怪獣娘×令和ウルトラマン クロスオーバーユニバース (特撮恐竜)
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怪獣娘×ウルトラマンタイガ
バディゴー!(前編)


初投稿且つ試験作になります。

他の方の小説と比べたら、残念な面も目立つと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

最凶獣『ヘルベロス』登場


ウルトラマン、それは宇宙の平和を守ってきた光の巨人の名前である。広い様々な宇宙の中で特に地球では様々な怪獣や宇宙人が現れ、地球人に脅威を与えてきた。彼らが現れた地球ではその脅威を退いてくれた英雄として知られている。

 

そんなウルトラマンが遠い宇宙の果てで、地球人が知ることがない戦いがあった。

赤い2本角のウルトラマンと青い1本角のウルトラマンと銀と赤と黒のカラーリングでOの字のカラータイマーのウルトラマンが光線を青い巨人に放つが、青い巨人は笑いながらそれをよける。

 

「フハハハハハハ、ハハハハハハ、ハーッハッハッハッハッハ!!」

 

またメカニカルなカラーの胸にXの字になったカラータイマーのウルトラマンと目つきの鋭く、両腕にヒレのようなものがあるウルトラマンも光線を放つもそれも笑いながらよけ、腕から光線を放つ。二人のウルトラマンはそれをよける。

 

その時、青い巨人は飛んだ先で黒が目立つ銀と赤の黒のカラーリングで額にV字のクリスタルと胸にV字のカラータイマーのウルトラマンと額、耳、胸部、両肩、両腕、両脚にクリスタルをつけた赤と銀のウルトラマンの拳で下にあった小惑星に叩き付けられた。

 

7人のウルトラマンが小惑星に着地し、叩きつけられた青い巨人にクリスタルが全身のあちこちについた赤と銀のウルトラマン『ギンガ』が言い放った。

 

「トレギア、もう諦めろ!お前の野望はここで終わりだ!」

 

7人のウルトラマンたちが『トレギア』と呼ばれた黒い仮面の青い巨人に向かってファイティングポーズを構える。しかし、トレギアは余裕そうに言い返す。

 

「そいつはどうかな、ウルトラマン達よ。では、ごゆっくり。」

 

トレギアは飛び立っていく。ウルトラマン達はそれを追おうとするが、小惑星のあちこちで赤い光が灯しはじめる。

 

「しまった!罠だ!」

 

トレギアは爆弾を小惑星に仕掛けていたのだ。ウルトラマン達は脱出しようとするも間に合わず、大爆発に巻き込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああああっ、なんだ、また夢か・・。」

場所は変わってどこかの宇宙の地球で一人の少年が目を覚ました。

 

少年の名前は白鳥ヒロキ、先日、神戸から東京へ引っ越してきた少年だ。

彼はこの1か月間、ウルトラマン達とトレギアと呼ばれる巨人が戦う夢を見ていた。

最初の頃はウルトラマン達もおぼろげだったが、今日ははっきりと見えてきたのだ。

 

「どうしてウルトラマンが、それにあのトレギアってやつは一体・・・。」

「ヒロキーッ、朝ごはんよ。」

「今行くからちょっと待ってて。」

 

 

 

ヒロキは今日から通う高校に向かっていた。夢にでできたウルトラマン達の事を考えながら。

 

「昔、お爺ちゃんから聞いたウルトラマンはあんな感じじゃなかったよな。詳しいわけじゃないから分からないけど、どのウルトラマンも見たことないし。なんでこの1か月、あんな夢を見るんだろう。」

 

昔、この地球でも怪獣や宇宙人の脅威があった時代があった。怪獣と人間が戦った第一次大怪獣時代と呼ばれたその時代は宇宙からやってきたウルトラマンの助太刀により、人類側が勝利した。

ヒロキの祖父はかつて第一次大怪獣時代を生き、あるウルトラマンとよく出会っていたため、よくウルトラマンの話をしていた。

しかし、ヒロキの夢に出てきたウルトラマン達はそのどれとも一致しなかったため、不思議に思っていた。

 

夢のことを考えながら歩くと、一人の少女とぶつかった。

 

「うわっ?」

「きゃッ?」

 

ぶつかった少女は自分と同じ学校の制服を着た、黄土色の髪の外国人の少女だった。

 

「(やばい。大丈夫かな。)あの、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫デス。」

「よかったです。じゃあ、ここで。」

 

そう言って、ヒロキは立ち去ろうとするが、少女に呼び止められる。

少女はヒロキをまじまじと見つめる。

 

「ちょっと待ってくだサイ。どこかで会ったことありまセン?」

 

そう言われて、ヒロキは戸惑う。目の前の少女は本当に一度会ったら、そう忘れることはないくらいの美少女だからだだ。しかも外国人でなれば、忘れるとは思えない。

ヒロキは考えていると、小学校の頃、友達になった外国人の少女を思い出していた。

 

「そう言われても、僕の同い年の外国人の知り合いなんて、・・・あれ、もしかして・・・クララちゃん?」

「え、もしかしてとは思いまシタが、ヒロキ?」

「うん、僕だよ。小学校の頃、家が近所でクラスも6年間一緒だった白鳥ヒロキ。」

「やっぱりそうデシタか! 久しぶりデース、ヒロキ!」

 

少女の名前はクララ・ソーン。ヒロキの小学校時代、家が近所にあり、クラスも一緒だったアメリカ人の少女である。つまりは幼馴染である。

彼女は中学校時代に東京に行くことになり、今まで会っていなかったのである。

会えたのが、嬉しかったのかクララはヒロキに抱き着いた。

 

「ちょっ、ちょっと待って。恥ずかしいし、何より君のファンにばれたらやばいよ。」

「大丈夫デスよ。今は通学か通勤中デス。ワタシに気付く暇はないはずデスよ。」

「僕らも学校に向かっている途中でしょ。遅刻しちゃうよ。転校初日から遅刻なんてカッコ悪いよ。」

「そうデスねって・・・その制服、ワタシの学校に転校してきたんデスよね?じゃあ一緒に行きまショウ。」

 

今、二人は色々なことを話しながら学校に向かっていた。

お互いの中学校時代の話や、東京にきてからのクララの話で盛り上がっていた。

 

「写真集買ったよ。すごいね。かなり活躍してて。」

「本当デスか!嬉しいデース!」

「僕も父さんも母さんも中学校に上がる頃にクララちゃんが怪獣娘だったと知ったときは少し驚いただけじゃなく、心配もしたけどかなり活躍してるようだしね。」

 

怪獣娘、それはかつて地球にいたあるいはやってきた怪獣や宇宙人の魂を継いだ少女の事である。彼女たちは受け継いだ怪獣に近い姿に変身することができ、怪獣によっては凄い力を使えることもあるらしい。

怪獣娘は様々な分野で活躍して、TVで見ることも多く、怪獣娘の格闘大会『大怪獣ファイト』は誰もが知っている。クララも怪獣娘の一人であり、現在ではモデルとして活動している。

 

「おじさまとおばさまは元気デスか?」

「元気にやってるよ。父さんは今でも宇宙開発に専念してる。お爺ちゃんの遺言をウルトラマンに伝えるんだって張り切っているよ。」

「元気そうで何よりデス。今度、会いに行ってもいいデスか?」

「いいよ。」

 

会話をしている間に学校に着いたようだ。ヒロキとクララは一旦分かれた。

 

「じゃあ僕、校長室に行くから。」

「分かりまシタ。それとヒロキ。」

「?」

「今日の午後4時30分に日比谷公園でGIRLSのイベントがありマス。

今日の午後、空いてたら「行くよ。」本当デスか!」

「幼馴染の活躍を生で見たいし、予定もないからいいよ。」

「ありがとうございマス!ヒロキ!」

 

ヒロキはそう言って職員室に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして午後4時15分頃、

 

「やばい、間に合うかな?」

 

ヒロキは会場である日比谷公園に向かっていた。

しかし、時間に間に合うか気にしたのは理由がある。

 

「まさか、クラスもクララちゃんと同じだったとは、しかも幼馴染だって知られることになるとは思わなかったなー。」

 

なんとヒロキとクララはクラスも同じだったのだ。

しかも幼馴染であることを彼女が先生に話したため、彼女に学校に案内されることになったのだが、それが原因でクラスだけでなく学校中の男子に敵視されてしまったのだ。

クララは誰もが振り向く美少女であり、笑顔が眩しく輝くため、学校内でも彼女のファンは多く、ヒロキは彼女のファンから要注意人物にされてしまった。

故に彼女のファンから追い回されてしまった。

 

「走ればまだ間に合うかも・・・。」

 

ヒロキは走れば間に合うと思い、走り出した。

走って5分位たったとき、ヒロキは一人の青年にぶつかってしまった。

 

「あっ、す、すいません。」

「結構さ、少年。」

 

その男は片手に風船を持っており、半分が白、半分が黒のブラウスを着ており、まるでピエロを思わせる青年だった。

 

「何かあるのかい?何やら急いで走っていたようだが。」

「今日、この先にある日比谷公園で怪獣娘のイベントがあって・・・・・。」

「へぇ、怪獣娘の・・。」

「今日、久しぶりに会った幼馴染が怪獣娘で、彼女の活躍を生で見たくて・・・・・。」

「だったら、行くといい。今日という日は君にとって忘れられない日になるだろうからね。」

「はい、それじゃ。」

 

ヒロキは走っていった。

その男は走るヒロキの後ろ姿を見て呟いた。

 

「今日は君にとっても、怪獣娘にとっても本当に忘れられない記念すべき日になるよ。

楽しみにしててくれ。」

 

 

 

 

その頃、日比谷公園ではGIRLSの怪獣娘と職員がイベントに向けて準備していた。

 

GIRLSとは、国際怪獣救助指導組織である。

主な活動内容は怪獣娘の保護やカウンセリング、怪獣娘の研究、怪獣娘が生活できるよう支援する組織である。

他にも、未知なる脅威から人類を守る防衛組織としても活動している。

 

「あーっ、緊張するよーっ!!」

 

そう叫んだのはウエスタンを思わせるビキニのような獣殻に頭に4本の角があるカプセル怪獣の怪獣娘である『ミクラス』である。

 

「大丈夫だよ、お前なら。」

 

ミクラスを励ましたのは鍛え抜かれた太い手足と黄色の獣殻に覆われており、下半身はフリルのような飾りと尻尾の先にはリボンと可愛らしさを詰め込んだどくろ怪獣の怪獣娘『レッドキング』である。

 

「そうですよ、あたしたちだって無事ライブ出来たんすよ!」

「ミクちゃんなら絶対成功させられるよ!」

 

セーラー服にスク水のような獣殻を身に覆われ、背中に翼が生えただだっこ怪獣の怪獣娘『ザンドリアス』と頭に三日月のような角と尻尾を身に付けスク水のような獣殻に覆われた古代怪獣の怪獣娘『ゴモラ』がミクラスを励ます。

 

「そろそろ本番デース。」

「みんな、準備はいい?」

 

暗い茶色の腰まで届く髪に金色の獣殻をまとった宇宙ロボット『キングジョー』の怪獣娘に変身したクララが開始することを伝えにきた。

白と水色の獣殻に水色の髪の分身宇宙人の怪獣娘『ガッツ星人』が皆の様子を聞く。

 

「あたしは大丈夫です。いつでもギターを弾けますんで。」

 

パンクファッションを思わせる獣殻に大きな耳とギターを持った騒音怪獣の怪獣娘『ノイズラー』が答える。

 

「よし、行くか!」

 

レッドキングがそう言うと皆が日比谷公園に設置された会場に向かっていた。

今日のイベントを成功させるために。

しかし、彼女はこの時は気付いていなかった。

今日という日が最悪な意味で忘れられない日になることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、間に合った。」

『本当に来てよかったのか、さっきの男は嫌な感じがしたぜ。』

「またこの声か、いいんだよ。今日は幼馴染の晴れ舞台を生で初めて見れる日だし、約束したからな。」

 

ヒロキは頭の中から聞こえる変な声に対してそう答えた。

実は1か月前からヒロキは頭の中から突然声が聞こえてくることがあった。

最初こそ、曖昧に聞こえたものの、ここ1週間ははっきり聞こえるようになった。

先ほどの青年に会った後、その声に、今日のイベントに来ることを反対されていたのだ。

 

「友達との約束を守るのは当然だろ。」

『そうか・・・。』

 

「みんなーっっっ、今日は来てくれてありがとーーーっ!!!」

 

ゴモラが会場に現れ、イベントに来た観客にお礼を言った。

その後からレッドキングが決めポーズをきめ、ガッツ星人とキングジョーが手を振った。

 

「クララちゃん・・」

 

ヒロキと怪獣娘に変身したクララの目が合った。

キングジョーはヒロキにウインクした。

その瞬間、会場が歓喜に溢れた。

 

「すごい・・。」

 

幼馴染の影響がここまですごいとは思っていなかったヒロキは思わず、呟いた。

 

その後は、ミクラスVSレッドキングの大怪獣ファイトのエキシビションマッチ、ゴモラのトークショーがあった。その際、襟巻と角がついたパーカーのような獣殻をつけたカプセル怪獣『アギラ』がゴモラの無茶ぶりで一発ギャグをやらされたりした。その後、ザンドリアスとノイズラーの組んだバンドのコンサートも行われた。

そして、キングジョーの握手会が始まった。

ヒロキの番がいよいよ回ってきた。

 

「いよいよか・・・。」

 

そんな時、晴天だった空に黒い渦のような雲が発生した。

 

「何だ、あれ。」

 

怪獣娘達も黒い雲を気にしていて、有事に備えていた。

彼女達は、ある人類の脅威とも戦っているため、警戒態勢に入っていた。

 

 

 

 

その頃銀座の高いビルから日比谷公園をみている男がいた。

ヒロキとぶつかった男だ。

 

「いい盛り上がりだ、怪獣娘の皆。では私からも贈り物を。」

 

 

「・・・・・・・・ヘルべロス・・・・・・。」

 

男が風船を手放すと同時に呟いた瞬間、雲から赤い光弾が降ってきた。

それらは銀座の町に降り注ぎ、建物を破壊する。

 

「何だ、何が起こっているんだ!?」

 

誰かがそう言った瞬間、雲から何かが落ちてきた。

 

 

 

それは腹と背中の部分が赤いカラーで目立ち、全身のあちこちに刃物のような突起が生えた60mはある怪獣としか言えない生物だった。

怪獣の名は最凶獣『ヘルベロス』、宇宙に名を馳せる凶悪な怪獣だ。

地球から絶滅したはずの怪獣が再び地球に現れた。

その時、人々は思い出した。怪獣の恐怖とその脅威的な力を。




次回はタイガ登場です。

感想、お待ちしてます。


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バディゴー!(後編)

後編となります。
原作とほぼ違う上、長くなってしまいましたが見て頂けると嬉しいです。


「嘘だろ・・・、あれって。」

 

『グオオオオオォォォォォッ!!!!!』

 

「ほ、本物の怪獣だーーーーーーーっ!」

「逃げろーーーー!!」

「皆さん、落ち着いてください!」

「係員がいますから、彼女達の指示に従って避難してください!!」

 

町に現れた本物の怪獣に怯え、逃げ惑う人たち。

日比谷公園に来ていた人々をGIRLSの制服を着た職員とアギラと眼鏡を掛けた銀色のメカニカルな獣殻に覆われたカプセル怪獣の怪獣娘『ウインダム』が誘導する。

そこにミクラスが合流した。

 

「アギちゃん!!ウインちゃん!!」

「ミクちゃん!ボク達と合流して大丈夫!?」

「うん、あっちは先輩達が対応してる!あれってどう見ても・・・・、本物の怪獣だよね?」

「そうだと思う。あんなに大きいし、口から火球を吐いてるし電撃を角から出してるし。」

「あれが本物の怪獣・・・。初めて見ました。」

 

3人は口から火球を吐きながら、銀座の町を破壊する怪獣『ヘルべロス』に視線を向ける。

大抵の怪獣娘にとって怪獣はGIRLSの記録映像でしか見たことがなく、直接見るのは初めてである。

そんな3人の『ソウルライザー』怪獣娘の変身を安定させ、暴走を防ぎ、携帯としても使えるデバイスに通信が入った。

 

 

 

 

場所は変わって、GIRLS東京本部司令室にて左右に分かれた赤く長い髪の風船をつけた友好珍獣の怪獣娘『ピグモン』が3人に通信をしていた。

 

「無事ですか!?アギアギ、ミクミク、ウインウイン!!」

『3人とも無事です!それよりもピグモンさん、・・・。』

「本物の怪獣が現れたことは把握しています!現場はどうなっていますか!?」

『怪獣が吐いた火球で多くの建物が破壊されました!今日のイベントに来た人たちは無事です。でも、どうして本物の『待ってください、怪獣の背中が赤く光ってます!』、ガッツ、レッドキングさん、ゴモたん、キングジョーさん、みんなーっっ!!!!』

『アギアギ!?ミクミク!?ウインウイン!?レッド達に何かあったんですか!!?」

『怪獣に立ち向かって、ごめんなさい、みんなを助けないと!!』

「アギアギ!?・・・アギアギ!?・・・・・アギアギーーーッ!?」

「みんなに何があったの!?」

 

黒が混じるピンクの長い髪とアンテナのような角と長い尻尾がつき、白と黒の獣殻に覆われた宇宙怪獣の怪獣娘『エレキング』がピグモンに聞く。

 

「レッドたちが怪獣に向かっていって、・・・・・・かなり最悪な状況になっています。」

「マガバッサーとマガジャッパを連れて、私も向かうわ。」

「お願いします。エレエレ。」

 

そう言って、エレキングは指令室を出ていった後で、ピグモンは呟いた。

 

「どうして、今になって本物の怪獣が・・・。ダメダメ、ピグモンがしっかりしないと・・・、皆さんどうかご無事で・・。」

 

時間を遡って、日比谷公園ではヒロキがヘルべロスに視線を向けて立ち続けていた。

 

「あれが本物の怪獣・・・。嘘だろ。あんなにデカいのか。」

「・・・ちょっと君。」

「でも、どうして、怪獣はもうとっくの昔に。」

「ヒロキッ!!」

「クララちゃん、何!?」

「何じゃないデス!!なんで立ったままなんデスか!?早く避難してくだサイ!!他の客はもう避難しまシタよ!!」

「えっ・・?あっ・・。」

 

ヒロキはキングジョーの声で周りを振り返ると、すでに会場にいたレッドキング、ゴモラ、ガッツ星人、そして怪獣娘の幼馴染しかいないことに気付いた。

他の客に加え、ミクラスとザンドリアスとノイズラーも会場の警備をしていたアギラ達もいなかった。

 

「ごっ、ごめん。」

「怪獣が気になるのは分かるけどよ、自分の命は大切にしなきゃ駄目だぜ。」

「怪獣は私たちに任せて、君は避難所に行って。」

「折角、会えたのにこんなところで幼馴染と永遠の別れは嫌デスよ。」

「分かった・・・って皆さんは・・?」

「決まってんじゃん。あの怪獣と戦う。」

「マジですか!?」

 

ヒロキは驚いた。彼女達には戦わなければならない人類の敵がいることがヒロキもニュースを見ていたため知っていた。

しかし、今回はその人類の敵よりも更に脅威的である。いくら彼女達が怪獣の力を持っているからって戦えるような相手ではと思った。

 

「本気デス。戦わなければ、大勢の命が危ないデスから。」

「相手は本物の怪獣だ!!クララちゃんにいくら強力な怪獣の力があるからって・・・相手が悪いって!!」

「大丈夫デス!幼馴染のワタシを信じてくだサイ!!」

 

他の3人もヒロキに声をかける。

 

「キングジョーなら大丈夫だ。怪獣娘だからな。」

「君はおジョーの幼馴染なんでしょ?だったら幼馴染の君が信じてあげなきゃ。」

「そうですけど、あれ、なんで僕とクララちゃんが幼馴染だって知って。」

「さっきの会話聞いてりゃ分かるよ。ワタシたちは頑丈だから心配しないで。あっ、おーい、ザンちゃん、ノイちゃん!!」

 

他の客の避難誘導をしていたザンドリアスとノイズラーがやって来た。

 

「どうしたんスか、先輩達?」

「ちょうど良かったデス。ワタシの幼馴染をよろしくお願いシマス。」

「了解です・・・・・って、この人キングジョーさんの幼馴染なんですか!?」

「ハイ、今日久しぶりに会ったんデス。」

「災難でしたね・・・・楽しいイベントのはずだったのにこんな形になって・・・・・。」

「ザンドリアスちゃん、ノイズラーちゃん、ヒロキをお願いシマス。」

「ハイ!!」

 

彼女達は怪獣に向かっていった。ヒロキと二人の怪獣娘はそれを見送っていた。

 

「ほら、早く行きますよ!!」

「ししょー達は強いから大丈夫ですよ、それにあなたの幼馴染は強い、あたし達はすぐそばにいたから知っています!!無事だと信じましょう。」

「・・・そうだよな・・・。僕が信じなくてどうする・・・。」

 

呟いてヒロキは避難所に向かっていた。

 

 

 

 

「まずは、その口を封じないとね。」

 

ガッツ星人が分身して、ヘルべロスの頭に光線を放つ。その光線は対象を捕縛できる拘束光線だ。

火球を吐かせないために口を封じる作戦に出た。

続いてキングジョーの腰の一部のパーツが分離して、光線を放つ。

 

「オラァッ!!!」

 

レッドキングがヘルべロスの頭に拳を叩きつける。

ゴモラは尻尾を叩きつけヘルべロスを攻撃する。

しかし、

 

『グオオォォォッッ!!!」

 

ガッツの拘束光線はいともたやすく破られる。

 

「私の光線が効かないなんて。」

「この間のガタノゾーアの怪獣娘と同じくらい、いや、それ以上だぞ・・・・・これは。」

 

ヘルべロスは自分に向かってきた小さき者たちをまとめて始末しようと考えた。その背中を発光させ、背中の刃状の背びれから無数の光弾が発射された。

最初に銀座に降り注いだ光弾の雨と同じものが彼女達に襲いかかった。

 

「「「「なっ!!?」」」」」

 

流石にこれは避けられない。そう感じた彼女達はせめてと腕で頭を守った。

しかし、光弾の雨は彼女に降り注がなかった。

彼女達の頭上を透明なバリアが守っていたからだ。

 

「ゼットン・・・・・・。」

 

黒い獣殻に覆われ、額に黄色い水晶がついた宇宙恐竜の怪獣娘『ゼットン』が張ったバリアに守られていたからだ。

 

「すまねぇ、助かった。」

「・・・遅くなってごめんなさい・・・。」

「大丈夫・・・、とは言えないな。これはかなりやばいよ・・・・。」

 

ガッツがそう言って、目の前の怪獣を見る。

ヘルべロスはまだ余裕といわんばかりに吠え、暴れている。

口から火球を吐き、背中から光弾の雨を降らせながら。

 

『グオオオォォォッ!!!!!』

 

 

 

 

ヒロキは避難所で怪獣と怪獣娘の戦いの様子を見ていた。遠くから見ても不利な状況だと分かった。

 

「クララちゃん・・・・・・。」

 

怪獣に立ち向かっていった幼馴染を考えたとき、

 

「健一ーーっ!?どこーーーーっ!?」

 

自分の母より10くらい下の女性が叫んでいるのを聞いた。周りの人たちが声を掛ける。

 

「どうしました?」

「小学生の息子がいないんです!!」

「何だって!!」

 

その会話を聞いた瞬間、ヒロキはその会話に割って入った。

 

「僕が探しに行きます!その子の特徴を教えてください!」

「君、本気か、怪獣が暴れているんだぞ!?」

「だからって、このままにしていいわけないじゃないないですか!!お子さんの特徴を、早く!!」

「えっ、オレンジのパーカーにリュックサックを背負っていて、リュックにはレッドキングのキーホルダーをつけています。名前は健一です。リュックに名札があるからすぐに分かるはずです。」

「分かりました。探してきます。」

 

ヒロキは外に飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

「こいつを食らいやがれ!!!」

 

レッドキングが怪獣に破壊されたビルの一部を頭に叩きつける。その体はヘルべロスの攻撃で傷だらけだった。レッドキングだけじゃない、ゴモラ、ガッツ星人、キングジョーもだ。

口からの火球と角からの電撃は避けやすいが、背中の突起から放つ光弾は雨のように降り注ぐ。

直撃を避けても、まわりに着弾した衝撃波や爆風に巻き込まれてしまうからだ。

それらが怪獣娘に確実にダメージを与えていた。

 

『グオオオオオォォォォォッ!!!!!』

「ダメだっ!!全然効かない!!」

「一体、どうすれば・・・・・・。」

「せんぱーーいっ!!!」

 

後ろを振り返るとアギラ、ミクラス、ウインダムが走ってきた。

 

「アギ、どうして・・・!?」

「仲間を放っておけないよ。」

「後はアタシ達が、おりゃあーーーーー!!」

 

ミクラスがヘルべロスに拳を叩きつけるが、微動だにしない。

 

「全然効きません!!」

 

ウインダムが額からのレーザーで攻撃するが、ヘルべロスは物ともしない。

 

「・・・・・なら私が・・・・。」

『グオオォォォッ!!!!!』

 

ゼットンが放つ火球でようやくダメージが与えられた。

今がチャンスだとアギラはピグモンに怪獣の攻略法を聞く。

 

「ピグモンさん、アギラです。ガッツ達は無事です。」

『本当ですか!?良かったです!?」

「あの怪獣はどうやったら倒せますか?GIRLSの記録なら怪獣の弱点もあるはずです!」

『・・・・・アギアギ、今銀座に現れた怪獣は今までに出現報告がない新種の怪獣です。だから、弱点も全く分かりません。』

「えっ・・・、それじゃあどうすれば・・・。」

 

 

 

 

アギラが怪獣をどうすれば止められるか考えていたその頃、ヒロキは逃げ遅れた子供を探していた。

 

「おーーーーーい、健一くーーーーん!!!駄目だ、聞こえないのかな・・・。」

 

有楽町の方に顔を向けたとき、地面に落ちたリュックを見つけた。リュックにはレッドキングのキーホルダーと「健一」と名前が書いてある名札があった。

 

「これ、リュックだよね?ってことは近くにいるかもしれない。」

 

建物の近くまできた時、「助けて」と叫ぶ声が聞こえた。

ヒロキは声のする方向に向かって走り出した。

 

「大丈夫かい!?」

「お兄ちゃんは・・・!?」

「君のお母さんに頼まれて君を探しに来たんだ。僕と一緒にお母さんの元へ帰ろう。」

「待って、まだ怪我した猫が取り残されているんだ!!」

「えっ!?」

 

健一を見つけたヒロキが少年の指さす方向に目を向ける。

すると怪獣に破壊され落ちてきた瓦礫の隙間に猫が閉じ込められていた。瓦礫に挟まれているのか、血が出ていた。

 

「まずい。早く助けないと!!」

 

ヒロキは瓦礫をどかそうとする。まずは自分の手でどかせる瓦礫から手をつけ始める。

 

「危ないから、君は離れてくれ!!」

 

健一はうなずく。しかしここで大きい瓦礫が出てきた。

 

(これはどうする・・・・。どうすればどかせる。漫画ではてこの原理でこういうものをどかしていたけど・・・、実際はどうなんだ。・・・やるしかないか。)

 

「何か、硬くて丈夫な棒みたいなものはない。」

「ちょっと待ってて、すぐに探してくるから。」

 

猫は生きてはいるが弱弱しく泣いている。

 

「頑張ってくれ、絶対に助ける!」

『おい、本当に助けるのか、今ならまだ逃げられるぞ!!』

「またか、何を言っているんだ、目の前で苦しそうにしている命がいるんだ!!どんな命も見捨てていいわけないだろ!!ここで見捨てて逃げ出したらカッコ悪いし、あの子の気持ちを踏みにじることになってしまう!!そうなったら、僕は一生後悔する!!だから、絶対に助ける!!!」

「お兄ちゃん、これなんかどう?」

 

健一が鉄パイプを指差しながら戻ってきた。

 

「ナイス、これを使おう。」

「うん!」

 

(小さな命の為に体を張れる、やっぱり、こいつとなら・・・。)

 

「よし、助けた。お母さんのところへ戻ろう!」

「うん!」

 

その時、ヘルべロスが角から放った電撃がヒロキの上のビルに直撃した。

ヒロキは健一を突き飛ばした。瓦礫から小さな命を抱えた少年を守るために。

 

「うわあああぁぁぁぁぁ!!」

「えっ、お兄ちゃん、お兄ちゃーーーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

『ヒロキ、おい起きろ、ヒロキ!!』

「まだ聞こえてくる、もしかして、僕はもう・・・。」

『目を開けろ、ヒロキ!!』

 

ヒロキが目を開けると周りが赤いオーラに包まれた不思議な空間にいた。

 

「何だ、ここは!?」

『お前の心の中だ。』

「また聞こえる、君は一体誰だ、姿を見せてくれ。」

『いいぜ。』

 

ヒロキの目の前でい光が集まって人型になっていく。そして光が晴れると明らかに人間ではない声の主がいた。

ヒロキは驚いていた。それは銀色が目立つ少しの赤が混ざったカラーリングに赤鬼のような角、そして胸に丸い水晶があった。それはまぎれもなく、

 

「う、嘘だろ?君はウルトラマンだったのか?」

『ああ、そうさ。』

 

実はヒロキの夢の中には出てきたウルトラマンは7人だけではなかった。

彼らがトレギアと呼んだ仮面の巨人の罠にはまった後、3人のウルトラマンが現れた。

目の前のウルトラマンは夢の中で筋肉質な赤と黒のウルトラマンと青い後ろに伸びたトサカが特徴のウルトラマンと一緒にギンガ達の前に現れた。

 

『お前の中に7年間ずっといたんだ。』

「ええっ?7年も、なんで、どうして?」

『話は後だ。今はヘルべロスを何とかしないと。』

「そうだ、なんで怪獣が現れたの!?地球から怪獣は絶滅したはずなのに!?」

『その話も後だ。お前の力を貸してほしい。今の俺は肉体が維持出来ないんだ。』

「肉体が維持できないって・・・、どうするんだよ!?」

『だからお前の力を貸してほしい。お前と一体化すれば俺はこの星で戦える』

「僕と・・・。でもどうして・・?」

『お前は危険な状況でも命を助けようとする勇気と命を絶対に見捨てない正義感を持っている。お前のような勇敢な地球人の協力が必要なんだ。』

 

ヒロキは少し考えた。今、目の前のウルトラマンに力を貸せば、確かに暴れている怪獣『ヘルべロス』を倒せるだろう。しかし、ウルトラマンになればもう二度と後戻りは出来ない戦いに巻き込まれるような予感がした。

しかし、幼馴染もヘルべロスに苦戦し、今は傷だらけだ。また頭の中に健一とその母親や自分の家族、そしてモデルをやっている怪獣娘の幼馴染の顔が思い浮かんだ。彼らを守れるなら・・・。

ヒロキは答えを決めた。

 

「分かった。君に力を貸すよ、一緒に戦おう、ウルトラマン。」

『そうこなくっちゃな、ヒロキ!』

 

 

 

 

 

 

 

ヒロキは気付いたら、瓦礫のすぐ隣にいた。健一が話しかける。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫、健一くん、避難所の場所は分かる?」

 

健一が首を縦に振り、頷く。ヒロキは笑みを浮かべ、話しかける。

 

「お兄ちゃん、ちょっとやることが出来たから、先に逃げてくれ。」

「分かった。お兄ちゃん、名前は。」

「そう言えば言ってなかったね。僕はヒロキ、白鳥ヒロキ。」

「ヒロキお兄ちゃん、また会おう。」

 

健一は猫を抱えて、避難所へ走っていく。ヒロキはヘルべロスを見据える。

その時、ヒロキの右腕にブレスレットが現れ、夢で見た3人のウルトラマンがつけていた手甲と同じものに変化した。

 

「これって・・・。」

『タイガスパークだ。それに俺をかざして、俺になれ!』

「これでウルトラマンに・・・。」

 

ヒロキの左手はさっきのウルトラマンの顔がついたキーホルダーが握られていた。

ヒロキはタイガスパークの下部にあるレバーを引いた。

 

『カモン!!!』

 

「光の勇者、タイガ!!」

 

キーホルダーを左手で持ちタイガスパークが付いた右腕を左手の前に重ねた。

右手でキーホルダーを持ち直した後、力強く握り、タイガスパークに光が集まる。

 

『叫べヒロキ、バディゴー!!!』

 

「バディィィゴーーーー!!!」

 

キーホルダーを持った右手を上に掲げる。

一点の光から銀色が目立つカラーリングにウルトラマンNo6と呼ばれるあるウルトラマンを思わせる角をしたウルトラマンが右手を前に伸ばして巨大化する。

伝説のウルトラマンといわれるウルトラ6兄弟の一人の血を引く息子にして『光の勇者』の異名を持つウルトラマン、その名は

 

『ウルトラマンタイガ!』

 

「シェアッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああああ!!!」

「うわあああああああ!!!」

 

ゴモラと加勢に来たミクラスが悲鳴を挙げながら、吹っ飛んだ。

ヘルべロスに戦いを挑んでいた怪獣娘は傷だらけになって倒れていた。もう立ち上がる気力も出ないくらい体力を消耗していたのだ。

ヘルべロスは背中を赤く光らせる。彼女達にとどめをさすために。

ゼットンはバリアを張ろうとした、仲間達を守るために。

 

その時だった。

光の巨人ーーーウルトラマンーーーが現れたのは。

 

ウルトラマンタイガが高く飛び上がり、燃え盛る銀座の町に着地する。着地と同時に炎が消え、怪獣娘を含む多くの人々がそれを見ていた。

タイガはヘルべロスの前で倒れていた怪獣娘達をその手に抱え、安全な場所に下した。

 

『これで彼女達も大丈夫だ。』

(良かった。間に合って。さて、後は・・・。)

 

タイガは目の前のヘルべロスに向かって構えた。

 

「シュアッ!!」

 

怪獣のいなくなった地球で光の戦士の戦いが再び始まろうとしていた。

 

 

 

 

「あれって、第一次大怪獣時代に現れて、怪獣との戦いに力を貸してくれたっていう・・・!!」

「間違いないわ。過去の記録にはないけど、あの巨人もウルトラマンよ。」

「ふえええ、本物の怪獣だけじゃなく、ウルトラマンまで・・・。」

 

エレキングが青い獣殻に覆われ、翼の付いた風ノ魔王獣『マガバッサー』と青いおかっぱヘアーのビキニに近い獣殻の水ノ魔王獣の怪獣娘『マガジャッパ』を連れて、キングジョー達の手当てをしながら目の前の光景を見る。

 

「本物のウルトラマン、マジかっけー・・・。」

「痛い痛い痛い、よそ見しながら手当するのやめて、包帯をきつく締めすぎて逆に痛いから!」

「あっ、ごめんなさい、ミクラス先輩。」

「あのウルトラマンは一体、「その名はウルトラマン、ウルトラマンタイガ。」えっ?」

 

怪獣娘達が振り返ると白と黒の服を着た青年が立っていた。

ヒロキがぶつかった青年だ。

 

「彼はある伝説のウルトラマンの実の息子さ。どうやら、この地球に流れ着いていたようだね。」

 

「ウルトラマン・・・タイガ。」

 

全員でタイガを見上げる怪獣娘達。

しかし、ふと振り返れば、さっきの青年が消えていた。

 

「い、いない。」

「今の人は一体・・・。」

 

 

 

 

 

 

タイガとヘルべロスは睨み合っていた。ヘルべロスが尻尾で先行をかける。タイガはバク転で刃が付いた尻尾の一撃を回避した。再び構えるタイガ。

 

ヘルべロスの背中が光った。怪獣娘達を苦しめた光弾の雨を放つつもりだ。ヘルべロスの背中から破壊光弾が雨のように発射される。

 

『スワローバレット!!』

 

ウルトラマンの光線技で有名なスペシウム光線の構えの逆を取って放たれた光弾が、ヘルべロスの背中からの光弾を全て撃ち落とす。

 

(町への被害は避けたね!)

『今度はこっちから行くぞ!!」

 

ヘルべロスへ向かって駆け出し、飛び蹴りを放つ。そのまま顔に右フック、回し蹴りを放つ。

そのまま飛び上がって、チョップを放つもヘルべロスも腕で受け止める。

ヘルべロスは両腕を振り回す。これを避け、頭を掴んで投げ飛ばす。

 

「シェアッ!!」

 

倒れたヘルべロスの背中に連続でパンチを叩きこむ。しかし、ヘルべロスが起き上がり、タイガが倒れる。

起き上がったタイガは再び頭を掴んで投げる。起き上がったヘルべロスに正面から連続で再びパンチを叩きこみ、ドロップキックをお見舞いした。

 

ヘルべロスが角から電撃を放つも腕で受け止める。その時、胸のカラータイマーが点滅し始める。

 

「胸のランプが点滅してる!!」

「確か資料によれば、ウルトラマンは地球で活動できるのは3分間だけだとあったわ。」

「ええっ、それじゃあ・・・もうウルトラマンは限界ってことですか!?」

 

ヘルべロスが口から火球を放つもチョップで切り裂く。火球はタイガの後ろで着弾し、爆発した。

 

タイガはタイガスパークを装備した右手を天へと向けた。両手を重ね、手を腰の位置まで持っていく。

虹色のエネルギーがタイガに貯まり、左腕を上に、右腕を下に支えとして両腕をT字に組んだ時、そのエネルギーは光線となって爆発した。

タイガが父であるウルトラマン『タロウ』から受け継いだストリウムの名を持つ必殺技、その名は

 

『(ストリウムブラスターッッッ!!)』

 

必殺技は直撃したもののヘルべロスはまだ倒れていなかった。

予想外の事態にヒロキは慌て始めた。

 

(やばいよ!!必殺技が効いてない!!)

『焦るな、オーブレットを使え!』

 

その瞬間、夢に出てきたウルトラマンの一人、カラータイマーがOの字になったウルトラマンがタイガに自身の力を宿したブレスレットを渡したビジョンが浮かんだ。

ヒロキはタイガスパークの下部にあるレバーを引いた。左手に銀河を渡る風来坊ウルトラマン『オーブ』の力を宿したブレスレットが現れた。

左手を右手に重ねた時、オーブレットから光がタイガスパークに集まる。

 

『オーブレット、コネクトオン!!」

 

タイガにオーブのビジョンが重なり、ストリウムブラスターと同じ構えをとる。両腕をT字に組んだO字の波導が展開され、ストリウムブラスターにオーブの力が加わった。

 

『(スプリームブラスターッッッ!!)』

 

オーブの力でパワーアップした必殺光線に耐えられず、ヘルべロスは大爆発した。ウルトラマンの勝利だ。

爆発の中から小さな光がタイガの中に入ってきた。

ヒロキをそれを掴んだ。光は指輪になった。ヘルべロスの顔が入った黒いオーラを放つ不気味な指輪に。

 

(これは・・・。)

『ウルトラマンの力を感じる・・・。』

 

戦いが終わったことを確認するとタイガは空に飛び立っていった。

 

「シュアッ!!」

 

 

 

 

 

 

それをみつめる一人の男がいた。ヒロキと日比谷公園で会い、怪獣娘達にタイガのことを教えた白と黒の服を着た青年だ。

 

「良き旅の終わり・・・。そして・・・始まり・・・。」

 

その男『霧崎』の影には人間ではない異形が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に僕があの怪獣を・・・。」

『どうやらこの星は俺がいなきゃ、駄目みたいだな!』

「なんだよ、随分と偉そうなウルトラマンだな・・・。」

「ヒロキお兄ちゃーーん!!」

 

ヒロキとタイガが話しているところに健一がやって来た。

 

「健一くん、あの猫は?」

「命に別状はないから大丈夫だって。」

「そうか、良かった。」

「あの猫、うちで飼うことになると思うけど、いい?」

「いいんじゃない。小さな命を助けようとした君ならきっと大丈夫だよ。だから自信を持って。」

「うん!!」

「健一ーーっ!!」

「お母さんが読んでるから、もう行くね。ありがと、ヒロキお兄ちゃん。」

 

健一は手を振って母親のところへ戻る。その際、健一の母親に頭を下げられた。

2人は笑顔で去っていく。

 

『見ろよ、俺達が守った笑顔だ。元気でなーー!!」

「(そうか、僕達が守ったんだ)元気でねーー!!」

 

ヒロキはあの少年の笑顔を守れて本当に良かったと感じていた。

そして、この人達のような笑顔を守れるよう強くなりたいと思っていた。




次はタイガ第2話が原作です。




次回予告(CV:ウルトラマンタイガ+????)

ヒロキが子供の頃、心を通わせた小さな怪獣。その怪獣との悲しいの裏には、奴の影が蠢いていた。俺たちと切っても切れない因縁を持つ蒼き巨人。奴の名は。次回!

怪獣娘×ウルトラマンタイガ


トレギア


この世界は矛盾に満ちている・・・。


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トレギア(前編)

第2話です。

オリジナル設定が入っていたりしますが、大丈夫な方はどうぞ。

海獣『キングゲスラ』登場


夕方の橋の下、少年と少女がチョコレートを持ってやって来た。その2人が小学校時代のヒロキとクララである。

2人は最近出来たある友達に会いに来たのだ。

 

「チビスケ、今日も来たぞ。」

 

ヒロキ達の視線の先には段ボール箱に何かが入っていた。それは青い色のナマズの顔のような大きなトカゲのような生物だった。

この生物は今から2週間前に2人が学校の帰りに見つけたのだ。最初は猫が捨てられていると思い、見に行ったのだが、それが猫から余りにもかけ離れた姿だったため、最少は混乱したものの今では心を通い合わせ友達になったのだ。

 

「チビスケ、ほらいつものやるぞーっ。クン!クン!パッ!」

 

そう言って、ヒロキはチビスケと名付けた謎の生物に向かって、手を振りパッ!のところで手のひらを広げる。チビスケはヒロキの手の動きに合わせて、首を動かし、口を開いた。

 

「えらいデスねチビスケちゃん。ほら、ご褒美デスよ。」

 

クララがチビスケに手に持っていたチョコレートをあげる。するとチビスケは嬉しそうに食べ始まる。

 

「チビスケ、ホントにチョコレートが好きなんだね。」

 

2週間前に見つけて以来、2人はチビスケが何の生物なのか調べていた。学校や図書館で動物図鑑や爬虫類の本を片っ端から漁っても、チビスケが何の生物なのか分からなかった。

でも時間がたつにつれて、それも気にしなくなった。2人とも気にせず仲良くなっていったのだ。

 

「では、ワタシはこれから用事があるから帰りマスね。また明日、ヒロキ、チビスケちゃん。」

「また明日。」

 

そう言って、クララは帰路についた。クララが帰ってしばらく経った後、

 

「そろそろ、僕も帰るよ。またな、チビスケ。」

 

ヒロキがその場を離れようとしたとき、サングラスを掛け、黒い服を身に纏う男がヒロキとチビスケの前に現れた。

 

「おじさん、誰?」

「・・・・・こんなところに逃げていたのか。」

 

男は一言呟くとチビスケを乱暴に掴んだ。当然、ヒロキは抗議を挙げる。

 

「おい、何するんだよ!!」

「こいつは我々のものだ。返してもらう。」

「ふざけるな!!」

 

ヒロキは男に体当たりをするが、あっさりとかわされる。ヒロキが振り向くと、その男の顔が人間のモノではない異形の顔になっていた。目の位置がちぐはぐに付いた頭部が上に長いその姿はまさしく、

 

「う、宇宙人・・・?」

「確かに返してもらったぞ。」

 

第一次大怪獣時代以来姿を見せなかった宇宙人におびえるヒロキ。宇宙人は光に包まれ、上に浮かび上がっていく。

しかし「助けて」と叫んでいるように見えるチビスケを見て、ヒロキは宇宙人に飛びついた。

 

「やめろーっ!!チビスケが嫌がってるだろーっ!!」

「・・・っ!このガキ、宇宙人を怒らせるとどうなるか思い知らせてやる!!」

「うわーーーーーーっ!!」

 

宇宙人はヒロキを蹴りつける。ヒロキは思わず宇宙人から手を離してしまう。宇宙人は既に地表からかなり離れたところにいた。こんなところから落とされたら間違いなく命はない。ヒロキは叫びながら、自分の最期を覚悟した。その時、赤い光の粒子がヒロキを包んだ。

目を覚ました時はヒロキは地上にいた。あの橋の下に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『というわけだ。お前の勇士の証明を見て、お前を選んだんだ。』

「あの時、タイガが助けてくれてたのか。」

 

時代は流れ、ここはヒロキの部屋である。ヒロキはいつからタイガが自分の中にいたのか説明されていたのだ。幼い頃、自分の命を助けてくれたタイガにお礼を言った。

 

「ありがとう、タイガ。あの時、タイガが来てなければ、僕は・・。」

『いいって事さ。』

「その頃から、僕の中にいたってことは怪獣娘のことも。」

『勿論知ってるぜ。驚いたぜ、まさか怪獣達の魂が、地球人の女の子に宿っているなんてさ。』

 

数々の星を旅してきたタイガにとっても怪獣娘は非常に珍しいらしい。そんな中でウルトラマンとの会話はベランダまで続いた。

 

「まさかお爺ちゃんが昔よく会ったと言ってたウルトラマンとこんな形で関わる事になるなんてな~。」

『お前の爺ちゃんがウルトラマンと?』

「当時怪獣と戦っていた防衛チームのお兄さんが家に下宿していたんだって。」

『へ~。』

「しかも、そのお兄さんがウルトラマンだったらしいんだ。」

『へ~・・・ってマジ!? マジか、その話!?』

「本当らしいよ。確かそのウルトラマンの名前は・・・。」

 

ヒロキがウルトラマンの名前を言おうとした時、テレビから聞き逃せないニュースが流れてきた。

 

『本日、東京湾岸にて、謎の巨大生物が目撃されました。警察や政府は鯨と公言していますが、どう見ても鯨とは思えない姿に市民らは・・・』

 

「タイガ!!」

『行くぞ、ヒロキ!!』

 

ヒロキは家を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってGIRLSの講義室にヘルべロスが現れた時に現場にいた怪獣娘が集まっていた。

 

「皆さん、先日は大変お疲れさまでした。」

「驚いたよ。まさか本物の怪獣が現場にいきなり現れちゃうんだもん。」

「どうして怪獣が現れたんでしょうか?」

「その事についてお話があります。」

 

その言葉にその場にいた怪獣娘がピグモンの方を向く。

 

「実はあの怪獣コードネーム『ヘルべロス』が出現した理由は未だ分かっていません。そこで皆さんには何故怪獣が出現したのか調査してほしいのです。調査部だけでは人手が足りないと思い、ここにいる皆さんにお願いしています。」

「勿論だぜ!」

「また怪獣が現れたら厄介だしね。」

「まーでも本来は怪獣は地球からいなくなったわけだし、これからは出現しない可能性もあるし、大丈夫でしょ。」

「またゴモたんリゾート状態!?」

 

ピグモンの言葉にレッドキングとガッツ星人が頷き、ゴモラがハンモックに寝転がっており、アギラが突っ込む。

そんな状況の中、一人の職員が講義室に入ってきた。

 

「失礼します。ピグモンさんにお客様が来ています。」

「ピグモンに・・・?後でいいですか?」

「はい、分かり「久しぶりだね、トモミちゃん。」

 

講義室に入ってきたのはスーツを着た40代~50代位の男だった。

 

「シンゴ叔父さん!?」

「「「「「叔父さん!?」」」」」」

「この人、ピグっちの叔父なの?」

 

ピグモンの言葉に怪獣娘達が驚き、ガッツ星人が代表してピグモンに聞く。

男の名は佐倉シンゴ。ピグモンこと『岡田トモミ』の叔父にして警視庁の刑事である。

 

「ここではピグモンって呼んでくださいよ~。」

「姪っ子を今更芸名で呼べないよ。どうやら元気にやっているようで安心したよ。」

「もう、それを言うために来たんですか?「まさか、頼みがあってきたんだ。」・・・頼み・・・ですか。」

 

そう言って、シンゴはカバンから何かを取り出した。それは無残に破壊された監視カメラだった。

 

「東京湾岸沿いの倉庫に仕掛けられた監視カメラだ。」

「何ですか、この監視カメラ・・・!?」

「どうやったら、こんな壊れ方を?」

「記録媒体は無事だったから、その時の映像がある。これを見てくれ。」

 

マガバッサーとマガジャッパが唖然とする中、シンゴはモニターにカメラの映像を写した。するとそこには衝撃的な映像が写っていた。

3人のサングラスをかけた作業着の男達が見たことのない機械を操作していた。男たちがカメラに気付くと男の1人がサングラスを外した。すると、男の目が赤く光り、そこで映像は終わった。

 

「これを見てどう思う?こんな事が出来るのが人間だと思う?」

「確かに、怪獣娘の中には出来る者もいるかもしれませんが・・・。」

「でも、この映像に写っていたのはどう見ても男だよな!?」

「普通の人間には絶対に出来ないわね。」

「だろ。しかもこの3人が写った近くで、こんな映像も記録されているんだよ。」

 

ピグモン、レッドキング、エレキングが映像の感想を言った後、モニターに別の映像が写し出される。それは巨大な黄色いヒレが付いた何かが泳いでいる映像だった。

 

「政府は鯨だって言ったけど、どう見ても鯨には見えないだろ。」

「はい、鯨には見えません。」

「だろ。僕は怪獣だと思ってるよ。それで3人の男が宇宙人じゃないかと思っている。」

「宇宙人・・・、怪獣に続いて宇宙人まで。」

「もしかして、頼みって・・・。」

 

ノイズラーが呟いた後、アギラがシンゴに尋ねる。頼みの内容が何となく見えてきたからだ。

シンゴはピグモンに頭を下げて頼み込む。

 

「申し訳ないとは思っているんだ。姪っ子達にこんな事頼むのは。けどこれは警察の負える事件じゃないかもしれない。だから頼む。この3人の宇宙人と思われる男達を探してくれ。」

「いいですよ。」

 

シンゴの頼みにピグモンが頷く。ウインダム、エレキング、アギラも後に続いて発言する。

 

「この事件は明らかにGIRLSの管轄ですからね。」

「それにこの3人が本当に宇宙人で、怪獣らしい生物の出現に関与しているなら・・・。」

「以前、銀座に現れた怪獣の手掛かりになるかもしれませんから。」

「ありがとう、怪獣娘諸君。よろしく頼むよ。」

 

ピグモンが皆に向き合う。

 

「それではGIRLS出動です。」

「「「「「了解!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ヒロキは怪獣らしき生物が目撃された湾岸地域に来ていた。そこでタイガと話しながら歩いていた。

 

「ニュースでは背びれのようなものが写っていたけど、何の怪獣か分かる?」

『流石に背びれだけじゃ、どうしようもないぜ。まあ、似た怪獣はいるけどな。』

 

ヒロキとタイガは海を見ながら、今回の怪獣について話していた。ヒロキは右腕に視線を向ける。

いざ、怪獣が現れたら、自分が戦わなきゃならない。もし怪獣なら水中でも活動できるから水中戦になるかもしれない。そう思いながら足を進めていた。

しばらくすると、大きな倉庫が見えてきた。ヒロキ達は足を止めた。

 

「大きな倉庫だね。」

『確かこの辺りだったはずだ。怪獣らしき生物が目撃されたのは。・・・ってあれは?』

 

ヒロキの視線の先には3人の怪獣娘だった。ガッツ星人とマガバッサーとマガジャッパだ。3人は倉庫の作業員から聞き取り調査をしているようだった。ヒロキは隠れて聞いていた。

 

「GIRLSも動いてたんだ。」

『どうする。話を聞くか?』

「一般人は危ないから下がってとか言われるだけだよ。」

「そうですか。情報ありがとうございます。・・・収穫なしか。」

「ガッツさん、どうしましょう。」

「他の倉庫でも聞き込みをしよう。2人とも行こう。ここから300m先の公園でおジョーと合流しよう。」

 

2人ともガッツ星人の言葉に頷いて倉庫を出る。怪獣娘達が行ったことを確認すると、ヒロキも姿を見せた。ヒロキは彼女達が行った方向とは逆へ足を進める。

 

「僕たちは反対側に行こう。反対側にも倉庫があったはずだから。」

『分かった。』

 

 

 

 

 

ヒロキ達が行った先の倉庫ではレッドキングとザンドリアスが聞き込みをしていた。

 

 

「では、この3人の姿は見なかったと。」

「ああ、少なくともうちの作業員ではないな。」

「巨大な影を見た事は?」

「それも無いな。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「ししょー、どうしましょう?このままじゃ何も・・・。」

「諦めんな、まだ聞き込みをしていないところも幾つかある。そっちへ周るぞ。」

 

ゴゴゴゴゴゴ!!!

 

「今の音は何!?」

「外へでるぞ!!もしかしたら怪獣かもしれねえ!!。」

 

その時、大きな音が響いた。2人は音がした外へ向かう。すると海の一面がゴボゴボと大きな音を立てて泡立っている。泡立った水面は水柱と変わり、巨大な何かが姿を現した。

思わずザンドリアスはレッドキングに抱き着いた。

 

「ししょー、これってまさか・・・・・・。」

「そのまさからしいな。」

 

海から緑色の体表に背中に刺々しい棘を無数に備え、ナマズのようなギョロっとした顔の怪獣が現れた。怪獣の名は海獣『キングゲスラ』、カカオ豆に害を及ぼす害虫を食べるトカゲが巨大化した怪獣『ゲスラ』を強化改造した怪獣だ。

慌てるザンドリアスの横でレッドキングはGIRLSに連絡していた。

 

「また怪獣が出たーーーーーっ!?」

「落ち着け、こちらレッドキング、怪獣が出現した。」

『こちらでも確認しました!!倉庫の作業員を避難させてください!!その間に怪獣の特定をします!怪獣との戦闘はその後にしてください!!』

 

 

 

 

 

その頃、ヒロキもキングゲスラが現れた現場に来ていた。

キングゲスラは建物を破壊し、中にあった何かを食べ始める。

ヒロキは持っていたスマホで怪獣を調べた。

「これじゃない?海獣ゲスラ、カカオ豆に害を与える害虫とカカオ豆が好物なトカゲが水質汚染の影響で巨大化した怪獣だって。」

『いや、恐らくあれはゲスラを強化改造したキングゲスラだ!!行くぞ、ヒロキ!!』

「うん・・・ってちょっと待って!!」

『どうした!?』

 

ヒロキが視線を向けた先には怪しい男達がいた。他の作業員達が慌てて逃げているのに対し、彼らは冷静に機械をいじり、怪獣を見ている。まるで怪獣を操っているかのように。

その男達こそGIRLSの怪獣娘達が追っていた3人だった。

 

「ちょっと、この非常時に何しているんですか!?怪獣が現れたんですよ!!」

「「「!!!!!!」」」

 

ヒロキが話しかけると男達は逃げ出した。まるで見られたくないものを隠すように。

ヒロキは追おうとするも、目の前で転んで足を怪我した作業員がいた。

ヒロキはまず、怪我人を助けようとする。

 

「大丈夫ですか!?」

『おい、怪獣が暴れているんだぞ!!早く俺達が行かないと!!』

「目の前の人達を助けるのが先だ!大丈夫ですか!?」

「すまねえ坊主、足を挫いちまった。」

 

そこにレッドキングとザンドリアスの2人が来た。

 

「大丈夫ですか、早く逃げてくださいって・・・君はこないだ日比谷公園にいた!?」

「キングジョーさんの幼馴染!?何でここに!?」

「ちょうど良かった。この人をお願いします!!」

 

ヒロキが2人に作業員を頼もうとしたとき、キングゲスラは海に戻った。そして潜ったのかそのまま姿を現さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって公園に怪獣娘が集まっていた。

ピグモンも合流し、彼女が口を開く。

 

「今回、現れた怪獣は過去に出現報告がありました。名前はキングゲスラ。横浜に現れたゲスラの強化体です。しかし・・・。」

「しかし?」

「ゲスラの元となったトカゲですが、第一次大怪獣時代から数年後には絶滅が報告されています。だから、今の地球に現れるはずがないんです。」

「生き残っていた可能性もあるんじゃない?」

「確かにその可能性もありますが、怪獣がいなくなって数十年間も目撃されていなかった以上、地球から絶滅した可能性が高いです。あの3人が宇宙人とするならば何らかの目的のために持ち込まれた可能性が高いでしょう。」

「何らかの目的ってやっぱり侵略のためか?」

「恐らくは。」

「やっぱり、あの3人の怪しい作業員を捕まえなければいけまセンね。」

 

ピグモンの言葉にミクラス、ゴモラ、レッドキング、キングジョーが反応するが、後ろからヒロキが声を掛ける。

突然の第三者の介入にピグモン達は驚く。

 

「怪しい3人の作業員なら、見ましたよ。」

「だ、誰ですか、あなたは!?」

「ワ、ワタシの幼馴染デス。ヒロキ、見たってどういうことデス!?」

「怪獣の現れた現場の近くにいたんですが、サングラスを掛け、何かの機械を持った怪しい作業員を見ました。もしかしたら、あの機械で怪獣を操っていたんじゃないかと思うんですが・・・。」

「ヒロキ、その作業員ってもしかして、こういう・・・。」

 

キングジョーはヒロキに写真を見せる。ヒロキはそれを見て頷いた。

 

「この3人だ!この3人を確かに見ました!!」

「どうやら、クロみたいだね。偶然とは思えないよ。確実に怪獣に関わっている。」

 

ヒロキの言葉にガッツ星人が確信したように言う。

ピグモンがヒロキにお礼を言い、皆に伝える

キングジョーが意見を言い、エレキングが頷く。

 

「ヒロキさん、でしたっけ?GIRLSへの情報提供ありがとうございます。皆さん、間違いなく3人は怪獣の出現に関与しています。捜索範囲を広げましょう。」

「待ってくだサイ。最初に現れた現場もレッドキングとザンドリアスちゃんが怪獣と遭遇した現場もカカオ豆の倉庫デス。記録によればゲスラもカカオ豆が好物と聞きマス。ゲスラの生態を考えれば、カカオ豆の倉庫に現れる可能性が高いです。。」

「確かにカカオ豆の倉庫に範囲を絞った方がいいわね。」

「では、カカオ豆の倉庫を見張りましょう。」

 

怪獣娘達は散っていった。

キングジョーはヒロキに向き合う。

 

「ヒロキ、GIRLSへの情報提供ありがとうございマス。けど、どうして怪獣が現れた現場近くにいたんデスか?」

「えっ、そ・・・それは・・偶然だよ偶然。」

 

ヒロキはキングジョーの質問に戸惑いながらも嘘を答えた。ウルトラマンタイガと一体化している事は話していない。

怪獣娘の幼馴染に余計な心配をかけたくないと思い、話してなかったのだ。

 

「あまり、無茶しないでくだサイ。怪獣はワタシ達がなんとかシマスから。」

 

そう言って彼女は去っていった。

彼女が去った後、ヒロキは海のほうを振り返り、見つめていた。

怪獣の消えた海を。

 

(どうしてだろう・・・あの怪獣、どこかで会った事があるような気がする・・・・・。一体どこで?)




次回、いよいよ『奴』が出ます。

怪獣娘×Zも試作版を書く準備を進めています。

しばらくお待ちください。


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トレギア(後編)

いよいよ、『奴』が登場します。

それではどうぞ。


3人の作業員が歩いていた。彼らこそ怪獣娘達が追っていた作業員であり、怪獣を操っていたヴィラン・ギルドに属する宇宙人だ。

宇宙人は地球の怪獣がいなくなった後も、怪獣娘が確認されてからもちょくちょく地球を訪れていた。そうした宇宙人達が集まって宇宙人の犯罪組織を立てていた。

宇宙人で結成されたその犯罪組織こそがヴィラン・ギルドだ。

 

「バイタル、心拍数、共に異常はない。」

「テストの結果は上々だ。宇宙ネットワークにつなげ。これでオークションが始められるな。」

「了解。」

 

階段を上る宇宙人を監視カメラが捉えていた。

そして、霧崎もそこから少し離れた場所からそれを見ていた。霧崎はそれを見て怪しい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

「皆さん、チョコレート工場の監視カメラが3人の作業員を捉えました!場所はチョコレートビクトリアの工場です!近い怪獣娘はすぐに向かってください。」

「チョコレートビクトリアの工場から一番近いのはゴモラとアギラね。2人に先に向かってもらうわ!」

 

ピグモンからの連絡を受けてエレキングが3人の作業員が見つかった地点に近い怪獣娘を特定する。

ゴモラとアギラもそれを知って現場に到着する。

 

「どこにいるんだろう。」

「絶対、近くにいるはずだよ。だから、頑張ろう!」

 

2人の上を3人の作業員が通る。上は金網になっていて、通る人が分かったのだ。

 

「上だ!!上にいる!」

「!!!」

 

 

 

その頃、ヒロキも怪獣を探して走りまわっていた。カカオ豆が大量にありそうな場所を探していたのだ。

そんな中、ヒロキはタイガと言い争っていた。

 

『どうして、変身しなかった!?あの時、変身していたら奴を仕留められたはずだ!!」

「あの人は怪我していたんだぞ!見過ごせるわけないじゃないか!!」

『けど、怪獣を倒さなければ、もっと多くの怪我人、最悪の場合、死人が出ていたぞ!』

 

2人が話していると、GIRLSの制服を着たクララが誰かと一緒に走っているのを見た。クララと一緒にいるのは水色の長い髪の美少女だった。彼女は『印南ミコ』、またの名を『ガッツ星人』だ。

 

「聞きましたカ?ガッツ?」

「既にアギとゴモが向かっている。私達も急ごう。」

「「ソウルライド!!」」

「『キングジョー』!」

「『ガッツ星人』!」

 

2人は怪獣娘に変身し、現場に向かう。それを見て、ヒロキも走り始めた。

 

「僕たちも行こう!!」

『ああ!』

 

現場ではアギラとゴモラが3人の作業員を見つけていた。

2人は3人に声を挙げ、近づく。

 

「見つけたでぇ!!」

「大人しくしてください!」

 

3人の作業員は2人の怪獣娘を見る度、戦闘態勢に入る。3人の内、2人がアギラとゴモラに蹴りかかる。アギラはそれを避け、ゴモラは受け止める。

受け止めたゴモラは思った以上の力の蹴りを受け止め、苦い表情を浮かべる。

 

「危なっ、怪獣娘なのに蹴りを受け止めるだけでここまで衝撃を受けるなんて。」

「やっぱりこの人達は・・・。」

 

余った1人が飛び降りた。何かの機械を手にして。

 

「待てっ!!」

 

アギラは飛び降りた1人を追う。アギラが上から飛び降りた1人を見た。彼女は驚いた。普通の人間のような顔の作業員が上に長いちぐはぐに目がついた宇宙人『レキューム人』に変わっていたのだ。

レキューム人は逃げ出した。

 

「くそ、GIRLSの怪獣娘か、邪魔をしやがって!!」

「このままじゃ逃げられる「アギちゃん、先に行って!!」

 

ゴモラが宇宙人の1人を押さえつけながら叫ぶ。

 

「ワタシなら大丈夫!!だってワタシはみんなのゴモたんだから!!」

「意味分からないけど、分かった!!ボクが追う!!」

 

アギラは飛び降りてレキューム人を追う。

アギラはレキューム人を追ったが、見失ってしまう。

レキューム人は積められた段ボール箱の裏に隠れ、アギラが走り去ったところで愚痴を言う。

 

「ったく、邪魔しやがって・・・。」

 

レキューム人は機械を取り出し、操作した。

 

ゴゴゴゴゴゴ!!!

 

地面が大きな音を立てて揺れ始めた。大きな土煙を立てて、キングゲスラが地上に現れた。

 

『グオオオオ!!』

 

『チョコレートビクトリアの工場付近に怪獣キングゲスラが出現!!GIRLSの皆さん急行してください!!!』

 

ピグモンがGIRLSの怪獣娘達に怪獣出現の報告をする。

 

 

 

 

地球の近くに一機の宇宙船が浮かんでいた。その中のモニターに暴れるキングゲスラが映っていた。

 

「全宇宙のクライアントの皆さん、オークションの時間です!本日の目玉はキングゲスラ!脳にはコントロール装置を埋め込み、完全制御を可能にしました~!抜群の破壊力と機動性、ラグチュアリーな外見、背中の棘には強力な毒を持ち、水陸両用で活動できる特性、皆さんこの怪獣兵器はお買い得ですよ~!」

 

モニターの怪獣を開設するのはカミキリムシのような頭を持つ宇宙商人『マーキンド星人』だ。彼がキングゲスラの解説をすると同時にモニターには様々な金額が表示される。

 

 

 

宇宙人のオークションと同時にアギラにガッツ星人とキングジョーが合流する。

 

「アギ、ゴモは?」

「怪獣を操っているっぽい宇宙人と戦っている!それより、ボク達は・・・!」

「ハイ、この怪獣を止めなければいけマセン!!」

『アギアギ、ガツガツ、キンキン、ゲスラの背中の棘には毒があります。その威力は怪獣になる前のトカゲの姿でもジャガーを仕留められるくらいです。まして、怪獣になって強化改造された今、その毒を食らえば確実に命はありません!!絶対に接近戦は避けてください!!』

「「「了解(デス)!!」」」

 

「とはいっても、どうやって近づかずに戦うか・・・。」

「ボク、接近戦以外、戦う手段がないのに・・・。」

 

彼女達が考えている間にもキングゲスラは工場を破壊し、チョコレートを食べ始める。

そんな中、キングジョーが怪獣を見つめていた。

 

「おジョー、どうしたの?」

「・・・あの怪獣、・・・どこかで会った事があるような気がシマス。」

「ちょ、ちょっとしっかりしてよ、おジョーらしくないよ、そんな冗談言うなんて!」

「大変、2人ともあれ!!」

 

アギラが指差した先にはヒロキがいた。ヒロキは怪獣に向かって走っている。

 

「大変!!早く避難させないと!!」

「ヒロキ・・・どうして・・・。」

「あれってさっき公園にいたキングジョーさんの知り合いの。」

「ええ、幼馴染のヒロキデス。どうしてここに?」

 

3人はヒロキを追っていった。

 

 

 

ヒロキはキングゲスラを見つめていた。キングゲスラがチョコレートを食べている姿を見て、体の中で何かが湧き上がったのだ。

キングゲスラは変わらずチョコを食べている。

ヒロキはその姿に昔、友達になった不思議なトカゲを思い出した。

 

「もしかして・・・、「おーい、そこは危ないから逃げてーー!!」

 

ヒロキが振り返ると3人の怪獣娘がこっちに走ってくるのが見えた。内、1人は幼馴染だ。

 

「何してんの!!危ないから逃げて!!」

「ガッツの言う通りです!!本物の怪獣が暴れているんですから・・って!!」

「こんなに近くに・・・いつの間二!?」

 

ガッツ星人とアギラがヒロキに避難するように言うが、その間にもキングゲスラはこちらに接近してきていた。3人が戦闘態勢に入る中、ヒロキから予想外の言葉がきた。

 

「待って、その怪獣は僕の友達なんだ!!だから、戦うのはやめてくれ!!」

「「ええっ!?」」

「もしかして・・・この怪獣・・・。」

 

ヒロキは怪獣の前に立つ。そして右腕を2回上下に降り広げた。掛け声を言いながら。

 

「クンクン、パッ!クンクン、パッ!」

「ちょっ、ちょっと何してんの!?」

「こんな時にふざけてる場合じゃ「大丈夫デスよ。クンクン、パッ」!!?」

 

驚くアギラとガッツ星人を横にキングジョーも同じようにクンクン、パッをやり始める。

するとキングゲスラはその動きに合わせ、首を動かし、口を開く。

 

「「クンクン、パッ!クンクン、パッ!チビスケ(ちゃーん)ーッ!!」」

「僕だよ、ヒロキだよ!」「ワタシデス、クララデスよ!」

 

驚く2人の怪獣娘を横にキングゲスラは大人しくなっていく。キングゲスラは目線がヒロキ達に合うようにしゃがむ。そして2人に嬉しそうに近づく。

 

「チビスケ、やっぱりチビスケなんだな!!大きくなったな、お前!!」

「大きくなりすぎデスよ、もう!!小学校時代に変な男に連れ去られたって聞いた時はショックデシタ!!でも、嬉しいデス!!こうやってまた、会えたのデスから!!」

「助けてやれなくてごめんな!!本当に、本当にごめんな、長い間待たせてしまって!!」

 

キングゲスラは気にしてないよというようにヒロキに首を振る。ヒロキは嬉しそうに笑う。

 

「ありがとうな、チビスケ。」

 

一方、アギラとガッツ星人は目の前の展開に完全に空いた口が塞がらなかった。

 

「本当に友達だったんだ・・・。」

「信じられない、マジ、マジか・・・。」

 

キングジョーは2人に振り向くと、2人をキングゲスラの前に出した。

 

「ガッツ、アギラちゃん、紹介シマス。ワタシ達が昔、友達になったチビスケちゃんデス。」

「「は、初めまして・・。」」

 

キングゲスラは2人に挨拶するように小さく鳴く。

ヒロキとキングジョーがキングゲスラの口にチョコを放り込む。キングゲスラは嬉しそうに食べた。

 

「チビスケのこと、これからどうする?このままじゃ。」

「ちょっと待ってくだサイ。今から掛け合ってミマス。」

 

そう言って、キングジョーはソウルライザーで連絡をとる。友達であるチビスケの今後の安全について相談するためだ。

その横でアギラとガッツ星人はヒロキと話していた。

 

「どうしてあの怪獣が友達って分かったんですか?」

「チョコレートが好物が大好きだったし、面影もあったし、すぐにわかったよ。」

「それだけで、すごいね、君は。」

「そういえば自己紹介がまだだったよね。僕は白鳥ヒロキ、よろしく。」

「ボクはアギラです。」

「私の事はガッツって呼んでよ。」

 

ヒロキが2人に自己紹介してる間、キングジョーはピグモンと話していた。

 

『あの怪獣がキンキンの友達!?本当ですか!?』

「ハイ、何とかチビスケちゃんの居場所を造ってあげられないデスか?」

『難しいですが、何とかしてみます。』

「ありがとうございマス!!」

 

キングジョーがピグモンと話をしている間、レキューム人は、制御装置で暴れさせていたはずのキングゲスラが突然大人しくなったことに困惑していた。

マーキンド星人は焦るように聞く。このままではオークションにならないからだ。

 

『どうした?何故、動かない!?』

「分からん、制御装置が動かなくなった!」

 

その後ろで、霧崎が目の横を叩く。すると、目が急に見開く。

それと同時にキングゲスラの目も見開く。すると、大人しくなった筈のキングゲスラが突然凶暴化し、暴れ出した。

怪獣娘達は凶暴化したキングゲスラに戸惑う。

 

「どうしたんだ、チビスケ!?」

「ワタシ達がチビスケちゃんを止めマス!!ヒロキは安全な場所に避難してくだサイ!!」

 

怪獣娘達はキングゲスラに向かって駆け出す。タイガもヒロキに声を掛ける。

 

『変身だ、ヒロキ!!』

「ああ、僕がチビスケを助ける!!」

 

『カモン!!!』

 

「光の勇者、タイガ!!」

 

『はあーっ!ふっ!』

 

タイガスパークを操作し、左手のウルトラマンタイガキーホルダーの光を読み込ませる。右手でキーホルダーを持ち直し、右手を上に掲げる。

 

「バディィィゴーーーー!!!」

 

『ウルトラマンタイガ!』

 

一筋の光からウルトラマンタイガが現れ、大空に飛び上がる。

 

「シュア!」

 

タイガは土煙を上げて、地上に着地する。地上に降り立ったタイガは目の前のキングゲスラに向かってファイティングポーズをとる。

 

『グオオオオオオ!!グオオオオオオ!!』

 

キングゲスラはタイガを見ると真っすぐ突進した。タイガも同じく走り出し、怪獣の突進を受け止める。しかし、思った以上に力の強いキングゲスラにタイガも押し戻されてしまう。

 

「シェアアアアァァァ!!」

『グオオオオォォォ!!』

 

タイガはキングゲスラを抑えたまま右足で蹴りを軽く放つ。キングゲスラがひるんだ隙に右ひじでひじ撃ちからの右回し蹴りを決め、怪獣との距離をとった。

 

『グオオオオォォォ!!』

 

キングゲスラは力を溜めると目と背中の棘が赤く光り出す。するとキングゲスラは毒の棘をミサイルのように発射してきた。

 

「シェアアァァァァァァ!!」

 

タイガは両腕で受け止めるが、全て防ぐことはできず、ダメージを負ってしまう。

 

『ヒロキ、あの指輪を使ってみろ!!』

(指輪って、この前戦った怪獣の?分かった!!)

 

『カモン!』

 

ヒロキはタイガスパークのレバーを操作し、左腕に意識を集中する。すると前回倒した怪獣『ヘルベロス』を倒した時に出てきた指輪がヒロキの左中指に出現する。

ヒロキはタイガスパークを装着した右手を指輪が付いた左中指に重ねる。

 

『ヘルベロスリング、エンゲージ!!』

 

タイガの両腕に赤黒いエネルギーが溜められる。そのエネルギーは光の刃となって、キングゲスラに放たれる。

 

『ヘルスラッシュ!!』

 

ヘルベロスの力を持った光の刃がキングゲスラに命中する。その一撃にキングゲスラは怯んだ。その隙をついてタイガはキングゲスラの右腕を掴み、投げ飛ばす。必殺技を撃とうとした時、ヒロキが待ったを掛ける。

 

(何とか助けてやれないかな)

『この生物は、宇宙人によって改造されて怪獣兵器になってしまった。分かってくれ。』

(それでも僕とクララちゃんにとっては友達だったんだ。クンクン、パッ!クンクン、パッ!)

 

タイガの体を借りたヒロキがかつて教えていた芸をする。キングゲスラはその動きに合わせて首を振る。

 

(クンクン、パッ!クンクン、パッ!よし、いいぞ、チビスケ!!)

 

キングゲスラは首を振り、最後に口を開く。これを繰り返していくうちにその光景にキングゲスラは目の前の巨人が誰か理解したのか近づいてすり寄っていく。

 

(よし、いいぞ、チビスケ!!チビスケ!!よく頑張ったな!!偉いぞ!!)

 

その光景を見てキングジョーは安心した。アギラとガッツ星人はキングゲスラにかつてヒロキが教えていた芸をタイガが知っていた事に疑問を持っていたが。

 

「良かったデス。後はチビスケちゃんの居場所を探してあげられればこの件は一見落着デス!」

「でも・・・なんでウルトラマンがあの芸を知っているんだろう・・・。」

「確かに謎だよね。・・・まさかとは思うけど・・・。」

 

一方、霧崎もそれを見ていた。

 

「甘いなあ。チョコレートより甘い。」

 

そう言って、霧崎は懐から青い折りたたまれた仮面を取り出した。それを広げると黒い仮面のようなアイテム『トレギアアイ』に変わった。霧崎はトレギアアイを目の辺りに翳した。

すると霧崎の体は青いカラーリングにX字の拘束具を胸に纏った赤い目の黒い仮面の巨人と化した。それはヒロキの夢に出てきたウルトラマン達と戦っていたあのウルトラマントレギアだった。

 

『トレギア!?何故貴様がここに!?』

(あれは・・・夢に出てきた仮面のウルトラマン!?確かトレギアって呼ばれてた!?)

『君に会いに来た、と言ったら?』

『ふ、ふざけるなーーーっ!!』

 

タイガはトレギアに殴りかかる。

マーキンド星人も奴を知っていたようで慌てたように叫ぶ。

 

「トレギア、トレギアだぁ~っ!?終わり、終わり!!今日のオークションは終わり~!!」

 

 

怪獣娘達も突然現れた2人目のウルトラマンに戸惑いを隠せないようだ。

現場に向かう途中で合流したレッドキングとゴモラとザンドリアスとノイズラーは驚いていた。

 

「もう一人のウルトラマン!?」

「タイガちゃんの仲間なのかな?」

「でも殴りかかってるっすよ!!」

「それにあの青いやつはいけすかないです!!」

 

ウルトラマン同士の戦いが始まる中、彼女達はトレギアの方を見ていた。どうか敵であってほしくないという願いを込めて。

 

エレキング、ピグモン、マガバッサー、マガジャッパもそれを見ていた。

 

「あれってウルトラマンっすよね、すげえ、2人目だ!!」

「じゃあ、味方なんでしょうか?」

「恐らくあの青いほうは敵よ。」

「ピグモンもエレエレと同じ意見です。あのウルトラマンは不気味な感じがします。」

 

はしゃぐマガバッサーをたしなめ、エレキングはトレギアを警戒していた。

 

アギラ達と合流したミクラスとウインダムもトレギアを見て唖然としていた。

 

「またウルトラマン。」

「では味方なんで「多分違うよ。」ミクさん?」

「あのウルトラマンは味方じゃない。多分だけど胡散臭い雰囲気が出てるもん!」

「私もミクラスに同意。いつでも戦えるよう警戒した方がいいよ!」

「ウルトラマンが敵に・・・。」

 

ゼットンもトレギアに対して敵を見る目をしていた。

 

 

 

タイガはトレギアに対して殴りかかるが、あっさりと受け流される。蹴りも放つがあっさりと受け流す。

 

『ほら、こっちだ。』

 

再び殴りかかるが受け流され、投げられてしまう。

 

『おやおや、もう終わりかい?』

『終わりじゃねえ!!』

 

再び拳を放つも受け流され、背中に掌底打ちを受ける。

 

(タイガ、どうしたんだ!?さっきから変だぞ!?)

 

タイガはチョップを放つも受け止められ、逆に腹にチョップを食らう。背中にもチョップを食らいながらも、振り返る。

トレギアは両手にエネルギーを溜めて、黒と白が入り混じった稲妻状の光線を放つ。タイガはそれをまともに食らい、ふき飛ばされる。トレギアが放った光線が決め手となり、カラータイマーが点滅し始める。

それを見ていたキングゲスラはトレギアに突進するも、あっさりと受け止められる。

 

『なんだ、どうしたチビスケ?』

 

キングゲスラから一旦手を離すと、足で軽く小突きバランスを崩す。トレギアはキングゲスラに蹴りを放つ。キングゲスラは吹っ飛ぶも、立ち上がり、トレギアに立ち向かう。

しかし、トレギアは受け流し、キングゲスラをいたぶるように蹴りを放ち、痛めつける。

 

(やめろ、チビスケ!やめてくれ!)

「駄目デス!!チビスケちゃん、逃げてくだサイ!!どうしてこんな事を、アナタだってウルトラマンでショウ!?今まで地球に現れたウルトラマンは悪意のない怪獣を痛めつけたりはしませんデシタ!!」

「駄目だよ!!おジョー!!話が通じる相手じゃない!!」

 

トレギアは両手からの破壊光線をタイガに放つ。しかし、光線はタイガに当たらなかった。キングゲスラが身を張ってタイガの盾になったからだ。

破壊光線を受けたキングゲスラは大爆発した。

 

(チビスケーーーーッ!!!!!)

「そんな・・・嘘でショウ・・・信じられマセン・・チビスケちゃーーーーーーーん!!!!!」

(よくも、よくもチビスケをーーーーッ!!!)

 

『(うおおおおおおおおお!!!!!)』

『おやおや』

 

タイガとヒロキは叫び、トレギアに拳を放つ。しかし、受け止められ背後に回られる。

トレギアはヒロキの心を抉るように言葉を放つ。

 

『私が怪獣を殺さなければもっと被害が出たぞ。』

(チビスケは僕とクララちゃんの友達だ!!いいやつだったんだぞ!!)

『この世界は矛盾に満ちている・・・宇宙には昼も夜も善も悪もないのだよ。あるのはただ真空・・・そこしれぬ虚無。』

(黙れ!!)

 

トレギアは掌底打ちを放ち、タイガは吹っ飛ばされる。

 

『この地球人もお前と同じで未熟だな。ウルトラマンタロウの息子よ。』

『俺は・・・タイガだ!!ストリウムブラスター!!』

 

タイガは必殺光線を放つもトレギアの放つ光線に押し返されてしまう。

 

『ヒロキ、ロッソレットを使え!!』

(分かった!!)

 

『カモン!』

 

ヒロキは腕のタイガスパークを操作し、左腕に意識を集中する。すると兄弟ウルトラマンの兄である二本角のウルトラマン『ロッソ』から託されたブレスレット『ロッソレット』が出現する。

ヒロキはタイガスパークを装着した右手に左手を重ね、ロッソレットのエネルギーをタイガスパークに読み込ませる。

タイガにウルトラマンロッソのビジョンが重なり、ストリウムブラスターと同じチャージを行う。タイガの必殺光線にロッソの力が加わり、強力な光線が放たれた。

 

『フレイムブラスター!!!』

 

必殺技は見事にトレギアに命中した。しかし、トレギアは何事もなかったかのように空に浮かび上がる。

 

『ハハハハハハ、中々骨のある攻撃だったよ。ではこの世の地獄でまた会おう。』

 

トレギアは空に黒い雲を発生させ、その中の魔法陣に消えていった。

 

(タイガ、トレギアって何者?夢の中に出てきてから、気になってはいたけど。)

『闇に堕ちたウルトラマンさ。あいつのせいで俺は大事な仲間を・・・。』

 

ヒロキは夢の中でタイガと一緒にトレギアに挑んだ2人のウルトラマンがトレギアに消された事を思い出した。

 

((夢の中に出てきたあの2人の事か・・・))

 

 

キングジョーもキングゲスラがトレギアによって無残に殺された現場に立っていた。その目には涙が浮かんでいた。

 

「チビスケちゃん・・・御免なサイ・・・。ワタシにもっと力があれバ・・・。」

「おジョー、帰るよってそんなこと言ってられないか。私達、先に帰っているから。」

 

ガッツ星人が声を掛けるも、反応がないため先に帰る事にした怪獣娘達。

アギラが重い口を開く。

 

「キングジョーさん、心配だね。」

「おジョー自身が立ち直るまで待つしかないさ。それよりピグっち。」

「はい、信じたくはありませんが、今度の私達の敵はウルトラマンです。どこまで戦えるか分かりませんが私達は強くならなければなりません。」

 

怪獣娘達が去った後で、キングジョーは変身が解け、元の人間クララ・ソーンに戻る。彼女は大量の涙を流して泣いていた。

 

「チビスケちゃん・・・ううう・・・うわああああああん!!!」

 

 

ヒロキはその光景を見ていた。いつも笑顔が眩しいあの明るい幼馴染が大泣きしているのを見て、声が掛けられなくなっていた。

タイガはその光景を見て謝る。

 

『御免な、ヒロキ。俺にもっと「いいよ、タイガは悪くない。僕が悪いんだ。僕が弱いからチビスケを死なせて、クララちゃんを泣かせてしまったんだ。」・・・ヒロキ。』

 

ヒロキの心はやるせない思いで一杯だった。ヒロキは夕日に向かって、泣きながら叫んだ。やるせない思いを振り払うために。

「うあああああああああああ!!!!」




基本的にほのぼのとした怪獣娘の世界が暗くなっていく。
誰かさんのせいでな!!(書いてる本人がいうのもなんですが)



次回予告(CV:ウルトラマンタイガ+????)

『GIRLSに舞い込んだ新たな任務。それは黒い噂の絶えないとある会社社長の警護だった。社長を狙う復讐者が無機質な冷たい怪獣に姿を変える時、宇宙の彼方から頼もしい仲間が帰ってくる!!次回!!
 
            怪獣娘×ウルトラマンタイガ

                 星の復讐者


賢者の拳は全てを砕く!!


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星の復讐者(前編)

今回の話は黒いです。

かなり感じ悪い話になってしまいました。

それでもよければどうぞ。



宇宙空間に浮かぶ一機の宇宙ステーションがあった。その宇宙ステーションに向かって、一機の無人ロケットが向かっていた。ロケットは減速せず、そのまま接近、やがて衝突した。

宇宙空間で大きな爆発が起こり、その光景に命綱を着けた一人の宇宙服を着た男が絶望した表情で叫んでいた。

その宇宙ステーションにはその男が一番愛している妻が乗っていたのだ。この状況では彼女は間違いなく助からないだろう。

やがて木っ端みじんになり人口衛星の残骸が漂流する宇宙空間に取り残された宇宙飛行士の前に青い悪魔『トレギア』が現れた。

 

『地球人よ。お前は何を望む?」

 

宇宙飛行士は知っていた。今回の衝突は決して、偶然起こったものじゃない。故意に起こされたものだと。

男は願った。

 

「決まっている・・・!!復讐だっ・・・!!あの汚職に身を染め、私腹を肥やしたあの男への・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日、コスモミラクル社の今里社長が謝罪会見を開きました。先日、コスモミラクル社が打ち上げた火星探査のための無人ロケットが宇宙ステーションに衝突し、宇宙飛行士2名が死亡する事故が発生し、今里社長はその責任問題を追及されていました。今里社長は『シュミレーションが合わなかった原因を解明し、二度とこんな・・・』

 

『悲惨な事故が起こったな。』

「うん。」

 

ヒロキとタイガは誰もいない部屋で、TVニュースを見ていた。TVは先日発生した宇宙ステーションと無人ロケットの衝突事故で持ち切りだった。

 

「父さんが宇宙開発の仕事に携わっていて、この宇宙ステーションにも関わる予定だったんだけど、断ったらしいよ。」

『予定?』

「なんか、あまりいい噂を聞かないんだって。裏では怪しいことをやっているって噂らしいよ。」

『ふーん。』

 

TVの中のアナウンサーが新しくきたニュースを読んでいた。

 

『たった今、新しい速報が入ってきました。どうやら今里社長あてに脅迫状が送りつけられたようです。なお、脅迫状を送った犯人は未だ不明であり・・・』

 

ヒロキはそのニュースを聞く前に外へ家のドアを開けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLSの会議室では再び現れた怪獣と宇宙人について話していた。

 

「皆さん、この地球に再び怪獣が出現し、暴れ出す事件が二度も起こりました。その内、キングゲスラの事件については宇宙人が関与していた事が分かっています!そして、その宇宙人達の証言で彼らは地球で犯罪組織を結成していた事が分かりました!」

「宇宙人の犯罪組織!?」

「宇宙人って地球からいなくなったんじゃ?」

「ゴモゴモが捕まえた2人によると地球から怪獣がいなくなった後も宇宙人は人知れず地球に来ていたそうです!彼らはオークションのために自分達の保有する怪獣を破壊兵器として放っていたそうです!」

「じゃあ、チビスケちゃんはそのため二・・・。酷いデス・・・命を兵器にして商売するナンテ!」

「キングジョーさん・・・。」

 

赤い髪のピグモンこと『岡田トモミ』からの説明に青い癖毛気味の髪のマガバッサーこと『風巻ヨウ』と長いポニーテールに八重歯の少女ミクラスこと『牛丸ミク』が驚き、クララが宇宙人の犯罪組織に怒りを覚える。そんなクララを長い白銀の髪を三つ編みにした眼鏡の少女ウインダムこと『白銀レイカ』が心配する。

 

「相手の供述によれば、彼らが持っている怪獣兵器は無数に存在し、既に多くの怪獣が地球に放流されたようです。」

「マジか!それじゃあ、あんな怪獣がこれからも現れる可能性があるってことかよ!?」

「第一次大怪獣時代と同じ人類と怪獣の戦いが再び起きる時代になる可能性があるわけね。」

「はい、一刻も早く、怪獣対策を整える必要があります。それに・・・。」

 

ウルトラマンタイガの画像がモニターに映り、トモミの言葉にレッドキングこと長髪を縦ロールにし、鼻に絆創膏を貼った少女『歌川ベニオ』とエレキングことピンク色の長髪に三日月型のヘアピンを付け、眼鏡を掛けた少女『湖上ラン』が反応する。

トモミは浮かなそうにウルトラマントレギアの映像を写しながら言葉を続ける。

 

「青い仮面のウルトラマンに対抗するためにはやはりウルトラマンの力を貸りるしかありません。・・・本来、地球への脅威は私達で対処しなければなりません。・・しかし、敵がウルトラマンであれば、怪獣娘だけでは、確実に勝ち目がありません。そのためにもウルトラマンさんとコンタクトをとらなければ。」

「でも、クラスの皆はあの仮面のウルトラマンも怪獣を倒してくれたから味方だと言って「あり得マセン!!!」キングジョーさんっ!?」

「あの仮面のウルトラマンは絶対に敵デス!!!断ジテ!!!味方なんかではありマセン!!!絶対二!!!絶対に倒さなければならない敵デス!!!」

「ふええええっ!?」

「キングジョーさん、落ち着いて!!」

「あの怪獣の友達を殺されて辛いのは分かったから落ち着いてください!!」

 

マガジャッパことショートボブに赤い髪飾りを付けた少女『竜波ユカ』の言葉にクララは逆上して反論する。いつも優しく笑顔が明るいクララの逆上にユカは思わず怯えてしまう。

逆上したクララをザンドリアスことピンク色の髪をツインテールにした小柄の少女『道理サチコ』とノイズラーことメッシュが入った髪と男っぽい雰囲気のヘッドホンを着けた少女『鳴無ミサオ』が押さえつける。

 

「御免なサイ・・・取り乱しテ。」

「だっ、大丈夫です。」

「とにかく、宇宙人の犯罪組織と青い仮面のウルトラマンに対抗するためにウルトラマンタイガさんの正体を探る事にしましょう。全体会議は以上です。今日の任務を控えたアギアギ、バサバサ、ジャパジャパの3人は残ってください。」

 

会議室にはトモミとアギラこと茶髪と眠そうな目をした少女『宮下アキ』とヨウ、ユカの4人になる。トモミは書類を配り、今回の任務を説明する。

 

「これってコスモミラクル社のパンフレットじゃないですか!?どうして今回の任務の説明にこれが・・・?」

「皆さんも知っているとは思いますが、先日コスモミラクル社が打ち上げたロケットが宇宙ステーションに衝突し、宇宙飛行士2名が死亡する事故が起こりました。今回の任務はコスモミラクル社社長『今里光』の警護です。」

「どっ、どうしてあの会社の社長の警護をGILRSが!?」

「そうですよ!!どうしてわたし達怪獣娘が出なければいけないんですか!?」

「その理由は・・・これです。」

 

トモミは会議室のモニターに映像を写し出す。映像に映っていたのは、事故にあった宇宙ステーションに乗っていた宇宙飛行士の1人『九条レント』だった。

 

「この人って、この前の事故に乗っていた宇宙ステーションの宇宙飛行士?」

『今里光、貴様はとんでもない罪を犯した。貴様の罪がこれだ。』

 

そう言って、宇宙ステーションにロケットがぶつかり、大爆発する瞬間が映る。

 

『これが貴様の最大の罪だ。貴様は様々な罪を重ね、その証拠を握りつぶすためにわざと今回の事故を起こした。その罪を貴様自身の命で償うがいいっ!!』

「事故を起こした社長への殺害予告ですか・・・。あれ、もしこの映像を撮ったのがこの人ならどうやって地球に戻ってきたんでしょうか?」

 

脅迫を予告した映像を見て、アキは疑問を口にする。宇宙ステーションには緊急事態用の脱出ポットもあったが、事故で木っ端みじんになったはずであり、もし予告を撮影したのが九条レント本人なら、地球に帰ってくることが出来ないはずだからだ。

 

「そうなんです。あの映像はスタジオやCGを使った悪戯である可能性もあります。ありますが、念のため怪獣娘に警備してほしいとのことです。」

「・・・さっき、宇宙飛行士が『様々な罪を重ねた』と言っていましたが。」

「・・・実はコスモミラクル社は黒い噂が絶えない会社でして・・・、宇宙開発事業の裏で武器の密造や密売、怪しげな人体実験なども行っていると噂されているんです。」

「そんな人の警護をするんですか!?わたし、絶対に嫌です!!」

 

今回の任務にヨウが大声を上げて、反対する。当然だ。事故を起こした原因かもしれない上に犯罪行為に身を染めた可能性がある社長を守りたいと誰が思うだろう。

 

「相手の人間性を考えると、私達も断りたかったです。しかし、社会的にも知名度が高いコスモミラクル社の依頼を断れば、今後の活動に支障が出るかもしれない。上層部はそう考えた結果、今回の依頼を受けました。」

「分かりました。」

「アギラ先輩!?本当にやるんですか!?」

「命を狙われているかもしれない人を助けてあげるのもボク達怪獣娘の役目だと思うよ。相手が誰であろうと、ボク達がやらなきゃいけない事はやらないと。ボク達の手で助けられる命を放っておいたら、きっと後悔するから。」

「バ、バサちゃん、やろう。わ、私もい、一緒に頑張るから。」

「ジャッパ、アギラ先輩、・・・分かりました!!やります!!」

 

反対したヨウをアキが論す。一緒にGIRLSに入った友達に励まされた事でヨウはようやく納得した。

 

「警備は午後6時からです。皆さん、全体会議の後で大変だと思いますが頑張ってください。」

「「「ハイ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後6時、コスモミラクル社前では、沢山のマスコミが取材に訪れていた。理由は宇宙ステーションの事故だけではない。

実はどこからか漏れたのか、社長宛に殺害予告が届いたという噂が世間に流れてしまった。

しかも、怪獣娘が社長の警備をしたせいで、その噂は信憑性が高くなり、結果として多くの報道陣が会社にけしかける形になった。

カメラを向ける報道陣に目立つのが苦手なアギラは顔を必死に隠す。マガジャッパも大勢の人混みに慣れていないせいでかなり戸惑っていた。

そんな2人の事を知らず、1人の新聞記者がコスモミラクル社社長『今里光』に質問し、つられて他の記者やニュースキャスターも質問する。

 

「今里社長、宇宙ステーションの事故についてどうお思いですか!?」

「実に残念で不幸な事故でした。」

「宇宙飛行士2名が死亡する事故が起こったきっかけは!?」

「残念ながらまだ分かっていません。しかし、我が社のシュミレーションでは安全に火星に着陸するはずでした。我が社の信頼を崩すために産業スパイによって仕組まれた可能性も出て来ています。」

「世間では故意に起きた事件だという意見も出ていますが!?殺害予告が送られたとの情報もありました。何か関係ありませんか!?」

「わざとではありません。殺害予告についてですが・・・。」

 

今里はマスコミの一つ一つの質問に対し、丁寧に答えていく。そして、最後の質問には一瞬戸惑うも、

 

「殺害予告は事実です!恐らく、会社の信頼を落とそうとする産業スパイの仕業でしょう!しかし、私は屈しません!!犠牲になった2人のためにも私はこれからも宇宙開発事業を続けていきます!!今回の事故の原因を解明し、解決策を見つけ、再び立ち上がる!!私は前に進みます!!前に進んで宇宙開発を進めていきます!!」

 

記者の質問に全てはっきりと答えた今里に対して、怪獣娘達もやはりあくまで噂で本当はいい人なんじゃないかと好感を持ち始めた。しかし、事態は急変した。

 

「世間には、でたらめを吹き込み自分は聖人アピールか。この犯罪者が!!」

 

彼らの前に青い作業着のような服を着た顔色の悪い男が現れた。その途端、アギラ達のソウルライザーに連絡が入った。ピグモンからだ。

 

『3人ともとんでもない事実が分かりました!!あの映像はスタジオでもCGでもありません!!本物の九条レントです!!」

 

怪獣娘達もマスコミも今里もその男を驚きながらその男を見た。男は紛れもなく、宇宙ステーションに乗った宇宙飛行士『九条レント』本人だったからだ。

当然、マスコミはレントに取材しようとした。二度と地球に帰ってくることが出来なくなった男がどうやって帰ってきたか気になったからだ。

しかし、レントは懐から白い奇怪な銃を取り出した。銃を突き付けられたマスコミは怯えて、逃げ出した。

レントは銃の引き金を引く。すると今里の後ろに白い魔法陣が形成された。すると魔法陣に今里が吸い込まれていく。

 

「助けてくれぇぇぇーーーっ!!」

「凄い力・・・2人とも力を貸して!!」

「はい!!」

 

アギラはマガバッサー達の力を貸りて、今里を魔法陣から引き離す。

 

「大丈夫ですか!?」

「助かった。ありがとう。頼むよ。彼を止めてくれ。きっと事故で気が狂ってしまったんだ。」

「気が狂ってるのは貴様の方だ!!社長!!あれは事故に見せかけて俺達を殺害するつもりだったんだろう。怪獣娘達、その男は武器の密造、密売、密輸を行っている!!その他にもテロリスト達に資金援助を行ってきたり、違法薬物にも手を染めてきた最低の男だ!!そんな男をお前達は守るのか!!?」

「奴は宇宙に行った影響で狂ってる!!正気じゃないんだ!!最悪の場合、殺してもかまわないから、あいつを止めろ!!」

「奴の言葉こそ何の意味も無い!!これを見れば分かる!!」

 

レントがそう言うと、建物の外のモニターに映像が写し出された。それは今里が外人にロケットランチャーやグレネードランチャーといった強力な武器を売っている映像だった。他にも武器を持った外国人に1億の大金を渡す場面やどこかの手術室で男に無理矢理薬を打たせて苦しむ姿を愉快な表情で見る姿が写し出されていた。

 

「どうだ!これらの犯罪をその男はしてきたんだ!!しかも、俺の妻はその男の悪事を知ったからという理由で殺害されたんだ!!あのロケットに衝突させて、事故にみせかけてな!!」

「お、お前、俺が事故に見せかけて殺害した証拠がどこにある!!でたらめを言いやがって!!」

「俺は宇宙ステーションに行く1週間前に妻から聞いたんだ。妻は会社の社長と一部の社員以外立ち入り禁止の部屋の前で社長と部下の武器の商談の会話を聞いたと!!妻は、宇宙ステーションから帰ってきたら本格的に証拠集めを行うと俺に言った!」

「しかし、貴様の方も妻に裏でしてきた事を知られたと知った!だから、事故に見せかけて、妻を殺害したのだ!!貴様らはそんな男も守るというのか!?」

 

怪獣娘達はさっきの姿やGIRLSで聞いた話が正しかったと知って、ショックを受けた。さっきまで、報道陣への質問に全てにきちんと対応していた姿は偽りの姿だったのだ。

しかし、アギラはそれでもレントに反論した。

 

「確かにこの人は多くの罪を犯した悪い人です!でも、だからと言って見捨てていいわけがない!だからボク達はこの人を最後まで守ります!!」

「まだ、そんな事を・・・ならば、貴様らも抹殺する!」

 

レントは銃から光弾をアギラに撃つ。アギラも怪獣娘の身体能力を生かして光弾を避け、レントの後ろに回り込み、羽交い締めにする。

 

「ボクが押さえている間に社長を逃がして!!ただし、君達も一緒だよ!!」

「はい、任せてください!!」

「私達から逃げないでください!!」

「おいおい、これってまさか・・・。冗談じゃない!!警察に行くのだけは御免だ!!」

 

今里は怪獣娘達に自分の身柄を拘束されると思った。レントが羽交い締めにされた今がチャンスだと思い、全力で走り出した。

マガバッサーとマガジャッパは憤り、アギラは指示を出す。

 

「あーーーっ!!逃げた!!」

「あんな罪を犯して、自分だけ逃げるなんて!!」

「ここは、ボクが何とかするから、2人は社長を追って!!」

「はい!!」

「邪魔だ!!」

 

2人が社長の後を追う。それを見たレントは逃がさんと言わんばかりにアギラを振りほどく。

 

「なんて力・・・。」

「俺は宇宙で悪魔と契約した。その結果、怪獣娘以上の力を手に入れたのだ!!」

 

そう言うと、アギラの前に今里を吸い込もうとした魔法陣が現れた。魔法陣の向こう側は宇宙になっている。

これに吸い込まれたら、生きて帰れないだろう。

 

「愚かな男を守ろうとする怪獣娘。闇にさようなら。」

「ぐっ、く、くううう!!」

 

レントは銃の引き金を引き、魔法陣を出した。魔法陣は下に降りて、レントを飲み込み、消えていった。

アギラは宇宙空間に投げ出されないように近くの柱に必死で掴まっている。

 

「うう、本当にマズイかも・・・。」

 

アギラは柱から手を離そうとしなかった。しかし、魔法陣が宇宙空間と繋がったことで容赦なく気圧の変化が起こり、アギラを宇宙空間へ飲み込もうとしている。

アギラは魔法陣が縮まっていくのを確認した。このままいけば耐えられる。そう思っていた。

しかし、悲劇は起きた。柱そのものが折れてしまったのだ。アギラの体は宙に浮かび上がり、そのまま宇宙空間へ放り込まれる。

 

(皆、御免ね。もっと、皆と楽しい時間を過ごしたかったな。)

 

アギラが魔法陣に吸い込まれそうになったとき、大きな声が聞こえてきた。

すると、1人の少年が走ってきた。彼はアギラにそのまま手を伸ばす。

 

「アギラさん、だっけ?僕に掴まって!!」

 

その少年はアギラの先輩であるキングジョーの幼馴染であり、最近怪獣娘達と知り合った白鳥ヒロキであった。




次回で怪獣娘×タイガは一旦終わりです。

本格的に連載するかはまだ未定です。


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星の復讐者(後編)

みんな大好き力の賢者のご登場です。

アンケートも設置しました。

よろしくお願いします。

シビルジャッジメンター『ギャラクトロンMK2』登場


『修行のため、色々な星を巡ってあいつらと出会ったんだ。』

「そして、その2人とチームを組んだんだ。」

『ああ、それがトライスクワッドだ。』

 

アギラ達がコスモミラクル社にいる頃、ヒロキはタイガの仲間と夢の中で戦っていたウルトラマン達について聞いていた。

ヒロキは度々夢に出てくるタイガ達の戦いについて興味があったのだ。

 

「その2人もウルトラマンなんだよね。」

『ああ、そうさ。タイタスは・・・パワーがあって、頭もいいんだ。フーマは喧嘩っぱやいけど・・・スピードに優れててさ、義理固くてさ・・・いいやつなんだぜ』

「大切な仲間だったんだね」

『ああ、けどトレギアにやられて・・・2人は・・・もう・・・。』

 

よほど悔しかったのだろう。タイガは肩を震わせながら当時の事を思い出していた。

そんなタイガにヒロキが声を掛ける。

 

「多分だけど2人は生きているんじゃないかな。」

『なんでヒロキがそんなこと言えるんだよ!!』

「タイガが生きているからだよ。タイガもその2人と同様にトレギアに同じ技でやられたんだろ?けど、タイガは生きているじゃないか。だから、希望は捨てちゃいけない。僕はそう思うよ。」

『ヒロキ・・・。』

 

ヒロキの言葉に思うところがあったのだろう、タイガがうつむきながら口を閉じる。

その時だった。多くの人がヒロキと反対側から走ってきたのは。それはさっきまで今里に取材をしてきた報道陣だった。

 

「うわっ!!」

「ああっ、すまない!!君も早く逃げた方がいいぞ!」

「一体何があったんですか!?」

「社長が宇宙飛行士に襲われている!!ここにいたら巻き添えになるぞ!」

 

そう言って走っていった新聞記者を見送ってヒロキは走り出した。

報道陣の走る方向とは逆に。

走っていたヒロキは白い魔法陣に吸い込まれそうになるアギラを発見した。迷わずヒロキはアギラに手を伸ばす。

 

「アギラさん、だっけ?僕に掴まって!!」

 

アギラはヒロキの手を掴む。ヒロキも魔法陣に吸い込まれそうになるアギラの手を必死で掴みながら踏ん張る。

やがて、魔法陣が消えた。

 

「大丈夫?」

「ヒロキさん?ありがとう。でもどうしてここに?」

「さっき、事故を起こしたロケットを打ち上げた社長に取材していたマスコミとすれ違ったんだ。どうしても気になって。」

「無茶しすぎだよ。でも・・・ありがとう。そうだ、レントさんを追わないと!また、社長を狙うはず!」

「僕も行くよ!!手伝える事は手伝いたい。」

「でも・・・。」

 

アギラは戸惑った。一般人のヒロキを巻き込んで何かあったら先輩であるキングジョーさんに顔向け出来ないと考えたからだ。

しかし、ヒロキの顔を見て、アギラは決意した。

 

「分かったよ。けど、危険だと判断したらボク達に構わず逃げて。」

「まさか、女の子を置いて逃げるほど臆病じゃないよ。」

 

2人は走り出した。その間、ヒロキはアギラから今までのいきさつを聞いていた。

 

「あの社長、そんなヤバイ事をしていたの!?じゃあ、あれは意図的に起こした事故に見せかけた事件だったんだ!?」

「うん。」

「どうやって宇宙から帰ってきたのかな?」

「レントさん曰く悪魔と契約したって言ってたよ。多分だけどその悪魔に力を貰ったんじゃないかな?そしてその悪魔の力で地球に帰ってきたんだと思う。」

「悪魔・・・か。」

 

ヒロキの頭に悪魔と聞いて以前友達であるチビスケを殺した青い仮面の悪魔が重い浮かんだ。

 

 

 

その頃、公園のベンチでポップコーンを食べながら、コスモミラクル社を見る男がいた。

それはレントに力を与えたトレギアの仮の姿『霧崎』だった。

 

「さあ、私が与えた力で憎き社長に鉄槌を下したまえ。」

 

霧崎は笑いながらまるで映画を見る客のようにポップコーンを口に運んでいた。

 

 

 

 

(まさか、トレギアが関与してるのか?もし、そうなら僕が止めないと!!)

「ヒロキさん?」

「ごめん、考え事してた。・・・ってあれ!!」

 

ヒロキが指を指すと、魔法陣に吸い込まれそうになる今里を引っ張るマガバッサーとマガジャッパが見えた。2人は急いで合流する。

 

「2人とも大丈夫!?」

「大丈夫です!ってあれ・・・その人って。」

「確か海岸沿いの公園にいたキングジョーさんの幼馴染の・・・。どうしてここに?」

「話は後だ!!2人とも引っ張るよ!!」

 

4人で今里を魔法陣から引っ張る。魔法陣から離れた距離に落ちたところで、魔法陣は消滅した。

レントは声を荒げる。

 

「何だ、さっきは居なかった奴がいるな!!」

「貴方が九条レントさんですね?貴方に聞きたい事があります。その力をくれた悪魔とは誰ですか?」

「そんな事どうでもいい!!それよりも、お前も邪魔をするのか!!それでも守るのか!!愚かな悪行に手を染めた男を!!ならば、最終手段だ!!」

 

レントは銃の引き金を引く。しかし、何も起きなかった。レントは階段で上に上がっていった。

 

「2人は社長をお願い!!今度こそ逃がしちゃ駄目だよ!」

「ハイ!」

「分かりました!大人しくしててください!!」

「ぐ、くうううっ!!今までの功績が消えるのは嫌だっ!」

 

アギラとヒロキはレントの後を追う。途中でアギラのソウルライザーにピグモンから連絡が入る。

 

「アギラです!」

『大変です!!アギアギ達がいるコスモミラクル社目掛けて使われなくなった人口衛星が落ちています!!』

「何ですって!!」

 

思わぬ話に2人は足を止める。そのままアギラはピグモンからの通信を聞く。

ヒロキは階段に上がる前にレントが銃の引き金を引いた瞬間を思い出した。

 

「きっとあの時、人口衛星を落下させたんだ・・・。」

『このままでは、1時間後に人口衛星がコスモミラクル社に衝突します!!現在GIRLSが人口衛星のコンピュータにアクセスしていますが、反応がありません!!』

「ボク達がレントさんを止めて、人口衛星の落下も阻止します!!」

『お願いします、アギアギ!!』

 

ピグモンとの通信を終えた後、2人は階段を再び駆け上がる。

そんな中、レントは子供の頃を思い出し、口を開く。

 

「正直に言うと僕はレントさんの気持ちが分かるんだ。僕も大好きなお爺ちゃんが轢き逃げにあったから。」

「えっ!?」

 

そう言って、ヒロキは小学5年生の頃を思い出した。

 

 

 

 

その日は特に何もない帰り道だった。幼馴染のクララもクラスの女子と約束があったため、ヒロキは1人で帰っていた。

 

「おっ、健一、今帰りか?」

「お爺ちゃん!」

 

帰り道の途中で祖父である『白鳥健一』と偶然顔を合わせたのだ。健一はヒロキの家の近くに住んでいて、丁度散歩の帰りだったようだ。

 

「家まで送っていくか?」

「いいよ、もう1人で帰れるから。」

「そうか、ヒロキも大きくなったな。光太郎さんにも会わせてあげたいよ。」

「またその人の名前?お爺ちゃんよく言うよね。光太郎さんって人の事。」

「兄のような人だったからな。最後は旅立っていったんだ。それ以来会えていない。しかも、その人は・・・」

「ウルトラマンだったんでしょ。何度も聞いたから分かるよ。」

「そうだ、怪獣に父さんを殺された昔の僕を勇気づけてくれたんだ。また、会いたいな。家族の事も紹介したい。未来を掴んだ事を伝えたいんだ。」

「いつか会えるといいね。じゃあ僕は帰るよ。じゃあね、お爺ちゃん。」

 

ヒロキは横断歩道を渡り祖父のいる道とは反対側に渡った。ヒロキが渡り切った後、ヒロキより年下のランドセルを背負った少年が走ってきた。

そこに車がブレーキを掛けようともせず、猛スピードで走ってきた。このまま少年にぶつかろうとした時、健一が走ってきたのだ。健一は少年を突き放す。車は猛スピードでそのまま走り、健一にぶつかった。車はそのまま走り去っていった。

ヒロキは轢かれた祖父に駆け寄っていた。近くで見ていた通行人も健一に駆け寄る。

 

「ひき逃げだ!!警察と救急車を呼べ!!」

「大丈夫ですか!!意識はありますか!?」

「お爺ちゃん!?しっかりして!?しっかりして!?」

 

通行人によって呼ばれた救急車に運ばれる健一。ヒロキも一緒に乗っていた。

 

「お爺ちゃん!しっかりして!今、病院に向かっているから!!」

「・・・・・・ヒ・・・ロ・・・・・キ・・。」

「お爺ちゃん!?」

「強く・・・・・・生きて・・・いけ・・・・・。」

「お爺ちゃーーーーん!!」

 

救急車でヒロキは祖父の最期を見届けた。

 

 

 

 

「そんな事が・・・。」

「あの時はショックだったよ、お爺ちゃんの事が大好きだったから。あの子供も助かった。けど、僕の中で犯人を憎む気持ちが芽生えたんだ。」

「後にお爺ちゃんを轢き逃げした犯人の車を見つけてさ、その日図工の授業で使ったカッターナイフを思わず取り出してしまったんだ。」

「それでどうしたの?」

「クララちゃんと父さんに見つかって止められた。父さんに言われたよ。『お爺ちゃんの言葉を忘れたのか』ってさ。」

「その言葉って。」

 

ヒロキはアギラに祖父から教えられた言葉を教えた。アギラは思わず頷いた。

 

「確かにそうだね。そうすれば・・・あの人を止められるかも・・・。」

「急ごう!!レントさんを!!」

 

2人は屋上にたどり着いた。ヒロキとアギラは説得を試みる。

 

「レントさん、もうやめてください!!」

「さっきの怪獣娘と・・・さっき一緒にいた小僧!!また、お前達か!!どうして、邪魔をするんだ!!」

「貴方を助けたいからです!!奥さんを殺されてあの人を憎い気持ちは分かります!!」

「お前なんかに何が・・!!」

「僕も轢き逃げ事件で祖父を失った事があります!!

「!?」

「でも、祖父が残してくれた言葉のおかげで立ち直り、憎しみを乗り越える事が出来たんです!!大切な人が奪われ、憎しみが生まれた時はその人と一緒にいた時間を思い出してほしい。その人は復讐を望むような人だったか、一緒に過ごした思い出を思いだせば分かるはずだ!!」

「僕のお爺ちゃんが残してくれた言葉です!!レントさん、貴方の奥さんと一緒に過ごした時間を思い出してください!!貴方の奥さんは貴方が誰かを傷付ける事を望む人ですか!?」

「!?そ、それは・・・!?」

 

レントの脳裏に妻『九条ナナ』と過ごした時間が思い出される。レントは苦悩していた。

しかし、悪魔は囁く。

 

『何してる。大切な人を奪った憎き男を殺せ。』

「俺の憎しみは・・・!!もう誰にも・・・止められない!!」

 

レントは銃を胸に掲げる。すると、魔法陣はレントを飲み込む。魔法陣がレントを飲み込むのと同時に町に大きな魔法陣が出現し、白い色に青い鎧で覆われ、大きな斧を持った竜人を思わせるロボット怪獣シビルジャッジメンター『ギャラクトロンMK2』が姿を現した。

現れた怪獣にアギラは驚くも向かっていく。

 

「あの人が怪獣に・・・。止めなきゃ、例え勝ち目がなくても!!」

「アギラさん!!・・・どうしてこんな事に・・・。」

『トレギアだ!あいつが人間の憎しみを利用したんだ!!行くぞ、ヒロキ!!』

「ああ!!」

 

『カモン!』

 

ヒロキは右腕にタイガスパークを出現させ、相棒の顔が刻まれたキーホルダーを手にし、叫ぶ。

 

「光の勇者、タイガ!!」

『はあーっ!ふっ!』

 

右手に持ち替え、タイガスパークに光を集め、右腕を掲げる。

 

「バディィィゴーーーー!!!」

 

『ウルトラマンタイガ!』

 

 

 

 

 

 

 

夜の街にウルトラマンタイガが降り立った。

ギャラクトロンMK2はタイガを認知すると、手に持った斧『ギャラクトロンベイル』を構える。

タイガは走り出し、ギャラクトロンMK2が振りかざす斧を受け止め、地面に受け流す。

斧は地面に突き刺さり、斧を抜こうとするギャラクトロンMK2に隙が生まれる。

隙が生まれた怪獣にタイガは拳を構え、パンチを放とうとする。しかし、ヒロキがそれを止める。

 

(駄目だ!!タイガ!!)

『何っ!?』

(あの人を傷付ける事になる!!)

 

丁度、斧が抜けたギャラクトロンMK2がタイガに斬りかかる。

タイガはバク転して、避ける。しかし、追ってきた怪獣はタイガに斧で一撃を食らわせる。

 

『うわっ!?』

 

ギャラクトロンMK2は再びタイガに斧で斬りかかる。タイガは押さえつけようとしたが、振りほどかれ、斧で何度も斬りつけられる。

 

『ぐあっ!!ぐっ!!ぐああっ!!』

 

力強く怪獣が振るった斧がタイガの体を吹っ飛し、後ろのビルを壊して倒れ込む。

 

『ぐああああっ!!』

 

ギャラクトロンMK2は右手に魔法陣を出現させ、タイガに放つ。

 

『ぐああああああっ!!』

 

ビームを放ち、タイガを圧倒するギャラクトロンMK2。その時、どこからか声が聞こえた。

 

「もうやめて!!レント!!」

 

空から黄色い光が降り立ち、ギャラクトロンMK2の赤い胸を貫き、近くのビルに落ち、空に昇っていく。ビルの屋上に2人の男女を残して。

怪獣が出現した事により、ピグモンが呼んだ応援のエレキングとガッツ星人がその光景を目撃した。2人はそれを見て驚いた。

黄色い光から現れたのはレントとその妻『九条ナナ』だったからだ。

 

「ナナ、どうやってここに!?」

「貴方の憎しみが悪魔を呼んだように、私の強い思いは賢者を呼んだの。心優しい賢者さんは私の願いを叶えてくれたの。」

「君の願い!?」

「貴方の・・・復讐を止めること。」

「!!けど、俺は・・・。」

「駄目だよ。これ以上苦しむ貴方を見たくない。一緒に宇宙に帰ろう、私達の命が消えたあの場所へ。」

 

その時、レントは思い出した。あの時の爆発で宇宙服が損傷し、命を落とした事を。

ナナは愛する夫を抱きしめる。

 

「空から地球を見守ろう。ずっと2人でね・・・。」

 

レントは妻の言葉に涙を流しながら頷く。黄色い光が宇宙飛行士夫婦の前に再び降り立つ。

ナナは目の前の光に感謝の言葉を言いながら、夫婦は敬礼する。

 

「ありがとう、賢者さん。」

『どういたしまして。』

 

2人はお互いの顔を見合い、笑顔を浮かべながら消えていった。

黄色い光はそれを見送ると、タイガのカラータイマーに吸い込まれていった。

ヒロキ達の前で光はタイガと似たキーホルダーに変わっていった。

 

『久しぶりだな、タイガ!!』

『おいおい、これは夢じゃないんだよな!!』

『ああ、また共に力を合わせて戦う時がきたようだ!』

(・・・もしかして、さっき話してたタイガの仲間の・・・ウルトラマン?良かったね!!タイガ!大切な仲間と会えて!!)

『ああ、本当だぜ!!二度と会えないと思ってた!!』

『そうだな。だが、再開を喜ぶのは後だ!!少年よ、私を手に取れ!!』

 

ヒロキは頷き、タイガスパークの引き金を引く。そのキーホルダーを左手で掴んだ。

 

『カモン!』

 

「力の賢者、タイタス!!」

 

キーホルダーを右手に持ち、タイガスパークに黄色い光が集まる。

 

『うおおおおおっ!ふんっ!』

 

タイガスパークを装着し、キーホルダーを持った右手を上に掲げた。

 

「バディィィゴーーーー!!!」

 

一点の光から赤と黒のカラーリングに鍛え抜かれた筋肉、額に星型の結晶が付いており、胸のカラータイマーも星型のウルトラマンが握りこぶしを作り、両手を上げて巨大化する。

U40という星で生まれ育った『力の賢者』の二つ名通り力に優れたウルトラマン。その名は、

 

『ウルトラマンタイタス!』

 

 

 

『ふんっ!』

 

タイタスは両腕を上に曲げ、上腕二頭筋を強調するポーズをとる。

 

『はっ!』

 

次は腰元へ手を持って行き、背中を広げる。

 

『ふぅんっ!!』

 

最後に手を組んで身体を捻りつつ、胸や腕……そして脚と、全身の至る所の厚みをアピールする。

 

(あのさ、何このポーズ・・・。)

『こうする事で私の力は一時的に高まる!』

(本当かな・・・。)

 

心配するヒロキを置いて、ギャラクトロンMK2が斧を構え、動き出す。

 

『憎しみの力だけでまだ動くか!!』

『賢者の拳は全てを砕く!!』

 

ギャラクトロンMK2が斧で斬りつけようとした時、タイタスも拳を振るう。その拳は頑丈な怪獣の斧を砕き、固いギャラクトロンMK2をたった一発で吹っ飛ばした。

 

(凄い、一発であそこまで・・・。)

『まだまだ、私のパワーはこの程度ではない!!』

 

怪獣娘達も新しい3人目のウルトラマンの戦いを見ていた。特にミクラスとレッドキングはタイタスのパワーにかなり驚いている。

 

「先輩!!あのウルトラマン、凄いパワーですよ!!」

「ああ、どうやらかなり鍛え抜かれた筋肉をしているらしいな!!」

 

ギャラクトロンMK2は立ち上がり、タイタスに向かって構える。

タイタスもギャラクトロンMK2目掛けて、大きな地響きを立て、走り出す。

タイタスの右肩からのタックルで再びギャラクトロンMK2が吹っ飛ぶ。

 

『少年、ジードレットを使いなさい!!』

(分かった!!)

 

『カモン!』

 

ヒロキはタイガスパークのレバーを引き、左手に意識を集中させる。すると光の国の反逆者の血を継ぐウルトラマン『ジード』の力を宿したブレスレット『ジードレット』が出現した。

ヒロキはタイガスパークを装着した右手に左手を重ね、ジードレットのエネルギーをタイガスパークに読み込ませる。

タイタスにジードのビジョンが合わさる。タイタスは両手を曲げ力を込め、腰の位置でクロスさせる。すると、紫のオーラを纏った緑色のエネルギー弾が出現する。

タイタスの必殺技『プラニウムバスター』にジードの力が加わった破壊光弾を右手を拳にしてパンチで打ち出した。

 

『(レッキングバスターッッッ!!)』

 

ジードの闇の力が加わり、破壊力が増した光弾にギャラクトロンMK2は跡形もなく木っ端みじんになった。

爆炎から一筋の光がタイタスの中に入ってくる。それを手で掴むとギャラクトロンMK2の顔が入った黒いオーラを放つ不気味な指輪になった。

 

(ヘルべロスの時と同じだ・・・。また指輪が・・・。)

『ウルトラマンの力を秘めている。不可思議だ。』

 

 

戦いを見ていたアギラのソウルライザーにピグモンから連絡が入る。

 

『駄目です。人口衛星はこちらのアクセスを全く受け付けません!!このままでは、後、5分もしないうちにそちらに衝突します!!』

「ええっ!!」

 

それを聞いたタイタスが空に飛び立つ。落ちてくる人口衛星を迎え撃つために。

だが、悪魔はそれを笑って見ていた。

 

「遊びの時間は終わらない・・・。」

 

霧崎はトレギアアイを目に翳し、本来の姿に戻る。レントに力を与えた悪魔トレギアへと。

 

 

 

 

宇宙空間で衛星を迎え撃とうとしていたタイタス。その姿を下から悪魔が追ってきた。

 

『フハハハハハハ!!』

『トレギア』

(どうしてここに?)

『あの日の苦痛、覚えているかい?』

 

タイタスはトレギアの挑発を一喝する。

 

『相手をしている暇はない!!』

『つれないねぇ・・・。』

 

トレギアは小さい光弾を放つもタイタスは裏拳でそれを弾く。

 

『暇はないと言ったはず!!』

 

タイタスは落下する人口衛星に向かって真っすぐ突っ込む。右手を拳にして、落下する人口衛星を木っ端みじんにする。

タイタスはトレギアに向かって構える。

 

『ナイスパンチ・・・。』

『暇が出来た!戦闘再開といこうか!!』

『打ってみな。賢者の拳とやらを・・。』

 

タイタスはトレギアに向かって真っすぐ進み、その拳を食わらせる。

 

『おいおい、全てを砕くんじゃないのかい?』

『その挑発、敢えて乗ろう!』

 

タイタスはトレギアに左手、右手、両手の順で拳を叩きこむ。トレギアは両手を掴むもタイタスの頭突きで両手を手放す。

再び、タイタスが左手を握り、拳を放つもトレギアは消える。

 

『フハハハハハハ、ハハハハハハ、ハーーーーーッハッハッハッハッハッ!!』

 

 

 

 

地球では今里が警察と怪獣娘が取り囲まれていた。今里はピグモンに言い放つも、彼女は平然としている。

 

「証拠なんてない。すぐに開放されるさ、証拠不十分でな。そしたらGIRLSが訴えられるかもしれないぜ!!無実の大企業の社長を冤罪で「証拠なら十分にありますよ~。」何・・・。」

 

ピグモンとその叔父である佐倉が取り出したのは、今までの今里の悪行が書かれた書類だった。武器の顧客先や人体実験の成果の報告書など今里を逮捕するのに、十分な証拠だった。

 

「よくここまでの犯罪をしておいて、バレなかったものだね~。でも残念ながら、今日で全て明らかになったよ。」

「うちの調査部は優秀ですからね。すぐに動いて証拠を集めてくれましたよ。」

「孤児院から思春期の少女を引き取り、この間の怪獣の細胞を移植して人口怪獣娘を造り、洗脳して兵士として売りさばく計画も考えていたようだな!!ふざけんじゃねぇ!!命は売り物じゃねえんだぞ!!」

「今里光、銃刀法違反などの数々の罪で現時刻を持って現行犯逮捕する!!」

「く、くっそ~!!せっかく本物の怪獣の細胞を利用したビジネスが出来ると思ったのに~っ!!」

 

今里はレッドキングに睨まれ、佐倉に手錠を掛けられ、パトカーに連れていかれる。

 

「今回の事件は一件落着かな。」

「その通りですね。皆さん、本当によく頑張ってくれました。明日の夜、ピグモンと叔父さんがお寿司を奢りますよ~。しかも回らないお寿司です。」

「お寿司!!やったぁ~!!」

「頑張ったかいがありましたね。」

 

ガッツ星人の一言にピグモンが皆を労り、寿司を奢るの言葉にマガバッサーとマガジャッパが喜ぶ。ガッツがピグモンに小声で話す。

 

「ピグっち、おジョーに絶対内緒だよ。この間のキングゲスラの細胞を・・・。」

「分かってます。今のキンキンが知ったらあの社長に突撃しかねませんから。」

 

 

 

 

「僕は白鳥ヒロキ。よろしくね、タイタス。」

『こちらこそ、よろしく頼む。』

 

ヒロキの家でヒロキは自分の部屋でタイガ、タイタスと話をしていた。

 

「後はフーマって人だけなんだよね。」

『そうだぜ。ヒロキ、ありがとな。』

「何が?」

『希望は捨てるもんじゃない。ヒロキの言う通りだった。タイタスは生きてて、こうしてまた会えた。だからフーマともまた会えるって気がしてきたんだ。』

『タイガの言う通りだ。きっとそのうち、ひょっこり現れるだろう。』

(早く会いたいな。どんな人なんだろう。)

 

3人で夜の空を眺めながら、談笑するタイガとタイタスを横にヒロキはまだ見ぬ3人目のトライスクワッドのウルトラマンに思いをはせていた。




今回で怪獣娘×タイガの体験版は終わりです。

次は怪獣娘×Zの1~3話までを体験版として投稿する予定ですが、アンケートの結果によっては怪獣娘×タイガの本格連載版を投稿します。
本格連載版は前編、中編、後編の3部連載になります

また怪獣娘×Zのメインヒロインをもう公開します。
怪獣娘×Zは印南ミコ、つまりガッツがメインヒロインです。
つまり、主人公はガッツの幼馴染となります。

体験版は確実に連載するので、それまでお待ちください。


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怪獣娘×ウルトラマンZ
ご唱和ください、我の名を!(前編)


怪獣娘×Zの試作版です。

怪獣娘×タイガとはパラレルワールドとなっています。

こちらも3話まで投稿して、アンケートを取ります。

それでは、どうぞ。

凶暴宇宙鮫『ゲネガーグ』登場

四次元怪獣『ブルトン』登場


東京のとある町で、大勢の人々が逃げ回っていた。

黒いスライムのような塊のような影、人類に厄災をもたらすシャドウと呼ばれる存在である。

 

「皆さん、落ち着いてください!!」

「ここは私達に任せて!!」

 

そんなシャドウに立ち向かう2人の少女がいた。1人は水色の長髪に青と白の格好に目のような髪飾りをつけた少女と襟巻きがついたフードに一本の角を備えた眠そうな目つきの茶髪の少女である。彼女達こそがかつて人類に恐れられた超常的な生物である怪獣や宇宙人の魂を継ぐ怪獣娘である。

水色の長髪の怪獣娘は分身宇宙人の魂を継ぐ『ガッツ星人』、茶髪の怪獣娘はカプセル怪獣の魂を継ぐ『アギラ』である。

彼女達は所属する組織の任務で外回りをしていたが、来た町にシャドウが現れたため、至急対応することになった。

 

「ガッツ、シャドウが最近活発化してきてない!?この間も大阪に行った時に戦ったよ!!」

「考えるのは後!今はこの状況を何とかしないと!!」

 

ガッツ星人は手から発射する光線でシャドウを倒していく。アギラも走り出し、頭の角でシャドウを貫いた。

このまま倒しきれるかと思った時、地面が揺れ出した。

 

「この感じ、もしかして・・・。」

 

その時、アギラとガッツ星人の持つ怪獣娘の変身を安全にするデバイス『ソウルライザー』の画面にWARNINGの文字が表示される。

すると、地面から二足歩行の怪獣を思わせる大型のシャドウ『シャドウビースト』が2匹現れた。

 

「うわっ、厄介な事になったよ!!」

 

2人がシャドウビーストに立ち向かう。しかし、1匹はまだ人がいる方向へ走っていった。

 

「しまった!!」

「早く、追わないと!!」

 

焦る2人。その時、援軍が現れる。ビキニのような恰好に4本の角があるカプセル怪獣の魂を継ぐ『ミクラス』、眼鏡を掛けた銀色のメカニカルな格好の『ウインダム』が合流する。

2人は親友であるアギラに声を掛ける。

 

「ここはあたしとウインちゃんに任せて!!」

「お2人はもう一匹のシャドウビーストを!!」

「ありがとう、2人とも!」

「行こう、アギ!!」

 

シャドウビーストが暴れる現場では怪獣娘と怪獣娘の傍にいる女性たちが周りの人の避難誘導を行う。そんな中、一人の少年が転んだ7歳位の子供を助けていた。

少年は一人の女性を指差し、子供に言う。

 

「大丈夫か?あそこで手を振っているのはお母さんだろ!!早く行くんだ!!お母さんの元へ!!」

「うん!!ありがとう、お兄ちゃん!!」

 

子供が母親と合流したのを見て、少年も逃げようとした。しかし、少年の視界にスカーフを巻いた犬が目に移った。

 

「ええ~っ。何であんなとこに・・・。駄目駄目。そこは危ないから・・・。ストップ、ストップ。」

 

少年は犬に向かっていった。犬を確保すると優しく撫でる。犬を抱きかかえていた少年は近づいてくるシャドウビーストに気付くのが遅れてしまった。シャドウビーストは少年を獲物とみなし、向かってきた。

 

「危なかったな~。もう大丈夫・・・じゃねえええええ!!」

 

少年は急いで、逃げるもシャドウビーストは思った以上に早く追い付かれるのも時間の問題だった。

 

(せめて、この犬だけでも・・・。)

 

少年が覚悟を決めた時、このシャドウビーストを追っていた怪獣娘が現れた。

 

「大丈夫ですか!?」

「えっ、はい、大丈夫です!!」

「ここは危険だから後は私達怪獣娘に任せて!!」

 

そこに鍛え抜かれた太い手足と黄色の蛇腹のような恰好のどくろ怪獣の魂を継ぐ怪獣娘『レッドキング』とスク水のような恰好の古代怪獣の魂を継ぐ怪獣娘『ゴモラ』が合流した。

 

「アギラ、ガッツ、待たせたな!!」

「レッドキングさん!!」

「もうすぐ、ミクちゃん達も片がつくから、それまで持ちこたえるよ!!」

「いーや、あいつらが来るまでに片をつけようぜ!!行くぞ、お前ら!!」

 

4人の怪獣娘はシャドウビーストに対して、連携して、攻撃をする。ガッツ星人が手から放つ拘束光線でシャドウビーストを拘束し、残りの3人の拳、尻尾、角による渾身の一撃がシャドウビーストを撃破する。

 

「凄い・・・。」

 

少年は思わず呟いた。自分は見ているだけしかできなかったのに、彼女達はあっという間に、事態を収拾したのだ。そんな彼女達に視線が釘付けになっていた。

そこにガッツ星人が話しかける。

 

「君、そこにいたの?危ないから離れてって言ったのに・・・。」

「すいません!!どうしても、目が離せなくて。」

「今後はちゃんと避難してね。」

「押忍・・・じゃなくてはい。」

 

ガッツ星人の注意を聞き、少年はその場から離れようとした時、彼女が待ったを掛ける。

 

「ちょっと待って!君、名前は?」

「え、何で「いいから聞かせて!!」ふ、冬河ハルキだけど・・・。」

「やっぱり・・・、どこかで会った事があると思ったら・・・。ハルーーーッ、久しぶりーーーっ!!」

 

ガッツ星人は少年『冬河ハルキ』に思い切り抱き着いた。ハルキと他の怪獣娘は驚いた。ハルキは目の前の怪獣娘に心当たりがなく、困惑していた。

 

「ちょっ、何すんスか!?」

「やっぱり、ハルだ!!つい押忍って言って、はいって言い直す癖、変わってないね~っ!!」

「ちょ、ちょっと待って、変わってないってどういう!?」

「私だよ!!幼い頃、家が近所で一緒に遊んだ印南ミコ。覚えてない?」

「えっ、印南ミコって・・・お前、あのミコなのか!?」

「そうだよ!!」

「マジか、久しぶりだな。ミコ、怪獣娘になったのか。」

「そうだよ。いかなる戦いに負けた事がない無敵のガッツ星人にね!」

 

思わぬ展開に他の3人はその光景をただ見るだけだった。

ハルキはガッツ星人の怪獣娘である幼馴染、『印南ミコ』と再会した。この再会をきっかけに大きく彼の運命が変わり始めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に久しぶりだな!!元気にしてたか?」

「勿論、私は出来る子だから!!」

 

場所は変わって、とあるカフェで1人の少女とハルキは談笑していた。ハルキの向かい側の席には水色のロングアーのガーリックかつスポーティでおしゃれな服装の少女がいた。この少女こそ、ガッツ星人の怪獣娘『印南ミコ』である。

テーブルにはハルキ側にカレーライス、ミコ側に大きなパンケーキが置かれていた。

 

「本当に良かったのか?GIRLSの仕事があったんだろ?」

「どうせ、外回りが終わったら、オフだったんだし大丈夫だよ。それにアギ達も「後は任せて。久しぶりに会った幼馴染と色々と話したいでしょ。」って言ってくれてさ。その好意を断るわけにはいかないじゃん。」

「そうか。」

 

ミコは国際怪獣救助指導組織、通称『GIRLS』という組織に属している。GIRLSとは怪獣娘の調査・保護・研究、力の使い方の訓練を行い怪獣娘が人間社会と共存するために支援する組織である。

ミコと一緒にシャドウビーストと戦った怪獣娘達もGIRLSに所属している。

本来ならミコも一緒に戻って、今回のシャドウの件について報告するはずだった。しかし、思わぬところで幼馴染と再会した事を知ったアギラ達が今回の報告を全て引き受けて、ハルキと過ごす時間を作ってくれたのだ。

 

「アギラさん、だっけ?彼女には感謝しないとな。」

「ホント、アギってば私のために・・・。いつも仕事を抱えている私を心配してくれてるのは嬉しいけどさ、アギも結構抱えちゃってるじゃん。」

「仕事を抱え込んでるって、GIRLSってそんなに忙しいのかよ?」

「いや、ハルも知ってるでしょ。私って色々抱えこんじゃう所があるって。怪獣娘になってからはやれる事も増えてさ、色々と仕事を溜め込んじゃうんだよ。」

「本当に大丈夫か?無理すんなよ。体壊したら元も子もないんだからな。」

 

幼馴染の言葉に思わずミコを心配してしまうハルキ。そんなハルキに向き合い、ミコは言う。

 

「私のカイジューソウルの元となった宇宙人はいかなる戦いに負けた事がないんだって。だから強い自分でいたくてさ。弱さを見せたくないって思ってたんだ。」

「でも、アギが言ってくれたんだ、弱い所を見せてるって事は負けてるって事じゃないって。今では周りの皆に頼る時もあるし、ちゃんと休みをとってるから、心配しないで。」

 

ミコはパンケーキを一口食べると、ハルキに向かって言葉を話す。

 

「ハルだって、GIRLSの職員や他の怪獣娘の避難指示を無視して、犬を助けに行ったでしょ。」

「ああ。」

「ハルの何に変えても命を守りたいって心意気はいいよ。命を守るのもいいけどさ、もう少し周りを見てもらわなきゃ。」

「じゃあ、あの犬を放っておけば良かったのか?」

 

ミコの言葉にハルキは不貞腐れるように言い返す。そんなハルキにミコは優しく諭す。

 

「もし、ハル自身に万が一の事があったら、私だけじゃない、おばさんやハルの親しい人達が悲しむ事になるんだよ。場合によっては一生消えないトラウマを背負う可能性だってあるんだから。」

「っ!!ご、ごめん、気をつける・・・。」

 

ミコの言葉に思うところがあったのか、ハルキは小さな声で納得する。

そんなハルキにミコは明るく話しかける。

 

「さ、説教はここまで。これ食べたら、一緒に街を見ようよ!案内するからさ!」

「押忍!」

 

 

 

 

 

 

 

「ゴアアアァァァ!!!」

 

 

その頃、宇宙空間では月で大爆発が起こり、一体の宇宙怪獣が地球に向かって接近していた。その怪獣は頭の鼻先に鋭い角を持ち、大きな口をしている。体の各部の皮膚には無数の傷痕が残っており、背中や体面側部に小さな穴を無数に備えた鮫を思わせるその怪獣は凶暴宇宙鮫『ゲネガーグ』。

ゲネガーグは背中の無数の穴からのジェット噴射で地球に真っ直ぐ進む。

 

「ジェア!!」

 

そんなゲネガーグを横から攻撃する者がいた。それは銀色と青色の胸に青く輝くZのマークの結晶を備えた巨人だった。

宇宙の平和を守り、光を照らす巨人がいた。かつて怪獣と戦う人類にも力を貸してくれた存在でその存在はGIRLSにも知られている。彼らはウルトラマンと呼ばれている。

ゲネガーグを攻撃した巨人もウルトラマンの1人でその名は『ウルトラマンゼット』。ウルトラマン達が宇宙の平和を守るために結成した宇宙警備隊の新人だ。

ゲネガーグはゼットを視界に捉えると、鼻先の角で攻撃を仕掛ける。ゼットも応戦し、頭の上に付いたトサカから光の刃を飛ばす。

 

ゲネガーグはゼットから離れ、体を赤く発光させる。やがて体面側部にエネルギーが貯まり、赤い無数の光弾となって、ゼットに襲い掛かる。

光弾がゼットに命中しようとした時、新たなウルトラマンが現れた。そのウルトラマンは頭に2つの刃物『スラッガー』をつけた額にビームランプという結晶を付けた赤と青のウルトラマンだった。ウルトラマンの名前は地球を愛したウルトラ兄弟の三男『ウルトラセブン』の息子『ウルトラマンゼロ』。

ゼロは身に付けていた青いマントで光弾を弾く。

 

『危ねーから手出すな!!』

『また半人前扱いして、俺も宇宙警備隊ですよ、師匠!!』

「ギュゴアアアァァァ!!!」

 

ゼロはゼットにはまだ荷が重いと判断して、ゼットを下がらせようとするが、ゼットは反論する。

ゲネガーグはその間に2人のウルトラマンに口から強力な破壊光線を放つ。

2人のウルトラマンは左右に分かれて、破壊光線を避ける。

 

 

『お前を弟子にとった覚えは無ねぇ!それにお前なんか俺からしたら三分の一人前だ!』

『さ、三分の一!!う、ウルトラショック…!?』

 

ゲネガーグは2人に体内に飲み込んでいたものを吐き出した。

2人のウルトラマンは避けるも、ゼットは吐き出したものに驚いていた。

 

『こいつ、小惑星を飲み込んでやがる・・・!?』

 

ゲネガーグは小惑星を飲み込んでいたのだ。

そしてゲネガーグはゼロに向かって、飲み込んでいた小惑星を吐き出した。

 

『その手は食うかっ!!』

 

ゼロはそれを受け止め、弾くもそれはゼロの予想と大きく違った。

それは小惑星ではなく、石に火山のような突起が生えた四次元怪獣『ブルトン』だったのだ。

ブルトンは四次元空間を発生させ、ゼロを吸い込もうとしていた。

 

『ブルトンッ!?マジかよ!?ああっ!!』

『!師匠っ!!』

『しゃあねえ!!ゼット、これを持っていけぇっ!!』

 

そう言って、ゼロはゼットに4つの小さな光を投げる。ゼットは右手でそれを受け止めた。

 

『これは・・・!?』

『奴が飲み込んだメダルはお前が取り返せ!!頼んだぞ!!』

『師匠ーっ!!』

 

ゼロは異次元空間に飲み込まれ、ブルトンと同時に消えていった。ゲネガーグはそれを見届けると背中からのジェット噴射で地球に向かっていった。

怪獣のいなくなった地球に再び怪獣の脅威が迫っていた。

 

 

 

 

 

「それでさ、私にさ、生き別れになった双子の妹がいたんだよね。」

「えっ、マジで!?どんな人?」

「私とは正反対かな、性格は。けど、抜けている所とかドジな所もあってさ、可愛いんだよね。今度、紹介するよ。」

 

ハルキとミコはアイスを食べながら、町を散策していた。その時、ミコが持つ怪獣娘の変身を安定させるデバイス『ソウルライザー』に着信が届いた。

 

「ごめん。ちょっと出るよ。はい、こちらガッツ。」

『そちらに隕石が接近しています!!住民の救助と避難活動をお願いします!!』

「了解・・・って隕石ってもしかしてあれ?」

「早い、間に合わないぞ!!」

 

ミコが指差した方向に周りの建物を砕く大きな音を立てて、隕石が落下した。

しかし、それは隕石ではなかった。隕石だと思っていたものは怪獣だった。

 

「グゴアアアァァァ!!!」

 

地球からいなくなった筈の怪獣が再び現れたのだ。怪獣が再び、地球に怪獣の脅威を齎す時が来てしまった。

 

「で、でけぇ・・。」

「ピグっち、やばいよ!!あれは隕石じゃない!!怪獣だよ、しかも本物の!!」

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLS東京支部では町に現れた怪獣をモニターからみる怪獣娘がいた。左右に分かれた赤く長い髪の風船をつけた友好珍獣の魂を継ぐ怪獣娘『ピグモン』、黒が混じるピンクの長い髪とアンテナのような角と長い尻尾がつき、白と黒の格好の宇宙怪獣の魂を継ぐ怪獣娘『エレキング』、暗い茶色の腰まで届く長髪に金色の肌の露出の多い格好の宇宙ロボットの魂を継ぐ怪獣娘『キングジョー』だ。

 

「こちらでも確認しました。レッド達が向かっています!!その間に住民の救助と避難誘導をお願いします!」

『了解!!』

「キングジョー、怪獣の特定は?」

「駄目デス。過去のアーカイプドキュメントに記録がありマセン。あの怪獣は新種だと思われマス。」

 

 

 

 

 

「ハル、この先に避難所があるからそこにハルは逃げて。」

「ミコは?」

「仕事。」

「分かった。気をつけろよ、相手は本物の怪獣なんだからな!」

 

ミコは怪獣娘に変身し怪獣に向かって走っていく。

やがて、怪獣『ゲネガーグ』の近くまで来たミコは一言呟く。その時、ピグモンからの通信がソウルライザーに入る

 

「記録で見たけど、やっぱり大きすぎるよね・・・。とにかくアギ達と合流しないと!!」

『待ってください!!』

 

 

GIRLS本部では宇宙からのもう1つ『何か』が接近しているのを捉えた。ピグモンがその事をガッツ星人に伝える。

 

「そちらにもう1つ、高熱源体が接近しています!!」

『まさか、また怪獣じゃないよね!?』

「そこまではまだ・・・。」

「これ以上、物騒な宇宙からの贈りものは勘弁願いたいわね。」

 

ゲネガーグの目の前に1つの光が落ちる。それは光が収まると50m位の巨人になった。銀色と青色のカリーリングに胸に青く輝くZのマークの結晶を備えたその巨人は見たガッツ星人は思わず呟いた。

 

「ウル・・・トラマン・・・。」

 

それは先程までゲネガーグと戦っていたウルトラマンゼットだった。

ゼットはゲネガーグに向かってファイティングポーズをとる。

再び怪獣との戦いが幕を明けた瞬間だった。




Zが終わった後にこの小説を投稿するとプレッシャーが掛かりますね。

それと怪獣娘×タイガですが、本格的に連載することに決定しました。
近い内には投稿できると思います。
また正式なタイトルを発表します。

怪獣娘タイガ ~トライスクワッド参上計画~

これでいきたいと思いますので皆さん、よろしくお願いします。


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ご唱和ください、我の名を!(後編)

結局新年になってしまった。

次回の怪獣はネロンガではありません。

怪獣娘の世界観上、ご了承ください。


ゼットはゲネガーグにキック、パンチ、肘打ちを打ち込む。格闘戦を仕掛けるもゲネガーグも首を振ってゼットを振り払う。

ガッツ星人は今の状況をGIRLSに報告する。

 

「現場では怪獣と過去の記録にあったウルトラマンっぽい巨人が戦ってるよ!!」

『見ています!!戦いに巻き込まれると危険です!!下がってください!!』

「でも、周辺に被害が出てる!ウルトラマンを援護するから!!」

『待ってください!!』

 

ガッツ星人はピグモンとの通信を切る。そして、ゲネガーグに向かって両手から光線を撃ち出した。

 

「ジェアッ⁉︎」

「援護するよ、ウルトラマン!」

 

ガッツ星人は分身してゲネガーグを取り囲む。ゲネガーグを取り囲んだガッツ星人は拘束光線を怪獣に向けて発射する。

その隙を突いて、ゼットは渾身の拳をゲネガーグに叩き込む。

 

「ジェアッ!」

「ゴアァァァ⁉︎」

 

ゼットのパンチでゲネガーグは後退するも、体を赤く光らせ、無数の光弾を放つ。

 

「ジィアァッ!!」

「きゃあああ!」

 

ゲネガーグの光弾の雨でゼットとガッツ星人は吹っ飛ぶ。ゲネガーグはその隙に背中のジェット噴射で突進した。

ガッツ星人はなんとか避けるも、ゼットだけはまともに食らってしまう。

 

「ウルトラマンッ‼︎」

 

 

 

その頃、現場にはGIRLSの要請を受けたアギラ、ミクラス、レッドキング、ゴモラが到着していた。

その横をゲネガーグが背中からのジェット噴射で突き進む。

アギラはソウルライザーでガッツ星人に連絡する。

 

「ガッツ、聞こえる?」

『聞こえるよ、アギ!』

「怪獣が避難所である伊賀栗中学校に向かっている‼︎ボク達も急ぐからすぐに向かって!」

『了解!!』

 

ガッツ星人はゲネガーグの顔面の前に瞬間移動で現れ、分身した。分身と共に拘束光線を放つ。 

 

「ウルトラマン‼︎手を貸して・・・って言葉通じてるのかな⁉︎」

 

その言葉を聞いたゼットはゲネガーグの尻尾を掴み、投げ飛ばす。

 

「言葉通じるんだね!なら、大丈夫かな!」

 

ゲネガーグの体が赤く発光する。ガッツ星人はさっきの光弾が来ると悟り、避けようとした。しかし、彼女は防御体制を取ろうとした。

彼女の後ろには大勢の人々が避難していたからだ。

そこにアギラ達も合流する。

 

「待たせてごめん!」

「大丈夫・・・・・とは言えないな。皆、避難所の人達を守るために力を貸して!」

「うん!」

「おう!」

「任せて!」

 

ゲネガーグが赤い無数の光弾を放つ。怪獣娘達は拳や尻尾、光線でそれを弾く。

ゼットもその身を盾にして、腕で光弾を弾く。

その途端、ゲネガーグは口から強力な破壊光線を発射した。

 

「「「「「なっ⁉︎」」」」」

 

破壊光線が直撃すれば死は免れない。彼女達は覚悟を決めた。しかし、怪獣の破壊光線は彼女達に当たらなかった。

ゼットがその身を盾にして、彼女達を守ったからだ。

 

「ジェアーーツ‼︎」

 

破壊光線を受けたゼットはその場に倒れ込む。怪獣娘達はその光景を見ている事しか出来なかった。

彼女達がゼットに呼びかける。

 

「ウルトラマン、御免なさい。ボク達の為に・・・。」

「おい、嘘だろ、頼むよ。頼むから立ってくれ、ウルトラマン!」

「わたしの前世のゴモラを倒したウルトラマンはその程度じゃなかったよ!お願い、立ち上がって!」

 

彼女達がウルトラマンに呼びかける間にゲネガーグは背中のジェット噴射で避難所である中学校に向けて前進する。

彼女達はそれを見て、怪獣に立ち向かっていく。

 

 

 

 

 

少し時間を遡って、ハルキは避難所に向かっていた。

その途中でゲネガーグがゼットに突進した時らゼットから4つの光が落ちた。その光はハルキの前に落下した。

 

「何だ?」

 

光は青い刃が付いたような機械と3枚のメダルになった。メダルには横顔が描かれていた。

 

「これって・・・・もしかして、ウルトラマン?これってあのウルトラマンっぽい巨人の物なのか?」

 

ゼットが落とした機械とメダルを届けるため、怪獣と戦う巨人に向かうハルキ。

ハルキが巨人に追いついた時は怪獣娘達がウルトラマンと力を合わせて、怪獣から避難所である中学校を守っているところだった。

 

「ヤバい、このままじゃ‼︎」

 

ハルキがやっと巨人の元に追いついた時、巨人は怪獣の破壊光線を食らい、虫の息だった。

巨人にハルキは声を掛ける。

 

「おい、これってアンタのものだよな⁉︎」

 

ハルキは大声で叫び、ウルトラマンの前にさっき拾った物を翳す。

ウルトラマンは驚いた様子でハルキを見ていた。

 

「やっぱ、これはアンタの何だな!こいつを返すから、立ってくれ、!俺にはこれしか出来ないけど!」

「ジェアッ!」

「こいつでアンタが・・・って、え?」

 

ウルトラマンが光り、ハルキを飲み込む。ハルキは思わぬ光の強さに目を閉じてしまう。

ハルキが次に目を開けると赤と青と黄色の光が光り、後は真っ暗な空間だった。

ハルキの後ろから何処からともなく声が聞こえた。

 

『振り向きなさい、地球人。」

「え・・・って、アンタはさっきの。」

 

ハルキが振り向くと、さっきまで怪獣と戦っていたウルトラマンが立っていた。ウルトラマンはハルキに語りかける。

 

『突然で混乱していると思うが聞いて欲しい。私はウルトラマンゼット。』

「ウルトラマン・・・ゼット。・・・やっぱりアンタはウルトラマンだったんだな。かつて地球を怪獣の脅威から救ってくれたあの・・・。」

『さっきの攻撃で私はウルトラヤバい状態みたい。』

「ウルトラヤバいって、どうするんだよ!このままじゃ、あの怪獣のせいで人が死ぬぞ!」

『だからこそ、頼みがある。私と手を組まないか⁉︎私もお前の力が必要なのでございます!」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・言葉通じてる?」

「あっ、いや通じてるけどさ、少し言葉使いが変だなと思って。」

「えっ、マジで?参りましたな。地球の言葉はウルトラ難しいぜ。」

「まあ、いいや。アンタと手を組めばあの怪獣を倒して皆を守れるんだな‼︎」

「ああ、守れる!」

「だったらやる!このまま何もやらないよりはいい筈だから‼︎」

 

ハルキが答えるとゼットは光となり、ハルキがさっき拾った青と黒の機械に変わる。

 

『さあ、その『ウルトラゼットライザー』のトリガーを押します。』

 

ウルトラゼットライザーを持ち、親指の位置についたトリガーを押す。すると、Zの形の光が現れ、それは扉『ヒーローズゲート』に変わる。

 

『その中に入れ。』

「おう・・。」

 

ハルキはヒーローズゲートに入る。そこは幾つもの光が駆け巡る不思議な空間だった。

光の中からゼットとハルキが描かれたカードが現れる。

 

『その『ウルトラアクセスカード』をゼットライザーにセットだ。』

 

ハルキはゼットの言葉通りアクセスカードをゼットライザーにスキャンした。

 

〈Haruki Access Granted〉

「これは・・・。」

 

するとハルキの腰に光が集まり、ホルダーになる。中にはさっきのウルトラマンの横顔が描かれてたメダルが入っていた。

 

『ゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠のウルトラメダルだ。スリットにセットしちゃいなさい。師匠達の力が使える筈だ」

「すげえな、流石ウルトラマン。師匠が沢山いるんだな。」

 

ハルキはメダルがはいるスリットにウルトラマンゼロ、ウルトラセブン、悲しみを乗り越えた獅子の王子ウルトラマン『レオ』のメダルをセットする。

 

『おおっ、ウルトラ感がいいな。じゃあ、メダルをスキャンだ。』

『なあ、もっと急いだ方が良くないか?このままじゃ、ミコ達が。」

『安心しろ。この空間は時間が歪んでいるからここでの1分は外での1秒だ。」

「そうなのか。分かった。

 

外では10秒も立っていない事に安心したハルキはメダルをスキャンする。

 

せる。

 

〈ZERO〉、〈SEVEN〉、〈LEO〉

 

メダルを全てスキャンするとゼットが現れる。

 

『よし、ならば俺の名を呼べ!』

「よ、よし。ウルトラマンゼット。」

『あ、そうじゃなくて、もっと気合いを入れて言うんだよ!』

「き、気合い?」

『そうだ!ウルトラ気合い入れていくぞ!』

 

ゼットは両腕を広げ胸を張る。それは自分を主張していた証だった。

 

『ご唱和ください、我の名を!ウルトラマンゼェット!』

「ウルトラマンゼェェェット‼︎」

 

ハルキは叫びながらゼットライザーを真上に翳す。しかし、何も起きなかった。

 

『トリガー、トリガー最後に押すの!』

「これ?」

『そう、そこ。」

 

ハルキは真上に翳して、ゼットライザーのトリガーを押す。

するとメダルに描かれた3人のウルトラマンが飛び交うビジョンが映る。飛び交った光の跡が一点に集まり、そこから1人のウルトラマンが現れる。

ウルトラマンゼットの面影を残しつつ、赤と青のカラーリングに額にビームランプと呼ばれる結晶、ウルトラマンゼロを彷彿とさせる2つのスラッガーを備えた拳法に優れたウルトラマンゼットの戦闘形態、その名は

 

〈ULTRAMAN Z〉

〈ALPHA - EDGE〉

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、怪獣娘達はゲネガーグの侵攻を食い止めるべく、必死になって攻撃を仕掛けていた。

 

「そっから先に行くな!!この野郎!!」

 

レッドキングがビルの瓦礫を投げつけて、注意を引こうとする。ゴモラも角から放つ超振動破を放つ。

しかし、怪獣の進撃は止まらない。

先に怪獣と戦っていたガッツ星人は拘束光線を放つもすぐに破られてしまう。

怪獣が口にエネルギーを溜め始める。さっきの破壊光線を放つつもりだ。後ろには怪獣から避難した沢山の人がいる。

彼女達は絶対に避けられない事を悟り、せめて自分達が盾になろうと決意した。

その時だった。ウルトラマンゼット・アルファエッジが現れ、飛び蹴りを放ったのは。

怪獣娘達はその光景を見て唖然としていた。

それはGIRLS東京支部作戦指令室でもそうだった。

 

「また、新たなウルトラマン!?」

「いいえ、さっきのウルトラマン本人よ。過去のウルトラマンの中には姿を変えられる者がいたと聞くわ。恐らくあのウルトラマンもその類じゃないかしら。」

 

ウルトラマンゼットと一体化したハルキはその力に驚いていた。

 

(すげえ、これならやれる!あの怪獣と戦える。)

『息を合わせて戦うぞ、地球人!』

(おうっ!!)

 

ゼットはゲネガーグに向かって構えた。ゲネガーグはゼットに突進してくる。ゼットは突進してくるゲネガーグを押さえつけ、右手、次に左手で2発の拳を打ち込んだ。

大きな口で噛みつこうとしてきたゲネガーグを再び押さえつけ、顔、口内と2発裏拳を叩き込む。その次に顎に左足で蹴りを放ち、右腕でチョップを2発叩き込む。

 

「ジィアッ!デュア!デアッ!!」

 

ゲネガーグと距離を再び取る。先にゲネガーグが突進してきた。それを両手をクロスして受け止め、右足、左足、右足の順で回し蹴りを放つ。

後ずさるゲネガーグは体を赤く発光させる。赤い光弾を放つつもりだ。

 

「イィヤーッ、トゥワーッ!!」

 

ゼットは頭のスラッガーに意識を集中し、エネルギー状の刃『ゼットスラッガー』を形成する。その刃は稲妻状のエネルギーで結びつき、光の刃でできたヌンチャク『アルファチェインブレード』となる。

ゲネガーグが赤い破壊光弾を放つもアルファチェインブレードで弾かれ、その体に何度も切り傷が刻まれる。

 

『おおっ、これが宇宙拳法秘伝の神業か!!ウルトラ強ぇ!!』

 

ゼットは右足でゲネガーグの顎に蹴りを叩き込み、左足で回し蹴りを決める。再び、右足で炎を纏ったキック『アルファバーンキック』を回し蹴りで叩き込む。

 

「ジェアッ!ジュッ!」

 

ゲネガーグは背中からのジェット噴射でゼットに突進する。ゼットはそれをまともに食らい、後ろにあったビルを破壊し、空に運ばれた。

 

「ゴガアアアァァァ!!」

「ジェアッ!?」

 

ゼットはゲネガーグを蹴り、距離を取る。ゲネガーグは口にエネルギーを溜め始めた。

ゼットは両の拳を向かい合う様に胸の前に並べ、拳を手刀の形にして、左腕を斜め上、右腕を斜め下に伸ばす。するとゼットにZの形をした光が描かれた。今度は両手を逆にして、腕を十字にして必殺光線を放つ。

 

『(ゼスティウム光線!!)』

 

 

ゼットの光エネルギーを宿した光線とゲネガーグの破壊光線がぶつかり合う。ゲネガーグは自分ごと推し進めようとするが、ゼットの方が光線の威力を上げた事で逆転する。

ゲネガーグはゼットのゼスティウム光線をまともに浴びて地面に叩きつけられ、爆散した。

ウルトラマンゼットの勝利だ。ゼットは着地し、敵が倒された事を確認すると空にZの文字を描いて飛び去る。

 

「ジュワッチ!!」

 

GIRLS本部ではピグモンとエレキングがその光景を見ていた。

 

「まさか、再び地球に本物の怪獣が現れるなんて・・・。」

「怪獣の中には宇宙から来たものもいる以上、有り得ない事はないとは思ってたけど・・・・・、怪獣対策にウルトラマンの調査・・・・、これから忙しくなるわね。」

 

 

 

 

『あの怪獣から散らばったメダルを回収してくれ。あれはこの宇宙を救う希望なんだ!お頼み申し上げます!!』

「言葉遣いやっぱ変だな。てか、メダルって何だよ!?これのようなメダルが他にもあるのか!?宇宙を救う希望ってどういう事だよ!?おい、ゼット!?」

 

ハルキは気が付くと、ゲネガーグの襲来で壊れた町の中にいた。そこでハルキは2枚のメダルを見つけた。

そのメダルには卑劣な異次元人に立ち向かったウルトラマン『エース』、ウルトラマン№6ウルトラマン『タロウ』の横顔が描かれていた。

 

「ゼットが言っていたメダルって絶対にこれだよな?このウルトラマンは・・・・後で調べよう。」

「ハル!」

 

ハルキは自分を呼ぶ声が後ろから聞こえたので振り返った。そこには怪獣娘に変身した幼馴染がいた。彼女は少し怒ってる様子だった。

 

「何でここにいるの!?危ないから避難してって言ったじゃん!!」

「あ・・・。」

 

ガッツ星人はハルキの体をペタペタと触り始める。

 

「大丈夫?怪我とかしてない?」

「ああ、大丈夫だ。」

「良かった。もう、心配させないでよ!!」

「悪い・・・・。」

 

その様子を物陰から見ている男がいた。その男の手には超古代の戦士ウルトラマン『ティガ』、ネオフロンティアの英雄ウルトラマン『ダイナ』、大地が生んだ光ウルトラマン『ガイア』の横顔が描かれたメダルがあった。

 

 

他の怪獣娘もゲネガーグの破壊跡にいた。取り残された人がいないか調べるためだ。

その中でゴモラはあるものを見つけた。

 

「何だろこれ、メダルかな・・・ってこれってまさか!?」

 

それはゴモラのカイジューソウルと因縁のある始まりの巨人『ウルトラマン』のメダルだった。

 

「ウルトラマンだよね、これ。まさかさっきのウルトラマンと何か関係が・・・。」

 

ゴモラはそう呟くとメダルを懐にしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、GIRLS東京支部内では回収されたゲネガーグの全ての肉片が運ばれていた。

半世紀ぶりに再び現れた怪獣という事で怪獣娘の研究にも役立てる事が出来るかもしれない上に、怪獣の細胞の悪用を避けるためにも、ゲネガーグの肉片は全てGIRLSが管理する事になった。

 

「本日出現した宇宙怪獣コードネーム『ゲネガーグ』の肉片1番から39番、収容完了しました。これで全てとなります。多岐沢先生。」

「すまないですね、カブラギ君。残業を頼んでしまって。」

「何言ってるんですか。大学時代あんなにお世話になったんです。それに折角、大学院を卒業したのに入社当日に就職先が潰れて、途方に暮れていた僕にGIRLSを紹介してくれたんです。そんな先生のために働きたいと思っていますから。

 

この作業を行っていたのは、カブラギシンヤと多岐沢マコト。多岐沢は城南大学準教授だった頃に始まりの怪獣娘と出会い、GIRLSの設立に関わった。現在はGIRLS研究部門の嘱託顧問および育成部の部長ならびに大怪獣ファイターのコーチングを行っている。

カブラギは城南大学院を卒業し、やっと見つけた就職先が入社当日に倒産したせいで途方に暮れていた。そんな時、大学時代にお世話になった多岐沢マコトと偶然再会し、彼に勧められ、GIRLSに就職した研究員見習いだ。

 

「まさか、本物の怪獣が出現するなんて思いませんでしたよ。確かにゴモラやレッドキングの様な地球に住んでいた怪獣と違って、宇宙怪獣な分、出現の理由に説明がつけられますけど。」

「そうですね。ただ今回の事件で一番心配なのは本物の怪獣が出現した原因が怪獣娘に向けられなければいいのですが・・・・。」

 

その途端、ゲネガーグの肉片を入れたケースが倒れ、中に入っていたゲネガーグの肉片が零れてしまった。

 

「うわっ、ヤバいっ!!」

「大丈夫ですか?手伝いますよ!」

「大丈夫です。僕の置き所が悪かったせいで起きたんです。僕が片付けますよ。先生は明日も忙しいでしょう?大怪獣ファイトの試合のためにジョンスン島に行かなければならないんですから。」

「しかし・・・・。」

「これくらい、僕がやっておきますよ。」

「・・・・・・分かりました。それでは、カブラギ君お願いします。」

 

多岐沢はそう言って、部屋を出ていく。カブラギは肉片を集めて、専用のケースに詰めていく。

 

「ああは言ったけど、・・・なんだよ、これ気持ち悪いな・・・。何だこれ、変な機械が入っているけど、・・・・後で先生に報告しておくか。」

 

その途端、肉片に潜んでいた何かがカブラギの顔に張り付いた。それはエイとアノマロカリスを掛け合わせた赤い目を持つ虫のような生物だった。

 

「うわあっ!!何だよ、これ!!気持ち悪いな!!離れろよ!!ああっ・・・あ・・・あ・・・。」

 

その生物はカブラギの口の中から侵入し、体に入り込む。

謎の生物に体を乗っ取られたカブラギは痙攣し、不気味な動きをした。

それも収まると、ゲネガーグの肉片に両手を突っ込み、何かを取り出した。

左手にはウルトラゼットライザー、右手には橙色の結晶を持って、呟いた。

 

「・・・・・キエテ、カレカレータ・・・・・。」

 

その言葉は地球の言葉でいい気分だを意味する。

カブラギの体を乗っ取った寄生生物『セレブロ』は宇宙語で呟いた後、不気味な笑みを見せた。




小説版のキャラも序盤から登場するのがタイガとの相違点になります。


次回予告(CV:ウルトラマンゼット)
怪獣出現!!宇宙から来た高速で飛び回る手強い相手だ!町と怪獣娘が危ない!!ハルキ!!見えない位早い敵の戦い方を身につけるぞ!!次回!!


怪獣娘×ウルトラマンZ



戦士の心得



ウルトラ張り切るぜ!!


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戦士の心得(前編)

星の復讐者以降感想が来ません。
またお気に入り登録者が減って地味にショックです。
何がいけなかったのか。



宇宙有翼怪獣『アリゲラ』登場


宇宙空間では1匹の宇宙怪獣が火星の傍を通過していた。

赤い体にワイバーンを思わせる翼、目の無い頭部を持つその怪獣は宇宙有翼怪獣『アリゲラ』。

アリゲラは高速で宇宙空間を飛び、真っ直ぐ地球に向かっていた。

 

 

 

 

GIRLS本部には、怪獣娘達が集められていた。先日、現れた怪獣について会議するためだ。

 

「皆さん、先日、再び怪獣が出現し、町を破壊する大事件が起こりました。今後、再び怪獣が現れた時のための対策会議を講義します。」

「まず、怪獣が現れた時の避難誘導はシャドウと何ら変わりありません。救助についても同様です。問題は怪獣の被害をどう食い止めるかです。」

「怪獣の被害を食い止める方法ですか・・・?」

「怪獣相手に戦うのが一番なんだけどね・・・。」

「実際に戦ったけど、恐ろしく手強かったぞ。いくら俺達が怪獣の魂を宿しているからって、挑むにはスケールがでかすぎるだろ・・・。」

 

ピグモンの言葉にゴモラとレッドキングが反応する。一方でガッツ星人は何か考え事をしていた。

そんなガッツ星人にアギラが声を掛ける。

 

「ガッツ、どうしたの?」

「ああ、ごめん。あのウルトラマンが気になって・・・。」

「ウルトラマン・・・、ああ、確かあの時の・・・。ピグモンさん、あのウルトラマンについて何か分かった事はありますか?」

 

ガッツ星人の言葉にウインダムはピグモンに質問する。

 

「まだ、何も分かっていません。ただ、あのウルトラマンはコードネームとして『ウルトラマンゼット』と名付けられました。」

「Z?NじゃなくてZなんスか?」

「お前、まだ言ってるのか?確かにNに見えるけど、あれはZだろ、どっちかと言うと。」

 

そんな会話をしていたのはセーラー服のような格好に背中に翼が生えた駄々っ子怪獣の魂を継ぐ『ザンドリアス』とパンクファッションのような格好に大きな耳が特徴の騒音怪獣の魂を継いだ『ノイズラー』だ。

そんな2人の会話をさておいて、ピグモンは会話を続ける。

 

「今はウルトラマンが来るまで、怪獣を足止めする事にしましょう。エレエレ、ウインウイン、バサバサ、ジャパジャパの4人はウルトラマンゼットの調査をお願いします。全体会議は以上です。」

 

 

 

 

 

会議後、ミコと濃い灰色のボーイッシュな少女ゴモラこと『黒田ミカヅキ』と長い髪を後ろにロール状にした少女レッドキングこと『歌川ベニオ』が雑談しながら廊下を歩いていた。

 

「いやー、参ったね。今度、怪獣が現れたら、私達が対応しなきゃいけないんだから。」

「まあ、今の世界で怪獣に1番深く関わっているのはGIRLSなんだから、仕方ない気もするけどな。しかし、大怪獣ファイトの試合も幾つか延期になっちまうし、あの怪獣のせいで色々な予定が潰れちまったぜ。」

「ゴモ、レッド、次にまた怪獣が現れた時は頑張ろうよ。いざとなったら私達が皆を守らないと。」

 

そこにGIRLSの制服を着た暗い雰囲気の男が歩いてきて、後ろから3人に声を掛ける。

 

「・・・・・すいません・・・。・・・・・少し時間よろしいですか・・・・・・・。」

「「「うわあああぁぁぁぁ!!!」」」

「あんちゃん、いきなりびっくりさせんといて!!」

「えーっと、貴方は・・・!?」

「・・・・・・多岐沢博士の部下のカブラギ・・・・・です・・・・・。ガッツ星人の怪獣娘の・印南ミコさんと・・・ゴモラの怪獣娘の・・・黒田ミカヅキさんと・・・レッドキングの怪獣娘の・・・・歌川ベニオさん・・・ですね。貴方達の健康状態のチェックのため、血液検査をさせてください・・・・・。」

「健康状態のチェック?検査はもう受けたぞ?」

「念のためと・・・多岐沢博士は・・・・言っていました・・・・。」

「博士が!?」

「心配性だな、ハカセは。いいよ。」

「・・・・・・ありがとうございます・・・・。」

 

カブラギは3人を連れて医務室に向かう。雑談する3人の前でカブラギは・・・、いや、カブラギの体に寄生したセレブロは彼女達に聞こえないような小さな声で呟いた。

「・・・・・・キエテ、カレカレータ・・・・。」

 

 

 

 

 

 

その頃、ハルキはランニングをしていた。ハルキは空手をやっており、基礎である体力作りのため、毎日ランニングに励んでいる。

 

 

「はぁはぁ、この公園をもう一周したら、一旦水分補給を兼ねた休憩をしますか。」

 

ハルキはランニングコースとなっている公園を一周し、首に下げている水筒に入ったミネラルウォーターを飲む。

そして、ウルトラゼットライザーを取り出した。

 

「ゼット、答えてくれ。どうしてあの怪獣は現れたんだ。このウルトラマンの横顔が描かれたメダルは何なんだ?宇宙を救う希望ってどういう事なんだ?」

 

実はハルキは何度か自分と一体化したウルトラマンゼットと話をしようとしていた。再び地球に怪獣が現れた理由やメダルの事を聞きたかったのだ。

しかし、ゼットは反応してくれなかった。

 

「どうすりゃいいんだ。どうすればゼットと話が出来るんだ?」

 

ハルキが途方に暮れている時だった。再び宇宙から怪獣がやってきたのは。

「ギイイイイィィィ!!」

「また、怪獣が・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、GIRLSも怪獣の出現を知り、動いていた。

 

「怪獣が出現しました!!」

「近くの怪獣娘に連絡して、近隣住民の避難誘導を!!」

「GIRLSの皆さん、緊急事態です!!再び、怪獣が出現しました!!直ちに現場に急行してください!!」

 

医務室に行った3人も急いで現場に向かう準備をする。

 

「カブラギさん、御免なさい!!緊急事態だから!!」

「・・・・・・・気を・・・・付けて・・・・・。」

「ガッちゃん、行くよ!!」

「急いで向かうぞ!!」

 

医務室では3人が行った後、カブラギが何かを持ちながら不気味な笑みを浮かべる。それはミカヅキとベニオの血が入った試験管だった。

 

「・・・・・キエテ、カレカレータ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

現場では怪獣『アリゲラ』が高速で低高度飛行をしたせいで発生した衝撃波が周りのものを全て吹き飛ばす。人も車も建物も、怪獣が発生させた衝撃波で吹き飛んでいった。

 

「うわああああああ!助けて、怪獣娘のお姉ちゃーーーーん!」

「ラン、絶対手を離しちゃ駄目!」

「分かってる!この手は絶対に離さない!大丈夫だよ!あたしが助けるからね!」

 

ビルの隙間に捕まって、小さい少年の手を掴む怪獣娘がいた。

胸にカラータイマーを備え、黒と灰色のどこか犬を思わせる格好の怪獣娘は超古代狛犬怪獣の怪獣娘『ガーディー』。彼女に捕まって、呼びかけるのはその親友の『日吉ジュン』。

彼女達は陸上に身を置いている者達であり、今日もいつもの様に走り込みをしていた。

そんな矢先に、怪獣が降りてきて、町の住民の救助を行なっていたのだ。

彼女達が必死に足掻く中、アリゲラは街に降り立った。

アリゲラは肩に付いたパルス坑から放つ破壊光線で町を破壊する。

その様子を高いビルから見詰める人影がいた。黒い格好に額に黄色い結晶を備えた少女は宇宙恐竜の魂を継ぐ『ゼットン』。

 

「・・・・・・これ以上、好きにはさせない。」

 

ゼットンは額の結晶にエネルギーを溜める。溜められたエネルギーは火球となってアリゲラに放たれた。

アリゲラは火球の一撃で悲鳴を上げる。

 

「ギイイイイィィ⁉︎」

 

目が無いアリゲラは肩のパルス坑から放つ超音波で自分を攻撃した敵を探す。

ゼットンは火球を再び放つ。アリゲラは火球が来る方向を超音波で探り、その方向に向かって肩から破壊光線を放つ。

ゼットンは瞬間移動で避け、再び火球を放つ。

アリゲラは再び火球が来る方向を察知し、そこに目掛けて突進した。

怪獣の突進を瞬間移動で避けるゼットン。

 

 

 

ゼットンとアリゲラの戦いを見ていたハルキはゼットライザーを構える。

 

「ゼット、俺達も行くぞ!」

 

ハルキはゼットライザーのトリガーを押す。しかし、何も起きなかった。

 

「え、ちょっと待て!今、怪獣が暴れてるんだぞ!やるなら今だろ!なあ、ゼット!!」

 

ゼットライザーが何の反応も示さない事に焦るハルキ。

アリゲラはその間に大空へ飛び立ち、何処かへ消えてしまった。

 

「ああ、怪獣が逃げる!・・・・逃したか。」

「ハルキ!」

 

そこに怪獣娘に変身した幼馴染と2人の怪獣娘がやって来る。ゴモラとレッドキングだ。シャドウビーストの時に対面した事を覚えていたのか、ハルキにも声を掛ける。

 

「ミコ!」

「怪獣が出現したから、早く逃げて・・・・ってもういないみたいだね。」

「君はあの時の。」

「冬河ハルキです。あの・・・・レッドキングさんとゴモラさんですよね。大怪獣ファイト見ましたよ!凄かったです!」

「おう!見てくれたのか!嬉しいぜ。」

「大怪獣ファイトを応援してくれてありがとう‼︎これからもよろしくね‼︎」

「って、君はここにいたんだよね⁉︎怪獣がどっちに行ったか分かる⁉︎」

「ええっと、空高く飛んで多分ですけど、海のある方向だと思います。」

「ありがとう!私達はGIRLS本部に戻るから。怪獣が来るかもしれないから、避難してよ!」

 

ミコはそう言うと、何処かへ行ってしまった。

ハルキはそれを見届けると、突然目の前にZの形の光が浮かび上がり、人が1人通れる門に変わった。

 

「うわっ⁉︎」

 

ハルキは驚くも、最初にゼットと会った時と同じ門であると気付くと、恐る恐るその中へ入っていった。

中にはウルトラマンゼットがいた。ゼットはハルキに話しかける。

 

『よう、冬河ハルキだっけ⁉︎』

「ゼット⁉︎何でさっきは出てきてくれなかったんだよ⁉︎怪獣が出たんだぞ‼︎」

 

ハルキはゼットにさっき何でウルトラマンに変身出来なかった理由を聞く。ゼットは淡々と答えた。

 

『ちゃんとギリギリまで頑張って、俺達の気持ちがギュッと引き締まらないとウルトラマンになれないんでごさいますよ!』

「俺達の気持ちか・・・。ゼット、聞きたい事がある。あの怪獣は何故現れた⁉︎このメダルは一体何だ⁉︎このメダルが宇宙を救う希望ってどういう事なんだ⁉︎」

 

ハルキは腰のホルダーからウルトラマンゼロのメダルを取り出しながら、ゼットに問いかける。ゼットは落ち着く様に促す。

 

『お、落ち着け!ちゃんと話す!俺の名前はウルトラマンゼット。M78星雲・光の国からやってきた宇宙警備隊のメンバーだ。』

「宇宙警備隊って事は・・・・・伝説のウルトラ兄弟と同じ星から・・・・・。」

『この宇宙の地球では怪獣は絶滅したらしいが、俺達の宇宙では怪獣達は色々な星にうようよいる。そんな怪獣達が最近、デビルスプリンターと呼ばれる邪悪な因子によって凶暴化し、暴れ回る事件が起こっている。光の国では、この事態に対処するべく先輩達の力が込められたウルトラメダルとその力を引き出すウルトラゼットライザーが開発された。しかし、それらが光の国を襲撃したゲネガーグが飲み込んで逃げ出した。俺はゼロ師匠と一緒にそいつを追って、ここにいるという訳だ。』

「凄え、スケールのデカい話だな。そのゼロ師匠はどうしたんだ?」

『師匠はゲネガーグが放ったブルトンの力で四次元空間に飲み込まれちまった。だから、俺1人で追ってきたんだ。』

「そうか。」

『とにかくメダルを回収しないとな。』

「ライザーもだろ。・・・・何となく気になったんだが、ゼットって何歳なんだ?」

『えっ、大体5000歳くらいだけど。』

「へ〜・・・・・ってめっちゃ年上じゃないですか‼︎すいません、ここまでタメ口使って‼︎』

『え、ええっ・・・・頭が・・・頭が低っ・・・・辞めて、そういうの、なんかウルトラ気持ち悪い・・・・。』

「いやいや、年上に対して敬意を払うのは当然ですって‼︎少なくとも、地球では常識ですから‼︎」

『ええっ・・・・。』

 

敬語を使い始めたハルキに引いたゼット。ハルキは思いました様にゼットに聞く。

 

「そういえば、この腰のホルダーにミコ達は全然触れなかったけど、どうしてなんですか?」

『ああ、それは地球人には見えない物質でできている。だから見えてない。そもそも目立ってない。というかレッドキングやゴモラみたいな格好の地球人がいたけど、あれは何だ?』

「ああ、それは怪獣娘ですよ!」

『怪獣娘?』

 

ハルキはゼットに怪獣娘について説明した。

 

「怪獣娘というのは、地球に現れた怪獣や宇宙人の魂を宿して生まれた女の子達の事を言うんです。俺の幼馴染もその1人で確か宿しているのはガッツ星人という宇宙人です。」

『ガッツ星人とはかなりの強豪の魂を持っているものだな。それにしても。』

「どうしました、ゼットさん?」

『不思議な事もあるもんですなぁ。怪獣達の魂が地球人の女の子に宿って、その怪獣の力が使える様になるとは。』

 

ゼットは怪獣娘の説明を受けて、宇宙にはまだ分からない事があると不思議な気分になるのだった。




ウルトラマン達が怪獣娘の世界に来た場合、一番馴染むウルトラマンって誰なんでしょう。
ムサシとか大地は馴染みそう。
ガイさんも馴染むかな。
ミライ君の反応が予想できない。


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戦士の心得(後編)

今回からアンケートをとります。

宜しければどうぞ。


ハルキは高台の上で空手の練習をしていた。怪獣が出たために道場が閉まっていたからである。

「フッ!ハアッ!」

 

現れた怪獣がかなり素早い敵だと知ったハルキはひたすら、体を鍛えていた。そこに1人の男が現れる。

その男はGIRLSの制服を着用した30代位の男だった。

 

「こんな所で空手の練習とは変わっているな、お前。」

「貴方は?」

「GIRLS戦闘部隊隊長ヘビクラ・ショウタだ。怪獣が出現した事で周りの警備をしている。ここにいつあの怪獣が現れるか分からない。いいからここから離れとけ。」

「す、すみません。けど、どうしてもモヤモヤする事があって。」

「ったく・・・。」

 

ヘビクラは考え込んだ。ふと、ハルキの腰に目線をやるとハルキの悩みが何か分かったかのように笑う。ヘビクラは笑いながら、ある提案をした。

 

「おい、空手の手合わせ位なら付き合ってやるぜ。」

「本当ですか!?俺、これでも腕っぷしには自信ありますよ!見ず知らずの人を怪我させるわけにはいきません!」

「お前みたいな餓鬼に負ける程、やわじゃねえよ。お前、名前は?」

「冬河ハルキです。」

「いいからやるぞ、ハルキ。」

「はぁ・・・。」

 

ハルキはヘビクラに誘われるまま、空手の手合わせをする事になった。2人とも構える。先に仕掛けたのはハルキだ。

 

「お先に失礼します!!」

 

ハルキは右手で正拳を放つも、ヘビクラにはあっさりと受け流される。今度は左手を手刀にするも、またも受け流される。

 

「今度はこちらから行くぞ。」

 

ヘビクラは左手で正拳を放つ。ハルキは腕を組んで受け止めるも思っていた以上に威力があったその拳にハルキは顔を歪める。

 

「くっ!」

「どうした、もう終わりか?」

「まだまだに決まっているじゃないですか!」

 

ハルキは再び正拳を放つもヘビクラに受け止められる。今度は右足で回し蹴りを放つもあっさりとかわされる。その一瞬でハルキはヘビクラを見失ってしまう。

 

「えっ!?どこだ?」

 

まるで消えたようになって、戸惑うハルキ。その時、ハルキは後ろから視線を感じ、裏拳を放つ。そこにはヘビクラがいた。ヘビクラはハルキの裏拳を受け止め、顔を近づけ呟いた。

 

「見えるものだけ、信じるな。」

 

ヘビクラの携帯に着信が入る。ヘビクラはハルキの承認を得て、電話に出る。

 

「ちょっと電話に出てるぞ。」

「構いませんよ。」

「悪いな。こちらヘビクラ。」

『海底で休息している怪獣を発見しました!!』

「分かった。すぐ戻る。というわけだ。万が一に備えておけ。」

「はい。」

「じゃあな。」

 

ヘビクラはハルキの前から去っていった。ハルキは彼の言葉を思い出す。

 

「見えるものだけ・・・信じるな・・・か・・・。」

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLS東京支部の会議室ではピグモンを筆頭に、怪獣娘が集められていた。

ピグモンが口を開く。

 

「怪獣対策会議を始めます。あの怪獣は過去の記録に該当データがありました。今回現れたのは宇宙有翼怪獣『アリゲラ』。驚異的なスピードの飛行能力と機動力、それに加えて空中、陸上、水中とあらゆる環境で活動できる優れた適応能力を持った宇宙怪獣です。」

「今、そのアリゲラはどこにいるの?」

「現在、アリゲラは海底で体を休めています。よって、沖縄の米軍と海上自衛隊がアリゲラを見張っています。彼らがアリゲラに発信機を埋め込みます。アリゲラが活動を開始しだい、彼らからGIRLSに連絡がいく筈です。そして、発信機を頼りにアリゲラの進路を予測し、私達が迎撃する予定です。」

「ただ、迎撃するだけですか?それでは怪獣に成すすべもなくやられてしまいますよ!」

「勿論、ただ立ち向かうわけではありません。これを持っていきます。」

 

ウインダムの疑問にピグモンがラジオのような機械を取り出す。アギラがその機械について質問し、キングジョーが答える。

 

「その機械は?」

「超音波を乱す機械デス。アリゲラはバットのような怪獣で、超音波で周囲を認識してマス。だから、これを使って、アリゲラの活動を鈍らせマス。」

「なるほどな。それであの素早い怪獣の動きを鈍らせて、一気に叩くという事か!!」

「よーし、やるぞー!!」

「この作戦は彼らからの通信が来るまで待機して下さい。」

「「「「「了解!!」」」」」

 

怪獣娘達はやる気に満ち溢れていた。その時、会議室に多岐沢が入ってきた。かなり焦っていたのか激しく息を切らしている。

 

「大変です、皆さん!!」

「博士、どうしたんですか!?そんなに慌てて!?」

「米軍の潜水艦がアリゲラに気付かれて、攻撃を仕掛けたみたいなんです!!」

「ええっ!?」

「向こうからの通信では、アリゲラに気付かれて攻撃を受けたみたいです!そして、米軍は応戦したらしいんですが、それ以来応答がありません!とにかく、指令室に来て下さい!!」

 

怪獣娘達は多岐沢に連れられ、指令室に直行する。指令室ではヘビクラが職員達に指示していた。

 

「向こうからの通信は!!?」

「駄目です!!反応がありません!!」

「俺が通信する!!こちらGIRLS東京支部、マックス号応答せよ!!マックス号応答せよ!!・・・くそっ、どうやらアリゲラにやられたみたいだ・・・。」

「海上自衛隊から通信です!!アリゲラが海を出たみたいです!!」

「行き先を特定しろ!そこから近い支部の怪獣娘を向かわせて住民の救助と避難誘導を!!」

「了解!!」

 

ヘビクラは多岐沢達に気付く。多岐沢はヘビクラに声を掛ける。

 

「ヘビクラさん、どうですか?」

「博士、済まない。最悪の展開だぜ。」

「いえ、まだそうと決まったわけではありません。こちらでもアリゲラの対策自体は練りました。」

「アリゲラの進路が特定出来ました!!アリゲラは日本に向かっています!このままの進路だと・・・!東京です!!」

「何だと!!」

 

アリゲラが再び東京に来ると知った怪獣娘達は指令室を飛び出していった。ヘビクラは呼び止めるも、既に遅かった。

 

「おい!お前ら!!」

 

 

 

 

「ギイイイイィィ!!」

 

再びアリゲラが町に降り立った。肩からのパルス坑から放つ光線で町を攻撃するアリゲラ。その行動を見ていた男がいた。

それはカブラギに寄生したセレブロだった。セレブロはただアリゲラが暴れて町を破壊する様子を見ているだけだった。

逃げる人々の中を逆走してハルキもアリゲラが暴れている現場に到着していた。

 

「これ、絶対ヤバいだろ・・・。ギリギリまでって、かなり辛いですよ、ゼットさん。」

 

肩のパルス坑からビームを発射し、建物を破壊するアリゲラ。

現場に怪獣娘達が到着した。

 

「皆さん、落ち着いて!!」

「こちらです!!慌てないで、落ち着いて避難して下さい!!」

 

ミクラスとウインダムが市民を避難誘導する中、ガッツ星人、ゴモラ、レッドキングは真っ直ぐアリゲラに向かっていた。

 

先手を打ったのはレッドキングだ。彼女は大きな腕で力の限り殴りつける。

 

「オラァッ!!」

 

次にゴモラが回転しながら、尻尾をアリゲラに叩きつける。

 

「てやぁっ!!」

 

しかし、アリゲラは微動だにしていない。ガッツ星人が拘束光線を放とうとした時、再びアリゲラは飛び立った。低高度飛行で再び衝撃波が発生し、辺りの物を吹き飛ばす。

 

「ぐっ、お前ら何かに掴まれ!!吹っ飛ばされるぞ!!」

「う、うん!!」

 

3人は建物などの柱に必死でしがみつく。しかし、ガッツ星人が掴まっていた柱は砕けてしまう。ガッツ星人はアリゲラの発生させた衝撃波に巻き込まれ、その手に持っていた超音波を乱す機械を手放してしまう。

 

「しまった!!」

「ガッツ!!」

「ガッちゃん!!」

 

ガッツ星人は衝撃波に巻き込まれ吹き飛ばされそうになった時、1つの影がガッツ星人を救った。

それは髪の色が濃いもう1人のガッツ星人だった。彼女はガッツ星人が人に憑依するシャドウ『シャドウミスト』に憑依された際に生まれたもう1人のガッツ星人『シャドウガッツ』。人間の姿では印南マコとして暮らしている。表向きではミコの妹ということになっている。

 

「大丈夫・・・。」

「マコ・・・ありがとう。助かったよ。」

 

今、2人は衝撃波の範囲外に瞬間移動でいた。そこから、アリゲラが衝撃波を発生させながら飛ぶのを見ていた。

アリゲラは急転回して逆に飛行し始めた。逆からの衝撃波が発生し、再び周りのものを吹き飛ばす。

ガッツ星人(ミコ)はレッドキングとゴモラに向かって叫ぶ。

 

「ゴモ、レッド、アリゲラがそっちに再び向かってる!!衝撃波に備えて何かに掴まって!!」

 

再びアリゲラが発生させた衝撃波がレッドキングとゴモラを襲う。

 

「くそっ、またかよっ!!」

「ぐうううううっ!!」

 

2人の上を通過し、アリゲラは再び転回し、そのまま真っ直ぐに飛んでいた。その先には避難誘導していたミクラス、ウインダムが別の方角でアギラ、ザンドリアス、ノイズラー、青く長い髪と青い翼に猛禽類を思わせる腕を持つ風ノ魔王獣の魂を継いだ怪獣娘『マガバッサー』、水色のボブカットに目玉みたいなものがあるビキニのような恰好の水ノ魔王獣の魂を継いだ怪獣娘『マガジャッパ』達と合流していた。

ガッツ星人(ミコ)はアギラ達に警告する。

 

「アギ、皆聞こえる!!?そっちにアリゲラが来る!!凄い威力の衝撃波が来るから、何かに掴まって!!」

 

しかし、ガッツ星人(ミコ)の警告を聞く前にアリゲラはアギラ達がいる場所まで飛んできた。アリゲラが発生させた衝撃波は7人を飲み込み吹き飛ばす。

 

「「「「「うわああああああああ!!!」」」」」

「「きゃあああああああああ!!!」」

「皆ーーーっ!!」

 

ハルキは周りの梯子に掴まりながら、衝撃波に耐えていた。その時だった。7人の怪獣娘が飛んできたのは。

 

「誰か助けてーーーっ!!」

「ママーーーッ!!」

「うわああああああああっ!!」

 

ハルキはゼットライザーを持って、ゼットに呼び掛ける。

 

「お願いです、ゼットさん!!このままじゃあの怪獣娘達が危ない!!だから、一緒に戦って下さい!!」

 

ハルキがゼットライザーのトリガーを押すと、目の前にZの形の光の門『ヒーローズゲート』が開く。ハルキはその中に飛び込んだ。

ハルキはウルトラアクセスカードをゼットライザーに読み込ませる。

 

〈Haruki Access Granted〉

 

腰のメダルホルダーからメダルを取り出し、ゼットライザーにセットする。

 

「宇宙拳法、秘伝の神業!!」

「ゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠!!」

 

〈ZERO〉、〈SEVEN〉、〈LEO〉

 

光がウルトラマンゼットとなり、腕を広げる。

 

『ご唱和ください、我の名を!ウルトラマンゼェット!』

「ウルトラマンゼェェェット‼︎」

 

ゼットライザーを上に掲げ、トリガーを押す。

メダルに描かれたウルトラマンの飛び回るビジョンが光となって一点に集中し、ウルトラマンゼット・アルファエッジが現れる。

 

〈ULTRAMAN Z Alpha Edge〉

 

 

 

 

 

 

「ミコ、奴がまた転回した!」

「やべぇ!!こっちに来るぞ!!」

「もう柱が持たないよ!!このままじゃ!!」

 

再びアリゲラはレッドキングとゴモラがいる地点まで飛んでくる。3度目の衝撃波がレッドキングとゴモラを襲う。

流石にもう柱が耐え切れず、ゴモラとレッドキングは空中を舞う。その時だった。眩い光が彼女達を包み込んだ。

それはウルトラマンゼット・アルファエッジだった。ウルトラマンがその掌に2人を乗せて、安全な場所に降ろす。

そこにアギラ達が駆けつける。

 

「う、ウルトラマン・・・。」

「俺達を・・・助けてくれたのか・・・・。」

「ゴモたん・・・レッドキングさん・・・。」

「アギちゃん、皆無事だったんね!!」

「はい、間一髪で、ゼットが助けてくれました。」

 

 

ゼットは怪獣娘達を見下ろしていたが、その視線をアリゲラに向けた。アリゲラに向けて正面から向き合い、ファイティングポーズをとる。

 

(よくも好き勝手に・・・!)

『行くぞ、ハルキ!!』

「ジェアッ!!」

 

ゼットはアリゲラに向かっていく。まず先に仕掛けたのはアリゲラだ。アリゲラは翼となった腕で格闘戦を仕掛ける。ゼットは左腕でその攻撃を受け止め、右手で正拳を放つ。そのまま、立て続けに拳を二発、蹴りを三発叩きこむ。

 

「ギイイイイィィ!!」

 

再びアリゲラは翼を叩きつけようとするも、側方倒立回転で回避する。向かってくるアリゲラに対し、右足で一発、左足で一発蹴りを入れる。

 

「ジェアッ!!シェアッ!!」

「ギイイィィ!!」

「ジュアッ!!ジィアッ!!」

 

今度はアリゲラの角を掴み、こっちへ引き寄せ、膝蹴りから正拳を三発放つ。アリゲラの背中を利用して回り込み、蹴りを放とうとする。

アリゲラは尻尾の先にエネルギーを溜め、大きな光弾にして発射した。ゼットはそれを避けるも、光弾はUターンして、ゼットに直撃する。光弾を受けたゼットは前に倒れる。

 

(あの光弾、相手が避けても、追ってくるのか!?・・・・っていない!!一体どこへ!?)

 

ゼットが立ち上がると、既にアリゲラの姿は無かった。ゼットが周りを見渡していると、後ろから何かに斬りつけられた。

 

「ジェアッ!?」

 

それは高速で飛ぶアリゲラだった。アリゲラは今度は右横からゼットに体当たりを仕掛ける。ゼットはアリゲラの体当たりを受けて地面に倒れ込む。

 

(くっ、何て速さだ・・・。)

『これは・・・ヤバいかもしれないな・・・。』

 

ゼットは立ち上がるも再びアリゲラに左横から翼で斬りつけられる。

 

「ジェアアアッ!!」

(一体どうすれば・・・。このままじゃ・・・。)

『見えるものだけ、信じるな。』

 

ハルキはヘビクラと空手の手合わせで聞いた言葉を思い出した。ハルキはゼットに声を掛ける。

 

(ゼットさん、目を閉じて。)

『ああ・・・・って、えっ!?』

(いいから早く!)

『わ、分かった。』

 

ゼットは掌を前に向けて、左腕を胸より上にして、右腕は胸より下にする。そして意識を集中する。

その時、ハルキは後ろから飛んでくるアリゲラの気配に気付いた。

ゼットはアリゲラが近付いた瞬間に振り向きアルファバーンキックを放った。炎を纏った回し蹴りは見事にアリゲラの頭部に命中した。

 

「ギイイイィィィィ!?」

(よっしゃあ!!)

『ウルトラヒットー!!』

 

アルファバーンキックを受けたアリゲラは地面を転がっていく。起き上がったアリゲラは再び尻尾から追尾機能を持つ光弾を放つもゼットは額のビームランプから放つ緑色の細い光線『ゼスティウムメーザー』で相殺する。再びゼスティウムメーザーを放ち、アリゲラにダメージを与えるゼット。

アリゲラは肩のパルス坑から光線を放つも、ゼットに手刀で弾かれる。再びアリゲラは飛び上がるも、ゼットは再び意識を集中し、アリゲラを探る。

アリゲラの気配を捉えたゼットはエネルギーを溜め、必殺光線の構えに入る。

 

『(ゼスティウム光線!!)』

 

後ろから迫って来るアリゲラに光エネルギーを収束させた必殺光線が直撃する。

猛スピードで飛んでいたアリゲラはゼットの必殺光線を避けきれず、正面から食らい断末魔を上げて爆発する。

 

「ジェアッ!!」

 

アリゲラが完全に倒された事を確認すると、ゼットは空に飛び立っていった。空にZの文字を描いて。

 

 

 

 

 

 

 

「助かった~。本当に危なかったよ~。」

「ウルトラマンが来てくれなければ、私達どうなっていたか分かりませんね。」

 

ミクラスとウインダムが話している裏でゴモラとレッドキングがゼットが飛び立っていった空を見上げていた。

思わずアギラが話しかける。

 

「あのレッドキングさん・・・・ゴモたんもどうしたの?」

「えっ、ああ、何でもない。何でもないぜ。」

「そうそう、ゼットを見て胸がドキドキしちゃったとか無いから!!全然無いから!!」

「全部言っちゃってるし・・・。」

「嘘、ゴモたんゼットに惚れちゃったの!?」

「えっ、私、やっぱり「おーい、大丈夫ですかーー!?」

 

怪獣娘達が声が聞こえた方向を向くとハルキが走ってきた。

 

「ハルキ!?どうしてここに!?」

「ああ、ミコ。いや、怪獣娘達が怪獣の衝撃波で吹っ飛ぶところ見ちゃってさ。それで心配になってさ。」

「ここに来たんだね。私達は大丈夫。どこも怪我してないよ。怪獣娘は頑丈だし、ゼットが助けてくれたからね。」

「そうか、良かった。」

「あのー、ガッツさん。その人は?」

「ああ、紹介するよ。私の幼馴染の冬河ハルキさ。」

「俺、冬河ハルキッス。ミコがお世話になってます。」

「ちょっと、ハルキはいつから私の親になったわけ。」

「ハルキさんだね、よろしく。」

 

アギラをはじめ怪獣娘とハルキは自己紹介していた。その間もレッドキングとゴモラはどこか考えていた。

 

「ねえ、レッドちゃん、私さウルトラマンゼットを見てると胸がドキドキするんだ。」

「俺もだよ。これってやっぱ恋ってやつなのかな?」

「多分そうだと思う。これってやっぱウルトラマンのものなんだよね。

 

ゴモラはウルトラマンのメダルを取り出す。

 

「それって?」

「この間の怪獣が現れた時に拾ったんだ。きっとウルトラマン・・・ゼットちゃんのものなんだと思う。だから私が大事に持っておこうと思うんだ。」

「いいんじゃねえか。今度、ゼットが現れたら、返そうぜ。」

 

ガッツ星人達がハルキと談笑する中2人はずっと空を見上げていた。2人の目にはまだ空を飛ぶウルトラマンゼットが映っていた。




今回の怪獣はスラン星人とヘイレンも候補にしていました。
けどスラン星人では宇宙人という事で他の方が書いている怪獣娘とZの小説と被るから却下、ヘイレンも出身は空中とあるので宇宙怪獣か怪しいと思い、怪獣娘の世界に現れてもおかしくはない宇宙怪獣であるアリゲラを選びました。

宇宙怪獣なら地球の怪獣がいなくなった怪獣娘の世界に現れてもそれ程違和感は無いと思いますので次回の怪獣もゴモラではありません。


次回予告(CV:ウルトラマンゼット)
『突如、宇宙からゴモラに似たロボット怪獣が落ちてきた。ロボットは動かないので、怪獣娘による解体作戦が始まるも、作戦中突如ロボットが動き出した。とんでもない怪力と固さを持つロボットに新しい力で立ち向かうぞ!!次回!!


怪獣娘×ウルトラマンZ



生中継!ロボット怪獣解体大作戦



ウルトラ燃えるぜ!!』


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生中継!ロボット怪獣解体大作戦(前編)

最初はブラックキングかカミソリデマーガのどちらかを出す予定でした。

しかしZのラスボスである??????にはレッドキングの存在が不可欠だと思い、登場する怪獣を変更しました。
今回の怪獣がレッドキングの存在にどう関係するかは本編を見てもらえば分かると思います。

他にも上の2体を却下した理由があります。

それは後書きのほうで理由を述べます。



ロボット怪獣『メカゴモラ』登場


その日、怪獣娘はシャドウの対処に追われていた。

ガッツ星人はシャドウに光線を放つ。光線を受けたシャドウは爆散する。

アギラも突進による角の一撃でシャドウを消滅させる。

 

「シャドウはこれで全部かな!!」

「うん。」

「おーい!アギちゃん!こっちは終わったよ!!」

 

ミクラスがマガバッサーとマガジャッパを連れてガッツ星人とアギラの元にやってくる。

 

「ウインちゃんとレッドキング先輩とゴモたんもたった今終わったって。」

「良かった。」

「おーい、お前ら!!」

 

レッドキングとゴモラとウインダムがガッツ星人達のもとへやってくる。

 

「お前らも終わったのか!!」

「はい!」

「よし、じゃあGIRLSに戻るz「大変です!!」ノイズラー!?」

 

ザンドリアスとノイズラーが慌ててやってくる。彼女達はノイズラーの次の言葉に驚いた。

 

「大変です!!何かが上から降ってきます!!」

「ええっ!!」

「何かって・・・一体何が!?」

「かなり大きな音を立てて地上に向かっています。・・・ってあれは!!」

 

ノイズラーが上を指さすと何かが炎を纏って接近してきた。その何かは地上に大きな音を立てて衝突した。

 

「凄い音!!一体何が・・・ってあれは!?」

「怪獣!?しかもあれって・・・・・ゴモラじゃない!?」

「いや、何か違う・・・。あれは・・・。」

 

煙が晴れて何かが姿を現す。それはゴモラのカイジューソウルである古代怪獣『ゴモラ』によく似た姿をしているもののその体は機械でできた怪獣だった。

怪獣の名前はロボット怪獣『メカゴモラ』。サロメ星人という宇宙人がゴモラを元に作ったロボット怪獣だ。

 

「ゴモラそっくりのロボット怪獣だ!!」

「どうしましょう!!また怪獣が出現しましたよ!!」

「落ち着け!!まずはGIRLS本部に連絡するぞ!!こちらレッドキング!宇宙から怪獣が落ちてきた!!ゴモラによく似たロボット怪獣だ!!」

 

マガバッサーとマガジャッパが慌てる中、レッドキングが2人を落ち着かせGIRLS本部に連絡する。

 

 

GIRLS本部もメカゴモラが落ちてくるのを確認していた。ピグモンがモニターを見ながら指示を出す。

「こちらでも確認しました!!まずは周辺の住民の避難をお願いします!」

『了解!!』

「・・・これで3度目の怪獣襲来ですね・・・・。一体何が起きているの・・・?この星からいなくなったはずの怪獣が宇宙から立て続けに・・・。」

 

 

 

 

 

現場では怪獣娘達が住民の避難誘導を行う。そんな中、アギラが怪獣を見つめていた。そんな姿にマガバッサーが声を掛ける。

 

「アギラさん、どうしたんですか?」

「おかしい、あの怪獣、全然動かない。」

「えっ!?」

 

そう言われたマガバッサーがメカゴモラを見ると確かにメカゴモラは動かない。地上に落ちて、もう15分は立っていたのに少しも動かないのだ。

 

「確かに動きませんね。あの怪獣が落ちてきてもう15分経つのに・・・。」

「うん、何か変・・・・。」

 

住民の避難誘導が終わり現場にGIRLS東京支部にいたピグモン、エレキング、キングジョーも合流する。

メカゴモラが地上に落ちてきてもう1時間が経過していた。

 

「メカゴモラが落ちてきてもう1時間になりますね・・・。」

「まるで動きませんね・・・ってメカゴモラ?」

「ええ、あの怪獣は過去に記録がありました。名前はメカゴモラ。ゴモラを元に作られたロボット怪獣です。」

「そのまんまの名前だね。・・・それにしても全然動かないね。」

「ロボットだから、落下の衝撃で壊れちゃったとか。」

「有り得ないわ。相手はロボット怪獣よ。ロボットという事は誰かが作ったはず。あんなものを作れるとしたら宇宙人しかいないわ。地球外のテクノロジーで作られたロボットがたかが落下の衝撃で壊れるわけないわ。」

「うっ、わ、分かってますよ。」

「いや、ミクラスさんの考えも間違いではないかもしれません。」

 

ピグモンとウインダムとゴモラの会話にミクラスが割って入るもエレキングに一喝される。ミクラスは初対面の時から苦手なエレキングの言葉にたじたじになる。

しかし、そこに1人の男性がミクラスの意見を肯定しながら現れる。GIRLS研究部門の嘱託顧問及び育成部の部長を務める多岐沢だ。

 

「博士、どういう事です?」

「あの怪獣は大気圏中を突破している最中か、宇宙のどこかで小惑星にぶつかった影響か、落下の衝撃で一部の機能が停止しているのかもしれません。」

「停止って事は・・・まさか動き出す可能性も・・・!?」

「無いとは言い切れませんね。GIRLS上層部は怪獣娘によるメカゴモラ解体作戦を計画しています。皆さん本部に戻ってきてもらえませんか?」

「怪獣娘によるメカゴモラ解体作戦!?」

「詳しくは本部で話しましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

GIRLS本部にて怪獣娘達が多岐沢、ヘビクラと会議をしていた。

 

「今回現れたメカゴモラを怪獣娘達で解体する事が決まった。作戦は明日の午前10時だ。」

「明日の午前10時!?どうして!?」

「今日、アメリカ支部やフランス支部等、世界中のGIRLSのお偉いさんが来ている。彼らは今日から3日間日本に滞在する予定だ。そこで午前10時から正午まで時間を頂いた。最近日本で起きている怪獣事件の対応作戦を彼らに見てもらい、日本支部の活躍を見てもらうというわけだ。」

「海外のお偉いさんが来てるの!?でも、どうして今なわけ!?」

「実は・・・立て続けに怪獣騒動が起こるので、急遽GIRLSの世界中の上層部が集まって会議を開く事になったんです。怪獣娘で怪獣騒動を解決できるのか、疑問に思う者も多く、今回の作戦は怪獣娘が本物の怪獣にも負けないという所を見せてほしいと思い、決行しました。」

「うへぇ~、滅茶苦茶プレッシャーだよぉ~・・・。」

「ちなみにこの作戦はTVで全国民に生中継される予定だ。くれぐれも失敗したり、無様な姿を見せるんじゃねえぞ。」

「全国に生中継!?しかもTVで!?」

「ふええぇ、私目立つの苦手なのに~・・・。」

「会議は以上です。明日に備えてゆっくり休んで、準備を整えてください。」

 

会議後、水色のボブヘアーにひし形の髪飾りの少女と青い癖ッ毛のあるロングヘアーの少女が並んで歩いていた。彼女達はマガジャッパこと『竜波ユカ』とマガバッサーこと『風巻ヨウ』である。

 

「明日の作戦、あたし達には荷が重いよ・・・。怪獣娘達だけで本物の怪獣相手に対抗できる所を見せるなんて・・・。しかもGIRLSの上層部が見ているって、プレッシャーマジパネェって・・・。」

「しかも、TVで生中継なんて・・・・、私、目立つの苦手なのに・・・。」

 

2人揃ってため息をついていると後ろから話しかけてくる男がいた。それはさっきまで彼女達と会議をしていたヘビクラだ。

 

「なんだ、2人揃って溜息なんかついて。」

「ヘビクラさん!?そりゃつきますよ!!今回の作戦あまりにも荷が重いですって!!」

「私達、新人でここまでプレッシャーが掛かる任務は今まで無かったんですよ。なのに・・・今回は・・・あんな・・・。」

「だからって逃げていいのか?また怪獣が現れた時、周りにお前らしかGIRLSの怪獣娘がいなかったらどうする?ウルトラマンがいつ来るか分からない時に自分たちは避難誘導だけで終わるつもりか?」

「だからって・・・・。」

「情けないな。お前らは魔王獣の魂を継いだ怪獣娘なんだろ?魔王獣ともあろうものが、まさかたかが動かないガラクタロボット1つ解体出来ないというのか?」

「なっ、そんな事有りませんっ!!必ずやってみせます!!」

「そうです!!絶対に先輩達の足は引っ張りません!!」

「あたし(私)達は必ずやってみせます!!」

 

ヘビクラの言葉に2人は逆上する。そんな2人を見てヘビクラは口元に笑みを浮かべる。

 

「だったら、やってみせろ。ウルトラマンが来なくても戦える、それ位の気持ちを見せろ。お前らの怪獣娘としての誇りを見せてやれ。」

「はい!!・・・ってもしかしてあたし達を焚き付けるために・・・。」

「あ、ありがとうございます。ヘビクラさん。」

「よせよ。今日はもう帰って、明日に備えておけ。」

「「はい!!」」

 

2人揃って返事をした後、ヨウとユカはヘビクラの元を去っていく。そんな2人の後ろ姿を見て、ヘビクラは小さく呟いた。

 

「ったく、魔王獣も随分と変わったもんだぜ・・・。俺が復活させた時とはえらい違いだ・・・。なぁ、ガイ。」

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLS本部前にハルキは立っていた。ニュースでGIRLSの怪獣娘によるロボット解体作戦が伝えられ、ミコの事が心配になったからだ。

そんなハルキの元にミコがやってきた。

 

「あれ、・・・ハルじゃん!どうしたの!?」

「あ、・・・いや・・・お前が心配になってきてさ。・・・・・・ニュースを見たよ。明日、あのロボットの解体を怪獣娘がやるんだろ・・・。」

「うん。・・・ってもしかして、それで来たの?大丈夫!!私達は普通の人間より頑丈なんだから!!」

「それは俺も知ってる!だけど・・・怪獣は動かないとはいえ・・・・・何か嫌な予感がするんだよ。」

「大丈夫だよ!!私はいかなる戦いにも負けた事がないガッツ星人なんだよ!!ハル、私を信じて!!」

「・・・・・分かった・・・・そこまで言うなら・・・・信じるぜ。」

「うん!」

 

ミコが笑顔で頷く。そこに眠そうな目をした少女とポニーテールと八重歯が目立つ少女と白銀の髪を三つ編みにした眼鏡の少女が近付いてくる。彼女達はアギラこと『宮下アキ』、ミクラスこと『牛丸ミク』、ウインダムこと『白銀レイカ』だ。

どうやら、一緒に帰ろうとしていたみたいで、彼女達はミコとハルキに話しかける。

 

「ガッツに・・・・ハルキさん。」

「アギ、ミクラス、ウインダム。どうしたの?」

「いや、姿が見えたから一緒に帰ろうと思ったんだけど、・・・もしかしてお邪魔だった。」

「俺の事なら気にしなくていいッスよ!!」

「そう、じゃあさハルキさんも一緒に帰ろうよ!!」

「あのー、俺、皆さんとどこかで?」

「アリゲラの現場で会ったでしょ。アギとミクラスとウインダム。」

「ああっ、あの時の怪獣娘っスね。いいっスか?」

「はい、ガッツ星人さんのお話も聞きたいですし。」

 

ミクラスに誘われて、彼女達と一緒に帰る事になったハルキ。

 

「あの、ハルキさん。敬語じゃなくていいですよ。私達あまり年は変わらないですから。」

「本当?じゃ、よろしくな!」

 

この時、怪獣娘達は思ってもいなかった。ハルキの嫌な予感が的中する事になるとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、メカゴモラに乗り込む人影があった。それはカブラギに寄生したセレブロだった。

セレブロはメカゴモラのコクピットに乗り込むと、回りのパネルを触り、コックピットのスイッチを押し始める。すると、コックピットの引き出しの部分が開く。セレブロはそこに手を入れると何かを取り出した。

それは握り拳1個分の何かが入ったボックスだった。ボックスを開くとそこには幾つかのカプセルが入っていた。

セレブロはボックスの中身であるカプセルをただただ見続けていた。やがてそれを懐にしまうとコックピットを操作する。機械の操作を終えたセレブロはコックピットから姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ニュースキャスターが怪獣の前で解説をしていた。

 

『皆さん、本日はこれから怪獣娘によるロボット怪獣解体作戦が始まります!!果たして、地球外の存在が作り出したロボットにはどんな秘密が待っているのでしょうか!?』

 

怪獣娘達がメカゴモラを囲んで集まっていた。周りにはGIRLSの職員とTV曲のカメラマンが集まっていた。

メカゴモラが見える離れた位置にいるニュースキャスターの周りには沢山のカメラマンや報道陣、野次馬が集まっていた。そこにはハルキの姿もあった。

 

「ミコ、皆、気をつけろよ・・・。」

 

ハルキは万が一、怪獣が動き出した時に備えて近くに来ていたのだ。そこにヘビクラやピグモンの姿が見える。ヘビクラはハルキに気が付き、声を掛ける。それにつられてピグモンもハルキに声を掛ける。

 

「よお、確か・・・ハルキ・・・だったか?」

「ヘビクラさん・・・?来てたんだ・・・。」

「あの、ヘビクラ隊長、彼は?」

「前に会ったんだ。それより、お前はどうしてここにいる?」

「怪獣娘に幼馴染がいて、彼女の活躍を見に・・・。」

「怪獣娘に幼馴染が?一体誰ですか?」

「印南ミコっていうんですけど、知りませんか?」

「印南ミコ・・・・・・・、ああっ、ガツガツの幼馴染なんですね。私はピグモンと申します。」

「知ってます。GIRLSのCMで見ました。ここで彼女達の活躍を見るだけならいいですよね。」

「そうですね・・・・私は構いませんが・・・。」

 

ピグモンはヘビクラを見る。

 

「フッ、・・・万が一の時は避難しろよ。」

「だそうです。」

「ハイ!!」

 

時計がいよいよ午前10時を示した。ピグモンは怪獣娘達に指示を出す。

 

「怪獣娘の皆さん、午前10時になりました。ただいまを持って、メカゴモラ解体作戦を開始します。」

『了解!!!』

 

怪獣娘達の今までない大規模な作戦が始まろうとしていた。




ブラックキングを却下した理由

ブラックキングを出すとなるとナックル星人も出さなければいけなくなるから。
地球人のペット投棄のように宇宙人に捨てられた個体が怪獣娘の宇宙の地球に辿り着いたという展開も考えたが強力な怪獣であるブラックキングを捨てる真似をする馬鹿な宇宙人がいるとは考えづらいため

カミソリデマーガを却下した理由

異次元空間に穴が開いた理由付けがいる上、他の方が書いた怪獣娘とZの小説で異次元空間の探索を既にしてしまっているため

主な理由は以上ですね。
2体とも片方は宇宙怪獣、片方は異次元空間に住む怪獣なため怪獣娘の世界に現れても違和感はないと思いました。
ブラックキングは怪力な上頑丈ですし、カミソリデマーガも硬い体表を持っているため、パワータイプの初陣にもふさわしい怪獣だと思いますが。


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生中継!ロボット怪獣解体大作戦(後編)

試作版はこれで終了です。

『試作版』はね。


巨大なメカゴモラを見上げる怪獣娘達。ミクラス、アギラ、レッドキングが計画を意見する。

 

「とはいっても、どうやって何処から解体すればいいの⁉︎」

「人数はいるから、二手に分かれる?人班が内側から、人班が外側からとか。」

「いや、それだと手間が余計に掛かる。全員で外側から解体するぞ!!」

 

そう言ってレッドキングを筆頭にメカゴモラの外壁を剥がそうとする。しかし、それは人間離れした力の怪獣娘達でも剥ぎ取るのに手間が掛かるくらい硬かった。

その、硬さにミクラスとノイズラーが愚痴をこぼす。

 

「これ、本当に2時間以内に解体できるの?」

「絶対に無理だと思います。下手したら、1日どころでは済まないかもしれません・・・・。」

「ミクちゃん、ノイズラー、諦めちゃ駄目だよ。ボク達の力を信じて力を振り絞ろう。」

「アギラの言う通りだ!俺達怪獣娘の意地を見せるぞ!!」

「私達の、怪獣娘の本物の怪獣に負けない無限の可能性を信じて!!

 

弱気になるミクラスとノイズラーをアギラ、レッドキング、ゴモラが喝を入れる。その言葉を聞くと、2人は頷き、力を取り戻す。

 

「・・・・そうだよね・・・。こんな所で諦めちゃ駄目だ!見習いだった頃に戻っちゃう!!」

「アタシ達なら絶対に出来る!!よっしゃあー!!行くぜーー!!!」

 

2人は外壁を掴み、思いっきり引っ張る。

 

 

 

 

 

 

その頃、高いオフィスビルの最上階の会議室に世界各国のGIRLSの上層部が集まっている。中には多岐沢の姿もあった。欧米人と思われる男が外の怪獣娘がメカゴモラの解体に苦戦している様子を見て、多岐沢に質問する。

 

「Mr.多岐沢、本当二彼女達ハアノ怪獣ヲ解体出来ルノデショウカ?」

「それは分かりません。しかし、怪獣娘には無限の可能性がある。本物の怪獣と違って、人間の心がある彼女達には元の怪獣を超える事が出来る力がある。彼女達は誰だって無限の可能性があります。僕はその可能性を信じたいと思っています。」

 

 

 

 

 

 

 

その頃、遠く離れた場所からヘビクラとピグモンが双眼鏡を持って彼女達の様子を覗いていた。

 

「おいおい、なんだかやる気満々じゃねえか。」

「あの子達ですからね、きっとやってくれますよ。」

「ミコ・・・、頑張れ・・・!!」

 

ハルキは幼馴染の奮闘を祈った。

 

 

 

その頃、ザンドリアスとウインダムはマガバッサーとマガジャッパと一緒に、ゼットンとキングジョーはガッツ星人とエレキングと一緒にメカゴモラの装甲を掴んでいた。

 

「ぐぐぐぐぐぐぐっ!!駄目ーっ!!力が抜けてきたーーっ!!」

「頑張って下さい、ザンさん!!お母さんもこの生中継を見てるんでしょう!!」

「先輩、諦めちゃ駄目です!!あたしだって頑張りますから!!」

「私の両親も見てくれているんです!!だから、やりましょう!!」

 

その時、ザンドリアスは遠くの野次馬の中に母親がいるのを確認した。母親にいいところを見せたい。その思いが彼女をつき動かす。

 

「あたしだって、やれば出来るんだーーーーーっ!!」

 

彼女の装甲を持つ手の力が確かに強くなった瞬間だった。

 

 

 

 

その頃、ガッツ星人もキングジョー、ゼットン、エレキングの4人と力を合わせてメカゴモラの解体に励んでいた。

彼女達は解体しやすいようにゼットンの火の球で金属を炙り、溶かす作戦に出た。しかし、彼女は周りを気にして手加減している。その為、未だに彼女達も装甲を一つ剥がす事が出来ずにいた。

 

「く、熱いのは怪獣娘に変身しているからどうにかなるけど・・・。」

「これ、予想以上に硬いよね・・・。」

 

弱音を吐いてしまうエレキングとガッツ星人。しかし、ガッツ星人の目に偶然幼馴染のハルキが写った。ガッツ星人はハルキに恰好悪い所を見せたくないと思い、再び力を入れる。

 

(ハルが見てくれているんだ・・・・。こんな所で挫けていたらダサダサだよ!!しっかりして!!私!!)

 

その時、怪獣娘に異変が起こる。レッドキングはマグマが固まったような色になり、ゴモラは体のあちこちに刺々しい棘が生える。

ガッツ星人は桜色になり、キングジョーは黒くなり、右腕にランチャーが装備される。

ゼットンは翼のようなものが生え、

突然変わったその姿は一瞬だったものの、怪獣娘の力が確かに強くなった瞬間だった。そして、遂に硬い装甲が剥がれたのだ。

 

「やった!!剥がれた!!剥がれたよ!!」

「よっしゃあ!!このままの勢いで行くぞ!!」

 

ミクラスとレッドキングの言葉でやる気にみち溢れる怪獣娘達。

オフィスビルの最上階にいたGIRLSの上層部もこれを見て希望を持っていた。

下で見ていたハルキにヘビクラとピグモンもだ。一緒に喜ぶ妖艶な女性もいた。ザンドリアスの母親だ。

 

「よっしゃあーーっ!!いいぜ、ミコーーーっ!!」

「いいわよ、ザンちゃん!!」

「ザンザンのお母さん。」

「ピグモンさん、こんにちは。あの子、頑張っているようですね。」

「ええ、きっとこのままなら・・・。」

「・・・・・・。」

 

ヘビクラは皆と一緒に歓声を上げないもの、嬉しそうだった。

しかし、彼らの喜びは一瞬でかき消される。なぜならメカゴモラの腕が一瞬動いたからだ。メカゴモラの手が一瞬だけだが、ドリルの様に回転した。

それを見て怪獣娘は凍りついた。

 

「ね、ねぇ。今、手が動かなかった・・・。何か・・・一瞬・・・・動いた様に・・・・見えたのは気のせいかな。」

「き、気のせいだと思う・・・よ・・・。気のせいだと思うけど・・・なんか嫌な予感が・・・。」

 

その時、メカゴモラの左胸のランプの部分が紫色に光った。そして、左胸のランプからビームが発射され、町を焼き尽くす。

 

「ギャアオオオオオ!!」

ビームを発射したメカゴモラは体からミサイルを発射して行進し始めた。ミサイルが当たり一面を火の海に変えていく。今まで動かなかったロボット怪獣が突然動き出し、破壊活動を始めた。

 

 

 

「どうなってんだ・・・・?あのロボット、急に動き出したぞ?」

「ザンちゃん!!ザンちゃーん!!」

「落ち着いてください!!お母さん!!ザンザンなら大丈夫ですから!!だから、大至急避難してください!!」

「皆さん、怪獣が動き出しました!!慌てないで、落ち着いて避難してください!!」

「博士!!一体何が起こっているんだ!!」

 

ハルキは突然ロボットが動き出した事に困惑する。その横でパニックになる人々の中でザンドリアスの母親が娘の名前を叫んでいた。ピグモンはザンドリアスの母親を落ち着かせ、GIRLSの職員達が避難誘導を行う中で、ヘビクラは多岐沢に連絡を取る。

ハルキは彼らから離れ、ヘビクラとピグモンが見えなくなった辺りでメカゴモラに向かっていた。

 

 

 

 

その頃、GIRLSの上層部達も混乱していた。その中でさっき自分に質問した欧米人を落ち着かせながら、多岐沢はヘビクラからの通信に答える。

 

「ネェ、動イテルヨ!!何デ、何デ!?」

「分かりません!!分かりませんが、落ち着いてください!!恐らくですが、今まで損傷していた起動回路か何かが自動的に回復し、今の状況になっているのではないのでしょうか!?」

『じゃあ、今まで動かなかったのは、損傷した部分を回復させるためって事か!?』

「恐らくは!こうなった以上、作戦は中止です!!彼女達を引き上げさせてください!!」

『分かった!!』

 

 

 

 

「ギャアオオオオオ!!」

 

メカゴモラは角から指からミサイルを放ち町を破壊する様子を見ている男がいた。セレブロだ。実はセレブロはメカゴモラからあるカプセルが入ったボックスを回収した後、ある仕掛けをした。それは怪獣娘達が少しでも外装を剥がしたら自動的に動き出すように設定していたのだ。その事を知らない怪獣娘達はまんまと外壁を剥がし、メカゴモラを起動させてしまったのだ。

セレブロはメカゴモラによって町が燃えるのを無表情でただ見ていた。

 

 

 

 

 

アギラとレッドキングとガッツ星人はヘビクラからの通信に答えていた。

 

「作戦中止・・・ですか!!?」

『ああ、メカゴモラは動き出した。よって作戦を中止して、お前らも退避・・・・。』

「駄目だ!!作戦は中止しない!!こいつを食い止めなきゃ、多くの被害が出るぜ!!」

「私達は絶対に引かないよ!!」

 

レッドキングとガッツ星人はヘビクラの言葉を却下した。メカゴモラによる被害を食い止めるため、作戦を続行する決意をしたのだ。

ヘビクラは声を上げるも、彼女達が一度言い出したら聞かないと分かっていたのか、彼女達の作戦続行を認めた。

 

『おい!!・・・・って言って聞くお前らじゃねえか・・・。十二分に気をつけろ!!』

「「「了解!!!」」」

 

3人はヘビクラからの通信を切るとメカゴモラに向かっていく。

まずはレッドキングがドロップキックを、ミクラスがストレートをメカゴモラにお見舞いする。

 

「オラァッ!!」

「どりゃああ!!」

 

続いてウインダムが額からのレーザーを発射し、マガジャッパも水流を発射してメカゴモラを攻撃する。しかし、メカゴモラは微動だにせず、進行する。

幾ら攻撃を受けても、微動だにしないメカゴモラにメンバーの中で一番幼いザンドリアスは怯えてしまう。

 

「やだ・・・こんなのと・・・どうやって戦うの・・・。」

「諦めんな!!」

 

そんなザンドリアスに発破を掛けたのは自分と同い年のノイズラーだ。ノイズラーはザンドリアスに言い放つ。

 

「今、アタシ達が諦めたらこいつは町を破壊し続ける!!お前のお母さんも家も通ってる中学校も何もかも破壊しちまうぞ!!」

「!!!」

 

ザンドリアスは後ろにいる母親の事を思い出し、勇気を振り絞ってメカゴモラの前に飛び上がる。そして、メカゴモラの顔を口から吐く炎で攻撃した。

 

「うがーーーっ!!ママも友達も・・・皆傷付けてたまるもんかーーー!!」

 

炎の威力は増し、命中した箇所が爆発する。しかし、メカゴモラは爆炎の中から姿を見せ、ザンドリアスを手で叩き落とす。

 

「きゃああああ!!」

「ザンドリアス!!」

 

メカゴモラは下にいるザンドリアスに狙いを定め、角にエネルギーを溜め始める。メカゴモラ版超振動破『メガ超振動波』を放とうとする。

 

「あ・・・ああ・・・・。」

「逃げろ!!ザンドリアス!!!!ザンドリアスーーー!!」

 

ザンドリアスは叩きつけられた痛みで体が思うように動かなかった。この状況で角から放たれる攻撃を受けたら、命はない。ザンドリアスは覚悟を決めて目を閉じた。

それはハルキがウルトラゼットライザーのトリガーを押してヒーローズゲートを通った時と同じだった。

ハルキはウルトラアクセスカードをゼットライザーに読み込ませる。

 

〈Haruki Access Granted〉

 

腰のメダルホルダーからメダルを取り出し、ゼットライザーにセットする。

 

「宇宙拳法、秘伝の神業!!」

「ゼロ師匠、セブン師匠、レオ師匠!!」

 

〈ZERO〉、〈SEVEN〉、〈LEO〉

 

『ご唱和ください、我の名を!ウルトラマンゼェット!』

「ウルトラマンゼェェェット‼︎」

 

ゼットの掛け声と共にゼットライザーを上に掲げ、トリガーを押す。

ハルキはゼットと一体化し、ウルトラマンゼットとなって現れる。

 

〈ULTRAMAN Z Alpha Edge〉

 

 

メカゴモラがメガ超振動波を放つもそれはザンドリアスの後ろに放たれた。ザンドリアスは何故自分が助かったのか目を開けて確認する。

メカゴモラの首に足を絡め、体重を後ろに掛ける何かがいた。それは光り輝いており、最初は見えなかったものの光が晴れて、その姿を現す。それはウルトラマンゼットだった。ゼットは体を捻り、メカゴモラを倒れさせる。

 

「う、ウルトラマン・・・ゼット・・・。ウルトラマンだーー!!来てくれたんだね!!」

 

 

 

一方、オフィスビルにいたGIRLSの上層部達もその姿を見て笑顔を浮かべる。彼らもその姿が現れた事を喜んでいた。

 

「It'S Ultraman !!」

「そうです!!あれこそ、再び地球に来た新たなウルトラマン『ウルトラマンゼット』です!!」

 

 

 

「ありがとーーーっ!!ウルトラマン!!」

 

ザンドリアスの声に下を向くゼット。ゼットはメカゴモラの方に向き、ファイティングポーズを構える。

 

「ギャアオオオオオオオ!!」

 

ゼットはメカゴモラに飛び蹴りを放つ。しかし、メカゴモラは数歩後退しただけだった。

 

「ジィアッ!デュア!デアッ!!」

 

ゼットは接近して、右手で正拳、左手で再び正拳、右足で膝蹴りを放つ。それでもメカゴモラは数歩後退するだけだった。ゼットは一旦距離を置くも、メカゴモラはロケットパンチを放つ。ゼットはそれを回し蹴りで弾いた。

 

『こいつ、ウルトラ硬いな・・・。』

(作戦を変えましょう!!)

 

メカゴモラは今度は体からミサイルを発射する。

ゼットはゼットスラッガーを形成してミサイルを弾き、ゼットスラッガーを繋ぎ合わせアルファチェインブレードを形成する。

ゼットはアルファチェインブレードでミサイルを弾きながら、メカゴモラを何度も斬りつける。

メカゴモラは6度目の斬撃を読んでたのか口で咥えて受け止め遠くに投げ飛ばした。メカゴモラは角で突進してきた。

ゼットは抑えつけられずに腹で受け止め、後退する。

 

『しかもウルトラ馬鹿力だぜ・・!!』

(このまま戦ってたら不利だ・・・。)

 

メカゴモラは胸のランプからビームを発射しながら、体からミサイルを発射した。

ミサイルは手刀で弾きながらも、ビームはまともに食らってしまう。

 

「ジェアッ!?」

 

ゼットはビームを受けて後ろに倒れ込む。ゴモラはその姿を見て、駆けだしていった。

 

「ちょっと、ゴモ!?」

「そっちは危ないよ!!ウルトラマンと怪獣の戦いに巻き込まれちゃうよ!!」

 

ガッツ星人とミクラスがその姿を追う。

 

「ジィィアッ!!」

 

立ち上がろうとするゼットの横にゴモラがやってきた。その後を追うようにガッツ星人、ミクラスと怪獣娘がやってくる。

 

「うわぁ、こうして近くで見ると本当に大きい・・・。」

「ゼットちゃん!!これって貴方のモノなんだよね!?」

 

ゴモラは持っていたウルトラマンのメダルをゼットに見せる。ゼットとハルキは驚いていた。

 

『あ、あれはウルトラマンのメダルだ!!』

(ウルトラマンってまさか、初めて地球で戦った初代ウルトラマン!?)

『ああ、俺達皆の憧れの兄さんみたいな人だ!!』

(そのウルトラメダル・・・・ゴモラさんが持っていたのか・・・。)

「これを返すよ!!だから、頑張ってウルトラマン!!」

 

そう言ってゴモラはゼットにメダルを投げる。ゼットのカラータイマーに吸い込まれたそれはハルキの手に渡った。

 

『ハルキ、ウルトラフュージョンだ。真っ赤に燃える、勇気の力を手に入れるぞ!!』

(はい!!)

 

ハルキは腰のメダルホルダーから2枚のメダルを取り出す。ウルトラマンエースとウルトラマンタロウのメダルだ。

 

「真っ赤に燃える、勇気の力!!」

「マン兄さん、エース兄さん、タロウ兄さん!!」

 

〈Ultraman〉〈Ace〉〈Taro〉

 

ウルトラマンゼットが腕を広げて胸を張る。

 

『ご唱和ください、我の名を!ウルトラマンゼェット!』

 

「ウルトラマンゼェェェット‼︎」

 

ゼットライザーを上に掲げ、トリガーを押す。

メダルに描かれたウルトラマン、エース、タロウが飛び交う。そしてアルファエッジの時と同じく一点に光が集中して、赤く染まったパワータイプのウルトラマンゼットが握り拳を作り両腕を挙げて現れた。

 

〈Ultraman Z Beta Smash〉

 

 

 

 

 

「ウルトラマーン!ゼェーット!ベータスマァーッシュ!!」

 

顔に赤いマスク、胸にプロテクターを着けた赤のカラーリングの筋肉質なウルトラマンが空中で体を捻り、ドロップキックをメカゴモラに叩きこむ。

 

「デュワッ!!」

 

ドロップキックを決めたせいで倒れ込むもメカゴモラよりも先に起き上がる。

 

「イィイチ、ニィ、サァァン・・・・!!ダアアアアアア!!」

 

力に優れたウルトラマンゼット『ベータスマッシュ』が右腕を掲げ高らかに吠えた.。

 

「おお~!!いかにも強そうな姿に~!!」

「まさしくパワースタイルって感じになったな!!」

 

ミクラスとレッドキングが目を輝かせてその姿を見ている。ゼットとメカゴモラが睨み合う中でミクラスはどこからともなくゴングを出す。

 

「よーし、行くよー!!試合開始ー!!」

「ミクさん、そのゴング何処から出したんですか!?」

 

ミクラスがゴングを鳴らしたのと時を同じくして、ゼットがメカゴモラに組み付いた。

 

「ディアアアッ!!」

 

力比べは僅かにゼットが勝り、メカゴモラが押し返される。メカゴモラから手を離すとその首にチョップを右手で叩きこむ。続いて顔に力強い拳を叩き込み、メカゴモラをを後退させる。

メカゴモラは指からミサイルを放つも微動だにせず、突進する。突進の後はメカゴモラの右横腹に蹴りを2発叩きこむ。

 

「ギャアオオオオ!!」

 

メカゴモラはメガ超振動波を放つも、両手を左腰の位置で合わせて右腕を斜め垂直上に持っていくことで繰り出す切断光線『ベータクレセントスラッシュ』を放つ。切断光線はメガ超振動波を突き破りメカゴモラに確かに切り傷を付ける。

ゼットは再びメカゴモラの首に力強いチョップを放ち、上へ投げ飛ばす。ゼットは赤く光り、その右手には既にエネルギーが溜められていた。

 

『(ゼスティウムアッパー!!)』

 

光エネルギーを纏った拳が直撃し、メカゴモラは大爆発。その機械の体は完全に砕け散ったのであった。

 

「やったーー!!」

「よっしゃあーー!!」

 

怪獣娘達は喜び、ゴモラはゼットを嬉しそうに見る。ゼットはゴモラに頷き、空へ飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、GIRLS本部では怪獣娘達がピグモンと多岐沢に謝っていた。

 

『すみませんでした!!』

「作戦は失敗してしまいました!!」

「大丈夫ですよ~、皆さん。」

「大丈夫なわけないじゃないですか!!結局はウルトラマンに助けられてしまいましたし・・・。」

「そんな事ありません。上層部の皆さんが言っていましたよ。ウルトラマンも苦戦した相手に一歩も引かず戦った日本の怪獣娘は凄いって。暫くは皆さんにかこれからを任せてもいいと言っていました。」

「本当ですか!?」

「はい、だから自信持ってください!!」

 

ピグモンと多岐沢の言葉に顔を喜ばせる怪獣娘達。外ではそんな怪獣娘達をハルキがGIRLS東京支部の前から見つめていた。その顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、セレブロは人里離れた海岸にいた。その足元には、カプセルが幾つも転がっていた。

 

「ピギシャアアアアア!!」

「グオオオォォォン!!」

「グアアアァァァ!!」

「ウオオオオン!!」

 

その前には幾つもの怪獣達がいた。実はセレブロが回収したボックスに入ったカプセルには怪獣が入っていたのだ。そして、たった今カプセルに入っていた怪獣達を地球に解き放ったのだ。怪獣は地面に潜り、空に飛び立ち、海に潜って消えていった。

セレブロはそれを無表情で見届けると、夜の闇の中に消えていった。




怪獣娘×Zですが、こちらも本格的に連載することに決定しました。
Z原作がウルトラマンシリーズ最高傑作といえる位面白かったので、その反面プレッシャーも大きいですが、どうか応援よろしくお願いいたします。

正式タイトルは


怪獣娘Z ~ウルトラマンゼット登場計画~


となります。

新作ウルトラマンが始まるまでここは更新が出来ませんが皆さん何卒ご理解ください。
そして2作同時進行になりますが、絶対に完結させる事を約束しますので皆さんこれからも私の小説をよろしくお願いいたします。


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怪獣娘×ウルトラマントリガー
光を繋ぐもの(前編)


いよいよ怪獣娘×トリガーの先行版です‼︎

妖麗戦士『カルミラ』登場
超古代闇怪獣『ゴルバー』登場


とある宇宙に隕石群と共に宇宙空間に浮かぶ石像があった。その石像は明らかに人間ではない女性型の巨人像だった。その石像に1つの隕石が激突する。すると石像にヒビが入った。ヒビは石像全体に広がっていく。すると石像が割れて中から女性型の金色と銀色のカラーリングの巨人が息を吹き返した。巨人は石像になっていたのだ。

 

『よくも・・・よくもこの私を・・・トリガアアァァァァ‼︎』

 

その女性型の巨人・・・妖麗戦士『カルミラ』は周りの隕石を手から生成した鞭状の光線で破壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

地球では1人の少年が鉢植えに植えられた白い咲きかけの花を世話していた。少年は花に呼び掛ける。

 

「いつか素敵な花を咲かせて皆を笑顔にするんだよ。」

 

少年はその花に笑顔で笑いながら呼び掛けた。

 

「スマイルスマイル。ルルイエ。」

「ツバサ・・・。」

 

少年『マナカ・ツバサ』が『ルルイエ』と呼んだその花に話しかけていると後ろから声が聞こえてきた。ツバサが振り向いた先には銀色の髪にが青い瞳の巫女を思わせる少女がいた。その少女を見てツバサは首を傾げる。

 

「君は・・・?」

「貴方は光であり・・・。」

 

少女がツバサに一言呟くと突然周りが赤黒いオーラに飲み込まれていく。ツバサは禍々しいオーラに怯えた表情になる。

 

「うわああああ⁉︎」

 

オーラは完全にツバサを包み込む。そしてオーラの中から禍々しい姿の巨人が現れツバサを見下ろしていた。それを見たツバサは思わず呟いた。

 

「闇の・・・巨人⁉︎」

 

巨人は腕を組むと赤と黒の混じったおぞましき光線をツバサに向けて放った。そしてツバサは思わず大声で叫びながらベッドから飛び起きる。

 

「うわああああああ⁉︎・・・何だ・・・夢か・・・。」

 

ツバサは学校の制服に着替えて朝食が既に備えられたテーブルの椅子に腰掛ける。そこに彼の母である『マナカ・レイナ』がスーツ姿で話しかけてきた。

 

「おはよう、ツバサ。」

「おはよう、母さん。もう出るの?」

「ええ、近い内にシズマ会長達との仕事が控えているから忙しくなるの。ツバサも花の世話ばかりしてないで朝御飯食べて」

「『学校行きなさい』でしょ。もう高校生なんだしそのくらい大丈夫だよ。」

「じゃあ、母さんもう行くわね。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

 

少し経ってツバサも朝食を済ませて鞄を持って家を出ようとしていた。家のドアを開けるとそこに1人の少女が立っていた。ツバサと同じ学校の制服で銀色のロングヘアーを三つ編みにした眼鏡を掛けた真面目な印象を思わせる少女だ。

 

「おはようございます、ツバサさん。いえ、ただいま・・・の方がいいでしょうか?」

「おはよう、レイカ。あっ・・・いや、お帰りかな、アハハ。」

「そ、そうですよね・・・。で、では・・・。」

「レイカの好きなようにしなよ。」

 

ツバサの言葉に少女『白銀レイカ』は手に持っていた紙袋をツバサに笑顔で渡す。ツバサはそれを受け取っていた。

 

「ただいまです‼︎これ、沖縄土産ですよ‼︎」

「ありがとね。家に置いてくるから少し待ってて!」

 

ツバサが家にレイカからの土産を置いて2人は談笑しながら学校に向かう。

 

「沖縄はどうだった?」

「いやー、暑かったです・・・。特に私の場合は鉄に近い獣殻だったので・・・熱を吸収しやすくて・・・。」

「GIRLSの沖縄出張任務、本当にお疲れ様。」

「はあ、怪獣娘になってから始めてですよ、シャドウとの戦い以上に辛いと思ったのは・・・。」

 

『怪獣娘』かつてこの星にいた人類の脅威と言われた存在である怪獣達の魂を宿し、怪獣に変身できる少女達の事をそう呼んでいる。レイカもその1人で彼女の中にはカプセル怪獣『ウインダム』のカイジューソウルが宿っている。そしてそんな怪獣娘の大半が所属するのが国際怪獣救助指導組織通称『GIRLS』である。このGIRLSではまだ力に目覚めたばかりの怪獣娘の保護や怪獣娘への好感度や理解を得るために怪獣娘によるイベントを行ったりなど様々な活動を行なっている。レイカもその一員であり、彼女は先日までGIRLSの任務で沖縄にまで足を運んでいたのである。

 

「GIRLSって本当に大変なんだね・・・。でも、スマイルスマイル‼︎レイカは笑顔が1番だよ‼︎」

「も、もうツバサさんってば・・・すぐに漫画の主人公のような事を言うんですから‼︎そ、それより早く学校行きますよ‼︎」

 

レイカはツバサの言葉に顔を赤くしながら走っていく。ツバサもレイカに続いて学校に向かっていく。これが彼らの今までの日常だった。しかし、この時、ツバサもレイカもこの平和な日常が恐ろしい脅威によって脅かされる事になるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、とある土曜日の日、ツバサは日頃から世話をしてる植物の世話をしていた。そして最後にルルイエに水を吹きかけていた。

 

「よし、水やりOK!えーっとルルイエに合う土を探しに行こう‼︎」

 

ツバサはルルイエを抱えて出掛ける準備をするとテーブルに1つの封筒が置いてあるのを見つけた。その封筒には『資料』と書かれていた。

 

「コレって母さんの?」

 

それはレイナが仕事に使う資料が入った封筒だった。ツバサはそれを手に取って自身のショルダーバックに詰める。そして家を出て行った。外に出たツバサはスマホを取り出して行き先への道を調べる。そして駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、レイカは何処かの眠たそうな目つきのカプセル怪獣『アギラ』の魂を宿した少女『宮下アキ』と長いポニーテールの八重歯が特徴のカプセル怪獣『ミクラス』の魂を宿した少女『牛丸ミク』と一緒にある建物の前に立っていた。

 

「ここで待ち合わせと言ってたけど・・・。」

「皆、まだ来てないのかな?」

「あっ、エレキングさんが来ましたよ‼︎」

 

レイカの指差した先にはレイカの先輩である長いピンクの眼鏡を掛けた少女がこっちに向かっていた。彼女は宇宙怪獣『エレキング』の魂を宿した少女『湖上ラン』だ。

 

「おはよう。貴方達、早いわね。」

「エレキングさん、おはようございます‼︎他の皆さんはまだですか?」

「まもなく来ると思うけど」

「おーい‼︎アギちゃーん‼︎」

 

レイカの質問に答えようとしたランの言葉を遮るようにアキを読んだのは栗色のボーイッシュな少女だった。その少女はアキを見つけるとすぐに飛び出して抱きつき髪をくしゃくしゃにし始める。

 

「久しぶり〜っ‼︎アギちゃん、会いたかったよ〜‼︎」

「ゴ、ゴモたんってば・・・ちょっと熱いよ・・・。」

「よう、ミクラス‼︎久しぶりだな‼︎」

「先輩‼︎久しぶりです‼︎」

 

アキにくっついてる少女は『黒田ミカヅキ』。古代怪獣『ゴモラ』の魂を宿した少女だ。その隣ではミクが長いロールのツインテールの少女と腕を重ね合わせている。その少女の名は『歌川ベニオ』。どくろ怪獣『レッドキング』の魂を宿した少女だ。

 

「はいはい、そこまで。ゴモ、アギが困ってるよ。」

「まぁ、いつもの日常が戻ったようで何よりデース‼︎」

 

ミカヅキを止めた水色の髪の分身宇宙人『ガッツ星人』の魂を宿した少女『印南ミコ』の隣でグレーのロングヘアーの外国人の宇宙ロボット『キングジョー』の魂を宿した少女『クララ・ソーン』がそれを見て微笑ましそうにしていた。

 

「皆さ〜ん、お待たせしました〜。」

「はーっ、はーっ、危なかったー・・・。」

「昨日のライブの練習が遅くなりすぎて寝坊しちまった・・・。けど、なんとか間に合って良かった〜・・・。」

「よーし、ジャッパ、下りるぜ‼︎」

「う、うん・・・。」

 

急いで走ってきたのが赤く長い髪をツインテールにした友好珍獣「ピグモン』の魂を宿した少女『岡田トモミ』の後からピンクの短いツインテールのセーラー服を思わせる獣殻の駄々っ子怪獣『ザンドリアス』の怪獣娘と髪にメッシュが入ったパンクな雰囲気の獣殻の騒音怪獣『ノイズラー』の怪獣娘は共に着地すると人間としての姿である『道理サチコ』と『音無ミサオ』に戻る。また、青い翼を備えた風ノ魔王獣『マガバッサー』の怪獣娘は何処かビキニを思わせる獣殻の水の魔王獣『マガジャッパ』の怪獣娘を地面に下ろすと2人とも青い癖っ毛のロングヘアーの少女『風巻ヨウ』と青いボブカットの少女『竜波ユカ』に戻る。

 

「大丈夫ですよ、時間には間に合っていますから〜。後はマコマコだけですね〜。」

「もう既にいるわよ。」

「わあっ⁉︎・・・マコ・・・何だもう来てたんだ。」

 

ミコの横には既にミコに瓜二つの紺色の少女『印南マコ』がいた。トモミは全員の顔を見て頷いた。

 

「これでGIRLS東京支部の主要メンバーが集まりましたね。」

 

そう、ここにいるのは全員GIRLSに所属する怪獣娘である。彼女達は今日大事な用があってこの建物に集まったのだ。

 

「皆さん、シズマ財団の案内役が来るはずです。それまでここで待機しましょう。」

「えー、入らないの⁉︎」

「当然でしょう。まだ許可が来てないのだから。」

「うっ・・・。」

 

そこに1人の少年がやってきた。少年は建物を見渡して首を動かして周りを何度も見ていた。怪獣娘達は少年を見て首を傾げていたがレイカはその少年が誰か分かったらしく話しかけた。

 

「ねぇ、ガッツ・・・あの人、何でここでキョロキョロしてるのかな?」

「なんか道に迷ったんじゃない?」

「ツバサさん⁉︎」

「えっ⁉︎」

「ウインちゃんの知り合い⁉︎」

 

レイカの声に振り向いた少年はツバサだった。ツバサはレイカを見ると驚いた顔をする。

 

「レイカ‼︎丁度良かった‼︎母さん見なかった⁉︎」

「い、いえ・・・見てませんね。おば様がどうかしたんですか?」

「ああ、実は母さん、家に仕事の資料忘れたらしくて届けに来たんだ。」

「そうだったんですか・・・。あっ⁉︎」

 

レイカは怪獣娘達の視線が自分と親しげに話す少年に目が行っている事に気付く。ミクの言葉でレイカはツバサとミクとアキにお互いの事を紹介し始める。

 

「ウインちゃん、その男の子はウインちゃんの知り合い?」

「あっ、御免なさい‼︎皆さんとは初対面ですよね・・・アギさん、ミクさん、そして皆さん、紹介します、こちら私の幼馴染のツバサさんです‼︎」

「ウインちゃんの幼馴染⁉︎ウインちゃんって男の子の幼馴染いたんだ・・・。」

「ツバサさん、こちらのお2人が前に話したアギさんとミクさんです。」

「ああ‼︎2人がそうなんだね。レイカから話は聞いてるよ。僕はマナカ・ツバサ。よろしくね、2人とも。」

「うん、よろしく。」

「よろしくねー‼︎」

 

アキとミクに挨拶を済ませたツバサを確認したレイカは次にトモミ達先輩の怪獣娘に視線を向けた。そして彼女達にツバサのことを紹介し始める。

 

「ツバサさん、こちら私の先輩の怪獣娘の皆さんです‼︎エレキングさんにピグモンさんにゴモたんさん、レッドキングさんにキングジョーさん、そしてガッツ星人さんです‼︎」

「えっ、もしかして大怪獣ファイト初代チャンピオンのレッドキングさんと人気ファイターのゴモラさんに大人気モデルのキングジョーさんですか‼︎ま、まさかここで会えるなんて・・・。あっ、僕、マナカ・ツバサと言います‼︎よろしくお願いします‼︎」

「おう、よろしくな‼︎」

「ゴモたんでいいよ、ダム子の幼馴染くん!よろしくね‼︎」

「Nice to meet you‼︎こちらこそよろしくデース‼︎」

「よろしくお願いします‼︎・・・あれ?」

 

ツバサは腕を組みながら表情を変えないランに気付く。思わずツバサはランに近付いて話しかけた。

 

「えーっと・・・エレキングさん・・・でしたよね。表情が硬いですよ。ほら、スマイルスマイル。人間最初は笑顔で会うのが1番ですって‼︎」

「・・・ちょっと・・・。」

「はい?」

「貴方、初対面の相手に距離が近すぎるんじゃない?」

「えっ?」

「初対面の相手に笑顔を強要するのは失礼に当たるんじゃなくって?」

 

ランの言葉に思わず固まってしまうツバサ。そこにミコとトモミが割り込んで入った。

 

「あー、気分を悪くしないで。エレっていつもこんな感じで無愛想だから気にする事はないよ!」

「そうです‼︎エレエレは本当はとっても心の優しい人なので気にしないでください‼︎ピグモンはツバサさんの言ってる事も分かりますよ‼︎人間誰もが笑顔が大切ですからね。」

 

トモミの言葉にホッとするツバサ。最後にレイカはサチコ達怪獣娘の後輩の事を紹介する。

 

「最後に私の後輩のザンドリアスさんにノイズラーさん、マガバッサーさんにマガジャッパさんです‼︎」

「よろしくね。」

「よろしくお願いしまーす‼︎」

「よ・・・よろしく・・・お願いします。」

「よろしくね‼︎それにしてもウインダムさんに男の子の幼馴染がいたなんて意外ッスね・・・。」

「よろしくな‼︎」

 

怪獣娘達と一通り自己紹介を済ませたところでレイカはツバサの用事を聞き返した。

 

「それで・・・おばさまの忘れ物を届けに来たと言ってましたが・・・。」

「ああ、母さん、家に仕事の資料忘れていったんだ。それで届けに来たんだけど・・・。」

「だったら、それ私が届けますよ。」

「いいの?」

「私達も今日はシズマ財団に用事がありましたから。」

「えっ、GIRLSの怪獣娘が揃ってどうしてここにいるんだろうとは思ったけどシズマ財団に用があったの⁉︎」

 

『シズマ財団』それはシズマ・ミツクニ会長が社会貢献を目的に1代で築き上げた世界最大の財団法人である。シズマ財団は社会貢献の他にも宇宙開発に力を尽くしており17年前には火星着陸を果たし、7年前には人類が火星で暮らせるコロニーを建設した事で注目を集めている。

 

「ええ、シズマ会長が私達GIRLSの怪獣娘に見せたいものがあるらしいんですよ。それで今日はここに集まっていたんです。」

「そうなんだ・・・。」

「話の途中ですがシズマ財団の案内役が来ましたよ。」

 

トモミの声で思わず全員がトモミ達が向いている方向を見る。そこにいたのはレイナだった。思わずツバサとレイカは声を上げる。

 

「母さん‼︎」

「おばさま⁉︎」

「「母さん⁉︎」」

「ツバサ、あなた何でここに⁉︎それにレイカちゃんも・・・。」

「おばさま、私が怪獣娘だって知ってますよね?」

「ああ、そういえばそうだったわね。・・・そうか、今日来るメンバーの中にレイカちゃんもいたのね・・・。」

「それより母さん、コレ。」

 

ツバサはレイナに資料の入った封筒を渡す。それを見てレイナは驚きと喜びが混じった顔でツバサを褒めた。

 

「ツバサ・・・まさかコレを届けに?」

「うん。」

「ありがとう、助かったわ。コレ、これからの仕事に必要だったのよ。今晩は外に食べに行きましょう。」

「うん‼︎じゃあ、僕はここで‼︎」

 

母親に資料を渡した事を確認するとツバサはその場を後にしていった。それを見たトモミがレイナに話しかける。

 

「ツバサくん、いい子ですね・・・。」

「ええ、そうね・・・。それじゃあ、皆シズマ会長に会いに行きましょうか。」

 

 

 

 

 

 

ツバサが去ってからレイナはシズマ財団の建物内をレイカ達に案内していた。そして彼女達の前に還暦を迎えた1人の男性がやって来る。

 

「レイナ君、ピグモン君たちを連れて来てくれたかい。」

「ええ、会長。」

「シズマ会長、ご無沙汰しています。」

「やあ、ピグモン君、そして怪獣娘の諸君、君達の中には私の事を知っている者も既にいるが自己紹介させてくれ。私がこのシズマ財団の会長を務める『シズマ・ミツクニ』だ。」

 

彼こそが『シズマ・ミツクニ』。研究者としての一面を待ちながらシズマ財団を1代で設立して築き上げた創設者であり会長である。社会貢献を目的として財団を設立し、宇宙開発にもその力を入れている。実はGIRLSもシズマ財団の援助を受けている組織の1つであり、シズマ財団からの依頼を受ける事も度々あるといわれている。

 

「以前は火星での任務、ご苦労だったね。ピグモン君、エレキング君、キングジョー君、レッドキング君、ゴモラ君、ガッツ星人君。」

「本当にその件はお世話になりました。まさか地球を離れての任務に当たる事になるなんて思いませんでしたよ。」

「しかも」

「おっと、ゴモラ君、その先はまだ内緒だ。あの任務に参加していなかった怪獣娘達にアレを見せるまではね。」

「ちょっ、ちょっと待って下さい‼︎先輩達が暫く出張でいない事がありましたけど・・・アレって火星に行ってたんですか⁉︎」

「ああ、お前らも知ってるだろ、シズマ財団が火星で見つけた古代遺跡・・・あそこに行ってたんだよ。」

 

実はミツクニは数日前にGIRLSを訪問してベテランの怪獣娘達を選出しある任務を依頼していた。それはシズマ財団が火星で発見した火星の古代遺跡の調査だった。実は6年前、シズマ財団による火星の第二居住区予定の区域から古代遺跡が発見された。当社は隕石の落下などの要因で偶然出来た物だと思われたのだが舗装された道や文字や絵が書かれた石板など人の手によって作られた痕跡が大量に発見されたのだ。かつて火星に文明があったことは当時、怪獣娘以上に世界を賑わせた。そしてその遺跡を発見したのがツバサの母であるレイナだったため、主にシズマ財団が遺跡の調査を行う事になった。

ミツクニとレイナに案内されてレイカ達はシズマ財団の建物の中を歩いていた。火星に行ってない怪獣娘達はミツクニ会長の言葉を聞いても余り実感が湧かないようだった。

 

「本当に凄いものが火星の遺跡で見つかってね。それを地球に運び出すのに君達怪獣娘の力が必要だったんだよ。」

「ほえー・・・。」

「本当にアレを運ぶのは大変だったよー。アギちゃん達の力も必要だったと思うしー。」

「それは本当にすまない・・・火星の任務だしなるべく怪獣娘になって日が長い者達を集めたかったんだ。」

「あっ、いや、会長さんに言った訳じゃないですよ‼︎あくまでわたしの独り言です‼︎」

「着きました、この部屋です‼︎」

 

レイナの声で立ち止まったレイカ達。セキュリティカードを認証してドアが開かれる。中はかなり広い空間になっていた。そしてそこには巨大な剣のような石像が置かれていた。

 

「何ですか、コレ⁉︎巨大な剣⁉︎」

「恐らくそうだと思われる。コレがコレは火星の遺跡で見つかった第二の大発見だった・・・。」

「第二の・・・?」

「そもそもね・・・あの遺跡は浅い地中に埋まっているものでは無かったの。スキャニングして調べた結果、逆ピラミッド状になって地中に埋まっている事が分かったのよ。」

「えっ⁉︎」

「しかもこの遺跡はかつてガタノゾーアが現れたルルイエの遺跡や熊本のイーヴィルティガ、ガーディーが眠っていた地下遺跡・・・そしてかの東北のピラミッドと同じ年代の物であること・・・それらと同じ物質で出来ていた物なのよ。」

「えっ、そうだったんですか⁉︎それは私も初めて知りましたよ‼︎」

 

レイナの言葉にトモミは驚愕の声を上げる。

 

「かつての超古代文明の時代・・・火星にも同じ文明が存在していた・・・いわばもう一つの超古代文明と言えるだろう・・・。」

「それは分かりました。けど、コレが第二の大発見ってどういう事ですか?」

 

アキの言葉にミツクニは彼女の方を向いて言葉を発しようとする。その時、怪獣娘達の変身をコントロールするデバイス『ソウルライザー』が一斉に鳴り出した。ピグモンがその原因を突き止める。

 

「ソウルライザーが鳴り出した⁉︎」

「皆さん、この建物の外から巨大なエネルギー反応が出ています‼︎」

 

すると突然大きな音を立てて建物全体が揺れ始める。その揺れにミツクニが全員に言葉を発した。

 

「皆、急いで避難するんだ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ツバサはシズマ財団の建物の近くの公園で土を採取していた。目的はルルイエに合う土を探していたのだ。

 

「よし、取り敢えず・・・この辺りの土にするか。」

 

その時、目の前に大きな黒いオーラが広がっているのを見てしまった。

 

「何だ、アレ・・・。」

 

そしてオーラの中から巨大な何かが姿を現した。それはかつてこの星からいなくなった筈の怪獣だった。背中に大きなワイバーンを思わせる翼と頭に鳥を思わせる顔を持つ怪獣『メルバ』と肉食恐竜を思わせる顔に特徴的な額を持つ怪獣『ゴルザ』の特徴を合わせ持った超古代闇怪獣『ゴルバー』が闇のオーラの中から姿を現したのだ。

 

「グオオオオオオギャアアアアアアア‼︎」

「嘘・・・どうして怪獣が⁉︎」

 

ゴルバーの進行方向はシズマ財団の建物だった。それを見てツバサは思わず声を上げて走り出した。

 

「あの怪獣・・・シズマ財団の方に向かってる‼︎このままじゃ母さんとレイカが‼︎」

 

ツバサは母と幼馴染の無事を祈りながらシズマ財団まで走って行った。

 

 

 

 

 

「そんな嘘でしょ!アレはまさか本物の怪獣⁉︎」

「そんな馬鹿な‼︎怪獣はもうこの星からいなくなった筈‼︎」

 

レイカ達も外に出ると目の前で暴れる怪獣『ゴルバー』に驚きを隠せない。当然だ。この星から消えた筈の怪獣が再び目の前で暴れているのだから。ミコとアキが驚いた声を上げる中、その怪獣を見てミツクニは声を上げた。

 

「アレはゴルザ・・・いや、メルバが融合されているのか⁉︎」

「ゴルザに・・・メルバ?それって確か‼︎」

 

トモミはソウルライザーを取り出してゴルザとメルバについて調べ始める。

 

「確かに目の前の怪獣はかつて現れたゴルザとメルバにそっくりです‼︎まるで2体が合体したような怪獣です‼︎」

「でも、どうして怪獣が⁉︎アギちゃんとガッちゃんの言う通り怪獣はもうこの星からいなくなった筈なのに‼︎」

「怪獣娘の諸君、奴を相手に時間稼ぎ出来るか?」

「えっ⁉︎」

 

ミツクニの言葉にトモミは思わず声を上げた。ミツクニは言葉を続けた。

 

「我々シズマ財団が開発した対怪獣用個人装備がある‼︎それを持ってくるまで怪獣を相手に時間を稼げるか⁉︎」

「対怪獣用個人装備⁉︎そんなのがあるんですか⁉︎」

 

ミツクニはトモミの言葉に力強く頷いた。トモミはその言葉が本気だと感じ、決意をする。

 

「分かりました‼︎怪獣は任せて下さい‼︎」

「頼む‼︎」

「皆、行くぞ‼︎」

『ソウルライド‼︎』

 

ベニオの言葉でソウルライザーを取り出した怪獣娘達は怪獣娘に変身する。まず先に先陣を切ったのは黄色の蛇腹の獣殻に覆われたレッドキングとスク水のような獣殻に覆われた頭に三日月状の角を持つゴモラだ。レッドキングの拳とゴモラの尻尾がゴルバーに叩きつけられる。しかし、ゴルバーは平然としていた。

 

「「はあっ‼︎」」

 

青と白の獣殻に覆われたガッツ星人(ミコ)とガッツ星人(マコ)が分身してゴルバーに拘束光線を放つ。更に金色の機械を思わせるキングジョーが腰のパーツを分離させて光のロープで更にゴルバーの動きを封じる。

その隙にゴモラが力を溜めて角から超震動波を放つ。

 

「行くでー‼︎超震動波‼︎」

 

超震動波は確かにゴルバーに命中した。しかしそれでもゴルバーは平然としていた。そしてガッツ星人の拘束光線を破って額から『超音波光線を放った。

 

「グオオオオオギャアアアア‼︎」

「「「「うわああああ⁉︎」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな・・・ガッツとゴモたんとレッドキングさんが全く歯が立たないなんて・・・。」

「一体どうすれば・・・。」

 

角と襟巻きが付いた角竜を思わせるフードのような獣殻のアギラと銀色のメカニカルな獣殻のウインダムが悲痛な声を上げる。彼女達はシズマ財団の人達を避難させていたのだ。そんな中、ゴルバーのメルバの目からの光線『メルバニックレイ』の流れ弾が建物に直撃する。そして建物の瓦礫の一部が財団の職員の1人に降り注ぐ。

 

「あっ‼︎」

「「「危ない‼︎」」」

 

その職員を突き飛ばして救ったのはツバサだった。ツバサに瓦礫が降り注ごうとしていた。ウインダムはツバサの名前を叫び、そこにアタッシュケースを持ったミツクニとアギラと赤い風船を付けたピグモンが叫んだ。

 

「ツバサさん⁉︎」

「「「危ない‼︎」」」

 

ツバサは思わず頭を伏せるも突然上にバリアが張られてツバサを守った。ツバサは自分が助かった事に驚きを隠せない。

 

「今・・・僕・・・。」

「「ツバサ(さん)‼︎」」

 

レイカとレイナがツバサに駆け寄った。2人はツバサの無事を確認すると共に問い詰める。

 

「大丈夫でしたか⁉︎怪我はありませんか⁉︎」

「ツバサ⁉︎どうしてここに⁉︎ここは危ないって分かるでしょ‼︎」

「御免、母さん・・・レイカ・・・2人の事が心配になって・・・。」

 

ゴルバーは怪獣娘を薙ぎ払うかのように超音波光線を放ちながら暴れ回る。それを見てレイナはツバサに避難するように促す。

 

「母さんとレイカちゃんは大丈夫だから早く逃げなさい‼︎」

「そんな・・・2人を放って逃げられないよ!」

「待たせたな、ピグモン君‼︎」

 

ミツクニはアタッシュケースの中身を開いた。そこには白を基調とした黄色い線が引かれた小型の銃と怪獣の絵が描かれたUSBメモリに似たアイテムが入っていた。

 

「コレがシズマ財団が開発した対怪獣用装備ですか⁉︎」

「ああ‼︎『GUTSスパークレンス』と『GUTSハイパーキー』だ。」

 

ミツクニはGUTSスパークレンスとゴモラの描かれたGUTSハイパーキーを取り出してGUTSスパークレンスの下部スロットにセットするとGUTSスパークレンスをゴルバーに向ける。

 

〈Boot UP! Shock Wave‼︎〉

 

GUTSスパークレンスから放たれたゴモラの力を宿した超震動波はゴルバーに確かにダメージを与えた。そしてその威力に怯んだのかゴルバーは地面に潜っていった。

 

「す・・・凄い・・・。」

「怪獣にダメージを与えて・・・退散させた・・・。」

 

アギラとマガジャッパがその威力に驚いている。しかし彼女達は知らなかった。ゴルバーの暴れた跡地を1人の異形が監視していた事を。

 

『見つけたよ、トリガー・・・。』

 

それは宇宙で封印から解放された闇の巨人カルミラだった。




今までで長くなりましたが本格連載するときは三部構成になるのでもう少し短くなると思います。

・・・本格連載するかはアンケートの結果次第ですが・・・。


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光を繋ぐもの(後編)

勿論、サブタイトルが隠されています。

今回は後編の何処かに隠されているので見つけた方はぜひ感想蘭でコメントお願いします!!


ゴルバーが暴れ回ったせいでシズマ財団の建物の中には多くの避難者が来ていた。死人こそ出なかったものの多くの怪我人が出てしまった。目の前で治療を受けるミカヅキとベニオ、ミコ、マコにクララを見て思わずツバサは声を掛けてしまう。

 

「あ・・・あの、皆さん大丈夫ですか?」

「君は・・・確かダム子の幼馴染君!平気平気‼︎わたし達怪獣娘は頑丈だから‼︎それにわたし達大怪獣ファイターにとって怪我はつきものだしね‼︎」

「それに俺達怪獣娘は怪我の治りだって早いんだ‼︎心配すんな‼︎」

「そうですか。でも・・・・。」

 

ツバサが視線を移した先には多くの人達が怪我をして手当てや治療を受けている光景だった。見るも痛々しい怪我をした人達を見てツバサはやるせない気持ちになっている。そんなツバサに幼馴染であるウインダムが話しかけてきた。

 

「ツバサさん・・・どうしたんですか?」

「あの怪獣のせいで・・・・多くの人達が・・・。こんな時・・・僕に何が出来るんだろう・・・・・。」

「ツバサさん・・・。」

 

目の前の苦しんでる人達を助けたい気持ちがあっても自分に何が出来るか分からないと思っているツバサは思わず悲痛な声を上げてしまう。そんなツバサにウインダムは声を掛けられずにいた。ゴモラはそんな雰囲気を察してから明るく話しかける。

 

「その気持ちだけで充分だよ‼︎君がそんな顔になっちゃ怪我した人達だって暗くなっちゃうよ‼︎笑顔が1番なんでしょ‼︎」

「ゴモラさん・・・でも・・・。」

 

それでも納得できないツバサの前に白い光と共に銀色の髪の少女が現れる。それはツバサの夢に出てきた少女だった。

 

「ツバサ・・・貴方は・・・光であり・・・。」

「・・・・君は・・・確か夢の中の‼︎」

「どうしたんですか?」

「えっ⁉︎レイカ、見えないの⁉︎ここに銀色の髪の女の子が⁉︎」

 

ツバサの反応に首を傾げるウインダム。彼女に何も見えなかったのかツバサの言葉が理解できずにいた。ツバサはウインダムの方を向いて銀色の少女がいた方に指を差すも振り向いた先にはその姿が見えなくなっていた。

 

「えっ・・・アレ・・・何処に行ったんだ?」

「怪獣娘の諸君、少し彼と話をしてもいいかな?」

 

そこにミツクニがやってきた。ミツクニの言葉に怪獣娘は頷き、ミツクニはツバサを連れて少し離れるとツバサに改めて話しかけた。

 

「君はレイナ君の息子だったね。」

「は、はい‼︎マナカ・ツバサと言います。・・・シズマ会長ですよね。母から話は聞いています‼︎よろしくお願いします‼︎」

「よろしく頼む。早速だが質問させてくれ。君の夢見る未来は何だ?」

「えっ?」

「夢見る未来は人それぞれにきっとある筈だ。私にもそして君にも。」

 

ミツクニの言葉に驚くツバサ。そしてツバサは少し考えた後、その手に抱えている花を見ながら自分の夢見る未来を話す。

 

「この花・・・僕が中学の頃見つけた新種でルルイエと名付けました。発見者として観察したいと思って幾つか種をもらったのですが蕾を咲かせたのはこれだけなんです・・・でもいつかは花を咲かせてくれる・・・そして綺麗な花を咲かせたルルイエを見て大勢の人達が笑顔になれたらと・・・思っています・・・。皆を笑顔にしたい‼︎それが僕の夢見る未来です‼︎」

 

ツバサの話を聞いたミツクニはツバサの前で自身が持っていたGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーが入ったアタッシュケースを開けながら話し始める。

 

「ならば君は君自身の手で未来を切り開かねばならない。かつて勇敢に戦い運命を切り開いた者がいた。夢見る未来を手に入れる為、自分に何が出来るか・・・その答えは誰も教えてはくれない・・・自分の手で見つけなきゃならない答えもある。」

 

ツバサはミツクニの言葉をただ静かに聞いていた。そこに母親のレイナもやってくる。

 

「ツバサ、貴方の思うようにしなさい・・・。」

「母さん・・・。」

 

その時、再び警報がシズマ財団内に鳴り響いた。アナウンスは怪獣の出現を知らせるものだった。

 

『皆さん、再び怪獣が姿を現しました‼︎大至急避難して下さい‼︎』

 

ツバサはあの怪獣が再び現れた事を察するとレイナとミツクニの顔を見て自身の思いを告げる。

 

「また・・・あの怪獣が・・・。あの怪獣のせいで皆がこれ以上泣くのは嫌です‼︎僕は皆を笑顔にしたいんだ‼︎」

「ならばこの建物の最下層に向かうんだ‼︎君に覚悟があるなら光を掴める・・・新たなる光になれる筈だ‼︎」

「ツバサ、貴方の思うままになさい!」

 

レイナとミツクニの言葉に頷くとツバサはルルイエをレイナに預ける。そしてミツクニのアタッシュケースからベルトとGUTSスパークレンスと何も描かれていないブランクのGUTSハイパーキーを受け取った。

 

「母さん・・・ルルイエの事お願いね。・・・母さん、スマイルスマイル‼︎」

 

今にも泣きそうな悲痛の表情を浮かべる母を励ました後、ミツクニから受け取った物を腰に装着してツバサはエレベーターに向かう。そしてエレベーターに乗るとすぐに最下層に降りて行った。

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では怪獣娘達がゴルバーから避難する人々を誘導していた。その中にはゴモラやレッドキングなど先程戦っていた者もいる。ゴルバーとの戦いで思ったよりもダメージが残った彼女達は避難誘導に回る事にしたのだ。ゴルバーを見上げるミツクニにピグモンが話しかけた。

 

「シズマ会長、どうして怪獣用の武器を開発したんですか?まるでシズマ会長はこうなる事が分かっていたみたいですが・・・。」

「以前、GIRLSを訪ねた時も言った筈だ。いつの日かシャドウやシャドウビースト、シャドウジェネラルをも遥かに超える脅威が地球に迫る・・・と。恐らくだがあの怪獣はその尖兵に過ぎない。」

 

『シャドウ』それは人類に厄災を齎す謎の存在である。一見すると黒いスライムといった印象が強いが、中には巨大なムカデや怪獣のような姿の強力な『シャドウビースト』、言葉を話す事の出来る『シャドウジェネラル』のような存在もいる。しかし、ミツクニはそれらを遥かに上回る存在が地球に迫る事を予測していたらしい。ピグモンがその言葉を思い出して先日の火星での任務を思い出す。

 

「シズマ会長、まさかとは思いますが・・・あの石像を地球に運んだのはこうなる事を予測してですか⁉︎」

「いや、あの石像に関しては本格的な設備が整った地球で調査したかったからだ。決してこうなる事を予想してではない。」

「ピグモンさん・・・何を言ってるんですか?」

 

後ろからアギラが話しかけてきた。偶々ピグモンとミツクニの近くにいた彼女は2人の会話が気になってしまったらしい。だが、そんな中でも怪獣は容赦無くこちらに向かってくる。

 

「畜生‼︎避難が間に合わねぇ‼︎こうなったらここにいる怪獣娘全員であの怪獣を止めるぞ‼︎」

「ええっ‼︎師匠、本気ですか⁉︎怪獣娘の中でも強い師匠達が束になっても敵わなかったじゃないですか‼︎」

「それでも戦うしかないんだ‼︎ここにいる人達を守れるのは俺達だけなんだぞ‼︎」

「ザンちゃん、怖い気持ちは分かるけど・・・ここにいる人達を守る為にも・・・わたし達に協力して‼︎」

「ううう・・・・分かりましたよ‼︎こうなったらやるだけやってやりますよ‼︎」

 

ザンドリアスもやけくそになりながらゴルバーを睨む怪獣娘の中に入る。そして全員で飛び出そうとした時、地面から眩しい光が灯しだした。

 

「何だ⁉︎」

「凄く・・・眩しいです!」

 

やがて光の中から何かが現れる。それは光が完全に止むと姿を現した。赤と紫のカラーリングに金色のプロテクターと菱形の青いクリスタルを胸に備えた巨人がゴルバーと怪獣娘の前に現れたのだ。それを見た誰かは思わず巨人の名を呟いた。

 

「ウルトラマンだ・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンが現れる少し前、ツバサはシズマ財団の建物の最下層に来た。ツバサがエレベーターから降りるとそこには大きな空洞があった。

 

「何だここ?ここに何があるんだ?」

 

ツバサは目の前の空間に足を進めて行く。少し歩いていくと目の前に信じられない物が見えた。そこには巨大な巨人の石像が膝を付いて置かれていたのだから。

 

「うわあっ⁉︎・・・闇の巨人・・・じゃない‼︎ウルトラマンの・・・石像⁉︎どうしてここに⁉︎」

 

『ウルトラマン』それはかつて怪獣と人間が戦った第一次怪獣時代に現れて人類を襲った怪獣や地球侵略を目論んだ宇宙人の魔の手から地球を守ってくれた存在である。怪獣がいなくなった今、彼らも完全に姿を消したと思っていた。しかし、ツバサの目の前にはそのウルトラマンを象った石像があったのだ。

 

「何でこんな所にウルトラマンの石像が?一体誰が作ったんだ⁉︎・・・というかなんでこんな所に置かれてるんだ⁉︎」

 

色々と混乱を隠せないツバサ。そんな中、巨人の石像に鞭のような何かが衝撃を加えた。ツバサは思わず振り向くとそこには銀と金のカラーリングの女性型の異形が立っていた。

 

『〜〜〜〜〜!』

「う、宇宙人⁉︎どうしてここに⁉︎」

 

最初はその言葉が分からなかったが次第に彼女『カルミラ』が話す言葉が明らかになっていく。

 

『漸く見つけたよ!もっと情熱的な再会を期待していたんだけどねぇ・・・三千万年分の想い受け取ってくれるかいトリガー‼︎』

「トリガーって・・・このウルトラマンの事か‼︎まさかこの石像は本物の・・・ウルトラマン‼︎」

 

最初は誰かが作ったと思っていたこの石像がカルミラの言葉により本物のウルトラマンであった事に驚きを隠せないツバサ。カルミラは再び光の鞭『カルミラウィップ』を振るい石像を壊そうとする。ツバサは思わず先程ミツクニから授かったGUTSスパークレンスを向ける。

 

「止めろ‼︎」

『何だい、人間・・・邪魔だよ‼︎どきな‼︎』

 

カルミラはツバサにカルミラウィップを振るった。ツバサの体は光の鞭で吹っ飛ばされる。ツバサは痛みに耐えながら立ち上がってGUTSスパークレンスでカルミラの足元を撃った。しかし、カルミラは全く怯まない。

 

『何だい?足下に撃っても意味ないよ‼︎』

「そ、それ以上近付いたら本気で撃つぞ‼︎」

 

ツバサはGUTSスパークレンスの引き金を引いた。しかしカルミラは銃撃を腕で簡単に弾いてしまった。

 

『全く無駄な抵抗を・・・外の連中も間もなくゴルバーによって潰されるのにねぇ・・・。』

「ゴルバー・・・まさかあの怪獣の名前か‼︎あの怪獣はお前が出したんだな‼︎」

 

ツバサは目の前の存在がゴルバーを呼び出した事を知り、目の前の存在こそ多くの人々が傷付いた原因だと感じた。ツバサは後ろのウルトラマンの石像に呼び掛ける。

 

「ウルトラマン‼︎僕は皆の笑顔を守りたい‼︎僕にもし・・・皆を守る力を持つ資格があるなら・・・僕に力を貸してくれえぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

目の前の存在とそれが操る怪獣から人々を守りたいという思いと人々の笑顔のために戦いたいという思いが石像に届いたのか石像の菱形の部分が青く輝く結晶に変わり、そこから光が放たれた。それはカルミラを吹き飛ばした。

 

『何だい⁉︎ぐぅっ⁉︎』

 

そしてその光はツバサの腰に付いたブランクのGUTSハイパーキーに集まっていく。そしてGUTSハイパーキーに目の前の石像のウルトラマンが描かれた。そしてツバサの頭の中にビジョンが思い浮かんだ。思わずツバサはそのGUTSハイパーキーを手に取った。そしてツバサの目の前に夢の中の銀色の髪の少女が現れた。

 

「君は⁉︎」

「・・・これ以上は・・・後戻り出来ない・・・貴方の・・・覚悟は・・・。」

 

少女の言葉にツバサは一瞬GUTSハイパーキーを握り締めながら怪獣と戦い続ける自分を想像する。しかし、それ以上に苦しんで涙を浮かべる幼馴染や多くの人達の顔を思い浮かべてツバサは自身の思いを叫びながらGUTSハイパーキーのスイッチを押した。

 

「やる!僕にウルトラマンの力を持つ資格があるなら・・・多くの人達の笑顔を守れる‼︎多くの人達を守れる‼︎だから・・・これから先、どんな事が起ころうが乗り越えてみせる‼︎」

〈ULTRAMAN TRIGGER! MULTI TYPE‼︎〉

 

そしてツバサはGUTSハイパーキーをGUTSスパークレンスの銃底に装填した。

 

〈BOOT UP! ZEPERION‼︎〉

 

銃身を開いてGUTSスパークレンスを持った右手を前に突き出すと左側から右側に動かしていく。そして引き金を引いて天に掲げながらその名を叫んだ。

 

「未来を築く希望の光‼︎ウルトラマントリガアアアァァァァ‼︎」

 

そしてツバサの体は光となって石像の胸の結晶に吸い込まれていった。

 

ULTRAMAN TRIGGER! MULTI TYPE‼︎

 

 

 

「お、おい‼︎また怪獣が出たぞ‼︎」

「で、でもどうして怪獣が⁉︎地球から怪獣はいなくなったと聞いてますが‼︎」

「分からん‼︎だが、本物の怪獣に対抗する為にもダークゾーンから強力な怪獣娘を呼び出さなければ‼︎」

 

その頃、シズマ財団の近くの公園で4人の怪獣娘が集まっていた。そこにいたのは黒い獣殻に豊満な胸の『ブラック指令』、白い獣殻に褐色肌の円盤生物の魂を継ぐ『シルバーブルーメ』、赤いマントに身を包んだシルバーブルーメ同様円盤生物の魂を継ぐ『ノーバ』、白と黒のごすろり風の獣殻の放浪宇宙人の魂を継ぐ『ペガッサ星人』だ。彼女達なペガッサ星人の能力である異空間『ダークゾーン』の検証を進めていた。その最中にゴルバーが現れて彼女達はパニックになっていた。

 

「ペガちゃん、頑張って‼︎このままじゃわたし達もあの怪獣に‼︎」

「ペガッサ、ファイトだ‼︎」

「無理ですよ‼︎やはりこの力では吸い込む事しか‼︎」

 

その時、ダークゾーンから1人の少女が降りて来た。頭にアンモナイトのような貝殻を手には鋏を付け、スク水のような獣殻に覆われた小さな少女はかつて超古代の光の巨人を倒すも人々の光で復活した巨人によって倒された邪神の魂を継ぐ怪獣娘『ガタノゾーア』であった。

 

「ガタちゃん⁉︎」

「馬鹿な‼︎変身した状態で降りて来ただと‼︎確かあの時ペガッサによって変身解除された筈だぞ‼︎」

「それ以前にどうして今になって降りてきたんだ⁉︎」

「・・・・来る・・・・。」

 

かつて池袋で酒入りのチョコの影響で彼女はブラックスターズの面子にも制御出来なくなり、最終的にはペガッサのダークゾーンに封じ込められた筈だった。そのガタノゾーアが降りて来た事に彼女達は驚いていた。当のガタノゾーアはシズマ財団の建物の方をずっと眺めて小さく呟いた。

 

「・・・今、ガタちゃん、何か言った?」

「来る・・・とはどういう事だ?」

「皆さん、アレを見て下さい‼︎」

 

ブラック指令達はペガッサ星人の指差す方向を向いた。すると大きな光が立ち上がって中から光の巨人が現れた。ブラックスターズの面子もその巨人を見て驚いた顔をしていた。

 

「あ・・・アレは・・・‼︎」

「馬鹿な⁉︎本物の・・・ウルトラマンだと⁉︎」

「ねぇ・・・なんかあのウルトラマン、どっかで見た事無い⁉︎」

「まさか、邪神を倒した伝説のウルトラマン・・・‼︎」

「ウルトラマン・・・・ティガ・・・⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

GIRLSの怪獣娘達もそのウルトラマンを見て驚きを隠せない状況になっていた。今まで過去の記録でしか目にした事ない本物の怪獣だけでなくウルトラマンまで現れたのだから。

 

「見て見て‼︎凄い凄いよ、ウルトラマンだよ‼︎」

「感激ッスよ‼︎まさか・・・本物のウルトラマンを見れるなんて‼︎」

 

牛を思わせる角を持つミクラスとマガバッサーがはしゃぐ中、ベテランの怪獣娘達はウルトラマンのその姿を見て話し合っていた。

 

「おい・・・あのウルトラマン・・・何か火星で俺達が運んだ石像のウルトラマンに似てないか⁉︎」

「うん、確かに似てる・・・っていうかあの石像のウルトラマンそのものじゃない⁉︎」

「嘘でしょ・・・ねぇピグっち・・・あの石像・・・まさか本物のウルトラマンだったの・・・?」

「も・・・もしかしたら・・・そうだったのかもしれません・・・。しかもあのウルトラマン・・・ウルトラマンティガに似てませんか⁉︎」

「確かに・・・あのウルトラマンはティガにそっくりデス‼︎でも、所々ティガとは違う部分がありますからやはりあの巨人はティガとは違うウルトラマンでショウ‼︎」

 

実はあのウルトラマンの石像は火星に行った怪獣娘がシズマ財団と協力して運び出したものである。怪獣娘の力で遺跡の最下層まで辿り着いたシズマ財団はそこでウルトラマンの石像を見つけて怪獣娘の力を借りて地球に運び出したのだ。

 

「まさか・・・あの石像が本物のウルトラマンで・・・怪獣が再び現れた今復活するとは・・・これは調査が必要だわ。」

「でも、ウルトラマンが来てくれたという事はあの怪獣と戦えるという事だよ‼︎頑張ってウルトラマンを応援しようよ‼︎」

 

ゴモラがウルトラマンに声援を送る事を求める中、ミツクニとレイナはピグモンの隣に立ちウルトラマンを見上げていた。

 

「光の巨人・・・第一次大怪獣時代の記録から考えてはいたが・・・やはりこの世界にもウルトラマンが・・・。」

「ツバサ・・・。」

「今、何か言いました?」

「ああ、何でもないわ。気にしないでちょうだい。」

 

ウインダムはレイナの周りに聞こえないくらいの声の呟きに思わずレイナの方を振り向いた。レイカはその言葉に首を傾げるもウルトラマンは怪獣に戦闘態勢をとり、そのまま向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

『嘘・・・本当に僕がウルトラマンに・・・。』

 

少し時間を遡ってツバサは先ほどの石像のウルトラマン『ウルトラマントリガー』になった自分の姿をビルの窓で確認していた。すると目の前にいたゴルバーがトリガーを敵だと認識して向かってきた。

 

「グオオオオオォォォギャアアアアァァァァ‼︎」

 

トリガーもゴルバーに戦闘態勢をとってゴルバーに向かっていく。

 

『止めなきゃ・・・僕がこの怪獣を止めなきゃ‼︎今の僕はウルトラマンなんだ‼︎』

「デヤアッ‼︎」

 

トリガーはゴルバーにタックルを仕掛けて次に頭にチョップを決める。ゴルバーが怯んだ隙にパンチを3発撃ち込んだ。しかし、ゴルバーも負けじとトリガーの腕を掴んで投げ飛ばした。ビルを砕いてトリガーは倒れるもすぐに起き上がり向かってきたゴルバーを蹴りで押し返した。そしてゴルバーの頭を抑えるとその頭に膝蹴りを決めて前蹴りを放つ。バックスタッフでゴルバーから距離を取るとゴルバーも向かってきてトリガーを押し返した。

 

「グオオォォォギャアァァァァ‼︎」

「ディアッ⁉︎」

 

すぐにトリガーは起き上がるもゴルバーの額からメルバニックレイが放たれる。幾つもの破壊光弾がトリガーに迫るもトリガーは右手を前に突き出して青白い光弾『トリガーハンドスラッシュ』を放った。それはメルバニックレイを相殺する。

 

「グオオオオォォォギャアアアァァァァ‼︎」

「デュアッ⁉︎」

 

ゴルバーは翼を広げて飛びながらトリガーに突進する。まともに受けたトリガーはふらつくもすぐに態勢を立て直してゴルバーに反撃しようとする。しかし、それ故にトリガーは背後から迫る影に気付かなかった。

 

『お、お前はさっきの⁉︎』

『あたしに会う為に人間を取り込んで復活したのかい?随分情熱的じゃないか‼︎』

 

トリガーの背後をとったカルミラはトリガーの右腕を右腕で、左腕で首を抑えつけた。思わぬ乱入にトリガーは対応できずにカルミラに抑えられてしまった。カルミラは喜びと恨みが重なった言葉を放ち、更に右腕を締め付けた。

 

 

 

 

 

 

「嘘・・・この状況で敵が増えた⁉︎」

「まさか宇宙人まで現れるなんて・・・あの宇宙人が怪獣を送り込んだ元凶でしょうか?」

「違う‼︎アレは宇宙人ではない‼︎」

 

この状況を呟いたゴモラの横のピグモンの言葉にミツクニは反論する。目の前の女性型の巨人が宇宙人ではないと聞いて怪獣娘達は驚きを隠せなかった。

 

「ええっ⁉︎アレ、宇宙人じゃないんですか⁉︎」

「ああ、アレは・・・石板に描かれた闇の巨人‼︎アレこそが私が以前君達に警告したシャドウを遥かに上回る脅威だ・・・遂にこの日が来てしまったのか・・・‼︎」

「闇の・・・巨人⁉︎」

「あ、アレが・・・シャドウを遥かに超える敵・・・。」

 

 

 

 

 

 

ゴルバーは降り立つとカルミラに抑え付けられているトリガーに向かっていく。ゴルバーはトリガーを鋭い爪で2度引っ掻くもトリガーの前蹴りで後ろに後退する。トリガーはカルミラの右腕を振り払うと右腕でカルミラに2度肘打ちを撃つ。しかし、すぐに距離を取ったカルミラは発勁でトリガーを押し返した。

 

「 フッ‼︎」

 

トリガーは目の前のゴルバーに再び引っ掻かれ、カルミラの前蹴りを受ける。何とか持ち直したトリガーはカルミラに裏拳を放つが彼女はトリガーから距離を取ったため空振りに終わる。再びゴルバーが迫るもトリガーの蹴りがゴルバーを後退させた。トリガーは更に威力が増したキックをゴルバーに放つ。ゴルバーはそれを受けて地面に倒れた。

 

「グオオオォォォギャアァァァァ⁉︎」

「フッ‼︎」

 

その間にカルミラは右手に闇で覆われた何かを形成する。それを左手でなぞると水色の光のバトン『カルミラバトン』が形成された。

 

「ハッハッハッハッハッ‼︎」

 

カルミラはカルミラバトンの中心を持つとそれを回してトリガーの体に打ち付けた。何度も光のバトンで打ちのめされたトリガーは地面に土煙を上げて叩きつけられる。体力の限界が近づいて来たのかカラータイマーが鳴り始めた。地面に倒れたトリガーの背中を踏みつけたカルミラは馬乗りになってマウントを取りトリガーの首を抑えて2度殴り付ける。

 

「ハッハッハッハッハッ‼︎」

「ジェアッ‼︎」

 

トリガーは何とか態勢を変えてカルミラを押し返そうとする。しかし、カルミラの拳が胸に命中して抵抗する力が削ぎ落とされていった。そんな中、ゴルバーが息を吹き返してこっちに向かって来た。トリガーの中のツバサ状況をどうすれば逆転出来るか考えていた。

 

『どうすれば・・・この状況を・・・⁉︎』

 

その時、ツバサの頭の中にシズマ財団に運ばれた巨大な剣を構えるトリガーのビジョンが映る。そしてシズマ財団に運ばれた剣がトリガーの武器だと知ったツバサは思いを込めて剣を求めた。

その時、シズマ財団に運ばれた剣『サークルアームズ』がトリガーの手元に飛んできた。トリガーは立ち上がりサークルアームズを振り回してカルミラを振り払うとそのまま真っ直ぐこっちに向かってくるゴルバーに向かって行った。そしてゴルバーとすれ違った時にその剣でゴルバーに強力な斬撃を入れた。

 

「グオオォォォギャアァァァァ⁉︎」

 

ツバサはGUTSスパークレンスからトリガーのGUTSハイパーキーを引き抜いてサークルアームズのスロットに装填した。

 

〈MAXIMUM BOOT UP! MULTI‼︎ ZEPERION SWORD FINISH‼︎〉

 

サークルアームズから放たれた光の斬撃光線『ゼペリオンソードフィニッシュ』がゴルバーに命中した。ゴルバーは大爆発を起こすも満身創痍の状態だった。

カルミラは配下の怪獣が戦闘不能なのを悟ると右手からカルミラウィップを形成してトリガーに叩きつける。トリガーはサークルアームズを駆使してカルミラウィップに対抗した。激しく鞭と剣がぶつかり合う。激しく打ち合いを続け、トリガーはサークルアームズに力を貯めて斬撃光線を放つ。斬撃光線がカルミラウィップを掻き消した時、トリガーはサークルアームズを地面に突き刺す。

そして両腕を腰の位置まで引いてすぐに両腕を真っ直ぐ胸の前に突き出して交差させ、そのまま左右に両腕を開いて光のエネルギーを集めていく。そして腕をL字に組んでかの超古代の巨人『ウルトラマンティガ』と同じ名を持つ必殺光線を放った。『ゼペリオン光線』それはカルミラに向けて真っ直ぐ放たれるもカルミラのフィンガーナップで再び立ち上がったゴルバーに命中する。

 

「ジェア‼︎」

「グオオォォォギャアァァァァ⁉︎」

 

ゼペリオン光線の威力を上げてそのままゴルバーに撃ち続ける。やがてゴルバーは耐え切れずに大爆発を起こした。ウルトラマンの勝利にその戦いを見ていた全ての人々が喜びの声を上げる。

 

「よっしゃああああああ‼︎ウルトラマンが勝ったあぁぁぁぁぁ‼︎」

「残るはあの宇宙人だけだね‼︎」

「頑張ってー‼︎ウルトラマーン‼︎」

 

しかしカルミラは潮時だと感じたのか闇のオーラの中に消えて行った。

 

『ハッハッハッ‼︎そうじゃ無いとつまらないねぇ‼︎』

 

そして制限時間が来たのかトリガーの体は光の粒子になって消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました‼︎シズマ会長‼︎」

 

ツバサは人間に戻るとミツクニにGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを返そうとした。しかし、ミツクニはその手を阻んだ。

 

「これは君が持っていなさい。・・・ツバサ君、君をGIRLSに推薦したい。今、私はGIRLSに我がシズマ財団の優秀な人員を出向させようと思っているんだ。その中に君も入って欲しい。」

「えええっ⁉︎僕がGIRLSにですか⁉︎」

 

ミツクニの言葉に驚くツバサ。ツバサとミツクニの会話にピグモンが怪獣娘を引き連れて問い詰める。どの怪獣娘も厳しい目でミツクニを見ていた。

 

「シズマ会長、貴方には色々と聞かなければいけない事があります。私達GIRLSに全てを話して下さい。」

 

自分に対して厳しい目を向けるピグモンにミツクニは怖気つく事なく頷いた。

 

「勿論だ。後日、我々シズマ財団が今までの遺跡の調査で知った全てを君達に伝えよう。」

 

 

 

 

 

その日の夜、とある豪邸で1人の少女と少年がTVニュースを見ていた。ツバサとレイカと同じ学校の制服に身を包んだ2人はTVに映るトリガーとゴルバーが戦う映像を見ていた。

 

『本日、シズマ財団近くにかつて地球からいなくなった筈の怪獣が現れました。しかし、怪獣は突如現れた光の巨人によって・・・』

「本当に今もいたんだ‼︎光の巨人・・・ウルトラマンが‼︎お父様は正しかった訳ね‼︎」

 

ニュースに湧き立つ少女と反対にその少年はトリガーに向けて怪訝な表情を浮かべながらブランクのGUTSハイパーキーを握り締めていた。




次回予告(CV:マナカ・ツバサ)
「GIRLSにスカウトされGIRLSに入るか悩む僕の前に怪獣『ギマイラ』が現れる。更に復活した第二の闇の巨人『ダーゴン』。そのパワーに対抗するためにはこっちもパワーを上げるしか無い‼︎次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマントリガー


明日への飛翔


スマイルスマイル‼︎」


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明日への飛翔(前編)

いよいよ2人目の闇の巨人の登場です‼︎

吸血怪獣『ギマイラ』登場
剛力闘士『ダーゴン』登場


怪獣が現れてから数日後、ミツクニはGIRL東京支部の講義室で教壇に立っていた。その横にはトモミが立っている。

 

「怪獣娘諸君、先日は大変ご苦労だった。数十年ぶりに怪獣が襲来するも君達のお陰で死人を出さずに済んだ。」

「ええ、けど・・・怪獣を倒したのは再び現れたティガにそっくりのウルトラマンです。私達はあのウルトラマンに比べたら無力と言ってもいいでしょう。」

 

ミツクニの言葉にトモミが返事を返す。トモミはモニターにトリガーと戦うカルミラを写し出して、ミツクニに問いかける。

 

「それで・・・シズマ会長、貴方に聞きたいのはこの巨人の事です。会長はこの巨人を闇の巨人と仰っていましたが・・・。」

「そうだ・・・我がシズマ財団が火星で人類の居住区を築き上げ、第二の居住区となる土地の調査をしていた頃・・・その土地から遺跡が見つかった。遺跡には明らかにかつて人為的に作られたとしか思えない出土品が幾つも発見された。・・・そして遺跡の調査が進むにつれ火星の古代遺跡から1つの石板が発見された。それがこの石板だ。」

 

ミツクニはその場にいた怪獣娘達にある石板を見せる。それは中心に祈りを捧げるような仕草の女性の後ろに先日現れたウルトラマンにそっくりな巨人が描かれていた。

 

「そ、その石板の絵・・・‼︎」

「先日現れたウルトラマンにそっくり・・・‼︎」

 

サチコとミサオが驚いた表情で石板に注目する。ミツクニは2人の言葉を聞いて全員に石板の事を伝える。

 

「そうだ。恐らくこの石板には先日現れたウルトラマンが描かれている。恐らく私達が君達と協力して火星から運び出したあの石像と同一のものだろう・・・。」

「やっぱり会長は知ってたんだな‼︎あの石像が本物のウルトラマンだって‼︎」

「でも、どうしてわたし達にもその事を黙っていたの⁉︎それにわたし達、あの女巨人について何も教えてもらってないよ‼︎」

「ちょっと、レッドキングさん、ゴモたん‼︎シズマ会長に向かって失礼な‼︎」

「アギラ、お前は知らないだろうが俺達はわざわざ火星に行ってあの馬鹿重い石像を運んできたんだ‼︎」

「せや‼︎このまま何も教えてくれなきゃ納得せぇへん‼︎」

 

ベニオとミカヅキが撃昂するのを宥めようとするアキだが、2人は自分達に秘密を知らせていなかったミツクニへの追及は止まらない。そんな2人の言葉を聞いたからかは知らないがミツクニは石板の左側を指差した。

 

「そして未だ完全では無いが石板をある程度は解析する事が出来た。その結果、三千万年前の超古代文明を滅ぼした巨大な闇の存在が明らかになったのだ。それがこの部分に描かれた闇の巨人だ。ピグモン君、この部分をズームアップしてくれ。」

 

トモミはミツクニの言葉通り、石板の左側をズームする。するとその部分にはトリガーに酷似した巨人が剣を奮って女性型の異形と戦う絵が描かれていた。その部分にミコとクララが反応する。

 

「ちょっと‼︎その絵に描かれているそれ・・・‼︎」

「先日現れたウルトラマン・・・そしてあのウルトラマンと戦った女性型の巨人にそっくりデス‼︎」

 

ミコとクララの言葉を一通り聞いたミツクニは再び石板を解読した結果を伝える。

 

「石板によれば先日現れたあの女性型の巨人の名は『カルミラ』。闇の巨人達を纏める残忍な女戦士だ・・・。」

「カルミラ・・・・それがあの巨人の名前・・・。」

「石板によれば先日現れたあのウルトラマンと超古代の巫女によって闇の巨人達は封印され、宇宙に追放された・・・しかし、遠い未来奴らは復活すると予言されていたんだ・・・。」

「どうして言ってくれなかったんですか‼︎知ってたらある程度対策も立てられたのに・・・‼︎」

「私もGIRLSの上層部に何度も訴えたんだ。しかし、『古代のお伽話を鵜呑みにするなんてシズマ会長らしくない』『そんなお伽話は信憑性に値しない』と聞く耳を持たず話を打ち切ってしまった・・・。それで今日まで伝えられなかったんだ。」

「頭の固い上層部ならあり得る話ね・・・。」

「シャドウ以外には人類の敵となる存在がいませんでしたからね・・・上層部が話を打ち切ってしまうのも無理は無いです・・・。」

「しかし闇の巨人は復活してしまった・・・このままでは怪獣娘だけでなくこの星に生きる全ての命が危機に晒されるだろう‼︎今まで奴らの事を黙っててすまなかった‼︎だが、この星に生きる全ての命の為にも私達に協力してくれないだろうか‼︎」

 

ミツクニは頭を下げてその場にいた怪獣娘全員に頼み込む。その様子を見たトモミが慌てて話しかける。

 

「い、いえ、シズマ会長‼︎こちらこそ色々と申し訳ありませんでした‼︎それで・・・この件ですが勿論力をお貸し致します‼︎いや、むしろ力を貸させて下さい‼︎これは間違いなくGIRLSが設立されて以来初めて私達怪獣娘に・・・いえ全ての人類に訪れる最大の脅威です‼︎」

「そうデス‼︎ワタシ達怪獣娘は怪獣の魂を持って生まれてきましシタ‼︎人々を守る為に戦うのもワタシ達の使命デス‼︎」

「俺達怪獣娘には人間の心があります‼︎そいつがあれば元の怪獣の力も超えられる‼︎」

「それをいつ振るうか・・・闇の巨人が復活した今な筈です‼︎」

 

トモミに続き、クララ、ベニオ、ミカヅキが声を上げる。まだ怪獣娘になって経験が少ないレイカ達は彼女達に唖然としていたがやがて覚悟を決めた表情を浮かべる。

 

「そうですね・・・私達は役に立たないかもしれませんがそれでもお供させて下さい‼︎」

「よーし、闇の巨人に打ち勝つぞー‼︎」

 

ミクが決意を叫ぶ横でアキは考え事をしていた。そんなアキの様子を心配したミコが話しかけた。

 

「どうしたの、アギ?」

「あ、いや・・・少しシズマ会長の話で気になる事があって・・・。」

 

そう言ったアキの言葉を聞いたミツクニはアキを見て尋ねた。アキもこのまま黙ってるだけじゃ駄目だと思って意を決意してミツクニに尋ねる。

 

「何か気になる事でも?」

「あっ・・・いや・・・シズマ会長、シズマ会長は闇の巨人『達』と言いましたよね・・・。それって・・・闇の巨人はあのカルミラだけじゃないって事ですか?」

『⁉︎』

 

アキの言葉にミツクニ以外の全員がはっと思い出した顔をする。ミツクニはアキの言葉を聞いて石板の左側に指を刺す。そこにはトリガーらしき巨人と戦うゴツい鎧の異形と腕が翼になった異形が描かれていた。

 

「そうだな・・・その辺も説明しなければな・・・実は闇の巨人はカルミラだけではではない・・・。」

「ええっ⁉︎闇の巨人って他にもいるんですか⁉︎」

「そうだ・・・力に長けた巨人『ダーゴン』、スピードに長けた『ヒュドラム』・・・カルミラを合わせて3体の闇の巨人が存在している。」

「ふええええぇぇぇっ⁉︎あんなのが3人も⁉︎」

「そうだ・・・恐らくだが・・・カルミラが復活した以上・・・残り2体が復活するのも時間の問題だろう・・・。」

 

ミツクニの言葉に驚いたヨウとユカの声が反応する。最後のミツクニの言葉に怪獣娘達は思わず沈黙してしまう。明らかにシャドウどころか自分達を遥かに上回る力を持つ存在が3人もいると知ってしまい途方に暮れ始めたのだ。マコが一言呟くまでその場にいた全員が言葉を話さなかった。

 

「あんなのが3人も・・・そんなのとどうやって戦えと言うのよ・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙空間の何処かの惑星で逆さになって頭が埋もれた石像があった。その石像の隣に降り立ったのは地球でトリガーと激闘を繰り広げたカルミラだ。彼女はカルミラウィップを振るいその石像をヒビを入れた。するとその石造が割れて中から赤と黒が基調の鎧を纏ったような見た目に頭に3本の角が付いた巨人が目を覚ましたのだ。その巨人こそ剛力闘士『ダーゴン』。ミツクニが復活を恐れた闇の巨人の1人だ。

 

『ぐっ、ぐおおおおっ・・・。』

『いつまで寝てるんだい‼︎』

 

目覚めたばかりのダーゴンは頭を抑えるがカルミラはそんな彼に対して蹴りを入れる。再びダーゴンは背中から倒れた。

 

『おおっ‼︎カルミラか‼︎』

『3000万年経っちまったよ‼︎』

 

再びダーゴンは起き上がる。カルミラはダーゴンを見ず言葉を放った。

 

『ダーゴン、聞きな。トリガーを見つけた。』

『何と⁉︎我が好敵手と再び戦えると言う事かぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

ダーゴンはカルミラの言葉に歓喜の声を上げた。ダーゴンの声が宇宙空間に響き渡る。そしてダーゴンは地球に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

地球ではシズマ財団に怪獣娘達が再び集まっていた。再びミツクニに呼び出されて彼女達はシズマ財団に訪れていたのだ。シズマ財団の講義室に彼女達が座る。

 

「集まってもらって申し訳ない。我がシズマ財団の誇る優秀な者を紹介しよう。GIRLSに出向を考えている彼らと共に闇の巨人に立ち向かって欲しい。」

「シズマ会長、一体どんな人が来ているんですか?」

「まあ、そう急かさないでくれ。今から紹介する。入っていいぞ。」

 

そこに入ってきたのは3人の人物だった。1人は怪獣娘達と同年代のレイカの学校の制服を着た少年と少女だった。レイカはその姿に見覚えがあったのか驚いた顔をしていた。

 

「えっ⁉︎ど、どうして2人が⁉︎」

「ウインちゃん、あの人達の事知ってるの?」

「は、はい・・・私の学校の先輩です。」

『ええっ⁉︎』

 

するとミツクニは2人の事を紹介した。

 

「紹介しよう。私の娘のユナと我がシズマ財団の優秀なメカニックのアキトだ。」

「初めまして、シズマ・ユナです。」

「ヒジリ・アキトです・・・・よろしくお願いします。」

「ユナは私の娘でね・・・あらゆる英才教育を施した・・・中には怪獣との戦いも教えてね・・・君達の役に立つ筈だ。」

「娘に怪獣との戦いを教えたんですか⁉︎」

「ああ、いつかの日に備えてね・・・GUTSスパークレンスの使い方も教えている・・・それとアキトはGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを作った開発者だ。君達の力になるだろう。」

「ええっ、あの武器を作ったの君なの⁉︎すっごーい‼︎わたし達と同じ歳くらいなのにそんなに頭がいいなんてー‼︎」

「・・・・ウザい。」

 

ミカヅキはアキトがGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを作ったと知って彼に近付いて褒めるも距離の近さに鬱陶しさを感じたのか彼女の顔を見ずに思った事を言ってしまう。その言葉に頭に来たのかミクが立ち上がって抗議した。

 

「ちょっと、アンタ‼︎そんな言い方無いんじゃないの‼︎」

「アキト‼︎初対面でそんな事言っちゃ駄目だよ‼︎御免なさい、アキト、少し無愛想なの。気にしないで。」

「アハハハハ‼︎平気平気!気にしてないよ‼︎」

 

ミカヅキもアキトの言葉に対して気にしている様子を見せずにホッとするユナ。そこに1人の人物が入ってきた。

 

「ったく・・・アキトの奴・・・怪獣娘が相手でも相変わらずだな。」

「普段からそうなんですね・・・・って・・・えっ⁉︎」

 

怪獣娘はその顔を見て驚いた顔をしていた。それは人間ではなかったからだ。大きな赤い頭に顔に黄色い発光体を備えたその存在を見た怪獣娘達は声を揃えて叫んだ。

 

『メトロン星人⁉︎』

「何だお前ら、俺様達メトロン星人を知ってるのか?だったら話は早いな。俺様はマルゥル。由緒正しい本物のメトロン星人だ‼︎よろしくな‼︎」

「な、何でメトロン星人がこんなところに⁉︎」

 

ミコの言葉を聞いたミツクニとマルゥルは昔の事を語り出した。それは怪獣娘達を驚かせるものだった。

 

「昔・・・宇宙を放浪してこの星に流れ着き行き場を無くしたマルゥル君を我々が保護してね・・・。」

「助けられた恩返しに俺様は会長にメトロン星のテクノロジーを提供してやったのさ。シズマ財団が火星着陸に成功したのも初めて火星で人が住めるコロニーを建設できたのも俺様が提供したメトロン星のテクノロジーが由縁なんだぜ‼︎」

「ええええええ⁉︎そうだったんですか⁉︎」

「漸くシズマ財団が火星着陸に成功した理由が分かったわね・・・。」

「彼は機械に強いだけでなく怪獣の知識もある。どうかGIRLSに加えてやってくれないかね。」

 

シズマ会長の言葉に迷いを見せるトモミ。そこにシズマ財団内部で緊急警報が鳴り響いた。

 

「何事だ‼︎」

「お台場にて怪獣が出現したらしいぜ‼︎」

『クワアアアアアァァァァ‼︎』

 

マルゥルが携帯端末を取り出して何が起こったのか確認する。するとモニターに海から大きな一本の角が生えた背中が棘だらけの黒い怪獣が現れる映像が映った。怪獣の名は吸血怪獣『ギマイラ』。かつて潮風島に現れるもウルトラマンに倒された怪獣の同種族だ。

 

「コイツはギマイラだな‼︎かつて宇宙から来て人間の生き血を吸っていた怪獣の同種族だろう。」

「確か、GIRLSのデータにもありました‼︎でも、どうしてギマイラが地球に⁉︎」

「恐らくだけど3年前にお台場の海に隕石が落ちただろ。そん時の隕石に紛れて地球に住み着いたんだろうな。」

「こうしてはいられません‼︎大至急、お台場に急行して下さい‼︎」

『了解‼︎』

 

怪獣娘達は部屋を飛び出していく。そこにユナとアキトが入ってきた。

 

「私達も行くわ‼︎」

「ユナさんに・・・アキトさん‼︎けど・・・‼︎」

「大丈夫‼︎こんな時に備えて2人とも特訓してきたから‼︎」

 

2人の眼差しとユナの言葉にトモミは2人を連れて行く決意をする。

 

「分かりました‼︎けど・・・無茶な真似はしないで下さい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クワアアアアァァァァァ‼︎」

 

ギマイラは海から上がるたび、口から霧を吐いて街を覆ってしまった。それを吸った人々がフラフラとまるでゾンビのような歩き方になる。ギマイラの口から吐く霧は宇宙のカオスで出来ており吸った人間の意識を奪う事が出来るのだ。ギマイラの霧を吸った人間達の動きが次々と鈍くなる。そしてギマイラの口から長く無数に舌枝分かれする舌を伸びて人間の首に吸い付く。それは次々と人間に吸い付いてその生き血を吸い始めた。

 

「皆の様子が‼︎」

「ギマイラの霧の影響か‼︎」

 

そこに怪獣娘達とユナとアキトが到着した。目の前の光景を見る度、ミクラスとゴモラが人々の生き血を吸うギマイラの舌を掴んで引きちぎる。

 

「うおりゃあああ‼︎」

「でやぁぁぁぁぁ‼︎」

「何で痛みを感じないの⁉︎あの怪獣に血を吸われてるのに‼︎」

『多分だけど、ギマイラの宇宙のカオスで出来た霧の影響だ‼︎このままじゃお台場はギマイラの吸血都市にされちまう!それとギマイラの霧が怪獣娘に効くのかどうかは未知数だ‼︎けど、お前ら全員が地球人である以上、いつまで持つか分からねぇ‼︎あんまり長い時間活動するのは止めた方がいいぜ‼︎』

『了解‼︎』

 

アギラはマルゥルからの通信を切る。そして目の前のサラリーマンの生き血を吸っていた舌を角で切り裂いた。その横ではガッツ星人が光線を撃ち、ギマイラの舌を攻撃する。

 

「アキト、怪獣娘達を援護するよ‼︎」

「ラジャー‼︎」

〈BOOT UP! SHOCK WAVE‼︎〉

〈BOOT UP! THUNDER‼︎〉

 

ガスマスクを付けたユナとアキトがGUTSスパークレンスにゴモラとエレキングが描かれたGUTSハイパーキーを装填してギマイラを攻撃する。ギマイラにその攻撃が命中するもギマイラは一瞬怯んだだけだった。

 

「⁉︎・・・しまった‼︎」

「ぐっ・・・・ぐううううう⁉︎」

 

しかし、ギマイラの舌の餌食になってしまった怪獣娘もいた。レッドキングとザンドリアスだ。彼女達の首にギマイラの舌が吸い付いた。そしてギマイラは2人の怪獣娘の生き血を吸い始める。

 

「うううっ⁉︎頭が・・・痛い・・・。」

 

そしてウインダムの身にも異変が生じていた。ギマイラの霧を吸った影響が彼女にも現れ始めていたのだ。彼女は激しい頭痛に見舞われていた。そこにギマイラの舌が彼女目掛けて襲いかかる。

 

「ひっ⁉︎」

「危ない‼︎」

 

そんなウインダムを救ったのはガスマスクを付けた彼女の幼馴染であるツバサだった。思いもよらない場所でツバサに助けられた彼女は動揺を隠せない。

 

「大丈夫か、レイカ?」

「ツバサさん⁉︎どうしてここに⁉︎」

「えーっと・・・何と言えばいいのかな・・・。」

 

実はツバサはミツクニに自分がトリガーである事は周りの人達に伏せるよう指示してきた。その上でGIRLSに入って欲しいと頼まれたが自分の正体がバレるリスクがあるため考える時間が欲しいと告げたのだ。しかし、彼が考えている間に怪獣が出現したため、ミツクニに呼ばれて至急お台場に駆けつけたのだ。そのためツバサはウインダムにどう言い訳するか悩んでいた。しかし、目の前で吠えるギマイラを見てウインダムを霧の少ない場所に連れて行く。

 

「レイカはここで待ってて‼︎僕が助けを呼んでくるから‼︎」

「ツバサさん、待ってください‼︎」

 

ツバサはウインダムの制止を振り切って霧の中に消えて行く。そしてGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを取り出した。

 

〈BOOT UP! ZEPERION‼︎〉

 

銃身を開いてGUTSスパークレンスを持った右手を前に突き出すと左側から右側に動かしていく。そして引き金を引いて天に掲げながらその名を叫んだ。

 

「未来を築く希望の光‼︎ウルトラマントリガアアアァァァァ‼︎」

 

ULTRAMAN TRIGGER! MULTI TYPE‼︎

 

その光景を見ていた者がいた。GUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーの開発者のアキトだ。

 

「あ、アイツが・・・‼︎」

 

ギマイラは怪獣娘達にも舌を伸ばして生き血を吸い取って行く。怪獣娘達も一部を除いてギマイラの霧の影響で体調を崩してしまった。

 

「うう、頭が痛い・・・。」

「何か・・・意識が・・・。」

 

そしてゴモラ、マガジャッパ、アギラに狙いを付けた。体調を崩した彼女達の生き血を容赦なくギマイラが吸い取ろうとする。しかし、ギマイラの舌は切断光線で切り裂かれる。

 

「クワアアアァァァァ⁉︎」

 

光と共にウルトラマントリガーが現れた。その姿を見てガッツ星人とキングジョーが歓喜の声を上げる。

 

「アレはウルトラマン‼︎」

「やはり来てくれたのデスネ‼︎」

「ヘアッ‼︎」

 

トリガーはギマイラに向かって構えるとそのままギマイラに向かって行く。そしてギマイラにキックを打ち込むとそのまま後退するギマイラの頭にチョップを打ち込んだ。そしてギマイラの頭を抑えると再びチョップを打ち込む。

 

「クワアアアアアアァァァァ‼︎」

 

ギマイラはトリガーを振り切るとトリガーに腕をぶつけようとする。何とかトリガーはかわすがギマイラは角をトリガーにぶつける。トリガーは思わずビルに激突してしまう。

ユナはトリガーの姿を見て思わず呟いた。その声を聞いたアキトはユナにその事を訊ねる。

 

「ウルトラマン・・・トリガー。」

「ウルトラマントリガー?ユナ、あのウルトラマンの名前が分かるのか?」

「えっ、今、私何か言った?」

「いや、何でもない・・・。」

 

しかし、ユナは気付くと何も覚えていないようだった。その事を知ったアキトはそれ以上追求するのを止める。

 

一方でギマイラの角からの光線を受けたトリガーは吹っ飛ばされてビルに激突する。カラータイマーを鳴らしながらこっちに向かってくるギマイラを確認するトリガー。トリガーはギマイラに飛びかかってマウントを取るとエネルギーをチャージして至近距離からゼペリオン光線を放つ。それを受けたギマイラは大爆発してトリガーも爆風に吹っ飛ばされる。

 

「やったーー‼︎」

 

しかし、どういう形であれウルトラマンが怪獣に勝った事をキングジョーとガッツ星人が喜ぶ。しかし、彼女達にマルゥルが警告を知らせてきた。

 

『おい‼︎喜ぶのはまだ早いぞ‼︎ヤベーのが降ってくるぜ‼︎』

「ヤバいのが降ってくる?」

「ガッツ‼︎アレを‼︎」

 

キングジョーが指差す方を見ると黒いオーラと共に何かが降りてきた。それは着地と共に地面に大きなクレーターを作る。それこそが復活した闇の巨人『ダーゴン』だった。




かなり雑になってしまいました。

本格的に連載するときはある程度纏められるようにします‼︎


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明日への飛翔(後編)

今回、アンケートを設置しました。
そちらも宜しくお願いします‼︎

俊敏策士『ヒュドラム』登場

追記

次回予告追加しました。


突如街に大きなクレーターを開けて来襲したダーゴン。ダーゴンはクレーターを後にするとトリガーに向けて言葉を放つ。

 

『久しぶりだな・・・我が好敵手、トリガー‼︎』

 

その時、トリガーの中のツバサの中に1つのビジョンが浮かび上がる。それは先日戦ったカルミラの隣に並び立つ目の前の巨人だった。ツバサはそれを見て目の前の巨人がカルミラの仲間だと判断した。

 

『まさか・・・・あの巨人の仲間か⁉︎』

 

 

 

一方でシズマ財団本部ではピグモンとミツクニとマルゥルがダーゴンに驚いていた。ミツクニの言葉でピグモンはモニターに写った巨人が新たな脅威だと感じた深く言葉を噛み締める。

 

「アレは・・・石板に描かれていた闇の巨人‼︎力に長けた剛力闘士『ダーゴン』‼︎」

「それではあの巨人も・・・・!」

「ああ、闇の巨人だ・・・2体目か・・・。」

「2人目も復活してしまったのですね・・。」

 

ピグモンの横でモニターを写すマルゥルはダーゴンが言葉を喋っている事に気付いた。思わずピグモンはマルゥルに駆け寄った。

 

「これは・・・・言語か・・・何か喋ってるな。」

「えっ、一体何を話しているんですか‼︎」

「そこまでは分からねぇよ‼︎アレは超古代の言語だ‼︎異星人の俺様でも解読できねぇよ‼︎」

 

 

 

 

 

 

その頃、怪獣娘達は目の前でクレーターを作りながら降りてきた巨人に驚いていた。ミクラスの隣に何とか体調を取り戻したウインダムが来る。

 

「な、何なのよ、アレ‼︎」

「もしかして・・・・あの巨人も闇の巨人なんじゃ・・・・。」

「ウインちゃん、そんな事言うの止めてよ‼︎アレが」

「ミクラス!ウインダム!さっきピグっちから連絡があった‼︎どうやらアレがシズマ会長が話していた力に長けた闇の巨人『ダーゴン』らしいよ・・・。」

「あ、アレが⁉︎」

「信じたくないけど・・・・もう既に2人目の闇の巨人が復活していたって事ね・・・。」

 

ミクラスとウインダムの元に2人のガッツ星人がやってくる。髪の色が明るい水色のガッツ星人(ミコ)の言葉にミクラスは思わずダーゴンを見上げた。髪の色が濃い紺色のガッツ星人(マコ)が呟いた時、キングジョーとマガバッサーが降りてくる。

 

「でも・・・今、この場にはウルトラマンもイマス‼︎彼の勝利を信じまショウ‼︎」

「そうですよ‼︎きっとウルトラマンなら勝ってくれますよ‼︎」

 

彼女達はマガバッサーの言葉を聞いてトリガーと睨み合うダーゴンに目が映る。

その頃、ダーゴンは3000万年前に自身と何度も対決を繰り広げたトリガーに待ちわびたといった感情の言葉を放ち土煙を上げながら向かっていった。

 

『我ら、3000万年の時を経て再び相見えた‼︎いざ尋常に・・・勝負‼︎』

 

ダーゴンはそのままトリガーにタックルを放つ。ダーゴンの硬い体から繰り出されたタックルをまともに受けたトリガーは怯んで後ろに下がってしまう。ダーゴンはそのまま追撃して拳を3度放つ。4度目の拳は何とか避けたトリガーはダーゴンの胸にチョップを放つもダーゴンの硬い装甲のような体にはダメージを与える事が出来なかった。

 

「シェアッ⁉︎」

 

トリガーはダーゴンの硬さに驚いて動きを一瞬止めてしまう。再ダーゴンは裏拳を放つもトリガーはそれを避けて再びチョップを撃ち込もうとする。しかし、逆にダーゴンのボディブローを受けてトリガーは怯んでしまう。それでも態勢を立て直して向かっていくトリガーは右腕で手刀を放とうとする。しかし、ダーゴンはトリガーの右腕を掴んで捻り上げた。そしてそのままトリガーに力強い拳を二発打ち込んだ。その威力にトリガーは大ダメージを受けてしまう。

 

『ふん‼︎』

「ジェアアアッ⁉︎」

 

トリガーとダーゴンの戦いを見たミクラス達はショックを受けていた。先程、ギマイラと戦って体力を消耗したとはいえ闇の巨人の1人であるダーゴン相手にウルトラマンが歯が立たない事態に驚きを隠せずにいたのだ。そこにある程度回復したアギラ達も合流する。

 

「嘘・・・・ウルトラマンが手も足も出ないなんて・・・・。」

「あのパワー・・・・・今まで地球に現れたレッドキングやゴモラなどのパワータイプの怪獣と同等・・・・いや・・・同等なんてもんじゃない‼︎それを遥かに超えているよ‼︎」

「ちょっと待って下さい・・・・これから先・・・・アタシ達はアレと戦わなきゃならないんですよね・・・・。」

「あんなの・・・・わたし達の手には負えないよ・・・・。」

 

トリガーとダーゴンの戦いを見て怪獣娘達はこれから先、自分達が相手にしなければならない敵に対してネガティブな言葉を呟くしかなかった。

 

怪獣娘がショックを受けている間もダーゴンによるトリガーへの追撃は止まらない。ダーゴンはトリガーを後ろの高層ビルに叩き付けた。

 

「ヘアアアアッ⁉︎」

 

トリガーは思わずビルをめり込んでしまう。そしてそのままダーゴンの力に長けた拳が10発も放たれた。

 

『ヌウウウ‼︎』

「ヘアアアッ⁉︎」

 

そして最後の10発目である両手の拳がトリガーをビルごと吹っ飛ばした。トリガーはその一撃にダーゴンが着地したクレーターに倒れてしまった。トリガーのカラータイマーが高速で点滅する。そしてトリガーは光の粒子となって消えてしまった。その様子にダーゴンは不満そうに叫びながら闇のオーラを纏って姿を消した。

 

『まだ足りん‼︎我と勝負しろ・・・トリガァァァァ‼︎』

 

 

 

 

 

人間の姿に戻ったツバサは腕を押さえながら街を歩いていた。そこにアキトがやってくる。そしてツバサの腕を掴むと辛辣な言葉を放った。ツバサは相手の事を知っていたようだ。

 

「何ですか・・・ってアキト先輩?」

「おい‼︎何ださっきの無様な戦い方は⁉︎」

「えっ、何のことですか⁉︎」

 

ツバサはトリガーの事を誤魔化そうとするとアキトは腰のホルダーからGUTSスパークレンスを取り出した。そして銃身を展開する。

 

「変形するのはお前のGUTSスパークレンスだけだ。」

「どうしてアキト先輩がそれを⁉︎」

「これを・・・・俺が作ったからだよ‼︎」

「えええっ⁉︎」

「コレは・・・コレは俺がユナを守るために作ったんだ‼︎ウルトラマンになるために‼︎・・・お前がウルトラマンになるためじゃない‼︎」

 

アキトはツバサの胸ぐらを掴んでツバサに作った自身の意図を叫ぶ。ツバサはそれを黙って聞いていた。暫く沈黙しているとツバサも言葉を放つ。

 

「ユナって・・・ユナ先輩の事ですよね・・・。御免なさい・・・僕がウルトラマンに選ばれて・・・・。でも・・・それでも僕は世界中の人々の笑顔を守りたいんです‼︎その中には当然、ユナ先輩も・・・アキト先輩も入っているんです‼︎」

「ウザい‼︎」

 

ツバサの目に何かを感じたのかアキトはツバサの胸ぐらを離すとその場から去っていってしまう。そしてかつてミツクニから超古代の遺跡から発見された神器を託された時の事を思い出していた。

 

『コレが・・・・遺跡から・・・。』

『そうだ・・・・アキト、その神器を解析して君の手で解析して欲しい・・・いつか光を受け継ぐ者が現れた日に備えて・・・。』

 

 

 

 

 

 

 

ツバサはGIRLS管轄の病院で検査を受けていた。幼馴染であるレイカの報告を受けたトモミからギマイラの霧を吸った効果がないか検査するために加えてツバサ自身に大きなダメージがあったため行かざるを得なくなったのだ。

 

「ツバサさん・・・大丈夫ですか?」

「ああ・・・僕は平気だよ。レイカこそ体は大丈夫なの?」

「ええ、私の場合は金属生命体の怪獣の怪獣娘だったのもあって宇宙のカオスで出来た霧の効果から早く立ち直りました‼︎」

「そうか・・・良かった・・・。」

 

ツバサとレイカがベンチに腰掛けて隣で話し合っている。そんな光景を彼女の親友であるアキとミクが物陰から見ていた。

 

「なんか・・・ウインちゃん・・・いい感じじゃない?」

「そうだね・・・なんか・・・意外かも・・・ウインちゃんがあんな感じで男の子と話しているなんて・・・。」

 

ツバサとレイカの前にトモミとベニオ、ミカヅキにランがやってきた。トモミ達がツバサにあの現場にいた理由を尋ねるも本当の事を言える訳のないツバサは答えに詰まるだけだった。

 

「ツバサさん、どうしてあそこに来たんですか?」

「えっ・・・・それは・・・・。」

「ウインウインの事を助けてくれた事は感謝します。けど・・・余り無茶な事はしないで下さい。貴方の行動次第ではウインウインを悲しませる事になるかもしれません。」

「お前・・・・言ってたよな・・・・『世界中の人達を笑顔にしたい』

って・・・けどよ・・・。」

「幼馴染であるダム子の事を悲しませたらその時点でその夢を叶えられなくなっちゃうんだよ。」

「幼馴染1人を笑顔に出来ないんじゃ世界中の人達を笑顔にするなんて夢物語よ・・・。大きな口を叩く前によく考えて行動しなさい。」

「・・・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アキトはシズマ財団の自身の研究室で新たなGUTSハイパーキーを作り出した。そこには赤いトリガーが描かれていた。それを手に取るとアキトはそれを見ながら呟いた。そこにミツクニがやってくる。

 

「俺じゃなかった・・・・。」

「アキト、ツバサ君をサポートしてあげてくれないか⁉︎彼は光を受け継ぎ、皆を笑顔にするために戦う決意をした・・・。彼が・・・ツバサ君が夢見た未来を・・・アキト・・・お前も見たくないか?」

 

アキトはミツクニの言葉を聞いてミツクニの方を振り向くと目を見開いていた。

 

 

 

 

 

『全てを破壊し尽くしても我が好敵手を引き摺り出す‼︎』

 

夜の町に再びダーゴンが降り立った。そしてダーゴンは両手を曲げて左手を左斜め上に、右手を右斜め下に伸ばして右手にエネルギーを溜める。そしてエネルギーが溜まった拳を地面に突き立てた。

 

『トリガアアァァァァァァァァ‼︎』

 

ダーゴンの放つ炎の衝撃波『ファイアビートクラッシャー』は地面を走ると次々と建物を薙ぎ払っていった。当然、その様子をGIRLSも確認していた。

 

「緊急事態です‼︎闇の巨人の1人、ダーゴンが街に現れて暴れ出しました‼︎GIRLSの皆さん、出動できる人は直ちに出動して住民の避難誘導を優先して下さい‼︎」

『了解‼︎』

 

 

 

 

 

その頃、ダーゴンが街に現れた事を察したツバサは着替えて現場に向かおうとする。その時、アキトが現れた。

 

「アキト先輩⁉︎」

「ミツクニさんがお前が運ばれた病院を調べてくれたんだ。コレを使え。パワーにはパワーで対抗しろ。」

 

アキトはそう言って先程作ったGUTSハイパーキーをツバサに差し出した。ツバサはそれを受け取ると笑顔を浮かべてアキトに礼を言う。アキトは素っ気なく返すも少し満更でもない表情だった。

 

「ウザい・・・・とっとと行け。」

 

ツバサは頷くとGUTSスパークレンスを取り出した。そしてその場を後にして駆け出していく。

 

 

 

 

『来たか‼︎』

 

トリガーは現れでいきなりダーゴンの胸に飛び蹴りを放った。ダーゴンは二、三歩下がっただけだったがトリガーが現れた事に喜びの声を上げる。

 

『待ちわびたぞ、我が好敵手‼︎』

『ここからは第二ラウンドだ‼︎』

 

ツバサは腰のホルダーからアキトから貰ったGUTSハイパーキーを取り出して、そのスイッチを押す。

 

〈ULTRAMAN TRIGGER! POWER TYPE‼︎〉

 

ツバサはマルチタイプキーを抜くと新たな『パワータイプキー』をGUTSスパークレンスの銃底に装填した。

 

〈BOOT UP! DERACIUM‼︎〉

 

そしてツバサは再びGUTSスパークレンスを持った右手を天に掲げながら引き金を引いて叫ぶ。

 

「勝利を掴む剛力の光‼︎ウルトラマントリガアアアァァァァ‼︎」

ULTRAMAN TRIGGER! POWRER TYPE‼︎

 

するとトリガーの体は赤くなり、体型はマッシブになり胸のアーマーがVの字状に、そして頭のトサカはあのウルトラセブンを思わせるアイスラッガー状に変化する。これがウルトラマントリガーの力に長けた形態『パワータイプ』だ。

 

「色が変わって・・・体型も変わってる・・・。」

「会長・・・あのウルトラマンは・・・。」

 

GIRLSでもこの様子を捉えておりピグモンはその場に来たミツクニに尋ねる。するとミツクニは何の迷いも無く答えた。

 

「彼は笑顔の未来を築く超古代の戦士・・・ウルトラマントリガー・・・。」

「トリガー・・・・それがあのウルトラマンの名前ですか・・・いい名前ですね‼︎」

 

トリガーはダーゴンに向かって構える。ダーゴンとトリガーが共に真っ向から向かっていく。そして2人は取っ組み合った。

 

「ダアッ‼︎」

『ヌウウアアアアアァァァァ‼︎』

 

力に長けたダーゴンをまともに受け止めたトリガーはその後、取っ組み合いを続けるもやがてトリガーが散髪の拳を放つ。それは初めてダーゴンにダメージを与える事が出来た。ダーゴンも拳を放つもトリガーはそれを受け止める。そしてトリガーは顔、胸、腹といった部分に拳を次々と叩き込んでダーゴンを押していく。

 

「ヌオオオォォォ‼︎」

 

しかし、ダーゴンはトリガーに頭突きを喰らわせて、腕を掴むと勢いよくトリガーを投げ飛ばす。そしてトリガーを重量を込めた足で踏みつけようとする。しかしトリガーはダーゴンの足に蹴りを放って足を払う。

 

「ダアァァ‼︎」

 

そして拳を撃ち込むがそれはダーゴンに受け止められた。そしてダーゴンはトリガーの首を右手で掴むと締め上げようとする。その時、トリガーはボディーブローからの左膝蹴りを決める。ダーゴンは再び体制を整えるとトリガーの腕を掴んで投げ飛ばした。

 

「ハッ‼︎」

 

トリガーも再び態勢を整えてダーゴンに数発のパンチを放つ。そしてダーゴンとつかみ合うと互いにビルを突き破りながら倒れる。そしてトリガーはダーゴンから距離を取った。

トリガーは両腕を広げると両手の中に赤い光のエネルギーを集めていく。そしてそれを胸の位置で赤いエネルギー光球にした。『デラシウム光流』かのウルトラマンティガのパワータイプの必殺光線と同じ光線がダーゴンに放たれた。それはダーゴンに命中するとダーゴンを海に沈めていく。

 

『ヌウアアァァァァァァ⁉︎』

 

トリガーもダーゴンを追って海に飛び込んでいく。そして2人の巨人は東京湾の海中でぶつかり合う。

 

「ハアァァ‼︎」

「ヌオオォォォ‼︎」

 

2人の拳がお互いにぶつかり合う。そしてトリガーがダーゴンにキックを打ち込んで先制攻撃を与える。しかし、ダーゴンはトリガーに拳を叩きつけてダメージを与える。それでもトリガーは拳を2発胸に撃ち込んだ。両手で3発目を打ち込もうとした時、ダーゴンに両手を掴まれて投げ飛ばされる。しかし、崖に足を掛けると踏みしめて海底に着地する。するとサークルアームズが飛んで来た。

 

〈CIRCLE ARMS‼︎〉

 

トリガーはサークルアームズを展開してハサミのような形態に変化させる。パワータイプ用に変化したサークルアームズ『パワークロー』だ。

 

〈POWER CLAW‼︎〉

 

トリガーはサークルアームズを突き立ててダーゴンを抑えつける。ダーゴンを振り回すとダーゴンも拳をぶつけようとしてきた。それをサークルアームズで制止するとダーゴンに拳を撃ち込む。再びサークルアームズでダーゴンを抑えて振り回すとその刃でダーゴンを斬りつけた。

 

『ヌウアアァァ⁉︎』

 

そして再びダーゴンがファイアビートクラッシャーを放つ構えを取る。ツバサもサークルアームズにパワータイプキーを差し込んで引き金を引き、その力を読み込む。

 

〈MAXIMUM BOOT UP! POWER‼︎ DERACIUM CLAW IMPACT!〉

 

ダーゴンが再びファイアビートクラッシャーを放った時、トリガーもサークルアームズを地面に突き立て赤いエネルギーを込めた衝撃波を放つ。そして2つの衝撃波がぶつかり合った。最初はダーゴンの方が優勢であったがトリガーが力を込め、ダーゴンの衝撃波を押し返していく。そしてトリガーの衝撃波が撃ち勝ち、ダーゴンに直撃した。

 

『ヌウオオアアアアァァァァァァァァッ⁉︎』

 

大爆発がダーゴンを飲み込んだ。しかし煙が晴れるとダーゴンはしっかりと立っていた。完全に倒し切る事は出来なかったのだ。

 

『それでこそ我が好敵手・・・また相見えようぞ。」

 

ダーゴンは闇のオーラと共に何処かは消えていった。残されたのはトリガー1人だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、GIRLS東京支部の講義室にトモミ達が集まっていた。教壇にはミツクニが立っている。

 

「今日から私達に力を貸してくれる新たなメンバーを紹介します。それでは4人ともどうぞ‼︎」

 

トモミの声と共に入ってきたのはツバサ、ユナ、アキト、マルゥルだった。レイカはツバサがここにいる事に驚きを隠さない表情だった。

 

「ツバサさん⁉︎どうしてここに⁉︎」

「シズマ財団の職員を助けた事と・・・この前のギマイラの霧からレイカを助けた事で会長に推薦されて・・・ね。」

 

ツバサはユナの顔をチラチラと見ている。それに気付いたユナはツバサに疑問を投げる。

 

「どうしたの?わたしの顔に何か付いてる?」

「いや・・・シズマ先輩って何処かで僕と会った事ありません?何処かで会った事あるような気がして・・・。」

「それだったら学校でだと思うよ。ツバサはわたし達の後輩なんだから。それと・・・わたしの事は名前で読んでよ。お父様もシズマなんだから混ざっちゃうでしょ。」

「えっ・・・ああ・・・そうですよね・・・・・。」

 

ツバサとユナが皆に聞こえない声で話している。そんな中、トモミが彼らの事を皆に紹介する。

 

「シズマ会長の推薦と本人の希望により私達の仲間になる人達です‼︎それでは自己紹介をどうぞ‼︎」

「マナカ・ツバサです‼︎世界中の人達を笑顔にするために頑張りたいと思います‼︎よろしくお願いします‼︎」

「シズマ・ユナです‼︎皆とは歳も近いしきっと仲良くなれると思います‼︎これからよろしくお願いします‼︎」

「ヒジリ・アキトです・・・。よろしくお願いします。」

「俺様はマルゥル様だ‼︎よろしくな‼︎それとGIRLSのメトロン星人の怪獣娘にも俺様の事を紹介してくれよ‼︎」

「うん、これからよろしくね‼︎」

 

ミカヅキの声で4人に拍手を送る。そしてこの後、彼女達は彼らを歓迎したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIRLSが新たな仲間を歓迎している頃、GIRLS東京支部が見えるビルの上で冒険家やトレジャーハンターを思わせる男が立っていた。その男はGIRLS東京支部を眺めていると顔に炎のような紋章を表した。

 

 

 

 

 

 

 

そしてある場所では青と白、それに黒のカラーリングに右肩に風を象った意匠が付いた異形が立っていた。その異形には左胸に斜めがけの発光体が光っている。

 

『エクセレント‼︎2人ともようやく目覚めましたか・・・さて・・・私もそろそろ本格的に動き出しますか・・・。』

「見つけた・・・。」

 

その異形の後ろに回り込んだのは黒い獣殻に黄色い結晶を額に備えた怪獣娘だった。彼女の名は『ゼットン』。最強の宇宙恐竜の魂を継ぐ怪獣娘だ。彼女の姿を見た異形は喉を弄ると彼女の問いに答える。

 

「漸く見つけた・・・・貴方が・・・・シズマ会長が言ってた闇の巨人・・・・『ヒュドラム』ね。」

「おやおや、まさか怪獣娘が既に私の事を知っていたとは・・・。けど、貴方達怪獣娘が私に勝てますかね。」

 

ゼットンと睨み合う異形・・・・俊敏策士『ヒュドラム』はゼットンと睨み合っていた。




今回からアンケートを設置します。
是非とも投票よろしくお願いします‼︎

それと今回の話に関しては本格的に連載する時はもう少しまとめた話にする予定なのでどうかご了承下さい。

次回予告(CV:マナカ・ツバサ)
「宇宙一のトレジャーハンター『イグニス』がユナ先輩を狙ってやってきた。ユナ先輩を狙う理由は一体?そして現れるガゾート。こうなったら高速の動きで全部まとめて解決してやる‼︎次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマントリガー


超古代の光と闇


スマイルスマイル‼︎」


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超古代の光と闇(前編)

どうしよう・・・トリガーが進むにつれてこっちではどうするか悩ましくなってきた・・・。(ガッツウイングとかシズマ会長の秘密とか登場怪獣とか・・・。)
そもそも本当に本格連載するかも決まっていない・・・本当にどうしよう・・・・。


ある日の夕方、トモミの耳にマルゥルからある出来事が伝えられた。マルゥルの言葉を聞いてトモミは驚いた表情を見せる。

 

「地球で再びクリッターが観測された⁉︎」

「ああ・・・シズマ財団が地球の電離層に無数の生命反応を観測して調査したところ、クリッターと思われる生命反応が出たらしい。」

「クリッターって・・・確かガゾートの・・・。」

「ああ、変異前の姿だ。だからもしかしたら再びガゾートが現れる可能性もある。十分に気をつけた方がいいぜ。」

 

『クリッター』それはかつてプラズマの影響で怪獣になった電離層に生息している生命体だ。過去に地球を去った筈のクリッターが戻って来た事で再びガゾートが現れる可能性が出来た事で彼女は緊張に満ちた表情になる。トモミは再び怪獣が現れるかもしれないという事に危険を感じずにはいられなかった。

 

「もしもガゾートが現れたら多くの人々が犠牲になります!それだけじゃない‼︎地球からいなくなった筈の怪獣が三度に渡って現れるという事に・・・‼︎」

「GIRLSももしものために備えておいた方がいいぜ。」

「分かりました。もしものために他の皆にも伝えます‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

トモミとマルゥルが話をしている間、ツバサはレイカ、ユナ、アキトと共に下校してGIRLSに向かう途中だった。

 

「アキト先輩とユナ先輩と一緒に学校から帰れる日が来るなんて思いませんでしたよ!僕達には縁が無いものと思ってましたから‼︎」

「・・・・ウザ・・・・。別に行き先が同じだけだろうが・・・。」

「ちょっとアキトさん‼︎」

「駄目だよ、アキト。後輩に対してそんな口を聞いちゃ。御免ね、レイカちゃん。色々と」

「い、いえ・・・気にしないで下さい‼︎ユナさんが謝る事じゃ無いですから‼︎」

 

4人は並んで歩いていた。暫くしてユナが何かを思い出すと3人に向き合って発言する。

 

「ねぇ、3人とも着替えを取りに家に寄ってもいい?」

「僕は大丈夫ですよ。」

「ええ、大丈夫です。」

「ありがとう。ちょっと待っててね。」

 

 

 

 

 

 

ツバサ達がユナの家に向かっていた頃、ベニオ、ミカヅキ、ラン、トモミ、ミコ、クララの4人は休憩スペースでお茶を飲みながらTVを見ていた。TVでは再び現れた怪獣とウルトラマントリガーの話で持ちきりだった。

 

『地球からいなくなった筈の怪獣が現れる事件が2度も起きましたがどの現場も再び現れた新たなウルトラマン『ウルトラマントリガー』によって倒されました。しかし、GIRLSや政府はトリガーと戦闘を繰り広げた新たな巨人とウルトラマントリガーに何らかの関連があると指摘し、ウルトラマントリガーを監視対象とする方針を・・・・』

「おい‼︎監視対象って何だよ⁉︎アイツは俺達を助けてくれたんだぞ‼︎それなのにGIRLSはトリガーを敵と疑ってるっていうのかよ‼︎」

「レッドン・・・確かにこれまでの場合だったらトリガーは今まで現れたウルトラマン同様人類の味方と断定されていたでしょう・・・ですが今回はウルトラマンと共通した特徴を持つ闇の巨人も共に現れています・・・それに闇の巨人が復活してから地球からいなくなった怪獣が現れる事件も起こりました・・・・怪獣・・・そして闇の巨人に継ぐ新たな脅威になり得る存在になると考えた結果GIRLS上層部はトリガーも人類の味方である保障が無いと判断しました。」

「何だよ、それ⁉︎俺達の為にアイツは戦ってくれたのに・・・‼︎」

「そもそも今までウルトラマンをあっさりと信用しすぎていたというものもあると思うわ。」

「おい、エレ‼︎」

「2人ともちょっと落ち着きなよ‼︎」

 

GIRLS上層部の判断にベニオは歯を食いしばって握り拳を作る。トモミの言葉に補足したランの態度にベニオは食ってかかるもミコに止められる。そんなベニオにミカヅキが明るく話しかける。

 

「大丈夫だよ‼︎トリガーが味方だとGIRLSのお偉いさん達に分かってもらえるようにすればいいんだから‼︎」

「ゴモラ・・・そうか・・・そうだよな‼︎」

 

 

 

 

 

 

その頃、ミカヅキ達が見ていたニュースが街のビジョンに映し出されていた。そしてそれを見ていた人々の中でトレジャーハンターを思わせる男は興味深そうに呟いた。

 

「ふ〜ん・・・・ウルトラマンねぇ・・・・・。」

 

そしてその男は後ろを振り向いて少し足を進めると一瞬で姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

その頃、ツバサ達はユナの家に辿り着いた。そこはかなり大きな豪邸でツバサとレイカは唖然としていた。思わずツバサとレイカは思った事を口に出してしまう。

 

「ここがユナ先輩の家なんですか⁉︎」

「かなり大きな豪邸ですね・・・流石お嬢様と言った感じです・・・。」

「というかこの家でシズマ会長と2人で暮らしているんですか⁉︎」

「まぁ、お父様は仕事で殆ど家に帰らないけど・・・それにアキトも一緒だよ。」

「「えっ⁉︎」」

「アキトがまだ小さかった頃に家に来たの。その後にマルゥルも家に住んでた時期があったから兄弟みたいに暮らしてきたの。ちょっと待ってて。」

 

ユナが自分の部屋に向かうとアキトは小さい声で浮かない表情を浮かべながら呟いた。ツバサとレイカは思わずアキトの顔を見る。

 

「だな・・・。」

「?」

「アキトさん・・・?」

 

ユナは支給されたGIRLSの制服を鞄に詰め込んだ。その時、自分しかいない筈のこの部屋でユナの後ろから声が聞こえた。

 

「こんな物かな。」

「いいねぇ・・・ゴクジョーだ!」

 

ユナが振り向くと後ろのソファーに腰掛けるトレジャーハンターを思わせる男がいた。男はユナを見て指を鳴らす。

その頃、ツバサとレイカはアキトの様子を伺っていた。するとユナの悲鳴が聞こえてきた。ユナはアキトにしがみ付いてきた。

 

「嫌ーっ‼︎もう・・・何⁉︎」

「どうしたんだ、ユナ⁉︎」

「ユナ先輩⁉︎どうしたんですか⁉︎」

「悲鳴を出していましたが・・・‼︎」

 

レイカが前を見ると階段からトレジャーハンターを思わせる男が降りてきた。男はユナに呼び掛ける。

 

「何で逃げるのかねぇ・・・。」

「逃げるに決まってるでしょ‼︎」

「誰ですか、貴方は⁉︎ここに何処からどうやって入ってきたんですか⁉︎」

「ユナに近付くな‼︎」

 

アキトは男に向かって突進するもあっさりと避けられる。すぐに男に体の方向を向けたアキトは男の胸ぐらを掴んだ。男は降参したかのように両手を上げるがアキトの腕を振り払うとすぐに突き飛ばしてアキトから距離を取る。アキトは拳を放つがすべて受け流され投げられてしまう。そしてアキトの体は近くのテーブルを破壊しながら倒れる。

 

「アキト先輩‼︎」

「よっ!」

「えっ?うおあああ⁉︎」

 

ツバサは目の前の男に向かっていくが男はその場のテーブルに置かれていたグラスなどをツバサに放り投げる。ツバサは思わずそれを掴むと男はテーブルクロスをツバサに放り投げた。テーブルクロスを顔面に被ってしまったツバサは視界が遮られ転んでしまう。アキトは男を羽交い締めにして動きを封じようとするが男はすぐに振り切った。

ツバサもテーブルクロスを振り払うと男に向かっていくが受け流されてしまう。アキトも立ち直って突撃するが男の蹴りを受けて倒れてしまう。ツバサは男に突撃するが腕を掴まれて投げられてしまう。投げられたツバサにレイカとユナが駆け寄った。

 

「ツバサさん‼︎」

「大丈夫⁉︎」

 

近付いてくる男にレイカは思わずソウルライザーを取り出した。そしてそのまま怪獣娘に変身しようとするがその前にアキトが男の胸に1発拳を打ち込んだ。男は後ろに下がると目を光らせ顔に炎のような紋章を浮かべながら笑みを浮かべる。

 

「やるねぇ・・・。」

「顔が‼︎」

「・・・まさか宇宙人⁉︎」

「宇宙人が何で私を?」

 

ユナの言葉に男は語り始めた。4人は黙ってそれを聞いていた。

 

「俺は宇宙一のトレジャーハンター。銀河を股にかけゴクジョーな物だけを手に入れる。」

「ゴクジョー・・・?」

「そう・・・火星開拓にまで乗り出したシズマ財団。そのお嬢様であるシズマ・ユナ・・・君こそゴクジョーではないか!」

「そ・・・そうね・・・分かってるじゃん!」

「ふざけるな‼︎ユナはお前のゴクジョーじゃない‼︎ユナは・・・ユナは・・・。」

 

言葉を濁すアキトの様子にツバサとレイカは顔に疑問を浮かべる。少し言い淀んだ後、アキトは叫ぶ。その後に続いてレイカもソウルライザーを構えて叫んだ。

 

「・・・兎に角お前のものじゃない‼︎」

「・・・そうです‼︎人は物じゃありません‼︎ユナさんには手出しさせません‼︎ソウルライド、『ウインダム』‼︎」

 

レイカは怪獣娘『ウインダム』に変身して額からレーザーを放つ。男は飛び上がってレーザーを避けるとウインダムの後ろに回り込んだ。

 

「なっ⁉︎」

「ほお・・・眼鏡のお嬢さん、お前さんが怪獣娘って奴か・・・この星のお嬢さん方の中には怪獣の魂を宿して怪獣に変身出来る者がいるというのは本当だったようだな‼︎」

「くっ‼︎」

 

ウインダムは拳を放つも男はあっさりと避ける。ウインダムはパンチが避けられたと知ると今度は蹴りを放つがこれはあっさりと避けられてしまった。

 

「おっと‼︎どうやら戦いの経験は俺の方が上のようだぜ!怪獣娘さんよ‼︎」

「それでも・・・それでも退くわけにはいきません‼︎」

「へぇ・・・勇ましいねぇ。」

 

男はウインダムのレーザーを避けると再び自分が元いた位置に立つ。そしてアキトを見て宣言した。

 

「それと一つ言っておくぜ。全てのゴクジョーは俺に盗まれる運命にある!また来るぜ‼︎」

 

そう宣言した男は顔に紋章を浮かべながら緑色のオーラと共に姿を消してしまった。アキトは男を逃がさまいと駆け出すも男が立っていた位置に立つ頃には男は完全に姿を消していた。男が完全にその場から消えた事を確認するとユナは3人に礼を言う。

 

「3人のお陰で助かったよ。ありがとう。」

「いえ・・・僕達やられっぱなしでしたから・・・。」

「それにしても・・・・あの宇宙人は何者だったのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、GIRLS東京支部に配置されたアキトの研究室にミツクニとアキトが立っていた。彼らの目の前には超古代文明が遺した石板が貼られている。ミツクニは石板に描かれた絵を指差しながら言葉を放つ。

 

「ユナが異星人に狙われるとはな・・・。かつて超古代文明を滅ぼしたと伝わる闇の巨人・・・・シズマ財団本部の前に現れたカルミラ・・・お台場に現れたダーゴン・・・・もしその男が最後の一体『ヒュドラム』なら奴らの目的は一体何だ?この石板を全てが解読出来れば・・・答えは出るのか・・・?」

「ユナに真実を話さなくていいんですか?」

 

アキトは何処か思うような表情を浮かべながらミツクニに問い掛ける。どうやらユナには何かの秘密があり2人はそれを知っているらしい。ミツクニは石板を見ながらアキトの疑問に答える。

 

「時が来れば・・・私が話す。」

「・・・・・分かりました。ユナは必ず俺が守ります。」

 

そして何の力も宿っていないGUTSハイパーキーに新たな力が宿ったのか青いトリガーが描かれたGUTSハイパーキーが完成した。

 

 

 

 

 

 

 

その翌日、ツバサ達4人にアキとミクが付いていた。彼女達はレイカとツバサの報告を聞いたトモミの判断によりGIRLSに向かうユナの護衛を引き受けたのだ。

 

「ユナさん・・・大丈夫?」

「大丈夫。昨日はレイカちゃん達のお陰で助かったから。」

「い・・・いえ・・・結局その宇宙人を逃してしまったから・・・大した事は出来ませんでした・・・。」

「そんな事無いよ‼︎レイカだってあの宇宙人に立ち向かったじゃん‼︎僕とアキトだけじゃあんなに対応出来たかどうか・・・。」

 

ツバサの言葉にアキトは顔を顰める。そんな中、レイカは何処となく浮かない表情だった。そんなレイカを察したのかアキはレイカに質問する。

 

「どうしたの?ウインちゃん。」

「あっ・・・・いえ・・・・その・・・・私も近接戦闘の方を磨こうかなと思いまして・・・・昨日あの宇宙人相手に上手く戦えたとは言い難いですから・・・。」

「ウインちゃん・・・・。」

 

そんな会話をしている中、青い斬撃が襲いかかる。ツバサ達は何とか避けるとその先には青と白、それに黒のカラーリングに右肩に風を象った意匠が付いた異形が立っていた。その異形は笑い声を上げながらツバサ達に近付いてくる。

 

『フッハッハッハッハッ‼︎』

「本当にまた来た‼︎」

「今度は宇宙人モード全開だね‼︎」

 

アキトは目の前の異形を見据えるとガンモードのGUTSスパークレンスに最強の怪獣娘に宿るカイジューソウルの怪獣『ゼットン』が描かれたGUTSハイパーキーを装填した。

 

「ゼットンが描かれたGUTSハイパーキー⁉︎そんなのもあるの⁉︎」

「ああ‼︎威力が高いコイツで一気に肩を付ける‼︎」

〈BOOT UP! FIRE BALL‼︎〉

 

アキトのGUTSスパークレンスから宇宙恐竜『ゼットン』の力を宿した火球が放たれた。しかし、目の前の異形はそれをあっさりと避けてしまう。レイカ達は怪獣娘に変身して迎え撃つ準備をした。レイカは額からのレーザーで異形を狙い撃つも余りにも早い動きに彼女のスコープが捉えられない。

 

「は、速すぎて捉えられません‼︎」

「だったらあたしが‼︎うおりゃああああ‼︎」

 

ミクラスが拳を放つも彼女の拳は空中を舞うだけだった。アギラは突進攻撃を仕掛けるようとするが動きの速さに追い付けず狙いを定められないでいた。

 

「ど・・・どうしよう・・・・このままじゃ。」

『〜〜〜〜〜〜。』

 

異形はツバサ達の目に捉えられないスピードでユナの後ろに回り込むとあっという間にユナに左腕に装着された剣を突きつける。

 

「ユナ先輩‼︎」

 

目の前の異形は剣から斬撃波を放つ。ツバサ達は横に分かれてそれを避ける。その間に異形はユナを連れて何処かへ飛んでいってしまった。ウインダムはユナの名前を叫ぶ。ツバサはアキトに呼びかけるとアキトは手持ちの携帯端末でユナの居場所を既に探っていた。

 

「ユナ先輩‼︎」

「アキトさん、ユナさんを追い掛けないと‼︎」

「分かってる‼︎既にGPSで追跡中だ‼︎」

 

そしてツバサ達はアキトの道案内を頼りにその場を走っていく。しかし、ツバサ達は先程ユナを連れ去った異形こそミツクニが復活を恐れた闇の巨人の最後の1人である俊敏策士『ヒュドラム』である事はまだ知らなかった。




本格的に連載する場合はもう少し可能な限り増やします。そうしないと前編、中編、後編の3部構成に出来ない以上ご了承下さい。
・・・・・そもそもこちらに関してはまだ本格連載するかも決まっていませんが・・・・。

それとこの時点ではタイマンでは戦っていませんが仮に連載するとなったらこの後のお話でウインちゃんはカルミラ、ダーゴン、ヒュドラムとタイマンで戦う事になります。


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超古代の光と闇(後編)

今回、イグニスに色々な捏造設定を入れています。それが許せる方はどうぞ。

変形闇怪獣『ガゾート』登場
猿人宇宙人『ゴーロン星人サリー』登場


ユナは目覚めると何処かの倉庫で椅子に触らされていた。その目の前には自身を誘拐した異形がいる。ユナはその異形に目的を問いかけるもその言葉は人間には理解できないものであった。

 

「貴方の目的は何⁉︎」

『〜〜〜〜〜〜〜。』

「えっ・・・何言ってるの?」

 

ユナに自身の言葉が伝わらないと分かった異形は喉を弄る。すると異形は日本語を話し始めた。

 

『これは失礼。私の言葉が理解出来ますか?』

「何が目的?私を拐ってどうするつもり⁉︎」

『何を今更、分かり切った事を。』

 

異形の右腕に備えられていた剣が飛び出すと異形は剣を首に突き立てる。ユナはそれでも怯まず目の前の異形に目を向ける。

 

『さぁ、エタニティコアの元に案内してもらいましょうか、ユザレ。』

「ちょっと待って・・・エタニティコアなんて知らないし・・・私はユザレじゃない!」

 

ユナの言葉を聞いた異形は考える仕草を取ると結論付ける。ユナは目の前の異形の言葉の意図を理解出来ずにいた。

 

『フム・・・・どうやらまだ覚醒前のようですね。』

「覚醒?一体何の事?」

 

その時、緑色の波動が異形を吹き飛ばした。異形は前転して起き上がると目の前に1人の男を視認する。それは昨日、ユナを狙ってやってきたトレジャーハンターを思わせる宇宙人の男だった。完全に目の前の異形が昨日の男の正体だと思っていただけに驚きを隠さずにいた。彼女は椅子から立ち上がって男に向かっていく。

 

「えっ⁉︎貴方がアイツじゃなかったの⁉︎」

「久しぶりだな、ヒュドラム・・・俺の事を覚えているか?」

『はて・・・何処のどなたです?』

「よーく分かった・・・お前にとってはその程度ってことかぁ‼︎」

 

異形の言葉を聞いた男は顔に紋章を浮かび上がらせながら怒りを露わにする。男の紋章を見た異形は笑いながら答えた。

 

『その紋章・・・リシュリア星人・・・フフフ・・・フハハハハハハハ‼︎エクセレント‼︎思い出しましたよ‼︎・・・・おや、客人のようですね・・・。』

 

異形はその場に近づく者達に気付くとその場を去っていった。そこにツバサ達が駆け付ける。そして未だ異形と昨日の男が同一人物だと思っていくアキトは目の前の男をGUTSスパークレンスで銃撃する。

 

「ユナ先輩‼︎」

「「「ユナさん‼︎」」」

「やっぱりお前か‼︎」

「ユナさんを返せ‼︎」

「待って、アキト‼︎レイカちゃん、アキちゃん、ミクちゃんも聞いて‼︎違うの‼︎」

 

隣にいる男と先程の異形が別人である事を知っていたユナは咄嗟に男を庇う。しかし、アキトは既に引き金を引いておりウインダムも額からレーザーを撃つ。ツバサは男に向けられた攻撃がユナに直撃しそうになったため、駆け出そうとする。しかし、ユナの言葉で急ブレーキを掛けたアギラとミクラスは目の前で止まるもウインダムとアキトの放ったそれの直撃はどう考えても間に合わなかった。思わずウインダムとアギラは叫ぶ。

 

「ユナさん、逃げて‼︎」

「‼︎・・・・・・。」

 

ユナにアキトの銃撃もウインダムのレーザーが当たりそうになった時、ユナの体に異変が生じる。そして彼女は銀色の髪の瞳の青い少女に変身した。その少女はバリアを張って男を守る。ツバサはその姿に心当たりがあった。

 

「ゆ、ユナさん⁉︎その姿は一体⁉︎」

「君は・・・夢の中の‼︎」

「えっ⁉︎ツバサくん・・・何を言ってるの⁉︎」

「ユザレ⁉︎・・・怪獣娘達の前に現れるとは・・・。」

「ユザレ?」

 

目の前でアキトに『ユザレ』と呼ばれた少女はツバサ達に警告した。それは闇の巨人に纏わる言葉だった。

 

「渡してはいけない・・・エタニティコアを・・・・闇の巨人に・・・。」

 

警告を終えたユザレが消えてユナに戻る。ユナはその場で地面に倒れてしまった。イグニスはその場から去り、ツバサ達はユナに駆け寄る。

 

「ユナ‼︎」

「ユナ先輩!大丈夫ですか⁉︎」

 

アギラはユナに駆け寄るとユナの安否を確認する。アギラはユナの状態を確認するとツバサ達に告げる。

 

「大丈夫だよ、気を失ってるだけ。」

「良かった・・・ユナ先輩・・・。」

「ねぇ、アキトさん・・・ユザレって誰⁉︎ユナさんは何故あんな事が出来るの⁉︎」

「・・・・悪いけど・・・・俺の一存だけじゃ話せない・・・ミツクニさんにこの事を報告するまで待ってくれないか?」

「ええっ⁉︎シズマ会長も今の事について何か知ってるんですか⁉︎」

 

かぷせるがーるずがユナとユザレについて問い詰めている中、先程の異形・・・闇の巨人の最後の1人俊敏策士『ヒュドラム』は1人いい答えを見つけたとばかりに歓喜な声を上げていた。

 

『エクセレント‼︎覚醒を促すいい方法が分かりましたよ。その身に危険が迫ればいいのですね‼︎』

 

ヒュドラムは指を鳴らした。それと同時に街の真ん中で巨大な竜巻が発生する。それを観測したGIRLS東京支部ではピグモン達がモニター越しにその竜巻を見ていた。

 

「東京都心部で巨大な竜巻が発生しました‼︎」

「何・・・・この竜巻⁉︎」

「どう見ても自然現象とは思えねぇ‼︎何かあるだろ、コレ‼︎」

「今、現場近くにアギアギ達がいます‼︎彼女達に市民の救助と避難誘導を頼みましょう‼︎」

「ピグモン‼︎俺達も行く‼︎」

 

レッドキングの言葉にピグモンは頷く。そしてレッドキング、エレキング、ゴモラ、ガッツ星人の4人が竜巻が部屋を出て行った。その時、マルゥルが竜巻の中に何かがいるのを感知する。

 

「とんでもねぇ数値の電磁波が出てる!それに竜巻の中に無数の生命反応が‼︎しかもそれが融合してやがる‼︎」

「生命反応⁉︎どんな生物が⁉︎」

「ちょっと待ってろ‼︎・・・・この生命反応は・・・クリッターだ‼︎」

「ええっ‼︎」

 

ピグモンはマルゥルの言葉に驚く。一方でここに待機する事になったザンドリアスとマガバッサーはピグモンが驚いている理由が分からず首を傾げている。

 

「あの・・・ピグモンさん・・・。」

「そのクリッター・・・って生物にどうしてそこまで驚くんですか?」

「ザンザン‼︎バサバサ‼︎お2人も授業を受けた筈です‼︎かつて大気圏内の電離層に生息する生命体『クリッター』が電磁波の影響を受けて現れたあの怪獣の事を‼︎」

「それってもしかしてガゾートですか⁉︎」

「そうです‼︎」

「竜巻の中で強力な電磁波が・・・・そして無数のクリッターが融合・・・まさか‼︎」

 

マガジャッパが授業で受けたガゾートの事を思い出す。そしてノイズラーは今の状況を整理してこれから起こる事を予想する。その時、モニターの映像で竜巻の中から青い背中に白い体、いかにも凶暴そうな面の怪獣が現れた。

 

「変形怪獣・・・ガゾート‼︎」

「いや、待て‼︎あの目・・このガゾートは普通のガゾートじゃねぇぞ‼︎・・・・・なっ、嘘だろ⁉︎」

「どうしたんだよ?」

「ガゾートから闇の巨人と同じエネルギー反応が出てるんだよ‼︎」

「ええっ⁉︎」

 

マルゥルの言う通り、このガゾートはヒュドラムによってクリッターが変化させられた怪獣である。それ故に闇の巨人と同じエネルギー反応が観測されたのだ。マルゥルの言葉を聞いたミツクニは渋い表情を見せて呟いた。

 

「このガゾートは闇の巨人によってクリッターが変異したものか‼︎・・・この星に戻ってきて早々に・・・闇の巨人によって怪獣化させられるとはな・・・。」

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアァァァァ‼︎」

 

竜巻の中から現れた変形闇怪獣『ガゾート』は口から放つプラズマ光弾を放って街を破壊する。その場に先にGIRLSを出て行った4人がやって来る。4人は上空からガゾートのプラズマ光弾を受けて破壊された街の真ん中にやって来る。

 

「ひ・・・酷い・・・・。」

「このままじゃ、大惨事になる‼︎俺達でガゾートを止めるぞ‼︎」

「無理よ。アイツは上空にいる。私達の攻撃は届かないわ。」

「けど・・・このままじゃ‼︎」

 

4人が話している中、ガゾートが地上に降りてきた。ガゾートは地面に降り立って早々にレッドキング達4人を発見する。思わず彼女達はガゾートと目が合ってしまった。そしてガゾートは彼女達を見ると鋭い牙を備えた口を開けて彼女達に迫る。

 

「トモダチェエアアア‼︎」

「へっ⁉︎友達⁉︎」

「レッド‼︎危ない‼︎」

 

ガッツ星人は思わず立ち止まったレッドキングを引っ張る。その後、ガゾートがレッドキングが立っていた地面に噛み付いた。ガゾートが離れるとその後には巨大な歯形が残っている。

 

「確かガゾートにとっての友達は自分達の餌よ‼︎」

「えっ⁉︎ま、マジかよ⁉︎」

「もう‼︎レッドちゃんってば授業でも習ったでしょ‼︎ガゾートは餌が少ない電離層に住んでいるから共食いをする習性があるって‼︎」

「わ・・・悪い・・。」

「レッドだけじゃなくてわたし達の事も完全に餌だと思ってるね・・・。」

 

ガゾートは再び大口を開けて彼女達に噛み付こうとする。4人は高くジャンプして散る。4人が立っていた後は完全に地面が抉り取られていた。

 

「ウチ、食べるのは好きやけど食べられるのは嫌や〜‼︎ガッちゃん、何とかして〜‼︎」

「わたしもそれどころじゃないよ‼︎」

 

ガゾートはガッツ星人に目を向けるも彼女目掛けてプラズマ光弾を放った。彼女は瞬間移動でそれを避ける。ガゾートは今度はゴモラに目を付けた。

 

「トモダチィィィィィィ‼︎」

「ウチはあんたの食料じゃなーい‼︎」

 

 

 

 

「アキト先輩、僕は彼女達を助けに行きます‼︎ユナ先輩の事を頼みます‼︎」

「おい!」

 

ツバサは先に避難誘導に行った3人に続いて自身も飛び出していこうとする。するとアキトがツバサに何かを放った。それは新たなGUTSハイパーキーだった。

 

「本当のスピードを見せてやれ。」

 

ツバサはアキトに頷くとツバサはGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを取り出した。

 

〈ULTRAMAN TRIGGER! MULTI TYPE‼︎〉

 

起動したGUTSハイパーキーをGUTSスパークレンスの銃底にセットした。

 

〈BOOT UP! ZEPERION‼︎〉

 

銃身を開いてGUTSスパークレンスを持った右手を前に突き出すと左側から右側に動かしていく。そして引き金を引いて天に掲げながらその名を叫んだ。

 

「未来を築く希望の光‼︎ウルトラマントリガアアアァァァァ‼︎」

ULTRAMAN TRIGGER! MULTI TYPE‼︎

 

ツバサはウルトラマントリガーに変身する。そしてその様子を見ていた男がいた。それはユナを狙った宇宙一のトレジャーハンターを名乗る男だった。

 

「アイツが・・・トリガー⁉︎」

 

トリガーは街に現れると目の前のガゾートに向かって構える。ガゾートはトリガーに向かって突進した。

 

「ギャアアアアアァァァァ‼︎」

 

トリガーはガゾートの突進を受け流すとガゾートの右腕を抑える。そして右腕にチョップを叩き込んだ。再びガゾートは左腕でトリガーを殴打する。トリガーはそれを受け止めるが近付いた隙を狙ってガゾートがトリガーの右腕に噛み付いた。

 

「ジェアッ‼︎」

「ウルトラマントリガーを食ってやがる‼︎クソッ、ふざけやがって‼︎」

「レッドちゃん‼︎」

 

レッドキングはゴモラの制止も聞かずにガゾートの真上にジャンプし、その脳天に剛力の拳を叩き込んだ。それを受けたガゾートは頭に違和感を感じてトリガーから離れる。トリガーはその隙にガゾートの頭を抑えて膝蹴りを撃ち込んだ。そして再びガゾートの頭を抑えつけるとその体を投げ飛ばした。ガゾートは口からプラズマ光弾を放つ。それはトリガーの足元で大爆発を起こした。

 

「トモダチィィィィィィ‼︎」

「ウルトラマントリガーを友達と言ってる・・・。」

「でも・・・それってトリガーを食料だと・・・。」

 

ガゾートは空に飛び上がった。空中で制止するガゾートを見てトリガーの中のツバサは先程アキトから受け取ったGUTSハイパーキーを取り出した。

 

「こうなったら‼︎」

〈ULTRAMAN TRIGGER! SKY TYPE!〉

 

ツバサはマルチタイプキーを抜くと新たな『スカイタイプキー』をGUTSスパークレンスの銃底に装填した。

 

〈BOOT UP! LANBULLET!〉

 

そしてツバサは再びGUTSスパークレンスを持った右手を天に掲げながら引き金を引いて叫ぶ。

 

「天空を駆ける、高速の光‼︎ウルトラマントリガアアアァァァァ‼︎」

ULTRAMAN TRIGGER! SKY TYPE‼︎

 

トリガーは腕を額の位置で交差させる。するとトリガーの色が青くなり頭頂部と両耳に金の装飾が施された新たな姿『ウルトラマントリガー・スカイタイプ』に変化した。

 

「見て‼︎ウルトラマンの色がまた変わった‼︎」

「今度は見た感じスピード特化に掛けた姿でしょうか?」

 

地上ではミクラスがその姿を見てはしゃいでいた。ウインダムが分析をする中、トリガーはガゾートを追って空に飛び上がる。

 

「ギャアアアアァァァァ‼︎」

 

ガゾートはトリガーに向けて口からプラズマ光弾を放つもそれをトリガーは正確に避ける。ガゾートは更に上に飛び上がるがトリガーもそれを追って飛び上がった。ガゾートは更に口からプラズマ光弾を放つ。そしてその一部が下にいるレッドキング達4人に降り注いだ。

 

「⁉︎」

「しまった⁉︎」

「ヤベぇ⁉︎」

「うわああっ⁉︎」

 

思わず覚悟を決めて目を瞑りながら腕で頭を覆う4人。トリガーは急降下してバリアを張って彼女達を守る。4人は思わず安堵した表情になる。

 

「た・・・助かった・・・・。」

「おい、ピグモン‼︎トリガーは監視対象だと言ってたがどうするんだ⁉︎」

 

思わず呟くガッツ星人の横でレッドキングはピグモンと通信を取る。GIRLS東京支部ではそれを見たピグモンがガゾートと光線の打ち合いをするトリガーを見て決意した。

 

「責任は私が取ります!ウルトラマントリガーを援護して下さい‼︎」

 

それを聞いたレッドキングとゴモラは歓喜の声を上げるも上を見上げるエレキングとガッツ星人の言葉で一気に現実に引き戻された。

 

「よっしゃあ‼︎」

「それでこそピグちゃん!ウチらもいっくでー‼︎」

「待ちなさい、この距離じゃ無理よ。」

「トリガーもガゾートもわたし達か届かない高さまで飛んじゃったんだから。」

「うっ・・・‼︎」

 

その頃、今度は立場が変わり空を飛ぶトリガーをガゾートが追っていた。ガゾートは口からプラズマ光弾を放ってトリガーを攻撃する。それはトリガーの背中に命中するが下に降下するだけで地上に落ちるまででは無かった。更にガゾートがプラズマ光弾で追撃する。そこに火球がガゾート目掛けて飛んできた。それを受けたガゾートは悲鳴を上げる。

 

「ギャアアアアァァァァ⁉︎」

「ジャッ⁉︎」

 

トリガーが火球が飛んできた方向を見るとそこには最強の怪獣娘であるゼットンがいた。彼女は額にエネルギーを溜めて更に火球を撃ち込んだ。それはガゾートに確かにダメージを与える。

 

「ギャアァァァァァァ⁉︎」

「今よ・・・・ウルトラマン。」

 

トリガーは頷くと両手を水平に広げてエネルギーを溜めていく。両手を左腰に持っていき光エネルギーを集めると右腕を突き出して必殺光線である『ランバルト光弾』が放たれた。

 

「ヘアッ‼︎」

 

ガゾートはランバルト光弾を受けて地上に落ちていく。しかし、頑丈だったのかガゾートは再び立ち上がってプラズマ光弾を放った。それはトリガーに命中して大爆発を起こす。

 

「ギャアアアアアァァァァ‼︎」

 

勝利を確信したガゾートは雄叫びを上げる。しかし、爆炎の中からパワータイプにチェンジしたトリガーが現れた。ガゾートは再びプラズマ光弾を放つ。しかし、トリガーはそれを両手で受け止めた。そして両手に力を込めてガゾートのプラズマ光弾を自身に宿るデラシウムエネルギーに変換する。プラズマ光弾をデラシウム光球に変化させたトリガーはそれをガゾートに投げ付けた。ガゾートは思わず飛び上がってそれを避けようとするが地面をバウンドしたデラシウム光球が見事にお腹に直撃する。そしてそのままガゾートは大爆発を起こした。そして周りの雲が晴れて夕焼けをバックに空中にトリガーが浮かび上がる。

 

「やったぁぁぁぁ‼︎」

「よっしゃああぁぁ‼︎」

「やりましたね‼︎」

「さっすがウルトラマン‼︎」

 

現場でトリガーの戦いを見ていたレッドキング達もGIRLSに残っていたピグモン達も喜びの声を上げる。しかし、それは長く続かなかった。何故なら後ろから斬撃光線が飛んできて空中に浮かぶトリガーを撃ち落としたからだ。

 

「ジャッ⁉︎」

 

トリガーはビルを破壊しながら地面に墜落する。それを見ていたピグモン達は何が起こったのか分からない様子だった。そして地上にいたウインダム達が何かが降りて来るのを確認する。

 

「見てください‼︎何か降りてきます‼︎」

「えっ⁉︎アレは‼︎」

 

そしてトリガーの前に降りてきたのは先程自身達の前でユナを誘拐した異形の存在だった。GIRLS本部のミツクニは思わずそれの名を呟いた。

 

「アレは・・・闇の巨人最後の一体・・・ヒュドラム‼︎」

「ええっ⁉︎アレが闇の巨人の最後の1人なんですか⁉︎」

 

ミツクニの呟きに思わずマガバッサーが驚いた声で叫ぶ。彼女の声に頷いたミツクニから再びモニターに目を移した怪獣娘達はヒュドラムに目を離さないでいた。

 

「ちょっと嘘でしょ・・・。もう最後の1人が復活してたっていうの⁉︎」

「ヤバいってコレ・・・絶対にヤバい・・・。」

 

怪獣娘の中で1番年下のザンドリアスとノイズラーは降り立ったヒュドラムに目を向けながら呟く。

 

 

 

 

一方で現場にいた怪獣娘達もそれが闇の巨人の最後の1人だと知って目を離さないでいた。

 

「アレが闇の巨人最後の・・・。」

「既に復活してたのね・・・。」

「嘘・・・。」

 

怪獣娘達がヒュドラムから目を離せない中、ヒュドラムは地面に背をついたトリガーに話しかける。トリガーの方はカラータイマーを鳴らしながらヒュドラムを見る。その時、ツバサの中にカルミラの右横で何者かと対峙するヒュドラムの姿が見えた。

 

『エクセレント‼︎懐かしいですね、トリガー。』

『これは・・・トリガーの記憶⁉︎まさか・・・アイツが最後の闇の巨人⁉︎』 

『さぁ・・・優雅な戦いを楽しみましょうか・・。』

 

ヒュドラムは右腕に装備した剣『ダガーヒュドラム』を撫でるとそれを構えてトリガーに向かっていく。トリガーは再びスカイタイプにチェンジしてサークルアームズを呼び出した。

 

〈CIRCLE ARMS‼︎〉

 

サークルアームズの刃を180度開いて弓状に変化する。トリガーはサークルアームズをスカイタイプ用の形態『スカイアロー』に変化させる。

 

〈SKY ARROW‼︎〉

 

そしてトリガーはヒュドラムに向かっていった。両者はお互い武器をぶつけながら空中でぶつかり合う。怪獣娘達の目に止まらぬ速さでお互いの武器をぶつけ合う両者。上空に飛んだかと思えば地上に降り立ち、再び飛び上がる。やがて両者は飛び上がって対峙する。ツバサはサークルアームズにスカイタイプキーをセットする。そしてサークルアームズの引き金を引いた。

 

〈MAXIMUM BOOT UP! SKY‼︎ LANBULLET ARROW STRIKE!〉

 

トリガーのサークルアームズから青い閃光の矢が放たれた。ヒュドラムも右腕の剣に力を溜めて特大の斬撃波を放つ。両者が放った技は空中で大爆発を起こす。そして爆炎が晴れると両者は共に突撃した。空中ですれ違いざまにお互いが斬り付けられる。そしてトリガーは地面に転がっていった。一方でヒュドラムはその足で地面を滑りながら立ち止まる。

 

『フハハハハハ‼︎ハーッハッハッハッハッハ‼︎』

 

ヒュドラムは勝利を確信すると残酷な彼の本性を表した笑い声を上げる。しかし、彼の横でゼットンが自身の体より大きな火球を集めていた。そして彼女はそれをヒュドラムに撃ち込んだ。

 

「これ以上・・・隙にはさせない・・・。」

『ヌアアアアア⁉︎』

 

ヒュドラムはゼットンを確認すると黒いオーラを纏わせながら激昂して彼女に向かって行こうとする。

 

『またテメエかぁ⁉︎エクセレントじゃねぇな‼︎俺はお楽しみを邪魔させるのが宇宙一嫌いなんだよぉぉぉぉ‼︎』

 

ヒュドラムはゼットンにダガーヒュドラムを構えるがその前に彼の首に光の鞭が巻き付いた。それはカルミラの放ったものだった。カルミラがカルミラウィップでヒュドラムの首を拘束している間にダーゴンが後ろから羽交い締めにする。

 

『ヒュドラム‼︎落ち着け‼︎』

『止めろぉ‼︎離せぇ‼︎』

『また悪い癖が出たねぇ、ヒュドラム。アンタがキレたらこの星が滅ぶよ‼︎』

「お、おいアレ‼︎」

「カルミラにダーゴン⁉︎既に復活した2人まで‼︎」

「最悪の状況です・・・・・。」

 

カルミラとダーゴンの出現にレッドキングとガッツ星人は思わず声を上げてしまう。人々の避難誘導に回っていたウインダム達3人も含めて怪獣娘は思わず最悪の展開を思い描きながら身構える。トリガーも立ち上がって警戒する。

 

『今度はもっと情熱的にね・・・トリガー!』

 

しかし、カルミラ達闇の巨人は黒いオーラと共に何処かへ消えていった。現場にいた怪獣娘達は思わず安堵の表情を浮かべるがGIRLS本部ではミツクニとピグモン、キングジョーが共に苦い表情を浮かべる。

 

「闇の巨人が3体揃ってしまったか・・・。」

「かつて世界を滅ぼした3人の闇の巨人が全員復活するなんて・・・。闇と光の対決が再び・・・ですか・・・。」

「ワタシ達はこれから先、とんでもない敵との戦いを強いられる事になりそうデスネ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わって右腕を抑えながらツバサがアキトと合流する。そこにウインダム達もやってきた。

 

「アキト先輩・・・ユナ先輩とユザレには・・・。」

「・・・・・。」

「アキトさん、お願いします。全てを話して下さい!私だけじゃなくアギさんやミクさんも見てしまったんですから‼︎」

「よう‼︎」

 

そこに先程のトレジャーハンター風の男がやってくる。アキトは警戒するもツバサは彼に駆け寄った。

 

「お前‼︎」

「待って下さい!アキト先輩‼︎・・・あのユナ先輩を助けてくれたんですよね⁉︎ありがとうございました‼︎」

「つ、ツバサさん⁉︎」

 

男に対してお礼を言うツバサにウインダムだけじゃなくミクラスとアギラも困惑する。

 

「いや、その人ユナさんを狙ってきたんでしょ‼︎お礼を言うのは‼︎」

「ユナ先輩はこの人を庇ったんだ‼︎だから・・・きっとこの人が助けてくれたんだ‼︎あの・・・僕ツバサって言います‼︎こっちはアキト先輩でこちらが僕の幼馴染で怪獣娘のレイカ、アギさんにミクさんです。」

「そーいやちゃんと名乗ってなかったな・・・俺はイグニス。宇宙一のトレジャーハンターだ。必ずこのゴクジョーなお嬢さんは頂くぜ‼︎・・・てなわけでまたな。」

 

イグニスはツバサの肩を叩くとその場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

その夜、GIRLSの本部に配置されたアキトの研究室にツバサ、レイカ達かぷせるがーるずにアキト、そしてミツクニがいた。ミツクニは4人に自身とアキトだけが知ってた秘密を打ち明ける。

 

「ツバサ君達が見た女性はユザレという・・・超古代の巫女で今も思念体としてユナの中に宿っている。」

「知っているのは俺とミツクニさんだけだ。ユナには不安にさせたくなくてずっと隠してきた。」

「アキト先輩・・・。」

「闇の巨人達がユナを狙うのはユザレが関係している筈だ。ユナは超古代文明の謎を解く鍵なんだ。」

「どうかこのことはユナには内緒にして欲しい・・・抱えている運命の重さに耐えられるかどうか・・・。」

 

レイカ達はユナに背負わされた運命に何も言えずにいた。そんな中、ミツクニの言葉を聞いた3人の中でアキが口を開く。

 

「それってピグモンさん達にも話してはいけないんですか?」

「・・・・そうだ。」

「「「⁉︎」」」

 

ミツクニの言葉に3人は目を見開いた。思わずミクとレイカが抗議の声を上げる。

 

「そんな‼︎このまま黙っていたっていつか絶対にバレますよ‼︎」

「この事について隠したままでいたら取り返しの付かない事になる可能性だってあります‼︎早めに話したほうが」

「それでも・・・頼む・・・・ユナの秘密は他の怪獣娘には内緒にしてくれ‼︎」

 

ミツクニの表情にツバサは考える。そしてミツクニの言葉に答えた。

 

「分かりました‼︎」

「ええっ⁉︎本気ですか、ツバサさん‼︎」

「大丈夫だよ、僕らが何も話さなきゃいいんだから。」

「ありがとう。私は暫くここを離れる。ユザレが警告したエタニティコアについて調べてみる。ユナの事、頼む。」

 

5人はミツクニの言葉に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、何処かの高層ビルの屋上にイグニスが立っていた。イグニスは月を見ながら呟いた。

 

「ウルトラマントリガー・・・その力・・・ゴクジョーだな・・・。」

「兄貴〜っ‼︎」

「サリー⁉︎お前、どうしてここに⁉︎」

 

その時、イグニスの後ろに何者かが降り立った。それは茶色の体毛の猿人のような姿の宇宙人だった。その宇宙人の名は猿人宇宙人『ゴーロン星人』。かつて地球人の脳波を猿と入れ替えて地球侵略を目論んだ宇宙人の同族だ。サリーと呼ばれたゴーロン星人はイグニスに駆け寄った。

 

「兄貴〜、探したでガンス!まさか地球に来てたなんて思わなかったでガンスよ‼︎何でこの星に来たでガンスか⁉︎」

「お前には関係ないだろ‼︎後、俺を兄貴と呼ぶな‼︎」

 

イグニスはサリーと距離を取って手に持った携帯端末を取り出して1枚の写真を写す。そこにはイグニスと共に笑いあう6人の男女が写っていた。それを見ながら今度はボロボロの折れたサーベルを取り出した。イグニスはそれらを見合わせながら思いにふける。

 

(マーベラス・・・皆・・・・ヒュドラムを見つけたぜ。見ててくれ、必ずお前らの敵・・・・取ってやるからな・・・。)

 

 

 

 

その頃、何処かの海底で闇の巨人が揃っていた。ヒュドラムは未だに怒りを隠せないようだ。

 

『何故だぁぁぁぁ‼︎何故だと』

『いい加減にしなよ‼︎ヒュドラム‼︎』

 

カルミラはヒュドラムにビンタをかます。ヒュドラムはその衝撃で思わず冷静さを取り戻したようだ。

 

『おっと・・・失礼しました。私としたことが。』

『さぁ、ここから情熱的に行くよ‼︎』

『いよいよ我が好敵手と決着をつける時だ‼︎』

『エクセレント‼︎・・・ま、私は2人より先に100年早起きして待っていましたけどね。』

『3000万年前なし得なかった悲願を今、エタニティコアを闇の手に‼︎』

 

現代に蘇った闇の巨人達が本格的に動き出そうとしていた。




この怪獣娘×トリガーについてですが・・・・・実は未だに本格的に連載するか迷っています・・・・。
まだアンケートは受け付けてますので皆さんの声をお聞かせ下さい‼︎
皆さんの声をお待ちしています‼︎



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怪獣娘×ウルトラマンデッカー
襲来の日(前編)


今年もやって参りました‼︎怪獣娘×デッカー、先行版です‼︎

巨大宇宙球体『キングスフィア』登場
精強宇宙球体『スフィアソルジャー』登場


とある宇宙のとあるこの地球ではかつて超常的な力を持つ災害級の生物である怪獣が人類の前から完全に姿を消してから遠い年月が流れ、怪獣の記憶は忘れ去られていた。そして長い年月が流れ怪獣の魂を継ぐ少女達が誕生した。人はそれを怪獣娘と呼ぶ。怪獣娘が現れた事により彼女達が人間社会で活動出来るよるサポートや支援を行う国際怪獣救助指導組織『GIRLS』が出来、怪獣娘が世にて活躍するようになった今の地球に新たな影が迫っていた。

ここは地球の衛星である月の表面である。そこにはかつて人類が初めて地球に降り立った証であるアメリカの国旗が立てられていた。更にそこから離れた場所にかつての宇宙船の残骸が散らばっていた。その上空を無数の大きな飛行物体が横切った。飛行物体はメカニカルというより全体的に白く丸みを帯びた双胴型のシルエットが七色に輝く生物的な飛行物体だった。その巨大な飛行物体は複数存在しておりどれもが青く輝く星である地球に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地球の島国である日本で1人の少年が店に煎餅を並べていた。彼の名は『明日見カズマ』。祖父が営むこの煎餅屋の手伝いをしている少年である。

 

「爺ちゃん、海苔煎餅並べたぞ‼︎」

「おお、すまん!ご苦労だったな、カズマ‼︎」

「おーい、カズマ‼︎」

 

そこに1人のセーラー服を着た褐色肌で長い髪をポニーテールにした少女がやってくる。彼女の名は『牛丸ミク』。カズマの幼馴染でカプセル怪獣『ミクラス』の魂を継ぐ怪獣娘だ。ミクはカズマに走って駆け寄ってくる。

 

「よぉ、ミク‼︎GIRLS帰りか?」

「うん‼︎明後日の大怪獣ファイトに向けての練習終わりだよ‼︎」

「そうか、ご苦労だったな。」

「えへへー。あっ、煎餅頂戴‼︎」

「ちゃんと金出せよ。・・・てゆうか明後日試合あるのに無駄に食べて大丈夫か?格闘技って減量とかあるんだろ?」

「大丈夫だよ‼︎全部食べる訳じゃないんだから〜‼︎それにあたし、よく動くからすぐ消費するし、全然平気‼︎」

「はいはい・・・で、何煎餅がいい?」

「海老‼︎海老煎餅食べたい‼︎」

「はい、1袋五百円な。」

「わーい‼︎」

 

ミクから五百円玉を受け取ったカズマは海老煎餅の袋をミクに渡す。ミクはそれを受け取るといきなり袋を開けて煎餅を食べ始める。

 

「ん〜‼︎やっぱカズマん家の煎餅は最高〜‼︎」

「って‼︎もう食ってんのかよ⁉︎」

「だって〜、お腹空いたんだもん〜‼︎」

「ハァ・・・しょうがねえな。」

 

カズマがため息をつく中、ミクは思い出したかのようにカズマに詰め寄ってくる。カズマはミクの勢いに思わず後ずさった。

 

「そういえばさ‼︎」

「うわあっ⁉︎・・・な、何だよ⁉︎」

「明後日の大怪獣ファイト、あたしも出るの。だから」

「分かってる。見に行くぜ。」

 

カズマの答えにミクは思わず笑顔を見せる。2人はこれからもこんな日常が続くだろうと思っていた。しかし、数日後には宇宙から恐ろしい脅威がやってきてこの日常が続かなくなる事も、その戦いの渦の中心に巻き込まれていく事になるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

数日後、運命の日がやってきた。この日もいつものように実家の煎餅屋を手伝っていた。煎餅を店に並べていると祖父である『明日見ダイシロウ』が話しかけてきた。

 

「カズマ、そろそろじゃないか?」

「ん、ああ‼︎煎餅届けてくるよ。」

 

祖父の言葉を聞いてカズマは自転車の荷台に商品を詰めると走りだした。それと同時に眼鏡を掛けた全体的な髪色が黄色で前髪と後ろの一部が白髪の小柄な少女がやってくる。

 

「ダイシロウお爺さん、こんにちは‼︎」

「おお、こんにちは。」

「今日もいつもので家族分下さい‼︎」

「ははは、元気でいいな‼︎ほらよ。」

 

ダイシロウからお煎餅が入った袋を渡された少女は周りをキョロキョロ見渡している。

 

「カズマなら出掛けたよ。今日火星に向けて打ち上げられるロケットが立てられた宇宙センターの売店にうちの煎餅を届けに向かったからな。」

「本当⁉︎カズマお兄ちゃん、宇宙センターにいるんだね‼︎ありがとう、お爺さん‼︎」

 

少女はカズマの行方を聞くと懐から何かを取り出した。それは怪獣娘の変身を安定させる端末『ソウルライザー』だった。

 

「ソウルライド、『ハネジロー』‼︎」

 

 

 

 

 

 

カズマは煎餅を届け終えると自転車に乗って周りを見ていた。するとカズマの目に3人の怪獣娘が見えた。トリケラトプスなどの角竜と呼ばれる恐竜を思わせる一本角に襟巻きを備えた眠そうな印象を思わせるカプセル怪獣の怪獣娘『アギラ』に銀色のメカニカルな見た目に眼鏡を掛けた白銀のアギラと同じカプセル怪獣の魂を継ぐ怪獣娘『ウインダム』、三日月のような角にスク水のような長い尻尾の古代怪獣の怪獣娘『ゴモラ』を見るとカズマは彼女達の方に駆け出して話し掛ける。

 

「あの〜、怪獣娘の皆さんですよね?」

「えっ?」

「そうだよ、わたし達は怪獣娘だよー‼︎」

「警備の仕事、ご苦労様です!」

「えっ・・・うん、ありがとうございます。」

「えへへ、ありがとうね‼︎」

 

カズマは怪獣娘達に挨拶するとゴモラに気付く。大怪獣ファイトのファンで幼馴染に大怪獣ファイターをやっているカズマは確かめるように訊ねた。

 

「もしかして・・・大怪獣ファイターのゴモラさんですか⁉︎」

「おお、わたしの事知ってくれてるのね‼︎嬉しいなぁ〜‼︎そう、わたしこそゴモラの怪獣娘こと、ゴモたん‼︎」

「凄え・・・本人だぁ・・・‼︎あっ、俺大怪獣ファイトのファンなんです‼︎もし、良かったら・・・。」

「サインかね?勿論、OKだとも‼︎」

 

カズマの色紙にゴモラは自分のサインを描く。サインが書かれた色紙を確認したカズマは嬉しそうにお礼を述べる。

 

「ありがとうございます‼︎俺、大怪獣ファイトのファンな幼馴染がいて・・・それで俺も大怪獣ファイト好きになって・・・。」

「本当‼︎嬉しいな‼︎その幼馴染にもよろしく伝えておいて‼︎」

「ええ、だから、こうして会えて嬉しいです‼︎・・・実はその幼馴染、怪獣娘で・・・そいつも大怪獣ファイトのファンで・・・。」

「幼馴染に怪獣娘がいるの?それは嬉しいな〜‼︎その幼馴染ちゃんによろしくね‼︎」

「ええ‼︎それで・・・あの‼︎」

 

カズマは彼女達に煎餅の袋を差し出す。目の前の煎餅に食いしん坊なゴモラは思わず目を輝かせる。

 

「うち、実家は煎餅屋をやっていて・・・もし良かったらどうぞ‼︎今日の警備のために頑張ってくれている怪獣娘の為に半額でお安くしますから‼︎」

「わぁ〜‼︎美味しそうな煎餅‼︎じゃあ1袋いい?」

「ちょっ⁉︎ちょっとゴモたん‼︎」

 

煎餅を買おうとしたゴモラをアギラとウインダムが引き止める。真面目な2人はカズマに申し訳なさそうな顔で断った。

 

「気持ちは嬉しいですけど・・・御免、ボク達仕事中だから・・・。」

「本当にありがたいですが・・・御免なさい。そういう訳にはいかないんです。」

「そこをどうか‼︎お安くしますから‼︎」

「いえいえ‼︎そんな訳には‼︎」

「もう〜‼︎アギちゃんもダム子も固いなぁ〜‼︎2人とも頭が煎餅より固いよ〜‼︎折角お勧めしてくれてるんだからお言葉に甘えようよ‼︎」

「ゴモたん・・・でも・・・。」

「あれ?カズマ?」

 

その時、カズマは自分を呼ぶ声を聞いてその方向に目を向ける。そこにはカズマの幼馴染であるミクが変身したウエスタンなビキニを思わせる牛のような角を備えたカプセル怪獣の怪獣娘がいた。その怪獣娘『ミクラス』は後ろにいる水色のロングヘアーに全身がタイツを思わせる姿でナイスバディなボディラインが分かりやすい分身宇宙人の怪獣娘『ガッツ星人』と後ろに巻き髪ツインテールの黄色い蛇腹の格好によく鍛えられた太い両腕のどくろ怪獣の怪獣娘『レッドキング』がいた。2人とも今の状況がよく分からないのか顔を思わず見合わせている。その一方でカズマとミクラスは思わぬ場所で会った事に驚き合っている。

 

「ミク、お前何でここに⁉︎」

「アンタこそ何でここにいるのよ⁉︎」

「俺はここに煎餅を届けに・・・商品を届け終えて帰ろうとしたら・・・怪獣娘の皆さんを見かけて。」

「で、アギちゃん達をナンパしてたの?」

「ハァ⁉︎ナンパじゃねえし‼︎」

「え〜、ナンパしてるように見えたけど〜?本当に〜?」

「本当だって⁉︎つーか、何でそんなに怒ってるんだよ⁉︎」

「べ、別に怒ってなんかないし‼︎ただ、アンタがあたしの親友のアギちゃん達をナンパするのが許せなかったというか・・・。」

「まあまあ、ミクさん。その人、今日の警備をしている私達を気遣ってくれた行動だと思いますし、勘弁してあげてください。」

「うん、美味しそうな煎餅を勧めてくれたし、悪い人じゃないよ。」

 

親友である2人の言葉にミクラスは少し目を瞑ると笑みを浮かべる。そこにレッドキングがカズマとミクラスに話しかけて来た。

 

「よ、カズマ。」

「レッドキングさん‼︎お久しぶりです‼︎」

「レッド、知り合いなの⁉︎」

「ああ、ミクラスの幼馴染さ。ほら、ミクラス、一時入院した事あっただろ?」

「ああ・・・あの時か。」

 

少し前、ミクは人の心に取り憑いて凶暴化させる存在『シャドウミスト』に取り憑かれたシャドウガッツに襲撃され、負傷し、その時の傷が原因で入院していた。ミクが入院している間、レッドキングは何度かミクのお見舞いに来たのだがその際、ばったりとカズマと会う事になったのだ。

 

「あれから会って無かったけど、元気そうで何よりじゃねえか、カズマ!」

「はい‼︎いや〜、それにしてもミクがあのレッドキングさんと知り合いだったなんて思いもしませんでしたよ・・・。」

「おいおい、ミクラスが大怪獣ファイターになった時からその辺は予想しとけよな。」

「そうだよ〜、カズマ〜‼︎」

 

ミクラスとレッドキングがカズマと詰まる話をしている中、ゴモラ達は思わずその光景を見ることしか出来なかった。

 

「まさか彼の幼馴染の怪獣娘がミクちゃんなんて世界は狭いね〜。」

「ボク達も結構ミクちゃんのお見舞いに来ていたけど・・・全く気付かなかった・・・。」

「全くですね・・・。」

「話の途中で悪いけど、交代の時間だぜ。」

 

話し合っているアギラ達の話をレッドキングが遮る。その声を聞いたアギラ達は顔を見合わせてソウルライザーを確認する。

 

「そうか、もうそんな時間だっけ。」

「そうだね、お煎餅はどうしよっか?」

「あ、それなら‼︎」

 

カズマは懐からメモを取り出してゴモラに渡す。ゴモラはメモを見るとその内容を何となく察する。

 

「これって・・・。」

「うちの店の住所です‼︎もし時間が有れば来て下さい‼︎特別サービスとして安くしますから‼︎」

「本当⁉︎ありがと‼︎今度買いに行くね‼︎」

 

アギラ達は談笑しながらその場から離れていく。カズマ達は彼女達の背中を見送るとミクが話しかけて来た。

 

「で?カズマはこれからどうすんの?」

「ん?・・・そうだな・・・煎餅は届けたんだし、ここで暫く時間を潰そうかなと思う。アレが発進するのも見たいし。」

 

カズマが指差した先には本日、火星に向けて発射されるロケットが設置されていた。

 

「そっか・・・カズマも気になるんだ。」

「そりゃあ勿論な。ミク達怪獣娘が警備までやってるんだからGIRLSも期待しているんだろ。気にならない訳ねえよ。それじゃあ、俺、そろそろ行くから。」

「そっか。」

「レッドキングさん、また今度会えたらよろしくお願いします‼︎」

「おうよ‼︎」

「ああ、それと‼︎」

 

カズマは手に持った煎餅の袋をミクラスとレッドキングに差し出す。ミクラスはそれを受け取った。

 

「これは?」

「俺からの差し入れ‼︎レッドキングさんと一緒に食べてくれ‼︎」

「いいのか?」

「構いませんよ。怪獣娘の皆さん、いつも頑張っているじゃないですか!これくらいさせて下さいよ‼︎」

「えへへ、それじゃあ遠慮なく貰うよ‼︎」

「おう、ありがとな‼︎頂いていくぜ。」

 

カズマはミクラスとレッドキングに煎餅を渡すとその場から離れる。2人はカズマの後ろ姿を見ながら話し合っていた。

 

「カズマ、相変わらずいい奴だな。」

「はい‼︎勉強苦手なあたしのために自分の時間を削って勉強を見てくれたりシャドウミストに取り憑かれて入院した時には毎日お見舞いに来てくれたり・・・。昔から優しくて・・・目の前の事には全力で取り組む・・・そんな奴なんスよ・・・。」

「成る程なぁ・・・ミクラス、お前、アイツの事好きなんじゃねえか?」

 

ミクラスはレッドキングの言葉を聞いて彼女に顔を向けると顔を真っ赤にする。そして彼女は全力で顔を赤くしながら否定した。

 

「ちちちちちがちがちが・・・違うっス‼︎カズマに対してそんな事思った事ないっスよ‼︎」

「けど、お前・・・さっきアギラ達がアイツと話していた時、カズマがナンパしたと思って怒ってたじゃねえか。それって嫉妬してたからじゃねえのか〜?」

「な・・・何言ってんスか⁉︎あたし、嫉妬なんてしていないっスよ・・・‼︎」

「もしかしてお前・・・。」

「何スか?」

(・・・もしかしたらまだ無自覚なのか・・・だったら俺がとやかく言っても無駄かな・・・。)

 

レッドキングがミクラスの様子に物思いにふけているとミクラスが空を見上げていた。元気な後輩が何かに唖然としている姿に思わず訊ねる。

 

「おい、どうした?」

「先輩、アレって・・・。」

 

ミクラスの声に釣られてレッドキングも空を見上げるとワームホールのような空に空いた穴から巨大な双胴体の物体が姿を見せていた。ワームホールから全身を現したそれは先程月を通過した巨大な飛行物体の姿を現した。その場にいた大抵の人々が思わず空に現れた未知の存在に恐れをなしている。警備に当たっていた怪獣娘達は何があってもいいように警戒する。

するとそのその飛行物体から緑色に発光した小型の飛行物体が生み出される。そして小型の方は緑色の光線を放ち町を襲撃する。小型の方から放たれた光線に焼かれて町が焼かれて燃え上がり、大勢の人間が悲鳴を挙げて逃げ惑う。巨大宇宙球体『キングスフィア』から放たれた精強浮遊球体『スフィアソルジャー』が町を襲撃した事でたちまち今までの日常が奪われ、周りが恐怖に包まれた。これが宇宙浮遊物体『スフィア』と怪獣娘の戦いの始まりだった。




主人公の名前はダイナの主人公アスカの父親のアスカ・カズマから取りました。


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襲来の日(後編)

皆さん、お待たせして申し訳ありません‼︎それではどうぞ‼︎

精強合成獣『スフィアザウルス』登場


突如現れた謎の飛行物体による襲撃でロケット発射基地は大混乱になっていた。GIRLSの怪獣娘達や職員達による案内で避難誘導が進められている。

 

「皆さん、慌てないでください‼︎」

「こちらです‼︎こちらです‼︎」

 

青い翼の怪獣娘『マガバッサー』と赤いひれを備えた怪獣娘『マガジャッパ』が会場に集まった人達を避難誘導する中、謎の飛行物体『スフィアソルジャー』は緑色のビームを放ちながら人々を襲う。その時、1つのスフィアソルジャーを何者かが踏み付けた。

 

「させマセン‼︎」

 

スフィアソルジャーを踏み潰した金色のメカニカルな怪獣娘『キングジョー』は空を見上げると再びスフィアソルジャーに向かっていく。スフィアソルジャーもキングジョーを敵と認識すると彼女にそのまま突っ込もうとする。その時、上空から放たれた火球がスフィアソルジャーを焼き尽くした。

 

「ゼットン‼︎」

「・・・待たせた。」

 

額に黄色の結晶を備えた黒い怪獣娘『ゼットン』がキングジョーの隣に浮くと彼女達はこちらを認識したスフィアソルジャーに向かって構える。2人は目を合わせると額からの破壊光線と火球でスフィアソルジャーを撃墜していった。

 

 

 

「お、おい‼︎ミク、あれって何だ⁉︎もしかしてシャドウか⁉︎」

「分かんないよ‼︎でも、こいつら・・・シャドウとは違う・・・そんな気がする‼︎

 

その頃、カズマは突然現れた襲撃者に混乱していた。カズマは襲撃者を見て幼馴染達が戦う人類の脅威『シャドウ』を思い起こすが実際にシャドウと戦っているミクラスは今、街を襲っている敵の姿にシャドウとは違う異質を感じていた。そんな中、スフィアソルジャーはカズマとミクラス達にもビームを放ってきた。

 

「うわっ⁉︎攻撃してきた⁉︎」

「コイツら、問答無用かよ‼︎」

「カズマ、近くに避難所があるからここから逃げて‼︎案内係もいる筈だからその指示に従って避難して‼︎」

「お前はどうするつもりだ⁉︎」

「コイツら全部やっつける‼︎」

「大丈夫なのか⁉︎数が多いぞ‼︎」

「先輩やアギちゃんもいるから大丈夫‼︎だから早く行って‼︎」

「分かった‼︎気を付けろよ‼︎レッドキングさん、ミクを頼みます‼︎」

「ああ‼︎」

 

カズマが2人から離れていくとレッドキングとミクラスにスフィアソルジャーが迫ってくる。レッドキングはそれを見ると大きく飛び上がりスフィアソルジャーを殴り付けた。

 

「オラァ‼︎」

 

スフィアソルジャーを拳で叩き落として着地したレッドキングの後ろではゴモラが角から超震動波を放っている。

 

「いくでぇぇ‼︎超震動波ぁぁ‼︎」

 

ゴモラの放った超震動波か次々とスフィアソルジャーに命中し、奴らを撃ち落としていく。その後ろではミクラスがアギラの手を借りて高く飛び上がり、スフィアソルジャーを拳で叩き落としていた。

 

「どりゃあああああああああ‼︎」

 

ミクラスの放った拳がスフィアソルジャーを撃墜するが高く飛び上がって無防備になった彼女に向かって1体が突進する。そのままミクラスにぶつかるかと思われたが先にウインダムのレーザーでそのスフィアソルジャーは爆散した。

 

「サンキュー、ウインちゃん‼︎」

「ミクさん、油断は禁物ですよ‼︎」

「うん‼︎・・・にしてもコイツら一体何なの⁉︎」

「分からない・・・はっきり分かるのはシャドウとは全く違うことと・・・人々を襲うボク達の敵だって事だけだよ。」

 

かぷせるがーるずは互いの背中を合わせ合うと空中を飛びながらビームを放ち街を破壊するスフィアソルジャーに視線を向ける。

 

「まだあんなに沢山・・・。」

「ていうかこいつら一体何なのよ・・・。」

「過去にこれに似た生命体が地球を襲ったという記録があったような気がしますが・・・。」

 

ウインダムが授業で学んだGIRLSの過去の記録を思い起こしそうにする中、再び無数のスフィアソルジャーがビームを放つ。ビームは彼女達の足元に着弾してミクラス達3人は大きく吹っ飛んだ。

 

「「「うわああああああああ⁉︎」」」

 

 

「助・・・けて・・・誰・・・か・・・。」

 

その頃、カズマは避難所に向けて足を進めていた。その時、彼の耳に女性の助けを呼ぶ声が聞こえてくる。カズマは空耳かどうか確かめるため周りに耳を済ませ、辺りを見渡す。すると瓦礫の山から右腕だけが見えた。瓦礫に埋もれた腕の持ち主は怪我をしているのか絶え絶えながらに助けを呼ぶ。

 

「助けて・・・誰・・・か・・・助け・・・。」

「今行きます‼︎」

 

カズマは瓦礫の山に向かうとすぐさま目の前の瓦礫の山を確かめる。その瓦礫は大きさはバラバラながらも声の主が見えなくなるくらい埋もれており、カズマ1人では撤去出来そうにないくらい積もっていた。しかし、それでもカズマは自分の手でどけられる瓦礫をどかして瓦礫の山に埋もれた女性を助けようとする。その時、爆風でミクラス達がカズマの方に飛んできた。

 

「痛てて・・・2人とも大丈夫⁉︎」

「うん、なんとか平気・・・。」

「けど、どうしましょう?シャドウ以上に数が多すぎます・・・このままじゃ・・・。」

「ミク‼︎アギラさん‼︎ウインダムさん‼︎」

「カズマ⁉︎アンタ何で⁉︎避難してって言ったじゃん‼︎」

「瓦礫の中に人が埋まってるんだ‼︎力を貸してくれ‼︎」

「「「ええっ⁉︎」」」

 

カズマに続いてミクラス達3人が瓦礫から延びる腕を確認する。すると彼女達は即座に怪獣娘特有の怪力で瓦礫をどかし始める。

 

「カズマ‼︎危ないから下がってて‼︎ここは危険だって分かるでしょ‼︎」

「こんな事になってるのに俺だけ逃げられる訳ねえだろ‼︎お前が何と言おうと俺はこの人を助けるのを手伝うからな‼︎」

「ミクさん、今は猫の手も借りたい状態です。カズマさんの協力も受け入れましょうよ。」

「うん、手伝ってくれるならそれに越した事ないよ。」

「うう・・・う"〜ん・・・。」

 

ミクラスは幼馴染を危険に晒したくないという思いと手伝ってくれたら助かるという2つの気持ちの狭間に揺れる。考えること数秒後、ミクラスは答えを出した。

 

「確かに・・・人の手が多い事に越した事はないよね・・・カズマ、手伝って‼︎」

「ああ、勿論だ‼︎」

 

カズマはミクラス達怪獣娘と共に瓦礫をどかして下に埋まっていた女性を助け出そうとする。そんな中、空中を浮かぶキングスフィアの方は怪しげな光を地上に放った。そして光が収まると同時に大きな雄叫びが聞こえてくる。

 

「グオオオオピギャアアアアア‼︎」

「何⁉︎眩しっ・・・って嘘でしょ・・・。」

「どうした、ミク⁉︎」

「あれ・・・マジでヤバい事になったかも・・・。」

「一体何が・・・う、嘘・・・。」

「そ、そんな・・・まさか・・・。」

 

ミクラス達が女性を抱えながらキングスフィアから光が落ちた場所を見るとそこには巨大な存在がいた。白い体色に爬虫類を思わせる姿をしたそれはクリスタルを纏った巨大な前足を地面に着けて大地に立っていた。その頭には赤い角が生えており、青白く発光した瞳のない眼、スフィアを思わせる突起を背中に生やしたその存在はまさしく地球からいなくなった筈の怪獣だった。スフィアによって怪獣のいなくなった地球に再び姿を現した怪獣である精強合成獣『スフィアザウルス』は再びその場で雄叫びを上げた。

 

「グオオオオオオオオオピギャアアアアアアアア‼︎」

「そ、そんな・・・馬鹿な・・・。」

「本物の・・・怪獣だと・・・。」

「初めて見た・・・。」

「あの生命体・・・怪獣まで・・・生み出せるなんて・・・。」

 

現場にいた怪獣娘達は目の前に現れた本物の怪獣であるスフィアザウルスに唖然としている。一方でGIRLS東京支部では赤い髪と服とは言えない獣殻に身を包んだ背の低い怪獣娘『ピグモン』と頭部に2本の角を生やしたピンク色の長い髪に白と黒の豊満な胸元が空いた怪獣娘『エレキング』がモニターに写る怪獣を見て冷や汗をかきながら司令室の職員に指示を出す。

 

「皆さん、連絡を取れる怪獣娘は至急宇宙開発センターに向かわせて下さい‼︎」

「ベテラン格は浮遊物体との戦いを中断して怪獣の迎撃に向かって‼︎少しでも被害を食い止めるのよ‼︎」

「まさか・・・地球に再び怪獣が出現するなんて・・・あの物体は何なのでしょう・・・。生命体である事は間違いなさそうですが・・・。」

「・・・過去に似た一例があったわね・・・かの第一次大怪獣時代、地球を襲った球体状の宇宙生命体が・・・モニターに写っている生命体はアレによく似ているけど・・・。」

「・・・宇宙球体・・・スフィア・・・。」

 

 

 

「グオオオオオオピギャアアアアアア‼︎」

 

その頃、スフィアザウルスは背中を光らせて衝撃波を放つ。怪獣が放った衝撃波で周囲の建物や道路が砕け散り、爆発が起こる。

その一方で瓦礫に閉じ込められた女性の救出活動をしていたカズマ達は完全に瓦礫をどかして女性を助ける事に成功した。今は救出した女性をウインダムが抱えている。

 

「もう大丈夫ですよ‼︎私達が安全な場所に連れて行きますから‼︎」

「ありがとう・・・ございます・・・。」

 

ウインダムの横で安心したのか女性は意識を失う。その隣でアギラがソウルライザーに電話を掛けて救護班を呼ぼうとする。しかし、電話が通じる事は無かった。

 

「もしもし、こちらアギラ‼︎こちらアギラ‼︎誰か応答して‼︎」

「どうしたの?」

「電話が繋がらない・・・救護班が必要なのに・・・。」

「ええっ⁉︎・・・もしもし、こちらミクラス‼︎こちらミクラス‼︎誰でもいいから応答して‼︎」

 

今度はミクラスが電話に出るも電波が一向に繋がらなかった。ウインダムはスフィアザウルスを見て先程の光景を思い出す。

 

「まさか・・・さっき怪獣が放った衝撃波に通信機能を妨害する機能があったんじゃ・・・。」

「ええっ⁉︎」

「なぁ、怪獣が何がしてるぞ‼︎」

 

カズマの声で3人がスフィアザウルスを見る。するとスフィアザウルスは前足を地面に着いて地面から何がエネルギーを吸収していた。その様子にカズマとかぷせるがーるずは漠然とする。

 

「あの怪獣・・・何してるの?」

「まるでエネルギーを吸い取っているみたい・・・。」

 

そんな中、再びスフィアソルジャーかビームを放って攻撃を仕掛けてきた。ミクラス達は前に飛んで攻撃を避ける。

 

「うわああっ⁉︎」

「そういえばコイツらもいるんだった・・・。」

「どうしましょう・・・この人を放ってはおけませんし・・・。」

「俺がコイツらを引き付ける。その隙にミク達はその人を頼む‼︎」

「はっ⁉︎・・・待ってカズマ‼︎」

 

ミクラスは自分達にとって驚く事をさらっと発言して飛び出したカズマを静止する。しかし、カズマは既に瓦礫の一部を投げてスフィアソルジャーの注意を自分に向けていた。

 

「お前ら地球に来て好き勝手な事しやがって・・・俺達地球人を舐めんなぁぁぁぁ‼︎」

 

カズマはスフィアソルジャーが放つビームから逃げながら必死に走る。しかし、スフィアソルジャーの1体が突然カズマの先に回り込んだ。カズマは急にこちらに向かって突進してきたスフィアソルジャーをかわしきれず、目の前に現れたスフィアソルジャーに飲み込まれてしまう。幼馴染が目の前の謎の生命体に飲み込まれた様を目の当たりにしたミクラスは思わず叫んだ。

 

「カズマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

「俺は・・・死ぬのか・・・。・・・あれ・・・俺って・・・誰だっけ?」

 

スフィアソルジャーの中でカズマは自分が何者か分からなくなっていた。しかし、カズマはすぐに自分を取り戻した。

 

「俺は・・・俺は・・・俺は俺だ‼︎俺は明日見カズマだぁぁぁ‼︎」

 

カズマが自分を取り戻した時、周りの光景が宇宙空間を思わせるものに変化する。その時、人型の光がカズマの前に現れた。

 

『俺・・・デッカー。力・・・欲し・・・光をつかめ!』

「デッカー・・・一体アンタは⁉︎それに・・・光って⁉︎」

 

その時、カズマの手元に人面像が彫られたアイテムが現れる。そのアイテムをカズマが掴むとカズマの腰にホルダーが装着され、ホルダーから光が飛び出す。カズマはそれを掴むと光はカードに変化した。

 

「ウルトラマンの・・・カード⁉︎デッカー、アンタは・・・ウルトラマンなのか⁉︎」

 

ウルトラマンとはかつて宇宙からやってきた平和の使者である。かつて幾人ものウルトラマンが地球にやってきて人類と怪獣の戦いにおいて人類に力を貸してくれた。そんな存在が描かれたカードを見ながらカズマは口を開く。

 

「このカードをこいつに差し込めばいいのか・・・?・・・詳しくは分からねえがやってやろうじゃねえか‼︎」

 

カズマは決意すると手に持った人面像が彫られたアイテム『ウルトラDフラッシャー』のスイッチを押す。そして手に持ったカードをウルトラDフラッシャーに裏向きに装填した。

 

〈Ultra Dimension!〉

 

Dフラッシャーの下部のレバーを引いて折り畳まれていた頭のクリスタルが展開する。

 

「輝け・・・輝け・・・輝け・・・輝けフラッシュ!デッカァァァァァァ‼︎」

 

そしてカズマは頭上に掲げた後で顔面の前でDフラッシャーを構えると再びスイッチを押す。その時、カズマの体は光に包まれた。

 

〈Ultraman Decker! Flash Type!!〉

 

 

 

 

その頃、外ではカズマを取り込んだスフィアに突撃しようとするミクラスをアギラとウインダムが必死に静止していた。

 

「離して2人とも‼︎カズマを助けなきゃ‼︎」

「駄目ですよミクさん‼︎」

「もう何処に行ったのか分からなくなっちゃったから‼︎」

 

その時、カズマを飲み込んだスフィアソルジャーが突然動きを止める。そしてスフィアソルジャーは体内から破壊され、光が迸った。光が収まるとそこには銀、赤、青のカラーリングに胸に宇宙を思わせる模様をした左胸にカラータイマーを備えたウルトラマンが現れた。『ウルトラマンデッカー・フラッシュタイプ』に変身したカズマは目の前のビルを見て自分が今どうなっているのか確認する。

 

『俺は一体・・・なっ⁉︎俺自身が・・・ウルトラマンに⁉︎』

 

一方で怪獣娘達も目の前に本物のウルトラマンが現れた事に驚きを隠さないでいた。

 

「嘘ぉ⁉︎あれってまさか・・・。」

「ええ、間違いありません。過去に現れた記録には無かったと思いますがあれは間違いなくウルトラマンです‼︎」

「本物の・・・ウルトラマン・・・。」

「マジかよ・・・怪獣だけじゃなく・・・ウルトラマンまで・・・。」

 

デッカーは自身の体に何が起きたのか確認するように自身の手を見ていた。その時、スフィアザウルスが吠えたてる。

 

「グオオオピギャアアアア‼︎」

『そうか・・・今の俺なら・・・コイツと・・・‼︎だったら‼︎』

 

スフィアザウルスはスフィアソルジャーを集めてデッカーにけしかける。デッカーは走り出すと腕を振り回しながらスフィアソルジャーを撃退し、スフィアソルジャーを退ける。

 

「ディアッ‼︎」

「グオオオピギャアアアア⁉︎」

 

デッカーは腕や蹴り、小型の光線でスフィアソルジャーを全て撃破するとスフィアザウルスにそのまま突撃し、その頭を殴り付ける。火花が迸り、スフィアザウルスの体は横に逸れた。スフィアザウルスは持ち直すと巨大な前足でデッカーを踏みつけようとする。

 

「ピギャアアアア‼︎」

「ディアッ‼︎」

 

そのままスフィアザウルスとデッカーの力比べが始まった。しかし、戦い慣れてないデッカーは力負けし、弾かれてしまう。

それでも持ち直したデッカーはスフィアザウルスの下顎にキックをかまして怯ませる。再び蹴りで反撃しようとするがクリスタル状の巨大な腕に阻まれて失敗に終わった。スフィアザウルスはそのまま頭の角を突き立てるがデッカーは右腕で受け止めて左手からの拳を打ち込む。デッカーはそのまま攻めようと怪獣に接近するがスフィアザウルスの巨大な足に踏み付けられる。

 

「デュワッ‼︎」

 

デッカーは下から牽制光線を放ち、スフィアザウルスを怯ませると怪獣に向かって走り出す。

 

『うおりゃああああ‼︎』

 

デッカーはスフィアザウルスにチョップを振り下ろした。その一撃はスフィアザウルスの頭の角をへし折り、怪獣の戦力を大幅にダウンさせる。その隙に怪獣から距離を取ったデッカーは額の菱形状のクリスタルに手を合わせると円を描き、エネルギーを集める。そして両腕を十字に組んで必殺光線である『セルジェント光線』を放った。必殺光線を受けたスフィアザウルスは大爆発を起こす。

デッカーは怪獣が完全に倒された事を確認する。その時、空に緑色の光が迸った。それを見たデッカーはスフィアがバリアで地球を覆おうとしているのを確認する。カラータイマーが点滅し、エネルギーが残り少ない事を察しながら空へ飛んだデッカーは多くのスフィアソルジャーを牽制光線で撃破し、親玉であるキングスフィア目掛けて飛んでいく。しかし、バリアに激突し、デッカーは地表に墜落していった。そして、地球はスフィアによって完全にバリアに覆われる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマは目覚めると地上で横たわっていた。思わず起き上がると自身の手にはDフラッシャーが握られている事に気付く。しかし、Dフラッシャーはカズマの目の前で消えてしまった。変身アイテムが目の前で消えた事やさっきまで自分に起こった事に唖然としているとミクラスがこっちに走ってきた。

 

「カズマぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「うわっ⁉︎・・・ミク⁉︎」

 

ミクラスはカズマに近づくといきなり号泣しながら抱き付いた。怪獣娘の姿で力強く抱き締めたためカズマの骨が軋み始める。

 

「良かったぁぁぁぁぁぁ‼︎生きてる・・・カズマ・・・生きてたぁぁぁぁ‼︎」

「ちょっ⁉︎ミク・・・お前・・・怪獣娘の姿で・・・勢いよく抱き締めるな‼︎痛いから‼︎」

「あっ、御免‼︎」

 

ミクラスはカズマの声を聞いて思わず離れる。そしてカズマの胸に顔を埋めると再び口を開いた。

 

「馬鹿ぁ・・・あんな無茶して・・・本当に・・・心配したんだよ・・・。カズマが死んじゃうんじゃないかって・・・本当に・・・。」

「ミク・・・御免・・・。」

「・・・生きてくれたからもういいよ・・・でも・・・あんな無茶は絶対にしないで・・・あたし・・・・・・本当に怖かったから・・・。」

「悪い・・・。」

 

カズマは自分の胸で泣く幼馴染に謝る。しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。カズマはこの日をきっかけに地球を巡る大いなる戦いへ足を踏み入れていく事になるのだった。




カズマ「カズマと‼︎」

ミク「ミクの‼︎」

「「ウルトラディメンションナビ‼︎」」

カズマ「ここからはウルトラディメンションカードについて勉強だ‼︎」

ミク「今日のカードはこれだよ‼︎」

〈Ultraman Decker! Flash Type!!〉

カズマ「身長55メートル‼︎体重4万5千トン‼︎赤と青のラインが映えるバランスのいい形態だぜ‼︎」

ミクラス「両手をクロスして放つセルジェント光線はすっごく強力な必殺技なんだって‼︎」

ハネジロー「次回はハネジローが担当するよ‼︎」

「「「次回もよろしく‼︎」」」

次回予告(CV:明日見カナタ)
「スフィアが襲来してから3か月が経ったある日、雨が降った後でもないのに空に虹が出現した。GIRLSが謎の虹の調査に向かうと虹から怪獣が現れてヤバい事に!やはり、俺がやるしかねえ!次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマンデッカー


決意のカズマ


皆、見てくれよな‼︎」


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決意のカズマ(前編)

当初は原作同様、デスドラゴを出そうと考えましたが地球怪獣であるデスドラゴは怪獣娘の世界では出せないと考え、オマージュ元であるダイナに登場したティガ怪獣という共通点から別の怪獣を出す事にしました。

剛力怪獣『キングシルバゴン』登場


謎の球体型浮遊生命体が地球に襲来し、カズマがウルトラマンデッカーとなってスフィアザウルスと戦ってから3か月の月日が経った。あれから怪獣の出現は起こらず、平穏な日々が続いていた。しかし、地球全体はバリアに閉ざされたままの状態が続いている。

そんな日々の中、カズマは自身の体を鍛えるべく筋トレに励んでいた。もう1度ウルトラマンに変身する事になるという予感がしていたため、いざという時に備えて体を鍛えていたのだ。腹筋を終えるとカズマは腰のホルダーからウルトラマンデッカーのカードを取り出した。

 

「あれから・・・1度もウルトラマンになれてないな・・・。」

 

カズマは部屋に横たわりながら窓の外を見る。そして手元にあるデッカーのディメンションカードを見上げながら思いにふけていた。

 

「何で・・・俺が・・・・・・ウルトラマンに・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLS東京支部の講義室では3ヶ月前に現れた謎の生命体『スフィア』について会議が開かれていた。

既に席にはミクだけじゃなく茶髪に眠たそうな目のアギラこと『宮本アキ』、眼鏡をかけた長い白銀の髪を三つ編みにしたウインダムこと『白銀レイカ』、ボーイッシュなヘアスタイルに茶髪のゴモラこと『黒田ミカヅキ』、長いピンクの長髪に眼鏡を掛けたエレキングこと『湖上ラン』、ピンクの短いツインテールのザンドリアスこと『道理サチコ』、長いロールのツインテールヘアーの筋肉質なレッドキングこと『歌川ベニオ』、水色の長い髪のガッツ星人こと『印南ミコ』に彼女と瓜二つの顔の紺色の髪のミコと同じくガッツ星人こと『印南マコ』、グレーのロングヘアーの欧米人のキングジョーこと『クララ・ソーン』、髪にメッシュが入ったボーイッシュなヘアーのノイズラーこと『音無ミサオ』癖毛の青いロングヘアーのマガバッサーこと『風巻ヨウ』、青いボブカットのマガジャッパこと『竜波ユカ』の東京支部において主力となる怪獣娘達が揃っていた。彼女達の視線の先には教壇に赤い長髪のツインテールのピグモンこと『岡田トモミ』が立っている。

トモミは全員の視線がこちらに向いている事を確認すると口を開いた。

 

「皆さん、3ヶ月前、突如地球に襲来した謎の生命体についてですが・・・3ヶ月の月日が経った今日でも詳細な事は何も分かっていません・・・。」

「ええっ⁉︎」

「そんな・・・。」

「ただ、1つだけ確定している事があります。こちらを見て下さい。」

 

トモミがモニターに映像を映し出す。それは何処かピンボケながらも3ヶ月前に現れた謎の浮遊生命体に酷似した生命体が特殊な戦闘機と戦闘を繰り広げている映像だった。

 

「その映像は・・・。」

「これはかつての第一次大怪獣時代のある時期の映像です。この映像に映るこの生物をご覧下さい。」

 

そう言ってトモミは映像を一時停止して謎の生命体の部分を拡大する。その生命体を見たミクとヨウは息を揃えて叫んだ。

 

「「あー‼︎そっくり‼︎」」

「ええ、第一次大怪獣時代のとある時期、宇宙から謎の生命体が襲来した時期がありました。その名は・・・宇宙球体・・・スフィア‼︎」

「スフィア・・・確か授業でも学んだね・・・岩などに取り憑いて怪獣になったり・・・他の怪獣に取り憑いて操ったり出来るんでしょ。」

「その通りです・・・3ヶ月前、地球を襲った謎の生命体はかつて地球を襲ったスフィアに酷似しています。か母体と思われる個体から複数の兵隊と思われる個体を出したり・・・固有で怪獣を生み出すという過去に地球を襲ったスフィアには無かった相違点がありますが・・・この生命体はスフィアに極めて近い生命体である事は間違いないでしょう・・・。そこであの存在を第一次大怪獣時代、地球を襲った宇宙球体『スフィア』と同種、もしくはそれが進化した亜種と仮定して・・・GIRLS上層部は仮にスフィアと呼ぶ事にしました。」

「スフィア・・・。」

「現在、分かっているのはスフィアによって地球はバリアで閉ざされ、宇宙船や人工衛星を打ち上げる事も出来なくなった事・・・私達GIRLSにとって・・・怪獣娘にとって・・・これまで乗り越えて来た試練を遥かに超える驚異が襲来したという事です。」

 

トモミの言葉に全員が黙り込む。暫く沈黙が続くとベニオが口を開いて発言した。

 

「それでよ・・・俺達はこれから先、どうすればいいんだ・・・?」

「ここ3か月間、スフィアは動きを見せていません。そこで多岐沢博士率いる開発課によるスフィア対策用の装備が開発される事になりました。更にGIRLS東京支部は新しい優秀な博士を迎える事になりました‼︎」

 

トモミの言葉を聞いて彼女達が頷く中、アキが挙手してトモミに質問をする。

 

「その人ってどんな人なんですか?」

「多岐沢博士によればとても優秀な技術を持ち、機械工学など様々な分野に長けた博士との事です。早ければ二週間後には皆さんに紹介出来ると思いますよ。」

「Ohh、是非とも仲良くなりたいデース‼︎」

 

機械弄りが得意なクララがGIRLSに加わる新たな博士について心待ちにしている中、会議室のドアにノックが鳴る。ノックを聞いたトモミは扉の先に呼び掛けた。

 

「どうぞ。」

「失礼します。ピグモンさん、異常事態が発生しました。至急司令室に来て下さい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、カズマはデッカーのウルトラディメンションカードを手に取って河川の手すりに肘を掛けながら空を見ていた。

 

「デッカー・・・アンタは一体・・・。」

「カーズマお兄ちゃん‼︎」

「うわああああああああああああああああああ⁉︎」

「きゃあああああああ⁉︎」

 

カズマは黄昏ている中、後ろから突然声を掛けられて驚く。カズマが驚いて絶叫すると少女の方も絶叫した。そのはずみで手からディメンションカードを落とすと慌てて手に取りホルダーにしまった。

その後ろには小学生くらいの年齢の眼鏡を掛けた全体的な髪色が黄色で前髪と後ろの一部が白髪の小柄な少女がいた。カズマはその少女を見ると溜息をついた。

 

「はぁ・・・ビックリさせないでくれよ、アムちゃん・・・。」

「何言ってるの⁉︎カズマお兄ちゃんが勝手に驚いてたんじゃん‼︎」

「いや・・・それはそうなんだけどな・・・。」

 

カズマの後ろにいる少女の名は『羽田アム』。カズマの家の煎餅屋によくお使いで煎餅を買いに来る常連である。その由縁なため、煎餅屋を手伝っているカズマや同じく常連でカズマの幼馴染みであるミクとは顔見知りでもあるのだ。

 

「どうしたの?さっき、何か慌てて隠したように見えるけど・・・。」

「いや、別に何も‼︎俺は何も隠してないぜ‼︎」

「えー、絶対に何か隠したように見えたよ〜?もしかして〜・・・Hな本でも隠したの?」

「何でそんな事知ってんだよ⁉︎」

「お婆ちゃんが言ってたよ。『男の子が何かを隠す時は女の子に知られちゃいけない物を隠してる時』だって。」

「あのさ・・・Hな本ってどういう事か知ってるの?」

「女の人の裸や下着」

「もういい‼︎もういいから‼︎それ以上は聞きたくないよ‼︎ていうか何でそんな事知ってるの⁉︎ていうか何で男の人が隠すもの=それに繋がるんだよ⁉︎」

「お爺ちゃんやお兄ちゃんが家に隠していたものをたまたま見つけちゃったの。その時にお婆ちゃんが言ってたんだ。『男が女に何かを隠すとしたらHな本だって。」

「・・・・・・何つー事教えてんだよ・・・アムちゃんのお婆ちゃん・・・。」

 

カズマはまだ顔も知らぬ顔馴染みの少女の祖母に手摺りに手をつけ、顔を腕に付けながら頭を悩ませる。だと言ってこのままアムに誤解される訳にはいかないと思ったカズマがアムの顔に視線を向ける。

 

「あのさ、アムちゃん・・・さっき隠したのは決してHな本なんかじゃないんだ。」

「えー、本当〜?アムが子供だからって誤魔化せると思ってない?アムだって女の子だよ〜。そう簡単には誤魔化せないよ。」

「本当だって‼︎俺、そういう本自体持ってないから‼︎」

「う〜ん・・・信じられないな〜・・・慌てて何かを隠したように見えたのに〜・・・。」

「俺が隠したのはこれだよ‼︎これ‼︎」

 

カズマがアムに見せたのは最初の大怪獣ファイトで初勝利を収め、笑顔を見せながらカメラの前でピースをするミクラスの写真だった。

 

「ミクお姉ちゃんの写真?」

「ああ、ミクが大怪獣ファイトで初勝利を収めた時の写真さ。ミクがくれたからお守りに持ってるんだよ。」

「成る程・・・カズマお兄ちゃん、ミクお姉ちゃんの事好きだもんね〜。」

「へっ・・・はぁ⁉︎何で⁉︎俺がミクの事を⁉︎」

「だっていつもカズマお兄ちゃんとミクお姉ちゃん一緒にいるじゃん。アレ?まだ付き合って無かったの?」

「何か勘違いしてるようだけど・・・俺とミクはただ単に家が近所で幼い頃から付き合いが続いてるだけだって・・・。」

 

カズマはアムから目を逸らしてミクラスの写真を懐にしまう。カズマの前に回り込んだアムが揶揄うように口を開いた。

 

「え〜、普通はただの幼馴染の写真なんて持ち歩かないと思うけどな〜。それも女の子のだよ。それってやっぱりカズマお兄ちゃんがミクお姉ちゃんの事好きだからなんじゃないの?」

「別にそんな事ねえよ・・・大体な・・・。」

 

カズマは再びアムから視線を逸らして彼方の方に目を向ける。後ろでキョトンとしているアムの前でカズマは考えていた。

 

(正直な話・・・今の俺はそれどころじゃねえしな・・・。)

「どうしたの?難しい事考えている顔して。」

「・・・アムちゃんも大きくなれば分かるさ。」

「え〜⁉︎またはぐらかす〜‼︎」

 

カズマはアムに背を向けるとそのまま真っ直ぐ歩き出す。アムがご立腹そうに頬を膨らませてその後を追っていく。そのままカズマの後をアムが付いてくると2人は人だかりを目撃した。

 

「何だ、アレ?」

「皆、何に目を向けてるんだろう?」

 

2人はそのまま人だかりの方に進んでいく。すると人々は皆、空を指差して上を見上げていた。

 

「皆、どうしたんだ?」

「カズマお兄ちゃん、あれを見て‼︎」

 

カズマはアムが指差した方向を見る。そこには雨が降った後でもないのに見事な虹が見えた。

 

「見事な虹だな・・・って今日は雨なんか降らなかっただろ⁉︎現在進行形で見事なまでに快晴だぞ‼︎」

「うん・・・これは・・・GIRLSに通報した方がいいかも。」

「だな。じゃあ、ミクに」

 

カズマがスマホを取り出してGIRLSに所属している幼馴染に連絡をしようとした時、アムも同じ物を取り出した。しかし、アムが取り出したそれは普通のスマホではなくGIRLSの怪獣娘達が所持するソウルライザーだったのだ。アムのソウルライザーを見てカズマは面食らった表情になる。

 

「どうしたの?カズマお兄ちゃん。」

「あのさ・・・アムちゃん・・・アムちゃんの持っているそれってソウルライザーだよな・・・。前にミクから見せてもらった事があるから分かる・・・。何でそれを君が持ってるの・・・?」

「だってアムも怪獣娘だもん。」

「ああ、成る程・・・ってえええええええええええ⁉︎」

 

店の常連の知られざる秘密に驚くカズマの横でアムはGIRLS東京支部に連絡を取り始める。そしてこの数十分後、ミクラス達は現地に姿を現した。

 

 

 

 

 

その頃、何処かの樹海の中を1体の怪獣が彷徨っていた。その怪獣は銀色の体色にヤギを思わせる角を備え、いかにも凶暴そうな目をした怪獣だった。その怪獣は以前は視力が弱く動く物しか見えなかったが進化した自身の目で空に上る虹を見る。その虹はカズマ達が見ていた虹と同じ物だった。実は虹の先には異次元空間が広がっていたのだ。怪獣はその虹の向こうから多くの音や声を聞き、虹の外にはここより広い世界が広がっている事を感じた。外の世界に出られると感じた怪獣は虹に向かって真っ直ぐ行進して行った。

 

 

 

 

 

 

その頃、怪獣がこちらに向かっている事を知らないミクラス達は空に浮かぶ虹の調査をしていた。様々な機器が並び立つその様にカズマはドラマで見たような光景だと感じた。

 

「凄え・・・マジで本格的だよ・・・。」

「まぁ、よくは分からないけど異常現象だからね。何が起きても対応できるようにしないと。」

「ああ、それもそうか・・・。」

「ってカズマ⁉︎アンタ何でここにいるのよ⁉︎一般人は下がってって言われたでしょ‼︎」

「悪い、気になっちゃって・・・。」

 

ミクラスは自然に会話に入ってきたカズマに突っ込みを入れる。その後ろではアムが変身した怪獣娘『ハネジロー』がピグモンに詳細を聞いていた。

 

「ピグモンさん、これってどうなってるの?ハネジローにも教えてよ!」

「ちょっと‼︎流石にハネジローちゃんにはまだ早いよ‼︎」

「ハネジローだって怪獣娘だもん‼︎自分だけ置いてけぼりなんてヤダよ‼︎」

「・・・仕方ないですね・・・第一通報者であるハネハネには特別ですよ。」

 

ピグモンは興味津々な顔を見せるハネジローに心負けし、分析結果が出された紙を手に取った。分析結果を手に持ったピグモンにカズマを含めその場にいた全員がピグモンに目を向ける。

 

「あの虹は普通の虹ではありません。異常な磁場を放つ虹です。」

「ええっ⁉︎虹から磁場が⁉︎」

 

ピグモンの説明を聞いてまさか虹から磁場が出ているとは思っていなかったゴモラは驚く。そんな彼女の前でピグモンは更に言葉を続けた。

 

「ええ、しかもあの虹の先からただ広い空間がある事が分かりました。恐らくあの虹は異次元空間への入り口だと思われます。」

「異次元空間に繋がる・・・入り口⁉︎あの虹が⁉︎何でそんなのが開いちゃったの⁉︎」

「・・・・・・恐らくですが・・・スフィアが地球に襲来した影響が関係している可能性が高いです。それより心配なのはあの異次元空間から何が出てくるかです。」

「どういう事だよ?」

 

ピグモンはレッドキングの疑問を聞くと自身のソウルライザーを操作する。彼女のソウルライザーの画面には過去の怪獣に関する記録が映し出されていた。

 

「異次元空間に繋がる虹・・・実はこれは過去にも過去の第一次大怪獣時代の記録にもありました。そしてその異次元空間で怪獣に遭遇した記録も残っています。」

「怪獣が⁉︎マジで⁉︎」

「はい・・・その怪獣の名は」

「グオオオオオオオオオオ‼︎」

 

ピグモンの言葉を遮るように何かが雄叫びを上げる。その雄叫びを聞いた者達全員が目を向けたのは雄叫びが聞こえた異次元空間に繋がる虹だった。虹から大きな足音がズシンと大きく音を立ててこちらに近付いてくる。

 

「お、おいおいまさか・・・。」

「冗談じゃねえぞ・・・おい・・・。」

 

足音が大きくなるにつれて虹から大きな影が現れていく。やがてそれは鮮明にカズマ達がいる世界に姿を現した。カズマ達の前に現れたのは樹海の異次元空間に生息する怪獣『シルバゴン』の強化体である剛力怪獣『キングシルバゴン』だった。キングシルバゴンは虹から完全に出てきてカズマ達の世界に足を踏み入れるとこちらの世界を支配するとでも叫びたげに大きな雄叫びを再び上げた。

 

「グオオオオオオオオオオオ‼︎」




ノーマルかキング、どちらの方を出すかどうか悩んでいたのですが私自身、キング版が初めて見たシルバゴンなのと最近のウルトラマンでキングゲスラが野生で登場している事から別にキングシルバゴンが野生で出てきてもいいかと思い、野生のシルバゴンが進化してキング版になったと考えてキングシルバゴンの方にしました。


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決意のカズマ(後編)

それにしても・・・キングゲスラは今でも現役、キングパンドンは普通のパンドンに生まれ変わって今も活躍中なのに、キングシルバゴンもキングゴルドラスも何故登場しなくなったのだか・・・。

ディメンション怪獣『ミクラス』登場


現場は突如現れたキングシルバゴンにパニックになっていた。キングシルバゴンは口から青い火球『デモリション・フレイム』を吹き、街を破壊して暴れ回る。

 

「ギイゴアアアアアアアア‼︎」

「う、嘘でしょ・・・・・・。」

「か、怪獣が・・・また・・・。」

「現れるなんて・・・。」

 

怪獣娘達が街に出現した怪獣に唖然となる。当の怪獣であるキングシルバゴンは大きく咆哮すると再び口から青い火球を吐き、その足で周りの物を蹴散らしながら街を破壊する。

 

「グオオオオオオオオ‼︎」

「はっ‼︎・・・呆気にとられている場合ではありません‼︎キンキン、照合を‼︎」

「ええ・・・そうデスネ。・・・過去のアーカイブドキュメントに記録を確認、アレは剛力怪獣シルバゴンの強化体のキングシルバゴンデス‼︎」

「キングシルバゴン・・・わたしとハネハネは市民の避難誘導に回ります‼︎GIRLSの皆さん、総員力を合わせて怪獣を止めて下さい‼︎」

『了解‼︎』

「カズマ、ピグモンさんやアムちゃんと一緒にここから避難して‼︎」

「お、おい、待てミク‼︎」

 

カズマは他の怪獣娘達と共に飛び出していったミクラスを見送ることしか出来ずにいた。キングシルバゴンに真っ直ぐ向かっていくミクラスを眺めてピグモンが話し掛ける。

 

「えっと・・・確かミクミクの幼馴染の・・・。」

「明日見・・・カズマです。」

「カズマさん、ミクミクなら・・・あの子なら大丈夫ですよ。」

「ピグモンさん・・・。」

「カズマさんが心配しなくてもミクミクは強いですよ。まだ見習いだった頃、あの子達が見習いから一人前の隊員になるための試験の最中、シャドウが出現した事がありました。けど、ミクミクは初めてGIRLSで出会った2人の仲間と共に逃げる事なくシャドウの脅威に立ち向かいました。」

「ピグモンさん・・・でも今回の・・・相手はシャドウじゃなくて」

「本物の怪獣・・・と言いたいんですよね。分かっています。けど、あの子達ならきっと大丈夫ですよ。絶対に生きて返って来ますよ。だって、ミクミクは初めての大怪獣ファイトの試合の前に敵の襲撃を受けて退院するまで初めての試合が御預けになっても諦めず立ち上がってきました。そしてその初めての試合で見事に勝利を収める事が出来ました。・・・あの子にはどんな困難があっても諦めずに立ち上がり、立ち向かう事が出来る勇気があります。だから、大丈夫、ちゃんと貴方の元に帰ってきますよ。」

「ピグモンさん・・・。」

「さ、私達も避難しましょう‼︎ここも危険ですから‼︎」

「行こう、カズマお兄ちゃん‼︎」

 

カズマはミクラス達から目を離すとピグモンとハネジローに連れられてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、キングシルバゴンに向かっていったミクラス達は目の前の怪獣の大きさに圧倒されていた。

 

「お、大きい・・・。」

「前のスフィアザウルスの時から分かってはいたけど・・・こうやって近くで見るとやっぱり迫力が違うね・・・。」

「怖気ついている場合じゃないわ‼︎来るわよ‼︎」

 

ガッツ星人(マコ)の言葉に皆が気付くとキングシルバゴンがこちらに向けて火球を放ってきた。怪獣娘は散ってそれを避けるとまず先にレッドキングとミクラスがキングシルバゴンの足に拳をぶつける。しかし、その拳は頑丈なキングシルバゴンには通用しなかった。

 

「痛ええええ‼︎」

「何つー硬い皮膚なんだよ・・・‼︎」

「だったらこれで‼︎超震動波ぁぁ‼︎」

 

ゴモラが頭の角に力を集めて超震動波を放つ。それを見たガッツ星人姉妹、キングジョーがゴモラに続いて光線を浴びせるがキングシルバゴンは彼女達の攻撃をものともせず進撃していく。

 

「ゴアアアアアアアアア‼︎」

「駄目‼︎全然聞いてない‼︎」

 

キングシルバゴンは自身の周りをうろちょろする怪獣娘達に向かって再びデモリション・フレイムを放つ。怪獣が放った青い火球は地面に着弾すると大爆発を起こす。怪獣娘達はその爆発に巻き込まれて次々と吹っ飛んでいった。

 

『うわああああああああああああ⁉︎』

 

 

 

 

その頃、カズマを連れて避難所に向かうピグモン、ハネジローは怪獣娘達がキングシルバゴンに蹴散らされる姿を見てショックを受ける。

 

「ピグモンさん・・・皆が・・・。」

「・・・やはり本物の怪獣は強いですね・・・。せめてあのウルトラマンと連絡が取れれば・・・‼︎」

「‼︎」

 

トモミの言葉を聞いたカズマは腰のホルダーに目を向ける。しかし、以前スフィアザウルスとの戦いが終わった後、消えたウルトラDフラッシャーが今も現れない事からその顔は険しく歪んでいく。その時、悲鳴が聞こえてきた。

 

「助けて・・・誰か・・・助けて‼︎」

 

カズマは声の聞こえた方向を見ると足を押さえて苦痛に歪む女性を見る。避難の途中で転んで足を骨折したのか必死に足を抑えるその姿にカズマはいち早く駆け出していった。

 

「カズマさん、どうしました⁉︎」

「カズマお兄ちゃん・・・って、お姉さん怪我してる‼︎」

「大丈夫ですか⁉︎」

「あ、足が・・・足が・・・動かないの・・・。」

「待ってて下さい‼︎」

 

カズマは後ろからついてきたピグモン、ハネジローと共に彼女の応急処置を行う。応急処置を終えるとカズマはピグモンと2人で彼女を抱えて避難所に向かう。

 

「ありがとう・・・ございます・・・。」

「無理しないで下さい‼︎私達が助けますから‼︎」

 

2人はやがて避難所に怪我した女性を連れて行く。ピグモンが医療班に彼女を頼む姿を後にするとカズマは再び怪獣が暴れている方向に目を向ける。そこにはキングシルバゴンの青い火球によって吹っ飛ばされるミクラスの姿があった。

 

「うわああああああああああああああああ⁉︎」

 

カズマは怪獣の攻撃で吹っ飛ぶ幼馴染の姿を見て苦悩に歪む。そして周りの人間が誰も自分に目を向けていない事を確認すると外に飛び出した。そしてこちらに向かってくるキングシルバゴンを見据えて力強く拳を握る。

 

「やるしかねえ・・・今、俺が・・・やるしかねえんだあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

怪獣を止める決意を決めたカズマが手を翳すと以前の戦いで消えたウルトラDフラッシャーが3ヶ月ぶりに現れる。カズマはウルトラDフラッシャーを手に取るとホルダーからデッカーのカードを取り出すとDフラッシャーにカードを装填した。

 

〈Ultra Dimension!〉

 

光の力をDフラッシャーに読み込むと下部のレバーを引き、頭のクリスタルが展開される。カズマはそれを頭上に掲げ、叫んだ。

 

「輝けフラッシュ!デッカァァァァァァ‼︎」

 

そして顔面にDフラッシャーを持っていくとそのままDフラッシャーのスイッチを押して、カズマは光に包まれた。

 

〈Ultraman Decker! Flash Type!!〉

 

 

 

 

 

 

キングシルバゴンはそのまま都心部に向かっていく。それを見た怪獣娘達は傷付いた体を無理矢理でも起こしながら立ち上がる。

 

「このままだと・・・町が・・・‼︎」

「わたし達が・・・やらなきゃ・・・‼︎」

 

ミクラスとゴモラの2人が1番に立ち上がると目の前のキングシルバゴンの前に立つ。キングシルバゴンは下で自分の進む先を妨害するように立つ2人を睨むと口に炎を溜め始める。そのままデモリション・フレイムを放とうとした時、光と共に現れたウルトラマンがその顔を殴り飛ばした。

 

「ジェアッ‼︎」

「ギイガアアアァァァァァァ⁉︎」

「あっ‼︎あれは・・・‼︎」

「あの時の・・・ウルトラマン‼︎」

 

キングシルバゴンが倒れると同時に3ヶ月ぶりに現れた新たな光の巨人『ウルトラマンデッカー』がキングシルバゴンに向かって構える。キングシルバゴンも立ち上がると同時にデッカーに向かって吠え立てた。

 

「ゴアアアアアァァァァァァァァ‼︎」

 

キングシルバゴンはそのままデッカーに向かって突進する。デッカーはこちらに向かってきた怪獣の頭を抑えつけ、顔面にパンチを入れる。頑丈なキングシルバゴンといえど顔面に受けた拳には怯み、後退する。その隙をついてデッカーは銀色の体に拳を連続で放った。しかし、5発ほど拳を撃ち込まれたにも関わらずキングシルバゴンは何のダメージも受けていなかった。そこでデッカーは力を込めてキングシルバゴンの目に向かって拳を放つ。

 

「グオアアアァァァァ‼︎」

 

何とか目を閉じた事で失明は免れたキングシルバゴンだが目に受けた痛みからの怒りを露わに吠えると口からデモリション・フレイムを放つ。デッカーはそれをよけると前転でキングシルバゴンに接近し、タックルを放つ。しかし、キングシルバゴンはデッカーのタックルをものともせずそのまま頭突きでデッカーを吹っ飛ばした。

 

「ジェアッ⁉︎」

 

デッカーは起き上がると同時にキングシルバゴンに蹴られる。怪力を誇るキングシルバゴンの蹴りはデッカーを吹っ飛ばした。再び立ち上がったデッカーが怪獣の腹に蹴りを放つ。しかし、頑丈なキングシルバゴンには蹴りが効かなかった。

 

『こいつ・・・硬え・・・‼︎』

 

デッカーはそのまま続けて頭や腹に拳や蹴りを連続で叩き込む。しかし、キングシルバゴンの硬い表皮にはダメージが通る事はなかった。デッカーがストレートパンチを撃ち込もうとした時、シルバゴンはデッカーの拳を受け止め、投げ飛ばす。

 

「ジェェアッ⁉︎」

 

そのままデッカーを投げ飛ばしたキングシルバゴンは口にエネルギーを集めてデモリション・フレイムを放った。デッカーは立ち上がった瞬間、怪獣の放った火球をまともに受けて吹っ飛ばされてしまう。キングシルバゴンは倒れたデッカーに向けてそのまま青い火球を吐き続ける。怪獣が吐いた火球で地面が大爆発を繰り返し、デッカーはそれに巻き込まれる。そしてデッカーの体はキングシルバゴンの最後の火球の直撃で大きく吹っ飛ばされた。

 

「ジェアアアッ‼︎」

 

デッカーは大きな地響きを立てて地面に倒れる。カズマは目の前のキングシルバゴンを見て歯軋りを立てながらカードホルダーに手を当てる。その時、カードホルダーが開き、3つの光がカズマの前に飛び出した。やがて3つの光は牛を思わせる角を備えた緩い顔の二足歩行の怪獣、全身が銀色のメカニカルな怪獣、頭に1本の角を備えた恐竜を思わせる怪獣が描かれたカードに変化する。カズマはその中から1枚のカードを手に取る。

 

「これは・・・ミクラスのカード⁉︎」

 

カズマが手にしたのは牛を思わせる姿の幼馴染のカイジューソウルの怪獣であるカプセル怪獣『ミクラス』のカードだった。カードに手にした途端、カズマは耳を済ませる。

 

「怪獣カードを・・・ミクラスのカードを使え?・・・分かった、やってみる‼︎」

 

カズマはミクラスのカードを裏向きにしてDフラッシャーに装填し、読み込ませる。そしてレバーを引いて頭のクリスタルを展開させた。

 

〈Mons Dimension! Miclas‼︎〉

 

キングシルバゴンがデッカーに向かって突進してくる。その時、怪獣とウルトラマンの間に光が立ち込めた。そして光の中から牛を思わせる角を備えた怪獣が現れる。その怪獣を見た時、アギラとミクラスは驚いた顔でその怪獣を見る。

 

「う・・・嘘・・・⁉︎」

「アレって・・・あたしの・・・カイジューソウルのミクラス⁉︎」

「クオオオオォォォ‼︎」

 

かつてセブンに仕え、宇宙からの侵略者と戦ったミクラスがデッカーによってディメンション怪獣『ミクラス』となって再び地上に降り立った。ミクラスは目の前のキングシルバゴンを見ると敵だと知り、そのまま突進する。キングシルバゴンとミクラスが激突し、両者の力比べが始まった。

 

「クアアオオォォォ‼︎」

「ギイガアアアアアアア‼︎」

「嘘ぉ⁉︎あんなヤバそうな怪獣相手に互角に渡り合えてる⁉︎」

 

ミクラスは何とキングシルバゴン相手に互角の力比べを繰り広げる。キングシルバゴンの剛力にミクラスは一歩も引かない力比べをしているのだ。自分の元の怪獣であるミクラスの底力にミクラス(怪獣娘)は驚きを隠せずにいた。

実はキングシルバゴン、ミクラス両者ともに力に長けた怪獣なのだがキングシルバゴンの方は470万馬力なのに対してミクラスは500万馬力と力に関してはミクラスの方が上回っているのだ。

やがてミクラスがキングシルバゴンを押し返し始めた。そしてキングシルバゴンはミクラスに力負けし、押し倒される。キングシルバゴンが倒れたところにミクラスがボディプレスを決め、キングシルバゴンの悲鳴が響き渡る。

 

「ギイガアアアアアアア⁉︎」

『凄え・・・ミクラスってこんなに強かったのかよ・・・。』

 

カズマ自身も幼馴染から怪獣のミクラスの事を聞いていたが彼女の口から語られた話とは違うミクラスの強さに驚きを隠せない。キングシルバゴンが立ち上がるとミクラスはその銀色の体表に次々と拳を撃ち込んでいく。自身を上回るミクラスの怪力を秘めた拳にキングシルバゴンも怯み始めた。拳を受け続けてキングシルバゴンが怯むとミクラスは突進してキングシルバゴンを吹っ飛ばす。そして地面に倒れたキングシルバゴンの尻尾を掴むとミクラスはジャイアントスイングで投げ飛ばした。

 

「ギイガアアアアアア⁉︎」

 

キングシルバゴンはミクラスの怪力に翻弄され、完全にグロッキーになっていた。そのまま熱線を吐こうとしたミクラスだが、時間切れになったのか光になってその体は消えていく。デッカーはミクラスが消えた事に戸惑うが怪獣の今の状態を見てチャンスだと感じ、必殺光線の構えに入る。

 

『消えた・・・時間制限があるのか・・・?・・・いや、考えてる時間は無い‼︎ミクラスがくれた今がチャンスだ‼︎』

 

デッカーはチャージを終え、腕を十字に組み、必殺技であるセルジェント光線を放った。頑丈なキングシルバゴンもミクラスの猛攻で弱っていた体ではデッカーの必殺光線に耐えられず光線の直撃で大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

「いやぁ〜・・・大変だった〜・・・。」

「本当、あの虹の向こう側は下手したらあんなのがうじゃうじゃいる怪獣無法地帯の可能性もあった訳だしね〜・・・。」

 

事件の後、GIRLSは避難所にいた市民達がそこから出て行く様子を見てため息をついていた。ミクラスとゴモラの言葉を聞いてピグモンが彼女達の隣に立つ。

 

「もしかしたら本当に再び第一次大怪獣時代の再来になる日が来たのかもしれません。もし、そうならこちらもなるべく人員を増やさなければ・・・。」

「人員か・・・。でも、未覚醒のカイジューソウルを持った怪獣娘を探すのも中々難しいよな。怪獣娘じゃなくても普通の職員は女が多くなるしよ・・・。」

「ええ・・・男性を雇うとしても・・・下心を持った者かどうかを厳正に確認しなければならないというのを考えると・・・中々難しいですね。」

 

合流したレッドキングとピグモンの言葉を聞いて彼女達は思わずため息を吐く。そしてゴモラが遠い目をしながら思わず呟いた。

 

「誰か紹介してくれないもんかね〜。いい人材をさ〜。」

 

ゴモラの言葉を聞いて思わずミクラスが周りを見渡す。すると彼女の目に怪我をしたお年寄りに寄り添うカズマの姿が見えた。それを見たミクラスは思わず呟いた。

 

「もしかしたら・・・いるかも・・・。GIRLSに入れても大丈夫なやつ・・・。」




カズマ「カズマと‼︎」

アム「ハネジローの‼︎」

「「ウルトラディメンションナビ‼︎」」

カズマ「ここからはウルトラディメンションカードについて勉強だ‼︎」

ハネジロー「今日のカードはこれだよ‼︎」

〈Miclas‼︎〉

カズマ「身長40メートル‼︎体重 2万トン‼︎かつてはセブンがカプセルから呼び出したんだけど今回はディメンションカードから紹介されたぞ‼︎」

ハネジロー「カプセル怪獣1番の怪力の持ち主でそのパワーはキングシルバゴンさえも凌ぐ程なんだよ‼︎」

アギラ「次回はボクが担当するよ‼︎」

「「「次回もよろしく‼︎」」」

次回予告(CV:明日見カナタ)
「とある洞窟からゴモラのミイラが発見された。ゴモラのミイラの確保にGIRLSが向かう中、雨でゴモラが生き返った⁉︎しかもゴモラにスフィアが取り憑いてヤバい怪獣に‼︎もっと・・・もっと力が欲しい!次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマンデッカー


出動!GIRLS


皆、見てくれよな‼︎」


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出動!GIRLS(前編)

ゴモラが恐竜の生き残りという設定を考えるとそのミイラが保存されていた洞窟ならこんな生物が人知れず生き残っててもおかしくないかなと思って書いた描写があります。
ウルトラマンって元々SF要素がありますし、その前身であったウルトラQはSF要素が強かったので別に許されると思うのですが・・・どうですかね?

古代怪獣『ゴモラ』登場


ここは東京内にあるとある洞窟である。とある会社が道路工事のための調査を行っていた過程で新たに洞窟を発見し、2人の洞窟専門の探検家が派遣される事になった。そして今、2人の探検家が洞窟内を探索している。

 

「広いな・・・。」

「ああ、それに奥もかなり深い・・・東京都内にこんな洞窟があったとは・・・。」

「これは・・・我々2人だけでは完全に探索し切るのは難しいぞ・・・。」

「しかも深くて長い・・・こりゃ本格的な探検隊を編成した方がいいかもしれんな。」

 

2人は洞窟内をずっと歩き続け、狭い天井とそこから降り注ぐ地下水を超え、行けるところまで歩き続ける。すると先に光見え、2人は立ち止まる。

 

「あそこ、光ってるな・・・。」

「地上からかなり深い場所だが・・・引き返せなくもない・・・行ってみよう。」

 

2人は光を辿ると広い空間に辿り着く。探検家達は唖然としながら周りを見渡して立ち止まった。そこは様々な色のクリスタルが至るところに散らばっていた。地下水が溜まって出来た広大な地底湖の水は透き通っており、クリスタルによって輝いているその空間を更に色鮮やかに輝かせている。探検家達はこれを見て呆然と立ち尽くすしか無かった。

 

「凄い・・・まるで幻想の世界だ・・・。」

「それにこの広さ・・・世界中探してもここまでの空間を備えた洞窟は存在しないぞ・・・。」

 

1人の探検家が足を一歩踏み出して歩み始める。もう1人の探検家は辺りを見渡しているうちに地下水が溜まった池に近付き、何か生き物がいないか確認する。すると自身の足元の水面で何か蠢く虫みたいな生き物を発見する。

 

「おい‼︎こっちに来てくれ‼︎水の中に何かいる‼︎」

「何⁉︎・・・本当だ・・・何か虫のような生物が這っているな・・・。」

「確かめよう。網を貸してくれ。」

 

相方を呼び戻し、地下生物の捕獲の為に用意した網を水中に突っ込んで謎の生物を捕獲する。2人は直ちに捕獲した生物を持っていた水槽に入れ、確認する。

その生物はフナムシなどを思わせるフォルムの節足動物だったが、フナムシとは違い、頭部から縦に走る軸溝によって体が右、中、左に分かれているように見える。頭部には一対の複眼と2本の触覚を備え、無数の脚を生やしたその生物を見て2人の探検家は驚いた顔をする。

 

「お、おい・・・この虫、なんかアレに似てないか・・・。」

「そ、そんな馬鹿な事がある訳・・・しかし、この虫・・・確かにそっくり・・・いや・・・太古に絶滅した三葉虫そのものにしか見えないぞ‼︎」

「しかも・・・生きてる・・・俺達の目の前で・・・動いてる‼︎」

 

そう、彼らが捕獲したのは遙か昔、古生代のペルム紀と呼ばれた時代の末期に完全に滅びた筈の三葉虫であったのだ。遙か昔に滅びた筈の生きた古代生物を2人は水槽を覗きながら唖然と見つめている。

 

「信じられない・・・生きた三葉虫をこんなところで見れるとは・・・。」

「長年、外界から閉ざされたこの世界ではずっと生きながらえていたんだ・・・もしかしたら三葉虫以外にも滅びた筈の生物がいるかもしれん‼︎」

「よし、湖をもっと調べてみよう‼︎」

 

2人は湖に再び目を向け、水面をライトで照らした。すると水中を泳ぐ小さな魚が見えた。1人が網を突っ込み、魚を捕獲するとその姿を確認する。

 

「な、なんだ・・・この魚は・・・⁉︎」

 

魚を捕獲した探検家はその姿を見て驚きと疑問を浮かべる。何故ならその魚は顎が存在せず、体が固い鎧のようなもので覆われているという現代のどの魚の特徴にも当てはまらない魚だったからだ。その魚を観察していたもう1人の探検家は魚を見て驚いた顔で詰め寄った。

 

「おい、この魚・・・甲冑魚かもしれないぞ‼︎」

「甲冑魚?」

「図鑑や博物館で化石を見たことがある。体が鎧のような骨盤で覆われていた魚達だ。これも大昔に絶滅している‼︎」

「じゃあ・・・‼︎」

「ああ‼︎この魚も絶滅種だ‼︎・・・世紀の大発見だぞ‼︎」

 

2人の探検家は遙か昔に滅びた筈の古代生物を目の当たりにしてはしゃぐ。2人は捕獲した甲冑魚も水槽に入れて写真を間近に撮り、動画にも収めると魚の方を湖に逃してやる。すると甲冑魚はサソリのような体をしているもののその尻尾の先は鋭いものの毒針が無く、大きな鋏を備えた1メートルくらいの大きさの節足動物に襲われる。巨大な節足動物の鋏によって甲冑魚は引き裂かれ、あっという間に湖が血で染まると節足動物は獲物を水底に引き摺り込んでいった。2人の探検家はその光景を見て暫しの間、絶句していた。

 

「い、今のは・・・?」

「ウミサソリに見えたぞ・・・。」

「ウミサソリ?」

「太古の節足動物だ。大昔の海に生息していた節足動物でサソリのような姿をしているからそう呼ばれている・・・。様々な種類がいるらしいが中には2メートルを超える種もいたらしい・・・。コイツらも絶滅している・・・。」

「あんなのがいると思うと恐ろしくなってきた。地底湖にはこれ以上近付くのはやめよう・・・。」

 

相方の言葉に頷いた男は陸地に沿って脚を進めていく。暫く歩いて数十分後、彼らは大きな岩に進行を阻まれた。

 

「何だ?こんなところで行き止まりか・・・。」

「仕方ない・・・地上に戻るか・・・。」

 

探検家達はため息をついて元の道に戻ろうとする。その時、1人が一息ついて岩に背持たれた時、背中から柔らかい感触を感じて男は驚いたように振り向いた。

 

「どうした?」

「いや、岩にしては感触が柔らかすぎて・・・何だこれ?」

 

背を掛けた探検家は岩の正体を確かめようと周りを歩き出す。その後をついてもう1人も足を進めると先に向かった探検家が叫び出した。

 

「うわああああ⁉︎」

「おい⁉︎どうした⁉︎」

「こ、これ・・・岩じゃないぞ・・・‼︎」

 

その言葉に思わず後から来た探検家が驚いた表情で何かを見る相方と同じ方向に視線を向ける。するとそこには自分達より巨大な足が存在していたのだ。

 

「デカい・・・何メートルあるんだ・・・。」

「おい‼︎ここから登れそうだ。この巨大な足の正体を確かめてみないか‼︎」

 

登れそうな岩場を見つけると2人は登って、足の正体を確かめる。すると2人は驚いて唖然としていた。自分達が岩と思っていたのは足の下には巨大な長い尻尾を持つ持つ巨大な怪獣のミイラだったのだ。

 

「か、怪獣だ‼︎早く逃げるぞ‼︎」

「待て‼︎・・・既に死んでるから大丈夫だ‼︎・・・凄い物を見つけたな・・・兎に角戻ってGIRLSに通報しよう‼︎」

 

探検家達は怪獣のミイラを後ろから見ながらその場を後にしていく。そして洞窟を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その2日後、東京某所で新たに確認された洞窟から怪獣のミイラが発見された事は当然、GIRLSにも伝わった。今は東京支部の講義室でトモミがいつものメンバーを集めて会議を行なっている。

 

「皆さん、ここに集まってもらったのは他でもない・・・東京のとある洞窟から見つかった怪獣のミイラについてです。」

「ああ、先日のニュースでやってた奴ですね・・・。古代の生物の生き残りが見つかったっていう・・・。」

「珍しいものですよね。怪獣のミイラが見つかったなんて〜。」

「うん、しかも全身、保存状態が綺麗なんて・・・。」

 

最近、スフィアザウルスやキングシルバゴンの襲来はあれどこの第一次大怪獣時代においてかつて怪獣が存在していたという裏付けを表す遺物が発見される事は珍しい。この場にいた全員がそのニュースを聞いて驚いた経験がある。モニターには怪獣のミイラが発見された洞窟があった地図が映し出されている。

 

「ゴモゴモとアギアギの言う通り、この時代において全身がある怪獣のミイラは怪獣の研究においてとても貴重なものになります。また、この怪獣のミイラを使った新たな兵器利用を目論む裏組織も出て来るかもしれないという事で私達GIRLSは怪獣のミイラの回収作戦を行う事になりました。」

「怪獣のミイラ回収・・・。あたし達で・・・。」

「ま、今、この星で怪獣によく携わっているのは私達GIRLSな以上、妥当な判断ね。」

「作戦は3日後となります。皆さん、作戦に向けて備えて下さいね。」

 

会議が終了してからトモミは講義室から出て廊下を歩いていた。すると1人の男性とすれ違う。トモミはその姿を見ると男性に挨拶を交わした。

 

「お疲れ様です、アサカゲ博士。」

「ええ、お疲れ様です。」

 

トモミが挨拶した人物の名はアサカゲ・ユウイチロウ。スフィア対策に当たって新たにGIRLS東京支部の開発課に配属された科学者である。

 

「GIRLSには慣れましたか?」

「ええ、女性が多いので少し心配でしたが多岐沢博士や他の職員、開発課の怪獣娘達のお陰で慣れましたよ。」

「それは良かったです。」

「もう少し、男性を増やしてくれても良さそうなものですけどね。」

「申し訳ありません・・・GIRLSは組織の都合上、どうしても女性が多くなってしまうんです・・・。」

 

アサカゲは溜息をついて、現実は厳しい事を察する。そして、今朝のニュースや今後の予定を思い出すと再び口を開いた。

 

「それより、例の怪獣のミイラ・・・遂に回収に当たるそうですね。」

「ええ、怪獣のミイラはかなり貴重ですからね。今の地球でGIRLSが1番怪獣という存在に携わっていますし、このミイラが怪獣娘にとって何か役に立つ事があるかもしれませんから。」

「私は少し心配ですよ。彼女達はまだ未成年も多い・・・本当に大丈夫なのですか?」

「確かに怪獣娘の皆さんは未成年が多いです。でも、年齢を感じさせない活躍を何度も遂げているんですよ。皆さんならきっと大丈夫です‼︎」

「だといいのですが・・・私はそろそろ失礼しても?」

「ええ、大丈夫ですよ〜。お時間ありがとうございました〜‼︎」

 

トモミが去っていくとアサカゲは1枚のカードを取り出した。そしてカードを暫く見つめていると再び懐にしまい、その場を後にして行った。

 

 

 

 

「てな訳で3日後、あたし、学校休むから‼︎」

「いきなりだな、おい・・・。」

 

会議が終わった後、ミクはカズマの店を訪れて先程まであったことを話していた。カズマはミクからお金を受け取ると彼女が頼んでいた胡麻煎餅を手渡す。

 

「ま、GIRLSの任務なら仕方ないな。先生もその辺は知ってるんだろ?」

「先生には明日話すよ‼︎」

「だったら大丈夫だろ。その間、授業のノートは取ってきてやるよ。ま、どうせミクには分からないだろうけどな。」

「う、うっさいな‼︎あたしだって頑張ってるんだ‼︎」

「悪い悪い。」

 

ミクは頬を膨らませながらカズマを睨むと拗ねた表情で胡麻煎餅を囓る。カズマはご立腹な表情を浮かべるミクの肩を優しく叩きながら謝ると今度は真剣な表情になって彼女と向き合う。

 

「ミク。」

「ん?」

「幾ら怪獣娘とはいえ古代生物の生き残りや怪獣のミイラがあるような未知の洞窟に挑むんだ。気を付けていけよ。」

「うん‼︎」

 

ミクは自身の安否を気遣うカズマの言葉を聞いて機嫌を良くすると満延の笑みで頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

そして当日、遂にGIRLSによる洞窟に眠る怪獣のミイラの回収作戦が実行された。現場にはGIRLS東京支部に所属する怪獣娘達が既に到着している。

 

「今回もいつものメンバーだけ?」

「いえ、地底に潜るという事で助っ人をお呼びしていますよ〜。それではどうぞ〜‼︎」

 

ガッツ星人(ミコ)の言葉に答えたピグモンの言葉で大きな目玉のような模様を付けた大きな手の怪獣娘が姿を表す。その怪獣娘を見たザンドリアスとノイズラーは驚いた。

 

「あー‼︎」

「モゲドン‼︎」

「ヤッホー、ザンドリアスにノイズラー‼︎私も来ちゃった‼︎」

 

彼女こそザンドリアス達のバンドの臨時メンバーである地底怪獣の怪獣娘『モゲドン』である。彼女はカイジューソウルの性質上、穴を掘る力に長けていたため今回、ピグモンに助っ人として呼ばれたのだ。彼女が合流したところで作戦が説明される。

 

「まず、ゴモゴモとモゲモゲが穴を掘って洞窟まで繋がる道を作ります‼︎皆さんはその道から突入してください‼︎」

『了解‼︎』

「さてと・・・行きますか、モゲドンちゃん‼︎」

「OK、ゴモラ‼︎」

 

2人が先陣して穴を掘り進め始める。穴を掘る力に長けた2人が穴を掘り始めて数十分後、他のメンバーが突入する準備を整え、穴の中に潜っていく。

 

「それでは皆さん、突入準備はいいですか?」

『はい‼︎』

「それではミッションスタートです‼︎」

 

ピグモンの合図で次々と怪獣娘達が穴に突入していく。彼女達が穴に潜り続けて2時間程、怪獣娘達は洞窟に辿り着いた。次々と穴から怪獣娘が降りてくる。最後にミクラスが着地すると穴に突入したメンバーが全員揃う。

 

「よっしゃ!着いた‼︎」

「よし、1番最後のミクラスが揃ったところで少しだけ休憩しよう。出発は10分後だ。」

 

レッドキングの言葉で彼女達はその場に座り込む。そして10分後、怪獣娘達は立ち上がり、出発した。そして1時間程進むとあの探検家達が来た広い空間に辿り着く。彼女達はその広さに驚きを隠さずにいた。

 

「凄く・・・広い・・・。」

「見て見て‼︎色んな色のクリスタルが光ってる‼︎すっごく綺麗・・・。」

「地球にまだこんな世界が残っていたなんて・・・。」

「話では聞いていたけど・・・こうして見ると予想以上だね・・・。」

「何かここにいるといい曲が思い付きそう・・・。」

 

感激の声を上げるアギラ、ゴモラ、ガッツ星人(ミコ)、ミクラスの横でノイズラーは思わずギターを手に取り軽く鳴らした。その横でマガバッサーとマガジャッパは広い地底湖に目を向ける。

 

「見て、ジャッパ‼︎すっごく綺麗‼︎」

「うん、水が透き通ってる・・・。」

「何たって生きた三葉虫がいるくらいらしいからね。」

「ねえ、何か水中に沢山いるわよ‼︎」

 

ザンドリアスが指を指した先に皆か向かう。そこには数十cm程の大きさの三葉虫が10匹程這い回っている。その中でも1番浅瀬にいた個体を見つけたミクラスは思わず水に手を突っ込み、三葉虫を摘み上げた。

 

「ねえ、一匹捕まえたよ‼︎」

「お、おいミクラス‼︎頼むからこっちに持ってくんな‼︎」

「気味が悪いわ‼︎早く捨てなさい‼︎」

 

女子特有の節足動物に対する嫌悪感をレッドキングとエレキングが見せて後退る中、マガバッサーとゴモラが三葉虫に近付く。

 

「これが大昔に滅びた三葉虫・・・凄い‼︎本当に生きてるよ‼︎」

「この星にまだこんな秘境があったなんてね〜‼︎」

「皆、こっちに来て‼︎」

「生きたアンモナイトがいる‼︎」

 

アンモナイトとは古生代シルル紀末期から中生代白亜紀に掛けて生息していたカタツムリのような殻を纏った頭足類の仲間である。アギラとガッツ星人(ミコ)の言葉を聞いて恐竜と共に滅びた筈のアンモナイトがいる事に驚きを隠せないウインダムは思わず叫んだ。

 

「ええっ⁉︎アンモナイトってあのアンモナイトですか⁉︎確かあれは恐竜と共に絶滅した筈ですよ‼︎」

「ウインちゃん、本当なんだって‼︎」

 

ウインダムを筆頭に皆がアギラとガッツ星人の元に駆け寄るとそこには渦巻状の殻から無数の触手を出した姿の皆がよく知るアンモナイトが泳いでいた。ガッツ星人(マコ)か思わず水中に手を突っ込み、殻を掴むと持ち上げてその姿をよく見る。

 

「確かに・・・図鑑で見た姿にそっくり・・・ううん、そっくりなんてものじゃないわ・・・図鑑で見た姿そのものよ。」

「マジで凄え・・・太古に滅んだ筈の生物が生きてる・・・。」

「あっ‼︎見て‼︎他にもこんなに‼︎」

 

ゴモラが指差した先をその場の皆が確認する。するとそこには水底を這う無数の三葉虫の上で様々な種類の甲冑魚が泳ぎ回っていた。更にその甲冑魚や三葉虫を50cmから1mまでの様々な大きさのウミサソリが複数泳ぎ回り、三葉虫や甲冑魚を狩っている。そしてそこから少し目を離すと更に複数のアンモナイトが水中を漂っている姿が水面から確認出来た。大昔の生物が無数に渡って生息している事に怪獣娘達は唖然としていた。

 

「マジで・・・大昔に滅びた生物が・・・こんなに沢山・・・。」

「弟が持ってた恐竜図鑑で見た事がある生物が沢山だ・・・。ウミサソリや甲冑魚もいる・・・。」

「信じられない・・・この現代でこの生き物達が未だに生きていたなんて・・・。」

「見て‼︎何か大きいのがいる‼︎」

 

ガッツ星人(ミコ)が指差した方向では何か大きな生物が泳いでいた。その姿は2mくらいの大きさのワニのような姿だったがその体表は鱗ではなくむしろカエルなどの両生類のものに近い生物だった。その生物はアンモナイトに急接近すると途端に噛み付き、硬い殻を砕きながら中身を貪っていく。その姿に再び怪獣娘達は唖然としていた。

 

「あれ何?ワニ?」

「多分違うと思います・・・皮膚はカエルなどに近いし・・・多分両生類かもしれません。」

「おい、ウインダム、馬鹿な事言うな‼︎あんな凶暴そうな両生類なんて聞いた事ねえぞ‼︎」

「そうでもないかもと思うよ・・・。」

「ミクラスさん、何言ってんですか⁉︎」

「あたしの弟が持ってた恐竜図鑑で見たんだけどさ、大昔にはワニのような姿の両生類がいたらしいよ・・・今のあれ、図鑑で見たそれにそっくりだった・・・。」

「ええ、わたしも図鑑で見た事あります・・・エリオプスなど、大昔には2、3mくらいの大きさの様々な種類の両生類がいたらしいです・・・今のはその子孫かもしれません・・・。」

「に、2、3mくらいはあるワニのような両生類⁉︎」

「マジで・・・そんなのいたのかよ・・・。」

 

ウインダムの解説にザンドリアスとノイズラーは驚きを隠せない。他の怪獣娘も解説を聞いてウインダムに目線が向いていた。その時、水面が盛り上がり、水しぶきが上がるとワニのような大きな顎を開けて3mくらいの大きさの古代の両生類が彼女達を襲ってきた。

 

「⁉︎・・・何か来る‼︎」

「えっ・・・うわああああああああああ⁉︎」

 

ウインダムの解説に気を取られていた彼女達だが突然水しぶきを上げる音に気付いたノイズラーの声で大口を開けて向かってきた両生類に気付くと思わず飛び退いた。両生類は空を噛むがミクラス達を見ると再び大口を開いて噛みつこうと襲ってきた。

 

「なっ、襲ってきた⁉︎」

「この野郎・・・お前に食わせる物なんかねえよ‼︎代わりにこれでも食らいな‼︎」

 

レッドキングが頭に拳をぶつける。両生類は水中に吹っ飛ばされるとそのままいそいそと中に潜っていく。そして辺りは静寂に包まれた。

 

 

「いやぁ、まさかあんな生物までいるなんて・・・。」

「それにしても・・・どうして三葉虫やアンモナイトなどの生物があの地底湖で生きていたのでしょうか?」

「長い間、外界から閉ざされていたこの地底湖に閉じ込められていたから・・・現代まで生きていられたんじゃないかな?」

「成る程ねぇ・・・地底湖への暮らしに適応して進化しながら現代まで子孫を残して生きながらえていたって事ね・・・。その内、本格的な調査隊を寄越す必要がありそうだな。」

「うん、多分その時はまたGIRLSも協力する事になりそうだね・・・。」

 

彼女達は地底湖を後にして先に進む事にした。前進しながら先程の地底湖の生物について語り合っている。しかし、そんな中、1番のお喋りなゴモラは何故か押し黙っていた。そんなゴモラの様子が気になったアギラはゴモラに問い掛ける。

 

「ゴモたん、どうしたの?さっきから黙り込んで。」

「へっ?ああ、いやね・・・何かこの洞窟に入った時からどうも胸騒ぎがするんだよ。しかも奥に進むにつれて胸騒ぎが大きくなってくるんだ・・・まるでわたしのカイジューソウルが疼いているみたい・・・。」

「そうなの?それって一体・・・うぶ⁉︎」

 

突然前を進んでいたガッツ星人(ミコ)が立ち止まった。アギラは突然立ち止まった彼女に文句を言う。

 

「ちょっとガッツ〜、急に立ち止まらないでよ〜‼︎」

「御免御免・・・でもさ、話している間に着いたみたいだよ。」

「着いたって?」

 

ガッツ星人(ミコ)が指を刺すと目の前には大きな40m程の大きさの巨大なミイラが横たわっていた。どうやら雑談をしている間に彼女達は怪獣のミイラの元まで辿り着いたらしい。怪獣娘達は目の前のミイラを見回っていた。

 

「凄い・・・長くて太い尻尾・・・。」

「生きてた頃は強靭な怪獣だったんだろうね・・・。」

「皆さん、こっちに来て下さい‼︎」

 

頭の付近を調べていたマガコンビが何かを発見したのかマガジャッパが皆を呼ぶ。彼女達はマガコンビの元にやってくると代表してエレキングが訊ねた。

 

「貴方達、何を見つけたの?」

「このミイラ・・・一体何のミイラか分かりました‼︎」

「この頭を見て下さい‼︎」

 

マガバッサーが指差した先には三日月状の角を備えた頭に鼻先に一本角がある顔が確認出来た。それを見たアギラとゴモラは恐る恐る訊ねる。

 

「ち、ちょっとその顔って・・・。」

「ま、まさかわたしの・・・。」

「はい、この頭の角から見てこの怪獣は・・・古代怪獣ゴモラのミイラです‼︎」

 

マガジャッパの言う通り、このミイラの正体は黒田ミカヅキことゴモラの元の怪獣である古代怪獣『ゴモラ』のものだったのだ。ミイラとはいえ初めて見た本物のゴモラ(本物)にゴモラ(怪獣娘)は感嘆とした表情でミイラを眺める。

 

「これがわたしの・・・カイジューソウルの・・・ゴモラ・・・本物見るのは初めてやあ・・・。」

「それは誰も同じだと思うよ・・・。それにしてもまさかミイラの正体が本物のゴモラだったなんて・・・。」

「ゴモたんのカイジューソウルが疼く訳だね・・・それよりどうする?この人数じゃ運び切れないよ。」

「地上に応援を頼もう‼︎俺達が入ってきたところからなら連絡が出来る筈だ。」

 

 

 

 

レッドキングからの要請で到着した応援が洞窟に潜り、漸くゴモラのミイラを回収する事に成功した。今はゴモラのミイラはベースキャンプの元で保管されている。

 

「いやぁ〜、大変だったぁぁ・・・。」

「皆さんお疲れ様です。」

「大勢の応援が無きゃ絶対に成功出来なかったよ〜。」

 

任務を終えて変身を解いた彼女達は皆、椅子に座り込みながら横たわっている。2万tもあるゴモラを運ぶのは相当大変だったらしい。トモミがお盆に冷えたジュースを注いだコップを配っていく。

 

「皆さん、お疲れ様でした。この後は食事にしましょう。沢山用意しましたから。」

「やった〜‼︎あたし、お腹空いてたんだ〜‼︎」

 

そして数十分後、彼女達は夕飯にありついていた。夕食のカレーを食べながら彼女達はゴモラのミイラに視線を向けている。

 

「本物のゴモラを見ながら夕飯を食べる日が来るなんて思ってもみなかったよ。」

「本当だよね。それにしても本当に大きい・・・。」

「しかもパワフルな感じがする・・・ゴモがパワーに優れるのも分かるよ。」

「えへへ〜。それほどでもぉ〜。」

 

彼女達が雑談話をしていると突然雷が鳴り響いた。突然の雷鳴にサチコが驚く。

 

「うわぁ⁉︎何何何⁉︎」

「落ち着けよ、ただの雷だろ。」

「それにしても雲が立ち込めてますね・・・これは一雨来そうです・・・。」

「一旦、本部というか・・・キャンピングカーに戻らない?ご飯はそこで食べてもいいでしょ?」

「そうですね、一旦移動しますか。」

 

彼女達はゴモラのミイラにブルーシートを被せてキャンピングカーに戻る。そして今夜一晩、強風と大雨が発生し、彼女達はそのままキャンピングカーで寝る事になった。しかし、強風は思ったより激しくゴモラを覆っていたブルーシートはやがて剥がれてしまう。そしてミイラに大量の雨水が降り注いだ。

 

 

「お、おいこれって・・・。」

「今日の夜、強風でブルーシートが飛ばされたようですね・・・。」

「じゃあこれって雨がミイラに降り注いだせいか・・・。」

「恐らく・・・。」

 

翌朝、彼女達はゴモラのミイラを確認して唖然としていた。干からびたミイラが何故か元のゴモラの体格まで膨らんでいたのである。

 

「ねぇ、ゴモラのミイラ・・・何か膨らんでない・・・。」

「うん・・・。膨らんでるね・・・。」

「何か・・・過去にゴモラの記録の中で雨で復活した事例が無かったっけ?」

「ああ、アメリカで復活したゴモラの亜種の事ね。でも、これはジョンスン島にいた方だし・・・大丈夫だと思うけど・・・。」

「だったら・・・大丈夫だね‼︎」

「グルル・・・。」

 

ミク、アキ、ミカヅキが話し合っていると唸り声が聞こえてくる。思わず彼女達は周りを見渡した。

 

「ね、ねぇ、今何か唸り声がしなかった?」

「う、うん、確かに聞こえた・・・。」

「耳がいいアタシにも聞こえた・・・間違いないぜ。」

「「ま、まさか・・・。」」

 

ミサオの声を聞いてヨウとユカが思わずゴモラには目を向ける。するとゴモラの目が開き、立ち上がりだした。その光景に彼女達は驚きながら慌て始める。

 

「お、おい‼︎目が開いたぞ‼︎」

「これって・・・まさか・・・。」

「うわああああああ‼︎立ち上がりだしたぁぁぁ‼︎」

「ギャアオオオオオオオォォォ‼︎」

『うわああああああああああああああ‼︎』

 

完全に立ち上がったゴモラは天に向かって雄叫びを上げる。天に雄叫びを上げるその姿こそ、古代怪獣『ゴモラ』が現代に復活した瞬間だった。




ゴモラのミイラを運ぶシーンが省略されたのには理由があります。本格的に連載するとなった場合、ミイラを運ぶ場面で様々な新キャラが加わる予定なのでネタバレになるからです。
また本格連載版では洞窟に生息している古生物が増えます。私自身、恐竜などの古生物が好きなのでその趣味が全開になる予定です。


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出動!GIRLS(後編)

怪獣娘×デッカー、読み切り版最後の投稿です‼︎本当は11月のうちに投稿を済ませたかった・・・。

古代合成獣『スフィアゴモラ』登場


ゴモラが復活したその頃、その事を知らないカズマは学校から帰る途中だった。そんな彼の背中にアムが飛び付いてくる。

 

「カーズマお兄ちゃん!!」

「わっ!?・・・アムちゃん‼︎」

「えへへ‼︎たまたま見かけたから後を付けて来ちゃった‼︎カズマお兄ちゃんも帰りなの?」

「ああ。」

「だったらアムと一緒に」

「ギャアオオオオオオオオ‼︎」

 

アムの言葉を遮るように聞こえた謎の雄叫びを聞いたカズマは咆哮が聞こえた方向を向くと同時に走り出した。アムは突然走り出したカズマを見てその後を追いかけて行く。

 

「ま、待って‼︎カズマお兄ちゃん‼︎カズマお兄ちゃーん‼︎」

 

 

 

 

 

 

その頃、GIRLSの怪獣娘達は復活したゴモラの対応に追われていた。街で暴れ回るゴモラを後ろにミクラス達かぷせるがーるずは戦えない人達の避難に追われている。その横でアギラがピグモンに問い詰めていた。

 

「皆さん、落ち着いて下さい‼︎」

「慌てないで落ち着いて‼︎」

「ピグモンさん、どうしてミイラだったゴモラが復活したんですか⁉︎」

「分かりません‼︎でも、恐らくかつてアメリカに現れたゴモラの亜種は雨を受け、ミイラの姿から蘇ったという記録があります‼︎」

「昨日の夜は大雨に加えて強風デシタ。風でブルーシートが飛ばされ、アメリカに現れた亜種のように雨を受けて水分を得て復活したのでショウ。」

「ギャアオオオオオオオオ‼︎」

 

キングジョーがピグモンの推測に補足を入れる後ろでゴモラが尻尾を振り回して周りの建物を破壊しながら吠え回る。何処となくゴモラの目は苦しそうに見開き、苦しみから逃れたいと言わんばかりに首を掻いていた。

 

「ギャアオオオオオオオ‼︎」

「ねえ、何かゴモラ・・・苦しそう。」

「わたし、別に苦しくないけど?」

「いや、ゴモたんに言ったんじゃないよ‼︎本物の方を見て言ったんだって‼︎」

 

ボケをかますゴモラ(怪獣娘)に鋭くツッコミを入れるアギラの横でウインダムやエレキングがゴモラ(本物)を観察する。頭がいい2人は過去の記録を思い返していた。

 

「確か・・・アメリカに現れた亜種も雨で復活した時も・・・。」

「ええ、無理な復活で苦しみ・・・ウルトラマンとの戦いの最中に死んだわ。」

「今回はあの時のケースによく酷似しています‼︎恐らくですがあのゴモラの寿命は1日を待たずに尽きるかと思われます・・・。」

「けど、少なくとも1日はまた生きているんだろ⁉︎その間ずっとアイツを放置しておくのか⁉︎そんな事したら多くの被害が出るぞ‼︎」

 

レッドキングの言う通り、ゴモラは苦しみから逃れたいと言わんばかりに腕や尻尾を振り回して周りにあるものを破壊している。ピグモンはゴモラを見て決意を固めた。

 

「・・・いえ、可哀想かもしれませんが・・・被害が拡大している以上、ゴモラを放っておく訳にはいきません‼︎皆さん、ゴモラが止まるまで何とか時間稼ぎをお願いします‼︎」

『了解‼︎』

 

かぷせるがーるずやマガコンビ、ザンドリアスとノイズラーの中学生コンビが市民の避難誘導をしている中、レッドキング達ベテランの怪獣娘は暴れるゴモラに向かっていった。

 

「オラアッ‼︎」

 

まず、レッドキングがゴモラの膝に拳をぶつける。しかし、強靭な生命力を持つゴモラには彼女の拳など何の意味も無かった。そのまま尻尾を振り回して暴れ回るゴモラの周りを分身したガッツ星人姉妹が取り囲む。そして彼女達は一斉に光線を放ち、ゴモラを足止めする。

 

『はあっ‼︎』

「ギャアオオオオオオオオオ‼︎」

 

自身を取り囲み、光線を浴びせる彼女達を鬱陶しく感じたゴモラは角に力を集めて超震動波を放った。ガッツ姉妹は瞬間移動で逃れるとそのまま地面に着地し、ゴモラを睨む。

 

「流石は本物のゴモラだね・・・。」

「ええ、生命力が尋常じゃないくらいに強いわ。」

「ギャアオオオオオオオオ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

その頃、カズマはゴモラが暴れる現場に着くたび、瓦礫に隠れて泣いているアムと同じくらいかそれより少ししたんですかくらいの年の少年を見つける。カズマとアムが変身したハネジローは真っ先にその場に向かっていった。

 

「うえええぇぇぇぇん‼︎お父さぁぁぁぁん‼︎お母さぁぁぁん‼︎何処ぉぉぉぉ⁉︎」

「君、大丈夫か⁉︎」

「うえええええん‼︎うえええええええん‼︎」

「落ち着いて‼︎ハネジロー達は助けに来たの‼︎」

「・・・本当に?僕を助けに・・・?」

「ああ、そうだ。」

 

少年が泣き止むのを確認したカズマとハネジローは一息つくと少年に向かって訊ねた。

 

「お母さん達とはぐれたんだな?」

「・・・うん。」

「ハネジロー達に任せて‼︎一緒にお母さんとお父さん探してあげる‼︎」

「本当に・・・?」

「ああ‼︎」

「ありがとう、お兄ちゃん達‼︎」

 

少年が泣き止んだ事を確認したカズマとハネジローは少年を連れてその場から離れる。すると大きな物音が後ろから響き、2人が振り返るとゴモラが尻尾でビルを薙ぎ倒す瞬間を見る。

 

「やべえ事になってんじゃねえか・・・。」

「カズマお兄ちゃん、早く行こう‼︎」

 

カズマはハネジローの声に頷くと少年を連れて崩れるビルから逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

「いくでえぇぇぇぇ‼︎フルパワーの超震動波ぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

ゴモラ(怪獣娘)が全エネルギーを角に集めた超震動波を放つと同時にキングジョーが額から、ガッツ姉妹の両手から光線が放たれ、ゴモラ(本物)に命中する。しかし、ゴモラ(本物)の体に何のダメージも与える事は出来なかった。ゴモラ(本物)は自身に攻撃してきた怪獣娘達をうざったく感じたのか彼女達に尻尾を振り回す。命中こそしなかったものの尻尾が振り回された衝撃と強風で彼女達の体は大きく吹っ飛んでいった。

 

『うわああああああああああああああ⁉︎』

 

彼女達は大きくビルに激突し、体が地面に倒れる。何とか体を起き上がらせるがそこに最悪と言える悪魔の知らせピグモンから入ってきた。

 

『皆さん、大変です‼︎スフィア反応が出ました‼︎スフィアが来ます‼︎』

『⁉︎』

「お、おい‼︎あれ見ろ‼︎」

 

レッドキングが指差した先では無数のスフィアソルジャーが空から降りてきている。スフィアソルジャーはゴモラに向かっていく。そして無数のスフィアソルジャーがゴモラに取り憑き、その体を侵食していく。スフィアに取り憑かれ、ゴモラの姿が変わっていく。

 

「見て‼︎ゴモラが‼︎」

 

市民の避難誘導をしていた怪獣娘達もその様を見て驚愕する。ゴモラはスフィアに取り込まれ、体格が更に大きくマッシブな姿になり、体表は焦茶色からグレーに変化し、三日月状の角のうち、右側が曲がりくねって大きなものになる。目は生気を感じさせない白目となり、背中にも本来無かった突起が生え、スフィアに取り込まれた事で異形の姿になった事がハッキリと分かる。その瞬間こそ、ゴモラがスフィアによって取り込まれスフィア合成獣となった古代合成獣『スフィアゴモラ』の誕生であった。

 

「ギャアオオオオオオオオオ‼︎」

「ご、ゴモラが・・・スフィアに・・・。」

「取り込まれた・・・。」

「かつてのスフィアと同じように他の物を取りこみ、怪獣化させられるのかよ‼︎」

「スフィア合成獣・・・じゃあ・・・やっぱりスフィアは・・・かつての・・・。」

 

ゴモラと対峙していた怪獣娘達はその様を至近距離で見て唖然としていた。そんな中、突然ゴモラ(怪獣娘)の顔が青ざめ、口を抑える。

 

「ゴモ⁉︎」

「ゴモラ⁉︎おい、どうした⁉︎」

「う"っ⁉︎・・・気分が悪くなってきた・・・。」

「は⁉︎いつから⁉︎」

「もう1人の・・・わたしが・・・スフィアに・・・・・・取り込まれた時から・・・かな・・・う"ぶ⁉︎吐き気もしてきた・・・。」

 

スフィアゴモラを見て気分が悪くなったゴモラは更に顔色が悪くなり、口を抑える。そんな彼女にガッツ星人(ミコ)が肩を貸した。

 

「ゴモ、大丈夫⁉︎」

「ガッちゃん・・・御免ね。こんな時に・・・う"!」

「気にする事ないよ。ここは一旦退こう!御免、マコ、おジョー、レッド、ゴモを連れて退避するから後は任せるよ‼︎」

「分かった‼︎任せとけ‼︎」

 

ガッツ星人(ミコ)がゴモラを連れて瞬間移動でここを去ったのを見届けたキングジョー達は目の前のスフィアゴモラを見て話し合う。

 

「何でゴモラの体調が悪くなったのよ?」

「あの怪獣はゴモラにとってもう1人の自分デス。恐らくデスがゴモラがスフィアに取り込まれた事で彼女のカイジューソウルに何かしら影響が出テ・・・。」

「体調不良を起こしたって訳か・・・。だったら後は俺達がやらねえとな‼︎」

 

レッドキングは拳を鳴らすとそのままスフィアゴモラに向かっていく。その後をキングジョーとガッツ星人(マコ)が追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミクラス達かぷせるがーるずは他に逃げ遅れた市民がいないか探している。その最中で必死に叫ぶ夫婦らしき男女を見つけた。

 

「シン‼︎シンー‼︎何処⁉︎」

「おーい‼︎シンー‼︎返事をしてくれ‼︎」

「すみません、そこの方達‼︎」

「え?」

 

必死に叫ぶ夫婦らしき男女の元に駆け寄った3人は手を取ってここから引っ張ろうとする。しかし、2人は3人の手を振り払った。

 

「GIRLSです‼︎怪獣が凶暴化しました‼︎もうここは危険です‼︎」

「ボク達と一緒に来て下さい‼︎」

「待ってくれ、僕達の息子がいないんだ‼︎」

「ええっ⁉︎」

「貴方達、GIRLSの怪獣娘よね?悪いけどあの子を置いてはいけないわ‼︎」

「だったら特徴を教えて下さい‼︎ボク達が2人の子供さんを探します‼︎お2人はウインちゃんと一緒に場所に‼︎」

「わ、分かったわ。息子はオレンジ色のバックに青いパーカーを着ているわ‼︎」

「恐竜が描かれた帽子を被っている。それで分かる筈だ‼︎」

「分かりました‼︎後は任せてください‼︎」

「ウインちゃん、お願いね‼︎」

「はい‼︎」

 

ウインダムが夫婦を連れてその場から走っていくとアギラとミクラスは周りを見渡し、2人の子供を探し始める。捜し始めて30分後、ミクラスは誰かとぶつかった。ぶつかってきた人物はミクラスの姿を見ると驚く。

 

「痛⁉︎」

「あっ、すみません‼︎・・・ってミク⁉︎」

「えっ⁉︎カズマにアムちゃん‼︎何でこんなところにいるのよ⁉︎ここは危険なんだから早く避難してよ‼︎」

「そういう訳にもいかねえ‼︎この子の両親を見つけないといけないんだ‼︎」

「えっ⁉︎」

 

カズマは隣のハネジローと一緒に驚きながら怒る幼馴染の前で自身が保護した少年に振り返る。ミクラスは驚いて、カズマの後ろに隠れている少年を見る。その少年は先程探していた夫婦から教えられた特徴と一致しており、ミクラスは探していた子供だと確信し、笑ってカズマの肩を叩いた。

 

「カズマ‼︎アムちゃん‼︎2人ともよくやったね‼︎その子の両親から探して欲しいって頼まれてたんだ〜‼︎まさか2人が保護してくれてたなんてね〜‼︎」

「痛い痛い‼︎お前、怪獣娘に変身してんだから力加減しろよ‼︎」

「それよりもミクお姉ちゃん、この子を探していたって・・・。」

「そうなんだよ‼︎さっきこの子の両親に会ってさ‼︎」

「お父さんとお母さんと会ったの⁉︎」

「どうしたの⁉︎」

 

アギラかその場に駆け付けるとカズマとハネジローの姿を見て驚く。しかし、2人のそばにいた少年を見つけて2人の意図を知るとすぐに駆け寄った。

 

「ありがとう、ハネジローにミクちゃんの幼馴染さん。」

「話は後‼︎ミクお姉ちゃん、アギラお姉ちゃん、彼を両親のところに‼︎」

「ギャアオオオオオオオオ‼︎」

 

カズマ達の後ろではスフィアゴモラがスフィア超震動波を放ち、街を破壊しながら暴れている。スフィアゴモラの足元ではレッドキング達が傷ついた体を無理やりでも起こそうとしていた。

 

「クソッ‼︎強え・・・‼︎」

「スフィアと融合したせいで色々と強化されてる・・・。」

「ピギャアアアギャアオオオオオオオオ‼︎」

 

カズマ達はスフィアゴモラを見た瞬間、走り出す。敢えてカズマだけは走る速度を落として走っていた。そしてミクラス達の姿が見えなくなるとスフィアゴモラに視線を向けてウルトラDフラッシャーを出現させた。

 

「カズマお兄ちゃん?」

 

ハネジローは姿を消したカズマに気付くと再び逆向きに走り出す。そしてハネジローがカズマの姿を確認した時、カズマはウルトラDフラッシャーを手に取っていた。そしてホルダーからデッカーのカードを取り出すとDフラッシャーにカードを装填した。

 

〈Ultra Dimension!〉

 

光の力をDフラッシャーに読み込むと下部のレバーを引き、頭のクリスタルが展開される。カズマはそれを頭上に掲げ、叫んだ。

 

「輝けフラッシュ!デッカァァァァァァ‼︎」

 

そして顔面にDフラッシャーを持っていくとそのままDフラッシャーのスイッチを押して、カズマは光に包まれた。

 

〈Ultraman Decker! Flash Type!!〉

 

「嘘・・・カズマお兄ちゃんが・・・あの・・・。」

 

ハネジローはカズマがウルトラマンデッカーに変身するところを目の当たりにする。カズマが変身したデッカーはスフィアゴモラに向かって構える。

 

「ディアッ‼︎」

「ピギャギャアオオオオオオ‼︎」

 

デッカーはスフィアゴモラに向かっていくと蹴りを放つ。スフィアゴモラが蹴りを受けて少し後退したところで拳を2発打ち込む。しかし、スフィアゴモラにデッカーの拳は効かず、そのまま突っ込んできた。デッカーはすぐ避けると尻尾を掴み、動きを押さえつけようとする。しかし、元々パワーが高いゴモラがスフィアの力で強化されたスフィアゴモラにはあっさりと振り払われてしまった。

 

「ディィィアッ⁉︎」

「ギャアオオオオオピギャアアアアア‼︎」

 

スフィアゴモラはデッカーの頭を掴むと膝蹴りを打ち、デッカーを吹っ飛ばす。そしてゴモラの頭突きを受けてデッカーは地響きを立てて地面に倒れた。

デッカーは立ち上がると同時に後ろを振り返る。後ろに建てられていた病院ではまだ入院している患者達が避難を終えていなかった。デッカーは立ち上がるとスフィアゴモラに取っ組み合う。そのまま力比べをするが力に長けたスフィアゴモラには敵わず、デッカーは押されていく。そしてデッカーはスフィアゴモラに弾き飛ばされた。

デッカーを弾き飛ばしたスフィアゴモラは角に力を集めてスフィア超震動波を放つ。デッカーはバク転、前転、側転で避けるが、立ち上がった時にスフィア超震動波を受けてしまう。スフィア超震動波を受けて倒れる。ダメ押しをするかのようにスフィアゴモラが尻尾を振り回した。スフィアゴモラの尻尾によってデッカーは叩きつけられ、吹っ飛んでいく。

 

「ディアッ⁉︎」

「ウルトラマン‼︎」

「頑張ってウルトラマン‼︎頑張って‼︎」

『ぐっ・・・力が・・・力が足りねえ・・・もっと力が欲しい・・・もっと・・・ゴモラに対抗できるくらいの力が‼︎』

 

カズマが力を願ったその時、赤い光がカードホルダーから飛び出す。光はカズマの目の前で赤いデッカーが描かれたカードに変化した。

 

「こいつで・・・力が・・・よし‼︎」

 

カズマが新たなカードを手にした時、カードを通してカズマの体に炎が走る。そしてカズマの中に新たに力が流れ込んできた。

 

「凄え‼︎力が・・・体の底から力が弾けてくるぜぇぇぇぇ‼︎これならゴモラにも勝てる‼︎」

 

カズマは新たなディメンションカードをDフラッシャーに装填する。そしてレバーを引き、頭のクリスタルを展開させた。

 

「弾けろ、ストロング‼︎デッカアアアァァァァァァァァ‼︎」

 

〈Ultraman Decker! Strong Type!!〉

 

そしてカズマがDフラッシャーのスイッチを押したと同時にデッカーの体はオレンジ色のプロテクターに赤い色、そして宇宙を思わせる部分は太陽を思わせる模様を備えた姿になっていた。これこそがパワーに長けたデッカーの姿『ウルトラマンデッカー・ストロングタイプ』である。

 

「ウルトラマンが・・・。」

「赤くなった・・・。」

 

ストロングタイプになったデッカーはスフィアゴモラと取っ組み合う。今度はデッカーがスフィアゴモラを押し返していた。そしてスフィアゴモラを押さえつけるとその胸に拳を放つ。

 

「デュアッ‼︎」

「ピギャアアアアアアア⁉︎」

 

後退したスフィアゴモラの腕を抑えると蹴りを2発放ち、頭を抑えてアッパーを放つ。そしてそのまま間髪入れずに拳を放ち、スフィアゴモラを吹っ飛ばした。

 

「ギャアオオオオオピギャアアアアアア‼︎」

 

スフィアゴモラが再び尻尾を振り回してくるとそれを受け止め、何度も回転しながらジャイアントスイングで投げ飛ばす。

 

「ギャアオオオオオオオ‼︎」

 

スフィアゴモラは再びスフィア超震動波を放つがデッカーは拳でそれを受け止める。そしてスフィア超震動波を弾いて拳に赤いエネルギーを秘めた力を集めるとそのままスフィアゴモラの体に拳を撃ち込んだ。そして拳から熱い熱線が飛び出し、スフィアゴモラを空中に打ち上げる。空中に打ち上げられたスフィアゴモラは大爆発を起こした。

 

 

 

 

「カズマお兄ちゃん、こっちこっち‼︎」

「お、おう・・・。」

 

スフィアゴモラが倒されてから数時間後、ハネジローは元の姿に戻ったカズマと合流する。するとハネジローは人混みが少ない場所にカズマを誘導した。

 

「何だよ?こんなところに誘導して。」

「カズマお兄ちゃんがあのウルトラマンだったんだね‼︎」

「は⁉︎何の事だよ‼︎ウルトラマンが飛んで行ったところ見ただろ‼︎」

「うん、さっき見たよ!カズマお兄ちゃんがあのウルトラマンに変身するところ‼︎」

「え⁉︎」

 

カズマは目の前の店の常連の小学生に自身の秘密を知られた事で頭を抱えていた。これからどうしようと悩んでいるところにハネジローが安心する言葉を告げてきた。

 

「だいじょーぶ‼︎カズマお兄ちゃんは皆を守るために戦ってくれたんだもん‼︎ハネジロー、カズマお兄ちゃんがあのウルトラマンだって事、皆に黙っててあげる‼︎」

「アムちゃん・・・ありがとな。」

「その代わり、今度、アイスでも奢ってよね‼︎」

「はは・・・そのくらいお安い御用さ。」

「カズマー‼︎」

 

その時、ミクラスがピグモンを連れてこちらに向かってきた。ピグモンはカズマを真剣な表情で見ている。カズマも緊張しながらピグモンに向き合った。

 

「カズマさん、ミクミクから聞きましたよ。自分の命は大切にしてください。貴方にも貴方の事を思う大切な人達がいる筈です。もし、貴方の身に万が一の事があればミクミクをはじめとしたカズマさんを思う人が悲しむんですよ。その事を覚えてください。」

「・・・はい。」

「でも、貴方のお陰で救われた命があったのも事実です。貴方のように危険な状況でも命を救うために頑張れる・・・そんな人が今のGIRLSには必要です。もし良ければ私達と一緒に人々のために頑張りませんか?」

「ええっ⁉︎それってGIRLSへのスカウトって事ですか⁉︎でも、俺、普通の人間ですし・・・。」

「大丈夫です‼︎GIRLSには普通の人間も沢山います。それに・・・ミクミクも貴方の事を推薦してします。私達と共に頑張りませんか?」

「俺は・・・。」

 

悩む姿を見せるカズマを見てピグモンは優しげな表情になると肩を叩いて声を掛ける。

 

「今すぐじゃなくて構いません。カズマさんが決心するのを待っています。」

「じゃあ・・・もし、答えを決めたらあたしに教えて。あたしがいなければGIRLSを訪ねて。それじゃ、あたし、この後の事後報告に行ってくるから‼︎」

 

ピグモンと共にこの場を去るミクラスを見ながら、カズマは視線を下に向ける。そして小さく呟いた。

 

「俺は・・・俺は・・・。」




怪獣娘×デッカーは以上になります‼︎
アンケートは実施する予定ではありますが現在、連載中の怪獣娘Zか怪獣娘トリガーの方が読者が多いので多分、沢山の票が来そうなのでそちらで行おうと思います。
どうかご了承ください


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怪獣娘×ウルトラマンブレーザー
ファースト・ウェイブ(前編)


今年もこの時期が来ました。怪獣娘×ブレーザーを先行連載します。

宇宙甲殻怪獣『バザンガ』登場


ここはとある宇宙のとある地球、この宇宙の地球ではかつて第一次大怪獣時代と呼ばれる人類と怪獣が激闘を繰り広げた時期があった。怪獣の強大なる力に人類は苦戦を強いられ、更に宇宙からの侵略者が幾度も襲来し、人類は何度も窮地に追い込まれた。そんな中、宇宙から宇宙の平和のために戦う巨大な宇宙人がやってきた。

『ウルトラマン』と呼ばれるその巨人は人類がピンチに陥る度に何度も現れ、これを退いてくれた。様々なウルトラマンが地球に来訪し人類と力を合わせて怪獣や侵略者達と戦った。そして長い戦いの末、人類が勝利し地球に平和が訪れた。

怪獣が確認されなくなってから長い時間が経過し、地球では怪獣の魂を宿し、怪獣の力が使える少女『怪獣娘』が確認されるようになった。怪獣娘が確認されてから世界は更に大きく変わった。彼女達の中にはその力を制御出来ず、人間社会で生きていくのが難しい者達や、破壊の化身である怪獣の力を宿しているだけに怪獣娘を化け物と呼んで恐れる人々もいた。

そうした課題を解決するため、怪獣娘が人間社会で生きていけるよう支援したり、怪獣娘専門のモデル、スポーツ選手など多くの人達の前に立つ分野を設立し、怪獣娘に対する差別意識を失くすための活動をする国際組織が世界中に設立された。それが国際怪獣救助指導組織通称『GIRLS』である。GIRLSが設立され、怪獣娘か多くの人々の前でモデルやタレントに歌手、アスリートなどの活動、災害救助の現場に彼女達が赴くようになってから怪獣娘を化け物と呼んで差別意識を抱いていた人達は大幅に減り、様々な怪獣娘が人々と社会で生活していける世界になった。

しかし、怪獣娘が確認されるようになってから新たに確認された脅威もいる。それが謎の存在『シャドウ』である。シャドウは何故か人々を襲う上に怪獣娘以外は倒す事が出来ない。よってGIRLSはシャドウを人類に厄災をもたらす存在として認識するようになり、シャドウ退治も怪獣娘の大事な活動内容となる。

街を守る為にシャドウと戦うGIRLSの怪獣娘達の姿を見た事で人々の怪獣娘に対する好感度は更に高まり、よりお互いの絆が深まった。そしてシャドウ以外、平和を脅かす者がいなくなり、人類と怪獣娘はお互いを支え合いながら平和に暮らしていた。しかし、その平和な日々は突然崩れ去る事となった。

 

 

 

 

 

20XX年、人類と怪獣娘が共存し『第二次大怪獣時代』と呼ばれるようになった現代の世界でとんでもない緊急事態が発生した。宇宙から突然、長年出現しなくなった怪獣が飛来したのだ。

 

「ゴギャアアアアアアア‼︎」

「うわあああああああああああああ‼︎」

「助けてええええええええええええ‼︎」

「どけ‼︎」

「痛⁉︎・・・痛い・・・痛いよ・・・。」

 

ここは夜の池袋の街、ここでエビなどの甲殻類を思わせる赤茶色の甲殻に身を包んだ鋭利な鼻先を持つ頭に2本の触覚を備えた宇宙甲殻怪獣『バザンガ』が暴れ回って大勢の人達がパニックになっている。そしてパニックの余り、小学生くらいの女の子が40くらいの中年男性に突き飛ばされた。突き飛ばされた少女は転んで足を捻ってしまい、涙を浮かべていた。そんな中、1人の高校生くらいの少年がその少女に駆け寄ってきた。

 

「君、大丈夫⁉︎」

「痛い・・・痛いよ・・・足が動かない。」

「足を捻ったのか・・・こんな子を突き飛ばすなんて‼︎・・・俺にしっかり捕まってて‼︎」

 

その少年は少女を抱えるとすぐさまその場から逃げるべく走り出す。そんな中、パニックに陥っている人達を必死に避難誘導する一本角にパーカーのような獣殻を備えた怪獣娘を見かける。少年はその怪獣娘を見ると彼女に向かって駆け出していく。

 

「皆さん、落ち着いて‼︎慌てないで避難して‼︎落ち着いてくださいってば‼︎」

「アキ‼︎」

 

後ろからアキと呼ばれたその怪獣娘は思わず振り向く。すると少年は彼女に先程助けた少女を見せる。

 

「ジュン⁉︎何してるの⁉︎避難してって言ったじゃん‼︎」

「悪い‼︎この子、足を怪我してたから助けて来た‼︎」

「えっ⁉︎・・・君、大丈夫?」

「・・・うん、最初は怖かったけど・・・今はこのお兄ちゃんが助けてくれたから平気。」

「そう・・・良かった。・・・ありがとう、ジュン。この子を助けてくれて。」

「これくらいどうって事ないさ。」

「あっ、ヨウコ‼︎」

 

そこに少女のお母さんと思われる女性が駆け寄ってくる。女性は娘をに駆け寄ると彼女を抱き締めた。少女の方も母親を見て安心したのか先程より柔らかい表情で抱き締め返している。

 

「お母さん‼︎」

「良かった・・・心配したのよ・・・無事で良かったわ。・・・娘を助けてくれてありがとうございます‼︎」

「い、いえ、ボクじゃなくてこっちのジュンが娘さんを見つけて・・・。」

「貴方が娘を・・・本当にありがとう‼︎」

「それより、早く娘さんを連れてここから逃げて下さい‼︎」

 

女性はジュンと呼ばれた少年から娘を受け取ると彼女を抱き抱えて走り出す。その時、バザンガの咆哮が響き渡った。

 

「ギョゴアアアアアアアア‼︎」

「くそ‼︎怪獣が近くに‼︎」

「どうしよう・・・まだ避難が完全に済んでないのに・・・。」

 

少女を見送った2人はバザンガを見て苦い表情を浮かべる。2人のうち少年の名前は『ヒルマ・ジュン』。この物語の主人公となる高校生である。そしてジュンの隣にいるアキと呼ばれた怪獣娘はウルトラセブンのカプセル怪獣の魂を継いだ怪獣娘『アギラ』又の名を『宮下アキ』である。

 

「かなりヤバイぜ・・・皆が大パニックだ。」

「うん・・・本物の怪獣が出ただけでここまで酷い事になるなんて・・・。」

「今日は最後の最後でとんでもなくツイてない日になっちまったな。」

 

ジュンの言葉にアギラが頷く。実はこの2人、今日はたまたま池袋に遊びに来たのだ。夕飯時になって夕食を食べてから帰ろうとした矢先に突然宇宙から怪獣が襲来したのだ。現場にいたアギラはGIRLSの怪獣娘として人々を守るべく変身し、避難誘導に回っていた。ジュンも避難誘導を手伝おうとしたのだがアギラに強く念を押されて避難する人に回されようとしていた。そんな中、先程の少女を見つけ、今に至る。

 

「まさか・・・この時代に本物の怪獣が出るなんてな・・・。」

「うん、しかもあの怪獣・・・GIRLSの記録にない新種の怪獣だからGIRLSも対応に困ってるみたい・・・。」

「アキ、やっぱ俺も避難誘導手伝うよ。絶対にアキ1人でやれる範囲じゃないって。」

「ジュン・・・でも一般人のジュンを危険に巻き込む訳には‼︎」

「そんな事言ってられる状況じゃないだろ‼︎今は1人でも人手が欲しい・・・違うか?」

「・・・・・・・・・分かった。でも無茶な事はしないでね。」

 

アギラはジュンの強い目に彼が一歩も引かないと悟り、彼の手伝いを受け入れる。そして2人は協力して市民の避難誘導に回り出した。

 

 

 

その頃、池袋サンシャインシティ通りにスク水に似た獣殻頭に三日月状の角を備えた『ゴモラ』に蛇腹状の獣殻に肥大化した豪腕の腕を備えた『レッドキング』、頭にアンテナ状の角を備えた露出の多く豊満な胸の『エレキング』に水色の髪の『ガッツ星人』と言ったアギラよりベテランの怪獣娘が到着していた。

 

「うわぁ・・・本当に大きい・・・。」

「これ・・・本当にわたし達だけで勝てるの・・・。」

「絶対・・・無理ね。」

「でも俺達がやらなきゃいけねえのも確かだ。このままだと被害が拡大するだけだからな。コイツを放っておいたら死者だって出かねねえ‼︎」

「それは分かるけど・・・ガッちゃん、マコちゃんとキンちゃんの方はまだ来ないの⁉︎」

「うん、まだもう少し掛かるみたい。」

「全く・・・何してるのかしら。」

「うだうだ言ってたって仕方ねえ‼︎行くぞ‼︎」

 

レッドキングの声を受けて彼女達は街を進撃するバザンガに向かっていく。バザンガの方は自身を阻む者がいないからか好き放題にビルを破壊しながら暴れている。その様子を見てレッドキングが憤る。

 

「ゴギャアアアアアアアア‼︎」

「くそ‼︎好き勝手にやりやがって‼︎」

「本当、暴れ放題してくれて・・・私のお気に入りのアニメショップまで破壊したなら許さないわよ。」

「エレ、私情で怪獣に怒りを燃やさないでよ・・・。」

「待って3人とも‼︎ピグちゃんから連絡が来た‼︎」

 

ゴモラの言葉に3人は思わず彼女に向かって振り向く。そのまま3人はゴモラの通信に耳を傾けていた。

 

「どうしたの⁉︎・・・うん・・・うん・・・え⁉︎動かせる人が見つかったの⁉︎それで・・・うん・・・うん‼︎分かった‼︎」

「どうした⁉︎」

「遠隔操縦に改造したジェットビートルがあってそれを動かすって‼︎それとあの怪獣への対策も分かったらしいよ‼︎」

「本当か‼︎」

「うん、怪獣の胸部装甲の隙間・・・胸の部分に1発撃ち込めば有効的なダメージが得られるみたいだよ‼︎」

「遠距離攻撃か・・・だったら仕方ねえ。とっておきを使うか。」

「でもその作戦危険じゃない?だってその作戦怪獣にギリギリまで近づなきゃいけないんじゃないの?」

「その為にジェットビートルで誘導するって‼︎後はダム子とミクちゃんを待とう‼︎」

 

ゴモラが結論を決め、レッドキング達が頷いた時、空から轟音を上げてジェットビートルが飛んできた。その操縦席には誰も乗っておらず無人戦闘機に改造された事を確かに思わせる。

 

「来たな‼︎ジェットビートル‼︎」

「まさか・・・この時代で空を飛ぶ光景が見られるなんてね‼︎」

「それにしてもよく見つかったよね・・・遠隔操作型に改造されたのがさ。」

 

ガッツ星人の言葉にエレキングが頷く。この世界でも科学特捜隊やウルトラ警備隊、GUTSなどの怪獣の脅威から人類を守る為に戦う防衛チームが存在していた。当然彼らが運用していたライドメカの類も昔は多く存在していたのだが怪獣の出現が確認されなくなってから過剰防衛だと判断されライドメカの大半が解体された。残った1部は今回の時のようなもしもに備えて当時の歴史が語られる博物館の展示物として展示されていたのだ。

しかし、いざ怪獣が出現して発進しようにも怪獣が出現しなくなってから長い年月が経ち、そういう意図を備えて展示されている事が完全に忘れ去られてしまっていた。その結果、誰もこの手の類のメカを操縦出来る人がいなくなってしまい立ち往生せざるを得なくなってしまったのだ。

しかし、近年無人型戦闘機として操縦出来る様に改造していた実験台の機体がある事を思い出し、その改造が施されたサンプル機であるジェットビートルを何とか掘り起こして今に至るのだ。

そして今、池袋に到着したジェットビートルはバザンガの周りを旋回し始めた。

 

「あのジェットビートルでわたし達がいるところまで誘導してくれるみたい‼︎」

「それまでにミクラスとウインダムが間に合えばいいんだけど・・・。」

「それなら大丈夫。」

 

ガッツ星人の呟きに後ろから答えてくる声が聞こえてきた。4人が振り向くとそこには額に黄色い結晶を備えた黒い獣殻の『ゼットン』の怪獣娘がいた。突然現れたゼットンにレッドキングとゴモラが驚く。

 

「「うわあっ⁉︎」」

「ゼットン、来てたのね。」

「・・・ミクラスとウインダムなら大丈夫。私が近くまで連れてきた。」

「本当か⁉︎」

 

ゼットンはとある方向に目を向ける。全員が彼女に釣られてそちらに視線を向けるとそこにはビキニに牛を思わせる角を備えた怪獣娘『ミクラスと』と眼鏡をかけた銀色の機械的な獣殻の怪獣娘『ウインダム』がいた。ミクラスはレッドキング達に向けて手を振ってアピールしている。その時、レッドキングのソウルライザーに連絡が入った。

 

「こちらレッドキング‼︎」

『こちらウインダム‼︎レッドキングさん、私達も現地に着きました‼︎レッドキングさん達の姿も見えてます‼︎』

「ああ、俺達も確認済みだ。ジェットビートルが奴を引き付けてくれる。そしたら俺達も反撃開始だ‼︎」

『了解です‼︎』

 

ウインダムが通信を切ると同時にジェットビートルの翼に備えられたロケット弾が発射された。ロケット弾はそのままバザンガに向かっていく。そしてバザンガの体に着弾すると同時に大爆発を起こした。

 

「凄い大爆発だな・・・。」

「でも結構な威力じゃない?これならあの固そうな怪獣でも幾らかは・・・⁉︎」

 

ガッツ星人は言葉の途中で口を止める。何故なら煙の中から現れたのはジェットビートルからのロケット弾を受けても尚、平然としていたバザンガの姿だったのだから。

 

「ゴキャアアアアアアアア‼︎」




ブレーザー、話が進む度に出せるかどうか悩む怪獣達が増えていきますね・・・。


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ファースト・ウェイブ(後編)

主人公の名前は原作の主人公であるゲント隊長の息子から取りました。

因みに今回、怪獣娘×ブレーザーの予告をしなかったのは登場怪獣に悩んでいたからです。
悩みに悩んだ結果、次回はゲードスではない怪獣を出す事にしました。何が出るかは次回を楽しみにしててください。


「ぜ、全然効いてないよ‼︎」

「待って下さい‼︎もう1発発射されたみたいです‼︎」

 

バザンガにロケット弾が効かない事にミクラスが慌てふためく。そんな彼女を落ち着かせようとウインダムがスコープでジェットビートルを拡大し、再びロケット弾がバザンガに向けて放たれた事を確認する。しかし、大爆発を受けてもバザンガが怯む事は一切無かった。

 

「やっぱり全然効いてないじゃん‼︎」

「どうやら相当固い皮膚を持つ宇宙怪獣のようですね。」

 

その後もジェットビートルは空中を旋回し、ロケット弾をバザンガに向けて発射する。連続で着弾するも硬い装甲に覆われたバザンガにダメージを与えている様子はない。バザンガも空から来る爆撃を鬱陶しさを感じたのか頭の角が上向きになる。そして両腕を上空に向けて構えた時、バザンガの両腕の手甲の穴から何かが飛び出した。飛び出した何かはジェットビートルが放つロケット弾を撃ち落とす。ロケット弾を打ち落としたバザンガはジェットビートルそのものを撃ち落とそうと両腕から再び何かを発射する。その様子を近くにいたレッドキングがGIRLSにいるピグモンに伝える。

 

「ピグモン‼︎今、怪獣が腕から何かを発射してロケット弾を撃ち落としやがった‼︎さっき発射したのが何か分かるか⁉︎」

『少々お待ち下さい‼︎ただいま分析します‼︎』

 

ピグモンは司令室の職員と共に先程の映像を拡大、停止しこれまで現れた事のない未知の怪獣を分析する。そして数分後、分析を終えたピグモンはその結果をレッドキング達に報告する。

 

「今、放たれたのは棘です‼︎それも無数の‼︎」

『棘ぇ⁉︎マジかよ⁉︎』

「はい、どうやら光弾状の棘で当たると爆発するようになっています。ジェットビートルの操縦士になるべく距離を取るよう伝えます‼︎」

『頼む‼︎』

 

場所は変わって池袋ではバザンガから距離を離すジェットビートルをレッドキング達が眺めていた。そのままジェットビートルはバザンガの棘の射程範囲から離れると思ったその時、再びバザンガが棘を発射する。そしてその棘は起爆距離から離れた筈のジェットビートルを襲う。ジェットビートルの右翼に火が燃え移るとジェットビートルは次第に降下し始めた。

 

「おい、どういう事だよ⁉︎怪獣の棘の射程範囲外だった筈だろ⁉︎」

「もしかしたらあの棘・・・起爆距離を調節出来るのかも・・・。」

 

レッドキングの横でガッツ星人が自身の考察を述べる中、彼女のソウルライザーに通信が入る。ガッツ星人はソウルライザーを手にすると通信に応答した。

 

『こちらピグモン‼︎ジェットビートルの右翼が損傷しました‼︎』

「こちらも確認したよ‼︎それでジェットビートルは飛ばせそう?」

『ええ、損傷の状態も大した事はなく、最低でも10分程の応急処置で再び飛ばせるとの事です‼︎』

「OK、ありがと‼︎・・・と言ってもあの怪獣、相当硬い装甲持ってるから・・・あまり効果無いと思うけどね。」

 

ガッツ星人はピグモンからの通信を再び切ると暴れ回るバザンガに目を向ける。既に彼女達はバザンガに攻撃を放てる至近距離にいたが思ったより近かったのか怪獣の圧倒的な大きさに唖然とする。

 

「・・・・・・大きいね。」

「うん、本当にわたし達の攻撃通用するの?」

「でもやらねえよりはマシだ。」

 

レッドキング達は至近距離から見るバザンガに圧倒される。その頃、ジュンは最後の避難者を避難場所である公園に誘導していた。

 

「こちらです‼︎」

「ありがとう、助かったよ‼︎」

「いえいえ、どういたしまして‼︎・・・アキ、避難が完了したぞ‼︎」

 

ジュンは最後の避難者を確かに確認すると幼馴染であるアギラに呼び掛ける。アギラも避難誘導を完了させたのかジュンのいる方向に向かってきた。

 

「ジュン‼︎」

「アキ、そっちは⁉︎」

「こっちも避難が完了したよ‼︎」

「よし、それじゃあ俺達も行くぞ‼︎」

 

ジュンはアギラの手を取って引っ張って行こうとする。しかし、アギラはジュンの手を振り解くとソウルライザーを取り出した。

 

「待って‼︎ボクはこのままGIRLSの皆と合流するよ‼︎何とかしてあの怪獣を止めないと‼︎」

「馬鹿言うな‼︎どう考えても勝てる相手じゃねえだろ‼︎」

「でもあの怪獣をあのまま放っておくわけにはいかないでしょ‼︎それに今、仲間達はあの怪獣を止めようと必死に戦っているはず・・・。ボク1人だけ安全な場所にいる訳にはいかないよ‼︎」

「おい‼︎待てアキ‼︎」

 

アギラはジュンに背中を向けて走っていく。ジュンはアギラを引き止めるべく、その後を追い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、バザンガに近付き、急所に一撃喰らわせる作戦に出ていた怪獣娘達はそれぞれ所定の位置でバザンガを待ち構えていた。レッドキング達ベテランの怪獣娘達も初めての本物の怪獣との戦いで体が緊張を隠さずにいる。

 

「そろそろ動いていいか⁉︎」

「待って‼︎まだもうちょっと‼︎」

「このままいつまでも待ってられるかよ‼︎このままじゃ被害が拡大するだけだぞ‼︎」

「レッドちゃん、お願いだからもう少し耐えて‼︎まだミクちゃん達の射程範囲内じゃないんだから‼︎」

「仕方ねえな・・・。」

 

ゴモラの言葉で先走りそうだったレッドキングは渋々拳を引っ込める。その時、バザンガが尻尾を振り回して周りのビルを破壊する。その時、レッドキング達はバザンガの尻尾で倒れるビルの方向を見て顔を青ざめた。実はビルが倒れた近くにミクラスとウインダムが待ち構えている地点だったのだ。思わずレッドキングはミクラス達に呼び掛ける。

 

「こちらレッドキング、聞こえるか⁉︎こちらレッドキング‼︎・・・・・・おい、ミクラス‼︎ウインダム‼︎応答してくれ‼︎」

「ミクラス・・・ウインダム・・・。」

「ねえ、どうするの⁉︎わたし達がここを離れる訳にはいかないでしょ‼︎」

「待ってろ‼︎今、ピグモンに近くに誰か動ける怪獣娘がいないか確かめてもらってる‼︎いたらそいつにミクラス達の安否を確認させるから‼︎」

「うん・・・ミクちゃん、ダム子・・・無事でいて。」

 

レッドキングがソウルライザーでGIRLSにいるピグモンに連絡を取る。その横でゴモラが2人の無事を祈っていた。

 

 

 

 

 

その頃、ジュンはバザンガに向かっていくアギラを追いかけている。しかし、人間であるジュンが怪獣娘である彼女に追いつける筈もなく2人の距離は引き離されていった。

 

「アキ!待てって‼︎」

「⁉︎もしもし、こちらアギラ‼︎」

 

アギラはソウルライザーからの着信に気付くと立ち止まり、通信に出る。後ろからジュンが迫る中、アギラは通信に応えた。

 

「ピグモンさん、どうしたんですか⁉︎・・・・・・え⁉︎ミクちゃんとウインちゃんが⁉︎・・・・・・分かりました‼︎すぐに2人を救出します‼︎」

「どうかしたのか⁉︎」

 

後ろから追い付いたジュンにアギラは目を見開く。思わず状況で自身に付いてきた幼馴染にアギラは焦りながら口を開いた。

 

「ジュン⁉︎何でここにいるの⁉︎危ないからここから早く逃げて‼︎」

「あのな‼︎幾らお前が怪獣娘とはいえあんなヤバそうな怪獣相手に立ち向かおうなんて無茶だろ‼︎一緒に避難所に戻るぞ‼︎」

「そうも言ってられないよ‼︎ミクちゃんとウインちゃんが怪獣のせいで倒壊した建物に巻き込まれたかもしれないんだから‼︎」

「何だと‼︎・・・ミクちゃんとウインちゃんってのは・・・前にお前といた角の怪獣娘と眼鏡の怪獣娘だよな?」

 

ジュンの問いにアギラは頷いて答える。そしてアギラはバザンガの方向を向くと再び口を開いた。

 

「だから・・・ボクが助けに行かなきゃいけないんだ‼︎だから・・・幾らジュンが止めてもボクは行くよ‼︎」

「・・・・・・分かった。だったら・・・俺も行く‼︎」

 

ジュンはアギラの目を見て、目の前の幼馴染がこの場から一歩も下がる気がないと知ると観念する。しかし、その次に出た言葉にアギラは驚きを隠さずにいた。

 

「ちょっ⁉︎本気で行ってる⁉︎」

「当たり前だろ‼︎お前だけ放っていけるか‼︎それにその2人はアキにとって大切な友達なんだろ。そんな2人がヤバい事になってるって聞いて黙って見てられる訳ないだろ。絶対について行くからな‼︎」

 

アギラはジュンの真っ直ぐな瞳に数秒間考える。そして結論を決めると口を開いた。

 

「分かったよ・・・その代わり、ボクから離れちゃ駄目だからね‼︎」

 

ジュンは彼女の言葉に頷いて答えた。そして2人は暴れるバザンガに近付いていく。至近距離で見たバザンガに2人とも圧倒されていた。

 

「ギョゴアアアアアアアアア‼︎」

「・・・・・・急がないと‼︎ジュン、行くよ‼︎」

「ああ‼︎」

 

そして2人は走る事十数分、やっとミクラスとウインダムが待ち構えていた現場に到着した。現場に到着した2人は2人の名前を叫び出す。

 

「ミクちゃーん‼︎ウインちゃーん‼︎2人とも何処ー⁉︎」

「いるならいると返事しろぉぉぉぉ‼︎」

「あ・・・アギちゃん・・・。」

「来てくれたんですね・・・。」

 

2人は微かに聞こえた声に耳を立てる。そして声が聞こえた方向を向くとそこには頭から血が流れているミクラスと足を抑えているウインダムがいた。2人とも怪獣の破壊行為に巻き込まれて負傷したらしくその場から動かないでいる。

 

「良かった・・・2人とも生きてて・・・大丈夫⁉︎」

「何とかね・・・アイツに一撃喰らわせる余力はあるかな・・・。」

「ところで・・・貴方は・・・?前に何処かで見たような・・・?」

 

ウインダムはアギラの隣にいるジュンに目を向ける。アギラはミクラスに肩を貸しながらジュンの事を紹介する。

 

「こっちはボクの幼馴染のジュン。2人を助けるのに力を貸してくれたんだ。」

「ヒルマ・ジュン。2人の事は前にアキから聞いたよ。宜しくな2人とも。」

「アギちゃんの幼馴染なんだ・・・もう・・・あたし達怪獣娘は頑丈なのに・・・こんな危険な場所にわざわざあたし達を助けに来るなんて・・・。」

「駄目ですよ・・・無茶な事をしたら・・・でもありがとうございます・・・お陰で助かりました・・・。」

「危ない目にあってる人を放って逃げる事なんかできないさ。えーっと・・・ウインさんでいいのかな?俺に捕まって。」

 

ジュンはウインダムに肩を貸す。ウインダムはジュンの肩に手を伸ばして立ち上がる。そしてアギラはレッドキング達に2人の無事を伝えていた。

 

「2人は無事です‼︎」

『良かった‼︎2人とも無事だったか⁉︎それで・・・2人とも戦えそうか⁉︎』

「あの怪獣に一撃喰らわせるくらいには充分ッスよ‼︎」

『よっしゃ‼︎作戦開始だ‼︎行くぜ、お前ら‼︎』

 

ミクラスはアギラに支えられながら口にエネルギーを、ウインダムはジュンに支えられながら額のレーザーに力を集めてゴーグルの照準をバザンガの腹部装甲の隙間に狙いを定める。

レッドキングは奥の手である口に備えたミサイルを構える。ゴモラも角に力を集めて超振動波を、エレキングは鞭に力を集めて電撃波を、ガッツ星人は両手に力を集めて光線を放つ用意になる。

 

「よし、お前ら・・・攻撃開始だ‼︎」

 

レッドキングの声で各怪獣娘達の攻撃が腹部装甲の隙間に放たれる。6人の怪獣娘の攻撃は確かにバザンガの腹部装甲の隙間に命中した。しかし、バザンガはその攻撃を受けても平然としている。その様にレッドキング達ベテランの怪獣娘達は声を上げて驚いた。

 

「そ、そんな⁉︎」

「全く攻撃が効いてないよ‼︎」

「クソ‼︎何でだ‼︎腹の隙間に撃ち込めば有効なダメージを与えられる筈じゃなかったのかよ⁉︎」

 

その頃、かぷせるがーるずのうち、ミクラスとウインダムは変身を保てなくなったのか、ミクラスはポニーテールの褐色肌の少女『牛丸ミク』、ウインダムは三つ編みの銀髪の眼鏡の少女『白銀レイカ』に戻ってしまう。アギラとジュンは2人を抱えてその場を離れようとする。

 

「アギちゃん・・・あたしの事はいいから・・・。」

「私達を置いて・・・逃げてください・・・。」

「そんな事出来ないよ‼︎」

「ああ、俺達は絶対に見捨てないからな‼︎」

 

アギラとジュンが必死に2人を支えてその場を離れようとする中、バザンガが腕を振り回して建物を破壊する。その衝撃でアギラとミクは倒れ込む。

 

「アキ‼︎」

「ミクさん‼︎」

 

ジュンとレイカが2人に駆け寄ろうとするが更なる衝撃でレイカが吹っ飛ばされた。思わずジュンは手を伸ばすが彼女には届かず、レイカは壁に激突した。ジュンは気絶したレイカに駆け寄ると必死に呼び掛ける。

 

「おい‼︎しっかりしろ‼︎おい‼︎」

 

ジュンはレイカの脈を測ってまだ動いている事を確認し、一先ずは安堵する。しかし、鳴り響くバザンガの咆哮に怪獣がいる方向に視線を写すと悔しそうに握り拳を握り締める。その時、ジュンの左腕に中心の円盤な青い結晶体に覆われた青色の結晶体が肘側に赤いライン、手首側に青いラインが走るブレスのような物が出現する。

 

「何だこれ⁉︎」

 

ジュンは突然左腕に現れたブレスに驚きを隠せない。その時、ジュンの右腕にメダル状の岩石に白い水晶が組み合わさったメダルのような謎の結晶体が現れ、光り出す。そしてジュンの意思とは裏腹に右腕が勝手にブレスの肘側に動いていく。必死に抵抗するも謎のブレスに結晶体が装填されると円盤を囲む結晶体が展開する。そして手首側に備わったスイッチに勝手に手が伸びていくとスイッチが押され、赤と青の光がジュンを包む。そしてジュンの体は光と共に銀のカラーリングに血管のように赤と青のラインが刻まれた左目に大きなクリスタル状の結晶が備わった巨人に変身した。

 

「ルロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロイィィ‼︎」

 

「ううん・・・・・・えっ⁉︎何あれ⁉︎銀色の・・・巨人⁉︎」

 

ジュンが変身した新たな光の戦士『ウルトラマンブレーザー』はバザンガを前にして両手をあげながら片膝を上げ、身を沈めて両手を突き出す。それはまるで祈りの祈祷のようなものを思わせた。そしてバザンガに向けて構えるとジュンの意識が復活したのか両手を見て驚く仕草をする。

その時、バザンガは両腕から棘を発射する。ブレーザーは避けてビルに登るとかかってこいと言わんばかりにバザンガを挑発する。そしてビルから飛び降りると同時に膝蹴りでバザンガを押し倒した。

 

「レッドちゃん・・・あれって・・・ウルトラマンだよね?」

「ああ・・・胸にカラータイマーがあるし・・・GIRLSの記録にあるウルトラマンにそっくりだし・・・ウルトラマンだと思うぜ。けど・・・。」

「何か・・・わたし達が知ってるウルトラマンとは何かが違う気がする・・・。」

 

ブレーザーはバザンガの背中に飛び込むとそのまま膝蹴りを首に叩き込む。バザンガはブレーザーを振り払うと反撃として両手を突き出してくる。ブレーザーはそれを確かに避けるとその腹に肘打ちを喰らわせ、腕を押さえて膝蹴りを放つ。バザンガはブレーザーを振り払うと怒ったように目を見開く。

ブレーザーは後ろにアギラ達がいるのを確認するとバザンガに蹴りを入れて距離を取るとそのまま怪獣に向かって吠えたてる。

 

「ルロロロロロロロロロイ‼︎ルロロロロロロロロロイ‼︎」

 

ブレーザーの咆哮に怯まず腕を振り回してきたバザンガだがブレーザーはこれを受け止める。そしてその腕に拳を打ち込み、自身に飛んできた左腕を受け止める。そして左腕の軌道を逸らすとバザンガの鼻先を掴み、力比べに入る。最初はバザンガが有利だったもののその口に拳を撃ち込んで怯ませると再び雄叫びを上げた。

 

「ルロロロロロロロロロイ‼︎ルロロロロロロロロロイ‼︎」

 

一旦ブレーザーと距離が離れたバザンガだったが再びブレーザーに突進を仕掛ける。今度はバザンガの頭を掴み、力比べに入るも振り落とされて右腕による突きを受けてよろける。

その時、バザンガの尻尾がブレーザーに襲い掛かった。ブレーザーはしゃがんで一度は避けるも2度目は避けきれず受け止めざるを得なくなる。そしてブレーザーはバザンガの尻尾に振り回されて、ビルを破壊しながら地面に倒れ込む。その時、胸のカラータイマーが鳴り出した。

ブレーザーは力を込めて立ち上がる。その時、バザンガは両腕に仕込まれた棘を放とうとするも弾切れで1発も放たずに終わる。するとブレーザーは手から赤と青の小型の光弾を放ち、バザンガにダメージを与える。そしてこっちに突進してきたバザンガに膝蹴りを浴びせると右腕を受け止めて固定して関節技を決めるとそのまま横腹に肘打ちを2発入れる。

 

「ルロロイ‼︎ルロロイ‼︎」

「ゴギャアアアアアアアアア‼︎」

 

バザンガと少し距離を離すと回転蹴りを浴びせる。そして再び距離を離されたバザンガはブレーザーに向かっていくもブレーザーはすれ違いざまに手刀てバザンガを斬り付ける。そして再びバザンガの右腕を受け止めるとそのまま固定して腰、そして頭に膝蹴りを放つ。

 

「ルロロロロイ‼︎ルロロロロロロイ‼︎」

 

ブレーザーは飛び回りながら咆哮し、バザンガに雄叫びを上げる。そしてバザンガがブレーザーに両手を向けてくるとブレーザーは両腕の甲殻部分を掴み、力の限り引きちぎる。バザンガは両手から青い血液を撒き散らしながら悲鳴を上げる。

 

「ゴギャアアアアアアアアア⁉︎」

 

両腕の装甲をちぎられ、戦力がダウンした事を確認するとブレーザーは右手の掌からブラックホールのような渦を作り出す。そして渦から赤と青の光の槍が現れる。そして光の槍『スパイラルバレード』をバザンガに向けて全力で投げた。バザンガの体は光の槍に貫かれて大爆発を起こす。そして爆炎が止むとブレーザーが立っていた。ブレーザーは暫くそこに佇んでいたがジュンの意識が現れてどうすればいいか分からずにいる。そしてブレーザーは大破した池袋の街を飛び立ち、赤と青の飛行機雲を描いて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

ジュンはかぷせるがーるずの横で地面に横たわっている。そこにアギラのソウルライザーから通信が入った。

 

『おい‼︎お前ら無事か⁉︎』

 

アギラとジュンは直ちに起き上がる。そしてアギラがソウルライザーを取り出して通信に出た。

 

「レッドキングさん、こちらアギラ‼︎全員無事です‼︎」

『良かった・・・アギラ、怪獣はもう大丈夫だ‼︎新しいウルトラマンらしい巨人が倒してくれた‼︎』

「本当ですか⁉︎良かった・・・。」

 

アギラの横でジュンはズボンのポケットに違和感を覚える。思わず探ってみるとそこには先程自身をウルトラマンに変身させたメダル状の結晶体『ブレーザーストーン』が握られていた。




次回予告
「バザンガの時の活躍を見込まれ、トモミにGIRLSにスカウトされたジュン。GIRLSに入るか悩む中、船が突然消える事件が発生。それは宇宙から来た新たな脅威によるものだった。次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマンブレーザー


消失海域Xの謎


悪魔の惑星の生き残りと対峙する時、少年は決意する。」


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消失海域Xの謎(前編)

今回、登場するのは原作のゲードス同様にアンコウがモチーフとなった怪獣から選びました。

円盤生物『ハングラー』登場


バザンガが新たなるウルトラマンに倒されてから3日後、ジュンは幼馴染である怪獣娘アギラの人間態である『宮下アキ』に連れられてGIRLS東京支部に訪れていた。

 

「なぁ、アキ・・・今からGIRLSのお偉いさんのところに向かうんだよな?」

「正確に言うとボク達の先輩の中で1番偉い人かな。・・・ピグモンさんって言うんだけど。」

「その・・・ピグモン?・・・さんが俺に一体何の用があるって訳?」

 

アキは分からないと言いたげに首を横に振る。その様にジュンは頭を抱えながらため息をついた。

 

「俺・・・一体何をしたんだろ・・・・・・避難せずにミクラスさん達助けに行った事怒られんのかな・・・。」

 

ジュンはもし怒られるとすれば心当たりがある理由を思い出して呟く。そして2人の姿はピグモンが待つ部屋の中に消えていった。2人が部屋に入るとそこには怪獣娘ピグモンの人間としての姿である『岡田トモミ』が座っていた。

 

「ああ、連れて来てくれましたか‼︎ありがとうございました〜、アギアギ。」

「いえ、ピグモンさんからの指令ですから。」

「いえいえ〜。」

 

トモミはアキに礼を述べると今度はジュンの顔に目を向ける。思わずジュンは緊張して背筋を真っ直ぐにして固まった。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。楽にしてください。それで貴方がバザンガに襲われて怪我をしたミクミク達の救助を手伝ってくれた民間人の方ですね。アギアギの幼馴染で同じ高校のクラスメイトの・・・ヒルマ・ジュンさんでよろしいですね。」

「は・・・はい。」

「アギアギから全ての報告を聞きました。バザンガの破壊活動に巻き込まれたミクミク、ウインウインの救助を手伝って下さったそうですね。」

「バザンガ?」

「ああ、まだ世間には知らされてませんでしたね。3日前、池袋に飛来したあの宇宙怪獣のコードネームです。」

 

ジュンはトモミの言葉でまだ報道されていなかった怪獣の名前に納得の表情を浮かべる。そしてトモミは再び口を開くとともにジュンに頭を下げた。

 

「この度はミクミク、ウインウインの救助を手伝って下さり、誠にありがとうございました‼︎もし、貴方が来ていなければ2人とも重傷を負って、今でも病院に入院・・・ううん、最悪の場合、2人とも命を落としていたかもしれません‼︎」

「あ、頭を上げて下さい‼︎俺はただ・・・俺に出来る事をしただけです‼︎」

「いえ、そういう訳にはいきません‼︎大事な仲間を助けて下さったのですから‼︎ジュンさん、本当にありがとうございました‼︎」

 

トモミは再びジュンに深く頭を下げる。困った表情のジュンがこういう時どうすればいいか目線でアキに訊ねるもアキも困った顔でお手上げな表情になる。そして再びトモミは頭を上げるとジュンに目線を向けて口を開く。そして彼女の口から出た言葉はジュンだけでなくアキにとっても驚く言葉だった。

 

「ジュンさん、ミクミク、ウインウインの救助活動の協力してくれた貴方にとても大切なお願いがあります。私達GIRLSの仲間になってくれませんか⁉︎」

「へ?・・・・・・え⁉︎」

「じ、ジュンが・・・GIRLSに⁉︎どういう事ですか⁉︎」

「3日前、再び地球に怪獣が現れた事で、私達GIRLSは怪獣対策の全てを押し付けました。」

「か、怪獣対策の全てを⁉︎な、何故GIRLSが⁉︎」

「恐らく・・・今の世界で怪獣に最も関わりがあるのは私達GIRLSだからでしょう。しかし、GIRLSに所属する怪獣娘は芸能活動や大怪獣ファイトなどのそれぞれの分野に加えて街に現れるシャドウへの対応があるのに、更に本物の怪獣への対応という新たな課題が加わりました。これから先、次々と怪獣が出現するようになるのであればこのままだと間違いなく人手不足で皆が倒れてしまいます・・・。今、GIRLSには人手が求められているのです‼︎」

 

トモミの説明を聞いてジュンだけでなくアキも黙り込む。彼女はトモミの言っている事は自身達にも当てはまると思い、胸に噛み締めていた。その上でアキは自身の疑問をトモミにぶつける。

 

「ピグモンさんの言いたい事は分かりました。けど、どうしてジュンなんですか?」

「アギアギ、貴方の幼馴染であるジュンさんは怪獣が暴れて危険な状況にも関わらず、ミクミクとウインウインの救助に協力してくれたんですよね?」

「え・・・は、はい。」

「再び怪獣が現れ、怪獣対策で人手が不足してくる可能性が高い中、勇敢で正義感が強い人物がGIRLSに求められています。そんな中、アギアギの報告を聞いて真っ先にミクミクとウインウインの救助を手伝ってくれたアギアギの幼馴染さんの事を聞いて正に今、GIRLSが求めている人物だと思い、ここに連れて来て貰ったのです。」

 

アキはその話を聞いて思わず幼馴染の方を見る。一方でジュンはトモミの話を聞いて大分困惑していた。

 

「お、俺・・・普通の人間ですよ。アキ達怪獣娘でもないのにGIRLSに入れるものなんですか?」

「それについては大丈夫です。GIRLSには普通の人間も多く働いています。少ないですが男性職員も働いています。ですからジュンさん、私達に力を貸してくれませんか?私達にはジュンさんのような人が必要なのです。」

「・・・俺が・・・GIRLSに・・・ですか・・・。」

「勿論、強制とは言いません‼︎考える時間は与えますし、何なら体験入隊期間を設けます‼︎どうでしょうか⁉︎」

「・・・少し考える時間を下さい。必ず答えを持ってきます‼︎」

 

ジュンは真剣な表情でトモミに言い放つ。トモミの方もジュンから出た言葉が拒否の言葉ではなかった事から思わず安心して一息つく。そして2人のやりとりを見守っていたアキも緊張が解けて一息ついた。そして一息ついたトモミは再び口を開く。

 

「ひとまず、検討を考えてくれてありがとうございます。これから先、怪獣だけでなくあのウルトラマンに関する調査も進めなければいけない状況ですからね・・・。」

「あのウルトラマンって・・・・・・もしかしてバザンガと同じ日に現れたあの・・・。」

「はい、正体不明のウルトラマンです。」

「そもそもの話、あの巨人ってウルトラマンなんですか?自分の元の怪獣の事を勉強するにあたってウルトラマンの事にも学びましたけど・・・。」

 

アキの質問にトモミは自身のパソコンを開いて過去のウルトラマンの記録と共にブレーザーの映像を映し出す。その映像を見たジュンも集中するように映像に目を向けていた。

 

「確かに・・・見た目も・・・野生児のような戦い方も・・・これまで現れたウルトラマンとは全く異なりますが・・・見た目からしてウルトラマンの可能性が高いと思います。ウルトラマンの特徴的な目に加えて・・・胸にはカラータイマーのような水晶を備えていました。私達だけでなく、GIRLS上層部や各政府の要人達もあの巨人はこれまでに現れた事がない新種のウルトラマンではないかと考えています。」

「確かに・・・これまで現れてきたウルトラマンと同じ特徴は持っていますね・・・。」

 

トモミの説明を聞いて納得したアキの横に立つジュンの脳裏に眩い銀河のビジョンが浮かび上がる。その時、ジュンは思わず無意識に呟いた。

 

「ブレーザー・・・。」

「え?」

「ジュン?今、何て言ったの?」

「ん?・・・ああ・・・・・・あのウルトラマンの名前が思い浮かんだんだ。」

「え?何で・・・?」

 

アキの疑問にジュン自身も分からないと言いたげに首を横に振る。そしてジュンは2人の顔を見ながら思わず口を開いていた。

 

「今まで現れたウルトラマンってジャックとかエースとか色々と名前があったと思うんですが・・・あのウルトラマンってそういうの付けられてます?」

「い、いえ・・・確認されたばかりという事もあって・・・まだ正式な名称は・・・。」

「あの・・・まだ民間人の俺が付けるのもおこがましいと思うかもしれませんが・・・ウルトラマンブレーザーってのはどうですかね?眩い光の中からやってきた・・・遠い銀河のブレーザー・・・ウルトラマンブレーザー・・・。」

「ウルトラマン・・・ブレーザー・・・・・・いいですね‼︎悪くありません‼︎」

「うん、ボクもその名がしっくり来る・・・。」

「本当ですか⁉︎」

「ええ、ジュンさんの名案を採用します‼︎あのウルトラマンのコードネームはウルトラマンブレーザーです‼︎」

 

ジュンは自身の名付けた名前が採用されるとアキと顔を向き合う。そして嬉しさのあまり、お互い笑顔で頷いて手を合わせてハイタッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、遠くに漁に出ていた漁船は漁を終えて帰路についていた。船の中では漁師達が漁の成果を話題にしつつ、雑談をしていた。

 

「今日は今の時期にしては微妙だったな〜。」

「そうだな・・・この時期なら鯵が良く取れるってのにその鯵も妙に少なかったなー。」

「勘弁して欲しいぜ。ただでさえ不漁気味で収入が少ないってのにこのままじゃ生活出来なくなっちまうぜ。」

 

不満げに語る漁師達の前で船を操縦していた操縦手は遠くに灯りを見つける。その光を灯台と思った運転手は後ろで雑談していた漁師達に声を掛ける。

 

「兄貴達、灯りが見えました。間もなく到着しますぜ‼︎」

「もうか?」

「今日は随分と早いな・・・もう少し掛かると思っていたが。」

 

漁師達は思ったより早い帰港に疑問を抱きながら下船に向けて備え始める。若い運転手も見えた灯りの方向に船を進めていく。しかし、灯りに近付く途中で漁師の1人が運転手を制止した。

 

「待て‼︎あの灯り・・・灯台じゃねえぞ‼︎」

「え⁉︎」

「俺達の港の灯台にしちゃ灯りが明るすぎる‼︎今すぐにでも引き返せ‼︎」

 

漁師の言葉に運転手は思わず舵を切る。すると先程から見えている灯りが突然動き出した。そして灯りの下から鋭い牙が生えた大きな口が船に向かっていく。

 

「ま、マズイ・・・追い付かれる‼︎」

「もっとスピード上げろ‼︎」

「む、無理です‼︎船が引っ張られて行きます‼︎」

 

船が吸い寄せられ、思うように動かなくなり漁師達はパニックに陥る。そして彼らの船は後ろから迫る大口を開けた何かに追い付かれてしまう。

 

『うわああああああああああああああああああああああ⁉︎』

 

そして彼らが乗った船は大きな口の中に飲み込まれる。そして大きな口が閉じられ、彼らが乗った船は完全に口の中に来てていく。。そして月の光で口の主が写し出された。その頭には灯台に見せかけていた光を照らす触覚を備えており、まるでチョウチンアンコウを思わせる丸っこい姿をしていた。かつてとあるウルトラマンによって破壊された悪魔の惑星と呼ばれるブラックスターの円盤生物の生き残りであるハングラーは食事を終えるとすぐに海の中に潜っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の翌日、ジュンは学校を終えるとそのままアキと一緒にGIRLS東京支部に向かう。そしてGIRLS東京支部の前に立つとアキは昨日の事を思い出しながらジュンに向かって訊ねた。

 

「それで・・・答えは決めたの?」

「いや・・・まだ・・・。」

「決まって無かったの?」

 

首を傾げるアキに思わずジュンは頷く。そしてアキの横で前を向きながら口を開いた。

 

「幾ら普通の人間もいるからって・・・何の力も無い普通の高校生である俺がGIRLSに入って・・・本当に上手くやっていけるか自信が無いんだよ。だって・・・GIRLSって今じゃ世界中に支部がある国際機関だろ?そんなところに・・・普通の高校生である俺が入って大丈夫なのかって思っちゃうんだよ・・・。」

「それを言ったらボク達だって変身しなきゃ普通の高校生なんだよ。でも、試験を受けてGIRLSの正式な一員になって・・・こうして活動出来ている。だから、決して難しく考える事なんてないよ。」

「アキ・・・。でも、ただの人間である俺が入って・・・お前ら怪獣娘達のために出来る事なんてあるのかよ?」

「何言ってるの?バザンガが現れたあの夜、ジュンはボクに意地でも付いてきてミクちゃんとウインちゃんの救出を手伝ってくれたんだよ。あの時、近くにいた他の先輩怪獣娘だってあそこから最低でも10分は掛かる位置にいたんだ。そこにジュンが来てくれたから2人を助ける事が出来たんだよ。」

「アキ・・・。」

「ジュン、ボクはどっちに転ぼうともジュンの気持ちを応援するよ。」

 

アキの言葉を聞いたジュンは目の前の幼馴染がこれまで以上に頼りに見え、彼女から目を離さずにいられなかった。その時、後ろからミクとレイカがやってくる。

 

「あっ、おーい‼︎アギちゃーん‼︎」

「あら、貴方は確か・・・3日前に池袋で会った‼︎」

「ミクちゃんにウインちゃん‼︎」

「2人はあの時の‼︎・・・その怪我とか大丈夫か?」

「平気平気‼︎あたし達怪獣娘は回復力も高いんだし心配無用だよ‼︎」

「寧ろ私達からすれば貴方の方が心配でした。その後、怪我したとかは?」

「ああ、俺も大丈夫だ。何ともない。」

「そっかー、良かった〜‼︎それで・・・どうしてアギちゃんと一緒にGIRLSに向かってるの?」

「ああ、それは・・・。」

 

ジュンとアキは2人に全てを説明する。説明を聞いた2人は納得の表情になっていた。

 

「成る程ね〜、君がGIRLSにか〜‼︎」

「ああ、まあな・・・。2人は俺がGIRLSに入るのは・・・どう思う?」

「あたしは賛成だよ‼︎あの時命を助けてくれたんだもん‼︎」

「そうですね・・・私達が今、こうしてここに無事でGIRLSに来られるのはジュンさんのお陰ですから・・・私も特に反対はしませんよ。」

 

ジュンは2人の答えを深く噛み締める。その言葉を聞いてある程度踏ん張りが付いたのか拳を握り締めていた。その時、アキのソウルライザーに連絡が入る。

 

「はい、こちらアギラ・・・え⁉︎怪獣がまた現れたかもしれない⁉︎」

 

ミクとレイカはアキの言葉を聞くとお互い顔を見合わせて驚く。その一方でジュンはアキの言葉を真剣な眼差しで聞いていた。




ハングラーが海にいる点ですが、オーブクロニクルによるとハングラー、ある海域で船や飛行機を襲って食べていたようなんですよね。船を襲っていた事もあるし、そもそもモチーフがアンコウですから私は水中でも活動出来ると思いました。


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消失海域Xの謎(後編)

皆さん、お待たせして申し訳ありません。
少しばかり体調を崩していました。
少しずつ投稿していこうと思いますのでどうかよろしくお願いします。


トモミから連絡を受けたGIRLS東京支部に所属する怪獣娘達は講義室に集まっていた。講義室にいたのはアキ、ミク、レイカに加えボーイッシュなヘアスタイルに茶髪のゴモラこと『黒田ミカヅキ』、長いピンクの長髪に眼鏡を掛けたエレキングこと『湖上ラン』、ピンクの短いツインテールのザンドリアスこと『道理サチコ』、長いロールのツインテールヘアーの筋肉質なレッドキングこと『歌川ベニオ』、水色の長い髪のガッツ星人こと『印南ミコ』に彼女と瓜二つの顔の紺色の髪のミコと同じくガッツ星人こと『印南マコ』、グレーのロングヘアーの欧米人のキングジョーこと『クララ・ソーン』、髪にメッシュが入ったボーイッシュなヘアーのノイズラーこと『音無ミサオ』癖毛の青いロングヘアーのマガバッサーこと『風巻ヨウ』、青いボブカットのマガジャッパこと『竜波ユカ』ら東京支部において主力となる怪獣娘達が揃っていた。そして壇上にはトモミが立っている。そんな中、このメンバーにアキの幼馴染であり、GIRLSにスカウトされた身であるジュンもこの場に居合わせていた。

当然、ジュンを知らないメンバーはその存在に疑問を抱く。

 

「え?誰?知らない男子がいるんだけど・・・。」

「あの〜、アギちゃん、アギちゃんの隣にいる彼は一体何処の誰かな?」

「あっ、ゴモたん‼︎ここにいるのはボクの幼馴染のジュンだよ。」

「はじめまして‼︎ピグモンさんからGIRLSへのスカウトを受けたヒルマ・ジュンです‼︎よろしくお願いします‼︎」

 

ジュンの言葉を聞いたベニオの頭の中にトモミの話を思い出して納得したように拳を叩く。

 

「ピグモンからスカウト・・・・・・ああ‼︎バザンガが現れた池袋でミクラスとウインダムの救助を手伝った高校生か⁉︎そうか君が・・・。俺はレッドキング‼︎よろしくな、ジュン‼︎」

「ああ‼︎貴方があの大怪獣ファイター初代チャンピオンのレッドキングさんなんですね!よろしくお願いします‼︎」

「お、知ってくれて光栄だ!よろしくな‼︎」

 

ジュンはベニオと硬く握手を結ぶ。それを見てアキは思わず少し面白くなさそうな表情になる。しかし、そんな彼女に構う事なくトモミが口を開いた。

 

「はいはい、お話はそこまでです。ジュンさんとの個人的な挨拶はこの後にして下さいね。」

「わ、悪い・・・ピグモン。」

「ジュンさん、わざわざお越し頂きありがとうございます。怪獣が出現したかもしれないというこの状況でここに来てくれたと言うことは・・・。」

 

トモミの声を聞いたジュンは彼女に向き合うと一旦心を整える。そして決意を口に出した。

 

「はい、俺をGIRLSに仮入隊させて下さい‼︎仮に怪獣が現れたなら、かなりの大ごとになる筈です‼︎俺に出来る事で少しでも多くの人を救えるならばやれるだけの事はやりたいです‼︎だから・・・俺を加えて下さい‼︎」

「・・・分かりました‼︎わたし達に力を貸して下さい‼︎」

「はい‼︎」

 

ジュンがトモミに認められたところで早速本題に入る。モニターには地図と船の写真が映し出された。

 

「皆さん、実は先日より東京湾から出港したこの船達と連絡が途絶え、船が帰ってこなくなる事態が続いています。そしてこの船が消える原因は怪獣の仕業である可能性が極めて高い事が分かりました。」

「ええっ⁉︎怪獣の仕業⁉︎」

「な、何か証拠はあるの⁉︎」

「勿論あります。こちらは消息を絶った船の中で最後に通信が出来た船からの音声です。こちらを聞いて下さい。」

 

ミクとミカヅキの疑問に答えるべく、トモミはパソコンを操作する。すると録音された音声が聞こえてきた。

 

『こちらグロリアス号、灯台が見えたからそろそろ船を着ける。迎える準備を始めてくれ。』

『了解だ。・・・・・・・・・おい、今何処にいる?そちらの船が見えないぞ。』

『えっ⁉︎そんな訳ないだろ。確かに、灯台の灯りが見えていて、そっちに向かって進んでるんだ。俺達の船が見えない訳ないだろ。』

『だがこちらからは確認出来ない。そもそもそっちが見た灯りはどんな灯りなんだ。』

『赤い灯りが見えるが・・・。』

『赤い灯り・・・・・・ちょっと待て‼︎ここの灯台の灯りの色は緑色だぞ‼︎』

『えっ⁉︎じゃあ・・・この光は・・・・・・う、嘘だろ⁉︎灯りが動いた‼︎しかも・・・灯りの下に何かいる‼︎』

『今すぐそこから引き返せ‼︎早く‼︎』

『だ、駄目だ・・・船が引き寄せられて・・・。』

『ギャオオオオオオオ‼︎』

『た、助けてくれ‼︎大きな口の化け物が・・・・・・』

『どうした⁉︎グロリアス号、応答してくれ‼︎グロリアス号‼︎』

 

そして消えた船の名を何度も呼び掛ける声が続いて録音された音声が終了する。音声が終わると再びトモミが口を開いた。

 

「これが数少ない消えた船との最後の通信が録音された音声です。お分かり頂けましたか?」

「ええ、道理で私達GIRLSに出動要請が来る訳ね。」

「大きな口の化け物に・・・さっき聞こえた何かの鳴き声・・・やっぱり怪獣の仕業である可能性が高そうだね。」

「その通りです。先日から起こる船の消失事件に怪獣が絡んでいると考えた政府はGIRLSに出動要請を出しました。よってこれより事件の調査に向かいます。GIRLS出動です‼︎」

『了解‼︎』

 

全員が席から立ち上がって部屋を出て行く中、トモミはジュンに向かって行く。そしてアキと一緒に部屋を出ようとした彼を呼び止めた。

 

「ジュンさん、貴方はアギアギと行動して下さい。貴方はまだ一般人のままも同然ですからね。」

「わ、分かりました・・・。」

「アギアギ、ジュンさんをよろしくお願いします。」

「大丈夫ですよ、ジュンとは幼馴染ですから。」

 

アキはトモミに向き合って頷く。そしてジュンもアキと一緒に部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ハングラーは満腹状態なため、海底でその身を沈めながら体を休めていた。そんな中、ハングラーは自身に近付いてくる無数の気配に気付き、目を開く。じっと前を見つめているとハングラーの視線にこちらに近付いてくる何かのシルエットが見えた。それは段々とハングラーに近付いてきてその姿を露わにしていく。それは幾つもの潜水艦だった。ハングラーに向かって行く幾つもの潜水艦は武装されており、いつでもハングラーに向かって攻撃出来る準備が整っている。そして潜水艦隊の中で先陣を切っていた艦体から魚雷が2発放たれる。魚雷が2発とも命中するとハングラーの体に水中の中で爆発が生じた。

 

「ギャオオオオオオオオオ‼︎」

 

ハングラーは折角ゆっくりと休んでいたところで潜水艦からの魚雷が直撃した事による衝撃と熱さを感じた事により、怒りを露わにする。ハングラーが上げた叫びを悲鳴だと思った潜水艦は次々とそれぞれの艦体から魚雷を放って行く。そして連続で自身に襲いくる魚雷な衝撃と連続で浴びた事による痛みでダメージを受けた。ハングラーは目の前の潜水艦隊に怒りを感じると、こちらに向かってくる潜水艦隊に対して迎え撃つように水中の中を飛び出した。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

ハングラーが何処かの潜水艦隊からの攻撃を受けている間にGIRLSは港に辿り着き、GIRLSが所有する2隻の船に調査に向かうメンバーを乗せて目的の海域に向けて出発していた。ジュンが船から海を眺めていると隣にミクラスとウインダムが座ってくる。

 

「隣、いい?」

「私も大丈夫ですか?」

「ん?ああ。」

 

ジュンが2人に頷くと2人はジュンを挟んで隣に座る。そして最初にミクラスが口を開いた。

 

「本当にあたし達と一緒に来てくれたんだね。」

「ん・・・まあな・・・俺に出来る事は限られると思うけど・・・。」

「そんな事ありません‼︎一緒に来てくれて心強いですよ。決してお世辞じゃなく、私達とご一緒してくれる事がありがたいです‼︎」

「そっか・・・。」

 

ジュンは2人の言葉に何処となく嬉しくなる。するとそこにゴモラがやってきた。

 

「やっほー‼︎ミクちゃんにダム子にアギちゃんの幼馴染君‼︎」

「ゴモたん‼︎」

「大怪獣ファイターの・・・ゴモラさん⁉︎どうしたんです?」

「いや〜、わたしも君の事がちょっと気になっちゃってね〜。」

 

ゴモラはジュンの前に回り込むとしゃがんでジュンに視線を合わせる。そして彼女はジュンに向き合うと口を開き出した。

 

「聞いたよ〜。バザンガの現れた現場にいて・・・ミクちゃんとダム子の救出手伝ったって。」

「ええ。」

「わたしからもお礼を言わせて。あの日、2人の事を助けてくれて何であの日そんな事したのかな?あ、別に怒ってる訳じゃないよ。ただ、あの時はバザンガが暴れて危険な状況だったじゃない?何でそんな状況で迷わずに危険な場所に飛び込んで誰かを助けようとしたの?」

 

ジュンはゴモラの言葉を聞くと少し彼女から顔を逸らして床に視線を向ける。その表情からは何処か悲しげな様子が見て取れたためゴモラは慌て出す。

 

「あ、あれ⁉︎わたし、何かマズい事聞いちゃった?」

「いや、大丈夫です。・・・ただ・・・3年前を思い出して・・・。」

「3年前?」

「3年前、両親の昔からの友人が働いている研究所に遊びに行って・・・その研究所で大事故が起きて・・・・・・多くの人が亡くなったんです・・・。」

「え⁉︎・・・そう・・・なの・・・?」

 

突然ジュンの口から語られた話にゴモラだけでなく隣にいたミクラスとウインダムも絶句する。そんな彼女達の前でジュンは語り続けた。

 

「あの時、俺は何も出来なかった・・・。両親は中学生なんだから仕方ない・・・子供なんだから仕方ないって励ましてくれましたけど・・・それでも・・・‼︎俺が少しでも・・・勇気を出していれば・・・助けられた人がいたかもしれない・・・俺は今でもそう思ってしまうんです。」

「ジュンさん・・・。」

「だから俺はあの時、バザンガが暴れているあの場所に飛び出したし、今回もこうやって皆さんに付いてきたんです。今度こそ・・・少しでも多くの人を助けられるように‼︎」

 

ジュンの決意にゴモラだけでなくミクラス、ウインダムも言葉が出なくなっていた。暫く沈黙が続く中、ゴモラが口を開く。

 

「そういう事だったんだね・・・君にも色々と事情があって・・・その経験を基に行動してるんだ。・・・ありがと、話してくれて。少し安心した。」

「何がですか?」

「君がスリルやロマンを求めて考え無しに行動してる訳じゃないって事。君は誰かを助けるために今回のようにわたし達に付いてきたんだね。」

 

ゴモラはジュンに背を向けて前を見つめる。そして再び振り返ってジュンに向かって口を開いた。

 

「約束して。あんまり無茶な事はしないで・・・自分の命を大切にするんだよ。」

「・・・分かりました。」

「ジュン‼︎」

 

その時、アギラがこちらに顔を出してきた。何処となく彼女の表情は不機嫌になっている。

 

「そろそろ船が消える海域に到着するから準備して。」

「ん・・・ああ、分かった。」

 

ジュンはアギラに付いていく。横で頰を膨らませるアギラにジュンは何かを感じて疑問を投げた。

 

「アキ、お前怒ってないか?」

「・・・別に。」

「いや、どう考えても怒ってるだろお前・・・俺何かしたか?」

「そんな事ないよ。ただ・・・ゴモたんやミクちゃん達可愛い子に囲まれて何話してたんだろうな〜って・・・。」

「別に大した事は話してねえよ。何故危険な状況になっていた池袋でミクラスさん達の救出に参加したのか問われただけだ。」

「・・・それだけ・・・。」

「それだけだよ。後は3年前の事を少し・・・かな。」

「3年前って・・・あの事故の⁉︎話す気になったの⁉︎」

「仕方ねえだろ、話さねえと納得させられなかったかもしれないし・・・それに・・・いつまでも引き摺ってられないだろ・・・。」

 

ジュンはそう言い残すとアギラに背を向けて準備に取り掛かる。アギラはそんなジュンの背中を見て思わず呟いた。

 

「自分が1番引き摺ってる癖に・・・。」

 

 

 

 

 

数十分後、ソナーや水中カメラなどの調査の準備が完了する。ウインダムが海に沈めた水中カメラを操縦する中、アギラとジュンは彼女が操る水中カメラの映像を確認している。

 

「・・・・・・何も写らないな。」

「そう簡単には写らないよ。」

 

ジュンが映像から目を離して海に目を向ける。その時、レッドキングのソウルライザーに連絡が入った。

 

「こちらレッドキング。ピグモンか?怪獣らしい奴は確認でき」

『それより大変です‼︎先程GGFが私達GIRLSに黙って海中に潜む怪獣に攻撃を仕掛けたそうです‼︎』

「はあ⁉︎どういう事だよ⁉︎ていうかGGFって何だよ⁉︎」

『・・・・・・実は国連の間で秘密裏に再び本物の怪獣が現れた時に備えて怪獣を倒す為に秘密裏に地球防衛軍が結成されていたそうです・・・その存在は私達GIRLSにすら存在を知らされていませんでした・・・。』

「本物の怪獣が現れた今・・・本格的に動き出したって訳か。それでそのGGFとやらはどうなったんだ?」

『それが・・・複数の潜水艦隊が怪獣に攻撃を仕掛けた結果・・・全て撃沈したそうです・・・。』

「何だよそれ⁉︎役に立たねえな地球防衛軍‼︎」

『けど、お陰で怪獣が確実にいる事が判明しました。艦体から怪獣の特徴に関する情報も届いています。情報によれば怪獣はアンコウのような姿をしていたそうです。』

「アンコウのような姿の怪獣ねえ・・・。」

 

レッドキングのピグモンの通信を聞いてゴモラは思わずソウルライザーを操作する。すると彼女のソウルライザーの画面にアンコウを思わせる2種類の怪獣が写る。

 

「アンコウにそっくりな怪獣といえば・・・ハングラーかアンゴーラスのどちらかと思うけど・・・。」

「あるいはアンコウにそっくりな新種の怪獣の可能性もありそうですね・・・。」

「その答え、すぐに分かりそうですよ。」

 

ゴモラとウインダムは思わず声を上げたジュンの方向を向く。するとジュンの見ているソナーに怪獣と思われる巨大な生物の反応が出ていた。それは真っ直ぐ船に近付いてくる。

 

「嘘・・・ソナーに反応が・・・。」

「こっちに近づいてませんか?」

「皆‼︎すぐに退避するわよ‼︎」

 

隣のもう一隻の船から顔を出したエレキングの声で全員が手摺りなど近くにあるものに捕まり、そこから離脱する準備に入る。すると海面が盛り上がってきた。

 

「ねえ、何か出てくるよ‼︎」

「皆、捕まってろ‼︎」

 

レッドキングの声と同時に船が発進する。その時、海面からハングラーが飛び出してくる。思わず、エレキングが乗る船に同乗していた小さな羽にセーラー服のような獣殻に身を包んだサチコが変身したザンドリアスが思わず叫ぶ。

 

「出たああああああああああああああ‼︎怪獣だああああああああああああああ‼︎」

「しっかり捕まってろ‼︎」

 

2隻の船は海面から飛び出してきた怪獣から逃れるべく全力で運転し始める。思わずジュンが後ろを確認するとこちらに向かって泳いでくるハングラーが見えた。

 

「あのアンコウ怪獣、追い掛けてくるぞ‼︎」

「えっ⁉︎・・・本当だ・・・こっちに近づいて来てる・・・。もっと急いで‼︎」

「怪獣の判別、完了したよ‼︎あれは円盤生物ハングラーだって‼︎」

「ハングラー・・・そうか全てが分かりました‼︎ハングラーは頭のアンテナで灯台の灯に擬態して船を食べてたんです‼︎」

「て事は船の失踪事件も・・・あの怪獣の仕業って事じゃん‼︎」

「GIRLSに連絡しないとな・・・こちらレッドキング‼︎」

 

全てが読めたレッドキングはソウルライザーでGIRLS東京支部に通信を掛ける。ピグモンが通信に出るとレッドキングはこれまでの経緯を説明する。

 

「・・・てな訳だ‼︎」

『成る程・・・やはり本物の怪獣の仕業だったのですね・・・。でも、この前のバザンガといい、何故今になって怪獣が・・・?』

「マズい‼︎追い付かれる‼︎」

 

ミクラスの声でレッドキングが後ろを向くとハングラーは既に彼女達が乗る船のすぐ後ろまで来ていた。思わず彼女達が身構えるもハングラーは2隻の船に目もくれずに通り過ぎていく。

 

「船を追い越した・・・何で・・・。」

「ま、まさか海中でゆっくりしてたところを潜水艦に攻撃されたからでは・・・。」

「この先は・・・港だぞ‼︎急がなきゃ‼︎」

 

2隻の船は全力でハングラーを追い掛けるもののハングラーが泳ぐ速さは彼女達の想像以上だった。ハングラーは2隻の船をぐんぐんと引き離し、港に辿り着いた。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオ‼︎」

「うわああああああああああああああああ⁉︎」

「か、怪獣だあああああああ‼︎」

「・・・もう駄目だぁ・・・お終いだぁぁぁ・・・。」

「あ、足を挫いて・・・いや・・・いや・・・いやああああああああ‼︎」

 

 

ハングラーは大口を開けて乗っていた人間ごと停泊していた船を口に吸い込んでいく。そして何隻かの船がハングラーの胃の中に消えていった。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオ‼︎」

 

咆哮を上げながらハングラーは陸に上陸する。すると何処からともなくミサイルが飛んできた。ハングラーの体に着弾し爆発するとハングラーはその衝撃と熱さに怒りを覚える。するとこちらに向かってGGFと描かれた戦闘機が飛んできた。ハングラーは大口を上げながら手足を収納して空に飛び上がる。そしてその大口の中に戦闘機が飲み込まれていった。

一方でやっと港に辿り着いたGIRLSは船から降りるとすぐさま市民の避難誘導を開始する。ジュンはアギラと一緒に避難誘導に回っていた。

 

「皆さん、GIRLSです‼︎ここは危険です‼︎早く逃げて下さい‼︎」

「慌てないで下さい‼︎慌てないで、案内の者の誘導に従って下さい‼︎」

 

2人が避難誘導している最中、ジュンとアギラの後ろにハングラーが着地して来た。ハングラーは再び足を出して街を歩き始める。思わず2人が後ろを振り向くと、その大きな口から炎が放たれ、並び立つ小屋が爆発しながら燃やされていく。

 

「やべえ・・・思ったより被害状況が酷えな・・・。」

「あっ‼︎あの人‼︎」

「え・・・ええっ⁉︎」

 

アギラはハングラーに向かって銛を構えながら走っていく壮年の男性を見つける。ジュンもその姿に気付き、2人は思わず頭を抱え出した。

 

「あの人・・・何であんな事・・・。」

「早く助けに行こう‼︎」

 

アギラの声にジュンが頷くと2人は男性に向かって駆け出していく。そして必死に男性を制止した。

 

「ちょっとお爺さん‼︎ここは危険ですって‼︎」

「すぐに逃げて下さい‼︎」

「離せ坊主共‼︎長年一緒にやって来た仲間がアイツに喰われたんだ‼︎仇をとらねえと気が済まねえ‼︎」

「いや、銛じゃ無理ですって‼︎多分怪獣の皮膚に掠りもしないですから‼︎」

 

2人が抑えるもそれでもハングラーに突撃せんと男性は暴れ出す。その時ハングラーが吐いた炎が怪獣が暴れた影響で燃料タンクから漏れ出た燃料に引火する。その瞬間、大爆発が起こり、その衝撃で3人は吹っ飛ばされた。

 

「「「うわああああああああああああああ⁉︎」」」

 

3人は地面に思い切り投げ出される。最初にジュンが咳き込みながら立ち上がる。

 

「ゲホゲホ・・・お爺さん‼︎アキ‼︎何処だ‼︎」

「じゅ・・・ジュン・・・。」

 

ジュンは声が聞こえた方に目を向ける。そこには男性を守るように覆い被さるアギラの姿があった。その背中の獣殻は何処となく焦げていた。

 

「アキ‼︎大丈夫か⁉︎」

「う・・・うん。それよりこの人を連れて安全な場所に逃げて・・・。」

「馬鹿言うな‼︎お前も一緒だろ‼︎」

 

ジュンはアギラと男性を肩に抱えるとその場からすぐに離れる。炎が立ち込めておらず、比較的安全な場所を見つけるとアギラはすぐに崩れ落ちる。

 

「お、おいアキ‼︎大丈夫か⁉︎」

「御免・・・無茶しすぎたみたい・・・。」

「ここで待っててくれ。すぐに助けを呼んでくる‼︎」

 

ジュンは物陰に2人を置いていく。アギラはジュンの言葉に頷くと気を失う。ジュンは窓から見えた街を破壊しながら暴れるハングラーに目を向けて拳を握り締める。その時、彼のズボンのポケットが光り出した。

 

「熱⁉︎熱熱熱っ⁉︎何だ何だ・・・。」

 

その時、熱さを感じたジュンは思わずズボンのポケットからブレーザーストーンを取り出す。ブレーザーストーンはまるで自身を使えと言わんばかりに点滅を繰り返していた。その時、ジュンの左腕にブレーザーブレスが装着される。

 

「・・・やっぱりあれは夢じゃなかった・・・俺は本当にウルトラマンになったんだ・・・よし‼︎」

 

ジュンはブレーザーストーンをブレーザーブレスにセットする。しかし、青ライン部分のボタンを押す事を忘れていたジュンは数秒経ってもブレーザーに変身する事は無かった。

 

「え?・・・あれ・・・あっ‼︎このボタンか⁉︎」

 

ジュンはボタンに気がつくとそれを押す。そしてジュンの体はブレスから出た光に包み込まれた。そして光の中から左腕を上げながらウルトラマンブレーザーが飛び出す。

 

「ルロオオオオオオオオオオイ‼︎」

「ギャオオオオオオオ‼︎」

 

ブレーザーは地面に着地すると前回、バザンガと戦った時同様にハングラーを確認してから、祈るようなポーズを取る。その姿を見たミクラスとウインダムは思わずブレーザーに向かって指を刺す。

 

「う、ウインちゃん‼︎あれって‼︎」

「この前の・・・ウルトラマン‼︎」

 

ハングラーの方もブレーザーを見て敵だと確信すると二本足で立ち上がりながらブレーザーに向かっていく。ブレーザーはそのままハングラーのお腹に膝蹴りをかます。

 

「ギャオオオオオオオオオ‼︎」

 

ブレーザーの膝蹴りをまともに腹に受けたハングラーは悲鳴を上げながら四足歩行に戻るとそのままブレーザーに突進する。ブレーザーは今度はハングラーの頭に肘打ちを放とうとした。

するとハングラーは大きな口を開けてブレーザーの腕に噛み付いた。鋭い歯と思った以上に強いハングラーの噛む力に今度はブレーザーが悲鳴を上げる。

 

「ルロオオオオオオオオオオオオイ⁉︎」

 

ハングラーは噛み付いたまま、ブレーザーを振り回す。ブレーザーは何とか振り解こうとするもハングラーの顎の強さに苦戦を強いられる。ハングラーは何度かブレーザーを振り回すとそのままブレーザーを放り飛ばす。そしてブレーザーが地面に倒れた事を確認すると大きくジャンプしてボディプレスを放つ。ブレーザーはハングラーに押し潰されて再び悲鳴を上げた。

 

「ルロオオオオオオオオイ‼︎」

 

ブレーザーは再びハングラーのお腹に膝蹴りを叩き込む。腹への一撃で怯んだハングラーは思わず押し潰す力を緩める。その隙をついてブレーザーが脱出するとハングラーの頭に強力な蹴りが放たれる。頭に蹴りを受けて怯んだハングラーは思わず後退するとブレーザーが頭の触覚を掴んで逃げられないようにする。そして頭の触覚を掴んだまま、顎に何度も膝蹴りを放ち、ハングラーの頭をくらませた。ハングラーが弱った隙にその触覚を強く引っ張り出す。頭の触覚から感じる痛さにハングラーも悲鳴を上げ始めた。

 

「ギャオオオオオ・・・‼︎」

「ルロオオオオオオイ‼︎」

 

そしてブレーザーが力を込めるとハングラーの頭の触覚を引きちぎる。頭に感じた激しい痛みにハングラーは悲鳴を上げながら悶絶し出す。

 

「ギャオオオオオオオオオ‼︎ギャオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」

 

苦しみのたうちまうハングラーを見てブレーザーは掌からスパイラルバレードを形成する。光の槍を見たハングラーは嫌な予感を感じて海に飛び込む。ハングラーが海に逃げるとブレーザーはスパイラルバレードを操作する。すると釣り糸のようなものが形成され、スパイラルバレードは釣竿のような形状になった。

 

「ええっ⁉︎釣竿になった⁉︎」

「まさか・・・奴を釣り上げるつもりじゃねえだろうな・・・。」

 

ゴモラとレッドキングの言葉通り、ブレーザーは釣竿となったスパイラルバレードを海に放つ。釣糸の先がハングラーに食らいつくとブレーザーはそのまま怪獣を引き揚げ始める。

 

「ルロオオオオオオ・・・‼︎」

「ギャオオオオオ・・・‼︎」

 

ハングラーは海面から顔を出しながらも必死に抵抗する。ブレーザーは抵抗するハングラーに対して一気に力を入れて釣り上げる。ハングラーは釣竿に釣られて空中にその姿を現す。

 

「怪獣一本釣り・・・お見事‼︎」

 

ゴモラが称賛する中、ブレーザーはスパイラルバレードを通常の光の槍に変化させる。そしてそれをハングラーに投下した。ハングラーの体を光の槍が貫き、熱でアンコウのような体が焼き焦げる。そのまま串焼きになったハングラーは大爆発を起こした。怪獣との戦いを終えたブレーザーはそのまま何処かへ飛び立っていった。

 

 

 

 

ハングラーとの戦いが終わって2日後、すっかり回復したアキはGIRLSの仲間と一緒に講義室に集まっていた。既に壇上にはトモミが立っている。

 

「それでは本日よりGIRLSの仲間となる新たなメンバーを紹介します。それではどうぞ。」

 

トモミに促され、壇上にジュンがやってきた。その姿にアキは笑みを見せる。あの後、変身を解いたジュンが2人を抱えてミクラス達の元に連れてきた。その結果、彼女と彼女と一緒にいだ男性は無事に救出されたのだ。ジュンはその功績を認められ、GIRLSの一員となる許可を得る事が出来たのだ。

 

「俺に出来る範囲で出来る事をやって・・・少しでも多くの命を救えるように頑張りますのでどうかよろしくお願いします‼︎」

「ジュン・・・本当にGIRLSに入ったんだ。」

「アキ‼︎・・・ああ、これからGIRLSでもよろしく‼︎」

「うん‼︎ジュン、国際怪獣救助指導組織『GIRLS』にようこそ‼︎」

 

アキの笑みにジュンも思わず笑みを浮かべる。そして2人は暫く笑い合っていた。




次回予告
「新たなエネルギー源『液化Tテリウム』の工場が次々と襲撃される事件が発生する。GIRLSに本格的に入隊したジュンはアギラのチームメイトであり親友であるミクラス、ウインダムと共に調査に乗り出す。調査の先で3人が目にした物とは!次回‼︎

怪獣娘×ウルトラマンブレーザー


新型エネルギーを守れ‼︎


強固な鎧を持つ蟲が未来の可能性を貪り食う。」


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新型エネルギーを守れ‼︎(前編)

今回も原作とは違う怪獣が出ます‼︎

変異昆虫『シルドロン』登場


ここは九州の新たな新エネルギーである『液化ティーテリウム』の九州生産工場である。微量ながらも水がある限り無限に取り出せ、加工すればクリーンで安全な次世代エネルギー源として注目されているこの液化ティーテリウムの生産工場は今は深夜であるのもあり、夜勤帯の人々を除けば工場で働く勤務員は帰宅している状態であった。この夜も特に異常は無く、特にトラブルや事故も起きずに朝まで働く事になると誰もが思っていた。

その思惑は突然破られる事となる。突然地底から虫を思わせる姿の怪獣が出現して工場を襲撃したのだ。突然出現した怪獣の姿に工場で働いていた夜勤の従業員達は逃げ惑う。

 

「ギシイイイイイイイイイ‼︎」

「うわあああああああああああああ‼︎」

「だ、誰か・・・助けて・・・助けてくれええええええええええ‼︎」

「イヤアアアアアアアアア‼︎」

「ギシイイイイイイイイイ‼︎」

 

深夜で突然の襲撃というのもあってGIRLSからの支援が誰も来ていないいま、従業員達は誰もが阿鼻叫喚を上げてパニックになりながら逃げ惑う。従業員達が逃げ惑う中、怪獣はエネルギーの貯蔵タンクを両腕を振り回して破壊し、破壊痕に口をつけてエネルギー源を啜り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

その日の翌日、トモミはモニター越しにGGFに所属する軍人服を着た男性と話をしていた。彼女はこれまでの後輩怪獣娘達に決して見せた事のないような険しい表情を浮かべている。それは2人の会話を聞いていたランとクララも同様だった。

 

「どうしてあの時、私達GIRLSに黙って勝手にハングラーに攻撃を仕掛けたんですか⁉︎」

『君達GIRLSに所属する怪獣娘では怪獣に勝てない・・・だから我々が圧倒的な火力を持って怪獣を撃滅しようと考えたまでだ。』

「結果的に艦隊の全てが沈められたじゃないですか⁉︎しかも貴方達が無闇に攻撃したせいであの怪獣は陸上に上がってきたんですよ‼︎」

『あれはとんだアクシデントだったが我々のこれからの活動において何の支障はない。』

「戦闘機部隊も全てハングラーに食べられたのに・・・よくそんな事言えるわね。」

『これから先も怪獣が現れるようなら調査の方は君達に任せる。その後は我々に任せろ。圧倒的な火力で怪獣を撃滅する。』

「それで怪獣を倒せなかったらどうするんですか⁉︎過去には攻撃を吸収して自身のエネルギーに変える力を持つ怪獣だっていたんですよ‼︎・・・兎に角、無闇に怪獣を攻撃するのは止めてください‼︎」

『我々が伝えたい事は以上だ。通信を切る。』

「え⁉︎ちょっ、ちょっと‼︎」

 

トモミがストップを掛けるも伝えたい事を伝えたGGFの男はすぐに通信を切り、モニターに砂嵐が流れる。暫く沈黙が続くとランが呟いた。

 

「駄目ね・・・火力のみで怪獣を殲滅出来ると思っている・・・。頭が単純な人達だらけだわ。」

「過去の記録を見れば火力押しだけでは怪獣には勝てない事くらい分かる筈なのに・・・。」

「かつて本物の怪獣が立て続けに出現していた第一次大怪獣時代から長い時が経ってイマスからね・・・。過去の怪獣の記録に触れても時間の無駄だと感じても無理はないデス・・・。」

「やはり怪獣対策も私達GIRLSが考えなきゃいけなさそうですね・・・。怪獣娘が本物の怪獣に戦える力を身に付ける方法を考えなくては・・・。」

 

トモミは先程のGGFとの通信を経て考えた結論を出すと机の上に置いた資料に手を付けて席を立つ。そして会議室を出ようとした時、ドアの前で立ち止まるとクララに向き合って口を開く。

 

「そういえばジュンジュンはどうしてますか?」

「問題ありマセン。アギラちゃん達が見てマスよ。何でもワタシ達怪獣娘の特訓に必死に食らいついているらしいデス。」

「あら、少しはやるのね。すぐに根を上げると思っていたわ。」

「やはり、池袋でバザンガが暴れる中、ミクラスちゃん達を助けるのを手伝ってくれた事もあって根性は中々のものデスよ。」

「そうですか・・・それは良かったです。・・・けど・・・。」

「どうしたの?」

「ゴモゴモ達から少し話を聞いたのですが・・・彼、3年前に何かの事故に巻き込まれたらしくて・・・その経験からミクミク達の救助を手伝ったりしてくれたんでしょうけど・・・少し無茶をしないか心配で・・・。」

「大丈夫よ。いざとなれば彼を止めれそうなアギラもいるわ。」

「それにワタシ達もいざ彼が無茶をしそうになったら、止めに入りマス。心配しないで下サイ。」

「そ、そうですね・・・ありがとうございます、2人とも!」

 

クララとランの答えにトモミも笑みを浮かべる。そして3人は会議室を後にして元の仕事に戻っていった。

 

 

 

 

 

その頃、GIRLSのトレーニングルームではジュンがランニングマシーンを走っている。怪獣娘専用に調整されていて普通の人間にはキツい筈のランニングマシーンにジュンは必死で食らいついていた。

 

「うおおおおおおおおお‼︎」

「じゅ・・・ジュン、大丈夫⁉︎あんまり無茶しちゃ駄目だよ‼︎」

「無理なんか・・・してないって‼︎・・・お前達に付いて行けるように俺も・・・強くならなくっちゃ‼︎」

 

アギラは明らかに普通の人間には過度を超えた特訓に励む姿を見ていられなくなり、これを見守っていた親友であるミクラス、ウインダムと顔を合わせると強制的にランニングマシーンを停止させる。そしてアギラとミクラスが強制的にランニングマシーンから引き摺り出した。

 

「おい‼︎何で止めんだよ‼︎」

「これ以上はジュンの体が持たないからだよ‼︎特訓もいいけど、適量を超えた運動は駄目‼︎これ以上は禁止だよ‼︎」

「・・・分かったよ。」

 

アギラからストップをかけられたジュンは渋々納得するとクーラーボックスに冷やしてあったスポーツドリンクに口を付ける。あっという間に飲み干すとため息をついて座り込んだ。そんなジュンの隣にアギラが座り込む。

 

「全く・・・何でここまで特訓したの?」

「・・・こうしてGIRLSの一員になったからには・・・また再び現れた怪獣から多くの人達の命を救いたい。そのために体力を付けて強く」

「それで体を壊したら元も子もないよ‼︎・・・確かにシャドウとか本物の怪獣の対処はボク達GIRLSが引き受けた役目だけどそれはボク達怪獣娘がやるものなの‼︎」

「けど、もし万が一に宇宙人が現れたら俺だって戦う事に」

「それもボク達が引き受けるよ。幾らGIRLSに入ったからってジュンはボク達怪獣娘じゃなくて普通の人間である事には変わりないんだよ。だから戦闘とか無茶な事はさせられないよ‼︎分かって・・・ジュン。」

 

アギラの言葉にジュンは少し考えるように黙り込む。そして数秒後、ジュンは観念したように口を開いた。

 

「・・・・・・分かったよ。」

「ジュン‼︎」

「でも、民間人や仲間がかなりヤバい状況になっててすぐに助けが欲しい時とか、宇宙人を俺しか止められない時とか、そういう時は無茶をやる事になると思う。それでもいいか?」

「うーん・・・本当は止めて欲しいんだけど・・・・・・でも人命が危かったり、ジュンしか戦えないようなその時はその時で仕方ないね・・・でも、極力無茶は避けるんだよ‼︎分かったね⁉︎」

「分かった分かった分かったから‼︎」

 

念を押してくるアギラにジュンは思わず顔をしかめながら頷いた。そして4人はもう少しトレーニングを続けて、その日の特訓を終える。

特訓を終えてジュンは軽くシャワーを浴び、普段着に着替えている。するとズボンのポケットからブレーザーストーンを取り出した。

 

「・・・・・・ブレーザー、何で君は俺を選んだ?そもそも君は何者なんだ?」

 

ジュンはストーンに思わず問い掛けた。しかし、ストーンから返事が帰ってくる事などあるはずもなくそのまま沈黙が続いた。どう問い掛けても答えが返ってくる訳がないと考えたジュンはストーンを再びポケットにしまう。そして先程の幼馴染との会話を思い出しながら三年前の事を思い起こす。

 

『ジュン君、ここから逃げるんだ‼︎レスキューが間もなく来る筈だから合流出来たらその人の指示に従ってくれ‼︎』

『は、はい‼︎』

 

ジュンは自身に呼び掛けた男性の言葉に頷いてその場から走り出す。そして曲がり角に曲がった時、ジュンの目に摩訶不思議な物が写った。何とジュンの目の前に宇宙空間を思わせる黒い穴が開いたのだ。ジュンは思わず驚いて後ずさった。

 

『な、何これ⁉︎』

 

ジュンは思わず緊急事態という事を忘れて穴に恐る恐る近付いていく。その時、穴の奥から光り輝く人影が見えてきた。ジュンは人影がこちらに近づいてくるのを見て、更に穴に近付いていく。そしてジュンは思わずその穴からやってくる光る人影に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

そして現在、あの事故の事を思い出しながら先程のアギラの事を思い出していたジュンは誰もいない男子更衣室でアギラに対して小さく謝った。

 

「御免、アキ・・・多分俺は無茶をしないという約束を守れない。あの事故を見てる以上、俺に救える命があると思うと黙って見ていられなくなると思う・・・。頻繁に無茶をする事を許してくれ・・・アキ・・・。」

 

ジュンは鏡の前で呟くと完全に着替え終える。そして男子更衣室を後にして去って行った。

 

 

 

 

その夜、大阪にある液化ティーテリウムを管理、生産している工場で緊急事態が起こっていた。何と九州の液化ティーテリウムの工場を襲った怪獣と同じ怪獣が現れ、この場所を襲撃してきたのだ。警備員達の誘導で職員達が工場から逃げていく。

 

「こっちや‼︎こっちに逃げるんや‼︎」

 

警備員達の誘導で職員達が避難する中、怪獣のシルエットが灯りに照らされる。それは典型的な二足歩行型でありながら虫を思わせる頭部をしており、額には緑色の水晶体が付いている。そして腕に如何にも硬そうな鋏を備えたその怪獣の名は変異昆虫『シルドロン』。その名の通り、種類は不明だが昆虫が突然変異を起こして誕生した怪獣である。シルドロンは固い鋏状の腕でエネルギー貯蔵タンクの上側の一部を破壊する。

 

「ギシイイイイイイイイイイ‼︎」

 

エネルギータンクの上側を破損させたシルドロンは破損した箇所から見える液化ティーテリウムに口を付ける。実はシルドロンは高純度エネルギーを餌としている。そのため、新たに開発された液化ティーテリウムに目をつけ、工場を襲撃したのだ。九州の液化ティーテリウムの工場が襲撃されたのもこのためである。シルドロンはそのまま自身が満足するまで液化ティーテリウムを啜り続けていた。

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございま〜す‼︎」

「ピグモンさん、大変です‼︎大阪支部から緊急の連絡が入っています‼︎」

 

その日の翌日、GIRLS東京支部に出勤してきたトモミに職員の1人が慌てて駆け寄ってくる。トモミはただならぬ空気を感じて女性に問い掛ける。

 

「大阪支部から・・・ですか?一体何の連絡が・・・?」

「それが・・・大阪に怪獣が現れたらしくて・・・。」

「怪獣が⁉︎」

「それで東京支部にも一応、緊急事態に備えて欲しいと・・・。」

「分かりました‼︎電話、変わります‼︎・・・もしもし、GIRLS大阪支部ですか?私、東京支部の岡田トモミことピグモンです‼︎・・・はい・・・はい・・・。」

 

それから数時間後、1日の授業が終わった学生である大半のメンバーがGIRLS東京支部に集まった瞬間、全員に呼び出しが掛かる。呼び出された東京支部の主力メンバーは講義室に集まっていた。

 

「皆さん、集まっていただきありがとうございます。実は・・・大阪支部より重要な連絡が入りました。」

「大阪支部から?それってどんな?」

「それが・・・またまた本物の怪獣が出現したとの報告で・・・。」

 

ミカヅキの疑問に答えたトモミの回答で全員が目を見開く。すかさずアキが立ち上がって疑問を投げた。

 

「また怪獣が出現したんですか⁉︎」

「ええ・・・報告によれば昨日大阪に現れた怪獣は一昨日、九州の方にも現れたらしく・・・同一個体が北上しているとか・・・。」

「怪獣の種類の特定は済んでいるのデスか⁉︎」

「それがまだ・・・ただ怪獣がティーテリウムを狙って工場を襲撃している事は分かっています‼︎」

「ティーテリウムって何?」

 

ミカヅキの疑問にトモミはモニターに映像を起動する。映像にはティーテリウムについてまとめたプレゼンが写し出された。

 

「水の中に微量に含まれており、水がある限り無限に取り出せると最新の研究で分かったエネルギーです。非可燃性で爆発する恐れがなく、加工すればクリーンで安全な新エネルギーになるかもしれないと世界中で注目されています。日本では九州、大阪、東京に生産工場及び貯蔵施設が建てられています。」

「成る程・・・そのエネルギー施設の内、九州、大阪が襲撃されたって事か。」

「待って‼︎そのエネルギー施設は九州、大阪、東京にあるんだよね⁉︎って事は次に狙われるのは・・・。」

「はい、この東京に存在する生産工場及び貯蔵施設だと思われます‼︎そこでこのGIRLS東京支部にも声が掛かりました‼︎よって皆さん、出動して下さい‼︎」

『了解‼︎』

 

全員がトモミの声で気を引き締める。そして全員で講義室を後にして、有事に備えて外に飛び出していった。




実はシルドロン、設定によれば昆虫が突然変異して生まれた怪獣だそうです。
生物が突然変異した怪獣であれば地球怪獣でも怪獣娘世界に遠慮なく出せる事に加えてタガヌラーと同じ昆虫怪獣であり液状のエネルギーを食らうという共通点から丁度いいと考え、今回の登場怪獣にシルドロンを選びました。


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新型エネルギーを守れ‼︎(後編)

何とか年内に間に合いました・・・。年を明ける前で尚且つ放送終了前にプロトタイプを全て投稿出来て良かった・・・。


ジュンはウインダム、ミクラスと共に東京にあるティーテリウムの工場に来て工場長から話を聞いていた。工場長は3人にタブレットに写る怪獣に襲撃された工場を見せている。

 

「見てくれ、GIRLS諸君‼︎これが九州、これが大阪・・・どれも大規模な被害を受けている‼︎」

「うわぁ・・・かなり破壊されてますね・・・・・・。」

「この怪獣はどうやって神出鬼没に日本の各地に姿を見せているんでしょうか?」

「空を飛んでいるとしか考えられん‼︎いや、地中か‼︎・・・水中もあり得る‼︎」

「ティーテリウムを食べてお腹が膨れる物なの?」

「確かにあれ単体では何の変哲も無い物質だ。だがエネルギー融合を起こせ莫大な熱量を得ることが出来る‼︎」

「でも、それってまだ研究中なのでは・・・?」

「GIRLS諸君‼︎そこは考えるんだ‼︎相手は我々の常識が通用しない本物の怪獣なんだぞ‼︎」

 

東京のティーテリウム貯蔵工場にて工場長から話を聞いている間、ピグモンは既に襲撃された工場の写真を映し出して分析を行なっている。そして怪獣が写った写真をアップすると怪獣の部分を鮮明化し、その姿を露にして過去のデータと結び付ける。

 

「この怪獣は・・・過去のドキュメントに記録を確認しました‼︎」

「本当テスか、ピグモン⁉︎」

「はい、間違いありません‼︎この怪獣は・・・変異昆虫シルドロンです‼︎」

「シルドロン・・・過去のドキュメントに記録があったわ。過去にも高純度エネルギーを求めて暴れ回っているわね。」

 

ピグモンはシルドロンの画像を写し出してエレキングとキングジョーに見せる。そして今回起こる全ての事件と結び付けた。

 

「これで全て合点がいきました・・・シルドロンは餌である高純度エネルギーを求めてティーテリウムの貯蔵施設を襲っていたのですね。」

「このままティーテリウムを食べ続けたらエネルギー融合を起こすかもしれないわ。」

「そうデスね・・・下手に手出し出来なくなる前に何とか手を撃たなければ・・・。」

 

ピグモン達が結論を決めた時、いきなりサイレンが鳴り響く。異常事態が起こったと感じたピグモンはエレキング、キングジョーの2人を引き連れて司令室に入り、職員に何があったのか訊ねる。

 

「どうしました⁉︎」

「大変です‼︎ティーテリウムを貯蔵している生産兼貯蔵施設に怪獣が出現しました‼︎」

「直ちにモニターに映像を出して下サイ‼︎」

 

キングジョーの指示で映像を写し出すとそこにティーテリウムの貯蔵タンクに向かってくるシルドロンの姿があった。シルドロンの姿を見たピグモンは直ちに近くにいたミクラス達に連絡を取る。

 

「ミクミク、ウインウイン、ジュンジュン‼︎聞こえますか⁉︎」

『ピグモンさん‼︎』

「そちらに怪獣が出現しました‼︎種別も特定出来ています‼︎怪獣の名はシルドロンです‼︎」

『私達もソウルライザーに残っているデータから怪獣の種類を特定しました‼︎今、職員達を避難させているところです‼︎』

「それなら話は早いです‼︎応援としてアギアギ達を向かわせますのでそのまま全職員の避難に努めて下さい‼︎」

『了解‼︎』

「それと怪獣の体内温度も調べて下サイ‼︎もしエネルギー融合が起こって体内温度が上がっていたら更なる対処法を考えなければならなくなりマス‼︎」

 

キングジョーからの通信を聞いたウインダムは自身のソウルライザーでシルドロンを分析する。その横でジュンが職員達の避難誘導に回っており、ミクラスが工場長を下がらせようとする。

 

「皆さん‼︎逃げて下さい‼︎工場から出て安全な場所に‼︎」

「止めろおおおおお‼︎俺のタンクを壊すなああああああ‼︎」

「何してるんですか⁉︎逃げますよおじさん‼︎」

「何言ってるんだ‼︎離せGIRLSの怪獣娘君‼︎私にはこの工場を守る義務があるんだ‼︎放置など出来るものかあああああ‼︎」

「ギイイイイイイイイイイ‼︎」

 

シルドロンが真っ直ぐタンクに向かう中、ウインダムは怪獣の分析を終える。サーモグラフィーに写るシルドロンの体温は60℃と平均の体温だった。分析を終えるとサーモグラフィーを表示したままGIRLS東京支部にいるピグモン達に報告を挙げる。

 

「ピグモンさん、シルドロンの体内温度はまだ大丈夫です‼︎まだエネルギー融合は起こしていません‼︎」

『でしたら今の内に何とかする必要がありそうですね。・・・応援が来るまでの間、シルドロンを引き付けて貰えませんか⁉︎』

「・・・出来るだけの事はやってみます。ミクさん‼︎」

「へ?」

「シルドロンをタンクから遠ざけますよ‼︎」

「うん‼︎」

 

ウインダムとミクラスがシルドロンに向かって額からのレーザーと口からの熱線を放とうとした時、後ろからいきなりミサイルが飛んで来た。

 

「ミサイル⁉︎」

「何処から飛んで・・・あれは‼︎」

 

ウインダムが額のスコープで確認するとGGFの戦闘機がシルドロン目掛けて何発もミサイルを放っていた。それを見たウインダムはソウルライザーで再びピグモンに連絡を入れる。

 

「ピグモンさん‼︎再びGGFの戦闘機がミサイルを撃ってきました‼︎」

「え⁉︎GGF⁉︎」

「・・・それじゃあれが噂の・・・。」

「地球防衛軍かああああああああああ‼︎これまでまともに姿を見せて来なかったというのに今更になってええええぇぇぇぇ‼︎」

 

ミクラスがウインダムに向けて驚きの表情をする中、あらかたの避難誘導を終えたジュンが彼女達の隣に立つと双眼鏡で戦闘機を確認する。その横で叫ぶ工場長の前でGGFの戦闘機が放ったミサイルがシルドロンに着弾した。

 

「ギイイイイイイイイ‼︎」

 

シルドロンは後ろからの爆発と衝撃を受けて振り向くと自身に向かってミサイルを放つ戦闘機を確認する。GGFの戦闘機は再びシルドロンに向かって何発もミサイルが放たれるがシルドロンは額の水晶を点滅させるとミサイル攻撃を両腕で塞いだ。

 

「ミサイル攻撃を防いだ⁉︎」

「まさか・・・額の水晶を光らせて危険を予測しているのか⁉︎」

 

実は工場長の推察通りシルドロンは額の水晶を点滅させる事で敵の行動を予測する事が出来る。その能力で再びミサイルが来ると分かったシルドロンはビームすら跳ね返す装甲に覆われた両腕を攻撃から自身を守るように覆う。そしてミサイルが幾らか着弾するも両腕に命中したミサイルには殆ど効果が無かった。すると戦闘機は更にシルドロンにミサイルを放ち続ける。しかし、全てのミサイルがシルドロンに着弾する筈もなく幾らかはそのまま地面や建物、ましてエネルギータンクに着弾して大爆発を起こしてしまう。

 

「お、おい‼︎明らかにミサイルによる被害の方が酷くないか⁉︎」

「まさか火力だけでシルドロンを⁉︎」

「防衛軍の馬鹿野郎おおおおおおおおお‼︎ここにミサイルが来たらどうなるかくらい分かるだろおおおおおお‼︎」

 

工場長が怒りを露わにする中、流れ弾がウインダム達の後ろに着弾する。大きな大爆発が起こって4人は吹っ飛ばされる。

 

「「「「うわああああああああああああああああ⁉︎」」」」

 

衝撃で吹っ飛ばされた4人のうち、ミクラスとウインダムは壁に後頭部を大きくぶつけて気を失う。地面に転がったジュンは意識をとりもどすとあ頭から血を流している工場長を確認して彼を支える。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

「あ・・・ああ・・・。」

 

工場長に意識がある事を確認すると意識を失ったミクラス、ウインダムを見てどう動くべきか判断に悩む。すると空から赤いビキニ状の獣額に身を包んだ怪獣娘『マガジャッパ』を連れた青い翼の怪獣娘『マガバッサー』が降り立ってくる。

 

「皆さんお待たせしました‼︎・・・ってふえええ⁉︎」

「大分ヤバい事になってません⁉︎どうなってるんですかこれ⁉︎」

「GGFの流れ弾にやられて・・・な。」

「大丈夫ですか⁉︎兎に角すぐに安全な場所に」

「俺の事はいい‼︎それより民間人の工場長と気を失っている2人を頼めないか?」

「ええっ⁉︎で、でも・・・。」

「頼む‼︎俺は俺自身で何とかする‼︎」

 

マガバッサーとマガジャッパは顔を見合わせてどうするか悩む。数十秒間の沈黙が続くとお互い頷いてマガバッサーが気絶した2人を、マガジャッパが工場長を支える事となった。

 

「それじゃあ・・・わたし達はミクラスさん達を連れてここから行きますけど・・・。」

「本当に大丈夫なんですか⁉︎」

「大丈夫だ‼︎俺、悪運だけは自信あるからさ‼︎」

「・・・分かりました‼︎3人の事は任せて下さい‼︎」

「工場長、行きますよ。」

「あ・・・ああ・・・。」

 

マガコンビが3人を連れてここから去っていく。彼女達がミクラス達を連れて確かに脱出した事を確認したジュンはミサイル攻撃に巻き込まれて破壊されたタンクから溢れるティーテリウムをすするシルドロンに目を向ける。

 

「ヤバいな・・・空爆のせいでティーテリウムが溢れて怪獣の餌場になってる・・・。」

 

その時、ジュンの左腕にブレーザーブレスが具現化された。自身の左腕にブレーザーブレスが現れた事でジュンはやるべき事を理解する。

 

「ブレーザー、力を貸してくれるのか・・・?」

 

ジュンはポケットに忍ばせたブレーザーストーンを取り出してブレーザーブレスに装填する。そしてスイッチを押すとジュンの体は光に包まれてウルトラマンブレーザーの姿へと変わる。ティーテリウムを貪るシルドロンの前にいきなり光となって現れたブレーザーはその頭に拳を叩き込んだ。

 

「ルロオオオオオオイ‼︎」

「ギイイイイイイイイイ⁉︎」

 

眩しさと顔面に受けた拳に怯んだシルドロンは大きく後退する。自身から距離が離れたシルドロンを確認するとブレーザーは大きく構えて戦闘態勢に入った。

 

「なあジャッパ、あれって・・・。」

「ウルトラマン・・・ブレーザー・・・。」

「ギイイイイイイイイ‼︎」

 

シルドロンはブレーザーを敵と認識すると自身の右腕の鋏を差し向ける。ブレーザーはそれを避けてシルドロンの背中にチョップを浴びせた。シルドロンが怯んで前に動くとそのまま膝蹴りに入る。ブレーザーの膝蹴りが横腹に命中するとシルドロンは怯んで悲鳴を上げた。

 

「ギイイイイイイイイ‼︎」

 

ブレーザーはそのままシルドロンに向かって肘打ちで追撃を掛ける。しかし、シルドロンも体勢を立て直してブレーザーに正面を向けると額の水晶を点滅させ、両腕の装甲で肘打ちをガードする。

 

「ルロオオイ・・・カッテ、カッテェ・・・。」

 

シルドロンの装甲の固さに思わずブレーザーは肘を抑えて離れてしまう。その隙にシルドロンは再びエネルギータンクに向かっていくとティーテリウムをすすり始めた。

 

「‼︎・・・ルロオオイ‼︎」

 

ブレーザーが後ろからシルドロンにしがみつくと自力でエネルギータンクから引き離そうとする。シルドロンは自分にしがみついて食事の邪魔をしてくるブレーザーを鬱陶しく感じて体を振り回してブレーザーを振り解く。距離を引き離されたブレーザーが思わず蹴りを放つ。しかし、額の水晶でブレーザーの動きを読んだシルドロンは再び両腕で蹴りを弾く。再びブレーザーはシルドロンの装甲の固さに悶えた。

 

「カッテェ⁉︎カッテエェェェ・・・。」

「やっぱりあの装甲、凄く固いんだ・・・。」

「ああ、ウルトラマンが固そうに手や足を抑えている姿を見りゃよーく分かるぜ・・・。」

 

工場の職員達が集まった避難所にいたアギラとレッドキングは思わずブレーザーの様子について語り合う。ブレーザーが足を抑えている間にシルドロンは左腕の鋏でブレーザーを殴り付け、その体を吹っ飛ばす。

再びエネルギータンクからティーテリウムをすするのを再開した姿を見たメカニカルな獣殻に身を包んだキングジョーが再びソウルライザーにサーモグラフィーの画面を写してシルドロンを観測する。するとシルドロンの体温が少しずつ上がっていく姿が現れる。

 

「これはマズいデス。・・・体温が上がってきてイマス。」

「ええっ⁉︎それじゃあ・・・。」

「ハイ、シルドロンはエネルギー融合を起こすつもりデス。倒すなら今の内でないト‼︎」

「しっかりしろブレーザー‼︎」

「頑張ってウルトラマン‼︎その怪獣を倒すには今しかないんだよ‼︎」

 

アギラ達が声援を送る中、ブレーザーは再びシルドロンに挑んでいた。しかし、ブレーザーの拳や蹴りはいずれもシルドロンの装甲に弾かれており、その度に腕や足を痛みで抑えていた。

 

「カッテエ・・・ホントニカッテェェ・・・。」

「ギイイイイイイイイイイ‼︎」

 

シルドロンは食事の邪魔をするブレーザーを右腕の鋏で掴んで押さえ付けると左腕の鋏で何度も何度も殴り付ける。硬い装甲に覆われたその鋏の威力にブレーザーがダウンしかける中、何処からともなく火球が飛んできた。シルドロンは額の水晶を光らせて火球を防ぐ。

 

「思っていたより・・・硬いわね。」

 

空中に浮遊していた黒の獣殻に身を包み、額に黄色い結晶を備えた宇宙恐竜の怪獣娘『ゼットン』は呟くと再び額にエネルギーを集め始める。そしてエネルギーを溜めると再び火球を放った。シルドロンは相変わらず両腕の鋏でゼットンの火球を防ぐ。その瞬間をチャンスだと感じたブレーザーはシルドロンに飛び掛かる。そしてシルドロンの背後を取ったブレーザーは怪獣の両腕に手を伸ばした。

 

「ギイイイイ⁉︎」

 

シルドロンは思わずブレーザーを振り解こうとするがブレーザーが先に動いた。ブレーザーはシルドロンの両腕の装甲を掴むとそのまま力を込めて引っ張り始める。シルドロンはブレーザーが自身の装甲を引きちぎろうと考えている事を感じ、必死で振り解こうと体を激しく揺らす。しかし、ブレーザーもシルドロンが自身を振り解こうとしている事を感じて更に力を込めて引きちぎりにかかる。

 

「ルロオオオオオオオオイ‼︎」

「ギイイイイイイイイイイイイイイイイ‼︎」

 

ブレーザーが大きく叫びながら引っ張ったその時、遂に両腕の装甲が剥がされた。シルドロンは緑色の血液を両腕から飛び散らせながら大きな悲鳴を上げる。

装甲を無理矢理剥がされ、守る盾を失ったシルドロンを確認したブレーザーはスパイラルバレードを形成する。そして両腕の装甲を剥がされた痛みで未だに悶えるシルドロンに向かって突っ込み、その体にスパイラルバレードを突き刺した。光の槍が突き刺さったシルドロンは大きな大爆発を起こす。シルドロンを完全に倒した事を確認したブレーザーは祈りのポーズをするとそのまま飛び去っていった。

 

 

 

 

その翌日、頭に包帯を巻いたジュンは自身が通う高校に登校しながら隣を歩くアキに睨まれていた。ジュンは自身を睨むアキに疑問を抱いて訊ねた。

 

「どうしたんだよ、そんなに睨んで。」

「ミクちゃんとウインちゃんから聞いたよ。2人と工場長さんを逃す為に危険な現場に残ったって・・・。」

「仕方ねえだろ・・・あの状況だったら真っ先な脱出させなきゃいけないのはあの3人なんだから。」

 

アキはその言葉を聞いて黙り込む。彼女は立ち止まって沈黙し、数秒後にジュンに向き合って再び口を開いた。

 

「うん・・・確かにジュンのした事は間違いじゃない。けど、忘れないで欲しいんだ。」

「あ?」

「ジュンはGIRLSの一員になったんだよ。だから・・・もしもの時はボク達の仲間を頼って。そして1人で突っ走って無茶な真似だけはしないで。」

「・・・アキ・・・分かった。」

「分かってくれたらそれでいいよ・・・じゃあ学校行こうか。」

「ああ・・・。」

 

アキが先に前を向いて歩き始めるとジュンはポケットに入れたブレーザーストーンを握り締める。そしてアキの言葉を思い起こしながらウルトラマンとして戦う自分の事を考えていた。

 

(アキ・・・俺は・・・。)

「ジュン、何してるの?遅刻しちゃうよ。」

「ああ、悪い‼︎今行く‼︎」

 

ジュンはアキの言葉を聞くと彼女に向かって走り出す。そしてアキの隣に並び立つと一緒に学校に向かって歩いていった。




これにて怪獣娘×ブレーザーの読み切り版は以上となります。
本格連載にはかなり時間が掛かりますが必ず連載する予定です。また連載する際、原作とは違う怪獣だらけになる事になるとは思いますが怪獣娘の世界の設定上、どうかご理解下さい。


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