堕天使の大冒険 (VerT-EX)
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1話[堕天使はこんらんしている!]

さて、皆様は『ドラゴンクエスト』というものをご存知だろうか。

 

はいそこ早かった。そうそう、その通り。かの有名なRPGゲームから始まるシリーズ群だ。

 

俺が知る限りでは、リメイク込でメインシリーズが1〜11、モンスターズがリメイクもあって数作品、スライムもりもりが3作品にソシャゲが何作品か。外伝とかマンガとか他にもいくつかある。

で、特にメインシリーズだが、RPGという特性上もあって『ラスボス』がいる。例えば1の竜王様とか、6のデスタムーア、11のウルノーガ。10はMMOなんで微妙だが、一応Ver.1.0のネルゲルってことにしておこう。

 

で、うち『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』というメインシリーズ9作品目がある。

9のメインストーリーのラスボスに当たるキャラクターは『堕天使エルギオス』。色々あって人間を憎んで堕天して、怪物化して人間を滅ぼそうとする天使。割と美形。

 

──えっ、何が言いたいか分からないからハッキリしろ?

分かった、端的に言おう。

 

『俺は何故かエルギオスの姿を持って、謎の森で目を覚ました』のだ。

 

 

───────

 

「………って、納得できるかああああああ!!!!」

 

目を覚ましてから体感時間で早数時間。どうしてこうなったのかと考え続けて出した答えはどれも絶対違うと言う結論に至った。

 

さて改めまして、自分の名前はエルギオス。元天使で元堕天使、現在全く分からない状態の輪無し羽なし天使もどきだ。

エルギオスはあのDQ9のメインストーリーのラスボスの堕天使で間違いない。間違いであって欲しかったけど。

なぜ確信があるのかと聞かれれば、まず見た目を挙げるだろう。エルギオスは3つの姿がある。天使としての姿、堕天使としての姿、化け物の姿。今の俺は1番目、天使としてのエルギオスの姿である。ただし、そこから9の主人公よろしく輪と羽をとっぱらった姿だが。

 

で、次に記憶。現在俺にはおよそ2つ記憶がある。

『エルギオス』としての記憶。天使界にいた頃から、あの忌々しい──じゃなくて、わかりやすく言うと9の主人公に撃破されて、星になる直前辺りまでの記憶。

もうひとつが、『いつかどこかの誰か』の記憶。有り体にいえば前世の記憶か。とは言っても、いつのどこの誰だったかは覚えてないし、だいたいサブカルチャーについての知識ばかりが多くを占めるが。

 

以上のことより、俺はエルギオスである!!証明完了AED!じゃなくてQED!!

 

 

で、現在地は良く分からん森の中。どこだよここ。

目が覚めてから少し彷徨う中、バブルスライムを見かけたので間違いなく何かしらのドラクエ世界であることは確実だ。

 

彷徨った結果、一応森の中とはいえ若干開けた場所に出たため、知識を総動員して超簡易拠点を作る。焚き火と座るための石を持ってきただけだけど。

 

「自由度なら10辺りがいいなぁ……9ならめんどくさそうだから何とかしなきゃだし。11ならどの時点か、だな。」

 

バブルスライム、というかスライム系統は外伝含めて基本皆勤賞の一族だ。まだ見たのはバブルスライムだけなので、どこのドラクエか断定できない。

それに。

 

「呪文、どーやって使うんだよ……」

 

現在、魔物に襲われた際の対抗手段がほとんどない。装備品的には見た目からすると『みかわしのふく』以外は『天使の』シリーズだ。一応『スーパーリング』も着いてるので、状態異常に関しては問題ないと思いたい。

で、肝心の武器なのだが……『きりんのおうぎ』である。よりにもよって扇である。せめてムチがよかった。

 

しかもなんで『たまはがねのおうぎ』みたいな鉄扇とかじゃなくて『きりんのおうぎ』なの?!ホイミ効果はあるけどうまのふん錬金するやつじゃん?!いやモンスターからもドロップするけど。

 

ゲームでは、はねのおうぎでも普通に戦っていたが、実際持たされるとどうしろって言うんだ。

呪文の使い方も上手く思い出せない。ならばと特技系統を考えたが……。

まず、『急降下』は羽が無いため無理だ。飛び上がってってのはそれほぼムーンサルトじゃねーかということで、後で出来ないかやってみるとこに。

『激しい稲妻』はなんとなくできる気がしたが、下手すると森が焼けるので保留。

『いてつくはどう』らしきものは出来たが、攻撃手段ではない。

 

第2形態で使えた『あやしいひとみ』とか使えるといいのだが、練習相手がいないと分からない。

テンションとかもよくわからん。

 

以上より、とりあえず魔物に出くわしたら逃げるしかない。幸い『みかわしのふく』のおかげで動きは軽いため、逃げに関しては問題ないと思われる。

 

「……腹減ったなぁ」

 

くうううと腹が鳴る。天使でもお腹は減るのか……とか謎の関心をしてしまったが、食料も水もないのがマズイ。

せめて獣系のモンスターでもいたらいいんだけど……。

 

と、思った矢先。近くの茂みが揺れた。気休めに扇を広げて構える。

 

ガサガサ、ガサガサと出てきたのは───グリズリーだった。

 

「は……?」

 

かなり腹を好かせてるのか、ヨダレを垂らしながらゆっくりと向かってくる。

確かに獣系のモンスターいないかなとは思ったけど!!それはいっかくうさぎとそういう感じのモンスターの事で、こういう猛獣じゃないんだ!!

 

「グルルルル……」

 

よし、熊に会った時の対処法だ。

まず目を離さずにゆっくりあとずさる!!で、持ち物を投げ……れねえわ!!なけなしのきりんのおうぎ投げる訳にもいかねえ!!

 

とにかくゆっくりとあとずさろう。ゆっくり、慎重n

 

バキッ。

 

「あ」

 

落ちていた枝が折れる音がした。それを皮切りに、グリズリーはいきなりおそいかかってきた!

 

「グァァルァァァァ!」

 

「ふえああああ?!」

 

焚き火を中心に、ぐるぐると回るように攻撃をなんとかして回避していく。流石、みかわしのふく。回避に関しては万全だ。

が、回避し続けではいつかこちらの体力が尽きるのが先だ。天使もどきとはいえど、野生の熊の体力には勝てない。

 

かと言って焚き火を離れる訳にもいかない。離れればほかの魔物に襲われるのがオチになる。

俺死んでまうストーリーとか勘弁やで!……とか言ってる場合じゃなくて。

 

「へえええるぷみいいいい!!!」

 

とりあえず叫ぶ。人が来るとは思わないけど───

 

「メラ」

 

「ギャウ?!クューン!」

 

どこかから飛んできた火球──メラにより、グリズリーは驚いたのか逃げて行った。

誰かと思って周囲を見渡す。すると、茂みの方から人影が出てくる。

 

「先生、やっぱり人がいますよ!」

 

「おや、本当ですね。そこのお方、無事ですか?」

 

茂みから現れたのは2人組──勇者の家庭教師(アバン先生)後の大魔導士(ポップ)だった。



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2話[堕天使はこんわくしている!]

「そこのお方、無事ですか?」

 

「えっあ……はい。ありがとうございます?」

 

アバン先生にもう一度声を掛けられてハッとして、何とか答える。

とりあえず立ち話もあれだし、ということで焚き火の近くに持ってきた石とかに座ってもらうことにした。

ポップがちょっと文句を言っていたが、石であることに対して文句を言いたいのは俺も同じである。座布団が恋しい。

 

 

 

「……なるほど。村を出てからの記憶が無く、いつの間にか森に迷い込んでいた、と?」

 

「はい。セントシュタインへ買い物に行こうと村を出たのはいいんですが……その後から何も思い出せないんです。」

 

とりあえず、「ウォルロ村に住んでいる旅芸人で、買い物のに行くつもりがいつの間にか森にいた」ということにしておこう。ウォルロ出身じゃないし住んでいないのだが、同じドラクエシリーズの別世界出身であることは間違いない。

なんでナザムじゃないのかって?………色々あるから、そこはスルーしてくれると助かる。

 

「ウォルロ村にセントシュタイン城ですか。聞かない名前ですねえ。」

 

「先生、聞かないも何も存在しないですよ?!」

 

アバン先生が真面目に思い出そうとしてくれているが、ポップの反応が普通正解である。というかなんでアバン先生は真面目に考えてるんだ。

ただ、ここはきちんと反応を合わせなければ。

 

「存在、しない……?どういうことですか?!」

 

あたかも取り乱したかのように言ってみせ、すぐに落ち着いたフリをする。ポップがビクッとしているが、そりゃ驚く。驚かせたのはすまない。

 

「落ち着いてください。地図に乗ってない場所という可能性も無きにしも非ずですから」

 

「すみません……けど、えっと……ここは?」

 

しばらくあーだこーだ言い合い、とりあえずここはロモスの近くにある森だと言うことは分かった。魔の森だろうか?と思ったものの、多分違う。

 

「うーん……よく分かりませんねぇ。ま、とりあえず……」

 

状況が分からないまま、アバン先生は何やら荷物をゴソゴソとあさり出した。自分もポップも『?』マークを浮かべる。

 

「晩ごはんにしましょーか!」

 

ズコーんとコケた。いや確かに腹は減ったけどね!とは言っても、自分は何も持っていないのだけども……。

 

「あの……自分、何も持ってないのですが……?」

 

「いいのですよ!とりあえず共にごはんを食べれば分かり合えますからね!」

 

「????」

 

わかるけどわからない。そう首を傾げると、ポップがそっと肩に手を置いて、「先生はこういう人だから」とでも言わんばかりに苦笑いだ。

 

「と、言うことでポップ、それと……」

 

「あ……自分はエルギオスと申します。」

 

「エルギオスさん、手伝ってくれませんか?」

 

「それは勿論」

 

と、言うことで突然始まりますはドキドキ☆飯盒炊飯である。ごめん自分でも何言ってるかわかんない。

 

やり方は簡単。飯盒に水と穀物と肉を突っ込んで、簡易的に作って立てた棒にひっかけて焚き火の上で煮込むだけ!

 

「ね?簡単でしょう?」

 

で、現在は3人でリンゴを剥いている。剥いているというか種を取っているという方が正しいか。

確かに簡単だとは思うけど、その言い方はどうしてか脳裏に黄色っぽいDJっぽいペンギンの姿がチラつきます、アバン先生。

 

「そういえば、お二人は何の為に旅を?っていうか……ポップ……さん?は先程アバンせ…さんのことを先生と呼んでいましたが」

 

「おっと?それ聞いちゃいます?それはですねぇ……」

 

 

丁度料理(?)が出来上がったので、皿によそって貰い、食べながら説明を受ける。いやまあ知ってるんだけど、本人の口から聞いてみたいのだ。

 

 

数分後。

 

「……なるほど。凄いですね」

 

「先生はすげーんだぜ!」

 

話しているうちに、ポップが少し警戒を解いてくれたらしく、アバン先生のことについて語る。

 

さてここで、かなり早いが今後の身の振り方を考えよう。

まず、ほのぼの隠居。これが最も理想だが、できる気がしない。どの道『この先』……言ってしまえば『本編』があるのだ。この2人がいる以上、本編に突入してしまえばほのぼのとか無理だ。結局戦いに巻き込まれる。

しかも今の自分は正直言って弱い。謎の黒騎士(レオコーン)と戦っても負けるだろう。というかグリズリーにすら勝てない。

それならば、いっその事アバン先生について行くのが得策だろう。とりあえず『死なない』のが先決だが、そのためには力がいる。特にドラゴンクエスト系列の世界はそうだ。せめて何かしら魔法か特技か武器かが使えるようにはなりたい。

なら、後者しかあるまい。しかし、簡単に弟子入りOKしてくれるかどうか……

 

ご飯も食べ終わる頃。

「……ふぅ、腹いっぱい……」

 

「美味しかった……ご馳走様、です。」

 

初めての飯は簡素なものだったが、美味しかった。だが、和食には敵わないなぁとは思う。出来たらいつか再現したいが……それはさておき。

 

「…アバンさん。ひとつ、よろしいでしょうか」

 

「はい?どうしました?」

 

「自分も、旅に連れて行っては……ああ違う。弟子にして貰いたいのです。」

 

「?!」

 

驚きのリアクションを取ったのはポップ。アバン先生は顎に手を当てて考える素振りだ。

 

「どう、でしょうか……」

 

「いいでしょう!ですが、弟子となると…修行は厳しいですよ?」

 

「せ、先生?!」

 

「問題ありません。野垂れ死にするよりも遥かに良いですから」

 

「なら、ベリーベリーOKです!」

 

 

うーーん、分かっているけどノリが軽い。一番の問題は、このテンションについていけるかどうかになりそうだ。

 

で、まあとにかく。今日の所は寝ることになった。




書いてるうちにわからなくなってきました。申し訳ないです


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3話[堕天使はおもいついた!]

次の日、起床。朝ごはんを手早く済ませ、身支度を整えると焚き火を消した。

 

「忘れ物は無いですね?」

 

「はい、先生!」

 

「ありませんよ、アバン先生。」

 

改めて自己紹介も終えて、進み出すこととなった。きりんのおうぎもきちんと持っている。

 

「では、行きましょ……ん?エルくん、それはあなたの荷物ですか?」

 

「へ…?」

 

荷物は持っていなかったはずだ。見覚えのない袋があるのが見えた。どういうことかと思いながら袋へ近寄り、中身を覗く。

 

中にあったのは、黄金に輝く実が7つ。洋梨に近い形をしているが、全くもって別物。

これを()は知っている。天使界の世界樹に成る奇跡の実。口にしたモノの願いを叶える、天使たちの悲願だった実。

 

 

 

 

 

─────『女神の果実』。

 

 

それは、もう無いはずだ。いや、そもそもこの世界に存在するはずも無い。しているはずがない!

例外の実も、私を追い詰めるために「奴」が使ったはずだ。なら、これはどういう……?

 

「エル?おい、どうしたんだ?」

 

ポップに声をかけられて我に返る。慌てて袋を括り、持つ。

 

「あ、いや……自分の荷物、てっきり無くなったと思っていたからビックリして……」

 

「ならいいんだけど……」

 

「2人共〜!日が落ちる前に森をぬけますよー!」

 

女神の果実については歩きながら考えよう。とにかくと思い、先生の方へと向かう。

 

 

─────

 

 

数時間歩いて、森を抜けると草原へ出た。海も比較的近いらしく、潮風が吹いてくる。

少し先に村か集落かが見える。今回の目的地はそこだそうだ。

「風がしょっぱい……」

 

「海が近いですからねぇ。これから行く村は塩漬けの魚が美味しいんですよ?」

 

「魚!」

 

「そういえば最近、肉ばかり食べてましたから、魚は久しぶりになりますねぇ」

 

「あの……興味で聞くのですけど、先生とポップってどのくらい森に居たのですか?」

 

「んー……どのくらいでしたっけ?ポップ」

 

「えっ?!えーっと……4日くらい?」

 

4日くらい肉ばかり食ってたらしい。そりゃあ魚食べたくなるよね。

 

「エルくんはどうです?魚好きですか?」

 

「え、あ、はい。自分、スシとか好きですよ。」

 

「スシ……ああ、遥か極東に存在すると言われている島国に伝わるという料理ですね。珍しいものが好きですね?」

 

先程から『エル(くん)』と言われているが、これに関しては「エルギオスと呼ぶのは長い」という話から、こう呼ばれることとなったものだ。悪くないけど、ちょっとこしょばい。

尚、ポップとは敬称なしの互いに呼び捨てで行くということで同意した。

 

で、村について宿をとり、荷物を置いて砂浜へ来た。

ちなみに自分の荷物に関しては小さな袋のようなものなので、自分で持っている。質量保存の法則とか無視してんのかな、この袋。

 

「んーー、潮風がいい匂いですねぇ!そう思いませんか?ポップ、エルくん?」

 

一足先に来ていた先生がラジオ体操に近い運動をして待っていた。

 

「えっと……先生?」

 

そう声をかけると、先生は体操をやめてこちらへ向き直った。

 

「道中詳しく聞きましたが、エルくんは呪文の使い方が分からないのですよね?何を使っていましたか?」

 

「は、はい。バギ系とメラ系を使っていた記憶はありますが……」

 

「ふむふむ……そ!こ!で!魔法の使い方を思い出そう作戦です!」

 

「「作戦??」」

 

自分もポップも同時に首を傾げた。

 

曰く。『使っていた記憶があるなら、何かの拍子に思い出せるかもしれない。だから色々試す』のだそう。

太陽はまだ真上手前。時間はある。

 

 

作戦一、お手本。

 

 

「魔法の使い方は、根本的にはほとんど同じです。例外はありますが、実際に見れば思い出す……かもしれません!」

 

と、言うことで。まずはポップが魔法を使っているところを見せてもらうことになった。特にメラ系は彼の得意分野だから、ちょっと希望は見える。

 

「……ってことらしいから、頼みます。」

 

「出来ますよね、ポップ?」

 

「もっ、勿論ですよ!エル、見とけよ!」

 

用意された的へとポップが向き、魔法の杖を向ける。片手サイズなのでスティックか。

 

「メラゾーマ!」

 

ゴウ、と音を立てて大きめの火球が的へ飛ぶ。石製の的は燃え上がる。

 

「どうですか?」

 

先生に言われたものの、こう、分かるような分からないような。

というか、そもそもにおいて使い方が違うような気がする。

ポップはほぼ無詠唱で魔法を放っているのだが、こう……ドラクエシリーズだと、あの「テレレレテン」という効果音の後に魔法が使われている。つまり、何かしら詠唱を挟むのだ。

 

「うんと……そもそもにおいて、使い方が違うような?」

 

「ほう、使い方ですか?」

 

「はい。なんか……」

 

説明しにくいため遠回りしつつも、何とかして2人へ説明する。テレレレテンとかどう表現すればいいんだ。と、かなり苦戦した。

 

 

で、それを踏まえての作戦二。再契約。

 

「もしかしたら契約が消えてる可能性もありますからねぇ。まずはバギ系と契約してみましょう!」

 

 

契約って消えるの?とか思ったが、そこは突っ込まない方がいいだろう。

 

半裸になり、サササッと用意された契約の魔法陣の上に乗る。魔法陣が光ったかと思えば、ふわっとした感覚に襲われる。

 

「契約成功ですね。」

 

「えっ、今ので成功なんです?」

 

「そうですよ?」

 

謎の沈黙。とりあえず服を着る。

ポップから「まさか契約を知らないのか、お前……?!」と引かれた目で見られたがスルー。

 

 

「で、は!エルくん、とりあえず使ってみましょうか!」

 

「は、はい?!」

 

海へ向かってバギを撃ってみてくださいと言われる。いや、その撃ち方が微妙なんですよ先生?!

 

とは思うものの、何かしら変わったかもしれないしなぁ…と思いながら、きりんのおうぎを構えて海の方を向いてみる。

そう、イメージするのは常に最強の自分だとどこぞの赤い人は言っていた。なら、できると思えば多分できる、気がする!

 

ひとつ息を吸い、扇を開くと同時に叫ぶ。

 

「"バギクロス"!」

 

途端、海の方へと強烈な風の刃が吹き抜けた。特にXの形に重なった刃は、海をその形に切り裂いた。無論、海なのですぐにもとの形に戻るが。

 

そう、できちゃった。バギクロス、いきなりできちゃったのである。というか自分はどうして突然上位の魔法を使おうとか思ったんだ?!せめてバギにしろよ数秒前の自分!!これでなんにも出なかったら虚無だぞ虚無!!

 

先生とポップの方を見れば、呆然としているのが見えた。いや、多分先生は正確には呆然としているというかは驚いているという方が正しいのだろう。

 

「えーっと……テヘペロ?」

 

「て、テヘペロじゃねえよ?!エル、お前、バギクロスって?!」

 

「メラゾーマ使えるポップに言われたくは無いな……」

 

「ま、結果オーライってやつですねぇ!」

 

カラカラと笑う先生に毒気を抜かれ、自分とポップは互いに向き合って苦笑いした。

 

その後、その日は瞑想やモンスターについての講義(とは言っても、自分はほとんど覚えていたのでほぼ復習状態である。)があって、一日が終わった。

 

 

魚の塩漬けを使った料理、めちゃくちゃ美味しかった。




更新が!!モチベが!!不定期すぎる!!


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4話[堕天使のたたかう!]

日が微妙に差す程の時間に目が覚めた。外は紫っぽい色の空で、明け方前だということが分かる。

先生やポップはまだぐっすり寝ており、別の部屋からの物音もほとんど聞こえない。

 

とは言っても、寝直すというような眠気はない。寝起きのぼんやり感はあるが。

 

仕方がない。散歩がてら浜辺にでも行こう。

 

念の為、『浜辺で散歩してます』の書置きを残し、女神の果実が入ったふくろを掴むと、2人を起こさないように静かに部屋を出た。

 

 

───────

 

 

ザザーン、ザザーンと波の音。誰もいない浜辺は、なぜだかなんとなく寒く感じる。

 

少し遠くの方にしびれくらげっぽい魔物が浮かんでいるのが見えるくらいで、あとはただただ水平線だ。

 

 

「どうするっかなあ……」

 

つい持ってきてしまった女神の果実のふくろを見つつ、呟いた。「どうするか」。これから、自分はどうするか。今のうちにある程度考えるべきだろう。

 

アバン先生達について行くことは決定事項だが、おそらく自分という存在によって『本編』は違うものになる可能性が高い。いやまあ、あまり干渉しなければ変わらない気もするが……そういう訳にはいかない。見て見ぬふり、知って知らぬフリをしようと言うのは大変なのだ。

 

関わってしまうなら、どう動くか?出来ることなら、何とかしたいことは多い。

 

 

例えば、バランの死。例えば、ヒュンケルの大怪我。例えば…………ダイの行方不明。

 

この先を知っている以上、「何があればどうにか出来る」ということはある程度分かっている。ただ、それが通用するかは別だ。

 

 

だが、俺には切り札がある。一か八かの賭けになるのは間違いないが───『女神の果実』は、本当に賭けになるだろうし使い所も難しいが、正しくJOKERとなり得るだろう。

 

 

しかし、それでも避けては通れないイベントはある。ダイ達が強くなるために必須すぎるイベントだ。

 

まず、クロコダイン戦は俺は絶対に関わらない方がいいだろう。ポップの為と言うやつだ。ヒュンケル戦は……状況次第。だが、これもあまり関われない。

 

直近で最も避けてはいけないものなら──アバン先生のメガンテ。あれだけは、絶対になくてはならない。そして、俺はその場面に立ち会ってはいけない。

 

ならばデルムリン島まで俺が行かない方がいい気もするが、ダイと顔合わせだけはしておきたい。

 

……と、まあ考えるだけ考えたものの、最適解と感情は別物だ。実行するにしても、自分のメンタル管理もしなければ。鬱りそう。

 

 

朝日が昇ってきた。そろそろ宿に戻るべきか……と思った瞬間、風の音と、耳障りな、蛇のような威嚇音が聞こえた。

 

『シャァァァ!』『キシャァァァァ……』

 

「オーシャンナーガ……と、その後ろにレッドサイクロンか!」

 

持ってきていたきりんのおうぎを開き、戦闘態勢に入る。

 

オーシャンナーガとレッドサイクロン。どちらもDQ9の海に登場するモンスターだ。攻撃弱点は、ヒャド系。だが生憎、俺の得意なものはバギ系だ。効きにくかった気がする。

 

ところで、ダイの大冒険の世界にオーシャンナーガは存在しないはずだ。いや、登場しなかっただけという線もあるが、レッドサイクロンなんかは4からの登場なので、魔界のモンスター扱いのはず。そんな魔物が、どうしてこんなところに?

 

とか考えてる場合ではなく、バギマと物理攻撃が飛んできた。紙一重で躱す。

が、その回避先にもう一体のオーシャンナーガのブレスが来た。もうどくの息、だ。

 

息をとめつつバックステップで距離をとる事でなんとかした。スーパーリングがあるため、そこまで怖くはないが。

 

とりあえず反撃と、こちらへ向かってきていたオーシャンナーガに攻撃を加える。いい感じに目元に入ったのか、オーシャンナーガAは後退した。が、状況はそんなに変わらない。

 

すかさず突っ込んできたオーシャンナーガBを回避すると、視界の端でレッドサイクロンがちからをためているのが見えた。ヤバい。

 

「バギクロス!」

 

オーシャンナーガAが復活し、Bと共にもうどくの息を吐いて来たため、何とかするためにバギクロスを放つ。纏めてダメージを与えられた様子だが、無力化は出来ていない。

 

この隙に逃げられるかと思ったものの、レッドサイクロンにまわりこまれてしまった。

 

 

「……どうしたものか」

 

挟み撃ちにされている。バギクロスはそこまで効かない。こうなると、使えるかはさておいてやってみた方がいいかもしれない。

 

そう思い、一息吐くと同時に、最初に飛びかかってきたのはレッドサイクロンだ。いつの間にかテンションもなかなか溜まっている様子なので、くらえばひとたまりもないだろう。

 

だから、『眠らせる』に限る。この三体のラリホー耐性はほとんどない。

 

タイミングを合わせて、レッドサイクロンに視線を合わせる。

 

『あやしいひとみ』に襲われたレッドサイクロンは、突然その場所で眠りに落ちてしまう。

 

よおおおし、使えた!これならなんとかなる!

 

そのままの勢いで、オーシャンナーガ達にもあやしいひとみを掛けて眠らせる。

 

 

「戦闘終了っと……って、コイツら、どうしよう」

 

ぐっすり眠っているオーシャンナーガとレッドサイクロンを見て、どうしようか悩む。

 

 

……と、悩んでいると、声がかかった。

 

「おーい、エルー!……ってててコイツらは?!」

 

「ポップか!あー、襲われたから……?」

 

宿の方から、俺を呼びにポップが来た。

 

「襲われたって……先生からも聞いた事ねぇぞ?こんなヤツら」

 

「眠らせてるだけだから……とりあえず、先生のところに行こ」

 

「その必要はありませんよ」

 

「おっっわ先生?!」

 

先生も来てた。びっくり。

先生はまじまじとオーシャンナーガ達を観察しはじめた。

 

 

「ふーむ……ポップ、エルくん。先に宿で朝ごはん食べちゃっててください」

 

「え?わ、わかりました」

 

 

とりあえず、ポップと共に宿の方へと戻った。




オーシャンナーガと同種のウイングスネークに何度もやられた思い出があります。ウイングスネーク許さない


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5話[堕天使は船その1に乗った!]

朝食を食べていると、先生が戻ってきた。

 

「2人とも、味はどんな感じです?」

 

「え?あ、美味しいです?」

「しょっぱくて自分は好きですね」

 

同じテーブルに先生も座り、改めて朝食。先生の料理はたまたま塩の塊が多いところに当たってしまったらしく、しょっぱさに驚いていた。

 

少しして朝食が終わり、宿をチェックアウト。ここからパプニカへと向かうらしい。

 

 

「海の方から向かいますから、船に乗りますよ!」

 

「船、ですか?」

 

「ええ、その通り船ですよ、ポップ。丁度、この村からパプニカへ向かう船が出るみたいでしてね、一緒に乗せてもらえることになったのですよ!……エルくん、どうしました?」

 

「あ、いえ……船に乗るのは初めてなので、船酔いしないか不安なだけです」

 

「それならダイジョーブですよ!特製の酔い止めがありますからね」

 

「なるほど??」

 

「大丈夫なの?」と言う意味を込めてポップに視線をおくれば、なんとも言えない視線が返ってきた。不安だが、まあ、先生だし……?

 

 

とまあ、なんだかんだと少しの買い物を済ませ、船に乗り込んだ。

 

 

────

 

 

船はいわゆる木造貨物船なのだが、造りとして似てるものを上げるならば7の主人公のフィッシュベルのほうの父親が乗っていた漁船か。あれを大きくした感じ。

 

個室は無いが、一応食堂的な部屋はあるので、自分達はそこにいた。

 

いや、最初は甲板に居たのだが、船が揺れた時に自分が落ちかけたので中に入ることになったのだ。ごめんよ先生、ポップ……。

 

 

後、先生から「話を聞きたい」と言われた。そのためにも座っている。

 

「……それでですね、エルくん。あの魔物についてですが」

 

「オーシャンナーガとレッドサイクロンですか?」

 

「よく名前を知っていますね。私も初めて見たのですよ?」

 

「あーいや、故郷の浜辺で見た事があるので……」

 

オーシャンナーガはともかく、レッドサイクロンは地上にも出たはずだ。大丈夫、嘘は言っていない。

 

「なるほど。それで、対処法が分かっていたということですね?」

 

「そ、そうですね。彼ら……というか、海近くの魔物は基本的にラリホーやヒャド系が効きやすいんです。自分はヒャド系使えませんけど……」

 

先生が「ふーーむ」という顔をしている。情報を整理しているのだろうか。

 

「オーシャンナーガとレッドサイクロンでしたね?彼らについてエルくんが知っている事を聞いても?」

 

「えっ?わかりました」

 

とは言っても、ラリホー耐性とか生息域とかそんなのしか話せることはないのだけども。

あ、でも下位のウイングスネークとその近くの祠の話くらいには持って行けるかな?

 

 

────

 

などと話ている間に、パプニカ……の、近くの港町に着いたらしい。船頭さんから声がかかり、船をおりる。よかった、途中から、3人でオーシャンナーガの丸焼きの議論になろうとしてたところだったし。とりあえず自分は今のところ、オーシャンナーガは魚っぽい味だと思う。

 

船の人達にお礼を言って降りる。

 

あたりを見回せば、遠くの方に塔の影が見える。バルジ島かな、あれ。

 

「さて、2人とも。ここから少し歩けばパプニカ城下街ですよ。張り切って頑張りましょう!」

 

「あの、先生?パプニカに来たのはいいんすけど、どうしてパプニカなんです?」

 

「まあ色々ありましてね。さっ、早くしないと日が暮れちゃいますよ。現地に着いたら、まずは宿を取りましょうね」

 

そんなに時間はかからないとの話。まあ、一応少し向こうに街並みが見えているので、これで時間がかかったら困る。

 

 

 

事実、本当にかからなかった。30分歩いたかな?程度である。道中見かけた、お昼寝してるスライムの群れが可愛かったことくらいしか特筆すべきことは無かった。

 

城下街に入って3つ目の宿をとった。1つ目の宿はごった返しすぎていて、2つ目の宿はカラコタ橋の店並みにぼったくり商店だった。で、3つ目の宿はちょうどいい感じだったのだ。まさか2つ目の宿で『1泊1人1000ゴールド』とかいう値段を見るとは思わなかった。

部屋に荷物を下ろす。

聞けば、とりあえず今日はもう夕刻なので一旦休み(時間の流れって早いよね)、明日は自分とポップは城下街で物資の買い物、先生はちょっと用があるらしい。それが終わったら、ロモスへ向かう船に乗り、そこからとある島に向かうらしい。

 

……ん、島?島って……

 

「その島って、もしやデルムリン島……?」

 

「おや、知っていましたか?ええ、そうです。色々ありましてね。まあ、ちょっと長旅でまた船に乗りますが、なんとなるでしょう」

 

「色々が多いですね、先生……」

 

そっかあ!もうそんな時期なんだね!早いよ!!!早すぎるわ!!!

 

と、なると。取れる行動が虚無になるぞ……?いやまあ、何年も前から準備するというのはそんなに得意ではないというかあれだけど。

 

デルムリン島に行くのまではいいが、うーん……頭が回らない。展開が早すぎるし時間が無さすぎる。

考えながら食べてたせいで、スープをちぎってパンをスプーンで飲もうとしてしまった。あつい。

 

うん、考えるの後にしよ。とりあえず明日、余ったゴールドで好きな物買っていいとは言われてるから、キメラの翼でも売ってたら買おう。




グダグダしてきたので、次一気に進めます。申し訳ない( ˇωˇ )


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6話[堕天使は上陸した!]

「やくそう2ダース」

 

「買った」

 

「せいすい3つ」

 

「買った。オマケでやくそうもらった」

 

「砥石と包帯」

 

「買った。軟膏とセールのやつ」

 

「よっし、これで全部だな!」

 

買ったものを確認し、残ったゴールドを半分に分ける。

後でこの場で落ち合うことにして、一旦それぞれ用のある店の方に向かう。

 

 

キメラの翼はこの世界ではあまり流通してないらしく、見つけたのは裏路地の怪しげな商店だ。

恰幅の良い、フードを深く被った男が店主らしく、大きな水晶玉が目印。

 

「おやおや、いらっしゃいませぇ……何をお探しで?」

 

「キメラの翼を」

 

「はぁいはい!ございますよ、ええ、ございます!一枚500Gでございますが如何致しましょう?」

 

たっっっっっっか!いや、流通的にかなり高いのは覚悟していたが、2枚買ったら手持ちが消えるぞこれ。

 

まあでも、持ち物を売るわけにもいかないし、一枚だけでもなぁ……仕方ない。

 

「2枚貰おう。足りるか?」

 

「ひぃふぅみぃ……はぁい!十分でございます!使い方は……」

 

「分かっているからいい。感謝する」

 

キメラの翼を受け取って袋に突っ込むと、足早にそこから立ち去る。なんだかこう、モンスターズに出てきたあのコレクターみたいな雰囲気の店主だった。

 

 

と、路地を出たところで丁度先生達が見えた。合流し、そのまま港町の方へと向かうこととなった。

 

────

 

そして今。

 

「えっほ、えっほ、」

 

「んしょ、よいしょ……」

 

「2人とも、このまま面舵いっぱいですよー!」

 

小舟を漕いでいた。どうして……と思うだろうが聞いて欲しい。

 

パプニカ発ロモス行きの船に乗った自分達は、途中乗り込んできたマーマンを優しく吹っ飛ばすくらいのアクシデントはあれど、無事ロモスへと着いた。乗組員のホイミスライムが可愛いのは覚えておこう。

 

それでロモスに着いて、古道具屋を覗いてから1泊、船を借りてデルムリン島に行くことになった……のだが、生憎今ある船が手漕ぎの小舟しか無かったのだ。そのせいで、えっちらおっちら漕いでいくしかなかった。

 

まあ、たしか本編でも2人は小舟を漕いで行っていたし……間違ってないのか?

 

バギクロスでターボ出来れば楽なんだけどな……多分転覆しそうなんだよなぁ。

 

 

それに、空模様も島に近付くほど怪しくなってきている。確か、この時点でハドラーがよみがえって、不死騎と氷炎が動いていたはず。オーザムは申し訳ないが、リンガイア陥落までにはまだ時間がある。

 

 

 

「曇りすぎているような……」

 

「ですねぇ。大変なことになっているようですよ。ポップ、エルくん、急ぎなさい」

 

「「はい、先生」」

 

船を漕ぐ手を早める。キーコキーコとオールの音と共に進む。海流に乗れているのか、割かしスピードが出る。

 

近付けば、きめんどうし……ブラスが、ダイに島を出るように言っているのがかすかにきこえた。その後ろから、モンスターの大群が迫ろうとしている。

島はもう目前だ。

 

「急げっ、ダイ!」

 

「いやだっ!!」

 

 

砂浜に小舟が着く。

 

「――――じいちゃんやみんなを置いておれひとりだけ逃げるなんてできない!そんなの、勇者のすることじゃないよ!!」

 

「…ダイ……!!」

 

「その通り…いいことを言いますね君は……ダイ君!」

 

船から降りた先生が言う。ダイが「なんでおれの名前を?」を言っているが、先生はそれを軽く受け流しつつ、鞘に入った剣を軽く地面に突き立て構える。

 

「ほ~~~~~~っ!!チョ~~~~~~~~~~!」

 

そのまま真っ直ぐにモンスターの群れに先生は突っ込んでいく。流石に大丈夫か?!と思うのはダイも一緒だ。

 

「ああっ、あぶない!!」

 

 そう言うダイをチョイチョイとポップがつつく。

 

「心配すんなって。先生はすげえんだから……!」

 

「先生?」

 

漫画ではここでセリフが終わって、先生がちょええ言いながら大爆走するシーンなのだが、自分もいることを忘れられてはたまったもんじゃない。

 

「ああ、自分達の先生なんだ」

 

「先生……」

 

 と、そうこうしているうちに先生が戻ってきた。途中でピオラでも使ったのかと思うほどの速度だ。

 魔法陣の終端をつなぐと、一息。

 

「ふう。邪なる威力よ退け。むううううっ!!”マホカートル”」

 

 詠唱と共に、島が聖なる結界に包まれる。暴れていた魔物たちも正気に戻り、その様子にダイとブラスは驚く。

 

「あなたは一体……」

 

「これは申し遅れました。私……」

 

 先生が懐から巻物を取り出して広げる。

 

「こーゆー者でございます」

 

「「はあっ!?」」

 

うん、まあそりゃそんな反応になるよね。だってレイアウトが怪しい家庭教師派遣会社の広告みたいだもの。

 ちょくちょく思うけど、先生、若干普段のセンスがあれなのでは……?

 

「アバン・デ・ジュニアールⅢ世、勇者育成職業……ま、平たく言えば家庭教師ですな」

 

「「家庭教師ィ!?」」

 

「そう、正義を守り悪を砕く平和の使途!勇者、賢者、魔法使い……!!彼らを育て上げ超一流の戦士へと導くのが私の仕事なのですっ!!」

 

 先生の眼鏡がキラリと光る。ブラスがじゃっかん引き気味に「はーー~」というのは悪くない。勢いがすごいのだ。

 

「これは弟子のポップとエルくんです。現在それぞれ、魔法や武芸の修行中の身であります」

 

 ポップが照れ気味に軽く頭を下げるのを見て、自分も軽く会釈をする。

 そこから、先生は魔王が復活したことを伝え、ロモスやパプニカのことも伝え、ダイにどうするかを尋ねる。しばらく自分たちは黙る。

 

 

「――――おれを鍛えてください!そして本当の勇者になって……魔王を倒すっ!!」

 

「よろしいっ!では……この契約書にハンコを……!」

 

 契約書を取り出した先生。ズベっとコケるダイとブラス。その様子を自分とポップは「またか……」という感じで見ていた。

 

 

 と、そんなところに飛来してくる影が二つ……あれ、四つ見えるんだけど?

 

「ガーゴイルだっ!」

 

 

「ケケケー!人間だ!!人間がいたぞ!!」

 

「殺せ殺せ!!キイイイッ!」

 

「ケケッ、皆殺しだァ!!」

 

「ケァーケケー!」

 

 と、勢いよく飛んでくるものの、先行していた一匹が結界にぶつかり「グエッ」となる。なんだこりゃ!?と騒ぎ立てるガーゴイルたちを見ながら、先生。

 

「どうやら魔王の偵察隊のようですね。ポップ、エルくん、あいつらをやっつけちゃってください」

 

「ええーおれ達だけでですかぁ~」

 

「まあ、先生は破邪呪文使って疲れてるだろうし、仕方ないと思うな……自分もやるからさ」

 

「その通り、ベリーベリー疲れているのです」

 

「ちぇ~っ。ずりィな先生」

 

 先生に押されて結界の外に出る。すると、ポップは大声でガーゴイルに挑発をかける。自分も便乗するとしよう。

 

「おい、カラス野郎!おれ達が相手してやるからおりてこいっ!!」

 

「それとも、飛ばなきゃ子供二人をやれないとか、そんなわけないだろうな?」

 

 自分の年齢については突っ込まないでほしい。堕天使だし、かなり年くってはいるが、見た目だけなら若干年上にしか見えないし、せーふせーふ。

 

「こ、このガキがあっ!」

 

「笑わせてんじゃねーーー!」

 

「ケケケーー!」

 

 一匹はポップの方へ、二匹は自分の方へと来た。ポップは杖を構え、自分はきりんのおうぎを構える。

 

「”メラゾーマ”!!!」「”バギクロス”!」

 

「グワワっ?!」「「グアァァァァァ?!」」

 

 焼き鳥とブツ斬りの鳥肉が完成した。マズそう。

 

「き……貴様らァっ!」

 

「へっ、今度はおまえをヤキトリにしてやるぜっ!」

 

 煽るポップに向かって突っ込んでくるガーゴイル。その剣で切り裂こうとするように見えた……が、口からなんかもわんもわんした光線を吐いてきた。マホトーンだ……って待て待て、その軌道は自分も巻き添えにあばばばば

 

「あぐっ……あぐう!!」「もごもご……」

 

「ケケケッ……見たか!」

 

「あぐっ、やっやばい……!」

 

「もご……まきぞえもご……」

 

 「マホトーンが得意だと教えたでしょう?」という先生めがけ、「まとめて葬ってやる」と息巻くガーゴイルがくるが……剣は、ダイの持つパプニカのナイフによって受け止められた。

 

「魔王の手下めぇ……この島から出て行けぇっ!」

 

「ゲッ!!」

 

 ガーゴイルの腹に拳が決まる。それによってよろけたところに、剣戟……ナイフ戟?が始まる。

 いい感じに応戦していたが、ナイフが弾き飛ばされてしまう。

 

 「あぶない!」と飛び出そうとしたポップを先生が止め、ダイのほうへと「由緒正しき伝説の剣(古道具屋の10Gの剣)」を投げ渡す。

 

 

 弾き飛ばされたナイフの代わりに、ダイはその剣を使い……斬った。

 いや、一瞬だけは何事もなかったかのように見えた。しかし、一瞬ののち、ガーゴイルは背後の海もろとも割れたのだった。

 

 

「やった……やったぞおっ!」

『ピピィ~~~!』

 

 

「さっすが、先生の剣の威力(パワー)はすごいですねえ」

「う~む……」

 

 喜ぶダイと魔物たち、先生の由緒正しき伝説の剣(古道具屋の10Gの剣)をほめるポップ、「すごい逸材を見つけてしまった」といわんばかりの表情の先生。

 

 

 この状況を長く続けたいが、そうもいかない。ここから、タイムリミットが始まるのだ。

 そう思うと、なんだかいわれもない寂しさが心の片隅を撫でていったような気になった。




 一気に飛ばしました( ˘ω˘ )漫画を見つけて読みながらテンション上げて書いていました。たのしい


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