紫の星を紡ぐ銀糸 (烊々)
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1部 眩耀のクリスタル編 -SISTERS GENERATION HEROINES-
01. プラネテューヌの女神補佐官(ギンガ)



アニメ2期、やって欲しいですよね。
というわけで初投稿です。


「ゲイムギョウ界にあまねく生を受けし皆さん、新しき時代に第一歩を記すこの日を、皆さんとともに迎えられることを、喜びたいと思います。ご承知の通り、近年、世界から争いが絶えることはありませんでした。」

 

 ゲイムギョウ界の4国による友好条約の締結、それは私の悲願でもありました。何故同じゲイムギョウ界を愛する女神様同士が戦わなくてはならないのか、歴代の女神様は「それが女神の運命だ」と言い戦い続けてきました。女神様に仕える身である私にはその運命に異を唱えるなど許されず、女神様同士が戦うことに心を痛めながらも戦うしかありませんでした。しかし今日、今の世代の女神様たちはついに、その運命を超えるのです。

 

「女神ホワイトハートが治める国、ルウィー。女神グリーンハートが治める国、リーンボックス。女神ブラックハートが治める国、ラステイション。そして、私女神パープルハートが治める国、プラネテューヌ。四つの国が国力の源であるシェアエナジーを競い、時には女神同士が戦って奪い合う事さえしてきた歴史は、過去のものとなります。」

 

 私は友好条約の式典をプラネテューヌ教会のテレビで見ています。女神補佐官という立場の私は式典をテレビ中継ではなく会場の特等席で見るべきだとプラネテューヌ教会の教祖であるイストワールに言われたのですがお断りしました。何故なら、己の悲願であった友好条約の締結と正装を身に纏った女神様による式典の宣誓のスピーチ、それらの感慨深さでさっきから涙が止まらないからです。もし今の私があの場にいれば式典の進行を妨げかねません。涙が出すぎて若干脱水症状を起こしているかもしれませんねこれ。ティッシュも2箱ぐらい使いましたし。

 

「本日結ばれる友好条約で、武力によるシェアの奪い合いは禁じられます、これからは国をより良くすることでシェアエナジーを増加させ、世界全体の発展に繋げていくのです」

 

 ちなみに、先程から式典の宣誓をしているのは私が仕えているプラネテューヌの女神様、パープルハート様です。どうやら他の女神様とのじゃんけんで勝利し、その権利を獲得したらしいです。それにしてもパープルハート様は今日も美しいですね。きっと明日も10年後も100年後も1000年後も美しいでしょう。

 

「「「「私たちは過去を乗り越え、希望が溢れる世界を作ることを、ここに誓います」」」」

 

 4人の女神様がそう言った瞬間、式典の会場は人々の歓声で溢れかえりました。しかし私は涙でもう何も見えません、あー女神様尊いしんどい。こんな姿を他人には見られたくないのでイストワールの誘いを断って正解でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自己紹介が遅れました。私の名は「ギンガ」。プラネテューヌ教会の女神補佐官です。「女神補佐官」というのはおそらくプラネテューヌ教会にしかない立場で、例えるなら王に仕える家臣…ですかね。そもそも「補佐官」という名も私がこの仕事をするようになってから後付けでできたものなのであまり気にしないでください。

 

 私のお仕事は基本的に女神様や女神候補生様の身の回りの世話や教育、鍛錬などを行うことです。それ以外にもプラネテューヌの衛兵や諜報員の戦闘指南も任されています。イストワールがプラネテューヌの「知」を司るのなら、私は「武」を司るなどと言われていますね。「武」を司るなんて言われていても私自身の実力は女神様には及びませんが。

あの感動的な式典から約1ヶ月、女神補佐官である私は今、プラネテューヌの女神パープルハート様の普段のお姿、ネプテューヌ様に

ーーーーー正座させられています。

 

「式典にも来ないし、その後も私を放ったらかしにして何してたのさー!これは温厚さが取り柄の主人公ネプテューヌさんでもおこだよおこ!」

 

 式典の後処理などで各国を飛び回り多忙を極めていた私は、ここひと月ぐらいまともにネプテューヌ様と顔を合わせることができずにいました。それに加え、どうやらネプテューヌ様は私が式典を欠席したことにもご立腹のようですね。しかし、ネプテューヌ様は怒っていても可愛らしいです。女神パープルハート様は美しいですが、その普段のお姿であるネプテューヌ様はとても可愛らしい見た目をしています。

 

「ですがネプテューヌ様の勇姿はテレビ中継で瞬きもせず目に焼き付けたので……」

 

 途中から涙で何も見えなくなりましたが。

 

「ギンガは私の補佐官なんだから中継じゃなくて生で見なきゃダメだよー! あと瞬きはした方がいいと思うな」

「申し訳ありません……」

「謝って済む問題じゃないよーだ!」

「お許しください……」

「ふーん、だ」

 

(ふっふーん、正直そんなに怒ってないけど、この弱みに付け込んでギンガに色々とお願いを聞いてもらおーっと!)

 

 あぁ、とても怒っています。確かにネプテューヌ様の怒りは尤もです。怒っているネプテューヌ様の可愛らしさに気を取られていましたが、私のしたことで女神様を不愉快な思いをさせたことに変わりはありません。女神補佐官としての責務を果たせず、あろうことか女神様に不愉快な思いをさせた……補佐官の姿か? これが。これは正に『生き恥』。ならばやることは1つ……

 

「とりあえずプリンを買ってきてもら……」

「このギンガ、ネプテューヌ様への非礼を腹を切ってお詫びします」

「……え?」

「ネプテューヌ様、私は貴女やネプギア様に……いえそれだけではなくこれまでプラネテューヌの女神様たちに仕え続けることができて幸せでした」

「ちょっとギンガ⁉︎ ギンガさーん⁉︎」

「願わくば、生まれ変わったらまた貴女に仕えたいです」

「切腹なんてしなくていいってば‼︎ ねえ‼︎ ていうかそれ一話で言うようなセリフじゃないよ‼︎ もっと後半まで取っておいて‼︎」

「止めないでください‼︎‼︎ ネプテューヌ様への非礼はこの私の薄汚い命を持って償います‼︎‼︎」

「ねぷぅうううう! ネプギアーーー! ネプギア助けてえええーーー! ギンガを止めるの手伝ってえええーーー! このままじゃギンガが死んじゃうーーー‼︎」

 

 そういえば、死ぬ前に紹介しておきます。今ネプテューヌ様が叫びながら呼んでいるネプギア様というのはネプテューヌ様の妹でプラネテューヌの女神候補生、次の女神様となるお方です。怠慢癖のあるネプテューヌ様と違い真面目な性格をしていますが、ネプテューヌ様のようにとても可愛らしい方です。

 あ、先程ネプテューヌ様には怠慢癖があると言いましたがそれもまた彼女の可愛らしいところなんですよ!

 というわけで、それでは来世でまた会いましょう。

 

「ど、どうしたのお姉ちゃ…ギンガさんが切腹しようとしてるーー‼︎⁇ お姉ちゃんってば! いくら女神でもさせていいことと悪いことがあるよ!」

「私が切腹を命じたんじゃないよー! とりあえずネプギアは左腕抑えて! 右は私が抑えるから! ていうか力つよ! こうなったら変身するしか……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで女神様のご慈悲を受け赦された私は、ネプテューヌ様とネプギア様と共にイストワールに呼び出されました。

 

「そういえばギンガは失態を命で償うのが当たり前な価値観の時代に生まれた人だっていーすんが言ってたなぁ……」

「ゲイムギョウ界において女神様に対する非礼は命でしか償えません」

 

 ネプテューヌ様が生まれるよりもっと昔のゲイムギョウ界ではそれが当たり前でした。当時の女神様が厳しかったわけではありません。友好条約が結ばれ、平和な時代となった今と比べ、当時のゲイムギョウ界は殺伐としていました。しかし、殺伐としていた時代だからこそ国民の女神様への信仰は今以上に根強かったのです。女神様への非礼は国において最たる重罪というのは女神様や教会が決めたのではなく当時の国民たちから自然と生まれた価値観でした。

 

「腹を切るところを見せる方がよっぽど非礼だと思いますけど……」

 

 ネプギア様にぐうの音も出ない正論を言われてしまい、たまらずネプテューヌ様の方に目を逸らすと、彼女はいつになく真剣な表情をしながら私を見つめていました。

 

「とにかく、冗談でもあんなこと二度としないで、約束して」

「かしこまりました」

 

 女神様と比べると道端の雑草ぐらいの価値しかない私の命を大切にしてくださるなんて、ネプテューヌ様はなんと慈悲深いのでしょう。

 

「……あの、そろそろ話の方に入ってもいいでしょうか?」

 

 しびれを切らしたイストワールが、自分をそっちのけにしていた私たちに話し始めます。どうやらその内容というのはプラネテューヌのシェアが下降状態にあるとのことです。

 

「……それっておかしくないですか? ネプテューヌ様が君臨しているだけでもシェアを上げるのがプラネテューヌの国民としてあるべき姿なのでは?」

「国民全てがギンガさんのような人ならそうかもしれませんが……事実下がってしまっているので…」

 

 納得いきませんが、それが事実なら受け入れるしかありません。納得いきませんが。

 

「まだたくさんあるんでしょ?心配することなくない?」

「なくないです! シェアの源が何かご存知でしょう⁉︎」

「国民の皆さんの女神を信じる心、ですよね」

「そうです、この下降傾向は国民の心が少しずつネプテューヌさんから離れている、ということなんです!」

「えー、嫌われるようなことした覚えないよー」

「うーん、好かれるようなことも最近してないかも」

 

 それは違いますよネプギア様、女神様は存在してるだけで好かれるものなのです。おそらくこれはプラネテューヌの国民の質の低下が問題というわけですね。斯くなる上は……

 

「ネプテューヌ様、ネプギア様、イストワール。私にお任せを。一ヶ月、いや一週間ほど時間をくだされば国民の意識改革を実現しシェアが下がらないようにしてみせましょう」

「……ねぇギンガ、意識改革という名の粛清とかしないよね? 私を信仰しない国民を虐殺するとか言いださないよね?」

「流石はネプテューヌ様、私の考えがお見通しとは」

「どうしよう……せっかく友好条約を結べたのに早速プラネテューヌ滅亡の危機だよ……絶対やっちゃダメだからね……」

「わかりました」

 

 ネプテューヌ様にダメと言われたので国民の意識改革はできなくなってしまいました。私にとっては女神様を信仰しない国民は国民ではありませんし、「人」ですらないと考えています。イストワールは女神様が大きな力を持つのは国民のために努力するためと言いますが逆ですよ。大きな力を持つ女神様に従うことで我々はこのゲイムギョウ界で生きていけるのです。全く、最近の国民には自分たちが女神様によって生かされているという自覚が足りていませんね。

 そういえば先程から部屋の外に人の気配がします。……これはあいちゃんとコンパさんのものですね。あいちゃんはプラネテューヌ教会の諜報員、私とイストワールの部下で、コンパさんはプラネテューヌ病院の看護師をしています。何故か部屋に入ってはきませんが、私たちに気をつかってくれているのでしょうか? 君たちならそんな遠慮する必要はありませんよ、こちらから声をかけてあげましょう。

 

(どうしようコンパ、入っていける雰囲気じゃないわ)

(そうですね、今のギンガさんにこの女神反対のビラを見せたら本当に大粛清をしかねないです……)

(これは今はしまっておいた方がいいわね)

 

「お2人とも部屋に入ってこないでどうしたのですか?遠慮するような間柄でもないでしょう」

「ヒィッ! 師匠!?」

「ギンガさん、こんにちはです」

「こんにちはあいちゃん、コンパさん」

 

『ヒィッ!』? ……急に声をかけたとはいえそんなに驚かなくてもいいじゃないですか……

 

「こんにちは師匠!」

「あいちゃん…師匠はやめてください、そう呼ばれるのは少し恥ずかしいんですよ」

「師匠があいちゃんって呼ぶのをやめてくれたら私もそう呼ぶのをやめますよ」

「じゃあ師匠でいいです」

「くっ……」

 

 確かにあいちゃんに戦いの基礎を叩き込んだのは私なのですが、師匠呼びは恥ずかしいんですよね。 しかし、そんな恥じらいなどあいちゃんをあいちゃんと呼べなくなることの悲しみに比べたら微々たるものです。可愛らしい響きで素敵じゃないですか、あいちゃん。

 

「えーと、その、皆さんが大事なお話をしているようだったので、外で待っていた方がいいと思ったんです」

「確かに大事なお話をしていましたが、君たちになら聞かれても問題はありませんよ」

「……ちょっと聞こえてしまったんですけど、ねぶねぷへの信仰が落ちているんですよね?」

「そうなんですよ……プラネテューヌの国民の質の低下が問題なんです。ネプテューヌ様にはダメと言われてしまいましたが、私は女神様を信仰しない愚民共を一人ずつ教会の前でギロチンにかけていった方が良いと思……」

「おーい、ギンガったらー! いきなり部屋から出て行ってどうしたのさー! もしかして私のサボり癖がギンガにも移っちゃったー? あれ? あいちゃんにコンパじゃん! どうしたの?」

「おっと、噂をすればネプテューヌ様」

「……ねえコンパ、今師匠がとんでもないこと言いかけなかった?」

「聞かなかったことにするです」

 

 どうやらネプテューヌ様はイストワールとの話が終わり、途中で退出した私を追ってきたようです。何かいいことを思いついた表情をしていますね。とても可愛いらしい。

 

「というわけでさ、ラステイションに行ってノワールに女神の心得を教えてもらいに行こうと思うんだよ!」

「なるほど、同じ女神であるノワール様と意見交換をして女神としての在り方を考え直す……ということですね」

「そうそう! だから今から一緒にラステイションに行くよ!」

「かしこまりました」

 

女神様とお出かけ……心が踊ります。魂が叫びます。

 

 

 

 

 

 

「イストワール、既にネプテューヌ様から聞いてはいると思いますが、私は今からネプテューヌ様達と共にラステイションに行きます。何かあればすぐに連絡をください」

「わかりました、なんといいますか、その、心なしか嬉しそうですねギンガさん」

「そりゃ、嬉しいですよ。今まではプラネテューヌの女神であるネプテューヌ様がラステイションに行くとなったら厳格な手続きが必要でしたのに、今はそんなものは必要ありません。彼女達が結んだ友好条約のおかげです。こんなに嬉しいことはありませんよ」

「そうですね」

 

「(ですが、平和の弊害というものを……少し私は感じます)」

 

 イストワールに聞こえないぐらいの声量で呟きました。ネプテューヌ様もネプギア様もイストワールも優しすぎます。確かに私だって平和な世界を望んでいましたが、平和となった世界で人々は女神様への信仰を忘れ始めてしまっています。今回のシェア下降の件がそうです。イストワールはネプテューヌ様が仕事をしないのが悪いと言いますが、友好条約締結以前なら女神様が仕事をしない程度のことでシェアが揺らぐことなどなかったというのに。 ……まぁ、このようなことを考えるのは私だけでいいですね。女神様やイストワールには優しいままでいて欲しいです。

 

「何か言いましたかギンガさん」

「いえ、何にも」

「では、お気をつけて、ギンガさんの方も何かあればすぐ私に連絡してくださいね」

「わかりました、では改めて、行ってきますいーすん」

「ギ、ギンガさんはその呼び方をしないでくださいと言ったじゃないですか!ネプテューヌさんとネプギアさんならいいですけど、ギンガさんにそう呼ばれるのは恥ずかしいんですよ!」

「いーすん」

「もう! 知りません! 早く行ってください!」

 

 いーすんもといイストワールはたまにからかうととても良い反応をしてくれます。からかいすぎるとしばらく口を利いてくれなくなるから適度にしなければなりませんが。

 

\ ギンガー! 早くしないと置いてくよー! /

 

 おっと、ネプテューヌ様に呼ばれてしまいました。女神様を待たせるなど万死に値する大罪。すぐに向かわねば。

 

「申し訳ありませんネプテューヌ様、すぐに行きます!」

 

 いざ、ラステイションに出発です。

 




次回、初ラステイションです。


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02. ラステイションに立つ

ねんどろいどパープルハート様が待ちきれないので初投稿です。


「ねえ、よくわからないんだけど、どうしてお隣の国の女神がうちの教会で寝ているのかしら⁉︎ そしてこのお隣の国の女神補佐官は私に平伏したまま動かないのかしら‼︎⁇」

「あー、構わずにお仕事してー私気にしないからー」

「私が気にするのよ! あなたならまだしもこの男を‼︎」

「ノワールがやめろって言えばやめると思うよー」

「そ、そうなの? じゃあやめなさいギンガ!」

「かしこまりました」

「ていうかギンガは私の補佐官なのに何でノワールに平伏すのさー? 浮気はダメだよー」

「いえ、確かに私が仕えているのはネプテューヌ様とネプギア様ですが、ゲイムギョウ界に生きる人間として、己が仕えていない女神様相手でも、女神様が良いと言うまで平伏すのは当然のことです」

「ねえ、ネプテューヌ、あなた部下にどんな教育をしてるの……?」

「ギンガがこうなのは私のせいじゃないよー!」

 

 ネプテューヌ様はラステイションの教会に着くとすぐ横になってしまいました。そして私もノワール様に平伏すために横になりました。ネプテューヌ様が動かない以上私もラステイションの教会から動くことはできないので、ノワール様に平伏した状態から動く許可をいただいたあと、女神の心得その1『書類の整理』を手伝わせてもらっています。

 

「ユニ様、お久しぶりです」

「こんにちはギンガさん、とりあえず平伏そうとするのをやめてくださいね」

 

 別室で書類整理をしているとノワール様の妹でラステイションの女神候補生のユニ様にお会いしました。どうやら、ユニ様は自分が姉であるノワール様に認めてもらえないことを悩んでいる様子でした。

 

「お姉ちゃんは自分みたいにできないと認めてくれないんです。そんなの絶対あたしには無理なのに……」

「そうですね……そのことに関しては私は何もできません」

「そうですよね、あたしなんかじゃ……」

「悩むのは女神候補生の特権です。女神様になってからでは悩んでる時間なんてほとんどありません。たくさん悩んで、たくさん壁にぶつかって、そうして女神候補生は女神様に相応しい強さを身につけていくのです。ノワール様だってそうでした。ネプテューヌ様もです。」

「……」

「さて、私の分の書類は片付いたので、私はノワール様のところに行きます」

「え⁉︎ もう終わったんですか?」

「はい、ユニ様の分もお手伝いしましょうか?」

「これは……自分でやります!」

「そうですか、ではお先に失礼します。ネプギア様が会いたがっているのでお早めにお越しくださいね」

「はい!」

 

「ネプギアが羨ましいなぁ、ギンガさんみたいな人がうちにもいればいいのに」

 

 ノワール様のところへ戻ると、まだ横になっているネプテューヌ様にネプギア様が注意しています。ネプギア様は私ほどではありませんがネプテューヌ様に甘いので珍しい光景ですね。

 

「ごめんなさいノワールさん…お姉ちゃん、女神の心得を聞くんじゃ…」

「悪いけどお断りよ、私敵に塩を送る気なんてないから」

「あー! 敵は違うでしょ?友好条約結んだんだからー」

「そうですよ、せっかく友好条約を結んだのですから、昔のように仲良くしたらどうでしょう。お互いをネプちゃん、ノワちゃんと呼び合うぐらい仲が良かったあの頃のように…」

「のわぁぁぁっ⁉︎ ギンガ⁉︎ 急に何言い出すのよ‼︎」

「あ、ギンガおかえりー」

「ただいま戻りました。……話を戻しますと、ネプテューヌ様とノワール様がまだ女神候補生だった頃はお互いをネプちゃん、ノワちゃんと呼び合……」

「戻さなくていいわよ! あなたはもう黙ってて!」

「ノワちゃん、私のこともまたネプちゃんって呼んでもいいんだよ」

「呼ばないわよ! てかノワちゃん言うな!」

「お姉ちゃん! 書類の整理終わったよ!」

「ありがとうユニ。でも、ちょっとこの馬鹿二人の相手に忙しいからそこに置いといて」

「はーい!」

 

 ユニ様もお仕事を終えた様子ですね。先程と変わって良い表情をしています。あなたもネプギア様も今よりもっとずっと強くなれますよ。

 

「ネプギ……ぎ、ぎあちゃん…」

「どうしたのユニちゃん?何か言った?」

「な、なんでもないわよ‼︎」

「えぇ⁉︎ 何で怒ってるの⁉︎」

 

 ネプギア様とユニ様はとても仲が良く、彼女たちを見ていると私の心までも洗われるようです。それは良いのですが……私はノワール様を怒らせてしまいました。女神様を怒らせてしまうという女神補佐官とっての『生き恥』を一日に二度も晒すことになるとは。切腹……はネプテューヌ様に禁じられてしまっているので、この罪をどう償いましょう。

 

 おっと、そういえば私はノワール様に書類を渡しにきたんでしたね。ネプちゃんノワちゃん談義に気を取られ忘れてしまっていました。

 

(ノワール様、書類の整理が終わりました)

「え、何? あ、書類ね、ありがとう」

(ノワール様が目を通す必要があるもの、必要のないものに分けておきましたので)

「何で黙って私を見てるのよ? 何か言いなさいよ」

(先程ノワール様に黙るように言われたので……)

「あ、もしかして私がさっき黙っててって言ったから……?」

(はい)

「嘘でしょ、本当にここまで徹底して黙るなんて……」

(できれば、喋る許可をいただきたいのですが……)

「まぁもう喋っても良いけれど……ちょっと待って、あなた今喋ってないわよね? 頭に言葉が流れ込んでくるんだけど……」

(喋ることができないので、ジェスチャーでは限界がありますし、直接脳内に語りかけることにしたのですが)

「やめて! 怖い! 喋っていいから!」

(かしこまりました」

「もうこいつほんとになんなの!」

 

 

 

 

 

 

 その後、私たちはあいちゃんとコンパさんの提案で、国境沿いのモンスター退治をしながらノワール様に女神様の心得を学ぶことになりました。今回のクエストはラスーネ高原とトゥルーネ洞窟の二つでどちらも難易度は高くないとのこと。私は今、私たちの歩くペースに付いてくるのが難しいコンパさんを抱えて歩いています。

 

「ギンガさん、重くないですか?」

「いえ、全く、むしろ軽すぎます。もう少し重くなった方が健康にいいと思いますよ」

「こらー! ギンガったらデリカシーのないこと言わないの!」

「申し訳ありません」

「ギンガさん、そろそろ自分でも歩けるので降ろしても大丈夫です」

「わかりました、また疲れたらすぐ言ってください」

「はい、ありがとうございますです」

「ネプ子もコンパも師匠も緊張感ないわね…」

「あいちゃんも疲れたらすぐ言ってくださいね、だっこしてあげますので」

「わ、私はいいです!」

「ねーギンガー、私はー?」

「命令ならば抱えますよ」

「それはちょっと違うんだよねー」

 

 ネプテューヌ様をだっこ……ですか。昔はよくしましたね。先代のプラネテューヌの女神様には自分よりネプテューヌ様のことをよく見るように言われていたので、幼い頃のネプテューヌ様とは常に一緒にいたものです。

 

「ねえユニちゃん機嫌なおしてよー! というか何で怒ってるのー⁉︎」

「別に怒ってないわよ! ぎあちゃんのことなんか知らないわよ! あっ…」

「え⁉︎ ユニちゃん今のもう一回言って! ねえもう一回!」

 

「はぁ……もう諦めよ、ネプテューヌ一人だけならまだツッコミは間に合うんだけどギンガまでいるとなると私の手には負えないわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで私たちはラスーネ高原の現場に到着しました。女神様を待っていた集落の人々を前に、ノワール様は女神ブラックハート様に変身し手を振ります。女神の心得その2『国民には威厳を示すこと』ですね。しかし、私はその光景にある違和感を覚え、つい口を開いてしまいました。

 

「……あの人たち、頭が高くないですか?」

「「「「「「え?」」」」」」」

 

 その場にいた全員が私に振り向きます。あれ、私何か変なこと言いましたかね? とりあえずブラックハート様に平伏しながら話を続けるとしましょうか。

 

「いや、普段のお姿ならまだしも目の前に変身した女神様がいるんですよ? 女神様が良いと言うまで頭を垂れて平伏すか、最低でも跪くのは常識でしょう⁇⁇⁇」

「どこのディストピアの常識よ! ネプテューヌ、ゲイムギョウ界の平和のためには友好条約を結ぶことよりも先にこいつを殺した方がいいと思うわ」

「まぁ確かにギンガは少し過激だしすぐ粛清とか言うけどー、実際にするわけじゃないしー」

「実際にしてたら大問題よ‼︎ ていうかギンガも早く顔を上げなさいよ‼︎」

「わかりました……このようにお許しが出るまで頭を垂れて平伏すのが常識ですよ! わかりましたか皆さん!」

「いやーーーー! 私の国民を過激思想に洗脳しないでーーーー‼︎」

「変身後のお姉ちゃんがこんなに取り乱してるの初めて見た……」

「ねえユニちゃん! さっきのもう一回言ってよ! ねえってばー!」

 

「……もうカオスね」

「……ですぅ」

 




次回、おそらく初戦闘です


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03. 初めてのモンスター退治

ギンガがネプテューヌのことをよく見ているようにネプテューヌもギンガのことをよく見ています。
まぁつまりそういうことです。
というわけで初投稿です。


 どうやらラスーネ高原にて大量発生したスライヌの殲滅が今回のクエストのようですね。大量発生したモンスターがスライヌごときなのが少し残念です。もう少し強いモンスターであればネプテューヌ様の変身を見られるかと期待したのですが。ノワール様のように最初から渋らず変身するスタイルも良いのですが、ネプテューヌ様のようにギリギリまで踏ん張ってギリギリまで頑張ってどうにもこうにもならない時に変身するスタイルも私は好きです。なんといいますか、最終フォーム登場回にありがちなその回の引きで変身して活躍は次回って感じのやつ、あれ私はあまり好きじゃないんですよね。

 

「……何だろう、よくわからないけど誰かが私のことを批判してる気がする……」

「どうしたのネプギア?」

「ううん、なんでもないよ」

 

 ……つい、話が逸れてしまいました、話を戻します。おそらくノワール様は国境沿いのクエストをあえて私たちにやらせることで、ラステイションだけでなくプラネテューヌのシェアの回復を目論んでいるのでしょう。女神の心得その3『活躍はアピールすべし』ですね。

 

 ノワール様は本当に優しいお方です。口では厳しいこと言うのは相手のことを思いやっているからこそなのでしょう。ですが、これをネプテューヌ様に伝えてしまうと今度こそ私がノワール様に殺されかねないので黙っておきましょう。女神様に殺されるなら本望ではありますが。

 

「ネプギア 、広報用に撮影しといたげるからね」

「ありがとうユニちゃん!」

「あーあーめんどくさいなー、まぁスライヌくらいひのきのぼうでも倒せるからねー!」

 

 スライヌごときネプテューヌ様が出るまでもありませんが、シェアの回復のためにはネプテューヌ様自身が戦った方が良さそうですね。そもそもネプテューヌ様は怠慢癖があってもやると決めたらやるお方ですので、ここまできたら文句も言わずにスライヌ退治に尽力すると思いますし。と、なると私はここで待機していた方がいいのでしょうが、ネプテューヌ様が戦うのに私が何もせず後ろで突っ立ってるというのは耐えられません。そうですね、ネプテューヌ様やネプギア様の活躍の場を奪わない程度に端の方でチマチマとスライヌ退治をしましょうか。

 

「お姉ちゃん、ギンガさんって強いの?」

「弱いわよ、私やネプテューヌよりは」

「そうなんだ……」

「でも、よく見ておきなさい」

「え?」

「ユニにとっては私が戦うのを見るよりも参考になると思うわ」

 

 ネプテューヌ様とネプギア様が武器を手にスライヌの群れに飛びかかります。では、私も続くとしましょう。女神様を立てるように慎ましく、ですね。

 

「てやぁぁぁ! ……ねー、ギンガー! そんな端っこの方で戦ってないでもっとこっち来てよー!」

「そう言われましてもネプテューヌ様のご活躍の場を奪うわけには……」

「そうじゃなくて、ちゃんとネプギアに指導してあげてー」

「……! はい!」

 

 おっと、これはいけません。私としたことが女神様を立てることに気を取られ、女神補佐としての責務を放棄してしまっていました。女神候補生であるネプギア様を一人前の女神様に育て上げること、これも女神補佐官としての責務です。

 

「ネプギア様」

「あ、ギンガさん」

「先程のスライヌを斬った動き、お見事でした。ですが」

 

 口を動かしながらもスライヌを倒す動きを止めずネプギア様に指導します。

 

「若干動きに無駄がありますね、余計な力もこもってしまっています」

「無駄……ですか?」

「スライヌ一体だけが相手なら無駄ではありませんが、敵は多数なので攻撃を1度で完結させるのではなく、即座に次の攻撃に繋げられるように動くといいでしょう」

「わかりました!」

 

 ネプギア様への助言はこの程度でいいでしょう。1から10を全て言ってしまってはネプギア様のためになりません。そもそもネプギア様は1を聞いて10の理解ができるお方ですしね。

 

「あの三人なら私たちの出る幕はなさそうね」

「でも、あいちゃん、久し振りにギンガさんに見てもらいたいんじゃないです?」

「え⁉︎ ま、まぁ……そうだけど……」

「行ってきたらいいですよ」

「そうね。ありがとうコンパ。スライヌ相手ならコンパでも苦戦しなさそうだけど万が一のことがあるからコンパはここで待ってて」

「はいです」

 

 どうやらあいちゃんも戦いに加わってくれるようですね。とても心強い。

 

「師匠! 私も戦います! できればご指導お願いしたいのですが!」

「ありがとうございます、あいちゃん。ですが、あいちゃんには今更教えるようなことなんてないですよ」

「え…」

「それだけあいちゃんが優秀ということです。あぁでも一つ、あいちゃんはすぐに熱くなりがちですので常に冷静さを保つように」

「はい!」

 

 先ほどよりも良い動きになったネプギア様やあいちゃんのおかげでスライヌ殲滅はもう時間の問題でしょう。ネプテューヌ様に至ってはスライヌ退治というよりもう遊んでいますし。

 

「すごい……」

「綺麗でしょう? ギンガの動き」

「うん……」

「手本のような丁寧な戦い方をするのよ、伊達に私たちより長生きしてないわ」

 

 ブラックハート様とユニ様がこちらを見ています。照れますね……ではなく、そうだ、ネプギア様とあいちゃんへの指導はもう良さそうですし、ここは剣ではなく銃を使いましょう。異空間に剣を収納し、そこから大型のライフルを取り出して……と。女神補佐官たるもの、どのような武器を使う女神様にも適切な指導ができるようにだいたいの武器は使えるようにしていますが、これを使うのは久し振りですので、ユニ様の前で上手く動けるか少し緊張しますね。

 

(あれ? いつのまにかギンガが銃使ってる。あーそういうことね)

 

 敵と一定の距離を取りつつも味方に敵の狙いが向きすぎないようにある程度は引きつける。撃った後も油断せず移動しながら敵との距離を調整する。どうしても近距離の間合いに詰められた時には蹴りなどで対処する。こういったところでしょうか。久々にライフルを使いましたが、あまり腕が鈍っていなくて安心しました。見てくれましたか、ユニ様。

 

「ユニの方が銃の扱いは上手いし、命中率も高い、けど……」

「うん……あたしより凄い……」

 

(やるわね、ギンガ。さっきまでは帰って欲しくてしょうがなかったけどあいつがきたのは正解だったわ)

 

 そのまま何事もなくスライヌの殲滅は完了しました。思っていたより数は多かったのですが、女神様たちにかかれば容易いものです。

 

「スライヌに纏わり付かれる、みたいなムフフなハプニングがあると思ったけどそんなことはなかったね! でも……しばらくゼリーとか肉まんとか見たくないー……」

「ネプテューヌ、どうして女神化しないの! 変身すればもっと楽に……」

「まぁでもほらぶっちゃけ余裕だったし」

「他の人になんとかしてもらったんでしょ! そんなんだからシェア…が…」

「あと変身するとほら、尺が」

「メタいこと言うのやめなさいよ! はぁ、もういいわ、あとは私がやる。せいぜい休んどきなさい」

 

 ブラックハート様が一人でトゥルーネ洞窟に行ってしまわれた……ご機嫌が悪いのでそっとしておいた方がいいのかもしれません。私はネプテューヌ様は今のままでもいいと思っているのですが、ノワール様は幼い頃から切磋琢磨してきたネプテューヌ様の今の体たらくが許せないのでしょう。

 

「短気だなーノワールは。あ、ユニちゃん! 写真撮れたー?」

「え、あ、はい」

「どれどれ〜? おお、ネプギア可愛い! 私のメアドにも送っちゃえー!あとはー、私とギンガのツーショットとかないかなー」

「ありませんよ」

「ねぷぅ? なんで写真を見てないギンガにわかるのさ?」

「ネプテューヌ様と私如きが一緒に映るなど烏滸がましいので、共に写らないような位置取りを徹底したり、どうしても写ってしまいそうな時はその場で高速移動をしブレることで写らないようにしましたので」

「何その無駄に洗練された無駄のない無駄な動き……」

「これも長年の鍛錬の賜物です」

「もう! せっかく久しぶりに一緒に戦ったのにー! 次からはちゃんと写るように!」

「ですが私如きが……」

「これは女神命令!」

「……はい」

 

「師匠は相変わらずねえ……あれじゃネプ子が少し可哀想だわ」

「そうですね、ねぷねぷの気持ちに気付いてあげてほしいです」

 

「ねぇ、ネプギア……ギンガさんっていつもこんな感じなの?」

「いつもこんな感じだよ」

 

(ギンガさんがうちにもいればって思ったけど……やっぱたまに会うぐらいでいいかなぁ)

 




コンパが戦闘からハブられがちになってしまってるんですけど、戦闘員じゃない彼女をあまり戦わせたくないんですよね。
ゲームでも戦闘メンバーからは抜いてしまいます。
次回おそらくネプテューヌ様の初変身です。
祝え。


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04. ご唱和ください、女神様の名を!

戦闘の描写を文字にするのはとても難しくて今の私にはできません……
実際に自分もやってみると、小説を書いている方々のスキルの高さを思い知ります……
というわけで初投稿です


 

 ゲイムギョウ界において、女神様への非礼は死をもって償うほどの重罪。そしてその重罪の中でも最も重いもの、それは『女神様の変身の妨害』だと私は考えています。なぜ今このタイミングでそのようなことを言うかといいますと、目の前でそれが起こっていたからですね。

 

 状況を説明しますと、一人でトゥルーネ洞窟に向かわれたノワール様、いえ、変身したからブラックハート様ですね。……いやでも変身をもう解いているのでノワール様か。まぁ、とりあえず……ノワール様がエンシェントドラゴンに苦戦をしていたところにネプテューヌ様が駆けつけたのです。私もネプテューヌ様と共に洞窟まで来たのですが、ノワール様にかっこいいところを見せたいからと、私は物陰に待機しているように言われました。それにしてもおかしいですね、相手がエンシェントドラゴンとはいえノワール様が変身を解除させられるほど追い詰められることになるはずはないのですが……目の前でそうなっている以上は考えても仕方がないですね。

 

 そしてネプテューヌ様がついに変身する……! というところで横から現れた『2体目』のエンシェントドラゴンがネプテューヌ様に攻撃し、変身を妨害したところから話は始まります。

 

「ちょっと! 変身中の攻撃は御法度だよ!気を取り直して、刮も……うわっ! 思いっきり変身邪魔して来るんだけど⁉︎ ていうか原作だとここ1体じゃなかったっけ⁉︎ 私ハードモード選んだ覚えないよ!?」

「ネプテューヌ! こんな時にメタなこと言ってふざけてる場合じゃ…」

「うーん、こんなはずじゃなかったんだけどなぁ……」

 

 変身の妨害を一度ならぬ二度までも…っ!この愚行を許すわけにはいきません…‼︎ ……ネプテューヌ様、お許しを。

 

「塵屑が‼︎‼︎ 女神様の変身の邪魔をするなど烏滸がましいにも程がある‼︎‼︎ 下がれ‼︎‼︎‼︎」

 

 私はエンシェントドラゴンの尻尾を掴み、それをもう一体のエンシェントドラゴンに投げつけました。もう何撃か加えてやりたかったのですが、これ以上出しゃばるわけにもいきませんので。

 

(え? ちょっと何今の? 怖……)

 

「ギ……ギンガ……?」

「申し訳ありませんネプテューヌ様。下がっていろと言われたのに出過ぎた真似をしたどころか見苦しいところをお見せしました…今のうちに変身を」

「う、うん、わかった! よーし、刮目せよ!」

 

 ついにネプテューヌ様の変身です。瞬きや呼吸も忘れて見入ってしまいます。嗚呼美しい……何度見ても美しい……涙すら出てきます……パープルハート様尊い……好き……

 

「女神の力、見せてあげるわ!」

 

 ちなみにパープルハート様に後ろから小型のモンスターが飛びかかろうとしていたのですが、それは引き千切ってその辺に捨てておきました。なるほど、ノワール様はおそらくこれの不意打ちのせいで追い込まれたというわけですか。

 

「どうかした? ギンガ」

「いえ、なにも」

「そう、私が変身した時には平伏すんじゃなくて隣に立つ。その約束をちゃんと守ってくれて嬉しいわ」

「私としては平伏したいのですが」

「ダメよ、私が隣に立っていて欲しいの」

「身に余る光栄です」

「一体、任せてもいいかしら?」

「私がやってもよろしいので? ノワール様にいいところを見せたかったのでは?」

「……それはもう失敗してしまったし、久しぶりにあなたの剣技が見たいのよ。さっきは途中から銃を使っていたから」

「わかりました、お任せを」

 

 パープルハート様の活躍の場を私如きが奪うなど心が痛みますが、任されたからには参ります。

 

 ……おいそこの塵屑、お前がさっきパープルハート様の変身の邪魔をしたのを俺はまだ許してないからな、覚悟しろよ。

 

「『クロスコンビネーション』!」

(ふぅ、こんなものね。ギンガの剣技を見逃したくないし、こっちは速攻でカタをつけてやったわ)

 

 ……先程の怒りとパープルハート様の尊さで情緒不安定になり少し素が出てしまいました。私もまだまだ未熟ですね。どれだけ感情が掻き乱されていても戦いでは冷静に、ですね。パープルハート様はもうエンシェントドラゴンを仕留めたご様子。余りにも早すぎて決着の瞬間を見逃してしまったのが悔やまれます。さて、パープルハート様とノワール様の前で無様な戦いは見せられませんし、それに何度も言いますが先程の怒りもあるので、私も必殺技を使わせていただきましょう。

 

「……『ギャラクティカエッジ』!」

 

 エンシェントドラゴンに必殺技を叩き込み、胴体を切り裂き、消滅させました。女神様の変身を妨害した罪を地獄で償うといいでしょう。 

 

 『ギャラクティカエッジ』というのは、歴代のプラネテューヌの女神様の使う技の中で私が一番好きな『クリティカルエッジ』をお借りし、自分に合う形に仕上げた技です。何百年、何千年と使い続けている技ですので、予備動作無しで技を出すことができます。

 

(……出たわね『ギャラクティカエッジ』。変身した私やネプテューヌの技より威力は劣るものの、私たち女神を差し置いてゲイムギョウ界で最も美しい技と言われるほどの剣技……)

「流石ねギンガ、何度見てもその技は私にも真似できそうにないわ……」

「お褒めいただき光栄ですが、パープルハート様が私の真似事などする必要はありませんよ。それにパープルハート様の技より威力も劣っていますし」

「……そういうことじゃないのよ」

「?」

「なんでもないわ」

 

(ふーん、ギンガと同じ技が使いたいなんてネプテューヌにも可愛いところあるじゃない)

 

 パープルハート様は何故か私の『ギャラクティカエッジ』を習得したがるのですけれど、パープルハート様が先程やった『クロスコンビネーション』の方が威力が高いので必要ないと思いますが。それに、私の技など剣技の基礎ができている者ならば誰にでも使えるようになるものです。ということはおそらく、基礎を疎かにしないというパープルハート様の意識の表れなのでしょう。女神様であっても傲ることはない、素晴らしき心がけです。

 

 さて、これで洞窟の中のモンスターも殲滅が完了したのでネプギア様のところまで戻るとしましょう。

 

「助けてもらわなくても一人でできたわよ!」

「でしょうね、でも、助け合うのが仲間だわ」

「別に仲間だなんて……」

「どうして今日はこの辺りを選んだの?」

「それは早く帰って欲しくて……」

「私が活躍すれば、噂はプラネテューヌに国境越しに伝わる」

「……」

「そうなれば、私はシェアを回復できる。ありがとう、ノワール」

 

 パープルハート様が変身を解除します。名残惜しいですが戦闘が終わったのでこれ以上変身している必要もないですしね。名残惜しいですが。いや、いつものネプテューヌ様よりパープルハート様が良いなんて一言も言ってないですよ? ですが、ネプテューヌ様は他の女神様と比べてあまり変身を乱用しないタイプですので、たまにしかパープルハート様のお姿を見ることができないんですよ。わかってください。

 

「でもー! やられそうになってた女神のこともバッチリ報告しなきゃね!」

「それは黙ってて! ていうかやられそうになってたのはあなたもじゃない!」

「てへっ」

「『てへっ』じゃないわよ!」

「まぁまぁここはお互い黙っておくということでー! ギンガも言っちゃダメだからね!」

「はい」

「あ、ノワール」

「何よ」

「先に戻っててー、私はギンガと少し話してから戻るから」

「はぁ、わかったけど……モンスターがまだいるかもしれないから気をつけなさいよ」

「わかってるってー」

 

 ネプテューヌ様が私にお話⁉︎ 私か不愉快な思いをさせてしまったのでしょうか? 心当たりがありすぎてわかりません……

 

「ねえギンガ」

「はい」

「ギンガはさ、私のことを信じていない国民は嫌いなのかもしれないけど、私は私のことを信じてない国民のことも好きだからさ」

「……」

「ギンガにも好きになれー! なんて言わないけど、粛清とか虐殺とか言わないでもうちょっと優しくなってほしいかなーって」

「……プラネテューヌの国民の意識を改革すべきだという私の意思は変わりません、ですがネプテューヌ様の命令ならばそうなりましょう。もう少し見守ってみることにします」

「そっかー、うん、まぁいいや。ギンガは私の嫌がることはしないってわかってるし。たまに無意識でやることはあるけど」

「私が……ネプテューヌ様の……嫌がることを……? 今すぐ直しますのでどのようなことかお聞かせください!」

「まぁ直さなくてもいいよ! そこ含めてギンガだからさー!」

 

(私の大好きな、ね)

 

「そんな……無意識にネプテューヌ様の嫌がることをしていたなど……私の存在意義が……俺は……僕は……私は……!」

 

(そういうとこなんだよなー)

 

 そうして私とネプテューヌ様は洞窟から出てネプギア様たちの元に戻ったのですが、洞窟内での戦闘の様子が少し間違った伝わり方をしていたようで。

 

\ブラックハート様とパープルハート様がハイパー合体魔法でモンスターを倒してくださったわ!/

\バンザーイ! バンザーイ!/

 

「……なんか話作られてね?」

「いいじゃないですかハイパー合体魔法。ロム様とラム様の連携魔法『ろむちゃんらむちゃん』のように『ねぷちゃんのわちゃん』と名付けるのはどうでしょう?」

「うーん、悪くないけどどうせならもうちょっとかっこいい名前がいいかなー」

 

 

 

 

 

 こうしてラステイションでの件を終え、プラネテューヌ教会に戻ってきた私たちをイストワールが出迎えてくれました。イストワールはプラネテューヌのシェアが回復したからかとても機嫌が良さそうでした。

 

「流石ノワールさん!」

「ねぷぅ⁉︎ そこは流石私でしょ?」

「ネプテューヌさんの功績かどうかは私まだ疑ってます」

「いーすん何気にひどーい!」

「実際どうなんですかギンガさん?」

「いや、ネプテューヌ様は獅子奮迅の活躍をされていましたよ、迫り来るモンスターたちを千切っては投げ……千切っては投げ……」

「うーん、ギンガさんはネプテューヌさんにとても甘いからあまり信憑性ないですね」

 

 逆にイストワールはネプテューヌ様に対して厳しすぎやしませんかね?まぁ……それがイストワールなりのネプテューヌ様への愛情なのでしょう。

 

「……なんで国民宛のメルマガの中身がギンガさんの写真ばっかりなんだろう?」

「でもそれで女性ユーザーからの支持がすごく増えてるらしいわよ」

「どの写真もカッコいいです」

「師匠は戦い方が綺麗だから映えるのよね、コメントを見てみるわ。えーと、『この教会員さんカッコいい』『ギンガさんステキ!』『ギンガ様に粛清されたい』」

「ギンガさん大人気です」

「もしかして今回のシェアの回復ってお姉ちゃんと私じゃなくて…」

「……あり得るわね」 「……あり得るですね」

「みんなどうしたのー? あれー? なんで国民宛のメルマガの中身がギンガの写真ばっかなのー?」

「そのくだりたった今やったわよネプ子」

「あ! もしかして私宛のメアドと間違えて送っちゃったんだ!」

「……ふーん、師匠の写真をそんなにたくさん、ねぇ……?」

「あ、あいちゃん! 何ニヤニヤしてるのさ! もう! からかわないでよぅ!」

「いつもの仕返しよ」

「あいちゃんめー! このー!」

 

 イストワールのところからネプテューヌ様たちがいる部屋に戻るとあいちゃんがネプテューヌ様に追いかけられていました。いつもは逆なんですが珍しいこともあるものです。ん?あいちゃんのコートのポケットから何かビラが落ちました。拾ってあげましょう。

 

「あいちゃん、何か落ちましたよ……『女神いらない』……?」

「すみません師しょ……はっ、しまったぁぁあ!」

 

(まずいわまずいわまずいわ! そういえばポケットにしまい込んだままであの紙を処分するのを忘れてたわ! どどどどうしよう…あんなものを見てしまった師匠がなにをしでかすか……血の大粛清? 冥界送り? ……ごめんなさいネプ子、ネプギア 、コンパ、イストワール様! 私のせいでプラネテューヌが…… !)

 

「……ネプテューヌ様の良さがわからないとは、哀れでなりませんね…そう思いませんか?あいちゃん」

「そ、そそ、そ、そうですね!」

 

(あれ?あまり怒ってないわ…)

 

「まぁ、こういった方々もいずれ思い知ることになるでしょう、ネプテューヌ様の偉大さを」

「あいちゃん捕まーえた!」

「なっ! 師匠と話してる時に捕まえるのは反則よ!」

「反則なんてないんだなーこれが!」

「ちょっと! どこ触ってんのよ!」

「ふへへへ、いいお尻してるね〜あいちゃ〜ん」

「やめなさい!」

 

 正直、内心ブチギレてますけれど、もう少し寛容さを持つというネプテューヌ様との約束がありますのでね。流石にこのビラを配ってる現場に遭遇したら殺……注意しますけど。

 

 そういえば、先程はとりあえず納得したのですが、ノワール様が追い詰められていた理由は本当にただモンスターに苦戦したからだったのでしょうか?

 

 何か嫌な予感がします……このゲイムギョウ界に悪意が渦巻いている……そんな嫌な予感が。……私の思い過ごしならいいのですが。

 

 そんなことを考えていたら急にネプテューヌ様に腕を掴まれてゲームの前まで引っ張られてしまいました。

 

「ギンガ! お仕事頑張ったしー! 一緒に今日の夜から明日の夜までーゲームしようよー!」

「確かに今日はよくお仕事をしてくださったのでそれぐらいは遊んでもよろしいですが、夜はちゃんと寝たほうがいいですよ」

「いやいや、睡眠時間を削ってやるゲームは最高に楽しいんだよー!」

「それは寝不足で頭が変になってしまっているだけでは……?」

「女神命令だから拒否権はないよー!」

「マジですか……」

 

 そうですね、たとえ私の悪い予感が当たったとしても、何が起ころうが私はネプテューヌ様とネプギア様のために戦います。この命を賭してでも、あなた達の笑顔を守るために。そして、あなた達の思いを……未来へと紡ぐために。それが私の生きている意味です。

 





とりあえず本編1話の分は終わりました。
ギンガの使った『ギャラクティカエッジ』って技の理屈はアレです、初代ウルトラマンの『スペシウム光線』みたいな感じです。
『スペシウム光線』は光の国のウルトラマンなら誰でもできる基本技ですが、初代ウルトラマンはそれを必殺技の威力まで練り上げている、それのパク…リスペクトです。


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小さな海王星(ほし)の話

幕間というやつなのでただでさえ短い本編と比べて更に短いです
そして初投稿です


「ギンガさんも寝るんだね……」

「そりゃ寝るでしょ、ネプギアはギンガをなんだと思ってるのさ」

「いや、その……寝てるから当たり前だけど、こんな隙だらけのギンガさん初めて見たし……それにギンガさんはいつも私たちより遅く寝て早く起きるから……

「それにしてもギンガが昼寝しているのを見るのなんていつぶりだろうなー?」

「きっとお姉ちゃんが一日中ゲームに付き合わせてたから疲れちゃったんだよ……」

「えー? 私のせいー?」

 

 

 

 

 

 

 

『そこよっ! ……「クロスコンビネーション」!』

 

『甘いです、「ギャラクティカエッジ」……!』

 

『なっ!』

 

『私の勝ち……ですね』

 

『私の方が先に技を出したのに……予備動作も無しにいきなり技が出てくるなんてズルよズル、反則負けで私の勝ちよ』

 

『長年の鍛錬の賜物です』

 

『はぁ……ようやく変身できるようになったから今日こそはギンガに勝てると思ったのに……疲れたから変身解こーっと!』

 

『まだパープルハート様、いえネプテューヌ様はご自身の変身後の力を使いこなせていませんね』

 

『使いこなせてない? 変身できるようになったのに?』

 

『ええ、使いこなせるようになれば私如き楽に倒せますよ』

 

『その如きに負けた私はなんなのさー! それにどうやって使いこなせばいいのー? 私今手を抜いたつもりないよー?』

 

『では1つアドバイスを。ネプテューヌ様は変身による身体能力や反応速度の向上などにまだ思考が追いついていません。動物のように本能で動いてるだけです』

 

『……ギンガってたまに毒吐くよね……』

 

『その非礼は後でお詫びしますが今は指導の一環ですので少し厳しくいきます、つまりは反射と思考を融合させる必要があるということですね』

 

『あーそれ昨日のアニメでやってたやつじゃん』

 

『はい、今の状況にぴったりの言葉だったので使わせていただきました』

 

『ギンガはしてんの? その反射と思考の融合ってやつ』

 

『一応していますよ、そういったことができなければ私如きでは生物としての格が違う女神様の相手にはなりませんので』

 

『だからその如きに負けた私は……もういいや、じゃあ、それをやるにはどうすればいいのさー?』

 

『死ぬほど鍛える……それしかないですね』

 

『えー! もっと楽にできる方法ないのー?』

 

『ありません』

 

『ねぷぅ……』

 

『ネプテューヌ様ならすぐにできるようになりますよ。さて、休憩は終わりです』

 

『えぇー⁉︎ まだちょっとしか経ってないよー! 疲れたから動けないよー!』

 

『ネプテューヌ様の回復力ならもう十分動けるのは分かっていますので、ネプテューヌ様には早く私を超えてもらわなければなりませんし』

 

『超えなくていいよ別にーギンガに守ってもらうからー』

 

『ダメです。ネプテューヌ様が女神様として国を守れるように強く鍛えるのが私の使命です。私に勝てるようになってからがスタートラインですよ。それに貴方が私より強くなったとしても、私は貴方をお守りします。それも使命ですから』

 

『……そっか……よし! じゃあ訓練再開! 行くよギンガーー!』

 

『はい、望むところです!』

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……少し眠っていたようですね……ん?」

 

 うたた寝から目を覚ますとネプテューヌ様が私の上で、ネプギア様が私の横でお昼寝をしていました。とても暖かく心地がよかったのはそういうことだったんですね。しかし参りましたね、もし私が動いたせいで気持ちよさそうに眠っているお二人を起こしてしまったらと思うと何もできません。心臓はものすごく動いていますが。

 

 それにしても懐かしい夢でした。あの後すぐにネプテューヌ様は私を超えました。私に初めて勝ったその時のネプテューヌ様の嬉しそうでありながらも少し寂しそうな表情は今でも鮮明に覚えています。

 

 ネプギア様はまだ変身ができないので負けたことはないのですが、時が経てばいずれ私は勝てなくなる……いえ、ネプギア様はネプテューヌ様と違い心に鍵をかけてしまっています。その鍵をどうにかしない限り変身も私を超えることもできないでしょう。ですが、それはネプギア様の心の問題なので私ができることは殆ど無りません。何かがきっかけでその心の鍵を開けることができればいいのですが……

 

「……むにゃ……」

「すぅ……すぅ……」

 

 心地好さそうに眠っているお二人を見ていたら目覚めたばかりの私もまた眠くなってきてしまいました。もう少しぐらいうたた寝をしてもいいですよね。それでは、おやすみなさい……

 

 

 

 

 

 

 

「やけに静かだと思ったら、こんなところで三人とも寝ているなんて……でも起こすのはもう少し経ってからにしてあげましょう。起きたらネプテューヌさんにはお仕事をしてもらわないと。

 

………私も、少しぐらい混ざってもいいですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ネプテューヌ様の寝返りで潰されてしまったイストワールの呻き声でみんな目が覚めました。

 




おそらく次回から本編2話の内容に入っていくと思います。


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05. 狙われた白のSisters!

私の文章って醜く(見にくく)ないか? って思いますが、瞬間瞬間を必死に生きながら書いているので初投稿です。


 

「綺麗な街並み〜! ルウィー、ずっと来てみたかったんだ」

「ルウィーはこのノスタルジックさが良いですね。私はプラネテューヌの近未来的な派手な街並みの方が好きですが」

「私の国だもんねー! でもーネプギアがルウィーに来たがってたからさ」

「ロムちゃんとラムちゃんに遊びに来てって言われてたの。二人が他の国に行くの、ブランさんが許してくれないんだって」

「あー、ブランってお堅いとこあるからねー。そういうことしてるとノワールみたいにぼっちになっちゃうもんねー!」

「目の前にいるんですけど…? ていうか誰がぼっちよ!」

「そうですよネプテューヌ様、ノワール様はぼっちなどではありません。孤高なのです」

「結局ぼっちってことじゃん」

「はぁ、この馬鹿二人は放っておいてネプギアだけ誘うんだったわ……」

「でもお姉ちゃん、ブランさんはギンガさんも連れてきてって言ってたよ」

「え⁉︎ 私は⁉︎」

 

 何気ないユニ様の言葉が、ネプテューヌ様を傷つけた。……という冗談は置いておいて、私は今、ネプテューヌ様とネプギア様、そしてノワール様、ユニ様と共にルウィーに来ています。

 

 ネプギア様がロム様ラム様に遊びに来るように誘われていたのと、私がこの間、久し振りにノワール様とユニ様にお会いしたので、他の女神様にもお会いしたくなったのをネプテューヌ様が気遣ってくれたのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 ルウィーの教会に着くと、ラム様とロム様、そしてそれを後ろから追いかけてきたブラン様にお会いしました。おそらく、ロム様とラム様がいたずらをしてブラン様に追いかけられていたのでしょう。ルウィー教会のいつもの光景、というやつですね。

 

「ネプギア! ユニちゃん!」

「来てくれたの……?」

「遊びに来たよ!」

「やっほー! ブランー! 来ちゃったー! てへっ」

「お久しぶりです。ブラン様、ロム様、ラム様」

「……ネプテューヌはともかく……ギンガ、あなたが来るとロムとラムの面倒をほぼ全部押し付けられるから助かるわ」

「勿体無きお言葉」

「あと、ロムとラムに悪影響だから平伏すのを今すぐやめて」

「あはは! ギンガさん面白ーい! 平伏せー!」

「平伏せー……!」

「……ってもう既に悪影響になってるじゃねえか!」

「ロムちゃんとラムちゃんに平伏せって言われると、なんか変なものに目覚めちゃいそうだよね」

「……わかりたくないけど、少しわかる気がするわ」

 

 ブラン様に平伏し終えた後、ベール様にもお会いしました。しかし、ルウィーにいるとは思わなかったので少し驚きましたね。ベール様からは自分と会っても平伏さなくていいと以前からメールで言われているので跪く程度に抑えておきましょう。

 

「ベールさんこんにちは!」

「やっほーベール!」

「お久しぶりです、ベール様」

「お久しぶりですわ、ネプギアちゃん、ギンガ。あとネプテューヌ」

「私はオマケ⁉︎ ていうかベールがなんでルウィーにいんのー?」

「その理由は後でお話しますわ。そういえばギンガ、そろそろリーンボックスの女神補佐官になる気にはなりまして?」

「ちょっ、私のギンガを取らないでくれるかなー」

「私には妹がいない、つまりリーンボックスにだけ女神候補生がいないんですのよ? 国同士のパワーバランスを保つためにギンガをいただいてもいいではありませんか。ギンガがダメならネプギアちゃんをくださいな。ギンガも欲しいですが、本命はネプギアちゃんですので」

「どっちもダメだよー!」

「お言葉ですがベール様、私如きが移ったところで国同士のパワーバランスは何も変わりませんよ。……そして、ネプギア様が抱きしめたくなるぐらい可愛いのはとてもわかりますが、息ができていなさそうなのでそろそろ離してあげてください」

「あら? さっきから何も言わないと思っていましたら、私の豊満な胸のせいでこんなことになっていたなんて、私の豊満な胸のせいで」

「それブランの前で言わない方がいいよ絶対」

「うぅ……苦しいけど……少し幸せ……」

 

 顔が真っ赤になりながら意識が飛びかけていたネプギア様が回復し、私たちの挨拶も済んだ後、式典以来久々に集まった女神様たちはお茶を飲み、女神候補生の皆様は雪で遊んでいます。私としてはルウィー教会のメイドさんたちに代わって女神様たちのお茶の給仕をしたかったのですが、ブラン様にロム様とラム様の面倒を見るように言われたので、候補生の皆様と雪遊びをしています。せっかくの機会ですし、遊びと少しの鍛錬を兼ねましょう。四対一の変則雪合戦です。私は投げ返しませんが。

 

「ギンガさんに雪玉当たらないよー!」

「当たらない……」

「ネプギアは左から攻めて、あたしは右から攻めるわ!」

「うん! わかったユニちゃん!」

「甘いですよ皆様。その攻め方では私には当てることはできません。面制圧で逃げ場を潰すか移動先を読んでそこに雪玉を置いておくぐらいはしませんと」

「さっきからその読みが更に読まれてるから当たらないんですけど……」

「もー! ロムちゃん! 魔法使っちゃおう!」

「うん……!」

「ちょっとラム! 流石にそれはダメよ!」

「なんでよユニちゃん!」

「ユニ様の言う通りです。私は魔法が直撃しても多分大丈夫ですが、建物や人に当たると良くないですからね。投げるのは雪玉だけにしておいてください。皆様、わかりましたか?」

「「「「はーい!」」」」

 

 少しの鍛錬を兼ねていると言いましたが、あくまでこれは遊びですので。ルールとマナーを守って楽しく遊びましょう。

 

(……ギンガがいるとあまりロムとラムの心配をしなくても良くなるから楽だわ。……いや、さっきみてえなことがあるからやっぱ油断はできねえけどな!)

 

「まぁそんなわけでねー! ルウィーに新しいテーマパークができたって聞いたから、みんなで遊びに来たのー!」

「イストワールからは女神の心得を教えてやってほしいって連絡をもらってるけど?」

「あーそれはもういいよ、前回あまり役に立たなかったし」

「悪かったわね役に立たなくて。ていうかあの後、私の方は大変だったのよ! 私がラスーネ高原に行くとそこの国民たちがみんな平伏したり跪くようになって! あそこで呑気に雪遊びしてるあの男のせいで‼︎」

「まさかギンガの意識改革がラステイションの方で成功していたなんてねー」

「ルウィーの国民にも同じことをしかねないわね…ネプテューヌ、ちゃんとあの男を制御しておいて」

「できる自信ないなー……でもノワール、その人たち嫌々平伏してるわけじゃないんでしょ?」

「嫌々やるのならともかく喜んでやるようになったからタチが悪いのよ!」

「意識改革大成功じゃん」

「望んでない改革なんて成功して欲しくないわよ!」

「まぁまぁノワール、今日はそんなことを言い合うために集まったわけではないのですから。ルウィーのテーマパークの噂は私も聞いていますわ。みんなで遊びに行くのも楽しいのではないかしら?」

 

 ベール様の提案を聞いたラム様とロム様がブラン様の元に駆け寄って行きました。

 

 ちなみに私は今、雪玉を当てるコツを掴んだ候補生の皆様に身体中至る所に雪玉をぶつけられ、全身真っ白です。口の中まで雪まみれです。

 

「ごめんなさいギンガさん……つい夢中になっちゃって……」

「フガフガ(何も気にすることはありませんよ)」

「ごめんなさい……あたしもやりすぎちゃって……寒くないですか?」

「フガフガ(大丈夫です。むしろ私はあなたたちの飲み込みの早さに感動しています)」

「すごい……何言ってるかわからないのに内容が頭に流れ込んでくる……これが前お姉ちゃんが言ってた脳内に語りかけてくるやつね……」

「うん、すごいけど……少し怖いかな」

 

 ……これ便利なんですけど、女神様たちからは不評ですね。

 

「スーパーニテールランドでしょ⁉︎ 行きたい行きたーい!」

「連れて行って……(わくわく)」

「….二人を連れて行ってあげて。ギンガならロムとラムの制御が私より上手いから任せられるし」

「え? ブランは来ないの? あと、私の女神補佐官を勝手にこき使わないで欲しいかなー」

「お姉ちゃん、行かないの?」

「私は……行けない」

「えー? 仕事ー? やめなよー! 昔の偉い人も言ってるよ? 働いたら負けかなと思ってるって」

「それ、偉い人じゃないから」

「しかし、働かなくても暮らしていけるぐらい生活が豊かな人はある意味『偉い人』なのかもしれませんね」

「何その哲学」

「とにかく……私は無理」

 

 ブラン様が来れない理由……私はブラン様を見た瞬間に察しました。仕事だからではないですね。では、何かって? それは秘密ですよ。ネタバレをしてしまってはネプテューヌ様に怒られてしまうので。

 

 

 

 

 

 

「いやー! このカメ、私のピーチを狙ってるよー!」

「………ネプテューヌ様に何してやがるこのど畜生が‼︎‼︎‼︎」

「ちょ、ギンガやめなさい!」

「止めないでくださいノワール様‼︎‼︎ このど畜生だけは許すわけにはいきません‼︎‼︎‼︎」

「ギンガを抑えないと……このままじゃさっきまでカメの命だったものが辺り一面に転がることになるわ……! ていうか力つよ⁉︎ ベール! ベールも抑えるの手伝って!」

「わかりましたわ。ほら、ギンガ、落ち着きなさい」

「私は冷静です‼︎‼︎‼︎ 冷静さゆえにこのど畜生を今すぐ殺……懲らしめなくてはならないと考えています‼︎‼︎‼︎」

「どう見ても冷静じゃないし、言い換えても殺す気満々じゃない!」

「ノワールもベールもカメじゃなくて私の心配してよー! まぁこのままじゃ本当にギンガがこのカメをバラバラにしかねないし、そろそろふざけるのやめよっと。じゃあねーカメさーん」

「……申し訳ありませんネプテューヌ様、ノワール様、ベール様。見苦しいところをお見せしました、確かに私は冷静ではなかったかもしれません」

「はぁ、変身しなきゃいけないとこだったわよ……」

「うーん、私は許しませんわ。そうですわね、ギンガがリーンボックスの女神補佐官になるというなら許してあげます」

「いやダメに決まってんじゃん何言ってんさ」

「ベール様のお誘いは嬉しいのですが、ネプテューヌ様がダメと言うので。それにしてもネプテューヌ様、あんなど畜生を生かしておいてよろしいので「ギンガ、正座」……はい」

 

 ネプテューヌ様に叱られてしまいました。ですが、やはり叱っている時のネプテューヌ様も可愛いです。

 

 スーパーニテールランドに着いてから、候補生の皆様と女神様たちは別行動をしていて、私も先程までは候補生の皆様と一緒にいたのですが、ネプテューヌ様が売店で桃を買って私たちにも分けてくれるそうなので、候補生の皆様の分を受け取りに行ったのです。そうして、あの忌々しき現場に遭遇してしまったわけですね。思い出すだけで腹が立つ……! あのど畜生めお前の顔覚えたからな。

 

…む?ネプギア様とユニ様が私たちのところに走って来ていますね。中々桃を取ってこない私を心配してきたのでしょうか? 女神様にご心配をおかけするなど死罪級の失態です。

 

 ……あれ? ……ネプギア様とユニ様『だけ』ですか? ネプギア様とユニ様がロム様とラム様を置いてくるとは思えないのですが……お二人のあの焦りよう……まさか⁉︎

 

「お姉ちゃん! ロムちゃんとラムちゃんが!」

「変なやつらに攫われたの……あたしたちもいたのに……何もできなかった……っ!」

 

 ……本当に失態ばかりの自分が嫌になります。私が少し目を離した隙にこんなことになるとは。ブラン様からの頼みを、女神補佐官としての使命を、果たすことができませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……誰だか知らねえが舐めた真似しやがって。

 

 

 

 




キレると口調が変わるという点でギンガはブランとキャラが被っているように見えてしまいますが、いつもの性格を『作っている』ギンガと、いつもの性格は別に『作っているわけではない』ブランという違いがあります。

…ブランっていつもの性格は作ってるわけじゃないですよね?大人しいブランもキレてるブランもどっちも本当のブランですよね?この作品を読んでる人がいるかはわかりませんが、もし間違ってたらコメントとかで教えてください。


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06. ルウィー狂騒曲

兇行者(ペロリスト)と狂信者(ファナティック)の死闘が始まろうとしているので初投稿です。


 自分の不甲斐なさと誘拐犯への怒りで頭がおかしくなりそうです。ネプテューヌ様には冗談でもやめろと言われていますが、ブラン様に腹を切ってお詫びしたい。できるだけ苦しんで死にたいので介錯もいりません。……ですが、死をもって罪を償うのは舐めた真似しやがった奴らに借りを返してからです。

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、ルウィー教会に戻り、ブラン様に謝罪をしにきたのですが、それも叶いそうにありませんでした。

 

「……そう言われましても、誰も通すなとブラン様に申しつけられているんです」

「えー⁉︎ 私たち女神仲間なんだからいいでしょ」

「いえ……女神様といえども」

「せめて謝らせてください!」

「ロムとラムが誘拐されたのはあたしたちのせいなの!」

「既に警備兵も総動員させて捜索させていますので……」

「それは知ってるけど……!」

 

『帰って……あなたたちはいつも迷惑よ』

 

 ようやくブラン様が口を利いてくれました……謝らなくては。許してもらえなくてもいいです。いや、許さないでほしいです。この状況において言葉だけの謝罪など何の意味もないですから。

 

「……申し訳ありませんブラン様、今回の件は全て私の責任です。責めるなら私だけを」

『そうね……あなたにロムとラムを任せたのは……間違いだったわ』

 

 ……その言葉に半分打ちのめされ、もう半分は救われました。私のせいにすらしてくれなかったら、私はもう何をしても償えないので。

 

「ちょっと、ブラン! いくらなんでもそんな言い方は……!」

「いいんです……事実ですので。……行きましょう皆様」

「ギンガ……」

 

 皆様と共に教会の外に出ました。しかしまだ、私はルウィーから帰るつもりはありません。

 

 

 

 

 

 

 

「全くブランったら、こんな異常事態に意地張ってどうするのよ」

「素直じゃないのはノワールの専売特許なのにねー」

「はいー⁉︎」

「ギンガさん……ごめんなさい……私たちのせいでブランさんに……」

「ギンガだけのせいじゃないんだからそんなに落ち込まないでよー」

「……そうですね、落ち込むのはもう終わりにします。どれだけ落ちこもうが、どれだけ謝ろうが、ロム様とラム様が帰ってくるわけではありません。この状況における最優先はロム様とラム様の奪還です。それが、ブラン様への償いでもあります」

「ふーん、切り替えが早いのね」

「ノワール様、申し訳ありません。ですが……」

「褒めたのよ。いつまでもウジウジされてるより100倍マシだわ」

 

 やはりノワール様は優しいお方ですね。しかし、そのお褒めの言葉を私はまだ受け取れません。奪還を成功させ、ブラン様に償った後にそれはいただきます。

 

「ネプテューヌ様、ネプギア様、ノワール様、ユニ様、ベール様、お願いがあります。ロム様とラム様の奪還のために……私に力を貸してください。女神様の手を煩わせるなど女神補佐官としてあるまじき行為ですが、この異常事態故、そんなことも言ってられません」

「頼まれるまでもないことね」

「そうだね、お姉ちゃん! あたしだってやってやるわ!」

「うーん、それはダメかな」

「そうですわね。そんなお願い、私は聞けませんわ」

「お姉ちゃん⁉︎ ベールさん⁉︎ どうして⁉︎」

「だって、貸すっていうのは違うでしょ! みんなで協力して、だよ!」

「みんな仲間なのですから。ギンガだって私たちの仲間ですわよ」

「ネプテューヌ様……ベール様……わかりました、訂正します。皆様、共にロム様とラム様を奪還しましょう!」

「「「「「おー!」」」」」

 

 とはいえ、私如きが女神様の仲間など烏滸がましいです。下僕ぐらいが丁度いいんですけど、まぁそれは今言うことではありませんね。

 

「それと、このタイミングで聞くのもアレだけどさ、結局何でベールってルウィーにいたの?」

「実は……」

「……? お姉ちゃん、あれ、なんだろう?」

 

 ネプギア様が指をさした先では……ブラン様が何者かのインタビューを受けていました。あの様子から察すると、良いインタビューではなさそうですね。止めに行った方が良さそうです。場合によっては殺………なんでもありません。

 

 

 

 

 

 

 

「つまり? 妹が誘拐されたのはあなたの責任、ということですね?ブランちゃん」

「そ、それは……」

「見てください! 幼女女神はなーーんにも釈明できません! やっぱり幼女に女神は無理です! 幼女は、お遊戯などして伸び伸びと生活するべきなんです! アブネスチャンネルは幼女女神に断固NO!」

 

 現場に駆けつけたのてすが、何ですかこのインタビュー? 聞くに耐えません。あのガキ……いや、見た目はガキだけどあれは割と歳いってますね、私も人のこと言えませんけど。とにかく、あの女を止めなくてはいけませんね。中継もされてますし丁度いいです。女神様に非礼なインタビューをした者の末路として見せしめに殺………なんでもありません。

 

「こらー! 何やってんのー!」

「何よあなた?」

「私はネプテューヌ、プラネテューヌの女神だよ!」

「あなたも女神ぃ? 外見的に少女と言えなくもないけど……身体が未発達だわ! あなたは幼女! 幼女認定よ!」

 

 未発達? 何言ってるんですかこの女? ネプテューヌ様は変身するとすごいんですよ?

 

「(ん? 無駄に顔の良い男がいるわね、そうだわ! この男に良さげなインタビューが聞ければアブネスチャンネルの支持率アップ間違いなしよ! それに悪いインタビューでも幼女女神の教会のイメージをダウンさせられるわ!)そこのお兄さんも幼女が女神なんてできないと思いますよね?」

「私ですか?」

「そうです! あそこの緑の大人っぽい女神ならともかく、幼女に女神なんてできないと思いますよね⁉︎」

「うーん、私との年齢差から考慮しますと女神様は全て幼女となってしまいますし……というより、この世の全ての女性は幼女となってしまうので……回答に困りますね」

「……はい⁇」

「あ、ごめんなさい間違えました。この世の全てと言いましたが一人だけ違います」

(何なのこの男? 予想の斜め上どころじゃないこと言い出したんだけど?こんな意味不明な回答聞いたところで意味ないわね……キリのいいところで適当に切り上げようかしら……).

 

「というわけでまぁなんといいますか、私が幼女女神様? というのを認めない場合、誰も女神様ができなくなってしまうので………っあぁ⁉︎ 今私女神様を『認めない』だなんて失礼なこと言いました⁉︎ すみませんこれ中継されてるんですよね⁉︎ うわあぁぁぁぁああぁぁぁ! 何という失言をしているんですか私は! 万死に値します!」

「え⁉︎ え⁉︎ ちょっ…あ! やめてください! カメラに頭を打ち付けないでください! ちょっと、やめ、やめてえ! もう! 何なのよこの男は⁉︎ 狂人の相手なんかしてられないわ! 撤退よ撤退ー!」

 

 ……我に返った私が最初に見たものは、おそらくカメラだったであろう物体の残骸でした。そして次に見たものは……疲労が限界に達し倒れ込んだブラン様でした。

 

「ブランさん! しっかりしてブランさん!」

「だ、誰か呼んできます!」

「どうしたんだろう」

「今の中継を見てルウィーの国民のシェアが一気に下が……いや、あの中継途中からとんでもないことになってもはやルウィー関係なかったわね……」

「シェアのせいじゃないと思うわ、たとえあの中継のせいだとしても影響が出るのが早すぎよ」

「じゃあ……」

「とりあえず、ブラン様はベッドに寝かせておきましょう。私が運びます」

 

 私如きが女神様に触れるなど烏滸がましいですが、この状態ではそうも言ってられません。失礼しますブラン様。

 ……それにしてもあのメイドさん、気配が普通のメイドさんと違うような? ブラン様に近い場所で働いているということはおそらくメイド長さんなのかもしれませんね。そして、メイド長さんというものは普通のメイドさんと纏う気配が違うのでしょう。

 

「皆さん、方法がありますの、ロムちゃんとラムちゃんの居場所を突き止める」

「!」

 

 ……おそらくその方法というのは、ベール様がルウィーにいた理由と関係している、ということなのだと私は推測します。

 

 

 

 

 

 

 

 ルウィーが飛ばしていた人工衛星から送られる低解像度の画像をリーンボックスのソフトウェアで高画質にする。その技術を利用し上空からロム様とラム様、そして誘拐犯の場所を特定する。それがベール様の言う「方法」とのことです。

 

 そしてベール様は、その人工衛星とソフトウェアの技術をルウィーとリーンボックスだけではなく四カ国で共有するという情報の公開のために、ルウィーに来ていたようです。ベール様とブラン様の心遣いに感動し平伏したかったのですが、今はそれよりもロム様とラム様の奪還が優先です。

 

 ……実を言うと私もその人工衛星の存在は友好条約締結以前から知っていたのですが、当時、プラネテューヌのプライバシーのために撃ち落とそうかと悩んでいて、結局やらなかったんですけどマジでやらなくてよかったです……

 

 ベール様がそれらを使い素早くその位置を特定しました。そこは、スーパーニテールランドの建設中のアトラクションとのことです。誘拐された現場から意外と近くでしたね…灯台下暗しというものですか。そして、奪還は夜に開始することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

「これから、ロム様とラム様の奪還作戦の内容を説明します。作戦フェーズは3まであります。まずはフェーズ1、ベール様が正面から突入します。いきなり大人数で入り込むことで誘拐犯を刺激しないようにするため、フェーズ1は最低限の人数、つまりベール様だけで行います。フェーズ1では敵の排除より人質の救出を優先してください」

「かしこまりましたわ」

「そして人質の救出が確認されたら、もしくは救出に失敗しても、フェーズ2です。ノワール様とユニ様によって内部の敵を殲滅します。しかし、フェーズ1が失敗していたら引き続き優先は敵の排除ではなく人質の救出でお願いします。あ、排除とか殲滅とか言いましたが、敵はなるべく捕獲してください」

「了解よ」「はい!」

「ギンガ、私とネプギアは?」

「フェーズ3……ですか?」

「はい、フェーズ3です。フェーズ3では、私とネプテューヌ様とネプギア様で敵の退路を塞ぎます。フェーズ2までで人質の奪還と敵の排除が完了したならフェーズ3は必要ありませんが、それでも念のため警戒は怠らないようにしましょう。それでは、作戦開始です!」

 

 まずはフェーズ1、ベール様が突入していきました。まず、自身と人質の交換を申し出て、ロム様とラム様を解放させるとベール様は言っていました。上手くいくといいのですが、いえ、ベール様なら上手くやってくださるでしょう。

 

\レイニーラトナビュラ!/

\いやぁぁ〜〜〜!/

 

 ……⁉︎ 誘拐犯のモンスターがロム様とラム様を抱えたまま吹っ飛んでいきましたけど⁉︎ ベール様、いえグリーンハート様何してるんですか⁉︎ フェーズ1という初っ端から人質ごと敵がいなくなるというパターンは想定していませんでした。……どうしましょう。

 

\レイシーズダンス!/

\やっぱりダメすかー!/

 

 ノワール様……ブラックハート様の声が聴こえたと思ったら、吹っ飛んで行く敵の構成員が見えたんですが⁉︎ 捕獲するように言ったはずですけど⁉︎ すごいですね、作戦が何一つ想定通りに進みません。

 

\テンツェリントロンペ!/

\幼女バンザーイ!/

 

 遥か彼方から聞こえるこの声は……やはりブラン様、いえホワイトハート様は来てくれましたか。ロム様とラム様が誘拐されたのにブラン様が何もしないなどあり得ませんしね。ブラン様ならきっと、いえ、絶対にロム様とラム様を助け出せたでしょう。作戦なんてもうあったものではありませんが、さて、私も果たすべきを果たすとしましょう。

 

「ネプテューヌ様、ネプギア様、申し訳ありませんが、少しお花を摘んできます」

「え? 花? ギンガにそんな可愛らしい趣味あったっけ?」

「お姉ちゃん、違うよ。あとギンガさんも違いますよ。その言い回しは男の人はしちゃいけないんです」

「あ、そうなんですか? 浅学なのがバレましたね。とりあえず行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アックック、あんなに活きがいい幼女など始めて見た! いつかぺろぺろしてやる……! 幼女が育たないうちに!」

「させると思いますか?」

 

 えーとですね、まず、ベール様の……グリーンハート様の攻撃パターンからこいつが吹っ飛ばされる地点を推測し、そしてそこに現れるであろうブラン様……いえホワイトハート様の攻撃パターンからさらにこのモンスター…モンスターですよねこれ?会話ができるぐらい知能の高いモンスターは珍しいですね。今の言動やロム様とラム様を誘拐したことからして、どうやらこのモンスターはロリータコンプレックスのようです。ロリコンのモンスター……ゲイムギョウ界は広いものです。

 

 話が逸れましたが、そういうわけで私はこのモンスターが吹っ飛された地点を推測し、そこに回り込んだわけです。

 

「ん? 誰だお前は」

「女神様を誘拐するような愚かな塵屑に名乗る名などありません」

「そうか、男に興味などない。今すぐ消えるがいい! 俺は今機嫌がいいから見逃してやろう」

「……お前状況わかってんのか? 見逃すか見逃さないかを決めるのはお前じゃねえんだよ」

 

 こいつ以外周りに誰もいねえし、こんな塵屑に対して丁寧な言葉使いをする必要もねえな。それに俺は初代プラネテューヌの女神様との約束で、仕事中はできるだけ丁寧な言葉使いをすることと、一人称を「俺」から「私」にするようにしてるわけだが、これは仕事じゃなくて俺の個人的な憂さ晴らしだしな。

 

「……今からお前を二度とあんなことができねえように徹底的に痛めつける。俺は殺したくてしょうがねえが、女神様は慈悲深いからお前みたいなやつでも殺すなって言うだろうからな。お前は地獄のような苦痛を味わうことになるが、絶対に殺さないようにするから安心しろ。その代わりそれが終わったらお前が正気を保てているかは知らねえがな」

「ふん、人間如きがこの俺に勝てるわけないだろう!」

「確かに俺は女神様より弱えよ。けど、お前如きの相手なんて俺で充分だ。覚悟しろよ。さっきも言ったが殺しはしない。だが、お前がこの先の人生で二度と泣いたり笑ったりできなくしてやる……!」

 

 あいちゃん、技を借りるぞ。

 ……『魔界粧・轟炎』!

 

「ぬっ……っ! ぐ、ぐわぁぁああああああ!」

「そうだ苦しめ、死にそうになったら回復してやる。回復したらまたやるけど……な!」

 

 

 

 

 

 

 

「……』

 

 ……終わったな、思ったより時間かかっちまった。女神様たちの攻撃で吹っ飛ばされてもピンピンしてただっただけあって割と頑丈だったからなこいつ。

 

 ……さて、ネプテューヌ様たちの元に戻るとしましょうか。女神様にトイレに行くと言って「嘘をついた」のは死罪級の非礼ですが、糞尿の処理という点では間違っていないので許されるでしょう。

 

「あ、ギンガおかえりー! あれ、お花は?」

「だから違うってお姉ちゃん……」

「お待たせしました、どうやら全て終わったようなので、私たちもルウィー教会に戻りましょう」

「うん!」 「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜はルウィー教会に泊まらせてもらい、その翌朝、ブラン様が昨日のご自身のことについて話してくれました。……やはり寝不足だったんですね、最初から私はわかっていましたが。

 

「えー? 寝不足ー?」

「ここのところ徹夜続きであなたたちと向き合う余裕がなかったの、それなのに、ロムとラムを助けてくれてありがとうベール、ノワール。ネプテューヌも中継の時私を庇ってくれて」

「なんのなんの、ていうか中継を台無しにしたのはギンガだし」

「ギンガもありがとう。そして、ごめんなさい。あんなこと言ってしまって」

「いいえ。私こそ、申し訳ありませんでした。ネプテューヌ様には止められているのですが、腹を切ってお詫びしたいです」

「ちょっとギンガ! ダメって言ったでしょそれ!」

「そうね、絶対にやめて。その代わり……といってはなんだけど、ロムとラムに『あること』をあなたから言ってくれないかしら?」

「私から……ですか?」

「多分私から言うよりあなたから言う方が効果があると思うの」

「そうですか、わかりました。では、『あること』というのは?」

「今から教えるわ、あの子たちも女神なんだからってことよ」

 

 ……成る程。私から言う方が効果があるというのは私を買い被りすぎですが、確かに大事なことではありますね。ちゃんとお伝えしてきます。

 

 

 

 

 

 

 

「ロム様、ラム様、この度は本当に申し訳ありませんでした」

「え? ギンガさん何か悪いことしたの?」

「したの……?」

「え? いや、その」

「変なギンガさん。それよりも一緒に遊ぼうよ!」

「ギンガさん……遊ぼ?」

「……お待ちください。ロム様、ラム様、一つだけ、よろしいでしょうか?」

「なーに?」「なに……?」

「今回の件、ロム様とラム様は確かに怖い思いをしたでしょう……ですが、幼いとはいえロム様もラム様も女神様なのです。降りかかる火の粉は自らの手で払い除けられるようにならないといけません」

「「……」」

「今よりずっと未来のことですが、いずれロム様とラム様はこのルウィーを守る女神様になるのですから」

「……ねえギンガさん」

「何でしょうか?」

「わたしたち……強くなりたいな。お姉ちゃんに心配かけないように、お姉ちゃんに追いつけるように」

「だから……たまにルウィーに来てわたしたちに色々教えてください……!」

「かしこまりました」

 

 それを言った時のロム様とラム様は、幼い子供ではなく立派な女神様としての面構えでした。あなたたちは強くなれます、きっと私如き簡単に超えていくでしょうね。

 

 その後、イストワールから私に急な仕事の連絡が入り、ネプテューヌ様とネプギア様よりも先にプラネテューヌに戻ることになりました。

 

「えー? ギンガ、先帰っちゃうのー? 仕事なんかサボっちゃいなよー!」

「そういうわけにもいきません。私もネプテューヌ様と一緒にいたいですが、仕事をサボってしまうと更に一緒にいられなくなってしまいますので」

「ねぷぅ……」

「ギンガさん、さっきロムちゃんとラムちゃんとどんな話してたんですか?」

「うーん、大したことではありませんが……お2人の覚悟……ですかね?」

「覚悟かぁ……」

「はい。では私はこれで、本当は他の皆様にもゆっくり挨拶していきたかったのですが……割と急なことらしいので……それでは、行ってきます」

「「いってらっしゃーい!」」

 

 女神様に送り出してもらえるなんてゲイムギョウ界一の幸せものですね私は。

 

 ……ブラン様が寝不足なのは最初からわかってはいましたが、何故ブラン様が寝不足だったのかは結局わかりませんでしたね。まぁおそらく、衛星写真の件で忙しかったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

\ラム、その本に落書きはやめて!/

 

\それは私が……徹夜して書いた本だからだ!!/

 

\読むなぁあああーーーーー!/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーー『違和感』。

 なぜ、居住区と隣接しているラスーネ高原ならまだしも、元々モンスターの生息地で人が立ち寄らないはずのトゥルーネ洞窟がクエストの範囲だったのでしょうか。モンスターというのは自らの生まれたところに留まるので、トゥルーネ洞窟にどれだけモンスターが増えようが人々の暮らしには関係はありません。

なぜ、ロム様とラム様の誘拐がこんなに目立って行われたのでしょうか。誘拐なんてものは実際はもっと隠密に行われるものだというのに、今思えばあの犯行は、誘拐を大々的に取り上げさせ、教会の人員のリソースをあえて大幅に割かせるような不可解さがありました。あのメイド長さんの気配が少しおかしく感じたのもそれに関連することだったのかもしれません。

 そしてなぜ、昔の私なら見逃さなかったようなこの『違和感』を、今の私は見逃してしまったのでしょうか。

 嗚呼、本当に不甲斐ない。『平和の弊害』というものを自覚していたつもりだった私も、結局平和に気が緩み切っていたのです。たとえ女神様が油断をしても、私は油断してはいけなかったというのに……

 私が、その『違和感』を見逃したせいで、あの事態が起こってしまったわけですが……おっと、これはまだ皆さんにとっては少し未来の話でしたね。

 

 

 

 

 

 




本編2話の内容が終わりました。そして3話から5話はついに女神候補生の覚醒で、個人的に1番やりたかったところとなっています。

普段は一人称が「私」のキャラが、本性を露わにすると「俺」になるのが好きです。
マクギリス・ファリドとか。


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俺の名前

今よりもずっと昔のプラネテューヌで、まだ何者でもなかった彼が、何者かになるおはなし。

幕間の回想シリーズです。会話文のみの回想で本編とはあまり関係がなく、オリキャラ同士の会話が続くだけで本編以上に人を分ける内容になっているので、読み飛ばしても大丈夫なため初投稿です。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離しやがれ! クソ! 殺すぞ!」

 

「それができないから今私に捕まっているんでしょう? どうして私を狙ったのかしら?あまりにも幼いし、他の国からの暗殺者……ってわけでもなさそうだけど」

 

「あ⁉ てめえが金持ってそうだったからぶっ殺して奪えば久しぶりにまともな飯が食えると思ったんだよ!」

 

「……」

 

「俺を殺すつもりか⁉ ああそうか! だったら早く殺せよ! 殺そうとしたんだ! 殺される覚悟はできてんだよ! 失敗したからあとは飢えて死ぬだけだしな! 殺されてもまた生まれ変わって今度こそぶっ殺してやるからな‼」

 

「もう、殺す殺すうるさいわね、見た感じ身寄りもなさそうだし、教会に連れて帰りましょう」

 

「おい! どこ連れてくんだよ! 離せよ!」

 

「大人しくしててちょうだい」ぺしっ

 

「ぐぇっ」

 

「安心しなさい、峰打ちよ」

 

 

 

 

 

 

 

「おい! どこだよここ! 俺をどうするつもりだ!」

 

「はぁ…目覚めて早々うるさいわね、とりあえずは……ご飯の前にお風呂かしらね」

 

「あ⁉ おいやめろ! 離せよ!」

 

「もう、じっとしてて、服を着たままだと身体を洗えないでしょう?」

 

「……自分でやれるから離せ」

 

「いい子ね、でもダメよ。一人じゃちゃんと洗えないわ」

 

「ちょ、何でてめえも脱いでんだよ!」

 

「服を着ながらじゃお風呂入れないじゃない」

 

「そういうこと言ってんじゃねえんだよ!」

 

「あら、照れてるの? 可愛いわね」

 

「あーうぜえもう好きにしろ……いや前は自分で洗うからやめろ! やっぱ好きにすんな!」

 

 

 

 

 

 

 

「さっきは汚れていてわからなかったけど、あなた意外と可愛い顔してるじゃない」

 

「うるせえな」

 

「髪も綺麗な銀色ね」

 

「……」

 

「目も綺麗だわ……まるで星空のようね」

 

「ジロジロ見んじゃねーよ」

 

「言葉使いがとても悪いけど、それは少しずつ直していくしかないわね」

 

「あん?」

 

「とりあえずご飯にしましょう」

 

「おい」

 

「なぁに?」

 

「なんで俺に優しくすんだよ……風呂に飯まで……俺はてめえのこと殺そうとしたんだぞ?頭おかしいんじゃねえの?」

 

「殺そうとした……? ふふ……無理よ、あなたには私は殺せないわ」

 

「あ?」

 

「あんなの、小さな子供にじゃれつかれたようなものよ」

 

「ちっ」

 

「ねえ、ずっとあんなことして生きてきたの?」

 

「人殺そうしたのは初めてだよ」

 

「でしょうね、明らかに慣れてなかったもの」

 

「…腹減ってた……これ以上何も食わねえと死ぬってぐらい……だから人殺して奪おうとした」

 

「殺そうした相手が私でよかったわね。その時誰かを殺してたら、あなたはもう後戻りできなくなってたかもしれないわ。……けど、あなたがそんな生き方をしてこなきゃいけなかったのは私のせいね…」

 

「……? なんでだよ? てかてめ…あんた何もんなんだ? なんかこの家すげえでけえし」

 

「そんなことも知らないのね……」

 

「?」

 

「私は○○。この国、プラネテューヌの女神よ」

 

「メガミ? なんだそれ?」

 

「そこからなのね……」

 

 

 

 

 

 

 

「ここがあなたの部屋よ」

 

「は?」

 

「今日からあなたはここで暮らすのよ」

 

「は?」

 

「わからないことがあればすぐに聞いてちょうだい」

 

「何もかもわかんねえよ」

 

「教会なんてものをノリで作ったはいいんだけど、信者はいてもまだ教会員が誰もいなくて、広すぎて少し寂しいのよ」

 

「まぁ、寝床があんのはいいけどよ」

 

「そう……とりあえず今日はもう遅いわ、早く寝なさい」

 

「けっ」

 

 

 

 

 

 

 

「寝てやがんな…油断しやがって……死ね! ……⁉ 嘘だろ⁉ ナイフが刺さんね⁉ これがメガミ……人じゃねえってことなのか……? うわっ! 離せ! 寝ぼけてんじゃねえ! おきろ、この! 寝てるくせになんて力だよ! くそっ! 離せーーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

「目が覚めたらあなたを抱きしめていたのは驚いたわ」

 

「……」

 

「けど久しぶりに気持ちよく眠れた気がするの。あなたのおかげね」

 

「……なぁ」

 

「何かしら?」

 

「昨日寝てるあんたをあのナイフで殺そうとしたんだけどよ」

 

「あー、あの転がってる折れたナイフってそういうことだったのね」

 

「俺じゃあんたを殺せねえってのは本当だったんだな」

 

「そうよ」

 

「……殺されそうになったんだぞ? 怒んねえの?」

 

「何もされてないのと一緒だから怒る必要なんてないわ。けどレディの寝込みを襲うのはよくないわね。ていうか失敗したなら黙っていればよかったのに」

 

「あんたに聞きたいことができたから……俺なりのイジメってやつ?」

 

「ケジメね。聞きたいことって何?」

 

「教えてくれ、メガミってなんだ? キョーカイってなんだ? あんた人じゃねーのか?」

 

「いいわ、教えてあげる。その代わり……私の言うことをちゃんと聞くこと」

 

「はぁ? ……まぁいいか、わかった」

 

「そういえば聞いていなかったけど、あなた名前は?」

 

「んなもんねえよ」

 

「ないって……」

 

「ねえもんはねえ」

 

「なら、私がつけてあげる」

 

「は?」

 

「そうねえ……うーん……あ!」

 

「?」

 

「『ギンガ』っていうのはどう? あなたのその銀色の髪とまるで星空のような綺麗な眼を見て思いついたの」

 

「んー」

 

「嫌かしら?」

 

「いや、悪くねえ、なんかかっこいいし」

 

「じゃあ、ギンガ、あなたには色々と勉強してもらおうかしらね」

 

「勉強?」

 

「女神や教会だけじゃなくてこの世界の色々なことについてよ」

 

 

 

 

 

 

 

「おい、飯できたぞ」

 

「ありがとう。あら美味しそうね」

 

「ん」

 

「美味しいわ。料理、上手になったわね」

 

「あんたが下手すぎんだよ。何をどうやったら青い卵焼きができんだよ」

 

「でも前は美味しそうに食べてたじゃない」

 

「まともな飯なんて久しぶりだったから食えばなんでも美味かったんだよ。今思えばまともじゃねえけどな」

 

「……そう」

 

「けど今は」

 

「?」

 

「あんたのおかげで飯に困らねえ。寝るとこもだ。勉強ってのも少し面倒だけど悪くねえ。だからよ、その、あ、ありがとな」

 

「!」

 

「二度は言わねえぞ……ってうわ! なんだよいきなり! おい! やめろ! 離せ!」

 

「だーめ」

 

「絞め殺す気か! 俺が何したってんだよ」

 

「嬉しいことを言ってくれたわ」

 

「はぁ?」

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「あの時ナイフが折れるぐらいの力で刺したってことよね?」

 

「あー、あんたと始めて会った日の夜の話か? そういや謝ってなかったな。悪かった」

 

「ちゃんと謝れたのは偉いけど、責めようと思って言ったんじゃないの。あなた見どころあるわよ。強くなれそう、私が直々に鍛えてあげる」

 

「?」

 

「ゆくゆくは私と一緒に戦えるぐらい……強くなってもらおうかしらね」

 

「あんたと? 無理だろ」

 

「いいや、あなたならなれるわ」

 

 

 

 

 

 

 

「これ書類。あと、言われたクエストやってきたぞ」

 

「ありがとう」

 

「明日は空いてんだろ? また稽古つけてくれよ」

 

「いいわよ」

 

「なんだよニヤニヤしやがって」

 

「別に、色々と手際が良くなったわね」

 

「メガミサマの教え方が良かったんだろうよ」

 

「もう、褒めても何も出ないわよ」

 

「それに」

 

「それに?」

 

「俺が少し仕事すりゃメガミサマも楽できんだろ?」

 

「……なんていうか怖いぐらい良い子になったわね」

 

「良い子? これぐらい普通じゃね?」

 

「そうだわ、ギンガ、正式に私の部下にならない?」

 

「もう似たようなもんだろ」

 

「正式にってことよ、私の仕事を今以上に本格的に手伝ってもらいたいの」

 

「俺はメガミサマに生かされてんだ。拒否なんかできねえよ」

 

「私が強引にさせるのとあなたが決めるのでは違うわ」

 

「断ったら強引にやらせる気だったのかよ」

 

「そうだけど?」

 

「はぁ……まぁやるよ。出来ること増やしてえし」

 

「嬉しいわ。……じゃあ今まで避けてきたけれど……」

 

「ん?」

 

「言葉使いを正すしかないわね」

 

「おう」

 

「おうじゃなくてはい」

 

「ハイ」

 

「私と二人きりの時はいいけれど、これから公の場に出ることも増えるだろうからちゃんとしてちょうだいね。それに私の部下として仕事する以上、仕事中は一人称も『俺』じゃなくて『私』か最低でも『僕』にしなさい」

 

「えー」

 

「えー、じゃないわよ」

 

「めんどくせえ……けどやるって決めたからなぁ……『僕』……はなんかちげえな、『私』にするわ……します?」

 

「私と二人きりの時は正さなくていいわ。それと、『私』の方を選ぶなんて意外だったわね」

 

「なんかそっちの方がいいと思ったんだよな。メガミサマがそうだし」

 

「……そう」

 

「なにニヤニヤしてんだ気持ち悪……痛っ! 殴るこたねえだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これの続きはまた本編のキリがいいところでやります。


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07. 美しき終末

限界なんて超えていけるので初投稿です、


\ 光れ! 夢の星ー!♪ /

 

 

 

「おおー!」

「流石リーンボックスの歌姫、5pb.ちゃんね」

「ですぅ」

「ギンガさんも来ればよかったのに……」

「ねぷねぷ、どうしてギンガさんは来なかったのです?」

「いや誘ったんだけどさぁ………

 

 

『えー⁉︎ ギンガ、ライブ来ないのー⁉︎』」

 

『はい、リーンボックスの国内を散歩しているので、終わったら連絡をください』

 

『どうしてー⁉︎ 5pb.ちゃん好きじゃないの?』

 

『彼女の歌は好きなんですけどね、でも……世界は歌のように優しくはないんです……っ!』

 

『え?』

 

『優しくはないんですよ……っ!』

 

『え⁉︎ ちょっと、走ってどこ行くのギンガ⁉︎ ギンガーーーーっ⁉︎』

 

 

 ……って感じでどっか行っちゃったから、よくわかんないけど放っておいた方がいいと思ったんだよねー」

「師匠ってたまに意味不明よね、いやたまにまともでいつも意味不明って言う方が正しいかしら」

「……とりあえず今はライブを楽しみましょうよ」

「そうね」

 

 

 

\ みんなー! ありがとー! 次は、『Dimension tripper!!!!』!/

 

 

 

 

 

 

 

 ネプテューヌ様から連絡をもらい、お散歩からリーンボックス教会に戻ってきました。リーンボックスは仕事では何度も来ているのですが、観光で来るのは久しぶりだったので、とても有意義な時間を過ごすことができました。

 

 今日はベール様のホームパーティに誘われたので、女神様の皆さんとあいちゃん、コンパさんが先にリーンボックス教会にいました。皆様がパーティの前に部屋の片付けと掃除していたのですが、女神様にそんなことをさせては女神補佐官の名折れなので、全て私がやらせていただきました。五分、いえ三分時間をくださればどんな汚部屋も新築のように綺麗してさしあげましょう……!

 

「皆さん、お待たせしましたわね! 我が家のホームパーティにようこそですわ!」

「……というかベール、ほとんど何もしてない」

「……やめましょう。言っても虚しいだけよ」

「途中から来たギンガが、片付けも掃除も料理も全部やったもんねー! ふふーん!」

「何でネプテューヌが誇らしげなのよ」

「ギンガは私の部下だからーギンガの頑張りはわたしの頑張りだよー!」

「クソ上司ね」

 

 女神様にそんな雑用をさせるわけにはいきません。女神様への奉仕こそ私の幸福です。それに、女神様の身の回りの世話をし続けてきた私にとってはそんなもの呼吸と同じです。

 

「さぁ皆さん! 思いっきり食べて、飲んで、騒ぎましょう! 今日のためにとびっきりのゲームも用意しておりますわ!」

「おおー! なになにー⁉︎」

「説明するより、見せた方が早いですわね」

 

 そのゲームとは、特殊なカメラと立体投影により、フィールドに立ったプレイヤーをモンスターの姿として映し出し、プレイヤー同士はその姿で戦う、というものでした。すごい技術ですね。長くこのゲイムギョウ界に生きている私にとって、このような技術革新は感慨深いものがあります。

 

 そして、何ということでしょう、プレイヤーであるネプテューヌ様とノワール様がスライヌの姿になってしまいました。ネプテューヌ様のスライヌ……良い!

 

「やいノワスライヌ! ねっぷねぷにしてやんよ!」

「何よノワスライヌって」

「てやー!」「うわぁ!」

「いえーい! ポイント先取ー!」

「……私を怒らせたわね! 覚悟しなさいネプライヌ!」

 

 ……これ、映像ではスライヌが戯れているように見えているだけで、実際にお二人はボコり合ってるってことですよね? 危なくないですかこのゲーム……

 

「ちなみに、もっと実践寄りのシュミレーションモードも用意してますから、戦闘の訓練にも使えますのよ」

「すごい……」

「面白そう」

「わたしもやりたーい!」

「ええ! どんどん遊んでくださいな!」

 

 訓練にも使えるんですか。じゃあこれ欲しいです。イストワールに頼んだら経費でプラネテューヌ教会にもこれを買ってくれるでしょうか?

 

「(……ベール様)」

「(何ですの? パーティの最中に)」

「(実は……)」

「……え?」

 

 ん? ベール様と教会員が話していますね。ベール様のあの表情……何か良からぬことみたいですが。ノワール様も気づいたようで、ゲームを中断しベール様に問いかけています。

 

「何かあったのベール?」

「いえ……ズーネ地区にある廃棄物処理場に、多数のモンスターが出現したという知らせがあったのですわ」

「……ズーネ地区、離れ小島ね。引き潮の時だけ地続きになるという」

「モンスターぐらいどこでも普通に出るっしょ」

「国が管理している地区ですので、そんなことはありえませんわ……でも、事実のようですわね。私、今から行って来ますわ」

 

 国が管理している地域にいきなり多数のモンスターが出現する……おかしいですね。ゲイムギョウ界にはモンスター害というものはありますが、基本的に人が住むところとモンスターの住むところは被らないようになっています。

 

 緊急事態とはいえ、せっかくのホームパーティですし、ベール様には楽しんでもらいたいものです。となると……

 

「ベール様、ここは私が行きます。引き続きベール様はホームパーティをお楽しみください」

「じゃあわたしも行くよー! 一緒に行こ、ギンガ」

「ネプテューヌ 、ギンガ……お二人の気持ちは嬉しいのですけど……これは私の国のことですからお二人だけを向かわせて私が行かないというのも…」

「じゃあベールも一緒に行こっか! こうしてわたしたちがいるのも、何かの縁だしさ! 手伝わせてよ!」

「またお決まりの友好条約を結んだ以上仲間ってやつ?」

「まーねー!」

「……私も手伝う。誘拐事件の時の恩を返す。良い機会だから」

「よーし、じゃあギンガも含めて四人で行こう! ノワールは来ないっぽいし」

「わ、私も行くわよ! ……あなたたちだけじゃどれだけ待たされるかわからないもの」

「皆さん……わかりました。では、私たち五人で……」

「いえ、皆様はここで待機していてください。モンスター退治は私一人で行きます」

「「「「え?」」」」

 

あの時と同じ『違和感』。普通に考えれば女神様四人と女神補佐官の私一匹ならモンスターの殲滅など容易いでしょう。しかし、だからこそ、女神様が動いてはならない……そんな気がしました。

 

「……どうして?」

「……これは誘っているようにしか思えません」

「誘っている?」

「はい、女神様がこのリーンボックスに集まっている時を狙ったかのようなモンスターの大量発生。偶然とは思えないのです」

「どういうことよ」

「誰かが意図的に、女神様が集まった時を狙い、モンスターを大量発生させ、そこに集まった女神様にまとめて何かをする。考えすぎでしょうか?」

「考えすぎね、それにもしそんな計画があったとして、ベール一人で行くことになったらそれは失敗するじゃない」

「そうだよー!」

「では、プラネテューヌで同じことが起きたら、皆様はネプテューヌ様を一人で行かせますか?ラステイションならノワール様を、ルウィーならブラン様を」

「そ、それは……」

「皆様がお優しいということもあるでしょうが、友好条約がある以上、この問題には女神様が力を合わせて対処するだろうという敵の狙いを感じます」

「「「……」」」

「ねえ? ギンガー」

「何でしょう、ネプテューヌ様」

「色々説明してくれるのはいいけどさー、ギンガはわたしたちが負けると思ってるの?」

「そ、それは」

 

 ネプテューヌ様に痛いところを突かれてしまいました。女神様が負けるはずがありません……しかし……

 

「それにさーわたしたちが心配なのはわかるけど、その場所にギンガ一人が行くって言われたら私がどう思うかわかる?」

「……ですが、女神様に何かあれば国だけでなくゲイムギョウ界全体の危機となるかもしれません。私如きに何かあったとしてもそれは大したことでは……」

「……っ! そういうのやめてって言ってるでしょ! どうしてギンガはいつもそうやって……! わたしがどう思ってるかなんて考えてないじゃん!!」

 

 ネプテューヌ様……? なぜ、怒っているのでしょう? 私がネプテューヌ様を侮っていると思われてしまったからでしょうか。弁明しなければ……

 

「はぁ、なんかムカつくわね」

「ノワール様……?」

「そうね……確かにギンガの言うことも一理あるけど、舐められてるようでムカつくのはわかるわ。それにネプテューヌの気持ちも少しわかるし」

「ブラン様……私は舐めてなど……!」

「まぁまぁ皆さん落ち着いて、きっとギンガは幼かった頃の私たちと今の私たちをまだ重ねて見ているんですわよ。けど、いい機会だと思いません?私たちがあの頃とは違うということをギンガに見せることができる」

「ベール様、私はそういうことを言っているわけでは……!」

「……ギンガ、黙って、女神命令。そしてギンガは来ないでね」

「ネプテューヌ様……!」

 

 女神様が誰も私の話を聞いてくれません……なぜこんなことに……

 

「お姉ちゃん私も……」

「ネプギアも来なくてもいいよ、私たちでやるから遊んでて」

「お姉ちゃん……うん……」

 

 ネプテューヌ様に黙るように命じられたので私はもうそれ以上は何も言えませんでした。脳内に語りかけるやつを使おうと思いましたが、それをしたところで意味がなさそうですし。

 

「変身!」

 

 四女神様の同時変身、いつもの私なら狂喜乱舞するほどの光景ですが、今の私はそういう気分にはなれませんでした。

 

皆様が行く前に、ネプテューヌ様に黙れと命令されたとはいえ、これだけは言わないと……!

 

「では皆さん、参りますわよ」

「……皆様……最後に1つ、どうか油断だけは「行くわよ、みんな」……っ!」

 

 ……行ってしまわれた。女神様たちを止めることができませんでした。私の杞憂で終わればいいのですが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、どう思われようと、何を言われようと、どんなことをしてでも女神様たちを止めていれば……

 

 『違和感』には気づいたのに、結局見逃してしまったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、誰が1番モンスターを倒せるか競争するってのはどう? ……ってネプテューヌ⁉︎ 速っ⁉︎」

 

「『クロスコンビネーション』! 私が一位よ!」

 

「はぁ、もうあなたが一位でいいわよもう」

 

「苛立ってんな」

 

「ええ……ギンガのことですわね」

 

「知らないわよあんな人! ……っ⁉︎ ノワール! ブラン!」

 

「なっ!」 「ぐっ!」

 

「なんなのこれ!」

 

「ざけんなよ……っ!」

 

「触手……? 気持ち悪いわね!」

 

「……そろそろか」

 

「誰…? あれが黒幕……⁉︎」

 

「黒幕って、じゃあやっぱりギンガの言う通りだったってこと⁉︎」

 

「……女神たちよ……我がサンクチュアリに堕ちるがいい!」

 

「なにこの光は……?」

 

「力が……抜けていく……!」

 

「どうして……っ?」

 

「あの石のせいで、あれを破壊すれば! ……っ⁉︎」

 

「シェアエナジーによって生きているお前たちはその石に近づけない。お前たちの力で生まれるその武器もだ」

 

「どういうことですの……?」

 

「これは『アンチクリスタル』。シェアクリスタルとお前たちのリンクを遮断し、力を失わせる石だ」

 

「アンチ……クリスタル……っ!」

 

「いい写真が撮れたっチュ! これで世間に大旋風を巻き起こせるっチュ!」

 

「……こんなこと……ただじゃ済まさないわよ……すぐにぶっ飛ばしてやるんだから!」

 

「さて、どうなるかな? アンチクリスタルの結界の中で女神は力を失っていく、お前たちの勝ち目は刻一刻と無くなるのだ! ふっふっふ、あーはっはっはっは!」

 

「……おい」

 

「なんだ貴様か、貴様の出番はもう少し後だ」

 

(何あのモンスター? デカいし不気味ね……)

 

「退屈だ、戦いてぇ。そこに捉えてる女神を出して戦わせろおおおお!」

 

「馬鹿か貴様は! やっと捕まえた獲物を即解放するやつがどこにいる⁉︎ それにいくら貴様とて女神とタイマンで戦ったら負ける」

 

「あぁ⁉︎ 何だとてめええ!」

 

「事実だろう? 貴様が女神と戦って負けて死ぬのは勝手だが、『あの女神補佐官の男を殺せるなら協力する』と言ったからには私に従ってもらうぞ」

 

「ちっ……まぁいい、俺の狙いはあのクソ野郎、ギンガだからなぁ! ここに女神どもを捕らえときゃ来るんだろおおおお⁉︎」

 

「だろうな」

 

「あのクソ野郎だけは俺が殺す……ブッ殺してやるうううう!」

 

「ふん、まぁ任せたぞ、『ジャッジ』」

 




なんか原作ではいなかった変なキャラ出ました。
ジャッジさん色々やらかすのでジャッジザハードファンの方がいたらごめんなさい。


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08. 怒りの銀糸

女神候補生たちの精神年齢を上方修正しすぎた感がありますけど初投稿です。


「私の名はマジェコンヌ。四人の小娘たちが支配する世界に混沌という福音を齎す者さ」

「そして、オイラはワレチュー。ネズミ界ナンバー3のマスコットっチュ! ……あんたは名乗らなくていいっチュか?」

「必要ねえ。それより、なんかニ匹見てたやつが逃げていったぜ? 追った方がいいか? いや、追わせろ! ぶっ殺させろ!」

「必要ない。まだ変身さえできない女神の妹などな」

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか……女神様たちが………」

 

 何か胸騒ぎがした、と言って現場に向かい、そして帰ってきたネプギア様とあいちゃんから聞かされたのは、簡単にいえば、女神様の敗北でした。

 

「……すみませんあいちゃん、ネプテューヌ様の命令で動けなかった私の代わりに」

「いえ、そんなこと……」

「今回の件について、とりあえずイストワールに連絡をしてください。私のことは……少し一人にさせてもらえませんか」

「え…はい。……その、師しょ……いえ、何でもないです。女神候補生を集めておきますね」

「はい、ありがとうございます」

 

 教え子に気を使わせてしまいました。そんなにしんどそうな顔してましたかね私。

 

 ………さて、あいちゃんはもう行きましたよね?

 

「……ああああああああ‼︎ クソッ! クソクソクソ‼︎‼︎ 何で今までアンチクリスタルの存在を忘れてたんだよ俺は‼︎‼︎ てか何でまだアレがこの世に存在すんだよ‼︎‼︎ 全部俺がぶっ壊しただろうがよ‼︎‼︎‼︎ クソ‼︎‼︎‼︎」

 

 その昔、ネプテューヌ様が生まれるよりも昔、女神様に仇なすクソみてえな物質であるアンチクリスタルを、俺はゲイムギョウ界中を探し回って全部壊しつくした……はずだったのに。それに、全部壊したと思ってたから、その存在を今の今まで忘れかけてた。たとえ、もうこの世には無いと思ってても、こんな石が昔あった、みたいなことを一言でも女神様に教えておけば……

 

 ……取り乱しました。つまりは今回の件は私の責任です。私の失態です。失態しかしませんね私って。

 

 

 

 

 

 

 

『一体どういうことなんですか? アイエフさん』

「よくはわからないんですが、アンチクリスタルがどうとか……多分、それがネプ子たちの力を奪ってるんです」

『アンチクリスタル……ゲイムギョウ界にまだ存在していたとは……』

「知ってるんですか? イストワール様」

『はい……でもあれは昔ギンガさんが処分し尽くしたはず……とりあえず、ネプギアさんはプラネテューヌに戻ってきてください。ユニさんたちもお国にお戻りになった方がいいと思います。それでは』

 

「……そういうわけだから「待って!」……ん?」

「帰れって言われて大人しく帰れるわけないでしょ、もっとちゃんと説明して!」

「いつものお姉ちゃんなら悪者なんて一発なのに!」

「お姉ちゃん……死んじゃうの?」

「きっと大丈夫です。女神様がそんな簡単にやられるわけ……」

「でも! 力が奪われたって……さっき」

 

 少し落ち着いたので、あいちゃんたちのところに向かうと、少し口論になっていました。とりあえず責任の所在を私であることで明らかにして、口論をやめてもらいましょう。

 

「私のせいで……」

「いいえ、ネプギア様のせいではありません。……ユニ様、いえ皆様、今回の件は全て私の責任です。私がアンチクリスタルのことを失念していたからです。この罪は後で必ず償いますが……」

「やめてください師匠……そんなこと今考えたって」

「……なんで、何でギンガさんはいつもそうなんですか……っ」

「ユニ様……?」

「……っ! ルウィーの時だって! 全部自分のせいって言って! ……あたしのお姉ちゃんは強いけど、最強だけど! もしかしたら油断しちゃったのかもしれないのに! それでも全部ギンガさんのせいってことですか⁉︎ だったら……!」

 

「だったらギンガさんは、最初からお姉ちゃんたちのことなんて信じてなかったってことじゃないですか‼︎」

 

「……っ⁉︎」

「ユニちゃん! どうして……どうしてそんなこと言うの!」

「ネプギア……? ……っ! ネプギアには関係ないでしょ!」

「関係あるよ! それに関係なくてもだよ! ギンガさんに謝って! 謝らないんだったら……そんなこと……そんな酷いこと言うユニちゃんなんか大きら「やめてください‼︎‼︎‼︎」

 

 ネプギア様の言葉を遮って大声をあげてしまいました。普通こんなことは死罪級の非礼です。ですが、そんな言葉、本心じゃなくても言ってはいけませんよ……

 

「申し訳ありません……外の風に当たりながら作戦を考えてきます。女神様たちを奪還するための」

「師匠……」

 

 

 

 

 

 

 

「足元を見るがいい、アンチクリスタルの力から生まれたそれは、いずれお前たちを苦しめ死に至らせるだろう。残された僅かな時間を楽しむがいい…!」

 

 

 

 

 

 

「おえええっ……! げほっ! ごほっ!」

 

 教会の庭で吐瀉物を撒き散らしてしまうとは……参りましたね……しんどいです。ユニ様が悪いわけではありませんが、あの言葉が心に突き刺さって吐き気が止まりません。

 

「「ギンガさん」」

「ロム様? ラム様?」

「大丈夫……?」

「心配ありません。申し訳ありません、見苦しいところをお見せしてしまって」

「ねえギンガさん」

「はい」

「女神様って失敗しちゃいけないのかな……?」

「そんなことありませんよ。女神様だって失敗ぐらいします」

「そっか、じゃあ、お姉ちゃんとギンガさんってどっちが強いの?」

「それはブラン様に決まっていますよ」

「…お姉ちゃんのこと……尊敬してる……?」

「それはもちろん」

「だって……ラムちゃん」

「そうだね、ロムちゃん」

「?」

 

 女神様とはいえこんな幼い子たちにすら心配をかけてしまうなんて……いけませんね私は。正直、質問の意図がわかりませんが……ロム様とラム様なりに私を元気付けてくれてるのでしょう。

 

「じゃあさ、ギンガさん」

「はい」

「どうして、ギンガさんより強くて、ギンガさんが尊敬してるお姉ちゃんが失敗しても良いのに、ギンガさんは失敗しちゃいけないの?」

「……! それは……」

 

 ……さっきは幼いなんて言ってしまいましたが、どうやらロム様もラム様も立派な女神様だったようです。見事に私の心に寄り添ってくれて、おかげで気分も落ち着いてきました。

 

「……ロム様、ラム様、中に入りましょう。……ユニ様に、いえネプギア様にも伝えたいことがあります」

「「はーい」」

「それと、ありがとうございます、ロム様、ラム様」

「私たちなーんにもしてないよ」

「うん……(こくこく)」

 

 たとえ、四人の女神様たちが負けてしまったとしても、ゲイムギョウ界にはまだこの方たちがいます。失意などしてる暇はありません。女神補佐官として、私がこの方たちを導かなければ。

 

 まずは……ユニ様とネプギア様を仲直りさせて、私もユニ様と仲直りしなくては。

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはその……言い過ぎちゃい……ました。ごめんなさいギンガさん……」

「ユニ様が謝る必要は……いえ、めっちゃ傷ついてしんどかったのでもう言わないでくださいね……あ! 責めてるわけじゃないんです! いや少し責めてますけど! あぁ! 泣かないでください! ……仲直り、しましょう」

「……はい!」

「ネプギア様とも」

「もうしましたよギンガさん。それよりさっきは遮ってくれてありがとうございました。本心じゃなくてもユニちゃんに嫌なこと言っちゃうところでした」

「どういたしまして……その、皆さんに少し聞いてもらいたいことがあります」

「何ですか?」

「私は今まで、女神補佐官として長い間女神様に仕え、このゲイムギョウ界で生き続けてきました。でも、女神補佐官なんて役職は他の国になくて、プラネテューヌにおいても私以外いないので、どうやって女神様と接していくべきかわかっていなかったんです」

「「「「……」」」」

「私なりにそれを上手くやってきたつもりだったんですが、長い時が経つにつれて、どうやら歪な接し方になってしまっていたようで、それで今回のようにネプテューヌ様に怒られてしまったんだと思います」

「ギンガさん……」

「だから、もう一度考え直そうと思います。女神様との接し方を、また1から。これはその宣誓です」

「……ギンガさん……あたし、ギンガさんのことは仲間だと思っていたのに、ギンガさんはそう思ってないって思ったから……怒っちゃったのかもしれません」

「ユニ様……」

「ギンガさんも私たちの仲間なんです。部下とかじゃなくて。ギンガさんはよく『烏滸がましい』なんて言いますけど、そんな寂しいこと言わないでほしいです……」

「ネプギア様……努力はします」

「わたしたちが言いたいことはもう言ったわ!」

「言ったよ……!」

「はい、わかっています。ロム様、ラム様」

 

「作戦を思いつきました。私たちの反撃を始めましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 女神候補生の皆様にあいちゃん、コンパさんを加えて、作戦の説明をします。

 

「私は今から単独でズーネ地区に突っ込み、モンスター包囲網を突破し、女神様たちを救出しに行きます。アンチクリスタルを使うということは、敵の強さは女神様ほどではないと思うので私でも充分戦えるでしょう」

「じゃあ私たちも!」

「いいえ、皆様はここで待機です」

「ギンガさん! さっき私たちが言ったこと…わかってないんですか!」

「わかっていますよ。ですが、変身もできない皆様が来てもぶっちゃけ足手まといです」

「それは……」

「師匠! そんな言い方は……!」

「いいんですアイエフさん。おかしいかもしれないけど、ギンガさんがそうやってハッキリ言ってくれるようになったのが、逆に少し嬉しく感じるんです」

「ネプギア……」

「……この非礼は後で詫びます。私が単独で突っ込むのが作戦のフェーズ1、そして候補生の皆様が戦うのがフェーズ2です。フェーズ2開始ギリギリまで候補生の皆様には修行してもらいます」

「ですが師匠が一人で行くよりも、師匠がネプギアたちの修行を見ててあげた方が…」

 

 あいちゃんがいると話が進むのが早くて助かります。何故かというと、私がして欲しいタイミングでして欲しい質問や意見を言ってくれるからです。

 

「確かに、あいちゃんの言う通り私がギリギリまで皆様の訓練を見たほうが良いかもしれません、敵も今すぐ女神様を始末することはないと思いますし、その時間はあると思います。なぜ今すぐ始末しないかと言いますと……そうですね、少し授業をしましょう。

 嫌な例えですが、女神様がこの瞬間に亡くなっても、国にシェアがあれば女神様へ行くはずだったのに行き場のなくなったシェアが溢れ、それにより新しい女神様が誕生します。

 しかし、シェアがない状態で女神様が亡くなると、何も起こらず、そのまま国が滅亡の危機となります。

 アンチクリスタルの発掘やモンスターの配置など手の込んだ手段ゆえに、おそらく敵の狙いは女神様を殺すことだけではなく、国やゲイムギョウ界そのものを崩壊させることだと思われます。

 つまり、捕らえた女神様をすぐに殺すのではなく、その失態を世界中に拡散し、シェアを下げてから殺すつもりなのでしょう」

「じゃあ、シェアが下がる前にお姉ちゃんを助けないと!」

「それはそうなのですが、ズーネ地区はものすごく電波が悪いので、敵は女神様の失態の情報を世界中に拡散するのはかなり時間がかかると思われます」

「じゃあ確かに……時間はあるということですね」

「はい。……となると、私が今すぐ向かう理由もないのですが……これは、まぁ、嫌な予感といいますか……」

「嫌な……予感?」

「……女神様にケンカを売るような奴らですよ? 捕らえた女神様に何もしないなんて思えますか? 殺さないようにギリギリ痛めつけるなんてことしかねません。それに勢い余って殺すなんてことも……そうなったら敵の作戦も失敗ですが」

「……」

「確かに女神様はシェアがあれば人間とは比べ物にならない回復力で身体が再生します。だからといって、女神様が、大切な人が傷ついているかもしれない瞬間に何もしないなんてできません。だから、私が先に突っ込んで行って、可能ならば救助します。皆様も同じ気持ちかもしれませんが、ここは私に皆様の気持ちを背負わせてください」

「わかりました。ギンガさん…絶対に死なないでくださいね」

「わかっています」

 

 無駄死だけはしません。それに、ネプテューヌ様とも仲直りをしないと死んでも死にきれませんので。

 

「というわけで先程言った通り、皆様にはフェーズ2開始ギリギリまで修行してもらいます。修行の目的は三つ、一つは『モンスターを怖がらなくなるため』。これはネプギア様とユニ様なら既にクリアしているでしょう。そして二つ目は『心の鍵を開けるため』です」

「心の鍵……そういえば、お姉ちゃんが言ってたことあるわ。私が変身できないのは自分の心にリミッターをかけてるからだって」

「心の……リミッター……」

「はい、皆様はおそらく変身できるほどの実力は既に持ち合わせていると思いますよ。でも、その心の鍵……リミッター……どっちでも良いですけどそれをなんとかしなければ変身はできないと思います」

「……三つって言いましたよね? あと1つは何ですか?」

「単純に『強くなるため』ですね。女神様にとって、変身できるようになったとしても、それがスタートラインです。ハッキリと申し上げますが、皆様が変身できるようになったぐらいでは、お姉様たちはおろか私にすら勝てません」

 

 また嫌な言い方をしてしまいましたが、言葉を選んでる暇はありません。この非礼も後で詫びます。

 

「というわけで、先ほどベール様から紹介してもらったこのゲームで鍛えてもらいます。このゲーム、どうやら難易度調整ができるようで、皆様には最低でも、一番上の難易度の敵モンスターに勝てるぐらい強くなってもらいます」

「一番上……」

「はい、例えるならコンパさんが八十禍津日神ぐらい強くなる難易度です」

「すごいです……私は今から八十禍津日神です!」

「ノリノリねコンパ……」

 

 と言いましても、あいちゃんとコンパさんにそんなサンドバックみたいなことさせたくはありませんし、私も作戦によりすぐいなくなるので困りましたね。

 

 このゲームはCPUとの対戦もあるんですけど、この手のCPUって攻撃パターンがだいたい決まってて、それ覚えたらヌルゲーになるせいで訓練にならなくなってしまうので、なるべく対戦相手は生きた人間の方がいいんですよね。どこかに都合のいいサンドバッグいませんかねえ?

 

「ガラッ! ガラッ! ガラッ! 見いつけた!」

 

 ……いた。

 

「え? ……あ、あの時の狂人⁉︎ 撤退よてった……捕まった⁉︎ いやぁあああ! やめてえええ! 殺されるううう‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは行ってきますあいちゃん」

「師匠! 私も一緒に……!」

「確かに……あいちゃんがいれば百人力、いえ千人力です。だからこそ、あいちゃんは候補生の皆様についていてあげてください」

「……はい」

「それに、本当はフェーズ1で作戦が成功するより、フェーズ2で成功した方が良いんですけどね。私が終わらせるより、たとえ情報が拡散しシェアが減っても、女神様が負けても妹たちがいるって感じでシェアが回復した方が、その先もシェアが減りにくくなりますし。……しかし、そう言ってられないほどの嫌な予感がするんです。だから、私がフェーズ1で全部終わらせる気で行きます。たとえ、今回は候補生の皆様の出番がなくなっても、この修行は無駄にはなりませんし」

「そうですね……ご武運を、師匠」

「ふふっ、最近あいちゃんにそう呼ばれるのを気に入ってきました。では、改めて、行ってきます」

 

 そう言ってからリーンボックス教会を飛び出し、私専用のプロセッサユニット『リミテッドパープル』を展開します。

 このリミテッドパープルというのは、パープルハート様が使用していたプロセッサユニット『パープル』が今使用している『ロストパープル』にアップデートされた際に、その時できた残骸を、イストワールに集めてもらって、それっぽく作ってもらったものです。

 衣装が変わるのではなく、普段の服装の上に追加装甲が少し付き、背中に小さめの羽型装備が付きます。これにより、私も変身後の女神様のように飛行することができるようになります。

 身体への負担が大きいので、装備していられる制限時間があります。というわけで、雑魚に構わず一点突破です。

 

 さて、ズーネ地区が見えてきました。モンスターがそれなりにいますね、一番層が薄いところから吶喊します……!

 

 そして、敵の対空攻撃をかいくぐり、アンチクリスタルの結界が展開されている場所までたどり着きました。……やけに敵のモンスターの攻撃が散発的でしたが、今はそんなことを考えても仕方ありません。

 

 結界の中には、ノワール様とブラン様とベール様が捕まって……ネプテューヌ様は?

 

「ギンガ…! ネプテューヌが! ネプテューヌがっ!」

 

 ノワール様がそう言って顔を向けた先には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ボロボロになりながら横たわっているネプテューヌ様がいました。

 

 …………は?

 

「ネプテューヌ様‼︎」

 

 ネプテューヌに様に駆け寄って抱き上げます。何でネプテューヌ様が…

 

「……ギンガ……な……んで……来た……の?」

「ネプテューヌ様! 喋らなくていいです!」

「こ……んな……かっこ悪い……とこ……見せたく……なかったのに…」

「……っ! そんなこと言ってる場合ですか!」

 

 ネプテューヌ様をなるべく平らなところに寝かせ、背後から感じる気配に対して振り返ります。

 

 ……お前か? ……お前がこれをやったのか?

 

「ようやく来やがったか! 会いたかったぜええ、ギンガァ! てめえが来るまで退屈でしょうがなかったからなぁ………

 

 

 

『退屈すぎるぅぅ…! いつになったら来やがんだあのクソ野郎はああああ!』

 

『うるさいぞ、落ち着け』

 

『もうこうなったらマジェコンヌ! てめえでいい! てめえが俺と戦いやがれええええ! それかそこのネズミだああああ‼︎』

 

『オ、オイラっチュか⁉︎ やめて欲しいっチュ! オイラと戦っても面白くないっチュよ!』

 

『そこらへんのモンスターとでも遊んでいろ! ……と言いたいところだが、貴様があの女神補佐官とはタイマンでやりたいと言うからモンスターどもをあえて散らばらせているんだったな……』

 

『退屈で死ぬううう……! 退屈死するううう! ……ん? ああ、いいこと考えたぜええええ!』

 

『何?』

 

『今はこの女神どもを殺さねえのはわかったけどよお、だったらもっとボロボロにしてやった姿を国民に見せた方がシェアも下がるんじゃねえかあ?』

 

『ほう?』

 

『俺じゃあ全快の女神にはタイマンで勝てねえっつってたが、アンチクリスタルっていう石のせいでこの女神ども弱ってんだろ? 一人ぐらい出して戦わせろおおおお!』

 

『ふん、結局は貴様が暇つぶしをしたいだけだろうが。まぁいい、確かにアンチクリスタルでの弱体化は進んでいる。今の貴様なら楽に倒せるだろうから、殺さないようにするなら好きにしろ。殺すのはシェアが下がってからだ』

 

『脳筋っぽいのに割とえげつない発想するっチュね』

 

『あと、逃したら承知しないぞ。もし今殺したり、逃がしたりしたらあそこに捕まってる女神のようになってもらうからな』

 

『大型のモンスターが触手に捕まってる絵面なんて需要ないっチュよ……それに、逃げたら逃げたで仲間を見捨てるような女神ってことを拡散したらシェアが爆下がりするっチュ』

 

『それもそうか』

 

『……っつーわけだ女神ども! 今からてめえらの中から一人を徹底的に痛めつける! 誰がそうなるかはてめえらに選ばせてやるぜええええ!』

 

『何よそれ……悪趣味ね……』

 

『私が行くわ』

 

『ブラン⁉︎』

 

『私はこの中で1番防御力が高い、だから……!』

 

『そんな理由でそんなことさせられませんわ! ここは私が!』

 

『いや、ベールはだめだよ。リーンボックスにはベールしかいないんだから、そうなると……ここはわたしかなぁ』

 

『どうしてよネプテューヌ! 妹なら私にも……』

 

『じゃあノワールは今すぐ国をユニちゃんに任せられる? ブランもロムちゃんとラムちゃんに……』

 

『ネプテューヌ……』

 

『わたしもネプギアに今すぐ任せるのは不安だけど、いーすんも……ギンガもいるから大丈夫でしょ!』

 

『だからって……』

 

『あーー、またいいこと思いついちまった、おい! プラネテューヌの女神ってどいつだあ⁉︎』

 

『どうしてプラネテューヌの……?』

 

『あのクソ野郎は確かプラネテューヌのやつだったからなぁ! てめえのとこの女神をボコしたところを見せてやりてえんだよおおおお‼︎』

 

『……わ、私がプラネテューヌの女神、ネプテューヌねぷぅ!』

 

『ノワール⁉︎』

 

『いえ、私がプラネテューヌの女神、ネプテューヌよ……ねぷぅ……』

 

『ブランまで⁉︎』

 

『いいえ! 私こそがネプテューヌねぷぅですわ!』

 

『ベールに至ってはできてないし! ていうかわたし語尾にねぷぅなんて付けてないよ! わたしこそがプラネテューヌの女神ネプテューヌだよ!』

 

『あああああ! 結局どいつなんだよおおおお⁉︎ 紫色の髪のやつじゃねえってことしかわかんねえぞおおおお!』

 

『ねぷぅ⁉︎ わたしが本物なんだけどー!』

 

『何ふざけたこと言っている。そいつがプラネテューヌの女神だ』

 

『あぁ⁉︎ そうなのか……』

 

『ねぷぅ⁉︎ 何その冷めた反応⁉︎』

 

『……まぁいいかあ! 精々楽しませてくれよおお⁉︎』

 

『くっ……力がでなくても、変身ができなくても、ねっぷねぷにしてやんよー!』

 

『そうだそうだそうだあああ! やる気出してくれねえと面白くねえからなああああ!』

 

 

 

 

 ……っつーわけで、この女神をボコってたんだよお! 中々いい抵抗してくれて面白かったぜえええ?」

 

「………様に」

「あ?」

 

「ネプテューヌ様に何してんだてめえぶっ殺すぞ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 無理だ、こんなもん見せられちゃもう無理だ。今は一応仕事中だけどもう言葉使いなんて知らねえ。

 

「はははははは! そうだ! そのツラだああああ! てめえのそのツラが見たかったぜええええええ! 前は表情一つ変えずに俺のことをやりやがったからなああああ!」

「知らねえな。倒した雑魚モンスターなんていちいち覚えてねえよ」

「んだとてめえ!」

「……俺の大切な女神様にこんなことしてくれたんだ……覚悟はできてんだろうな…⁉︎」

「へっへっへっへ! そうこなくちゃなあ! 殺し合いの時間だぜええええ!」

 

 ムカついてたから覚えてねえっつったが、こいつのことはよく覚えてる。こいつの名は「ジャッジ」。別にどこかの犯罪組織の四天王とかそういうわけじゃない。だいたい1000年ぐらい前に、人にもモンスターにも見境なく襲いかかる危険なモンスターがいるってことで、当時守護女神戦争で忙しかった女神様に代わって俺が討伐したモンスターだ。それに、雑魚っつったけど俺が今まで戦ったモンスターの中では一番強かったんじゃねえかな。まさか生きてやがったとは。

 

 怒りで頭がおかしくなりそうだ。……けど、どれだけキレていても戦闘では冷静に、だな。一度は倒した相手、どう立ち回って戦えばいいかは知ってる。……とりあえず敵のでけえ武器から繰り出させる大振りの攻撃を、最低限の動きで避けつつ、敵の懐に飛び込んで……っ!?

 

「オラァ!」

「ちぃっ……!」

「てめえの技は知ってんだよおおおお! 間合いに入らせるわけねえだろうがああああ!」

 

 ……なるほど、以前より強くなってやがるな。前は懐に飛び込んでからの『ギャラクティカエッジ』で勝てたんだが、今回はそもそも俺の技の範囲に近づけさせてくれねえ。こいつは攻撃範囲が広い代わりに小回りがきかないのが弱点だったんだが、その弱点をカバーできるようになったらしい。面倒だな……

 

「ははははは! 1000年だ! てめえを次確実に殺すために生き延びても1000年ぐらい大人しくしててやったんだ! 弱点ぐらいなんとかしてんだよおおおお!」

「……」

「どうした⁉︎ 逃げてるだけじゃ勝てねえぞおおおおーー!」

 

 怒りでおかしくなりそうな頭をなんとか冷静に抑えながら考える。リミテッドパープルの制限時間もあるし、こいつはなるべく迅速に仕留めたい。こいつはまだ知ってるからいいが、問題は奥に立ってるあの魔女みてえなやつだ。情報がねえ、なんだあいつ。情報がねえからこいつより、あの女と戦う時間の方を多目に残しときたい。

 

「……『魔界粧・轟炎』!」

「あ⁉︎ 効かねえんだよお!」

 

 ……ちっ、牽制にもならねえか。ごめんあいちゃん、あいちゃんの技が弱いわけじゃないからね。

 

「終わりかぁ⁉︎ だったら八つ裂きにしてやる……! 八つ裂きにしてやるよ雑魚がああああ!」

 

 うるせえな、誰が雑魚だよ。てめえ俺に一回負けてんだろうが。いや、殺せてなかったってことは俺は勝ててねえわけだ。試合と死合は違えし。

 

 ーーーーじゃあ今度こそ確実に殺してやる。

 お前に教えてやろう、お前如きならまだしも、今の女神様でさえも到達していない、シェアエネルギーを用いた戦闘の『真髄』というものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………『シェアリングフィールド』展開……!」

 

 

 

 

 

 




ジャッジ・ザ・ハード好きな人はマジで申し訳ありません。
原作ゲームの誇り高き犯罪組織マジェコンヌ四天王の「ジャッジ・ザ・ハード」とこの作品のなんかそこらへんの乱暴なやつ「ジャッジ」は別物として考えていただければ…

次回は、ちょっと整理したい情報や設定があるので、それに関する番外編をやります。


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ギンガのパーフェクトシェアエネルギー教室

前回の後書きでも言いましたが、幕間の番外編みたいな感じの回です。

シェアエネルギー、原作でも作品ごとに設定は違いますが、とても面白い設定だと思ったので、自分なりの考えをまとめてみた初投稿です。



 

 

 

『シェアエネルギー』、それは、女神様の力の源で、ゲイムギョウ界の「本質」ともいえるエネルギーです。基本的に国同士のパワーバランスはその国の教会にあるシェアエネルギーの総量で決まります。

 

 あ、そういえばシェアエネルギーはシェアエナジーとも言われます。文字が少し違うだけで同じ意味です。

 

 ゲイムギョウ界に生きる人間のほぼ全ては、微々たる量ながらシェアエネルギーを有しています。ちなみにこれはこの作品の独自設定ですからね。

 

 とりあえず、シェアエネルギーの説明はこういった感じで4つに分けてしようと思います。

①女神様とシェアエネルギー

②人間とシェアエネルギー

③戦闘におけるシェアエネルギー

④私「ギンガ」のシェアエネルギー

 

 なお、この回は原作の『ネプステーション』のような、本編とは違う時間軸になっています。つまり、今は本編が色々とやべーことになっていますが、この回には関係ありません。ですので、先程のようなメタ発言も本編より多いと思いますがご了承ください。また、これも先程言いましたが、原作のゲームやアニメとは異なったこの作品の独自の設定を解説することにもなるので、そこについてもご了承ください。

 

 

①女神様とシェアエネルギー

 

 「女神様」は人間と比べ物にならないほどの強い身体と膨大なシェアエネルギーを持って生まれてくる存在です。しかし、それ故に女神様は生命活動にシェアエネルギーが不可欠なのです。

 

 女神様と違い、人間は生命活動にシェアエネルギーを必要としません。また、シェアエネルギーを自身で使用し何かをするということはほとんどできません。唯一できることは、自らの持つシェアエネルギーを女神様を信じることで女神様に譲渡することです。この行為がゲイムギョウ界における『信仰』です。

 

 信仰により譲渡されたシェアエネルギーは、女神様もしくは教会の「シェア」というものになります。というわけでシェアエネルギーが変化したものがシェアなので、シェアエネルギーはほぼ全ての人間が持っているということと、シェアの源が国民の女神様を信じる心ということは矛盾しません。

 

 信仰は人間にのみ行えて、女神様は信仰により別の女神様にご自身のシェアエネルギーを譲渡することができません。しかし、シェアエネルギーそのものではなく、それを別の力に変換したものなら可能です。別の次元の女神様ならシェアエネルギーそのものの譲渡も可能なのかもしれませんが。

 

 信仰によるシェアエネルギーの譲渡は人間が女神様を信じることでほぼ自動的に行われるので、何か特別なことは必要ありません。そして国民にとって信仰は、メリットが多くデメリットがほぼないためしない理由がありません。…まぁ私的に言わせてもらうと、信仰は国民の義務で、女神様への信仰をメリットデメリットで考える時点で死罪級の不敬ですが。

 

 また、信仰は自動的に行われると言いましたが、女神様はその信仰で得られるシェアエネルギーを受け取らないこともできます、しかしこれは女神様にはメリットがなくデメリットしかありません。

 

 あまりこういう話はしたくないのですが、シェアエネルギーがあれば、女神様は四肢が取れようが、内臓が潰れようが、時間が経てば身体の傷が再生します。信仰によるシェアエネルギーが多ければ多いほど回復も早くなります。

 

 そうして、信仰で女神様に譲渡されたシェアエネルギーは、教会に集められシェアとなり、そのシェアが再び女神様の変身や女神様のご加護に用いられるシェアエネルギーとなるのです。

 

 変身というのは所謂「女神化」で、女神様がシェアエネルギーを使用しもう1つの姿になることです。身体能力の向上とプロセッサユニットの装備により絶大な力を得ることができる代わりに、必要なシェアエネルギーはとても多いため、信仰によって大量のシェアエネルギーを得ていなければ行えません。また、シェアエネルギーの量は充分でも、女神様のコンディションが悪い場合に変身ができないことがあります。

 

 女神様のご加護というのは、女神様が国そのものや国民に与えるパッシブスキルのようなものです。これも信仰による大量のシェアエネルギーが必要となります。有名な例を挙げると、人間が暮らすのが厳しいほどの極寒の大地に位置するルウィーが、女神ホワイトハート様のご加護により国内が暖かく国民が快適に過ごせるようになっていることです。

 

 それ以外に重要な女神様のご加護があるのですが、それは③の内容と関連しているので、そこで説明します。

 

 また、国民からの信仰によるシェアエネルギーがその国の女神様が用いる量よりも過剰に溢れることで、その国に新たな女神様が誕生します。これは前回も話しましたが、もし何か良くないことが起こり、ある国に女神様が存在しなくなった場合にも、その国に信仰によるシェアエネルギーが多く残っていれば即座に新しい女神様が誕生します。

 

 1つ勘違いされがちなのが、女神様は信仰されなかったら絶命するというわけではありません。先程言った変身やご加護を行えなくなるというだけで、最低限の生命活動は、信仰で得られるシェアエネルギーではなく、ご自身の持つシェアエネルギーでまかなうことができます。

 

 しかし、生物が長い年月を生きると老化して身体が衰える様に、女神様も見た目は変わらずともご自身の持つシェアエネルギーの量が低下し、それだけでは最低限の生命活動すらまかなえなくなってきます。そしてそうなった、またその兆候を感じた女神様は、その国に次の世代の女神様がいれば『守護女神』としての座を託し、引退します。

 

 また、逆に、国民がその国の守護女神の交代を望み、今の女神様への信仰を減らし、その結果女神様の世代交代が起こることがあります。それが起こる期間、もしくはその兆候がある期間を『転換期』と呼びます。転換期にはしばしば今の女神様へのネガティヴキャンペーンが行われがちです。また、転換期が来ることで一度失われそうなった信仰が、今の女神様に戻ってきて、結局世代交代が起こらないというパターンも多々あります。国民如きが女神様を選ぶなど烏滸がましいですし、あまつさえネガキャンをするなど憤死ものですよ。つまり転換期はクソです。

 

 引退した女神様はご自身のものではまかなえずとも、信仰によるシェアエネルギーを用いれば半永久的に生命活動を続けることができます。しかし、引退した身であるご自身が生き続けるのではなく、完全に次の世代の守護女神に国を託すために、信仰によるシェアエネルギーを受け取ることをやめて安らかな眠りにつく女神様が殆どです。人間と比べものにならないほど長い年月を生きる女神様は、人間のように逝くことに憧れている、とも言われています。

 

 先程言った通り女神様同士ではシェアエネルギーの譲渡はできませんが、女神様同士がお互いを思い合うことで、お互いのシェアエネルギーが反応し合い、それにより一時的に片方、もしくは両方の女神様のシェアエネルギーが爆発的に増加する『共鳴』という現象があります。しかしその現象は女神様が能動的に起こすことはできず、ゲイムギョウ界の長い歴史の中でも見られたことはほとんどありません。2人の女神様で行われる小規模なものならともかく、4人以上の女神様で行われる大規模な共鳴は長らくこのゲイムギョウ界で生きている私ですら見たことがありません。

 

 また、『共鳴』によるシェアエネルギーの爆発的な増加に何か別の要因が重なれば女神化を超えた更なる進化をすることができるかもしれない、と私は考えているのですが、その「何か別の要因」が見当もつかない以上、机上の空論に過ぎません。

 

 

②人間とシェアエネルギー

 

 先程言ったように、人間は微々たる量のシェアエネルギーを持って生まれてきて、信仰以外ではシェアエネルギーを使えません。しかし、例外があり、その『例外』をこの章で取り扱うことになります。

 

 例外は2種類に分けられます。

⑴:シェアエネルギーを先天的に常人より多く持つ人間

⑵:⑴に加えて、信仰以外のことにシェアエネルギーを扱うことができる人間

 

 ⑴の人間は1000人に1人ぐらいの割合で生まれてきます。⑵の人間は国中を探して10人も見つかれば御の字という程度の割合でしか生まれません。

 

 これらの人間は、常人より質の高い信仰をすることができて、 女神様のご加護を常人より多く受けることができます。また、女神様を信じる心が強い性格になりやすいので、教会などの女神様と近い場所で働く場合が多いです。

 

 身近な方で例を挙げるなら⑴はあいちゃんとコンパさん、おそらく5pb.さんもそうでしょう。⑵はイストワール以外の教祖の皆さんです。コンパさんや5pb.さんのように、⑴に該当していても、教会で働くよりも自分のやりたいことで働いている方ももちろんいます。

 

 教祖の皆さんは多量のシェアエネルギーを用いることでそれを結晶状にしたシェアクリスタルを生成することができます。シェアクリスタルというのはシェアが具体的な形となった結晶で、これがあった方が女神様にシェアエネルギーを供給しやすくなります。ただでさえ少ない⑵の中で、シェアクリスタルの生成が行えるほどシェアエネルギーを扱う才能のある人間のみが、教祖になることができるわけです。

 

 また、これらとは逆に、シェアエネルギーが少なかったり、シェアエネルギーを全く持たない、つまりシェアエネルギーが「0」の人間も存在します。それはまぁこの私、ギンガなんですけど、そのことについては④で説明します。

 

 イストワールは完全な人口生命体であるため、例外中の更に例外なので今回は触れません。…ていうか彼女のことは私でもよくわかってません。

 

 ……ちなみにあえて言っておきますけど、ネプテューヌ様とあいちゃんとコンパさんの関係は、シェアエネルギーや信仰が関係のない純粋な友情ですからね。

 

 

③戦闘におけるシェアエネルギー

 

 このゲイムギョウ界における戦闘行為で、自身の持つシェアエネルギーを直接用いることができるのは女神様と⑵に該当する人間だけです。

 ⑵も含む信仰を行なっている全ての人間は「信仰で譲渡したシェアエネルギーの分だけそれに相応した戦闘力を得る」という女神様のご加護を受けています。このご加護には名称はないのですが、私は説明を楽するために『戦闘加護』と呼称しています。ちなみにこの戦闘加護は、女神様の意識に関係なく自動的に行われています。

 

  シェアエネルギーや戦闘加護で手に入れた力を『魔力』によって変換したものを『魔法』といいます。魔力もシェアエネルギーと同じく先天的に決まります。残念ながら、魔力を持っていなければどれだけシェアエネルギーを持っていても魔法は使えません。おそらく、このゲイムギョウ界で最も多くの魔力を持っているのは、ロム様とラム様だと思われます。

 

 というわけで、基本的には「ゲイムギョウ界における戦闘力は先天的なシェアエネルギー量に比例する」ということになります。しかし当たり前のことですが、ある程度身体も鍛えてなければそれを戦いに活かすことができず、宝の持ち腐れとなってしまいます。また、これも当たり前のことですが、シェアエネルギーが少なく戦闘加護をあまり得られていないが、高い身体能力や極めた技により戦闘力が高い者ももちろんいます。

 

 シェアエネルギーや戦闘加護の力は、ただの戦闘力の向上だけではなく、技にも使われます。例えば、ネプテューヌ様の「クロスコンビネーション」は斬撃にシェアエネルギーを使用しているため、シェアエネルギーを込めていない通常の斬撃より威力が底上げされています。シェアエネルギーや戦闘加護の力の使い方が上手ければ上手いほど、戦闘力も上がります。

 

 また、自らの戦闘力の『核心』を理解し、それに近づくと更なる戦闘力が得られたり、使える技や魔法が増えたりします。この核心は人によって異なるので、10人いれば10種類の核心がある、ということですね。しかしその核心に近づくのは難しく、女神様ですら己の力の核心に迫り切れてはいません。ちなみに私はとっくに掴んでますよ。それができなければ私如きが生物としての格が違う女神様の相手にはならないので。まぁ私の場合はその核心が他者よりも単純かつ明解だったというのもありますが、それについては後で説明します。

 

 

④私「ギンガ」のシェアエネルギー

 

 最後に、これらの例外中の例外である私自身について説明します。

 

 先程言いましたが、私にはシェアエネルギーが全く存在しません。シェアエネルギーが存在しないということは、信仰もできず、女神様のご加護を受け取ることもできず、戦闘加護も得られません。

 以前ベール様に言った「私如きが移ったところで国同士のパワーバランスは変わらない」というのは、先程「国同士のパワーバランスはその国の教会にあるシェアエネルギーの総量で決まる」と言った通り、シェアエネルギーを持たない私が移動する、つまり0が移っても何も変わらないということです。……しかしこれをベール様に言ったらそれはそれで「でしたらむしろギンガがリーンボックスの女神補佐官になっても何も問題ないということでありませんか?」みたいなこと言い出しかねませんね。

 

 これだけ聞けば、私の身体は常人の下位互換、ゴミです。しかし、どうやら私の身体はシェアエネルギーが全く存在しないことにより他者と一線を画しているようで、「ゲイムギョウ界においてシェアエネルギーを持たずに生まれてきた」という欠陥が、「女神様ほどではないが生まれつき強靭な身体」と「シェアエネルギーや戦闘加護を介さずに魔法を使える特殊な魔力」という利点で帳消しにされています。それにより、私は常人よりも高い戦闘力を持つことができているのです。

 

 これを知っているのはこのゲイムギョウ界ではイストワールだけです。ネプテューヌ様にも説明したことがあるのですが、その時のネプテューヌ様の視線は私ではなく私の周りを飛んでいた蝶々に向いていたので、おそらく聞いていなかったと思われます。

 

 信仰ができないとしても女神様を想う気持ちはこのゲイムギョウ界で1番強いと自負していますが、結局それができない私は女神様や国のシェアに常人未満の貢献もできません。だから私は女神様に全身全霊で尽くすのです。それでようやく私は常人と同じ貢献ができる…と思っています。その思いで女神様に長年仕え続けたから、他者に狂信者と言われる私の性格が出来上がったのかもしれませんね。

 

 「人間」の私は、シェアエネルギーを持たず、扱うこともできません。しかし、私は半分は人間でもう半分は人工生命体なので、まるでモード切り替えのようにして、シェアエネルギーを扱うことができるようになります。そのモード切り替えというのは「強靭な身体能力と魔力を半減させ、減らした分だけ戦闘用のシェアエネルギーを創造する」というものです。これをすれば私もシェアエネルギーを用いた戦闘が可能になります。例えるならウルトラマンZのアルファエッジとガンマフューチャーのタイプチェンジみたいな感じですかね、いや、ベータスマッシュとガンマフューチャーか?

 

 しかし、そのシェアエネルギーはこの世に本来存在しないはずのエネルギー、つまり虚数のシェアエネルギーなので、信仰にも使えず、教会のシェアエネルギーの総量にもカウントされません。

 

 私にとっても、身体能力と魔力を犠牲にしてシェアエネルギーを得るメリットはあまりないのですが、女神補佐官として女神様にシェアエネルギーを用いた戦闘を教えなければならないということで付いている機能です。その少ないメリットの1つが前回の引きでやった『シェアリングフィールド』なのですが、それについては次回の私から説明されるでしょう。

 

 これは余談となりますけど、それが無意識か意識的かは女神様によって分かれていますが、女神様は戦闘中、敵の身体のシェアエネルギーや戦闘加護の力の流れから、敵の次の行動をある程度予測しています。ですが、シェアエネルギーがない私に対してはそれができないため、女神様には私の動きは読みづらいようで、予備動作無しで出ててくる私の『ギャラクティカエッジ』は、女神様にとって、いきなり無から攻撃が飛んでくるように思えるらしいです。

 

 色々解説しましたが、シェアエネルギーについてはまだ未知なる部分も多く、全てを解説はできません。

 

 というわけで、とりあえず今回の「ギンガのパーフェクトシェアエネルギー教室」は終了となります。

 

 何度も言いますが、この作品のシェアエネルギーの設定は作者の稚拙で勝手な解釈により行われているので、この設定の時点で理屈が通ってなかったり、この先の展開でどうしようもない矛盾が起こったりするかもしれません。その場合、この回は削除され、初めからなかったことになりますので、皆さんもこの回のことをお忘れください。あとこの作品を読んでいる人がいるかわかりませんが、この設定の疑問点や問題点があったらどんどん指摘してください。

 

 それでは、引き続き本編をお楽しみください。

 

 




ある作品の中でそれと別の作品の力でキャラを戦わせる、二次創作の醍醐味ですが、せっかくシェアエネルギーなんていう面白い設定があるのでそれを最大限活用してみようと思いました。



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09. 光る銀河、革新する(かわる)女神

マジェコンヌさんちょっとカッコよくしすぎましたかね? まぁいいや初投稿です。


「………『シェアリングフィールド』展開……!」

 

 その瞬間、高濃度のシェアエネルギーの粒子が、俺とジャッジを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「何よアレ……? 何か変なドームみたいなのができたけど……?」

「『シェアリングフィールド』……」

「ブラン? 知っているのですか?」

「名前だけよ。まさか本当に使える人がいるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 『シェアリングフィールド』。自らのシェアエネルギーを空間を作り出せるほどの高濃度のものへと昇華させるシェアエネルギー操作の『真髄』。ゲイムギョウ界の長い歴史の中でもこれを使える女神様は片手で数えられる程度しか存在せず……いや、完全なシェアリングフィールドを展開できるのはただ一人しかいなかった。俺もそのお方、『天王星うずめ』様にコツを教えてもらい、その後も鍛錬を続け、ここ100年ぐらいの間でようやくできるようになった技だ。

 

 そういうわけで、俺はシェアリングフィールドを使えるんだが、あのお方が使うものは俺のものとは格が違う。俺は目の前のこいつをフィールド内に引きずり込めるぐらいの広さを展開するのが精一杯だが、あのお方ならこのズーネ地区を全て覆うほどの広さのフィールドを展開できるだろう。

 

(何だぁ……? 動けねえ……何も見えねえ……何も感じねえ……俺は今、何をされている……⁉︎)

 

 シェアリングフィールドの強みは、外界と遮断された特殊な空間を生成できることと、そこにいる者にフィールド内限定のルールを強いれることだ。このルールってのは使用者によって異なって、あのお方のルールは確か……敵の弱体化と、味方のシェアエネルギー使用量軽減と強化だったかな?

 

「……俺のフィールド内のルールは『フィールド内での戦闘力は、その者の女神様への想いの強さによって決まる』ことだ。女神様を嬲るような真似をするお前みたいな信仰心の微塵もない塵屑は、このフィールド内では動くことすらできないだろうし、おそらく五感すら機能していないんじゃねーかな」

 

(あの野郎……何しやがったんだ? 前はこんなことしてこなかったぞ……)

 

「俺のシェアリングフィールドのルールは女神様には一切効かないが、まぁ逆に女神様に一切効かないっていうデメリットが、自分で言うのもなんだけどチート級のルールで帳消しにされてる感じだろうな」

 

(動けええええ! ……何も感じなくても……身体さえ動きゃ何とかなるだろおおおお!)

 

「シェアエネルギーを使ってる間は俺の身体能力は半減されるんだが、無抵抗のお前を切り刻むのには充分だ。じゃあな、先に地獄で待ってろよ、いつか俺が死んだらまた会おうぜ。……ま、聞こえてねえか……『ギャラクティカエッジ』」

 

 

 

 

 

 

 

「……ネズミ、お前は役に立たんから下がっていろ。ジャッジのやつはもう終わりだ。私に出番が回ってくる」

「……チュ? あいつもう終わりっチュか?」

「おそらくな。……1つ、このゲイムギョウ界で長生きするための秘訣を教えてやろう。食らっていい攻撃とそうでない攻撃を見極められることだ。それができなければ実力はあっても、あそこに捕まってる女神共のようになる」

 

「……聞こえてるんだけど? 事実とはいえ、ムカつくわね……!」

「それより、ネプテューヌは……?」

「ボロボロにされたけど、この結界の中にいるよりは安全だと思う……今はギンガに賭けるしかないわ……」

「ギンガだけではなく、あなたがたの妹がいるではありませんか」

「ユニ? あの子はまだ私抜きで戦ったことすらないのよ?」

「ロムもラムもまだ私が守ってあげなければならない歳だわ……」

「それはあなたがたのエゴではなくて? あの子たちは確かに可愛らしい。私だっていつまでもそのままでいて欲しいと思いますわ。でも、そんな思いがあの子たちを変身できない可愛い妹のままでいさせているのかもしれない……そうは思いませんこと?」

「「……」」

 

「今、奴がやられてるのは後者の食らってはいけない方のものだ。おそらくあの変な空間が解除された時、私たちが最初に見るのは奴の死体だろうな」

「……ヂュっ⁉︎ そんなやばい技を使う相手なんて逃げるしかないっチュよ!」

「まぁ落ち着け、おそらくだがあんなもの乱発はできん。ネズミ、下がる前にこの地区にいるモンスターのほとんどをここに集めろ、私はジャッジと違って一対一の戦いに拘りはしない。確実に倒す手段を選ぶのさ」

「……前払い分の報酬は貰ったっチュけど、後払い分のはまだ貰ってないっチュからね。死ぬなっチュよ」

「ふん、死ぬのは私じゃなくて女神どもとあの男さ。……さて、そろそろあのフィールドが解除されるようだな」

 

 

 

 

 

 

 

 ……フィールドを解除し、ジャッジの残骸を踏み潰しながら、あの魔女みてえな女を睨みつける。

 

 ーーーーーー次はお前がこうなる番だ。

 

「行け……モンスターども!」

「……っ⁉︎」

 

 なるほど、おそらくジャッジは俺をタイマンで殺したかったからあえてモンスター共を散らせていたわけか。どうりでここまで辿り着くのが楽だったわけだ。で、あの女はそうじゃないから大量のモンスターを嗾けてくるわけだな。

 

 シェアリングフィールドは一度の戦闘で二度は使えない。身体のモードをシェアエネルギーを使用するモードから通常に切り替え、半減された身体能力と魔力を元に戻す。とはいえ、この数相手は流石に俺一人じゃしんどいな。ネプテューヌ様が俺の後ろでお休みになっているから絶対にモンスター共を近寄らせるわけにはいかねえ。……となると、アレを使うしかねえか。

 

 俺の戦闘における切り札は三枚。

 一枚は剣技の真髄『ギャラクティカエッジ』。……真髄って言ってもこれは剣技の基礎ができてりゃ誰でもできるようになる技だけどな。

 

 二枚目はシェアエネルギーの真髄『シェアリングフィールド』。

 

 そして、最後の一枚は『魔法』の真髄。これも真髄ってよりは…俺が使える中で一番強力な魔法って言い方が良いかな。対多数において一番効果を発揮する俺の最強魔法だ。これを使うのは久しぶりだ………

 

「血に飢えた死霊の宴を始めよう……『魔界粧・黒霊陣』!」

 

 その詠唱が終わった瞬間、自分の周りに歪な光の術式が展開される。

 

 今さっき言ったばっかだが、あえてまた言おう、宴の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あははははは! 今の私は八十禍津日神よ! ドラゴニックレイズでフィールドごと敵を焼き尽くしてあげるわ!」

 

(意外と楽しいわねこれ、なんか私のステータス底上げされまくってて無双できるし)

 

「てやあ! これでトドメです!」

「きゃっ! そんな! 八十禍津日神であるこの私が負けるなんて!」

「ようやく勝てるようになってきたわね……でも変身できるようにはならないわね……」

「うん……だけどもっと倒したらできるようになるかな」

「もう1回よ! 今度こそ私のドラゴニックレイズで焼き尽くして……」

「ノリノリのところ申し訳ないけど……四女神が囚われたことはそろそろ世界中に広まるわ、それにもう師匠が言った作戦のフェーズ2開始の時間よ」

「四女神が囚われた……? これは大スクープ……モゴっ!」

「ケガしてるです、安静にしてるですよ」

「モゴモゴ!(ちょっ、包帯で口塞ぐのやめなさいよー!)」

「アイエフさん……! 行こう……みんな!」

「……⁉︎ 見て! お姉ちゃんたちの捕まってるところがなんか変な光り方してる!」

「お姉ちゃん……!」

「大丈夫、あれは……師匠の魔法よ」

「ギンガさんの?」

「ええ、今すぐ行ったら巻き込まれるかもしれないから、師匠があの魔法を使い終わったら出発しましょう!」

 

(師匠……アレを使ったんですね……)

 

 

『あいちゃん、何を書いているのですか?』

 

『えっ⁉︎ し、師匠⁉︎ こ……これは……その……』

 

『すみません、驚かせてしまいましたか? あと、言いづらいことなら言わなくても大丈夫ですよ』

 

(師匠になら……見せてもいいわよね? 笑ったりしないわよね?)

 

『その……設定集っていうか……自分の脳内設定を書き留めたノート……なんですけど……』

 

『なるほど! そのようにアイデアを書き留めておけば、新しい技や魔法を開発しやすくなる……流石です、あいちゃん。やはりあいちゃんは優秀ですね』

 

『あ、ありがとうございます!』

 

(嘘、褒められた! ちょっと嬉しい……)

 

『そうですか……あの、もしよかったらそのノートを見せてくれませんか?』

 

『ええ⁉︎』

 

『ダメですか……?』

 

『だ、大丈夫です!』

 

(その無駄にいい顔でしょんぼりするなんて卑怯よ!)

 

『ありがとうございます、あいちゃん……どれどれ……ほほう……』

 

(すごい真剣に読んでる! 嬉しさ半分恥ずかしさ半分ね……)

 

『……おっ! これは……! ……あいちゃん』

 

『な、なんですか⁉︎』

 

『この「魔界粧・黒霊陣」という名前……私が使ってもよろしいでしょうか?』

 

『え? 別にいいですけど……師匠、それみたいな魔法を使えるってことですか?』

 

『まぁ、似た技を使えます』

 

(それ設定では死霊の使役魔法よ……なんて魔法使えるのよ師匠は……)

 

 

 

 

 

 

 

 展開された術式から湧き出るのは……このゲイムギョウ界に眠る亡者の魂。『魔界粧・黒霊陣』はそれらを呼び出し、使役する魔法だ。

 

「亡者共、後ろにいるお方は俺の命より大事なお方だ。お前ら如きが触れるなよ。そして、あのアンチクリスタルの結界の中にいる女神様たちにも触れるな。まぁ、俺でもあの結界の破壊は難しいから、お前たち如きじゃ壊せないだろうがな。……それ以外の命は全て殺し尽くせ。……行け!」

「「「「「「グオオオオオオオッ!」」」」」

 

 俺の言葉を合図に、亡者共が咆哮を上げ、モンスターに襲いかかる。雑魚モンスター相手は充分だが、おそらくあの女には有効打にはならない。だが奴も亡者共とモンスター共の乱戦の中では、俺に対して有効打をあげることができないだろう。

 

「ええい、気色悪い! 近寄るなこのっ! ……おい!」

「あぁ⁉︎」

「死者に鞭打つとは……とんだ非情な魔法だなぁ! ええ⁉︎」

「非情……? 何言ってんだ? 死後も女神様のために戦えるんだぞ……? ゲイムギョウ界において、それはこれ以上ない幸福だろうが……!」

「……ちっ、狂信者が……っ!」

「ありがとう、最高の褒め言葉だ!」

 

 それに、魔界粧・黒霊陣では、死後も女神様のために戦う気のある亡者しか呼び出せないしな。皆、俺ほどじゃないが狂信者たちだ。アンチクリスタルの結界の近くで戦ってる亡者なんて捕まっている女神様に手を振ってるからな。……っておい、ちゃんと戦えよ。

 

 魔界粧・黒霊陣の展開はかなり体力を持っていかれる……リミテッドパープルの制限時間もあるし、早くこの場の雑魚モンスター共を殲滅してあの女を叩かねえと。

 

(……ちぃっ! このゾンビ共を楽に葬れるようなモンスターは先程女神共が全て倒してしまったからな……モンスターが全滅するのは時間の問題か……!)

 

 後10体!

 ……5体!

 ……1体!

 ……殲滅完了、術式展開終了……再び眠れ亡者共、ご過労だった。まだ、ズーネ地区にモンスターは少し残っているが、この場に集められなかったモンスターはまだ周囲の警備をさせてるんだろう。それらも纏めて殲滅したかったが、そこまで術式は伸ばせねえ。

 

「さぁ、後はお前だけだ」

「せっかく集めたモンスターを……女神より弱いくせに面倒な技ばかり使いおって」

 

(ネズミ……は生きてるな。まぁくたばったらくたばったで後払い分の報酬が浮くからいいか)

 

「……お前の名前だけ聞いておこう」

 

 こいつの名前なんか興味ないが、今回の事件はイストワールに記録しておいてもらわなきゃいけないから一応聞いておく。

 

「ふん、マジェコンヌだ……四人の小娘たちが支は「名前だけでいいっつってんだろ興味ねえよんなこと」

「……ムカつく小僧だ」

「多分お前より歳上だぞ? 敬えよ」

「誰が敬うか!」

「そうか、お喋りは終わりだ。ここで死ね」

「お前がな! ……これを女神以外に使うことになるとは思わなかったが! はぁっ!」

 

 そう言うとマジェコンヌとやらは、プロセッサユニットのような追加装備を身につけた。強いなこれ、プレッシャーがすげえ。制限時間が近いからリミテッドパープルの装備を解除して戦おうと思ったが、まだ無理みたいだな。まぁここで俺が負けてもまだ候補生の皆様がいる。モンスターの殲滅は済ませたし、俺は勝つことよりこいつの体力を削ることに専念すれば…………

 

 

 

 

 

 …………いや、そんな『守り』の考えは捨てろ。『攻め』ろ。じゃなきゃ死ぬ、それが命のやり取りだ。

 

 俺が全部終わらせる。マジェコンヌをぶっ殺し、女神様を助け出し、ネプテューヌ様を介抱し、後から来た候補生の皆様を俺が笑顔で出迎える。そのつもりでやってやろうじゃねえか!

 

 マジェコンヌとの最後の死闘が幕を開ける。相手の方がパワーもスピードも上、ステータスだけ見るならぶっちゃけ勝ち目はねえ。でも、負けねえよ。俺が今まで、誰に仕えてきたと思ってやがる。俺が今まで、誰と戦ってきたと思ってやがる!

 

 奴の翼型装備からビット兵器が射出される。形状的にガンダムシードデスティニーに出てくるストライクフリーダムのスーパードラグーンが近いかな。だが、問題ねえ。伊達に長年生きてねえんだ。その手の武装との戦い方はよくわかってる。オールレンジ攻撃と言えども、敵の視点は一つだからそっから敵が攻撃してきそうな場所とタイミングを見極めれば余裕で捌ける。

 

「……昔は女神の力を欲したこともあった。それを手に入れれば退屈な世界が変わるだろうと」

 

 あ? なんだ急に? お喋りタイムか? 要らねえよ、お前のことなんか興味ねえ。

 

「……しかし、手に入れたとしても、私の退屈は終わらなかった」

 

 興味ねえよ。

 

「……だから私はこの世界そのものを変えるのさ!」

 

 興味ねえっつってんだろうが。

 

「……『クロスコンビネーション』!」

 

 ……! これは、パープルハート様の技⁉︎ なるほど、こいつは他人の能力や技をパクれるのか。いいや、関係ねえ! 俺が今まで何回その技を見てきたと思ってやがる! 

 

「『レイシーズダンス』! 『テンツェリントロンペ』! 『レイニーラトナビュラ』!」

 

 技を変えても無駄だ。ノワール様の技も、ブラン様の技も、ベール様の技も、お前のしょーもねえ劣化コピーなんかじゃ何も怖くねえんだよ!

 

(ちっ、こいつには女神の技があまり通用しないか。ならば力で押し通す!)

 

 ……あぁ、わかった。さっきこいつが言ってたこと、興味ねえって言いながらも耳に入ってきたから、わかりたくなかったけどわかっちまった。こいつは『俺』だ。あの日あの時あの場所で、女神様と出会えなかった場合の『俺』なんだ。

 

 力を手に入れようが、他者から何かを奪おうが、自分の世界の見方が変わらないと、世界の色は変わらない。灰色のままだ。俺もあの時は、ただ生きることだけを考えることしかできなかった。俺も世界の色も灰色だったんだ。…けど俺は女神様に出会って、女神様が灰色だった俺の世界に彩りを与えてくれたんだ。そして、灰色だった俺は銀色になれたんだ。

 

 それに、お前の力からは何も感じない。グリーンハート様の「華麗さ」も、ホワイトハート様の「力強さ」も、ブラックハート様の「気高さ」も。

 

 そして、パープルハート様の「俺の語彙力じゃ表現できないような何かそのすごい物凄さ」もだ。

 

 けど、お前も変わればつまらなくなくなるんじゃねえか。奪うんじゃなくて、与えることを覚えれば。殺すんじゃなくて、生かすことを覚えれば。お前も世界も彩りを得られるんじゃねえかな。

 

(……⁉︎ 私が押されている……⁉︎ 何故だ⁉︎ 今の私は女神に匹敵するほどの力があるはず……! 何故女神より弱いこの男になど苦戦する……っ⁉︎ なんなんだこの男は……⁉︎)

 

 まぁ、考え直してみろよ、そこんとこ色々。

 

 ……………地獄でな‼︎‼︎‼︎

 

(……っ! 馬鹿な……⁉︎ 殺られる………っ!)

 

 敵の攻撃を捌ききって、体勢を崩させる。

 

 そして無防備になった敵を、俺の剣が貫く………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ことは無かった。

 

 想像を絶する激痛と、口から吐き出る血、外れて散らばる俺のプロセッサユニット。

 

 とっくに過ぎてたんだよな、リミテッドパープルの制限時間。時間が無いことを悟らせないように、焦っている様子なんて微塵も見せられなかったから。そして、普通にこのマジェコンヌが強かったから。

 

 調整されたものとはいえ、女神様用のプロセッサユニットなんて人が付けられるようにできてはいない。たとえ俺みたいな常人より身体が丈夫なやつだったとしても、制限時間を多く過ぎればこのザマだ。

 

 あぁ、クソ、負けちまった。女神様以外には誰にも負けたくなったのに。見ろよ、あのマジェコンヌの表情。まだ何が起こったか理解できてないぜアレ。

 

「……? ……ふ、ふはははは! なんだお前、限界だったんじゃないか! すっかり騙されてしまったよ!」

「……」

 

 身体が動かねえ…血が止まらねえ。

 

「お前の自滅みたいなものだが……まぁいい! 最後に立っていた方が……勝ちなのさ!」

 

 マジェコンヌの攻撃が振り下ろされる。当たったら死ぬなこれ。身体動かねえから避けらんねえし。

 

 ……避ける必要ねえけどな。

 

「 ……最後に、か。じゃあ、俺の、俺たちの勝ちだな」

 

 

 

 

 

 

「『スラッシュウェーブ』!」

「……っ⁉︎」

 

 突如現れた斬撃の波が、マジェコンヌの攻撃を弾いた。あーもう、女神様ってほんとかっこいいな。

 

「ギンガさん! 皆さん! お待たせしました!」

「ありがとうございますネプギア様、今のなかったら私死んでました」

「……死なないでくださいって言いましたよね? ボロボロじゃないですか!」

「はい、でも、死にませんよ。だってその前にネプギア様が来てくれましたし」

「もう……!」

「あっ! それどころではありません、私のことよりネプテューヌ様を……!」

「お姉ちゃんはアイエフさんとコンパさんが見ててくれています。酷い怪我ですけど……命に別状はないみたいです……でも、許せません!」

「許せない……? 許せないなら何だ⁉︎ 変身もできない女神の妹如きに何ができる⁉︎ いいだろう……そこの男は放っておいても死にそうだし、先に目の前でこの小娘を葬ってやろう! ……そこの女神どもも見ているがいい! 愚かな小娘が死ぬ瞬間をなぁ!」

 

「ネプギア……大丈夫なの……?」

「現時点では私たちはおろか……ギンガよりも弱いわよねあの子」

「……いいえ、大丈夫ですわよ。今のネプギアちゃんなら」

 

「ギンガさん……私、お姉ちゃんより強くなることを恐れてたんです。ずっとお姉ちゃんに憧れていたかったんです。だけどギンガさんに言われて気づきました。私はまだ、お姉ちゃんを超えるスタートラインにすら立ってないって。私はお姉ちゃんを、ギンガさんを、みんなを守るためなら、誰よりも強くなります! いつかあなたたちを超えてみせます!」

「ネプギア様……

 

 ネプギア様……怒りはあっても冷静さを失っていませんね。そしていい眼をしています。今ならきっと、いえ絶対にできますよ。

 

「だから……見ててください。私の……変身!」

 

 そう言ってネプギア様が光り、変身が開始されます。あぁ、美しい。涙が出そうです。

 

 ……変身完了。身体が動かないから平伏せられません。くそっ。

 

「引くわけにはいきません……全力で行きます!」

 

 ……さて。

 

 

 

「……祝え! プラネテューヌの民の信仰を受け、次元を超え、過去と未来を知ろしめす紫の女神! その名も『パープルシスター』様! 新たな歴史の幕が開きし瞬間である!」

 

 

 

(な、なんだこいついきなり…?)

 

「ギ、ギンガさん……? いえ、ありがとうギンガさん!」

「存分にお戦いください、パープルシスター様!」

「はい!」

 

 あ、やばいです。ただでさえ満身創痍なのに腹から声出したせいでもう意識を保ってられません。パープルシスター様の後ろからモンスターを蹴散らしながらユニ様、ロム様、ラム様がやってきています。おそらく、パープルシスター様だけではなく、彼女たちももう変身ができるでしょう。

 

 そして、絶対にお姉様たちを助けられるはずです。だから、私の出番はもう終わりです。

 

 あぁ、ユニ様とロム様とラム様の初変身も見たかったなぁ……そして戦っているところも見たかった…………

 

 ………少し、疲れました………おやすみなさ……い……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメのパープルシスター様の初変身シーン好きです。
どれぐらい好きかと言うと、仮面ライダービルド ジーニアスフォームの初変身シーンぐらい好きです。
ですが、回の引きで変身して活躍は次回ってのは、両方において好きじゃないです。

ギンガの戦闘力は今回でめっちゃ盛られてるように見えますが、対女神においては
『ギャラクティカエッジ』は威力が足りず、
『魔界粧・黒霊陣』は亡者が女神に攻撃せず、また体力の消費が多すぎるので発動するのは自殺行為で、
『シェアリングフィールド』はそもそも女神に効果がない、
という感じでバランスを取ったつもりです。


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私の証

「俺の名前」の続きの初投稿です。




「初めて会った頃と比べると随分身長が伸びたわね。私よりも大きくなっちゃった」

 

「女神様のおかげです」

 

「言葉使いも丁寧になっちゃって、二人きりの時はいいって言ったのに」

 

「使い分ける方が難しいのでこっちで統一しましたよ。それに今あの頃の自分を思い出すと女神様への非礼の数々を思い出して死にたくなります」

 

「死んじゃダメよ。あなたが真面目になってくれて嬉しいけど……それはそれで少し寂しいわね」

 

「むぅ……では、戻した方がいいです……いいのか?」

 

「いやいいわ、あなたのしたいようにしなさい」

 

「かしこまりました」

 

「教会も随分と賑やかになってきたわね」

 

「私としては女神様と二人きりだった頃が恋しいです」

 

「あら、私も最近少しそう思うのよね」

 

「ですが、教会が賑やかになったというのはそれだけ人々の暮らしも良くなったということ。女神様を信じる国民も以前とは比べものにならないほど増えました」

 

「そうね、あなたのような子供を作らないためと思って頑張ったのよ」

 

「……」

 

「……前の私は他の国の女神を倒すことばかり考えていて、国民たちがどんな暮らしをしているかなんて考えたこともなかった。そんな時に私を殺そうとしてきたあなたと出会ってようやく気づくことができたのよ。私はこの国をこんな小さな子供がこんな生き方をしなきゃいけないようなひどい国にしていたってことに」

 

「……」

 

「それに……きっと、あの時の私はいつも戦いばかりで寂しかったんだと思うわ。おかしいでしょう? 自分を殺そうとしてきた子供を寂しさを紛らわすために連れて帰るなんて。でもあなたが来てからは寂しいって思うことが全くなくなったのよ」

 

「……」

 

「少し話が逸れたわね。えっと、だから……この国が良くなったのはあなたのおかげなのよギンガ……ギンガ?」

 

「……」

 

「ちょっと、せっかくいい話をしてたのに、何よ急にそんなところで倒れ込んで……お腹でも痛いの? ……ねえ? ……ギンガ? え……? 血……? ギンガ‼︎⁇」

 

 

 

 

 

 

 

 

「余命……半年ほどらしいです」

 

「そう……」

 

「この国どころか今のゲイムギョウ界の医療では治す方法がないって言われてしまいました」

 

「……っ! そう……」

 

「情けないものですね。女神様と肩を並べて戦うゲイムギョウ界屈指の猛者と言われた男が病なんかでこのザマです」

 

「……」

 

「女神様、この間、私見てしまったんですけど」

 

「何をよ?」

 

「ゲイムギョウ界初の人工生命体を作るという計画の書類をです」

 

「勝手に見ないでくれるかしら」

 

「すみません、目に入ってしまいどうしても気になったので」

 

「で? それがどうかしたの?」

 

「非人道的だから用意できないけれど、人体のサンプルがあれば完成が数年は早くなる……みたいなことが書いてありましたよね」

 

「書いてないわよ」

 

「いやいや、書いてありましたって」

 

「書いてないわ」

 

「いやいや、書いて……」

 

「……ッ! そんなこと書いてないって言ってるでしょ! それにもし書いてあったらとしたら何なのよ! あなたを実験台にしろってこと⁉︎ ふざけないで!」

 

「ふざけてなんかいませんよ、このまま何もできずに病に殺されて死ぬぐらいならあなたの役に立って死にたいのです」

 

「もう充分役に立ってくれたじゃない……私にあなたを殺せっていうの……?」

 

「私の死すら役に立てるなら光栄です。病に殺されるなら悔いが残りますが、あなたに殺されるなら悔いはありません」

 

「……わかった。あなたの命…貰うわ」

 

「ありがとうございます。申し訳ありません、嫌な思いをさせてしまって」

 

「ほんとよ。でも、さっき言ったことを訂正するわ。これはあなたを殺すためじゃない、あなたを救うためよ」

 

 

 

 

 

 

 

「まさか人工生命体の技術の完成が間に合うとは……」

 

「成功したのは奇跡って言われてるわね。私言ったでしょ、あなたを救うって。そのために奇跡でもなんでも起こしてやったわ」

 

「……なんといいますか、体の半分が人口生命体になっても、以前とあまり変わりませんね」

 

「そりゃそうよ、どこかの改造人間じゃないんだから」

 

「超パワーを手にするのを少し期待したのですが……」

 

「そんな技術があったらとっくに守護女神戦争なんて決着がついているわよ」

 

「人工生命体ってだけで凄まじい技術だと思いますけどね。あと、お願いがあるのですが」

 

「なにかしら?」

 

「女神様に抱きしめてもらえるのは嬉しいんですけれど、それ以上に痛いので離してください、それか少し緩めてください」

 

「だーめ」

 

 

 

 

 

 

 

「小さいですね」

 

「あなたのように人体がベースならともかく、0から作ったらこんなものよ」

 

「名前はなんというのですか?」

 

「そういえば、まだつけてなかったわ。そうねぇ……うーん……『イストワール』ってのはどうかしら? 『歴史』という意味よ」

 

「直球ですね」

 

「名前なんて直球でいいのよ。よし、起動するわ」

 

「ちゃんとできるでしょうか?」

 

「大丈夫よ……多分」

 

「多分ですか……申し訳ありません、私にシェアクリスタルの生成ができれば教祖をやれたのですが……」

 

「それは先天的な才能が必要だから仕方ないわよ」

 

「それができる生命体を人為的に作れるなんて……本当にすごい技術です」

 

「この子を作れたのは奇跡に近いわね。たとえ技術があっても再現できるかわからないし、ぶっちゃけ何で成功したかもわからないわ。……とにかく、あなたの部下になる子よ、ちゃんと面倒を見てあげてね」

 

「最初から育った状態で生まれるのがこの人工生命体ですよね? 面倒なんて見る必要あるんですか?」

 

「膨大な知識がデータとしてあるから既に私やあなたより賢いと思う。でもデータだけじゃなくて実際に色々な経験を積ませてあげるべきよ」

 

「わかりました。その前に1つ、我儘を聞いて欲しいのですが」

 

「なにかしら?」

 

「部下じゃなくて同僚が欲しいです」

 

 

 

 

 

 

 

「紹介するわ、私の妹よ」

 

「はい?」

 

「だから、私の妹よ」

 

「え? 女神様に妹さんがおられたのですか? 初耳なんですが」

 

「違いますよギンガさん、国民の皆さんからの女神様への過剰なシェアにより、プラネテューヌに新しい女神様が生まれたのです」

 

「説明ありがとうイストワール。それにひきかえギンガったら、女神の生まれ方はちゃんと教えたはずなのに忘れたのかしら?」

 

「すみません……」

 

「まぁいいわ。ほら、△△、挨拶しなさい」

 

「△△です! よろしくおねがいします!」

 

「はい、プラネテューヌの……イストワール、私の役職名ってなんでしたっけ?」

 

「え?えーとですね……あれ? データがありません」

 

「そういえば『部下』ってだけで役職名なかったわね。まぁ『女神補佐官』でいいんじゃないかしら?」

 

「そんな適当な……」

 

「いえ、それで構いません。……気を取り直して、女神補佐官のギンガです。△△様、よろしくお願いします」

 

「こら、△△、私の後ろに隠れないの。確かにギンガは顔が無駄に良いから緊張するのはわかるけど、これからは私より一緒にいることになるかもしれないんだから慣れなさい」

 

「無駄に、ですか」

 

「無駄に、よ。そのせいで、プラネテューヌ教会には私じゃなくてギンガの信者がいるぐらいよ。ちょっと気に入らないわ、ギンガは私のものなのに」

 

「そうですか……ん? 最後なんかちょっと変なこと言ってません?」

 

 

 

 

 

 

 

「ぎんがぎんが!」

 

「どうしました△△様?」

 

「わたしね、おおきくなったらぎんがとけっこんするー!」

 

「お気持ちは嬉しいのですが、私などが女神様と結婚なんて烏滸がましいのでできません。それに、私には心に決めた方がいますので」

 

「えー! めがみをふるなんてしけーよ!」

 

「わかりました……私が死刑なら明日の動物園は無しですね」

 

「やっぱしけーなし!」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあぎんがはそのひととけっこんするの?」

 

「いいえ、しませんよ」

 

「なんで? すきなんでしょ?」

 

「はい、好きですよ。愛しています。ですが、私だけを愛するその人のことは好きではありませんから」

 

「よくわかんない」

 

「そうですね、△△様にはわかりにくい話かもしれません」

 

「うーん、ぎんがはおねえちゃんのことがだいすきだけどぎんががすきなのはみんなのことがすきなおねえちゃんだからぎんがのことだけがすきなおねえちゃんのことはすきじゃないってことぐらいしかわかんないかなー」

 

「全てを理解されていますね、この方が次の女神様ならプラネテューヌの未来は安泰でしょう」

 

 

 

 

 

 

 

「私、そろそろこの国の守護女神やめるわ」

 

「そうですか、では△△様に女神様の座を譲るための手続きなど色々準備しなければいけませんね」

 

「……驚いてないわね」

 

「最近の女神様のご様子からそんな気はしてたので」

 

「そんなにわかりやすかった?」

 

「自惚れかもしれませんが私だからわかったのかもしれませんね。もう数百年の付き合いですので」

 

「……多分、自惚れじゃないと思うわよ」

 

「女神様は……守護女神を辞めたあとどうなさるおつもりで?」

 

「少しの余生を過ごしたら死ぬでしょうね」

 

「死なないでください」

 

「あなたのお願いなら人工生命体になってでも生きてあげたいわ。でも、不謹慎だけど私、死ぬことに憧れているのよ。女神って人とは比べ物にならないぐらい長く生きるから、天寿を全うした人間のように大事な人に看取られることに憧れてるの」

 

「では死んでください」

 

「なんかすごく暴言を吐かれてる気分だわ」

 

「半分暴言です」

 

「あら」

 

「ですが、それが女神様の願いなら私は受け入れましょう。後のプラネテューヌは△△様やイストワールや私に任せてどうぞ死んでください」

 

「ねえ、もしかして怒ってる? 自分の願いとはいえ死ね死ね連呼されると少し傷つくんだけど」

 

「別に怒ってませんが? 私を半永久的に生きる人工生命体にしておきながら私を残して自分だけ安らかに逝こうとしている女神様に対して全く怒っているわけではありませんが?」

 

「怒ってるじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

「ねえギンガ、今日はいい天気なのかしら?」

 

「曇りですね、雨になるかもしれません」

 

「そこは嘘でも晴れって言うべきだと思うけど」

 

「女神様に嘘はつけません」

 

「ねえ、前から気になってたんだけど、どうして△△は△△様って呼ぶのに私は女神様って呼ぶの? もう私は守護女神じゃないのに」

 

「女神様は守護女神をやめても私の女神様ですよ。それに、こんなことを言うと女神補佐官として失格ですが、私にとっての唯一絶対の女神様はあなただけですので」

 

「それ△△とかその後の代の子たちに絶対言っちゃダメよ」

 

「わかってますよ。あとは本当に好きな人を名前で呼ぶのは恥ずかしいからですかね」

 

「なんか今とんでもないことさらっと言われた気がするわ。そうね、私もあなたことが大好きよ、愛しているわ。でもあなたしか愛していない私のことは好きじゃないんだっけ?」

 

「……△△様から聞いたのですか?」

 

「あなたからそれを聞いた日にすぐ私に教えてくれたわ」

 

「マジですか」

 

「マジよ」

 

「△△様め……」

 

「……ねえ、最期の頼みを聞いてほしいわ」

 

「何でしょう」

 

「私と会ったばかりの頃の言葉遣いに戻してくれない?」

 

「今更できますかね」

 

「できるでしょう。たまに出てたし」

 

「誤魔化せてたつもりでしたけどバレてたんですね」

 

「バレバレよ」

 

「咄嗟に出んのと使うのじゃわけが違えんですよ」

 

「本当ね、混ざってて面白いわ」

 

「ちょっと待っててくれません? 頭を整理するので」

 

「早くしないと私死ぬわよ」

 

「不謹慎なジョークやめろ」

 

「できてるじゃない」

 

「あんたが死ぬとか言うから速攻で頭整理して切り替えたんだよ。つーか、何で今更俺の言葉遣い戻せなんて言うんだよ」

 

「『私』のあなたも好きだけど『俺』のあなたも好きだったからかしらね。あの頃のあなたは可愛かったから。今も可愛いけど」

 

「そうか」

 

「照れてる?」

 

「千年以上の付き合いだからもうあんた相手じゃ照れねーよ」

 

「ふーん、つまんないの」

 

「なぁ、やっぱ死なないでくれってのは無しか?」

 

「あーもう、あなたがそれを言わなかったら何も思い残すことなく死ねたのに」

 

「悪い、忘れてくれ」

 

「あ、最期の頼みがもう1つあったわ」

 

「最期じゃねえじゃねえか」

 

「ごめんなさいね、これが本当の最期よ」

 

「ムシキングかよ」

 

「言う前に本当に死ぬわよ私」

 

「……頼みって何だよ」

 

「私より好きな人を作ってね」

 

「は?」

 

「あなたの呪縛にはなりたくないのよ」

 

「呪縛ねえ……ま、あんたより素敵な女神様が生まれりゃそーなるかもな」

 

「意外と気が多いのね」

 

「あんたのせいで女神様の狂信者に育て上げられちまったからな」

 

「いや、絶対それは私のせいじゃないわよ」

 

「初めて会った女神様があんただったからあんたのせいだよ」

 

「もう……」

 

「へっ」

 

「ねえ、ギンガ」

 

「ん?」

 

「私が生きていて1番幸せだったことは……あなたに会えたことよ。ありがとう、ギンガ」

 

「……あぁ、どういたしまして」

 

「……」

 

「おやすみなさい、女神様」

 

 

 

 

 

 

 

「すみません△△様、イストワール。あの方の最期の時間だったのに、二人きりにさせてもらって」

 

「いいんですよ、○○さんが望んだことですから」

 

「私も構わないよ。ねえ、ギンガ」

 

「何でしょう?」

 

「お姉ちゃんへの恋は叶ったの?」

 

「ええ、叶いました。その直後に振られましたけど」

 

「それはどういうことなんでしょう?」

 

「うーん、お姉ちゃんとギンガは結局相思相愛だったけどお姉ちゃんはこの先も生き続けるギンガの心を縛りたくなかったからお姉ちゃんが死ぬ直前でギンガを振ったってことぐらいしかわからないかな」

 

「相変わらず凄まじい理解力ですね」

 

 

 

 

 

 

 

「何度経験しても、女神様を看取るのは慣れませんねイストワール」

 

「慣れなくてもいいことだと思いますよ、ギンガさん。私だって慣れませんし、慣れるつもりもありません」

 

「ハンカチ……貸しましょうか?」

 

「ありがとうこざいます、お借りします」

 

「鼻は噛まないでくださいよ」

 

「噛みません! ……引退した女神様はほとんど死ぬことを選びますよね」

 

「昔、女神様が言ってました。人より長く生きる女神様たちは、人のように逝くことに憧れるんだって」

 

「ギンガさんは……憧れたりすることはありますか?」

 

「いいえ全く。いつ死んでもいいと思ってますが、死にたいと思ったことはないですね」

 

「いつ死んでもいい……ですか」

 

「私の役割を果たせたなら、です。無駄死には御免ですよ。あ、でも、女神様への失態は命で償わなければならないのでその場合はすぐ死にます」

 

「やめてください」

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ、あなたがギンガって人?」

 

「ええ、ギンガは私ですが」

 

「おぉ! 早速探し人を見つけるとは流石はわたし! えっと、自己紹介が遅れちゃったね! はじめまして! わたしの名はネプテューヌ ! プラネテューヌの女神候補生だよ! よろしくね!」

 

「知っていますとも。こちらも自己紹介をしておきましょう。私の名はギンガ。プラネテューヌの女神補佐官をしています。これからよろしくお願いします、ネプテューヌ様」

 

「堅苦しいなー! ネプテューヌって呼んでよー私もギンガって呼ぶからさー」

 

「私のことは好きに呼んでくれて構いませんが、私は女神様を呼び捨てにはできません」

 

「なんでよー」

 

「なんでもです。女神様を呼び捨てにするぐらいなら死を選びます」

 

「え? 死? もしかしてこの人やばい人? もしかしてやばい教育されるの私?」

 

「では、早速、戦闘の訓練……はネプテューヌ様がもう少し大きくなってからにしましょう。まずはお勉強からですね」

 

「えーめんどくさーい! 勉強なんかよりゲームしよーよ! ほらほら座って!」

 

「……まぁ顔合わせ初日からお勉強をさせるのもあれですし……そうですね、一緒にゲームしましょうか」

 

「しましょうか、じゃありませんギンガさん! ちゃんとネプテューヌさんにお勉強をさせてください!」

 

「げっ、いーすん」

 

「げっ、じゃないですよネプテューヌさん! ゲームは1日1時間と決めたじゃないですか! さっきまでゲームをしていたので今日はもうダメです! ギンガさんとお勉強をしてください!」

 

「決めてないよー! いーすんが勝手に言ってるだけじゃん!」

 

「いーすん、ここは私に免じてネプテューヌ様を許してあげてください」

 

「何でギンガさんまでいーすんと呼ぶんですか! ネプテューヌさんならいいですけど、ギンガさんにそう呼ばれるのは恥ずかしいからやめてください!」

 

「えぇ、なんでよー! 可愛いのにー」

 

「そうですよ、可愛いのに。ねえ、いーすん」

 

「次そう呼んだら一週間仕事以外ではギンガさんと口聞いてあげません。だいたいギンガさんはいつもそうです。女神様に厳しくすることを私に押し付けてギンガさんは甘やかすばかり、300年前のあの日もそうでした………」

 

「……ねーギンガ、めっちゃ話長くなりそうだし外で遊ぼうよ」

 

「……そうですね、イストワールが説教に夢中になっている隙に逃げましょう」

 

 

 

 

 

 

 

「ギンガー! わたしにも妹ができたよー!」

 

「ネプギア様ですよね、存じ上げております」

 

「もうギンガったら! 知ってたとしてもネプギアが自己紹介する前に名前言っちゃダメでしょ! ネタバレ厳禁だよ!」

 

「申し訳ありません、ネプテューヌ様、ネプギア様」

 

「い、いいんですよ。えーと、プラネテューヌの女神候補生、ネプギアです。よろしくお願いします、ギンガさん!」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

「可愛いでしょー?流石わたしの妹って感じ」

 

「はい、とても可愛らしいです」

 

「そ、そんな……恥ずかしいよお姉ちゃん……」

 

「可愛いなぁネプギアは! ……ねえ、ギンガ」

 

「はい」

 

「わたしに対してやってた厳しいシゴきはネプギアにはしないでね」

 

「厳しいシゴき……ですか?」

 

「自覚なかったの⁉︎ ギンガが優しかったのは最初の最初だけであとは鬼の訓練だったよ! 笑顔でえげつない訓練内容を課してくる悪魔だったよー! とにかくネプギアにはもっと優しくしてね!」

 

「私としては普通にしてたつもりだったのですが……」

 

「ねぷぅ⁉︎ あれが普通ぅ⁉︎」

 

「ギンガさん……その……変えなくてもいいですよ?」

 

「ダメだよ! お姉ちゃんはネプギアにあんな思いさせたくないんだよー!」

 

「昔から同じようにやってきたのですが……これも時代というものなのでしょうか……?」

 

「そうそう! 昔は教育的指導だったけど今は体罰になるのと一緒だよ! 懲戒免職ものだよ!」

 

「でも……私はお姉ちゃんと同じ訓練がしたい……かな」

 

「ネ、ネプギア…?」

 

「だから、お願いしますギンガさん! 私を厳しくシゴいてください!」

 

「ダメーーーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「明日は、待ちに待った友好条約の式典だね」

 

「そうですね、ここ最近は条約の締結に関するゴタゴタでとても忙しいです。おそらく締結後はもっと忙しくなるでしょう。あまりにも忙しいのでイストワールもオーバーヒートを起こしかけていました」

 

「わたしみたいにお仕事サボっちゃえばいいのにー」

 

「忙しいと言いましたが、私にとっては好きでやっていることですので」

 

「……式典には来るよね? わたしがじゃんけんで勝ってスピーチできるようになったんだよ?」

 

「行けたら行きます」

 

「それ来ないやつじゃん!」

 

「それにしてもお姉ちゃん、じゃんけん強いね」

 

「まぁそれはあれだよ、ギンガから教わった反射と思考の融合ってやつ。みんなの手の予備動作から気づかれないぐらい早く有利な手を出したんだ。でも多分二度と同じ手は通用しないと思うよ。ノワールとブランは気づいてなさそうだったけど、ベールはわたしが何したかなんとなく気づいたっぽいし」

 

「ギンガさんから教わった戦闘の技術をそんなことに使っちゃうんだ…」

 

「私の教えを日常生活にまで活かすなんて……流石はネプテューヌ様」

 

「ギンガはわたしのやることなすことなんでも褒めてくれるよね。……なろう主人公ってこんな気分なのかなー」

 

「お姉ちゃん、私も……それできるようになれるかな?」

 

「ネプギアなら余裕だよ余裕! でもまずは変身からだね! よーし、ギンガは忙しそうだから今日はお姉ちゃんが直々にネプギアを鍛えてあげよう! ついてこいネプギアー!」

 

「あ、待ってよお姉ちゃーん!」

 

「二人とも行ってしまいましたね……明日は忙しいですし今日は好きに過ごさせてあげましょう」

 

「あ、イストワール。オーバーヒートは大丈夫なのですか?」

 

「クールダウンするために少しお喋りしにきました。ギンガさん、式典を欠席するというのは本当ですか?」

 

「はい、私がその場にいると感慨深さから自らの感情を制御できず何をしでかすかわからないので。それに式典が終わったらすぐに仕事で四国間を行ったり来たりしなければならないので、式典に行かない方が都合が良いんですよね」

 

「……ネプテューヌさんに怒られますよ」

 

「ネプテューヌ様は怒っていても可愛いのでむしろ怒られたいです」

 

「はぁ……そうですか……友好条約の締結、ついにこの時が来ましたね」

 

「ええ」

 

「友好条約の締結はギンガさんの願いでもありましたよね?」

 

「そうですね、いつも思ってたんですよ。どうして同じこのゲイムギョウ界に生まれ、同じこのゲイムギョウ界を愛する女神様たちが同士が争わなくてはならないのかを」

 

「それは……」

 

「歴代の女神様は皆それを運命だと受け入れて戦い続けてきました。いえ、中には戦いを望まなかった方もいましたが、殺伐とした戦乱の時代ではそんな思いはかき消されていきました。私も女神様が戦うと決めた以上それに付き従い戦ってきました。……ですが、女神様の意に反したとしても、戦いを止めるために私に何かできることがあったんじゃないか…と思うのは自惚れですかね?」

 

「ギンガさん……」

 

「……しかしついに、武器を捨て、手を取り合うことを今の世代の女神様たちは選びました。それにより新たな問題も生まれるでしょうが、彼女たちなら乗り越えていけるでしょう。何より、人々が待ちわびた真の平和を、私も喜ばずにはいられません」

 

「式典には来ないのに……ですか?」

 

「うっ……」

 

 

 

 

 

 

 

「教会がこんなに静かなのは珍しいですね。皆式典に行っているから当たり前なのですが」

 

「おっといけません、そろそろネプテューヌ様の……いえ、パープルハート様のスピーチの時間ですね。テレビをつけて『刮目』しなければ……」

 

『ゲイムギョウ界にあまねく生を受けし皆さん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




話のストックが無くなりました。

おそらく、次回で1部?前半?…なんて言い方をすればいいか分かりませんが、とりあえずそれが完結です。


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10. 私たちのゴール

初投稿です。


 いやぁ良かったです!

 

 私がぶっ倒れたあと、アンチクリスタルの結界に囚われた女神様に、変身した候補生の皆様の思いが届き、シェアエネルギーの共鳴が発生! それにより爆発的に増えたシェアエネルギーが結界のアンチエネルギーを相殺し、囚われの女神様は解放されたようです! その共鳴によりパワーアップした候補生の皆様が見事マジェコンヌを撃破! 多人数の女神様で行われた共鳴を見ることができなかったのが悔やまれますねえ! そして、今回の件で国民からのシェアは、女神候補生が変身可能になったということであまり下がらなかったようです! あの塵屑野郎にボロボロにされてしまったネプテューヌ様もシェアによって傷が直ぐに治りました! いやぁ良かった良かった、ハッピーエンドです!

 

「…………『ハッピーエンドです!』じゃありませんギンガさん! 確かに女神様たちは問題ありませんが、ギンガさんはあの後即病院に搬送され、搬送される間にもネプギアさん、ロムさん、ラムさんが回復魔法をかけ続け、コンパさんの決死の介抱があったから今生きているんですよ!」

 

 ひえ〜! いーすんが怒っています〜!

 

 ……さて冗談はここまでにし、私は今プラネテューヌの病院にいます。最初はリーンボックスの病院に運ばれたようなんですが、人と人口生命体のハイブリットである私はリーンボックスより製造元のプラネテューヌで治療した方がいいという判断で、容態が安定してからプラネテューヌの病院に運ばれたようです。

 

 戦闘のダメージとリミテッドパープルの制限時間オーバーによる負担で、私の身体は今、中も外もボロッボロらしいです。候補生の皆様の大活躍と女神様の共鳴の話を聞いて、気分はめっちゃ良いんですけどね。ハイテンションです、

 

 ……話を戻すと、目覚めてから身体を起こせるようになって最初に目に入ったのが、怒っているイストワールでした。確かに心配をかけて申し訳ないですが、緊急事態だったからしょうがないじゃないですか。それに、たとえ死ぬ寸前だったとしても、皆様が助けてくれるから絶対に死なないと信じていましたし。

 

「ギンガさん、私がなぜ怒っているか、わかりますか?」

「……そういう無駄な質問は好きじゃありませーん。『なぜ怒っているか』と『どうしたら許してくれるか』を簡潔に教えてくださーい」

「なっ、何ですかその言い方は⁉︎ 私はギンガさんを心配して……!」

「いーすんとは付き合いが長いので甘ったれたこと言っちゃいまーす! 許していーすん。てへぺろ」

 

 血を流し過ぎたか、ハイテンションだからか、頭と言動が少しおかしくなってますね私。イストワールがキレるか落ち着くか……7:3といったところでしょうか。

 

「このぉ……! こほん……まぁいいです。ギンガさんには私より先に、お仕事をサボってそのベッドの中に隠れているネプテューヌさんに言うべきことがあると思うので」

「え? ネプテューヌ様?」

「……もしかして気づいてなかったんですか?」

 

 なんかやけに暖かくて、掛け布団が少し膨れ上がっていると思ったんですが、まさか、ネプテューヌ様が潜んでいたとは……。療養中ゆえ、気配を察知するのを怠っていたようです。

 

「バレちゃったらしょうがない! 女神ネプテューヌ参上!」

「……くだらないことしてないで、お二人でちゃんと話すべきことを話し合ってくださいね。私は仕事に戻ります。ネプテューヌさんもお話が終わったらすぐにお仕事してくださいね。では私はこれで……あと、どさくさに紛れていーすんって呼ばないでくださいギンガさん!」

 

 そう言うとイストワールは病室から出ていきました。ギリギリ3の方を引きましたね。

 

 ……ありがとう、心配かけてごめん、イストワール。

 

 ハイテンションでおかしかった頭が落ち着いてきたので、ネプテューヌ様に言わなきゃいけないことを言いましょう。

 

「ネプテューヌ様……」

「なーに、ギンガー?」

「言いたいことが二つあります。一つは謝罪です。私がアンチクリスタルの存在を失念したこと、昔あのジャッジというモンスターを仕留め損なったこと。そのせいでネプテューヌ様……いえネプテューヌ様だけではなく全ての女神様の危機となりました」

「……それはもういいよ、油断したわたしたちも悪いんだし! それに、今回のことでネプギアたちが変身できるようになったんだから結果オーライ、だよ!」

「それに、なぜあの時ネプテューヌ様が私に怒ったのか、ようやくわかったんです」

「それはネプギアとユニちゃんに言われて反省したんでしょ? ネプギアが言ってたよ。……わたしの方こそごめんね……これで仲直り! ね?」

「……はい。仲直り、ですね」

 

 ネプテューヌ様と仲直りができました、良かったです。

 

 ……でも、仲直りも重要ですが、本題は次なのです……!

 

「では、一つ目の『謝罪』は終わりで、次は二つ目です」

「よしきた! どーんと来い! なんてねー」

「……ええと……その……」

「あ、これふざけちゃいけない感じだった? ……言いづらいことなら無理して言わなくてもいいよ」

 

 ……言葉が出てきません。……正直これは言いたくないです……けど、言わなくては……!

 

 ここで勇気を出せず言えなかったら……また私は同じことを繰り返してしまう、そんな気がします。だから言え! ギンガ!

 

「……私は……私はネプテューヌ様と長い間一緒に暮らしてきて、一つだけ後悔していることがあります」

「……!」

「私は……ネプテューヌ様を叱ったことが一度もありませんでしたよね。イストワールのように、もっとちゃんと叱っておくべきでした。自分の勇気のなさが情けないです。正直……ずっと……どうすればいいか分からなかったんです。女神補佐官として、女神様にどう接していいのか、どこまで踏み込んでいいのか。だけど……今回の件で、自分を見つめ直した今だからこそ勇気を出すチャンスかもしれません。だから……叱らせてもらいます」

「ギンガ……うん、叱って」

「……ネプテューヌ様…私『油断しないように』って言いましたよね? 確かにアンチクリスタルは女神様の最大の弱点とも言える物質です。ですが、油断しなければ、今回のように四人とも捕まってしまうようなことにはならなかったはずです。常に油断しないで生きろなんて言いませんし、隙だらけなところがネプテューヌ様の魅力でもありますが、しちゃいけない油断をやらかす女神様なんて……国にとって駄目な女神様、略して駄女神様になっちゃいますよ!」

「……うん」

 

 い、言えましたぁ。緊張しすぎて、最後ちょっと変なこと言っちゃってた気がします。ネプテューヌ様はどんな顔してるのでしょう……? あれ? 笑っている?

 

「な、何で笑ってるんですか! 私今叱ってるんですよ!」

「えー? だってさー、ギンガが始めて叱ってくれたんだよー? 何か嬉しくってさー! なるほどねー、ギンガがわたしに怒られてる時少し嬉しそうにしてる理由がわかっちゃったよ!」

「う……」

 

 ……そうですか、私いつもネプテューヌ様に怒られてる時こんな感じだったんですね……

 

「先程言った通り、今回の件で私は自分を見つめ直すことができました。だから、改めてこれからもよろしくお願いします、ネプテューヌ様!」

「……うん! これからもよろしくねギンガ! ……ギンガぁっ!」

 

 ……おっと! いきなり、私にネプテューヌ様が飛びかかって抱きついてきました。ああ、なんという幸せ……!

 

 ……幸せ、ではあるんですけど……

 

 …………痛いです! 私は怪我の治りが常人より早いとはいえ、身体の中も外もボロッボロだったからまだ怪我が治りきってないんです! そんな時に、こんなふうに抱きしめられたら全身が痛くてたまりません! ですが、こんなに嬉しそうなネプテューヌ様に離せなんて言えませんし…せめて緩めて、緩めてくださ……⁉︎ 何で変身までするんですか⁉︎ 痛い痛い痛い痛い! 変身後の女神様の力でそんな強く抱きしめられたら怪我してなくても痛いですよ! あー逝く! 痛みで逝く! 女神様に殺されるなら本望ですけど、こんな死に方は嫌ですーーーー! 誰か助けてください! 誰かーーーーーーーー! あっ、意識が…………

 

「やっとお見舞いに来れました、ギンガさ……⁉︎ お、お姉ちゃんが変身してギンガさんにトドメ刺してるーーーー⁉︎」

「ギンガ……あなたが死ななくて良かった……仲直りできて良かった……!」

「ちょ、お姉ちゃん! 離してあげないとギンガさんが死んじゃうよ! 泡吹いてるもん!」

「ギンガ……あなたにこうやって甘えるのなんていつぶりかしら……」

「抱きつくのに夢中で聞いてない⁉︎ そして力が強くて離せないよ! こうなったら私も変身しなきゃ……!」

 

 ……入院が伸びました。

 

 

 

 

 

 

 

「暇ですね……」

 

 ネプテューヌ様からの寵愛によって私の入院が伸びることになった騒動から数日後、私は病室で暇を持て余していました。暇すぎます。暇の山の如しです。

 

「携帯ゲーム機でもイストワールに持ってきて貰うんでした……でもなんかそれパシッてるみたいで嫌なんですよねえ」

 

 誰に言ってるわけでもない独り言を呟きます。

 

 ネプテューヌ様とネプギア様は、一日に一回は必ず病室に会いにきてくれるんですが、お仕事もありますしそんなに長くはいられないんですよね。いいえ、ネプテューヌ様が見舞いを大義名分としてお仕事をサボりに来るので、一日一回って決めたんでしたね。そういえば私が入院してる間、迷子? 捨て子? ……をプラネテューヌ教会で保護したようです。ネプテューヌ様曰く「ネタバレ厳禁!」らしいので、名前は退院してその子に直接会ってから聞くことになりました。

 

「退屈過ぎますね……退屈死します」

 

 ん? 部屋の外に気配? 看護師さんですかね……ということはコンパさんでしょう。……おっ、あいちゃんもいます。

 

『この部屋だったわよね?』

『そうですよ』

『師匠起きてるかしら?』

『わからないです…でも寝ていたら寝ていたでギンガさんの寝顔を見てみたくはないですか?あいちゃん』

『……それもそうね』

 

 ……起きてますけどね。寝てた方が良かったのでしょうか。コンパさんにはここ最近ずっとお世話になってるんですが、そういえばあいちゃんが見舞いに来てくれたのは今日が最初ですね。

 

「師匠、こんにちは!」

「こんにちはです、ギンガさん」

「こんにちは、あいちゃん、コンパさん」

「すみません師匠……来るのが遅くなってしまって」

「はい、あいちゃんが来ないのが寂しくて心細かったです」

「えっ……」

「ギンガさん、あいちゃんをからかっちゃダメですよ! あいちゃんは可愛いからからかいたくなるのはわかるですけど」

「ちょ、コンパ」

「すみませんコンパさん。あいちゃんもからかってごめんなさい。……あいちゃん、どうですか……その後」

 

 さて、冗談はこのくらいにして、あいちゃんに最も聞きたかったことを聞きます。奴らがどうなったかを。

 

「……マジェコンヌという女も、あのワレチューというネズミも見つかっていません」

「やはりですか。死体が残らないほど徹底的に殺る、なんてことを女神様はしないと思いますし……逃げられましたね…」

「はい、おそらく」

「とはいえ、もう一度あの量のモンスターとアンチクリスタルを仕入れるのは容易ではないでしょうし、同じことをしてももう女神様には通用しないのは奴らもわかっていると思います。ですが、警戒を怠らず、対策を練っておきましょう」

「はい!」

「私にもできることがあったら何でも言ってくださいです!」

「……コンパが悪い女になれたら、あのネズミは懐柔できそうだけどね……」

「「……?」」

 

 最後あいちゃんがよくわからないこと言っていましたけど、その話が終わってから、少し他愛もない話をして、あいちゃんは諜報員の仕事に向かい、コンパさんは私に看護師としての仕事をした後、別の現場に向かいました。

 

 そしてそれから更に数日後、先程言った通り、私は女神様ほどではありませんが回復が早いので、ほぼ怪我も治り、退院することになりました。

退院にはあいちゃんとコンパさんが付き添ってくれました。ネプテューヌ様とネプギア様は、ラステイションで起こった事件の捜査の協力のため忙しかったそうですが、逆に良かったです。女神様を付き添わせるなんて烏滸がまし……おっと、これからはそういうことをあまり言わないようにするんでしたね。

 

 ……夕焼けが綺麗ですね。綺麗なんですけど、あの夕焼けに……何かが起こる前触れのようなものを感じます。

 

 ……まぁ、考え過ぎでしょう。さて、今回の件において、激しい戦いを生き抜いた私達には、日常に戻るという一番大切な仕事が残っています!

 

 私たちの日常はこれからです!

 

『紫の星を紡ぐ銀糸 1部 眩耀のクリスタル編 -SISTERS GENERATION HEROINES- 』 -完-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしは『プルルート』って言うの〜」

「プラネテューヌの〜女神だよ〜」

 

\ ええーーーーーー⁉︎ /

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あ、終わりませんよ。



おじさんがソウゴに叱るシーン、ジオウで1番好き。


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2部 爛然のビヴロスト編 -THE ABSOLUTE AMBITION-
11. 離れ離れの"金と銀(ベストマッチ)"


2部スタートです。と言ってもただの続きですが。
そして初投稿です。


 

『ギンガといーすんが並んでるとさ、銀髪と金髪でなんか映えるよね』

 

『そうですか? ……そうですね、今までも……そしてこれからもイストワールの隣に立ち続けていたいものです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラネテューヌの新しい女神さん、ぷるちゃんに乾杯するです!」

「ちょっと待ったー! コンパー、それじゃあわたしがぷるるんに女神の座を奪われたみたいじゃない」

「え、でも、ぷるちゃんはプラネテューヌの女神さんです」

「プラネテューヌはプラネテューヌでも、別のプラネテューヌだから、そこんとこよろしく!」

「つまりプルルートさんは別の次元のプラネテューヌから来たわけなんです」

「まぁ、別の次元とかさらっと言われても反応に困りますけどね……」

「プルルート様は変身もできるんですか?」

「できるよ〜でも〜あんまり変身しないようにってみんなから言われてるんだ〜」

 

 ただでさえ賑やかな教会が更に賑やかになりましたね。

 

 ええと、どこから説明したらいいものか。退院した私がプラネテューヌ教会へ戻ると、そこには保護された子供のピーシェさんと、新たなプラネテューヌの女神様のプルルート様がいました。いえ、新たな…ではなく別次元のプラネテューヌの女神様ですね。

 

 小さい子と接するなんて機会ほとんどないので(ロム様とラム様は女神様なのでノーカンです)、最初は怖がられないか不安だったのですが、ピーシェさんはすぐに懐いてくれました。

 

 プルルート様は……なんといいますか、おっとりしてて、掴み所がないお方ですね、ですが、一緒にいると癒されます。あと、私ほどの女神補佐官になると、変身前の女神様を見ただけで変身したらどのようなお姿になるのかわかるんですよ。どうやら、プルルート様は変身したらネプテューヌ様以上に変わるようですね。平伏しがいがありそうです……ふへへへ。

 

 ピーシェ様は私が入院中からここで暮らしていたようですが、プルルート様はさっき空から降って来た……? ようなので、夕飯もかねて歓迎会みたいなものをしています。

 

「うーん! 美味しい! いやぁギンガが入院中は、ギンガの作るご飯が食べられなくてさー! またこうして食べられるようになってよかったよー!」

「その言葉が心に沁みます……! 入院中は……女神様に尽くすことができなくて……どれだけ辛かったか……! 本当はクエストなども手伝いたいんですけど……」

「今のギンガさんは身体のモードを更に切り替え、怪我の回復に特化させているんです。その代わり身体能力は普通の成人男性ぐらいまで下がっているんですよ。クエストにはまだ行けません」

「私としてはもう戻して欲しいのですが……このモード変更はイストワールじゃないと戻せないようになってますし」

「まだダメです! ギンガさんは放っておくとすぐに無茶するので!」

「……はーい。ですのでこういったことで全身全霊をかけて尽くさせていただきます」

「愛が重いなー……でもまぁいっか、ご飯美味しいし!」

「……お姉ちゃん私が作ったご飯食べた時、一瞬微妙な表情してたもんね……」

「ごめんってばネプギアー!」

「ギンガさんは私の料理の師匠なんです」

「そうだったのコンパ⁉︎」

「はいです」

「私も師匠に料理教えてもらおうかしら……」

「ねぷてぬのおにくもーらい!」

「あっ⁉︎ ピー子⁉︎」

「ねぷてぬにはこっちあげるー!」

「えっ⁉︎ ナス⁉︎ いやぁぁあああ! 近づけないでえええええ! わたしナス嫌いなのーー!」

 

 っ⁉︎ まずい! ネプテューヌ様はナスを向けるとまるでムンクの叫びのような表情になってしまうのです! おやめくださいピーシェさん! せっかく良いナスが手に入ったからと調理したけれど、ネプテューヌ様のお皿には入れないようにしていたのに! ちなみに、ネプテューヌ様は私にもナスを食べるなというので、私もナスが食べられません。

 

「ネプテューヌさん、女神が好き嫌いなんて国民に示しが……」

「嫌だよー! ナスの臭いだけで力が出なくなっちゃうんだからー!」

「そうですよイストワール。この世にはたくさん食べ物があるのですから、少しぐらい食べられない物があったっていいじゃないですか」

「またそうやってギンガさんはネプテューヌさんを甘やかして……! 私がそれでどれだけ苦労しているかわかってるんですか?」

「……? 苦労ってなんですか?」

 

 身体のモード切り替えのせいで、身体能力だけでなく精神レベルも常人並に落ちたからか、いつもは受け流せるはずのイストワールの説教を今日は受け流すことができませんでした。

 

「苦労は苦労です! ギンガさんが甘やかしたツケをいつも誰が払ってると思ってるんですか? 400年前のあの日もそうでした……」

「そんな昔のことを今更言われても困るんですが」

「……はい?」

「それにイストワールっていつも自分だけが嫌な思いしてるかのような言い方しますよね」

 

(ちょ⁉︎ なんか険悪だよ! どうしようネプギア……)

(とりあえず、やめてもらわなきゃ)

 

「何が言いたいんです?」

「……まぁいいですよ、イストワールはそのままで、私が全部悪いことにしておけばいいじゃないですか」

「何ですかその言い方は!」

「何でしょうねーいーすん」

「なっ、いーすんって呼ばないでください!」

「これもそうですよ、こんなに可愛い愛称があるのに私だけには呼ばさせてくれない。意外と寂しいんですよ?」

「それは……!」

「ま、どーせ私が悪いらしいので構いませんけどー! どーーーーーーーーせ私が悪いらしいのでー!」

「ううぅぅ……! ……もう! ギンガさんなんて知りません!」

「こっちも知らないーすん! ばいばいーすーん!」

「むきーーっ! もう仕事以外ではギンガさんと口聞いてあげませんから!」

 

(嘘……師匠とイストワール様ってこんな子供っぽい喧嘩するんだ…)

(驚いたです……)

(いーすんさんってギンガさん相手だと割とすぐムキになるよね……)

(付き合い長いらしいからねーちょっと妬けちゃうなー)

(あたしの…歓迎会が……ぷる〜ん……)

(ぎんがといすとわるたたかうの⁉︎ おもしろそー!)

 

「……あばっ! あば! あばばばば!」

「……⁉︎ イストワール様大丈夫ですか⁉︎」

「まさか、ナスの呪い⁉︎」

「……おそらく別次元のイストワールからの着信でしょう、イストワールのマニュアルに書いてあるんですよ。イストワールのことなんて知りませんけど。プルルート様がこの次元に来たことと関係しているかと。イストワールのことなんて知りませんけど」

「……師匠(イストワール様のことが心配なんですね……)」

 

 

 

 

 

 

 

 イストワールのことなんて知りませんけど、私には立場というものがあるので別次元からのイストワールとの着信……? 会談……? とりあえずそれに同席することになりました。イストワールのことなんて知りませんけど。

 

「ふぅ、失礼しました。別次元から着信を受けるなんて初めてだったもので、マニュアルを読んで対応するのに時間がかかってしまったもので」

「こちらこそ突然連絡してすみませんm(_ _)mうちのプルルートさんがお世話になっています」

「なんだかちっちゃいですね」

「あ、小さいからって馬鹿にしないでくださいね(>_<)プルルートさんをそちらの次元に送ったのは私なんですから」

「しかし驚きました。別次元なんてものが存在するなんて……」

 

 知らなかったんですか? こっちのイストワールのマニュアルにも次元の超え方は書いてありますよ。まぁイストワールのことなんて知りませんけど。ちなみに私は別次元に1度行ったことがあります……が、その話はまた今度にしましょう。それにしても……

 

 ……か、可愛い……! 小さいイストワール……なんて可愛さなんですか! まぁこちらのイストワールも可愛いですけ……いや、こちらのイストワールのことなんて知りませんけど。

 

「ええと、そちらの方は?」

「この次元のプラネテューヌの女神補佐官をしている、ギンガと申します! よろしくお願いしますね! 念のため私も話を伺った方がいいと思いまして!」

「そうですね、よろしくお願いします(^-^)/」

「……やけにあちらの私には愛想が良いですね」

「何か言いましたぁ?」

「……別に」

「あれぇ? 口聞いてくれないじゃありませんでしたっけぇ?」

「……今は一応仕事中ですので」

「そうでしたねー」

「あの……やけに険悪な様子ですが(-_-;)」

「「気にしないでください」」

「はい……(息ピッタリですね……)えと、話に入りましょう。実はですね、こちらの次元からそちらに大きなエネルギー転移が検知されたんです。何か、もしくは誰かがそちらに移動したみたいで。その存在のエネルギーは余りにも大きいので放置しておくとこちらの世界の形が保てなくなる可能性があるんです。だから、プルルートさんにはその大きな存在を探してこちらの世界に連れ戻って貰わなければならないんです」

「なるほど。それで、その大きな存在というのはどうすれば見つけられるんですか?」

「それが……みっかかけて調べてもわからなかったんです…・゜・(ノД`)・゜・。」

「……大体わかりました」

「「え?」」

「……いえ、なんでもありません。このことは、他の皆様には私から伝えておきます。こちらで変わったことがあればすぐに連絡しますね」

「わかりました、では通信切りますね(・ω・)ノ」

 

 おそらくですが、それはピーシェさんだと思われます。彼女の持つエネルギーは女神様に匹敵するほどのものなのは会った瞬間にわかりました。しかし、今のところ推測に過ぎませんし、もしそうだったとして、せっかくネプテューヌ様と仲良くしているところを今すぐ帰れなんて言えませんしねぇ……どうしたものか。

 

 まぁ…まだ何もこの次元に変化は起こってませんし……少しぐらい先延ばしにしていいでしょう……多分。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「ネプギア様……」

「どうしたんですかギンガさん⁉︎ そんなにやつれて……⁉︎」

「私はイストワールに嫌われてしまいました……もう生きていけません。私の骨は海の見える丘の上に埋葬してください」

「ギ、ギンガさん⁉︎」

 

 昨日はムキになって色々言ってしまいましたけど、寝て起きて冷静にもう一度考えてみたんですが、どう考えても私が悪いですよねこれ。イストワールには悪いことをしました。謝ろうにも仕事以外では口を聞いてくれないらしいですし……久しぶりに直接脳内に語りかけるやつ使いましょうかね……?

 

「どうすれば……イストワールは許してくれるでしょうか?」

「いーすんさんもギンガさんと喧嘩して後悔してると思いますよ。ただ謝りづらいなら……うーん、あ! プレゼントとか渡してみるのはどうですか?」

「……物で釣るような男だと思われないでしょうか?」

「ちゃんと謝った上で心のこもった贈り物をすれば大丈夫だと思いますよ」

「……そうですか、ありがとうございますネプギア様。早速何か買いに行ってきます」

「私も着いて行きましょうか?」

「気持ちは嬉しいのですが……これは私の問題なので、イストワールへのプレゼントは私が選びます」

「わかりました。頑張ってくださいねギンガさん!」

「……はい!」

 

 早速出かけましょう! 善は急げです!

 

 

 

 

 

 

 

「やはり……ネプギア様に着いてきてもらうべきでした』

 

 街に出てきたはいいのですが、参りました。何を贈ればいいのかさっぱりわかりません。イストワールって何が好きなんでしょう? 何千年も一緒にいるのに……イストワールの好きなもの1つわからないなんて……私も酷いやつですね。プリンとか……? いや、それはネプテューヌ様の好物でした。

 

 そういえば昨日、ネプテューヌ様とピーシェさんがプリンの取り合いをしていたらしいです。プリンは人数分あったのですが、ネプテューヌ様は自分のプリンに「ねぷのプリン」と書くんですよね、ピーシェさんがそれを気に入って欲しがって取り合いになった、とのことです。本人たちからすれば大きな問題なのかもしれませんが、見ている側からすると仲が良くて微笑ましいです。

 

 ……ではなく今はイストワールの話でした。どうしましょうか……一度は断りましたが、教会に戻りネプギア様の手をお借りしましょう。近道である路地裏を通って……ん路地裏に不審者がいますね、職質でもしましょうか。

 

 ……いや、あれは……っ!

 

「久しいな。ええと、ギンガだったか?」

「……てめえマジェコンヌ……! やはり生きてやがったか、わざわざノコノコとぶっ殺されに来たとはな……!」

「強がるな、お前が今常人並みの力しかないのは知っているぞ?」

「なぜそのことを……っ⁉︎」

「私と来てもらおう、お前には女神を誘き寄せるための餌になってもらう」

「女神様のご負担になるぐらいならこの場で死……………はぁ、そういうことしないようにすんだったな。降参だ、言うことを聞く、着いて行くからあまり痛くしないでくれよ?」

「やけに聞き分けがいいではないか。まぁいい、着いてこい。おいネズミ、念のため縛っておけ!」

「はいはい……はぁ、どうせならコンパちゃんを誘拐したかったっチュ…」

 

 あーくそ、どうせならイストワールへのプレゼント買ってから誘拐して欲しかったよ。さらに、女神様のご負担になるなんて一生の恥だ。だからイストワールにモード切り替えで身体戻してくれってって言ったのにさ。

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!」

「どしたの? ネプギア ?」

「これ! この画像が知らないアドレスから送られてきて! 地図も添付されてたの!」

「……ギンガ⁉︎ 助けに行かなきゃ!」

「でも……誰がこんな……」

 

「ギンガさんがどうかしたのですか⁉︎」

 

「「いーすん(さん)⁉︎」」

「教えてくださいネプギアさん! ギンガさんの身に何が⁉︎」

「この……画像なんですけど」

「……っ! あぁ……私のせいです……私が変な意地を張らずにギンガさんの身体を戻してあげていれば……! ……ネプテューヌさん、ネプギアさん、プルルートさん! 私もギンガさんを助けに行きます!」

「ええ⁉︎ 危ないよいーすん!」

「私が行ってギンガさんの身体を戦えるように戻した方がギンガさんを助けられる確率が上がります! だから、連れて行ってください!」

「でも……」

 

「連れて行ってあげようよ〜」

 

「ぶるるん⁉︎」「プルルートさん⁉︎」

「ギンガさんを助けたいって気持ちは〜一緒でしょ〜だから〜」

「うん、そうだね、わかった。いーすんも一緒に行こう!」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 棒に括り付けられてるなう。自分がこうなるなんて思ったことなかったわ、ベタだなぁこれ。ベタベタすぎて逆に珍しい。でも今の俺の力じゃ逃げられねえ。くそっ、マジェコンヌめ。

 

「復讐の時が来た」

「そういえばお前の負けたとこ俺見てないんだよな。どんな負けっぷりだった? ていうかどうせ今回も負けるぞお前」

「減らず口を……っふん、前回のようには行かんぞ! 私には秘策がある! ……それは、このナスだ!」

「……!」

 

 一面に広がるナス農園……! なるほど、考えたな。ネプテューヌ様はナスが大嫌いなんだ。変身後のパープルハート様が口にナスを突っ込まれると一瞬で変身解除して戦闘不能になるほどに。これだけの規模の大きいナス農園……ナスの臭いだけでネプテューヌ様は大幅に弱体化する。更に配置しているモンスターはナス型のモンスターばかり。……くだらないように見えて割と有効な作戦じゃねえか!

 

「ふっふっふ、お前にもナスを味わわせてやる!」

 

 そう言うとマジェコンヌは俺の口の中にナスを突っ込んできた。

 

「むぐっ」

 

 ぐ……こ……これは……!

 

 

 

 

 

 

「……美味い!」

「何⁉︎」

「美味い! 美味い! 美味い!」

「な、何だと⁉︎」

「美味ーい!」

(馬鹿な……っ! 昨日プラネテューヌの教会の外から聞き耳を立てていたが、この男もナスを食べていなかったはず! ナスが嫌いだから食べていなかったわけではなかったのか⁉︎)

 

 ………実は俺、ネプテューヌ様に食うなって言われてるから食わないだけで、ナス大好きなんだ。生でもいけるほど。味だけじゃなくて、ネプテューヌ様と同じ紫色だから好きなんだけど、これネプテューヌ様に言うとマジでキレられるんだよな。

 

 それにしても美味いなこのナス。昨日調理したナスも中々上質なナスだったが、これはそれ以上だ……!

 

(………? 何だこの感情は……? 他人が私のナスを美味しく食べている姿に……心が動いている……?)

 

 ナスなんて普段食べられないから、この際たっぷりと堪能し…………ぁ

 

「……ギンガ?」

 

 ネプ……パープルハート様⁉︎ それにパープルシスター様とプルルート様とイストワール! もう来てくださったのですか! やったぜ!

 

 ……いや違う! 不味い……! いやナスは美味いけど……ってそうではなくて、パープルハート様に、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!

 

「ギンガ……ど、どうしてナスを食べているの……?」

「お、お姉ちゃん⁉︎」

「ち、違うんですパープルハート様!」

「私の紫より……ナスの紫を選んだの……⁉︎」

「違うんです聞いてください!」

「嫌……そんなの……嫌よ! 嫌ぁぁあああーーーー!」

 

 ……っ! これはやばいです!

 

「パープルシスター様! 今すぐプルルート様とイストワールを連れてその場を離れてください!」

「……え? どうしてですかギンガさ「早く‼︎‼︎」……は、はい!」

 

 パープルシスター様が急いでその場を離れた直後、パープルハート様を禍々しいエネルギーが呑み込み、そしてそれが晴れると、中からいつもとは違うパープルハート様が現れました。

 

 少し乱れた髪型、逆結びの三つ編み、露出度が高く禍々しい装備のプロセッサユニット。女神様が負の感情に呑まれ変身することで生まれる女神様の『カオス化』。こんなところで見ることになろうとは…

 

 

「ふ、ふふふ、あははは! ギンガぁ……! 私よりナスを選ぶなんて許さない……! だから! あなたを殺して……ナスからあなたを奪い返して! 永遠に私のものにしてあげるわ!」

 

 

 

 

 




『ゲイムギョウ界こそこそ裏話』
ギンガは友好条約締結前から「条約を締結すると教会の優秀な人材を多国間で共有できるメリット」のデモンストレーションとして、プラネテューヌ以外の3国で仕事をすることが多かったです。その当時は名目上敵国ではあったので、他国の女神様に平伏しはしませんでした(ギンガはそういう分別はつく男です)。
だから、他国の女神、特に女神候補生には、優秀な女神補佐官としてのギンガしか知られておらず、残念な狂信者としてのギンガは知られていませんでした。



次回、私にもどうなるかわかりません。


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12. 我らは1つ

ライブ感で駆け抜けたのでいつも以上に文章がおかしいかもしれない初投稿です。




 前回のあらすじを一言で説明すると、パープルハート様がナスのせいで闇落ちしました。

 

「殺してあげる……殺してあげるわギンガ!」

 

 やばいです。私めっちゃ狙われてます。

 

「ギンガさん……あれは?」

「あれは女神様が負の感情により変身する『カオス化』です。私も二回しか見たことがありません」

「二回……今と、あと一回ってことですか?」

「はい、前のは五代前のプラネテューヌの女神様が、好物のショートケーキの上の苺を食べられた時になりました」

 

(意外としょーもない理由なんだ……)

 

 カオス化すると感情が悪意に支配され、性格も凶暴になってしまいます。おそらく今のパープルハート様は本気で私を殺す気でしょう。とりあえず、今の私だと確実に殺されるので……

 

「イストワール! 私のモード切り替えを!」

「……させると思う?」

「……っ!」

 

 そう言ってパープルハート様が一直線に私に迫って飛んできます。先程言った通り、ガチで殺す気で来てます……こんなパープルハート様……ちょっと良いですね! ……じゃないです! 今の私はあの剣で切り裂かれたら死にます! モード切り替えが間に合わな……

 

「てやあ!」

 

 咄嗟にパープルシスター様が庇ってくださりました。申し訳ありません!

 

「くっ! ネプギア、邪魔よ! ギンガを殺せないでしょう!」

「させないよ! 今のお姉ちゃんはそうしたいかもしれないけど、元に戻ったら絶対にお姉ちゃんは悲しむから!」

「うるさいわ! どきなさい!」

「いーすんさん! ギンガさん! 今のうちに!」

「ありがとうございますパープルシスター様!」

 

 今のうちにイストワールにモード切り替えをしてもらいます。三日かかるとか言いませんよね?

 

「少し待ってください……よし、切り替えました。ですがギンガさんの身体はまだ完全に治っているわけではないんです。無理だけはしないように!」

「ありがとうございます」

 

 モード切り替えが終わり、自身を縛っていた縄を引きちぎります。よし、これならある程度は抵抗できます。パープルハート様に殺されるのは本望ですが、今のパープルハート様には殺されたくないですからね。

 

「……面倒ね。まぁいいわ。少しぐらい抵抗してくれた方が面白いし」

「お姉ちゃん……!」

「変身できるようになったばかりのあなたではまだ私に勝てないわよネプギア。そこで少し休んでなさい」

「まだ…まだ負けてないよ……!」

「……前までは私に勝とうなんて思ってすらいなかったあなたにそう言われるのは嬉しいわ。けどやめておきなさい。これ以上は手加減できないから」

 

 パープルシスター様が既にパープルハート様に圧倒されていました。……早い! パープルシスター様が弱いというわけではなく、変身した彼女たちの実力差から考えてもいくら何でも早すぎる……!

 

「なんて力……!」

「……おそらく、今のネプテューヌさんはカオス化によって自身に影響がある物質からの効果が反転しているのだと思います」

「つまり?」

「通常のネプテューヌさんはこの大量のナスで弱体化します。しかし、今のネプテューヌさんは……」

「パワーアップしている、と?」

「はい……おそらく」

 

 なるほど、厄介ですねカオス化。私の力が戻ったぐらいでは焼け石に水かもしれません…

 

(馬鹿なっ! ナスモンスターどもの制御ができん……⁉︎ まさか、あの暴走した女神に奪われていると言うのか……⁉︎ ナスモンスターと合体し更なる力を手に入れナスコンヌとなり、女神どもとこの男を抹殺する計画が全て台無しだ! どうする……?)

 

「おい、マジェコンヌ! 本当は今度こそ殺してやりたいですが、お前は逃げてください!」

「何⁉︎ というか何だお前⁉︎ 女神が来た瞬間言葉遣いが丁寧になりおって!」

「それはそういうものなんですよ! それより、もうお前の手に負える状況じゃないんです! 死にたくなかったらここは逃げてください! お前みたいなやつでも殺したら、暴走が終わったらパープルハート様は後悔しま……避けろ!」

 

 その瞬間、パープルハート様の一閃によりマジェコンヌの後ろのナス畑が切り裂かれました。私の言葉に反応してその場から避けていなかったら、マジェコンヌは無事ではなかったでしょう。私がマジェコンヌを助けたのが気に入らなかったのか、パープルハート様はマジェコンヌではなく私をまた狙ってきました。

 

「何でそのナス女を庇うのよ! やっぱり私よりナスの方が好きなのね!?」

「そういうわけではありません! しかし物を恵んでもらった礼というものがありますので!」

 

 パープルハート様の連撃を捌きながら……不味い、普段のパープルハート様よりパワーもスピードも段違いです。今の私では捌ききれません……!

 

「そうだ! なぜ私を庇う⁉︎ 私は敵だぞ!」

 

 早く逃げろって言っているのに……! ああもう!

 

「そうですよ! 敵です! ですが、お前のナスは美味しかった!」

「!」

「あのナスからは、以前のお前からは感じられなかった、お前なりの命への尽くし方というものを感じたんです! 命と真剣に向き合っている者にしか出せない味でした!」

「何……だと?」

「だから、今はお前を助けます! お前の世界が変わろうとしている……そんな気がしますから! でしたら……それを私は見届けます! 変わった上でまだ女神様と戦おうとするのなら、その時は容赦なく殺しますが!」

「……っ! 貸しだと思うなよ!」

「わかっています! 早くここから消えてください! 邪魔です!」

 

 パープルハート様の攻撃を捌きながら……いえ、捌ききれてはいませんが、とりあえずマジェコンヌに言いたいことを言って撤退させることができました。

 

「やっぱりナス女の方が良いんじゃない!」

「はぁ⁉︎ あんなのよりパープルハート様の方が魅力的で良いに決まってるじゃないですか!」

「ええっ⁉︎ ……その……困るわよ……いきなり……そ、そんなこと……嬉しいけど……」

「隙ありっ!」

「なっ!」

 

 何故か隙ができたので、防御から態勢を立て直し……ここは逃げます!ひたすら逃げです! お恥ずかしながら私では今のパープルハート様とまともに戦っても勝てません。先の戦いでぶっ壊れたリミテッドパープルを装備していたとしても厳しいでしょう。そもそも私は普段のパープルハート様にも勝てませんし。

 

 逃げるだけなら時間を稼げますし、時間を稼げば再びパープルシスター様が戦闘可能になるかもしれません。そうすれば活路を見出せます。ですのでここはひたすら逃げるのです!

 

「あら逃げるの? 追いかけっこ? ふふふ、私が幼い頃よくしたわね、懐かしいわ。でも今はそんな気分じゃないの……乙女の純情を弄んで……許さないわ! 行きなさい……!」

 

 パープルハート様の合図で配置されていたナスモンスターが私を追ってきます。なるほど、自身が力を得ているナスエネルギー(私命名)を逆流させ、操っているわけですか。

 

「本当はナスモンスターなんて操りたくないけど、あなたを捕まえるためだもの!」

 

 くぅ……数が多すぎます……! 『魔界粧・黒霊陣』を使いますか……? いえ、体力消費が多いのでナスモンスターは殲滅できても結局パープルハート様に捕まりますね。

 

「……っ⁉︎ しまっ!」

 

 そんなことを考えていたら、ナスに擬態したナスモンスターに捕まってしまいました! くそっ! ナス畑のナスそっくりで接近に気づけませんでした!

 

「うふふふふ、捕まーえた」

 

 ナスモンスターたちに抑え付けられ動けません……パープルシスター様は……まだ動けないご様子……

 

「安心してギンガ……あなたが死んでも、私の心の中で永遠に愛してあげるわ……!」

 

 パープルハート様の剣が振り下ろされます。

 

 ここまで……ですか……っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぷちゃん〜ちょっとおいたが過ぎるんじゃないかな〜?」

 

 全てを諦めて閉じた目を再び開くと……プルルート様が、剣をぬいぐるみで受け止めていました。どうなってるんですかそのぬいぐるみ?

 

「それに〜この回って〜私の初変身回だよね〜?」

「邪魔しないでぶるるん! 後、メタな台詞は私の専売特許よ!」

「せっかくのあたしの初変身回を〜台無しにしないでくれるかなぁあああ〜〜〜!」

 

 そう言ってプルルート様が光り出します。そのプレッシャーでナスモンスターたちが動けなくなっています。今ならこいつらを振りほどき、変身したプルルート様に平伏すことができます!

 

「アイリスハート。変身完了よ。さぁねぷちゃん! たぁっぷりお仕置きしてあげるわぁ……!」

 

 アイリスハート様……! やはり、私が思った通りネプテューヌ様がパープルハート様に変身する以上の変わりようです……! 平伏しがいがありますね! どけっ! ナスモンスターども! 俺……私が平伏すのを邪魔するな!

 

「ギンガさん……? 何してるのかしらぁ?」

「女神様が変身した場合、女神様が良いと言うまで平伏すのはこの次元の民の常識ですので」

 

(へぇ〜、尽くされたり、平伏されたりするのって悪くないわねぇ。なんかそっちにも目覚めちゃいそう。ねぷちゃんがギンガさんに夢中になるのも少しわかるわ)

 

「まぁとりあえず、それは良いから早く逃げなさい。ねぷちゃんとは、あたしが遊んでてあげるから」

「かしこまりました。今のパープルハート様はいつも以上に強いので、お気をつけて!」

「そうね、それが終わったら、たっぷりと尽くさせてあげるわ」

 

 アイリスハート様やべえ、ゾクゾクします。やばいものに目覚めてしまいそうです。

 

「ぷるるん……っ! 私からギンガを奪うつもりっ⁉︎」

「今はあたしと遊んでるのよねぇ? 他の人の話しないでくれるかしらぁ! あたしだけに集中しなさいよぉ!」

「ぐぅ……っ! 強さも性格も厄介ね……!」

 

 ここはアイリスハート様に任せ…いえ、任せきれないでしょう。普段ならお二人の実力はほぼ互角かもしれませんが、今はナスエネルギーの分、パープルハート様が少し強いと思われます。このままではパープルハート様を止めることができません。

 

 ……丁度イストワールがいますし、『アレ』をやるしかないですね。

 

「イストワール! パープルシスター様の様子は?」

「もう少し休んだらまた戦えます!」

「ダメですネプギアさん! まだ戦えるまで回復できていません!」

「ですよね……イストワール」

「はい?」

「『アレ』をやりましょう。今の私では何分持ちますか?」

「『アレ』ですか? ええと、30分……いえ、今のギンガさんは万全ではないので20分が限度かと」

「じゃあ10分にしましょう。10分で活路を開けば、あとはアイリスハート様がやってくれるはずです」

「いーすんさん、ギンガさん、『アレ』ってなんですか?」

「それは今からお見せします、イストワール!」

「はい、ギンガさん!」

 

「「合体!」」

 

 そう言ってイストワールは私の頭にしがみつきます。それにより、人工生命体であるイストワールと半人工生命体である私の意識をリンクさせる、これが私たちの合体です。

 

「「ギンガイストワール。合体完了」」

 

 

 

 

 

 

 

「今は私の方が強いようね、ぷるるん!」

「くっ……ねぷちゃんのくせにナスで強くなるなんてねぇ……」

「それは言わないでくれるかしら! ぷるるんはネプギアより厄介だし…少し痛い思いしてもら……⁉︎ 何よあれ⁉︎」

 

(ギンガの頭にいーすんがしがみついてる……? ちょっとシュールで可愛いけど、すごいプレッシャー……)

 

「へぇ〜ギンガさんといーすん、なんだか面白そうなことしてるわねぇ」

 

 

 

 (イストワール)は身体のサイズの小ささゆえに、本来のスペックを発揮することができません。しかし、(ギンガさん)(イストワール)をリンクさせることにより、(イストワール)の身体に加え、(ギンガさん)の身体で(イストワール)の本来のスペックを発揮できようになります。これがプラネテューヌ教会の最終秘密兵器、ギンガイストワールです。(ギンガさん)への身体の負担と(イストワール)への脳への負担が大きいので最大30分しか合体していることができません。ですが、10分もあれば、パープルハート様(ネプテューヌさん)の動きを止めることぐらいはできるでしょう。

 

「何をしようが無駄よ! 『クロスコンビネーション』!」

「「見切っています」」

 

(ギンガといーすんが同時に喋った……⁉︎)

 

 (イストワール)の持つ膨大な情報から導き出された未来予測を即(ギンガさん)の身体に反映させ、それにより、今の私たちは敵が行う全ての攻撃が予測できます。

 

「このっ……! 当たらない……⁉︎」

 

 無駄です。今のパープルハート様(ネプテューヌさん)の攻撃といえども、どのような攻撃をいつしてくるか全て分かっていれば最低限の動きで全て回避できます。

 

「当たらないなら……こちらから攻めなければいいだけよ! 多分制限時間付きでしょう⁉︎ それは!」

 

 流石パープルハート様(ネプテューヌさん)、即座にそれを見抜いてくるとは。相手が行うであろう反撃を全て予測しましたが、ダメージ覚悟でこちらを捕まえる方法を取られるとどうしようもないですね。

 

 でしたら、敵の意表を突く行動をすれば……!

 

(来るっ⁉︎ いや、いいわ! 攻撃をあえて食らって、そこで捕まえるわ!)

 

 パープルハート様(ネプテューヌさん) の攻撃を回避しながら懐に潜り……

 

 ……思い切り抱きしめました。

 

「……え? その……ギンガ? き、気持ちは嬉しいけど……まだこんなに明るいし……それにいーすんもいるのよ? まさか、いーすんごと楽しもうって言うの……⁉︎ ……殺す前にちょっとぐらい楽しんでもいいわよね……?」

 

 何か変なことを言っていますけど、意表を突けたようですね、攻撃もして来ません。抱きしめ返してきたのは謎ですが、まぁいいでしょう。これで確実に巻き込むことができます。

 

「「『シェアリングフィールド』」」

「……はい?」

 

 抱きしめるぐらい密着する必要はなかったのですが、今のパープルハート様(ネプテューヌさん)の機動力ならフィールド展開前に範囲外に逃げられる可能性があったので、零距離で発動させていただきました。

 

「……許さない! 一度ならず二度までも、乙女の純情を弄んで……! 絶対に殺すわ! いーすんも共犯でしょう⁉︎ いーすんごと殺してあげる!」

 

 パープルハート様(ネプテューヌさん)が激怒していますね、よほど私たちにしてやられたのが悔しかったのでしょうか?しかし、このフィールド内に入れた以上、私たちの勝ちは決まりです。(ギンガさん)(イストワール)は、最高のコンビ(ベストマッチ)なんです!

 

「何よその勝ち誇った顔! 知っているわよ! あなたのこのフィールドは私たち女神には効かないって!」

「「それは、 (ギンガさん)のフィールドでしょう?」」

「何ですって……? ギンガの……っていうことはまさか……⁉︎」

「「はい、御察しの通り、本来(イストワール)にはシェアリングフィールドは使えませんが、私たちがリンクしている間のみ、私たちが発動したシェアリングフィールドには(イストワール)のルールも付与されます」」

「いーすんの……ルール?」

 

 (イストワール)のルール。それは

 

「ぐぅ……頭が……っ! ……なにこれ⁉︎」

 

(イストワール)の頭の中の情報量をフィールド内の相手に強制的に共有させることです。常人はおろか、女神様ですら処理しきれない情報の波が相手を襲います。

 

(何よこれ? ギンガはどこ? いーすんはどこ? 目の前にいるはずなのに! いつまでも頭の中の情報が完結しないわ……!)

 

「「流石はパープルハート様(ネプテューヌさん) 、常人なら既に気を失うほどの情報量をまだ耐えることができているとは」」

 

(動けない……! 今の私はどうやって動けばいいかすらわからなくなっているわ……!)

 

「「とはいえ、今回はあなたを倒すためではなく、あなたを止めるためなので、ここら辺にしておきましょう。『シェアリングフィールド』解除」」

 

 そう言ってフィールドを解除し、そしてイストワールとのリンクも解除します。フィールドは解除されたものの、まだパープルハート様は情報の波に苦しんでいるでしょう。さて、ここから先はアイリスハート様に任せます。

 

(フィールドは終わったの……? まだ頭がクラクラする……まともに動けないわ……!)

 

「あれぇ? ねぷちゃん動けないのねぇ、可哀想〜。でも動けないねぷちゃん可愛いわぁ」

 

(ぷるるんなの……? 何をする気……?)

 

「うふふふふ、これなぁんだ?」

 

(アレは……紫……野菜……ナス⁉︎ 嫌⁉︎ 近づけないで! 逃げなきゃ! 動いて! 動いてよ私の身体!)

 

「おいたしすぎたねぷちゃんにはぁ、たぁぁっぷりこれを食べさせてあ・げ・る!」

 

(嫌、やめて、ぷるるん、嫌!)

 

「よく噛んで味わって食べなさいよぉ! ほらぁ!」

「嫌ぁぁぁああああ! もごっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ええと、みなさんこんにちは。ネプギアです。メタなことを言ってしまうんですが、この物語の地の文担当であるギンガさんが、ギンガさんいーすんさん……? ギンガいーすんさん? うーん、とりあえずギンガイストワールさんにしておきましょう、それに合体した副作用で、数日間酷い頭痛と身体のだるさで寝込んでいるので、今だけは地の文は私が担当しています。

 

 あれからプルルートさんに大量のナスを食べさせられたお姉ちゃんは気絶し、起きたら正気に戻りました。暴走していた時の記憶は無いようです。……暴走していた時色々と口走ってしまってましたし、良かったんじゃないかなと思います。

 

 あの後ギンガさんといーすんさんは仲直りできたようです。というより、合体して心が一つになったから、お互いがお互いをどれだけ大切に思っているかも伝わった……とのことです。良かったですね。なんか羨ましいなぁそういうの。

 

 いーすんさんも合体した副作用でオーバーヒートして寝込んじゃっていて、元に戻るのに三日ぐらいかかるそうです。国の教祖と女神補佐官が同時に数日間行動不能になってしまうという点では、あの合体は本当に最終秘密兵器ってことなんですね。

 

 そしてお姉ちゃんはというと……

 

「ほらぁ! 手が止まってるわよぉ! 誰かさんのせいでいーすんとギンガさんが動けなくなったんだからぁ、その誰かさんがちゃんとその分お仕事しないとダメでしょう⁉︎」

「無理だよー! こんなにできるわけないじゃん! 助けてネプギアー!」

「ぎあちゃんは誰かさんのせいで動けなくなったいーすんとギンガさんの介抱で忙しいのよぉ! ほらぁ! 無駄口叩いてる暇あったらお仕事しなさいよぉ!」

「ねぷぅぅぅ! なんでぷるるん変身しててしかもこんなに怒ってるのー⁉︎」

「別にぃ⁉︎ 怒ってないわよぉ⁉︎ 誰かさんの暴走と合体した二人のせいで私の初変身のインパクトが薄れたことに関して何も思ってなんかいないけどぉ⁉︎」

「怒ってるぅぅうう! も、もうナスなんてこりごりだよ〜〜〜〜!」

 

 き、今日もプラネテューヌは平和です。

 

 ……多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……随分とナス畑がめちゃくちゃにされてしまったなぁ……まぁ自業自得というやつか」

 

『あのナスからは、以前のお前からは感じられなかった、お前なりの命への尽くし方というものを感じたんです! 命と真剣に向き合っている者にしか出せない味でした!』

 

「……ふん、命と向き合う……か。とりあえず畑を綺麗にし直すところから始めよう」

「マジでナス農家になる気っチュか? 世界征服は諦めたっチュか?」

「あぁ、少し疲れたよ。今回の作戦のために有り金をはたいたからな。ここより他に行く場所もない……」

「……手伝うっチュよ。どうせやることないっチュし。それに何も言わずに逃げて悪かったっチュね」

「いや、お前がいたところでどうしようもなかっただろう。逃げていて正解さ」

「……」

「不思議だな……こうやってナスの世話をしているだけなのに、初めて『生きている』と感じるよ」

「……時給はきっちりもらうってチュよ」

 

 




本編7話の内容が終わりました。
次回、例のあの回です。

ギンガイストワール。ルビを振るのがめんどくさいので当分出てきません。


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13. パラダイス・ロスト

水着回に見せかけた修行回の初投稿です。



「嫌です!」

「なんでよー⁉︎」

「嫌なものは嫌なんです! それにあの島は男性禁制ではありませんか!」

「そんなもの女神権限でどうにでもするよ! 女神命令だよー! ついて来なさーい!」

「そんなことに女神様の権限を使わないでください!残念ながら、今の私には女神命令に対するカウンターがあります!『いーすん助けてくださーい!』」

「い、いーすんを呼ぶのは反則だよー! 」

「まぁお姉ちゃん、嫌がってるのに無理やりついて来させるのは……それにギンガさんの言う通りその島は男性禁制らしいし……」

「えー⁉︎ ネプギアは行きたくないのー⁉︎ ギンガとバカンス!」

「それは行きたいけど……」

「ネプテューヌったら、遊びに行くんじゃないのよ」

「はい、R-18アイランドに設置されている砲台の調査が目的なので、遊びに行くわけじゃないんですわよ」

「だけどさぁ……」

 

 状況を簡潔に説明しましょう。R-18アイランドというその名の通り俗人が低俗な水着姿もしくは全裸ではしゃいでいるクソみたいな島がありまして、そのクソみたいな島に巨大な砲台が設置されているらしく、その調査に女神様は向かうようなのです。

 

 女神補佐官は女神様のお仕事に同行するのが仕事と以前言いましたが、こればっかりは私は絶対に嫌です。仕事に私情を持ち込むことなど愚の骨頂ですが、あんなところに行くぐらいなら愚の骨頂で構いません。

 

 そもそもあの島は先程言った通り男性禁制なので行かずに済むと安堵していたら、ネプテューヌ様は私についてこいと言うんですよ⁉︎

 

「それにしてもギンガ、どうしてそこまでR-18アイランドを嫌うのですか?」

「はしたないからです。俗人共が低俗に肌を晒す姿など身の毛がよだつのです」

「肌を晒すという点では私たちのプロセッサユニットもそうではありませんか」

「……ベール様は女神様の神聖なプロセッサユニットと俗人共の低俗な水着を一緒になさるつもりですか‼︎⁇ 女神様とはいえ、そのような物言いは許しませんよ‼︎‼︎」

「しまった! 地雷踏みましたわ!」

「もうめんどくさいから置いてけばいいじゃない……」

「でも……ギンガと……ねぷぅ」

 

 ようやくネプテューヌさまが諦めてくれました。私にも譲れないものはあります。

 

 女神様たちが変身し、飛んで出発して行きました。ですが、どうやらプルルート様は変身しないようですね。パープルハート様とブラックハート様が二人で持って行くようですが、変身してもらった方な楽なのでは……?

 

 

 

 

 

 

 

「砲台…誰かが戦争でも始めようとしているのかしら?」

「ねぇねぷちゃん〜。あたし自分で飛びたいな〜」

「え? だ、だめよ! お願いだからぷるるんはそのままでいて!」

「どうして? 変身できるならして貰えばいいじゃない」

「ノワールだってアレを見たら絶対そう思うから! ダメったらダメよ!」

「ねぷちゃんのけち〜〜!」

「あ、暴れないでよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「なんであたしはR-18アイランドに一緒に行けないのよ! 納得いかないわ!」

「いかないわ!」

「いかない……!」

 

 そういえばあの島はその名の通り大人しか入れないんでしたね。ユニ様もラム様もロム様も実年齢的に考えると入れるのでしょうけど…たとえ行けたとしても、私的にはあんなところ行って欲しくはないですがね。

 

「どうしたですか? ピーシェちゃん」

「探し物なら手伝うわよ?」

「……探してない!」

 

 ……ピーシェさんの探し物……それはおそらくネプテューヌ様でしょうね。そういえばネプテューヌ様がR-18アイランドに行く前にプリンの取り合いになって喧嘩していました。それはいつものことなのですが、今回はその喧嘩のせいでプリンが床に落ちてしまったから、いつも以上にネプテューヌ様がピーシェさんを責めてしまって更に大喧嘩になってしまったようです。

 

 皆様はネプテューヌ様に大人気ないと言いますが、多分その大人気無く全力でぶつかってくるのがピーシェさんは嬉しくて楽しいんだと思います。時に喧嘩はしても、ネプテューヌ様はピーシェさんと仲良しなのです。

 

 だから、ピーシェさんはネプテューヌ様に謝って仲直りがしたいのでしょう。ですがネプテューヌ様は出かけてしまいましたし……タイミングが良くないですね……

 

「ネプテューヌ様ならお仕事に出かけましたよ。帰ってきたら一緒に謝ってあげますから、ちゃんと仲直りしましょうね」

「ぎんが……」

「ネプ子も仲直りしてから行けばよかったのに」

「二人はもう家族みたいなものですから、家族だったらそんなこともあるです」

 

 家族、ですか。

 

 現時点では私の推測に過ぎないですし、ピーシェさんのことについて何もネプテューヌ様にお伝えしていない私が言うのもなんですが、いずれ別れることになるので仲良くなりすぎても…辛いと思うんですがね。

 

 

 

 

 

 

 

「クエスト……ですか?」

「はい、バーチャフォレストに大量のモンスターが発生しているとの情報が…昨日までは何もなかったらしいのですが……」

「わかりました、処理してきます」

「申し訳ありません、お願いします」

「いえいえ、サクッと終わらせてきますので。行ってきます、いーすん」

「はい、ギンガさん」

 

 あ、そういえば、先日のナス騒動のおかげといいますか、イストワールがついに私にもいーすんと呼ばせてくれるようになったんですよ! めっちゃ嬉しいです! これからは用がない時にもどんどん呼んでいきたいですね!

 

 私が身支度を整えているとロム様とラム様が駆け寄ってきました。

 

「ギンガさん出かけるのー?」

「出かけるの……?」

「はい、緊急のクエストが入ったので」

「じゃあわたしたちも行く!」

「行く……!」

「え?いや、わざわざロム様とラム様の手を煩わせるわけには……」

「ギンガさんに色々教えて欲しいの!」

「もっと強く……なりたいから」

 

 ……確かに以前ルウィーで約束しましたね、色々教えると。

 

「わかりました。一緒に行きましょう!」

「「はい!」」

 

 となると、あの方を置いて行くわけにもいきませんよね?

 

「あたしも連れて行ってください!」

 

 おっ、丁度今誘おうと思っていたところをユニ様から声をかけていただけました。

 

「勿論です。逆に申し訳ありませんね、うちの国の問題ですのに」

「そんなことないです! その、ネプギアが羨ましくて…いつもギンガさんに色々教えてもらってるって自慢してくるから……あっ! ネプギアは自慢なんかしてるつもりじゃないと思うんですよ! でも……」

「ユニ様は可愛いなぁ(わかっていますよ)」

「え⁉︎」

「いえ、なんでもありません何も言っていません」

「そ、そうですか……」

 

 やべっ、逆になってました。

 

「ふふ、大人気ですねギンガさん」

「他国の女神様を使い走りにしているようで少し心が痛みますが……」

「そんなことありませんよ。それに、そのための友好条約ですので、ちゃんと女神候補生の皆さんに指導してあげてくださいね」

「わかっています。では改めて行ってきます!」

「「「行ってきまーす!」」」

「はい、いってらっしゃい」

 

 正直めんどくさいなーって思ってたクエストですが、楽しくなってきました。ですが気を緩ませすぎず、女神補佐官として恥じぬ戦いと、指導をしなければなりませんね。

 

 

 

 

 

 

 

「アレが例の砲台?」

「ただのシャボン玉製造機じゃん!」

「こんなもののためにわざわざ私たちはこんなところまで来たってこと⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 バーチャフォレストに到着しました。聞いていた通りやけにモンスターが多いですね。ダンジョンにモンスターがいることなど当たり前なのですが、ここは居住区に近いので放っておくわけにもいきません。さっさと片付けましょう。

 

「あの、ギンガさん。ネプギアがギンガさんは戦闘の指導の時だけはめちゃくちゃ厳しいって言ってたんですけど……」

「私としてはそんなつもりないんですけどねぇ…どうしてもそうなってしまうようです……」

「だから厳しくお願いします!」

「え?」

 

 …そうきましたか。厳しく、と言われましても…どんな感じにすればいいでしょうかね? とりあえずモンスターをしばきつつユニ様の動きを見ながら考えましょうか。

 

 私たちの接近に気づいたモンスターたちが次々と襲いかかってきます。ガンナー一人と魔法使い二人なので前衛は私が勤めましょう。

 

「皆様、前衛は私がやるので後衛で援護をお願いします!」

「「「はい!」」」

 

 見た感じ雑魚モンスターばかりですね。今回はプラネテューヌの件ですので、他の国の女神様である三人を立てるような戦いをする必要はありませんが、指導するために三人にはできるだけ多めにモンスターを倒してもらわないといけません。ですので、最低限の前衛の仕事しかしないことにしましょう。

 

 迫り来る雑魚モンスターをどんどん斬り伏せます。しかし全て私が処理するのではなく、後衛の皆様に任せるようにあえて多めに斬り漏らします。で、私は空いた手間でしっかりと後衛の皆様の戦いを観察するわけです。

 

 ほうほう……なるほど。

 

 そうこうしてる内にモンスターの群れの第一波を殲滅しました。正直、私一人で充分なぐらいの雑魚ばかりだったのであまり時間はかかりませんでした。

 

「ギンガさん! あたしの戦い方……どうでした?」

 

 うーん、ユニ様の戦い方は悪くなかったのですが、厳しくするように言われているので、ここはあえてめっちゃ厳しく評価しましょう。

 

「全然ダメですね。以前私が見せたことの三分の一程度しかできてません」

「え?」

「クエストなどはノワール様と共にやることが多いのですか?」

「はい……」

「なるほど、いかにノワール様の素晴らしき前衛に甘えてるかということがわかりました」

「で、でも、お姉ちゃんはあたしは役に立ってくれてるって……!」

 

(ギンガさん怖い)

(怖い……)

 

 ユニ様の戦いは悪くはないしむしろ良いですよ。しかし、それはノワール様ぐらい強い前衛がいる場合です。ノワール様って態度だけならユニ様に厳しいように見えますが、ぶっちゃけ甘々のデレデレですからね。ユニ様を認めていて、頼る時は頼るとしても、なるべくユニ様の負担を減らすような戦い方をする、そんなお方です。今のユニ様は、そんなノワール様と多く共に戦ううちに、無意識に自分を型にはめてしまっています。

 

「ユニ様。あなたが目指しているものは『お姉ちゃんの役に立つ妹』ですか?それとも『女神ブラックハート様を超える新たなラステイションの女神様』ですか?」

「それは……」

「勿論後者なのはわかっていますが、立ち回りからは前者の考えが滲み出ていました」

「……」

「変身できるようになってから少し経ち、初めて変身した時のお気持ちを忘れかけてしまっているのでは? もう一度、考え直してみてください」

「……はい!」

 

 いくら厳しくと言われたとしても……少し言いすぎましたかね?

 

(……正直心折れそうになったけど、お姉ちゃんでも言ってくれないようなあたしの甘えてるところを容赦なく言ってもらえて……なんか良いわねこれ! なるほど、ネプギアが強くなるわけだわ……!)

 

 いえ、ユニ様の表情は闘志に燃えています。上手くいったということでしょう。さて、次はロム様とラム様ですか。

 

「あの! ギンガさん!」

「はい、なんでしょう?」

「わたしたちにも厳しめにお願いしまーす!」

「お願いします……!」

 

 まさかこのお二人にもこう言われるとは……では容赦なく。

 

「ロム様とラム様は魔法の使い方がダメダメですね。せっかく高い魔力を持っているのに、それを無駄にしてしまっています」

「ダメダメ……」

「はーい! ギンガせんせー! どうすれば無駄にならないですかー⁉︎」

 

 せ、先生⁉︎ ……女神様にそう呼ばれるのは……その、ふふ、なんか良いですねぇ……じゃありません! ええと、今のロム様とラム様に足りないことは……

 

「魔力をちゃんと練れば少ない魔力でも強い魔法を使うことができますが、今のお二人は逆です。魔力が練られていないので弱い魔法になってしまっています」

「ギンガせんせー……どうすれば上手く魔力を練れるようになりますか……?」

「どのように魔力を用いて魔法を使えばいいかという想像力が大事ですかね」

「よくわかんない」

「お絵描きと一緒ですよ。何も考えずに描いてもよくわからないものしか出来上がりませんが、ちゃんと想像力を働かせた上で描けばいいものが出来上がるでしょう?」

「なんとなく……わかったかも……」

「とりあえずまた戦って試したいなー」

「はい、では奥へ向かいましょう。まだ大量モンスターがいると思われるので」

「「「はい!」」」

 

 先程言った通り、今倒したモンスターたちは第一波に過ぎません。多くなりすぎたモンスターを減らすという今回のクエストにおいては、おそらく第三波ぐらいまでは倒す必要がありそうですね。

 

 

 

 

 

 

 

「何も無かったからそのまま帰ることになるなんて……骨折り損のなんとやらね……」

「みんなあたしが変身したとこさっき見たんでしょ〜? だったらあたし変身しても…」

「「「「「絶対ダメ!」」」」」

「みんなのケチ〜! ギンガさんなら良いって言ってくれるのに〜! むしろ変身して欲しがるよ〜?」

「それはギンガがおかしいのよ……」

 

 

 

 

 

 

 

「クエスト、完了ですね。皆様、お疲れ様でした」

 

 私はあの程度の指導しかしていないのに、信じられないぐらい三人の動きが良くなっていまして、速攻で第三波まで倒し終えました。ネプギア様もそうですが、本当に候補生の皆様は成長が早いです。今はまだ私の方が強いでしょうけど、すぐに超えられてしまうでしょうね。

 

「はぁ……ものすごく考えながら動いたから、今までで二番目にしんどい戦いだったわ……疲れたぁ……」

「えー? 一番じゃないのー?」

「一番は……多分最初に変身した時の戦いだと思う……」

「確かに……でも今日もすっごく疲れたよ……」

「……なんでギンガさんはあたしたちの中で一番動いてたのに全く息が上がってないんですか……?」

「長年の鍛錬の賜物です。透き通る世界が見えているので」

「何ですかそれ……」

「とりあえずもう少し休んだらプラネテューヌ教会に帰りましょうか。おそらくお姉様方が帰ってきているかもしれません」

「「「はぁい……」」」

 

 疲れているからか返事に覇気がありませんね。ですが、あなた方は今日は本当によく頑張りました。ノワール様とブラン様に今日の三人の活躍を教えてあげたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました、いーすん」

「おかえりなさい、ギンガさん。それにユニさん、ロムさん、ラムさん。あの、一つお伝えしておきたいことがありまして、ピーシェさんのことなんですけど……」

「ピーシェがどうかしたの?」

「ピーシェさんのお母様が迎えにいらして……ピーシェさんがどうしてもすぐにお母様と帰ると言ったので…」

 

 ……どうやら私の推測は間違っていたようですね。次元を超えた大きな力を持つ存在…私はそれがピーシェさんだと思っていたのですが、普通にお母様が引き取りに来るような子供ということは、違ったわけですね。エネルギー量が多いというのも……偶然そんな子が生まれてくるのはゲイムギョウ界ではあり得なくはない話ですし。

 

「そうですか……でも、家族と再会できたならそれは良いことなのではないでしょうか?」

「ギンガさんは寂しくないの?」

「寂しいことには寂しいですよ」

 

 ……ですが長年生きていて人との別れには慣れていますので。

 

「また会いに行けないの?」

「それが……住所を聞く前にいなくなってしまって……」

 

「たっだいまー! 見てみてほらー! お土産のプリン! 全部『ねぷの』って書いてるからこれでもうピー子と喧嘩しなくて済むね!」

 

 ネプテューヌ様たちか帰ってきました。ピーシェさんと喧嘩しなくなるように大量のプリンを買ってきてようですが……ピーシェさんはもう……

 

「あれ? ピー子は?」

「ネプテューヌ様……実は……」

 

 ネプテューヌ様たちにピーシェさんが帰ってしまった旨を話しました。ネプテューヌ様はそれを聞くとすぐに駆け出して行きました。他の皆様は腑に落ちないような表情をしていましたが、ピーシェさんの意思ということもあり一応納得していました。

 

 結局、ネプテューヌ様はピーシェさんと喧嘩したまま別れることになってしまいました……

 あの時私が強引に仲直りさせていればよかったのかもしれません……

 

 

「バカ…ピー子のバカーーーーーーっ!!」

「………バカって言う方がバカだ…」

 

 

 

 

 

 

 

「あの、例の子を連れてきました……」

「ご苦労様」

「アノネデスさん……こ、こんなことしてよかったんですか?」

「……あなた、キセイジョウ・レイちゃんって言ったかしら?」

「は、はい」

「じゃあ覚えておきなさい。質問っていうのは答え聞くことに意味がある時だけするものよ」

「……」

「バーチャフォレストにモンスターを多めに放っておいてよかったわね。多分女神補佐官の男が教会にいたら、今ごろレイちゃんの命はなかったかもしれないわ」

「えっ⁉︎」

「それにR-18アイランドの地下に拠点を構えて正解だったわ。下手したら女神より厄介なその補佐官は、あそこなら一切手出しして来なさそうだし」

 

 

 

 

 

 

 

 この時私は気づいていませんでした。

 

 友好条約によって築かれた平和が、少しずつひび割れてきていることに。

 




『ゲイムギョウ界こそこそ裏話』
アノネデスはギンガのことを女神以上に警戒しています。しかし、ギンガはラステイションの盗撮騒動の時、入院中で不在だったため、アノネデスのことを知りません。もしギンガがアノネデスのことを知っていて、一瞬でもピーシェとアノネデスが接触していることを知っていれば、たとえ母と名乗る者が引き取りに来てもピーシェを渡さなかったかもしれません。



レイもアノネデスもこの作品だと今回が初登場みたいになってしまいました、ていうかそもそもこの作品のストーリー構成は原作アニメにおんぶに抱っこなんですよね。何が言いたいかと言うとまぁあれです、原作アニメ知らないのにこの作品読んでる人はおそらくいないと思うので大丈夫でしょうってことです。



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14. プロジェクト・エディン

新作ネプ、ソフトが手に入ってもPS5が手に入らなさそうなので初投稿です。



「いつまで寝てんのー⁉︎ 早く起きてー!」

「まだ眠いよ〜ねぷちゃん〜」

「だめだめー! 今日もパトロールに行くんだからー!」

「えぇ〜」

「こらー! 二度寝禁止だよ! とにかくさっさと起きてね! あ、おはようネプギア! 30分後に出発ね!」

「うん、わかったお姉ちゃん」

「む〜最近のねぷちゃん疲れる〜」

「そうですね……」

 

 ここ最近、朝っぱらから騒がしいですね。ネプテューヌ様がピーシェさんの件でピリピリしていて、そのせいで教会の雰囲気もピリピリしています。

 

「あ、ギンガ! 今の聞いてたでしょ?30分後に出発だからねー!」

「必要ないと思いますが、パトロールは昨日も朝から晩まで行いましたし……」

「行くったら行くの! これは女神命令!」

「必要のない仕事に人員のリソースを割くことはおススメしません」

「じゃあギンガは来なくていいよもう!」

「……かしこまりました」

 

 ネプテューヌ様は怒ってそのままネプギア様とプルルート様とパトロールへ行ってしまわれましたが、これに関しては私は間違ったことは言っていません。たしかにパトロールは必要ですが、ネプテューヌ様はパトロールというより、ひたすらピーシェさんを探しているは明らかです。あのような振る舞いをしていると、そのうちプルルート様あたりと喧嘩になってしまうかもしれませんよ。

 

 ですが、ネプテューヌ様はピーシェさんのいなくなった心の穴を埋めるために必死なのでしょう。この手のことに関しては、私はできることも掛ける言葉もないのでお手上げ状態です。人には向き不向きというものがあるので。

 

 ……はぁ、私も教会の雰囲気につられてピリピリしてしまっているようですね。ネプテューヌ様が帰ってきたら謝りましょう。久しぶりにネプテューヌ様のためにプリンでも作りましょうかね?いや、いくらネプテューヌ様の好物とはいえ、今この状況でプリンは良くなさそうです。『ねぷのプリン』を連想されてしまうかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

『え?じゃあネプギアもネプテューヌさんもいないの?』

「はい、このところ毎日、朝から晩までパトロールに出てるもんですから……」

『ええっ⁉︎ あのネプテューヌさんが⁉︎』

「まぁ……そう思いますよね」

 

 お掃除とお洗濯を終え部屋に戻ると、あいちゃんとコンパさんがユニ様と通話していました。

 ユニ様が私にもタメ口になってくれたら嬉しいのですがね。

 

 とりあえず、通話を邪魔をしないように、畳んだ洗濯物を棚にしまいながら、会話に聞き耳をたてるとしましょう。

 

「ところで、どうしてユニさんがルウィーにいるです?」

『えへっ、ちょっとロムとラムを手伝ってたの! 実はあたしたち……』

『人工衛星で突き止めちゃったー!』

『ピーシェちゃんがいるところ……』

「「ええ⁉︎」」

 

 ……全く、いくら女神様といえども、人工衛星をそのように使ってはいけませんよ。後でお説教ですね。ピーシェさんとの別れ方に納得しきれていない気持ちはわかりますけど。

 

「……お話に混ざってもよろしいでしょうか?」

『あ! ギンガさん!』

『ギンガさんこんにちは〜!』

『こんにちは……!』

「大人気ですね師匠」

「ピーシェさんのところへ行くのですね?私も同行します」

 

 

 

 

 

 

 

「ギンガってば、最近私に反抗的になっちゃって……許せないわ!」

「でも……お姉ちゃんはそういうギンガさんを少し望んでたんじゃないの?」

「それは……そうだけど……」

「ねえ〜ねぷちゃん〜? ここ三日前にも来たよ〜?」

「三日で状況が変わることもあるでしょう?」

「むぅ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 さて、あいちゃんとコンパさんと共に、ユニ様から送られてきた衛星写真の場所あたりに着きました。とりあえずは三人が来るまで待機ですね。

 

「そういえば師匠、もう身体の方は大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。元気100倍です」

「アンパンマンみたいです」

「私の顔を食べますか? ……あ、これセクハラみたいですね、無かったことにしてください」

「ギンガさんの顔を食べれば、ギンガさんみたいに強くてカッコよくなれそうです」

「確かに……師匠、ちょっとじっとしててください」

「え⁉︎ 二人とも顔が怖いですよ……? どうしてジリジリと寄ってくるのですか……⁉︎」

 

 ……みたいな、変な会話をしながら待っていると、変身した三人が空からやってきました。会話の流れ的に少し危なかったので助かりました。

 

「おまたせー!」

「お待ちしていました、ユニ様、ロム様、ラム様。会って早々ですが、まずはお説教からです」

「「「え?」」」

「たとえ女神様といえども、人工衛星をあのように使ってはいけませんよ。プライバシーというものがありますので」

「でも……」

「『でも』ではありません。皆様も、素性のわからない者に私生活が覗かれたら嫌でしょう?」

「それは……そうですね……ごめんなさい……」

「「ごめんなさい……」」

「その言葉は私ではなくピーシェさんのお母様に言うことです。一緒に謝りましょうね。あと、私たちは一度はピーシェさんを保護していた身として、引き取られた後のピーシェさんがちゃんと養育されているか確認する必要があります。つまりこれはお仕事なので、皆様も出来るだけそういう振る舞いをしてください」

「「「はい……」」」

「(やば、私もグッジョブユニ様とか思ってたし、お出かけ気分だったわ……私もまだまだね……)」

「(私もです……ピーシェちゃんのお母さんに謝るです……)」

 

 確かにピーシェさんのその後は気になりますし、先程言ったように経過観察をする必要がありますが、それはそれ、これはこれです。

 

「ピーシェちゃんのお家どこ……?」

「それが……送っていただいた衛星写真によれば……多分……」

 

 そう言ってあいちゃんが指をさした建物は、明らかに使われていなさそうなビルでした。外見だけで判断するのは良くありませんが、ピーシェさんは本当にちゃんと養育されているのでしょうか?とりあえず入ってみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはー! ……ここも無人みたい」

「じゃあ一番上ね!」

 

 ほぼ全てのフロアのドアをノックしたのですが、どこからも応答がありませんね。あとは最上階だけですか。

 

「でも良かったのかな? あたしたちだけで来ちゃって……ネプギアもネプテューヌさんもピーシェに会いたがってるでしょ?」

「はい、それは勿論」

「私たちがピーシェを教会に連れて行けばいいのよ!」

「ネプギアちゃんたち……帰って来たらびっくり……!」

「わぁ! サプライズですぅ!」

 

 いいえ、そうはならないでしょう。先程から会話に混ざらず、このビル内の気配を探知することに集中しているのですが、何も感じません。おそらくもうここにピーシェさんはいませんね。いえ、ピーシェさんどころか誰も人がいないでしょう。

 

 ……繋がってきました。ピーシェさんは引き取られたのではなく、攫われた可能性があります。ピーシェさんの母を名乗る人物は、常人と比べものにならないほど高いエネルギーを持つピーシェさんを何かに利用しようとしている……? しかし、なぜその人物はピーシェさんが高いエネルギーを持つことを知っているのでしょう?

 

「……で、ここがピーシェの家?」

「こんにちはー! ……返事ないよ」

「あれ?鍵が開いてる?」

「入っちゃえ! ……何ここ?」

「ピーシェちゃんは……?」

 

 そのフロアは、どうやら反女神の市民団体の事務所のようなものでした。部屋中に『女神反対』みたいなことを書かれたビラや看板が転がっています。人の気配はありません。

 

「何よこの看板…? 『女神にNo!』って失礼しちゃうわね!」

 

(師匠がこんなもの見たら……⁉︎ あれ? 師匠は?)

 

「さっきから何も言いませんが……どうしたんですギンガさん? 体調が悪いですか?」

「いえ、少し考えごとを……ん? 『女神いらない』……? この落ちているビラ……前にどこかで……」

「(……師匠、意外と落ち着いているわね……)ねえコンパこのビラ!」

「……あ! じゃあ、あの時のビラを配ってた人がピーシェちゃんのお母さんです?」

「どうかしらね。とにかくここには誰もいないみたい」

「ピーシェちゃん……」

 

 このビラや看板に書いてあることにイラついてる暇はありません。私たちの不在の時を狙ってプラネテューヌ教会にピーシェさんを攫いに来た、という頭の片隅にあった仮説に過ぎなかったものが現実味を帯びてきました。もしかすると、先日のバーチャフォレストのモンスター大量発生も、私を教会から外に出すための仕組まれたものだったのかもしれません。

 

 この反女神の団体とやらは…おそらく私たちの想像以上のことをしでかす予感がします。私たちは既にこの団体の計画の後手に回っているのかもしれません。高いエネルギーを持つピーシェさんを対女神様の兵士にでも育てようとしているのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

「私は女神なんて嫌いなんです……女神なんていなくなるべきなんです……なのにどうしてこんなことに協力を……私、ただの市民運動家なのに……私、もう帰ります」

「あら、それはだめよ。あなた、もう共犯なんだから。攫ってきたのは他でもない……あなた、でしょ? わかったらそんなところで腐ってないで、あなたの仕事をして。この子もそろそろ仕上がるわ」

 

 

 

 

 

 

 

(お姉ちゃんの態度に耐えかねたプルルートさんが、変身してお姉ちゃんに襲いかかって……どうしよう……!)

 

「あたしぃ〜自分の気持ちに嘘をついてる人はぁ……無性にいじめたくなるのよ……ねぇ!」

「やめてぷるるん! 私、あなたと戦いたくなんか!」

「あらぁ、あたしだってそうよ! 素直にいじめられてくれれば戦う必要なんてないわ!」

 

(お姉ちゃん……プルルートさん……私はどうすれば……見てることしかできないよ……)

 

「あははは! ねぷちゃん! あなたこの程度なのぉ⁉︎」

「やめなさいぷるるん……! やめて……やめてよ……! やめてってば‼︎」

 

(お姉ちゃんの変身が……! でも……プルルートさんもさっきまでとは違って、もう戦う気はなさそうだし……)

 

「ぷるるんは……友達でいてよ……わたし、ぷるるんのためならなんでもするから!」

「まだ自分に嘘ついてる。何でもしてあげたい人は、他にいるんじゃないの…?」

「……っ! ピー子……!」

 

(お姉ちゃん……)

 

「もっと遊んであげればよかった……! ねぷのプリンをもっと食べさせてあげたかった……! 一緒にいようねってもっとちゃんと言ってあげれば……! ……うぅ……!」

「それでいいのよ……どうしようもない気持ちは、吐き出しちゃえばいいの……そういうねぷちゃんだってみんな大好きなんだよ?」

 

(プルルートさんも変身を解いてお姉ちゃんに寄り添ってあげてる…もう大丈夫そうかな……ん? 電話? いーすんさんからだ)

「はい、もしもし……? ……え⁉︎ お姉ちゃん! プルルートさん!」

「どうしたのーネプギアー?」

「今いーすんさんから…………新しい国ができたって!」

「……ええええええ‼︎⁇」

 

 

 

 

 

 

 

 色々と考えは纏まったものの、何も収穫がなかったため、その空きビルを後にしてプラネテューヌ教会に帰ろうとすると、いーすんから『新しい国ができた』と連絡が入りました。それを聞いて急いで教会に戻り、いーすんから詳しい話を聞いていますが、国が誕生したという以外ではあまり情報が入っていないようです。

 

「新しい国……って何なんですか?イストワール様」

「まだよくわからないんです……ただ、R-18アイランドに新たな国を作ったという通達がいきなり送られてきて……とにかく、ネプテューヌさんやネプギアさんが他国の女神の皆さんと交流して、調べてきてくれるそうです」

「……どうしてネプギアだけいつもR-18アイランドに行けるの⁉︎ ずるい!」

「わたしたちも女神なのに……」

「わたしたちも連れてってよー!」

「私は……ユニ様とロム様とラム様にはあんなところに行って欲しくないです……」

「え? ……じゃあ行かなくていいです」

「わたしも……」

「えー……まぁでもギンガさんが嫌なら行かなくて良いかなー」

 

(流石はギンガさん……三人をすぐに大人しくさせました)

 

 先の戦いで破損したリミテッドパープルがまだ修理中なので、今の私は飛行ができません。だからR-18アイランドに私は行くことができません。……良かった。

 

 あの島の砲台はただの遊具と報告されたはずだったのですが、遊具に偽装された兵器であった可能性が高そうですね。

 

 あの島で何が起ころうとしているのでしょうか?とりあえず、私はパープルシスター様の端末から送られてくる映像を見ています。電波が良くないので映像が映ったり映らなかったりですね、どれどれ……

 

 ……マジですか。

 

『ええと、名前はねー、イエローハートだよ!』

 

 新たな……女神様……⁉︎ 良いですねぇ〜……ではなく! 出来立てでシェアもクソもない国に女神様が誕生するなんて普通はあり得ません……! それにあのイエローハートという女神様の姿……あれはもしや⁉︎

 

「パープルシスター様!」

『どうしたんですかギンガさん!?』

「ダメです! その女神様と戦っては! 特にパープルハート様は‼︎」

『どうしてお姉ちゃんが? ……まさか!』

「おそらくはそのまさかなんです!」

 

 パープルシスター様への忠告は……間に合いそうにありません……! その間に戦闘になり、次々と女神様たちがイエローハートという女神様に技を叩き込んでしまっています……っ!

 

 戦闘のダメージか、それとも制限時間があってそれが切れたのか、変身が解除されて判明したイエローハートという女神様の正体は……私が思った通り……ピーシェさんでした。

 

『ピー子! なぜあなたがここにいるの⁉︎ まさか、あなたが……そんなわけないわよね」

『……あっち言って!』

『……っ!』

 

 どうやら今のピーシェさんはパープルハート様を完全に敵として認識しているようです。せっかく、プルルート様のおかげでネプテューヌ様が立ち直ってきたというのに……!

 

『遅ればせながら紹介するわ、この方こそ我が「エディン」の女神! イエローハートことピーシェ様よ!』

 

 新国家『エディン』……ですか。それになんですか、あの執政官を名乗るロボなのかオカマなのかわからないヘンテコな生命体? そして、後ろにもう一人女性がいますね。こいつらが首謀者ですか……! 計画の全貌が明らかになってきましたね。

 

『あ、それからここで、レイちゃんから重大発表がありまーす! ほら、レイちゃんアレ読んで』

『あ、はい……女神イエローハートが治めるエディンは国内で生産された成人向けコンテンツの制限のない流通を各国に求める! これを認めない場合は…我が国への宣戦布告と見なす‼︎』

 

 レイという女の宣言が終わると、島の奥から大量の兵隊が現れました。……なるほど、これがあなたたちの計画ですか。そうなればこのエディンという国、そしてピーシェさん……いえ女神様となったからもうピーシェ様か、ピーシェ様と戦争することになりますね。先程は戦ってはいけないと言うつもりでしたが、戦争となるなら話は別です。

 

「パープルシスター様、通信を切ります」

『え? あの、その、これってピーシェちゃんと戦争するってことになるんですか……?」

「はい。私は今からそのための準備をします」

『準備って……! ギンガさんはピーシェちゃんと戦うことになんとも思わないんですか⁉︎』

「はい。思うところが全くないといえば嘘になりますが、私はプラネテューヌの女神補佐官として、戦争となる場合、それに備える義務がありますので。それでは」

『あっ! 待ってくださ……』

 

 既に私たちは後手に回っています。これ以上後手に回ればプラネテューヌが滅びかねません。パープルハート様とパープルシスター様がまだ戦う覚悟を決めていなくても、私はこの国を守るためにもう覚悟を決めています。

 

「いーすん、いえ、イストワール」

「は、はい」

 

 

 

 

「全ての兵士たちに連絡を、ついに立ち上がるべき時が来たと」

 

 

 

 

 

 

 

 




ギンガは今の女神と比べて戦争の経験が段違いですから切り替えもクソ早いです。

そしてギンガは、女神様やイストワールとの関係はともかく、人間関係ではかなりドライな性格です。今はアイエフやコンパを溺愛レベルで可愛がっていても、別れが来たらあまり引きずることはない、そんな男です。


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15. MEMORY OF EDIN

戦闘シーンはライブ感で書き上げてるのでわっかりにくいと思います。申し訳なさの極みな初投稿です。



 最初にエディンが侵攻してきたのはプラネテューヌでした。上等です、血祭りにあ…………なんでもありません。

 

 エディンと同じ主張をする暴徒によるテロが他の国でも多発しているようで、他の女神様たちはその対応に追われているため援護は期待できませんが……それが無くてもなんとかしてみせましょう。

 

「というわけで、敵の前線は全て私が抑えるので、漏れた敵はあいちゃんたちや防衛ラインの兵士たちにお願いしますね」

「……全部師匠がやるんですか?」

「敵はロクな訓練も受けてなさそうな兵隊なので、兵器とモンスターが少しいたところで、私一人で十分です。それに場合が場合なので死傷者を出すわけにはいかないんですよ」

 

 そうなんですよね。困ったことに、見た感じどうやら敵の兵隊は全て洗脳されているようです。完全な敵兵なら皆殺しにしても問題はないのですが、操られているだけの民間人となると、もし殺してしまった場合、戦後の事後処理が面倒なことになります。シェアにも影響が出そうですし。

 

 R-18アイランドを拠点に国を作ったのはそういうわけですか。はしゃいでいて頭が馬鹿になっている人間の方が洗脳が楽そうですしね。ほんとクソですねあの島。エディン制圧のどさくさに紛れて沈めて地図から消しましょうかね?

 

「師匠、死なないでくださいよ」

「死ぬわけありませんよ。殺し合う覚悟もない兵では私は殺せません。問題は……」

「ピーシェ……イエローハートですね?」

「はい、あの方には私では勝てません。パープルシスター様が抑えると言っていますが厳しいでしょう」

「ネプギアじゃ勝てない……ということですか?」

「いえ、イエローハート様の力の源が不明だから、と言うべきですね。女神様が信仰によるシェアもないのにあれだけの力を持てるはずがありません。何かカラクリがあるはずです。そのカラクリをどうにかしない限りパープルシスター様どころかパープルハート様でも厳しいでしょうね」

「そんな……!」

「それと、あいちゃん。私が前線を1人で抑えると言いましたが、リミテッドパープルの修理がもう少しで終わるらしいので、終わったら一度教会に取りに戻ります。その間は、あいちゃんたちに防衛ラインを任せてもよろしいでしょうか?」

「はい! 任せてください!」

 

『こちら偵察班! 敵部隊はマイダカイ村を進行中! 防衛ラインに向かっています!』

「了解。防衛ライン、戦闘態勢に入ります」

 

 エディン建国を聞いた時から、あらかじめ国境付近のマイダカイ村の人々を全て避難させておいて正解でした。

 

「さて、お出ましのようですね」

 

 そこそこの数の兵士と戦車と敵モンスター、それを先導するのはイエローハート様ですね。

 

「ギンガさん! さっきも言いましたが、ピーシェちゃ……イエローハートは私が抑えます!」

「任せます。ですが無理をしないように、先程あいちゃんには言ったのですが、敵の力の源が不明ですので、正面から戦っても勝てるか怪しい相手です」

「わかりました……!」

 

「エディンの皆さん、止まってください! これ以上進んだら……撃ちます!」

「あー! 悪い女神だー! 悪い女神は嫌いだけど……遊ぶだけならいいってパパが言ってた! ……だから、遊ぼー!」

「たとえピーシェちゃんでも、ここから先へは行かせません!」

「じゃあ、ここで遊ぼー!」

 

 まぁ……警告を聞くような相手ではありませんよね。パパ……おそらくあのオカマロボットですか。誘拐して洗脳して父親と刷り込むなど趣味が悪いですね。

 

「あははは! それーっ!」

「たぁぁああっ!」

 

 パープルシスター様とイエローハート様の戦いが始まりました。私も私の戦いを始めましょうか。とりあえずは……

 

「『魔界粧・黒霊陣』!」

 

 私の魔法で亡者たちを召喚します。前線を一人で抑えると言ったのはこれがあるからですね。

 

「亡者共よ、モンスターは殺せ、兵器は壊せ、だが人だけは殺すなよ。適当に戦力を奪ったらそこらへんに放っておけ」

 

 私の命令を皮切りに、亡者どもが敵兵に襲いかかります。しかし、正気ではない敵兵は亡者に恐れずに応戦します。向こうはこちらの命関係ないのに、こちらはなるべく殺さないように戦うので、分が悪い戦いですね。亡者はもう死んでいるので死にませんけど。

 

(確かに……師匠にはこれがあるから一人で抑えられるわよね。女神様より弱いって言うけど、師匠も師匠でとんでもない人よね……)

 

 

 

 

 

 

 

「一瞬にして……世界中がめちゃくちゃに……」

「あら、他人事みたいに言わないで頂戴? 我が軍の最高責任者はあなたなのよ?」

「我が軍って……兵隊も暴徒も操って言うことを聞かせてるだけじゃないですか!」

「操ってるのはあたしだけど、どう操ってるかは知らないわよ。そのための道具は全部クライアントから送られてきたんだし、詮索は禁じられてるし。それにしても、あの女神補佐官ほんと鬱陶しいわね! なんで一人で兵士たちを抑えられんのよ!」

 

「……俺が行こう」

 

「あら、あなたにはここの守りをしてもらおうと思ったけれど……まぁ今はあの女神補佐官を叩いてほしいわね。じゃあ任せるわ」

「……俺は貴様らの目的に賛同しているわけではない。成人コンテンツとやらもどうでもいい。しかし、貴様らは協力すれば俺の理想を叶えると言った、だから今はエディンに所属しているだけということを忘れるな」

「あたしの仕事は今のゲイムギョウ界をめちゃくちゃにすること。あたしも成人コンテンツがどうとかはどうでもいいし、めちゃくちゃになった後の世界のことなんてもっとどうでもいいの。その後の世界はあなたの好きに創り変えればいいじゃない?」

「……そうだな。とりあえず、俺も戦場へ向かおう」

 

「いってらっしゃーい! 『ブレイブ』ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 亡者たち生前では歴戦の兵士だった者がほとんどなので、敵の雑兵では相手になりませんし、急拵えの戦力だろうから亡者では厳しそうなモンスターはいませんでした。そういうわけで、敵の第一波の制圧は即終了です。一旦術式を解き、おそらく来るであろう第二波に備えます。パープルシスター様は……

 

「うわぁ! みんなもう負けてるー⁉︎ まぁいっか! ほらほら! もっとあそぼー!」

「くっ……! 強い……! でも、負けない!」

 

 ……まだ持ち込たえてくれていますね。私は今飛行できないので、空で戦っているパープルシスター様に加勢できません。魔法などで援護はできるかもしれませんが、あまり効果はなさそうです。

 

『こちら、イストワール! ギンガさん聞こえますか⁉︎ リミテッドパープルの修復が完了しました!』

「ありがとうございますイストワール、今取りに行きます」

 

 ようやく終わりましたか。とりあえずここはあいちゃんたちに任せましょう。

 

(本当に師匠一人で制圧したわ……)

 

「あいちゃん、イストワールからリミテッドパープルの修復が完了したと連絡が入りました。今から急いで取りに戻るので、その間お願いできますか?」

「はい!」

 

『こちら偵察班! 敵の侵攻ルートから第二波が来ています! 敵戦力……え⁉︎ 一です! 大型のロボット系モンスターが一機のみ! 今、画像を送ります!』

 

 ……第二波が来るのは予想できていましたが……一機? 画像を確認してからプラネテューヌ教会に戻るとしましょうかね。

 

「大型のロボット系モンスター? どれどれ……何ですかこの出来損ないのガオガイガーみたいなロボット? エディンというのはこのようなビックリドッキリメカを使ってくるのですね」

「強敵登場シーンのはずなのに、今の師匠のセリフで緊張感が消えちゃいましたけど……」

「しかし、一機だけで来るとなると相当な強さなのでしょうね。やはり私が残った方がいいかもしれません」

「師匠、あれは私たちが食い止めます! その間に師匠はプロセッサユニットを!」

「あいちゃん……しかし……!」

「なんとなくわかります、師匠でもプロセッサユニットがないと厳しい相手だと! だから……!」

「……申し訳ありません、すぐに戻ります!」

 

 戦場を後にし、急いでプラネテューヌ教会に戻ります。私がまた戦場に戻るまで、どうか持ちこたえていてください……!

 

 

「どうやら来たようね……!」

「……女神補佐官の男……奴はどこに行った?」

「(このロボ喋るのね……)タイミングが悪かったわね、今はいないわ」

「そうか……貴様らでは俺の相手にはならん、退け。無駄な戦闘をするつもりはない。それでも俺の前に立つというのなら倒させてもらう」

「舐めてるの⁉︎ 何が無駄な戦闘よ! 戦争を始めたのはあんたたちじゃない!」

「……この戦争自体は無駄ではない、我が理想を叶えるために必要なものだ」

「だったら私はあんたと戦う理由があるわ! あんたのことなんて知らないけど、あんたの…エディンの理想なんて叶えさせてやるもんですか!」

「俺の理想はエディンとは異なる……とはいえ、来るなら来い! 相手してやろう!」

「望むところよ!」

「アイエフさんだけに戦わせるわけにはいきません! 私たちも戦います!」

「みんな……! えぇ、行きましょう! 師匠が……ネプ子が来るまで食い止めるわよ!」

「「「「「はい!」」」」」

「雑兵共め……纏めてかかってくるがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

「イストワール! 戻りました!」

「あ、ギンガさん! 例の物は用意してありますよ!」

「リミテッドパープルもですが……ネプテューヌ様もですね……」

 

 ネプテューヌ様はピーシェ様と戦いたくないからか、部屋に閉じこもってしまっています。そっとしておいて、私たちだけでなんとかしようと思っていたのですが、状況が状況なのでそういうわけにもいかなくなってきました。

 

 ……ん? ネプテューヌ様の端末へ着信がありますね。本人は出る様子がないので代わりに私が出ましょう。

 

「もしもし」

『ネプテューヌ! ……ってその声はギンガね』

 

 ブラックハート様ですか。周りの音的に高速で飛行中のようですね。

 

「はい……あの島に向かっているのですか?」

『ええ、あの島を直接叩けばすぐにこの騒動を終わらせられそうだわ。国の方はできる妹に任せておけば問題ないもの。どこかの誰かさんにきつい指導を受けたらしくて、前よりも頼れるようになったし』

「……そうですか」

『ネプテューヌに代わってもらえる?』

「かしこまりました」

 

 今のネプテューヌ様は代わるかわからないのです端末を耳に近づけて強引に聞かせるとしましょう。

 

『こらぁネプテューヌ !』

「うわぁ⁉︎ ノワール⁉︎」

『まだそんなとこにいるの? 早く国民を守りに行ったらどうなの?』

「でも……だってピー子だよ?」

『あなた女神でしょ⁉︎ 女神なら自分の感情より国のことを考えて行動しなさいよ!』

「ピー子をやっつけろってこと……?」

『私ならやるわ……言いたいのはそれだけ。じゃあね』

 

 そう言ってブラックハート様は通話を切りました。ネプテューヌ様が心配でしょうがなかったのでしょう。言葉は厳しくても、本当にお優しいお方です。

 

「ギンガさん〜」

「はい」

「あたし〜ノワールちゃんを手伝ってくるから〜ねぷちゃんをよろしくね〜。あたしが言うより〜ギンガさんが言った方が効果あると思うし〜」

「…わかりました。行ってらっしゃいませプルルート様」

「うん〜ギンガさんも頑張ってね〜」

 

 そう言ってプルルート様は変身し、R-18アイランドに向かいました。さて、こちらも時間がないので、少し厳しめにいきましょう。

 

「ノワールにはできるかもしれないけど……私には……」

「ネプテューヌ様」

「……ギンガ……」

「正直に申し上げるとパープルシスター様ではイエローハート様の相手は厳しいです。この国を守るためにはあなたが戦うしかありません」

「……嫌だよ……私ピー子と戦いたくなんて……」

「……ネプテューヌ様がこの国の守護女神になった時、私に言いましたよね? 『自分の信じるもののために戦う』、『自分を信じるもののために戦う』と。それ、嘘だったんですか? それか、友好条約で一応平和を築いたから、そこらへんの気持ちはぜーんぶ忘れちゃいましたか?」

「……」

「私は……敵を倒すつもりで戦います。ですが、あなたにもそうしろとは言いません」

「でも……戦うって……」

「奪われたものは奪い返せばいいんですよ。敵を倒すんじゃなくて、そういう戦いをすればいいんです」

「奪い返す………っ! ギンガ!」

「何でしょう?」

 

「私はピー子をエディンから奪い返す! だから、誰にも邪魔させないで!」

 

「……ふふふ、ははははは! ……失礼しました。ですが、それでこそ、ネプテューヌ様です! かしこまりました! あなたとピーシェ様の間に……何者も入れさせないと約束しましょう!」

「……ありがとね、ギンガ。……変身!」

 

 ネプテューヌ様は変身し、私はリミテッドパープルを装備します。以前と比べ、少し性能と付け心地が良くなっていますね、流石はイストワール。

 

「ギンガさん……リミテッドパープルの長時間の使用は……」

「わかっています。もうあんなヘマはしませんよ」

「わかっていても無茶をするのがギンガさんじゃないですか……まぁそれでこそギンガさんですものね。ネプテューヌさんもお気をつけて」

「ええ、ありがとういーすん」

「あ、ねぷねぷ、ギンガさん、これ、私特製の救急キットです! 一つしか用意できなかったですけど……」

「じゃあそれはギンガが持っていて」

「よろしいのですか?」

「私とピー子の間にそれは必要ないわ」

「…わかりました。コンパさん、ありがとうございます」

「はい、二人とも頑張ってくださいです!」

「ええ!」 「はい!」

 

 コンパさんとイストワールに送り出され、パープルハート様と共に空を翔けまた戦場に戻ります。

 

「行きましょうギンガ。ネプギアが、あいちゃんが待ってるわ」

「そのお二人だけではありません。プラネテューヌ中があなたを待っています」

「そうね!」

 

 ……こうなったネプテューヌ様、パープルハート様はもう誰にも止められません。これはもう凱旋です。

 

 

 

 

 

 

 

「パープルハート様、二手に分かれましょう。実はイエローハート様以外にもう一人? 一機? ……とりあえず強敵がいまして、そちらをあいちゃんに任せたままにしてしまっているので」

「わかったわ。お願いね、ギンガ」

「はい」

 

 パープルシスター様ははちゃめちゃな戦い方をするイエローハート様のせいで、防衛ラインからはだいぶ離れたところに行ってしまったようです。パープルシスター様の方へ向かうパープルハート様と、防衛ラインの方へ向かう私とで分かれました。

 

 

「あははは! 面白ーい!」

(……やっぱり、ピーシェちゃんには何度攻撃を当てても……全然ダメージがない)

「それぇ!」

(もう、抑えられ……!)「きゃあっ!」

 

「遅くなってごめんね、ネプギア。少し休んでなさい」

「お姉ちゃん……! でも……っ!」

「大丈夫……私がなんとかしてみせるわ」

 

「新しいのが来たー! ねー! 遊ぼうよ!」

「そうね、ピー子! 今度は私が遊んであげるわ! ……私のやり方で、さあ来い! ピー子!」

 

(お姉ちゃんが変身を解除した……? 何をするつもりなんだろう……?)

 

 

 

 

 

 

 

「弱いな。もう立っている兵はお前だけだぞ。最後の警告だ。いたずらに命を落とすことはない、退け」

「まだよ……師匠が来るまで食い止めてやるんだから……!」

「……少し訂正しよう。弱いが、意思は強いな。貴様のことは敵として認めてやる。だが、退かぬならトドメだ!」

「……っ!」

「アイエフと言ったか。貴様の名は覚えておこう! はぁっ!

 

 ……っ⁉︎」(手応えがない?避けられたか?いや……)

 

 ギリギリ間に合ったようですね。奴の大剣が振り下ろされる前にあいちゃんを抱えて回避しました。

 

(速い…っ! あの少女も素早かったが、あの男はそれ以上だ)

 

「師匠……?」

「こんなボロボロになるまで……遅くなって申し訳ありませんでした。よく私が来るまで持ち堪えてくれました。ありがとうございますあいちゃん、いえ、我が弟子アイエフ」

「(師匠が……やっと私を……名前で……)師匠……ししょぉ〜……!」

「な、何故泣くのですか…⁉︎ そんなにあのロボに痛めつけられたのですか⁉︎ ……俺の愛弟子を……許せねえ……っ‼︎」

「ちがうんです〜あと素が出てます〜」

「おっと、いけません」

 

 アイエフだけでありません、プラネテューヌの兵が皆、奴を食い止めてくれていたそうです。皆ボロボロですが、死傷者は……いないようですね。よかった……

 

「……貴様が女神補佐官のギンガだな?我が名はブレイブ。矛盾に満ちた今のゲイムギョウ界の女神の統治に異を唱えるためにエディンに身を寄せている」

「あなたのことはどうでもいいです。しかし、私の愛弟子や教え子たちを可愛がってくれた借りを返させていただきます」

「……奴らは強くはなかったが、よく鍛えられていた兵たちだった。貴様が育てた者たちなのだな……ふっ、貴様には期待できそうだ!」

 

(アイエフ)

「はい!」

(ーーーーーーーー)

「……! わかりました!」

 

「話は済んだか……?」

「待っていてくださったのですか? お優しいことで」

「ふん、準備ができたならば……これは挨拶代わりだ! 我が剣を受けよ! 『ブレイブソー「『ギャラクティカエッジ』」……ぬっ!」

 

 敵の大剣から繰り出される技の前に、こちらの技を出し潰します。しかし、技を潰すためのものなので大したダメージになっていませんね。

 

(あれが噂の剣技……予備動作無しで技が出てくるのか……厄介だな)

 

 とりあえず、少しずつ削って行きましょう。大きなダメージを狙うと逆にこちらがやられそうです。正面からまともに相手する気はありません。

 

「くっ……ちょこまかと……!」

 

 それは当たり前でしょう。自分より大きくてパワーのある相手に正面から戦う人がどこにいますか。常に敵の死角に回りながら戦うんですよ。敵の大剣の大振りの攻撃は当たらないし、技ならば発生前に潰せます。しかし、大剣を振ることしか脳がないわけでもなさそうですね。それに巨体だから動きが遅いというわけでもなさそうです。見た感じ肩とかからミサイル出してきそうですし、ビームとかも出すんでしょうか?

 

「まずは足を止めるか」

 

 肩からミサイル……! やはり来ましたね。弾速と誘導が良く、避けきれそうにありません。ならば……

 

「闇の氷に抱かれろ……『魔粧・氷結樹』!』

 

 その名の通り、魔力でできた氷を樹のように張り巡らせ、ミサイルを誘爆させます。ちなみにこの魔法名もアイエフの設定ノートから付けたものです。私の使う魔法は彼女の設定ノートから名前を借りまくってます。

 

「(魔法まで使いこなせるのか……アノネデスの言っていた通り、下手したら女神と戦うより厄介かもしれん)しかし、避けているだけでは勝てんぞ!」

 

 確かに奴の言う通りですね。とはいえ、巨体のくせに意外と隙がありません。大きな一撃を食らえば即ゲームオーバーです。敵の大剣の技をまともに食らえば体の半分がもう半分とお別れすることになるでしょう。敵の技は発生前に潰せますが、こっちから技を仕掛けに行っても逆にダメージ覚悟で突っ込んで来られたらおしまいですね。さて、どうしたものか。

 

(この男……一切戦闘に焦りを見せない。いや、焦りをだけではない、無駄な感情を持ち込まず、最適な行動を繰り返している、敵ながら綺麗な戦い方をする……面白い!)

 

 敵の攻撃を捌きながら、技を発生前に潰すものの、こちらの攻撃も大したダメージになっていない膠着状態が続きます。しかし、そうなるとリミテッドパープルの制限時間がある私の方が不利ですね。

 

「……一つ聞こう。貴様のような男が、なぜ女神に尻尾を振るようなつまらん生き方をしている?」

「つまらない……? 最高の生き方じゃないですか」

「くだらん、その女神の悪政により、ゲームのできない恵まれない貧乏な子供が増えているというのに!」

「はぁ……?」

「高額化するゲーム、サービス、それにより恵まれない子供達は娯楽を奪われ続けている! 今のゲイムギョウ界はそんな子供たちを切り捨てている!俺はそんな子供たちの嘆きによって生まれた存在だ!」

「……エディンがその子供達を救うという理想のための国と? 私には到底そうは思えませんが」

「エディンは今の世界に打ち込まれる変革の楔に過ぎない! その変革の果てに……俺は全ての子供が平等に娯楽を楽しめる世界を創る! それが俺の正義だ!」

 

 あーはいはい、その手のやつですねこいつは。女神様ならばそれを聞いて何か思うことがあるのかもしれませんが、私は別に…………

 

 

 

『あなたのような子供を作らないためと思って頑張ったのよ』

 

 

 

 …………なんでこんな時にあなたの言葉を思い出してしまいますかね。まぁでもそうですよね、女神様が子供達を切り捨てるわけなどないというのに。

 

「お前は知らないだけでしょう……一つ、言っておきます。『お前』は『私』です」

「何? 誰が貴様のような……!」

「わかりませんか? わからないなら私には勝てません」

「ほざけ! 小手調べは終わりだ! 食らうがいい!」

 

 敵の背部のキャノン砲から上空に放たれたビームが雨のように降り注いできます。上からのビームと前からの剣……二段構えですか。上で防げば前から斬られ、前を防げば上からビームを浴びるはめになる……割とやばい状況です。ミサイルならさっきみたいに誘爆させればなんとかなるんですけど……ビームとなると話は別ですね。

 

 ……完全に避けるのは無理ですね、ダメージを安く済ませるように動きましょう。

 

(なるほど……あえて上のビームに突っ込みダメージを少なく済ませるか)

 

 逆に敵のビームの雨の真ん中は、敵の斬撃からの安全地帯になるわけです………が。

 

「ぐぅぅぅぅっ! 痛ってぇ……そりゃ防御したとはいえビームの雨に突っ込んだんですから痛いに決まってますか……」

「だいぶダメージを食らったようだな!」

「いいえ、まだまだですよ」

 

 ……強がってはいますが、今のでだいぶこちらの体力が削られました。そのせいでリミテッドパープルも制限時間もかなり減らされましたね……しかし、大剣の技を直接食らうよりはマシだったということにしておきましょう。しょうがありません、こっちもとっておきを使うとしましょう。秘策も込みで……!

 

「風よ! 来い‼︎」

 

「(……風? 風魔法か? ……何も起こらんぞ?)錯乱したか! 仕留めさせてもらおう!」

 

 近づいてきましたね……! これならばいけます!

 

「『シェアリングフィールド』!」

 

 

 

 

 

 

 

「弱い! つまんない! もう遊ばない!」

「……弱いって言う方が弱いんだもんね……!」

「離して……離し……離せっ! 離せぇっ!」

「離さない! もう絶対に……!」

 

 

 

 

 

 

 

「面妖な空間だ……だが、問題はない!」

 

 私のシェアリングフィールド内のルールは女神様への想いの強さで戦闘力が変化する…のですが、一つ問題がありまして、それはプラスの感情じゃなくても良いんですよ。奴のように信念があって女神様を憎んでいる相手にはそこまで効果がないんです。

 

 まぁいいです、今は奴の弱体化が目的ではありませんので。

 

「これが貴様の奥の手か……しかし無駄だったようだな!」

「さあどうでしょうね?」

 

「『クロスエッジ』!」

「ぬぅぅっ!?」

 

 背後からの一撃で奴が体勢を崩します。

 いい一撃です…………アイエフ。

 

「ぬぅ……っ⁉︎ 貴様は動けなくなるぐらいダメージを負っていたはず……」

「そうね……知り合いに腕のいい看護師がいてね。その子特製の救急キットがすごいのよ。あんなダメージを食らった後でも、それを使えばすぐに動けるようになるの」

 

(……今の一撃……本当にあの少女のものなのか? 威力が先程戦った時とは段違いだったが……)

 

 そう、これが私の秘策です。

 

『アイエフ』

『はい!』

『そのコンパさん特製の救急キットを使って待機しててください。そして、私が『風よ!』って叫んで呼んだら私のシェアリングフィールドの範囲内に急いで来てくださいね』

『……! わかりました!』

 

 てな感じですね。『風』というのは、相手が魔法を警戒してくれるかもしれないのと、あいちゃんが以前『ゲイムギョウ界に吹く一陣の風』と名乗っていたからそう叫ぶことにしたのです。

 

「それが貴様らの策か⁉︎ 二人になったところで俺の相手ではない!」

「それはどうでしょう。あなたも気づいているはずです。先程のアイエフの一撃が、あなたの思ってる以上の威力だったことを」

「この面妖な空間のせいというわけか!」

「ご名答! 今の彼女をさっきまでの彼女だと思わないことです」

 

(師匠が前言ってたわ……師匠のフィールド内では女神への想いが強さになるって、だから今の私はなんかすごく強くなってる気がする……って! これじゃあ私がネプ子のこと大好きみたいじゃない!!」

「大好きじゃないのですか?」

「し、師匠! 思考を読まないでください!」

「私は思考を送れても読むことはできませんよ。途中から声に出てました。話を戻しますけど、ネプテューヌ様のことがお嫌いなのですか?」

「え⁉︎ そ、それは……好きですけど……」

「そうですよね! ネプテューヌ様を愛する者同士! 共に参りましょうか!」

「誤解を招きそうな言い方しないでください!」

 

「何が女神を愛する者同士だ! 女神が正義だと誰が決めた!」

 

「さぁ、敵が来ますよ。指示は……必要ですか?」

「大丈夫です! 師匠に合わせてみせます!」

「OK!」

 

 そうしてアイエフは右から、私は左から斬りかかります。

 

(狙うはあの男一択だ! 少女の方は強くはなっているが、気にするほどではない!)

 

 奴は私しか狙ってませんね。好都合です。奴も疲弊してきてるはず……いやロボだから疲弊とかしないんでしょうか? とりあえずこのフィールド内で仕留めます!

 

(ミサイルもビーム砲のエネルギーはもうないが…この空間を生成してからか奴の息も上がってきて、機動力も落ちてきている!ならば剣だけで充分だろう!)

 

(あいつ、私のことを気にも留めてないわね……! まぁ、私と師匠相手ならそうなるか…………それにしても、今の私……そんな状況じゃないのに…なぜかとても心地がいいわ……なんでだろう……)

 

 ……アイエフ? あの表情……気配……なるほど……!

 

「余所見をしている暇があるのか!」

「さっきからずっとしてるお前には言われたくありませんね!」

「何……?」

「気づいていないならいいです」

 

(あぁ、これが……ずっと前、師匠が言ってた自分の力の『核心』に近づくってことなのかしら? なんかわかってきたわ……自分がどう動けばいいか、どうやって戦えばいいか)

 

 そうですよ、アイエフ。そういうことなのです。さて、少しの間……こいつの動きを止めていてあげましょうか!

 

(何⁉︎ 俺の大剣を剣で受けただと⁉︎ 俺と力勝負をしようというのか……? 舐められたものだ! ……後ろからあの少女に攻撃させようとしているようだが、無駄だ! この男の一撃ならまだしも、あの少女の攻撃では俺の装甲に傷などつかん! 俺はこの男だけに意識を集中していればいい! このまま押し切って仕留める!)

 

 ……みたいなこと考えてそうですね。ならば、ぶちかましてやりなさい、我が愛弟子よ!

 

(今の私なら『これ』ができそうね……見ていてください、師匠! そしてネプ子……先を行くわよ……!)

 

「はぁぁっ! 『ギャラクティカエッジ』‼︎」

 

 無防備な敵の背部へ放たれたアイエフの一閃は、敵の装甲の表面を砕きました。己の力の『核心』を掴んだ者の一撃です。まともに食らって無事で済むわけがありません。

 

「ぐぁあああ! 馬鹿なぁっ!」

「舐めすぎましたね、我が自慢の愛弟子を」

「師匠!」

「わかっています」

 

 怯んだ相手に、今度は合わせて叩き込んでやりましょう。

 

「「『クロス・ギャラクティカエッジ』!」」

 

 剣技の真髄が合わさったその技は……敵の大剣ごと装甲を切り裂きました。

 

 ……私たちの勝ちです。

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ……シェアエネルギーが……機械から発生しているの? これがイエローハートの強さの秘密なのね!」

「じゃあこれを壊したら……ピーシェちゃんとかエディンの暴徒たちはどうなっちゃうのかしらぁ?」

「そこのオカマが教えてくれない以上、やってみるしかないわよね!」

 

「『ファイティングヴァイパー』!」

「『レイシーズダンス』!」

 

 

 

 

 

 

 

「嫌い……っ! 嫌い……」

「いいよ……嫌いでもいい。ピー子がここにいるんなら……」

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……負けたのか……」

「えぇ、負けです。今連絡が入りました。R-18アイランドが落ちた、と。イエローハート様の力の源と人々を洗脳していた機械も破壊されたようです。それにより変身が解けたイエローハート様……ピーシェ様の身柄はこちらの女神様が確保しました。エディンは終わりです。お前たちの負けなんです」

「そうか……

「……ここからは、プラネテューヌの女神補佐官としてではなく私……俺個人の言葉で喋ろう」

「……」

「俺は……お前の言ってることはそこまで間違っていないと思う。確かに、この世界にゲームができないぐらい貧しい子供がいることは事実だ。俺もそうだったよ、俺がガキの頃はゲームどころか衣食住も無いような日々を送っていた」

「……!」

「けど、そんな俺は女神様に救われたんだ、そして女神様は俺みたいな子供を作らないように力を尽くしてくれた。それは今からはもう数えるのも面倒なぐらい昔の話だけど、その女神様の想いは時を超えて、今の女神様にも受け継がれているはずなんだよ。だから…… もう少し、女神様を信じてくれないか? 女神様だけじゃない、俺も俺たち教会も……お前の言う全ての子供達が平等にゲームを楽しめる世界とやらに近づけるように頑張るからさ」

 

「師匠……」

 

「……あの言葉の意味がようやくわかった。貴様も俺も自分の信じる正義のために戦っている点では同じだったというわけだな」

「そうだよ、正義の押し付け合いさ。その果てに未来で立ってるのは俺かお前らか、それはこんな戦いだっだわけだ。それが戦争なんだよ」

「ここで俺が消えても……貧しい子供達の心の嘆きがあれば俺は何度でも蘇る。そのことを肝に命じておけ」

「なら今度お前が蘇ったら、戦うんじゃなくて協力してもらおうかな」

「……そうか。ギンガ、それとアイエフ、貴様たちと戦えたことを誇りに思う。さらばだ……」

 

 そう言ってブレイブは活動を停止しました。

 

「終わり……ましたね」

「パープルシスター様がネプテューヌ様とピーシェ様を無事回収したようです。兵士たちも撤退が完了したらしいので、私たちも戻りましょう、あいちゃん」

「……え? 何であいちゃん呼びに戻ってるんですか? さっきはアイエフって呼んでくれてましたよね?」

「さぁ? ほら、置いていきますよあいちゃん」

「えぇ⁉︎ せっかく名前で呼んでくれたと思ったのに〜!」

「そうですね、先ほどあいちゃんがやった『ギャラクティカエッジ』、見事でした。しかし、予備動作があるのでまだまだです。次は予備動作無しで出せるようになったらまた呼び捨てにしてあげましょう」

「そんな〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、新国家エディンはその短い歴史の幕を閉じました。暴徒の洗脳も解けたため、各国の暴動も大きな被害を出すことなく終わりました。しかし、全てが元通りというわけではありません。

 

 失われたピーシェ様の記憶は戻ることはなく、そのままプルルート様と彼女らの次元に帰ることになりました。

 

 私は、エディンの件の事後処理があまりにも忙しいので立ち会うことができませんでしたが、先にプルルート様とピーシェ様への別れの挨拶を済ませ、プルルート様から私の人形をいただきました。

 

 そしてお二人が帰ってしまった日の夜、仕事から教会へ戻るとネプテューヌ様がピーシェ様の描いた絵を眺めていました。

 

「ねえギンガ……」

 

 声をかけずに見守っているつもりでしたが、ネプテューヌ様からこちらに声をかけてくるとは。

 

「……どうしました?」

「ピー子がさ、最後ねぷてぬって言ったんだよ。記憶なくしてからねぷてゅーぬだったのに……」

「……いつか、また会えた時、その答えは分かりますよ」

「……そうだね」

 

 

 

 会えますよ。いつか、また、どこかで、必ず。

 

 

 

 

 




次回から最終章に入っていきます



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必殺技の贈りもの

最終章に入る前のおそらく最後の番外編的な初投稿です


-昔(ネプギアが生まれる少し前ぐらい)-

 

 

「はぁ……はぁ……もう無理! ネプ子さんはもう動けませーん! ギンガの訓練きつすぎィ……!」

 

「では、少し休憩にしましょうか」

 

「何で……はぁ……ギンガは……ふぅ……全く疲れてないのさ…」

 

「最適な体の動かし方を覚えると疲労を軽減できるんですよ。むしろ動けば動くほど調子が良くなってきますね」

 

「……なにそれ……どうやったらできるの……?」

 

「長年生きてきてなんとなく掴んだコツなので説明できないんですよね。申し訳ありません」

 

「ねぷぅ……」

 

「ネプテューヌ様にもそのうち掴めますよ」

 

「そのうちか……それよりもさーギンガー? ギンガがいつも読んでるその本何ー?」

 

「これですか? 本……というよりは教科書ですね。女神様に指導をする際の要項を纏めたもの……みたいな感じです」

 

「ふーん……ギンガもそういうの読むんだ」

 

「まだ私がこういうことに慣れていない頃、当時の女神様に作ってもらったものなんですよ。すごく丁寧に作られているものなので、今でも参考にしています」

 

「私も読んでみていい?」

 

「どうぞ」

 

「ふむふむ……ねぷぅ……あんまり面白いこと書いてないなぁ……」

 

「まぁ、そういうものですので」

 

「プラネテューヌに代々伝わる超必殺技とか書いてないのー?」

 

「『そういうのを残すと後の子たちの独創性を妨げかねない』みたいなことを言って残さなかったようなんですよ」

 

「なんか私と似てるねその女神。私にも妹か後輩ができたらその子には自分独自の技を磨いてほしいしねー」

 

「そうですね……その方はネプテューヌ様と似ていました」

 

「……ねぷぅ⁉︎ もしかしてギンガは私を通してその女神のことを見ていたりして⁉︎ 嫌だよそんなのー! ちゃんと私を見てよ!」

 

「似ていても、魂の輪郭が異なるので同じに見えることはありませんよ」

 

「魂の輪郭って何⁉︎ ギンガには私がどう見えてるの⁉︎」

 

「それに今の私はあなただけを見ていますよ。むしろあなたしか見えていません」

 

「え? ……そんな……なんか情熱的……! 恥ずかしいよぅ……その……私も……ギンガのこと……」

 

「で、話を戻しますけど」

 

「ねぷぅ⁉︎ サラッと流されたー⁉︎ 私のときめきを返してよー!」

 

「……? 何か気に障ったのなら謝ります……申し訳ありません……」

 

「はぁ……まぁそれでこそギンガだからね……なんでもないよー! 気にしないでー!」

 

「わかりました。というわけで……ええと、なんの話してましたっけ?」

 

「え? ……うーん、あ! 必殺技だよ! プラネテューヌに代々伝わる超必殺技の話!」

 

「そして、そういうものは残されていないって話でしたね。あ! いえ、違います! そういえば、一つだけ書き残してもらっていた技がありました!」

 

「おお! なになにー⁉︎」

 

「確かこのページの……これです!」

 

「……ええと、『クリティカルエッジ』……?」

 

「はい、私の一番好きな技だったので……どうしてもと我儘を言って残してもらったのです」

 

「ふーん……ギンガの好きな技かー……」

 

「……さて、ネプテューヌ様がもうお元気そうなので訓練を再開しましょうか」

 

「えー⁉︎ もう⁉︎ ……ネプ子さんは疲れたので動けませーん……」

 

「嘘はいけませんよ、ネプテューヌ様の気配や魂の輪郭から、もう充分疲労が回復していることはバレバレですので」

 

「ねぷぅぅぅ! だから魂の輪郭って何なのさー‼︎⁇」

 

 

 

 

 

 

 

「ギンガとお出かけー! つまりデートだよ!」

 

「お出かけと言ってもクエストですけどね、油断はいけませんよ」

 

「わかってるって!(デートってところ流しやがったよー!)」

 

「今回の討伐対象は……ビッグスライヌですね。今のネプテューヌ様なら楽に倒せるでしょう」

 

「でも三体ぐらいいるんじゃなかったっけ?」

 

「そうですね。囲まれると厄介そうです」

 

「よーし! さっさと片付けて帰ってゲームしよ!」

 

\ ぬら〜〜 /

 

「ねぷぅ⁉︎ 早速出てきたよ! でも一体だけだね」

 

「幸い群れていなかったようですね。ここは私が」

 

「いいよ、こいつは私がちゃちゃっと片付けるからさー! まぁ見ててよ!」

 

「かしこまりました」

 

「ちゃんと見ててね! 目を離しちゃだめだよ! 刮目しててね!」

 

「そんなに言わなくてもちゃんと見ていますよ」

 

「とおりゃああー! 『クリティカルエッジ』!」

 

「……! その技は……!」

 

\ ぬら〜…… /

 

「ふっふーん! その程度でネプ子さんに勝とうなど一万年と二千年早いよー! ……そんなことより、ギンガ見てた⁉︎ 見てたー⁉︎ 一生懸命練習したんだからね! どう⁉︎」

 

「はい! とても綺麗で美しい技でした」

 

「えへへ……」

 

「………っ! ネプテューヌ様! 後ろです!」

 

「え?」

 

\ ぬら〜〜 /

 

(嘘⁉︎ 二体目⁉︎ 避け……間に合わな……!)

 

「はぁっ! 『ギャラクティカエッジ』!」

 

\ ぬ…… /

 

「塵屑が……女神様に触れるなど20000年早い……地獄で後悔しろ」

 

(何今の技……? 私がやったのより綺麗でかっこいい……)

 

「大丈夫ですか、ネプテューヌ様⁉︎」

 

「……大丈夫だけど……大丈夫じゃないかな……」

 

「大丈夫じゃないんですか……」

 

「いや、まぁ気にしないで!」

 

\ ぬらら〜〜 /

 

「あ、三体目だ。なんかトントン拍子で出てくるね」

 

「だからこそ討伐依頼が出るほど危険なのでしょう。私たちならともかく、このダンジョンに迷い込んだ民間人は遭遇したらひとたまりもないでしょうし」

 

「なるほどねぇ……とりあえず、これで最後だね! 今度は私がやるからギンガは見ててね! さっきの汚名挽回といきますか!」

 

「汚名挽回は誤用……いや、諸説あるらしいですよね」

 

「話逸れてるけど……まぁいいや。よーし私も!(『ギャラクティカエッジ』!)」

 

\ ぬら〜? / ぽよ〜ん

 

「ねぷぅ⁉︎ 全然効いてない!」

 

「ネプテューヌ様……? どうしたのですか? さっきは一撃で仕留ましたのに」

 

「え? そ、そうだね。おかしいな〜。そうだ、ギンガさっきの技もう一回やってみて欲しいんだけど」

 

「かしこまりました」

 

「あ、でも倒さないでね」

 

「難しいですね……ですが、やってみます。はぁっ!」

 

\ ぬぅ〜〜〜〜 /

 

(なるほどなるほど、あんな感じでやればいいんだね。今度こそ成功させちゃうよ!)

 

「倒し切らずにすみました……ネプテューヌ様、ここからどうすれば?」

 

「トドメは私がやるよ! 見ててねギンガ!(『ギャラクティカエッジ』!)」

 

\ ぬら〜? / ぽよ〜ん

 

「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛‼︎‼︎」

 

(めっちゃ藤原○也に似てますね……ではなく、ネプテューヌ様は何を……? 新技の開発でしょうか?)

 

「むむむむむぅ……! 動きは完璧にコピったはずなのにぃ……!」

 

\ ぬらららら〜〜 /

 

「左右に揺れてる? ……っ! あのスライヌ……っ! めっちゃシャゲダンしてるよー! 煽ってきてるよー!」

 

「ネプテューヌ様落ち着いてください」

 

「ぐぬぬ……ギンガ! あの技どうやってやるの⁉︎」

 

「あの技……? 私の『ギャラクティカエッジ』ですか?」

 

「そう! 何回か真似しようとしたのに全然できないんだよー!」

 

(なるほど……さっきまでのはそういうことだったんですね……)

 

「どうやるかと聞かれましても……えいっ! って感じです」

 

「全然わかんない〜! もういいや!『クロスコンビネーション』!」

 

\ ぬらぁ〜…… /

 

「撃破……と、見事です、ネプテューヌ様」

 

「全然見事じゃないよー! もう! 帰ったら特訓だよ! 絶対にあの技をできるようになってやるもんねー!」

 

「うーむ……あの技は私や人にとっての最適な剣技ですが、女神様にとっては最適じゃないんですよね。だから、ネプテューヌ様はあまりやる必要はないと言いますか……それに私も女神様にはご自身の独創性を大事にして欲しいので……」

 

「やるったらやるのー! 早く帰って特訓だよー!」

 

「わ、わかりました……」

 

 

 

 

 

 -現在-

 

 

「薬草集め、手伝ってくれてありがとうです! ぎあちゃん、ギンガさん」

 

「いえいえ、私も最近薬草といった回復アイテムの素材の在庫がなくなった来たのでちょうどよかったんですよ」

 

「それにしても、お姉ちゃんがギンガさんと一緒に来なかったのは意外でした」

 

「ネプテューヌ様はただでさえお仕事が嫌いなのに加え、こういった収集クエストは面倒だからとやりたがらないんですよね。討伐クエストなら多少はやる気を出してくださるのですが…」

 

「お姉ちゃんらしいな……」

 

「ねぷねぷらしいです……」

 

「それに、今日はあいちゃんと模擬戦をやると言っていましたので」

 

「あいちゃん、最近すごく調子が良さそうです。ねぷねぷに挑むんだー! って張り切ってたです」

 

「力の『核心』を掴んだからでしょうね」

 

「自分の力の『核心』……私にも掴めるのかな……」

 

「どうでしょうね……こればっかりは保証できません。女神様ほどの存在となると人よりそれを掴むのは難しいので、それができずに生涯を終える女神様がほとんどでしたからね」

 

「そうなんですか……」

 

「ぎあちゃんならきっと掴めるです!」

 

「保証できないとは言いましたが、自分を信じていた方ができる確率もあがりますから」

 

「わかりました! 頑張ります!」

 

\ グォオオオオオーーー! /

 

「……おっと、モンスターが現れましたね。さて、サクッと片付けて採集に戻りますか」

 

「……私がやります! ギンガさんとコンパさんは下がっていてください!」

 

「女神様の手を煩わせるわけには……いえ、そうですね、ネプギア様、お願いします」

 

「ぎあちゃん、ファイトです!」

 

「はい! てやぁーーっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

「ネプ子と戦闘訓練なんていつ振りかしらね……?」

 

「前に一回やったきりだったよねー」

 

「……思い出したわ。その一回で女神と人間の違いに心が折れそうになってそれ以降やめたんだったわね……けど、今回は前みたいにいかないわよ!」

 

「ふっふっふ、望むところだよ! それに女神様と戦闘訓練なんて誇りに思うといいよあいちゃん!」

 

「言ってることは確かなんだけど、ネプ子にそう言われるとなんか腹立つわね」

 

「それにしてもあいちゃん最近調子いいんだって〜?」

 

「そうよ! めちゃくちゃ良いの! だからあんたに挑むのよ!」

 

「どこからでもかかってこいあいちゃん!」

 

「なら……行くわよっ!」

 

「……って速っ⁉︎」

 

「油断しすぎよ!」

 

(嘘⁉︎ あいちゃんこんなに速かったっけ⁉︎ いやあいちゃんは速さが売りだけど……前とは違う! 闇雲に攻撃するんじゃなくて、持ち前の速さを活かして私の行動を全部先に潰してくる!)

 

(師匠がブレイブとの戦いでやっていたことよ! 力では劣っていても、速さで勝っていれば戦闘を有利に進められる! このままハメ殺しにしてやるわ!)

 

(やばいよ、防戦一方だよ〜! けど、防御に専念していればなんとかなるよ! そんなに速く動き回ってれば先にそっちのスタミナが切れるもんね!)

 

(なーんて、思ってるんでしょうね! けど!)

 

(……あれ? スタミナが切れるどこかなんか更に動きが良くなってきてない⁉︎ あいちゃんどうしちゃったの⁉︎ まさかこれって……

 

 

『最適な身体の動かし方を覚えると疲労を軽減できるんですよ。むしろ動けば動くほど調子が良くなってきますね』

 

 

 ……あいちゃんもその域に⁉︎)

 

「守ってるだけじゃ勝てないわよネプ子!」

 

(そんなことわかってるけど……!)

 

「なんなら変身してみなさいよ!」

 

「……前に変身した私に手も足も出ないで泣きべそかいてたの誰だったっけ⁉︎」

 

「安い挑発ね! まぁしないならしないでいいわよ! このまま一方的に負けて今度はネプ子が泣きべそをかくことになるけど!」

 

「ぐぬぬぅ! あいちゃんめー! だったらお望み通り……変身!」

 

「変身中の攻撃は……ご法度ってやつよね」

 

「変身完了。随分と余裕じゃない、あいちゃん」

 

「余裕じゃないわよ、正直ビビってるわ。けどね! 変身したあんたに、女神パープルハートに今の私がどれだけ通用するか試したくてワクワクもしてるのよね!」

 

「あいちゃんを侮るわけじゃないけど、女神として負けるわけにはいかないのよ。さっさと終わせてあげるわ!」

 

(来る!)

 

「はぁっ!」

 

「……っ!」(さっきと比べてパワーもスピードも段違いね……! 一撃一撃が重い……! 前までの私だったらこの時点で終わってたわ)

 

(確かに前と比べ物にならないぐらい強くなっているわ。変身前の私じゃ厳しいぐらいね。あの人が何かしてあげたのかしら?)

 

(ネプ子が何してくるかはわかるのに! それに身体がついていかない……!)

 

「嬉しいわ、あいちゃんがこんなに強くなってくれて。でも、さっきも言ったけれど、女神として負けるわけにはいかないの。これで決めるわ!」

 

(技が来るっ! 避けるのも受けるのも無理そうね……けど、たとえ勝てなくても爪痕ぐらいは残してやるわ!)

 

(……正面から来るつもり⁉︎ やるじゃないあいちゃん‼︎)

 

(師匠! この技、使わせてもらいます!)

 

「『ギャラクティカエッジ』!」

 

「『クロスコン………えっ⁉︎」

 

 

 

 \ スパーーーン!!!! /

 

 

 

「ちょ、ちょっとネプ子! いきなり棒立ちになるってどういうつもりよ! いくら訓練用の殺傷力のない武器だからって思いっきり顔にやっちゃったじゃない! ……大丈夫⁉︎ 痛くない⁉︎」

 

「大丈夫だけど……どうして……あいちゃんがその技を……?」

 

(言えないわ……驚いて動きを止めてしまったけど、その後も見惚れて動けなかったなんて。そうだわ! ギンガはあの技についてあまり教えてくれないから、この際あいちゃんに聞けばいいじゃない! 流石私、そしてあいちゃん! やっぱり持つべきものは親友よね!)

 

「どうしたのよネプ子?」

 

「……あいちゃん! いえアイエフ師匠!」

 

「ええ⁉︎ 何よ急に⁉︎ ていうか師匠!!??」

 

「私にその技を教えて……教えてください! この通りよ!」

 

「やめて! いつもの姿ならともかく変身後の姿で頭なんか下げないで!」

 

「どうやったらできるのよ⁉︎ 私できないのよその技! コツとか教えてちょうだい!」

 

「どうやるかって聞かれても……えいっ! って感じかしら?」

 

「……どうして」

 

「ん?」

 

「どうしてギンガと同じこと言うのよぉ! 『えいっ』じゃ何もわからないわよぉ! あいちゃんの馬鹿ぁ!」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりです! 『ミラージュダンス』!」

 

「……見事でした、ネプギア様。しかし……」

 

「攻撃が単調過ぎましたよね? それに、前ギンガさんから言われたように、攻撃を一回で完結させちゃってることが多かったし……もっと頑張らないと……武器の出力とかも弄ってみようかな……ぶつぶつ」

 

(……私の指導もだんだん必要なくなってきましたね。嬉しいような寂しいような……)

 

「よし! これだけ薬草があれば救急キットがもっとたくさん作れるです!」

 

「コンパさん、あの救急キットはとても良いものだったので、これからもお願いしますね」

 

「はいです!」

 

(そういえば、あの救急キットがあったからあいちゃんは核心を掴めたわけですし……コンパさんとあいちゃんの愛の力……なのかもしれませんね。さて、収集も終わったので帰りましょうか)

 

「ぶつぶつ……でもここの出力を上げるとバランスが……必要なパーツも足りてないし……ぶつぶつ……」

 

(……帰るのはネプギア様のシンキングタイムが落ち着いてからにしましょう)

 

(あ、そうです。いい機会だからねぷねぷのために聞いておくです)

 

「あの、ギンガさん」

 

「どうしました?」

 

「ギンガさんって好きなタイプとかあるんです?」

 

「好きなタイプ……とは?」

 

「ええと、こんな人が好き……とか、恋人にしたい……とかですかね?」

 

「私は女神様に仕える身なのでそういったものはありません」

 

(まぁギンガさんならそうですよねぇ……)

 

「しかし、その一言で終わらせるのもせっかく話を振ってくれたコンパさんに申し訳ないですから、もしもの話をしましょうか」

 

(……! やったです! 良いことが聞けそうです!)

 

「私のタイプ……といいますか、私が求める人は……私をおいていかない人、ですかね」

 

「……?」

 

「さて、ネプギア様のシンキングタイムがそろそろ終わりそうなので今度こそ帰りましょう」

 

「……ぶつぶつ……帰っていーすんさんに相談してみようかな……あれ? ……もしかして採集終わっちゃっいましたか」

 

「はい、とっくに」

 

「え〜⁉︎ 声ぐらいかけてくれたらよかったじゃないですか〜!」

 

(……『おいていかない人』……? よくわからないです。後でねぷねぷとあいちゃんと作戦会議です)

 

 

 

 

 

 

 

(……突然興奮しだしたネプ子をなだめるのに一時間ぐらいかかったわ……)

 

「ネプ子は何でこの技に拘るのよ?」

 

「あいちゃんだってそれ使うじゃん」

 

「いや、それは私の使える技の中で強いから……」

 

「本当に????」

 

「う……師匠と同じ技だからよ……」

 

「そういうことだよ! 私だってギンガと同じ技使いたいの!」

 

「でも……師匠言ってたわよ、人間にとっての剣技の真髄であって、女神様にとっては違うからネプ子とか女神様が使う必要ないって」

 

「使えるようになってから自分流にアレンジするからいいの!」

 

「それもそうね」

 

「名前も少し変えちゃおうかなー『ギャラクティカネプテューンエッジ』みたいなー?」

 

「師匠と自分の名前混ぜちゃって……そんなに師匠が好きなら、甘えるだけじゃなくて言い寄ってみればいいじゃない?」

 

「ギンガがちょっと言い寄った程度で意識してくれるような人なら苦労はしないよ……過度なことやって引かれたくないし……」

 

「あー……」

 

「それに……ギンガはさ、今は私しか見てないって言ってたけど……あ、ネプギアもいるからネプギアもか……でも何となくわかるんだ」

 

「何をよ?」

 

「ギンガの中には、今でもギンガが一番好きだった女神がいるってことかな。女神だから好きってことじゃなくて、普通に愛してたその人が」

 

「……」

 

「その人のこと話してた時のギンガね、普段しないような穏やかな表情してたんだ。自分では気づいてなかったと思うけど。それ見たらさ……今の私がギンガ落とすの無理かなぁ……って」

 

「ネプ子……」

 

「まぁ諦めるつもりなんてないけどね! 絶対にギンガをその人のものから私のものにしてやるもんねー! ギンガと同じ技使うのはそのためのファーストステップなんだよー!」

 

「……わかったわネプ子、どう説明すればこの技ができるようになるか私でもわからないけど、特訓ならいつでも付き合うから」

 

「ありがとうあいちゃん!」

 

「一緒に倒すわよ! 師匠の中のその女神様を! 後でコンパも交えて作戦会議よ!」

 

「なんか違う気もするけど……まぁいいか、頑張っちゃうよー!」

 

 

 

 

 





なんかネプテューヌ様デレすぎじゃね…?まぁいいや
こういう感じの話はもっと早くにやっておけばよかったかもしれません
次回から本当に最終章に入ります

ウルトラマンZが終わってウルトラ寂しいでございます


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16. 絆-Access-

 
 投稿しようと思ったら文章のデータが消えて心が折れそうになった初投稿です。



 

「プラネテューヌ教会の敷地を開放した国民への大感謝祭……ですか?」

「うん! みんなにはもう伝えたんだけど」

 

 エディン侵攻を食い止めたからか、最近プラネテューヌのシェアが大幅に上昇しているようで、それに対する国民への感謝祭なるものをネプテューヌ様は計画しているようです。

 

「いいですね。ですが私はそのようなイベントの運営についてはよくわかりませんし……他に仕事もあるので……」

「えぇ⁉︎ 手伝ってくれないのー⁉︎」

「申し訳ありません……」

「そんなー! ……あ、いいこと思いついた! はいこれ!」

 

 そう言ってネプテューヌ様が差し出した手には、感謝祭の招待券が握られていました。

 

「ギンガはその日はお客さんとして楽しんでね!」

「お気持ちは嬉しいのですが……感謝祭当日も仕事があるので……」

「ねぷぅぅぅ!」

 

 ……そう、仕事があります。エディン計画の首謀者の一人、キセイジョウ・レイの取調べが。本来はもう少し早く行うつもりだったのですが、逮捕してすぐはまだ彼女の精神状態が不安定だったため取調べの予定が遅れることになったのです。

 

「ギンガっていつも仕事してるイメージがあるけどさー私と仕事どっちが大事なのー?」

「ネプテューヌ様に決まっています」

「……そんなに即答されるとは思わなかったよ」

「しかし、この件が終われば、久しぶりにまとまった休暇が取れそうです」

「じゃあいっぱい遊ぼうね! やることリスト作っておくから覚悟しておいてねー!」

「かしこまりました、では私はこれで」

「うん、お仕事頑張ってね! 私もイベントの準備頑張っちゃうよー!」

 

 そうしてネプテューヌ様の元から去ります。あーーーーーーネプテューヌ様可愛すぎます。ネプテューヌ様の笑顔があれば私は一日に26時間は仕事を頑張れます。

 

 しかし、プラネテューヌのシェアの上昇……引っかかりますね。引っかかる点は二つ、一つは上昇量が高すぎること、もう一つは他の三国が減少しているということ。特に、エディンの本拠地であるあのクソ島を落としたラステイションのシェアまで下降しているのは不可解です……この現象が続くのなら少し調べてみましょうかね。

 

 

 

「ギンガと……えへへ……楽しみだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで感謝祭当日になりました。私はプラネテューヌ教会から離れた場所にあるプラネテューヌ刑務所に向かいます。

 

 ……ん? あれは……?

 

「アブネスチャンネルを見てくれてるみんな! お久しぶり! 幼年幼女の味方、アブネスよ! プラネテューヌの教会に大勢の幼年幼女が集められているという情報が入ったわ! これは陰謀の匂いがするわね! さぁ、幼年幼女を救うわよ!」

「……またあなたですか」

「げっ、狂人!」

「狂人ではありません。プラネテューヌの女神補佐官、ギンガと申します。以後お見知り置きを。あなたはええと、アブネスさん……でしたっけ? なんの御用で?」

 

(名前を覚えてくれてた……⁉︎ 嬉し……じゃなくて!)

 

「私は幼女女神には反対なのよ! 幼女に女神をやめさせるためにはなんだってやるわ!」

「それは何故ですか?」

「何故って……」

「子供は様々な経験をして大人になるものです。幼いからといって何もかも抑制するのは大人のエゴでは?」

「それは……」

「確かに女神様は長く生きていても精神的には未熟なところもあるかもしれません、だからこそ私が……私だけではありません、あなたたちこの世界に生きる大人たちが導くのです。そうやってこの国や世界は、女神様と我々が一丸となって成長していくものなのですよ」

「……」

「まぁすぐにわかってくれなくてもいいです。今日はプラネテューヌ教会では国民感謝祭というものが行われていますので、どうせ来たからには楽しんでいってください。多くの人が楽しんだ方がネプテューヌ様もネプギア様も喜ぶと思うので。では私は用事があるのでこれで」

「あ……」

 

(あの男、狂人だと思ってたけど割とまともな人かもしれないわね。抑制するのではなく導く……か)

 

 さて、気を取り直して刑務所に向かいましょう。飛べばすぐに着くのですが、私は女神様と違い、平時ではプロセッサユニットの使用をイストワールに許されていないので飛べないんですよね。だから、歩いていくしかありません。まぁ今日はいい天気ですのでお散歩だと思えばいいでしょう。

 

 そうやってふと空を見上げると、どこかへ飛んでいくパープルハート様が見えました。今日はイベントの運営で忙しいと言っていたのですが、どうしたのでしょうか?緊急事態なら連絡が私にも来るでしょうし、そういった類のものではなさそうですね。

 

 こちらにも仕事がありますし、勝手について行ったら怒られるかもしれませんから、今回は放っておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

「全く強引なんだから…今日は私も忙しいのに…ブラン!来たわよ!どこにいるの?」

 

「『ゲッターラヴィーネ』!」

 

「……っ⁉︎」

 

「何をするの⁉︎ ブラン!」

 

「シェアを寄越しやがれ! ネプテューヌ!」

 

「何を言っているの⁉︎ 武力によるシェアの奪い合いは友好条約で禁じられて……」

 

「じゃあ騙し取るのはいいのかよ⁉︎ 各国のシェアの動きを調べた! 各国が落とした分だけプラネテューヌが上げてやがる! 他から奪えばそりゃ急に上がるわけだよな⁉︎」

 

「待ってブラン! 私知らないわ! そんなことできるなんて私にも初耳よ!」

 

「百歩譲ってお前じゃないとして、ギンガの野郎がやったのかもな!」

 

「……っ! するわけないでしょう! あの人がそんなこと! あの人を……ギンガを侮辱しないで!」

 

「へっ、やる気になったじゃねえか! 『アインシュラーク』!」

 

「『テラ・ドライブ』!」

 

「うおおおおお!」「はあああああ!」

 

「ちっ……ラチがあかねえな、まぁ今日は警告ってことにして引いてやる。だけどなネプテューヌ、このままとぼけ通すならその時は……戦争だ。じゃあな」

 

「…………何が……起きてるの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 やっと刑務所に着きました。割と時間かかりましたね。

 

「お待ちしていました、女神補佐官様」

「こちらこそ、お待たせして申し訳ないです。では早速取調べを開始するので、キセイジョウ・レイが収容されている部屋を教えてください」

「では、案内します」

「いえ、あまり他人に聞かれたくない話もするので私一人で行かせてください」

「わかりました、では待機しておりますので」

「ありがとうございます」

 

 プラネテューヌは犯罪率が非常に低いので、刑務所の中に全然人がいませんね。それどころか下手したら収容されてるのはキセイジョウ・レイ1人かもしれません。

 

「時は満ちた……! くくく……ふははは……!」

 

 笑い声……? キセイジョウ・レイのものでしょうか? いや、彼女しかいないので彼女のものなのは間違いありませ………っ⁉︎ この気配は……シェアエネルギー⁉︎ 彼女から発生しているというのですか⁉︎

 

「何をしている⁉︎ キセイジョウ・レイ!」

「……遅かったわねぇ、ゲームオーバーよ」

 

 奴から発せられるドス黒いシェアエネルギーのオーラが奴の手錠を破壊し、牢屋も破壊しました。

 

 私は即座にプロセッサユニットを展開、奴を止めるのではなく、刑務所にいる人物を全て避難させるために、時間が惜しいので刑務所の壁を破壊しながら移動します。元々収容されている犯罪者は奴一人、それによりここに勤務してる者もほとんどいなかったため、私一人ですべて抱えて先ほど破壊した壁から脱出します。

 

 私たちが脱出し終えた瞬間、刑務所が建物ごと吹き飛び、激しい地鳴りと共に地面から何かが生えてきました。

 

 ……あれは要塞? いや……国……なのでしょうか?

 

 とりあえず人々を地面に降ろし避難させます。

 

「ありがとうございました……女神補佐官様」

「あなたたちは逃げてください。すぐに女神様が対応に向かうと思いますが、もうここ都市部は危険ですので」

「では、民間人に避難を呼びかけます!」

「ありがとうございます、お願いします」

 

 彼らが避難した後、生えてきた国が浮かび上がり空中で静止しました。まるで天空の城……と呼ぶには不気味ですね。

 

 そこに立ちプラネテューヌを見下ろすのはキセイジョウ・レイ。あの女……ただの市民活動家じゃなかったということですか……?

 

「うふふふふ、ついに蘇った……! ……はぁっ!」

 

 そう言ってキセイジョウ・レイが変身します。あの女……女神様だったのですか……! 長年ゲイムギョウ界に生きてきた私ですら、理解が追いつかない展開です。

 

「私の大陸……私の国……タリ!」

 

 タリ……? 今奴はタリと言いましたか? タリというのは私が生まれる少し前に滅んだ国のはず。なぜ今更そんなものが……ならば奴は……タリの女神⁉︎

 

 奴が本当にタリの女神ならば、今の私ではプロセッサユニットがあっても勝てる相手ではありません。幸いまだ奴に私は捕捉されていないようですし、この隙にプラネテューヌ教会まで戦略的撤退します。気づかれないように低空飛行で行きましょう。

 

 歩けば時間がかかりましたが、飛べばすぐでしたね。時間が惜しいのでプラネテューヌ教会の上部のプラネタワーの窓から入ります。

 

「いーす……イストワール!」

「ギンガさん!」

「あいちゃんもコンパさんもネプギア様も一緒でしたか…皆様は国民の避難誘導をお願いします。私とイストワールはキセイジョウ・レイ……タリの女神と戦いに行きます!」

「タリの女神……? それにイストワール様もってどういうことですか⁉︎」

「ギンガさん……いーすんさん……アレをやるんですか?」

「ぎあちゃん……アレって何です?」

「それは見れば分かりますよ」

 

「ギンガさん!」

「イストワール!」

「「合体!」」

 

 再び登場、ギンガイストワールです。

 

(これが……ネプギアが前に言っていたプラネテューヌの最終秘密兵器ってことね。ごめんなさいネプギア、正直冗談だと思ってたわ……)

 

「「では行ってきます」」

「師匠もイストワール様もお気をつけて!」

「私たちも避難誘導に行きましょう、 アイエフさん、コンパさん!」

「ええ!」「はいです!」

 

 そうしてまた教会から飛び去ります。

 

 タリの女神……一度はお目にかかりたいと思っていましたが……こんな形でそれが叶うことになるとは。しかし、このプラネテューヌに災厄を齎すのならば容赦はしません。

 

 

 

 

 

 

 

(プラネテューヌに戻ってきたはいいけれど……何が起こってるの……? あの浮かぶものは何……? そしてあそこにいる者は誰……?)

 

「あら〜もう来たの? プラネテューヌの女神様」

「まさか、キセイジョウ・レイ?」

「あ〜それ好きじゃないのよね〜だってぇ〜そんなダサい名前女神っぽくないですし〜」

「……あなたも新しい女神なの?」

「はぁ? バカにしないでもらえますぅ? あなたよりず〜っと先輩なんですけど? 私はタリの女神、この土地を統べる大いなる国の女神よ。あはははは!」

「タリの……女神……? タリって遥か昔に滅びた大国の……あなたがそのタリの女神だとして、一体何が目的なの?」

「滅びたってのは間違いなんですけどぉ? ずっと復活の時を待っていたんですけどぉ? まぁいいや、とりあえずこの土地と国民ぜーんぶまとめて私にくれませーん? そしたら命だけは助けてあげるかもしれないしぃ?ていうか元々私のものなんだしぃ? ていうわけでさっさと返しやがれこのクソアマ! ってことなんですけど? あはははは!」

「ふざけないで! ここはプラネテューヌ! 私の国よ! そんなことできるわけないでしょう⁉︎」

「へぇ〜そう言うこと言っちゃっていいんだ〜? そんな簡単にぃ? じゃあ!」

 

(何をする気……? ……っ⁉︎ 後ろに浮かんでいる国から大型のキャノン砲が展開された……⁉︎)

 

「うーんと、エネルギー充填オッケー!」

「……私を脅しても無駄よ!」

「あ〜! 待って待ってぇ! こうなっても同じこと言えるんですかぁ? お偉い女神さんは!」

 

(砲台の向きが私から逸れた……まさか、狙いは私じゃなくてプラネテューヌそのもの……⁉︎ あの向きの先にあるのは……プラネタワー!)

 

「発射ぁ……!」

 

(ダメ……間に合わな……っ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「『ギャラクティカクロスシュート』!」」

 

 交差させた腕から放つ必殺光線で、敵の要塞から離れたらビーム砲を相殺します。実はこれ(ギンガさん)の最強必殺技なのですが、隙だらけな技なので、週末の朝にやっている子供向け番組のように敵が技発動中は待っていてくれなければ撃てず、今の今まで使うタイミングがなかったんですよ。

 

「はぁ⁉︎ 何よ今の⁉︎」

「あれは……ギンガといーすん⁉︎ その姿は……」

 

 パープルハート様(ネプテューヌさん)は前見せた時はカオス化していたせいで記憶がないから初見のような反応をしていますね。

 

「「パープルハート様(ネプテューヌさん)、話は後です。まずは私が奴を止めるので、その後はトドメをお願いします」」

 

(ギンガといーすんが同時に喋ってる…ちょっとシュールだけどなんか可愛いわね……)

 

「止めるって……いえ、わかったわ」

 

(よくわからないけど、ギンガといーすんなら何とかしてくれるはずね)

 

「止めるぅ? やれるもんならやってみなさいよ!」

 

 タリの女神のエネルギーから展開された翼のようなものから繰り出される攻撃、そしてどこなからともなく降ってくる雷撃……厄介ですが、今の私たちにはどこからどう来るかわかっているので全て当たりません。

 

「はぁ? 当たんない? うっざいわねぇ……まぁいいわ、どーせあんたらの攻撃も私には効かないしぃー」

 

 でしょうね。その未来も予測しています。敵はバリアのようなものを展開しているので、私たちの攻撃でタリの女神に通用するものはほとんどありません。

 

 しかし、これならばどうでしょう!

 

(近づいてきた……? 何をする気……?)

 

「「シェアリングフィールド!」」

「……⁉︎」

 

 相手のバリアごとフィールドの範囲内に巻き込みます。フィールドに入れてしまえば、バリアは関係ありません。

 

「何これ……? 不愉快な空間ね」

 

 そして、入れてしまえばこれで終わりです。情報の波に呑まれ落ちるがいい、タリの女神……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ、ふふふふ、あはははははは!」

 

 ……⁉︎ 効いていない…⁉︎ あり得ない……! 女神様ですら耐えられない情報の波ですよ……⁉︎

 

「あんたたちの……この空間の理屈はなんとなくわかったわ。私には『他の世界に干渉できる』力があってねぇ……例えば一時的に力と記憶を別の世界に逃がすとか、そんなことができちゃうわけ」

 

 別の世界に……逃がす……? ……まさか!

 

「つまりぃ! あんたたちが私に押し付けた情報の波とやらはぁ……ぜーーーんぶ私の頭を素通りして適当な別の世界に捨てられてたってわけぇ! あははははは! 自分たちの力は絶対無敵とでも思ってたぁ⁉︎ 残念でしたぁ! 私には全っ然効きませーん! それに、さっきはちょこまかと逃げ回ってくれたけど、こーんな狭い空間じゃもう逃げ場はないわよねぇ?」

「……!」

「おしまいよ、あんたたち」

 

 その瞬間、タリの女神が放った攻撃は私を貫きました。

 

 ……直前にイストワールとのリンクを強制解除しておいて良かったです。合体中の私の身体へのダメージはイストワールの脳へのダメージとなってしまうので。

 

 ダメージが深刻で、強制的にシェアリングフィールドが解除されてしまいました。終わらせるつもりだったのが逆にやられてしまうとは…なんとも情けない……

 

「ギンガ!」

「パープルハート様……申し訳ありません……しくじりました……これ以上は戦えそうにないので、下で国民の避難誘導を手伝ってきます……」

「手伝ってくるって……あなた今お腹に穴が空いてるのよ⁉︎」

「……私にとってはこんなものかすり傷ですので……申し訳ありません……止めると言っておきながら……っ!」

「いいのよそんなこと、後は任せて……!」

 

 そうして、強制的なリンク解除により意識を失ったイストワールを抱えて戦線を離脱します。本当に情けない……最後までパープルハート様と共に戦うことができないとは。

 

(さっきは全然効かないとは言ったけど、流れ込んできた情報を全部捨てられたわけじゃないから頭が少しイライラするわね……ま、この程度なら問題ないか)

 

「面白い負けっぷりだったわよあいつら。あんたにも見せてあげたかったわね。さ、仕切り直しといきましょうか。いや、ただの虐殺ショー再開かぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合体の反動と怪我でよろよろと飛びながら、あいちゃんとコンパさん、そしてネプギア様が民間人の避難誘導を行っている街から離れた広場に向かいます。

 

 さっきはかすり傷と適当なことを言ったのですが、流石に腹に穴が空いているとしんどいですね……げほっ……

 

「あ!ギンガさん……ってその怪我!」

「しくじりました……イストワールを……頼みます……それにパープルシスター様……変身を解いた方がよろしいかと」

「え?」

「イストワールとのリンク中にあの国の下から発せられる光を少し解析しました。おそらくあれはプラネテューヌのシェアエネルギーを奪っています。変身した状態だと体力の消耗が激しくなるでしょう」

「じゃあ師匠、このシェアクリスタルの輝きが減っているのは……」

「はい、おそらく。タリの女神の前にあれをどうにかしないとどうしようもありません。私はこの傷を適当に塞いだらまた戦いに行きます」

 

 そう言って、パープルハート様とタリの女神が対峙してる上空に視線を向けると……

 

「えーっと、もう一回エネルギー充填しちゃいまーす! 次の目標はぁ〜? 人がたくさんいるからあそこにしよーっと!」

「やめなさい!」

「いやで〜す! ロックオン!」

「させない……きゃあっ!」

 

 ……パープルハート様がタリの女神の攻撃により吹き飛ばされ、浮かぶ国の壁面に叩きつけられていました。まずいですね……この光景を国民が見たら……

 

「ネプテューヌ様が…!」「もうおしまいだわ!」「どうすればいいの」「死にたくない!」

 

 敵の砲台がこちらに向いたことと、パープルハート様が苦戦している光景を目の当たりにした国民たちから悲鳴があがります。

 

「皆さん! 大丈夫です! 落ち着いて! お姉ちゃんがきっと!」

「ネプテューヌ様もやられてるわ!」「きっともうダメなのよ!」

 

 ネプギア様が必死に声をかけますが、絶望した人々にその想いは届いていません。

 

「私も……っ⁉︎ ダメ……変身できない……!」

 

 変身すらできなくなったネプギア様の様子を目の当たりにし、さらに人々の恐怖と絶望は広がっていっています。確かに絶望したくなる気持ちは少しはわかりますけど、私はそれ以上に怒りを覚えます。……っ!

 

「どいつもこいつも…っ! 黙って聞いてりゃうるせえんだよ! ダメかどうか勝手に決めてんじゃねえ! いいか! 国ってのはな! 女神様だけが守るものじゃねえんだよ! 女神様とそこに生きる人々が一丸となって守るものなんだよ! 今は苦戦してるけどな、あの方はお前らのために……この国のために一生懸命戦ってるんだぞ! お前らも弱音吐いてる暇があったら女神様に少しでもシェアを届けようとしたらどうなんだ! ……げほっ」

 

 丁寧な言葉遣いをも忘れ、つい思っていたことを全て口に出してしまいました。ついでに血も出てきました。

 

 私の言葉で人々がほんの一瞬静まり返りましたが…結局あまり意味はなさそうですね…

 

「師匠!」 「ギンガさん!」

「ぅ……コンパさん……救急キットありますか?」

「ありますけど……それでなんとかなる傷じゃないですそんな傷で戦っちゃダメです!」

「しかし……! パープルハート様が戦っているんです! 女神補佐官として……いえ、この国に生きる者として、何もせずにはいられません! 女神様のため……この国のために……戦える者は戦わないと……!」

 

 

 

 

「だったら私たちが戦うわ」

 

 その声は……ブラックハート様⁉︎

 

「ブラックハート様⁉︎ どうしてここに?」

「ネプテューヌにイベントの招待券をもらったからよ。私たちが戦うからあなたは休んでなさい」

「まさかこれがそのイベント……ってわけじゃありませんわよね」

「グリーンハート様まで……」

「私は5pb.ちゃんを送り届けに来ただけですわ」

 

 そう言ってグリーンハート様が視線を向けた先には、ブラックシスター様に抱えられた5pb.さんがいました。

 

「はーい! ……ユニさんありがとう」

「お安い御用よ」

 

 5pb.さん……絶好のタイミングで来てくださりました。人々を勇気付けるのにうってつけの人物ですから。

 

「ネプギア、何暗くなってるのよ」

「ユニちゃん……」

「私はお姉ちゃんたちを」

「うん、私の分まで……お願い!」

 

「あれは…5pb.ちゃん?」「こんな危険なところに?」

「みんなー! 心配することないよ! 女神様を信じよう!」

 

 流石はリーンボックスの歌姫、その一言だけで人々が希望を取り戻してくれました。

 

「ブランはまだ来てないようですわね」

「さっきネプテューヌにシェアの件で思いっきり喧嘩売ったらしいから来づらいんじゃない? ま、そのうち来るでしょ。さてと、まずはやられそうになってる女神のことをしっかりと助けてあげないとね」

「お姉ちゃん! 私も!」

「ええ、頼りにしてるわよ!」

「では、参りましょう!」

 

 そう言ってブラックハート様たちがパープルハート様の元に飛んで向かいます。

 

 そうですか。パープルハート様…ネプテューヌ様、これがあなたの繋いできた絆ですか……! 

 友好条約があるからじゃない、本当の仲間に、友になれるようにと、あなたが頑張ってきた証なのですね……!

 

 希望が見えてきました……女神様たち、ご武運を……!

 

 




ギンガイストワールが瞬殺されたのは決してルビを振るのが面倒だったとかそういう理由ではありません。

ちなみにあと2話ぐらいで終わります。最後までよろしくお願いしますね。


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17. 紫の星を紡ぐ銀糸

 初投稿です。




 

 俺は祝福されて生まれてきた人間ではなかった。物心ついた時には既に親はいなかった。死に別れたのか捨てられたのかはわからないが、今となってはどうでもいい。

 

 年齢が一桁の頃から喧嘩は負けなしだった。今思えば俺はその時から自分の力の『核心』を少し掴んでいたのかもしれない。自分には何もない哀れな存在だと思っていたことと、自分には人が生まれ持つシェアエネルギーが存在しないことが偶然にも一致していたからじゃないかな。

 

 けど、力が強くても餓えには勝てなかった。餓えを凌ぐために人から金でも何でも奪おうと、俺は生まれて初めて人を殺そうとした。運が良かったのか悪かったのか、強盗しようとした相手が女神様だった。生まれて初めて喧嘩に負けた。いや、喧嘩ですらなかったな。今思えば丸腰の人間が女神様に勝てるわけねえよな。

 

 女神様は俺を咎めることはなく、それどころか俺を側に置いた。そして、俺は生まれて初めて他者の優しさに触れた。最初は素直になれなかったけど、ずっとこの女神様の側にいたいと思った。だから頑張った。女神様の役に立つことはなんだってやった。そんな日々の中、俺は……いや、私は大事な人のために何かをすることの喜びを知りました。

 

 その過程で私は人であることをやめました。元々女神様の側にずっといたかったから丁度良かったです。今ではその原因となったあの病に感謝すらしています。あの病がなければ私は人のまま生きて人のまま死んでいたかもしれませんし。

 

 ある時、可愛い同僚ができました。その同僚は私なんかよりよっぽど賢いけれど、よっぽど馬鹿でもありました。そうやって共に過ごすうちに、私にできないことは彼女にはできて彼女にできないことは私にはできる、そんな最高のコンビとなりました。

 

 女神様の妹が誕生しました。その方を育てることを任されました。最初は不安だったけれど、その方がとても優秀な方だったので困ることはほとんどありませんでした。

 

 それからしばらく経ち、最愛の女神様が俺を残して逝ってしまった。胸が張り裂けそうなぐらい辛かったし、正直後を追うか悩んだ。だけど、女神様が残したものを未来へと受け継がせることにも意欲があったから、生き続けることを選んだ。

 

 そうしてそれから多くの女神様と出会い、別れていきました。

 

 ある時には、制御しきれない強大な自身の力を民に恐れられ、女神様であることをやめざるを得なかった方がいました。その方は自分が封印されることを選びました。そしてその方が封印された後すぐに新たな女神様が誕生しました。民は喜びましたが、私は素直に喜ぶことはできませんでした。その時からでしょうか、女神様を信じない民に対する嫌悪感を抱き始めたのは。

 

 それから更に時が経ち、ネプテューヌ様と出会いました。名前は海王星だが、まるで太陽のような方でした。出会ってすぐに確信しました、この方はゲイムギョウ界の運命を変える方だと。

 

 ネプテューヌ様の妹であるネプギア様も生まれてきました。しっかり者だけど素直に甘えてくる可愛らしい方でした。ネプテューヌ様とネプギア様と過ごす日々は常に幸福感に満ち溢れていました。

 

 ネプテューヌ様が『友好条約』なるものを考案しました。それは私の悲願でもありました。他の国も女神様も賛同し、それは締結されました。ゲイムギョウ界の争いの歴史が終焉を迎えました。私が思った通り、ネプテューヌ様はゲイムギョウ界の運命を一つ変えました。

 

 ズーネ地区の件を境に、私は女神様に対する歪な接し方を見直すことができました。そして、ネプテューヌ様を初めて叱りました。叱られていた時のネプテューヌ様はとても嬉しそうにしていて疑問に思いましたが、ネプテューヌ様に叱られている時の自分を思い出してみたらすぐに納得しました。

 

 ネプテューヌ様もネプギア様も本当に立派は女神様になられました。しかしいずれ、このお方たちも私を残して逝ってしまうのでしょう。それはやはり寂しいですね……何度経験しても女神様との別れには慣れません…

 

\ ん! ……ガさん!/

 

「ギンガさん!」

「え⁉︎ あ、はい!」

「急にぼーっとして……大丈夫ですか? 気分はどうですか?」

「あ、はい、すみませんコンパさん……気分は……悪くはないです、大丈夫です」

 

 ……なぜでしょう? なぜ私は今急に自分の人生を振り返っていたのでしょう?気の遠くなるような長い年月を振り返ったのですが、時間は先程から数分と経っていないようです。

 

 今のは何なのでしょう……これが走馬灯というものなのでしょうか? いや、走馬灯というのは死の直前に見るものらしいですが、わたしは今普通に生きてますよね。腹に穴が空いてますけど。

 

「どうしたんですか師匠?」

 

 走馬灯のようなものを見たり、女神様が戦っているのを眺めることができない無力感で表情に出るぐらい感傷的になっていた私に、あいちゃんが心配そうに聞いてきました。

 

「……なんでもありませんよ」

 

 と、ありきたりな感じで誤魔化しておきます。私の返答に納得はしきれていない表情でしたが、あいちゃんはそれ以上何も聞いてきませんでした。

 

「それよりも、戦っているの女神様たちに祈りを捧げましょう……!」

「……はい!」「はいです!」

「お姉ちゃん…! ユニちゃん……! みんな……!」

 

 

 

 

 

 

「ノワール! ベール! ユニちゃん! 来てくれたの……?」

「全く……これがあなたの言っていたイベントってやつ?随分派手ね」

「ノワール……そのくだりはもう下でやりましたわ」

「ネプテューヌさん、一緒に戦います!」

「ありがとうみんな……行きましょう!」

 

 四人の女神様の華麗なるコンビネーションで、強大な力を持つタリの女神に対しても有利に戦闘を進めていく……

 

 ……かのように見えたのですが、空に浮かぶタリの下にある『シェアエネルギーを奪う装置』とやらのせいで、ラステイションやリーンボックスのシェアも奪われているようで、ブラックハート様もグリーンハート様もブラックシスター様も力を失っていきます。

 

 そういえば、ブラックハート様がエディンの本拠地でも同じような装置を見たと言っていましたね。エディンの装置とやらはシェアエネルギーを生み出す装置ではなくシェアエネルギーを奪う装置であった…とするならば…なるほど、エディンはタリ復活の野望のための単なる実験にすぎなかったというわけですか。今更それがわかったところで意味はありませんが。

 

 冷静に分析してる場合ではありませんね。ならばあの装置を破壊すれば……!

 

「『ギャラクティカクロス………うぇっ……げほぅ……!」

 

『ギャラクティカクロスシュート』であの装置を破壊しようと思ったのですが…私の身体がこんな状況なのもあり二度目は撃てそうにありません。それどころか止まってきた血がまた流れ出してきてしまいました。

 

 まずい……イストワールとのリンク中に敵のビーム砲のチャージ時間も解析したのですが、それがもうそろそろ撃てるタイミングなのです。

 

「ま、数が増えたところで無駄なんだけどね。おっ、そろそろレーザーのエネルギー貯まりました〜。目標はまたさっきのところで〜発射!」

 

 ビームがこちらにめがけて飛んで来ます。クロスシュートが撃てないなら防御魔法を……! しかし、今の私が練れる魔力では防げません……っ!

 

 

 

 

「「『アイス・サンクチュアリ』!」」」

 

 

 

 突如発生した魔法の氷壁により、敵のビームが相殺されます。

 

 そして、どこからともなく飛んで来た巨大な斧が、シェアエネルギーを奪う装置を破壊しました。斧……ということは…

 

「レーザーの下を打てば……稲妻は撃てない……だろ?」

「ブラン!」

 

 ホワイトハート様……! ならば、今の魔法は……

 

「やったねロムちゃん! 私たちってばさいきょー!」

「うん! さいきょー……!」

 

 ホワイトシスター様……!

 

「ネプギア ! ギンガさん! おまたせ!」

「ギンガさん……怪我してる……!」

「私たちが治してあげるわ!」

 

 そう言ってホワイトシスター様たちは私に回復魔法をかけてくれました。女神様の強大な魔力から放たれる回復魔法は私の傷をみるみると塞いでいきます。

 

「ありがとうございます。これで……!」

「ダメ! 怪我自体は治ってもギンガさんはまた休んでて!」

「私たちが戦うから……ね、ネプギアちゃん」

 

 ネプギア様……? そうか! 装置が破壊されたから、変身が可能になるわけですね。

 

「感じる……シェアエネルギーを! 皆さん! 行ってきます!」

 

 ネプギア様が再び変身し、ホワイトシスター様たちと共に空に戦いに行きます。行ってらっしゃいませ、パープルシスター様。

 

 

「エディンの装置がシェアを奪うものなら色々と辻褄が合う…冷静になって考えたんだが……」

「流石はブランね」

「けど、一番美味しいところを持っていくなんてずるいですわ」

 

「お姉ちゃん!」

 

「ネプギア……これでみんな揃ったわね! 始めましょう! 私たち、女神のターンを!」

 

 

 

 

 

 今までは二人か三人でした。女神様と候補生様と私、国を守るために戦うのは。しかし、私はあそこにはいませんが、今は八人います。八人の女神様が世界を守るために共に戦う、その光景見ることこそが私が今まで生きてきた理由とすら思えました。

 

 

 

 

 

 

「ノワール、ベール、ブラン、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん、ネプギア! みんなの力を私に貸して!」

 

「もう遅いんですけど〜! シェアは充分にもらったから、今度こそビーム砲でお前たちの守りたい奴らを消しとばしてやりま〜す! 今度は猪口才な魔法なんかじゃ防げませんけどぉ?」

 

(連続放射は砲台が持たない……いや、この一回でいいわね。まずはこの国を吹き飛ばす!)

 

「……残念ながらエネルギーは充分溜まってるんですよねぇ! 発射ぁ‼︎」

 

「嘘でしょ⁉︎ 早すぎる!!」

 

 ……おっと、もう私には何もやることはないと思っていたのですが…最後の大仕事が残っていたようです。

 

 怪我が治り、体力も回復してきました。ホワイトシスター様には治ってもまだ安静にしているように言われましたが、ここで動かねばいつ動くのでしょうか!

 

「ギンガ! あいちゃん! コンパ! みんな!」

 

 安心してくださいパープルハート様。そして、お見せしましょう。私の最強必殺技を超えた、究極必殺技を!

 

「『ギャラクティカエスペシャリー』!」

 

 そう、これが私の究極必殺技『ギャラクティカエスペシャリー』です。『ギャラクティカクロスシュート』が腕から光線を出す技なら、これは全身から光線が出る技です。ゆえに威力も桁違いなのです。一定時間戦闘が行えなくレベルで体力を消費するのが玉に瑕なんですよね。

 

 それにより、先ほど以上の出力があるビームを完全に相殺しきることができました。

 

「何今の……意味わかんないんだけど!」

 

 私の究極必殺技に唖然としたタリの女神の隙をついて…

 

「『インフィニットスラッシュ』!」

「『ハードブレイク』!」

「『スパイラルブレイク』!」

 

 3人の女神様の必殺技と

 

「「「「『スペリオルアンジェラス』!」」」」

 

 候補生の皆様の連携必殺技と

 

「『ビクトリィースラッシュ』!」

 

 トドメのパープルハート様の必殺技で、空に浮かぶタリの大陸が粉々に破壊されました。

 

 しかし……大陸は粉々になりましたが、大陸に貯められたシェアエネルギーは、タリの女神が既に回収している……!

 

「大陸を落としたぐらいで勝った気になっちゃってぇ⁉︎ あはははは! 残ったエネルギーを解放するだけで世界の半分ぐらいはかるーく無くなりますから!」

「世界を……? あなたの目的はこの国を奪うことじゃなかったの……?」

「わかったぜ、こいつは多分かつて自分の国が亡くなった復讐を今の世界にしようとしてるんだな」

「そうよ! こんな国なんて……世界なんて要らない! 全部めちゃくちゃに壊してやるわ!」

 

 奴は残ったエネルギーを爆発させて、世界ごと消し飛ばすつもりのようです。

 

「確かに……驚くほど強い憎しみですわ」

「けど、所詮は憎しみだろ?」

「たとえ私たちのシェアエネルギーを使い果たしたとしても」

「女神が……私たちがやることは一つだけよ」

 

 女神様たちが手を繋ぎ、奴を取り囲みます。まさか…あれを防ぎきるおつもりですか⁉︎

 

 ……どう考えても無茶ですが、女神様がやると決めたならば、私は祈るだけです。

 

 そうですよ、女神様が負けるはずがありません……!

 

「そうやって正義の味方ごっこしてろっての! あの世でな‼︎‼︎」

 

 そして、タリの女神を中心に爆発が起こりました。爆発のエネルギーは女神様たちによって抑えられ、抑えられたエネルギーは光の柱となって天を穿ち、雲が割れ、その直下の大地は抉れ、衝撃の暴風が街から遠く離れたここにまで吹き荒びます。

 

 爆発が終わり、プラネテューヌを静寂が支配します。戦いは終わったのでしょうか。

 

 ……いえ、それを判断するのは私の責務ですね。

 

 あいちゃんやコンパさん、5pb.さんが女神様たちの元へ駆け出そうとします。それに続き人々が爆心地へ向かおうとしますが………

 

「まだ近づいてはいけません! 待機命令!」

 

 私はそう叫び、爆心地まで駆け出そうとする人々を制止します。人々はちゃんと動きを止めてくれました。プラネテューヌの民度の高さに感謝です。

 

「タリの女神を仕留めているかを私が今から確認しに行きますので、それが終わるまで皆さんはまだ近づかないでください!」

「師匠! 私も!」

「いえ、あいちゃんもここで待機です。おそらく女神様たちは今ので力を使い果たしています。だから、私に何かあった場合もう人々を守れるのはあいちゃんしかいないので」

「……わかりました……!」

 

 そう言って私は現場に向かいます。プロセッサユニットを装備できるほど体力が残っていないため走って行きます。

 

 爆発現場の付近まで来て、そこから遠目で見えたものはシェアエネルギーを使い果たし気を失っている女神様たちと、エネルギーを使い果たさずに爆発の衝撃をも耐えきったタリの女神でした。

 

「まだやれる……あいつらだけでも吹っ飛ばして……その後世界を粉々に!」

 

 奴め……最後の力で女神様たちにトドメを刺すつもりですか! 魔法は……っ、使えません……! なら私の身体を盾にするしか……いや、それも間に合わない!

 

「それは困る」

 

 あれは……マジェコンヌ⁉︎

 

「この世界は私のものになる予定なのでな!」

「はぁ⁉︎ 誰?」

「OKっチュよ、オバハン」

「絶望の奈落で眠れ!」

 

 突如して現れたマジェコンヌとワレチューがアンチクリスタルを使用し、タリの女神の力を奪います。まさか奴らがこちらに協力をするとは、しかし今は助かりました。あのままではタリの女神によって女神様が全員殺されていたので。

 

「いやぁああああああ! 私の力がああああ! おおおおおおおああああああ!」

 

アンチクリスタルにシェアエネルギーを吸われ、タリの女神が悲鳴をあげながら変身を解除します。

 

 そして、ようやく現場に到着しマジェコンヌに問います。

 

「なぜ女神様を助けた」

「今の私にはこの世界を守る理由があるのでな」

「守る理由?」

「私の愛する農作物たちと、その消費者たちさ」

「……そうか。礼を言っておこう。助かった、ありがとう」

「ふん……」

「オイラにも感謝するっチュよ」

 

 ……助けてもらったとはいえ、〆をマジェコンヌたちに持っていかれたみたいで少し腹が立ちますね。タリの女神を追い詰めたのは女神様たちですよ。そこんとこちゃんと理解してるんでしょうかこいつらは。

 

(これは……アンチクリスタル? 私の力が!! ……いや待て! ……これなら!)

 

 ……? おかしい……タリの女神が悲鳴をあげるのをやめた? 見た感じ気を失ったわけではありません……! 奴のあの表情………笑顔⁉︎ まさか!

 

「マジェコンヌ! 今すぐアンチクリスタルを止めろ!」

「何だと? ネズミ! 止めろ!」

「今すぐなんて無理っチュよ!」

 

(これをこうすれば……いけるわ!)

 

「うおおおおおおおおおおああああああ!」

 

 ……奴のシェアエネルギーが増えています……! そして、増えたシェアエネルギーを元に、奴は再び変身してしまいました……!

 

「ぅ……ううん……ねぷぅ⁉︎ 何あれ⁉︎ 何が起こってるの?」

 

 タイミングが良いのか悪いのか、ネプテューヌ様だけ目を覚ましたようです。

 

「おはようございますネプテューヌ様。少々……いやかなりやべえことが起こってしまいまして……」

「見ればわかるよ……なんでタリの女神のシェアエネルギーが増えてるの?」

 

 うろたえながら呟かれたネプテューヌ様の問いに、タリの女神が答えます。

 

「うふふ、『シェアエネルギーの反転』って知ってる?」

 

 ……やはり奴が行ったのは『シェアエネルギーの反転』か!

 

「ん〜? 今の表情的にそこの男なら知ってそうねぇ、殺す前に説明させてあげようかしら。はいどーぞ」

 

 見るからに上機嫌で腹が立ちますね……しかし説明しない理由はありませんのでさせていただきましょうか。

 

「……信仰により生まれるシェアとは逆のもの、女神様への悪意であるアンチシェアというものがあります。アンチシェアはシェアと同じく女神様は受け取らないことができますし、シェアが女神様の力の源ならアンチシェアはその逆で女神様には毒となりますので、基本的には女神様はそれを受け取りません。それに、アンチシェアはシェアでかき消されます。つまり、ネプテューヌ様たち守護女神は、アンチシェアというものを感じることはありません。しかし、今のタリの女神は、暴虐の限りを尽くしたことにより、人々からのシェアよりもアンチシェアの方が高くなっているため、アンチシェアを受け取ることができます」

 

(なるほど……よくわかんないけどとりあえずうなづいとこ)

(なるほど……ならば反転とは……そういうことか……!)

 

 ネプテューヌ様はわかっていない様子ですが、マジェコンヌは少しわかったたようですね。

 

「先程言った通りアンチシェアというものは基本女神様は受け取らないのですが、奴はこれをあえて受け取り、アンチクリスタルのアンチエネルギーと掛け合わせました。すると負の数と負の数を掛けると正の数となるように、アンチシェアとアンチエネルギーを掛け合わせるとシェアエネルギーを生成できます。これが『シェアエネルギーの反転』です」

「はい、説明ありがとお疲れ様〜! いやぁ私も知識だけあって実際やったことはなかったんだけどねぇ〜土壇場で成功させちゃったってわけ。アンチクリスタルありがとうねぇ! そこのおばさん〜!」

「……すまない、私のミスだ」

「私が知る限り、シェアエネルギーの反転が実際に行われたことは歴史上今の一回だけです……知らなくても無理はありません…」

「そうそう気にしないでマザコング! マザコングが一瞬でも動きを止めてくれてなかったらあの時私たちみんな死んでたんだし!」

 

 今マジェコンヌを責めてもどうしようもありませんからね。と、言いましてもこの戦力ではどうしようもないですね……何か手は……

 

 ……あー、この方法しか思いつませんね。なるほど、さっきの走馬灯は虫の知らせだったということですか。死ぬ直前ではなく予兆の段階で走馬灯を見せてくるとは……私の身体というものは本当に変ですね。

 

「マジェコンヌ、頼みがあります」

「何だ」

「ほんの少しの間だけ奴を食い止めてくれませんか?」

「……いいだろう。それに、別に奴を倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 そういうこと言った奴は大体負けるんですけどね。とりあえずここは任せました。

 

「お、オイラにはそんなこと無理っチュよ⁉︎」

「お前には期待してません、死にたくなかったら逃げてください」

「……逃げはしないっチュよ。悪人には悪人同士の友情というものあるっチュ。もうオイラはオバハンを見捨てて一人では逃げないっチュ」

「……そうですか」

「ネズミのくせに泣かせること言うね!」

 

 ネプテューヌ様、その一言で台無しですよ……

 

「ん〜? なんかする気? 無駄だと思うけど、念のため何かする前に殺しておくわね!」

「させん!」

「ちっ……どけよおばさん」

「おばさん? お前の方が年齢的にはおばさんじゃあないのか?」

「……殺す」

 

 さて、マジェコンヌが時間を稼いでくれている今のうちに……

 

「ギンガ、何か秘策があるの?」

「ネプテューヌ様には昔言ったのですが、多分聞いていなかったと思うのでもう一度説明します。私にはシェアエネルギーが存在しませんし、作り出せるシェアエネルギーも虚数のもののため、ネプテューヌ様に信仰によりシェアエネルギーを与えることができません」

「知ってるよ、ちゃんと聞いてたもん。私がギンガの言うことを聞いてないわけないじゃん」

 

 その言葉に少し頬が緩みそうになりますが、今はそんな場合ではありませんね。

 

「……そうですか、では話を続けます。そんな私がネプテューヌ様が変身できるほどのシェアエネルギーを与える方法があります」

「おぉ! それは⁉︎」

「私の虚数のシェアエネルギーを実数にし、そのシェアエネルギーでシェアクリスタルを生成することです。本来私にはシェアクリスタルの生成は行えないのですが、この方法でならシェアクリスタルの生成が行えるのです」

「よし! じゃあお願……ねえギンガ、それって絶対何か代償が必要とかだよね…すごく嫌な予感がするんだけど……もしかして……」

 

 勘がいいですねネプテューヌ様。私のシェアエネルギーでシェアクリスタルを生成する方法、それは……

 

「はい、私の命です。私の命を捧げることにより、シェアクリスタルを生成できます」

「絶対にダメ! 他の方法を考えるよ!」

 

 ネプテューヌ様ならそう言いますよね……ですが、残念ながらこの状況では他に方法はないんです。

 

「そうしなければタリの女神に皆殺しにされ世界も終わります。それにたった今生成を開始しましたので、ネプテューヌ様が受け取ってくれなければ私は無駄死になります」

「どうしてそんなことするの⁉︎ 嫌……そんなの嫌だよ……!」

 

 ネプテューヌ様が泣き出してしまいます。その涙を拭い、頭を撫でながら言います。

 

「ネプテューヌ様……別れというものは誰と誰の間にも来るものです。友や仲間とも、そしてあなたとネプギア様の間にもです。だから……私で慣れておいてください」

 

 そう、女神様たるもの別れの悲しみというものは乗り越えなければならないのです。こんなタイミングでこんな思いをさせたくはなかったのですがね…

 

「ギンガ! 嫌だ! ギンガぁ! やめてよぉ! 約束したじゃん! 今度一緒に遊ぼうって!」

 

 泣き噦りながら私に縋りつくネプテューヌ様を優しく抱きしめながら言います。

 

「ネプテューヌ様、私は貴女やネプギア様に…いえそれだけではなくこれまでプラネテューヌの女神様たちに仕え続けることができて幸せでした。願わくば、生まれ変わったらまた貴女に仕えたいです」

 

 もっと沢山の言葉をかけたかったのですが、これ以上は私の想いが呪いになりかねないのでやめておきましょう。

 

「ギンガ……私……私…っ! ねぷぅぅぅ!」

 

 ばちぃいん、とネプテューヌ様が自身の手で自身の頬をひっぱたきました。

 

「女神補佐官のギンガが覚悟を決めてるのに、女神の私が覚悟を決めないでどうするのさ!」

「ネプテューヌ様……」

「守ってみせるよ……この世界を、みんなの未来を! そのために……ギンガの命、貰うね!」

 

 完全に覚悟を決めた表情……それでこそネプテューヌ様です。さて、私はシェアクリスタルの生成の方に集中しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

「その程度かよおばさん! このまま愉快な死体にしてやるよ!」

「ぐぁあああああ……っ! まだだ!」

「苦しむ時間が増えるだけなのに粘るわねえ! それに、あんたって女神どもの敵なんじゃないの?」

「敵さ! だが何故だろうな! 自分でもなぜこんなことをしているかわからん!」

「はぁ⁉︎ ボケんのも大概しとけクソババア!」

 

 

 

 

 

 

 

 シェアクリスタルの生成が進み、私の身体の消滅が始まりました。ネプテューヌ様のためにこの命を捧げられるのならば本望です。何も悔いはありません。

 

「さあネプテューヌ様! 私の力と想い……受け取ってください!」

 

 ついに完成したシェアクリスタルをネプテューヌ様に手渡します。シェアクリスタルを手放すのと共に私の身体も消えていきます。ネプテューヌ様の変身を見届けられそうにないのが唯一の心残りですかね……

 

「ギンガ……変身!」

 

 ネプテューヌ様……私の心は……いつもあなたのおそばに……

 

「変身……完了……! 女神の……いえ、私とギンガの力、見せてあげるわ!」

 

 

 

 

 




ギンガ、プロフィール
身長 182㎝
髪の色 銀
好きな食べ物 ナス 料理が下手だった初代プラネテューヌの女神が作った青色の卵焼き
趣味 散歩 女神様について考える
特技 家事全般

次回、最終回です。


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FIN 1. 未来(あす)を懸けた戦い


 最終回……のつもりだったのですが、前編と後編に分けます。地の文担当だったギンガが死んだのでパープルハート様にやってもらうことにしました。

 タリの女神を本編より強くしすぎた感がありますけど、ラスボスは強くてナンボなので初投稿です。




 

「よく頑張ったけどとうとう終わりの時が来たようねクソババア」

「……はぁ……はぁ……クソ……」

「マジェコンヌっつったっけ 名前ぐらいは覚えておいてあげようかしらねぇ! ……っ⁉︎ この気配⁉︎ まさか……女神⁉︎」

 

(嘘でしょ⁉︎ もう変身する力なんて残ってないはず……ちぃっ! こんなやつと遊んでる場合じゃなかった!)

 

 どうやらタリの女神は変身した私のシェアエネルギーに反応し、マジェコンヌの前に私を先に仕留めにくるようね。

 

「……なるほどね、なんとなく理解したわ。あんたのその力……あの男殺して得たのねぇ…酷い女神様ね〜! 大事な部下を犠牲にするなんてぇ!」

「……」

「面倒だけど……まぁいいわ、力使い果たしたカスどもを嬲り殺しにするより、最後の力で変身! みたいな希望がある感じのところをぶっ殺す方が面白いしねぇ!」

 

 ……雑音よ。ギンガがいつも言ってたわ、どれだけ感情がかき乱されていても、戦いは冷静にって。

 

 彼の残したシェアクリスタルは、私の大好きな人の力だから最強……なんて都合のいいことはなく、変身して戦える最低限の力しかない。正直体力も限界、気力だけで立っているようなもの。女神としての華麗さなんてまるでない。

 

 それでも、私はタリの女神を倒す。女神として、力と想いを託された者として!

 

「だんまり? 面白くねえの……はっ! じゃあ、最後の殺し合いといこうじゃないの!」

「……」

「「はぁああああっ!」」

 

 私の剣とタリの女神の武器がぶつかり合い、最後の戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘の音……⁉︎ 向こうで何が起こっているの⁉︎ ネプ子……師匠…!」

「あいちゃん……待機命令はいつ解除されるんです?」

「何の連絡もないし……師匠に何かあったのかもしれないわ」

 

「……幼女女神が戦っているのに……私は……」

 

『確かに女神様は長く生きていても精神的には未熟なところもあるかもしれません、だからこそ私が……私だけではありません、あなたたちこの世界に生きる大人たちが導くのです。そうやってこの国や世界は、女神様と我々が一丸となって成長していくものなのですよ』

 

「……っ! 私は幼年幼女の味方……! 私がアブネスよ! ちゃああああああ‼︎」

 

「あ、アブネスさん⁉︎」

「え、ちょっと! どこ行くのよ! 待機命令はまだ解除されてないのよ! って走るの速⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

「最後の戦いが始まったか……」

「見た感じ互角っチュね、なんとかなりそうっチュ」

「いや、タリの女神の方が少し押している……このままでは……!」

「でもオイラたちにできることなんてもうないっチュよ?オバハンもボロボロなんだから休んでろっチュ」

「……せめてもう少しシェアがあれば……しかし、プラネテューヌの女神は既に国民からの分は使い切ってしまっている……新しいシェアでなければ……!」

 

「がら! がら! がらっ! 聞いたわよ! シェアがあればいいのね!」

 

「……なんだお前は? それに扉もないのになんだ今の効果音は」

「私はアブネス! 幼年幼女の味方よ!」

「その幼年幼女の味方がなんの用っチュか?」

「この戦闘を私のチャンネルで中継するのよ! 私のチャンネルの視聴者は幼女女神の反対派だらけ……けどその人たちに幼女女神を信じることを呼びかければ新しいシェアを生み出すことができるかもしれないわ!」

「それはそうだが……それをしたらお前に不利益が生じるんじゃないのか?」

「ここであの幼女女神が負けたら、幼年幼女ごとこの世界が滅びるんでしょ! だったら何だってしてやるわ!」

「……機材のセッティング手伝うっチュよ」

「ありがとう! さぁ、始めるわよ! ……アブネスチャンネルを見てるみんな! こんにちは、幼年幼女の味方! アブネスよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「コンパ! この動画見て!」

 

『今日はみんなにお願いがあるの! みんなにはあそこで戦っているプラネテューヌの女神を応援してほしいの! 私のチャンネルを見てる人たちは……女神のことなんて好きじゃない人が多いと思うけど、この世界を守るために今だけはお願い!』

 

「これは……アブネスさんです!」

「あの人はこのために……みんな方法は違っても、この世界を守るために戦っているのね……コンパ!」

「どうしたです?」

「私も私のやるべきことをやるわ! 行ってくる! 師匠……命令違反を許してください!」

「私も……私も行くです!」

「そうね、一緒に行きましょう! ネプ子たちのところへ!」

 

 

 

 

 

 

 

「『しょーもないチャンネルだと思っていたけど感動しました、チャンネル登録します』ありがとう! チャンネル登録もだけど、今だけは幼女女神を信じるのも忘れずにね! 『私もアブネスさんと同じく幼女が女神をやるのに反対ですが、今だけは応援します!』ありがとう! 応援してあげて! 『これ、気持ちです ¥50000』トリックさん! いつもスパチャありがとう!」

「コメントを返してる場合か!」

「でもこういうことを怠るとユーザーからの支持は落ちるっチュよ」

「そういうものなのか……」

 

 

 

 

 

 

 

(こいつ……何で強くなってきてるのよ⁉︎ とっくに限界のはずでしょ⁉︎ まさかシェア……⁉︎ この期に及んで⁉︎)

 

 これは……シェアの力? 国民からの分はもう使い果たしたはず……それでも……ありがとう!

 

「まぁ、限界なのに変わりははないわよねぇ!」

「いいえ! 私に限界なんてないわ!」

「言ってろ!」

 

 

 

 

 

 

「ネプ子が戦ってる……! それにこれ……師匠のプロセッサユニット……」

「どうしてこんなところに落ちてるです……?」

「それは奴が己の身を犠牲にしたからだ」

「あんたは……マジェコンヌ! それに犠牲にしたってどういうこと!?」

「力を使い果たしたあの女神のために、自らの命をシェアクリスタルに変えたのさ」

「そんな……師匠が……」

「武器を向けるのはやめてほしいっチュ。あの女神が再び変身する時間を稼いだのはオイラたちっチュよ」

「お前は何もしていないだろうが……」

「ネズミさん、ありがとうございますです」

「コ、コンパちゃん……コンパちゃんマジ天使っチュ……!」

「これ以上戦っている女神たちに近づかない方がいい。巻き込まれるぞ」

 

「じゃあこれで中継は終わるわ! みんな本当にありがとう! ……こんなところかしらね。あーあ、せっかく集めた幼女女神反対の同志たちが、これじゃあみーんな女神信者になっちゃうわねー」

「……その割には嬉しそうだな」

「そうかしら? よし! これ以上は危険だから撤退よ!」

「逃げるっチュ!」

「おい、待て! ああもう! 女神よ、後は任せたぞ! さらばだ!」

 

「さようならです……ネズミさん、マジェコンヌさん、アブネスさん」

「なんか……いい奴らになってたわね」

「そうですね……っ! あいちゃん! あそこ! 女神さんたちが倒れてるです!」

「起きてるのはネプ子だけのようね……安全なところまで運ぶわよ!」

「はいです!」

 

 

 

 

 

 

 

 ……! あいちゃんとコンパがみんなを離れさせてさせてくれてる。いつもありがとうあいちゃん、コンパ。私はあなたたちに助けられてばかりよ。これで、やっと本格的に戦いに集中できるわ。

 

 満身創痍の状態でいつも以上に集中して戦っているからか、ようやく少し見えてきた。ギンガが言っていた疲れない身体の動かし方ってやつが。

 

 身体の動かし方だけじゃない。こんな時だからこそ改めて、あの人から教わったことを徹底する 。今だからわかる。あの人が教えてくれた戦いの基礎に全てが詰まっている。

 

(シェアだけじゃない、動きが変わった……⁉︎ 何よこいつ! 死にかけの女神ごときに私が⁉︎ ふざけんなふざけんなふざけんな!)

 

 あなたは私の方が強いと言うけれど、私はまだあなたを超えた気なんて全然していなかった。

 

 だからギンガ……私を導いて!

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅ……あ、アイエフさん……?」

「目覚めたわね、ネプギア」

「お姉ちゃんは……?」

「戦っているわ。どうしてネプテューヌだけがまだ変身できるのかは知らないけど」

「ノワール様、それは……」

「……なるほどね。こんな事態なのにギンガの姿がないからなんか察したわ」

「どういうことですかノワールさん⁉︎」

「私から説明するわネプギア。師匠は死んだの、ネプ子に全ての力を託して」

「そう……ですか……悲しいけど、ギンガさんらしいな……」

「私たちに何かできることは……」

「ブラン……気持ちはわかりますけれど……私たちはもう力を使い果たしましたし……」

「今は信じましょう……ネプテューヌを」

 

「……⁉︎ 皆さん⁉︎ 急に光り出して……どうしたんですか⁉︎」

 

「え⁉︎ 私今光ってるの⁉︎」

「これは……まさか『共鳴』の光……?」

「ズーネ地区の時よりも規模は小さいですが……あの時のものよりも綺麗ですわ……」

「この光をどうにかしてネプテューヌに届けるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減くたばりなさいよ!くたばれぇ!」

「きゃぁあっ! まだよ! まだ終わりじゃないわ!」

「……っ!何なのよあんたは! 何度も攻撃しても立ち上がって……鬱陶しいのよ! もう終わりなのよ! 奇跡なんて起こらない! ゲイムギョウ界は今日滅びるのよ! 私が滅ぼすんだよぉお!」

「……哀れな人」

「何ですってぇ……っ⁉︎」

「国民に……国に……そして世界に向き合うことを諦めた人が……諦めない私に勝てるはずないでしょう……!」

「はぁ……?」

「私は決して世界を諦めない……! それが女神よ!」

「黙れェ‼︎」

 

 タリの女神の攻撃が苛烈さを増す……ギンガの教えを徹底しても、今の私には捌ききれない。疲労と敵の攻撃で私の身体が軋んでいく感覚がする。痛い、苦しい。

 

 ……けれど絶対に倒れない……絶対に!

 

「……はんっ! もう剣を支えにしないと立っていられてないじゃない! 気持ちだけあったって無駄なのよ無駄無駄ァ!」

 

(こいつを殺して、残った女神どもを殺して……あれ? 他の女神どもはどこ? こいつの後ろに倒れてなかった? 目が覚めてこの場を離れたのかしら……)

 

(……いた! ……ちっ、もうあんなところまで離れてやがる。……あ? 何よあの光? ……あれはまさか『共鳴』の光⁉︎ クソ……っ!)

 

「死に損ないどもが! やらせるかよ!」

 

 ……? どこに行くつもり? あの方向……まさか狙いはノワールたち⁉︎ 止めなくちゃ! ダメっ、敵の方が速い!

 

「させないわ! 『ラ・デルフェス』!」

「ぐぁぁっ⁉︎」

 

 今のはあいちゃんの魔法……! 来てくれたのね!

 

「助かったわあいちゃん! って、それギンガのプロセッサユニットじゃない!」

「どうやら師匠は私にもこれを装備できるようにしてたみたい! ほんの少しの間だけ私がこいつを食い止めるわ! だからその隙にあの光を受け取って!」

「ありがとう……すぐに戻ってくるわ!」

 

 こんなことも想定してたってことかしら。ギンガってほんとに抜け目ないわね……! ていうかあの人、私よりあいちゃんの方が可愛がってたんじゃないの? 

 

 ……こほん、今はそんなこと思ってる場合じゃないわね。ノワールたちのところに急いで飛んで行くわ。

 

「ノワール! ベール! ブラン! ネプギア!」

「この共鳴の光……受け取りなさいネプテューヌ! 今回は全部あなたに譲るわ!」

「最後まで素直じゃないですわね……」

「ネプテューヌ……頼むわね……」

 

 ありがとう、みんな。

 

「お姉ちゃん……!」

「ネプギア…見ていてね。これがあなたのお姉ちゃんよ」

「……うん!」

 

 そうして受け取った共鳴の光を取り込んで私のシェアエネルギーに変える。女神の共鳴だけじゃない……世界中の人たちの想いも感じる。負けるわけにはいかない……いえ、負ける気がしないわ!

 

 

 

 

 

 

 

「人間ごときが邪魔すんじゃねえ! くたばれクソガキが!」

「きゃぁぁぁああ! ……うぅ……ぐっ……その……程度……?」

「何なのよ……っ! どいつもこいつも……っ! カスの分際で一丁前に足掻きやがって!」

 

 あいちゃんが何とか持ちこたえてくれていたわ。本当にありがとう。大好きよ、あいちゃん。

 

「おまたせ、あいちゃん」

「……ネプ子……早かったわね……! ネプ子が戻って来る前に私がこいつを倒しちゃおうと思ったんだけど」

「そんなボロボロの身体で何言ってるのよ。後は任せてちょうだい」

「ボロボロなのはお互い様でしょ。ネプ子……決めてきなさい!」

「ええ!」

 

「ああもう! うぜえうぜえうぜえうぜえうぜえええ‼︎ もう後のことなんてどうでもいい! お前だけは……お前らだけはここで確実に殺してやる!」

 

 そうやって怒り狂うタリの女神を中心にエネルギーが集まっていく。どうやら最大の技で決めに来るようね。

 

「(こいつ、まだこんな力が)……ネプ子!」

「大丈夫、私を信じていて」

 

「くたばれぇえええ! 『覇光の光芒』!」

 

 敵の最大の技……もし直撃したら私ごとプラネテューヌが消滅しそうなほど強大なエネルギーの奔流。だけど、今の私に恐怖はない。

 

「……『32式エクスブレイド』!」

 

 まずは、敵の技の強大なエネルギーの奔流に、私のシェアエネルギーで作り出した巨大な剣をぶつけて、互いの技のエネルギーを相殺させる。

 

「……何……だと……? 私の……最大の技が……!」

 

 そしてその奥にいるタリの女神に……必殺技を叩き込む……!

 

(技の反動が……! 避けられない! 防御もできない……! クソ、クソクソクソクソクソ!)

 

「やめろぉ! 来るなぁ!

 

 これで決めるわ……!

 

「『ネプテューンブレイク……

 

 いいえ、一緒に行きましょうギンガ。

 

「『ギャラクティカネプテューンブレイク』‼︎」

 

「ぐぁああああああああああああおおおおおおおおおおおおあああああぁぁ……ぁ……」

 

 私の技をまともに食らったタリの女神が断末魔をあげながら……ついに倒れる。

 

 今度こそこれで、私の……私たちゲイムギョウ界の勝ちよ。

 

 

 

 





 次こそラストです。今までありがとうございました。

 この作品を書き始めて気づいたことは、私の文章力はクソということです。やっぱ作品投稿なんて早かったかなぁと思いながらも気づいたことは、未完のまま投げ出すのはクソということです。
 同じクソなら後味の良い方を、私がこの作品を投稿し続けてきたのはそんな理由です。ぶっちゃけ作品作るのは楽しいですし。





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FIN 2. 私(きみ)の未来


 これが最後の……最後の……初投稿です。



 

 はい、皆さんどうもこんにちは、プラネテューヌの女神補佐官……いえ、元女神補佐官のギンガです。

 

 私は今おそらく死後の世界というところにいます。身体が消滅しましたからね、完全に『死』です。ですが、いい人生だったと思うので悔いはありませんけど。

 

 死後の世界というものは、暗くも明るくもなく、寒くも暑くもない……不思議な感覚です。前も後ろもわかりませんが、とりあえず今自分が向いている方向に進んでみましょう。

 

 ……ん? 前方に誰かいますね。あれですかね、閻魔大王ってやつ。私に地獄行きを告げに来たのでしょうか?

 

「誰が閻魔大王よ」

「その声……! その魂の輪郭……! ○○様!」

「久しぶりねギンガ」

「○○様……ずっと会いたかったです……」

「そうねギンガ、私もあなたに会いたかったわ」

「まさかあなたがお迎えに来てくれるとは……」

「違うわよ、追い返しに来たの」

「……え?」

「あなたはまだ死んでいない」

 

 

 

 

 

 

 

「なんてツラしてんのよ……あんたは勝ったのよ? 勝者は勝者らしくもっと喜べばいいじゃない」

「あなた……消えるの……?」

「力も何もかも完全に使い果たしたからね。あーあ、完全敗北よくそったれ」

「……あなたのことも救えたら……」

「それは傲慢ってもんよ、私は救われるつもりなんてないし。それにこんなクソみたいな世界じゃ生きてる方が幸せってわけでもないけどね」

「そんなことはない……このゲイムギョウ界に生きるみんなが幸せになれるように、私たちはこれからも力を尽くすわ」

「そ……ま、せいぜい頑張んなさいよ……じゃあね」

「さようなら……タリの女神、キセイジョウ・レイ」

「はぁ……それ好きじゃないって言ったのに……」

 

 そう言ってタリの女神は消えていった。あなたのことは許せないけど、あなたのことは忘れない。

 

「あいちゃん……あいちゃん?」

 

 話しかけても返事がないから振り向いて様子を見たら、疲れて寝てしまっていたわ。

 

「すぅ……すぅ……」

「もう、こんなところで寝ていたら風邪ひくわよ」

 

 どうやらあいちゃんだけじゃなくて、起きたはずのノワールたちもさっきの『共鳴』の光を生み出したからか、疲れて寝てしまっているわね。

 

 さて、これからどうしようかしら。まずはプラネテューヌの復興よね。こんなにめちゃくちゃになってしまったけれど、いーすんとギンガがいればすぐに復興できるわよね。

 

 ……ぁ…………ギンガはもう……

 

「ネプテューヌさーーーーん‼︎」

 

 ……! いーすんが凄い勢いで飛んで来たわ。ギンガが死んでしまったことを伝えなくちゃね…

 

「いーすん。聞いてほしいの」

「分かっています、ギンガさんはあれをやったんですよね」

「分かっているのね……だからギンガはもう」

「ネプテューヌさん、少し待ってくださいね。はぁっ!」

 

 その掛け声と共にいーすんが魔法陣を展開し、その魔法陣から出てきたのは……ギンガの身体?

 

「いーすん⁉︎ これは?」

「ギンガさんの新しい人工生命体の身体です。いつかこんな日が来ると思って作っておいたんです。これを作るのに数千年かかりましたが」

「そうなの……」

 

 正直今すぐにこの身体を思い切り抱きしめたいけれど、そんな場合じゃないわよね。つんつんとその身体をつつきながらいーすんに聞く。

 

「でも起きないわよ? 呼吸もしていないし」

「ただの身体だけなので当たり前です。今から起動して活動を開始させるので」

「じゃあ……やっぱり私たちのギンガはもう死んだってことじゃ……」

「いいえ、この身体に今から私がギンガさんとリンクした時に手に入れた記憶などの詳細なデータを入力し、さらにネプテューヌさんが今持っている共鳴で生じた膨大なシェアエネルギーを使い、ギンガさんを復元します!」

「そんなこと……できるの?」

「普通は不可能です。人間を人工生命体にする場合、これらに加えて本来人が生まれて来た時にその魂に宿るシェアエネルギーが必要で、それを人為的に作り出すことはできません」

「魂に宿るシェアエネルギー……でもギンガの持つシェアエネルギーは0……ってことは!」

「はい、その条件はギンガさんには関係ないのです」

「つまり……理論上は可能ってことね」

「成功する確率は低いですが……」

「0じゃないなら可能ってことよ。私は女神なのよ? 奇跡ぐらい起こしてみせるわ」

「そうですね、では開始します!」

 

 いーすんが展開した魔法陣に、私がシェアエネルギーを注入していく。

 

 ギンガ……あなたのことを絶対に取り戻してみせるんだから!

 

 

 

 

 

 

 

「死んでいないって言われましても……身体も消滅しましたし……」

「いいえ、あなたはまだ引き返せる」

「あ、そうなんですか? じゃあ帰ります」

「……随分とすんなり帰るのね」

「はい。もう死んでもいいと思っていたのですが、やはりどうしても会いたい方々がいますので、引き返せるんだったら帰ります」

「そう……あなたを帰らせるために説得とか必要だと思ってたんだけど……拍子抜けだわ」

「あなたとずっとここにいるのもいいと思ったんですけど……歓迎されてないようですし、私が本当に死んだらまた会いましょう」

「ええ、またねギンガ」

 

 そう言ってその場から引き返します。数千年ぶりの再会にしてはやけにあっさりなものとなってしまいました。もっと話したいことが色々あったのですが、それは私が完全に死んだ時にしましょう。

 

 とはいえ、引き返すって言いましても、どこに行けばいいのでしょう? それに、肉体が消滅したのに死んでいないっていうのは謎ですね。しかし、死んでいないのならばもう少し足掻いてみるとしましょうか。

 

 

 

「ギンガ……行っちゃったね」

「△△、あなたもギンガになんか言ってあげればよかったのに」

「お姉ちゃんとギンガの間には入っていけないかな……お姉ちゃん、振られちゃったね」

「あーあ、私が死ぬ前に振らずに『一生私だけを想っていろ』なんてこと言えばよかったかしら?」

「……本当はギンガに来て欲しかったんでしょ?」

「そうね、何回も喉まで出かけたわ『こっちでずっと一緒にいよう』って。今のプラネテューヌの女神が羨ましいわ。私よりギンガを夢中にするなんて、その子に会ってみたいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 少し歩いていたら真っ暗な空間になりました。さっきは明るくも暗くもなかったというのに。さてどうしましょう。どこに進めば戻れるのでしょうかね?

 

 

\ ……! ……ガ! /

 

 

 何か聞こえます……これは……

 

 

\ お願い……戻ってきてギンガ! いや、戻ってきなさい! 女神命令よ! /

 

 

 ……声が聞こえます……パープルハート様の声が……

 

 昔、いーすんに『使命を果たせればいつでも死んでもいい』みたいなこと言ったんですけどね……やっぱりまだ死にたくないです。

 

 これからもずっと、ネプテューヌ様とネプギア様とイストワールと……それだけではありません、ノワール様、ブラン様、ベール様、ユニ様、ロム様、ラム様、あいちゃん、コンパさん……かけがえのない皆様と一緒に生きていたいです。

 

 だから……今戻ります……! パープルハート様! ネプテューヌ様!

 

 

「……ぅん……ぉ、おはようございます……パープルハート様、イストワール」

 

 目を覚まして、最初に目に入ったものは、私の手を握るパープルハート様と頭から煙が出ているイストワールでした。

 

 目覚めた瞬間は、なぜ消滅したはずの自分の身体が存在するのかわかりませんでしたが、半人半人工生命体だった自分の身体が完全な人工生命体となったという感覚と、頭から煙を出していたイストワールを見て、全てを把握しました。

 

「ありがとう……イストワール」

「おかえりなさいギンガさん…ぷしゅー……」

 

 まずは起き上がって、オーバーヒートして倒れ込んだイストワールを地面に寝かせるわけにもいかないのでとりあえず頭の上に乗せます。

 

「パープルハート様もありがとうございます」

「ギンガ……ギンガぁ!」

 

 パープルハート様に思い切り抱きしめられました。女神様の全力の抱擁の威力で、私の新しい身体のどこかの骨が砕けたような音がしましたが、そんなことはどうでもいいのです。パープルハート様を抱きしめ返します。

 

「パープルハート様……ごめんなさい。少し寂しい思いをさせてしまったようで……」

「少しどころじゃないわよ……! 女神にこんな思いさせて……許さないわよ……もう……!」

「許してくださいとは言いません」

「絶対に許さないわ。だからこれからはずっと一緒にいてちょうだい。私もあなたとずっと一緒ににいるから……いつか私が女神じゃなくなってもずっと一緒に……」

「パープルハート様、申し訳ありませんが最後の方を聞き取れなかったのですが、なんと………? 差し支えなければもう一度言っていただけると……」

「な、なんでもないわ! 忘れてちょうだい!」

 

(ぅぅん……どうしてそこで引いてしまうんですかネプテューヌさん……もう少し押せばギンガさんを落とせたかもしれないのに……)

 

 

 

 

 

 

 

 それから数ヶ月後、無事シェアも回復して、こうして今日新プラネタワーの完成式典を開けることとなりました。私とイストワールで守ったプラネタワーは、結局その後の戦いで消し飛んでしまったようなので。

 

 変身して式典用のドレスを身に纏った女神様たちが集まっています。前回の友好条約の式典とは違い、今度は女神候補生の皆様も変身してからドレスを着ています。ドレス姿の八人の女神様の並んだ光景……ここが理想郷ですか。嗚呼……女神様尊すぎます、生き返ってよかった……!

 

「あれからみんなのシェアも順調?」

「もちろんですわ」

「タリに奪われてただけで国民の心が離れてたわけじゃなかったんだもの」

「こっちも問題ない」

「よかった、じゃ式典をはじめましょう」

 

「お姉ちゃん」

「言わなきゃ……ダメ」

「……おいネプテューヌ…なんつーかあの時」

「私を攻撃してきたこと?」

「ごめんな……友好条約の裏をかかれた気がして頭に血が上っちまった」

「あなたと久しぶりに全力をぶつけあえて、正直ちょっと楽しかったわ。それでちょっと思いついたんだけど……

「……何だよ?」

「あとで言うわね」

「そうか。……もう一つ聞きたいことがあるんだけどよ」

「何?」

「あそこで車椅子に縛り付けられているお前んとこの女神補佐官は何なんだ?」

 

 ホワイトハート様がようやく突っ込んでくれました。そうです、私は今車椅子にガッチガチに縛り付けられています。まるで千年血戦篇の愛染です。他の女神様やあいちゃんやコンパさん、果てにはイストワールまで気まずそうに私から目を逸らしていましたからね……!

 

「あれ? 式典に来なかった前科があるからね。その戒めよ」

「せめて口ぐらいは自由にしてやれよ……」

「つい塞いじゃったけど……それもそうね」

 

 さて、ようやくこれで喋ることができそうです。

 

「ぷはぁ! パープルハート様! こんなもの無くても今回は欠席しませんよ!」

「どうかしらね? ギンガは私の前からすぐにいなくなってしまうから……あの時みたいに……」

「このタイミングでそれ言うのやめてください!」

「まぁ師匠、車椅子は私が押しますから……」

「ありがとうございますあいちゃん。けど、この鎖を解いてくれるともっとありがたいのですが……」

「ネプ子が怖いから無理です」

「そんな……」

「それにしても……力を入れられなくて身動き一つ取れないけれど身体の負担にはなりづらい絶妙な縛り方をしてるわね」

「感心してないで助けてくださいブラックハート様……」

「めんどくさいから嫌よ。それに、やりすぎだとは思うけどネプテューヌの気持ちは少しわかるし。ていうかネプテューヌよくこんな縛り方できるわね。あなたそんなに器用だったかしら?」

「コンパに教えてもらったのよ」

「何してるんですかコンパさん!」

「包帯を巻く要領と似ているのでねぷねぷに教えちゃったです。てへっ、です」

 

 ……可愛いから許します。今はこの運命を甘んじて受け入れましょう。動けないのはつらいですが、パープルハート様に縛られてる感じがしてそれはそれでたまらないんですよねげへへへへ。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで式典が始まりました。

 

「皆さんの信じる心のおかげでこうして新しいプラネタワーが完成しました。プラネテューヌの街を日々復興しつつあります。この国の女神として皆さんに感謝します。本当にありがとう」

 

 パープルハート様はやはり美しいですねぇ〜。

 

「そしてもう一つこの場を借りて皆さんに宣言したいことがあります。それは……少し待って」

 

 そう言ってパープルハート様が変身を解除します。

 

「やっぱりこの姿じゃないとね! えっと、プラネテューヌ女神ネプテューヌは! 本日をもって友好条約を破棄します!」

 

 その宣言に周囲はざわつきますが、私はネプテューヌ様から事前に………

 

『そろそろみんな来るわね』

『パープルハート様……もう変身したのですか?』

『あなたにいち早くドレス姿を見せたくて』

『とても似合っていますが、私は何回も見ていますよ』

『それでもあなたに一番に見せたいのよ』

『そうですか、ありがとうございます』

『あのねギンガ。私、今日で友好条約を破棄しようと思ってるの』

『そうですか』

『……あまり驚いていないわね』

『パープルハート様のことなら何だってわかりますよ。だから、どんな意図で破棄するかなんてもう分かっています』

『何だって、ねぇ……私の一番わかってほしいことはわかってくれないのに』

『一番わかってほしいこと……ですか?』

『いいのよ、いつかちゃんと言うから。待っていて』

『かしこまりました』

『あと、ここに座ってちょうだい』

『車椅子……ですか? 私今どこも悪くないですよ?』

『いいから』

『は、はい……座り……ましたよ?』

『さてと、これをこうして……こうね』

『あの、パープルハート様……? 何ですかこの拘束具……? 鎖……?』

 

『ズーネ地区で私たちが捕まっていた時のと同じぐらい丈夫なものよ。よし、こんなとこかしらね』

 

『あの! すみません! これはどういうことなのでしょうか⁉︎』

 

『うるさいから口も塞いでおこうかしら』

 

『え⁉︎ ちょ、もごっ! ……んー! んー! んんー!』

 

 ……という感じで聞いていました。それにしても……一番わかって欲しいことって何なのでしょう? まぁ、いずれ教えてくれるらしいので今は気にしなくても良さそうですね。

 

「そんなのもう必要ないでしょ? わたしたちとっくにほんとの仲間なんだから! ね、ノワール! ベール! ブラン!」

 

 そうです、友好条約締結から様々な事を経て、本当の仲間になれたのですからね。

 

「……それもそうね」

「これからは正々堂々と競い合うということですかしら?」

「たまには気の利いたこと言うじゃねえか」

 

 ふふふ、そういうわけで、これからは思う存分私も他の国の女神様にも仕えられ……

 

(ダメだよ! ギンガは私のギンガなんだから! わたしとネプギア以外の女神にデレデレしちゃダメ!)

 

 ……これは、脳内に直接語りかけるという私が序盤数回使っただけで死に設定になりかけてたやつ……! まさかネプテューヌ様も習得するとは……ー

 

(表情で変なこと考えてたのバレバレなんだからね後でお説教だよー!)

 

 ネプテューヌ様のお説教……心が踊ります……!

 

(何言っても無駄かなこれ……)

 

「じゃあこれからエキシビションマッチでもどう?」

「いっちょやるか!」

「胸が高まりますわ!」

 

 そう言ってブラックハート様たちがいきなりドレスからプロセッサユニットに着替えます。それに……エキシビションマッチ……ですか?あの、今式典中なのですけど……?

 

 ブラックハート様が飛んでいってしまい、それに続いてグリーンハート様とホワイトハート様も飛んでいってしまいました……

 

「うわぁ! 待ってよー! 主人公は私だよー!」

 

 ちょ、パープルハート様⁉︎ あなたまでいなくなってしまったら式典はどうなるのですか!

 

「ユニちゃん! ロムちゃん! ラムちゃん!」

「私だって!」

「私たちがサイキョーなんだから!」

「うん、サイキョー……!」

 

 女神候補生の皆様も飛び去っていってしまいました……あーもう何もかもめちゃくちゃですよもう。イストワールも私の横で嘆いています。

 

「はぁ、また騒がしい日々が始まりそうですね」

「……とりあえずは、戦いながら飛んでいってしまった女神様に代わって式典を終わらせることからですね」

「皆さんったら……こんなにいい式典だったのに…最後の最後でめちゃくちゃにしてしまって……」

「本当ですよね……まぁでも、めちゃくちゃで良いんですよ。それでこそ女神様……それでこそゲイムギョウ界です」

「ふふ、そうですね」

 

 そう、めちゃくちゃでいいんです。未来がどうなるかなんて誰にもわかりません。

 

 ここで私たちの物語はおしまい。時には間違えながらも未来へと進んで行く、それが人生という名の冒険です。

 

 今はただ、女神様と、仲間たちと、そしてこのゲイムギョウ界に感謝を。

 

 

 

 

 

『紫の星を紡ぐ銀糸 第2部 爛然のビヴロスト編 -THE ABSOLUTE AMBITION-』 -完-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ようやく始まる…オレの復讐が」

 

「待っていろ……ゲイムギョウ界」

 

「そして待っていてくれ……あの時……世界でただ一人オレの憎しみを肯定してくれたキミを……迎えに行くよ……ギンガ」

 

 

 

 




とりあえず…とりあえず完結です。

最後なんか出てきましたけど、まだその先を何も考えてないし、原作が変わるので、投稿する時は新作品として投稿するつもりです。

その前に1週間ぐらい前に投稿した別のやつを進めるのでそっち終わってからですね。

楽しかったです。ここまで読んでくれた方へ、ありがとうございました。

気が向いたら活動報告辺りでこの作品についてなんか書き残そうかなと思います。





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番外編豪華3本立て

 完結した後に投稿するという禁忌を侵してしまいましたが番外編なのでノーカンだから初投稿です。



 

-アイエフとの出会い編-

 

 

 諜報員って戦闘訓練もやるのね……諜報員になってからの初めての戦闘訓練、少し緊張するわ。

 

 訓練の指導してくれるのはプラネテューヌの女神補佐官か……どんな人なんだろう? ネプ子やイストワール様は式典みたいなイベントで見ることが多いけど、女神補佐官は表舞台にはほとんど出てこないし、どんな人だか知らないのよね。ネプ子曰く無駄に良い顔らしいけど。

 

 ……ていうか私一人しかいないんだけど⁉︎ そういえば他の諜報員に会ったことないわね……プラネテューヌって人材不足なのかしら?

 

 そんなことを考えていたら女神補佐官が来たようね。

 

「遅れ……てはいませんけど、待たせてしまったようですね。申し訳ありません。戦闘訓練の指導をさせていただきます、女神補佐官のギンガです。よろしくお願いします」

「あ、アイエフです! よろしくお願いします!」

 

 この人が女神補佐官のギンガって人か。うわぁ……ネプ子が言ってた通り良い顔……

 

「さて、早速ですがアイエフさんがどれぐらい戦えるのか見させてもらいますね」

「え?」

「プラネテューヌには衛兵はまだしも、諜報員は人材不足なのはご覧の通りでご存知だと思いますので、その分アイエフさんにはしっかりと指導したいのです。だから、まずはどれくらい戦えるのか見たいんですよね」

「今すぐ……ですか?」

「はい、どこからでもかかってきてください。手加減とかはしないでくださいね」

 

 当然といえば当然だけど甘く見られてるわね。私、プラネテューヌではネプ子の次くらいに強い自信あるのよ! それを見せてあげようじゃな……

 

 ……隙、どこ? 何で突っ立ってるだけなのにどこにも隙が見当たらないの⁉︎ 何この人……

 でも、隙がないなら、私のAGIの高さを活かした高速戦闘で翻弄してやるわ!

 

「ほぅ、中々速いですね」

「……っ!」

 

 完全に私の動きを見てから対応してきた……! 嘘でしょ、私よりAGIが上だってこと……?

 だったら、対応できなくなるまで畳み掛ける!

 

「はぁああっ!」

(……なるほど)

 

 顔色ひとつ変えずに全部対応してくるなんて……こうなったら本気で行くわ!

 

「『クロスエッジ』!」

 

 技を使う! 訓練用のゴム製の武器だから当たっても大丈夫でしょ!

 

「良い技です」

 

 何事もなかったかのように受け止められた……! こうなったら……魔法でどう⁉︎

 

「『魔界粧・轟炎』!」

 

(……魔法も使えるのですか、とりあえず火は危ないので適当に水魔法で消化しておきますか)

 

 あ、この人魔法も使えるのね。私の魔法が簡単に消されちゃった。うん、これもう無理ね。今の私じゃこの人には何しても勝てないわ。こんな無理ゲーを確信するのなんて、変身したネプ子と戦った時以来だわ……

 

「……ここまでにしましょう。よく分かりました」

 

 はぁ、全然良いとこなかった……自信なくしてきた。こんなんで諜報員続けていけるかしら……

 

「中々良かったですよ」

「え?」

「戦闘力に関しては申し分ないです」

「けど、私何もできてなかったじゃないですか……」

「まぁ、私とあなたでは戦闘の経験値が数千倍ぐらい違いますし、ゲイムギョウ界で私に勝てるのは女神様ぐらいしかいませんから」

「……」

「アイエフさんならもっと強くなれますよ。私と共に戦えるぐらい」

 

 多分この人はお世辞で言ってるわけじゃない。それがわかったから少し自信を取り戻してきた。でも、私が思い上がっていたのも事実。この人にもっと近づけるように強くなりたい。

 

「……ん? アイエフさん……アイ……あっ!」

「どうかしたんですか?」

「あなたがネプテューヌ様の親友の『あいちゃん』ですか?」

「え、あ、そうですけど」

「ふふ、なるほど、ネプテューヌ様は良い友をお持ちのようです。いつもネプテューヌ様からあいちゃんのことは聞いています。これからよろしくお願いしますね、あいちゃん」

「あいちゃん⁉︎」

「ネプテューヌ様がそう呼んでいますし、可愛らしい響きなので私もそう呼んだのですが、嫌でしたか……?」

「いえ! あいちゃんでいいです!」

 

 その良い顔でしょんぼりするのは卑怯よ! なるほど、ネプ子の言う『無駄に良い顔』の『無駄』ってそういうことなのね!

  なんかこのやりとりだけでこの人と仲が良くなった気がするわね。ネプ子のおかげかしら? ……決めた! 私はこの人に習おう! この人について行くわ!

 

「これからも指導お願いします、師匠!」

「……し、師匠?」

「はい」

「あの、その呼び方は……少し……」

「なら師匠があいちゃんって呼ぶのをやめてくれたらやめます」

「え? ……あー……じゃあ師匠でいいです」

 

 ええー……

 

 

 

 

 

 -コンパへのお料理講習編-

 

 

「……どうですかギンガさん?」

「うーむ、火を通しすぎですかね。プリンのカラメルソースは加熱時間が1秒違うだけで世界が変わると言いますし」

「ショックです……」

「いえ、それでも良いものにはなると思いますよ」

「ギンガさんってとってもお料理が上手ですよね。何でそんなに上手なんですか?」

「料理をできるようになろうと思ったきっかけは……初代のプラネテューヌの女神様の料理がクソ不味かったからですかね。食材への冒涜レベルで料理がヘッタクソだったので、これは私が作るしかないな、と」

「そうだったんですか……」

「そういうわけで作りだして、同じものばかり作るのもつまらないのでレパートリーを増やしてみて、仕事があまりない期間はプロのシェフに弟子入りしたりして、今に至るというわけです」

「……思ってたよりギンガさんの料理にかける情熱かすごかったです」

「そうですね……弟子入りした店の料理長が引き起こした連帯食戟に巻き込まれたり、同じ値段でのステーキデスマッチをやったり、グルメ界に行ったり……私にとって料理とは第二の戦場のようなものでした」

「壮絶すぎです……」

「あ、今の全部嘘ですからね」

「……怒ってもいいですか?」

「ごめんなさい」

「じゃあ昔のプラネテューヌの女神様の料理が下手だったっていうのは……」

「あ、それはマジです。クッッッッソ下手でした」

「そ、そうですか」

「……けど、今となってはそのクソ不味いゴミみたいな料理をふと食べたくなってしまうものなんですよね」

「……(く、クソ不味いゴミみたいな料理……逆に気になるです……)」

「さて、仕上げに入りましょうか」

「はいです!」

 

 

 

 

 

 

 -イストワールと二人きりの夜編-

 

 

「ラステイションでお泊り会だよ!」

「全く……女神とあろう者がそんなことではしゃいでるんじゃないわよ」

 

(お姉ちゃんがすっごく楽しみに準備してたことは黙っておこう……)

 

「ユニちゃん! ユニちゃん! 一緒に寝よ!」

「何言ってるのさネプギア。今夜は朝までゲーム大会だよ! 寝てる時間なんかないよ!」

「えぇ⁉︎ ……まぁそれはそれで楽しそうだからいいか」

「夜更かしは健康に悪いのよ? ちゃんと寝た方がいいわ」

「ふ〜ん、ノワールってばわたしたちに負けるのが怖いんだ〜?」

 

(うわ、安い挑発。流石にこんなのに乗るお姉ちゃんじゃ……)

 

「そんなわけないでしょ! いいわ、かかってきなさいネプテューヌ!」

 

(えぇ……)

 

「よーし、ゲーム機のセッティングもできたし、早速始め……る前にちょっと電話していい?」

「電話?」

「ほら、ギンガがわたしがいなくて寂しがってるかもしれないからさ。ちゃんとわたしの声を聞かせてあげないと」

「考えすぎじゃないの? って思ったけどあながち間違いではなさそうね……」

「さてさて……もしもしギンガ?」

『あ、ネプテューヌ様? どういったご用件でしょ…………おい! イストワール! 不利だからって一時停止解除して棒立ちの俺のキャラをサンドバックにするな! ずりぃぞ! 名付けてずるいーすんだ! …………失礼しました、ええと今立ち込んでおりまして、落ち着いたら必ず折り返しかけ直しますので…………おい! それ即死コンじゃねえか! そんな勝ち方して嬉しいのかよ⁉︎ …………申し訳ありません! 切りますね! ………イストワール‼︎‼︎』

「え⁉︎ ちょっ! ギンガ⁉︎ ……切れちゃった……」

「どうしたんですかネプテューヌさん?」

「ギンガはどうだったの?」

「……いーすんとめっちゃ楽しそうにゲームしてた」

「いーすんさんとギンガさんって二人きりの時は意外と子供っぽくはしゃぎますよね」

「…………むぅ〜〜っ!」

「ちょっとネプテューヌ! 急に変身なんかしてどうしたのよ⁉︎」

「少し待っててちょうだいみんな。私はちょっとプラネテューヌに戻って女神補佐官を教育してくるから。私と遊んでる時より楽しそうにしてて……許せない! 誰が一番か思い知らせてあげるわ!」

「やめなさい! そんなくだらないことで変身なんかするんじゃないわよ!」

「離してノワール! あんなにはしゃいでるギンガなんて私見たことないのに!」

「あーもう! ユニ! ネプギア! 手伝って!」

「うん!」「はい!」

「大人しくしなさいネプテューヌ! 三人に勝てるわけないでしょう!」

「いや私は勝つわ私は!」

 

(結局お姉ちゃんを抑え込むのに朝までかかりました……けど、ちゃんと抑えていたのは最初の方だけ途中からベットの上を転がりまわったり枕を投げ合ったりでそれはそれで楽しかったお泊まり会でした。またやりたいなぁ)

 






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