鉄兜のかぶき者 (デルタ2521)
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第零話 奇怪な男
その男の異様さは瞬く間に村中に響き渡り、どんなに鈍感な人間でも”鉄兜”の男を知っていた。
筋骨隆々を体現したかのようなその巨体は全身を緑色の見るからに丈夫そうだが不格好な深緑の服装で覆われ、顔も異様なガラスとゴムで出来たお面を被り、顔どころ表情すら判別不能であった。
担いでる背嚢はぎっしりものが詰まっているように見え、外側もスコップや寝具、水筒といった普段から野外での生活をしていることがうかがえるものを背負っており勘のいい人間はその男が兵士だと気づいた。
しかし、明らかにこの国の人間ではない。それは明らかであった
だが、誰もその事実に触れ、話しかけようとは思わなかった。
その男は見かけにはよらず非常に流暢だが、訛りのある日本語の標準語を話し、金をたんまりつめてある袋を宿の小娘に放り投げ、部屋をあてがってもらった。
「お客様、お食事のほうはどうなさいますか?」
「大丈夫だ、必要ない」
その男は金払いのいい男であったが非常に淡白であった。誰とも話そうとせず食事も取らずに部屋に引きこもり、鉄と鉄がぶつかりあう音が時折ふすまの隙間から聞こえるばかりで、外の人間には皆目彼が何をやっているか検討すらつかなかった。
「母さん、あの客なんなのよ。飯一粒も手をつけないし、お風呂が沸いてるて言ってもふすまを開けてすらくれないし気味が悪いわ」
「しいっ!バカ娘が余計なことを言うんじゃないよ!天狗みたいな格好をしてるけど銭払いはいいんだ、とって食うような男じゃないしせいぜい搾り取れるだけ搾り取っておけばいいのさっ」
宿屋の娘はその男の薄気味悪い気配に警戒心を示しつつも、日々の生活を支える銭のためにこの厄介な客を受け入れざる得なかった。むしろこの男は特に何か騒ぎを起こすわけでもなく、鉄の擦れる音以外は静かなものだったし、宿としてはむしろ好都合な存在だった。
しかし、事態が急変したのは深夜の時だった。
好奇心に押された宿屋の娘は思わず部屋を間違ったフリをして珍客の襖を開けた。
ふすまと木目がこすれる音とともに娘は背中に無数の銃槍や刃物による擦り傷、その上には透き通るような金色の髪の毛と青い目がついていた半裸のゲルマン人があぐらをかいて何か作業をしている最中であった。
口に異様に長く反っている犬歯を伸ばしながら。
「あ、すみません、あの」
娘は自分の愚かな行いに悔いる隙もなく、意識を失い気絶した。
「クソッタレが、危うくぶっ殺すところだったぜ」
ヘルマン・マイヤー
それがこの元バイエルン第四歩兵連隊に所属していた人間”だった”頃の男名前だ
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第壱話 狂乱
「報告より鬼の数が多いじゃないかっ?!なんでこんなど田舎に30体以上もいるんだよおぉ!!!」
善逸は相変わらず泣きじゃくりながらも必死に鬼の攻撃をかわしながら、刀を降りつつ炭治郎に助けをこう。
少数の鬼の拠点があるとされ、周辺の村で女子供が行方不明となっていることから炭治郎と善逸、伊之助と他に数名の鬼殺隊で構成された討伐部隊は茂みや高い木々が生茂る森の中で思いもよらぬ大多数の鬼相手苦戦していた。
「大丈夫か善逸!?もう少しだけ持ち堪えてくれぇ!!!」
「無理だよおおおお!俺もう死んじゃうんだああ!!可愛い彼女もできないまんま惨めに死ぬんだああ!!」
「うるせえええ!それ以上騒ぐならぶっ殺すぞ!!!」
相変わらず伊之助は善逸を強い言葉で罵倒しながらも、善逸の周りの敵の首を2体とも切り落とし、更に猿の如く木々の枝を使った三次元的なアクロバティックフォームで雑魚の鬼を圧倒していた。
「お前らはその程度かあ!!クソガキのお遊びにもならねえぜ!!!」
そう言いながら今度は上空から重力の力を使い、足で鬼の頭を蹴り飛ばして脳の一部分が飛び出るほどの衝撃を与えて倒し、さらに別の獲物にも焦点を当てた。
「よしっ!見えた、隙が見える!!」
炭次郎も意識はせずともその冴たる嗅覚と”糸”を見抜き効果的かつ効率的にてきをなぎ倒して行った。どの敵も今までの恐ろしい敵とは雲泥の差ほどの鬼であり、それはその鬼があまり多くの人間を食っていたない証拠でもある。
その事実に少しばかり喜んでいる嬉しい気持ちと、それでもやはり食われてしまった子供やその遺族のことを想う悲しみと憎しみの複雑な感情が混じりながらも彼は斬った。
斬って、斬りまくり己の命が力尽きようとも妹の禰豆子を人間にもどし、鬼の脅威を取り除くことだけが彼の望みであった。
しかし、戦闘の途中彼は今までにない、異様な”匂い”に感づいた。
硫黄と火薬、そしてなんだかとても酸っぱい、とにかく今まで嗅いだことのないが恐ろしい匂いが近づいてることに気がついた。
人間ではない、かといって鬼と断言できるものでもない、だが危険な匂いなのは確かだ。
「善逸!!伊之助!!気を付けろ!!!!なんだかよく分からないけど、恐ろしい奴がきてる気がする」
「たんじろおおお!!なにそれそんなにやばいの!!僕死ぬの?!ねえ!!」
「うるせえ!!俺がぶっ殺してやるよ!!お前は指咥えてしょんべんたらしながら見学してな!!!」
しかし、炭治郎ですらその匂いの場所を特定できない、と言うよりも特定してもその動きが早すぎてあまりにも意味がなかった。
「たんじろうおお!なんかやばい音が聞こえる!!!鉄がこすれてガチャガチャいって鎧着てるみたいいいいいい!!!」
その瞬間、”奴”に気を取られていた善逸の背後に鬼が飛び出した。
そして鬼は死んだ。
鬼の後頭部には軍用スコップが減り込み、体の内外のありとあらゆる組織がめちゃくちゃにされスイカ割りのごとく頭部が破裂し、鬼は痛みも感じることなく息絶えた。
「は、ひ、ひいいいい!!!!」
善逸の目の前には天狗がいた。身長180cmの色白い青い目をした天狗が
「グーテンアーベント」
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第弐話 接触
鉄のこすれる音とは軍人特有の装備であるワイヤーカッターや手榴弾が擦れる音であった
やつは鬼にめり込んだスコップをさっとなぎ払い、炭治郎達を見つめる
もうあたりに鬼はいない、他にも鬼の”匂い”はあったはずなのに、あの鬼特有の腐った死の匂いは消え去り、代わりに硝煙の匂いが炭治郎を囲っていた。
「よお、アジアの黄猿ども、それにしてもその箱、なんだか親しみのある匂いだな、俺とおんなじ半端野郎の匂いがするぜ。」
「えっ」
そいつは突然禰豆子が入っているだろう箱について喋り出した、言葉はうまいがなんだかぎこちない、生まれた時から親もなく野生児であった伊之助とはちがったどこか不自由そうな喋り方、炭次郎はそもそも外国人という言葉を今まで意識したことすらなかったため彼が渡来人であることに気づくのに時間がかかった。
「きみっ!!名前は?!」
「お前こんな奴の名前聞いてどうすんだ!!とにかくぶっ殺せぇえええ!!!」
やはりどうしても敵を殺したい気持ちを抑えることのできない伊之助は他の多数の鬼の気配の消失がこいつのせいだとも知らずにのこぎりのような日輪刀を両手に抱えて突っ込んだ。
「くっせえ害獣風情が」
「待て伊之助!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん?!ごちゃごちゃ言うんじゃねええ黙ってろ!!!このクソみそがあああ!!!」
そいつはスコップを手放し丸腰で伊之助の日輪等をふわっと避けた。本来首元にあたり、食道をぶった切り骨を切断するはずだったノコギリ刀は空振りし、そのすきに男は伊之助の頭を掴んで鈍く不安な音が出るほどの強い衝撃を膝で与えた。まだ祖国ですらいまだに開発段階の軍隊格闘術であり、それはこの国の柔道や空手とは一線を画す”殺しの技”だ
「あがああ」
ああ、まただ。また頭だ
なんらかのデジャブを走馬灯のように感じた伊之助はその場で倒れた。
「いのすけえええ!!!!」
「ガタガタうるせーぞ、脳震盪だ。安心しろ殺しはしねえ」
「た、た、たんじろううううこいつやばいよ!鬼だよ!!悪魔だよおおおお!!!」
「そこの金髪野郎うるせえぞ!!白人でもねえくせに髪の色だけいっちょまえに金色になりやがって!!」
「こっれっは!!地毛ですうううう!!ハクジンとか訳わかんないこと言わないでくださああああい!!!!」
「わかったからもうしゃべんじゃねえ!!ピーチクパーチク女みたいに騒ぎやがって耳障りだバーカ!!」
「ま、まあ落ち着いて...」
「まあ、いいわ」
そう言いながら、倒れてる伊之助を若干気遣う仕草を見せつつも歩み寄るその男、奴はガスマスクを外しとうとう顔をあらわにした。
「わっ、やっぱり外国人だ」
「外国人、外国人言うんじゃねえよ一応お前らのコトバ、鬼以上に面倒なのに覚えたつもりなんだからさ。」
やはりイントネーションは消え去ることはできない
「ヘルマン・マイヤーだ、ペンツベルグ生まれのえっとなんだっけ、あ、そうそう、炭鉱一家の次男坊さ。」
だが、気になるのはその風貌であった、外国人だからと言う理由だけでは説明できないほどの青白い肌はあの蜘蛛鬼を思い出させる
炭治郎が自分のことを憐憫や恐れの表情で見つめていることを悟ったマイヤーは少しばかりため息をついてから口を開いた
「あ、なんだ知ってたんだ。そうだよ」
「俺もちょいとばかりいわゆる”鬼”が入っててね、お前らの言葉で言う舶来品の種ってわけさ、白だけにな
ぎゃはははは!!!」
面白くない、気絶している伊之助は別として、炭次郎も善逸も微妙な顔つきだ。
(うあーこいつも伊之助とは違うけど、頭がおかしいんだ...)
善逸の哀れみと困惑の表情がマイヤーの顔に刺さる、
「あ?俺の冗談が面白くねえのかてめえは」
「あったりまえだろ!!!オヤジギャグじゃねえか!!」
「すごいーい!外国人なのに冗談まで言えるなんて、えらいなあ、すごいなあ本当に努力したんだね!!」
(あ、そういえば炭治郎もおかしかったんだ)
「だろ?俺っち頭いいからなー!」
鬼の血が少しばかり混じっていながらも、真夜中の森で言葉を交わす一行はすぐさま仲良くなり、話し合いの結果なんと一緒に下山することになった
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