ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド 宵闇の黙示録 (放仮ごdz)
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第一話:目覚め

どうも、性懲りも無く新作を出した放仮ごです。知り合いの某作者さんとの談義でゼルダ関連のネタが集まってしまったので書くことにしました。曰くルーミアをブレスオブザワイルドに介入させたら面白いんじゃないか、と。

題名はそろそろ発売予定の厄災の黙示録にあやかりました。ゼルダ無双前作はプレイしているので結構期待してます。

では、楽しんでいただけると幸いです。


「…厄災ガノン、予想以上の代物だったのかー」

 

 

 厄災に襲われ、災禍に飲み込まれる城下町を見下ろして、憂い気な表情を見せる一人の少女。少女は空に浮かんでいて、大きな城の直上にて地上から己を狙ってくる数多の機械歩兵(ガーディアン)のレーザーを避けていた少女の周囲が暗闇に包まれ、ガーディアンは対象を見失って攻撃を中止。暗闇の球体はふよふよと浮いてその場を後にする。

 

 

「…私が、なんとかしないといけないのかー…」

 

 

 暗闇の中心で十字架の様なポーズをした少女は決意に満ちた表情を浮かべ、ふよふよと城下町を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから長い長い時を経て、ハイラルという名の大陸の「始まりの台地」にて。一人の少年が目を覚ます。ぼろい布の古びた衣服を身に包んだ彼の名はリンク。少女の声を聴いて目を覚ました彼は、シーカーストーンという板状のアイテムを手に、回生の祠から出てきた彼は、道なりに進んで奇妙な二人組に出会う。フードで顔を隠した老人と、小奇麗な黒い服を着た赤いリボンを付けた金髪の年端もいかない少女だった。鍋を囲んで食事をしていた二人に、少年は近づいた。

 

 

「ふぉっふぉっふぉっ。晩御飯はいつかの?」

 

「おじいちゃん、まだ昼飯食べたばかりじゃないのかー?」

 

「そうだったかの。さて…こんなところに人がいるとは珍しいのう」

 

「あなたたちは?」

 

 

 少年の問いかけに、笑顔を浮かべる老人に対して、何とも言えない表情を浮かべる少女。

 

 

「えっと、私のことが分からないならはじめましてー、でいいんだよね?私はルーミア。こっちは…えっと、私のおじいちゃん…なのかー?」

 

「そうじゃよ孫よ。わしはもうずいぶん長くここで暮らしている変わりもんのじじいじゃ。してお主。こんなところで何をしておる?」

 

「ここは?」

 

「問いに問いで返すとは。ルーミアと言い最近の若者は…まあいい、教えてやろう。此処は始まりの台地。遠くハイラル王国の発祥の地と言われている。百年前…その王国が滅んで以来放置された神殿がそこにある。今はわしら以外誰も寄り付かん忘れられた場所じゃよ」

 

「ところで少年、名前は何て言うのかー?」

 

「…リンク」

 

「おじいちゃん。リンク、このままだとふらふらどこにでも行って危なそうだからついていっていいかー?」

 

「おおよいぞ。好きにするといい。わしはわしで自由にするからの」

 

「いや、でも…」

 

 

 ついて来ようとする少女、ルーミアに少年、リンクはたじろぐ。

 

 

「きみ、ほっといたらすぐ死んじゃいそうだし、私が手伝ってあげるのかー」

 

「それは助かる、けど迷惑じゃないのか?」

 

「ううん。私も暇だったし、なにより…約束なのかー」

 

「約束?」

 

 

 黄昏るルーミアに首を傾げるリンク。もしかして、自分を導いてくれる声の少女と知り合いなのかと思い至る。

 

 

「えっと…よろしく、ルーミア?」

 

「よろしくなのだー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔物は悪い敵なのだ。背後から不意打ちするといいのかー」

 

「なるほど?」

 

 

 声に導かれるままにシーカーストーンの導く場所に向かっていた道中、小型の魔物ボコブリンと遭遇したリンクとルーミア。こちらに気付いてないボコブリンにこれ幸いとルーミアが助言をし、リンクは道中落ちていた錆びた剣を手にソーッと背後から近づき一閃。ボコブリンは崩れ落ち、リンクは勝利の勝鬨を上げた。

 

 

「なんか、体が思い出してきた気がする…!」

 

「それはいいことなのだー。盾もあると調子を取り戻すんじゃないのかー?」

 

「盾?」

 

「たとえば…はい、ナベの蓋なのかー」

 

 

 差し出された、恐らくさっきまで料理に使っていただろうナベの蓋にいぶかしむ視線を向けるリンク。

 

 

「誰が隠そう、それは以前も君が盾として使ったものなのだから心配はいらないのかー」

 

「…俺の過去を知っているのか?」

 

「知ってるかもしれないし、知らないかもしれないのだー。だって、百年前だもの」

 

「はい?」

 

 

 百年。さも当然とばかりに語られたその年数に呆けた表情を浮かべるリンク。あのじいさんはともかく、この少女が百年も生きたとは到底考えられないリンクは首を傾げる。それに気付いたのかルーミアは「わはー」と笑顔を浮かべる。

 

 

「そこらへんはおいおい。そのうち思い出して行けばいいのかー。それとも私を信じられない?」

 

「あ、ああ…いや、ルーミアのことは信用しているよ。どうしてなのかはわからないけど…なんか、信じられる」

 

「そーなのかー」

 

 

 はぐらかされた気もするが、特に気にすることなく歩くリンクとそれに追従するルーミア。髪の色も相まって傍から見ると兄妹の様である。シーカーストーンと睨めっこししつつ目的地を目指すリンクとルーミア。道中遭遇した弓を使うボコブリンもナベの蓋を盾にして矢を受け止めながら突進して制し弓矢を手に入れ、ナベの蓋への認識を改めるリンク、ドヤ顔するルーミアといった一幕もあった。

 

 

「シーカーストーンの示す場所はここらへん…か?」

 

「どれどれ…うーん、あの小高い丘辺りなのかー?」

 

 

 なにやら宙に浮かんでシーカーストーンを覗き込んだルーミアの指差す方向に、浮いていることに驚きながら歩いて行くリンク。そこに、なにかが近づいてくる重い足音が聞こえてきた。

 

 

「なんだ!?」

 

「これは…やばい、奴に嗅ぎつけられたのだー!」

 

 

 慌ててリンクの手を掴んで走り出すルーミア。その瞬間、先程までいた小高い丘が吹き飛んだことに驚くリンク。宙から飛んできたのは、巨大な四足の魔物だった。背中には弓が、その手には金棒の様な大剣が握られていて、顔は鬼の様だ。

 

 

「…ライネル。始まりの台地にいる魔物の中では最上級に危険な奴なのかー。ごめん、私のせいで君を巻き込んでしまったのだ」

 

「なんであんな奴に狙われてるんだ…!?」

 

「何度も倒しているからなのかー」

 

「は!?」

 

「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 冷や汗を流しながら、リンクを庇うように立ちふさがるルーミア。大気を震わせる咆哮を上げ、大剣を手に一度遠のいてから突進してくるライネル。常に余裕たっぷりで己を導いていた少女の焦燥した顔に、決意を固める一人の少年がいた。

 

 

「ルーミア、どいてくれ!」

 

「え?」

 

「(できるかわからない、だけど…!)」

 

 

 ナベの蓋を盾として構え、錆びた剣を手に飛び出すリンクにルーミアは止めようと手を伸ばす。だがしかし少年は、近づいてくる圧倒的な死を幻視しながらも、集中して構え、ライネルと衝突した。

 

 

「男なら、女の子一人ぐらい守ってみせろ、俺!」

 

「グオッ!?」

 

「なっ…」

 

 

 ガキン、と。何の変哲もないただのナベの蓋が、ライネルの渾身の一振りを弾く。否、リンクがタイミングを合わせて振り上げたことで、ナベの蓋には何のダメージも無く弾き返したのだ。その姿に、ルーミアは遠い過去を幻視する。

 

 

「ああ、リンクはやっぱり…」

 

「うおおおおおおおお!」

 

 

 弾かれ体勢が崩れたライネルに、リンクの渾身の一撃が炸裂。したのだが、錆びた剣はいとも簡単に折れてしまう。ライネルの表皮の硬さに耐えきれなかったのだ。

 

 

「折れたァ!?」

 

「…やれやれ、見直したんだけどなあ!」

 

 

 折れた剣に絶叫を上げるリンクに溜め息を吐いたルーミアは両手を十字架の様に広げる。すると暗闇が辺りを支配し、混乱するリンクを置いてルーミアは笑い、同じく辺りを警戒しているライネルを見上げる。

 

 

「まあ、及第点かな。変身」

 

 

 そして暗闇が晴れた時、リンクが正気を取り戻すと全てが終わっていた。

 

 

「え…?」

 

「うん、やっぱりライネルの肝は美味なのだ」

 

 

 胸部に大穴を開けた崩れ落ちたライネルが、武器を取りこぼして黒い靄となって消えていく。その背後ではライネルの肝を手にしたルーミアが美味しそうにそれにかぶりついていた。

 

 

「な、なにが起きたんだ…?」

 

「気にすることはないのかー。ライネルは私のおやつなのかー」

 

「…ルーミアが強いってことは分かった。案外本当に百年生きてるのか?」

 

「リンク、女の子に年の事を尋ねちゃ駄目なのだ。気を付けないとお前も食べちゃうのかー」

 

「わ、悪かった」

 

 

 口を大きく開けて威嚇するルーミアに頭を下げるリンク。そして、武器が無いので道中遭遇したボコブリンを拾った木の枝でしばいて「旅人の剣」を手に入れたリンクたちはようやく目的地にたどり着いたのだった。それは小さな遺跡の部屋の様になっていて、中央には台座がある。

 

 

「シーカーストーンの示しているのは…この台座か。シーカーストーンが置いてあった台座と似ているな」

 

≪シーカーストーンをセットしてください≫

 

 

 しらべると、機械音声が鳴ったので言われるままにシーカーストーンをオレンジ色に輝くちょうどはまりそうなくぼみにセットする。すると台座が確認し、シーカーストーンが輝いた。

 

 

≪シーカーストーンを確認しました。シーカータワーを起動します。揺れに注意してください≫

 

「ん?」

 

「そーなのかー」

 

 

 言われるなりふわりと浮かぶルーミアにずるいぞ、と睨み付けるリンク。しかし突然の揺れに転がってしまい、近くの森からは鳥が飛び立ち、始まりの台地各地の魔物たちも何事かと辺りを見渡し、そして。

 

 

 

 小高い丘を突き破って、遺跡(?)が天高く昇り始めた。

 

 

「うおっ、わわ!?」

 

「おーおー。絶景なのだ」

 

 

 どんどん上がって行く視点に、わくわくしながら己も浮かんで上がって行くルーミア。その視線の先には、黒い靄に包まれた城が在った。

 

 

「…待っているのかー、ゼルダ」




現在のリンクの装備
「古びたシャツ」「古びたパンツ」
「錆びた剣」→「旅人の剣」NEW!
「ナベの蓋」
「ボコ弓(木の矢20本)」

祝え!おじいちゃんの孫ルーミア爆誕の瞬間である。謎の老人少女、彼らは一体何者なのかー。

まさかのマスターモード。ライネルを瞬殺するルーミア。ライネルの肝が大好物の模様。

次回は祠を巡る旅。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第二話:克服の証、岩襲来

どうも、UAが600もあってお気に入りも五人いてちょっと嬉しい放仮ごです。厄災の黙示録、動画でしか見てませんが百年前の描写が丁寧でいいですね。上手く生かしたいところ。

さて、リンクとルーミアの珍道中第二話です。始まりの台地と言えば…な魔物も登場。楽しんでいただけると幸いです。


 天高く上った遺跡(?)はシーカータワーという音声の通り、塔だった。見れば、始まりの台地の外側でも何本か新しく塔が立っており、この始まりの台地の塔…さしずめ始まりの塔の起動がきっかけでハイラル各地に塔が伸びたのだと分かった。

 

 

≪周辺のマップ情報の入手を開始します≫

 

 

 すると塔の天辺の広場の中央にある台座の上の天井から吊れ下がった石から、先程置いたシーカーストーンに滴のようなものが落ち、シーカーストーンの画面に地図が浮かび上がる。

 

 

≪周辺のマップが追加されました≫

 

「はー、これは便利なのかー」

 

 

 台座からリンクが受け取ったシーカーストーンの画面を興味津々といった風で眺めるルーミア。すると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

 

『思い出して・・・。思い出して。貴方は…百年の間、眠っていたのです…』

 

 

 声の聞こえてきた方を二人で見やると、先程ルーミアが眺めていた城の中心が光り輝いていて。それに呼応するように、城を包む黒い靄が赤く輝きつつも集まって行き、猪の頭部の様な物を形作り咆哮を上げると再び城の中心が輝き、靄は消えていく。それを見て驚くリンクと、対照的に冷めた目で見つめるルーミア。

 

 

『この怪物が、本当の力を取り戻した時、世界は終わりを迎えてしまう。だから…手遅れになってしまう前に早く…彼女と、共に』

 

「彼女?…ルーミアのことか?」

 

「うーん、そうなのかー?」

 

 

 少女の声は消え、リンクが訪ねるとルーミアはにぱーと笑顔ではぐらかす。どうやら自分は百年眠り続け、ルーミアはその100年前の自分の知り合いの可能性が出て来たリンクは考える。だが、考えてもどうにもならないし、ルーミアに尋ねてもはぐらかされるのでとりあえず塔を降りることにした。

 

 

「飛べないなんて人間は不便なのかー」

 

「まるで、自分は人間じゃない、みたいな、物言いだな!」

 

「飛べる人間もいるのかー。リト族とか」

 

「知らない、名前を、出すなって!」

 

 

 塔の足場を乗り継ぎながら、外側をくるくる周りながら下りるルーミアにツッコむリンク。ようやく地面に2人して降り立つと、どこからともなく今度は陽気な声が聞こえ、空から凧のようなものに掴まってやってきたのはルーミアの祖父を名乗った老人だった。

 

 

「ほーっほほーい。いやはや驚いたわい。大地から次々と塔が姿を現しおった…おそらく、このハイラルの大地に眠っていた力が呼び覚まされたのだ。あ、元気にしとったかルーミア」

 

「元気ーなのかー、おじいちゃん」

 

「して…塔の上はどうであった?」

 

「色々ツッコみどころはあるけど…遠くの城から声が聞こえた」

 

「ほう。城の方から声が聞こえたとな。お主はその声に心当たりはないのか?」

 

「わからない。でも、ルーミアが何かを知っているはずだ」

 

「私はなにもわからないのかー、今はね」

 

「こんな風にはぐらかされてるけど…爺さんも何か知ってるんじゃないのか?」

 

「ふむ。お主も見たであろう、あの城を包み込む禍々しい怨念の塊を…アレは今から100年前、この地にあった国ハイラル王国を滅亡させた元凶。名は」

 

「厄災ガノン、なのかー」

 

 

 老人の台詞を遮り、ぽやんと語るルーミア。遮られたことに物申そうとしたのかなにか言いたげだった老人だがすぐにこほん、と咳払いして続ける。

 

 

「…何故か(・・・)突如として現れた奴によって街は破壊され多くの民の命が奪われた。そして今日まで100年もの間…王国の象徴だったハイラル城にあの様な姿で憑りついたまま、その動きを止めておる」

 

「…厄災、ガノン」

 

「もしかしてリンク、あの城に行きたいのかー?」

 

「…ああ。行きたい、あの場所に、誰か大事な人がいる気がするんだ」

 

「そう言うと思っておったぞ」

 

 

 リンクの決意の言葉に嬉しそうに笑う老人。

 

 

「だがここは陸の孤島、この絶壁の台地から出ることは不可能じゃ」

 

「もし飛び降りたら骨折じゃすまないのかー。下手したら命もないのだ」

 

「ルーミアの様に飛べたら問題はないがの。例えばわしのパラセールを持っていれば話は別じゃ」

 

「…それ、くれないか?」

 

「ふぉっふぉっふぉっ、いいじゃろう。じゃがタダという訳にはいかんのう。そうじゃな、ではあるところに眠るお宝と交換というのはどうじゃ」

 

「おじいちゃん、回りくどいのかー」

 

「乗った」

 

「よし。では今わしの見ている先に怪しげに光る祠の様な物が見えるか?あれは塔かせり出したのと同時にあのように光り始めたのじゃ。ああいう場所にはたいがい宝が眠っておるモノよ」

 

 

 老人の視線の先にはちょっとした池の先に怪しげなオレンジ色に光る線が特徴の祠の様な物。

 

 

「…それ、宝が無かった場合どうするんだ?」

 

「そのときはそのときじゃ。パラセールが欲しいのじゃろう?楽しみにしておるぞ」

 

 

 老人と別れた後、池を迂回して祠に辿り着いたリンクとルーミア。閉ざされた入り口には台座が存在しており、シーカーストーンが必要なようで、シーカーストーンをかざすと扉が開いて1人用のエレベーターの様なものが現れる。リンクが中に入り、ルーミアが外に待つことになったのだが…

 

 

「勇者を待ち伏せしようって魂胆なのかー?そうやすやすとさせないのだー」

 

 

 そこへ現れたのは、池を挟んだ広場に野営地を組んでいた魔物、ボコブリンの一団。ボコ棍棒とボコ弓片手に襲いかかってくるボコブリン達を、ルーミアは紙一重で回避。目を輝かせるとボコブリンの一体の腕に噛みつき、首の力でちぎり取り、鮮血が舞う。

 

 

「うーん、やせっぽちのボコブリンは不味いのかー」

 

 

 その際落ちたボコ棍棒を血塗れの姿で拾い、怖気づくボコブリン達に三日月の様な笑みを向けるルーミア。

 

 

「妖怪と魔物の格の違いってものを教えてやるのかー!」

 

 

 四体いるボコブリンは逃げ出そうとする。しかし一体は投擲されたボコ棍棒が脳天をかち割って撃沈。二体目はそのまま拾い上げたボコ棍棒を頭部に叩きつけられてその衝撃でボコ棍棒と共に頭部が爆散。三体目は逃げることを諦めたのか弓を引き絞るも、いつの間にか目の前に迫っていたルーミアに放たれた矢を握られて目玉に突き刺されて撃沈。最後の一体は突如発生した暗闇でなにも見えなくなったところに飛びかかったルーミアに頭から貪り食われて即死。暗闇が消えると共に死体は消滅し、ルーミアは満足げにボコブリンの生き胆を味わうのだった。

 

 

「ライネルには劣るけどこれだけは味がいいのだー。…そろそろかな?」

 

「ただいまルーミア…ってその格好。どうしたんだ?怪我でもしたのか?」

 

「ちょっと掃除をしただけなのだ。洗ってくるから待ってるのかー」

 

 

 戻ってきたリンクに血塗れの格好を指摘され、顔を赤らめて側の池に向かうルーミア。顔を洗い、服も側に出現させた闇から取り出した新しいものを着替えて戻ると、不満げなリンクがいた。

 

 

「どうしたのだ?」

 

「あの爺さんが来たんだけど、あと三つ台地にある祠から克服の証を手に入れたらパラセールをくれるって…話が違うだろ、お前の爺さん!?」

 

「あのおじいちゃんはケチだからしょうがないのかー」

 

「…気になってたんだけど、あの爺さんとルーミア、実際の祖父と孫の関係じゃないんだろ?どういう関係なんだ?」

 

「うーん?別に隠すことじゃないから答えるけど、腐れ縁、なのかー?」

 

「ハハッ、なんだそれ。っと、そろそろ夜だな。天気もいいし、祠の側で野営でもするか」

 

 

 ルーミアの返しに笑ったリンクは空を仰ぐ。黄色に輝く太陽が山の向こうに落ちようとしていた。黄昏時だ。

 

 

「おっ、それはいい考えなのかー。じゃあ準備するからご飯は任せたのだ。夜は骨の魔物や蝙蝠の魔物の群れが出るから気を付けるのかー」

 

「了解だ。弓もあるし、大物を取ってくるよ」

 

 

 そういって意気揚々と森へ狩りに出たリンクを見送り、ルーミアはゲシッと木を蹴り倒し、手刀で割って薪を作ると祠の前まで持っていき、闇から火打石を取り出して金属製の祠に投げつけて火花を起こして焚火を作る。百年間で慣れ親しんだ行動だった。闇から鍋も取り出して設置し、野営の準備はばっちりである。

 

 

「さて。100年前のリンクだったら簡単に大物の一匹や二匹狩ってくるんだろうけど…今のリンクはどうかなー?」

 

 

 準備している間にすっかり暗くなり、焚火前に座って手をかざすルーミア。百年前に行ったことのある砂漠の様に寒暖差が激しいとまではいかないが、夜は冷えるものだ。すると常人よりも鋭い耳が地響きを捉えて、どんどん近づいてきたため腰を上げるルーミア。ライネルとも違う地響きに身構えてると、獣肉を大量に抱えたリンクが森から急いで飛び出してきた。

 

 

「に、逃げろルーミア!」

 

「一体全体どうしたのかー?」

 

「い、岩の化け物が!」

 

「岩?」

 

 

 そして、リンクの背後から木を薙ぎ倒しながら現れたのは、巨大な岩に小さな岩が手足の様にくっついて歩く、文字通りの怪物。ライネルとは別ベクトルの魔物の登場に、リンクにジト目を向けるルーミア。

 

 

「あれはイワロック。馬鹿みたいに厄介だけど近づかなければ無害な魔物なのだ。あんなあからさまに怪しい岩に近づいたのかー?」

 

「イノシシを追いかけてたら偶然近づいてしまったんだ!追いかけてたイノシシは潰されるし、もう散々だ!」

 

「それは運が悪かったのだー、っと!」

 

 

 すぐ近くに水場があるのでイワロックが来る心配はないが、それでも野営地を荒されたら堪らないのでリンクと入れ違いにイワロックに飛びかかるルーミア。振るわれた拳と、イワロックの振り上げた腕代わりの岩がぶつかり、罅を入れて粉々に破壊する。

 

 

「すごい…!」

 

「…んにゃ、これじゃコイツには勝てないのかー」

 

 

 イワロックは壊された腕を補う様に地面に倒れ込み、新たな岩を腕として装着。その勢いでルーミアを殴り飛ばし、木々に叩きつけられたルーミアは森の奥へと突っ込んでいって見えなくなる。

 

 

「ルーミア!くそっ!」

 

 

 リンクは獣肉を投げ出し、旅人の剣を抜いてナベの蓋を構え臨戦態勢を取るも、イワロックに敵うビジョンが見えない。イワロックがこちらに向けて飛ばしてきた岩拳をタイミングよくナベの蓋で弾きつつ、旅人の剣を振るうも文字通り歯が立たない。祠で手に入れたマグネキャッチを試そうとするもうんともすんとも言わず、金属で無い岩には通じないと察する。打つ手がない。

 

 

「こうなったら…!」

 

 

 頭突きしてきたイワロックの攻撃を避け、咄嗟に剣と盾を仕舞ってしがみつく。何とか上に上がると、そこには如何にもな黒い岩が。暴れるイワロックを乗りこなし、やけくそとばかりに旅人の剣を黒い岩に叩きつける。手ごたえを感じてそのまま叩き続けるが、イワロックはぶるぶると体を震わせてリンクを振るい落とし、腕の岩で押しつぶそうとする。

 

 

「させないのかー!!」

 

 

 そこに、赤い装甲を纏って腰に無骨なベルトを巻き、金色の鍬形の様なティアラを身に着けた格好になったルーミアが空から飛来、空中で体勢を変えて飛び蹴りを黒い岩へと叩き込む。バキィッと、黒い岩が砕かれ、イワロックは爆散。ルビーやらコハクやら火打石などの鉱石がその場に散らばった。

 

 

「ははは、油断したのかー」

 

「ルーミア、その姿は?」

 

「んー、パワーアップみたいなものなのだ。今のリンクには関係ないのかー」

 

 

 そう言って元の格好に戻り、慣れた手つきで鉱石を拾い上げてはポイポイ傍らに出した闇に放り込んでいくルーミア。

 

 

「…今の俺には、ね。…なあ、ルーミア。アンタは何者なんだ?なんで俺を守ってくれるんだ?」

 

「…もしかして、気付いてたのかー?」

 

「返り血かどうかぐらいは、何故かは知らないけどわかるぞ」

 

 

 祠の外での戦闘の事は気付いていたと、そう述べるリンクにルーミアはたははと笑う。正直、百年眠っていたリンクをなめていた。考えを改め、野営地に座って真剣な顔を向けるルーミアに、リンクも座りながら続きを促した。

 

 

「……言っちゃうとね。私には、責任があるのだ。君をあの城まで無事に送り届けるのが私にできる贖罪なのか。君にもしものことがあったら、姫さんにもみんなにも、顔向けできないのだ」

 

「姫?」

 

「そのことはおいおい。時が来れば教えるのだ。だから、今はこれぐらい、で…」

 

「ルーミア!?」

 

 

 そこまで言って、何度か瞑目したと思えばばたりと倒れるルーミアに慌てて駆け寄るリンク。するとぐーっと音が鳴り、顔を赤らめるルーミア。

 

 

「…さすがに、あのダメージを治すのに妖力を使いすぎて…お腹が…」

 

「…あー、とりあえず適当に採った香草と一緒に焼いた獣肉でいいか?肉なら大量にあるし」

 

「い、いただくのかー…」

 

 

 そして二人は、リンクの作った大量の包み焼肉を美味しくいただき、夜も更けていく。その光景を始まりの塔の上から遠目で眺める老人が一人。

 

 

「まずは一つ目。ライネルやイワロックに襲われたりハプニングもあったが、ルーミアもよくやっとるようじゃの。さて、何時になったらパラセールを渡し、例の事を話せるのか…気長に過ごして待つとするかのう」

 

 

 そう言って老人は塔の上から消える様にその場を去って行った。




現在のリンクの装備
「古びたシャツ」「古びたパンツ」
「旅人の剣」
「ナベの蓋」
「ボコ弓(木の矢20本)」

本日のルート&食事
・始まりの塔→マ・オーヌの祠→精霊の森→マ・オーヌの祠
・ケモノ肉+ハイラル草→包み焼き肉×7

ルーミアの好物は魔物の肝。割と容赦ないです。イワロック相手はさすがに生身じゃきつかった。リンクを守るのが「贖罪」の様だがその真意とは…?

パリィを駆使するリンク。何気にパリィだけでイワロックと渡り合う神業を披露、だけど装備が貧弱だから勝てないのはしょうがないね。

次回は遺跡跡へ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第三話:少女の抱える闇

どうも、厄災の黙示録の終盤の展開に涙した放仮ごです。そのタッグはずるいて…

リンクとルーミアの珍道中第三話。みんなのトラウマ登場。ルーミアの事情もちょっとだけ明かされます。楽しんでいただけると幸いです。


 翌朝、二人は始まりの塔を登っていた。他に三つあるという祠の居場所を探るために高い場所がいいと判断したのだ。もちろん、ルーミアは浮いて、塔の壁を足場を乗り継いで登るリンクに追従していた。

 

 

「最初は勝手に上がったからよかったけど改めて登るとなると大変そうなのだー」

 

「…ルーミア。お前、実は祠の場所を知ってるとか言わないよな?」

 

「行ったことはあるけど正確な地図の場所までは分からないのだー」

 

「変なところで役に立たないな、っと」

 

 

 辿り着いた天辺で。シーカーストーンが望遠鏡のようになることに気付いたリンクが、画面に記されるままに見つけた祠を片っ端からマーキング。地図上に浮かび上がるという便利機能で場所を確かめる。

 

 

「えっと…東の神殿跡と、南の断崖絶壁の上、西の雪山の頂上…ってこの台地は暖かいのに何であんな近くに雪山があるんだ?」

 

「台地は他の土地と違ってだいぶ上にあるから雪が積もりやすいって聞いたのだ」

 

「なるほど…こんな薄着じゃ寒そうだな」

 

「お爺ちゃんが防寒着持ってたからそれをもらえばいいのかー」

 

「ルーミアは大丈夫なのか?」

 

「私は人間じゃないからあれぐらいの寒さだったらへっちゃらなのだ」

 

「隠す気あるのかそうじゃないのかどっちなんだ…うん?」

 

「どうしたのだ?」

 

「遺跡にたくさんあるのは…ここに来るまでにあちこちでちらほら見たでっかいひっくり返ったツボ…か?」

 

「あー、あれは…近づかない方がいいのだ」

 

 

 遠い目をして答えるルーミアに、シーカーストーンから目を外して首を傾げるリンク。

 

 

「なんでだ?というか動くのか?あれ」

 

「あれは朽ちたガーディアンなのかー。私でも下手したら死ぬのかー。リンクなんか一撃なのだ」

 

「そ、そんなにか…気を付ける」

 

「もしかしたらリンクなら簡単に迎撃しちゃいそうだけどね」

 

「…記憶があった頃の俺ってどんな人間だったんだ?」

 

「剣一本でライネルを数匹討伐する化け物なのかー」

 

「ええ…」

 

 

 自称人外であるルーミアが化け物と呼ぶ記憶があった頃の己を幻視するリンク。ライネル一体もルーミアの助けなしでは生き残れなかった自分とは天と地の差なので深く考えないことにした。

 

 

「…とりあえず、塔から一番近い神殿跡を目指すぞ。…また下りないといけないのか」

 

「がんばるのかー」

 

「飛べる奴は気楽だな」

 

 

 

 

 

閑話休題~少年少女下降中~

 

 

 

 

 

 

 塔を降りて断崖沿いに南東を目指す二人。道中ボコブリンに襲われながらも難なく迎撃し、ルーミアは思い出したことをリンクに説明していた。

 

 

「魔物には基本近づかない方がいいのだ。弱いボコブリンでも群れを作ってると危険なのかー」

 

「なんでだ?」

 

「群れを作っていると高確率で上位個体がいるのだ。赤、青、黒、白って感じでどんどん強くなっていって、上位個体は赤色とは比べ物にならないぐらい強いのかー。たまに一匹だけいても色次第では殺されることも珍しくないのだ。まあ、この始まりの台地だと強くても一段階上の青ボコブリンだけどね」

 

「…そいつにも俺は、負けそうか?」

 

「百年眠って弱った体だと一撃なのかー」

 

「そうか…青いのには気を付ける」

 

「ちなみに下の道を通っていたらその青いボコブリンのいる群れが陣取る髑髏型の拠点があるから気を付けるのかー」

 

「塔に行く道中で遠目に見かけたアレか…でかい髑髏は魔物の巣と考えた方がいいのか?」

 

「うん、あとツリーハウスや空き地なんてものを陣取ってる魔物たちもいるのだ」

 

「へえ、色々あるんだな」

 

 

 そんな会話をしつつ小高い丘を上がり辿り着いたのは石造りの神殿跡地。警戒するルーミアに対してリンクは特に警戒せず足を踏み入れ、それは起動した。

 

 

「ん?」

 

 

 ピピピピピッと甲高い警告音の様な物が聞こえ、赤い光の線がリンクに差す。振り向くと、そこにはゴゴゴゴゴッと音を立てながら動き頭部のモノアイをこちらに向けるひっくり返ったツボの様なものがあった。百年前、ハイラル城下町で暴れていた自律行動ロボット兵器「ガーディアン」の成れの果てである。

 

 

「あれが…!?」

 

「ガーディアンなのか!リンク、盾!」

 

「あ、ああ!」

 

 

 言われるなりナベの蓋を構えるリンク。その瞬間、赤い光の線が一瞬消えてガーディアンのモノアイからビームが放たれる。咄嗟に打ち返そうとナベの蓋を振るうリンク。しかしタイミングがずれてナベの蓋は粉砕され、リンクは吹き飛ばされる。

 

 

「リンク!」

 

「来るな、ルーミア!」

 

 

 続けてチャージされ、放たれるビームから壁に隠れて逃れながらそう叫ぶリンク。ルーミアは言われた通り壁に隠れて、闇の中に手を突っ込んであーでもないこーでもないとボコブリンの武器類を放り投げる。昨日倒したボコブリン他、百年もの間溜めこんできた武具である。

 

 

「こっちだ!」

 

 

 リンクは壁を駆け上り、壁の上を走ってガーディアンを翻弄。ビームは放つ予兆は分かったので、壁に隠れて防ぐ。そんなことを繰り返していると、さすがにスタミナが落ちてきて登ろうとした壁からずり落ちてしまう。

 

 

「しまっ…」

 

「こっちなのだ!」

 

 

 するとルーミアが投擲したボコ棍棒がガーディアンに炸裂して照準をずらし、その間にスタミナを回復させたリンクは壁の上に何とか駆け上る。そしてその視界にオレンジ色の光がよぎった。

 

 

「ルーミア!祠を見つけた!そこのアイテムが使えるかもしれないから壁の上から行ってみる!」

 

「あと二体ぐらい動くのがいたはずだから気を付けるのだ!私も使えるものを探しておくのかー!」

 

「じゃあ、あとで!」

 

 

 そう言って祠に入って行くリンクと、逆に離れていくルーミア。宙に浮いてガーディアンの視界から逃れたルーミアは時の神殿跡地へと向かった。近くにいたボコブリンを軽く倒し、ボコ棍棒や盾を拾って背中に担ぎ、持ちきれないものは闇の中に入れながら近くの遺跡跡を探索するルーミアに近づく影が在った。

 

 

「確かここらへんの宝箱に…」

 

「ルーミア」

 

「っ!…おじいちゃん。何だか久しぶりなのかー?」

 

「まだ一日しか離れておらんじゃろ…それよりも、リンクの様子はどうじゃ?」

 

「今は祠の一つに潜っているのだ。昔の技術を体が覚えているのか結構強いのだ。でもスタミナ体力共に落ちて弱っていて、まだここから出すには厳しいのかー」

 

「そうか。百年の時はそれほど長いと言う訳じゃな。それと、リンクはいないしいつもの口調でいいのだぞ」

 

「……それもそうね」

 

 

 目つきが鋭くなり、口調を変えたルーミアに生唾を飲み込む老人。知性ある魔物ともいうべき「妖怪」であるルーミアから放たれる異様な圧に押し潰されないように咳払いし、ルーミアは続けた。

 

 

「心配しなくとも、この台地の祠を巡る冒険でリンクは着々と力を取り戻しつつある。知識も私が教えているし、咄嗟に私を守ろうとする勇気も百年前のまま。心配せずとも貴方の娘を取り戻すために私も死力を尽くす。贖罪だもの」

 

「…ルーミア。わしはお前を許していないし許すつもりもないが、百年近く共に過ごした友だとも思っている。…お前が罪に囚われて無茶をしないか心配じゃ。昨夜もイワロックの攻撃をまともに受けていたじゃろう」

 

「ちゃんとケモノ肉を食べたから心配いらないよ。それに私、人よりよっぽど頑丈だもの」

 

「回復したといっても完全とはいかないじゃろう。なにせお主の力の源は人の…」

 

「…それ、話したっけ?」

 

「100年前。悪い噂の立つ人間が次々と闇に消えていく事件があった。さすがにわしの元にも噂は届く。ケモノ肉と魔物の肝を好んで食べるお主の食を見ていれば自ずと察しがつくとも」

 

「まあそれだけじゃないんだけどね。私たち妖怪は魔物と違って自然的な存在。主に人間の「畏れ」を糧に存在している。故郷(ふるさと)を離れて101年…今は魔物や動物たちの畏れを供給して私という存在を保っているんだ。魔物の肝で魔力も取り込んでるけど、正直ギリギリ。後一年持っていい方かもね」

 

 

 そう笑って闇を出した手を握ったり開いたりして調子を確かめるルーミア。儚げなその笑みに、老人はそんなに危険な状態だったのかと戦慄する。

 

 

「なら帰ろうとは思わんのか?贖罪のためとはいえ、少しの間帰郷するという手も…」

 

「冗談。私が離れている間にリンクが死んだりでもしたらそれこそみんなに合わせる顔がない。百年もこの地にいたのも、万が一厄災ガノンにここの存在がバレて眠っている間を襲撃でもされたら私しか守れる奴がいないからだ。リンクを守ってハイラル城まで無事に送り届けるまで、私は帰るつもりはないよ」

 

「ううむ…ならば、なおさら急がなくてはならんな。厄災ガノンもいつまで封じ込められているか分からん。百年持ったのはあの子の力をもってしても奇跡と言ってもいいだろう」

 

「そのつもりで、これを探しに来たんだ。今のリンクの装備じゃあまりにも心もとないからね」

 

 

 そう言って見つけた宝箱から引っ張り出したのは、彼女には到底合わないであろうサイズのズボン。リンクの着ている物よりも丈が長く丈夫な素材でできているものだ。

 

 

「なるほど。邪魔したかの」

 

「私がちゃんと導くから、おじいちゃんは安心してスローライフを送っているといいのかー」

 

「ふむ。ではそうさせてもらおう。防寒着も用意しとくから例のアレ、よろしく頼むぞ」

 

「了解なのだー」

 

 

 そう言ってズボンを抱えて空に浮かび、東の神殿跡を目指すルーミアを見送り、老人は神妙な顔を浮かべていた。

 

 

「…人ならざる者なれど本来は関係なきはずの少女を酷使するのは、どうも気が滅入る……ゼルダ、わしはお前の友人に、どういう顔で接すればいいのだろうな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせルーミア。リモコンバクダンっていうものを手に入れたぞ」

 

「おかえりなのかー。こっちも今戻ってきたところなのだ。はい、これとこれ」

 

 

 ルーミアが戻るとちょうどリンクが祠から出てきて爆発を起こして目の前の岩を砕いていたところで、青く輝く球体を手に笑顔を浮かべるリンクに、ルーミアが手にしていたズボンと、背中に背負っていたボコ盾を手渡した。ちなみにボコ棍棒は自分の武器にするつもりなのか背中に背負ったままである。

 

 

「魔物達が使っていた盾か、助かる…けどズボン?確かに今履いているのは丈があってないけど…」

 

「今リンクが履いてるものよりマシなはずなのだ。それと、すぐ近くにガーディアンがいるから気を付けるのかー」

 

「よし。リモコンバクダンの力を見せてやる」

 

 

 そう息巻いて近くにいたガーディアンに意気揚々と青く輝く球体を投げつけ、シーカーストーンを構えるリンク。光の爆発が起きてガーディアンは一瞬動きを止めるものの、難なく動き出してリンクを狙う。

 

 

「なっ!?…もしかして、威力自体は低い…?」

 

「リンク!」

 

 

 そして放心するリンクに容赦なく放たれるビーム。ルーミアはそれを、咄嗟にリンクを突き飛ばしてまともに受けてしまい、祠の側まで吹き飛ばされ地面に力なく転がった。

 

 

「くっ…効いたぁ、のかー…」

 

「ルーミア!?この…っ!」

 

 

 己を庇って傷付き倒れたルーミアに、即覚悟を決めたリンクはガーディアンに向けて突進。

 

 

「いくらタイミングがよくわからなくても…近くなら、さすがにわかるぞ!」

 

 

 再度放たれたビームを、至近距離から盾を振るって跳ね返してみせ、己のビームの直撃を受けたガーディアンは機能を停止して爆発。ネジやら歯車やらがその場に転がった。

 

 

「ルーミア!大丈夫か!」

 

「ぐうっ…なんとか、平気なのかー」

 

 

 慌てて駆け寄ったリンクは目を疑う。確かにビームの直撃を受け、抉れて痛々しいことになっていたはずの腹部が服ごと何事も無かったかのように元通りになったからだ。心配して損したと思う一方、ゼーハーと荒い息を吐いて明らかに疲労困憊なルーミアに心配するリンク。

 

 

「本当に大丈夫なのか…?」

 

「大丈夫大丈夫、ルーミアは妖怪だからこれぐらい、なんとも…」

 

 

 そう笑顔で取り繕かったかと思えば、こてんと倒れて気を失うルーミアにリンクは慌ててルーミアを抱えて持ち上げた。

 

 

「えっと…とりあえず、爺さんのところに!ど、どっちだっけ…?」

 

 

 両手が塞がってるのでシーカーストーンも出すことが出来ず、女の子らしい匂いに一瞬意識が向きながらも、とりあえずと東の神殿跡地を後にするリンク。その先には、切り立った崖と、深い谷の側に高い木が立ち並ぶ林があった…




現在のリンクの装備
「古びたシャツ」
「古びたパンツ」→「ハイリアのズボン」NEW!
「旅人の剣」
「ナベの蓋」→「ボコ盾」NEW!
「ボコ弓(木の矢20本)」

本日のルート
・マ・オーヌの祠→始まりの塔→東の神殿跡地→ジャ・バシフの祠(時の神殿跡地側)→台地南の林

皆のトラウマガーディアン。今まで無敵を誇っていたナベの蓋を粉砕し、ルーミアまでもを負傷させるトラウマ要素は健在。初見にしてはリンクは頑張った。

明かされるルーミアの事情。リンクがいない時は口調が変わり、目つきも悪い本来のルーミアに。懼れ云々は半分くらいオリジナル設定。もしもの時はリンクの盾になるぐらいに闇を抱えてます。

 次回は崖の上へ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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