このポーション屋に祝福を! (霜降り )
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第一話

まぁ、適当に書いた作品なんで適当に読んでいただければ


馬車に揺られながら思い返す。

この世界にきて十数年くらいだろうか……流石にこれほど時間が経つとキャベツが空を飛んだり、サンマが畑に生えたりと意味不明なこの素晴らしい世界にも新しい体にもある程度慣れてくる。

 

と言っても未だ慣れないこともあって例えば自分の生まれた村の風習というか雰囲気とかは未だに慣れることができない。

いやむしろ慣れたくない。

なんというか慣れてしまったら戻れない気がしてしまうのだ。

お蔭様でいつも村では変わり者扱いで居心地が悪い、いやまぁ変わり者というのは事実なのだけれども。

なぜなら、魔法が得意な種族でポーションを研究してるのだから。

これで変わり者扱いされないほうが珍しいって話だ。

 

 

 

何もない平地に整備された道を狭い馬車にガタゴト揺られながら進む。

 

そろそろアクセルか、ここまでたどり着くまでが大変だった……特にあのアクシズ教団とかいう頭のおかしい奴らに追われたせいで。

何なのだアイツらは、クソみたいな演技をして口を開けばアクシズ教に入れ!入れ!と五月蝿いし店にいってもアクシズ教の勧誘ばっか、あれならうちの村の奴らのほうがまだマシだぞ。

温泉が有名と聞いて疲れを取るためにちょっと寄り道しようなんて思うんじゃなかった、むしろ疲れてしまった。

馬車に入ってる他の冒険者だと思われる3人を見てみるとみんなやつれた顔をしていて、一番屈強な男は何かをずっと呟いているし、エリス教徒と思われる女性はずっとエリス様、エリス様、と呟いている。

おそらくリーダーだと思われる男は特に呟いているわけでもないがえげつないレベルで震えている。

きっと彼らも同じ目にあったのだろう、いやこの感じ私以上の何かがあったのかもしれない。

馬車の御者はもうこの光景に見慣れているのか何もツッコまない。

 

「お客さん!そろそろアクセルに着きますよ!荷造りしておいてくださいね!」

 

やっとか……

他の三人も同じ気持ちだったようで、まるで女神に救われたような表情をしている。

と思ったらさっきからエリス様エリス様と連呼していた女性が

 

「エリス様、私達をお救い下さりありがとうございます!この御恩は私の体を捨ててでもお返しします……まずはあの憎きアクシズ教を……」

 

目に殺意を満たしながら、なんか怖いことを言い始めた。

この世界の宗教にまともなものはないのか?

 

馬車の御者は何もツッコまず真顔で馬を進めていくし、他のパーティメンバーは女性の暴走をとめないし馬車はカオスな状態でアクセルの門を通った。

 

 

 

アクセルという街は周辺に弱いモンスターしか生息していないため冒険者の卵が集まる街である。

どんなに強い冒険者も初めここから始めるそんな街だ。

 

で何故アクセルに私が来たのかというと、単純に金稼ぎだ。

今まで自分が作ったポーションを自分の住んでた里に来た人に売ってたのだが、それが結構売れたのだ。

買ってくれた人に理由を聞くと、どうやら品質に対してものすごく安いらしい。

王都でのポーションの相場を聞いたが高すぎて驚いたものだ。

ならばこのポーションを人がたくさんいるところで売ればそりゃあバカみたいに売れるだろう、それをしない手もない。

だがここでこう思った人もいるだろう、ならアクセルじゃなくて王都に行くべしではと。

私も最初は王都で売ろうかと思っていた。

しかし、王都で今までの相場をぶっ壊すレベルの値段でポーションを売ってしまったら?

王都のポーション屋の客を奪ってしまうことになり大喧嘩になる気がするのだ。

というかなるだろう。

 

だがアクセルならどうだ。

アクセルにポーション屋はほとんど存在しない。

何故なら駆け出しの冒険者がポーションたくさん買えるほどの金を持ってないから、誰もポーション屋なんてせず、雑貨屋などにおいてあることがあるくらいだ。

でも私のポーションは安さが売りだ、駆け出しの冒険者でも買えるような値段には、ちょっと品質を落とす必要があるが……全然できる。

 

と言っても店を建てられるほど金もないし店をを建てたら建てたで管理がめんどくさいので店を建てるつもりはない。

そこらの雑貨屋でもなんでもいい、そこに売ってもらうように頼むつもりだ。

 

 

 

馬車が止まり、ようやくアクセルの街の地面に足の裏をつける。

まずは宿探しかな、アクセルに住む予定だから家を買うまでの拠点がほしい。

アクセルに来ている同級生が二人いるが流石にアポなしで泊めてもらうのはアレだろう。

幸い金は村にいたときポーションを売ったお金と、親から貰ったお金でかなり余裕がある。

でも節約できるとこでは節約したいし、できれば安い宿に泊まりたい、とりあえず歩き回って安いところを探そう。

 

 

 

よさげな宿が見つかったのは太陽が沈むくらいの時間だった。

予想以上に時間がかかってしまった……アクセルの街に宿屋がまさかここまで多いとは。

変に選り好みするんじゃなかった。

流石にこの時間からポーションを売ってくれと店に言うのはやめたほうがいいか……

だが流石に寝るには早いしな……どうしたものか……あ、そういえば冒険者ギルド行かないといけないんだった。

 

冒険者ギルドに行く理由はポーションの素材集めのために冒険者になる必要があるからだ。

いや、別に素材を採るだけなら冒険者になる必要はないのだけれども。

ある程度のポーションの素材なら売ってはいるのだが、レアなものや普通素材にならないものは売ってないことが多く、自分で採らなければならない、だが盾や剣の至近距離で戦える奴らと違って遠距離の魔法専門の私でソロプレイというのは流石に厳しいものがある。

そうなってくると素材集めもできない。

だから仲間が欲しい、俗に言うパーティーメンバーだ。

まぁ、パーティーに入ってしまうと行動が制限されそうなので、いろんなところをサポート的な感じで転々とするつもりだが。

そうするためには冒険者になる必要があるだろう、いくら私がちょっと有名な種族だからって冒険者じゃないやつを入れたがるパーティはいないだろうし。

 

私の本職は冒険者ではなくポーション屋だしな。

 

 

 

冒険者ギルドにつくと時間的にそうなのか宴会のような騒ぎだった。

あたりを見回すと男たちと飲んですでにベロンベロンのやつから、セクハラしてるやつまで、全体的にやばいやつばっかだが、かなりの騒がしさだ。

 

そんななか端っこにポツンと座って一人でトランプタワーを作ってる見てるだけで悲しくなる同級生を見つけてしまい私はため息を吐いてしまう。

 

同級生の目の前に近づくが、トランプタワーを建てるのに集中してるのかなかなか気づかない。

 

うん、とりあえず崩すか。

 

トランプタワーの横に手を持っていき、手を思いっきり横に振る。

 

それだけで紙の脆いタワーは崩れ落ちる。

急に倒れたタワーを見てようやく気づいたのか同級生が顔をあげた、その顔は文句を言いたそうな顔をしている。

 

「ちょっ!めぐみん崩…さ……え?ふらすこ?え?」

「やぁ、ゆんゆん相変わらずのようで安心……してはいけないのかね?この場合」

「ええええええ!?」

 

うるさいな、周りからの視線が痛いから早く黙れ。

 

「な、なんでアクセルに居るのよ!年中引きこもってポーション作ってるくせに!」

「うんうん、無意識で毒を吐くのも相変わらずみたいだね」

 

同級生……ゆんゆんの反対の席に座る。

どうやら彼女は私がアクセルにいるのがとても意外らしい。

 

「いやー、紅魔の里らへんの素材で作れるポーションなくなっちゃったから新しい素材が欲しくてね、あと金」

「お金って……ふらすこらしいっちゃらしいけど……でもならなんで冒険者ギルドにいるのよ?」

「素材採るのに冒険者だと便利だろう?それに一人だと危ないところもパーティ組めるようになるしね」

「なるほど……あ、なら、私とパーティを「遠慮しておくよ、アークウィザード二人は流石に偏り過ぎだろう?それにゆんゆんだって他のパーティ入ってるだろう?」

「う……そのパーティは……」

 

ゆんゆんが答えを濁す。

ま、まさかこいつ、さっき冗談で変わってないって言ったのだが本当に変わってないのか?

ゆんゆんはアクセルに来る前……紅魔の里にいたころからともかく一人だった。

自分と同じで感性がまともなのが原因らしい……多分他のとこもあるが。

アクセルに来てちょっとは治ってると思ったのだがな。

 

「はぁ……まだ治らないのかそのぼっち癖は、アークウィザードなんだから一回くらい勧誘されたことがあるんじゃないか?」

「その……されたことはあるんだけど、どうしたらいいのかわからなくって……」

 

それを聞いてもう一度ため息を吐いてしまう。

そんなんだから友達もできないんだろう。

もうこの話はやめよう、多分一生治ることはないのだろうし。

 

「そういえば、めぐみんのやつはどうした?あいつもアクセルにいるんだろう?」

「めぐみん?めぐみんは今日は見てないから、多分家でゴロゴロしてると思うけど」

「おい、まるで人をヒキニートのように言うのはやめてもらおうか」

「ひぅっ!」

 

ゆんゆんの後ろから突然もう一人の同級生めぐみんが現れる。

急に隣から話しかけられ横を向くとちょうど探していたやつがいた。

 

「やぁ、久しぶりだね、めぐみん」

「ええ、久しぶりです、ふらすこ、アクセルには何のようで来たんですか?」

「ポーションを売りに来た」

「そうですか、あなたのポーションはいい性能ですし、ここならバカ売れ間違いなしですよ」

「おお、めぐみんに褒めてもらえるとは光栄だね」

「ところでですね……爆裂魔法強化のポーションはどうなりました?」

「ああ、結構大変だったが作れたと思うよ」

 

バッグからピンクの液体が入った一本の試験管を取り出す

それを見るとめぐみんは目を輝かせて素早く私の手からそれを奪い取る。

 

「ちょっとまって!爆裂魔法強化のポーションってなんの話!?」

「流石に使えるやつがいないから試せてはいないが……理論上は効果があるはずだ」

「おお!ありがとうございます!今日はもう魔力切れで撃てないですが……これは明日が楽しみです!」

「無視しないで!」

 

ちょっと無視しただけなのにゆんゆんがかなり怒ってる

可哀想だし話してやるか。

 

「なんだいゆんゆん?」

「爆裂魔法強化のポーションってどういうことよ!今でさえ毎日騒音と地鳴りの文句があるのよ?そんなもの強化したら……」

「騒音と地鳴り?どういうことだ?」

「めぐみんが一日一回は爆裂魔法を撃たないと死ぬって言って、毎日毎日爆裂魔法を撃ってるからその余波がアクセルの街にきてるのよ!」

 

確かに爆裂魔法ほどの威力のある魔法なら街まで余波がきてもおかしくないか、なるほどね、じゃあこれもあげとくか。

白衣の裏側に仕込んでいる今度は緑色の液体が入った試験管を取り出す。

 

「めぐみん、これも試作品なんだがすべての魔法の威力を上げるポーションだ。もらってくれ」

「おお!これならさらに爆裂魔法の火力を上げることができます!感謝しますよ!ふらすこ!」

「何してんのよぉぉぉぉおお!」

「まぁまぁ、落ち着くんだゆんゆん、今渡したやつは1.1倍程度しか威力上がらないし」

「それでもよ!私同じ紅魔族だからってめぐみんを止めてくれって言われたんだからね!?お願いだからやめて!」

「それは無理ですね、私は一日一回爆裂魔法を撃たないと死んでしまいます」

「じゃあせめて!せめてよ!ポーションは飲まないで!」

「それも無理な話です、全力で撃たなかったらそれは爆裂魔法じゃないので」

「やめとけ、ゆんゆん多分いくら言っても無駄だぞ」

 

めぐみんの爆裂魔法愛はゆんゆんのぼっち癖と同レベルだし一生治らないのだろう。

 

「じゃあ、私は今日受けたクエストの報酬をもらわないといけないのでここらへんで」

「そうか、明日の爆裂魔法楽しみにしてるぞ」

「ええ!期待しておいてください!」

「だからやめてぇぇぇぇぇぇぇえ!!」

 

 

 

「はぁ、もうやだ……」

 

私とめぐみんの対応で疲れたのかゆんゆんは机に倒れ伏して、弱音を吐く。

 

「ため息を吐くと幸せが逃げるぞ」

「誰のせいだと……もう」

「じゃ、私は冒険者登録してくるから、じゃあね」

 

それにゆんゆんは答えない、どうやら答える気力すらないらしい。

奥の方にあるカウンターに向かい金髪の女性に話しかける。

 

「冒険者登録ってできますか?」

「冒険者志望の方ですね、では手数料として千エリスいただきますね」

 

バッグから財布を取り出す千エリスを渡す。

 

「ありがとうございます。ではこちらに必要事項を記入してください」

 

そう言われて書類とペンを渡される、どうやら名前などを書かないといけないらしい。

すらすらと名前から生年月日まで書いていく。

 

「はい、できました」

「えっと、ふらすこ……?様もしかして紅魔族ですかね?」

「そうだよ、目の色は魔法で変えてるからわからないでしょ」

「なるほど、じゃあもしかしてめぐみん様やゆんゆん様とは……」

「うん、学校の同級生」

「そうでしたか……これ以上問題児が増えないといいんだけど……」

「なにか言ったかい?」

 

聞こえてた上でこういうこと言うから性格悪いってよく言われるんだろうか?

ま、確かに紅魔族に問題児じゃないやつのほうが少ないのは事実だけど。

 

「い、いえ、なんでもありません。紅魔族なら冒険者カードは大丈夫ですか?」

「いや、お願いするよ。アクセルにくる道中で失くしちゃってね」

 

本当はポーションで溶かしちゃったのだがそれは黙っておく。

 

「わかりました。ではこちらに水晶に触れてください」

 

金髪の女性が水晶を手で指す。

これはステータスがわかる水晶だ、多分大体の人はこれのステータス次第で職業を決めるのだろう

水晶に手をかざす。

 

「ふらすこ様は、やはり魔力が高いみたいですね。この数値なら最初からアークウィザードになれますよ」

「だろうね、アークウィザードでお願いするよ」

「わかりました」

 

そういうと、金髪の女性は冒険者カードを何回かタッチする。

 

「はい!職業登録完了しました!これでこれからふらすこ様は冒険者の一員です!」

 

金髪の女性から自分の名前の書いてある。冒険者カードを受け取る。

 

これで、私の冒険者生活が始まるわけだ。

本職はポーション屋だが。

 




ちなみに時系列的には4巻のリザードランナーあたりです(めぐみんはちょうど報告にきた)

タイミング的にカズマと関わるの遅くなりそう()


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第二話

ゆんゆんがいじめられる話


昨日私の輝かしい冒険者生活は始まったのだが正直すぐに冒険に行く予定はない。

何故なら行く意味がないからだ。私が冒険者になった理由はポーションの素材集めのためなのだが、今は作るポーションどころかポーションを作る場所さえない。

こんな状態でポーションの素材を採りに行ったところで、バッグのこやしになるだけだ。

一応宿屋でポーション作りはできるのだが……まぁ汚れるし、危ないからな。

というわけで今日は家探しである。

できることなら隠れた地下室があるような場所がよい、私の作ってるポーションはグレーゾーンというか普通にアウトだらけだからな。

 

 

 

 

「お客さん、ここでよろしいですかね?」

「ああ、ここで頼む」

 

結果から言うとだいぶ早く家は見つかった。

というより地下室がある家が一個しかなかった。

案外地下室のある家とはめずらしいらしい。

里じゃ地下室がある家がたくさんあったから勘違いしてしまった。

にしても何故あの里にはあんな地下室があったのだろうか?

一回理由は聞いたことはあるがかっこいいからとか言われて誤魔化されたんだよな…

塹壕みたいに使ったりするのだろうか。

 

「ではお金のほうはまた後日お願いしますね」

「ああ、分かった」

 

にしても一個しかなかった家がなかなかいい家で良かった。

広いし、地下どころか2階までついてる、しかも家具も備え付き。

問題があるとしたらこの家がお店とくっついてるタイプということか。

 

ポーション店はするつもりなかったのだが……これならもう店だしてしまった方が手っ取り早いかもしれん。

と言ってもここ店としては凄まじく立地が悪いんだよな。隣に墓地あるし……お蔭でめちゃくちゃ安かったが……やはりポーションは他の店で売ったほうがいい。か?

 

あ、そうだ。

汎用性の高いポーションは他の店に売ってもらって使用率の低い、言い方を悪くすれば使いみちのないポーションとかはこちらで売るか。

案外使いみちのないポーションも欲しがる人がいるからな。

そうなると店の用意も必要か、今日は時間もあるし店用のものとかポーション作成に必要な物を探すか。

 

 

 

 

「あ、あの、なんで私は連行されてるの?」

 

店用のものとポーション作成に必要な物を買うことに決めた私はギルドで今度はトランプで一人スピードをしていた可哀想なゆんゆんを連れて商店街に来ていた。

 

「たくさん買うつもりだから荷物持ちが欲しくてね」

「荷物持ちって男の仕事じゃ……」

「まだこの街にきて2日しかたってないのに男の知り合いとかいないよ、それともゆんゆんが誰か紹介してくれるかい?」

 

まぁぼっちのゆんゆんに男の友達なんているわけ無いと思うが。

 

「そ、そのいるにはいるんだけど……」

「えっ!?」

「な、なんで、そんな驚くのよ!そのめぐみんのパーティメンバーでカズマさんっていう「いや、やめておこう、めぐみんと一緒のパーティメンバーとか嫌な予感がするし」

 

あんな爆裂魔と一緒のパーティになれるやつなんてロクなやつじゃない、私の本能がそう言っている。

 

「そ、そう……でも私が荷物持ちって」

「ごめんねゆんゆん、友達からのお願いだよ」

「わかった!友達だもんね!荷物持ちでもなんでも頼んで!」

 

チョロい、こいついつか悪い男に騙されたりしそうだな

いや、もしかしたらめぐみんのパーティメンバーのカズマってやつにもう騙されてるのかも……

 

「でも買い物って何を買うの?ふらすこのことだからポーションを作るための物持ってきてそうだけど」

「もちろん持ってけるものは持ってきてるけど、デリケートで持ち運べない物とかがあるんだよね、あと自作のちょっとやばいやつもあるしねー」

「へー、って最後なんて言った!?」

「まーまー、バレても怒られる程度のものだから安心しなって、あと他にも欲しいのがあるんだよねぇ」

「怒られる程度って……大丈夫なのよね?で、欲しいものってなんなの?」

「店、結局開くことにしたんだよね。だからそれ用の棚とか欲しくてさ」

「店?その……大丈夫?」

「なんというか凄まじく失礼だね」

 

まるで私が店を経営できないみたいに言いやがって。

 

「だって!ふらすこ紅魔の里に来た人に気持ちよくなれるポーションとか媚薬とか色々やばいもの売りつけてたじゃん!」

 

ああ、確かにそんなことあったな。

女を囲ませてるムカつくいけ好かない冒険者がいたからムカついて媚薬と避妊薬と前世だったら一発アウトの薬売りつけたんだった。

確かぶん投げられた記憶がある。

 

「ま、多分大丈夫だよ、気持ちよくなれるポーションは売るつもりないし、ていうか売ったら捕まっちゃうし」

「まって!捕まっちゃうってどういうこと!あれそんなやばいやつだったの!?」

「さーて、いい棚はないかなー」

「誤魔化さないで!」

 

 

 

 

「お、重い……」

「ゆんゆん……?流石にそれを持つのは無理があると思うんだけど……」

 

買い物を済ませた帰り道、ゆんゆんが棚を持ち上げようとする、だが持ち上がらない。

確かに小さめな棚だがアークウィザードが持ち運ぶには無理があるだろう。

何故ゆんゆんがこれを持とうとしてるのかというと。

 

私が冗談で誰かこの重い棚持ってくれる友達いないかなぁとゆんゆんの方をチラチラ見ながら言ったからである。

 

まさか友達のためにここまでするとは、ゆんゆんに友達ができない原因の一つがわかった気がする、重いんだよこいつ。

 

「はぁ、もういいや、私が持ってくからゆんゆんはこっち持って」

 

私が持っていた小物とかが入った袋をゆんゆんに渡す。

 

「え?あ、うん、でもふらすこ持てるの?」

「いーや、持てない、だからこれを使う」

 

白衣の裏側から一本ポーションを取り出して飲み干す。

そして棚を片手で持ち上げる。

 

「そんな便利なものがあるなら最初から出しなさいよ!」

「仕方ないだろう、これポーションに体が慣れてない人が飲むと危ないんだよ、強力なやつだから」

 

流石にここまで筋力を上げるポーションを副作用なしにすることはできなかったのだ。

なのでこれは日頃からポーションを飲んでるようなやつ以外が使うと下手すりゃ死ぬポーションである。

 

「それ実質ふらすこ用ってことじゃ……」

「そうだね、これで副作用がなかったらボロ儲けできるんだけどねー」

 

一応効力を抑えれば副作用をなくすことができるのだが正直そこまで落とすと、飲む必要ある?ってレベルになってしまうし。

 

「そんなことしなくても、ふらすこは回復ポーションだけでボロ儲けできるでしょ……」

「ま、そうだけどね。あ、あそこだよ」

 

会話の途中で新しい家が見えてきたので指を差してゆんゆんに伝える。

 

「これ家じゃなくて店じゃない?」

「店と家が合体してるタイプ」

「ああ、じゃあここでポーション屋するの?」

「そのつもりだよ、立地は最悪だがね」

「確かに墓地の隣だもんねぇ、それでもあの回復ポーション売ったら満員になるんじゃない?」

「んー、だから汎用性の高いポーションは他のお店にも売ってもらって、こっちで変なポーション売ろうかなって」

「変なポーションって言い方……確かに変なポーションたくさん作ってたけどさ、ていうかそれ売れるの?」

「売れるよ?何故かそういうの欲しがる人いるからね」

 

コレクター精神とかとてつもなく特定の状況で使えたりするからと買う人が実はいたりするのだ。

特定の状況がどんな状況か聞いてはいけない。

 

「何よそれ……」

 

知らない、思い出したくない。

 

「ホントに何だったの!?」

 

 

 

 

買ってきた荷物を部屋に置いた私達は、3時になって今更昼ご飯を食べてないことに気づきギルドに来ていた。

 

「ねぇ、なんかオススメのものある?」

「オススメ?カエルの唐揚げとか?」

 

カエルの唐揚げ……?美味しいのかそれは?気になるし頼んでみるか、日本にいた頃カエルは鶏肉みたいな感じと噂で聞いたが本当なのだろうか?

職員……いや店員か?にカエルの唐揚げと酒を注文する。

それに合わせてゆんゆんはサラダを頼む。

 

「相変わらず酒好きなのね……こんな時間から飲んで平気なの?」

「いいじゃないか、この味知ったらやめられないね、酔えないのが残念だけど」

 

私は前世から酒が好きだったこともあってこの世界の酒も思いっきりハマった、それはもうこの世界が酒に対してゆるいのもあってハマった。

悔やまれるのはポーションを飲みすぎてしまったせいで薬物耐性がついてしまって全く酔えないことか。

なので悲しいかな私にとって酒はジュースとほぼ同じである、雰囲気で酔うしかない。

 

「ゆんゆんも飲むかい?」

「流石にこんな時間から飲みたくないわよ……」

「ゆんゆんは真面目だねぇ」

 

ゆんゆんも飲んでもらわないと人の目が気になって飲みにくくなっちゃうんだが、まぁ飲むが。

 

「人の目を気にする質でもないでしょ」

「言っとくけど私くらいが普通だよ、むしろゆんゆんが気にしすぎ、紅魔族のくせに」

 

紅魔族に人の目を気にするやつなんて殆ど、というかゆんゆん以外いないからな。

みんなむしろ自分を見てくれって思ってるバカばっかだ。

 

「はぁ……どうしたらみんなみたいに人の目を気にしなくなれるんだろう……」

「まずは紅魔族をやめることをオススメするよ」

「どうやってやめるのよ!」

「はい、これ人間をやめるポーション」

「ふらすこと話してると冗談が冗談にならない……うぅ」

 

私がバッグから取り出したポーションを見てゆんゆんが死んだように頭を机に下ろす。

 

「いらないのかい?」

「そもそも何なのよ、そのポーション」

「これはね、猫の細胞を人間に適応させるポーション」

「細胞……?適応……?どういうこと?」

「わかりやすく言うと猫耳と尻尾が生えてくる」

「本当に何なのよそのポーション……」

 

こんなんでも里に来た人の3割くらいが買ってくれた人気商品だったりするのだがな。

 

「何に使ってるのよ……?」

「いたずら用と、あとは……ゆんゆんは知るべきじゃないかな」

「そっか」

 

どうやらゆんゆんはこれ以上聞いたら駄目だと勘付いたみたいだ、何も聞いてこなかった。

 

「ま、これは今度めぐみんにでも投げつけておくとして」

 

ツンデレなあいつならさぞかし似合うだろう……想像するだけで笑える。

 

「めぐみん絶対怒るわよ」

「だからこそ、ね?」

「どうなっても知らないわよ……」

 

ま、最悪爆裂魔法の強化ポーションあげないって言ったらあいつ黙るだろうし平気だろ。

さてめぐみんにどのタイミングで投げつけるか……できれば冒険者ギルドで投げつけたいな……ここの雰囲気的に面白いことになるのが目に見えている。

そんな計画を頭の中で考えてると酒とカエルの唐揚げとサラダが運ばれてくる。

ほー、これがカエルの唐揚げ、見た目は普通の唐揚げみたいだけど。

 

レモンをかけずに唐揚げを口に運ぶ、ふむ、うん、これは鳥だな、先にカエルと言われなかったら勘違いしてしまうかもしれない。

結構うまいし、酒のつまみにもいいな、オススメなだけはある。

 

「そういえば、少し気になったんだがめぐみんのパーティメンバーってどんな人なんだ?」

 

さっきは嫌な予感がしたから聞かなかったが、まぁ知っといたほうがいいだろう。

 

「えっと……まずパーティリーダーがさっき言ったカズマさん職業は冒険者、それとダクネスさん、職業はクルセイダー、最後はアクアさん、職業はアークプリースト」

 

ほー、結構いいパーティじゃないか、バランスもいいし、上級職もいる。最弱と言われてる冒険者が気になるが。

 

「で、問題点は?」

「なんで問題ある前提なのよ……」

 

だって、めぐみんと同じパーティだろ?まともな感性をしていれば一日で逃げ出すだろう。

 

「ふらすこはめぐみんをなんだと思ってるのよ!問題なんて……ない……わよ」

「ゆんゆん、アドバイスだ。友達と話すときは目を合わせたほうがいいぞ、なぁ?おい?」




どうでもいいですけど主人公の名前もとはボツ案だったんですよねぇ(安直すぎるから)

でもこれ以上しっくりくる名前もなかったんでこれになりました()


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第三話

感想、誤字報告、評価、お気に入りありがとうございます。

今回はバニル回です


「うぅ、朝か……」

 

窓から差し込んだ日光で目を覚ます。

一回あくびをしてからベットからでる、正直なとこまだ眠い。

ベットの横に置いておいたゴムで髪を結びながら洗面台までいく。

 

「クリエイト・ウォーター」

 

水を魔法でだして顔を洗う。やはりこういうときに初級魔法は便利だ。

顔を上げると、そこには腰まで届くほどの黒髪のポニーテールで目の色は奇麗な黄色だが、その下にはくまがある、なんというか不気味な少女が不機嫌な表情でいた。

ポーション作るために昨日夜ふかししすぎたか……

目も覚めたので早いとこ朝ごはんを食べて売り込みに行こう。

くまもとらないとな、このままじゃ悪魔と勘違いされかねん。

 

 

 

「ふぅ、結構いい感じだな」

 

大きなリュックを持って商店街を歩きながら呟く。

 

ようやく準備が整ったので今日からポーションの売り込みを始めることにしたのだがありがたいことに今のところ2店に売り込んで買ってもらうことに成功した。

正直ここまでうまくいくとは思わなかったのだがな……こんな安いポーション疑われて当然だと思ってたから、ちょっとずつ信用を得ようとしてたのだがな。

 

この調子ならなかなかの売上を得られるだろう、さて次の店に行こう。

 

 

 

 

「ここか……」

 

地図を見ながら歩くこと10分くらい、「ウィズ魔道具店」というらしい店についた。

次はここで売り込みか、買ってくれるといいのだがな。

少し緊張しながらドアノブに手をかけてドアを開ける。

 

「ごめんくださーい」

「フハハハ、よく来たな薬中女よ!今我輩は、あのポンコツ店主を追い出せて機嫌がいいのだ!さぁ、早速商談といこうか!」

 

閉めた。

 

 

 

「おっと、帰るのにはまだ早いぞ、吾輩の見通す目によると貴様とはなかなか良い関係になれるのでな」

 

仮面の男が閉めようとしたドアに足を引っ掛けて閉められないようにしてきた。

……これを私がされるか……普通売り込みに来たほうがするものだと思うのだがな。

 

「仮面の不審者と良い関係になどなりたくない、帰らせていただく」

「むぅ、ならば仕方ない貴様のその魂の秘密について貴様の友人……頭のおかしい爆裂娘とかに話すしかないな」

 

仮面の男が言った言葉を聞いてドアを閉めようとした手を止める。

何故こいつは私の秘密を知っている……?

 

「ふむ、商談することを決めたようだな、なら早く入ってくるのだ」

 

どうやらこいつと商談するしかないようだ、私は舌打ちをしてウィズ魔道具店の中に入った。

 

 

 

「では早速商談へ入ろうか、貴様のポーションを見せてもらおう」

「おい、その前に色々聞きたいことがあるのだが?」

 

私の秘密もそうだが、何故ポーションについて知っている、話した覚えはないのだが。

 

「落ち着け、我輩の目については後で話してやろう。それよりも貴様のポーションを見せてもらおうか」

 

くそ、ムカつくが秘密を握られてるかぎり、こちらが不利だ、従うしかない。

舌打ちをしながらバックから回復ポーションを取りだして、仮面の男に投げつける。

仮面の男はそれを難なくキャッチしポーションを確認する。

 

「ほぅ、確かに良いポーションだな、それではこいつをいくらで買い取るかの話だが」

 

仮面の男が仮面の下にニィーッと悪い笑みを浮かべる。

クソが、そういうことか。

 

「脅しと商談は違うぞ、もう少し勉強したらどうだ?それで何割だ?」

「ふーむ、貴様とは関係を持っておきたいし、5割でどうだ?」

 

5割……マシなほうか……どうやら本気で関係を保ちたいらしい。

こちらとしては二度と会いたくないのだがな。

 

「わかった、5割でいい、それじゃ貴様についていい加減教えてもらおうか」

「まぁいいだろう、我輩は地獄の公爵バニル、魔王より強いかもしれないバニルさんである」

 

魔王よりも強いかもしれない地獄の公爵ねぇ、なんでそんな上級悪魔がこんなところにいるんだか。

もう関わりたくないし帰るか、他の店にも売り込んでおきたい、そうと決めたら早く帰ろう、バニルとかいうやつに背中を向けてドアノブに手をかける。

 

「商談は終わりだな、後日ポーションは送りつける」

「おっと、まだ終わりではないぞ、貴様のポーションまだいいものがたくさんあるだろう?」

 

本当になんでこいつはわかるんだ、イライラしてきた。

 

「フハハハ、その悪感情美味である!我輩の見通す目にかかれば貴様の未来過去今考えてることすべてお見通しである!例えば貴様が帰ったらナニをしようとしてるか、とかな?」

「帰っていいか?」

 

こいつと話してると秘密も恥ずかしいこともバレて金を巻き上げられる予感がする、秘密とか脅しとか無視して逃げるべしかもしれん。

 

「おっと逃げるのはやめてもらおう、さっき言った通り貴様とは良い関係を結びたいのだ、我輩としてはな」

「貴様と良い関係などお断りだ、そもそも私のポーションで生産が安定してるもので需要があるものはほとんどない」

「いいや、あるだろう?貴様のポーションで生産が安定していてなおかつ需要があるものが」

 

まさか"アレ"のことか?チッ、やはりこいつに隠し事は無理らしい。

バックから一つポーション……いやムカつくし聖水を取り出し、蓋を開け、これもまたバニルに投げつける。

だがバニルは避けるどころかさっきみたいにキャッチした。それも聖水を一滴もこぼさずに。

 

「おっと、急に聖水を投げつけるではない、まぁ、我輩には効かないがな!」

 

いちいち人を煽るような口調しやがって。

今度はバックからちゃんとポーションを取り出してバニルにぶん投げる。

それを二本指でキャッチしたバニルはさっきと同じようにポーションを確認する。

 

「ふむ、これもなかなかいい性能をしている、変態の多いこの街ならよく売れるだろう、これも5割でいいな?」

「別にそれでいい、どうせそれは売るつもりはなかったものだしな、ただそれ関係の責任は私はとらんぞ」

「まぁ、いいだろう、いくら我輩とて"媚薬"関係のトラブルなど関わりたくはないのだがな」

 

媚薬関係のトラブルなんぞ、私も関わりたくないし誰も関わりたがらないだろう。

媚薬使うやつなんてろくなやつじゃないだろうしな。

 

「爆裂娘に飲ませようとしてた貴様が言えることなのか?」

「おっと、それは言わないでもらおうか」

 

 

 

「なぁ、このポーションはなんだ?」

「それは開けると爆発するポーションだ、いるか?」

「いらない」

 

クソ悪魔との商談も終わり早いとこ帰ろうと思ったのだが、ポーションが目に入ってしまいついつい聞いてしまう、ポーション関係になると後のことを考えられないのは私の悪い癖だな。

 

「これは?」

 

棚から水色のポーションを一本取り出し、バニルに聞く。

 

「それは飲むと一時的に魔法の威力が大きく上がるが、代償として筋力が落ちるポーションである」

 

ふーん、なかなか使えそうなポーションだな。

 

「どのくらい、筋力が落ちるんだ?」

「だいたいだが足が自身の体重に耐えられなくなって倒れてしまうくらい筋力が落ちる」

「誰が使うんだそんなポーション!」

「それは我輩が知りたい、脳味噌空っぽでもわかることであろうにうちのポンコツ店主はこれを売れると思っているのだ」

 

どんな頭をしてればこんなもの買うことになるんだ。

空っぽどころか腐ってんじゃねぇの?

 

「じゃあこれは?」

 

今度は棚から赤色のポーション一つ取り出す。

 

「それは透明になれるポーション……ではなく自身が鏡に映らなくなるポーションだ、いたずらくらいなら使えるだろう」

 

自滅しないだけさっきよりはマシだが本当にいたずらにしか使えなさそうなポーションだな。

ここって魔道具店だったよな?

 

「ああ、そうだ、貴様に聞きたいことがあるのだった」

「なんだ?」

「ポーションを元の素材に戻すことは可能か?」

 

ポーションを元の素材にか……できないことはないが……

 

「ものによる、元の素材が液体状のものなら基本的にできる」

「そうか、ならばこれは戻せないのだな?」

 

そう言ってバニルが赤色のポーションを指す。

なんだ?そんなレアなもの使ってたのか?

 

「ドラゴンの肉にドラゴンの骨、ドラゴンの爪にドラゴンの角の豪華ドラゴン四点セットである」

「アホなのか?」

 

高級なドラゴンの素材を使ってこれとは、流石にしょぼすぎるだろ。

ていうかこれいくらしたんだ?

 

「なんとびっくり20万エリスである」

 

…………ドラゴンの素材使ってると考えれば安いか……?

効果に対しては高すぎるが。

 

「今なら100エリスで譲ってやろう、いるか?」

「はぁー、まぁその値段なら買わせてもらおう、他の素材と混ぜれば何かになるかもしれん」

 

こんなんでもレアな素材使ってるわけだし、何かしらに使えるかもしれん、期待はできんが。

 

「まいどあり!うちのポンコツ店主が買ってきたポーション、まだまだあるが見ていくか?」

「見せてもらおう、嫌な予感しかしないが」

 

その日ウィズ魔道具店から女の子の悲鳴が聞こえたらしい。




バニルさんと主人公はかなり相性が悪いです。
理由は性格が似てるからですね、どちらも人をいじったりするのを楽しむ性格、そのため二人は口喧嘩多めで主人公もいつもと比べて口悪いです。
ちなみに見通す目があるので主人公は基本的にバニルに勝てません()

そういえばバニルさんって見通す目で金稼ぎすると痛い目にあうらしいですね


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第四話

まぁ、その……ようやくカズマと絡むよとか原作に関わってくるよとか色々ありますが……その前に一言

遅れてすみませんでしたっ!!

リアルの方でトラブルってたというか現在進行形でトラブルってるというか……

まぁ、そんな状態で書いたので短いですし、多分誤字もたくさんありますが楽しんでくれたら幸いです。


ドンドンドンドン

そんなドアを、ノックする音で目を覚ます。

うるさい、ノックするにしてももうちょっと静かにしてほしいものだ。

玄関前まで歩きドアを開けるとそこには走ってきたのか少し汗をかいた焦ってるゆんゆんがいた。

 

「どうしたゆんゆん、朝からうるせぇノックしやがってこっちはポーション作りで寝不足なんだ、くだらないことだったら媚薬飲ませて商店街に裸で投げ込むぞ」

「な、何をしようとしてるのよ!とりあえずこれを見て!」

 

ゆんゆんが封筒を渡してくる、それを受け取って開けると2枚の紙が入っていた。

 

えーと……一枚目はゆんゆんのバカ父のやつからか、えーと『この手紙が届く頃にはきっと私はこの世にいないだろう』相変わらずこの紅魔族の時候の挨拶はアホ臭いなぁ……

うーん、なになに、読みにくいがまとめると魔王の幹部が村を襲いに来たってところか。

 

「で?こんなくだらないことのためにこんな朝早くに起こしやがって、そんな媚薬が飲みたいようだな?」

「くだらないって、紅魔の里が失くなっちゃうかもしれないのよ!」

 

ないない、ありえない、あの里が魔王の幹部程度でなくなるなんてありえない。

その程度で失くなってたらもっと昔に失くなってるだろう。

クソみたいな理由で邪神とか封印して、しかも解けてるような里だし。

 

「そ、それにもう一枚の方を見て!」

 

そう言われて思い出した、確かにもう一枚あったな。

これは【紅魔族英雄伝 第一章】著者:あるえ……あいつまだ小説書いてんのか。

 

んーと、内容的には主人公のゆんゆんがヒモ男を養って、その二人にできた子供が魔王を倒す的なありがち……?なやつか、何故主人公がゆんゆんなんだ?

 

「その、それ的には私が子供を産む必要があるって……」

 

えー?もしかしてゆんゆん、これがあるえが書いた小説って気づいてないのか?

まー、確かにゆんゆんは先走ることがよくあるけどさ……流石にそれは先走りすぎだろ。

おそらく一枚目の手紙を読んで焦ってしまったのだろうけどさ。

それはさぁ。流石にないだろ。

 

「ねぇ!?どうすればいいのかな私!?知り合いにこの条件に当てはまる人がいるんだけど!?」

 

ゆんゆんが私の肩をつかんで揺らしまくりながら聞いてくる。

 

「とりあえず子供が欲しいとでも言っておけば?あと揺らすのやめろ」

「やっぱそうするしかないのかな、で、でもそれって告白じゃ!」

「とりあえず揺らすのをやめろ」

 

頭が痛くなってきた。

そんなに媚薬飲んで裸で商店街歩きたいのか?

私から不穏な雰囲気を感じ取ったのかゆんゆんは肩から手をはなした。

 

「ていうか、その条件に当てはまる男って誰だ?確実に縁を切ったほういいと思うが」

「ほらあの、この前言っためぐみんのパーティーメンバーのカズマさん」

「なおさら縁を切ったほうがいい」

 

そいつかよ、めぐみんのパーティーメンバーって時点で嫌な予感してたけど想像どおりだったな。

そういえばめぐみんって結構過保護なタイプだしまさかめぐみんのヒモってことはないよな?

 

「と、とりあえず、これめぐみんにも見せないとだからいっしょに来て!」

 

正直めんどくさいから行きたくないんだが、ポーションもまだ余裕はあるが早く入荷しなければいけないし。

まぁ、面白そうだしいいか、もしかしたらゆんゆんが何かやらかすかもしれないし。

 

「ところでゆんゆんパジャマのまま行かせる気か?早く手を離せ」

 

 

 

 

予想以上に家から近かっためぐみん達が住んでるらしい家、そこでのゆんゆんの第一声は。

 

「私……!!私……!!カズマさんの子供が欲しいっ!」

 

予想の斜め上、いや直角だった、やばい笑いを堪えるのがきつい、お腹痛い、てかもう笑ってる。

めぐみんは口を開けたまま固まってるし、ゆんゆんの目に前にいる……多分カズマというやつは紅茶を吹き出した、他の人……多分めぐみんのパーティーメンバーも全員同じような状態だ。

 

「ここに盗賊を……いやでも……」

 

訂正、一人だけボードゲームに集中していて聞いてないらしい。

 

「いやちょっと待ってください、ゆんゆんは突然何を口走っているのですか!?ふらすこぉ!笑ってないで説明してください!」

「そ、そうだ、めぐみんの言う通りだ、確かゆんゆんといったな!?カズマと何があったのかは知らないが血迷うな!コレがどんな男か知っているのか!?」

 

めぐみんと金髪の女性がゆんゆんを止めにかかる、まぁ当たり前だろう。

友人の友人が自分の友人の男に急に告白したんだからな。

それもダメ男、誰だって止めるだろう。

 

「だ、だってだって!!わたしとカズマさんが子供を作らないと世界が!魔王が……っ!!」

「そうか、世界が……。大丈夫だ、皆まで言わなくていい。世界も魔王も俺に任せとけ。俺とゆんゆんが子作「カズマはややこしくなるので黙っててください!ふらすこ!いい加減説明してください!」

 

正直説明しろと言われてもゆんゆんの持ってる手紙見ろとしか言えないが……うーん、だけどこれを言ってしまうとアレがあるえの小説だとバレてしまうな。

それじゃつまらん、ちょっと遊ぶか。

 

「まー、まー、落ち着けめぐみん、えーと、カズマだったか?コレあげるよ」

 

カズマに白衣の裏から取り出したポーションを一本渡す。

 

「なんだこれ?」

「媚薬だ。ゆんゆんにでも使ってやってくれ」

 

媚薬を渡したあとカズマに向けてサムズアップする。

 

「何をしてるんですかあなたは!!カズマも当たり前のようにしまわないでください!!」

「んーと、アークウィザードは動かしても意味ないし……あっ!!ここでいらない子だったクルセイダーを使えば!!」

「お、おい、一旦落ち着け!とりあえずその媚薬について……」

 

うん、なかなかカオスになった、いい感じだ。

 

 

 

 

「粗茶ですけど」

 

色々カオスな状態から復帰し、ちゃんと説明することになった私達は水色の髪のさっきまでボードゲームをしてた女性からお茶を……これお湯じゃね?

 

「で……ゆんゆんとふらすこはいったいなんのためにここに来たのですか」

「おい。めぐみん待ってくれふらすこって誰だ、名前からして紅魔族なんだろうけど」

「ああ、自己紹介がまだだったか、ふらすこというものだ。さっき言ってたとおり紅魔族でゆんゆんとめぐみんの同級生だ」

「あれ?」

 

あれ?ってなんだ、あれ?って、その意外そうな顔はなんだ。

 

「い、いやてっきりあの名乗りをするのかと」

 

名乗り……?あー、我が名は!ってやつか、何だったかな学校の授業で考えさせられた記憶はあるがもう覚えてないな。

昔は一応やってたが里の路上でポーション売るときに引かれるからやめた。

 

「めんどくさいし、やる必要もないだろ」

「そ、そうか、これは遂にまともなやつが……あ、俺はカズマだ」

「ダクネスだ、よろしく頼む」

「ああ、よろしく頼む」

 

黒髪の男がカズマで、金髪の女性がダクネスか、覚えておこう。

で残りのボードゲームをやってた水色髪のやつだが、なにか不敵な笑みでこちらに近づいてくる。

 

「ふふふ…、私はアクア。そう、アクシズ教団の崇めるご神体、女神アクアよ」

 

アクシズ教か、関わらないでおこう。

 

「まぁ、私のことは置いといて私達が来た理由の説明はゆんゆんに任せよう」

「あれ?今もしかして私無視された?」

「えっと…これを見てください」

 

ゆんゆんがめぐみんに封筒を手渡す。

周りのみなも手紙を見るためにめぐみんのほうに近づく。

 

「これは、族長からの手紙ですか。『……この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』……?」

 

めぐみん達は神妙な顔で手紙を見ていく。

 

「ねー、少しくらい反応してほしいんですけどー」

 

訂正、見るどころか話さえ聞いてなさそうなやつが一人。

 

 

 

「ああああああああーっ!!」

 

めぐみんが手紙を読んでゆんゆんの勘違いに気づいた。

その時のゆんゆんの顔は非常に傑作だった、これもう笑っていい?笑っていいよね?

 

「ふらすこ絶対気づいてたでしょ!」

 

そんな状態の私に気づいたのか、ゆんゆんが食い気味に聞いてくる。

 

「は?当たり前じゃん」

 

なに当然のこと聞いてんの?

ゆんゆんも私とそれなりの時間いるはずなんだがいい加減私の性格を理解したほうがいい。

 

「お、おい。どういうことだ?俺はここで脱げばいいのか?」

「あなたはもう部屋で寝ててください。これはただの物語ですので」

「物語だったのか……ん?なら最初の手紙は?」

 

ダクネスが一枚目の手紙について聞いてくる。

 

「それは多分本物の内容だよ。流石に嘘でこんなことは言わないだろうし」

「多分そうでしょうね、前々から魔王軍は紅魔族を目の敵にしてましたし、ついに本腰を入れてきたってところでしょう」

「……何故二人はそんな落ち着いているんだ?同級生や家族が心配じゃないのか?」

 

そんなダクネスの言葉にゆんゆんが急に立ち上がる。

 

「そ、そうだわ、こんなことしてる場合じゃない!二人とも、どうしよう!?里が襲われてるのは本当だと思う!私達はどうすればいい!?」

「「無視すればいいと思う」」

「二人の薄情者!なんでそんな冷たいのよ!」

 

いやー、だって紅魔の里がその程度で滅びるわけないしねぇ。

めぐみんは多分ゆんゆんに実は心配してることがバレたくないだけだろうな、ツンデレだこと。

そんなこと考えてたらゆんゆんは早速紅魔の里に行くのかカズマ達に謝って出ていった。

じゃ、私も帰るか、椅子から立ち上がる。

と、その前に

 

「私も帰らせてもらうね。ああ、そのまえに、ちょっとカズマこっち来てくれ」

「ん?なんだ」

 

カズマがこちらによってくる、私は口をカズマの耳に寄せめぐみんに聞こえないように言う。

 

「多分あのツンデレが行きたいと言うから、そうなったら私はそこの家にいるから教えてくれ、こんなんでも護衛くらいになるはずだ、対価はめぐみんがどんな言い訳をしたかでどうだ?」

 

それを聞いたカズマは返事をサムズアップでした。

私もサムズアップで返した。

 




主人公朝弱いので機嫌が悪い

そして主人公もまぁまぁツンデレ(自覚はある)


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第五話

かなり短めなんで第五話とか言ってるけど番外編に近い


はい、そこ!お前投稿するたびに文字数減ってね?とか言わない!


ゆんゆんが紅魔の里に向かってカズマと約束をしたあと。

どうせめぐみんが紅魔の里に行きたいと言い出すのに時間がかかるだろうということで、背にたくさんのポーションが入ったバッグを背負いながら私はとある場所へ向かっていた。

正直本音としては行きたくない場所ではあるのだが……まぁ、仕事だ。そこは割りきらなければいけない。

そんなことを考えながら歩くと見えてきた『ウィズ魔道具店』と書かれた看板。

今からあの私を脅して不当な値段でポーションを買ったクソ悪魔に会わなければいけないのがすごく嫌なのだが。

ただ、どうせいつかやらなければいけないことだ。早いとこ終わらせて帰ってポーションの研究でもしてストレスを発散しよう。

どうにかこうにかして直接仕返しできればストレス発散になってそれが手っ取り早いのだが。

ウィズ魔道具店の扉を開ける。

すると、うざったらしい口調の聞いているだけでいらいらしてくる、声が私を出迎え……

 

「いらっしゃいませ!ウィズ魔道具店へようこそ!」

 

なかった、いや誰?

 

 

 

 

あの悪魔の代わりに私を出迎えてくれた人はウィズというらしく、この店の店主らしい。

そういえばあのバニルのやつなんかそんなこと言っていた気がする。

ガラクタばっか取り寄せてくるガラクタ店主だったか……

 

「それでふらすこさんは何かお探しで?」

 

そういえば、まだポーションを入荷に来たと言ってなかったな。っていうかこの反応の感じあの悪魔もしかして店主に無断で私と契約したのか?

 

「バニルのやつとポーションの契約をして、それを持ってきたのだが……もしかして聞いてないのか?」

「えっ!?またバニルさん勝手に契約したんですか!?」

 

ああ、やっぱり知らなかったのか……店主に無断で契約とかクビにされても文句は言えないだろうに。

ていうかまたってことはすでに何回かやってるのかよ……

 

「えっと……その申し訳ないです……バニルさんは今いないので私が代わりに確認させてもらいます……」

「あ、ああ、よろしく頼む」

 

バニルいないのか、なら早いとこ終わらせて帰らせてもらおう。

バックからポーションを取り出していく。

 

「これ何のポーションなんですか?」

「回復ポーションだよ」

 

取り出してる途中でウィズが質問してくる。

まぁ、何を契約されたかもわからないし、気になるのだろう。

本当はこれと同時に媚薬を持ってくる予定だったが……流石に渡しづらい。

 

「へー、凄いですね、これ。私も昔冒険者をしてたのでわかりますが、これはかなりいい物です」

「そう言ってくれるとありがたい、数はいくつか決めてなかったからとりあえず30本だ。受け取ってくれ」

 

そう言われるとウィズは一本ずつしっかり確認していく。丁寧なことだ。

 

「はい、30本ピッタリですね。えーとお金は」

「1本1万エリス、合計30万エリスね。」

「えっ!?そんな安いんですか!?」

 

いや、本当はこれの2倍なんだがな……あのクソ悪魔の奴め。

今バニルいないことだし、契約無視しても良かったかもなぁ。

ただ、破ったら確実に私の秘密を言うだろうしな……あいつ絶対躊躇するタイプじゃないし。

 

「とりあえずお金を用意してきますね、お茶いりますか?」

「いらないから早くしてくれるとありがたい」

 

バニルが帰って来られると面倒くさいし。

 

「わかりました。少し待っててくださいね」

 

そう言ってウィズが店の奥に入っていく。

今話した感じじゃ普通な感じだったが……バニルが言う使えない物ばっか取り寄せてくるってのは嘘なのかねぇ。

いやでもそれだとあのポーションの説明がつかんか

 

 

 

「お待たせしました!30万エリスです。」

 

ウィズから1万エリスの貨幣を30枚受け取る。

これどうするかな……財布には入らんぞ。

とりあえずリュックにくしゃくしゃにならないよう入れておくか、バックのなかのポーションがもれてかからないよう気をつけないと。

さ、用事もすんだし帰らせてもらうか。

 

「あ、待ってください!」

 

と思ったらウィズに呼び止められた。

何か用でもあるのか?

 

「この回復ポーションってふらすこさんの自作ですよね?」

 

何故そんなことを聞く?もしかして安すぎるから不当な手段で手に入れたと思ったのだろうか?

ちゃんと自作なので首を縦に振る。

 

「じゃあ…、もしかして他にもポーション作ってたりします?」

「?確かにしてるが」

 

基本的に純粋に使いみちがなかったり、素材が高すぎて使えないゴミばっかではあるが。

 

「ならそれを見せてくれませんか!」

 

はぁ?

 

 

 

 

 

「これはどんな効果なんですか?」

「それは飲むと周りの人だけが飲んだ人に対して殴りたくなる衝動を起こすポーションだけど……」

「へー、使えそうですね。これください!」

 

いや、使えないよ?使えるわけないからね?

強力なモンスター寄せのポーション作ろうとしたらできてしまった失敗作なのだが……

ウィズに頼まれてバッグに入れっぱなしだったポーションを見せたが……うん、これはバニルの言った通りだ商才の商の字すらない、むしろマイナス。

 

こんな感じで彼女が買ったポーションは5本目である。

こちらとしてはゴミが金になるわけだからありがたいのだが……なんだろうな、騙してる感じがする……別に騙してないし、むしろちゃんとポーションの効果は言ってるのだが。

 

「これはどんな効果ですか?」

 

あー、そんなキラキラした目でこちらを見てくるな、売らないって言いにくくなるだろ。

 

「それは体を冷やすことで熱に耐性を得るポーションだ、冷やしすぎて体が低体温症になる」

「いいですね!これもください!」

「あ、ああ、わかった」

 

今のでウィズの買ったポーションの合計が15万エリスを超えた……よくこの店営業できてるな、バニルどんだけ頑張ってんだ。

ん、まてよ?そういえばバニルはこのウィズの商才に対してかなり文句を言っていた。

つまりバニルからしたらこの店は儲かってほしいわけで

だがそれをウィズに邪魔(恐らく本人自覚なし)されてると。

ふむ、これは使えるな。もしかしたら諦めてたバニルへの仕返しいけるかもしれん。

 

「なぁ、ウィズ。バニルは後どれくらいで帰ってくる?」

「バニルさんですか?結構遠くまで出掛けているので多分後2時間くらいで帰ってくると思いますけど」

 

2時間、十分だ。

そんだけあれば家からポーションを取ってくることができる。

 

「そうか、あ!そうだ!うちにポーションが他にもたくさんあるのだが、持ってこようか?」

 

自分ですら白々しい棒読みだと思う言い方だったが。

 

「ぜひ!見せてほしいです!」

 

はい、引っかかった。

 

 

 

 

「フハハハ!!我輩が帰宅し……おい、待て貴様ら何をしている」

「あ、バニルさんお帰りなさい!見てください!使えそうなポーション沢山仕入れましたよ!ほらこれ!飲むと足が速くなるんです!」

 

代わりにジャンプできなくなるがな。

そんな思考を見通したのか、バニルの顔がどんどん引きつってくのが仮面越しでもによくわかる

かわいそー

だけど私は遠慮しない、ここでトドメをささせてもらおう。

私は今にもブチ切れそうな仮面の悪魔の肩を叩いて全力の笑顔で耳元でこういった。

 

「使えないポーション40個、合計50万エリスまいどあり!そういえば、言ってなかったがうちは返品不可だから……ま、頑張ってね」

 

じゃあ用事も済んだことだし帰るかぁ。

結構時間食っちゃったし、家に帰ってポーションの研究をしよう。

使えないポーションの使いみちができたわけだしな。

 

帰り道後ろから女性の悲鳴がしたが……まぁ気のせいだろ。




かわいそー(棒)


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第六話

リアルとゲームのイベントが重なったのが悪い。


鏡の前でゴムで髪を一つに結ぶ。

目の前の鏡には黒い服と黒いズボンの上に白衣を着た、透き通るような紅い瞳の下に隈をつけた黒髪のポニーテールの眠そうな顔をした少女が映っていた。

 

前世とは似ても似つかないこの姿も流石にもう慣れてきたな。

 

この世界に来る前は身だしなみとか興味のない男だったのだが、流石にこれだけこちらで過ごせば女の身だしなみの整え方とか色々慣れてきてしまう。

 

というかまだ眠い、最近ポーションの研究に没頭しすぎてるかもしれない、たまには休息も必要か。

眠気を少しでも覚ますために顔を魔法で出した冷たい水で洗い、洗面台をでる。

 

あ、隈とるの忘れてた……まぁ、いいか面倒くさいし。

 

……案外身だしなみに対する興味というのは男のときと変わってないかもしれん。

 

 

 

 

ドンドンドン、とドアがノックされる。

やっと来たか。

ドアを開けると予想通りカズマが立っていた。

 

「なんか隈すごいことになってるけど大丈夫か……?」

「気にしなくていいよ、ちょっと夜ふかししただけだから。まだ眠いけど」

 

顔一回洗っただけじゃあんま眠気とれないな。

 

「そうなのか、めぐみんが妹が心配だから紅魔の里に行きたいってさ」

 

あー、こめっこ言い訳にしたのか、じゃあこめっこ使っていじるかぁ。

あいつこめっこにめちゃくちゃ弱いし。

 

「そうか、詳しくは後で聞くとして、早く行こう、馬車で行くのか?」

「いや、知り合いがアルカンレティアにテレポートを登録してるらしくてさ、そこから歩いていこうと思っているんだ」

 

知り合いねぇ、まともなやつだといいんだが。

 

 

 

 

カズマ達の家によりめぐみん、ダクネスとたしかアクアって名前のやつを連れてカズマの知り合いがいるらしい場所に来ていた。

で、その場所なのだが

 

「へいらっしゃい!媚薬をもらったけどヘタれて使えてない男と、最近、実家の威光以外ではあまり役に立てない娘!チンピラプリーストに、厄介者のネタ種族二人よ!丁度いいところに来たな!」

 

まさかのウィズ魔道具店だった。

なんていうか、私この店と縁があるな、すごくいらない縁だが。

先程のバニルの煽りがムカついたのか、アクアはバニルをピシピシとジャブをしているし、めぐみんに関しては切れかけの雰囲気を感じる。

だがそんな攻撃も雰囲気も、ものともせずバニルはどうぞどうぞと店の中に入れてくる。

 

「丁度いいところにってなんだよ、俺ここの商品を買いたくないぞ」

「まぁ、そう言わずに、このポーションとかどうだ?逃げ足の早い貴様にオススメだぞ」

 

そう言ってバニルが水色のポーションをカズマに見せる。

あ、それ私が昨日売ったポーションじゃないか。

正直使えないし売れるとは思わないんだが。

 

「なんだこれ?というか今なんか罵倒された気がするんだが」

「これは足が速くなるポーションである、デメリットとしてジャンプができなくなるがモンスターから逃げるときなどオススメの商品だ」

「ほー、なかなか使え……ん?いや、ちょっと待て、ジャンプできない状態で走れるのか?」

「…………オススメの商品である!」

「やっぱ、走れねぇんだろ!その間はなんだよ!」

 

カズマが大声で購入を拒否する。

惜しい、あとちょっとで売れていた、まぁあれを使えそうに見せただけマシか。

店の奥の棚にポーションをしまいに行くバニルがかわいそうなので慰めてあげよう、そう思った私はバニルの肩に手を載せこういった。

 

「惜しかったな」

「貴様にだけは言われたくないわ!」

 

 

 

 

その後カズマがバニルに白い靄がでる箱型の100万エリスの魔道具を買わさせられたりしていた……あの屋敷とか今の魔道具を買えるあたり結構金持ちなのかね。

ていうか知り合いの話どこいった、もしかしてバニルのことじゃないよな?

 

「カズマ、確認したいんだが……知り合いってこいつのことか?」

 

もしそうだったら私は絶対に行かない、こいつに借りをつくるとか死んでも嫌だ。

 

「いやバニルじゃなくて。と、そうだ、ウィズに用があるんだ呼んできてくれよ」

 

カズマの言葉を聞いてバニルが残念そうに白い靄が出ていた箱を閉じる。

それから間もなくすると店の奥からウィズが出てくる。じゃあもしかして知り合いってウィズのことか?

 

「あれ?ふらすこさんとカズマさん?どうされたんですか?」

「ようウィズ、体調は大丈夫か?昨日の今日ですまないな。今日は客じゃなくて、ちょっと頼みがあってここに来たんだよ」

「……私に頼みですか?」

 

どうやらウィズが知り合いらしい、テレポート使えたのか……そういえば確かに冒険者をやっていた的なことを言ってたな、テレポートを使えるならもしかしたら案外有名な冒険者だったのかも。

 

奥でめぐみん、ダクネスそしてアクアが私の売ったポーションを見てるなか、カズマは事情を説明していく。

事情はカズマに任せればいいし、私はめぐみん達のほうに行くか、それにポーションを買わせないようにしないとな、なんたってあれ全部ゴミだし。

それに、買われたらバニルに収益入るし。

とりあえずポーションを一本一本取って確認してるめぐみんに近づいて声をかける。

 

「何か欲しいのはあったか?」

「いえ、ふらすこが作ったぽい魔法の効果を上昇させるポーションらしいので、この前ふらすこが作った爆裂魔法のはないかなと思ったんですが」

「ああ、そういえばあれどうだったんだ?改良していきたいから教えてほしい」

「バッチリでしたよ!洞窟ごとモンスターを破壊するあの快感!はぁ……また味わいたいものです……」

「そうか、じゃあ今度量産しておこう」

 

とりあえずあのポーションは成功だったらしい、なら今度はさらに効力を強めるよう改良してみるか。

 

「どうせ需要はお前しかないから今度開店する私の店に置いといておくよ」

「店開くんですか?その……大丈夫なんですか?」

「ゆんゆんにも言われたよ、それ」

 

紅魔族のなかでは比較的常識のあるゆんゆんならともかく紅魔族らしい常識を持つめぐみんにすら言われるか。

そんな私やばいのか?

 

「いや、なんというか、前あったこめっこのことを考えると」

「あれはこめっこが全部悪いだろ、私は悪くない」

 

昔、と言ってもめぐみんが紅魔の里をでる少し前、私が紅魔の里の路上でポーションを売ってるとき、私が少し席をはずしたら、こめっこが私のポーションを飲んでしまうという事件が起きたことがある。

あのときは大変だった。こめっこが飲んだポーションの中に興奮状態にさせるポーションがあってただでさえ騒がしいこめっこがさらに騒がしくなって里の食料が……もう思い出したくないな。

話を切り替えよう。

 

「そういえばこめっこで思い出したんだが、こめっこが心配なんだって?」

「え!?ええ!!そうですよ!久々に顔を合わせたいですしね!」

 

わかりやすい反応してるなぁ。まぁ、多分こめっこが心配なのは本当なんだろうが。

ならこめっこを使っていじるか。

 

「そーか、そーか、じゃ、こめっこにお姉ちゃんはお前が心配で帰ってきたって言っておこう、こめっこ喜ぶぞぉ」

「やめてください!なんであなたはそういうことをするのですか!?」

 

そりゃあ面白いからねぇ。

 

「あれ?嫌なのかい?こめっこならきっと満面の笑顔で『お姉ちゃんありがとう!』とか言うぞ」

「そういう問題じゃないんです!!」

 

めぐみんが顔を赤くして言い返す。

そんな恥ずかしいかねぇ、かわいいもんだ。

 

「そ!そういえば!このポーション達はふらすこが作ったやつですよね!?」

 

露骨に話題そらしたな、まぁ今は見逃してやるか。

後でみっちりいじるつもりだし。

 

「うん、そのとおりだ。というかこの容器を使ってるのは私だけだから、この容器だったら私のものと思ってもらって平気だ」

 

普通ポーションというのはフラスコのような容器に入れるものだが、私は基本的にポーションは試験管に入れている。理由はそのまますぐ実験に使えたり、服に仕込みやすい、かさばらないなどの簡単な理由だ。

そしてこの試験管はオーダーメイド品だったりするので、試験管を使ってたら私製のポーションということになる。

 

「……なんでこんな使えなさそうなポーションしか売ってないのですか?」

「一応使えるのもあるぞ、そこの回復ポーションとか」

「いや、そうですけど……よく売れましたね」

「私も売れると思わなかったんだけどね」

 

どうやらめぐみんもウィズの商才について知っていたらしく、あー、と声を出す。

 

「なんていうか、ここまでくるとバニルがかわいそうですね……」

 

めぐみんがダクネスに使えないポーションの効果について説明してるバニルに憐れみの目を向ける。

にしても説明の仕方が必死だ、本当に憐れだな。

あ、売れたっぽい、どうやって騙したんだ?ていうか買わないようにさせるの忘れてた。

 

「……ダクネスが買ったやつは大丈夫でしょうね?変なことになりませんよね?」

 

めぐみんが心配そうに問いかけてくる。

過去のこめっこのこともあって私のポーションで変なことにならないか心配してるのだろう。

 

「うん、まぁ、多分平気だよ」

「多分が怖すぎるんですが!?」

 

一応あれの効果は一日で切れるし、大問題に発展することはないはずだ。

 

 

……多分

 

 

 

その後またバニルとアクアが戦いはじめた、どうやらアクアがポーションをだめにしたらしい。

それにムカついたのか、どうやらバニルはここから早いとこ追い出すことにしたらしく、カズマに謎の忠告をしたあとカズマ達をウィズにテレポートでアルカンレティアに早く送るように言った。

それを聞いてウィズがテレポートを私を除いてめぐみん達に使う。

これは別に私がゆんゆんみたいにハブられたわけではなくテレポートには同時に4人という制限があるので2回に分けたのだ。

そんなときバニルが話しかけてくる。

 

「おい、薬中女、貴様にも忠告をしてやろう」

「……その呼び方だと私が犯罪者みたいに聞こえるからやめてくれないか」

「すでに犯罪者のようなものだろう?」

「否定はしないが、貴様に言われるのはムカつく」

 

確かに私は法に掠ってるポーションを作ったことあるが……

 

「まぁ、それはどうでもいい、忠告……いや、アドバイスだ。貴様はこの旅であの男に貸しを作っておくことをオススメする。わかったなら、早くいけ」

 

アドバイスねぇ、イヤな予感しかしないんだが。

 

「ではふらすこさん。どうか無事な旅を送られますよう……!『テレポート』!!」

 




今回諸事情により世にも珍しい3dsからの投稿です()

時間がなく返信できてませんが感想などいつも励みになっています。

投稿遅いですけどこれからもよろしくお願いします。


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第七話

えっと……遅れてごめんなさいの前に

感想で、紅魔族は冒険者カードを持っているんじゃ?という指摘ありました。

完全に私のミスです。ごめんなさい

すでにそのミスは修整済みです。ほぼ内容自体に変化はないので読み直す必要はないです。

あとは……まぁ、遅れてごめんなさい!!


ウィズのテレポートで送られ目をあけるとそこは、水と温泉の都として有名なアルカンレティアだった。

ただ私はここを一刻でも早く去りたい。

なぜなら、ここには紅魔族をはるかに凌駕する頭のおかしい連中アクシズ教がいるからだ。

奴らは出会えばアクシズ教に入れと言ってくるわ、だれが考えたかしらんが、糞みたいな茶番を見せてくるわ、挙句の果てには最高責任者とプリーストがセクハラしてくるわ。

だから、私は早くここから去りたい、そのためにはめぐみん達が温泉が気になるとか言い出す前に早くここを出るようパーティーリーダーのカズマに言っておかなければならない。

なので、私はカズマに近づく、それと同時にアクアがカズマに近づいてくる。

何か話すことでもあるのだろうか?

 

「おい、カズマ」「ねぇ、カズマ」

 

私とアクアが、同時にカズマに話しかける。

 

「今すぐここから出るぞ」「ちょっと寄り道してかない?」

 

「「ん?」」

 

私の隣にいたアクアと顔が向き合う。

 

「ちょっとアンタ、めぐみんの同級生だかなんだか知らないけど、女神の私を差し置いてカズマに命令するなんて何様のつもりよ」

 

アクアがいらついたような声で言ってくる。

まずいな、どうやらアクアはアクシズ教の恐ろしさを知らない、もしくはここがアクシズ教の総本山という事を知らないみたいだ、忠告しなければ。

 

「いいかアクア、このアルカンレティアはアクシズ教の総本山だ、そしてそのアクシズ教というのかなり頭がおかしい、どのくらいかというと同じ人間だと思わない方がいいレベルだ。奴らのことは悪魔、いやそれ以上のモンスターといっても過言ではない、絶対にとは言わんがまともに生きたいなら関わらない方がいい」

「ア、アンタうちの子たちをなんだと思っているのよ!いいわ!決闘よ!私のこのゴッドブ「ストーーーップ!!」いったぁぁぁ!!」

 

カズマがアクアを思いっきりチョップする、それがアクアの脳天に直撃しアクアが叫ぶ。

二人の騒ぎを見てめぐみんとダクネスがこちらに集まってきた。

 

「ちょっと何すんのよ!今からこいつと決闘するつもりだったのに!」

「お前は何当たり前のようにケンカ売ってんだ!!あと言っとくけどこの町は寄らないからな、アクシズ教とはもうかかわりたくない」

「だって!だって!仕方ないじゃない!!こいつがうちの子たちを悪魔以上のモンスターだとか言ってくるんだもの!!」

「「「事実じゃないか」」」

「なんでよー!!わかったわ!!アンタら全員同時に相手してあげるからかかってきなさい!!ぶっ飛ばしてあげるわ!!」

「さ、カズマ早く行きましょう」

「おう、そうだな」

 

私達に対してシャドーボクシングをしてくるアクアを無視して私達は紅魔の里への街道に向った。

 

 

 

アルカンレティアを後にした私達は、整備された街道をダクネスを先頭にして、私、カズマ、めぐみん、アクアの順で歩きながら紅魔の里へ向かっていた。

私はアクアに睨まれ続けるという、なんとも落ち着けない状態だが。

 

「……む、誰かいるぞ?」

 

先頭に歩いていたダクネスが、突然立ち止まる。

ダクネスの視線の先に私も視線を向ける。

林の入り口で、出っ張った岩の上に腰かけた緑髪の少女がこちらに手を振っていた。

…………一番最初に会うのがこいつか。

安楽少女、植物型のモンスターで攻撃などはしてこないがその見た目で冒険者相手に庇護欲をいだかせ、その場に立ち止まらせ、栄養失調で殺しそこに根を張る、という、見た目に反してなかなかに恐ろしいモンスターである。

 

「怪我してるじゃない。ねえあなた、大丈夫?」

 

そう言って、ホイホイと安楽少女に近寄ろうとするアクアの肩をいつの間にか地図を持ったカズマがガッと掴んで引き止めた。

 

「敵感知スキルにモンスターの気配をビリビリ感じる。あれ、擬態したモンスターだ」

「「「えっ」」」

「安楽少女だな、攻撃はしてこないが旅人に庇護欲を抱かせて、足止めし、餓死したところに根を張る」

 

私の説明を聞いてカズマ以外の三人が安心したように、安楽少女に近づく。

こいつらには一回危険を理解させる必要があるな……

 

「今傷を治してあげるからね!……あれっ?これって怪我じゃないのね。包帯じゃなくて、そんな感じに見える様、擬態してるんだわ」

 

アクアの言葉にカズマも安楽少女の方に近づいていく。

こいつら危機感ないな?

四人が安楽少女の怪我の部分をまじまじと見る。

よし、じゃあ、殺るか。

私は安楽少女の前に近づき、魔法の詠唱を始め

 

「ちょっと待ってください、ふらすこ、なんですかその手のひらの雷!それで何をするつもりですか!?ていうかちょっとかっこいいですね!?」

 

ようとしてめぐみんに止められた。

 

「何って?もちろんこいつを殺そうとしただけだけど?」

「あ、あんた、こんないたいけな少女を殺すつもりなの!?鬼畜すぎるわ!?なら、今度こそ決闘よ!!私のゴットブローでその腐った性根を叩き直してやるわ!!」

 

そう言ってアクアは安楽少女を庇う様に抱きしめながら睨みつけてくる。

邪魔なのでどいてほしいのだけど。

 

「安楽少女は冒険者が見つけたら殺すように言われている。それに……こいつは安く回復ポーションを作るための素材になる、殺さない理由はないだろう?」

「おおありよ!?あんた鬼畜どころじゃないわ!?クズじゃない!?」

 

……なんでモンスターを殺すのにここまで言われなきゃいけないんだ……

と、ここでカズマが地図をしまい刀を抜いてアクアに抱きつかれてる安楽少女の前に立つ。

 

「ちょっと!?カズマまでそんなことするの!?あんたも外道じゃない!?」

「カ、カズマは確かに外道だの鬼畜だの言われてますが、流石にこんな少女に手を出すわけないですよね?ない……ですよね?」

 

めぐみんが安楽少女の手を握りながら、訴えかける目でカズマを見上げる。

カズマの手がぷるぷると震え始めた。

迷ってるようだ。

それを見かねたのかダクネスが、大剣を抜き、安楽少女に身構えて言った。

 

「……いや。カズマが駆除すべきと判断したのならそうすべきだ。怪我をしてるように見せる擬態なんてしてくるモンスターだ、よっぽど狡猾なモンスターに違いない、ここで駆「……コロス……ノ……?」……っ!?駆除す「……コロ……スノ?」っ!?すべ……駆除……す……すべぇっ……!!」

 

前言撤回、安楽少女に、悲しそうな目で見られ、駆除すべしと言えなかった。

そういやこいつら喋るんだったな、いつも見かけたらすぐに殺してたから忘れてた。

安楽少女の声を聞いたカズマはさらに迷いが増えたのか、頭をかきむしり始める。

そんなカズマを見てアクアが諭すように言った。

 

「カズマ、迷っている時に出した結論はね、どの道どっちを選んだとしても後悔するものよ。なら、今楽ちんな方を選びなさい」

 

何を言っているんだこいつ、完全にダメ人間の考えかたじゃないか。

それからもカズマは葛藤を続ける。

……もう私殺しちゃっていいかな?

 

「クルシソウ……。ゴメンネ、ワタシガ、イキテル、カラダネ……」

 

葛藤してるカズマを見かねてか、安楽少女が呟く。

そして儚げに微笑み。

 

「ワタシハ、モンスター、ダカラ……。イキテルト、メイワク、カケルカラ……」

「ウマレテハジメテ、コウシテニンゲント、ハナスコトガデキタケド……」

「サイショデ、サイゴニアエタノガ、アナタデヨカッタ。……モシ、ウマレカワレルノナラ……。ツギハ、モンスタージャナイト、イイナア」

 

そう言って、観念するかのように目を閉じた。

それを見たカズマは刀を鞘にしまい、安楽少女から顔を背けて歩きだした。

 

「カズマが殺さないなら、私が殺っていいか?」

「感動的な雰囲気なのでちょっと黙っててください!?」

 

 

 

結局めぐみんに止められ、安楽少女を見逃した私達はまた街道を歩いていた。

 

「はぁ、もったいない……」

「いつまで言ってるんですか……ふらすこってそんなマッドでしたっけ?もうちょっとまともなイメージあったんですが」

「……紅魔の奴らに毒されすぎだ」

 

私がまともなわけがない、周りがもっとおかしいだけだ。

そんなことをめぐみんと話していると、唐突にカズマが足を止める。

 

「おいちょっと待て。やばいんじゃないか、この道に安楽少女がいるってのは」

 

そう言うとカズマの顔がどんどん青くなっていく、どうしたっていうのだ。

同じことを思ったのかアクアがカズマに尋ねる。

 

「ウィズみたいな顔色してどうしたの?お腹でも痛くなったの?そこに茂みがあるわよ。ちょっと離れてあげるから行って来なさい」

 

いや、同じことではなかったらしい、こいつさっきのカズマの発言聞いてたのか?

 

「違うわ!おい、お前ら先行っててくれ!俺は安楽少女の下へ行って、ちょっと話をしてくる!」

「えっ、ちょ、ちょっとカズマ!?」

 

アクアが止めにかかるが、それを無視し、カズマは、今来た道を駆け出した。

 

 

4人で話し合い、カズマが戻ってくるのを待つことにするのを決めて20分ほど。

カズマが駆け足で戻ってきた、何故かスッキリした顔を浮かべている。

今度こそ同じことを考えたのかアクアが尋ねる。

 

「なんかスッキリした表情ね!どうしたの?なにか良いことでもあったの?」

 

そんなアクアに向けてカズマが冒険者カードを見せつけた。

 

「見ろよこれを!一気にレベルが三つも上がった!これでめぐみんの里に行っても少しは役立てるだろう!」

 

カズマの言葉に私含めた四人の時間が止まる。

レベルが上がる……それが表すことは……

 

「わっ……わあああえああーっ!!カズマの外道!鬼畜外道っ!あんたはバニルが可愛く見えるぐらい悪魔だわっ!」

「お、おいカズマ!素材は!素材は!採ってきたんだろうな!?安楽少女の足と腕!!一体分あれば10万エリスになるんだぞ!!」

「い、いや待ってくれ!これには理由が!……え?まって、何その猟奇的な素材」

 

アクアは私といっしょにカズマの胸元を掴みながら叫び、めぐみんは何も言わず泣いている。

そしてダクネスは真面目な顔でこう言った。

 

「辛かっただろう?……お前は、冒険者の義務を果たしたんだ。すまない、お前にだけ嫌な役割を押しつけて……」

 

その後カズマが説明するのに一時間がかかった。




主人公まともとか結構言われてたけど、そんなことないです。変人というかどっちかと言うとやべーやつです。思いっきりマッドです。ポーションさえ関わらなければまともではあるんですがね……

今後どんどん遅れそうなので遅れる報告のTwitterアカウントができました↓
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第八話

遅れてないっ!!遅れてないっ!!(遅れてる)

正直今回もっとうまくかけたんじゃないかと思ってる


夜、真っ暗な中、街道沿いの地面の上に、大きめの石を取り除いたあとカズマが持ってきた布を敷く。

今日はここで寝る予定だ。寝心地は良くないが仕方ない

旅先で贅沢なんて言ってられない。

 

「……カズマ、本当に寝なくても大丈夫なのか?確かに、スキルの特性上お前が起きていると有り難いのだが……」

 

ダクネスが闇の中からカズマに尋ねる。

寝てる合間にモンスターに襲われるわけにもいかないので見張りを誰かがすることになったのだが……カズマはスキルが索敵に優れてるということでカズマは常に起き続け、私含む他四人は交代で休むことになった。

正直私も心配ではある。

 

「気にすんな。俺は徹夜に強いって特性を持っているんだよ。俺が住んでた国では、徹夜なんてしょっちゅうだったからな」

「そういえば、カズマやアクアはどこに住んでいたのですか?カズマの国の話が聞きたいですね。カズマが開発した商品を見るに、便利な魔道具がたくさんある国みたいですが。カズマがそこで、どんな暮らしをしてきたのか気になります。徹夜に強いだなんて、一体どんな暮らしをしていればそんな特性が身につくのか……」

 

カズマの住んでた国……正直薄々感づいているが、日本なのだろう。

名前も、姿もまさに日本人って感じだし。

というかこの世界は私と同じで日本人と思われる人物が結構たくさんいる、それも昔から。

前、村に来た人もそれっぽい名前だったし、伝説の勇者の名前はサトウだったらしいし、この世界で古代文字と呼ばれてるのが日本語だったりと。

ただ少し気になることがある。

私と彼らでは決定的に違う場所があるのだ。

彼らはこの世界に日本人の姿でやってくる、私とは違って。

今のところ私があった日本人らしき人物は全員、日本人と一目見てわかる見た目をしていた。私の見た目とは違って。

これは、仮説でしかないが、多分他の日本人は私と違う手段でこちらの世界に来たのだろう。

というか、おそらく私がかなり特殊な手段だったと考えるべきか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

彼らがどんな手段を使ってこちらの世界に来たのか知りたいところだが……多分私が日本人だといえば言ってくれそうではある。

ただ下手にバラして周りに言いふらされても困る、特に前世が男だというところ……私の友人が女しかいないせいでバレたら怖い。

前世が男というところを隠しても、結局周りに言いふらされたい話ではないしな。

なので私は前世については話さないことにしている。

もし話すなら信用ができるくらいの仲になるか、言わざるを得ない状況になるかの二択だろう。

前者はともかく後者は避けたいところだ。

それに

 

「言ってみれば、ランキング上位者って意味だな。仲間には『レア運だけのカズマさん』だの、『インしたらいつもいるカズマさん』だのと……。まぁ色んな通り名を付けられ、頼りにされていたな。戦友と一緒に砦へ攻め込んだり、大物のボスを狩ったり、楽しかったなぁ……。徹夜なんて当たり前。ロクに食事も取らず、毎日二時間ほど寝て、またすぐにモンスター狩りへと戻ったもんさ……」

「す、凄いな……。砦攻めだのボス狩りだの……!なるほどカズマの機転はこの経験が元になっていたのか……!」

「普段のカズマからは信じられない様な今の話ですが……。なぜでしょう、嘘を言ってる気配が全く感じられませんでした。今のカズマからは、確かな自信と懐かしさが感じられます……」

 

こういったことのタネバラシをするのもつまらないだろう。

 

 

 

特に何事もなく……なく…………なく?朝を迎え、軽い朝食を終えた後私はカズマを睨みながら街道を進んでいた。

 

「……まったく、昨晩は騒がしいカズマとめぐみんのせいで……なんかカズマさん睨まれてない?」

「い、いや、その、ちょっと色々あってな?」

 

昨晩、ひさびさの野宿でなかなか私が寝付けずにいたとき、どうやら見張りのめぐみんが眠ってしまったらしくカズマが起こしたらしいのだが

その起こし方が問題だった、その起こし方というのが……正直言葉にしたくない……

で、それを見た私がブチ切れて大体3時間くらい怒って今に至る。

 

「うう……。と、とんでもない事されました……」

「おー、よしよし、怖かったな」

 

めぐみんの頭を撫でようとして逃げられる、ちょっとショック。

そんな緊張感もないゆるい状態で街道を順調に進んでいたのだが……

 

「参ったなあ……」

 

カズマがだだっ広い平原を呆然と眺めながら呟く。

ここらへんは遮蔽物がないのでそれを心配してるのだろう。

 

「なぁ、ふらすこ、俺らを守りながらここを通り抜けれるか?」

 

カズマが質問してくる。

ふむ……ここらへんのモンスターなら数でせめて来られたり、足を引っ張られたり、運のないイレギュラーでも起きない限り守りきれるだろう。

 

「足を引っ張られたり、何か変なことが起きなければ平気だ」

「なら大丈夫ね!!私にかかればどんなモンスターもイチコロよ!!むしろあんたこそ私達の足を引っ張らないでよ!!」

 

さっき安楽少女というモンスターに囚われてたのを忘れたのだろうか?

 

「ええ、そうですよ!最悪私の爆裂魔法でぶっ飛ばしてやります!!」

 

この平地で爆裂魔法を撃ったらどうなるのか理解してないらしい。

 

「私も硬さだけなら自身がある、それに……ここらへんのモンスターには女騎士の天敵の性欲絶倫のオークが……想像しただけで……んっ////」

 

なにを言ってんだこいつ。

 

「よし、お前ら俺とふらすこが二人で先行するから、お前らはいつでも逃げれるようにしてろ、というか何もするな、わかったな」

 

私もそうすべしだと思う。

 

 

 

ただ広い平原をカズマと歩いていく。

カズマは千里眼スキルを持ってるらしく、モンスターに見つかる前に見つけるためキョロキョロと顔を動かしている。

正直サーチの魔法でいいのだが、頑張ってるみたいだし黙っておこう。

 

「そういえばカズマはどのくらい戦えるんだ?」

「ここらへんのモンスターは絶対に無理ってくらい」

 

つまりロクに戦えないと、カズマはレーダー以上の期待はしないほうがいいな。

 

「というか、そんなレベルで逃げれるか?」

「逃走スキル持ってるからそれは平気だよ。あ、おい!何かいるぞ」

 

カズマが何か見つけたらしく道の先を指差す。

私も視線を向けるが遠すぎて黒い点にしか見えない

仕方ないのでカズマに聞く。

 

「カズマ、何がいた?」

「多分、オークだと思う」

 

『オーク』

豚の頭を持つ二足歩行型のモンスターで、繁殖能力が高く年中発情している生物。

日本ではRPGなどで雑魚扱いのモンスターなのだが……この世界は違う。

特に男に対しては。正直、こいつのせいで私が女になったのは幸運だったんじゃないかと思ってる……

 

「カズマはここで待っていてくれ、私が倒してくる」

「えっ!?あ、は、速っ!?」

 

カズマの驚きの声を無視して、オークの方に走り出す。

私はとある事情でオーク達にえげつないくらい恨まれてるのでできる限り仲間を呼ばれないようにたおさないと、ただ射程的に、見つけられてから魔法を撃つことになるので間に合うかどうか……

自身に近づいてくる足音に気づいたのかオークがこちらを向くが。

 

「あ、あんたは……」

「『ライトニング』!」

 

オークが何かを言う前にオークに手を向け魔法を唱えると、手から電気がほとばしる。

それは吸い込まれるようにオークに当たりオークは倒れる。

なんとか、仲間を呼ばれる前に倒せたか。

 

「私の仲間によくやってくれたわねぇ、あんた」

 

後ろから声を投げかけられる、どうやらオークは一人だけじゃなかったらしい。

変に気を使わず、サーチの魔法ちゃんと使っておくべきだったか……

ケモミミやらなんやらが生えた大量のオークが私の周りに展開する。

こんなにいたのか……これを全員倒すのは少々骨が折れそうだ。

 

「っ!!……あんた。まさかあの……!?昔、私達の集落に唐突に来て同族を大量に生け捕りした女ね!」

 

私の顔をみて一人のオークが目を見開いて言った。

昔、人間に比較的近い体を持つオークならポーションの人の適量を調べる実験台にできるんじゃないかと思って父と一緒にオークを大量に誘拐したのだが……やはり恨まれてるようだ。

ちなみに結果としては失敗だった。オークの体がでかすぎて人の適量がわからなかったのと、試しに媚薬飲ませたら暴走して父が犯されかけたのが理由である。

閑話休題。

この量のオークどうしたものか、別に倒しきれる量だけど、魔力がなぁ……ポーションでドーピングして殴り倒すか?

スコーン!!

と、ここで、私を取り囲んでいたオークの一匹が気持ちの良い音と共に倒れる。

後頭部には矢が刺さっている。

 

「お、おい!大丈夫か!」

 

遠くからカズマが声をあげる、その片手には弓。

どうやら私がピンチだと思って弓を撃ったらしい。

……まずい

すべてのオークの視線が私からカズマに移る。急に視線を向けられビビったのかカズマがひぃっ!と悲鳴を出す

そして次の瞬間、オークの群れはカズマの方に走り出した!

 

 

 

 

俺はオークをふらすこが倒しに行った後、本物の紅魔族なら問題ないと判断して、言われたとおり三人と合流していた。

そして元の場所に戻ると、ふらすこがオークに囲まれていた。

それを危険と判断し、素早く弓での援護をした、その判断は的確だと、自分でも自画自賛していたのだが……

 

「あんたって本当にいい男ね。あたしの仲間を倒すなんて!……絶対に逃さない。惚れちゃったわよ、どうしてくれるの?あたし、絶対にあんたの子を産むわ!!」

 

今は走りながらその判断を全力で後悔していた

砂埃を撒き散らしながら、後ろから迫りくる大量のオーク、なんでこんなことに!?

 

「最初は男の子がいいわねぇ!オスが六十匹にメスが四十匹!そして海の見える白い家で、毎日あたしとイチャイチャするの!」

「助けてぇ!めぐみん!!ふらすこさーん!!」

「こんな近くで爆裂魔法を使うと私達も巻き込まれてしまいます!!ふらすこが戻ってくるまでなんとか耐えましょう!!」

「クソぉぉぉ!!本当に何なんだよこの世界は!!普通オークってのは男じゃなくて女を襲うもんだろ!」

「そうだ!なんで男のカズマが襲われてるんだ!そういうのは私の役目だろう!」

「カズマ!今この世にオークのオスはいません!!今ではたまにオークのオスが生まれても、成人するまでにメス達に弄ばれて乾涸びて死にます。おかげで、今いるオーク達は混血に混血を重ね、各種族の優秀な遺伝子を兼ね備えた、もはやオークとは呼べないモンスターです!!」

 

めぐみんが俺と並走しながらオークの情報を伝える。

それを聞いてダクネスが驚いたようにめぐみんに質問する。

 

「ま、待て、オークといえば女騎士の天敵だ!性欲絶倫ので、女とみるや即座に襲いかかる、あの、オークのオスが……」

「もういません。……彼女達は優秀な遺伝子を持つ強いオスを求めています。そしてオークを倒してしまったカズマは……その……」

 

めぐみんが、最後になると言い難そうに声を落とす。

つまり、俺は狙われてるってことですね。

それを理解した俺は叫んだ。

 

「まじでこの世界ロクでもないな!!」

 

ていうかさっきよりオークが近い!怖い!

この調子だと追いつかれると思った俺は、ダガーを取り出し前に突き出す。

だが、優秀な遺伝子の良いとこ取りをしたオークは、巨体に見合わぬ速度であっさりとダガーを弾き、俺を地面に押し倒した。

バカでした。

この危険地帯で生き抜くオークの力を舐めてました!

俺は、オークにのしかかられながら必死に叫んだ!

 

「話をしよう!話をしようっ!!」

「エロトークなら喜んで!さあ、話してごらん?あんたの今までの恥ずかしい性癖をさ!ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ」

 

駄目だ!話が通じねぇ!!

貞操の危機を感じた俺は、周囲に助けを求める。

 

「助け!助けてぇ!」

「『ライトニング』!」

 

オークが荒い息を吐きながら、俺の上着を引きちぎろうとしたとき、横から電流がほとばしる。

ふらすこが追いついてくれたらしい。

 

「ふらすこさぁーーん!!感謝しますうううっ!!」

「ちょっ!?まとわりつくな!早く逃げろ!この数は抑えきれるか怪しい!『インフェルノ』!」

 

俺がふらすこに抱きつくがすぐに振り落とされる。

そしてふらすこが魔法名を唱えると巨大な火炎がオーク達に飛んでいき、オークを焼いていく!

おお!これが本当の魔法!どこかのネタ魔法とは大違いだ!

 

「『ボトムレス・スワンプ』!」

 

俺が状況を忘れ魔法に感動していると、聞き覚えのある少女の声が響き渡る、それと同時、悲鳴が上がった

オークの方を見ると、そこには大きな泥沼の中でもがくオーク達の姿がある。

この聞き覚えのある声といい、魔法といい、まさか!

 

「ゆんゆん!ゆんゆんじゃないか!」

 

どうやら俺たちに追いついたらしいゆんゆんに声をあげる。

 

「大丈夫ですかみなさん!今の内に逃げましょう!」

 

 

 

 

オークの縄張りの平原地帯を抜け、森の中に入った私達は、そこで小休止する事にした。

 

「ゆんゆんもいれば、モンスターなんて怖くないわね。もう楽勝じゃない」

 

アクアがそう言う、事実まともな紅魔族二人いれば足手まとい4人でも楽勝だろう。

 

「ゆんゆん、ふらすこ改めてありがとう。感謝するよ。どのくらい感謝してるのかというといえば、これからの人生で毎日ありがとうと言うくらい感謝してるよ。ありがとう」

 

気持ち悪い事をカズマが言う。

普通にやめてほしい。

 

「ところで、皆は何故こんな所に?」

「いやな?めぐみんがゆんゆんのこ「違いますよ!妹が!妹が心配になりましてね、ほら、あの子は色々無茶をやらかす子ですから!」

 

ゆんゆんの質問に対して答えようとしたカズマをめぐみんが横から止める。

相変わらずツンデレのようだ。

 

「い、いやそうじゃなくて、ふらすこ……テレポート使えた……よね?」

 

ゆんゆんが確認するかのように私に聞いてくる。

それを聞いてカズマ達が私に『えっ』と言わんばかりの視線を向ける。

はぁ……、ゆんゆんは空気読めてないというか……なんていうか。

私は、彼らに微笑んだあと。

 

「『テレポート』!」

 

魔法を唱えた。

 

 

 

テレポートした場所はモンスターがひしめく森の中、太陽は木の葉に隠れて見えない。

……一応言い訳しておくと、テレポートポイントを紅魔の里じゃなくて森の中にしていて、ここから紅魔の里まで守り切れるかわからなかったからテレポートを使わなかったのである。

さて、紅魔の里に向かいながら素材でも集めようか

 

「あら、こんなところで、何をやってるのかしらあなた?」

 

そんな私の計画は後ろから投げかけられた声で壊されたのであった。




主人公のクズさがだんだんあらわになってきてますねぇ……

次回戦闘、ガチガチの戦闘にするかこのすばらしい戦闘にするかどっちにするか迷ってます

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第九話

ごめんって、ごめんって、いやまじで

言い訳すると小説書いてました
多分ハーメルンには投稿しないけど

後、ガチ戦闘になっちゃった


「あら、こんなところで、何をやってるのかしらあなた?」

 

後ろから声をかけられる。

私は嫌な予感をするなか、後ろを振り向きながら返答する。

 

「少しポーションの素材を採りに来たんだ、邪魔しないでほしいな」

 

声の方を向くと、そこにいたのは胸元の大きく開いた赤いドレスを着た、少し褐色気味の肌の美女がいた

右耳には青いピアスをつけており、一見すると人間にしか見えない

 

だが彼女の後ろ、大量にいるモンスター、それが彼女が人間ではないことを証明していた

思い出すのは、族長の手紙にあった

 

『魔法に強い抵抗を持つ魔王軍の幹部が送られてきた』

 

という部分、おそらくこの女性が手紙に書いてあった魔王軍幹部なのだろう

 

「そう、それは無理な相談ね。アタシはいままでアンタたち紅魔族に散々にやられてきた、それをこんなチャンスが転がって来たんだから逃すわけ無いでしょう?」

 

赤いドレスの美女が私の要望をばっさりと切り捨てた。

そうだよね、逃すわけないだろうね、多分私を人質に取るつもりなんだろう。

やはり今日は運がない……運のステータスはそんな低くなかったんだけどな。

あの四人組が原因だったりしないよな?

ああ、どうするかな、どうせ里の他のやつが倒すだろうと思ってかさばるポーションはそこまで持ってきてないんだよな、この状態じゃ魔王軍幹部には勝てないし、なんとかテレポートで逃げれるか……

とりあえず可能性は薄いが里の誰か(主にクソニートあたりが)がここに来るのを願って時間稼ぎでもしよう。

そしてクソニートだったら盾にして逃げよう。

そう考えた私は、適当に彼女に話しかける。

 

「君が紅魔の里に送られた魔王軍幹部かい?どんな名前なんだ?」

「ふふっ、こんな状況でいい度胸ね、いいわ教えてあげる」

 

そう言って彼女は微笑み、少し息をためて。

 

「我が名はシルビア!強化モンスター開発局長にして、自らの身体に吸収し、合成と改造を繰り返してきたもの!そう、アタシはグロウキメラのシルビアよ!」

 

…………どうやらこの人も紅魔族に散々やられてきたらしい。

不覚にも少し共感を覚えてしまった。

ていうか、グロウキメラ?キメラは何回かあったことあるけど人型のキメラは初めてだ。

ていうことは彼女……シルビアは新しい素材になるってことだよね?

 

それを理解した瞬間私の中でなにかが、カチッと鳴った。

 

 

 

 

 

シルビアは慢心していた。

いつもなら慢心なんてしないシルビアだが、今この瞬間は慢心せざるをえなかった。

今まで散々、煮え湯を飲まされてきた紅魔族

アイツらに対抗できる!ようやくだ!

今までの苦労もあってその喜びはデカかった、それこそ慢心してしまうくらい。

だが、シルビアは慢心するべきじゃなかった。

相手は一癖も二癖もある紅魔族、それを忘れるべしじゃなかったのだ。

例え自身が圧倒的有利な状態でも

 

 

「へぇ?色んな生物を吸収するキメラか、面白いね、それってつまりは他の細胞と拒絶反応を起こさないってことかい?でもそれっておかしいよね、それだと抗体がないってことになっちゃうからね?魔王軍幹部が病気にかかって死んだなんて笑い話もいいところだものね、じゃあどうなってるのか?仮説だけど、合体するときに抗体が機能を停止するとか?それとも元から病原体と別の扱いにされてるのかな?それともそれとも抗体とは別のものを持ってるとか?それともそれともそれとも病気といったものに耐性があって抗体を持ってないとか?ああ、最後二つはほとんど同じか、まぁどうでもいいんだけどさ、僕はそれよりももし脳を吸収するとどうなるのか気になるな、記憶を吸収できるの?その時の感情も?記憶がどこに入ってるのかは未だによくわかってないからね、案外君を使えばそれがわかるかもしれない、臓器移植でできないことができるようになったっていうのもあるし、君にも似たようなことが起こるかな?ああ、臓器移植といえば君に他の生物の皮膚とかを外部から移植するとどうなるかも気になるな、この場合は拒絶反応が起きるのかな?それとも起きない?もし起きるんだったらさっきの仮説は否定されることになるよね、気になるなぁあと取り込んだあとなんで神経がくっつくのかも気になるなぁおかしいよね普通生物によって神経の位置は違うものそもそも哺乳類とか鳥類とか魚類とかで整体に大きく変化するよね、もし体の下半身を魚とか鳥にするとどうなるんだい?産むのは卵?それとも子供?それともそれとも何も生まれない?ていうか下半身だけじゃなくて上半身も変えちゃったらどうなるの?例えばなんだけど君の下半身切り取って魚の下半身をつけるそして上半身も切り取って魚の上半身をつける、そしたら君の体はどうなる?魚になるのかい?それとも切り取られたほうが本体?それとも分裂しちゃったり?それともそれとも死んじゃったり?もし魚のほうが本体なら面白いね、あ、でもこの実験を君が死んじゃったら他の実験ができないねじゃあやれないか、ああ残念だなぁ……あ、そうだ、君のクローンを作ったらどうなるのかな?君の体には色んな生物のDNAとかが混ざってるわけだけどそのDNAを使ってクローンを作ったらどんな生物が生まれるんだろう?君が生まれる?それともその部分の元になった生物が生まれる?もし君が生まれるならさっきの実験も試せるね、あ、でもこの世界の科学力じゃクローンはちょっと難しいかな、父に頼んだら作れないかな?あの人ホムンクルス作ってるわけだしこれを応用すればクローンができる気がするな、父はホムンクルスを作るとき自分の髪を使ったって言ってたし、じゃあやっぱりできるかもね嬉しいなぁ、それと君ってもしかして無機物とも合体できたりするのかい?正直信じられない話だけど父がそんなキメラがいるって言ってたんだよね、父はバカでアホだけど天才だし多分本当のことなんだよ、君は魔王軍幹部なんだろう?なら種族のなかでもトップクラスなはずだ、多分できるんだろうね、さっき神経とかどうなってるのか気になるって言ったけど無機物に関しては神経どころじゃないね、神経ないんだがら自由に動かせるならそれはもうすごい、あ、今一つ仮説を思いついたよ、もしかして身体を動かすのに筋肉以外のものがあるのかな?それを合体した物質に入れれば動く的な……いや流石にこれはないか、そういえば君の素の身体はどうなっているんだろうね?多分君は色々なものを取り込んできたんだろうけど素の身体の部分も残ってるんだろうね?ああ気になるなぁ調べたいよ、まぁでも僕の専門は残念ながら生物学じゃないんだよね、僕としては君がどんなポーションの素材になってくれるのかが気になるね、君のどんな生物とも合体できる細胞はどんなポーションを作れるか想像できないよ、猫耳とか犬耳とか生やすポーションは作ったことあるけどこのポーション達はもともと身体を猫とか犬に変えるポーションを作るつもりで作ったんだよね、なんで断念したのかって言うと身体に変化が大きすぎて耐えられなかったんだよね、オークで試したから間違いないよ、効果自体は成功してたから猫の死体が残っただけだったけどね、もしこれを君の細胞を使えば身体に対する負荷を大きく抑えられるかもしれない、他にも君のように他の生物の身体を取り込める身体になれるポーションが作れるかもしれないこれもいいね、人間の身体能力を上げたり色々できる正直ポーション効果によるドーピングは限界を感じていたんだ、これはいいアプローチになるのかもしれない、ああ、想像できないって言ってた癖に想像できてるじゃないかって?いやいやそんなことないよ、そもそも君の素材を使ったポーションが君の特徴を出すとは限らないからね、悪魔の素材が特効薬になるように、だから君の素材がどうなるか気になるんだ、髪の毛、爪、腕、脚、心臓、骨、筋肉、ああこの素材達で何が作れるんだろう?僕は気になって夜も眠れないかもしれない、もしそれを知れたら死んでも……ああいや死にたくはないかな、まだ色々研究したいんだ、君の身体以外にもリッチーとかドッペルゲンガーとか人間とか色々研究したりないんだよ、ああそうだ君の知り合いに今言った生物で弱いやつとか知らない?部下とかにいたりするだろう?予想だけどさ、もしいたら教えてほしいな研究したいんだこいつらレアすぎてどこにもいないんだ、ああ、いや魔王軍幹部にいるのは一応知ってるんだけどさ、やっぱ弱いほうが研究するぶんには楽なんだよ、あ、でももちろん強いやつと弱いやつの身体の差とか気になってるんだよ?でもこれ研究するには色々足りないんだ残念だけど、あ!そういえば忘れてたけどリッチーに人間からなれる禁忌の術とかあったね、それをした場合肉体が残るって聞いたんだけどその肉体も調べたいなきっと面白いことがわかるんだでもこのタイプのリッチーはレアすぎてどこにもいないんだよね本当に残念、自分がそれを使えばリッチーになれるし正直寿命的に研究する時間がたりなさそうだからいつかしようかなって思ってるんだけど、それすると周りから疎外されちゃうからね、それは避けたい、あ、でも肉体がなくならないなら人間に紛れ込むことも可能かもしれないな、試せないからわからないけど、ああ、話がずれたね今は君の可能性について考える時間だったいや違ったかな?まぁどっちでもいいか、今の僕の話をわかってくれるなら協力してほしいなわかってくれないならむりやり奪い取ることにするよ、あ、でも君って魔王軍幹部なんだっけ?それも魔法につよいとか言ってたっけ?じゃあ僕じゃ倒せないかもな、父と一緒なら多分倒せるけどあの父を頼るのはムカつくし、そもそもここにいないわけだし、じゃあ倒すのは諦めようかな、髪の毛とできれば爪とかもほしいやくれたりしない?だめかな?だめならいいや倒せなくても奪い取るくらいなら僕の力でもできるからさ、最悪紅魔の里に来たとき父と一緒に倒せばいいし」

「ひっ」

 

自身の自己紹介のあと少し止まったかと思えば凄まじい速度で言葉を並べていく少女に本能的な恐怖を感じたシルビアは、柄にもなく悲鳴を出す。

いや悲鳴が出た原因は言葉だけではない、視線だ。少女の視線はこちらを値踏みするような、まるでシルビアの価値を見るような視線だ。

不覚にもシルビアはそれに怯えてしまった。

だから、シルビアは少女がポーションを飲むのを止めれなかった。

もし、もしここでポーションを飲もうとするのを止めれていたら、それができていたら紅魔族に対抗できたかもしれない。

すでに手遅れな話ではあるのだが。

 

少女がポーションを飲みきった瞬間、少女は消えた。

 

「は?」

 

シルビアがそれを認識したのは自身の腹に蹴りが叩き込まれたことに気づくのと同じだった。

間の抜けた言葉と共に吹っ飛び木に叩きつけられ、口から空気がもれる自分の体。

そしてその後ろから聞こえた魔法の詠唱

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

シルビアは神がかりな反応を見せて、なんとか身体を動かして前に回避する。

自身の真上から迫った手刀はシルビアの髪の毛を切り取るだけに終わった。

 

「これで殺れたら良かったけどハズレ、残念、まぁいいや髪の毛は取れた、じゃあ次は爪かな、ああ、でも爪だけ取るのは難しいなじゃあ腕を切り落とそうか、ああでもさっきのスピードを初見でぎりぎりとはいえ避けれるなら厳しいかな、まぁやるけどさ」

 

シルビアの後ろに着地した少女は左手には髪の毛、右の手は光り輝いた状態で独り言をブツブツと呟いた、そして左手の髪の毛を白衣のポケットにしまう。

 

「あ、あんた、何もっっ!?」

 

シルビアが喋ろうとした瞬間、地を蹴って少女がシルビアに突撃する。

シルビアは身体をずらしなんとか回避する。

だが少女は止まらない、今度は木を蹴って、地を蹴って、挙げ句の果てにはモンスターを蹴って、シルビアに突撃する。

だがシルビアもこの状況で慢心はしない、少女の攻撃を避けていた。

しかしシルビアは焦っていた。

何故なら……

 

(速すぎて攻撃できない!)

 

少女の猛攻をなんとか防ぐシルビアは防戦一方だった。

躱すことはできる、見切ることもできる、だが攻撃できない。

下手に攻撃に出たらその隙をつかれる、そもそもこの速さの相手に当たるわけがない。

いや、攻撃する方法はある、シルビアの得物はムチ、範囲攻撃もできるし、攻撃も速い、だが彼女のムチは今彼女の手にはない、相手が一人それも少女だと慢心してたつけが回ってきたのだ。

 

(さっきポーションを飲んでいた事を考えると恐らくこの速さはポーションの力ね、ならポーションの効果切れまで待つ!)

 

シルビアだって魔王軍幹部、避けながらでも的確に戦略を練っていく。

基本的にポーションには効果時間というものがある、なのでそれまで耐える。

少女もそれをわかっているのか動いた。

 

「【黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混淆を望みたまう】」

 

(詠唱!?)

 

少女が短剣を取り出し高速移動と攻撃をしながら魔法の詠唱を始めたのだ、これにシルビアは目を見開く。

いや、詠唱自体に驚いたのではない、これだけ動き回りながらだ。無詠唱だと魔力が制御できないのだろう、それくらいは予想できる。

では何に驚いたのかというと。

 

(今まで聞いたことない詠唱!?)

 

今までたくさんの魔法使い、魔法剣士などと戦ってきたシルビア

だが、この詠唱には全くもって聞き覚えがないのだ。

それに、シルビアは嫌な予感がした。

この魔法を撃たせたらまずい、という予感が。

 

「【覚醒の時来たれり。無謬の境界に落ちし理。】」

 

そんなシルビアの心情を無視して少女の詠唱は攻撃と一緒に続いていく。

このままではまずい、シルビアはそう思った

だから、シルビアは賭けに出た。

少女の攻撃を回避すると同時に腰につけていたムチに手をかける。

もちろんその隙を少女が逃すわけがない、チャンスと言わんばかりに突撃してきた。それに対しシルビアは少女の短剣に自ら左手を突き出した。

今度は少女が目を見開く番だった、まさか自分から攻撃を食らいに来るとは思わなかったからだ。

少女の体が驚きとともに固まる。

 

「油断したわね?」

 

その隙をシルビアは逃さない、シルビアは自身のことを棚に上げてそう言い放ち、右手に拳を作った。

ムチでは攻撃が間に合わない、だから拳で。

少女に当たればそれでよし、当たらなくても詠唱を中止できればよし。

まさに肉を切らせて骨を断つ、そのシルビアの拳に少女は。

 

「『テレポート』!」

 

素早く今まで唱えていた詠唱を中断し、テレポートを唱えてシルビアの前から消えた。

虚空を空振る拳を見て、シルビアは舌打ちと共に拳を解く。

人質も取れず、紅魔の里に攻めるまでに無駄な消耗をしてしまった。

とんだ災難だと、自嘲気味につぶやく。

ここでシルビアは油断してしまった、先程油断で負けかけたというのに。

 

「ぐッ!?」

 

左肩に走る鋭い痛み。

まさか、まさか、そう思いながら、後ろを向くと、少女が自身の肩に短剣を振り落としていた。

ここでシルビアは気づいた、少女が逃げてなんていないことに、そして今の自分が立っている場所が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

少女は逃げていなかった。逃げたと思わせてシルビアの後ろを取っていたのだ、テレポートしてすぐに攻撃しなかったのは逃げたと思わせて油断を誘うため。

シルビアの腕を切り落とそうと、少女の手に力が入る

シルビアも抵抗するがなかなか振り払えない。

そして短剣がシルビアの骨に届くその瞬間、ガリッ!とシルビアの腕、いや短剣から音がなった。

チッと舌打ちして少女が短剣を引き抜いて後ろに下がる

その短剣は刃の部分が取れていた。

今まで少女に無理な使い方をされていた短剣に限界がきたのだ。

 

「最悪、魔法に強いらしいから使ったけど、やっぱり安物は駄目だ、後で鍛冶屋のおじさんにオーダーメイド頼もう、たしか貴族が自分の鎧を使ってくれてるって言ってたし腕は確かなはず、ああ、本当に最悪、もう一度やりたいけどもう時間切れだ」

 

少女が不機嫌そうに呟く。

 

「『テレポート』!」

 

そして少女は魔法を唱え今度こそ逃げた。

 

 

 

 

興奮しすぎた、あのポーション飲むと面倒なのに。

 

アクセルの家にテレポートで帰ってきた私は床に倒れ込む。

新素材だからって興奮しすぎた、特にあのポーションは五分間ステータスが数十倍になる代わりに7日間はステータスが激減する強力なやつだ。

これから一週間は不便な生活が続くのを覚悟しなければ。

 

「まぁ、でも」

 

ポケットに入ったグロウキメラの髪の毛、それと短剣に付着した血を見る。

 

「さぁて、これで何が作れるかなぁ」

 

私は顔に笑みを浮かべた。




主人公の強さについて

ポーション込みの本気ならウィズに匹敵する強さがあります。
主人公が強い理由は、結構ちゃんと設定はあります。
取り敢えずカズマとかそんなレベルじゃない苦労があったとだけ言っておきます。
まぁ、これについてはいつか失踪する前に()

どうでもいい蛇足
シルビアの三人称は彼女か彼のどっちにすればいいのだろうか?

作者ツイ↓
https://mobile.twitter.com/furosuto2809


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第十話

遅れていないの久々すぎない?

今更ヒロアカ買ったらヒロアカの二次創作が書きたくなりました。


暗い暗い森の中、風か、動物か、それともモンスターか、どこかの木々がかさかさと揺れる。

そんな暗闇を暗視のポーションを飲んだ私は里を目指して走り抜けていた。

いつもなら素材を採取しながら行くところだが、ステータスが落ちてる今はやめたほうがいいと判断して走り抜けている。

 

『ウォオオオオオ!!』

「『ブリザード』」

 

目の前に出てきた一撃熊を魔法で凍らせ、蹴り飛ばす。

ステータスが落ちてるといっても数で来られなければ問題なく倒せる。

 

『『『ウォオオオオオオオオオオ!!』』』

 

……フラグ立てた私が悪いか。

 

 

 

 

大量発生した一撃熊を苦労して倒し、せっかくだからと欲張って素材を取っていたらもう一回バグベアーの群れに襲われつつ、なんとか森を抜け、里にたどり着く。

里は時間が時間だからか皆寝静まっているようだ。

そういえばカズマたちはどこに泊まるんだろう?とか考えながら実家に向かって歩いていく。

そして自宅、正直に言ってみすぼらしい家だ。

外見は、であるが。

ただいまーとなんとなく言って玄関を通る、返事は返ってこなかった。

リビングに行ってみると、紙やらなんやら泥棒に荒らされたかのような状態だ。

思わず、はぁとため息が出る。

私が出るときにきれいに片付けたのだがな。

まじで、あのクソ父が……掃除しろと何度言ったか

そして人の気配がしない。

つまり父は出掛けている。

こんな時間、父が出かける場所となるとあそこしかないか。

 

 

 

 

「いらっしゃい。おっふらすこじゃないか帰ってきてたの?久々だね?」

 

ドアを開けると髪の長い紅魔族が話しかけてくる。

酒場『サキュバス・ランジェリー』どっかのアホな紅魔族が考えだした名前の旅人や冒険者を騙す酒場である。

今まで何度も騙された人を見たことがある。

 

「やぁねりまき、めぐみんとゆんゆんの付き添いでね、久しぶり」

 

カウンター側にいるねりまきに返答する。

久しぶりといっても私が里を出る前にも来てたからそんな久々ってわけでもないのだが。

昔は2日に一回はここで飲みふけってた弊害か、そんなことを考えながら座る。

いつもの、と言うとすぐに酒が目の前に置かれた。

横には飲みすぎたのかテーブルに突っ伏して寝てるダメ人間みたいな見た目の男がいた。

 

「おい、起きろ」

 

そのダメ人間とは私の父である。

背を叩くが起きる様子がない、どうやらかなり飲んでたようだ。

…………ムカつく、この父の状態と、これが父であるということに。

幸せそうに寝てる顔にムカついた私は、ポケットから一つポーションを取り出して父の口にぶち込んだ。

 

今飲ませたポーションの効果は酔を覚ますポーションだ。

結構強力なやつで寝落ちしてるやつに飲ませても数秒で起きあがある品物だ。

もちろん強力な分、副作用はあって。

 

「うっぷ……」

 

父が唐突に立ち上がって口を抑えながらトイレに駆け込んだ。

まぁ、そういうことだ。

 

 

 

「帰ってきてくれたのか娘よ!!」

「うるさい、他の人に迷惑だから黙れ」

 

私の姿を見て騒ぐ父を黙らせる。

多分、ここまで騒いでるのは私が里を出たとき、ほぼ家出……いや、どっちかと言うと夜逃げみたいな感じで出たからだろう。

 

「娘よ〜、帰ってきてくれて嬉しいぞぉ〜、今日はお祝いに朝まで飲むぞ!!」

「黙れって言ったの聞こえなかったか?」

 

このクソうるさい父、あるけみはこんなんでも国から認められている本物の天才錬金術師なのだが……他の部分が壊滅的だ。

主に頭と家事と料理。

とくに料理に関しては初めて見たとき、ポーションの素材になるのでは、と思ってしまったレベル。

研究者としては尊敬できるんだけど……人として尊敬できん。

 

「ねりまきちゃん!お酒頂戴!」

「さっきまで酔いつぶれてたくせによく飲むな」

「仕方ないだろう?娘がアクセルから帰ってきてくれたんだから!」

「言っとくけどめぐみん達が帰ったら私も……おいまて、なんで私がアクセルにいることを知っている?」

 

私は父に何も言わずに出てったのでアクセルにいることを父は知るはずもないのだが。

 

「ハハハハハハハハ!!実はお前がつけてる髪留めには発信機の機「『ティンダー』」あー!?お前それ作るのクソ大変だったんだぞ!?」

 

クソ父が人の髪結びに発信機つけてると言った瞬間、髪留めを解いて魔法で燃やし尽くす。

にしても、娘に発信機って……ただの変態じゃねぇか。

 

「お前それ作り直さないからな!?ステータス隠せなくなるけど仕方ないよな!?だってお前が壊したんだもの!!」

 

一応あの髪留めはステータスの隠蔽効果があった、アクセルに見合わないレベルを冒険者登録の際に驚かれないようにとつけていたが、まぁ別に同効果のポーションを作ってるので別にいらない。

それを抜きにしても、発信機のついた髪留めはつけたくない。

ムカついたので酒を飲み干してもう一度酒を頼む。

すると、私が頼んだものを持ってきながらねりまきが話しかけてきた。

 

「ねぇ、ふらすこ、向こうでのめぐゆんがなにしてるか教えてよ」

「別にいいが私もあまり関われてるわけじゃないからな、えーと、めぐみんは……パーティーメンバーにセクハラされてたな」

「へー、めぐみんにセク…セクハラ!?しかもパーティーメンバー!?も、もしかしてあのめぐみんが男!?」

「私もそれは知らないが……まぁ、仲は悪くなさそうだったな」

 

横から見てるだけでもめぐみんはかなり楽しんでそうだったし、仲が悪いってことはないだろう。

 

「そんな……嘘でしょ、私はてっきりあの二人がくっつくのかと……ま、まさか、ゆんゆんにも男がいたりしないよね!?」

「ゆんゆんは、男どころか女も一人もいない」

「ねぇ、それはそれで心配なんだけど」

 

ゆんゆんなぁ、うーむ、まだ一週間程度だが、あいつが私とめぐみん、カズマ、ダクネス、アクア以外と話してるのを一回も見てないんだよな。

流石ゆんゆんと言うべしか……

と、ここで横でちびちびと酒を飲んでいた父が唐突に立ち上がり叫んだ。

 

「二人して俺を無視してるんじゃないぞ!その話俺も混ぜろ!」

「ねぇ、他にはなんかないの?」

「うーん、そういえばめぐみんのパーティーメンバーは里に来てるぞ、明日にでもあったらどうだ?」

 

流石酒場の娘と言うべしか酔っ払いの扱いになれているねりまきが父のことをガン無視する。私もそれに乗っかる。

 

「へー、来てるんだ、からかいついでに会ってみようかなぁ」

「おーい、無視するな。それ以上無視したら俺の魔道具が火を吹くぞ」

「あ、あと、めぐみんの仲間あと二人いるから」

「二人?どんな人なの?」

「おーい、いいのかぁ?俺の魔道具が火を吹くぞ、例えばこれは冒険者のスティールを再現した魔道具でだな……」

「アークプリーストのアクアとクルセイダーのダクネスって人、ちなみにどっちも女性」

「えっ!?それってまさかハ、ハ、ハ、ハーレムってやつ!?」

 

横から見てた感じそんなことなかった気がするが、面白そうなので頷いておこう。

 

「おーい、流石にこれ以上無視は辛いんですが」

「ま、まさかめぐみんがハーレムの一人に落ちぶれるなんて……」

「私もあいつが男に気を許すのは予想外だったな」

「よし、俺の魔道具が火を吹くぞ、この魔道具は盗賊のスティールを再現したやつでな、これでねりまきちゃんの下着を……」

「『テレポート』」

 

横がうるさいのでテレポートを放っておく。

その数秒後店の扉がバン!と音をたてて開かれた。

そこにいたのは父。

私は森の奥のほうに飛ばしたはずなんだが戻ってくるの早すぎないか?

その私の疑問を表情で察したのか父は言った。

 

「俺はこの店の目の前にテレポートポイントを設置してるからな!」

「殴るぞ」

 

本当に何してるんだコイツ。

昔からほぼ毎日ここに通い詰めてると思ってたがこれほどか。

ちなみに私の家からサキュバス・ランジェリーまでは徒歩で5分かからない距離だ。

 

「殴りたいなら殴るんだな!俺の目にかかればお前のステータスが落ちてることなど水を見るより明らかなのだよ!」

「なぁねりまき、いじるネタにめぐみんがどんなセクハラされてたか教えてやるよ」

「せめて突っ込めよぉ!」

 

あー、聞こえない聞こえない。

もうコイツに酒飲ませて潰したほうがいいか?

てかもう帰ろうかな、デカすぎてアクセルに持ってこれなかったポーション作成の機器を使いたくて来たのだが……ついでにカズマ達に謝ることも。

いや、まずこの店に来るべきじゃなかったか?

でも久々にここのお酒飲みたかったからなぁ……アルコール濃度80%超えの酒(私が要望して無理やりメニュー加えてもらった)とかどこも出してくれないし。

ここまでのアルコール濃度なら少しだけだが酔うことができる。

本当に少しなのがつらいが。

 

「そういえばさ、ふらすこ」

「なんだ?」

「なんか女っぽくなってない?」

 

ねりまきの質問に思わず固まる。

 

「お、女っぽくってどんな?」

「いや、なんていうか細かい仕草、というか色々変わってるなぁって」

 

仕草か、原因として考えれるのは……あ

気づいてしまった瞬間、体がぷるぷると震えだす。

 

「ちょ、ちょっとどうしたの!?」

「すまん、その話題なしで」

 

アクシズ教、金髪プリースト、お着替え、メイド服、ゴスロリ、銭湯、セクハラ

もう、あれは、思い出したくない。

 

体の震えを抑えるため、震える指で酒を傾ける私だった。

 

 

 

結局朝まで飲んでしまった私は、またあの酔い覚ましを飲まされ気持ち悪そうな父と共に帰路についていた。

あ、そうだシルビアのこと頼んでおこう。

 

「なぁ、今来てる魔王軍幹部のやつ倒せないか」

「魔王軍幹部?シルビアのやつのことか?」

 

父は顔を青くしながら、まるでシルビアのことを知っているかの口調で言った。

 

「まるで知り合いかのような口ぶりだな」

「ん?ああ、言ってなかったっけ?俺魔王軍幹部だよ?」

「……は?」

 

は?




キャラ紹介
あるけみ
ふらすこの父、錬金術師としてはとんでもない天才で国からも認められている。
ただかなりのダメ人間、さらに純粋な紅魔族なので紅魔族の性質も持ち合わせている。
ふらすこと同じくマッドサイエンティストなところがある。


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十一話

…………すまん

何があったかというと普通にエタりかけてました。
どのくらいエタりかけていたというと、この回が投稿されるまでの合間にヒロアカ二次の短編を投稿し、ダンまちの二次の小説が始まるくらい。


「つまり、魔王軍に入った理由は、魔王軍が所有している書物が読みたかったからと」

 

テーブルを挟んで座る父が私の言葉に首をぶんぶんと縦に振る。

父が魔王軍幹部とかいう、意味不明なことをカミングアウトされた私は、家で詳しい話を聞いていた。

聞いていたのだが……

 

「それで、入る際に結界の維持と魔王軍に攻撃をしない、そして、魔王軍に人間側が攻め込んできたときのみ、魔王城の防衛と」

 

父がまたもや首を縦に降る。

うん、うん、なるほどね。

 

「馬鹿なのか?いや、馬鹿だな?馬鹿なんだな?」

 

魔王軍に攻撃をしない、結界の維持、書物が読みたかったから、これらの理由はまだ!まだ!許そう。

私だって魔王軍の書物は気になるし。

最後の魔王軍に人間側が攻め込んできたときのみ、魔王城の防衛、これはまずい。

何がまずいって、こいつは国から認められている(世間からの評価は一応)天才錬金術士なのだ。

つまり、何が言いたいかと言うと、魔王軍に人が攻め込むときにこいつは確実に呼ばれる、確実に。

そこんとこ、どうするんだ?と聞いたら「裏切りってカッコいいよね!」とかほざきやがった。

どっちに裏切るつもりなのかはしらんが、紅魔族の特性の厄介さを久々に思い知った。

 

「待て待て、裏切りって言ってもあれだ、二重スパイって奴だ、ほらこういうのはもっとカッコいいだろ?」

「今そういう話じゃないんだよ」

 

というか、話を聞く限りこいつは魔王軍の機密情報とか手に入れてるわけじゃない。

なんかそういった情報ないのかって聞いたら、最近魔王が娘を超溺愛している、みたいなホントなのかも怪しいクソみたいな情報ばかり。

魔王軍攻略に魔王が娘を溺愛してる情報なんか役に立たねぇよ。

そして、私の頭をさらに悩ませることが……

 

「そうそう俺が魔王軍に入ったから自動的にお前も魔王軍に入ったから」

 

これである、なんとこの父、娘を勝手に魔王軍に入れやがったのである。

しかもなんか、こいつが私のことを魔王軍に言いまくった(しかも恐らく誇張している)おかげで私は、魔王軍幹部候補になってるらしい。

私は一応父と違ってとくに契約はされてないので、行動が制限されたりしないが……厄介事の種には違いない。

昨日のシルビアが私のことを気づかなくて良かった。

もし気づかれていたらと思うと背筋に悪寒が走る。

別に裏切ることに抵抗があるわけでもないのだがね。

 

「なんでそんな厄介事を持ってこれるんだお前は」

「いや〜、それほどでも」

「褒めてない」

 

この父の厄介なところは百害あって一利なし、のニートのような穀潰しではなく、百利あるところだ。

つまり下手に処分できない。

この父、こんなんでも割と人類の発展に協力してるのである(衰退に協力仕掛けたことも結構あったけど、ゾンビハザードとか)(そのたびに私が全力で止めた)

百害あって百利あり、これが私の父だ。

つまりただのクソ厄介者である。

昔、それも私が生まれる前はこんなんじゃなかったらしいのだけど……

なんだろう、親バカだったのだろうか?

前世にも今世にも(今世に関しては当たり前だけど)子供のいない私にはよくわからん。

 

「もういい、この話をしたくない、私がいない合間に何かやったか?」

 

やったか?というかやらかしたか?なのだが。

基本的にこいつは、自分のやらかしに気づかないのでこう質問しないと理解してくれない。

疲れた私は、コップに入れたお茶を口に注ぎ込む。

 

「んー、ライフルの開発が少し進んだことと、貴族の立場を買ったくらい?」

 

父の言葉にブッ!?と口からお茶が吹き出す。

 

「しゃ……爵位は?」

「侯爵!」

 

どうやら厄介事は尽きないらしい。

 

 

 

もう、言い訳を聞くのも怒るのもめんどくさくなって、本気でぶん殴るという原始的な方法で父を罰した私は、里にある鍛冶屋に来ていた。

シルビアとの戦いで刃のこぼれた短剣の代わりを探しに来たのだ。

ここの鍛冶屋の店主も紅魔族なので、すごく紅魔族しているが腕は確かだ。

どこかの大貴族が自分が作っている鎧を愛用しているとか言っていたし。

大貴族の娘なんて恵まれた立場で戦うなんて相当立派な娘なんだろうな、すこし見てみたいな、とか思いつつ鍛冶屋の扉を開ける。

 

「おうらっしゃい!ん?なんだ、あの引きこもりの娘さんじゃねーか。何が欲しい?お前さんみたいな理知的な表情の子には、このハンマーとか、ムチとかもオススメだぞ」

 

引きこもりというのは恐らく私の父のことだ。

確かに研究に没頭してよく引きこもって入るが言い方が凄まじく悪い。

否定はしないけど。

 

「そんな似合わない武器いらん、それよりオーダーメイドをしたいのだが」

「似合わないというギャップがいいんだよ、小さい女の子がでかい武器を振り回すのもいいが、理知的な子がえげつない武器を使うのも良い、どうだ?」

「いらない」

 

何言ってるのか全然わからん。

 

「で、オーダーメイドか、なんか要望あるのか?」

「切れ味に完全特化のナイフ、もしくは短剣をお願いしたい、できる限り刀身は細く」

 

普段の攻撃は基本的に魔法で十分なので、できれば素材採取に使えるようなものが欲しいのだ。

特に、龍の鱗とか硬くて面倒くさいのだ『ライト・オブ・セイバー』だと細かな作業が難しいし。

 

「なかなかえげつないことを言うじゃないか、分かったその条件なら2から3日あれば作れる。ところでそんなえげつない武器使うならこんなのもどうだ?これは毒を吸う短剣なんだがな、吸った毒を切りつけた相手に付与できる、他にも色々あるぞ」

「何度も言わせるな、いら……あ、いや、ちょっと待て、詳しく聞かせろ」

 

もしかして、それポーションも吸えるのか?

 

 

 

 

それは、鍛冶屋で結構いい買い物をして、鍛冶屋から出たときだった。

 

「あ」

「あ」

 

物陰に隠れる男……ぶっころりーと目があった。

……というか、こいつまだストーカー行為してたのか……

取りあえず魔法で……

 

「ちょっ、ちょっと待った!魔法唱えようとしないでくれ!?」

「なら今すぐストーカー行為を辞めろ」

 

このニート、ああ、いや、私がこの里から出てある程度たったしニートじゃない可能性もあるか、このニート。(暫定)は昔からとあるそけっとという女性にストーカー行為を繰り返しており、それを私が見つけるたびに魔法で攻撃していたのだが……

最近しないと思っていたが、私がいなくなったから再開したのだろうか?

取りあえず反省の色が見えないので魔法で氷の彫像にでもしておくか。

 

「いや、だから魔法を唱えないでくれよ!わかった!ストーカー行為はやめる!」

「そうか、じゃあ駄目だな」

「あぁあああああああああああ!!!!」

 

 

 

────しばらくお待ちください。

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、本気で魔法撃つの辞めてくれよ……」

「ならストーカー行為を辞めろ」

 

別に私も撃ちたくて撃ってるわけじゃないんだよ。

私に凍らされた状態から魔法で抜け出したニート(暫定)の涙ながらの訴えをばっさりと切り捨てる。

 

「別にそけっとに対して求婚するのはいいがストーカー行為は本当に迷惑辞めろ」

「なんか実感の籠もった言い方だね?」

 

それはどっかの自称美少女金髪プリーストに実際にされたからだな。

思い出したくないのであまりこういった話はしないでほしい。

 

「いちいち見かけたら魔法撃つのもめんどくさいんだ、早く告白して砕けてこい」

「せめて成功を祈ってくれよ!というか俺の社交性で告白なんて難易度の高いことできるわけないだろ!?」

 

自覚あんならストーカー行為なんてしてないで治す努力をしてほしいものだ。

できないからニート(暫定)なのだろうけど。

 

「だから、昔惚れ薬を渡してやったんだろ」

「そんなものを盛れる度胸も俺にはないんだよ」

「じゃあ酒の力を借りろ、酔ったときの勢いでそのまま……なんてのはありがちな話だろ」

「酔えるほど酒を買えるお金があるとでも?」

「じゃあ、働けよ」

 

もう私はこんなニート(確定)の恋のキューピッドとかいう不名誉なものになりたくない。

せめて仕事しろ仕事。

そうだな、酒に頼れないなら。

白衣の裏に取り付けている一本の試験管を取り出しニート(確定)に投げ渡す。

 

「何これ?」

「媚薬」

「いやだから、さっきこんなもの盛れる度胸ないって言ったよね!?」

「飲ませんじゃなくて、お前が飲むんだよ、性欲の力に身を任せろ」

「それただの強姦じゃないか!?ただのクズだよ!」

「ニートな時点ですでにクズだろ、これ以上落ちても問題ない」

「問題大アリだよ!」

 

駄目か……

注文が多いニートだこと。

……もうこっちでそけっとに媚薬飲ませてぶっころりーに手渡そうかな?

 

「そ、そうだ!勇気をくれるポーションとかないのか!?」

「媚薬ならあるぞ」

「それ以外で!」

 

媚薬以外で勇気をくれるポーションかぁ……

ああ、そうだ、確か一つだけそんなのがあったな。

 

「あるぞ」

「ほ、本当か!?それならそれを僕に!」

「そうか、これなんだがな、勇気がすごく湧くが、その勇気が綺麗に空回りする副作用があるんだよ。それともう一つ効果が切れたときにとんでもない自己嫌悪に襲われるんだが……いるか?」

「いらない」




話数ごとにホント文字数減ってくなこいつ。









果たして今までに前書きをツッコまれ修整した人がいただろうか()


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第十二話

やる気


 ストーカーを討伐したあと、一応カズマ達に謝っておこうとめぐみん宅に向かったのだが、非常に残念なことに入れ違いになってしまったので謝ることができなかった。

 というわけでごめんなさいはまたいつかということにしておく、謝る気はある、多分。

 その後は特に何も無く、あったことと言えば父があのストーカーに協力していたので私がボコったくらい。

 勘違いしないでほしいが、父が協力したのはストーカー恋愛に対してではなく、ストーカー行為に対してである。

 そんなこともあり、ストレスが貯まった私は昨日と同じく酒を飲みに来ていた。

 今日はいつもよりアルコールが美味い。ある意味ストレスは最高の酒のお供かもしれない。

 毎日は勘弁だが。

 

「ねりまき、おかわり頂戴」

「はいはい、今日はよく飲むね。私はもう寝たいのだけど」

「眠れなくなるポーションあるけどいるかい?これは副作用ないよ」

「眠くなるじゃなくて眠れなくなるなの?」

 

 飲むと強制的に五日はオールナイトが決定するポーションだ。

 残念なところは眠気は消えないところか。

 眠気すら感じないほど集中しているときはなかなか便利である。

 このポーションのおかげで研究中の気絶がなくなったしな。

 ちなみに集中出来ないときに飲むと眠気だけを永遠に感じる軽い地獄を味わうことが可能だ。

 拷問にオススメである。

 

「それもうポーション自体が副作用みたいなものじゃない」

「この効果目的で飲むから副作用ではない」

「屁理屈?」

「一応、正しい話」

 

 例えば二つの効果があるポーションあるとして一つ目の効果目的で飲むなら二つ目の効果は副作用になり、二つ目の効果目的で飲むなら一つ目のほうが副作用になるのである。

 なのでこのポーションの眠れなくなる効果は一応作用である。

 

『魔王軍襲来!魔王軍襲来!!既に魔王軍の一部が、里の内部に侵入した模様!』

 

 そんな雑談を酒を飲みつつねりまきとしていると、大きいサイレンが里中に流れた。

 名前なんだっけか?セルビアだっけ?が里に攻め込んできたらしい。

 

「なんか、おつまみある?」

「ちょっとは反応したら?」

「めんどくさい、他のやつらがどうにかするだろ」

「他人任せにもほどがあるよ」

「酒飲みすぎて酔ったからな」

「じゃあもうお酒終わり」

「ああ、まって、あと十杯は飲みたいんだ!」

 

 

 

 

 

 その後ねりまきが眠ってしまったので一応魔王軍のところに行くことにした。

 行ったところで弱体化した私はとくに何もできないが。

 せっかく行くんだし、もし他の紅魔族が魔王軍幹部を倒してくれたら素材を譲ってもらおう。

 あのキメラの素材が手に入ったら……ふふふ、考えただけで興奮する。

 正直、諦め気味だったが考えればまだまだチャンスはあるかもな。

 さて、魔王軍がいるのはここらへんかな。

 怒鳴りのような声が聞こえる方へ向かい、家で体を隠し、頭だけで辺りを見渡す。

 

 カズマが魔王軍幹部の胸に顔をうずめていた。

 

 ふむ……私は何も見ていない。

 何かとんでもないを見てしまった気がするが何も見ていない。

 いや、見たよ。何してんだあれ?

 もしかしてカズマって魔王軍の一員だったりするのだろうか?

 いや、それは流石にないだろう。

 じゃあ、なんだ?何があればあんな状況になるんだ?

 戦って人質に……いや、あれはどう見てもカズマから胸に向かっていた。

 もう一度見よう、もう一度、もう一度見れば何かわかるかもしれない。

 そう思い、先程と同じように顔だけをゆっくり家の端から出して……いないじゃん。

 何なんだよもう。

 

 

 

 

 先程見た光景について、もしかして何かポーション誤って飲んでしまって幻覚でも見ているのかと考察をしていたとき、地面が揺れた。

 それと同時に里の一角が突然騒がしくなった。

 

 先程の光景についての考察を一度取り置き騒ぎの方へ向かっていく。

 その途中で急いで走っている他の紅魔族と出会った。

 

「なんでそんな急いでるんだ?」

「ん?誰かと思ったら、あるけみさんのとこの子か、早く逃げたほうがいい、お前ではここから先生き残れん」

「もう少し詳しく言ってくれ」

 

 紅魔族特有のこの口調は抽象的すぎて説明には向いていない、というか会話に向いていない。

 なんだ?何かあったのか?

 

「我に語れることはもうない……ではさら――」

「話せ」

「あっ、はい、話します。話します」

 

 紅魔族結構小心者なところあるのでこうやってやさしく胸ぐらを掴んでドスを利かせればちゃんと話してくれる。

 

「ま、『魔術師殺し』が魔王軍幹部に乗っ取られたんだ」

「『魔術師殺し』?『魔術師殺し』は封印されているはずだろう?」

 

 魔術師殺しというのは魔法が効かないという対紅魔族とすら言える魔術師キラーの特性を持つ兵器だ。

 その危険性故に封印をされていたはずなのだが、魔王軍はそれを解いたのだろうか?

 それこそありえないと思うのだが。

 魔術師殺しの封印は普通の魔法による封印とは違いかなり特殊な封印をされている。

 そのため、封印解除も特殊で、まずこの世界では古代の言語とされている日本語が読める必要があり、さらにパスワードが必要になっている。

 日本語が使われている理由は私以外の転生者が関係していると思われる。

 この封印、私も父も一回封印を解いてみよう試したのだが、パスワードが不明のため解くことはできなかった。

 父は過去に不法侵入はしているらしいが……

 

「どうやったのか分からないが、魔王軍のやつが解除したらしい、今はみな魔神の丘へ避難しているところだ。俺たちも逃げたほうがいいだろう」

 

 『魔術師殺し』の危険を考えるとそうするべしと判断し、一度どうやって封印解いたのか?という疑問を置いて紅魔族特有の話し方をやめた男と共に避難した。

 

 

 

 

 

 丘の上で告白して結ばれたカップルは、魔神の呪いにより永遠に別れることができないと言われている、そこらへんのデートスポットとは比べ物にならないくらい厶ーディな場所である魔神の丘には、沢山の紅魔族が集まっていた。

 その中にはカズマ達もいた、あの時何があったのか聞きたくなったが、それより気になることがあるのでそれについて考える。

 『魔術師殺し』の封印についてだ。

 『魔術師殺し』の封印を解くには日本語を読める能力が必要だ。

 そして、この世界で日本語を読める人は少ない、一部の学者か、私のような転生者、そして転生者の子供ぐらいである。

 魔王軍に日本語を読めるやつがいるとは考えにくい。

 そうなるとどうやって解いた?それとも魔王軍が封印を解いたわけではないのか?

 里の中に内通者がいるとか……いや、この里で日本語が読めるのは私と父だけだ。

 そして二人とも封印の解除は失敗している。

 なら、部外者……あ、いるじゃないか日本語読めるやつ。

 カズマか?恐らく転生者であろう彼は日本語が読めるはず、というか読めないわけがない。

 ということはカズマは魔王軍の内通者なのだろうか?そんな雰囲気はしなかったが……ふむ、聞くか。

 こういうときは直接聞いたほうが早い、取りあえず嘘をついたら全身に刺されたような痛みを感じるポーションと拷問用のポーションを用意しとかないと……

 辺りの紅魔族が何故か盛り上がっている中、一人リュックからポーションを取り出していく。

 えーと、眠れなくなるポーションに……全身が痒くなるポーション、溺死ポーション、力を込めると込めた部位に痛みが走るポーション、慢性の毒ポーション、他には……回復ポーションも必要か。

 こんだけあれば十分か、何も吐かないなら最悪オークの入った檻に弱体化のポーション飲ませてぶち込めば男なら一日くらいで終わるだろう、何がとは言わないが。

 さてと、取りあえずカズマを攫うか。

 そう思い、立ち上がって辺りを見渡すがカズマ達が……いや、正確にはアクアとカズマがいなくなっていた。

 いつの間にかダクネスと紅魔族は魔王軍幹部と対峙している。

 取りあえず爆裂魔法を撃ちたそうにしているめぐみんの元に向かう。

 

「めぐみん、カズマを知らないか?少し聞きたいことがあるんだが」

「ああああああっ!?」

 

 めぐみんが私を見た瞬間関節技を繰り出してきた。

 逃げたことに対して、どうやらまだご立腹らしい。

 

「あなたよくもまあ、そんなひょうひょうとしてられますね!?謝ってくださいよ!」

「はいはい、後で謝ってやる。そんなことよりカズマは何処にいる?」

「そんなことより!?少しは申し訳ないという気持ちが湧かないのですか!?」

「湧いてはいるよ」

 

 謝る気もあるけど、今はそれ以上に優先したいことがある。

 

「で、カズマ達は何処にいる?」

「……もういいです。何言っても意味なさそうですし。カズマはアクアと一緒に魔術師殺しを破壊した兵器を取りに行ってます」

「ん?それって確か使い方が分からなかったはずじゃなかったか?」

 

 私は実物も文献も見ておらず、噂で聞いただけなので詳しくは知らないのだが……

 

「はい、ですけどないよりはマシということで取ってこようということになりました」

 

 確かに、ないよりはマシか。

 にしても魔術師殺しの対策をしようとしているあたり内通者ではないのだろうか?いや、信用を得るための可能性もあるな。

 ふむ、ここは一つめぐみんに聞いてみるか。

 

「なぁ、めぐみん」

「なんですか?」

「カズマは信用できるか?」

「……な、なかなか言いづらいことを聞きますね。ま、まぁなんやかんや、やる時はやってくれるますし信用はしてますよ」

 

 なるほど、関係は良好。

 里に来るまでの道中も……セクハラをしようとしていた以外は善良と行った感じだった。

 いや、あれはどちらかというと小心者な気がするが。

 感情で判断するのはあれだが、白の可能性が高いか?

 

「よし、じゃあ私もカズマ達のところに行こう、気になるところが色々あるのでな」

「気になること?何がですか?」

「カズマが魔王軍の関係者の可能性がありそうなのでな、ちょっと拷問を」

「何をしようとしてるんですか!?カズマがそんなことするわけ無いでしょう!」

「情報ありがとう」

「え、ちょっ!?待ってください!私も行きます!」

 

 

 

「おらあああああ!」

「わああああああ!私のゲームガールー!」

 

 兵器などが封印されている場所に行くと、カズマとアクアと思わしき叫び声のような悲鳴が聞こえた。

 

「何すんのよクソニート!折角のゲームガールが鉄くずになっちゃったじゃない!?弁償しなさいよ!弁償!」

「うっせーわ!今は非常事態なんだよ!ゲームじゃなくてレールガン探せや!」

「めぐみん、カズマとアクアは兵器を探しに行ったと聞いたのだが?どういうことだ?」

「し、知りませんよ!二人とも何をしているのですか!?」

 

 めぐみんに声をかけられて私達に気づいたのか、ようやくこちらの方に顔を向ける。

 

「いいとこに来たわねめぐみん!今から私のゲームガールを壊したこのクソニートをしばくわよ!さあ手伝って!」

「ゲ、ゲームガール?なんですかそれは?というか、兵器は見つかったんですか、カズマ?」

「いや、まだ見つかねーんだよ、このバカはどうでもいいものしか見つけてこねーし!って、あああああっ!?」

 

 カズマが急に私の方を見て大声を上げた。

 この反応ついさっき見た気がするな。

 取りあえず、挨拶でもしておこう。

 

「やあ」

「やあ、じゃねーよ!?ふらすこ、お前が逃げたせいで俺がどんだけ苦労したか分かってんのか!?」

 

 知らない、興味もない。

 

「まあ、そんなことはどうでもいい」

「よくねーよ!」

「そうよ!よくないわ!ゲームガール弁償しなさいよ!」

「アクアはちょっと黙っててください」

 

 めぐみんがアクアを引っ張って奥の方へ消えていく。

 

「たまたまだが二人だけになれたしちょうどいい、本題へと入ろう」

「お、おう、なんだよ。二人だけってことは……」

「カズマは魔王軍の一員か?」

「は?」

「なるほど、ありがとう」

 

 今の反応からしてカズマは魔王軍じゃなさそうだ。

 

「あと一つ、ここの封印を解いたのはカズマか?」

「い、いや、違う」

「ここに嘘をつくと体に激痛が走るポーションが……」

「俺です、ごめんなさい!」

 

 正直でよろしい。

 

 

 

 

 カズマから話を聞くことで、何があったのかはだいたい理解した。

 説明のなかに恐らく数カ所誤魔化しているところがあるようだが、どうでもいいことな気がするのでとくには突っ込まなかった。

 

「それでその兵器を探していると」

「そうなんだよ!いくら探しても見つかんねぇし、ふらすこも手伝ってくれ!」

「その兵器の見た目は?」

「ライフルみたいな……ってこれじゃ伝わないか、なんていうかな……」

 

 いや、それで私には十分だ。

 

「ないぞ」

「は?」

「多分ここにはない」

「な、ない?どういうことだよ?ここに封印されてるんじゃないのか?」

「私の父が壊した」

「え?」

「父が壊した」

 

 数年前、父がここから取り出して試したらぶっ壊れたのをこの目で直接見ている。

 今再開発をしているらしいがなかなか上手くいってないらしい。

 

「なあ、ここ封印されてんじゃなかったのか?」

「私の父について詳しく考えるのはやめたほうがいい、意味がない」

「お前の父親何なんだよ」

天才(バカ)

 




ふらすこは割とナチュラルサイコパス


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第十三話


よぉ、また会ったな

……すまんて
いやね?別に小説書くのはサボってないんすよ。書いてるんすよ、これ以外のやつ

……投稿してないけど、お蔵入りしてたりしてるけど
いやー、毎日投稿できる人ってすごいっすねほんと



 どうせ兵器はないのだからもう兵器を探す意味はないだろう。というわけで、私とカズマ達は魔王軍幹部のところへ向かっていた。

 

「ねぇ!兵器なかったのになんで戻るのよ!兵器なかったんだから意味ないじゃない!帰らせて!帰らせてよ!」

「うっせぇーぞ!兵器ないんだからむしろ戦力のために行くしかないんだよ!」

「兵器壊したのはこいつのお父さんなんでしょ!?私がやる義務なんてないわよ!?こいつだけ連れていけばいいじゃない!」

 

 隣で相変わらずな言い争いをするカズマとアクアを横目に見つつ、私はあることを思い出していた。

 

『まぁ、それはどうでもいい、忠告……いや、アドバイスだ。貴様はこの旅であの男に貸しを作っておくことをオススメする。わかったなら、早くいけ』

 

 紅魔族の里へ行く前にもらった、胡散臭いクソ悪魔からのアドバイス。

 あいつが言っていたのは恐らくこのことか……

 未来を見通す、かムカつくほどずるい能力である。

 アドバイスの癖に私がやるしかないことを言っているのもムカつく。

 

「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者……」

 

 そんな私の脳内を吹き飛ばす声が遠くから聞こえた。

 聞き間違いではなければ、今のゆんゆんの声だった気がするのだが……

 どうやら、聞き間違いではなかったらしい、ゆんゆんが岩の上に立ち魔王軍幹部と対峙していた。

 何をしているのだろうか、あれか?極限状態でトリップでもしたのか?気持ちよくなれる薬でも服用したか?

 

「ゆんゆんじゃねーか!何してるんだあの子は……!」

 

 同じことを思ったのか、カズマが私の脳内と似たようなことを口走る。

 

「紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがてこの里の長となる者!」

「ああっ!?」

 

 ゆんゆんと宣言と同時、何処からか、めぐみんの声が聞こえた。

 恐らく紅魔族随一の部分が引っかかったのだろう。

 

「魔王軍幹部、シルビア!紅魔族長の娘として……!あなたには、紅魔族の族長となる者にしか伝えられていない禁呪を見せてあげるわ!」

 

 ゆんゆんはマントを翻し、片手のワンドを高らかと掲げた。

 すると、雲もないのに蒼い稲妻がゆんゆんの後ろに轟音とともに迸った。

 どうやら、ゆんゆんは族長の娘という責任感からか知らないが興奮状態で錯乱しているらしい、普段のゆんゆんなら存在しない禁呪を言ったりとか、自分の後ろに雷を落として演出みたいなことをするなどといった、アホにも程がある行動はしないだろう。

 取り敢えず面白いので放置、のちのちいじり倒してやろう。

 私が面白いことになっているゆんゆんを見ていると、めぐみんが私達に気づいたのかめぐみんの妹、こめっこと共にこちらに寄ってくる。

 

「あ、カズマ!兵器は見つかりましたか!?」

「い、いや。見つからなかった!それよりゆんゆんのやつは何をしてるんだ!?ダクネスはどうした?」

「ダクネスは途中までシルビアの注意を引いていたんですか……お前みたいな硬くて攻撃力のない女は相手してられないと言われて、あそこで落ち込んでいます……というか兵器見つからなかったんですか!?」

「すまないね、私の父が壊した」

「何をしているんですかあなたのお父さんは!?」

 

 めぐみんの突っ込みに関しては私が一番言いたいものだ。

 アレのせいで私が人類の敵になってしまったんだぞ。

 人を勝手に魔王軍に入れたり、人類を滅ぼそうとするのと比べたら、兵器一個ぶっ壊すなんて甘い方である。

 

「というかカズマカズマ、兵器ないならもう爆裂魔法撃っていいですか?撃っていいですよね?というか、もう我慢の限界なんですか!?」

「待て!落ち着けどんだけ撃ちたがってるんだお前は!?いや、でも確かにそれしか手は……」

 

 めぐみんが目を赤く光らせて、爆裂魔法を撃ちたがっていた。

 確かに、上級魔法すら無効化する魔術師殺しでも、威力だけ見れば最強と言っても過言ではない爆裂魔法は無効化出来ない可能性はある。

 けれど、確実とは言えないだろう。

 というわけで、

 

「仕方ないか……よし、やるぞめぐみん」

「ちょっと待て」

 

 私が強化してあげようじゃないか。

 カズマの覚悟に割り込む形で声をかける。

 

「いくら爆裂魔法でも魔術師殺しに対して効果があるかは確実ではない」

「い、いやでもこれしか手はなくないか?」

「まあ、そうだな。だからこれを使う」

 

 カズマ達に見せつけるように、試験管に入った水色のポーションをゆらゆらと揺らす。

 

「これは、魔法を()()()()()()に変換するポーションだ」

「お、おい、それってつまり」

「ああ、試したことはないが……魔術師殺しを貫通できるだろう」

「…………」

「どうした?」

「まともなポーションも作れるんだなって」

「おい、お前は私のことをなんだと思っている」

「い、いや。と、取り敢えずそれをめぐみんに飲ませれば……!」

 

 ポーションに伸びてきたカズマの手を避ける。

 まさにえっ、と言いたげな顔でカズマ達が見てきた。

 

「ふふっ、私はポーションの職人でもあり商人だぞ?まさか無償でポーションを渡すとでも?」

「ふらすこ!?今そういうこと言ってる場合じゃないでしょう!というか、この前思いっきり無償で渡してましたよね!?」

「めぐみんの言うとおりよ!あなたのせいであの兵器が使えなくなったんでしょ!?責任取りなさいよ!」

「これに関してはアクアの言うとおりだろ、責任を「封印」……いくらですか?」

 

 根本的な原因を思い出してくれたようだ。

 まあ、父の責任とカズマの責任でとんとんということで納得してもらおう。

 確実に父のほうが責任重い気がするが気にするな。

 

「値段は……一億エリスとかでどうだ?」

「完全にぼったくりじゃねーか!買わせる気あんのか!?」

「ないなら貸し一つでもやらんこともない」

 

 あの悪魔の言うとおりになるのは癪だが、あいつがアドバイスと言うときは多分これをすれば、winwinなことでも起きるのだろう。

 新素材が手に入るとかそういったところだろうか。

 

「~~ッ!わかったよ!!貸し一つな!おら、めぐみん飲め!」

「ふらすこ後で許しませんからね!?さぁ、やってやりますよ!」

「めぐみんこれサービス、爆裂魔法の強化ポーション完成版」

「許します!あなたは最高の人です!」

 

 チョロい、めぐみんは扱いやすくてありがたい。

 めぐみんは先程ゆんゆんが立っていた岩の上に立ち杖を構え、魔王軍幹部と対峙した。

 

「あら、また新しい子かしら?あなたもテレポートっていうしょっぼい必殺魔法使うつもり?」

 

 どうやら紅魔族が捕まりそうになるたびテレポートで逃げていたため、魔王軍幹部はお怒りらしい。

 ゆんゆんも見てはいないが恐らくテレポートで逃げたのだろう、姿は見えない。

 

「ふふふ……、我が名はめぐみん!私こそが本当の紅魔族随一の魔法使い!魔王軍幹部シルビア!あなたには本当の必殺魔法というやつを見せてあげます!」

 

 魔王軍幹部の挑発に、めぐみんは高らかに宣言するという行為で返した

 それと同時、めぐみんの目が今まで一番赤く光り輝いた。

 興奮してるな〜、とか思っているとカズマが焦ったような声を出す。

 

「おい待て!あの位置じゃ他の紅魔族も巻き込まれちまうぞ!」

「いい、無視しておけ。言っても意味ないからな。最悪死んでも死ぬだけだ」

「死んでるんじゃねぇか!!おい、お前ら逃げろ!早くできるだけ遠くへ!」

 

 カズマはあたりの紅魔族へ警告するが……

 

「さすがはめぐみんのお連れさんだな!外の人なのに盛り上げ方が分かっている!」

「あの演技力……とてもじゃないが演技には見えないなぁ」

 

 まったく紅魔族には届いていなかった。

 ホント紅魔族はこれなので、注意するだけ無駄なのだ

 そんな中めぐみんが詠唱を開始した、どうやら紅魔族を巻き込んでも大丈夫だと判断したらしい。

 まあ、なんやかんや強さだけはある奴らだ、あの距離なら私のポーション込みの爆裂魔法でも死にはしないだろう、怪我はするだろうが。

 あ、そうだ!怪我をしたやつがいたら私のポーションを売りつけてやろう、アークウィザードしかいないこの里では回復手段は貴重なのだ、高く売れるんじゃないだろうか。

 と思ったのだが、めぐみんの詠唱を聞き彼女が何をしようとしたのか気づいたのか、紅魔族が一斉にその場から逃げ出した。

 どうやら、私のポーションの出番はないらしい……残念である。

 

「アハハハッ!!必殺技?炸裂魔法でも、爆発魔法でもどんな上位魔法でも撃ってみなさいよ!魔術師殺しと一体となったアタシに効くわけ無いんだから!」

 

 周りの様子を見て魔王軍幹部も本当の必殺魔法が来ると感づいたようだ。

 炸裂に爆発……それどころではないのだがな。

 今から放たれるのは、本当の意味での"必殺"技なのだから。

 

「……この詠唱どこかで、もしかしてあのときの……待ちなさい!あなた何をするつもり!?」

 

 魔王軍幹部が、めぐみんに焦った様子で突撃する。

 あのときの、というのは私と戦ったときか、アレはハッタリのようなものだったのだが……あのときも感づいていたし、もしかしたらあの魔王軍幹部は勘がいいのかもしれない。

 もう、遅いのだけれど。

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

 めぐみんが魔法を唱えた瞬間、杖から圧倒的な魔力が魔王軍幹部へ向かって一直線に伸びる。

 そして魔王軍幹部に当たると同時、爆発した。

 

 その暴力的な威力は、砂嵐を起こし、魔王軍幹部どころかあたりのものも、紅魔族もカズマもありとあらゆるものも吹き飛ばし……めぐみんすら吹き飛ばした。

 

 ……ふーむ、強化ポーションの効果が強すぎたようだ。

 

 砂嵐が晴れ、あたりを見渡すと爆裂魔法が当たった場所を中心にまるで隕石でも落ちたかのようなクレーターができていた。

 

 ……テヘペロ?

 

 

 

「なぁ、ゆんゆん。知らないとは思うけど正座ってのは畳とかの上でやるもので、何も整備されていない地面の上でやるものではないと思うのだ。脚に石が刺さって痛い」

「た、畳?じゃなくて!あのめぐみんの爆裂魔法の威力絶対ふらすこのせいでしょ!?」

「私のせいではない、私が作った爆裂魔法強化ポーションが原因だ」

「やっぱふらすこじゃないの!!」

 

 魔王軍幹部が倒され、バカデカいクレーターが里にできた翌朝。

 私はゆんゆんに捕まり地面に直接正座させられていた。

 もちろん、ゆんゆんがお怒りの理由はあのクレーターである。

 ちなみにあのクレーターは現在里の観光地にするか、普通に戻すかで議論中らしい、やはり紅魔族はバカである。

 

「めぐみんになんてもの渡してるのよ!あの威力アクセルで撃ったら大変なことになるわよ!?」

「いや、あそこの連中はむしろ大丈夫じゃないか?」

 

 毎日の轟音に慣れてるし、あれ?今日はちょっと轟音が響くな程度で終りそうだ。

 正直、私は紅魔族と並ぶくらいアクセルの住民もやばいのでは、と思っている。

 

「た、確かにそうかもしれないけれど!ギルドの人達からどうにかしてくれって言われてるって、この前言ったでしょ!なのに、威力が上がってるなんてことになったら……」

「多分ギルドも諦めてると思うぞ」

 

 めぐみんがアクセルに来て数カ月経っているのだ、今更どうこうしようと思っていないだろう。

 そんなことをゆんゆんと話していると、

 

「あ、ゆんゆんにふらすこじゃないですか」

「なんでふらすこは正座しているんだ……?」

 

 ゆんゆんの悩みの種がカズマと一緒に話しかけてきた。

 

「やぁ、めぐみん。爆裂魔法強化ポーションはどうだった?」

「最高でしたよ‼‼今回は距離が近すぎて自分も吹き飛ばされてしまいましたが、あの爽・快・感!あれは癖になります!」

「どんだけオーバーキルしたいんだお前は」

 

 カズマがめぐみんにジト目を向ける。

 実際、爆裂魔法なんてもとから威力馬鹿なのだ、強化する必要なんてない。

 鬼に金棒どころか、鬼に聖剣エクスカリバーである。

 

「あ、次からは金とるからな」

「はぁ⁉友達なんですから無料でくださいよ‼」

「こっちは商売だからな」

「……っ‼カ、カズマ‼」

「やだよ、ていうかお前金あるだろ」

 

 むぅ、とめぐみんが頬を膨らませる。

 

「仕方ありません。この際お金は妥協します。いくらですか?」

「どうせ需要はめぐみんだけだし五百エリスとかでどうだ?」

「む、微妙に高いですね。ちょっと迷います……取り敢えず二十個ほどお願いします」

「え?お前、買うことじゃなくて、何個を買うかに迷ってたの?」

「当然です!取り敢えずこれで二十日は持ちますね!」

 

 めぐみんの発言にギョッとしたのはゆんゆんだった。

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさいめぐみん。まさか二十日連続でそれを飲んで撃つつもり……?」

「なんですか『蒼き稲妻を背負う者』ゆんゆん。何か文句あるんですか?」

「へ?何それ?」

「あなたの二つ名ですよ?知らないんですか?」

「え?ちょっ、ちょっと待ちなさい!?なんの話してるの?それ本当なの?そ、そんな二つ名が私につけられてるの?って、逃げるなぁ!?」

 

 逃げ出しためぐみんをゆんゆんが追いかける。

 これでようやく正座から開放される。ありがとうめぐみん。あとでそのゆんゆんの二つ名についての話を詳しく教えてくれ。

 めぐみんに感謝しつつ、立ち上がろうとするが長時間座っていたせいか脚がしびれていて、思うように動けない。

 

「っとと、カズマ体を貸せ」

「え?ちょっ?待て、近い近い近い」

「正座をしていて脚が思うように動かん。少しこのままにさせてくれ」

「お、おう。当たってるんだけど……」

 

 このままだと転んでしまうのでカズマの体を使わせてもらう。

 にしても反応が初心だ。あんな美少女とパーティーを組んでいるのだからそこらへんの耐性はありそうなものだが。

 まぁ、こちらの方が可愛らしいか。

 

「ところで追いかけなくていいのか?」

「いや、お前がいるから追いかけられないんですけど」

「それは残念だったな。言っておくが私はどく気はない」

「それは……(当ってるし)構わないけどさ。つーか貸しでなに要求するつもりなんだ?」

「特に決めてないが、鬼畜なことを要求することはないさ。多分」

「多分を外してくれ。もうこんな旅はコリゴリなんだよ。落ち着いて過ごしたいんだよ」

「魔王幹部と関係することはない。多分新素材が欲しいときに協力してもらうくらいか」

「まあ、それくらいなら……いや、むしろやらせてくれ!生産職の護衛とかすっごく異世界っぽい!」

「そうか。まあ今度龍の素材を取りに行く際に協力でもしてもらおう」

「え?素材ってモンスターの?しかも龍?植物とかじゃなくて?」

「冗談だ。龍の素材を取りに行くときは一人でいくさ」

「あ、龍は冗談じゃないんですね。つーか、ふらすこってやっぱ強いのな」

「それなりだ。私より強者など沢山いる」

「なあ、なんか魔法教えたりしてくれないか?中級とかでいいからさ」

「構わないが、一個千エリスだ」

「お前金の亡者すぎるだろ」

 




次回はなんかサブキャラと関わらせたいなって


いつかはわからんけど


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第十四話

息抜きで書く小説の方が筆が乗るんですよね……


 それは、紅魔の里での事件も解決しアクセルに戻りポーション屋の開店準備をしているときだった。

 私のポーションを売り込んだお店の店員が私のとこへ来たのである。

 話を聞くとどうやら私のポーションが早くも売り切れたらしい。

 思ったよりも早かったなというのが感想。

 安めとは言えポーションはポーション、駆け出しにはそこそこな値段だったのだが……そこは命あっての物種ということなのだろう。

 もしくは噂がいい感じに働いたか。

 

 まあ、それは置いといて。

 店からしても予想以上に売れたので私と契約したいとのことらしい。

 もちろん、契約した。

 金の余裕はあるが、金はいくらあっても困ることはない。

 

 その後他の店も同じ理由で来たため、数店と契約をした。

 そして、気づいた。

 

「素材が足りんな……」

 

 数店も契約したせいで、毎月百本は超えるポーションを作ることになってしまった。

 少し後先を考えなさ過ぎたか。

 お陰様でポーションの作る手間もそうだが、素材を取るのが面倒くさい。

 この量を一人でやるとなるとほぼ毎日働く必要があるだろう。

 流石にそれは勘弁だ。研究の時間がなくなってしまう。

 

 今更契約の取り消しはできない。

 さて、どうしたものか……

 素材を買う……なしだな、私のポーションは紅魔の里付近の強い魔物の素材が多いので買うとなると高くついてしまう。

 ……仕方ない、契約のポーションの量を減らしてもらうか、少しダサいが。

 

 それ以外の策も思いつか……あ、そうだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「『クリエイト・ウォーター』」

「ぼぶっ……!ちょっ!?急に何!?溺れる!?お、ボボボボボ……」

「起きたか」

 

 閃いた私は紅魔の里のとある一軒家に来ていた。

 場所を詳しく言うとぶっころりーの実家のぶっころりーの部屋である。

 

「ゲホッ、ガホッ、はぁ……はぁ……ふ、ふらすこ……?な、なんで俺の部屋に?」

「少しお前に用があってな」

「そ、それはわかったけど、もうちょっとマシな起こし方してくれないかな!?」 

「すまない、私が寝不足だというのに、昼間まで惰眠を貪っているお前を見ると無性に水をかけたくなってな」

「ただの八つ当たりじゃん!?布団ずぶ濡れなんだけど!?どうしてくれんの!?」

「知るか、自分で乾かせ。無職なんだからそのくらいの時間はあるだろう」

「無職じゃないから!魔王軍遊撃部隊やってるから!」

「なるほど、無職か」

「違う!魔王軍遊撃部隊だよ!」

「最近魔王軍幹部は吹き飛んだようだが」

「ま、また来るかもしれないだろ!」

「そうか。まあ、そんなことはどうでもいい。用と言うのはお前に仕事を持ってきたんだ」

「え……?嫌だ!働きたくない!」

 

 ぶっころりーからの返答は拒否だった。

 あまりにも酷い理由にちょっとイラッときたが、ここは抑える。

 まだ話は終わってないのだ。

 

「まあ、待て。仕事と言ってもそんな難しいことじゃない。お前の所属する無職連盟ついでにできる内容だ」

「無職連盟じゃなくて魔王軍遊撃部隊だよ!ついでにってことは素材採取ってとこか?」

「ああ、私のポーションのための素材が欲しくてね。暇なやつということでお前なわけだ」

「嫌だ」

 

 …………こいつは一回精魂叩き直した方がいいのかもしれない。

 もしかして自分がニートであることがアイデンティティになるとでもおもっているのか?

 

「ふらすこのことだし、とんでもない量の仕事出されそう」

「安心しろ、むしろ少ないくらいだ。現代ではありえないくらいアットホームでホワイトな仕事だ」

「信用ゼロだよその仕事」

「まあ、仕事量が少ないのは本当だ。エリスにでも誓っておこう。で、どうだ?」

「俺は働きたくない!」

「親が泣くぞ?」

「既に泣いてもう諦めの境地だが?」

「『インフェ「ちょっ!?家燃える!家燃えるから!僕以外にも迷惑かかるから!」

「家燃やされたくないなら来い、採ってほしい素材を教える」

「はい……もっと寝てたかったのに」

 

 今は三時である。

 

 

 

 

 脅しによる半誘拐的な感じでぶっころりーを連れた私は紅魔の里周辺の森に入っていった。

 

「なぁ、教えるだけなのに森までくる必要あった?」

「お前は植物の見分けつかないだろう?」

「まあ、そうだけど……」

 

 どうやら、ここまで来てもぶっころりーは未だ働くのが嫌なようだ。

 ちょっとこいつの親に対して同情心が湧いてきた。

 まあ、前世含めて子供を持ったことのない私が同情したところではあるが。

 

「マンドラゴラは知っているだろう?まずは……とっ、予定変更だマンドラゴラの説明はあとにして、こいつの説明をしておこう」

 

 ぶっころりーに植物の素材の採り方について説明しようとしたら、植物ではないが丁度いいものを見つけた。

 

 木の根本に座る可愛らしい少女、安楽少女である。

 

「素材の一つ安楽少女だな。こいつは特殊だから教えておくぞ」

「……え?あの子狩るの?」

 

 安楽少女の方へ近づいていく、少し遅れてぶっころりーもついてきた。

 安楽少女に人差し指を向けながら私は告げる。

 

「こいつの手と足が素材だ」

「……ん?ごめん、もう一度言ってくれる?」

「こいつの手と足が素材だ」

「待って!?この子の手と足が素材なの!人じゃん!どう見ても人じゃん!」

「人じゃない、モンスターだこいつは」

「見た目の問題だよ!こんな可愛らしい少女を殺すとか俺にはできないよ!」

 

 なるほど。

 ふーむ?

 

「ニートというクズの癖に、そんな気持ちがあるとは」

「ふらすこはニートをなんだと思ってんの?」

 

 最低でも魔王軍幹部と並ぶクズだとは考えている。

 人に迷惑をかけるという点では同レベルだろう。

 早く独り立ちしろ。めぐみんでもしてるぞ。

 

「まあ、そこはどうでもいい。今後この仕事をするのだ、今のうちに慣れておけ」

「それ慣れたら駄目やつ!?ていうか今後やるなんて言ってないし!」

「ごちゃごちゃとうるさい。紅魔族だろう弱音を吐くな」

「それ紅魔族ハラスメント!」

 

 なんだ紅魔族ハラスメントって。

 面倒くさい、早く倒せ。燃やすぞ。

 

「あ、はい。やりますやります」

 

 ぶっころりーが安楽少女へトボトボと近づいていく。

 そして、魔法を唱えようとした瞬間だった。

 

「……ころすの?」

「ぐっ……!」

 

 安楽少女が喋った。

 どうやらその言葉が刺さったらしくぶっころりーは胸を抑える。

 これだから知性あるモンスターは厄介だ。

 

「……いいよ。……わたしはモンスターだから……しかたないよね……」

 

 ぶっころりーがこちらを見てきた。

 ふむ、せっかくなのでこいつの反応で遊ぶか。

 

「殺さなかったらお前のこと燃やすから」

「そ、そんなっ!」

 

 私の言葉を聞いてぶっころりーは視点を安楽少女と私を交互に見る。

 さてと、あいつは自分を取るか安楽少女を取るか。

 なかなかの見物である。

 

 ぶっころりーが安楽少女と私を交互に見るのを繰り返して大体五分たったくらいだろうか?

 

「あなたがくるしむくらいなら……いいよ」

「……うおおおおお!ふらすこぶっ倒してやる!『ライト・オブ・セイバー』!!」

 

 どうやら安楽少女の言葉が決めてになったらしく。

 私に反抗するという手で、安楽少女を取ったようである。

 まあ、

 

「『インフェルノ』」

「ああああああああああああああああああああああ!?!?」

 

 私に勝つなんて百年早いが。

 

 

 

 

 

「茶番もやめだ。早く殺せ」

「本当に容赦もないね!?」

 

 私のインフェルノにはギリギリ水魔法が間に合ったらしく、そこまで、あくまでそこまでだが怪我はしてないぶっころりーに命令する。

 てっきりポーションを使うことになると思っていたので完全ではないとはいえ防げるのは予想外だった。

 魔王軍遊撃部隊を名乗ってるだけはあるか。

 

「……わかったよ!やればやればいいんだよね!?」

「ああ、時間は有限だ。早くやれ」

「……っ、ごめん」

 

 どうやら覚悟は決まったようだ。

 ぶっころりーは目を閉じながらではあるが、安楽少女の前に立った。

 

「せめて楽に死ねるように……『インフェ「『ライトニング』!アホ!炎系の魔法を使ったら素材が燃えるだろうが!」

 

 はぁ、なんともカッコつかない男である。

 当初の目的を忘れたのか、素材採取だぞ?燃やしてどうする。

 

「いやいやいやいや、邪魔してきたのそっちでしょ!?」

「カッコつけごときに目的を忘れるな。こいつの素材は使う素材の中でも多いんだ。あまり無駄にはしたくない」

「じゃあどうやれって言うのさ!」

「ライト・オブ・セイバーがあるだろう?」

「……あの、この子を斬れと?」

「それ以外に何がある?ああ、そうだ。できれば手と足を最初に斬るんだ」

「……絵面が猟奇殺人なんだけど」

「それがどうした」

「鬼畜!めぐみんとかも鬼畜だと思ってたけどふらすこが一番鬼畜だよ!」

「そうだな、早くしろ」

「お、俺ライト・オブ・セイバー使えないので……」

「私にさっき使っていただろう。なんだ、お前は私に武器を向けられてもモンスターには向けられないのか?」

「い、いや……ああもう!やる!やってやるよぉ!!」

 

 それはぶっころりーの口が呪文が唱えようと動いたのと同時だった

 

「さ、さっきから一人でぶつぶつ言って……きゅ、急に大声上げて……な、何をヤるつもりなの……?ぶっころりー……?」

 

 木々の合間、そこから顔だけをだしてこちらを伺う女性。

 里でも凄腕の占い師とその美貌で有名であり、ぶっころりーの片思いの相手でもあるそけっとだった。

 どうやら、彼女からは木などが邪魔で私のことは見えていないらしい。

 

 さて、ここで彼女から見たらぶっころりーがどう見えるか考えてみよう。

 可愛らしい、外見で判断したら十歳程度の少女の前で『やってやるよぉ』と叫ぶ成人男性(ニート)一人である。

 

 ふむ、圧倒的犯罪臭だ。日本なら速攻通報からの警察が来て事情聴取のコンボが決まるだろう。

 

「そ、そけっと……あ、いや!これは違うんだ!?」

「じゃ、じゃあ何してたの?」

「えっ……えっとそれは、ふらすこ!?いないし!?」

 

 そして事実は腕と脚を切り落とそうとした瞬間である。ある意味誤解の方がマシだろう。

 ちなみに私は光を反射することで透明になる魔法を使っている。

 にしてもこいつ結構いじると反応面白いな。

 

「ふらすこ……?あの子がどうしたの?」

「ふらすこも一緒だったんだよ!」

「ふ、ふらすこもヤるつもりなの!?」

「ちがっ!?違う!違う違うんだそけっと!」

 

 まあ、あいつも好きな人と話せて嬉しいだろう




素材は安楽少女は自分で、それ以外はそけっとに頼むことになりました。

ぶっころりーはニートのままです。



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第十五話


……おひさしぶりです。

一言言わせてください

ウマ娘の二次創作が書きたい!!!!


 太陽が真上できらめき、辺りの定食屋が賑やかになる時間帯。

 私は自身の家に看板を立て掛けた。

 そこに書いてあるのは英語で言う『open』と同じ意味を持つ文字列だ。

 つまり、ポーション屋ふらすこ、ついに開店である。

 

 

 

 

 言い訳をさせてほしい。

 店名についてである。恐らく思ったんじゃないだろうか?名前そのまま安直すぎないか、と。

 これには一応ワケというか、少々の経緯がある。

 まず最初に言うと私はあまりネーミングセンスが良くないと自覚している。

 なのでシャレオツな店名なんて思いつくわけがないのである。

 だから、私は友人に助けを求めた。

 まあ、ゆんゆんのことなのだけど。

 

 が、ここで問題発生ゆんゆんもネーミングセンスがなかった。

 いや、ないとは違う。ゆんゆんはいわゆる安直な奴しか思いつけないのである。

 まあ、ここまでなら普通にゆんゆんの案を却下すればいい話だった……が。

 

 ここでめぐみんが『ふふふ、店名に悩んでるようですね!しかし私が来たからにはもう安心!天才であるこの私が最っ高にカッコいい店名をつけてさしあげましょう!』とか言って乱入してきたのである。

 率直に言おう、めぐみんはセンスがない。

 ……めぐみんというか紅魔族のセンスは基本終わってて、ゆんゆんとか私が異端なのだけど。

 

 で、そこからさらに厄介なことにめぐみんとゆんゆんが競い合い始めたのである。

 その結果、どっちの方が私の店の店名にふさわしいかを決定する戦いが始まり、その審査員に私が選ばれ。

 私がまだマシであるゆんゆんの方を選んだわけである。

 

 そんなこんな店名がこれに決まったわけだ。

 なのでネーミングセンスはゆんゆんが全て悪い。

 まあ、『アルティメットカオスブラッドリキッド』とかにならなかっただけマシである。

 ちなみに今のはめぐみんが出した案の中ではまともな方に入る。

 

 そんな経緯もありつつ、開店したポーション屋ふらすこなわけだが、現在進行形で閑古鳥が鳴いていた。

 まあ、当たり前である。どこぞの悪魔のいる魔道具店よりも立地悪いし、宣伝とかも特にしてないのだから。

 そもそもまともなポーションのほうが少ないポーション屋だ。恐らくこのポーション屋が有名になる頃には悪い噂が流れまくっていることだろう。

 

 そんな少々ネガティブ気味なことを考えていたら、カランコロンというベルの音共に店の扉が開いた。

 どうやらようやく記念すべき最初のお客様のようだ。

 

 お客様の第一印象は……チンピラと言ったところだろうか。

 くすんだ金髪に冒険者なのか装備を身に着けた男である。

 その客は頭を俯けにし(おそらく格好付け。紅魔族と気が合いそうだ)深刻そうな言い方で質問をしてくる。

 

「ここが、あのポーションを作ったやつが経営してる店か?」

「あのポーション?」

「最近、色んな店に置いてある回復ポーションだ」

 

 ああ、あれか

 どうやらあのポーションの製作者である私に興味を持って来たらしい。

 自分で言うのもあれだが、ここまで早く私に目をつけるとはなかなか良い目をしている。

 

「ああ、そうだが」

「よし、ならあんたに頼みがある」

 

 男はそういうと、少し息をため……言った。

 

 

「俺に!!透明になれるポーションを売ってくださぁああああああああい!!!!!!!!!」

 

 

 ちなみに土下座しながらである。

 

 

 

 

 近所迷惑になりそうな程の大声量で叫んだこの男はどうやらダストというらしい。

 

「透明になれるポーションか」

「そうそう!売ってくれないか!?」

「使用目的は?」

「え?そりゃもちろん覗……じゃなかった、ほら透明ならモンスターに気づかれず不意打ちとかできるだろ?」

 

 嘘をつくな、覗き目的だろう。

 はぁ、全くこいつに見る目なんてなかった。私も見る目がない。

 こいつには裸の女体しか見えてないようだ。

 私は犯罪者の犯罪に手を貸すつもりはない、透明化のポーションなんて売るつもりはない。こいつにはとっとと帰ってもらおう。

 そもそも

 

「透明化のポーションは存在しない」

「え?は?ないの?」

「ない。半透明になれるポーションなら存在するがな。子供を脅かすくらいには使えるがいるか?」

「なんで俺がガキを驚かせなきゃいけねーんだよ」

「ならとっとと帰れ。貴様に売れるもんはない」

「は?客にその口の聞き方はねぇんじゃねぇのぉ?」

 

 男は私の言葉に反応し、悪い顔をした。

 前世でバイトでみたクレーマーの顔と似ている。面倒くさい。

 

「もう一度言う。覗き魔に売るポーションはない」

「覗き魔じゃねぇわ!?不意打ちのためつってんだろ!はっはーん、さてはお前あれだな!俺が透明化のポーションを飲んで女湯に入り込むと思ったから透明化のポーションがないって嘘ついて俺を帰らせようとしてるんだろ!俺の目は誤魔化せないぞ!」

 

 こいつ本当に面倒くさいな。

 こうなってくると、むしろ向こうから手を出して欲しくなってくる。そしたら正当防衛が成り立つし。

 ただ、まあ、開店初日に暴力沙汰というのは印象が悪い。

 ここは穏便に済まそう。

 私は、棚の一つ『使えないポーションエリア』から赤色のポーションを取り出した。

 

「はぁ、全く面倒な。ほれ、これでいいか?」

「お、これが!……いや、待てさてはお前俺をとっとと帰したいからなんでもないポーション渡して帰らせようとしてるな」

「違う。飲んでみろ。それは一滴でも飲めば効果があるからな」

「は!嘘だったら訴えてやるからな」

 

 そういうと男はポーションの蓋を外し、一滴だけ口に入れた。

 しかし、男の体は透けたりはしなかった。

 男もそれを気づいたようで、ニヤニヤとしながらこちらへ問いかけてくる。

 

「おいおい何も変わってねぇじゃねぇか?嘘ついたな?嘘ついちまったな?」

「そこの鏡を見てみろ」

 

 私が立て掛けられている鏡を指差す。

 そこには男は映っておらず。男が着ている装備だけが映っていた。

 

「おおおおお!!!!本当に透明化のポーションじゃねぇか!おい!これいくらだ!?」

「本来二十万エリスなのだが……まあ、初めてのお客様だ。半額の十万エリスでどうだ?」

「半額でも高えじゃねぇか……いやしかしこれで……十万……十万か……。よし買った!」

 

 男は高額の値段に少し悩み、そして買った。全くどれだけ裸体が見たいのだ。

 前世の私はここまで性欲に溢れてなかったと思うが……

 男は私に金を放り投げて、ポーションをぶんどると、待ちきれないと言わんばかりに外へ駆け出した。

 

「よっしゃああああああああ!!!!これで覗き放題だぜぇぇえええええええ!!!!」

 

 こうでなかったことを祈る。

 てかやっぱり覗き目的じゃないか。

 

 はぁ、これが初めてのお客様か……幸先不安にも程がある。

 

「フハハハハハハハハ!!!!開店してそうそうチンピラに絡まれた不幸なサイコパス娘よ。喜べ!我輩が来てやったぞ!」

 

 幸先不安にも程がある!!

 

 

 

 クソ悪魔が首だけを動かし、棚に飾られているポーションを見る。

 そして一言、顎に手を起きながら言った。

 

「ふむ、見事にゴミしかないな」

「おい、事実だとしてもムカつくものはムカつくぞ」

「フハハハ、悪感情をどうもありがとう。しかしあまり美味しくはないな。汝はもう少し感情に起伏をつけるべしだ。でなければ煽り甲斐がない」

「そんな甲斐性はいらん」

 

 確か悪魔というのは人の悪感情を食べるのだったか。こいつと話す際は感情の起伏を薄くするポーションを飲んでもいいかもしれない。

 

「しかしゴミを売ったところで何にもならないだろう。この店の売り上げは大変なことになるだろうな」

「かまわん。そもそも趣味みたいなものだ。私はお前と違って金が有り余ってるのでね」

「フハハハ!我輩が貧乏なのは今だけだ。近いうちに大きい商売をするつもりでな。そこで大きく儲けるつもりだ」

 

 何故だろう。失敗する未来が見える。

 そして原因も予想できる。

 まあ、こいつが失敗する分にはざまあみろと言った感じだが。

 

「で、なんの用だ。そんな大きい商売をするならこんなところにいないで奴隷のようにせっせと働いたらどうだ?」

「フハハハ!全てを見通せる我輩が無駄なことをするわけがないだろう?ここに来たのはその大きい商売の成功率を上げるために来たのだ」

「はぁ……言っておくが私は協力しないからな」

「そんなことではない。単刀直入に言おう。うちの店主をこの店に入れるな」

「……あー」

 

 思い出すのは私とウィズの初対面。

 ウィズは、私の持っていたゴミみたいな、いやゴミを何故か使えると言いながら大量に買っていった。

 

「前に言ったがあの残念店主は何処か頭のネジが外れているのだ。そんなやつがこんな店に来てみろ。全財産をぶん投げて全部買ってもおかしくはない」

 

 確かにちょっと想像してみればすぐに『これ、すごく使えますよ!』とか言いながら大量に買っていくウィズの姿が頭の中で描くことができた。

 

「確かに、すごくすごくしそうだな」

「だろう?分かってくれたのなら契約を結ぼうではないか」

「で、私のメリットは?」

「……汝としていた不平等な契約を平等にしてやろう。なんならそちらに優位でも良い」

「……そこまでするか」

 

 このプライドだけは無駄に高い悪魔がここまで譲歩するとは、そこまでこの店にウィズを入れたくないか。

 

「そこまでだ。汝にも見せただろう、あのドラゴンの素材使った鏡に映らなくなるだけのポーション。む、そういえばあれはどうしたのだ?棚には置いてないようだが」

「ああ、さっきチンピラが買っていった」

「そうか、奇特なチンピラもいるものだな」

 

 世の中不思議な人は案外多いものだ。何故かゴミを買ったりと。

 恨まれても面倒だし、ウィズのついでにあれも出禁にしておこう。

 

「分かった。うちのポーションを高く買ってくれるならウィズをこの店に入れないでやろう」

「ほぉ、やけに聞きわけが良いな」

「だから早く帰れ」

 

 正直とっとと帰っていただきたい。

 こいつが来てからというもの、うちの店に興味を持った客が変態悪魔をみてそそくさっと離れていってるのだ

 つまりこいつはいるだけで業務妨害である。

 

「フハハハ!そこまで言うなら仕方ない。契約も通って今我輩は気分が良い。少々遊んでいこうと思ったが帰らせてもらおう」

「そうか、帰れ」

 

 私がそういうと悪魔はフハハハハ!!と高笑いしながら出ていった。

 お陰様で店に近づいていた客がびびってどこかへ行ってしまった……本当に邪魔なやつである。

 

 

 

 ……ところでゆんゆん。君六時間前くらいからそこにいないかい?

 早く入ってこい。

 




マジな話競馬とかの知識がないので諦めてます。

競馬の世界、ちょっと調べてみましたけど難しいですね。


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第十六話


 お久しぶりです。
 なんかいっつも言ってますがお久しぶりです。

 いやーウマ娘が楽し距離Sがつかないいつになったらつくんだよ終わんねぇよチャンミ育成終わんn


 

「ゆんゆん、これは君の友達としての善意からの忠告だが」

「う、うん、友達としてのね!」

「友人宅に遊びに行く際の菓子はもう少し高価の方が良い。これでは失礼に思われるぞ」

「ええっ!?ご、ごめんねふらすこ……い、今から新しいの買ってくるね!!」

 

 うん、チョロい。

 オレオレ詐欺に引っかかる老人よりもチョロい。

 騙してる方が不安になってくるほどチョロい。

 

 本日開店したポーション屋ふらすこ。

 その店内には、開店前の早朝から入らずに六時間ほどもじもじしていたアホがいた。

 

 と、たった今アホが菓子を買いにいなくなりそうになったのでさすがに止める。

 本当にこいつ大丈夫だろうか……?

 ま、まあ、最悪めぐみんが止めるだろう、そこらへんの常識はまだめぐみんはある方だ(ゆんゆんとの相対評価)

 取り敢えず嘘であることを伝えておく。この嘘を放置して、教えたのが私とバレるとこの店が早くも爆裂魔法の餌食になりかねない。

 時間の問題になると思うが。

 

「お前は、なんというか、紅魔族だよな」

「ねえ、それどういう意味!?」

「ところで、友人なら少しポーションを買ってくれないか?」

「うん、分かった!友達だもんね!」

「そういう意味だ」

 

 はぁ、とため息を吐く。

 いつか先程のチンピラのような奴に騙されてとんでもないことになりそうだ。

 あと、誰とは言わないが仮面を被ったやつに騙されたりしそうだ。

 あの金にがめつい悪魔のことだ。カモには容赦しないことだろう。

 

「水中で呼吸ができるようになるポーション、かけたところが光るポーション、投げた場所に雷を落とすポーション、へー、ふらすこの割に結構いいポーションもあるね」

「水中で呼吸できるポーションは口を開いた瞬間、大量に水が胃袋を制圧すること、かけたところが光るポーションは一分すら持たずに消えること、投げた場所に雷を落とすポーションは雷とは名ばかりの初級魔法以下であることを除けば優秀なポーション達だな」

「ふらすこのポーションに期待したのが間違いだった」

「おい、一応言っておくが私は使えるポーションも作るからな」

 

 この店に置いてある大半は新たなポーションのレシピ開発でできる失敗作達だ。

 なので高確率で使えない。

 まあ、工夫次第で使える状況がないわけではないのだが、そういうのって基本上位互換のようなポーションが存在するのだ。

 例えば、かけた場所が光るポーションが一分すら持たないポーション。

 これの一分が一時間のバージョンが存在する。しかも安価。

 そりゃ一時間の方使うわという話。

 超超限定的な条件に限定するなら一分の方がいいってことはあるかもしれないが、そもそもそんな超限定的な状況ある?あったところでそれ想定してわざわざ買うか?という話。

 

 まあ、正直に言うとこの店に置いてある大半のポーションは産廃である。

 じゃあなんでそんなもの売ってるの?といえば、このこの産廃どもクソ邪魔なのである。

 つまりこの店は廃品処理兼倉庫である。

 ポーションって処理が大変なんだ……

 下手に捨てると、何かしらの害がおきたり、同じ場所に違うポーションを捨てたら混ざってとんでもない効果が発動したりしかねない。

 ポーションの研究は楽しいのだが、これだけはどうにかならないものか。

 

「というか、そういうのはちゃんと書いたほうがいいんじゃ」

「ゆんゆんは馬鹿だなぁ、そんなことしたら誰も買わないだろう」

「それもう詐欺じゃないの!」

「ゆんゆん」

 

 ちょっと……少し、いや普通に……かなり頭の中が残念なところがある我が友人よ、いいことを教えてやろう。

 

「残念じゃない!そ、それで、何?」

「騙される方が悪い」

「クズ」

 

 おっと、さすがにゆんゆんも軽蔑の目である。

 だが、クズという言葉は言われなれてるので特にダメージはない。

 しかしだなゆんゆん。

 

「商売というのは多少黒い部分がないと駄目なんだよ」

「多少どころじゃないって!真っ黒だよ真っ黒!」

「何、訴えられたところで何も問題はないさ。ちょうど最近記憶を消すポーションを作れたんだ」

「何するつもり!?そのポーションで何するつもり!?というか訴えられた時点で店的には悪評じゃないの?」

「どうせこんな店悪評だらけになるだろうから一つ増えるくらい問題あるまい」

「自分の店にそれはどうなの」

 

 こんなゴミみたいなポーションを売っている店にまともな噂が立つはずもない。

 火のないところに煙は立たない。

 個人的に一番心配しているのは、実物を噂が超えてしまうことだ。

 

「それがありえちゃうってどういうこと……」

「まあ、暫くは安泰だから安心しろ。そもそも買う人がいないから噂が立ちようもない」

「それはそれでどうなの……」

 

 立地が立地だから仕方あるまい。

 こんなアンデッドが好みそうな、というか住み込んでそうな湿気臭い場所普通なら来ないのである。

 ああ、ちなみに素材になるのでアンデッド歓迎である。

 土くれのクソ悪魔はお断りだが。

 

「というか繁盛したらしたで、ポーションの研究する暇が消えるので困る」

「そしたら従業員でも雇えば?ふらすこならそのくらいのお金はあるでしょ?」

「従業員なぁ……ふーむ」

 

 ふいっ、とゆんゆんの方を見る。

 

 うーん

 

「なしだな」

「ねえ何がなしなの!?なんで私の方見ながら言ったの!私だってそのくらいできるからね!」

「いや、別に従業員がなしのなしだよ」

 

 別に他意はない。

 ゆんゆんが従業員になったら、ポーションの価格が値下げ交渉で一エリスになりかねないと思ったわけではない。

 ……本当に従業員がなしという意味でのなしだったのだが、想像してみるとこれがまた脳内で実際見てきたかのように再生される。

 ゆんゆんに従業員は無理そうだ。

 

「というか、それくらいと言ってるがこの店で働くなら全てのポーションの効果、レシピ、素材を覚える必要があるからな?」

「え、そ、それは大変そう……確かにこんなあるポーションを一つ一つ覚えるのはふらすこでもないと無理かぁ」

「まあ、それ以前に犯罪の片棒担がせることになるってのもあるんだけど」

「お願いだから足を洗って!」

「そんなゆんゆんに、飲むとその人の悪が消滅するポーション!お値段なんと一万エリス!」

「……デメリットは?」

「消えすぎて、凄まじいことになる」

 

 具体例を上げるとメスオークが男に対してまともにデートとかをしようとするくらいには消える。

 ちなみに性欲は消えないらしく、ものは試しとバカ親父がデートに行ったのだが、涙目で帰ってきた。

 ちなみにこのポーション、人間が飲むとろくなことにならない気しかしないので人間で試したことはない。

 

「なんかヤバそうだからやめとく」

「いい判断だ。このポーションをやろう」

「いらないんだけど、これ何?」

「友達が出来やすくなるポーション」

「ありがとうっ!!!!!」

 

 今日一の大声である、近所迷惑、近所墓地しかないけど。

 そうか、それがそんな嬉しいか。

 友人が喜んでくれて嬉しいよ。

 まあ、中身がただの砂糖水であるが。

 

 ……結構真面目な話プラシーボ効果、つまりは思い込みを狙ってである。

 実際に友達ができるポーションがあればそれが良いのだが……うちにあるのでは友達から数段階先の仲になりかねん。

 ちなみにそのポーションの実験ではねりまきが巻き込まれた。

 

「流石に私でも友人に友人がいないというのは心配だからな」

「ふ、ふらすこがそんなこと言うなんて……明日は大雪かなぁ」

「知り合いに降格するか?」

「ごめんなさいっ!」

 

 ん、まあ、今言った理由はもちのろん建前である。

 本当の理由はとっととこいつに友達作らせないとここに入り浸ってきそうだからだ。

 もし、そんなことになれば多分この店に来る客が減る

 

 先程繁盛しなくていいと言ったが、売れなくても困るのだ。

 ああ、そうだ。言うまでもないが。

 あんま期待はしていない、ゆんゆんだし。まあ、最悪出禁にすれば良い

 

 

 

「あ、ゆんゆんも飲む?」

「昼間から、しかも労働中にお酒を飲まないの!」

 

 酒瓶を取り出したらゆんゆんに怒られた。

 解せぬ、別に酔うわけでもないのだからいいだろう。

 

「だとしても!あんまいいイメージはないじゃない!」

「さっきも言ったが多分この店にいいイメージを抱くやつはいないぞ」

 

 外見取り作ったところで中身がゴミならそれはゴミなのである。

 悲しいかな、すっぴんというのはいずれバレるのだ。

 

「酒臭くなっちゃうよ!さすがに昼からお酒の匂いするなんて嫌でしょ?」

「そこらへんは問題ない。それ対策の香水を使ってるからな。私の香りは安楽少女の香りだ」

「それはそれで大丈夫なの?」

「ほんの少し人から好かれやすくなるくらいだ。つけこみやすくなる」

「大丈夫じゃない!」

「今度ゆんゆんにもあげるよ。友達できやすくなるよ。代わりにお酒飲ませろ」

「え!?ホント!?じゃなぁくって!昼からお酒は駄目!禁止!……あ、あとその香水はあとで頂戴」

「三十万エリスね」

「金取るのね……しかも、た、高い……でも、友達……三十、うぅ……」

 

 ゆんゆんが馬鹿なことにガチで迷ってるのでその合間にお酒をグラスに注ぎ、口をつける

 うん、アルコールが足りない。サキュバス・ランジェリーの度数80%のお酒が恋しい

 今日開店記念ということで久方ぶりに飲みに行こうか

 最近は開店準備で忙しかったし、四日ぶりである

 

「って!お酒飲んでるし!」

「で、買うの?一応言っておくと値段は適正だからね。素材が手に入りづらいんだ」

「何使ってるの?」

「安楽少女の実とか、色々高いやつ。特にサキュバス系の素材が厄介なんだよ。冒険者は欲望だらけでサキュバス狩ってくれる人どうしても少ないし」

「サキュバスの素材とか使ってるんだ……というかデメリットとかないよね?」

「ゆんゆんは私の作るものに対して警戒がしすぎじゃないか?」

「当たり前の反応だと思う」

「そうか……で、デメリットだが高価であること、あとは効果が一日しかもたないのがデメリットだな」

「高いのはそうとして……効果が一日しか持たない?香水って普通そういうものじゃない?」

「ああ、言ってなかった三十万で、一回分だ」

「やっぱ買わない」

 

 そりゃ残念

 

「というか、そんな高価なものをお酒の匂いを消すためだけに使ってるの!?」

「だけとはなんだ。人につけ込むのにも使う」

「そっちはどうでもいい!いや、良くないけど!」

「私ほど酒を飲むとそこらの香水じゃかき消しきれないんだよ」

「どんだけお酒飲んでるのよ……」

 

 まあまあ、安心しろ節度はわきまえてる。

 酒は飲んでも飲まれるな、有名な格言だな。

 ぐびぐび

 にしても酔えないお酒はお酒ではなくやはりジュースか何かじゃなかろうか。

 

「言ってるそばから飲んでるし……昼間から飲んでる時点で節度なんてどこにもない気が……」

「さっきも言ったが別に酔わないからいいだろ?お酒を禁止されると私は死んでしまう」

「別に禁止するんじゃなくて、昼飲むなって言ってるだけなんだけど」

「無理、死ぬ」

「飲んでないときもあるじゃん!」

「飲んでるぞ?私がたまに試験管の中身を飲んでることがあるだろう?」

「え、あれポーションじゃなくてお酒なの?」

「というのはさすがに嘘」

「そ、そうよね。いくらふらすこでもそこまでじゃないよね。そこまで言ったらもうアル中だもんね良かったぁ」

 

 まあ、やってないのは試験管に酒を入れることであって、酒瓶は常に持ち歩いてるし、飲んでるが。

 そんなこと言ったらゆんゆんがなにかしてくるだろうから何も言わない。

 それにしてもアル中か……褒め言葉だな。

 

「せめて、ノンアルコールにしない?どうせ酔わないなら同じじゃない?」

「アルコールが入ってないくせに酒を名乗るとは不敬だよなノンアル」

「めんどくさ……」

 

 おうっ

 クズなどの事実に関してはいくら言われようがダメージはないが、これは中々にダメージがあるな。

 

「ゆんゆんもこっち来ない?幸せだよ?友達増えるよ?」

「友達っていえば私が釣れるって思ってるでしょ!」

「実際釣れてると思うけど」

 

 先程友達のためだけに香水に三十万エリス使おうとしていたお前が何を言っているんだ。

 

「そもそもお酒と友達に因果関係はないでしょ!?」

「いーや。真面目に結構あると思うぞ?酒の席というのは友好関係を広げるにはいい場所だ。みんな酔ってるから無礼講になりやすいし、みんな陽気で話しかけやすい話しかけられやすい。その上失言を拾えれば脅すこともできる。中々に良い手だと思わないか?」

「……確かに、最後が不穏すぎるけど一理あるかも。やってみる価値はあるのかな」

「別に担任を脅してなんかいないからな」

「ふらすこの超自由行動がやけに容認されてるなって思ったらそんなことしてたの!?」

「まあ、あの担任が族長を……っと、これ以上はやめておこう。ともかく酒の力を借りるってのは悪くないと思うぞ。ゆんゆんはお酒初心者だよな?ならば果実酒あたりがいいと思うぞ。あと間違っても一気飲みとかはしないように、死にたいなら別だけど」

「待って!ぷっちんさんとお父さんの二人に何があったの!?それが気になって話が入ってこないんだけど!」

「じゃあ、頑張ってこい」

「……今度その脅しについて詳しく教えなさいよ!」

 

 ゆんゆんは、少し涙目になりながらそう吐き捨てると店から出ていった。

 恐らく人で賑わう冒険者ギルドへ向かったのだろう。

 

 ……ところで、ゆんゆん。

 

 君は、そもそも酒の席に人を誘うことすらできないと思うのだけど、そこらへんはわかって……ないよね。

 あと、誘い方間違えるとそういう行為への誘いになること分かってる……わけないよね。

 

 ……いくか、どうせこの店人こないだろうし。




 酒が絡むとテンションが少し高くなるふらすこです。

 ちなみにふらすこの中の紅魔族好感度

 ねりまき>>あるえ>ゆんゆん>めぐみん>>>>ぷっちん>>>>道端に落ちてる手袋>>>>>ぶっころりー

「ちょっと!私達はどこよ!」
「そーだ!そーだ!」
「…………誰だ?」
「「!?」」


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