」

 

妃魅禍「ハハハハハ! 今の世は幾度もの争いにより死があふれ、憎しみの情念に世界が満ちておる!」

 

シーラ「……」

 

 

 それはオーラ力を操るシーラ達も感じていた。

 憎しみのオーラが宇宙に満ち、それを感じたシーラ達は悲しんだ。だが、妃魅禍はそれをむしろ喜ばしいように語っている。

 

 その悪意の集合体。

 

 それは、憎しみにより膨れ上がり、巨大化したオーラバリアのハイパー化にもよく似ていた。

 

 

妃魅禍「これこそが、うぬらの星の嘆き。魂を喰らい、この荒之皇(スサノオ)はどこまでも力を得る! さあ、愚かな人間どもよ。わらわにひれ伏すがよい!」

 

つばき「そんな力に、誰が屈するもんですか!」

 

 

 大銅鐸による悪意の具現化。

 

 邪魔大王国の秘密兵器との決戦のゴングが鳴る。

 

 

 ……かと思われたその時!

 

 

???「まてぇい!」

 

豹馬「誰だ!」

 

グルジオス「この世に満ちたその悪意、それさえ利用し、目的を達すること。人それを悪辣という!」

 

ジェット「グルジオス!?」

 

グルジオス(……一度やってみたかったのだ)

 

デビルサターン6「やられた! いつかワイもやりたかったのに!」

 

ドリル「なにしにきやがった!」

 

グルジオス「くくっ。大銅鐸による悪意の招集。これほどの死者の念があるならば必ず成功しよう! この力、我等も利用させてもらう! さあ、蘇りください、ガデス様!!」

 

ガルディ「なにっ!?」

 

ジェット「あいつは死者を呼び出す力がある。まさか、あの力を使ってガデスをこの世界に呼び戻すつもりなのか!?」

 

甲児「なんだって!?」

 

 

 グルジオスの言葉とともに闇が瞬き、荒之皇が現れた時と同じく、その闇の瞬きが集まる。

 そこには、あの時皆を苦しめた、ハイリビードで若返ったガデスの姿があった。

 

 

グルジオス「これが、ガデス様より与えられし我が力の一端!」

 

 

 グルジオスはガデスに与えられた怪しい術により、死者を呼び出すことができるのだ!

 

 ロム達は地球に来る前、ガデスから派遣されたグルジオスと戦う機会があった。

 その戦いの際、グルジオスはロム達が他で倒した妖兵コマンダーを何人か蘇らせ、彼等にけしかけてきたことがあるのだ。

 

 その戦いでグルジオスはブラックホールに飲まれ死んだと思われていたが、ああして地球にたどりつき、再びロム達の前に立ちふさがったというわけである。

 

 通常ならば、ガデスほどの大物は呼び出すことは不可能だが、大銅鐸の力で集まった死者の念を使い、悪意を器としてガデス復活を可能にしたのである!

 

 

ガデス「よくやった。グルジオス」

 

グルジオス「ガデス様! 我が忠義、見てくださいましたか! これでハイリビードを吸収すれば、あなた様は完全無欠。不死身にして不老の完璧な存在となります!」

 

ガデス「うむ。貴様には褒美をとらせねばならぬな」

 

 

 そう言うと、ガデスはグルジオスの体をむんずとつかんだ。

 

 

グルジオス「ガデス様……?」

 

 

 そしてそのまま、グルジオスをその体にとりこんでゆく!

 

 

グルジオス「な、なにをなさいます!」

 

ガデス「貴様に貸した力をすべて返してもらう。貴様はワシと同化し、永遠に生きるのだ。これほど光栄なこともあるまい!」

 

グルジオス「そんなっ! 嫌だ。死にたくないー!」

 

 

 断末魔をあげながら、グルジオスはガデスの中へと消えていった。

 これでガデス、完全復活である!

 

 

ガルディ「なんてことを!」

 

ガデス「裏切り者のガルディ。貴様もここで死ぬがよい!」

 

妃魅禍「貴様がギャンドラーの首領、ガデスか。グルジオスから聞いておるぞ」

 

ガデス「ふん。貴様はどうでもいい。わしの獲物はあいつらよ。邪魔をしなければ、好きにせよ」

 

妃魅禍「ハハハ。うぬに格の違いを判らせるのはジーグを始末してからだ。わらわの獲物こそ、横取りせぬようにな!」

 

豹馬「どうせならあいつらで潰しあえばよかったのによ」

 

ちずる「さすがにそんな都合のいいことはないみたいね」

 

ジェット「俺達が倒れたあとならいくらでも争うだろうがな。だが、それを望むのは無駄ってことだ」

 

シーラ「ええ。その通りです。総員、迎撃の準備を!」

 

一同「おお!」

 

 

 こうして大銅鐸によって生み出された悪意の怪物、荒之皇と、復活したガデスとの戦いがはじまった!

 

 

 とりまきのハニワ幻神もガデスの指揮下に入ったギャンドラー軍団も、どちらも大銅鐸の影響を受けパワーアップしている。

 だが、ロンド・ベル隊の士気は落ちない。

 

 とりまき達を排除し、妃魅禍の最終兵器である荒之皇とガデスへ攻撃が命中した。

 

 

剣児「なにっ!?」

 

 

 だが、荒之皇にもガデスにもダメージはない。

 攻撃が命中したそばから荒之皇もガデスも回復してゆくのだ。

 

 

甲児「またこのタイプかよ!」

 

 

 ロンド・ベル隊は経験豊富な部隊である。

 幾度か名を変えたが、部隊には第一次地球圏争乱初期からずっと戦い続けている者が多く所属している。

 第一次地球圏争乱終結直前に戦った、フューリーの騎士団長。グ=ランドンのズィー=ガディン。

 第二次地球争乱最後のシャピロが操るデビルガンダム。

 少し前でもハイリビードを得たガデス。

 

 どれも同じように攻撃を即座に再生し、無敵であるかのように思われた強敵だった。

 

 だが、そのどれもを倒し、彼等はここにいる。

 

 この攻略法は、回復の源。この場合大銅鐸から荒之皇とガデスに供給されるエネルギーをたつということだ。

 そのエネルギー。この領域へと集まる恨みや憎しみなどの負の情念がある限り、例え消滅に等しい一撃を与えたとしても即座に復活。回復されてしまう。

 

 そのために、根本であるここに引き寄せられた負の情念を消すか、それを集めている大銅鐸からのリンクを切らねばならない!

 

 

つばき「なら、私が!」

シーラ「ならば、私達が!」

 

 

 今回その解決のためとった方法。それは、その両方だった。

 

 シーラとエレの二人がみずからのオーラ力を使い場に集まった悪しきオーラ(負の情念)を浄化し、力が弱まったところでつばきが銅鐸の巫女の力でそのリンクを断つ。

 

 二人の女王の祈りにより、大銅鐸そのものと化したラングーン周囲に渦巻いていた負の情念が浄化されようとする。

 同時に、つばきも大銅鐸にアクセスを試みた。

 

 

妃魅禍「小癪な!」

 

ガデス「愚かなことを!」

 

 

 当然、それをおとなしく見ているわけがない。

 

 妃魅禍の命により荒之皇がつばきを。ガデスが祈りを捧げるオーラ・バトルシップの元へと迫った!

 

 

シンジ「させないっ!」

ショウ「させない!」

 

 

 荒之皇の攻撃をシンジのエヴァンゲリオン初号機が。

 ガデスの攻撃をショウの乗るビルバインが守る!

 

 

妃魅禍「バカなっ!」

 

 

 守ったのは、ATフィールドとオーラバリア。

 どちらも生きる意志が生み出した力。

 

 

シーラとエレ「「今です!」」

 

つばき「はいっ!」

 

 

 大銅鐸の周囲に渦巻いていた負の情念がエレとシーラのオーラ力によって浄化され、力の供給に一瞬の空白ができた。

 つばきはその小さな隙を見逃さず、大銅鐸と悪意とのリンクを断ち切る!

 

 

荒之皇「グオオオオッ!」

 

ガデス「グゥウゥゥ!?」

 

つばき「剣児!」

 

剣児「ああ!」

 

宙「剣児、お前に託すぞ、俺の銅鐸を!」

 

 

 銅鐸の導きにより、初代磁偉倶、司馬宙はビルドアップを解き、サイボーグ形態に戻ってみずからの体内より銅鐸をとりだし、剣児に受け渡すべく放った!

 

 

ガルディ「ロム!」

 

ロム「ああ!」

 

ガルディ「託そう。この剣を!」

 

 

 ロムの兄、ガルディもみずからが持つ、流星(ながせ)の導きでその対となる剣狼を持つロムへとその剣を投げ渡した!(前回ガデスを倒したのは二人の同時攻撃だった)

 そして二つの銅鐸を得た剣児は破瑠覇と合体し鋼鉄神ジーグとなり、ロムは流星と剣狼の柄をつなげあわせ、運命両断剣・ツインブレードをもって両者を粉砕する!!

 

 

ガデス「バッ、馬鹿な……」

 

ロム「これが、人々の想いだ!」

 

つばき「そうよ! 人が人を思う心。それこそが人間を作り上げたの! 想いは、負の情念なんかに負けないわ!」

 

妃魅禍「おのれ……!」

 

鏡「剣児、ここでもう一度つばきと力をあわせるんだ!」

 

剣児「いくぞ、つばき!」

 

つばき「うん!」

 

妃魅禍「貴様等、なにをっ……!」

 

 

 ビッグシューターの隣に来た剣児は、心の中でつばきと手をつなぐ。

 

 二人は虚空へと手を伸ばす。

 すると、光と共に伸ばした先へ剣が現れた。

 

 

剣児「これは……」

 

鏡「それは逆鉾。銅鐸を受け継ぎし者にのみ宿る魂の刃だ! 二人でその力を開放し、大銅鐸と妃魅禍を封印するんだ!」

 

妃魅禍「負けぬ! なにが生きた人間の想いだ。憎しみや恨みが負けるはずがない! 負の情念の方が強いに決まっている!」

 

剣児「そいつはどうかな! 決めちまおうぜ、つばき!」

 

つばき「うん! 彷徨える魂よ! ここに眠りたまえ!」

 

妃魅禍「バカな! 想いなどという弱い心に! ぐわあああああっ!!!」

 

 

 光が瞬き、そこにあった巨大な大銅鐸は、跡形もなく消えてなくなった。

 二人の想いにより、大銅鐸は再び封印され、妃魅禍と共に永遠と言える永い眠りについたのだ……

 

 

鏡「……」

 

剣児「終わったぜ、鏡!」

 

鏡「ああ。だが、まだすべてが終わったわけじゃない。俺隊の戦いは、まだまだ続くぞ」

 

剣児「そうかよ。なら安心だ。お前にもまだまだ活躍してもらわなきゃならないからな」

 

鏡「ふっ。簡単には死んでいられないようだ」

 

 

 そうして二人は笑いあったそうな。

 

 

 こうして、邪魔大王国とギャンドラーとの戦いは終わりを告げた……

 

 

 第16話 ラングーンを追うルート おわり

 

 

──おまけ──

 

・没ネタ

 ラングーンの一族とフューリー。

 銅鐸の力によりゾーン内の時間がほぼ停止した状態になっていたとか、大昔にやってきた強大な力をもつ異星人とか、共通点が多く、色々クロスオーバーも考えたりしたが、うまく調理できなかったので第1作目のブレンパワードのオルファンと同じく大した関係もない宇宙の迷子ということに落ち着いてしまった。

 



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第16話 コロニー落としを阻止するルート

 

────

 

 

 ネオジオン・ムゲ帝国同盟によるコロニー落としを防ぐため、ロンドベル分隊は集結する連合軍の元へと急行する。

 今回はかつてジオンがやろうとした電撃的なユニウスセブンの落下と違い、早い段階で情報をつかんでいたため、地球連合側も相応の戦力を集めることに成功していた。

 

 その集結ポイントへむかう途中、宇宙にて活動するラクス・クライン(ガンダムSEED DESTINY/人物)が合流してくる。

 敵であるはずの、シーマ・ガラハウ(ガンダム0083/人物)と共に。

 

 ラクスの乗るエターナルと共にシーマ艦隊が現れたことで見な警戒するが、ラクスが警戒しなくてよいと笑うのだった。

 なんとシーマはデラーズ・フリートを裏切り、スパイとしてラクスに情報を流していたのだ。

 

 今回のコロニー落としの情報も、シーマ→ラクス経由で地球連合にもたらされたものなのである。

 

 

コウ「信用、できるのか?」

 

ラクス「わたくしはしています」

 

シーマ「こっちに来た時点でもうむこうには帰れないんだ。信用してもらうしかないね。よろしく頼むよ」

 

 

 ふふふ。とシーマは笑った。

 

 いずれにせよ、彼女からもたらされた情報は事実。

 今は信頼することとし、コロニー落下阻止を優先することにした。

 

 シーマとガーベラテトラ。さらにラクスのエターナルが合流したことにより、ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスにミーティアが追加され、さらなる戦力の増強となった。

 

 ラクス一行と合流したロンド・ベル分隊は連合軍と合流し、迎撃のため準備を進める。

 

 地球へむかうコロニーの周囲には、途方もない数のネオジオン・ムゲ帝国連合の戦艦、機体がついていた。

 ネオジオンからはハマーン艦隊。デラーズ艦隊がつき。さらにムゲ帝国より新たに派遣されたムゲ皇帝の右腕、デスガイヤー将軍までもが守りについていた。

 

 当然だろう。

 この一撃が成功すれば、地球に住む人間の半数は死滅してもおかしくないからだ。

 

 そうなれば、地球はネオジオン・ムゲ帝国同盟に抗う力を失う。

 この作戦の成否が、地球の未来を決めると言っても過言ではなかった。

 

 ただ、この厳しい戦いの中で唯一の救いはハマーン・カーンは指揮に忙しく、直接モビルスーツに乗って出てくる暇はないということだろうか。

 

 

 こうして、地球の未来をかけた戦いがはじまる!

 

 

 地球へのコロニー落下を絶対に阻止しようとする連合軍。

 その中でも別格の活躍を見せるのは、やはりロンド・ベル隊であった。

 

 通常の半分の戦力しかなくとも、最も戦力の集中するネオジオン・ムゲ帝国同盟の中核へと突入し、コロニーを各々の武器の射程に収めるほどの近さへと接近してゆく。

 

 今回の目的はネオジオン・ムゲ帝国同盟を倒すことではない。

 地球にコロニーを落とさせないことだ。

 

 

 ネオジオン・ムゲ帝国同盟もそれは百も承知。

 

 攻めこんできたロンド・ベルにむけ、エースを差し向ける。

 

 ネオジオンの若きエース達(マシュマー、キャラ等)。さらにジオンの精神が形になったようだと言われたモビルアーマー、ノイエジールに乗るガトー。

 

 

ガトー「ここから先は、一歩も行かせん!」

 

コウ「この気迫、ガトーか!」

 

 

 例えガトーを退けたとしても、ムゲ帝国より遣わされた新たな将軍、デスガイヤー。

 

 さらに戦艦サダラーンに乗り指揮するハマーンさえも、コロニーに近づけまいと彼等に襲い掛かる。

 

 

ジュドー「くそっ。さすがにあいつらも必死かよ!」

 

剣人「こいつらばかりにかまってられねえってのに!」

 

???「ならば、ここはまかせて先に行け!」

 

弾児「あ、あんたは……!」

 

 

 エースによりコロニーへの道をふさがれたロンド・ベル分隊に現れた二つの影。

 

 それは……

 

 

剣人「クロッペン!?」

 

クロッペン「ふん」

 

ジュドー「プルツーも!」

 

プルツー「……」

 

 

 そこには、みずからの乗機であるデスターク2に乗ったクロッペンと、どこから手に入れたのか、巨大なモビルスーツ。クインマンサに乗ったプルツーだった。

 

 

剣人「クロッペン……」

 

クロッペン「ふん。勘違いするな。地球のことなどどうでもいい。私は奴等を叩きに来たのだ!」

 

プルツー「そういうことだよ。早く行きなよ。あんたらの目的は、こいつを相手することじゃないだろ!」

 

ジュドー「確かにその通りだ。行くぜ剣人さん!」

 

剣人「ああ!」

 

プル「プルツーありがとね!」

 

プルツー「ふん」

 

デスガイヤー「あの機体。強化人用に開発されていたクイン・マンサではないか。奪われるとは、ネオジオンも存外だらしないな」

 

ハマーン「……」

 

 

 クロッペンの助太刀もあり、ネオジオン・ムゲ帝国同盟の防御網を抜けた統夜達は、ついにコロニーへ肉薄する!

 

 あとはコロニー本体か、推進部を破壊するのみだ!

 

 

ブライト「総員、かまえ!」

 

 

 コロニーを破壊すべく、各機が武器をかまえたところで、コロニーに異変が起きた。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴッ!

 

 

 なんとコロニーがうごめき、姿を変えはじめたのだ。

 さらに、そこから金属のような触手さえ姿を現す。

 

 彼等はこの姿を知っていた。

 

 

ドモン「デビルガンダム!」

 

 

 そう。このコロニーはデビルガンダム細胞に侵されていたのである!

 

 破壊しようと一撃を与えるが、受けたダメージはすぐにふさがってしまった。

 

 

東方不敗「やはりまずはコアをどうにかせねば無意味か!」

 

 

 デビルガンダムとはもう幾度もやりあった仲である。

 その対処法も嫌というほどにわかっていた。

 

 内部にある高エネルギー反応をとらえ、外壁を一点集中の攻撃で破り、内部へと突入する。

 

 コアの排除。

 これは、誰かが望まずデビルガンダムのコアにされていた場合、救出するためでもある。

 ゆえに、もう一つ用意してあった勝利の鍵は使えなかった。

 

 コロニー内に侵入したロンド・ベル分隊は、コアのあるべき場所に到着した。

 

 

ガトー「……」

 

 

 そこにいたのは、デビルコロニーの核となったアナベル・ガトー。

 

 デビルガンダムのコアに最も高い適性を示すのは女性である。

 しかし、健康で強力な肉体を持つ男子がコアになってはならないなんてことはない!

 

 ノイエジールが退けられた際、このままではコロニーを守り切れないと悟ったガトーは、コロニー内へ突入し、最後の手段に手を出したのだ。

 

 

ガトー「この手段を使わねばならぬとは。だが、我等の大義をかなえるため、手段は選ばぬ!」

 

コウ「ガトー!!」

 

 

 コロニー落としに立ちはだかるのは、最後までこの男であった。

 

 愛機、ノイエジールごと核となったこの男を倒さねば、彼等はコロニー落としを阻止することはできない!

 

 デビルノイエジールを守るよう、コロニー内にデスアーミーが生える。

 その中には、ゾンビ兵と化した、すでに倒されたはずのムゲ所属のザール艦隊の元将軍達の姿もあった。

 

 何機倒そうと、一定数を下回るたびデスアーミーは補充される。

 

 

ドモン「こいつらをいくら倒してもきりがない! みんな、コアを狙え!」

 

 

 コロニー落下を阻止するための最後の防衛線がはじまった。

 

 

ガトー「うおおおおお!」

 

コウ「この気迫。どうしてその想い、どうしてもっと別のやり方でやれなかったんだ!」

 

 

 激闘が続く。

 

 だが、さしものガトーもたった一人では勝ち目がなかった。

 

 ロンドベルの猛攻に、ついにデビルノイエジールも倒れる。

 

 

ガトー「だが、まだだ! まだ、私の志は死なぬ!」

 

 

 ゴゴッ!!

 

 コロニーが激しく揺れる。

 

 なんとコロニーがさらに加速したのだ。

 デビルガンダム細胞が消えても、コロニーが消えるわけではない。

 

 ガトーは最後の力を振り絞り、細胞が消滅する前にコロニーを加速させたのだ!

 

 こうなっては、コロニーを完全に破壊しない限り、地球への落下はとめられない。

 

 

???「こうなれば、こちらも切り札を切らねばなるまい!」

 

凱「大河長官!」

 

大河長官「うむ!」

 

 

 そこに現れたのは、GGG長官大河幸太郎と新たに建造された新造艦、『ディビジョンVII超翼射出司令艦ツクヨミ』、『ディビジョンVIII最撃多元燃導艦タケハヤ』、『ディビジョンIX極輝覚醒複胴艦ヒルメ』だった。

 

 

大河長官「凱君。今こそあれを使う!」

 

凱「はい!」

 

鉄也「あれを使うのか!」

 

剣人「そうか、あれか!」

 

弾児「知っているのか剣人!?」

 

剣人「いや、知らねえ!」

 

弾児「お前な!」

 

 

 強固なセキュリティが外され、現れた3機のディビジョン艦が変形をはじめる。

 

 ヒルメが重力衝撃波フィールドを形成するヘッドの上部へと。

 ツクヨミが同ヘッドの下部へ。

 

 そしてタケハヤが衝撃ユニット兼スーパーメガノイド接続部へと形を変え、合体した。

 

 

 そこに現れたのは、巨大なハンマーの柄と呼べる存在。

 

 

凱「クラッシャーコネクト!!」

 

 

 そこに、ゴルディマーグを変形させたマーグハンドを装着したガオファイガーがタケハヤのコネクト部へ接続する。

 

 凱の持つGストーンが強く輝き、さらに3艦のGSライドと直結されたレプトントラベラーもフル回転。膨大にして過剰ともいえるエネルギーが発生する!

 

 同時に重力衝撃波フィールドが形成。

 

 ヒルメとツクヨミの一部が分離し、そこに全長20キロを超える巨大な光のハンマーが生まれた!

 

 

 その名も、『ゴルディオンクラッシャー』!!

 

 

 正式名称は、グラヴィティ・ショックウェーブ・ジェネレイティング・ディビジョン・ツールという!

 

 これは木星クラスのサイズであったZマスターサイズの脅威から地球を守るため開発された、人類最後の切り札。

 前大戦でも起きたコロニーをとりこんだデビルガンダムクラスの敵性体に対する決戦兵器でもある!

 

 つまり、今まさに地球へ落下しようとするコロニー。未曽有の大災害を生み出す可能性を秘めたそれを排除するために使われずしていつ使われるという代物なのだ!!

 

 

 巨大な光のハンマーを、ガオファイガーが振るう。

 そう。ここに、本来ならば幻となるガオファイガーによるゴルディオンクラッシャーが発動したのである!!

 

 

ジュドー「いけ!」

 

コウ「いけ!!」

 

剣人「いけええぇぇ!!」

 

凱「光になれええぇぇぇ!!」

 

 

 巨大な光にのみこまれ、コロニーは光へとかえってゆく。

 この一撃から発生する光子変換効率はゴルディオンハンマーとは比べ物にならない。

 

 防御できる存在はほぼいないと言っていい威力であった

 

 

コウ「……ガトー。お前の信念は確かに強かった。でもそれは、かなってはいけないものなんだ」

 

 

 消えゆくコロニーを見て、コウは静かにつぶやいた……

 

 

ハマーン「……撤退する」

 

 

 コロニーの消滅を見届けたネオジオン・ムゲ帝国同盟は、作戦の失敗を感じとり、全軍撤退していった。

 

 ちなみにだが、この戦闘の最中。デラーズ艦隊の主、エギーユ・デラーズはどこからともなく現れたコブラにかまれ死亡しているのが発見されたという。

 不思議なこともあるものである……

 

 

ジュドー「そういやプルツーは?」

 

剣人「クロッペンの奴もどこいきやがった?」

 

トレース「どうやら俺達がコロニーから出た時にはもういなくなっていたみたいだ」

 

プル「そっか……」

 

剣人「あいつら……」

 

弾児「あいつらの目的はわかっている。すぐまたかち合うだろうさ」

 

剣人「そうだな」

 

 

 そう。コロニー落としが阻止されたといっても、ネオジオン・ムゲ帝国同盟との戦いはまだ終わっていない。

 

 むしろこれからが、ネオジオン・ムゲ帝国同盟との真の決戦なのだ。

 

 そこに彼等が現れないなどということはないだろう。

 

 戦いはまだ、続くのである……!

 

 

 第16話 コロニー落とし阻止ルート 終わり



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第17話 アクシズの激闘

 

────

 

 

 ネオジオン・ムゲ帝国同盟。さらに地球連合軍。双方の総力をこめたコロニー落としという一大作戦は、落下阻止という形で終わりを告げた。

 乾坤一擲の作戦も失敗に終わり、アクシズまで後退せざるを得なくなったネオジオン・ムゲ帝国同盟に対し、地球連合は最後の戦いを仕掛けるべく戦力の再集結を図る。

 

 対するネオジオン・ムゲ同盟も減った戦力を補填し、それを迎撃するかまえであった。

 

 その補填により、今までムゲ帝国に攻めこまれていたプラントのザフトも反撃の動きを見せ、連合と合同で決戦を仕掛けることが決まる。

 

 もうじきはじまる地球圏の争いを終わらせるための決戦。

 

 ザフトと連合。その戦力が集結するには、しばしの時間がかかった。

 

 その時間を、ロンド・ベル隊はのんびりと待っているわけにはいかなかった。

 

 なぜならその時間にムゲ帝国へ反逆したクロッペンが攻めいってしまうからだ。

 

 今、ネオジオン・ムゲ帝国同盟も連合と同じく次の決戦のため、戦力の補充を急いでいる。

 そう、作戦に失敗し、大きな打撃を受けた今こそが、攻め入るには絶好の機会なのである。

 

 連合やネオジオン・ムゲ帝国同盟の都合など関係のないクロッペンは、その隙を見逃さない。

 間違いなくすぐにでも攻めこむ。

 

 ロンド・ベル隊の皆は、それを確信していた。

 

 問題は、連合軍もクロッペンとネオジオン・ムゲ帝国同盟の戦いなど関係ないということだった。

 むしろクロッペンが連合ザフト側の戦力を集結する時間を稼いでくれるのだから、好都合と言うだろう。

 

 連合側にしてみれば、クロッペンも敵であり、相手側が勝手に疲弊するだけなのだから。

 

 戦闘の末、少数の反乱部隊。すなわちクロッペン達が全滅しようが関係ない話だった。

 

 

 それゆえ、ロンド・ベル隊は先行偵察ということで連合軍本体より先にアクシズへとむかう。

 状況によっては威力偵察も許可されることにもなった。

 

 上層部からはただ一言。「生きて帰ってこい」ということだけだった。

 

 なにをする気なのか、今の上も理解しているようである。

 

 確かに、連合の戦力が回復するのを待ち、歩調をあわせればかなり有利な状態で戦闘をはじめられるだろう。

 だが、それでは間違いなく間に合わないのだ。

 クロッペンの一行は、助かろうと思って戦っているわけではないから。

 

 だからこそ、彼等は行く。

 

 たった二人のために。

 それは、この艦隊が分艦隊として発足した時からの伝統行事である!!

 

 

──アクシズ──

 

 

 ロンド・ベル隊がアクシズに到着すると、すでに戦いははじまっていた。

 戦闘は激しく、アクシズ内部にまでおよんでいるのがわかる。

 

 どちらがおしているかというと、やはりアクシズ側だった。

 

 このままではやはり、クロッペンの反乱は鎮圧され、終わりを告げるだろう。

 

 そうなる前に、アクシズにとりつかなければならない!

 

 

ブライト「いいか、我々はアクシズを落としに来たわけではない! 目的を達したら撤退する。いいな!」

 

甲児「いいけどよ。どうせ最後までやることになると思うぜ」

 

豹馬「だよな」

 

鉄也「まあ、いつものことだな」

 

忍「なに。逃げるなら中枢にむかって反対側に抜けりゃいい。それでも撤退にはかわらねえ」

 

ドモン「確かにな」

 

ブライト「やれやれ。いずれにしても、目的を忘れるな。総員、突撃!」

 

一同「おー!」

 

 

 最初の相手は、アクシズを囲む防衛隊。

 そこを突破し、クロッペン達が戦うアクシズ内部へ到達するのだ!

 

 

──アクシズ内部──

 

 

 クロッペンはかつてはネオジオンと同盟を組むムゲ帝国のザール艦隊において総司令官を務めた男である。

 それほどの男ならば、基地になにがあってどうすれば手に入れられるかなどをきっちり把握している。

 

 そうして彼は基地に置かれていたニュータイプ専用に開発されたクインマンサと、その基地で製造された多くのロボットに人工知能を乗せ、反乱の戦力とした。

 

 無人機の導入で数の面ではロンド・ベル隊を上回る数を得たクロッペンであったが、しょせんは魂の乗らぬロボット。

 

 ロンド・ベル隊以上の数がそろおうと、アクシズ・ムゲ帝国同盟の戦力に比べれば微々たるものでしかない。

 エースと呼べる存在もクロッペンとプルツーの二人しかいないこの状態では、多勢に無勢。彼等以外の機体は徐々に数の差によってすりつぶされ、ついにはアクシズ内で過剰ともいえる戦力に取り囲まれてしまった。

 

 

クロッペン「……どうやら囲まれてしまったようだな」

 

プルツー「そうだね」

 

クロッペン「なぜ、あの時逃げなかった? お前ひとりならば、囲まれる前に逃げきれたであろう」

 

プルツー「かもね。でも、そうしたらあんたは本当に助からないだろ?」

 

クロッペン「ふん。私の命など、ここで散るものと覚悟してきたわ」

 

プルツー「……」

 

クロッペン「そんなことは最初からわかっていたはずだ。なのになぜ、ここまでついてきた」

 

プルツー「ふん。あたしがここにいなきゃ、理由がなくなるからさ」

 

クロッペン「……りゆ、う?」

 

プルツー「ああ。そうさ。あたしがピンチになれば、あいつらは必ず来る。そう、あたしと約束したんだから!」

 

クロッペン「バカなことを」

 

 

 確信をもって言うプルツーに、クロッペンはあきれた。

 

 司令官として動いたこともあるクロッペンにはわかっていた。

 ムゲ帝国と敵対する連合軍もコロニー落としを阻止した際、無傷ではいられなかった。

 

 その出血を一度とめなければ、新たに戦いは起こせない。普通に考えれば、ここに部隊など送るはずがないのだ。

 無駄に、被害を出すだけだから。

 

 下手な数を送れば、自分達と同じように、囲まれて散るだけ。

 

 そんな愚かな選択を、普通の司令官なら許可しない。

 絶対にしない。

 

 ありえない。

 

 ……そう、思っていた。

 

 

 囲んでいたモビルスーツ、ムゲの機体がこちらへと銃口を向ける。

 もう、逃げ場はない。

 

 いよいよここまでか。と覚悟を決めたその時……

 

 

 どぉんっ!!

 

 

 囲みの一角が、破裂した。

 

 

クロッペン「っ!?」

 

ジュドー「待たせたな!」

 

プル「助けに来たよ、プルツー!」

 

プルツー「遅いよ、ジュドー!」

 

 

 現れたのは、偵察に来たはずのロンド・ベル隊の面々だった。

 

 

クロッペン「な、んだと……?」

 

剣人「勘違いすんなよクロッペン。俺達はプルツーを助けに来たんだからな!」

 

クロッペン「……」

 

剣人「な、なんだよ」

 

クロッペン「……くくっ。ハハハハハ」

 

剣人「なにがおかしいんだよ!」

 

クロッペン「いや、まいった! これは勝てぬ。勝てぬわ! ここまで愚かだったとはな!」

 

剣人「うるせえな。誰も反対しなかったんだからいいんだよ!」

 

クロッペン「いや、感謝する。助かった」

 

剣人「す、素直に礼を言われるとこっちの調子が狂うぜ」

 

クロッペン「お前達といると、私は自分が人間であるとはっきり認識できる。これほど嬉しいことはないな……」

 

 

 クロッペンは現れたロンド・ベル隊を見て、ただ笑うしかできなかった。

 

 

クロッペン「だが、本当に愚かな奴等だ。たった二人を助けるために、より多くの犠牲を出すというのだからな」

 

剣人「へんっ。そんなのやってみなきゃわからないだろ!」

 

ジュドー「そうさ。あんたも助けて、俺達も助かる。簡単な話だ!」

 

ブライト「さあ、目的は達した。ここは一度撤退するぞ!」

 

ムウ「おいおい、そんな逃げ腰でいけると思うか? 相手さんは間違いなく俺達を逃がすつもりはないみたいだぜ」

 

 

 当然である。ここはネオジオン・ムゲ帝国同盟の本拠地であるアクシズ。

 

 そこに突撃してきた一部隊を逃がすなど、組織の沽券にかかわることだった。

 

 

 その本気度を示すためか、アクシズから逃げ道を塞ぐようにしてムゲ帝国のデスガイヤー将軍も艦隊を率いて姿を現した。

 

 

デスガイヤー「たった一部隊でここに攻め入ってくるとはな。ただの愚か者か、それとも……」

 

ブライト「こうなったら前でも後ろでもいい。道を作るんだ!」

 

 

 こうして、アクシズでの決戦がはじまった!

 

 

 戦いが、進む。

 その中で、徐々にだが、ある感情がアクシズ、ムゲ兵の中へ広がっていく。

 

 

アクシズ兵「な、なんだこいつら……」

 

ムゲ兵士「なんでだ。さっきの奴等より数が少なくなっているというのに、なぜこうも強い!」

 

ムゲ兵士「なぜ倒れない! 奴等はいったい。いったいなんなんだ!」

 

 

 最初に襲撃を仕掛けてきたクロッペンの反乱部隊。

 それよりも数は少ないというのに、その強さは段違い、けた違いだった。

 

 どれだけこちらが攻めようと、そのすべてを跳ね返し、逆にこちらへ迫ってくる。

 並のエースではそこらを飛ぶ羽虫のように軽々と落とされ、本当に名の通ったごく一部のスーパーエースクラスでなければまともにやりあうことすらできない。

 

 アクシズの中という圧倒的な数を展開できないこの場で、彼等をとめられるものは存在しないと言ってよかった。

 

 これが、幾度も地球を侵略者の魔の手から守ってきた部隊の実力!

 

 その攻撃は、退路を塞いでいたデスガイヤーにも迫る!

 

 

デスガイヤー「まさか、たった一部隊に敗れるとは。ただの愚か者の集まりではないということか……!」

 

 

 届いた攻撃は、デスガイヤーを撤退させるに十分の一撃だった。

 

 デスガイヤーの戦闘空母が撤退したことにより、塞がれていた退路は開き、ロンド・ベル隊はアクシズの内部を脱出することに成功した。

 

 しかし、出た先には、アクシズを囲むように大部隊を率いたハマーン・カーンのキュベレイの姿があった。

 

 これを倒さねば、アクシズを脱出することはかなわない。

 誰もがそう思った。

 

 

忍「やっぱこうなるわけだ」

 

甲児「言ったとおりだったな」

 

ブライト「お前達はどうしてそんない楽観的なんだ!」

 

剣児「当然だろ。誰も死ぬつもりなんてないってことなんだから!」

 

豹馬「その通りだぜ!」

 

ブライト「まったく」

 

 

 やれやれと、ブライトはあきれるしかなかった。

 

 いずれにせよ、ムゲ帝国の将軍は撤退し、アクシズのトップである彼女を倒すことができれば、地球における人類同士の戦いを終わらせることができるだろう。

 ここに、ネオジオンとの最後の戦いがはじまった!

 

 

ハマーン「一つ感謝してやろう。いずれムゲ帝国は追い出す予定だった。それを速めてくれたことをな!」

 

ジュドー「そんなこと感謝されてもうれしくないね!」

 

 

──戦闘前会話──

 

 

ハマーンVSジュドー

 

ジュドー「ハマーン!」

 

ハマーン「ジュドーか。やはり、お前と私は、互いに引き合うものがあるようだな」

 

ジュドー「もういい加減にしてくれ! 人類同士で戦っている場合じゃない! あんたにだって見えているはずだ。こんな戦い、無意味だって! 人の悲しみが!」

 

ハマーン「だから協力しろというのか? それこそなんの意味がある。人は生きている限り一人だよ。人類そのものもそうだ。このままでは、人類は地球を食いつぶす!」

 

ジュドー「そんなに人を信じられないのか!? 憎しみは憎しみを呼ぶだけだって、いいかげんわかれ!」

 

 

──決着──

 

 

 激闘の末、ハマーンのキュベレイを倒すことに成功する。

 

 最終的にはジュドーのZZガンダムによるハイメガキャノン・フルパワーにより、ハマーンはMIAとなるのだった。

 

 

ジュドー「ハマーン・カーン。あんたのその力、もっと別の使い方ができれば、俺達とも……」

 

 

 消えたキュベレイのいた空間を見て、ジュドーは小さくつぶやいた。

 

 こうしてハマーンは倒れ、指揮官を失ったアクシズの勢力は降伏するのだった……

 

 

──強襲──

 

 

 ムゲ帝国の軍勢は本国へ撤退し、ハマーンが倒れ、アクシズも降伏した。

 

 これで、人類同士の戦いは集結した。

 そう、皆が安堵した瞬間であった。

 

 

 どぉん!

 

 

凱「ぐわあぁぁぁ!」

 

 

 ガオファイガーが激しい爆発に包まれた。

 

 

戒道「ESウィンドウ!?」

 

 

 ESウインドウとはEscape Windowの略。

 多次元宇宙同士をつなぐ亜空間ゲート。これを通じて超長距離航行を可能にするもの。簡単に言えばワープ。

 それをもちいて、どこからかミサイル攻撃されたのだ!

 

 攻撃はそれだけではなかった。

 同時にネェル・アーガマも襲撃され、中にいたチリがさらわれ、統夜の乗るシン・グランティード・ドラコデウスも攻撃を受ける。

 ついでに生存フラグが立っていなければ、クロッペンの乗るデスターク2も被害を受け、戦艦への攻撃の巻き添えで、ハーリン皇子までもが怪我を負う。

 

 さらにESウィンドウが開き、アクシズを囲むようにしてソール11遊星主とジュエリオン。そして無数のデュナンの子が姿を現した。

 彼等はロンド・ベル隊が戦闘で疲弊するのを待っていたのだ!

 

 

命「凱。応答して凱!」

 

ちづる「チリ!」

 

甲児「大丈夫か統夜!」

 

統夜「なんとか。でも、しばらくシン・グランティード・ドラコデウスにはなれない。修復にしばらくかかりそうだ」

 

鉄也「奴等め。それが狙いか」

 

 

 疲弊をなかったことにするシン・グランティード・ドラコデウス。それを封じるため、統夜は狙われたのだ!

 

 凱からの応答がないままに、デュナンの子を従えたソール11遊星主が襲い来る。

 

 

ブライト「奴等の狙いは我々だ。一度この宙域を脱出するぞ!」

 

一矢「凱はどうする!?」

 

ブライト「ここで戦う方が逆に危険だ。今ならアクシズの者が救助してくれる!」

 

アムロ「駄目だブライトさん!」

 

ブライト「なにっ!?」

 

アムロ「奴等の狙いは、僕達だけじゃない。銃口が、アクシズにも向いている!」

 

ブライト「なんだと!?」

 

ジュエリオン「逃がさん。貴様等がここから去るならば、あの小惑星を破壊する!」

 

 

 チリをさらった彼女の姉。ジュエリオンがそう宣言した。

 

 

豹馬「てめえ!」

 

健一「あそこには非戦闘員もいるんだぞ!」

 

ジュエリオン「だからどうした。私には関係ない。そう、関係ないのだ! いずれすべてを破壊するのだからな」

 

健一「くっ……!」

 

統夜「しばらく耐えてくれ。修復が終わり次第ハイリビードを開放する!」

 

ブライト「ええい。アクシズへ奴等を近づけるな! こうなったら、守れるだけ守れ!」

 

甲児「そうこなくちゃよ!」

 

 

 アクシズを守るため、ロンド・ベル隊はこの場にとどまり、ソール11遊星主とデュナンの子を迎え撃つ!

 

 

アクシズ兵A「なぜだ……」

 

アクシズ兵B「なぜお前達は俺達を守っている! 俺達は敵だというのに!」

 

甲児「うるせえ! お前達はもう降伏したんだ。戦いは終わった。なら、もう敵じゃない! だから守るんだよ!」

 

豹馬「そういうことだ! だから絶対俺達は負けない。待ってろ、チリ!」

 

アクシズ兵A「なんなんだ。なんなんだお前達は! ええい、畜生! 俺達だって!」

 

アクシズ兵B「そうだ。守れ! 俺達こそが、アクシズを守るんだ。俺達を誰だと思ってやがる!」

 

 

 さっきまで敵同士であったというのに、彼等はいつの間にか、手をとりあい、守りあい戦うのだった。

 

 

統夜「あともう少し。もう少しだ! みんな!」

 

パルパレーパ「そのようなこと、させると?」

 

統夜「っ!」

 

ピア・デケム「……」

 

ペチュルオン「……」

 

プラヌス「……」

 

パルパレーパ「その希望を、打ち砕こう!」

 

 

 統夜が取り囲まれてしまった。

 

 

統夜「しまった!」

 

 

 ここで統夜が倒れれば、数に押されたロンド・ベル隊に再起の目は消える。

 

 グランティード・ドラコデウスにむけ、4体の11遊星主より、攻撃が……

 

 

──???──

 

 

凱「俺は、死んだのか……」

 

 

 真っ暗な闇の中、凱は一人でそこにいた……

 

 

???「凱兄ちゃん。凱兄ちゃん!」

 

 

 暗闇の中、よく知る少年の声が聞こえた。

 

 

凱「……護?」

 

護「立ち上がって! みんなが、みんながピンチなんだ。お願い、立ち上がって!」

 

凱「立ち上がりたいさ。だが、肝心のガオファイガーが……」

 

護「大丈夫。ここにあるよ!」

 

 

 その時、Gストーンが輝き、闇を照らした。

 そこにいたのは……

 

 

凱「これは……!」

 

 

──破壊神降臨──

 

 

パルパレーパ「その希望を、打ち砕こう!」

 

 

 パルパレーパの号令と共に、ソール11遊星主の攻撃が統夜の乗るグランティード・ドラコデウスへ振り下ろされようとする。

 誰もがもう駄目だと思ったその時。

 

 どこからともなく現れた、獣を模した機体がグランティード・ドラコデウスを囲む4体へ突撃し、最後の一撃から統夜を救ったのだ!

 

 

パルパレーパ「なっ!?」

 

ジュドー「なんだあれ!?」

 

鉄也「ガオーマシンのように見えるぞ!」

 

凱「こい。ギャレオン!!」

 

ギャレオン「ガオオォォ!!」

 

宗介「あれは、ギャレオン!」

 

凱「フュージョン!」

 

 

 その言葉と共に、凱のGストーンが輝く!

 

 そこに、ジェネシックガイガーへの変形を成功させた凱がいた!

 

 

命「凱!」

 

凱「心配かけたな、命。みんな!」

 

護「再生の力を止めるもの。それは破壊の力。破壊は新たなるゼロへの希望。無限なる可能性の挑戦!」

 

凱「いくぞ、護! 俺達の新たなる誓いのもとに!」

 

護「凱兄ちゃん。今、奇跡を!!」

 

 

 護の言葉と共に、先ほど統夜を救った5つの機体がジェネシックガイガーの周囲へ飛来した。

 鉄也が言った通り、これはガオーマシンなのだ!

 

 

凱「行くぞ! ファイナルッ! フュゥゥゥジョォォォォォォンッ!!」

 

 

 言葉と共に、緑の光と嵐が吹き荒れ、ジェネシックガイガーと5つのジェネシックマシンが合体!

 ここに、新たな勇者王が降臨する。

 

 その名も、ジェネシックガオガイガー!!

 

 

甲児「護! お前も戻ってきたのか!」

 

護「うん! でも、ギャレオンのプログラムを元に戻すのに手間取って、今までごめんなさい!」

 

 

 来れなかった理由はそれだけではない。

 ソール11遊星主の警戒が厳しく、動くに動けなかったというのもある。今回ロンド・ベルを襲撃するためほとんどの遊星主が動いたため、護もこうして動けるようになったというのもあるのだ!

 

 

かなめ「かまわないわよ! でも、あれはいったいなんなの!?」

 

護「あれは、本当のガオガイガー。かつて三重連太陽系が機械昇華された時、緑の星の指導者カインは最後の希望を託して遺産を残していた。それが、ギャレオンなんだ」

 

命「……護君っ!」

 

護「機械昇華は終わり、三重連太陽系はソール11遊星主による再生プログラムを始動させた。Zマスターに対してJ達。ソルダート師団率いるアーク艦隊があったように。ギャレオンは本来、遊星主の暴走に対するアンチプログラムだったんだ」

 

命「じゃあ、ギャレオンは元々は対ゾンダー用に造られたものではなかったのね……」

 

護「Zマスターの侵攻が激しかったから、本来の目的とは違う使い方をしていたんだ。僕は、旅立った先でそれを知ったんだ。そして、ソール11遊星主とも……」

 

命「ずっと、遊星主達と戦い続けていたのね……」

 

護「うん」

 

パルパレーパ「馬鹿な…! ギャレオンは破壊されたはず! それにラティオ! お前がなぜ生きている!?」

 

護「お前達にそれを答える理由はないよ!」

 

凱「そうだパルパレーパ! お前達はここで破壊される!」

 

 

 ジェネシックガオガイガーから、強大なオーラが発せられる。

 

 

パルパレーパ「こ、この力は……!」

 

凱「そうだ。お前達が恐れるジェネシックオーラの波動だ!」

 

 

 それは、ソール11遊星主の動力源であるラウズGストーン。それを無効化する波動。それがジェネシックガオガイガーのGクリスタルが放つジェネシックオーラなのである!

 このオーラを前にすれば、ソール11遊星主は力を失ってしまうのだ!

 

 

パルパレーパ「破壊神……いや、滅びを呼ぶ悪魔よ! お前の存在は許されない!」

 

ジュエリオン「それに、奴等が弱ったとしても、我がシモベ達がいる!」

 

統夜「それでも、十分だ!」

 

ジュエリオン「っ!」

 

統夜「もう一度、力を見せてくれ。ハイリビードッ!!」

 

 

 統夜の意思に応え、神核に納められたフューレイム改めハイリビードの力が解放される!

 

 直後、あたたかな光がアクシズを包み、その中にいた統夜の味方は次々と回復してゆく。

 その効果は、アクシズすべてに効果があり、一方的にやられるままであったアクシズの機体さえも復活させていった!

 

 

アクシズ兵A「おおおおおっ! これで、俺達もまだ、戦える!」

 

アクシズ兵B「ああ! アクシズを、みんなを守れる!」

 

ジュエリオン「だからどうした! しょせんは烏合の衆。そんなのがいくら集まろうが、我等の敵ではない!」

 

???「ならば、きちんと指揮をとれるものがいればどうかな?」

 

ジュエリオン「っ!」

 

ハマーン「総員、私の指揮に従え! ロンド・ベルと協力し、アクシズを守るぞ!」

 

アクシズ兵A「ハマーン様!」

 

アクシズ兵B「ハマーン様だ!」

 

マシュマー「ハマーン様あぁぁぁ!!」

 

ハマーン「アクシズの防衛は我等に任せろ。お前達は、目の前の敵を倒すことに集中しろ!」

 

ジュドー「ハマーン!?」

 

ハマーン「どうやらお前達のおかげで死に損なったようだ。なに。今更戦うつもりはない。我等はもう、負けたのだからな」

 

ブライト「すべては振り出しに戻った! 総員、目の前の敵を叩け!」

 

 

 昨日の敵は今日の友。

 ロンド・ベル隊はアクシズのネオジオンと協力し、ソール11遊星主とデュナンの子と戦う!

 

 ほとばしるジェネシックオーラにより弱体化したソール11遊星主は、これではたまらぬと態勢を立て直すためこの場から撤退してゆく。

 ジュエリオンも、ひとまずの目的。チリの回収を優先し、この場を去った。

 

 最後まで残されるのはデュナンの子達。

 

 彼等は人工知能の機械である故、ソール11遊星主と主を逃すため、すべてが破壊されるまでこの場に残り戦うのであった……

 

 

──没イベント フラグ非成立──

 

 

 デュナンの子をすべて倒し、戦いが終わったところで、クロッペンが膝をついた。

 無理して戦った結果、限界を超えてしまったのだ。

 さらに、ハーリンも戦艦が奇襲された時に重傷を負ってしまった。

 

 と、このまま原作イベントと同じく負傷したハーリンを死せるクロッペンの肉体を使い救うというイベントを考えていたのだが、統夜がハイリビードを発動させていたため、フラグ云々以前の問題であると気づいた。

 ゆえにこれは没イベントであり、クロッペンの生存は確定してしまうのだった。

 

 あとハマーンも同じく生存フラグがない場合こっそり来てたシャアに助けられて戦後その姿を見かけたものがいたそうだという噂話が流れる予定だったが、それもなくなってしまった。

 

 

──戦闘終了──

 

 

 戦いは終わった。

 

 負けを認めたネオジオンは、連合に降伏することとなった。

 この降伏に対し不服を口にする者もいると思われたが、そうはならなかった。

 

 流石に一度敗北し、さらに命がけでアクシズを救われたとなれば、反対すると口にするものは出なかったようだ。

 

 こうして、ネオジオンの降伏により、今度こそ人類同士の戦いは終わりを告げることとなる。

 

 次はいよいよ、人類の根絶とこの世界を犠牲にし三重連太陽系を復活させようとしているソール11遊星主と復讐者ジュエリオンとの戦いであった。

 

 

豹馬「チリ……絶対助けるから、待ってろよ」

 

 

 次の目的地は、護よりもたらされた。

 奴等は太陽に潜み、世界を作り替えようとしているのだ!

 

 決戦の地は、太陽!

 

 

 ちなみに、降伏したネオジオンが変なことを考えないようにと、ハマーンが人質としてロンド・ベル隊についてくることになった。建前上変なことをしたら指導者の彼女がただじゃすまないということだが、本音はハマーン様参戦! ということだ。

 

 

──ムゲ帝国──

 

 

デスガイヤー「申し訳ありません。奴等を、侮っておりました」

 

ムゲ・ゾルバドス「かまわぬ。貴様で敗れたのであればやむえまい。我等が支配する宇宙の隅々まで勇猛で知られたデスガイヤー将軍が破れたのであるからな」

 

デスガイヤー「はっ」

 

ムゲ・ゾルバドス「その貴様を破った相手。そのような強敵がこの宇宙に現れたのであれば、貴様と2人、また思う存分戦おうではないか。じき、奴等の方からやってくるであろう。それまでゆっくりと休むことだ」

 

デスガイヤー「ははー!」

 

ムゲ・ゾルバドス「出迎えてやらねばならぬようだな。余をあまり待たせるな。地球の戦士達よ……」

 

 

 第17話 終わり



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第18話 太陽の決戦!

 

──目指すは太陽!──

 

 

 目指すは太陽。

 

 護によってもたらされた、ソール11遊星主とジュエリオンの情報。

 それにより、彼等が今どこに潜んでいるのかが判明した!

 

 得られた情報を元に、太陽を観測すると、太陽の表面すれすれを公転する人工惑星が発見された。

 慎重に偵察すると、その周囲には幾重にも張り巡らされた防衛網が存在しており、バリア、妨害などをふくめれば近寄る隙も無い鉄壁の防御がしかれていることがわかった。

 

 ただ、唯一太陽を背にしていることにより、そこだけ防御が薄くなっている。

 

 ゆえにロンドベル隊は太陽の中をコン・バトラーV6の強化超電磁スピンをもちいてつっきり、奇襲を行うという作戦をとった。

 

 連合・ザフト&ネオジオンの合同軍を太陽にむかうと見せ、注意がそちらへむいた隙に、彼等は太陽の中を走る!

 

 

──人工惑星デュナン──

 

 

 ソール11遊星主が拠点としている人工惑星デュナン。

 そこは、人々への復讐を目指すジュエリオンが3000年前からみずからの手足として使うデュナンの子を作り続けた場所でもあった。

 

 

ジュエリオン「べリオン。べリオン」

 

 

 ボアザンとバームの血を引く復讐者、ジュエリオンは、牢へ入れられたみずからの妹。べリオン(チリ)へと語り掛ける。

 

 

チリ「姉様……」

 

ジュエリオン「あの時、お前はまだ小っちゃかったから、きっとそれで父さんのことも母さんのことも忘れちゃったのね……」

 

チリ「もう、やめましょう。姉様」

 

ジュエリオン「……」

 

 

 バチッ!

 チリの体に、電撃が走る!

 

 

チリ「ああっ!」

 

ジュエリオン「かわいそうに。あなたは悪い男に騙されたのよ。心配いりません。姉さんがすぐにその男を殺してあげます」

 

チリ「違います! 私は!」

 

 

 バチッ!!

 

 

チリ「っ! やめて! やめてください! あの人は、あの人達は、星と星との争いをなくそうと戦っているのと! 必死で!」

 

ジュエリオン「……」

 

チリ「かつて、父さんと母さんが夢見たものを、現実に変えようとしているのに、どうして私達がその邪魔をしなくてはいけないのですか!」

 

ジュエリオン「おだまりっ!」

 

 

 バチチッ!!

 

 

チリ「あぅっ!」

 

ジュエリオン「だったら、だったら私のこの胸の内の憎しみを誰にぶつけたらいいの! 目の前で引き裂かれ父と母の無念を忘れろというのか! 嫌だ! できるものか。そんなこと!」

 

チリ「……」

 

ジュエリオン「すべてたたきつけてやるんだ! あの、自分達の呪われた歴史も忘れ、のうのうと生きている奴等に!」

 

チリ「……姉様。聞いて。あの部隊の中には、私達と同じ経験をした人が何人もいたわ。でも、あの人達は、目の前で親が殺されたというのに、前を向いて生きている。それどころか、地球を守ろうと。他の星さえ守ろうとしているの。だから……」

 

ジュエリオン「同じ? ククククク。同じなわけがないでしょう、べリオン。そいつらと私が同じなわけがない。あなたも知っているでしょう?」

 

チリ「っ!」

 

 

 ジュエリオンは牢に手を入れ、チリの髪を一部分引きちぎる!

 

 

ジュエリオン「さあ、見なさい。もう一度、理解なさい。この、事実を……」

 

 

 手を開き、髪を見せる。

 すると、チリより切り離された髪は、光へと還って消えてゆく……

 

 

チリ「ああっ……!」

 

ジュエリオン「体から引き離された髪は消えてなくなる。思い出したかしら? 私達はすでに、三千年前に死んだということを!」

 

チリ「っ!」

 

ジュエリオン「後ろを見なさい。あのクリスタルで眠っている。いえ。死んでいるのは誰かしら? あれこそが、本当の私達。これは、私達の復讐でもあるのですよ!」

 

チリ「ううっ……」

 

ジュエリオン「追い詰められて、逃亡の果てに次元の狭間に迷いこんで、私達は一度死んだ……彼等に拾われなければ、あのまま私達は、その想いは、消えてなくなっていたのよ……」(粛清のため追われて船が破壊→衝撃で時空転移→最近のパスキューマシン使用可能状態のところに。という流れ。人工惑星デュナンは、3000前から今までずっと稼働しデュナンの子を製造し続けていた)

 

チリ「……」

 

ジュエリオン「私達と同じ? いいえ。同じなわけないでしょう? 私達はもう、普通になど生きていけないのだから……!」

 

チリ「でも! なおさら私達は……!」

 

 

『シンニュウシャ接近、シンニュウシャ接近』

 

 

ジュエリオン「来たようだ。少し待っておいで、べリオン」

 

チリ「姉様っ! 待って! 待って姉様!!」

 

 

 呼ばれても、振り返らず彼女は行ってしまった。

 その憎しみを、ぶつけるために……

 

 

──決戦! ソール11遊星主──

 

 

 太陽を抜けた先に、人工惑星を前に、ソール11遊星主とデュナンの子はロンド・ベル隊を待ちかまえていた。

 それぞれはすでにパーツキューブとフュージョンし、メガノイド状態である。

 

 さらにジュエリオンその人も、六足の馬に人の上半身を持つロボに乗り、この場にいた。

 チリの反応は、そのジュエリオンが乗る機体から出ている。どうやら先ほど話をしていたあの場所。あれはこの中だったようだ。

 

 名のある者だけでなく、名もなきデュナンの子も無数に存在し、ロンド・ベル隊を待ちかまえている。

 

 

ブライト「奴等を倒し、地球。いや、世界の消滅を阻止する! 全機、発進!!」

 

 

 ブライトの号令と共に、ロンド・ベル隊も部隊を展開させる!

 

 

パルパレーパ「よく来たものだ。と称賛してやりたいが、お前達がピサソールを破壊することはできない」

 

凱「なにっ!?」

 

パルパレーパ「なぜなら、ピサソールを破壊し、パスキューマシンを破壊するということは、貴様等がチリと呼ぶあの娘も消滅することになるからだ」

 

豹馬「なっ!?」

 

パルパレーパ「そう。あの娘も我等と同じレプリジン! パスキューマシンの消滅と共に消える存在だ! お前達は世界を守るため、あの娘を犠牲にするというのか!?」

 

剣児「人質ってことかよ……!」

 

ルネ「まさか、そのためにあの子をこっちに送りこんだってのかい!」

 

ジュエリオン「その通り。お優しいお前達はどうする? あの子を犠牲になどできぬだろう。お前達は、ここで死ぬしかないのだ!」

 

甲児「てめえら!」

 

ちずる「人の情につけこんで!」

 

鉄也「……それがどうした?」

 

甲児「鉄也さん!?」

 

鉄也「地球を守るために、それしか手段がないというのなら、俺はその手段をとろう。そのようなくだらない脅しで、俺達の歩みを止められると思うな!」

 

宗介「その通りだ。俺達の任務は世界を守ること。そのための犠牲に覚悟はできている」

 

かなめ「宗介!?」

 

宗介「だが、俺達を甘く見るな。その覚悟をもって戦い、さらに人質も救い、お前達の野望を打ち砕く……!」

 

鉄也「それが俺達だ!」

 

かなめ「鉄也さん。宗介!」

 

ジュエリオン「ほう。都合のいいことだな。そんな方法、本当にあるのか?」

 

宗介「それを考えるのは俺の仕事じゃない。かなめ、大佐殿、あとは任せました!」

 

かなめ「あんたねー!」

 

鉄也「ふっ。そういうことだ。俺達がすべてを終わらせる前に、救いたいものは必死に考えるんだな!」

 

 

 そう言いながら、鉄也はちらりと統夜の方を見た。

 すでになにか、あてがある。そういう風であった。

 

 実際二人とも、そのようなことをしたいとは思ってはいない。相手にこちらが動揺していることを悟らせないため、自分達を悪役にしてでもああいっているだけだ。

 

 

統夜「……」

 

 

 統夜は考える。鉄也の期待することが、本当にできるかどうかを。

 サイトロンを最大まで活性化させ、自身のできることを探る。

 

 そして……

 

 統夜は無言でうなずいた。

 

 それを感じたのか、鉄也のグレートもうなずく。

 

 

鉄也「俺達は俺達の仕事をこなす! 凱、お前はどうだ!」

 

凱「ああ。こっちも大丈夫だ!」

 

ブライト「いずれにせよ、目の前の敵を排除しなければ話にならん。すべてはそれからだ! 総員、攻撃を開始しろ!」

 

一同「おおー!」

 

 

 すべての元凶。三重連太陽系を再生させる物質復元装置、パスキューマシンを制御するピサ・ソールの元へとむかうための戦いがはじまった!

 

 初手、凱のジェネシックガオガイガーは遊星主にむけジェネシックオーラを放つが、一度撤退して態勢を立て直しただけあって、相手もそれへの対策をほどこしていた。

 ゆえに遊星主の出力低下は起きず、万全の状態でロンド・ベル隊と戦える!

 

 ぶつかりあう両者。

 

 数そのものは、デュナンの子を有する遊星主側が多いが、個の強さはロンド・ベルが勝っていた。

 しかし、遊星主側はどれだけ倒されようと、物質復元装置であるピサ・ソールが無事である限り何度でも復活する。

 

 それだけではない。

 

 

パルパレーパ「勝利するのは貴様等ではない。創造主たる我々だ! ドーピングシリンダー!」

 

 

 みずからにドーピングシリンダーを注入し、パルパレーパはパルパレーパ・プラジュナーへと変化する!

 

 

凱「パワーアップしたか!」

 

パルパレーパ「しっかりと教えてやろう。貴様等には生きる価値などないということを!」

 

凱「そんなことはない! 生きる資格。それはもがきあがくことで勝ちとるものだ!」

 

パルパレーパ「消え去れ、悪魔よ!」

 

凱「消え去るのはお前の方だ! ソール11遊星主!」

 

 

──ソルダートJ──

 

 

 人工惑星の上で決戦がはじまる中、人工惑星にある拠点を移動する人影がいくつかあった。

 

 

ルネ「ここにいるんだね?」

 

護「うん」

 

戒道「J……」

 

 

 護がもたらした情報はもう一つあった。

 それは、戒道の相棒であり、キングジェイダーのパイロットであるソルダートJの居場所である。

 

 戒道を地球に逃がした後、護も逃がすためにソルダートJは一人残り、ソール11遊星主に捕らえられたというのだ。

 そのソルダートJが、この本拠地に捕らえられているはずといい、護達はルネと共に救出へ動いたというわけなのだ。

 

 うまくいけばチリも一緒に救出したいところだったが、チリはジュエリオンと共にいるため、それはかなわない案件だった。

 

 Jの反応を追い、彼のいる場所へ到着した三人であったが、そこでソール11遊星主の一人、ピルナスが待ち受けていた。

 

 戦いの最中、ルネのGストーンを使い、Jは戒めを解き放たれ、外の決戦にルネを乗せたキングジェイダーが加わることとなる。

 

 

──戦闘前会話──

 

 

ジュエリオンVS健一

 

健一「ジュエリオン、君はまだ、止まれないのか!? もうわかっているはずだ。この復讐に意味なんてないと!」

 

ジュエリオン「……」

 

健一「憎むべき相手は3000年前にすべて死んでしまった。チリだってすでに望んでいない。でも、止まれないんだろう?」

 

ジュエリオン「……っ!」

 

健一「ならば、俺達がとめてやる。その憎しみの衝動ごと、君達の野望をくじき、すべてを止める!」

 

ジュエリオン「ふん。無駄なことだ。すべてはお前達が消えるか、我等が消えるかのみ! この憎しみを消すことなど、お前達にできるものか!」

 

健一「止め続けてみせる! その憎しみが、消えるまで!」

 

 

──決着!──

 

 

 さらなる激戦が続く。

 倒れても倒れても復活するソール11遊星主。

 

 そして、ついにその時が迫る。

 

 ピサ・ソールによる三重連太陽系の再生がはじまろうとしているのだ!

 

 残された時間は、少ない……!

 

 

命「駄目です! ピサ・ソールのエネルギー、さがりません!」

 

大河長官「なんだと!?」

 

 

 護が運んできた情報から、ピサ・ソールは一度に大量の再生復元を行うと、ほんの一瞬だがエネルギー不足によってパワーダウンし、周囲に存在するパーツキューブの放つ反発力場『レプリジョン・フィールド』などの防御機構が弱体化する弱点が存在するはずだった。

 

 ロンド・ベル隊はそれを狙い、再生するソール11遊星主を倒し続けたのだが、予測された数を再生させてもそのエネルギーダウンが起きない。

 

 

パルパレーパ「残念だったな」

 

凱「っ!」

 

パルス・アベル「あなた達が、この隙を狙うのはわかっていました。コロニーを完全消滅させたあの兵器。あれならば、確かに逆転が可能だ……」

 

パルパレーパ「だが、我等はそれを見た! それをいかに使うか、対策をとるのは必然! 一度見せた切り札に、二度目はない!」

 

パルス・アベル「我々の勝ちです。三重連太陽系の復活。その願いが、今、叶う……」

 

豹馬「いいや、そんなことはねえ!」

 

大河長官「うむ。我等とて一度見せた切り札がやすやすと通じるとは思っていない! 移行する! プランVだ!」

 

豹馬「おう!」

 

健一「はい!」

 

一矢「ああ!」

 

エリカ「はい!」

 

剣人「おう!」

 

ジュエリオン「なにをっ!?」

 

統夜「豹馬! これを!」

 

豹馬「ああ!」

 

統夜「これがあれば、あの子はきっと大丈夫だ!」

 

 

 フォーメーションに入ろうとするコン・バトラーにむけ、シン・グランティード・ドラコデウスが光を渡す。

 それは神核に納められたフューリー創世神フューレイムの力。またの名をハイリビード! 命の源となるこの力があれば……!

 

 コン・バトラーの両手が、光輝いた!

 

 

健一「天空剣!」

 

豹馬「超電磁スピン!」

 

一矢「ブリザード!」

 

エリカ「加速!」

 

 

 ボルテスⅦ、コン・バトラーV6、ダイモス、フォボスがコンビネーションを組む。

 

 天空剣を頭上にかまえたボルテスⅦの膝元にコン・バトラーV6が超電磁スピンを発動させ立ち、ダイモスとフォボスの2機がそれを背中合わせに手を握るような形で挟みこみ、互いのダブルブリザードをもちいてさらに回転を加速。

 

 これにより、天空剣の切っ先に超電磁スピン以上の一点突破力が生まれる!

 

 さらに!

 

 

剣人「いけえぇぇぇ!!!」

 

 

 それを、ダルタニアスの超空間エネルギーをこめた火焔剣を射出台として撃ちだすのだ!!

 

 

健一「超電磁スピン!」

 

豹馬「ビクトリィィストラーイク!!」

 

ジュエリオン「ばっ……!」

 

 

 それに、誰も反応することはできなかった。

 

 ジュエリオンの乗る機体を貫き、さらに展開された絶対不可侵の障壁に穴をあける!

 

 

パルパレーパ「バカな! 防御機構をすべて突き破っただと!?」

 

 

 絶対に突破できない。

 

 相手の策を看破し、勝利を確信していたからこそ、彼等は動けなかった。

 

 ゴルディオンクラッシャーという広範囲への対処は完璧。

 勝ったと思った一瞬の油断。

 

 そこをつかれたのだ!

 

 

パルス・アベル「いや、開いたのはただのひと穴。あの程度の大きさで入れるロボットはいない。点の一撃では、ピサ・ソールは倒せない……」

 

凱「それはどうかな!」

 

 

 絶対の防御機構に開いたのは、ロボットが頭から滑りこんだ程度の小さなひと穴。

 これでは、姿勢を変えられぬ巨大な戦艦をふくめた最後の切り札は通ることなどできない。

 

 その上、開いたバリアの穴も、すぐにふさがる。

 

 なんの意味もない一撃。

 そうなるはずだった。

 

 だが!

 

 

ルリ「今です!」

 

アキト「ああ!」

 

エリカ「ボソン・ジャンプ、スタート!」

 

パルス・アベル「っ!」

 

 

 ほんのちいさな穴。だが、彼等にはその針の穴程度の大きさで十分だった。

 一瞬開いたそこを通り、アキトと共に無人となった3機のディビジョン艦とジェネシックガオガイガーが中枢へと飛びこむ!

 

 

豹馬「対策している!? それがどうした! そうしているとわかっているなら、それごとぶち壊せばいいだけだ!」

 

 

 チリを救い出し、反対側へ抜けた豹馬が笑う。

 

 転移さえ防ぐその防御機構。

 だが、小さなひと穴さえあれば、道はできる!

 

 あとは、ピサ・ソールに迫ったジェネシックガオガイガーが全力のゴルディオンクラッシャーを振り下ろすだけだ!

 

 

パルパレーパ「やめろおぉぉぉ!!」

 

凱「光に、なれえぇぇぇ!!」

 

 

 光が瞬く。

 

 その衝撃で、周囲にいたソール11遊星主と、すべてのデュナンの子が光へかえってゆく……

 

 

パルス・アベル「三重連太陽系が滅びる……私達の使命が……これでは……」

 

戒道「さらばだ。パルス・アベル。赤の星の指導者アベルをもとに造られたプログラム。この宇宙では、お前達の使命は必要なかった」

 

護「そう。三重連太陽系はちゃんと再生したんだ。宇宙の死と新生をこえて、150億年の時をかけて。命を持たない遊星主が最も恐れた勇気の力に満ちた星。地球とその太陽系として……」

 

パルス・アベル「……」

 

 

 消えゆくソール11遊星主達の顔は、どこか満足気であった。

 

 

豹馬「終わった」

 

健一「ああ。終わったな」

 

 

 着地したコン・バトラーが、ゆっくりと手を開く。

 

 そこでは不思議な光景が繰り広げられていた。

 

 コン・バトラーの手の中には、チリと呼ばれた少女とジュエリオンだけでなく、水晶の中に入った同じ二人がいたのだ。

 水晶に入っていない二人は手が開く間に光の粒子となり形が崩れはじめ、その光は、水晶の中に入った二人の元へと吸収されてゆく。

 

 コン・バトラーの手が開いた時、その中にあったのは、二人の少女が納められた水晶のみ。

 

 まるで二人を守るように存在していたそれは、豹馬達が見ている前でぱきりと割れる。

 

 手の中に放り出された二人は、ゆっくりと目を覚まし、驚きの表情を浮かべた。

 暗黒物質で作られた偽りの心臓でなく、本当の心臓が動いていたからだ。

 

 体が生身で生きている。記憶がきちんと受け継がれている。

 

 驚かずにはいられないだろう。

 

 

ジュエリオン「……なぜ、私が生きている?」

 

豹馬「なんでって、そりゃ、なんでだ?」

 

ちずる「豹馬、あのねえ……」

 

健一「それは、君も生きて、復讐なんて考えるんじゃなかったって後悔してもらうためだ」

 

 

 そう、健一が告げた。

 

 

健一「辛いことがあったのはわかる。でも、世界はそれだけじゃないと知る権利も、君にはあるはずだ。だから、生きて、見て。それからもう一度改めて考えてほしい」

 

ジュエリオン「……ふん。甘いことだ。そうして生かしたこと、いつか後悔させてやる!」

 

 

 その言葉に、皆やれやれと肩をすくめるのだった。

 

 

健一「いいさ。いつまでだってつきあってやる。そう、約束したからな」

 

 

 こうして、世界の崩壊を目指したソール11遊星主は滅び、地球における主だった争いは終わりを告げた。

 

 残るは、ムゲ・ゾルバドス帝国のみである!!

 

 

 第18話 終わり

 

 

・唐突なQ&A

Q ジュエリオンはソール11遊星主の仲間だったけど、なんで来てすぐQパーツを回収しなかったの?

 

A すぐ回収しなかったのは、ソール11遊星主が到着するのを待っていたから。Qパーツはそれ自体が強いエネルギーを発しているので、下手に回収すると本拠地がバレてしまう可能性があるからというのもある。

  あと、滅亡させるにしても自分達にしたことを後悔して苦しんでほしかったから、こっそり回収とかは考えていない。むしろ自分の存在をアピールするのは必須だった。

 



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第19話 失われた者たちへの鎮魂歌

 

──決戦前夜──

 

 

 世界を滅ぼそうとしたソール11遊星主と人類への復讐に燃えたジュエリオンは倒れ、残る大勢力はムゲ・ゾルバドス帝国。

 その本国は、次元を超えた異空間にあるのだという。

 

 宇宙各地へ戦線を広げるムゲ・ゾルバドス帝国との戦いを終わらせるためには、その皇帝。ムゲ・ゾルバドスを倒す以外にない。

 

 ロンド・ベル隊は、この争いを終わらせるため、ムゲ・ゾルバドス帝国へ乗りこむことを決意する。

 

 ただし、その本国へ行くためには少しの時間がかかる。

 その道を開くため、各博士がその頭脳を集結させ、ムゲ・ゾルバドス帝国へわたる方法を整える。

 

 その準備が整うまでの短い時間。

 

 そこに、ひさしぶりの平穏があった。

 

 

かなめ「ねえ、ソースケ」

 

テッサ「相良さん」

 

宗介「む?」

 

テッサ「もうじき、戦いも終わります」

 

かなめ「それで、学校も終わって、みんなが新しい道を歩む時までにはさ……」

 

テッサ「選んでくださいね。わたしか……」

 

かなめ「あたしかを!」

 

宗介「……。……っ!? ?!?!!?」

 

かなめ「ふふっ。まだまだ時間はあるから、ゆっくり考えなさい」

 

テッサ「はい。後悔をしないように!」

 

 

 このように、愛しい人と過ごすもの。

 友と過ごすもの。

 安らげる場所ですごすもの。

 普段と変わらぬ生活をするもの。

 

 各々が最後の平穏を過ごすのだった。

 

 

 しかし、そこに空気を読まない闖入者によって中断される。

 

 

 ギャンドラー軍団の生き残り、デビルサターン6が襲撃してきたのだ!

 

 

 日本の防衛隊、練馬レッドドラゴンズがその防衛に出る。

 しかし、市民は守れども、勝利するまでには至らない。

 

 彼等がピンチに陥ったその時。

 

 

???「待てい!」

 

デビルサターン6「誰や!」

 

 

 ロム・ストールが現れた。

 

 

デビルサターン6「お前さん一人なら……!」

 

???「待てっ!」

 

デビルサターン6「なにぃっ!?」

 

 

 ドモン・カッシュが現れた。

 

 

???「待ちやがれ!」

 

デビルサターン6「もう一回!?」

 

 

 兜甲児が。

 

 

???「待て!」

 

デビルサターン6「まだくるんかいな!」

 

 

 草薙剣児が。

 

 

???「「待てい!」」

 

 

 一矢とエリカが現れた。

 

 

2人「「二人は……!」」

 

デビルサターン6「それちゃう奴やろが! てかなんやねん! これ前にもやったやろ!」

 

 

 やったのはデビルサターン6に対してではないけどな!

 

 

ロム「問答無用!」

 

デビルサターン6「ちょっ! 勝てるかいな!」

 

 

 集結したロンド・ベルに、ただの残党が勝てるわけがなかった。

 

 あっさりとやられ、デビルサターン6は逃亡してゆく。

 

 

デビルサターン6「覚えとけー!」

 

甲児「いや、ちょっと待て。お前このまま地球に居つくつもりかー!」

 

鉄也「……地球を救っても、完全な平和は少し遠いようだな」

 

豹馬「地球を守る仕事は、終わらねえってことだな」

 

 

 やれやれと、全員ため息をついた。

 

 最後の戦いの前、ちょっとした平穏の時間は、終わりを告げた。

 

 

──失われた者たちへの鎮魂歌──

 

 

 準備も完了したロンド・ベル隊は再びGGGの宇宙基地オービットベースに集合し、ムゲ・ゾルバドス帝国のある異空間へと突入する。

 

 空間を突破した先では、ムゲ・ゾルバドス帝国の将軍、デスガイヤーが艦隊を率いて待ちかまえていた。

 相手の方も、決戦であると予測し、最大の戦力を集結させていたのだ。

 

 

デスガイヤー「皇帝陛下」

 

ムゲ・ゾルバドス「うむ。獲物を存分かわいがってやれ。コロセウムはどれを選ぶ?」

 

デスガイヤー「闘技場は、ぜひとも赤い宇宙で」

 

ムゲ・ゾルバドス「ふむ。赤い宇宙とな。よかろう。我が宇宙に眠る、悲しき魂どもよ。このムゲ・ゾルバドスの声に応えよ!」

 

 

 ムゲ・ゾルバドスがいる城から、不気味なエネルギーが立ち上り、空をおおう。

 

 ムゲ世界の空が、赤く染まった。

 この世界は皇帝ムゲ・ゾルバドスのもの。世界は彼の意のままに変化し、この世界の住人でない者達には存在するだけで苦しむ場所となる。

 

 そこはまるで、地獄のようであった。

 

 

アムロ「なんだここは……」

 

プル「気持ち悪い……」

 

ショウ「なんてオーラだ」

 

コウ「俺でさえ、感じる……こいつはなんだ……」

 

 

 この赤い宇宙ではムゲ兵の力は増し、それ以外の者の力は失われる。

 

 動くだけで消耗する体力。

 圧倒的なプレッシャー。

 

 そして、コアを破壊しない限り何度でも甦るデスガイヤー。

 

 

 それでも彼等の心は折れない。

 

 

 デスガイヤーの弱点がコアであることを見抜き、それを刺し貫いた。

 

 

デスガイヤー「も、申し訳ありません。皇帝陛下ー!」

 

ムゲ・ゾルバドス「……デスガイヤーをくだすとはな」

 

 

 広がった赤い空が、消えてゆく。

 

 

雅人「ん? なんか変だよ?」

 

沙羅「赤い宇宙が消えていく!?」

 

忍「赤い宇宙がなくなって、体の動きが軽くなった気がするぜ」

 

ムゲ・ゾルバドス「褒めてやろう。我が右腕を倒す、その強さを……」

 

 

 居城から、ムゲ・ゾルバドスが姿を現した。

 

 

クロッペン「あれは、ムゲ・ゾルバドス!」

 

忍「あいつが!」

 

沙羅「直接お出ましってわけかい」

 

剣人「あいつを倒せば、この戦いは終わる!」

 

ムゲ・ゾルバドス「さて、クロッペンよ」

 

クロッペン「むっ?」

 

ムゲ・ゾルバドス「認めよう。クロッペン。お前の存在を。お前をただのクローン。道具でなく、一人の戦士であると」

 

クロッペン「なにっ!?」

 

ムゲ・ゾルバドス「ゆえに、今一度問う。我が配下にならぬか。と」

 

忍「なにを言ってやがるお前は!」

 

ムゲ・ゾルバドス「余のもとに戻るのならば、これまでのことをすべて水に流してよい。どうだ?」

 

クロッペン「……」

 

 

 場にいる者すべてが、固唾をのんで見守る。

 

 

クロッペン「断る! 今更貴様に認められたところで、なんの意味があるというのだ!」

 

剣人「よく言ったぜ!」

 

クロッペン「なにより、結局貴様は私を道具としてしか見ていない。いや、私だけではない。貴様はすべてのものを使えるか使えないかの道具としてしか見ていない!」

 

ムゲ・ゾルバドス「そうか。よかろう。ならば、同じ愚か者と共に散るがよい。そして、死して我が配下に加わるがよい!」

 

 

 ムゲ・ゾルバドスが腕をあげると、その周囲に死霊が集まる。

 ゾルバドスもまた、死者を操る力をもつのだ!

 

 それにより、かつて死した部下達が姿を現す。

 

 元ザール艦隊の三将軍、ネシア、カブト、ボイダー。彼等は体をデビルガンダムに奪われ、その魂はムゲ・ゾルバドスに利用されているのだ。

 

 さらに、さっき倒されたばかりのデスガイヤーさえ現れる。

 

 彼等は何度倒されようと、ムゲ・ゾルバドスがいる限り甦る。

 勧誘に応じようと応じなかろうと、負ければこうなるのである!

 

 ムゲ・ゾルバドス帝国が戦乱をむやみに広げるのも当然である。

 戦乱が広がり、被害が増えれば増えるほどゾルバドスの力が増す!

 

 それゆえ、ゾルバドスにとって配下による争いは戯れなのだ。

 

 その気になれば、無限の軍勢を率い、一人ですべてを蹂躙できるのだから!!

 

 

つばき「こいつも、大銅鐸と同じ……!」

 

剣児「なんてやつだ」

 

カオル「……あれは、彼等が目指した存在に最も近い存在かもしれない。逆の方向に。だけど」

 

 

 ムゲ・ゾルバドスの姿を見たカオルが、小さくつぶやいた。

 

 

ムゲ・ゾルバドス「進化の過程にある人類にしては、よくぞここまできたと褒めてやろう。いま少し、お前達の戦いを眺めたかったところだが、それもしまいだ。ここに、散るがよい!」

 

ブライト「総員、ゾルバドスに攻撃を集中しろ! なんとしても倒すんだ!」

 

 

 倒しても倒しても復活する幹部達。

 だが、それらがいくら現れようと、彼等は負けない。

 

 ムゲ帝国との、最後の戦いがはじまった!

 

 

──戦闘前会話 ムゲ・ゾルバドス──

 

 

VS忍

 

忍「俺達を甘く見るな! 無限に再生するヤツを、どれだけ相手にしてきたと思っている!」

 

ムゲ・ゾルバドス「フハハハハ。余をそこらの雑魚と同じとする。底知れぬ無知は哀れよ。生命の究極とは余であると、教えてくれる!」

 

 

VS剣人

 

剣人「お前がムゲ帝国の親玉か!」

 

ムゲ・ゾルバドス「ほう。貴様がエリオスの血を引くものか。エリオスのため、余を滅ぼしに来たのか?」

 

剣人「いいや、俺はお前が許せないから来ただけだ!」

 

ムゲ・ゾルバドス「くくっ。個人的な感情で来たというわけか」

 

剣人「ああそうさ。エリオスの再興とか、世界の平和とかそんなたいそうなことを言うつもりはねえ。だがな、じいさんにあんな苦労をさせたこと。親父があんな苦難にあったこと。クロッペンの奴をあれほど苦悩することになったこと、全部が許せねえ! 俺の怒りを、受けてみろ!」

 

ムゲ・ゾルバドス「それを貴様の怒りと言うか! 面白き男よ。どうだ? 我が配下とならぬか? お前ならばデスガイヤー以上の活躍ができるであろう」

 

剣人「なるわけねーだろうが!」

 

ムゲ・ゾルバドス「ならばもう用はない。消えよ!」

 

 

────

 

 

 

 ロンド・ベル隊からの集中攻撃を受けムゲ・ゾルバドスも一度倒れる。

 しかし、一度倒れようと、バルバドスは平然と立ち上がった。

 

 

ムゲ・ゾルバドス「フハハハハ」

 

甲児「こいつも不死身かよ」

 

亮「そ、そうか。わかったぞ。奴はこの宇宙にうごめく悪霊を力にしている。ここに悪意がある限り、ヤツは不死身なんだ!」

 

ムゲ・ゾルバドス「ほう。少しは頭のまわる奴もいるようだな。ならば……」

 

 

 ムゲ世界に黒い閃光が走った。

 

 

ムゲ・ゾルバドス「我が悪霊の餌食となれ!」

 

ジュドー「な、なんだよこれ……!」

 

 

 ゾルバドスの命により現れた黒い影が、それぞれの機体へまとわりつく。

 

 

ショウ「なんてオーラだ……!」

 

亮「ゾルバドスめ。お、俺達の精神エネルギーを吸い取ってしまう気か……!」

 

コウ「くそっ。機体が動かない!」

 

 

 まとわりつく悪霊達により、機体の動きは制限され、パイロットの気力や精神のエネルギーも奪われてゆく。

 

 

アイザック「くっ。このままでは……」

 

ムゲ・ゾルバドス「どうした? この程度で我を倒そうとは、片腹痛い!」

 

ショウ「これが、ムゲ・ゾルバドスの力!」

 

シーラ「ならば、この悪意を私が……」

 

ムゲ・ゾルバドス「そのようなことできるものか!」

 

シーラ「いいえ。私が命をかければ……」

 

カワッセ「い、いけません。それでは……!」

 

忍「ああ。そんなことをする必要はねえ! 感じないか、お前達。奴の後ろにいるのは、悪霊だけじゃないってのを!」

 

統夜「っ! そうだ。いる。ここにいるのは、悪霊だけじゃない!」

 

アムロ「この感覚。あの時『ジ・ヴォーダ』の世界へ行った時に感じた……!」

 

テッサ「そうか。ここはオムニスフィアや『ジ・ヴォーダ』のいた空間に近いんです。だから、ゾルバドスの呼び出した死者の中には……」

 

忍「そういうことだ。聞こえるか! 俺は祈らせてもらう! いるなら、力を貸してくれ!!」

 

 

 パァッ!!

 

 その瞬間、ムゲの空間を取り囲む悪霊の中で、光が瞬いた。

 

 

ゾルバドス「ぬうっ!?」

 

チャム「闇の中から、光が!」

 

アール博士「あれは、パルミオン陛下!?」

 

沙羅「シャピロ!?」

 

鏡「美夜受(ミヤズ)!」

 

???「……」

 

シンジ「え? かあ、さん……?」

 

ロム「父さん……!」

 

シーラ「これは……」

 

アムロ「ああ。人の意思が集まってくる」

 

ジュドー「人の意思が、力になっていく……!」

 

 

 闇の中から現れた光が、それぞれの機体を包み、彼等をとらえる闇を払った!

 

 

ムゲ・ゾルバドス「バカなっ! この力はなんだ。我が宇宙に漂う死者が、我以外に力を貸すというのか!」

 

沙羅「忍!」

 

忍「ああ! やぁってやるぜ!」

 

 

 悪霊の束縛を打ち破ったダンクーガが断空剣を掲げる。

 

 するとそこに、死者の光が刀身へと集まる!

 

 断空我。

 それは、獣を超え、人を超えた、神の戦士である。

 

 ダンクーガの断空剣が輝き、光の牙となった!!

 

 

忍「くらえー!」

 

 

 剣を、投げた!

 闇を引き裂き、道を作りながらその光の牙はムゲ・ゾルバドスへ一直線に突き進む!

 

 

ゾルバドス「ぬうぅっ!」

 

 

 だが、ゾルバドスは両手を前にむけ、飛来するその牙を受けとめる!

 

 黒い雷鳴がとどろき、光と闇が拮抗する!

 

 

忍「なにっ!?」

 

ゾルバドス「いくら力をあわせようと、すべての死を操る余に、貴様等が勝てるはずがなか……」

 

剣人「なら、押しこむまでだ!」

 

ゾルバドス「なにっ!?」

 

 

 ダルタニアスが飛び上がった。

 

 

剣人「超空間エネルギー開放!」

 

 

 ダルタニアスの中に内包されたエネルギーをすべて開放し、まとわりつく闇をすべて吹き飛ばす。

 そのまま、ダルタニアスはそのエネルギーをまとったまま突撃。投げつけた光の牙を、無理矢理おしこむ!

 

 

ゾルバドス「ぐわあぁぁぁ!」

 

忍「とどめだ!」

 

 

 さらにつっこんだダンクーガが、ムゲ・ゾルバドスに深々と突き刺さった断空剣をつかみ、そのまま振りぬいた!

 

 

 斬ッ!!

 

 

ムゲ・ゾルバドス「くくっ。我をも倒すか……神である私を……! ならば、貴様等もまた……! ぐわあぁぁぁ!!」

 

 

 断末魔と共に、ムゲ・ゾルバドスは光に飲まれ、消滅していった……

 

 

アール博士「か、勝った!」

 

忍「剣人!」

 

剣人「ああ!」

 

 

 忍と剣人が、ダンクーガとダルタニアスがハイタッチをかわす。

 

 

 ゴゴゴッ!

 

 

 ムゲ・ゾルバドスが滅びたことにより、彼の力により創造されたこの異空間は崩壊をはじめた。

 

 崩壊する世界にまきこまれぬよう、彼等はそこから脱出するのだった。

 

 

──宇宙──

 

 

ハーリン「……これで、ムゲ帝国との戦いも終わるだろう」

 

 

 消滅した空間の入り口を見つめ、どこか感慨深くつぶやいた。

 

 

アール博士「やりましたなハーリン皇子。これで、エリオスの再興も、夢ではなくなりもうした。……パルミオン陛下もきっとお喜びになられていることでしょう」

 

ハーリン「ああ。戦いは終わった。だが、これからが新たな戦いのはじまりでもある。これからも、力を貸してもらえるか?」

 

アール博士「もちろんにございます!」

 

剣人「親父……」

 

ハーリン「剣人。お前はお前の道を進め。エリオスの王家は、お前を縛る鎖ではない」

 

 

 ハーリンはエリオス再興の暁には、帝政を改めようと考えている。

 ゆえに、剣人にまでその重荷を背負わせる必要はないと考えているのだ。

 

 

剣人「ああ。もちろんだぜ! ただ、困ったらいつでも呼んでくれよ。あんたが何者でも、俺の親父なんだからよ」

 

ハーリン「剣人……。嬉しいことを言ってくれる……」

 

剣人「へへっ……」

 

 

 親子は顔をあわせ、笑いあうのだった。

 

 

クロッペン「……」

 

プル「羨ましい?」

 

クロッペン「そのようなことはない。ワシには過ぎたものだ」

 

プル「そうでもないと思うな。ねえ。プルツー」

 

プルツー「なぜわたしにふる?」

 

プル「んー。だって、ねえ?」

 

プルツー「ふん。バカバカしい。クロッペン。どうせ行くところもないんだろ? なら、もうしばらくジュドー達の力になりなよ」

 

プル「みんなでジャンク屋やるの?」

 

クロッペン「……ふっ。それも悪くないかもしれんな」

 

 

 やれやれと笑う。

 その表情は、どこか朗らかであった。

 

 

忍「よっしゃ。これでムゲ野郎との戦いも終わった。地球へ帰ろうぜ!」

 

 

 ムゲの空間は消滅し、地球へと戻るロンド・ベル。

 

 これで世界は平和に……

 

 

 とは、ならなかった……

 

 

──シン・アトゥーム計画──

 

 

 ムゲ帝国を倒し、地球圏へと帰還したロンド・ベル隊。

 広く戦線を広げていたムゲ・ゾルバドス帝国は本国が滅びたことにより、徐々にその勢力を弱めていくだろう。

 

 これでこの争乱も終わりかと思われたその時。

 木星にて大きな異変が観測された。

 

 木星に内包される強大な力を秘めたザ・パワー。

 その力が乱れているというのだ。

 

 異変が観測されたのを見計らったかのように、世界に向け一つの通信が放たれた。

 

 

カーメン・カーメン「地球の人類よ。そして、宇宙の人類よ。ヌビアの王、カーメン・カーメンが最後の挨拶を送る! 間もなく、太陽系最大の惑星、木星は破壊される! おろかな安息をむさぼり、堕落してしまったお前達に未来はない。シン・アトゥームの聖なる意志により、このカーメン・カーメンが木星を爆破し、新たな世界を生み出すだろう! ヌビアの民よ。新たな世界で安息を得るがよい。古き民よ。残り少ない明日を惜しむがよい! ハハハハハ、ハハハハハ!」

 

 

 こう宣言し、放送は切れた。

 

 木星には超エネルギー『ザ・パワー』が存在している。

 その木星を爆破するとなれば、本当に新しい世界が生まれかねない。

 

 少なくとも、この太陽系に人類が住める場所がなくなるのは確実だ。

 

 この星系に住まう者として、それをさせるわけにはいかなかった。

 

 ロンド・ベル最後の戦いが、はじまろうとしていた!

 

 

 第19話 終わり



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最終話 はじまりの終わり

 

──ハイパーガウルン──

 

 

 カーメン・カーメンの発した木星爆破計画。

 その限界リミットの直前に、ロンド・ベル隊は木星宙域に到着する。

 

 そこで待ちかまえていたのは、カーメン・カーメンとガウルンだった!

 さらにはディオンドラまでもがいる。

 

 

宗介「ガウルン!?」

 

ガウルン「いよう、カシム。地球でやりあって以来だな」

 

宗介「やはり生きていたか……」

 

ガウルン「しぶとさなら世界一だって自負してるぜ」

 

 

 ガウルンはにやりと笑った。

 確かにこの男の言い分、あながち間違いではない。

 

 

キッド「あんた、自分がなにをしようとしているのかわかっているのか?」

 

ガウルン「ああ。わかっているさ。最高の祭りだろ。世界を滅ぼして新しい世界を作る。最高じゃないか!」

 

マオ「こいつになにかを聞いても無駄よ。まともな答えは返ってこない」

 

アイザック「そのようだ」

 

ガウルン「だが、流石の俺も、これだけ負け続けた相手にこのまま無策で戦って勝てるとは思っていない」

 

カーメン・カーメン「ハハハハハ。その通りよ」

 

ガウルン「だから、色々小細工をさせてもらうぜ」

 

宗介「いったい、なにを……?」

 

ガウルン「なあ、カシム。知っているか? いや、知っているよな。悪意を集めればとんでもない力が出るって」

 

宗介「……っ!」

 

 

 彼等は知っている。

 オーラコンバーターの集めた悪しきオーラの強さを。大銅鐸の集めた負の情念の厄介さを。ムゲ・ゾルバドスの操る死霊の手ごわさを。

 

 

ガウルン「そしてラムダ・ドライバもそれと似たような力だ」

 

宗介「っ!」

 

カーメン・カーメン「それらすべてを我等は見た! そこにオーラコンバーターを積んだ。世の悪意を集め、力に変える!」

 

ガウルン「きたきたきたー!」

 

 

 カーメン・カーメンが発した瞬間、場の空気が変わった。

 

 

シーラ「っ! 世界の悪しきオーラが、ここに集まっています。これは、かつて大銅鐸が集めた比ではありません!」

 

カーメン・カーメン「当然よ。この世の悪意を自在に操ったムゲ・ゾルバドス。そして同じく負の情念を集めた大銅鐸。その両方が消え、世の悪意はすべて手放された状態になっているのだからな!」

 

ガウルン「感謝するぜ。ムゲ・ゾルバドスが倒れた今、奴が握っていた悪霊の力もここに集まる! 世界すべての悪意がな!」

 

 

 そうしてフリーとなった憎しみや恨みの負の情念を、ここ一点にあつめ、それがガウルンに注がれているのだ!

 

 

カーメン・カーメン「かの者の敗因は、死者の霊すべてを集めてしまったことだ。我等は違う。真の悪意を、負の情念のみを集める!」

 

 

 さらにこの悪意は、オーラコンバーターによって増幅される!

 

 

エレ「いけない。それ以上は……!」

 

ガウルン「ハハハハハ。耐えられず、精神が狂ってしまうって? 安心しろよ。もうとっくに狂っているからよ!」

 

甲児「こいつっ!」

 

ガウルン「来た来た来た! 見ろ! これが俺の、ハイパー化ってやつだ!」

 

 

 ガウルンの乗るヴェノムが、膨らむように巨大化する。

 それは、オーラの膨張。悪意を糧とし、オーラによる鎧を着こみ、巨大になったかのように見える虚像の姿。

 

 だがその力は、決して幻ではない。

 

 オーラバリアの代わりにラムダバリアをまとい、すべてを破壊する。

 

 ここに、ハイパーガウルンが生まれたのだ!

 

 

カーメン・カーメン「ハハハハハ。ハハハハハハ!」

 

ガウルン「さあ、はじめようぜ。最後の祭りってヤツを!」

 

ルリ「オモイカネの計算が終わりました。木星の臨界まであと10分。それまでにあのヴェノムを破壊してください。制御装置の反応はそこから。でなければ、世界は終わります」

 

ブライト「聞いたか! 総員、あの機体を狙え!」

 

 

 ヌビア・コネクションをまとめるカーメン・カーメンと、ハイパー化したガウルンとの最後の戦いがはじまった!

 

 

──戦闘前会話──

 

 

ガウルンVS宗介

 

ガウルン「カァシムゥ!!」

 

宗介「いい加減、お前との因縁も終わりだ!」

 

ガウルン「楽しもうぜカシム! これで最後だって言うのならな!」

 

 

ガウルンVS甲児

 

ガウルン「カブトコウジ。お前とも長いつきあいになったもんだ!」

 

甲児「ああ。こっちもうんざりしてきたところだ!」

 

ガウルン「ハハハ。寂しいこというなよ。もっともっと楽しもうぜ!」

 

 

ガウルンVS統夜

 

ガウルン「カシムのオマケだと思って侮ってたのは謝るぜ、カシムのお友達君」

 

統夜「なに?」

 

ガウルン「だが、おかげでここまで楽しめた。ご褒美として、世界ごとお前も壊してやるぜ。さあ、最後の祭りだ、楽しもうか!」

 

統夜「毎回毎回。今度こそ、お前を止める!」

 

ガウルン「できるもんならやってみな! シウントウヤ!!」

 

 

ディオンドラVSロムorガルディ

 

ロム「生きていたのかディオンドラ!」

 

ディオンドラ「生きてて悪かったね。最初からあの時死ぬつもりはなかったのさ!」

 

 

 負の情念を集める大銅鐸。

 その情報をカーメン・カーメンにもたらしたのは彼女の仕業だ。

 

 

ガルディ「なぜあの男に与する!」

 

ディオンドラ「色々縁があってね。ガルディ。あんたを遺跡で殺そうとした時に手駒を手配した時とかさ!(第12話の南ルートでの出来事)」

 

ガルディ「あの時現れた傭兵。あれは貴様の仕業だったのか!」

 

ディオンドラ「だったらどうだって言うんだい。どうせやることは変わらないだろ!」

 

ガルディ「当然だ。覚悟しろ!」

 

 

──バッドエンド──

 

 

 当然タイムリミットに間に合わなければ、木星は爆発し、太陽系は終わる。

 

 この際、木星の爆発から地球圏を救うため、ロンド・ベル隊は皆の力でバリアを張り、その衝撃を外に漏れないよう『νガンダムは伊達じゃない!』をやり、太陽系の崩壊を防ごうとする。

 

 エヴァのATフィールドが。

 オーラバトラーのオーラバリアが。

 レーバテインのラムダ・ドライバが。

 

 そこから生まれた障壁に、勇者達のGストーンが。

 νガンダムのサイコフレームが。

 ジーグの銅鐸エネルギーが。

 さらにサイトロンを共鳴させたシン・グランティード・ドラコデウスが、その機体を輝かせ、皆の勇気と意志と想いを一つとする。

 

 一つとなった緑色の光が木星の爆発を包み、そのままゆっくりと収束させてゆく……

 

 こうして木星そのものの崩壊は免れ(中にあったザ・パワーは消えた)、世界は救われた。

 

 しかし、木星の爆発を阻止しにむかったロンドベル隊は、ついに帰ってこなかった……

 

 宇宙は平和になった。

 

 その世界で、待ち続ける者がいる。

 彼等が、帰ってくることを……

 

 

 終わり

 

 

 

──はじまりの終わり──

 

 

 木星が爆発するより早く、ハイパー化したガウルンは倒れた。

 

 

ガウルン「ハハッ。これで、終わりか。今まで、楽しかったぜ。カシム、カブトコウジ。シウントウヤよぉ……」

 

 

 これにより、木星を爆発させる装置は停止し、その爆発は阻止される!

 

 だが……

 

 

カーメン・カーメン「ハハハハハ。ハハハハハハ」

 

アイザック「なにがおかしい?」

 

カーメン・カーメン「儀式は成功である。我等をいけにえに、生まれるのだ。世界を破壊し、創造する、我が主が!」

 

アイザック「なんだと?」

 

カーメン・カーメン「貴様等の得た生を司る源。我等の集めた、死を根源とする存在。この二つのぶつかりをもって、ネブカドネザルの鍵は生まれ、バラルの扉は開いた!」

 

 

 ぞわっ!

 

 

アムロ「なんだ、これは……!」

 

ショウ「悪しきオーラと、それだけじゃない。生命のオーラが……」

 

 

 正と負。両方の力が、消えゆくガウルンのヴェノムへと収束してゆく。

 そこにあるのは、負の情念だけを力にした存在ではない。それとは違う、まったく別の……

 

 

ガウルン「ハハハ。そういうことだ。こいつが、俺の最後の置き土産だ。来世ってやつで待ってるぜ」

 

 

 カーメン・カーメンとガウルンの目的は、木星の爆発ではなかった。

 シンの目的は、命の源、ハイリビードを持ったものと、その対極の力、死を源とする負の情念の集合体をぶつけあわせることにより、世界を創造する『神』を生み出すことが目的だったのだ!

 

 あるべき世界を破壊し、新しい世界を創造する、新たな『主』を降臨するための!

 

 そこに、ぽっかりとした黒い穴が開いた。

 

 ガウルンとカーメン・カーメンは笑いながらその正と負の交錯する渦にのみこまれてゆく。

 

 

カーメン・カーメン「ハハハハハハ。ハハハハハハ」

 

ブライト「皆、あれに吸いこまれないよう気をつけろ!」

 

ディオンドラ「ちょっと、待ちなさい! 嫌だ。こんなところで。こんなところで……っ! こんなところでえぇぇぇ……!」

 

 

 その穴は、卵のようであり、ゲートのようにも見えた。

 ソコから、なにかが現れる。

 

 ぶつかりあいはじけた命の力に木星の『ザ・パワー』のエネルギーと、集まった負の情念、死霊の力、悪しきオーラが集束し、ヌビアの一団をのみこんで生まれた『ソレ』

 

 世界を破壊し、新たな世界を創造する存在が……

 

 

カオル「……」

 

シンジ「カオル君?」

 

カオル「まさか、正の力をもちいる文書を応用して負をものみこみ、双方を超越する存在を生み出すなんてね。このまま進めば、あの老人達の夢もかなうかもしれない。叶った先に、僕達も彼等もいないけれど……」

 

 

 そこに生まれた新たな『神』はエヴァンゲリオン初号機のようにも、シン・グランティード・ドラコデウスのようにも見えた。

 神々しいように見えるが、どこか冒涜的のようにも見え、それでいて光輝いている。

 

 そこに、白い闇が現れた。

 

 

???「私はシン・アトゥーム。この世にありし宇宙、次元、時空。そのすべてに終わりを与え、新たな世界を創造するもの」

 

 

 ただ、一つだけわかる。

 

 こいつは、今から、この世界を破壊するということが!

 

 

甲児「あいつらにいいように使われたってことか。くそっ!」

 

統夜「いや、まだだ! まだ終わってない。ここで世界を守り切れば、奴等のやりたかったことは潰える。なんの意味もなくなる。それが、奴等を唯一喜ばせない方法だ!」

 

宗介「そうだな。奴等の思うような世界など、作らせてなるものか。俺はまだ、この世界でやることがある」

 

甲児「ああ。その通りだぜ。まだまだやりたいことが残っているんだからな!」

 

ブライト「皆、聞いての通りだ。なにがなんでもこれを倒せ! それ以外に、世界を救う手段はない!」

 

 

 シン・アトゥームこと世界を破壊するもの。

 それを倒せなければ、世界は終わる。

 

 

シン・アトゥーム「抵抗は、無意味」

 

 

 新たな『神』に、後光がさした。

 

 

統夜「まずい!」

 

 

 強大な光が、広がる。

 

 それは、すべてを原初へ返す導きの光。

 すべてを終わらせ、すべてをはじまりへ返すもの。

 

 光が広がり、再び闇へ収束した時。世界の創造とされるビッグバンが起き、新たな世界が生まれる……

 

 ……はずだった。

 

 

シン・アトゥーム「……」

 

 

 光の広がりを、二つの別の光が食い止めた。

 

 シン化初号機と、シン・グランティード・ドラコデウス。

 この二つのシンの力により、世界が原初に溶かされ、新生する源となるのは防がれた。

 

 

シン・アトゥーム「……シン体の器が二つ。いや、器となりうる存在は他にもいくつか……」

 

 

 視線は、初号機とシン・グランティード・ドラコデウスだけでなく、ロンドベル隊内に存在するいくつかの機体をとらえる。

 

 

シン・アトゥーム「未顕現ながら、それらの力をあわせて私に対抗しますか。ならば、先んじてあなた達に終わりをあたえましょう。そして、すべてに終わりを。世界に、はじまりを」

 

 

磁偉倶「来るぞ!」

 

 

 シン・アトゥームは動き出す。

 正真正銘、最後の戦いが、はじまった!

 

 

シン・アトゥーム「滅びを受け入れなさい。それが、この世界の運命です」

 

健一「断る! こんなものが運命であってたまるか!」

 

豹馬「そうだぜ。これが運命だというのなら、俺達はその運命を叩き壊す!」

 

 

シン・アトゥーム「新たに生まれる存在。それを祝福するのは当然のことではありませんか?」

 

甲児「なにを言ってるんだこいつは」

 

鉄也「無駄だ。我々の価値観とそれは全く別のものだ。元が元だけにな」

 

 

シン・アトゥーム「終わりはいずれ、誰の身にもやってきます。それが、今なのです」

 

凱「その終わりが来るのは、本来ならまだ先のこと。今それを受け入れる理由は、俺達にない!」

 

アイザック「確かに、人も世界もいずれ終わりが来る。だが、そのいずれくる終わりは今ではない!」

 

キッド「そういうことさ」

 

ボウィー「まだまだ生きたりないしね」

 

お町「そういうことよ」

 

 

シン・アトゥーム「安心なさい。すぐ次はやってくる。新たな世界と共に……」

 

シン「そんな次は欲しくない! 欲しいのは、明日だ!」

 

キラ「その次は、今の次じゃない。僕達はこの世界の次が欲しいんだ!」

 

 

シン・アトゥーム「世界の破壊と新生はもう決まったこと。運命を受け入れ、来世に期待をなさい」

 

剣人「その言い方腹立つな! 絶対受け入れてやるかよ!」

 

剣児「ああ。誰が受け入れてたまるか!」

 

アムロ「そうだ。僕達はお前にすがるほど、今の世界に絶望もしちゃいない!」

 

ジュドー「お前こそ、俺達の言い分を聞くぐらいしてみなよ!」

 

 

 この戦いは、総力戦である。

 今まで集まったすべての力をぶつけ、ここに降臨した破壊の存在を逆に破壊するのだ!

 

 

 ガンダム試作3号機デンドロビウムの零距離メガビーム砲が。

 

 ZZガンダムのハイ・メガ・キャノン・フルパワーが。

 

 νガンダムのフィンファンネルが。

 

 ジェネシックガオガイガーのゴルディオンクラッシャーが。

 

 エステバリスカスタムのダブルゲキガンフレアが。

 

 マジンカイザーとグレートマジンガーのダブルバーニングファイヤーが。

 

 ロム・ストールの運命両断剣 ツインブレードが。

 

 シャッフル同盟のシャッフル同盟拳が。

 

 ビクトリーファイブの超電磁ビクトリーストライクが。

 

 インフィニットジャスティスとストライクフリーダムのコンビネーションアサルトが。

 

 ビルバインとダンバインのツインオーラアタックが。

 

 エヴァ初号機 (疑似シン化第1覚醒形態)の衝撃波が。

 

 ブライガーのブライカノンが。

 

 ジーグの鋼鉄神ジーグが。

 

 ダンクーガの断空光牙剣が。

 

 ウルズチームのウルズストライクⅡが。

 

 

 総力戦の果て。

 世界の命運をかけたこの戦いも、ついに終わりの時がくる……

 

 

シン・アトゥーム「……」

 

トレース「動きがとまりました!」

 

ブライト「やったか!?」

 

アムロ「いや……!」

 

シン・アトゥーム「……無駄です」

 

 

 倒したと思うほどのダメージを与えたというのに、その傷は次々と消え、元の状態へと復元してゆく。

 

 

カワッセ「まだ倒れないのか!」

 

シン・アトゥーム「倒れるわけがありません。どれだけ表層を傷つけたところで無意味。私は世界。すべてを司り、すべてを終わらせ、はじまりを与えるもの」

 

剣児「言ってる意味がわからねえ! だが、俺達の心を折ろうとしても無駄だ!」

 

甲児「ああ。それなら、滅ぶまで倒すのみだ!」

 

豹馬「そうだぜ!」

 

統夜「そうだ。それに、無意味な攻撃なんかじゃない!」

 

シン・アトゥーム「なに?」

 

統夜「そうすることで、お前を倒す方法がわかった。みんなの行動に、未来が、過去が、世界が応えてくれた!」

 

 

 統夜達とてむやみやたらに攻撃していたわけではない。

 その最中、様々な分析をかけていたのだ。

 

 そしてその結果をサイトロンを通じ、統夜が受け取った。

 

 

シン・アトゥーム「世界が、だと?」

 

統夜「そうだ。今ある世界だって、死にたいわけがない!」

 

シン・アトゥーム「っ!」

 

統夜「みんな、力を貸してくれ! シン・グランティード・ドラコデウスのインフィニティキャリバー・オーバーワルドなら、ヤツを生み出した源を、その根源である生と死のまじわった門を斬れる!」

 

 

 相手は新たな世界。

 それを倒すには、物理的にダメージを与えるだけでは足りない。

 

 だが、時間も空間も超越するインフィニティキャリバー・オーバーワールドならば、ヤツを形作るそれを攻撃することができる!

 そのために、ハイリビード(生)とジ・ヴォーダ(死)を超える力を集める必要があった!

 

 

宗介「わかった。すべてをお前に託す!」

 

鉄也「世界をお前に託すぞ、紫雲!」

 

忍「やってやれ!」

 

剣人「いけー!」

 

 

 シン・グランティード・ドラコデウスから翠色の光があふれる。

 その光はラインとなり、次々と仲間の機体と繋がってゆく。それにより、皆の心が一つに集まってゆく。

 

 光はすべてを超越し、宇宙中に広がってゆく。

 

 その輝きに、命あるものは祈る。

 地球で世界の無事を願う人々の想いが。

 宇宙の星々で、平和を願う者達の祈りが。

 

 生きたものの。死んだものの。

 

 時間も空間も超越し、シン・グランティード・ドラコデウスへ集まってゆく!

 

 

 シン・グランティード・ドラコデウスがインフィニティキャリバーを掲げる。

 その刀身は、今までにない輝きを放つ!

 

 

シン・アトゥーム「なんです、これは……。この力は。あなたは確かに、私と同じセイとシの力を備える器。だが、この力は違う。なんなのです、これは……!」

 

 

 それは、命の源であるハイリビードでも、すべてを破壊するジ・ヴォーダとも違う力だった。

 それは、統夜達が今までの旅で積み上げ、生み出してきたもの。

 

 それは……

 

 

統夜「お前はどこまでいっても一人でしかない。まだ生まれてもいない。これは、この世界が積み重ねた、俺達が紡いできた繋がりの力だ!」

 

 

 翠に光り輝く無限の想いを乗せた剣を振り上げる。

 

 

統夜「いつかこの世界にも終わりが来る。あなたの出番は、それからだ。それまで、眠れ。次の世界を夢見て!」

 

 

 翠の光を纏い、今までのすべてがこもった一撃。

 

 シン・インフィニティキャリバー・オーバーワールド(斬りつけた瞬間世界が超スローモーションになり、全機体の最強技が振り下ろされた翠の刀身をスクリーンにしてテンポよく叩きこまれる演出のある一撃にして全ブッパな攻撃)が、世界を破壊する存在を切り裂いた!

 

 

シン・アトゥーム「ああっ。光が。光があふれる……。これが……これが……っ!」

 

 

 白く輝く闇ははじけ。

 世界を破壊するものは、ロンドベル隊の前に敗れた。

 

 

 こうして、世界は再び、救われたのである。

 

 

 

 最終話 終わり



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エンディング

 

──エンディングに関するあれこれ──

 

 

 ついにエンディングである。

 なので今回もエンディング直前に、それらのことについて説明しておこう。

 

 今作も前作、前々作と同じく出撃ごとにグランティードのサブパイロットになったヒロインにポイントがたまってゆく形式である。

 今回は物語後半から加わるヒロインがいないので、ポイントの増加は全員一律同じ。ポイントが一定以上ならば、そのヒロインとの個別エンドを迎えられる。

 今回はその一定ポイント以上あるなら、ソロエンドをふくめ選択が可能となっている(一周で複数も可能。ポイントは周回累積)

 さらに、前作で個別エンドを迎えたデータがある場合、ポイントを無視して選択が可能となる。

 

 これは、今回の個別エンドは前作第2次スーパーロボット大戦Jの個別エンドの続き、または前日譚となるからだ。

 なので前回の個別エンドで登場したキャラは、今回のエンディングに顔を出さないこともあるのでご了承くださいなのです。

 あと、今回は追加ヒロインがいないので、全員エンドは前回と一緒なので個別エンドの確認ついでにそちらを参照としてほしい。

 

 さらに、今回は次回作に続くための、いわゆるノーマルノーマルエンドはない。

 今作で統夜達は学生を卒業してしまうからだ。

 

 一応その卒業部分は共通エンドとなっている。そこで、選択可能な場合、エンディングを選ぶというわけだ。

 

 今回のエンディングの種類は、統夜ソロエンド続、カティアエンド前、クド=ラエンド続、シャナ=ミアエンド続、テニアエンド続、メルアエンド続、ロゼ=リアエンド続(五十音順)、全員エンド(前作参照)の8種類となる。

 

 

──卒業式 統夜──

 

 

 卒業式。

 桜舞い散る中。俺達の学生生活も、今日、終わる。

 

 色々なことがあった。

 本当に、いろいろなことが。

 

 思わず感傷に浸ってしまいそうになるけど、そういうわけにはいかない。

 今日で俺の人生が終わるわけじゃないのだから。

 

 むしろ、新しい道のはじまりなのだから。

 今まで同じ道を歩んできた友とも別れ、新しい目標への。

 

 

ボス「あー、せいせいするぜ。もう勉強しなくてすむからよぉ。ずびー」

 

ヌケ「おーいおいおいおい。おーいおいおいおい」

 

ムチャ「うわーん」

 

 

 強がりを言いつつ、ボスが友と抱き合って泣いている。

 

 

甲児「ったく、これで会えなくなるわけじゃないんだ。大げさだろ」

 

ボス「うるせえんだわさ。お前はアメリカへ行っちまうし。行っちまうしよぉ……ずびー!」

 

甲児「だから、ちょっと行ってくるだけだろ」

 

 

 やれやれとあきれる甲児。あいつも、これは新しい旅立ちと、未来を見据えているのだろう。

 終わりじゃなくて、はじまりなんだと。

 

 

宗介「……」

 

かなめ「さて、ソースケ」

 

宗介「むっ?」

 

テッサ「はい。いよいよですよ、相良さん」

 

宗介「……っ!」

 

かなめ「そうよ。いよいよよ。私か」

 

テッサ「私か」

 

2人「どちらを選ぶのか!」

 

宗介「……っ!」

 

かなめ「どっちも。と言えるならそれでいいけど、そんな甲斐性あんたにないでしょ」

 

テッサ「どちらを選んでも、私達に後悔はありません。相良さんの素直な気持ちでいいんです……!」

 

宗介「俺は……自分は……っ!」

 

 

選択肢

 

→『かなめを選ぶ』

 『テッサを選ぶ』

 『不器用がなんだ! 俺は二人を幸せにするぞー!』

 

 

 選ばれても選ばれなくても、双方涙を流すことになる。

 ただ、一つ言えるのは、不幸になる人はいない。ということだ……

 

 

マオ「青春してるわねー」

 

クルツ「そうだな。俺達が見守るのも、もう終わりかな」

 

マオ「そうかもね。ねえ……」

 

クルツ「ん?」

 

マオ「ううん。あせることはないわ。私達は私達の速度で行きましょ」

 

クルツ「よくわからんが、そうだな」

 

 

 どうやら彼等も、新しい一歩を踏み出すようである。

 

 

 そして、俺は──

 

 

選択肢

 

→『一人で新しい道を歩むことになった』

 『カティアと共に新しい道を歩む』

 『クド=ラと共に新しい道を歩む』

 『テニアと共に新しい道を歩む』

 『メルアと共に新しい道を歩む』

 『ロゼ=リアと共に新しい道を歩む』

 『みんなと共に新しい道を歩む』(第2次Jの全員エンドと同じ)

 

 

──統夜ソロエンド 続──

 

 

 長い戦いも終わり、統夜は平穏へ戻った仲間達を護るという道を選んだ。

 

 様々なところから共に戦わないかと誘わた。

 どこで人々を護ることにしたのか。それは統夜にとって重要ではない。どこを選んだとしても、人々を護るという行為に違いはないからだ。

 

 そして今日も、理不尽に振るわれる力から、無辜なる人々を護るため、統夜は走る。

 

 

デビルサターン6「ふふっ! 見つけた。見つけたで! これで我がデビルサターン軍の飛躍は間違いなしや!」

 

???「待ちな!」

 

デビルサターン6「だ、誰や!」

 

ルネ「フランス特殊犯罪組織機関シャッセール所属、ルネ・カーディフ・獅子王。人呼んで獅子の女王(リオン・レーヌ)とは私のことだ!」

 

デビルサターン6「来よったな、だが、たったひと……」

 

???「待てい!」

 

デビルサターン6「って……!」

 

ソルダートJ「……」

 

 

 そこに現れたのは、逆光にたち腕を組んだソルダートJだった。

 

 

デビルサターン6「こ、この流れ……」

 

???「待てい!」

 

 

 さらに現れるのはロム・ストール御一行!

 

 

デビルサターン6「やっぱりか!」

 

???「そこまでだ!」

 

 

 さらに現れるのは、我等が統夜!

 

 

統夜「これ以上の悪行、させるわけにはいかない!」

 

デビルサターン6「なんべんやらせんねんこの流れ!」

 

キッド「おっと、俺達もいるぜ」

 

 

 ついでに退路を塞ぐようにコスモレンジャーJ9の面々も現れた!

 

 

デビルサターン6「なんちゅー戦力つれてきてんねん。ワイ一人(?)に戦力過剰やろ!」

 

統夜「ならおとなしくお縄につくんだな!」

 

ジェット「その通りだぜ。そうすれば、俺等も安心してクロノス星へ帰れる」

 

デビルサターン6「いやや! 諦めてたまるかいな! 地球にはまだまだお宝がある。ワイは知っとるんやで! それを手に入れるまで、ワイは逃げ続ける! 覚えとれー!」

 

レイナ「あ、待ちなさい!」

 

ドリル「やれやれ、世界は平和になったが、俺達はまだ休むわけにはいかないようだ」

 

 

 大きく、苦しい戦いは終わった。

 世はすでに、長い平和と平穏の時代に移ったと言っていいだろう。

 

 多くの者には、退屈で安全な世界。

 

 しかし、その中でもまだ、すべての悪が潰えたわけではない。

 陽の目盗み、陰に潜みて悪事を働く者はまだまだいる。

 

 それでも、地球に住まう者達に不安はない。

 

 なぜならここには、人々の平穏を護る守護者がいるのだから。

 

 

 地球の平穏は、まだはじまったばかりだ!

 

 

 

 おしまい。

 

 

──カティアエンド 前──

 

 

 これは、統夜がカティアと共に政治の世界へ至る前のお話。

 

 争乱も終わり、平和となった地球。

 そこに永住するわけでなく、去る者達もいた。

 

 その一つが、バイストンウェルよりやってきた者達。

 

 彼等は平和となった今、諸悪の根源となったオーラコンバーターを搭載した機器を破壊し、バイストンウェルへの帰還を決めたのである。

 平和となったしばしの時間、地球を見て回り、様々なものを吸収し帰路につこうとするシーラ達を、統夜達も見送ることとなった。

 

 大勢の人達が見送りに来る中、統夜とカティアはシーラと話をする機会を得た。

 

 

カティア「どうしても、戻るんですか? 戻らず、この世界で暮らしてもいいと思いますけど」

 

シーラ「ここに残りたいと望む者達は、その願いをかなえさせてよいでしょう。それもよいと思います。ですが、私達はそういうわけにはいきません。バイストンウェルに残した民がいるのですから……」

 

統夜「ああ」

 

カティア「そういえば、そうですね……」

 

 

 地上に追放されたのは、オーラコンバーターを積んだすべてのオーラマシンとそれに関する者のみであり、争いに加わらなかった力もない民たちはそのままバイストンウェルの大地に残されたままなのである。

 オーラマシンを動かしていた者の多くはかの地の指導者であったため、導く者のいなくなったあちら側を心配するのもまた、当然と言える。

 

 もちろん、こちら側へ追放された者の中にだって故郷へ帰りたいと願う者がいても不思議ではない。

 

 

シーラ「私達は、争いにより、多くの過ちを学びました。人々の愚かさ。憎むことの辛さ……ですが、地上で得たのはそれだけではありません。それをのりこえられる強さ。手をとりあえる優しさ。それらを伝えるためにも、我々は帰らねばなりません」

 

カティア「……」

 

 

 そうまで言われては、もうなにも言うことはできなかった。

 

 

シーラ「それに、もう二度と会えぬというわけでもありませんから。再び道が開き、地上の皆と再び会えぬ時が来ると信じています。その時こそ、平和に交流ができると、願っております」

 

カティア「もう一度……」

 

統夜「それは、どちらも正しい道を歩んでいなければ、また同じ過ちにたどりついてしまう……できるといいですね」

 

エレ「もちろん、そのようなことがないよう、努力いたします」

 

シーラ「はい」

 

カティア「シーラさんとエルさんならできるわ」

 

統夜「むしろ問題はこっちの方かもしれないな。そうはならないよう、できるだけ努力するよ」

 

シーラ「はい。期待します」

 

チャム「そうだ! それならトウヤが姫様みたいになってこっちの世界をよくしていけばいいんだよ!」

 

統夜「は?」

 

ショウ「チャム。思いつきで言うもんじゃないぞ」

 

 

 やれやれと、ショウがチャムをたしなめた。

 地上へ残る者がいるように、逆に地上からバイストンウェルへ行く者もいる。

 

 エレのゴラオンを救う際交渉に当たったトルストールや、マーベルと共にシーラについていくことにしたショウなどだ。

 

 

シーラ「案外よい思いつきだと思いますがね」

 

統夜「ははは」

 

カワッセ「時間です」

 

 

 統夜が返答に困ると、グラン・ガランの艦長を務めていたカワッセがシーラ達を呼びに来た。

 いよいよオーラロードが開く準備が整ったようだ。

 

 別れの、時間である……

 

 

シーラ「それでは、またいつか」

 

ショウ「またな」

 

統夜「ああ。また」

 

 

 光が瞬き、オーラロードが開かれ、彼等はバイストンウェルへと帰っていった……

 

 

 光を見送った統夜とカティア。

 

 

カティア「上に立つ人も、大変なのね」

 

統夜「そうだな。シャナ=ミアみたいに、終わらせることができる人がいれば、そうもいかない人もいる。でも、俺はやりがいのあることだと思ったよ」

 

カティア「それって……」

 

統夜「ああ。今までぼんやりとしてきたけど、やりたいことがはっきりしたかもしれない。カティア。大変な道かもしれないけど、ついてきてくれるか?」

 

カティア「ふふっ。あたりまえじゃない」

 

統夜「君がいてくれるなら、心強いよ。君となら、どこまでも行けるような気がする」

 

カティア「もう。そんなにもちあげてもなにも出ないわよ!」

 

統夜「俺は事実を言っただけさ。君が支えてくれるなら、俺はどこにでも行けるし、なんにでもなれる」

 

カティア「責任重大ね。でも、私もあなたならできると信じてる。だから、あなたの思うように進んで、その背中は、私が支えるから」

 

統夜「ああ。頼りにしてる」

 

 

 そう言い、二人は手をとりあって歩き出した。

 輝かしい未来へと……

 

 

 

 おしまい。

 

 

──クド=ラエンド 続──

 

 

 地球の争乱もおさまり、平穏を取り戻した人々であったが、紫雲統夜はそうではなかった。

 

 復讐の炎が消えぬクド=ラの襲撃を受け、それをなんとか受け流す日々を続けている。

 

 それは、気が済むまで何度でもつきあってやると言った代償であった。

 

 

 今日も今日とてゲームをたしなみ復讐の一幕をなんとかいなした統夜であったが、そこにさらなる襲撃者が現れた!

 

 

ジュエリオン「同じ復讐者として、聞きたいことがあるわ。同志クド=ラ」

 

クド=ラ「ふふっ。このボクの復讐術を聞きたいとは。よいだろう同志ジュエリオン。いったいいかような方法が聞きたいのだ?」

 

ジュエリオン「先の第三回復讐者の会で提案された憎き者を仕留めるため、毒のごとき代物を食させるという復讐術。あれは失敗であった!」

 

クド=ラ「なんとっ!」

 

統夜(そういえば、ちょっと前に俺も食べさせられたような……)

 

 

 お客人に飲み物を用意しに台所へ引っこんでいた統夜はそんなことを思い出していた。

 

 

ジュエリオン「ヤツはわらわの料理を食し、のたうち回るはずであった! だが奴は、それをうまいと平らげおった! ダメである!」

 

クド=ラ「ふっ。それはボクも同じだった! うまくいかなかったね」

 

統夜(食べた料理はうまかったけどね)

 

ジュエリオン「やはり、奴等は手ごわい!」

 

クド=ラ「手ごわいね!」

 

ジュエリオン「さらに葵豹馬、あの男はよりにもよって我が最愛の妹、べリオンとなんか距離が近い! とてもじゃないが許せないわ!」

 

クド=ラ「わかる。でもボクはなにも言えない。ごめんね兄さん……」

 

ジュエリオン「ど、どうした同志! がたがた震えて!」

 

クド=ラ「気にしないで! ボクは兄さんを忘れない!」

 

ジュエリオン「そうね。話を戻して、また新たな知恵を借りるべく参上したのよ!」

 

クド=ラ「ふふっ。ならば良い案があるわ!」

 

ジュエリオン「まことか!」

 

統夜(ところでなんで、二人ともいつもと話し方が違うんだろう。かっこいいから? 雰囲気づくり?)

 

クド=ラ「次なる作戦は、ヤツを仲間から遠ざけ孤立させ、さらに訓練の時間さえないよう束縛する!」

 

ジュエリオン「なんと! 仲間との信頼を砕き、弱体化までうながすとは! それはよき作戦よな。内容はいかに!」

 

クド=ラ「それは……!」

 

 

 2人の話す内容を、統夜は台所でお湯を沸かしながら聞いていた。

 そして、思う。

 

 

統夜(それって、デートのお誘いですよね)

 

 

 お湯が沸いたので、それをカップに注ぎながら、統夜はそんなことを思ったが、口には出さなかった。

 

 

ジュエリオン「くくっ。待っていろ剛健一。我が復讐の炎で貴様を焼き尽くしてくれる。永遠にな!」

 

クド=ラ「目指せ、打倒シウン・トウヤ!」

 

ジュエリオン「打倒、剛健一!」

 

二人「おー!」

 

統夜「……」

 

 

 相変わらず、地球圏は平和である。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 おしまい。

 

 

──シャナ=ミアエンド 続──

 

 

 平凡だが幸せな家庭を築く統夜とシャナ=ミア。

 

 今日はそこに、つばきと剣児が二人のお子を連れ、遊びに来ていた。

 

 

シャナ=ミア「ふんふふふふーん♪」

 

 

 とんとんとんとん。

 軽快な鼻唄と共に、包丁がまな板を叩く音が響く。

 

 

つばき「ふふふふーん♪」

 

 

 つばきとシャナ=ミアは、お昼の準備のため、二人で台所に立っていた。

 

 お父さん二人は、それまでの間近くの公園へと出向き、子供達と遊んでいるためここにはいない。

 お子が準備の邪魔しないよう、2人で散歩に出たという寸法だ。

 

 ちなみに、今日は来ていないが、剣児の母の弟である美角鏡おじさんは二人の子にメロメロらしい。

 

 

つばき「あ、そういえばさ」

 

シャナ=ミア「なんでしょう?」

 

 

 二人で手際よく料理をしている中、手を動かしつつ、つばきが口を開いた。

 すでにお母さんもベテランなので、料理だけに集中していなくても大丈夫なのだ。

 

 

つばき「リビングに櫛が飾ってあるけど、あれ、ひょっとしてさ……」

 

シャナ=ミア「はい。多分想像した通りの物ですよ。統夜がプロポーズする時、私にくれたものなんです」

 

つばき「やっぱり!」

 

シャナ=ミア「あの頃は、この国の文化に興味があって、色々調べていたんです。だからですかね。統夜はわざわざ、櫛を送ってくれたんですよ」

 

つばき「きゃーきゃーきゃー」

 

 

 プロポーズ。

 それは、する側にとっては一世一代の大勝負。

 される側にとっても心震える幸せの瞬間最大風速が吹く時である。

 

 その方法は千差万別。様々であるが、その方法の中に、『櫛を送る』というものがある。

 

 櫛とは一般的には『苦』と『死』を連想させるものとされ、贈り物には適さないとされている。

 しかし、プロポーズに限っては『その苦労も苦しみも共に過ごし、死ぬまで添い遂げよう』という意味にかわるのだ。

 苦と死から縁起が悪いとなり、逆に添い遂げるならば……となるのは、日本ならでは言葉遊びだろう。

 

 ちなみに、櫛は元々求婚と縁の深い代物でもある。

 神話の時代、スサノオが生贄となるはずだったクシナダノヒメを櫛に変え、髪にさし、共に討ち取り結婚の約束を果たしているのだ。

 

 そうしてプレゼントされた櫛を、シャナ=ミアは大事にしているというわけである。

 

 

つばき「いいわねー」

 

シャナ=ミア「はい。宝物です!」

 

つばき「いいなー。剣児なんてあれよ。いて当然。みたいな感じでプロポーズらしいプロポーズなかったんだから!」

 

シャナ=ミア「それはそれで羨ましいかもしれません。私とトウヤも幼馴染ですけど、いて当然となるのはもう少しかかりそうですから」

 

つばき「そうかな。えへへ」

 

シャナ=ミア「つばきさんはいつごろから剣児さんと一緒にいるんですか?」

 

つばき「んー。聞いちゃう? 聞いちゃう?」

 

シャナ=ミア「はい。聞きたいです!」

 

つばき「しょうがないなー。なら、剣児の恥ずかしい過去、教えちゃおう!」

 

シャナ=ミア「わーい」

 

 

 二人は、笑いあう。

 

 その語らいは、2人のパパが子供を連れて帰るまで続いたという。

 

 

 紫雲家は、今日も平和である……

 

 

 

 おしまい。

 

 

──テニアエンド 続──

 

 

 争乱も終わり、平和になった世で無事高校も卒業した統夜は、テニアと共にアメリカへ新しい機械工学を学ぶため留学しに来ていた。

 一緒に留学してきた甲児。さらに同じく機械工学を学ぶアムロと食堂で近く開かれるロボットのコンテストにどんなものを作ろうかと話に花を咲かせていた時のことだった。

 

 

ニナ「あ、コウ。またニンジンを残して」

 

コウ「い、いいだろ。少しくらい」

 

ニナ「駄目です」

 

コウ「とほほ……」

 

 

 同じく食堂でお昼を食べていたのは、ニナ・パープルトンとコウ・ウラキだった。

 

 

甲児「あれ、コウさんとニナさんじゃないか」

 

テニア「あ、ホントだね」

 

コウ「あれ、君達もいたのか」

 

 

 甲児達を発見し、これ幸いとコウは話題を彼等にむけた。

 もちろん無駄な抵抗であるが、抵抗しなければならないプライドがコウにはあるのだ!

 

 

統夜「アムロも来ているわけだから、他にも軍関係者がいても不思議はないか」

 

コウ「そうさ。もっとも、俺はテストパイロットをするだけだけどな」

 

テニア「ああ。ニナさんが作るモビルスーツに」

 

ニナ「そういうことよ」

 

アムロ「ということは、ニナさんも今度開かれるロボットコンテストに出るんですね?」

 

ニナ「ええ。私独自のガンダムを発表しようと思ってるの」

 

 

 ここで開かれるロボットコンテスト。

 それは、新しい才能を発掘するために開かれるものである。

 

 著名な博士が審査し、光るものがあると判断されれば、予算がつけられたりもするのだ。

 

 それは学校の関係者だけでなく、市政の博士も挑戦しに来る、ロボット作りの祭典なのである。

 

 

統夜「なら、俺達のライバルですね」

 

甲児「ああ。とんでもないライバルが現れたもんだぜ」

 

ニナ「あなた達四人でなにか作るの?」

 

テニア「あたしはサポートするだけだから、三人ですけどね」

 

ニナ「でも、十分に手ごわいわね。私のガンダムは簡単にまけないわよ」

 

アムロ「望むところですよ」

 

 

 新たなライバルの出現に、甲児もアムロも盛り上がる。

 

 ワイワイがやがやとにぎやかになったところで、統夜とテニアは顔を見合わせ、どこか楽しそうに笑いあうのだった。

 

 

 彼等の新しい戦いは、はじまったばかりだ!

 

 

 

 おしまい。

 

 

──メルアエンド 続──

 

 

 争乱終結後、平和な世となった世界で統夜とメルアは美味しいお菓子屋さんをオープンさせていた。

 

 小さなみせながらも今日も今日とて大盛況。

 次々と甘いお菓子が売れてゆく。

 

 

アスカ「ついた!」

 

シンジ「はー。はー、アスカ、そんな走らなくても大丈夫だよ……」

 

アスカ「大丈夫なわけないでしょ。ほら、売り切れてる!」

 

シンジ「嘘!?」

 

アスカ「嘘ついてどうするのよ。これもあんたが遅刻したせいよ」

 

シンジ「ご、ごめん。綾波が……」

 

アスカ「レイのせいにしない!」

 

シンジ「確かに。綾波も、ごめん」

 

レイ「かまわないわ。それより……」

 

メルア「いらっしゃい。ちょうど焼き上がったところだから、補充するね」

 

シンジ「あ、よかったじゃないかアスカ」

 

アスカ「やったー」

 

剣人「よし、時間ばっちりだな」

 

早苗「そうね」

 

 

 シンジ達のあとから、剣人が入ってくる。

 剣人と早苗の後ろには、ジャンク屋時代からつきあいのある学ぶやおちゃめもいた。

 

 平和な時代となり、皆新たな道を歩いているが、それでもちゃんと交流があるのだ。

 

 

メルア「みんな大きくなったね」

 

おちゃめ「はい!」

 

シンジ「あ、剣人さん」

 

剣人「お、シンジじゃねーか」

 

シンジ「どうしたんですか?」

 

剣人「ああ。じいさん(アール博士)がちょうど地球にやってくるみたいでな。その歓迎のために、ここのお菓子を買いに来たのさ」

 

シンジ「アール博士もひさしぶりですね」

 

剣人「エリオスの方もやっとひと段落ついたみたいでよ。そっちはどうしたんだ? こうやって鉢合わせするのも珍しいな」

 

シンジ「こっちもミサトさんが来るんですよ。それで、みんなで買いに来ました」

 

剣人「同じ考えか。暇ならウチに誘うんだがな。弾児も来るし」

 

アスカ「なら、ミサトをそっちに呼べばいいじゃない」

 

剣人「は?」

 

シンジ「え、でも……」

 

アスカ「レイ、やっちゃいなさい!」

 

レイ「わかったわ」

 

 

 アスカに頼まれたレイは携帯をとりだし、ミサトへ連絡をつけて集合場所をあっさり変えてしまった。

 

 

シンジ「いいのかな……」

 

アスカ「いいのいいの。ミサトなんだから」

 

剣人「変えられちまったんならしかたねえ。行くか!」

 

早苗「まだ肝心のお茶菓子を買ってないわよ」

 

剣人「おっと、うっかりしてたぜ」

 

 

 江戸っ子にしても気が早すぎる剣人であった。

 

 

統夜「ミサトさんとアール博士も来るなら、少しだけオマケさせてもらうな」

 

剣人「あざーっす!」

 

シンジ「すみません」

 

統夜「いいのいいの。どちらもお得意様だからね」

 

 

 こうして歓迎の茶菓子を買った二組は、笑顔で去って行った。

 

 

メルア「こういう時、このお店をはじめて本当によかったと思います」

 

統夜「ああ。本当にな」

 

 

 笑顔で去った後輩の姿を見て、二人は感慨深そうに微笑む。

 

 世界は、幸せで満ちている。

 

 

 それは、間違いない。

 

 

 

 おしまい。

 

 

──ロゼ=リアエンド 続──

 

 

 争乱も終わり、新たな道を歩みだしたロゼ=リアと統夜は、改めて開拓のはじまった火星へ来ていた。

 

 開拓団にはバームの面々や超電磁チームだけでなく、ジュドー兄妹とプル&プルツー+αの姿もあった。

 

 

 その火星に、新たな旅立ちを迎ええる者が立ち寄る。

 

 

 ネオジオンのアクシズ。

 色々やらかしたネオジオンは、戦力の多くを残したまま降伏していることと、宇宙を滅ぼしかけたソール11遊星主との決戦のおり、陽動に全面協力したことを考慮され、トップの首を差し出し地球圏にとどまるか、トップごとこの地球圏を出て新天地を目指す開拓団になるかの選択を迫られた。

 

 彼等はトップのハマーン等を救うことを選び、二度と地球圏には戻らぬことを約束し、アクシズを開拓宇宙船とし、地球圏を離れることとなった。

 

 ちなみにだが、下手に戻ることをすれば、ゴルディオンクラッシャーで問答無用に光となることが決定している。

 なにか問題があって戻ってくる場合は、死ぬ気で連絡してくることが必須である。

 

 こうして外宇宙へ行ける宇宙船へと改造されたアクシズは、最後の物資を積むため、火星に寄ることとなった。

 

 それを受け取り、火星を離れれば、彼等は二度と地球へは戻らないだろう……

 

 

 その物資の積みこみの最中、ハマーンが一人の少女を連れ、ジュドーの元を訪れた。

 

 

ジュドー「ハマーン!?」

 

ハマーン「あまり大きな声で私の名を呼ぶな。ここに私が来てはいないのだから」

 

ロゼ=リア「いったい、なにをしに来たんですの?」

 

 

 ふう。とハマーンは小さくため息をつき、自身の後ろに隠れていた少女を前に出す。

 それは、ネオジオンの旗頭であったミネバ・ザビであった。

 

 

ハマーン「この子を、お前達に託したい。ジュドー・アーシタ」

 

ジュドー「なんだって!?」

 

統夜「そんなことをしたら、アクシズは……」

 

ハマーン「気にするな。彼女は影武者だ。だから、ここに残っても問題はない」

 

ジュドー「ホントかよ」

 

ハマーン「ああ。それでよいのだ。それで」

 

ジュドー「……」

 

 

 その真偽はどうであれ、ハマーンの言葉は、いずれアクシズからジオンの直系が忽然と消えるということを示していた。

 そうなれば、ジオンを再興し、再び地球に戻ろうと考える不埒者も現れることはなくなる。

 

 しかし、肝心の旗頭がなくなるということは、アクシズそのものが分解する恐れがある……!

 

 

ジュドー「いいのか、ハマーン?」

 

ハマーン「よい。これからの地球のためにも、あの子のためにもな……」

 

 

 肝心のミネバは、プルとリィナとすぐ仲良くなっていた。

 確かに、あの狭く苦しい小惑星に閉じこめられるより、ここの方がのびのび暮らせるだろう。

 

 

ロゼ=リア「わかりました。では、彼女はわたくし達が責任をもって預かります!」

 

プルツー「ええー!?」

 

ロゼ=リア「こう見えてわたくしは元姫! その立場の大変さはよくわかります! ですので、大船に乗ったつもりでお任せください!」

 

統夜「あー、言い出したら、もう止まらないぞ」

 

ジュドー「しかたないな。わかったよ」

 

ハマーン「……ありがとう」

 

ミネバ「ハマーン……」

 

 

 自分がどうなるのか気づいたミネバが、どこか不安そうな表情で彼女を見た。

 

 

ハマーン「どうか、幸せに。ここならば、間違いなくそれがなります」

 

ミネバ「……うん!」

 

 

 笑顔で見送る彼女であったが、ハマーンの姿が見えなくなると、泣き出してしまった。

 ジュドー達は、その少女を慰める。

 

 この場には、ジュドー達だけでなく、他にも頼りになる者がたくさんいるのだ。

 

 彼女の未来は、きっと明るい。

 

 

 

 おしまい。



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ヒロインズエピソード 01 こたつ

 

──こたつ その1──

 

 

 これは、ロゼ=リアが地球に現れる前、シャナ=ミアが地球にやってきて皆の高校に通いはじめたころの話である。

 時は冬。

 

 カティア、シャナ=ミア、テニア、メルアの四人は冬の寒さから逃れるため、日本の伝統敵暖房器具、こたつに入っていた。

 

 

テニア「はへー。これがこたつかー」

 

カティア「噂に聞いていたけど、こういうものなのね」

 

メルア「あったかいですねー」

 

シャナ=ミア「本当に。ぽかぽかします……」

 

 

 四角いこたつの一辺に一人ずつ座り、四人はその温かさの恩恵を受ける。

 元々日本に住んでいなかった彼女達は、この時がこたつ初体験であった。

 

 

テニア「甲児やボスが冬ならこれって言うのがわかるー」

 

メルア「ですねえ」

 

テニア「ふにゃー」

 

 

 こたつの暖かさに、テニアがくてーっととろけたようにテーブルへつっぷす。

 その時だった。

 

 

カティア「きゃっ」

 

 

 カティアが驚きの声をあげた。

 

 

シャナ=ミア「どうしました?」

 

カティア「なにかが、私の足に……」

 

テニア「あー、ごめん。多分、アタシの足」

 

カティア「びっくりしたわ」

 

テニア「足の裏にちょっと当たっただけだと思うけど、カティアってば敏感だね」

 

 

 あはは。とテニアが笑う。

 

 

カティア「誰だって不意をつかれればびっくりするわよ」

 

シャナ=ミア「……」

 

テニア「大丈夫。可愛かったから!」

 

カティア「全然大丈夫じゃないわ」

 

テニア「メルアはどう思う?」

 

メルア「わたしも可愛かったと思いますよ」

 

テニア「だよねー」

 

カティア「二人共なにバカなことを……ひゃんっ!」

 

テニア「!?」

 

 

 また、カティアから声が上がる。

 テニアもびっくり。

 

 

カティア「テニアー」

 

テニア「違う! これはアタシじゃないよ!」

 

シャナ=ミア「くすくす。ごめんなさい。私です。カティアさんの反応がもう一度見たくて」

 

カティア「シャナ=ミアー」

 

テニア「シャナー」

 

 

 二人で非難をこめた視線をシャナ=ミアに送る。

 

 

シャナ=ミア「ごめんなさい。でも、私もこういうことやってみたくて」

 

カティア「まあ、しかたないわね。もうしちゃダメよ」

 

 

 滅多にこういったおふざけをしないシャナ=ミアだったためか、カティアもすぐ矛を収めた。

 

 

テニア「気持ちはよくわかる」

 

シャナ=ミア「わかってくれますか」

 

カティア「わからないで」

 

 

 えへへ。とカティアの声に、二人は笑った。

 

 

メルア「……」

 

テニア「そういえば、シャナはミカンの白いのは全部とる派? 気にしない派?」

 

シャナ=ミア「私は……」

 

 

 謝罪も終わり、他愛のない話へ戻った。

 

 

シャナ=ミア「カティアさんは?」

 

カティア「私は……ひゃっ!」

 

 

 またまたカティアの声があがる。

 

 

カティア「今度は誰!?」

 

テニア「ぶんぶん」首を横に振る。

 

シャナ=ミア「ふるふる」首を横に振った。

 

メルア「わたしです!」

 

 

 なぜか自慢げにメルアが答えた。

 

 

カティア「一応聞いておくけど、理由は?」

 

メルア「わたしだけ仲間はずれはずるいと思うの! わたしもカティアちゃんのかわいい声聞きたい!」

 

カティア「そう。素直でよろしい」

 

メルア「えへへ」

 

カティア「だからって許さないけどね!」

 

メルア「ごめんなさーい」

 

カティア「もう」

 

テニア「……」

 

 

 ぺこぺこと謝るメルアを尻目に、テニアはそっと、こたつの下で足を伸ばす。

 

 再びその足が、カティアの足裏へ触れようとしたその時……

 

 がしっ!

 

 

テニア「ひえっ!?」

 

カティア「これは、テニアね」

 

 

 がっしとテニアの足をつかんだのは、カティアの手であった。

 

 

カティア「この流れなら自分がもう一度やっても笑って許されるとか思ったでしょう?」

 

テニア「な、なんでわかったの!? サイトロン!?」

 

カティア「使わなくたってわかるわよ。どれだけ一緒にいたと思っているのよ」

 

テニア「だ、だめかな?」

 

カティア「駄目に決まってるでしょ。二度目は許さないわ。覚悟なさい」

 

テニア「やーっ!」

 

 

 つかまれた足を、そのままくすぐられた。

 

 

テニア「あはっ。あはははは! やめっ。やめてー! なんでアタシだけー!」

 

カティア「確かにテニアだけは不公平ね。わざとやった2人もあとでくすぐってあげるわ」

 

シャナ=ミア「ええー!」

 

メルア「テニアちゃーん!」

 

テニア「うぇへへ。死なばもろともよ、うぃひひひっ! 無理。もう無理ー!」

 

メルア「カティアちゃん許してー」

 

シャナ=ミア「ごめんなさーい」

 

カティア「いいえ許さないわ。たまには私にもやらせなさい!」

 

シャナ=ミア「これは……」

 

メルア「カティアちゃんもやりたかっただけだー」

 

テニア「あははははは。たすけてー!」

 

 

 こうして、かしましい声が、部屋に響いたそうな。

 

 

──こたつ その2──

 

 

 これは、オーラシップ・ゴラオンを救出するためシベリア方面へむかった時の話である。

 

 シベリアは、寒かった。

 

 

統夜「うー、さむさむ。艦の中は暖かいといっても、寒い外から戻ると足りないな……」

 

 

 出撃デッキから戻った統夜が、思わず体を震わせる。

 戦艦アーガマの中は空調が効いているが、出入りする出撃デッキは外からの空気が入るため、外と変わりはない。

 その空気の中を通ってくれば、空調の効いた艦内に入ってもすぐに体は暖まらなかった。

 

 

統夜(そういえば、ボスがこたつをもちこんだって話してたな……)

 

 

 少しでも暖まろうと、統夜は設置されたというこたつの方へ足をむける。

 ボスボロットの中にはちゃぶ台を置く畳があり、寒い場合はここがこたつになったりもするのである。

 

 今回それを、艦内へ持ちこんだのである。

 

 

???「ほわあぁぁ! な、なんですのこれ!」

 

統夜「なんだ? この声は、ロゼ=リア……?」

 

 

 こたつの置いてある部屋から響いた突然の奇声。

 何事かと、統夜はその声のした方へとむかう。

 

 

ロゼ=リア「なんですの。なんなんですのこれはー!」

 

 

 そこには、こたつにすっぽりとのみこまれ、カメのようにこたつから頭だけを出したロゼ=リアの姿があった。

 

 

ロゼ=リア「これは……極楽……ですの……?」

 

 

 あまりの暖かさに、ロゼ=リアがとろけたような声をあげる。

 

 

統夜「ロゼ=リア?」

 

ロゼ=リア「ああ、トーヤ。トーヤではございませんか。わたくしは大変な発見をしてしまいました」

 

統夜「あ、ああ」

 

ロゼ=リア「寒さの中、すべてを優しく包みこんでくれるこの暖かな空間。こんな素敵なところ、はじめてですわー!」

 

統夜「それはよかった……」

 

ロゼ=リア「というわけで、わたくし今からここに住みます!」

 

統夜「ちょっ!?」

 

ロゼ=リア「むしろここを終の棲家としたい所存ですわ!」

 

統夜「さすがにそれはどうかと思うな。住むに適さない場所だし、それ人の物だし」

 

ロゼ=リア「なんの問題もありません! だってこんなにふにゃーっとするんですもの! ここはもう、わたくしの所領となりました! 極楽にございます!」

 

統夜「……」

 

統夜(今なにを言っても届かないな。まあ、冷静になれば明け渡すだろ)

 

 

 統夜はこのテンションのロゼ=リアだと、冷めるまでなにを言っても聞く耳を持ってもらえないと判断した。

 なので、落ち着くまでしばらくつきあってあげることにする。

 

 

統夜「わかったよ。確かにこたつはいいものだしな。ロゼ=リアが自分のものにしたくなっても仕方がない」

 

ロゼ=リア「ですわ!」

 

統夜「それで相談だけど、俺もその終の棲家に住まわせてもらってもいいか?」

 

ロゼ=リア「ほへっ!?」

 

統夜「一人で住むより、二人で住んだ方が暖かいだろ」(なにより、寒いから俺もこたつに入りたい)

 

ロゼ=リア「……」

 

統夜「駄目か?」

 

ロゼ=リア「し、しかたありませんわね。特別ですわよ!」

 

統夜「ありがとう」

 

 

 礼を言うと、統夜は「うー、さむさむ」と口にしながら、こたつへ入った。

 

 一方ロゼ=リアは、先ほどのテンションとはうって変わり、静かなものである。

 

 座っている統夜からは、頭だけ出しているロゼ=リアの顔をうかがい知ることはできない。

 

 

ロゼ=リア「ねえ、トーヤ」

 

統夜「ん?」

 

ロゼ=リア「今度、改めてわたくし達の終の棲家を探しに行きましょうね」

 

統夜「そうだな」

 

ロゼ=リア「ふふっ、約束ですわよ」

 

統夜(こたつ、ホントに気に入ったんだな)

 

 

 ロゼ=リアが冷静になってきたことを感じた統夜は、のんきにそんなことを思うのであった。

 

 その後本当にこたつを買いに行ったのかは、エンディングのフラグが立っているかどうかで変わるんだってさ。

 

 

 エピソード その1 終わり



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ヒロインズエピソード 02 感動と料理

 

──感動──

 

 

 これは、ダルタニアスの一行と共に日本へ戻ってきたあとの話である。

 

 

???「ブー」

 

???「ぶー」

 

統夜「?」

 

???「ブー」

 

???「ぶー」

 

 

 ビルドベースの裏。

 そこでなにやら声がすることに気づいた統夜は、そちらへ足をむけた。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「ぶー。ふふっ」

 

 

 そこには、笑顔でトン助を撫でるシャナ=ミアの姿があった。

 ブーと鳴くトン助にあわせ同じく声をかけるその姿は、二重奏を奏でる歌のようであり、とても楽しそうである。

 

 ちなみに、トン助とはダルタニアスのパイロット、剣人と共に生活していた戦災孤児の次郎のペットである豚のことである。

 彼等が日本に帰ってきた時、一緒に連れ帰ってきた、ダルタニアスのマスコット要員だ。

 

 

シャナ=ミア「あ、トウヤ」

 

 

 誰かが近づいた気配を感じた彼女は顔をあげ、そこにいた統夜を見てまた笑顔を浮かべる。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「ふふっ。見てくださいトウヤ。可愛いと思いませんか?」

 

 

 気持ちよさそうに頭を撫でられるトン助を見せる。

 

 

統夜「そうだな。俺も撫でさせてもらってもいいかな?」

 

シャナ=ミア「もちろんです。ですよね?」

 

トン助「ブー!」

 

シャナ=ミア「よいそうです!」

 

統夜「ありがと」

 

 

 許可を得た統夜も、トン助の頭を撫でる。

 

 

トン助「ブー」

 

シャナ=ミア「喜んでいますよ!」

 

 

 撫でられ、嬉しそうな声をあげたトン助に、シャナ=ミアも嬉しくなる。

 

 

シャナ=ミア「地球の生き物は、どの子もとても素晴らしいですね。多種多様な個性を持っていて、みんな生き生きしている」

 

統夜「そうだな」

 

 

 トン助を愛でながら、シャナ=ミアはしみじみと思う。

 

 シャナ=ミアは、元々フューリーが生活していた星系の生き物を知らない。

 情報としては知っているが、実際に見たことも触れたこともない。

 

 なぜなら彼女は、フューリーが大戦で敗北し、40億年前の地球に到着して地球に生命の種をまき時を待ち、40億年後新たに活動をはじめてから月の中で生まれた新しい世代だからだ。

 月の中で育ち、統夜に月から連れ出されるまで、月の外を伝聞以外知らずに生きてきた。

 

 ゆえに、彼女にとって地球とは、驚きの宝庫。生で見るものすべてが新鮮で、刺激に満ちたものばかりなのである。

 それは、今、この時も続いている。

 

 

シャナ=ミア「まだまだ、地球には私の知らないことばかりです」

 

統夜「確かにな。俺もまだまだ知らないことばかりだし。そうだ、今度動物園にでも行こうか? そこならさらに動物を見れるし」

 

シャナ=ミア「はい! ぜひ!」

 

統夜「せっかくだし、お前のご主人様も誘おうか。やっと日本に戻ってきたことだし、他の小学生とも一緒の方が楽しいだろうしな」

 

 

 お前のご主人様というのは、トン助の飼い主でもある次郎達のことである。

 他にもロンド・ベルに参加しているパイロットの関係者の中に子供は多い。

 

 それらの子のことを統夜は気にかけたのだが……

 

 

シャナ=ミア「むー」

 

統夜「ん?」

 

シャナ=ミア「トウヤは、意地悪です」

 

統夜「え、なんで!?」

 

 

 ぷくーっと頬を膨らませるシャナ=ミア。

 

 なぜか、彼女の受けは悪かった。

 不思議である。

 

 こういう時はなぜか全然サイトロンも働かず、察しが悪いのは仕方のないことである。

 

 

シャナ=ミア「でも、まあ、しかたありませんね。トウヤ、約束ですよ」

 

統夜「ああ。必ず行こうな」

 

シャナ=ミア「はいっ!」

 

トン助「ブー!」

 

 

──おまけ──

 

 

・裏話

 当初シャナ=ミアと戯れているのは猫の予定だったが、ちょうどトン助がいたのでそちらに変更となった。

 

 

──料理──

 

 

 これは、テンカワ夫妻がロンド・ベルに合流してからのエピソードである。

 

 

統夜「……」

 

 

 場所は、食堂。

 そこにいるのは、無言の統夜。

 

 彼の前には、一つの料理。

 

 小さく噴き出した脂汗もそのままに、統夜はハシを握る手に力をこめる。

 

 その姿をじっと見つめる人影が三つ。

 ミスマル改めテンカワ・ユリカと、ナデシコCの艦長であるホシノ・ルリ。

 

 この二人は、真剣な眼差しで統夜を見ている。

 

 そして三人目。この不思議な光景に首をひねるクド=ラがいた。

 

 

統夜「……!」

 

 

 二人の視線に耐え切れなくなったのか、統夜は意を決して目の前の料理にかぶりついた!

 

 

統夜「っ!」

 

 

 目を見張る。

 

 がたっ!

 

 二人の視線も強くなる。

 

 

統夜「……美味しい」

 

ユリカ「やったー!」

 

ルリ「ぐっ!」

 

 

 ユリカが飛び上がって喜び、感情をあまり表に出さないルリがこぶしを握って喜びの姿勢を見せる。

 

 そう。この料理を作ったのはユリカである。

 

 第一次地球圏争乱の時には食べた人を医務室送りにし、テンカワ・アキトと結婚した第二次地球争乱時には野菜を切るくらいは可能となった彼女が、ついに人をノックダウンさせず、舌をうならせる料理を作ることに成功したのだ!

 

 そして、この経緯をすべて目の前で見て知っている統夜だからこそ、ユリカ製の料理を口に運ぶのを躊躇するのも当然である!

 

 

統夜(気軽に頼まれごとを引き受けるんじゃなかったと後悔したけど、よかった!)

 

 

 時間外にたまたま食堂を訪れ、ユリカに頼まれごとをされ、安請け合いした結果が冒頭であった。

 

 

統夜「本当によかった……!」

 

クド=ラ「どうしてそんなに喜んでいるわけ?」

 

 

 そうした事情を全く知らないクド=ラは、一人この感動を理解できない。

 

 

統夜「そりゃ喜ぶさ……」

 

 

 統夜がさっき説明した経緯をクド=ラに話した。

 

 

クド=ラ「ふーん。別にそこまで必死にならなくてもよかったんじゃない? そのアキトって人は料理人なんでしょ?」

 

ユリカ「確かにそうだね。アキトの料理はおいしいもん! でも、それでもね、私が作った料理を食べてもらいたかったの!」

 

クド=ラ「よくわからないなあ……」

 

ユリカ「ちょっと考えてみて。美味しい料理を食べてもらって、美味しいと言ってもらえる姿を! アキトに美味しいって言ってもらえた姿を!」

 

ルリ「この場合は、自分がそう言ってもらいたい人のことですね。アキトさんを想像する必要はありません」

 

 

 ルリがフォローを入れる。

 

 

クド=ラ「料理を食べさせたい人ー?」

 

 

 ほわほわーっと想像してみた。

 ある奴がなぜか思い浮かんだ。

 

 

クド=ラ「い、いないわ!」

 

統夜「?」

 

ユリカ「そう。ならいいわ!」

 

ルリ「いいんですか?」

 

ユリカ「いいのいいの。ともかくルリちゃん。冷めないうちにこれをアキトに食べてもらわなくちゃ!」

 

ルリ「あ、そうですね」

 

ユリカ「じゃ、私達はもういくね! 味見、ありがとう」

 

ルリ「はい」

 

統夜「どういたしまして」

 

ユリカ「あと、がんばって、クド=ラちゃん!」

 

クド=ラ「意味がわからない!」

 

 

 そうして二人は、料理を持って勢いよく食堂から駆け出して行った。

 

 

ユリカ「アキトー!」

 

統夜「……あ」

 

 

 そして、気づく。

 そのノリでそのまま迫ったら、間違いなく警戒される。と。

 だってこの勢い。前に医務室送りにした時と同じノリだから。

 

 そう思い、フォローするため追いかける統夜であった。

 一応ルリがついているが、二人いた方が説得しやすいと思ったからである。

 

 食堂に一人取り残される、クド=ラ。

 

 

クド=ラ「もう。なんなのよあの人は……」

 

 

 実はわかっているのか、いないのか、本当にわからない女である。

 

 

クド=ラ「そんなこと、ないんだから」

 

 

 ただ、その時、クド=ラの脳裏にあることがひらめいた。

 料理、医務室送り。そういう理由がある。

 

 ピンときた!

 

 

クド=ラ「これだ!」

 

 

 なにかを思いついた彼女は、行動をはじめた。

 

 

 …………

 

 ……

 

 

クド=ラ「そいうわけでシウン・トウヤ、今からお前をノックダウンしてあげるわ!」

 

統夜「え? どういうこと?」

 

クド=ラ「ふふふっ。目の前にボクの作った料理があるでしょう?」

 

統夜「ああ。出来立てだな」

 

クド=ラ「それを食べてノックダウンされるがいいわ!」

 

統夜「だからどういうこと!?」

 

クド=ラ「ふふっ。ボクは気づいた。あの時テンカワ・ユリカがなぜがんばれと言ったのかを。すなわち、この料理でお前をノックダウンし、復讐をとげろということなの! あんたはボクの復讐につきあうと言ったわね!」

 

統夜「確かに言ったけど……」

 

クド=ラ「つまり、この料理から逃げられないということ! 我が復讐の時来たれり!」

 

統夜「言ったけどさ……」

 

 

 なので、拒絶するつもりはない。

 そもそもせっかく作ってくれた料理を食べないという理由もなかった。

 

 

統夜(そもそも断る理由もないしな)

 

クド=ラ「観念したようね。さあ、ノックダウンするがよい!」

 

統夜(見た目も悪くはない。でも、口ぶりからしてものすごくまずいのか?)

 

 

 席に座って、料理を眺める。

 

 立ち上る湯気と匂いに刺激的なところはない。

 この前にユリカの食べ物騒動があったゆえ、あれクラスの代物かと思い思わず警戒したが、そうではないようだ。

 

 あれよりひどいものはそうないだろう。

 そんな楽観的な考えを巡らせながら、統夜は料理を口に運んだ。

 

 ぱくっ。

 

 

統夜「……っ!」

 

 

 統夜に電撃走る。

 

 

統夜(普通に美味しいー!)

 

 

 料理は普通に美味しかった。

 むしろ普通より美味しかった。

 

 

統夜(え? でもこの場合、どうリアクションすればいいんだ? どういう意味のノックダウン?)

 

 

 思わず戸惑う。

 彼女の口ぶりから言って、初期ユリカのような惨状を想定したのだろう。

 だとすると、この味では到底望めない。

 

 それとも素直に美味しいと認めてしまっていいのだろうか?

 

 

統夜(俺はどう反応すればいいんだこれは。素直に美味しいと言えばいいのか? それとものたうち回るのが優しさか? わからない。教えてくれサイトロン。俺はどんな反応を返せばいい!)

 

 

 ワクワクと結果を待つ彼女を前に、統夜は祈る。

 だが、こんな時に限ってサイトロンはなにも教えてはくれなかった。

 

 統夜にできることはただ、時間を引き延ばすために食べ続けることだけだ。

 

 

統夜「……」ぱくぱく。

 

クド=ラ「ふふふっ。言葉もないようね! でも、全部食べるまで許さないから!」

 

 

 無言で食べる統夜に満足したのか、喜びの顔を浮かべる。

 

 

統夜(あ、これでもいいのか)

 

クド=ラ「えへへ」

 

 

 料理を食べる統夜を見て嬉しそうな彼女に、統夜は考えるのをやめ、食べることに集中するのだった。

 

 クド=ラの復讐は、まだまだ終わらない!

 

 

 エピソード その2 終わり



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ヒロインズエピソード 03 イヤホンと夜食と文化祭

 

──イヤホン──

 

 

 これは、碇シンジが仲間になってすぐのお話である。

 

 

カティア「あれ? 統夜君」

 

統夜「ん?」

 

カティア「ポケットからヒモが出てるわ。なにかに引っ掛けたら危ないわよ」

 

統夜「ヒモ……? ああ、確かに」

 

 

 言われ、出ているヒモに気づいた統夜は、ポケットの中からそれをとりだした。

 とりだした物は、携帯型の音楽プレーヤー。

 

 カティアが見つけたのは、そのイヤホンコードである。

 

 改めて統夜は、コードをまとめる。

 

 

統夜「ありがとう。引っ掛かっても落ちるのはこれだったろうけど、落として壊れたらショックも大きいからな」

 

カティア「いいのよ。でも、今まで持っていなかったわよね」

 

統夜「ああ。つい、懐かしくなって昨日探してきたんだ」

 

カティア「懐かしくて?」

 

統夜「この前入ったシンジがポータブルカセットレコーダーを持ってたろ? それを見てさ」

 

カティア「ああ、確かに彼も、だいぶ古いのを持っていたわね」

 

 

 それは、印象的なものだった。

 シンジが外と自分とを隔絶するかのように、装着していた代物だからだ。

 

 

カティア「少し、心配よね。彼」

 

統夜「……俺は、あまり心配していないかな」

 

カティア「どうして?」

 

統夜「俺も、シンジと似たような経験があるからさ」

 

カティア「え?」

 

統夜「俺もさ、父さんが事故で死んだとなって、知り合いのところに預けられたことがあるんだ」

 

 

 統夜の父であるエ・セルダ=シューンは地球とフューリーの未来のため、死を偽装して姿を隠したことがあった。

 母は彼が幼いころに病でなくなっており、統夜はその時、天涯孤独の身になったのである。

 

 

統夜「その時、俺もシンジみたいに人が怖くなって、周囲から少し距離をとっていたんだ。シンジと同じく、これで耳を塞いで」

 

 

 と、統夜はさっきとりだした携帯型音楽プレーヤーをもち上げる。

 

 

統夜「高校に入って、一人暮らしをはじめたころには多少マシになって、これを使うことはなくなったけど、それでも一人でいることの方が多かった……」

 

 

 そうした中、はじまったのが第一次地球圏争乱だ。

 

 

統夜「でもそこで、俺はお前達に出会った。弓教授と、光子力研究所のみんなに。分艦隊のみんなにあった。そこで俺は、変われた。これを逆に、懐かしいと思えるくらいに」

 

カティア「……」

 

統夜「ここには、変われた俺がいる。変えてくれたみんながいる。だから、きっとシンジも大丈夫だよ」

 

カティア「そうね。統夜君がそう言ってくれるなら、私も安心だわ」

 

統夜「それに、こうして心配して気にかけてるカティアもいるしな。安心だ」

 

カティア「わ、私をもち上げてもなにも出ないわよ」

 

統夜「そうか?」

 

カティア「そんな大したことできた覚えはないもの」

 

統夜「そうでもないと思うけどな。俺は、いつも助かってる」

 

カティア「そ、それは、ありがとう」

 

統夜「ここで礼を言うなら俺の方じゃないか?」

 

カティア「そうでもないわよ。私だって、いつも統夜君には助けられているもの」

 

統夜「そうか?」

 

カティア「そうよ。だから、お互い様ね」

 

統夜「そっか」

 

 

 二人は顔を見合わせ、笑いあった。

 

 

カティア「ところで、その中にはどんな曲が入っているの?」

 

統夜「ん?」

 

カティア「心配事がなくなったら、気になって。そのころの統夜君が、なにを聞いていたのか」

 

統夜「ええと、なにを入れていたっけな。そもそも曲名を言って、カティアが知ってるか……」

 

 

 プレーヤーを動かし、中身を確認しようとする。

 昨日ひさしぶりに引っ張り出してきたものだが、充電は切れておらず、問題なく起動を果たした。

 

 

カティア「確かに、曲名を言われてもわからないかも。でも……」

 

 

 カティアが、イヤホンの片方を手にした。

 

 

カティア「一緒に聞かせてもらえれば、問題ないわ」

 

統夜「え?」

 

カティア「聞きながら名前を教えてもらえれば、手間が省けるでしょう?」

 

統夜「そりゃ、省けるけど……」

 

カティア「駄目かしら?」

 

統夜「駄目じゃないけどさ……」

 

カティア「変な統夜君ね」

 

 

 二人は、イヤホンから流れる曲を聞きはじめる。

 当然だが、その距離は、肩を寄せ合うほどに近い。

 

 

統夜「……」

 

カティア「……」

 

統夜(やっぱり近い。近いって!)

 

カティア(ちょっと大胆だったかしら)

 

 

 二人で平静を装いながら、イヤホンから流れる音楽を聞き入ったそうな。

 

 

──夜食──

 

 

 これは、期間を指定しないエピソードである。

 

 夜。

 消灯時間を過ぎた今は、当直の者達以外はおやすみをして明日へ備えなければいけない時間である。

 

 そんな中、休んでなければいけない筆頭のパイロットの一人である統夜は、夜中目がさえた上、お腹もすいたので自動販売機のコーナーにてカップ麺をこっそり食しているのだった。

 

 

統夜「なんだろうな。この、夜中に隠れて食べるカップ麺てのは、どうしてこんなに美味しいんだろう……」

 

 

 ちゅるちゅると、麺をすすりながら、統夜はひとりごちた。

 

 

???「あー、いけないんだー」

 

統夜「っ!」

 

テニア「もう消灯時間過ぎてるぞー。寝ないとダメだぞー」

 

統夜「なんだ、テニアか」

 

テニア「なんだとはなんだー」

 

統夜「いや、カティアだとこんな時間に食べちゃ駄目でしょと注意されただろうし、メルアには示しがつかないからな」

 

テニア「そうだね。テニアちゃんならそこの一番高いヌードルで秘密にしてあげるもん」

 

統夜「あれ? 結局誰に見つかっても駄目だな。むしろ叱ってくれるカティアが一番マシまである」

 

テニア「なぜに!」

 

統夜「そもそも秘密にするならテニアも一緒だろ。そっちも寝てなきゃダメじゃないか」

 

テニア「統夜くん。それは言ってはいけないことだよ」

 

統夜「なぜくんづけ」

 

テニア「なんかノリで」

 

統夜「ノリか」

 

テニア「というか統夜はなんでこの時間に起きてるの?」

 

統夜「いろんな博士からおススメの機械工学やロボット工学の本を借りたんだ。それを読んでいたらうっかりこんな時間になって眠れなくなった。だから、腹を膨らませて眠気を誘おうかと思ってさ」

 

テニア「へー」

 

統夜「サイトロンがあるからって、やっぱり基礎や理論を理解していないと意味がないからな」

 

 

 サイトロンがあれば、そこにあるものの構造や使い方は理解できる。

 だが、それを実際に自分で作ろうとする時、そこになにもない状態ではサイトロンも教えてくれない。

 

 知ろうとするものが、なにを知りたいのかすらわからなければ、知りたい情報も引き出せないのだ。

 

 ゼロからなにか新しいものを生み出すためには、それ相応の知識が必要なのである。

 

 

テニア「あー」

 

 

 テニアもサイトロンをあつかえるので、それに心当たりがあり声をあげた。

 サイトロンは相互理解を促進させるが、万能ではないのだ。

 

 

統夜「ものを作るってのは難しいよな」

 

テニア「だね」

 

統夜「それで、テニアは?」

 

テニア「ん? なにかね?」

 

統夜「いや、テニアはなんでこんな時間に?」

 

テニア「あー、それ聞いちゃう? 聞いちゃうかー」

 

統夜「どうせだしな」

 

テニア「聞いて驚くなかれ。なんとただお腹がすいただけなのだ!」

 

 

 まいったか! と胸をはった。

 

 

統夜「なんてこった。負けた……」

 

テニア「はっはっは」

 

 

 一体なんの勝負をしているのよ。

 カティアがいたら間違いなくそう言っていただろう。

 

 

テニア「まー、ここでアタシもなにか意識の高いこと言えればかっこよかったけど、そんな見栄はってもしかたないしね」

 

統夜「そうだな。素直なのはいいことだ。それはテニアの美点だと思う。ただ……」

 

テニア「おっと。この時間に食べたら太るとか言い出したら許さないよ。それ以外ならばーんと言いなさい!」

 

統夜「……」

 

テニア「よろしい!」

 

統夜「なにもなくこの時間に食べるのは体に悪いぞ」

 

テニア「言ったー。言ってくれたなー」

 

統夜「太るとは言ってない。体に悪いと言っただけさ」

 

テニア「屁理屈をー」

 

統夜「自覚したなら我慢しよう」

 

テニア「無理! 目の前でそんないい匂いされたら無理ー!」

 

統夜「しかたないな。なら、俺の半分食べるか?」

 

テニア「はへっ?」

 

統夜「今食べると体に悪いと言った手前、俺もこれを全部食べるのもどうかと思うし」

 

テニア「い、いや、それはどうかと、アタシは思うなー」

 

統夜「遠慮するなよ。このままだと残すことになるし」

 

 

 テニアは統夜を見る。

 カップ麺を見る。

 統夜を見る。顔を。

 カップ麺を見た。

 統夜を見る。その唇を……

 

 

テニア「と……」

 

統夜「と?」

 

テニア「統夜のバカー!」

 

 

 テニアはその場から逃げ出した!

 

 

統夜「……流石に、人が食べたのは嫌だったか」

 

 

 悪いことをした。

 そう思う統夜であった。

 

 ……これは、サイトロンだけに頼っていると、いざという時ダメになるぞ。という教訓も秘めた小話なのだ。

 だから都合悪くサイトロンが働かなかったのである!

 

 わかったかな!?

 

 

 ちなみに残すのももったいないので、結局全部食べたそうな。

 

 

──文化祭──

 

 

 これは、文化祭の時に挿入されるお話である。

 

 統夜達の高校での文化祭において、クラスの出し物はメイド喫茶。いわゆる飲食店である。

 

 メイド喫茶となった理由は、統夜や甲児達ロンド・ベル隊に参加していて準備に参加できない者でもメイドの恰好をすればそれだけで元がとれ、厨房担当なら学校以外でも練習できるなど、当日時間を作るだけで出し物に参加できるからである。

 という建前。

 

 本音は本編で甲児とクルツが語っていたように、可愛い女の子のメイド服姿が見たいというだけだが!

 

 ちなみにカードゲームでメイド服姿を披露した三人娘(カティア、テニア、メルア)以外にもフルメタルパニックのテッサとマジンカイザーの弓さやかも原作中でメイド姿(さやかはメイド風の衣装だが)を披露していたりする。

 

 ロンド・ベルに参加し、準備に加わることのできない統夜は、自炊をしたことがあるという理由から、文化祭当日は調理係として参加することになっていた。

 裏方として材料を運んだりするのは甲児やボスがやるので、役割分担でもある。

 

 

統夜「……意外に忙しいな」

 

 

 担当時間内、受けた注文を次々とさばいていく中、統夜は思わずつぶやいた。

 

 それもそのはずで、この時ちょうどヒロイン三人娘やシャナ=ミアにロゼ=リア、テッサ達が給仕を担当していたからである。

 見目麗しい彼女達が表に出ているのだから、このメイド喫茶がはやらないわけがなかった!

 

 

統夜「なのに調理担当が今俺しかいないって、完全に配分間違えただろ。誰だこれ配置設定したの」

 

 

 さらなる注文が押し寄せ、手一杯になりそうになれば、愚痴も出るというものである。

 

 

メルア「統夜さん、調理のヘルプに入りますね」

 

 

 メルアはお菓子を自給自足するようになったので、喫茶の料理もお手の物である。

 むしろ文化祭の練習と称して、統夜が作るのを指導し、一緒に食べていたまであるくらいだ。

 

 

統夜「助かった。今なら少しくらいのつまみ食いも見逃すぞ」

 

メルア「ふふっ。それなら心配にはおよびません」

 

 

 得意げな顔をしたメルアは、メイド服のポケットに手を入れた。

 

 

メルア「こうしてつまみ食いをするために昨日から準備をしておきましたから!」

 

 

 そう、彼女は自信満々にポケットの中から喫茶であつかっているお菓子類のミニ版(つまんで一口で食べられるサイズ)をとりだした!

 万全です! と、その顔は満点の笑顔である。

 

 

メルア「これでつまみ食いをせずに堂々とつまみ食いができます! だから見逃してもらう必要はありません!」

 

統夜「確かに怒る理由はないなぁ……メルアは、凄いな」

 

メルア「えへへー」

 

 

 そこまでしてつまみ食いをするメルアに呆れつつも、その情熱には感心する統夜であった。

 

 

統夜「まあいい。そっちの注文、頼めるか?」

 

メルア「はい。まかせてください!」

 

 

 こうして二人は、手分けして調理にとりかかった。

 狭い厨房の中、二人は息の合った動きでてきぱきと注文を完成させてゆく。

 

 

統夜「メルアこっちの仕上げ頼む」

 

メルア「はい。統夜さんはこれのカットを」

 

統夜「まかせろ。2番テーブル、できた」

 

メルア「こっちは四番です」

 

さやか「息がぴったりね。二人共」

 

 

 できた品物をトレイに乗せたさやかが関心したようにうなずく。

 

 

統夜「そりゃな」

 

メルア「二人で一つの機体を動かしてますから!」

 

テッサ「では、二人でなんとかなりそうですね。追加の注文です」

 

メルア「まかせてください!」

 

統夜「ついでに、これを5番テーブルに」

 

テッサ「はい」

 

メルア「私が追加を担当しますね」

 

統夜「まかせた」

 

 

 さらに二人で注文をさばいてゆく。

 一方教室では、問題を起こした客をボン太くんが制裁している音が響いていた。

 

 

メルア「ふふっ」

 

 

 手を動かしながら、メルアが楽しそうに笑った。

 

 

統夜「どうした?」

 

メルア「なんだか、みんなでお店をやるの、楽しいな。って思って」

 

統夜「確かにな。忙しいけど、やりがいはある」

 

メルア「そのうちまた、みんなでこんなことができるといいですね」

 

統夜「そうだな。そのためにもこの戦いを一刻も早く終わらせないといけないな」

 

メルア「そうですね」

 

統夜「まあ、それより前に、まずはこの戦場を無事切り抜けないとな」

 

メルア「はい!」

 

 

 ふふっ。と、二人は視線をあわせず笑いあった。

 

 

 目が回るような忙しさ。

 でも、とても楽しい一日でした!

 

 またこうして、一緒に戦い以外のことができるといいな。

 

 

 そのために彼等は、明日も戦い続ける。

 

 地球の平穏を取り戻すために!

 

 

 ヒロインズエピソード その3 終わり



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