ヨコヅナのヒーローアカデミア (ニッケン)
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ヨコのヒロアカ 1話

 ヒロアカにオリジナル小説のキャラを出した二次創作を書きたくなったので、投稿してしまいました。


 雄英高校、ヒーロー科は全国同科中で最も人気で最も難しい。

 その為ヒーロー志望でもヒーロー科に入れない者が普通科に入学することはよくある。

 

 雄英高校の普通科一年、井ノ中ヨコヅナは学食で昼食を食べていた。

 

「さすが全国屈指の有名校雄英だけあって、どのメニューも美味しいだな」

 

 テーブルには三人前の料理が並んでいるがヨコヅナが一人で食べる分だ。

 

「特にから揚げが美味いだな、将来のちゃんこ鍋屋を開くにしても、メニューに揚げ物系は必須だべな」

 

 から揚げを食べながら、ブツブツ言っているヨコヅナに、

 

「相変わらず、よく食べるねヨコヅナ」

「ん?拳藤……久しぶりだべな」

 

 ヒーロー科1年B組、拳藤一佳が話しかけてきた。

 

「一佳ちゃん知り合い?」

 

 拳藤と一緒にいるのは同じクラスの小森希乃子。

 

「同中出身なの」

「普通科の井ノ中ヨコヅナだべ」

「ヒーロー科の小森希乃子、宜しくね」

「宜しくだべ」

「……相席して良い?」

「良いだよ」

 

 ヨコヅナが座っているのは4人掛けのテーブル、しかし片側はヨコヅナ一人で占領しているので、拳藤達は向かい側に座る。

 

「井ノ中は大きいね」

「あはは、縦も横もデカいだろこいつ」

 

 ヨコヅナは身長190程あり体重は130超えの逞しい体格をしている。

 

「ここでは、オラなんて普通だべがな」

 

 逞しい体格と言っても普通の基準でだ、この世界は総人口の八割が特異体質。

 身長が2026㎝に巨大化する者や巨大な竜に変身する者もいるのだから、それらに比べたらヨコヅナの体格はいたって普通だ。

 

「あ、そう言えば、ヒーロー科の1-Aが(ヴィラン)に襲われたって聞いただが、二人は大丈夫だったべか?」

 

 少し前に、ヒーロー科の1-Aの授業中に(ヴィラン)が襲撃するという事件があった。

 

「大丈夫だよ、私らB組だから関係ない」

「A組の生徒や先生に怪我した人はいるらしいけど、もう学校に来れてるらしいよ」

「それは良かっただ。……ヒーロー科の授業はどうだべ?」

「ヒーロー基礎学での屋内戦闘訓練とか人命救助訓練とかはやっぱ全然違うよ」

「大変だけどやりがいあるし楽しいよね」

「そうだべか……」

 

 二人の話を聞いて何かを考えるヨコヅナ、

 

「あんたも素直にヒーロー科受けてたらよかったのに…」

「え、井ノ中はヒーロー志望なの?」

「…ヒーロー免許は取りたいと思ってるだよ」

「ん?」

 

 ヨコヅナの言い方に首を傾げる小森。

 

「こいつは将来自分の店、ちゃんこ鍋屋を開業するのが夢らしんだけど…」

 

 ヨコヅナが雄英に入学したのはヒーロー免許を取りたいからなのだが、それは別にヒーローになりたいからではない。

 だから、雄英入試はヒーロー科ではなく初めから、普通科を受験していた。

 

「オラはちゃんこ鍋屋の副業としてヒーロー活動出来たらと思ってるだよ」

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022

 こちらも読んで頂ければ幸いです。


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ヨコのヒロアカ 1話②

 ヒーローの職業は国家公務員に含まれるのだが、基本給料は歩合性で副業が許される。

 だからヒーローでありながら、ちゃんこ鍋屋を経営する事は何も問題ない。

 ヨコヅナはヒーローになって多くの人を助けたいなどと崇高なことは考えていないが、

 

「目の前で襲われてる人を助けたいとは思うべ、でも資格もってないとそれも出来ないだよ」

 

 この世界では、資格末取得者が個性を使って危害を加えた場合、相手が凶悪犯であろうと規則違反として処罰される。

 

「こいつ中学ん時、それで処罰されてんの」

「だから(ヴィラン)ぶっ飛ばしても処罰されないように、ヒーロー資格は欲しいんだべ」

 

 資格を持っていないちゃんこ鍋屋の店主が(ヴィラン)をぶっ飛ばした場合、処罰を受け店の評判は落ちる。

 しかし、資格を持っているちゃんこ鍋屋の店主が(ヴィラン)をぶっ飛ばした場合、国からお金が貰えて、店の評判は上がるのだ。

 これは資格取る他ないと考えるだろう。

 

「そうなんだ……でも、だったらなんで普通科なの?」

「雄英だったら、普通科でもヒーロー資格試験を受けれるって聞いただよ……でもデマ情報だっただ…」

 

 がっくりと肩を落とすヨコヅナ。

 

「バカだろこいつ。ヒーローの訓練しないでも試験受けれるなんて、ちょっと考えたらそんな甘い話あるわけないのに…」

「確かにちょっとバカだね」

 

 辛辣な女子二人の言葉だが仕方ない。

 ヒーロー活動は人命がかかっている、訓練もなしに試験だけ受けてヒーローになれるわけがないのだ。

 

「雄英だったらあってもおかしくないと思っただよ……でもまぁ、まるっきりデマってわけでもなかっただよ」

「え、普通科でもヒーロー資格の試験受けれる方法あるの?」

「いや、普通科じゃ受けれないだ。でも、今度の体育祭の成績によっては、ヒーロー科に編入出来るって話だべ」

 

 雄英でも普通科でヒーロー資格試験は受けれないが、ヒーロー科に編入すれば試験を受けることは出来るのだ。

 

「へぇ~、それはつまり私らヒーロー科に対する、宣戦布告ってことね」

 

 雄英の体育祭は、ビックイベントで全国のトップヒーローもスカウトの為に観に来る。

 ヒーロー科の生徒にとっても卒業後名のあるヒーロー事務所に入る為の重要なイベントだ。

 普通科から編入するには、そんな必死に勝ちに来るヒーロー科よりも優秀だと思われるぐらいの成績でなければ認められないだろう。

 

「ヒーロー科って言っても入学して三か月もたってないだよ。多分大丈夫だべ」

「そんな甘い考えだから今あんたは、普通科なんでしょうが!」

 

 お気楽に言うヨコヅナの額にチョップを喰らわす拳藤。

 

「ははは、そうだべな」

「精々ヒーロー科編入の為に頑張る事ね、対決する事なっても負けてあげないけど」

「必要ないだよ」

「言ってくれるわね」

 

 ヨコヅナの真剣にやっても絶対に負けないという口ぶりに、ムっとなる拳藤。

 

「まぁいいわ…食べ終わったし行こうか希乃子」

「……うん、またね井ノ中」

「じゃあね、ヨコヅナ。体育祭の対策少しは考えときなさいよ」

「分かっただよ、まただべ」

 

 ニコニコ笑顔のヨコヅナを残して、拳藤と小森は食堂を後にした。

 

「……対策って何をどう考えたら良いんだべかな?」

 

 ヨコヅナの入試での筆記の成績はかなり合格ぎりぎりだった。

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 2話①

 最近ヨコヅナが雄英に登校する時間はかなり速い。

 それは学校の敷地内にある緑化地区で鍛錬をする為だ。

 ヨコヅナは褌一丁の姿で、股を広げて腰下ろし、そして片足を高々と、足の裏が天に向くほど高々と上げ、強く地面を踏む。

 

 ズドーンと地面が揺れたかのような轟音が森に響く。

 

 相撲の【四股踏み】という稽古だ。

 ヨコヅナの特技は、名前のまんま相撲である。それと料理(得意料理は当然ちゃんこ鍋)

 

 しかし、世界総人口の八割が特異体質となったこの時代、相撲は廃れ過去のモノとなっていた。

 それは相撲会は個性を受け入れることをせず、個性持ちは新弟子検査で不合格にして角界に入れなかった為だ。

 他でも個性を受け入れない格闘技やスポーツはあったが、時代が流れ個性持ち人口が増えるにつれ、個性持ち○○と前言葉をつけて受け入れ、そして個性持ちが当たり前となった今では前言葉がなくなった。

 競技によっては世の流れに柔軟に対応し、個性持ちを取り入れ人気になった競技も多い。

 だが、相撲会だけは決して個性を受けいれなかった。他の団体が「個性持ち相撲」などを名乗る事すら許しはしなかった。

 今では個性発生以前の、時代の文化を紹介するみたいなイベントで、相撲が行なわれる事もあるがそれはイベントショー団体。

 相撲会、角界は今の世にはない。

 ヨコヅナは祖父に相撲を教わった。

 ヨコヅナの祖父はぎりぎり相撲会があった時の力士で、角界がなくなったことで廃業した、最後の力士の一人とでも言える。

 祖父が亡くなってからも、ヨコヅナは相撲の稽古を一日たりとも欠かしたことはない。

 

 

 ヨコヅナが稽古をしていると、

 

「元気の良い鍛錬の音を聞いてぇ~、私が来た!!!」

 

 №1ヒーローにして、雄英の教師のオールマイトが現れた。

 

「……おはようございますだ。オールマイト先生」

「はっはっは!おはよう、鍛錬を中断してしまってすまないね」

「構わないですだよ」

 

 オールマイトと一対一の状況はファンの生徒なら緊張するかもしれないが、ヨコヅナは別に緊張しない。あまり現役のヒーローとかに興味ないのだ。

 

「普通科なのに最近毎日朝早くから鍛錬している生徒がいるという話を聞いてね、今日は早起き出来たから見に来たよ、名前を教えてくれるかな?」

 

 ヨコヅナはオールマイトを知っているが会話するのは初めてで、オールマイトはヨコヅナの事を知らない。

 

「オラは井ノ中ヨコヅナですだ」

「はっはー!名が体を表すとはまさに君の事だね。……鍛錬を見学させてもらっても良いかね?」

「?……良いですだよ」

 

 №1ヒーローが見ても面白いものでもないと思うヨコヅナだが、気にせず稽古を続ける。

 

 四股踏みの鍛錬の後ヨコヅナは、

 

 巨大な岩を抱えながら、すり足。

 

 大木に向かて左右交互に、張り手。

 

 一回一回、手合の構えから大木に向けて渾身の、ブチかまし。

 

 と次々と稽古をこなしていく。

 オールマイトはヨコヅナの稽古を真剣な目で見ながら、

 

「…やはり相撲は凄いな」

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

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ヨコのヒロアカ 2話②

 

 ヨコヅナの稽古が一通り終わったところで、パチパチパチとオールマイトが拍手をする。

 

「いやぁ、実に質の高い訓練だ……以前、イベントショーで相撲を見た事があるが、全く別物だね」

「ははは、当然ですだ……あの人達は力士のモノマネをしてるのであって力士じゃないだ」

「では、君は本物なのだね」

「あぁ~、オラ自身も本物とは言えないだが、本物の力士の弟子ではあるだ」

「なるほど、良き指導者に鍛えられたのだな」

 

 ヨコヅナを鍛えた者がよき指導者だった事は、高校一年とは思えないヨコヅナの鍛え上げられた逞しい体を見ただけでも分かる。

 

「とても素の状態とは思えないけど、個性は使ってないんだよね」

「オラの個性は身体能力が上がったりするモノじゃないだよ」

「やはりか!…あ、いや…ご、ごほんっ」

「ん?」

 

 喜んで声を大きくするオールマイトだが、咳をして誤魔化す。

 

「井ノ中少年、君はヒーロー科を落ちて普通科に入ったクチかな?」

「……普通科だけどヒーローになりたいって意味では一緒ですだ」

「そうか、そうか、……では訓練を頑張っているのは、今度の体育祭で活躍する為の秘密特訓なのかな?」

「体育祭で活躍したいとは思ってるだべが、別に秘密じゃないだよ。稽古は昔からの日課ですだ。最近になってここでやってるのは、朝稽古してる生徒は学科関係なくシャワーを借りれると聞いたからですだ」

 

 雄英高校だけあって朝に自主鍛錬する生徒は多い、だから学校側も頑張る生徒を応援する為、色々な施設が朝から使用可能となっており、それはヒーロー科以外でも使用可能だ。

 一月前は別の場所で相撲の稽古をしていたが、最近それを知ったヨコヅナは学校で稽古をするようになったのだ。

 オールマイトに言ったようにヨコヅナにとっては相撲は日課であって、別に体育祭の為の秘密特訓ではない。

 

「ではその……相撲の稽古の事を詳しく聞いても、良いかな?」

 

 オールマイトがヨコヅナのところに来たのは実は目的があってのことだ。

 

「他でいくらでも調べられると思うだが……理由を聞いても良いだべか?」

 

 相撲が廃れたと言っても、資料としては残っている。ネットで検索するだけでも色々知ることが出来るだろう。

 

「……少し恥ずかしいので他言しないで貰えるかな」

「分かったですだ」

「私は№1ヒーローなどと言われてるモノの教育者としては素人同然でね」

 

 オールマイトは恥と知りながらも本心を話す。

 

「私自身も日々勉強しながら、教鞭をとっているという現状さ」

「……何も恥ずかしいことなんてないと思うだよ」

 

 知られたところで、トップヒーローだと驕らず生徒のために頑張ってる先生、と高評価されると思うヨコヅナ。

 

「はっはっはー、大人には色々あるのだよ……私のことよりもだ。ヒーローを目指す生徒に大事なのは、個性の訓練もだが、根本となる丈夫な体づくりだと私は考えるわけだよ」

「…まぁ当然ですだな」

 

 体が資本、ヒーローを限らずどんな仕事においても言われる事だ。

 

「そこで、丈夫な体づくりの参考にと相撲のことを知りたいと思ったのだ……ネットの情報だと真偽のほどが分からないからね。井ノ中少年が本物の相撲を受け継いでいることは、稽古を見せてもらって確信してした。理由としてはそんなところだよ」

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

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ヨコのヒロアカ 2話③

 

・相撲は決して弱いから廃れたわけではない。

・「個性持ちに負けない」という己が信念を貫いた。

・並みの個性では力士には勝てない。

 

 個性持ちを受け入れず廃れ、過去の文化になった相撲だが、今でも高く評価する者はいる。丈夫な体づくりにおいては特に。

 

「それは、でも……」

 

 しかし、ヨコヅナは疑問に思う。

 

「オールマイト先生自身がやってきた体づくりの方法を教えれば良いと思うだよ」

 

 ヨコヅナの言う通り、生徒達もオールマイト直伝の体づくりを教わりたいだろう。

 なにせオールマイトは№1ヒーローになれたほどの、丈夫に鍛え上げられた体なのだから。

 

「私の鍛え方はプロレスを基本としていてね、欧米式なのだよ。でも最近、個性関係なく体の鍛え方にも合う合わないがあると思ってね。日本人には日本古来の鍛え方が合っているのでは、とか考えたわけだよ」

 

 オールマイトの本音を言えば、目をかけている少年が怪我ばかりするものだから、自分の鍛え方は合っていないのではと色々模索しているのだ。でも一人の生徒を贔屓にしてると思われるのは教師として良くないので、ぼかした言い方をしている。

 

「……先生の考えは何となく分かりましただ。相撲の鍛え方も合わない人は多いと思いますだが、教えること自体は、構いませんだよ」

「本当か、ありがたい」

「その代わり、条件を付けても良いだか?」

 

 ヨコヅナは相撲を教えること自体は何の問題もないが、これを好機だと考え、条件を付けることにした。

 

「どんな条件かな?」

「オールマイト先生の権限でオラをヒーロー科に編入させることって出来るだべか?」

「……私にそんな権限はない」

 

 その問いだけでヨコヅナがどういう条件を付けたいのかを察するオールマイト。

 

「仮に権限があったとしても、その条件は飲むことは出来ない」

「それは分かってますだ。でも編入の件でオールマイト先生は意見を聞かれることはあるんじゃないだか、それに№1ヒーローの意見なら皆耳を傾けるだ」

「……可能性はある。だがその条件も飲めない、何の実績もない生徒をヒーロー科編入に推薦する事は出来ない」

「実績なら今、作るだよ」

「ん?…今?」

「条件はオラと相撲を一番とることだべ。……そしてオラが勝ったら、オールマイト先生は意見を求められた場合「井ノ中ヨコヅナは相撲なら私よりも強い」と言葉をつけてオラを推薦する。どうだべ?」

「な!?……」

 

 ヨコヅナの条件に驚きつつ考えるオールマイト。

 オールマイトの個性は、詳細は世間に出回っていないが、圧倒的なパワーであることは周知の事実だ。

 オールマイトは相撲を凄いと思っているが、個性を使えばどんな力士も片手で勝てるとも思っている。

 

(個性を使えば…)

 

「それはひょっとして個性を使わす、勝負しろという意味かな?」

 

 相撲会は個性持ちを排除していたので、当然力士は皆無個性だ。なら「相撲を一番とる」とは、個性を使わず勝負するという意味にも解釈できる。

 

「ん?……ははは、違うだよ。言い方を変えるだ、相撲の様に、足の裏以外が地につくか、決めた円の範囲から出たら負けというルールの格闘試合で勝負だべ」

「そのルールなら個性を使った私にも勝てると言いたいのか?」

「可能性はあると思ってるだよ」

 

 №1ヒーローであるオールマイトに対して笑顔で勝てる可能性があると応えるヨコヅナ。

 

「はーはっはっは、思ってたより尊大な生徒のようだね、井ノ中少年。……相撲を知りたいと思っていたから直に技を体験出来るなら是非もない。一番と言わず何回でもかかってくるがいい」

 

 大笑いしながら上着を脱いでネクタイをとり、生徒に対して大人げないと思われるほどの威圧感を発するオールマイト。

 

「一度でも私に勝つ事ことが出来たら、井ノ中少年を推薦する事を約束しよう」

 

 

 

 一分後、

 

 ドオッーン!!

 

「…え?」

「№1ヒーローって意外と軽いんだべな」

 

 地面に叩きつけられ大の字で倒れるオールマイトと、それを見下ろすヨコヅナの姿がそこにはあった。

 

 




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ヨコのヒロアカ 3話①

 場所は雄英高校、ヒーロー科1-Bの教室。

 

「皆、次の体育祭で見せつけ様じゃないか、観客やスカウトのプロヒーローにぼく等B組の実力を!」

 

 物間寧人がクラスの皆に聞かせるように話す。

 

「そしてA組に教えてあげようじゃないか、君らは唯の(ヴィラン)に襲われた被害者だって事を!」

「おう!その通りだ物間、この前話聞こうと思って隣行ってみたけどよ。エラく調子づいちゃってだよ!!」

 

 呼応するように、鉄哲徹鐵もデカい声をだす。

 

「自分達が(ヴィラン)追い返したと勘違いしているんだろうね。追い返したのは先生達だと言うのに!」

「本番じゃ俺が伸びた鼻っ柱をへし折ってやるぜ!!」

 

 そんな盛り上がってる二人に、

 

「あんたら五月蠅い!」

「「うぎゃっ」」

 

 チョップを喰らわせる、B組委員長、拳藤一佳。

 

「何をするんだ拳藤?、折角皆を鼓舞していたのに」

「そうだぜ、体育祭に向けて気合上げてんだ」

 

 いきなりの暴力に文句を言う物間と鉄哲、入学して三か月と経ってないのだが、B組ではいつもの光景になりつつある。

 

「鼓舞や気合と、A組への妬みを煽るのは違うでしょうが!「勘違いしてる」とか、「調子に乗ってる」とか、そんな不確定要素はいらないの!」

 

 拳藤は頭の回転も速く、勢いに流されることはない。

 

「重要なのは、A組は実践を大きな被害もなく乗り越えた経験がある。その事実よ」

 

 物間や哲徹が言ってる事は主観でしかない。

 

「A組は注目されてるかもしれないけど、本番で大切なの普段の実力を出せること。多すぎる注目は逆に足枷でしかないわ」

 

 拳藤の言葉にクラスメイトから「あぁ、なるほど」「確かに…」と声が上げる。

 

「だから私達は自分のベストを尽くせばいいの、A組なんて関係ないわ」

 

 おおぉぉ~!とB組の皆は拳藤の意見に納得する。

 

「確かに拳藤の言う通りだ。A組なんて関係ぇ、俺は俺の全力を体育祭で出し切るぜ!!」

 

 単純な鉄哲も五月蠅いのは変わらないが、素直に納得する。

 だが、物間は性格がひねくれてるので、

 

「全く拳藤は、暴力的な上に真面目過ぎるな~、そんなことじゃ彼氏の一人も出来ないよ」

 

 と、全く関係のない嫌味を返す。

 

「大きなお世話よ。ヒーロー志望なんだから恋愛なんて、そもそもしてる暇ないでしょう」

 

 物間の嫌味を全く意に介さない拳藤。

 しかし、

 

「でも、一佳ちゃん、恋人いますけどね」

 

 小森希乃子が爆弾発言を投下し、

 

「「「「「「えええぇぇ!!!??」」」」」」

 

 B組は先ほどまでよりも、もっとうるさい状況になってしまう。

 




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ヨコのヒロアカ 3話②

 

「何言ってるのよ希乃子!?私に恋人なんていないわよ!」

「ほら、この間お昼に会った…」

「…ヨコヅナは違うわよ、別に恋人なんかじゃ…」

「ん~、私は井ノ中の事なんて言ってないよ、のこのこ!」

「…いや、それは…」

 

 小森の簡単なカマかけに引っ掛かり慌てる拳藤。

 

「マジなの!?、今まで全くそんな素振りなかったじゃん」

「Are you sure?一佳のboyfriend!?」

「ほら、ポニーが驚きで英語出ちゃってるよ」

「白状して」

「嘘は罪人の始まり」

 

 あっという間にクラスの女子に囲まれる拳藤。ヒーロー科と言えど恋バナ大好きな高校一年生なのだ。

 

「ほ、本当にそんなんじゃないって…」

「茨ちゃん、やっちゃってのこ」

「委員長の不祥事、逆さ吊り刑です」

 

 塩崎茨の【個性:ツル】が拳藤の足を縛り逆さにして吊るす。

 

「ぎゃぁー」

 

 逆さになったことでスカートが捲れそうになり、

 

「おおぉ!…」

 

 期待する男子達だが、その前に拳藤の【個性:大拳】でしっかり押さえる。

 

「はぁ~…」

 

 残念がる男子達、ヒーロー科だが思春期の高校一年生なのだ。

 それは置いといて、

 

「さっさと白状しな」

「は、話すって、と言うか同じ中学ってだけなの!だから降ろして!ー」

「同中なだけにしては仲が良すぎのこ、一佳ちゃんのチョップを相手は笑っておでこで受けてたのこ」

「ふむふむ、つまり気楽にスキンシップがとれる間柄だと…」

「何でそうなるのよ!?ヨコヅナとは格闘技の稽古で手合わせしてたから、慣れてるだけ!」

「ふむふむ、つまり一緒に稽古している内に愛が芽生えたと…」

 

 他の女子も「格闘少女らしい~」「ベタだけど青春って感じ」と、恋愛脳に適当な言い訳は寧ろ逆効果のようだ。

 

「だから何でそうなるのよ!?……ヨコヅナはすごい太ってるの、希乃子だって見たでしょあの出っ張ったお腹」

 

 拳藤は疑いを解く為、言い訳の方向性を変える。

 

「被告人はこう言ってるが、どうだ?証人希乃子」

 

 拳藤は別に悪い事してないのに、何故か逆さ吊りの上に被告人扱い。

 

「確かに太ってたけど、半袖から出てた腕から鍛え上げられた筋肉が見て取れたノコ、ヨコヅナという名前から考えるに、相撲の使え手だと思うのこ」

 

 お昼に相席しただけなのに、良く見いる希乃子、それに推測も当たっている。

 

「ワォ!?スモウのヨコヅナ!」

 

 日本古来の文化、相撲に反応するアメリカからの留学生、角取ポニー。

 

「あ、いや、力士だったお祖父さんから相撲を教わってたから相撲の使い手なのは確かだけど、ヨコヅナは本名だから、ポニーが考えてる横綱とは違うよ」

 

 ヨコヅナを相撲番付の横綱と勘違いしてそうだから訂正する拳藤。

 

「ふむふむ、つまり家族の事も知っているズブズブの関係だと…」

「だ、か、ら、何でそうなるのよ!?」

 

 一佳の逆さ吊り裁判はまだ続く。

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 3話③

「本当に恋人でも何でもないの!……さっさと降ろして」

「……でも、一佳ちゃんは井ノ中にヒーロー科に来て欲しそうだったのこ」

 

 そもそも小森が拳藤の恋人疑惑を出したのは、言動からヨコヅナにヒーロー科へ編入して欲しいのだと察したからだ。

 

「それは、その……ヨコヅナは私の宿敵だからよ」

「宿敵?」

「ヨコヅナと手合わせして、私 勝てたことないんだよね、だからヒーローとしては上だって証明したいの。でも普通科だとそもそも競い合いにならないし…」

 

 言い訳としては少し苦しいが、これは拳藤の本音だ。

 しかし、

 

「待って一佳、手合わせで勝てたことないって……格闘戦で一佳が勝てたことないってこと!?」

 

 クラスメイト達は別の部分に反応する。

 拳藤の格闘戦の実力はヒーロー科B組においてもトップクラス、【個性:大拳】を使えば鉄板すら易々凹ませる。

 他の生徒からも、「ウソ~!?」「相撲ってそんなに強いの?」などの言葉がとぶ。

 

「一佳ちゃん、それって個性を使用しても勝てないってことのこ?」

 

 希乃子のヨコヅナを体格を見ているので、個性無しで戦えば、いかに格闘少女である拳藤でも勝てないのは分からない話ではない。

 

「え~と、いや、個性有りでも個性無しでも、勝ったことない」

 

 拳藤は言葉通り、格闘戦でヨコヅナに勝てたことがない。

 

「一佳ちゃんの彼氏って、そんなに強いのこ?」

「彼氏じゃないってば!」

 

 ここまであからさまな引っかけにはかからない拳藤、だか、

 

「……でも多分、このクラスの誰も、格闘戦でヨコヅナには……いや、やっぱなんでもない」

 

 ヨコヅナは強いのか?という質問には答えようとして途中でやめる。これはこれで不味い発言だと思ったからだ。

 しかし、やめるのが少し遅かった。

 

「それは聞き捨てならないね~。僕は拳藤に恋人がいるかなんてどうでも良いんだけど…」

 

 口を出して来たのは物間だ。

 

「ヒーロー科の僕達より、その普通科の生徒の方が強いと言いたいのかな拳藤?」

「……ヒーロー科と言っても入学して3カ月も経ってない、差なんてないわよ」

「ヒーロー科に入学出来てない時点で、差があると思うけど」

「それはあいつがバカだからよ……それと私が言ってるのは格闘戦限定の話よ」

 

 拳藤がヨコヅナに勝てないのは格闘においての話であって、中学時代での学業の総合成績で言えば拳藤の圧勝で、体育でも100m走とかなら拳藤が勝つ。

 

「まぁ、格闘戦が強い=強いヒーローでない事は確かだね……」

 

 物間はそう言いつつ、少し考え、

 

「じゃあ、その生徒の個性を教えてくれるかな?」

「はぁ、なんでそうなるのよ。…茨、降ろして、こいつにこの格好で問い詰められるのムカつくから…」

「分かりました…不純異性交遊の罪はまた後ほど…」

「だから、罪なんて犯してないってば……で物間、なんで個性を教えるって話になるのよ」

「当然じゃないか、その生徒はヒーロー科に編入にする為、今度の体育祭で上位を狙ってくる。強敵になりそうな相手の情報を知るのは当り前だろ」

 

 物間の意見は間違っていない。

 個性の詳細を知れば対策が立てれるし、一人で敵わない場合、多数で先に潰すという方法も取れる。

 しかし…

 

「……嫌よ」

「おや、どうしてだい?やっぱりその生徒に特別な感情があるのかな?」

「ヨコヅナは関係ない。物間が嫌いだから教えたくないだけよ」

 

 拳藤の辛辣の言葉に、「ああ、分かる~」「物間、ウザいもんね」と他の女子も共感の声を上げる。

 

「ふ、ふふ、酷いなみんな、僕はB組の為を思って言っているのに」

「あんたの理屈で返すなら、普通科の相手に対策なしで勝てないようなら、プロのヒーローなんてなれないでしょ」

「屁理屈をこねるね~拳藤」

「物間にだけは言われたくない」

「……ならこういうのはどうだい?鉄哲…」

 

 何故か鉄哲を呼ぶ物間、

 

「君は、普通科の生徒に格闘戦で勝てない、なんて思われるのは我慢ならないよね」

「あたりめぇじゃねぇか!!」

 

 鉄哲もB組において格闘戦はトップクラス、他にも格闘戦が強い生徒はいるが一番のせ易いから物間は鉄哲を指名した。

 

「だったらここは一つ、証明する為にも格闘試合と行こうじゃないか」

 




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 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 4話①

 都合のいいオリジナル設定に思えるかもしれませんが、
「あり得なくもないかな…」ぐらいに思ってください。


 場所は雄英高校、体育館。

 

「お前が井ノ中ヨコヅナか!」

 

 体育館の真ん中で、入って来たヨコヅナに対して叫ぶ鉄哲。

 距離をおいて周りにはヒーロー科B組の他の生徒達もいる。

 

「手合わせって聞いただが、なんか観客多いだな」

「ごめんなヨコヅナ、なんか話の流れで、こうなっちゃったのよ」

 

 体育館の中の様子を見て、疑問に思うヨコヅナと謝る拳藤。

 

________________________________

 

 B組でヨコヅナの話が出た最後、物間が提案したのは、

 

「鉄哲とその生徒が格闘試合して勝ったら、何も話さなくてもいい、負けたら個性を含め情報を話す。でどうかな?」

「そんなのヨコヅナが勝負する必要ないじゃない、負けた場合のリスクしかないんだから…」

「そうだね……みんなは鉄哲とそのヨコヅナって生徒の勝負見たいと思わないかい?」

 

 他のクラスメイト達にも話しかける物間、それに対して、

 

「見たいっちゃ見たいか…」

「他科でヒーロー科に編入したい生徒の実力は知りたいしね」

「一佳のboyfriend見タイ!」

「そうだね、相撲の使い手ってのもちょっと興味あるしね」

 

 と、皆勝負を見たいと言い、

 

「では、勝負はみんなで観戦する。かわりに鉄哲が負けたら体育祭の時、直接対決以外では積極的に潰しに行くような事はしない、という条件でどうかな?」

 

 さらに続いた、条件にも、

 

「いいんじゃね、鉄哲なら勝てるっしょ。バカだけど」

「格闘訓練の授業で拳藤に鉄哲は勝ち越してるもんな。バカだけど」

「バカだけど、負けねぇよな鉄哲!」

「あったりメェよ。任せとけやぁ!!」

 

 と大方が賛成した。

 

「盛り上がってるけど、そもそも先生が認めてくれないでしょ、他科の生徒と格闘試合なんて…」

「それじゃ、ブラド先生が認めたら良いってことだね」

「それは…」

 

 そこで考える拳藤。

 ヨコヅナの情報を教えるのは気が引ける、でもクラスメイトに有益な情報を秘密にするのも負い目を感じる。だったら…

 

「ブラド先生が許可するなら良いわ、ただし許可が下りなかった場合は今後一切詮索はなし。それでいいわね」

 

 というふうに持っていき、話を収めた

 

(ブラド先生は真面目な先生だから、授業以外で他科の生徒と格闘試合なんて認めるわけがない)

 

 と、拳藤は考えていたのだが…

 

 ホームルームの後、B組担任のヒーロー名ブラドキング、通称ブラド先生に、格闘試合の話をしてみると…。

 

「分かった、申請してみよう」

 

 と、意外な言葉が返ってきて、次の日、

 

「申請が通ったぞ、体育祭が近いから、試合は今日でもいいか?」

「……え?」

 

 あっさり認められたのである。

 

「本当に良いんですか?他科の生徒と格闘試合なんて…」

「最近はめっきり行われなくなったが、申請を通した上での他科との格闘試合は昔からある制度だ。…寧ろ昔だからこそ、だな」

「昔だからこそ?」

「雄英も昔から名門校ではなかったということだ」

 

 多くのトップヒーローを輩出してきた実績があるからこそ、名門雄英高校ヒーロー科だが、設立当初はそんなことなかった。

 その為、入学する生徒も今ほど優等生ばかりではない。

 他科の生徒同士での暴力事件が多発する年代も歴史を振り返ればあるのだ。

 その為考案されてのは、他科との格闘試合制度。ぶっちゃければ、個性を持て余してる生徒のガス抜きの為の正々堂々の喧嘩、と言えるるのだが、

 しかしこの制度には効果があり、暴力事件が激減したのだ。

 

 なので、生徒は知らない者の方が多いが、他科との格闘試合は申請が通れば認められるのだ。

 

_____________________________

 

 

「最近の子は、良くも悪くもイイ子ちゃんばっかりだからね。学生はちょっとぐらいヤンちゃな方が私は好きだよ」

 

 看護教諭リカバリーガール。

 格闘試合の申請が通る条件の一つは、リカバリーガールが立ち会う事。

 それと他に二人のヒーロー教師が審判として立ち会う事。

 一人はB組の担任ブラド先生で、もう一人は…

 

「はっはっはっ!そうですねリカバリーガール。現役ヒーローの中には学生時代荒れていた、なんて者もいますからね」

 

 №1ヒーロー、オールマイトが務めることになっていた。

 

 

 

「あの真ん中に立ってるヒーロー科の生徒と、格闘試合ってことだべな」

「そう。ヨコヅナが負けたら、個性の情報をB組のみんなに話す事なってる…」

「オラの個性、話してないんだべか…どうしてだべ?」

「えと、その、なんかズルい気がして…」

「そうだべか……、まぁオラの個性は簡単に対策出来るだべからな…秘密にしてもらえる方が助かるだよ」

 

 そう言ってヨコヅナは体育館の真ん中で立つ鉄哲の前へと進む。

 




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ヨコのヒロアカ 4話②

 体育館に入って来たヨコヅナを見て、

 

「あれが一佳の彼氏?君」

「ぽっこりお腹」

「あれは……言ってた通り、唯の同じ中学出身なだけかな」

「無罪、一佳さん私は信じていました」

「でもスモウなのに、マゲしてないデス」

「本物の力士じゃないから仕方ないのこ」

「力は強そうだけど、動きは遅そう、一佳が格闘で負けるとは思えないけど…」

 

 とB組の女性達が姦しく話をする。

 

 

 

「俺の名前は鉄哲徹鐵だ」

「…オラは井ノ中ヨコヅナだべ」

 

 試合前に自己紹介をする二人。

 ヨコヅナは心の中で「変わった名前だべな」と思いつつも名前は自分で決めれるモノではないので、そこには触れなかった。

 代わりにでもないが、

 

「体育祭前に格闘試合とか、本当に良いんですだべか?」

 

 とブラド先生に聞くヨコヅナ。

 

「申請は通っている、オールマイト先生のお陰でもあるがな…」

 

 ブラド先生も、体育祭前だから申請は通らないかと思ったが、リカバリーガールが乗り気だったのと、オールマイトが「私が、審判を務めよう!」と、言ったので申請が通った。

 

「リカバリーガールもいる、思いっきりやりなさい」

「…そうだべか」

「それより井ノ中、着替えてきなさい」

 

 鉄哲はジャージだが、ヨコヅナは制服のままだった。

 

「……分かりましただ」

 

 ヨコヅナはその場で服を脱ぎだす。

 

「いや、控室で…」

 

 ヨコヅナはブラド先生の言葉を聞かず、褌一丁になる。

 その姿を見て、B組の女子達が、「キャー!」「何、露出狂?」「HENTAI!?」などと騒ぎだす。

 

「いや、ヨコヅナは相撲の使い手で、褌での稽古が普通だから……ちょっとヨコヅナ!女子がいるんだから、考えなさいよバカ!」

 

 ほぼ裸の褌一丁姿は思春期の女子には刺激が強いようだ。拳藤もヨコヅナがバカで周りの事を考えてないのだと思って怒鳴るが…

 

「見たくないなら、帰ればいいだよ」

 

 ヨコヅナはいつものニコニコ顔を消して、冷たい声色で答える。

 

「あ……そう、だね。ごめん」

 

 個性の秘匿の為にも、観戦者がいなくなるならヨコヅナとしては願ったりだ。

 ヨコヅナの言葉に拳藤は素直に謝り、他の生徒達も黙る。ヨコヅナの真剣な雰囲気を感じ取ったからだ。

 そんな中、森野は拳藤に近づき、

 

コソコソ「…井ノ中、怒ると怖いタイプのこ?」

コソコソ「前に(ヴィラン)をぶっ飛ばして処罰されてるって言ったでしょ。怖いどころか…ヤバイ」

コソコソ「今は怒ってる?無理やり連れてきたのこ?」

コソコソ「ううん、ちゃんと説明したよ、試合に真剣なだけ、怪我したくないから…」

 

 

 

「鉄哲、先生、オラは個性の関係で褌一丁で試合したいんだべが良いだか?」

「ああ、アイテムを付けるならともかく、脱ぐなら別に構わない。鉄哲も構わないな」

 

 聞くまでもない事だが一応鉄哲にも確認するブラド先生。

 だが、

 

「駄目だ…」

 

 鉄哲は否定…

 

「だったら、俺も服を脱ぐぜ!!」

 

 否定すると思い気や、鉄哲もジャージを脱いで、トランクス一丁になる。

 

「…オラは、構わないだよ」

 

 ヨコヅナとしても鉄哲がトランク一丁になることに問題はない。

 それに、鉄哲のトランク姿を見てもB組女子達は、ヨコヅナの褌の時と違い騒ぐようなことはせず、

 ただ、一言…

 

「「「「「「鉄哲はバカだからね」」」」」」

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 4話③

「もう一つ確認だべが、オラが勝ったら、体育祭で積極的に邪魔をしない事を約束する、って聞いただよ…」

 

 体育祭で上位を狙うヨコヅナにとってこの約束は有利に働く、だから拳藤の話を聞いて格闘試合することに同意したのだ。

 

「おぉよ!お前が勝った場合、B組のモンは体育祭で直接対決以外ではお前を邪魔しない。お前が俺に勝てればだけどなぁ!」

 

 鉄哲は大声で約束を肯定する。

 しかし、

 

「言っておくが井ノ中少年、格闘試合は認めたが、その約束は学校は認めていない」

「そうなんだべか?…じゃあやる意味ないだか…」

「認めはしないが、法律や道徳、倫理に反してなければ否定もしない」

 

 あくまで学校が認めているのは、他科との格闘試合であり、勝敗による賭けは認めていない。

 もし金銭などを賭けている場合は当然申請は通らないし、隠れて試合での博打などしている場合、重い処罰が下される。

 だが、今回の様な約束の場合は止めさせたりしない。

 

「そういう約束をすること自体は止めないが、約束を破ったとしても学校側は関与しないと言う事だよ」

「そうだべか……約束を破られる可能性もあるんだべな」

「がはははは、そんな心配する必要ねぇ!俺たちはヒーローを目指してんだぞ。勝負の上での約束を破るようなクソ野郎は、B組には一人もいねぇ!!!」

 

 鉄哲のその言葉に、B組の他の生徒も、

 

「鉄哲の言う通りだ」

「俺達はヒーロー志望だぞ」

「正々堂々勝負した結果の約束を破ったりしないよ」

「そんな事は、さすがの物間でもしないのこ」

「も、もちろんさ、僕も、約束を破るつもりなんて、全然ないよ」

 

 と、皆賛同する。

 

「……はははっ。良いクラスだべな、ヒーロー科B組」

「それじゃ、死ようぜ、格闘試合!!」

 

 鉄哲をそう言って、個性を発動させる。

 

「俺の個性はスティール、体を鋼のように出来るんだ!!」

「……え?何で個性バラすだ?、不利になるだよ」

「がはは、不利になんてなんねぇよ、俺の個性は格闘戦において万能だぁ!!」

「いや…もし、オラが鉄を錆させる個性とかだったらどうするだ?」

「お前そんな個性なのか!?」

「あ、今のは例えで、オラの個性は違うだが…」

「だったら問題ねぇ!!俺の鉄の拳は最強だぁ!」

「え、あ…うん…」

 

 鉄哲の言動に困惑しているヨコヅナに、

 

「ヨコヅナ、鉄哲はあんたよりバカだから、細かい事は気にしなくていいよ」

 

 拳藤がそう言う。

 

「……そうだべか」

 

 理解は出来ないがとりあえず納得するヨコヅナ。

 

「確認が済んだなら、ルール説明しておく、個性の使用可の格闘、禁止は、目つぶし、金的、噛みつき、それと、倒れた相手への攻撃も禁止だ。ダウンして10カウントで負け。質問はあるか?」

「…場外負けはあるだか?」

「試合範囲は決めてないが、逃げてばかりの場合は、戦意無しを判断し負けとする。他にあるか?」

「…いえ、大丈夫ですだ」

「俺もないぜ、先生」

「では試合を始めるぞ」

 

 ブラド先生の言葉に、少しの距離を開け対面して立つ、ヨコヅナと、鉄哲。

 

「構えて」

 

 ヨコヅナは股を広げて腰を下ろした状態から、前に手を付いて前傾姿勢、相撲の手合の構えをとる。

 

「相撲って初っ端から突撃し合うんだよな。がはは、真っ向勝負だ!!」

 

 鉄哲はヨコヅナの構えを見て、自分も突撃する為に、クラウチングスタートの構えをとる。

 

 皆が観戦に集中し、静かになる体育館の中、

 

「はじめ!!」

 

 ブラド先生の合図で、ヨコヅナと鉄哲が頭からぶつかり合った。

 

 




 
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ヨコのヒロアカ 4話④

「ワン…ツー…」

 

 試合は始まった直後だが、ブラド先生がカウントをとる、つまりダウンしているという事。

 

「嘘…」

「バカな!?」

「鉄哲が…一撃で?」

 

 ダウンしてカウントされているのは鉄哲、

 ヨコヅナと鉄哲は開始と同時に互い頭でぶつかり、鉄哲はダウン、ヨコヅナは平然と立っており10秒数え終わるのを待っている。

 

「スリー…フォー…」

「無駄だよ、勝負アリさね…」

 

 テンカウントが終わる前に、リカバリーガールが鉄哲に近づく、

 

「気を失ってるよ」

 

 鉄哲は完全に気を失っている為、10秒数えたところで起き上がれないと判断したからだ。

 

「個性が消えてるんだ、ブラドも分かっていただろう」

 

 鉄哲の個性は発動型、気を失えば鋼鉄化は解ける。

 ブラド先生もそれは分かっていた。

 

「そうですね……勝者ヨコヅナ」

 

 少し悔しそうにしながら、勝利者宣言をするブラド先生。顔は怖いがブラド先生はとても生徒思いのなのである。

 

「褌一丁で戦う必要なかっただな」

 

 

 B組の生徒達は

 

「今の体当たり、いや頭突きか…速すぎじゃね」

「あんな太った体してるのにな、そういう個性か?…」

「鉄哲、出足で完全に負けてたもんな」

「でも相撲って、短い距離なら凄く速いと聞いたことありますよ」

「筋肉の発達した下半身を見るに、あれは自力とも推測できますな」

「確かに、重くて速い一撃だろうけど、……それだけで鋼鉄化した鉄哲が一撃でやられるか?」

「……鉄哲より硬くなれる個性とかかな、ダイヤモンド化みたいな」

「個性使ったようには見えなかったけどね…あと、ダイヤモンドは金槌で砕けるよ」

「ダイヤモンドかどうかはともかく、体の一部だけを硬化出来る個性はA組にもいるから可能性あるか」

「拳藤、彼の個性は硬化系かい?」

「教えないわよ、ヨコヅナが勝ったんだから」

「あれ…でも硬化系の個性だったら、服脱ぐ意味なくない?」

「服が邪魔になる個性ってことだもんね……なんだろ?」

「巨大化や変身系…」

「井ノ中はどっちもしてないのこ。……個性使わず勝ったと言う可能性もあるのこ」

「個性使わず鉄哲に勝ったんなら、マジで凄いな相撲」

「スモウ、fantastic!」

「強敵」

「…ですが、約束は守らねば罪人となります」

 

 

 B組のみんなでヨコヅナの個性について考えるが答えは出ない。でもヨコヅナが勝ったので拳藤は教えない。

 それに強敵である事は分かっても約束から、体育祭でヨコヅナを積極的に邪魔する事は出来くなった。

 

 

 

「お疲れヨコヅナ。圧勝だったね」

 

 拳藤が試合の終わったヨコヅナを話しかける。

 

「ごめんね、体育祭前に危険な事に付き合わせて…」

「構わないだよ…それに、ちょっと安心しただ。ヒーロー科に編入しても何とかなりそうだべな」

「……ヒーロー科の生徒が弱いから?一回格闘試合しただけでそれは…」

「いや、オラよりバカでもヒーロー科に入れるって分かったからだべ」

「…うん、それは確かだね」

 

 ヨコヅナも拳藤も酷い言いようだが、鉄哲はバカだから仕方ない。

 

「それより、みんなヨコヅナの個性に興味深々だからさっさと服を着て、帰った方が良いわ」

「……バレてはないだか?」

「一瞬だったから多分大丈夫」

「そうだべか、なら帰るだべかな」

「あ、井ノ中少年」

 

 帰ろうとするヨコヅナを、オールマイトが呼び止める。

 

「聞きたいことがあるのだけど、ちょっと良いかな?」

「良いですだよ」

「…ここだとアレだね、帰りながら話そうか」

「分かりましただ……じゃあ、まただべ拳藤」

「あ…うん…」

 

 ヨコヅナはオールマイトと体育館を出て行った。

 その様子を見て、「え、どういうこと?」「何で普通科の生徒とオールマイトが?」「アイツが強いのってオールマイトが関係してるのか!?」とB組の生徒達は更に騒ぎだす。

 だが、

 

「一佳ちゃん、井ノ中はオールマイトと知り合いのこ?」

「それは、私も知らない」

 

 ヨコヅナとオールマイトの事に関して知っているのは一人もいなかった。

 




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ヨコのヒロアカ 5話

 場所は雄英高校の仮眠室。 

 

 ヒーロー科の1年A組緑谷出久は、

 

「痛、い痛、痛い、オールマイト、これ以上は無理です」

「最初は痛いだろうが、我慢するんだ、緑谷少年…」

 

 オールマイトに、

 

「でもこれ以上は、さ、裂ける」

 

 無理やり、

 

「怪我しない為には、柔軟な身体が大切なんんだ」

 

 股割りからの体前屈をさせられていた。

 

 

「緑谷少年の体は硬いとまでは言わないが、柔かいとも言えないな……少しづつでも柔軟にしていこう」

「オールマイト、怪我しない為にも柔軟さが大切というのは分かりましたが、……意外と言うか、何故今突然と言うか…」

「……トレーニングにも、向き不向きがあるからね。緑谷少年に合うやり方を考えているのさ」

「僕の為に……ありがとうございます、オールマイト!」

「では次は体幹トレーニングだ」

「はい、オールマイト!」

 

 

 身体の柔軟と体幹トレーニング。

 この二つはオールマイトがヨコヅナから相撲の稽古内容を聞き、緑谷に教えようと考えたトレーニングだ。

 

 格闘技では柔軟が大切とよく言われるが、中でも相撲では必須とされ、

 

「新弟子力士はプチプチと本当に肉が裂ける音がするほど、股割りを強引にさせられていたらしいですだよ」

 

 とのこと、

 ヨコヅナも股割りは180度開き、そのまま地面に体をぺったりとつけ、形で表すと【土】の態勢になれる。

 それほどまでに柔軟な体だからこそ、全体重を乗せた速いブチかましをしても、反動を緩和し怪我をしないのだ。

 大きすぎる力の反動でいつも怪我している緑谷にも、必須だとオールマイトは考えたのである。

 

 そして、体幹トレーニング、

 

「あ、わっ、これ難しい…」

 

 今緑谷がやっているは、小さい積み木の上に片足で乗りバランスをとる体幹トレーニング。

 

「足だけに意識を集中したら駄目だ緑谷少年。全身の筋肉を意識するんだ」

 

 これも相撲の事を教えてもらった時ヨコヅナが、

 

「四股は足を鍛える稽古と思われがちだべが、体の様々な筋肉を鍛えれますだ。……まぁ、それは相撲の稽古全てに言える事ですだが…」

 

 と、言っていた。

 そしてこの考えは、緑谷に足りていないものだ。

 対象を拳で殴る行為一つにしても、腕だけでなく様々な筋肉を使う。逆に腕の力だけで殴れば怪我の原因となる。

 緑谷の怪我の原因は、個性の力の扱いに慣れていないからではあるが、格闘的な筋肉の扱いが下手なのも理由と考えた。

 ただこれは、聞いたところですぐ出来るモノではない。

 なので、第一段階的な意味でも、体幹トレーニングで全身の筋肉を意識する感覚を掴ませるのだ。

 

 

「……あのオールマイト…柔軟や体幹トレーニンが、大切なのは、分かるんですが…」

 

 緑谷は積み木の上で、片足立ちでバランスを取りながら、疑問に思っていることを聞く。

 

「体育祭が、間近ですけどこれは効果、あるんでしょうか?」

「はっはっはっ-、ほとんど無いに決まってるじゃないか!」

「えぇ!?、あっ…」

 

 驚き積み木から落ちる緑谷。

 

「会話してるぐらいで、落ちたら駄目だぞ緑谷少年」

「はい、すみません。いや、ですけど……体育祭に向けてのトレーニングをした方が…1位目指してるのに…」

 

 体育祭はもうすぐだ、それに1位を狙うように言ったのはオールマイト。

 

「君に体育祭で1位を目指すように私は言った。だが勘違いしないように、体育祭は通過点に過ぎないだろ」

「それは……確かに…」

「今教えているのはもっと先を見据えたトレーニングだ、だから体育祭が終わっても毎日続けるように」

「…わかりました」

「そもそも私は雄英の教師だからね。一人の生徒に体育祭に向けての特別なトレーニングなんてすれば不正行為と言われてしまうよ、はっはっは」

「あ、そっか」

 

 今の時点でも他の生徒が聞いたら不公平とは言われそうだが、個性を引き継いだ関係もあるので仕方ない。

 

「それに君の事だ。過去の体育祭の動画とか見て、色々分析してるんだろ」

「一応…分析と言える程でもないですが…」

「体育祭では今君が出来ることで、試行錯誤しつつ頑張りなさい」

「…分かりました!、オールマイト」

 

 オールマイトは緑谷が体育祭で1位を取れるように応援しつつ、もう一人の気にかけている生徒、ヨコヅナの事を思い浮かべる。

 

(もし井ノ中少年と格闘戦のような勝負方式で当たれば、今の緑谷少年に勝ち目はないだろう。だが井ノ中少年は基礎能力も個性も格闘戦に特化し過ぎている、序盤で脱落もありえる……本当に体育祭が楽しみだ)

 

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 6話

明日は投稿出来ないと思います。


 雄英体育祭、本番当日。

 

 日本中が注目なだけにテレビ局関係者も多く、スカウト目的のプロヒーローも多く集まっていた。

 例年は3年生を観戦する者が多いのだが、

 オールマイトが教師をしていることや、ヒーロー科一年A組が(ヴィラン)に襲撃されたなどの話題で一年生を注目している観客が多かった。

 

 一年ステージ開会式、

 高校なのに、18禁ヒーローミッドナイトが主審だったり、選手宣誓で代表の爆豪勝己が「俺が一位になる」と宣言したりなどして、ざわざわするが滞りなく進む。

 

 

「早速第一種目、行きましょう!」

 

 何でも早速の雄英。

 大型モニターに第一種目の競技が映し出される。

 

「今年の一種目は~、障害物競争よ!!」

 

 障害物競走の概要。

 

・計11クラスの総当たり。

・コースはスタジアム外周、約4㎞。

・コースを守れば何をしても構わない。

 

 

 

「不味いだな…」

 

 一種目の説明を聞いたヨコヅナは、

 

「いきなり苦手な競技だべ」

 

 早くも脱落という文字が脳裏によぎる。

 ヨコヅナは、というよりも相撲の力士は走り込みなどの稽古をしないので、基本長距離走が苦手だ。

 体重が重いのもあるし、相撲は短時間で勝負を決める為、鍛えている筋肉も違うのだ。

 また、障害物走である事もヨコヅナにとって厳しい。

 

「さあ、さあ、位置につきまくりなさい」

 

 ミッドナイトの言葉に生徒達はスタート位置へ移動する。

 

「…まぁ、考えても仕方ないだな。精一杯頑張るべ」

 

 

 

 B組の拳藤はスタート位置へ移動しながら、遠巻きにヨコヅナを見る。

 そんな拳藤を見て森野が、

 

「…そんなに恋人が気になるのこ?」

「だからヨコヅナは恋人じゃないって!」

「私は井ノ中なんて言ってないのこ」

「ぐっ…一種目で脱落したら張り合いがないって思っただけよ」

「確かにあの体型に4㎞の長距離は厳しいのこ……井ノ中の個性はその弱点を補いなえないのこ?」

「無理よ」

「……まぁ、井ノ中は格闘戦に強いから、ここで脱落してもらった方が良いのこ」

 

 種目の発表はされていないが、過去の傾向から最終種目は一対一の格闘戦の可能性が濃厚。

 ヨコヅナと鉄哲の格闘試合を観て、上位を狙うヒーロー科B組の者がそう考えるのも当たり前だ。

 

「一佳ちゃん、手助けしたりしたら駄目のこよ」

「しないわよ!したって意味無いでしょ…」

 

 ヨコヅナはヒーロー科の編入を目的としている為、助けられて上位入賞しても意味はないのだ。 

 

「…始まわね」

 

 

 スタートを知らせる三つのランプが消えていき、最後のランプが、

 

 パッ

 

「スターート!!」

 

 体育祭一種目、障害物競争が始まった。

 




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ヨコのヒロアカ 7話

 障害物競走がスタートし、

 

『さぁて実況していくぜ!』

 

 実況はプレゼント・マイク。

 

『さっそく序盤の見どころは?、イレイザーヘッド』

 

 解説はイレイザーヘッド。

 

『今だよ…』

 

 

 生徒達は一斉に走り出すが、スタート地点のゲートは押し合いへし合いになる。

 そんな密集状態で、

 

「なんだべ!?」

 

 ヨコヅナは驚きの声をだす、地面や壁が凍結しだしたからだ。

 

「誰かの個性だべかな…」

 

 さすがに学校の障害物で氷漬けはないだろうと考えるヨコヅナ。

 

「靴が駄目になっただな。初めっからは裸足で走れば良かっただよ…」

 

 ヨコヅナは凍った靴と靴下を脱ぎ棄て裸足で走る。

 

 

 他生徒の氷攻撃で、ヒーロー科以外の多くの生徒が被害を受けるが、それを凌いだ生徒達を直ぐに第一の障害物が襲う。

 

『さぁ、いきなり障害物だ‼。まずは、手始め…第一関門ロボ・インフェルノ』

 

「デカいだな……さすがにあれと相撲とっても勝てないだな」

 

 巨大なロボを見て一旦足を止めるヨコヅナ。  

 だが、

 

 パキパキパキパキパキ!!

 

 とロボが氷漬けになり、

 

 ギャッシャーン!!!と派手に倒れた。

 

 

「……危ない体育祭だべな。というか、前に試合したB組の…鉄哲が潰れたように見えただが…」

 

 周りも「二人、誰か下敷きになったぞ!」「死んだんじゃねか!?」と騒いでいるが、

 

「俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

「あ、無事だったべ」

 

 と、ロボの中から出てきた鉄哲、あと、もう一人下敷きになってた生徒も無事だった。

 

 

「…隙間を埋める小さいのを倒しながら進むしかないだな」

 

 他に、個性で上から行く生徒もいたがヨコヅナにはそんな真似は出来ないので、隙間にいる小さいロボを倒して進む。

 その最中、

 

 ドッゴーン!!!と轟音が響きまた、巨大ロボが倒される。今度は誰かが大砲で倒したようだ。

 

「……どっから持ってきたんだべあれ?個性で、何でも入るポケットがお腹についてるんだべかな?」

 

 疑問に思いつつも、道が拓けたので、先に進むヨコヅナ。

 

「ヒーロー科ってやっぱりすごいだな」

 

 

 

『オイオイ、第一関門ちょろいってか、じゃあ次は第二関門。ザ・フォールだ!!!』

 

 崖の先に、小さいいくつもの足場があり、それらが張ったロープで繋がっている。

 

「…深いだな、ほんとに体育祭の競技だべか?」

 

 文句を言いたくなるヨコヅナの気持ちは、普通科なら分かってくれるだろうが、難なくクリア出来る生徒がヒーロー科には大勢いる。

 

「綱渡りも苦手だべが、落ちないように慎重に渡るしかないだな

 

 

 

「ふ~、何とか渡れただ」

 

 重たい体が仇となってゆっくりだった、第二関門を超えたヨコヅナ。

 

「脱落してない生徒の中では、かなり下位の順位だべな」

 

 上位何名が通過かは公言されてないが、さすがにゴールした全員が通過と言うほど甘くはないだろう。

 

「急ぐだべ」

 

 

 

『最終関門は一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!!』

 

 走る前方から、ボウン!ボウン!と爆発音が聞こえる。

 

「ほんと容赦ない、障害物競走だべな」

 

 ヨコヅナは地雷を避けながらも、慎重になり過ぎず、速いペースで進む。地雷の威力は大したことないと言っていたから、自分の皮の厚い足裏と重たい体重なら、そこまでロスにならないと考えたからだ。

 

 そのかいあってか、ヨコヅナがゴールした順位は42位、そして、

 

「予選通過は上位42名よ!!!」

「危なかっただ!ギリギリだべ!」

 

 本当にギリギリで一種目の障害物競走を通過して、ヨコヅナは本選出場を決めた。

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 8話

「困っただな…」

 

 なんとかギリギリ、一種目の障害物競走をクリアしたヨコヅナは、二種目が発表され、説明がされた後、また、困っていた。

 

 二種目は騎馬戦。

 障害物競走の順位で一人一人に持ち点があり、点数が表示された鉢巻を奪い合う。

 体育祭らしい種目だが、4人または3人のチームを作らなければならない。

 チームは自由で、今生徒達は誰とチームになるかを相談し合っているところなのだ…

 そんな中、ヨコヅナはボッチで佇んでいた。

 

「本選に残ったのは、ヒーロー科しかいないんだべかな…」

 

 予選通過できた42名の中にヨコヅナと同じ組の生徒は一人もいなかった。

 当然この騎馬戦でも個性使用は自由、個性を知っていて、相性のいい生徒と組むのは当然だ。

 その為、他科で個性を知らない、予選42位で5ポイントのヨコヅナと進んで組もうと思う者などいないのだ。

 唯一知り合いの拳藤は速攻でチームを組んでいるし、どうもヨコヅナはヒーロー科B組の生徒からは避けられているようだった。

 

「拳藤の言う通り、褌一丁で戦うのはバカな行為だったべかな…」

 

 実際のところ褌は関係ないので、そんなことを後悔しても意味はない。

 

「…これ、あぶれたらどうなるんだべかな?」

 

 42名と言う事は、4人チームが10組出来ると2人余る、または、4人チームが8組と3人チームが3組出来ると一人だけ余ってしまう。

 そんなボッチ的な考えをしているヨコヅナに、

 

「あんた普通科だよな?」

「ん…」

 

 話しかける生徒がいた。

 

「俺も普通科なんだ、一緒に組まないか」

 

 相手は普通科だが、ヨコヅナとは違うクラスの生徒のようだ。

 その生徒の誘いを、

 

「良いだよ」

 

 ボッチだったヨコヅナは笑顔で了承した。

 

 

 

 そして二種目、騎馬戦が、

 

「START!!」

 

 が開始され、 ヨコヅナは騎手の指示に従って動いただけで……

 

 制限時間の15分が過ぎ、

 

「TIME UP!!」

 

 終了となった。

 

 

『早速、上位4チーム、見てみようか!!』

 

 最終種目に進出できるのは4チーム。

 

『1位轟チーム!!2位爆豪チーム!!3位鉄て…アレェ!?』

 

 大型モニターに映ってるチーム名を読み上げていた、プレゼント・マスクが3位のチーム名を見て驚く。

 

『オイ!!心操チーム!!?』

 

 終了間際まで鉄哲チームだったのに、心操チームに変わっていたからだ。

 

「凄いだな、心操の個性…」

 

 心操チームの騎手、心操人使はヨコヅナとチームを組んだ普通科の生徒。他二人はヒーロー科のA組とB組の生徒が一人ずつ。

 心操チームは3位、つまりヨコヅナの最終種目の進出が決定したのである。

 

「何もしてなさ過ぎて、申し訳ない気持ちになるだな」

 




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ヨコのヒロアカ 9話

明日は投稿出来ないと思います。


 二種目の騎馬戦が終わり、一時間の昼休憩を挟んで午後の部となった。

 

 最終種目の発表。

 

『進出4チーム総勢16名からなる。トーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』

 

「ガチバトルだべか…今年だけ奇を狙って例年と全然が違う競技とかじゃくて良かっただ」

 

 得意と言える種目に少し安心するヨコヅナ。

 

 その後、トーナメントの組み合わせ決めのくじ引きをすることとなったのだが、

 一人の生徒が挙手をし、

 

「あの…、すみません。俺、辞退します」

 

 ヒーロー科のA組、尾白猿夫が最終種目出場の辞退を希望する。

 さらに、

 

「僕も棄権したい!」

 

 ヒーロー科B組の庄田二連撃も辞退を希望した。

 

「あの二人、どうしてだべ?」

 

 この二人はヨコヅナと同じ、心操チームで騎馬をしていた生徒達だった。

 辞退の理由を要約すると、

 

「皆が力を出し合い争ってきた(最終種目)なのに、何もしてない自分達が上がることは出来ない」

 

 とのことだった。

 それを聞いてヨコヅナの心に、グサッ!グサッ!幻痛が走る。

 

(何もしてないことは…ないだべ、よな……心操を乗せて動いてただ、うん)

 

 そして、さらに拳藤チームが繰り上がりでの最終戦出場を似たような理由で鉄哲チームに譲る、

 それを見て、さらにヨコヅナの心にグサァ!!!と幻激痛が走る。

 痛みに強く、倒れないことには自信のあるヨコヅナでも、膝をついてしまいそうになるほどだった。

 

「おまえは、辞退しないのか?」

「心操……」

 

 心にダメージを喰らっているヨコヅナに、いつの間にか近くにいた心操が問いかける。

 

「しないだよ」

 

 心は痛むがはっきりと言い切るヨコヅナ。

 

「あの二人はヒーロー科、そもそもの立ってる位置が違うだべからな」

 

 他科がヒーロー科に編入する為の見せ場なんてほとんどない、体育祭でも三年はもちろん、二年生になってからでは無可能に近いだろう。

 ヨコヅナにとっては、この体育祭が最初で最後のチャンスと言っても過言ではないのだ。

 だから、ヨコヅナは他の生徒がどう言おうと辞退するつもりはない。

 

「そうか……お前とは当たらないことを祈ってるよ」

「はは、それだと優勝出来ないだよ」

「…ふ、ニコニコしながら言ってくれるな」

 

 

 

 くじ引きが終わり、トーナメント表が完成した後、ヨコヅナに拳藤が話しかけてきた。

 

「最終種目、出場おめでとうヨコヅナ」

「ありがとうだべ。でも拳藤も出場できたのに…」

「良いの、私のことは……それより組み合わせ的に、決勝まで行かないとB組とはあたらないし、試合観ながら不利にならない程度に、ヨコヅナの個性、クラスメイトに説明してもいいかな?」

「良いだよ」

「ありがと。じゃ準優勝までは頑張って」

「オラは優勝するだよ」

「ははは、塩崎と鉄哲が負けたら、最後まで応援してあげるよ」

 

 そう言って拳藤は他のB組生徒の元へと戻っていった。

 

 トーナメント表に井ノ中の名前が書かれているのは、左から5番目、第三試合。 

 対戦相手はヒーロー科A組 上鳴電気。

 




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ヨコのヒロアカ 10話

 最終種目の前にレクリエーションがあるのだが、参加は自由なのでヨコヅナは、控室で昼寝をしていた。

 

「ZZZ~、なんでオラ、こんなとこに…ZZZ~」

 

 そんな寝言を言ってるヨコヅナを、

 

「君!、大丈夫か?君!」

 

 体を揺らし起こす生徒がいた。

 

「Zっ…ん……誰だべ?」

「俺はヒーロー科A組の飯田天哉だ。君は体調が悪いわけじゃないのか?」

「ただ昼寝してただけだべ」

 

 どうやら飯田は昼寝しているヨコヅナが体調を崩している思ったようだ。

 これには理由があり、

 

「しかし、君は三試合目の生徒だろう。第二試合はもう終わったぞ」

 

 飯田は四試合目であり、二回戦に勝ち進めば戦う可能性のあるヨコヅナが三試合目だと知っていた。

 次が試合にもかかわらず、控室で寝ていたから心配になったのだ。

 

「え!?オラ、三試合目なのに…もう始まってるだか?遅刻だべか!?」

「いや、まだだ、今は轟君が作った巨大な氷塊を溶かしてる最中だ」

「そうだべか、良かっただ。起こしてくれてありがとうだべ」

「何、礼を言われる様な事はしていない」

 

 結果はどうあれ、戦う可能性のある相手の体調を心配してくれたのだ。ヒーロー志望だけあって親切な人だなと思うヨコヅナ。

 

「ちょっと聞きたいだが……1試合目はどっちが勝っただ?」

「緑谷君だ、ヒーロー科A組の」

「心操は負けただか…」

 

 同じ普通科として、少し残念思うヨコヅナ。

 

『まもなく、第三試合が始まります。上鳴電気、井ノ中ヨコヅナはステージへ』

 

 スピーカーから呼び出しがかかる。

 

「呼ばれただな」

 

 立ち上がり扉に向かうヨコヅナ。

 控室を出る前に飯田の方を振り返り、

 

「起こしてもらって助かっただが、二回戦では手加減はしないだよ」

「……望むところだ」

 

 

 大観衆の中スタージに立つヨコヅナ。

 

『最終まで残ったもう一人の普通科 井ノ中ヨコヅナ! 対 スーパーキリングボーイ!上鳴電気!』

 

 実況のプレゼント・マイクが選手紹介をするが、観客のヨコヅナに対する評価はかなり低い。

 予選は42位でギリギリ通過、騎馬戦は心操の個性のおかげで通過。

 体格こそ、トーナメントの16名の中で一番大きいが、その程度は個性使用可の試合ではさして有利とは思われない。

 対して上鳴の個性は【帯電】、操る事は出来ないが、広範囲に電気を放出する事が出来る。

 その威力は騎馬戦時に観客も見ており、この試合勝つのは上鳴だと多く者が思っていた。

 

『普通科でここまで残ってるってこたぁ、やっぱヒーロー科編入を目指してるって感じか、井ノ中は?』

『…多分な』

 

 プレゼント・マイクの疑問にイレイザーヘッドは推測で答える。ヨコヅナは心操と違い、普通科しか入学試験を受けていないからだ。

 

『それじゃ、しっかり実力を見せてくれよ!!』

 

 

『START!』

 

 試合が始まり、

 

「試合で目立ってヒーロー科に編入したいみてーだが……相手が悪かったな」

「ん?」

 

 早々に上鳴は喋りながら、

 

「多分この勝負、一瞬で終わっから。無差別放電!130万ボルト!!」

 

 全力の電撃をステージ中に放電した。

 

 そして、観客の目が眩むほどの電撃が静まった時、ステージには、

 

「確かに一瞬だったべな。相手が良かっただよ」

 

 張り手一発でK.Oした上鳴を見下ろすヨコヅナの姿があった。

 

 

 

『……瞬殺!!あえてもう一度言おう!瞬・殺!!。二回戦進出は、普通科井ノ中!!』

 




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ヨコのヒロアカ 11話

 予想外のヨコヅナの勝利に会場中がざわついていた。

 特に騒いでいたのはヒーロー科A組の生徒達が座っている客席だ。

 

「何で、今…?電撃を喰らいながら攻撃した!?」

 

 信じられないといったふうに驚く緑谷出久。

 

「でも、あんな凄い電撃だよ」

「上鳴の電撃喰らいながら動けるかよ」

 

 上鳴の個性は、的を絞るって放電することが出来ないとか、使用した後馬鹿になるとか、欠点は大きいが、その威力が強力なことはA組の皆が認めている。

 

「でも、事実そうとしか…」

「個性で防いだ、のかな?」

「でも、何か出したようには見えなかったよ。眩しくてよく見えなかったけど…」

「服は焦げてるように見えるケロ」

「……同じ電気系とかなら、効果がない可能性があります」

「あ!USJ襲撃の時、そんなことあったね」

 

 そんな風に騒いでいるA組を、

 

「あれあれ~、一瞬で決めるんじゃなかったっけぇ、おっかしいな一瞬でやられたよね。相手は普通科なのに、おっかしいな~」

 

 B組の物間が揶揄する。

 だが、

 

 ゴスッ

 

 拳藤が首筋に当て身して物間を気絶させる。

 

「ごめんな」

 

 A組に迷惑かけた事を委員長として謝る拳藤。

 

「それと、ちょっと聞こえてたけど、……井ノ中ヨコヅナの個性は電気系じゃないよ」

「知ってるのですか?」

「私同中だから、でも詳細は教えれないけどね」

 

 それだけ言って拳藤は自分の席へと戻った。

 

「電気系じゃない…だとしたら他に考えられるのは、……体をゴムなどの伝導率が悪いモノに変えるとか、ブツブツブツブツ…」

 

 拳藤の言葉を聞いて、ブツブツ呟いていた緑谷だが、

 

「今は情報が少なすぎるから、下手な憶測はしない方がいいか……それにしても心操君といい、普通科にも凄い人たくさんいるんだ」

 

 と、結論付け試合観戦に集中する事にした。

 

 

 

 ヨコヅナがステージから戻ると通路に飯田がいた、次が試合だから通路で観戦していたみたいだ。

 

「一回戦突破おめでとう」

「ありがとうだべ」

「しかし、どうやってあの電撃を掻い潜ったんだ、君の個性かい?」

「…それを言ったら、二回戦で不利になるから、言えないだよ」

「おっとそれもそうだな。軽率な発言だった。すまない」

 

 大したことじゃないのに丁寧に謝ってくれる飯田。

 

(ほんと真面目な人だべな)

 

 と、思いつつもヨコヅナはあることに気が付く。

 

「何で体に色々つけてるだ?」

 

 飯田は何故か体に複数のサポートアイテムを付けていた。

 サポート科以外は原則アイテム着用は禁止だ。

 

「これか、実は…」

 

 これは対戦相手である発目に理由があることを説明する飯田。

 

「そうなんだべか」

「もちろん、2回戦に勝ち進んだとしても、君との試合では使わないさ」

「それは助かるだ」

 

 ヨコヅナは16人の中で飯田が一番強敵だと思っていた。サポートアイテムを使われると困る事になっただろう。

 

「それじゃ、がんばってだべ」

「ああ、2回戦で会おう」

 

 

 その後飯田は、

 

「騙したなああああ!!」

 

 という叫びと共に勝利した。

 




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ヨコのヒロアカ 12話

明日は投稿出来ないと思います。


 第五試合は芦戸VS塩崎。

 序盤、芦戸は個性【酸】と持ち前の運動能力で、塩崎の個性【ツル】を回避していたが、圧倒的物量の前に抵抗空しく捕縛され場外へ。塩崎が二回戦進出。

 

 と、会場では次々試合が行われていたが、

 ヨコヅナは飯田の試合以降は観戦せず、

 

「一回戦が弱い相手で良かっただよ」

 

 会場の外で体を動かす為、四股を踏んでいた。

 予選での疲れと寝起きの影響で、一回戦は動きが悪かったからだ。

 

 そんなヨコヅナの元に、

 

「試合と試合の合間に…私が来た!」

「オールマイト先生」

 

 凄いスピードでオールマイトがやって来た。

 

「やぁ、井ノ中少年。一回戦突破おめでとう」

「ありがとうございますだ」

「二回戦に向けても余念がないようだね」

「次が大一番だべから……次を勝てたら優勝するのはオラだべ」

「はっはっは。強気な発言だね。表彰台に乗った方が私も約束を果たしやすいがね」

「優勝したら、ヒーロー科編入は確定するんですだか?」

「……私も今年からなので詳しくは知らないが、そんな簡単には決まらないだろう」

「そうだべか…」

「だが、優勝すれば編入の可能性は大きくなることに変わりはない」

「そうですだな」

「それでは私は生徒達の試合を観ないといけないので、失礼するよ。頑張りたまえ、井ノ中少年」

 

 そう言って凄いスピードでオールマイトは去っていった。

 

 

 一回戦の試合は全て終わり、

 二回戦第一試合緑谷VS轟を、次が試合の為ヨコヅナは通路で観戦していた。

 

「派手な戦いだべな」

 

 轟の作り出す巨大な氷塊を、緑谷がデコピンの衝撃波で潰すという展開が繰り返されていた。

 

「オラの試合はどうしても地味になるべからな」

 

 ヨコヅナがそんなことを考えていると、

 さらに派手な大爆発が起こり、二回戦第一試合は轟の勝利で終わった。

 

 その後、ステージの破損の修復が行われ、

 

『さぁてお次は、二回戦第二試合、井ノ中VS飯田の試合だ!』

 

 ヨコヅナがステージに上がる。

 

『普通科井ノ中は今だ個性が謎のままだ。イレイザーは何か気づいたか?』

『生徒の個性の情報は、資料見れば分かるだろ』

『それ見たら面白いくねぇじゃねえか』

『だったら聞くな。それにこういう場では、知らない個性を推理するのも楽しみ方の一つだ』

『それもそうだな!』

『だた一つ言っておくなら、さっきの緑谷と轟の試合のような派手な個性の打ち合いなどでなく、近接格闘戦になるだろうな』

『……あぁ~、じゃあ地味目な戦いになっちまうかな』

『俺はこっちの試合の方が楽しみだがな』

『それじゃさっさとはじめるとするか。格闘戦にしてもバチバチやり合ってくれよ!』

 

 




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ヨコのヒロアカ 13話

 二回戦第二試合、井ノ中VS飯田の、

 

『START!!』

 

 試合開始の合図が出される。

 

「俺も遠慮なく倒させてもらう!」

 

 飯田は開始同時に個性【エンジン】を使って猛スピードで前に出る。

 そして、ヨコヅナから少し遠い間合でジャンプし、

 

「レシプロバースト!!」

 

 奥の手まで使って、強烈な飛び回し蹴りを繰り出す。

 飯田の考えとしては、

 ヨコヅナは、個性の分からない対戦相手、逆に自分は個性も奥の手も相手に知られている。

 だから、開始早々奥の手を使った速攻で虚をつき、一気に勝負を決める策に出たのだ。

 

 そして、飯田のレシプロバースを使っての強力な飛び回し蹴りは…

 

『ああっ!!飯田の強烈な蹴りが、井ノ中の顔面にキまった!!!』

 

 プレゼント・マイクの実況通り、試合を見ている者全てが、ヨコヅナは顔面に強烈な蹴りを喰らったように見えた。

 事実、飯田の飛び回し蹴りはヨコヅナの頭部に当たっている。

 だがしかし、

 ヨコヅナは間髪入れず、飯田の蹴り足を両腕で抱える。

 

「何!?」 

「ふんっ!」

 

 そして、抱えた足を一本背負いの要領で投げ、飯田を床に叩きつける。

 

「がはっ!」

 

 ステージの床はセメントスが作ったモノなので、とても固く威力は絶大だ。

 

『なんだぁ!?井ノ中、蹴りが全く効いていなかったかのように、飯田を床に叩きつけた!!』

 

 見ているほとんどの者が驚き、そして理解出来なかった。それほどまでに、飯田の蹴りは強烈で、完璧に決まていたように見えたからだ。

 

『一回戦の電撃の時といい。井ノ中に攻撃は効かないのかぁ?』

 

 プレゼント・マイクのその言葉を、

 

『…違うな』

 

 イレイザーヘッドが否定した。

 

『効かないのではなく、効いてるが耐えられてるだけだ』

『……あ!、あれか、イレイザーがズタボロに負けた(ヴィラン)の【衝撃吸収】と似たような個性ってことか?』

『ズタボロに負けたは余計だ。それに【衝撃吸収】でもない。井ノ中は蹴りに対して自らも、額をぶつけに行った』

 

 ヨコヅナの顔面に飯田の蹴りがキまった、ではなく、ヨコヅナが飯田の蹴りを額で受け止めた、が正しい言い方だ。

 

『余程の頑丈な頭なんだろうな』

『それじゃ…個性使ってないってことか!?』

『…どうだろうな』

 

 

 見ている者達がザワついている中で試合は進む。

 床に叩きつけられたダメージは大きいが、飯田は立ち上がる。

 

「次はこっちから行くだよ」

 

 飯田が立ち上がるのを見て、今度はヨコヅナから前に出る。

 一旦距離を取ろうとする飯田だが、

 

「くっ」

 

 足の痛みに動きが止まり、ヨコヅナに腕を掴まれる。

 

「その足じゃ、もうさっきのようには走れないべ」

 

 初撃の蹴りでヨコヅナの額に当たったのは、飯田の脛の部分。ダベージが大きかったのは飯田の方であった。走る事はおろか歩く事すら厳しい。

 

 ヨコヅナは捕まえた飯田の顔面に向けて、張り手を繰り出す。

 飯田は掴まれていない方で腕でガードするが、

 

 ミシっ!

 

「ぐぁっ!」

 

 まるで石で殴られたかのような衝撃。

 飯田が痛みに意識を取られている隙に、ヨコヅナは足をかけ、今度は二丁投げで背中から床に叩きつけるように飯田を投げる。 

 

「ガハッ!」

 

 背中を硬い床に強く叩きつけられ苦しむ飯田。

 

「……それ以上怪我したくないなら、立ち上がらないことだべ」

 

 倒れている飯田を見下ろしながら、ヨコヅナは忠告する。

 

「でも、立ち上がるなら容赦はしないだ」

 




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ヨコのヒロアカ 14話

「嘘…?」

「飯田君まで」

「なんなんだ、あの普通科…」

「強すぎだろ」

 

 ズタボロになり倒れ伏す飯田とそれを見下ろすヨコヅナを見て、A組の生徒は驚きの声を漏らす。

 

『なんだよオイ!?普通科井ノ中の一方的展開じゃねえか!!』

 

 初撃の蹴り以降飯田の攻撃はほぼない。

 立ち上がる度、多少の抵抗はするが、ヨコヅナの張り手を喰らい、投げで硬い床に何度も叩きつけられていた。

 

『どうなってんだよ?イレイザー』

『見ての通りだ、井ノ中ヨコヅナは強い。それだけだ』

『でも普通科だぜ?』

『…強くなる努力を積み重ねることに、学科など関係ないと言う事だろ』

 

 

「飯田君…まだ戦える?」

 

 主審のミッドナイトが飯田に声をかける。

 もはや、飯田に勝ち目がないのは誰の目にも明らかだ。

 それでも、

 

「ま、まだ…戦え、ます」

 

 ズタボロの姿で、ふらつきながらも立ち上がる飯田。

 

「もう止めるだよ」

 

 ヨコヅナも何度も降参をすすめているが、

 

「それは、出来ない!。俺の目指すヒーローは、勝ち目が薄いからと、降参などしない!」

 

 飯田は降参に応じない。

 

「…仮にオラが(ヴィラン)で命を落とす事になるとしてもだべか?」

「当然だ!命惜しさに(ヴィラン)に降伏するヒーローなどいない!」

「オラはいると思うだがな」

 

 たくさんのヒーローがいるこの世の中で、命惜しさに(ヴィラン)に降伏するヒーローがいないと断言する方が無理があると思うヨコヅナ。

 

「少なくともオラだったら、状況次第では降参するだ」

「……君は普通科だが、ヒーローを目指してるのではないのか?」

「自分のヒーロー像を他人に押し付けるのは良くないだよ」

「俺一人の考えではない、ヒーローとして当たり前の考えだ!」

「……あんたは真面目で良い人だが、オラとは考えが合わないだな」

 

 そもそも、ヨコヅナはヒーローになりたいのではなく、ヒーロー免許が欲しいだけなのだ。

 代々ヒーロー一家あり、真面目一辺倒な飯田と分かり合えるはずがなかった。

 

「話は終わりだべ。そして試合も終わらすだ」

 

 ヨコヅナはそう言って、立っているのもやっと言った飯田に素早く近づき、がっつりと組み付く。

 だが、今度は投げず、そのまま押していく。

 

『なんだぁ?井ノ中、飯田をどんどん押していくぞ!これは…』

『場外に押し出すつもりなのだろうな』

 

 ズタボロの飯田は簡単に押されてく。

 

「くっ……この…」

 

 何とか抵抗しようと、個性【エンジン】を発動させようとするが、エンジンはかからない。

 

「無駄だべ」

 

 そして、飯田は、

 

「どんな個性だろうと、オラに相撲で勝てる奴はいないだ」

 

 何の抵抗も出来ないまま、あっさりと場外へ押し出された。

 

「飯田君場外!勝者井ノ中ヨコヅナ!」

 




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ヨコのヒロアカ 15話

明日は投稿できないと思います。


『普通科井ノ中、三回戦進出!こいつぁとんだダークホースだぜ!!優勝しちまうんじゃねぇか?』

『かもしれないな…』

『おいおい、イレイザーはヒーロー科A組の担任だろ。生徒を信じろよ!』

『信じる信じないではなく、可能性の話だ』

『そりゃ、今残ってる生徒は全員可能性あるわな。それより井ノ中の個性、結局分かんねぇままだな。使ってるようにも見えなかったしよ』

『…そうだな。分かったのは井ノ中が相撲の使い手だと言う事だな』

『やっぱあれ相撲か。絶滅危惧種だな』

『種じゃないがな。ヨコヅナの名は伊達ではないと言う事か…』

 

 

 

 ヒーロー科B組の観客席。

 ヨコヅナの圧勝にB組の生徒達もザワついていた。

 

「本当に強いね一佳の彼氏」

「だから、彼氏じゃないってば」

「応援してたじゃん」

「応援ぐらいするでしょ、同中なんだから」

「スモウ!very強いデス!」

「同意」

「さっきの試合、井ノ中は個性使ってたのこ?」

「使ってたよ」

「やっぱり硬化型の個性?凄い蹴り受けても平気だったし」

「いや、ヨコヅナは素で頑丈なの。特に額は殴った方が怪我するぐらい硬い』

「もうどんな個性か言いなよ」

「う~ん……次の試合ではっきり見れると思うから、その時説明するよ」

 

 三回戦のヨコヅナの相手は、ヒーロー科A組の轟焦凍。

 

 

 選手控室1。

 試合に勝利し控室に戻ったヨコヅナを、一人の生徒が訪ねてきた。

 

「二回戦突破、おめでとう」

「心操……言葉と表情が合っていないだよ」

「同じ普通科として嬉しいという気持ちより、悔しいという気持ちの方が強いからな」

「だったら毎日稽古するだよ、強力な個性に頼ってるから負けるだ」

「…耳が痛いな」

「オラに何か用があったんじゃないんだか?」

「あまり圧勝ばかりされると、俺の印象が薄くなるから止めて欲しいと言いにな」

「はは、それは無理だべ。オラの戦いはどうしても地味になるべからな。圧勝するしか目立つ方法がないだよ」

「残り二戦も圧勝出来ると確信してるみたいな言い方だな」

「出来るだよ……残りの生徒でオラに勝てる奴はいないだ」

「顔はニコニコしてるくせに、冗談じゃなさそうだな」

「もう個性を隠す必要もないだべからな」

「バレると簡単に対策される個性を持つと大変だよな。もっとヒーローに誂え向きの個性が良かったぜ」

「オラはこの個性が嫌だと思った事は一度もないべ」

「…そんなこと言えるのはお前だけだと思うがな。そこまで大口叩くんだ、ちゃんと優勝しろよ」

 

 そう言い残し、心操は控室を出ていった。

 

 

「やっぱヒーロー志望はみんな良い人だべな。……心苦しくなってくるだ」

 

 

 

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 16話

 リカバリーガール出張保健室。

 

 緑谷出久が轟との試合で負った怪我を治療してもらい、試合を観戦する為、部屋を出ようとしたその時、担架で一人の生徒が運ばれて来た。

 

「飯田君!?」

「…緑谷君、俺も…負けてしまったよ」

 

 ヨコヅナとの試合に負け、ズタボロになった飯田だ。

 

「さっさとベットに運びな」

 

 リカバリーガールの指示に従って、ベットに寝かされる飯田。

 

「飯田君が…相手は、あの普通科の生徒」

「そうだ」

「いつまで喋ってるんだい。治療するよ」

 

 飯田の怪我の容態を診た後、個性を使って、チューーっと治療するリカバリーガール。

 

「体が…だるい…」

「それだけ、重症だったということだよ。まるで何度も高い所から飛び降りたかのような怪我だね」

「飛び降り?…あの普通科の生徒、どんな個性だったの?」

「……分からない」

「え、でも……もしかして、上鳴君の時ように一瞬で…」

「違う…俺は何度も、彼の攻撃を受けた……だが、それは掌底打ちや、投げ技で床に叩きつけられたりと、格闘の技だ」

「それじゃ、個性を使わずに勝ったってこと!?」

「分からない…外見に変化がない増強型かもしれないが…」

 

 飯田も生徒の中では体格がよく、子供の時からヒーローの兄を目標にしてしっかり鍛えていたから、個性なしのパワーでも普通の生徒よりずっと強い。 

 だが、そんな飯田でもヨコヅナのパワーにまるで抵抗出来なかった。

 増強型と考えるのも無理はない、が…

 

「それは違うよ飯田少年」

「オールマイト先生!?いつのまに…」

 

 その考えを、突然現れたオールマイトが否定する。

 

「井ノ中少年の個性は増強型ではない」

「知ってるんですか?」

「少し前に知り合ってね。彼は相撲の使い手、力士だ。あの常人離れしたパワーは日々厳しい鍛錬の賜物だよ、個性は関係ない」

「ではあれは…純粋な努力の差…」

 

 真面目な飯田からすれば、個性で負けたよりも、ショックを受ける事実だった。

 

「力士……相撲はイベントショーで見た事ありますが…」

「あんなのは偽物だよ」

 

 緑谷の言葉にそう言ったのは、リカバリーガールだった。

 

「アタシは若い頃本物の相撲を見た事がある……」

 

 リカバリーガールは幼い時見た、肉の山の如き力士のぶつかり合う戦いを思い出す。

 

「とても無個性とは思えなかったさね」

「無個性…」

「そうだよ。相撲会は個性持ちを受け入れなかったからね、力士は全て無個性さね」

「じゃぁ、井ノ中も…」

「……どうなんだい?オールマイト。そもそも角界のない今の世に、本物の力士はいないんだけどね」

「そうですねリカバリーガール。正しくは井ノ中少年は本物の力士の弟子、力士だった祖父から相撲を習ったそうです……そして、彼は無個性ではない」

 

 オールマイトは朝の稽古でヨコヅナと相撲をとった時、ヨコヅナの個性について聞いている。

 

「だが、もし今の世に相撲会があれば、彼の個性なら受け入れたかもしれないな」

「それはどういう…」

「三回戦、轟少年との試合で分かるよ……飯田少年は観に行けるかい?」

「い、行きます…」

 

 リカバリーガールの回復で怪我は治ってても体力が零に近いが、ふらつきながらも立ち上がる飯田。

 

「それじゃ観に行こうか、井ノ中少年の個性の力を」

 




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ヨコのヒロアカ 17話

明日は投稿できないと思います。


 二回戦第三試合は塩崎VS常闇。

 序盤、塩崎の個性【ツル】の物量に常闇は苦戦を強いられるが、大量の【ツル】で常闇の個性【黒影】を覆ってしまい、太陽光が遮られた為【黒影】がパワーアップ。

 パワーアップした【黒影】で塩崎を一気に場外へ押し出し、常闇の勝利。

 

 二回戦第四試合の切島VS爆轟は、真っ向勝負で爆轟の勝利。

 

 

 

『さぁて、こっからは準決勝だぜ!第一試合は轟VS井ノ中』

 

 準決勝でステージに現れたヨコヅナは、

 

『なんだぁ!?普通科井ノ中、裸で登場だぁ!誰得だよ!!』

『いや、裸ではないだろ、褌をしている』

 

 ヨコヅナは今回褌一丁でステージに現れた。

 

「井ノ中君、ジャージはどうしたのかしら?」

 

 主審のミッドナイトの質問に、

 

「個性の関係で、この格好で戦いたいだ」

「そういうのは、事前に申告しなさい」

「そうなんだべか、すみませんだ」

「でも、サポートアイテムを付けるのと違って、ルール違反にはならないわ。轟君はどうかしら?」

「…別に俺は構いません」

 

 轟もヨコヅナが褌一丁で戦う事に反対しなかったので、

 

「ではこのままで試合をします。でも井ノ中君、テレビカメラもあるから気を付けるようにね」

「分かりましただ」

 

 ヨコヅナが褌一丁で戦うことに許可が出た。

 

『どうやら、井ノ中がケツ丸出しで戦う事に許可が出たようだ』

『言い方を考えろ。まぁ個性の性質上、服が邪魔になる事は少なくないからな』

『そうなると……服を着ていた今までの2戦は、井ノ中は個性使ってなかったってことになんねぇか?』

『…そうとも限らないがな』

 

 

 轟は【半冷半熱】という強個性で、№2ヒーローの息子でもある為一番の注目株。

 対するヨコヅナも、始めこそ皆興味なかったが、個性、実力、共に未知数な生徒として注目を集めていた。

 

 そんな会場中が注目する、

 

『START!!』

 

 二人の試合の始まった。

 

 

「裸で凍傷になっても、恨むなよ!」

 

 轟は開始と同時、それも瞬時に全力で巨大氷塊を作り出す。

 

 轟からしてもヨコヅナの個性は不明。

 服を脱いでいる事からヨコヅナの個性は、大きく体型が変形する個性か、もしくは、肌から何かを分泌する個性か、と推測はできる、ただ確証はない。

 今までの2戦から分かっているのは、ヨコヅナが近接格闘戦に強いと言う事だけだ。

 だが、轟からすれば全て関係なかった。

 個性を使用する間もなく、接近もさせず、凍らしてしまえば倒せるからだ。

 そんな考えで、轟が作り出す巨大氷塊に対して、

 

 ヨコヅナは前傾姿勢になって突っ込んだ

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 18話

『轟、三回戦もいきなりの巨大氷塊!井ノ中は裸なのに氷漬けだぁ!』

 

 ヨコヅナの姿が氷の中に消え、勝負は決した、と会場のほとんどの者がそう思った。

 しかし、

 ヨコヅナは一切凍ることなく、巨大氷塊から出てきた。

 それも轟に向かって走る速度を落とすことなく、

 

「な!?…くっ」

 

 驚きながらも直ぐに次の氷塊を作り出す轟。でもヨコヅナを凍らす事は出来ない。それどころかヨコヅナは全く氷を意に介していない。

 ヨコヅナは間合にまで近づけた轟に対して張り手を繰り出す。

 轟は間一髪で腕を上げて張り手をガードするも、ミシミシと腕の骨が軋み、一撃で吹っ飛ばされる。

 

「ぐっ……なんてパワーしてやがる」

 

 吹っ飛ばされるも、倒れはしなかった轟。 

 倒れてないのを見て、さらに追撃するヨコヅナ。

 

「…こんなところで」

 

 氷が効かないヨコヅナに対して、轟は左側の炎を解放し、

 

「負けられるか!!」

 

 ヨコヅナに左手を向けて炎をぶつける。

 だがしかし、

 

「無駄だべ」

 

 ヨコヅナは炎も全く意に介さず、自分に向けられている轟の腕を掴んだ。

 

 

 

 観客達は今見ている現象に理解が追い付かず、会場は静まり返っていた

 そんな中、ヨコヅナの個性を知っている、

 

 オールマイトは、

 

「井ノ中少年の個性は…」

 

 緑谷と飯田に聞かせるように、

 

 

 拳道一佳は、

 

「ヨコヅナの個性は…」

 

 B組の生徒に聞かせるように、

 

 ヨコヅナの個性の正体を明かす。

 

 

「「個性無効」」

 

 

 

『どうなってんだぁ!?氷も炎を全然効いてねぇ!!一回戦の電撃といい、井ノ中には何にも効かねえのか!!?』

『…限定的にはその通りだ。井ノ中の個性は【個性無効】と資料に載っている。つまり個性による攻撃は効かないという事だろう』

 

 もう種明かししても問題ないと考えたイレイザーヘッドは資料を見て解説する。

 

『【個性無効】って…イレイザーの【個性抹消】と同系統の個性か?』

『俺の個性では発動を止めれても、作られてしまった轟の氷は消せない。だが、井ノ中の個性は作られた後でも触れた部分を消すことが出来るようだな』

 

 開始時に轟が作り出した巨大氷塊には、ヨコヅナが通って来た部分だけトンネルのように穴が開いている。

 ヨコヅナの【個性無効】は個性で作り出されたモノであれば、直接触れる事で消すことが出来る。

 そしてさらに、

 

『……しかも、あの様子を見るに発動を止める事も出来るようだ』

『よく見りゃ、轟…腕掴まれてから炎が止まってる!?』

 

 

 

「炎が出ない!?……炎だけじゃない、氷も…」

 

 ヨコヅナの【個性無効】は直接相手に触れる事で、個性を使用出来なくすることが出来る。

 

「…弱いだな」

「弱い?…俺が…」

「そうだべ」

 

 ヨコヅナが掴んだ腕を持ち上げて行き、

 

「な!?…」

 

 轟の足が床から離れる。片腕だけでヨコヅナは轟の体を持ち上げる。

 

「こうやってオラに片腕を掴まれているだけで、何も出来なくなってるだ」

「くそ…」

 

 轟は何とか手を振りほどこうとするが、ヨコヅナの万力を思わせる握力を引き剥がすことはできない。

 一回戦の上鳴を弱い相手と言っていたように、轟もヨコヅナにとっては弱い相手と言える。

 個性自体に攻撃力があり、それに頼った攻撃しか出来ない者は、ヨコヅナに攻撃手段が無いに等しいからだ。 

 

 ヨコヅナが腕を掴む手に力を込める。

 ミシミシッと轟の骨が軋む。

 

「ぐぁ…」

(やわ)い体だべな、ちゃんとご飯食べてるだか」

 

 ヒーロー目指しているのだから轟も体は鍛えてはいる、だがそれは個性があるからという考えが前提の鍛え方。

 そんなものはヨコヅナにとっては、毎日適度な運動をしている高校生と変わらない。

 

「…弱い者虐めをしてる気分になるから、もう終わらせるだ」

 

 そう言ってヨコヅナは、持ち上げられて身動きの出来ない轟の顔面に張り手を叩き込む。

 

「がはっ」

「怪我が治ったら、個性が使えなくても戦う方法を考えると良いだよ」

 

 張った手で轟の頭を鷲掴みにし、

 

 ドゴンっ!と、硬い床に顔面から叩きつけた。

 

 セメントの床にひびが入る程強い力で顔面から叩きつけられたのを見て、ミッドナイトが轟に駆け寄る。

 

「轟君……」

 

 名前を呼ぶが、戦えるかどうかを問うまでも無く、戦闘不能と判断し、

 

「勝者、井ノ中!!」

 




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ヨコのヒロアカ 19話

 ヒーロー科B組の観戦席。

 

「あんな強個性相手に、準決勝も圧勝とか、強すぎだろ…」

「おスモウさん!Extremely strong!!」

「相手の個性を無効化する個性か…」

「前に鉄哲と格闘試合した時も、鋼鉄化は額がぶつかった時に無効化してたってことだね」

「弱点、ある?」

「…あるよ。だから個性を秘密にしてたわけだしね」

 

 ヨコヅナの【個性無効】は弱点・欠点は多く、知っていれば簡単に対処も出来る。

 

「……ひょっとして井ノ中は肌で直接触れないと個性を無効化出来ないのこ?」

「そう、だから今の試合ヨコヅナは褌一丁で戦ってたの、服は凍っちゃうからね。それに個性を使えなくする場合も相手の肌に触れないといけない」

 

 ヨコヅナが個性を無効にするには、肌での直接な接触が必要。それは薄い布一枚纏うだけでも防ぐことが出来る。

 

「ヨコヅナにとって一番やっかいな相手は、二回戦の飯田だったろうね。もし飯田が足首まであるジャージ履いてたら、個性を無効化する事が出来ず、蹴りを額で受けたとは言え無事じゃすまなかったはずだよ」

 

 ヨコヅナ自身も飯田を強敵と言っていたように、個性で格闘技術を向上させるタイプは相手の肌に触れれなければ、強力な攻撃を喰らってしまう。

 飯田はふくらはぎから、マフラーが出ている為、膝までのジャージを履いていたのはヨコヅナにとって幸運だった言える。

 

「それじゃ、肌の出てないヒーロースーツ着てたら、無効にはされないんだ」

「肌に触れるにしても、射程もないし一度に無効に出来るのはせいぜい両手でつかめる二人が限度」

「相澤先生の【個性抹消】の上位互換かと思ったけど、そうでもないのこね」

「そうだね。それともう一つ相澤先生と大きく違うのが、ヨコヅナの個性は常時発動型なの」

 

 イレイザーヘッドは個性の発動を自分の意思で決めれるが、ヨコヅナは個性の発動は自分の意思で決めれない。常に触れた個性を無効にしてしまう。

 

「奇襲でも無効化出来るってことか」

「じゃあ庄田と違って騎馬戦で心操に操られてなかったんだ」

 

 最終種目を自体した庄田や尾白と違い、ヨコヅナは心操に操られてはいなかった。

 騎馬戦のチーム決めの時、もちろん心操はヨコヅナを操るつもりで話かけた。だが、不意打ちでしかも、目に見えない声による個性であろうと、ヨコヅナは無意識で無効化出来るのだ。

  

「常時発動の利点は確かにあるんだけど、欠点の方が大きんだよね」

「欠点……あ!リカバリーガールに治療してもらえないのこ…」

「そう、だから一種目の障害物競争なんてヨコヅナにとって本当に命がけだったと思うよ」 

 

 個性の発動をoffに出来ないヨコヅナは、個性による恩恵も無効化してしまう、リカバリーガールの治療を受けれないヨコヅナにとって体育祭はとても危険な行事…

 

「それなら個性を秘密にするのも納得のこ」

「もうその必要もないけどね」

 

 正確には、危険()()()と過去形だ。

 

「個性の攻撃力に頼ってる奴には、ヨコヅナを倒すのは厳しいから、こういう試合形式だと特に」

「……残ってる二人もそういうタイプの個性だよね」

 

 決勝でヨコヅナと戦うのは、これから試合する常闇と爆轟のどちらかだが、どちらも個性その物に攻撃力を持ち、だからこそヨコヅナには通じない。

 

「え、じゃ普通科が優勝!?」

「可能性高い」

「それちょっと、悔しいと言うか、ヒーロー科として情けなく思えてくるね」

 

 B組の生徒達にとって、A組の生徒に優勝されるのも悔しい気持ちになるが、普通科のヨコヅナだと、ヒーロー科として情けない気持ちにまでなってしまうのだった。

 




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ヨコのヒロアカ if20話

 選手控え室2

 

 ヨコヅナが控え室に備えつけてあるポットで湯を沸かしてお茶を入れ、飲もうとしたその時…

 バアン!と扉が蹴り開けられる。

 

「熱っ!…何だべ?」

 

 びっくりしてお茶を零すヨコヅナ。

 

「あ?」

 

 開いた扉の所に立っていたのは爆豪だ。

 

「あれ!?何でここに……あ、ここ2の方か、クソが!!」

 

 どうやら控え室を間違えて入って来たらしい。

 

「……まぁいい。てめェには言いときてぇ事がある!」

 

 爆豪がヨコヅナに近づく、

 

「何かオラに用だべか?」

「俺は個性が効かない相手に何も出来ねぇ半分野郎とは違うからな!」

「半分野郎?」

「てめェが準決勝で戦った相手だ」

「ああ……で、あんたは誰だべ?」

「……まさかてめぇ、さっきの試合観てなかったのか!?」

「準決勝第二試合のことだか……それじゃあんたが決勝の相手だべか」

 

 準決勝第二試合の常闇VS爆豪は、爆豪の勝利。

 だがヨコヅナはその試合を観ていない。

 

「興味なかっただよ、どちらが勝とうと優勝するのはオラだべからな」

 

 ヨコヅナは挑発ではなく本心を言っただけだが、その瞬間、BooMと爆豪が机を爆発させる。

 

「ニコニコ笑顔で言ってくれんじゃねぇか!」

「……せっかく入れたお茶が、全て無駄になっただ」

 

 机を爆発されたことで、急須も湯飲みも、床に落ちて割れる。

 

「物にアタるのは良くないだべ」

「うるせぇ!今はそんなもんどうでも良いだろうが!」

 

 ヨコヅナは椅子から立ち上がり、

 

「あんたは、何でヒーローを目指してるだ?」

 

 爆豪に問いかけた。

 

「あぁん……そんなもん、決まってんだろ!ムカつく(ヴィラン)共をぶっ倒すためだ!」

「オラと同じ理由だべな……じゃあんたも」

 

 お茶を無駄にされて少し不機嫌なヨコヅナは、

 

「ヒーローには向いてないだな」

 

 今回は挑発的な意を込めてその言葉を言った。

 だが、ヨコヅナは理解してなかった。

 憧れのヒーローもおらず、ヒーロー資格が欲しいだけのヨコヅナと違い、

 性格は乱暴でも、幼い時からオールマイトに憧れ、本気で№1ヒーローを目指して努力している爆豪に対して、

 それが、どれほどの侮蔑の言葉となるのかを、

 

 BOOOOM!!!!

 

 

 A組の観戦席。

 

「デク君。決勝で爆豪君はあの普通科の生徒に勝てると思う?」

「カっちゃんの個性【爆破】も、無効化されダメージはないと思う」

「やっぱり爆豪君でも勝つのは…」

「いや、カっちゃんは爆破の反動を使って、空を飛んだり、打撃の威力を向上する事もできる。それに無効化出来ると言っても視認できているなら、爆破は目隠しにも使える」

「相変わらず凄い分析力だね…。でもそれなら爆豪君に勝機はあるんだね」

「一度でも掴まれたらピンチだけど、カっちゃんの反射神経と格闘センスなら、十分勝機はあると思うよ」

 

 

『さァいよいよラスト!雄英1年の頂点がここで決まる!!』

 

 緑谷出久の推測は間違っていない、

 爆豪は飯田同様、個性を使って格闘技術を向上させることも出来る。

 ヨコヅナは予想外の苦戦を強いられることになるだろう。 

 

『決勝戦、選手の登場だ!!』

 

 決勝が行われれば、だが…

 

 

「「「「「「「「!?…………」」」」」」」」

 

 会場にヨコヅナは、片手で()()を引きずりながら現れた。

 控え室から引きずってきたその()()を、ヨコヅナはステージに投げ捨てる。

 それは、

 

「この場合、どうなるだか?」

 

 顔面が潰れた()()だった。

 

 




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ヨコのヒロアカ if最終話

明日は投稿できないと思います。


 雄英体育祭が終わり、休みを挟んだ月曜日。

 

 井ノ中ヨコヅナは学食で昼食を食べていた。

 

「新メニューのお好み焼き定食、美味いだな」

 

 今日もテーブルには三人前の料理が並んでいる。 

 

「炭水化物×炭水化物はどうかと思っただが、何でも食べてみないと分からないだな」

 

 お好み焼きを食べながら、ブツブツ言っているヨコヅナに、

 

「なに呑気な事言ってんのよ」

 

 そう言って断りもなく、テーブルの向かいに座ったのは拳藤一佳。

 

「本当バカね、あんたって。あそこまでいって最後に失格とか」

「それまでの成績も無効になるとは思わなかっただな、酷い話だべ」

 

 雄英体育祭の決勝は行われず、ヨコヅナは失格となった。

 負傷による辞退などとは違い、試合外で暴力を振るったいう反則行為と判断され、ヨコヅナの体育祭での成績は【決勝進出】などではなく、【失格】だ。

 

「酷くないわよ、当たり前でしょ!相手が先に攻撃して来たからってやり過ぎ」

 

 爆豪の治療後、事情聴取のようなことが行われ、事の原因は爆豪が先に個性で攻撃したことにあるのは分かってる。

 その為爆豪も【失格】扱いだ。

 

「でも、あの爆破はオラじゃなかったら大怪我してるだよ。あういう調子に乗ってる奴は、顔面潰して良いと法で決まっているだよ」

 

 ヨコヅナの「ヒーローに向いてない」発言の怒りから、爆豪はヨコヅナに向けて個性【爆破】を使用した。

 爆豪としては無効化されることを見越しての爆破だったのだが、ヨコヅナは攻撃された瞬間爆豪の頭を鷲掴みにし、顔面を床に何度も叩きつけたのだった。

 

「そんな法律ないわ、よ」

 

 バカな事を言うヨコヅナの額をチョップする一佳。

 

「優勝してたら、ヒーロー科編入はほぼ間違いなかったでしょうに…」

「そうだべな~。ヒーロー科編入、やっぱ駄目だべかな」

 

 ヨコヅナの成績は反則による【失格】。事実はどうあれ、ルール上では一種目の障害物競走で棄権した生徒よりも低い成績になるらしい。

 

「でも、ブラド先生に聞いたら、可能性は零じゃないみたいだよ」

「ほんとだべか?」

「詳しくは何も教えてくれなかったけどね」

 

 反則で【失格】にされたヨコヅナだが、その実力と個性の有用性を評価する者もいるようだった。

 

「そうだべか……それじゃまぁ、もう少し頑張ってみるだべかな」

「もっと真剣になりなさいよね」

「それなりに真剣だべ。でも、オラはヒーロー資格が欲しいだけだべからな」

「はぁ~…前言撤回。やっぱあんたなんて【失格】の評価で十分よ」

「ははは、オラもそう思うだよ」

 

 ヨコヅナは体育祭で多くのヒーロー志望の者と関り、自分がヒーローに向いてないと思った。

 と言うよりも、それは高校受験の時から分かっていた、

 

「拳藤、久さしぶりに、ちゃんこ食べに来ないだか?新作もあるだ」

「いいの!…いや~、実はずっと食べに行きたかったんだけど、高校に入ってからヨコヅナ誘ってくれないし…自分から言うのもアレかなっと思って…」

「オラは、拳藤はヒーロー科で忙しいと思って、誘わなかったんだべが」

「そうなんだ。ヒーロー科でも、ご飯食べに行くぐらい出来るよ」

「そうなんだべか……それじゃ中学の時みたいに、ちょくちょく誘うだよ」

「うん!」

 

 ヨコヅナはのんびり平穏に、ちゃんこ鍋を作って美味しいと言って貰える。そんな暮らしが目標なのだから。

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 20話

 本当に前回で最終話にするつもりだったのですが、
 しっくり来なかったので、前話、前々話をifストーリにしました。


 選手控え室2

 

 ヨコヅナが控え室に備えつけてあるポットで湯を沸かしてお茶を入れ、飲もうとしたその時…

 バアン!と扉が蹴り開けられる。

 

「熱っ!…何だべ?」

 

 びっくりしてお茶を零すヨコヅナ。

 

「あ?」

 

 開いた扉の所に立っていたのは爆豪だ。

 

「あれ!?何でここに……あ、ここ2の方か、クソが!!」

 

 どうやら控え室を間違えて入って来たらしい。

 

「……まぁいい。てめェには言いときてぇ事がある!」

 

 爆豪がヨコヅナに近づく、

 

「何かオラに用だべか?」

「俺は個性が効かない相手に何も出来ねぇ半分野郎とは違うからな!」

「半分野郎?」

「てめェが準決勝で戦った相手だ」

「ああ……で、あんたは誰だべ?」

「……まさかてめぇ、さっきの試合観てなかったのか!?」

「準決勝第二試合のことだか……それじゃあんたが決勝の相手だべか」

 

 準決勝第二試合の常闇VS爆豪は、爆豪の勝利。

 だがヨコヅナはその試合を観ていない。

 

「興味なかっただよ、どちらが勝とうと優勝するのはオラだべからな」

 

 ヨコヅナは挑発ではなく本心を言っただけだが、その瞬間、BooMと爆豪が机を爆発させる。

 

「ニコニコ笑顔で言ってくれんじゃねぇか!」

「……せっかく入れたお茶が、全て無駄になっただ」

 

 机を爆発されたことで、急須も湯飲みも、床に落ちて割れる。

 

「物にアタるのは良くないべ」

「うるせぇ!今はそんなもんどうでも良いだろうが!」

 

 ヨコヅナは椅子から立ち上がり、

 

「あんたは、何でヒーローを目指してるだ?」

 

 爆豪に問いかけた。

 

「あぁん……そんなもん、決まってんだろ!ムカつく(ヴィラン)共をぶっ倒すためだ!」

「オラと同じ理由だべな……じゃあ」

「一緒にすんじゃねぇ!!」

 

 ヨコヅナの言葉を遮って怒鳴る爆豪。

 

「俺はオールマイトをも超える、№1ヒーローになるんだ!!」

 

 爆豪がヒーローを目指す根本の理由は、№1ヒーロー オールマイトへの憧れからだ。

 

「…確かにオラとは違うだな」

 

 ヒーロー資格が欲しいだけのヨコヅナとはまるで違う。

 ヨコヅナが真剣な表情になる。

 

「あんた選手宣誓で一位になると言ってただな」

 

 ヨコヅナは選手宣誓で爆豪が「俺が一位になる」と言っていた事も思い出した。

 ヨコヅナにとって体育祭で一位になるのはヒーロー科編入の為の手段でしかない。もし二位でも編入が確定するなら、戦う必要がないので決勝戦を辞退してた可能性すらあっただろう。

 体育祭やヒーローの順位にも興味はないヨコヅナ、

 

「オラの名前のヨコヅナ(横綱)は、本来は相撲で一番強い人が名乗れる称号名だべ」

 

 ただし、

 

「相撲を教えてくれた祖父(じい)さん以外に、オラは格闘戦で負けたことないだ」

 

 戦う以上負けるつもりはない。

 

「№1を名乗りたいなら、オラに膝をつかせてからにするだよ」

「はっ!面白れぇ!!横綱だろうが、【個性無効】だろうが、全部上からねじふせてやる。そんで俺がトップだ!!」

 

 決勝戦前に舌戦をして、爆豪は控え室から出て行った。

 ヨコヅナは最後に、

 

「……ここの片付け、オラがしないといけないんだべかな」

 

 爆豪のせいで散らかった控え室の惨状を見ながらそう呟いた。

 

 

 

『さァいよいよラスト!雄英1年の頂点がここで決まる!!決勝戦、選手の登場だ!!』

 

 会場に現れたヨコヅナに、

 

「ヨコヅナ君、がんばれー!」

「頑張ってください!ヨコヅナ君」

「ヨコっちなら優勝間違いなしだ!」

「勝てよ井ノ中!」

「爆発猿なんて一捻りなのじゃ!」

「井ノ中君なら楽勝みたいな」

「頑張れー井ノ中君」

「ヨコちゃん、ファイト!」

 

 

 普通科で同じクラスの多くの生徒から声援が飛ぶ。ヨコヅナは応援してくれるクラスメイトに、いつもの笑顔で手を振って応える。

 

 反対側の通路から現れた爆豪にも、

 

「カっちゃん頑張れ!」

「勝てよ爆轟!」

 

 ヒーロー科A組の一部の生徒から声援が飛ぶ。爆豪は応援するクラスメイトに、

 

「応援なんかしてんじゃねぇクソデク!!」

 

 いつものように罵声で応える。

 

 

『決勝戦!!井ノ中VS爆豪、今!!』

 

 ワアァァァと歓声が響く中、

 

『START!!!』

 

 雄英体育祭、最後の戦いが始まった。

 




ご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。

次回は12/30に投稿する予定です。
以降は投稿頻度が週に1日ぐらいのペースになります。

今後も読んで頂けたら幸いです。


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ヨコのヒロアカ 21話

20時ぐらいにもう一話投稿します。


『決勝戦!!井ノ中VS爆豪、今!! START!!!』

 

 雄英体育祭、最後の戦いが始まった。

 

 

『そういや今回井ノ中、褌一丁じゃなくて、ズボンは履いてるな』

 

 ヨコヅナは準決勝の時と違い、上半身は裸だが褌一丁ではなく、ズボンを履いている。

 

『褌を爆破されたら困るからだろ』

『ハッハー!!そりゃそうだ。テレビ中継もあるのにモロ出しはこっちも困るぜ』

 

 

 などと、イレイザーヘッドと、プレゼント・マイクが、言ってる間に、

 先手で爆豪が攻撃を仕掛けた。

 走って前に出ながら、手の平をヨコヅナに向け、BOOOM!!と個性【爆破】を放つ。

 

『爆豪、いきなり大爆発を起こしたぁ!!しかし、相手はの井ノ中、今まで雷、氷、炎が効かなかったわけだからぁ~』

『爆破も効かないだろうな』

 

 ヨコヅナは避けようともせず、いや、避ける必要ないから爆破に飲まれる。

 爆豪の個性【爆破】もヨコヅナの個性で無効化できる故に、直接的なダメージはない。

 

「…凄い煙だべな」

 

 爆豪の爆破による煙を条件反射的に手で払うヨコヅナ。

 その煙の中から拳が飛び出してきて、ヨコヅナの顔面を捉える。

 

「すっとろい野郎だな!」

 

 爆豪もヨコヅナに爆破でダメージがないことは承知の上だ、だから初撃の爆破は目くらましでしかない。

 

「個性が効かねェなら、個性なしでぶっ倒しゃ良いだけだろうが!!」

 

 爆豪は突き、蹴りを織り交ぜ、次々ヨコヅナに攻撃を叩き込む。

 

 

『爆豪、個性は使わず肉弾戦を仕掛けた!!』

『個性を使ったところで無効化されるからな』

『猛烈なラッシュを繰り出す爆豪!!井ノ中はやられ放題だ!!』

 

 ヨコヅナは防御もせず爆豪の攻撃を喰らっている。

 

 

 その様子を見て、一佳は、

 

「あのバカ、決勝だって言うのに…」

「一佳ちゃん、どうして井ノ中は防御すらしないのこ?」

「横綱相撲のつもりなんでしょ」

 

 横綱相撲とは、先に相手に攻撃させ余裕でしのぎ、それから危なげなく勝つこと。

 一見爆豪のラッシュにヨコヅナは手が出ないようにも見れるが、それはヨコヅナが攻めさているだけに過ぎない。

 

「………井ノ中が無効化できるのは、個性だけのこ?」

「そうよ」

「衝撃無効、ダメージ無効とかは…」

「ないわ」

「それなら、あれはどういう理屈のこ?」

 

 希乃子同様会場のほとんどの者が驚きの声を漏らす。

 ヨコヅナが爆轟のラッシュを受けながら普通に前に歩き出したのだ。

 

「ヨコヅナが素で頑丈なだけよ」

 

 

 

 爆豪の攻撃を全てまともに受けながも、ドンドン前に出るヨコヅナ。

 

「どうしただ?オラをねじ伏せるんじゃないんだべか?」

「このっクソがぁ!!」

 

 爆豪のラッシュはさらに激しさをますが、ヨコヅナの歩みは止まらない。

 

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022

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ヨコのヒロアカ 22話

次回は1/7の投稿する予定です。


『なんだぁ!?井ノ中、攻撃を喰らいながらも、前に歩き出した!!攻撃しているのは爆轟なのに、下がっていく!』

『まるで効いてない様子だな』

『冗談じゃなく【衝撃吸収】とかの複数個性持ちなんじゃねぇのか?』

『いや、力士には並みの打撃など効かないと言う事だろう』

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

 攻撃を手を止め、荒く呼吸をする爆豪。

 

「もう疲れただか…№1を目指すと言ってたからもっと強いかと思ったべがな」

 

 決勝だから少しは盛り上げようとしたヨコヅナだが、思っていた通り爆豪も自分の相手にならないと判断し、

 

「終わりにするだよ」

 

 張り手を繰り出す為、力強く踏み込もとした、その瞬間、

 

「バカが!」

 

 BOOM!と床を爆破する爆豪。

 

「ぬぉ!?」

 

 いかに足腰の強いヨコヅナであろうと、思った位置に床が無ければ多少は体勢を崩す〔階段を下りきったと思ったのに、もう一段あった時ような感じ〕。

 また、爆破の煙により爆豪の姿が隠れる。 

 

 BOOM!BOOM!ヨコヅナの耳に爆破の音が届いたあとに、

 

「ぐぁっ」

 

 先ほどまでとは段違いに強い打撃の衝撃を顔面に受けるヨコヅナ。

 

「言っただろうが!俺は半分野郎とは違うってよ!」

 

 BOOM!BOOM!とまた爆破の音、今度のはヨコヅナも視認できた。

 爆破の方向はヨコヅナには向いておらず、全く別の方向。

 爆豪はその爆発による反動を使い、遠心力をつけての後ろ回し蹴りをヨコヅナの脇腹に叩き込む。

 

「くっ…」

 

 ヨコヅナはその衝撃に顔を歪める。

 しかしダメージはあるものの、ヨコヅナの動きを止めれるほどでない。 

 

「このっ…」

 

 爆豪を捕まえよう手を伸ばすヨコヅナ。

 それに対して後ろにさがりながら、また床を爆破する爆豪、今度は穴を掘るようにではなく、角度を変えて床が削れるように爆破した。

 爆破した床の破片がヨコヅナに向かって飛ぶ。

 咄嗟に腕で目を庇うヨコヅナ。床の破片の幾つかがヨコヅナの肌を傷つける。

 

「上も着とくべきだったべな」

 

 上半身が裸なことをちょっと悔やむヨコヅナ。

 

「触れなければ個性を無効化出来ね、弱個性なんざいくらでも、やりようあんだよ!」

 

 爆豪が個性【爆破】で出来るのは直接攻撃だけではない。

 飯田同様、個性で格闘技術を向上させることが出来、さらに撹乱・関節攻撃までやってのける。

 これは【爆破】が強個性だからではない。

 ヒーロー科A組の生徒達から「才能マン」「格闘センスの塊」とまで言われる爆豪勝己だからこそできる戦い方なのである。

 

 

「……上からねじ伏せるとか言っておいて、意外とみみっちい戦い方するだな」

 




 小説投稿サイト『カクヨム』にて、

 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 23話

次回は1/15に投稿する予定です。


『おぉ!爆豪が優勢っぽくなってるぞ!?』

『個性を上手く使い、相手の弱点をついているな』

『担任が【個性抹消】とか使えるから、対策を普段から考えてたのか?』

『どうだろうな…だが、あれだけで勝てるほど甘い相手ではないと思うが…』

 

 

 距離を取った爆豪は再度ヨコヅナに向けて大きめの爆破を行う。初手同様、煙による目隠しが目的だ。

 爆豪の狙いが分かったヨコヅナは動かず冷静に、音や煙の動きに集中する。

 先に動かなければ足場を崩されることはない。それに爆破の反動で打撃の威力の上げているのだから、爆破音が爆豪の大まかな位置と攻撃のタイミングを教えてくれる。

 後手にはなるが、足場を崩されてさえなけれ張り手で相打ち、もしくは打撃を喰らってから捕まえ投げる事は可能だと考えるヨコヅナ。

 BOOM!、BOOOM!!と爆破音が聞こえ、その方向の煙の合間から爆豪の姿が微かに見えた。

 ヨコヅナはそれに向けて張り手を繰り出す。

 しかし、

 

「な!?…」

 

 手ごたえがまるでなかった、ヨコヅナが張り手を喰らわしたのは、

 

「ジャージの上着?」

「油断して試合観ねぇから、こんな手にひっかかんだよ!」

 

 爆豪はヨコヅナの考えの一歩先を読んでいた、音で攻撃を悟られると考えた爆豪はジャージの上着を爆破でヨコヅナの方へ飛ばして囮にしたのだ。一回戦で爆豪が戦った麗日お茶子の戦法のパクリだ。

 BOOM!BOOM!BOOM!今まで以上の連続した爆破音はヨコヅナの頭上。

 爆破の反動で前方宙返りしながら、遠心力をつけた、

 

「死ねぇ!!!」

 

 爆豪の強烈な踵落としがヨコヅナの頭部に叩き込まれた。

 

『爆豪のド派手で強烈な踵落としが井ノ中の頭に炸裂!!!さすがの井ノ中も終わったか!?』

『…いや、まだだ』

 

 

「油断?なんのことだべ」

 

 ヨコヅナは空中にある爆豪の体をガッシリと両腕で捕らえる。

 

「あれは余裕と言うだよ」

「なん…だと!?」

 

 

『爆豪捕まった!!踵落としは井ノ中に効いてなかったのかぁ?』

『いや、二回戦の飯田の時と同じだ、ヨコヅナは爆豪の踵落としを額で受け止めたんだ』

 

 

「クソがっ!」

 

 捕まった爆豪はどうにか逃げようとするが、単純な力ではヨコヅナが圧倒している、それに上着を脱いだ為、肌がヨコヅナと接しているので個性が使えない。

 

「喋ってると舌噛むべ」

 

 ヨコヅナは爆豪を高々と持ち上げ、勢いよく頭から、

 

 ドゴンっ!!

 

『頭から床に叩きつけたぁ!!!』

『相撲、というか、プロレスのパワーボムだな』

『あぁ、爆豪だけにな!!』

『そんなギャクを言ったつもりはない』

 

 

 ヨコヅナのパワーボムで、頭からセメントの床に叩きつけられた爆豪。

 

「……」

「爆豪君、戦える?」

 

 直ぐに起き上がらない爆豪に主審のミッドナイトが近づく、

 そんな動かない爆豪に、

 

「立てー!カっちゃん!!」

 

 幼馴染の緑谷から大きな声援。そのおかげなのか…

 

「…うるせぇ、クソデク」

 

 悪態をつきながら、ゆっくり立ち上がる爆豪。

 爆豪が立ち上がったことに会場の観客達もワアァァァと歓声を上げる。 

 

『終わったかと思った爆豪立ち上がる!根性あるぜ!!』

『選手宣誓での「1位になる」は本気の宣言だからな』

 

 

 

「まだやるだが?」

 

 立ち上がったとはいえ、頭を強打した爆豪は重心が安定していない。

 

「あたりまえだ!!」

 

 爆豪はヨコヅナの不愉快な質問に、怒声の返答と共に両手をヨコヅナに向ける、そして目隠しの為の個性【爆…

 

「それはもう無理だべ」

 

 ヨコヅナは爆破が起こるよりも早く爆豪に近づきの腕を掴む。

 爆豪の個性は、大きい爆破を起こすのにタメが必要となる。普段の爆豪であれば、ヨコヅナの動きに反応できただろうが、ダメージで負った状態では無理だ。

 ヨコヅナは掴んだ腕を強引に引き付け一本背負いで爆豪を投げる。

 

「ぐっ…」

「……これ以上怪我したくないならそのまま寝てるだよ」

 

 倒れた爆豪を見降ろしながら、

 

「でも、立ち上がって来るなら容赦しないべ」

 

 二回戦で飯田にしたのと同じ忠告をするヨコヅナ。

 

「…ふざ、けんな!」

 

 ヨコヅナの忠告に怒り心頭で立ち上がる爆豪。

 

「何故、倒れてるうちに攻撃しねぇ?」

「相撲は地に足の裏以外がついた時点で決着になるだよ。倒れた相手への攻撃は駄目押しと言うだ」

「この試合は相撲じゃねぇぞ!!」

「分かってるだよ。でも、命の危険もない状況で、オラは倒れた相手に攻撃する気はないだよ」

「とことん、ムカツク野郎だなぁ……だったら」

 

 爆豪は着ているシャツをBOOM!と爆破しつつ破るように脱ぐ。

 

「相撲でテメェを倒してやるよ」

 

 爆豪は破いて布切れになったシャツを頭に巻きつける。

 

「頭から突撃し合うんだよな、相撲ってのは?」

「それが相撲ってわけじゃないだが……そんな状態で本気で言ってるだが?」

 

 ただでさえ、頭にダメージがあるのに正気とは思えない爆豪の言葉。

 

「てめぇだって、そんな状態だろうがよ」

 

 ヨコヅナにもダメージがある事を、爆豪は見抜いていた。踵落としを額で受け止めたとはいえダメージでは決して少なくない。だから、先の一本背負いも威力が低く爆豪が直ぐ立ち上がれたのだ。

 

「……分かっただ」

 

 ヨコヅナはそう言って腰を落とし、ドスンッ!と大きく四股を踏む。

 そして、腰を落とした状態から手を前につき、手合の構えをとるヨコヅナ。

 

「本当の相撲を教えてやるだよ」

「…へっ、それがお前の本気ってわけか」

 

 手合の構えをとるヨコヅナの圧力は今までの比ではなかった。

 爆豪は少しさがって距離を取り、クラウチングスタートに似た構えを取る。

 

「それを上からねじ伏せるやる」

 

 爆豪は全力で走り、爆破を使いながら前に飛ぶ。

 さらにとBOOM!BOOM!BOOM!連続の爆破で自らを回転させ、

 

ハウザーインパクト(榴弾砲着弾)!!!」

 

 頭からヨコヅナに突っ込む。

 

 

「個性使ってる時点で相撲ではないべ」

 

 自らを榴弾にして突っ込んでくる爆豪に対して、

 ヨコヅナは毎日の稽古で鍛え上げた己が身による、全力のブチかましで迎え撃った。

 

 

 BOOOOOOOOM!!!!!!

 




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 ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、

『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。

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ヨコのヒロアカ 24話

次回は1/22に投稿する予定です。


 

 大爆発が起こりステージが煙で覆われる。

 爆発自体は爆豪の個性によるもの、しかしどれだけの威力の爆発であろうと個性である限り【個性無効】のヨコヅナには通じない。 

 煙が薄れて、観戦している者達が目にした立っているシルエットは一つ。

 シルエットだけとは言えその大きさから、とても爆豪とは思えなかった。

 大激突にて勝利したのはヨコヅナ。と思いかけたが、

 

『なんだ!?』 

 

 実況のビックマウスの言葉は観戦している全員の代弁と言えた。

 薄っすらと見えるシルエットは、人のとしては歪だった。異形型の個性でなければあり得ないシルエット。

 完全に姿が見え、異形なシルエットの答えがわかる。それと何故爆豪が効かないと分かっている大爆破を起こしたのかも、

 

『井ノ中が爆豪を背負っている!?』

『正確には、爆豪が井ノ中の背中にしがみ付いている、だ』

 

 爆豪は自分の突撃の勢いを爆破の反動で止め、ブチかましを回避しつつヨコヅナの背中に上からしがみ付いたのだ。

 当然しがみ付いているだけではない。

 

『首元を見ろ』

『あれは、チョークスリーパー!?何と爆豪!背中にしがみ付きながらチョークスリーパーで井ノ中の首を絞めている!!』

 

 

  

 

「相撲じゃあ首締めは、…喉輪って言うんだったか?」

 

 字面だけで適当に言う爆豪。

 

「…全然、違う、だよ」

 

 途切れ途切れでながら否定するヨコヅナ。

 聞いときながらも爆豪も大して興味はない。興味があるのはヨコヅナに首締めが効いているかどうかだ。

 頑丈なヨコヅナでも首を締める技は効果がある、完璧に極まっていれば喋る事も出来ないだろう。途切れ途切れでも喋れているのは、片手の、それも指三本だけだが首との間に挟めて抵抗出来ているからだ。

 

「…これを、狙ってた、だべな」 

 

 シャツを破いて頭に巻いたのも、「頭から突撃し合う」や「相撲でテメェを倒してやる」という言葉も…

 

「ああ、全てこの状態に持って行く為のブラフだ」

 

 爆豪がブラフを使っていたのは試合開始時からだ、「個性を使わず倒す」と言って殴り続け、息切れの演技で油断を誘っていた。

 ここまでくると間違えて控え室に入って来たところから、ブラフの下準備ではないかとすら思えてくるヨコヅナ。

 

「それが、あんたの目指す、№1ヒーローの、戦い方だべか?」

「…普通科のてめぇには分からねぇか。こんなもんはヒーローの前提条件だ」

 

 

 

『爆豪は教えてなくても分かっているようだな』

『あん?どういう意味だイレイザー?』

『何か会話をして爆豪が頭にシャツを巻いただろ、その後井ノ中が相撲の構えを取ったのを見るに、爆豪が体当たりでの勝負を誘ったんだろうな。にも拘らず個性で回避して背中に組み付いてのチョークスリーパー』

『…そう聞くとあれだな、なんか卑怯だな』

『だがルール違反はしていない。勝つ為に戦術を駆使しているだけだ。そしてヒーローも(ヴィラン)を退治するのに、一見卑怯に思える戦術をとる事がある』

『あぁ、一人の(ヴィラン)を複数のヒーローが奇襲してフルボッコにするとかな』

『それで犠牲者が零になるなら、迷わずそうすべきだ。法に反しない限りではあるが、ヒーローは…』

 

 

 

「ヒーローの前提条件は、何が何でも勝つ事なんだよ!」

 

 爆豪の言い方では乱暴に聞こえるが、間違ってはいない。

 ヨコヅナを(ヴィラン)だと仮定した場合、犠牲者を出さない為、試合では法に代わるルール内でどんな手段を行使しようと勝利に執着すべきなのだ。

 寧ろ、間違っているのはヨコヅナ。

 

「倒れた相手に攻撃しねぇとか言ってるテメェは、ヒーロー志望としてすら失格だ」

 

 爆豪はヨコヅナをヒーロー志望の普通科生徒だと勘違いしているが、

 

「……ヒーロー、志望じゃ、ないべ」

 

 ヨコヅナはヒーローを目指していないから失格なのも当然だ。

 

 ヨコヅナは挟んでいる手とは逆の手で、背にしがみ付いている爆豪の頭を掴む。

 

 

『井ノ中が爆豪の頭を掴んだ!力ずくで引き剥がせるか!?』

『…いや、眼だ。親指が眼にあてられている』

 

 

 ヨコヅナは掴んだ爆豪の頭の眼に親指をあて強く押す。

 

「うっ……」

「眼に指を、突っ込まれたくな…」

 

 ヨコヅナの言葉が終わる前に、

 

「やれよ」

「ぐっ……」

 

 爆豪は首を絞める腕に全力をそそぐ。

 

「言っただろうが何が何でも勝つと、たとえ眼を潰されてもな!」

「……そう、だべか」

 

 ヨコヅナはあっさり爆豪の頭から手を放す。本気で眼に指を突っ込む気はなかった、相撲では眼への攻撃は禁じ手である。それでも脅すような真似をしたのはブラフで仕返しをしたかっただけだ。

 

「終わり、する、だよ」

 

 その言葉を聞いて「奥の手でもあるのか?」と首を絞めながらも警戒する爆豪。

 

「「「「「!?」」」」」

 

 次にヨコヅナがとった行動に観戦している全員が驚く。

 

 

 

「……井ノ中君…場外」

 

 

 




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ヨコのヒロアカ 25話

20時ぐらいにもう一話投稿します。


『井ノ中自分から場外に出たぁ!?いったいどうした?』

『どうしたも何も、ギブアップだろ』

『あんなあっさりとかよ。でも、さすがに眼を潰せねぇか』

『…そうだな』

 

 主審のミッドナイトが手を上げ、

 

「井ノ中君、場外。よって、爆豪君の勝利!!」

 

『今は敗者より、勝者だろ』

『おっとそうだった。以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭一年優勝は――』

 

『ヒーロー科A組 爆豪勝己!!!!』

 

 勝利者宣言の聞いて会場にワアァァァ!!!と割れんばかりの歓声が響き渡る。

 

 

 勝敗が決しヨコヅナの背から離れた爆豪。だがその表情は、試合に勝利し体育祭で優勝したにもかかわらず、悔しさを押し殺しているのが容易に分かる。

 

「来年は小細工なしで、テメェをねじ伏せてやるからな!」

 

 爆豪自身「何が何でも勝つのがヒーロー」と言ってても、こんな勝ち方は望むモノではなかった。

 

「それは俺の台詞だ」

「!?」

 

 その声を聞いた瞬間、試合が終わったにもかかわらず警戒心強く身構える爆豪。

 

 

「憶えておけ。来年は俺がお前をねじ伏せる、同じヒーロー志望としてな」

 

 

 爆豪は別人としか思えなかった、今まで戦っていたの相手とは全くの、

 

「……ケっ。そんな顔出来んなら、普段からそうしてろ」

「それは疲れるだよ」

 

 

 

「これより!!表彰式に移ります」

 

 ヨコヅナは『2』の表彰台に立っていた。

 

「私がメダルを持って「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」

 

 登場で台詞がカブったが、オールマイトがメダルを授与していく。

 

「井ノ中少年、おめでとう」

「…ありがとうございますだ」

 

 首にメダルをかけられお礼をいうヨコヅナ。

 

「優勝こそ逃したが、君の実力は皆が思い知ることとなった。大半はヒーロー科編入に賛成してくれるだろう、私も約束を守りやすい……編入が絶対とは言ってあげられないがね」

「2位だべからな、仕方ないだよ」

「そうだね。もし君が倒れた相手に躊躇なく攻撃を出来たなら、大半と言わず、全員が賛成していただろう。井ノ中少年は幼い頃から相撲の稽古を積んできたから強い、しかしだからこそ相撲がヒーローになる為の足枷となっている」

「その辺は決勝で、優勝したのに不満そうな顔をしている隣の奴が教えてくれただよ」

 

 ヨコヅナがそう言うと一段高い隣の台からチッと舌打ちが聞こえた。

 

「はっはっは、そうだったか、失敬失敬」

「確認として№1ヒーローに聞きたいだ。ヒーローは何よりも実績だべか?」

「……そうだ。法に反しないとことが前提だがね。綺麗ごとを口にするだけで実績のないヒーローはヒーローではないよ」

 

 オールマイトの返答を聞いて、ヨコヅナはいつものニコニコ笑顔とは違う笑みを浮かべる。

 

「分かりましただ」

 

 ヨコヅナをオールマイトは抱きしめるようにしながら、

 

「頑張りたまえ」

「はいだ」

 

 

 こうして雄英体育祭は終了し、ヨコヅナはヒーロー志望へのスタートラインにつく。

 

 




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ヨコのヒロアカ 最終話

 雄英体育祭が終わり、休みを挟んだ月曜日。

 

 井ノ中ヨコヅナは学食で昼食を食べていた。

 

「このドレッシング美味いだな」

 

 今日もテーブルには三人前の料理が並んでいる。 

 

「サラダは彩よく盛り付けるとより美味しく食べれるだな」

 

 大きいサラダボールに入った色とりどりの野菜を食べながら、ブツブツ言っているヨコヅナに、

 

「相席して良い?」

「拳藤、良いだよ」

 

 一言断って、テーブルの向かいに座ったのは拳藤一佳。

 

「体育祭2位になった反響はどう?茨も色々な人に声かけられたって言ってたけど」

「凄いだよ。どこに行ってもお相撲さんお相撲さんと言われるだ」

 

 雄英体育祭はテレビ中継もされているので、活躍すれば一躍有名人。

 特にヨコヅナは普通科でありながら準優勝の快挙。それに相撲という格闘スタイルは印象が強く且つ親しみやすいのか、老若男女問わず声を掛けられた。

 

「他にも「現代に生きる唯一の力士」とか言って取材が来たり、相撲公演をしているショー団体から出演依頼が来たりしただ」

「あはは。優勝したA組の爆豪よりも注目されてるんじゃない。それで編入の話はどうなの?」

「正式にヒーロー科編入の意思確認はされたべ。でも、すぐヒーロー科って事は無いと言われただ。仮に優勝しててもそうらしいだ」

 

 ヒーロー科は普通科にはない授業がある。編入するのは少なくともそれらを現授業内容まで補習で学んでからだ。

 

「そっか。私もブラド先生にちょっと聞いてみたんだけど、格闘の実力や無効化の個性は高く評価されてるけど、決勝での「油断」と「諦めの速さ」がマイナス評価だって」

 

 ヨコヅナの編入に反対する意見もあり、「倒れた爆豪に攻撃していれば勝てた可能性は高い。油断からの敗北だ」とか、「勝機はまだあったはずなのに降参した、あれはヒーロー志望としても不味いだろ」とかだ

 

「でも「体育祭で相手の眼を潰して勝つより良い」とブラド先生は編入賛成みたい」

「あの先生、眼ぐらい平気で潰しそうな怖い顔してるだが…」

「ブラド先生は生徒思いの凄く良い先生だよ。それにオールマイト先生も賛成で強く推してくれてるらしいよ」

「そうだべか」

 

 オールマイトは約束を守ってくれているようだ。

 

「……あの時どうして場外に出たの?」

 

 ヨコヅナが自ら場外に出て負けたのは、首を絞められ声も出せなかったから場外に出てギブアップを表したと思っている者が多い。だが、一佳は違うと確信している。

 

「ヨコヅナなら力ずくでも爆豪を引き外すことは出来たでしょ」

 

 ヨコヅナは増強型個性と間違われるほど、素の力が常人離れしている。後ろにあった爆豪の眼に指を添えれるぐらいには余裕があったなら、引き外すことは可能だったと考える一佳。

 

「……あの時点ではもう負けてただよ」

「どういうこと?」

「手をついただ」

「手?…床に手をついたってこと?」

「そうだべ」

 

 これがヨコヅナが自ら場外に出た本当の理由。

 煙りに覆われ観客はおろか爆豪にも見えてはいなかったが、ブチかましをかわされ背に乗っかられたヨコヅナは、一瞬床に手をついてしまったのだ。

 

「あんたね…」

 

 一佳はヨコヅナが相撲に拘りを持っているのは知ってる、それでも…

 

「あんな状況で相撲も何もないでしょ。床だって爆破で凸凹だったし」

「それでも、オラは勝てると思ってただ」

 

 個性を使われている時点で相撲ではないし、爆破で足元が崩れてたのも事実だ。だが、【爆破】を承知でヨコヅナは爆豪の誘いに乗った。その上で勝てると思っていた。

 ヨコヅナは「相撲でテメェを倒してやるよ」という爆豪の言葉を思い出す。

 正面からぶつかると見せて、衝突をかわし上から力を加えて相手を地につける。相撲で【叩き込み】と言われる列記とした決まり手の一つ。

 

「だからあの試合は、オラの負けだべ」

「はぁ~…ただでさえ、倒れた爆豪に攻撃していれば勝てたのに…」

「…でも、あれが最後だべ」

「最後?」

「今後は相撲のルールに拘らず、ヒーローを目指すって意味だべ」

「……私もその方が良いと思うけど、随分あっさりね。どういう心境の変化?」

 

 相撲に拘らないというのもそうだが、ヨコヅナが「ヒーロー免許をとる」ではなく「ヒーローを目指す」と言ったことに一佳は少し驚いていた。

 

「オラは勘違いしてただ。オラはヒーローが、崇高な志があり誰からも正義と思われる存在、なんだと思ってただよ」

 

 ヨコヅナはヒーローに興味ないからこそ、ヒーローにあらぬ幻想を抱いていた。

 だからヨコヅナは、ヒーロー免許を欲しいだけの自分が他のヒーロー志望の生徒と競い合い勝つ事に心苦しさを感じていた。

 自分はヒーローに向いてないと思っていた。

 しかし、今は違う。

 

「でも違っただ、法に反せず実績を作れればヒーローなのだと分かっただ」

 

 体育祭で真実を知ったヨコヅナ。

 

「それなら気兼ねする必要など一切ない」

「!?……ヨコ、ヅナ?」

 

 一佳は会話をしていたのにも関わらず、目の前に居るのがヨコヅナだと思えなかった。

 

「ちゃんこ鍋屋の店を持つのは遅れそうだべが、しばらくは本気でヒーローを目指す事にするだよ」

 

 そう言うヨコヅナはいつものヨコヅナだった。

 

「…そ、そう(気のせいかな…)」

 

 ヨコヅナの変化を気にしないことにする一佳。 

 

「私は誰からも正義と思われるヒーローになりたいけど、奇麗ごとだけじゃ駄目なのは確かだしね……ところで」

 

 ヨコヅナが食べている料理に視線を向ける一佳。

 

「ヒーローを本気で目指すからそのメニュー?」

 

 ヨコヅナの前に並んでいるのは、山盛りのサラダの他、蒸し鶏、ゆで卵、煮魚、納豆、無糖ヨーグルト、などのカロリー低めの料理が大半だった。

 

「ダイエットするの?量は多いけど」

 

 3人前あるのは変わらない。

 

「無駄に重い分だけ痩せるだ」

「…まぁ、ヒーローは機動力大事だもんね……痩せてるヨコヅナっていまいち想像できないけど」

 

 一佳が出会った時からヨコヅナは力士体型だったので痩せてる姿が想像できない。

 

「それじゃ、ちゃんこ鍋も食べないの?」

「ちゃんこ鍋は食べても太らないだよ」

「え?太る為に力士はちゃんこ鍋を食べるんじゃないの?」

「それはちゃんこ鍋が大量に食べれる料理だからだべ」

 

 一度にさまざまな栄養を大量に摂取できる効率の良い料理だから力士はちゃんこ鍋を食べるが、適量ならちゃんこ鍋が太る料理ということはない。

 

「太るかは食材によるだな」

 

 今ヨコヅナが食べているメニューのようにカロリーの低く調整して作れば、

 

「美味しくて、たくさん食べても太らない『ダイエットちゃんこ鍋』みたいなのも作れると思うだよ」

「そんなの作れるの!?それは食べてみたいな」

「それじゃ拳道、久さしぶりにちゃんこ食べにこないだか?」

「いいの!…いや~、実はずっと食べに行きたかったんだけど、高校に入ってからヨコヅナ誘ってくれないし…自分から言うのもアレかなっと思って…」

「オラは、拳藤はヒーロー科で忙しいと思って、誘わなかったんだべが」

「そうなんだ。ヒーロー科でも、ご飯食べに行くぐらい出来るよ」

「そうなんだべか……それじゃ中学の時みたいに、ちょくちょく誘うだよ」

「うん!」

 

 ヨコヅナはのんびり平穏に、ちゃんこ鍋を作って美味しいと言って貰える。そんな暮らしが目標だ。

 

 

 でも、

 

 

 それだけなら雄英に入学する必要はない。

 

「そのかわり勉強教えてくれないだか?編入したらヒーロー情報学とかで法律なんかも勉強すると聞いただよ」

「あはは、良いよ。中学の時と同じだね」

「拳藤が教えてくれるなら何も問題ないだな」

「何言ってんの、私が教えてもヨコヅナ自身が頑張って勉強しないと意味無いで、しょ」

 

 ヨコヅナの頭にチョップする拳藤、このやり取りも中学の時から変わらない。

 ヒーローを目指しながらでも、こういう日々を送れるなら、

 

「もちろん頑張るだよ」

 

 ヨコヅナが雄英に入学した本当の理由は……

 




今話で一応本当に最終話です。

ヒロアカ5期のアニメを見たら続きを書くかもしれませんが、未定です。

今までご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。


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