波動ポケモンルカリオは波導の勇者である (プロトタイプ・ゼロ)
しおりを挟む

第一章
今日からルカリオで生きていく!最初の敵はバーテックス!


一応ストーリーは花結いのきらめきのストーリークリア後となっています。俺自身まだそこまで進めてないので、色々調べながら投稿していきます。


 

 

 

どうも皆さん、初めまして!僕の名前は黒宮零牙。どこにでも居る普通の中学生であり、ポケモン大好きな少年です!

 

皆さんはルカリオっていう存在を知っていますよね?もしかしたら知らないという方もいるかもしれないから、簡単に説明しますね!

 

波動ポケモンに分類される比較的バランスのいい獣人型ポケモンである。リオルが進化し成長した姿で、リカオンの獣人のような凛々しい容姿となった。

 

全体的に青を基調とした身体で、頭部の大半や四肢の先端などは黒くなっており、胴回りの体毛のみ薄い黄色。手の甲と胸には白いトゲ状の爪がそれぞれ1本ずつ付いている。

 

『波動』と呼ばれる、気やオーラ等と同義のエネルギー波を使いこなすポケモンであり、あらゆる存在が放っているとされるそれらを読みとる能力を持っている。

 

人語を理解するほどの高い知能を持っており、他の生き物が発する波動をキャッチする事で、その種類や考え、動きまでも鮮明に感じ取ることができる。

 

後頭部には左右合わせて4つの「房」と呼ばれる器官が存在し、この「房」が波動を感じ取る器官になっているという設定。見えない相手と対峙した際や目が使えない状態でも、この能力により問題なく対応出来る。

 

鍛えられたルカリオの感知範囲は1キロ先にまで及ぶとされ、より正確に読み取ろうとする際には、手を前に突き出し何かに翳すようなポーズが取られる。

 

見た感じリカオンと呼ばれるオオカミみたいな姿をしたルカリオをゲームで見た時、僕はカッコいいと思った。

 

そう!カッコいいんですよ!ルカリオって体から燃える炎のような青い波動を使いこなしているのはもうカッコいい!

 

僕はルカリオが大好きなんです!だってカッコいいから!そんなルカリオになれたらどんなに嬉しいか、もう一年ぐらい語れる!

 

そんな僕ですが、夢が叶いました。そう、ルカリオに慣れたんです!

 

僕はいつものように学校に行き家に帰った。そして、ご飯を食べていざ眠りについて目が覚めたら、体がルカリオの姿になっていたんだ。

 

いやぁ、びっくりだよねー。ホントびっくりだよ。でもまぁ、ひとつ不安があるとすれば……

 

『ここ、樹海だな?』

 

僕がいる場所が「結城友奈は勇者である」に存在する樹海の中にいたことだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕……俺が目が覚めて数分したぐらいした。辺りは樹海しかなくて退屈だ。

 

『一体どうすればここから出られる?』

 

俺はゆゆゆいについては少ししか知らない。だから原作がどうなっているのかはあまり知らない。

 

でも樹海化しているということは、この辺りにバーテックスがいる証拠なはずなんだが……あぁ、アレか。今はルカリオだからこそ波動で分かるが、かなり離れた距離に勇者達がバーテックスと戦っているようだ。

 

さて、どうするかねぇ。俺としては手伝ってもいいんだが、手伝った方がこの先良さそうだな。

 

【高速移動】【グロウパンチ】

 

俺はその場から瞬間的な速さで移動し、今まさに桜色の髪をした少女に襲いかかろうとしていたバーテックスを殴り飛ばす。その一瞬だけ桜色の髪をした少女と目が合うが、すぐに視線を戻し次のバーテックスの元へ向かう。

 

【剣の舞】x3【電光石火】【波動弾】

 

体に力が漲ったことで攻撃力が一気に六段階上がったことがわかった俺は、黄色い髪をした少女二人の前に出る。少女二人は突然現れた俺に驚いた顔をしているが気にしない。

 

俺は移動しながら溜め込んだ波動の塊……波動弾をバーテックス達に撃つ。波動を操るルカリオの波動弾を受けたバーテックス達は悲鳴をあげながら消滅する。

 

【ボーンラッシュ】【高速移動】

 

今度は握った両手を合わせて波動を込めて離す。すると両手の間から骨の棒が現れる。それを二つに折った俺は赤い衣装を着た少女の元へ移動し、バーテックスの撃ってくるビームを片っ端から斬り落としていく。

 

「な、なによアンタ!?」

 

赤い衣装を着た少女が睨みながら問いつめてくるが今は無視。まぁ、キャラのことならある程度名前知ってるから一々少女って呼ばなくてもいいんだけどさ。面倒だから名前表記にしよう。

 

赤い衣装を着た少女もとい三好夏凜は手に持った双剣の一つを俺に向ける。やれやれ、まだまだバーテックス共は残っているというのに……仕方ないか。見れば桜色の髪をした少女結城友奈もいるし、黄色い髪をした少女二人犬吠埼風と犬吠埼樹も居る。あと、でっかい銃を持った東郷美森もな。三森に限っては銃口を俺に向けている。

 

『俺はルカリオ。波導の勇者と呼ばれている』

 

波動の力を使い人間達にわかるようにテレパシーを送る。ポケモンは基本的人の言葉を話すことは出来ない。だが、それでも時として特殊な環境を生きたポケモンはテレパシーを使って人の言葉を話すことが出来ることがある。いや、違うな。自分達の言葉をわかるようにテレパシーで話しているだけだ。

 

俺がやっているのはそれと同じ。

 

「波動の、勇者?お姉ちゃん何か知ってる?」

 

「いいえ、知らないわ。夏凛は?」

 

「全く」

 

そっか。波導の勇者はあくまでルカリオの二つ名だし、そもそもこの世界にポケモンという概念がないか。だったら波導の勇者という二つ名を知らなくて当然か。

 

「初めまして!私、結城友奈って言います!」

 

どんな時も明るく優しい心の持ち主は、笑顔を作って自己紹介しながら俺に手を伸ばす。が、残念ながら波動を扱う俺の前では、その行動が周りに気を遣ってのことだとすぐにわかった。

 

『……お前が、何故そこまで周りに気を遣うのかは知らんが、バーテックスの群れが来ているぞ』

 

一瞬だけ友奈が浮かべる花のような笑顔が凍りついたが、俺はそんなことを気にせずこちらに向かってきているバーテックスの元に突入する。

 

「……バレちゃうかぁ」

 

友奈がボソッと呟くのが聞こえる。だが今はそんなことは気にしていられない。バーテックスの目的は神樹の消滅と人類の滅亡。

 

俺も元は一人の人間として、この力で世界を守る。

 

『はあああぁぁぁ……波動弾!』

 

手に込めた波動を片っ端から撃ち放っていく。波動弾の当たったバーテックスは次々と消滅していくが奴らは油断ならない。

 

波動弾にボーンラッシュにグロウパンチに……あらゆる技を使いまくってようやくバーテックスの群れを殲滅することが出来た。

 

バーテックスが全て居なくなったからか樹海化も解除され、勇者達は多分学校の方に転送されただろう。俺が飛ばされた場所は何故か讃州中学校の運動場だった。

 

やれやれ、俺はこの先どうすればいいのかねぇ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

波導の勇者は優しい……情けないなぁ俺って

 

 

 

 

讃州中学校の運動場に飛ばされた事により、俺は速攻で勇者部に連行された。なぜ飛ばされただけで勇者部に連行されるかわかるか?

 

勇者部は日々困っている人達の助けとなるべく行動している。どんな時も人助け、つまりは人助けされた人達との人脈があるわけだ。俺はその人脈によって勇者部に連絡が入り、こうして何もせずに連行されたのだ。

 

 

いやまぁ、ルカリオとなった俺なら簡単に切り抜けられるけど、この先まだまだバーテックスは現れる可能性があるわけなので、ここで逃げずにいればこの先楽になるかなっと考えたわけなんだよ。

 

まぁ、一つ想定外のことがあるとすれば……

 

 

 

 

「ルカリオってモフモフしてて温かぁい♡」

 

 

 

何故か結城友奈に抱きかかえられていることだ。こんなの誰かが想定するよ!?日々面倒事を避けるべく頭の思考回路をフル回転させてる俺でも、こんな状況になるなんて考えてもいなかったわ!

 

ほら見ろよ勇者部の面々を!なんか呆れたような顔をしているぞ?

 

「友奈ちゃん、もうそろそろ解放してあげたら?なんか困っているような顔しているわよその子」

 

おぉ、東郷さんナイス!でも羨ましそうな顔しないで!結構台無しだから!

 

「えぇ〜!?嫌だ離したくない!」

 

お前はどこの駄々っ子だよ!?アレおかしいな!?俺の知ってる結城友奈はこんなキャラじゃなかったはずだぞ!

 

それにしても……アニメで見た時はそこまでないように感じてたが、実際背中に当たると友奈の胸は結構あるんだな。三森に比べると可哀想なぐらいないけど、それでも中学生が持つには大きいと思う。

 

『……痛い』

 

そんなことを考えてたからか、三森が思いっきりアイアンクローをかましてきやがった!いや痛い痛い痛い痛い痛い!!やめて!無言で頭握らないで!ガチで潰れるから!

 

「東郷さん!ダメだよ乱暴なことしちゃ!」

 

「友奈ちゃん、その子から今すぐ離れるべきよ。えぇ、絶対離れるべきよ」

 

「二人とも、なんだか怖いなぁ〜」

 

と、そこで先程の戦いには参加してなかった六人目、三森と同じく先代勇者の一人であり、三十三体との精霊と契約しているほぼ最強勇者乃木園子。

 

以前までは満開により代償として体の機能をほとんど失っていたが、なんやかんやあって今はその代償がなくなっている。三森も同じくで、先代勇者として戦っていた時に記憶と両足の機能を失っていたが、今では戻っている。

 

え?なんやかんやのところが知りたい?残念だったな!第一話でも語ったが、俺は結城友奈は勇者であるについてはそこまで知らないんだ。知っているのはキャラの名前だけな。

 

ってか、お二人さんほんともうそろそら解放してくださいな!俺かなり苦しいんだけど。

 

「はぁ……ほら二人とも、今から会議を始めるから解放してあげなさいな」

 

流石風先輩!ナイスだぜ!……あれ?なんかデジャブ。

 

二人とも(特に友奈)はかなり渋っていたが、このままでは埒が明かないと思ったのか、俺を解放してくれた。その際に俺は夏凛の傍に避難する。

 

「なんで私の所に来るのよ」

 

そう言いつつも離れることはない。流石ツンデレキャラ。

 

「さて、大赦から教えて貰っていると思うけど、私達が歴代の勇者たちと戦ったあの戦いは終わったわ。でも何故かバーテックスは未だに襲ってくる。この意味が分かるかしら?」

 

風は真面目な顔で部室にいるみんなを見渡す。

 

 

「恐らくだけど、天の神は今回のバーテックスには関係ないと思う。多分別の誰かが召喚していると私は睨んでる」

 

「それって、赤嶺ちゃんの時みたいな?」

 

「そう」

 

赤嶺?誰だそいつは?

 

「あぁ、そっか。ルカリオはまだいなかったから知らないと思うけど、私達は少し前まで歴代の勇者たちと共に戦っていたのよ。その際にそこにいる友奈と同じ顔をした赤嶺友奈って子が、バーテックスを召喚していたのよ」

 

あぁ、思い出した。確かスマホアプリにあったゲームにそんなキャラがいたわ。確か【結城友奈は勇者である花結いのきらめき】に登場してた。俺はプレイしてないから全く知らないけど、多分敵役で出てきたんだろうな。

 

「んま、そういうわけだから私達の戦いはまだ終わってない。私達が神樹様の作り出したこの世界にいるのがいい例ね」

 

ん?神樹様の作り出した世界?なるほど、アニメ版ではなくてゲーム版の世界線かここ。

 

全くどうやら俺はかなり面倒くさい世界に来てしまったようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うってかわって、何故か結城友奈の部屋。

 

あの後学校が終わった友奈達(友奈と三森と園子)は、俺を連れて友奈が住む家に招いた。というかほぼ強制的に連れてこられた。

 

知ってるか?男は女の胸には勝てないんだ……嘘だよ。

 

『何故俺がお前の部屋に来なくてはならない』

 

「別にいいんじゃないかなぁ〜。女の子の部屋だよ〜?興奮したりしないの〜?」

 

『するか』

 

園子さん、貴方は俺の予想を超えた言葉を言うので少し黙っててくれませんか?見てみ?友奈さん顔真っ赤だよ?仮にも女の子が「興奮しない」とか言っちゃいけません!

 

「でも、住むとこないよね?だったらうちにいた方がいいよ!」

 

『そうだとしてもお前の家という選択肢はない』

 

「なんでぇ!?」

 

いややめて三森さん。笑顔で睨みながらアイアンクローしてくるのやめて!ほんとお願い"だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!

 

「あ!ルカリオをいじめちゃダメだよ東郷さん!」

 

『そもそもの元凶は黙ったろ!』

 

ため息を吐きながら部屋の隅に座る。少し精神統一でもしておくか。俺は目を瞑って心を落ち着かせていくと、静かに波動を溜め始める。

 

それからしばらくして、俺は友奈と共にご飯を食べた。その際に友奈が家族に対して俺の事を紹介していたが、友奈の家族はあっさり俺を受け入れた。

 

なにか怪しいところがあるが、今ら気にしていても意味などないだろうな。俺は友奈の母から頂いた木の実を食べる。それだけで俺はおなかいっぱいになった。

 

夜、友奈の部屋の隅で座って目を瞑っていた俺は、友奈がなにか魘されているのに気づき、友奈の傍による。友奈は酷く傷いた顔で「やめて」と言いながら魘されていた。

 

過去に何かあったのだろうか?原作の戦いの終わった今でも魘されるぐらいの何かが。

 

『……仕方ないな』

 

俺は仕方なく友奈の手を握り、傍で座り込んで目を瞑る。ルカリオになってから何故か眠る必要がなくなったみたいなので、こういう暇な時間は精神統一でもしていることに決めた。

 

それから朝まで友奈が魘されることなく寝ていられたのは別の話。

 

昔ただ一人の友人に言われたな。

 

「お前は基本的に優しい」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪夢の世界

 

 

 

 

 

 

『何故私だけがこの世界で苦しまなければいけない』

 

本来の四国とは掛け離れた暗黒の世界で、ただ一人だけ存在する黒い影が嗚咽を混ぜた悲鳴を上げている。一人しか存在しない世界ではあるが、ここは悪夢の世界でもあるため、時々夢を見る人間が迷い込むことがある。

 

現実で夢を持つ人間に恨みを持つ黒い影は、夢を見る人間を強制的にこちらの世界に連れてくると、夢から覚めるまでたっぷりと痛みつける。

 

『人間とは何故こうまで脆いのか』

 

黒い影の目の前では赤みを帯びた茶髪の少女友奈が、両手両足を鎖で繋がれたまま目に光を失っていた。その姿は誰もが見るのを躊躇うぐらい酷く、服は所々破かれ血が滲んでおり、真っ白で綺麗な肌には無数の傷跡がある。

 

友奈の目には希望はなく絶望だけの闇が広がっていた。

 

夢の世界で人間が死ぬことは無い。最悪廃人になるかもしれないが影からすれば人間の命などどうでもいいのでたっぷり痛みつける。影は闇から鋭い刃を作り出すとそのまま友奈の心臓に向けて突き刺す。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」

 

『ふははははははははは!』

 

影は楽しそうに悲鳴を上げる友奈の心臓をグリグリと刃で抉る。だが、友奈の胸からは一切血は出ていない。ここは悪夢の世界。影の力で友奈にどのようなことをしても血が出ないようにしたのだ。

 

痛みだけがある世界で影は楽しそうに刃をもう一つ作り出す。そしてその刃を友奈の股に突き刺そうとする。

 

『そこまでにしてもらおうか?』

 

だが、当然影は肩を掴まれると殴り飛ばされる。自分を殴った奴を見つけてイジメつくしてやろうと考えた影は、グレー色のルカリオにまた殴り飛ばされた。

 

『可哀想に……相当酷いことをされたのだな』

 

ルカリオはそっと傷物を触るように丁寧に友奈に繋がれた鎖を斬り落とすと、優しくお姫様抱っこで抱える。

 

『今日は友奈を助けるために来たから帰るが、次友奈に……俺の仲間にこのようなことをすれば必ず消滅させてやる。覚えておけよ……ダークライ』

 

ルカリオは影……ダークライを睨みつけながらその場から立ち去っていく。ダークライは訳が分からずその場で固まってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヤバいな。書いててダークライに虐められて絶望状態の友奈が見たくなってしまった。自分でも思うけど俺ってクズだなぁ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ポケモン知らない人から見れば俺って怪しいよね?

 

 

 

 

 

友奈がダークライの理不尽な恨みによる悪夢に魘されてから数日が経った。最初こそは怯えたようにビクビクしていた友奈も、今ではすっかり元気に登校している。色々怖がって登校拒否した時はだいぶ焦った。

 

三森も三森で友奈を心配するあまり、倒れてしまっていたのでかなり焦ってしまった。なんとか看病して元気になった貰ったけど、その分友奈からのわかりやすい嫉妬が怖い。そんなに三森の看病したかったなら言ってくれればよかったのに。

 

三森の傍に居ると友奈の目から光がなくなって怖いんだよなぁ。アレホントどうにかなんない?

 

ちなみに俺は今勇者部室に居る。なんでも元の時代に帰れなくなった勇者達を俺に紹介するらしい。さてさて、あの大英雄様に会えるわけだからな。

 

友奈達は授業中のため放課後になるまでは暇なので、部室の床にあぐらをかいて精神統一を始める。波動を扱うルカリオの力を最大限にする為にも、準備は念入りにしておかなくてはならない。

 

そう言えば、以前俺がバーテックスの戦いに乱入した時、勇者部以外の勇者達は他の場所で戦っていたらしい。本当はその次の日に俺に紹介するつもりだったらしいが、その日の夜に友奈がダークライに虐めらたことで心が塞ぎ込んだからなぁ。アレで暫く動けなかったし、仕方ないっちゃあ仕方ないのか。

 

『樹海化警報?』

 

目を瞑って精神統一していた俺は、突然鳴り響く警報に目を開ける。そしてその場から立ち上がると、いつでも戦闘が始められるように構える。

 

その次の瞬間、目の前の景色が全て変わった。色とりどりの樹海を見て、俺はすぐさま行動に移す。

 

【高速移動】【剣の舞】x3

 

高速で移動することによって早めに勇者達を見つけられることが出来た。だが、俺が見つけられたのは俺の知っている勇者ではなかった。刀や鎌にボウガン、盾といった武器を持つ勇者達、多分以前話に聞いていた西暦の勇者達だろう。聞いていた話と一致するし。

 

今後ともに戦う仲間として助けた方が良さそうだな。波導で確認した結果、ここにいる勇者たちの方が襲いかかってきているバーテックスの数が一番多い。

 

彼女らは急激な速度で接近してくる俺に気付いて警戒するが、その中でいち早く気づいたもう一人の友奈が拳を下ろす。

 

【波動弾】

 

俺は彼女達の目の前で止まると同時に、限界まで溜め込んだ波動弾をバーテックスに向けて放つ。続け様に五回ほど波動弾を打ち込んだ俺は、ボーンラッシュを投げつけてバーテックスを地面に落としていく。

 

そして一体ずつグロウパンチを打ち込んで消滅させる。

 

流石に硬いバーテックスには二、三回ぐらいグロウパンチを打ち込んだけど。

 

「助けてくれるのか?」

 

一通りバーテックスを消滅させた俺は、近づいてきた侍少女乃木若葉の方を向く。

 

『お前達の事は風から聞いている。早めに片付けるぞ』

 

「……!了解した」

 

返事が返ってくるとは思っていなかったのか、若葉は驚いた顔をするがバーテックス第二波のバーテックスが来ていることに気づき気を引き締める。

 

「私、高嶋友奈!よろしくね!」

 

俺の隣に来たもう一人の友奈……えぇい、ややこしいな!高嶋でいいか!高嶋は笑顔で自己紹介するとバーテックスの方に向き直る。

 

その一連を鎌を構えた少女……群千景が殺気立った視線を向けてくるが無視しておこう。千景は恐らく違いはあるものの東郷と同じタイプの人間だと思うからな。

 

『……友奈の原点か。その力、期待させてもらう』

 

【神速】【グロウパンチ】

 

俺は小さく呟くと目にも止まらぬ速さでバーテックスに向かって走ると、バーテックス一体一体にグロウパンチを御見舞していく。

 

所々から若葉達の声が聞こえるあたり多分戦ってる。いや、戦ってなかったらおかしいんだけどさ。なんだかなぁ。元々は普通の女の子達だったはずなのに、こんな戦いに巻き込まれたなんてかわいそうだ。

 

え?自分の年齢考えろって?ルカリオになった時点で年齢考えても意味ねーよばーか!

 

それから暫くして、俺達はようやくバーテックスの群れを殲滅させることが出来た。それと同時に、カチャリと音と共に俺の首に千景の鎌が迫る。

 

『……なんのつもりだ?』

 

「ち、千景!?何してんだ!?」

 

「ちょ、ちょっと郡ちゃん!?」

 

俺は冷静に、他のメンバーは動揺している。だが、千景は関係ないとばかりに極めて冷たい声を出す。

 

「……私は貴方が信用出来ない。昨日部室で貴方のことを聞いた時からずっと……」

 

わぁお、警戒心ダイマックスだなおい!なんてふざけている時じゃねーや。

 

「おーい、みんなーそっちは大丈夫だっ……だりゃああぁぁぁぁ!!」

 

「え、ちょっと友奈ちゃん!?」

 

向こうも戦闘が終わったのか風達もこちらの方に向かっているのは波動で分かっていた。何故波動で確認したのか、それは風達からすれば俺は後ろ向きになるからだ。

 

そしてなんだろうね。こっちに向かいながらなんか叫んでる友奈の声が聞こえる。

 

「……結城さん……」

 

千景は突進してきた友奈に殴り飛ばされ、友奈は俺を庇うように前に立つ。いきなり仲間割れみたいなことが起きてみんなあたふたしている。……一人冷静な刀使いがいるが。

 

「ルカリオに刃を向けるなら、たとえソレが仲間だとしても許さない!」

 

ちょっと前から思ってたけど、なんか少しずつヤンデレ化してきてない?俺嫌だよ?ヤンデレ。

 

そして三森よ、何故俺を睨む?

 

どうしてこうなるのやら。

 

「ちょ〜っと待とうかお二人さん。今は仲間割れしている場合じゃないでしょ?」

 

「そうだよ!タマ達がこんな所で喧嘩しているうちに、バーテックス達が……ってあれ?さっきのオオカミもどきは?」

 

盾を武器とする西暦の勇者土居球子が俺がいないことに気付いた。

 

「……逃げたわね」

 

千景はそういうが、残念ながらちゃんと居ます。

 

と言うかさぁ、お前ら……

 

『敵を目の前にして随分と余裕だな?』

 

【発勁】

 

ひっそりと千景の後ろに迫っていたバーテックスに向けて発勁を打ち込む。

 

発勁は武道を通じるものなら誰もが知っている技であり、習得技術もかなり難しい。俺自体がルカリオだからこそ出来るが。

 

敵の外面に対してはなく内面に向けて攻撃する技は、硬い装甲に覆われている今回のバーテックスには相性が良い。

 

『油断するな!敵はまだいる。俺が本当に敵かどうか、そんなの帰ってからでもできるはずだぞ千景』

 

俺は千景を睨みながらバーテックスに発勁を打ち込んでいく。バーテックス共は暗殺が出来ないと理解したのか、もう正面から襲いかかってきている。

 

面倒な奴らだな本当に!

 

そんなことを考えていた時だった。突如空が黒い雲に覆われると、真っ黒い禍々しい雷が俺を撃ち抜く。

 

『があああぁぁぁっ!!』

 

「きゃあぁ!」

 

雷を当てられ麻痺状態を引き起こした俺は、その余波によって友奈を巻き込んで吹き飛ばされた。

 

雷によって辺りに煙が充満していたが、煙の中から黒い稲妻が走り煙をかき消す。そして煙が消えた先を見た俺は、絶望してしまった。

 

『ギュウワアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!』

 

 

俺に大ダメージを負わせ煙から出てきたのは刻印ポケモンゼクロムだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伝説のポケモン!黒き英雄!謎広まるルカリオ!

 

 

 

 

 

黒き稲妻を操る神話のポケモン、その名もゼクロム。最悪な事に今の俺達では手も足も出ない大物がやって来てしまった。

 

『なんだってこんな奴が……!?』

 

俺は舌打ちしつつも高速移動でその場にいる勇者達を安全園まで弾き飛ばす。そして改めてゼクロムと相対すると、体がぶるっと武者震いを起こす。

 

恐怖はある。死ぬのは怖い。でも、それと同時にワクワクもしている。この戦闘を切り抜ければ更に強くなれる。そう感じた。

 

俺は両手の波動を今出せる最大限まで増幅させると、ゼクロムを追い返すべく構える。生憎と勇者がいても俺がいても、現段階の時点ではゼクロムには勝てない。それは悔しい。だが、そうは言ってられない。

 

『今ここで戦うしかないな……全く、面倒事は嫌いだと言うのに』

 

なんとなく愚痴を零しつつもしっかりゼクロムの動きに注意を向ける。勝つことは出来ないが追い返すことぐらいなら俺でもできる。

 

『波動の力を見よ!』

 

俺は青白い波動の尾を靡かせながらゼクロムに突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

突然空から降ってきた黒い雷と共に出現した黒龍を見てから、なんだかルカリオの様子が焦っているように私には感じとれた。

 

ルカリオは私達の目では捉えられない速度で私達を、ルカリオから遠ざけると一人で挑んでしまった。

 

「大変だよ!急いで助けに行かなくちゃ!」

 

初めてルカリオを見てからなんだか惹かれてしまっていた私は当然の如く焦りでわかんなくなってしまっていた。

 

「落ち着いて友奈ちゃん!」

 

「落ち着いていられるわけないよ東郷さん!?ルカリオが!ルカリオがぁあ!」

 

あぁ、どうしよう!今ルカリオが私の元から去ってしまったら、私はきっと自分を抑えられなくなる。あの時見た悪夢に魘されていた時みたいになっちゃう。そんなのは嫌だ!

 

何としても助けに行かないと!

 

「落ち着いた方がいいよ結城ちゃん」

 

そんな私の肩にぽんっと優しく手を置いた高嶋ちゃん。私のご先祖さまである高嶋ちゃんは、一件見ると落ち着いているように見えるけど、それでも私と同じように焦りを感じる。

 

「あのルカリオ?って人を助けに行きたいのは私も同じだよ。でも、ルカリオがわざわざ私達を遠ざけた意味を考えてみようよ?」

 

「そう、だね」

 

高嶋ちゃんの説得で私の心もだいぶ落ち着いた。どうしてだろう?今までも誰かが危険な目になった時に焦った時があった。天の神の祟りに悩まされていた時も焦っていた。でも今回はその倍以上に焦っている。

 

ようやく心が落ち着いた。その思った瞬間、

 

「そもそも敵なんじゃないの?」

 

「――今、なんて言った?」

 

いかにもルカリオの事を信じていない千景ちゃんの言葉に怒りを覚えた。思わず千景ちゃんの胸倉を掴んで壁に押し付ける。

 

「ルカリオが敵なわけがないっ!ルカリオと出会ってからずっと一緒だった私が言うんだよ!敵なわけがないっ!」

 

千景ちゃんは私がここまで怒るとは思っていなかったのか、なんだか驚いているように見える。その様子が私の怒りをもっと増幅させる。

 

「ちょっとやめなって!今喧嘩してもどうしょうもないでしょうが」

 

「そうだな。千景の言いたいことは理解できるが、さっきのはダメだと思うぞ」

 

千景ちゃんから私を引き剥がした風先輩と若葉ちゃんが言う。その二人にもなんでか怒りが湧いてしまう。

 

「……っ!二人にはわかんなよ!」

 

そうして私は一人でルカリオのいる場所まで走っていった。後ろから私を引き留めようのとする東郷さんの声が聞こえるけど、今の私にはそんなの関係なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ルカリオ〜

 

 

 

 

 

 

ゼクロムとの戦いはまだ数分しか経っていないのにも関わらず圧倒的だった。ゼクロムにダメージを与えることなんかできず、俺の方がダメージを受けてしまい、その場に膝をついてしまう。

 

元々のレベル差があったんだろう。神話のポケモンを相手に本来一人で立ち向かうべきではないのだが、勇者と言っても彼女らはただの人間だ。精霊の力で死ぬことは無かっとしても、相手は本来この世界には居ないはずの生物だ。もしかしたら精霊の守りが聞かないかもしれない。

 

俺はそう判断したからこそ彼女らをこの場から遠ざけた。

 

ゼクロムってゲーム上では特攻より攻撃の方がポイント値が高かったはずだから、覚えている技もほとんど物理技だった。たまに特殊技も使ってくるけど。

 

今の所俺が体に受けた技は

 

雷撃

 

クロスサンダー

 

ドラゴンクロー

 

思念の頭突き

 

噛み砕く

 

破壊光線

 

シャドークロー

 

ライジングボルト

 

流星群

 

当たりだった。ちなみに、流星群以外の技はほとんど攻撃受けました。それはもう痛いのなんぼ。すごく辛い。

 

身体中麻痺しまっくて動きにくいし、癒しの波動は自分以外を対象としているから体力回復できないしなぁ。

 

『……なぜ逃げん?』

 

お、初めて喋ったな。ゼクロムって劇場版ポケットモンスターの黒き英雄で登場したんだよなぁ。その時のゼクロムはテレパシーで喋ったし、俺という前例がいることから喋れると思っていたけど。

 

『貴様と我の力の差は歴然のはずだ。なぜ逃げん?』

 

『今逃げたら命を失う可能性のある彼女らがいる。俺とは違い無限の可能性を秘めた少女達の命を優先したまでだ』

 

『分からぬな。生物とは自分の命が第一のはずだ』

 

お前から見ればそうだろうねぇ。

 

『生憎とこの世界にお呼ばれした時点で、俺の本来の命なんか無いに等しいんだよ』

 

『……そうか』

 

ゼクロムはそれっきりは黙り込むと、右手に高圧の雷を纏う。確か、雷パンチだったか……ゼクロムって雷パンチ覚えたっけ?

 

拳が目の前まで迫ってきた。あーあ、俺の命早めに終わったなぁ。

 

そう思って俺は静かに目を閉じる。だが、いつまで経っても痛みが来ない。それに気づいた俺はまさかと思って目を開ける。するとそこには、

 

「ぐうぅぅぅぅ……」

 

必死な顔でゼクロムの拳を拳で受け止めた友奈がいた。これには流石のゼクロムも驚いたみたいで思わず後ろに跳んでいた。

 

「くっ……!ぜっ、絶対ルカリオにはこれ以上怪我させない!」

 

『貴様、なぜそやつを助けた?』

 

ゼクロムには理解できないようだ。そう思ってる俺も全然理解出来てないけどな。

 

「誰かを助けるのに理由なんか必要ないっ!そんなのっ……私が目指す勇者じゃないもんっ!」

 

友奈は必死に俺を守ろうと庇う。ゼクロムはその様子を見て何かを考えている。

 

『理想を求める者として、貴様のその理想を認めよう』

 

ゼクロムは友奈の理想を認めてくれたようだ。なんか展開的にからでいいのかって思いたいぐらいなんかグダグダ感が半端ないけど。

 

『今日の所は貴様の理想に免じて引くとしよう。それと、一つだけ忠告しておくぞルカリオ』

 

『なんだ?』

 

『この世界に召喚されたのは貴様や我だけではない。イレギュラーたる貴様を除いて天の神は神話の生物たる我らを召喚した。誰もが我のようだと思わないことだ』

 

それだけ言ってゼクロムは雷を纏って天に登っていく。友奈は思わず「……綺麗」と呟いているが、今の俺にとってそんなことを考えている頭はなかった。

 

(ゼクロムは天の神に召喚された?しかもゼクロムだけじゃない?では俺は?俺は誰に召喚された?いや、そもそも俺は召喚されてここに来たのか……?)

 

危機は去った。だが、俺にとって新たな疑問が追加された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ〜ん、ゼクロムが自ら引いたのね。やっぱり三百年前から続く『高嶋友奈』の血は伊達じゃないってことね」

 

見るからに高級そうな椅子に座った美少女は、セミロングの黒い髪を手で払うと、面白そうに地面にひれ伏すルカリオとそれを助け起こそうとする友奈に目を止める。

 

「ふふっ……まだまだ遊べそうね。せっかく召喚してあげたのだから、せいぜい勇者達を守ってあげなさいよね……ルカリオ?」

 

美少女は友奈に対して困った顔をしているルカリオを見て、まるで恋する乙女のようなうっとりとした表情で言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

闇に堕ちた勇気の勇者

 

 

 

 

 

 

友奈のご先祖さまって聞いていた時から少なからず覚悟していたことがある。それは、

 

 

 

 

「えへへ〜結城ちゃんの言う通りモフモフだねぇ〜」

 

「でしょでしょ?高嶋ちゃんもそう思うよね!」

 

『……』

 

勇者部に無事戻ってこれた俺は、W友奈によって抱きしめられていた。俺一応怪我人なの分かってんのかなぁ?

 

これには勇者部全員(二名以外)苦笑い。って、テメェら苦笑いしてねーで助けろや!

 

「若葉ちゃん、ルカリオさんが物凄く助けてほしそうに見ているのですが……」

 

「そのままにしておこう。流石の私も、今の二人に近づきたくない」

 

「「……羨ましい」」

 

おいそこの二人!ボソッと言ってんの聞こえてるからな?ルカリオなめんなよ?

 

「はぁ……なぁんで帰ってきて早々にこうなるかねぇ」

 

風よ、お前の気持ちはよくわかる。

 

「なんかルカリオって昔持ってたぬいぐるみと同じ姿なんだよねぇ」

 

おいおい、高嶋さんよ、そんな偶ぜ

 

 

「ホント!?私なんだよ〜」

 

……お前もか友奈。この後どっちが家に連れていくかで睨み合いが始まったのは言うまでもない。

 

結局の所何故か風の家に行くことになった。

 

放課後、風と樹と俺の三人で帰路についている。俺はポケモン映画に登場するアーロンと同じ服装をしている。と言っても完全に同じという訳ではなく、勇者部部室にあった青い布とかで自作した。

 

……まぁ、正確には作ったのマントと帽子だけなんだけどね?ある程度は人には見えないようにしたけど。

 

『今日は世話になる。友奈から風の作るご飯は最高にうまいと聞いていたので、実は楽しみだったりする』

 

「そうかそうか!友奈はそんな嬉しい事言ってくれたのね!よぉし!今日は腕によりを掛けて作っちゃうぞー」

 

「私も手伝うねお姉ちゃん!」

 

「……何もしなくていいから座って待っててね樹ちゃん」

 

「お姉ちゃん!?」

 

……姉妹コントかな?いゃまぁ、微笑ましい限りだけどさ。

 

家に着いた俺はすぐさま精神統一を始める。樹は料理の手伝いを断られて拗ねてシャワー浴びに行った。風は悲しみの涙を流しながら料理している。

 

後で悲しくなるんなら手伝わせればいいのに(樹の料理が壊滅的なのを知らない)。

 

結論風の料理はとても美味しかった。

 

ご飯食ったあとは、風が風呂から上がるのを待ち、三人でトランプゲームをした。途中で樹が寝落ちしてしまい、風も「今日は(精神的に)疲れたから寝るわ」と寝床に着いた。ふふふ、風よ、心の中で言った言葉、波動で丸わかりだぜ?

 

二人が夢の中に落ちたのを確認した俺は、玄関から外に出てとある場所に向かった。そろそろ寂しくて泣くと思うから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

 

 

今日の私はなんだか私らしくなかった。今まで以上に焦りを感じていちのは自分でもわかる。でも、もっと冷静になるべきだった。

 

ルカリオが風先輩の家に泊まることになったのも、きっと私のせいだよね。私がちゃんとしていればこんなことにはならなかったはずなのに!

 

どうして!?どうして私は……

 

「クハハ!随分と闇を抱えているなぁ」

 

ベッドで体育座りしていた私は、突然聞こえた声に顔を上げる。私の部屋は電気をつけてないから視界真っ暗な状態。でも、それでも何故か私を見つめる赤い目が見えた。

 

「だ、誰!?」

 

「俺様の事か?俺様は夜を支配するルガルガン。まぁ、簡単に言うなら以前お前が見た悪夢の権化ダークライの部下って所だな」

 

何気に親切に教えてくれるルガルガンの「ダークライ」という言葉に私の背筋は凍りつくような感じがした。

 

ダークライ。私が暗い悪夢の中で見たトラウマ。もう聞きたくもない名前。

 

「…………いや!いやぁ!」

 

私は思わず耳を抑えて何も聞こえないふりをする。

 

「けひゃひゃひゃひゃひゃ!!こりゃあ傑作だなぁ。まさかダークライの名前聞いただけでこのザマかよぉ。勇者ってのも随分と心が貧弱だなぁ!」

 

ルガルガンはまるで子供のように蹲っている私の首を掴んで、外に放り出す。

 

「きゃあ!」

 

そのまま首を掴まれて壁に押し付けられる。苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。

 

「こりゃあすげぇぜ!心の闇がどんどん深く増幅していく。こりゃあ闇の勇者が生まれるのも時間の問題だな!」

 

ルガルガンが楽しそうに言っているのが苛立つ。あぁ苛つく。殺したい!こいつを今すぐ殺したい!誰もが目を背けるようなグチャグチャにして、いたぶったりしたい!殴りたい!あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁもう!苛つく。苛つくなぁ!

 

「……離してよ」

 

「あぁ?」

 

「……離してって言ってんの」

 

いつまでも首を掴んでいるルガルガンの手をギチッと掴む。どうしてかルガルガンが顔を顰めているけどそんなの興味ない。

 

「勇者シムテム起動」

 

スマホを出してアプリを起動させる。すると私の体から無風の闇が溢れ出る。今まで怖かった闇が、何故だか今の私にはとても心地いい。

 

「アハッ、最っ高!」

 

私に纏うように包み込んでいた闇が晴れると、いつもの勇者服を黒く闇に染める。髪までもが黒くなっちゃってるなぁ。

 

「あぁ、気持ちいいなぁこの感じ。なんでだろうね?」

 

私は優しいほほ笑みを浮かべてルガルガンの方を向く。あれ?ねぇどうして逃げようとするの?

 

「は、離せ!俺様を掴むな!」

 

言ってること理不尽だと理解してるの?さっきまで私に何してたかわかるよね?じゃあ……倍にして返してあげなくちゃね‪‪‪‪‪‪♡

 

「ふふふ、ふふふふふふ、あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

拳に闇を纏わさてルガルガンを殴って殴って殴って殴りまくる。いつもの私だったらこんなこと絶対にしないだろうね。でも、今の私はとっても悪い女の子だから。こうやって殴っちゃってもいいよね?

 

 

 

 

 

 

 

『そこまでにしておけ』

 

 

 

 

 

 

あれ?どうして意識が……?おかしいなぁ。今とっても会いたかったルカリオの声がしたと思うのに、体が何故か倒れてる。

 

アハッ!意識が無くなりそう。せめて私の意識を奪おうとした奴の顔ぐらいは見ておかないとね♡

 

「え?」

 

なんとか頑張って顔を上げた私が見たのは、私に冷たい目で見る紅く光らせた瞳のルカリオだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心配なる桜の勇者!不慮の事故

 

 

 

 

 

 

気絶した友奈をベッドに運び、その手を握ってやる。何が原因で友奈が闇堕ちしたのかは知らない。だが、多分相当心が追い込まれていたんだろうなぁって思う。

 

友奈は自分の心の内を仲間に明かした事はかなり少ない。高嶋もそうだが、この二人の共通点は隠し事が下手な癖に仲間に迷惑をかけたくないから隠そうとする所だな。ホント……もっと頼ってもいいと思うのにな。

 

『虫の知らせとはよく言ったもんだな』

 

後で風に謝っておかないとな。勝手に家から出てきたから。でも、今日は友奈の側にいてやるよ。いつまた闇の力が現れるかわからないからな。

 

それにしても――

 

『夜のルガルガン……最悪だな』

 

ポケモンゲームにイワンコという少し特殊なポケモンが存在する。イワンコには三つの進化方法があり、朝型、夜型、黄昏型と別れている。朝型の姿は四足方向の薄い茶色の犬だ。夜型は凶暴性のある赤い二足方向の犬。黄昏型は朝型と同じ姿で色が橙色になる。

 

この三つの姿にステータスの違いはないけど、多分それぞれ考え方が違うだと思う。

 

最悪だ。ホント最悪だ。友奈を闇に堕としたルガルガンにも、それを防ぐことが出来なかった自分自身にも……っ!

 

ギリッと音を立てて歯を噛む。仲間一人救えないで何が勇者だ!自分であの時波動の勇者と名乗っておきながら、こんなにも心の弱っていた女の子すら守れていないじゃないか!

 

『ダメだ。俺まで闇に捕われるわけにはいかない……俺が、俺が友奈を守る』

 

どうして俺がこの世界にルカリオの姿で呼ばれたのかは知らない。でも、守れる対象がいるんだからそんなこと考えている暇もない!

 

『俺は波動の勇者ルカリオ』

 

友奈の部屋の窓から見れる満月を見ながら決意を改める。バーテックスはいつ攻めてくるかはわからない。

 

「う、うぅ……ルカ、リオ?」

 

ベッドの方で友奈が寝返りを打ちながら目を覚ます。薄らと開けられた目には不安が込められている。その不安を俺が取り除けるぐらい強くならなくては。

 

俺は友奈に笑みを浮かべて頷くと、窓を開けて外へ出る。結論、風にはバレました。帰ってきたタイミングでまさかのトイレに出てきた風と鉢合わせしてしまい、こってりと怒られました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日――

 

 

 

 

無事元気に登校してきた友奈を見て俺は安心した。今も三森と仲良く話している。そう言えば最近俺は体の中に眠る波動を物質に宿らせる技術を身につけた。この技術がなんの役に立つのか?そう思うと思うけどこれが物凄く役に立つんだよ。

 

 

『友奈は元気そうだな』

 

「そうねぇ。元気でよかっ……アンタ何してんの?」

 

風のカバンからはみ出しているルカリオのぬいぐるみに憑依している。これが俺が最近になって身につけた波動の技術である。ホントビックリしたよ。風がこのぬいぐるみをいつも持ち込んでいるのを知っているからこそ出来たようなものなのだ。

 

まぁ、簡単に言うなら自分の体を波動で粒子上に変換し、他の物質に粒子を入れることで憑依する事が出来たのだ。自分でも滅茶苦茶だという自覚はあるぞ?

 

ちゃんと出ることも出来るから何気に便利だし。

 

『ぬいぐるみになった』

 

「嘘よね?いや、声が聞こえるんだから嘘なわけないか」

 

最初こそ驚いていたようだが、直ぐに納得すると疲れたように脱力する。

 

そして粒子上にした俺の体を友奈の体に憑依させる。憑依って言っても昔見た仮面ライダーエクゼイドにあったパラドが宝生永夢の体に潜り込んだことと同じことをしているだけだ。乗り移っている訳ではなくただ内側から友奈の様子を見ているだけだ。

 

「それでね!そのお医者さんが子供に言ったんだよ。『君のその笑顔が、健康の証だよ』って!」

 

「ふふっ、ホント好きなのねその話」

 

『まさか、宝生永夢の話が出てくるとはな』

 

「だよねー……ってえぇ!?」

 

「今……ルカリオ君の声がしたと思うのだけど」

 

三森さんや、なぜルカリオである俺にに君付けしてるのかな?する必要あった?ってか、それ言いにくくない?

 

『色々実験していたら憑依する事ができるようになった。凄いよな。自分でも驚いているよ』

 

「それで、誰に憑依しているの?」

 

「友奈に」

 

「私に!?」

 

まぁ、いつの間にか自分に憑依されてたら、そりゃあ普通驚くわな。というか、勇者部のみんなは俺が予想外の事を起こすと必ず驚いてくれる気がする。

 

あ、あのー三森さん?出来るなら俺の事睨まないでくれます?出来るだけ友奈の近くにいないといけない状況なんだよ?友奈の性格上絶対みんなには話していないと思うけどさ。

 

「……やましい気持ちがある訳では無いのね?」

 

『当たり前だ。これも俺なりの防衛だと思ってくれ』

 

「そう……なら、任せるわ」

 

「……少しぐらいならやましい気持ち持ってくれてもいいのに……」

 

……友奈、今俺はお前に憑依しているんぞ?今ぼそっと呟いた事丸聞こえだからな?まぁ、憑依していなくても波動で分かるけどな。残念な事に俺は友達曰く鈍感系キャラらしいから、友奈が考えていることはわかっても想いまではわからんけどな。

 

そんなこんなで授業中、体育の時間になった時だった。体育の時間は三時間目であり俺はそれまで寝ていたのと授業の割り振りを知らなかったこともあり、友奈達女子組の着替えを丸見えしてしまった。

 

くっ……この俺、ルカリオとなった黒宮零牙一生の不覚!早い所ここから脱出しなければ……。

 

「ねぇ、ルカリオ……もしかして起きてる?」

 

体操着に着替え終わった友奈が思い出したかのように、誰にも聞こえない声で聞いてくる。その声にはうっ暗と恥じらいがある。

 

『残念な事に起きてしまっている』

 

「……もしかして、私たちの着替え見た?」

 

『不覚ながら見てしまった……起きるタイミングを間違えた』

 

「そっかぁ……いいよ、黙っててあげる」

 

『分かっている。俺は覚悟を決めた。みんなから殴り倒され……いいのか?』

 

「うん。いいよ。後で言うこと聞いてくれるならね?」

 

『それぐらいなら別に構わ』

 

「よし言質とった録音した」

 

……謀ったなこの小娘……?いやまぁ、これが三森にバレてしまえば殺される未来しか浮かんでこないから、バレない為にも言うことを聞いておくか。後で何を聞かされるのかが怖いがな。

 

ってか録音いつからしてたの?最近君怖いよ?

 

ちなみに今日の体育は、西暦組と神世紀組で一緒にやるらしい。なんでもほとんどの遊びが忘れられたこの世界で、唯一忘れられなかったスポーツをするらしいな。

 

ドッチボールか……杏や樹、死なずに生きて帰ってこいよ?

 

さてさて、お手並み拝見と行くか……な?いや、いやいやいや!?高嶋さん貴女マジですか!?貴女ドッチボールのルール知ってる?なんでが嫌だからって飛んできたボール殴って返すの?死ぬよ?当たった子死んじゃうよ?分かってる?

 

あ、友奈がなんとかキャッチして同じように……もう疲れた。でも、友奈が楽しそうだからいいか。

 

この様子なら暫く離れていても大丈夫そうだな。そう思った俺は粒子上になって友奈から離れる。あ、完全型勇者がボール当たって外野になった。若葉やるなぁ。

 

友奈から離れた俺は人気のいない場所で実体化する。相変わらずグレー色のルカリオだな俺。本来ポケモンゲームにもアニメにもこんな色のルカリオは存在していないはずだ。なのに俺はこんな色になった。一体どういうことなんだ?

 

いや考えても仕方が無いか。

 

と、俺が油断していた時だった。

 

『なっ……!?』

 

世界の時が灰色に止まった。そしてもう一つ。

 

「な、なんで、俺が人間に……!?」

 

そう、俺の姿が先程までのルカリオではなくこの世界に来る前の黒宮零牙としての姿だった。う〜ん色々と困った状況になったぞこりゃあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

自らの正体と新たな力!

 

 

 

 

樹海化とはまた違う時の止まった灰色の世界。一体この世界はなんなんだ?どうして俺が人間の黒宮零牙の姿に戻っている?

 

「考えてもわからないな。仕方ない。しばらく探索でもするか」

 

ため息を吐いた俺は取り敢えず学校の中に入り、屋上を目指した……時が止まってても物は動かせるのね。もう何も驚かないよ絶対。

 

屋上にやってきた俺はそこから学校を見渡している。何かわかるかもしれないとは思っていない。でも、来ないといけない(・・・・・・・・)と何故か思った。

 

「まぁ、簡単に答え見つかったら苦労しないよなぁ」

 

「当たり前だよ」

 

突然友奈の声が聞こえて驚いた俺は後ろを振り向く。するとそこには、

 

「えへへ、初めましてだね」

 

髪型や髪色、服装は違うけど友奈と同じ顔をした少女が立っていた。いつの間に、そう思いたい。一体いつからそこにいたんだ?

 

「驚いた?いや驚くよね?ゴメンね?時間がなかったから」

 

「時間が、ない?」

 

「うん、そうだよ。今この世界には物凄く時間が無いんだぁ」

 

「それよりも君は誰だ?」

 

目の前にいる友奈似の少女の事を俺は知らない。知っているはずがない。なのに何故だ?この妙に懐かしいと感じるのは。

 

「私の事忘れちゃったかー。でも、君の心は覚えているはずだよ?天の神」

 

「……天の神、だって?冗談はよせ!天の神は……」

 

「うん。勇者達の戦いで一度撤退したよ。でも、君は異世界にへと魂が飛んでしまいそのままその世界で過ごすつもりだった。でも、天の神としての力が残っている君は、私たちの世界の戦いに巻き込まれたんだよ」

 

……言っていることが理解できない。何一つ理解できない。いや、理解できるはずがないんだ。誰がかつてこの世界を滅ぼそうとした天の神だって言われて理解できるよ?無理だろ!

 

「俺が天の神のな訳が無い」

 

「まだ信じられない?まぁそうだよねー。君は天の神ではあるけれど、その中の一部だったみたいだからね。多分友奈ちゃんがみんなとの絆でなった大満開での攻撃が一部当たったんだと思うよ」

 

なんでそんな詳しい。いや、だんだとだが君が誰だがわかってきたよ。君は、

 

「君は地の神であり、みんなが崇拝する神樹様だな?」

 

「……驚いたなぁ。なんでわかったの?」

 

「ただの勘だよ」

 

「勘で当てられちゃったのかー。なんか悔しいな」

 

そう言って地の神は俺の近くに来る。両手を後ろで組んで少し前屈みになる。友奈の顔でその動作はやめなさい。全国の友奈ファンに殺されるよ……俺が。

 

「ふふふ、焦ってる焦ってる♪」

 

地の神は楽しそうに笑うと、俺が理解できないほどの速さで顔を寄せると

 

静かに、そして大胆にもキスしてきた。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

「これは記憶をなくしてもこの世界を守ろうとしてくれたお礼だよ」

 

顔を真っ赤にした地の神が微笑むと、強い突風が吹き荒れる。俺は思わず目を瞑ってしまうが次に目を開けた時、地の神の姿はどこになく俺は樹海の中にいた。

 

手には見覚えのないベルトと二つのガシャットがあった。

 

「まさか……これを使えってことか……?」

 

使い方なんかわかるはずがない。そう思っていたが、

 

「あれ?なんでだ?なんで俺は……」

 

 

 

 

使い方を知っている?

 

 

まぁ、とにかく使うしかないだろう。俺はベルト……確かゲーマドライバーを腰にセットにして、手に持つガシャットのうち黒い方を起動させる。

 

マイティアクション!エーックス!!

 

ガシャットを起動させた事で音声が流れる。俺はガシャットを指で一回転させて下向きにすると

 

「グレード2、変身!!」

 

そのままドライバーに差し込んだ。すると俺の周りをグルグルと顔の着いたパネルが出現する。俺は右手をパネルをタッチする。

 

マイティジャーンプ!マイティキーック!マイティアクションエーックス!!

 

音声が終わると同時に俺は仮面ライダーゲンムレベル2に変身完了した。

 

さてさて、いっちょやったるかな。

 

「コンテニューしてでも……勝つ!」

 

開いた右手を顔の前まで持ってくると、握りつぶすように掌を握る。

 

そして俺は、友奈立ちのいる場所まで走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はちょっと短め


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勇者組が仮面ライダー知っているわけないよなぁ普通

 

高速化のエナジーアイテムを三つ拾った俺は、俺自身止まれるか不安な状態で友奈の元に急ぐ。なにか良くないことが起こりそうな予感がしている。間に合わなかったら大変になる。

 

「クソっ!こんなヤツらに足止めをくらっている暇はない!」

 

ガシャコンブレイカーを使って俺にとってのザコバーテックスを蹴散らしていく。

 

「お前らが元々天の神が作った存在なら……俺の邪魔をするなァ!」

 

見るものにとっては黒い流星の如く速さで走る。俺は急いでいるんだ。邪魔されては困る。

 

待っていろ友奈!今行く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまで突然樹海化警報がしてからの樹海化なんて普通だった。でも、今回は違った。

 

突然樹海化が始まった(・・・・・・・・・・)。こんなこと今まで無かったよ。

 

しかも、私達の前にいるのは……

 

「グヒャグヒャグヒャ!」

 

「……」

 

二足方向のクマのような生物に、リズミカルに飛んだりしているオレンジ頭の怪物だった。怪物はなんか数が多いし。

 

あー、なんかイライラしてきた。すっごくイライラしてきた。いつもなら絶対に思うはずのない殺意が芽生えてきた。どうしよう。抑えなきゃいけないのに抑えきれない。

 

「ゆ、友奈ちゃん?なんか友奈ちゃんから黒いモヤが見えるんだけど……」

 

うるさいなー東郷さん。殺したくなるから今は黙っててよ。知らないよ?思わず殴っちゃっても。

 

「グヒャグヒャグヒャ!あれれー?あの弱っちぃオオカミさんはどうしたのかなぁ?連れてきた方がいいんじゃぐぼひゃ!?」

 

「あーあ、知らないよ?今言っちゃいけない事言ったんだから。殺されても……文句ないよね?」

 

もう我慢なんかしてやるもんか。コイツは殺す。今ここで殺す。次なんかない。命あったら世界に迷惑だ!

 

「やってくれたなぁこのメスガキがァ!」

 

「うるさいんだよクマもどき!」

 

殴っちゃえ殺しちゃえ!アハッ♪最っ高♡︎たーのしぃ♡︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜□☆○♡〜

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈を襲おうとするタチフサグマとバクスターを前に、楽しそうに殴り掛かる桜の勇者。殴ることを楽しんでるように見える友奈を見て、勇者のみんなは少し引いたような感じになる。

 

「な、なんでアイツはあんなにも楽しそうなの!?」

 

「知らないわよ!そんなことよりも私たちも行った方がいいんじゃないの部長!?」

 

「分かってるわよ!」

 

慌てながらも勇者としてタチフサグマに向かっていく風と夏凜の二人に続いて若葉も向かう。三森だけは豹変した友奈に対して信じられない顔をしていた。

 

「友奈ちゃん、どうして……?」

 

「大丈夫だよ」

 

そんな三森の肩を優しく手を置く

 

「きっとルカリオが何とかしてくれる」

 

顔を上げた三森が見たのは、ルカリオを信じた高嶋の笑顔だった。

 

だが、そんな二人の目の前に、向かって行った勇者達が飛んできた。

 

「友奈ちゃん!! 」

 

三森はすぐさま傷ついて倒れている友奈に駆け寄る。先程までのたった数分で向かって行った全員がやられてしまった。

 

「そんな、そんな……友奈ちゃん!友奈ちゃん!」

 

三森が必死に友奈の体を揺さぶる。だが友奈は呻くばかりで反応はなかった。

 

「そんな……友奈ちゃん!友奈ちゃん!……いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

自分の顔を手で覆った三森の体から闇の突風が吹き荒れた。

 

「わぁお、これはちょっと予想外……どんだけ結城ちゃん好きなのさ?」

 

後ろで心配そうに様子を見ていた高嶋は、引きつった笑みを浮かべる。

 

「ああぁぁぁああああぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

吹き荒れる闇が固まり三森に纏わりつこうとした時、

 

「少し寝ておけ」

 

バシッと三森の首を打って寝かせるゲンムが現れた。

 

高嶋は最初警戒するが、心配そうな手つきで寝かせるのを見て、直ぐに警戒を解く。

 

「さて、天の神が召喚した奴らか……俺という存在がいながらおこがましいにも程があるぞ……しかも友奈を傷つけた。その罪、万死に値する」

 

ゲンムはガシャコンバクヴァイザーをチェンソーモードにすると、タチフサグマを人斬りで消滅させる。断末魔を上げる暇もなくタチフサグマは消滅したのを見て、若葉達勇者は最大限に警戒する。

 

「いくら肉体と意識を持とうが、この俺がいる限りお前の命を断ち切るなど容易いことだ」

 

ガシャコンバクヴァイザーをガンモードにすると増殖し続けているバクスターに向け発射する。

 

「お前らバクスターは絶版だ」

 

ゲンムはもう一つのピンク色のガシャットを取り出しガシャコンブレイカーに装填する。

 

 

 

ーマイティクリティカルフィニッシュ!!ー

 

 

 

ブレードモードのガシャコンブレイカーが光り輝き、ゲンムはそれをバクスターの大群に向かって横凪に振るう。すると、ガシャコンブレイカーから放たれた斬撃派がバクスター達を消滅させていく。

 

「友奈を傷付ける存在は……全て俺が滅ぼす」

 

そう言うとゲンムはクルリと友奈の方を向く。突然こちらを向いたことに全員が身構えるが、ゲンムが友奈の元に駆け寄り心配そうに手を伸ばすのを見て唖然とする。

 

「良かった……傷はないみたいだな。信じてなどいなかったが精霊の力は本物という事か。地の神に感謝しなきゃな」

 

友奈に傷がないことを確認したゲンムは立ち上がって歩き出す。

 

「ま、待て!お前は一体なんなんだ!?」

 

ハッと気を取り直した若葉が睨みつける。油断しないように刀を構えている。

 

「俺はゲンム。安心しろ。俺が出てくるのは今回だけだ」

 

そう言ってゲンムは突然現れた霧の中に消えていく。

 

「なんなのよアイツは……」

 

意味不明なキャラの登場に夏凛は呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ルカリオ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海化が解除され先程までいた屋上に放り出された俺は、強制的に変身が解除された。変身が解除されたことで、ゲーマドライバーとガシャットが地面に落ちる。役目を終えたからか、ゲーマドライバーとガシャットが粒子化されて消えていった。今後二度と使う機会もないだろうし、俺からしたら少しホッとした。

 

「流石にもう仮面ライダーにはなりたくない。俺がなりたいのはルカリオなんだぞコノヤロー」

 

と矛先のない怒りを出す。声の感じから察してはいたけどさ、やっぱりまた人間の姿に戻ってる。という事はルカリオの姿に制限でもつけられたのかな?

 

例えば戦闘中だけルカリオとか?

 

「そんなことないよ。大丈夫、ちゃんとなれるよ」

 

「うお!?また現れたな神樹友奈もとい神奈!!」

 

そんなことを考えていた時、いつの間にか俺の隣に神樹友奈……神奈が立っていた。神奈は神樹友奈の略みたいなものだな。

 

「ぷっ!何それ神樹友奈だから神奈?面白いね君は。うん好きだなその名前」

 

「と、そんなことより。またなれるってどう意味だ?」

 

「一瞬で私のトキメキを砕かれた……あーうん。ルカリオの姿には君がなりたい時になれるよって意味」

 

ホントかなぁ。じゃあ試しに……

 

『ホントになれた』

 

「す、凄いねー。ルカリオになる説明してないのになっちゃうなんて」

 

『昔から勘は鋭い方だからな』

 

友達からも「お前は女の子の恋心に関しては鈍感系主人公なのに、それ以外だと天才的な勘があるよなぁ」って褒められていたからな。

 

……褒められていたのかあれは?逆に馬鹿にされてなかった?まぁいいや。

 

なんとなく人間の姿に戻る。やっぱり元の世界でこの体を使っていただけはあり、ルカリオの体よりは動きやすい。

 

「まぁ、みんなを助けれくれたし感謝してるよ。はいご褒美」

 

そう言ってまたいつの間にか近づいてきた神奈に

 

チュ!!

 

またキスされた。今度は長めの……えーっとあれだアレ!R15では説明出来ない方のキス!

 

「ぷはぁ……流石にもっとしたいけど、こんな所を友奈ちゃんに見られたら殺されちゃうし、名残惜しいけどご褒美はここまで。もっとして欲しかったら私の元まで来るといいよ」

 

「誰が行くか!!」

 

顔を真っ赤にした俺は怒って怒鳴る。よく見れば神奈も頬を赤く染めている。だから恥ずかしいならしなきゃいいだろ!

 

「さて、と。もう時間だから帰るね。また会おうね」

 

「二度と来んな」

 

霧のように姿を消した神奈に向かって悪態をつく。早く友奈のところに行きたい。みんなの様子も気になるが、やっぱり一番は友奈が心配だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品でオリ主が仮面ライダーに変身するのは今回限りです。以後はルカリオと人間体の二つ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

殺意を仲間に/黒き闇の勇者

おかしいな。東方エボリューションよりもドレアム様のつぶしの方がお気に入り数が高い。


 

 

 

 

 

 

俺がゲンムとなって敵を殲滅させてから数日が経った。俺達はあの戦いから未だ目を覚まさない友奈を心配して病院にまで来ていた。

 

俺はあの時勇者達とは違う場所に降りたために知らなかったが、樹海化が解けても何故か友奈だけが目覚めることもなかったらしい。

 

俺の予想ではあの時闇の力を使っていたからだろうと推測している。闇の力が何故友奈から溢れ出るようになったのかは知らないが、同じように闇のチカラが溢れでた三森は気絶させても起き上がることは出来たのに、何故か友奈だけは目覚めなかった。

 

言い忘れていたが友奈は本来アプリを使わずとも勇者に変身できる。以前天の神と戦った際になった大満開の姿になることが可能らしい。だが、それの形態になれずにいるのは友奈の心の闇が原因らしい。

 

恐らくずっと友奈の心を蝕んでいたんだろうな。だからこそ友奈の事を心配する誰かによって俺は召喚された。いや、再びこの世界に呼び戻された。

 

俺が本当に天の神であるならば、友奈の闇を払うことだって出来るはずなんだ。

 

あれからさらに数日後、三森の体に憑依して、今日は部員全員で友奈の容態を確認しに来た。その途中、俺は三森から分離して人のいない場所で人型……まぁ、つまり黒宮零牙の姿になる。よく良く考えれば黒宮零牙って名前も体も仮初なのかな。

 

まぁ、そんなことはさておき。黒宮零牙の姿になった俺は、掌から青い波動を出す。

 

「なるほど。俺は本当に天の神だったみたいだな」

 

自分の力が本当に真実だと理解できた俺は、友奈の眠る病室に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室に着いた俺は、なんの躊躇いもなく扉を開け中に入る。中で友奈を心配そうに見ていたみんなが驚いた顔をするが無視。

 

「ちょ、アンタ誰よ!?」

 

「ここは関係者以外は立ち入り禁止なんだよ〜?」

 

「安心しろ。大赦とは全くの無関係だが、君らとはちゃんと関係あるから」

 

頭にハテナのついた風、夏凛、園子の三人を取り敢えず無視して、友奈の体を見る。やはり力の存在を認めたからか、友奈の体に巣食う闇の存在が見える。場所は心臓のある胸。

 

「言ったはずだよ。俺がいる限り友奈に傷はつけさせないってな」

 

俺は右手に青い波動を出すと、思いっきり友奈の心臓部分の胸に触れる。正直かなり恥ずかしい。

 

「なっ……何してるんですか!?」

 

「へ、変態よ!誰か警察を」

 

「黙って見ていろ!!」

 

後ろでガヤガヤとうるさくなったが、一喝して黙らせる。今は俺の精神力だけが頼りなんだ。いらない力を出させないでくれ。

 

俺が今何をしているかと言うと、ルカリオの覚える技である【癒しの波動】で友奈の体を癒しているんだ。

 

「くっ……ああぁぁぁ……ああぁぁぁああああぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!」

 

だが、癒しの波動で癒している最中、突然友奈の目が開かれ尋常じゃないほどの闇が溢れ出した。その反動で俺は吹き飛ばされ壁に打ち付けた。

 

痛い。ものすごく痛い。

 

「え?友奈……ちゃん?」

 

「東郷さん?どうしたの?そんな怯えた顔して」

 

「どうしたって……アンタ、なんか怖いだけど」

 

溢れ出た闇が再び友奈の中に戻ると、友奈は目に光のない笑顔を浮かべる。そして、ベッドから降りた。その光ない瞳に明確な殺意を浮かべて。

 

「嫌だなぁ夏凛ちゃん。私の何が怖いの?私は私だよ?」

 

そう言って友奈が夏凛に近づこうとした時、アラームなしで樹海化が始まった。

 

「ちっ……もう感知しやがったの?全く早いなぁ神樹様って」

 

突然始まった樹海化に彼女らしくもなく舌打ちすると、彼女を中心に闇が天に昇るように闇が吹き荒れる。その闇の風にみんなが吹き飛ばされた。

 

しばらくして闇が吹き飛ぶように収まると、俺以外の全員が絶望した顔をする。

 

「アハッ♪アハハハッ♪みんなどうしたの?」

 

「なんで……なんで……」

 

 

 

 

勇者が黒くなっているのよ!?

 

 

 

 

友奈の勇者としての服は桜色と白色だが、今の友奈の勇者服は黒と紫の禍々しい感じになった。その姿はまるで、

 

「勇者じゃなくて魔王だな」

 

「アハッ♪なんか知らないうちに一般人が紛れ込んでいるよ♪でも、なんだろうね?君の事は知らないはずなのに知っている感じがするなぁ」

 

「なんでだろうな」

 

俺はふてぶてしく笑うと拳を構える。その拳から青い波動を出して。

 

「その波動……そっかぁ、君だったんだ。ルカリオって」

 

「「「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」

 

友奈さんよ、正体わかっても言わないのがお約束ですぜ?知らんけどな!

 

「オラァ!」

 

俺は高速移動で友奈の前に現れると、鋭く拳を振り上げる。だが、

 

「無駄だよ」

 

その拳は友奈の手によって簡単に止められた。しかも優しく手を置いただけ。

 

「マジかよ」

 

友奈の勇者としてのステータスが上がってやがる。これはまずいな。力を認めたことで記憶が戻ってきた俺だからこそ分かる。ここにいる全員が力を合わせ束になっても、闇に堕ちた友奈には勝てない。

 

どうすればいい。どうすれば……そうか。まだ手はあるな。出来れば使いたくないけど。友奈のためだ。背に腹はかえられぬ。

 

俺は大きく後ろに飛んでもう一度拳を構える。先程まで拳だけに出していた波動を、今度は全員に覆う。

 

「悪いが、少しだけ時間を稼いでくれ!」

 

俺が声を張り上げると、勇者達は黙って頷いてくれた。よし、ならあとは少し集中するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よし!これでいけるな。

 

本当はこの力を発動させるためには、相方が必要なんだがあのオゾン層に住んでる龍でも出来たんだ。俺にできない道理なんぞ無いはずだ!

 

『うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!メガ、シンカッ!!』

 

俺の体を覆っていた波動が丸い球体のようになり、そしてヒビが入って割れる。その中から現れた俺の姿は大いに変化していた。

 

いつものルカリオではなく、房が四つになり黒い模様や先が赤くなったりしていた。ちなみにグレーの体は何故か銀色に変化している。不思議だな。

 

そしてこの姿こそ、ポケモンが唯一なれる限界突破姿……その名もメガシンカだ!

 

これなら勝てる。あ、そう言えばメガシンカする際に球体が卵の殻のように割れたけど、あれ飛んで行ったよね?勇者の方に……。怪我してなきゃいいけどさ。

 

「いったぁ!この痛いじゃないの!!」

 

ごめん、まさか夏凛に当たるとは思ってなかった。そう言えばちょっと前に樹に占ってもらった時に十回中十回とも死神だったな。

 

まさかその死神の効果がここで発揮されるとは思ってなかった。

 

『怒りなら後でいくらでも受けてやる!今は友奈を元に戻すぞ!』

 

「って、なんか姿変わってない!?」

 

風、今はその説明は出来ないよ。状況考えろ。

 

「アハッ♪元に戻す?無理だよ。だって、私強いもん♪」

 

闇に堕ちた友奈からは楽しそうに笑っているのにも関わらず、俺以外の勇者に向けて殺意が向けられていた。

 

こりゃあ、一筋縄ではいかなそうだなぁ。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メガルカリオで苦戦するって、闇友奈強過ぎない?

 

 

 

 

 

 

「アハッ♪メガシンカしたんだぁ?面白ーい。じゃあ♡︎私も強くなろっと……満開」

 

メガシンカを果たした俺と闇の満開をした友奈の拳ラッシュがお互いの体に打ち付けられる。闇の力+満開したことにより、メガシンカした俺よりもスペックを越されてしまう。

 

クソ!元々神奈が認めた真の勇者なだけはあるな!元々のスペックは勇者の中でも群を抜いていたんだ。そこに闇の力をプラスしての満開って、俺これ勝てるかな。

 

「ほらほらほら、どうしたの?私を止めて見せてよ」

 

 

友奈が笑みを浮かべながら連続で殴りかかってくる。時々蹴りを入れてくるから戦いにくい。知らないだろうけどルカリオは蹴り技が少ないんだぞ!

 

心の中で言っても意味の無い愚痴を言いながら友奈から大きく離れる。

 

【ブレイズキック】

 

友奈に向かって走っていく途中俺の右足が地面に触れる度に燃え上がる。そのまま飛び蹴りをする。これが俺のブレイズキックだ!

 

「アハッ♪遅いよ♪」

 

だが、神に等しい力を持つ友奈に余裕綽々で避けられてしまう。なんか腹が立つなぁおいコラ!可愛いけど腹が立つ。

 

【メガトンキック】

 

なんの予備動作もなく友奈を蹴りあげる。友奈の腹を蹴り上げた事で、友奈は口から血反吐を吐きながら宙に浮いてしまう。

 

【グロウパンチ】【インファイト】

 

からの拳ラッシュ。グロウパンチとインファイトの合わせ技により、友奈は拳を受ける度に体のダメージが大きくなる。防御も出来ずに殴られ続けた友奈は、最後に俺の放ったグロウパンチで遠くまで吹き飛ばされる。

 

波動で感じた時に生命反応はあったから生きてはいるが、どうやら壁に埋まったらしい。体のエネルギーが尽きた俺はメガルカリオから通常のルカリオに戻り、気絶した友奈の元に向かう。

 

『やはり、今の段階でのメガシンカは少しきついな』

 

なんとなーく愚痴を零しつつ、気絶して動けない友奈を背中に背負う。

 

『全く……世話のやけるご主人だな』

 

「「「「えっ!?」」」」

 

突然驚いたように声を上げる勇者四人に、俺は訝しげに首を傾げる。

 

『どうした?』

 

「「「「いや、ご主人ってどういう事(よ)(ですか)(なの)!!??」」」」

 

そんな声を揃えて言わなくても……。

 

『今日から友奈は俺のマスターだから当たり前だろう?』

 

「いや知らないんだけど?」

 

『そりゃあ今初めて言ったからな』

 

「「なら分かるかっての!!」」

 

風と夏凛による蹴りツッコミが俺のお腹に炸裂する。お前ら、俺がルカリオだったから良かったものの、俺以外だったら吹き飛んでんぞコラ!お前らが今勇者服なのを忘れているだろ!

 

全く……まぁ、もしかしたら今後友奈以外にも闇の力を覚醒させる奴が出てくるかもしれないし、警戒するに越したことはないな。三森は一度だけ闇の力を覚醒させそうになってたからな。

 

それに、友奈が闇に堕ちたという事は、もしかしたら高嶋友奈も赤嶺友奈も闇の力を覚醒させる可能性があるし、俺の中で一番覚醒率の高いのは千景だし……勇者って何かと闇抱えている奴多くない?

 

そんなことを考えていたからか、樹海化が熔けて周りに警戒していなかった俺は、頭上で俺達を監視していたドローンがあったことに気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

勇者を管理する大赦で使われていない部屋の中で、珈琲カップを手に画面に目を通していた青年が溜息を吐く。

 

「ふむ、やはりいくらかつては天の神だと言えど、この神の才能をもつわたしが開発したゲームを使いこなすのは無理だったか」

 

「おいおい。この世界に飛ばされてきてからもう何年経ってると思ってんだよ?」

 

青年が立ち上がって飲み干した珈琲の替えを淹れると、突然粒子化していたカラフルな格好をした青年が現れた。

 

「……パラドか。奴の様子はどうだった?」

 

「お前の考えていた通り、あの桜の勇者は心の闇を覚醒させたよ」

 

「やはりか。いくら地の神に認められ愛された勇者と言えど、人間であることに変わりはない。それは滅びの神(・・・・)からすれば好都合だろう」

 

青年がそう言うと、パラドは顔を顰めた。

 

「あ〜あ、ここに永夢が居てくれれば良かったのにさぁ」

 

「そんなことを言っても仕方ないだろ。この世界に呼ばれたのが君とわたしだけなのだから」

 

パラドはここにはいない相棒が居ないことを寂しく思っている。

 

「まぁ、今あるガシャットがわたしのプロトマイティアクションしかない状況では動きようがないし、パラドには引き続きガシャット作りの為に動いてもらうしかないな」

 

「へいへい、わかってるよ。んじゃ行ってくる」

 

言うが早いか、青年が気付いた時にはパラドは体を粒子化させてこの場所から去っていた。青年はもう一度椅子に座ると、珈琲を飲みながら画面を見る。

 

画面にはメガシンカが強制解除され、気絶した友奈を背負うルカリオが映っていた。

 

「さて、メガシンカの力を手に入れた君にはまだまだ強くなってもらわなければならないな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本家GMさんはマジで腹黒いな!

今回は神の才能が登場します。


 

 

 

 

 

 

 

友奈がまた入院した。まぁ、それもそのはずだ。異例中の異例だったとはいえ、バーデックスを倒すための拳を仲間に向けた友奈は大赦によって「隔離」という名の入院をする羽目になった。

 

大赦からも厳しく注意されたようで、意識はなかったとはいえ仲間に拳を向けた罪悪感に支配されている友奈は、入院中誰とも会おうとはしなかった。

 

俺?勿論最初は拒絶されたよ。でも、忘れてはいないかね皆さん?俺は粒子化出来るルカリオだということを。つまりは、そういうことさ。

 

誰も見ていない所で身体を粒子化させて、友奈の病室に入って憑依した。まぁ、何度も何度も「出ていってよ!」って怒鳴られたけど、俺が憑依した事で分かったことが一つだけある。それは、俺が憑依することによって、心の闇を中和させることが出来るみたいだ。

 

完全に取り除くことは出来ないが、それでもある程度落ち着かせることは出来る。ただ、焦ったことがあるとすれば、友奈の心の闇は末期寸前だった事だな。もしこの闇が完全に末期状態ならもう手のつけ所がない。最悪の場合、勇者の資格を剥奪し殺すしか方法はない。

 

って言ってもこれは大赦がそう言っただけだ。何故かは知らないが、大赦は未だに俺の存在を知らないらしい。だからこそ俺が友奈の中にいる事で心の闇を中和出来ることを本人だけしか知らない。

 

『全く、困ったご主人だ』

 

「そう思うならさっさと出ていってよ」

 

『残念ながらそうはいかないんだな』

 

「……チッ!!」

 

あ、今この子舌打ちしたぞ。闇に捕われる前はあんなにもいい子だったのに……オヨヨ。一体何がこの子を変えてしまったのかねぇ。なんつって。

 

『まぁ、とにかくお前の中に俺がいれば安心だから』

 

「信用できないし、ウザいし、殺したい」

 

なんだろう。今ここにいるのは紛れもなく本人なんだけどさ、友奈顔の友奈ボイスでこんな絶対言わないセリフを言われると物凄く心にグサッと巨大な刃が何本も突き刺さってくる感じがする。

 

ちなみに友奈は何度も病室から抜け出そうとしていたため、絶対に抜け出せないように鎖で厳重に縛っている。俺としては友奈をベッドに鎖で縛り付けるのは心痛いが、こうでもしないと今の友奈は何するかわかったもんじゃない。

 

コンコンッ!

 

俺が友奈の荒れ果てた心について悩んでいると、突然扉がノックされる。

 

「……どうぞ」

 

最初の頃と比べて最大限警戒をしながらも中に入ることを許す。ただ超不機嫌そうだけどね。三森とか風とか知り合いが来ると罵倒するぐらい有り得なかったからな、入院生活最初の友奈。

 

「やぁ、お邪魔するよ」

 

病室のドアが開き外から黒いスーツを着たイケメンが現れた。……いや、なんでアンタがこの世界にいんの?作品違くない?

 

「初めまして、わたしの名は檀黎斗。幻夢コーポレーションの社長をしている。君は結城友奈さんで合っているね?」

 

「この病室に私以外がいるように見えますか?どうでもいいので早く用件言って帰ってください」

 

おいおい、結城さん家の友奈さんや?この人に対して喧嘩腰に言うのは……そもそも君檀黎斗の事知らないか。

 

「フフ、随分と辛辣だね?わたしが知っている君はもっと心優しく純粋な女の子だったはずだよ?」

 

「……さっきからキモいんですけど、あの、私のストーカーかなにかですか?警察呼んでいいですか?」

 

君今動けないの分かったて呼ぼうとしてる?って言うか見てみ?黎斗さんの顔ちょっと引きつっているぜ?

 

「ふむ。では要件だけ言っておこうか。実は君には我が社で開発している新作ゲームのテストプレイヤーになってもらいたいんだ」

 

は?

 

あ、友奈の顔が凄く不機嫌になった。友奈って普段から笑顔を絶やさずにしているから、闇の力の原因で怒りやすくなっているけど、うん。凄く怖い。俺は今ルカリオとして生きていなかったら今すぐ逃げ出したい。

 

「ふざけているんですか?新作ゲーム?何それくだらない。どうして私がそんなのやらないといけないんですか?やらせるなら郡千景って言う人の方が上手いですよ?あと、私が今体動かせないの知ってて言ってるんですか?」

 

「まぁまぁ、待ちたまえ。君がそう思う気持ちも大変良く理解できる。君の言う郡千景って少女の方が上手なのもね?しかし、どれだけゲームが美味かろうが強かろうが、ゲームに対する適合率が合わなければ意味が無いのだよ」

 

あ、コイツ……。友奈を使ってなにか実験するつもりだな?俺知ってるんだぞ?お前が元の世界で主人公宝生永夢に何したか。

 

「それに安心してくれ。この新作ゲームに両手を使う必要は無い」

 

「……どういう事ですか?」

 

「このゲームは君の脳波を使い、そこからデータを読み取ってアクセスするんだ。要するにVRMMORPGというわけさ」

 

なるほどな。コイツやはり腹黒い。

 

「それで、答えを聞かせてくれないかい?」

 

黎斗は波動使いの俺だからこそわかる腹黒い笑みを浮かべる。そのといに対して友奈は、

 

「分かりました」

 

まさかの了承してしまった。

 

友奈が新作ゲームのテストプレイヤーになる事が決まった事で黎斗は満面の笑みを浮かべて帰ろうとしていたが、何を思ったのか突然友奈の耳元に口を近づけて

 

「もし良ければ、君の中にいるトモダチ(・・・・)と一緒にプレイしてくれたまえ」

 

俺たちの背筋が凍りつくようなセリフを残していった。

 

「何アイツ……本当にキモい」

 

俺達だけが残った病室に、友奈の辛辣な言葉だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黎斗が病室に来てから一週間が経ち、今友奈は憑依しているルカリオと共に黎斗にゲームヴァイザーを装着させてもらった。

 

ヘルメット型のゲーム機(黎斗曰く最新型ゲーム機ゲームヴァイザーという名前らしい)は友奈の頭にしっかり嵌まる程の大きさだった。

 

「それでは、友奈くん。準備はいいかい?」

 

「……いつでも」

 

相変わらず腹黒い笑みを浮かべる黎斗に対し、興味なさげにツンと言う友奈。

 

「では、始めよう」

 

そう言ってゲームヴァイザーのボタンを押すと友奈の意識はすぐにゲームの中に入っていく。それを確認した黎斗は気持ち悪いほどの満面の笑みを浮かべると、

 

「では、わたしの方も始めるとしようか」

 

どこからか取り出したゲーマドライバーを腰に装着して、右手に持っているプロトマイティアクションガシャットを起動する。

 

マイティアクションエーックス!

 

「変身」

 

黎斗はガシャットを下向きに変えてゲーマドライバーにセットする。そしてすぐにレバーを横に引く。その後、黎斗の周りをクルクル回る一枚のパネルに触れる。

 

ガシャット!レベルアーップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクションエーックス!

 

そうする事で彼の体に大きくなったパネルが通り過ぎ、Lv2の仮面ライダーゲンムに変身完了する。

 

さて、そろそろ実験の方を開始するとするか。クックック

 

ゲンムは声を加工して話すと、身体を粒子化させてゲームヴァイザーの中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒き戦士ゲンム

 

 

 

 

 

 

あの訳分からない黎斗(変態)に付けてもらったゲームヴァイザーでゲームの世界に来た私は、後ろから大群で追いかけてくるバクスターから全速力で逃げていた。

 

バクスターって言うのがなんなのか分からないけど、私を見るなりいきなり攻撃してきた。ホントなんなのあれ?ウザ過ぎてイライラしてくる。

 

私の事を守るって言ってたルカリオは違う場所に送られたみたいで、本っ当に使えないっ!!私のことを守ってくれるならもっとちゃんと守って欲しいな!

 

「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」

 

流石に長い時間全速力で走るのは疲れてくる。いくら私が勇者の力で超人並の体力があるからと言って、永遠に走ってられるという訳では無いのに。あ〜あぁもうイライラする!イライライライライライラしてきて、もうアイツら全員殺してやりたい!!

 

この世界がゲームである以上必ずゲームクリア条件がある筈なのに、一向に見つかるどころか私を追いかけるバクスターの数がどんどん増えていくからそれどころじゃない。

 

なんとか誰も来なさそうな廃墟に潜り込むと、誰もいないことを確認してその場に座り込む。長いこと走ってたから足が痛い。

 

「もういやぁ。どうして私が狙われるの!?」

 

どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないの!!私はただ普通の女の子として生きていきたかっただけなのに!!

 

それがお前の運命だからだ

 

イメージBGM【GenmLevel2】

 

突然聞こえた加工された声に顔を上げると、以前東郷さんから聞いた黒い戦士が私を見下ろしていた。

 

嘘……ちゃんと誰もいないこと確認したのに、どうして?

 

怖い。凄く怖いのに、コイツを殺したいって心が……私の闇が叫んでる。殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたいコロしたい!!

 

まさか、ここまで壊れそうになっていたとは……。滅びの神(・・・・)も酷な事をする。

 

黒い戦士が何か言ってるけど、殺意に溺れそうな私には聞いている余裕がない。少しでも何かに気を取られればすぐに堕ちてしまいそうになる。

 

それが辛いから私は苦痛の表情を浮かべる。

 

辛いか?辛いだろうな。自分に勝てるのは自分だけ。お前が今ここで、自らを蝕む闇に打ち勝てなければ意味が無い。だが――

 

黒い戦士は話の途中で所々崩れた廃墟にある穴の空いた場所の一つを見る。そして薄く笑った。

 

彼なら、君のその闇を取り除くことが出来るだろう

 

まるで長年付き添ってきたお兄さんのように柔らかい言葉で言う。その直後、私は穴から入ってきた黒い影によってお姫様抱っこされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜黒宮零牙〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーゲンムを見つけるなり残像を残す勢いで友奈をお姫様抱っこすると、出口付近まで移動する。

 

ゲンムは油断ならない。

 

来たか……君を待っていたよ

 

「俺はお前とは会いたくなかったね」

 

君がどう思うが関係ない。これから先、君の前には強力が壁が迫ってくる。今の君では、この戦いの元凶には勝てない

 

「元凶……だと?」

 

まさかの敵からの情報に頭がこんがらがってきた。俺からすればエクゼイドに最終的に味方していたとしてもゲンムが敵である事に変わりないので、警戒心が解くことが出来ない。そもそも、敵である俺にわざわざ情報を渡すのも疑問だ。

 

コイツももしかしたら俺以外の天の神によって召喚されたのかもしれないし、どう考えても気が抜ける相手ではない。

 

そう警戒しないでくれ。少なくとも私は君達の敵ではない

 

「信じられるかよ……幻夢コーポレーションの社長さんよ!」

 

ふむ。やはり私のことを知っていたか

 

そりゃあね。テレビの中では最悪の敵キャラだし。なんか途中から味方なってたけど。

 

さて、役者の揃った所で、このゲームについて説明しよう

 

芝居がかかったように加工された声で話すゲンムは、俺たちから少し離れた場所に行くとゲーム画面を映し出す。

 

そこには

 

ドキドキ!ブレイブハート!

 

って書かれていた。まぁ、取り敢えず

 

お前ちょっくら殴らせろ!

 

友奈は純粋なんだ。どの女の子よりも純粋なんだ。これ名前だけ見たら恋愛ゲームじゃねーか!!名前と場面が矛盾してんぞコンチクショウが!!俺だって恋愛したことないけど、友奈は恋愛経験ゼロなんだぞ!恋バナ聞いて顔真っ赤な女の子なんだぞ!!

 

このゲームは恋愛とファンタジーを合わせたもの。彼女の散らばった純粋な心を取り戻す為に、君は三体のバクスターに勝たなければならない。サポートキャラもいるから大丈夫だと思うが健闘を祈るよ。無事彼女の心を取り戻してきたまえ

 

なるほど。闇に堕ちた友奈を元に戻すために作られたものなのか。ん?なんでゲンムがそんなこと知ってんだ?

 

「もう居ねぇし」

 

仕方ねぇ。いつの間にかゲンムもいなくなってんし、友奈の為にも頑張るとしますかね。

 

ゲンムから聞いたルール通りなら三つのバクスターを倒せばいいって事のはずなんだが、その三つのバクスターを倒したらどうやって友奈の心を取り戻せるのかはわからない。

 

今この状況でこの世界に一番詳しいのはゲンムと『サポートキャラ』だけなのだろうが、悲しい事に仮面ライダーエグゼイドを最後まで視聴した俺にとってゲンムと檀正宗の言葉ほど信じられないものはない。

 

確かにゲンム……黎斗のゲームを作る才能は本物の神のようだが、別作品の茅場晶彦といい勝負だと正直思う。

 

俺のいた世界では茅場晶彦も檀黎斗も神の才能の持ち主だと思うんだよ。でも、何故か信じられない。

 

昔から人を超越した才能の持ち主が何故か信用できない。それで何度対決してきたか。

 

いや、そんなことはどうでもいいんだが。

 

マップを見る限り、ここから一番バクスターとの距離が近いのは教会だと思う。今はそこに行ってみようと思う。

 

俺は背中に背負っている友奈がまだ起きないのと可愛いのを確認して、教会目指して歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜しばらくして〜〜

 

……遠いわ!教会に着くまでに30分もかかったわ!なんだよ!マップには10分で着くって記してあったのは実際30分もかかったぞ!

 

やっぱ黎斗は信用できねぇ!アイツはもう許さん!後で絶対殴ってやる!

 

「はぁ……疲れた」

 

「よっ!お疲れさん」

 

「お前までいるのか……パラド」

 

意外と遠い距離を友奈を背負いながら歩いてきた事で疲れた俺に、白衣を着たパラドが教会の壁に背を預けながら人懐っこい笑みを浮かべていた。

 

「ここまで来たってことは、ちゃんとゲンムの説明受けたんだな?」

 

「いや勘ですね」

 

「……え?マジで?」

 

先程までの笑みが一瞬にして凍りつく。うん分かる。

 

「マジで勘で来たの?」

 

取り敢えず友奈を安全そうな場所に降ろして、パラドを方を向きながら頷く。

 

パラドは信じられないような顔している。

 

「マジかぁ……それ違う場所に勘で行ってたら、俺ずっとここにいるハメになるじゃん」

 

「知るかよ。ゲンムはその辺の説明一切しなずに消えたぞ?」

 

「アイツ……」

 

呆れた顔をしながらパラドが俺の肩を叩く。

 

「まっ、お前が来たことだし、サポートキャラとしてここの説明をしておこうか」

 

そう言ってパラドは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――おまけ――

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、奴にバクスターの場所を教えてなかったような……まぁ、奴なら自力で辿り着くだろう」

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一体目のBOSSバクスター

 

 

パラドからこの世界の説明をある程度聞いた俺は、パラドに友奈に任せて教会の中に入った。なんでも教会にいる敵は仮面ライダーブレイブの敵として登場した魔法を使うバクスターらしい。

 

そう言えば、BOSSバクスターだからと言って、必ずにも俺の知ってるバクスターがいるとは限らないって言ってたな。

 

第一のBOSSバクスターか。一体どんな敵なのだろうか?魔法を使ってくるなら近距離での戦法のがいいよな?

 

いや最近の魔法使いって近距離にも対応してくるらしい(アニメ情報)から油断出来んな!

 

「来たか……試練を受ける者よ!」

 

な〜んか聞いたことのある声が上からするなぁ。気のせいかなぁ。

 

俺の前に現れたのは、レベル50のアランブラバクスターだった。いやちょっと待て!何レベル50って!?ゲンムの野郎……このゲームクリアさせる気絶対ないだろうな!

 

あークソ!やってやるよ!

 

『友奈の為にも速攻で終わらせる!!』

 

俺はすぐさまルカリオの姿となって攻撃態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?私、なんで寝ていたんだろう?

 

なんでだろう?樹海に入ってからの記憶がない。どうして?

 

皆は?ルカリオはどうなったの?

 

なんでここはこんなにも暗いの?まるで光の届かない深い闇にいるかのような、そんな真っ暗な世界。

 

『ようやく目覚めたか』

 

あなたは誰?

 

くらい闇の中で聞こえた声。聞いたことがないはずなのに、なんだか懐かしいような声。

 

『私か?そうだな……三百年も昔からお前達人間に天の神と呼ばれている者だ』

 

天の神?天の神がどうしてここに?

 

『私が何故ここにいるのかは、後で説明してやるよ。今大事なのは、お前の事だ』

 

私の?私はあれからどうなったの?どうしてこんなくらい闇の中にいるの?みんなはどうなったの?

 

『えぇい!!いくら神とてそんないっぺんに言われて答えられるか馬鹿者が』

 

なんで怒られたの私。

 

『とにかくだ!今お前は危険な状態にある。お前は自ら生みだした闇に完全に堕ちる前にある。今は私の半身がそれを防いでいるようだがな』

 

半身?どういう事?

 

『なんだ知らなかったのか?いつもお前と一緒にいるあの蒼き狼の事だ』

 

ルカリオが?ルカリオがあなたの半身なの?

 

『そうだ。そのおかげで私は今もこうしてここにいられるわけだ。いや、私のことは後でいい。ルカリオはそもそも、お前があの時変身した大満開での勇者パンチで分離した一部だ。それが自我を持ち自分の知らないうちに異世界に飛んでいたのだ』

 

知らなかった。そんな事があったなんて。

 

『いや、まぁ。これまでのお前を見ていれば気づかないのも無理はないか。最初の桜の勇者は薄々勘ずいていたかもしれんが』

 

高嶋ちゃんが?

 

『奴の感性は相手を見抜く事だ。まぁ、本人は無意識にやってる事なのだが……お前と違い、空気の読み方も奴の方が上だ』

 

……なんかイラつく。高嶋ちゃんには悪いけど、ちょっと嫉妬しちゃう。

 

『お前が今感じたその感情こそ、闇を生み出す原因なのだがな』

 

私にはわかんないよそんなの。

 

『だろうな。さて、先程話した半身の事なのだが、今お前が失ってしまった心の光を取り戻すべく戦っている』

 

えぇ!?ルカリオが?私のために!?

 

『そ、そうだ。そう言えばお前は半身に……』

 

わあああああ!?それ以上言っちゃダメええぇぇぇ!!ダメだからね!?それ以上は!!

 

『くくく。随分と面白く育ったようだ』

 

うぅ……恥ずかしいよぉ。

 

『安心しろ。確かにルカリオは波動の力で相手の感情を見抜くことができるが、奴自身恋をしたことがないから気付くことはないぞ?』

 

それはそれでちょっとイラつくというか、なんと言うか。

 

『……まぁよい。これからどうするかはお前が決めることだ。私はもう寝る。忘れるな?ルカリオ……黒宮零牙はお前の為だけに傷つきながらも戦っているということを』

 

そんな言葉を残していきながら、天の神はどこかに消えたような感じがした。多分昔ルカリオが言ってた念力で話しかけてたんだと思う。

 

今どこにいるのかはわからないけど、私の為に天の神まで動いたんだ……ちょっと待って?天の神って今私と戦ってるバーデックスを作り出した存在じゃないの!?

 

なんで私は敵と話してたの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ルカリオ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アランブラバクスターとの戦闘が始まってからもう一時間が経過した。

 

流石レベル50のバクスターだ。全く歯が立たねぇ。

 

ゲーム世界の影響なのかメガシンカが出来ないようになっている。だが、メガシンカを封印した程度でこの俺を止められると思っていたのかァ!?

 

俺は三連続で剣の舞をして攻撃力を6段階アップさせると、極限まで溜めた波動が拳に力を籠る。うん。これなら最大の攻撃力に追加してアランブラバクスターを倒せるな。

 

『俺の一撃受けてみな……波動の力を見よ!』

 

【波動パンチ】

 

俺の拳に篭った波動が燃え上がる炎のようになり、その一撃でアランブラバクスターを殴りつける。殴りつけられたアランブラバクスターはその勢いのまま教会の壁を砕いて外に放り出される。

 

すると、突然画面が現れ、

 

ゲームクリア!!

 

とクリア時の音声が流れた。

 

よし、ようやく一体倒せたな。

 

ッガン!

 

喜びに浮かれていると俺の頭に二枚メダルが落ちてきた。地味に痛てぇ。

 

『なんだこれ?』

 

その二枚のメダルには、剣を咥えた狼と(たてがみ)のような盾をつけた狼の絵柄が載っていた。

 

裏を見てみると「まどろみの森」と書いてあった。なるほどそこに行けってことだな?

 

マップで見てみるとここから南に進めばすぐにあるみたいだ。簡単だな!行ってみるか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜謎の場所〜

 

 

 

 

 

光溢れる輝きの大地に座っする少女が、画面に映し出された光景を見て笑みを浮かべる。画面には丁度ルカリオがアランブラバクスターを倒した所だった。

 

「ふふ、あの子ならやり遂げるって信じてたよ」

 

友奈と同じ顔を持つ少女は肘で顔を支えながら、ニヤケたくなるのを必死に我慢する。そこにはもう嬉しくて嬉しくて堪らないのが、誰の目を見てもわかる。

 

「さすが、私から分離したとはいえ、天の神の一部なだけはあるね現実世界に帰ってきたらキスやハグでもしてあげよう。うんそうしよう。地の神だって普通のキスや大人のキスをしたんだ。今更許してくれるはず」

 

そう言って少女……天の神は舌舐めずりをする。

 

だが、天の神も地の神も知らない事ではあるが、友奈と同じ顔を持つ地の神にキスされてから数日は、ルカリオ(黒宮零牙)はマトモに友奈の顔を見れなかったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一応補足。

今まで友奈達が倒した雑魚バクスターはレベル5〜10ですが、BOSSバクスターは20から50までのレベル設定されています。
今回戦ったアランブラバクスターは色合いだけをレベル50にしたレベル35です。

現在のルカリオのレベルは数値で表すなら20程度です。よく勝てたね。



零牙君がそのうち女子に刺されないか自分でも心配だ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蒼く気高き狼の逆鱗

 

 

相手の斬撃を躱しながら波動弾を撃ちまくる。このゲーム世界では一度強化すると永続になるらしく、俺は6段階攻撃力を強化した状態で、目の前で剣と盾を構える二匹の狼と対峙する。

 

「ウオオオォォォォォォン」

 

「フォォォォォォォォォン」

 

剣を咥えるザシアン。

 

鬣のような盾を持つザマゼンタ。

 

ポケットモンスターソードシールドに登場する伝説のポケモンが、まさかのBOSSバクスターとして俺の前に立ち塞がった。

 

コイツらは二匹でBOSSバクスター一体分らしく一匹倒しても意味が無い。

 

そうそう、今回戦闘に入るのが早いって思っただろ?俺も最初はまどろみの森で戦うのだと思っていたから森に向かっていたんだが、その途中にある平原で襲いかかってきたんだよ。

 

だからパラドに友奈を任せて俺はコイツらの相手をしているというわけだ。

 

さぁ、早く終わらせよう。一刻も早く友奈の心を取り戻す為にも。

 

『身体に闇が集まるのがわかる。だが無意味だ。俺は闇に堕ちない』

 

俺はゆっくりと歩き始めると、波動を使って剣を錬成する。その剣が宙に浮くと同じ剣が数本錬成されていく。

 

ザシアンとザマゼンタが次に俺を見た時には、自らの体に刺さる無数の剣だった。ポケットモンスターソードシールドでかなりの攻撃力と防御力を誇るザシアンとザマゼンタが瞬きした次の瞬間には無数の剣が刺さっているのを見て、パラドは面白いおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせる。

 

(おもしれぇなアイツ。あんな技持ってんのかよ)

 

さて、相手が予想外の場所に居てくれたのと俺の攻撃のバリエーションが増えたおかげで早く終わらせることが出来た。

 

『はぁ……疲れた。もうこんなのはコリゴリだ。いくら友奈を守るためとはいえ、な。まぁ、次に最後だし、楽勝だろ。場所は……』

 

そう言えば、俺は元いた世界では「フラグブレイカー」とか「フラグ創造神」とかの渾名があった。今でも意味が全くわからんけど、あれどういう意味だったんだ?

 

『ん?なんか近づいてきている?』

 

次の的を確認するためにマップを開くと、高速で俺の元に向かってくるポイントがあった。そして、その名前を確認しようとした時だった。

 

『……っ!!』

 

強力な殺気を感じて後ろに飛ぶ。するとそこに地響きと共に何者かが降りてきた。どうやら今のは俺を倒すための一撃だったみたいだ。

 

何者かが地響きを立てて降り立ったおかげで辺り一面砂煙で溢れた。あぁあ、どうしようかねぇ。

 

『何者かは知らんが、お前が最後の敵でいいな?』

 

両手に波動を纏わせいつでも対処できるように構える。だが、俺は次の瞬間には殴られ吹き飛ばされていた。

 

『っ!?』

 

突然の事に思考回路がショートしそうになったが、なんとか持ちこたえる。あぁ、地面に落ちた時にちょっとヒビ入ったな地面が。

 

『誰かは知らねぇが、これが最後なんだ』

 

俺は目を閉じて波動の力で相手の姿を確認する。

 

『……えっ?』

 

そして確認した俺は、目を開けた瞬間相手が信じられなかった。

 

何しろ、

 

『……友奈?』

 

「アハ♪アハハ♪アハハハハハ♪」

 

真っ黒な闇の勇者服に身を包んで楽しそうに嗤っている友奈だったから。

 

違う所があるとすれば勇者服の色とその身に宿す闇だけだ。髪の色も瞳も顔立ちも全て友奈そのものだった。

 

『……それは無いだろう。俺に、友奈を殴れってか?』

 

はぁ、そうかよ。

 

本当にコレばかりは許せねぇぞクソ神がああぁぁぁ!!

 

相手が本物の友奈ではないのは頭では理解出来ている。だが、それでも友奈を殴るのは躊躇ってしまう。できない。

 

だけど、俺がここで殺らないと、純粋な友奈は一生帰ってこない。やるしかないんだ!

 

わかってんだよ。わかっているんだよそんな事は……』

 

俺の中から黒く染った波動が溢れ出る。俺で求められないほどの闇が。

 

あぁ、ヤバいなこれは。心の底から全てを壊したい。全ての生命を無に還したい。友奈は闇を抱えてからずっと我慢してたんだなこれを。本当にすげぇよお前は。

 

俺と友奈じゃあ抱える闇も違うし、大きさも違うから闇を抱く事がこんなにも辛いんだな。

 

「アハ♪アハハ♪楽しいねぇ?楽しいよねぇ?好きだよねぇ?大好きだよねぇ?私の事?アハ♪アハハ♪アハハハハハハハハハハハ♡」

 

狂ったように嗤う闇友奈を見て、俺の心はキュッと締め付けられるような苦しみがくる。こんな友奈は見たくない。でも、友奈を殴りたくない。

 

『……覚悟を決めるか

 

俺は一つ深呼吸をすると体に流れる波動の力を静め、冷静にそして熱く波動を纏う。感情に揺さぶられてはいけない。感情に任せた戦いはルカリオのやるべき事ではない。それが俺の理想だ。

 

『さぁ、覚悟はいいな?友奈のなくした心の光、返してもらうぞ』

 

俺は再び拳に青い波動を纏わせるとキッと睨みつける。闇友奈は何故か頬を紅潮させている。意味わからん。

 

【瞑想】×6

 

心を落ち着かせて特攻と特防を6段階上昇させる。俺は波動ポケモンルカリオ。波動の勇者だ!!

 

【電光石火】【発勁】

 

目にも止まらぬ速さで友奈の懐に入り、勢いよく掌を突き出すことで闇友奈の体内に衝撃を与える。

 

「がはっ!!」

 

油断していた闇友奈は突然体内に衝撃を受けて吹き飛んでいく。吹き飛んだ側の闇友奈は何が起こったのかわからない顔をしているが、それでも感覚で俺だとわかったのだろう、キッと俺を睨みつけながら走ってくる。

 

【フェイント】【発勁】

 

今度はフェイントを用いて発勁を繰り出していく。二度、三度と発勁を打ち込むと闇友奈が突然倒れる。

 

倒した訳では無い。発勁の追加効果にある麻痺状態に陥ったのだ。身体の隅々がビリビリと麻痺った闇友奈は俺を睨む。

 

「……くっ!!」

 

俺は闇友奈の首を掴んで持ち上げると腹を蹴り上げて宙に浮かせる。そして右手に雷の力を、左手に氷の力を纏わせ、

 

【インファント】+【雷パンチ】+【冷凍パンチ】

 

俺の防御と特防が下がるのを覚悟で無数の拳撃を繰り出す。交互にビリビリヒヤヒヤと殴られた闇友奈は壁に直撃すると、雷と氷の力を本気で受けて立ち上がることすら出来なくなる。

 

『これで最後だ』

 

俺は右腰に両手を持ってくると掌で丸を作るように構える。すると両の掌に青い波動が集まり球体になっていく。

 

『これがルカリオの十八番……波動の力だっ!!』

 

極限まで威力を高めた波動弾を闇友奈に撃つ。今の俺が出せる最大波動弾。これで全てが決まる。

 

痺れて動けない闇友奈はまともに最大出力の波動弾を受けてしまい、闇と共に爆発した。

 

『これで終わりだ。ようやく友奈が……』

 

その後の事は正直覚えていない。これまでの戦いの中で一番力を使って、残り空っぽの俺は熟睡するように気絶してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

天の神と話してから少し経ったあと、ずっと暗い闇の中にいた私の目の前が突然光で覆われた。本当に突然の事で何が何だかわからなかったけど、その光からは心地いい温かさを感じた。

 

薄らと瞼を開けると、病院の壁が見えた。

 

「あれ?私何してたの?」

 

何故か気を失ってからの記憶がない。何があったんだろう?

 

「っ!?友奈ちゃん?目が覚めたのね!!」

 

「あれ?東郷さ……わっぷ」

 

隣で椅子に座っていた東郷さんが私に気づくと、涙を浮かべて抱きついてきた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「どうしたもなにも、友奈ちゃんが突然起きなくなって心配になって。口の悪い友奈ちゃんも素敵だけど、やっぱり私は純粋な友奈ちゃんの方が好きよ?」

 

……何言ってるんだろう。ちょっと東郷さんの言ってることがわからない。たまに思うけど。

 

まぁ、東郷さんだし仕方ないかな。

 

「今日もお見舞い来たよ〜……ってゆーゆ!?もう大丈夫なの!?」

 

しばらく東郷さんの好きなように抱き着かせていたら、果物の入った籠を持った園ちゃんが涙を浮かべて嬉しそうにしてた。

 

嫌だから何があったの?

 

「あの、東郷さん?あれから何があったのか説明してくれると嬉しいんだけど……?」

 

「友奈ちゃん!!友奈ちゃん!!友奈ちゃん!!」

 

「うん、ダメだねこれ」

 

私の名前を連呼するばかりでそれ以外の反応を示してくれない東郷さんを見て、私は諦めの領地に入った。おかしいなー。いつもならもっと粘るのに。

 

「だったら俺が説明してやるよ」

 

「えっ?誰?」

 

突然聞こえた声の方に向くと、何だか奇妙な服を着た男の人がいた。

 

「俺はパラド。しばらくお前の面倒を見ていた」

 

「あ、私讃州中学勇者部所属結城友奈って言います」

 

「いや知ってるけど」

 

パラドさんに私が気を失ってからの出来事を全て聞いた。なんともその時の記憶がないからわからないけど、私はかなりみんなに酷い事言ってしまった。

 

「ゴメンね。東郷さん、園ちゃん」

 

二人に謝ると

 

「いいのよ。事情は全てパラドさんから聞いているから。今は友奈ちゃんが無事に目覚めてくれた事が何より嬉しいわ」

 

「うんうん。私も同じだよ〜。ゆーゆが目を覚ましたからきっとリオるんも喜ぶよ」

 

リオるんとは私といつも一緒にいるルカリオの事みたい。園ちゃんのいつもの癖で渾名を付けられたルカリオは最初こそはその名で呼ばれる事を拒否していたけど、最後の方で諦めたのかガックリと項垂れていたのを思い出す。

 

「あれ?ルカリオは?」

 

「今はお前の中で眠っているぜ」

 

どこにもルカリオが居ないことに不思議に思っていると、パラドさんが説明してくれる。そっかぁ。私の中にいるのかぁ。うん……うん?

 

「私の中で眠ってる!?」

 

「あれ?知らなかったのか?ルカリオはお前を助けるために、お前な深層心理に入り敵を倒したんだよ。おかげで力を使い果たしたのか、今はぐっすり眠っている」

 

ゴメンねルカリオ。私が心の闇なんかに負けちゃうから。本当にゴメンね。

 

「……」

 

そんな私をパラドさんはずっと見ていたけど、ため息を吐いて笑った。

 

「そんなに自分を責めるなよ。お前は何も悪くない。心って言うのは自分自身でも理解出来ねぇもんなんだからよ。まぁ、どうしても責めてしまうなら、今度ルカリオになにかしてやれ」

 

そう言って私な頭をわしゃわしゃと撫でたあと、用事があるからと病室を出て行った。

 

「そうだ!みんなを呼ぼうよ〜わっしー」

 

「そうね!せっかく目を覚ましたのだもの。友奈ちゃんの事を知らせなくては!」

 

「あはは……東郷さんはいつもどうりだね」

 

先代勇者二人はテンションが上がっているみたい。私はこんなにもみんなに愛されているんだなぁ。

 

その後勇者部の皆が集まって騒いでしまったのは語るまでもないと思う。病院の人達にも怒られちゃった。

 

私は胸に手を置くと、私の中で眠っているルカリオを思い浮かべて少しだけ笑う。

 

「ありがとうルカリオ。君にはいつも助けられているね」

 

ルカリオの事は大好きだよ。たとえルカリオが天の神の一部だったとしても。私達の仲間である事に変わりはないからね。

 

本当に大好きだよ。ルカリオ、愛してる。ずっとずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんでこうなるんだろ?展開おかしくないよね?大丈夫だよな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。