アサルトリリィと呼ばれた男 (岡村優)
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設定1


長すぎるので複数回に分けます。

ネタバレを含む可能性がございます。予めご了承下さい。

また、疑念に思いましたら直接お願いします。


船坂家

 

元々の家名は、岡村家である。日本に置ける最も古い家でニニギノミコトと共に天下ってきた一族である。(諸説あり)その際、当時の当主が天照大御神より、天羽々斬を受け取り、代々天皇家を守護している。

 

当家では、天羽々斬を持つ者が当主とみなされ、現在百之助が269代目に当たる。

 

 

船坂百之助

 

年齢 17歳

 

誕生日 4月11日

 

身長 180センチ

 

武術 義経流兵法 薬丸自顕流

 

職業 学生 又は 近衛軍少将 (守護者)

 

所属レギオン 白襷隊→一柳隊

 

レアスキル

 

ルナティックトランサー 神速 七人御先 ラプラス ヘリオスフィア ファンタズム(後の2つは樟美と、天葉から血を吸った為)

 

好きな言葉 一所懸命

 

口癖 大和魂を見せてやる!  

 

性格

 

戦になると笑いながら敵を倒すが、基本的に殺生を好まず人間であれば苦しまない様に首を確実に斬り飛ばす。ヒュージであっても一撃で倒すことを美学にしており。根は優しい。日常生活に置いても後輩やら先輩が困っていると助けたりする。しかし、1年生からは嫌われていてその事で凹んだりする。 

   

 

使用武器 (現時点)

 

100式機関短銃→38式歩兵銃→99式長小銃改→40式歩兵銃

 

95式軍刀 天羽々斬 30年式銃剣→40式銃剣

 

14年式南部拳銃 MP17

 

19式対艦ライフル砲武御雷

 

経歴(本篇は、少し齧る)

 

皇紀2713年(西暦2053年)4月11日生まれ、双子の兄として誕生、物心つく前から船坂徳永(曾祖父)及び朽井迅三郎光景(先祖)から戦う為の技術を叩き込まれる。そうしている内に途中からゲヘナから助け出された冨永伊吹、弟の船坂裕也と共に戦う技術を叩き込まれる。

 

 6歳になると3人共、迅三朗より太鼓判を押され特尉待遇で三人と、姉達と共に台湾奪還戦に参加。船坂家の大半がこの戦いで戦死した。その後上が軒並み戦死したことにより百之助は、中尉となる。

 

 その後、ゲヘナなどの潜入や、強襲等を行い戦果を上げる。しかし、8歳の時の強襲作戦において夜々と言う吸血鬼に出会い。彼女の意思を継ぐことにし、彼女の力を継承した。(守護者になった)その際様々な要因が重なり精神が病んでしまい、船坂家一同の決定により百合ヶ丘女学院に伊吹と共に放り込まれる。

 

百合ヶ丘に放り込まれて直ぐは、周りが女子しかおらず、心を完全に閉ざしていたためなかなか馴染めず孤立していた。その事に気を揉んでいた学院側の配慮により当時の外征旗艦レギオンである白襷隊に入る。勿論この時の隊長は当時14歳であった船坂千夏

(百之助の姉)だった事もありとても可愛がられていた。そのおかげかだいぶクラスに馴染める様になり、依奈を始めとするクラスメイトから話し掛けられるようになった。

 

しかし、あいからわらず戦い方が捨て身の突撃であったのでそれに関してはクラスメイトだけで無く教官からも苦言を言われていた。が、どこ吹く風であった。

 

桜島防衛戦にて白襷隊前衛隊長に任命された。この役割はスピアヘッド(槍手)で最も戦死率の高い役割であり、大変重要な場所である。ひたすら正面を支え続けアルトラ級を撃破した。

 

その後も初等部時代は軍の命令でアルトラ級を遠距離から撃破したりしたため軍内部では「アルトラ級キラー」と言うあだ名まで付けられていた。(使用したのは武御雷)

 

中等部では、途中編入組(夢結、天葉)等が入って来るが。雰囲気が、軍人のそれである為受け入れられなかった。特に当時は夢結と対立していた。理由は百之助が戦いにしか興味がなく、戦いしか生きる道が無かったのを夢結が真っ向から否定していたため。ただ傍から見たらそれは痴話喧嘩にしか見られなかったそう。

 

因みにだがいつから付き合いはじめたかは本人達が頑なに言わない為現状では分からない。

 

中等部二年時に、甲州撤退戦が発令。これに参加した。

 

この戦いでは、百合ヶ丘の生徒20名が亡くなっておりその内の16名が白襷隊であった。白襷隊は退路を絶たれたリリィ全員と一般市民を助けるため自ら捨て身の突貫で退路を開きこれを維持、全員が脱出したのを確認した上で、全員の玉砕を持って敵を撹乱及び足止めを行い、百之助と、伊吹のみが生還した。(この二人に関しては不死身であったため。また、百之助に関して言えば昏睡状態)

 

この際、夢結はシュツエンゲルと恋人を失った(百之助は、戻ってきたが昏睡状態)事で自分を責め、ふさぎ込んでしまった。

 

百之助は、百之助で、このことに関しては反省しており、できるだけ死なない様に心掛けることとし、夢結にスキンシップを取るようになり夢結をよく甘やかした。戦い方は、全く変わらなかったが。

 

これにより数多の通り名が付けられるようになった。(ゴシップも含む)

 

余談ではあるがヒュージの撃破数(アルトラ級のみ)180体以上、対人に至っては、不明である。

 

現在近衛軍第一師団長である。

 

 

 

冨永伊吹

 

年齢 17歳

 

誕生日 6月5日

 

身長 184センチ

 

武術 二天一流兵法 義経流兵法

 

職業 学生 又は 近衛軍大佐 (監視者)

 

所属レギオン 白襷隊→一柳隊

 

レアスキル ファンタズム

 

 

好きな言葉 乱れ撃つぜ!

 

口癖 死にたくないなら戦場にのこのこやってくるな。

 

性格

 

基本的に大雑把。基本的に人とは関わらない人間だが、人助けはしてしまう。百之助より人望が厚い(百合ヶ丘では)

 

使用武器(現時点)

 

ウィンチェスターライフルM1895→スプリングフィールドM14(予備)

 

刀二振り(銘なし) M1917銃剣→M6銃剣(予備)

 

トーラスレイジングブル二丁 トーラスジャッジ二丁

 

サバーニャ

 

経歴

 

皇紀2713年(西暦2053年)6月5日生まれ。産まれてすぐにゲヘナによって誘拐され、人体実験で無理やりチャームユーザ(男版のリリィ)に改造される。4歳の時にゲヘナの研究施設が防衛軍の特殊部隊により壊滅、その際助け出される。その後船坂家預かりになった。

 

その際百之助と出会い一緒に戦うことを決意、一緒に訓練受けた。その後百之助と共に、台湾奪還戦に参加。百之助を掩護し、二人共生き残る。

 

その後は百之助と共に、ゲヘナなどの潜入、強襲をした。百之助がその際精神崩壊直前にまで陥ったがこれを支えた。その後百之助と共に、百合ヶ丘に放り込まれる。

 

百合ヶ丘では、ほぼ無言を通す予定であったが流石に不味いと思い話しかけられれば答えていた。しかし辛辣過ぎたためクラスメイトからは嫌われていた。その後百之助と共に、白襷隊に入り百之助と共に奮戦した。

 

甲州撤退戦では瀕死の重症を負ったが、その際神と名乗る人物から不死身にしてもらったため直ぐに復活。

 

その後、御台場迎撃戦などの戦いにてひたすら他のリリィの代わりに重症を負っては復活を繰り返した。その結果他のリリィからは更に距離を置かれた。(天葉曰く死神)が、ほかのリリィを手当したりしていたためそこまで酷くは無かった。

 

現在近衛軍第一師団第一大隊長である。

 

 

船坂文香

 

年齢 15歳

 

誕生日 12月8日

 

身長 160センチ

 

武術 義経流兵法

 

職業 学生 又は 近衛軍少尉

 

所属レギオン 一柳隊

 

レアスキル 

 

ルナティックトランサー ブースト 縮地 円環の御手

 

好きな言葉 見敵必殺

 

口癖 ゲヘナは、絶対許さない…

 

性格

 

基本的には優しい。百之助のストッパーで、良く一般人に向けて言ってはいけないことを自重させる。言いたいことははっきり言うが少し感情がこもりすぎる癖がある。

 

使用武器

 

ブリューナク二機

 

HK45二丁

 

小太刀(銘なし)

 

経歴

皇紀2714年(西暦2054年)12月8日生まれ。船坂家の娘ではあるが愛人の娘である為母親によって6歳まで育てられる。

 

6歳の時、母親がゲヘナの強化リリィに眼の前で殺され、心に深い傷を負った。

 

その後、船坂家に引き取られ「船坂文香」となる。姉妹や兄弟とは仲が良かった。

 

7歳の時百之助が帰って来なかった為、一晩中泣いていた。

 

甲州撤退戦の後、百之助が重症を負ったことにより近衛軍に入隊、その二年後には百合ヶ丘女学院に入学する。

 

近衛軍第一師団第一大隊第一中隊第一小隊長である。

 

 

ギン

 

年齢 1080歳

 

誕生日 5月3日

 

身長150センチ

 

武術 不明

 

職業 刀鍛冶 又は 防衛軍少将 (監視者)

 

レアスキル ルナティックトランサー

 

好きな言葉 不明

 

口癖 言い回しが少々古い。

 

使用武器

 

大太刀、小太刀(銘は蝶と蜂)

 

性格

基本的には優しいが、自分の作った物を壊されると激怒する。しかしそれはそれで仕方が無いとは思っているので次はそうならない様に日々改良を続ける。酒が入ると小躍りし始める。

 

経歴

 

皇紀1650年(西暦990年)5月3日生まれ。父親は酒呑童子、鬼である。産まれてすぐに監視者となった。

 

 

5歳の時に襲撃を受け武士により父親が討伐される。その際、流石に子供は殺せなかったのかギンのみ生き残る。途方に暮れたギンであったが、刀鍛治に拾われ事なきを得る。

 

ひたすら修行を重ね一流の刀鍛治になったが鬼である為、山奥でひっそり暮らしていたが、ある日迅三朗が自分の家の刀鍛治とした。

 

その後迅三朗は、政権争いに巻き込まれて流人になった事を知り、また山籠り生活に戻った。

 

その四年後にまた迅三朗が来てまた連れ出した。そして頃くして迅三朗が自分と同じく監視者である事を知る。

 

迅三朗は、妻が死んだ段階で家督を子に譲り自身はギンと共に、山籠りをする。

 

ギンは腕は良かったので沢山の発注が掛かり、沢山の武具を生産した。基本的には迅三朗が対応した。(鎌倉後期から、江戸時代末期まで)

 

明治になり迅三朗とギンは迅三朗の本家から招集された。そのまま家に、組み込まれた。

 

その後は迅三朗と共に、軍刀を製作(迅三朗は、事あるごとに戦に参加していたが)

 

戦後は仲良く暮らしておりヒュージ出現の際には、ギンのみが継承していた技術によりチャームを、完成させ各国に売り込んだ。

 

現在でも新しくチャームを作った場合著作権により金がギンの元に集められている。

 

迅三朗とは、台湾奪還戦の後に結婚している。

 

 

朽井迅三郎光景

 

年齢 830歳

 

誕生日 8月1日

 

身長 140→170センチ(監視者になったため)

 

武術 義経流兵法

 

職業 元鎌倉御家人 防衛陸軍予備役大将 百合ヶ丘女学院教官

 

レアスキル 縮地 ヘリオスフィア ファンタズム 天の秤目

 

好きな言葉 一所懸命

 

口癖 一所懸命

 

使用武器

 

太刀 脇差 和弓

 

性格

 

命知らず、百之助が突撃戦法を取るのは迅三朗の指導によるもの。戦以外のことはすべて投げ捨て、それしか知らない。

 

経歴

 

皇紀1900年(西暦1240年)8月1日生まれ岡村家(後の船坂家)分家朽井家に生まれた。その後鞍馬山にて、今であれば虐待レベルの鍛錬を行い6歳で初陣。戦果を上げた。

 

家督を継いだあとは海賊狩りやら野党刈りやら行っていたが勢力争いに敗れ流人として対馬に送られる。

 

対馬では蒙古軍と戦い守護代である宗家家中の者や刀祓い(防人の末裔)と共に。対馬ヲは守ろうとするが壊滅。その後も生き残った者達とともにゲリラ戦をしていたが元軍の船に忍び込み博多に渡る。

 

その後も戦い2度の猛攻を退けた。その功績により流人から御家人に戻るが本家である岡村家が病で殆どが無くなったため迅三朗が家督を継いだ。元々4人の妻が居たが全員病で無くなった為に岡村家を継ぐ際、また妻を持った。

 

子供が生まれ、妻が死ぬとギンを連れて山籠りをした。

 

そのまま明治まで刀鍛治をしていたが岡村家に呼び出された。

 

その後も刀鍛冶と軍人をやっていたが日本に軍隊がなくなったため刀鍛治になる。

 

次に表舞台に舞い戻ってきたのは南極戦役でその後も防衛軍の上層部に居座り続けた。

 

最後の戦いは台湾奪還戦であった。この時、総司令官であったアメリカ軍の大将が判断を誤り戦線が打壊しかけた際、撤退を具申したが聞き入れずイギリス陸軍が孤立した。流石に不味いと感じた迅三朗は、宗助国から賜った平知盛公の甲冑を纏い、防衛軍の戦力を持ってイギリス陸軍の撤退を掩護、全滅を免れた。その際馬に乗って最前線で鼓舞した。

 

その後これ以上は戦闘は不可能となり全軍撤退。敗退した。

 

余談ではあるが。イギリス陸軍の指揮をとっていたのはイギリス王室の王子で後に王になった際、迅三朗はこのときの功績により爵位と勲章を賜った。その後イギリスで特集が組まれその都度出演し、今までの経緯やら、戦績やらを話しイギリスでは「サムライ」の名で通っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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設定2

船坂寧次

 

年齢 38歳

 

誕生日 5月25日

 

身長185センチ

 

武術 薬丸自顕流

 

職業 近衛軍中将

 

 

性格

 

愛妻家で人目をはばからずイチャつく。とても良い親父である(子供が二人いる。どちらもリリィ」

 

 

経歴

 

皇紀2692年(西暦2032年)5月25日生まれ。8人兄弟、船坂家次男として生まれる。

 

学生時代はやんちゃしていたようである。

 

表舞台に出てきたのは甲州撤退戦で、近衛軍の指揮をとった。

 

日本国防衛軍・近衛軍戦力

 

陸軍

 

140万人

 

70師団(空挺師団・戦車師団含む)

 

武装は自衛隊から引き継ぐ。

 

空軍

 

90万人

 

総機数3000機(戦闘機のみ)

 

武装は自衛隊から引き継ぐ。爆撃機などを新たに購入している。

 

海軍

 

95万人

 

8個機動打撃群 9個潜水艦隊 その他多数

 

総艦艇数約140隻

 

海軍の場合は、海上自衛隊の艦艇はすべて退役し、一新されている

 

大和型戦艦8隻

 

長門型戦艦8隻

 

改大和型空母8隻

 

護衛空母16隻

 

その他駆逐艦など

 

水陸機動軍(海兵隊)

 

30万人

 

12個水陸機動師団

 

おおすみ型強襲揚陸艦24隻(海軍も同じものを保有、足りない場合はそれを使う)

 

 

近衛軍

 

数不明

 

8個師団

 

 

 

用語解説

 

運命の囚人

 

ヒュージを作った神々に対抗すべく、敵対する神々がリリィやチャームユーザから選びだした者たち。全員が不死者で、全員が単独で巣なしのアルトラ級を仕留めることが出来る。

 

守護者

 

運命の囚人の中から4人選ばれる。運命の囚人の中で最も強い力を与えられている。

 

現在の守護者

 

第一席 吸血鬼 船坂百之助

 

第ニ席 錬金術師 ハインリヒ・クンラート

 

第三席 魔女 ベアトリーチェ・モルティナーリ

 

第四席 聖女 ジャンヌ・ダルク

 

監視者

 

運命の囚人の中で守護者に選ばれなかったもの

 

冨永伊吹

 

ギン

 

朽井迅三郎

 

船坂愛奈

 

以下約5000名

 

兵器解説

 

大和型戦艦

 

同型艦 大和 武蔵 信濃 紀伊 周防 蝦夷 美濃 出雲

 

全長 580メートル

 

武装

 

主砲 61センチ超電磁加速3連装砲3基

 

副砲 20センチ超電磁加速3連装砲2基

 

高角砲 76ミリオート・メラーラ スーパーラビット砲12基

 

その他 ファランクスなど

 

説明

 

この艦艇は、前級である長門型戦艦を超えるべく建造された旗艦級戦艦で、射程は脅威の2500キロメートル。対艦ミサイルの射程を超えているため大艦巨砲主義が復活した。これによりすべての艦艇が装甲を持っている。また、この艦艇は自身の砲撃に耐えるよう設計されている。

 

 

長門型戦艦

 

同型艦 長門 陸奥 土佐 加賀 甲斐 薩摩 近江 対馬

 

全長 510メートル

 

武装

 

主砲 46センチ超電磁加速4連装砲4基

 

副砲 15センチ超電磁加速3連装砲2基

 

高角砲 76ミリオート・メラーラ スーパーラビット砲8基

 

その他 ファランクスなど

 

解説

 

クーデターの後、構想段階であったが突貫で開発製造した超電磁加速砲を載せるべく建造された戦艦。射程が予想を超えて優秀であったので各艦隊の旗艦として設計されている。また、アメリカ海軍の戦艦を遥かに越えていた。(パナマ運河の関係がある為大きく出来なかった。)また唯一、戦争に参加した超電磁加速砲搭載型戦艦である。

 

 

改大和型空母

 

同型艦 蒼龍 飛龍 瑞鶴 翔鶴 大鳳 龍鳳 天城 赤城

 

全長 580メートル

 

武装

 

艦載機数 97機(偵察機含む)

 

機関砲 ファランクス4基

 

解説

 

正規空母はすべてアメリカ海軍のお下がりで殆どが老朽艦であったためにそれを一新すべく建造された。なお、可及的速やかに建造しなければならなかった為大和型を再設計し、建造した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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設定3

第一遠征打撃群や、新しい面子の設定です。また、ネタバレを含みます。


第一遠征打撃軍とは、殆どが突撃擲弾兵(リリィやチャームユーザーの軍名称)で構成され海軍陸戦隊、陸軍、水陸機動軍、近衛師軍から突撃擲弾兵を集めた軍であり、世界の現状を打開すべく編成された軍である(補給部隊は通常編成なので一般兵である)。遠征打撃軍の名の通り要請があり次第世界のどこにでも派遣される。

 

第一遠征打撃群

 

総指揮官 船坂百之助中将

 

作戦参謀長 石川精衛少将

 

副官 船坂裕也大佐

 

 

第9近衛師団(近衛軍から)

 

師団長 冨永伊吹少将

 

作戦参謀 岡村桜大佐

 

副官 山本彩中尉

 

 

第58歩兵師団(陸軍から)

 

師団長 伊予島零少将

 

作戦参謀 結城達也大佐

 

副官 柴田樹少佐

 

 

第8空挺師団(陸軍から)

 

師団長 船坂千夏少将

 

作戦参謀 冬月蓮大佐

 

副官 白井鈴少尉

 

 

水陸機動軍第1師団(水陸機動軍から)

 

師団長 高山水樹少将

 

作戦参謀 谷端零夜大佐

 

副官 遠山若葉少佐

 

 

海軍陸戦隊第7師団(海軍から)

 

師団長 船坂桜花少将

 

作戦参謀 大山椿大佐

 

副官 鷲尾美森中尉

 

 

第1騎兵連隊(近衛軍から)

 

連隊長 朽井迅三郎光景大佐

 

作戦参謀 ガリウス・ユリウス・カエサル少尉

 

 

以上、第一遠征打撃軍は五個師団一個連隊、約11万人(この内5千人は補給部隊である)で編成されている。船坂百之助中将は、突撃擲弾兵総監と言う役職も持っており、日本のすべてのガーデンの総指揮権も付与されている。

 

なお、第1騎兵連隊は運命の囚人のみで編成されているため、ずば抜けて戦闘能力が高い。(昔の日本が迫害された魔女などを積極的に受け入れた為である。)

 

 

 

軍正式チャーム

 

突撃擲弾兵にのみ使えるチャームで軍人以外は使用が許されていない。(ガーデンに所属している軍人も許可が下りる)

 

30式チャーム

 

このチャームは色々なバリエーションが用意されている。基本的には性能が変わらないが、長さや大きさが違う。

 

製造は豊和工業開発は山本美保野を首魁とする防衛軍第2工廠(後の帝国軍第2工廠)

 

小銃型(30式1型)

 

一般的に持たされる方である。ボルトハンドルの付いていない38式歩兵銃のような外見にフォアグリップが付いている。

 

セーフティは38式歩兵銃と同じ場所に付いており突起が頂点の時がセーフティで右に回すとフルオート、左に回すとセミオートである。

 

銃剣は着脱式では無く展開式でスライドして展開される。

 

射撃の威力は単発の場合は、光弾ではある物の、実弾仕様のアステリオンと同等である。

 

なお銃剣は格納状態でも使用可能。光学サイトは38式歩兵銃の狙撃型同様、左側のレールにはめ込むが38式と違い斜め上ではなく真上に来るように逆コの字型になっている。

 

ノインベルト用のバレットを入れる場合はボルトハンドルが無いが38式を分解する容量でボルトを取り出してそこから装填する。なお、撃ったあとはバレットは消滅する為排莢の必要はない。

 

全長 1320ミリ(銃剣格納時)、1690ミリ(銃剣展開時)

 

銃剣等身長 550ミリ

 

20ミリ砲

 

 

狙撃型(30式2型)

 

狙撃型の変更点は、フォアグリップの付け根部分のボタンを押すとバイポッドが展開される。

 

もう一つはセレクターのフルオートの部分がビームに変更されている。

 

 

機関銃型(30式3型)

 

機関銃型の変更点はフオアグリップがバイポッドに変更された事である。

 

 

騎兵型(30式4型)

 

全長 955ミリ(銃剣格納時)、1305ミリ(銃剣展開時)

 

銃剣刀身長 450ミリ

 

騎兵型の変更点は全長を短くし、馬上での取回しを良くした点である。短い分、射撃時の威力は劣る。

 

 

空挺型(30式5型)

 

統一されてはいないが、主に狙撃型、機関銃型、騎兵型を折り畳みストックにした物である。空挺では短い方が良いのだが、機関銃型と狙撃型は威力が欲しいとのことでこのようになった。

 

 

また、一人ひとりチューニングする為、他にもバリエーションがある。(軍内ではこれに関しては正式な物としていない)

 

 

散弾砲型

 

騎兵型を、散弾にしたタイプ。セレクターの内容も異なる。セーフティは変わらないが、左に回すと散弾右に回すとスラッグになる(勿論どちらも光弾、実弾では無い)

 

代表的なチューニングで、代表例が船坂佐奈(本人が射撃が得意ではない為である。)

 

船坂佐奈

 

誕生日 6月2日

 

年齢 15歳

 

身長 150センチ

 

武術 薬丸自顕流

 

職業 近衛軍軍曹

 

レアスキル

 

ファンタズム、ルナティクトランサー、縮地、鷹の目

 

使用武器

 

30式チャーム散弾砲型、刀(雲洋)、M1901ウィンチェスターソードオフ(射撃が致命的な為拳銃ではなくこれを使っている。)、クロスガードライトセーバー(通常青、ルナティックトランサーを使用すると赤くなる)

 

性格

 

天然、基本的に笑っている。抜けている部分もあるが剣術に関しては超舌である。剣術が得意でそれ以外がざるである。(模擬戦で夢結が押されるレベルである。)射撃が致命的である為面制圧でそれを補う。

 

船坂の血を持つ者である為、非常に戦いが上手いが、ルナティクトランサーを発動すると味方は攻撃しないものの敵が居るだけ戦い続ける為に手が負えない。いつも妹の由奈がストッパーの役割をしている。

 

 

船坂由奈

 

誕生日 6月2日

 

年齢 15歳

 

身長 151センチ

 

武術 義経流兵法

 

職業 近衛軍伍長

 

レアスキル

 

天の秤目、ルナティックトランサー、縮地、ファンタズム

 

使用武器

 

30式2型、刀(秋水)、オートマグV、Vz85スコーピオン、フォークライトセーバー(通常緑、ルナティックトランサー発動時赤)

 

性格

 

性格は夢結に近い、基本的に喋らず受け答えのみであるが、はっきり物は言う。姉が天然である為、フォローすることが多い。狙撃を得意とし、接近戦は他の人より出来るが船坂家の中では最弱である為接近されないように弾幕を張り、最後の手段で刀を抜く。

 

由奈と佐奈が組むと対抗できるのは百之助以外では迅三郎だけである。

 

 

里見さとり

 

誕生日 8月2日

 

年齢 17歳

 

身長 159センチ

 

武術 警視流

 

職業 近衛軍兵長

 

レアスキル

 

ルナティックトランサー

 

使用武器

 

30式3型、刀(八重)、M1911A4改

 

性格

 

何を考えているのか全く分からない不思議少女、感情が分からず表情も読めない為、物凄く分かりづらい。

 

剣術は確かなもので、対人戦闘(実践)で負けたことが無い、銃火器はほぼ使用しない、ハンドガンに至ってはほぼ新品である。

 

使っているところが見れたらその日はお祭り騒ぎになるほど実践で使ったことが無い。本人も使う気がサラサラ無い。なのでほぼ剣術である。

 

射撃に関しては機関銃で狙撃ができる程の技量を持つが殆ど使わない。

 

里見家のご令嬢である為、悟り姫と呼ばれている。

 

 

試作人形 ABRー00 ソヤ

 

使用武器

 

 

AR15

 

デザートイーグル50AE 6インチ

 

GLOCK21

 

レミントン V3 TAC13改

 

40式銃剣

 

ライフルピット 14機

 

突撃に特化している百之助を支援する為だけに銃器設計技士のマイケル・ブローニングによって設計された戦闘人形で、この人形自体がチャームである。

 

駆動方式はマギとパワーパックで駆動させるがマギの方は人形自体がタンクになっており、事前にマギを供給して置けば百之助から離れていても問題はない。(万が一マギが戦闘中に枯渇したときの為に百之助と、ソヤには同様の腕輪が付いており腕輪をとうしてマギを送ることが可能である。(これに関しては錬金術師のハインリヒが、腕輪を作成した。)

パワーパックは、原子炉を使用している。

 

ほぼ人間と同じように生活が可能であり、外見も肌の感触もほぼ人間と同様である。食事に関しても燃料にするために摂る(食べ物は分解して原子炉の炉芯にする。廃棄する場合も分解して被爆しないようにしている。)ソヤの名前の由来はマイケルの娘の名前であり、ヒュージどの戦いで戦死している。

 

 

武装に関しては、刀は低振動術式が組まれており、AR15は百之助の持つ40式のフルオートをオミットした物でアタッチメントは百之助と同じである。

 

ライフルピットは、伊吹の持つサバーニャのライフルピットの改良型である。しかし、サバーニャとは違いパージした状態では、人形本体が飛行する事はできないが、ライフルピットを羽のように広げることで飛行する事は可能である。(武器を使わない場合は腕輪に付けた空間収納に格納する。)

 

 

 

 

 

 

武器

 

 

チャーム

 

桜花

 

第3世代チャーム

 

 

ダインスレイブのような形状と変形機構を有するがダインスレイヴでは無い。見分け方はダインスレイヴが砲撃モード時にギザギザしているのに対し桜花はストレートである。使用者は船坂奏であり、元白襷隊の隊長である。(故人)百之助が甲州から持ち帰った。

 

 

M1911A4改

 

本銃は、M1911A1をダブルカラムにし、ライトを付けられるようにし、コンペンセイターを付け、改造された物で、使用弾薬は45ACP弾である。

 

 

レミントン V3 TAC13改

 

本銃は、TAC13の弾倉を短くして代わりに展開式銃剣が格納されている。展開する際は弾倉前のレバーを押すことでバネの力で展開される。装弾数は3+1発である。上下にレールが設けられており、ソヤのものは折り畳み式のフォアグリップとダットサイトが付いている。グリップはスチール製の一体成型で握り込む部分には、強化プラスチックでまかれている。また、ナックルガードが付いており、ぶん殴る事も可能である。

 

 

AR15

 

 

ソヤのAR15は百之助の40式のフルオートをオミットしたものでアタッチメント類もほぼ全て百之助の40式と変わらないがソヤの物はは、ストック内にGLOCK21を収納する為、ストックが少々大きい物となっている。見分ける場合もそこで見分ける(百之助と同じ場所に銃を置くためである)又、百之助の40式はCTRストックである。

 

 

ライトセーバー

 

某映画に出てくる物を実際に作った物、船坂のファクトリーでのみ生産されている。(ほぼ複製は不可能である。未知の材質で出来ているため)某クリスタルではなくマギを使う。本人のマギによって色が変化する。

 

市販では買えず、主に映画撮影用のダウングレードした物(ほとんど使い物になら無い)と、船坂一門の為に対リリィ用に用意された物の二種類がある。

 

参考までに、このライトセイバーは、某ネズミの国から特許を取得している。

 

クロスガードライトセーバー

 

十字架のように3本の刃が生成されるライトセイバー主に船坂佐奈が使用。

 

フォークライトセイバー

 

クロスガードライトセーバーが十字架のように対して、このライトセイバーは、トの字形に2本の刃が生成される。主な使用者は船坂由奈

 

ダブルブレードライトセーバー

 

このライトセーバーは二本のライトセーバーからなるライトセーバーで分離接続出来るライトセーバーである。主な使用者は船坂百之助。

 

ノーマル・ド・ライトセーバー

 

ごくごく普通のライトセーバー主な使用者は一柳梨璃、船坂徳永。

 

ライトセーバーブラスターハイブリット

 

ライトセーバーとチャーム技術のライフルのハイブリット切替式である。主な使用者は船坂千夏。

 

 

 

 

ランボルギーニ LP2202ラッフィカ

 

基本性能

 

最高速度 687キロ

 

0km〜100km 2.5秒以内

 

 

本車両はセリカ・ランボルギーニが設計した車両で、ラッフィカとは日本語で『疾風』を意味する。

 

ラッフィカはシアンのフレームをベースに設計されているものの日本の四式戦闘機疾風をイメージしているため直線的ではなく少し丸みがある。エンジンやハイパーキャパシタはすべて新規設計で本車両の為だけに設計された物である。

 

お値段は日本円にして約5億円で50台限定生産となっている。

(内4台が日本に納入された。)

 

百之助が購入したラッフィカは四式戦闘機同様オリーブドラブ色、防弾仕様となっており、12.7ミリまでなら防ぐ事ができる。

 

 

百之助の所有する車

 

現時点において

 

フェラーリF40 1台

 

フェラーリ458スペチアーレ 1台

 

フェラーリラ・フェラーリ 1台

 

フェラーリSP90ストラダーレ 1台

 

ランボルギーニシアン 1台

 

ランボルギーニラッフィカ 1台

 

ランボルギーニウルス 1台

 

Wモーターズフェニアスーパースポーツ 2台

 

マクラーレンアルトゥーラ 1台

 

マクラーレンスピードテール 1台

 

ケーニグセグジェメーラ 1台

 

ケーニグセグレゲーラ 1台

 

SSCノースアメリカトゥアタラ 1台

 

インフェルノ・エキゾチックカー 1台

 

アルファロメオ8Cコンペティツィオーネ 1台

 

アルファロメオ4C 1台

 

アスパークアウル 1台

 

パガーニ・ウアイラR 1台

 

パガーニ・ウアイラ 1台

 

スバルBRZ 1台

 

95式乗用車「くろがね4起」 1台

 

 



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設定4

船坂奏

 

身長 168センチ

 

年齢 21歳

 

レアスキル 

 

円環の御手、ユニバーザイン、ファンタズム、ヘリオスフィア

 

 

 

使用武器

 

ペインシーラ、ガドファクス

 

使用チャーム

 

不知火、30式4型

 

 

 

概要

 

元白襷隊隊長、諸事情により戦場に舞い戻る。百之助の姉。強襲制圧を得意とするリリィ。

 

 

 

 

マリア・フィッツアラン=ハワード

 

身長 160センチ

 

年齢 17歳

 

レアスキル 

 

ファンタズム

 

 

使用武器

 

グロック17Gan4

 

サーベル

 

使用チャーム

 

ブリューナク

 

 

概要

 

ノーフォーク公ハワード家(フィッツアラン=ハワード家に改名)の公爵令嬢、百之助の古い友人の一人。ファンタズム持ちだが接近戦を苦手とするため中距離戦闘を多用する。

 

 

 

 

フィーネ・フリーデブルグ・V・オットー

 

身長 165センチ

 

年齢 17歳

 

レアスキル

 

円環の御手

 

 

使用武器

 

ルガーP08 タクティカルトマホーク(斧)

 

使用チャーム

 

アステリオン、ヨートゥンシュベルト

 

 

概要

 

オットー公爵家の令嬢、同じく「オットー」の家名を持つロザリンデの叔母に当たる。(フィーネのほうが年下ではあるが)マリアと同じく百之助の古い友人。接近戦を得意とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャーム

 

 

30式 有坂Refine タイプB(通称30式歩兵銃)

 

全長 1600ミリ(銃剣着剣時2080ミリ)

 

着剣装置あり、マギリフレクターあり。

 

 

 

12.7ミリ超々高出力砲

 

正式名称 12.7ミリ陽電子収束圧縮型衝撃波砲

 

武御雷を小型化し、かつ威力を上げたもの。電磁投射砲としても使用可能。

 

 

30式銃剣

 

全長700ミリ(刀身長500ミリ)

 

30年式銃剣を大きくしたような銃剣。

 

 

マギビットソード

 

基数 50基

 

全長 1200ミリ

 

変形機構、マギリフレクターあり。

 

高出力砲

 

一般的なチャームの高出力砲、刀身部を真ん中から割ることでその刀身部を加速装置として使用する。ある程度は他の高出力砲より初速が早い。

 

低振動ブレード

 

その名のごとくロングソードの様な物にマギビットコアが付いている。空中を浮遊し制御可能。

 

 

 

概要

 

百之助の為だけに作られたワンオフ機、百之助のマギ操作の加減ができず、まともに耐えられる機体が無かった為製造された。外見は百之助の99式小銃を模しており、ストック部含め実際に木を使用している。

 

弾薬が12.7ミリNATOになったのは99式実包では超電磁砲で加速させた際に溶け落ちてしまう事と、武御雷を代替する為にアルトラ級を一撃で撃破できる性能を持たせたかったからである。

 

銃剣展開などの変形機構を取り入れなかったのは銃剣単体で戦闘することが多々あった為別々となった。

 

マギビットソードは単純に思いつきである。美保野がガン○ムを見過ぎた挙げ句、再現したくなったようで完全に遊んだ結果とも言える。

 

マギビットソードを展開する際は腕輪から出現させるのだがいちいち一本づつ出すのが面倒なため空中に多数の魔法陣を出現させ一気に開放する。(具体的にはりメイク版宇宙○艦ヤ○トのワープアウト時の様な出てき方をする。)

 

Type-BとはB型兵装である事を示している。

 

 

 

サバーニャ

 

 

 

 

M2070ライフル

 

全長1300ミリ(着剣時1700ミリ)

 

ウィンチェスターライフルを模した物でハンドガードはM-LOKを採用。着剣装置も健在。使用弾薬は338ラプアマグナム超電磁加速銃

 

 

 

M2070銃剣

 

全長 600ミリ(刀身長400ミリ)

 

低振動術式を組んだ物、百之助の30式と長さが違うだけでほほ同一のものである。

 

 

 

ライフルビット/シールドビット

 

正式名称

 

ライフルマギビット/シールドマギビット

 

計22基

 

ほぼガ○ダムサバ○ニャのGNシールド及びライフルビットである。

 

 

ミサイルランチャーコンテナ

 

計60発の小型ミサイルを格納しているが、ライフルを背負ったり、刀を振るう際に邪魔にならない様にコンパクトにまとめられている。強いて言うなら20センチの箱でしかなく、そこから計60発の小型ミサイルが発射される。(中は亜空間に繋がっている為大きさ以上のミサイルを積み込んでいる。同時発射数は16発)

 

なお打ち切ったら自動的にパージされ、勝手に空間収納に格納される。

 

小型ミサイル

 

全長 20センチ

 

直径 10センチ

 

高性能爆薬を積んだ小型ミサイル。理論上はマギを溜め込ませた状態で洗車の正面装甲を貫くことが可能。大きさの割に高火力なミサイルである。

 

説明

 

元々は面白半分と伊吹のために設計された物である。元々サバーニャは腰回りのユニットとそれに接続された14機のライフルビット及びシールドビットのみであったが、戦闘データを元に改修を施し、より制圧能力に重点を置いた仕様となっている。

 

 

 

70式不知火

 

武装

 

P90改2丁

 

前方のフォカグリップを廃止し、新たにグレネードランチャーを追加した物。グレネードランチャーの装弾数は5発左右によってチャージングハンドルの位置が違う。右側の物は右、左側のであれば左側に付いている。(排莢の問題上)

 

銃身を延長して全長が700ミリになった以外はほぼP90である。なお、グレネードランチャーが付いているためセレクターから単発が消え、代わりにグレネードランチャーを射撃出来るようにしてある。

 

使用しない場合は両腰にマウントされる。

 

 

バックパック及び背部懸架

 

胸部を覆う装甲のようなものに付いている。右側にガドファクス、左側に30式4型を懸架する。使用時は肩に乗せる形で展開され手で握った瞬間解除される。

 

 

腰部機動ユニット

 

腰部後ろ側についている機動ユニット。ジェットモーター及びロケットモーターで出力する(燃料の代わりにマギを消費)これを動かすことで姿勢制御方向転換などを行う。これに関してはだいぶ前から検討されていたが、マギの消費量の問題で実用化の目処が立たなかったが幾度にも渡る臨床試験で実践レベルにまで昇華させた。

 

 

 

概要

 

強襲に特化した奏のために用意された機体、この機体自体は甲州撤退戦以前に作られており、独自に改良した機体がこの不知火である。

 

 

 



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第一章
1話






一人の男のリリィが病院で目を覚ました。その男の名は船坂百之助だ。

 

「うん?ここは何処だ?甲州撤退戦はどうなった!?」

 

直ぐに病院だと気づき。ナースコールを押す

 

直ぐに看護師が来て俺を見るなり医師を呼びに行った。その後医者が全力で走ってきた。

 

「船坂さん目が覚めたんですね!」

 

「御託はいい、甲州撤退戦はどうなった!?」

 

「多大な犠牲を出しましたが成功しました。」

 

「そうか…くっ!!」

 

直ぐに立ち上がった。体を動かしてみる。問題はなさそうだ。

 

「すごい…2年も寝てたのに直ぐに立ち上がるとは…」

 

「うちの家系は頑丈なんでね…明日退院してもいいか?」

 

時計を見ながら言った。

 

「構いませんが…検査だけさせてください。」

 

「了解した。」

 

その後、医者が帰っていったので電話を掛けた。

 

『もしもし?』

 

「久しぶりだな…戦友」

 

彼の名前は富永伊吹。彼もまたリリィだ。

 

『ようやく目覚めたか英雄。白雪姫が待ってるぞ?』

 

「わかってるさ…夢結には済まないと思ってるさ。」

 

『そうかよ…いつ退院するんだ?』

 

「明日だ、迎えに来てくれよ。」

 

『マジかよ…いいぜ』

 

「夢結には言うなよ。」

 

『お前も意地が悪いな…了解した。じゃあな。』

 

「ああ…」

 

電話を切り。その他諸々の検査を受け、翌日退院手続きをした。

 

黒いブレザーの百合ヶ丘女学院の制服とコートを着て自分の武器。左側のベルトに30年式銃剣と刀を差し、右側のホルスターにはMP17を入れ、背中には九九式長小銃を背負った。

 

敵であるヒュージには、現代兵器は効かないこれは当たり前のことだが、これらの武器はマギが通るように改造したため関係がない。それにリリィが一般的に用いるチャームは、彼の場合強度不足なのだ。故に彼はそれらの武器を使う。

 

病院を出ると富永伊吹が待っていた。

 

「よう。戦友」

 

「遅かったな」

 

彼は背中にウィンチェスターライフルM1895軍用モデルを背負い腰には日本刀二本とトーラスレイジングブルを下げていた。おそらく彼は、両脇にトーラスジャッジも持っているだろう。

 

「トミー相変わらずの重装備だな…」

 

「お前も似たようなものだろう?」

 

「違いない!」

 

「所で今日、入学式なんだ。」

 

「俺らのか?」

 

「俺らは迎える側、高ニだぞ?」

 

「あれ?俺も進級してんのかよ?」

 

「そうだが?」

 

「は?勉強どうすんだよ?」

 

「夢結に教えてもらえ。」

 

「まじか…」

 

「白雪姫、滅茶苦茶泣いてたからなお前が入院した時…それに契りを結んだ先輩が戦死したし…まあ俺たちのレギオン…白襷隊は。俺たち二人以外全滅したからな…」

 

「嘘…だろ…あいつら死んだのか…」

 

コレには動揺を隠せない。

 

「まあそれでも頑張るしかないけどな」

 

「そうだな」

 

二人は学院に向う

 

 

 

 

 

 

 

 



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2話

「懐かしの我が家だ…」

 

「厳密には高等部だがな」

 

二人は百合ヶ丘の門を潜り構内を歩いていた。勿論気配を消していた為誰にも気付かれてはいない。理由は男だからである。

 

途中で騒ぎがある事を知ったのでそちらに向かった。すると二人のリリィが立っておりその周りに野次馬が集まっていた。

 

「中等部以来お久しぶりです。夢結様」

 

「何か御用ですか?遠藤さん」

 

「亜羅那と呼んで頂けませんか?そして入学のお祝いにチャームを交えて頂きたいんです」

 

「相変わらずの猪だな…」

 

「言うな…虚しくなるから。」

 

伊吹と百之助は亜羅那にあきれていた。すぐ近くに見慣れた顔を見たため後ろから声を掛けた。

 

「やあ、久しいな天葉。」

 

「は?え!幽霊!?」

 

この金髪の少女は、天野天葉だ。

 

「何でそうなるんだ…」

 

「冗談だよ。冗談」

 

「でも久しぶりに見たなあの猪」

 

「そう言わないであげて」

 

「へいへい」

 

「あの…何で男の人が居るんですか?」

 

と銀髪の少女が聞く。

 

その問いに答えたのは天葉だった。

 

「白襷隊の【アサルトリリィ】て聞いたことない?」

 

「ありますけど…」

 

「本人!」

 

「ええ!?都市伝説じゃ無いんですか!?」

 

「そっち!?」

 

そんな話をしていたら話が進んでしまっていた。

 

「お退きなさい時間の無駄よ。」

 

「ならその気になって頂きます。」

 

亜羅那は、言うが早いかチャームを起動する。

 

斧の形状に変化したそれはリリィ専用の兵器だ。

 

「あーあ」

 

「手加減はしないわよ?」

 

「お〜怖〜いゾクゾクしちゃう。」

 

そこに闖入者が参上する。

 

「は〜いそこ、お待ちになって。私を差し置いて勝手なことなさらないで貰えます?」

 

「何?貴方。」

 

亜羅那は、声のトーンが下がった。闖入者は。それを無視した。

 

「お目に掛かり光栄です。楓・J・ヌーベルと申します。夢結様には、私のシュツエンゲルになって頂きたく存じております。」

 

「しゃしゃり出てきてなんのつもり!?それとも夢結様の前座と言うわけ?」

 

「上等ですわ!」

 

闖入者改めヌーベルがチャームを抜こうとする。がそこでピンク髪の闖入者が現れた。

 

このスキに伊吹と百之助がそれぞれのライフルに着剣し、ちょうど真ん中に背中合わせで対峙し。ライフルの引き金を引く。

 

ターン

 

ダーン

 

 

「「そこまでだ」」

 

流石にこれには周りは困惑する。百之助は、フード付きのコートを空にぶん投げた。

 

「これ以上は白襷隊の【アサルトリリィ】が相手してやるが双方如何に!」

 

亜羅那に百之助は、99式を向ける。

 

「な…」

 

「男!?」

 

「アサルトリリィ!?」

 

周りはこの際無視する。

 

「邪魔しないでもらえますか?百之助様!伊吹様!」

 

「黙れ!猪!そもそもこっちは退院したばかりだっての!」

 

「なら引っ込んでもらいましょう。」

 

「やなこった!こっちは体訛りすぎて準備運動が欲しかったところでね」

 

「流石に分が悪いですね。ここは引きましょう。」

 

亜羅那は。チャームを仕舞った。

 

そのまま反対側の夢結の方に99式を向け180度ターンし伊吹と入れ替わった。

 

「で?ゆーゆは?どうする…!?」

 

夢結は、持っていたチャームを落とし。真っ直ぐ走り込んで百之助を押し倒し馬乗りになり、そして

 

バチーン

 

平手打ちをぶちかました。この時点で周りは困惑して静まり返っていた。

 

「お前!こちとら病み上がりだぞ!?死んだらどうしてくれるんだ!」

 

「貴方なんて…貴方なんて!死んでしまえば良かったんですよ!そしたら…こんなに…辛くなかったのに!」

 

見れば夢結の目から涙がポタポタと滴り落ちていた。

 

「済まなかった。」

 

「…一人に…しないで…お願い…」

 

これを上目遣いで言われてしまうと何も言え無くなってしまった。なので行動で示すことにした。具体的には唇にキスをした。

周りから黄色い変えが聞こえるが無視する。

 

しばらくして立ち上がったが。腕の中に夢結を抱いていたところに。生徒会のメンバーである出江史房がきた。

 

「何をなさっているの!…あなた達…」

 

視線の先には。百之助と夢結がいた。そして事情を察した。

 

「帰ってくるなら連絡ぐらいしなさい」

 

「忘れてた!」

 

「はぁ…変わらないわね。…それよりも!校内の研究施設からヒュージが逃げ出した。と報告が入りました。出撃可能な皆さんは、これを捕獲してもらいます。」

 

「分かりました。」

 

こう言ったのは、まさかの夢結だった。そして百之助の腕から抜け、行こうとしたときに止められた。

 

「待ちなさい夢結さん。単独行動は禁じます。」

 

「何故です?)

 

「このヒュージは、周りに擬態するとの情報があります。必ずペアで行動してください。」

 

「必要ありません。足手まといです。」

 

「貴方には、足手まといが必要でしょう。」

 

「なら俺が行こう。トミーあとそこの二人!付いて来い!」

 

「了解」

 

「「分かりました。」」

 

そうしてヒュージ探しに出かけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3話

「で、お二人は付き合っているんですか?」

 

互いに挨拶したあとさっきのピンク色の髪の少女。

一柳梨璃は、百之助と夢結に聞いた。

 

それに答えたのは以外にも夢結だった。

 

「ええ、そうよ。…昔はここまで人を愛す事のできる人では無かったのだけれど」

 

「そいつは悪かったな…俺親の愛なんて受けたことなかったから、好きって何なのか分からなかったんだよな。」

 

「「へー」」

 

「それにしてもこれ全部ヒュージとの戦った跡なんですか?」

 

「そうだ…それに学園自体が…」

 

「海から来るヒュージを誘引し、地形を利用した。天然の要塞となることで市街地に被害を押さえるんだ。」

 

梨璃の問いに百之助が答えかけ途中から伊吹が答えた。

 

「途中で切るとは、酷いじゃないか…」

 

「お前の場合そのまま歴史の勉強になるから却下だ。」

 

暫く歩いていくと細い天然の通路に入った。

 

「何なんですのこの道は…」

 

疲れたのか楓が話を持ってくる。

 

「切り通しと言って千年ほど昔に作られた通路よ。」

 

「はぁ…歴史の勉強になりますわね。」 

 

暫く進むと少し開けた場所に出た。ので少し休憩していた。

 

「はぁ…入学式の前に疲れ果てましたわ…」

 

「なんにも出ませんね…」

 

その時壁の穴から敵が出てきた。気づいているのは百之助と伊吹だけだった。

 

「敵襲!!」

 

すぐさまライフルを構え発砲する。

 

ダーン

 

ターン

 

腕を二本吹き飛ばした。すぐさま排莢装填する。

 

ガシャンチャキン

 

それで全員が戦闘態勢に入ったが梨璃が反応が遅れた。

 

「チッ」

 

流石にまずかったのでMP17に持ち替えストックを展開射撃しながら梨璃を回収する。

 

トトトト

 

「キャ!」

 

 

「トミーこいつ抑えて!他の連中は一時撤収する!!」

 

「了解!」

 

「分かったわ」

 

「分かりましたわ」

 

梨璃を抱えたまま爆走する。

 

暫くしてから梨璃を下ろすと楓が壁ドンをした。

 

「チャームも扱えないのに何をなさるおつもりでしたの!?」

 

「ごめんなさい…私…」

 

「そう責めなさんな。こっちは分かってて連れてきたんだ。夢結、略式を教えてやってくれ、頼む。」

 

「正気ですの!?死んだら元も子もないですわよ!?」

 

「ええ…分かったわ。」

 

「夢結様!?」

 

「楓、俺達で警戒するぞ!」

 

「どうなっても知りませんわよ!?」

 

言うが早いかチャー厶を抜き周りを警戒する。暫くして伊吹が戻ってきた。

 

「悪い。逃げられた。」

 

「お前が逃すって相当だな。」

 

「来ましたわ!」

 

最初に反応したのは楓だった。すぐさま白兵戦に移行し。残りの二人で援護射撃をする。

 

ダーン

 

ターンターンターンターン

 

99式とウィンチェスターライフルが火を吹く

 

そして楓がチャームを持って敵の斬撃に対応する。しかし分が悪いと踏んだのか、煙幕を使い目くらましをする。

 

「厄介だな」

 

「こうも苦戦するとは…訛ったな…」

 

「こうも狭いと全力が出せんしな…」

 

 

突然敵が爆発した。

 

「好機だ!体制を立て直す。」

 

返事を待たずに移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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4話







「あのヒュージ相討ちを狙ったわ」

 

移動したあと夢結がこういった。

 

「ヒュージがそんな知能を?」

 

「一柳さんにお礼を言うべきね。」

 

「え?」

 

「一柳さんが私を止めなければ貴方今頃真っ二つになっていたところよ。」

 

「ぐ…貴方目は良いのね!」

 

楓の挑発に梨璃は、正直に答えた。

 

「田舎者なので視力には自信があります。」

 

すると煙幕が突然展開された。

 

ポンポンプシュー

 

「はわ!?何!?」

 

煙幕が充満した所で夢結にヒュージが襲いかかり夢結は、チャームを起動し反撃する。

 

ゴン!

 

キンキン!

 

そのまま飛び上がりヒュージがそれを迎撃する。

 

直ぐにヒュージの触手が夢結を包み込む。

 

「夢結様!」

 

その時梨璃のチャームが起動する。

 

「丁度いい。梨璃と楓で夢結を助けてくれ。」

 

「何考えてますの!?」

 

「何事も訓練。」

 

「分かりました」

 

「どうなっても知りませんわよ!?」

 

二人は息を合わせ夢結を閉じ込めた触手を断ち切る。

 

「「はあああああ!」」

 

中から夢結が出てきたので声を掛ける。

 

「夢結!トミー!合わせろ!」

 

「ええ!」

 

「了解」

 

同時に切り込む。

 

三枚おろしにされたヒュージが崩壊しそれを楓以外全員がかぶった。そして検疫室に行き検疫を受けたあと待機室に送られた。

 

「お前。相変わらず意地が悪いな。」

 

「言ってろ…」

 

「新入生に任せるよりお前がやった方が早かっただろ?」

 

「それじゃ訓練にならん。それに直ぐに命を賭けることになるからさっさと実戦を潜らせる方が手っ取り早い。」

 

「そうかよ…なら、何も言わん。」

 

そんな話をしている間に検疫が終了したので外に出ると梨璃に楓が抱きついており、夢結がその向こうに歩いていたので全力で走って追いついた。

 

「置いていくとは酷いじゃないか。」

 

するとさり気なく手を繋いできた。

 

「貴方、意地が悪いわ…」

 

「よく言われる。」

 

「久しぶりに一緒に食堂に行きましょう。」

 

「構わないぞ」

 

食堂では、百之助は、うどんを食べていた。

 

「相変わらずうどんが好きね。」

 

「そうだな、まあ久しぶりってのもあるかな。…なあ、結局何人死んだ?」

 

夢結が膠着した。暫くしてから答えた。

 

「20人よ…」

 

「まじか…」

 

「皆…腕利きだったわ…姉様が死んで…貴方まで失ったら私、どうなっていたかしらね?…毎日苦しかったわ…」

 

「済まん…」

 

「もう…失うのは懲り懲りよ!」

 

夢結は、涙を流していた。百之助は席を立ち、夢結を抱きしめた。

 

「大丈夫…大丈夫だから…な?」

 

「う…う…あ…うわあああああ…!」

 

涙腺が崩壊したのか、心のダムが決壊したのか泣き始める。

 

「よしよし…辛い思いさせて悪かったな…ごめんな…」

 

泣き止むまで百之助は、頭を撫で続けた。

 

余談だがリリィ達は夢結が泣き止むまで遠巻きに見守っていたらしく後日百之助は、全員から弄り倒されたのはご愛嬌である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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5話

次の朝、百之助は入院する前の日課だった筋トレや走り込みをした後、シャワーを浴びていた。

 

「やっぱり訛ってるな…」

 

男子寮は二人しかいないので普通なら下宿しなければならないが理事長代行である高松咬月の意向により百合ヶ丘女学院の内部に作られていた。

 

シャワーを浴びたあと体を拭き制服に着替えて寮の食堂に向かう。ちなみに男子寮には食堂が無いので2年の女子寮で取らねばならない。なので朝早く行きさっさとご飯を食べて離脱するのである。

 

だが先客がいた。

 

「珍しいなこんな時間に起きてるなんて。夢結」

 

ちなみに今は午前5時である。

 

「たまたまよ。」

 

と、食べ終わったのか紅茶を飲んでいた。隣に座り、ご飯と味噌汁を食べる。

 

「久しぶりだが美味いな。」

 

「今日はどうするのかしら?」

 

「うーんこの後午前中は何もないから午後から工廠科に獲物を取りに行くが?」

 

「そう…」

 

食べ終わったので食器を片付け寮に戻る。制服を脱ぎベッドに潜り込む。

 

暫くしてドアがノックされた。

 

コンコン

 

「開いてるぞ〜」

 

「失礼するわ。」

 

これには動揺を隠せない。

 

「ちょ!?おま!?」

 

夢結は、構わず入ってくる。

 

「寝間着借りるわね。」

 

脱ぎ始めたので反対側を見る。

 

ジィ…シュルシュル…パサ

 

 

と着替え終わり百之助の入っていた布団に入ってきた。

 

「何しに来た?」

 

「夜這い?」

 

「今朝だし、まだ学生だぞ?」

 

「抱きしめて欲しいの。駄目?」

 

懇願されると破壊力抜群である。

 

「はぁ…分かった…俺の負けだ。」

 

抱きしめると異変に気付いた。具体的には柔らかいものが当たっていた。

 

「まて…ブラ付けてないだろ。」

 

「邪魔だもの。」

 

「お前な…欲情したらどうする気だ?俺の場合自制するの難しいんだぞ…」

 

「責任を取ってくれるのでしょう?それに最近血を摂取して無いでしょう?」

 

「そうだが…」

 

夢結がうなじを見せる。

 

「ほら。」

 

「分かったよ…完敗だ。」

 

すると百之助に変化が起きた。目が黒から青くなり黒い髪も白くなり、犬歯が牙に変わった。そして夢結の首筋に噛み付いた。

 

「あっ…う…」

 

百之助は暫く夢結の血を吸った後、元の黒髪と黒い目に戻し牙が犬歯になったところで夢結の首筋を魔術を使って治した。

 

「大丈夫か?」

 

「気にしなくて良いわ」

 

「そうかよ…」

 

今の行為について話しておくと、彼は吸血鬼であるので血を摂取しなくてはならないのだ。

 

「たく…あの婆さん吸血鬼の力を押し付けやがって…」

 

「まぁ…良いじゃない、困ってないでしょう?」

 

「まあな…」

 

「ふふふ」

 

夢結が百之助に口付けた。

 

「やっと笑ったな…そっちの方が良いぜ?」

 

「ごめんなさい…甲州撤退戦の後、ずっと笑えなかったの…だからいま驚いているのだけれど…」

 

夢結を強く抱きしめた。

 

「どうしたの?」

 

「済まなかった…」

 

「いいえ、私達は貴方に感謝する事は有っても謝る必要はないわ。」

 

「それでもゆーゆを悲しませたのは事実だろ?」

 

「だったら、抱きしめて私を安心させて?」

 

「分かった」

 

 

 

 



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6話

暫くしたあと、夢結と百之助は、制服に着替えた。着替え終わった所で夢結からある物を受け取った。

 

「本当は、昨日渡すべきだったのだけれど」

 

その手には3つの指輪が乗っていた。この指輪はリリィ全員が付けている物だ。

 

「これは?」

 

「貴方のシュツエンゲルと実の姉二人の指輪よ。」

 

「!…わざわざ済まない。」

 

百之助は、指輪を受け取ると引き出しに入っていたチェーンに通し首に付けた。

 

「じゃあ行こうか」

 

「ええ。」

 

寮を出て共用スペースに向かい少し早い昼ご飯を食べて工廠科に向かった。

 

「よお!昨日は世話になったな!百由!」

 

「そのへんにして上げなさい反省はしてるようだし。」

 

「や~ほんとごめん。今度埋め合わせするから」

 

こいつは真島百由である。

 

「分かったそれよりも俺の得物は?」

 

「廊下にある長い箱だよ。」

 

「了解。」

 

一端廊下に出て8m近い箱を開けると長いライフル型のチャームが出てきた。

 

「防衛軍が丹精込めて作った19式140口径57mm陽電子対艦ライフル砲、通称武御雷だよ」

 

「凄いな…変形機構は勿論オミットされてるだろうな?」

 

「うんだってそうしないと壊れちゃうでしょ?」

 

「そうだな」

 

直ぐに亜空間に収納する。

 

「いやー今のをご教授願いたいね〜。」

 

「馬鹿か、無理だ。」

 

「ですよね〜」

 

夢結も終わったらしく待っていた。

 

「じゃあありがとうな。」

 

「うん、またねー」

 

今度は射撃場に向う。

 

夢結と二人で射撃している頃、共用スペースでは…

 

百由と梨璃と楓そして二川二水が話をしていた。

 

「しっかし…よりによって夢結とシュツエンゲルとはね…」

 

そこに闖入者が現れた。

 

「辞めといたほうがいいぞ。」

 

「伊吹様」

 

「伊吹様」

 

「や〜トミー珍しいね話に割り込んでくるなんて。」

 

「あのーこの方は?」

 

「二水ちゃんは知らないか。トミー自己紹介してやって〜」

 

「ああ…元白襷隊所属富永伊吹だ。そうだな…保安官と言ったら分かるかな?」

 

「え?えええええええ!?」

 

二水は、驚いた上で鼻血が出ていた。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫です〜」

 

「そうか…理由は心の傷が癒えてないからだな。いくら百之助が帰ってきたと言っても傷が深いからな。」

 

「あ〜やっぱり…」

 

「それに百之助の方が傷が深いと思っているらしくあまり甘えられてないからな…」

 

「その百之助はどうなの?」

 

「あれは元々失う事が多かったからあまり気にしてないな、それでもレギオンが壊滅してるから何とも…」

 

「あー凄く可愛がって貰ってたもんね…」

 

「全員がシュツエンゲルみたいな物だったからな、俺もだが…」

 

「あのー白襷隊ってどうなったんですか?」

 

二水は、恐る恐る聞いてみる。

 

「18人中16名が戦死。残り2名は重症、ほぼ玉砕だな。もう再建もしないから昨日手続きをして無くなったぞ」

 

「「「!…」」」

 

「その…すみません…」

 

「気にせんでいいさ。もう終わったことだ。」

 

「心鋼過ぎない?」

 

「俺も百之助も、軍人の家系だから慣れてるのさ。まあ、どうしてもと言うなら…頑張れ。では失礼。」

 

 

「うんじゃあね!」

 

こうしてトミーは去っていった。

 

 

 

 

 



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7話

一通りの訓練を夕方までやった後、夢結と百之助は寮に戻る所であった。

 

「なあ、夢結…シュツエンゲルの契りをもう交わさないのか?」

 

「ええ…」

 

「そっか…」

 

暫く歩いていくと梨璃と楓と二水(この時二水の事を百之助は知らない)が歩いてきた。

 

夢結は、会釈して通り過ぎようとしていたが梨璃は、何かを伝えようとしていた。

 

「あっ…」

 

夢結が通り過ぎたあと梨璃から声がかけられた。

 

「まっ…待って下さい。」

 

夢結は足を止めた。

 

「夢結様!…私とシュツエンゲルの契りを結んでください!」

 

夢結の手は握り締められていた。

 

「私…夢結様に助けて貰って…夢結様に憧れてリリィになったんです。」

 

「誰に憧れるのかはあなたの自由だけれど、それと私のシルトになるのとではなんの関係も無いわ。」

 

「それは…」

 

「貴方とシュツエンゲルの契を結んでも、私の作戦遂行能力が低下するだけよ。それが貴方の望み?」

 

これには百之助も動揺を隠せない。楓が怒って近づいて来るのを手で静止し。夢結に問う。

 

「そこまで言わんでも良かろうに、素直に嫌だと言えば済むことだろう?」

 

梨璃の耳元で囁く。

 

「梨璃、素直に言えないんだよあいつは、本当にシュツエンゲルの契を結ぶ気があるか?あるなら説得するが?どうだ?」

 

「はい…」

 

「了解した。」

 

夢結を後ろから抱き締める。

 

「なに…」

 

「なあ…俺のシュツエンゲル…覚えてるか?」

 

「ええ」

 

「実は俺より戦力としては劣っていたんだ。」

 

「!?」

 

「でも、心が強かった…絶対に諦めなかった…どんな絶望的な状況下でも気丈に振る舞って周りを鼓舞し続けた…散るまで…最後まで…」

 

さらに強く抱き締める。

 

「死ぬときこう言ったよ…夢結ちゃんとお幸せに、だと…」

 

「なんで…」

 

「知るかよ…お前が辛いのは良う分かる…俺とて無くした身だ…だがな、梨璃に当たるのは筋違いだろ…それに…お姉様方はとても良くしてくださっただろ…受けたものは他の人に還元せねばならんよ…これは実の姉二人の言葉だかな…」

 

「そう…でも、私には…」

 

「成せばなる…俺のお姉様の言葉だ。俺も手伝ってやるから…な?それにあの娘は心に入れても痛くないぞ?保証する。」

 

「貴方は?結ばないの?」

 

「言われたら受けるさ…ただ俺の戦闘技術は、人殺しの技だから教えられんがな…」

 

「分かったわ…」

 

「なにがだ?」

 

「貴方を信じてみる。」

 

「そうか…」

 

夢結を放し向き合わせる。

 

「貴方の申し出を受け入れましょう。」

 

「え…」

 

「私が梨璃さんの守護天使、シュツエンゲルになる事を…受け入れましょう」

 

「夢結様」

 

「貴方にも付き合ってもらいますよ?百之助?」

 

「了解した。俺の剣にかけても。」

 

「そこまでしなくても…いいわよ」

 

「いいや…焚き付けたのは俺だからな…姉上に申し訳ないしな。」

 

「そう…」

 

 



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8話

翌日、夢結と梨璃が訓練をすると言うので訓練場に向かった。

既に始まっていたので隅の方で見学する。

 

「くぅ…!」

 

夢結が梨璃に打ち込み梨璃は、耐えきれてないようだ。

 

(スパルタだな…俺もお姉様や姉上にしごかれたっけ…)

 

と百之助は、昔を思い出していた。

 

「ヒュージとは、通常の生物がマギによって怪物化した物よ。マギと言う超常の力に操られるヒュージには同じマギを使うリリィだけが対抗できる…マギを宿さないチャームなど、それはただの刃物よ。」

 

「は、はい…」

 

 

「もっと集中なさい。そうすればチャームも動く…強靭になる。」

 

梨璃のチャームにマギが宿っていく…

 

タタタ…ガン!

 

そこに夢結が打ち込む。

 

「ぐぅ…あぁ!」

 

「素人相手になんてことを!」

 

(あれが一般的な反応だな。)

 

楓の言う事にそう思った百之助である。

 

「もう少し粘って見せなさい、梨璃さん。

 

「はい…」

 

タタタ、ガン!

 

「ゔあ!」

 

ガタン

 

梨璃は、チャームを落とし、膝を付いた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「軽いわね。」

 

「随分と手荒いですこと。私にマゾっ気があればたまらないでしょうね〜!夢結様のお噂は、存じておりますわレアスキルルナティックトランサーを武器に数々のヒュージを屠ってきた百合ヶ丘屈指の使い手トランス状態ではリリィ相手でも容赦しないとか!」

 

「楓さんそれは…」

 

楓の言葉に狼狽する二水。すると立ち上がった梨璃が言う。

 

「いいんです…私…私、皆より遅れてるからやらなくちゃいけないんです。だから…続けさせて下さい。」

 

この後も続けられ、日が沈むタイミングで止めを掛ける。

 

「そこまでだ…もう体が持つまい?それに明日もやるんだろうからもう休め…」

 

「ですが!」

 

「お前な…はぁ…強情だな…とにかく休め。夢結も…やり過ぎだ…俺の姉上じゃないんだから…」

 

「貴方のお姉様は、異常よ」

 

「確かに鬼以外の何者でもなかったがな。それでもぎりぎりで止めてたぞ?梨璃の場合突破してるからな。」

 

「そうね…この位にしておきましょう」

 

「だそうだ。」

 

「分かりました…」

 

夢結と二水と楓が帰っていく。

 

「はぁ…夢結…何考えてんだ?…昔はもっと優しかったと記憶してるんだが…」

 

「変わったのよ…」

 

「そうかよ…」

 

百之助は、夢結との間に壁を感じた。

 

「じゃあやる事あるから寮に戻るよ」

 

「ええ…」

 

夢結と別れたあと墓地に向かった。

 

ここには戦火で散って逝ったリリィたちが眠っている。

 

「大変遅くなりました…姉様方…」

 

同じレギオンだった戦友に、花を手向ける。一人一人に…だが自分のシュッツエンゲルと二人の姉には、手向けなかった。理由は夢結が居ないからである。

 

(やっぱり夢結と一緒に来た時に手向けることにします。お姉様方…それまで…待っててください。)

 

    ーその頃女子寮風呂ではー

 

「おいたわしや〜梨璃さん〜痣だらけですわ〜ほらここも〜ここも〜あら〜こんな所も〜」

 

楓のスキンシップがどんどん過激なものに変わってゆく。流石にこれには耐えられなかったようで。

 

「そこは違います〜!」

 

と叫んでいた。

 

暫くして湯船につかっていた。楓だけ浮島に上がっていたが。

 

「はぁ…私には解せませんわ。そこまでして夢結様にこだわることないんじゃありません?」

 

「楓さんだって最初は…」

 

「こんな所で挫けていられないよ…だって私、夢結様のこと全然知らないから。」

 

するとアールブヘイムの一年、田中壱、藤堂亜羅椰、江川樟美の3名がやってきた。

 

「貴方が夢結様のシルトね。」

 

「まさか本当に物にしちゃうなんてね。」

 

「おめでとう梨璃さん…」

 

順番に壱、亜羅椰、樟美である。

 

「アールブヘイムの皆さん!?」

 

二水は、興奮しすぎて鼻を抑えた。

 

「丁度良いですわ。教えて頂けません?夢結様のこと。」

 

それに答えたのは壱だった。

 

「そうは言っても中等部は、校舎違うしね〜」

 

「でも、夢結様と言ったら…」

 

「甲州撤退戦…」

 

壱の言葉にアールブヘイムの二人は被せる。

 

「甲州…」

 

梨璃にとっても思い出深い戦いであった。何せ助けてもらったからだ。

 

二水が説明する。

 

「2年前…ヒュージの攻勢によって甲州の大部分が陥落した戦いですね?百合ヶ丘からもいくつかのレギオンが参加したものの、大きな損害を出して威勢を誇った先代のアールブヘイムが分裂するきっかけとなり、白襷隊が玉砕しかけたと聞いてますが…先輩方に伺っても口が重くて…」

 

「度胸あるわね…貴方も…」

 

「中等部だった夢結様も特別に参加したと…」

 

「なら知っているでしょう?夢結様はそこで自分のシュツエンゲルを亡くしてるって…」

 

流石にこれにはを動揺する面々。

 

「亡くしたと言えば白襷隊もそうですね」

 

「天葉様が言ってた…白襷隊は、甲州撤退戦の時リリィたちがヒュージの軍勢の中で孤立したとき。真っ先に退路を開き、嬉々として殿を引き受けて、笑って戦っていたって…」

 

樟美の言葉に動揺する面々。

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「死体も笑ってたらしいよ…」

 

「うそ!?」

 

「まあ…天葉様曰く、先代のアールブヘイム全員集めても白襷隊一人に勝てないらしいから…」

 

「そりゃそうでしょう…何せ他のリリィとは考え方と命のあり方が違うんですから。」

 

いきなりの闖入者に困惑する面々。

 

「誰よ?」

 

亜羅椰が聞く。

 

「申し遅れました。船坂文香であります。船坂百之助とは、腹違いの妹です。」

 

と文香は敬礼する。

 

「「「「「「腹違い!?」」」」」

 

「はい…私の父は一個小隊ほどの愛人がいましたから…大体30人位…」

 

これには唖然とする面々。

 

「それで?違うとは?」

 

帰ってきた楓が聞く。

 

「他の人は存じ上げませんが…当時、所属していた兄上と二人の姉上は、自分の命が軽い物と考えていましたし、勝つ為なら死ぬ事も良しとする人たちでした。…そして、船坂家では戦死する事が美徳と教えられます。物心付くときには戦い方を教わります。…姉上二人の戦死を夢結様から聞いたとき耐えられませんでした…でも夢結様の方が辛そうでした…父はそうか逝ったかと言って直ぐに何処かに行きました。でも顔が笑ってました。」

 

楓が怒った。

 

「なんて親ですの!?子供が可愛く無いんですの!?」

 

「まだいい方です…父は手柄を立てた者しか興味が無ので。」

 

「はあ!?」

 

「私は放置されてましたよ?」

 

「なんて親…なの…。」

 

これには全員絶句するしかなかった。

 

「私の家系は軍人です。故に戦にしか興味が無く、それしか知らないのです。…もっとかんたんに言うと功名餓鬼ですね。」

 

「想像を絶するわ…」

 

「どう反応していいかわからない…」

 

「理解不能ですわ…」

 

困惑する面々。

 

「白襷隊の意味…分かりますか?」

 

「分からないわね…」

 

「敵陣に真っ先に斬り込む部隊の事を指すんです。」

 

「「「「「!?」」」」」」

 

「そして真っ先に死にます。敵が全滅するか…味方が全滅するまで…。」

 

「てことは…全滅するまで戦い続けるのが掟だったの!?」

 

「ええ…」

 

「理解できませんね…」

 

「戦うためなら死ぬことさえ良しとする…まるで日本兵ね?」

 

「その通りです。白襷隊は、それを自分達の命を持ってヒュージを食い止めました。…最後まで…」

 

「でもよく生きてたわね…あの二人…」

 

「結構ぎりぎりだったみたいですよ?見つかった時は満身創痍だったらしいですから…でも兄上が生きてて良かった…」

 

「どうして?」

 

「可愛がってもらいましたから…それに兄上が8歳の時から会ってませんから…会えるのが楽しみです。」

 

「そう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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9話

ある日の昼頃百之助は、木陰で木により掛かり黄昏れていた。理由は特に無い。ただそうしていただけだった。夢結の事は今日だけ伊吹に任せたのである。

 

「平和だな〜」

 

等と言っていたら眠くなったので目を閉じる。暫くして声を掛けられた。

 

 

「隣、良いですか?」

 

見れば自分と同じ黒髪と黒い目をした少女が立っていた。

 

「ど〜ぞ。」

 

「では、失礼します。」

 

少女が隣に座ってきた。

 

「寝る前に聞かせてくれ。お前…軍人だな? 雰囲気と空きの無い動きが軍人のそれだ。」

 

「よく、分かりましたね?」

 

「俺も軍人だからな。で?…何者だ?」

 

「そうですね…昔話をしても?」

 

その答えがその少女の事だと気付く。

 

「ああ。」

 

「昔々ある所に、とある軍人がいました。その軍人は、妻子もちでしたが一個小隊程の愛人がいました。その中の一人には、その軍人の子供を生みました。その子供は、6歳のときに母親を亡くし、軍人の元に引取られました。その家には、娘二人と子息がいました…引き取られた子供はとても可愛がられました…軍人以外の人達に…やがてその子供は一人になりました…そして2年前、姉二人が戦死し、兄が重症を負いました。…」

 

百之助は、話をぶった切った。

 

「そこまででいい!…文香…だな…?」

 

「はい…兄上…」

 

文香を抱き寄せ頭を撫でた。

 

「すまんかったな…やらかしたから帰れなかった…」

 

「それは知ってます…古参の方から聞きました。」

 

「そうか…」

 

「兄上…お願いがあります…」

 

「どうした?」

 

「私と…シュツエンゲルの契りを結んで下さい。」

 

「いいぞ」

 

「有難うございます」

 

「まさか…兄弟全員…ここに来るとは…」

 

「そうですね…」

 

暫くして共用スペースに向かい、書類を書き、提出した所。1時間ほどで受理され。現在、共用スペースで寛いでいた。

 

「百之助今、暇?」

 

振り向くと空葉とそのシルトがいた。

 

「立ち話も何だから、ここ座れ。」

 

「どうも。」

 

「有難うございます。」

 

二人が席に付く。

 

「結論から言うと暇だな。」

 

「そう。じゃあ…その娘が、貴方のシルト?」

 

「いや…情報早すぎだろ…」

 

「で?どうなの?」

 

「そうだよ…ついでに言っとくと俺の妹だ。」

 

「全然似てないよ?」

 

「そらそうだ…腹違いだもん。」

 

「何その小説みたいな設定?」

 

「俺の親父は愛人が沢山いたからな。」

 

「女として殺意が湧いたよ…」

 

「だろうね…」

 

「私、天野天葉。貴方、名前は?」

 

「船坂文香です。」

 

「そっか…本当に妹なんだ…」

 

「で?本題は?」

 

「実は…貴方の実力が私のレギオンで疑問視してる娘が居て…耐えられないから見せてあげてほしいの。」

 

「別に良いけど…相手は?」

 

「勿論私!」

 

「そうかよ。」

 

その時、面白い事を百之助は、考えついた。

 

「代わりにお願いがあるんだが…」

 

「なに?」

 

「お前のシルトと俺のシルトで模擬戦やってくれないか?」

 

「どうする?樟美?」

 

「受けます。」

 

「だって!でも何で?」

 

「俺だと秒で決着が付いてしまって訓練にならんからだ。」

 

「あ〜確かに…私ですら30秒持てば良い方だもん。」

 

「そんなに強いんですか?」

 

「強く無い…速いだけだ。」

 

天葉が頬を膨らませた。

 

「嘘つき…強く無かったらヒュージの軍勢に囲まれたとき、真っ先に突撃して道を切り拓くなんて芸当…出来るわけないよ。」

 

「お前が言うと説得力が違うな…まあ死にかけたわけだが。」

 

「ごめん…失言だった…」

 

「おいおい…気にすることはないだろう?」

 

「でも…」

 

「良いか戦友?…もう終わったことだ。それにああしなければ、もっと多くのリリィが戦死してたはずだ。20名で済んで良かったとさえ思ってるぞ俺は。大体…何で、皆気にしてんだよ…今は戦時、死体なんぞいくらでも積み上がる。いちいち気にしてられんわ。」

 

ここで百之助は、紅茶を飲む。

 

「姉上には、後を頼むと言われた。だから俺は姉上の遺言に従い敵を叩き潰す。…残された者は、志半ばで散った戦友の意志を継がなきゃならん。それは先祖にも顔向けする為でもあるが。…おれは嫌だぞ。この国の為に散って征った先祖たちに国が無くなりましたと報告するのは。」

 

「何で…何でそこまで前向きなの!…貴方!可笑しいよ!?姉を亡くしたんだよ!?」

 

「…そこがお前の良い所であり悪い所だ。それに俺が死んだらその時は…」

 

バチーン

 

辺りが静まり返る。文香による平手打ちだ。

 

「兄上!天葉様は軍人ではありません!普通の女の子です!託す相手が違います!この学院で死ぬ覚悟と失う覚悟があるのは、私と兄上と伊吹様だけです!」

 

「そんな事は分かってるさ…彼女たちはリリィだもん。軍人じゃない。」

 

「どうして…どうしてよ…何で死ぬのが怖くないの…」

 

「戦って死ぬ、この上ない名誉だ。…それに俺が死んだって悲しいやつ…夢結以外でいないだろ?」

 

「貴方ほんとに知らないのね…皆心配してたのに…」

 

「は?本気で?」

 

「お通夜状態だったよ?」

 

「ええ…俺をいじり倒すのが趣味みたいな連中なのに…まあいいや。行こうぜ?」

 

「はあ…」

 

「兄上…」

 

そうして四人で演習場に向かった。

 

 

 



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10話

演習場に来た百之助は、開口一番感想を述べた。

 

「しかしまあ…アールブヘイム、顔ぶれが変わったな!」

 

現在のアールブヘイムは、二代目に当たる。

 

「うん…色々あってね…」

 

「言わんでいいぞ〜…大体察した。」

 

「ごめん…」

 

「でどいつだ?俺の事を言ってるのは?」

 

「そこの三人。」

 

「なるほど…自己紹介は後回しな。」

 

「りょ〜かい」

 

「俺たちが最初?」

 

「なわけ無いでしょ!」

 

「了解…文香?行けるか?」

 

「何時でも…準備完了です。」

 

文香の腰には小太刀を差し。両手には二本のチャームが収まっていた。

 

「へえ…レアスキル、円環の御手なんだ…」

 

「まだあるぞ…ブーストとか。」

 

ブーストは、通常の3倍の威力が出るスキルで常時発動である。

 

「とかって事は…まだあるの?」

 

「何があるのかは知らない。」

 

「えぇ…」

 

二人が配置につく。依奈が号令を掛ける。

 

「両者構えて!…始め!」

 

「参ります!」

 

最初に動いたのは文香だった。一瞬で距離を取る。

 

「縮地!?」

 

次に目が赤く染まり髪が白く染まる。

 

「ルナティックトランサーまで!?」

 

一瞬で距離を詰め樟美に斬りかかる。

 

「!?…っ」

 

ギン!

 

一撃入れ反撃される前に反対に飛ぶ。そしてまた斬りかかる。

 

ギン!

 

「ぐぅ!」

 

「凄い…完全な一撃離脱…」

 

暫くしてまた距離を取ったが今度はチャームを投げた。

二つのチャームが空中を飛翔する。

 

ガン!ガン…ガラン。

 

樟美が弾き飛ばしスキができる。そこに太ももから抜いたHK45、2丁を発泡する。

 

ババババ

 

それをとっさに回避する樟美。

 

「危なかった…」

 

直ぐにホルスターに戻し、小太刀を抜いて突貫する。

 

「ふっ!」

 

斬りかかる。そのままつばぜり合いに以降…すると文香は、樟美のチャームを掴み足を払って押し倒す。

 

どさ…チャキ…。

 

 

「参りました…」

 

小太刀を放り頭にHK45を突きつけていた。

 

「それまで!」

 

「有難うございました。」

 

樟美を立たせ。礼をする。

 

 

「よくよく考えたらおかしいよね?レアスキルって一つ以上持てたっけ?」

 

「無理だな。」

 

「貴方も4つ持ってたよね?」

 

「あぁ…」

 

「その手の研究してる人からして見れば…卒倒するわねこれ。」

 

「まあな…内の家の連中は何故か複数持ってんだよな…」

 

「謎だね…」

 

「あぁ…次は俺らだな。」

 

「えぇ…」

 

ガチャ…チャキン

 

MP17にマガジンを刺しコッキングする。

 

カチン

 

MP17をホルスターに収め。刀を抜刀する。

 

「あれ?ライフルは?」

 

「この距離ならいらない…むしろ邪魔だ。」

 

「そう…」

 

依奈が号令を掛ける。

 

「両者構えて!…始め!」

 

両者は、同時に地面を蹴った。

 

 



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11話

「はあああ!」

 

「キェェェェ!」

 

空葉は下段から百之助は上段から切り込む。

 

キン!

 

両者鍔迫り合いへ移行しそのまま切り込む。力負けしたのは百之助だ。

 

「くっ…」

 

空葉は上段から切り込んで来る。力負けすると判断し、刀を放り空葉のチャームを左手で掴み右手で、MP17を突きつける。

 

「参りました…」

 

「それまで!」

 

「ふい〜危なかったわ…やっぱり体が鈍ってるな。」

 

「そう?…そんな風には見えなかったけど?」

 

「流石に2年わな…」

 

そんなこんなでアールブヘイムのミーティングルームに一行は向かった。

 

「へぇ…白襷隊のミーティングルームがアールブヘイムのミーティングルームになってるんだ。」

 

「ええ…そうよ。」

 

百之助は周りを見回しながら聞きそれに天葉が答える。

 

「じゃあ…これは知ってる?」

 

言うが早いか左側の壁にカードキーを翳す。すると機械音が聞こえてきた。

 

『ロックを解除します。』

 

ギュイーン…ガン!

 

壁が開き中から沢山の武器が出て来た。唖然とするアールブヘイム一同。

 

「は?え?…何これ?」

 

「いや…見ての通りだけど?」

 

「普通の武器じゃ無いよね?」

 

「リリィ用の武器だよ?」

 

「いやいやいや…おかしいよね?」

 

「なにが?」

 

「どう見ても通常の兵器だけど?」

 

「おいおい…俺が使ってるのと同じやつだよ。」

 

「えぇ…」

 

百之助は壁から一丁のライフルを手にする。

 

「美炎姉様の64式小銃だ。持ってみる?」

 

「遠慮しとく…」

 

「あっそう…本命はこれじゃなくて…あった。」

 

ライフルを戻し一振りの直刀を手にする。

 

「天羽々斬…久しぶりだな。後は戻しとこう。」

 

武器庫中央に有るリーダーに翳すと先程の機械音がなる。

 

『ロックします。』

 

ギュイーン…ガン!カチャン!

 

もとの壁に戻った。

 

「さてと…お〜い!帰って来〜い!」

 

「…」

 

振り返ると唖然とするアールブヘイム一同。

 

「何…あれ…」

 

と切り出したのは渡邉茜だ。

 

「詳しくは言えないぞ?…この国の闇みたいなものさ。」

 

「なによ…それ…全然、今まで分からなかったわよ…」

 

「そらそうだ…言うつもりも無かったんだから…空葉は、知ってるだろ…俺の古巣…」

 

「えぇ…でも話半分で聞いてたのだけれど…」

 

「本当さ。」

 

「いっそ見なかった事にするわ」

 

「そうしてくれ…これでそこの三人組も分かっただろ?」

 

首を立てに振る三人組。

 

「自己紹介をしよう…2年の船坂百之助だ。よろしく。」

 

「その妹の、船坂文香です。以後お見知りおきを。」

 

「一年、金箱弥宙です…」

 

「一年、高須賀月詩です…」

 

「一年、森辰姫です…」

 

「よろしくな」

 

その後紅茶を頂いて撤収した。

 

 

 

 

 



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12話

「ふい〜ここまでにしとくか…」

 

「分かりました…」

 

百之助と文香は、戦闘訓練をしていた。

 

「それに、これから当番だ…やりすぎたけどな。」

 

「はい…」

 

二人とも白熱しすぎてやり過ぎてしまったのである。おかげで疲労困憊であった。

 

「行くぞ…」

 

「はい…」

 

そのまま戦場、に向かう。

 

 

「おーい百之助!当番か〜?」

 

見れば遠くから手を振っていた。彼女は、吉村・Thi・梅であり、先代のアールブヘイムに所属していた。その近くまで行く。

 

「あぁ、そうだぜ。」

 

「そっか…まあよろしくな!隣の娘はシルトか?」

 

「あぁ…自己紹介しな。」

 

「船坂文香です。」

 

「船坂って事は…お前の妹か!?」

 

「そうだ」

 

「まじか!…私は吉村・Thi・梅!よろしくな!」

 

「はい、こちらこそ。」

 

近くで夢結を見かけたのでそちらに行くことにした。

 

「ゆ〜ゆ。よ!」

 

「貴方も来てたのね百之助。」

 

「おう。」

 

「そう…久し振りね…文香ちゃん」

 

「え?」

 

百之助は、疑問が浮かんだ。

 

「はい…お久しぶりです…夢結様。」

 

「え〜と?…何で?」

 

それに答えたのは文香だ。

 

「甲州撤退戦で報告に来たんです…」

 

「まじか…すまん…二人とも…」

 

「いえ…」

 

「良いのよ。」

 

流石に重いので話を切り替える。置いてきぼりにされていた梨璃のためでもあったが。

 

「梨璃は、あの後受け切れたのか?」

 

「はい!さっきですけど…」

 

「そうか!やったな!」

 

「所でその長いのは何ですか?」

 

梨璃が指差したのは、百之助のチャー厶だ。

 

「これか?チャームだよ?」

 

「長過ぎません?」

 

「良いんだよ…撃って見せたほうが早いか…」

 

他のチャームは、射程圏外だが百之助が持つチャーム、武御雷は例外である。

 

チャキ

 

バイポッドを立てて狙いをつける。

 

「届くんですか!?」

 

「あぁ問題ない。」

 

既にヒュージが射程圏内である。

 

カチ。ピューン!

 

引き金を引くと砲口の200倍のビームの奔流がとぼしる。(武御雷は、57ミリ砲である。)

 

ドカーン

 

直撃したが何かがおかしいと百之助は、思った。

 

「手応えがないな…こいつはノインベルトの半分の威力なんだが…」

 

「いやいや…可笑しいでしょう?何でそんな威力あるのよ…」

 

「それに関しては後回しで良いか?」

 

「えぇ…」

 

梨璃と文香は、あまりの出来事で固まっていた。周りも同様だ。

 

「もういっちょやって見るか…」

 

さっきの様に引き金を引く。また爆発した。しかし何かがおかしいと感じていた。

 

「うん…やっぱり効いてないな…」

 

爆炎が晴れ敵の全貌が明らかになる。

 

「うそ…だろ…」

 

ヒュージには、無数のチャームが刺さっていた。

 

「そうか…俺に仇を討てと…そうゆうことか…なあ夢結!?」

 

夢結の方を向くとルナテックトランサーを発動させていた。そのまま突貫する。

 

「おいまて!」

 

「兄様!目が青く、髪も白くなってます。」

 

心配した様子で文香は、困惑していた。

 

「だろうな…だってあのヒュージに刺さってるのは、白襷隊全員のチャームだからな!」

 

言うが早いか百之助は突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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13話

「どうすっかな…」

 

百之助は、怒りに任せて突貫したが、長年の戦闘経験からこのヒュージが撃破不可能であることを感じていた。

 

「仕方ない使うか」

 

そう言ってポケットから取り出したのは緑色の液体の入った注射器、ブースタードラッグだ。それを首筋に刺し一気に注入する。

 

「グッ!ガアアアアアア!」

 

全身に苦痛が走るがすぐに収まった。

 

「はぁ…はぁ…よし…」

 

さらにルナティックトランサーを発動。この時点で身体が臨界寸前である。

 

「アハッ!ハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

そのままヒュージに突っ込み、切り刻み続ける。笑顔で。

頭がおかしくなったのでは無く、本来は戦う事に歓びを感じるが故に、こうやって笑うのだ。ただひたすらに刀、九五式軍刀を振るう。

 

「何…あれ…」

 

「笑って…ますの…?」

 

「はあ…」

 

待機を食らった他のリリィ達はドン引きである。文香は、心配そうなため息を付いていたが…

 

「しかし兄上、ブースタードラッグを使いましたね…でなければこんな機動出来ません…」

 

「「ブースタードラッグ?」」

 

梨璃と楓が首を傾げた。

 

「ブースタードラッグと言うのは、人間を一時的に強化する薬です。当然副作用があり…持って20分です。…良くて戦闘不能、最悪死に至る代物ですよあれは…」

 

「「な!?」」

 

乱入者が二人突然現れた。

 

「あれ使ったんだ…あの戦争屋!使うなと何度も言ったのに!」

 

「百由様?どうしたんじゃ?」

 

百由とミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスである。

 

「百之助は、麻薬を打ち込んで戦ってんのよ!」

 

「それは…不味くないかの?」

 

「不味いに決まってるでしょ〜!」

 

「あの…百由様…とミリアムさん?…何故ここに?」

 

梨璃が何故居るのか言う。

 

「ああ〜工廠科とは言え、私達もリリィなの。結構戦えるのよ〜!」

 

「今日は、当番と違うがの。」

 

こう話してる間でも夢結は暴走状態、百之助は高笑いしながら戦っていた。

 

「夢結様と百之助様、凄い。」

 

「じゃが、片方は暴走。もう片方は頭のネジが飛んでおるようじゃ、それに危なっかしいの…」

 

「百之助はともかく夢結は、なまじテクニックがあるから突っ込み過ぎるのよね…百之助は、元からああだけど…」

 

「兄上は、久し振りの戦場ですからはしゃいでるだけだと思いますよ?それに私達船坂の家系の者にとって戦場は故郷ですから…私も含めて…」

 

「貴方は?誰?」

 

百由は、声の主に問う。

 

「申し遅れました、船坂百之助の異母兄妹にあたります。船坂文香です。以後お見知り置きを。」

 

「ワーオ、妹さんか。よろしくね!…因みに何人兄弟?」

 

「認知している中では、40名中30人目になります。」

 

「うわあ…凄いね…」

 

「父上が節操なしですので、まだまだ増えるかと…」

 

「…聞かなかったことにする。」

 

「それが良いでしょう。…兄上!?」

 

単眼鏡で文香が覗いた先では、夢結に攻撃され、血を流す百之助が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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14話

「夢結!」

 

百之助は、夢結が突っ込み過ぎているので一時退却させる為に戦いながら声を掛けていた。

 

「おい!夢結!止まれ!…この、馬鹿!」

 

夢結は、ルナティックトランサーを発動させてトランス状態である為百之助の声が聞こえない。(百之助の場合、ルナティックトランサーは、ブースタードラッグで半ば強引に制御している。)

 

そのまま戦闘を続行。このままではどちらも死ぬ可能性があるので百之助は、勝負に出た。

 

「やるか」

 

その時にヒュージに刀が刺さってることに気付く。

 

(あれは…奏姉上の鬼切鶴姫!?)

 

その刀を左手に、右手に軍刀を持ち夢結に向かって突貫する。

 

「…!…!」

 

キン!

 

チャームと刀二本がぶつかり合う。

 

「夢結!落ち着け!お前も死ぬ気か!」

 

それでも夢結は止まらない。ここでブースタードラッグの効果が切れた。

 

「クッ…!」

 

全身が麻痺し始めたのだ。そこに夢結の重い一撃が迫る。それを二本の刀で迎撃するが。力が足りなかったため左腹に夢結のチャームが食い込む。

 

「ぐあ!」

 

焼ける様な痛みが走り血が吹き出る。そこで夢結のルナティックトランサーが解けた。

 

「!百之助!…ごめんなさい!」

 

「…いやいいんだ…夢結が無事なら…」 

 

そこに文香が現れる。

 

「兄様!夢様様手伝って下さい!」

 

「ええ…」

 

言うが早いか二人で百之助を抱え離脱し、さっき駄弁っていた所に戻る。

 

「ちょ!百之助!?大丈夫なの!?」

 

「不味いの…血が止まらぬ…」

 

「「…」」

 

百由が心配し、ミリアムが処置する。楓と梨璃、夢結は、思考停止中だ。

 

「これは…駄目なやつ…ですね…兄様…言い残す事はありますか?」

 

「…あとは頼む…」

 

「分かりました。」

 

そう言うと文香は、HK45を抜いた。

 

「それでどうする気!?」

 

「介錯します。」

 

「「え?」」

 

辛うじて反応した梨璃と楓だがあまりの事に絶句した。

 

パァン

 

確実に頭を撃ち抜いた。

 

「何で…」

 

「戦場では慈悲です。」

 

「けど!」

 

「まあ見てて下さい…」

 

暫くして血が逆再生するように戻っていき傷口が塞がった。

 

「「「「「…は?」」」」」

 

「これが兄上が不死身と言われる由縁です。死ねないのですよ。」

 

暫くして文香が崩れ落ちた。

 

「文香ちゃん…どうしたの?」

 

帰ってきた梨璃が聞く。

 

「………………………………………………産気付きました。」

 

「………………………………………………今なんて?」

 

「…赤ちゃんが生まれそうです…」

 

「「「「「え?えええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」」」」」

 

流石にこれには全員がびっくりである。

 

「…貴方…まさか妊娠した状態で飛んだり跳ねたりしてたの?」

 

「…はい…」

 

我に返った百由が指示を飛ばす。

 

「夢結は、百之助を保健室に連れてって!グロッピーは、保健室に事情を説明して!楓ちゃんと梨璃ちゃんは文香ちゃんを連れて保健室に!急いで!」

 

「分かりましたわ!」

 

「わかりました!」

 

「わかったのじゃ!」

 

「分かったわ!」

 

全員が忙しくなった。

 

因みにヒュージは、他のリリィ達が何とか撃破したそう。

 

 

 

 

 



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15話

百之助は目を覚ますと辺りを見回した。

 

「保健室…か…」

 

説明しておくと百合ヶ丘を初めとするガーデンの保健室はほぼ大型の病院に匹敵する設備と人員が揃っており。ほぼ全ての治療を受けることが可能である。

 

「百之助、起きたのね…」

 

そう言いながら入ってきたのは秦祀、生徒会のメンバーである。

 

「おう…死にぞこなったがな。」

 

祀は、呆れたように百之助を見る。

 

「はぁ…船坂の人は皆嬉々として死地に立つけど取り憑かれてるのかしら?あなたの妹も妊娠した状態で戦っていたし…さっき生まれてたけれど…」

 

「………………………………………………今なんて?」

 

「貴方の妹さっき子供を産んだわよ?」

 

「…何にも知らないんだが?」

 

「そう…後で行ってあげたら?」

 

「そうする。所で夢結は?」

 

「懲罰室自分で入ったわよ?」

 

「いつまでだ?」

 

「何時でも。」

 

「分かった。今から行ってくる。」

 

「本当は安静にしててと言いたいところだけれど…いいわ」

 

「済まない。」

 

祀が出ていったので着替えて懲罰室に向かう。中に入るとベッドに座って夢結が静かに泣いていた。

 

「ゆーゆ…」

 

「嫌…来ないで…」

 

拒絶されたが無視する。

 

距離を詰め強引に顎を持ち上げる

 

「…!」

 

目が泣き晴らして赤くなっていた。

 

「藍色の綺麗な瞳だ。…俺は好きだ。ゆーゆが。」

 

「恋人を殺そうとする様な女の何処が良いの…?」

 

上目遣いがとても可愛らしかった。刀やら銃やらを置き夢結の隣に座り、抱き締めながら頭を撫でる。

 

「それはね、ゆーゆ。手の感触、肌の温もり、抱き心地、サラサラした髪、心臓の鼓動、唇の感触、ちょっとした仕草、表情一つ一つが全て愛おしいのさ…君のシルトに嫉妬する程に…」

 

「…///!」

 

この時点で夢結の顔は林檎のように赤く熟れていた。額にキスをし、ベッドに押し倒した。

 

「ああ…夢結…今すぐに襲ってしまいたい…」

 

百之助は、夢結の腕を押さえつけ、唇を重ね舌を差し入れ口の中を蹂躙する。暫くして唇を離すと、惚けた顔をしていた。耳元で囁く。

 

「愛してるよ夢結。君は一生、死ぬまで可愛がってあげるからね?」

 

「あ…う…う…///」

 

夢結は、このプロポーズ紛いの言葉の為、思考が停止してしまい。顔を赤く染め上げ百之助を見上げていた。

 

余談ではあるが後でこの事に関して夢結は、こう回想している。

 

ー恥ずかし過ぎて死にそうだった。だけど、とても嬉しかった。とー

 

その様子を見ていた三人組がいた。ここは誰も入る事が許されない領域だ。

 

「ふふふ、百之助、男になったわね。」

 

そう言うのは赤い髪と目を持った少女だ。

 

「ベアトリーチェ…今はそれどころではないでしょう…」

 

苦言を言うのは金髪碧眼の少女。

 

「良いじゃないハインリヒ、そう思わない?」

 

「そう思いますが…ジャンヌは、どう思いますか?」

 

話を同じ金髪碧眼の少女に聞く。

 

「そうですね…成長したと言うことでしょう」

 

「ですがこれから人類は神々との全面戦争になるでしょう。その時は我らも動かねばなりません。」

 

「そうですね」

 

「そうね…」

 

「夜々の後継、百之助…また逢える日を楽しみにしています。どうかその時まで壮健なれ…」

 

三人が何者かは本人達と百之助以外はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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16話

暫くして共に落ち着いた辺りで梨璃を呼び出し、百合ヶ丘の墓地に行くことにした。

 

「梨璃、今から墓地に行くからな。一応言っとくが霊感は無いよな?」

 

「無いですけど…何でですか?」

 

「リリィで霊感があると取り憑かれる可能性があるからだ。」

 

「そうなんですか!?」

 

「霊感がある場合…まあ神職関係者が大半なんだが稀にそうゆう人がいるからな。大抵はそういう人は巫女になるんだよ。」

 

「全く知りませんでした…」

 

「これは教科書やらには無いが…そもそもリリィとヒュージの戦いは何千年にも渡るんだ。」

 

「え?でも何処の国でも50年前からって…」

 

「妖怪とか魔女刈りとか陰陽師とか聞いたことない?」

 

「あります。」

 

「妖怪は、ヒュージ。魔女刈りの魔女とか、陰陽師はリリィだ。」

 

「そうなんですか!?」

 

「知り合いに錬金術士が居てね。その人に教えてもらったんだよ」

 

「私それ、初耳なのだけれど?」

 

「ほんとは教える気が無かったんだけど…なんとなく。」

 

「そう…」

 

話題を変えることにした。

 

「どっち先にする?」

 

「百之助の方が先よ…そのおかげで生き残ったのだから。」

 

「分かった。所で梨璃、甲州撤退戦は知ってるよな?て言うか居たよな?」

 

「何で知ってるんですか?」

 

「逃げてる時にお茶渡さなかったか?」

 

「あっ…受け取りました。でも髪の毛白くて長かったし、目は赤と青のオッドアイの人でしたよ?」

 

「俺だ。」

 

「ええええええええええええ!?」

 

「まあ異能やら、体質やら、レアスキルやらを使ってたから。分からんだろうが…俺だ。」

 

そのまま吸血鬼としての力を引き出す。すると髪が白く染まり、腰のあたりまで髪が伸びる。目は青くなる。

 

「コレが見たやつだろ?」

 

「はい」

 

直ぐに引っ込め、元に戻す。

 

「とまあ…そう言う事だ。着いた。」

 

見ればお墓がずらりと並んでいた。

 

「梨璃、俺は三人の姉を亡くした。まあレギオンの姉様方入れるともっと沢山なんだが…とゆうかここには俺の腹違いの姉妹達が合わせて30名近く眠ってるんだよ。」

 

「そんなに…」

 

「文香は40人て言ってたけど。俺が知ってる限りでは、約100名程腹違いの姉妹が居るんだ。殆ど戦死したか大怪我を負って入院して植物状態だが。」

 

「そんな…」

 

「後でとんでもない事言うから心の準備しといてくれ。」

 

「分かりました…」

 

まず右から4番目の墓に来た。そこには船坂奏と書かれていた。

 

「姉上、遅れました。」

 

そう言うと花を添え好きだった蜜柑を置く。そして手を合わせる。

 

そのまま右隣の墓の前に立つそこには船坂七々と、書かれていた。

 

「いつも膝枕して頂き有難うございました姉上。」

 

さっきと同じように花と蜜柑を置き手を合わせる。

 

そのまま右隣の墓に移動し花と蜜柑を置く。そこには、藤堂美炎と書かれていた。

 

「可愛がって頂き有難うございます。美炎姉様。」

 

手を合わせ最後に右端の墓に移動する。

 

「夢結。俺いた方がいい?」

 

「ええ」

 

「分かった。」

 

夢結は、花を添えた。そこには川添美鈴と書かれていた。

 

「私も貴方のように割り切れればいいのだけれど…」

 

「そんなもん慣れない方がいいに決まってる。本来戦争なんざ子供の出る幕なんて無いんだよ…今がおかしいだけで。」

 

「そうね…梨璃これを見て…」

 

「はい…」

 

夢結は首に下げていたロケットを開けるそこには写真が入っていた。

 

「この方が…お姉様のシュツエンゲル?」

 

「そう…私の…お姉様…」

 

「川添、美鈴様…」

 

「懐かしいな…面倒見の良い人であったけれど…」

 

「そうね…」

 

そうして墓地を、後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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17話

百之助は、このまま言うべきか悩んだ結果まだ言わないことにした。

 

「さっき言おうと思ったけど辞めるよ、またの機会にしよう。」

 

「分かりました。」

 

梨璃もあまり重いことは聞きたく無かったので利害が一致した。

 

「それよりも…文香の子供見に行こうぜ?」

 

「それは良いわね…行きましょう」

 

三人は保健室に向った。すると共用スペースで楓と二水がいたので声を掛ける。

 

「二人とも文香の子供。見に行かないか?」

 

「ええ!行きますわ!」

 

「私も行きます!」

 

と言う事で保健室に向った。すると保健室近くで百之助は旧大日本帝国陸軍の軍服を深緑に染めた服を身に着けた二名の軍人を見つけた。

 

「父上、爺上お久しぶりです。」

 

「百之助か…久しいな」

 

「そうじゃの…最後に見たのは8つの時じゃったから…大きくなったの…」

 

百之助と夢結以外の三人は困惑していた。夢結は構わずあいさつした。

 

「お久しぶりです。」

 

「夢結ちゃんか…久しぶりだな。」

 

「久しいの…」

 

梨璃が切り出す。

 

「あの…この方々は?」

 

「自己紹介してやって…」

 

「ん?ああ…大日本帝国、防衛陸軍大将、船坂景だ。百之助と文香の父だ。」

 

厳密には日本国が正しいのだが他国か帝国と呼ぶせいでそのままなし崩し的にそうなったのだ。

 

「同じく、防衛陸軍元帥、船坂景雲じゃ。祖父じゃな。」

 

これには三人とも絶句した。防衛軍のトップとその部下であるからだ。

 

景雲は、名乗ろうとした。三人娘を手で静止した。

 

「卿らは名乗る必要はない…知っておるからの。」

 

「「「分かりました(わ)」」」

 

「所で何で爺上までいるのさ?」

 

「それは…じゃな…」

 

景雲が濁したがそれを途中でさえぎった

 

「私が文香嬢と卿に会いたかったからだ。」

 

振り向くと声の主と共に伊吹が歩いてきた。周りの人達は目を見開いて固まった。

 

「お久しぶりです今上天皇陛下。」

 

「卿と私の仲であろう?昔のように呼ぶが良い。」

 

「では照久。これでいい?」

 

「それで良い。我が友よ。」

 

周りを置いてきぼりにして照久は名乗る。

 

「今上天皇、照久である。リリィ諸君、今日は非公式であるから楽にせよ。」

 

そうは言っても天皇陛下であるから楽にできない…と言うのが周りの意見であった。助けてと目線が百之助に突き刺さる。

 

助け船を出したのは景だった。

 

「陛下、皆萎縮してしまっています。ですからもう少し砕けて話されてはいかがですか?」

 

「おお…それはすまぬ…。照久だ、よろしく頼む。」

 

流石に砕け過ぎではないかと思う一同である。しかしチャレンジャーがいた。梨璃だ。

 

「照久様、百之助様とどういう関係で…?」

 

「梨璃!?」

 

これには夢結が悲鳴に近い声をあげた。

 

「よい、私の最初の友が百之助なのだ。その次が伊吹であるが。」

 

「そうですか…」

 

痺れを切らした百之助が促す。

 

「とりあえず保健室入ろうぜ?」

 

「そうであるな。」

 

そして一同は保健室に入った。

 

 

 

 

 



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18話

保健室の奥が病棟になっておりそこの中の一つに入った。文香は一行を見るなり目を見開いて驚いていた。

 

「陛下!?爺上父上まで…皆さんも、お揃いで…」

 

百之助はおもむろに近づきて文香の抱いていた子をを見ながら愛おしそうに言った。

 

「抱いても良いか?」

 

「はい…兄上…」

 

素直に抱いていた子を百之助に渡した。その子はすやすやと寝ていたのでとても可愛いかった。

 

「可愛いな…性別はどっちだ?」

 

「女の子です。それと…この子マギが使えるみたいです。」

 

「そうか…で?名前は?」

 

「決めてません…兄上が決めてください。」

 

「では、七々で」

 

「そんなあっさり…」

 

あっさり名前を決めた百之助に梨璃が何か訴えてきた。

 

「死んだ姉上の遺言でな…まあでもいいじゃないか」

 

「いいと思います。」

 

「文香ちゃんまで…」

 

「照久、抱いてみる?」

 

「良いのか?」

 

「さっき自分で言ったこと忘れたか?」

 

「そうであるな…」

 

そう言いながら七々を照久に渡した。

 

「確かに愛おしいと感じる。…そこのお嬢抱くかえ?」

 

と隣にいた夢結に聞いた。

 

「そうさせて頂きます。」

 

そんなこんなで七々は、リリィ達に変わる変わるたらい回しにされている間に百之助が切り出す。

 

「七々の父親は?分かってるのか?」

 

「はい…でもお教えする事はできません…」

 

「なに?何故だ!?」

 

「流された…私の責任ですから…」

 

文香の目には涙が流ていた。

 

「父上!爺上!今すぐ退室を!」

 

「どうしたのじゃ?」

 

「言いにくいのでしょう…後でお教えしますから…」

 

「しかし…」

 

そこで助っ人が現れた。ここの医者で先生でもある山田先生と生徒会の祀が来たからである。

 

「親御さんですか?お話が…」

 

「…分かりました。」

 

四人が退室する。

 

「で?教えてくれるか?」

 

「嫌です…」

 

そこで照久が痺れを切らした。

 

「上官命令である。言え!」

 

一瞬固まったが観念したようで…

 

「久仁殿下です…」

 

「何!?」

 

流石にこれには動揺を隠せなかった。ここの全員が…

 

「てことは…七々ちゃん…内親王殿下!?」

 

丁度、二水が抱いていた所で爆弾が投下されたことで全員が動揺していた。

 

「あの愚弟!…許さぬ…」

 

「陛下…落ち着いて…」

 

「止めるな…首を飛ばさねば気が済まぬ!」

 

と出で行こうとしたので全力で止めにかかった。(その時、七々は文香の腕に返されていた。)

 

「文香…それは事実か?」

 

「はい…」

 

「陛下嘘は言ってないです。異能で確認しました。」

 

「あい分かった。…やはり殺す…」

 

「まぁまぁ…落ち着いて…過ぎた事ですから…」

 

「卿は、憎く無いのか?」

 

「そんな事はないです。可愛い妹ですから…」

 

「そうか…安心した。」

 

「はぁ…こりゃ大変だ、俺の首も飛ぶ…」

 

「何故だ?」

 

「ちょっと耳を貸してください。」

 

「ああ…」

 

「件の親王殿下に文香を護衛に付けたのは私ですから…」

 

「そうであるが…しかしだな…どう考えても愚弟が悪い訳で」

 

「責任は私が取らされるでしょう?」

 

「そんな事はない…そもそも卿の所属する軍隊は防衛軍とは違い、私の直属の部隊だ。責任を取るなら私だ」

 

「いや…それは流石に…」

 

このままでは拉致が開かないのでひとまず陛下が謝ることとした。

 

「文香嬢…愚弟が…した事については、私が代わりに謝罪する。

すまなかった…」

 

「陛下!?頭を上げて下さい…!」

 

山田先生が戻ってくるまで陛下はひたすら平謝りをしていた。

 

 

 



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19話

「で?何がどうなってるんですかこれは…」

 

山田先生達が帰って来て、陛下がひたすら謝っていたので怪訝に思ったらしい。百之助が説明する。

 

「実はですね…」

 

これまでの経緯を話すと。山田先生は、納得したようで頷いていた。

 

「なるほど…で?文香さんの子はどうしますか?」

 

「普通に考えて親父に実家に連れ帰って貰って育ててもらうのが良いんですが…なにせ…父親がその…」

 

「なるほど…皇族ですからね…」

 

「私は別に連れ帰って貰っても構わんが?」

 

「陛下…しかしですね…」

 

「文香はどうしたいんだ?」

 

「自分で育てたいです…」

 

「それは無理だろ…ここは全寮制だぞ…いや待てよ…トミー。俺の所で夜は面倒見ていいか?」

 

「別にいいぞ?何なら手伝ってやろうか?」

 

「済まない恩に着る。」

 

そこで田中先生がとんでもない事を言う。

 

「授業中は私が面倒を見よう。」

 

「先生!?」

 

「良いじゃない、だって子供と親を引き剥がしたくないもの。それに学校やめたくないでしょう?」

 

「有難うございます…先生」

 

これには脱帽である。

 

 

「それでいいですか?元帥閣下?」

 

「わしは構わんぞ?」

 

まさかの即答である。

 

「父上!?」

 

「そもそもお前が外で子供を沢山作ったのが原因であろうが。子供のワガママくらい一つや2つ聞いても良いのではないか?」

 

「分かりました…」

 

「それで決まりだな。」

 

「やったね文香ちゃん!」

 

梨璃を始めとしてリリィ達から祝福の声が掛けられた。そのどさくさに紛れて祀に抱くか聞いてみる。

 

「祀、抱いてみては?」

 

「良いのかしら?」

 

「良いですよ」

 

と言いながら文香が祀に七々を渡す。

 

「案外重いのね…とても可愛いわ…有り難う。」

 

そのまま直ぐに文香に返す。

 

「文香ちゃん今日はこのままここに居なさい。」

 

「はい」

 

「では我らは引くとしよう」

 

「分かったまたな…次はどうなるか分からないけど」

 

「違いない。」

 

そう言って陛下達は帰っていった。

 

残ったのは先生とリリィ達だ。その時百之助は、重大な事に気が付いた。

 

「さてと…どうしよう…」

 

「どうした?」

 

「赤ちゃんの世話分かんないや…見たの今日が初めてだし…」

 

「確かに…」

 

百之助と伊吹が青ざめていたが山田先生が助け舟を出してくれた。

 

「大丈夫大丈夫、手取り足取り教えてあげるから。」

 

「有難うございます。」

 

夢結が呆れていた。

 

「それでさっき…よくもまあ大口叩いたわね?」

 

「あはははは…」

 

「とりあえずお開きにしましょう…早くしないとお風呂入れなくなるわよ?」

 

「「「あ…」」」

 

そんなこんなで撤収した。

 

 



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20話

百之助は、横に居る文香に呆れていた。

 

「まさか…翌日から復帰するとは…思わなかったよ。」

 

「ですが兄上…身体が訛ってしまいます。」

 

文香は、七々を抱いていた。

 

「分かった…」

 

二人は共用スペースに向かうと、人だかりが出来ていた。

 

「なんだろう?」

 

「さあ?」

 

覗いてみると梨璃が暴れる夢結を取り押さえていた。

 

ジャンプして人だかりの中に入った。

 

「何があった?…なるほど。」

 

ポスターを見て納得した。

 

「百之助様…助…けて…下さい。」

 

「了解。」

 

夢結の前に立ち前から抱きしめ、キスをした。周りは黄色い悲鳴で充満したが無視する。

 

「落ち着いたか?夢結?」

 

「ええ…でも…恥ずかしいわ…///」

 

顔を百之助の胸に埋めるが耳が真っ赤なので赤面してるのが丸わかりである。頭を撫でながら周りを見渡すと周りの野次馬達も赤面していた。

 

「何故…こうなった?」

 

「そりゃ、見慣れてないからよ。中等部からいる私達はともかく、他の娘は見慣れてないから。」

 

「そいつは悪かったな…天葉。」

 

天葉が呆れたように言う。

 

「もう結婚しちゃえば?…そっちの方が嬉しいんだけど?」

 

「それにはノーコメント。」

 

「あっそ。でも、何でそんなベッタリなのかは教えてくれても良いんじゃない?」 

 

一瞬百之助は、考えた。これに関しては実体験であり。重いからだ。

 

「10%…これが何を指すかわかるか?ヒントはそうだな…これだ。」

 

百之助は、虚空から指輪がたくさん付いたチェーンを出す。

 

「何それ?」

 

「なんだと思う?」

 

それを空葉に放る。

 

「よっと…………リリィが身に着ける指輪だよね全部…」

 

受け取った天葉は、分かったようだ。

 

「結論から言おう。そのチェーンに付いているのは…戦死したリリィの指輪だ。そして10%とは白襷隊に所属していたリリィで生きてここを卒業できた数値だ。」

 

この言葉に周りのリリィは、戦慄した。

 

「何故そんなに死んでるのかって?簡単だ、戦い方が違うからだ。白襷隊以外は基本的に戦線を維持する為の部隊だ。それに対し白白襷隊は、槍だ。敵陣を引っ掻き回し一対多数戦闘で敵を撹乱または突破する。最も戦死率の高い部隊なのさ。それを嬉々として受け入れる白襷隊は、並のリリィでは務まらない。だから基本的に、国の為なら死ぬ事すら受け入れる事ができるリリィが集まって出来たのが白襷隊だ。因みに殆どが軍人の家系のリリィだ。…俺はその中でも槍の矛先を担当していた。ここは最も死亡率が高い位置だ。話しがずれたな…それといちゃつくのとなんの関係があるかって?簡単だ。リリィとて人間、すぐ死ぬ。だから悔いを残さない為にも言いたい事は言ってしまう。その人が死んでしまったら言えなくなって、それが傷になってしまうから…君たちもそうだよ?…言いたい事は…すべて相手に伝えたほうがいい…喧嘩したなら直ぐに謝るべきだ…死んでしまったら…言えなくなってしまうのだから…だからこそ俺は戦場に立つ、そう言った事が少なくなる様に…戦死者が増えないように。そして今まで戦場で散って行った戦友を始めとしてこの国の為に散って行った、先祖たちの為にも俺はその意志を継ぐ。」

 

「そう…なのね…」

 

「でも、俺はこのまま戦争が続けば良いとすら思っている。何故なら平和とは戦争の準備期間であるからだ。ヒュージがいなくなったら今度は人類同士で殺し合う。その時先頭に立つのは俺達かもしれないからな。」

 

「何それ…」

 

天葉は、目を見開き絶句している。

 

「だって、どこの軍事資料も作戦用紙にもそう書かれてるし…俺の親父陸軍大将だから。情報が入って来るんだもん。今の所親父が抑えてるし、陛下が許可しないから、不可能だけど。」

 

その言葉に胸を撫で下ろす一同である。

 

「とまあそいうことで説明を終わる。」

 

それで百之助は、これ以上は何も言わんとばかりに夢結を抱きしめた。



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21話

「で?今日はどうすんだ?」

 

野次馬がいなくなったところで百之助、文香、夢結、梨璃は共用スペースにて紅茶を飲んでいた。

 

「まだ決めてないわ。」

 

「エッへへ〜」

 

「そうか…ところで夢結のシルトは、顔がとろけてるが良いのか?」

 

梨璃は完全にとろけていた。

 

「良くないわよ…梨璃貴方これから講義でしょう?予習は?」

 

「分かってはいるんですけど〜今お姉様の顔を見ていられるのが幸せで、幸せで〜」

 

(駄目だこりゃ…)

 

(駄目ですね…)

 

(迂闊だったわ…)

 

と梨璃以外の面々は同じ事を思った。夢結は何かを閃いたようで…

 

「梨璃、貴方にお願いがあります。」

 

「ハァイ〜何なりと〜」

 

梨璃のサイドテールが揺れていたのが子犬の尻尾みたいであった。

 

「レギオンを作りなさい。」

 

「は?」

 

「分かりました!」

 

「即答!?」

 

「へ?…レギオン?て何でしたっけ?」

 

「おいー!?知らんで答えたんかい!」

 

ズサー

 

「二水ちゃん!?」

 

今のは二水が頭からスライディングしたのである。

 

「あはは…御機嫌よう…ははは…」

 

「二水さん、お願いします。」

 

「はっはい!レギオンとは基本的に9人一組で構成されるリリィの戦闘隊員の事です。」

 

「因みにアールブヘイムや白襷隊がそれだ。」

 

「所で二水さん…お祝い有難うございます。」

 

夢結は、静かにキレていた。

 

「ど…どういたしまして」

 

「けど、どうして私がレギオンを?」

 

「貴方が最近弛んでいるから、少しはリリィらしい事をしてみると良いでしょう。」

 

「リリィらしい…分かりましたお姉様!精一杯頑張ります!」

 

夢結は紅茶を飲んでいたが次の言葉で吹き出した。

 

「なんたってお姉様達のレギオンを作るんですから!」

 

「ブフ!」

 

「大丈夫か?」

 

「ええ…」

 

「所で…お姉様達とは?」

 

「へ?お姉様と百之助様と伊吹様と文香ちゃんですが?」

 

「あー…俺と伊吹と文香以外で9人集めてくれ。そしたら入るから…」

 

「何でですか?」

 

「それに関してはレギオンが出来たら教えてあげるよ…どうせ全員が知っててもらった方がいいからな。」

 

「分かりました!」

 

「では早速勧誘です!」

 

梨璃と二水は、走って行ってしまった。

 

 

「いえ…そうゆう意味では…」

 

「諦めろ…なるようにしかならん。」

 

「では私は失礼しますね兄上、夢結様。」

 

「ええ…」

 

「おう。」

 

文香は、退席していってしまった。

 

「貴方…良かったの?」

 

「何が?」

 

「貴方の居たレギオンの特殊性を考えたら、他のレギオンに入ると、運用に支障が出るのでは無いかしら?」

 

「確かに一利あるが…問題ない。そこは考えてある。」

 

「そう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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22話

しばらく夢結とお茶を楽しんでいたが電話がなった。叔父上からだ。

 

「済まん夢結。叔父上から連絡が来た。」

 

「分かったわ行ってらっしゃい。」

 

「ああ…」

 

百之助は寮の自室に戻りモニターとカメラを繋ぐ。すると旧大日本帝国陸軍のカーキの軍服を着た50代の男が出てきた。敬礼する。

 

「お久しぶりです。船坂寧次中将閣下。」

 

『おう!久しいな!船坂百之助少将!元気そうで何よりだ!』

 

この男は船坂寧次近衛軍中将だ。

ここで近衛軍の事を話しておくと。防衛軍とは系譜が異なり、前身は皇宮警察、その前は近衛師団であるので旧大日本帝国陸軍の系譜である。因みに防衛軍の前身は、自衛隊だ。故に近衛軍は、防衛軍とは違い戦果を挙げると直ぐに昇進するためこのように十代で少将になる事ができるのだ。

 

「小官に何か問題でも起こしましたでしょうか?」

 

『いやいや、そうでは無い。目が覚めたと兄上が言うから本当か確かめたかっただけだ。』

 

「そうですか…所で小官は、大佐だった筈です。いつの間に少将に?と言うか…部屋にある軍服の階級章もいつの間にか少将になってるんですが…」

 

寧次中将はその言葉に、笑った。

 

『ハハハハハハ!…すまん。甲州戦役で他大なる戦果を挙げただろう?前任の近衛友作少将が自ら予備役になったから。貴官が繰り上がった、そうゆう事だ。因みにもう97歳だからもう無理だと言ってたぞ?』

 

「なるほどそうゆう事でしたか…という事は小官は、近衛第一師団長になったわけですね?」

 

『ああ!…あともう一つ有るんだが…』

 

「何でしょう?」

 

「貴官、一柳梨璃の血縁関係を調べているんだろう?」

 

「…何故それを…」

 

『私も調べていたからな。きっかけは兄上が避難民の名簿見てたときその名前を見て固まってたからだが…』

 

「私は異能で確認しました。」

 

『なるほど貴官の異能は、覚えた相手の血の記録を見るんだったな…』

 

百之助の異能は他にもあるのだが今は割愛する。

 

『結論から言うと兄上の子供だ。』

 

「やはりですか…」

 

『いい加減にして欲しいんだがな…こればかりはどうにもならん…今は落ち着いているが。まだまだ出でくると思う。』

 

「分かりました…」

 

『本人には、言わないほうが良いだろう…混乱するだろうから…』

 

「そうします」

 

『そうしてくれ…では、また』

 

「ハッ!失礼します。」

 

通信を切り。射撃演習場に向かう。

 

演習場には夢結と梅がいた。

 

「やあ梅!夢結も。」

 

「おう!百之助!今からやるのか?」

 

「おう!」

 

百之助は、99式長小銃に弾を込める。

 

チャキン…ガ…カキン

 

「貴方相変わらず古いライフル使ってるわね…」

 

「これが一番頑丈なんでね…一番使い慣れてるってのもあるけどな。」

 

そう言いながら初弾を入れ発砲。即座に排莢装填。

 

ダーン!チャキン…カランカラン

 

「それ、旧日本軍が使ってた奴だろ?でも、他の奴より長くないか?」

 

「そりゃ長いだろうぜ…この銃実は試作銃で厳密には99式長小銃じゃ無い。それをわざわざ引っ張り出して刻印入れて大東亜戦争に投入したやつだからなぁ。全長が160センチだからとても長い、取り回し最悪だが、着剣したら完全に槍になるから使いやすいぞ?」

 

「へえ?でも持ち歩くとき大変じゃないか?」

 

「それはあるな…でも長い分リーチが長いから重宝してるんだぜ?」

 

「へー」

 

その後は駄弁りながら射撃練習をし、その後解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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23話





「やれやれ…どうしてこうなった。」

 

ある日百之助は、中庭で昼寝をしていたら身体が重かったので起きてみたら。左側に文香、右側に夢結が寝ていた。起こすのは酷だったので頭を撫でていたらいきなり声が掛けられた。

 

「両手に花ですね、百之助?」

 

見れば金髪碧眼の少女が立っていた。

 

「珍しいな…で、何のようだ錬金術師。いや、ハインリヒ・クンラート。」

 

「手厳しいですね。真祖夜々の後継、船坂百之助。それはそうとさっさと結婚なされてはいかがですか?」

 

「法律の問題で不可能だ。歳が足りん。」

 

「そうですか…月日が経つのは早いですね…。」

 

「そうかよ…」

 

「その娘を離しては成りませんよ。ただひたすらに愛してあげなさい。貴方が息絶えるその時まで…」

 

「そうするつもりだが?」

 

「なら安心ですね。」

 

「で?何しに来た?」

 

「その娘の心を折り、貴方しか愛せないように洗脳調教して監禁し、貴方無しに生きられない身体にして差し上げようかと。」

 

内容が滅茶苦茶怖かった。

 

「…いや…怖すぎるだろ…」

 

「後遺症を残さない薬を作るなど錬金術師にとって造作も無い事です。依存性の高い媚薬作りましょうか?」

 

「薬漬けにする気満々じゃねえか…」

 

このマッドサイエンティストは、頭がぶっ飛び過ぎてないかと思う百之助である。

 

「そうですか?私がいた時代は錬金術師は、そうやってましたが…」

 

と、心底意外そうにしていた。

 

「昔の錬金術師、頭のネジ絶対飛んでるだろ…」

 

「他の人が来たので失礼します。」

 

言うが早いか直ぐに消えてしまった。

 

「何だってんだ…」

 

もう一度寝ようとすると声を掛けられた。

 

「さっきの誰?」

 

「お前か…天葉。」

 

見れば天葉が仁王立ちしていた。

 

「で?誰よ?」

 

「言ってもわからんだろ…」

 

「また会うかもしれないでしょう?)

 

「はぁ…ハインリヒ・クンラート。約300年前の錬金術師だ。俺らの大先輩に当たるリリィだよ…」

 

これには首を傾げる空葉。

 

「何で生きてるのよ?」

 

「一回死んでるぞ?自爆してな。そしたら神が不老不死の体を作って魂入れられたんだよ。」

 

「何よそれ…」

 

「同じようなのがあと3人いてそれらは、【守護者】と言われてるぜ?」

 

「へぇ…」

 

「まあ…ヒュージとの戦いは遙か昔から有るからな…詳しい話はできんが…」

 

「そう…その時は教えて?」

 

「いいぜ?」

 

「じゃあ邪魔したら悪いからこれで」

 

「おう!」

 

こうして天葉は、去っていった。

 

「さてと…寝ますかね…」

 

そうして百之助は、深淵に飲まれていった。

 

 

 

 

 



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24話

しばらく昼寝を楽しんだあと。夢結の電話が鳴り始めたので三人は飛び起きた。そして梨璃からのヘルプであった為、文香を除く二人は急いで向かった。すると、見知らぬ一年生二人がいた。

 

「で?どうしたんだ?梨璃?」

 

「実は…」

 

梨璃曰く、片方の子が一流のリリィで有る事を証明する為に立ち会ってほしいとのことだった。

 

「なるほど…君たち名前は?」

 

「郭 神琳(クオ シェンリン)と申します。神琳で結構です。百之助様。」

 

と赤と茶色のオッドアイの娘は、そう名乗った。どうやら百之助の事を知っているようだ。そしてもう一人に声をかける。

 

「こちらこそ、よろしく。…で君は?」

 

こちらの娘はおどおどしている。自虐的な娘のようだ。百之助は、この娘が手練である事を見抜いていたがもう一つ気になっていた。

 

(何でこんなに自信がないのか…)

 

「王 雨嘉(ワン ユージア)です…雨嘉で…お願いします。」

 

「おう…所で…なんでそんなに挙動不審なんだ?それに何故自分を卑下する…雰囲気がどことなく手練のそれなんだが…」

 

「…私はへぼリリィだから…」

 

百之助は、絶句した。何処がへぼリリィなのか説明をしてほしいレベルであった。

 

(お前の様なへぼリリィいてたまるか!!寧ろ遠距離で狙撃されては堪らんぞ!?)

 

直感で狙撃手である事を見抜いていた。

 

「いやいや…雨嘉…一つ言わせてくれ…お前の様なへぼリリィが居てたまるか!!どう見ても!歴戦の猛者だよ雰囲気が!!」

 

と雨嘉の肩をがっちり掴み前後に揺らした。周りはドン引きである。

 

「百之助…落ち着きなさい」

 

「けどな…」

 

「私…姉や妹に比べて…出来が悪いから…」

 

なるほどそれでかと思う百之助である。

 

「最大交戦射程は?」

 

「4.5キロです…けど…」

 

「…世界記録知ってるか?」

 

「いえ…」

 

「4.1キロだ。」

 

これには驚愕する一同。

 

「すごーい雨嘉さん!」

 

「十分凄いから!!全然へぼリリィじゃ無いから!!寧ろ伸びしろあるから!!!!自信をもって!?」

 

とまた肩を掴んで前後に揺らした。

 

「でも…出来が悪いから…必要とされて無い…だから…アイスランドから追い出された…」

 

こいつは重症だと天を仰ぐ百之助である。

 

(と言うかそれ絶対違うと思うぞ…)

 

「そうか…もう何も言わん…神琳…君が言いたい事が分かった気がするよ…」

 

「有難うございます…分かっていただけて。」

 

「へ?」

 

と梨璃だけが分かってなかった。

 

「では行きましょう。」

 

そしてヒュージを迎撃するための廃墟の一角に来ていた。

 

百之助、梨璃は雨嘉と、夢結と神琳で別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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25話

廃墟の屋上の上に来ていた。

 

「少し待ってくれ準備するから」

 

「はい…」

 

百之助は、空間収納から袋を取り出した。その中から99式狙撃眼鏡改と曲げられたボルトハンドル、着剣装置用バイポッドを取り出し。既存のストレートボルトハンドルを曲げられた物に換装し狙撃眼鏡とバイポッドを装着する。その際、残弾が入ってないか確認し空打ちをした。これにより99式長小銃は、99式長狙撃銃となる。

 

カチン…チャキン!

 

「準備完了したぞ。」

 

そう言うと、バイポッドを展開し腹這いになり、狙撃眼鏡を覗く。

 

「分かりました。」

 

「雨嘉さん!あなたの事教えて!」

 

「うん…私の姉も妹も今もアイスランドに残って戦っているの…一人だけ故郷を離れるよう言い渡されて…私は必要とされて無いんだって思った。ごめんなさい…百合ヶ丘は世界的にトップクラスのガーデンよ。…ただ故郷を守りたいって気持ちは、特別ってゆうか…」

 

「うん…それ分かるよ…」

 

(梨璃…君が言うと説得力があるぞ…)

 

と思う百之助である。

 

電話がなった。雨嘉が電話に出る。

 

すると遠くが光った。

 

(多分あれが狙撃目標…)

 

百之助は、99式狙撃眼鏡改の倍率を4倍から8倍にする。(倍率を可変出来るように改造してある。等倍から12倍まで。)

 

(なるほど…神琳か…)

 

「うん…え?…そんな訳!」

 

電話を切る。

 

「どうして…」

 

どうやら読み通りの用だ。そこで梨璃が雨嘉のストラップの猫に反応した。

 

「雨嘉さん!猫好きなの?」

 

一瞬狼狽えたが持ち直した。

 

「え?…う、うん」

 

「可愛いね〜その子。」

 

「うん!これ…持っててくれる?」

 

「え?うん…」

 

少し迷ったが梨璃は、雨嘉の電話を受け取る。

 

雨嘉は。自前のチャーム【アステリオン】を構える。そして自身のレアスキル天の秤目を発動。

 

「遠距離射撃?目標は何なの?」

 

「神琳…」

 

「え!?」

 

「こちらでも確認した…君のタイミングで撃て。」

 

「了解。」

 

「アワ!アワ!危ないよユージアさん!」

 

「一柳さんと神琳は、私にチャンスをくれたの…だから私も貴方達を信じてみる。」

 

「え?チャンス?」

 

ドォン!

 

対物ライフル並みの砲声を響かせる。その弾を神琳は弾く。

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ドォン!

 

「ヒット」

 

ここで風が出てきた。

 

(残り2発行けるな…)

 

風に合わせて銃口を動かす。

 

ドォン!

 

「ヒット!ラスト一発!」

 

さらに風が出でくる。さらに修正。最後の一発が吐き出される。

 

ドォン!

 

「ヒット!?」

 

その弾は弾き返され戻ってくる。

 

それを雨嘉は、両断した。

 

「全弾命中。お疲れさん。」

 

「はい…」

 

「10発…」

 

そこで電話が鳴った。電話に出る。

 

「神琳…!」

 

「う〜やったー!」

 

「有難う梨璃。」

 

「え?」

 

梨璃はなんの事か分からないようだった。

 

「梨璃がこの子を褒めてくれて…私、貴方のレギオンに入りたいって思えたから。」

 

「それが有難う?」

 

「うん…有難う…」

 

百之助が立ち上がった時に何かを思い出したようだ。

 

「今思い出した…なんか見た事あると思ったら…俺が6歳のとき、アイスランドに行った時の娘では無いか?」

 

「はい?」

 

「王 秦崙(ワン タイロン)の次女だろ?」

 

「はい…」

 

「父上が君の父上と友達でな。俺が六歳の時、父上と母上、姉上二人と、妹とでアイスランドの君の家に、行ったことあるぞ?その時君は母上の影に隠れてたけど。最終的に【お兄ちゃん】と言ってたの思い出したわ!」

 

「あ…」

 

それで思い出したようだ。

 

「久しぶりだなユーちゃん?」

 

「お兄ちゃん!」

 

と抱きついてきた。

 

「アワワワワ!」

 

と梨璃がキャパオーバーであったが…

 

「多分君の母上は、君に世界を見せたかったのでは?」

 

「そう…でしょうか…」

 

「俺はそうだと思うがな。」

 

 

しばらく離してくれなかった。そして夢結に怒られたのはご愛嬌である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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26話

ある日、百之助に、大きな荷物が届いた。送り主は、船坂景である。

 

「何が入ってんだこれ…」

 

「分からん…」

 

伊吹には、手伝ってもらう為に来てもらっていた。

 

「でかいな…」

 

「銃にしては長すぎるし、刀にしてもこれはおかしい…チャームは使わないから除外だ。」

 

「とりあえず開けてみるか…」

 

「だな…」

 

と、二人でダンボールを開けた。すると大小2つの風呂敷に包まれた物とガンケースが出てきた。

 

「ガンケースは後回しにするとして…この2つは何だ?」

 

唸っていると伊吹がダンボールから手紙を見つけた。

 

「百之助。手紙があったぞ!」

 

「どれどれ…」

 

手紙は2通ありどちらも百之助宛であった。

 

1つ目は船坂大将からで、梨璃に守り刀を渡してほしいとのこと。

 

2つ目は天野海軍中将からで、妻が亡くなったのでその旨を娘、つまり空葉に、伝えて欲しいとの事だった。

 

「何方も…言いにくいな…しかも丸投げ…」

 

「そうだな…」

 

「梨璃に付いては、一柳陸軍中将に聞かないことには言えんだろうし…天葉は、滅茶苦茶怒られそう…」

 

「やるしか無いだろ…」

 

「だな…」

 

翌日、講義が終わった後、天葉に声をかけた。

 

「天葉…ちょっといいか?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「二人だけで話を…」

 

「嫌よ。アールブヘイムのミーティングルームに来て。」

 

「…分かった…でも…後悔はするなよ…」

 

「分かった。」

 

そう言って自室に戻り例の箱(大きい方の包み)を空間収納に格納した。そして、軍刀を下げた。

 

直ぐにアールブヘイムのミーティングルームに行った。

 

コンコン

 

「どうぞ。」

 

と中から天葉の声がしたので入室する。

 

「失礼する。」

 

入ると全員が揃っていた。

 

「で、何のよう?」

 

「実はだな…これを天野海軍中将から渡すよう言われたんだ…」

 

そう言いながら空間収納から包みを出す。

 

「えらく長いね。」

 

「言いにくいから…開けてくれないか…頼む…」

 

そう言うとテーブルに置いた。

 

「百之助、貴方大丈夫?」

 

「なんとか…これきついんだよ…頼む…開けてくれ…」

 

「分かった。」

 

そう言うと天葉は、風呂敷を開けその中の木箱を開けた。そこには一振りの刀が入っていた。

 

「…これ…お母さんの…リリィ現役時代の刀…なんで…!」

 

「先月…亡くなられたそうだ…」

 

「うそ…嘘よ!」

 

「本当だ…現役時代に受けた傷と、ブースタードラッグの乱用により身体がズタボロだったんだよ…」

 

百之助は、顔を直視出来なかった。でも分かっていた…泣いていることには…

 

「ブースタードラッグって…貴方が使ってた奴…」

 

「1世代前のだがこれで合ってる。」

 

百之助は、ポケットから注射器を取り出して見せた。

 

「なんで…貴方にお願いしたの…」

 

空葉は、声が震えていた。

 

「夏には会えなくなる可能性があるからだ。」

 

「え?」

 

「防衛海軍は天野中将率いる第2艦隊を持って、ヒュージネストに攻撃を仕掛ける…何処かは言えない。」

 

「無理よ!リリィですら無理なのに!!」

 

「だから…俺にお願いしてきたんだろう?…帰れないから…そして…愛する娘に顔向け出来ないから…」

 

「軍人って…何でそうなの!?…何時もそう!…何で…」

 

「自分の一所を懸命に守り抜くために…愛する物を守る為に…祖国をまもりぬくために…その為なら命すら投げ捨てる。それが軍人と言う生き物だ。」

 

「…貴方もそう?」

 

「今更だ…この身はいつ死んでもおかしくない…いつ死んだって良い…それで何かを守れるならば…それで良い…それに…戦場は…俺にとって故郷だ。」

 

「貴方…狂ってる!…可笑しいわよ!?」

 

「俺は所詮戦争屋…人殺しだ。だから死んだって誰も気にしないし、寧ろ罵る奴も居るだろう。それで良いんだよ。」

 

「あの…百之助様?…リリィでは無いのですか?」

 

と恐る恐る樟美が聞いてくる。」

 

「ああ…突撃擲弾兵…まあ…リリィの事だが…俺は軍人だ」

 

これには全員が絶句した。

 

「そもそも白襷隊は全員が軍人だぞ?俺のシルトも含めて…」

 

「そう…なんですか?」

 

「大勢失ったし、大勢殺した。…俺達は本来、リリィを狩るためのリリィだ。だから人殺しは沢山やった。…これからもそうだろう…」

 

「そんな…そんなのって…あんまりです!!」

 

全員が涙ぐんでいた。

 

「君たちはこちら側には来るなよ…それだけは…やめてくれ…」

 

「天葉…」

 

「何よ…」

 

「この前の続きたが俺が戦死したらその時は、笑ってくれ…君の泣き顔は見たくない。と言うか…百合ヶ丘のリリィ全員だけど」

 

「嫌よ!…何で…何で…そんな…そんな事言うのよ…」

 

「俺は戦う事しか出来ないから…それで悲しむ人が少なくなればいい」

 

「貴方の事で悲しむ人は入らないのね!?」

 

「知るか…誰も困らんだろ…」

 

「顔も見たくない!!出てって!!」

 

「分かった…じゃあな戦友さらばだ…」

 

そう言って百之助は出て行った。



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27話

百之助が出て行ってしばらく経った後、依奈は何かを思い出すように言う。

 

「百之助も、変わったわね…昔は戦う事しか…頭に無かったし、何も話してくれなかった。それにリリィを【戦友】って言う事も無かったのに…」

 

「え?」

 

「初等部に編入されて初めて会った時、目が死んでたし、自分の名前しか教えてくれなかった。受け答えも[ああ]だけだったし」

 

「今と全然違う…」

 

と樟美は、声をかろうじて出すことができた。

 

「それに…笑わなかった…と言うか表情がこの世の終わりって感じだった。そして、もっと危ない戦い方してた。具体的には、味方が射撃してる中を突っ込んでヒュージを斬狩してたよ。」

 

「危な過ぎる…」

 

「これには流石に文句を言ったら。[問題ないこちらが避ける、だから安心して射撃して]と言ってたわ。」

 

「いやいや…頭のネジが可笑しい…」

 

「それに比べればさほど気にならないよ…今はそこまでじゃないからね」

 

依奈は、一白置いた。

 

「多分編入される前から…戦場に身を置いていたんだと思う。それにこう言ってた。[死者のいない戦場なんてものは無い、あるとすれば人間を物と定義したときか、戦を無かった事にしたときかだ。]って、多分経験からだと思う。」

 

「そんなのって!」

 

これは全員が…聞きたくなかった。

 

「あるのよ…そして…私達にはどうする事もできない…ただ寄り添うしか出来ないのよ…」

 

ここで依奈は、紅茶を飲んだ。続きを紡ぐ為に。

 

「甲州撤退戦の前、白襷隊が何か儀式してたでしょ?」

 

「ええ…」

 

「確かに…」

 

天葉と茜は、思い出すように言う。

 

「これ…白襷隊の伝統儀礼で…死ぬ為の儀式よ…」

 

「「な!?」」

 

「ワイングラスにワインを注いで、天高く持ち上げ[フロージット]と叫び一気に飲み干しグラスを叩き割る。…これ元々神風特別攻撃隊の出撃前の儀式を改変した物よ。…もとはアニメを参考にしたらしいけど…そして…生き残ってしまった…それが苦痛になっていると思う…本当は死にたいんだと思う…」

 

これには全員が押し黙ってしまった。

 

「100人近くいた姉妹達は、殆どが戦死してしまって…もう心が…折れてる可能性すら有る。夢結もああだし…もう耐えられないのかも…」

 

「ちょっと待って!姉妹が100人近い!?可笑しくない?」

 

これに反応したのは、茜だ。

 

「異母姉妹よ…殆どは…」

 

これに答えたのは天葉だった。

 

「何よ…それ…」

 

「話を戻すけど…百之助にとって…私達は…ただの重り…現世に繋いでおくための…百之助は、ああ言うけど…私達が悲しむから…死ねないのかも…」

 

壱が言う。何かできるのではないかと…

 

「でも…私達に出来ることはあるんじゃ無いですか?何かしてあげることだって…」

 

「死者に会うことは出来ない。これだけは…どうしようもない…

彼が百合ヶ丘の墓地に行くと半分くらいは花が手向けられてる…これが意味するの分かる?」

 

「う…」

 

「全員が死んだ姉妹達よ…」

 

更に場が重くなってしまった。

 

 

 

 

 

 



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28話

「やっぱり…こうなるよな…軍人って、理解してもらえないのかな…」

 

そう言いながら百之助は、自室で寛いでいた。

 

「勉強は…教本丸暗記しちゃったし…一柳中将には、面会許可貰ったし…風呂入ったし…することがねえ…」

 

百之助は、とてつもなく暇を持て余していた。どうするか考えていたらでかいガンケースが目に止まった。

 

「あれ…開けてみるか…」

 

ロックを解除し開けると一丁のバトルライフルが出てきた。その銃は、AR−15系列の銃で、MーLOKの16インチハンドガードに20インチの着剣装置の付いたヘビィバレルに、可変ストック、ハンドガードギリギリに付いたアングルグリップ、ハイマウントで、覗く方が大きく銃口側が細くなっている、等倍から12倍のスコープ。もちろん脱着式のサブレッサーに、刀身が50センチの銃剣、そして…バックアップサイト。セミフル切り替え可能。使う弾は7.62mmNATO弾。

 

「何じゃこりゃ…銃の名前は…あった…」

 

ガンケースの隅の方に手紙が入っていた。

 

「なになに…」

 

差出人は、変な銃を作っては送り付けて来る変人マイケルブローニングからだった。

 

「名前は…40式歩兵銃…あの人相変わらず変な名前付けるな…」

 

弾倉は30発入り弾倉だった。

 

「これ案外使えるんじゃない?…マギは…通るな…」

 

チャキ!

 

構えてみたが、さほど重くないし撃ちやすそうだ。着剣出来るのも追加点だ。

 

「やばいこれ…いい…心が踊るわ…」

 

一回ガンケースに入れ、息吹の部屋に行く。

 

「トミーちょっと来てくれよ」

 

「あ?いいけど?」

 

自室に招き入れ。銃を見せる。

 

「どうかな!」

 

「これ…いいな…ボルトストップとか全部アンビだから操作しやすいだろ…いいな…」

 

そう言いながら百之助に返す。

 

「だろ?」

 

「弾は7.62mmNATOだろ?ヒュージ相手でも問題なさそうだ。」

 

「分かってくれたか…戦友」

 

「これは…感動する…でも作ったの誰だ?」

 

「マイケルブローニングさんから。」

 

「本当か?あの人変なものしか作らないのに…今回のはいいな。」

 

「問題は、何処まで出来るのかだけど…どうだろう?」

 

「こればっかりは実際に使うしかないだろう?」

 

「それもそうか。」

 

とそんな感じで話していたら夢結が来た。

 

コンコン

 

「開いてるぞー?」

 

「失礼するわ」

 

「…何しに来たし…」

 

「空葉の様子がおかしいのだけれど…何か知らないかしら?」

 

顔は、笑っていたが目が怖かった。

 

「うぐ…心当たりしかありません…」

 

すると夢結は、呆れたように百之助を見る。

 

「はあ…貴方相変わらず天葉と、折り合いが悪いわね…」

 

「まあ…今回のは…時間がたたんとどうしようもないぞ…」

 

「どうしたのよ…」

 

「天葉の家の問題だからそっとしておいてくれ。」

 

「分かったわ」

 

「済まないありがとう…」

 

「邪魔したわ…」

 

そう言って夢結は出ていった。



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29話

百之助は、とある場所に来ていた。

 

ー宇都宮要塞ー

 

この要塞は、近衛軍第一、第二近衛師団の守る天皇陛下の仮住まいであり、近衛軍及び防衛軍の総司令部であり、関東方面軍司令部でもある。大変重要な要塞である。

 

百之助は、この要塞に関東方面軍司令官一柳竜也中将と面会する為に百合ヶ丘からオスプレイで来ていた。

 

「久しぶりだ…お?」

 

「船坂百之助閣下!お待ちしておりました!」

 

彼は百之助の部下であり、双子の弟でもある。互いに敬礼した後歩いて行く。

 

「船坂祐也大佐…久しいな」

 

「ハッ、小官が途中までお供します!」

 

「ありがとう…いつも通りで良いぞ?)

 

「そうさせてもらうよ…兄上」

 

「所で佳奈美とは進展は、あったのか?」

 

「親父じゃないんだから…」

 

「だろうな。」

 

そんなふうに、他愛のない話をしながら歩いて行くと途中で、一柳中将の副官である八島尊少佐に引き継いでもらい、関東方面軍司令官室の前まで来る。

 

「八島少佐です。船坂百之助近衛少将をお連れしました。」

 

「入り給え。」

 

「ハッ、失礼します!」

 

「それで?話とは?…まあ…座り給え。」

 

「はい、お言葉に甘えて…」

 

「どうしたんだ?」

 

「実は…御息女の一柳梨璃の話なのですが…」

 

百之助は、経緯を話した。

 

「なるほど…それについてはいつか話すつもりであったので。それが早まるだけなのでか構わない。」

 

「分かりました…では、そのように。」

 

「少将…娘を、頼む。」

 

「この命に変えましても。我が妹を守り通します。」

 

「済まない…ありがとう」

 

「では失礼します。」

 

「では、また。」

 

そうして百之助は退室し、百合ヶ丘に戻った。

 

その時は既に夜であった。息吹から梨璃の誕生会をやると言われていたので共用スペースに向った。

 

「おー夢結が可愛い顔晒してるじゃないか〜!」

 

「百之助様!?」

 

「おー梨璃。なかなか過激なことしてるな〜?」

 

「百之助?嫉妬したのか?」

 

「馬鹿かよ!妹に嫉妬してどうするんだ!?」

 

「「「「「「「「「へ?」」」」」」」」

 

全員が固まった。

 

「どうゆうことだ?」

 

「それはな梅、梨璃と俺は異母兄妹だ。」

 

「どうゆう…事ですか?」

 

「それはな…実は君の母上は、一柳竜也中将と結婚する前からお腹に子供を抱えていたのだ。…つまりそういう事さ。」

 

「まじか…」

 

「ええ…」

 

流石に動揺を隠せない一同である。

 

「うちの親父が君にこれを渡すそうだ。」

 

そう言いながら小さい箱を渡す。

 

「これ何ですか?」

 

「開けてみて?」

 

開けると中から守り刀が出てきた。

 

「いいんですか?」

 

「良いんだよ!貰っとけ!あとこれも!」

 

「なんですかこれ?」

 

手紙である。

 

「君の父上からさ。」

 

「分かりました。」

 

「百之助、レギオンメンバー揃ったわよ?」

 

「じゃあ入る。」

 

「即答!?」

 

「よろしく頼む。戦友諸君!」



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30話

百之助は梨璃のレギオンが発足したため、伊吹と文香とともにミーティングルームに向かう。

 

「白襷隊のミーティングルームを使うらしいぞ?」

 

「は?アールブヘイムが使ってなかったか?」

 

「あそこは俺らしか使えないものがあるからだろ?」

 

「それもそうか。」

 

と百之助と伊吹は、文香を話から置いてきぼりしながら向かう。

 

「ここだな…」

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

と中から夢結の声が聞こえたのでそのまま入る。

 

「おー集まってるな。」

 

「これで全員揃ったな!」

 

と梅が全員を見渡しながら言った。

 

「で?話すんでしょう?百之助?」

 

と夢結が百之助に話すよう促す。

 

「ああ!忘れとった…」

 

「何をだ?」

 

と忘れてたと言わんばかりに百之助オーバーリアクションをとった。それに疑問を浮かべる伊吹。

 

「傾注!現時点を以って情報統制を解除する!諸君には守秘義務がある事を理解されたい。」

 

と百之助、伊吹、文香は敬礼する。

 

「なんか物々しくなってきたわね…」

 

「我々はここの生徒である前に一回の軍人である。その事を理解されたい。」

 

百之助は、一白置いた。。

 

「日本国近衛軍第一近衛師団長、船坂百之助少将であります。」

 

「同じく、第一近衛連隊長、富永伊吹大佐だ。」

 

「同じく第一小隊長、船坂文香少尉です。」

 

「まじか…」

 

「…」

 

「ええええ!?」

 

と、皆驚いていた。

 

「まあ…色々あってここに居るんだが…その…軍と協同で事に当たるときどうしても原隊で行動しなければならなくて。その場合俺ら含めて9人だとノインベルト戦術がつかえないから…」

 

「なるほど…」

 

と皆納得していた。

 

「百之助もう一つのは話さなくていいのか?」

 

と伊吹が聞いてくる。

 

「それに関してはもっと詳しい人に話してもらおう。…居るんだろ?ハインリヒ、ジャンヌ、ベアトリーチェ。」

 

すると窓側にある後から3人が出てきた。

 

「やはりバレましたか。」

 

「でしょうね」

 

「坊やは、鋭いわね」

 

ハインリヒ、ジャンヌ、ベアトリーチェである。

 

「どっから出てきたのじゃ…」

 

「だれだ?」

 

「あらまあ。」

 

「全然気付かなかったぞ!?」

 

と、驚いていた。

 

「自己紹介頼む。」

 

「錬金術師、ハインリヒ・クンラートです。以後お見知りおきを」

 

「オルレアンの乙女、ジャンヌ・ダルクです。」

 

「ベアトリーチェ・ポルティナーリよ」

 

「ちょっと待って…全員歴史上の人物じゃない…」

 

と夢結は、驚いていた。

 

「安心してください…一回死んで体は再構築してますから…人間では無いですよ?」

 

「「「「「「「そう言う問題じゃない(のじゃ)(ですの)!」」」」」」

 

とハインリヒの言葉に突っ込む一同

 

「私達は守護者です。人類の…神々と戦うための」

 

「で?その守護者がなんの関係が…」

 

「百之助もその内の一人だからよお嬢ちゃん?」

 

「…はい?」

 

「死んで再構築された訳ではないが、俺も守護者なのさ。」

 

 

「「「「「「「え?ええええええええええええ!?」」」」」」」」

 

「じゃあ…貴方が死なないのはそう言う事?」

 

「そのとうりさ」

 

厳密には違うのだがそう言う事にする。

 

「うわあ…」

 

「何千年と戦い続けているのよ、私達は…ヒュージと」

 

「百之助は、まだ17歳なのでそこまででは無いけれどね」

 

「何かとてもヤバイものを聞いた気がする…」

 

と全員真っ青である。

 

「そういえばハインリヒ・クンラートって男ではなかったかしら?」

 

夢結が聞く。

 

「ああ…男装してたからですね」

 

「そうですか…」

 

「ここまで胸大きくなかったんですけど…これはこれで良いものですね」

 

と自分の胸を揉む

 

「はわわわわ…」

 

と約1名顔真っ赤なのがいた。

 

今日も平和である。

 

 

 



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31話

レギオン名は一柳隊に決まり、日々訓練に明け暮れていた。

 

「疲れた…」

 

「おいおい…軍人が何言ってる…」

 

「だって久しぶりにトミーと立合ったんだもん…」

 

「そうだな…」

 

と百之助と伊吹は、木陰で休んでいた。

 

「所で…」

 

「何?」

 

「何故膝に仔猫が居るんだ?」

 

百之助の膝の上に白い子猫が乗っていた。

 

「母猫がヒュージにやられてこの子が残ったんだよ…で、懐かれてる…」

 

「まじか…と言うか…小さすぎない?」

 

この子猫は手のひらサイズであった。

 

「生後3日だ…」

 

「まさかの生まれたて…」

 

「寮で育ててやりたいけどこればかりは…」

 

「難しいよな…」

 

「仕方がないから玄関にダンボールの箱で飼ってるんだけど…夜は心配でな…」

 

「わかる気がする。」

 

そこに同じレギオンメンバー達が寄ってくる。気配を察知した子猫は百之助のポケットに隠れる。

 

「あらら隠れちゃった…」

 

「何をしているのよ…」

 

「木陰で休んでる。」

 

「お兄ちゃん…隣いい?」

 

「構わんぞ?」

 

雨嘉が右隣に左側に夢結が座る。

 

「結局ほぼ全員揃うのかよ…」

 

「所で先輩、なんで哺乳瓶持ってるんだ?」

 

哺乳瓶を見て聞いてくるのは安藤鶴紗である。

 

「あー…鶴紗手を出せ。」

 

「?いいけど…」

 

その上にポケットから子猫を取り出し鶴紗の手に乗せる。

 

「ちっちゃい///」

 

「生後3日の赤ちゃんだ、大切に扱えよ?」

 

「猫の赤ちゃんそこまで小さいのは見たことないわよ…」

 

「そうか?」

 

「あら可愛い!」

 

「ちっちゃい…」

 

と神琳と雨嘉も釘付けである。

 

「珍しいな母猫は?」

 

「梅、昨日のヒュージに押しつぶされてた。」

 

「まじか…」

 

「名前は何ていうんですか?」

 

「決めてないぞ梨璃、[鷗外]て呼んでたけど。」

 

「お前絶対、高瀬舟読んでただろ…」

 

「そうだな…読んでた…でも何で分かった?」

 

「昨日お前の机に置いてあった、しかも出版当時の古いやつ」

 

「何でそんなに古いの持ってるのよ…」

 

「実家の倉庫にあった。」

 

「ええ…」

 

「まあ、博物館級の代物だからぞんざいには、扱えんけど…」

 

「お前が使ってる武器も博物館級なんだが…」

 

「言われてみれば確かに…けど一番頑丈なんだよな…」

 

「40式歩兵銃は?今日使ってないけど…」

 

「今度使うさ、今はまだ使う気にならないな」

 

「そうかよ…」

 

「所でグロピウスは?」

 

「工廠科」

 

「なるほど」

 

「所で先輩、この子猫はどうするんだ?」

 

「寮の玄関で飼ってる」

 

「良いのか?それ」

 

「良いんじゃね?寮母さんとかいないし」

 

「限りなく黒に近いグレーでは?」

 

「そうとも言う!」

 

今日も百合ヶ丘は、平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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32話

数日後、一柳隊はアールブヘイムのノインベルト戦術を見せてもらうため、とある建物の屋上に来ていた。そこにはパラソルやら椅子やらテーブルやジュースまで置かれていた。

 

「オイオイ…天葉、遊びに来たんじゃないんだぞ…」

 

「良いじゃない、そこまでヤバイのは来ないんだし?」

 

天葉の答えに呆れた百之助である。

 

「アホか、起きたらどうするんだ?」

 

「その時は…他のレギオン呼ぶかな…」

 

「アールブヘイムが敵わないってどんな状況よ…」

 

夢結は、そんな事は起き無いと考えていた。

 

「いやいや…最悪の状況を常に考えとかないともしもの時死人が出るぞ?」

 

「白襷隊出身者の実体験は説得力が凄くあるわね…」

 

「一応元、槍の穂先だったんでね…俺がいたポジションが一番戦死者が出る所だから…よく分かるんだ。」

 

「あははは…」

 

天葉は、百之助の言葉に笑うしかなかった。

 

「あの…ここで見学ですか?」

 

と、梨璃が聞いてきた。

 

「ええ、私達の戦闘を見学するなら、特等席でしょう?」

 

「あの夢結がシルトの為に骨折りするなら協力したくもなるでしょう。」

 

「アッハハ、貴方夢結をこんなに可愛くしちゃうなんてあなた一体何者なの?」

 

天葉と依奈は、どこか嬉しそうだ。

 

「え?私はただの新米リリィで…」

 

「有難う、天葉。」

 

どうやら夢結は、恥ずかしくなったようで梨璃の言葉をぶった切った。

 

「気にしないで?貸しだから。」

 

「ノインベルト戦術を見たいんでしょう?お見せする暇もなく倒しちゃったらごめんなさいね?」

 

百之助は、異能でヒュージを識別していた。

 

「そいつは無理だな…あれ、レストア。」

 

「本当に?」

 

「ああ…だが…なんかヤバそうだ…」

 

そう言いながら、異能を限界まで引き上げる。ヒュージの内部構造にある物を見つけた。

 

(あれは…まさか!)

 

「天葉!行くのを待て!…アールブヘイムだけでは対応できん!」

 

「どう言う事よ?」

 

「夢結?一つ聞きたい…お前のダインスレイブ…今どこにある?」

 

「それは…お姉様が持って行ったわ…」

 

「なるほど…じゃああのヒュージは、君にとって…仇と言う訳か…」

 

「なぜ?」

 

「あのヒュージ…君のダインスレイブでマギを操ってやがる。…つまりノインベルト戦術が無効化される可能性がある。」

 

「何ですって!?」

 

これには全員が戦慄した。

 

「最低でもマギスフィアが3つ必要だな。」

 

「なんて…事。」

 

何か思いついた伊吹が聞いてくる。

 

「百之助、あの大砲ならヒュージネスト破壊出来るから抜けるんじゃないか?」

 

「確かにあれならフルパワーなら抜けるだろうが…問題は、直撃させたら校舎が吹き飛ぶぞ?何せ核弾頭並みの破壊力だからな。」

 

「何それ?」

 

天葉がそれは何かと聞いてくる。

 

「これさ。」

 

空間収納から自身のチャームを取り出す。そこに現れたのは57mm対艦ライフル砲、武御雷だ。ついでに砲弾も3発ほど出す

 

「何それ!なっが!!」

 

流石に8m近い砲身を持っているのでとてつもなく長い。

 

「ちょっとノインベルト戦術の威力で撃って見るわ」

 

地面に置きうつ伏せになる。

 

「実弾発射モード!」

 

そう言うと武御雷のバイポッドからパイルドライバーが発動、本体を固定する。そして薬室を開き砲弾を放り込み、ボルトを蹴り飛ばして装填する。すると砲弾にマギをチャージしノインベルト戦術と同等の威力の砲弾になった。その上で余剰砲身…二枚のレイルがマギによって展開される。

 

「全員!耳を塞げ!!」

 

全員が耳を塞いだのを確認し、トリガーを引く。すると砲弾が砲身内を加速し、余剰砲身で更に加速され砲口初速8000Mで射出された。更に砲身が50mm後退しその勢いでボルトが後退、そのまま勢いよく薬莢が排出される。

 

「ドゴォーン!!」

 

効果はいかに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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33話

弾はオレンジ色の一筋の光となりヒュージに向かって、飛翔する。

 

ドカーン!!

 

ヒュージは、直撃する瞬間マギリフレクターを展開した。だが…

 

「ヒビが入ったな」

 

見ればマギリフレクターは、ヒビが入っていた。直ぐにマギを使って時間停止魔術を使い、砲弾を装填した。

 

「今から作戦を考えよう」

 

「貴方まさか…時間を止めたの?」

 

周りの様子を見て天葉は、絶句した。他のリリィ達も同様である。

 

「ああ、この為だけにな。」

 

「相変わらず突拍子の無いことをするなお前は…」

 

伊吹は、百之助の行動に呆れると共に称賛もしていた。

 

(なるほど…作戦を練るために、時間を止めたのか…)

 

「で?作戦は既に考えてあるんだろう?」

 

「その通りだが…一応確認を取る必要が有るだろ?俺は2つのレギオンの隊長じゃ無いからな。」

 

「私は構わないわよ?」

 

「私も問題無いです。」

 

梨璃と天葉は、作戦立案するのを許可した。

 

「了解した。 まず第一段階は、俺のチャームでさっきの倍の威力の砲弾を以て、敵のマギリフレクターを完全に破壊する。 

 

次の第2段階では、間髪入れずにアールブヘイムがマギスフィアを叩き込む。トミーと文香はそれを掩護、で敵の中からダインスレイブを取り返すか破壊する。

 

第3段階は、一柳隊がマギスフィアを叩き込む。その時か、第2段階時に敵の増援が来るかもしれないから、その時はトミーと文香はそれを牽制しろ、倒す必要はない。…ここまでで質問はあるか?」

 

息吹が手を上げた。

 

「増援の規模は?」

 

「飛行型ミドル級が最低でも200。」

 

「無理じゃないか?」

 

「出来るだろ?お前のチャームなら。」

 

「使っていいのか?」

 

「俺も使ってしまったからいいだろ?」

 

「了解。」

 

次に手を上げたのは文香だ。

 

「紅の舞を披露してもいいですか?」

 

「寧ろやれ。」

 

「分かりました。」

 

「他に質問は?」

 

「あの…紅の舞って何です?」

 

聞いてきたのは樟美だ。

 

「レアスキルルナティックトランサーと、縮地を極限まで高めて使う俺の家の十八番だよ。…慣れてないと暴走するという曰く付きの技だけどね?」

 

全員が…アホなの?という顔をしていた。

 

「まあなんとかなるさ!トミー行ける?」

 

そこには両腰にチャームを羽のように付けた伊吹がいた。

 

「何時でも」

 

「ちょっと待って!それ、どうやって使うのよ!?」

 

「このチャーム…サバーニャは、ちょっと特殊でな?ちょっと見てて」

 

そう言うと息吹は、チャームにマギを込める。するとチャームが起動した。

 

『シールドピット展開!シールドピット展開!』

 

すると、片方につき7枚、計14枚の羽が分裂し伊吹の周りに回るように展開する。

 

「「「「「「「「「「「「「「「は!?」」」」」」」」」」」」」」」

 

全員が絶句した。

 

「こいつは敵の射撃兵器を遮断する為の物なんだよ。」

 

そう言って、そのシールドピットからライフルピットをその上に展開する。

 

「こっちは攻撃用。」

 

「何ですか?どこ製ですか?」

 

と、笑顔で聞いてくるのは二水だ。

 

「これ?マイケルブローニングとか言う銃器設計技師がガンダムを見て酔狂で作ったものさ。現状俺しか使えないけど。」

 

そう言いながら展開したピットを格納する。

 

「うわあ…」

 

これ以降は、特に質問は無かったのでそのまま作戦に移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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34話

「今から作戦を開始する!!」

 

了解とばかりに全員の、チャームが発光。それを見た百之助は、武御雷を発砲。今回は遅延信管では無く衝撃信管だ。

 

ドゴーン!!

 

砲弾が敵に向かって飛翔し、着弾。直ぐに信管が発動。さっきより大きい爆炎と砲声が響き渡る。

 

ドカーン!!

 

すると敵のマギリフレクターを完全に破壊する。そのままアールブヘイムがノインベルト戦術を開始、伊吹と文香は、敵を牽制する。頃くして敵の増援が到着。数およそ200

 

伊吹は空中で停止し敵を睨む。

 

「百之助の読みが当たったな…やはりこのチャームを使うならこれでしょ」

 

そう言いながらピットを分離攻撃体制に入る。

 

「乱れ撃つぜ!!!」

 

敵の攻撃をシールドピットで防ぎながらライフルピット及びウィンチェスターライフルで攻撃する。

 

ガンガンガガガン!ターン!カチャン!ピピピューン!

 

 

「絶対敵に、回したくないね…」

 

「同意するわ」

 

天野と依奈が伊吹の一方的な戦闘に絶句する。

 

一方文香は、全身を赤く染め上げ、縮地で全力加速…出鱈目な機動で動き回りながらヒュージに斬りつける。

 

「ハアアアアアアアア!!」

 

「こっちもおかしいのだけれど…」

 

「すごい…」

 

夢結と梨璃も文香の戦い方に圧倒されていた。

 

 

そうこうしている内に、亜羅揶がフィニッシュショットを決めた。そして待ってましたとばかりに伊吹は、切れ目からダインスレイブを引っこ抜いて百之助に向かってぶん投げる。

 

「百之助!受け取れ!!!!」

 

 

「ナイスだ戦友!!」

 

百之助は、受け取った。

 

その時手負いのミドル級ヒュージが天葉に砲撃しようとしていた。

 

すぐさま軍刀を抜刀。天葉に向かって叫ぶ!

 

「天葉!後ろだッ!!」

 

その声で天葉は、その方を見るが間に合わないと思い恐怖で目を瞑ってしまった。

 

「畜生め!!」

 

百之助は、縮地の上位レアスキル…神速を使い4キロ以上あった距離を一瞬で駆け抜け、砲撃と同時に下段から砲弾を切り上げるが。刀身が限界であったのととっさであるのでマギの供給を怠った為に刀身が折れ。自分の脇腹に直撃した。

 

「がは…!」

 

そのまま1メートル殆ど吹き飛ぶ。

 

「百之助!?」

 

天葉は、直ぐに駆け寄る。見れば百之助からは血が大量に出血しており…手のつけようが無かった。

 

「…そ…ら…は…無事…か?」

 

「ええ…ええ…無事よ…」

 

「なら…いい…」

 

そう言いながら百之助は、大粒の涙を流している天葉の頬に手を当てる。

 

「泣く…なよ…笑って…くれ…」

 

ドカーン!!

 

一柳隊がレストアを撃破した様だ。

 

徐々に人が集まってくる。皆、そんな…嘘…て感じの顔をしていた。生き返るのを知っている人以外。

 

「後…10分…ぐらい…で…お迎え…来るかな…?」

 

「そんな事…言わないでよ…お願いだから…死なないでよ…」

 

「天葉…諦めろ…もう無理だ…助からない…」

 

と言いながら伊吹が天葉の肩に手を乗せるが…

 

「なんでよ!せっかく…甲州撤退戦で生き延びたのに!こんな…こんな事って…」

 

そこに追い打ちをかけたのは文香だ。

 

「兄上言い残すことはありますか?」

 

そう言いながらHK45を構える。

 

「今…まで…お世話に…なり…ました。戦友…諸君…あっち…で待ってるから…」

 

文香はそのまま引き金を引こうとする。

 

「やめて!」

 

と百之助を庇おうとする。他のメンツは放心状態でついて行けていない。

 

構わす引き金を引く。

 

パン!

 

頭を貫通し百之助は、息絶えた。

 

「なんで…自分の兄を撃てるのよ!」

 

「兄だからです。…それに戦場では介錯しなければ苦しみ続ける事になるんですよ!…苦痛を与えるのがお望みですか!?」

 

天葉と文香の言い争いに全員が釘付けである。だからこそ気付かなかった。

 

天葉の頬を百之助がつねった。

 

「よお!心配かけたな!元気か?」

 

「は?え?…は?」

 

皆絶句である。知ってる人以外、絶句である。

 

「なんだよ…みんな揃って豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔しやがって…たかが一回死んだからって死ぬとは限らんのだぞ?」

 

「いやいや…その理屈はおかしいぞ百之助。」

 

「そうかな?」

 

「お前が特殊なんだよ」

 

「それもそうか!」

 

天葉を抱きしめ安心させようとする。

 

「すまんな…心配かけて。」

 

「う…わあああああ!」

 

涙腺が崩壊したのか大声で泣き始めた。他の娘たちも。

 

暫くは百之助は、全員から抱き締められるという体験をした。

 

 

 

 



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35話

翌日、天葉の声が共用スペースに響いていた。

 

「百之助!貴方の事を教えてもらうわよ!拒否権は無いから!」

 

一人で緑茶を飲んでいた百之助は、溜息を尽きながら湯呑を置いた。

 

「ハァ…いつかこうなると思ってたよ…了解…でも、話せることと話せない事があるからな…そこは分かってくれよ?」

 

「分かった。」

 

百之助は、談話室の使用許可とアールブヘイム及び一柳隊全員を招集した。

 

「済まないな…全員集まってもらって…で、俺について話そうと思うのだが…まず俺の家の歴史から学ぶ必要があるな。」

 

「船坂家の?」

 

「そうだ…でだ、船坂といえば、俺以外で誰が出てくる?勿論歴史上での話だ。」

 

皆、それぞれ考え混んで難しい顔をしていた。夢結が直ぐに答えた。

 

「船坂徳永、陸上自衛隊幕僚長。約50年前ヒュージ出現のどさくさに紛れてクーデター…4.11事件を起こした人ね。最終的に自衛隊が国防軍に、皇宮警察から再編され、近衛軍になった事件ね。」

 

「正解だ。じゃあその人のご先祖は?」

 

「流石に誰も分からないわ…」

 

「分かった。…大日本帝国陸軍北支那方面軍司令官、岡村寧次陸軍大将だ。」

 

「は?」

 

「え?」

 

「ウソ…」

 

「苗字違うよね?」

 

と言うように全員が違う反応を見せた。

 

「苗字は、変えざる負えなかったんだ…A級戦犯だったから。」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「第二次世界大戦終結時、A級戦犯だったんだよ…だから名前を変えた。」

 

「そんな…」

 

雨嘉は、目を見開いていた。

 

「そして連合国側はこれをを手に入れたかったんだ。」

 

そう言いながら空間収納から一振りの剣を取り出し、机においた。

 

「これは…まさか…」

 

「そうだ天葉…神剣、天羽々斬だ。」

 

それを聞いたメンバーは、絶句した。

 

「それって…古事記に出てくるあの…天羽々斬ですか?」

 

聞いてきたのは、梨璃だ。

 

「そうだ、正真正銘、本物の天羽々斬だ。」

 

「…」

 

全員が息を呑み、そして驚愕した。まさか神話上の、武器が出てくるとは思わなかったからだ。

 

「船坂…いや、岡村家は先祖代々天皇陛下とこの国を敵対する人間や化外から、守護して来た。これからもそうだろう。そして戦って死ぬことはこの上ない名誉だとそう教えられて育ってきた。戦しか知らずそれ以外に生きる道が無かったから…」

 

「それで…死ぬ事が喜びだったのね」

 

「そうだ夢結…そして化外とは、昔のヒュージの呼び名だ。そして、太古の昔から人類の戦いは続いているのさ。」

 

「じゃあ…歴史が間違ってるの?」

 

「そのとうりさ。…そして、化外を生み出したのは神々だ。それに対抗する為にそれに敵対する神々がリリィを生み出した。その中から4人選び出しそれぞれに別の能力を与えた。それが[守護者]だ。俺はその内の一人、吸血鬼、船坂百之助と言う訳さ。…だから死ぬことが出来ない。そういう事さ。これ以上は話せない…」

 

「何よそれ!あんまりだわ!何で百之助に、そんな物を背負わせるのよ!」

 

「トミーもだよ天葉、こいつはその下の、[監視者]だけど。」

 

「二人とも!?」

 

全員が絶句した。伊吹が話を繋ぐ。

 

「元々俺はゲヘナが生み出した人工リリィだけどな?元々ただの人間だったぞ?…それに強化リリィをたくさん殺したしな、俺も百之助も…」

 

これには何も言えなくなった。

 

「とまあそんな感じだ。…まあ俺の吸血鬼としての力は、夢結一人に依存してるからなんとも言えないけど…」

 

「はい?」

 

「吸血鬼は、血を吸う相手が多いほど強くなれるんだよ。だがら、夢結一人で賄っているから夢結の負担が大きいのさ。」

 

「じゃあ私が立候補するわ。」

 

「天葉姉様がするなら私も。」

 

天葉と樟美が立候補したが、百之助は、顔を赤く染めた。

 

「なあ!?!?!?/////」

 

そしてそのまま突っ伏してしまった。

 

「百之助、お前ほんとに言うのは出来るのに言われるのは駄目なんだな…」

 

「うう…しゅみましぇん」

 

呂律も回って居なかった。

 

(駄目だこりゃ…)

 

「百之助の代わりに説明してやる。…天葉と樟美から求婚されたらしい…」

 

「え?」

 

「は?」

 

周りがざわめき出す。構わす伊吹構わす続けた。

 

「吸血鬼の場合、血を吸われると言うことは妻になるという事なんだよ。」

 

「「…////」」

 

 

「ありゃりゃ…」

 

「はわわわわ///」

 

「アラアラ」

 

皆顔が赤くなった。沈黙したが夢結が沈黙を破った。

 

「良いんじゃないかしら?法律は2年前に改定されて重婚可能になったのだし、勿論二人がそれで良いのなら…だけど?」

 

「「考えさせて(下さい)…」

 

と二人は考えることにした。そのまま話は、お流れとなった。

 

 

 



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36話

夏休みが近くなったある日、共用スペースにて百之助は一柳隊の面々に提案をしていた。

 

「夏休み、何処か旅行行こうぜ?皆で!」

 

「いいですわね!」

 

「良いですね!」

 

「心が踊りますね」

 

「行きましょう!」

 

「良いなそれ!」

 

「いいの!」

 

「何処に?」

 

「良いんじゃないか?」

 

「いいと思います。」

 

と、大半がOKであったが。…夢結は、それに異を唱える。

 

「降りるわけ無いでしょう?私達はリリィよ?」

 

「手は打ってあるぜ?これだ。」

 

百之助は、懐から封筒を出し夢結に手渡した。そこには、長期の外出許可と書かれていた。

 

「どうやったのよ…」

 

「理事長代行に交渉したに決まってるだろ?」

 

当たり前じゃ無いかといわんばかりである。

 

「ハァ…何処に行くのよ…」

 

「それは今からに決まってるだろ〜?」

 

そこにアールブヘイムの主将たる天葉が便乗して来た。

 

「私達も便乗していい?」

 

「そんな事もあろうかと…用意したぜ」

 

百之助は、また懐から封筒を出した。

 

「流石百之助!抜け目ないね!」

 

因みに、百之助赤面事件(夢結命名)は、一旦保留したのだ。

 

「で?何処にする?」

 

そこに口を挟んだのは息吹だ。

 

「百之助の実家はどうだ?あそこなら訓練もできるし、風呂は温泉だし、近くの神社でお祭りあるし、良いんじゃないか?」

 

「確かに、生き残ってる姉上達は、ここの卒業生だしな…訓練も出来るな…でもど田舎だぞ俺の家…」

 

「田舎も何も、山一つ所有してるからど田舎なんだろうが。それでもその地域の土地全部所有してそれを貸してて金があるから家もでかいだろうが…俺、最初行ったときプチ要塞だと思ったぞ?」

 

「お褒めいただき光栄だが…何もないぞ?」

 

「オイオイ…お前のお母様も、リリィだろ?昔話してくれるんじゃないの?」

 

「いや…確かにそうだが…皆それでいいか?」

 

皆、頷いた。

 

「決まりね!」

 

「まじかよ…分かったよ…電話すればいいんだろ?」

 

そう言いながら本家に電話した。すると老人の声が聞こえた。

 

『もしもし?』

 

「お久しぶりです葉山さん。」

 

『おお…お久しゅう御座います。百之助坊ちゃま…爺は、今お声が聴けて感激しております。』

 

この人は先祖代々、船坂家に仕える執事だ。

 

「葉山さん。今年の夏休み、帰省しようと思います。ついでに20人ほど来ますがよろしいですか?』

 

『奥様に確認を取るので少々お待ち下さい。』

 

「分かりました」

 

『では、このままお待ち下さい…」

 

頃くして葉山さんが出て来た。

 

『ぜひ連れてくるようにとの事でした。』

 

「分かりました。」

 

『移動はヘリにしますか?それともバスにしますか?』

 

因みにどっちもも所有している。

 

「ちょっと待って下さい…」

 

『はいわかりました』

 

百之助は、全員にどちらにするか聞く。

 

「ヘリとバス…どっちがいい?」

 

「はぇ?」

 

「へ?」

 

「何故その二択なのよ…」

 

葉山さんは聞こえてたようで…

 

『オスプレイもありますよ?』

 

「オスプレイもあるってよ」

 

「いやいやいやおかしいでしょ!」

 

そう言うのは天葉である。

 

「流石に…グランギニョルの総帥の娘である私でもオスプレイは無いのですけれど…」

 

電話を、スピーカーにして聞く。

 

「他のは無いんですか?」

 

『他のですか…二式大艇は如何ですか?それとも戦闘機?はたまた戦闘車両ですか?』

 

「あのー突拍子過ぎてついて行けないんだけど…」

 

と天葉は天を仰いた。

 

百之助は、考えるのを辞めた。

 

「葉山さん。オスプレイでお願いします。」

 

『承りました。では、修了式が終わったあたりに向かいに行きますね?』

 

「はい、お願いします。では」

 

『はい、会える日を楽しみにしています。』

 

そのまま電話を切った。

 

「百之助…お金持ちだったのね…」

 

「そんなことはどうでもよくないか?」

 

「「「「「「「「「「「「「よくない!」」」」」」」」」」」

 

そういう事で決まった。

 

 

 

 



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37話

修了式が終わった後、ヘリポートに旅行準備をして集まっていた。

 

ババババババ…

 

「来たぞ」

 

「本当に、オスプレイで来たのね…」

 

全員見上げて絶句した。何せ軍にしか納品されてないものであるからだ。

 

着陸したあと、操縦席から出てきたのは、70代ぐらいの男性であった。

 

「葉山さん。お久しぶりです。」

 

「大きくなられましたな…さあ皆様方乗ってください。」

 

「はい!」

 

後ろのハッチから全員乗り込んだ。

 

「壁に掛かってるヘッドセットを付けろ!」

 

と、百之助は叫んで指示する。

 

「全員付けたな聞こえたら手を上げてくれ」

 

全員が手を上げたので無線は機能していると判断した。

 

「これが無いと聞こえないからな…」

 

『でしょうね』

 

『あははは…』

 

『にしても、こんな物どうやって…』

 

「それは言えないな」

 

『でしょうね…』

 

『そういえば思い出したんですが…船坂徳永氏って、南極戦役の生き残りでしたよね?』

 

と、二水が聞いてくる。

 

「その通り、そして俺の祖父…船坂景雲もその一人だな。理事長代行もだが。」

 

『やっぱり…』

 

「俺の家の連中はマギが使えなくても何故かヒュージと戦えるから世界中の学者たちが紛糾するんだよな…あ、ついでに言っておくと、俺の曾祖父船坂徳永は、まだ生きてるぞ?何時でも戦えるように体鍛えてるし…文香、何歳だったっけ?」

 

『98歳です。兄上。』

 

『『『『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』』』』

 

 

「だそうだ…後、家の家で生き残ってる姉上は、一人だけで、百合ヶ丘の卒業生で、レギオンは白襷隊だ。因みに、白襷隊を作ったのは、祖母だったりするんだけどな…祖母は、既に亡くなってるから聞くことはできないな」

 

『白襷隊って、歴史が長いんですね…』

 

二水は、歴史が長いことに驚いていた。

 

『船坂家よりかは短いけどな』

 

「そう言うなよトミー。後な、俺の親父と、天葉の親父、梨璃の親父は防衛大学校同期なんだ。」

 

『そうなんですね…』

 

『自分の父なのに知らなかった…』

 

「因みに、甲州撤退戦を指揮したのは、俺の叔父で船坂寧次中将だ。近衛軍だけどな…まあ本人にノウハウが無いのに良くやったよ叔父上は、ホントは対人戦専門なのにな」

 

『甲州撤退戦…』

 

『激戦だったわね…』

 

『沢山リリィが亡くなった。』

 

『死にかけたしな…』

 

『大変だったな…』

 

『二度とあの規模の作戦が無いことを祈るわ…』

 

と、話が重くなってしまった。そこで天葉は、話を変えた。

 

『甲州撤退戦、から2週間経ったとき、百合ヶ丘中等部は空気が重かったわ、でも…廊下で血まみれの百之助見たときびっくりした。生きてたんだって…そう思った。皆、ライフルの銃口を地面に向けて歩いている百之助を見て固まったわ。教官たちでさえ、声をかけられなかった…夢結が抱きついて…みんな我に返って、急いで病院に搬送した時理事長代行の顔、良く帰ってきたって感じの顔をしてた。』

 

『そんな事もあったわね』

 

「俺、自力で帰ってきたのかよ…」

 

『覚えてないの?』

 

「済まん…最後に、レストアと刺し違えた辺りから覚えてない…」

 

『オイオイ…』

 

 

 

 

 



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38話

他愛もない雑談をして、目的地に付いた。後部ハッチを開けるとそこには3人の少女と青年がいた。

 

「久しぶり!佐奈、由奈、玲奈、裕也!」

 

「「兄上!お帰り!」」

 

最初に挨拶したのは佐奈と由奈だ。この二人は双子でとても良く似ている。はっきり言って見分けがつかない。

 

「おにいさま!おかえり!」

 

この子は末っ子の玲奈だ。

 

「宇都宮要塞以来だね兄上!」

 

「所で、愛奈は?」

 

「後で来るさ!…取り敢えず場所を移そう!」

 

「わかった!」

 

取り敢えずローターの音がうるさいので先に泊まる場所に案内する為に屋敷に入る。

 

「広すぎないかしら…」

 

「夢結、指摘はごもっともだが、ここは要塞を兼ねてるんだよ。」

 

「ええ?…防衛には向いて無いよね…」

 

「昔の話だよ天葉。」

 

「あっそう…」

 

頃くして目的地に付いた。

 

「ここだ。」

 

「広く無い?」

 

「なんの為の襖だ?レギオンごとに区切っても良いし、しなくても良い。

 

「なるほど…」

 

荷物を置いて自己紹介する事とした。

 

「俺は兄上の双子の弟で裕也だ。歳は17、趣味は昼寝だ。」

 

「はいはーい次私ね!佐奈だよ!趣味は剣術だよ!15歳!」

 

「私は由奈…佐奈は双子の姉よ。得意なことは狙撃。歳は姉と一緒」

 

「すえっこのれなです。としは、6さいなのです。とくいなことは、はやうちです。」

 

その時軽快な足音が聞こえてきた。

 

タタタタタタタタタタタタ!

 

襖を開けて入ってきたのは…

 

「父上!お帰り!」

 

と、少女が百之助に飛びついた。

 

「「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」

 

「紹介しよう、この子は愛奈、義理の娘だ。」

 

「はあ!?」

 

流石にこれには全員が絶句した、

 

「色々あってな…ゲヘナ関係だ」

 

約2名ほど顔を顰めた。鶴紗が聞いてくる

 

「…ブーステッドリリィ?」

 

「それならまだマシだな…間違ってはいないが…人工リリィで、現在あるブーステッドスキルすべて持ってるんだよ。…可愛そうな事に…」

 

「なあ!?」

 

「そんな事すれば暴走するぞ!?」

 

「鶴紗…この子は、一応[監視者]なんだよ…だからそれは無い…この子は、4年前にゲヘナを強襲した際に保護した子なんだよ…それで、戦時特例法を適用して俺が親になったってわけ。ついでにハインリヒに頼んで、普通に使えるようにしてもらった。」

 

「じゃあ先輩…その子大丈夫なのか?」

 

「ああ…問題ない。暴走した時始末は、俺が付ける。助けたのは俺だからな。」

 

「分かったよ…百之助様…」

 

「愛奈自己紹介。」

 

「はい父上。船坂愛奈です。歳は…15だったかな?趣味は…無いです。得意な事は、人殺しです。」

 

「言い方…」

 

「だって父上、今まで戦う相手が人だったんだもん。」

 

「そうだった…補足しておくと、この子はリリィと殺し合いをさせられてたんだ。」

 

「…さすがゲヘナ…やる事が汚い」

 

「俺もそう思う…」

 

その後、皆で雑談をしばらく楽しんだ。

 



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39話

「百之助様、ギン様がお見えです。お通ししても宜しいですか?」

 

話してる途中に船坂家使用人の一人である仲居さんが話しかけてきた。

 

「じゃあ俺たちは母上の所に行ってくるから」

 

「わかった。」

 

「「お姉ちゃんたちバイバイ。」」

 

「「なのです。」」

 

百之助と、文香を除く船坂兄弟は退室した。

 

「仲居さん。ギンを入れて。」

 

「分かりました。」

 

するとちょこんと、角の生えた銀髪赤眼の少女が入ってきた。

 

「じゃまするぞ。」

 

と言って輪の中に入ってきた。

 

「百之助、注文の品すべて持ってきたぞ。」

 

「早くないか?」

 

「じゃから突貫で作ったんじゃろうが!…大体貴様は自分の命を何だと思っとるか!!いいか?貴様が折った刀はな、化外相手でも十分戦える代物じゃったんだぞ!?分かっておるのか!このうつけがッ!!」

 

物凄く御立腹である。

 

「すみませんでした…」

 

「ハァ…船坂の者は、血の気が多くて、挙句の果てには自分の命を軽視しよる…だから嫌なのじゃ…」

 

「戦場で散るのはこの上ない喜びだし、俺自身戦う為に戦ってるからね…と、以前の俺なら答えただろうね。」

 

「ほう?」

 

「今は、好きな人の為に生きて帰らねばと思ってるし、その人を守る為に戦うことにしたよ」

 

その言葉に夢結が顔を赤らめ、それを見たギンが獲物を見つけたかのような顔をした。

 

「ほほう!色を知ったか!良きかな良きかな!なら問題あるまい!…大切にせえよ?」

 

「分かってるさ」

 

「さて…本題に入る前にだ、安藤鶴紗とはどの娘かの?」

 

全員が鶴紗を見た。

 

「わたしがそうですが…」

 

「フム…確かに面影があるの…貴様の父上とは、交流があってな、遺品を渡そうかと思ったのじゃ」

 

「ッ!?」

 

ギンは、いうが早いか鶴紗の前に大きいガンケースを置いた。

 

「…これはの、戦死した際に身に着けていた戦道具じゃ…持っていけ。本来貴様が持つべき物じゃからな。」

 

「何故貴方が持ってるんですか?」

 

「聞きたいかの?…百之助…教えてやれ、知っておろうが。」

 

「分かったよ…全員落ち着いて聞いてくれ…[静岡陥落]って知ってるか?」

 

「それと鶴紗になんの関係があるんだよ…」

 

「梅、それはな…静岡陥落の原因を作ったのが、防衛陸軍第一大隊大佐、安藤鶴太だったからだ。」

 

「なぁ!?」

 

「そんな…」

 

「違う!父は…玉砕を謀ったんじゃ無い!撤退しようとした時には…もう…」

 

「時間が無かった。全部調べてるよ。だから知ってる。」

 

「分かった…続けて先輩。」

 

「あの戦には、俺も参加しててな。その時に死体の散乱した。防衛陣地があったので武器弾薬とドッグタグを俺が回収してたのさ。その武器は元々ギンと、その弟子が作ったものだから。ギンが持ってたってわけさ」

 

鶴紗は、ガンケースに目を落とした。

 

「そう…ですか…」

 

「…開けて見るが良い…」

 

言われるがままにガンケースを開ける。そこには64式小銃改、64式銃剣改、軍刀、30発入り弾倉6個、M17とホルスター…そしてドッグタグもはいっていた。

 

鶴紗は、ドッグタグを持ち上げ…

 

「うッ…うわアアアアアアアアアアアアアア!…お父さん…うッうッ…」

 

涙腺が崩壊した。

 

「あのうつけめ…娘を残して征くとは…ふざけるで無いわ…」

 

頃くして鶴紗が泣き止んだ所で本題に入る。

 

「自己紹介がまだじゃったの、儂は酒吞童子の娘でギンと申す。この国の兵の刀は全て儂が作ったものじゃ…貴様らが使うチャームとやらの原型を作ったのは儂じゃ。」

 

「そうなんですか!?」

 

二水もびっくりである

 

「おうよ!…ほれ、百之助お前のじゃ」

 

亜空間から刀を取り出しその中の長い物を百之助に渡した。

 

百之助は袋からだし鞘から抜く。

 

「込めてみい」

 

百之助は、マギを込める。すると刀身の刃先が青く光る

 

「おお…」

 

「試作の低振動術式を組み込んだ刀じゃ…普通の物より肉厚で作っておいたぞ」

 

「有難う!」

 

「おう!いい仕事したぞ!全部合わせて19振り!お望みどうり作ってやったわ!文香は持っとるから別にして…貴様らの刀じゃ受け取れ!」

 

「はい?…まさか…わたし達のため?」

 

天葉を始めとして首を傾げる。

 

「そうだが?チャームが戦場で壊れたときの為に持っとけ。」

 

「いいのかしら?」

 

「おう!」

 

全員が刀を受け取る。

 

「取り回しやすい様に、小太刀にしておいてやったわ!…いや〜いい仕事したの〜」

 

「ありがたいわね」

 

全員がこれには感謝することになろうとはこの時は思わなかった。

 

 

 

 



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40話

「所で百之助、貴様[守護者]になったのだな。」

 

「ああ。」

 

「夜々の後釜だな。と言うか喰ったのであろう?」

 

「いや?託されただけさ」

 

「そうか…」

 

ギンは一瞬、悲しそうな顔を見せたが直ぐに元の顔に戻った。

 

「所で貴方は人間ですか?」

 

そう聞くのは壱だ。

 

「その質問を待っとったぞ?答えは否、人では無いわ。」

 

「では…」

 

「この角で分からんか?鬼じゃ。」

 

そう言うと頭に付いた二本の角を指差す。これには、百之助と文香以外がポカンとしていた。

 

「正確には、人間と化外の中間じゃな。化外の、なり損ないじゃからの。」

 

「鬼ってもっと怖いのかと思った…」

 

「昔は人を食いよったぞ?効率が悪いからやめたらしいの。儂は食うたことないが。」

 

この言葉に全員が一瞬強張った。

 

「その…いつの話ですか?」

 

梨璃が恐る恐るギンに、問うた。

 

「500年前かの?正確には忘れたが、確かそれぐらいだったはずじゃ」

 

「そ、そうですか…」

 

その時、百之助の端末がなった。

 

ぴー

 

「はい、百之助です。」

 

『兄上、手荒いお客さんが来た。』

 

出たのは裕也だった。そのままスピカーにする。

 

『エレンスゲとルドビコの混成部隊、数は30。どうする?』

 

「な…」

 

「何で…」

 

これには全員が動揺する。

 

「天葉、梨璃。ここにゲヘナの強化リリィは居るか?」

 

「…言わなきゃ駄目?」

 

天葉は難色を示し

 

「いないと…」

 

「私だ。」

 

「え!」

 

鶴紗は梨璃の言葉を遮った。

 

「…分かった。」

 

取り敢えずいるのは分かったため指示を飛ばす。

 

「命令は2つだ。1つ目は全員生きて帰ってこい。2つ目は。生きてれば良い、全員生け捕りにしろ。そして、引きずって俺の前に全員連れてこい。…文香、娘を母上に預けて行って来い。」

 

「分かりました。」

 

『きついが分かったよ兄上』

 

「儂も行こう。」

 

「済まないギン。」

 

「構わんぞ」

 

そのままギンと文香は退室した。

 

「仲居さん。そこいる?」

 

「はい。」

 

「ひい爺様連れてきて!大至急!」

 

「分かりました。」

 

その後。6分後に船坂徳永、百之助の曾祖父が来た。勿論自衛隊の野戦服。及び装備でだ。

 

「百之助様。お連れしました。」

 

「お通しして!」

 

「百之助、久しいな…で何用か?」

 

どう見ても、60代で筋肉ムキムキの爺さんにしか見えないが。98歳である。

 

「ネズミが潜り込んだらしいです。」

 

「よほどの死にたがりじゃな…」

 

チャキン

 

そう言いながら89式小銃に弾を込めた。

 

「で?呼んだのはなぜじゃ?」

 

「雑談と護衛。」

 

「なるほど…儂以外で護衛に最適なのはおらんからな。」

 

「自己紹介してあげて。」

 

「相分かった…儂は、元日本国陸上自衛隊幕僚長、船坂徳永である。わかりやすく言えば4.11を起こし、南極戦役をくぐり抜け、数多の戦場で生き残ってきた人間じゃ。」

 

「…御幾つですか…」

 

「98じゃ、まだまだ若いのには負けんぞ。」

 

「…歩く軍神と言われてるぜ。…死にかけた事すらないから。」

 

全員絶句した。何せ生ける伝説である。

 

「この家には道場があるからの。手取り足取り何時でも指導してやろうぞ。戦場で生き抜く術をな?」

 

「末恐ろしいお祖父様ね…」

 

「夢結…同意するが…この人は、リリィですら勝負にならない。文字通り最強だ。」

 

「手合わせしてくれるんですか?」

 

そう聞くのは辰姫だ。

 

「何時でも掛かってきなさい。色々教えて信ぜようぞ。」

 

「凄い…英雄から教えてもらえるなんて…!」

 

二水は、リリィでは無いこの老人を。尊敬の眼差しで見つめている。…案の定鼻血が出ていた。

 

戦闘が終わるまで。昔話を皆で聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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41話

「兄上、相手の現場指揮官持ってきた。…他は独房に放り込んできた。」

 

裕也は担いでいた大きい麻袋を百之助の前に放り投げた。

 

「んッ!?」

 

中から少女と思われる声がした。

 

「流石に乱暴過ぎない?」

 

「こいつ他の連中捕まったら。撹乱し始めたんだよ…」

 

「なるほど…。殺すか。」

 

そう言いながら百之助は、懐から14年式拳銃を取り出しコッキングした。

 

チャキン!

 

「その前に顔を拝んどこう。」

 

そう言って麻袋の紐を解き袋から中身を出した。

 

「ゲヘナの赤いコートを纏ってるけど…下に着てるのは確かにエレンスゲだな…所で首に付いてるのは何だ?」

 

「んーーー!」

 

何か言おうとしてるが布を噛まされているため声にならない。手首と足首にリリィ用の手錠が嵌っていた。

 

「ああ…それ。変なことしたら首が飛ぶ装置だ。」

 

「おいおい…まあいいや…布を外してやれ。」

 

「了解!」

 

「鶴紗、こいつ知ってる?」

 

「いや…知らない。」

 

「そうか…」

 

「で?どうしようか?」

 

「拷問しても良いんだけど…それは最後だな。」

 

「物騒なこと言わないでよ…」

 

天葉は、顔が青ざめていた。

 

「まあ、そう言うな…ほんとに最終手段だから。」

 

「ふう…」

 

「安心してるところ悪いが、こっちは怒り心頭なんでね…答えなければ撃つ。」

 

因みに中々の上玉である。

 

「…分かったわ。でも彼女達を開放してあげて…」

 

「それは却下だ。で?何しに来た。」

 

「…船坂愛奈、安藤鶴紗、富永伊吹、森辰姫、この4名の捕獲よ。」

 

「ほほう…それでこの人数か…残念だったな?ここを襲うなら防衛軍8個師団を持ってこないとここは落ちんし。確保できないぞ?」

 

「でしょうね…でももう遅いわ…ギカント級がここに向かっているもの。」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!たかがギカント級如きでここが落ちるとでも?…馬鹿だな!」

 

「ギカント級?それなら最初に倒したぞ?」

 

裕也の答えに全員が絶句した。

 

「え?」

 

「あんなん敵ですらないぞ?そもそもうちの連中単騎でギカント級を屠るからな?」

 

「いや…おかしいから…」

 

依奈は、考えるのをやめた。

 

「で?どうしようかなぁ…」

 

「ただで返すのもな…」

 

「いや、何する気よ…」

 

「真霧に投げるか…」

 

「ああ…あの拷問と調教が得意なアイツか…」

 

「調教させよう全員。」

 

「了解。」

 

「ちょっと待…んぐ!?」

 

再び口を封じられ麻袋に放り込み口を閉めた。

 

「じゃあな!」

 

裕也は、そのまま退室した。

 

梅は、静かに怒っていた。

 

「百之助…」

 

「ん?」

 

「見損なったぞ…」

 

「これが普通だよ?ここに侵入した時点で生きて返すつもりは無い。殺しても良かったんだから。それよかマシでしょうよ」

 

「法的機関とは…」

 

「ゲヘナが紛れ込んでるから却下。それにこれで240回目だ。」

 

「まじかよ…」

 

「そういう事さ」

 

百之助は、もうこれ以上来ないでほしいと内心思っていた。

 

 

 

 

 

 



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42話

「あ、真霧?調教ってお願いしたけど、指揮官以外洗脳で。後、指揮官以外はどっかの山のわかりやすいとこに捨てといて。」

 

百之助は、気が変わった為真霧に電話していた。

 

『分かった。任せろ』

 

「済まないね」

 

『構わんよ?』

 

「じゃあな」

 

『おう』

 

そう言って電話を切った。

 

「儂は戻るぞ?」

 

「うん。ありがとう!ひい爺様!」

 

そう言って徳永は、退室した。

 

「さてと…風呂の前に母上に会いに行きますかね。」

 

「情報量が多すぎるんだが…」

 

「それは仕方ない。何せ従兄弟もここに住んでるしな。」

 

これには全員が呆れた。

 

「なん世帯よ…」

 

「知りません。」

 

「自分の家だよな?」

 

「忘れました。」

 

「ええ…」

 

そんな事を話していたら襖をいきなり開けた人物がいた。

 

「母上!?」

 

「何時まで経っても来ないから来てしまったわ。」

 

そう言いながら和服を着た女性が入ってきた。百之助によく似ており、髪と目が黒く妖艶な雰囲気を漂わせていた。

 

そして百之助の隣に座り、百之助を抱きしめた。

 

「!…母上!?」

 

背丈で言えば百之助の方が17センチ殆ど大きい。百之助の母は夢結と、同じ身長である。

 

百之助は、自制するのに必死であった。何故なら母親とはいえ胸がとても大きいからである。

 

「良いじゃない…久しぶりなんだから…」

 

こう言われてしまうと、反論できない百之助である。

 

頃くして百之助を離した女性が自己紹介を始めた。

 

「私は、百之助の母で船坂知恵よ。貴方達の先輩にあたるわ。所属レギオンは白襷隊だったわ。」

 

「あの…もしかして…母の戦友ですか?」

 

そう聞くのは天葉だ。

 

「ええそうよ天音とは。ルームメイトだったわ。他にも。二川瑞希、一柳理那は同じレギオンだったわ。」

 

「私の伯母と、戦友…」

 

二水は何かを思い出そうとしていた。

 

「私のお母さんも…」

 

梨璃は、初めて知ったという顔をした。

 

「因みに私の旧姓は、安藤よ。わかりやすく言うと安藤鶴太の従姉妹に当たるわ。」

 

流石にこれには驚きを隠せない面々である。

 

「あ、あ〜!思い出しました!会津防衛戦の英雄じゃないですか!!」

 

「あら!そんな古い事をよく知っているわね。…甲州撤退戦より多い戦死者数を出した戦で、当時の百合ヶ丘でも7割の戦死者を出したのよ。それで百合ヶ丘の殆どのレギオンが戦闘不能になったわ。…その生き残りももう…二人しか残っていないのだけれど。」

 

知恵は、何処か悲しそうな顔をした。

 

「母上…これをお返しするのを忘れてました…」

 

そう言って鬼切鶴姫を知恵に渡した。

 

「もう2年も経つのね甲州撤退戦から…」

 

「はい…」

 

「…終わったことを悔いても仕方無いじゃない?散った友の思いを胸に…戦うべきよ…」

 

「はい…母上…」

 

「一所懸命を貫きなさい百之助。貴方はそれで良いのよ。」

 

「分かりました母上…」

 

「詳しい話を聞きたいと思うけど、今は風呂に入って来なさい。さっき千夏が入って行ったから。会えると思うわ。」

 

「げ…千夏姉上帰って来てるのかよ…」

 

「良いじゃない。久しぶりに一緒に入ったら?」

 

「母上…俺を窒息死させる気ですか?…まあいいや全員風呂の準備してくれ。」

 

そのまま解散となった。

 

 



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43話

百之助は、先に風呂に入っていた。

 

この風呂はもはや銭湯のそれで有り、ここに湧いているのは本物の温泉だ。

 

「相変わらず広いな…何人入れるんだよ…」

 

そう言いながら風呂場の奥にあるドアを開け更に奥のガラス張りの露天風呂のような場所に出た。

 

「ここも変わらないな…月見えるし…」

 

「やぁ、百之助。久しぶり。」

 

「千夏姉上お久しぶりで…………………何で守護者が3人も居るの…」

 

百之助は、声のする方に振り返って…固まった。百之助によく似た女性の横には、ハインリヒ。ベアトリーチェ。ジャンヌ。がいた。

 

「貴方を含めて4人全員いますよ?」

 

「そうだね~ベアトリーチェ…」

 

「私も居るがな?」

 

「陛下…何故…居るんですか…」

 

「良いではないか。それにここは、落ち着く。」

 

「左様で…」

 

「こっちに来なさい。…百之助。」

 

「分かりました…」

 

百之助は、観念して千夏の横に座った。すると千夏に抱きしめられた。

 

「…姉上…苦しい…」

 

「我慢なさい。」

 

しばらくこのままであったがアールブヘイム及び一柳隊の面々が来た為中断した。一柳隊の面々は守護者3名を見て膠着した。

 

「はじめまして。船坂家長女、船坂千夏だ。よろしく。」

 

「千夏様!?」

 

依奈が目を見開き、驚いていた。

 

「あれ?知り合い?依奈。」

 

「天葉知らないの!?桜島防衛戦で活躍したリリィで、アルトラ級を撃破した立役者よ!?」

 

これには全員が絶句である。

 

「あ〜それ…百之助が大破まで追い込んで私が撃破しただけなんだけどなぁ」

 

と千夏は苦笑していた。

 

「あの時は武御雷。故障してたから大変だったな。」

 

「大変だったね〜一歩間違えたら全員が戦死してたけどね〜」

 

と、船坂姉弟はお茶を飲む老人のようにくつろいでいた。

 

「まあ…当時の白襷隊の面々は…甲州撤退戦で…戦死してしまったけど…そんなのは些細なことさ!戦場で死人が出るのは当たり前!悔いても仕方ないし、終わった事だから、前に突き進むだけさ!数多の戦場(いくさば)で散って逝った先祖や戦友…いや、英霊達の意思を継ぐために!前に進むのさ!!」

 

「貴方の家系は、可笑しいわね…どうしてそう…前向きなのよ」

 

と、天葉は苦言を言う。

 

「そりゃ…うちは戦しかないから。」

 

「そうだ。天皇家の懐刀、最強の将騎、最古の防人、神々の血を持つもの、夷狄を討つ一族の末…それが船坂百之助少将だ。」

 

そう言って風呂場中央の岩陰から陛下が出てきた。それを見た一部が青ざめた。

 

「貴方は?」

 

「この国で一番上に居るものだが?」

 

「………陛下、人が悪いですよ?」

 

「……は?」

 

「へ?」

 

「え?」

 

知らない連中は今なんて言った?という顔をした。

 

「私は今上天皇である…卿らの同級生である百之助は、私の友だ」

 

「「「「「「「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」」」」

 

びっくりである。

 

「百之助!陛下と友だちだったの!?聞いてないよ!!」

 

そう言いながら天葉は百之助の頭を揺らす。

 

「天葉、揺らすのやめろ…小さい頃はよく遊んでたんだよ…」

 

「初めて見たわよ!?天皇陛下!!」

 

「そうであろうな私は基本人前やらに出てこないからな。あ、今日はそんな事は気にしないで気楽にやってくれまえ。」

 

「…そうは言っても…天皇陛下…」

 

と依奈も顔が青ざめていた。と言うかほぼ全員がである。

 

「私で驚いていたらそこの三人はどうなるのだ?」

 

「さあ?」

 

全員が3人の女性を見た。

 

 



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44話

「あ、私達ですか?…どう説明しましょうか…」

 

ハインリヒは頭を抱えた。が、何処か気楽だ。

 

「守護者については俺が説明既にしてるから自己紹介でいいぞ?」

 

百之助は、助け船を出した。

 

「そうですか!それなら楽ですね!」

 

「…いや…待って…守護者なの!?」

 

「はい!守護者です!私の名は錬金術師、ハインリヒ・クンラートです。よろしくお願いしますね」

 

「同じく、オルレアンの乙女、ジャンヌ・ダルクです。よろしく。」

 

「同じく魔女、ベアトリーチェ・ポルティナーリよ。宜しくね、子猫ちゃんたち?」

 

「………歴史上の人物…よね?名前継いでるだけよね?」

 

「依奈、残念ながら…本人だよ。」

 

アールブヘイム全員が絶句した。

 

「あの…歴史だと…全員が死んでるんですが…」

 

「樟美、彼女達の体は新規設計で神々が作った体に魂を入れてあるから。間違ってないよ。」

 

「いやいやいやいや…」

 

「落ち着け…壱、そこらへんは納得するしかないんだよ。」

 

「でも!」

 

「守護者に理屈は通じません。分かった?」

 

「分かりました…」

 

強く言うと壱は、引き下がった。するとギンが、入って来た。前を隠さずに。

 

「よう!さっきぶりじゃの!守護者揃い踏みではないか!」

 

「それは良いから!前を隠せ!」

 

「儂は気にせんが?」

 

「こっちが気にするんだよ!!」

 

「ほう!まあ良かろう」

 

ギンは、前を隠し風呂に使った。

 

「言っておくが儂は監視者じゃからの。守護者連中と同類じゃ、覚えておくが良いぞ!」

 

全員が想定していたためこれには驚く者は居なかった。

 

「反応が薄いの…」

 

「いや、分かるだろ…」

 

「そうか…」

 

見るからにシュンと、していた。

 

「でもさ…凄いよな…チャームの元を作ったのギンじゃん?」

 

「昔からあった技術じゃが?」

 

「ギン以外で当時、知ってた奴いたか?ギンがいなかったら失われてたぞその技術。」

 

「そうじゃな。」

 

「その点はありがたいと思ってるよ?そのおかげで…戦える力があるんだから。」

 

「そうかえ…まあワシも…そろそろ刀鍛冶、辞めようと思っとるよ…もう、潮時じゃて。」

 

「それは困る…俺の刀はギンの作った物だから、これからも作って欲しいんだけど…」

 

「安心せい、完全に辞めるわけではない…来月から百合ヶ丘に赴任するからの。儂だけじゃなく、美保野と、千夏も一緒じゃ。」

 

「は?もっさんと千夏姉上と一緒に百合ヶ丘に来るの?」

 

「指導教官としてな?」

 

 

これには全員絶句である。

 

「百由様喜ぶの…これは…」

 

グロビウスは、真っ先に百由が思い浮かんだようだ。

 

このあと頃くして全員風呂から上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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45話

皆が泊まる部屋で晩ごはんを食べた後皆で花札やらゲームやらで遊んでいた所で柱を叩く音が聞こえた。

 

コンコン。

 

「はい?」

 

「朽井だ。入っても良いか?」

 

「いいか?」

 

皆構わないと言わんばかりに頷いた為。入れることにした。

 

「どうぞ。」

 

「失礼。」

 

そう言って入って来た人物は鎌倉時代の武士の格好をした人物だ。はっきり言うと場違いな人物である。

 

「ご先祖様…どうされたので?」

 

「面を拝みに来ただけである。…立派になったな…まるで武士(もののふ)の様な面構えだ。」

 

「武士(ぶし)としての心得は教わっておりませんが…」

 

「ぬかせ、拙者がそう言うのだ。主は立派な武士である。異論は認めぬ。」

 

「左様で。」

 

そこで宙弥が皆の代わりに聞く。

 

「あの…何方ですか?」

 

「拙者か?百之助の先祖で朽井迅三朗光景と申す。以後見知り置かれたい。」

 

それに百之助が補足した。

 

「補足しておくと、元寇襲来の時の人で元鎌倉御家人、参加した主な戦いは、蒙古進行、日清日露戦争、支那事変、大東亜戦争、日中戦争、南極戦役、そして…台湾奪還戦。」

 

全員が驚愕した。何せ、参加した戦いがほぼ国の命運がかかっているものだからだ。

 

ここで、日中戦争と、台湾奪還戦について説明しておく。

 

日中戦争とは、日本が富国強兵をひたすら行った為に脅威に感じた中国が宣戦布告、40年前に沖縄に進行した。それに伴い米軍及び防衛軍、が迎え撃ちこれを撃破、陸海空全てに置いて中国軍が全滅。中国軍の3分の1を失った。この際陸軍を指揮していたのが迅三朗であった。

 

次に台湾奪還戦であるが、これはヒュージによって壊滅させられた台湾を奪還するために世界各国が共同で作戦を展開した物の敗北を喫した戦いだ、この戦いでは船坂家の3分の2が戦死した。

余談ではあるが百之助は、当時6歳で参加していた。

 

「一応、拙者は、防衛陸軍予備役大将である。」

 

流石に全員が言葉を失うレベルであった。

 

「俺も参加したぜ?台湾奪還戦。…6歳だったがな。」

 

更に追い打ちをかけた。

 

「まあでも、蒙古よりマシであったな…」

 

「比べるもんがおかしい…」

 

「そうか?…まあ総指揮官が馬鹿過ぎたのが問題だったのだが…それで負け戦になったようなものだ。」

 

「まじかよ…」

 

「状況把握がまるでなっていなかったからな。まるで初めて戦を経験した様な指揮官であった。仕方がないから拙者が前線の指揮をしてやったわ…とんだ貧乏くじであったが。」

 

「そのおかげで日本が一番戦死者が少なかったけどな。」

 

「違いない。」

 

 



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46話

色々雑談やら迅三朗の戦話やらを聞いていたら11時になったためそのまま寝ることにし、男連中は退散した。

 

「百之助、己の為に戦をせよ。けして、誰かの為に戦をしてはならぬ。…我らは、戦をするしか道が無いのだから。」

 

「それは、愛する者を守る為でもですか?」

 

「そうでは無い、誰かの代わりに戦をするなと言いたいのだ。…主は、背負い過ぎておるからな。…我らの一族のことは我らが背負う物、主だけ背負う必要は無い。…他の者であれば、他の家の者達が背負う物だ。それを背負う必要は無い。」

 

歴戦の戦士の言葉はとても…重かった。

 

「心得ました。ご先祖様。」

 

「主には必要は無いやも知れぬが…我らは死ねぬ。この世から化外共が居なくなるその時まで。一所懸命を貫け。」

 

「分かっております。我ら監視者、及び守護者は…いや、運命の囚人は、戦をするしか無いのだと。」

 

「分かっておるなら、それで良い。では、また明日な。」

 

「はい、明日からよろしくお願いします。」

 

「うむ。」

 

そう言って百之助と迅三朗は、それぞれの部屋に戻った。

 

 

 

百之助の部屋は洋室と和室を混ぜた様な部屋である。10畳程の部屋で入って右側にガンラックがあり。18丁殆どのライフルがずらりとならんでおりその隣にはタンスがある。一番奥の右側にベッド、左側に机。その左にはガラス張りの棚があり、その中には、拳銃用のガンラックがあり棚に拳銃が、ずらりと並んでいる。そして、ベッドと机の間には刀掛けが置いてある。

 

百之助は、ガンラックに自身のライフルと、拳銃を置き刀掛けには軍刀と、天羽々斬を置いた。そして机に向かいパソコンを起動、溜まっていた仕事を開始した。本来は年齢を鑑み、部下にしてもらうのだが、百之助自身勉強の為にいくつか回してもらっているのだ。約一時間ほどでそれをこなし、時間を見たら午前零時30分であった。

 

「緑茶飲んで寝るか…」

 

そう言いながら拳銃用のガンラックの下の棚から湯呑と急須を取り出し、机の上にあるポットと茶缶を使い急須に茶葉とお湯を入れ、お茶を作る。しばらくしてから湯呑に注いだ。

 

吹き冷ましながら飲む。

 

「あー落ち着く。」

 

するとドアがノックされた。

 

「どうぞ…」

 

「百之助様…」

 

入って来たのは樟美だ。

 

「樟美!?…こんな時間に男の部屋に来るとは…イケナイ娘だな?」

 

そう言いながら樟美を左手で抱き寄せ、右手で顎を持ち上げた。

 

「襲われても文句言えないぞ?」

 

要は早く帰れと言う事であるが、樟美はそのままの意味で受け取った。

 

「不束者ですが…よろしくお願いします////」

 

と、顔を赤らめながら行った。

 

「そう言う言葉は軽々しく使う物では無いぞ…」

 

まさかの予想外の言葉が返って来て困惑気味である。

 

「はい…」

 

樟美は、シュンとなった。

 

「で?何しに来た?」

 

「実は…朽井様の話を聞いたら…眠れなくなってしまいましたのでここに来ました。」

 

「確かに…あれは刺激が強すぎるな…」

 

「一緒に寝ても良いですか?」

 

と、瞳を潤ませながら訴えてきた。本来は追い返すのだが事が事なので了承することにした。

 

「…分かった…今日だけだぞ…」

 

「有難うございます!」

 

見るからに明るくなった。

 

「百之助様、そこの拳銃…見ても良いですか?」

 

「構わないぞ?気に入ったものがあれは取ってやるが。」

 

「お願いします。」

 

そう言って、樟美はしばらく見ていたが左隅に4丁並んだ同じ銃の中の一番端の銃を指差した。

 

「これがいいです。」

 

「どれ…M712シュネルフォイヤー8インチか…これまた面白いの選んだな」

 

そう言いながら取り出して樟美に手渡す。樟美は、まじまじと見たあと困った顔をした。

 

「使い方わかりません…」

 

「後ろにある長いのがハンマー、その横が安全装置。左側面に付いてるのはセミフル切り替えボタン今の配置がセミオート、つまり引金を一回引いたら一発発射される。右側のボタンはマガジンリリースレバー、押せば落下する。最後にスライドだがこの取っ手を後ろに引いたら装填される。」

 

と、手取り足取り指導した。

 

「有難うございます…これ借りても良いですか?」

 

「構わんぞ?何なら撃ち方教えてやるが?」

 

「有難うございます!」

 

滅茶苦茶嬉しそうだ。

 

(天葉曰く余りそう言うの好きじゃ無いと聞いてたんだが…どう言うことだ?)

 

この時百之助は、樟美が百之助に対してどんな感情を抱いているのか知る由もなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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47話

男の最大の敵は女である。何故なら男は女に弱いからである。

ー 船坂百之助近衛軍大将 ー

後にテレビにて【ヒュージと人間による長年の戦争は、なぜ終わらないのか?】と言う番組でのヒュージ以上の天敵はと言う質問に対する答えである。


「百之助様…」

 

「どうした?樟美。」

 

二人は同じベッドに入り、樟美に背を向けて寝ていた百之助に声を掛けた。

 

「怖くて…なので…抱き締めて下さいませんか?」

 

「…分かった。」

 

百之助は、樟美を抱き寄せ落ちたら困るので180度反転し、壁側に樟美を持って行った。そして右手で頭を撫でた。

 

「有難うございます////」

 

「椿の香りがするな樟美は…」

 

「///」

 

ちなみにだが百之助は、暗闇でも目が見えるので表情が丸わかりである。

 

「百之助様…あの…その…///」

 

「ん?」

 

「…好きです…///」

 

「そうか…分かった。こんな男で良ければ…君を愛そう。」

 

「私はイケナイ娘です。躾けて百之助様の物にしてください///」

 

「血を貰おうか。」

 

「はい///」

 

百之助は樟美の着ていた浴衣をはだけさせて首筋に歯を突き立てる。

 

「あっ///ひゃん///」

 

部屋に矯声が響いた。

 

「ごちそうさま」

 

「お粗末さまでした///」

 

まだ樟美の顔は赤い。

 

樟美の上に馬乗りになり、左手で樟美の右手首を掴み右手で顎を持ち上げる。すると少し怯えた表情を見せた。

 

「安心しろ…今から襲う訳じゃ無い。」

 

と言うとこくんと頷いた。顔を近づけ唇を重ねる

 

「!?」

 

最初は強張ったがすぐに脱力した。更に舌を差し入れ樟美の口を蹂躙する。

 

「んっ///」

 

最初こそ戸惑っていたものの直ぐに舌を絡ませてきた。頃くして唇を離すと惚けた表情を見せた。

 

「その表情良いな。」

 

「はぅ///」

 

桜色の唇がとても色っぽく見えた。

 

「もっと〜」

 

と。せがんで来た。

 

「イケナイ娘に、オシオキをもしなくてはね。」

 

言葉に魂を乗せる。

 

「脱げ」

 

「や…あっ///ひゃんあっあっあん///なにこれぇ///」

 

「身を持って理解した様だな。」

 

そう言いながら樟美を脱がせる。首には紋様が浮かんでいた。

 

「これはな反逆防止のために付いてるのさ。…体が切ないだろ?」

 

「ゆるひてくだひゃい///」

 

「だーめ、オシオキにならないでしょう?」

 

そう言いながら抱き上げ、背筋に指を這わせる。

 

「ひゃん!?あっ///らめえ!イっちゃうの〜///」

 

流石に気の毒になって来たため解除する。

 

「はぁ…はぁ…いじわりゅ…しないで…」

 

「次はもっと凄いことしようかな。」

 

「や…やぁ///」

 

「大丈夫だよ。それは結婚してからだよ?キスしてあげるから。機嫌直して?」

 

「はあぃ///」

 

今度は横になり樟美を抱き寄せ唇を合せる。直ぐに脱力して嬉しそうにしていた。

 

頃くして唇を離し。樟美に浴衣を着せ抱き締めて樟美が寝るまで頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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48話

天葉に、樟美と寝ていたのを見られた時、命は無いと覚悟した。

ー 船坂百之助近衛軍大将 ー

自身の著書に置ける回想にて。


朝百之助は、自分の体がいつもより重い事に気付いた。

 

見れば上に樟美が乗っかっていた。

 

「可愛い…」

 

そう言いながら樟美の頬を撫で、自身の左側にそっと寝かせた。

 

「ちと弄び過ぎたな…後で謝ろう。」

 

そう言いながら頭を撫でる。

 

暫くするとノックされたので慌てて樟美を布団の中に隠す。

 

「どうした?」

 

すると天葉が血相を変えて入って来た。

 

「百之助!樟美知らない!?」

 

(あっこれは…詰んだな)

 

一緒に寝たと言えない百之助である。

 

「さぁ?風呂は?探したか?」

 

「見てない…」

 

「風呂入ってる可能性は…」

 

その時布団から出てきた樟美が寝ぼけながら百之助にキスをした。

 

「百之助?後でお話があります。…いいわね?」

 

静かに怒っていらっしゃる。これは私刑確定である。

 

「あっはい…」

 

そう言うと直ぐに天葉は、出ていった。

 

「百之助様?頭撫でて?」

 

言われるがままに頭を撫でる。

 

「///」

 

呑気なものである。

 

その後二人は別れて着替えた。

 

そのまま重い足取りで皆のが泊まってる部屋についた。

 

「失礼します…」

 

アールブヘイムの面々は顔が笑顔だが目が笑っていなかった。樟美を除き。

 

対象的なのが夢結である。

 

一柳隊の方は困惑気味である。何があったのかさっぱりのようだ。

 

「百之助?何故樟美と寝てたのかしら?」

 

天葉の言葉に全員が状況を把握した。百之助を見る目が剣呑な物に変わっていく。

 

「弁解は、聞くわよ?」

 

(もはやこれまでか…)

 

「見苦しいからしないよ…煮るなり焼くなり好きにしてくれ…」

 

「あっそう…まあ、ヤッて無いみたいだから何もしないけど…」

 

天葉は、樟美から直接聞いていたため事情を把握していた。その言葉を聞いて空気が和やかになった。しかしそこに伊吹が爆弾を投下した。

 

「血を吸ったようだが?」

 

再び、怒る天葉。

 

「樟美?どう言うこと?」

 

「…そのままの意味です。天葉姉様、私は百之助様の子供を産み育てたいのです。」

 

「…本気なのね?」

 

「はい。」

 

「分かったわ」

 

「ちょっと天葉!」

 

抗議をしたのは依奈だった。

 

「本人がそう言うのだから良いじゃない?」

 

「それは…そうだけど…」

 

「百之助もその気だから血を吸ったんだろうし。」

 

天葉は、百之助を見る

 

「全くもってその通りだが…お前の返事も待ってるんだが?」

 

「それは…もう少し待って…」

 

「了解した。言っておくが、俺は天葉の事好きだからな?」

 

「それって…どう言う…」

 

明らかに狼狽している。

 

「そのままの意味だが?逆に他の意味があるか?」

 

「そう…ね」

 

天葉は、顔が赤くなっていた。

 

全員が落ち着いたあと朝ごはんを食べ道場に向かった。

 

 

 

 

 

 



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49話

私は百之助が泣いた所を見たことがなかった。…まさかそこまで心が壊れていたとは当時は思いもよらなかった。

ー 百合ヶ丘女学院教官船坂天葉 ー

リリィ特集番組にて。


道場にて、船坂徳永と朽井迅三朗による訓練の後、百之助と伊吹は、行く所があるからと直ぐに出ていった。

 

その後、直ぐに迅三朗と徳永が全員集めると、迅三朗が切り出す。

 

「今日は、百之助…いや我ら一族にとって大切な日なのだ。」

 

「何でですか?」

 

梨璃が純粋な目で迅三朗を見た。

 

「…台湾奪還戦…前線が突破され…数多の命が散って逝った日だ。」

 

これには全員が絶句した。更に追討ちをかける。

 

「この戦いで船坂一門の約2/3が戦死した。」

 

「そんな…」

 

全員の顔は暗い。

 

「百之助は自身の戦友、姉達を介錯して回ったのだ。もう助からぬ…そう判断して。」

 

「…………………」

 

誰も答えることが出来なかった。そんな事をした事も体験した事も無いからだ。(文香を除く)

 

「数にして843回…介錯した。そして…心が壊れた。表情が無くなったのだ。」

 

一拍置いた。

 

「今は、鎌倉時代では無い。なのに人を、たくさん殺した。それが引き金かどうか分からぬが目が死んでいた。…拙者にはどうすることも出来なかった…」

 

生生し過ぎて顔が青くなっている娘も居た。それでも続ける。

 

「それから色々あって…このままではいかんと思い…元部下が運営していた百合ヶ丘女学院に無理を言って放り込んだ。」

 

「それで…初等部3年生の時編入されたんですか。」

 

依奈が納得がいったと…そういう顔をした。

 

「うむ…あのままでは相当不味かったのでな…そのおかげか知らぬが笑うようになった。御礼申し上げたい。有難う。」

 

迅三朗と、徳永が頭を下げた。

 

「やっと…納得した…あんなに突撃する理由が…」

 

天葉は、続ける。

 

「私達を死なせない為ね…戦友や、姉達を失ったように…私達を失いたくなかったから…馬鹿ね…それなのにずっと反発して…受け入れないで…否定してたんだ…私」

 

天葉は、静かに泣いていた。

 

「天葉…」

 

「天葉様…」

 

「天葉姉様…」

 

アールブヘイムの面々はこの前の一件を見ていたので。天葉を心配していた。

 

頃く沈黙していたがそれを夢結が破った。

 

「所詮、私達は民間人。彼は軍人だから…死なせたくなかったのかもしれないわね…でも…彼は私達を戦友と言ったわ。その時点で背中を預けられるとは判断していたと思うわよ?」

 

その答えには初等部より一緒にいた依奈が肯定する。

 

「百之助は、私達を貴方方と、初等部の頃は言ってたわよ?絶対戦友とは言わなかった。だから少なくとも肩を並べるに値すると判断したのではないかしら?」

 

そこに文香が、追討ちをかける

 

「そもそも兄上は、女性が戦場に立つこと自体嫌がってましたから劇的な進歩かと。」

 

「そうかしら…」

 

そんな話をした後、夜風呂場にて全員から抱きしめられた百之助である。

 

 

 

 



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50話

船坂家とは恋と戦によって成り立っている一族である。しかし舩坂の男達は揃いも揃って鈍感であり、自身が恋をした事を自覚するのに時間がかかり気付いたときには遅かったりする。

しかし、百之助の場合。あの三人の娘はそれを理解し自ら己を差し出したのだ。

ー 元鎌倉御家人 現近衛軍第一突撃騎兵連隊長朽井迅三郎光景大佐 ー

自身の日記にて。(後に出版)


「何しに来たし…」

 

「「「夜這い?」」」

 

百之助は夢結、天葉、樟美の答えに頭を抱えた。

 

因みに今は23時で、更に百之助の部屋である。

 

「勘弁してくれ…」

 

「それよりも樟美に拳銃渡したでしょう?私のは無いの?」

 

夢結は、何故か御立腹の様だ。

 

「それならここから選んでくれ…」

 

そう言いながら棚の鍵を外して開けた。

 

「私も良い?」

 

「良いけどさ…良いのか?人殺しの武器なんか…」

 

「良いの良いの!だってそれ言ったらチャームだって人殺せるし!」

 

そう言いながら二人は拳銃を選ぶ。

 

頃くして二丁の銃が選び出された。

 

「天葉は、デザートイーグル50AE6インチ。夢結は、MK23。夢結は良いとして天葉…なぜそれ選んだ。」

 

「え?銃口が大きいから?」

 

「体壊すからやめとけ…他のにしてくれ…」

 

「分かった。」

 

次に選んだのはグロック21改である。

 

この銃は原型であるグロック17を9ミリから45ACPにしたものである。それを更に銃身を8インチまで伸ばし。スライドやら本体やらをそれに準じたものにしたものだ。

 

「ライト付ける?」

 

「付ける」

 

それにライトを装着した。天葉に手渡す。

 

「明日射撃場に行こう。道場の訓練の後に4人で。」

 

「どうせなら皆で行こうよ?持たせた方がいいでしよ?」

 

「それもそうだな」

 

そういうことで決まった。

 

「樟美が選んだのってどれ?」

 

それに百之助が机の中から出す。因みに渡しては無かったのだ。

 

「これ。」

 

「なんか古臭いね?」

 

「そうだろうな…原型が第一次世界大戦時のだしな」

 

「へ〜」

 

「さてと…寝るかね…」

 

そのまま百之助は布団に入る。すると左側に夢結。上に樟美右側に天葉が入ってきた。

 

「正気か?…まあいいや…で?天葉、そういう事で良いんだな?」

 

「うん」

 

「分かった…」

 

夢結と天葉と樟美を抱きしめた。結構ぎりぎりである。

 

「そういえば天葉の血は吸わなくて良いのかしら?」

 

「朝でよくね?」

 

「そう…でもほかの子たちが来たら詰むわよ?」

 

百之助は、少し考えそうする事とした。

 

「それもそうか」

 

言うやいなや樟美と位置を反転させた。

 

「きゃ!」

 

「天葉だけだとあれだから三人とも吸う」

 

そう言いながら天葉の首筋に歯を突き立てた。

 

「あ…」

 

口の中に鉄の味が充満する。十分に吸ったあと今度は樟美の血を吸う。

 

「ん…」

 

次は夢結だ。

 

「あ…う」

 

「ごちそうさま」

 

「「「うふふふ」」」

 

「な…何だよ…」

 

天葉が代弁する。

 

「いや、優しいなと思って。」

 

「何処がだ?」

 

「公平にする為にわざわざ三人の血を吸ったでしょう?」

 

「そうだな…」

 

「認めるんだ?」

 

「図星だからな。」

 

「そっか」

 

そのまま4人で寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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51話

全員に拳銃を持たせる。これは生存率を上げる為よ。決して人と戦う為では無いわ。

ー 百合ヶ丘女学院教官船坂夢結 ー               

クラスメイトに対して言った言葉。後にドラマ化 (これに関しては夢結が台本を作る際に協力していた。)


一同は、射撃場に来ていた。

 

この射撃場は。本家から20メートル離れた場所に入り口があり、そこから階段か、エレベーターで地下に向かう。(何メートルだったかは不明)

 

「もっさん!いる!?」

 

「だれがもっさんや!山本さんと呼べ言うとうやろが!!」

 

そう言いながら繋ぎを着た女性が出てきた。

 

「良いじゃん別に…昔からそう言ってたんだから…」

 

「ええ加減にせんか!言うていいのはあんたの母だけや!…まあええわ…何の用や?」

 

百之助はガンケースを渡す。

 

「ブローニングのおっさんが作った奴なんだけど整備できる?」

 

山本と呼ばれた女性がガンケースを開け、手に取る。

 

「これはこれは…兄弟子なら奥にいるから整備でけるで?」

 

「ブローニングのおっさん帰って来てんの?」

 

「せや。昨日帰って来たで?」

 

「まじか…」

 

「所で百之助…後の連中は誰や?」

 

百之助の後ろの人集りを見て聞いてくる。

 

「…拳銃選んでやって欲しいんだよ。」

 

「と言う事は…ウチの後輩か。」

 

「そう言う事。」

 

「それは…自己紹介せな。ウチは百合ヶ丘出身で山本美保野言うもんや!よろしゅうな!」

 

「因みにギンの弟子だよ。」

 

「なるほど…」

 

と皆さん納得のご様子である。

 

「拳銃とホルスター、それとマグポーチやな…付いてきいや!」

 

全員が美保野に付いていく。

 

奥の倉庫に来た。

 

「ここには色んな国の色んな拳銃があるで!好きなの選びいや!」

 

20分後全員が決まったようである。(夢結、天葉、樟美及び既に持っている面子は除く。)

 

レギオンで揃えたようでアールブヘイムがM17、一柳隊はUSPである。どちらも45口径だ。

 

「なんや…早いな…じゃあこれやな」

 

と言いながら腰にベルトを付けていく。それにはマグポーチやらホルスターやらが右側にほぼ全て集中しており左側に刀を差すためのホルダーが付いている。

 

美保野は同じものを装着しホルダーに刀を差す。

 

「これ位置ずらすと、刀の鞘のほうが上向きになって格納されんねん。」

 

刀の鯉口を持ち後ろにずらすと、鞘が上向きになった。

 

「抜くときは反対な。」

 

また鯉口を持ち手前にスライドさせると元の位置に戻った。

 

「すご…」

 

「画期的過ぎてびっくり…」

 

と、全員がびっくりである。

 

大きい箱を美保野は取りだした。

 

「マグポーチと銃本体からマガジンを抜いてこの箱から弾入れえや」

 

全員弾を入れる。

 

「射撃場に行くで…その前に説明しましょか。レンジでは絶対に撃つまで弾を入れてはならんで?例外もあるけど基本的には入れるなや?後耳が聞こえんくなるからヘッドセットつけえや。ええか?」

 

全員が頷いた。

 

「ほな行こか!」

 

射撃場に向かった。

 

 



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52話

最初私の夫である船坂百之助大将から渡されたこの銃を手にした時、とても怖かった。でも初めて船坂百之助大将の射撃を見たときまるで映画のワンシーンの様にカッコ良かった。それがこの銃を持つ理由よ。

ー 百合ヶ丘女学院教官船坂樟美 ー

生徒から拳銃について聞かれた時の答え。


「まだヘッドセットはつけなくてええで!使い方の説明せなあかんから!」

 

全員集めて説明する。

 

「M17からいくで!M17は、マガジンを入れてスライドを引けばオッケーや!スライド後部にあるのがセーフティや!上げればロックがかかるその手前がスライドストップや!下にあるのがマガジンキャッチで押せば自重で落下する!」

 

カシャン!チャキン!カシャン!カンカン!

 

「USPもほぼ一緒や!ただセーフティを下に下げるとデコックされるでセーフティでは無いから気い付けや!マガジンキャッチは、押すんやない下げるんや覚えときや!百之助!射撃姿勢見せたって!」

 

「了解。」

 

百之助は、MP17からスライドを外しM17にスライドを取り付ける。

 

「え?その部品共通だったの!?」

 

「マガジンもだぜ天葉!」

 

そう言いながら弾を装填する。

 

「構え方は簡単だ!右手を真っ直ぐにして左手を添える。以上!ヘッドセットを付けて!」

 

 

全員がつけたのを確認する。

 

「撃つぞ!」

 

「OK!」

 

パン!パン!

 

2発発砲。その後マガジンを。外しスライドを引き弾を除き引金を引いて撃鉄を落とす。

 

「以上だ!」

 

「弾は、無くなったらうちに言いや!出したるさかい。」

 

全員が頷いた。

 

「トミーここ任せてええか?」

 

「いいけど?」

 

「ほな頼むで…百之助!ちょっときい!」

 

「何さ?」

 

「ええから!」

 

そのまま美保野に付いていく。工房の奥に1つのチャームがあった。それはまるで38式の様な形をしており銃剣が銃身の下に装備されていた。スリングは横に付いている。

 

「今度軍に納品する試作機や。感想聞きたいんやけどええか?」

 

「良いけど…知ってるよな?」

 

「知っとるわ!」

 

「分かったよ。」

 

「ほな登録済ませえや!」

 

「あいよ!」

百之助は、自分の腕を切り血をチャームに流し、マギも流す。すると起動した。

 

「射撃モードとランスモードがあるんや。ランスモードでも撃てるけどな!」

 

ランスモードにすると銃剣がスライドして展開される。

 

「外見が38式に似てるな…」

 

「格闘しやすいようにしてるんや」

 

「なるほど」

 

「撃つ必要は無いで!それはこちらでやるから!」

 

「了解。」

 

そうしてチャームを元の場所に戻す。

 

「これなら俺でも使えるな。」

 

「せやろ!でもまだ先なんや…色々問題もあってな…軍の要求がアホか言いたくなるんや…何せ空挺用、狙撃仕様、歩兵仕様、軽機関銃仕様、挙句の果てには騎兵仕様…泣きたなるわ…」

 

「一新する気満々じゃねえか…で?何処の軍だ?」

 

「近衛軍や…何でも新しい部隊を新設するとかで…」

 

「それ言っていいのか?」

 

「良く無かったらあれ見せへんわ。」

 

「そっか…」

 

その後夜になるまでずっと訓練した。

 

 

 

 

 

 



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53話

百之助様のお母様?お金を沢山持っていて色んなチャームメーカーに投資なさってる御方ですわ。私のグランギニョル社も資金援助を受けてチャームを開発していますの。感謝しても仕切れませんわ。

ー グランギニョル社総帥 楓・J・ヌーベル ー


数週間が過ぎ、今日の夜夏祭りがある為女性陣は、知恵と文香が着付けを手伝っていた。

 

「百之助!良いわよ!」

 

「了解!」

 

そう言って百之助、裕也、伊吹は、入室した。因みに裕也とは射撃訓練やらで全員が仲良くなったのである。

 

「「「…!?」」」

 

三人とも声を失った。予想を超えていたからだ。

 

「感想はないの?」

 

と天葉は、少々怒り気味だ。

 

「すまん…予想を超えて綺麗だったから…」

 

「「同じく」」

 

その言葉に女性陣は顔が赤くなった。

 

百之助は、話を逸す、事にした。

 

「所で母上、幾らかかりましたか?」

 

「なんの事かしら?」

 

と、とぼけるように言う。

 

「母上の手持ちにここまで綺麗なのは、無かったでしょう?正確に言うと新品ですね?」

 

子供のいたずらがバレた様に言う。

 

「だって…素材が良いんですもの…それに似合った物にするのは当然でしょう?」

 

「だからといって千總の着物ってどうなんです?値段張ったでしょう?」

 

「ノーコメント」

 

「はぁ…で?それどうするんですか?」

 

「勿論プレゼントするわ。」

 

全員がえ?と言う顔をした。

 

「家にあっても困るもの…あげるわよ?」

 

「そんな事だろうと思いましたよ」

 

そこに伊吹が補足する。

 

「君達が着てるその着物はブランド物で、ガチの伝統工芸品だ。それをくれてやるってさ。」

 

「うそ…」

 

「はい?」

 

「まじか…」

 

「で?総額いくらよ?」

 

「中古のランボルギーニが買えるかもしれないわね?」

 

「やっぱり…」

 

全員が真っ青になった。

 

「お…お金…」

 

「ああ…気にしなくていいわよ?私のポケットマネーですから。それに使わないと貯まるばかりで勿体ないから。」

 

「言われてみればそうだな…普通に巡洋艦が買えるレベルだったはず。」

 

「それは古いわよ?今は原子力空母2隻買えるわ。」

 

「いやたまりすぎだろ…」

 

「因みにそれでも半分しかないわよ?半分国債に使ったから。」

 

「まさかの国に投資しやがった。」

 

「寄付と言ったほうがいいかしら?」

 

「やる事がおかしい」

 

「大丈夫大丈夫!色んなチャームメーカーに投資したりガーデンに投資したりしてるから結構ホクホクなのよ?この前は競馬場作ったわよ?」

 

全員絶句である。

 

「そもそも貴方達チャームの開発資金何処から来てるのか知ってるかしら?」

 

「いや、知らんし。」

 

「私のお金よ?」

 

「まじか…」

 

「だって…私の時、チャームが貧弱で沢山失ったんだもの…今は当時の物でもマギクリスタルが改良されて出力が強化されているから格段に戦死する確率が減っているもの。」

 

全員がなんとも言えない雰囲気になった。

 

 



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54話

百之助は、妻の事になると全力でやる。

ー 近衛軍第9近衛師団長 冨永伊吹 ー

インタビューにて


百之助達は、夏祭りに来ていた。しかし、割り振りが…

 

「何故夢結、樟美、天葉だけなんだ…」

 

「気を使われたわね…」

 

「ですね…」

 

「だね…」

 

と、四人で回っていた。

 

「トミーは、トミーで神琳と、嘉雨なんだよな…」

 

「あっちは、あっちでそういう事だからね?」

 

「良い意味で想定外だ」

 

「それはそうと何故軍服?」

 

「この夏祭りの主催は、護國神社だ。慰霊の意味も兼ねてるのさ。だからだよ。…まあ、周りの牽制も兼ねてるが」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「で?どこから行く?」

 

「「「射的」」」

 

凄い形相である。

 

「お、おう」

 

かくして、百之助達は射的屋に向かう。

 

「おじちゃんいくら?」

 

「おう!4人で2000円だな。」

 

「はいはい。…2000円だね。」

 

「まいど!…いま思い出したが…あんちゃん7歳の時来なかったか?」

 

「水臭いな…来てたじゃんか…久し振り!」

 

「おう!そっか…大きくなったな!」

 

「何?知り合い?」

 

「昔、家に出入りしてた人…元気そうで安心した。」

 

「ガハハハハハ!昔の事だぜ?」

 

皆、当てていくが倒れない。

 

「むぅ…」

 

「はぅ…」

 

「倒れない…」

 

「コツはあるんだぜ?それに倒れるのは確認済みだよ?」

 

と、おじさんは言う。

 

(おっちゃんいかさましない主義だからな…)

 

「あんちゃん…代わりに取ってあげなよ?いつもの奴、わざとやってるぜ?」

 

「まじで?」

 

百之助は、土台を見回す。

 

(見つけた。相変わらず緊急手段残してんだから…」

 

狙った先はナットが付いていないボルトだ。

 

ぽん!ピキーン!ガッシャーン!

 

「ええ…」

 

「え…」

 

「へ?」

 

そうボルトが外れて崩れ落ちたのだ。

 

「じゃあヌイグルミ3つ貰おうかな。」

 

「3つ?全部持ってっていいんだぜ?」

 

「いや…3つでいい」

 

「分かったよ。」

 

3つ受け取り退散することにした。

 

「じゃあね」

 

「おう!来年も楽しみにしてるぜ!」

 

その後かき氷食べたり焼き鳥を食べたりしていた。

 

「あの人優し過ぎませんか?」

 

「昔からそういう人なんだ。…変わらないんだよ。」

 

「足取りが…不自然でした…」

 

「台湾奪還戦で負傷して…退役したんだ…娘さんはリリィだったけど…病弱でね…そのまま逝ったよ。」

 

「そう…ですか…」

 

「まあ気にする事じゃない…君達が背負う物では無いから。」

 

「貴方もよ百之助…」

 

「分かってるさ」

 

「ならいいわ」

 

「喉乾いただろ?なんか買ってくるよ。」

 

「分かった」

 

「分かりました」

 

「ええ」

 

百之助は、ジュースを買いに言った。

 

ラムネを屋台で4本買い、直ぐに合流すべく夢結達のいる場所に戻った。するとチンピラ3人に絡まれていた。

 

(離れなきゃよかった…)

 

今更であるが少し興味があったので聞き耳を立てる。

 

「良いじゃん。行こうぜ!」

 

「お断りいたします。人を待ってるので」

 

樟美に関しては天葉の後ろに隠れてしまっている。

 

「興味が無いから!」

 

「はぅ…」

 

チンピラ共はポケットから何かを取りだした。

 

(あれは不味い!)

 

「そうか…じゃあ強行手段を取ろうかね。」

 

臨戦態勢だ。どちらも。

 

「そこまでだ。後、俺の女に手ェ出すなや。」

 

と、全力で殺気を放つ。

 

「誰だ!」

 

「見てわからんか?軍人だよ?」

 

「クッ!」

 

ナイフを展開する。

 

「やめとけ、手加減できなくなるから。」

 

「何を!」

 

一人が向かってくる。そいつのこめかみに14年式を突きつける。

 

「これが何かわかるよね?」

 

これには固まるしか無かった。

 

「拳銃とナイフどっちが強いと思う?」

 

「チッ!」

 

「分かったらとっとと失せな。」

 

「クソ!」

 

チンピラ共は退散した。

 

「物分りが良くて安心した。」

 

「こっちは全く安心出来なかったけど?」

 

「すいませんでした。」

 

「まあ過ぎた事だから」

 

「樟美おいで?」

 

「百之助様ぁ!」

 

そう言って樟美を抱きしめ、頭を撫でる。

 

「うぅ…」

 

「怖かったね…」

 

その後少ししてから全員合流して楽しんだ。ついでに百之助は、伊吹をいじってぶん殴られた。

 

家に帰ると葉山さんから渡す物があると呼ばれた。

 

「で?駐車場に何があるんですか?」

 

「旦那様より2台の車を百之助様と伊吹様に差し上げる様に言われております。」

 

頃くして白いシートを被った車2台の前に来た。

 

「これですか?」

 

「そうです。」

 

そう言って、シートを取った。

 

「これは…」

 

「こいつは…」

 

その中から出てきたのは、ランボルギーニであった。

 

「FKP37シアンと、LPI910−4アステリオンでございます。」

 

「まじか…」

 

「うわあ…」

 

二人共絶句である。

 

アステリオンは、青。シアンは、深緑だ。

 

「お前シアンに乗れよ。」

 

百之助は、伊吹にシアンを促すが…

 

「いや、俺はアステリオンだ。」

 

「なんで?」

 

「俺の好きな人が使ってるチャームがアステリオンだからだ。しかも青。」

 

「了解。」

 

「ではお二人にこれを。」

 

渡されたのは、車の鍵だ。

 

ちなみにだが、二人は軍人なので免許を持っている。

 

「因みにこの車は、どちらも装甲化されていますので防弾性能はピカイチです。その分重くなったものの、馬力を上げることで速度を維持しております。」

 

「了解しました。」

 

「分かりました。」

 

二人は獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 



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55話

まさかあんな事になるなんて…

ー 百合ヶ丘教官冨永雨嘉 ー

自身の回想にて


新学期が始まり一柳隊は、探索していた。理由はヒュージの残骸が浜に打ち上げられていたからだ。

 

「しかし、姉上やもっさん、ギンはともかく…ご先祖様まで指導教官とは…」

 

「あれはびっくりしたよな…」

 

そう、迅三朗まで指導教官になったのだ。

 

「そんな事より昨日、戦闘ありましたっけ?」

 

「無かった筈だが?」

 

「ハイ、無かったはずです。」

 

梨璃の問に百之助が答え、二水が同調する。

 

「共食いでもしたんじゃろか?」

 

そう言うのはミリアムだ。

 

「ヒュージを形作るのは全てマギの力だから物を食べたりしないはずです。」

 

と、二水は反論する。

 

「マギを失えばヒュージは、巨体を維持出来ずその場で崩壊するはずよ。軟組織は一晩で無機質まで分解され、骨格も数日で…」

 

「それがまさに今…」

 

「この匂いまだマシな方…」

 

辰紗は周りを見回しながら、雨嘉は鼻を抑えながら。それぞれ言う。

 

「ふえ〜!」

 

二水は、狼狽えてしまっている。

 

「なんだこれ?」

 

百之助は、判断に困っていた。視線の先には黄色い物体が転がっていた。

 

「何でしょう?」

 

梨璃と、百之助は同時に首をかしげた。流石は血を分けた兄妹である。

 

「梨璃、つついてみてくれ俺は出てきたら切る。」

 

「分かりました。」

 

チャームと40式を両者構える。

 

「行きます…」

 

するとチャームが起動。

 

「へ?うわ!…何今の?」

 

「な…」

 

梨璃は、チャームを百之助は中の物に釘付けである。

 

「梨璃さんどうしたんですかぁ?」

 

「あ、二水ちゃん!今…チャームが…」

 

「へ?梨璃さん!?」

 

「へ?どうしたの二水ちゃん?」

 

「どうしたー?」

 

「何か見つかりまして?」

 

梅と楓がやって来た。

 

「梨璃さん後…」

 

「へ?ふぇ!!」

 

見れば少女が抱きついていた。

 

(嘘だろ!?だって…あいつは…俺が…手に掛けたんだぞ!?)

 

「な…ん…だ…と」

 

百之助の心を代弁したのは息吹だ。

 

「梨璃から離れろ!!」

 

そう言うやいなや百之助が刀を抜いた。

 

「何をしているの!?」

 

見れば夢結が百之助を睨んでいた。

 

「分かったよ。」

 

そう言って刀を収めた。

 

緊急を要する為に保健室に急いだ。

 

処置室にて。ガラスの向こうにいる少女を見ていた。

 

(どう見てもあいつだ…)

 

百之助と、息吹にとっては忘れられないことのようだ。

 

「はあーこんな所にいても私達に出来ることなどありませんわ…」

 

「出来る事はしたわ…梨璃、行きましょう?」

 

楓と夢結がここを離れようと言う。

 

「もう少し、ここに居ても良いですか?」

 

「え?」

 

皆何言ってると言う顔をした。

 

「俺は祀に用があるから俺も残る。」

 

「分かったわ…斬らないでね?」

 

「分かっとるわ。」

 

そう言って百之助と、梨璃以外は退散した。

 

頃くして祀が来た。

 

「こんな所で何をしているの?貴方達?」

 

「あ。」

 

「よ。」

 

 

「御機嫌よう梨璃さん、百之助も。」

 

「御機嫌よう!ええっと…」

 

「2年の秦祀よ。初めまして。」

 

「失礼しました祀様!たしか…お姉様お同じお部屋の…方ですよね?」

 

「夢結から何も聞いてない?」

 

少し不機嫌だ。

 

「はい、何も…」

 

「はぁ…まあ、予想通りだわ…フゥンこの子ね?そうで無くとも貴方、相当な有名人なのよ?もっぱらゴシップ的な意味だけど。」

 

「はあ…」

 

「こんな所にいないで、貴方達も入って。」

 

そして処置室に入る。

 

「あの…祀様はどうして…」

 

「言い忘れていたけど私も生徒会なのよ?と言っても代理なのだけれど。」

 

「あ、祀ちょっとお話が」

 

「良いけど…」

 

処置室の奥の部屋に二人で入った。

 

「あの子のDNAこれと一致するか見てくれ。…可及的速やかに。」

 

「理事長代行には話さない方がいいかしら?」

 

「今はまだ駄目だ。頼む…」

 

「はあ…分かったわ…」

 

「すまん有難う。」

 

そのまま二人は一緒に処置室を出る。

 

「俺行くとこあるから」

 

「百之助様、分かりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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56話

シアンだったかしら?とても乗り心地が良かったわ。私は好きよ?…最も運転はしたくないけれど。

ー 百合ヶ丘女学院教官船坂夢結 ー

回想にて。


所変わって共用スペースにて一柳隊の面々は、お茶会を開いていた。

 

「百之助の事何があったか教えてくれないかしら?伊吹?」

 

と、夢結は伊吹に問うが…

 

「…軍規によりお答えしかねる。」

 

とその表情は硬い。

 

「そう…なら、仕方無いわね?」

 

「ぶっちゃけて言うと判断に迷ってる…まだそうと決まったわけではないしな…」

 

「分かったわ…」

 

「それはそうと帰って来ませんわね〜あのお二方。」

 

と、しびれを切らした楓が言う。

 

「梨璃に関して言えば。自分が助けたから、世話を焼きたいのでしょう…正義感の、強い子だから。気になるなら貴方も行けばどうなの?」

 

「治療室はお喋り禁止ですのよ?せっかく梨璃さんといた所で黙ったままどうしろと?」

 

「いや、見舞えよ…」

 

と、鶴紗はつっこむ。

 

「以外だな〜!黙って居てもできる事はありますわ〜!とかなんとか言うと思ってたのに〜!」

 

面白がって言う梅

 

「なるほど!その手がありましたわ!」

 

「アホか。」

 

楓に伊吹がつっこむ。

 

「おう!楽しそうだな!」

 

「百之助…」

 

「夢結、言いたいことは分かるが今は言えないぞ…最ももう答えは出てるがね…トミー、やっぱりあいつの娘だ。異能で確認した。」

 

「やっぱりか…あいつら一度ならず2度も苦しめるか…」

 

「怒りで腸が煮えくり返りそうだ。」

 

と、百之助と伊吹は怒っていた。

 

とそこに、救世主が現れる。

 

「お姉様〜!」

 

と、梨璃が駆けてきた。

 

「梨璃、どうしたの?そんなに慌てて。あの子が目を覚ましたの?」

 

と、夢結が、子を諭すように言う。

 

「いえ、まだ寝てます。ぐっすりと。私、お姉様に戦術理論の講義で教えて欲しいことがあったんですけど…」

 

キーン

 

「うわあ〜間に合わなかった〜!これから講義なんです。御機嫌ようお姉様。」

 

そのままパタパタと駆けていった。

 

「夢結と、百之助は授業無いんだっけ!」

 

「取れる単位はもう既に取ってあるから。」

 

「俺の場合は、軍で終わってるからなぁ」

 

因みにそれが百之助が進級出来た理由である。

 

「…あっそ…じゃあな」

 

「御機嫌よう」

 

「またな」

 

「あら?」

 

そこには梨璃の教本が置いてあった。

 

「忘れて行ったか…」

 

「そのようね…」

 

「所で夢結、ドライブしないか?」

 

「良いわね。」

 

と、二人は校門を出る。

 

百之助は、道路にシアンを空間収納から出す。

 

「何度見ても凄いわね…」

 

「だろ?」

 

そう言いながら車の鍵を開け、乗りエンジンをかける。

 

ブオーン!!

 

百之助は、運転席と助手席にあるミサイルボタンの様なパーキングボタンを押し、車を走らせる。

 

「音が凄いわ」

 

 

「分かるけどな!」

 

そう言いながら3時間ほどドライブを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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57話

あの時の百之助は、何かを決心した様だった。その覚悟は私達の、予想を遥かに上回っていた。

ー 百合ヶ丘女学院教員秦祀 ー

インタビューにて。


「梨璃の教本、持ってっとくよ。」

 

「あら、そう?じゃあお願いしようかしら?」

 

ドライブを終えたあと百之助は、夢結から梨璃の教本を受け取った。そして、処置室に向う。

 

すると案の定梨璃が探していた。

 

「あれ…ええっと…あの教本どこやったっけ…」

 

「お探しの物はこれかね?」

 

百之助は、そう言いながら教本を渡す。

 

「百之助!?有難うございます!」

 

「礼なら夢結に言え。気付いたのは夢結だからな」

 

「はい!」

 

「ハクション!」

 

くしゃみの主を見た。すると寝ていた少女が起きていた。

 

「具合はどお?気分は?どこから来たの?名前は?歳はいくつ?」

 

「落ち着け…びっくりしてるぞ?」

 

「すみません…私、一柳梨璃。」

 

「リリ?…うふふ…」

 

その少女は笑いながら顔を背けた。

 

「いいじゃない笑ってる顔、見せてよ?」

 

その少女は梨璃に笑顔を向けた。

 

その時梨璃の指輪に少女の手が触れた。

 

ポーンリリリリリ。

 

「へ?指輪が…これ私のマギじゃ無い。

 

「?」

 

「そう、その子はリリィよ?」

 

「祀様、百由様」

 

「よう」

 

「えへへ御機嫌よう梨璃ちょうどさっき結果が出た所でね〜保有マギの値を示すスキラー数値は50、ちょっと心許無いけど…リリィは、リリィね!」

 

「スキラー数値50って…私がリリィに受かった時の数値です。」

 

「そして俺の数値の1/100だな」

 

「あんたがおかしいのよ…それはともかくとして、それは奇遇ね?」

 

「この子がリリィ」

 

「あ、百之助、ほぼ一致したわよ?」

 

「やはりか…決まりだな…祀これを」

 

百之助は、祀にUSBを投げ渡す。

 

「これは…?」

 

「今日までにゲヘナがやらかした研究のすべてが入ってる。…もしもの時の保険だ。」

 

「そんな物何処から!?」

 

「それに関してもそれに記されている。…はっきり言おう。この子は俺の義理の妹だ。この子の母の力を継いでいるからな。」

 

「それは、どう言う…」

 

「詳しく聞きたいのなら…ギン教官、朽井迅三郎光景教官に聞いてくれ。俺より詳しいし、元戦友だから。理事長代行でもいいがね。」

 

「……分かったわ」

 

「後、もう一つ…その情報は軍の一級機密事項だバラすなよ。」

 

「了解…」

 

「では俺は失礼する。」

 

そう言って百之助は退室した。

 

(クソ…8歳の時の不始末が今頃になって回って来ようとは!夜々すまん…やらかした…)

 

寧ろ8歳児に責任を押し付ける方が酷であろう。でも百之助は、自分の不甲斐無さに怒り狂っていた。

 

(やはりゲヘナは、皆殺しにして晒し首にしてやる!!)

 

大変物騒である。

 

(だか…妹を守り抜きます…全力で)

 

 

 

 




設定は、もう少し様子をみます。


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58話

そんな事があったなんて…

ー 一柳梨璃 ー

回想にて


一柳隊全員が一柳隊のミーティングルームに集まっていた。

 

「あの子…リリィだったの?」

 

嘉雨が驚いた表情を見せながら言う

 

「どこの誰か分かったのか?」

 

「それは…何も思い出せないみたいで…」

 

梅の質問に梨璃が答えるが…悲しそうだ。

 

「そりゃそうだ。あいつの母親は記憶を消したんだからな」

 

「え?」

 

一部を除きどう言う事だと言う顔をしていた。

 

百之助は、続けた。

 

「あの子の母は…元守護者…夜々って言う人物で、俺が彼女の力を受け継いだ時に消滅した。その際彼女は、娘の記憶を消したのさ。」

 

「おい!百之助!」

 

百之助に、伊吹が食って掛かるが…

 

「この際仕方無い…話してしまおう。」

 

「了…解」

 

「ゲヘナの研究施設が9年前に爆破事故起こしたの知ってるか?」

 

「当時は騒がれたわね…それがどうしたの?」

 

夢結は、何故そんなことを?と言う顔をしていた。

 

「爆破したのが俺たち近衛軍だからだ。」

 

「なん…だって…」

 

梅の顔が青ざめていた。

 

「当時はとんでもない事をゲヘナがしていたみたいでそれを奪取する為に近衛軍は強襲したのさ。…その中に夜々がいたよ。その時に力を託されたのさ。」

 

「そう…」

 

「完全に頓挫させるために一人も生かしておけなかったから…強化リリィを除きすべての研究者を始めとする者は、すべて殺した。そして全てのデータを奪った上で消去又は破壊した、その後施設を爆破して完全に破壊した。…そのデータはこれだ。」

 

百之助は、ポケットからUSBを取りだした。

 

「マジか…」

 

全員が絶句した。

 

「補足すると、夜々の血を受け継いでいるのは、リリィ全員だ。だから全員の先祖に当たるぞ。」

 

「壮大すぎて分からないわね…」

 

「それでいいのさ夢結。」

 

「じゃあ、何であんな所に居たんだ?」

 

「それは、分からんが九分九厘ゲヘナが絡んでる。」

 

「そっか…」

 

「俺にとっても妹だからな…このまま…ここにいて欲しいけど…おっと喋りすぎた。これ以上は、話せないな。あと、軍事機密だから喋るなよ?」

 

「分かったわ」

 

全員が首を縦に振ったので、百之助は退室した。

 

「話が…重い」

 

と、嘉雨が漏らすほどに内容が重かった。

 

「梨璃、好きなようになさい。」

 

「はい!お姉様!」

 

さっきまで表情が暗かったが一気に輝いた。そのまま退室した。

 

「何事も無ければいいんだけどな…」

 

「どういう事?」

 

息吹の独り言に夢結は、疑問を浮かべる。

 

「いや、こっちの話。」

 

「そう…」

 

夢結は、それを深堀りしようとは思わなかった。

 

この時は全員がこれから起こる事を想像すらしていなかった。

 

 

 

 

 



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59話

結璃の名前、結璃で決まったわけではなかったとは当時は知らんかった。


ー 近衛軍大将舩坂百之助 ー

同窓会にて




それから数日が経過した。その間百之助は、共用スペースにて夢結や樟美、天葉の膝に頭を乗せて寝ていたりしていたため、全員から訝しむ様な目で見られていた。因みに今日は夢結の膝である。

 

「癒やされる…」

 

「そう…光栄ね。」

 

と、百之助は夢結の膝で蕩けていた。

 

「夢結…堅いよ…まあいいけど。」

 

「…善処するわ」

 

と、そこに梨璃が現れた。

 

「御機嫌よう。兄様、お姉様、お隣良いですか?」

 

「聞かなくても良いぜ?」

 

百之助は、そう言いながら夢結の膝からどいた。

 

「ええ…どうぞ、梨璃。」

 

と、姉が妹に見せる表情を見せながら夢結は言う。すると梨璃は、目を潤ませながら夢結に突撃した。

 

「ご無沙汰してましたお姉様〜!」

 

「どうしたの?ちゃんとしなさい。」

 

「本当に姉と妹だな?」

 

「そう言う百之助も文香さんと居ると恋人同士の様よ?」

 

百之助は、向側のソファーに座って丁度来た文香の頭をなでていた。勿論膝枕である。

 

「そうかな…」

 

「兄上と夢結様の場合は、恋人を通り越して最早夫婦ですよ?」

 

「何を言うのよ…」

 

と、謎の褒め言葉?を言い合っていた。

 

夢結の後ろでは…

 

「全く…聞いてられませんわ!」

 

と、楓が貧乏揺すりしていた。

 

そこに神琳がハンカチを持って楓に差し出した。

 

「さあ…これで涙を。」

 

「泣いてませんわ!」

 

と言う具合である。

 

「元気になった様だな。」

 

「え?」

 

見れば梨璃の反対側に少女が座っていた。

 

「貴方、この間の…」

 

レギオンのメンバーが集まってきた。

 

「おう…元気になったか!」

 

「て、その制服!」

 

ミリアムと、二水はうれしそうだ。

 

「うん、正式に百合ヶ丘の生徒にして貰えたって。」

 

「編入されたって事?」

 

「まあ可愛い!」

 

1名ほど雲行きが怪しいのが居るが無視する。

 

「ほら、ご挨拶して。こちらは夢結様だよ!」

 

「夢結?」

 

余りわかっていないようだ。

 

「ちゃんと練習したでしょ?自己紹介しようよ。」

 

「何で〜?」

 

「何じゃ…梨璃とこの娘…」

 

「姉と妹って感じです。」

 

「ちょっとあなた達狭いわよ…!」

 

「もっと詰めろ」

 

「梅も見たいぞ!」

 

と、皆謎の少女に目がいっていたが本人はスコーンを眺めていた。

 

「これ何?」

 

「スコーンよ?食べたいの?食いしん坊さんね誰かさんの様だわ。」

 

「俺が?」

 

「私ですか!?」

 

この異母兄妹は、食い意地が張っているらしい。

 

「夢結にシルトがもう一人出来たみたいだ。」

 

「食べていい?」

 

「ちゃんと手を拭くのよ。」

 

と、夢結はお手拭きを渡した。

 

「姉と妹と言うより…」

 

「母と娘じゃな。」

 

と、二水とミリアムが言うと少女は勘違いをし始めた。

 

「夢結お母さん?」

 

「産んでないわよ。」

 

「じゃあお父さん?」

 

「違いますから。」

 

 

(やばい…!笑いが止まらん!)

 

と、必死に堪える百之助である。

 

「うん…それが、まだ記憶が戻ってなくて…」

 

「それじゃあ今までなんて呼んでたんだ?」

 

その問に答えたのは百之助だ。

 

「梨璃が結梨って呼んでたぞ?」

 

ブッ…

 

夢結は、紅茶を吹き出しかけた。

 

「へぁ!?」

 

「ファ!それは!」

 

「てっきりそうなのだと思って、一柳中将に頼んで養女にしてもらってしまったのだが…駄目だったか?」

 

「おい!飛躍しすぎだろ!」

 

流石にこれには唖然とする一同である。

 

「って事で一柳結梨だ。」

 

「…いやいやいや…」

 

「あら〜良いんじゃないでしょうか〜」

 

「似合ってると思う。」

 

「なんか愛の結晶って感じだな〜」

 

「一緒に猫缶食うか?」

 

「いつの間にやら既成事実が積み重ねられてますわ…」

 

「じゃあ決まりじゃな」

 

と、伊吹と楓以外賛成であった。

 

「じゃあそのままレギオンに登録しておきますね!」

 

「二水ちゃん!?」

 

「良いんじゃないかしら?」

 

「ハ〜?」

 

と間抜けな声を梨璃が出していた。今日も平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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60話

女装は嫌だ!!


ー 近衛軍大将舩坂百之助 ー

一番嫌いな物である。


「おーこれが指輪?」

 

結梨が指輪を眺めながら問う。

 

「嵌めてみて。」

 

梨璃も何にか嬉しそうだ。

 

「うん。」

 

嵌めるとすぐに指輪が光る。

 

「はあああ…」

 

「これで貴方も百合ヶ丘の一員ね。」

 

神琳の言葉に梨璃は、悲しい顔をした。それを見た夢結が続ける。

 

「あなたのマギが馴染むまで暫くそのままにして。」

 

「どのくらい?」

 

「そうね…2、3日くらいね。そうすればチャームと契約出来るようになるわ。」

 

「…俺は…納得してない…夢梨が武器を取るのは…」

 

「百之助…」

 

夢結は、その言葉には、返す言葉がなかった…

 

「だろうな…俺もだよ戦友…納得はして無い…だがな…奴らがどう動くか分からん以上は、武器を持たせたほうが良いだろう…」

 

「だな…貴様の言う通りだ」

 

そう言いながら百之助と伊吹は、立ち上がった。

 

「俺らはドライブしてくる」

 

夢結は、それを正確に読み取った。

 

「分かったわ…気を付けて…」

 

「すまんね…」

 

そう言いながら二人は退室した。

 

「しばらくそのままにしておいた方がいいでしょうね…」

 

夢結の言葉で、ほぼ全員が頷いた。

 

ところ変わって共用スペースに、百之助は来ていた。

 

「ロザリンデ様、ここにおられましたか。」

 

「あら?珍しい…どうしたのかしら?」

 

この銀髪の女性こそ対ゲヘナ特化レギオンロスヴァイセの隊員で、ロザリンデ・フリーデグンデ・フォンオットーである。

 

「…例の件で話が。ここでは何なのでドライブでも?」

 

「…例の車でかしら?」

 

「いえ…別の車です。」

 

ロザリンデは、シアンだと思ったようだ。それを百之助は、否定した。

 

「そう…まあいいわ、行きましょう。」

 

「了解です。」

 

二人は正門の前についた。

 

「で?どうするのかしら?」

 

「まずはこれを」

 

百之助は、ロザリンデに車のキーを渡した。

 

「私が運転するのかしら?」

 

「運転してみたいかなと…」

 

そう言いながら空間収納から赤い車を出した。

 

「……これ……スーパーカーじゃない…しかも億単位の…」

 

ロザリンデは、車を見てドン引きである。

 

「フェラーリの、ラ・フェラーリです。まあ…乗ってください。」

 

「え、えぇ…」

 

顔を引き攣らせながら車に乗り込む。そして車の動かし方をロザリンデに教えた後走り出した。

 

 

「良いわね。これ楽しいわ!」

 

ご満悦のロザリンデである。

 

「で話ですがね…結論から言うと…私とロザリンデ様は…腹違いの姉弟です。」

 

「あら…そうなの…では、ロザでいいわ。」

 

「…知っておられたので?ロザ姉上。」

 

「なんとなく、女の勘よ?」

 

「そうですか…所で車はどうですか?」

 

「楽しいわ」

 

「良かったです。では停めて他のにしましょうか…例の車を。」

 

「いいのかしら?」

 

そう言いながら脇に止める。

 

「良くなかったら言いませんよ?姉上。」

 

「そう。」

 

二人は車から降りてラ・フェラーリをしまってシアンを出し乗り込んだ。車の操作方法を教え来た道を戻る。

 

「これもいいわね」

 

「そうですか。良かったです。」

 

学校の前で止まり車を仕舞った。

 

「姉上…これを…」

 

そう言って渡したのは守刀だ。

 

「いいのかしら?」

 

「はい。受け取ってください。」

 

「ありがとう。貰っておくわ。」

 

そう言って暫く話した後に別れた。

 

次の日レギオンのミーティングルームにて、結璃のチャームが出来たので登録していた。

 

「ハン!北欧の田舎メーカーで無くグランギニョルでしたら代わりにワンランク上のが手に入りますのに。」

 

「楓…別に良いじゃないか。機体の性能に自分がついて行けなかったら宝の持ち腐れだぞ…」

 

それに反応したのはミリアムだ。

 

「百之助様の言う通りじゃ…それにの、このグングニルは中古じゃが儂ら工廠科が、丹精込めてすべての部品を1から組上げておる。新品よか扱いやすいぞい。」

 

「あら、そ。」

 

まるで喧嘩腰の楓である。話の流れを変えたのは結梨だ。

 

「ねぇ梨璃。リリィって何で戦うの?」

 

「え?ええっと…それは…ヒュージから皆を守る為…」

 

その続きを夢結が引き継いだ。

 

「誰だって…怯えながら暮らしたくない…ただそれだけよ…」

 

結璃は、夢結の匂いを嗅ぎ始めた。

 

「クンクン…夢結…悲しそう。」

 

「そう?表情がよく読めないと言われるけど…」

 

梅が、何故か嬉しそうだ。

 

「何だ?匂いでわかるのか?」

 

するとみんなの匂いを嗅ぎ始めた。

 

「皆も…悲しい匂いがする…特に百之助…」

 

「俺?…そうか?」

 

実は百之助、失い過ぎて色々慣れてしまっているため、分からないのだ。それが異常なのだが、それに気づいてすらいない。

 

「誰だって…何かを背負って戦っているわそういう物かもね。」

 

そう言うのは神琳だ。

 

最後に、梨璃の匂いを嗅いでいた。

 

「クンクン…梨璃はあんまり匂わないの。」

 

「お気楽なのかな私アハハ…」

 

「良いんですのよ?梨璃さん何時までもそのままで〜!純粋無垢は、梨璃さんのとりえですもの〜!」

 

「変態は…置いとくとして。」

 

「誰がですの!?」

 

「クンクン、あ!でも今の夢結は、梨璃が居るから喜んでる、梨璃が居ないと何時も寂しがってるのに。」

 

「そ…そうかしら?」

 

これには夢結は動揺する。

 

「夢結様が動揺してます」

 

「匂いは誤魔化せんようじゃの。」

 

「その辺にしとけ二水、ミリアム。」

 

「「はーい」」

 

「分かった!結璃もヒュージと戦うよ!」

 

「無理はしなくていいんだよ?まだ記憶も戻って無いんだし…」

 

「うん!ちっとも分かんない!だからいっぱい知りたいんだ〜」

 

「結梨ちゃん…」

 

「アッハハ。そんな事言われたら断れないな。」

 

「さて〜結璃さんのことも一段落した所で次は嘉雨さんね!」

 

「え?」

 

神琳の言葉に首を傾げる嘉雨。

 

「これと…これ、この日の為に用意したの〜」

 

「え?」

 

そこにミリアムと、鶴沙が便乗する。

 

「こんなのもあるぞ?」

 

「猫耳は外せない!」

 

「あ、や…やめて…」

 

部屋の隅で着替えさせられてゆく…男の目の前で…

 

男約2名は全力で目をそらした。

 

「今年は、女装せずに済みそうだ…」

 

「あ、百之助の女装凄いんだゾ〜」

 

百之助のボヤキに反応する梅。

 

「嫌だ。絶対やらんぞ!」

 

「兄様、見たいです…」

 

流石に梨璃の言葉には勝てなかったようで…

 

「……分かったちょっと待ってろ…」

 

そう言って部屋から消えた。

 

しばらくしてドアがノックされた。

 

「開いてるわよカナ。」

 

「おじゃましま~す!」

 

「「「「「「「誰?」」」」」」

 

 

皆、誰かわからない様だ。そこには黒髪の美少女が立っていた。

 

「え?百之助の多重人格のカナだよ?」

 

「「「「「「「「え?ええええええええ!?」」」」」」」」

 

知ってる人以外びっくりである。

 

「補足しておくと〜百之助の体だけどカナになると性別も変わっちゃうんだ〜」

 

これには、全員絶句である。

 

「って事は…女性?女装じゃなく無い?」

 

「別に良いじゃん。あ、記憶も共有だから風呂はいるとき大変らしいよ〜?」

 

全員が思ったことは…童貞を殺しにかかってる…である。

 

「よろしくね〜」

 

 

今日も平和である。

 

 

 



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61話

クズがたくさん来たが返り討ちにした

ー 近衛軍大将船坂百之助 ー


戦技会当日、生徒会長3人と高松咬月理事長代行は運動場のテントにて本日の客人について話していた。

 

「さぁて…今日の客人は?」

 

「15名を確認しています。又、ドローンが3機ほど」

 

報告を上げるのは秦祀である。

 

「素性は?」

 

これに答えたのは出江史房だ。

 

「偽装していますが、大半が国内外の政府系組織です。中にはチャームメーカー、反政府組織や自然保護団体と思われる者もまだ分析中ですが興味の対象は一柳結梨で間違い無いかと。」

 

「こちらは何を探ります?」

 

そう聞くのは内田眞悠理である。

 

「情報のルートも徹底的に通信の量とその行き先じゃ」

 

「挑発行為があった場合は?」

 

「出歯亀が分を超えた場合の対処は…諸君らに頼む。」

 

「はい、結梨さんには指一本触れさせません。」

 

その時、祀に無線が入った。

 

『こちら船坂、ゲヘナの実行部隊が居るんですが…やって良いですかね?…多分突入されます。』

 

「…理事長代行、ゲヘナの実行部隊は、排除して宜しいですか?」

 

「…遊び過ぎないように。」

 

「了解、アウト」

 

「船坂君のレアスキル…七人御先とは、何とも便利なスキルじゃな」

 

理事長代行の目線の先の校庭には百之助がいた。

 

ところ変わって…無線の主はというと。校舎の屋上で40式歩兵銃にバイポッドを付け、銃口にサプレッサーを付けて銃を構えていた。

 

「七人御先は自身が7人になり7人同時に死ななければ死なないと言うレアスキルで、しかも一人やられてもひとり現れるからな。全くチートだな。」

 

そう、百之助は、校庭に一人校舎の屋上に一人、残りの5人は敷地内に展開していた。

 

「こちらガンスリンガー、許可がおりた。徹底的にやれ。」

 

『『『『『『了解!』』』』』

 

「こっちも仕事しますかね」

 

そう言いながらスコープ越しの敵を撃つ。

 

バスッ…カランカラン

 

「エネミーダウン。」

 

敵が崩れ落ちる。

 

「次…やれやれ敵が多いな…」

 

そう言いながら次の的に照準を合わせる。

 

 

 

ここで校庭に視点を変える

 

二水が説明していた。

 

「まずはクラス対抗戦ですね!私達一年椿組は二人一組で技を競います。」

 

「フッフフ。お邪魔虫の居ないここならば無防備な梨璃さんを思うがままですわ〜」

 

そう言って楓は誰かの手を掴んだ。

 

「ん?」

 

「ん?…何故結梨さんがここに?」

 

「私も椿組だから」

 

「何ですって!?」

 

「編入されてもう一週間経ってるよ?」

 

と、梨璃に指摘された。

 

「おじゃま虫2号〜」

 

「先生の話を聞いていないのですか?」

 

神琳もびっくりである。

 

「生憎都合の悪いことは記憶に残さない質なので〜」

 

「ポンコツか」

 

鶴沙も呆れていた。

 

で、梨璃と結梨はペアで競技に参加していた。

 

「練習した通りに、良い?」

 

「うん!」

 

梨璃は、自身のチャームグングニルで円を書きそこに結梨が飛び乗ってジャンプし、空中の円盤を取ろうとするが他の生徒に取られた。

 

「ああ!」

 

「いただき!」

 

取ったのは妹島広夢だ。

 

「初めまして初心者にしてはセンスいいのね。」

 

「やったね結梨ちゃん!」

 

「出来なかった〜!」

 

「そんなことないよ〜凄い凄い」

 

次の準備が終わり、次の競技が始まる。解説は二水だ。

 

「お次はエキシビジョンです。最初は我が一年椿組六角汐里さん」

 

「六角汐里参ります!」

 

「汐里さんは二振りのチャームを同時に使うレアスキル。円環の御手の持ち主です。」

 

「やあーー!」

 

 

ダダダダダダダダダ

 

 

「ほ…やりました!」

 

「続いてはお待ちかね、工廠科による新世代チャームのデモンストレーションです。精神連結式機動実証機ヴァンピール!使うのは長谷部冬佳さん!」

 

 

バリバリバリ

 

的を電撃で破壊していく。

 

「そしてルイセ・インゲルス様が纏うのは格闘戦闘特化型ヤンググレイブル試作機です!」

 

 

バババババババパ

 

 

的が一掃された。

 

 

 

ここでやや時系列を遡り敷地内の森林部で戦っている百之助ーズをに視点を移す。

 

 

実行部隊の隊長は焦っていた。20名中5名が狙撃により既に脱落しているからだ。

 

(クソっ!まさか狙撃手を配置しているとは…)

 

なにせ、たかが学校である。

 

(こっちはブーステッドリリィを20名用意しているのに、たかが狙撃銃でやられるとは…)

 

そこに黒いフード付き外套を着た5名が来た。

 

「よう!クズども!元気か?」

 

男の声だ。手には刀が握られていた。

 

「誰だ!」

 

実行部隊メンバーは全員距離を取った。

 

「そうだな…9429と名乗っておこう。」

 

「9429号だと!?」

 

驚くのは無理もない、何せ近衛軍の誇る掃除屋であるからだ。

 

「最近体が鈍っててね…準備運動に付き合ってくんない?」

 

普通なら名乗らないし姿を見せないのだが…百之助ーズは、相手が、そこまで強くない事を長年の感で感じていた。故に接近戦を挑む事にした。

 

「舐めてるのか?…クッ!」

 

キン!

 

百之助ーズが全員斬りかかったのだ。縮地で一瞬で距離を詰め、すれ違いざまに首を刎ねる。その様子は巫女が舞を舞う様に、美しい物だった。

 

この時点で残り1名となった。

 

「クソ!」

 

「死ね!社会のゴミが」

 

MP17を敵に向け引き金を引いた。

 

トッ

 

これでゲヘナの実行部隊は全滅した。

 

 

 

 

 

 



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62話

結梨さん、戦いの中で成長していたわね…


 ーロザリンデ・フリーデグンデ・V・オットー ー


午後一番の競技は的棒倒しだ。

 

「あ〜疲れた…」

 

そう言いながら百之助は夢結の近くに来た。

 

「何で何もしていないはずの貴方が疲れているのよ…貴方ちょっと!?」

 

夢結は、血生臭い臭いで、ある答えを導き出してしまった。

 

「百之助。ちょっとこっちに!」

 

「ちょ!おい!」

 

そう言いながら百之助の腕を掴み校庭の端に寄った。

 

「貴方…殺ったわね…人を…」

 

「あぁ…」

 

「と、言う事は…今日午前中はレアスキルを常時使用してたわね!…はあぁ…」

 

百之助は、言い訳を考えていたが…止めた。

 

「あぁ…そうだ。ゲヘナの実行部隊と殺り合った。」

 

「そう…貴方は私を心配させる天才ね…」

 

「悪いとは思ってるよ…」

 

夢結もその必要性を理解しているので追求はしなかった。

 

「…まあいいわ…シャワー浴びて着替えて来なさい。」

 

「了解…」

 

百之助は、シャワーを浴びに寮に戻った。

 

「…わざとやってるのかしら…いや、そんなわけ無いわね…」

 

的棒倒しのメンバーは全員配置についた。

 

 

「午後一番の競技は混成レギオンによる的棒倒し!的を落とすか棒を倒せば勝ちです。」

 

「よし!頑張るぞ!」

 

「あ、私達は見学ね?」

 

「何で?」

 

「この競技は各レギオンから選抜されたメンバーで行うんだって。」

 

結梨と、梨璃の話を聞いていた梅が結梨に提案してきた。

 

「結梨、梅と代わるか?習うより慣れろって言うだろ〜?」

 

「そんな駄目ですよ!結梨ちゃんはチャームにも慣れてませんし!怪我したらどうするんですか!」

 

「へい…へい」

 

「もはや母親だな梨璃。」

 

これには百之助もびっくりである。因みに百之助は戻ってくるのに20分もかかって無かった。

 

そしてピストルの号砲とともに競技が開始された。

 

一番最初に動いたのはアールヴヘイムの一年3人組である

 

「私とお手合わせお願いします!夢結様!」

 

「こんな時でないとかまって貰えませんから!」

 

「倒しちゃったらごめんなさいです!」

 

弥宙、月詩、辰姫が夢結に突撃する。

 

「ちょっと抜け駆けしないでよ!」

 

亜羅椰は声を上げたが…

 

「猪!よそ見したら駄目だぞ!」

 

「がは!」

 

と、百之助が40式のストックで殴りつけ一撃で気絶させる。

 

「えげつねえ…」

 

伊吹は、ドン引きである。

 

「こら!夢結は、敬遠しなさいといったでしょう!」

 

「性のない子達ね〜」

 

「いいな〜」

 

依奈は声を荒らげ、天葉は呆れ、樟美は羨ましそうな顔をしていた。

 

 

「「「いざ!」」」

 

夢結に三人が向かうが…

 

「は!」

 

まさに鎧袖一触!返り討ちである。

 

「もっと本気でいらっしゃい?」

 

 

それを見ていたグロピウスは、笑いながら目的を達成する為に走っていた。

 

「へへ!迂闊じゃの!」

 

「隙だらけよ!グロピウスさん!」

 

「だまらっしゃい!」

 

壱に対してグロピウスが自身のチャームで迎撃する。

 

キン!

 

そのまま鍔迫り合いに移行した。

 

 

「私だって本当は夢結様にお相手してほしいけど!今日はあんたで我慢したげるわ!」

 

強烈な剣撃である。

 

「なんの!必殺!フェイズドランセンデンス!」

 

ビームの奔流が壱を狙うが…

 

「当たらなければ皆同じよ!」

 

軽々と避けられた。が…

 

「ふ!ふ!ふ!避けてくれてありがとうなのじゃ。」

 

「え?」

 

ビームの奔流は、的を落としていた。

 

 

「ミリアムさんのフェイズドランセンデンス勝ちです!」

 

「フェイズ…?」

 

二水は興奮し、結梨は分かってなかった。

 

「まあ!ワシがちょいと本気を出せばこのくらい…」

 

バタン…

 

「救護班急げ!」

 

グロピウスは、運ばれていった。

 

 

百之助はと言うと…

 

「夢結、久しぶりに手合わせ願おうか。」

 

「えぇ…」

 

百之助は40式を地面に置いた。

 

「いいのかしら?」

 

「長すぎて扱いづらいからな。」

 

そう言いながら刀と天羽々斬を抜刀した。

 

キン!

 

「く!」

 

「夢結、本気でこい!」

 

「言われなくても!」

 

ものすごく速いスピードで剣戟が行われる。

 

「すご…」

 

天葉もびっくりなスピードである。が…

 

百之助が刀の刀身をひっくり返して夢結の腹に押し当てぶん投げた。

 

ド!ゴロゴロ

 

夢結は気絶した。

 

「あ…やりすぎた…」

 

 

かくして的棒倒しは終了した。

 

 

次は午後のエキシビションであるが…

 

 

「ちょっとこれ!どう言う事ですか!」

 

「見ての通り午後のエキシビションマッチ。」

 

梨璃の問いに鶴沙が答える。

 

「百由様が特別に作成したヒュージロイドとミリアムさんの特別対戦のはずですが…」

 

「あぁ、梅がミリリンの代わりに登録し直しといたぞ!」

 

「そんな!」

 

「大丈夫だと思うぞ…多分…」

 

「相手は百由の作った何かだろ〜?大丈夫じゃ無いか?」

 

「フラグを立てるな…」

 

「百由様だから心配なのでは?」

 

そう言っていたら地面から棒が突き出てきた。

 

「うお!?」

 

そう言いながら百之助は結梨の方向に転がった。

 

「あぶねえ…閉じ込められた!」

 

「百之助様!?」 

 

「ハワワワ」

 

百由が走ってきた。

 

 

「アララ間に合わなかったか…百之助何してるの?」

 

「反射で転がったらこうなった。」

 

ガチャ…チャキン!

 

百之助は、銃に弾を込めた。

 

「百由様!どうにかして下さい!」

 

「いやーこの檻勝負が付くまで開かないのよ。」

 

「殺しにかかってるじゃねえか!ここはコロッセオじゃねえんだぞ!?」

 

「えぇ!?」

 

「要は結梨が勝てばいいんだろ?」

 

「エキシビジョンだから当然リリィが勝てるようにセッテイングして…ありますよね!」

 

雨嘉が強めに言うが…

 

「いいえその逆よ!ゴリゴリにチューニングして…グロッピもイチコロのはずだったのに…結梨ちゃんが危ないわ!」

 

「馬鹿じゃねえの!?殺しにかかってるじゃねえか!やっぱり!」

 

「百由様ワシをどうするつもりだったんじゃ!?てー…慌てるのが遅いわ!」

 

「名付けてメカルンペルシュツェルクヒェン君よ!」

 

「名前まであるのかい!よほどお気に入りじゃの!」

 

「初心者が無茶するのは私の役目じゃなかったんですか〜!」

 

と、梨璃が崩れ落ちた。

 

「時代が変わったんでしょう」

 

神琳の言葉に…

 

「はい!百合ケ丘のゴシップは今やすっかり謎の美少女結梨ちゃんに取って代わられましたから!」

 

「二水ちゃんまで!?」

 

この二人結構辛辣では?と考える百之助である。

 

「梨璃私やるよ!」

 

「結梨ちゃん…」

 

「私もリリィになりたいの!リリィになって〜みんなのこともっと知りたいの!だから見てて!」

 

「…その言葉を待っていた!俺はここで座っとくから危なくなったら助ける!」

 

「分かった!」

 

「梨璃…それでいいな?」

 

百之助は、檻越しに梨璃の肩に手を乗せる。

 

「百之助の言うとおりよ…信じなさい。」

 

「はい…」

 

「あの子はちゃんと貴女を見ているわ…だから貴女も見ていなさい」

 

結梨が構える。

 

「ほう…」

 

「あれは…」

 

「夢結様の型…」

 

チャキ!

 

百之助も即応体制を取り、40式を構える。

 

「存分にやれ!」

 

まず動いたのはヒュージロイドだ。

 

「あっ!」

 

攻撃をチャームで受ける。正面から。故に体制を結梨は崩した。

 

「おあ!?」

 

「押されたときは間合いを取りなさい!」

 

「そう。相手のペースは崩す為にあるのよ!」

 

「止まらず動いて!相手にスキを作らせれば勝機はある!」

 

戦いの中で結梨は成長していた。現に正面から受けていた攻撃を受け流すようにしていた。

 

「おおー」

 

「決まったな…」

 

結梨は、ヒュージロイドを四つに切り飛ばしていた。

 

最後にコスプレ部門だがこれは雨嘉の優勝で幕を閉じた。

 

「祀…ちょっと…」

 

百之助は、祀を呼んだ。

 

「どうしたの?」

 

「2つある…一つ目はゲヘナの実行部隊を殲滅した。」

 

「そう…」

 

「もう一つはこれだ…」

 

USBを祀に渡す。

 

「これは?」

 

「雲行きが怪しいから持ってきた…現時点のゲヘナの研究資料全てだ。」

 

「な!?」

 

「最悪の場合を想定してこれをお前に託す。バレたら俺の首が飛びかねないが…陛下の了承を得ている。理事長代行に渡せ…いいな?」

 

「分かったわ…」

 

「俺は今から準備をする。…戦のな…」

 

「え?…まさか…」

 

「それ以上は言うな…それにな…結梨がヒュージと認定されると不都合が起きるんだよ…近衛軍は。」

 

「…」

 

「じゃあな…」

 

祀は見送る事しかできなかった。

 

 

 



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63話

戦争の時間だ!


ー 近衛軍少将船坂百之助 ー


「文香…結梨を護衛しろ。今はそれでいい。」

 

「了解。…ですがなぜ…」

 

「今は言えない…時期にわかる。」

 

「…分かりました。」

 

そう言って文香は自室に戻った。

 

 

自室で色々下準備をしていた。

 

 

裕也に電話をかける。

 

プルルルルル

 

『兄上?』

 

「国と一戦交える…陛下の命令だ…」

 

そう言って。陣を構える場所を指定する。

 

 

『何時までに完了すればよろしいですか?』

 

「明朝0600までにだ。行けるか?」

 

『どこの部隊に言ってます?我らは近衛軍、できるに決まってるではないですか』

 

「だろうな…頼んだ。」

 

『了解。』

 

そう言って電話を切った。

 

 

「もうこれ内戦だな…」

 

そう言って、布団に入って寝た。

 

翌日…

 

カチャン…

 

結梨の髪を切っていた梨璃が動揺してハサミを落とした。

 

「そんな…嘘です!間違いです!…そんな訳無いじゃないですか!」

 

文香も拳銃のグリップに手を掛けた。

 

「そこをお退きなさい梨璃さん。」

 

史房が梨璃に結梨を渡す様に促す。

 

「結梨ちゃんをどうするんですか…」

 

「答える必要は無いです。」

 

とそこに夢結と百之助がやってきた。

 

「私もお聞かせ願いたいです。」

 

「俺もだ。…祀、例のものは?」

 

「既に渡してるわ」

 

「了解。」

 

「結梨は私のレギオンの一員です…訳を知る権利はあるかと。」

 

「残念だけど…ゲヘナとグランギニョルが開示した資料で結梨さん…いえ…その個体はヒュージと確認されたわ。」

 

「ヒュージ?」

 

「だろうな…」

 

そう言いながら瞬き信号で文香に座標とそこに行くように指示した。

 

文香はそれを見てうなずいた。

 

眞悠理は、話し始めた。

 

「彼女が見つかる直前…ゲヘナの実験船がヒュージネストに異常接近している事が確認されたわ。ネストから発せられるマギを利用しようとしたのでしょう。船はヒュージの襲撃をうけ…沈没殆どの実験体が発現することなく失われたけど…一つだけ残ったまま…」

 

「だけど…」

 

「梨璃さん…先輩方は分かっているのよ…貴女の言いたいことは…だから…言わなくていいの…兄上…知ってましたね…?」

 

と、文香は百之助を睨みつける。

 

「だから言ったろうに…最初に…ヒュージだと…」

 

「それで?」

 

「それに関しては今度な?」

 

「了解…」

 

そう言って、ボタンを外し叩きつける。

 

カッ!

 

全員目が眩んだ隙に、文香は結梨と梨璃を連れて逃げた。

 

「文香さん!」

 

「逃げた。」

 

「なんて事を…」

 

これには生徒会三人組も驚く。

 

「あー俺はこれから準備をするから寮戻るわ」

 

「待ちなさい!」

 

「時期にわかると思うぜ?じゃあな」

 

「ま…!」

 

百之助は一瞬で消えた。

 

この後夢結は、理事長室に行き抗議していた。

 

「結梨を学院で保護すべきです。結梨が危険な存在とは私には思いません…」

 

「ヒュージを心通わす相手と見なす事は人類にとって禁忌だヒュージと同じマギを使うリリィもまた脅威と捉えかねられん…それだけは…絶対に避けねばならん…現在防衛軍の部隊がこの学院に迫っている…人とリリィが争う事態は絶対に避けねばならん…」

 

「リリィを恐れる人達は皆怯えているのでしょう…ですが…私達が自由に生きることを願うのはは不遜な事でしょうか…」

 

ところ変わって…一柳隊控室。

 

「どうするんですか!どうするんですか!結梨ちゃんがヒュージで梨璃さんと文香さんが逮捕命令って!」

 

納得できない二水に雨嘉が聞く。

 

「どうする?」

 

「そんなの決まってるじゃないですか!だって結梨ちゃんがヒュージな訳無いじゃないですか!梨璃さんは間違ってないんですよ!」

 

「それはどうだろうな?…そもそも俺たち運命の囚人は、ヒュージがどこにいるかわかる…発見当初は確かにヒュージの波形だった…今は違うけどな。」

 

伊吹の言葉に全員が絶句する。

 

「今は違うって…」

 

「そのままの通りだ…ヒュージじゃなくなった。」

 

「でもこの学院から逃げたと言うことは…ここも安全ではないと判断したということよ…」

 

と神琳がいった。

 

と…そこに夢結がやって来た。

 

「出動よ。梨璃と文香さんには逮捕命令、結梨には捕獲命令が出たわ三人を追います。」

 

「それは…何のためです?」

 

「一柳隊は、どの追っ手よりも早く二人を探し出し保護します。これは副隊長としてのわたしの判断です。異議のあるものは従わなくて構いません。」

 

「それって学院からの命令とは違うよな…」

 

梅は、疑問を述べる。

 

「指示は学院ではなく政府から出たものです。…だけど私達はリリィよ。リリィがリリィを守るのは当たり前のことでしょう?」

 

「はあぁ!夢結様ならそう言うと思ってました!」

 

「そういえば楓と百之助は?」

 

「楓の家は今回絡んどるようじゃし…バツも悪かろう…」

 

「百之助は、親父と祖父が防衛軍の大将と元帥だ…動けんだろ…」

 

 

その頃楓は父親に電話していた。

 

「ようやく出てくださいましたわね、お父様。」

 

声がいつもよりトーンが下がっている。

 

『元気か?』

 

「ええ!ピンピンしていますわ。」

 

『済まないが今は都合が悪いまた後でこちらから…』

 

「でしょうね。随分とやらかしてくれたものですわ。」

 

『済まない…この件ではさぞ苦労をかけたと思う…だが会社の事に口を出すのはいくらお前でも…』

 

「お父様が許すか許さないかは関係ありません…このままでは私がお父様を一生許せなくなります。」

 

『…ゲヘナからの提案は愚劣極まりない物だった。心から軽蔑すべきものだ。ヒュージからリリィを作り出すなど…』

 

「ヒュージから人を作ったリリィならどうなろうと構わないとゆうことですか?吐き気がしますわ。」

 

『私はお前のような娘たちが戦わなくて済むようになるならと…それを受け入れた。』

 

「チャームメーカーの総帥とは思えないお言葉ですね、そのお心には感銘を禁じ得ませんが。お父様は間違っています。実験は失敗ですわ…だってあの子私達と変わりませんもの…結局何処かのリリィが傷尽くのは代わりありません…お願いですお父様…私に自分の運命を呪うような惨めな思いをさせないで下さい…マギを持ちリリィになったことも…お父様の娘に生まれた事も…」

 

楓は電話を切り控室に向かった。

 

「皆さんお揃いですわね…」

 

「「あ…」」

 

これには全員が驚きを隠せない。

 

「どこ行ってた。」

 

と、鶴沙が聞いた。

 

「ほんのの野暮用ですわ。」

 

「梅達は梨璃達に付く…楓はどうする?」

 

「はあ。残念ですわ〜梨璃さんをお助けする栄光を〜独り占めにできないなんて〜」

 

神琳が言おうとした言葉を伊吹が口を押さえて遮る。

 

「言うてやるな。本人は分かっててこっち側に付いている…いいね?」

 

こくんとうなずいた。

 

「後は…百之助だが…」

 

ガチャ

 

百之助が入ってきた。

 

「何だ〜その格好は?」

 

と、梅が聞いてくる。百之助は、近衛軍の野戦服を纏いフル装備で立っていた。

 

「伊吹…戦争の時間だ。近衛軍はこれより防衛軍を叩く。」

 

「「「「は!?」」」」

 

 

これには全員が驚く。

 

「そんなこったろうと思ったぜ。少将…どうする気だ?」

 

「ここは関東軍の管轄だ、ならば一つしかないだろう?」

 

「関東軍司令官一柳中将を討つ?」

 

「そうだ。」

 

「な…」

 

「…正気か?」

 

「当たり前だこのままでは運命の囚人全員がしょっぴかれる可能性がある…これは近衛軍にとって痛手だ。」

 

「だよな…」

 

「だが流石に一柳中将を討つのは現実的で無いから…時間を稼ぐ。だから行くぞ戦友!」

 

「いいのか?」

 

「陛下の命令だっつーの。」

 

「それじゃあ従うしかないわな。」

 

「百之助…」

 

「夢結すまんがこっから先は生きて帰れるか分からん」

 

「でしょうね…」

 

「行くぞ戦友、硝煙と血の匂い嗅ぎに行くぞ。」

 

「了解。じゃあなみんな」

 

そう言って。百之助と、伊吹は一瞬で消えた。

 



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64話

あの時肝を冷やしたわ、わっはっはー


ー 帝政大日本帝国総理大臣桂大輝 ー


ー 国の対策会議場にて ー

 

「何!?近衛軍が反逆しただと!?」

 

「国防大臣、反逆ではありません。我々が賊軍になったのです。」

 

国防大臣の言葉に船坂景雲元帥は、こう答えた。

 

「このままでは我々が世界から爪弾きにされるのだぞ!?」

 

「分かっていてやっているのですよ。」

 

「何という事だ…」

 

「近衛軍は陛下の命令なら玉砕するまで戦いますよ。文字どうり旧大日本帝国軍よろしく…死を選びますからね…」

 

「不味いのではないかね…士気と練度が違いすぎる」

 

「仰る通りです。総理…」

 

この総理と言われた初老の男性こそ元国防陸軍元帥桂大輝である。彼が元軍人であるがゆえに状況がわかっていた。

 

「加えて、言いたくないのですが…ヒュージと、一柳梨璃を匿っているのは…近衛軍第一師団です。」

 

「なん…だと…」

 

これには国防大臣も絶句するしか無い。

 

「確か…船坂百之助少将だったね。」

 

「はい、総理…」

 

「と言うことは…天羽々斬は…」

 

「少将が持っています。」

 

「これは…ふむ…どうしたものか…」

 

天羽々斬を持つとどれだけの血が流れるか各閣僚たちはよく分かっていた。

 

「加えて…彼の持つチャームは、最大火力で戦術核に匹敵します。」

 

「手の出しようが無いではないか!?」

 

「国防大臣…落ち着き給え…」

 

「しかし…」

 

「我々では手が出せんな…」

 

これには全員が黙る他無かった。

 

「私は分かってますよ?近衛軍がなぜこのような事をするのか。」

 

元帥の言葉に全員が注目した。

 

「それは…何故だ?」

 

「一柳結梨がヒュージと認定された場合、近衛軍に所属する運命の囚人全員がヒュージと言うことになってしまうからです。」

 

「なに?」

 

「運命の囚人は、基本的にヒュージのなり損ないです。ゆえにスキラー数値が非常に高く戦闘能力が高いのです。」

 

「だが…人の遺伝子ではないか。」

 

「問題はそこなのですよ…ヒュージから作った人間が人の遺伝子を持っているかどうか…持っていたらこの件はなかったことにしたほうがいいでしょう。」

 

「しかし…それは…」

 

「国防大臣…魔史学というのはご存知ですか?」

 

「いいや?初耳だが…」

 

「では軽く説明しましょう。神話時代…陰陽師…魔女狩り…そして、ヒュージとリリィ。これは共通なのです。」

 

全員が首を傾げる。

 

「まず最初に神話時代…これをファーストエンゲージ期と言います。我が国で言う天羽々斬や三種の神器がこれに当たります。」

 

「君の家や天皇家のことだな。」

 

「そのとおりです。次に魔女狩りや陰陽師、悪魔や妖怪が出てきた頃ですね。これをセカンドエンゲージと言います。」

 

「ギン嬢の事であるな…」

 

「そうですそして最後が…」

 

「ヒュージ、リリィのサードエンゲージか…」

 

「共通点は一つ…マギです。」

 

「そういうことか!」

 

総理が分かった顔をした。

 

「昔からマギは存在したのです。古い時代から…そしてエンゲージ期には、必ず脅威に対して対抗する為に新しい力を持つものが現れますそれが異能です。」

 

「なるほど…異能とはマギを使える者たちのことか…」

 

「いえ…神話世代に関して言えば乗能力者…つまり身体的な者も居ますので必ずしもマギとは限りません。」

 

「と…言うことは…船坂少将は…」

 

「ファーストエンゲージ期と、サードエンゲージ期のハイブリットですね。」

 

「とても…不味いな…」

 

「船坂少将の場合、ファーストエンゲージ期のもう一つの力がありますよ?それは…吸血鬼の真祖としての力です。」

 

「つまり?」

 

爆弾を投下した。

 

「原子力潜水艦に核ミサイルと核魚雷が満載と言う事です。しかも全てツァーリ・ボンバ級のが」

 

「例えが…」

 

これには全員が頭を悩ませた。

 

「手が出せないではないか…」

 

「とりあえず現状維持ですな…」

 

「どうなるかは…近衛軍に掛かってるな…」

 

と、膠着状態に陥った。

 

 



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65話

まさに一触即発!これが衝突すれば西南戦争以来の内戦だ!


ー 近衛軍大佐船坂祐也 ー


百之助と伊吹が、近衛軍第一師団の陣地構築(学校を中心とした)と梨璃を含む3名の保護は完了していた。それに伴い連隊長以上を招集した。

 

「さて諸君…言いたいことはあるだろう?…この際だから構わない言い給え。」

 

「…船坂閣下我らは天皇陛下の命にのみ従います。それがどんな物であろうと死ぬまでその任を全うします。」

 

「同じく」

 

「同じく」

 

「同じく」

 

「同じく」

 

「諸君らの粋はよし!では作戦であるが…」

 

「巣ごもりでしょう?硫黄島のごとく。」

 

と、第3連隊長である斎藤一が応えた。

 

「その通りだ。全員配置につけ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

敬礼し、解散後全員が配置についた。

 

 

と、そこに梨璃と結梨が百之助によって来た。

 

「今から何をするんですか?」

 

「人間同士の殺し合いだ。」

 

「そんな!」

 

「だから言ったはずだ…殺すべきであったと、それをはねた結果がこれだ!分かったか!」

 

「…はい…」

 

「だがな…これは覚えとけ梨璃…お前も一柳隊の隊長だ。時には辛い決断をしなければならん時もある。今回はその尻拭いを近衛軍全員でやるからよく見ておけ。いいね?」

 

「…分かりました…」

 

この時点でもう泣きそうである。

 

「もう一度言っておくが死体が山のようになる可能性があるからな?慣れろとは言わないが覚悟はしておくように。」

 

「はい…」

 

「分かったら文香のところに行け。」

 

「…分かりました…」

 

そう言って。梨璃と結梨は退室した。

 

「お優しいですなぁ」

 

「ははは…」

 

「相変わらずの様で安心しました」

 

「しーらない…」

 

「ありゃゃ…」

 

と、連隊長達は微笑ましいものを見るような目で百之助を見ていた。

 

「そもそも…高校生が師団長やってる時点で可笑しいんだよ?」

 

「違いないですなぁ!がはははは!」

 

一大佐が笑ったことで全員が笑った。

 

「所で少将、どうします?永遠に巣ごもりはできませんぜ?」

 

「弾薬含めてどのくらいだ?」

 

「一人一日8000発と仮定して3週間分ですな。」

 

「そんな持ってきたの!?長くても一週間掛からないよ?」

 

「じゃあ余裕ですな!」

 

「最悪あの3名は逃がすけどね。」

 

「それが良いでしょうな…」

 

とそこに無線が入る

 

『来ましたお客さんです!』

 

「コチラからは絶対に撃つな、全員に徹底させろ。」

 

『了解。』

 

と、そこにメガホンでコンタクトを防衛軍がとってきた。

 

「我々は防衛軍第一師団の第一大隊長の 大佐である!速やかに投降されよ!繰り返す!投降されよ!」

 

「…メガホンをかせ。」

 

「ここに。」

 

祐也大佐からメガホンを受け取った。

 

「私は近衛軍第一師団長船坂百之助少将だ!天皇陛下の命により、我々は最後の一兵になっても戦い続ける用意がある!君たちこそ投降されては如何か!」

 

「船坂閣下の大和魂には敬意を称するが、承服しかねる!」

 

「よろしい!ならば戦争だ!合戦準備!」

 

この号令に両軍のすべての火砲銃火器全てに実弾が装填され戦闘態勢を取った。が…両軍ともに膠着状態に入った。どちらが弾を発射しかねない状況ではあるものの弾は発射されていない。もはや我慢比べである。

 

この頃百合ケ丘では…

 

「何?近衛軍第1師団と防衛軍第1師団が睨み合いを始めたじゃと…」

 

「そのようです。」

 

祀も複雑そうな顔を浮かべた。

 

「これは急がねばなるまい…」

 

「はい…」

 

「儂はこれからお偉方とお話をしてくるかのう…百合ケ丘のリリィには両軍が衝突した場合は即座に退避する旨を伝えておくように。」

 

「分かりました」

 

「…くれぐれも…死者を出さない様にな…」

 

「はい…」

 

「しかし…船坂くんも大胆な事をするのう…命がいくつあっても足りんわい…」

 

「同感です…」

 

「もう退室して良いぞ。」

 

「失礼します…」

 

祀はそう言って退室した。

 

「ふう…やれやれ…2年前から変わらんの…」

 

 

 

 

 

 



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66話

長い夜だった。


ー 近衛軍船坂百之助大将副官船坂祐也大佐 ー


防衛軍第1師団と近衛軍の第1師団は、翌朝まで睨み合いを続けていた。

 

「動かないから有り難いな…」

 

百之助は、即席の司令部とした廃棄された校舎の窓から外を見ていた。

 

「そうですがね…しばらく休ませたほうが良いかと。」

 

一大佐がそう進言する。

 

「そうなんだが…こうも目と鼻の先だと交代と出来ないしな…」

 

「打つ手なしですか…」

 

「一応入れ替えろ…ただしゆっくりとな…」

 

「了解…」

 

無線でそう指示が出される。

 

その頃防衛軍側もこの動きを察知し、同じように入れ替えを行った。

 

 

「凄いなタイミングがバッチリだ。」

 

「そうですね…」

 

現在は敵同士だがやはり通じ合う物があるのだろうと百之助は考えた。

 

「さてと…」

 

その時第2連隊長が報告を上げた。

 

「少将、…ガーデンのリリィが来たと斥候から連絡が…」

 

「分かった。」

 

「どうしますか?」

 

「ここお願いできるか?俺は彼女達を足止めしてくる。ここで戦闘に巻き込まれては堪らん。」

 

「分かりました。」

 

「了解」

 

「了解」

 

「了解」

 

「了解」

 

と、全員の了承が取れた為、早速目撃された場所の近くにに行き準備をした。

 

 

ガーデンのリリィ達は霧の中の森を歩いていた。

 

「薄気味悪いわね…」

 

「ですが祀様、何かおかしいです。さっきまで霧なんて…ッ!?」

 

その時銃撃音と剣戟が聞こえてきた。

 

キン!…ダダダダダン!…ダンダンダン!…キン…!

 

(誰かが戦っている?それにこの銃撃音は…7.62ミリNATO…)

 

祀は、判断に迷っていた。その時肩を叩かれる。振り向くと史房が立っていた。

 

「祀さん。防衛軍や近衛軍のアサルトライフルの音では無いわ。この連射速度であれば…私達が知っている人の小銃よ。」

 

「まさか…百之助!?」

 

「それ以外でいないでしょう?それに剣戟が聞こえてくるという事はそういう事よ…」

 

(防衛軍と、近衛軍が戦端を開いた!?にしては銃撃音が少ない…)

 

「目で確認したほうが良いでしょう。」

 

そう言って史房は進んでいく為全員が警戒しながら進んでいく…

 

「うっ…この匂い…」

 

火薬の匂いに混じって血の匂いが漂って来ていた。そしてその目線の先には…血だらけの地面と百之助…その周りには防衛軍人だった物が転がっていた。

 

「戦場にようこそ…リリィ諸君?」

 

百之助の目は赤く染まっており、それがルナティックとランサーだと気が付くのに時間を要した。

 

周りを見れば他のガーデンのリリィも居た。この状況にまだ慣れていない人もいた。そんな中で…祀は、声を捻り出すように百之助に聞く…

 

「どう…して…」

 

「どうしてだと?ここは戦場だ、言葉で語るな剣で語れそれ以外は存在しない。」

 

百之助は、祀の右2センチを銃撃した。

 

ダーン!

 

「来ないならこちらから行くぞ?」

 

言うや否や40式のマガジン部をスリングに引っ掛け後ろに回して刀を抜き、祀に突貫する…が途中で他のリリィに止められた。

 

キィン!

 

ロザリンデである。

 

 

「ロザ様!?」

 

「貴方の相手は私がするわ!来なさい!」

 

百之助は獰猛な笑みを浮かべロザリンデに突貫する。

 

「良いですねそう来なくては!…はは…ハハハハハハハハ!」

 

「クッ!」

 

キィン!

 

ロザリンデのチャーム…アステリオンと百之助の軍刀ではアステリオンの方が一撃一撃が重い物の、百之助の軍刀の方が短いので必然的にロザリンデが手数で押されていた。それに百之助の方が練度は上である。

 

百之助はまともな思考ができないと判断しルナティックトランサーを強制解除、 それでも変わらず剣戟が続く…

 

「貴女が相手になるとは想定してませんでした!ですが…これもまた一興…存分に仕合わせ願おうか!」

 

「お断りよ!」

 

ここぞとばかりにアステリオンの重い横薙ぎを放つが百之助はその勢いで距離を取った。そして背中に回した40式を持って構えトリガーを引く

 

ダダダダダーン…カチャンチャキン…ダダダダダダダーン

 

 

フルオート射撃でロザリンデを銃撃する。それをロザリンデはチャームで防ぐ…40式のセレクターをセーフティにして、またもスリングにマガジン部を引っ掛け後ろに回して左手に持ち替えていた軍刀を右手に持ち、左手で、右腰に下げていた天羽々斬を抜刀し十字に構える。

 

「さあ!第2ラウンドですよ!」

 

言うが否や突貫。ロザリンデに斬りかかるが…

 

キィン!ガッ!

 

「兄上ここまでです…両軍ともに停戦命令が出ました。」

 

祐也が軍刀で百之助の軍刀を防ぎ、片手でロザリンデのアステリオンを掴んでいた。

 

「貴方は?」

 

「ロザリンデ姉上、初めまして。百之助兄上の双子の弟、船坂祐也であります。以後お見知りおきを。」

 

「えっえぇ…」

 

突然の弟の登場で場が静まり返った。その段階で周りの死体と霧、匂いを消した。これは百之助による幻影魔術だったのだ。

 

「で?どうなったんだ?」

 

「人と認められました。」

 

「そうか!」

 

これには百合ケ丘のリリィ達は歓声を上げていた…

 

 



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67話

まさか…第二次大戦中の戦闘機を見れるとは…


 ー 百合ケ丘女学院教官秦祀 ー


政府及び天皇陛下より停戦命令が出た為、近衛軍と防衛軍の両軍は撤収準備を開始した。

 

「いや〜何事もなくてよかった!」

 

「兄上がそれを言いますか…」

 

「戦死者出てないからいいでしょ?」

 

これを聞いた裕也は呆れるしかない。

 

「本気で言ってます?」

 

「…本気だと思ったの?違うよ?ジョークだよ?」

 

「でしょうね」

 

「ここ任せていい?」

 

「了解…」

 

百之助は、了承を得たため百合ケ丘のリリィ達のところに行った。

 

 

「戦死者が出なくてよかった…」

 

「貴方ね…」

 

トラウマを植え付けておいて何言ってるのと思う祀である。

 

「いや…あのね…最悪…全滅を覚悟してたんだよね…」

 

「…なんて言えば良いのかしら?そこまでする気だったの?」

 

「うん、だって…可愛そうじゃん?結梨を実験道具にされるのは勘弁願いたいしね。」

 

「だからといって軍を動かすのはどうなのよ…」

 

「それは陛下の命令。俺達近衛軍には拒否権ないから。」

 

「そう…」

 

とその時、防衛軍と近衛軍が戦闘態勢を取り始めた。これに慌てた百之助は、無線を入れる。話の内容はギガント級ヒュージが出現したとの事だった。これを聞いた祀と百之助は、リリィ達に戦闘態勢に入るように伝えた。

 

 

そのギガント級は、洋上にそびえ立つ島の様な形をしていた。

 

するとそのギガント級から小さな子機が9機ほど現れ円状に展開、光を放射し、それを収束させてモーゼよろしく海を割り、百合ケ丘の校舎に向かって行ったがそこまでの射程は無いのかそれよりもはるか手前で四散した。

 

 

「ありゃやべえな…」

 

「そうね…」

 

これには驚きを隠せない。

 

「何だあのヒュージ…」

 

「マギを直接攻撃に使ってる…」

 

 

「そんな事をしたらあっと言う間にマギがなくなっちゃうのに…」

 

梅も神琳も雨嘉も同様だ。

 

「あれヒュージ?」

 

「だと思うけど何か…」

 

「ヒュージは、マギに操られる事があっても自らマギを操ることはないはず…どうして…」

 

「夢結、マギを扱えるヒュージ自体は存在するぞ?過去に会敵した事あるからな…めちゃくちゃやりづらいけどな…」

 

「なんですって!?」

 

これには驚きを隠せない…

 

「あのヒュージやっつける?」

 

「私達も早く百合ケ丘…あっ!」

 

言い終わる前に結梨は走り始め海の上を走る、。

 

「あれ縮地だ!梅のレアスキル…」

 

「ばかかよ!?ああもう!」

 

百之助は、口笛を吹く

 

ピー

 

すると虚空から馬が現れた。

 

「「「「「「「「ええええええ!?」」」」」」」」

 

これには知ってる人以外驚愕した。

 

「文香乗れ!行くぞ!」

 

「了解!兄上!」

 

「行け!」

 

百之助と、文香は即座に乗り同じように。海の上を走り始める。

 

「理解が追い付かないのだけれど…」

 

「そんな事より3人じゃ危なくないか!?」

 

「海の…上を走ってます!」

 

「見りゃわかるけど梅だってそんなことしたことないぞ…」

 

「フェイズドランセンデンス…わしの技を組み合わせたのじゃ…」

 

全員が驚愕する状況だ。

 

「あのままではマギを使い果たすぞ!」

 

 

百之助は結梨に追いついた。

 

「3人で倒すぞ!」

 

「うん!」

 

そう決めた直後…

 

 

ブーン!ドドドドドドド!

 

空からヒュージに対して99式20ミリ機関砲が火を吹き。ヒュージの子機を吹き飛ばした。

 

「プロ…ペラ機?」

 

これには二水もびっくりである。

 

「ありゃ紫電改だな…と言う事は…あの人か…」

 

伊吹は双眼鏡で機体を識別していた。

 

「紫電改?」

 

「旧日本海軍の局地戦闘機で、100年以上前の戦闘機だ。まさかここで見れるとは思っても見なかったけどな…」

 

紫電改に対空砲火が集中している間に百之助達は距離を詰めて馬を格納し、三人と戦闘機一機体で子機をすべて破壊。その段階で紫電改は離脱。三人で、ヒュージを攻撃する。

 

 

「やるぞ!」

 

「うん!」「はい!」

 

3人でヒュージを撃破、爆発した。

 

爆発する瞬間二人を抱えた百之助は、離脱不可能と判断結界を張ったが衝撃を抑えきれず、吹き飛ばされ…虚空に消えた…

 

 

 

 



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68話

いやー凄いね。初めて見たよあの車。


ー 近衛軍第一突撃騎兵連隊所属○○○○少尉 ー


百之助は頭の下が柔らかい事に気付いた。

 

「やぁ百之助、甲州撤退戦以来だね…最も僕は命を落としたけど…」

 

その声を聞いて頭が完全に覚醒し、声の主を見る。するとそこには元アールヴヘイム所属、川添美鈴がいた。彼女は百之助を膝枕していた。

 

「美…鈴…様…?なんで…」

 

「君の様に言うならば神に魂を売ったのさ。」

 

「何してるんですか!?…夢結は…」

 

「言わなくも分かってるよ、魂と体が定着したら会いにいくつもりだ」

 

「了解…」

 

「にしても…君は無茶し過ぎだ…左足は骨折してるからね?」

 

と、百之助の頭を撫でながら言う。確かに骨折している事に気付いた。ちゃんと処置もしてあるようで後はくっ付くのを待つだけだ。

 

 

「…他の二人は見ませんでした?」

 

「他の二人は…愛華がみているよ?)

 

「愛華って…行方不明の明石愛華!?」

 

これにはびっくりである。

 

「そうだ、彼女も又運命の囚人、監視者となっている。僕は守護者だけど。」

 

「守護者は四人のみの筈なんですがね…」

 

「事情が変わったんじゃないかな?…にしても大きくなったね…」

 

「それはどうも…では無くてですね…その…目のやり場に困るのですが…」

 

見れば美鈴はネグリジェで、下着が薄く見えているのだ。

 

「別に減るものではないし気にならないけどなぁ。」

 

百之助は、話題をかえることにした。

 

「所で何処ですここ?」

 

「運命の囚人が使う空間だよ…と言ってもほぼ街だけどね…今いる所は僕の自室だ。」

 

「…なるほど…」

 

「自分でこの空間に飛んできただろうに…」

 

「守護者の間に飛んだはずなんですがね…」

 

「あぁ…守護者3人共びっくりしてたね…血と、火傷だらけで飛んでくるんだもの。」

 

「でしょうね…」

 

「今日はここでゆっくりして行きなよ…どうせ歩けないのだから。特別に僕が添い寝してあげよう。」

 

「…今何と?」

 

百之助は、自分の耳を疑った。

 

「だから、添い寝してあげるよ。」

 

「本気です?」

 

「本気だ。」

 

「えぇ…」

 

「…なんだい?その目は…」

 

百之助は、目が点になっていた。

 

「いや…なんか…雰囲気変わったなと…今までなら絶対に有り得ない事ですからね…」

 

「良いじゃないか、久し振りなんだから。」

 

「そうですね。」

 

諦めた百之助である。と、そこである事に気付いた。

 

「まさかあの三人…黙ってたな…」

 

「ああそのことか、それに関しては仕方無いだろう?だって…死んでるのに生きてたら混乱するだろうに。」

 

「自分は見慣れてますよ?」

 

「運命の囚人は、例外だろう?他のリリィ達さ。」

 

「確かに…」

 

「話はこれで終わりだ。寝ようか」

 

「分かりました…」

 

二人はそのまま寝た。

 

翌日、百之助は顔面が柔らかい事に気付いた。美鈴が百之助を胸に抱きとめているからだ。百之助はゆっくり動いて抜け出す事に成功した。

 

「美鈴様、そろそろ学校に戻ろうかと思うのですが…」

 

「…ん…もう起きたのかい?まあいいけれど…」

 

「早く戻らないと戦死扱いになってしまいますから…」

 

「そうだね…仕方ないな…」

 

そう言いながら美鈴は、着替え始めた。もちろん百之助の目の前で…

 

 

「何を!?」

 

「何って着替えだよ?…あぁ!別に気にしないから良いや。」

 

 

「いやいや…」

 

百之助は、全力で顔を逸した。

 

 

暫くして百之助を美鈴が着替えさせ、百之助に肩を貸しながら部屋の外に出る。

 

「その足では歩けないだろう?どうする気だい?」

 

「こうするんですよ」

 

百之助は、一台の車を空間収納から出した。

 

「これは…また高そうな車だねぇ…」

 

その車は黒塗りのスーパーカーだった。

 

「ケーニグセグのジェメーラですね。4人乗りなので全員乗るかと。」

 

「確かにね…」

 

そう言って車のキーを開けてドアを開ける。ドアはランボルギーニの様に跳ね上がるのではなく90度回転して開いた。

 

「これは凄いな…」

 

「あんまり乗らないんですがね…これじゃないと乗れないので。」

 

「なるほど…」

 

そう言いながら百之助は、運転席に座った。

 

「で?残り二人は?」

 

「愛華が連れてくるよ。」

 

「了解。」

 

暫くして愛華が来た。文香と結梨を抱えて。

 

「ごめ~ん」

 

「久し振りだな…甲州以来か?」

 

「うん久し振り百之助。にしてもこの車すごいね…」

 

「億超えスーパーカーだよ。」

 

「ワォ。」

 

そんな話しながら結梨を後部座席に、文香を助手席を座らせシートベルトを付けさせた。

 

「で?どっちが付いてくるの?」

 

「「え?」」

 

「今から無茶するからどうしても後ろに一人乗ってて欲しいんだけど…」

 

これには二人共黙ったが愛華が先に口を開いた。

 

 

「美鈴様で…」

 

「なんでさ!」

 

「いいじゃないですか!」

 

「分かったよ…乗ればいいんだろう!乗れば!」

 

そう言って車に乗った。

 

それを確認した百之助は、車のドアを締め電話を掛けた。

 

「もしもし…」

 

知り合いに電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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69話

無茶苦茶…


 ー 百合ケ丘女学院秦祀 ー


「どうして梨璃が罰を受けなきゃならないんですか!?」

 

「結梨が人と認められたのなら、梨璃のした事もお咎め無しってことじゃありません?」

 

壱と亜羅椰はご不満のようだ。と言うか全員納得していない。

 

「…命令は命令、例えそれが、間違いから出たものだとしても。撤回されるまでは有効よ。」

 

「命令を守ったり守らなかったりでは仲間を危険にことにもなるでしょう。」

 

天葉と依奈は、一年生たちの気持ちがよく分かっていた。が、命令の重要性を一年生たちに説く。

 

「じゃあ、伊吹様は!」

 

「伊吹は近衛軍所属よ。彼は百合ケ丘の生徒である前に近衛軍の正規軍人、天皇陛下の命令にのみ従う…だから命令系統が別よ。今回の場合は、近衛軍の命令と政府の命令が反対だったから近衛軍の命令が優先されただけよ。」

 

「ですが、リリィには臨機応変な状況判断が認められているはずです!」

 

「そうね…でもそれは百合ケ丘での話、外にはそれを快く思わない人たちも居るのよ。」

 

「百合ケ丘には、例え形式上でも、梨璃さんを罰する必要があるの…」

 

「補足しておくと…リリィの命令系統を一本化する話もあるのよ。」

 

その声の主は船坂千夏だ。

 

「船坂教官!」

 

「それに…百之助は死んで無いわ。たぶん三人共まだ生きているでしょう」

 

これには全員が驚愕した。

 

「…その根拠は何でしょうか?」

 

天葉もこれには疑問を投げる

 

「貴女が灰になってないからよ天野さん。」

 

「はい?」

 

「百之助は、貴女の血を吸ったはずよ?」

 

「はい…」

 

「百之助が消滅したならば貴女も消滅するわよ?つまり彼は生きているの。まあ、血を吸った人全員と百之助が同時に死んだら消滅するけど。して無いから生きてると思うわよ?」

 

これには全員の顔に光が差した。その時天葉の携帯が鳴り始めた。

 

「ほら、言ったそばから電話が掛かってきたでしょう?」

 

天葉は着信の主をみた。

 

「ほんとだ…百之助からだ…」

 

そのまま出る。

 

『もしもし?』

 

「百之助!心配したわよ!』

 

『すまんが単刀直入に言う。共用スペースにいる人全員を退避させろ、車で突撃するから。』

 

「は?」

 

『だから…俺骨折してて歩けないから車で共用スペースに突撃しておろすんだよ。あとな、足のある亡霊が居るのと、一柳隊の連中には何も言うなよ!』

 

「分かったけど…足のある亡霊って何!」

 

『そいつは見てから判断してくれ!…5分やる、それ以上は待て無い…』

 

「分かったわ」

 

『準備出来たらケータイ鳴らせ。』

 

「分かった。」

 

そうして携帯を切った。

 

天葉は近くに居た祀を呼び事情を説明した。

 

「…百之助、正気かしら?」

 

「正気だと思うが?」

 

そう言うのは迅三郎である。

 

「机とか邪魔なものは拙者が片付けよう。」

 

「分かりました。」

 

共用スペースにいた全員を退避させた。

 

その頃百之助はと言うと…

 

 

「百之助…亡霊って誰のことかな?」

 

「それは勿論美鈴様ですよ?」

 

「だろうと思ったよ…ハァ」

 

「で、その格好はなんです?」

 

美鈴は、明治時代の騎兵軍服を着て腰にはグロッグ21、そして新型のチャームと、サーベル型の日本刀を持っていた。

 

「あれ?言ってなかったっけ?近衛軍の騎兵隊に所属してるんだ。」

 

「ああなるほど…それで…」

 

携帯がなり始めた為即座に切り。エンジンを点火した。

 

 

ブオン!

 

「さーて皆さんどいてて下さいよ!」

 

そう言って。百之助は、アクセルを思いっ切り踏み込んだ。

 

共用スペース側では魔法陣が展開されていた。

 

「あれから出てくるわね…」

 

「そのようね…」

 

するとスピードを出した状態で一台の車が突入してきた。車は魔法陣からでる瞬間に180度ターンして、ギリギリで止まった。

 

「運転技術が凄いわ…」

 

エンジン音が消えドアが開く。つかさず祀が指示を出す。

 

「車から全員降ろして医務室に運んで!!早く!」

 

言われるやいなや即座に飛び出す。

 

すると後部座席から一人出てき、百之助に肩を貸して百之助を降ろした。

 

それを見た2、3年のリリィたちが固まった。

 

「み…す…ず…様…」

 

「やあ、久し振りだね…そんな事より運ぶの手伝ってくれないかな…時間が無いんだ。」

 

「はっ!はい!」

 

全員驚愕しつつも全員を運んだ。

 



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70話

まさか…


 ー 秦祀 ー


美鈴は、百之助を見て呆れていた。

 

「…検査と手当が終わって来てみれば病室で何をしているんだい?」

 

百之助は、MP17の部品を交換していた。

 

「何って…改造ですね。制圧力が足りないのでどうにかしようかと。」

 

「なるほど…」

 

「具体的には、バレルを延長して、アタッチメントで単発式のショットガン付けるだけなんですがね。よっと…できた。」

 

そしてそこには約2センチほどバレルの長いMP17が出来上がっていた。

 

下部レールのアタッチメントがライトからショットガンに変わっていた。

 

「凄く攻撃的だね…」

 

「じゃ無いとヒュージ相手はきついので。」

 

「そうか…」

 

「後さっき千夏教官がこれ持ってきたんですよね。」

 

手に持っている封筒は、近衛軍からの辞令である。

 

「そうか…で?」

 

「昇進して中将に、そして新部隊の司令官に就任する旨が書かれてました。」

 

「17歳の中将か…ってそれ言っていいのかい?」

 

「機密文書としての印が無いので大丈夫ですよ。問題は…この封筒です。しかも、高松理事長代行宛です。」

 

そこには、政府からの書類である事を示す印が押してあった。

 

「…見たのかい?」

 

「いえ…自分の書類から考察しました。…全ガーデンの総指揮権に関する書類だと思います。」

 

「…なんだって…」

 

これには美鈴もびっくりである。

 

すると医務室に、3人の生徒会長と、高松理事長代行が入ってきた。

 

「船坂くん…随分と無茶をしたようじゃな…」

 

「申し訳ありません…」

 

「それは良い…それよりもだ…川添くん、君は本当に川添君かね?」

 

「…そうです。私は戦う為に神に魂を売り、百之助と同じ守護者になりました。また、現在行方不明の明石愛華も、監視者となっております。…体は新しく作ってますが。」

 

これには4人共驚いていた。

 

「そうか…戻ってくる気は?」

 

「現時点では…」

 

そこで百之助は、話を切り、封筒を高松理事代行に渡した。

 

「政府から理事長代行にお手紙が。」

 

「む?」

 

「中は見てません…いま読んでください」

 

高松理事代行は、封筒の封を開け何回も熟読した。

 

「…川添くんと、明石くんは現時点を持って復学するように。川添くんは3年、明石くんは2年生とする。」

 

これには、驚いた美鈴である。

 

「…了解…」

 

「それと船坂くん…いや、船坂中将、現時刻を持って有事の際閣下の指揮下に入ります。」

 

「はい。よろしくおねがいします。」

 

と、握手を交わした。

 

「しかし…まさか川添くんも明石くんも生きていたとは…」

 

「高松理事長代行、百之助が車椅子で授業参加するまで待ってもらっても良いですか?」

 

「かまわんが…」 

 

「夢結に、言う言い訳を考えておこうかと…」

 

「…」

 

理事長代行以外から睨みつけられた美鈴である。

 

 



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71話

「さてさて、そろそろ梨璃の謹慎が明ける頃だろうから行こうか。」

 

「百之助にも困ったものだ。」

 

「いつもの事じゃないですか美鈴様。」

 

美鈴は呆れ、愛華は諦めていた。

 

 

懲罰房が並んでいる場所に行くと、人だかりが出来ていた、その中で梨璃が泣いていた。

 

 

「よう!」

 

「やっぱり生きてたのね……………!?お姉様!?と、愛華!?」

 

生きてた事より後ろの人間に驚いていた。

 

「やぁ夢結、甲州撤退戦以来だね。」

 

「夢結、久し振り!」

 

 

「梨璃おいで?」

 

「兄様!うう…」

 

車椅子の百之助に飛びついた。

 

「泣くな泣くな…よしよし…」

 

梨璃の頭を撫でていた。

 

「本当に…お姉様?」

 

「本物だよ。夢結。」

 

「そうそう本物本物!」

 

と、二人は言う。

 

「お姉様…うう…」

 

夢結は、美鈴に抱きついて泣いていた。

 

「ここでいるのも何だし…夢結のレギオンメンバーを紹介してほしいな?」

 

「はい…お姉様…」

 

ところ変わって一柳隊のミーティングルームにて、

 

「そろそろ離してくれないか梨璃…」

 

「や、です。」

 

「夢結も。ほら…」

 

「嫌ですお姉様…」

 

「姉妹揃って離さないね…」

 

「誰のせいだ誰の…」

 

呆れる伊吹である。

 

「そうだね僕が悪いね」

 

「同じく」

 

二人共よ〜く分かっていた。

 

 

「そういえば愛華は?」

 

「聖んとこ」

 

「あっちもあっちでそうだったな。」

 

「たく…心配させるなよ…」

 

「それは悪いと思ってるさ」

 

「実行に移しやがれ。」

 

「努力する」

 

「夢結…そろそろ離してくれないと百之助が嫉妬するから…」

 

「布団の上で後で可愛がってもらいますから、問題ないです。」

 

これには驚いたようで…

 

「おやおや…そこまでの関係に発展したのかい?隅に置けないな百之助?」

 

と言うと殆どの人間がりんごになっていた。

 

「冷やかすのは止めてくださいよ、それに布団ですることと言えば抱きしめてキスして頭を撫でるだけですからそこまで手を出してませんよ。」

 

「昔は夢結に見向きもしなかったし、嫌われていたのにね、変わるものだなぁと。」

 

「すいませんね…こんなクズで」

 

「おやおや…自分を卑下するのは君の悪い癖だぞ?」

 

「兄様は悪くありません。優しくて…可愛がってくれますもん!」

 

「梨璃それはね、君が半分とはいえ船坂の血を継いでいるから可愛がってるだけだぞ?」

 

「でも優しいです…」

 

「百之助…梨璃が妹だって聞いてないんだけど?」

 

「美鈴様、この子は父の隠し子です。」

 

「…増えてないか?」

 

「後はロザ姉様もそうです。」

 

「ロザもか…凄い事になっているね…」

 

「ぶっちゃけると勘弁して欲しいですね…」

 

「だろうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 



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72話

梨璃が運命の囚人になるのだけは阻止する。…妹が戦場に囚われるのを見たくない。


 ー 近衛軍中将船坂百之助 ー


「で?何で俺と美鈴様呼ばれたんだ?」

 

目線の先には理事長代行、3人の生徒会長、そして百由がいた。

 

「それは、貴方が良く知っている事よ〜感だけど。」

 

「ほう?」

 

百由の言葉に百之助は目で続けろと、目配せした。

 

「単刀直入に聞きます。美鈴様のレアスキルはカリスマですね?」

 

「その根拠は?」

 

美鈴は、笑顔でそう聞いた。

 

「そうじゃ無いと、辻褄が合わないんですよ。」

 

「へえ?」

 

「美鈴様、貴方は夢結のダインスレイヴの術式を戦闘中瞬時に書き換えて使用し、ヒュージに影響を与えた…という事です。」

 

「…ヒュージの方は…誤算だったんだけどね…」

 

美鈴は目をそらし、それに百之助が付け足す。

 

「…百由、美鈴様は…自分のレアスキルを正しく理解してないんだ」

 

「え?カリスマではないの?」

 

これには祀も驚く。

 

「まさか…レアスキル…ラプラス…」

 

「正解です眞悠理様。そしてこれは…俺たち運命の囚人にとっても秘匿事項です。…ラプラスは…非常に危険なのです。」

 

一拍おいて百之助は続けた。

 

 

「ラプラスは、味方を統率するだけでなく敵も味方にすることが可能です。…それは人に限りません。もちろん記憶の改竄も。」

 

「それで…ヒュージが…」

 

「でもですよ。これはおかしいんですよ。何せ今回はヒュージを味方につけているならこちらを攻撃することはありません。多分術式を書きかける前に夢結が…ルナティックトランサーを発動してたのが原因だと思います。…完全に憶測ですがね…それが、守護者としての感ですよ…」

 

「なるほどの…守護者か…」

 

と、理事長代行は考え込んだ。

 

「一つ補足です…一柳梨璃もまた同じだと思いますよ。あの子のレアスキルはカリスマから…ラプラスになりかけてる…」

 

「「「な!」」」

 

これには生徒会長三人組は驚いた。祀から質問が飛ぶ。

 

「仮に聞くけど…ラプラス保持者は、現時点で何人?」

 

「ラプラスは、基本的に扱いが難しい上に保持者が少ない。しかもほぼ運命の囚人だ。現状で38名。そこに梨璃が追加される可能性があるね」

 

「…その内、運命の囚人でない人は?」

 

「…梨璃だけだ。まあ、梨璃は運命の囚人にはしないけどな。」

 

「根拠は?」

 

「交渉済みだよ。あの子を戦場に囚われるのを見たくないんでね。」

 

「…君ってやつは…」

 

「美鈴様、あんたも運命の囚人にはしたくなかった。」

 

「…そうか…」

 

「話は終わりか?終わりなら退室させてもらおうか。」

 

「行きたまえ。」

 

「失礼します。」

 

百之助と美鈴は、退室した。

 

「…どうなるかは…神のみぞ知る…か…」

 

理事長代行は二人が出て行った扉を見つめた。

 

 

 

 

 



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73話

あれは凄かったね




 ー 帝政大日本帝国帝国近衛軍大将兼陸軍第一遠征打撃軍大将船坂百之助 ー

自身の回想にて。




数日後、全員退避命令が出され避難区域に全員(昏睡状態の結璃と、文香は病院に移動済み)退避した。

 

「あはは。」

 

「百之助、急にどうしたんだい?」

 

「そんなの決まってるじゃないですか。」

 

百之助は敵が強いと笑う事を美鈴は、思い出した。

 

「…だろうね。血筋ということか。」

 

「今更じゃ無いですか…美鈴様?」

 

こう答えるのは愛華だ。

 

「みんなおるし、出番はなさそうだけどなぁ」

 

と、そんな事言っていると。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!ドゴーン!!

 

と、ヒュージ3体が着弾し、ヒュージ3体を吸収、一体のヒュージに変化、結界を構築した。

 

「う〜ん…これ…オレたち案件じゃない?」

 

「私もそう思う。」

 

「同じく」

 

三人はすぐに敵の脅威度を感じ取った。

 

「そうと決まれば…これは要らないよねっと」

 

そう言いながら足のギプスを破壊した。

 

「貴方ね…」

 

「いつもの事じゃないか。」

 

「車椅子も要らないね」

 

二人共呆れた。

 

「兄様!?」

 

とそこに梨璃がやってきてギプスを破壊した百之助を見てびっくりしていた。

 

 

「梨璃、こっちに。」

 

「はい、兄様…」

 

梨璃を呼び耳元で話す。

 

「梨璃、君のレアスキルはカリスマからラプラスに変化している。」

 

「え?」

 

「良いかよく聞け…ラプラスは危険だ、最悪梨璃の命が危ういかもしれない。だが梨璃は躊躇いもなく使うだろう。気を付けろ…ラプラスは味方のマギをひたすらに強化するのと同時に敵も味方に変わる可能性がある。…ただこの敵を味方に変える力は、発動するとも限らない。」

 

「分かり…ました」

 

「扱いが大変なのがラプラスだ。因みに俺は後者の方も発動する。いいね?」

 

「はい…兄様、心に刻んでおきます!」

 

「よし、いい子だ。」

 

と、百之助は梨璃の頭を撫でて頭にキスをした。

 

 

「兄様////」

 

とその時、ヒュージが爆発した。

 

ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

「なんだ!?」

 

 

視線の先にはヒュージと、ヒュージを拘束する長い手、そして金色の閃光…青い巨人だった。

 

「誰か戦ってる!?」

 

「さっきのあれで…チッ!そういうことか!」

 

「現状、マギが使えるのは運命の囚人と…梨璃か…所で梨璃…夢結は?」

 

「そう言えば…見てません。」

 

「う〜ん…」

 

「美鈴様、梨璃と他の運命の囚人とであれを足止めしてくださいこちらでやり方は考えます。」

 

「分かった…」

 

「梨璃、美鈴様について行け。」

 

「はい、兄様!」

 

即座に運命の囚人達がヒュージに攻撃を仕掛ける。

 

 

「さあて…どうしようかね…」

 

「百之助様!」

 

見れば楓が走ってきた。

 

「おう…丁度いい所に〜これを受け取れ!」

 

何かを放り投げた。

 

「投げないでくださいまし!…これは」

 

「バレットだ何かのときのために渡しとく。…梨璃のポケットから拝借した。もちろん代わりに俺のを入れてあるぞ〜」

 

「…百之助様のバレットを渡せばよかったのでは?」

 

「白襷隊の魔改造品をまともに扱えるか?」

 

「無理ですわね…」

 

「そゆこと〜」

 

「…楽しい戦争の時間だ…」

 

百之助は、笑いながらそういった。

 

 

 



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74話

戦艦といえば砲撃戦だろう?

 ー 帝政大日本帝国海軍第二艦隊司令官天野天馬中将 ー

自身の口癖


「クッ、何んでチャームが動かない!」

 

「他の生徒もチャームが動かないそうです。こんな事って…」

 

「先の3体のヒュージは墜落時の運動エネルギーを利用して地中深くに潜り込みマギの結界を展開しているようだけど…あの巨体を構築しながらリリイのマギにまで干渉するなんて…」

 

「じゃああの光はなんだ!?」

 

目線の先には巨人と閃光、無数の手がヒュージを攻撃していた。

 

「誰かが戦っておるようじゃが…」

 

 

これには理事長代行と、3人の生徒会長及び百由も、頭を抱えるしか無かった。

 

「あの三柱は、運命の囚人の中でも守護者と呼ばれる方々で、ハインリヒ・クンラート、ジャンヌ・ダルク、ベアトリーチェ・モルティナーリですよ。」

 

そう言ってやって来たのは百之助だ。手には二本の青く光る剣が握られていた。

 

「「「「は!?」」」」

 

 

「…百之助それは…?」

 

「これ?ライトセーバーだけど?」

 

「「「「は?」」」」

 

まさかの答えに、理事長代行を除く4名が絶句した。

 

「あ、これのダウングレードバージョンがディズニーに納品されて映画の撮影に使われてるぞ?これ、船坂家のファクトリー連中が酔狂で作って特許取ってるぞ?因みに対リリィ用な?」

 

「「「「は!?」」」」

 

「それはそれとして…何やってるの?」

 

「あの中に突撃するに決まってるじゃん」

 

「「「でしょうね」」」「だろうな」

 

「はあ…無茶はせんように…」

 

「わかって…ん?なんか光った…」

 

百之助は水平線の向こうが光った気がした…次の瞬間…

 

 

ドドドドォォォォォォン!!!!!!

 

ヒュージが突然爆発した。

 

「「「「きゃ!」」」」

 

 

「うお〜スゲえ…」

 

「防衛海軍か…」

 

理事長代行と、百之助は正確に理解していた。

 

「この正確な砲撃…天野天馬中将の第二艦隊だな、と言うことは…武蔵の、61センチ超電磁加速砲と、陸奥の46センチ超電磁加速砲28門による一斉砲撃か…初めて見たけど凄いな…」

 

「のんきなこと言ってる場合!?」

 

と、祀が吠えるが…

 

「いやいやあれごときで巻き込まれて戦死するわけねーじゃない」

 

「いやそうじゃなくて!」

 

「第二斉射はないから安心しろ。」

 

「え?」

 

「あれみればわかるじゃん…」

 

「「「「な!?」」」」

 

見れば大きく体力が削れたようだ。思いっきり倒れていた。

 

「じゃあ、行ってくるわ…あれでも難しいと思うしね」

 

「ちょ!?まっ!」

 

止める前に一瞬で消えた。神速を使ったか空間をジャンプしたのだ。

 

 

「ああぁ!もう!相変わらず無鉄砲なんだから!」

 

「それは思うね〜」

 

「「同じく」」

 

 

 

 

 

 

 

 




設定3を追加してますのでそちらも見ていただけると幸いです。


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75話

これは大変ですね…骨が折れそうです。


 ー ジャンヌ・ダルク ー


「いや〜まずいね〜」

 

「美鈴様!そんなことを言ってる場合ですか!?」

 

「美鈴、私達はアレを倒すために存在しています、泣き言を言ってる場合ではありませんッ!」

 

「デスヨネー、聖女様は現状を打開する策あります?」

 

「ありますが現実味が無いので脚下です。そして爆風で全員死にます。」

 

「そりゃ駄目だね…」

 

と、全員押され気味である。敵の腕のような物がパージされ戦闘する全員を圧倒する。

 

「貴女方で言うアルトラ級…それ以上…と考えたほうが良いでしょう。」

 

「そう言ってもジャンヌ…このままではジリ貧ですよ?」

 

「ハインリヒに同意するわ」

 

「と言われてもですね…」

 

「おーいやっぱ駄目か〜?」

 

とここで百之助が参戦する。もちろん振るうのは二振りのライトセーバーだ

 

「良いところに来ましたね…」

 

「言っておくがやりようはあるぞ?」

 

「策があるのですか?」

 

「…あるにはあるが…問題がある…このジャミングどうにかしない事にはやれん。」

 

「分かりました、そう言う事ならやることは一つです。」

 

と言うといきなり梨璃に斬り掛かった。

 

「な!?」

 

「へ!?」

 

流石にこれには驚くが…刃を交えた瞬間円状に曇っていた空が青空に変わってゆく…

 

「おお…」

 

「部分的に彼女のラプラスを強引に引きだしただけです。」

 

「なるほどラプラスを断片的に発動させるために梨璃に斬り掛かったと…貴女にしては強引だな…」

 

「このままでは埒が明きませんので強硬手段に出たまでの事。」

 

「さいですかっ!」

 

ちょうど敵が攻撃してきたので回避した。

 

「梨璃!夢結は!」

 

「兄様!あそこです。」

 

見れば夢結は、ヒュージと格闘戦を演じていた。右に左にヒュージを翻弄する。

 

「ルナティクトランサー無しであそこまでやるかいやはや…」

 

「百之助!マギスフィアが!」

 

伊吹がサバーニャで空から攻撃しながら言う。

 

「マギスフィアが来るまで敵を抑え込むぞ!出し惜しみはなしだ!」

 

「ヒャッハー!!」

 

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

 

百之助は、ルナティクトランサーと吸血鬼の力を開放する。すると髪が伸びて白く染まり右目が赤左目が青く光はじめ目の色に合わせてライトセイバーの色が変わる。更にダメ出しで七人御先を発動百之助が7人になる。

 

「久しぶりの全力開放だ!楽しませてくれよ!ふはははははははははは!!!!」

 

そう言いながら敵にライトセイバーで攻撃する。

 

「どうした!その程度か!?」

 

どうもヒュージは百之助を最初に倒すべき敵と判断したようで…

 

無数の光弾を百之助に全力照射するが百之助の縮地で避けられる。

 

「いよいよ楽しくなってきたな!」

 

そう言いながら攻撃を続行した

 

何とも悪役じみた笑い方である。

 

 

 

 

 

 



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76話

貴重な体験だったわ




ー ベアトリーチェ・モルティナーリ ー


戦い始めた百之助達を見た神琳が一柳隊の全員に問う

 

「ノインヴェルト戦術してみませんか?」

 

「そんな事、決まっているのではなくて?」

 

「やらないと言う選択肢は存在しない。」

 

「決まりだな」

 

と、全員が賛成した為実行に移す。まず雨嘉が二水にマギスフィアを狙撃でパスする。

 

「やらなくちゃ…!やらなくちゃ…!やらなくちゃ…!やらなくちゃ…!う〜へ〜」

 

と、言いながら自身のチャームで打ち返した。しかし別方向に飛んでいった。

 

「すみませ〜んお願いしま〜す!」

 

「いいえ!いいパスですわよ!」

 

と、楓が受け取り

 

「なんか調子いいな!」

 

「ワシャ絶好調じゃ!」

 

「いつもより体が軽い」

 

「夢結様、梨璃さん!」

 

と連続で梅からミリアム、鶴紗、神琳と、遠距離パスを繋いでいくが…

 

「マギスフィアが来るわ!私が受けるからフィニッシュは貴方が!」

 

突如ヒュージの腕が分解マギスフィアを横取りする。

 

「なんですって!?」

 

「フハハハハハ!!そうこなくっちゃな!」

 

「百之助!笑っている場合じゃないでしょう!」

 

「だって!こんなに楽しい戦場は久しぶりなんだぜハインリヒ!」

 

「ああ…もう!仕方ありませんね! 火、水、風、土、光、そしてカラバの蒼き守護者と!」

 

ハインリヒの持つ錬金術の粋…その中でも最も攻撃力の高い術、【リチュアルサークレット】を発動、巨大な魔法陣からヒュージと同サイズの巨人が生成、ヒュージをぶん殴る。流石にこの質量に耐えられなかったのかヒュージが倒れ込む。

 

「うっひょーいつ見てもすげえ!」

 

「さらにダメ出しするわ! 沈みなさい!」

 

今度は、ベアトリーチェが自身の得意とする魔法 【煉罪の握撃】を発動。魔法陣から無数の腕が伸び、ヒュージの腕を掴んで引きずり落とす。その拍子にマギスフィアが明後日の方向に飛んでいくが梨璃が自身のチャーム、グングニルで受ける。

 

「やった!」

 

「マギを吸いすぎてる!」

 

ガン!

 

夢結が梨璃のグングニルを破壊し、マギスフィアを吹き飛ばしてしまったが…

 

「行くよ楠美!」

 

「はい!天葉姉様!」

 

二人がマギスフィアをかろうじて受取る。

 

「おっ…も!」

 

ガン!

 

「くぅッ!」

 

「「ハァァァァァァァァァァ!」」

 

マギスフィアの軌道を二人がかりで変え、それを依奈が受け取る。

 

「ハッ! 壱!亜羅椰!」

 

とバスを繋げるしかしチャームが限界を迎え…一部を破損する。

 

「な!?これだけでチャームが限界だなんて、どんだけのマギスフィアなのよ! かなりヤバい奴よ!気を付けて!」

 

「ッ!望むところ!」

 

「あと頼むわよ!「皆!」」

 

全校生徒によるノインヴェルト戦術…そのパスは百之助を魅了した。

 

「いっけぇ〜!!!!」

 

「こんなに心躍るのは久しぶりだぁ!」

 

「「私達ももう一度!」」

 

「「チャームの限界まで!」」

 

「「夢結様と梨璃さんに!」」

 

「頼むぞ!ワシの!」

 

「「「「「「「「攻撃力!う〜〜〜や!」」」」」」」

 

そしてこのパスを更に繋ぐ!

 

刀で受け

 

「百之助!」

 

ライトセイバーで受け

 

「ナイス伊吹!ハインリヒ受け取れ!」

 

フォーナ・ペリ(双剣)で受け

 

「しかたありません ね!ジャンヌ!」

 

聖剣デュランダルで受け

 

「こういうのもいいでしょう!ベアトリーチェ!」

 

天国の薔薇(サーベルと大剣)で受け

 

「行くわよ!子猫ちゃんたち!」

 

梨璃と夢結は互いに目配せし、二人でダインスレイフを持ち飛ぶ!そしてマギスフィアをダインスレイフで受け

 

「「ハァァァァァァァァ!!!ヤァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

ヒュージを両断する。

 

ドッッカーン!!!!

 

大爆発して…消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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77話

あの曲そんなに良かったね?


ー 船坂百之助 ー


「ふわぁ〜あ。戦闘の後のお風呂は格別だわ〜」

 

「たしかに格別だけど…格別すぎませんか〜!!」

 

「まさか温泉まで湧くとわね〜」

 

「大丈夫よ〜監視網も麻痺してるから誰も見てないわよ〜」

 

と壱、二水、依奈、百由が完全に寛いでいた。と言うか全員くつろいでいた、約1名を除いて…

 

「………男俺いるんだけど…なんなら百之助もいるんだけど…」

 

と居心地悪そうに伊吹が言う

 

「今さら気にする人いると思う〜?百之助なんて鼻歌歌いながら楠美膝に乗せて頭なでてるよ〜?」

 

と依奈の視線の先にはたしかに楠美を膝に乗せて頭を撫でながら鼻歌を歌ってる百之助がいた。

 

「…お前な…」

 

「私は見られても平気だけどね〜」

 

「亜羅椰は少しは恥を知れ!」

 

「亜羅椰ちゃんエロい…」

 

と、壱と楠美に言うが逆効果だったようで…

 

「楠美から食ってやろうか!」

 

「ヒッ…!」

 

「下品はいけません。」

 

と、天葉に怒られていた。

 

「百之助様…何歌ってるんですか?」

 

「あ、それ私も気になる」

 

「え?これ?奏姉様が自分で作った奴だが?」

 

百之助は鼻歌を止めてそう答えた。

 

「「え?」」

 

「歌ってやろうか?」

 

「「聞きたいです」」

 

「了解」

 

咳払いして声を変える。今は亡き姉の声に。そして空間収納からイントロの入った音楽プレイヤーを取り出し音楽をかける。

 

「誰の為〜に何のた〜め〜に〜

変わり果てた世界

鈍色(にびいろ)の風切る

夜が明けて

また朝日が昇る〜ま〜え〜に……」

 

気がつけば全員が聞き入っていた。

 

 

「…この世界はずっと

終わらせない〜

分かち合った愛を

絆に変えるから

懐かしい笑顔 取り戻して

飛び越える 限界の自分を

壊したい 今日を失くしたって

僕はそう

勇気振り絞って進むよ」

 

曲が終わってみれば全員から拍手を貰った。

 

 

パチパチパチパチ……

 

「ご静聴ありがとうございました〜」そしてこう付け加える

 

「言っておくが俺が作ったわけではないからな〜?」

 

「いや…完成度がおかしいだろ!声真似までできるとか聞いてねえぞ!」

 

「これ声真似じゃなくて変声術。」

 

「それでもおかしくね?」

 

「作った本人に言え!」

 

「聞けねえだろ!」

 

「間違いねえw」

 

「ね〜もう一回歌ってよ?」

 

と天葉に懇願されては首を横にふれない百之助である。

 

「いいぞ〜」

 

そしてまた歌い始めた。

 

事あるごとにこの曲を歌わされる羽目になるとは百之助は思ってなかった。

 

因みにこの曲がまさか代々百合ヶ丘で継承されドラマで挿入歌として入り、世界的に有名になるとは誰も思わなかった。(ドラマでもこのシーンはある)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




筆休めとして、14年後の話となる

「アサルトリリィと呼ばれた男 〜その子供達が征く〜」

を執筆したのでそちらも読んで頂けると幸いです。


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78話

あれは我ながら越権行為だった。だが結果として良かったよ。


 ー 帝政大日本帝国近衛軍大将舩坂百之助 ー


理事長室にて、高松理事長代行、百之助、伊吹、生徒会長3名、百由、夢結、梨璃が集まっていた。

 

「これが、私達百合ケ丘女学院の管轄する7号由比ヶ浜ネストよ」

 

「因みに防衛軍及び近衛軍はこれを甲7号目標って呼んでるぜ」

 

百由の説明を百之助が補足する。

 

「現在の様子がこれ、ここに写ってるのがアルトラ級ヒューじね!」

 

梨璃にそう言いながらパソコンの画面を見せる。

 

「えっと…あの…もしかしてこれって…海の底ですか?」

 

 

「そうそうそうそう!ちなみに〜アルトラ級ヒュージの全長は400メートルとも1キロとも言われてるのよ?」

 

「よく分からないけど…凄いですね」

 

「ココ最近のヒュージはこのアルトラ級から半ば奪う形で供給されていたわ」

 

「過剰な負荷を掛けられたせいで、その機能を事実上停止していると思われます。…殲滅するにはまたとない機会よ。」

 

と、3人の生徒会長が一人史房が言った。

 

「殲滅!?」

 

「先輩…正気か?」

 

「百之助が言いたいのもよく分かるわ…だってあれは…」

 

「2回しくじってるだろう?沢山戦友が散ったと母が言ってたからな…その時の戦傷の後遺症とプースタードラックで…天葉のお母様が亡くなられた事も。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

流石にこれには百之助、伊吹以外は驚愕する。

 

「ありゃ?知らんかったか?夢結、梨璃、百由以外は知ってると思ってたが…?」

 

「やはりそれが原因じゃったか…若くして亡くなっておるからのう…」

 

と、理事長代行が納得したように言う。

 

「と言っても、今年でしたが…皮肉なものです。その甲7号目標に第ニ艦隊が明日0700より砲撃を開始するんですがね。」

 

「…なんじゃと?」

 

「第二艦隊司令官は天野天馬中将…天葉の父です。」

 

「無謀過ぎやしないかのう?」

 

「そうはいってもここが落ちれば東西に日本が分かたれかねませんよ…最悪第二艦隊は刺し違える気です。」

 

「まるで貴方ね」

 

そう夢結が言う。

 

「そりゃ…な気持ちが分からんでもない。子供が戦火に身を投じるなんてことは本来あってはならんからな…それに妻だけでなく娘まで失っては山口多聞の再来と言われた天野中将といえど耐えられるものではないし。で?どうするつもりで?まさか止めようなどと考えて無いですよね?」

 

「そのまさかじゃ…ダインスレイブを持ってヒュージネストを破壊せしめるのじゃ。」

 

「……まさか…夢結と梨璃に行かせる気ですか!?」

 

「そうじゃ。」

 

「…チッ!で?バックアップは?」

 

「現状では無いわ。…チャームがこの一振りしかないのよ…」

 

と、祀が申し訳無さそうに言う。

 

「俺たちが行ったら駄目なんですかね?」

 

「君たちにはここの防衛を任せたい」

 

「…了解…ですが条件があります。」

 

「何じゃ?」

 

「ある手は全て使いましょう。」

 

そう言って通信機を取り出した。

 

 

 

 



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79話

最初聞いたときはこいつ正気か!?って思ったよ。

 ー 近衛軍第9師団長冨永伊吹 ー


「私が考えたのは…伊吹の近衛軍第九師団で、大磯ネスト…甲14号目標をつつく」

 

「言ってる意味がわからないけど?何故大磯ネストを?」

 

と言うのは祀だ。百之助と伊吹を除く全員が何故?という顔をしていた。

 

「あのな…ネスト同士が連携する事例があるんだよ。例えば沖縄奪還戦の時みたいにな。だから牽制のために甲14号目標をつつく!そしてその間に夢結と梨璃を甲7号目標を叩く、それが失敗した場合、第9師団は、攻勢から防衛に転換、そして第二艦隊が艦砲射撃を開始し、注意をそらす、その間に私が武御雷にマギをチャージし…直接叩く。使用するのは25式弾頭だ」

 

伊吹は目を見開き百之助に食ってかかる。

 

「ちょっと待て!お前核弾頭打ち込む気か!?」

 

「トミーその通りだ、しかもマギで威力を強化されたやつな?…」

 

「二人殺す気か!?」

 

「まさか…何も考えてないとでも?」

 

「あるのか?」

 

「ハインリヒがよく使うあれ分かる?」

 

「ハインリヒが使う?…………まさか…転移?」

 

「ピンポーン!でだ、ここに2つの腕輪があります」

 

収納から腕輪2つを出す。

 

「まさか強制的に転移させてそれから直接…」

 

「砲撃するのさ!………おーい皆様大丈夫です?」

 

百之助と伊吹の話についていけない皆様がいた。百由が質問する。

 

「百之助〜?転移に関して教えてほしいんだけど〜?」

 

「錬金術と魔法の融合で転移術式ってのがあってな?指定座標にジャンプするのさ。まあこの腕輪で出来るのは一回こっきりだけどな…言っておくが量産はできないぞ?」

 

「ありゃ…残念…」

 

と、心底残念そうだ。

 

「ところでトミー第9師団は?」

 

「所定の位置に配置済みだ」

 

これには眞悠理も複雑である。何せ軍が百合ケ丘のナワバリに入ってきたようなものなのだから。

 

「いつの間に…」

 

「さすがだな…で?どうでしょう?その方向で天野中将とお話がしたいんですが?」

 

「許可しよう」

 

流石に史房は反対だったようで…

 

「理事長代行!?」

 

「やらなければここが落ちるじゃろう?…それでも良いか?」

 

「甲州奪還を控えてる以上それは不味いですね…」

 

「ではやるしかあるまい…船坂くん、天野中将とは私が話そう。」

 

「いや流石にそれは…」

 

「君だけに責任を押し付ける訳には行くまい?それに核弾頭ともなれば国に許可を取らねばなるまいし…」

 

「それに関しては陛下と総理の了解を得ています。問題ありません。…これが通信機器です。」

 

「うむ…了解した」

 

そう言って、百之助は理事長代行に通信機を渡した。

 

 

 

 

 

 

 



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80話

まさか…すでに結婚の了承を付けてたなんて…知らなかったわ



 ー 船坂夢結 ー

自身の回想にて


ホログラムを起動し空中に投影する。出てきたこの人物こそ防衛海軍第二艦隊司令官、天野天馬中将だ。

 

 

「お久しぶりです、天野天馬中将」

 

 

『昇進おめでとう、船坂百之助中将。…と言ってもまあ昼間無線で会話したけどな。で?どうした?』

 

理事長代行が、百之助の代わりに作戦を説明した。

 

「それは私が。…実はカクカクシカジカで…」

 

『なるほど…しかしそれではそちらの生徒が…』

 

「ですがやらねば艦隊が全滅なんて事になりかねません…リスクは分担したほうが良いかと。」

 

『しかし…』

 

流石に天野中将は難色を示した。何せたった2名のリリィをネストに放り込むと言うのだから。これにゴネた百之助が天野中将に食ってかかる。

 

「お言葉ですが天野中将、中将が戦死なさった場合は天葉になんと説明すればよろしいので?ヒュージネストと差し違えましたとか言った瞬間、彼女ふさぎ込みますよ?それにまだ中将の奥方の件で未だに怒ってますし。それに硫黄島の件もまだ気にしてますよ?言っておきますが硫黄島の件はぼかして伝えてますからね?」

 

『うぐ…』

 

天葉には激甘な中将だけに面白いほど狼狽していた。もはや軍人と言うよりただのオヤジである。

 

「それだけではありませんよ中将、あなたが乗られている第二艦隊旗艦の武蔵は陛下の御召艦です。それを沈めたらどうなるかおわかりでしょうな?それに艦隊戦以外で艦艇を失うのは防衛戦略上極めて痛手だと思いますが?」

 

ほぼ脅迫である。

 

『一理ある…が、流石に…』

 

「ハインリヒの腕を信じられないと?」

 

『そうではないが…良いのか?貴官の妹と想い人だろう?』

 

「言っておきますが妹は防衛陸軍関東軍司令官一柳中将の義理の娘ですし、想い人の方は防衛海軍第三艦隊司令の白井中将の娘ですよ。…まあこの場合全く関係ありませんが…帰ってくると二人を信じてますよ。」

 

『貴官がそう言うならそうなんだろう…しかしまぁ…なんと無謀な作戦を考えるな…やはり血は争えないということか…その無謀な作戦で死者があまり出ないことがいいのか…運なのか…」

 

「両方だと言っておきます。」

 

『了解した、…船坂中将、娘を頼む。出来れば早めに孫の顔が見たい。』

 

「それ、軍以外で言ったらセクハラですよ。もちろん天葉に対してです。」

 

『ハハハ!…以後気を付けることとしよう。では、次は式場かな?』

 

「そうですね。互いに陸で会いましょう」

 

『互いにな、その為にはまずは生き残らねばならぬ。戦死はお預けだな。』

 

「はい、ご武運を!」

 

『フッ…そうだな』

 

そう言って、敬礼の後、互いに通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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81話

あれこそ近衛の実力がわかる戦場だったわ。彼らの指揮、練度、どれをとっても一級品で私達では到底不可能な戦術を使用していたわ。

 ー ロザリンデ・フリーデグンデ・フォン・オットー


色々終わって男子寮にて夢結と百之助と梨璃は同じ布団で寝ていた。

 

「さっき思ったのだけれど…貴方親から了承得ていたのね。」

 

「まあな…まあ、楠美の両親だけは楠美の事を話そうとしたらぶち切りやがったけどな…あとで楠美に聞いたら仲悪すぎて絶縁関係だと…」

 

「そんな…血は、繋がってるはずなのに…」

 

と、梨璃は悲しそうに言う。

 

「そういう家もあるさ…世の中には親の苗字を名乗らせてもらえないやつだっているんだからな…」

 

「……」

 

二人の頭を撫でながら百之助は言う。

 

「俺が言える言葉じゃないけどさ…二人共帰ってこいよ?」

 

「分かっているわ。」

 

「はい!帰ってきます!」

 

「じゃあ安心だな、取り敢えず。おやすみ二人共。」

 

「「お休みなさい」」

 

百之助は、二人にキスをして三人は深い眠りに落ちた。

 

 

ー 翌日 ー

 

百之助は、百合ケ丘女学院の屋上で武御雷を起動し砲弾を装填その場で待機する。

 

「総員傾注!こちら第一遠征打撃軍司令、舩坂百之助中将である!本日0800よりヒュージネストに攻勢をかける!諸君の祖国愛と忠誠心に期待する!奮励し努力せよ!」

 

 

ー その頃第二艦隊 ー

 

 

「よろしかったのですか?」

 

参謀長が天野中将に進言する。

 

「うん、まあ良くは無いな…」

 

無線機のスイッチを入れる

 

「…まあ、かけてみようじゃないか。全艦に達する!要請があるまで第一戦闘配備のまま待機!弾種ニ式徹甲装填!左砲戦用意!誘導弾はポップアップ誘導に変更!」

 

 

ー オスプレイの中にて ー

 

「そろそろよ梨璃準備はいいかしら?」

 

「はい!お姉様!」

 

二人で準備をする。と言っても持って行くものは少ない。二人の腕には金色の輪っかがはまっていた。

 

『お嬢ちゃんたち準備はいいか?ハッチ開けるぞ!』

 

ガコン…ゴォォォォォォォォォー

 

ハッチが開きー

 

『あとは任せた!武運を祈る!』

 

「「有難うございました!」」

 

二人は空に身を投げた。

 

 

ー 百合ケ丘周辺 ー

 

伊吹が号令をかける。

 

「時間だ諸君!我ら近衛!常に戦場の最前線で戦い、撤退時は殿を務!戦場【いくさば】こそ我らが本懐!奴らに大和魂を見せてやれ!兵器使用自由!総員抜刀!総員突撃ィィィィィィィィィィィィィィィ!」

 

「「「「「「「「「「「天皇陛下ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァバンザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァイ!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」

 

 

それを見ていた天葉がぼやく

 

「さすが近衛…戦術は前時代的だけど指揮は高いわね…しかもヒュージ出現黎明期の戦術、ヒュージヤークト…あれ出来るの…ほとんど居ないのに…」

 

ヒュージヤークトとはヒュージ出現(世界的に認知された時)時に、世界的に使われた戦術の一つで言うなればただの突撃である。そもそも当時の軍隊で銃剣突撃のできる軍隊がほぼ無かったので戦術として残していた自衛隊と、イギリス軍しかノウハウを持っておらず、殆ど壊滅してしまったという笑い話がある。

 

「さあ…どうなるかな?」

 

天葉は、水平線に見える第二艦隊旗艦、「武蔵」を見つめていた。

 

 



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82話

伊吹が指示を出していた。

 

「止まるな!ヒュージネストを叩き潰す気でかかれ!右翼!弾幕薄いぞ!左翼!今だ畳み掛けろ!中央は一旦後退!左右からクロスファイアだ!撃ちまくれ!…しかしまあよくもまあこんなにうじゃうじゃ抱えてたな。パーティーじゃねえか。」

 

「まあネストですからね…」

 

と副官が言う

 

「少将閣下!被害報告!」

 

と、走ってきた伝令兵を尻目に続きを促す。

 

「うん。で?」

 

「3名が重症、2名が負傷です。」

 

「それで全員か?」

 

「ハッ!全員であります!」

 

「下がってよろしい。」

 

「ハッ!失礼します!」

 

「さぁ〜てどうなるかね〜?なんせこの近衛第九師団はまだ結成されて日が浅いしぶっつけ本番だからな…」

 

「他は猛訓練をやってるみたいですよ?」

 

「だろうな。ま、それでも問題はないが。」

 

「ですね。」

 

一方夢結と梨璃は…

 

「あれが…アルトラ級ヒュージ…」

 

「そうね…」

 

そう言って二人でチャームを起動する。

 

ポーン…

 

「美鈴様を感じます。」

 

「…そう…でも帰ってきてるわよ?」 

 

「そうですね。」

 

そしてアルトラ級にぶっ刺しチャームはアルトラ級に吸い込まれた。

 

その瞬間を捉えた百之助は、二人を強制転移。百之助の隣に転移させた。

 

「わ!」

 

「いきなり過ぎよ!」

 

「わりい!こちら船坂!二人の転移を確認、お二方!始めてください!」

 

ー 第九師団 ー

 

 

「よっしゃあ!総員傾注!我らは遅滞戦術に切り替え!総員もう少しふんばれ!」

 

「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

 

 

ー 第二艦隊 ー

 

「全艦主砲誘導弾斉射の後、最大戦速!急速離脱!主砲斉射用意!」

 

「主砲斉射ヨーイ!」

 

「うちーかーた始め!」

 

「うちーかーた始め!」

 

ドドドドドン!…ゴォォォォォ!!!

 

大小様々な口径の砲弾が一斉砲撃される様はそれ自体に美学を感じるほどである。トマホークミサイルを始めとする対艦ミサイル巡航ミサイルもきれいな線を描きながら飛んでゆく…

 

 

「全艦最大戦速!急速離脱!」

 

「最大戦ソーク!」

 

艦の加速力にGを感じながらも急速離脱に成功。この後、大爆発を起こしてアルトラ級を討伐することに成功した。

 

 

「終わったー」

 

「流石に精神的に来るわね。」

 

「俺も〜…まあ二人が戻ってきてくれて良かったよ。…ほんとに…」

 

そう言いながら二人を抱きしめ、自身の背中側に倒れる。

 

「ちょっと!」

 

「良いじゃないですかお姉様〜お兄様は本当に心配してたんだと思います。」

 

「夢結の気持ちが分かったからな」

 

「フフフ、やっと理解してくれたのかしら?」

 

「お陰様でな。」

 

そのまま3人は日向ぼっこしていたところを他のリリィに発見された。

 

 

 

 

 

 



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83話





数日後、百之助は夢結、楠美、天葉を車に乗せてランボルギーニのディーラーに向かっていた。乗ってる車はランボルギーニのウルスである。

 

「いやーすまんなーわざわざ付いてきてもらって〜」

 

百之助は車を運転していた。

 

「気にしなくていいじゃない。久し振りに外出許可証出たんだもの。」

 

と言う夢結は、淡い青色のワンピースに黒のカーディガンを着ていた。

 

「そうそう気にしなくていーの。」

 

天葉は青いブラウスに黒いスカートを履き、楠美の頭を撫でていた。因みに楠美は天葉とペアルックである。

 

「所で百之助〜いつ車買ったの〜」

 

と、天葉が聞いてきた。

 

「えーとだな、実は8歳の時なんだよ。ランボルギーニの本社でお得意様集めてスケッチの車を買うか買わないかで決めて、オプションやら付けまくって後で金払ったんだけどな〜延び延びになったのは技術開発が難航したからだと聞いてるぜ〜」

 

「へー…でいくら?」

 

「確か5億だったかな〜」

 

「「「5億!?」」」

 

流石にこれにはびっくりである。

 

「おう、まあそこまでの経緯は後でな〜」

 

「わ、分かった…」

 

「百之助、ところでなんで誘ったのかしら?」

 

夢結の問に百之助は一拍おいた。

 

「…明々後日出征する事になったのさ。」

 

「え…」

 

これには3人とも膠着した。

 

「明後日学校で説明があると思うけど、出征するんだよ。だから誘ったのさ…まあ帰ってくるけど。」

 

「「「……」」」

 

「おいおい…心配するなよ。ちゃんと帰ってきますとも。それに行くのは軍に所属してるやつ全員、当然姉上や、朽井教官、文香やトミーも一緒だよ。それに海外に行くわけじゃないしな。」

 

「………百之助…女心って知ってる?」

 

「知らん」

 

即答である。

 

「このバカァァァ!!!」

 

流石に天葉が怒るのものもわかるのだが分からないものをどうやったらわかるのかと聞きたくなる百之助である。そこに夢結が助け船を出す。

 

「天葉落ち着いて、百之助だって心配させたくないはずよ。」

 

と、天葉を宥める。

 

「悪い、けど急遽決まったからな…申し訳ない…」

 

「…百之助は、女心を学んだほうがいいと思うわ。蓮にでも聞けばいいと思うわよ?」

 

「あいつかーわかった聞いてみる」

 

で、気を取り直した天葉が百之助に聞いてくる。

 

「で?車の名前は?」 

 

 

「ラッフィカだったはずだ。ちなみに設計したのはセリカ・ランボルギーニで俺の台湾奪還戦時の戦友。」

 

「へー…」

 

「そういやあれからだいぶ経つのか〜時間は早いね〜」

 

「何おじいちゃん見たいこと言ってるのよ…」

 

「だってもう10年ぐらい経つんだぜ〜?」

 

「その時の話今度してよ」

 

「いいぜーその為にも帰ってこなくっちゃだな〜もちろん外国に行ったときの話もしてやろう」

 

「了解」

 

そうしてる内にランボルギーニのディーラーに到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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84話

店員に案内された先に3人の人物がいた。それを見るなり百之助は、冷ややかな目で3人を見て言う。

 

「………なんであんたらいるんだ?」

 

「久しぶりなのに酷い言いようだね…」

 

「可愛げが相変わらず無いわね…」

 

「卿、そこまでしかめっ面しなくてもいいでは無いか…」

 

「百歩譲ってセリカがいるのはまだ分かるが…今上天皇陛下とウィリアムズ王太子殿下いるのは何でだよ!?ウィリーに至っては来日したなんて聞いてねえぞ!?」

 

「おや、愛称の方を使ってくれるとは嬉しいね。」

 

ウィリーと呼ばれた人物がにこやかに笑う

 

「嬉しいね。じゃねえよ!ここは日本だぞ!?一国の王太子がほっつき歩いていい場所じゃねえよ!?暗殺されたらどうする気だ!?」

 

「百之助がいるだろう?」

 

「俺流石にそこまで万能じゃないよウィリー…」

 

「台湾奪還戦で戦死しようとした人間の言葉じゃないと思うんだけど?」

 

「悪かったな!」

 

「所で百之助、後ろにいる御令嬢方は君のこれかい?」

 

ウィリアムズはそう言いながら小指を立てる

 

「そうだが?」

 

「へぇ〜あの百之助が異性に興味を持つとはねぇ…」

 

「悪いか?」

 

「いや、柔らかくなったな〜と。昔なら邪魔なだけだと言うだろうから劇的な進歩だと思うよ?」

 

3人とも少し笑っていた。

 

「ウィリアムズ王太子殿下。余り百之助をいじめないでください、この人…拗ねますから」

 

「ちょっと夢結!?」

 

流石に天葉は恐れ多いので言わ無かったのだが、夢結はお偉方に対する感覚が麻痺し始めていた。

 

「お前な…」

 

その百之助は夢結にも弄ばれていた。

 

「まあいいじゃないか…さてと、自己紹介は後回しにして本題に入ろうじゃないか。セリカ、シーツをめくっていいのかな?」

 

「ええ、いつでもいいわよ?」

 

「了解」

 

バサ…

 

「おお…」

 

「これは…」

 

「凄い…」

 

「洗礼されてますね…」

 

シーツの下にあったのは一台の車…そうこれこそがセリカ・ランボルギーニが設計し40台のみを生産した限定車『LP2202ラッフィカ』である。今までのランボルギーニに比べて丸みを帯びたその車は日本の四式戦闘機疾風をモチーフとし、車体シアンをベースとしている。

 

「どうかしら?」

 

「点数付けろって?無茶を言うな、要求通りに仕上がってるじゃねえか。言う事はねえよ」

 

「ちゃーんと要求通りにマギを使えるようにしておいたわよ?」

 

「だろうな。そもそもラッフィカは同じ車は一台もないだろうが」

 

「その通りよ、この車はあなた専用のマシーンなの、他の人では扱えない代物よ。これは鍵ね」

 

と、セリカから鍵を受け取る。

 

「エンジンをかけてご覧なさい」

 

「了解」

 

鍵を開け車に乗り込み、エンジンを掛ける

 

ブォォン!ドドドド!

 

「おいセリカ!これハイブリッドだよな!?」

 

「ええ!モード切替はコンソールでやるの!」

 

「なるほど!」

 

コンソールを操作しEVモードにする。

 

するとエンジンが止まった。

 

「なるほどな!凄えな…」

 

「自動運転も付いてるわよ」

 

「はあ!?正気か?あれ確かやらかしたから禁止になっただろうが!」

 

「完全自立運転出来るわよ!技術自体はトヨタが提供してくれたわ。しかも問題点を洗い出してOS組み直したらしいの。」

 

「トヨタァァァァァァァ!!」

 

「安定と信頼のトヨタだなぁ…」

 

「さすがトヨタ」

 

「これであなたの大好きなカーチェイス出来るわよ☆」

 

「やったぁ~…ってなるかボケェ!やっちまってるじゃねえか!」

 

「大丈夫!次の新型のLFA共同開発だから☆」

 

「サラッとすげえこと今言わなかったか!?」

 

流石にまずいと思ったのかとぼけ始めた。

 

「あら?なんのことかしら?」

 

「とぼけるなァァァァァ!!」

 

「凄く…」

 

「賑やか…」

 

「ですね…」

 

と夢結、天葉、楠美は若干引いていた。

 

 

 

 



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85話

納車式の後、7人は料亭に来ていた。

 

初対面の方がいる為自己紹介を始めた。

 

「では私から自己紹介をしよう、イギリス王国皇太子ウィリアムズ王子だ。百之助とは台湾奪還戦時の戦友で当時16歳、陸軍少佐だった。私の事はウィリーで構わない。」

 

「セリカ・ランボルギーニよ。元イタリア陸軍少佐、同じく台湾奪還戦で百之助と知り合ったわ。今はランボルギーニの副社長やってるわよ。」

 

「百合ケ丘女学院高等部2年、白井夢結です。百之助とは中等部編入時に、同じクラスでそれからずっとですね。」

 

「同じく天野天葉です。夢結と全く一緒ですね。」

 

「同じく高等部一年江川楠美です。高等部からです。」

 

「ほお…昔話を聞いたり話したいところだがそれは、置いといて…本題に入ろうか、百之助これを。」

 

と言って細長い包を渡してくる。

 

「なにこれ?…開けても構わない?」

 

「うん、構わないよ?後それ、ゼウス神からの贈り物だからね?」

 

「……………は?」

 

神様からの貰い物とは全く考えてなかった百之助ではあるが不気味なので急いで開け、魔術で包を燃やした。中から出てきたのは一振りのロングソード。

 

「こいつは…精霊兵器の一つ、ヴェロスティール!?」

 

「よく知ってたね。」

 

「いや、おとぎ話レベルとかじゃねぇぞこれ。しかし精霊兵器とはまた皮肉な…」

 

百之助は頭を抱えた。

 

「百之助、精霊兵器って?」

 

「魔女とか吸血鬼とかを狩る為の代物だ、魔史学は教えたよな?」

 

「ええ。」

 

「古い時代のエギゾシストが作り出したもので【魔】に関するものを討ち滅ぼす為の武器だ。けど制約もあって、誰でも作れるものじゃない。このヴェロスティール以外に7つしか無い上に製造方法が特殊すぎるのと技術も失われてるから製造も不可能。チャームの原型とも言われてる。違いはマギクリスタルコアがあるか、精霊を納めたこの鉱石を使うかだ。」

 

そう言いながら百之助は、剣のガード部分の緑色の部分を見せる。

 

ウィリアムズ王子が百之助を見ながら言う。

 

「でだ百之助、私にとある人物が会いに来たんだけど、あれを持ってたんだよね…ペインシーラ。」

 

「ペインシーラ!?」

 

流石にこれには驚きを隠せない。

 

「そう、ペインシーラ。」

 

「あれ持ってるやつ確か戦死した上に紛失してなかったか!?」

 

「そうなんだよねぇ…」

 

「オイオイ洒落にならんぞ…でそいつがどうかしたか?」

 

「百之助によろしくってさ。」

 

「………………は?意味がわからんのだが?」

 

「いつか分かるさ…気長に待ちなよすぐに会えるさ」

 

そう言いながらウィリアムズ王子は笑った。

 

「さてと…色々聞かせてもらおうかな〜」

 

「ええ、私達も知りたい事ありますし。」

 

 

「えっ?ちょっ!まっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 



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86話

夢結、楠美、天葉から学園生活やら百之助との馴れ初めなどを聞いた。ウィリアムズ王子、今上天皇、セリカの三人はとても満足そうに聞いていた。

 

「百之助!君は隅に置けないなぁこのこの〜」

 

と上機嫌である。

 

「やめてくれ…」

 

「じゃあ僕達が最初に会った時の話をしようかな〜」

 

「何それ鬼畜ぅ〜」

 

「良いじゃ無いか、減るもんじゃないし。」

 

「黒歴史すぎるからやめーや」

 

「でも貴方の彼女達は聞く気満々のようよ?」

 

 

見れば聞きたそうな目を百之助に向けており、百之助は根負けした。

 

「…まあいっか…」

 

「じゃあ百之助が許可を出したから話すけども…三人とも台湾奪還戦を知ってる?」

 

「大まかにしか知らないです。」

 

「OK。台湾奪還戦事態は台湾政府が国連に打診したのが最初だ。それにアメリカが乗りアメリカ主導で作戦が組まれていた。…それが悲劇の始まりだ。」

 

ウィリアムズ王子の言葉にセリカが補足した。

 

「アメリカ軍は南極で敗退したにも関わらず、リリィ及びチャームユーザーの戦力化に難色を示し規模が大きいにも関わらず通常編成で遠征軍を編成していたのよ。」

 

「他国軍は積極的に取り入れてたけど…問題があってね…人数が足らなかった上に舞台編成のノウハウが無いために通常部隊に紛れる感じで編成されてたんだ。」

 

一拍おいて話し続ける。

 

「唯一それのみで編成してたのが…日本近衛軍の第一師団隷下の一個連隊…相澤青葉大佐率いる第一近衛連隊。…この部隊が百之助のいた部隊だ。」

 

百之助が話す。

 

「…大佐は良い人だった…ずっと気にかけてくれてな…色々話してくれたんだ…自分の娘の事とか…妻の事とか…結婚生活とか…雑学とかな…」

 

それをセリカが引き継ぐ

 

「慢心…判断の遅れ…各国の思惑…そんなのが絡み合って…壊滅しかかった。その中でも最前線にいたイギリス軍が包囲されたのよ…そこで日本の国防軍司令官、朽井迅三郎大将がイギリス軍を撤退させようと自ら出撃…殿担当は第一近衛連隊…しかも自ら志願したのよ。」

 

ウィリアムズ王子が続ける

 

「それでイギリス軍は全滅を免れた…が…即座に反転するはずの第一近衛連隊は反転せずそのままヒュージヤークトを敢行。それに気付いたイギリス軍の司令官、チャック中将は軍を再編して負傷兵を除き即座に反転、第一近衛連隊を追うが…とき既に遅しで約5千名いた内生き残ってたたのはわずか7名…その内5名は百之助を含む少年兵だった。…その中に、相澤大佐は居なかった。」

 

一泊おいた。

 

「百之助は先行した大佐を追うと言って聞かなかったのだが…強引に7名とも回収して駐屯地に収容した。ここで困ったのが7名の処遇だ。大人の2名はともかく5名はまだ子供でしかも同隊が全滅している…上層部でも意見が割れたようだ。」

 

「結論として私とウィリアムズ王子が一番歳が近かったから5人の面倒見るのだけど…まぁ百之助の心理状況が悪くて…」

 

「具体的には…子供でなることは絶対に無い症状でPTSD一歩手前まで行ったんだ。」

 

「…悪かったな…」

 

「だから貴方のせいでは無いでしょう。戦場なんだから…」

 

しんみりどころか重苦しいのでウィリアムズ王子は話題を変えた。

 

「まあそんな感じだったんだけどね。…それは置いといてだ。イギリスで勲章もらったんだよ百之助。それでダンスパーティーなわけだけど…同年代の女性受けが良くてね。イギリス貴族の子息共より百之助の方が紳士的だったという笑い話があって、すごく人気だったんだ。今でも百之助好きな令嬢は居るんじゃないかな。」

 

 

「マジ…?」

 

「自覚がないって…大変ね…」 

 

と夢結の冷めた目に驚きを隠せない百之助である

 

「夢結!?」

 

「まあまあ落ち着きなさいな…ご飯来てるのだからご飯にしましょう」

 

その後も百之助に関する話題で盛り上がった一同である

 

 



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87話

数日後、百之助は起きた。

 

「もう朝かよ…」

 

いつもならランニングやらをするのだが気分が優れないので伊吹を起こしに行った。

 

ガチャ…

 

「伊吹…朝だぜ」

 

「…ん?もうそんな時間か?」

 

「おう」

 

百之助は伊吹のベッドに座る

 

「どうした?いつもなら走ってる時間だろ?」

 

「気分が乗らなくてな」

 

「だな…なんてったって…作戦前日だからな」

 

「ちげえねぇ」

 

「しかしまあ…あそこを攻略しろとは…皮肉だな…」

 

「仇討ちできるからいいんじゃねえか?」

 

「確かにな…なぁ…夢結達には話したのか?」

 

「……話したよ…天葉にはもっと早く言えと言われたがね」

 

「そうか、オレは話せてない。」

 

「お前らしくねえなァ」

 

「違いない…暇だし装備チェックしとくか?」

 

「だな」

 

しばらくして伊吹の部屋にリュック、着替え、戦闘食料、弾倉入れ、エンピ、防弾チョッキ、弾帯、外被、銃剣を持って来ていた。

 

「40式で行くのか?」

 

「今回はな」

 

「そうか…俺はM14で行く。」

 

「そっか…」

 

二人で確認しながら荷物を詰めていき、最後に弾帯に装備品をつけていく…

 

 

「よし、これで良いな」

 

「バッチリだな」

 

 

次に銃を確認していく。

 

「動作点検終わり」

 

「結構早かったな」

 

「心の中では楽しみなんだろうぜ…久しぶりの大規模作戦だからな」

 

「オイ、軍刀は?」

 

「持ってくよ、でも姉のを持ってく…」

 

「そうかよ」

 

ー その後 ー

 

講義を受けたらその後出征する予定の二人はどことなく落ち着きが無く講義の内容が全く入ってこなかったし、周りのクラスメイトは気付いても何も言わなかった。

 

「今日の授業はこれで終了しますが…船坂、富永、前に来なさい。」

 

この教官はシェリスヤコブセンと言う女性でシスターゼロとかいう化け物(リリィとして)である。

 

「「ハイ」」

 

呼ばれた二人は教壇の前に立った。シェリスは続ける

 

「この二人はこの後出撃します。いえ、出征すると言ったほうがいいわね」

 

ざわつき始める一同、それを一発でシェリスは沈めた。

 

「静まりなさい、両名説明なさい。」

 

「ハッ!…我らは今から戦場に向かいます。が、この作戦は死者が出る可能性が非常に高く、それがここにいる2名でないという保証はない。なのでこの場をお借りして弁明させて頂きます。」

 

 

「具体的には何をするの?」

 

そう聞くのはクラスメイトだ。

 

「…陥落地域の奪還及び制圧」

 

「なっ!?」「まさかそんな…」「無茶よ!」

 

と、驚きを隠せない一同である。

 

「ちゃんと帰ってくるわよね?」

 

「首を縦には振れないな」

 

「なんでよ!」

 

「帝国軍人だからだ!貴様らとは違うんだよ!我ら帝国近衛軍人からしたらお前らも十分守る理由になるんだよ!それで満足か!この際だから言ってやらァァ!!!ホントは行きたかねーんだよ!生きてこの学校卒業してえんだよ!でもな、陥落地域の連中はどうだ!?ここで育ったからってそこから離れずに未だに戦ってやがる!満足な補給もないまま!補給が追いつかなくて死んでるやつだって居る!もっと一緒にいたかっただろうに!生きていたかっただろうに!なのに俺たち軍人は指くわえてろってか!?ふざけんじゃねぇよ!そんなことしてる暇があったら一つでも多くの命を助けてやらァァァ!分かったかコノヤロォォォォォォ!!!」

 

すごい剣幕でしかも殺気まで放出したが為に全員萎縮してしまった。

 

「オイ!やめろって!…それは同じリリィがよく分かってっから」

 

「わりい…冷静じゃなかった…」

 

「済まんな…百之助は、そこで沢山知り合いとか戦死してるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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88話

百之助、伊吹、文香、美鈴、愛華は野戦装備で一柳隊のミーティングルームに向かった。

 

ガチャ!

 

「よう!みんな揃ってんな〜wwww」

 

「せ、先輩…なんでフル装備なんだ?しかも近衛軍の…」

 

と、二年連中は複雑そうな顔をし、一年生は頭にはてなが浮かんでいた。

 

「おい、文香。説明してないのか?」

 

「…そんな時間無かったです。」

 

とバツが悪そうに顔をそらした。

 

「……まじか…」

 

百之助は察していたのでそれ以上は追求しなかった。

 

「じゃあ今説明するわ、俺達は出征する。それも陥落地域かつ激戦区だ。相当な死者数が予想される上に、俺達にとっては台湾奪還戦以来の近衛、陸、海、空、海兵の四軍による陸上作戦となる。本音を言えば帰ってこれる可能性が少ないとだけ言っておこう。」

 

「「「「「「「「な!?」」」」」」」

 

これには驚きを隠せない一同である。

 

「梨璃、これを渡しておく。」

 

「…はい…」

 

5人分の…遺書だ。

 

「帰って来なかったら中身を見ても見なくてもいいぞ。帰ってきたら破って捨てといてくれ。いいね?」

 

「はい、兄様。」

 

「よしよしいい子だ。」

 

そう言いながら梨璃を撫でる

 

「////」

 

「……で、何処に行くんだ?」

 

と聞くのは梅だ。

 

「それについては私が説明しよう」

 

「美鈴様、流石に軍機に…」

 

「この際だからいいんじゃないかな?どうせ誰も言わないだろうし不確定要素が二水だけど。」

 

本人は首を横に振ってたので良しとする。

 

「甲州さ」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

それには全員が驚く。

 

「俺にとっては雪辱戦だよ…いや…敵討ちだな。」

 

みんな黙ってしまったが百之助は続ける。

 

「帰ってきたらさ、皆でご飯でも食いに行こうぜ。」

 

全員首を縦に振る。

 

「あと皆にはめちゃくちゃ迷惑を掛ける事になるがよろしく頼む。夢結、こっちは頼むぜ?」

 

「誰に言ってるのかしら?貴方の帰る場所は責任を持って私、いいえ…わたし達が守ってみせるわ」

 

「すまん…」

 

「良いのよ…行ってらっしゃい。」

 

百之助は夢結を抱きしめてキスをした。

 

「トミーはしなくていいのか?」

 

「お前と違って俺は戻る気満々だからな。お前と違って。」

 

「悪かったな!」

 

「そうかっかするなよ。お前だって死ぬつもりは毛頭ないだろうが。」

 

「いいや、ただ死ぬにしてもただでは死んでやらん。」

 

「お前らしくていいけど、悲しませんじゃねえよ。」

 

「分かってラァ。」

 

「文香ちゃんも戻ってきてね。」

 

「分かってるわよ。梨璃さん。」

 

「じゃあ別れの挨拶が終わったところで我らは行きますかね」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

戦いの火蓋はここで切られたと言っても良かった。

 

 

 

 



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ラストバレット編
89話


百之助たちが百合ケ丘から出征して7日後、政府から緊急声明が出された。

 

その内容は…甲州地域の奪還を軍が完了したとの声明であった。

 

これに対する記者会見が行われようとしていた。

 

ー 首相官邸 ー

 

ここに集まったのは防衛大臣、近衛軍大将船坂寧治そして、首相たる桂大輝総理の3名と記者団が集まっていた。

 

報道官が司会を務める。

 

「ではこれより記者会見を始める」

 

「3時間前に我々が声明を出した通り、甲州地域の奪還が完了したのであります。掃討や維持は甲州地域のガーデン甲斐聖山女子高等学校に一任し、攻略にあたった部隊、第一遠征打撃軍を撤収させる準備に入ったと11月10日1200に連絡が入ったため、その二時間後に声明を発表したのであります。そして我々はヒュージに対し戦線を布告し、世界からのヒュージ殲滅の為の同盟をイギリス、ドイツと結びこれに備える事をここに宣言す。」

 

この時点で記者一団はざわついた。

 

「静粛に、そしてもう一つ。我が国はより、ヒュージとの戦争を円滑ににする為に、【日本国】から国号を変え、『帝政大日本帝国】と名を変える事を宣言す。」

 

さらにざわついた…何せ【大日本帝国】がここに復活したのだ。

 

「では質疑応答に移行せよ!」

 

記者が手を上げた。報道官が指名する

 

「朝○新聞の大井です。と言う事は総理、我が国は軍国主義に戻ったという事ですか?」

 

「その通りだ。それに伴い赤狩りを実施する。我が国に赤い連中はいらない。」

 

「何という事だ…」

 

朝日新聞の記者はヒステリーを起こした為退場したが…これには各左側の記者団から手が上がった。

 

「毎○新聞の佐々木です。総理、貴方は先の大戦から何を学んだのか!これでは二の舞いになると思うのですが!」

 

「では聞くが、鬼畜英米と叫びまくり、そう仕向けたのは何処のマスコミであったかな?私の記憶が正しければまともな記事を書いたのは一社もなかったはずだ?それに【我が帝国】はそもそも彼らと戦争する気はサラサラなかったのだよ。君は旧海軍の永野修身という方を知っているか?知らんだろう?勉強し直したまえ。他にはあるかね?」

 

「…私からは以上です。」

 

次に指名されたのは産経新聞だ

 

「産○新聞の伊藤です。総理、第一遠征打撃群とはどのような部隊なのですか?」

 

記者のざわめきが消えた。

 

「この部隊は陸、海、海兵、近衛軍からチャームユーザー及びリリィを集めた部隊で対ヒュージ専用の攻略部隊です。規模までは軍機に付き説明できないが。」

 

「では総理、ガーデンとの連携もあるということですか?」

 

「その通りだ。」

 

「私からは以上です。」

 

「次は…」

 

 

 

 

7時間に渡り記者会見が続いた。

 

 

 

 

 

 



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90話

百合ケ丘女学院の管轄地を負傷したリリィ二人が走ってヒュージから逃げていた。服装からしてエレンスゲ女学院であろう。彼女たちは強制外征でここまで来ていたのだがどうやら負傷したらしい。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…急いで!ヒュージがすぐそこまで来てる!」

 

「駄目…さっきの戦闘で足が…」

 

もうすでに…二人とも矢が尽きている状態である上、体力も限界が近い危ない状況であった。おまけに負傷している。

 

「ッ!」

 

もうすぐそこまでスモール級の大軍が迫っていた。

 

「あ……あぁ……っ!ヒュージが…あんなに沢山…っ」

 

どちらも満身創痍ではあるが片方はまだやる気のようだ。自身のチャームを構え直す。

 

「私達はエレンスゲのリリィよ!このままでは終わらせない…」

 

するとヒュージの大軍は形状を変化させた。やる気満々なようだ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ドンドンドン!

 

万事休すかと思われたその時、チャームによる正確な射撃がヒュージを襲う。

 

「梨璃、ヒュージの足を止めたわ!今よ!」

 

「はい!お姉様!やぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そう言うやいなやヒュージの大軍に梨璃が突っ込み蹂躙していく。

 

ザン!ギン!ザザッ!ドドドン!

 

「大丈夫ですか?エレンスゲの方ですよね?」

 

エレンスゲのリリィが礼を言う。

 

「ありがとうございます。その制服…あなた方もしかして…」

 

「百合ケ丘の…!」

 

「はい!一柳隊です!」

 

「挨拶は後よ!今は一刻も早くここから離れましょう!」

 

「はい!お姉様!お二人共走れますか?怪我をしているようでしたら私に捕まって!」

 

この申し出にエレンスゲの二人は断った。

 

「大丈夫です。さあ、あなたも行きましょう。」

 

「うっ、く……ごめんなさい…ありがとう…」

 

エレンスゲのリリィが撤退したのを確認したと同時に一柳対全員が集結していた。最も出征組はまだ帰って来てなかったが。

 

異変に気づいた楓が警告を発する。

 

「10時の方向から更にヒュージが!気を付けてくださいまし!」

 

「待ってください!あのヒュージ、真新しい傷が…」

 

鷹の目で二水がヒュージを確認する。

 

「手負い…あれはチャームによる刀傷。どこかでリリィと交戦した……?」

 

鶴沙が大まかな仮説を立てる。が、ヒュージは逃げ出した。

 

「ええ!?逃げ出した?」

 

「逃しません!雨嘉さん十字砲火を浴びせましょう!」

 

と言う神郭に対して雨嘉は射線が通らないことを伝える。

 

「っ、駄目遮蔽物が多い。それに動きが早い…!」

 

「速さ比べなら私の出番だな!」

 

「いえ、下がって…梅。ここは私が出る…!」

 

言うやいなや突貫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

ゴン!ドン!ガン!ズサァ!

 

「相変わらず、鬼神の如き暴れっぷりじゃのう…もうワシの出番はないかのー」

 

「お姉様…無理はしないでください…っ」

 

と、ミリアムは嘆息し、梨璃は心配した。

 

「…ん?この気配、なんだ?」

 

鶴沙が感じた気配はすぐに現れた。

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 

その声とともに巨大なチャームが空をかっ飛びヒュージに大きい衝撃を与え弾かれそれをチャームの大きさに合わない身体で受け止め吶喊するリリィだった。しかもルナティックトランサーを発動。

 

「何あれ…っ!?巨大なチャーム?」

 

「あんなチャーム、わしでも見たことないぞっ!」

 

これには一同驚愕する。

 

「ヒュージ、見つけたぁぁぁっ!!」

 

と、リリィは某軍人よろしく笑顔であった。

 

「えっ…子供!?」

 

「いえ、リリィです。先ほどのチャームを投擲したようです。」

 

「なんて無茶な戦い方!まるで誰かさんのようですわ!」

 

とそこでその子のレギオンであろう人物たちが戦線に参戦する。

 

「藍!待ちなさい!」

 

「うわー、遮蔽物なんて関係ないね。藍ってば、相変わらずワイルドな戦い方するねー」

 

「今は、藍ちゃんを追いましょう。敵の規模はまだ分からないんだし、孤立させるのは危険よ。」

 

「そうだね………一葉」

 

「はい!恋花様と瑤様は前衛を頼みます。」

 

「お任せー!」

 

「うん、分かった」

 

更に隊長と思われる人物は指示を飛ばす

 

「千香瑠様は死角からの奇襲に備えてください。特に藍は防御が手薄になるので巻き込まれない程度にアシストを。」

 

「了解!藍ちゃんは私が守るわね。」

 

「私はチャームで牽制しつつ、誘導します。各員チャー厶構え。ヘルヴォル、状況開始!」

 

合図とともに持ち場に付き、連携しながら翻弄する。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ごーーーーん!

 

「自分ばっかり目立ってずるいんだー私達のも残しといてよ………ねっ!」

 

「っ………!」

 

「私は別に目立ちたくない…」

 

ドン!ドン!ゴン!ザシュ!

 

「3人とも気を付けて!そのヒュージ!力を残してる!」

 

「っ…………!」

 

「獣と一緒だね、手負いのほうが厄介なんだから、まじで。」

 

「たおす…らんが、ヒュージ…やっつける!」

 

ヒュージが藍と呼ばれるリリィに意識を向けるが…

 

ドン!

 

「藍ちゃんに…わたしの仲間に手出しをするのは許しませんよ?

 

「千香瑠…」

 

「いい感じです、千香瑠様!そのままプレッシャーかけて押しつぶしましょう!」

 

ドドドドドン!ドドドン!ザン!ドドン!

 

どこに逃げても十字砲火を浴びるヒュージ、それに感嘆を漏らす二水。

 

「凄い…凄いです!あんな高度なハイプレス戦術、久々に見ました!」

 

「そうですわね…あのちびっこの無秩序な動き。それすら計算に入れて連携を取ってるように見受けられますわ。」

 

「あれは…あのリリィは…」

 

「エレンスゲのトップレギオン、ヘルヴォルのリーダー……。相澤…一葉」

 

ドドドドドン!ゴン!ザシュ!ザッ!ザシュ!

 

ヒュージは崩れ折れた。



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91話

「不味いわね、これは…」

 

「はい…」

 

先ほどの戦闘から一分後、ヒュージの大群が押し寄せてきていた。先ほどの10倍どころの話ではないレベルでだ。

 

「一葉、どうする?」

 

「この状況では引けない上にこれが市街地に向かうと大変なことになりますので抑えなければ…」

 

「でも、動かないわね…なんでかしら?」

 

その時銃声がなった。

 

ターン!

 

シュルルルルザスッ!ガン!

 

3体のスモール級が同時に崩れ折れる。見れば一つのチャーム、と剣、そして弾痕。

 

「狙撃!?どこから?」

 

「それよりもあのチャーム…桜花じゃ無いか?」

 

「ッ…!…あれは…」

 

夢結の目線の先には見覚えのあるチャームと剣だった。青と緑色の輪光を放っていた。

 

「たしかに片方は桜花ね…もう一つは…ヴェロスティール…ってことは!」

 

ここで無線がオープンチャンネルで繋がれる、それを夢結はスピーカーモードにする。

 

『Reach each member of the White Fellow Corps from Spearhead 1! Rush into a horde of enemy HUGEs! Formation Arrow Head 1!』

 

『『『『『『『『『Yesser!!』』』』』』』』

 

そうしてヘルヴォルと一柳隊の頭上を通過し、ヒュージとの間で陣形を組み直す。

 

「帝国近衛軍!?」

 

「何でこんなところに…」

 

ヘルヴォルからしてみれば不自然に思うかもしれないが一柳隊からして見れば普通である。

 

「スピアヘッド1から白襷各位に達する!以後の指示は日本語にて行う。兵器使用自由!突撃せよ!」

 

百之助を槍の穂先の真ん中に配置、吶喊する。

 

「「「「「「「「天皇陛下ァァァァ!!バンザァァァイ!!」」」」」」」」

 

ターン!カチャン!ターン!カチャン!ピューン!ドドドドド!ガン!ダダダダダダ!

 

「スピアヘッド1!無茶はするなよ!」

 

「ガンナー1!!分かってらあ!」

 

「ふたりとも軽口叩くな!」

 

あっという間に掃討されていく。

 

「す…凄い…スピードが全然違う…」

 

「うわあ…藍より、ワイルド…」

 

と、感想を述べる。

 

撃ちながら百之助は99式長小銃、伊吹はM14にそれぞれ着剣する。

 

カキン!

 

「さーて本気でやりますかね!」

 

百之助はレアスキルルナティックトランサーを発動し、その上で吸血鬼としての力を開放する。髪が伸び、白くなる。そして右目が赤左目が青く光り始める。そして左右の目と同じ色のマギが全身を包み込む。

 

「なんてマギの量!リリィじゃありえない!」

 

「スピアヘッド2!後ろは頼んだ!」

 

「了解!」

 

その時ヒュージの反撃が百之助を襲うが…

 

ドゴン!

 

「スピアヘッド3!ナイス!」

 

「よそ見しちゃだめだよ!」

 

そう言って30式散を構えさらに撃つ!

 

ドゴン!

 

ダーン!

 

そこにガンナー2のチャーム30式2型からの狙撃で更に減る。

 

「いいねー」

 

「そんなこと言ってないで奥のあれ倒してよ!」

 

「それは私がやります閣下!」

 

ガンナー3のライフルピットが狙撃で倒す。

 

みるみるヒュージは数を減らし…

 

「これで最後だ!」

 

百之助が14年式を取り出し撃つ。

 

パァーン!

 

これで全てのヒュージを殲滅された。

 

 

 

 

 

 



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92話

ザス…シュッ!キン!ジャキ!ガッ!チャキン!

 

百之助はヴェロスティールを納刀し、99式小銃改に弾を装填する。

 

「ソヤ!お疲れ!初実戦はどうだったかな?」

 

ソヤと呼ばれた人物は自身の銃に弾を装填し直し、ながら答えた。

 

「はいマスター、何ら問題ありませんよ。強いて言うなら私がマスターに合わせられなかったことですね。」

 

「それはこれからで良い。次も頼む」

 

「了解。」

 

とそこに梨璃が突撃してきた。

 

「にっ…兄様ぁぁぁ〜!!」

 

抱きしめながら頭を撫でる。

 

「おー梨璃、ゴメンな〜心配かけたなぁ…」

 

「えへへ~////」

 

「夢結も、ただいま。」

 

「ええ、後でお話があります。」

 

「りょーかい」

 

そこにヘルヴォルの隊長が割り込んでくる。

 

「貴方方は…何者ですか?それに一柳隊の皆さんはご存知のようですが…」

 

「ああ、すまん。自己紹介が遅れたな。百合ケ丘女学院高等部2年一柳隊所属、船坂百之助だ。ちなみにこの野戦服を着ている時は、帝政大日本帝国近衛軍中将だ。一応、突撃擲弾兵総監って事になってる。リリィとチャームユーザーの日本における総指揮権を持っているといえばわかりやすいかな?エレンスゲ女学院高等部一年、序列1位の相澤一葉さん?」

 

「な!?…なるほど…総指揮権とはリリィの情報も…」

 

「ああ、日本にいるリリィ全員把握済みだ。そして全員私の指揮下に入らなきゃならん。たとえどんな理由があろうとも…な、まあ、そりゃ有事の時とかだけで現状はそこまでは無い。せいぜい第一遠征打撃軍のみだ。」

 

「なるほど…」

 

「マジか…スリーサイズも把握してるのかなぁ…」

 

「ちょっと///」

 

「すまんがそこは全く把握してない、見る必要あるか?なあトミー?」

 

「確かにないな。と言うか…俺にそれを聞くな。そもそも俺にそんな権限は無い。」

 

ガチャ!

 

そう言いなら新しい弾倉を銃に叩き込む。

 

「同じく百合ケ丘女学院高等部2年、兼第九近衛師団長富永伊吹少将だ。」

 

 

「同じく百合ケ丘女学院高等部1年、兼近衛軍中尉船坂文香。兄上とは腹違いよ。」

 

「百合ケ丘女学院高等部3年、近衛軍川添美鈴少尉だ。」

 

「百合ケ丘女学院高等部2年兼、近衛軍少尉明石 愛華よ。」

 

「はいは~い!近衛軍軍曹!船坂佐奈です。兄上とは同腹です!」

 

「佐奈の妹の由奈です。近衛軍伍長よ。」

 

「里見さとりだよぉ〜近衛軍兵長〜よろしくねぇ〜」

 

ここで最後の一人に目線が行く。紫色の髪と目を持つ少女で白いブラウスにブリッツスカート、それをベースに防弾チョッキとごてごと沢山ついてる兵装類。

 

「…マスター、私の説明はマスターがしたほうが良いかと。」

 

「…はいよ。こいつはABR-00ソヤだ。ものすごーく分かりやすく言うとロボットだけどもう一つの側面を持っていてな、こいつチャームなんだ。」

 

「「「「「「「「「「「「「「はい!?」」」」」」」」」」」

 

「人の形をした完全自立式のチャームだ。」

 

「じゃあ、桜花は?あれもチャームだよな?」

 

「普通のチャームと違うのは、完全自立ってだけじゃないぞ〜?他のチャームと干渉しないから現状、円環の御手持ちじゃなくても同じように使用できるという点だ。」

 

「なんという画期的なチャーム…」

 

「そういう訳で皆様、今後マスター共々よろしくおねがいします。」

 

 

 

 



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93話

「んんっ〜!!雨もすっかりやんだみたいだな。」

 

雨がさっきまで降っていたが今はやんでいる。

 

「ヒュージの方も百之助様達が瞬殺したので最後だったようじゃ。この付近からはもう反応が無い。」

 

と、ミリアムが探知機とにらめっこして確認する。

 

「一葉さん!またお会いできましたね。嬉しいです!」

 

「私もです。先日は簡単な挨拶だけでしたからね。夢結様も来ていただきありがとうございます。」

 

百之助が夢結に後ろから抱きついた。

 

「もう///」

 

「久しぶりなんだから良いじゃないか〜」

 

「久しぶりって…貴方ね…」

 

「あの…お二人は…どういう関係で?」

 

「見ればわかるのでは?」「見ればわかると思うわ」

 

と、二人同時に言う。

 

「えぇ!?…つまりお二人は…そういう関係…」

 

「それはそれとして、随分早い再会になってしまったけれど、あえて嬉しいわ。」

 

とそこでヘルヴォルの隊員が入ってくる。

 

「なになに、一葉ってば百合ケ丘の子たちと仲良しだったんだ。」

 

「いえ…仲良しと言うか…」

 

「はいっ!お友達です!」

 

(相変わらずだな梨璃は…)

 

と、嬉しそうな百之助である。

 

「ふふっ…そうみたいです。」

 

一葉は、先ほど助け出されたエレンスゲ女学園の生徒2名を見る。

 

「あなた達も無事で良かったです。」

 

「いえ、まさかヘルヴォルに来て頂けるとは思っていませんでした。」

 

「あっ、まずは御礼申し上げます。この度は救援要請に快諾いただき我がエレンスゲのリリィを保護いただけた事誠にありがとうございます。正式な感謝状は後日、学園を通して送られると思いますが ー」

 

彼女の父を知っている為、流石にここまで硬いと思わなかった百之助である。

 

「………」

 

「かたい! かたい!かたい!かたい!買ったのを忘れて三日後に冷蔵庫から発掘されたドーナツくらいカッチカチでパッサパサだよ。一葉!」

 

「そんなこと言われても…」

 

不服そうである。

 

と、そこで気になった二水が問う。

 

「あの…貴女は…」

 

「おっと、自己紹介が遅れたね♪ヘルヴォルのお洒落番長、飯島恋花とは私のことよ!」

 

「ばんちょう…?」

 

「エレンスゲには、変わった役職があるのね。」

 

「HAHAHA!!」

 

「百之助、笑いすぎよ。」

 

「ハイスミマセン。」

 

「本気にしないでください夢結様。恋花様もあんまりふざけないように!」

 

「だって一葉が硬いからさ〜」

 

「恋花様が柔らか過ぎるんですよ。」

 

それを見ていたミリアムが口を開ける

 

「あれがエレンスゲのトップレギオンか。思ったより愉快な連中じゃの。」

 

「なかなか面白いレギオンに入ったみたいだナ、千香瑠」

 

「元気そうだな千香瑠。」

 

と、千香瑠と呼ばれた人物に梅と伊吹が声をかける。芹沢千香瑠というのが本名だ。

 

「ふふふ…二人とも同じような感じでしょう?」

 

「それに夢結さんと同じレギオンに所属してるなんて私も嬉しくなっちゃいます。」

 

「あー、それはまあ、うちのリーダーのおかげというか…うん。」

 

とそこで伊吹が声を荒げた。

 

「おい!さとり!おま!なんて格好!」

 

「え〜暑いんだも〜ん〜さとりが〜する事なんて〜個人の自由でしょ〜」

 

見れば上半身の野戦服を脱ぎインナーになっていた。このインナーは防刃防弾ともに優れているものの体組織を支える機能がないためその…揺れるのである。もちろんその下には何もつけていない。

 

「いいから着ろ!」

 

「え〜やだ〜」

 

「おまえな…」

 

「女の子なんだから着ないとだめでしょ!」

 

まさかの佐奈にまで言われん始末である。

 

「こっちはこっちで愉快な連中じゃの…」

 

「あれでも近衛軍じゃ結構な有名人なんだがな…」

 

「ええ…」

 

「それはともかくとして、お主ら知り合いじゃったのか〜夢結様の事も知っておるとはな。」

 

「ええ、何度か戦場でご一緒する栄誉にあずかりました。」

 

「ははは、謙遜はよせよせ。大人しそうなナリしてるけど千香瑠は相当な使い手だからな。」

 

「間違いねぇ」

 

「ふむ…まあ、そのチャームを見ればわかる。百由様から聞いてはいたが直接見るのは初めてじゃな。」

 

「あの…千香瑠。携帯食、余ってないかな?藍がお腹すいたって騒いでて…」

 

「ああ、動き回りましたものねでも急な出撃だったから藍ちゃんが好きなお菓子はないかも…」

 

「甘くないの…やだな、モソモソしたクラッカーとドロみたいなスープは、いらなーい。」

 

見ればさっきのチャームぶん投げた子であった。

 

「おっ!さっきのルナティックトランサーの子だな。そちらは、はじめましてかな?」

 

「らんだよ。ささきらん。」

 

「あ、ご挨拶が遅れました。初鹿野瑤です。…よろしくお願いします。」

 

「私は吉村・Thi・梅。さっきも話してたけど、千香瑠とは何度か戦場で会った仲だ。」

 

「ワシはミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスじゃ。リリィじゃが、アーセナルとしてチャームの開発調整も請け負っておる。」

 

「ミリ村…昼で…マイ?…わかんない」

 

頭が混乱していた。

 

「いやいや、混ざっとる混ざっとる。」

 

「ハハハ、難しい名前だもんな、こっちはぜひグロッピとよんでやってくれ。」

 

「グロッピ?…ですか…」

 

「やめい、梅様。変なあだ名で呼ばれるのは百由様だけで十分じゃ。」

 

「グロッピ…覚えやすくて、いい。」

 

「むむ、まぁ、どうしてもというのなら良かろう。あまり人前で連呼させたくは無いが…」

 

「んふ…グロッピ。」

 

嫌そうなミリアムとは対称的な藍である。

 

「なんだか、すみません…」

 

「あははは、面白い娘じゃの。さっきまであんな戦い方してたとは思えん。」

 

「でも、藍は、藍です。」

 

「ああ、そうだな見事な戦いだったぞ。」

 

「お、そうだ。甘いものが好きだったら、このチョコをやろう。」

 

と、鞄の中からチョコを取り出した。

 

「ちょこ…!?」

 

すごく嬉しそうである。

 

「おい、梅様!そりゃわしが持ち込んだおやつじゃろうが!」

 

「まーまーいいだろ。ちっちゃい英雄さんにご褒美をあげないと、な?」

 

ちなみに白襷隊連中は木に寄りかかって睡眠を取ってたりする。

 

「別に良いが…ブドウ糖補給の為の特性チョコレートじゃ。常人にとっては脳が痺れるほど甘いから覚悟するのじゃぞ。」

 

「おっけー。らん、あまいのだいすきだからだいじょうぶー。」

 

と、美味しそうにほうばり始めた。

 

「なんだかすいません…ほら藍ちゃん、ありがとうございます。でしょ?」

 

「ほりがとーございはふ(ありがとうございます。)」

 

「可愛い…神琳、あれ…すごく可愛い…」

 

「欲しがっても駄目ですわ。こっちで我慢なさい。」

 

そう言って神琳は、雨嘉に鶴沙の方を向かせる。ほぼとばっちりである。

 

「こっちってなんだ、私の方を見るな。」

 

「でも、どこか鶴沙さんに似てますわね。サイズ的なものもそうですけど、どこか雰囲気と申しますか…。」

 

「どっちも…可愛い…」

 

「……」

 

不服そうである。

 

しばらくして、負傷したリリィを撤退させた後、全員集まった所で一葉は切り出した。(白襷の面々も、仮眠を終わらせている)

 

「とにかく助かりました。この御礼は、いずれまた日を改めてお返しいたします。」

 

「で?それでヘルヴォルは、特型追っかけるんだろ?」

 

「はい…って、何故それを!?」

 

「俺を誰だと思ってる?気配で特型いるのはわかってるし、君の事だから追うんだろうと思ってたよ。白襷隊は同行する。…それにな、台湾奪還戦で君の父上の部下だったんでねえ、相澤葉一大佐に申し訳が立たねえ。まさか親子揃って戦場に来るとは思っても無かったよ。なあ、トミー?さとり?」

 

「そうだね〜」

 

「だな」

 

「という事は…貴方方が…第1近衛連隊の生き残りですか!?」

 

「おうよ!…それに、うちの妹も行きたそうにしてるしな!」

 

「はい兄様!一葉さん!私達一柳隊も同行します!」

 

「えぇ!?しかし…ん?百之助様と、梨璃さんは、シュツエンゲルではありませんよね?」

 

「確かにそうだが、梨璃とは腹違いだ。」

 

「なっ!」

 

「ねぇ一葉、本当は一緒に協力し合いたいんだよね。でも、これ以上、助けてもらうのはいけないと思ってる。」

 

「はい、確かに協力し合う事は決まりました。ですが、すでにエレンズゲのリリィを助けてもらっています。ですがこれ以上、一柳隊、白襷隊の力をお借りする訳には…」

 

「言っておくが、白襷隊の中にはヘルヴォルが嫌いな連中がいるぞ?何度も刃を交えたのもそうだし、血が流れてる。極めつけは【日の出町】だ。俺の姉はそこで戦死した。」

 

「…っ!」

 

ヘルヴォル全員の表情が曇った。

 

「だがな、それとこれとは話が違う。手を取り合うと決めた以上、貸し借りとか言う概念は無しだ。仇討ちも含めて…な。それでいいな文香!」

 

「わかっています兄上。」

 

実は文香、小さい頃に目の前でヘルヴォルのリリィに母親を殺されている為ヘルヴォルに対して復讐心を持っていた。

 

「よろしい!それに、そんな水臭いこと言うなよな。現に梨璃と夢結は一葉が首を縦に振らずともついてくるぜ?なあ?」

 

「はい!」「ええ」

 

「分かりましたでは、3隊合同と行きましょう!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

ここにヘルヴォル、一柳、白襷による共同作戦が始動した。

 

 



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94話

「ヒュージ反応、無し。この付近には居ないみたい、です。」

 

「ふむ、こっちも同じくだ。」

 

瑤と梅は、探知機を見ながら五感で確認した。

 

「一葉達の方はどうでしょう。隊を分割して混合とか、大丈夫かな…」

 

「大丈夫だと思います。姉上もいますし。」

 

「全く同意見だね。」

 

「でも慢心は駄目、絶対、ですよ。」

 

佐奈に対し由奈は慎重であった、さすがスナイパーである。

 

「でもなんとかなると思うぞ、こう見えて全員修羅場はくぐってるわけだし。あとはあれだな、純粋にみんな仲良くなりたいんだろ。」

 

「仲良く…ですか。」

 

「ああ、うちのリーダーは人懐っこいところあるからな。」

 

「えぇ〜っ!!本当ですか〜っ!!」

 

「ほら早速始まったみたいだゾ…ふふふっ」

 

「姉上が犬に見えるのは私だけでしょうか…」

 

「確かに…」

 

船坂姉妹からした見たら異様な光景ではあるのだ。

 

「千香瑠様もさとり様も山梨の出身なんですかっ!!」

 

「はい、そうです。住んでたのは中学の頃までですが。」

 

「私はぁ〜6歳までしかいなかったかなぁ〜6歳からずっと軍役だったし〜帰ろうと思った時には〜陥落してた上に家族全滅しちゃってたから〜家族の顔すら思い出せないんだぁ〜」

 

「ごめんなさい…」

 

「気にしなくていいよ〜終わったことだしね〜それに最後に、両親に言われたのは【化物】だったし〜」

 

「そうだったんですね…でも、同郷の方とお会い出来て嬉しいです。」

 

自分の妹ながら切り替えが早かった。

 

「…いい雰囲気のレギオンだね。」

 

瑤は、素直にそう思ったようだ。

 

「リーダーがリーダーですもの〜。私達の絆は絶対ですわ。ね、梨璃さん!」

 

楓も相変わらずであった。

 

「あははは…頼りないリーダーですけど、みんなに助けられてなんとか頑張ってます!」

 

「信頼し合えると言うのは素晴らしいことだと思います。その繋がりこそ、レギオンの…リリィとしての強さでしょう。」

 

「所で〜百之助ちゃんは〜何でそんなにへこたれてるの〜?」

 

「だって…御台場防衛戦とか参加したかったァァァ!寝てる間にめちゃくちゃ楽しそうなことやってるじゃないか〜」

 

本音である。

 

「百之助お前な…」

 

「そういう百之助ちゃんは〜いろんな戦場で戦って生き残ってたでしょ〜はっきり言うけど〜今ここにいる全員台湾奪還戦に参加してたら全滅待ったなしだよぉ〜?私だって〜百之助ちゃんがギガント級400キルオーバーしなかったら死んじゃってるからねぇ〜」

 

「「「「「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」」」」」

 

流石にこれには皆びっくりである。

 

「百之助ちゃんは〜刀一本でギガント級約400体を含むヒュージ3万をほぼ一人で沈めてるからねぇ〜誰もそんな記録破れないよぉ〜?」

 

「…遠回しに俺人外って言われてません?泣いていい?」

 

「百之助貴方…よく生きてたわね。」

 

「夢結にも呆れられてる!?」

 

「あはは〜そりゃ歩くガーデンとか、不死身の日本兵とか、言われる訳だ〜」

 

「梅まで!?」

 

「兄様は…かっこいいと思います。」

 

「梨璃に慰められた…」

 

心がポッキリと逝ったようだ。

 

「そういえば佐々木藍さん…あの子のレアスキル…」

 

「ああ、夢結と同じ【ルナティックトランサー】のようだな。あの小さな身体であの破壊力…相当なものだゾ。」

 

「えぇ、あの子のリリィとしての素質は相当なものです。ですのが…少し…」

 

千香瑠の表情が曇った。

 

「少し…なんですか?」

 

「扱いが難しいね。放って置くと、勝手に突撃しちゃうし。」

 

梨璃の疑問に瑤が答えた。

 

「そういえば、先ほども先行してヒュージに挑んでましたわね。斬新な戦術だと思いましたが…なるほど。」

 

そう言いながら楓は百之助を見る。百之助は、顔をそらした。

 

「私達は一葉の指名されてヘルヴォルに入ったの。」

 

「たしか、エレンスゲはリリィ達に序列と言うランキング制が敷かれてるんでしたわね。」

 

「そうそう、そして今の序列一位は、何を隠そう我らがヘルヴォルリーダーの一葉だよ。」

 

と、恋花が自慢げに言う。

 

「あの規律に厳しいことで有名なエレンスゲで、一位ってすごいなぁ。」

 

「確か序列一位である一葉さんには、レギオンメンバーの指名権が与えられていたのよね。」

 

梅は感心し、夢結はエレンスゲのレギオン制度について知っていることを述べた。

 

「ええ…でも私はそれほど序列は高くありません。」

 

と、自虐気味に千香瑠が言う。

 

「それでも千香瑠様たちを選んだんですね。一葉さんは、すごいな…自分の意志でそんなに動けるなんて尊敬しますっ!」

 

「そうですね」

 

「おしゃべりはここまでだ。各位!臨戦態勢!」

 

百之助がいち早く号令を掛け白襷隊の空気が変わり、それに習うように一柳隊とヘルヴォルは、戦闘態勢を取った。

 

「こいつはケイブだ!ちっ!何故俺は気づかなかった!」

 

「ケイブ…ヒュージ達が通り道に使うワームホール。放って置くと周り一帯がヒュージだらけになっちゃいます!」

 

「二水!一葉に連絡して合流を!」

 

「合流後、ケイブを全力で叩きましょう!」

 

「息ぴったりだね…」

 

と、瑤は二人の息がぴったりで兄妹だと感じた。

 

「まずは、敵の正確な位置と、規模が知りたいですわね。…お願いできますか、梅様。」

 

「おう、任せとけ。」

 

「私も一緒に。」

 

「いえ、偵察は隠密と機動力が命ですわ。ここは梅様にお任せるのがよろしいかと。」

 

「そうか…そうだよね。気を付けて…」

 

「うん、ありがとう。じゃ、先行ってるゾ。」

 

「私達も急ぎましょう。激しい戦いになるかもしれないわ。」

 

「特型ヒュージ…そこにいる可能性が高いですね。」

 

「ノインヴェルト戦術も備えておいたほうが良さそうですわね。梨さん、特殊弾の準備はよろしくて?」

 

「え、えーと…うん大丈夫、持ってる!」

 

「30発持ってきてるぞ」

 

「百之助様!なぜそんなに持ってきているんですの!?ここら一帯耕すおつもりですの!?そもそも何故30発も持ってますの!?」

 

言うまでも無く戦場で使うためである。

 

「って言われてもなぁ…」

 

「百合ケ丘のノインヴェルト戦術…。」

 

「そう、百合ケ丘のノインヴェルト戦術教育は世界的権威ですわ!その名に恥じぬ働きをお見せします!」

 

「か、楓さん。そんなにプレッシャーかけないでくださいよ〜。緊張しちゃって失敗しちゃいそうです…」

 

二水はテンパっていた。

 

「ミスったらちびっこ一号はちびっこ3号に降格ですわ。代わりにヘルヴォルのちびっこを一号に昇格しましょう。」

 

「そ、そんなぁ〜…って別にそんな呼び名は、ほしくないです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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95話

梅は、できるだけケイブの近くに行き偵察していた。

 

「かなりの数だな…サイズもスモールからミドルまで選り取り見取り…。」

 

その中でも存在感が別格な個体がいた。

 

「っ…!?あの個体…他とは違うな周りのヒュージもあいつを取り囲むように展開している。あれが情報にあった特型ヒュージか。…もう少し情報がほしいところだが…」

 

特型が梅を視認した。

 

「っ、しまった!発見された…っ!?」

 

特型から梅に攻撃が開始された。

 

ピュイーン!

 

「く…っ!」

 

「ヒュージの視線を独り占め、か。ははっ、ゾッとしないな。私はこっちだ!ほらほら、ついてこーい!」

 

ヒュージから逃走する梅

 

「そらよっと!遅い遅い!鬼さん、こちらっと♪」

 

(これである程度、ヒュージを分断できたな。そろそろ頃合いか…)

 

戦場では一瞬の判断遅れが死につながる。目の前に特型が躍り出た。

 

「あっ…やばっ。」

 

ダン!

 

「やらせません…!」

 

ナイスタイミングで千香瑠が射撃を見舞った。

 

「ふふっ、絶好のタイミングだな。」

 

「梅さんこそ素晴らしい誘導です。この位置からならば」

 

「ヘルヴォル、総員ポジションについて!敵はヒュージの群れ!多数!」

 

「あらあら、千客万来ってやつ?掃除が大変そ〜」

 

「無事か梅様!」

 

「当然っ!」

 

「一柳隊も、合流完了です!」

 

「白襷も同じく。」

 

「奥に居るあのヒュージが特型ですわね。」

 

「頭に輪っか…それに羽まで…」

 

「まるで…天使…?」

 

「相手はヒュージじゃ!そんなメルヘンチックな相手だと思ってると痛い目にあうぞ!」

 

天使に例えた数人にミリアムが警鐘を鳴らした。

 

「何でもいい!ヒュージはらんが叩き潰す!」

 

と、藍が突撃しようとするがすんでのところで一葉が止める。

 

「待って、藍!」

 

「…なに、一葉、」

 

不服そうである。

 

「私達は散らばってるスモールからミドル級の掃討を担当するわ。一柳隊の皆さんはあの特型ヒュージを!白襷の皆さんは双方の援護を!」

 

「はい、分かりました!」

 

「無茶を言ってくれるぜ…白襷各位!フォーメーションウイングダブルファイブ!接近戦でなく射撃で応戦せよ!撃ち方始めぇ!」

 

「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

ダダダダダダダダダ!ダーン!カチャン!ダーン!ドン!ドン!ドン!ドッ!

 

7.62ミリNATO弾、99式実包、チャームの光弾が一斉に放たれる。見る見るうちにヒュージが一掃されていく。

 

「うわぁ…制圧力がすごい…」

 

流石にこれにはヘルヴォル全員戦慄した。

 

「私達も行くよ!」

 

「とにかくこちらは私達に任せて!梨璃さんたちは頭を潰して!」

 

「了解!」

 

「了解しました!皆さん…行きましょう!」

 

「ヒュージの殲滅とケイブの破壊同時にこなしますわよ!」

 

「いつでも行けるわ…梨璃。」

 

「はい!お姉様! 一柳隊、ヘルヴォル、白襷隊の皆さん!戦闘…開始です!」

 

 

 



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96話

「はぁぁぁぁぁぁっっ!」

 

夢結が突っ込む。そして、自身のチャームを振り被り連撃を加えた上で渾身の一撃を放つ

 

ザシュ!ザシュ!ピュイ!ゴォォン!

 

「やりました!お姉様が!」

 

「特型ヒュージ活動を停止しました。そのままケイプに攻撃を集中 ーー」

 

「いえ、まだです!」

 

梨璃と二水が喜んだ束の間、千香瑠が警戒を促す。

 

「ヒュージ反応未だ健在!其奴、まだ動くぞ!」

 

動き出した特型ヒュージは、形状を変化2枚羽から4枚羽に進化した。

 

「羽が…増えた…」

 

「形状変化…いえ、進化?戦闘中に形状を変化させるヒュージなんて…」

 

「ははは!そうこなくっちゃな!」

 

「っ…!?」

 

夢結に対し特型は攻撃態勢に入った。

 

「お姉様!危ない!」

 

黒い影が2つ特型に突っ込んだ。チャームを振りかぶった藍と、銃剣突撃をけしかけた百之助だ。

 

「キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

二人はほぼ同時に斬りかかり百之助はダメ出しに射撃する。

 

ダーン!かちゃん!

 

「っ…!」

 

ちょっど弾切れの為クリップで装填し空撃ち、そして銃床部分をつかい渾身の一撃で殴りつける。すると特型は吹っ飛び距離が開き、それに追撃を仕掛ける。

 

ゴ!

 

「まだまだぁぁぁぁぁ!!」

 

「梨璃、夢結さん!一旦退避して!そこの二人、援護して!」

 

「はっ、はい!」

 

「お任せください!」

 

恋花が雨嘉と神琳と共に特型に対し援護射撃を見舞う。

 

ダン!ダン!キン!

 

「弾かれてるだと!?」

 

「っ…効いてない!」

 

「由奈!」

 

「分かってる!」

 

由奈が最大出力で自身のチャー厶の高出力砲を放つ。

 

シュバ!ゴゴゴゴ!

 

直撃するがあまり効果は無かった。

 

「うそ!?ラージ級ですら貫けるのよ!?」

 

「トランスフォームに伴う外郭の硬質化と言ったところじゃな、おまけにあの目玉…」

 

りィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

 

 

百之助の30年式銃剣の低振動ブレードがうなりを上げて突き刺す!

 

ザス!ズサァ!

 

切り込みを入れる。

 

「刃は通るみたいだな!ならば!」

 

99式を空間収納にしまい、腰からヴェロスティールと軍刀を抜き放つ。

 

シャキン!

 

同時に特型が攻撃を仕掛ける。沢山の散弾が飛び散る中を百之助は突貫。

 

軍刀の低振動ブレードがうなりを上げ、ヴェロスティールの精霊を封じた鉱石と刀身を緑色の光で包み込む。

 

りィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!

 

 

「ひゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「目が増えた分攻撃力が増してるな。」

 

「天使なんかじゃなかった…あれは、堕天使」

 

「4枚羽の堕天使か、百由様が喜びそうじゃな…よいしょっと。」

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ザシュ!ザシュ!

 

百之助が二太刀浴びせ強引に黙らせる。

 

 

「ん?何してるの?」

 

「あのヒュージの情報を習得しておる。百合ケ丘にチャームもヒュージにも詳しいアーセナルがおってな。データを送っておる。今頃、リアルタイムで解析中じゃろ。」

 

「みんな!周囲を警戒!ヒュージが増殖してきてる。…囲まれないよう注意して!」

 

「ホントだ。さっきより増えてる!」

 

「トミー!ソヤ!」

 

「「了解!」」

 

サバーニャのシールドライフルピットと、ソヤのライフルピットが稼働し、互いに周囲のヒュージを一掃する。

 

 

「うわぁ…容赦ないなぁ…」

 

「私も私も〜!」

 

「姉上!無闇に突撃しない!」

 

「相変わらず船坂家って凄いなぁ」

 

「そうだね…」

 

またたく間に白襷隊によって掃討される。

 

「制圧力が化け物じみてるよ…」

 

「けどケイブから吐き出される量のほうが制圧力より上回ってる!」

 

「ノインヴェルトもこの状況下じゃ使えない…」

 

すると特型がケイプの方に動き出した。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

百之助が周囲のヒュージを蹴散らしながら特型に近づいてゆく。

 

 

 



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97話

あともう少しで刃が届くという瞬間、何者かがその間に割って入り百之助の攻撃を受け流した。

 

キン!

 

「っ!?」

 

「ここで倒されては困る。私が相手をしよう。」

 

そう言った人物は刀を右手に左手にウィンチェスターライフルを所持していた。

 

「土方ァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

百之助は相手を視認し、殺気を全開で放ちながら、咆哮した。

 

「な、何!?」

 

「百之助様がこんなに感情むき出しで殺気を向けるなんて!」

 

これには全員が、困惑した。

 

「土方ァ!久し振りだなァ!!ここで決着付けようぜ!」

 

「ふん!他愛無し!」

 

両者は全力で激突した。

 

「!?土方って事は…土方歳三か!全員聞け!ありゃ敵だ!ヒュージ側に付いた人間でリリィ狩りのスペシャリストだ!気を付けろ!」

 

「なんですって!?」

 

「土方ァ!貴様何故戦う!戊申戦争はとっくの昔に終わってるぜ!まさか、幕府を倒した敵だからなんて抜かすんじゃねえだろうなァ!」

 

「そんなわけ無かろう!それはすでに終わっている!ならば日ノ本の害虫駆除を古い人間がすべきだ!」

 

「だからって他のやつ巻き込むんじゃねぇェェェ!!だから殺したのか!?ゲヘナの研究施設襲って!!研究員皆殺しにした上でそこに関わるリリィもすべて処分したってか!?テメェふざけるんじゃねぇよ!」

 

「でなければもっと血が流れていたぞ!貴様こそ分かっているんだろう!?このままでは民の血が流れるぞ!」

 

「分かってはいるが、だからといって関係のないリリィまで殺す事はねえだろうが!それぐらい貴様だって分かるはずだ!」

 

「ゲヘナは潰さねば多数の同胞が実験台になるのだぞ!」

 

「分かってるが単略的すぎるんだよ!それでヒュージ率いてゲヘナ叩きってか!?正気じゃねえぞ!!」

 

キン!ターン!カシャン!キン!

 

鍔迫り合いや互いの銃で撃ち合い、どんどん激化して行く。

 

「土方ァ!俺は貴様のやり方は気に食わねえが利害は一致してるようだなぁ!だがやり方が前時代的だ!退場願おうか!」

 

「ここで倒れる訳にはいかぬ!勿論貴様も私もだ!」

 

「そこをどけぇ!そいつだけは倒させてもらう!」

 

「それは聞けぬ!」

 

どんどん激化する二人の戦闘、その間にヒュージにケイブに逃げられた。

 

「くそ!」

 

「私の勝ちだな。…む!?」

 

上空から軽快な射撃音とともにフードを被った人物が上空から降下してきた。

 

タタタタタタタタ!!ガコン!パシュ!

 

持っていたのはP90だったがそれを空中で投棄、同時に背中のジョイントを解除し、背中から大きな大剣を右手で抜き左手の手甲から伸縮可能な槍をアンカーの如く射出し、その巻取り速度を利用して加速、土方に突貫する。

 

「ぐっ!?」

 

大剣と、槍は緑色の燐光を放っていた。双方ともに妖精兵器だ

 

「ガドファクスと、ペインシーラ!?」

 

「2対1か…流石に分が悪い、ここで退散するとしよう。」

 

そう言って土方はケイブの中に消えていった。見事な引き際であった。即座に百之助は闖入者に誰かを問う。

 

「そこのフードを被った貴様、何者だ。」

 

「あら?百之助、私の事を忘れたのかしら?実の姉だというのに。」

 

百之助は、一瞬誰か分からなかったが理解した瞬間その答えを否定した。

 

「奏姉上は俺が責任を持ってとどめを刺した、ありえん。」

 

「これを見てもそう思う?」

 

フードを取ったその人物は百之助と同じ髪の色に百之助の母によく似た顔をしていた。彼女を知る人物は絶句した。

 

「うそだろ…」

 

「そんな…」

 

「な…」

 

「馬鹿な…」 

 

そこには元白襷隊隊長にして百之助の実の姉、甲州撤退戦で戦死した船坂奏が目の前に立っていた。

 

「あら皆様、ごきげんよう。船坂奏と申します。地獄から戦場へ舞い戻ってまいりましたわ。姉妹兄弟共々以後お見知りおきを。」

 

その場で全員固まった。

 

 

 

 



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98話

「姉上!…まさか生きてるうちに会えるとは思いませんでした…」

 

そう言って百之助は奏に抱きつく。

 

「ふふっ!久しぶりね、私も会えて嬉しいわ。」

 

「夢結ちゃんも梅ちゃんも久しぶり。元気そうね?」

 

「はい…」

 

「想定外過ぎるゾ…」

 

「所で夢結ちゃん、百之助とはどこまでシたのかしら?」

 

「姉上!」

 

「奏様///」

 

夢結は顔を真っ赤にして完全に狼狽していた。

 

「………………」

 

殆どの連中が固まっていたが百之助が話題を変えるために一葉に問う。

 

「一葉、取り替えずここは解散にしたほうがいいぜ、後日多分またやっこさんとはやりあわなきゃならねえし、こっちはこっちでこの足のある幽霊とお喋りせねばならん。」

 

「そ、そうですね…」

 

「足のある幽霊とは何よ!」

 

「死んだのに目の前に立ってる時点でおかしいですから!」

 

「では、俺たちは退散だ。またな一葉。」

 

「はい。」

 

双方ともに撤収した。

 

その後帰りながら百之助の話しで盛り上がったり梨璃が妹と知った奏が抱きしめて梨璃を赤面させたりと色々あった。

 

 

 

 ー 百合ケ丘女学院理事長室にて ー

 

そこには理事長代行、3人の生徒会長、そして百之助を含む出征組がいた。

 

「船坂百之助以下5名、甲州より帰還いたしました。」

 

「うむ、よく帰ってきた。して、想定外の事とは?」

 

「本当はここで退散する予定だったのですが…実態のある幽霊に会って頂く必要が出てまいりまして…ここに呼んでも?」

 

「構わないが…」

 

「入って来てくれ。」

 

「はい」

 

入って来た人物を見るなり理事長代行は目を見開き、生徒会長三人組は絶句した。

 

「「「なっ!?」」」

 

「甲州撤退戦以来ですね。理事長代行。そして、三人共。」

 

「どういうことじゃ?確実に火葬までしておるぞ?」

 

美鈴方は百之助の事例があるのでそこまで驚いては無かったが流石にこれには驚きを隠せないようだ。

 

「それについては私から説明を。…船坂家の元は神なのはご存知ですね?」

 

「うむ…」

 

「普通の人間であれば死ねば黄泉の国に行き、その中で分かれ、かつ輪廻転生によりぐるぐる回るのですが…船坂の場合は別です。神性が高すぎる為に黄泉の国に行った段階で弾かれ、天津國にはじき出され神となります。なので、船坂家の者は死んでも神になるだけで死んだ事にはならないんです。なので私のように降りてくることが可能だと言うことです。」

 

「にわかには信じられんが…」

 

「百之助が所持している天羽々斬が証拠になるかと。あれ自体が神であり、剣ですから。」

 

一応納得したようだ。

 

「なるほど…して、奏君。復学する気はあるかね?」

 

「ええもちろん。他の子たちは天津國で色々することがありますが私は暇なので。」

 

「あい、分かった」

 

船坂奏に関しては箝口令を敷かずあえてオープンにした結果。ゲヘナに激震が走ったのは言うまでもない。

 

 



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99話

「はあ…何故に百合ケ丘グリーンフェアなる物に参加せねばならんのか…」

 

実は百之助、式典とか祭りとかそういうの嫌いなのである。

 

「力仕事頼むわね?百之助。」

 

「はーい…」

 

夢結に言われてもこの有様である。ちなみに伊吹を始めとする出征4名は、急用で留守である。

 

「あはははは…」

 

「いつにも増して百之助様の元気がない…」

 

「百之助はこう言うの苦手だからナ。仕方ない仕方ない。」

 

「なんでこんな時に限って居ないんだよ…」

 

「はいはい百之助、つべこべ言わずに行くわよ〜後で膝枕してあげるから☆」

 

「やる気出た。」

 

「単純だなぁ…」

 

流石奏である。百之助の取り扱い方法をよく理解していた。

 

「でもグラン・エプレだっけ?」

 

「叶星様が隊長のレギオンです!」

 

一瞬百之助の表情が固まった。

 

「えーと…銀髪に黄金色の目をした…かわいい感じの…?」

 

「はい!」

 

「あっ…俺帰るわ急用思い出したわ」

 

超絶あからさまである。顔も青ざめていた。そして逃げる体制に移行し走り始めたタイミングで夢結に首根っこ掴まれる。

 

「待ちなさい」

 

「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

 

事情を知ってる奏がやれやれという感じで言う。

 

「あ〜…百之助、叶星ちゃん苦手だからねぇ…」

 

「いや叶星の横にくっついてるクリーム色の髪の毛して紫色の目ン玉した奴が苦手なんだよ!千夏姉みたいで!」

 

「高嶺ちゃんの事?あ〜たしかにそうかも。」

 

「あのハッピーセットだけはマジで無理です。てか俺の頭撫でて何が楽しいんじゃぁ!」

 

「少なくとも私は楽しいわよ?」

 

「姉上〜…」

 

もう涙目である。

 

「そういう貴方も叶星ちゃんのほっぺで遊んだりスカートめくりしてたでしょう?同じよ?でももう10年近くあってないでしょう?流石にされないと思うわよ?百之助もスカートめくりはしないでしょう?」

 

「したら殺されるわ!依奈にやりまくって後で干されてるんだからな俺。…まあそれはそれで楽しかったけども。」

 

 

「楽しかったんだ…」

 

「意外と悪い子だったんですね…」

 

「見損なったぞ百之助様」

 

「あ〜あ知らない…」

 

「兄様…弁解できません」 

 

「アハハ、確かにしてたナ、そんな事」

 

「百之助様も大胆なことするのう」

 

「流石に…無いですわ」

 

と白い目を向けられる百之助であるが…それよりも怖いものが…

 

「えーと夢結さん?」

 

見れば笑顔で百之助を見てる夢結がいた。しかしその目は全く笑ってなかった。

 

「百之助?後でお話があります。」

 

「アッ…ハイ」

 

ここから先どうなったかはおまかせしよう。

 

 

 

 

 

 



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100話

怒られたあと百之助は夢結を抱き締めて頭を撫でながらグラン・エプレの面々を待っていた。…まあ当然一柳隊の面々からしたら見慣れた光景であるが。

 

「もう///」

 

「抱きしめられるの好きだろう?」

 

「それはっ!…そうだけれど///」

 

心境としては嬉しさと恥ずかしさが半分である。

 

「完全に愛し合ってる夫婦状態ですわ…」

 

「でもさ…これ、一柳隊の風物詩みたいになってるじゃないか」

 

鶴沙の言葉に全員が納得するようにうなずいた。

 

「「「「「「「…あ〜確かに…」」」」」」」

 

「いっその事結婚させてしまった方が逆に落ち着くのでは無いでしょうか?」

 

二水の言う事はあながち間違っていないだろう。

 

「たしかに…指輪があるのと無いのとでは全然違うらしいしナ」

 

「後は…婚姻届は18を待って、それまでにさっさと式だけ挙げてしまうのはどうかしら?」

 

「一理あるナ」

 

「でも神琳、百之助様の結婚式したとして…多分世界各国の重鎮がたくさん来ると思うの…ほら…台湾奪還戦の英雄だから…」

 

全員固まった。雨嘉は続けた。

 

「少なくとも…英国からは、ウィリアムズ王太子殿下が来ると思う…それどころか今上天皇陛下も来る訳で…」

 

「あはははは…」

 

もうこの時点で笑うしかない。

 

ウーー

 

警報がなったため話を切り上げる。

 

と同時に百之助と奏は歩道橋から飛び降り、ヒュージの場所を感覚で把握しそのまま走って行ってしまった。

 

「は、はやい…」

 

「まったくもう…いつもこれなんだから…」

 

そう言いながら一柳隊の面々は情報を確認してツーマンセルで別れて行動を開始した。

 

ー それからしばらくして ー 

 

ドンドン!キン!ガン!

 

「っ!敵が多い!」

 

「グラン・エプレだけではこれ以上対応できないわね…」

 

「叶星様!どうされますか?」

 

「取り敢えず殲滅戦から遅滞戦術に以降するわ!ここは百合ケ丘の管轄、しばらくすれば援軍が来るわ。それまで支えて!」

 

「はいは~い☆」

 

「りょ、了解ですっ!」

 

「分かりました!」

 

「とはいえ…この数はちょっと…」

 

「厳しいわね…」

 

と、斬り伏せていくが数の暴力とは恐ろしいものがある。

 

スモール級が波状攻撃を仕掛けて叶星の体制が崩れる。

 

「しまっ…!」

 

タタタタタタタタタタタタタ!

 

P90による正確な射撃がスモール級を襲う。

 

「スピアヘッド1!援護お願い!」

 

「遅れを取るなよホワイトファング1!」

 

「あら、誰に行ってるのかしら?」

 

「そうだったなぁ」

 

ダーン!

 

99式による射撃で奏に攻撃しようとしたスモール級を沈める。

 

「みんな!形勢が変わったわ!あの二人に続いて!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「さーて本腰入れますかねぇ!」

 

百之助は99式をしまい軍刀を引き抜き。左手で構え右手に14年式南部を持つ。

 

ザシュ!パァン!パァン!

 

そして突貫、すれ違いざまに3体のスモール級を軍刀で沈め、14年式南部でスモール級2体を崩れ折らせる。

 

「通常兵器でヒュージを!?」

 

「そんなことを気にしてる暇はないわよ!」

 

「はい!」

 

「沈め!沈め!沈め!ヒャッハー!HAHAHA!」

 

パァンパァンパァン!ガチャ!ザシュ!パァン!

 

「ウフフフフフフフフ。」

 

タタタタタタタタタ!

 

百之助の14年式と軍刀が…奏のP90が敵を殲滅していく。

 

「うわあ…」

 

最後の一体を百之助が倒し、戦闘が集結した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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101話

「貴方方は?」

 

「おいおい…従兄弟の顔忘れちまったのかぁ?ひどくない?」

 

「……え?」

 

「百之助だよ。…こっちは奏姉。久しぶりだな叶星、高嶺。」

 

「ハァイ。」

 

「うそ…」

 

「あら…」

 

二人共目を見開いていた。

 

「陛下が会いたがってたぞ?顔見せたらどうだ?」

 

「叶星様…お知り合いですか?」

 

「二人は船坂家の人間なんだけど。私の従兄弟なの。でも百之助、貴方台湾奪還戦で…」

 

「それな、都合でそうなってただけで実際には生きてたよ。ちょっと色々あってな。」

 

「そう…でも良かった…生きてて。」

 

「おいおい泣くな泣くな〜オレが悪者じゃねえか〜」

 

「あら?実際叶星ちゃんを泣かせたの百之助じゃない。」

 

「こっちが泣くぞ!…まあ…あれだ…すまんかった。」

 

そう言って百之助は叶星を抱きしめた。

 

「叶星だけずるいわ…」

 

「性のないやつだなぁ…ほら…」

 

高嶺も抱きしめた。

 

「はわわわわ…」

 

としばらくすると夢結と梨璃が来た。

 

「…百之助?何をしているのかしら?」

 

「…兄様…」

 

二人を離して夢結を見ると相当不機嫌なようだ。目からハイライトが消えていた。

 

「弁解はあるかしら?」

 

「ありません…」

 

「後でお話があります」

 

「アッハイ…」

 

(あっ…この二人付き合ってるのね)

 

と、高嶺と叶星は瞬時に理解した。

 

「…百之助は後でみっちりとお話をするとして…」

 

(あっ…詰んだ…これ色々ヤバイやつだ)

 

「わざわざ遠くからお越しいただき誠にありがとうございます。その上ヒュージの討伐まで。」

 

「申し訳ありません外征に来た訳ではありませんが、放って置くことができずに動いてしまいました。」

 

「いえいえ、そんな!私達の百合ケ丘を守って下さってありがとうございます!」

 

「ここではなんですから、場所を移しませんか」

 

「ええ、そうですね。」

 

「あの方たちが百合ケ丘のリリィなのね。」

 

「はい、髪を結わえている可愛らしい方が一柳梨璃さん。そして、あの凛々しい立ち振る舞いの方が白井夢結様です。あとの二人は存じ上げませんが…」

 

「あのさあのさっ!あの人たち珍しいいきものみたことあるかなっ!よしっ!聞いてみよ〜!」

 

「待ちなさいって!最初の会話にユニコーンはやめなさいって!」

 

「え〜。どうして?百合ケ丘には僕達の知らない生き物いるかもしれないよ〜?」

 

「ああ、梨璃さんと夢結様…あの方たちがシュツエンゲル…。立ってるだけなのにお二人に後光が差しています…!」

 

「所で百之助?何故いるの?」

 

「一応俺も一柳隊だぞ?諸事情により百合ケ丘に放り込まれたからな。」

 

「なるほどそれで…」

 

この後自己紹介を互いにして約1名ほど百之助と奏が元白襷隊と聞いて倒れたりしたがそれはまた別の話。

 

 

 

 

 



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102話

ー 百合ケ丘市街地にて ー

 

グラン・エプレ及び一柳隊(出征組4人を除く)が歩道橋に集まっていた。

 

「神庭女子藝術学校の皆様、本日は百合ケ丘グリーンフェアのお手伝いに来て頂き、誠にありがとうございます。わたくし、本イベントの陣頭指揮を取らせていただきます。楓・J・ヌーベルと申します。」

 

と楓が早速指揮を取り始める。まるで司会者のようだ。

 

「はーい!ぼくは丹波灯莉っていうの!よろしくね。ヌーベル!」

 

「……その呼ばれ方は割と新鮮ですわね。」

 

と、それはそれでいいという感じであった。

 

「あー!その制服は百合ケ丘女学院のデザイン☆梨璃と同じレギオンなの?」

 

と、興味津々な灯莉に少々引き気味な百之助である。

 

「いやそれ以外に何があるよ…」

 

「ええ、そうですわ!私と梨璃さんはシュッツエンゲルの契こそ結んでおりませんが同じレギオンに所属しており、のっぴきならない関係にありますの!」

 

「……………お前もか…」

 

もう百之助も疲れてきたようだ。

 

「の、のっぴき!」

 

この子はさっき百之助と奏が元白襷隊と聞いて倒れた子で土岐紅巴である。

 

「おーい…帰ってこーい…」

 

フリフリ…プニプニビヨーン

 

と、百之助は、手を目の前で振ったりほっぺを摘んだりして正気に戻す。

 

「ハッ!」

 

「しっかりしろ〜?」

 

「あはは、楓さんは中のいいお友達だよ〜。」

 

「まあ、そうとも言いますわね。」

 

「いや言わねえよ…」

 

「悪ふざけはここまでにして…」

 

「いやちょっと待て〜悪ふざけだったのかよ…てかなんでボケ役担当の俺がツッコまねばならんのだ…」

 

「百之助、落ち着きなさい。」

 

「アッハイ…」

 

流石に姉には逆らえ無かったようだ。

 

因みにさっき百之助は、紅巴を介抱したため頭の回転が遅くなっており(そもそも乗り気でないのもあいまって)ボケと、本気の境目がわからなくなっている模様だ。ただし戦闘になったら喜んでそっちに行くが。

 

「神庭女子藝術学校の皆様にはこれよりイベント準備の為、お力をお借りしたいと思います。僭越ながらこちらで役割分担を決めさせてもらいましたわ。貴女方の適性は事前に把握しておりますので。どうか素晴らしい働きをお願いしますわね。あ、百之助様は変更で叶星様と同じ所で。」

 

「りょーかーいーしーまーしーたー」

 

「ぼ、棒読み…」

 

物凄い棒読みである。

 

「は、はい………!微力ながら頑張らせていただきます……………っ!」

 

「では、これより準備に移ります。私達の手で素晴らしいイベントにいたしましょう!それでは…散開!」

 

各員はそれぞれに分かれて準備し始めた。

 

 

 

 

 



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103話

大体4つのグループに分かれていた。こちらは第一グループ。叶星、高嶺、梨璃、夢結、百之助だ。

 

「では、私達は会場の飾り付け担当になりました!叶星様、高嶺様、どうぞよろしくおねがいします!」

 

「ええ、お役に立てるよう頑張ります。」

 

「園芸に関しては私も梨璃も百之助も詳しくありませんのでお二人に指示をお願いできれば。」

 

と、申し訳無さそうな夢結である。

 

「かしこまりました。」

 

「では早速そちらの苗を…百之助?何してるの?」

 

「え?何って?苗を運ぼうとしてるだけだが?」

 

百之助は苗を4つ持っていた。

 

「…重くない?」

 

「大丈夫だが?」

 

「あらそう…」

 

梨璃が素手で苗を掴み高嶺が注意する。

 

「梨璃さん、土が付いてて意外と思いから気をつけてね?作業用手袋もあるからどうぞ。」

 

「大丈夫ですよ高嶺様。私田舎で育ったんで土いじり好きなんですよ。」

 

「…田舎は関係あるのかしら?」

 

「ふふふ…でも梨璃さん。手袋は汚れから守ってくれるだけでは無くて怪我やかぶれも防ぐんですよ。」

 

「あ…なるほど!」

 

「そうよ、梨璃さんのこのお人形の様に可愛らしい指が傷付くのは耐えられないわ」

 

「お前本当に相変わらずだな…」

 

もちろん悪い意味でである。

 

「大丈夫です!お姉様に毎日しごかれて元から傷だらけですから」

 

「………」

 

必死に笑いを抑える百之助である。

 

「聞こえが悪いわよ。梨璃」

 

「ふふふ、流石は梨璃さんね。」

 

「姉妹の絆には勝てないか…ふふふ」

 

「お前らわざとだな…」

 

「えっ、どういうことですか?」

 

「それより、早く準備を勧めましょう。イベントが始まってしまうわ。」

 

「そっそうですねっ。叶星様、次は何をすればいいですか?」

 

「そうね、じゃあこちらの飾り付けをお願いします。好きな花を使って華やかにしたいわね。」

 

「はい!」

 

 

 

一方第2グループ。二水、楓、紅巴、奏のグループだ。

 

こちらは机を並べていた。

 

「はい、そのまま…あっ。ちょっと左にずれてます!長机を並べて…オッケーでーす!」

 

「ここで、物品の販売をするんですね…。何だかバザーみたいでワクワクしてしまいます。」

 

「あらあら〜」

 

奏は何故か楽しそうだ。

 

「販売するのは花の種や苗ですけどね。地元の方が大切に育てた植物を色々な地域に広げて緑の輪を広げよう!と言うのがフェアの目的ですから。」

 

「素晴らしいと思います…!そのイベントをお手伝い出来るなんて光栄です。」

 

「土岐さんはお優しい方ですね。私もご一緒できて嬉しいです!」

 

「そ、そんな!勿体無いお言葉…!」

 

少々狼狽気味である。

 

「お嫌でなければですけど…紅巴って呼んでいいですか?」

 

と、おずおずと二水が言う。

 

「も、勿論です。」

 

「やったぁ〜!じゃあ私の事も二水って呼んで頂けると嬉しいです!」

 

「二水…さんっ。」

 

「はい、紅巴さんっ。」

 

完全に二人の世界が出来上がっていた。(語弊があるかもしれないが…)

 

「あらあら〜仲が良い事は良い事だわ!」

 

「奏様……ともかく、ほんわかしている場合ではありませんわよ。値札の準備がまだですわ。」

 

と、釘を差したが…

 

「あっ、楓さん。」

 

「っ…!?」

 

「地方自治体の小規模なイベントとはいえ、金銭のやり取りが行われる以上、手は抜けませんわ。」

 

「ふふふっ」

 

「あ、楓さんはグランギニョル社のご令嬢なんですよ!私なんかじゃ理解できないような経済の話とか、とってもお詳しくてすごい方なんですからっ。」

 

と自慢げに二水が言う。

 

「それほどでも!ございませんわ!」

 

完全に鼻が高くなっていた。

 

「お、お噂は聞いております…。」

 

「噂…ですの?」

 

「一年生でありながら同学年のリリィに、シュッツエンゲルの契りを申し込むような熱いパッションをお持ちの方だとか…!そのシュッツエンゲルの契りを結ばれる事は無かったようですが、それでも変わらぬ愛を意中の方に注ぎつづけているとか…!」

 

なんか色々面白いことになっていた。二水は一度考え込みながらいや間違ってないような…間違っているような…なんかこう…という感じにビミョーな顔をした。

 

「う、うーん…間違っては無いですけど…」

 

「困りましたわ…わたくしと梨璃さんへの想いがガーデン外にまで響き渡っているだなんて!」

 

全く困っているようには見えなかった。

 

「えっ、梨璃さんって一柳隊の…。」

 

「私のロマンスは後ほど、じっくり聞かせて差し上げますわ。まずはこのイベントを盛り上げる為に奮起してくださいませ!そして、その暁には梨璃さんから感謝の抱擁を…くふふふ。」

 

「え、えーと…」

 

「あまり私の妹で遊ぶと…処すわよ☆」

 

目のハイライトが奏から消えていた。

 

「ヒッ!?」

 

流石に奏の圧力に紅巴は耐えられなかったようだ。…まあ向けた相手は違うのだが…

 

「大丈夫ですよ、紅巴さん。楓さん、時々こうなりますけどとっても優秀なリリィですから!それに奏様だって数多のギリギリの戦場を駆け抜けたリリィですから。」

 

「待っていらして梨璃さん!わたくしがあなたを甘美な夢の国の世界へ誘いますわ!」

 

「やっぱり百合ケ丘のリリィは凄いです。」

 

なんか色々勘違いされてそうであった。

 

 

次は第3グループを見てみよう。

 

姫歌、ミリアム、灯莉の三人だ。

 

「ここが姫歌の舞台になるのね…!屋外ステージなんて素敵じゃないのっ!」

 

「む…お主らか、神庭女子の助っ人と言うのは。」

 

「うんっ!よろしくね☆」

 

「む…あなたさてはひめかのライバルね!」

 

傍から見たら完全に残念な子である。

 

「はあ?何を言ってるのじゃ?」

 

「のじゃ〜☆」

 

「その髪型!そのルックス!百合ケ丘のアイドルリリィも中々どうして可愛いわね。まっ、一番はひめかなんだけど!」

 

完全にヤバイやつである。

 

「よく分からんが、手が開いてるなら手伝って欲しいここに看板を設置したいのじゃ」

 

「看板!ぼくがやる!描かせて!描かせて!描かせて〜っ!」

 

「お主が描くじゃと?」

 

「その子は丹波灯莉。こう見えてセンスは抜群だから任せて良いと思うわひめかが保証してあげる。」

 

「う〜む、お主のお墨付きがどういうものか分からぬが…面白そうだからお願いするかの。道具はそのへんにあるから好きに使うといい」

 

「やったー!それいけ〜☆」

 

と言ってすごい勢いで描き始めた。

 

「灯莉、ひめかのイラストは一番大きく描くのよ。」

 

「グリーンフェアの看板になんでお主が登場するのだ?」

 

その指摘はごもっともである。

 

「まあ、いい。挨拶が遅れたがわしはミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウス以後よしなに頼む。」

 

「ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウス、ね。ひめかはひめかって言うの!ひめひめって呼んでね。」

 

「ほう、わしの名前を一発で正確に覚えるとはやりよる。」

 

「ファンや共演者の名前を間違えるわけにはいかないもの。アイドルリリィとしては当然のスキルよ!」

 

「アイドル…」

 

ミリアムは少し考え込み…一つの結論を導き出した。

 

「なるほどちょっとあれな者なのじゃな。大丈夫、大丈夫、変人の扱いに慣れておるからな。」

 

「変人じゃなくてアイドルですっー!」

 

「は…出来たじゃと?今さっき作業を始めたというのに何を ー」

 

流石にこれには驚愕である。

 

「見て見て!この看板!」

 

「ほう…これは森の中をイメージしたのか…。ちょいとファンタジックじゃが、雰囲気は出ておるのぉ〜」

 

実際すごく良かったようだ。と、その時。

 

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

「む…ヒュージが現れたか!」

 

「さっき倒したのにもう!?」

 

「先程の襲撃はお主らが対処してくれたのか。おそらく、同一のグループが散らばっておるのじゃろうヒュージもそう都合良くまとまって現れてくれるとは限らんのじゃ。」

 

「ど、どうしよう定盛!」

 

深刻な表情である。

 

「えっ、な、なに、どうかしたの灯莉。」

 

「ヒュージを見に行きたいけど…絵も描きたい…!ぼく、どうすればいいの〜☆」

 

「知らないわよ!」

 

「ヒュージを見たい…百由様みたいな事を言うやつじゃの…」

 

「そうだ!看板を持って行ってヒュージを模写しよう!定盛ー手伝ってー」

 

ヒュージを看板に描いてどうするかと言う考えはこの際捨てておく。

 

「お断りよ!あと、ひめかのことはひめひめと呼びなさーいっ!」

 

三人は戦闘地域に移動した。



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104話

「全く今日は忙しいねぇ!」

 

百之助が99式で狙撃。

 

ダーン!

 

「はいはいボヤかないで仕事しなさい。」

 

奏がP90で掃射。

 

タタタタタタタタ!!

 

「はーい」

 

ザシュ!

 

「今戦闘中だよね…グリーンフェアの準備中じゃない…よね?」

 

ドン!

 

「ええ、戦闘中よ雨嘉さん。」

 

ダラララララララララ!!!

 

「ノリ…軽すぎない?」

 

ドン!

 

「多分…面白み無さすぎて作業になっているのではなくて?」

 

ドン!

 

「あ〜…」

 

ザシュ!

 

「皆気が散漫になっているわ!引き締めなさい!」

 

ザシュ!

 

と、一柳隊の面々はほのぼのとした戦闘ムードで戦闘中であった。

 

「……流石ね…」

 

「ええ。」

 

「楽しそう☆」

 

「すごいですっ…」

 

流石にこれには驚愕するグラン・エプレの面々。そのグラン・エプレもまた横目で見ながら戦闘を続けていた。

 

 ー 30分後 ー

 

 

 

「…ふう、終わったわね。」

 

「…………」

 

(高嶺まさか…長期戦闘はできないのか?だとすりゃ退役した方が身のためではあるが…)

 

高嶺を見ながら百之助は1つの結論にたどり着いたがあえて言わなかった。

 

「凄まじい戦い方だったな。何処か急いでいたように感じたけど……。」

 

たしかに梅の言う通り、苛烈極まる戦い方ではあった。…百之助程では無いが…

 

「この後にグリーンフェアが控えてますからね。のんびりしていられません。」

 

「確かにそうだな!」

 

「高嶺ちゃん…身体の方は大丈夫?」

 

叶星のこの問で全て察した。

 

(やはりか…!)

 

「ええ、何も問題無いわ。ありがとう叶星。」

 

「…………」

 

夢結も何か気付いたようだ。

 

「グラン・エプレの皆さん。協力していただきありがとうございます!」

 

「おかげで大きな被害を出す事なくヒュージを倒すことが出来たわ。」

 

「いえ、リリィ同士の結束の話をした時から、グラン・エプレは、一柳隊と共にあります。ですから、協力を惜しみません。」

 

「叶星様…」

 

「……姉上どうしたの?」

 

奏は静かに泣いていた。

 

「…立派になって…!!」

 

「おかんか!」

 

思わず突っ込んでしまった百之助である。因みに小声での会話である為全く誰も聞いていなかった模様。

 

「さあ、梨璃さん。そろそろ時間じゃないかしら?」

 

「そうでした!皆さん。行きましょう!」

 

そうして会場に向かった。

 

ー 会場にて ー

 

「それでは、第12回百合ケ丘グリーンフェアを開催いたします!皆さん。どうぞ楽しんでいってくださいませ!」

 

司会たる楓がそう宣言する。

 

「ふう、何とか無事に始められましたね。」

 

「ヒュージが襲ってきた時はどうなることかと思ったけどね。鎌倉は激戦区と言われるだけあるわ。」

 

梨璃の言葉に姫歌が答えた。

 

「グランエプレの皆さんが迅速に対応してくれたおかげよ改めて、お礼申し上げるわ」

 

と、夢結はお礼を述べる。

 

「当然のことをしたまでです。」

 

「でも、グラン・エプレの皆さん。素晴らしい動きでしたよ!特に叶星様と高嶺様のコンビネーション、あれは芸術的でした!あんなに迅速にヒュージを倒すなんて!」

 

と興奮気味の二水である。

 

「……そうね、あまり時間はかけたくなかったから。」

 

「……えっ?」

 

「ふふっ、大切なイベントを台無しにされては困るもの。ちょっとだけ本気を出させてもらったわ。」

 

「本当に凄かったですよ!私もいつかお姉様とあんなふうにぴったりと息の合った連携ができるようになりたいです!」

 

「あ、あの…!叶星様と高嶺様は生まれた時からずっと一緒に過ごしてきてそれはそれは深い関係で結ばれているのですっ……!」

 

「そうなんですか?わぁぁ…それって本当の姉妹みたいですねっ。」

 

「ふふふ…そうね。まあ、小さい時は百之助、伊吹、陛下もいたからこの3人も連携が取れると思うわ。」

 

「「「「「「えぇ!?」」」」」」

 

と一斉全員に百之助を見る。百之助は目をそらした。

 

「……やめーや…」

 

だが観念したようだ。

 

「…叶星とは従兄弟同士だ…これで満足か?」

 

「「「「「「「「「「「ええ!?」」」」」」」」」」」」

 

グラン・エプレと船坂姉妹以外全員驚愕である。

 

「って事は…叶星様と梨璃さん…従姉妹なんですね!」

 

「「「「「ええ!?」」」」」

 

今度はグランエプレの皆さんが驚愕した。

 

「…あれ?言いませんでしたっけ?」

 

「知らなかったわね…」

 

「聞いてないわね…」

 

「あはははは…」

 

とそこで闖入者が叶星のチャームを観察していた。

 

「あの…わたしのチャームになにか?

 

「これはケルティックデール社の先行試作チャームクラウソラスか。こんな所でお目にかかるとはね。」

 

「えーと…この方は?」

 

少々引き気味である。

 

「これ、百由様。お客様に迷惑を掛けるでない。」

 

ミリアムの言い分もっともである。

 

「というかここまでわざわざ来てくれたのか?百由。」

 

「私もグラン・エプレ子たちに会いたかったからね。それに、珍しいチャームも見れるかなって思って来てみたら早速それが叶ったってわけ。ほらグロッピも見せてもらうと良いわ。」

 

「グロッピ…?」

 

「その呼び方はよせと言っておろうに…全く。あぁ、この方は真島百由。百合ケ丘の二年生でわしと同じ工廠科なのじゃ。国内トップクラスのマギ研究者ではあるんじゃがセンスが独特での…」

 

「そうだったのですか…お初にお目にかかります神庭女子藝術高校、グラン・エプレ今叶星です。」

 

「ごきげんよう、早速だけどチャームをいじらせてくれない?」

 

「えっ……。」

 

「……馬鹿なのか?」

 

「百之助、落ち着きなさい。」

 

「ほいほい」

 

「はぁぁ…すまんのう。常識と引き換えにチャームとヒュージの知識を頭に詰め込んだ様な御仁じゃから色々と残念な所は目をつむってくれい。」

 

もう頭を抱えるしか無い。

 

「グロッピに言われたくないけどな〜」

 

「ふふふ…お二人共仲がよろしいようで。」

 

「まあ二人とも同じアーセナルじゃからな。工房も近いし便利な物置ができたわ!ぐらいに思ってそうじゃが。」

 

「そーんなことないわよ〜?私の工房はものが多すぎるから片付け上手な後輩が出来て嬉しいな〜とは思っているけど。」

 

「ほれみろ…やっぱりじゃ…」

 

「それより叶星さん。このクラウソラスを使っているという事は…御台場女学校の関係者だったりする?」

 

「っ…。」

 

百由の問に答えたのは高嶺だ。

 

「はい、その通りです。私と叶星は中等部まで御台場女学校で学び、高校から神庭に編入いたしました。」

 

「ほう、そうだったのか。」

 

「このクラウソラスは御台場女子から去る際にとある方から譲り受けた物です。」

 

「俺で言うこれだな。」

 

そう言って14年式南部を見せる。

 

「なるほど。そう言う事だったのね。でもこのクラウソラスをあれだけ使いこなせるなんて相当な実力をお持ちのようね。」

 

「レギオンのメンバーに支えられての事です。高嶺ちゃんや彼女たちがいるからこそ、私は戦えるのです。」

 

「………」

 

百由はブツブツ言いながら去っていった。なにか考え事をし始めたようだ。

 

「これ、百由様。急に現れて急に去るでないっ!」

 

 

とその時、夢結からヘルプが来たので会話を中断し、手伝いを再開した。余談だがグリーンフェアが成功したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 



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105話

 ー 数日後、共用スペースにて ー

 

一柳隊全員が百由に集められていた。

 

「で?話とはなんだい?」

 

とお菓子を食べながら聞く美鈴。

 

「それはですね!ズバリ!特型ヒュージの件です!」

 

「おお〜」

 

「だろうな」

 

百之助と伊吹はそんな気がしていたらしくさほど驚いてはいなかった。

 

「何か分かったんですか百由様!?」

 

喜怒哀楽の激しい梨璃はとてもわかりやすかった。

 

「ふむ、わしも気になるぞ。百由様、自分の工房に籠もって何やら調べておったな。」

 

ミリアムは最近の百由をよく見ていたため調べていたことは知っていた。

 

「ちょーっと研究に没頭しすぎちゃって寝食忘れてたけど特型ヒュージの事はバッチリよ!」

 

…安定である。

 

「安定と信頼と安心の百由ね。」

 

半分呆れている愛華である。

 

「実に百由様らしいですわね」

 

「うむ、平常運転じゃ。」

 

楓とミリアムも呆れていた。

 

「あははは、そんなに褒めないでよ、照れちゃうわ〜。」

 

「誉めてない!」

 

「…………」

 

見事な鶴沙のツッコミに笑いを抑える文香。

 

「それより百由様、特型ヒュージのことをお聞きしても…?」

 

流石神琳である。話題を修正した。

 

「うん、この間グロッピがサンプリングしたデータを元に私の方で解析した結果、とある反応をキャッチしたわ」

 

「あ、あの特型ヒュージの反応ですね!」

 

と、二水は少々興奮気味である。

 

「では、あのヒュージがどこに現れるか分かるのかしら?」

 

夢結の言いたいことは全員よくわかっていた

 

「まぁまぁ、落ち着きなさい。残念ながら検知した反応は非常に微弱。存在することは分かっても具体的な場所を特定するのは不可能ね。」

 

「やはりか…」

 

百之助にはやはり驚きはない。むしろ想定内である。

 

「存在するのに…分からない…そんな事あるんですね…」

 

「まあ仕方ないさ」

 

雨嘉の頭を伊吹が撫でながら宥めるついでに神琳の頭も撫でた為、ふたりとも顔が真っ赤である。

 

「でも、もし近くにいるのが分かるんだったらその近くで待ち伏せすればいつかは見つけられますよね!?」

 

「籠城戦か!」

 

「籠城って…お前どこに立てこもる気だ?」

 

「いや冗談を真に受けないでくれよ…」

 

「でも、待ち伏せって…」

 

兄妹揃ってボケたようだ。まあ百之助の場合は悪ノリであろうが。

 

「そうよ!梨璃さん、大正解!景品としてチャームクリーナーを進呈しましょう!」

 

「え……っ」

 

「ブフッ!?」

 

「ありがとうございますっ!」

 

強烈なボケである。強烈過ぎて百之助は吹き出した。

 

「どうゆう事なの、百由いつ現れるのかわからないヒュージを待ち伏せるなんて、いくらなんでも非効率すぎるわよ。」

 

確かに非現実的かつ非効率極まりないやり方である。

 

「もちろん、ただ指を咥えて見てろってわけじゃないわ。第一前回の戦闘では全く葉が立たなかったんでしょう?このまま再戦したところで同じ結果になるんじゃない?」

 

「たしかにな〜ヘルヴォルの連中も一緒だったのに散々な結果だったからな。」

 

「でも次は…次こそはなんとかします!ですよね!皆さん!?」

 

「うん…私、特訓してもっと強くなる!」

 

「前回は特型以外のヒュージも多くノインヴェルト戦術が使えなかったのも大きな誤算でしたし…それに…」

 

「土方が出て来やがったからな…」

 

「今度はきっと…上手くいく。」

 

「うん、よろしい!モチベーションの方は問題ないようね!」

 

百由は自身の考えたプランを話し始めた。

 

 

 



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106話

「ではあなたたちには特型ヒュージ出現に備えると同時に戦力増強の為、強化合宿を行ってもらうわ。」

 

流石にこの内容には全員びっくりである。

 

「強化、合宿じゃと…!なんで百由様がそんなことを言い出すのじゃ?」

 

「もちろん、決めたのはガーデンよ。私はそうね…現場監督って所かな?」

 

…色々と不安である。

 

「百由様が監督…考えただけでゾッとする合宿じゃな…」

 

見ればミリアムの顔が真っ青になっていた。

 

「ふふふ、大丈夫よグロッピ。あなた達にやる気を出してもらう策はまだあるわ」

 

「今回合宿に参加するのはあなた達だけじゃ無いの。特別ゲストを紹介しましょう」

 

「特別ゲスト…ですか?」

 

と梨璃が疑問符を浮かべたが百由が手を振った。その先にいたのは…

 

「ごきげんよう一柳隊の皆さん。」

 

「ごきげんよう…お元気そうで何よりです。」

 

と現れたのは、グランエプレの叶星と高嶺。そして近衛軍メンバー+2名である。

 

「叶星様!?そして高嶺様も!グランエプレのお二人がどうしてここに…!?」

 

梨璃の驚き方がとてもわかり易い。

 

「あっ、特別ゲストってもしかして…。」

 

「神庭女子藝術高校所属、グラン・エプレ一同。要請いただいたリリィ戦力強化合宿に参加させていただきます。」

 

「ふふっ、約束を果たしにやって来たわ。一緒に頑張りましょうね。」

 

「グラン・エプレの皆さんと強化合宿…。」

 

とても嬉しそうだ。

 

「それだけじゃないわよ梨璃さん。先日一緒に戦ったレギオン、あのヘルヴォルと…近衛軍にも声をかけているわ。」

 

「…へ?」

 

とここでさらに人数が増えた。

 

「やーほー梨璃ちゃーん」

 

「久しぶりです姉上」

 

「おっひさー」

 

「さとり様!?佐奈ちゃん由奈ちゃんまで!…そして…あなた方は?」

 

「………まじで?」

 

三人はともかく二人が分からなかった。百之助は見覚えがあり過ぎて絶句した。

 

片方は赤い服、もう片方は黒い服であった。

 

「ごきげんよう、皆様。お初にお目にかかります。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国陸軍近衛第11歩兵連隊長、マリア・フィッツアラン=ハワード大佐よ。そしてこちらが、」

 

「ドイツ第4帝国、オットー家直属貴族連隊ローゼンリッター連隊長、フィーネ・フリーデブルグ・V・オットーよ。よろしくね。」

 

「まさか…マリアとフィーネとは…予想外だ…」

 

「あらぁ〜?なにか問題でも?」

 

「…あると思う?」

 

「まぁまぁマリア落ち着いて。久しぶりなのは分かるけど、喧嘩ふっかけないの。」

 

「ふってないもん!」

 

国同士だと仲が悪いが、この二人に関して言えば仲はいい。

 

「仲がよろしいようで…」

 

「詳しい話は後回しだ。で?百由、ヘルヴォルと言ったな。…来るのか?」

 

あのエレンスゲだけに来るとは到底思えなかった。

 

「書類をゴリ押しして来るみたいよ?」

 

「まじかよ!?」

 

「あと、百之助と伊吹と奏様は今から山本教官が呼んでるから行ってきなさーい。自己紹介云々はこっちでやっておくから〜」

 

「「それを早く言え!」」

 

そう言って百之助、奏、伊吹の三人は美保野の工房に向かった。

 

 

 ー 美保野の工房にて ー

 

「で、もっさん。どうしたのさ。」

 

「誰がもっさんや!まあともかく、お前らのチャーム及び追加装備やまず百之助からや。」

 

そう言って百之助に一丁の銃を渡す。99式と同じような感じではあるが機関部が太く長い。

 

「…これは?」

 

「30式を再設計したやつや。使用弾薬は12.7✕99ミリ、いわえる12.7ミリNATOやな。そしてこれが銃剣、低振動術式を組んである。一応一級品やで?」

 

と言って銃剣を渡してくる。

 

「まじか…」

 

「まあそれだけじゃないで?超々高出力砲が付いてるんや、一応武御雷よりパワーアップしとる。因みにな、材質は錬金術お得意の魔法鉱物やから強度面は度外視してええわ。今までみたいに扱ってもびくともせんから安心せいや。そしてこれや、」

 

最後に見せてきたのは…ロングソードのようなチャームだ。

 

「これはマギビットソードや。切る、刺すのは勿論のこと、中に高出力砲が入ってるから射撃もできるで?まあこれ伊吹のライフルビットと使い方は一緒や。」

 

「まじかよ…ありがとうございます。」

 

「じゃあ次は、伊吹な。ホイこれ」

 

「ウインチェスターか?」

 

見ればM-LOKのついたウィンチェスターがあった。

 

「一応これもチャーム…いや、サバーニャの追加武装や、扱いやすいようにウインチェスターにしといたわ。百之助のとは違って高出力砲は無いけど、超電磁砲だから扱いやすいはずや、弾は338ラプアマグナムにしといたで。もちろん後付けで武装つけられるで?」

 

「おう…すげえ…」

 

「まだ追加武装あるで?まずこれ、」

 

そう言って目の前においたのは…コンテナである。それも背中にマウントするタイプの。

 

「ミサイルポッドかこれ?」

 

「正解や小型ミサイル60発入ってるんや。それとは別に腰のユニットにライフルビット、シールドビットを4機づつの計8機追加するんや。」

 

「随分と重武装だな…」

 

「制圧火力に物を言わせる為やで?」

 

「なるほど?」

 

「じゃあ次は奏、まずこれやな」

 

と言って持ってきたのは30式4型である。

 

「説明はいるか?」

 

「いいえ、要らないわ。知ってるから」

 

「よし、次や」

 

そして奥からでかいものを持ってきた。

 

「不知火や、後ろ腰にジェット及びロケットモーターを付けて空中戦ができるようにしてある。そして両腰に付いてるのがP90みたいなものや。作動方式はP90とほぼ変わらんが40ミリグレネードランチャーが下部フォアグリップの代わりについとる。それによりセレクターの単発機能を廃止して変わりにグレネードランチャーの発射機構になってるんや。」

 

「なるほど…では胸周りのこれは?」

 

「あのでっかい出刃包丁みたいなのと30式を吊り下げるものや。思考式だから使いやすいはずやで?」

 

「なるほど了解、他には?」

 

「これで全部や」

 

「ありがとうございました。」

 

「3人とも…死ぬなや」

 

「「「了解」」」

 

そうして三人は新しいチャームを手に入れて退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




明日は設定を出します。


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107話

ー 翌日、共用スペースにて ー

 

 

百之助、夢結、楓、高嶺がお茶会をしていた。

 

「……相変わらず仲がよろしいですこと…」

 

楓の目線の先には百之助が夢結の膝で爆睡していた。しかもとても気持ち良さそうに緩みきった顔でだ。

 

「ふふっ。ここまで気を許して寝てる姿は珍しいわ。夢結さん、相当好かれてるわね。」

 

と、小さい頃を知っている高嶺ですら珍しそうに百之助を見ていた。

 

「ええ、…もっともここまで至るまで色々とあったけれど、それでもこの人を愛してるわ。」

 

そう言いながら夢結は百之助の頭を撫でる。

 

「取り敢えずその話は置いておきまして。それより、叶星様はいかがいたしましたの?」

 

「ガーデンへの報告で席を外しています。すぐに戻るかと。」

 

「なるほど…お二人はいつも一緒のイメージでしたから、高嶺様の横に叶星様が居ないのは不思議な感じですわ。」

 

「ふふっ。それほどいつも一緒にいる訳ではありませんよ?小さい頃は逆にそこで寝てる百之助と一緒にいる事が多かったもの。」

 

と、昔を思い出しながら言う。

 

「ですが、お二人は幼馴染で、進学もずっと一緒でしたのでしょう?御台場女子から移られたのもお二人揃ってとお聞きしております。」

 

「ええ、そうです。腐れ縁…と呼ぶには長すぎるかもしれませんね。」

 

とそこで楓が切り出した。

 

「高嶺様…失礼だと思われましたら無視して頂いて構いません。お聞きしたいことがあります。」

 

「…何かしら」

 

高嶺には、思い当たる節があるようで身構えていた。

 

「高嶺様は身体に不調を抱えているのではありませんか?特にマギに関わる部分で。」

 

「……」

 

「楓さん、本当に失礼よ。」

 

夢結もこのことに関しては理解していたし、楓が言うのももっともである。何せ、最悪生死を分ける状況下で格段に生存率が下がる可能性があるからだ。

 

「申し訳ありません。ですが、今回の合宿の最中に特型ヒュージが現れた場合、グラン・エプレにも協力をお願いすることになるでしょう。」

 

一拍おいて息を整えたあと続けた。

 

「わたくしは一柳隊の司令塔であると自負しております。ですから指揮下にあるリリィの正確な戦力分析は必須ですわ。まあ…把握出来て無い方もいらっしゃいますが…」

 

そう言って楓は百之助を見る。確かに百之助の戦力としての分析はほほ不可能に近いのだ。実際不可能と言われた事を平然とやってのける百之がは分析不可能であることは周知の事実である。

 

「皆さんと生きて帰る…それだけは是が非でも成し遂げなければなりませんわ。」

 

約1名ほど死んでも戦うのが居るが割愛する。

 

「流石ですね…百合ケ丘は。いえ、【百合ケ丘の至宝】と呼ばれる楓さんが特別なのかもしれませんね。」

 

「高嶺さん…」

 

「楓さんの仰る通りです。私は数年前の戦いで致命的な傷を負い以来、マギの受容量が大きく損なわれる後遺症を抱えております。」

 

「…エーテルを損傷したのかよ…」

 

と、そこで百之助が起きてきた。

 

「聞いてたのね…」

 

「まあな、まあ…薄々気づいてた、夢結も、俺もトミーも。ちなみにエーテルっていうのは身体を這う血管みたいなもので、これを損傷すると高嶺みたく受容量が減ったりするんだ。まあ、代替出来るけどな。」

 

そう言って空間収納から小さな箱を取り出した。中には赤い宝石のついた腕輪が入っていた。

 

「…これは?」

 

「周囲のマギを勝手に浄化した上で吸い上げて身体の代わりに溜めてくれるという優れ物だ。…安心しろ後遺症とか代償とかないから。」

 

「…貰っていいのかしら?」

 

「やる。ただし、こいつは試作だ。過信するなよ?」

 

「分かったわ」

 

「まあともかく、どうせおまえの事叶星しか知らなかったんだろう?黙っといてやるよ。ふたりともそれでいいな?」

 

「ええ。」

 

「はい。」

 

「ま、後のことは楓に丸投げすればよろしい。と、言う訳だよろしくな楓」

 

「承りましたわ」

 

「ふふっ」

 

と、そこで叶星が帰ってきた。

 

「どうしたの?みんな揃って笑ってるけど」

 

「気にしなくて良いこともあるんだよ。か、な、ほ。」

 

「余計気になるじゃない。」

 

「あ?俺の幼少期どんだけ迷惑をかけたかって話だ。…丁度いい、お前しか知らない俺の話してくれよ」

 

「…貴方ね…」

 

この後、中々に盛り上がったことは想像に難くない。

 

 



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108話

 ー 二時間後 ー

 

一柳、グランエプレの面々は訓練をする為に浜辺に来ていた。(白襷隊は一柳隊に含まれる為、本来は呼称しないが指揮系統の問題から呼称する場合がある。)

 

「わぁぁぁぁっ!海だ、海だ、うーみーだー!」

 

「あ、灯莉ちゃん、急に走ったら危ないです……つ!姫歌ちゃんも注意して ーー」

 

紅巴が姫歌に助けを求めたが…

 

「海よ!海よ!ひゃっほー!」

 

「あ……あう……」

 

姫歌も灯莉とまったく同じ反応をしてしまった為、変な声が出てしまっていた。

 

「「ふふふっ」」

 

フィーネとマリアは面白過ぎて笑ってしまっていた。

 

「お二人とも海が好きなんですね。」

 

「都内に居ると中々海に行く機会がなくてねこういう海岸に来たのは久しぶりだわ。」

 

二水の問に叶星が答えた。そして周囲を見回して続けた。

 

「でも、この辺は、ヒュージの痕跡が多く残っているのね。見るからに激しい戦いがあったように感じるわ」

 

「私の故郷はここより酷く、完全に陥落してしまいました。あそこはもうヒュージの跋扈する土地ですから…」

 

確かに神琳の言う通り台湾は壊滅していた。そしてそれを聞いた面々がなんとも言えない感じになった。

 

「しかも米軍が空爆で耕したしな…大佐はあっちで元気にやってんのかね…」

 

「そうだな…元気だといいな…」

 

百之助は台湾奪還戦を思い出し、伊吹にしては珍しく弱々しい答えだった。

 

「…あの…伊吹様?」

 

神琳を伊吹は後から抱きしめ頭を撫で始めた。

 

「…いつか…取り返したいな…」

 

「…はい///」

 

空気を変えるために高嶺が切り出した。

 

「………郭神琳さんね。前回はほとんどお話できなかったけど改めてよろしくおねがいするわ。」

 

「はい、高嶺様。何卒よろしくおねがいします。」

 

「あぁぁぁぁぁ〜っ!郭神琳!」

 

「…はい?」

 

いきなりフルネームで姫歌に呼ばれた上に叫ばれたので少々戸惑ってしまった神琳である。

 

「あ、あなた、郭神琳じゃない!あの、【ワールドリリィグラフィック】の表紙を飾った郭神琳ね!」

 

「なんじゃか説明的じゃの〜」

 

「っていうか、ガーデンからずっと歩いて来たのに今更?」

 

ミリアムは微妙な顔をし、鶴沙は蔑んだ目で姫歌を見る。

 

「郭神琳!あなたは姫歌のライバルよ!」

 

「さとりより残念な子だねぇ〜」

 

確かにさとりより残念な子である。

 

「ライバル…ですか?申し訳ありません身に覚えが無いのですが…」

 

「あなたにはなくてもひめかにはあるの!アイドルリリィを目指すひめかより先にモデルデビューを果たすなんて…!」

 

そして神琳の観察を始めた。レビュー付きで。

 

「あ…でも確かにキレイね…。整ったお顔にエキゾチックな瞳、すらりとした手足…。写真で見るより実物の方が美しいわ。」

 

「えーと…ありがとう、ございます?」

 

「はっ!?ち、違うわ、その手に乗ってはだめよ、ひめか!だって可愛さでは負けてない…はず!」

 

勝手に乗って降りて面白い娘である。

 

ナデナデ…

 

「伊吹様…そろそろやめていただけると…」

 

「ごめんごめんついやっちまった。百之助のが移ったかね…」

 

「そうかこっち側の人間だったか」

 

「「ハハハハハハ!」」

 

二人揃いも揃って大笑いである。

 

「はいはい、ちゅうもーく!皆さん、今日は遊びに来たわけではありませんのよっ。ヘルヴォルと合流までに少しでも力をつけておきたい、そうおっしゃっていたのはどなたでしたか!?」

 

楓が張り切っている…そう、張り切っているのだ。

 

「えっと…楓だったと思う。」

 

「はい、そういう訳でこれより合同訓練を始めますわ!一年生は基礎体力を付ける為、海岸をランニング!上級生の方々は戦術理解を深めるシュミレーションを行います。」

 

「楓〜海の上走ったらだめなのか?」

 

「走れる人が限られていますでしょう!?」

 

「ですよね〜」

 

「はーい☆砂遊びしよう、砂遊び〜」

 

「分かってらっしゃらない方がいらっしゃいますわね!」

 

と、合同訓練が始まった。

 

 

 

 

 



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109話

一年生のランニングが終わった時点で再度楓が招集をかけた。

 

「…では、ランニングと基礎訓練が終わった所でノインヴェルト戦術についての講義を行いますわ!」

 

「あら、ノインヴェルト戦術なら知ってるわよ。特殊な弾丸をチャームで弾いてパスするあれでしょう?」

 

「ひ、姫歌ちゃん…ご存知ないのですか?百合ケ丘はノインヴェルト戦術の教育において世界レベルの実績を持つ名門中の名門なんですよっ。」

 

と、姫歌に対して力説する紅巴。

 

「その百合ケ丘の方から、講義を受けられるなんて貴重な機会です。聞き逃さないようにしましょう。」

 

「神庭女子でも当然一通りの戦術はカリキュラムに含まれているけど、百合ケ丘の専門教育に比べればまだまだでしょうね。」

 

「楓さん、ぜひご教授して欲しいわ」

 

高嶺が自校を分析し、叶星がぜひ受けたいと申し出る。

 

「そうね…ではどうせなら基礎から説明することにしましょう。はい、ちびっこ1号!あなたにお願いいたしますわ。」

 

楓に話を振られた二水が悲鳴を上げた。

 

「ふぇぇぇぇぇぇ!?わわわ、私ですかぁ〜!」

 

「突然のキラーパスだね」

 

「まあ当然の人選だと思うけどな。だってそこらへんは二水の管轄じゃん?」

 

「確かに」

 

鶴沙がツッコミをいれ百之助は納得の人選であると説明し納得した。

 

「わ、わかりました…僭越ながら、この二川二水が説明させていただきます!

まず、ノインヴェルト戦術と言うのは通常9人のリリィで行う集団戦法なのです。もっとも、ヒュージの強さや規模によってこの人数は変動します。5人で行う場合は正式にはフンフヴェルトと呼びますが総称としてノインヴェルト戦術と呼ばれることが一般的です。」

 

「因みにノインヴェルトとは、9つの世界と言う意味よ。」

 

「マギスフィアを9つの世界に模したチャームを通して、成長させてヒュージに向けて放つんですよねっ!」

 

「その通りです。最初の一人が特殊弾を使ってマギスフィアを、生成し。できたマギスフィアをパス回しする事でリリィのマギを一つの弾に込めていきます」

 

「ノインヴェルト戦術は、9人分のマギを集めた分の威力がありますわ。大抵のヒュージが、この一撃で倒せることでしょう!」

 

と、夢結、梨璃、神琳、楓が補足する。

 

「ひっさつわざだ〜☆」

 

灯莉の脳天気な答えは的を得ていた。

 

「その通り!ですが、この必殺技を叩き込むには相当な練度が必要です。何よりもリリィ同士の連携が必要になりますわ。その為にもリリィ達はレギオンという戦術単位で編成され、普段から絆を深め合う必要があるのですわ。…ねぇ梨璃さん!」

 

「うん、いつも一緒にいた方が息が合いますもんね!」

 

「補足だが、ノインヴェルト戦術用のバレットは別の使い道があるがここでは説明を省かせてもらおう。」

 

と、伊吹が補足した。

 

「あ、あの楓さ〜ん…。私が説明するはずじゃ…。」

 

「百聞は一見にしかず。まずはお手本をお見せしましょう!」

 

 

 



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110話

少し楓が考え込んでこう言った。

 

「そうですわね〜。では、わたくしたちも5人でやりましょうか、梨璃さん、夢結様、梅様、神琳さん。」

 

「は、はい!」

 

「分かったわ」

 

「おう、任しとけ〜!」

 

「お手本になるか分かりませんが、尽力いたします。」

 

そして全員が位置についた。

 

「梨璃さん、始めてくださいませ〜!」

 

「う、うん…!特殊弾をチャームに装填して…。ノインヴェルト戦術、いくよ!神琳さん!」

 

梨璃は、声に出しながら確実に動作をした。神琳にパスを出す。

 

「畏まりました。」

 

確実にチャームで受ける。

 

「っ…たしかに受け取りました!」

 

「お二人はそのままパス回しを!私達はポジショニングを行います!」

 

「ヒュージがいる事を想定して動くんだゾ!実戦では動く敵がいるんだからなっ!」

 

「味方の位置、そしてマギスフィアの軌道。フィールド内の流れを感じ取るのよ。」

 

と楓、梅、夢結の三人は説明しながらヒュージがいる想定で説明と動きをする。

 

「そうわたくしの力で…。」

 

楓が自身のレアスキルレジスタを発動。

 

「レジスタ…楓さん、そして叶星様のレアスキル。周囲のマギ純度を向上させ、指揮などを向上させるという…」

 

「対ヒュージ戦闘で指揮を執るにはレジスタは必須とも言えるわねよく見ておかないと…」

 

紅巴の言葉に叶星はうなずいていた。

 

「くっ…神琳さん、どうぞ!」

 

「はい!」

 

マギスフィアを梨璃と神琳で育てていた。

 

「マギスフィアが育ってまいりましたね…!」

 

「っ!…今です!夢結様、梅様っ!」

 

「了解したわ…!」

 

「こっちはいつでもいいぞ〜」

 

「お願いいたします…それーっ!」

 

神琳から夢結へマギスフィアが渡される。

 

「っ、たしかに受け取ったわ。梅、私から行くわよ。」

 

「おっ、あれをやる気か?いいゾ、任せとけー!」

 

「はっ…そこ!」

 

と、夢結は梅がいない方向へパスを飛ばした。

 

「なるほど…」

 

「中々に面白いわね…」

 

と、何をやったのかフィーネとマリアは正確に理解した。

 

と、マギスフィアの近くに縮地を使い瞬間移動、マギスフィアを受け取る。

 

「おっと、相変わらずの激しいパスだな。私じゃなきゃロストしてるゾ?」

 

「貴女だからこそ出したパスよ。」

 

「ははっ、そう言われたら張り切るしかないな…そりゃ!」

 

「す、凄い、あんなに素早くマギスフィアを扱うなんて…。」

 

「うひぃぃ〜目が回っちゃいそう☆」

 

姫歌と灯莉刃完全に魅入られていた。

 

「10時方向できヒュージあり!フィニッシュを決めてくださいませ!」

 

「おっけい!決めろ、夢結ーっ!」

 

「っ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」

 

最後に夢結にパスされフィニッシュを決める。

 

ドコォォォォォォン!!

 

「っ…決まったわね」

 

「す、凄いです…これが本場のノインヴェルト戦術…!忘れない内に日記に書いておきませんと…っ。」

 

叶星、紅巴共に感想を述べた。

 

「やったー!成功ですね、お姉様!」

 

「実戦で必ずしもこう上手くいくとは限らないけれどね。数をこなして練度を上げないと。」

 

「そうですね…私達も頑張らなくては…出来れば実戦で力と自身をつけたいところだけど…」

 

成功に喜ぶ梨璃に対して、精進すべきという夢結の言葉に賛成する高嶺。

 

 

その時ヒュージの声が聞こえた。

 

「っ…!?」

 

「この声は…っ!」

 

 

雨嘉とミリアムが驚く。

 

 

「もー、定盛ぃ。お昼食べたばかりなのにお腹の音鳴らさないでよっ☆」

 

「ひめかじゃないわよ!て言うか、ひめかのお腹をなんだと思ってるわけ!?」

 

「まーまーお二人さん仲のいい夫婦漫才は置いといてくださいな」

 

と、百之助がチャームを構えた。

 

「すまんが俺とトミー、奏姉のチャーム。試運転したいから見ててくれる?馬火力過ぎて演習場じゃ使えなくてね…丁度いいから頼むわ。」

 

「別にいいけれど…」

 

「いいですよ!」

 

と、叶星と、梨璃の了承を得たので戦闘準備にかかる。

 

 

 

 

 



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111話

チャームに弾薬を装填し、100を数えるヒュージに相対したのは百之助、伊吹、奏の3名。

 

「みんなよく見ておきなさい、最も参考にならない力技で殲滅しますので。」

 

ゴオォォォォォ!!!シュパパパパパ!ズドォーン!ダーン!

 

奏が言うやいなや、不知火の腰部ジェットモーターを全開に吹かし突貫した、それに合わせて伊吹がミサイルランチャーから30発を発射、奏を追い抜き前方のヒュージを沈め、そこに百之助の30式の12.7ミリ主砲を超電磁加速砲モードで射撃、ミドル級ヒュージを串刺しで10体近くを沈めた。

 

タタタタタタタンッ!!ポンポン!ドカーン!

 

隊列の崩れたヒュージに向けて奏がP90改で掃討、40ミリグレネードと、5.7ミリ弾がヒュージを殲滅する。時間にして30秒で100体。たかがそれだけの時間で約100体ものヒュージが殲滅された。しかも3人得意の白兵戦無しで、である。

 

「で、どうだった?」

 

「…………なんかこう…凄いね…」

 

「本当に全く参考にならなかったナ…」

 

「何をどう考えたらこんなチャームが生まれるのやら…」

 

「瞬殺だ☆」

 

「ヒュージが可哀想に思えてきたの初めてよ…」

 

「白襷隊の方々が全く参考にならないのは知ってはいましたが…実際に見ると…差を感じます…」

 

「御台場女子のロネスネスより上じゃないかしら?3人でこれと言うことは…9人揃えたら末恐ろしいわね…」

 

と、3人の異常すぎる制圧力に全員驚いていた。

 

「そもそも、先代のアールヴヘイム全員に対して一人で事足りる白襷隊がおかしいのであって、私達が劣っているというわけじゃないと思うけどナ。」

 

「まあ、梅の言うとおりで俺たちが異常なだけだから気にするな、それにこれでも地形を変えないように抑えたつもりだ。」

 

「まだ上があるんですか!?」

 

と、紅巴が驚く。無理もない、ただでさえ驚いているのに抑えていたというのだから。

 

「ああ、百之助が本気ならここらへん一体がクレータになって海岸線が変わっちまうよ」

 

「やったろっか?」

 

「やめれやめれ!色々大変なことになるから!」

 

「ですよね〜」

 

「お前がよく知ってるだろうが!」

 

流石にキレ気味な伊吹である。それに対して楽観的な百之助。

 

「…収束圧縮式陽電子衝撃波砲の試射したいんだけど…」

 

「いいけど何も壊すなよ!」

 

「了解」

 

チャキ。

 

「えっちょっまっ!」

 

伊吹が驚くのも無理はない。周りのマギが銃口に収束していく。それも今までの比較にならない量を。

 

「200%で発射する。」

 

ちなみにこれは、ノインヴェルト戦術での射撃を除き30式の最高出力である。

 

「5…4…3…2…1…0ッ!」

 

カッ!

 

青色の光が空中に放出された。真っ直ぐに照射され、大気圏を抜け…衛星軌道上の人工衛星を飲み込んだ。

 

「あっ…なんか撃ち落とした…」

 

「オイィィィィィィィィ!!」

 

因みに後で判明したが、ゲヘナの人工衛星だった。

 

 



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112話

戦闘も終わり、訓練を再開した。

 

「楓、ちょーっと揉んであげようと思うんだけどいいか?」

 

「はい…お願いしようと思っていた所ですわ」

 

(たしかに梅は適任だろうな)

 

百之助は自分もやろうとしていたが潔く引き下がった。

 

「えー、なになに?どゆことー?」

 

「ここからは私がヒュージ役だ」

 

灯利の疑問に答えた梅がチャームを構えた。

 

「え?えっ、えっ、えっ?」

 

「なるほど…ノインヴェルト戦術を開始するわ」

 

「みんな、あそこに居るのは梅さんではないわ。あれはヒュージよ…気を引き締めなさい」

 

流石、叶星と高嶺である。すぐに戦闘態勢を取った。

 

「え、えっと、それって練習試合的な…?」

 

「姫歌ちゃん全体を見て!行くわよ…っ!」

 

叶星が姫歌にマギスフィアをパスする

 

「は、はい、叶星様!いくら百合ヶ丘のお嬢様だからって一人じゃ…」

 

次の瞬間目の前に梅が縮地で目の前に現れる

 

「一人じゃ、どうした?」

 

「ひ…いっ!?」

 

「おわーっ!はやーい☆」

 

「あれは…梅様のレアスキル…縮地ですか。空間の抵抗ベクトルを操作して高速移動するレアスキルですが、あれ程の速度…見たことがありません。」

 

グランエプレの1年三人組の中で唯一冷静に分析できたのは紅巴だけである。

 

「ど、どうゆう事よ!?さっきまであそこに居たのに…ずるいわっ!」

 

「定森!僕に任せてー!」

 

「くっ…仕方ないわ…灯利、パス!」

 

姫歌が灯利にパスをする。がしかし…

 

「えっへへー☆今度は僕の番〜」」

 

「そんなにかんたんに行くかな?」

 

マギスフィアが届く前に梅が灯利の目の前に現れた。

 

「えぇぇぇーっ!?どうやったのっ?どうやって来たのっ?ワープだー☆」

 

若干興奮気味である

 

「こらー灯利!驚いてないでマギスフィアをしっかり保持しなさいよ!」

 

「あ……忘れてた」

 

「わ、私がフォローします!」

 

と、灯利が途中で放り投げたマギスフィアを紅巴が受け取ろうとしたが梅が早すぎた。

「ハイカットー」

 

「え…そんな早すぎます……っ!」

 

「あぁぁぁぁ〜っ!ロストしちゃうぅぅっ!」

 

「…させないわ。」

 

と高嶺が受け取った。レアスキルゼノンパラドキサも発動する

 

 

「ほう……ゼノンパラドキサ使いか。縮地に加えて複数対象の行動ベクトルを把握できるレアスキル」

 

「梅さんほどの高速機動は出来ませんが、この程度ならば。

 

「高嶺様がマギスフィアを……!」

 

「やってみなければわからないゾ?試してみるか?……私とのドックファイトを。」

 

「胸をお借りするわ。」

 

「お、お二人の姿が……消えたっ?」

 

姫歌に百之助が突っ込む。

 

「違う!超高速で白兵戦してんだ!」

 

「よく見て、みんなあれだけ高速でのマッチアップ…そう見れるものではないわ」

 

(高嶺のやつ無茶苦茶しやがるな…あれじゃ持たんぞ…)

 

「……紅巴さん!」

 

「ふぇっ!?私ですかっ?」

 

「やらせない」

 

梅が機動を読んで対応するが高嶺が上手であった。

 

なんとバックパスで叶星が受け取った。

 

「受け取ったわ、高嶺ちゃん!これで…フィニッシュよ!」

 

ドゴォォォォォォン!

 

「…楓先生、今の評価はどうだ?俺はいいと思うんだが…」

 

「そうですわね、私も問題ないと思いました。ただ…」

 

「一年があの二人についていけてない…だろ?」

 

「その通りですわ」

 

「台場出身者の動きについていけるやつが神庭にいるわけねえだろ。これからだよ…それに一年をよく見てみろ何とか食らいついていけるよう努力はしていたと見えるよ。これは…楽しみでしかないだろ」

 

「あら…珍しいですわね…百之助様が楽しそうにするのは」

 

「かもな…よし、これはシゴキがいがありそうだな?今度は遅滞戦術教えてやっか?」

 

「それもいいですわね…百之助様お願いできます?」

 

「了解した。」

 

グランエプレを百之助は夕方になるまでしごき倒した。

 

 



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