ぼうけん (塗り絵のバランスボール)
しおりを挟む

はじまり

小説を書くのは初めてです。拙く見苦しいものになると思います。
王道展開っぽい物が書きたくなったので書きます。


草原の広がる道中。

「俺たちの最終的な目的は魔王を倒すことだ。」

「うん。」

「そのためには、レベルを上げながら魔境に向かわなきゃならない。」

「そうだね。」

「今レベルいくつ?」

「じ、16…」

「じゃあ次の街までに20だな。」

「えぇ!?ここまで3年かかったんだよ!?僕には無理だって…」

「そんなに卑屈になるなよ。それに、普通にトレーニングするよりも魔物を倒したほうが早いしさ。大丈夫だって!」

「そうかな…」

「そうだよ!初めてなんだろ?あそこのスライムとか、いいんじゃないか?」

そう彼が指差した方向には、世間一般が想像するような、大きくて丸い動くゼリーみたいなやつがいた。

「ど、どうやるの?」

「お前、魔法使うんだろ?ティーアでも打ったらどうだ?」

ティーア。

火属性の魔法だ。確かにスライム程度なら倒せるだろう。

「やってみるよ。」

「おう!がんばれ!」

「アンフェルカンス ティーア!」

詠唱とともに、手のひらに熱が集まる

火の玉が生まれ、だんだん大きくなっていく。

「アフィア!」

最後の詠唱とともに、火の玉が放たれる。

「ぴぐぇ」

断末魔と共にスライムは形を失った。

スライムの残骸の水たまりができていた。

どうやらスライムは水でできているらしい。

「やったな!」

彼が駆け寄ってきた。

「うん!今まで鍛えてきたのはなんだったんだろうってくらい経験値が手に入ったよ!」

「そんなこと言うなって。今までのトレーニングだって無駄じゃないだろ?」

「はは、そうだね。」

 

その後も順当に経験値稼ぎは進んだ。

いつの間にか僕のレベルは19になっていた。

 

…そういえば

「そういえば、君のレベルはいくつなの?」

「俺は42だよ。」

「うへぇ…一生かけても追いつけそうにないや。」

「追いつけるさ!なんたって俺の親友なんだからな!」

「…関係ないんじゃない?」

「いいんだよ!細かいことはさ!とにかくお前は俺の親友で相棒だ!お前だって強くなれる!それでいいじゃないか。」

「そうだね!」

彼の性格は昔と変わっていなかった。

それがわかっただけで僕は安心した。

安心したし、嬉しかった。

 

次の街が見えてきた頃、僕のレベルは20に到達していた。

本当に彼に追いつけるかもしれない。

本気でそう思った。

 

 

-石造りの街・クレプ-

クレプは主に石で街の建築物ができている。

近くにはクリプミン山があり、そこは有数の採石場となっている。

 

「装備整えるか。お前少し動きやすいだけの服装だもんな。」

「あはは…これしかなかったからね。」

会話を交わしながら、店に入った。

さすがは石の街というべきか、装備さえ石でできている…

石の甲冑などという珍妙なものまであった。

「魔法使いだし、杖とかか?」

「そうなのかな…効果、見てみようかな。」

近くにあった黒い杖の効果を見る。

「なにこれ!?すごい!魔法の効果全部1.5倍だって!

 

…たっか…凄い高かったよ…」

「金なら国からたっぷり貰ってるし、さっきスライム倒して手に入ってるだろ?」

「じゃあ買えるか!買うよ!」

「じゃあ俺他のとこ見て回ってるから。」

「うん!店員さん!これ欲しいです!」

近くにいた店員の人が駆け寄ってきた。

「スワトグリマーの杖ですね!15000Gになります!」

「はい!ええっと…」

お金を取り出そうとしていると、そこへ店長が来た。

「あなたは勇者様の仲間じゃねぇですかい?」

「そ、そうですけど…」

「やはり!ここは半分の金額で結構ですので!」

「い、いや、えっと…」

「いいんじゃないか?店長さんがこう言ってくれてるんだし。」

いつの間にか彼が戻ってきていた。はやいな…

「そうだね…じゃあ、お願いします!」

「はい!まいどあり!」

 

そのあと、移動速度と耐久の上がるちょっとしたローブやら他にも装備全般を揃えた。

「よし!いい感じだな。様になってるぜ!」

「へへ…ありがとう。」

少し恥ずかしいが、悪い気分ではなかった。

 

「じゃあ今夜はこの宿にでも泊まるか!」

「そうだね。」

そこはやはり石造りの宿だった。

不規則なはずの石が、ぴっちり間を詰められて綺麗に並んでいた。

確かどこかとんでもなく遠い国の建築物にもこんなのがあったような気がする。イシ…そう、思い出した。

「イシガキみたい」

「なんだそれ?」

「すごく遠くの国の建築物だよ。詳しくはわからないけど…」

 

翌朝

村は騒然としていた。

「どうしたんですか。」

彼が村の人に聞いた。

「突然国の軍隊が現れて、『来月から納税額を2倍にする。』と言い出したものだから、今町長さんがなんとかならないか話し合ってるところだ。」

「軍が?なんでわざわざ軍の人間をよこしたんでしょう?」

「俺に聞かれても分からねぇよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「ど、どうしたの?」

「軍が横暴なことを言い出したから、町長さんが掛け合ってるそうだ」

「えぇ…どうしたら…」

「俺たちはなにもできないよ。この街と国との問題だからな…」

「そんな…」

……

「出発だ。」

「うん…」

僕たちは、後味の悪いまま、次の街へ向かった。




つづく
といいなぁ
そのうち僕と彼の容姿描きます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔物は、怖い。

怖い。
怖いのは、悪い奴らだから。
悪いのは、おれたちの命を脅かすから。
ではなぜ、おれたちは命を脅かされているのか。


僕ら勇者御一行は、次の街への道の途中にある、森に入った。

森の名は、特にない。普通の原生林だ。

 

「ギェェェ!」

 

突如、先行していた彼と、その後ろについていた僕との間に、ゴブリンが現れた。

 

「うわっ!?」

 

思わずびっくりして退いてしまったが、攻撃の準備をする。

「アンフェルカンス…」

その時。

「セダオイマエノラ…」

!?

「ウクゾド、キタエ…セオイマエノラ…」

「な、なに…?」

「ギャアアアアア!」

棍棒を振り上げ、こちらへ走ってくる。

さすがは魔物、雑魚といえど速い。

「ひっ…」

萎縮してしまった。

いや

躊躇った。

攻撃を、躊躇った。

なぜ?

こいつは魔物だ。

敵だ。

殺すべき、相手だ。

 

 

気づけば、そいつはもう目の前まで来ていた。

「はっ!」

彼の声が響き、その瞬間にはもうそいつは両断されていた。

死骸は間も無く消えた。

 

「大丈夫か。」

優しい声。

「うん…」

 

あいつは、僕に何を伝えようとしてたんだろうか。

 

 

-木の街 ハウト-

さっき通った森に近く、豊富な木材が建築などのさまざまな分野に用いられている。

が、森林の減少が進み、文化が衰退しつつある。

問題解決のため、植林などの工夫がなされているが、解決には長い時がかかりそうだ。

 

「どの家もログハウスみたいで、キャンプ場にきてるような気分だな。」

「はは。昔一回家族ぐるみでみんなで泊まったよね。」

「それ懐かしいな。凱旋したら、みんなでもっかい行こう。」

「そうだね!」

 

装備屋でも、木製のものが多かった。

 

「すごい…木でできてるのに、剣も防具も他のに性能が劣ってない…」

「技術力の勝ちだな。」

「あんちゃんら、買ってくかい?」

おじさんに話しかけられた。

「じゃあ…この剣もらおうかな。」

「あい。まいどあり。」

彼が買ったのは、いたって普通の木の剣だった。

 

「それ、使えるの?」

「いーや、使えない。」

「じゃあなんで買ったの。」

「入ってなんも買わないのもバツが悪いだろ。」

「まぁ、そっか。」

そうこうしているうちに、今日泊まる宿についた。

ここも例に漏れず木の家。

木特有の柔らかい感触、暖かさを感じる一方、頑丈な構造になっている。やはりこの街は技術力が高い。

 

「はー!つかれた!」

「だな。丸1日歩きっぱなしだったからな。」

疲れた。でも、それよりも、

「ねぇ。」

「うん?」

聞きたい。

「魔物ってさ、なんかこう、さ。」

「なんだよ。」

魔物に

「生きてるん、だよね。」

感情は、あるのか。

「…うん、そうだな。」

なぜ、

「なんで魔物はさ、」

魔物は

「僕らを、殺そうとするの?」

その日、それ以上会話が進むことはなかった。

 

翌朝。

空は晴れやかでなかった。

曇天。

混濁したような、淀んだ雰囲気の中、僕らは街を出た。




なぜでしょうね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒトのため。

どうやら魔物は、おれたちが嫌いらしい。
だから、殺そうとするんだろうか。
なら、俺たちもお前らが嫌いだ。
お前らを殺すしかない。
ヒトが勝つために。


なぜこんなに気持ちの悪い気持ちなんだろう。

気持ち悪いんじゃないんだ。

今の気持ちが、何ともなく、気持ち悪い。

 

-海岸の街 バクスティーン-

潮風にさらされた中でも劣化しにくいレンガ造りの家々が建ち並んでいる。海岸の街というだけあり、海産物が名産だ。飲食店も心なしか他の街より多く、そのほとんどがシーフード料理を扱っている。

 

「「いただきます。」」

僕らは街の東側にある、シーコスという店で昼食を摂ることにした。

「うまいな。」

「うん、おいしい。」

心地よい潮風も相まって、ここ最近の戦いで荒んだ心が澄んでいくようだ。

「はー、お腹満腹。」

「ぷっ!なにそれ!」

「言ってみたかっただけ。じゃ、行こうぜ。」

「うん!」

 

町外れ、少し小高い場所にある展望台。

僕らはそこから夕日を見ていた。

「雲ひとつないな。」

「うん。綺麗。」

空を赤く染める煌々とした光は、心を凪いだ水面のように落ち着かせた。

考えてもわからない。

考えても無駄。

わかっている。

だけど、

「最近、考えずにはいられないんだ。」

「何を?」

「僕は…いや、みんな、人もモンスターも、現実が見えていないんじゃないかって。」

「哲学かよ。」

「僕には難しいことはわからないよ。でも、多分誰も何も知らないんだ。それは多分、誰も知らせてくれないからなんだ。」

「何言ってんだよ。ほら、もう暗くなる。行くぞ。」

気づけば、赤かった空は暗い青と白い点だけになりかけていた。

「うん。もう、眠い。」

 

宿に着いた。

レンガ…は他の建物よりは多用されておらず、粘土壁が主だった。

「なぁ。」

今日は、彼が話しかけてきた。

「なに?」

「お前が最近言うことは、難しくてわからんけどさ。」

「うん。」

「お前の考えてることは、相当スケールの大きいことなんだろうな。」

「そう…かも…」

「お前は、魔物を…」

ここからは、覚えていない。

寝てしまったようだ。

 

翌朝。

晴天だった。

しかし、街のみんなは騒然としていた。

海から魔物が這い上がってきたのだという。

そいつは、街から少し離れた洞窟に入っていったそうだ。

街の人も、長も、

「怖いから、討伐してくれ。」

そう言った。

僕は、みんなの生活を脅かすそいつを、やっつけてやろうと心に決めた。

 

「いこう。」

「あぁ。必ず倒す。」

僕らは洞窟へ向かった。

 

 

「海から上がってきたってのはお前か。」

彼がそいつに話しかける。

意思の疎通が可能か計っているのだ。

高度な知能を持つ魔物ほど厄介なものはいないからだ。

「ウ…ソウ、ダ」

「話せるな。なぜ、海から上がってきた?」

「オマエラ、ウミ、ヨゴス。スメナイ。

オマエラノセイダ。」

お前らのせいだ。

僕らのせいだ。

「そう…そうだったんだね。」

僕はそいつに歩み寄ろうとした。

「ギッ!オマエラ、オ、マエラ、マタ、コロソウ、ト、シテル。クルナ」

「あ…」

そうだ。

僕は、殺そうと決めたんだ。

殺そうと。

みんなの命を、脅かすこいつを。

 

いつ?

いつ、こいつがみんなの命を脅かしたのか。

こいつを殺すところだったのは、自分たちの方なのに。

 

「グガァァ!」

そいつは、口を目一杯開き、こちらを食おうとしてきた。

僕も彼も、容易に避けることができたが、僕は攻撃に転じることをしなかった。

「お前なんで戦わないんだ…よっ!!」

彼は剣を振り下ろし、そいつの右後ろ足を切り落とした。

「ガァァァァァァァァァ!マタ!コロス!オマエラ!コロス!」

「やめよう。」

「はぁ!?」

「こいつは、悪いことをしてない。」

「絶対これからする!こいつは街の人を殺すつもりだ!」

「そう、だね。」

「なんで!とっ!それがっ!わかっててぇっ!戦わないんだよっ!!!」

そいつが爪を振りかざすのを彼は剣で受け、生まれた隙を逃さずに着実にそいつの体力を削っていた。

「じゃあなんで、そいつは人を殺そうとするの?」

「そりゃ、ふっ!こいつが死にそうになったからだろっ!ひとのせいでぇっ!」

そいつの目に攻撃が命中した。そして、

「ググゴァ…」

と小さく断末魔をあげたそいつは地に伏し、やがて消えた。

「わかってるんじゃん。」

「は?何をだよ。」

「人の、せいだ。」

「だからってこいつを許そうとは思わないよ。俺は。」

「そっか。」

「そういうもんだよ。みんな。」

「そっ…か…」

 

洞窟を出て、街の長に討伐完了の報告をすると、街はすぐにお祭りのような空気感で包まれた。

 

僕らの心中とは裏腹に。




捉え方の違い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。