京太郎「え、俺が公式Vtuberに!?」 (スパッツP)
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京太郎「え、俺に依頼ですか!?」

そんなわけで息抜き兼リハビリ兼衝動で書きました。詳しい設定なんかありません。
元々、某スレに投稿しようかどうか迷っている内に忙しくなってしまい諦めた話を基にしています。なので、無理やり小説に引き延ばしたので1話ごとの話が短くなるかと思います。


※2022年1月17日修正箇所あり


「と言う訳で須賀君、頑張ってきてね♡」

 

「えぇ……」

 

 ここは長野県にある清澄高校の麻雀部部室。つい先日行われた高校生雀士による全国大会において、見事初出場初優勝を果たした彼女たちとその活躍を裏から支え応援し続けた彼は今、部長である竹井久からあまりにも突拍子もない話を聞かされた所であった。

 

「あの部長、本当に京ちゃんが指名されたんですか?」

 

「そうだじぇ!この犬のことをどこで知ったんだじぇ?」

 

「高麻連の方々の言い分もわからなくもないですが、わざわざ須賀君を指名するというのは少し不自然な気もしますね」

 

「みんなひどくない?いやぶっちゃけ俺も『なんで俺?』とは思ってるけどさ……」

 

 1年生ズの京太郎・咲・優希・和はそもそもこの話が本当なのか、また部長のドッキリや悪巧みなのではないかと疑い、久へと質問する。それに答えたのは久ではなくまこだった。

 

「おんしらの言いたいことは分かる。わしも最初は久の悪ふざけじゃと思っとたからのう」

 

「え?私の信頼なさすぎじゃない?」

 

「普段の行いのせいじゃろ。……だけど、今回の話はどうやらマジの事みたいでな。ほら、イジケとらんでとっととアノ手紙をみんなにも見せい」

 

 はーい。とややイジケ中の久は1年生4人へ1通の手紙を手渡す。4人はみんなでその手紙の内容を読んでいく。その内容を簡単に纏めると――

 

●全国大会初出場初優勝おめでとう

●優勝後のインタビューで話題に出した男子部員に依頼を出したい。内容は高麻連の公式Vtuberとしての活動。

●コンセプトが『高校から初めて麻雀に触れる素人雀士』なので、ピッタリだと思う。

●活動の一環としてプロ雀士や有名雀士から麻雀を教わったり、今年の全国で活躍した高校へのインタビューがある。

●配信機材はこちらで用意する。より詳しい話は実際に会って説明したい。

●この話は機密事項のため同部員以外に口外しないで欲しい

 

と言う物だった。

 

「……確かにマジっぽいじぇ」

 

「でも部長がきっかけなのか……」

 

「そもそもどうして、えと、ぶいちゅーばー?として活動するの?」

 

「それはね昨今の若者やネット上で人気だからよ!」

 

「つまり流行に乗って、今までとは違う層の人間を取り込もうという算段じゃな」

 

「と言うか優勝後インタビューで何を話したんですか?」

 

「えっ?それは……秘密よ」

 

 和からの質問をはぐらかし手紙を受け取ると久は京太郎の前に立ち、真剣な表情で問いかける。

 

「須賀君、まだこれは決定ではなく提案の段階なの。だから、須賀君がどうしても嫌なら私は断るつもりよ」

 

「部長……」

 

「でもこれはチャンスだと思ったわ。夏の間は裏方に徹してくれた須賀君の指導に、プロやその他大勢の強豪たちの手を公式に借りることが出来る。そんなの普通なら無理よ」

 

 その言葉にはいつになく本気さを感じ、まじめに話を聞く一同。久は京太郎の目をジッと見つめてさらに話を続ける。

 

「全国優勝のために須賀君の指導を後回しにした分を、いままでの感謝も含めて返したい。そう思ったから私はこの話を前向きに受け取ったの。さっきも言ったけど、まだ提案の段階。決定権は須賀君にあるわ。――どうする?」

 

 久だけでなく、まこも和も優希も咲も京太郎の意志を尊重し言葉を待つ。そして――

 

「……部長、染谷先輩、優希、和、そして咲。俺、引き受けたい。なにをすればいいのかはよく分かんないけど、強くなりたい」

 

「京ちゃん……」「「須賀君……」」「「京太郎……」」

 

 こうして高麻連からの依頼を受ける事となった京太郎。そのあとすぐに受諾の旨を返信し、数日後に担当者との打ち合わせが東京の『Ritzスタジオ』で行われることとなった。

 

 

―Ritzスタジオ 会議室―

 

 都内某所にある配信スタジオ。その会議室にて4人の男女が机を囲んでいる。

 

「本日は遠い所ありがとうございます。私、高麻連広報部Vtuber企画部長の宇井在人と申します。これからよろしくお願いしますね」

 

「はい、こちらこそ。須賀京太郎です。よろしくお願いします!」

 

 宇井と名乗った銀髪で黒縁の眼鏡を掛けた男性が京太郎と握手を交わす。続いて宇井の右手側に座っていた、亜麻色の腰まで伸びたロングヘア―をした温和そうな雰囲気の若い女性が自己紹介を始める。

 

「柊麻衣です。宇井と同じ高麻連広報部に所属してます。各活動のサポートを担当しますので、よろしくお願いしますね」

 

「柊さんですね。お世話になります!」

 

 宇井の時よりも心なしかキリっとした表情で握手を交わす京太郎。最後に宇井の左手側に座っていた、黒髪に無精ひげを生やし若干やつれ気味の男性が挨拶をする。

 

「あー、雑賀現。システム部長だ、まよろしく」

 

「よろしくお願いします、雑賀さん」

 

 こうして3人と挨拶を交わした京太郎たちは打ちあわせを始めていく。

 

「まず、須賀さんは麻雀の知識や経験はどの程度ありますか?」

 

「役は一通り。全国大会ルールも頭に入れてます。経験は、4月に入部して初めて麻雀打ったので一般雀士よりないと思います」

 

「ふむふむ。竹井さんから伺ったのと相違なさそうですね。次に、Vtuberについてはどの程度知ってますか?」

 

「そうですね……。正直、あまり見たことはないですね。有名どころの名前や容姿は目にしたことはありますが、配信や動画を見たことはないですね」

 

「あら、そうなんですか?学生さんなら一度は見たことがある人が多いと思っていたのですが」

 

 柊が意外そうに尋ねる。Vtuberは4~5年前に登場して以来徐々に人気を集めていき、今では下手な芸能人以上の話題性・人気度を誇っている。特に10代から30代の年齢層のファンが多く、他業界では大手のV企業とコラボして大規模な宣伝や新商品を販売するなど、新たな広告塔として注目されている分野なのである。

 

「すみません。俺、中学の時はハンドボール部一筋だったんで。高校上がってからも麻雀部の活動が忙しくて見る暇が無く……」

 

「なるほど。いや、全然構わないですよ。むしろ知らない方がより自然体で活動しやすいかもですから。ただ……」

 

「――中学時代の話は無しだな。と言うより、”アバター”に合わせた設定を一から作るべきだろう」

 

「雑賀さん……?」

 

 雑賀の発言に困惑する京太郎。てっきり自分の経歴や趣味などを(身バレしない程度に)話題の種にするものだと思っていたからだ。だが、設定を一から作るとなると役者のように演じるのだろうか?なんのために?などと京太郎が疑問に思っていると

 

「そうですね。これを見てもらった方が話が分かりやすいでしょう」

 

 そういって宇井が机の上に広げ始めた資料には、コンセプトや2Dイラスト・3Dモデルなど今後の活動に必要な物が色々と書かれていた。が、そのイラスト・3Dモデルをみて京太郎は思考停止に陥ってしまう。なぜならそこに描かれていたのは、上下黒のセーラー服を着た美少女の姿だった。




Vtuberには去年ごろからハマってはいるのですが、そこまで多くの配信を見れてるわけではないので知識に偏りがあるかもしれません。感想などでこういう話が見てみたい、このキャラとの絡みが欲しい、等あれば参考にさせていただきます。

(そこまで重要ではない)オリキャラ解説

・『宇井在人(ういあると)』:30代前半の男性。Vtuber大好きVR大好きマン。月10万以上はスパチャしてる。好きなプロ雀士は戒能良子。
・『柊麻衣(ひいらぎまい)』:20代前半の女性。声フェチ。低音の女性の声が好みなためそれ系のVtuberを追ってる。好きなプロ雀士は藤田靖子。
・『雑賀現(さいがげん)』:30中頃の男性。プログラミングやモデリングを得意としている。そっちの研究のためにVtuberを追ってる。好きなプロ雀士は三尋木咏。


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京太郎「え、俺が美少女にですか!?」

「これ、何かの間違いとか……?」

 

 未だ混乱中の京太郎がなんとか絞り出した言葉を、3人は否定するように首を横に振る。その姿を見て、京太郎もこれはもうどうすることも出来ない『確定事項』なのだと悟り、「そうですか」と一言呟く。

 

「……まず初めに、このことは竹井さんも知りません。と言うより、当初の予定から大きく変更させられてしまったのです」

 

「最初はな、普通の初心者男子高校生として、お前さんには素面で活動してもらう予定だったんだが『若い男性雀士界隈を盛り上げるためには女性アバターの方が絶対に良い!』って意見が出てきてな……」

 

 宇井と雑賀の言葉を聞きながら落ち着きを取り戻してきた京太郎は、なんとなくだが事情を把握しだした。新たな分野・新たなファン層獲得のために、少しでも受け入れられやすい形にしたかったのだろう。実際、不意に目にした時、男の子と女の子なら女の子の方に興味を向けるだろうな、と京太郎も思ったからだ。

 

「もちろん、演者候補として声を掛けてるのが男子高校生だという事はみな知っていました。ですが、バ美肉で成功してる先達や、上手くいけば男性と女性のファンを一挙に獲得できるかも、という打算的な誘惑に流された結果、このようなことになってしまったのです」

 

「すみません須賀さん。私の部長としての力不足です」

 

「宇井さん……」

 

 申し訳なさそうに謝る宇井の姿をみて京太郎は、「宇井さんは何も悪くないじゃないですか!」と声を掛けようとした。――が

 

「それに『正直、現役男子高校生がバ美肉公式雀士デビューしたと聞いたら、絶対話題になるし人気もでるだろう』と思ってしまったんです……!」

 

「宇井さん……」

 

 京太郎から宇井への評価が内心でかなり下がった瞬間である。チラリと他の2人を見てみると、視線に気付いた柊は気まずそうに顔を背け雑賀は気にせず話を続ける。

 

「そんなわけで、急遽新たなイラストと2D・3Dモデルの製作が決まってな。そのせいで俺はここんとこ徹夜続きなんだ。早いとこ説明を終わらせて寝させてくれ……」

 

「ちょっと雑賀さん!」

 

 大きなあくびをしながらぶっちゃける雑賀と、それをたしなめる柊。宇井も含めてこの3人とこれからうまくやって行けるのか、不安になる京太郎であった。

 

………

……

 

 仕切り直し。改めてバーチャル美少女雀士としての活動をするにあたり、いくつかの注意点や公式設定の説明を受ける京太郎。そこで3人は京太郎の驚きのポテンシャルを目の当たりにする。

 

「す、須賀君……すごいよ!このままで行けるよ!」

 

「えぇえぇ!」

 

「驚いた。これなら、細かい調整はいらないかもな。逆に追加項目が……」(ブツブツ

 

「まさかこんなに受けがいいとは思わなかったですよ」

 

 今京太郎が行ったのは単純に女声で話をする、というものだったのだがそのクォリティがボイスチェンジャーを必要としないレベルであったため、3人は興奮を抑えられないでいた。

 

「地声はそこまで高い訳ではないのに、よくそんなに自然な女声出せますね」

 

「俺も最初は無理だと思ってたんですけどね……人生、一体何が役に立つか分かりませんね」

 

 そういって乾いた笑いをしてどこか遠くを見つめる京太郎。宇井と柊はその顔を見て詳しく聞くのをやめた。

 

「――よし。大体の目安はついた。次は実際に中に入って色々と動きのテストとかやっていくか」

 

 雑賀の一言に京太郎と柊は気持ちを切り替え、宇井はよりテンションを上げる。

 

「んんっ!それでは須賀さん、撮影スタジオのほうに移動しましょうか」

 

「は、はいっ!」

 

 いよいよか、と京太郎は緊張の面持ちで3人の後をついて行く。やると言った、強くなりたいといった。清澄麻雀部のみんなのために、こうして色々と準備・調整してくれる目の前の3人のために、しっかりと役割を果たさなければ。そう気合を入れて、いよいよ須賀京太郎は美少女となる。




次回、ついにバ美肉します。えぇ、はい。ふわっとしか考えてなかったせいで10日も開けてしまったのにこの短さ。何分冬は仕事が忙しすぎて、書いてるどころか設定を考える暇さえないのです。申し訳ありません。年末年始等も休みは無いので、気長にお待ちいただければと思います。


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