呪詛師、伏黒恵 (砂漠谷)
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遭遇、虎杖悠二

文才が欲しい


呪術師は因果応報の歯車だ――中二の頃までそう思っていた。

 

 中三に上がってすぐの頃、津美紀が殺された。残穢から呪殺した呪詛師は特定され、素早く抹殺された。

 だが、呪殺を依頼した人間――津美紀の同級生の複数人だった――は殺されなかった。軽い処罰すら受けなかった。

「呪術師は非術師に危害を加えてはならない」

 裏の司法は非術師を裁けず、表の司法は呪いによる殺人、しかもその依頼のみなんて起訴できる訳がない。

 理不尽に対して憤った。何故この世界は罪に罰を下らせないのだ、と。呪術界、司法界、あるいは国家。それは因果を応報させるために出来たものではないのか、と。悩んで、悔いて、そして……

 

 依頼者を殺した。津美紀の呪殺を依頼した奴らは「面白半分で依頼した、本当に死ぬなんて思ってなかった」と今際の際に喚いていた。だが、もしかしたら死ぬかもしれない、と思わないと依頼なんて出来る訳がない。死んでもいいと思ったから依頼したんだろう、未必の故意だ。その時はそう思ったが、こいつらにそれを言うことの意味を感じられず、面倒だった。ただ、殺した。こいつらが存在することが、呼吸をして心臓を鳴らしていることがただただ腹立たしかった。

 

 そうして俺は呪詛師になった。呪術規定9条、「非術師を殺した呪術師は呪詛師として処刑対象となる」、呪詛師になった、というよりそう認定された、の方がより正確だろう。追われる身になり、山奥や下水道を転々とした俺を助けてくれたのは、父の知人を名乗る孔(コン)さんという人だった。

 

「やあ、俺はコン シウ。君の味方だ。いや、そんなに警戒することはない。実は、俺は君のお父さん、伏黒甚爾さんの知り合いなんだ。君が呪詛師認定されたと聞いて、困ってないか見に来たんだ」

 

 たしか、最初はそんな感じで声をかけられた気がする……場所は下水道だったか。あからさまに胡散臭いし、呪詛師を助けようとしている時点で確実に悪人だ。腹にも一物抱えているんだろう。だが、当時の俺はその差し伸べられた悪意の手を取るしかなかった。

 

 その後、住居と諸々の生活資金を準備してもらい、倫理は捨てたが良心はまだ捨て切れていない俺でも抵抗の無い呪詛師の仕事、復讐代行や裏社会の人間のボディーガードや除霊などを回してもらった。それで生活費を稼ぎつつ、呪詛師になったことで途切れた呪術の勉強は独学と通信教育で補った。一般的な呪術常識は押さえているが、専門的な部分まではまだまだだったからだ。孔さんのコネで呪術の基礎や結界術に長けた呪詛師を紹介してもらい、通信教育を依頼した。青春を捨て、呪術の勉強と実戦にひたすら邁進した。

 

 そうして一年間、「より多くの悪人を殺し、より多くの善人を救う」の信条――ともいえない心情の元、呪詛師をやってきた。裏社会に足湯程度とはいえ浸かっているため、極悪人もよく目にする。様々な事情で殺せないこともあるが、それでもそれなりの数呪詛師や非術師を殺してきた。

 大義ではない。正義なんてもっての他だ。自分のちっぽけな良心のために、多くの人間を殺し、傷つけ、人生を壊してきた。だが、これしかなかったんだ。呪術界に、人間社会に否定された俺の良心には、呪詛師という道しか無かった。

 

 そんな時に、五条先生――自分と津美紀の生活費を呪術高専から引き出してくれた人だ、その金は無駄になり彼の口座から引かれているだろう――から電話で連絡があった。

 

「やあ恵、おひさ、元気かい?」

「何のようですか、特級呪術師さん。暗殺予告だったりします?」

「つれないなぁ、呪詛師になったと言っても“比較的”良心的な働きだそうじゃないか、聞いてるよ?復讐代行業中学生の仕事ぶり」

 

 言葉のドッジボールっぷりに自然と眉をしかめる。

 

「で、暗殺予告じゃないなら何なんですか?体制側の呪術師が呪詛師と連絡を取ってるなんてバレたら軽く見積もっても教職剥奪ものですよ」

「依頼だよ。依頼。上層部公認だから大丈夫。そろそろ呪物、両面宿儺の指が目覚める季節ですね、ということでその指の回収を依頼したい。完全成功報酬、宿儺の指と引き替えで一本一億だ」

「話が旨すぎますね。確実に裏がある、それも見え見えの。指目当てで呪詛師同士の潰し合わせが目的ですか?それで残った呪詛師を殺して指を奪う、と」

「確かに他の呪詛師にもこの情報は流す予定だが、流石にそんな信頼を自らドブに捨てる真似なんかしないさ。潰し合いには関与しないし、こちら側も宿儺の指の収集に尽力するが、きちんと指を持ってきたら金は払う」

「わかりました。やりましょう、指争奪バトルロワイヤル」

「頼むよ。そのバトルロワイヤルの巻き添えで幾ら非術師の被害が出るか知れない。それを止めるためにいの一番に君に連絡したからね。ったく、この案を通した上層部全員ブチ殺してやりたい」

 

 非術師の被害を止めるために俺に連絡したということは、俺をまだ信じているということ、かもしれない。こんな悪人を信じるとは、六眼は他人の人格を見る目ではないな。

 

「君だけにヒントをプレゼントしちゃおう、今目星が付いてるところは仙台の杉沢第三高校ってとこの百葉箱」

「百葉箱!?……いや何でもありません。わかりましたすぐ行きます」

「驚いた?まあ僕はもう君の保護者じゃないからね。死にかけても助けにいけないどころか殺しにかからなきゃいけないから、これくらいのサプライズは上げないと」

 

 ブツッと電話が急に切れた。久々の五条先生との電話だったが、あの人は電話を掛けてくるのも切るのも急だ。

 それはそれとして急がなければ。他の奴が宿儺の指を狙って在校生皆殺しとかもしかねない。大抵の人間は善人でも悪人でもないが、その中にもし善人がいれば、俺は耐えられないだろう。一億円?それはどうでもいい。

 仙台への最速の新幹線を取って、すぐさま杉沢第三高校へと向かった。

 

 

 

 杉沢第三高校に侵入する。といっても入校許可証なんて要らない警備の緩い学校だったので、ふつうに正門から入っただけだ。百葉箱はすぐに見つかった。その中をのぞき込む……が、そこには特級呪物の残り香、残穢が色濃く残っていただけだった。呪物の発する気配がデカすぎて呪力探知は使い物にならない。

 ありえる可能性としては、既に呪詛師が取ったがまだ去っていないか、もしくは学生が持っているか、という可能性だ。

 呪詛師が持っている場合はあまり問題はない。新幹線内でネットの地方ニュースを調べたが、呪詛師同士が争っている形跡としての事故・事件の報道は無いので居たとしてもおそらく一人か一組だろうし、そのまますぐに呪術界上層部に指を渡すだろう。他に持ち込むことはあまり考えられない。宿儺の指がすべて揃っているならともかく、一本に一億も出せるのは日本では国と繋がってる上層部だけだ。“ついで”で学生を攫ったりしなければいいのだが……

 学生が持っている場合、これが問題だ。学生がもし何かの弾みに封印を解いたりしたらその学生どころか周囲にいる人間、宿儺の指レベルなら区の人間全員犠牲になりかねない。

 

 一番最悪なのはもう持ち帰ってるパターンだ。今は四時半、既に学校が終わり部活が始まっている時間だ。指を持っている学生が帰宅部だったりしたら……いや、待てよ。未だに下校している人間を見ない。

 近くで休憩してるテニス部員に聞く。

 

「なあ君、この学校で部活に入っている人どれくらいいるかわかるか?」

「この学校は全生徒入部だから――」

「今部活停止処分を受けてる部活は?」

「たしか無かった筈……え?というか誰?部外者?」

 

 よし、これで下校している人間はほぼいないことが確定した。百葉箱に走って戻り、印を二つ組んで玉犬の白と黒を出す。

 

『玉犬・白』『玉犬・黒』

 

「この箱の中の匂いを覚えろ。……覚えたか?そしたら黒は正門、白は裏門で待機して、この匂いを少しでも持つ人間を見つけたら遠吠えをして俺に伝えろ。持ってる人間が非術師なら多少手荒にしてもいいから確実に捕獲しろ。ヤバいと思ったら逃げろ」

 

 今回の件は呪術界上層部の正式な依頼であり、つまり家入硝子の反転術式による後始末も期待できるということだ。多少一般市民を傷つけようが問題はない。

 

 一安心して一息付き、グラウンドの方を見るとおそらく二級だろう大きな呪霊が地面から泳いで出てきた。宿儺の指の気配が大きすぎる+指の校外脱出防止のために必死だった、ので今まで気づかなかった。地面を泳いでるのは固有術式か、それとも壁抜けの応用で実は等級が低いのか……どちらにしろさっさと処理した方がいいが、部活動生を巻き込む訳にもいかない。彼らが下校した後にしよう。

 

 なんか砲丸投げで30メートル越え出してる超人がいたが今は気にしている暇はない。式神なので非術師には見えない『大蛇』を使い、生徒のバッグなどを漁らせる。

 

 しばらくしても何も成果がない状況で、玉犬の遠吠えが聞こえた。この声音は黒だな。走っていくと、顔も尻尾も沈んでいる玉犬・黒がいた。どうやら逃したようだ。

 

「呪詛師か?」

 

 黒は首を横に振る。黒が逃がした非術師となると、相当足の早い非術師ということだろう。

 

「追えるか?」

 

 今度は首を縦に振る。大蛇と玉犬・白は解いて、黒と共に走る。

 着いたのは杉沢病院というところだった。中に入り、匂いを追い続ける。

 三〇一病室に入ると、ベッドに横たわっている病人が二人、それと見舞いの学生が一人居た。例の砲丸投げ30mの超人だった。玉犬がそいつに向かって吠える。こいつだな、こいつが宿儺の指を持っている。

 

「おまえは大勢の……おいお前、病院はペット禁止だぞ」

 

 見舞われている老人に声を掛けられる。玉犬が見えるということは……この老人、死期だな。死ぬ直前には非術師でも呪いが見えることがある。

 

「ああ、すいません。これは麻薬探知犬なんですよ。おい貴様、病気で辛いからってシャブにテェ出してんじゃねーぞ!」

「えぇ、何ですか急に!?」

 

 同じ部屋にいるもう一人の病人に難癖を付けてやり過ごす。髪の色素が薄い、若い女だ。というか5、6匹程の蠅頭に憑かれている。蠅頭に憑かれている人間は偶に見かけるが、普通は一匹でその程度なら生活に大した支障はない。俺も不審者として目立つのも危険なので普段は放置している。しかしこの数となると、生死の問題に発展する可能性もありうる。

 

「貴様ァ、しらばっくれてんじゃないぞ!どこに隠した!」

「きゃあ、ちょっと、やめてください!」

 

 布団を剥がし枕をひっくり返す合間に手早く蠅頭を祓う。胸や背中などの社会的・物理的に触りにくい部位に憑いている蠅頭は玉犬に祓わせる。

 

「すみません、勘違いみたいでした。ご協力感謝します」

「協力なんてしてないって……あれ、体が軽い」

 

 二人で騒いでいる間に、老人は死んだようだ。電話で見舞い人の学生が死んだと伝えている。

 

「おいお前、指持ってないか?」

「なんだ麻薬Gメン急に。こちとら親類が死んだ直後だぞ、もう少し労れや。というか遺言聞いてる途中にうるせーんだよ」

「それを放っておくと人が死ぬ」

「はぁ?指を?どういうことだよ」

「【かくかくしかじか】で、危険なんだよ」

「おいそれ、やべぇじゃん。先輩が今夜包帯剥がすってたんだけど」

「ここには無いのか、その先輩は今どこにいる。」

「杉沢第三高校、心霊現象研究会部室にまだいる筈……おい、置いてくな俺も行く!足手まといにはならんつもりだ!」

 

 踵を返し、即座に高校に戻る。呪力を足に込めた走法でもこの超人を振り切ることはできないようだ。

 

「なぁGメン、いつまでもGメンって呼ぶのはアレだし、名前教えてくんね?」

「伏黒恵だ。あとGメンじゃない。呪s……呪術師だ」

「そうか、伏黒、俺は虎杖悠二、よろしくな!」

 

 校門を抜ける。呪霊はまだ活性化していないようだ。心霊現象研究会という張り紙がされた部屋に押し入る。

 

 すると、ロン毛・金髪・顎髭・褐色肌という最も学校に似合わないであろうチャラいおっさんが学生らしい部員二人と話を――いや、取引をしていた。

 

「これを頂ければなんと一〇万円、あなた方個人にお支払い致します。いえ、詐欺なんてめっそうもない!信じてください、トラストミー」

「いや、そんな、でもそんなに価値があるものなら取っておいた方が……」

「いえ、今売るのが一番マネーになるんですよ、本当です。10万を部費に当てれば設備も増え、それにつられて部員も増えのウハウハです。ですからそれを私に渡した方がいいんですよ」

「いやでも剥がしたい……」

「ですから!今すぐ私に渡すべきなんで……あれ、伏黒君?」

「鶴瓶さん……何やってんすか」

 

 この男、実は俺の知り合いである。鶴瓶加也、少なくとも俺が即座に殺しにかからない程度には“良心的”でかつ“厄介”な呪詛師だ。呪詛師といっても呪殺は範疇外で、仕事としては詐欺師兼情報屋兼呪霊調教師、という感じだ。

 そして何故ここにいるのか、何故ここに特級呪物があると知っているのか。五条先生は俺だけにヒントを教えたのではないのか。

 

「申し訳ありません、ちょっと失礼……何でこの学校に呪物があるって知ってるんだよ俺の極秘情報だったのに」

 

 どうやらあちらも同じことを考えていたようだ。部員との会話を切ってこちらに来る。相手は呪言師だ。知り合いとは言え念のため呪力で耳から脳までを保護しておく。

 

「どうしてって、五条先生から君だけに、って教わったんですよ。鶴瓶さんは?」

「いや俺はこう裏のネットワークで……」

 

 奇妙なジェスチャーをし始めた鶴瓶さんを無視して部員の方を向くと、後から入ってきた虎杖が部員と何か揉めていた。

 

「だからこれは危ないもんなんだって!専門家に処理してもらわないと」

「でもこれは10万の価値があるものすごいものなのよ!手放すなんて勿体ない!」

 

 虎杖と女の部員が揉めて、指を引っ張り合っている。女の部員の方は鶴瓶さんの術式の影響か、ぼんやりした顔と焦点の合っていない目をしている。嫌な予感がする……

 

【ビリィ、ビリビリィ、ビリビリビリビリ】

 

 宿儺の指の包帯が、封印が解ける。呪霊が活性化し、壁や天井、床をすり抜け低級の呪霊が押し寄せてくる。

 

「ああもう逆効果じゃないですか、だからアンタに呪言を無闇やたらに使うなって言ったんだ!そして虎杖!馬鹿!本当に馬鹿!」

「どうしよ、これどうしよ伏黒」

「鶴瓶さん、虎杖は学校に残ってる非戦闘員を避難誘導!というか小泉さんはどこやったんですか!?」

「やりはするけど報酬は!?小泉は別の仕事ぉ!俺も非戦闘員なんだよただ働きとか一生恨むぞ!」

「指の金全部やりますよ!虎杖指寄越せ!」

「ああ、わかっ……」

 

 指を虎杖から取ろうとしたが、それは天井から現れた粘土越しに掴むような手に阻まれた。粘土のようだった天井は砕け、虎杖は瓦礫の下に。そして穴の開いた天井から二級……いや準一級呪霊が出てきた。

 

「オロロロロロロ」

 

 奇妙な鳴き声を放ちながら部員の二人に襲いかかる。

 

『満象』

 

 即座に印を組み、呼び出した体中に密教的な絵様がある象を壁にして抑え、部員の二人の手を引いて部室から脱出する。虎杖は頭から血が出ているが、ピンピンして瓦礫から這いだしその後を追いかけてきた。

 

「猛毒ガスが撒かれたぞー!本当だ!逃げた方が良い!猛毒ガスだー!」

 

 鶴瓶加也の術式、“信じさせる呪言”による避難誘導は呪力による抵抗ができない非術師にこそ覿面に効く。正常性バイアスなどお構いなしにブチ抜き、耳に入る情報の信憑性を無条件に最高レベルにまで引き上げる。たとえ校内にいてはいけない金髪褐色のチャラいおっさんの言だろうと。

 呪言師がいてくれて本当に助かった……いや呪言師のせいでこういうことにもなったのか。

「なぁ、これからどうすんだ伏黒!?なんかヤバそうなバケモンいっぱい出てんだけど!」

「そうだな……、虎杖、お前喧嘩の経験は?」

「え?百戦百勝だけど?あれ格闘で倒せんの?」

「いや呪力が無きゃ無理だ、普通はな。だがこれを使えば話は別だ」

 

 影から石に刺さった短剣を引き出す。

 

「工業的製法で作られた量産型聖剣だ。微弱な反転呪力を……いや説明はいいな。ともかくそれを石から無理矢理引っこ抜いて使え。元々そういう縛りで作られてる」

「よくわかんねぇけどわかった!フン!」

 

 一瞬で抜きやがった。しかも手だけで。まあ砲丸投げ30mの男だ、抜けるとは思ったが……これで俺には使えないな。まあ役に立つならいいか。

 

 満象がそろそろ限界だ。術式を解き、戦闘体制を整える。

 

『即身化生・鵺・天威武放』

 

 自分の胸に射影が写るように太陽との角度を調節して“鵺”の印を結ぶ。拡張術式『即身化生』は、式神の固有術式を自分のものとして使う術だ。

 俺の生得術式、十種影法術は、電化製品でたとえればスマホのOS、基本ソフトウェアのようなもので、その中に十種類の式神がアプリとしてダウンロードできる。それぞれのアプリの中の機能の一つに式神の固有術式があるということだ。鵺の場合は体から電気を放出するものである。【脱獄】し、アプリを起動せずにその機能のみを取り出し、OSのものとして使う。これが“即身化生”の仕組みだ。ちなみにこれを使っている時は体に余計な部位が付加される。今回は小さい翼が背中に生えた。ムレる。【脱獄】については後ほど。

 

 俺の武器は呪力が篭もった一般的な形状の直剣だ。これに電気を集中させる。

 

「虎杖、まだ指は持ってるか?」

「ああ、バッチシ掴んでるぜ」

 

 死語で虎杖が返答し、指を見せる。

 

「お前はあのデカい呪霊を人間のいないところに誘導しろ。あとその聖剣は脆いから防御には使うな。俺は雑魚の呪霊を祓ってからお前に合流する」

 

 虎杖を囮に使うことにした。あの瓦礫でピンピンしてるなら死にはしないだろう。

 

 学校の廊下を賭け、

 

「ちゅーるちゅーるちゃうちゅーる」

「そうねだいたいねぇぇえぇぇ」

 

 呪霊をすれ違いざまに剣で切りつけ、電気で痺れた呪霊を後ろから突き刺す。作業だ。呪霊は祓われ、塵になって消える。呪霊に襲われていた人間も居たようだが即座に対処したからか怪我は無いようで、鶴瓶さんの呪言を聞いて直ぐに避難した。雑魚退治をしばらく繰り返すと、

 

「伏黒君!!避難完了!!」

「こっちもバケモンの誘導終わったぞ!今屋上!ちょっとヤベェ助けてくれ!」

「鶴瓶さんは『帳』降ろしてください!虎杖は剣ぶっ壊してもいいから耐えろ!」

 

 どうやら終わったようだ。『天威武放』を解除し、印を組んで新たにただの『鵺』を出す。窓ガラスをブチ破り、俺を鵺に掴ませ空中経由で屋上に向かう。

 

 虎杖と準一級呪霊が対処している。聖剣はもう壊れている。その隙を突いて、空中から落下した勢いで剣を呪霊の脳天に突き刺そうとした。しかし感づかれ素早く床に潜られる。

 つまり俺は無様に鵺からの飛び降り自殺を敢行しただけという形になった。呪力で咄嗟に足を守ったが完全には間に合わず。足の骨に罅が入った感触がある。

 地面に落ちたショックから立ち直る隙に、虎杖の下の床が粘土のようにゆがみ、床越しに呪霊の巨大な手に捕まる。

 

 と、その時、何を思ったのか、虎杖が宿儺の指を飲み込んだ。そうだ【かくかくしかじか】の時に「より多くの呪力を得るために呪霊は指を狙う」とは言ったが「宿儺の指は猛毒」とは言ってない。「呪力が無きゃ倒せない」とも言った。

 あれは虎杖の中の情報だけで考えれば最適解だろう、だが違う。普通は死ぬし、死ななくても伝説の宿儺が受肉するという最悪の事態になる。そして……

 

 虎杖……否、宿儺が片手を振り上げ、呪霊を吹き飛ばした。

 

「ケヒッ、ヒハハハ!久しいな、生の風、生の地面、生の光は!」

 

 虎杖は普通じゃない、宿儺の受肉体としては完璧に近いだろう。ほぼ超人に近い膂力に宿儺の呪力、最悪の組み合わせだ。

 だが、相手は後ろを向いて、服を引き千切っており、完全に油断している。体には、いや顔にも入れ墨のような呪印が浮かび上がっている。

 今なら……!

 

「気づいていないと思ったか?ケヒッ、ヒ?」

 

 背中から剣で突き刺そうとしたのを弾かれ、カウンターを決め俺の腹を貫こうとした宿儺の腕がもう片方の腕に止められた。

 

「おい、俺の体を勝手にしてんじゃねぇよ!てか伏黒もいきなり刺しにくるのは酷くね?」

「何故動ける?オマエは器に過ぎな……」

 

 宿儺の声が途切れる。虎杖が宿儺を押さえ込んだのか、それとも宿儺が一人芝居でコチラを騙そうとしているのかわからない。

 

 未だに最悪の事態が続いているのかもしれないし、最悪の事態を脱したのかもしれない。これは……俺には判断できない。六眼を持つ五条悟に視て/観て/診てもらうしかない。

 

「両手を上げて正座しろ」

「お、おう。わかった」

 

 正座なら立って襲いかかるまでに多少の予備動作ができる。もし宿儺の一人芝居でも少しは何とかなると思いたい。“鵺”を解き、体の呪印も消えているがこれもミスリードの可能性がある。虎杖(もしくは宿儺)が正座してる間に五条悟に連絡する。

 

「伏黒です。杉並第三高校の虎杖悠二が両面宿儺の指を食べ、宿儺が受肉しました。虎杖は宿儺を押さえ込めるようですが、それも宿儺の芝居かもしれない状況です」

「へぇ?ずいぶん訳のわからない事態になってるじゃないか。それで、鑑定人五条に依頼した訳だ。僕は高いよ?」

「……百万までなら払えます。さっさとこっち来てください。俺は逃げます」

「ジョーダンだよ。あと組手してやるからそこで宿儺の器監視してて。逃げたら本気で殺すから」

 

 唐突に切られた。

 一級以上の術師は俺のような呪詛師とは交戦する義務がある。特級呪術師である五条悟も例外ではない。規則の穴を付き、普段は手加減した“組手”にしてくれている。それでもボロボロにされて闇医者に高い金を払う羽目になるのがいつものオチなのだが。

 

「お~い、伏黒さんや~、そろそろ正座がキツくなってきたんですけど~」

「お前はそのまま座ってろ!お前が呪霊になったのか人間の意識を保ってるのか俺では判断ができん!今判別できる人間を呼んで……」

 

 来た。学校の正門に白髪で両眼帯、高身長の男が見えた。一瞬後、そこに彼はおらず、咄嗟に眼のみを動かし探ると虎杖の真後ろに居た。無下限術式による瞬間移動だろう、俺も詳しくは知らないが。

 

「うん、確かに混ざってるね。少なくとも宿儺に逆に食われている訳ではなさそうだ。今は虎杖君が表にでている、ということでいいのかな?」

「え、ああ。そうだけど。アンタ誰?」

「五条悟、一位の男さ」

「何のだよ……」

「う~ん、色々?で、宿儺と代われるかい?」

「頭ン中で代われ代われってうっせぇし、まあできると思うけど」

「じゃあ十秒だけ代わってみてごらん。十秒だよ」

 

 不味い。おそらく宿儺は真っ先に俺を狙う筈だ。俺は宿儺を背中から刺そうとした。それに、五条先生が俺を前みたいに守ってくれる立場にいる訳じゃない。裏社会の“ゴミ掃除”をやってるのを理由に抹殺の優先順位が低いだけ、だから特級呪術師である彼が俺を殺さなくてもお咎め無しなだけだ。流石に守ってしまうとこれ以上の言い訳が聞かなくなるだろう。五条悟が上層部に対しても、上層部が呪術規定に対しても、だ。一応は五条悟も体制側の人間だ、上層部と真っ向の対立はしたくないだろう。

 つまり、五条先生の目論見は……

 

「即座に俺の背中に傷をつけようとしたな、オマエ。見所がある、殺してやろう」

 

 体に呪印が再度現れた宿儺が体のバネを使って俺に飛びかかる/襲いかかる。

 目論見は、こういうことだ。

 

 宿儺の呪力を込めた掌底を間一髪で横に躱し、全力の後ろ走りで距離を取りつつ――罅が入った足の骨を労ることなく――印を組む。

『満象』

 満象を全力で突進させる。特級呪物の受肉体、そうでなくてもオリンピック選手を遙かに越えたフィジカルの持ち主だ。数トンの重量を持つ満象の突進でもないと、怯ませることも難しいだろう。これしかない

 だが、それは当たればの話だった

 満象の突進をひらりと躱し、宿儺は満象の鼻を抱え、砲丸投げのようにブン回してこちら側に投げ飛ばしてくる。

 

「クソッ、ならこれだ」

 

 投げつけられた満象が当たる直前に解き、再度印を組む。

『鵺+大蛇、蛇喰蛇』

 

 拡張術式による鵺の翼と鉤爪、そして蛇の頭と胴体を持つ式神だ。通常の式神と違い、破壊されても問題は無く、複数出すことができる。

 5匹の式神に先行し、呪力で強化した拳を頭から振りかぶり宿儺に走りより殴りかかる。

 殴りかかった拳は当然受け止められ、お返しとして腹に拳をたたき込まれそうになる。

 

「ふん、その程度効く訳が……ッ」

 

 だがその瞬間、ガクンと宿儺の姿勢が崩れた。俺の影の中に片足が引きずり込まれており、その足が大蛇に噛みつかれている。拳は股をすり抜けた。

 大蛇の印は十種影法術の式神の中で唯一片手でも発動できる、つまり後ろ手で隠して印を結ぶこともできるということだ。だから大振りにした拳を目立たせ殴りながら『大蛇』を発動した。お返しは威力は減衰こそすれ、食らうだろうと思っていたが外すことに成功した。

 大蛇が片足にだけ噛みついているのは、両足なら膂力次第で顎をあけられてしまう可能性があるからだ。ほかの腕や足には蛇喰蛇が絡みつき行動を妨害することで大蛇の口を開けるのを防ぐ。

 

 そして、大蛇の牙から分泌された即効性の麻痺毒は、宿儺を一時的にでも麻痺させてそのまま十秒間経過する……筈だった。

 

 だが俺は忘れていた。宿儺の器、虎杖悠二の肉体は、猛毒、両面宿儺の指を飲み込み生きながらえているという事実を。

 

「なかろう。……台詞が途切れてしまったな」

 

 

 

 




当然一級以上の術師に遭遇すれば戦うことになりますが
冥々→金さえ置いておけば
七海→規定側なので殺しに来るが飛行に対処できない
日下部→ポテンシャルのある十種影法術使い、土壇場で覚醒されて殺されたくはない
という感じです

冤罪吹っ掛けられた女性は夏油にサトウの方が良いと言われた女性です。霊媒体質という捏造設定でよく蠅頭に憑かれます

工業的製法で聖剣
簡易領域インスタント使い捨てミサイルを短期間でメカ丸が作ってたのでそれくらいは作るのは難しくない、しかも海外は上層部が保守的すぎて腐ってる訳じゃない、技術の発展があると考えると、魔虚羅の退魔の剣の劣化版くらいは作れるかなって話 それでも耐久力ゴミ+抜いた人にしか扱えない+石に刺さっていて尋常の膂力じゃ抜けない(呪力による強化があっても簡単ではない)という縛りの上で作られてます
工業的といっても工場の設備を使っているだけで、肝心なところは手作業です。

鶴瓶加也
 小説版で野薔薇兄貴を拉致った呪詛師です。呪詛師とはいえ、発言と小泉との関係性で(発言は術式の仕様上だった感じもするが)奪って犯して殺せみたいなクズオブクズではなさそうだったので味方キャラとして出してみました
この人普通に呪術師に手なんか出さないでサマーオイルみたく宗教の教祖でもやればよかったのに
呪霊調教師というのは、こいつの呪言って言葉が少しでもわかる呪霊なら効くよね?(六本木の廃ビルの人質呪霊とか)あと狗巻家と違って術式の持続性が高くて呪霊の調教に使えそうと思ったので。

中学三年の青春を捨てて呪術の勉強に没頭してるので原作より強くオリ拡張術式も増やしてる、という設定ですが、脱兎はまだ手に入れてません。領域展開習得しないと調伏できなさそう


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嫌悪、釘崎野薔薇

感想批評訂正待ってます

呪物購入シーンは読み飛ばしてOKです


「なかろう……台詞が途切れてしまったな」

 

 咄嗟に考えた策、その要である大蛇の毒が効かなかった。宿儺は大蛇に噛みつかれ、影に引きずり込もうとしている足を気にせず、もう片方の足だけで体を支える。蛇喰蛇の爪や牙が四肢に食い込むのも構わずに俺と無理矢理の握手をし、宿儺は俺が印を結ぶのを封じた。

 

「おい、小僧……ああオマエじゃない、俺の中にいる奴の方だ。オマエが少しでも出てこようとすればコイツを殺す」

「……喉笛を噛み千切れ!」

 

 一瞬自死も視野に入れた。結局虎杖ごと殺す気で蛇喰蛇に指示したが、しかしその直後に、宿儺は指一本動かすことなく蛇喰蛇をバラバラに寸断された。大蛇も口腔内をズタズタにされて破壊されそうになったので解いておく。

 術式……いや御三家秘伝の領域対策を応用したのか?兎に角これ以上俺に出せる術はない、ここですべきことは、

 

「五条先生!」

「う~ん、まあ及第点かな?『蒼』」

 

 “最強”に助けを求めること、だ。

 

 術式が発動した瞬間、宿儺“だけ”が五条先生の方に吸い込まれた。宿儺だけとはいえ当然腕を捕まれている俺も引きずられそうになるが、その直後に、宿儺と俺の間に何かが挟み込まれたように手が外れた。

 

「ま、赤点を取っても満点を取っても上層部から追っ手が来るんだけどね、僕がまともに報告する訳ないけど」

「クソッ、呪術の呪の字も知らないような小僧にこの俺が押さえ込まれるなど……」

「……あ、うん、うし、戻った。伏黒、大丈夫か?コイツに殺されそうになってたけど」

 

 虎杖が自分をさしてそう言う。指さされた宿儺の体からは呪印が消えかけていた。宿儺の意識の浮上と呪印はどうやら対応しているようだ。

 

「ああ、まあ死にそうではあったが運良く……」

「はい終了、伏黒君は帰っていいよー、虎杖君はー、ちょこっとこっち向いて」

「うん、何s……」

 

 五条先生が虎杖の頭を小突くと虎杖の体から力が抜け、倒れたところを五条先生が支えた。

 

「何したんですか」

「ん?企業秘密。彼は持ち帰って扱いを検討するから君はもう帰っていいよ?もちろん指の一億は取ってこれなかったからナシね」

 

 一億は別にいい……と言っていたが、たとえ欲してなくても逃げた魚はデカい、惜しく感じる。いや、いまはそれよりも。

 

「そいつは……虎杖はどうするんですか?」

「どうしたい?」

「どうしたいって……正直、そいつが善人なのかわかりません。俺の指示に従って呪霊の誘導をしてくれましたが、自分の善意で俺に従ったのか、それともただ人の指示に従うしか能の無い馬鹿なのか。でも、もし善人だったとしたら生きてほしいです」

「相変わらず面倒臭いね、ま、僕に任せなよ」

 

 そう言って虎杖を背負い、俺から背を向けた。

 その背中に俺は大きく息を吸い、声を掛ける。

 

「助けてくれて、ありがとうございました!」

 

「あれは助けたんじゃなくて宿儺を捕獲しただけ、だからね」

 

 そうだ。呪術師が呪詛師を助けるなど、あってはいけないことだ。そういうことに、しておかなくてはならない。

 

 その後、東京郊外の自分の拠点に帰り、布団に入った。布団を被る時には、もう朝になっていた。足の骨の罅は海外産の副作用の強く高価な霊薬を飲んで治療した。これから忙しくなる。ギプスをはめて治療している暇はない。

 

 数日ほどすると、宿儺の指に一億を掛けるという情報が呪詛師界隈に広まっていった。俺が仙台に行った時には情報はほとんど広まっておらず、俺のような呪術師とのコネを持つ人間か、鶴瓶さんのような情報通しか知らなかったため、争奪戦という状態ではなかったが、今は多くの呪詛師が一本一億という金に釣られ、協力し合いつぶし合い裏切り合いの戦略が各地で繰り広げられている。

 今のところは争奪戦による一般市民の死者は出ていないようだが、いつ巻き添えが出るかわからない。一般市民の被害を躊躇しないような、特に悪質な呪詛師の行動を妨害し、可能なら殺害すること。それが俺の今の目的だ。

 まあその為には戦闘用の呪具呪物の準備や、術式の精度や戦闘技能の向上が必要なのだが。

 

 そして前者、呪具呪物を購入するために訪れたのは、ここ、食べ処“小鳥箱”……の二階にある置物屋だ。名前は下の店名と同じコトリバコだが漢字が違う。“児盗匣”……非術師やオカルトの知識が浅い者にもその不吉さがわかる字面だ。

 店内に入ると、壁は呪具や呪物が並んだ棚で覆われているからわからないが、天井や床は呪力の漏洩を抑える呪符で覆われていた。

 そしてカウンターには、店主である呪詛師、金切静がいた。

「おいーっす、伏黒っち」

「失礼します、静さん。いつものお願いします、あと霊薬も」

「ふーい、霊薬に術式浮上薬一丁!」

 

 店の中には俺と彼女しかいないが叫ぶ。これが彼女のルーティーンらしい。叫んだ後に自分で店の奥に入って商品を取ってくる。

 彼女の術式は“蟲毒”、生物を殺し合わせることで呪物を作成できる。

 繁殖力の強いゴキブリや鼠を育成した後に、結界の内側で殺し合わせる。これで二級までの呪物なら作成出来るようだ。

 そして何を注文しているのかだが、霊薬は前に足の治療に使った薬だ。反転術式により反転した呪力を保存しているため、どんな傷も治せるが、水銀が多く使用されているため、反転呪力による治癒・正常化を差し引いても有毒だ。

 で、術式浮上薬。これが以前言っていた【脱獄】に関わる薬だ。【脱獄】とは、術式の浮上のことであり、つまりは体の内部に刻まれている術式を体表に呪印のように浮かび上がらせることだ。正確には術式そのものが体に浮かび上がってくる訳ではなく、その影のようなものが入れ墨のように体表に見えるだけだが……それでも利便性は非常に高い。

一つ目の利点は、術式の構造が目に見えることだ。呪力がどのように流れて術式効果につながるのか、二次元的かつ象徴的に表される。五条先生の六眼は三次元的かつ詳細に見えるのでその劣化でしかないといえばそうなのだが。俺の場合は背中に浮かび上がっているため、鏡越しにスマホで写真を撮って見ている。背中には墨色で、セフィロトのような構造の十個の円とそれを繋ぐ線、円の中には十種類の象徴的意匠がある。こうした象徴を読み解き、術式の条件、媒介、空白を読み解けばどのような拡張術式が作れるのか、作ればいいのかがわかる。解読/解釈には専門的な知識が必要であり、かつ正規の術師なら五条悟の六眼によるアドバイスを受ければこのような代物は不要なため、現代では徹頭徹尾呪詛師側の技術である。

 二つ目の利点は、拡張術式を記憶してくれる点だ。拡張術式を一度一から組み上げれば、次からは自分で組み上げる必要は無く、通常の術式と同じように呪印に呪力を流せば自動的に発動する(俺の術式は掌印が省略できないタイプのため、掌印も結ぶ必要があるが)。ただし領域展開や極の番レベルの高度な術式は容量をオーバーする、らしい。

 俺の場合は相伝の術式であり、小学生の頃に取り扱い説明書が禪院家から送られてきたため一つ目の利点にあまり意味は無いが、二つ目の利点はしかし大きい。普通なら拡張術式を一から即座にノーミスで組み立てられるようにしなければ実戦では使えないが、一度成功すれば実戦で使用可能というのは訓練の時間を大幅に削り、それを他の訓練の時間に充てることが出来る。このお陰で、かなりの時間を呪力による肉体強化や近接戦闘技能、呪力量の向上に費やせた。

 この“術式浮上”を、具体的にどうやって行うのかというと、最初は激痛の伴う施術を行い、そして定期的に浮上薬を塗らねばならないというものだ。浮上薬は低級呪物の一部を擂り潰して加工したものであり、霊薬と同様当然有毒で、容量を間違えると誰に呪われるでもなく自然に呪いにかかることもある。

 だが長生きするつもりもないので問題ない。こんな悪人はさっさと死んだ方がいいのだ。まあ他の悪人を殺す使命があるため自死するつもりは無いが。

 この技術、元々は金切静の曾祖父が呪言師の呪印の差異を研究し、百年前に開発したもので、その技術を代々改良しつつ受け継いでいるらしい。彼女は施術の効果を浮上薬で際限なく延長する技術を開発した、と誇っていた。昔は十数回施術すると魂が削り切れて死ぬという致命的な欠陥があったのだが、彼女の代でそれも無くなった。そして彼女の術式で原料となる低級の呪物を作成することで、百年の時を経てようやく実用化されたと言っても良いだろう。

 

 少しして出てきた彼女から薬を塗ってもらい――塗るのにも特殊な呪力運用が必要で自分でするのは難しい――ちょっとした雑談/情報収集をして店を出た。

 彼女は呪詛師――比較的悪質な者を含む――相手に商売をしているが、個人情報の秘匿義務など無いため、尋ねれば普通に客の情報を教えてくれる。そのため正規の呪術師にも泳がされているし、俺も手を出さない。ちなみに俺の場合は行動も術式内容もここ一年で有名になったのでもはや隠す意味はない。

 逆恨みで殺されそうになることもあるが得意の結界術と術式効果のある呪具・呪物を使いこなして返り討ちにする、らしい。実は通信教育をしてもらったのも彼女だ。

 

 金切静や鶴瓶加也、孔時雨から手に入れた情報――鶴瓶の情報は当然有料である、情報屋なので――を元に私刑対象を探して私的制裁を課したり、孔時雨から仕事を斡旋してもらったり、特に悪質な呪詛師を狩ったり、偶に感知した呪霊を祓ったりする日常を過ごしていた。ある日東京の少年院上空に特級レベルの呪胎が発見された、という情報が入った。“窓”の一部から情報を横流しさせている呪詛師のネットワークだ、信用性はあるだろう。

 少年院なので放置でも良いかとも思ったが、特に噂も信仰も無い場所で特級レベルの呪胎ということは、宿儺の指のような特級呪物を呪胎が食べた可能性がある。それに少年院といっても看守の人たちもいるだろう。即座に向かうことにした。

 

 到着した。既に“帳”が降ろされている。フードを深く被って顔を隠して――雨なので怪しまれることはないだろう――一般人を装い、現場の状況について尋ねる。「毒ガスが散布され、まだ受刑者と刑務官の避難がほとんど出来ていない」らしい。毒ガス云々は呪霊の隠蔽のための虚偽だろうが、避難が出来ていないことはおそらく事実だ。

 別の方角から“鵺”を使って上空から侵入する。普通に帳をくぐり抜けて入ることが出来た。もう一度出て入ってみても問題は無かったため、この帳に術師の出入りを防ぐ効果は無いと判断した。

 帳の中に入ると、十分強いが特級にしては少し弱い呪力の気配があった。まだ呪胎だからだろう。しかし情報にあった上空にも、屋外にも見えない。『鵺』を解いて屋内に侵入することにした。

 

 扉を開けてすぐのところには人間の姿は見えなかったが、人間の呻き声がする方向に向かう。その部屋には、例の呪胎と多くの一般人、そして一人の術師の男がいた。

 呪胎と一般人は様子がおかしい。呪胎はその透明な卵の内部に、深青色の線虫のようなものが大量に這っており(数万匹か?)内部の呪胎本体が見えない。そして一般人の非術師らは呼吸で体は僅かに上下しているが、全員が地面に突っ伏している。服装からして受刑者と刑務官だろう。比率は4:1と言ったところか。

 

「お?呪術師がキたと思ったらガキが一人かよぉ!高専もたった一人で特級相手にサセるとか人材不足もハナハダしいな!」

 

 どうやら俺を高専生だと勘違いしているらしい。制服を着てない時点でそうじゃないとわかるだろう、馬鹿かコイツは。それにしても奇天烈な喋り方だ。個性アピールに必死なのか?呪詛師はそういう所がある。普通からハミ出してないと負けみたいな所だ。

 呪詛師の見た目はサングラスにロン毛、アロハシャツの中年男であり、如何にもダメ人間と言った感じだ。喋り方と比べれはそこまで個性は感じない。

 

「お前は特級じゃないだろ、日本で唯一の特級呪詛師は去年に死んだ。というか何してるんだ」

 

 馬鹿は大仰な振る舞いをしながら口を開く。

 

「あぁ?これはなぁ、特級呪霊を俺が支配スる準備だよ、準備!俺の『生霊虫』は寄生した対象の呪力を吸収シて支配スる能力をモつんだ。そしてコレは式神じゃネぇ!俺の精子を術式で変異・肥大化サせ呪力をアタエたれっきとシた生命体だ!だから維持に俺の呪力をツカわず、無限に使役デキるんだよ。特級といえど呪胎の状態なら寄生サせることがデキた!これで俺も特級呪詛師ってワケだ!」

 

 術式効果を向上するための術式の開示か。心なしか呪胎に寄生している生霊虫とやらの蠢きが活発になったように見える。嘘ではないだろう。

 つまり今やるべきことは。

 

「その精子塗れの呪胎を祓う」

 

 天井も低い屋内だ、鵺は使えない、万が一呪胎が孵化した時のために呪力を消耗したくもない。だから、真正面から《呪詛師》バカ|を物理で潰して呪胎も潰す。相手から見えないように剣を影から引き抜き、それを突きつける。

 

「はっ、これをミてもそれがデキるとでも?」

 

 地面に突っ伏していた非術師たちが立ち上がり、馬鹿と呪胎を覆う肉壁として立ちはだかる。涎を垂らして呻く受刑者と刑務官はまるでメイクのないゾンビ映画のエキストラのようだ。

 

 精子使いの馬鹿は非術師を壁にして特級呪霊の孵化まで持たせようとしているのだろう。おそらく俺を、宿儺の指争奪戦相手の呪詛師ではなく高専の呪術師と勘違いしているから、こうすれば手を出せなくなるだろう、という寸法か。

 

 何発か呪力を込めた拳で殴ってみるが怯む様子はない。痛覚は麻痺しているようだ。

 これは……正直やりたくはないが、やれないことはない。今選ぶべき選択肢は受刑者の殺害だ。

 

 そのまま突っ込み、剣状の呪具にさらに呪力を込めて、年齢が高そうな受刑者を選んでその首を切断する。首から血が吹き出るのでそれを馬鹿に見せつけるのだ。

 他の似非ゾンビたちに手首を掴まれないように距離を取り……後ろから呪力の籠もった釘が飛んできたので咄嗟に振り向き、血に濡れた剣で弾き飛ばす。

 

「完全に死角を突いたと思ったのに!どんな反応速度よ!?」

「というか、え?伏黒……?嘘だよな?」

 

 ……完全にカオスの状態に突入してしまった。特級の呪胎の気配で人の気配に感づくことが出来なかったのが原因だ。「俺は殺しを躊躇しない、無駄だ」というブラフで肉壁を退かせ、最小限の犠牲で済ますつもりだったのだが……受刑者でも過半数はわざわざ殺すほどの悪人ではないだろうし、刑務官を殺すなんて以ての外だ。

 

 面倒なので後ろの虎杖と茶髪ショートヘアの女は無視しよう。

 

「無駄だ、俺は殺しを躊躇しない。指を奪いに来た一介の呪詛師にすぎないし高専の人間でもない。さっさと邪魔な肉壁を退かせて戦ろう」

「はぁ~?指ぃ?何のことだ?兎に角俺が特級呪霊を手にイれるのを邪魔スるんだったら容赦しネぇぜ?」

「指!?宿儺の指のことか?何で宿儺の指を奪うんだよ、何でここにいるんだよ、何で人を殺してんだよ……殺しを躊躇しないって何なんだよ、伏黒!」

「落ち着きなさい、相手は呪詛師ニ体、救助対象は一般人数十人、内一人は死亡。アンタが若い方の呪詛師と何があったが知らないけど、すべきことを忘れないで」

 

 もう状況が混乱しすぎている。俺は呪霊とバカ(呪詛師の方)を殺せて刑務官が救出されればそれで十分なので、後ろの二人を邪魔する気は無いのだが……それを《呪詛師》バカ|の前で言うと嬉々として刑務官を肉盾にしてくるだろう。

 

 前後を警戒して動けずにいると、女の呪術師が釘を飛ばしてくる。剣で弾き飛ばすと、虎杖が突進してきた。

 

「うおおおおお!!俺はお前を絶対に止める!伏黒ォ!」

 

 何がうおおおおおだ馬鹿(善人の方)。しかしその速力は俺の反応速度を超えていた。釘を弾き飛ばした瞬間で短い距離を詰め、剣を振り終わった隙に組み付かれる。

 

 突進の衝撃で虎杖と一緒に肉壁まで吹き飛ばされる。虎杖に背後から組み付かれたせいで動きが取れず、さらに虎杖ごと肉壁の非術師に覆い被さられる。

 

「ひゃはははは!もっと覆いカブされ!ツブしてシマえ!」

「あんたは私が相手よ、洗脳野郎」

「んあぁ?俺の術式は洗脳じゃナくて生霊虫の生成だぞ!そんなしょぼい術式と一緒にスんなや、釘打ち機のアマ!」

「私のは趨霊呪法だ!感染呪術だってのボケ!」

 

 女呪術師とバカ呪詛師の言葉の応酬で術式の開示が行われたが、今はともかくこの拘束を解かなければいけない。片手で印を組める“大蛇”を出す。

 

「拘束を剥がせ、殺すな」

 

 バカ呪詛師に聞こえないように囁いて命令する。虎杖と俺の間の影から“大蛇”が出現することで無理矢理拘束を解く。出現時の圧力は虎杖の力を上回ったようだ。その後、俺は大蛇に掴まり、非術師の山から這い出る。その後虎杖は素の力で非術師の山から抜け出した。

 

「伏黒!あの時先輩を助けてくれただろ?なんで……なんでこの人は殺したんだよ!あのビリビリで気絶させたりとか!お前ならなんとか出来ただろ!」

「取り敢えず今は呪胎を祓うのが先だ!そこの目的は合致してる筈だろ?」

 

 正直に言うと、『天威武放』や素の『鵺』で気絶させることができる可能性もあった。拳では気絶させることはできなかったが……だが、それでも相手は殺傷攻撃を封じる肉盾として非術師を使ってくるだろう。全員気絶させなければいけない羽目になる。呪力を消耗した状態で特級呪霊と相対することは絶対に避けたい。殺した相手の罪状はわからないが、少年院の受刑者なんて碌な人間ではないだろう。コラテラルダメージの押しつけ先としては適当だ。

 

 虎杖の拘束から解放されると、バカ呪詛師と女呪術師がバチバチにやり合っていた。

 

「クソッ、これ式神でしょ?なんで『共鳴り』で殆ど効かねぇんだよ!」

「ッツ……、イテぇなぁ……よくも俺の生霊虫をツブしやがってぇ!?」

 

 非術師の口や肛門から排出された巨大な(それこそ成人男性の腕程の太さや長さがありそうな)生霊虫が女呪術師に這い寄っている。女は釘を飛ばして虫を地面や壁に留めてはいるものの、数が多く、留め損なった虫が女にじりじりと這い寄ってくる。

 呪詛師は股間を押さえて蹲っているが、生霊虫が弱ったり崩壊したりする様子はない。創造主の指示に従うだけで存在としては自立しているのだろう。

 

「うぇ、雑魚っぽいのに群としてはしぶといわね。それにしてもゲロクソ塗れの式神押しつける精神攻撃以外できねぇのかグラサン野郎、ちょ、何股間押さえて……まさか」

 

 

 

 ――ー少し戻ってside釘崎――ー

 

 

 

「いい虎杖、ガキの呪詛師、伏黒って奴の方に釘を飛ばすから、弾いた後の隙にその短剣をブっ刺しなさい」

「いやっ、でも、事情があるかもだろ?伏黒は人を助ける奴だし……」

「あんたに何があったのかしらないけど、民間人を殺してた奴は呪詛師で敵よ。今生かして捕らえる余裕なんかない」

「……生かして捕らえればいいのか、わかった」

「全然わかってない……もうそれで良いわ」

 

 相手が前後を警戒して動けない間に小声で作戦と言うには稚拙な行動のすり合わせをする。

 私たちと同年代に見える呪詛師の男――伏黒と言うらしい――と同じく呪詛師のロン毛男。ガキの方は剣を持ってるから近接もイケる口なんだろう。六本木の廃ビルで見せた超身体能力を持つ虎杖に任せた方がいい。

 

 つまり私が相手をすべきなのは、ロン毛呪詛師の方だ。人の壁で見えにくいが、呪胎は深青色の大量の線虫に覆われている。報告ではあんな姿の呪胎ではなかったから、線虫がおそらくロン毛の式神だ。術式効果はわからないが、触れないに越したことはないだろう。

 不衛生担当は虎杖なのでそっちに丸投げしたい欲求に駆られるが、私も呪術師だ、給料分の仕事はしなければならない。

 

 釘を金槌で打ち、伏黒とやらに飛ばすが剣で弾かれる。あとは虎杖に任せよう。

 

「うおおおおお!!俺はお前を絶対に止める!伏黒ォ!」

 

 熱血主人公みたいなことを叫んで吶喊していった虎杖を尻目に、ロンゲ呪詛師の方を向き合う。

 民間人が邪魔であそこまで釘を飛ばすことは難しそうだ。“簪”で天井を崩しても民間人に被害が出そうな気がする。

 

 そう思ったら、民間人の半数程が組み付いた虎杖と呪詛師伏黒(全国の伏黒さんに失礼なので呪詛師と頭に付けることにした)に覆い被さった。人の壁に隙間ができ、呪詛師はともかく巨大な呪胎には届きそうだ。

 

「ひゃはははは!もっと覆いカブされ!ツブしてシマえ!」

 

 あの程度で虎杖がつぶれる訳ないだろう。呪詛師伏黒の方は知ったこっちゃない。

 

「あんたは私が相手よ、洗脳野郎」

「んあぁ?俺の術式は洗脳じゃナくて生霊虫の生成だぞ!そんなしょぼい術式と一緒にスんなや、釘打ち機のアマ!」

 

 洗脳をショボい術式呼ばわりとか、よほど自分の術式に自信があるようだな。

「私のは趨霊呪法だ!感染呪術だってのボケ!」

 

 感染呪術というのは、元々接触していたものはその後離れても、一方に与えた影響がもう一方にも与えられるという、なんたらフレーザーが提唱した理論だ。非術師によって提唱されたその呪術理論は間違っているとはいえ、それに類似した生得術式が世界各地で確認されている、らしい。仮想怨霊と分類される呪霊はこういった架空のオカルト知識に基づく噂等によって生まれる場合も多いため、呪術高専ではそういった知識も一般教養として教えられる。

 誤った理論とはいえそれなりに有名だ。術式の開示はそれなりに面倒だし、隙も多い。趨霊呪法は感染呪術とほぼ同じ論理で動く。「私と接触していた釘」に遠隔で呪力を流し込む『簪』や、「部位と繋がっていた相手」に部位と人形を使ってダメージを与える『共鳴り』。「感染呪術」と言っただけで、術式を不明瞭にだが開示した扱いになり、縛りにより術式効果が僅かにあがる……たぶん。

 ぶっちゃけ実際に試すのはこれが初めてだ。不発でもまあ構わない。特級呪胎の気配で相手の呪力量は殆ど分からないが、逆に言うと特級とはいえ呪胎で分からなくなる程度。油断するつもりはないが、そこまで恐れる相手でもない……と油断して廃ビルで子供を死なせかけた女は誰だよ、私だ。

 後付けでオカルト知識を早口で披露して言い訳をするオタクになってしまった。単純に売り言葉に買い言葉で術式の開示になるには微妙な発言をしてしまっただけです反省します。

 

 閑話休題、人の壁、救出対象の民間人の一部が震えだし、突然嘔吐したり脱糞したりし始めた。いや、脱糞という表現は正確ではない。ひりだしたのは糞ではなく巨大な深青色の線虫だったからだ。もちろん嘔吐したものもそれと同じだ。これが呪詛師ロン毛が言う『生霊虫』という式神だろう。

 一人から何十匹何百匹と出て来て、総数は数千にもなりそうなソレはこちらに近づいてくる。吐瀉物、排泄物塗れかと思ったが体表から出る分泌液で洗い流されているのかそんなこともない。近づいてくるとはいっても速度は亀の歩み、大したことはない。しかし一本一本釘を飛ばして祓っても釘が足りなくなりそうだ。

 そう考えていると、虎杖たちに覆い被さった人の丘の中から、デカい白蛇とそれに掴まった呪詛師伏黒が出てきた。ゴリラ虎杖の組み付きからどうやって逃れたんだよ……やべえ、が、こちらに敵意は無いようだ。そのすぐ後に出てきた虎杖に「今は呪胎が先だ」とか言っている。

 

 やはり呪詛師ロン毛の対処が先決だ。式神使いは一般的に、式神の維持に術式を常に回している。つまり式神と術師には強い“繋がり”がある。本人の一部と言ってもいいだろう、『共鳴り』の格好の餌食だ。一度ブチ込めば瀕死に追い込めるだろう。

 一匹だけ突出した巨大線虫モドキに藁人形を重ね、直接触れないように釘を金槌で打って『共鳴り』を発動させ、即座に離れる。

 しかし、呪詛師ロン毛は苦痛に顔を歪め蹲るも式神は解除されない。ロン毛呪詛師は痛みに弱いだけのようで、その生命や呪力に支障はないようだが、それにしたって蹲るほどの苦痛なら術式は解除される筈だ。意外さについ叫んでしまう。

 

「クソッ、これ式神でしょ?なんで『共鳴り』で殆ど効かねぇんだよ!」

「ッツ……、イテぇなぁ……よくも俺の生霊虫をツブしやがってぇ!?」

 

 呪詛師の逆ギレと共に、線虫モドキの蠢きが一層活発になる。術式を発動させるために線虫モドキに近づいていた私は当然蠢くソレの標的となり、這い寄られることになる。近いものから釘を飛ばして床に留めるが、数が多すぎてすべてに対応することが出来ない。

 これ以上相手から離れると、呪胎が射程範囲外になるのだが、後退も視野に入れるべきか、と考えた時だった。

 

「うぇ、雑魚っぽいのに群としてはしぶといわね。それにしてもゲロクソ塗れの式神押しつける精神攻撃以外できねぇのかグラサン野郎」

 

 呪詛師ロン毛の式神操作の集中を反らそうと相手に顔を向けて適当に毒づく。よく見ると、相手は股間を押さえている。嫌な予感がする。

 

「ちょ、何股間押さえて……まさか」

 

 通常、『共鳴り』のダメージは心臓に行く。それは心臓が循環系の中心だからであり、即ち体の全てに強い“繋がり”を持っているということと同義だ。

 しかし生殖細胞はそれよりも強い繋がりを持つ部位がある。女性なら卵巣、そして男性なら……睾丸だ。生まれ出た場所、それの根源。循環系よりずっと強い繋がりだ。呪詛師ロン毛は自身の術式を『生霊虫の生成』と言った。式神とは言ってない。もしこれが呪詛師ロン毛の精子を変成肥大化させたものだとしたら……?嫌な予感が増大する。

 民間人から明らかに内容量以上に這い出た巨大線虫モドキ、呪胎に数万もこびり付いた線虫、底辺呪詛師がこれだけの式神を独力で生み出せる訳ない。元は精子、術式の本質は?

 苗床、繁殖、受精。この文脈で考えると、あまりにも悍ましいキーワードが脳裏に浮かんだ。

 

「無理無理無理絶対無理、ゲロ塗れクソ塗れは他人の命のためなら耐えられたけどこれは無理。虎杖後は任せたソレの処理が終わったら呼んで!!!」

 

 踵を返し全力で走って逃げる。部屋を出て扉を閉じ、鍵を掛ける。少年院だからだろうか、鍵は外から掛けるタイプだったのが幸運だった。

 

 

 

 




伏黒は非戦闘員という意味で「非術師」、釘崎は救出対象という意味で「民間人」と呼んでいます。別に伏黒が夏油思想に染まった訳ではないです。

必要とはいえ躊躇なく民間人をぶち殺したのは受刑者だからです。少年法で罪が軽減されても保護観察処分で済まされない程度には重い罪を犯した人間だということを伏黒は理解しています。

タイトルの嫌悪は、人を殺した伏黒への嫌悪と精子術式への嫌悪の二つです


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確保、伏黒恵

最近は呪詛師集団Qに興味があります


 

 ーー伏黒視点に戻るーー 

 

「無理無理無理絶対無理、ゲロ塗れクソ塗れは他人の命のためなら耐えられたけどこれは無理。虎杖後は任せたソレの処理が終わったら呼んで!!!」

 

 女の呪術師が顔面蒼白になり踵を返して生霊虫の群から逃げ出した。精子から作られたということは女性に特に有害な術式効果の可能性もある。賢明な判断だろう。

 

「えっちょ、釘崎?俺一人で伏黒とおっさん拘束して民間人救出すんの?ちょっと俺には難易度が高……」

 

 困惑している虎杖を無視して新しく印を組む。

 

『蝦蟇+鵺、井底不知』

 

 蝦蟇本体と比べれば小さいが人の頭ほどはある蝦蟇に、鵺の翼を持たせた拡張術式。飛行は下手だが一応は滞空できるため、地を這う生霊虫に絡まれずに一方的に伸びる舌で捕食できる。生霊虫は人の腕程の大きさだが、蛙は口が大きい。難なく飲み込める。

 

 消化能力はそこまで高くないため、一定数食べ腹が膨れたら、大蛇に井底不知ごと消化させる。捕食による呪力補給が生霊虫による呪力吸収を上回り、式神の維持に使う呪力消費は殆ど無い。

 

「え、これ伏黒のか?気持ち悪いのがどんどん減ってく……俺はどっちと戦えば……」

 

 思考が硬直している虎杖に向かって俺は剣を大きく振りかぶる。虎杖はとっさに短剣を構え、ぶつかり、鍔競り合いになった。これが俺の狙いだ。

 

 小声で囁く。

「このまま俺の話を聞け。俺は非術師を無闇に殺すつもりはない。呪霊を祓って呪詛師を殺せればそれで十分だ」

「でもさっき……」

 もう一度打ち合い、再度鍔競り合いに持ち込む。

「あれは虫に完全に支配されてて打撃では気絶しなかった。おそらく他の方法でも無理だろう。一人殺して肉の壁は無意味だと知らしめるのが被害の少ない策だったんだ」

 再三の鍔競り合い。“おそらく”無理だったということは他の方法を試していないということだが、それに気づかせる必要はない。

「理解してくれ。俺は少なくともお前の敵じゃない」

 犯罪者の死さえも悲しむことができる、虎杖は疑う余地のない善人だ。彼は他の凡人、悪人とは違う。世界の宝と言っても良い。彼を決して死なせてはならない。殺し合うことは最も避けるべき事項の一つだ。

 出来れば命の危険がある呪術師もやめてほしいのだが……彼は呪術師であることを望んでここにいるんだろう、そこまでは望みすぎだ。

「……今は信用することにする。で、何をすりゃいいんだよ」

「このまま俺との敵対を演出してくれ。俺に追われるふりをしつつ、非術師を部屋の外に運び込め。刑務官が先、受刑者が後だ」

「……わかった」

 

 さあ、式神が生霊虫の処理をしている間にマッチポンプ鬼ごっこだ。虎杖の速力は半端ではない。俺が剣を振り回して追いかけるが、割とマジで追いつけない。もっと接戦を演出して欲しいものだが、相手は騙されているようだ。

 

「アラソえアラソえ。時間は俺の味方だっつーんだよ!」

 

 正確には少し違う、時間は呪胎に有利なのだ。ロン毛呪詛師の術式、生霊虫で呪力を吸収されているから孵化が遅くなっていると俺は予想しているが、それでもだんだん呪力の気配が強まっている。呪詛師が特級呪霊を支配できても出来なくても、特級呪霊が俺の敵になることは間違いない。

 

 虎杖は俺の猛攻()を躱し、見事に刑務官を全て部屋の外に出した。女の呪術師は虎杖が部屋の外に出した刑務官を建物の外に出している頃だろう。虎杖は受刑者の救出に取りかかる。そして地を這う生霊虫も俺の式神が捕食して、殆どいなくなった。いるのは生霊虫に呪力と生命力を吸われ栄養失調で死にそうな受刑者だけである。

 

 しかしそろそろ限界だ。呪胎の気配が最高潮にまで高まってきている。

 ロン毛呪詛師に気づかれないように、井底不知に非術師を少しづつ端の方に寄せさせているが、それでも二人ほど俺と呪胎の間に残っている。

 多少の犠牲は仕方ない。ここで呪胎を祓う。

 

『満象』

 

 他の式神を解除し、印を組み満象を出す。満象の術式で間にいる二人を押し流しても全員動けないまま溺れ死ぬだけだ。二人には近隣住民の皆様を守るための尊い犠牲になってもらおう。

 何をやろうとしているか、もう分かっていると思う。象の突進だ。

 

「突っ込め」

「パァオオオン」

 

 象は雄叫びを上げ、通行方向に横たわっていた二人の受刑者を踏みつぶし、呪胎と呪詛師をその両の牙で貫こうと突進する。

 

「ぞ、象!?糞、ハヤく、メザメてくれぇえええ!!!」

 

 ロン毛呪詛師が叫ぶが、もう遅い。否、孵化にはまだ早い。満象はその呪胎と呪詛師にぶつかり……

 

 その結果、満象が破壊された。解けたのではなく、完全な破壊のようだ。

 満象という遮蔽物が無くなり、土煙も晴れた。俺からも特級呪霊がよく見える。そう、孵化したのだ。特級が。全然早くはなかった。丁度だ。

 

「何やってんだよ伏黒、人をまた、二人も!」

 

 まだ特級呪霊の孵化に気づいていない虎杖に向かって叫ぶ。

「孵化した!逃げろ!!これは俺が相手をする!!」

「ッ~!クソッ、わかったよ!」

 

 特級呪霊。呪胎の時に徐々に巨大になっていく気配で慣らされたからか、そこまでの恐怖はない。だがそれは麻痺した感覚だ。

 特級呪霊。最低レベルでも一級呪術師上位の実力がなければ祓えない相手だ。やれるか……?

 まあ最悪の場合でも魔虚羅がある。全身全霊全力で挑んで、無理だったら気楽に死のう。《悪人》オレ|は世界に不要だ。死はむしろ喜ぶべき事柄だ。

 この心意気でこの一年間呪詛師相手に死闘を繰り返し、生き残った訳だが。さすがに特級相手は初めてだ。今度こそ死ぬかもしれないなと気軽に考える。

 

「ヨし、ヨし、ヨしぃ!土壇場での覚醒!やっぱり俺は主人公だあぁ!!」

 

 ロン毛呪詛師も満象の突進から生き残っていたようだ。

 だが、特級呪霊は拡大するバリアによりそいつを吹き飛ばした。

 俺にもバリアが迫ってくる。呪力を全部防御に回したが、吹き飛ばされ壁に激突した。

 

「ど、どうして……俺に支配サれたんじゃ……ひべっ」

 

 このバリアは生得術式か?複雑な結界術を特級とはいえ孵化したばかりの呪霊が行使するとは考えがたい。

 自己を中心に拡大するバリアにより、体中を覆っていた生霊虫も吹き飛ばした特級呪霊はロン毛呪詛師を一撃で殴り殺した。

 死んでも死体を殴り続けている。呪霊はまだ俺に気づいていないようだ。呪霊の足下を見れば、地面の色が変化している。生得領域が徐々に具現化しているのだ。いや、無意識に漏れ出しているという認識の方がいいだろう。呪霊は呪詛師の死体に夢中だ。そんなところに思考を割けるほど知能が発達している様子は見られない。

 

 呪霊が意識的に領域を拡大できるようになれば、この建物は全て飲み込まれる可能性がある。そして建物を飲み込まれれば、虎杖一行や逃した非術師が逃げられなくなり、他の呪霊も活性化するだろう。

 選択肢は一つだ。こちらが領域を展開する。

 

 領域展開、それは呪術の最高技術の一種である。それは三つの段階に分類出来る。一つ、結界術により、空間を“閉じる”。二つ、閉じた結界に生得領域を具現化する。三つ、具現化した生得領域に術式を付与する。

 そして最も難しいのがこの三つ目と言われている。俺も実際二つまでは成功した経験がある。俺の場合、生得領域は武器の収納などでよく使う慣れ親しんだ空間だからだ。

 特級呪霊は死体に意識が向いている。二つ目まではその隙に時間を掛けて呪力を練れば成功はするだろう。そして一か八か、三つ目をここで成功させれば特級呪霊を祓える可能性が見える。成功しなければギリギリまで時間を稼いで魔虚羅だ。

 

 一つ、結界で空間を閉じる。成功だ。

 

 相手はこちらに気づいた。

 

 二つ、結界に生得領域を具現化する。俺の場合は影が広がっていくが、結界の中はそもそも暗く、視覚的には変わりがない。

 

 相手は呪詛師の死体を打ち捨て、こちらに歩み寄ってくる。

 

 三つ……出来ねぇ。前から思ってたがそもそも訳がわからない。俺の術式は式神だ。式神を領域に付与するって何なんだよ、意味がわからねぇ。

 

 相手は拳に呪力を湛え、こちらに駆け寄ってくる。

 考えろ、考えろ、領域に術式を付与しろ……

 

 防御のために、無意識に鵺の掌印を組んでいた。違う、今すべきなのは領域展開……術式の付与?術式の付与はもうすでにやったことがある。『即身化生』だ。あれは式神の術式を俺に付与するものだ。その調子で、式神の術式を俺の生得領域に付与出来れば……?鵺の術式は帯電、電気を領域に付与する、というのなら分かりやすい。鵺は一番使い慣れてる式神でもある。適任だ。

 できる。鵺を呼び出し、その術式を俺の生得領域に付与させる。

 俺の掌は鵺の印を結び、鵺は足の爪を合わせ印を結ぶ。

 

『領域展開・鵺、稲魂青山』

 

 生得術式と異なる術式を付与されたためか、領域の景色が変化する。そこは、水墨画のような白と黒だけの世界だった。

 

 その地面は骨で出来ていた。死体の山、人の骸骨の山だ。

 骨の上には稲が生えていた。人の手で植えられたような正条植えではない、野生の稲のように見える。

 稲穂には米ではなく、電気が実っていた。静電気の火花がチカチカと光っている。

 

 そんな世界に、俺と鵺と、そして特級呪霊はいた。

 

 領域を展開したからといって即座に祓える訳はない。しかし領域内での術者強化のおかげか、鵺との繋がりが強くなっている。

 印を組み替え、領域の維持作業を鵺から俺に移す。鵺に俺を掴ませ飛んで特級呪霊の拳を避ける。

 しかしその拳は地面に激突し、領域を歪ませ、空間を閉じる結界に僅かに罅が入った。驚いて結界を修復する。外側の強度ほぼ0、術者が結界内部にいる縛りで相当強度をあげているのにコレかよ。

 呪霊は呪力を矢のように加工して番え、放とうとしてくる。まずい、領域の術式を解放する。必中効果により電気で痺れ行動が出来なくなる筈だ……と予測した。

 しかしその予測は外れ、体から目映く電気を放っているが、ピンピンしている特級呪霊が俺の目には映っていた。矢のように放たれた呪力の塊が鵺を穿つ……かと思いきや、それは途中で電気になって霧散した。

 

 これは……俺の、いや鵺の領域展開、稲魂青山の効果は、領域内の呪力を電気に変換するもの、のようだ。俺と鵺は対象外になっている。

 本来ならば術式内容を理解できていないと領域は展開できない筈だが、俺の場合は式神の術式解釈を知らずに、鵺に任せて展開させた領域の結果こういうことになったのだろう。

 

 この領域ならば祓える。呪霊の肉体は呪力で構築されている。特級ともなれば瞬時に変換は出来ないだろうが、徐々に肉体は解け、電光に変わって消え失せるだろう。遠隔攻撃は無効化出来る。領域内で飛行し続ければ勝てる。

 

 相手は何度も何度も呪力を俺に飛ばしてくる。だがその全てが電気に変わって消失する。

 呪力を飛ばすことに意味はないと悟ったのか、呪力を飛ばすのではなく術式である拡大するバリアで領域ごと吹き飛ばそうとする。完全な領域ならこの程度でびくともしないのだろうが、俺の領域はこれが初めてだ。バリアが領域を内側から崩す出力を持つ。

 つまり、バリアと領域との押し合いという形になる。

 

 領域効果で相手の術式を崩しつ、自分の領域は強く保つ。

 

「これで、なんとかっ!」

 

 特級の呪力は電気に変換されており、着実に削れている。しかし俺の呪力も領域の維持で精一杯で、押し合いにも呪力を割ける余裕はない。

 徐々に押され、狭まっていく領域。領域効果をバリア内部にも通用させることに注力し、押し合いは捨てた。加速度的に特級の呪力は削れていき、それに比例するように俺の領域も押されていく。

 

 そして、特級の身体が半分ほどに小さくなり、呪力も二級程度に落ちた時、呪霊のバリアの維持と俺の領域の維持が同時に不可能になり、共に元の部屋に戻って膝を付く。

 そこには非術師は1人もいなかった。避難が終わったのだろう。

 

 しかし俺はもう呪力の消費が激しく、疲労で一歩も動けない。相手は二級程度とはいえ、まだ呪力を残してある。

 

 これで決着だろう。お仕舞いだ。ずいぶん早い年貢の納め時だが、こういう最後もまあ悪くないだろう。

 

「オラァ!例の虫消えてんじゃねーか最高だよ!これからは私のステージだ!」

 

「伏黒!お前には聞きたいことがたくさんある!頼む、死ぬな!」

 

 と思ったら虎杖と釘使いの女の呪術師が乱入してきた。非術師の確保は終わったようだ。呪霊を祓い、俺を確保しに来たのだろう。 二級程度に呪力量の下がった瀕死の元特級呪霊、この二人なら祓える筈だ。

 呪力の消耗により子供程度に小さくなった呪霊は、二人を見て焦ったのか、俺に駆け寄ってくる。俺を人質にでもするつもりか?

 

「させねえよ!」

 

 しかし釘使いが釘を飛ばし、呪霊が俺に近づくのを妨害する。二本ほど呪霊の腕に刺さった。

 その隙に虎杖が素早く俺を抱え、後方に離脱させる。俺も抵抗はしない。今は確保されることよりも二人の邪魔をしないことの方が優先だ。

 

「『簪』ィ!虎杖、今!」

「ああ!」

 釘から針状の呪力が流れ込み、呪霊がひるんだ隙に虎杖が呪霊の脚を払って呪具の短剣で頭を刺す。だが浅くしか刺さっていない。腐っても特級呪霊と言うことか、肉体の強度は呪力を消耗しても元のままのようだ。

 虎杖は呪具を放り投げ、羽交い締めにかかる。膂力は虎杖の方が上回っているようだ。その拘束から呪霊は抜け出すことが出来ない。

 

「釘崎、すまん、トドメ頼む!」

 

「ああもう分かったわよ!直刺しで行く!」

 

 釘使いが羽交い締めにされている呪霊に近づき、釘を今までのようにトンカチで飛ばすのではなく直接叩き込んだ。

 

『共鳴り』

 

 その瞬間、呪霊の肉体内部から大量の棘が出現した。呪霊は力つき、塵になって消えた。

 

「痛った!釘崎これ俺にも刺さってんだけど」

「そこらへんの調整は効かないのよ。さて、呪霊も祓ったことだし民間人も避難させたことだし、あとはあの、呪詛師?呪術師?を高専に持って帰れば任務完了ね」

 

 俺はもう一歩も動けない。手を上げて降参のポーズを取る。

 

「伏黒は俺が背負って帰るよ、いろいろ聞きたいこともあるし」

「ふーん、知り合い?まあどうでもいいわ。さっさと帰って凱旋の宴じゃ宴!」

「その前に伊地知さんにいろいろ報告しなきゃならないんじゃねえか?」

「あんた以外とちゃんとしてるわね……」

 

 そんな同年代の話を聞きながら、俺は虎杖に背負われ高専に確保されに行くのだった。

 

 その後、五条悟の力もあり、何とか死罪を免れ呪術師として奉仕活動を命じられた俺はこの二人と一緒に高専に通うことになったのだが、それはまた別の話だ。

 

 呪詛師としての俺の話はこれで終わった。




一発ネタなのでこれで終わりです
おもんない一発ネタにこれだけ期間掛けるとか、だからモテないのよ


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