オーズNEXT 仮面ライダーゼロ/フレア (黒野永華)
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第0章 ブロローグ
ep00 零司と映司



祝! 平ジェネFINAL&コンセレ発売 (今頃)

と言うことで、私なりに思いついたオーズの妄想続編です!
タイトル通りオーズ『ネクスト』な為、オーズの次の話、次世代の話となります。

映司とアンクの出番は果たしてあるのか? 期待してください!



ちなみに作者の一番好きなライダーはオーズです。


 

 

託された思い/継承する魂

 

 

 

 

±0 欲望の終焉

 

 

欲望、それは人間が誰しも持っている物。

生きていく上で必要不可欠であり、人は生まれた瞬間から

自らの欲望を叫ぶ。

 

欲望、それは使い方次第でヒトに絶望をもたらす物。

行きすぎた欲望はやがて自身を崩壊させ、終末へと至る。

 

欲望、それは……

世界を救う力……

 

 

拡大してく欲望はやがて、人をそして文明を呑みこむ。

空に浮かぶ巨大な物体が町をビルをあらゆる物を銀色のメダルへと変えていく。

もはやこれは人知を超えた災害だ。人間の手ではどうすることもできはしない。

 

しかし無謀にもそれに立ち向かう者がいた。

赤い翼を携え、大空に舞う。まるで不死鳥のごとく。

 

その者の名は”仮面ライダーオーズ”

 

 

 

 

 

 

+20 ゼロの創世

 

新たなる欲望は世界を破滅させる為生まれた。

新たなる欲望はすべてが全であり無である。

新たなる欲望は、世界を救おうとした。

 

故に矛盾を重ね、やがて……

 

 

 

 

「俺は映司。ねえ、キミはなんて言うの?」

 

 

 

「……俺に名前なんて無い ただのコードゼロ、失敗作に過ぎない」

 

 

 

「そうか、でもキミは生きてる」

 

 

「…生きてる? どう言う意味だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南米某国、とある非合法組織の研究施設だった場所。

普段の静かそうな雰囲気から一転、付近は業火に包まれていた。

次々と崩壊してく施設の中の一室。

 

その中に佇む一人の仮面の戦士、仮面ライダーオーズ、火野映司。

財団Ⅹに関する調査を鴻上ファウンデーションの部隊と合同で行っていた映司、

捕えられていた少年を保護している所で仲間からの救難信号が入り、急いでかけてけてみれば、

謎の怪人が、炎の中に佇んでいたのだ。

 

 

「怪物!? まさかグリード!?」

 

部屋に入るや否や、反射的に声が出た。

無理もない、その怪人がかつての宿敵グリードと重なったからだ。

メダルの怪人グリード、欲望を糧とし、欲望を求める生命体。

しかし、グリードは映司の手によって全てが滅びたはずだった。

そう、全てのグリードは今存在するはずが無いのだ。

 

 

「あんなものと一緒にされては困りますねー。おっと名乗り遅れましたね。私はSと申します。

いや、今の私は……クモ そう スパイダーエクザスとでも呼んでください。」

 

謎の怪人の事務的な返答でそれはあっさりと否定された。

グリードではない、新たな怪人、「エクザス」

 

オーズとエクザスが崩れゆく施設のなか向き合う。

怪人の周りには何人ものバース部隊のバースが倒れている。

おそらくあのエクザス一人にやられたのだろう。それだけで怪人の恐ろしさが分かる。

アレは危険だと。

 

 

「鴻上の部隊だけでなく、まさかあのオーズが出てくるなんて。

財団Xが知ったらきっと驚くでしょうねー。

もっとも、今頃は……」

 

 

 

財団X、死の商人と呼ばれる組織。まさか今回の事件にも裏で奴らが関わっているというのだろうか?

何度も映司の邪魔をしてきた財団X。奴らがこの一件にも関わっていると言うのか?

そして、財団Xやオーズを知るこいつは一体なんなんだ?

 

「お前は一体何なんだ! その姿は!? 」

 

「質問が多いですね、あなたとてそんな物を使っている以上、察しているので無いのですか、まあ、どうしても気になると

言うのならそこに居る男にでも聞いたらどうですか?」

 

 

 

Sの目線の先には唯一生き残っていたバース部隊の隊長がたっている。

映司と共にここにきたが不穏な動きを察知し先行していたのだ。

 

今映司が使っているのは財団Xの技術によって作られた複製メダル、その存在を知っている者は限られる。

最近活動を始めた、財団Xの派生組織、その名前が映司の頭に浮かんだ。

 

「隊長さん? なんで隊長さんが関係あるんだ」

 

 

「さあ、何故でしょうね」

 

 

「………」

 

映司に見つめられ黙ってしまう隊長、どうやら何かあるようだ。

 

「安心してください。もうすでに我らの計画は動きだした。誰にも止められない。

これであなたの望むものだって手に入るはずですよ、ねぇ鋼さん。

アリスは解き放たれた。後はアレを待つだけですよ。」

 

そんな映司の疑惑と裏腹にエクザスは隊長の本名で語りかける

やはり、あの怪人と何か因縁があるようだ。

 

「ほざけっ! 全部貴様が仕組んだことだろうに!」

 

隊長いや鋼ががエクザスに噛みつく。

今にも飛び出していきそうな雰囲気だ。

しかし、それは叶わない。

 

 

「チッ……足が…」

 

怪人によるダメージか鋼の足はありえない方向へ曲がっていた。

これではまともな戦闘は出来ない。

 

 

「隊長さんは逃げてください! こいつは…危険です。」

 

 

再びタトバコンボに変身した映司が、鋼に撤退を指示する。

オーズの力を持ってもこの程度。やはりコンボを使うしかないのか。

今映司の使えるメダルは限られる。財団X製のメダルを解析して鴻上ファウンデーションが作った疑似メダルで

何処まで戦えるのか、不安が頭をよぎる。最悪鋼と先ほど発見した生存者を連れ逃げるしかないのか。

しかし、そんな憂鬱を無視するように怪人は、へらへら笑いながら話し出す。

 

 

「いやー。やはりオーズ相手ではこれが限界ですか。

バースにやられた傷もありますしここは引かせてもらいます。」

 

胸に刻まれた傷を撫でながら残った背中のロボットアームを振り回し、

映司が気が取られた瞬間、怪人は上空に待機してたヘリの元へ飛び移る。

 

 

「まてっ! サルヴァ!!」

 

怪人の男の本名らしき名を口にし、足元に転がっていた

仲間のバースバスターを広い上げ、退避する怪人に向け連射する。

いくつかの銃弾が怪人をかするが、どうやら意味が無いようだ。

 

 

「鋼さん、あなたいい加減ウザいですよ。あなたはもう用済みです。

おとなしく死んでください。」

 

突然、声色が変わったその瞬間、最後のアームが一気に鋼の胸に突き刺さる。

高速で放たれた一撃は鋼の体を突き抜け、一面に鮮血を散らせた。

 

 

「グっ…!?」

 

「隊長さん!!」

 

 

映司が急いで駆け付けるが、その隙に怪人はヘリに乗り込むと、

ローターの轟音と共に何処かへと消えさってしまった。

 

もはや追撃は不可能。そう判断した映司は変身を解除し、急いで倒れた鋼のもとに駆け寄る。

もうすでにバースへの変身は解除され、傷口からは血がとめどなく流れてる。

おそらくダメだろう…… ひと目見ただけで分かってしまう。

 

しかし映司は決してあきらめない。あきらめずに手を伸ばすのが映司だ。

知り合いの医者の手順をマネし応急手当を試みる。

 

「絶対に助けて見せる!」

 

「……そんなことをしてもムダ、そいつはもう死ぬ」

 

突如少年の声が部屋に響く、先ほど映司が研究室から助けた少年だ。

少年は黙って鋼を見つめる。

隠れているよう言い聞かせていたと言うのに、こんな所まで来ている。

その口調は目の前に血まみれの人間を前にした少年とは思えないほど冷静であった。

 

その少年をみた鋼は、何かを決心し、最後の力を振り絞り、映司の方を向く。

そして、今にも消えそうな声で語りだす。

 

「…映司さん、これを、カケル、息子に… あなたになら任せられる… あなたに託す、未来を!」

 

まるで遺言のように映司に語る。しかし、その言葉にはただの遺言ではない、

まるで辞世の句のような力強さと美しさがあった。

 

ポケットに入っていた見慣れぬ形のデバイスを映司に渡し、無理やり微笑む。

この人になら任せられる。そう鋼が確信したからだ。

そして、あの少年にも…

 

 

「ゼロ、お前は自由だ。生まれ変わるんだ……」

 

せめてもの罪滅ぼしか、ゼロと呼ばれた少年に未来を与える。

その言葉がどれ程の意味を為すのかは分からない。だが…

 

そして、映司さんに自分の意思を託す。

きっと彼ならこの事を託せられる。

自分が命をかけてまで手に入れた、未来への希望の欠片を

 

「映司さん、ゼロを頼む。彼が希望だ。財団Xの野望は動いている。

止めてくれ、奴の計画を。子供たちの為に、アリス達の為に。」

 

本当に最後に、自分が今まで抱えていた秘密を語る。

自分が今まで、隠し通していた最大の秘密。未来を守るために

思いを次の世代へ託すために、自分が為し得なかった来るべき明日のため。

これくらいは……

 

(俺のした事は無駄じゃない…… いずれ…次の世代がきっと…………)

 

「鋼さんあなたは…」

 

力尽きた鋼の瞼をそっと閉じてやると映司は立ち上がる。

託されたのだ思いを。継承されたのだ意思を。

ならば、それを踏みにじるわけには行かない。

 

 

「……ゼロ。君はどうする?」

 

「俺は… 何のために存在しているのかそれを知りたい」

 

 

それは少年にとっての始めての欲望だった。

 

 

「そうか、ならゼロ… いや零司! 一緒にいこう。繋ぐんだ思いを。未来の為に」

 

「零司?」

 

「そう、火野零司。それがこれからのキミの名前だ。」

 

 

映司は少年に手を差し伸べる。指し伸ばされた手を見て戸惑う少年だが、やがてその手をギュッと握った。

これがゼロが死に、そして新たに零司が生まれた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~happy birth day to you~ happy birth day dear……」

 

 

高層ビルの最上階、豪華な一室に古めかしいレコードの音楽と野太い歌声が響く。

豪華な装飾品に囲まれた部屋の真ん中には余りにも不似合いなキッチンが備え付けられている。

キッチンには今完成した巨大なケーキ。

男はゆっくりとケーキの上にクリームで文字を書く

 

「ハッピーバースデイ!! 新たなるオーズ!!!」

 

ケーキの上にはただ一文字、0と書かれていた。

ゼロ、それは終わりを意味する文字であり、始まりを意味する文字でもある。。

 

「ハッピーバースデイ!! 火野零司!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、エクザス総本部

 

 

 

 

「ゼロがようやく解き放たれました。これで全てあなたの計画通りです。」

 

 

「そうか、これで残る駒は後一つ……」

 

顔に包帯を巻いた謎の男は先ほど逃げてきた男、Sの報告を聞きほくそ笑む。

包帯の不気味な顔は何処か嬉しげに笑う。

 

「ええ、とうとう長きにわたる計画の完遂の時です。」

 

 

「フハハハハッ! とうとうこの私、レム・カンナギが再び銀河の王へとなるのだ!」

 

 

to be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





設定解説コーナー


今回は本編と映画の扱いについて解説します。
基本本編と映画は組み込みましたが、自分でいろいろ考えた結果、
本作品では、春映画(ヒーロー大戦系)、MOVIE大戦アルティメイタム、ハイパーバトルDVDはパラレルとして扱います。
その他夏映画やMOVIE大戦、平ジェネは正史として扱い、極力本作に組み込んでいきます。


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ex01 キャラ紹介+α

1章、仮面ライダーゼロ編の登場人物紹介です。
多少のネタバレを含みますが、そこまで重要な事では無いので問題ありません。
話の展開により随時更新するか、ex2として新たに紹介を作る予定です。

最後の方に今後出てくる専門用語の解説を載せておきました
良ければ軽く読み飛ばしてください。


次回は1話を投稿予定です!





 

火野 零司 (ひの れいじ) ?歳

 

かつてイクスに作られた人造兵器の失敗作。

映司によって救い出され今では火野家の養子としての生活を送っている。

体がセルビットで構成された戦闘マシンでもあり、生身でもかなりの戦闘力を誇る。

家族のおかげか、普通の人のような性格になったが、その心の奥底で自分が生まれた意味や、こうして生きる意義を捜し続けるもののかなり自分を卑下している。

見かけは学生だが、見かけ以上の知性を持ち、様々なアイテムの開発や研究を鴻上と良くやっている。

 

 

 

 

理沙 (りさ) 16歳

 

イクスに捕えられていた謎の多い少女。

セルビットを操る能力をもち、それを狙いイクスに狙われる。

何故か零司の事を異様に好んでおり、基本零司と一緒に居る

かなりのマイペースで良く零司を困らせるが、そこが彼女の魅力でもある。

金髪にオッドアイとかなり目立つ風貌だが、自他とも認める華麗さを持つ。

 

 

 

 

 

火野 誠司 (ひの せいじ)   24歳  

 

火野家の長男。少し抜けている所はあるが他人思いで優しい性格。

運動神経は良く、腕力も強いが頭はそんな良くはない。

イクスを探りながらクスクシエでウェイターをやっている。

なんだかんだで頼りになるとこもある。

 

 

火野 奈々  (ひの なな) 24歳  

 

火野家の二女。と言っても誠司とは30分しか違わない双子。

誠司と間逆で、運動神経は良くないが頭脳は超天才レベル。

良く映司の研究を手伝ったり、様々な分析を行う。

普段はこちらもクスクシエで働いている。なぜか凄い怪力を持つ。

趣味で服をよく作っている。

 

 

藤原 優斗 (ふじわら ゆうと)   26歳

 

零司に協力する謎の多い男。

元鴻上ファウンデーションの開発研究員であり、今は鴻上学園で化学の教師をしている。

裏が多く常にニコニコしてるが、その笑顔裏は計り知れない何かがある。

他人にはだらしないドジな男と思われているが実は演技でそう見せている。

 

 

伊達 冬美  (だて ふゆみ) 24歳

 

鴻上学園の講師であり、謎の組織、ライズのメンバーでもある。

普段は学園の保健教諭として働いてる元医者。

孤児であったが国境なき医師団である父に引き取られた

 

 

鴻上 リラ(こうがみ りら) 16歳

 

 

学園の最強の実力を持つ少女。

背が低い事がコンプレックスでいつも大きな帽子を被っている。

学園最強の名は伊達では無く1年なのに関わらず生徒会長の座まで上り詰めた。

ライズのメンバーでもある。

鴻上光生の遠い親戚

にあたるが、本人は鴻上の事を好んでいない。

 

 

 

 

 

S   ?歳

 

白衣を着た謎のイクスのエージェント、スパイダーエクザスに変身する。

映司と対峙したこともあり、現状では一番真相に近い男でもある。

飴が好物で常に舐めているが、仕事時は噛み砕く。

誰よりも冷徹でかつ冷静な計り知れない男。

 

コールド ?歳

 

イクスのエージェント。フリーズエクザスに変身する。

美しい物を好んでおり、常に綺麗な物を集めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

用語解説集

 

補完や追加はそれが登場した会の後書きに載せる予定です。 

 

 

 

 

 

 

 

セルビット

 

次世代の電子エナジーメダル。それ自体の実体は無く、デバイス上にライドネットを通し保管される。

金として利用できる他、ライドネットに利用され、

ライダーの変身や武器の使用に不可欠。

 

 

ヴァーチャルライダー

 

ライドネット上で戦う電脳空間の戦士、通称ライダー。

学園の生徒は全員この才能がある。

主にシステム上に発生したバグであるエクザスを倒す。

なお一部の物は実体化し現実世界で戦う事も出来る。

匿名の正義のライダーの事を尊敬を意もこめて仮面ライダーと呼ぶ。

 

 

イクス

 

財団Xの派生組織、メダルの研究やエクザスの利用をする。

零司を生みだした張本人。裏でトンデモ無い計画が動いている。

表面的な活動は少なく、電脳空間での活動が多い。

 

 

エクザス

 

イクスが開発した怪人。通常は電子ウイルスとして実体を持たずセルビットを媒体に活動するが、

セルビットが一定量たまると実体化する。

特殊固体は人間が変化する事が可能でその力を十全に扱える。

 

 

 

ライドネット

 

鴻上ファウンデーションが開発した、巨大な電脳空間。

フルダイブ技術により、意識を完全にネット上に送る事が出来る。

 

 

鴻上学園

 

鴻上ファウンデーションが主導で開発した都市計画の一環で、ライドネットやセルビットを最大限活用した、

ライダー育成機関。適正のあるものが全国から集められ、電脳空間での訓練を行う。

 

 

 

ライズ

 

謎の組織。学園守護が目的らしいが詳しくは不明。

生徒会とつながりがあると言う噂も。

 




 

設定解説コーナー

今回はコアメダル大まかな流れについて語ります。
本編最終話で全てのコアは真木博士と共に消滅し、恐竜コアは全て砕け散りました。
その後MEGAMAXにて未来の世界に送られた事が判明しました。
ポセイドンが未来から来た事により、一時的にコアが映司の元へ帰ってきました。

ここまでが明確に語られたコアメダルの流れです。
平ジェネ内にて、映司はコアメダルを所持しておらず、変身できませんでした。
その為MEGAMAXの最後で、アンクと共に全てのコアを未来に返したものと私は考えます。

以上がコアメダルの大まかな流れと私見です。
要はコアは未来に帰ったため現時点では一部を除き無いものとして話を展開すると言う
訳です。

この件は分からない事も多いため、是非みなさんも感想欄にて意見をください!


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第一章 仮面ライダーゼロ
01  過去と家族と動き出した歯車


ニコニコ配信でオーズが完結しましたね。
あの最終回はやっぱ何度見ても感動しますね…

良かったら是非皆さんのオーズの感想を聞かせてください!



動き出す影、ゼロの始動

 

 

 

 

 

 

 

ゼロには過去が無かった。

ゼロには記憶が無かった。

ゼロには家族がいなかった。

 

 

 

 

 

+37 終わりの始まり

 

 

かつてゼロと呼ばれた少年、零司はその後映司に引き取られ、映司の家族と

して迎えられた。

最初は家族ごっこに意味が無いと言ってきた零司であったが映司の優しさも

あり段々と今の状況になれてきていた。そんな矢先にある荷物が届く。

 

 

 

 

 

「おーい、レイーまた父さんからの郵便だ。開けるからこいよー」

 

 

一軒家の一室、パソコンの前で作業をする零司の部屋の前に一人の男が立っている。

零司は面倒くさそうな顔をするも、郵便物の中身が気になったか、

渋々男の方へ行く。

 

 

「それで誠司兄さん、今度は何処から?」

 

郵便物をもつ男、誠司は零司に兄さんと呼ばれた。

火野誠司、火野映司の長男にして零司の兄である男だ。

 

このように送り物が来ることが良くあるのか、2人とも見慣れた反応をする。

零司がここに来て数年、なんだかんだで零司もこの生活に慣れてきていた。

 

 

「えーと…… 書いてないな。 全く、父さんと母さんは一体どれだけ世界を巡れば気が済むんだよ。」

 

父である映司と母比奈は、現在海外勤務中だ、

と言ってもほとんどが映司の研究の為で比奈がそれについていく形ではあるが。

映司は世界中は飛び回りメダルに関する研究を進めている。

今やその分野では知らぬ人がいない一流の研究者だ。

 

アンクと言うグリードのメダルを復活させるため、鴻上ファウンデーションと協力し、

世界中でメダルに関する資料や、データを集めているらしい。

そして裏では、各地に散った組織や財団Xの事を追っているのだ。

 

 

「父さんの事だ、ついでに人助けでもしてるんだろ。

全くいつものことだが、困ったものだな……」

 

軽くため息をつきながら口にする。

あの人は自身の夢と同等に他人の事を考える。そんな人だ。

 

 

「ハハッ、まあ、あの父さんの事だ、心配ないさ。」

 

誠司は大げさに笑い答える。

いつも兄さんは場を和ませようと、笑っている。

俺には到底できないことだ。他人の顔色を疑い、場の雰囲気を和ませる。

 

記憶がない改造人間である、俺には絶対に出来ない。

でも、今はなぜだかそれを余り悔んだりはしない。

なぜだろうか、仮初であるはずの家族が確実に俺の中の何かを変えていったのは事実だ。

 

それは一体何なのだろうか。

 

 

「どうしたー、レイ 難しそうな顔して、そんなに父さんの事が気になるのか?」

 

 

「いや、大丈夫だ。そっちじゃない。むしろ…… いや何でもない。」

 

 

兄さんがなぜいつも笑ったりしていられるのかと聞きかけるが、やめた。

これは、他人に聞いて分かる事じゃない。自分で答えを捜す物だ。

 

 

「ちょっと誠司、いつまで話してるのよ。さっさとソレ、開けない?」

 

居間の方から女性の声が聞こえてきた。

その声に驚き、兄さんは足早に居間の方へと駆けていく。

 

「ごめん、ごめん、今行くよ奈々姉。」

 

火野奈々、同じく火野映司の娘、一応誠司より上で俺にとっても姉だ。

どうやら兄さんは姉さんに頭が上がらないらしい。

不思議だ。姉弟といっても2人は双子、確かに姉さんの方が少し先に生まれたらしいが、

それを今まで引きづる何て、やはり本物の家族には何かあるのだろうか。

ますます、不思議になる。

 

 

養子と言う形で引き取られた俺を兄さんや姉さんは俺を家族として迎えてくれた。

赤の他人である俺を疑いもせずに家族に迎える。そんな考えがずっと理解できないでいた。

 

この家族になってからは疑問の連続だ。

俺はその疑問を解決しようといつも考える。それが人間になる為の一歩だと思い。

モノであった俺がヒトとして暮らす事に意味を見出す為にも。

 

 

「どうしたレイー、開けちまうぞー」

 

 

「ちょっと、少しは零司を待ちなさいよ。それでも兄貴なの?」

 

 

「……その言葉そっくりそのままお前に返すよ。」

 

 

「えっ?」

 

 

兄さんと姉さんは相変わらず、口げんかをしている。いつもそうだ。

2人は事あるごとに何か良い争いをしている。

そんなに意見が合わないのなら口をきかなきゃ良いと以前言ったことがあったが、

その時は、2人ともなぜか悲しんでいた。

今思えば、あれは的外れな言葉だったのだろう。現に2人は笑っている。喧嘩しながらも

ときどき苦笑を見せている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、開けるぞ。」

 

 

なんだかんだで、全員そろいやっと本来の目的である箱の開封に至る。

箱は辞書くらいの大きさで中には何か重い物が入っている。

良く見ると、取扱い注意のラベルが貼られてるあたり、何処かの土産物か、それとも何かの資料か。

 

 

「なっ……」

 

「これって……」

 

 

「………」

 

 

箱の中には不思議な形の物体。一般人であれば何だかわからないが、俺達家族は知っている。

これがいかに重要なものか。本来これが父さんの手を離れることなど無いはずだと。

そして同時に疑問が生まれる。一瞬良くできた偽物なのでは?とさえ思う。

 

 

 

「……オーズドライバー!? なんでこいつが!?」

 

兄さんが驚き、取り乱す。

流石にこれには俺も驚いた。父さんが常に肌身離さず持ち運んでいるオーズドライバー。

世界にこれ一つしかない非常に重要なもので、使い方次第ではとても危険なものだ。

最も、父さんしかこれを扱う事が出来ないのだが。

それを、俺達に渡すなど、普段の父さんの行動からは信じられない。

 

 

「待って、手紙が入ってるわ。」

 

 

箱の下には、一枚の手紙が入っている。

いまどき紙の手紙なんて珍しい。そこが父さんらしいが。

 

「あなた向けよ、零司。」

 

少々驚いたが、これほどの事態何か込み入った事があるのだろう。

手紙をひったくるように受け取ると、栓を切る。

 

 

『零司へ

 

これをお前に託す。詳しくは話せないが、今は零司が持っていた方が良いと思う。

俺はまだ帰れそうに無い。なにかあったら鴻上さんに頼んでくれ。

まだ確信は無いがおそらくイクスが再び活動を開始した。

気持ちは分かるがくれぐれも無茶な真似はするなよ、………』

 

 

そこまで読んで、俺の抱いてた感情が露わなる。怒りだ。

俺をこんな体に改造したイクス。あの事故依頼動きを見せていなかったが、

まさかもう動き出してたとは。

奴らは、奴らは何としても俺の手で……

 

 

「零司!」

 

姉さんの言葉でハッとなる。

拾い上げた手紙を読んだのか、事態を把握しているようだ。

俺の出生は2人とも既に知っている。無論俺がイクスの事を殺すほど憎んでいることも。

しかし、これは俺の問題だ。2人を巻き込むわけにはいかない。

これは俺の復讐であって俺個人の問題だ。

だから……

 

 

「大丈夫だよ、姉さん、兄さん。今頃復讐なんて考えないさ。

父さんがこんな事をするくらいだ何か意味があるんだろう。」

 

 

「零司……あなた……」

 

 

姉さんは一瞬悲しそうな顔をしたが、俺の言葉に安心したのか、いつもの笑顔に戻る。

似合わないしかめっ面をしてた兄さんも姉さんにつられ、いつもの表情に戻った。

 

それで良いんだ。2人には俺みたいな顔は似合わない。

いつも笑顔でいてこそだ。

だからこそ、2人は巻き込まない。

俺一人で……

 

 

(必ずイクスを潰す!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が寝静まった夜、零司はゆっくりと玄関のドアを開ける。

先ほどは2人にはああ言ったが、本心はやはりそうはいかなかった。

自分を改造したイクス、自身の過去の秘密を握る奴らが再び動き出したと知っては動かずには居られなかった。

 

(ごめん、姉さん、兄さん、やはり俺は戦う事しか出来ない。)

 

 

強く握りしめたその手には、とある物が握られていた。

本来それを使う事は出来ないが、どう言うわけかこっそり持ってきてしまったようだ。

まるで何かに引かれるように。

 

しかし、2人に悟られぬように鳴らないこの状況、零司自身も、自分一人でどうにかなると考える

ほど愚かではない。

 

(本望ではないが仕方ない、この状況頼れるのは奴しかいないか……)

 

 

躊躇っている物の、2人に内密で事を進め、一式の装備を手に入れるためには、

かなりの力を持つ者の助けが必要となる。

そんな者、世界に奴しかいない。

なぜか奴とは気が合わず、奴の事は何処か苦手だった。

しかし、この際しょうが無い。

ポケットからデバイスを取り出すと少ない連絡先の一番上を選択する。

 

 

「……鴻上か、話しがある。取引だ。

お前ももう知ってると思うが、奴らが動き出した。お前の欲しがるアレのデータをくれてやる。

そうだ、そちらにとっても良い話しだ、文句は無いだろ。

とりあえず地下にあるアレとバースドライバーを寄こせ。今から取りに行く。」

 

 

 

 

 

 

to be contenuud

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




設定解説コーナー

今回はメダルの種類について説明します。
本編に登場したのはコアメダルとセルメダルの2種類でしたが
本作品では新たにセルビット、ビットコア、ゼロメダルを追加しました。
もちろん私が考えた独自設定です。
各々については後の後書きで詳しく説明しますが、
セルビットがセルメダル、コアビットはコアメダルの電子版と考えてもらって結構です。
ゼロメダルについてはいずれ……


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02 葛藤と戦う理由と伸ばす腕

お気に入り数が10突破しました、皆様ありがとうございます!

本作の事でも、オーズの事でも良いので是非みなさんの意見を聞かせてください
感想お待ちしています。



 

 

 

零司には過去が無かった。

零司は新たな記憶を手に入れた

零司は未来を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝静まった夜、工場地帯の一角で見慣れぬ怪人が暴れていた。

カマキリのような鎌を持った怪人、カマキリエグザスだ。

自然発生したのか、研究所から逃げ出したのか、定かではないが、

少なくても、奴が人々にとって危険な存在なのは確かだ。

カマキリエグザスは次々と暴れ付近の建物を破壊し続けている。

まるで何かを求めるかのように。

 

零司はそんな中エグザスをただ見つめていた。

鴻上との取引を終え、物を受け取った所でエクザスの出現の知らせを聞き、

飛び出してきたのだが、どう言うわけか傍観に留まっていた。

 

エクザスの出現にイクスが関係しているのは確実だ。

しかし、まだ何かが零司の心を踏み留めていた。

待ち望んだはずの復讐の機会、今その手にはわざわざ鴻上からもらった力もある。

目の前に敵がいて、それを倒す力を持っている。

そのはずなのに、なぜか、自分にも分らない何かが零司を止めている。

 

「クソっ! なんでだ!」

 

手にした双眼鏡を投げ捨てる。

ふと手を見ると手が小さく震えている。

 

本来ならさっさと奴の元へ行き、イクスに繋がる手掛かりを手に入れるか、それが不可能なら奴を始末するはずだった。

今の零司には何故かそれが出来ないでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャァー!」

 

 

突然少女の物とみられる悲鳴が響いた。

エクザスの方を見ると何処から迷いこんだのか、一人の少女がエクザスに

追いまわされている。

 

(エクザスがあの少女を狙ってるだと!? 奴に意思があるはずが……)

 

 

そういつも通り分析してたが、なんだか調子が狂う。

一体俺は何をしているんだ?

 

復讐?

……違う、結局姉さんの言葉が引っ掛かって怖気づいている。

 

なら人助け?

……違う、現に俺はあの少女を見ている事しか出来ない。

 

なら俺はなぜここにいる?

イクスを潰すために鴻上と取引し、やっと得た機会。

それを見す見す棒に振るのか…!?

 

ダメだ、行動の目的が見つけ出せない。

 

(俺は何の為に戦えば……)

 

 

 

 

『手が届くのに、手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。

それがいやだから手を伸ばすんだ。』

 

 

 

それは、いつかか父さんが話してくれた言葉。

昔の俺にはそれを理解することが出来なかった。

 

 

「俺はっ!」

 

 

俺は白紙だ。過去も無ければ家族もいない。明日だって真っ白だった。

でも父さんや、姉さん、兄さんがいてくれた。

彼らが俺の真っ白だった心を満たしてくれた。

 

俺は白紙だ。

だからこそ何色にでも染まることが出来る。

 

何のために戦うかじゃない、誰の為に戦うのか。

 

理屈なんてどうでも良い、俺は父さんのように……

 

 

「目の前の手をつかむ為に!」

 

 

 

一直線にエクザスに向って突っ込む。

戦略?作戦?そんなのは無い。

ただ今は彼女を助ける。それだけだ。

 

「変身!」

 

 

バースドライバーにメダルを入れダイヤルを勢いよく回す。

瞬時に体がエネルギーに包まれ、銀色の装甲が装着される

‥‥ハズだった。

 

 

『エラー』

 

一瞬光ったベルトはエラー音を吐きそのまま沈黙する。

どうなってるんだ? まさかあいつ‥‥

 

 

「くそが! 不良品掴ませやがったな!」

 

鴻上のことを信用し過ぎたようだ。

あの鴻上が素直に俺の言うことを聞くとは思えない。

 

つまりはまんまと騙されたという訳だ。

 

「だとしてもっ! 俺は!」

 

この程度ではあきらめない。

決めたんだ、誰かのために戦うと。

 

俺はいつまでも白紙じゃない。

だから俺は

 

「戦う!」

 

エクザスを蹴り飛ばす。

辺りどころが良かったのか、そのまま転がっていき瓦礫の山に突っ込んでいく。

少女は驚いた表情でこちらを見る。瞬間、少女と目があっった。

青と緑の宝石のようなオッドアイに、長い金髪、拘束服に似合わない綺麗な体。

一目見ただけで忘れられないような不思議な雰囲気、そこになぜか何処か懐かしいものを感じた気がした。

 

 

「あっあなたは……?」

 

 

「話は後だ、今は黙って俺の手をつかめっ!」

 

戸惑う少女に手を差し伸べる。

少女は少し迷った末、零司の手をしっかりと握る。

零司はその手の感触を確かめるように、今一度握り直す。

 

『Gyaaaa!!!』

 

 

瓦礫の山からエクザスが飛び出してくる。

蹴られた事に怒ってるのか、こころなしかさっきよりも気性が荒い気がする。

 

少女の手を引き、そのままエクザスから背を向ける。

今は逃げるのが先決だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とりあえずここまでくれば安全か。

クソっ、通信妨害か救援は望めないな…」

 

 

工事現場の中の仮宿舎の一室に零司と少女は隠れていた。

エクザスは闇雲に周囲を破壊し、相変わらず少女を捜している。

 

助けを求めようも、謎の電波妨害のせいで外部との通信は遮断されてしまっている。

恥を忍んで鴻上にバース部隊の要請をしようとも思ったが、こうなってはどうしようもない。

 

 

「あなた……なんで?」

 

 

 

「……そんなもの俺が知るか!

ドライバーが使えれば、こんな事しなかったはずだ。」

 

 

何故か使えないバースドライバーを床に投げ捨て、吐き捨てるように言う。

零司自身が一番衝動的に動いたことに動揺していたのだ。

 

 

 

「ふーん、で、それであなたがゼロなの?」

 

『ゼロ』それはイクスに居た時の零司のかつてのコードネーム。

イクスによってつけられた忌々しきもの、一般人が知りえる情報ではない。

この少女はなぜか、零司を見て突然その名を口にした。

それも、先ほどのような怯えた様子ではなく、何処か期待してるような声で。

 

「お前…! それを何処で!」

 

 

「やっぱり…… あなたがゼロなのね!

あの人の言った通りだ……」

 

 

話しがかみ合わないまま、変な空気が部屋に流れる。

少女に追求したいことは山ほどあるが、あのエクザスをどうにかしない限り、2人の命は無い。

 

どうしたものかと不図窓の外を眺める。工事現場と言う事もあり、周囲には誰もいなくとても静かだ。

ここまで静かならば、奴が近づいてくればすぐわかるだろう。

 

 

「っ!?  伏せろ!」

 

「キャッ!」

 

 

その瞬間、風を切る鈍い音が響く。

エクザスの放った鎌の一撃が、宿舎の支柱ごと壁を切り裂き

一瞬にして瓦礫の山へと変える。

仮宿舎とは言え2階建てのしっかりとした作りの物だ。

こう簡単に崩れ落ちるわけが無い。

それをたったの一撃でいともたやすく行うエクザスはまさしく化け物だ。

宿舎の骨組みが崩れ次々と雨のように振ってくる。

 

 

(クソっ! 間に会え!! )

 

 

ふと零司は少女の方を見ると、今まさに割れた鉄パイプが少女に降り掛かろうとしていた。

それを見逃す事は零司には出来なかった。

咄嗟に少女に飛びかかり、鉄パイプを自身の背中に受ける。

 

 

「……だい…じょうぶ…か…」

 

 

「あなた……それ……」

 

 

とっさに少女を庇い、瓦礫を受けた為か、零司の背中にはいくつもの破片が突き刺さっていた。

体を貫通した鉄パイプから血が垂れ落ち、少女の頬を濡らす。

その鉄パイプは零司の「心臓」の位置を貫いている。

本来なら声を出すどころが即死の筈だ。

 

しかし、零司は鉄パイプを無理やり引き抜くと、それを杖代わりにゆっくりと立ち上がる。

胸からあふれ出た血はいつの間にか止まっていた。

 

「あなた……まさか……」

 

 

「そうだ……俺は人間じゃない。奴と同じ化け物だ。

人間なんかじゃない、ただの兵器。」

 

虚ろな目でエクザスを見つめながら語りだす。

それは、少女に語っているのか、自分に言い聞かせてるのか、

あるいは両方か。

 

 

「違うっ!」

 

 

少女が声をあげる。

さっきまでとは違う真剣な眼差しで零司の目を見つめる。

 

 

「あなたは私を助けてくれた、だから……」

 

 

「あんな事所詮は真似ごとだ! 結局俺はお前を助けた意味が分からない。

理由も無い。ただ借り物の言葉に従っているのに過ぎない!」

 

 

あの時零司を突き動かしたのは父さんの言葉、決して自分の意思ではない。

父さんの真似をすれば、人間らしくなれるかも、

ふとそう思っただけだ。

 

借り物の言葉に作られた体、零司自身の意思はそこには存在しない。

ただ、与えられた言葉に従い、作られた体を振るう。

それはまるで、プログラミングされたロボットのようだ。

 

「でもさっきはとっさに体が動いたんでしょ。」

 

エクザスと零司の間に割って入り、零司の傷後をそっとなでる。

血は完全に止まっているがその傷は零司が無意識に動いた証拠だ。

 

「これは、あなたが自分の意思で動いた証拠。

決して誰かの言葉に従ったわけじゃない。あなたがあなたの意思で私を守ってくれた。

あなたは決して化け物じゃない。あなたは……」

 

 

『Gyaaaaa!!!!』

 

しびれを切らしたエクザスが突っ込んでくる。

しかし少女は逃げない。

強く握られていた零司の手を開けそっと握り返す。

 

 

「あなたは化け物じゃない、『仮面ライダー』でしょ」

 

 

零司の手に握られたのは1枚のメダル。

一角獣が描かれたそのメダルは光り輝き、真っ黒だった表面が鮮やかな白に変わる。

 

 

「俺は……俺は……」

 

 

握られたメダルを見つめ、零司は前を見据える。

確かに零司は作られた存在だ。

でも、今の零司は違う。

 

(まったく……俺らしくない。そうだ、誰が何と言おうと俺は俺だ。

化け物でもロボットでも無い。)

 

 

ポケットから、父さんから預かった例の物を取り出す。

それの名はオーズドライバー、それを使うには3枚のコアメダルが必要となる。

しかしここにはコアメダルは一枚もない、……そうコアメダルは。

 

少女から受け取った一角獣のゼロメダルをベルトの右に装填する。

 

鴻上から強引に借りた、魚のような怪物が描かれたメダルを左に装填する。

 

そして、零司の胸から飛び出した不死鳥のメダルを真ん中に装填する。

腰にある円形のスキャナーを握ると胸の前に持ってくる。

 

出来るのか?と言う不安よりもやって見せると言う気がした。

ぶっつけ本番、これを使えばどのようになるかは零司には分からない。

それでも零司は戦うとそう決意したのだ。

 

「変身!!」

 

 

『ユニコーン!』

 

 

『フェニックス!』

 

 

『リヴァイアサン!』

 

 

『ユー二フェーリヴァー!』

 

 

奇怪な歌が流れた後、零司の体は一瞬にして変化した。

真っ黒なボディに絡みつく白・。青の3色の装甲、血のように赤い複眼がエクザスをにらみつけるように光輝く。

 

「俺は仮面ライダー ……仮面ライダーゼロだ!」

 

 

 

思えばこの時全てが始まったのだ。

ゼロのメダル、その強大な力をめぐる新たなる戦いが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




設定解説コーナー

ex01の補足です。このように今後も登場した用語はここで補足説明します。


ゼロメダル

ゼロメダルには謎が多く、まだ判明していない所の方が多い、
コアメダルと違い縁の色は黒、動物では無くそれぞれ幻獣をモチーフとしています。
各地の遺跡から発掘され、いくつかは鴻上が手に入れた。
覚醒しなければ使えず、未覚醒時は表面が真っ黒になっている。
一枚づつしか存在しない。
コアメダルの試作品とも言われている。

現時点で零司が所有しているのはユニコーン、フェニックス、リヴァイアサンの3枚



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03 無限と代償と運命の2人



やっと戦闘回です。
ここから段々と物語は加速していきます……


オーズ、それは欲望の王。

大きな欲望を持つ者のみに与えられる究極の力。

しかし、逆に無慾の象徴となりうるものがオーズになったとしたら?

その矛盾は、何をもたらすのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニコーン』

 

 

『フェニックス』

 

 

『リヴァイアサン!』

 

 

 

『ユー二フェーリヴァー!!』

 

 

奇怪な歌が流れた後、そこに立っていたのは、黒い仮面ライダーだった。

一角獣のような角に赤い複眼、体を覆うローブのような金の羽、足に絡みつく青い鱗のような装飾。

白、金、青の3色のパーツと比べ黒いアンダースーツが何処かミスマッチな姿。

全身に廻る赤いラインは血のように濁っている。

 

 

「……オーズ?」

 

 

少女がゼロに酷似したかつての英雄を思い出し口にする。

かつて、世界を終末へと誘ったとある研究者の暴走から世界を救った一人の英雄、

欲望の力を使い、メダルの力を自在に操る究極の戦士、仮面ライダーオーズ。

 

零司のその姿はオーズに酷似していた。

 

 

 

変身に使用した3枚のゼロメダル。

コアではなくゼロ、従来のメダルのような金縁でも銀色でもなく、黒い縁を持つ。

中心のメダル部分はそれぞれ、銀、金、青で彩られており、そこにはそれぞれの幻獣を

モチーフとする絵が掘られている。

 

コアメダルが生命の力を宿し、欲望を司るのに対し、

ゼロメダルに描かれているのは、本来存在しない空想上の生き物。

恐竜のように、かつて存在していた物とは違い、最初から存在していない生き物。

古からの人々の想像が形になったそのメダルは無の力を持つのに関わらず、無現の可能性を持っていた。

 

 

 

「っ…… これは……なるほど、ここまでとはな……」

 

 

ゼロへと変身した零司だが、突然胸を抑える。

痛い、いや苦しい。胸を裂くような痛みと、体の中が張り裂けそうな感覚が突如零司を襲う。

エクザスの攻撃では無い。エクザスは突然の変身に困惑している。

変身による反動か、メダルを取り出した事による弊害か、零司の体は謎の痛みに苛まれていた。

 

しかし敵はいつまでも待ってはくれない。

零司の様子を見て好機と見たのか手の鎌を振り上げ突撃してくる。

少女の確保より、障害の排除を選んだのか、一気に突撃してくる。

 

 

「クソっ! やるだけやるしか……てかっ!」

 

 

肩部のフェニックスファザーを展開し、金色のビームを一斉射する。

ビームは湾曲しエクザスへと迫る。

が、その瞬間エクザスは透明の膜のような物を展開しビームを全てはじき返す。

 

「チィ…… 一筋縄では… ならばっ!!」

 

 

フェニックスの羽で空中に飛び上がると敵めがけ一気にビームを放つ。

無論、先ほどと同じく防がれてしまうが目的はそれでは無い。

 

湾曲したビームが奴の足元に転がっていたガスボンベに発火し爆発する。

どうやら奴のバリアは物理的な爆発は防げないらしい。

 

そのまま飛び降りながら、蹴りを喰らわし続けざまに回し蹴りをお見舞いする。

 

『Gyaaaaa Gyaaaa』

 

 

猛攻にひるんだエクザスが闇雲に鎌を振り回し、零司を離す。

 

 

「これが……オーズの力?」

 

一瞬の猛攻を見た少女はまたもや、英雄の名を口にする。

3枚のメダルを使い変身し、圧倒的な力を持つ過去の英雄仮面ライダーオーズ。

今の零司はそれすらに並ぶほどの力を持っていた。

 

しかし、これほどの力には代償が付きものだ。

先ほどから零司の体は謎の痛みに襲われていた。

先ほどの傷ではなく、体の内側からくる謎の痛みは次第のその勢いを増してくる。

 

 

(クソっ これは不味いな…… もって後1分。次で決めるしかないか!)

 

鎌の攻撃をさばきながら一気にエクザスの懐に飛び込む。

 

エクザスもたまらず鎌を振りかざし反撃するが、鎌を避けるとそのまま叩き割る。

 

『Gyaaaa!』

 

獲物は一つ失ったがそれでも果敢に突っ込んでくる。

理性を持つ物の動きとは思えない。

 

(何だっ? だがこれはチャンスだ、このまま決める!)

 

銀色に光ったユニコーンの角が、エクザスを捕えると一気に空中へと投げ飛ばす。

 

「今だっ!!」

 

 

『スキャニングチャージ!』

 

ベルトのメダルを再びスキャンし、空へ飛びあがる。

 

フェニックスウィングが後方に展開し、段々と加速する。

ユニコーンの角のエネルギーが足に集中し、リヴァイアサンの鱗から水流がほとばしる。

 

 

「ハァーーー セイヤァーーーーー!!」

 

 

『Gyaaaaa!!』

 

 

強力なキック、『インビンジブルアロー』がエクザスに炸裂する。

瞬間、エクザスは一瞬にして体内のエネルギーが暴走し爆発する。

 

 

爆風が零司を見つめる理沙の頬をかすめ、破壊された廃材が周囲に転がる。

 

 

「勝った…の?」

 

 

「何とかな……」

 

 

そう答えた瞬間変身が解除され、その場に崩れ落ちる。

少女が急いで駆け寄り支えようとするが、零司の体を見て一瞬躊躇する。

 

黒いタトゥーのような物が顔まで駆け巡っている。先ほどまで無かったはずだ。

それは、まるで零司体をむしばんでいるように毒々しいものだった。

 

「あなた……それ…」

 

 

「気に…するな… ただの持病だ。」

 

なんとか意識を取り戻し、ゆっくりと答える。

変身の反動のせいか。かなり苦しそうな様子だ。

それに加え謎の黒い靄が体をむしばんでいる。到底無視出来る状態ではない。

 

 

「気にするよ! 今すぐ治療を……」

 

 

涙目で少女は零司の体をどうにかしようとするが、どうしようもない。

零司はなんとか、平然をよそうが、靄が広がるにつれ顔をしかめる。

 

「なんとかしないと…… このままじゃ…ゼロが…死んじゃう…」

 

 

慌てて周囲を見回した少女はあることに気づく。

それが零司を救えると確信した少女は涙を拭い、零司に近づく。

 

「うまくいくか分からないけど、きっと大丈夫。

今度は私が……」

 

 

零司の手を強く握ると、エクザスが爆発したあたりから光る粒子が現れる。

エクザスを構成してたエネルギー、セルビットだ。

セルビットが零司の周囲に集まると段々と胸に吸い込まれる。

 

セルビットが吸い込まれるのにつれ、黒い靄が収まっていく。

エクザスのセルビットが完全に無くなったころには零司の体は元に戻っていた。

 

「良かった……うまく行った……」

 

安心したのか力の抜けた少女が倒れるが、

今度は零司が少女を受け止めた。

 

「お前、一体……? いや、ありがとう」

 

 

少女の事を詮索しようとするが、腕の中で安堵している少女を見て、お礼を口にする。

こういう時はこれが正しいはずだ、と判断したからか、本心なのかは

分からないが、自然にこの言葉がでた。

 

「私こそ、ありがとう、ゼロ。」

 

少女は微笑んで言葉を返した。

しかし、ゼロと呼ばれるのに抵抗があるからか零司は少し考え、

自分の新しい名前を口にする。

 

 

「……零司だ。」

 

 

「えっ?」

 

 

「ゼロじゃない。今の俺は零司、火野零司だ。」

 

 

はっきりと自分の意思で名前を口にする。

イクスの人造人間であるゼロでなく、映司の息子で仮面ライダーである零司と。

この瞬間、零司の中にあった心の縛りが解けた気がした。

自身を零司ではなくゼロだと卑下し、人間らしく振る舞うことを疑問に感じていたことを捨て去る。

根本的な思いは変わらないが、何処か楽になった気がした。

 

 

「そう、零司よろしく。 私は理沙。ただの理沙だよ。」

 

 

「ん? 名字は?」

 

「無い。とっくの昔に捨てちゃったの。」

 

 

「そうか、昔の俺と同じだな。」

 

零司の名字は映司から与えられたもの。それまでは、名字など存在しなかった。

ただのゼロとして日々を過ごしていた。

 

「ねえ、零司は何のために戦う?」

 

突然来た核心を問う質問に、零司は少し驚き悩むがすぐ口を開く。

 

 

「俺は、自分…いや誰かの為に戦う。父さんのように。でも自分の意思で。」

 

 

その答えを聞いた理沙は満足気に笑い零司に抱きつく。

 

 

「良かった。 あなたならきっと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、やはり零司クンが新しい器だったか。」

 

 

豪勢な部屋の中、真っ赤なスーツを着た男はモニターを眺めながら口にする。

モニターには先ほどの戦闘の様子、付近の監視カメラの映像をジャックして得た物だ。

 

男の前には大きなケーキが完成間近でおかれている。

モニターの電源を切った男はクリームで大きくOの字を書く。

0『ゼロ』先ほど零司が変身した仮面ライダーの名前だ。

 

「しかし、あのメダルがあれほどの物とは、ドクター真木の遺産がこうなるとは。」

 

切り替わったモニターには零司の使っていたフェニックスメダルのデータ。

バースドライバーと保管してたリヴァイアサンメダルと引き換えに零司から手に入れた物だ。

最も、バースドライバーは不良品だったがこれは全くの偶然で仕組んだ物では無いのだが。

 

「ゼロのメダル、無の力と無現の欲望、両方の可能性を持つメダルか、

実に素晴らしいっ! 0の力だとしても、欲望の力でそれは無現にすらなる!」

 

 

ケーキに書かれたOの字にもう一つOをつけ足すと∞となる。

 

「それすらも超える力、それが欲望!」

 

 

さらにOを一つ加える。OOO『オーズ』それは欲望の王の名前。

 

 

「ゼロとオーズ、この2つは矛盾しているようでそうではない!

オーズはゼロに!、ゼロはオーズに! やがてオーズすら超える欲望が!!」

 

 

よほどうれしいのか、声を上げ、自身の欲望を叫ぶ。

ケーキにはOOOと0両方の文字が混ざりあうように書かれている。

 

 

「そのためにも、アレを完成させなくてはならないな」

 

男の名は鴻上光生、誰よりも強欲で、誰よりも貪欲な男。

欲望を愛し、その先の世界にある物を望む。

 

モニターが切り替わり、先ほどと違うメダルのデータが映し出される。

金色の縁に色取り取りの模様が描かれたメダル、コアメダル。

 

それは全て失われたはずだった。

しかし、これらは違う。古代のオーズも、映司も使う事の無かった新たなコアメダル。

その一部が将来、重大な事件を起こす事を知ってもなお、鴻上は開発を止め無かった。

新たなコアメダル、かつて未来のメダルと呼ばれたそれがそこに写しだされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






設定解説コーナー

セルビット

鴻上ファウンデーションが開発した次世代の電子エナジーコイン。
通常はただの電子コインだが、どう言う訳かエクザスの体を構成するのに使われている。
その上零司の体にも何故かこれらが含まれている。
セルメダルと性質は似ている為、代用も可能だがもちろんヤミーを生みだす機能は無くなっている。


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04 能力と実験と心の闇



一週間ぶりの投稿です。
ようやく皆さん大好き?なあの男が登場します。


それはそうと最近ビルドが楽しみ過ぎて毎週が楽しみ過ぎる……


 

 

 

 

いつも思いだすのは暗い部屋、そして無機質な手術室、

繰り返される日常のなか訪れた変化はこれだけだった……

 

 

 

 

「これが今回の実験体か。」

 

 

「家族に捨てられたんだって?気の毒に」

 

 

「なるほど…、例のルートからか」

 

 

「だがこの手術で生まれ変われるさ」

 

 

 

「生きていれば、ですが」

 

 

 

「まっそういうことだな、では始めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、何時まで寝てる、いい加減起きろ、」

 

 

「んっ…… あっ零司、おはよう」

 

 

理沙が目を覚ますとそこは小さな小屋の中だった。

謎の力を使った後気を失った理沙を零司が近くにあった無人の小屋に運んで来たのだ。

 

「もう大丈夫なのか? 」

 

 

「うん、私はもう平気。 零司こそ大丈夫なの?」

 

 

問題ないと返す零司だが、無意識に傷跡を抑える。

心臓を貫かれたはずの零司だが、その傷は一瞬にして治ってしまった。

あれほどの傷を一瞬にして直すなどもはや人間業ではない。

 

 

 

「そう、良かった。 私の力がやっと零司の役に立てたんだ。」

 

 

「やっと?」

 

そこで零司は理沙を見る。初めてであった時もそうであったが何処か見覚えがある気がしたのだ。

それに理沙はさっきから零司の事を知っているかのような口ぶりで話している。

思い返しては見るが彼女と会った記憶は無い。

 

「お前、何処かで……」

 

 

そう言いかけて口を閉じた。零司自身過去の記憶が無い、そんな自分が誰か覚えているはずが無いと、

結論づけてしまう。自分の過去の手がかりを捜すのに零司は何故か戸惑っていた、

過去を知るのが怖いのか、あるいは…

 

「んっ零司、何か言った?」

 

 

「……いや、何でも無い。 それよりもさっきお前が俺に使った力、アレは一体何なんだ?

そもそもお前は……」

 

 

話を変え、理沙の力について尋ねる。瀕死の零司を一瞬にして回復させたあの力、それが一体何なのか、

イクスの事に大きく関係があるとみて間違いは無いだろう。

 

 

「んー零司は知りたいの? 理沙のこと」

 

 

「無論だ」

 

 

「じゃあ教えてあげる、でも一つ約束してくれない? 私を一人にしないって」

 

 

少しの空白の後零司は、理沙を見つめる。『一人にしないで』と言う言葉が何処か引っ掛かる。

それがどうゆう事を意味するのか、それがどんな事なのか、そう思うがやはり彼女の言葉に何処か聞き覚えがある気がする。

考えても仕方ないと思いながらも空返事をする。

 

 

「……分かった約束する」

 

 

考え抜いた末約束する。約束の真意は分からないが、何故かこの約束は守らなくては、そんな気がしたのだ。

 

 

「よかった、零司ならきっと約束してくれると思ったよ」

 

 

またもや零司の事を知ったかのような口ぶり、謎は深まるばかりだ。

 

理沙は二コリと笑い、ベットから立ちあがる。

うれしいというよりも安堵の表情を浮かべた理沙はゆっくりと小屋の中を歩き出す。

 

「それで、あの力は?」

 

 

「あ、アレの事、うーん確か『周囲に存在するセルビットの流れを操る』らしいよ」

 

零司の周りをクルクル回りながら、思い返すかのように答える。

どうやら自分では力の事を良く分かっていないようだ。

 

 

 

「なるほど、だからあの時俺の体のセルの流れが動かして活性化したのか。」

 

 

零司の体にはエクザスと同じセルが流れている。倒れたエクザスに残っていたセルを零司に流し、

変身の反動で弱っていた体を活性化させたのだ。

それほどの事をやってのけるとはやはり理沙の能力は常識を逸脱している。

 

「うーん…?、たぶんそうみたい。」

 

 

「お前なぁ、一体あの力にどれくらいの価値があるか分かって…」

 

 

 

「分かってるよ、理沙のこの力は特別だって事くらい分かっているつもりだよ」

 

クルリと向き返り真剣な眼差しを零司に向ける。

彼女の態度がクルクル変わるのを不審に思いながらも理沙に流される零司。

ニコニコとしてる笑顔の裏にも常に彼女は何かを抱えてる、そんな気がした。

 

 

「……そうか。で、そもそもお前は一体…?」

 

 

渋々納得する。これ以上この事は本人に聞いてもどうしようもないだろう。

先天的な能力ではなく、なんらかの要因で付加された後天的な能力なら本人が知っていることは少ないだろう。

 

そこで一つの疑問が生まれる。こんな能力を持ちながらも悠々としている彼女は一体何なんだろうか?

 

「理沙は理沙だよ。それだけ。」

 

 

含みのある言い方だ。理沙は理沙、その言葉にどんな意味があるのか、零司には分からないが、

その言葉の奥に理沙の本心が垣間見えた気がした。

 

 

「理沙はね、売られたんだよ。パパとママに。だから私はただの理沙。

理沙を捨てた家族の事なんてこっちから捨ててやったの。

パパとママに研究所に連れてかれて、そこに置いてかれたの。

たぶんイクスに売ったんだよ理沙の事を。理沙見ちゃったの、パパが研究所の人に頭下げてる所。」

 

悲しげと言うより、侮蔑するような顔を浮かべる。

両親に捨てられた事の悲しみより、自分をみすみすとイクスに売り払った両親に対する怒りが勝っている。

自分が尊敬していた両親に裏切られた事に対する憎しみは相当な物だろう。

 

 

「それで、ただの理沙、名字なんてない、か。」

 

昨日彼女に言われた事を思い出す。

自身の名をかたった時、彼女は同じことを言った。

 

 

「そう。私にはもう家族なんて居ない。誰かに捨てられるのはもうごめんだよ。でも零司は違うよねっ」

 

 

明るい笑顔を向ける。どうやらもう昔の家族のことをそこまで気にしていないようだ。

過去を振り返らないと言うことか、それにしても度が過ぎる気がする。

曲がりなりにも自分を育ててくれた家族をこうも簡単に忘れる事が出来るのだろうか、

最も家族がいなかった、理沙とは真逆な零司には分からなかったが。

 

 

「なんだって零司は私の王子様だもんねっ!」

 

 

「王子様!?」

 

 

理沙の突飛な言葉に驚きつつ、零司は肩の力を抜く。

そう思えば、エクザスと遭遇してからずっと警戒してばかりだった。

 

自分だけこうしているのがバカバカしくなり理沙の雰囲気に押され、墨に放置されているパイプイスに腰掛ける。

 

 

 

「…とは言えこのままにここに居るわけにはいかんか」

 

 

あれからイクスの敵襲は無かったが何時までも安全だとは限らない。

今居るのはただの小屋、もしまた襲われたら今度こそ危ない。こちらにはまともな武器もない、

誰かの援助を受けなければならないのは必然だ。

 

 

「クソっ、こうも奴に頼るのは癪だが、この際仕方ないか…」

 

 

頭の片隅に苦手な男の顔を思い浮かべながら、携帯端末を取り出す。

幸いもうジャミングは解除されているようだ。

 

 

「ねえ零司、奴って?」

 

 

不安そうに見つめる理沙の方を見て、ため息をつきながら答える。

 

 

「鴻上ファウンデーション会長、鴻上光生だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ! 零司クン! そろそろ来る頃だと思ったよ!

いやーこう何度も零司クンと会えるとは、私はうれしいよ!」

 

 

出会って早々マイペースで話しだす鴻上、理沙が不思議そうな目でこちらを見る。

まるで状況を理解出来ていないようだ。

それも仕方ない、高層ビルの最上階にきたと思ったら、いきなりケーキを持ちながら大声で語る

おじさんが出てきたのだ。

 

 

「おっと、これは失礼。私は鴻上光生、この鴻上ファウンデーションの会長をしている。

以後よろしく、理沙クン!」

 

 

「あっ…えと…うんっ、よろしく鴻上さん」

 

何となく理解したようだ。ぎこちない返事を返す理沙を尻目に鴻上がさらに話しだす。

 

 

「それにしても、やはり零司クンが新たな器だったとは! いや、実にすばらしい!

無現と無、2つの矛盾する力を操る仮面ライダー! それがキミ、仮面ライダーゼロ!

最初は私もゼロのメダルを使うのには抵抗があったが、いやまさかあれほどの物とは…

やはり、欲望の力は素晴らしい! 欲望の力こそ世界を救うのに……」

 

 

「前置きは聞き飽きた、本題に入るぞ鴻上」

 

 

鴻上の熱気の入った演説を聞き流し、勝手に会長室のパソコンをいじりながらソファに腰掛ける。

何かのデータスティックをパソコンに挿入し、いくつかのデータをパソコンにコピーする。

 

 

「これと引き換えだ、こいつをしばらく匿え。どうやらイクスに狙われているらしい」

 

モニターを回し、データを見せると後に佇む理沙を指差す。

 

「ほう、なるほど、彼女がイクスの… 分かった彼女はこちらで保護しよう」

 

 

送られたデータに満足したのか、良い返事が返ってくる。

鴻上とは、何度もこうやって俺が昔イクスから持ち帰ったデータや技術と引き換えに様々な取引をしていた。

今や世界を代表する一大企業になった鴻上ファウンデーション、その持つ物全てを私慾のままに使えるこの男の

援助を受けれるのは非常に大きい。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、ねえってば、零司聞いてるの?」

 

理沙の声がさっきから響いている。こちらは鴻上の交渉をしていると言うのに相変わらず

呑気に話しかけてくる。

 

 

「お前ってやつは…今がどんな状況だかわかってるのか」

 

 

 

「えー、だって暇だもん。ねえ、欲望おじさん何か服ってない? 理沙この服好きじゃないの」

 

 

「欲望おじさん?」

 

珍しく気の抜けた声を出す鴻上。

十中八九、鴻上の事だろう。さっきの話で何度も欲望と連呼していたからか、理沙の中では

鴻上=欲望というイメージがあるらしい。

まあ、ある意味間違ってはいないが。

 

 

とはいえ、言われて見れば理沙の服はあそこから抜け出した時に着ていた拘束服のままだ。

先ほどまではそんなところ気にする余裕がなかったが、理沙もずっと拘束服のままではうんざりしたようだ。

 

「後でそこら辺で適当な服を見繕ってやるから我慢してろ」

 

 

「えー、せっかくだから可愛い服が欲しいよー

ねえ買ってよ零司ー」

 

まずい、今この男の前で欲しいと言ったな、この男の前で欲望を口に出すと厄介になる。

 

「美に対する欲か、実に素晴らしい!ならこのカードを使うといい。

ここらの店ならこれで事足りるだろう」

 

上機嫌な鴻上がブラックカードを取り出す。

やはりめんどくさくなった。

とはいえ成る程、ああやればやつに色々たかれそうだ

 

 

「ねえ零司、行こ!」

 

 

「まてまて、俺は鴻上と話しをしにわざわざここに…」

 

理沙に手を引かれるが、ソファから動じない零司。

まだいろいろと鴻上と話したいことが山ほどあるのだ、おちおち買い物など行く気は無い。

 

 

「なら零司クン、これを使いたまえ、研究所が開発した新型デバイスだ、

私との極秘直接回線を繋げる。他にもいろいろ使える便利物だ」

 

 

めんどくさそうな顔をしながら手渡されたデバイスを受け取る。

ああ言えばこう、理沙と鴻上の2人のペースに完全に呑まれてしまっている。

しかし、デバイスをみるとぱっと見だかなかなかの完成度、到底ただの通信だけに使うような物ではない。

 

「おい、これは何のマネだ、 こいつどう見ても…」

 

「零司ー行くよー」

 

零司の言葉をさえぎるように理沙が間に入る。

鴻上は相変わらずニコニコとこちらを眺めている。

どうにかしようとするがどうやら無駄らしい。

鴻上に後で話すと伝え、半ば強引に理沙に連れられてく。

 

「ほら零司、早く早く!」

 

「ちょ…おい待て、分かったから引っ張るな!」

 

(あの零司クンがこう変わってくとは。ゼロのメダルの影響か、それとも…)

 

不気味な笑みを浮かべながら二人を見送る。

どうやら鴻上にもまだ何かあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

鴻上ファウンデーション本社ビルのそば、おしゃれな店が並ぶ小洒落た通りに二人はいた。

ビルを出て間もなく理沙が零司を引っ張り

近くにあったここへ連れてきたのだ。

 

こんなことをしている場合ではないと、注意をしようとしたが、

理沙がショーウィンドウを眺め目をキラキラとさせているのを見て、口を閉じる。

こういった場所はいったこも無く詳しい訳ではないが

 

「ありがと!零司、こういう所に一度行ってみたかったんだよね。初めて来たけどこんなたくさんの店があるんだね」

 

まるで初めてこういった場所に来たかのような口ぶり、零司のようにおしゃれに全く興味ない人ならまだしも、

理沙はそういった物をかなり意識している感じだが…

 

「初めて? お前なら結構行ってそうだが…」

 

 

「……パパとママといた頃は服はぜーんぶママのオーダーメイド、

それもよかったけどそれじゃなんだかママの着せ替え人形みたいで嫌だったの。

自分で好きな服を選ぶのが昔からの夢だったの。

まあ、パパとママがいなくなってからはずっとこんな服のままだったんだけどね。」

 

自傷的に笑い、拘束服の裾をあげる。

明るく振る舞う彼女だがその裏にはかなりの闇が垣間見る。

 

(初めて……か、)

 

「んっ? 零司? どうしたの?」

 

「何でもない、そうか、俺も詳しい訳ではないが俺の姉さんがこういうのに詳しくてな、少しは付き合ってやろう。」

 

姉である奈々は母の影響で、服飾関係の知識が豊富だ。何となくだが、たまにそう言う話をされるので、常識知らずの零司でも

一般人程度には一応知識を持っている。

 

 

「ねえねえ零司、これどう?」

 

「おい… お前は人の話しを…」

 

相変わらずのマイペースに引っ張られ、ペースを崩される零司、理沙のことを思って声をかけたのだが

どうやら取り越し苦労であったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




理沙の能力と零司の体

理沙の能力は周囲に存在するセルビットを操る事が出来る能力である。
発動条件としてはセルに触れることが条件であり、対象に触れれば発動が出来る。
謎が多い能力だが、ゼロメダルと何らかの関係があるとされる。

零司の体はエクザスと同様セルビットが体に巡っている。
そのため、無の能力を持つゼロメダルと反応してしまい、変身時に大きな苦痛が伴う。









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05 買い物と襲撃と新たなメダル争奪戦





やっと出せたコンセレの新メダルのネタです。

実はコンセレ買えなかった……orz
いつか中古で買えないかなー


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴻上ファウンデーション本社ビルのそばのストリート、おしゃれな洋服店に2人はいた。

零司は相変わらず理沙に連れてかれ、服選びに付き合わされている。

 

 

 

「ん~これも良いな~、あ!でもこっちの色も捨てがたいなー、ねえ零司はどっちが良いと思う?」

 

手に持った二つの服を見せる、どちらともフリルがふんだんに使われたとても華麗な服だ。

 

だか、零司の目から見れば二つとも全くの同じにしか見えない、姉の影響で多少の知識はあったが

零司には違いが分からない。

 

「お前の好きな方にすれば良いだろ」

 

無難な答えでなんとか誤魔化す。

これ以上の答えは無理だ。

 

「あーもう! だからお前じゃなくて理沙ってよんでよー」

 

今度は理沙から別の指摘を受ける。

どうやらずっとお前呼びしているのが気に入らないらしい。

 

 

「…ああ、すまない」

 

 

さっきからずっと言われているが、なんだか名前で呼ぶのには少し抵抗があった。

そのたびに理沙に修正されるが、結局お前呼びのままになってしまっている。

気恥ずかしいというか何と言うのか、やはり名前で呼ぶのには抵抗がある。

 

 

「それで、どっちが似合うと思う? やっぱこっちかな~ 零司だったらどっちにする?」

 

 

男の自分に聞いても意味無いのではと思いながらも、何となく右の服を指差す。

ぶっちゃけ違いが分からないが、何となくこっちが似合うと思った気がしたからだ。

 

「うんっ やっぱこっちだよねー 流石零司、見る目があるね」

 

 

選ばなかった方を適当に戻すと、選んだ方を抱きしめる。

どうやら理沙は物に対する執着が少しずれてるらしい、興味の薄れたものには何の関心も示さない。

昔の生活のせいなのか、理沙の常識は少し一般とずれていた。

 

 

「そんなに悩むなら両方買えば良いだろ、どうせ鴻上の金だ。店買いしても文句は無いだろう」

 

冗談なのか本気なのか分からないが、少なくとも鴻上から見ればその程度なんてことも無いだろう。

 

 

「そんなのつまらないよ。 それに零司が選んでくれたのが良いのっ!」

 

やや食い気味に答える。どうやら理沙は服が欲しいのだけでなく、服を選ぶのを楽しんでいる。

零司には相変わらず理解できないが、それが理沙にとって楽しいのなら気にしなかった。

 

 

「そう言う物か 良くわからんな…」

 

 

「全く…、零司は少し言葉が少ないんだよ。もっと理沙といろいろ話してよ。

これじゃ理沙一人で買い物してるみたいでつまらないもん」

 

 

「…わっ悪かった」

 

 

わざとらしく頬を膨らませて怒る理沙に謝る零司。

その態度が面白しろかったのか、ニコッと笑って振り向く。

 

 

「うんっ 許してあげる。 その代り零司、手つないで」

 

 

「手っ!?」

 

からかうように微笑む。

指し伸ばされた手を見て案の定戸惑う零司を見てまたもや二コリと笑う。

理沙には零司がペースを乱されて慌てているのが、とても面白いらしい。

 

「ねえ、零司 零司はさ、私の事好き?」

 

 

突飛過ぎる質問にまたもや零司は困惑する。好きかどうかなど零司にはさっぱり分からない。

恋愛と言う物をそもそも知らない零司にこの質問は難しい。

 

しかし、少し考えた末零司の口から出た答えは余りにも意外だった。

 

「……強いて言うなら好きだぞ」

 

 

「ふぇっ…!?」

 

 

突然の零司の発言に今度は理沙が困惑する。

まさか零司の口から好きなんて言葉が出てくるとは思いもして無かった。

 

「お前と居ると何だがこっちまで不思議な気分になる、なんだか懐かしいと言うか…

とにかく俺は、お前の事は嫌いじゃない。俺には好きってことが良く分からないが、

好きって事になるのか」

 

 

 

「あっ…うん、そうだね… もー、零司言葉が少ないとは言ったけど、そう言う事はね… 」

 

 

今度は本気で頬を膨らませ起こる。いきなりの発言に混乱したが、なんとか持ち直したようだ。

ただ、零司の言葉が嬉しかったのか、顔が少し赤かった。

誰かに好きと言われるのがよほどうれしかったのだろう。

 

 

「とにかく、零司! 言葉は選んだ方が良いよ」

 

 

「……今のは俺が悪いのか?」

 

 

全く状況を理解していない零司、どうやら素でああ言ったらしい。

 

 

「でも…ありがと」

 

ボソッと口を開く。両親に過度に愛され育った理沙、イクスの監禁生活で忘れていた、

感情を取り戻せた気がした。

今までのような自分を偽るように陽気な声でなく、本心で弱弱しくそう言った。

 

「んっ?何か言ったか?」

 

 

「なんでもないっ さあ零司! 次はアクセサリーだ!」

 

 

選んだ服をカードで会計する。

気付けば周囲の客は誰ひとり居ない、話しこんでいるうちに他の客は出ていったようだ。

定員がタグをカットし袋に詰めようとする。

 

 

 

「あっ! 袋はいらないよー ここで着てくから」

 

 

そう言えば理沙の服は依然あの服のままだ。本来はまともな服に着替えるためにここに来たのだが、

理沙の気まぐれによりかなり長引いていた。

 

袋を仕舞い、理沙に服を渡した定員が更衣室へ案内しようと一旦レジの奥へ消える。

どうやら回ってこないとこちらに来れないようだ。

 

 

「零司、これ持ってて」

 

 

「ん? 何だいきなり…」

 

 

突然理沙から布を渡される。

何事か理沙を見た零司が瞬時に目をそらす。

 

 

「なっ… お前! なんで脱いでる!」

 

 

「えっ? だって脱がないとこれ着れないじゃん?」

 

 

買った服を広げながら答える。

チラッと理沙の方を見ると、何故か下着すら身につけていない。どうやらあの服の下に何も着てなかったらしい。

慌てて周囲を見回し、従業員口を急いでふさぐ。

 

 

「お客様 どうされましたか!? 開けてください!」

 

扉の向こうで定員の声がするが無視して棒でドアをふさぐ。これでここは開かなくなった。

窓の外に誰もいない事に安堵し、すぐカーテンをしめる。

 

 

「だから! なんでここで着替える! 更衣室があるだろ!」

 

更衣室を指差し、目をつむりながら声を荒げる。そんな零司を気にもせず着替え始める理沙。

 

「えー、だってあそこ狭くて何か理沙嫌い。あっ!まさか零司、理沙の魅力に気付いたー?

ほらほら、もっと見ても良いよー」

 

 

ニヤリと笑い、取り乱す零司に見せつけるように着替出す理沙。

ふと何かを思いついたのか、下着姿でゆっくりと歩き出す。

零司が目を瞑っているのを良い事にじりじりと近づく。

 

 

「なっ… ちょっ… おま… いい加減に…」

 

 

「えいっ!」

 

 

戸惑う零司にがっしりと抱きつく。

背中に柔らかい感触を感じながらもなんとか平常心を取り戻す零司。

ニコニコと笑いながら零司の背中に顔を埋める理沙をなんとか離そうとするが全く離れる気配が無い。

 

 

「……あったかい、零司の体あったかいね、やっぱり零司は生きてるんだよ」

 

突然の言葉に驚く零司、昨日自身が人間ですら無いと卑下した時も理沙はそれを否定した。

それを今度は裏付けるように体のぬくもりを確認する。

 

 

「俺のことを化け物じゃないと否定したのはお前だろ、何を今更」

 

そう、零司がエクザスと同じ化け物だと言った時に理沙はそれを否定した。

零司の事を仮面ライダーと呼んだ。それは伝説のヒーローの名前。

 

 

「そう、零司は零司だもんね。零司はきっと理沙の事を、みんなを守る気面ライダーになるんだよ」

 

 

何時になく真剣な口調で語る。零司の鍛えられた背中をなぞりクルリと零司の正面の方へ行き、零司を床へと押し倒す。

少し目のやり場に困り目をそらす零司の顔を見つめ手を後にかける。

 

 

「そう言えば零司、あの時のお礼して無かったね」

 

 

「そんなこと… お前も俺を助けてくれただろ、アレで十分だ」

 

 

零司が理沙とことをエクザスから守り、瀕死になった零司を理沙が力で治した。

零司からしたらそれはこれで釣り合いが取れたと思っていた。

 

 

「フフっ そんなのじゃ足りないの。 私を救い出してくれた零司にはもっとおっきなお礼しなくちゃ。

だから零司、ちょっと目、瞑って」

 

 

「ハァ!? お前なにを…」

 

 

背伸びした理沙が零司の顔を覗きこむ。そしてそのまま唇を零司の方へ向ける。

 

 

「えいっ」

 

瞬間理沙の唇が零司に触れる。

 

 

「なっ…」

 

理沙が零司の頬にキスをした

 

 

「フフっ、残念ー。 口だと思った? 零司の変態ー」

 

いつもの調子で零司をからかい出す。

一瞬驚いた零司だが、ため息をつくと理沙に文句を言う。

口うるさく咎める零司を尻目にニコニコ笑ってる理沙。

 

 

「あの~ お客様? そう言った事はよそでやってくれません」

 

いつの間にか向け出した定員がそこ立っている。

定員がしちゃいけないような顔をしている。このクソリア充が!と言いたげな顔だ。

 

その後もなんとか脱出した定員にいろいろ誤解され、何故か返り際にこれもまた鴻上の傘下のホテルの名刺をもらう。

何の事か全く分からない零司を見てまたもや、からかう理沙。

 

零司の表情は心なしか豊かだ。思えば零司がこうやって誰かと話すとは初めてだ。

この瞬間も零司の心は何か温かい物で満たされていた。

 

 

 

 

「ルンルンルーン♪」

 

 

鼻歌交じりに歩く理沙、全身をお気に入りの服やアクセサリーに包み上機嫌に歩いている。

鴻上のカードで買い占めた服がよほど気に入ったのか、先ほどからずっとこんな様子だ。

時々、振り返り零司に見せつけるようにクルリと回ったりとしてニヤリと笑う。

 

 

「はぁ、お前…まっすぐ歩けないのか」

 

 

あきれる零司だが気にすること無くくるくる回る理沙。

 

買い物を終えた二人は再び鴻上の元へ向かおうとしていた。

 

 

「だからー、零司、さっきから言ってるけどお前じゃなくて理沙って…」

 

 

「!? 伏せろ!!」

 

そう言いかけた瞬間、周囲に爆発音が響く。轟音に地面が震え爆風が周りを覆う。

爆風から理沙を庇い、音の方を向くと今自分たちが向おうとしていた鴻上ファウンデーションのビルから煙が上がっている。

続けざまにビルが爆発しガラス片が頬をかすめる。

 

 

「なっなに? 何が起きたの?」

 

 

「良くわからんが、どうやら鴻上のビルが爆破されたようだな… クソっ どうなってる!?」

 

 

困惑する理沙をなだめ、頬の傷を拭う。

次々と瓦礫が落下する中、ある一点をじっと見つめる。

ビルの構造は何度も言ったので大体は把握している。先ほど爆破された場所は鴻上の研究室があったはずだ。

さっきチラ見した実験工程表を思い出し、燃えさかるビルの元へ駆ける。

 

 

「ちょっと零司! どこ行くの!? 危ないよ!」

 

 

「お前は隠れてろ! すぐ戻る!」

 

 

理沙を押しとどめ、ビルに突入する。

瓦礫に当たり気を失っている警備員から拳銃を拝借し、人の波を逆らい研究所へと向かう。

 

 

「おいっ! 鴻上! 何が起きた! いや誰の仕業だ!」

 

 

「零司クンか、大変だ! わが社のビルに襲撃が……」

 

デバイスで鴻上に通信するが、返事が返ってくる前にノイズが酷くなり沈黙する。

 

「電波妨害… やはり奴らか!」

 

 

エクザスには周囲の電波をかく乱する能力がある。先日カマキリエクザスに襲われた時と同じような状況が起きている。

このタイミングでの爆破や電波妨害、十中八九イクスの仕業だろう。

 

 

(イクスめ… よりによってこんなタイミングで襲撃するとは、非常に不味い、何としてもアレだけは奪われる訳にはいかない)

 

 

今日、このビルにある研究所では鴻上監修の元ある実験の最終調整が行われる予定だった。

鴻上が長年研究を続けさせ、映司の持ち帰った資料や、零司のもたらした技術を利用し開発させた技術。

 

コアメダルの練成技術だ。

 

もしこれが奴らに奪われるような事があれば一大事だ。

そして何より、研究所には全てのメダルが保管されているのだから。

 

 

 

(コアメダル… やはりこうなる運命なのか!?)

 

 

ここに新たなるメダル争奪戦の幕が切って落とされたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







設定解説コーナー

新たなコアメダル
鴻上が新たに研究し作り上げたもの、俗に言う未来のメダル。
コンセレに追加された新たなメダルの事です。
今のうちは全部で12枚存在する。



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06  強敵と崩壊と海王のコンボ

遂に登場した新コンボです。
実は変身サウンドがまだ分からないので公式サイトの文字をそのまま引用しました。

皆様是非脳内再生で補完してください。


 

 

 

 

「ほう、これがコアメダルですか。実に美しい」

 

 

壁に大きな穴が開けられた研究室に一人の男が佇む。男の足元には気を失った研究員が何人も倒れている。

何故かその全ての体は何故か青白く変色している。

 

 

「これで全て、ではなさそうですね。流石にそこまで愚かではありませんか、仕方ないありません、

は後Sに任せますか」

 

 

保管庫に仕舞われていたコアメダルをケースごと抜き取る。

警報が鳴り響くがパチンっと指鳴らすと一瞬で部屋が凍りつき警報機が沈黙する。

 

ここは鴻上ファウンデーション本社ビルにあるメダルの研究施設、本来はここで新造されたメダルの試験が行われる予定であった。

しかし目論みは、この男達の襲撃によりあえなく散った。

 

最強のセキュリティーを自称していたこの本社ビルだが、空中からの爆撃には流石に対応しきれなかった。

未確認の無人機から発射されたミサイルがビルの中ほどに突き刺さり、次々と誘爆しビルはたちまち燃えさかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(クソっ! 何処だ!? どこに居る!)

 

 

所々から火の手が上がり煙が充満する通路を逆走する。

回路が壊れたのかあちこちで電気が付いたり消えたり繰り返してる。

 

あの襲撃がイクスによるものだと察した零司は本社ビルへと単身突入したのだ。

しかし、めぼしい研究室を先ほどから回っているがどこも襲われた後でもぬけの殻となっている、

中はめちゃくちゃでまるで手あたり次第に破壊しているようにしか見えなかったが、

 

 

(間違いない、奴ら明らかにメダルを捜してる… 無作為に破壊してるように見えて、破壊してるのは一部にしか知られてない

極秘研究所ばかり、なんで奴らがこの場所を…?)

 

「クソっ! ここもか!」

 

いくつ目か分からない部屋の扉を開けてまた悪態をつく。どうやらまたハズレだ。

ビルの規模は非常に大きく、また機密保持のため何処の研究所に何があるかは一部の物以外には伏せられている。

零司ですらいくつかしか分からない研究室をメダルがある可能性の高い所ばかり襲撃されてる。

 

幸いメダルはいくつかの研究室に分散され保管されているが、この状況では全て持ってかれるのは時間の問題だろう。

鴻上からもらったデバイスを頼りに研究室を回っているが何処も手遅れになっている。

 

 

(この手際の良さ、不自然な誘爆、まさか裏切り者が?)

 

 

そう考えるのも妥当だろう。今や鴻上ファウンデーションは世界の一大企業、多少の恨みはそこらじゅうで買っているだろう。

金を積んでいくら研究員を買収したりしたのは目に見える。

 

 

「ここが最後か…」

 

デバイスに示された極秘研究室、見回っていないのはこれで最後だ。

いまだメダルの一枚も、イクスの戦闘員にすら出会っていない。

まさかこれがただの事故で零司の早とちりだったのかと思えるほどだ。

 

 

「部屋は…無傷か」

 

 

部屋のロックを解除し中に入るとそこは先ほどの部屋と違い全くの無傷であった。

どうやら今回は零司が先行したらしい、急いで保管庫や金庫をひっくり返し、メダルを捜す。

今日実験予定だった新造メダルは全部で12枚、グリードのように暴走しない、純粋なエネルギーの塊らしいが、

結局はそれを使う人間次第で、どうとにでもなってしまうのが現実だ。

 

 

「あった! これが新たなメダル…」

 

 

部屋の奥の金庫のケースに仕舞われた3枚のメダルを発見する。

それぞれには魚のような絵がえがかれており、青と赤の独特なカラーリングだ。

 

 

「サメ、クジラ、オオカミウオか、この3枚確保できたのは不幸中幸いか」

 

3枚の入ったケースを金庫から取り出し、しっかりと持つ。

 

この3枚はいずれ大事件を起こすことになるとかつて映司に聞いたことがあった。

未来を変えない為にもこの3枚だけは最低でも確保しておきたかったのだ。

 

 

 

 

「おやおや、先客ですか。 全く私も運が無い。 雑務ばかり任されたと思ったらその矢先これですか」

 

 

靴音を立て一人の男が部屋に入ってくる。白衣を纏っているが先ほどから別の部屋で倒れていた研究員とは違い、

何処か不気味な雰囲気を醸し出している。

 

めんどくさそうに語る男は零司を見るとまたもや悪態をつき、ポケットに手を突っ込む。

舐めていたいたのど飴をバリッと噛み砕き、床に吐き捨てる。

 

 

「ハァ、まさか、こんな所で再開するとは…… 私もますます不運ですね。 必要以上の仕事はしない主義なのですがね…

まあ良い、久しぶりですね、ゼロ。 いや今は火野零司君でしたっけ」

 

 

ニヤリと笑い零司に語りかける男、S。イクスのエージェントにして、かつて映司の前に現れたスパイダーエクザスであり、

零司が今に至った原因の一人でもある男だ。

 

研究所時代にも何度かあった事のある零司の因縁の相手と言っても過言でも無いものだ。

 

「貴様っ!… あの時のっ!」

 

男に向け拳銃を向け、躊躇なく発砲する。

 

 

「おやおや、話す気もなしですか、ならさっさとコアメダルを渡してくれませんか?」

 

その姿をスパイダーエクザスへと変化させると

背中から突如生えたロボットアームが銃弾を両断する。

続きざまに放った弾丸も全てアームの前では全て無意味となる。

どうやらSには通常攻撃は効かないようだ。

 

 

「やはりメダルが目的か、話しなら貴様を倒した後でゆっくり聞かせてもらう!」

 

 

拳銃を投げ捨て、懐からオーズドライバーを取り出す。

 

 

「ほうっ 噂には聞いてましたがまさか、本当だとは。 キミもなかなか面白いな」

 

 

「黙れ」

 

 

余裕こいて語るSを無視し、三枚のメダルを装填する。

 

 

(ゼロのメダルか… いや、理沙の力のおかげか、あの時よりはマシだ。さっさと片付ける!)

 

 

「……変身」

 

 

『ユニコーン』

 

『フェニックス』

 

『リヴァイアサン』

 

 

『ユー二フェーニアー!!』

 

 

 

ユニフェニアコンボに変身する零司。

あれから2回目の変身だが、前回の後の理沙の能力のおかげか、前回ほどの痛みは感じられない。

全身のセルビットの循環を最適化されたことがかなり効果があったようだ。

 

「ほーう、それがゼロですか。いやはや、あの会長の言葉を借りるなら、実に素晴らしいですね。

ゼロのメダルをそのような使い方をするとは」

 

よほど面白いのか、その場で笑いをこらえるかのように語るS。

 

背中のアームを全面に展開し切っ先を零司法に向ける。

 

 

「全く、おとなしくメダルを渡してくれれば痛い目に合わずに済むものを!」

 

 

アームから次々とビームが放たれる。部屋の実験機器が一瞬にして、鉄屑にへと変貌する様を見るにかなりの威力だ。

あちこちを破壊しながら向ってくるビームを上に飛び上がり避け、そのままSに向け突っ込む。

 

 

「ハァ!!」

 

 

「無駄ですよっ!」

 

 

カマキリエクザスよりも数倍強いバリアを張り、零司の攻撃を跳ね返す。

エクザスには敵の攻撃を無効化出来るバリアを展開することが出来る。これをどうにかしない限り勝ち目は無い。

 

「知ってるさっ!」

 

再び放たれるビームを避けながら、一旦廊下にでる。閉所でのビーム攻撃は非常に避けずらく、接近しないといけない

こちらからすれば圧倒的に不利だ。

 

「ハッァ!!」

 

 

「チィ、誘い込まれましたか」

 

攻防を繰り返しながら開けた広場に出る2人。

零司の狙いが分かっているのか、それでも余裕の表情で、ビームとバリアを繰り返し放つ。

 

「だとしてもあなたの勝ち目はゼロです!」

 

「クソっ、さっきからちょこまかと……」

 

すぐそばの柱にビームが直撃し柱が砕け散る。

このままではじり貧だ。

 

離れればビームの餌食になり、近づけば障壁によって跳ね返される。

お互いに決め手に欠ける戦いが続く中、以前零司は不利だった。

 

 

(何故だ、なぜ奴は必要以上に攻撃してこない、奴の狙いはコアメダルの筈、俺を殺してでも奪い取るはずだが)

 

さっきから攻撃のペースがゆるい気がする。

やろうと思えばいくらでもチャンスがあったと言うのにだ。

 

そもそも事の発端はSが回収しようとしたメダルを零司が偶然先に手に入れたからだ。

それなのに、Sは零司の攻撃を打ち消したり、遠くからビームを放つだけで、こちらに積極的に攻撃してこない。

わざわざビルを爆破までした今回の出来事、そう簡単にあきらめるとは考えづらい。

 

 

「貴様っ 手を抜いてるのか! お前が欲しいのはコアじゃないのか、このままじゃ俺はさっさと逃げちまうぞ!」

 

ここは賭けだが思いきって啖呵を切る。

 

「まさか、私は合理的に判断する性格でしてね。 ムダの事はしたくないのですよ」

 

余裕ぶってこたえるS、どうやら必要以上に手を焼きたくないようだ。

 

返事とばかりにより強いビームを放つ。

いい加減時間も立ってきた。決めるなら今しかないと確信した零司はビームの直撃するタイミングで一気に前に出る。

 

 

「そうかよっ! なら!」

 

「だからムダだと…」

 

ビームの合間を縫って接近し、打撃を加えようと大きく腕を振り上げる。

バリアを展開しようとその場に止まりこむSの後ろに回り込み大きく蹴り上げる。

 

 

「なにっ!?」

 

 

「やはりな、そのバリアを張れるのは一方向のみ、余裕こいてるが単に強がってるだけだろ、小心者」

 

 

態勢を崩したSに続けざまにフェニックスレイザーを叩きこむ。

アームの何本かがひしゃげるが残りのアームから苦し紛れに放たれたビームと後に張られたバリアにより、また距離が開けられる。

 

「言いますね、黙っていたら好き勝手に。 ですが、あなたがそんな風になるとは、少し驚きです」

 

 

それでもなお、その態度を崩さない。

やはりこの男は何処か侮れない所がある。油断ならない。

 

「そうかよっ!」

 

 

距離を詰める為再びSに向け拳を振り下ろす。先ほどアームをいくつか潰したおかげか弾幕が薄い。

壊れた柱を盾にしつつジグザグに加速していく。今のSでは追いきれない。

そのままバリアに衝突し、勢いがそがれるが問題はない。

 

『スキャニング チャージ!!』

 

メダルをスキャンし、段々とエネルギーが足に集中する。

フェ二クスの羽が展開し、相手を拘束するとそのままバリアの撃つ側にキックを繰り出す。

 

 

「この距離ならバリアは張れないな!」

 

 

「なッ!?」

 

 

強烈な一撃をSに叩きこむと吹き飛ばされたSが爆炎に包まれる。

 

 

 

 

「…やったか!?」

 

思わずそう口にした所でそれが叶わない事に気づく。

 

煙の向こうでシルエットがゆっくりと立ち上がる。

どうやらやりきれなかったようだ。

 

 

「いやいや、今のは流石に冷っとしましたよ。流石はゼロのメダルの力、模造品とはわけが違いますか。」

 

ほこりを払うように、手を振りながら近寄るS。

その手には砕けたコアメダルが握られている。

 

 

「……疑似メダルと言う訳か。まさかそんな使い方があるとな…」

 

 

どうやら疑似メダルの力を強制解放し、攻撃を打ち消したようだ。

疑似メダルは元々は財団Xが開発した物。疑似メダルに関する技術は財団Xの方が上手らしい。

鴻上ファウンデーションが作ったコピーでは、一度きりの変身でしか使えない欠陥品だ。

 

 

「いやいや、メダルに関する研究ならあなた方もなかなか面白いことをしてるじゃないですか」

 

 

懐から鴻上ファウンデーションのロゴが描かれた機械を取り出す。良く見ると零司が鴻上からもらったデバイスに似ている。

今回の襲撃の際に、メダルだけでなくこの機械も盗み出したようだ。

 

「メダドライブ、と言う名前らしいですよ。どうやらメダルの力を簡単に引き出す事ができるとか」

 

 

そう言いながらSは同じくここから盗み出したハチのコアメダルを取り出すとメダドライブにセットする。

 

 

『ハチ! コア・ロード……  コンプリート!』

 

 

メダドライブを腕にセットすると、ハチの針のようなエネルギー体がSの腕に出現する。

それと同時にメダドライブから流れるエネルギーが全身をめぐり体のエネルギーラインが紫に変化する。

 

「なるほど、これは面白い。ではさっそく試させてもらいますかっ!」

 

メダドライブのスイッチを押すと先端が展開しエネルギーが放出される。

 

『エンター! ハチ! コア・パ二ッシュ!!』

 

「喰らいなさいっ!」

 

 

Sから放たれたエネルギー弾が零司を襲う。

ハチのコアメダルのエネルギーを含んだ攻撃は非常に協力で、防御する零司を段々と押しだす。

 

「ならっ!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

 

2回目となるスキャニングチャージを行い、エネルギーに向いこちらもフェニックスのビームを放つ。

一瞬の均衡の末、2つのビームは爆ぜ、周囲を吹き飛ばす。

 

 

「ハァハァ  くっ……」

 

その場に崩れ落ちる零司。

 

2回の必殺は流石に付加が大きかったのか、胸を抑えた零司はそのまま変身が解除される。

どうにか攻撃は防げたが圧倒的に不利だ。

 

 

「どうやら、時間切れのようですね。ゼロのメダルの負荷の大きさは承知しています。

むしろ良くここまでもちましたね。いや、あの娘のお陰ですか。」

 

理沙の事か、思いだしたのかのように言うS。

この男は一体どこまで知っているのか。

 

 

「さてと、ではさっさとコアを渡してくれませんか? それとあの娘の居場所も。

私はやさしいですから命だけは見逃してあげてもいいですよ。まあ、我々の所に来ればの話しですが。」

 

 

「どっちもお断りだっ!」

 

 

コアをイクスに渡すことは出来ない。おそらく他のコアは奴らが握っている。全てのコアをとられる訳にはいかない。

それにいまさらイクスの元に戻る気などさらさらない。イクスを潰すため、ここまで来たのだ。

そして、理沙を奴らの手に渡すなど言語道断だ、命からがら逃げてきた理沙を再びイクスの手に渡すことは許されるはずが無い。

 

 

「チッ、ならさっさと…」

 

再びメダドライブにエネルギーを重点するS。

その銃口は零司に向けられている。

 

 

(どうする!? ゼロのメダルは今は使えない。 前みたいに理沙だっていない。

何か、他に使えるものは……)

 

周囲を見渡し、不図ある物が目に入る。

 

(そうか、これなら……)

 

ゆっくりと立ち上がる零司、その目にはかすかだが闘志が宿っている

 

「んっ? どうしましたか、考え直す気にもなりましたか」

 

またもや余裕ぶって話すS、奴は強いが所々甘いと思わざるを得ない。

 

「おいS、俺はまだ負けてない」

 

 

「何を、あなたのゼロメダルはもう使えないことは分かって……」

 

 

そこまで言いかけて何かにきずく。零司の手には空のケース。

その中身はいつの間にか腰のベルトに装填されている。

 

 

「まさかそれでをコア使う気ですかっ!? 気でも狂ったのか、あなたではコアは使えないはず」

 

 

「どうだか… やってみるしかないんでな…  変身っ!」

 

 

 

『サメ!』

 

『クジラ!』

 

『オオカミウオ!』

 

 

『サーラーミウオー! サ!ラ!ミーウオ―!』

 

 

ゼロに変身した時と違い、少し苦しみながらもその体を変化させる。

青と赤のカラーリングのアーマーを纏った戦士にへと変わった。

 

しかしその姿はゼロとは少し違う。黒いアンダースーツに特徴的な三色のアーマー。

 

 

仮面ライダーオーズサラミウオコンボだ。

 

 

 

「さあ、第二ラウンドと行こうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




設定解説コーナー

零司のオーズ

先代と映司が変身した物と基本的には同様。
しかし、使用するメダルが過去の物と異なり、新たに作られた物の為
力が不安定でコンボ時のパワーもオリジナルに劣る。
ゼロメダルと組み合わせることで新たな可能性を発揮させる。




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07 敗北と後悔と求める力



CSMオーズドライバーいいなーーー(買えなかった)

と言うことで新コンボの音声が判明した為ドンドン登場させる予定です。

そしてとうとう登場したサラミウオコンボ、他のコンボも早く出したいです。


 

 

 

 

 

『サメ』

 

『クジラ』

 

『オオカミウオ!』

 

 

『サーラーミウオー! サ!ラ!ミーウオ―!』

 

 

力強い音声と共に全身が変化する。

青と赤の流線形のアーマー、クジラを模した巨大なナックル、上半身と対照的に赤い足。

この姿こそ、オーズ。

 

かつての王も、映司も変身することが無かった新たなメダルでのコンボでもあるそれは

底知れない力を感じさせていた。

 

 

「まさか、本当にオーズになるとは…… これはなかなかめんどくさい事になりそうですね…」

 

 

明らかに狼狽するS、何処までも計算ずくのようなこの男でもこの事態は想定外だったらしい。

仮面ライダーゼロはゼロのメダルを使って変身する。

それとは違い、オーズはコアメダルを使う。コアメダルとゼロメダルは似ているようで根本的な部分は違う。

オーズが欲望の器が無ければ変身出来ない、その上そもそも映司にしか変身出来ないはずである。

 

零司には欲望が無かったはずだ。映司のように無くしたのではなくそもそもの欲望を持っていないはずであったのだ。

 

 

「なんとかなったな… さて、第二ラウンドと行こうじゃないか」

 

 

似合わない笑みを浮かべ臨戦態勢を取る零司。

余裕ぶってはいるが、依然不利なのは変わらない。ゼロに変身した反動がまだ残っている状況で、慣れないオーズへの変身。

その負荷は想定以上の物であったのだ。

 

(今度こそ不味いな… オーズになれたは良い物の、この状況でどうした物か…)

 

 

 

「いまさら何をっ!」

 

 

次々と背中からビーム放つS、ハチメダルの力のせいか、攻撃がより激しいものへとなっている。

危なげなくかわしながらも再び攻撃を加える。

 

どうすればこの状況を打開できるのか、どうすれば奴を倒せるのか、それが今の零司には思い浮かばない。

 

(逃げるか…… いや、俺がコアも持っている以上必ず追ってくるはず。それに理沙が心配だ。)

 

結局あの場に置き去りにしてきてしまった理沙の事を思い出す。

あの時はとっさの事で、がむしゃらに突っ込んできてしまった。今思えば何故ああしてしまったのかと後悔が絶えない。

 

 

「フッ、どうしました? 攻撃してこないのですか?」

 

どうやら零司の不調に気付いたのか、再び余裕な声で煽りながら、攻撃を避ける。

サラミウオコンボはスピード特化の攻撃型。今の状況にはあっていない。

替えるコアメダルが無い以上、このコンボでどうにかしなければならない。

 

「だとしてもっ!」

 

敵の上段蹴りをしゃがみ込みながら避け、コンボの高速な一撃をSの腹に叩きこむ。

 

「くっ… 流石はオーズ、簡単には行きませんか」

 

クジラアームによる重いパンチを繰り返し、オオカミウオの鋭いキックを叩きこむ。

流石はコンボの力か、確実にダメージは入っている。

 

(つっ…… これはきついな…)

 

しかし、そのたびに零司の体に負荷が入る。そもそもコンボは大きく体を消耗する。

ゼロのユニフェニアコンボに変身した後、さらにオーズのサラミウオにへと変身したのだ、かなりの負荷があってもおかしくない。

 

 

(まだ、まだだ。何か打開策が出来るまでは…)

 

インファイトに持ち込み、次々と打撃を加えていくが段々と見切られてくる。

 

 

「どうしました? 動きが鈍くなってきましたよ」

 

 

「くっ…」

 

段々と意識が朦朧となってくる。

変身の限界が近づいてきてるのか、攻撃も弱弱しくなってくる。

 

 

「さてと、これで終いです!」

 

 

『コア・パ二ッシュ!』

 

 

再びメダドライブから強烈な一撃が叩きこまれる。

防御しようと手を出すが間に合わない。前回のように再びスキャニングチャージする間もなく変身が解除され吹き飛ばされる。

 

 

「っう……」

 

 

メダルがコロコロと床を転がる。

変身を解除したSがゆっくりと床に落ちたクジラとオオカミウオメダル、そしてリヴァイアサンメダルを拾う。

 

 

「…そのメダルもおとなしく渡してください。」

 

 

なんとか必死につかんだサメメダルを見つめ、Sがゆっくり歩み寄る。

それでも頑なに離そうとしない零司にあきれたのか、その手をグリグリと踏みつける。

 

 

「グッ……」

 

 

「離さないと言うならば……」

 

 

メダドライブの銃口を零司へ向ける。

 

 

 

 

 

「まって!!」

 

突然声が響く、どう言うことだ!?この声は……

 

「んっー? あなたは……」

 

「お前っ!」

 

 

声の方を見ると、息をあげている理沙が立っている。

こっそり零司の後をつけ無理してここまで来たのか、服のあちこちが破れている。

 

 

「あなた達は私を捜してるんでしょ!? なら…」

 

必死にSに訴えかける理沙、しかしSの前でそれは無駄だ。

 

「…脅しのつもりですか、そんなこと無駄ですよ。ここで彼を殺してあなたを連れ変えれば良い話し、

交渉にもなってませんよ」

 

 

Sの言う通りだ。この場で主導権を握っているのは依然彼、この状況でどうしようもない。

 

そうくる事が分かってか、理沙はそれでも臆せずゆっくりと後へ下がる。

 

「じぁあ、これならどう?」

 

 

2,3歩下がるとそこで止まる。そこは戦闘の衝撃で破壊された窓際だ。ここは地上数十階、もしここから落ちたらひとたまりもない。

理沙は恐がることもなく、片足を踏み出す。

 

 

「なっ…!? あなた何を…」

 

 

「私の力はとても貴重なんでしょ? もしここで私が死んだらその力は永遠に失われる」

 

 

どうやら理沙は自身の命を取引の材料とするらしい。

確かに理沙の言う事は理にかなっている。イクスはわざわざエクザスを使ってまで理沙を連れ戻そうとした。

その理沙の命を捨てることは果たしてSにはできるのだろうか。

 

 

「お前! なんで来た! あそこに居ろと…」

 

 

「ごめんね零司。でも私は零司の事を失いたくないの。これが私に出来ることなの。」

 

寂しそうに零司に微笑む。いくら無邪気に振る舞おうとも、自身の過去は変えられない。

その事を理解してるようだ。自身に課された悲しい運命をただ受け入れているのだ。

 

 

「……そうですか、良いでしょう。私もムダな仕事はしたくない主義でですね、本来彼を殺す予定ではありませんし。

その取引に乗ってあげましょう。さあ、私たちの元へ帰ってきてもらいますよ」

 

 

「やめろっ!、そんなことしてお前は…」

 

「大丈夫、零司ならきっとまた助けてくれるでしょ、だからその時まで…」

 

 

背中のアームで理沙を抱え込むとSは壁を破壊し外へ飛び出す。

 

 

「では失礼します、ゼロ。そのメダルはあなたに預けておきます。またいずれお会いしましょう。」

 

お辞儀のようなしぐさと共に外に待機してたヘリへ飛び移る。

 

必死に理沙の元へ駆け寄ろうとするが、ヘリの風圧に吹き飛ばされる。

 

「理沙っー!!」

 

 

そう叫んだ時、零司の周りには誰も居なかった。

一人残された零司はただ突っ立てることしかできなかった。

魂が抜けたかのように立つ零司だが、理沙が消えていった空の一点を見てふと思う。

 

(…そう言えば奴の名前、呼んでやれなかったな…)

 

連れ去られた最後に叫んだ時、それが初めて理沙の名を口にした時だった。

 

零司にはそれを最初の最後にはしたくは無かった。

メダルを握っていた手が無意識に強く握られる。

 

(もっとだ、もっと俺に力があれば……)

 

彼女を守れた。Sを倒す事も出来たし、メダルも守りきる事が出来たはずだ。

究極の力を持つゼロメダルを使っても、さらにオーズの力を使ったのに関わらずこの始末だ。

 

ゼロメダルは無と無限、両方の可能性を内包する。それを使いこなすのは使用者次第だ。

零司にはその力が無かった。

 

彼女を守る力が、敵を殲滅する力が。

 

「力、力さえあれば……」

 

 

何かを求めるのかのように空に手を伸ばす。

伸ばした先の空は黒く、全てを洗い流すかのような雨が激しい降り注いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしいっ! 零司クン! やはりキミは力を求めるか!」

 

 

突然鴻上からもらったデバイスから声が響く。いつの間にかに電源が入っていたようだ。

 

 

「想定より早いが、キミはやはりそうなる運命にあるのだよっ! さあ、何が欲しい? 何を求める!?」

 

その言葉に無意識に答える。零司が欲しい物、それはただ一つ。

 

「……力だ、力が欲しい。全てを守る力が、全てを破壊する力がっ!」 

 

 

「フハハハハっ!! 素晴らしい! 実にすばらしいっ! それだよっ!!」

 

 

高笑いをする鴻上を無視し立ち上がる。デバイスの電源を黙って切ると半壊したビルの地下へと向かう。

鴻上の事だ、どうせそこに居るのだろう。

かつて映司も行ったと聞かされていた地下の保管庫、そこに何があるかは察しがつく。

 

 

(メダルだっ、もっと強いメダルが、もっとたくさんのメダルさえあれば)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

 

何処か暗い倉庫の中で理沙は目を覚ました。どうやらあの後眠らされ、何処か一旦ここに連れてこさせられたようだ。

 

 

「おやっ、目を覚ましましたか」

 

Sが不敵な笑み浮かべ理沙の目の前のイスに腰掛ける。

動こうとするが、腕が縛られ天井に繋がっている。Sに突っかかろうとするが全く動かない。

 

「そう暴れないでください。明日になれば迎えの船が来ます。またあそこへ帰りましょう」

 

「……誰があんなとこ…」

 

かつて理沙が監禁されていたイクスの極秘施設。そこで理沙は長年実験を繰り返されていたのだ。

理沙の記憶に焼きついた辛い過去、その元凶とも言える場所だ。

 

 

 

「ま、そう言えるのも今のうちですね。戻ったらさっさと再洗脳しますがね。

彼との接触は計画の想定外ですからね。記憶をリセットさせてもらいますよ。」

 

 

「っ!? 待って! それだけは! 」

 

 

突如怯え出す理沙。理沙にとってあの場所に戻される事よりも、零司と過ごした記憶が消されるのが嫌だったのだ。

ほんの短い時間だったが、理沙にとって初めての事ばかりだった。

その記憶を消されることが理沙にとって一番辛い事だ。

 

ガシャンガシャンと手錠が音を立てるが、依然手錠はびくともしない。

 

 

「はぁ、全く……」

 

 

Sが注射器を首に指すと、理沙の気が失われる。

空の注射器を投げ捨て、後に立つ同僚に声をかける。

 

「私は先にあの方の元へ向かいます。彼女の施設への輸送はコールド、あなたに任せます。」

 

 

コールドと呼ばれた男が使っていた手鏡と串を仕舞いながら返事をする。

薄暗い倉庫には不釣り合いな真っ白なスーツ着こなした美形の男だ。

 

 

「わかりました。それにしても実に美しいですね、彼女は」

 

眠っている理沙の顔をねっとりと撫でる。

Sがめんどくさそうな目でコールドを見る。

 

「……貴重なサンプルです。くれぐれも手を出さないでくださいよ。」

 

 

「分かってますよ、S。私もそこまで愚かではありません」

 

そうですか、と理沙に見とれるコールドをあしらい、倉庫の重い扉をあけるS。

 

倉庫の扉を開け外に出るとそこは何処かの港だった。

どうやらこのまま船で施設に移送する予定のようだ。

 

 

(さてと、ゼロ……いや火野零司クン、君は一体何処まで行くのか、フフっ実に面白い事になりそうですね。)

 

 

不気味にほくそ笑むS、彼には彼の目論みがあるようだ。

ニヤリと笑いながら口の中の舐めていた飴を噛み砕く。

何処までも不気味な男である。白衣をはためかせながら港とは逆の方向へ歩き出す。

 

 

(彼の進化の礎となってもらうとしますか。恨まないでくださいね、コールド)

 

その冷徹な笑顔には仲間すら平気で乗り捨てる恐ろしさがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、来たね零司クン! キミならきっとここに来る事になると思っていたよ!」

 

 

本社ビル地下深く、爆撃の影響も受け無い強固な地下施設がそこに広がっていた。

鴻上がその私財を投じて世界中から集めた美術品がいくつも並んでいる。

 

中にはメダルがいくつも入りそうな巨大な円盤もある。一体これほどの物をどうやって集めたのだろうか。

 

 

「今回の襲撃では、我が鴻上ファウンデーションも大きな被害を受けた! しかし、それはどうでもいい!」

 

 

この男は本社ビルが爆撃されたというのに、それをどうでも良いと言った。やはり何処か普通とは違う。

しかし、この男はそれほどの器をもっていると言う事でもある。

 

 

「せっかく開発した新メダル、そのほとんどがイクスに奪われてしまった! これは大変深刻な事態だ。

特にあの3枚のメダル! あれは非常にまずい。私がいずれ彼に渡さなければならないメダル、

このままでは歴史が狂ってしまう!」

 

そう非劇的に語るが、何処か芝居じみている。まさかと思うがこの男は歴史が変わっても良いとでもいうのか。

数年後、ある少年に鴻上が3枚のメダルと新型のベルトを渡さなければならないのだ。

その事件が起きなければ、歴史が大幅に狂う可能性があるのだ。

その為には早急に3枚のメダルを手中におさめなければならない。

 

 

(まあ、一枚はここにあるんだがな…)

 

ポケットに入ったサメコアメダルを静かに握る。

なんとか守ったことメダルの事は鴻上には黙っている。これはいざという時の交渉材料として使える。

 

 

「奪われたメダドライブの件も心配だ。 アレと、奪われた大量のメダルがあれば大抵の戦力は無意味となってしまう!」

 

 

 

「…ご自慢のバース部隊もか」

 

 

鴻上ファウンデーション所属の精鋭のライダー部隊ことだ、元軍人を大量に雇い、ライドネットによる恩恵で改良を進めた

新型のバースを導入した最強の部隊。

それさえも、コアの力には叶わない。セルをいくら集めてもコアには叶わないのだ。

 

そして、そのコアすら凌駕する可能性のあるゼロメダル。

 

 

「だからこそキミの出番だよ! ゼロとオーズ、2つの力を使うキミならきっと」

 

 

「いや、オーズは使えない。疑似コアもない以上、使えるコアは一枚もない。」

 

 

オーズに変身するには3枚のコアメダル必要となる。

鴻上に隠してるコアを含めてもあるのはたったの一枚。これでは到底足りない。

 

 

「フッフッフッ、零司クン、確かに新造のコアは全て奪われてしまった。

しかし! 秘密裏に再生したコアがあるのだよ!」

 

 

そう言い取り出したのはエビ、カニ、サソリの3枚のコアメダル。

確かあれは映司が別の仮面ライダーと協力し、出現したコアと言う巨大ライダーを倒した際に失われたはずだ。

それを再生するとは、やはり鴻上のメダルに対する執着は異常だ。

 

 

「そうか、だが鴻上、お前まだ隠し持っているだろう」

 

しかし、そんな事はどうでも良い。

零司は知っていた、鴻上にもまだ隠しているカードがある事を。

 

「なっ何を言うのかね、零司クン。私の持つコアメダルはこれで全て……」

 

 

「そうだな、確かにコアはこれで全部だ」

 

3枚のコア鴻上からひったくり、握りしめながら詰め寄る。

 

 

「遺跡からお前が発掘したゼロメダルは全部で2枚。この前もらったリヴァイアサンともう一枚」

 

 

鴻上の襟をつかみ持ち上げる。体格差があるのに関わらず鴻上の体は簡単に浮き上がる。

 

 

「よこせ! 持っているのだろう、『ドラゴン』のゼロメダルを!」

 

 

「しかしあれは……」

 

 

口ごもる鴻上。

奴の言いたいことは良く分かる。まだ解析途中のアレだが、とあるメダルに近い特性を持つことが判明している。

恐竜コアとだ。

 

メダルを破壊する無の力を持つ恐竜コア、それと同程度の力を持つドラゴンメダル。

恐竜コアは全て完全に失われたため、これが唯一のメダルを砕く力。

 

コアメダルを破壊する力を嫌う鴻上にとってこのメダルは良い物ではないのだろう。

 

 

「問題ない、俺はメダルを砕く気は無い。それにあれはまだ覚醒してないはずだ」

 

 

ゼロメダルは発掘された状態では全て黒で覆われ、その力の一部しか発揮できない状況にある。

俺の持つフェニックスはイクスにより、リヴァイアサンは鴻上の技術により、ユニコーンは理沙に力によって

覚醒した。どのメダルがどのような条件で覚醒するかは判明してないが、ドラゴンはまだ覚醒してない。

この状況ならば、鴻上の危惧してることもきっと起こらないだろう。

 

「零司クン、キミは一体なにを目指すのかい?」

 

 

「……少なくとも俺は終末を求める気はない、今のところはそれだけだ」

 

 

鴻上を離し、放る。スーツのしわを伸ばす鴻上に背を向ける。

手に入らないのなら仕方ない。元より覚醒してないゼロメダルなどほとんど使い物にならない。

もしもの時の保険として手元に置いてきたかっただけだ。今のメダルさえあれば理沙を助けに行ける。

 

 

「待ちたまえ!」

 

振り返ると鴻上が小箱を投げ渡す。リボンが付いたおしゃれな箱だ。

 

 

「……どう言うつもりだ」

 

中身は何か、持っただけで分かる。俺の中のフェニックスメダルが共鳴してるのを感じるからだ。

鴻上はあれだけ渋った癖に、何故か零司にやすやすとこれを渡した。

 

 

「ゼロメダルには無限の可能性がある。キミならそれさえも無現の力に変えると思ったからだ

零司クン、君ならそれが出来るはずだ。」

 

そう言い残し部屋を去る鴻上。

小箱を開けるとそこには真っ黒なメダルが鎮座している。

ほとんど力は感じられないが、それでも何処か凶悪な空気を感じる。

 

(待ってろ、理沙…俺が…必ず……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






設定解説コーナー

仮面ライダーゼロ

零司が3枚のゼロメダルで変身した姿。
コアメダルとの共用は出来ず、アンダーのカラーも黒でなく白に代わっている。
無と無限の力を司ると言われており、未知の力を持つ。
変身すると強大な負荷がかかる為、最大限変身しないスタイル。





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08 監禁と屈辱と白馬の王子



仮面ライダージオウ、とうとう発表されましたね!

今までの平成ライダーの力を使うと言う事は、
私の好きなオーズやエグゼイドがどうなるか非常に気になります





 

 

 

 

 

 

 

カウント・ザ・メダルズ!

 

現在零司の使えるメダルは…

 

ユニコーン フェニックス 

 

ドラゴン(未覚醒)

 

 

サメ エビ カニ サソリ

 

 

 

 

 

 

「ひぃ、ふぅ、み、とこれで全部ですか…」

 

 

暗がりの部屋、Sは一人強奪したコアメダルを机に並べていた。

いくつかは同じ幹部であるであるコールドに預けている。一人で全てのコアを持つのには危険だた考えたからだ。

 

鴻上が新たに作ったコアメダルは全部で12枚、復元した物を含めると15枚。

そのうちの大半である11枚がイクスに手に渡っていた。

 

そしてこの男、Sの手には6枚のコアがある。

コールドに持たせた5枚と合わせて11枚。それだけで十分な量のコアがイクスの手にある。

 

「さてと、彼は一体どうするのでしょうか、楽しみですね」

 

しかし、Sは満足していない。

彼の目的はまた別の物だった。

 

 

(コアメダル、そしてゼロメダル。実に面白くなってきましたね。

これは私の仕事も増えそうですね。)

 

 

ニヤリと笑うSの手には2枚の黒いメダルが握られている。

 

先ほど零司から奪ったリヴァイアサンともう一枚の謎のメダル。

 

(ゼロメダル… まさかこんなものがカギだったとは、計画の調整が必要か)

 

 

立ち上がるとその姿が一瞬にして霧のように消え去る。

まるで初めからそこに誰も居なかったかのような違和感さえ覚えるほどにSは不気味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(サメにエビ、カニ、サソリ。コンボが使えるがやはりこれだけでは…)

 

 

保管庫のエレベーターの中、零司は独り手に並べたコアメダルを眺めていた。

鴻上によって復元された3枚となんとか守りきった1枚。

頭、体、足を構成するコアは全てそろっているため、オーズへの変身は可能だ。

 

強大な力を持つが、不確定要素が多すぎるゼロメダルの力には極力頼りたくなかった。

今までも戦闘中に強烈な痛みに苛まれたり、変身解除されたりと、確かに強いが使いにくいのが本音だ。

 

 

「やるしかないか…」

 

 

コアを握り締め、開いたエレベータ―の扉をくぐる。

まだ修理が終わってないのか、エレベーターの外は酷い有様だった。

床に散乱するガラスの破片を踏みつぶしながら、ビルの奥へ向かう。

 

少し歩みを進めると、ビルの地下駐車場につく。

ここは地下な為襲撃の被害比較的が出ていないが幸いだった。

 

「確かこの辺りに…」

 

 

周りを見渡すと目的の物はすぐ見つかった。

黒い自動販売機のような機械に近づくと端末をかざす。

 

ピピッと電子音がなると自動販売機が音を立て、バイクに変形する。

 

ライドベンダーⅡ、鴻上ファウンデーションが新たに開発したライドベンダーの後継機だ。

セルビットによる電子決済に対応し、ネット上からセルを補給する事が可能となった最新モデルだ。

今では当たり前になった自動操縦システムもハイレベルな物が搭載されている。

 

 

ギュルーン!

 

バイクにまたがりヘルメットをかぶるとアクセルを勢い良く回す。

 

 

(待ってろ、理沙!)

 

バイザーを下げ一気に加速する。

砂塵をまき散らしながら道路に出る。

目的地は分かっている。

 

どう言う訳か、あの後匿名で海岸の廃倉庫に少女が監禁されていると連絡が入ったのだ。

パッと見怪しいが、この際仕方ない。

イクスに戻されれば一体どんな目に会うのか、イクスに長い間いた零司には分かる。

 

あれだけ貴重な能力を持っているのだ、もう二度と脱走などしないよう、洗脳されるのは目に見えている。

 

 

 

ライドベンダーを駆り、道路を疾走する零司。

自動操縦システムが法的速度違反の警告を鳴らすが無視して手動運転に切り替える。

 

「クソっ! 邪魔だ! もっとスピードが出ないのかっ!?」

 

 

前に走る車を次々と抜かし、段々と加速していく。

ライドベンダーⅡは様々な機能を追加した新型機だが、それを大量生産するとなると性能を落とさざるを得ない。

その上零司は自動操縦を無理やり解除し運転してる為なかなかスピードが出ない。

 

舌打ちを打ちながら、交差点を右折する。

港まであと7キロ、急いではいるがまだ理沙の元には遠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

 

廃倉庫の中、何か冷たい感触を感じ再び目を覚ます理沙。

Sに薬を打たされ気を失っていた理沙だが、天井から垂れる水滴が頬を濡らしゆっくりと目を開ける。

 

「おや、もう目を覚ましたんですか。 全くSは薬の分量くらい把握して欲しいですね」

 

 

床に転がる空注射器を拾い上げ、理沙の元に近づくコールド。

良く見ると注射器の中には半分ほど薬が残っている。

全部注射されなかったためか、理沙は予想より早く目を覚ましたのだ。

 

 

「あのまま寝てたら、そのまま洗脳手術を行えた物を、あなたもなかなか不幸ですね。

さてと、Sには止められてましたが、折角目を覚ました事ですし、少しだけ味見でもしましょうかね…」

 

 

嫌らしい目付きで理沙を舐めまわすように見つめるコールド。

彼の趣味は美しい物を集める事だが、それは宝石などだけではない。

 

コールドの性癖はかなり歪んでいる。

自分が気に入ったものならそれが例え人間であれコレクションに加えたがる。

 

「Sとの約束ですから私のコレクションに加えられないのは非常に残念ですが、

まあ今回は味見だけで勘弁してあげましょう」

 

 

手のひらを開くと、残っていた注射器の液体が一瞬で氷つく。

それと同時に倉庫内がまるで冷蔵庫の中のような冷気に包まれる。

 

「……氷結能力、まさかそんな使い方をするなんて悪趣味だね」

 

明らかな侮蔑の目を向ける理沙。

当たり前だ、本人の前でコレクションに加えるなど言われれば誰でもそうなるはずだ。

 

「ほう、悪趣味とは心外な! 私はただコレクションを一番良い表情で保管したいだけですよ。

時には幸せそうに家族といる所を凍らせ笑顔に、ゆっくりと足から凍らせ苦悶の表情を。

いやー、どれも美しい! あなたにはそれが分からないようですね」

 

 

「……やっぱ悪趣味、言っとくけどそんなこと絶対ないから。」

 

 

目の前で淡々と語るコールドに嫌悪感を示す理沙だが、この状況ではどうしようもないのも事実だ。

手は天井から伸びるコードに拘束され、動こうとしても動けない。

 

 

 

そんな理沙を見つめコールドは何かを思い出したように理沙の顔に近づく。

 

 

「……なによ」

 

 

「いやぁ、とても良い事を思いつきましたよ!」

 

嬉々として声を上げるコールド。

にやりと不気味に笑うと理沙の顎をくいっと持ち上げる。

 

思わず、小さな悲鳴を出す理沙。予想外の事に少し戸惑っている。

 

「あなたと一緒にいた彼氏? いましたよね」

 

顎を持ち上げたまま覗きこむように理沙の目を見つめる。

 

「……零司はそんなのじゃないよ」

 

 

少しだけ悲しげに答える理沙。

本当はそうなりたかったのか、零司に好きか?と聞いたり、キスをしようとしたリした時も、

零司は理沙の事をどう思っているのか、それが不安だったのだ。

だからキスをしようとしたときも直前で頬にし誤魔化したのだ。

 

 

「フーン。 とにかく、片思いでも何でもいいですがあなたにはそう言った人がいる。

ならする事は一つしかありませんよ!」

 

「一体n……んんっ!?」

 

なにをと言いかけた理沙の口を自身の口でふさぎ無理やり唇を奪うコールド。

もごもごと暴れる理沙を抑え込み、ゆっくりと口づけをする。

 

なんとか抜けだそうと唯一自由な足でコールドを蹴りつけるがびくともしない。

顔をふりなんとかコールドから自由になる。

 

 

「よくも…よくもっ! 私の…!!」

 

涙を浮かべながら今にもつっかりそうな理沙。

零司にささげようとした、それでも出来なかったそれをコールドは簡単に奪い取ったのだ。

 

「ハハハハッ! 実に良い表情です! そう、それが見たかった! もう約束なんてどうでも良い!

あなたは私のコレクションに相応しい! いやそうなるべきだ!」

 

手をかざし、力を込めるコールド。瞬時に周囲の気温が下がり出す。

天井から滴る水滴が一瞬にして糸のように氷つく。

 

次第に理沙の肌が青白くなっていくのを感じる。

 

 

(あーあ、結局こうなるんだ…私… あの時、してたら良…かっ…た……)

 

 

次第に意識が薄れていく理沙、その瞳にあの不器用だけどもやさしい彼を思い返す。

一緒にいた時間はとても短かったがそれでも理沙にとっては全てだった。

 

囚われていた自分に手を指し伸ばしてくれた。

それが嬉しかった。

家族にも捨てられ、何も無くなった心を満たしてくれた。

そんな零司の事が気づけば好きになっていた。

 

 

「れ…いじ…」

 

 

なんとかその名前を口にする。

そこまでで、声が出なくなった。

 

(なまえ、呼んでほしかったな……)

 

 

 

「理沙っ!!」

 

 

『フェニックス! ゼロ・ドライブ!』

 

声とともに廃倉庫の扉が破壊され、不死鳥の形をした炎が飛び込んでくる。

一瞬にして氷を溶かしつくし、炎が消えると、音を立てバイクが突っ込んでくる。

 

「れい…じ?」

 

 

「そうだ。助けに来たぞ理沙」

 

 

ヘルメットを投げ捨て、理沙の元へ駆け寄る零司。

ロープを破壊すると、倒れる理沙をゆっくりと抱きかかえる。

 

 

「…れいじ? 本当に零司だ、幻じゃないよね?」

 

 

「何を言う? 当たり前だろ俺は零司だ、どうやら本当に王子様の真似ごとをするとはな…」

 

肩をすぼめる零司。

囚われた理沙を助け出した零司は正に王子様だった。

 

「もっとも、今必要なのは王子じゃなくオーズだがな」

 

理沙を下ろすとドライバーを腰に当てる。

フェニックスの炎で吹き飛ばされたコールドが怒りをあらわにし、零司の元へ迫る。

 

本人からしてみれば、史上最高のコレクションを得る機会をつぶされたのだ。

手をかざすとその姿をフリーズエクザスへ変える。

 

 

「冷凍能力…なるほど、冷蔵庫のエクザスか」

 

「貴様っ! 良くも私の最高のコレクションを!!」

 

 

「べーだ。私の初めてを奪った罰だ! 零司、ぼこぼこにしちゃって!」

 

アッカンベーでコールドを挑発する理沙。

来るまでの間何かあったようだが、今は気にしないでおこう。

 

「だ…そうだ。 なら遠慮なくやらせてもらうぞ」

 

3枚のコアメダルを装填する、鴻上から奪ったなんとか奪われなかった3枚の新造コア。

以前のような茶色ではなく、鮮やかな色へと変わったメダル。

 

 

 

「変身!」

 

 

『エビ!』

 

『カニ!』

 

『サソリ!』

 

 

『ビーカーソー! ビーカーソー! 』

 

 

仮面ライダーオーズビカソコンボへと変身する。

赤と紫の装甲に手に携わった巨大なカニクロー、甲殻類の特徴である防御力と瞬発力を合わせもつコンボだ。

 

「オーズだと!? 何故彼が……」

 

 

変身した零司を見明らかに狼狽するコールド。

……おかしい、Sから情報が来ている筈だ。それなのにあの様子、何かあったのか?

 

(…そんなことどうでも良い、今は奴をどうにかするしかないか)

 

 

 

コールドの氷の粒を防ぎつつ奴の間会いに一瞬で飛びこむと強烈な打撃を繰り返す。

今のオーズはコンボ、圧倒的な力を持っている。

 

「ハァ!」

 

回し蹴りを喰らわすと、たまらず後退するコールド。

 

カニクローを構えコールドへ接近する。

しかしコールドとて一筋縄では無い、今度は周囲に冷気を発生させる。

 

「何っ?」

 

 

クローがコールドを捕えようとした瞬間、足元か滑り攻撃が宙を切る。

気づけば、床が凍りスケートリンクのようになっている。

 

これではビカソコンボの瞬発力を生かせない。

コールドは冷気を操る能力を持っている。当然そこで有利に戦うすべもだ。

 

 

「さあ、どうしましたか? 私を倒すので無いのですか?」

 

 

氷の上を自在に歩きがら挑発する。

どうやら奴は氷を操るだけでなく、氷の状態すら操れるらしい。

 

零司の足元の氷は固く滑りやすくなっているのに対し、コールドの足元だけが安定している。

 

 

「チッ、これなら!」

 

 

メダドライブを取り出し腕に装着する。

フェニックスのメダルを再びセットし、地面に銃口を向ける。

 

『フェニックス ゼロ・ロード』

 

 

「氷には火だ!」

 

 

大火力の火を発生させ、周囲の氷を全て溶かし尽くし空中へ飛び上がる。

コールドが驚いて見上げるが、瞬間天井を打ち抜く。

幸い今は夕方、まぶしい日差しがコールドへと差し込む。

 

 

「なっ……」

 

 

見上げたコールドがまぶしさに目がくらんだ瞬間にカニクローを空中から振り下ろす。

空中からの振り下ろし、ビカソコンボの重量のある重い一撃だ。

 

「グハッ……」

 

 

「これでどうだっ!」

 

着地と同時にメダドライブをを構える。

コールドは先ほどの攻撃に依然眩んでいる。

決めるなら今しかない。

 

 

『ドラゴン! アンノウン!』

 

虎の子のドラゴンメダルをメダドライブにセットする。

鴻上から苦労して奪った禁断のメダル、この力なら確実に奴を葬る事が出来る筈だ。

 

先ほどの一撃で、膝をついていたコールドに向け引き金を引こうとする。

 

 

『エラー!』

 

 

「なっ!?」

 

 

しかしそれは不発に終わる。

コールドが復帰し攻撃を仕掛けようとする。

仕方なく、スキャニングチャージを使おうとするがその瞬間不意に声が響く。

 

 

 

「そこまでです! 今すぐ変身を解除しメダルを渡しなさい」

 

 

「なん……だと」

 

振り返るとそこにはいつの間にかSが立っている。

一体いつの間に現れたのか、戦闘に集中してたとは言え零司は全く気付く事が出来なかった。

そしてその手のうちには

 

 

「……ごめん、零司」

 

 

Sが握る銃口の先に理沙がいる。

どうやら人質を取られたようだ。

 

「貴様……!」

 

 

渋々変身を解除し、コールドから離れる零司。

Sにベルトから抜いたメダルを投げ渡す。

 

満足気に微笑みメダルを受け取るS、何かに気付いたのか一瞬顔をしかめるが無視しそのままメダルを仕舞う。

 

「……S! 今までどこにいたのですか、おかげでこっちはいろいろと…」

 

ほこりを払うように方を振るいながら立ちあがるコールド。

形勢が一気に逆転した。

 

2対1に加えこちらは人質を取られている。

 

 

(どうする!? どうやってこの状況を打開する!? 

ゼロの力か? いや、あれでは理沙を巻き込む。

オーズか?だめだ、メダルがない…)

 

 

必死に考える零司、これまでもどうにか切り抜けてきたのだ、きっと何か手はあるはずだ。

しかし、どう考えても打開策が思いつかない。

必死にいくつものパターンを考えるがどれも成功率は0だ。

 

今の零司には圧倒的な力がある、しかしそれを生かせるかと言われたたら話しは別だ。

一人でイクスと戦ってきた零司、どんな困難でも一人で突破してきた。

 

そんな零司には決定的に足りないものがあった。

 

 

 

 

「S,トドメは私にやらせて下さい、このガキには散々な目にあわされましたからね、

ただ殺すだけでは私の機嫌が収まりません」

 

 

勝手に約束を破っておいて何だ、と言いたげな目を向けるSだがコールドの前で動けないでいる零司を見て、

コールドに答える。

 

 

「良いですよ、手柄はあなたに譲ってあげましょう さっさと始末してくださいよ」

 

理沙を連れ端へ寄るS、Sとしては目的さえ達成出来ればそれでいいのだ。

 

 

「では、遠慮なく!」

 

 

『ウシ! コア・ロード!』

 

 

取り出したコアドライブにウシのコアメダルをセットする。

どうやら盗まれたコアドライブは一つでは無かったようだ。

 

エネルギーが銃口に重点し、チャージが開始する。

ゆっくりと銃口を零司に向けるコールド、こころなしか楽しそうだ。

 

 

(クソっ! どうする… もう打つ手は……)

 

 

歯ぎしりする零司、今の零司にはどうする事も出来ない。

ただ向けられる銃口も見つめることしか

 

 

「零司!」

 

必死に飛び出そうとする理沙だがSに阻まれどうしようもない。

自分を助けに来てくれた零司がピンチだと言うのにどうすることも出来ない自分にいら立ちながら、決死に声をあげる。

 

 

 

「さあ、終わりです!」

 

 

(ダメなのか… 俺はっ!)

 

引き金に置かれた指がゆっくりと引かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「零司に何してるんじゃボケぇーーー!!」

 

 

「へっ?」

 

 

突然の怒声と共に銃弾が降り注ぐ、気の抜けた声を出したコールドがひるんだ瞬間

なにか筒状の機械がいくつも投げ込まれる。

 

 

『カマキリカン! コンドルカン! サイカン!』

 

 

筒状の機械がそれぞれ動物に変形し、コールドを襲う。

まとわりつくカンドロイドを振り払おうとするがカンドロイドはすばしっこく動き、コールドの攻撃をかわす。

 

 

困惑する零司のそばに2人の人影がよる。

 

 

「大丈夫か、零司!」

 

 

「助けにきたわよ!」

 

 

声の方を見るとそこには零司が良く知る2人が立っていた。

 

 

「兄さん、姉さん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





設定解説コーナー


ライドベンダーⅡ

鴻上ファウンデーションが新たに開発したライドベンダーの後継機。
見かけは旧版とほとんど同じだが、内部はほとんど違う。
セルメダルだけでなくセルビットに対応した為、デバイスによる電子決済が可能となり手持ちのセルメダルが
無くても利用可能となっている。
また新型のカンドロイドも多く搭載されており、そちらも電子決済が可能。
バイクモードでは自動運転となっており、バイクが乗れない人でも乗る事が出来る。




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09 絆と逆転と次世代バース



Be The oneやっと見れました。
ネタバレになるので感想は控えますがとにかく最高でした!

そんなことより最近のビルド、壮絶過ぎません!?
残り2話で一体どうなる事やら……


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人ともなんでここに…」

 

 

思わす困惑する零司、2人には黙って事を進めてきたはずなのにそこには零司が巻き込みたくなかった2人がいる。

 

 

「どうして… 2人を巻き込まぬようにしてきたはずだ…」

 

 

ため息をつく誠司。奈々とを目を合わせると零司の元へ駆け寄る。

 

「零司、お前は独りで抱え込みすぎなんだよ、」

 

そう言い手を差し伸べる誠司、隣に居る奈々も同じく零司に手を指し伸ばす。

 

今まで一人で戦ってきた零司に足りなかった物、それは仲間だ。

巻き込まないようにと遠ざけてきた結果、一人なっていたのだ。

 

「兄さん、姉さん、俺は……」

 

 

「零司、少しは私たちを頼りなさいよ、なんたって私たちは零司の家族なんだからねっ」

 

「そうだ、それに隠しごとはダメだと言っただろ」

 

そうだった、俺を受け入れてくれたのも、寄り添ってくれたのも家族だった。

それがなんだ、こんなに頼れる人がずっとそばにいたのに零司は自分から遠ざけてしまっていたのだ。

 

かつての父さんの話しを思い出す。

映司もこうやって仲間の手を取り合う事で強くなれたのだ。

 

なら俺がすることは一つだ。

 

「「零司!」」

 

2人の声に答え手をとる零司。

 

 

 

 

「何なんですかあなた達っ」

 

 

本日2度目の邪魔が入り、怒り狂うコールド、カンドロイドをはねのけるとこちら銃口を向ける。

 

 

「っ…! 2人とも下れ…」

 

 

思わず2人をかばう庇うように手を伸ばす零司だが、誠司は黙って零司の肩をつかむ。

今度こそダメなのか!?と思う零司、しかし誠司の表情は全くの真逆だ。

 

「言っただろ、俺達を頼れって。 あっ後それと隠しごとがあるのはお前だけじゃないぜ」

 

零司を押し抜けコールドの目の前に立つ誠司、銃口を向けられていると言うのにずいぶんと余裕だ。

不思議がる零司やコールドを無視し悠々と話し出す。

 

 

「俺達が何者かだって? なら教えてやる! 通りすがr……」

 

「……誠司」

 

「ごめん何でもない姉さん」

 

 

何か聞いたことがあるかのような決め台詞言いかけて、奈々ににらまれる誠司。

ゴホンと咳払いをし気を取り直した誠司は再びコールドの方を向く。

 

 

「なら教えてやる!」

 

(無かったことにした…)

 

コールドに向けビシッと指を指し、カバンから見慣れぬドライバーを取り出す。

同じくカバンからメダルケースをとり一枚抜き取るとカバンを投げ捨てる。

 

「俺達は零司の家族だ! そして俺も……」

 

ニヤリとほくそ笑んだ誠司はドライバーを腰に巻くとセルメダルを親指ではじく。

あれはバースドライバー!? しかし良く見ると中央にあるはずの丸いパーツが円柱型に代わっている。

同じく驚くコールドに見せつけるようにメダルをキャッチする。

 

「…仮面ライダーだ! 変身っ!」

 

メダルを挿入し、ダイヤルを勢いよく回すと機械音を立てアーマーが展開される。

全身に丸いパーツが展開され一瞬でその姿を変える。

 

 

「バースだと!?」

 

「いや、リバースだっ!!」

 

 

仮面ライダーリバース、バースの後継機にして完全上位互換、量産型の開発によって開発が中断されたと

聞かされていたが、誠司はそのリバースへと変身した。

 

 

「どっちでも良い! 今頃出てきたってこっちには人質がいる、それにオーズでなければ…」

 

 

「えいっ!」

 

 

突然膝に蹴りを喰らうコールド、変身しているとは言えかなりいたそうだ。

腕を振るうと、蹴りを喰らわした理沙が零司と元へよる。

 

 

「理沙っ!なんで…」

 

「いやー彼女、強いですねー。お陰で人質を取り逃してしまいましたよー。 それにあれまで…」

 

白々しく語るS、どうやら奈々姉さんがSから理沙を奪い返したようだ。

コールドにむかってまたアッカンベーをする。

 

 

「この… 良くもっ!」

 

理沙に向け引き金を引くコールド。しかし、

 

 

『エラー』

 

 

「なにっ!?」

 

メダドライブを見るとはまっていたはずのウシコアがいつの間にか抜き取られている。

もしやと思い、理沙の方を見るがもう遅い。

 

「零司っ!」

 

理沙が零司に向かってウシコアを投げる。

蹴った時にどさくさに紛れドライブから抜き取ったのだ。

 

 

「しかしこれでもまだ2枚……」

 

 

「零司っ! これ使って!」

 

奈々もまた零司にメダルを投げ渡す。

Sからなんとか奪い取ったカニのコアだ。

 

2枚を受け取り、誠司の横に並び立つ零司。

その顔は自身に満ち溢れている。

 

 

「いくぞ、兄さん」

 

 

「応っ!」

 

 

『サメ』

 

『カニ』

 

『ウシ!』

 

オーズサカシフォームへと変身する。偶然3枚が丁度良くそろったのだ。

サメの頭とカニのクロー、ウシの突進力とコンボでは無い物のバランスの良いフォームだ。

 

どさくさの3枚のメダルの変身であったがどうにかうまく行った。

これで再び戦況は逆転した。

 

「これは不味い…では私はこれで……」

 

黒い霧に包まれSの体が消える。

 

リバースとオーズが並び立つのを見て、流石に不利と思ったのかSはこの場から姿を消す。

残されたコールドだが、それでも先ほどの怒りが収まってないのか、2人に向け攻撃を開始する。

 

「何人いようがまとめて叩き潰して!」

 

 

「奈々姉! 理沙をたのむ! 行くぞ兄さん!」

 

 

「ああ、任せろ!」

 

お互い目を合わせ、突っ込んでくるコールドを見据え左右に分かれる。

一瞬迷ったが、すぐに零司の方へと氷の粒を乱射するコールド。

 

クローで攻撃を防御し、攻撃の隙を誠司が主砲の砲撃で襲う。

砲撃で眩むコールドに零司がすかさずクローで追撃をかける。

 

「ちょこまかと… そんなに死にたいならあなたから!」

 

『ガゼル コア・パ二ッシュ!』

 

メダドライブを構え誠司に向け、ビームを放つ。

射線上にいた誠司はたまらず避けるが、それでもいくつかが直撃する。

 

「グッ… この程度で、リバースをなめるなよっ!」

 

多少の傷があるがそれでも損害は軽微だ。

強大な負荷と制限時間を持つリバースは通常のライダーシステムとは一線を越えた性能を持つ。

コアの力を使った砲撃でさえも、防ぐ事が出来るのだ。

 

スタビライザーを作動させ、空中に飛び上がりお返しとばかりにビームを乱射する。

氷を発生させ、攻撃を防ぐコールド、その隙に零司が誠司と合流し息をあわしキックを喰らわす。

 

「ハァ!!」

 

「なっ!? グハッーーー!」

 

コールドのど真ん中に命中し、そのまま倉庫の壁を突き破り外へと吹き飛んでゆく。

着地した2人もコールドを追い倉庫の外へと飛び出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……零司」

 

 

コールドと激戦を繰り広げる零司、それを理沙はただ黙って零司の無事を祈るしかなかった。

奈々に連れられとりあえず安全な所まで来たが、時折聞こえる爆発音に不安になりながらも、零司を信じ待つ。

 

「…あなたは零司の事を思ってくれるのね」

 

独りよがりだった零司の事をここまで思ってくれる人がいる事におろどきつつも、納得する奈々。

零司の本質を理解してくれる人がいつか…とずっと思っていたのだ。

この少女ことは詳しくは知らないがそれでも零司の事を信じてくれてるだけで奈々は全て納得できた。

 

「ねえ、零司のお姉さん?」

 

「奈々で良いわよ」

 

 

「奈々さんにとってさ、家族って何?」

 

先ほどの零司を見て思ったのか、自身の手を握り締めながら問う。

家族を捨てた理沙に家族を得た零司、その事が理沙の頭で引っ掛かっていた。

家族とはあんなにも頼れるものだったのか?

家族を捨てた理沙には分からない。

 

 

「難しい質問をするわね… そうね、私も大層な事言える立場じゃないけど

それでも一つはっきりしてることがあるわ」

 

 

暗い顔をする理沙の手を握り二コリと笑う奈々。

家族が何かなんて奈々にもはっきりとは分からない。それでも分かってる事はある。

 

 

「こうやって手を取り合えば誰だって家族よ」

 

 

かつて映司が究極の選択を迫られた時に出した答え。

こうやって心を通わせ、手をつなぎ合えば例え世界のどんな人だって家族。

 

「手をつなげば家族?」

 

もうひとつの手を見つめ、最初に零司にあった時の事を思い出す。

零司が指し伸ばした手、それを理沙は確かにつかんだ。

 

「……なんだ簡単だね…」

 

零司が掴んでくれた手を握りしめる。

今まで考えてた事がばかばかしくなってくる。

 

こんな簡単な事に気づかず、ずっと悩んでいたなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉庫の壁を破り外へ飛び出す3人。

破片をまきちらしながらも転がるコールドは怒りをあらわにし、次の攻撃の為に周囲を一気に凍らせる。

 

2人の連携により完全にペースを乱されたコールドはここで一気に2人諸共潰そうと渾身の一発を構える。

 

「あいつ何かしでかす気だぞ、どうする零司!?」

 

周囲のエネルギーをためるコールドの様子を見て流石にヤバイ空気を感じる誠司。

先ほどとは比べ物にならないスピードで周囲の温度が下がって行っている。

このままだと、何か強烈な攻撃を繰り出すに違いない。

 

なんとか有利だが、こちらには制限があるため、いい加減にどうにかしないと今度がこっちが劣勢になってしまう。

体の消耗を感じた零司は誠司の方を向き覚悟を決める。

 

 

「次で決めるぞ。 行けるか兄さん」

 

 

「たりめーだ!」

 

 

うなずきそれぞれスキャナーとセルメダルを握る2人。

エネルギーがたまったのか、その巨大なエネルギーを2人に打ち出すコールド。

 

「今度こそ! 永遠の眠りを!!」

 

これを喰らえばいくら2人でもひとたまりもない。

 

そんな中誠司は臆することなく、コールドの方へ進む。

 

「行くぞっ! 氷野郎! 俺達の力みせてやる!」

 

 

『セル・バースト! セル・バースト! セル・バースト!』

 

続けざまにベルトにメダルを挿入すると腕に構えた巨大なハサミ型クローが発光する。

 

 

「……これで、終わりだっ!」

 

『スキャニング・チャージ!』

 

メダルをスキャンし、3つのリングがコールド目掛け展開する。

こちらもカニクローにエネルギーを重点して構える。

 

 

「2人まとめて、潰してやりますよっ! 死ねっ!!」

 

 

絶対零度の一撃、当たれば正しく一撃必殺。

しかし2人はそんな一撃に臆することなく一気に突っ込む。

リングをくぐるたび加速し一瞬で距離を詰める零司、半歩遅れてクローを構える誠司。

 

「「ハァーー! セイッヤーーーーー!」」

 

「まさか…私がーーーー!?」

 

2人のクロー攻撃がコールドの渾身の一撃を切り裂き、そのままコールドの体を切り裂く。

続けざまにクローが直撃し、爆発と共に吹き飛ぶコールド。

 

地面に着地しクローを仕舞う2人。初めてのコンビネーションだと言うのに2人の息はぴったりだった。

爆風と共に飛んできたメダルをキャッチする零司、ふと横を見ると誠司が手を指し伸ばしている。

 

 

「やったな零司!」

 

 

「……ああ、そうだな」

 

 

少し照れながらも誠司が伸ばした手にタッチする零司。

困難からの勝利は、家族の絆が生んだ、今まで独りよがりだった零司には考えられなかった結果だ。

 

(そうか、これが……)

 

 

誰かを頼り、信頼して戦う。

そんな簡単な事さえ零司には出来なかったのだ。

 

 

「なんだ、こんなにも簡単じゃないか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ 何故私が……」

 

 

少し離れた路地裏、コールドはなんとかあの攻撃から絶えていた。

しかし、そのダメージは強烈で常に手入れをしてた美しい顔は醜い物へと焼くき焦げている。

 

 

「私の…私の顔がっ! 良くも…」

 

 

水たまりに映った代わり果てた自分を見て発狂するコールド、コールドの屈辱は計り知れないものだった。

 

 

 

「おやおや、これはこっぴどくやられて、虎の子のメダルさえ盗られるとは」

 

姿を消したはずとSが悠々とコールドの元へ歩いてくる。

折角奪った貴重なコアを失ったと言うのにやはり余裕の表情だ。

 

コールドの顔を見て肩をすぼめる、期待はずれだとでも言いたげな顔だ。

 

 

「S! あなたさえいればこんな事には…」

 

 

Sに突っかかるコールド、なんとか動く片腕でSのスーツの胸元をつかむ。

しかし、虫を払うかのようにコールドの手を払いのけたSは懐から一枚のメダルを取り出す。

 

 

「フッ、そうですか、ならあなたの欲望、解放してみてはどうでしょうか?」

 

黒い渕、零司しかもってないはずのゼロメダルを握りしめるとコールドの懐からいつの間にか抜き取ったコアメダルを掲げる。

 

「S? あなた一体なにを?」

 

明らかに普段と様子が違うSに困惑するコールド、思わず逃げようとSから背を向ける。

 

 

「もう遅いですよ、さあ、あなたも欲望解放しなさい!」

 

コアメダルをコールドに向け投げると、コールドの頭に挿入口のような物が現れ、コアが体の中へ吸い込まれる。

 

 

「ウッ… あなた、私に何を!?」

 

 

「さあ、時期に分かりますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わり、か。長い一日だったな……」

 

変身を解除した零司は肩を撫で下ろす。

良く思い返せば、朝鴻上の元へ行き、そのまま理沙と買い物、本社の襲撃の末、今の戦闘と、

非常に過酷な一日だった。

 

理沙と出会った昨日の事がずっと昔のように感じる。

昨日理沙と出会い、そして初めて仮面ライダーとなった。

 

仮面ライダーとはどんなものなのか、それを理解してなかった零司だが、今こうやって家族や仲間と助け合ったことで、

それがどんな意味なのかを実感する。

 

一人では決して出来なかったことだ。

 

誰かを助ける為に戦う仮面ライダー、それは決して一人の力では無い、皆で助け合う事で初めて成立するのだ。

 

 

 

「零司!!」

 

 

「おわっ!?」

 

奈々と共に戻ってきた理沙がいきなり抱きついてくる。

疲れきっていた零司には受け止めきれずそのまま地面に倒れ込む2人。

 

 

「もうっ! 零司のバカっ! 無茶ばっかり!」

 

涙目で零司の胸をポカポカ叩く理沙。

 

 

「それはお互いさまだろ」

 

フッと頬笑み返す零司、2人ともお互いの為無茶を重ねてきた。

そんな2人だからこそこうやっていられるのだ。

 

叩くのを止めた理沙は零司の胸に顔をすぼめる。

 

 

「……怖かった、零司との思いでが消されるのが、理沙の全部が奪われるのが」

 

 

顔を埋めて泣きじゃくる理沙、零司はただ黙って抱きしめる。

どうすればよいのかとチラッと奈々の方を向き助けを求めるが無視される。

どうやら自分でどうにかしろと言う訳のようだ。

 

 

「……でも、零司がいてくれたから」

 

 

顔をあげると、涙をぬぐう。

そのまま零司の目をゆっくりと見つめる。

 

 

「ねえ零司、ちょっと目瞑って?」

 

「……分かった」

 

 

一瞬渋ったが理沙の言葉を受け入れた零司がゆっくりと目を閉じるとそのまま零司の顔に手をかける。

 

そのままの状態でしばらく躊躇した理沙だが、勇気を振り絞り零司の唇にそっと自分の唇を重ねる。

 

 

「なっ……!?」

 

驚いて目を開いた零司だが、理沙の顔を見、また目を閉じる。

 

衝撃の光景にかたまる誠司と奈々。

自分の弟が何時の間にこんな事になってるとは想像もつかなかった。

 

 

「えへへ、今度こそ零司のもらったよ!」

 

コールドにされたのを打ち消すように強烈なキスをした理沙は勝ち誇ったように固まる2人にブイサインをする。

 

 

 

「まさか零司が…… よし、奈々姉! 今夜は赤飯だ!」

 

勝手に騒ぎ始める誠司。

 

「ちょっとまって…えーと、2人はそうゆう関係…?」

 

 

「おい待て、何故そうなる!?」

 

慌てる零司、しかし理沙はそんな零司に抱きつき不満そうにする。

 

「えー、違うのー だって零司は私の王子様なんでしょ?」

 

 

「王子様っ!? ちょっと零司! 私たちのいない間に一体なにが……」

 

飛び交う衝撃発言に頭がパンク寸前の奈々、どうすればよいのか分からず困惑する零司。

 

 

「いや、確かにそうは言ったが…」

 

 

「言ったの!?」

 

思わず突っかかる奈々。自分の弟がいつの間にかそんなロマンチストみたいになってたなんて…

 

 

「いや!、そうだがあれは……」

 

 

「いやー兄さんうれしいよ。まさか弟に先を越されるとは…」

 

 

もう何が何だか、そんな零司を見て理沙は満足気に微笑む。

 

 

(やっぱ理沙は零司の事……大好き!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






設定解説コーナー

リバース

鴻上ファウンデーションが新たに開発していたバースの正統後継機。
表では量産型バースの開発の為プランは凍結されていたが、鴻上会長の元裏で開発されていた。
バースが様々な人に適合しやすくなるようになっているのに対しリバースは完全な上級者向けとなっており、
厳しい特訓が無ければまともに扱えない。
誠司が鴻上会長に頼み、零司に内緒で特訓を行っていた。



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