病んでるコネクト (100000)
しおりを挟む

おはようございます主さま。

物語を始める前にコッコロちゃんがどうしてママと呼ばれるのかを自分なりに解釈してみようと思います。(怪文書作成)
まず根本的な話をするのですが、皆さんは母親とママの違いはなんだと思われますか?同じ意味、言葉と感じるのでしたらそれはまだ日本の固有文化にしっかり馴染めていないと思いますのでプリコネをプレイすることをオススメします。
母親とは血縁、あるいは戸籍上における養育者である女性を、また社会学ではときどき精神的、肉体的に母性を内包した人物を指します。この場合、私が定義するママというのは後者の方に該当しそうですが、残念ながら社会学的に当てはまる母性と我々がコッコロママに感じている母性はズレているので後者でもありません。
では我々が何をもってコッコロママをママと見ているのか、なぜ母とは言わず、ママなのかを説明していきます。
コッコロママの最大のママポイント(以下ママポ)は主様─この場合は我々赤ちゃんを指します─を全肯定してくれるところにあると思います。
さすがに他人に迷惑がかかる部分には否定的な面を見せますが、基本こちらのやることなすことを批判するようなことはしません。
これは、我々が知る健常な母親─つまりネグレクト等の育児問題を持たない─には当てはまらない行為です。
本来、母親というのは私たち赤ちゃんに対して一定の人格を育てるために多少厳しくあたるものです。たまに度を過ぎたものも存在しますが、それらも含めた育児行為というのは将来、我々が人間性を強く持つのに大いに役立ちます。
しかし、コッコロママのそれは()()()()()()()()()()()という母親がやることから大きく逸脱しています。
これはコッコロママの根幹にある『おはようからおやすみまでをお世話する』に原因があり、我々がママポを感じる部分でもあります。
全肯定+甘やかすというコンボがコッコロママの優しい声、仕草、容姿にトッピングされ、いい歳した大人が皆揃いも揃って幼児退行するというこの世の地獄みたいなことを引き起こしているのです。
加えて本来ママという言葉は、母親を幼い子どもが呼ぶ時に使われる呼称です。
我々赤ちゃんがコッコロをママと呼ぶのは一重に母性を感じるからだけでなく、我々が潜在的にママなる存在を求めているからではないでしょうか。
例えそれが11歳という犯罪的年齢だったとしても我々赤ちゃんは疲れ、荒んでいるゆえにその母性に縋ることを余儀なくされているのです。
だから幼児退行するのです。幼児と呼ぶにはあまりにも歪ですがママになってもらうのですから赤ちゃんになるのは当然です。
つまり、そもそもコッコロママと母親では行っていることが根本的に違っており、また、我々赤ちゃん自身が本能的にママを求めているのでコッコロを母親ではなくママと認識するということです。これはある種当然のことであったと言えるでしょう。


それでは本編開始です。




「おはようございます。朝ですよ、(あるじ)さま」

 

俺のことを(あるじ)と呼ぶ声がする。幼くも穏やかさを感じさせるその声は俺の意識を一時的には浮上させるものの再び睡魔の波へ引き込もうとする。

 

「あ、あと五分」

 

思わずまだ寝たい時の決まり文句を言ってしまった。彼女に限って俺をたたき起こすことはしないだろうが、少し身構えてしまう。

 

「ふふ、主さまはお寝坊さんですね。では朝ごはんができましたらまたお呼びしますね」

 

そう言って、少女は俺の傍から離れようとする。

 

よし、これでご飯ができるまでおねんねできるぞ。起きたらご飯ができてるとかホント最高かよ。

 

こうして俺は他人に頼りきった自堕落の生活を今日も満喫するのであっ───

 

「ちがうだろぉ!?」

 

「コロッ…!」

 

無理やり意識を覚醒させ、布団からガバッと起き上がる。危なかった…あと少し覚醒するのが遅かったら今頃俺は堕落しきった人間性を獲得していただろう。

 

「主さま…?どうかされましたか?」

 

「い、いや別にどうもしてないぞ。さすがにコッコロに任せっきりじゃダメだからな。俺も手伝うよ」

 

俺にコッコロと呼ばれた少女は俺の言葉に驚いたようだが、すぐに慈愛に満ちた表情を浮かべ、こちらに歩み寄ってきた。

 

「主さま」

 

「ん?」

 

「主さまがそのようなことをする必要はございません。主さまのお世話はこのコッコロが全てやりますので」

 

始まった……

 

まるで俺の全てを管理するかのような話し方。最初は冗談かと思ったがここで暮らし続けてそれがマジであることは充分に理解出来た。甘やかしてくれるのはいいのだが、流石に管理はされたくない。

 

「いやいや、手伝いくらいさせてくれよ」

 

「家事でしたらペコリーヌ様も手伝ってくださいます。主様はただそこにいてくれるだけでいいのです。他のことは全てわたくしがやります」

 

「ならせめて──」

 

「主さま」

 

ゾクッと背筋が凍るのを感じる。目の前の少女は変わらず慈愛の笑みを浮かべている。しかし放つオーラは明らかにおかしい。ゴゴゴと擬音が聞こえてくるかのようだ。これほどの威圧感を目の前の幼い少女が放っているのだから驚きだ。

 

「主さまはもう何もしなくていいのです。主さまの全て、全てをこのコッコロが管理します。これで主さまがもう傷つくことも記憶を失うこともありません。ここには美食殿の皆様もいます。主さまがしたいこと、欲しいもの、全てを用意してみせます」

 

「だからわたくしに、わたくし達に……全てを委ねてください」

 

有無を言わせぬほどの大きな圧力、首を縦に降らなければどうなるのか。おおよそこちらの望むような展開にはならないだろう。ならば俺ができるのは……

 

「は、歯を磨いてこようかな〜」

 

撤退一択だ。

 

「……左様でございますか。ではわたくしの方でご用意させていただきます」

 

「いやそれくらいは自分でさせて!?」

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

気づいたら転生していた、憑依していた。前世ではよく遊んだスマホゲーム『プリンセスコネクト!Re:Dive』の世界に生まれ落ち、スマホでもアニメでも主人公となっていた騎士くんに姿も声も変わってしまっていた。

 

原作のように意味記憶レベルまで消し飛ぶようなことにはなってなかったが、名前などの自分が何者なのかはきれいさっぱり忘れてしまった。一応ユウキという名前はあるらしいがそれが自分の名前ではないというのは俺がいちばんよく分かっていた。

 

当時はなにがなんだかよく分からず、気が動転していた時期もあったがゲーム同様やたら献身的なヒロイン達によって俺は落ち着きを取り戻しつつあった。

 

そして気づけば俺の中にはそんな彼女たちへ恩返しをしたいと想いが芽生えており、もう原作がどんなのだったかもよく覚えていないにも関わらず彼女たちが幸せになれるように頑張りまくった。

 

ある時は自分がいらない人間だと言う女の子を説得するために城に特攻かましたり

 

自分の存在が消されてしまった女の子を救うためにまた城に特攻かましたり

 

結局そいつが諸悪の根源だったので再三特攻した。

 

他にも色んなことをした、数えきれないほど冒険をした。

 

正直、死にかけた回数が2桁余裕で迎えていたし、なんか時々記憶が消滅したりしていたが赤ちゃんになるようなことはなく、自分が知り合った女の子たちを幸せにするためだと思えばどんな苦行も笑って越えられた。

 

そして騒々しかった日々もようやく治まり、平穏な日々が訪れたのだと一人思っていた俺は多分ここら辺で何かを見落としていたんだと思う。

 

あの三人や他の女の子が──何故こんなことになってしまったのかいまだによく分かっていないが、いや怪しいところはいくつかあったのだが──自分に対して強い感情を抱くようになってしまった。

 

きっとそれは好意的なものなのだろうと解釈しつつも強い想いをここまでダイレクトに多方面からぶつけられたことがなく、どうすればよいのか分からずズルズルと引きずっていた。

 

それが俺自身を追い込んでいくことにこの時はまだ気づいてなかった。

 

 

 

 

 

 

とまぁ色々とシリアスにしてみたが、こうやって少々苛烈ながらもハーレムみたいに扱われるのは正直悪くないのでもう少し、できればもっとこの状態を味わってみたいとは思っていたりする。

 

────────────────────

 

 

 

「おはよー」

 

「おいっす〜☆」

 

「おはようございます、主さま」

 

俺が顔を洗い、歯を磨いてリビングに来る頃にはとっくに配膳が済んでおり、いただきますを待つ状態になっていた。

 

「む、キャルはまだ寝てるのか?」

 

「起こしてきますね〜☆」

 

とややウキウキしながらペコリーヌはキャルの部屋へと向かう。

 

その数分後、叫び声が聞こえてくるのだが、最早そこまでがこのギルド、美食殿の日常である。

 

 

 

 

 

「もうちょっとマトモな起こし方できないの!?」

 

「さて、キャルも来たし飯にするか」

 

「無視するなー!」

 

しっぽも耳も逆立てながら猛抗議するキャルかわいい。たしかに変な起こし方をするペコリーヌもペコリーヌだが、朝はキャルの叫び声を聞いてようやく始まったと思える。つまりペコリーヌナイス。さて、キャ虐も堪能したしいい加減朝飯にするか。

 

「いただきます!」

 

『いただきます!』

 

「うがああああ!」

 

キャル、うるさいぞ。

 

─────────────────────

 

 

 

「ふぅー、食った食った」

 

「あんたと言い、ペコリーヌと言い、どうしてそんなに食べれるのよ…」

 

「やばいですね☆」

 

「あんたもよ!」

 

「しょうがないだろ、食べられるだけ食べてるだけなんだから」

 

「食べる子は育ちます。キャル様も主さまもたくさん食べて大きく育ってくださいね」

 

「いやコッコロ、俺もう成長期過ぎてるから」

 

コッコロとペコリーヌは一緒に食器を片付け洗い物をしに行った。手伝いたかったが、朝の二の舞になる気がしたのでキャルと一緒に机で一息つくことにする。

 

「あんた、今日は何すんの?」

 

「ん〜」

 

唐突にキャルに予定を聞かれる。何気ない一言だが、返答によっては地雷そのものになりかねないので言葉を考える。たしかこの前は自称お姉ちゃん(ガチ勢)のお手伝いをすると言って一悶着あったんだな。

 

「特に予定はないな」

 

「そ、そう…」

 

しかしそこで閃く。ギルドのクエストなら問題ないのでは?女性関係だったら確かに何か言われるだろうが、女性関係ではなく人助けに行くのは止める理由がないのでは?

 

「いや、クエストに──

 

「だめ」

 

あっ⋯⋯(察し)

 

「あんた、そう言って毎回無理して帰ってくるじゃない。あんたが傷つく姿なんて私はもう見たくないのよ。あんたが死ぬなんてことになったら私も死ぬから。そしてペコリーヌもコッコロもきっと後を追うわよ。いい?別に私は他の女の子の所に行くのは…本当は嫌だけど許すわ。でもクエストはダメ。もうあんたが傷つく姿なんて誰も見たくないの、誰も望んでないの。…それでも行くなら……」

 

いつの間に取り出したのだろうか。キャルは愛用の杖を取り出したかと思うと……

 

「私はここで死ぬ」

 

それを自分自身につきつけて脅してきた。

 

「……普通はあんたを殺してでも止めるとかじゃない?」

 

「何言ってんのよ、それじゃ本末転倒じゃない」

 

たしかに。

 

とにかくキャルの地雷スイッチを踏んでしまったようだ。くっそ、まだ何が地雷か把握しきれてなかったか…。ともかくここを静かにおさめる案を…!

 

「まあまあ、キャルちゃん。ここは抑えてください」

 

ぺ、ペコリーヌ!

 

「そんなに心配なら私たちで行きましょう!久々のピクニックです!」

 

ペコリーヌが後ろからキャルに抱きつく。キャルの頭がペコリーヌの豊かな胸に呑み込まれていく。うらやま…けしから……いいな〜。

 

「くっつくなー!」

 

ウガーッとキャルが吠え、ペコリーヌがそこにまた抱きつく。目の前でこれまで何度も見てきた光景に、胸がほっこりする。

 

「あ、それはそれとして」

 

「ん?」

 

「私もあなたがクエストに行くのは反対です。絶対に…絶対に……」

 

「……」

 

いちばん怖いのはもしかするとペコリーヌかもしれない




脳死で怪文書作るの楽しい…楽しい…
そうだ、君もどう?(お目目ぐるぐる)



(冷静に考えるとプリコネの世界ってヤバい人しかいない気が……)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クスクス…あなた様、お待ちしてましたわ

前回はコッコロママがなぜママなのかで議論(怪文書作成)したので今回はコッコロママは性的かどうかを話していきたいと思います。
まずはじめに答えを述べるのであれば人それぞれという解が最も的を射ていると思います。
これはコッコロママが性的なのかというより我々が何を性的に見ているのかを構造主義的に解説していけば自ずと分かってくると思います。
我々赤ちゃん(ここでは幼児退行している大人を指す)がコッコロママに母性を感じるのは前話でも話した通り周知の事実です。
しかしここでコッコロママを性的に見るかで一つ疑問があります。
果たして赤ちゃんは母性に対して欲情するのでしょうか?
母性というものはいわば穢れのないオーラのようなもの。そんなある意味神聖視できるものに対して果たして我々は欲情できるのでしょうか?
そこで構造主義の考え方に移ります。構造主義とは簡単に言えば、その対象に含まれる要素をそれぞれで抽出、考察していくことを言います。
例えば、ペコリーヌを例に挙げてみましょう。
プリコネにおいて欠かすことのない彼女を構造主義的に解体していくと『元気』『おっぱい』『かわいい』『おっぱい』『前向き』『暗い過去持ち』『おっぱい』などなどいくつかの要素に分けられます。
同じようにコッコロママに含まれる要素を抽出していくと『母性』『ロリ(ガチ)』『ちっぱい』『奉仕体質』『脇』『太もも』と様々な要素が見られます。
しかしここで一つ問題があります。それはこの要素分けには個人の主観がかなり強い度合いで含まれるという点です。
既にここまでの議論が何も意味をなさなくなってしまったがしかしこの問題こそが人それぞれという答えの核心をついています。
私はコッコロママの要素に『ちっぱい』や『脇』などを挙げました。しかしそれは誰にとっても同じなのでしょうか?否、違います。
これは私がいつもプリコネのホーム画面でコッコロママのその部分ばかりを凝視、タップしまくっているからこそ抽出できた要素なのです。私が常日頃からコッコロママの脇をクンクンしてみたいと思っているから出現した要素なのです。しかし、それは主観であり、全員が全員そうとは思ってないはずです。(ちっぱいは皆の宝)
我々赤ちゃんは性癖という個性の汚点のようなものをそれぞれ抱えています。我々が性的だと思うトリガーは前述したようにこの性癖なのです。
つまり、我々赤ちゃんはコッコロママに欲情はしているもののそれは母性に対してではなくその個人個人が持つ性癖が原因であり、もしコッコロママに自分の性癖に該当するものがないのであればその人はコッコロママに欲情することは無いということです。
したがって我々赤ちゃんは業が深すぎる。さすがは日本、HENTAIの国。

それでは本編開始です。



今日はペコリーヌは王城に、キャルも昼寝…というか二度寝しているのでここ美食殿のギルドハウスには実質俺とコッコロしかいない。…いないのだが

 

「主様、ここから先へは行かせる訳にはいきません」

 

「通してくれコッコロ!」

 

コッコロが扉の前に立ち、俺の行く手を阻む。しかし小さな体をめいいっぱい広げ、通せんぼする姿は可愛いの一言しかなく全然脅威には感じない。

 

そもそもなぜコッコロが俺の移動を阻止するのか、理由は察しがつくが俺が行かなくてはいけない理由はそこではなく他にあった。

 

「トイレ!トイレくらい一人でできるから!」

 

「なりません。不肖ながらこのコッコロが主様のおトイレを手伝わさせていただきます」

 

「なんでやねん!」

 

管理したいとは言っていたが、ここまですることないじゃないか。風呂で背中流すとかは百歩譲ってOKしたが流石に排泄までお世話になるわけにはいかない。

 

「くそっ!こうなったら!」

 

「主様!」

 

トイレとは逆方向、つまり玄関の方へ駆け出す。

 

「トイレ行ってきます!」

 

こうして俺は美食殿を飛び出し、全力ダッシュでランドソル城下町へ駆けて行った…トイレを借りに。

 

────────────────────

 

 

「とりあえず知り合いを探さないと!」

 

近くの民家でトイレを借りるのも良かったができれば知り合いに借りたい所ではある。ぶっちゃけ知らない人にトイレ貸してくださいって言うのはちょっと恥ずかしい。

 

とりあえずランドソルの市街地付近まで来た。辺りを見回して快くトイレを貸してくれそうな人を探す。

 

不意にゾワッと身の毛が立つのを感じる。これが殺気を感じた時に起こる反応ではないことは分かった。それは恐怖、いつの日かに味わったであろうトラウマが覚えてなくても体が勝手に思い出し、俺に警告を発する。

 

「クスクス……見つけま──」

 

「エリコぉ!」

 

「ひゃあ!?」

 

すぐさまふりかえり、エリコが逃げないようにその手を取る。知り合いいたぜ!しかも俺のお願いなら割となんでも聞いてくれそうな子!

 

「エリコ、お前にしか頼めないことがある!」

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

なんだかエリコの様子がおかしいが、それどころじゃないので本題に入る。

 

「トイレ貸してください!」

 

「…はい?」

 

────────────────────

 

 

 

 

「いや〜、エリコが近くにいて助かったよ」

 

「クスクス…あなた様のお願いですもの。これくらいお易い御用ですわ。…少々想定と違いましたが」

 

()()()()その場に居合わせたエリコに頼み込み、ギルド『トワイライトキャラバン』のギルドハウス?診療所?のトイレを借りさせてもらった。

 

「お礼とは言ってなんだけど何か仕事があるなら手伝おうか?」

 

「まぁ、お優しいですわね…そういうことでしたら一つお願いしてもよろしいですか?」

 

あ、やべぇ選択肢ミスった。

 

彼女の目が怪しく光る。その目はまるで肉食獣のように獰猛でいつもみたいに軽はずみで言葉を発してしまったことを今になって後悔した。

 

「な、何をするご予定で?」

 

「最近、料理の特訓をしていまして…せっかくですのであなた様に食べてもらおうかと…クスクス」

 

絶対なにか混ぜるだろ、前に看病してもらった時なんかコッコロが気付かなかったら俺の体は媚薬漬けになってたらしいしな。

 

「あー、実は俺もうお腹いっぱ──」

 

やんわりと断わり、去ろうとすると突然、俺の足元になにかが突き刺さった。ギギギと顔を動かし、それを確認するとどこかで見たことがあるような斧が突き刺さっていた。

 

「あなた様?」

 

「と思ってたけどやっぱりご馳走になろうかなぁ!?」

 

うんうん、トイレを貸してくれただけとはいえやっぱり恩人のお願いを断るのは良くないよね!さーて、どんな料理がくるんだろうな〜!(やけくそ)

 

「クスクス…たくさん…えぇ、たくさん作って差し上げますので楽しみに待っててください」

 

「おぉたくさん作ってくれるのか!やったぁ!」(涙目)

 

「……クスクス」

 

そしてエリコに案内されるままにキッチンの方へ連れていかれる。……どうしよう(絶望)

 

──────────────────────

 

 

 

「〜♪」

 

楽しそうに料理するエリコの後ろ姿を見ながら、彼女と出会った時のことを思い出す。記憶自体虫が食ったように穴だらけなのだが、たしか最初は行き倒れていた彼女におにぎりかなにかをあげたのが始まりだったか?服装がエロすぎて、紐みたいなブラジャーにしか目がいってなかったためその部分だけはよく覚えている。ていうか何をどう思ったらあんな服?着ようってなるんだろうな。

 

「そういえば他のギルメンは元気してる?」

 

「二人っきりの時に他の女の話をするんですか?」

 

「…ヒェ」

 

やっべまた地雷踏み抜いちゃった。後ろ姿なのになんであんなに威圧感あるんだよ。

 

「…他の皆さんはいつも通り元気ですよ」

 

「そ、そうか。なら良かったよ」

 

「皆さん、最近あなた様に会えてなくて寂しそうにしてましたよ」

 

「え、もうそんなに会ってなかったっけ?」

 

一週間前にはトワイライトキャラバンの皆とご飯した記憶があるのだが。

 

「はい、()()()()会えずじまいでしたね。私も含めて」

 

ですから、と続けてエリコは料理の手を止めてこちらへと歩いてくる。そして顔をこれでもかと近づけてくる。その大きく見開かれた瞳に見つめられると蛇に睨まれたカエルの気持ちになるが、不思議と逃げようとは思わなかった。

 

「久しぶりですから私も自分を抑えられ…はい?」

 

気づけば俺はエリコの頬をその両手で挟み込むように触れていた。

 

「あ、あの…あなた様?」

 

「やっぱりというか、エリコって凄い美人だよな」

 

いつも抱いていた印象が実際しっかり見据えてみるとそれとは逆の印象を受けるのは良くあることだ。エリコに対していつも俺は怖い印象を持っていたが、こうして目の前で見つめられると恐怖というよりもまるで芸術品でも見ているかのようにみとれてしまっていた。

 

「え、あ、えと…」

 

ボンッと音が聞こえるようにエリコはその顔を真っ赤にした。あ、かわいい。

 

「す、すまん思わず本音が漏れてしまった。忘れてくれ」

 

「い、いえ…」

 

微妙な空気が流れるが、危機的状況は去ったようだ。先程までエリコから溢れ出ていた威圧感を今は全く感じない。

 

「あ、シグルド!」

 

「ん?この声は…」

 

いきなり俺をシグルドと呼ぶ厨二病丸出しな声、心当たりがありすぎる。後ろを振り向くと、疾風の冥姫(ヘカーテ)ことアンナがこれまた厨二臭いポーズを決めていた。

 

「よっ、アンナ久しぶり」

 

「うむ、久しぶりだな!シグルド!」

 

俺としては全く久しぶりではないのだがエリコ曰く一週間は久しぶりに入るらしい。アンナはその独特な左目を輝かせながら俺の腕に抱きついてくる。

 

「お、おい」

 

「どうしたのだシグルド?これしきのこと我ら熾炎戦鬼煉獄血盟暗黒団(ジ・オーダー・オブ・ゲヘナ・イモータルズ)にとっては日常茶飯事であろう?」

 

いやその日常甘すぎだろ、砂糖吐くわ。てかその謎グループまだ続いてたんだな、団員俺とお前の二人しかいないからそもそもグループですらないけど。

 

今腕に引っ付かれると色々とマズイので振り払おうとするが、アンナがあまりにも愛くるしくくっついてくるものだから振りほどく気が起きない。

 

ふと室内の気温が数度程下がったような寒気に襲われる。

 

「クスクス…アンナさん?今ユウキさんは私と愛を育んでいるのです。邪魔しないでくださいますか?」

 

「え」

 

あ、マズイ事が起きる。エリコさんのハイライトが元に戻ってらっしゃる。

 

「残念だったな!既にこの男は我と生涯を共に歩む誓約を交わしている!つまり……その………こ、恋人です!」

 

「え」

 

あれ、俺そんなことしたっけ?吹き飛んでいった記憶の中の俺ってそんなことしてたの?何やってんの俺?このままだと俺地雷原でタップダンスしなくちゃいけなくなるんだけど。

 

「クスクス…おかしなことを言いますね。ユウキさんの運命の人は私です。そしてそれはこの世界に生を受けた時から決まっていたことです。つまり…私が先です」

 

「それを言うならシグルドは我と前世で繋がっている!例えアカシックレコードが失われていようとも我がそれを知っている!」

 

あー、エリコは初志貫徹だよね。そこは出会った時から変わらないよね。生まれた時からだったら多分俺じゃないユウキ君だと思うけど。あとアンナは共感性羞恥って知ってる?

 

「どうやらエリコとは一度シグルドをかけて血と血を交わす必要があるようだな」

 

「クスクス…私も同じことを思ってましたわ」

 

二人はそれぞれの獲物を構え、一触即発の空気になる。

 

あ、ヤバい。これに巻き込まれたら無事じゃ済まないぞ。

 

この状況をどうやって切り抜けるかを考え始めた時、救いの手が差し伸べられる。

 

「まったく、アンタらこんなとこで暴れて怪我人が出たらどうするんだい?」

 

「姉御!痛っ!」

 

「姉御と呼ぶんじゃない」

 

この曲者揃いのギルド、トワイライトキャラバンをまとめるギルドマスター、ルカが仲裁に入った。思わず姉御と呼んでしまい、ゲンコツを貰ってしまったが、ピンチになった時に颯爽と登場して、助けに入る姿はどう見ても姉御だ。

 

「すまない、二人はいつもは仲良しなんだがお前さんが絡むとどうもな」

 

「いや助かった。おかげで命拾いした」

 

「ほら、二人とも。喧嘩するなら他所でやんな」

 

「ぐぬぬ…」

 

「クスクス…」

 

いまだに視線をバチバチ鳴らしている二人だが取り敢えず抑えてくれたようだ。

 

よし…今のうちにお(いとま)しよう。

 

「おや?どこに行くんだい?」

 

「…………はい?」

 

こっそりその場を後にしようとすると後ろからグイッと肩を引っ張られる。チラッと後ろを見るとルカがやけに強い力で俺の肩に手を置いていた。

 

「お前さんの居場所はここだよ」

 

「…ルカさん?俺を助けてくれたのでは?」

 

「…?助けたじゃないか」

 

「……」

 

どうして俺がそもそもここの人間じゃないということに疑問を持ってくれないのだろうか。別にハイライトはオフってない。まるでそれが当たり前だと言うようにルカは振る舞う。

 

「そうだぞシグルド!お前はずっと我の側にいないといけないんだ!…ずっとずっと」

 

「クスクス…えぇあなた様は私の伴侶ですから。共に屋根の下にいるのは当たり前ではありませんか」

 

あ、君らは(ハイライト)オフるのね。

 

結局その日はトワイライトキャラバンに泊まり(拘束され)、俺が美食殿へ帰れたのは翌日になった。




なんかヤンデレ成分薄い…てか無くね?

言えない…ナナカとミツキがいないのは単純に好感度もレベルも上げず放置してたからなんて言えない…。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お姉ちゃんと弟くんは血よりも濃い絆で結ばれてるんだよ!

それでは今回はアンケートであった『キャ虐はなぜ抜けるのか』を考察していきたいと思います。
キャ虐は抜ける、これは皆さんの共通の認識ではあると思います。しかし、何でキャ虐が抜けるのかを考えたことはありますか?ペコ虐は抜けない、キャ虐はおk、コッコロたんは天使…アニメやゲームでもこの認識が共有されてるのは何故か。これは一重に彼女のキャラクターにあります。
プリコネの実質主人公的存在である美食殿の3人は言わずと知れた闇をそれぞれ抱えています。主様至高主義、過去重すぎ、出生から何か何まで笑えない、サブストーリーで見られる彼女らの和気あいあいとした掛け合いからは考えられないほど鬱な展開もメインではしばしば見られます。キャルも例外なくこれに当てはまります。
しかし実際はどうでしょう。キャルはいわゆるいじられキャラとして地位が確立され、重い話がありながらも赤ちゃん騎士達からは愛される存在となっています。
闇を抱えながらもキャ虐がここまで愛されるのは我々赤ちゃんが持つ歪んだ価値観()()()()()()()()()にもあると思われます。
かわいそうは可愛いとはアニメや漫画のキャラクターが酷い目に遭う姿を見てニチャアとする日本の道徳教育に喧嘩を売るような性癖を指します。
ではこのかわいそうは可愛いのどんなところに原因があるのか、それを説明するにはこの性癖における()()()()()の定義に着目する必要があります。
かわいそう、漢字では可哀想と書きますが、我々がこの漢字から受ける印象と実際のかわいそうには大きな乖離(かいり)があります。
どういうことかというと、キャ虐における"かわいそう"は笑える、つまりギャグ時空において行われる漫才のようなものだからです。
鬱になりがちな可哀想はいくら我々赤ちゃんでも忌避する傾向にあります。中にはそれでご飯3杯いくサイコ赤ちゃんもいますが、広く一般的な赤ちゃんは前者に当てはまります。
果たしてギャグ傾向にあるものに重いものを感じるでしょうか?答えはノーです。
我々赤ちゃんがキャ虐が笑えるから何も感じないのです。ペコ虐のようにガチのやつは心を痛めるのです。
つまり、キャルって踏んだり蹴ったりで結構同情するよね。でもしょうがないね、いじめると可愛いんだもの。

それでは本編をどうぞ。今回は短めでしたね、もっと怪文書を練らなければ…!


ふと思うことがある、家族とはなんだろうと。俺が所属している美食殿の3人はまず間違いなく家族と言える。どうしてか、何か証明があるのかと言われると何かある訳では無いのだが、でも家族、あるいはそれ以上の固い絆で結ばれているからという理由はある。

 

戸籍は関係なく、ココロの繋がり、友だちを超えた関係なら、例え血が繋がってなくとも家族と言っていいのではないか。

 

ユウキ()くん?どうしたの、難しい顔して。悩みがあるならお姉ちゃんが全部解決してあげるよ!」

 

「お兄ちゃん!シズルお姉ちゃんだけでなく妹である私も忘れないでくださいね!お兄ちゃんのためなら例え井の中、(かわず)の中、どこでも着いて行きますよ!」

 

この血の繋がっていない自称姉妹を俺は家族と思っていいのだろうか、いいんだろうけど認めたら何かヤバい一線を越えてしまいそうで怖い。あとリノちゃんそれ『たとえ火の中、水の中』って言いたいのか?

 

──────────────────────

 

 

 

今朝はいつも通り配達業に勤しんでいた。美食殿の面々に討伐系のクエストを全面禁止されてからは専らこうしてランドソルの中で済むクエストをこなしていたりする。

 

とりわけ俺はこの配達業が結構好きだったりする。一番の理由は知り合いとよく会うことだ。担当がランドソルの一部分とはいえ顔見知りに会わないということはない。むしろ会う、めちゃくちゃ会う。ストーキングされてる説もあるかもしれないが彼女たちに限ってそんなことはない…のだろうか。

 

『先輩……』

 

『クスクス……』

 

『ちぇるーん☆』

 

『騎士くん騎士くん騎士くん……』

 

…………気のせいだと思いたい。ともかく知り合いと会って挨拶するというのが日課で結構楽しかったりする。こっちが笑顔で挨拶すると向こうも笑顔で挨拶を返してくれるから尚更だ。

 

「さて、最後の配達先は……マジか」

 

最後の配達先、行き先は味普通、店員可愛いけど怪しい、と巷では噂になっているクレープ屋だった。まぁどこのことなのか分かるんだけど。

 

「……仕事だ。行くか」

 

覚悟を決めて足を運ぶ。そこに行くということは必ずあの二人がいる。優しくも狂気に満ちたあの二人が……!

 

 

 

 

 

 

ユウキ()くん!元気にしてた?よく来たね〜偉いぞ〜♪こんなに重い荷物を持ってわざわざお姉ちゃんに会いに来てくれるなんてう〜ん、朝5時からユウキ()くんが来るのを待った甲斐があったよ〜。大丈夫?疲れてない?お姉ちゃんがマッサージしてあげようか?ユウキ()くんのためにお姉ちゃん、マッサージたくさん勉強したんだ。え、いらない?じゃあじゃあ、他になにかして欲しいことはない?ユウキ()くんのためならお姉ちゃん、なんでもしてあげるよ?あ、エッチなお願いでも全然いいよ?だって私とユウキ()くんは姉弟の枠すら超えた運命の赤い糸で結ばれてるんだから何も問題ないんだよ?どうしたのユウキ()くん?遠慮なんて全然しなくていいからね?」

 

「あ、お兄ちゃん!どうしたんですか、アルバイトですか?流石お兄ちゃん、働き者ですね!私もシズルお姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんが来るのを待っていました!それにしてもお兄ちゃんはいつも働いていますよね?もし困ったことがあるなら妹である私になんでも言ってくださいね?お兄ちゃんのためならどんなに難しい仕事も数の子ふんさい!あっという間ですよー!あ、護衛なんてどうです?お兄ちゃんの周りには色々といらないものが多いですからね!私達とお兄ちゃんの一家団欒を邪魔するヤツらは消すに限りますからね!お兄ちゃん、もしそんなヤツらに出会ったらすぐに言ってくださいね!私とシズルお姉ちゃんがすぐに消しに行ってあげますからね!」

 

「…………」

 

クレープ屋に着いたと思ったらまるで来ることを見越してたかのように二人の美女に両サイドをガチっと固められてしまった。

 

片方は俺の姉を、もう片方が妹を名乗るのはもはやおなじみの光景となった。出会った最初の頃は頭に疑問符しか浮かばなかったが、俺の記憶自体もかなり消し飛んでしまったせいか、この二人が姉妹なのかと聞かれるとイエスともノーとも言えない。

 

「おぉ〜、少年。朝からご苦労さま。はいこれ今日の分の賃金」

 

二人に挟まれるなか、店主ラビリスタが声をかけてくる。こちらも赤毛の美女だ。

 

「あ、ありがとうございまーす」

 

「そうだ、少年。ついでなんだけどここの店番もしてくれないか?シズルもリノも少年がいるなら精が出るからね、もちろんアタシもね」

 

「ですよね〜」

 

一番警戒していたことが起こってしまった。いやこうなることは何となく分かってはいたのだが。ここのクレープ屋に材料などをいつも配達するのだが、毎回こうして店番を頼まれる。別に断る理由もなく、彼女たちには日頃からお世話になってるから無償で手伝っても全然問題ない。

 

問題があるとするならこの後なのだが………

 

──────────────────────

 

 

 

「いらっしゃいませー!クレープ美味しいよ!」

 

「お兄ちゃんが作るクレープはランドソルで一番ですよー!」

 

「違うよリノちゃん。世界で一番…だよ?」

 

「そうでした!お兄ちゃんのクレープは世界一ぃ!」

 

「ここ一応アタシの店なんだけどな〜」

 

クレープの店番に立つにあたって俺がやることは一つ。それはラビリスタに代わってクレープを作ることだ。というのもこの店の店主であるラビリスタが作るクレープ、味も見た目も普通なのだ。作る人は美人ではあったが、それだけであんまり繁盛はしてなかった。しかし、俺がクレープを作ると結構好評でそれからは店番兼料理人をしている。

 

シズルとリノが客の呼び込みをして俺がクレープを作る。ラビリスタは………うん、現場監督をしている。しかし、俺も別に特別な作り方はしてないはずなのにどうしてこんなに売上に差が出るんだろ?

 

──私の弟がね作ってくれたクレープがあるんだけど……食べるよね?

 

──お兄ちゃんが作ってくれたクレープありますけどどうですか!……食べますよね?

 

『は、はいぃ!』

 

シズルとリノが熱心に呼び込みをしている。凄いな今のところ声をかけた人みんなこっちに来てるぞ。やっぱり俺のクレープが美味しいんじゃなくて彼女たちが頑張ってくれるからなんだな。

 

「アタシの時もあれぐらいやって欲しいんだけどね〜。まぁ少年だからこそなんだろうけどね」

 

「どんまい」

 

隣で椅子に腰かけながら最早サボっていることを隠さなくなったラビリスタが一人愚痴る。なるほど、俺のためにやってくれてたのか。なら何かお礼をしたいところだな。

 

「気にしなくていいよユウキ()くん。あ、でもせっかくだから今度一緒にお出かけしない?」

 

「あ!お姉ちゃんズルいです!卑怯です!抜け駆け禁止!私も連れて行ってくださいー!」

 

シズルがナチュラルに思考を読み、マッハでこっちに接近してきた。ちょくちょくこういうことはあったが何でできるのかと聞くとお姉ちゃんパワーらしい。なんだそれ、ユニなら知ってるかな?

 

「それならこの後でもいいぞ?午後は暇だし」

 

「本当!?よーし、お姉ちゃん張り切っちゃうぞ〜☆」

 

「やったー!お兄ちゃんとデートだー!」

 

まさに疾風の如く駆け出していった姉妹二人は、あっという間にお客を集めて戻ってきた。凄いなこりゃ、これなら昼飯前には終わりそうだ。

 

うん?なんかさっきも見たお客さんが混じってるような…さすがに気のせいかな?なにかに怯えてるようだけどなにかあったのだろうか。

 

 

 

その後、二人の健闘もあって予想通り昼前にはもう材料は残りわずかとなっていた。

 

「…こりゃあもっと材料仕入れておくんだったな〜」

 

「…姉妹って凄いな」

 

俺とラビリスタも圧巻の一言である。クレープももう今作ってる分で最後となった。さて、最後のお客さんは誰かな。

 

「おいっす〜!」

 

そこに現れたのはキレイなティアラを頭に乗せて、豊かなお胸を揺らしながら満面の笑みを浮かべるペコリーヌだった。

 

「お、ペコリーヌじゃん。どう?クレープ食べてく?」

 

「はい!もとからそのつもりで来ました!」

 

どうやらペコリーヌは俺がクレープ屋で働いていることを聞いてきたようだ。しかし冷静に考えると俺の行動っていつも周りに筒抜けだよな。知り合いの子大体俺の行動把握してるし。

 

「じゃあクレープいくついる?残り少ないけど」

 

「全部ください!」

 

「そう来ると思った」

 

さすが大食い。残りは数える程しかなかったが、それでも食べれるだけ食べたいらしい。袋詰めにしてペコリーヌに渡……そうとしたのだが。

 

「あーん」

 

袋を渡そうとした時、ペコリーヌは口を開けて待機していた。ペコリーヌが何を求めてるのか、すぐにわかったがさすがに公衆の面前でそれは恥ずかしすぎないか?てか王女じゃん、大丈夫か?

 

「ペコリーヌさん?」

 

「……あーん」

 

ペコリーヌをそれを自覚しているのか、徐々に顔が赤くなっていく。しかしどうあってもそこから動かないらしい。

 

「…あーん」

 

しょうがないので恥ずかしいのを堪えてクレープを口の方へ持っていく。恥ずかしいがそれが彼女のしたいことなら俺も付き合おう。

 

ペコリーヌは待ってましたと笑みで目を細めながらクレープを───

 

「いっただきまーす☆」

 

食べようとした瞬間、横からシズルが割り込んできてクレープを頬張った。

 

「う〜ん!美味しいな〜、さすがユウキ()くんが作ってくれたクレープ!愛情たっぷりでお姉ちゃん幸せだよ〜」

 

………ああああああああぁぁぁ!!!ペコリーヌの顔が能面のような無表情にぃ!?何も感情を映さない顔でシズルを見てるよ!怖っ!?

 

「…何をしてるんですか?」

 

「え?何って私はただ、ユウキ()くんが愛情込めて作ってくれたクレープを食べただけだよ?」

 

「……それは私のものだったんですが?」

 

「あ、ごめんね。ユウキ()くんが作ったクレープだからつい♪」

 

そう言ってまるで見せつけるかのように俺の腕に抱きついてくるシズル。そしてもはや隠す気もないのか濃密な殺気をぶつけてくるペコリーヌ。

 

「ふふ、あ、ほっぺにクリーム付いてますよ?」

 

笑顔(目は笑っていない)でペコリーヌがこっちに近づいてくる。お、おい?さすがに殴るのは

 

「いただきます☆」

 

なんでペロッと俺の頬を舌で舐めたの?あ、クリーム付いてたんですね。まぁクレープ作ってたし付いちゃうか…。

 

「ふふっ♪」

 

「………」

 

今度はシズルの方が無の表情へと変わる。こっちも同様に刺すような殺気を放つ。

 

「…やっべ〜」

 

バチバチと火花を散らす二人。その中間には摩擦のように殺気のぶつかり合いが生じている。

 

「ちょちょ、リノ!止めてくれ!お姉ちゃんなんだろ!?」

 

「あーん」

 

リノに助けを促すが、当の本人はペコリーヌと同じように口を開けて、雛鳥のように待機していた。……なにやってんの?

 

「さて、今日はもうこれくらいでお店閉めとくかね」

 

そう言って、既に移動を開始し始めているラビリスタ。ちょっ、置いてくなよ!

 

「前々から思ってたんだよね。この子は私達の家族なのに何でそっちにいるんだろうってね」

 

「その方は私達の大切な人です。絶対に渡しません」

 

「…ふーん、じゃあどっちがユウキ()くんに相応しいか決めないとね」

 

「そうですね。ではいきましょうか」

 

そう言って二人はランドソルの郊外の方へ歩いていく。

 

「え、ちょ」

 

ユウキ()くん、待っててね。これヤったらお姉ちゃんと一緒にデート行こうね!」

 

「待っててくださいね。帰ってきたらあなたのクレープをお腹いっぱい食べさせてください!」

 

俺には満面の笑みを向ける彼女たちもお互い向かい合うとすぐに無表情に戻り、郊外にある草原の方へと足を向けた。

 

 

 

数分後、爆発音がランドソルの郊外から聞こえてきたのだが今日はクリス辺りが軍事演習でもしているのだろうか。……うん、これどう収拾つけよう?

 

「お兄ちゃん!あーん!あーーーーん!」

 

「………」

 

結局手元に余ってしまったクレープをリノの口へ運ぶ。美味しそうに咀嚼する彼女を見ながらどうやってあのバトルを止めるか思考を巡らすのだった。




正直、リノちゃんは妹として100点だと思ってる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

端的に言うとぼかあね、君のことが──

ユニちゃんの「諸説あり」めちゃくちゃ好き

さて、今回は『キョウカママは合法か違法か』について論理を展開していきたいと思います。
まず初めに、未成年、それも小学生を()()()()()()として扱うことが犯罪だという意見は間違いであるという結論を先に述べさせてもらいます。なぜそうなのか、それはそもそも法律におけるママの定義は母親であり、我々が求めるママとはまた別の定義であることから法には触れていません。(倫理的なものには言及しない)つまり法律が位置づけられる我々赤ちゃんに課せられるであろう罪は実はそもそも見当違いということです。
では合法かと言われるとまだそれだけでは早計過ぎます。次に挙げられる問題点は、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということです。
一般的な例は未だ見られていませんが、例えば目の前の小学生に大人がママ〜と言って抱きつきます。はい、犯罪です。何がダメって何もかもがダメです、これがいいならこの世は終わりです。そもそもこれは強制わいせつ罪にあたり、実刑判決待ったナシです。
『小学生をママ呼ばわりすること』で触れる可能性のある罪は『強制わいせつ罪』『児童売春罪』、法律でなら『児童売春・ポルノ禁止法』『民法(セクハラなら)』と色々あります。その行為が公序良俗に反していれば色んな法が適用されます。
では、『キョウカママをママと()()こと』は公序良俗に反しているでしょうか?
公序良俗自体、作者全然法律に詳しくないので完全に言い切ることはしませんが、別にママと呼ぶこと自体は一般社会の倫理的にも公な秩序でも問題ありません。なぜならママという存在は母親とは別のものとして既に世間に広く認知されているからです。それになにより我々がキョウカママを面と向かってママと呼んでるのはユニちゃんくらいなので実刑をくらうとしたら彼女と言えます。
つまり、ユニ博士のようにママ〜って行くと犯罪になりますが、我々赤ちゃんが遠くから、キョウカママの知らないところでママと呼ぶのはOKということです。
法にふれなければ取り敢えず何してもいいですが、リアルに手を出すような事は伏せてください。仮にキョウカママが目の前に現れても、バブった時点でアウトになる可能性がかなり高いので気をつけましょう。
結局、犯罪するもしないも我々赤ちゃん次第なので皆さん、おぎゃるのは程々でお願いします。
騎士くんならまだセーフですが、おぎゃーじゃなくてデュフフが鳴き声な我々赤ちゃんがバブり始めたらこの世の地獄みたいになってしまうので我慢しましょう。

(ガバガバ過ぎて草生えます)


「ふぅ…、最近は寒くなってきたな」

 

少しずつ寒くなってきた今日この頃、何故か朝、俺の枕元に一通の手紙が置いてあった。美食殿のギルドポストではなく俺の枕元にあったということは俺宛てということなのだろう。……ん?そういえば俺は届いた手紙を見たことないな。コッコロ辺りが毎日確認してくれてるならいいけど…。今度聞いてみるか。

 

「えーと、差出人はユニ先輩か。なになに、手伝ってほしいことがある…か。場所は書いてないけど、まぁどうせあそこだろうな」

 

差出人はとある事情で一時期通っていた聖テレサ女学院という学校の三年生であるユニ先輩からだった。内容は手伝って欲しいことがあるとなんとも不透明だが、まぁあの人に限って何かしでかすということは……ありえるな。

 

しかし日頃から勉強を教えてもらったり、知恵を借りたりとお世話になってるのは事実。その恩返しの意味も込めて手伝いに行こう。

 

「主さま、お財布は持ちましたか?道は分かりますか?念の為お小遣いは多めにいれておきましたので、もし何かあったら……あの、やっぱり私も」

 

「いや大丈夫だから!あとお小遣いいらないから!」

 

──────────────────────

 

「やあやあ、よく来たね。座って座って、同じ学び舎の者同士、そして先輩としてぼくは君を歓迎するよ」

 

「えーと、おじゃまします?」

 

あれ?おかしいな。俺は確かに手伝って欲しいことがあるという手紙を預かってここに来たはずなんだが、なんか歓迎されてね?

 

「あの、ユニ先輩」

 

「む、いかに君がぼくを尊敬していて先輩呼びをする事に頼もしいまでの使命感を抱いていたとしても相手が求めてないのに敬称なんてもので立場を縛る必要も無いだろう。普通に、親しみを込めてユニちゃんと呼んでくれたまえ。あ、別に他の呼び方でもいい」

 

「あ〜、じゃあユニ」

 

なんだろう、ユニちゃんは自分で言って恥ずかしくなるから呼び捨てでいいかな。

 

「え、呼び捨て…むふふ、こらこら親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのかね。ぼく自身、君とはかなり進展した仲だとは思ってたがまさかここまでとは思ってなかったぞ、もほほ」

 

呼び捨てにした瞬間、とてもご機嫌になるユニ先輩、改めユニ。ご機嫌なのはいいことだが、俺をここに呼んだ理由を忘れてないか?

 

「ユニ、今日はどうしたんだ?」

 

「呼び捨て…えへへ。…は!?すまない、少々上の空だった。引き籠もりにこういった甘酸っぱい青春はとても居心地が良いのだ、是非もない」

 

なんだこの可愛い生き物。手に持った本で自分の顔を隠しながらやや不釣り合いに高い椅子で足をパタパタさせてるユニだがこれでも俺より先輩…なんだよな?

 

「えーと、そろそろ本題に…」

 

「おぉ、すまない。今日来てもらったのは他でもない、まずはこの発明品を見てもらいたい」

 

そう言うとユニは自分が座っていた椅子から降り、その椅子を指差す。

 

「発明品に座ってたのか……」

 

「耐久テストさ。もっともぼくの場合、軽すぎてテストにならないがね。なに、何事も形からさ。まぁ、構造的に大の大人が乗っても壊れないようには設計してある。安心したまえ」

 

「お、おう。それで?俺はこれでなにすればいいんだ?座ればいいのか?」

 

「うむ、その通りだ。察しが早くて助かる。今回はこの『魔術的マッサージチェア:ユニっとチェア二号機』を試していただきたい」

 

魔術的マッサージチェア?マッサージチェアがどんなのかは分かるがそれが魔術的…。なんだろう嫌な予感がする。

 

「ふむ、その様子を見るにこの発明品の効果が気になって仕方がないようだね」

 

いや、確かに効果は気になるけど、それ以上に安全性が気になるんですが。

 

「まぁ細かいことを説明しようにも魔法学治癒系統、身体学神経系統を最低限習得してないと話してもわからんだろう。なら実際に体験してもらった方が早い、座りたまえ」

 

そう言われ、ユニの誘導にしたがって椅子に、ユニっとチェア二号機に座らされる。すると懐からリモコンのようなものを取り出すユニ。ポチッとボタンを押すとガシャンと拘束具が飛び出し、俺の手足を椅子に縛り付ける。

 

「すまない、魔術を使っているから座標ズレが起きないように念の為拘束させてもらった」

 

「……えーと、これ一応ちゃんと試験運転したんですよね?」

 

「残念ながらこのユニ博士、基本的にここの象牙の塔で日々研究に勤しんでいるためそういった機会がない。端的に言うと引き籠もりに疲労はたまらない」

 

「それ自分がしたくない口実だよね!?」

 

「諸説あり〜。さて、しばらく意識は無くなるだろうが。なに、目覚める頃には体の調子は絶好調となっているだろう」

 

ユニがポチッとボタンを押すと同時に俺の意識が徐々に闇の中へと落ちていく。え、これ大丈──

 

──────────────────────

 

「…。寝た、かな?」

 

スヤスヤと眠る彼の頬を指でつついてみる。その頬は男という性の割には存外柔らかいものだった。うむ、これは寝ているな。

 

「魔術式も問題なく稼働している。オッケー、ロゼッタ。彼のこの姿を転写魔法で記録しておいてくれ」

 

『了解!転写魔法展開!』

 

ぼくの声に反応した飛行型パーツを搭載した自律思考型魔法結晶のロゼッタは素早く宙へ飛び、彼の前で滞空する。

 

『パシャパシャ!パシャパシャ!』

 

「おぉ、そこまで命令してないが転写を回路が擦り切れるギリギリまでやるとはロゼッタも張り切っているな」

 

「よし、もういいぞ。ロゼッタ、もう充分だ。あ、こら止まらんか。これ以上は、いや確かに一枚でも多い方がぼくとしても嬉しいが今はそんなことをしてる場合じゃない」

 

そうだ、確かに転写魔法で彼の貴重な寝顔を記録するのも大切だが、そのために彼を呼んだのではない。これではわざわざロゼッタを飛行できるように改造し、()()()()()の監視をかいくぐり、無防備に鍵のかかっていない彼の部屋に手紙を仕込んだ意味が無い。

 

「…さて、状態はどうかな?」

 

目を閉じ、無防備に寝顔を晒す彼に顔を近づける。いつもは凛々しさと頼もしさ、そして()()を感じさせるその顔も目を閉じ、睡眠状態にある今は年相応、自分と変わらないように感じる。

 

「ふふ、君がどれだけの無理を通してきたのか。普段の姿と寝てる時のギャップで手に取るように分かってしまうよ。……本当に、その正義の味方のような思想でその実、破綻した行動論理には脱帽する他ない」

 

何故ここまで自分の命を省みない()()()をするのか。君はぼく達を幸せにするためだと言った。でもぼくは、否、ぼく達は()()()()()()()()()()()。ぼく達は君にこそ幸せになって欲しいのだ。でもきっと君はぼく達の制止を振り切って走って、走り続けて、そして……転んで動かなくなってしまうだろう。

 

「オッケー、ロゼッタ。彼の状態は?」

 

『はいマスター!現在、対象"ユウキ”の疲労値は標準値を大きく上回っています!対象の疲労値を正常値に戻すまで3時間ほどかかると思われます!』

 

「ほほぉ!想定よりも短い時間で済みそうじゃないか!我ながら中々の完成度だ、うむ!」

 

きっと無理をしているであろう彼を癒すためにどうにか作りあげた装置であったが、これならなんとか元気になってくれそうだ。もっとも根本的な解決にはなってないし、彼がこれからもより一層無理をするのならこちらも何か策を練る必要がある。

 

「……ZZZ」

 

しかし気持ちよさそうに眠るな、この少年は。ここまで安らかだと何か意地悪をしたくなる愛らしさまで感じるではないか。

 

……彼が抱える疲労を回復させるという偉業を成したのだ。ぼくには少しくらい褒美があってしかるべきではないのかね。

 

いやいや何を考えてるんだぼくは。彼は寝ている。つまりそこに意志は存在しない状態だ。そんな彼にあれこれするのは犯罪だ、倫理的にアウトだ。

 

「……」

 

あ、こら何をやってるんだぼくは。いや、これは彼の経過観察であって決してそんなやましいことは…。

 

スンスン

 

「あ、いい匂い」

 

なんだろう、果実とかそういう香りじゃなくて本能的にこの匂いを好いているように感じる。

 

「…って何をやってるんだ、ぼくは!恥を知れ!」

 

ここで何かやらかせばぼくは二度と彼の前に顔を出せなくなるだろう。それはダメだ。ここで退けば彼をめぐった争奪戦からの撤退を意味してしまう。彼を狙う女性はそれこそ両手では数え足りない程たくさんいる。……たくさんいるな。

 

「……」

 

なんだろう、このドロっとした感情は。言葉では説明しづらいが、嫉妬とは似て非なるような燃える感情だ。彼が誰かのものになることを考えると耐えがたい衝動性のある感情が胸の奥から飛び出してくる。

 

ふむ……このまま彼を返すよりも彼がぼくのものだという証くらい付けても誰も文句を言わないだろう。

 

「……」

 

では、証とはなんだろう。できれば彼にとっても、ぼくにとっても残るようなものでありたい。

 

そういえば何かの文献で『きすまーく』なるものを女性は男性に付けてマーキングすると書いてあったな。

 

となると、ぼくは彼に接吻をもってマーキングを、自分のものであるという証を刻むということになるな。

 

…………うん。

 

「無理だ、無理無理。近づくだけでも動悸が収まらないのに接吻までしたらぼくは死んでしまうよ、きっと。でも彼に何か自分の証は残しておきたいな」

 

……いや、くちびるには無理でも、頬とかならいけるのでは?

 

「ちょっとだけ、そう先っちょだけ…いや先っちょってなんだ」

 

色々口にし、色々と思考しているが顔は自然と彼の顔へと近づいていく。それはぼくが無意識にでも願っているからか……無意識?いや無意識なんかではない、それはぼくが一番分かっている。

 

彼の顔が数センチ前というところまできてしまった。あとはほんの少し、本当に少しだけ前に出るだけで接吻が完了してしまう。

 

心臓の鼓動がいつになくうるさい。あまりのうるささに心臓が普段より倍近く大きくなったように錯覚してしまう。ええい、うるさいぞぼくの心臓。これから一世一代の大勝負をするのだ。黙って見てるがいい。

 

「……よし、では──

 

「ユニ先輩〜☆暇だから遊びに………は?」

 

「……や、やぁ」

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

う、うーん。どうやら眠ってしまったらしい。いや眠らされたという表現が正解か。なんか首がほんの少し痛い気がするが寝違えた?

 

パチッと目を覚ます。まず視界に入ってきたのは

 

「おはようございまーす、先輩!あなたの可愛い後輩、チエルですよ〜!せーの、ちぇるーん♪」

 

「……」

 

「なんだこれ」

 

何故かいる後輩のチエル、そして何故か顔を赤くし俯いたままのユニがそこに立ち、俺の覚醒を待っていたようだ。

 

「先輩〜、チエルに隠れてなに面白そうなことしてるんですか!抜けがけしようとしてもそうはいきませんからね!」

 

いや、抜けがけって今回チエル完全に関係ない立ち位置じゃん。そこに介入してくるなんてまるでストーカーみたいだな。

 

「いえ、超絶美少女です」

 

「ナチュラルに思考を読むな」

 

 

 

 

 

「おぉ、すごい身体の調子がいいな。さすがユニ、てかこれ結構凄い発明なんじゃない?」

 

自分の体がとても軽くなったように感じる。めちゃくちゃ調子がいい。正直半信半疑だったが、ここまでとは思ってなかった。

 

「そ、そうかい。まぁ…術式もそこまで複雑ではないし、部品自体がしっかりしていれば失敗はまずない。また疲労が溜まってきたのであればまたいつでも来るがいい」

 

「おう!……でもこれ結構すごい発明なんじゃないか?いっその事発表でもした方が」

 

「否、それはない。これでもまだ完成品とは言い難い。未完成なものを提出して理系の頭が固い者たちに付け入る隙を見せたくはない。それに……これがあればまた君と会えるからな

 

「ん?何か言ったか?」

 

「なんでもない!さぁ、処置は完了した。これからはドクターユニとしてぼくを尊敬したまえよ」

 

「はい!ユニ先生!」

 

「……あ、やっぱり呼び捨てでいいよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

ともかく、何かあると思ったが何事もなく、しかも体の調子が良くなるというオマケ付き。本当に彼女たちには頭が上がらない。彼女たちに恩返しできるように俺ももっと頑張らないとな!

 

────────────────────

 

 

「……ユニ先輩、本当の目的はなんだったんです?」

 

「目的とな?はて、ぼかあ彼の治療以外何もするつもりはなかったよ」

 

「ふーん、まぁいいです。今回はチエルも得できましたし!」

 

「あ、そうだユニ先輩!」

 

「ん?なんだね」

 

「……先輩は私のものですから」

 

「…何を言ってるのだね、彼は誰のものでもない。ぼく、ましてや君のものでもないよ」

 

「それは分かりませんよ?先輩がチエルを求めてくれれば先輩はチエルのものです!それじゃあ!おつちぇるーん♪」

 

「………やれやれ、ぼくもぼくだが、彼は少々爆弾を抱えすぎではないかね」

 

──────────────────────

 

 

その後はユニのおかげでとても快活に過ごせた。あまりにも元気よく張り切りすぎてたせいか同じバイトの先輩であるミフユさんからは訝しげな目を向けられた。しかもその後もなんか圧を感じる目で見られていた。確かに元気良すぎではあったが、そこまで怪しむ必要は無いのでは?

 

「ただいま!」

 

「おかえりなさ〜い☆なんだかとても元気ですね!」

 

「まあな!ユニのところで体の調子良くしてもらってね!いや〜これなら普段の何倍も動けそうだぜ!」

 

「そうですか!……ところで

 

 

 

()()は何ですか?」

 

 

 

「え?それ?」

 

いきなりのペコリーヌからの質問に疑問符を浮かべる。それってなんだ?なんか頭についてるのか?

 

頭をガシガシとかいてみるが、ペコリーヌの表情が変わることは無い。え、待ってあれ笑ってるんだよね?笑ってるだけだよね?なんか圧が凄いんだけど…。

 

「ぺ、ペコリーヌ?」

 

「あなたが分からないということはソレは誰かが勝手につけたんですね」

 

え、ナニを!?

 

少しずつこちらに歩みよってくるペコリーヌの圧に思わずたじろいでしまう。

 

そもそも最初から距離は離れていなかったため、すぐにペコリーヌと密着してしまう。必然的に彼女の豊かな胸に押し付けられてしまうが、今はそれどころではないためその感触を味わう余裕が無い。

 

「失礼しますね☆」

 

チクッと針を指したような痛み、そして何か湿ったものを押し付けられたような感覚、そしてペコリーヌの顔が俺の首筋の方にあるのを総合的に考えると多分、噛まれた。

 

え?え?え?ペコリーヌさん、まさかついにカニバリズムとかに目覚めちゃった的な…?

 

しかし甘噛み程度だったのか、すぐにペコリーヌは顔を俺の首から離し、相変わらずの元気な笑顔を浮かべる。

 

「えへへ、()()()()()()()()()()☆」

 

上書き?え、上書きってなんだ?なにを?なにで?首に噛み付いたことで一体何を上書きしたんだ!?

 

そしてさらに、今度は逆側から感じる鋭い痛み、今度は顔は分からないが、ピコピコと動くネコ耳を見るにこの人は……

 

「キャ、キャルさん?」

 

「ふん!」

 

キャルもペコリーヌと同様すぐに離れてくれたが、かなり不機嫌な様子で2階へと上がっていった。

 

「えーと、どういうこと?」

 

流石に意味が分からずペコリーヌに助けを求めるが

 

「自分で考えてください☆さーて、ご飯ご飯〜♪」

 

期待した答えは得られなかった。というよりペコリーヌも若干怒ってるように感じるのは気のせい…じゃないよな……今度じっくり考えてみるか。

 

そういえばユニの実験後も首が少しだけ痛かった気がするけど……流石に偶然だよな。




(俺もしかしてヤンデレ書ける文才が無いのでは?)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺はロリコンじゃ…え、事案?そっかぁ(諦め)

ミソギ派はガチと言われますが、誰が誰でも普通に『へんたいふしんしゃ』ではあると思います。ところでロリ化した宴おばさんって来ないの?欲しいな〜、出して、出して、出せ(豹変)

では今回は昨今、学会では定番となりつつあるシズルのお姉ちゃんパワー(姉力とも言う)の理論について自分なりに解説していきたいと思います。
まず、有識者の方は既にご存知でしょうが、この理論における『姉』の定義について語っていきます。
この理論における姉の定義は血の繋がった、ではなく『血の繋がりを超えた』お姉ちゃんです。違うと思われた方もいると思いますが、一般的な姉ではなく『お姉ちゃん』なので何も問題ありません。
血の繋がりを超えた、というのは従来の姉弟の間に結ばれる絆をさらに先の領域を指します。プリコネにおいてシズルはこの領域に至ることで身についたお姉ちゃんパワーを存分に発揮しています。
しかし如何にお姉ちゃんと言えど、そのエネルギーは自身の力のみで為しているのかと言われると多少の疑問が残ります。どんなにお姉ちゃんが偉大であったとしてもあまりにもその力は超越的すぎます。ではそのお姉ちゃんパワーの源は一体何なのでしょうか?
答えは簡単、『弟』です。そもそも姉力は弟を強く思うことで生まれる信仰のようなものです。姉あるところに弟あり、この繋がりが強ければ強いほどお姉ちゃんパワーは爆上がりしていきます。騎士くんのプリンセスナイトとしての能力も関係しているのかなと個人的に思ってたりするのですがそれは置いといて、お姉ちゃんの弟への愛は無限大はですのでその力も無限大ということです。妹であるリノちゃんが弓矢で攻撃しているのに対して、シズルはその姉力によってプリンセスフォームみたいなことをし、姉々(あねあね)しい光を放っています。しかもたまに闇属性フォームもします。この姉と妹の差も姉力というのが机上の空論では無いという証明にもなっているんですよね。
さらにこのお姉ちゃんパワー、実は他作品にも登場しています。名前は避けますが、とある救国の聖女は常夏の島で水着に加え、お姉ちゃんパワーを身につけることでなんか凄い暴走してました。
このようにシズルの姉力及びお姉ちゃん(形容詞)はユニちゃんすら理解できないものではありながらもその輝きは確かに存在し、弟にとって姉が一番の存在であるという証明となっているのです。

(いやそうはならんやろ)



『このひとさがしています!』

 

そんな言葉と一緒に子どもが書いたような似顔絵が書かれた紙がクエストボードに貼ってあるのが目に付いた。今日は配達も珍しくなかったのでギルド管理協会まで仕事を探しに来たのだが、なにやら面白そうな貼り紙を見つけてしまった。

 

「この顔・・・なんか俺に似てるな」

 

そういえば以前もこんな子どもっぽい感じの紙がクエストボードに貼ってあった気がする。その時は……あれ、どうしたんだっけ?

 

子どもが貼ったのであろう高さにある紙を手に取る。差出人は書いてないが、場所は書いてある。ここに向かえということか。

 

「そこまで遠くないな、元々仕事探しに来ただけだしせっかくだから受注しよう」

 

森の奥だが、まぁここ近辺ならよっぽどの事がない限り危ない目に会うことはないだろう。クエストの紙を手に、受付嬢のカリンさんの元へ向かう。カリンさんは苦笑いしながら「行ってあげてください」と言ってくれた。どうやら探している人は俺で間違いないようだ。

 

『素敵な仲間が増えますよ!』『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙』

 

「ん?何か言った?」

 

「はい???」

 

なんだか聞き慣れたセリフに、新衣装ママに天井することになった憐れな赤ちゃんの叫び声が聞こえた気がしたが、やはり気のせいだろう。

 

・・・俺は何を言ってるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おにいちゃん、来てくれるかな?』

 

『大丈夫だよ、ミミ!にいちゃんは絶対来るよ!』

 

『でも、おにいさんがあの紙を見つけてくれるなんて分かりませんよ?』

 

『・・・大丈夫だよ!にいちゃんは来る!キョウカも来てくれたら嬉しいでしょ?』

 

『そ、それは・・・そうですけど・・・』

 

『なら来るよ!なんたってにいちゃんはヒーローなんだから!』

 

 

さて、実際に依頼場所に来たはいいが、どう登場したものか。カリンさんの顔を見るに、多分俺の知り合いと予想していたが当たりだったようだ。

 

彼女らからの依頼ということは・・・一緒に遊ぼうというサインだろうか。そういえば最近あんまり遊べてなかったな。子どもに大人が一人混じるのはなんだか気を使わせてしまうと思っていたけど彼女たちとしてはそうは感じないのだろう。

 

しかし、あの活発をそのまま体現したような子、ミソギが俺をヒーローと崇めるアレは何なのだろう。いつの間にかヒーローと言われるようになったけどどうしてそうなったのか全く覚えがない。なんか最近忘れてばっかだな、意外と記憶消し飛んでる?

 

『で、でも迷惑じゃないですか?おにいさん、色んな仕事を受けてますし、仕事を受けるつもりで来たのに待ってたのが私たちだったら・・・』

 

『あ・・・』

 

しっかり者なキョウカがそんなことを口にする。どうやらミソギはそこまで考えてなかったようでニコニコしていた顔が一気に暗くなる。

 

『ど、どうしよ・・・、にいちゃんに嫌われちゃう・・・!』

 

もはや涙腺崩壊寸前のようだ。これは出る時期を伺ってる場合ではないな。

 

「お!やっぱりリトルリリカルだったか!」

 

できるだけ明るく振る舞う。暗い雰囲気ならこちらが明るい雰囲気を作ればいい。俺の言葉にビクッと反応する3人。特にミソギは泣きながらこっちに向かってきた。

 

「にいちゃん!」

 

突っ込むように胸へ飛び込んできたミソギを受け止める。ギューッと抱きついてくるミソギだが、想像とはいえ俺に嫌われるのがそんなに嫌だったのだろう。

 

「ミソギのこと嫌いにならないでよ!いやだよ!」

 

「ははっ、なに言ってるんだよ。俺がこれくらいでミソギのことを嫌いになるわけないだろ?」

 

「ほんとう?」

 

「あぁ、本当だ」

 

「ミソギのこと、大好き?」

 

「そりゃあもちろん」

 

「・・・!にいちゃん!」

 

そしてまた抱きついてきたミソギの頭を撫でる。いちいちリアクションが大袈裟な気もするがこれくらいが子どもらしい。そもそも俺の周りの子どもは頼もしすぎる子ばかりだからそう思ってしまうのだが。

 

「えへへ〜」

 

…ん?今流れで大好きって言ってしまったけどこれ捕まらないよね?LOVEじゃないよね?LIKEの方だよね?

 

「アイライクユー、アイライクユー」

 

「ミソギちゃんズルいよ〜。ミミも!」

 

そう言うと、ミミもウサギの耳をぴょこぴょことさせながら飛びついてきた。この子は最初会った頃よりもかなり積極的というか引っ込み思案なところがなくなった気がする。良いことだと思うが、年端もいかない少女を抱きしめる俺・・・

 

「へ、へんたいふしんしゃ・・・」

 

「ま、待つんだキョウカ!その防犯魔石をしまうんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?今日は何をして遊ぶんだ?」

 

「今日は探検に行く!」

 

俺のその言葉にミソギはニコニコと笑いながら答える。もうさっきまでの弱々しさはもうない。立ち直ってくれたようで何よりだ。

 

「なるほど。ということは・・・ここか」

 

そして見上げるは目の前に広がる明らかに廃墟となっている屋敷。そもそも場所が森の中のため気づかなかったがこんな場所にこんなに大きな建物があるとは思わなかった。

 

「そう!このおばけやしきを今日は探検するんだ!」

 

雰囲気はたしかにいかにもという感じだ。しかし問題はこの屋敷の安全面よりも他のことにあるようだ。

 

「「・・・」」

 

さっきからミソギ以外の2人が俺の背中に隠れて動かない。まぁおばけ苦手だよな、俺は知り合いに幽霊(ホンモノ)いるし、悪霊と戦う機会もいくつかあったから気にはならないけど。

 

「2人ともどうしたの!?おばけ退治なら前もしたでしょ!」

 

「そ、それでもこわいものはこわいよ〜」

 

「わ、私は怖くありません。ただおにいさんが怖がっていないか心配なだけです!」

 

「大丈夫だよ!にいちゃんもいるし、また幽霊が出たらミソギが倒すから!」

 

しれっと言ったが、どうやら幽霊退治は初めてじゃないらしい。もしかしてこの子たちって戦闘力高い?戦ったら俺もしかして負けちゃう?そんなことになったら本格的に引きこもる自信があるのだが。

 

「よし!本当に幽霊が出たら俺が守るから安心してくれ。こう見えても結構強いんだぞ?」

 

「でもあなたはいつも周りにいる女の子に戦わせてるじゃないですか!」

 

「グハッ!」

 

凄い痛いところをついてくるキョウカ。実際は俺が戦おうとすると彼女たちに止められているからなのだが、それも事実なので反論しようがない、というより俺が頼りない何よりの証拠だからそもそもできない。

 

「た、たしかにそうだ。でも!俺だってやれる時はやれるんだ!それを証明してやる!」

 

だが、ここで引き下がってはプライドも何もあったものじゃない。ここで見せなきゃ、男として、大人としての立場がない。

 

「いくぞ!」

 

「おぉー!」

 

「あ、待って〜」

 

「もぉ!怪我しても知りませんからね!」

 

ミソギと俺を先頭にミミやキョウカも後に続き、屋敷の中へと入っていく。なんやかんやミソギについて行く2人はやっぱり仲良しなんだな。

 

重そうな扉を押すと、ギィィと古さを感じる軋みをあげる。

 

「わぁー!」

 

ミソギが楽しそうに言うが、中の雰囲気は如何にもという感じだ。その証拠に俺の後ろに張り付いた2人はとうとう動かなくなった。

 

「よしよし、怖くないぞ〜」

 

頭を撫でて落ち着くように語りかける。妹いないけど実際いたはこういう感じなのかな?

 

『お兄ちゃん!?』

 

どこかで妹と思われる声が聞こえた気がする。そうだ、暫定妹ならいたわ。

 

そんなことを思っていても始まらない。おそらく悪霊とかそういった類は出ないはずだ。・・・出るならどこかで妨害されたろうし。

 

「ま、待って〜」

 

ミミが背中に張り付いて離れない。あんまり前に行こうとするとそれに従うようにくっついてくるため妹というよりこれはアヒルの子かな?

 

「ズルいよ!ミソギも!」

 

とうとうミソギまでもくっついてきてもう探検どころではなくなってきた。この場で静止してても始まらないため、塊状態のまま前に進む。ミシミシと歩く度に床がなるためいつ床が抜けるか少しドキドキする。

 

「どう?キョウカは何か感じる?」

 

正直何も感じないためここはエルフのキョウカに助けを求める。知り合いのエルフもまるでずっと見てるんじゃないかってくらい勘がいいから多分エルフは皆勘がいいという考えからだ。

 

「え、えーと・・・う〜ん」

 

どうにか答えを出そうとするキョウカにしまったと思う。こういう時何かと答えを出そうとしてしまうのはしっかり者なキョウカだからこそなのだろう。

 

「あ〜、何も感じないなら──」

 

「大丈夫です!」

 

そのまま目をつぶってウーンと唸りながら気難しい様子を見せるキョウカ。そ、そんなに頑張らなくてもいいのに・・・。

 

「わ、分かりません・・・」

 

しばらくして諦めたのか、落ち込んだ様子でキョウカはそう告げた。

 

「はは、キョウカが何も感じないなら幽霊なんていないかもな、ありがとう」

 

我ながらフォローになってるか怪しいが、ともかく頭を撫でながらお礼を言う。

 

「ふあぁ・・・・・・は!?こ、子ども扱いしないでください!」

 

おぉ、そんなこと言っても最初ちょっと気持ちよさそうにしてたの見逃さなかったからな、おら、追加でよしよししてやる。

 

「ひゃああああ・・・」

 

・・・さて、事案になる前にやめようか。あと他2人からなにやら圧みたいなものも感じる。子どものかわいい嫉妬みたいなやつか?そう信じたい。

 

(キョウカちゃん、ズルい・・・ミミも)

 

(ミソギだって・・・)

 

なんだか頭を撫でないといけない危機感を感じてしまい、とりあえず残り2人の頭を撫でる。すると圧が消えた、どうやら正解だったようだ。

 

 

 

 

「さて、どこから探検する?」

 

「2階から!」

 

俺の声にミソギがハイハイと手を挙げて応える。とても楽しそうだ。こういうのって少しワクワクするよな、分かる。我がギルドでも最近はしなくなったけど食べ歩きツアー(バトル)もやってたし、探検することの楽しさには理解があるつもりだ。

 

「じゃあ行くか!」

 

「うん!」

 

ミソギに手を引かれ、あと未だに腰から離れないキョウカとミミに歩きづらさを感じながらも屋敷の階段を上がっていく。

 

「にいちゃん、今日は楽しもうね!」

 

「うん?そうだな」

 

ミソギの言い方に少し引っかかりを覚えたが、まぁ小学生だし言葉の言い間違いくらいあるだろ。日本語難しいもんね。

 

 

 

 

 

結果報告、異常なし!

 

まぁカリンさんが黙認してたから察してはいたけどホントに何も出なかった。途中からミソギが遊び出した辺りからミミもキョウカも最初に抱いていた恐怖心は消えていた。まぁ、キョウカは暴れるミソギを叱ることで恐怖を忘れていたんだろうと思うけど。

 

ただ怖くはなくなってもキョウカやミミが俺から離れることは全くなかったのだが。

 

「楽しかったー!」

 

ミソギの声が空に響く。屋敷を出る頃にはもうすっかり夕方になっていて良い子は帰る時間となっていた。戦闘がなかったから俺の心配は杞憂だったようだ。正直探検としては物足りない気もするが、まぁ安全第一ということで納得しよう。

 

「もう帰らないとね〜」

 

「はい。今から帰れば日が沈む前に帰りつけるはずです」

 

「えー!もっとにいちゃんと遊びたいー!」

 

ミミとキョウカが帰宅ムードを出しているとミソギがまだ帰りたくないと言い出す。わかる、俺も多分子どもの時はこうやって駄々こねて、少しでも長く遊ぼうとしてたはずだ。

 

「夜は危険な魔物が出てくる。遊ぶならまた今度にしようか」

 

「やだ!だって次にいちゃんと遊べるのかわかんないんだもん!」

 

「ミソギ!」

 

駄々をこねるミソギに痺れを切らしたのか、キョウカが叱咤するがミソギは止まらない。それどころかちょっと泣き始めている。

 

「にいちゃんと遊びたい。ずっと一緒にいたい・・・」

 

「おいおい、まるで俺がいなくなるような言い方だな」

 

「ミソギ知ってるよ!にいちゃんがもしかするとミソギやみんなのことを忘れてしまうかもしれないって!思い出も、何もかも消えちゃうって!」

 

「え・・・」

 

ミソギの口から信じられない言葉が出てきた。たしかに記憶が飛ぶのは一部の人は知っているが、ミソギには伝えてないはず。

 

「もうみんな知っていますよ、おにいさんの知り合いの人は多分みんな知っています。知ってて隠している子もいるんです」

 

「マジかよ・・・」

 

キョウカの言葉が本当なら俺の状態がかなり不安定なことが周知されているということになる。

 

「おにいさんは記憶喪失だからまた記憶喪失になるのはしょうがないと思っていました。でも、今おにいさんに忘れられるのは・・・悲しいです」

 

「キョウカ・・・」

 

「お兄ちゃんに忘れられるのは嫌だから、それなら忘れられないようなことをしようって」

 

「ミミ、それって・・・」

 

今日呼んでくれたのって俺の記憶が無くなることを気にして思い出作りをしてくれたということだろうか。

 

俺の記憶がまた無くなるかもしれないと知った3人がそうなる前に思い出を少しでも作ろうと催してくれたのか。

 

それは・・・また酷いことをしてしまったな。

 

「心配しなくていいぞ、みんな」

 

「うぅ・・・ぐすっ」

 

「何度か記憶が無くなってるけど俺がみんなのことを忘れたことなんて一度もないぞ」

 

「でも、いつかミソギのことを忘れるかもしれないじゃん・・・」

 

「はは、俺がミソギのことを忘れるようなやつに見えるか?俺はミソギのヒーローなんだぞ?忘れるわけないじゃないか」

 

「にいちゃん・・・」

 

実のところ、俺は本当にミソギ達のことを忘れてしまうかもしれない。それでもここで忘れるなんて言いたくないし思いたくもない。俺の記憶が無くならない保証は無いのだが、そういうことにならないように頑張らないとな。

 

「俺結構強いから!そんなことにはもうならないから、大丈夫だ!」

 

「おにいちゃん・・・うぅ、ふえええええぇ!」

 

「うおっ!?泣くな泣くな、大丈夫だからミミ!」

 

実は今まで我慢してくれたのだろうか、ミミが堰を切ったように泣き出した。そもそも大人しいながらも感情豊かなこの子が泣かないはずもないか。

 

「だから、しょうがないですけど!お兄さんがもう記憶喪失にならないようにサポートします。だからもう大丈夫です」

 

「・・・おぉ、それは頼もしいな」

 

キョウカがとても力強い眼差しでそう語る。なんだろう、一瞬母親のような何かを感じたけど、これがユニが前に言ってた母性のようなものだろうか。

 

俺は意外と守られている。その気持ちは嬉しくもあり、

 

やはり情けなく感じてしまった。




Q.全然ヤンデレじゃないやんけ!

A.リトルリリカルをヤンデレにするなんて無理やったんや。

Q.なんで投稿遅れたの?

A.実はヤンデレ宴おばさん書いてたんだけど書き終わったらサイコパスおばさんになってたから書き直したから。気づくとリトルリリカルの話になっていた。あとAPEX。

Q.何か一言

A.キョウカママは安産型だと信じてる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私と結婚しろ!

みんな大好き宴おばさん(27歳)
おばさんおばさん言われてるけど正直、普通にキレイだしイけますね、作者的には。

今回はクロエの萌え要素について軽く話してみたいと思います(怪文書詠唱)。
クロエさんといえば、ただの萌えキャラとして今日の日本に広く知られています。それではクロエさんに感じている萌え要素とはなんなのか、一言で言えばそれはギャップ萌えと言えます。
クロエの普段の言動は素っ気ない態度に、ハスキーな声とおおよそ友達のできなさそうな(暴言)感じですが、そういった態度の裏に隠れた人の良さが彼女の魅力の一つでもあります。
そしてその裏に隠れた要素の一つが萌え声です。騎士くんがクロエの後ろから話しかけた時は、「にゃん!」と猫のような声で鳴くことはあまりにも有名です。
言わずもがなギャップ萌えはその高低差が激しければ激しいほど萌えます。
クロエは特にその傾向が強いと言えます。
実家のチエル並に低い声をしながら、高く可愛い声、素っ気ない態度を取りながらも弟を大切にしたり、色々と世話焼きだったりとギャップ萌え要素をこれでもかと盛り込んでいます。加えてそこに恋愛クソ雑魚要素も入ってるので実質メインヒロインみたいなところがあります。色々と頑張ってるちえるがもう息してません。
また、ギャップ萌えは光と闇で例えられるように普段は明るい性格が本当は性格悪い、逆に人当たりが悪いのに裏で自分がしたことを公開していたりとパッと見、多重人格を疑ってしまうような変化があります。しかし、我々赤ちゃんやその他赤ちゃんに刺さっているものは一部を除けば闇→光の変化の方が萌えを強く感受する傾向にあります。それはなかよし部を見ていればよく分かります。
普段は明るいけど実家では声が低いちえる、引きこもりのくせに興味があることには目を輝かせるユニちゃん、そして先程色々と要素をあげたクロエ、よく可愛い可愛いと言われるのはクロエやユニちゃんではないでしょうか。もっともちえるは素直美少女という光→光という例外的なギャップがあるので一括りにはできませんが、少なくとも闇→光の方がギャップの衝撃(萌え)があるのはたしかです。
個人的にはエルフでぼっちってところに凄い刺さるものがあるんですがそれは凄い個人的な話なので今回は割愛します。
色々と言いましたが、ギャップ先が自分の性癖だったっていう場合もあると思います。あくまで個人的なやつですので、俺のママあるいは推しはこんないいところがあるんだ!という意見は否定しませんしできません。
クロエが舐めてるキャンディーになりたい。


「すいません、キャベツを一玉よろしいでしょうか?」

 

─はいよ!10ルピいただくよ!

 

「はい、10ルピですね」

 

─毎度あり!

 

コッコロが八百屋さんに代金を支払ったのを見てキャベツを売り場から一玉手に取り、バックに入れようとする。

 

「あ、お待ちください主さま。キャベツはこちらのものを。大きさもありますし身もしっかりとしています」

 

「え、そうなのか?」

 

コッコロが示してくれたものと自分が手に取ったものを見比べてみる。言われてみるとそんな気もするが、正直違いがさっぱり分からない。

 

─おお!お嬢ちゃんはしっかりしてるねぇ!

 

さすがコッコロ。やっぱり日頃から台所に立たないとこういうのは分からないんだろうな。

 

「ありがとう、コッコロ。品定めはコッコロに任せて、俺は荷物持ちに専念しようかな」

 

「いえ、私は主さまの下僕(しもべ)として当たり前のことをしたまでです。せっかくですので主さまがわざわざ選んでくださったこのキャベツも購入しておきましょう。主さまが選んだのです、美味しくないはずがございません」

 

「え、いやコッコロ、そこまでしなくていいぞ?」

 

適材適所、コッコロがこういった食材の品定めをした方がいいのにどういう訳か俺の意見が尊重されてしまった。そして相変わらず自分を下僕扱いしている。

 

「コッコロ、いつも言ってるがお前には──」

 

「やりたいように生きて欲しい・・・ですね?」

 

「・・・・・・」

 

「主さまは勘違いなさってるかもしれませんが、これが私のやりたいことです。私は私の意思で主さまの所有物になることを決めたのです」

 

「・・・いや」

 

『きゃあああああ!!』

 

「ッ!」

 

そうじゃないと、俺が言いたいのはそういうことじゃないと言おうと思った瞬間、悲鳴が向こうから聞こえてきた。

 

「いくぞ、コッコロ!」

 

「あ、お待ちください!主さま!」

 

買い物袋を片手に悲鳴の聞こえた方へ急ぐ。着くとそこではクマ型のモンスターが女性を今にも襲おうとしている場面だった。

 

「やらせるか!」

 

袋をその場に置き、剣を抜きながら全力で駆け、モンスターと女性の間に体を滑り込ませる。

 

─ガアッ!

 

女性に向けて振り下ろされる大腕をギリギリのところで受け止める。

 

「凄いパワーだな・・・」

 

剣で受け止めてもなお、両手から足の先まで痺れるように衝撃が伝わってくる。

 

「コッコロ、今のうちに!」

 

「かしこまりました!」

 

俺の声にコッコロはすぐに女性を安全な所へ誘導する。よし、辺りを見渡す限りでは被害にあった人はいなさそうだ。

 

─グオオッ!!

 

「!」

 

しかしそれでモンスターは止まることはない。というより獲物を逃がしてしまったからか俺に向けて何度も腕を叩きつけてくる。

 

「ちぃ!」

 

受け止める度に剣が弾かれそうになるのを全力で抗う。しかし、このままでは確実にやられてしまう。

 

「主さま!」

 

後ろからコッコロの声がする、どうやらもう戻ってきたようだ。迅速な行動この上ない。一旦引いて、体勢を立て直そう。

 

モンスターは上からの叩きつけをやめ、今度はボディーブローのように下からすくい上げるように攻撃しようとする。

 

その攻撃を剣で受け、衝撃に合わせるように後ろに飛ぶ。結果は想定通り、コッコロの元まで吹っ飛び、間合いを離すことができた。

 

「主さま!お怪我は!?」

 

「軽い痺れが残ってるが戦闘に支障はない」

 

「・・・主さまは下がってください。あの畜生は必ず私がこの手で─」

 

「え、コッコロさん?」

 

コッコロから急にとてつもない殺気が放たれる。え、この子こんなエグい気配放てる子だったっけ?自分を鼓舞するのは構わないが流石に俺だけ見てるつもりは無い。

 

「よし、コッコロ。アレを倒すぞ!」

 

「主さまは─」

 

「いくぞ!」

 

コッコロが俺を止めそうな気配がしたので先に駆け出す。元々彼女はサポートが得意、俺が前衛で彼女が後衛、それで問題が無いはずだ。

 

モンスターに切りかかるべく、足を踏み出す。大丈夫、後ろにはコッコロがいる。俺がドジを踏んでコッコロの足を引っ張らないようにしないと。

 

「うお──」

 

 

 

 

 

それは一瞬の出来事だった。

 

いきなり空から大量の矢が降ってきたと思うと数多の閃光がモンスターを貫き、そこからまるで我先にというように風、雷、火と人が見れば天変地異と見間違う程の"破壊”が巻き起こる。

 

気づけばモンスターがいた場所にはクレーターができており、モンスターはその肉片すら残すことなくこの世から消滅していた。

 

辺りを見渡すと見知った顔の女の子たちが周りを取り囲むようにして立っていた。

 

「・・・・・・・・・えぇ」

 

「当然の報いです」

 

自分の勢いが空回りしたことも忘れ、目の前の光景に呆然とするしかない俺の隣でコッコロは当たり前のことだと一切の動揺を見せない目でクレーターを見つめていた。

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

そして次の日、

 

今日はまた知り合いに呼び出しをくらったので約束の場所へと向かう。しかし今回俺を呼んだ人物は中々の要注意人物であったため、コッコロに頼み込んで一緒に来てもらうことにした。決して保護者同伴ではない。

 

「主さま、私はあの方と共に行動するのは反対です。戯れとはいえ主さまに剣を向けるなど従者として見過ごせません」

 

「そうなんだけど、でもだからといって断るわけにもいかなくてな。その人にはちょっと、いや結構借りがあるし」

 

「そのようなもの、主さまの身に危険が及ぶことと比べれば踏み倒しても誰も文句を言いません」

 

「いやいや流石にそれはマズイでしょ」

 

この話をしてからというのもコッコロ、いや美食殿の面々は朝から否定的だった。唯一、ペコリーヌは微妙な顔をしていたが、それでも良しとはしてなかった。

 

「おや、ようやく来たか。遅い、年上をあまり待たせるものではないぞ☆」

 

集合場所の噴水広場に着くと、その女性は長い金髪をポニーテールのように結び、胸元を大胆に開けた服装、黒く金の装飾が施された大剣を手に・・・まさにゴージャスといった容姿で俺たちを待っていた。

 

「・・・・・・」

 

「すまない、少々支度に手間取った、クリス」

 

その人は俺の知る中で、近接でなら最強の部類に入るクリスティーナ・モーガンという女性だ。

 

クリスは相変わらず意地悪な笑みを浮かべながら、腕を組み、こちらを一瞥する。

 

「ほぅ?ではその隣の少女がその支度ということかな?感心しないな、私との()()()に他の女を連れ込むなど」

 

「・・・・・・」

 

ヤバい、いつも誰であっても挨拶はするコッコロがさっきから無言だ。なんとなくこうなることは察してたけど実際ここまで空気が悪くなるとは思わなかった。

 

「そ、それはアンタがまた俺に死合を申し込んでくるかもしれないからだろ?」

 

「つまり今日は戦ってもいいということだな?」

 

「んなわけあるか!」

 

「はぁ、私は先日とその前、坊やのために身を粉にして頑張ったというのに君からそういった態度をとられるのか」

 

「うぐ・・・」

 

心外だとばかりに手を広げ、やや大袈裟な演技をするクリス。しかし彼女が言ったことは間違っていない。先日の『モンスター滅殺事件』やその前の『姫とクレープ屋の呼び子ガチバトル』では地形を破壊にするまで至ったため当然軍が動いた。

 

流石に彼女たちが捕まるのはダメだと、軍に顔が効くクリスに頼み込んで、軍の演習、そしてモンスターに関しては適切な対応だったということにしてもらった。

 

自分でもかなり無理なお願いをしてしまったため、もはや彼女には顔が上がらなくなってしまい、今回の呼び出しに応じたのだ。

 

「わ、分かった。戦う、ただし俺はアンタよりもずっと弱い。命のやり取りはナシで頼むぞ?」

 

「ふっ・・・安心しろ、私はこう見えて不殺で仕留めることには定評があるのだ」

 

・・・・・・初耳だ。

 

「まぁ相手の状態は知らんがな」

 

「ダメじゃん!」

 

両手両足欠損して、でも生きてますなんてことにされたらたまったものではない。

 

「その時は私が主さまを死ぬまでお世話致します」

 

「コッコロ、俺の心の声を当たり前のように読むのやめようか」

 

「・・・さて、決まったところで申し訳ないが、私は戦いたいとは言ったが坊やを呼んだのはそれが目的ではない」

 

「・・・え?」

 

「さぁ、デートの始まりだ☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは俺がいつもバイト帰りに寄る唐揚げ屋さんだ。結構美味しいぞ?」

 

「ほぅ、ではせっかくだ、私が奢ってやろう☆。店長、美味しいやつを二つ!」

 

「いやメニュー名を言え。塩を二つ、コッコロは?」

 

「私は大丈夫です」

 

「坊や、今お前は私とデートをしているのだ。部外者を気にする必要はないだろ?それと店長、塩と醤油一つずつだ」

 

「・・・・・・」

 

ヤバい、コッコロがヤバい。もう怒ってるとかそのレベルを通り越してる気がする。

 

「ほら、私が食べさせてやろう。あーん☆」

 

「いや俺一人で食べられ・・・モガっ!」

 

異を唱える間もなく唐揚げを口に突っ込まれる。

 

「・・・・・・いい加減にしてください、いつまで主さまを連れ回す気ですか」

 

今のやり取りを聞いてかコッコロが横から割って入ってくる。もはや怒っていることを隠そうともしていない。

 

「坊やが言うならまだしも勝手についてきた貴様に言われる筋合いはないな」

 

「クリスティーナさまにはなくてもこちらにはあります。私は主さまの従順なしもべ、主さまの身を案ずるのは当たり前のことです」

 

「⋯だ、そうだが?」

 

「そう言われても⋯」

 

クリスはニヤニヤしながらこっちに矛先を向けてきた、これは完全に分かってやってるな⋯。コッコロが自分のことを俺の所有物として卑下するところは前とあまり変わらない、前よりは幾分自分の意見を主張するようになってくれたが、それでも自身を(ないがし)ろにするところは変化していない。

 

「コッコロ、今回は俺がクリスに助けてもらったのが発端なんだ。その埋め合わせなんだ、分かってくれないか?」

 

「ほーら、坊やの方は聞き分けがいいぞ?」

 

やめろ、肩を組むんじゃない。ただでさえ露出が多い服装なのにそんなに寄られると色々と目のやり場に困るんだよ。

 

「⋯⋯」

 

あ、待ってコッコロさん。無言で杖を構えないで、君サポート系でしょ?バリバリ近接系のクリスにはさすがに歯が立たないよ。

 

「別に私は2対1でも構わんぞ?」

 

「え、やだ」

 

クリスとつるむなら戦闘の一つや二つは覚悟しているが、それでも極力避けて通りたい。てか、まず勝てないし。勝つ負けるよりは、クリスが満足するかどうかというのがキツいところだ。

 

「⋯⋯まぁいい、次に行くぞ」

 

さて、コッコロが怒る前に移動しよう。お、頭撫でると膨らんだほっぺが萎んでいくぞ。可愛い。

 

────────────────────

 

 

しかし、本当に散歩だな。いやこれが平和で1番いいけど。だが、クリスがよくくっついてくるせいか隣のコッコロの機嫌がこれまで見たことがないくらい悪い。俺と目があった時はニコッと優しく微笑んでくれるが、視界から外すと重い威圧感をクリスに向けて放つ。

 

「そういえばあの話は考えてくれたか?」

 

「ん?」

 

あの話?・・・あの話・・・・・・あ

 

「おま、そこでこの話をするのか!?」

 

「・・・?主さまいかがなさいましたか?あの話とは一体」

 

間違いない、これは確信犯だ。これから起こることをこの女は間違いなく分かってるし楽しむつもりだ。

 

「私との()()、もちろんするよな?」

 

「は?」

 

本当にコッコロの口から出た言葉なのか疑いたかったが、どうなら本当のようで、コッコロは凍てつくような視線を()()()()()

 

「コ、コッコロさん?」

 

あまりの圧力に普段呼び捨てなのにも関わらず、思わずさん付けになってしまう。それだけの凄みが彼女にはあった。

 

「主さま」

 

「は、はい!」

 

凄まじい圧に思わず声をかけられただけで姿勢を正してしまった。ヤバい、もしかするとコッコロは今までで一番怒ってるかもしれない。

 

「その話、本当ですか?」

 

ここで言葉の選択肢を間違えれば俺に明日は無いかもしれない。慎重にならなくては・・・。

 

「いや、それは・・・結婚することにはなってないが、なんかそういう契約があったらしくてな」

 

クリスが自らに課したある誓約(ゲッシュ)のせいなのだが、コッコロにはなんと伝えるべきか。

 

「実はな、この少年はあろうことか私のこの胸を揉みしだいて嫁に行けない体にしてしまったのだ。責任を取ってしかるべきだろう?」

 

「はぁ!?」

 

なんだよそれ!初耳なんだけど!?

 

「おい、クリス!あれは不慮の事故だろ!確かに触った・・・いや触ってしまったが、そこまで酷いことはしてないぞ!」

 

「何を言っている?胸を揉んだのは事実だろ?」

 

「うぐっ・・・・・・!」

 

確かに胸を揉ん・・・触ったのは事実、それは否定できない。だからといって結婚することになるのはいくらなんでも横暴すぎる、例えそれがクリスの一族にとって大事なことだったとしてもやりすぎだ。

 

「主さま・・・」

 

「ま、待てコッコロ・・・!これは俺はお前が思ってるような事は何もしてないぞ!」

 

もはや何を写しているのか分からない瞳をこちらに向けながらコッコロは少しずつこちらへと歩み寄ってくる。

 

「止まるんだコッコロ!あ、いや止まってくださいお願いします!」

 

「なんだ、向こうから求めてきてるんだ。受け止めてやるのが男の甲斐性ってものだろ?」

 

「お前は少し黙ってろ!」

 

 

 

「主さま、私は分かっています」

 

「え?」

 

ピタッとコッコロがその足を止めた。そして手に持つ杖をクリスに向けてニッコリと微笑む。

 

「原因は全て、主さまを奸計に嵌めたこの女にあるということですね」

 

「・・・ほぅ?」

 

「待って!あながち間違いとは言い難いけどちょっと待って!」

 

コッコロとクリスの間に割って入る。いつの間にかクリスもその剣を肩に担ぎ、いつでも戦える状態になっていた。このままでは何かの些細なキッカケで血みどろの争いが始まってしまう。

 

いや、逆に考えるんだ。何かキッカケが、別のキッカケがあればこの雰囲気を打破出来るはずだ・・・!

 

辺りを見渡す、何か話題を変えられるような、それでいて二人とも食いついてくれるような・・・!

 

───そしてそれは突然やってきた・・・

 

「シグルドー!」

 

ドドドドと走る音と共に俺の胸元に飛び込んでくる淡い翠色の髪をした少女。俺のことをシグルドと呼び、愛らしく胸元に顔をこすりつけるこの子は・・・

 

「アンナ!」

 

来た!キッカケ来た!これで勝つる!

 

「アンナ、今日はどうしたんだ?」

 

「シグルドが見えたのでな!盟友として挨拶をしただけだ!」

 

「おぉそうかそうか!」

 

シグルド〜とまるで猫のように自分の頬をスリスリとするアンナ。いつもなら苦笑いを浮かべるところだが、今はとても頼もしい限りだ。おら、なでなでしてやる〜。

 

「むふ〜」

 

え、やだこの子可愛い。そんなにスリスリしても何も出てこないぞ?

 

「主さま、その方は?」

 

コッコロが構えを解き、アンナについて聞いてくる。そういえばちゃんと紹介はしてなかったな。

 

「ほら、熾炎戦鬼煉獄血盟暗黒団(ジ・オーダー・オブ・ゲヘナ・イモータルズ)の子だよ」

 

「あ、あのよく分からない呼称の方でしたか」

 

コッコロが若干引き気味だが、概ね合っている。俺もいい加減この呼称をマシなのに変えたいところではある。

 

「シグルド、コイツらは?」

 

アンナの目が唐突に怪しく光る、どうやら二人のことが気になるようだ。せっかくだし紹介しておこう。

 

「えーと、この二人は」

 

「婚約者だ☆」

 

「主さまの従順な下僕です」

 

「・・・・・」

 

俺今日下僕と婚約者と侍らせて街を歩いていたんだよな。自分でも何言ってるか分からなくなってきた。

 

「ふ、二人とも紹介するよ、この子は・・・」

 

もういいやと若干思考を放棄気味にアンナの紹介にうつる。しかしなんて説明しよう、厨二病なんて言ったら傷つくだろうし、設定の方を言ったら俺が恥ずかしい。

 

「この子は・・・」

 

無難に友だちと言っておくか?

 

「と「恋人だ!!!」・・・え?」

 

「「は?」」

 

 

 

なんか静かですねぇ・・・。

 

場の空気が先程よりもさらに悪くなるのを感じる。さっきまでは殺気のぶつかりあいだったが、今度はそうではない・・・がそれ以上に濃く重い気が場を支配する。

 

「主さま・・・婚約もですが、恋人も初耳なのですが?」

 

コッコロがこちらに問いかける。しかしその目はいつもの優しげな雰囲気を纏ってはいなかった。

 

「これは一本取られたな。まさか私が婚約を結ぼうとしている一方で恋人を作ってしまうとはな☆」

 

クリスは・・・笑っていた、微笑んでいた──殺気を吹き出しながら。ミシッと手に握る剣に力を込めている。これはいつ斬られてもおかしくない。

 

「シグルド、どうやら我らの英雄譚を邪魔する輩が現れたようだぞ?」

 

アンナは武器を構え、獰猛な笑みを浮かべている。え、君そんなに表情浮かべられるの?

 

「は、ははは・・・」

 

もはや乾いた声で笑うことしか出来ない。どうしよう、下僕と恋人と婚約者に殺されてしま──あれ、これって殺されて然るべきなやつでは?

 

ともかく、今の俺に出来ることは一つ。

 

「おい、待て!」

 

「主さま!説明してください!」

 

「シグルド・・・なんで逃げるの?」

 

逃げよう。ともかくほとぼりが冷めるのを待ってその後に一人一人説明してまわろう。うん、これは戦略的撤退であって決して彼女たちが怖いからとかではない。




ケンガンアシュラでラノベ作家(オリ主)が刃牙の抜拳を使って戦いながらエレナたんちゅきちゅき♡♡(妄想)するやつ閃いた。

最近あまり怪文書練れてないな。きっかけが、何かきっかけがあれば・・・!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ちぇるろちぇるちぇるちぇるぽぱぴ

ちぇる語って翻訳できるんですか?全く言葉の法則性が掴めない。

ごめんなさい、今回は怪文書おやすみです。


「体験入学?それはまた・・・突然だな」

 

「ですよね〜!ちえるもそう思うんですけども、先輩もバイトばかりだと人生灰色なるなる系だと思うんですよね!」

 

「まあまあ失礼だなおい」

 

「そんな先輩に!可愛い後輩であるちえるちゃんはその人生に青春を与えるためにこうして体験入学の話を持ってきたわけです!はい、拍手!」

 

「わー(棒)」

 

適当に合わせ、チエルが持ってきたパンフレットらしきものに目を通す。・・・これもしかして自作か?パッと見それっぽいけど使われてる文法が所々で違う。とても文学的かと思えば、テキトウな説明、なんかやたら独特なものまである。これ、なかよし部製か。

 

「こんなの作ってるけど、学園の方には許可取ってるのか?」

 

「当たり前じゃないですか。え、ちえるもしかして何のバックロールもなくこんなこと言い出す子だと思われてます?」

 

「正直思ってた」

 

「は?」

 

声が徐々に低くなってくるチエルを宥める。しかし、学校生活か・・・。バイトしかしてないから勉強全然してないが、今の俺が学校の勉強についていけるとは思えないんだよなぁ。

 

「あ、勉強の方でしたらご安心を。学園長からはとにかく『問題ない男』を連れてくるように言われたんで、学力については心配無用です☆」

 

いや、問題ないって学力とかそこら辺も問題ないって意味なんじゃ。てか、学園長も選考ガバガバ過ぎない?流石に俺でももう少しマシな人を・・・あれ?

 

「ま、まぁ()()問題ないんだけど」

 

正直、チエルのコミュニケーション能力はランドソル一だと思っていたが、まさかその神経までここまで図太いとは思わなかった。

 

「ホントですか!?なら早速、ちえると──」

 

 

「いけません」

 

 

盛り上がるチエルに俺の後ろから氷水のように冷たい声がし、場を切り裂く。その声の主がコッコロなのは俺にも分かっていたがあいにく今は首が痛い(ということになっている)ので振り向くことが出来ない。

 

それに後ろにいるのはコッコロだけじゃない。キャルやペコリーヌもいる。二人とも、別に何か言った訳でも無いがなにやらただならぬ雰囲気を醸し出してるのは分かる。俺が保証する。

 

なぜこうなったのか、それはチエルが朝一番に美食殿にやってきたと思ったら唐突に体験入学を薦めてきたことが始まりだ。

 

朝いきなりやってきたちえるに三人とも目を丸くしていた、体験入学の話が出た瞬間にその目も鋭くなったけど。

 

「・・・はい?先輩が言うならともかくなんであなたがたに言われないといけないんですか?」

 

チエルの言葉に圧がさらに重くなる。もはや殺気と言っても差し支えない程だ。

 

「あ!もしかして先輩が取られちゃうかもって思ってます?安心してください☆ちえるはそんなことしません。第一、先輩が帰る場所ってここじゃないですか?そこを奪うほどちえるも鬼じゃないです!」

 

お、おぉ。てっきり煽り散らかすのかと思ったけど流石に自重してくれたようだ。まぁこれ以上、場を重くする理由もないしな。

 

「あ、でも〜・・・先輩が私たちを選んでくれたらその限りじゃないかもしれませんね!」

 

ビキッ、という擬音が聞こえる程には今空間が軋んだ気がする。それを感じたのは俺だけだっただろうが、ともかくヤバい状況なのはすぐに理解出来た。

 

「アレアレ〜?おこですか〜?まぁちえるみたいな超絶完璧美少女を前にしたら流石の御三方も危機感を──」

 

「よし行こうすぐ行こう今すぐ行こう!コッコロ夕飯までには戻るから!多分お昼は必要ない!いってきまーす!」

 

どうやら空間が軋んでたのはリアルな話だったようだ。キャルから魔力が滲み出てるのを感じた俺はちえるを抱えて全力で美食殿から走り出た。

 

「べ〜!」

 

「お前後で説教な!」

 

────────────────────

 

 

 

 

逃げるように走ったが、三人が追ってくることはなかった。まぁそれはそれで話し合うつもりだったが、ともかく帰ったら、ちゃんと話そう。

 

「ちえる、わざわざ足を運んでもらったのは嬉しいがあれはないだろ」

 

「・・・すいません、正直今のはちえるもやり過ぎちゃったかなって思います」

 

・・・あら?意外と素直だな今回は。いつもなら

 

『はぁ〜!?ちえるの何が悪かったんですか!むしろこの完全無欠美少女の悪い所探してみろって話ですよ!』

 

とか言ってるのに。ホントにこうして悪いことした子どもみたいにそっぽ向いてる分には可愛いのにな。

 

「だってしょうがないじゃないですか!先輩とは最近ご無沙汰でしたし、先輩全くこっち来ないし、ならこちらから行くしかないじゃないですか!」

 

「そうは言ってもな・・・俺もユニの荷物持ちぐらいでしかそっち来れないし」

 

「・・・そうですね。まぁでも先輩がこっちに来たなら私たちしか勝たん!今日は一日遊び尽くしますよ!」

 

うん?一瞬、ちえるの表情が歪んだ気が・・・気のせいかな。てか、遊び尽くすって学校は勉強するところだろ、一応記憶にはそれなりに知識もあるから遅れはとってもついていけないことは・・・あるな。うん、余裕であるわ。

 

「・・・先輩、一ついいですか?」

 

「ん?」

 

学校へ向かう中、唐突にこちらへ振り返るちえる。だが、その目をいつもの飄々とした感じではなく、どこか真剣味を帯びたものだった。

 

「先輩は色んな、ホントに色んな女の子と知り合いなんですけど好きな人とかいるんですか?」

 

「え。急にどうした?」

 

「いいから答えてください!」

 

まさかチエルからその質問が来るとは思わなかった。そういえば自分は恋愛に興味がない、なんて言っていたがやはり花の女子高生、そういうのに興味があるんだろうか。

 

「・・・好きな人はいない」

 

「ふ〜ん・・・・・・」

 

本当のことを言ったはずだが、チエルの反応は興味なさげのようだった。いや聞いといてその反応はないだろう。

 

「ちえるにはいるのか?そういう人」

 

「うぇ!?わ、私ですか?」

 

私と言うことは今のチエルは素の方だろう。素が出る時はこういうところでチエルはボロが出てくる。あとなんか可愛くなる

 

「え、えーと私は・・・ですね」

 

おぉ、冗談で言ったつもりだったけど本当に言ってくれるのか。からかうことはしないけどその恋が実るよう応援しないとな。

 

「・・・・・・あ、え、うぅ──バカァ!」

 

「え─うおっ!?」

 

顔を真っ赤にしたチエルが俺を突き飛ばす。そういえばチエルは戦う時は武術みたいなのを扱う程度には強い。まあまあ強い突きを放ったチエルはそのまま学校の方へ走っていく。

 

「あ、ちょっと待て!置いてくな!」

 

 

 

 

「そういえば、俺って学年はどこになるんだ?」

 

「え?ちえるの学年に決まってるじゃないですか!」

 

「ん?うちの学年っしょ」

 

「ふむ、ぼくの学年にくるべきだろうな」

 

「「「は?」」」

 

さて、体験入学をするのはいいがどうやらどの学年に配属されるかでなかよし部がバチバチになり始めた。これでは不なかよし部だ。

 

あ、理事長さんどうも。え、久しぶり?・・・そうでしたね!あはは・・・やべ、記憶にねぇ。




中途半端で終わってしまった。続きは次回ってことで、ごめんなさい。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。