ISー兎協奏曲ー第二楽章 (ミストラル0)
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設定資料
設定資料① 量産機


活動報告のキャラ募集の参考資料として量産機のデータをアップしておきます。


(ハガネ)

 

雪華や打鉄シリーズをベースに開発した量産仕様IS。

打鉄のような使い易さを主眼として開発されており、肩の積層構造のシールドスラスターを装備し、元の人としての腕の長さから違和感を減らしたガントレットパーツ等の打鉄本来の良さはそのままにシールドとしても機能する頑丈さを併せ持つ。

刀型の近接ブレード・蓮華やガンブレイドにアサルトライフル、先端を尖らせて刺突も可能にしたピアッシングシールド等を装備する。

 

近接仕様【村正】

元から装備する蓮華に加えて雛菊という近接ブレードを追加し、バックパックに瞬発型のブースターを追加。

ピアッシングシールドを小型の物に換装し、斬艦刀の運用データから対大型機・対艦用ブレードとして作成された斬機刀・村正を装備する。

 

狙撃仕様【種子島】

超長距離射撃用スナイパーライフル・種子島に強化センサーバイザーを装備し、索敵用レドームやその他中距離用火器を積んだ遠・中距離戦仕様。

 

装甲強化仕様【防人】

ピアッシングシールドを両手に装備し、左右の肩のシールドスラスターを大型の物に換装し、追加外装を装備した耐久性を向上させた装備。

弐式の夢現をベースに改良を施した薙刀型の穂先にショットガンを装備した高周波ブレードの陽炎を装備する。

 

高機動仕様【隼】

バックパックや腰のサイドアーマーに高機動ブースターを追加し、機動力を強化した装備。

武装は雛菊や陽炎等を必要に応じて追加装備する。

 

【武神】

【村正】【種子島】【防人】【隼】の各種装備を全て装備したフルアーマー・フルウエポン形態。その分扱いは非常に難しく、エネルギー効率も悪いので滅多に使う者はいない。

 

白銀(シロガネ)

鋼のバリエーション機。

主に学園の教官や部隊指揮官仕様として出力やセンサー類を強化してあり、装甲も一部増設されている。

カラーリングが白いのが特徴。

 

黒鉄(クロガネ)

鋼のバリエーション機。

更識等に支給された隠密仕様で、各装甲等を小型化したり軽量化しており、その分静音性や機動力に優れる。

その他にもジャミング機能を有する専用パック【常闇】が存在する。

カラーリングはダークグレーや黒。

 

 

 

ラファール・リヴァイヴⅡ(制式採用)

 

シャルロットや真耶機のデータからブラッシュアップが行われたリヴァイヴⅡの制式採用版。

元々の豊富な使用可能武装はそのままに徹底した操作性の向上と整備性、リヴァイヴとの互換性やⅡへ改修のしやすさ、今後の強化を想定した拡張性等を纏めたデュノア社の現最高傑作という仕上がりっぷりにあの兎師弟が感心したという。

オプションパックはいくつかの組み合わせで性質を変化させるという雪兎とシャルロットの使う二重武装や重複武装を元にした他とは違う方式を採用した。

 

グレール

雹を意味する機動射撃オプション構成。

その名の如く両手とサブアームに持った武装から弾幕を展開しながらバックパック等の高機動装備で戦場を駆け巡る

 

エクレール

雷を意味する高機動近接オプション構成。

近接オプションとして先行量産機ではオミットされたシールドバンカー【一角獣の紋章】を装備する。

 

クードヴァン

突風を意味する純高機動オプション構成。

バックパックのスラスターを2基増やし、元からの2基を含めた4基スラスターで高速移動を可能にした。

 

アルカンシェル

虹を意味する射撃・砲撃オプション構成。

グレールの射撃オプションに砲撃オプションを追加した純射撃オプションで、バックパックのサブアームには大型レールバズーカとビームキャノン、撃つ際の姿勢制御アンカーや反動相殺用スラスターを装備する。

 

トルナード

竜巻を意味する純近接オプション構成。

追加のソードライフルにシールドバンカーやエッジウイング、ソードビットを装備しており、近付いたものを竜巻に巻き込まれたようにズタズタに切り裂くというコンセプト。

 

ミラージュ

蜃気楼を意味する回避・防御型オプション構成。

両肩のサブアームシールドによる防御と高機動スラスターによる回避運動を得意とする。

 

その他にもあるが、今回はこれで割愛する。

 

 

 

ブルー・アクシス

 

BTシリーズの稼働データと雪兎から齎された技術のハイブリッドとなるイギリスの新型にして3.5世代量産機。

イギリスからPFへの出向者が基礎設計を行っており、性能で言えば初期のブルー・ティアーズを上回るカタログスペックを誇る。

BTシリーズの最大の特徴である偏向射撃も強化型ハイパーセンサーやブルー・ティアーズ・ガブリエルの使用履歴等から扱い易さを格段に向上させており、偏向射撃の適性と訓練さえしっかり熟せば使用可能な程に改善されている。

基本武装はバックパックから腰のサイドアーマーに移設したBTビットと腕部内蔵型のレーザーブレード、オプション装備によってカスタム可能なマルチカスタムレーザーライフル、脚部内蔵のマイクロミサイルと拡散レーザー砲。

 

オプションS

ブルー・アクシスの狙撃タイプオプションパック。

マルチカスタムレーザーライフルにスナイパーバレルと銃身下に実弾仕様のミニガトリングガンを装備し、肩に左右選択式のレドームシールド、バックパックに追加のBTビットコンテナを持つ。

 

オプションA

ブルー・アクシスの近接タイプオプションパック。

マルチカスタムレーザーライフルには銃身下に実体ブレードを追加してバヨネットとしており、脚部にレーザーブレードを応用したレッグブレードを追加。

バックパックは高機動ブースタータイプに換装する。

格納武装としてランパードランチャーを元に基礎設計者がとあるアニメから着想を得た槍型武装ガングレイブを持つ。

ガングレイブは某間違った使い方で有名なあの武装が元ネタ。

 

オプションD

ブルー・アクシスの強襲タイプオプションパック。

マルチカスタムレーザーライフルにはレーザーキャノンへと出力強化を行うキャノンバレルを装着し、バックパックにクラスターミサイルコンテナを装備。

マルチカスタムレーザーライフルとは別にレーザーアサルトライフルとグレネードランチャーの複合武装であるピアッシングレイを装備する。

 

 

 

ハイゼ

 

雪兎から齎されたデータとシュヴァルツェアシリーズをベースとした3.5世代量産機。

本体そのものは各種オプションパックとそれ以外に各個人で追加装備を付けさせる事を前提にハードポイント増設した機体で、他のオプションパックの装備も別のオプションパックに装備する事も視野に入れた設計となっている。

本体の武装はアサルトライフル、対ビームコーティングコンバットナイフ、ヒートブレード、グレネードランチャー付きシールドとシンプルに纏められている。

 

ヘイズル

ハイゼ本体のシールドをシールドウエポンブースター*1に換装し、脚部に追加スラスターを装備。頭部にも顔の上半分を覆う強化センサーバイザーを装備したパック。

シールドウエポンブースターはバックパックに装備し、本来のシールドも装備する事が可能。

シールドウエポンブースターを更に2つ追加して両腕とバックパックでドライブースターという高機動形態にもなる。

 

ハイザ

レーゲンの大型レールガンをベースとしたレールカノンを装備し、それに合わせて脚部やバックパックを耐反動用に大型外装を追加したパック。

ミサイルポッドやレーザーワイヤー等を装備しており、レーゲンに近いコンセプトのパックである。

 

キハール

インレが装備していたキハールをそのままハイゼ用のパックとして再設計したパック。

長距離移動や偵察用のオプションパックで、巡航形態への簡易変形とセンサー兼追加装甲のレーダーアーマーを装備し、レーゲンと同じワイヤーブレードを装備している。

あくまで偵察オプションなのでそれ以上の武装追加はない。

 

フライルー

強襲用オプションパックで、肩に大型のシールドウエポンブースターを2基装備し、小型化したレールカノンを左右に装備する。

 

その他、装甲切換以外で使用するオプション装備としてアサルトライフルに装備するロングバレルとヒートブレードを複合したブレードバレルやヘイズルで装備したシールドウエポンブースターの予備、バズーカランチャー、腕部に装着するヒートサークルカッター*2等を持つ

 

 

 

鉄竜

 

乱の鋼竜の正式量産機。

小型化した龍咆のビット・龍咆球を4基装備しており、メインウエポンは青竜刀。

バックパックには龍の頭部を模した5基目の龍咆を持ち、こちらは大型化して出力を強化したバージョンで、収束と拡散も可能。

 

風翼

高機動パック。

竜の翼を模したバインダーブースターで機体を覆うように可動させればシールドにもなる。

翼に龍咆を応用した圧縮空気砲のスラスターを持ち、長距離移動もエネルギー消費を抑えたコストパフォーマンスに優れる。

オプション武装として青龍偃月刀を装備する。

 

雷爪

近接強化パック。

腕に竜の爪を模した大型のクローガンドレットを装備した形態。

こちらにも小型の翼型バインダーブースターが4基付いており、龍咆球を接続して一気に加速したり、方向転換を行う。

高電圧縛鎖(ボルテックチェーン)も装備している

 

炎牙

砲撃強化パック。

バックパックの龍の頭部を換装し、圧縮率を上げて炎熱と化した龍咆を放つ龍崩火を装備する。

また、腕部内蔵龍咆の崩拳*3を装備した。

 

鋼竜

乱が専用とする鉄竜の先行試作機。

各出力が鉄竜より高めに設定されており、扱いが少しピーキーになっている他、龍の尻尾を模した多段式スラスター兼サブアーム龍尾を装備している。

 

 

 

インパルスイーグル

 

ファング・クエイクを改良して3.5世代機に合わせた仕様にした機体。

各部が大型化していたファング・クエイクに対して各部を小型化し、本体はシンプルな構造にする事で拡張性を高めており、オプションパックを装備すれば多方面に活躍出来る。

バックパックに懸架したアサルトライフルを二本のサブアームで使用する等のアクションが可能。また、両手にライフルを装備してアサルトライフル四つによる射撃も可能。

 

アサルトイーグル

近接強襲オプションパック。

ファング・クエイクの装備をオプション化したようなもので見た目はダウンサイジングしたファング・クエイクそのもの。

右腕にスタンガンナックル、左腕に高周波ブレードクローを装備する。

 

イーグルアイ

射撃・狙撃オプションパック。

鷹の嘴を模した強化センサーバイザーを装備し、実弾とレーザーの2種のスナイパーライフルを使った狙撃を行う。

バックパックにミサイルポッドも追加している。

 

ストームイーグル

高機動オプションパック。

バックパックに大型ブースターを装備して脚部にも姿勢制御用に追加スラスターを内蔵した増設装甲を装備しており、高い機動力を持つ。

 

 

 

ヴェルデ・グリフォーネ

 

テンペスタとロッソ・アクイラのデータから作成された3.5世代機。

アームブレードや双銃剣【アクイラ】を標準としており、基本形態から機動力を重視した設計となっている。

名前の通り、通常機はヴェルデ()なのだが、指揮官機はヴィオラ()と名前と色が変わる。

 

グリフォーネ

基本装備パック。

ロッソ・アクイラに比べてミサイルポッドやシールド等のオプションを追加しているバランスの取れたパック。

 

レオーネ

近接オプションパック。

ロッソ・アクイラのデータをそのまま流用し、蛇腹剣やヒートチャクラム等を装備する。ほぼロッソ・アクイラの量産バージョンという感じ。

 

アクイラ

射撃オプションパック。

【アクイラ】をアサルトライフルタイプのソードライフルにしたものを装備したり、ミサイルポッドの増設等の機動射撃を重視した装備をしており、一応はセンサーも強化しているのでスナイパーライフルも装備しているが、他の量産機に比べて精度は高くはないが、機動射撃の精度は恐ろしく高く、戦場をかき乱す事を得意としているようだ。

*1
ブースターを兼ねたミサイル内蔵型シールド

*2
ワイヤーブレードで回転部を飛ばして有線チャクラムにもなる

*3
甲龍のオプションにあったものと同じタイプ




現行ではオプションは3つから4つが主流で、リヴァイヴⅡは少し方式が異なるタイプになっております。

専用機に関してはまた増えてきたら纏めます。


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1章 再始動編
1話 再始動


兎達からの一日早いクリスマスプレゼント!
と称した新シリーズ開幕です。

設定等はまたそのうちにまとめておきます。

それでは兎協奏曲第二楽章始まります。


〈これまでのあらすじ〉

 

IS 正式名称インフィニット・ストラトス。

宇宙開発用に篠ノ之束が開発した宇宙空間活動用マルチフォーム・スーツ………なのだが、発表当初は各国から見向きもされず、【白騎士事件】と呼ばれる一件によって漸く注目を浴び、本来の目的とは違う兵器・競技用パワードスーツとして世界に広まった。

しかし、ISは女性にしか使えないとされていたが為に【女性権利主義】が広がり、女尊男卑という世界になってしまっていた。

 

それが変わったのは【織斑一夏】という初の男性IS適性者が発見されてからだ。

その後の調査でもう一人の適性者にしてISの開発者である篠ノ之束の弟子である【天野雪兎】が見つかり、二人は他の生徒が全て女子であるIS学園へと入学させられる事になる。

だが、天野雪兎は転生者であり、篠ノ之束の教えを受けたせいか学園で再会した友人や知り合った者達を巻き込み『原作?そんなもん知るか!』とばかりに行動し、いつしか【兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)】という二つ名を得る。

そして、原作ブレイクのせいかIS学園に居着いた篠ノ之束と師弟揃って好き勝手にIS開発に勤しみつつ………IS学園に入学して一年が経過した。

 

***

 

四月。

IS学園校舎前。

 

「今日から僕もここの生徒なんだなぁ」

 

桜舞う中、“見慣れた”校舎を見つめ、薄紫色の髪をした少年、天野紫音(あまのしおん)は今日までの日々を思い返していた。

 

「そんなとこでどうしたの?紫音」

 

「まだ実感が沸いておらぬのだろう。何せここは他の学び舎とは異なる故にな」

 

「それに紫音自身も特別事情を持っていますからね」

 

そんな中、紫音に声を掛けてきたのは毛先だけが黒い水色のツインテールのレヴィ=ラッセル、白い髪のディアーチェ=K=クローディア、茶色の髪をしたシュテル=スタークスの三人の少女だった。この三人とあと二人、ユーリ=エーベルヴァインとイリス=セブンフィールドという少女もいるのだが、彼女達五人は正確には人間ではなく、紫音の保護者の一人であるとある“天災”の片割れが作り出した疑似人類、彼曰く「人工知能に骨格強化した肉体を与えたハイブリッドヒューマノイド」というカテゴリーに入るそうなのだが、基本的なところは人間と変わらないそうだ。

 

「はは、ディアーチェの言う通りちょっと実感がね………ところでユーリとイリスは?」

 

「あの二人でしたらマスターの手伝いで先に講堂に行っています」

 

「そっか、なら僕達も行こっか」

 

***

 

講堂。

 

「マスター、こっちの接続は終わりました!」

 

「こっちも終わったわ」

 

「ありがとさん、ユーリ、イリス」

 

教師達に混じって入学式の準備をしていた雪兎達三人。その一人が先程話題に出たイリスである。彼女は最近ユーリ達四人と同じマテリアルズに加わった新メンバーなのだが、彼女だけ他の四人とは出自が異なる。

実は彼女は一週間程前に雪兎が訪問した異世界にて発見された石板型のタブレット端末に封じられていた人格データの複製体らしく。その人格データをマテリアルズのようにハイブリッドヒューマノイドのボディを与えた存在なのだ。

記憶メモリ等に欠損があり、“イリス”という名前しか自分の事を覚えていなかったが、何故か機械工学やテラフォーミング等の知識は残っていたので雪兎の助手の一人として重宝されている。

 

「(にしても“イリス”とはな)」

 

その正体を雪兎は知っていた。

その正体とは魔法少女リリカルなのはシリーズのゲームを原作にした劇場版3作目と4作目に登場するオリジナルキャラクターで、奇しくもマテリアルズに縁のある人物であった。

尚、記憶メモリの方は某ツンツン頭さんが脳細胞が死滅して記憶が戻らないように、メモリそのものが欠損しているせいで記憶が戻る事は無い。

そして、オリジナルの“イリス”の緊急時用のコピーであったためか、内部データに劇場版3、4作目の黒幕の人格データも存在したが、イリスをチェックする際に雪兎が発見し削除済みである。

また、セブンフィールドという名は他のマテリアルズ達と同様に並行世界を描いた番外編のイリスから拝借している。

 

「雪兎〜、準備終わった?」

 

そこへ雪兎の彼女でクラスメイトでもあるシャルロットがやってきた。

 

「ああ、二人が手伝ってくれたからな………会長も余計な手間を掛けさせやがって」

 

「これをやるって言われたの“あっち”から帰ってきてすぐだったもんね」

 

「一週間でイリスのボディ作ってる最中にこれの準備させられたんだ、この借りは高くつくぞ」

 

「あはは………御手柔らかにお願いします」

 

噂をすれば何とやら、この準備を雪兎に依頼した生徒会長の更識楯無が申し訳なさそうな顔をして現れ、手の扇には『陳謝』と書かれていた。

 

「それじゃあ俺とシャルはもう行きますよ?」

 

「ユーリとイリスはそのまま入学式に?」

 

「はい」

 

「そろそろ他の子達も来るでしょうしね」

 

そうして雪兎とシャルロットが講堂を去るのを見送ると、楯無は今年の新入生のリストを眺める。

 

「今年も紫音君にマドカちゃん、それから蘭ちゃんと将来有望な子が多いわね………他にも何人か面白い子がいるみたいだし」

 

紫音を含む四人の新男子適性者や新たな代表候補生。他にも個人的に面白いと思える人材が集められていた。

 

「それに、今年は去年までと色々違うから退屈はしなそうね………お姉さんもこの年に入りたかったくらいだわ」

 

そう、楯無が言うように今年は去年のアレコレがあったせいか設備やカリキュラムが新生したとも言えるレベルで変わったのだ。しかし、楯無達3年生はいきなりこれまでの二年間を無視する訳にはいかず、最低限の変更点に抑えられてしまっており、年度末の説明会の際に「留年したらそっちのカリキュラム受けられますか!?」と声が挙がっていた程だ。

 

「その中でもこれが飛びっきりで違う点かしらね?」

 

“新設特化クラス”、去年の雪兎達のクラス再編に続く試みとして推薦された者や希望者だけが集められる専用の特殊なカリキュラムが組み込まれた特別クラスが新設されたのだ。

このクラスには紫音やマドカ、マテリアルズの五人等の雪兎に縁のある者が全体の1/3を占めており、「依怙贔屓なのではないか?」という意見もあったが、特殊なカリキュラム以外は他のクラスと変わらないという事もあって反対意見はほとんど出なかった。というよりも「アレの関係者だし一纏めにしてもらった方がいいのでは?」という意見の方が多かったぐらいなのだ。

 

「それよりも私の後釜をどうしようかしら」

 

楯無はもう3年であるため今年で卒業だ。

以前、全生徒の前で雪兎にボッコボコにされた際に彼に生徒会長の座を譲ろうとしたのだが、「面倒なのでパス」と断られてしまっており、そのため楯無の任期が終われば生徒会長の座を狙って熾烈な争いが始まると予想出来る。

 

「いっそのこと今のうちに私を倒して一夏君が会長を継いでくれないかしら?」

 

そこで楯無が考えたのは今では雪兎に次ぐ実力を身に着けた一夏が己を倒して会長に就任してくれないか、というものだった。

生徒からの人望もあり、実力は雪兎のお墨付きとあって悪くない考えだと楯無は思っている。

 

「かいちょ〜、そろそろ打ち合わせ始めるそうだよ〜」

 

「今行くわ」

 

同じ生徒会の本音に呼ばれ、楯無はステージ脇の会議室へと向かうのであった。

 

***

 

そうして講堂が開場となり、新入生達が期待と不安を胸に次々と集まってきた。

紫音も指定された席に座って待っていると………

 

「おっ、ここか」

 

その隣に紫音と同じ男子の制服を着た少年がやってきた。

 

「隣が男子で良かったぜ、やっぱIS学園って女子ばっかだから本当にここにいていいのか不安になったよ」

 

「あはは、確かに知り合いとかがいないとキツそうだね」

 

「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は進藤(しんどう)レオン、レオンって呼んでくれ」

 

「僕は天野紫音、僕も紫音って呼んで」

 

「おう!………って、“天野”?それってあの有名なあの人と同じ!?」

 

「うん、僕は訳あって雪兎兄に引き取られて義理の弟になったんだ」

 

「そ、そうなのか………紫音も色々大変なんだな」

 

「へぇ、君があの人の」

 

そこへもう一人金髪碧眼の男子がやってきた。

 

「君は?」

 

「これは失礼。僕はルーク=ファイルス、良ければ僕もルークと呼んでくれ」

 

「よろしくルーク。ファイルスって事はナターシャさんの?」

 

「ああ、彼女は僕の姉さんさ」

 

「ナターシャ=ファイルスってアメリカの国家代表だった人だろ?ルークの姉さんってすげーんだな」

 

「今は国家代表を辞してここで教師をしているけどね」

 

ルークも席が二人の傍らしく、そのまま三人は会話を続ける。

 

「そうか、君は母親に楽をさせたくて」

 

「おう、片親なのに無理して入院しちまってな、だから恩返しがしてぇんだ」

 

「母親かぁ………」

 

しばらくレオンの身の上話を聞いていると、最後の四人目の男子が現れた。

 

「はぁ、はぁ………何とか間に合った」

 

割とギリギリな時間にやってきた最後の少年は黒髪の少年で、その顔は何故か少し油や煤で汚れていた。

 

「おっ、最後の一人だな」

 

「外部から来たにしてもモノレールの時間は余裕があったと記憶しているが………」

 

ルークがそう呟くとその少年はゲンナリした顔で訳を話してくれた。

 

「実はそのモノレールでテロがあってね」

 

「テロ!?」

 

「うん、なんでも女性権利主義の一派と思われる女性がモノレールのコントロールルームに爆破物投げ込んでコンソール破壊しちゃってね」

 

「うわ、そりゃ災難だったな」

 

聞けば他にも新入生の乗客がいたらしく、そのせいで多くの新入生がギリギリになってしまったらしい。

 

「ほんとね………犯人は巡回に来てたここの用務員さんが捕まえて警察に突き出したんだけどモノレールは直ぐに復旧しそうになくてね………それで、“その破壊されたコンソール直してた”からギリギリになっちゃって」

 

「そうなんだ」

 

「って、ちょっと待て!?お前今コンソール直してたって言ったか!?」

 

「うん、僕はそういうのが得意でね、時間も無かったから用務員の人にお願いして直させてもらったんだ。直したと言ってもちょっとした応急処置で動かせるようにしただけだけどね」

 

「雪兎兄みたいな事するね、君………あっ、僕は天野紫音、紫音って呼んで」

 

「これはご丁寧に………僕は赤城優斗(あかぎゆうと)、僕も優斗と呼んでくれ」

 

「俺は進藤レオン。レオンでいいぜ」

 

「ルーク=ファイルスだ。僕もルークでいい。よろしく、優斗」

 

こうして後に第二世代の四天(セカンド・フォー)と呼ばれる事になる天野紫音、進藤レオン、ルーク=ファイルス、赤城優斗の四人は出会ったのであった。




新キャラの赤城優斗君は狼牙竜さんよりアイデアをいただきました。
この場をお借りして改めてお礼お申し上げます。

イリスの出自に関してはそのうち番外編として書かせていただきます。


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2話 入学式

年末どうお過ごしでしょうか?
という訳で今年最後の投稿です。

新キャララッシュになりますので少し駆け足ですがお付き合い下さい。


それから程なくして入学式が始まった。

偉い人の挨拶等は手短に済み、最後に生徒会長・更識楯無からの挨拶となった。

 

『皆さん、入学おめでとう。あんまり長く話しても皆退屈だろうし、私からはこれを挨拶代わりとさせてもらうわね』

 

そう言って楯無が指を鳴らすと講堂が暗くなり、ある立体映像が映し出された。

それは過去の様々な行事での活動記録であった。

始めはクラス代表戦、その次はタッグトーナメント、文化祭、キャノンボール、体育祭、その名シーンを切り取ったものである。

そして、去年度の末に行われた専用機持ちによるトーナメント決勝戦………雪兎と一夏による戦闘の一部が流される。

 

「スッゲー………」

 

「あれが噂の………」

 

映像が終わると明かりが戻り、皆の視線が再び楯無へと戻る。

 

『今見てもらったのはほんの一部だけど、皆の先輩達がこの学園で行ってきた事よ。今年からは少し今までと違う所もあって色々戸惑うかもしれないわ。でも、ここで過ごす三年間はきっと貴方達の良い糧となるでしょう』

 

そう言って楯無が扇子を開くと、『日々精進』の文字が見える。

 

『改めて入学おめでとう』

 

扇子を閉じてそう告げると、講堂の中なのに桜の花弁が新入生達の頭上を舞うが、その花弁には触れようとしても触れなかった。

 

「これも立体映像か」

 

「現実拡張………話には聞いてたけどここまでのAR技術があるなんて」

 

「雪兎兄達がしてた準備ってコレだったんだ」

 

***

 

入学式を終えた新入生達はそれぞれ指定された教室へと向かう。

紫音は同じクラスと知ったレオン、ルーク、優斗の三人と一緒に教室へと向かっていた。

 

「やっぱ俺ら全員同じクラスなんだな」

 

「男子の少なさを考えれば同じクラスにしてまとめて管理したいというのが学園の本音なんだろう」

 

「それはそうだけどよ………」

 

「雪兎兄から聞いた話だと僕らのクラスは少しカリキュラムとかに違いがある特別クラスだって話だよ」

 

「そのカリキュラムというのが僕達を集めた理由なんだろうね」

 

そんな事を話している紫音達の少し後ろを金髪のローツインテールに碧眼の少女・イクス=シアハートは歩いていた。

彼女は前に入試に訪れた際に落とし物を紫音に拾ってもらった事があり、改めてお礼を言おうと紫音を探していたのだが、気付けば紫音は他の男子三人に囲まれており、イクスは声を掛け辛い状況であった。

 

「うぅ………せっかく同じクラスになれたのに………いいえ、同じクラスならまだチャンスは」

 

「ねぇ、君どうしたの?」

 

「ひゃい!?な、なな何でしょうか!?」

 

「驚かせちゃってごめん。私は紫陽日向(しようひなた)、貴女のお名前は?」

 

「イ、イクス=シアハートです」

 

「ならイクスちゃんって呼ぶね、私も日向でいいから」

 

「は、はぁ」

 

そんなイクスに声を掛けたのは紫陽日向。雪兎の中学時代の後輩だった首元までの短い茶髪に黒みかかった茶色の瞳をした少女だ。

 

「話は戻すけどイクスちゃん、何をそんなに悩んでたの?」

 

「えっと実は………」

 

日向が悪い人では無いと信用したイクスは入試の時の事を日向に話した。

 

「な〜るほど、それで彼の事ジッと見てたんだ」

 

「はい………」

 

「なるほど、そういう事でしたか」

 

そこへ更に二人の少女がやってくる。

 

「あれ?貴女は前に雪兎先輩と一緒にいた人だよね?」

 

「知り合いだったの?ユーリ」

 

「ちょっと入試の時に………お久しぶりです、日向さん」

 

それはユーリとイリスの二人だった。

 

「改めまして、ユーリ=エーベルヴァインです」

 

「イリス=セブンフィールドよ」

 

「じゃあ、私も改めまして紫陽日向です」

 

「イクス=シアハートと申します」

 

「それで、イクスさんは紫音さんにお礼が言いたいのですよね?」

 

「はい」

 

「でしたら後で時間を取ってもらいますからその時にしましょう」

 

「だ、大丈夫なんですか?」

 

いきなり時間を取ってもらうなんて出来るのか?と心配になるイクスだったが、ユーリとイリスは顔を合わせて微笑んだ。

 

「心配しなくても大丈夫よ。私達と紫音は知り合いだから」

 

「その事についてはまたHRで説明があると思いますから」

 

そう告げる二人にイクスと日向は首を傾げるが、その意味は直ぐにわかる事となる。

 

***

 

教室に着き、それぞれ指定された席へと座り担任教師を待っていると、そこへやってきたのはかつて世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を持っていた織斑千冬と日本の代表候補生だった山田真耶の二人であった。

 

「あ〜、私はこの度新設された1年α組、特化クラスの担任となった織斑千冬だ。色々と訳有りの生徒も多いが、去年の阿呆共のようにやらかしてくれない事を祈る」

 

「副担任の山田真耶です。皆さん、1年間よろしくお願いしますね」

 

紫音達が集められたα組とは、入試の段階で高いIS適性を持った者や代表候補生、そして千冬の言うような訳有りの生徒を集めたクラスで、その訳有り生徒をまとめられそうな教師と言う事で去年雪兎達問題児集団の担任だった千冬とその副担任だった真耶に白羽の矢が立ったのだ。

無論、クラス対抗戦に配慮して他のクラスにも代表候補生は割り振られている。

千冬にとって幸いな事に今年は千冬の名を聞いても黄色い声をあげる生徒が皆無だったのは良いのか悪いのか………

 

「とりあえず皆さんの自己紹介から始めましょうか」

 

「なら、初めは赤城優斗君からですね」

 

「えっと………赤城優斗です。趣味は機械弄りです。特技は機器のメンテナンスや修理等ですかね?」

 

トップバッターとなったのは四人いる男子の新入生の一人である優斗だった。

 

「そうか、報告にあったモノレールの応急処置をしたのはお前だったな」

 

「「えっ?」」

 

千冬の呟きに同じモノレールに乗っていたと思われる生徒達が驚く。

 

「あはは、偶々現場に居合わせただけですよ」

 

「謙遜するな。あの後お前の応急処置を見た天野………お前達の先輩になるあの馬鹿兎が感心していたぞ」

 

「えっ?そうなんですか」

 

最早IS学園で兎と言えば彼が連想されるくらいには天野雪兎は有名なのだ………色々な意味で。

 

ここからは何人かの自己紹介をダイジェストでお送りします。

 

赤刎栞(あかばねしおり)よ。趣味は読書、特技はお菓子作りかな?」

 

黒縁アンダーリムのメガネをした黒髪で三つ編みおさげの委員長タイプの少女。

 

「天野紫音です。趣味は読書で、特技は………特にないです」

 

雪兎の義弟の紫音。

 

「天野マドカだ。趣味は音楽鑑賞、特技は戦闘と危険物処理だ」

 

同じく雪兎の義妹となったマドカ。

 

伊集院渚(いじゅういんなぎさ)よ。趣味はアウトドアで、特技はサバイバルね」

 

アウトドアグッズメーカーの社長の娘の茶色に近い金髪のローツインテールの少女。

 

出雲寺瑠華(いずもじるか)だよ。アイドルやってました!」

 

日本の人気アイドルだったが、「普通の青春もしてみたい!」とIS適性があった事からアイドル活動を休止して入学した水色のショートカットの少女。

 

「ユーリ=エーベルヴァインです。趣味はガーデニング、特技はプログラミングです」

 

マテリアルズの癒やし枠のユーリ。

 

「我はディアーチェ=K=クローディア。趣味は料理、特技は家事全般だ」

 

マテリアルズが筆頭のディアーチェ。

 

「クロエ=クロニクルです。趣味は料理、特技は並列演算処理です」

 

束から「くーちゃんも学校に行ってみたら?友達増えるかもよ?」と言われて入学したクロエ。

 

五反田蘭(ごたんだらん)です!趣味はショッピングで、特技は料理です」

 

マドカの親友にして弾の妹の蘭。

 

「オニール=コメットです」

 

「ファニール=コメットよ」

 

双子で瑠華と同様アイドル活動を休止してまで飛び級入学してきたコメット姉妹。

 

「イ、イクス=シアハートです………趣味は園芸で、特技は花言葉、かな?」

 

紫音の席をチラチラと見ながら自己紹介をするイクス。

 

「紫陽日向です!趣味は運動とカラオケ、特技は」

 

「進藤レオンだ。趣味はゲーム!特技は色んなバイトしてたから色々やれる事だな」

 

中学時代は苦学生だったレオン。

 

「サラ=スカイフィールドです。趣味は動物と触れ合う事、特技は動物と仲良くなる事です」

 

3年の姉を追うように入学した青髪のふんわりした少女。

 

「シュテル=スタークスです。趣味は読書、特技は精密作業になります」

 

マテリアルズが参謀シュテル。

 

「イリス=セブンフィールドよ。趣味はガーデニング、特技は機械関係ね」

 

マテリアルズのニュービーのイリス。

 

「橘紗代子。趣味は日光浴、特技は機械整備よ」

 

日光浴が趣味とあって日焼けした肌の快活そうに見えてインテリな少女。

 

「ルーク=ファイルスです。趣味はサッカー、特技は乗馬かな」

 

ナターシャ=ファイルスの弟のルーク。

 

凰乱音(ふぁんらんいん)よ!台湾の代表候補生として来たわ。趣味は料理、特技は武術よ」

 

鈴の従妹にあたる台湾の代表候補生の乱。

 

「エクシア=ブランケットです。趣味はお料理、特技は紅茶を淹れる事だよ」

 

去年の年末に雪兎達に救われたチェルシーの妹のエクシア。

 

「僕はレヴィ=ラッセル!趣味はお散歩!特技は暗算だよ」

 

マテリアルが一番槍のレヴィ。

 

「アリス=ローズウェルよ。趣味はショッピングと実家の犬の世話、特技は乗馬とピアノよ」

 

最後はアメリカで近年急成長している複合企業ローズウェルの社長令嬢のアリス。緋色の背中まで伸びるロングヘアーの少女だ。

他にも生徒はいるが、長くなりそうなので他はまたの機会に紹介するとしよう。

 

「はい、皆さんがこれから1年を共に過ごす仲間です。仲良くしてくださいね」

 

最後の生徒が自己紹介を終えたところで真耶がそう言って締め、再び教壇に千冬が立つ。

 

「さてと、ここでお前達には話しておかなければならないことがある」

 

「話しておかなければならないこと?」

 

「そうだ進藤。だが、次から質問する際は挙手するように」

 

「はい!」

 

「よろしい………話しておかなければならないことというのは先程話した訳有りの生徒についてだ」

 

多くの生徒が首を傾げる中、千冬はその生徒の名を呼ぶ。

 

「天野紫音、天野マドカ、クロエ=クロニクル、前へ」

 

呼ばれて教壇の隣に立ったのは紫音、マドカ、クロエの三人。

 

「この三名だが、とある違法研究機関によって作られたクローンもしくはデザイナーチルドレンだ」

 

「えっ?」

 

突然の言葉にそう呟いたのは誰であっただろうか。

 

「その違法研究機関そのものは既に解体済みで研究者も逮捕済みだ。だが、その被験体だった三名の内二名は苗字からわかるようにあの馬鹿兎(雪兎)が身内として保護している。クロニクルも篠ノ之束が個人的に保護した娘だ」

 

そして追加で投下されたのは世間では下手に接触するべからず(アンタッチャブル)と言われる兎師弟が保護者という情報だった。

 

「あ〜、訳有って養子にしてもらったってそういう事か」

 

多くの生徒があまりの情報に唖然とする中、レオンの反応はアッサリしたものだった。

 

「ほう、貴様はソレを聞いてもそれだけの反応か」

 

そんなレオンにマドカは面白いヤツを見つけたという顔をしてそう言う。

 

「だって、生まれはどうあれ、紫音は紫音だろ?」

 

「ふふ、お前も兄さんのような事を言うのだな」

 

「レオン………」

 

「一度ダチになったヤツにその程度で態度変えるかっての」

 

そこからはレオンの言葉に賛同するかのようにクラスメイト達は紫音達を受け入れた。

 

「良かったね、マドカ」

 

「そうだな」

 

席に戻ったマドカを親友である蘭が嬉しそうに出迎える。

 

「と、ここで終わりであれば良かったのだが………もう一つ教えておかねばならん事がある」

 

と、そこで千冬がやれやれといった表情でまだ話が終わっていない事を告げる。

 

「ま、まだ何かあるのですか?」

 

「まだそんなものジャブにすぎん」

 

紫音達の生い立ちという中々の衝撃情報が前座でしかないという千冬に一同は戦慄する。

 

「クローディア、スタークス、ラッセル、エーベルヴァイン、セブンフィールド、前へ」

 

続いて呼ばれたのはマテリアルズの五人。

 

「この五名だが………頭が痛くなるような情報ではあるが、普通の人間ではない」

 

「はい、それって天野君みたいな作られた人間って事ですか?」

 

「そうであればまだ良かった」

 

「「えっ?」」

 

紗代子の問いに千冬は頭を抑えながら違うと言う。

 

「スタークス、すまんがお前が説明しろ」

 

「はい。私達はマスター………天野雪兎が作り出した人工知能に骨格を強化して人間と変わらぬ肉体を与えたハイブリッドヒューマノイド………解りやすく言うのであればホムンクルスという存在です」

 

「「は?………はぁあああ!?」」

 

これには以前からマテリアルズの事を知ってるメンバーを除く全員が目が点になる。

 

「肉体的には少し頑丈なくらいで貴様らと何ら変わりはない」

 

「ちゃんと食べたりもするよ」

 

「いや、そういう問題じゃないでしょ!」

 

これには堪らずアリスが声をあげる。

 

「ホムンクルスって………ああ、姉さんが『気を強くもつのよ』って言っていたのはこういう意味だったのか」

 

「やっべ〜………僕、そんな人に目付けられたの?」

 

ルークもナターシャから言われていた事を思い出し、優斗はそんなマテリアルズの生みの親である雪兎に注目されていると知って苦笑である。

 

「あはは………先輩、相変わらず過ぎますよ」

 

「話した感じはほとんど人間と同じでした」

 

日向は雪兎のめちゃくちゃっぷりを思い出し、イクスは先程のユーリとイリスとの会話を思い出してとても元は人工知能とは思えなかった。

 

「更に言えばこの五名にはそれぞれ専用機が存在し、手足の如く扱える………性能は去年のキャノンボールを見た者ならわかるだろう」

 

「この子達は紫音君やマドカさん、そしてクロエさんの出自から良からぬ者に狙われないように護衛するという目的もあってクラスに入っていますが、基本的に一生徒として扱いますので仲良くしてあげて下さいね?」

 

「この学園はどうなってるのよぉ〜!!」

 

そのアリスの叫びが訳を知らぬクラスメイト達の総意の叫びだった。




アリスは優斗に引き続き狼牙竜さんから
栞は恋文さん
紗代子はカブトロンガーさん
渚と瑠華は桐生 乱桐(アジフライ)さん
サラは眠らない聖剣さん
以上の方からキャラ案をいただきました。
改めてお礼申し上げます。

今年は色々と大変な年になりましたが、皆さん良いお年を………


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3話 その頃の兎と再会

明けましておめでとうございます。
新年一発目の兎でございます。
本年もISー兎協奏曲ー第二楽章をよろしくお願いします。


紫音達のクラスが阿鼻叫喚となっていた頃、雪兎達2年1組はというと………

 

「皆さん、一年よろしくね」

 

「よろしくね〜」

 

今年の雪兎達の担任はナターシャ=ファイルス、副担任は天野雪菜の二人であった。

 

「新任なのにいきなりこのクラスだなんて………」

 

「大丈夫、このクラスを一年務められたらきっと他のクラスなんて大した事ないと思えるから」

 

「それはそうでしょうね」

 

「まあ、このクラス濃いからなぁ」

 

貴方(雪兎)がその筆頭でしょうが!」

 

天野姉弟に振り回されるナターシャに対し、一夏達はなるべく困らせないようにしようと誓った。

 

***

 

HRが終わってから雪兎達はいつものように集まっていた。

 

「今年は蘭や日向が入ってきたんだよな?」

 

「日向?」

 

「中学時代の俺達の後輩だよ。雪兎にめっちゃ懐いてた」

 

「やめろ、不用意にアイツの話するんじゃねぇ!」

 

「雪兎がこんな反応するなんて珍しいね」

 

「まあ、あの娘はちょっと特殊だったからね」

 

「特殊?」

 

「雪兎の妹になりたいっていうソウルシスターの筆頭だった子よ」

 

「「あ〜」」

 

あまりにも的確な表現に一同は日向がどんな人物であるかを把握する。

 

「でも、それって紫音君が危なくない?」

 

そこで聖がある事に気付く。

 

「というと?」

 

「いや、雪兎君の義弟でしょ?あの子。その紫音君と付き合ったら」

 

「やめろ、それ以上言うならちょびっとだけ想像しちまったじゃねぇか!」

 

「そこまで苦手なんだ………」

 

「雪兎絡まなきゃ良い娘なんだけどなぁ」

 

「ほんとそれよね」

 

中学時代をよく知る一夏と鈴は当時を思い出して苦笑する。

 

「そういや、鈴の従妹も入ってきたんだよな?」

 

「あ〜、乱のことね」

 

「蘭?」

 

「違う違う、凰乱音っていうんだけど身内は乱って呼んでるのよ」

 

「じゃあランランだ♪」

 

「あっ、それあの娘には禁句だから」

 

「パンダみたいってか?」

 

「そういう事よ。まあ、他にも禁句のテンプレは何個かあるけど、それを言わなきゃ特に問題は無いはずよ」

 

「凰乱音………台湾の代表候補生で専用機は煌龍の量産機の先行試作型の【鋼竜】か」

 

雪兎はいつものように端末を操作して乱の情報を表示する。

 

「甲龍に追加したパッケージのデータを使って元からあった試作機をカスタムしたみたいだな」

 

「その試作機は甲龍・紫煙(スィーエ)ね」

 

「そんな試作機を回してもらえるなんて優秀なんだね」

 

「昔は私を『お姉ちゃんお姉ちゃん』って追っかけてきたんだけどねぇ」

 

「私も知り合いが一人入りましたわ」

 

「イクス=シアハートだろ?オルコット家と繋がりのある貴族のお嬢さんの」

 

「ええ、かつての私のように男性に偏見を持っていない純粋な娘ですわ」

 

「自分で言うのかよ」

 

「こう言っておきませんと後で何を言われるかわかりませんもの!」

 

「セシリア………」

 

「雪兎は誰か注目してる子はいる?」

 

「この赤城優斗ってやつかな」

 

「あ〜、ニルギースさんから報告があった彼だね」

 

「さっき応急処置した車両を見てみたが、有り合わせの物でしっかり応急処置してあって感心したよ」

 

「雪兎に注目されるなんてお気の毒に」

 

「おい、それどういう意味だこら!」

 

そんなこんなで後輩達について話が盛り上がるのであった。

 

***

 

夜。IS学園学生寮の一室。

 

「アハハハ、今日は色々驚かされたけど、アイツら(マテリアルズ)の事が一番驚いたぜ」

 

「それをそうやって笑って言える君は将来大物になりそうだよ、レオン」

 

ここは紫音とレオンが割り振られた寮室。そこに紫音、レオン、ルーク、優斗の四人が集まり話をしていた。

 

「それより明日はIS選びだろ?くぅ〜楽しみだぜ!」

 

「これまでは実技授業や訓練用に申請しないと使えなかったISが学園在席中の全校生徒に貸し出されるんだろ?よくそれだけのISを確保出来たね」

 

「雪兎兄が各国に呼び掛けて技術と追加のISコア提供する代わりに量産機のガワだけを提供してもらえるように交渉したんだって」

 

「ガワだけ?」

 

「コアはまだ束さんや雪兎兄しか作れないから各国に配る用と学園に配備する分を一週間で作ってた」

 

「一週間って………失踪する前はほんと手抜いてたんですね、篠ノ之博士………」

 

サラッとトンデモ無い情報が飛び出しても既に三人は受け止められるくらいには悟ってしまっていた。

すると、コンコンコンと部屋をノックする音が聞こえた。

 

「はい」

 

「紫音、シュテルです。ちょっといいでしょうか?」

 

「シュテル?」

 

こんな時間に訪ねてくるのは珍しいと思いつつも紫音がドアを開けるとそこにはシュテル、ユーリ、イリスの三人の他にイクスの姿があった。

 

「あれ?君は確かイクスさんだっけ?」

 

「は、はい!」

 

「イクスさんが紫音さんにお話があるそうで」

 

「それで私達が仲介したってことよ」

 

緊張するイクスに代わりユーリとイリスが事情を説明する。

 

「そっか………でも、話すのは入試の時以来だよね?」

 

「お、覚えててくれたんですか!?」

 

「まあ、あんな出会い方して忘れる方が無理だと思うよ。それにイクスさん可愛いし」

 

「か、かわ………」

 

「おやおや?入学早々青春してんなぁ、紫音」

 

そこに部屋の中にいたレオン達もやってきた。

 

「はう………」

 

「イクスさん頑張って下さい」

 

「は、はい………その!あの時はブローチを拾って下さってありがとうございました!あの時のお礼をキチンと言えてなかったのが心残りだったので!」

 

「そうだったんだ………なら、どういたしまして」

 

頑張ってお礼を告げたイクスにそう言って微笑む紫音。するとイクスは顔を赤面させてしまう。

 

「(こりゃオチたな)」

 

「(完全に無自覚だね)」

 

「(青春だね〜)」

 

そんなイクスを見てレオン達は色々と察し、シュテル達も「やらかしおった」という顔をしていた。

 

「で、ででは!私はこここで!」

 

そしてイクスはぎこちなく回れ右をするとそそくさと自分の部屋へと駆けていった。

 

「どうしたんだろ?」

 

「前途多難だな、あの子………」

 

レオンのその言葉に紫音を除く一同はウンウンと頷くのであった。




次回はそろそろIS出します。


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4話 オリエンテーション〜兎参上〜

コロナでまた色々大変な事になっていますが、皆さんはちゃんと対策してますか?

それはさておき、やっとISが出てきます。
新しい機体が増えます。


多少のトラブルはあったものの、無事に入学式を終えた翌日。

1年α組は実技実習の前に多くのISが置かれた格納庫へとやってきた。

 

「今日はお前達に在学中のパートナーとなるISを選んでもらう」

 

これはISコアが増産可能となった事で実現した在学中の専用機持ち以外もISを常備出来るという新たな試み。

これは今までの実習用のISしかなく、使用申請をしても必ず使える訳ではなく、自主練習等の機会が大幅に減ってしまっていた事に対する是正処置で、各国にもこれによる人材の育成充実を理由に*1押し通したもので、提案者は今やISコアの製造が可能な二人目の人物となった例の兎(雪兎)である。

この試みにはいくつかの実験的要素を含んでおり、一つは男子操者達とISコアのリンク時間を増やす事でコアネットワーク上での男子への適合を促進する事。二つ目は先も説明したように各個人にISを持たせる事での訓練時間の改善。三つ目は少し前に起きた平行世界からの介入や去年度に何度も起きたIS学園への攻撃、これに対する生徒達自身の自衛能力の向上。四つ目として各国からの代表候補生以外の優秀な人材の早期発掘の為のデータ収集。他にも細かな理由はいくつかあるが、これらの理由から兎達が多方面に呼び掛けを行って実現したのだ。

 

「事前に各国から寄せられた“次世代量産機”のカタログスペックは見ていたと思う。そこからそれぞれ三年間を共に過ごすものを選べ。間違っても『お友達と同じだから』等のくだらん理由で選ぶんじゃないぞ」

 

「この子達を用意してくれた人が言うには『きっと触れた時にこの子だ、ってくるISが見つかる』そうですよ」

 

並んでいるのは日本産*2の鋼にフランスのリヴァイヴⅡ、イギリスからはBTシリーズのデータから作られた量産試作機のブルー・アクシスに、ドイツからは同じくシュヴァルツェア・レーゲンの稼働データと兎由来の技術から作られた試作機のハイゼ、中国からは鋼竜の正式量産バージョンの鉄竜、アメリカからはファングクエイクのマイナーチェンジによるバリエーション機のインパルスイーグル、イタリアからもロッソ・アクイラとテンペスタのデータから開発されたヴェルデ・グリフォーネ、今年の選抜に合格したこれらのISだ。

 

「カタログでは見てはいたけど、ほんとに各国の最新の量産機ばかりだね」

 

「例年は型落ちの打鉄やリヴァイヴ、しかも数に限りがあったと考えると、ほんとに今年は色々特別なのね」

 

それらの実機のISを見て生徒達は圧倒されつつも、それぞれお目当ての機体へと散っていく。

 

「この様子を見ると専用機が与えられるって言うのも少し考えものに感じるよ」

 

「確かに………でも、私のはそこの鉄竜の先行量産型だからあまり変わらないわね」

 

一方でルークや乱といった既に専用機を与えられているメンバーは特にやる事が無かった。

 

「私は兄さんから貰ったコイツ(フッケバイン)で満足しているからな」

 

「私の風舞も前のからアップデートしてあるって言ってたなぁ」

 

蘭が持つ風舞は以前異世界に跳ばされた際に護身用として持たされていたISの改修型で、戻ってきた際に一度返還していたのだが、IS学園に入学するという事で再び入学祝いとして貰ったものだ。

 

「私も雪兎お兄さんから専用機を貰いました!」

 

エクシアはコアが肉体と融合してしまっているという特殊な事例の為、雪兎からカリバーンと名付けられた外装を与えられており、それを融合しているコアに取り込ませた形だ。

他にもマテリアルズの五人やコメット姉妹、クロエ、そして紫音が専用機持ちとなるのだが、紫音はまだ専用機を受け取っていなかった。

 

「雪兎兄は入学したら渡すって言ってたけど………」

 

あの雪兎の事なのでまだ完成していないという事は無いのだろうが、どのような形で受け渡しをするのか紫音は全く聞いていなかった。

多くの生徒がISを選び終えた頃、格納庫の扉が開いて一人の生徒が入ってくる。

それはこの学園でおそらく生徒会長より知名度と権限を持つであろう男………天野雪兎だった。

 

「よっ、紫音。待たせたな」

 

「雪兎兄!」

 

「悪かったな、少しHRが長引いちまってな」

 

そう言って紫音の所へやってきた雪兎に高速で迫る影があった。

 

「先輩!お久しぶりでござっーー」

 

「日向、いきなり飛びかかってくるなって前にも言ったよな?」

 

その影こと日向の頭をアイアンクローでガッチリと掴む雪兎の様は何時だったか、某兎()に対してその親友(千冬)がやったそれに酷似していた。

 

「あ〜、この懐かしき手の感触………」

 

「そこで恍惚とした顔するな!バカ日向!」

 

この時、その一部始終を見ていた生徒達は日向の知りたくもなかった本性を知る事となった。

 

「天野、紫陽の事はこちらに任せて用を済ませろ」

 

「お願いします、織斑先生」

 

「さあ来い、紫陽」

 

「あっ、先輩!?そんな御無体な!?あ〜!?」

 

そして、日向は雪兎から千冬へと手渡され、そのまま襟首を掴まれて引き擦られていった。

 

「さて、仕切り直して………初めましての顔もいるが、俺が天野雪兎だ。今後はこのクラスとも色々関わっていくと思うからよろしく頼む」

 

日向の突然の変貌と雪兎の登場にしばらく麻痺していた1年α組だったが直ぐに元に戻り、雪兎に頭を下げる。

 

「さて、紫音の専用機だが、大体のデータは先行入力済みだからあとはフィッティングくらいだ」

 

「そうなんだ」

 

「で、これがその専用機………エクストリームだ」

 

「これが、僕の専用機………」

 

そう言って空いてるハンガーに雪兎はそのISを呼び出した。

全体的には白い装甲を持ち、部分的な装甲が薄紫色をしており、一部紫の水晶体のようなパーツもある。

見た目は非常にシンプルで四肢と簡易的なバックパック、そして装備はソードライフルと思われる武器とシールドだけ。

雪兎にしては珍しい簡素と言っていいデザインである。

 

「もしかして、コイツも他のみたいに装甲切換タイプなのか?」

 

そこへ自身のISを選び終えたレオンが戻って来て呟いた。

 

「ご明察だ、そこの後輩君。とはいえ、コイツは少し特殊でな」

 

「というと?」

 

「今のコイツには対応する換装装備はねぇんだ」

 

「えっ!?」

 

それは未完成なのではないのか?多くの生徒がそう思う中、雪兎は続けてこう告げた。

 

「コイツは乗り手の成長に合わせて装備を生み出し、それを更新(アップデート)していく。ありとあらゆる可能性を秘めた機体………その果てに極限に至るってコンセプトでな」

 

「それでエクストリーム(極限)と………」

 

「そういう事だ」

 

乗り手に応じて常に成長するIS。既存の2次移行等の段階をおいた進化ではなく、紅椿のような無段階移行に近いシステムで、まだ白紙と言っていい紫音にはある意味でピッタリな機体と言えた。

 

「フィッティングはほぼ自動でやってくれるから着けてからしばらくジッとしてな」

 

「うん」

 

そう言って紫音にエクストリームを装着させてオートフィッティングプログラムを走らせると既に雪兎にはやる事がなくなってしまった。

 

「さて、やる事も済んだし、次の準備もあるから戻るとするかねぇ」

 

と、雪兎が格納庫を去ろうとした時だった。

 

「あ、あのっ!少々よろしいでしょうか?」

 

アリスが雪兎に声を掛けて呼び止めた。

 

「うん?君は………あ〜、ローズウェルのとっさんのとこのアリス=ローズウェルだっけか?そういや娘が今年から世話になるって言ってたな」

 

「ち、父をご存知で!?」

 

「まあな、聖剣事変の前から色々と支援をしてくれてたアメリカでも珍しい企業だったからな」

 

「父は目先ではなく、時勢をよく見て行動しろとよく言っていましたから」

 

アリスの父・アラン=ローズウェルはそういう良き眼を持つ実業家で、雪兎も何度か直接話した事のあるくらいには親しくしている人物だ。

 

「で、俺に何か?」

 

「そ、そうでした!少しお伺いしたい事がありまして!」

 

そう言ってアリスが取り出したのはとあるリストの表示されたタブレット端末だった。

それに表示されているのは量産機の選考からは外れてしまったものの、来年以降の選考に選ばれるべく武器や各種オプション等を各国の企業から送られてきており、その中から学園関係者が厳選したもののオプションカタログである。

 

「実はインパルスイーグルを選ぼうと思っているのですが、そのインパルスイーグルの装備に無いオプションを探していまして」

 

「ほう」

 

詳しく聞くと、アリスは自国の機体であるインパルスイーグルを選んだのだが、自身の戦闘スタイルに合う装備が無く、オプションカタログからそれを探していたのだが、どれもしっくりくるものが無いのだという。

それを聞いてこのIS馬鹿は食いついてしまった。

この男、よく一点物(ワンオフ)の専用機を作っている為、そういう機体にしか興味が無いと勘違いされているが、実は既存の量産機を自身好みにカスタマイズするのも大好きだったりするのだ。

 

「種類は何だ?」

 

「両手剣………出来ればグレイトソードを」

 

「ほうほう、グレイトソードか………確かにアレは癖が強いって理由で外されてたな。鉄竜が採用された関係で青竜刀タイプならあったが」

 

「念の為にそちらも試してみたのですが、やはり両刃の大剣の方が………」

 

女性にしては珍しいタイプの武装を所望するアリスを雪兎はこの段階で割と気に入っていた。なので、そんなアリスに雪兎はタブレット端末を操作してカタログには無かった武器を数点表示して見せた。

 

「この中にピンとくるやつはあるか?」

 

それは雪兎が個人的に面白いと試作品を取り寄せたり、訳有りで雪兎の元に流れてきた類いの武器であった。

雪兎からタブレット端末をひったくるように受け取ったアリスはそのリストに記載されているデータを読み漁る。

そして、一つの武器の画面を開いて手を止めた。

 

「ほう、そいつに目を付けたか………その眼は親父さん譲りのようだな?」

 

そこに表示されていたのはISの全長と同じ長さを持つ幅広のグレイトソードで、専用のバックパックにマウントする事でウイングブースターへと変形するマドカのフッケバインの【レーヴァテイン】のデータを元に開発された大剣【ストームブレイカー】という雪兎の技術提供でイギリスで製造されたものだった。

 

「これです!私が探していたのはこういう剣なんです!」

 

「山田先生〜、ちょっとカタログからは外れるけど、これ渡してもいいですか」

 

「えっ?この大剣をですか?」

 

「どうもこの娘、しっくりくる武器が無いって言うんで、選考落ちしたやつから条件に合いそうなのを見繕ってみたんですが」

 

「ジョイントの規格は統一規格なので何とかなりますが………かなり癖のある装備なので扱いには苦労するかと思いますが、ローズウェルさん、構いませんか?」

 

「はい!」

 

「なら現物はここに出しておくぞ」

 

そういうと雪兎は空いている整備用のハンガーに【ストームブレイカー】とその専用バックパックを展開する。

 

「扱い方はマドカに聞け。アイツもそれの元になった武器を持ってるから基本的な扱いは教えられるはずだ」

 

「わかりました」

 

「さて、一部の生徒だけ特別扱いするのもあれだし、他にも少しIS選びを手伝ってやるとするかね」

 

その後も雪兎は数名の悩んでいる生徒にアドバイスをしてから紫音のフィッティング完了を見届けた後「この後の準備があるので俺はこれで」と選考落ちした装備等の詰まったstorageを真耶に預けて格納庫を後にした。

尚、千冬のOHANASHIから戻った日向がそれを知って更に絶望する事になる。

 

「何かすげ〜人だったな、あの雪兎って先輩」

 

「俺、さっきあの人に『また時間空いたら呼ぶからよろしく』って言われたんだけど」

 

「あはははは………多分悪いようにはされないはずだから」

 

この時、彼ら1年α組はまだ知らなかった。雪兎が言う「この後の準備」が自分達に関係があるのだと。

*1
各国への追加ISコア配布等も行ってはいる

*2
ほぼ雪兎製




という事で次回は実技実習になります。
さて、兎の準備とは一体………


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5話 兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)

零時更新が間に合わずにこんな時間になりました。
そして、ついに兎が本格的に動き出します。


全員の機体が選び終わったところで、千冬と真耶は全員にISスーツに着替えて0番アリーナに集合するように伝えられた。

0番アリーナとは、昨年度末に建造されたAR技術を使った特殊アリーナの事で、設定を変更すれば如何なる運用も可能なアリーナで、他のクラスも同じく選んだISの慣らし運転を行うという事でα組はこの0番アリーナを割り振られたのだ。

まあ、今回は慣らし運転の為に通常のアリーナと同じ設定にされている。

そこへアリーナの更衣室で着替えたα組の生徒がISスーツで整列する。

 

「さて、これからお前達には順番にISに搭乗して慣れて貰う訳だが、その前に今年から導入されるカリキュラムの一つについて説明しなくてはならない」

 

新しいカリキュラム。入学式で楯無が告げていた新たな試みの一つ。それは全生徒がISを常備するだけではない。

 

「今回はお前達以外にも関係するカリキュラムでな………入ってこい!」

 

千冬がそう告げると上空から一機の純白のISが飛来してきた。それは急降下でありながら地面スレスレでピタリと停止しており、その技量を示している。

だが、α組の生徒からしたらそんなことは問題ではなく、そのISの搭乗者こそが問題だった。

 

「よっ、さっき振りだな、α組の諸君」

 

それは先程IS選びのアドバイスをしてくれた先輩である雪兎だったからだ。

 

「今回のカリキュラムは言ってしまえば上級生による指導実習だ」

 

これは2年生以上で一定の技量を認められた生徒が後輩への指導を行うというカリキュラムで、α組の指導担当に選ばれたのが雪兎他数名。今回は初回という事で雪兎だけがやってきたという訳だ。

 

「天野、今回の内容はお前に一任するが………あまりやらかすなよ?」

 

「わかってますって」

 

という事で突然始まった雪兎の指導。その初回の内容は………

 

「さて、全体への指導の前に少しだけやっておきたい事がある」

 

「やっておきたい事?」

 

「ルーク=ファイルスと凰乱音、ちょっとIS展開してみろ」

 

そう言われ、ルークと乱はそれぞれ専用機を展開する。

ルークの専用機はシルバリオ・ファング。名前からお察しの通りシルバリオ・ゴスペルのアメリカ側の開発スタッフが作り上げた全身装甲(フルスキン)に近いISだ。

一方で乱の専用機は鋼竜。鉄竜の先行試作型で尻尾のようなサブアーム兼スラスターを持つ機体だ。

 

「展開したけど、一体何をさせようっての?」

 

いきなりISを展開させられて何をさせるつもりなのかと乱が問うと、雪兎は自身の専用機である雪華にある装備を展開する。

それは進級するにあたって増えたパック類を一度整理しアップデートを施した事で再誕した旧【T:トライアル】に当たる新パック【TR:トライアルR(リメイク)】という。見た目はトライアルと同じくエッジ付きのシールドとソードライフルというシンプルな構成ながらスラスター配置や装甲のデザイン等を変更した純白の装備だ。

先程までの非武装形態からこの形態へ移行したという事は………

 

「お前達二人には俺と模擬戦をしてもらう。国で一通りの操縦は習ったんだからやれるな?」

 

「2対1でですか?」

 

「ああ、それと俺はこのパックしか使わない」

 

「随分と上から目線じゃない!」

 

憧れの人物からのハンデキャップの提案にルークは困惑し、乱は舐められてたまるかと闘志を燃やす。

 

「他の子らはとりあえず見てな。ついてこい」

 

そう言って雪兎が浮上すると、ルークと乱もそれを追ってアリーナの上空へと向かう。

 

「なあ、紫音」

 

「何?」

 

「お前の兄貴って強いのは知ってるんだが、あの二人相手に勝てんのか?」

 

レオンは去年度の年度末トーナメントの戦闘を映像で見た事があるので1対1の戦闘なら雪兎があの二人に負けっこないのは知ってる。

しかし、雪兎の真骨頂と言える装甲切換無しにあのシンプルな装備であの二人を相手出来るのかは疑問であった。

が、そんな疑問に対して紫音の回答はあっさりとしたものだった。

 

「目を離さない方がいいよ、多分すぐに終わると思うから」

 

紫音は知っている。雪兎が時々いつもの特訓メンバー相手に2対1で相手しているという事を。

 

「鈴はアレコレ言ってたけど、この最新機相手にそんな貧弱な装備で勝てるなんて思わない事ね!」

 

「待って!」

 

鈴への憧れと対抗意識を持つ乱は青竜刀を手にし、オプション装備の一つである近接戦闘パック・雷爪でルークの制止を無視して雪兎に斬りかかる。

 

「奥せず向かってきたは良し、でもまだまだ甘い」

 

しかし、雪兎は迫る青竜刀を最低限度の動きで右に避け、その青竜刀の側面をエッジシールドで殴る事で乱の態勢を崩し、そこへいつの間にかチャージしていたソードライフルのチャージショットを叩き込む。

 

「うわぁ!?」

 

「乱音さん!」

 

「おいおい、余所見はいかんぞ?」

 

「しまっ」

 

チャージショットで弾き飛ばされた乱にルークが意識を向けたその一瞬でルークとの距離を詰めていた雪兎の蹴りがその腹部を捉え、ルークも乱と同じように弾き飛ばされてしまう。

 

「………めっちゃ強くね?お前の兄貴」

 

「あれでもまだマシな方だよ?いつもだったら弾き飛ばす方向を同じにして二人まとめて弾幕の追い打ちくらい普通にするし」

 

「マジ?」

 

そうこうしている間に復帰した乱とルークが2方向から同時に仕掛けるも、ソードライフルとエッジシールドで容易くあしらわれ焦った乱が龍咆をルークにFF(フレンドリーファイヤ)させられてしまう。

そこを追撃してルークを撃墜判定にすると、完全にパニック状態となった乱にトドメを刺し、二人は雪兎に一撃も食らわせる事が出来ずに模擬戦は終了となった。

 

「う〜、マスターだけ楽しそう!」

 

「レヴィ、また機会はありますよ」

 

あの模擬戦を見てほとんどの生徒が絶句している中、レヴィは羨ましいとばかりに拗ねており、それをユーリが宥めている。

また少し離れた場所ではキャーキャーと黄色い声をあげる日向がいた。

 

「………あれが兎の皮を被った災害(ラビット・ディザスター)

 

誰かがポツリと呟いたその言葉でα組の生徒は改めて天野雪兎という人物の規格外さを思い知るのであった。




という訳で雪兎VS乱、ルークコンビでした。
二人が選ばれた理由は雪兎と直接関係の無い専用機持ちという理由です。

【TR:トライアルR】
【T:トライアル】の改修型のパック。
これまでの運用データから最適化された仕様のパックで、装備は雪華の基本装備である改修型ソードライフルが予備を含めて2つとレーザーブレードが2つ。専用のクリアパーツのエッジが取り付けられたエッジシールドという構成で、非常にシンプル。
雪兎が試作した装備をテストするテストベッドでもある。


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6話 実習と呼び出し

今回は短めです。

書いていたやつの一つが訳有って執筆不能になって少しモチベーション下がってしまっていて………次回からは復調するように頑張りますね。


ルークと乱が戦闘不能となった事で模擬戦は終わり、雪兎も地上へと戻ってきた。

 

「まあ、こんなもんか」

 

改めてその実力を見せつけた雪兎に多くの生徒は絶句している。

 

「………あんな、大口叩いたのに………」

 

一方、乱は自身の不甲斐ない戦いを思い返して落ち込んでいる。

 

「さて、とりあえず模擬戦を見てもらったが、専用機持ちって言っても油断したらこうなる。去年も専用機持ち二人がそこの山田先生にボッコボコにされてたから誰でも通る道だと思ってくれ」

 

これを聞いて真耶の事を少し甜めていた一部に生徒は気をつけようと心に誓う。

 

「っと、じゃあフィッティングは済ませてるだろうから今日はISの展開とオプションの展開をやろうか………凰、いつまでも拗ねてないで列に並び直せ」

 

「うっ」

 

「早くしねぇとこれからはランランと呼ぶぞ」

 

「ちょっ!?それだけはやめて〜!!」

 

そこからはやはり技術者と言うべきか、雪兎の教え方は上手く展開に手間取っていた生徒達の多くが一秒以内で展開を出来るようになっていった。

 

「うんうん、今年の1年は優秀だな」

 

その言葉に安堵するα組だったが………

 

「なら次回は飛行動作と今回の復習するからちゃんと自主練しとけよ〜」

 

その分ハードルが上がりげんなりするのであった。

 

***

 

昼休み。

 

「疲れた………」

 

「展開の繰り返しだから肉体的な疲れはないけど、その分脳を酷使した感覚だね」

 

「僕は肉体的にもボロボロだけどね」

 

「あはは………雪兎兄はこういうのスパルタだから」

 

「さて、飯の時間だが、皆で食堂行こうぜ!」

 

先程の実習でヘトヘトとなった紫音達はとりあえず昼休みという事で昼食にしようと食堂へ移動しようとしたのだが………

 

「お前達、ちょっといいか?」

 

それに待ったを掛けたのはディアーチェであった。

 

「ん?何だよ」

 

「今から昼食なのであろう?ならば我らと一緒に来い。マスター達からの呼び出しだ」

 

「えっ?」

 

「あ〜、そういう事か」

 

雪兎からの呼び出しとあって顔が引き攣る三人だが、紫音はその意図を把握したようでなるほどと頷く。

 

「紫音、大丈夫なのか?」

 

「うん、雪兎兄達はよくお昼はお弁当を持参して集まって食べてるんだ。多分、今回は皆の歓迎会みたいなものじゃないかな?」

 

「流石は紫音、察しがいいな。マスター達がお前達や関係者を集めて食事がしたいというのでな。我も腕を振るったのよ!」

 

「紫音、クローディアって料理上手いのか?」

 

「学園でもトップ3に入るんじゃないかな?残りの二人は雪兎兄と一夏兄だけど」

 

「あの人、料理まで出来るとかスペックバグってね?」

 

「他にもシャル姉や箒姉、鈴姉も上手いよ」

 

「そうなのか………というか、紫音って先輩達を○○兄や○○姉と呼ぶんだな?」

 

「僕の出自が出自だからね。助けてもらってからずっと雪兎兄達にはホントの弟みたいにお世話になってるから」

 

「なるほど」

 

「ていうか、もしかしてだけど………その食事会、俗に言う兎一味勢揃い?」

 

「「えっ?」」

 

優斗の言葉にレオンとルークが固まる。無理も無い、今や各方面で有名となりつつある兎一味御一行の呼び出しとなれば誰でもこうなる。

 

「シュテル達には他の招待者を呼びに言ってもらっておる。それに変に硬くならんでも今回はただの食事会だ。とって食われやせん」

 

「ディアーチェ、他には誰が呼ばれてるの?」

 

「うむ、元より関係者のマドカとクロエは除くとして、確かコメット姉妹に蘭、ブランケットとシアハートに乱音、あとはローズウェルの娘であろう」

 

「なるほど」

 

イクスはセシリアの知り合いで、乱音も鈴の従妹、アリスは雪兎が彼女の父親の知り合いだから呼ばれたのであろうと紫音は推測する。

 

「さて、早くせねば昼休みも有限だ。移動するぞ」

 

「お、おう」

 

「とりあえず覚悟はしておこうか」

 

「怖いけど、興味深いから行ってみよう」

 

「大丈夫、セシリア姉の創作料理さえ手を出さなきゃ」

 

「「それ、移動中に詳しく」」

 

他の招待者は既に移動を開始しているとの事なので紫音達も移動する事にした。




活動報告のクラスメイト募集はまだ募集中なので興味がある方は覗いてみて下さい。
全部採用する訳ではありませんが拾えそうなら拾いますので。


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7話 食事会

遅くなってすみません。
最近色々あって執筆が思うようにできませんでした。

今回は特に大きなイベントではないので短めです。


ディアーチェの案内で紫音達が屋上を訪れると既に他のメンバーは集まっているようであった。

 

「おし、皆揃ったな」

 

「皆、それぞれシートに名前が書いてあるからそこに座ってね」

 

「始まったら移動してもいいからまずはそこに座ってくれ」

 

シャルロットの言う通り、屋上に敷かれたいくつかのシートには名前が書かれたシールが貼られており、紫音達はそれに従ってシートに腰掛ける。

 

「昼だからそこまで凝った物はねぇが、好きに食べてくれ」

 

「足りなくなったまだstorageに入ってるから遠慮なく言ってくれ」

 

それぞれのシートにはサンドイッチやおにぎりに巻き寿司、唐揚げやフライドチキンにコロッケやメンチカツ等の揚げ物、彩りとしてレタスやプチトマトが盛り付けられた大皿が置かれている。

 

「飲み物は行き渡ったな?そんじゃ、いただきます」

 

「「いただきます」」

 

こうして食事会は始まった。

 

「美味っ!?何これ!?」

 

「これが噂に聞く先輩達の料理………」

 

「………これ、下手したら一流シェフすら上回りますわよ」

 

料理は概ね好評なようで、特に初めて雪兎らの料理を食べた一部の者は啞然としている。

 

シートはこのようなグループに分かれている。

①雪兎、シャルロット、ラウラ、エリカ、カロリナ、マドカ、クロエ、ユーリ、イリス、蘭、優斗、アリス

②一夏、箒、簪、本音、ロラン、紫音、レヴィ、シュテル、乱、オニール、ファニール

③セシリア、鈴、聖、楯無、晶、アレシア、ディアーチェ、レオン、ルーク、イクス、エクシア

 

「よっ、堪能してくれているようで何よりだ」

 

まずは同じシートの優斗とアリスに声を掛ける雪兎。

 

「ど、ども」

 

「御招待感謝しますわ。それと、先日はありがとうございます」

 

「気にするな、あれは何れ誰かにテストしてもらいたかったからな。アリス嬢のおかげで他の組にもあの装備達を使ってもらえる事になってな」

 

感謝するのはこっちの方だ、と告げる雪兎にアリスはホッと息をつく。

 

「で、こうやってゆっくり話すのは初めてだな、赤城優斗」

 

「は、はい!」

 

「………別に取って食おうってんじゃないから」

 

「赤城君震えちゃってるね」

 

そこへやってきたのはシャルロット。

どうやら様子を見かねてフォローに来たようだ。

 

「怖がらせるつもりはねぇんだけどなぁ………今までのやらかしが原因かね?」

 

「やらかしてる自覚はあったんだ?」

 

「流石にな」

 

「すみません、色々と聞いてたイメージがあって」

 

「そんなやつからいきなり声掛けられたらビビるわなぁ」

 

これまでのやらかしがここで響いてくるとは思ってなかった雪兎。

若干凹んでいる。

 

「………師匠、凹んでる?」

 

そんな雪兎を見てカロリナもやってきた。

 

「彼が赤城優斗?」

 

「お、おう………」

 

「私はカロリナ=ゼンナーシュタット、よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「モノレール直したって聞いた」

 

「いや、応急処置しただけで」

 

「師匠とその応急処置を見たけど、私達だとあんな処置は思いつかない」

 

「そうなんですか?」

 

「私や師匠だとstorageから必要な機材出して直しちゃうから」

 

「あ〜」

 

カロリナの独特な喋りに優斗も緊張が解けたのか自然と喋れていた。

 

「そうなんだよなぁ………最近はそのせいか発想がパターン化しちまってな」

 

「だから新しい発想を持ってる優斗を勧誘しようと思った」

 

「勧誘?」

 

「ああ、部活とかとは別で有志で活動してる技術向上研究会にだ」

 

技術向上研究会とは雪兎や簪、本音にカロリナ等が所属するISを始めとする技術の向上を研究する研究会だ。

 

「ほう、研究会!」

 

その研究会という響きに優斗は心惹かれる。

 

「この前呼ぶって言ってたのも、この研究会に呼ぼうと思ってたんだ」

 

「あっ、そうだったんですね!」

 

「彼も雪兎達と同じタイプかぁ」

 

研究会の事を聞いて雪兎とも普通に話せるようになったのを見てシャルロットは優斗を雪兎達の同類と認識する。

 

「………私、場違い感全開なんですけど」

 

一方、乱は仲の良い知り合いのいないシートになってしまったがために少し居心地が悪そうである。

 

「凰さん、大丈夫?」

 

「別にいいわよ、私に何て気を使わないでも」

 

心配して乱に話し掛けた紫音に素っ気無い態度を示しつつ、乱は鈴の方を見ていた。

 

「ご無沙汰しております、セシリアお姉様」

 

「元気そうですわね、イクス」

 

「………お姉様って、ププ」

 

「鈴さん、何故笑うのですか!」

 

「いや、だってさ、セシリアがお姉様って………」

 

「私だって本国では立場ある振る舞いというのがですね!」

 

その鈴はセシリアをからかって戯れている。

 

「まるで大好きな姉を取られた妹ですね」

 

「はっ!?そんな訳無いじゃない!」

 

そんな乱を見てシュテルがそう呟くと、乱は必死になってそれを否定する。

 

「顔真っ赤にして言っても説得力0だよね」

 

「レヴィ、それを言ったら可哀想だよ」

 

「うわぁ〜ん!」

 

レヴィにトドメを刺されて泣き出してしまった乱を騒ぎを聞きつけた鈴が宥め、若干幼児退行した乱に皆がホッコリしたとかしないとか………




優斗、勧誘される
乱、泣かされる
の二本でした


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8話 亡命少女

今回は雪兎や紫音とは別の人物の視点からのお話。

そして、活動報告で募集していたキャラが二人登場します。


Sideフェルト

 

私はフェルト=ペイズリー。

訳有ってIS学園1年β組に所属している美少女である。

自分で美少女って言うと何だか自意識過剰っぽいけど美少女なのは本当なので美少女です。

 

と、そんな事はどうでもよくて………

私がIS学園にいるのはとある理由で学園に保護されているからだ。

とある理由とは、私が“元”亡国機業(ファントム・タスク)の工作員だったから。

私は元々は棄児で、色々あって拾われた亡国機業に工作員として育てられていた。

そうしないと生きていけなかった為、組織に捨てられないように様々な技能を身につけ、とある幹部の配下として活動していた………去年のクリスマスに起きた聖剣事変までは。

あの聖剣事変で私の上司だったレグルスことシルヴィア=メルクーリを始めとした【闇夜の星座(ゾディアック・ノワール)】の幹部達は全員逮捕され、その配下だった私達工作員も芋蔓式の捕まった。

その際、私は私が知り得る全ての情報と引き換えに司法取引をし、未成年だった事や私にIS適性が有ったのを理由にIS学園に監視を兼ねて入学させられる事となった。

監視の為に位置情報を発信するナノマシンを投与されたり、やけにオシャレな外見をした監視用のISを首輪として着けられはしたが、それ以外は特に行動の制限等も無く、一学生として扱われている。

というか、いくら監視されてるとはいえ、ISまで持たせられているのはどうかとも最初は思ったのだが、用意されたISであるヴェルデ・グリフォーネに細工を施したのがあの【兎の皮を被った災害】と知って絶句した。

【兎の皮を被った災害】こと天野雪兎と言えば亡国機業をこれまで散々返り討ちにしてきたあの男である。

その監視下に置かれていると知って私は直ぐに色々な事を諦めた。

そもそも組織に帰るつもりも無い私からしたら彼の保護下にあるのは決して悪い事ではない。

というか、滅ぼしてくれないかな?亡国機業。

 

「フェルト、どうかしたの?」

 

「何でもないよ、キャロル」

 

そんな事を考えていた私を心配そうな顔で見つめるこの娘はキャロル=クロコディル。

シリア軍に所属するシリアの代表候補生で私のルームメイトなのだが、戦闘はともかく私生活がポヤポヤしていて放っておけない娘なのだ。

 

「それよりまた寝癖ついてる」

 

「ん、お願い」

 

「はいはい、ここ座って」

 

寝癖を直した後、二人で教室に入るとクラスメイトから「おはよ〜」と挨拶をされる。

 

「今日も手繋ぎ登校だなんて仲良しですなぁ」

 

「うんうん、今日もオカンしてるわね」

 

「美乃里!此花!」

 

キャロルは過去に目の辺りに怪我をしたせいか弱視で、他の感覚は優れているのだが、ISを展開していないと教室の中央から黒板を見るのも苦労するらしい。その為、私が日常生活のフォローをしているのだが………それをクラスメイトで友人となった白浜美乃里(しらはまみのり)柏木此花(かしわぎこのは)にからかわれる。

 

「おはよう、ミノリちゃん、コノハちゃん」

 

「おっは〜」

 

「フェルキャロ、おは〜」

 

二人とは座席が傍であったことから仲良くなった。

最初は首輪付きとあって怖がられるかと思ったのだが、隣になったキャロルが放っておけなかったから面倒を見ていたら温かい眼で見られるようになり、気が付けばキャロルの保護者のような扱いに納まっていた。

 

「そういえば聞いた?チームトーナメントの事」

 

「今年からクラス代表トーナメントが廃止になったんだっけ?」

 

何でも今年からクラス代表によるトーナメントが廃止になったらしい。

理由はクラスの編成で専用機持ちが偏ったりISに乗り慣れていない生徒がいるこの時期にやってもあまり意味が無いのでは?という意見が出たからだそうだ。

言われてみればなるほどと思った。代表候補生なんて入学前からISに乗り慣れた士官候補生のようなもの。そんなエリート相手にISに乗って一ヶ月にも満たない生徒ではただのワンサイドゲームである。そんなのいくら優勝景品が良くとも意欲的になる訳が無い。

それに対して今年発表されたのは学年毎に五人ずつのチームを作り、そのチーム対抗トーナメントという方式となった。

ただ、1年生は代表候補生はチームに一人という制限があり、中々に公平なルールだと思う。

 

「そのトーナメント、私達でチーム組まない?」

 

「早速私とキャロルを抱き込むつもりね?けど、あと一人いるわよ?」

 

「それは真白に頼んであるわ」

 

真白というのは同じクラスの美乃里と此花の幼馴染の久川真白(ひさかわましろ)の事で、大人しめの小柄な少女だ。

 

「手が早いわね」

 

「こういうのは早めにチーム決めておいて連携とか練習しておいた方がいいでしょ?」

 

「そうね………キャロルはどう?」

 

「フェルトがいいなら」

 

「なら決まりね」

 

「「やった!」」

 

こうして私達はチームを結成して放課後に練習をする事にしたのであった。

 

Sideout




フェルト=ペイズリー
元亡国機業の工作員だった少女。司法取引で監視付きではあるがIS学園に保護された。
レグルスの部下だったが、上司への信頼等は皆無でむしろ積極的に情報を売っている。
首輪付きではあるが、キャロルや他の生徒への態度から1年β組のオカン扱いをされている。
乗機はヴェルデ・グリフォーネ

キャロル=クロコディル
シリアの代表候補生。テロでシングルマザーだった母親を失い、別のテロ組織に拾われたのだが、そのテロ組織が母親を殺したテロ組織と統合される事になり脱走、その際に現在の保護者であるシリア軍人に拾われて養女となった。
目はその際に負った怪我が原因で弱視化しているが、その分他の感覚に優れる。
専用機としてアズラエルという機体を持つ。

白浜美乃里
1年β組の生徒。
フェルトにオカンというあだ名をつけた張本人。
フェルトの本質を見抜き友人となった。
中学では水泳部だった。
乗機はハイゼ

柏木此花
1年β組の生徒。
美乃里と真白の幼馴染。
中学では弓道部だった。
乗機は鋼

久川真白
美乃里と此花の幼馴染で1年β組の生徒。
中学では文芸部で図書委員という根っからの文学少女だった。
乗機はハイゼ


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9話 学年別チームトーナメント

お待たせしました!

別作品の修正やら書いてる途中にデータ飛んだりして時間が掛かってしまいました。


「今日は今月末に行われる学年別チームトーナメントのチーム決めを行ってもらう」

 

「「学年別チームトーナメント?」」

 

その日のHRにて担任の千冬から告げられた内容に多くの生徒が首を傾げる。

 

「はい」

 

「何だ、赤刎」

 

「例年ならこの時期はクラス代表トーナメントだったのでは?」

 

「ああ、その事か………実は新年度のカリキュラムを決める際にあの兎が『国である程度訓練した専用機持ちの代表候補生と一般入試した量産機に乗りたての素人が戦ってもちゃんと勝負になんねぇだろうに』と、口を挟んできてな。なら代案はあるのかと聞いたらその言葉を待っていたとばかりにプレゼンしていった企画が今回のチームトーナメントだ」

 

そう言って額を押さえる千冬に一同は「あぁ、またあの兎先輩か」と納得する。

 

「奴の言う事も最もではあるし、代案もルール的に不備は無いが………その後も束と揃って梃入れと称して色々口出ししてきてな」

 

「「ご愁傷様です」」

 

元世界最強ですら手に負えない問題児(兎師弟)の行動に1年α組の生徒達はそう告げる他なかった。

 

「そんな訳で今年からはチームトーナメントに変わったという訳です」

 

「なるほど」

 

最後に真耶がそう締めると栞は納得する。

 

「チームは五人一組が原則で、1クラス最低2チーム、最大8チームのエントリーが許可されている」

 

「全員参加では無いんですね?」

 

「チーム編成時にどうしても合わないメンバーが出る可能性や裏方に回りたいという生徒に考慮した結果だそうだ。つまり、クラスでよりすぐりを集めた2チームでも全員が経験を得る為に8チームでも良いという事だ」

 

「ただ、編成条件として“代表候補生”は1チームに一人までだそうです」

 

「「うわぁ………」」

 

ここで感の良いα組の生徒達は気付いてしまった………このクラスには“代表候補生”ではないイレギュラーレベルの生徒が複数人いることに。

 

「よし、僕達ダークマテリアルズでチーム組もう!」

 

「クハハハハ!ルールには抵触しておらんからな!」

 

「皆様の良き壁となれるよう務めさせていただきます」

 

「イリスも一緒ですよ?」

 

「はいはい、そんな事だろうと思ったわよ」

 

「「(これ、絶対に兎先輩がワザとルールに穴作ったよね!?)」」

 

レヴィ、ディアーチェ、シュテル、ユーリ、イリスのダークマテリアルズの五人がチームで参加とかいう他の参加チーム涙目な事態に。

 

「となると、僕と凰さんは別のチームにしないといけないのか」

 

「男子だけで固まるのは不味そうだし、かといって4チームに分かれようにも連携が心配だし、2・2で分かれようか?」

 

一方の男子四人はとりあえず二人ずつに分かれてチームを作ろうと話し合う。

結果、紫音とレオン、ルークと優斗の組でチームメンバーを探す事になった。

 

「なら私とイクスちゃんは紫音君のチームに入れてもらおうかな?」

 

「それなら私も!」

 

「おっ、神城じゃんか」

 

紫音とレオンのチームに名乗りを挙げたのは日向とイクス、そして神城飛鳥(かみしろあすか)というクラスメイトであった。

飛鳥はクラスのムードメーカーのような娘で、レオンと気が合うんだとか。

 

「なら私はルークと優斗のチームに入れてもらおうかしら」

 

「私も〜」

 

ルークと優斗のチームにはアリスとエクシアに加え………

 

「私もいいかな?」

 

先程質問していた栞が入る事となった。

 

「構わないよ」

 

「委員長が一緒なら心強いな」

 

「いや、何で委員長!?クラス代表はまだ決まってないでしょ!?」

 

「いや、赤刎さんって委員長っぽいじゃん?」

 

「わかる」

 

「た、確かに中学では三年間クラス委員でしたけど!」

 

「あっ、やってたんだ」

 

尚、後にクラス代表を決める際にこのやり取りを思い出したクラスメイト達にクラス代表にされてしまったりする。

 

「ファニール、オニール、私のチームに入れ!」

 

「妹分同盟だね?入る!」

 

「入るのは構わないけど、私達を入れるとISが四機になるわよ?」

 

「それくらい丁度良いハンデだ」

 

マドカは蘭やクロエに加えてコメット姉妹を加えた妹や妹分のチームを編成する。

 

「私達も負けてられないわね!」

 

「そうね、ISの調整も任せて」

 

「それなりに頑張ります」

 

「やるからには最善を尽くすわ」

 

「私は程々に頑張るよ〜」

 

「………ちょっと不安かも」

 

クラスにいる最後の代表候補生こと乱のチームは紗代子、菅野美与(かんのみよ)、渚、水戸茉優(みとまゆ)の五人。

美与はα組では珍しく落ち着いた同年代とは思えない大人びた少女なのだが、オプション装備としてMVB(高周波ブレード)のナイフを複数確保していたり、スプラッター映画鑑賞が趣味というなんとも癖のある娘で、茉優は今や兎一味として有名になった本音を思わせるダウナーな少女だ。

そんな茉優が参戦する理由は実は趣味がキャンプで渚と仲良しだからというありふれた理由なのだが。

他の生徒は今回はこの5チームのサポートに回る事にしたようだ。

 

「それではこの5チームでエントリーしておく」

 

「皆さん、頑張って下さいね」

 

「「はい!」」

 

この日の放課後からそれぞれのチームは特訓や作戦会議の為にアリーナや空き教室の使用申請に走り回るのであった。




α組のエントリーチームのまとめ
ダークマテリアルズ
・ディアーチェ
・レヴィ
・シュテル
・ユーリ
・イリス

紫音チーム(仮名)
・紫音
・レオン
・日向
・イクス
・飛鳥

ルークチーム(仮名)
・ルーク
・優斗
・アリス
・栞
・エクシア

妹分同盟
・マドカ
・蘭
・クロエ
・ファニール
・オニール

乱チーム(仮名)
・乱
・美与
・紗代子
・渚
・茉優(New)


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10話 開幕!チームトーナメント

今回はチームトーナメントの開会式になります。


月末 学年別チームトーナメント当日

0番アリーナには出場しない1年生や新入生の実力を一目見ようと集まった2、3年生が観客席に座り、来賓席には各関連企業などのお偉方が集まっており、アリーナの控室には出場選手が割り振られた控室で出番を待っていた。

 

『という事で、第一回学年別チームトーナメント1年の部当日となりました!司会実況は2年3組益田江里子(ますだえりこ)が担当いたします。そして!解説には【兎の皮を被った災害】こと2年1組の天野雪兎君にお願いしております!』

 

『ども、1年の部の解説に呼ばれました天野雪兎です』

 

実況席には雪兎と放送部から選ばれた益田江里子が座っており、試合の実況解説をしてくれるようだ。

 

『さて、雪兎君。この1年の部の注目チームはどこでしょうか?』

 

『まあ、贔屓目抜いても優勝候補はチームダークマテリアルズだろうけど、それ以外にも何人か面白いと思ってる生徒がいるチームがいくつもあるんだよなぁ』

 

『あ〜、やっぱダクマテちゃん達は優勝候補ですか』

 

『チームワークは言うまでもなく、各個人の戦闘能力もずば抜けてますからね………レヴィやシュテルに関しては国家代表クラスとも交戦経験ありますから』

 

『うわぁ………』

 

『それにユーリの専用機も一応リミッター付きにしたとはいえ洒落にならん装備ありますし、それを束ねるディアーチェの統率力もね』

 

『そこにダークホースのイリスちゃんが加わったチームですもんね………よく出場許可しましたね?学園』

 

『ルールに抵触してない上にチーム戦の見本みたいなチームだしな』

 

『………確かにルール上は何にも問題無いんですよねぇ』

 

「こうなるのわかっててルール提案したよな?お前」という呆れ顔で雪兎を見る江里子だが、雪兎は何食わぬ顔である。

 

『それはともかく、チーム紹介といきましょうか』

 

『今回は初の試みというのもあったが、6クラスで17チームの参加があった。発案者としてこの場を借りて礼を言わせてもらう』

 

『各チームに関しては事前に新聞部の協力でリサーチした資料を元に御紹介しましょう』

 

『新聞部のリサーチってとこで不安一杯だがな………』

 

『まずはα組から………実績多数!前評判にて優勝候補!チームダークマテリアルズ!』

 

『これは普通だな』

 

『機体数はハンデとなるのか!?カナダ代表候補生を引き入れたチーム妹分同盟!』

 

『ほんとにあの名前で登録したのかよ………』

 

『私個人としては注目チーム!雪兎君の弟君が入ったチームパープルラビッツ!』

 

『この短期間でどこまで成長したか楽しみだな』

 

『こちらは残る二人の男子が中心となったチーム!リーダーはあのファイルス先生の弟!チームシルバーファング!』

 

『チームメンバーも中々面白いぞ』

 

『本当に強いのは私達!そう意気込む台湾のドラゴンガールが率いるチーム神龍!』

 

『ほんとそういうとこは鈴そっくりだよなぁ………ん?「私はあんな傲慢じゃないわよ!」?何を言う、去年の今頃のお前の言動思い出してみやがれ』

 

雪兎のコメントに抗議する鈴だったが、去年のクラス代表戦の話題を出されてしまう。

 

『………え〜っと、α組からは以上5チームです』

 

『次はβ組か………これは俺が紹介するか。シリアの代表候補生とそのルームメイトを抱き込んだ幼馴染トリオのチームクインテット。専用機が割とクセが強いみたいだからどんな試合をしてくれるか楽しみだな』

 

五重奏(クインテット)ね。オシャレなチーム名ね』

 

『他にもβ組からは2チームがエントリーしてる。まずは弓道部が無ければ作ってしまえ!と弓道好きが集まったチーム弓道同好会………目標はトーナメントで活躍して部への昇格だそうだ』

 

『機体も見事に鋼ばっかだね』

 

『鋼の追加オプションに弓があるからだろうな………続いてはチームβ。こっちはβ組の中から可能な限り成績優秀者を集めたクラスの代表って感じのチームだな』

 

『あっ、割とガチチームだ』

 

『さて、次はγ組だが』

 

『はいはい!ここからはまた私が!γ組からは2チームがエントリー!お揃いの眼帯は結束の証!チームブラックラビッツ!』

 

『あ〜、今年入学してきたラウラの後輩がいるチームか。機体もハイゼで統一してる点からも気合の入れ方が違うな』

 

このチームのリーダーはドイツのラウラの部隊にラウラと入れ替わりで配属された少女で、部隊のメンバーによって重度のラウラファンになっており、今回の入学もハイゼの専用仕様を持ってラウラの学園での様子を伝える為に学園にやってきたのだ。

 

『もう1チームはチームブルースカイ。機動力に秀でたメンバーを揃えたチームみたい』

 

『機体もブルー・アクシス統一か………統一パーティー流行ってんの?』

 

『そんな貴方にδ組のチームIS5!全機別のISで組んだチームだよ』

 

『うわ、ほんとに鋼、鉄竜、ブルー・アクシス、リヴァイヴⅡ、ハイゼとバラバラだな………しかもカラーリングがニチアサじゃねぇか!わざわざ申請して変えたのかよ………』

 

『δ組もう一つのチームはイランの代表候補生を招いたチームキャットね』

 

『代表候補生の専用機以外はハイゼ2、鋼2のバランス編成だな』

 

『ε組からはチームは眼鏡女子だけで結成したチームメガネーズ!』

 

『今時珍しい眼鏡キャラがよく五人も揃ったな』

 

『次はチームブルースカイのライバルになるのかな?グリフォーネ統一のチームヴェルデヴィント!』

 

『まだ統一チームいたのか………って、次のチームのチームインパルスはインパルスイーグル統一じゃん』

 

『アメリカからの新入生二人を中心としたチームみたいだね』

 

『残すはζ組か………ここは2チームエントリーで一つは………そうきたか』

 

『どれどれ………あ〜』

 

『リヴァイヴⅡ統一チームでフランスからの入学生が中心となったチームジャンヌ。シャルのファンチームっぽい』

 

『あ〜、デュノアちゃん、国だとジャンヌ・ダルクの再来とか呼ばれてたんだっけ?』

 

『俺も去年の年末に行って知ったよ』

 

この際、観客席にいたシャルロットが赤面していたそうな。

 

『ラストのチームは同じくζ組からチームZ02小隊!』

 

『サバゲー部の1年で編成したチームみたいだな。インパルスイーグルやブルー・アクシスにリヴァイヴⅡとミリタリー色強めだな』

 

『出場チームは以上となります!』

 

『試合は抽選会の後に行います』

 

開会式はこうして終わり、抽選会の結果トーナメント表はこのようになった。

 

ダークマテリアルズ(シード)

 

第一試合

チームブルースカイ

VS

チーム弓道同好会

 

第二試合

チーム妹分同盟

VS

チームブラックラビッツ

 

第三試合

チームジャンヌ

VS

チームZ02小隊

 

第四試合

チームパープルラビッツ

VS

チームメガネーズ

 

第五試合

チームヴェルデヴィント

VS

チーム神龍

 

第六試合

チームキャット

VS

チームβ

 

第七試合

チームインパルス

VS

チームシルバーファング

 

第八試合

チームIS5

VS

チームクインテット

 

『次回もお楽しみに!』

 

『次回ってメタいわ!』




ダークマテリアルズはやはりシードにしました。

次回からは試合になります。
全部しっかり描写できないかもしれませんがなるべく頑張ります。


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11話 一回戦①

遅くなって申し訳無い………
今回は一回戦の2試合をお送りいたします。


『さて、早速一回戦第一試合といきましょう!』

 

『チーム・ブルースカイVSチーム・弓道同好会か』

 

『この試合、どう見ます?解説の雪兎さん』

 

『資料を見た限りだとブルースカイは空戦機動を得意としているみたいだが、得意分野に合わせてオプションはマチマチだ。対して弓道同好会は鋼のオプションパックの一つである種子島に弓型のオプション装備である【飛梅】を全員が装備してる特化型編成』

 

『つまり、ポジション分けされた小隊編成のチーム・ブルースカイと一点特化部隊編成のチーム・弓道同好会の戦いと』

 

『ああ、航空隊と対空部隊だな』

 

チーム・ブルースカイの編成は全てブルー・アクシスではあるが、オプションパックは異なり、Aパックが2機、Dパックが2機、Sパックが1機という編成で、Aパックもマルチカスタムレーザーライフルのバヨネット装備とそれとは別にアサルトライフルを装備した機体と大型のランスのガングレイヴを装備した機体に分かれ、D装備の2機は片方はマルチカスタムレーザーライフルを2丁にし、もう片方は通常のDパック装備である。

最後にリーダー機のSパック装備はバックパックの追加ビットコンテナに雪兎が使用していたグラスパービットを参考にしたリフレクタービットを装備し、レドームにもミサイルのジャマーシステムを搭載したものに換装するなど対空攻撃対策を施した装備だった。

 

対してチーム・弓道同好会は機体を鋼にし、オプションパックを全員が種子島を選択し、追加オプションとして紅椿の穿千を元にしたエネルギー弓・飛梅を装備しており、他にもそれを補助する追加装甲等も統一している。

 

『ほんと対象的ですね』

 

『にしてもあのSパック装備………面白い装備積んでるな』

 

『チームリーダーの美月(みつき)レナちゃんだね』

 

『これは面白い試合になりそうだ』

 

『それでは〜』

 

『試合開始!』

 

***

 

試合開始直後に動いたのは弓道同好会。

穿千の一斉掃射でブルースカイを攻撃する。

 

「全機乱数回避後プランC!」

 

「「了解!」」

 

レナの指示で散開したブルースカイはレナのSパックがフィールドの上に陣取り、一斉掃射のお返しとばかりにDパック装備の2機がクラスターミサイルを発射。それを迎撃しようとする弓道同好会の機体をAパック装備の2機が襲い、1機が撃墜判定を受ける。

 

『おっと!早速1機撃墜だ!』

 

『開幕の弾幕を抜けられてからの対応が遅れたな』

 

「み、皆落ち着いて!態勢を!」

 

「させないよ!」

 

「きゃあ!?」

 

そこへ空かさずガングレイヴを装備したAパック装備がランスチャージを敢行し更に弓道同好会の陣形を乱す。

 

「そこよ!」

 

そこで逸れた1機をスナイプで撃墜すると、反撃しようと飛梅を射るもそれはリフレクタービットでブロックされ、カウンタースナイプでバランスを崩し、そこをガングレイヴの刃の部分が開いてビーム砲が襲う。

 

『データで一応知ってはいたが………やっぱルガーランスじゃねぇか、アレ』

 

そこからは一方的な試合となり、最初に減らされた人数の不利を覆せずチーム・ブルースカイの勝利となった。

それでも最後まで諦めずにDパック装備の1機を相討ちとはいえ撃墜判定に持ち込んだところは評価すべき点だろう。

 

『勝者、チーム・ブルースカイ!』

 

『今回はブルースカイのリーダーの作戦勝ちだな。弓道同好会は陣形を崩された際にリカバリーをするために近接装備の練習ももう少ししておいた方がいい』

 

『けれどあの飛梅の一斉掃射はロマンありますよねぇ〜』

 

『それは否定しない』

 

こうして一回戦第一試合の勝者はチーム・ブルースカイとなった。

 

***

 

『続きまして、一回戦第二試合!チーム・妹分同盟VSチーム・ブラックラビッツ!』

 

『妹分同盟はコメット姉妹の専用機の特性上機体数が少ないが………それを補って余りあるんだよなぁ』

 

『マドカちゃんのフッケバインはある程度知ってはいますが、他の二人の専用機ってどんなISなんですか?』

 

『クロエの黒鍵改は元々は電子戦特化型の非武装ISだったんだが、学園に通うってことでそれを改修した師匠お手製のISだな。機能としては電子戦型のままではあるが、鍵型のロッドに小型のソードビットを装備した中遠距離支援タイプだ』

 

『見た目はうさ耳付きのクラシカルメイドタイプですか………うん、流石は篠ノ之博士、クロエちゃんによく似合ってます!』

 

クロエの黒鍵改の見た目は江里子の言う通り黒いクラシカルメイドに近い意匠をしており、改修前の装甲を展開しない時に比べて様々な機能が追加されているのが判る。

 

『うさ耳はお揃いだからと師匠が譲らなくてな』

 

『では次に五反田蘭ちゃんの専用機ですね』

 

『風舞は俺が衝撃砲を参考に開発した風を利用した機能を持たせた試作機だ。各所に空気を圧縮して放出するギミックを持っていてそれを様々な用途に使用する事が出来る』

 

『さらっと中国の技術をコピーして発展させてますね、この人………』

 

『一応鈴の奴に追加パッケージを作ってやった時にあちらには許可取ってるぞ』

 

『いや、それをあっさり発展させるなって言ってるの!』

 

『………話を戻して、風舞の最大の武器は大型の扇型武装【風神】だ。あれは表面に空気を圧縮させて強風を起こしたり、衝撃砲のように空気の弾丸にしたり、鎌鼬を発生させたり出来る』

 

『うわぁ、それって扇を振っただけじゃどれがくるか読めないから結構厄介なのでは?』

 

『そういう風に作ったからな』

 

『その三人にコメット姉妹の世にも珍しい複座型のグローバル・メテオダウンが加わった形になりますね』

 

『あれは二人の息がしっかり合わないと動きが変な事になるんだが………双子でアイドルとあってかしっかり動きがシンクロして中々に面白い動きをするISだな………うん?二人でシンクロ?』

 

『はいそこ!何か思い付いたみたいだけどそういうのは後にして下さいねぇ!』

 

『おっとスマンスマン』

 

またしても何か思い付いた様子の雪兎だが、江里子に止められて試合の解説に戻る。

 

『そんな妹分同盟に挑むのは黒色に揃えたハイゼ統一チームであるチーム・ブラックラビッツ!』

 

『ヘイズルパックが2機、あとはハイザ、キハール、フライルーとここもそれぞれ役割を決めたオプションパックのセレクトだな』

 

『そのヘイズル2機も微妙に装備が違いますね?』

 

『ヒートサークルカッターやブレードバレル装備の近接仕様とバズーカランチャーやショルダーキャノンを追加した砲戦仕様みたいだな………リーダーはハイザの砲戦オプション装備か』

 

何でもラウラの古巣である黒兎隊の新人だそうで、ラウラへの憧れからラウラが使用していたシュヴァルツェア・レーゲンに近いハイザパックをその砲戦パッケージであったダブルカノンに近い装備構成にしている。

また、チームメイトも全員黒い眼帯装備なところを見るに既に布教済みなのだろう。

 

『それでは簡単な紹介も終わったし、第二試合を始めるか』

 

『それでは〜』

 

『試合開始!』

 

***

 

開幕早々に動いたのは意外な人物達であった。

 

「いくよ!二人共!」

 

「ガッテン」

 

「承知よ!」

 

なんと、蘭とコメット姉妹が並び、グローバル・メテオダウンがライブ等で使うスピーカーを起動させ、マイクを握っていたのだ。

 

『えっ?一体何を………』

 

『うわぁ………そうきやがったか』

 

江里子はその意図がわからず困惑するも、雪兎は三人が何をやるつもりなのか理解して顔を顰める。

 

「必殺!ハウリングストーム!」

 

「「アァ〜!」」

 

コメット姉妹がその美声をスピーカー音量最大で放ち、それを風舞の風神で風を起こして風の障壁を作って向かう先を相手に限定させる事で音量を更に増幅・反響させるという手段でSEへのダメージこそは無いが相手の動きを制限する音響兵器としたのだ。

 

『うっわぁ………観客席やこの実況席にはバリアがあるのでそこまで響きませんけど、ブラックラビッツの皆には結構キツイでしょうね』

 

『というか、こんな攻撃誰も想定してねぇよ!』

 

だが、これで足を止めてしまったブラックラビッツに更なる追撃が襲う。

 

「ミラージュエッジ、いってください」

 

クロエの黒鍵改から細剣タイプのソードビットであるミラージュエッジが襲いかかり、それを受けてしまったキハール、フライルーパックのハイゼの動きがおかしくなる。

 

『あの〜、電子戦型ってまさか………』

 

『ハッキングされたな、ありゃ』

 

「この!」

 

「きゃあ!?何で味方を攻撃するの!?」

 

キハールパックの女子は慌てて反撃しようと“視界に映っていた”黒鍵改をワイヤーブレードで攻撃するが、それはクロエがISの視界をハックして見せていた幻影で、黒鍵改に見えていたのはヘイズルパックの砲戦型の子であった。

 

「えっ!?あれ!?」

 

「落ち着いて!まずはあのクロニクルさんからやらないと!」

 

「私も忘れてもらっては困るぞ?」

 

「しまっ!?きゃああああ!?」

 

ハッキングの主がクロエと見抜いたハイザパックのリーダーだったが、この混乱の隙をマドカが逃すはずもなく、レーヴァテインの一振りでバトルフィールドの外周へ叩きつけられてしまう。

 

『五反田ちゃんとコメット姉妹で気を逸らさせて、その隙にクロエちゃんがハッキングで妨害。その混乱に乗じてエースのマドカちゃんが強襲って………中々にエグい』

 

『完全な初見殺しな戦法だが、呆れる程に有効な戦術だ』

 

『キハールの子とフライルーの子はもう下手に動けないから実質4対3よね………』

 

『チーム戦だと視界ジャックはほぼ詰みだからな………』

 

結局、ヘイズルパックの2機が早々にマドカに撃墜され、リーダー機も蘭とコメット姉妹の連携に破れ、残った二人は視界ジャックのために棄権。

 

『うん、これはヒドイ………』

 

『多分、ダークマテリアルズはもっとヒドイぞ?』

 

こうして第二試合はチーム・妹分同盟の勝利となった。




第一試合
ブルースカイ○
VS
弓道同好会✕

第二試合
妹分同盟○
VS
ブラックラビッツ✕


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12話 一回戦②

遅くなりました!
今回は一回戦第三試合の内容となります。


『次の第三試合は運命の悪戯か!?同じζ組!チーム・ジャンヌVSチーム・Z02小隊!そして、今回はゲスト解説者としてシャルロットちゃんに来てもらいました!』

 

『うぅ………シャルロット=デュノアです』

 

『この試合にシャル呼ぶとか鬼か、お前………』

 

尚、チーム・ジャンヌの方はシャルロットの登場を知り、実況席の方に祈りを捧げ始める。

 

『聞いてたよりガチじゃねぇか』

 

『恥ずかしい………』

 

『というか、機体もシャルと同じカラーにしてね?こいつら』

 

『わざわざ申請したみたいですよ?』

 

『僕、カラー変えようかな』

 

チーム・ジャンヌは制式量産型のラファール・リヴァイヴⅡをシャルロットのⅡSと同じオレンジカラーにしており、リーダーのアデライト=ブランシャールは装甲切換に高い適性を持っており、まだほとんどの1年生が上手く使えない装甲切換もある程度使えるという稀有な才能の持ち主である。

 

「(あ〜!天野先輩だけでなくデュノア先輩までコメント戴けるなんて………あとでログ貰えないか交渉しなくては)」

 

しかし、その中身は日本のアニメオタクでもあり、元々は日本に渡る為にIS学園を受験しようとしていた程だったりする。

シャルロットファンになったのは去年の12月に雪兎とシャルロットが来仏した時で、シャルロットの見た目がとあるアニメのジャンヌダルクに似ていたのが理由だったりする。

アデライトも金髪碧眼でそのジャンヌダルクに憧れて髪型等も同じにする程であったが、シャルロットが「ジャンヌダルクの再来」と呼ばれ始め、その関係でシャルロットに興味を持ったのだが………偶々空港で雪兎とシャルロットの姿を見る事ができたアデライトはすっかり二人のファンになってしまい、IS学園に入学してからは学友らにその素晴らしさを布教するまでに至っていたのだ。

今回チームを組んだメンバーは入学当時からアデライトのオタク趣味すら普通に受け入れてしまうようなメンバーで、自身のISとして選んだリヴァイヴⅡはシャルロットに憧れて選んだという四人であった。

その為、今回のトーナメントへの出場チームを決める際にすぐにエントリーを希望した。

その初戦の相手が同じクラスのチームであったのは残念に思うが、負けるつもりはサラサラ無い。

 

「私達も負ける気はありませんよ、アデライト」

 

対するは軍隊オタクの聖川真紀(ひじりかわまき)の率いるZ02小隊。

真紀が集めたメンバーは同じ軍事オタクやサバゲー趣味の一癖も二癖もあるメンバーで、使うISはアデライト達と同じリヴァイヴⅡやインパルスイーグル、ブルー・アクシス構成は真紀のリヴァイヴⅡのグレールパックにブルー・アクシスのSパックとDパック、インパルスイーグルのアサルトイーグルとイーグルアイの5機である。

こちらもカラーリングを申請してカーキ統一している。

 

『これはこれで濃いな………』

 

『どっちも濃いね………』

 

『それではいってみましょう!』

 

そんなこんなで第三試合が始まった。

 

「皆、いくよ!」

 

「全機、攻撃開始!」

 

チーム・ジャンヌはアデライトがグレールパックに換装し他のメンバー二人のグレールパックと残ったアルカンシェルパックの二人に3:2で分かれ、Z02小隊はグレールパックとDパック、アサルトイーグルを前衛にSパックとイーグルアイが後衛に控えるという同数同士の戦いとなった。

 

「同じグレールパックなら私の方が分があります!」

 

「かと思った?」

 

「えっ?」

 

するとアデライトは真紀の目の前でエクールパックに装甲切換して【一角獣の紋章】を掲げて一気に距離を詰めてくる。

 

『面白い使い方するなぁ』

 

『偶に雪兎もやるよね?アレ』

 

『まだアレに慣れてるやつも少ないから有効な戦術ではあるが、使い所が重要だな』

 

『タイミングを間違えると隙になっちゃうもんね』

 

『装甲切換の第一人者とそれをいち早くモノにした人が言うと説得力ありますね』

 

そのままシールドバッシュを放ち真紀のグレールパックを弾き飛ばすと、それに合わせて前に出てきたアルカンシェルパックの2機に合わせてアルカンシェルパックに換装して弾幕をお見舞いする。

 

「小隊長!?」

 

「余所見は厳禁だよ?」

 

「しまった!?」

 

その隙にグレールパックの1機が追加装備していた【一角獣の紋章】のパイルバンカーを叩き込みSEを半分以上削り取る。

 

「このまま追撃を」

 

「させません!」

 

「くっ」

 

『わ、私も!』

 

しかし追撃を許さないとイーグルアイの狙撃がそれを阻み、Sパックが追加分のビットも含めての一斉射でチーム・ジャンヌの攻撃を中断させる。

 

『パイルバンカー2連発!一気に形勢が傾いたか!?』

 

『いや、狙撃手のカバーが上手い。決定打になる前にフルバーストで仕切り直したのも良い判断だ』

 

『彼女、元々サバゲーでそういうのに慣れてるみたい』

 

『なるほど』

 

それぞれに仕切り直しとなりチーム毎に集まり態勢を立て直す。

 

「すいません、仕留め損ないました」

 

「いえ、あれは相手の狙撃手の判断が良かっただけです」

 

「けれどSEを半分削れたのは大きいですね!」

 

「けれど油断せずにいきましょう」

 

「「はい!」」

 

一方、チーム・Z02小隊は………

 

「助かりました」

 

「いえ、上手くいったのは彼女のサポートがあったから………」

 

「それもそもそもあの狙撃があったからで」

 

「それはともかく………これから巻き返しますよ!」

 

「「おー!」」

 

仕切り直してからはアデライトが引き続きアルカンシェルで弾幕を形成し、対抗しようとしたZ02小隊だったが、弾幕でビットを展開できなくなった狙撃手がジリジリと削られていき、大きくSEが削られていたアサルトイーグルが落とされたところで優位が決してしまい、そのまま押し切られる形で1人また1人と人数を減らしていき、最後はせめて一矢報いろうとした真紀が隠し札として持っていたビームシールドで弾幕を抜けてアデライトに迫ったものの、エクールに切換を行ったアデライトに【一角獣の紋章】を使われてシールドを貫通されてしまい残ったSEが底を尽きた事で決着となった。

 

『途中までは善戦したんですけどねぇ………』

 

『やはり装甲切換が使えるかどうかで戦術に差が出来るからな………問題は今後当たるだろう専用機持ちにそれが通じるかどうかだな』

 

『アデライトちゃんの装甲切換のスピードも良かったと思うなぁ』

 

『あっ、シャル………』

 

「あ、ありがとうございます!憧れのデュノア先輩から褒めてもらえるなんて!」

 

『あっ………』

 

シャルロットに褒められて感激するアデライトに「やってしまった」と頭を抱えるシャルロット。

 

『………さて、次は紫音の試合だな』

 

そんなシャルロットを見て雪兎は何とか話題を逸らそうとしたが、アデライト以外のメンバーからも期待に満ちた眼を向けられて結局シャルロットは全員の講評をする事となり、更に尊敬の眼差しを向けられるようになってしまったのであった。




次回は第四試合の紫音のデビュー戦となります。


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13話 一回戦③

今回も一試合だけになってしまいました。
紫音達の初陣ははてさてどうなるのか?


一回戦も三試合が終わって次が第四試合。

対戦カードはα組のチーム・パープルラビッツとγ組のチーム・メガネーズ。

そのパープルラビッツを率いる紫音は初めての公の場での試合に緊張を隠せないでいた。

 

「はぁ………」

 

「おっ?緊張してんのか、紫音」

 

「レオン………ちょっとね、でも僕よりもシアハートさんの方が心配かな?」

 

「あ〜、確かに仲間内のは慣れてきたみたいだが、この観衆だもんなぁ」

 

そのイクスはチームメイトの日向や飛鳥に励まされていた。

 

「大丈夫?イクス」

 

「………うん、何とか」

 

「前衛は私とレオン君、それから紫音君がやるから」

 

レオン、日向、イクス、飛鳥のISはレオンと飛鳥が鋼、日向がリヴァイヴⅡ、イクスがブルー・アクシスを選択しており、パックはそれぞれレオンが隼、飛鳥は村正を、日向はミラージュ、イクスはSパックをセレクト。

対するチーム・メガネーズはやや砲撃タイプに偏った編成で、リヴァイヴⅡのアルカンシェル、鉄竜の炎牙が2機、ブルー・アクシスのDパックが1機、ハイゼのハイザ装備が1機。

しかし、高速切替の技能が無くとも少し時間を掛ければ戦闘中のパック交換も可能で、高速切替の技能を有していれば先の試合のように一瞬で装備が切り換わるという厄介な機能があるので油断は出来ない。

 

『さてさて、今回の試合の見所は?』

 

『砲戦装備が多いメガネーズに対してやや近接に寄ったパープルラビッツがどういう戦いを見せるか、ですかね』

 

「よし、皆行こうか!」

 

「おう!」

 

「は、はい!」

 

「先輩の前で無様は晒せませんからね」

 

「ははは、ひなちんはブレないなぁ」

 

チーム・パープルラビッツ………紫音の初陣が始まる。

 

***

 

「よろしくお願いいたします」

 

相手のメガネーズは全員が今時珍しい眼鏡愛用者で構成されたメンバーで、各々眼鏡の種類は異なっているもそれぞれサブディスプレイとしての機能を付与しているそうだ。

ちなみにリーダーの半田尚子(はんだなおこ)は赤いコンビフレームのアンダーリムの眼鏡を着用しており、ISは鉄竜の炎牙のバックパックに大型ミサイルランチャーを増設した仕様を使うようだ。

 

「よ、よろしく」

 

何故か全員揃って眼鏡を光らせている様子に少し気圧されかけた紫音だが、開始位置に移動してからは落ち着いてメガネーズの作戦を探る。

 

「多分開幕ブッパしてから何かしらアクションがあると思うな」

 

「そりゃ、皆してあれだけ大きなミサイルランチャー背負ってたらねぇ」

 

「スモークとフラッシュを混ぜ込んで視界を潰してから装備を切り換えてくる可能性もあるね」

 

上からレオン、飛鳥、日向の意見である。

そこへ紫音がある提案をする。

 

「………その開幕の弾幕、利用出来ないかな?」

 

「何か企んでるな?相棒………で、何をやるんだ?」

 

「この作戦の鍵はシアハートさんにあるんだ」

 

「えっ?私ですか!?」

 

その後、紫音が作戦を伝えるとレオン、飛鳥、日向の三人はそれに賛同する。

 

「面白えじゃん、乗った」

 

「私も私も〜」

 

「で、でも、私に務まるでしょうか?」

 

「大丈夫よ、私がフォローするから」

 

「う、うん」

 

「それじゃあ、勝ちにいこう!」

 

「「お〜!」」

 

「お、お〜」

 

***

 

試合開始直後にやはりメガネーズは一斉にバックパックのミサイルを広域展開してきた。

 

「シアハートさん!」

 

「は、はいっ!行って!BTビット!」

 

それに対してイクスがSパックの追加分も含めたBTビットを展開してミサイルをマルチロックオンで迎撃。

日向の予想通りにスモークも混ざっていたミサイルが紫音達の視界を遮ってしまうも、メガネーズが想定していた位置より前で迎撃されてしまったせいでメガネーズも視界を奪われる形になってしまった。

 

「くっ、皆警戒して!」

 

尚子がそう告げるも既に遅く………

 

「おうらぁ!」

 

煙幕を突破してきたレオンがピアッシングシールドでハイザ装備のメンバーを殴り飛ばし、

 

「私もいるよ〜!」

 

蓮華と雛菊の近接ブレード二刀流でアルカンシェル装備のメンバーを強襲する。

 

「何故私の位置が!?」

 

「タネも仕掛けもあるんだな、これが!」

 

動揺するもう一人の炎牙装備のメンバーを蹴り飛ばしながらレオンは種明かしをする。

 

「さっきのミサイル攻撃を迎撃した時にこいつをそっち側に潜り込ませてたのさ!」

 

それは追加オプション装備の一つである長距離偵察用のカメラビット。

そう、イクスがミサイルを迎撃した際にこれを煙幕に紛れてメガネーズ側に送り込んでおり、その映像から位置を算出してデータリンクでメンバーに情報を共有させていたのだ。

 

『へぇ〜、面白いオプション持ち込んでるな、あの娘』

 

『あれって確か長距離狙撃のスポッター用のオプションだったわね』

 

『ああ、でもこのアリーナでの戦闘ではアレを使うって発想が中々出来ないから持ち込んでくるとは普通思わねぇわな』

 

『けど、狙撃用ってことは………』

 

『そういう事だよな』

 

二人の言わんとしている事は直ぐに明らかとなる。

 

「ぐぁ!?」

 

「狙撃!?いや、ビットからの攻撃?」

 

「おかしい!私達のスモークの効果時間はとっくに………まさか!?」

 

「………囲い込むつもりが逆に囲い込まれたようね」

 

そこで尚子は自分達が置かれている状況を把握する。

紫音の作戦とは相手の目眩ましを逆に利用してメガネーズの視界を奪い、自分達はイクスのカメラビットで位置を把握。レオンと飛鳥に煙幕に紛れた一撃離脱戦法をさせつつ、自分は追加の煙幕を撒き、イクスにはビットとライフルによる多角狙撃、日向にはイクスの護衛をさせるというものだった。

 

「お見事と言うべきね………貴方達の勝ちよ、天野紫音君」

 

「偶々そちらの思惑とこっちの作戦が噛み合っただけさ」

 

「謙遜は過ぎると嫌味よ?」

 

「それは失礼………なら半田さん達の分も二回戦で頑張らせてもらうよ」

 

「そう、応援させてもらうわ」

 

最後に残った尚子を紫音が撃破した事で第四試合は紫音達チーム・パープルラビッツの勝利となったのであった。

 




兄兎もニッコリの紫音の作戦勝ち。
メガネーズの作戦は視界をスモークや爆煙で塞いだところに飽和砲撃で数を削り、残った相手を数の暴力で圧倒するというものでした。


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14話 一回戦④

まだまだ続くぞ一回戦!
ということで今回は乱のチームの試合です。


「マドカも紫音も勝ち上がったみたいね」

 

選手控室にて乱は獰猛な笑みを浮かべつつチームメイトへと向き直る。

 

「相手はヴェルデ・グリフォーネの統一チーム。α組だと私と水戸さん、それから冬海さんが選択していたわね」

 

「そ〜だね〜、私とさよっちとみみっちゃんだけだね」

 

紗代子と茉優が言うようにα組でヴェルデ・グリフォーネを選択したのは紗代子と茉優、そしてチーム・神龍のサポートを受け持っている冬海実弥(ふゆみみみ)の三人だけと意外と少ない。

理由としてはオプションパックが他の量産機に比べてどれも機動力タイプで、そういった機体特性のクセが原因だった。

ヴェルデ・グリフォーネはロッソ・アクイラをベースとしている関係か常に動き続ける機動力タイプに分類され、まだ自身の適正が判らない者が多い1年生が選ぶ機体としては難のあるISなのだ。

だが、その代わりに装甲切換の際の切換が非常にスムーズで、動きながら切換を行っても動きがブレ難いというメリットも存在する。

それを統一チームとして使用してくるヴェルデヴィントというチームは必然的に機動力に秀でたチームであると予想が出来る。

 

「茉優達から機体特性を聞いてるからまだ何とかなりそうね」

 

「それにうちの茉優には“隠し玉”もあるものね」

 

渚はそんなグリフォーネの特性を知れた事から茉優に感謝しており、乱は茉優が紗代子らと用意した“隠し玉”はきっと切り札になると読んでいる。

 

「ふふ、鷲獅子はどんな声で鳴くのかしら?」

 

一方、もう1人のチームメイトである美与はさっきから愛用のMVB達の刃を磨いている。

 

「美与、お願いだから映画みたいなスプラッターなのはやめてよ?」

 

「善処するわ」

 

「「(試合になったら絶対忘れるな、この娘)」」

 

乱が一応注意はしたが、このスプラッター映画マニアが自重するとは思えない。

 

「紗代子、フォローよろしく」

 

「ええ、何とかするわ」

 

さて、そんなチーム・神龍の機体構成は乱が専用機である先行量産試作機の鋼竜。紗代子と茉優がグリフォーネ。渚はインパルス・イーグルを選択しており、美与は鋼だ。

同じグリフォーネでも紗代子は射撃寄りのアクイラ、茉優はバランス型のグリフォーネの基本パックをメインに使用している。

渚は近接寄りのアサルトイーグルを、美与は武器をオプション選択したMVBのナイフを複数拡張領域に格納した隼を使用する。

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

「「お〜」」

 

***

 

『続いて第五試合!ε組からチーム・ヴェルデヴィント、α組からはチーム・神龍の登場です!』

 

『グリフォーネ統一のチームと鈴の従妹のチームだな』

 

『という訳で今回はロッソ・アクイラのテスターのアレシアちゃんと乱音ちゃんの従姉の鈴音ちゃんに来てもらいました〜』

 

『うぅ、私、場違いじゃない?』

 

『何で私まで………というか雪兎!さっきはよくも好き勝手言ってくれたわね!』

 

『お前さ、そういうとこだぞ?これ、一応中継とか入ってるからな?』

 

『………えっ?』

 

『雪兎君、それ、マジ?』

 

『お二人共、聞いてなかったんですか?今年のトーナメントは初めての試みですし、今年から本格導入になった量産機の一般公開も兼ねて中継が入ると事前に連絡があったはずですが………』

 

そう、今年のトーナメントは江里子が説明した以外にも様々な思惑が重なってTV中継がされており、実況者の役も全国中継とあって部活内で熾烈なじゃんけん大会が行われ、3年の部長を抑えて江里子が勝ち取ったものだったりする。

 

『あ〜、あん時クラスが別日の2年の部のチーム決めで揉めてたからな』

 

『織斑君関係で?』

 

『一夏関係で』

 

思わぬところで一夏に飛び火して観客席にいた一夏にカメラが向けられると「えっ!?俺!?」と一夏が慌て出す。

 

『そんな事は置いといて試合いくぞ〜』

 

『ちょっ!?』

 

『今回の見所は?』

 

『統一チームのヴェルデヴィントはともかく、神龍にもグリフォーネが2機いるからな。両チームでどういう運用の違いが出るかが見ものかな?』

 

『そっか、ロッソ・アクイラがベースだから基本的に機動力頼りになるもんね』

 

『そういう事だ』

 

雪兎が見所を語るとアレシアは開発に関与したグリフォーネの特性を思い出す。

 

『それでは第五試合、試合開始!』

 

開始直後、先に動いたのはヴェルデヴィント。

やはり機体特性を活かすべく始めは全機アクイラを装備して散開する。

 

「やっぱりそうきたわね!」

 

それを予期していた乱はバックパックから伸びる竜の頭部を模した大型の龍砲を起動させ、肩にマウントされていた龍砲球を使いチャージを短縮させ、正確な狙いもつけずに龍砲を放つ。

 

「そんな攻撃、このグリフォーネには」

 

「きゃああああ!?」

 

「何!?」

 

乱もヤケクソや当てずっぽうに龍砲を撃った訳ではない。

龍砲は言ってしまえば“圧縮空気砲”………つまり、大出力で放てば射線上の気流を大きく乱す事が可能なのだ。

そう、乱の狙いは撹乱機動によって常に動き続けている相手チームの軌道を潰し、あわよくば乱れた気流で連携を乱そうとしたのだ。

 

「どんどん行くわよ!」

 

「いかん!彼女を止めろ!」

 

最初の一発で運良く連携を乱した乱は続けて龍砲の発射態勢を取り、相手のリーダーはそれを止めさせようとするが………

 

「させませんよ?」

 

「私達を忘れてもらっては困る」

 

乱へと向かっていくグリフォーネ2機を美与の鋼と紗代子のグリフォーネが阻む。

 

「では、行きますわ」

 

美与は両手に逆手持ちでMVBナイフを握ると阻まれた事で機動力の低下したグリフォーネへと一気に接近し、相手が迎撃しようと取り出したアームブレードを弾いて態勢を崩させ、その隙に回し蹴りを叩き込む。

 

「なっ!?」

 

「ほらほらほら!」

 

態勢を崩された相手を美与はMVBナイフでジワジワと削るように連撃を浴びせていく。

 

「今援護を!」

 

そこにリーダーがスナイパーライフルを取り出して援護しようとするが、もう1機と交戦中のはずの紗代子によって銃身を撃ち抜かれて彼女の手から弾き飛ばされてしまう。

 

「こいつ、私と戦いながら!」

 

「ISはハイパーセンサーによって全方位を知覚可能なのだから利用しなくては損だろう?」

 

「嘘でしょ!?」

 

紗代子がやったのはハイパーセンサーを使って目の前の相手を見つつ、サブウィンドウでリーダーの動きも監視するという並列処理である。

一般的には全方位知覚が可能とはいえ、人間である以上自身の視覚に頼りがちになる。

その為、人間としての死角がそのまま死角になってしまう事が多いのだが、紗代子は左右で正面の相手とサブウィンドウに映る相手を正確に認識してノールックにも見える先程の射撃を行ったのだ。

また、紗代子がオプション装備として選んだ装備の1つはISからしても大型のリボルバー2丁。

これは大型化による取り回しの悪化と連射性、反動の増大と引き換えに大口径弾による威力とガンカタにも耐えうる強度を獲得した非常に使い手を選ぶ装備だ。

 

『ねぇ、雪兎君』

 

『うん?』

 

『あの2丁拳銃ってああいう使い方するやつじゃないよね?』

 

『まあ、人間で例えるなら片手でデザートイーグルを2丁使うようなもんだからな』

 

『うわっ………あの娘、そんなのでスナイパーライフルを見ずに弾いたの!?』

 

『そうなるな』

 

これには実況席のアレシアと鈴もドン引きである。

 

『それよりもあっちも面白い事になってんぞ』

 

そう言って雪兎が示したのは残る1機を追っている茉優のグリフォーネだった。

だが、そのパックは試合開始時に装備していたグリフォーネではなかった。

 

『あれ?グリフォーネにあんな装備あったっけ?』

 

というのも、茉優のグリフォーネはアクイラでもレオーネでもグリフォーネでも無いアレシアが知らないパックが装備されていたのだ。

 

『今年の1年はほんっとに面白えわ』

 

『雪兎、絶対アンタあれ知ってるわよね?勿体ぶらずに話しなさいよ!』

 

『悪い悪い、アレは元々はグリフォーネのオプションパックの試作品の1つだったんだが、学園に納品するまでに完成させられなかったパックでな。あの嬢ちゃんは偶々俺が持ち込んだオプションリストからそれを見つけて「面白そうだからこれをオプションにしてもいいですか〜?」とか言ってな』

 

『えっ、まさか………』

 

『研究会の事を聞いてわざわざ持ち込んで自分専用のパックとして完成させやがったんだよ………まあ、俺やカロリナ、それから優斗も手伝ったけどな』

 

『うわぁ………』

 

その際に茉優は雪兎達とすっかり意気投合してしまい、そのまま研究会に入ってしまった優斗に並ぶ逸材だったのだ。

そうして完成した専用パックの名は【ヒッポグリフ】と言い、元々はヴェルデ・グリフォーネの機動力強化パックとして開発されていたもの。

しかし、ただでさえ機動力に秀でたグリフォーネを強化するとあって開発が難航し結局完成しなかったのだ。

それを兎達が面白半分にあれこれ弄って完成したという経緯からグリフォーネの名の由来となったグリフォンに関連付けて本来ならありえない幻獣と言われるグリフォンと馬の交配種であるヒッポグリフの名を与えられた。

その機動力は通常のグリフォーネを遥かに凌駕するものとなっており、全速力で弾丸をばら撒きながら逃げる相手のグリフォーネを余裕で追従出来る程であった。

 

「ほらほら〜、もっと速く逃げないと捕まえちゃうよ〜?」

 

「な、何なのよそれ!?」

 

「ほら、つっかまえた!」

 

「しまっ、きゃああああ!?」

 

茉優はヒッポグリフの両腕に搭載したアンカークローで相手のグリフォーネの足を掴むとスラスターを全開にして相手を引き摺り回し、急降下しながら拘束を解いて地面に叩きつけてしまった。

 

『うっわぁ………あれ痛そう』

 

『というか、あの娘も中々エッグい事するわね………』

 

最初に龍砲の餌食になった1機は既に渚にトドメを刺されており、茉優と乱がフリーになってしまった事で残る3機も順番に倒されていき勝者はチーム・神龍となった。

 

『まさかここまで一方的な試合になるなんて………』

 

『というか、あの改造パックは有りなの?』

 

『ルールに“改造した装備を持ち込んではいけません”なんて書いてないからな。そんな事言い出したら専用機とかほぼアウトだぞ?』

 

『普通はISを自分で改造しようなんて考えないわよ、普通はね!』

 

雪兎の影響を受け過ぎて“ISを改造する”という発想に疑問を抱かなくなったアレシアに対し、元代表候補生の鈴は雪兎達が普通ではないと声高く指摘するのであった。




ヴェルデ・グリフォーネ茉優専用パック【ヒッポグリフ】

元々はグリフォーネの機動力強化パックとして開発中だったが、未完成のまま雪兎の元に流れたものを茉優が発見し技術向上研究会に持ち込んで完成させたパック。
バックパックの大型ミサイルポッド兼ブースターと各所に備えたアクティブスラスターによって機動力を強化し、両腕に備えたアンカークローによる攻撃や腰のサブアームで銃器やレーザーブレード等を扱えるようになっている。
その機動力は同世代の量産機の中ではトップクラスのスピードを誇るが、制御が非常に難しくなっており、現状では茉優の専用パックとなっている。


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15話 一回戦⑤

また遅くなって申し訳ない。
今回は2試合です。


『さて、次の試合にいきましょう!』

 

『第六試合はイランの代表候補生のいるチーム・キャットVSβ組の精鋭チーム・β』

 

『ところであの専用機について何かご存知で?』

 

『ウルファ=ザフラーニーのゴルベイェグリスターンの事か?』

 

『それってどういう意味なの?』

 

『ペルシャ語でゴルベイェで【〜の猫】、グリスターンは地名でもあるが、今回は【花園】【薔薇園】という意味だろう』

 

『つまり、【薔薇園の猫】と?』

 

『多分な。機体の方は旧リヴァイヴをベースに改修した第3世代機だ』

 

『第3世代機って事はイメージ・インターフェイスを使った装備が搭載されてるのよね?』

 

『そいつに関しては見てのお楽しみってやつさ』

 

『うぅ………気になるから早速試合にいきましょう!』

 

***

 

チーム・キャットの編成はゴルベイェグリスターンに鋼とハイゼが2機ずつという編成。

一方のチーム・βの編成はリヴァイヴⅡが2機、鋼、イーグル、アクシスが1機ずつとなっている。

試合の方は最初は軽い撃ち合いから始まり接戦を見せるも、ウルファは最後まで第3世代装備を使う事なく勝利してしまい、江里子はモヤモヤしたまま第七試合へと移る。

 

***

 

次の第七試合は両チーム間に嫌な空気が発生していた。

 

「やっとこの時が来ましたわね!」

 

「はぁ………また君らか。僕はうんざりだよ」

 

「ムキ〜!!」

 

「貴女もいたのですね、成り上がりのローズウェルさん」

 

「はぁ………(またこの手の人達ですの?)」

 

その原因はチーム・インパルスの中心メンバーであるアメリカからきたジル=ヘルナンデスとその幼馴染みであるケイリー=ベーカーの二人が同じアメリカ人のルークとアリスに絡んできたからである。

ジルは元々ナターシャのファンであり、彼女を目標にしてきた経緯から、編入当時のラウラのような八つ当たりじみた嫉妬の感情をルークに抱いている。

また、ナターシャのシルバリオ・ゴスペルと同じアメリカ側の開発チームで開発されたシルバリオ・ファングをルークが受領している事も気に食わないらしく、受領当時から自分に譲れとしつこく絡んでいたそうな。*1

ケイリーの方は軍部高官の娘で、アリスの父が1代で急成長させたローズウェルをよく思っていないらしい。

 

『うわぁ~………何か私怨全開っぽいですね』

 

『本当なら入学前に弾かれそうなもんだが、ルークとアリスにしかその感情向けてないから問題になってなかったんだろうなぁ』

 

実況解説の二人もこの状況には少し呆れている。

 

『おいそこの二人。ジル=ヘルナンデスとケイリー=ベーカー、お前ら二人だよ。ぶつくさ言ってないでケリは試合でやれ』

 

「「は、はい!」」

 

だが、試合が進まないので雪兎が名指しで注意すると大人しく下がっていった。

 

「お互いに面倒なのに目をつけられたね」

 

「全くですわ」

 

「まあまあお二人さん………こういうのは試合で黙らせればいいんだって」

 

「優斗、研究会参加してから雪兎先輩に似てきてない?」

 

「えっ?」

 

「そうだね、僕としては少し羨ましいよ」

 

「ほら三人共、始まりますよ」

 

栞の言葉で試合に意識を戻した三人と栞、そしてエクシアが並ぶ。

 

「いこうかファング、お前があんなのに御せるなんて勘違いを正しに」

 

ルークはシルバリオ・ゴスペルを彷彿とさせる白銀のフルスキンISであるシルバリオ・ファングを纏い。

 

「研究会での成果を見せないとな」

 

優斗は赤くカラーリングされた鋼を。

 

「思いっきりやろうか、カリバーン」

 

エクシアは蒼き翼を持つ騎士のような専用機・カリバーンを。

 

「あのような人達には負けられませんわ」

 

アリスは真紅に染め、バックパックにストームブリンガーをマウントしたインパルス・イーグルを。

 

「わ、私も!」

 

栞は薄い赤色にしたリヴァイヴⅡを展開し、相手チームの青に統一されたインパルス・イーグル達の前に立つ。

 

『第七試合、試合開始!』

 

「私は貴方達を倒して私を国に認めさせるんだから!」

 

ジルがそう言って飛び出すとそれに続いて他のメンバーも隊列を揃えてルーク達に突撃してくるが………

 

「そういうとこがダメなんだよ」

 

ルークはグレネード付アサルトライフルを二丁取り出して先頭のジルのイーグルにグレネードを発射。

 

「こんなもの!」

 

迎撃しようとジルがアサルトライフルでグレネードを撃ち落とすが、それはルークの罠だった。

 

「対閃光防御」

 

「なっ!?」

 

そのグレネードはフラッシュグレネードで、迎撃してしまった事でジル達は防御する間も無く閃光弾の光を浴びて動きを止めてしまい、その隙にルークはアサルトライフルの連射を浴びせてジルのSEを削る。

 

「ジル!」

 

「おっと、余所見は厳禁だよ?」

 

「せいっ!」

 

閃光からいち早く回復したメンバーがジルのフォローを行おうとするも、優斗が双刀でそれを阻みながら二本のサブアームにセットしたサブマシンガンで追撃し、後退させられたところを上からアリスがストームブリンガーで強襲しアリーナの地面に叩き付ける。

 

「優斗、後は任せるわ」

 

「うん、任せて」

 

そう言うとアリスはまだ回復しきれていないケイリーの方へと向かい、優斗は墜落させたイーグルに向かって双刀から切り替えたアサルトライフルとサブアームのサブマシンガンを使って弾丸の雨を浴びせて身動きを封じる。

 

「それ!」

 

「くっ!」

 

「まるで二人いるようなビット捌きって」

 

その頃、エクシアは両手に持つクリア素材の刀身を持つ片刃の双剣で一人を相手しながらバックパックの翼にマウントしていた4基のソードビットともう4基のガンビットでもう一人を抑え込んでいた。

 

「この子達なら私は手足のように使えるよ」

 

エクシアに与えられたこの専用機【カリバーン】は雪兎がエクシアの特性に合わせてブルー・アクシスをベースに改造を施したISなのだが、例の如くほとんど原型を留めておらず、手にしている双剣と腕部にはブルー・アクシスが元から装備している内蔵レーザーブレードをレーザーバルカンとしても使用可能にしている。

バックパックにマウントしている4基のソードビット【ソーディアン】と腰にマウントしたガンビット【ガンファミリア】の5種だけしか武装を付けておらず、その分本体のスペックアップにリソースを使っている。

一応、拡張領域の空き容量は残っているのでエクシアの好みである程度なら武装を追加可能。

そのビット制御能力は長い間聖剣の生体コアとして取り込まれていた関係からか高い数値を叩き出しており、まだ戦闘経験の少ない同じ1年生であれば文字通り片手間に相手が出来てしまう。

そして、エクシアが一人で二人を相手にしているという事はシルバーファング側が一人フリーになるという事で………

 

「きゃあああ!!」

 

「狙撃!?」

 

「判断が遅いよ」

 

エクシアに釘付けにされていた二人の内の一人が狙撃を受け、狙撃手の存在を知るも、その狙撃手である栞は既にもう一人のイーグルの背後におり、バックパックのサブアームに装備したアサルトライフルで強襲。

 

「私も忘れちゃダメだよ?」

 

そこへ上から急降下キックを浴びせて狙撃されたもう一人にぶつかるように蹴り飛ばす。

 

「ちょ、ちょっと早くどいて!」

 

「そんな事言われてもバックパックが引っかかって」

 

「これはオマケです」

 

「「あっ」」

 

ぶつかった際に絡まってしまったのかジタバタと暴れる二人に栞が放ったグレネードが命中して二人のISのSEが0になってしまう。

 

『………やば、ツボ入った………』

 

『えっ?今のが?』

 

『前に、セシリアと鈴が山田先生と模擬戦やった時とそっくりな終わり方で………ぷっ』

 

かつてのその一戦を思い出したらしく、雪兎は堪えきれずに笑い出す。

 

『それよりも、あっちも大詰めみたいですよ?』

 

江里子が示した先ではケイリーとアリスが戦っていたのだが、形勢はアリスの有利という状況だった。

 

「はあっ!」

 

「くぁっ!?」

 

そもそも同じインパルス・イーグルでもアリスの使うストームブリンガーは通常のオプションではなく、アリスの要望で追加されたオプション装備であり、ケイリーの使うイーグルにはアサルトイーグルのスタンガンナックルとブレードクローしか近接装備が無く、アリスも同じアサルトイーグル装備なせいで距離を詰められてしまい追い詰められてしまったのだ。

 

「なんて野蛮な戦い方だ………やはり成り上がり者の娘か」

 

「元世界2位の方も似たような武器を使っていましたし、珍しくはありません。あとその野蛮な者にすら劣勢なのに強い言葉をお使いになると益々惨めですわよ?」

 

「あんな男の学生に負けたような国家代表の面汚しを引き合いに出しても!」

 

「確か日本ではこういうのでしたわね………“

弱い犬程よく吠える”と」

 

「アリス=ローズウェルぅうううう!!」

 

アリスは挑発してくるケイリーに逆に挑発仕返すと、ケイリーは激昂して無策に飛び出してきたが、アリスはそれをストームブリンガーを双剣モードにして斬り払いSEを削り切る。

 

「もう少し煽り耐性をつけて出直してらっしゃい」

 

父親の関係で煽り耐性のあるアリスからしたらケイリーはさほど苦労する相手ではなかった。

 

「ルークの方はどうかしら?」

 

同じく目の敵にされていたルークはどうかと見てみればこちらもルークが優勢であった。

 

「なん、で………」

 

「君の動きは単調過ぎる。もう少しフェイントも混じえた方がいい」

 

接近戦を仕掛ければプラズマチェーンソーで弾かれ、射撃攻撃をしても掠りもしない。

逆に少しでも隙を見せれば鋭い反撃をしてくる。

 

「例の演算システムを使っているのよ!でなければ!」

 

「【エニグマ】の事かい?悪いけどアレは脳への負担が大きくてまだ30秒くらいしか使えないんだ」

 

ジルが苦し紛れにルークがシルバリオ・ファングに積まれた演算予測システム【エニグマ】を使用しているからだと指摘するも、ルークによってそれは否定される。

 

「そろそろ終わりにしようか」

 

「これは夢よ!私がこんな!」

 

最後まで認めようとしなかったジルだったが、無情にもルークが残るSEを削り切り、そこで全機撃墜されチーム・シルバーファングの勝利となった。

*1
開発チームはファングの開発経緯やジルの態度から彼女を候補から外しているのだが………




第六試合
チーム・キャット○

第七試合
チーム・シルバーファング○


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16話 一回戦⑥

やっと一回戦が終わります………

そして、ついにニチアサチームことチーム・IS5がベールを脱ぐ


『さてさて、一回戦も最後の試合となりました!』

 

『第八試合はチーム・IS5VSチーム・クインテットだったな』

 

『今回は更識簪ちゃんにゲストとして来てもらったわ』

 

『よろしく………ところでフィールドにはクインテットの五人しかいないけど』

 

『あれ?係の人にはもう控室は出たって聞いたんだけどなぁ』

 

そう、既にクインテットの五人はアリーナにいるのだが、対戦相手のIS5の姿は見えない。

 

「敵前逃亡?」

 

「いや、それは流石にないでしょ………ないよね?」

 

「私に聞くなし」

 

「あっ、出てきた」

 

弱視故の鋭いその他の感覚と弱視をISのハイパーセンサーで補う事で高い空間把握能力を持つキャロルが反対側のゲートから相手が入場してくるのを感知しチームメイトに伝えると、ゲートから眩い五色のISが飛び出してくる。

 

「ISピンク!」

 

最初に飛び出してきたのはピンクと白にカラーリングされたブルー・アクシスを纏った桜色のツインテールの少女・桃城希望(ももしろのぞみ)

 

「あっ、ISブルー!」

 

続いて少し恥ずかしそうに出てきたのは青にカラーリングされたリヴァイヴⅡに乗るポニーテールの蒼井静華(あおいしずか)

 

「ISイエロ〜」

 

ゆったりとした口調で現れたのは黄色にカラーリングされた鋼に乗るお団子ヘアーの黄島翔子(きじましょうこ)

 

「ISレッド!」

 

見た目から熱血タイプなショートカットの赤坂光子(あかさかみつこ)は真っ赤な鉄竜に乗る。

 

「………ISブラック」

 

元から黒ではあるが、ほとんどのパーツを黒一色に染め直したハイゼに乗る黒河沙月(くろかわさつき)

 

「「五人揃ってISファイブ!」」

 

最後に五人揃って決めポーズを取ると、五人の後ろに五色のスモークが出て戦隊ヒーローやプリ○ュアのようなド派手な登場シーンを演出する。

 

『チーム名からしてやると思ってたけど、ほんとにやるバカいるんだな………』

 

『往年の戦隊ヒーローのカラー煙幕………わかってる』

 

『簪、ちょっと落ち着こうなぁ………というか、やるならやるって申請しとけや!知ってたらもっとちゃんとした演出や音響もやってやれたのに!』

 

そんな演出に目を輝かせる簪だったが、雪兎はどうせやるなら自分も演出やりたかったと悔しがっていた。

 

「次があればお願いしま〜す」

 

リーダーの希望はそんな雪兎に笑顔でそう返事をする。

 

「フェルト、私達もアレやろ」

 

「嫌よ!恥ずかしいじゃない、あんなの!」

 

「フェルト、それは言わないであげて」

 

「何で………あっ」

 

美乃里の言葉でフェルトは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている静華に気付き、非常に申し訳ない気持ちになる。

 

「なんかごめん」

 

「………ううん、気にしないで」

 

ちなみに希望と静華は幼馴染みらしく、静華は常に希望に振り回される関係にあったようだ。

そんな静華にフェルトはシンパシーを感じずにはいられなかった。

 

『さて、色々ありましたが一回戦最終第八試合!試合開始!』

 

試合が始まると、IS5の五人はそれぞれパーソナルカラーにカラーリングされた武器を取り出す。

 

「パステルフェンサー!」

「オ、オーシャンブレイカー」

「ブリッツアローだよ〜」

「バーニンググレイブ!」

「インパクトアックス」

 

『うん?あの武器は………』

 

『知ってるんですか?』

 

『雪兎はオプション装備は全部一通り目を通してるから全部覚えてるはず』

 

『えっ?あの膨大なリスト全部覚えてるの!?』

 

『それは技術者だからな。あの武器、あんな名前じゃなかったはずなんだが………あと何か忘れてるような………』

 

雪兎が引っ掛かりを覚えている間にも両チームが激突する。

 

「やぁっ!」

 

希望がパステルフェンサーでキャロルが操る専用機【アズラエル】に突きを放つが、キャロルは素早くアズラエルの第三世代装備である液体金属制御で盾を作ってブロックする。

 

「むっ、今のを防ぐなんて………流石は代表候補生!」

 

「貴女の突きも速い………この子(アズラエル)じゃなかったら今のでいいのもらってた」

 

「エヘヘ………」

 

「だから私も本気出す」

 

「え?」

 

すると、キャロルの両手に液状金属が集まり腕部と一体化した二振りのブレードとなる。

 

「ちょっ!?」

 

「いくよ」

 

驚きはしているものの、希望はきっちりキャロルの攻撃を防ぎつつ、隙きあらば突きでの反撃を繰り返す。

 

***

 

「セイセイセイセイセイッ!」

 

「速いけど対応出来ない速さじゃない!」

 

羞恥心から半ばヤケクソになってはいるが、両手のブレードトンファーから鋭い連撃を繰り出す静華と、それに対しヴェルデ・グリフォーネの標準装備であるアームブレードやレオーネパックのレッグブレードで打ち払うフェルトの二人。

 

「首輪付きって事で色々噂は聞いてたけど、噂は噂ね」

 

「そう?私は命欲しさに組織を裏切った裏切り者の悪党よ?」

 

「本当の悪党ならあの娘はあんなに貴女に懐かないと思うのだけれども?」

 

「それはあのド天然な娘が放っておけなかっただけよ!」

 

距離が開けばトンファーに仕込まれたマシンガンと双銃剣の撃ち合いとなり、お互いに一歩も引かない戦いが続く。

どうやらチームでの立ち位置だけでなく、戦闘スタイルも似ているようだ。

 

***

 

「せいやっ!」

 

「くっ」

 

一方、美乃里はバーニンググレイブを持つ光子との戦いを繰り広げていた。

美乃里のハイゼはヘイズルパックにブレードバレルを装備したライフル二刀流で対抗しているが、光子は量産機の中ではパワーに優れた鉄竜で尚且接近戦仕様の雷爪装備にオプション装備のバーニンググレイブという特化仕様だ。

セッティングも近接戦闘に重点を置いたセッティングがされているようで、押し込まれかけている。

 

「そんなパワーじゃコイツは止められないぞ!」

 

「わかってるわよ!」

 

「うおっ!?」

 

鍔迫り合いは不利なのはわかっていた美乃里は更に力を加えると見せかけて力を抜いて受け流し、光子がバランスを崩したタイミングを利用してパックをフライルーに換装。

バックパックに残したシールドウエポンブースターと左右の大型版からミサイルをバラ撒き、レールガンとブレードライフルを連射して美乃里は反撃に出た。

 

***

 

「シッ!」

 

「おっと………それ」

 

此花は同じ鋼を使う翔子と弓同士の戦いをしていた。

だが、翔子の使うブリッツアローは通常鋼のオプションとして存在する和弓タイプの飛梅とは違い洋弓のリムと呼ばれる部位に近接戦闘用の刃が取り付けられたもので、此花が翔子の矢を避けながら射っているのに対し翔子はブレードの部分を使って此花の矢を切り払いながら矢を射ってくる。

 

「やっ」

 

「ほんとその弓厄介ね!」

 

弓は両手で使わねばならず、ブリッツアローのように近接戦闘で使えない飛梅を使う此花のSEは少しずつではあるが、確実に削られていく。

 

「(こうなったら………)」

 

そこで此花は一度回避に専念し、装備を変更する。

 

「えっ?それって!?」

 

「元弓道部だからって弓しか使えない訳じゃないわ!」

 

それは此花がオプション装備として選んだ装備の一つであるビームサイズ。

実は此花はとあるMMORPGにて鎌を愛用しており、そんな中オプションリストからこのビームサイズを見つけ出していたのだ。

パックもいつの間にか隼に変更しており、一気に距離を詰めてビームサイズを振るう此花に翔子はブリッツアローのブレードで防御するが、ビームサイズの方が大きく次第に押され気味となる。

 

「弓の時より強っ!?」

 

「弓道は実家が道場やってたからやってただけだもの!」

 

***

 

残る真白と沙月は同じハイゼでありながらカラーリングが白と黒という真逆のカラーリングをしており、沙月はヘイズルにフライルーの肩のマウントを追加した複合装備仕様とオプション装備のインパクトアックスを用いた近接戦闘向けカスタムを施している。

それに対して真白はハイザの大型レールガンを左右に装備した重砲撃形態で、両腕部にヒートチャクラムカッターをつけるとかいうカスタムをしており、ベースが同じ機体のはずなのに全く別のISに見える程であった。

 

「そこまでの重武装でよく動ける」

 

「そっちこそその斧での一撃に特化させてるよね?」

 

お互いにキメラじみたセッティングを施している為か相手の装備特性も理解しており、だからこそその装備で対等にやり合える事を賞賛する。

 

「よっ、はっ」

 

「むっ!ぜやっ!」

 

左右の大型レールガンを撃ちながら腕を動かしワイヤーでチャクラムを操作する真白と弾丸を躱しながらチャクラムをインパクトアックスで弾きつつ、隙きあらば真白に向かって接近してアックスを振るう沙月。

そんな沙月をレーザーワイヤーで妨害してミサイルを放つ真白。

 

「随分と手慣れているな?」

 

「ゲームで後衛をやってるとよく狙われるからね〜、その対策と同じ事をしてるだけだよ〜」

 

此花だけでなく、美乃里や真白も同じゲームをプレイしており、フェルトとキャロルの二人にも「連携の練習に丁度いいから」と言ってプレイさせていたりする。

そこからは各々膠着状態が続き、SE上では若干クインテットが優勢で、このままタイムアップになってしまうとIS5の敗北が決まってしまう。

そこで希望はある賭けに出る事にした。

 

「皆!アレをやるよ!」

 

「わかったわ!」

「りょ」

「おう!」

「ああ」

 

すると、四人はそれぞれの相手から多少のダメージは無視して振り切り希望の元へと集まった。

 

「一体何を………」

 

パステルフェンサーの柄をインパクトアックスの先端に繋ぎ、インパクトアックスの柄の左右にオーシャンブレイカーを、柄の下に変形させたブリッツアロー、石突きを上にしたバーニンググレイブという順で連結していき一本の大剣へと変貌させる。

 

『あー!!そいつはクロスキャリバー!?』

 

『それって確か前に戦隊ヒーローの武器を見て作った試作品じゃなかったっけ?』

 

『バラしてオプションに混ぜといたんだが………チームメンバーで揃えて合体機構までアンロックするとは………』

 

希望の賭けとは合体剣クロスキャリバーでの必殺攻撃で大逆転をしようというものだったのだ。

 

「面白そう………なら私も」

 

それに対抗してかキャロルがクロスキャリバーを構える希望の前に立つ。

 

「このクロスキャリバーなら!」

 

「えい」

 

キャロルは左肩に装備されていたアーマーの一部を分離させ、そこに拡張領域から取り出した柄を連結して液体金属を全て注入して巨大なブレードへと変貌させる。

 

『ちょっと待て!?そっちはスレードゲルミルかよ!?』

 

そのブレードの仕組みは雪兎が言うようにスレードゲルミルというメカが使用する斬艦刀に酷似していたが、これは千冬が使う打鉄・参式の斬艦刀から着想を得たキャロルが本国に連絡して付けてもらったオプションだったりするのである意味似ていて当然であった。

 

「そ、そんな大っきいだけの剣には負けないもん!」

 

「イザジンジョウニ勝負」

 

そのあまりの大きさにビビる希望と若干片言なキャロル。

 

「クロスキャリバー!!」

 

「ちぇすと〜」

 

両者が剣を振るうが、質量が圧倒的なキャロルの液体金属ブレードが勝り、一箇所に集まっていたIS5はたった一撃で残りのSEを失いクインテットの勝利が決まってしまった。

 

「ぶい」

 

『………うん、アイツらは相手が悪かった』

 

『ある意味ロマン武器対決でしたね………』

 

『開幕にアレ使われてたら普通に終わってたかも』

 

こうして1年生の部の一回戦の全試合が終わったのであった。




IS5の武器はガオレンジャーの破邪百獣剣を参考にライオンファングをソニックアローっぽいファルコンサモナーに置き換えたものになっております。

キャロルの大型ブレードはスレードゲルミルの斬艦刀まんまです。
アズラエルのアイデアもらった時からやろうと思ってたネタです。


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17話 兆し

今回は短い閑話のようなものと思って下さい


1年生の部の一回戦が終わり、残ったチームは9組。

一回戦と二回戦はシード扱いで試合に出ていないが、前評判から優勝候補と名高いダークマテリアルズ。

ブルー・アクシスのみの編成で弓道同好会を下したブルースカイ。

機体数のハンデを物ともせず圧勝した妹分同盟。

シャルロット信者のチームであるジャンヌ。

相手の作戦を逆に利用してみせた紫音率いるパープルラビッツ。

個性派メンバーを揃えた神龍。

未だ奥の手を残した専用機のいるキャット。

同じ出身の国同士でも格の違いを見せつけたルークとアリスのいるシルバーファング。

一見ネタにも見えるが、かなりの実力を持っていたニチアサ風チームを下したクインテット。

どのチームも例年よりも数段高い実力を有しているのが判る。

その原因はやはりあの兎師弟であった。

まず、全新入生が入学して間もない頃からISを扱える環境があったことと、それに合わせてアリーナの混雑を予期して導入されたVRポッドの存在だ。

このVRポッド、以前に一夏達がサイバー攻撃の迎撃に使用したのものの改良型で、ISをリンクさせる事で実戦稼働に近いシミュレーションを行う事が可能なのである。

これを利用する事でアリーナの待ち期間をVRシミュレーションで補う事が可能となり、1年生だけでなく2、3年生のレベルアップにも繋がったのである。

尚、その仮想敵データとしてテスターを務めた兎一味の戦闘データも存在しており、データとはいえ恐ろしい難易度となっている。

しかも、その兎一味本人達が「良い訓練になる」ミラーマッチを続けており、常日頃にアップデート版が増えている始末である。

中でも雪兎は本人に極めて近い思考をしており、繰り返し戦闘を行うと動きを覚えて対策してくるとかいう鬼畜仕様である。

話を戻して今回のチームトーナメントはそんな背景もあってこのような激戦となったのだ。

 

「う〜、僕も早く試合したい!」

 

「仕方なかろう、参加チーム数が半端になってしまってどうしても決勝以外は試合をしないチームが出来てしまうのだ」

 

「三回戦からは別のチームがシードになるそうなのでそれまで我慢しましょう」

 

そんな中、早く試合がしたくてウズウズしているレヴィをディアーチェとシュテルが宥めていた。

 

「でも、今回のトーナメントといい、設備やISの拡充といい、“地下のアレ”といい、マスター達は何に備えてるのかしら?」

 

「ここ最近は大人しくなった亡国機業やマスター達に敵意を持つ人達はまだいますからね」

 

「それに異世界や並行世界等からマスターやその技術を狙った者もいましたからね」

 

「なんばじゅーこー、だっけ?あとブラッドスタークとかいう蛇野郎!」

 

「………その異世界で拾われた私が言うのもアレだけど、この世界も相当よね」

 

「何れにせよ我らの方針は『立ち塞がるならば蹴散らすのみ!』であるからな」

 

***

 

一方、雪兎はアリーナの上で空を見上げていた。

 

「どうみても何かあるとしか思えないよな、あれ………」

 

その視線の先にあるのは数週間前から空に瞬き続ける彗星。

雪兎や束も調査はしているものの、判っているのはあの彗星は“自然発生したものではない人工物の可能性が高い”という事だ。

 

「まさか“デューオの彗星”みたいなもんじゃねぇよな?」

 

以前に電脳空間モドキを再現した事を思い出してそんな事を考えたりもするが、真相はわからない。

 

「何か忘れてる気もするが………このまま何事もなきゃいいんだがな」




短いですが、それなりに伏線仕込んでますのでお楽しみに


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18話 二回戦①

遅くなりましたが、今回から二回戦となります。


『さてと、準備が整ったようなので二回戦を始めていこうと思います』

 

『ダークマテリアルズはまだシードだから次はブルースカイと妹分同盟の対戦か』

 

『どう思います?』

 

『俺からは何とも言い難いので特別ゲストとしてこの人に来てもらった』

 

『オリバー=オルブライトと申します。以後お見知りおきを』

 

『あれ?この人って確かブルー・アクシスの………』

 

『アレの基礎設計したのこの人な』

 

オリバー=オルブライト。

元々はBT兵器の開発に関与していた技術者で、重度の日本のロボットアニメファンだった男で技術は1流なのだが、何かと癖のある武器等を好む。

BT兵器も「曲がるビームは男の浪漫」と開発に従事していたのだから筋金入りである。

雪兎の作成したブルー・ティアーズ用のパッケージのデータを見てイギリスからのPF出向者に志願し、そこで雪兎と意気投合してしまい、その成果としてブルー・アクシスの基礎設計を本国に送った後にそのままPFに移籍して居付いてしまったというかなり変わった経歴の持ち主で、例のルガーランスモドキを設計したのも彼である。

 

『似たような経歴のやつはあと二人くらいいるけどな』

 

『おかげ様で毎日が充実しているよ』

 

『うん、それは良かったですね………』

 

『一回戦のデータもさっき見させてもらったけど、自分の設計した機体をこうして見られるのは嬉しいね』

 

『それわかる、技術者あるあるだな』

 

『おっと、話がズレたね………今から始まる試合は相手が彼女(マドカ)だから少し厳しいと言わざるえないかな』

 

『と言うと?』

 

『彼女はサイレント・ゼフィルスに搭乗していた経験があるからBT兵器の特性をよく理解してるはず。そんな彼女をどう抑えるが重要なポイントだね』

 

『機体数の差もあるから上手く抑えさえすれば勝ち目はなくはないってことだな』

 

『なるほど………』

 

それでもクロエやコメット姉妹、そして蘭も決して侮ってはいけない相手なのは変わりない。

 

『さて、それでは二回戦第一試合を始めます!』

 

今回のブルースカイの編成はAパックが3機、Dパックが1機、Sパックが1機という編成だった。

試合開始直後、ブルースカイは一回戦での音響攻撃を警戒して直ぐに散開しており、その際にDパック装備がクラスターミサイルを散布している。

 

「随分と警戒されたものだな………しかし、まだ甘い!蘭!」

 

「任せて!疾っ!」

 

しかし、そのクラスターミサイルは蘭の持つ風神の巻き起こす風で進路をめちゃくちゃにされ、いくつかはミサイル同士の接触で爆発してしまい、それによって誘爆を繰り返し一掃されてしまう。

 

「マドカ、10時と3時から2。蘭、上から。お二人には6時からです」

 

その爆煙を使った奇襲も索敵担当のクロエに読まれ反撃されてしまう。

 

「くっ………やはり強い」

 

「私達相手でなければそれなりに通用しただろうが、うちのクロエの“眼”は特別だからなっ!」

 

「「きゃあああ!?」」

 

双銃のヴァイス&シュヴァルツで迎撃した後は腕のアンカーショットであるスティンガーで両者を拘束して急降下と急停止で二人を地面に叩き付ける。

 

「マドカもやってるね。なら私も!」

 

蘭は両手の風神を使って相手を押し返す程の風と真空波の刃を織り交ぜて放つ。

 

「見えない複数種の攻撃がこうも厄介とは」

 

「でも、私ばっか注意しててもいいのかな?」

 

「何を………しまった!?」

 

蘭に気を取られていた隙にクロエが放っていたミラージュエッジが突き刺さり、機体の制御を妨害され動きを止めてしまった彼女の目の前に蘭がいい笑顔で閉じて棒状になった風神を振りかぶる。

 

「ちょっ!?」

 

「カッキーン!」

 

防御もままならぬところへこの打撃は堪えたようで相手は気を失い戦闘不能になってしまった。

 

「左右の動きがバラバラなのに息はピッタリってどういう事!?」

 

「雪兎に指摘されて気付いたけど、これが私達二人の強みだからね」

 

「1機で連携攻撃してくるみたいって言われたね」

 

コメット姉妹はDパック装備を相手に二人で1機を操縦するという特殊性を活かした戦い方をしていた。

左右で別々の動きをするのは熟練の操作技術があれば可能ではあるが、コメット姉妹のそれは通常のそれと異なり、左右それぞれ別の人間が操作してはいるが、双子故にその連携のシンクロ率が高く、左右バラバラなのに息がピッタリという謎の現象が発生していたのだ。

 

「ほらほら!」

 

「こっちからもいくよ〜」

 

「あ〜!」

 

この後、彼女は自棄になって各武装を乱射し弾切れとリロード待ち状態になってしまい、その隙を突かれてやられてしまった。

そして、ブルースカイのリーダーであるSパック装備のレナはクロエと対峙しており、狙撃装備故にミラージュエッジを食らう訳にはいかず、回避に徹させることで支援狙撃を封じられていた。

 

「ミラージュエッジだけじゃなくて偏向射撃にも似た攻撃までしてくるなんて」

 

「それはスレイブシューターといいます。雪兎兄様やシュテル様ならもう少し多く制御できるのですが」

 

ミラージュエッジと併用して使っているのは光球状のエネルギー弾を操作するアクセルシューターやパイロシューターと同じシューター系のスレイブシューターで、手に持つ鍵状のロッドが制御ユニットになっている。

ミラージュエッジと併用するため制御数は4つと少ないが、厄介な攻撃手段であることには変わりない。

蘭の相手が墜ちた事でそちらに回していたミラージュエッジが戻り、集中力が落ち始めたところでスレイブシューターに被弾し、とうとうミラージュエッジが当たったところで他の仲間がやられているのを確認してレナは自ら降伏を宣言する。

 

「負けたわ………もう少しやれると思っていたのだけど、やはり強いわね。ところで、前回の連携技は今回の私のようにアレを意識して開幕に散開させて各個撃破しやすくするためかしら?」

 

「ふふ、そこはご想像にお任せ致します」

 

こうして第一試合は妹分同盟が勝ち上がったのであった。




キャラクター解説

オリバー=オルブライト
イギリス
25歳
BT兵器の開発に関与していた技術者で、重度の日本のロボットアニメファン。
技術は1流なのだが、何かと癖のある武器等を好むが、紅茶とマーマイトはキメていない。
BT兵器も「曲がるビームは男の浪漫」と開発に力を入れていた。
後に雪兎の技術の一端に触れてイギリスからのPF出向者に志願し、ロボットアニメの本場である日本行きの切符を得た。後にPFに参加しつつブルー・アクシスの基礎設計を行った。


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19話 二回戦②

大変遅くなりました!

季節の変わり目はやはり体調を崩し易いと実感しているミストラル0です。
皆さんも体調には気をつけて下さい。
というわけで二回戦第二試合です。


『続きまして二回戦第二試合!』

 

『チーム・ジャンヌVSチーム・パープルラビッツだな』

 

次の試合は別名シャルロットファンクラブと紫音達の試合となった。

 

「あ、あの!天野さん!」

 

「うん?何か?」

 

その試合開始前にジャンヌのリーダーであるアデライトが紫音に声を掛ける。

 

「あの、その………こ、この試合に私達が勝てたらデュノア先輩と顔繋ぎをして欲しいのですが………」

 

「(あ〜、この人達、シャル姉のファンなんだっけ………)それは構わないけど、僕達に勝ったらでいいの?」

 

「ええ、貴方達に勝って自信を持って会いにいきたいので」

 

「わかりました。けど負けるつもりはありませんよ?」

 

「望むところです」

 

『両者気合十分なようですね。それでは、二回戦第二試合、試合開始!』

 

そうして決意を新たにして仲間の元へと戻ったところで試合開始の合図が告げられる。

今回ジャンヌはエクレール2機、グレール2機、トルナード1機、という構成で、パープルラビッツは前回と同じくレオンが隼、飛鳥が村正、日向はミラージュ、イクスはSパックを装備している。

そして、エクレールの2機がレオンと飛鳥、グレールの2機が日向とイクスをマークしており、残るトルナード装備のアデライトが紫音を狙っている。

 

「お相手願います!」

 

「くっ、この装備でどこまでやれるか」

 

紫音の装備は今後の装備開発分の拡張領域が有り余っていたことから汎用装備を多く投入しており、今は右手にソードライフル、左手にシールドとサブマシンガンを装備している。

 

「まだまだいきますよ!」

 

「やはり速い」

 

アデライトはトルナードで接近戦をしていたかと思えばグレールに換装して機動射撃に切り替えたり、それに追い付こうとすればミラージュに換装して紫音にリードを奪わせない。

 

「(せめて、近接戦に適した装備があれば………)」

 

そう紫音が思っていると………

 

『取得データが一定に達しましたこれより第一装備近接戦闘用パック【ブレイズ】ver1.0の精製を開始………完了しました』

 

「えっ?」

 

「隙きあり!」

 

「ぐあっ!?」

 

突然のアナウンスに驚く紫音だが、その隙きをアデライトは逃さず再びトルナードに換装して鋭い蹴りを放った。

 

「紫音!?」

 

「余所見をしている暇なんてありませんよ!」

 

「くっ」

 

それによりアリーナの地面に叩きつけられた紫音に気を取られ攻撃を受けてしまうレオン。

他の三人も動揺した隙きを突かれたようでチームの優勢がジャンヌに傾く。

 

「悪いけど、ここで決めさせてもらうわ!」

 

続いてアデライトはアルカンシェルに換装して紫音の落下点に全砲門を向ける。

その時であった。

 

「まだ終わりじゃない!」

 

紫音の落下点の煙の中から火柱が上がり、そこから新たな装備を身に纏った紫音が姿を現す。

肩や胴体に真紅の結晶のような追加装甲を纏い、両腕に真紅のガントレットを装備、脚部にも真紅の装甲とブレードフィンが備えられ、腰には通常形態とは異なるソードライフルが二振りマウントされた近接戦闘特化型形態【ブレイズ】がここに誕生した。

 

『な、何が起きたんです!?』

 

『へぇ〜、この土壇場で装備を精製しやがったか………これはまだ試合がどうなるかわからないな』

 

「第二ラウンドといこうか」

 

「面白い!」

 

アルカンシェルのまま紫音に砲撃を敢行するアデライトだが、紫音はそれを回避や回避できないものを脚のブレードフィンやガントレットによって迎撃しつつ高速で接近する。

 

「速い!ならば!」

 

それに対抗すべくアデライトも三度トルナードに換装してソードライフル二刀流で立ち向かう。

 

「はぁあああ!」

 

「せいやぁあああ!!」

 

ブレードフィンとソードライフルがぶつかり火花を散らす中、紫音とアデライトはお互いに笑みを浮かべている。

 

「俺も負けてられねぇな!」

 

「くっ」

 

そんな二人を見てレオンも蓮華とガンブレイドの二刀流で相手のエクレール装備を押し返し、そのまま連続攻撃を仕掛けて撃墜判定に追い込む。

 

「あ〜あ、負けちゃったわね」

 

「よし!他の連中は………」

 

その一方で飛鳥とイクスは徐々に追い込まれており、日向はまだ自分の相手を抑えるので手一杯という状態だ。

 

「こっから近いのは………飛鳥の方だな!」

 

瞬時に状況を判断したレオンは飛鳥の援護へと向かう。

 

「助太刀するぜ!」

 

「レオン!」

 

「美奈がやられたの!?」

 

そこから2対1で押し込み相手を撃墜判定にするも、その間にイクスが撃墜判定をもらってしまい、日向が2機にから攻撃を受けていた。

 

「ごめんなさい、私………」

 

「俺と飛鳥で何とかするから気にすんなって」

 

「そうそう、私達に任せて」

 

そうしてレオンと飛鳥が日向の援護に向かう中、紫音とアデライトの戦闘も佳境へと差し掛かっていた。

 

「はぁあああ!」

 

「しまっ!?」

 

紫音の放つガントレットのスラスターを活かしたブーストブローがアデライトの持つソードライフルを弾き飛ばし、そこへ回し蹴りを叩き込んでアデライト自身もソードライフルを弾いたのとは別方向に吹き飛ばし、右のガントレットにエネルギーをチャージする。

すると、ガントレットの一部が変形して放熱フィンが展開される。

 

「ガントレットバスター・フルドライブ!!」

 

そして、スラスターを全開にしてアデライトへと突撃する紫音はまるで緋色の流星のようであった。

勿論、アデライトもアルカンシェルに換装して迎撃を試みるが、どうも防御フィールドを展開しながらの突撃のようで効果は薄く、ミラージュに換装しても耐えきれないと判断したアデライトはそのままその攻撃を受け入れた。

 

『試合終了〜、激闘を征したのはチーム・パープルラビッツだぁ!』

 

アデライトを撃破する前にレオン達も残りの2機を撃破していたようで、試合は紫音達の勝利に終わった。

 

「完敗ですね」

 

「いえ、エクストリームが土壇場であのパックを作ってくれなかったら負けていたのは僕達だったと思います」

 

「そうですか………次の試合の健闘を祈ります」

 

「はい」

 

アデライトと握手を交わす紫音。

そんな二人を見てイクスは申し訳なさそうにしていた。

 

「大丈夫?イクス」

 

「はい、日向さん………日向さんこそ私がやられてしまったせいで」

 

「そういうのは言いっこなしだよ。次また頑張ればいいんだから」

 

「はい」

 

日向に励まされなんとか立ち直ったようだが、これからは一回戦程甘くない事を実感するパープルラビッツの面々。

 

「次は乱音さんのとことあのイランの代表候補生がいるチームか」

 

次の試合にはまだ詳細の明らかになっていない専用機を有するチーム・キャットがいる。

もしかしたらそちらが勝ち上がってくる可能性を考え、彼らは控室のモニターにて次の試合を観戦することにするのであった。




紫音のエクストリームが精製したブレイズパックについて解説します。

近接戦闘特化型パック・ブレイズ
元ネタであるエクストリームガンダムにおけるゼノンフェースに相当するパックで、両腕にスラスター内蔵型シールドガントレットのブレイズガントレット、両脚にブレードフィンを備えたアクセルレガースを装備。
各部に真紅の結晶体に見える追加装甲を装備しており、高い近接格闘能力を有する。
上半身はゼノンフェースを元にしており、下半身は悟空インパルスガンダム沙悟浄シルエットをイメージ。


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20話 二回戦③

遅くなってすみません………

今回出る第三世代兵器やその他の設定でかなり書き悩んだ結果、遅くなってしまいました。

次回は予定通りに投稿できたらいいなぁ………


『次の第三試合はチーム・神龍VSチーム・キャットの試合となります』

 

『今回はゴルベイェグリスターンの第三世代兵器が見れるといいな』

 

『知ってるならこっそり私には教えてよ〜!』

 

『アレは言葉だけだと説明し難いんだよなぁ』

 

第三試合は乱のいる神龍とウルファのいるキャットの対戦。

 

「相手チームの専用機の第三世代兵器について少し調べてみたのだけれど、どうもあの機体の第三世代兵器はまだ試験段階のものらしく、データが少なくて詳細は一切わからなかったわ」

 

「そう………元よりダメ元ではあったけど、そこまでかぁ〜」

 

「ウルファさんも一応軍属ってことだし、一回戦の映像を見ても油断ならないかと」

 

「とりあえず気を引き締めていきましょ!」

 

今回の乱達の装備は乱が風翼、美与は隼、渚はアサルトイーグル、紗代子がアクイラと前回に似た編成ではあるが、茉優が最初からヒッポグリフを装備している。

対してウルファ達は第三世代機のゴルベイェグリスターンに加えて種子島装備の鋼が2機とハイザ装備のハイゼが2機の編成だ。

 

『へぇ〜、そういう編成でくるって事は“アレ”を出すか』

 

『えっ?ってことは………』

 

『お待ちかねのもんが見られるぞ』

 

「前の試合では使わなった装備を使う気になったみたいね?」

 

「貴女達は油断できないのは前の試合で判ってる」

 

乱の言葉にウルファは簡潔にそう返す。

 

『それでは二回戦第三試合………試合開始!』

 

試合開始直後、先に動いたのは意外にもウルファであった。

味方を後方に下がらせたウルファは丁度乱達と下がらせた4機の中間に位置取るとその場でクルリと一回転して赤い薔薇の花弁のような形をしたものをバラ撒く。

それを見て会場の一部がざわつく。

 

『雪兎君、あれってまさか………』

 

『なんだ、もう気付いたのか』

 

その花弁の正体に江里子の表情が引きつる。

それも無理もない、何故ならその正体は………

 

「まさか………“銀の福音”と同じ広域展開エネルギー弾!?」

 

去年の暴走事件当初は秘匿されていた銀の福音だが、ナターシャがIS学園に赴任してきた際にその詳細が公開され、ある程度情報を収集していれば知る事ができるようになっており、実習等でナターシャと戦闘をしたこともあり、故にその厄介さは多くの生徒が知っている。

 

「正解」

 

ウルファがそう告げると花弁の一部が拡がり、乱が咄嗟に龍咆の風圧で散らそうとするも、花弁はその影響を受けず龍咆の射線上のものだけが迎撃され、残りが乱達に近付き爆発する。

 

「くっ」

 

「風で舞っているように見えるけど、全て彼女の思念操作って訳ね」

 

そうこうしている間に辺りに花弁が展開されており、花弁の弾幕の向こうから種子島とハイザの射撃が飛んでくる。

 

「こっちの機動力を封じて安全圏からの射撃で仕留めるって作戦か………どうする?凰」

 

「ちょっと一か八かになるけど私がウルファを何とかするわ。そしたら私はこの試合じゃ動けなくなるから後は任せるわよ?」

 

「わかった」

 

乱が何か操作している間、紗代子と渚が花弁を迎撃し、美与と茉優が弾幕を突破出来ないかと試みる。

 

『雪兎君、乱音さんは何をしようとしてるの?』

 

『多分、先行量産型の鋼竜に試験的に搭載した特殊モードだな。まあパイロットへの負担がキツイから制式量産型の鉄竜はオミットされてる』

 

「暗証コード入力………システムロック解除………起動コード・四竜招来!」

 

いくつかの手順を経て乱が声を上げると乱の鋼竜に変化が起こる。

風翼を展開したままバックパックの龍の頭部が炎牙のものに換わり、両腕に雷爪のガントレットが装備される。

そう、乱が起動させたのは鋼竜の全装備展開モード、コードネーム【四竜】*1だった。

 

『鋼の武神と同じ全部載せ?』

 

『似てるようで違うぞ。簡単に言うとあの形態は鈴の煌龍を再現した形態でな。各パーツの相乗効果でスペックが跳ね上がるんだが、エネルギー消費とパイロットへの

負担がやばくてな』

 

『あ〜、全部載せですもんね』

 

鋼竜・四竜を展開した乱はその強化されたスペックを使い強引に花弁の弾幕を突破してウルファに迫る。

そして、ボロボロになりながらも両腕でウルファのゴルベイェグリスターンを掴むと至近距離にも関わらず炎牙の口が開いて龍崩火のチャージを開始する。

 

「そんな事をしたら貴女も!?」

 

「貴女さえ何とかすれば私のチームメイトはやってくれるって信じてるからねっ!」

 

チャージ中も花弁による攻撃はしていたがウルファ自身も巻き込んでしまう為に躊躇ってしまったのか、乱を崩す事は叶わず龍崩火のチャージは完了してしまう。

 

「これが私の全力全開よっ!」

 

至近距離で発射された龍崩火は乱諸共ウルファを襲い双方のSEを削り切る。

 

『うっわぁ〜………無茶すんなぁ、あいつ』

 

『自爆特攻って………』

 

その後はウルファが撃墜された事で花弁の弾幕が消え、乱の特攻に啞然とするキャットの残る四人を紗代子達が撃破して試合は神龍の勝利に終わった。

 

『あ〜、今回の試合だが、他の生徒は決して真似しないように………自爆は死ぬ程痛いぞ』

 

『自爆って………もしかしてやった事が?』

 

『一回だけな………もう二度とやりたくねぇけど』

 

尚、この自爆。福音事件で足止めをする為にやったらしく、事件から少し経った頃にそれがバレて関係者一同からお説教を受けたそうな。

*1
風翼の翼、炎牙の頭部、雷爪の爪、鉄竜には無い鋼竜の尾で竜の4つの要素を持つので四竜




鋼竜・四竜は仮面ライダーウィザードのオールドラゴンを想像してもらえばなんとなくイメージが掴めるかと思います。
違いは胸からではなく背中から龍の頭が生えてる点ですかね?

ゴルベイェグリスターンの第三世代兵器の名前は読み仮名付けるの面倒だったので出してませんが、日本語で書くと【爆裂花弁】となります。
いや、ペルシャ語調べるの大変なんで………(なら何故イランにしたよ、俺)


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21話 二回戦④

またしても遅くなりましたが、二回戦最終試合です。


『二回戦最終第四試合はチーム・シルバーファングVSチーム・クインテットです』

 

『個人的には二回戦で一番やらかしてくれそうな試合だな』

 

『一回戦のアレがありましたもんね、このチーム』

 

アレというのはIS5との試合の最後の合体武器とそれを迎え撃ったキャロルの斬艦刀の激突である。

 

『それもあるが………ちょっと面白い因縁があってな』

 

そう言って雪兎がフェルトに視線を向けると、フェルトはビクリと肩を震わせる。

 

『例の首輪ちゃん?………あ〜、そういうこと』

 

江里子も雪兎の言いたい事を理解してルークに視線を向ける。

そう、フェルトとルークはちょっとした関係があったのだ。

 

「“今は”ペイズリーさんだっけ?久しぶり」

 

「ど、どど、どうも………」

 

「あの時は色々とお世話になったよ」

 

「めっ、命令でしたから………」

 

実はフェルトが亡国機業を抜ける前の最後の仕事がナターシャへの人質として監禁されていたルークの世話だったのだ。

その時は偽名のコードネームで呼ばれていたし、髪型等も変えていたので覚えていないかと思えばルークはしっかりフェルトを覚えていたようだ。

 

「まさか覚えていたなんて………」

 

「君は他の監視が暴力を振るおうとしたのを止めてくれたし、監視にしては色々と融通をしてくれたからね」

 

「あ、あれはルークさん達を怪我させたら人質にしておく意味がなくなりますし………」

 

「フェルト、顔真っ赤」

 

「うっさい!これは当時の事思い出して恥ずかしかっただけよ!」

 

「これは怪しいですな」

 

「ですな」

 

「あんた達ねぇ!そもそも私は加害者側であっちは被害者よ?そんな関係なのに恋愛感情に繋がらないわよ!」

 

キャロルを筆頭にフェルトをからかうチームメンバーを見てルークはフェルトにちゃんと居場所が出来ていると安堵する。

 

「さて、恩人とはいえ容赦はしないよ?」

 

「そもそもあんなことで恩人だなんて恩着せがましい人間になったつもりは無いわよ!」

 

「なら遠慮なく」

 

『それでは二回戦最終試合、試合開始!』

 

江里子が開始を告げた直後、ルーク達へと

巨大な刀身が振るわれる。

振るったのはキャロルで、初手から斬艦刀の一閃というド派手な一撃であったが、ルーク達は散開する事でそれを回避する。

 

「いきなり容赦無いな、おい」

 

「でも、いい手でしょ?」

 

散開してバラバラになった優斗に両腕のブレードバレルで斬り掛かる美乃里。

優斗もそれを双刀で受け止めるが、態勢が悪かったのと美乃里がハイゼのスラスターを全開にしていたせいでルーク達から引き離されてしまう。

 

「開幕のアレはこれを狙ってたのか!?」

 

「発案はフェルトよ。組織にいた時の経験も使い様ってことよ」

 

他の面々もルークとフェルト、エクシアとキャロル、アリスと此花、栞と真白、というように分断されている。

 

「専用機持ちの僕とブランケットさんを専用機持ちのクロコディルさんと君で抑えれば経験が豊富とは言えない他のメンバーでも勝ち目はあるか………これはしてやられたね」

 

「ちっともそんな顔してないのにそう言われても嬉しくないわね………それだけ仲間を信じてるって事かしら?」

 

「それは君も同じだろう?学園に来ていい仲間に恵まれたようだね、お互いに」

 

「それには同意したげる!」

 

レオーネ装備のフェルトのグリフォーネが有線式ヒートチャクラムを投擲しつつ双銃剣で斬り掛かるとルークもシルバリオファングのプラズマチェーンソーでチャクラムを弾いて応戦する。

チェーンソー相手に鍔迫り合いは悪手とフェルトは双銃剣をガンモードに切り換えて射ちながらスラスターを全開にして後退。

ルークも深追いはせずシールドを取り出して射撃をガードしつつも腕に仕込まれたプラズマガンで反撃する。

 

「あ〜もう!チェーンソー相手に近接戦闘なんてやってられるか!」

 

レオーネからアクイラに換装すると、フェルトは組織に在籍時から使用しておりオプション装備として持ち込んだ武器も一緒に展開する。

それは大型のアサルトライフルの銃身の下にブレードを付けた癖の強い武器。

フェルトはその武器“ベルセルク”を構えてトリガーを引き無数の弾丸をルークに向かって放つ。

 

「おっと………中々凶悪な武器だね」

 

「だってこれ、組織時代に上司(レグルス)が趣味じゃないからって私に押し付けた武器だもの。オプション装備にする申請は手間だったわ!」

 

一方、エクシアとキャロルの戦いはエクシアのソードビットとキャロルが液状金属によって模倣したソードビットがぶつかり合い、お互いに両手のブレードで斬り合う戦いとなっていた。

 

「そのスライムみたいなの汎用性高いね」

 

「うん、色々出来る」

 

キャロル本人はのほほんとした印象を受けるが、鍔迫り合いになれば形状を十手のようなソードブレイカーへと変えてエクシアのブレードを折ろうとしてくるので油断も隙も無い。

そんな戦いが続いてしばらくしてエクシアがソードビットのエネルギー補給の為にバックパックのコネクタにソードビットを戻すと突然バックパックが爆ぜてダメージを受けてしまう。

 

「えっ!?一体何が」

 

『うわぁ………そういう使い方も出来んのか』

 

混乱するエクシアを他所に解説の雪兎はその爆発の原因がキャロルの仕業と気付いていた。

 

『雪兎君、一体何が起きたんですか?』

 

『簡単な事さ、ソードビットと打ち合わせた時に微量の液状金属を付着させ、そのソードビットがコネクタに戻る際にその間に挟み込ませて内部から破壊したんだよ』

 

『うわぁ………』

 

「ふっふっふ、驚いた?」

 

「うん、驚いた………というか、もう私詰んでない?」

 

「うん、今回は私の勝ち」

 

その間にもソードビットモドキがエクシアのカリバーンに突き刺さって変形し纏わりついてしまっており、エクシアは既に戦闘不能に陥っている。

その後、システムからも戦闘不能判定されてしまったエクシアが退場となり、エクシアから回収した液状金属を使い再びソードビットモドキを展開するキャロル………どうも気に入ったらしい。

 

「よ〜し、皆の援護に行こ」

 

そうしてキャロルが最初に目をつけたのは此花と交戦中のアリス。

 

「ざんかんと〜はこれくらいの大きさでいいかな?」

 

液状金属を使い再び斬艦刀を生成するが、その大きさはアリスの使うストームブレイカーと同じくらいに小さくしている。

 

「此花〜、ちょっと退いて〜」

 

「オッケ!任せた!」

 

そして、此花と入れ替わるように飛び込んでくるキャロルにアリスは困惑する。

そこへビームサイズから弓に持ち換えた此花が援護射撃を加え、一気にアリスは劣勢に陥る。

 

「くっ、このままでは………」

 

人数の不利を強いられ、専用機持ちがフリーになってしまったのを機に戦況はクインテットに傾いた。

そんな中、ルークとフェルトの戦いにも決着が着こうとしていた。

 

「はぁ………はぁ………ここまでやっても、勝てないなんてね………」

 

「僕としてはエニグマを使わされた事に驚きなんだけどね」

 

既にフェルトのグリフォーネはボロボロで、切り札だったベルセルクもブレードがプラズマチェーンソーで削られたのか刃こぼれしてしまっている。

あの後、ルークの接近を許してしまったフェルトはベルセルクのブレードで応戦したものの、プラズマチェーンソーとバックパックのシェルカノンを食らいダメージはレッドゾーンとなったが、お返しにとベルセルクのガンモードを至近距離から放ってルークにも少なくないダメージを与えたが、ルークが奥の手であったエニグマを発動させてフェルトを撃破寸前に追い込んだのだ。

 

「でも、私は私の役目を果たしたわよ」

 

「ああ、してやられたよ」

 

フェルトを撃破したとしてもルークも既にSEを半分以上削られており、キャロルがエクシアを倒して遊撃になってしまった事でチームとしてはルーク達の方が劣勢。

優斗が美乃里を破ったものの、直後にアリスを倒したキャロルと此花の攻撃でダウン。

栞も真白を倒せずにおり、此花が援護に向かったので程なく撃破されるだろう。

挙句にはルークの方には未だに万全のキャロルが向かってきている。

 

「フェルト、大丈夫?」

 

「これが大丈夫に見える?って事で後はお願い」

 

「がってんしょうち」

 

「また変な言い回し覚えて………きっと美乃里ね?後で締めとかないと」

 

試合はルークがキャロルに破れ、真白と此花の2人に攻められた栞が降伏した事でクインテットが勝利した。

試合後、他はα組ばかり残ったトーナメントにて唯一の他組とあってクインテットの面々は注目を浴びる事となった。

三回戦はそれぞれのISのダメージが大きいので翌日に行われる事と運営から通達があり、その後は2年生の試合が行われたが………やはり兎一味が突出した実力を見せつける形となり、見学していた1年生達はそのレベルの違いを改めて思い知る事となったのであった。




最後に大番狂わせのチーム・クインテットの勝利
損傷した機体は兎印のメンテナンスマシーンで翌日には修理完了していたとの事

2年生の試合については次回

今回フェルトが使ったベルセルクは軌跡シリーズのランディ・オルランドのSクラフトであるベルゼルガーをイメージしてください


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22話 兎一味、暴れる

大変お待たせしました〜
というわけで前回チラッと話題にした2年生の部についてです。


1年生のトーナメントの後に行われたのは2年生のチームトーナメントなのだが………雪兎達兎一味は制約を課された状態で参加していた。

まずは雪兎を除く面々の制約だが、チーム人数は二人、組み合わせも学園指定というもの。

一方、雪兎はといえばまたしてもソロで一般生徒にはアドヴァンスド・複数装備の使用禁止、とかなり厳しい制約を受けているのだが………

 

「弾幕ってのはこうやるんだよ!」

 

「鬼!悪魔!兎!」

 

両腕のダブルガトリングシールドブースターに両手のアサルトライフル、バックパックと脚部に付けられたスラスター兼ミサイルポッド、左右の腰に備えたサブアームで保持したビームマシンガン、バックパックから大型ビームキャノンとリニアレールガン、そこにエナジーウイングからのエネルギー弾の広域殲滅射撃。

そう、皆のトラウマ【G:ガンナー】のアップデートモデル【GR:ガンナーリロード】である。

 

「何でそれも改良されてるのよぉ!?」

 

『あれ、絶対肩のアーマーにも何か仕込んでるよね?』

 

『あっ、仲間が盾となって距離を詰めた!』

 

「せめて一太刀!」

 

「狙いは悪くねぇが、そこはまだ射程圏内だ」

 

すると、肩のアーマーが開き無数の発射口が姿を現す。

 

『あっ』

 

「オリジナルブレンドの特殊合金弾だ、全部持っていけ!」

 

そこから放たれたベアリング弾が一気にSEを削り取る。

 

『至近距離での特殊合金ベアリング弾の雨ですか………』

 

『エゲツな………』

 

これには実況解説の3年生も絶句である。

トドメに残った相手をシールドを反転させメガビームキャノンを展開して撃ち落とし、自身は一度の被弾も受けない完全試合を達成する雪兎。

 

『やっぱ兎一味はおかしい』

 

『他のペアもなんで2対5で圧勝出来るの?』

 

『兎一味だからね………』

 

思い出されるのは既に退学となり聖剣事変にて逮捕されているが、亡国機業に所属していたレイン(ダリル)とフォルテペアが瞬殺されたタッグトーナメント。

あの衝撃はその後の襲撃でも薄れる事はなかった。

ちなみに他のメンバーのペアはこうなっている。

 

一夏・簪

鈴・アレシア

箒・セシリア

カロリナ・エリカ

本音・晶

シャルロット・聖

ラウラ・ロラン

 

何組かは勝ち上がっていく中でぶつかり名勝負を見せた。

一夏・簪ペアとラウラ・ロランペアの戦いは開幕一夏と簪のダブル荷電粒子砲でインレを破ってハイゼンスレイモードになったラウラを簪が追い詰め、パージされたインレのパーツをロランが操って一夏に仕掛けたが、一夏が一刀両断してラウラが涙目になってしまい、一夏・簪ペアの勝利後にロランがラウラに高級和菓子を奢る事で何とかおさまった。

他にはカロリナ・エリカペアとシャルロット・聖ペアの試合は開幕からシャルロット・聖ペアの飽和弾幕が放たれるも、カロリナがそれを耐え切りエリカが聖を撃墜する戦果を出す。

しかし、カロリナも弾幕を耐えるので精一杯だったようで結局はシャルロットが二人を撃墜した事で決着した。

 

「雪兎兄達、今日も元気だなぁ」

 

「いや、元気ってレベルじゃねぇよな!?」

 

「これが噂に聞く兎一味の戦闘………」

 

「流石は雪兎先輩です!」

 

そんな兎一味の試合を観戦していた1年生組はその出鱈目なISと技量に驚きっぱなしである。

 

「あの二重弾幕もヤバいけど、あれを耐え切ったゼンナーシュタット先輩もヤバい」

 

「兎一味最堅の名は伊達じゃありませんね………」

 

「そりゃああの堅さで突撃してきたらそれだけで武器になるわ」

 

雪兎のトラウマ弾幕はさておき、カロリナの防御の堅さは1年生達から見ても異常というレベル。

機体の防御性能もあるが、バリアの展開速度や何処に防御を集中させるのかという判断の的確さが段違いで、守るだけでなくその堅さを最大限に利用したバリアフィールドタックル等の攻撃転用等の応用力にも優れている。

また、技術者としても最近は弟子(雪兎)への指導でその面白さを知った束自ら指導しているのもあってかなり伸びているらしく、優斗がカロリナから聞いた話では雪兎達が最近新たに設計しているISの1つはカロリナに一任されているという。

 

「くぅ〜、僕も早くそういう事やってみたい!」

 

「優斗は研究会に参加してからほんとに変わったよね………」

 

尚、優斗は現在雪兎から「鋼のカスタマイズでどこまで性能をアップさせられるか?」という課題をもらっており、今日の試合には間に合わなかったがオリジナルのパックを作成しているのだとか。

 

「おっ、しっかり観戦してるようだな」

 

そこに先程試合を終えた雪兎がやってくる。

 

「雪兎先輩っ!」

 

それに空かさず反応した日向が飛んでいくが、ガシリと頭をアイアンクローで掴まれて停止する。

 

「少しは場所考えろ!このワンコ!」

 

「ああ〜!」

 

ギリギリと頭を締められているはずなのに日向の声は何故か恍惚とした色が含まれているように聞こえるが、紫音達はもう慣れたと言わんばかりにスルーしている。

 

コイツ(日向)の事はともかく………お前らのISのメンテは終わったぞ」

 

そう言って雪兎が取り出したのは紫音達のISの待機形態。

明日の試合に間に合うように今回は1年生のISは全て雪兎が作ったメンテナンス装置で行っている。

 

「ありがと、雪兎兄」

 

「すみません、御自身の試合もあるのに………」

 

「気にすんなって、今日の俺の試合は済んだし、人数が人数だから専用にメンテマシン作ってそれで自動メンテさせただけだからな」

 

「サラッととんでもない事してるわね………」

 

鋼竜を受け取りつつ顔を引き攣らせる乱。

 

「さてと、俺は他のチームにも届けてこなきゃいけないからもう行くわ」

 

「うん、じゃあね、雪兎兄」

 

その後、紫音達は残りの試合を観戦して先輩達の動きを学び、寮に戻ってからはそれぞれのチームで活かせないか話し合うのであった。




【GR:ガンナーリロード】
【G:ガンナー】の改修タイプで圧倒的面制圧火力を誇る重射撃型パック。
従来の倍近い武装を備えており、【NG:ネオガンナー】時のチューブチャージシステムも継承されている。
重武装ながらスラスター等も強化されており、高速移動をしながら攻撃も可能という割とトンデモ装備となっている。


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23話 三回戦 ダークマテリアルズ出陣

お待たせしました(汗)
兎の今年最後の投稿になります。

皆お待ちかねのダークマテリアルズ出陣となります。


トーナメント2日目。

三回戦第一試合には遂にダークマテリアルズが出陣した。

 

「やっと出番だ〜!」

 

「相手はマドカ達ですか………不足はありませんね」

 

「我らの力、ここで見せつけてやろうぞ」

 

「皆やる気ねぇ〜」

 

「頑張りましょう、イリス」

 

彼女らのISは基本的に雪兎が使っていたアドヴァンスドシリーズを一つのISとして再設計し直したもので、機体性能は破格と言っても良い。

まずはレヴィのバルニフィカス。

青みかかった黒の装甲に蒼のクリアパーツが取り付けられた他のISに比べて小型で軽装ではあるが、バックパックの蝙蝠の羽を模した推進器兼防御兵装であるアクティブクロークを装備しており、手にしているのは斧、大鎌、大剣、槍等に変形するライトニング・スラッシャーを主装備としている。

また、蒼い雷撃を放つ事も可能で撹乱や奇襲を得意としている。

基本的に「当たらなければどうということはない」を地で行くスタイルであり、機動力に関してはマテリアルズ随一とされる。

 

次にシュテルのルシフェリオン。

こちらも赤みかかった黒の装備に真紅と赤いクリアパーツを取り付けたデザインになっており、レヴィと違いガッチリと装甲を着込んだ防御力に優れた姿をしている。

特徴的なのは左腕に装着された大型ガントレットであるブラストクロウで、バックラーとしても使用でき、掌に炎熱砲が内蔵されていて掴んだまま零距離で発射する事も可能という攻撃的な装備である。

ブラストクロウとは別にルシフェリオン・ドライバーという槍型の砲撃杖を持っており、そこから放たれる直射炎熱砲の火力は凄まじい。

 

続いてディアーチェのエルシニアクロイツ。

こちらは黒、紫のカラーリングに金の縁取りが施された法衣のようなデザインで、背中に3対の黒い翼のようなユニットがあり、そこから羽根状のダガービットを発射する。

メインウエポンはルシフェリオン・ドライバーと違い本格的な魔法の杖に見える砲撃杖のアロンダイト。

他にも4基のビームカノンビットのランスロット、無数のダガービットのブリンガー、ディアーチェ用に新造されたカイトシールドくらいのフローターシールドを2枚装備しており、後方からの指揮管制と援護砲撃を得意とする。

 

お次はユーリのスピリットフレア。

他のメンバーに合わせてか本来は白い装甲を黒くしており、淡い紫の縁取りを施した御子服のようなデザインとなっている。

その武装の大半は背面の翼型のユニットであるマテリアルウイングに集約されており、翼から大型アームに変形する2対の主翼とそこに装着されている4枚のフローターソードシールドで構成されている。

大型アームは更に変形して砲身となり、ヴェスパーカノンやエネルギーブレードとしても使用出来る。

だが、その最大の武器は翼から放出される真紅のナノマシンで、これを利用して散布エリア内のものからエネルギーを奪い自身のエネルギーに転換してしまうという領域支配型ともいうべき恐ろしい装備を持っている。

幸いにも今回のトーナメントではそれの使用は禁止されている。

 

最後にイリスだが、雪兎のアドヴァンスドに彼女に適合するものがなく、新造された専用機アスタリアを与えられた。

このアスタリアだが、専用装備は銃身の短い専用ソードライフルが2つとバックパックのサブアームで保持しているシールドブースターウエポン2基と少ないのだが、専用ソードライフルであるガンスラッシャーは刀身をカッターナイフのように長さを調整したり刀身を分割して蛇腹剣として使えたりし、刀身を随時拡張領域から取り出して延長し続ける事が可能なので伸縮自在とかなり厄介な装備になっている。

シールドブースターウエポンは右にビームキャノン、左にガトリングガンを備え、サブアームから外して遠隔操作ユニットにする事も可能と中遠距離を重視した設計がされている。

 

「相手にとって不足無し!」

 

「マドカやる気だね」

 

「私達も頑張ろ!」

 

「どこまでやれるかわからないけどね」

 

「制限が掛かっているとはいえ、全員が雪兎兄様のアドヴァンスド相当………」

 

対するマドカ率いる妹分同盟は機体数の不利を抱えており、この試合は勝敗よりも妹分同盟がどこまでダークマテリアルズに食らいつけるかというのが焦点になっている。

 

「さて、試合を始める前に提案がある」

 

だが、それでは面白くないとディアーチェがある提案をする。

 

「この試合、我らは我と右腕たるシュテル」

 

「は」

 

「左腕のレヴィ」

 

「は〜い!」

 

「この3人で相手をしよう」

 

なんと、ディアーチェはユーリとイリス抜きの3人で相手をすると告げたのだ。

 

「こちらとしては助かるが、いいのか?」

 

「機体性能に機体数の有利があっての勝利となっては観客もつまらんだろう?それにウチのバトルジャンキー共が昨日はお預けを食らっておってな」

 

つまり、シュテルとレヴィのガス抜きも兼ねているとのこと。

 

「慢心は命取りになるぞ?」

 

「はっ!慢心せずして何が王か!」

 

何処ぞの金ピカ王のような事を言いつつも、ディアーチェの顔に油断は見られない。

 

『何勝手にルール変更してんだ、お前ら………まあ、それくらいしねぇとまともな試合になんねぇか。今回は特例で認めてやるからユーリとイリスはこっちこい』

 

「は〜い」

 

そうしてユーリとイリスが実況解説席に移り、改めて両チームが向かい合う。

 

『さて、色々とありましたが、遂に公式戦でベールを脱ぐダークマテリアルズに対するは人数の不利を跳ね除けて勝ち上がってきた妹分同盟!』

 

『今回は実況解説にユーリとイリスを迎えてお送りするぞ』

 

『3人共〜頑張ってくださいね〜』

 

『王様、これで負けたら承知しないわよ?』

 

「ふっ、両腕の揃った我らが負けるとでも?」

 

「燃えて参ります」

 

「頑張るよ〜!」

 

ユーリとイリスの激励にディアーチェは不敵な笑みを浮かべ、シュテルは静かに闘志を燃やし、レヴィはテンションを上げる。

 

『それでは三回戦第一試合!試合開始!』

 

「シュテル」

 

「はっ」

 

開幕した途端に事前にチャージしていたと思われる3連炎熱砲のディザスターヒートが妹分同盟に放たれる。

 

「全機散開!」

 

防御が危険な事は去年のタッグマッチで判っているためマドカは散開を指示する。

これがシュテル単体を相手にするならば正解であったが………

 

「僕を忘れたらダメだよ?」

 

「なっ!?」

 

散開したクロエの背後にいつの間にかレヴィがおり、スラッシャーを振り抜いてダメージを与えるとそのスピードを活かして散開した他のメンバーに攻撃を加えていく。

 

「ハハハハ!スピードスピード!僕はスピード!ヤッホーイ!」

 

「くっ、的が絞れない」

 

かと言ってレヴィにばかり気を取られるとその合間を縫うような正確無比なシュテルの炎熱砲やパイロシューターが襲ってくるのだからたまったものではない。

 

「そういえばディアーチェさんは!?」

 

「!?しまった」

 

そこでシュテルの隣にいたはずのディアーチェが姿を消している事に気付く。

慌ててその姿を探すと、ディアーチェはアリーナ中央の上………全てを見下ろせる位置に陣取り、アロンダイトを構えながらその周りに4基のカノンビット展開してチャージを行っていた。

 

「気付くのが遅いわ!全てを喰らえ!ヨルムンガンド!」

 

そうして5つの砲門から放たれたのは大蛇のような黒くうねるような砲撃が放たれ、真っ先に墜とされたのはコメット姉妹。

やはり他の3機に比べてスペックが低いのが大きかったようだ。

 

「ここまでね」

 

「ごめんなさい」

 

その次に撃墜されたのはディアーチェの行方を探して足を止めてしまったクロエだ。

そこにヨルムンガンドが掠り、残ったSEをシュテルの炎熱砲で削り切られてしまったのだ。

その間にマドカは蘭に護られながらレーヴァテインのキャノンモードを発射してヨルムンガンドを減衰させて止めるも既に3対2にまで数を逆転されている。

 

「強いのは知っていたが、ここまでとは………」

 

「マドカ!危ない!」

 

「雷光輪・追の太刀!」

 

完全に試合の主導権を握られ疲弊するマドカにレヴィがザンバーモードで放った飛ぶ斬撃を咄嗟に蘭がマドカを突き飛ばして身代わりとなって受ける。

 

「蘭!?」

 

「あとはお願い」

 

その一閃によりパイロシューターでSEを削られていた蘭もリタイアとなり、残るはマドカ1人だけだ。

 

「ただではやられんぞ!」

 

「受けて立つ!」

 

ソードモードに戻したレーヴァテインとザンバーモードのバルニフィカスがぶつかり火花を散らすが、危険を察して下がるとマドカが直前までいた地点をブラストファイアが通り抜ける。

 

「外しましたか」

 

「ならばこれはどうだ?」

 

続けてディアーチェからダガービットのブリンガーが雨の様に放たれ、レーヴァテインを盾にする事で耐えるもそのレーヴァテインがボロボロにされもはや武器としてはおろかスラスターユニットとして使う事すら難しい。

 

「ははは………亡国機業にいた時は私より強い者など極少数だったが、井の中の蛙であったようだ………兄さん側についたのは正解だったな」

 

「貴様はまだ強くなれるだろう………が、今は我らの方が上手という事だ」

 

「必ず追い抜く」

 

「待っておるぞ。シュテル!レヴィ!」

 

「かしこまりました………疾れ明星」

 

ディアーチェの呼び掛けにシュテルは目の前にエネルギー集束し。

 

「オッケー!轟雷爆滅!」

 

レヴィは周りにいくつもの雷光球が発生させ、それが剣へと変わる。

 

「紫天に吼えよ、我が鼓動」

 

そして、ディアーチェの頭上にてカノンビットが魔法陣を展開する。

 

「グラヴィトンキャノン展開!エネルギー集束!」

 

対するマドカも拡張領域からグラヴィトンキャノンを展開してチャージを開始する。

 

「雷刃封殺爆滅剣!」

 

「全てを焼き消す焔と変われ!ルシフェリオンブレイカー!」

 

「出よ、巨重!ジャガーノート!」

 

「Gインパクトキャノン発射!」

 

3人それぞれの必殺技がマドカ目掛けて放たれ、マドカもフルチャージしたGインパクトキャノンを発射して対抗するが、3対1では拮抗する事も許されずに撃ち負けてしまい3色の光に飲まれてしまう。

 

『し、試合終了〜!何かとんでもない攻撃の撃ち合いになってましたけどマドカちゃん大丈夫ですよね!?』

 

『ちゃんと非殺傷モードにしてたみたいだし、大丈夫だとは思うが………4人共やり過ぎだ』

 

『あわわわわ………』

 

『これ、後でお説教コースね』

 

雪兎が慌ててアリーナのシールド出力を上げたから何とかなったが、4人の必殺技の撃ち合いはかなり危険だった模様。

この後、すぐに目を覚ましたマドカを含む4人は雪兎からお説教される事になるのであった。




グラヴィトンキャノン
マドカのフッケバイン用に作成された追加武装。
出力でグラヴィトンランチャーとGインパクトキャノンを撃ち分けれる。


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24話 三回戦 兎龍激突

2ヶ月近くお待たせしました(汗)
ちょっと試合が続いて難産となりましたが、何とか書けました。

今回はパープルラビッツVS神龍の戦いとなります。


ダークマテリアルズの圧倒的な試合の次に対戦するのはパープルラビッツと神龍。

尚、クインテットはこのまま四回戦へ進出が決まっている。

 

『この試合が実質BEST3決定戦!そう思うとこのトーナメントを大詰めですね』

 

『俺らの時はトラブルばっかで最後までやれたトーナメント少ないんだよなぁ』

 

『でしたねぇ』

 

まともに完遂したトーナメントは最後の学年末トーナメントくらいのような気がする。

 

『この試合の見所は何処でしょうか?』

 

『実力は五分っぽいな。乱は奥の手見せてしまってるし、エクストリームも新しいパックがそんなホイホイ生成できる訳でもないしな』

 

『なるほど』

 

今回の両チームの布陣は………

紫音が最初からブレイズ装備、レオンと飛鳥は隼装備、日向とイクスは変わらずミラージュとSパック装備だ。

対するは乱が近接戦闘用に雷爪、美与が隼、渚がアサルトイーグル、紗代子がアクイラ、茉優がヒッポグリフとこちらもいつもの編成だ。

 

『それでは試合開始!』

 

江里子の開始の合図と共に前に出たのは紫音、レオン、飛鳥、乱、美与、茉優の六名。

イクスは狙撃、日向はイクスのカバーに回り、渚と紗代子はその妨害に動く。

その結果、前衛組は紫音と乱、レオンと茉優、飛鳥と美与に分かれ、イクス・日向と渚・紗代子という戦いになった。

 

「私に近接戦闘を仕掛けてくるなんていい度胸じゃない!紫音」

 

「確かに乱さんに接近戦はリスクが高いかもしれないけど、龍咆の拡散攻撃を封じるには乱戦に持ち込まないといけないからね!」

 

手甲と爪、蹴り等の打ち合いに加えて少し距離が離れれば乱は龍咆球、紫音はガントレットに内蔵された小型砲・ブレイズショットで牽制しつつ、隙を見ては衝突を繰り返す。

他の面々はどうかというと、飛鳥と美与は紫音と乱のように接近戦を演じてはいるが、有利なのは美与の方である。

その理由はお互いの武器にあった。

飛鳥が使うのは鋼に元からある蓮華と雛菊の二本の日本刀型近接ブレード。対する美与が使うのはIS用の刃渡り1M程のMVB(高周波ブレード)のナイフ。

このナイフと打ち合い続けたことで飛鳥の蓮華と雛菊の耐久値をゴリゴリ削られ既にレッドゾーン。

一方、美与の方はまだ何本も予備のナイフを所持しているのでこのままでは飛鳥は武器を失い一方的な戦いになってしまいかねない。

 

『………あの娘、他の娘に隠れがちだけどヤバいわね』

 

『近接タイプはやり辛いだろうな』

 

そして、レオンと茉優の方は茉優のヒッポグリフの機動力にレオンが押され気味となっている。

やはり魔改造の施された高機動パック相手では分が悪い。

それでもアンカークロー等、受けたら致命傷になりかねない攻撃はしっかり手にした二本のブレードで弾いているところを見るにレオンには高速戦闘のセンスがありそうだと雪兎は目を付ける。

 

「(やっぱ速度じゃ勝てねぇか………なら一か八かだ)」

 

そんなレオンが賭けで使ったのは瞬時加速。

去年の1年生でこの時期に瞬時加速を使えたのは専用機持ちの極一部くらいで、今年の1年生でこれを習得している生徒いなかった。

つまり、レオンはほぼ独学で瞬時加速を習得していたという事になる。

だが、驚くのはまだ早かった。

レオンが瞬時加速を使った事に慌てた茉優は急いで後を追うのだが、前方にいたレオンの姿が突然消えたのだ。

その原因は茉優が追ってきたのを確認したレオンが瞬時加速中に進行方向とは真逆に再度瞬時加速………個別連続瞬時加速を行ったのだ。

それにより茉優のバックを取ったレオンは再度個別連続瞬時加速で斬り付ける。

 

『はぁ!?個別連続瞬時加速!?』

 

『くくく………クハハハハッ!マジかよ、俺でも軽く進行方向変えるくらいにしか使えねぇのに前後でZの字走行とか普通なら視界がブラックアウトすっぞ』

 

いくらISにパイロット保護機能があるとはいえあんな無茶な機動をすれば身体への負担だって馬鹿にならない。

だというのにそれをやってのけたレオンに雪兎は笑いが止まらない。

それはまるで何かを見つけたかのようなロックオンする目である。

その後、茉優を何とか降したものの、いきなりの個別連続瞬時加速3連発の負荷が大きかったようで、スラスター各部からアラームが鳴り響く。

なのでレオンはスラスターへの負担を考えて隼から防人にパックを切り換え飛鳥の援護に向かった。

 

***

 

前衛組がそんな高速戦闘を繰り広げている中、後衛組の戦いは弾が飛び交っていた。

 

「いって!」

 

紗代子のアクイラと渚のアサルトイーグルにSパックでは対処出来ないと判断したイクスはDパックに装備を換装し、MC(マルチカスタム)LL(レーザーライフル)はキャノンバレルにSパックのミニガトリングガンを付けた状態に。

そのMCLLとDパックの装備であるピアッシングレイ、クラスターミサイルコンテナを使って弾幕形成しとにかく近付けさせない戦い方を行う。

日向もグレールとミラージュの変則組み合わせであるニュアージュ*1へと換装し弾幕形成に協力している。

対して紗代子と渚は接近出来ないのならばと狙撃を試みるも、日向のカバーリングが上手く通してはくれない。

 

「これは思ったより厄介ね………私が盾になって飛び込んだらワンチャンある?」

 

「無理ね。飛び込めても落とせてシアハートさんだけよ。その後に紫陽さんに落とされるでしょうね」

 

渚が昨日の2年生の試合で使われた戦術を提案するも、紗代子は首を横に振る。

アサルトイーグルは近接戦闘向けに装甲は厚めになっているので盾役は何とかこなせるものの、グリフォーネに防御向けの装備は今のところなく、下手接近すれば日向が展開している一角獣の紋章による一撃でアウトになりかねない。

そう判断され、とにかく前衛組へ援護させないようこのままの状態を維持すると決めた二人は弾幕を躱しつつ狙撃を繰り返すのであった。

 

***

 

そうこうしている間に紫音と乱の戦いも激しくなっていく。

紫音がガントレットを変形させて丸鋸状のエネルギーソー・ブレイズサーキュラーを展開して攻撃すれば、乱は鋼竜にのみ装備された龍尾に予備の青龍偃月刀を持たせ両手の二本を含めた変則三刀流にして振るう。

 

「やるわね!紫音」

 

「機体のおかげだよ。ブレイズじゃなきゃとっくにやられてる」

 

「謙遜は過ぎると嫌味よ!」

 

そう言うと乱は腕から高電圧縛鎖を射出し、紫音はそれを躱してサーキュラーを飛ばして反撃するも、龍咆によって迎撃されてしまう。

しかし、紫音はすかさずブレイズショットをグミ撃ちして足を止めソードモードにしたソードライフルを二本取り出して斬りかかる。

両手の青龍偃月刀でそれを受けた乱は龍尾で掴んだ三本目で紫音を攻撃するが、紫音もそれを読んでいたのかそれを蹴り飛ばして弾くとそのまま後退する。

 

『おっと!ここで水戸ちゃんが落ちたわね』

 

『今年の1年はどいつもこいつも面白い事やってくれる』

 

茉優が脱落した事を知り、紫音と乱も勝負を決めるべく動き出す。

 

「お互いにSEは僅か………この一撃が勝敗を分けるわね」

 

「なら、お互いに出し惜しみは無し、だね?」

 

乱が雷爪のクローを伸ばし電圧を高めると、紫音もガントレットを変形させて三爪のクローとし、通常ならばブレイズショットの発射口である部分に意図的にエネルギーを溜め始める。

 

「轟け雷鳴!雷電竜爪!」

 

「灼熱!ブレイズバンカー!」

 

必殺の一撃がぶつかり合い火花とスパークがお互い残り少ないSEをジリジリと削る。

ゲージの減りは紫音の方が若干速く、乱は自身の勝利だと笑みを浮かべるが、紫音も笑みを浮かべるのを見て何かがおかしいと気付く。

 

「(あれ?前の試合では最後の一撃の時に放熱フィンを展開していたはず………)」

 

しかし、今の紫音のガントレットはクローの部分しか変形しておらず、放熱フィンを展開していない。

つまり、紫音はまだ(エネルギー)を何処かに溜めている。それは何処だ?

そこでは漸く乱は気付く。

 

「紫音!アンタまさか!?」

 

「そのまさかさ!雪兎兄やシュテルの真似だけど、これが僕の奥の手!ブラストブレイズ!」

 

そう、撃たずにチャージ(・・・・・・・・)し続けていた(・・・・・・)ブレイズショットのチャージショット………ブラストブレイズが零距離で炸裂し、紫音のSEが尽きる寸前のところで乱のSEを全て削り取る。

 

『うっは………シュテルの零距離ブラストファイア真似しやがったのか、えげつない』

 

『というか、去年のタッグマッチで雪兎君もやってたよね?それ』

 

江里子の言うのはイージスコンビを正面から叩き潰したあの試合である。

 

「あ〜!大人しそう顔してえげつない手を切ってくるじゃないの!」

 

「僕の勝ちですね、乱さん」

 

「ええ、負けよ負け、完敗だわ」

 

その後程なくしてレオンの加勢で美与を降した飛鳥がイクスと日向の援護に向かい、それにより逆転がほぼ不可能だと察した紗代子が渚と降伏した事でパープルラビッツの勝利となった。

 

「私達に勝ったんだからせめて次も勝って決勝でダクマテ共に一矢報いなさいよ?」

 

「あはは………勝てとは言わないんだ」

 

「………いや、あれは無理でしょ」

 

自信家の乱もマドカ達が完封されたあの試合を見て力量差はキチンと把握したようで、ハッキリとダークマテリアルズに勝つのは無理と告げるのだった。

*1
フランス語で雲




一応、あと2試合でチームトーナメント編は終わりますのでもう少しお付き合い下さい。


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25話 準決勝?実質決勝戦

大変お待たせしました。

大筋は決まってるのに中々試合内容がまとまらずにこんなに時間が経ってしまいました。
次の決勝はそんなに時間掛からないと………いいなぁ


『ってな訳で四回戦こと準決勝なんだが、ここで勝ち上がった方がダクマテとやるから実質決勝戦みたいなもんだと思ってくれ』

 

『ぶっちゃけやがったよ、この兎………』

 

三回戦が終わって直ぐにパープルラビッツのメンバーのISが修理され、準決勝が始まったのだが、雪兎がぶっちゃけた通りダークマテリアルズを決勝へとシードさせ、残ったパープルラビッツとクインテットの対戦を実質決勝戦と扱うと今回の大会運営委員会は決定した。

 

『もうここまでこればチーム紹介は要らんだろ。俺から言えるのは一つ「悔いだけは残すな」』

 

『それでは準決勝パープルラビッツVSクインテット!試合開始!』

 

「いくよ、皆!」

 

「おう!」

「「はい!」」

 

意気揚々と飛び出すパープルラビッツ。

 

「あ〜もう!ここまで来たらやれる限りやってやんわよ!」

 

「お〜、フェルトがやる気だ」

 

「あれはやる気というより自棄よね?」

 

「それは言わないであげて」

 

「あははは………」

 

「そこ!くっちゃべってないで行くわよ!」

 

「「は〜い」」

 

一方のクインテットはいつものノリである。

 

「僕がクロコディルさんを抑えるからその間に」

 

「させるかっ!」

 

パープルラビッツはキャロルのアズラエルに唯一対抗可能な紫音をぶつける作戦だったが、それはクインテットも承知だったようで紫音の行手をフェルトが阻もうと前に出る。

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

そんなフェルトをブロックしたのはレオン。

 

「レオン!」

 

「いいからお前はクロコディルのとこへ向かえ!」

 

「う、うん」

 

「行かせーー」

 

「お前の相手は俺だ!」

 

レオンのブロックで紫音に抜かれてしまったフェルトは仕方なく先にレオンの相手をすることに。

そのアシストのおかげで紫音はキャロルが他の三人に仕掛ける前にキャロルの元に辿り着く。

 

「追い付かれちゃった」

 

「クロコディルさんの相手は他の皆じゃキツイからね、僕が相手をするよ」

 

「う〜、暑いのヤ」

 

変幻自在の液体金属を操るアズラエルだが弱点が無いわけではなく、紫音が使うブレイズや鉄竜の炎牙などの高熱を発する装備との相性が悪い。*1

これは液体金属が熱で気化されてしまうのもあるが、制御に使っているナノマシンが高熱化した液体金属の中で融けてしまい機能しなくなるというのが原因だ。

ナノマシンであるが故にちょっとした温度変化ならまだしも高熱にはめっぽう弱いのである。

紫音がこの対処法に気付いたのは去年の体育祭で行われた雪兎と楯無の戦闘記録を見たからで、同じ流体制御ならば同じ戦法が有効であると知っていたのだ。

ただ、ブレイズでアズラエルを相手にする場合、接近しなければならない為に常に自身を高熱化する必要があり、早期に勝負を決めなければエネルギー切れになりかねないリスクがある。

 

「はっ!」

 

「ヤ」

 

紫音がブレイズショットを放てばキャロルは液体金属でシールドを張らずに回避する。

光学兵器を防げるのに何故ブレイズショットは回避を選んだのか、それは光学攻撃であるビームとブレイズショットの違いが関係していた。

 

『ここで軽く科学のお話といこうか。ビームやレーザーってのは基本的に荷電粒子砲と同じで荷電粒子を粒子加速器で加速させて弾丸とする技術だ。その歴史は意外にも1980年代に研究が行われていたそうだ』

 

『へえ〜』

 

『しかし、当時ではその加速器の小型化と使われる電力*2の問題から実用化に至らなかったらしい。開発の歴史はまた有志に調べてもらうとして………現行の光学兵器は引っ括めて言ってしまえば何かしらの粒子を加速させて放つ粒子加速砲というわけだ』

 

『成程』

 

『前置きはこれくらいにして、なんでクロコディルが防御でなく回避に徹してるかだったな。これは光学兵器が反射可能という点だ。レーザー加工機が良い例で、あれは発信部分からレンズやミラーを使って加工部にレーザーを照射して焼き切る工作機械だ。クロコディルは液体金属で防御する際に表面を鏡面にすることで反射減衰させてんだろ』

 

『雪兎君もビーム反射させる戦法は得意ですもんねぇ………あれと同じ原理ですか』

 

『対して紫音が使ったブレイズショットは高温に熱したエネルギーを直接叩き込むタイプの攻撃でな。言ってしまえばエネルギー弾版焼夷弾だ』

 

『うわぁ………』

 

つまり反射不可能な高熱を浴びせられ使用可能な液体金属を減らされてしまうのだ

 

『更に言えば液体金属が色々応用出来るせいであのISの武装あれしか無いんだよな』

 

『つまり………』

 

『相性最悪って訳だ』

 

***

 

キャロルが紫音に徐々に追い込まれる中、フェルトの足留めを買って出たレオンは先の試合の無茶によって丸っと新品と交換になってしまったスラスター類を酷使しつつ必死に食らいついていた。

 

「あ〜もう!しつこいわね!」

 

「逃さねぇ!」

 

フェルトはアクイラ装備での機動射撃で少しずつレオンの鋼にダメージは与えてはいるものの、隼の機動性で強引に振り切っては蓮華とガンブレイドで反撃してくる。

 

「(というか、コイツほんとにIS使い始めて一ヶ月!?一回戦の娘達といい、コイツといい何でこんなのが在野に埋もれてんの!?)」

 

組織にいた頃はIS適性があるのを知らなかったのでISにこそ乗った事は無いが、いざという時に備えて一通りの銃器の扱いや近接戦闘法は教えられていたし、ISに関する知識もあったフェルトに対してレオンはまるっきりの素人だ。

おそらく1年生の使っている新型量産機が旧来機より扱い易く作られているのもあるが、それ以上に才能の有無があるのだろう。

 

「(このレオンとかいうヤツの才能はおそらく耐G適性と高速戦闘。高機動タイプの隼すらアイツの反応に少し遅れてるわね)」

 

パーツを新品に換えたばかりというのもあるが、前の試合で見せた個別連続瞬時加速という絶技を経験したことで機体性能が搭乗者に追いつけなくなっているのだ。

その反応速度の遅れは隙となり、そこへフェルトのライフルが火を噴く。

だが、レオンはそれをピアッシングシールドを射線上に投擲する事で防ぎ、瞬時加速でフェルトに組み付くとそのままアリーナの防壁に突き進む。

 

「ちょっ!?アンタまさか」

 

「そのまさかだよ!」

 

アリーナの防壁は兎師弟によって物理的な強度とバリアフィールドの二重の備えが施されており、その鉄壁っぷりは以前にクラス代表戦のときに防壁を貫通した【S:ストライカー】のパイルバンカーの改良型ですら傷一つ付けられないとかいうもので、あの千冬が「これを破るとなると零落白夜があっても骨が折れるな」*3

その防壁に自分ごと突っ込むという暴挙に慌てるフェルトだが既に遅く、表面のバリアフィールドに激突した瞬間に絶対防御が発動してしまいフェルトのグリフォーネのSEが尽きる。

 

「いったぁ………やられたわ、私の負けね」

 

「いや、引き分けだなこりゃ」

 

見ればレオンの鋼はSEこそ僅かに残っているがボロボロで、特にスラスター周りは酷い事になっている。

 

「直してもらったばかりなのにそんなに壊して………怒られるわよ?あの人に」

 

「だよなぁ………」

 

その光景を想像したのか顔が引きつるレオンを見て「ご愁傷様」と苦笑するフェルト。

 

「あっちも終わったみたいね」

 

「だな」

 

紫音とキャロルの方も結局は追い付いた紫音が最大火力の一撃を叩き込んだ事で決着したようで、他の六人の方は日向が撃墜判定を受けたもののイクスと飛鳥が美乃里達を破ったようだ。

 

「次は王様(ディアーチェ)達とか………ところでさ、ペイズリー」

 

「フェルトで良いわよ、で?」

 

「これ、決勝までに直んのかね?」

 

「………あの否常識師弟なら出来るんじゃない?」

 

こうして準決勝は閉まらない終わり方で終わったのであった。

*1
実はスコールが使うゴールデン・ドーンやシュテルのルシフェリオンが最大の天敵

*2
最低でも10GW

*3
破れないとは言っていないという恐怖




この後、レオンはしっかり雪兎に怒られました。
ぶっ壊したのもですが、防壁への突撃という危険行為についても。

危ないので皆さんは相手諸共壁に突撃!なんて事はやめましょうw


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26話 終幕、チームトーナメント

遅くなりましたがチームトーナメント編はこれにて終了となります………いや、ほんと想定してたのより長くなった。

シヨン SXIYONさんのとこでのコラボシナリオに雪兎が出張したりもしていましたので良ければそちらもご覧下さい。


少しの休憩と整備時間を設けてその時は訪れた。

 

『いや〜、長かったトーナメントもこれで最後ですね』

 

『ほんの数日が長く感じるな………約1年くらいに*1感じたな』

 

『試合内容濃かったですもんねぇ』

 

『てなわけで1年の部決勝戦だ』

 

決勝戦はここまで何とか勝ち上がったパープルラビッツに対し圧倒的な存在感を持つダークマテリアルズ。

その2チームによる決勝戦が始まろうとしていた。

 

「よくぞここまで辿り着いた!」

 

「うん。きたよ、王様」

 

「紫音他も良い表情をしておる」

 

「そりゃな、ここまで来たらやれるとこまでってな」

 

「お〜レオもやる気〜」

 

「私も楽しみです」

 

「今度は私も出るわよ」

 

今回はダークマテリアルズもフルメンバーのようで、ユーリやイリスもスピリットフレアとアスタリアを纏っている。

 

『長ったらしい前説や紹介も要らんだろ?お互いに存分にやれ』

 

『決勝戦、ダークマテリアルズVSパープルラビッツ………試合開始!』

 

「いくよ、皆!」

 

紫音達パープルラビッツが一斉に動き出す一方でダークマテリアルズは動かず待ち構える。

どうやら先手を紫音達に譲るようだ。

 

『先に仕掛けたのパープルラビッツ!狙いはユーリちゃんね』

 

『まあ、機能限定してるとはいえ、ユーリのスピリットフレアが厄介な事に変わりはねぇからな』

 

紫音達もそれでユーリを落とせるとは思ってはいなかったものの、彼らの放った射撃攻撃はユーリのフローターシールドから発生したバリアフィールドによって掻き消されてしまう。

 

「堅いのは知ってたけど、今のが一発も通らないって理不尽よね」

 

「反撃来ます!」

 

そこへ先手は譲ったダークマテリアルズの反撃………無数のパイロシューターとそれを縫って前に出るレヴィ、さらにはパイロシューターを掻い潜ってもイリスのガンスラッシャーのウィップモードが襲い掛かるという鬼仕様。

 

「あの弾幕の中を何で突っ込んでこれんだよ!?」

 

「このソードウィップも生き物みたいに変幻自在です!」

 

このコンビネーション攻撃に紫音、レオン、飛鳥の三人は乱数回避、イクスと日向は防御を選択。

前衛三人は散らされ、防御力の低いイクスを日向がカバーしてはいるものの身動きが取れない状態へと追い込む。

 

『うっわ、初手からエグいじゃないですかぁ………』

 

『あのフォーメーションはほんと厄介だからな………まだ後ろにディアーチェとユーリ控えてるし』

 

『………ちなみに雪兎君ならどう突破します?』

 

『同じく弾幕で返すか、レヴィひっ捕まえて盾にしながらシュテルへ突撃して弾幕止めにいくかな?カロリナならブレイクフィールド展開しながら強引に突破出来そうだが………』

 

『トーナメントでも暴れてたもんね、あの娘………あの二人のフルバースト耐えきるとか堅いにも程があるわよ』

 

元々センスがあったのか、カロリナとリリコンバージュの相性が良かったらしく、体育祭以降に兎一味に加わったメンバーで2トップの成長率を誇っている。

ちなみにもう一人はエリカで、長距離狙撃に関しては既に兎一味で右に出る者がいないレベルに達している。

それはさておき、シュテルはパイロシューターの制御と並行してディザスターヒートを放ち始め、レヴィは狙撃手であるイクスを守る盾役の日向を引き剥がす為に強襲を仕掛け、それを何とかしようとする紫音、レオン、飛鳥の三人はシュテルのパイロシューターやディザスターヒート、イリスのソードウィップ、ディアーチェやユーリの放つ砲撃に阻まれ完全に封殺されていた。

 

『あっと!ここで日向ちゃんが落ちた!』

 

『そのままシアハートも刈られたか………こりゃ全滅も時間の問題………あっ、ディアーチェがグラビティブラストの構えに入った』

 

『パープルラビッツの三人も阻止しようと攻撃するけど、ユーリちゃんにブロックされて初手の二の舞いだ』

 

『うわ、ただのグラビティブラストじゃなくて拡散グラビティブラストかよ………神城を庇って進藤が落ちて、その神城は直後にディザスターヒートでノックアウトか』

 

『残った弟君は………イリスちゃんが落としておしまいね』

 

『もう少し善戦するかと思ったが、やっぱマテリアルズ相手はキツかったかぁ………』

 

やはり経験が違い過ぎたようでダークマテリアルズの勝利に終わった決勝戦。

まあ、最初の弾幕で落とされた者がいないので善戦はしている。

そして、その後に行われた2年生のトーナメントでは兎一味が上位をほぼ独占しており、今回は2人掛かりで挑んだ一夏と簪を返り討ちにした雪兎が優勝して観戦に来ていた各国の要人達は改めて「絶対にアレとは敵対したくない」と兎一味のヤバさを実感した。

3年生?ほぼ楯無の独壇場だったとだけ言っておこう。

こうしてチームトーナメントは何のトラブルもなく終了したのだが………

 

***

 

ー衛星軌道上・特別留置所ー

 

そこは危険度SS級の犯罪者を地上と隔離しておく為に建造された宇宙の監獄。

その管理は徹底されており、数名の職員しかおらず、囚人のいる区画とは隔絶し機械的に管理する程。

脱獄するには牢を抜け出して宇宙服を纏い物理的に離れた管理区画に月一しか来ない定期船に乗り込むか、IS等の宇宙空間で活動可能なパワードスーツを着て脱出するか、ではあるが、そもそも囚人区画には宇宙服は置かれておらず、ましてやISなんて置かれているはずもない。

そんな場所にオータムは囚われていた。

過去に護送中に逃亡、厳重な留置所からの脱獄にネビュラガスを注入された副作用か異常な身体能力の強化と通常の留置所では拘束が不可能と判断されたが故に彼女はここに収容されている。

 

「………クソ」

 

しかも食事は必要最低限の栄養素を詰めたレーションに宇宙空間という点を利用して牢内は無重力となっており、身体を鍛えるのが難しいのも脱獄をより難しくしている。

 

「………あの兎共め……次こそは………」

 

そんな環境にあってもオータムの心は折れていなかった。

ネビュラガスによる好戦的な性格への変貌もあるが、それだけ雪兎やシャルロットへの憎悪が強いのだろう。

 

『ほう、この環境下で未だに折れぬ憎悪………ヤツが目を付けていただけはあるようだ』

 

オータムしかいないはずの牢内にいつの間にか銀色のパワードスーツのようなものを身に着けた何者かがいた。

 

「てめぇ、あの蛇野郎(ブラッドスターク)のお仲間か?」

 

その姿はかつてオータムをスマッシュに変えて脱獄させたブラッドスタークによく似ていた。

 

『同じ変身システムを使用してはいるが、仲間ではない。彼は取引相手の一人ではあるが、それはキミの知るスタークとは異なるスタークだろうな』

 

「?」

 

『今重要なのはそこではない………キミはここから出たくはないかい?』

 

「なん、だと?」

 

いきなり現れたソイツはそうオータムに囁く。

 

『キミは天野雪兎………世間一般には兎一味と呼ばれる彼等に恨みがあるのだろう?私は彼の師である篠ノ之束に恨みがあってね。キミを同志として勧誘に来たのさ』

 

警報装置も何も作動してはおらず、悠長に話し続けるソイツにとってここへの侵入やオータムを脱獄させる事等容易い事なのだろう。

そして何よりも篠ノ之束に恨みがあるというのはボイスチェンジャー越しにもハッキリと判る憎悪の感情が乗っていた。

故にオータムはソイツの言葉に乗った。

 

「いいぜ………アイツラに復讐出来るなら、悪魔の誘いだろうと乗ってやるよ」

 

『クフフフ………いいですね。それと私の事はこの姿でいる際はこう呼んで下さい』

 

オータムの言葉に気を良くしたソイツはやっと名乗りをあげる。

 

『“ウィスパーデビル”と』

 

「はっ、テキトーに言ったつもりがほんとに悪魔(デビル)とはね!」

 

こうして裏で銀の悪魔(ウィスパーデビル)が静かに動き出す。

*1
チームトーナメント編の連載期間




最後が不穏だって?そこは今後のお楽しみって事で。

ウィスパーデビルのデザインは白いナイトローグをイメージしてもらえるとよいかと。

次回からはまた通常の学園でのお話となります。


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27話 兎のお誘い

短いですが、書けたので投稿です。


トーナメントから数日が経ったある日、レオンは雪兎から呼び出しを受けて彼が管理する研究棟にやってきていた。

 

「先輩からの呼び出しとか嫌な予感しかしねぇ………」

 

トーナメント中に相棒である鋼を何度か酷い損傷をさせてしまい迷惑を掛けた自覚のあったレオンはその事についてアレコレ言われるのではないかと思ったが、紫音や優斗からはそういう用件ではないだろうと言われホッとする。

だが、ディアーチェからは何故か同情の視線を向けられたのが上の嫌な予感に繋がっている。

 

「ようやくきた」

 

そんなレオンを入口で出迎えたのはカロリナだった。

 

「ゼンナーシュタット先輩?」

 

「名前の方でいい」

 

「うっす、ならカロリナ先輩で………で、カロリナ先輩が何でここに?」

 

「師匠に言われて貴方を迎えにきた。ついてきて」

 

恐る恐るカロリナの後を追って研究棟の奥へと案内されると、そこには雪兎の他に研究会のメンバーも揃っており、増々レオンは呼び出された理由がわからなくなる。

 

「おっ、きたか」

 

「あっ、はい」

 

「ちょっと待っててくれ、もう少ししたら“コイツ”の調整が済むから」

 

雪兎のその言葉にレオンが部屋の奥を見ると、そこにはダークグレーの装甲を持つ1体のISがハンガーに鎮座していた。

 

「このISは………」

 

「プロジェクトフロンティアは知ってるな?」

 

「えっ、あっはい!先輩達が立ち上げた新宇宙開発計画ですよね?」

 

「そのプロジェクトの新型IS開発チームが開発したはいいが、あまりにもじゃじゃ馬過ぎて俺に投げてきたのがコイツ、黒雷(こくらい)だ」

 

「黒雷………」

 

「何か開発メンバーに日本のロボットアニメヲタがいたらしくて和名にしたんだとよ」

 

「は、はぁ………」

 

何故そんな話を自分にするのかわからないレオンはそう返す。

だが、次の雪兎の言葉は意外過ぎるものだった。

 

「これ、お前の今後の専用機な」

 

「はぁ!?じゃじゃ馬ってさっき言ってましたよね!?」

 

聞けば代表候補生や国家代表レベルでも持て余すじゃじゃ馬というのだからレオンの反応も当然である。

 

「いや〜、加速性能はピカイチなんだが、高過ぎて軽くスピード上げようとしたらトップギアまで上がっちまうような性能でな。なら止まるのはどうするんだってなったら慣性制御で強引にスピード落とすとかいう具合でな」

 

「それって、トップとローしかギアが無いってことじゃ………」

 

「そういうこった。だからそこを改良してメインスラスターだったそれを大型のサブスラスターとしてメインスラスターを通常のに取り換えたんだ」

 

そのおかげか通常の動作なら支障が無い範囲に収まったものの、やはり戦闘時にサブスラスターを稼働させるとハイ&ローの極端な出力になってしまうんだとか。

 

「何でそんな機体に俺が………」

 

「お前がトーナメントでやった個別連続瞬時加速の使い方、あれが決め手だ」

 

あの無茶苦茶なZ字走行を行えるレオンならばこの黒雷も扱えるのではないか?と目を着けたのだ。

 

「コアは今のを移植するし、武装面も希望がありゃ少しは聞いてやる」

 

「俺は………」

 

***

 

その後、レオンは黒雷を受領することを承諾し、今はその試運転の為にアリーナに来ていた。

 

『一次移行は問題なく済んだな』

 

一次移行を終えた黒雷はダークグレーだった装甲が漆黒となり、一部のフレームと縁が黄色に変化していた。

 

「はい、さっきよりも動かし易くなったというか、俺に最適化されたって事ですよね?」

 

『そうなるな』

 

武装は元から装備されていた実弾とビームの複合ガトリングガンの付いたガトリングシールドにグレネードランチャー付きビームサブマシンガン、出力が高くて並の慣性制御では反動で自身が後ろに吹っ飛び兼ねない専用ビームガンに加えて、レオンの要望で柄の部分を連結する事で双刃刀になるヒートブレードとアサルトライフルを追加している。

 

『移行後のデータも取るから出てくるドローンを色々やって落としてみろ』

 

「はい!」

 

アリーナに出現したドローンを次々と落としていくレオンはふとある事を試してみようとドローンに向かって加速し、その目前で急制止しながら回し蹴りでドローンを蹴り砕いたのだが………何故かその蹴りの軌道上に衝撃波の刃のようなものが発生してその先にあったドローンが両断されてしまう。

 

『………おい、今何やった?』

 

「えっと………制止する時の慣性制御で行き場を失くしたエネルギーを変換して衝撃波として放出した?」

 

『何サラッと“牙の玉璽”の牙みたいな事やってんだよ、コイツ………』

 

その後の検証の結果、牙としてではなく砲弾のようにも飛ばせ、少しの間ならそれを溜めておいて後から放つ事も可能だと判明した。

 

「牙と角の複合型かよ………確かに概念的には似たような理論使ってるとはいえ、なんつーもん作ってんだよ………それにそれを初めて使ってやらかしたコイツもコイツでおかしいし………」

 

多少は手を加えたとはいえ、面白半分で世に放った技術が生み出した想定外の成果とそれを使い熟してしまったルーキーに流石の雪兎も頭が痛くなる。

 

「………レオン」

 

「はい」

 

「お前、ウチのプロジェクト預かりにするから」

 

「は、はい………って、えっ!?」

 

「最初は黒雷をお前にぶん投げてデータだけ取らせてもらうつもりだったが、お前と黒雷放置しとくのは色々ヤバいと判断した。安心しろ、ウチの直轄になれば今より支援金増えっから」

 

「えぇえええ〜!?」

 

こうしてレオンは早くも兎一味に取り込まれる事になるのであった。




という訳でレオン君、一味の仲間入りです………時間の問題だったよね?それは言わないお約束。

次回くらいからちょっとした番外編を書こうと思ってます。
ウチのイリスの出処に絡む話となりますが、なのはではなく別の場所に雪兎と数名が出張して色々やらかす事になります。
詳しくは次回をお待ち下さい。


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番外編 スーパーロボット大戦30
○○○○①


という訳で番外編スタートです。

伏せ字は今回限りで次回は普通に表記します。


これは春休みに起きたとある旅の記録である。

 

***

 

その日、雪兎は先日訪れたとある並行世界で起こった現象の記録を見返していた。

 

「あの時の謎の共鳴現象………あれを再現出来ればアレも作れそうな気がするんだよなぁ」

 

そこで共闘した人物とのISの共鳴現象によってお互いの機体を模した武装やパックを使用したのだが、その場限りのものでデータこそ残ったものの、その原因や理論は不明のままなのだ。

 

「他にも面白い機体のデータも取れたしなぁ………アイツらの機体を再現したの作ってデータ取るのも面白そうではあるが」

 

ISやそうでないものまで色々といた全国IS祭と呼ばれていたあのイベントは雪兎からすれば未知のISやその世界の千冬等と戦えた満足いくイベントだった。

 

「雪兎〜、そろそろ休憩しよ?」

 

「聖からお菓子もらってきた」

 

そこへシャルロットとカロリナの二人がやってきた。

 

「もうそんな時間だったか………」

 

「またそのデータ見てたの?」

 

「ああ、機会があればまた行ってみたくはあるな」

 

「雪兎に眼をつけられるなんて………お気の毒に」

 

本当にお気の毒な事にあの世界で知り合った人達はこの兎に眼をつけられたばっかりに様々な事件で首を突っ込まれる事になるのだが、それはまた別のお話。

 

「さて、今日の菓子はなんだ?」

 

「カタストロフィナンシェ(再現)」

 

「ちゃん様のアレ再現したのかよ………地味に再現度高っ!?」

 

そんな事を話していたその時、突如警報が鳴り響く。

 

「この警報音、聞いた事無いパターンだけど!?」

 

「あ〜、先日追加した時空の歪みとかを検出した時のやつだな。発生地点は………ここ?」

 

次の瞬間、雪兎達三人は光に呑まれてその世界から姿を消した。

 

***

 

「………うっ、一体何が………」

 

「ここ、何処だろう?」

 

「それに、ISが展開されてる」

 

強い光に呑まれたかと思えば三人は何故かISを纏った状態で廃墟となった街にいた。

 

「状況からいって何処かの異世界に跳ばされたんだろうけど………あの残骸からして嫌な予感しかしねぇ」

 

雪兎の視線の先にあったのはビルに叩きつけられたと思われる地球連邦軍主力MS………“ジェガン”の残骸であった。

 

「雪兎、それって………」

 

「MS………宇宙世紀で発展した人型機動兵器だ」

 

故にここが宇宙世紀世界かと雪兎達が疑っていると、彼らのいる廃墟に何者かが突入

してくる。

 

「一旦隠れるぞ」

 

ISの小ささを活かして廃ビルに隠れ様子について伺う事にした彼らの目に飛び込んできたのはジェガン*1を超える巨大な機体だった。

 

「全長約58m………あんな機体は俺の知る限り宇宙世紀にはいなかったはずだが」

 

「しかもあれ、多分量産型」

 

そう、カロリナの言う通りその機体は一機ではなく複数機おり、その規格化されたデザインから量産機であるのは明白であった。

現状ISしか戦力の無い雪兎達では勝てなくはないだろうが、手間と時間が掛かる上に、ISをこの世界の住民に見られるという厄ネタになりそうという問題もある。

なのでISを解除してその場に身を潜める事でやり過ごす事にした。

幸いな事にその機動兵器は1時間もしない内に何処かへと飛び去っていってしまった。

 

「まずは情報収集からだな………可能であれば俺達も何か機体を入手しておくべきだろう」

 

「賛成」

 

「うん、それにここには丁度良いのがいる」

 

そう言ってカロリナが示したのは先程のジェガンの残骸であった。

 

「他にも何機かありそうだしな………このままスクラップにしておくよりは俺達が有効活用してやった方が良さそうだな!」

 

「うん、私達が仇を撃ってあげるから有効利用」

 

「そんな事言って………二人が弄りたいだけだよね?」

 

「「うん!」」

 

「………似た者師弟だなぁ、こんな状況なのに」

 

結局は実物のジェガンを弄りたくてしょうがない二人にシャルロットは溜息をつく。

その後、情報収集の為にライフラインの一部が辛うじて生きていた施設でこの世界について調べたのだが………

 

「一年戦争にヘル事変、ミケーネ戦役、月面戦争、原種大戦から始まりウルガルの出現、グリプス戦役、第一次ネオジオン抗争、ブラックリベリオン、キャンベル星人の侵略に第二次ネオジオン抗争、でゼロレクイエムで勝ち取った平和もラプラス事変で政情が崩れて瓦解………」

 

「奇病アルジャーノンやフォルツォイク事件、火星にヨロイもある」

 

「で、今はウルガルとザンスカール帝国が活動中………カオス過ぎないか?この世界」

 

ここ十年の記録でコレである。

更に古い記録にはMS発展前にスーパーロボット大戦らしきものがあったと語られているのだ。

過去一カオスなスーパーロボット大戦の世界だろう、この世界は。

 

「まだ各方面でバラバラに動いてる時期と考えるとゲームで言う主人公やその部隊は登場前ってとこかね?」

 

ここまでくれば先の機動兵器が今作のオリジナル敵勢力のものだと予想もつく。

 

「とりあえず回収したジェガンを改造して活動するとするか」

 

幸いにも回収できたジェガンは多く、何機かのパーツを継ぎ接ぎにすれば修理できそうという事が判り、ちゃんとした機体を建造するまでの繋ぎで使う事にしたのだ。

以前喚ばれた世界で手に入れたアイテムを使えば、別の世界を経由して帰る事もできたのだが、今回喚ばれた理由や原因を突き止めてからでないと今度はもっと大規模な人数で喚ばれかねない。

その為、とりあえずはこの世界の主人公らに接触して原因を突き止めようという事になったのだ。

 

***

 

数日後………

 

「とりあえずジェガンの改修はこんなもんか」

 

廃墟の施設を勝手に改造して一時拠点とした雪兎達は回収したジェガンをベースに大幅な改修を加えて専用機として完成させた。

見た目はジェガンをベースに肩をジムカスタムタイプとし、脚部をアドヴァンスドヘイズルのように改造。

ヘイズルの腰のフロントアーマーのサブアームは付けず、サイドアーマーにスラスターとサブアームを内蔵したものを取り付け、ジーラインを参考に各部のハードポイントや装甲の付け替えで様々な状況に対応出来る機体に仕上がっている。

各員のチューンナップは以下の通り。

 

【雪兎機】

バックパックにスタークジェガンのものを改造した四基スラスターを装備し、肩にフレキシブルスラスター付きのアーマーを装着。

シールドの先端がパンツァーアイゼンのようなアンカークローになっており、敵の拘束や引き寄せ、緊急回避等に使われる。

【シャルロット機】

通常のスタークジェガンのオプションを元にしたアーマーを装着し、シールドにパイルバンカーを内蔵した専用シールドを装備する。

【カロリナ機】

フルアーマーガンダム(TB)のようにバックパックからサブアームでシールドを二枚構え、両腕にもシールドガトリングガンを装備した重装仕様。

 

さて、雪兎達にMSが操縦出来るのか?という問題だが、仮にもIS操縦者の三人が全くの素人という訳もなく、操縦システムのアレンジ等は加えてはいるが少しのシミュレート訓練で操縦はこなせるようにはなった。

 

「さしずめジェガンカスタムとでもいったところかね」

 

「これで本命の材料集めが出来る」

 

「この混沌とした状勢にすっかり適応しちゃってるよ、この二人………」

 

こうして雪兎達はジャンク屋紛いの活動を開始したのであった。

*1
全長20.4m




跳ばされたのはスパロボ30の世界でした。
混ぜるな危険な人物が多いからどうなることやら………
シナリオはガッツリやらず飛ばしたりすると思うのでそこは御了承下さい。
また、オリジナル機体が数機登場予定なのでそこも御理解下さい。



今回のオリジナル機体紹介
ジェガンカスタム

専用機が完成するまでの繋ぎとして雪兎達が使用したカスタムMS。
ジェガンをベースに肩の形状をジムカスタム風にしサイドスラスターを内蔵。
下半身はアドヴァンスドヘイズル風に改修し、サブアームはフロントアーマーからサイドアーマーに移してある。
バックパックはスラスターが強化され、ビームマシンガンと折りたたみ式スナイパーライフルをマウントできるようになっている。
また一部の装甲がジーラインのように換装できるようになっており、三人共別の仕様で使用していた。

雪兎機
バックパックにスタークジェガンのものを改造した四基スラスターを装備し、肩にフレキシブルスラスター付きのアーマーを装着。
シールドの先端がパンツァーアイゼンのようなアンカークローになっており、敵の拘束や引き寄せ、緊急回避等に使われる。

シャルロット機
通常のスタークジェガンのオプションを元にしたアーマーを装着し、シールドにパイルバンカーを内蔵した専用シールドを装備する。

カロリナ機
フルアーマーガンダム(TB)のようにバックパックからサブアームでシールドを二枚構え、両腕にもシールドガトリングガンを装備した重装仕様。


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スパロボ30②厄ネタ拾った

書けたので投稿………
まずは最初なので一話目はほぼ通しでやることにしました。
そしたら少し長くなりそうだったので2話に分ける事に………
早速兎がやらかします。


ジェガンカスタムが完成して活動を開始した雪兎達だが、その完成前にとあるものを入手しており、その扱いに困っていた。

 

「どうみても厄ネタの臭いしかしねぇ………」

 

それは転移された廃墟を探索していた際に発見した水晶片型データ端末。

雪兎は辛うじてそれが何なのか知っていた。

 

「何でリリカルなのはのアイテムがスパロボ時空にあんだよ」

 

そう、それはリリカルなのはの劇場版作品である【リリカルなのはREFLECTION】に登場した【イリス】という存在が入っていた端末にそっくりだったのだ。

実を言えばこのREFLECTIONが雪兎が転生前に見た最後の劇場版作品で、続編のDetonationは見る前に事故に遭い転生してしまっているので地味に続きが気になっていたのだが、転生後の世界にもリリカルなのはシリーズが放映されていた事があってその存在を知った直後に視聴している。

その為、イリスやその内に眠る真の黒幕についても知っており、それ故にこの端末がどれだけ危険なものか判っているのだ。

どうも雪兎達と同時期に跳ばされてきたらしく、その衝撃で機能不全になっていたのは幸いである。

 

「とりあえず外部との接続してない端末で調べてみるか」

 

そうして調べてみたところ、この端末はイリス本体に何かあった際のバックアップとして作られたもので、量産型の姉妹とは違いほぼイリスと遜色ないイリスが保存されていた。

おそらくイリスの中に仕込まれた黒幕のバックアップがいざという時の為に用意したもののようだが、まさか異世界に吹っ飛ばされるとは想定していなかっただろう。

しかも転移の際に端末の機能不全が起こった影響でイリスのデータもかなり損傷してしまっており、特に記憶に関するデータが9割失われていた。

これに関しては雪兎が作ったマテリアルズ………特にユーリを見て暴走される危険が無いので一安心ではある。

しかし、黒幕ことフィル=マクスウェルのデータはかなり深部に保管されていたせいかほぼ無事で、放っておくと厄ネタにしかならないと判断した雪兎は一部の技術データ*1のみ吸い出して黒幕に関するデータは削除してしまった。

 

「茅場といい、大尉*2といい、山寺ボイスのボスキャラは大抵理不尽だからさっさと始末するに限る」

 

「すごい実感籠もってる………」

 

「で、この娘はどうするの?」

 

「流石にイリスも問答無用で削除すんのはなぁ」

 

記憶もほぼ失っており、純粋無垢に近い人工知能を消すのは流石の雪兎も躊躇いがある。

 

「とりあえず別の端末作ってそっちに入れとくか」

 

未だに目を覚まさないようなのでとりあえずイリスのデータは他の機器に干渉出来ないようにスタンドアローンの端末を作ってそちらに移しておく事にするのであった。

 

***

 

活動を開始してから数日が経ち、詳しい状勢や遺棄された機体がそれなりに集まった。

 

「やっぱり怪しいのはこの【第30士官学校】だな」

 

「士官学校?どうしてそこが怪しいの?」

 

「場所が極東………日本って言うのが一つ、もう一つは士官学校なのに他の士官学校に比べて資金や物資の流れが多い。十中八九何か裏で造ってる」

 

スパロボ時空であるならば極東方面の基地に戦況を打開する新兵器があるのは珍しい事でもないのでそれが主人公機やそれに類するものだと雪兎は確信している。

という訳で極東に向かう事になった雪兎達は何処かから調達した輸送機を改造して造ったレイディバード級輸送機ネザーランド*3で極東へと旅立つ事に。

尚、仮拠点だった施設は念入りに解体した。

 

***

 

それからまた数日………

 

「いや〜、助かったぜ」

 

「旅は道連れって言うしな」

 

ネザーランドの同乗者に一人の男が増えていた。

男の名はエッジ・セインクラウス。

補給に立ち寄った街で生き倒れていたのを雪兎達に救われ、その縁で同じく極東に向かっているというので同乗することになったのだ。

話せば雪兎と同様義理の妹がいるらしく、その共通点で親しくなったのと、(雪兎曰く)声がスパロボ常連の“彼”*4と思われる事から彼が主人公なのではないか?という点から同行した方が都合が良いと判断したのだ。

それに行き先が同じく極東というのも彼が主人公だと仮定した場合、雪兎達の推測が正しかったという事になる。

 

「(主人公が物語の起点となり得る場所に向かうって事はそろそろ始まるって事だな)」

 

この時、雪兎は単に物語が始まるくらいにしか思っておらず、これがこれから始まる想像以上に混沌とした戦いの幕開けだとは知る由もなかった。

 

***

 

極東エリア大湊

 

極東エリアに着いた雪兎達は一度エッジと別れ、士官学校のある大湊へと立ち寄った。

 

「極東エリアも他と大差無いようだな」

 

「うん、何処も戦乱で復旧が間に合って無いみたい」

 

「機械獣軍団も頻繁に出現してるみたい」

 

「で、噂に聞く士官学校とやらは自治会長様の判断で避難民の受け入れをやってると………」

 

士官学校が大湊基地に隣接している為か補給等は受けやすいのだろう。

そう考えるとその自治会長とやらは優秀な人間のようだ。

 

「エッジもそっちに向かったみたいだし、俺達も行ってみるか」

 

そんな事を考えていると警報が鳴り響く。

 

「どうやらそんな暇はなくなったみたいだな!」

 

「機械獣!?」

 

「シャル、カロリナ。俺達も出るぞ」

 

「えっ」

 

「余所の世界だろうが見捨てるのは性に合わねぇからな」

 

「うん!」

 

「了解」

 

そうして光学迷彩で隠していたネザーランドに戻るとそれぞれのジェガンカスタムに乗り込む。

 

「天野雪兎、ジェガンカスタム。出るぞ!」

 

そうして大湊基地に戻ると基地に襲撃をかけていた機械獣に雪兎達とは別で攻撃を仕掛けた機体がいた。

 

「この基地のジェガンとイチナナ式は全滅したって聞いてたが、まだ機体が残ってたのか?」

 

「雪兎、あそこ!」

 

シャルロットが示した先、格納庫から現れた機体は雪兎にとって予想外の機体だった。

 

「なっ!?あれはアッシュ!?いや、細部が異なる………だが、あれは間違いなく“ヒュッケバイン”!」

 

通信を傍受してみればその機体はヒュッケバイン30というらしく、偶々その場に居合わせたエッジが乗っているらしい。

 

「シャル、こっちも基地側に通信を」

 

「う、うん!」

 

『えっ!?通信!?』

 

『あそこにいるジェガン(?)から?』

 

「あ〜、俺達は傭兵みたいなもんでな。偶々通り掛かったら戦闘に出くわしたもんで援護にきてみたんだが、指揮官は誰だ?」

 

『わ、私ですが………』

 

「今回はお試しサービスみたいなもんで無料で助太刀させてもらうが構わないか?そっちの機体に乗ってるのもどうも顔見知りっぽいしな」

 

『お前………雪兎か?』

 

「ちょっとぶりだな、エッジ。流石にこの数相手に初乗りの機体だと厳しいだろ?」

 

『助かる』

 

「って訳でいくぞ、二人とも。相手は機械獣だ、何の遠慮もいらねぇ!」

 

「うん!」

 

「ラジャー」

 

基地を襲っていたのはガラセクトV2という機械獣で両腕が斧と盾になっているのが特徴である。

それが五機程、雪兎からすれば多少物足りないくらいである。

 

『うそ………あの人達、強い』

 

『ヒュ〜、やるねぇ』

 

改造機といえどジェガンで機械獣を翻弄する雪兎達と初乗りであるはずなのにヒュッケバイン30を乗りこなすエッジ。

そこへ更なる援軍が現れる。

 

『大丈夫だ、ミツバ君………じゃなくて艦長!援軍が来てくれた』

 

そこに現れたのは通常とはカラーリングが異なるイチナナ式が一機。

 

『援軍ってイチナナ式が一機だけかよ』

 

「いや、ただのイチナナ式じゃないみたいだぜ」

 

『こちらは新光子力研究所所属の兜甲児だ!要請を受けて救援に来た!』

 

そう、そのイチナナ式に乗っていたのは兜甲児だったのだ。

 

『う、嘘!?マジンガーZの兜甲児さん!?』

 

『その兜甲児さんが、どうしてここに!?』

 

『話は後だ!まずは機械獣を片付ける!』

 

『ヘル事変とミケーネ戦役の英雄、兜甲児ね………』

 

「(マジか、生兜甲児かよ………)」

 

顔には出していないが、生の兜甲児の登場に雪兎は興奮していた。

やはりメカヲタとしては元祖スーパーロボットのマジンガーZは思うところがあり過ぎる。

 

「(でも、イチナナ式があるってことはINFINITY確定じゃんかよ………あれも割と厄ネタだったような………)」

 

そうして兜甲児も加わり有利になったかと思いきや別方面から増援のガラセクトV2が現れ基地が攻撃を受けてしまう。

 

「チッ、少し調子にのりすぎたか」

 

すると、基地から通常の戦艦を遥かに凌駕する巨大戦艦が現れる。

 

『巨大戦艦だと!?』

 

「なっ!?全長2000超え!?軽くゼネラルレビルの倍はあるぞアレ!?」

 

『あれが………地球の希望………!』

 

その戦艦はエッジや雪兎が言うようにあまりにも巨大だった。

尚、ゼネラルレビルが全長630mという事を考えればこの戦艦が如何に巨大であるかお分かり頂けるだろう

 

『ドライストレーガー、回頭!同時に連装砲、発射準備!』

 

『ドライストレーガー、回頭!同時に連装砲、発射準備!』

 

先程の指揮官と思われる女性と男性の声がするとドライストレーガーと呼ばれた巨大戦艦は各部に備えた連装砲で増援として現れた機械獣を一掃してしまう。

 

「おいおいおい………なんつう火力してんだ、あの戦艦………」

 

『とんでもないものを隠してたもんだぜ』

 

『ありがとう、エッジに傭兵の皆さん』

 

『へ………』

 

「え?」

 

『貴方が、貴方達が、ドライストレーガーを………この星の明日を守ったのよ』

 

『そんな大げさな………』

 

『大げさなんかじゃない。私達が、このドライストレーガーでそれを証明してみせる』

 

そこからはあっという間で、むしろ過剰戦力というレベルで機械獣は殲滅された。

 

「(ヒュッケバインだけじゃなくオリジナルの超巨大戦艦とか………この世界、割とヤバイ?)」

 

『やった………やったのね、私達!』

 

『はい、艦長!任務達成です!』

 

初陣が勝利に終わった事に喜ぶドライストレーガーの面々だったが、そうは簡単に事は終わってくれなかった。

 

『喜ぶのは、まだ早いみたいだぜ』

 

そこに二機の識別不明機が乱入してきた。

 

「こいつはあの時の………」

 

それは雪兎達が跳ばされてきた時に現れた謎の機体だった。

 

『そっちのも、やれるな?』

 

『やりたくないって言っても見逃してくれる相手じゃなさそうですよ』

 

「だろうな」

 

『各機は攻撃を!相手が何であろうとドライストレーガーは負けるわけにはいかないわ!』

 

そこから謎の機体を相手にする事となったのだが、機械獣とは違ったタイプの機体で、機体サイズも違ったので少し苦戦したものの何とか撃破に成功する。

 

『アンノウン、全滅しました』

 

『その正体は不明のまま………わかっている事は………』

 

『高い戦闘力………それもとてつもないほど高い戦闘力を持ってるって事か』

 

『ありがとうございました、甲児さん。直接、お礼を申し上げたいので、こちらに着艦してください。傭兵の皆さんもどうぞ』

 

『了解だ、艦長。その艦には、俺も興味がある』

 

「こちらも了解だ。乗ってきた輸送機があるからそいつも持ってきていいか?」

 

『構いません』

 

「シャル、カロリナ、先に着艦しててくれ、ネザーランドを取ってきたら俺も直ぐに合流する」

 

「わかった」

 

その後、艦長と呼ばれた女性はエッジに声を掛ける。

 

『それとエッジ………』

 

『礼なんていいぜ。俺は人間として、当然の事をしたまでだ』

 

『ううん………あなたのおかげでドライストレーガーはこうして発進できた。それにはお礼を言わせて』

 

『悪いが、そんなガラじゃないんだ』

 

ここまではいい話っぽかったのだが………

 

『でも、逃げようとするなら攻撃するわよ』

 

『へ………』

 

『軍の機体の無断使用………エッジ・セインクラウス、あなたを拘束します』

 

「(まあ、そうなるわなぁ………仮にもあの機体は軍事機密っぽいし)」

 

こうして物語は幕を開けたのだった。

*1
フォーミラ関連技術

*2
戦場のヴァルキュリア3のダハウ大尉のこと

*3
兎の品種ネザーランドドワーフラビットから

*4
杉田智和




戦闘パート終了………
続きは次回


今回のオリジナル機体紹介
ネザーランド

レイディバード級輸送機ネザーランドが正式名称。
スパロボOG系統に登場するレイディバード輸送機が元ネタの雪兎オリジナル輸送機。
MSサイズなら八機まで搭載可能な様にスペースを拡張してあり、簡単な修理・整備も行える。
実はアムドライバーの世界から持ち帰ったキュプロクスのデータも反映されており垂直離着陸まで可能とかいう地味に優秀な輸送機だったりする。
名前の由来は兎の品種であるネザーランドドワーフラビットから。


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スパロボ30③旅立ちの日

続きです。
この番外編はエッジ地上ルートで進行しています。

思ったより一話が長くなりそうなので今後はもう少しマキで進行するかもしれません。
あんましダラダラと番外編書いてもつまらないでしょうし………


ドライストレーガー格納庫

 

「エッジ・セインクラウス君………無駄な抵抗はやめたまえ。こちらの指示に従わない場合は発砲も辞さないぞ」

 

副長のレイノルドに銃を向けられつつもエッジは無抵抗に機体を降り指示に従っていた。

 

「力むのはいいがよ………誰も抵抗なんてしてないだろうが」

 

「意外ね………ヒュッケバイン30を捨てて逃げるかと思ったのに」

 

「俺は悪い事をしたつもりはないんでな。だから、逃げる必要なんてない。軍のルールではNGだとしても俺のルールではGJだったと思っている」

 

確かにあの場でエッジがヒュッケバインを動かしていなければドライストレーガーが無事に出航できたかは怪しい。

そうなれば基地がどうなっていたと考えればエッジの言い分もわからなくはない。

 

「こいつの言う通りだぜ、自治会会長………じゃなくて、艦長!」

 

「そうですよ。エッジさんが戦ってくれたおかげでドライストレーガーは発進できたんですし」

 

それを支持するようにツナギ姿の青年ジークンやオペレーターをしていた女性のリアンがエッジの擁護に入る。

 

「(若い艦長だとは思ってたが、この艦長さんが例の自治会会長だったのか………となるとホワイトベースやアークエンジェルみたいに本来の艦長ではなく、何らかの理由で艦長にならざるえなかったってとこかね?)」

 

「それはそうだけど………」

 

「みんなの気持ちはわからなくもない。だが我々は、もう任官を受けた軍人なんだ。軍人は軍人としてそのルールにしたがわなければならない」

 

「俺は軍人じゃないぜ」

 

「君は黙っていたまえ!」

 

「黙ってられるかよ。そっちのルールを押しつけてくるならこっちにも考えがあるってもんだ」

 

「や、やっぱり、抵抗するのか!」

 

「(この副長、微妙に頼りねぇ………)」

 

ピリピリとした空気になったところで二人の間に甲児が割って入る。

 

「まあ落ち着けよ、二人共。事情はだいたいわかった。俺からも彼を弁護させてもらう」

 

「甲児さん………」

 

「非常時に民間人が軍の新型に乗り込んで敵を撃墜する………過去にもそういった事例がなかったわけじゃないしな」

 

「そいつはどうなったんです?」

 

「その後も軍に協力する事で事態を有耶無耶にしたよ。本人は渋々だったけどな」

 

「アムロ・レイ、ですね?」

 

「一年戦争の英雄の!?」

 

「そっちの傭兵君は色々詳しいみたいだな」

 

「まあ、あの人は有名ですからね………貴方と同様に」

 

雪兎がそう返すと甲児は苦笑する。

そんな中、やはりというか艦長のミツバは甲児の言葉に反発する。

 

「連邦の白き流星とこんな風来坊を一緒にはできません!」

 

「(連邦の過去のアムロ・レイの扱いを知ってんのかね?この艦長さん)」

 

一年戦争で発揮したその能力を恐れた連邦軍に軟禁状態にされたり、厄介事を押し付けたりと実はあんまり扱いが良くなかったりするのはガンダムファンの常識とも言える知識である。

 

「悪かったな。宿無し、ロクデナシ、甲斐性なしで」

 

「そこまでは言ってないけど………」

 

そこからはとりあえず上位の人間に判断を仰ごうということになったのだが………

 

「その必要はない」

 

「この声は!」

 

「総員に告ぐ。私はドライストレーガー建造計画責任者のファイクス・ブラックウッド准将だ」

 

「准将とはまた大物が出てきたもんだ」

 

通信と思われるその声の主は地球連邦軍准将と名乗った。

 

「まずはドライストレーガーを無事に発進させた諸君等の健闘を讃えよう」

 

これには士官学校の生徒だった現ドライストレーガーのクルーも驚いている。

 

「状況については報告を受けている。ヒュッケバイン30を無断使用した民間人についてもだ」

 

「………」

 

その声にエッジの表情は鋭さを見せているが事を起こす気はないようだ。

 

「諸君等も認識している通り、地球連邦軍は現在、未曾有の危機を迎えている。ドライストレーガーはそれを打破するための存在であり、その慣熟は我々にとって最優先事項である」

 

おそらく新光子力研究所に協力要請を行ったのはこの准将だろうと雪兎と甲児は推測する。

 

「まだ学生であった諸君を特例で乗員に任官したのもその一つだ」

 

「(この准将、絶対只者じゃねぇぞ)」

 

いくら最新鋭艦の為とはいえ、学生を動員させる程の強権を振るったとなればその影響力はとてつもないものだ。

 

「ファイクス准将………我々の今後の作戦行動についてお聞かせください」

 

「ドライストレーガーは万能戦闘母艦であり、本艦を中心とする部隊は独立部隊としての運用を前提とする。別の言い方をすれば、既存の指令体系に本艦は組み込まれるべきではない」

 

「では………」

 

「諸君等は、当面は極東地区にてドライストレーガーの慣熟を目的とする行動を命じる」

 

「具体的には何をすればいいのでしょうか?」

 

「それを考え、最善の道を模索する事こそが諸君等に求められる事だ。ドライストレーガーに関する資料、各セクションの機能その他についての情報はメインコンピュータに送っておく」

 

要は「自分で考えろ」という身も蓋もない言葉に再びクルーが騒ぎ出すが、「もう学生ではなく軍人だ」と言われてしまい沈黙する。

そんな中、艦長のミツバは再びファイクスに問う。

 

「准将………ヒュッケバイン30を無断使用した民間人についてはいかがします?」

 

「ミツバ中佐………まずは君の見解を聞かせてもらおう」

 

「本艦の慣熟………それによる現状の打破こそが地球連邦軍における最優先事項と先程お聞きしました。事後承諾の形となりますが、ヒュッケバイン30により本艦を護衛した彼の行動もそれに則るものとして………特例により不問に処すべきだと判断します」

 

「(へぇ………)」

 

このミツバの判断に雪兎は感心する。

 

「理屈としては間違いではない。だが、ヒュッケバイン30も計画の一端であり、軍機に属するものだ。それに触れた民間人を放免するわけにはいかない」

 

「了解しました。では、彼を私の監視下に置きます」

 

「は!?」

 

「学内には他に適性な人材もいませんので彼にはヒュッケバイン30のパイロットを務めてもらいます」

 

「彼はそれに値する人間なのか?」

 

「それは、これから見極めるつもりです」

 

という訳でエッジの処遇はヒュッケバイン30のパイロットとしてミツバの監視下に置かれる事となったのであった。

 

***

 

「では、改めてお礼を言おうと思ったのだけれど………」

 

「自分達より歳下で驚いたか?」

 

「正直な事を言えば」

 

あれから雪兎達は艦長室に呼ばれ改めてミツバからお礼を言われていたのだが、彼らからしたら歳下に当たる雪兎達に驚いていた。

 

「傭兵を始めたのは割と最近だが、腕はさっき見た通りだ」

 

「カスタム機とはいえ、機械獣相手にあれだけ戦えるのであれば大したもんだ」

 

同席した甲児から見てもその実力は十分のようだ。

 

「しかし、あのジェガンは何処から………」

 

「戦場でスクラップになってたのを数機分集めてレストアしたものをカスタムしたものだが?」

 

「「えっ?」」

 

サラッと言われた言葉にミツバとレイノルドは言葉を失う。

 

「別に基地から機体を盗んだ訳じゃないんだから問題あるまい」

 

「いやいやいや!?そういう問題じゃなくて!それを自分達だけで!?」

 

「こう見えて一技術者なんでな。素性はちと訳有りで話せないが」

 

レイノルドはやはり何処か頼り無い。

 

「エッジとの関係は?」

 

「それは単に途中で生き倒れてたのを助けた縁で極東まで一緒に来たってだけだ」

 

「ああ、ソイツの言う通りだ………ってか、生き倒れてたとか言うなよ!」

 

「生き倒れ………」

 

ミツバのエッジを見る眼が少し厳しくなった気がする。

 

「で、あんたらはこれからどうするんだ?あの准将さんの話ではしばらく極東を回って艦の慣熟を行うみたいだが」

 

「その事なのだけど………雪兎君達は傭兵なのよね?」

 

「一応な」

 

「なら、私に雇われてみる気はない?」

 

「ほう」

 

「ドライストレーガーの艦外戦力は甲児さんとエッジの二人だけ。出来ればもう少し戦力が欲しいの」

 

「慣熟とは言ってもこの状勢じゃ何処で襲撃を受けるかわかったもんじゃないものな………あのアンノウンみたいなのがいるとなれば尚更に」

 

雪兎としてもドライストレーガーが今後の物語の中心になると踏んでおり、それに関与できるとなればミツバの提案は好都合とも言える。

シャルロットとカロリナが黙っているのもそんな雪兎の考えがわかっているからである。

 

「准将には私から話をつけておきます。だからお願いできないかな?」

 

「そういう事なら雇われよう。これから世話になる、ミツバ艦長」

 

「ええ、よろしくお願いするわ」

 

こうして雪兎達はまんまとドライストレーガーに滞在する権利を得たのであった。

 

「あっ、そうだ。なら艦の設備を少し借りてもいいか?」

 

「というと?」

 

「実は今使ってるジェガンカスタムは仮の機体でな。本命の機体を建造中なんだわ」

 

「「………えっ?」」

 

これには再びミツバ達が固まる。

 

「いや〜、せっかく最新の設備があるんだからそっち使った方が造るの早いかなって」

 

「へぇ、面白そうじゃないか。俺もその機体見せてもらっても?」

 

「甲児さんならむしろ歓迎するよ。というかジェガンみたいな改造じゃなくて完全な新造だから他の技術者の意見も聞きたいと思ってたんだ」

 

「すみません、雪兎は技術者としては優秀なんですけど、ちょっと発想がぶっ飛んでるといいますか………」

 

「うちのメイヴィーみたいなタイプって事ですね………」

 

その後、許可を貰った雪兎は輸送機に載せてあった未完成の機体を降ろし、甲児と意見交換を始める。

更には話を聞きつけたジークンやメイヴィーも駆けつけあっという間に意気投合してしまうのであった。




という訳で兎は平常運転でございます。
雪兎達の今後の機体については早めに出す予定なのでお楽しみに。
現状、雪兎のレイノルドへの評価は頼り無い大人です。
まあ、あの人が本気出すの後半ですから………
雪兎達が自分達の素性を明かすのは他の転移組が加入する頃になると思います。


今回オリジナルメカ紹介は新規で出た機体がないのでお休みです。


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スパロボ30④凶鳥と勇者の系譜

今回はタイトルの通りジェイデッカー関連のお話となります。
雪兎達の新型も出るよ。


あれから数日………ドライストレーガーは極東エリアを巡回しつつ慣熟航行を続けていた。

 

「にしてもコイツ(ヒュッケバイン30)、どうもおかしな造りしてんなぁ」

 

その格納庫にて雪兎はヒュッケバイン30を見上げながら呟く。

ベースは初代ヒュッケバインのようだが、最新鋭機のはずなのにパッチ・アーマーとADテープで補強・補修が行われているエクスバイン・アッシュと似たその外装もだが、ブラック・ホールエンジンと思われる主機が封印されており、補機のプラズマジェネレーターのみで稼働している点やリープスラッシャーの取り付け方法が同じヒュッケバインの系譜に当たるガリルナガンのそれに近い事等、過去のヒュッケバインシリーズをごちゃ混ぜにしたかのような妙な機体なのだ。

 

「分類もこの世界だと他にないPT(パーソナルトルーパー)………絶対何か隠してるよな、これ」

 

この戦艦ドライストレーガーもゼネラルレビルの事を踏まえてこれだけの巨大戦艦を一から建造していたとは考えにくく、何かしら“元となった何か”かヴァルストークのように“前文明が遺した設計図”が存在するのでは?と雪兎は考える。

そんな事を考えていると………

 

「こんなとこにいたのか」

 

「ジークンか」

 

ドライストレーガーの整備班のチーフメカニックであるジークン・リューが声を掛けてきた。

ジークンとは同じメカニックという事で割と直ぐに意気投合し、雪兎達の新型の開発にも手を借りている。

 

「艦長が集まれってさ」

 

「招集ってことは何かしらの任務かね?」

 

「さあ?詳しい話はブリーフィングに出ればわかるさ」

 

まだ戦力の整っていないドライストレーガーがどのような任務に参加するのかは不明だが、雪兎にはそろそろ新しい戦力が加わる頃なのではないかと予想する。

 

「そういや、次の出撃では“アレ”に乗るのか?」

 

「一応テストでは問題無しって出たし、実戦テストもしておきたいからな」

 

“アレ”とは雪兎達の新型の事で、甲児達の意見等も取り入れて微修正はしたが、元々設計は済んでおり、基礎フレームも完成していたため、この短期間で完成までいくことができたのだ。*1

ただ、シャルロットの機体は専用のサポートメカが未完成の為、完成度は六割といったところだろう。

とりあえず雪兎はジークンに連れられてブリーフィングルームへと向かった。

 

***

 

ドライストレーガーブリーフィングルーム

 

集められた面々は主要クルーと甲児………エッジは各所で雑用をしているようだ。

そこでミツバは各所から有望な戦力を掻き集めて独自の部隊を結成しようとしている旨を雪兎達に明かし、今回はその一環として東京へ向かう事を教えられた。

 

「伊豆じゃなくて東京ですか?」

 

「伊豆なら南原コネクションがある………コンバトラーVの力を借りるならその選択肢もありだろうな」

 

「やっぱりコンバトラーについても知っていたか」

 

それを放っておいて東京に向かうからには何かしらの戦力があるのだろう。

 

「そう思うのも無理はないですね」

 

「“ブレイブポリスプロジェクト”は今日まで水面下で進められていたからな」

 

「ブレイブ、ポリス?」

 

シャルロットはピンとこないようだが、一方で雪兎とカロリナはその言葉に顔に驚きを露わにしないよう必死だった。

 

「(ブレイブポリスだと!?つまりこの世界じゃガオガイガーの超AI搭載ロボの後輩がブレイブポリスになんのか!?)」

 

ブレイブポリス、それは勇者ロボシリーズ第五作目に当たる【勇者警察ジェイデッカー】の組織名で、ロボット等のハイテク犯罪に対抗すべく超AIを搭載したロボット刑事が活躍する物語で、そのボスは何と小学四年生の少年の友永勇太。

彼と勇者ロボ達の絆と戦いを描いた作品である。

 

「彼等と会う事が、私達が東京に行く目的です」

 

「(機体のOS独自仕様にしといて良かったぁ………)」

 

このジェイデッカーの世界のAIコンピュータにはフォルツォイクロンというものが採用されており、これにはハーメルンシステムというバックドアのようなものが仕込まており、これを開発したエヴァ・フォルツォイクというジェイデッカーにおけるラスボスはハーメルンシステムを使う事でシステムの仕掛けられたロボットを自分の配下にしてしまうとかいうやべーやつなのである。

まあ、元々研究の行き過ぎで非合法な人体実験やって冷凍刑にされるような人物なのではあるが………

そのハーメルンシステムは原作では超AI等の搭載ロボだけしか操っていなかったが、スパロボ時空の彼女が超AIだけをターゲットにするとは考え難いので対策は必須となるだろう。

雪兎達のジェガンカスタムや完成した新型には独自OSを搭載しているのでハーメルンシステムの影響は無いと思われる。

 

「(GGGも再編されてるみたいだが、ガオガイガーとジェイデッカーの世代逆転コラボ………スパロボだからあり得るこれがどう作用するやら)」

 

ちなみにGGGの勇者ロボ達はまだ三重連太陽系から帰還していないようでガオガイガーFINALで起こったGGG追放の影響からか新型は造られていないらしい。

 

「次世代の勇者ロボか………会うのが楽しみだ」

 

そんなこんなはさておき、雪兎は生勇者ロボと会えるとあって喜色円満の笑みを浮かべていた。

 

***

 

そんな勇者警察をスカウトすべく東京へとやってきた彼らだったが………

 

「敵機体のステルスにより、発見が遅れました!」

 

「識別信号は出ていませんが、軍の機体ではないようです!おそらくですが、日本周辺で多発しているロボット犯罪と思われます!」

 

突如ドライストレーガーの近辺に謎のロボ軍団が現れたのだ。

 

「その鎮圧も私達の任務です。各機に発進指示を!」

 

そして、それを待ちわびている人物がいた。

 

「さぁて、コイツの初陣だ!」

 

「師匠、笑みが邪悪になってる」

 

「カロリナもだよ………」

 

そう、雪兎達だ。

 

「天野雪兎、“ラフトクランズ・ブラン”。出るぞ!」

 

「シャルロット・デュノア、“シュヴァリエール”。出ます!」

 

「カロリナ・ゼンナーシュタット、“ハイペリオンGC”出る!」

 

雪兎の機体はダウンサイジングとサイトロン技術を代替技術で開発した白いラフトクランズ。

シャルロット専用パックのアンジュルグのビームエネルギーの物質化(マテリアライズ)を応用し、オルゴンの代わりにビームを物質化するという方法でソードライフルを再現し、シールドクローはクロー部分をパンツァーアイゼンのようにワイヤー式のアンカーハングにしており、ソードライフルと合わせて左右にそれらを装備している。

頭部は下級仕様のラフトクランズのようにツインアイの上にバイザーゴーグルを装着し、FAのバーゼラルドような頭部の後ろに伸びた二本のアンテナを追加しており、何処か兎を連想させるデザインとなっている。

他にも胸部のキャノン等はオミットしており、バックパックにはトールギスのようなバーニアスラスターが追加されているとかいう地味にやべー機体。

ブランは白を意味するフランス語から。

 

シャルロットの機体は見た目はカラーリングがシャルロットカラーのオレンジになったベルゼルート2号機のシュヴァリエール。

名前から判る通りエール・シュヴァリアーやブランネージュ等の機構を取り込んだ機体で、本来のショートガンの代わりにサイファーガン/ソードを小型化したサイファーエッジを腰の両サイドにマウントしている。

本来ならバスターキャノンやアルス・ノーヴァに該当するサポートメカがあるのだが、今回は間に合わなかったようだ。

 

最後にカロリナのハイペリオンGCはその名の通りハイペリオンGをベースにした魔改造機。

動力源はプラズマジェネレーター二基で、エネルギー問題をクリアしたアルミューレ・リュミエールをバックパックから伸びるサブアームで保持したシールドに搭載し、フォルファントリーも発生装置から分離させたものをバックパックから二門備える。

両腕に五連装ビーム砲とパンツァーアイゼンⅢを搭載した多目的シールド【ゴルゴネイオン】を装備している。

他にもビームナイフを取り外してアーマーシュナイダーとビームソードを組み合わせたマルチシュナイダーを腰のサイドアーマーに内蔵しているというスーパーハイペリオンの上位互換機に仕上がっている。

 

「行くぞ、皆!準備はいいな!?」

 

「やる気はばっちりです。つまみ食いをさせてもらって、ヘマするわけにはいきませんから」

 

「あっ、今日は食堂の手伝いしてたんですね」

 

「あの設備なら腕を振るい甲斐がありそうだな」

 

そんな事を話してる間にミツバから号令が掛かる。

 

「各機、攻撃開始!犯罪者ロボットから、東京を守ります!」

 

そこからは各機散開して敵ロボットを相手にする。

 

「(コイツはデスマグネか………確か、ドクトル・ガウスが造ったロボだったはず。スパロボらしく量産されてはいるが………)ブランの敵じゃねぇな………雑魚は雑魚らしく糧になりやがれ!」

 

両手に展開したマテリアライズソードライフルを持ち、数発牽制で撃ち込んでからマテリアライズしたビームソードで斬りつけ胸部のメインコイルを叩き斬る。

 

「メインコイルがなきゃ鈍足な的だからな!」

 

そのまま壊れて剥き出しの胸部にビームを撃ち込んで撃破する。

 

「そこっ!」

 

シャルロットもオルゴンライフルを元にしたマテリアライズライフルでデスマグネを撃ち抜いている。

 

「ヒュ〜、やるねぇ」

 

しかし、そこでトラブルが発生する。

 

「このエリアに輸送機が接近!どうやら追われているようです!」

 

「(来たか)」

 

リアンの言葉通り、戦闘中域に一機の輸送機とそれを追ってきたデスマグネが現れる。

 

「あの機体だけ動きが良い………となれば有人機か」

 

その有人機と思われるデスマグネの磁力ビームが輸送機に被弾し、輸送機は不時着を余儀なくされる。

そして、ガウスが勇者ロボの引き渡しを要求するも同乗していた冴島総監に拒否され、ガウスは街を攻撃し始める。

 

「各機は輸送機の救出を!急いで!」

 

そう指示を飛ばすミツバだったが、ガウスは各機をその場に釘付けにしようと攻撃を仕掛けてくる。

 

「艦はやらせない!」

 

だが、ドライストレーガーの近くにはカロリナが控えており、アルミューレ・リュミエールを展開してそれを阻む。

雪兎はデスマグネを振り切ろうと思えば出来たのだが、これからの展開を予想して最悪の場合は駆けつけれるようにしつつ事態を静観する。

そして、その予想通り、“彼”は現れた。

 

「やめろ!」

 

輸送機とデスマグネの間に立ち塞がったのは一人の少年だった。

 

「子供だと?」

 

「(来たか、友永勇太)」

 

「あれは………友永勇太君か!」

 

友永勇太。後のブレイブポリスのボスになる人物にして、主役ロボのデッカードに心を教えた少年である。

 

「デッカードは僕が渡さないぞ!」

 

「笑わせてくれる!子供が、このデスマグネに向かってくるか!」

 

「こ、怖くなんてあるものか!僕は………僕は勇気を持って強く生きていくんだ!」

 

「(そう、その勇気こそが勇者の何よりもの力………あぁ、この名場面に立ち合えて感激だぜ!)」

 

そんな勇太に内心感激しつつ、雪兎はこっそり輸送機へと機体を近付ける。

ベストポジションでその光景を撮る為ではなく、勇太をいつでも守れるように………のはずである。

 

「デッカード!僕だ………勇太だ!僕の声が聞こえるだろう!?その飛行機に乗ってるんだろ、デッカード!まだ眠っているのか!」

 

既にデッカードはメモリを初期化され勇太の事は覚えていないはず………しかし、勇太は呼び掛ける。

 

「目を覚ますんだ、デッカード!目を覚まして戦うんだ!」

 

「うるさい奴め!痛い目に遭いたいようだな!」

 

そんな勇太にガウスはデスマグネを接近させて叩き潰そうとする。

 

「(チッ、そろそろ動かないと不味いか?)」

 

「デッカード………!デッカード………デッカード!デッカードォォォォ!!」

 

「うぉおおおお!!」

 

その時である。輸送機の中から一体のロボットが飛び出してきてデスマグネを突き飛ばしてしまう。

 

「ホールドアップ!ブレイブポリス、デッカードだ!」

 

そう、それは勇太の呼び声に応じて目を覚ましたデッカードだった。

 

「デッカード!」

 

「勇太………君の声が私を目覚めさせてくれた」

 

「そんなバカな!シーケンスを無視してデッカードが起動した!」

 

「あの少年のためにか………」

 

「おまけにデッカードは彼の事を覚えている………再フォーマットしたはずなのに………」

 

更に言えばデッカードのスペックは想定されたものを大きく上回る数値を叩き出している。

 

「心ってのはメモリを消したくらいじゃ消えやしないって事か」

 

だがガウスはデッカードを再び攻撃を再開する。

その攻撃はデッカードの後ろにいる勇太にも及びそうになるが、透かさず雪兎がシールドを構えて勇太の前に現れブロックする。

 

「デッカードとか言ったな!この子の事は俺に任せろ!」

 

「感謝します!」

 

そこへ冴島の判断でデッカードの真の力を発揮する為のサポートメカ、ジェイローダーが発進させられる。

 

「(えっ!?ここでジェイローダー!?二話の合体もここで見せてくれんの!?)」

 

死んでも治らなかったメカヲタ、まさかのサプライズに表情を隠せなくなっている。

しかし、デッカードは心を得たせいで超AIのプログラムを呼び出す機能がバグを起こしており、正常な合体ができなくなっていたのだ。

それによるクラッシュを恐れ、それによって勇太や冴島達を守れない事をデッカードは何よりも危惧していたのだ。

 

「失敗を恐れるな!デッカード!」

 

そこへ雪兎は堪らず口を挟む。

 

「お兄さん?」

 

「生まれたばかりのお前が失敗を恐れるのはよくわかる。だがな!この場でこの子やあの輸送機を守れるのはお前だろ、デッカード!」

 

「………!?」

 

「お前も勇者の名を受け継ぐ者なら………このくらいの困難、足りない部分は勇気で補ってみせろっ!」

 

「先に言われちまったな………そうだ、デッカード。お前が勇者なら乗り越えてみせろ!足りない分は勇気で補え!」

 

先代の勇者を知る甲児は雪兎の啖呵に苦笑しつつも同意する。

 

「勇気………勇気………私の超AIに刻まれた言葉………」

 

その間に勇太に冴島は専用の警察手帳型デバイスを手渡す。

 

「勇太君!君がデッカードを合体させるんだ!キーワードは………」

 

そして、そのキーワードを託された勇太はデッカードを励まし合体を決行させる。

 

「ブレイブアップ!ジェイデッカー!」

 

その勇太の掛け声と共にデッカードはパトカーモードとなり飛び上がり、変形したジェイローダーの胸部へと合体………ジェイデッカーへの合体を成功させる。

 

「あれが、ジェイデッカー………」

 

「勇気ある者………新たな勇者の誕生か」

 

「兜甲児さん、それからそこの貴方」

 

「雪兎、天野雪兎だ」

 

「天野雪兎さん………あなた達の言葉にも感謝します」

 

「俺の力じゃない。お前の先輩達の言葉さ………なっ、雪兎?」

 

「あ、ああ………」

 

実は割と勢いで言ってしまったとは言い出せず、甲児の助け舟に乗ることにする。

 

「先輩………」

 

「ぬうう………!依頼主の求めていたのはこれの事だったのか………」

 

ガウスは乗機を一度下げて態勢を立て直そうとするが、雪兎がそれを逃さない。

 

「逃がすかっての!」

 

シールドに内蔵したシールドハングでデスマグネの足を掴んでそれを引き戻す事で転倒させてしまったのだ。

 

「なっ!?あのサイズで何てパワーだ!」

 

「今だ!やれ、ジェイデッカー!」

 

「はい!」

 

「ジェイデッカー!勝負を決めるんだ!」

 

「ジェイ、バスターッ!」

 

そこへジェイデッカーがジェイバスターを発射しデスマグネを破壊する。

 

「首謀者は脱出したようです!」

 

「大丈夫よ」

 

リアンがガウスが逃げるのを危惧するが、ミツバはそれも大丈夫だと諭す。

そのミツバの言葉通り、脱出したガウスの元にジェイデッカーが立ち塞がる。

 

「ドクトル・ガウス!器物破損、強盗、脅迫、騒乱罪の現行犯で逮捕する!」

 

そう、ジェイデッカーは勇者“警察”なのだから。

こうして新たな勇者のデビュー戦は幕を閉じたのであった。

*1
それでも普通と比べておかしい速度なのだが




雪兎、我慢できずに色々やらかしました。

今回のオリジナル機体紹介
ラフトクランズ・ブラン

雪兎がスパロボ世界にて使用する専用機。
見た目はサイズダウンさせたラフトクランズ・アウルンではあるが、ラースエイレムもオルゴンクラウドも搭載していないので色々と元のラフトクランズとは異なる。
見た目の変更点としてはカラーリングが白とライトグレーになっており、爪先と膝横の突起をなくしてあり、頭部は一般機のラフトクランズにバーゼラルドのような後部に伸びるアンテナを取り付けた専用仕様となっている。
オルゴン系統のマテリアライズ機能はアンジュルグのイリュージョンアロー等の技術を応用して再現している。
ショルダーキャノンはオミットし、バックパックにトールギス系の大型スラスターを取り付けた。
武装は片刃の専用ソードライフルが2つとシールドクローのクロー部分をアルトロンガンダム(EW)のドラゴンハングにしたシールドハングをカロ=ラン機のように両腕に装備する。
他にも予備武装としてビームソードも腰のサイドアーマーにマウントしてある。
胸部のオルゴンキャノンもオミットしており、その分機体のフレーム強度と人体に近い可動域を強化してある。
ソードライフルは刃を外側にして連結することでビームの刃で再現したオルゴンソードFモードを使え、ツインバスターライフルのように連結することも可能。
シールドハングはワイヤーアンカー式で射出が可能で、炸薬式パイルバンカーも内蔵している。

武装
ソードライフル✕2
シールドハング✕2
ビームソード✕2


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スパロボ30⑤超電磁と電脳超人

今回は2話分一気に進みます。

登場作品はサブタイトル通りです。


あの戦いの後、ガウスは無事に逮捕され、勇太は原作通りデッカード達ブレイブポリスのボスである最年少刑事*1となり、ミツバの要請でドライストレーガーの協力者となった。

 

「よろしくな、勇太、デッカード」

 

「雪兎兄ちゃんもよろしくね」

 

「雪兎さん、改めて感謝を………あの時、勇太を守っていただいた上に叱咤激励してくださってありがとうございます」

 

「うっ………今思うと小っ恥ずかしい事言った気がする」

 

「そんな事無いぜ、雪兎。実際、あの雪兎の言葉があったからデッカードは一皮剥けたようなもんだからな」

 

「甲児さん………」

 

雪兎が勇太やデッカードと話していると甲児がやってくる。

そして、勇太には聞こえないように雪兎に耳打ちする。

 

「まあ、何で雪兎があの言葉を知ってたのかは気になるがな」

 

「うっ………」

 

「別に疑ってる訳じゃないさ………隠し事の一つや二つあるのはおかしい事じゃないしな」

 

追求はされるだろうとは思っていたが、幸いこのことに気付いたのは甲児だけだったため深く追求する気は無いらしい。

 

「いつかちゃんと説明しますから」

 

「そうか」

 

この話はここまでとなり、ミツバ達も交えて交流を深める事になった。

そのいつかは割と早くに訪れる事になる。

話は変わってドライストレーガーの次の目的地は伊豆で、今度はコンバトラーVを味方に引き入れようという事なのだが、雪兎には一つ疑問があった。

 

「南原コネクションはあるのにビッグファルコンが無いってどういうことだ?」

 

そう、スパロボではコンバトラーVとセットで登場するのがお馴染みのボルテスVの存在がこの世界には影も形もなかったのだ。

具体的な名前は出さずに皆に探りを入れてもボルテスVどころかビッグファルコンの名すら出てこなかったのでこの世界にはボルテスVは存在しないという確証しか得られなかった。

他にわかっているのはキャンベル星人との戦いは去年………ゼロレクイエム前に終結している事くらいである。

 

「キャンベル星人との戦いの後となると戦力としては頼もしいだろうな」

 

雪兎はゲームでは他に使いたいユニットが多くてコンバトラーを二軍扱いしていたが、リアルとなればきっと頼もしい味方となってくれるだろう。

そう信じて一行は伊豆へと向かったのだが………南原コネクションが襲撃を受けていると聞き現場へ急行する事となった。

 

***

 

現場に到着すると、当初南原コネクションを襲撃していたというネオジオン残党はコンバトラーVに撃退されており、代わりにまたも機械獣が襲撃を仕掛けていた。

 

「また機械獣か」

 

「だが、あの機械獣は………」

 

「タイターンG9………」

 

過去に倒されたはずのワンオフタイプの機械獣の出現に皆は動揺を隠せない。

コンバトラーVと協力することでその為の機械獣は倒す事ができたが、タイターンG9には逃げられてしまう。

 

「タイターンG9クラスの機械獣がいるって事は………」

 

「最悪を想定しておいた方が良さそうだな」

 

その後、南原コネクションにて四ツ谷博士らと面会を経てミツバは無事にバトルチームの勧誘に成功したのであった。

 

「バトルチームか………」

 

「よっ、あんたがあの白いのに乗ってた人だな?」

 

「ああ、天野雪兎だ。よろしく」

 

「葵豹馬だ。よろしくな、雪兎!」

 

「いきなり呼び捨てかよ………まあいいけど」

 

割と単純な性格をしてはいるが、バトルチームをまとめていたリーダーなだけはあり、あっさり雪兎と打ち解ける豹馬。

 

「あ、あの!」

 

そこへバトルチームの頭脳である北小介もやってくる。

 

「小介もきたのか」

 

「あの機体………雪兎さん自身が設計開発をしたと聞いたのですが!」

 

「そうなのか!?」

 

「ああ、ブラン達は俺が設計してドライストレーガーの施設を借りてついこの間完成させたんだ」

 

「すげぇんだな、雪兎って」

 

「小介だっけか、君もアメリカで飛び級で大学に留学してた天才だって聞いたぜ」

 

「そ、そんな………」

 

そこからは三人でロボットについて語り始める。

 

「シャルロットも苦労してるのね」

 

「ちずるも彼とは苦労したって聞いてるよ?」

 

「そうなのよ、豹馬ったらね!」

 

一方でシャルロットとちずるはお互いのパートナーとの苦労話で盛り上がっていた。

 

「青春だね〜」

 

「甲児さんは甲児さんでさやかさんとどうなの?」

 

「へ?そ、それはだな………」

 

そんな様子を他人事のように見ていた甲児もカロリナにさやかとの仲を指摘されるとあたふたとし始める。

こうしてバトルチームとも無事に打ち解けたのだった。

 

***

 

太平洋沖

 

メインコンピュータの指示した座標へと向かっていたドライストレーガーだが、突如として艦のコントロールが効かなくなり、ドライストレーガーは勝手に進み出してしまう。

そして、霧に包まれたかと思えば見知らぬ街へとやってきてしまった。

更にはドライストレーガーが突如航行不能になってしまい、外部とも連絡が取れなくなってしまったのだ。

判っているのはその地名がネリマ市ツツジ台という事だけ。

調査の為に各員が手分けして街を回ってみたものの、空に浮かんでいるドライストレーガーには住民は反応を示さず、街の至る所から見える怪獣と思われる存在も見えていないという有様であった。

 

「昨日はボロボロになってたのに朝には元通りになってる………」

 

「まるでフィクサービームだな」

 

「フィクサービーム?」

 

「昔の特撮番組であった破壊されたものを復元するビームでな………でもあれは電脳空間だから出来た芸当だし」

 

雪兎達も調査に赴いたが、これといった収穫はなかった。

が、雪兎は一つだけ気になるものを見かけていた。

 

「ジャンクショップ“絢”?」

 

その響きが何か引っかかりを感じるも、街に怪獣が現れてしまったのでその引っかかりを解消出来ぬままドライストレーガーへと戻る事になったのだが、未だにドライストレーガーは機能不全で格納庫のハッチも開かない。

なのでハッチを爆破してでも出撃しようとしたのだが………

 

「何だあの巨人は………」

 

「まるで特撮ヒーローだな」

 

「(ちょっとまて!?微妙にデザインは違うがあれは間違いなくグリッドマン!?)」

 

そう、その巨人は雪兎が知る“電脳超人グリッドマン”に酷似していたのだ。

 

「(という事はここは………現実世界じゃない?)」

 

そうこうしている間にグリッドマンと思われる巨人は街に現れた怪獣を倒してしまう。

しかし、新たな怪獣が現れ、グリッドマンのビームを無効化してピンチに陥ってしまう。

その時、何処からともなく飛来した剣を手にしたグリッドマンの反撃を受け怪獣は後退し、先程倒したのと同じタイプの怪獣が複数出現する。

 

「(あの剣、やっぱりグリッドマンソードに似てやがる)」

 

そこでドライストレーガーのシステムが突然復旧したため出撃することになる。

 

「行くぞ、みんな!巨人を援護して、怪獣退治だ!」

 

「あのような巨大なバイオ兵器が存在しているとは………」

 

「………多分アレはそういうものじゃない」

 

「どういう事ですか?」

 

「すまん、混乱させるような事を言った………みんな、あの銀色のやつにはビーム兵器は使わないように」

 

「あの巨人のビームだけじゃなくて俺達の武器も効かない可能性があると?」

 

「ああ、多分アレはそういうコンセプトの怪獣だ」

 

「わかった。皆もあの怪獣にはなるべく物理攻撃を仕掛けてくれ!」

 

こうして怪獣達との戦いになったのだが、最初に現れたタイプの怪獣は首が脆いようでそこを突くことで撃破していくのだが、雪兎は怪獣から感じる違和感からその正体について察し始める。

 

「(首の強度不足………各所の針金みたいな突起や爪………間違いねぇ、コイツの正体はフィギュアだ!)」

 

特撮のグリッドマンの時は藤堂武史という少年のデザインしたプログラムをカーンデジファーが怪獣へと変貌させていたが、おそらくこの世界では誰かが造った怪獣フィギュアを実体化させているのだろう。

 

「(だとすればグリッドマンのビームに対するメタな怪獣を出してきたのにも説明がつく)」

 

結局、銀色の怪獣はグリッドマンの剣で両断され撃破されてしまった。

 

「終わったみたいだな」

 

「巨人は消えてしまいましたが」

 

その後、グリッドマンは姿を消してしまい、ミツバの要望でこの街についてもう一度調査をする事となった。

その際、勇太と雪兎の意見が一致し、ジャンクショップ絢を訪れると雪兎が知る“ジャンク”に酷似したコンピュータの前に三人の少年少女がおり、その画面に映っていたグリッドマンの姿から彼らが今回の協力者なのだと知る。

しかも、ミツバはグリッドマンに部隊に協力してもらえるよう要請し始めた。

その後、三人はグリッドマンとの連絡要員という形でドライストレーガーに乗り込む事となり、もう一人キャリバーと名乗る人物も協力者として同行する事になった。

また、グリッドマンの入ったジャンクは軍の予算で買い上げてドライストレーガーに持ち込まれる事となる。

 

「(まさかグリッドマンまで参戦するとか今回のは一体どうなってんだか………)」

 

響裕太、内海将、宝多六花の三人とメカニックを名乗るキャリバーなる人物。

おそらく裕太という少年がグリッドマンの合体しているのだと雪兎は予測しているが、もう一つ内海という少年がウルトラシリーズについて随分と詳しかったのが印象的ではあった。

 

「行動範囲制限もなくなるみたいだし、これからが本番ってとこか?」

 

戦力も集まり出した事から本格的に物語が始まる予感を感じ、雪兎も気を引き締めるのであった。

*1
階級は警部




雪兎は前世で特撮のグリッドマンは見ていますが、GRIDMANの方は見れずに転生してしまったのでグリッドマンの続編のようなものとは判っても原作知識はありません。
というか、参戦作品のいくつかは原作知識があったりなかったりなので本編よりメタ知識は使えなかったりします。
それでも初見でグールギラスの正体を見破ったり、デバダダンのコンセプトを見抜いたりはしています。


次回は異世界からの客演陣等が登場予定。


今回のオリジナル機体紹介
シュヴァリエール

雪兎がシャルロット専用機として作成した機体。
設計はベルゼルートをベースにエール・シュヴァリアー、ブランシュネージュをミックスしている。
基本的にはベルゼルートと同じなのだが、カラーリングは青い部分がシャルロットのパーソナルカラーのオレンジに変更され、オルゴンライフルはアンジュルグのイリュージョンアローを応用した物質化光学武装(マテリアライズビーム)を使用したマテリアライズライフルとなっており、ショートランチャーの連結無しでAモードを使用可能にしてある。
ショートランチャーの代わりにエール・シュヴァリアーのサイファーソードを小型化したサイファーエッジを2本装備している。
ベルゼルート・ブリガンディのバスターアーマーとブランシュネージュのアルス・ノーヴァを参考に作成されたアーマードガンナーというサポートメカが存在するのだが、現状未完成。


武装
ホーミングミサイル(膝)
マテリアライズライフル✕1
サイファーエッジ✕2


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スパロボ30⑥ドライクロイツと異世界のロボット

兎、とうとう混ぜるな危険の“彼”と出会ってしまいます………
前にも一度話題には出してますが、彼とは完全に同類です。


行動範囲制限が解除になるにあたり、ミツバは部隊名を【ドライクロイツ】と命名し、その目的を【地球統一】だと語った。

それは現状の地球の内乱状態では侵略者から地球を守るという目標が達成できない。

ならば地球圏の各勢力を統一させ、外なる敵に立ち向かう体制を築くのが重要なのだと言う。

その為ならは世界征服も辞さないというその覚悟に雪兎は改めてミツバへの協力を誓う事にする。

 

「俺もその方針を支持させてもらう。内ゲバしてる間に地球が滅ぼされました、じゃ困るからな」

 

「ありがとう」

 

「で、とりあえずは地球上で戦力集めを続行か?」

 

「ええ、まだ宇宙に上がるには不安要素が多いもの」

 

聞けばブレイブポリスの新たなメンバーの合流もあるのだという。

 

「(次のメンバーとなるとビルドチームか)」

 

そんな時、ラサの辺りでDBD(次元境界線歪曲現象)が発生したとの方向があり、そこで戦闘が起こっていると聞いて現場へと向かう事となったのだが、そこにいたのは雪兎にとって驚愕する存在だった。

 

「サ、サイバスターだと!?」

 

そこにいたのは“風の魔装機神サイバスター”だったのだ。

 

「雪兎君、あの機体を知っているの?」

 

「あっ………えっと………詳しい事は彼にも一緒に説明したいので、とりあえず艦に収容してあげて下さい。あっ!あの機体には近付き過ぎないように通達しておいて下さい」

 

「どうして?」

 

「近付き過ぎると倒れるんで………下手すると命に関わるレベルで」

 

「………わかったわ」

 

という事で収容したサイバスターのところへ向かうと雪兎の予想した通りの人物がそこにいた。

 

「やっぱマサキ・アンドーかよ………」

 

「俺の事を知ってるのか?」

 

「それなりにな………ところで、この中で聞き覚えのある単語はあるか?」

 

雪兎がマサキに告げた単語は過去の彼が参戦したスーパーロボット大戦に纏わるもので、その聞き取り調査の結果、このマサキはαシリーズと呼ばれるシリーズからやってきた事が判明した。

 

「というか、何でお前がそんな事知ってやがるんだ?」

 

「サイバスターやマサキさんについても事前に知っていたようですし………」

 

「前に言ってた話せない事が関係してるのか?」

 

「もしかして、雪兎兄ちゃん達も異世界人、とか?」

 

マサキだけでなくミツバや甲児からも理由を問われ、勇太の言葉がトドメとなった。

 

「そんなばかなことが………」

 

「そんなばかなことがあったんだよ………勇太、正解だ。やっぱお前の洞察力は警察向きだよ」

 

「「え、えぇえええ〜!?!?」」

 

こうして雪兎達は自分達がマサキと同様にDBDの影響でこの世界にやってきた事、そこから今日に至るまでの経緯を説明した。

尚、彼らが雪兎の知るアニメやゲーム等の二次元作品で知り得た知識という話は雪兎なりに「並行世界の事を何らかの影響で受信した人が無意識に創作したのではないか?」という推論を立てて何とか納得してもらった。

 

「………という訳だ」

 

「マジか………」

 

「なるほどな………俺達の事を色々知ってたのはそういう理由だったのか」

 

「とはいえそれらがこの世界の皆と完璧に合致するかと言えばそうではないし、さっきマサキがあちらの甲児と知り合いだったって話してたに聞いたように同じ人物でも複数の可能性が存在するんだ。だからある程度は予測できる事もあれば全く知らないのも存在するって事は覚えておいてほしい」

 

「ふ〜ん」

 

「では、雪兎君達も元の世界に帰る方法を探す為に?」

 

「いや、そっちに関しては宛てはあるんだが」

 

「あるんだ………」

 

「俺達がこの世界に喚ばれたのには何か意味があるはずだと思ってな。それを解決しない内にハイさようならってのは違うかなって」

 

これは奇しくもミツバがツツジ台で取った行動と似ていた。

 

「では………」

 

「原因を突き止めるまではこのままドライクロイツの一員でいさせてほしい」

 

「ええ、改めてよろしくね、雪兎君」

 

こうしてマサキの加入と雪兎達の正体の暴露が行われたのだが、転移してきたのは彼らだけで終わらなかった。

 

「グルンガストにヴァンアインまで………」

 

しかもイルムは若い頃*1ときたもんだから雪兎は頭を抱える。

 

「グルンガストはまだわかる………でも、ヴァンアインっておい!」

 

グルンガストは過去にも別パイロットで追加ユニットとして存在したことはあった。

しかし、ヴァンアインはアプリ版のXΩの主人公機で雪兎もそこまで詳しいシリーズではなかった事とヴァンアイン自体が火星の遺跡発掘された未知の機体とあって色々と未知数なのだ。

 

「あっ、イルムさん、ウチのシャルに粉かけたら容赦しないんでよろしく」

 

「えっ!?俺の印象どうなってんの!?」

 

「防塵装置二重で付けても叩けばホコリが出てくるプレイボーイ?」*2

 

その後もDBDは多数観測され、ほとんどは空振りに終わったものの、跳ばされてきた面々からの聞き取り調査でやはり何者かの意思を感じるとのことだ。

ソウルにて見つかったのはアルトアイゼン・リーゼとキョウスケで、聞けばライン・ヴァイスリッターに乗っていたエクセレンも巻き込まれたというのでそのうち遭遇するかもしれない。

尚、彼はCOMPACTシリーズからの参加のようで、豹馬の事を知っていた。

 

「キョウスケ・ナンブだ。よろしく頼む」

 

次に台北で龍虎王とクスハにブリッドの二人。

彼らはαシリーズから来たようでマサキとは面識があるようだが、キョウスケとは初対面のようだ。

 

「(OGシリーズやってた身としては面白いような複雑な感じだな)」

 

聞けば強い念動力者であるクスハは跳ばされてきた直後の戦闘では何か強い気配に視られているような感じがした言っていた。

 

「で、次は何処へ向かうんだ?」

 

「豪州のアリススプリングス。例の異世界軍に接触するんだって」

 

「ブルーホールか………α3やOGのクロスゲートみたいなもんっぽいからなぁ。気にはなってたんだ」

 

「魔法を使うロボットもいたみたいだし、楽しみ」

 

「サイバスターは俺らが触れたらプラーナ吸われちまうからなぁ………にしても魔法を使うロボットか。いくつか心当たりはあるが………」

 

聞いた限りでは黒い騎士のような姿をした背にマウントされた杖のようなものから魔法を撃ってくるのだという。

 

「(どう考えても幻晶騎士(シルエットナイト)だよな、それ………)」

 

雪兎が知る限り、そんな特徴を持つ機体はナイツ&マジックという『小説家になろう』から書籍化した作品に出てくる機体であり、その中でもジャロウデク王国が使用していたティラントーという機体なのだ。

ミツバは対話による解決を試みようとしているが、ジャロウデクにそれが通じるとは雪兎は思えなかった。

 

「まあ、これも経験ってことかね」

 

そうこうしている間に異世界(ジャロウデク)軍と接触しているという連邦軍の部隊との干渉地区に向かった。

 

***

 

現場に到着するとやはりそこにいたのはジャロウデク軍のティラントー。

しかも連邦軍へ攻撃を仕掛けているようだ。

とりあえず連邦軍を下がらせてミツバが敵指揮官に対話を試みるのだが、相手はジャロウデク軍銅牙騎士団のケルヒルトであり、彼女は対話等するつもりはなく先制攻撃を仕掛けてきた。

 

「こ、攻撃してきた!」

 

「やっぱこうなったか」

 

結局迎撃することになり各機がティラントーへと向かう。

レイノルド曰く、幻晶騎士は射撃攻撃に耐性があるらしく、近接攻撃の方が有効なのだが、近付くにはあの独特な魔法攻撃を掻い潜る必要がある。

 

「くらえ!」

 

「パワーはあるようだが、動きに柔軟性がないな!」

 

向かってくるティラントーのメイスをあっさり躱した雪兎はソードライフルをソードモードにし、すれ違いざまに左腕を斬り飛ばし、バランスを崩してつんのめったところを背面に回って背面武装を破壊する。

 

「しぶといね!こっちの世界にここまで骨がある連中がいるとは思わなかったよ!」

 

これまではジェガンやイチナナ式を相手にしていたようで、ドライクロイツのような多種混成部隊との交戦経験は無いようだ。

 

「だが、状況はこちらが有利!初手をミスったのが致命的だったね!」

 

射撃攻撃が有効でなく、先手を許してしまったのが悪かったのか、迫りくるティラントーの数にこちらが押されそうになったその時、ケルヒルトのティラントーに魔導法撃が襲いかかる。

 

「法撃!?ということは………“お前”もやっぱいたか、御同輩」

 

そこに現れたのは蒼い鬼武者のような空を飛ぶ幻晶騎士と四足歩行のケンタウロスのような異形の幻晶騎士だった。

すると、鬼武者のような幻晶騎士はケルヒルトのティラントーへと一気に距離を詰めて斬りつける。

そして、何やら興奮した様子でその鬼武者………イカルガのパイロットであるエルネスティはミツバに協力を申し出た。

そんなエルネスティにケンタウロス型のツェンドルグのパイロットである双子のアーキッドとアデルトルートの二人が大丈夫なのかと問うが、エルネスティの答えは単純明快だった。

 

「あんなにかっこいいロボットを動かしてる人達が悪であるわけがありません!」

 

「雪兎………あの子って」

 

「言ったろ、御同輩だって」

 

そう、このエルネスティという少年は雪兎と色んな意味で同類で、“死んでも治らなかったメカヲタク”なのである。

そして、彼が興奮しているのもスーパーロボット大戦という彼からしたら楽園のような世界に来れたからである。

 

「やっぱ生で見ると迫力がダンチだよなぁ」

 

「そこの貴方!」

 

「うん?俺か?」

 

そんな中、エルネスティは雪兎へと通信を繋いできた。

 

「中々に良い機体をお持ちのようですね!」

 

「そちらさんもいいセンスしてやがるじゃんかよ」

 

「ありがとうございます!後で思う存分語り合いませんか!?」

 

「ノッた!」

 

この時、ドライクロイツの面々は思った「あれ?この二人って出会わせちゃいけなかったような気がするんだが?」と。

 

「エルネスティ、ついて来い!さっさと片付けるぞ!」

 

「エルで構いませんよ、雪兎さん!」

 

あっという間に意気投合し、自己紹介も済ませた二人は初対面とは思えないコンビネーションでジャロウデク軍のティラントーを解体し始める。

 

「その機体!」

 

「僕達がもらい受けます!」

 

「うわぁ………エルが二人になったみたいだ」

 

「ズルい!私達も行くよ、キッド!」

 

「はいはい」

 

「僕達も援護するよ、カロリナ」

 

「合点承知」

 

そんな二人にアーキッドとアデルトルート、シャルロットにカロリナも追従する。

 

「何なんだよ、こいつらは!?」

 

「だ、脱出する!」

 

「馬鹿な!馬鹿なぁああああ!?」

 

そうしてジャロウデク軍を削っていると、ツツジ台で遭遇した怪獣達が突如現れてドライストレーガーを攻撃してくる。

 

「魔獣!?」

 

「あれはどちらかというとウルトラシリーズの怪獣に似ていますね」

 

「やはりお前もそう思うか、エル」

 

「ええ………なるほど、雪兎さんとは別の意味でも話し合いが必要ですね」

 

「その為にもさっさとこいつらを片付けるぞ」

 

「はい!」

 

「くっ………フレメヴィーラの鬼神と同レベルの動きをする白い幻晶騎士だと!?」

 

その連携攻撃に流石のケルヒルトも押され気味となり、エルネスティ率いる銀凰騎士団とドライクロイツが合流した事を本隊に報告すべく撤退していった。

残った怪獣軍団はグリッドマンやグルンガストや龍虎王といった特機(スーパーロボット)が蹴散らしてくれた。

その後、ホクホク顔でティラントーの残骸を回収した雪兎とエルはそのままドライストレーガーへと戻るのであった。

 

***

 

「ああ………!格納庫に並ぶロボット達!これぞ僕が夢に見た光景!なんという僥倖!なんという幸運!天国はここにあったのですね!」

 

「わかる、わかるぞ、エル!」

 

「うわぁ………実際並ぶとエルそっくりだな、あのお兄さん」

 

「うぅ、エル君………」

 

「アデルトルートちゃんだっけ?ごめんね、ウチの雪兎が………雪兎、多分エルネスティ君と同じ大のロボット好きだから」

 

「ああ、やっぱエルの同類だったか………」

 

ドライストレーガーの格納庫に並ぶ数多のロボット達に興奮を隠せないエルとそれに深く同意する雪兎。

並んでいるその姿は白と銀という髪色の違いはあれど、同じようにロボット達に青い瞳を輝かせるその姿はまるで兄弟のようですらあった。

尚、エル達の他に彼らの幻晶騎士を整備しているダーヴィドとバトソンもドライストレーガーに合流し、事情を聞けばジャロウデクはやはりクシェペルカへ侵攻をしており、その救援として銀凰騎士団がフレメヴィーラから派遣されたのだが、ジャロウデクが他の勢力と協力してブルーホールのあちら側で何かをしているのを調べていたらこちらに跳ばされたのだという。

それからエル達銀凰騎士団もドライクロイツに協力してくれる事となった。

 

「となればまずは宙間戦闘に対応できるように幻晶騎士を改修する必要があるな」

 

「ですね!親方!バトソン!こちらのメカニックの方々から色々教えてもらい幻晶騎士を改造しましょう!」

 

「あ〜、また始まりやがった………」

 

ということでまず始まったのは幻晶騎士の宙間戦闘対応改修である。

 

「エル君、楽しそう………」

 

「アディちゃん、苦労してるんだね」

 

「シャルロットさん………」

 

楽しそうに幻晶騎士を弄りだした雪兎とエルに除け者にされたアディをシャルロットが慰め、お互いにメカヲタクのパートナーを持つ者同士とあって二人もすぐに仲良くなるのであった。

*1
第四次スーパーロボット大戦

*2
スパロボアンソロジーネタ




DLCの面々も程々に集めつつ進行していきます。
次回はもう一つの異世界ロボ(?)と兎の地雷しかないあの国に向かいます。


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スパロボ30⑦新たな勇者王と地雷国

今回、ちょっと過激な表現がありますのでご注意下さい。
また、エルネスティに関しては独自設定が加わっていますが、“スパロボ30のエルネスティ”としての設定です。



「なるほど、雪兎先輩も転生者でしたか」

 

「いや、こっちからしたらそっちが転生モノの先輩になるんだが?」

 

ドライストレーガーの雪兎に与えられた一室にて雪兎とエルはお互いが転生者である事を明かしていた。

 

「あ〜、やっぱり雪兎先輩は覚えてないんですね」

 

「どういう事だ?」

 

「こう言えばわかりますか?“雪人”先輩」

 

「!?ちょっと待て、って事はお前………俺の高校の後輩の倉田なのか!?」

 

「あっ、覚えててくれたんですね!先輩」

 

「あそこまでロボで語り合える後輩をわすれられっかよ」

 

どうやら雪兎の前世である村上雪人とエルの前世である倉田翼は高校時代の先輩後輩に当たるらしい。

雪人は高校時代はロボ研に所属していたのだが、三年時に入ってきた新入部員だったのがエルこと倉田翼だったのだ。

 

「うわぁ………あの世界、リアルで未来に起こってた事も異世界転生モノなら作品化しちまってたのかよ」

 

「みたいですね………まさか先輩もISの世界に転生していたとは!」

 

「俺としては倉田がナイツマのエルだった事の方が衝撃なんだが………」

 

雪兎からすると高校卒業後は疎遠になってしまったので今の今まで忘れていたが、エルの方はちゃんと覚えていたようだ。

 

「ところでナイツマとは?」

 

「うん?お前もしかしてナイツマ知らないのか?」

 

そこから聞き取り調査を行なった結果。

エルは因果律でも働いたのか、それとも不都合な記憶が消えたのかナイツ&マジックに関する知識はなく、ブルーホールの向こう側はどうもレイアースの舞台でもあるセフィーロとも隣国関係にあるらしく、レイアースについても知識を持っていないようだった。

 

「となると、ナイツマに関しては俺の知識も半分はあてにならねぇって事か」

 

「出来れば今後の楽しみの為にもネタバレは無しでお願いします」

 

「安心しろ、俺も西方諸国戦争の辺りまでしか原作読んでねぇから………むしろレイアースとかいう厄ネタがあんのが問題だわ」

 

「それは炎の魔神の名前でしたよね?」

 

「作品名にもなってる主人公の魔神だ………原作かアニメ版かでも展開は変わるが、アニメ版だろうなぁ」

 

スパロボではどのようなシナリオになるかは不明ではあるが、原作やアニメの展開からして過酷なものであるのは間違いなさそうだ。

 

「それにしても先輩がシャルロットさんとお付き合いしているとは………専用機のリヴァイヴも含めて先輩の好きそうなタイプではありましたけど」

 

「お前は俺を何だと思ってんだよ………」

 

「無類のパイルバンカー好きでしたよね?先輩。ロボゲーだとパイルバンカー装備の機体使う事多かったですし」

 

「うっ」

 

「ちなみにシャルロットさん達は先輩が転生者なこともご存知で?」

 

「ああ、シャルには福音の一件の時に明かしたし、他の連中にも後で明かしたんだが、『まあ、雪兎だし』で納得された」

 

「あ〜」

 

「お前もそれで納得するんかい!」

 

その後はお互いに転生してからの経緯を語り合い、ジャロウデク軍やザガート一派への対策やロボットについて話し合うのであった。

 

***

 

エルとの密会の後、ミツバから招集を受けた面々はブリーフィングルームにて次の任務について説明を受けていた。

 

「GGGからの協力要請?」

 

「はい、バイオネットの拠点の捜索に手を貸してほしいとの事です」

 

バイオネットとはガオガイガーシリーズに登場した国際犯罪組織の一つでGGG以外で多くのハイテク技術を有している。

かなりの組織力を持っており、何度もGGGと相対しているが、スパロボシリーズだとそのエージェントの一人であるギムレットくらいしか登場したことがなかったせいで影が薄かったりする。

聞けば疑似ゾンダーメタルまで開発しているらしく、疑似ゾンダーロボまでいるんだとか。

現GGGも本腰を入れて制圧に動きたいが、現GGGの戦力は新たな勇者王達しかいないそうで超AIや勇者ロボの構造等でブレイブポリスにも手を貸していた伝手で連絡をしてきたという。

 

「超AIの勇者ロボが他にいないとなれば拠点制圧の戦力が足りないの無理はないか(新たな勇者王か………会うのが楽しみだな)」

 

***

 

ということでローマに向かったドライクロイツの面々だったが、内海らが勇太に小学生だからとドライストレーガーの中から捜査指揮を取るように言い聞かせようとして反発され、勇太は単独でローマ市内へと捜査に出てしまった。

 

「お前らなぁ、そんな言い方したら反発されるのは当然だ。お前らだって学生だからとか言われて除け者にされたら反発するだろうが………アホなのか?」

 

「「う………」」

 

そんな内海らにお説教をする雪兎。

一方で勇太は現バイオネットの総帥であるタナトスにわざと拐われ、勇太の持つ警察手帳の信号から拠点の特定に成功し、新GGGの機動部隊隊長となった天海護と副隊長の戒道幾巳はバイオネットの拠点へと強襲を仕掛ける。

 

「勇太君は天海さんと戒道さんが他に囚われた人達と一緒に保護したって」

 

「それにしても雑過ぎるな………最近の活動記録を見るとやっている事がめちゃくちゃ過ぎる」

 

「まるで自滅しようとしてるみたい………」

 

先行したデッカードに合流すると、既にジェイデッカーに合体を終えており、隣には新たな勇者王ガオガイゴーがいた。

 

「あれがガオガイゴー………」

 

「今はGGGの長官になった阿嘉松社長が建造したコアマシンに既存のガオーマシンを組み合わせて誕生した勇者王か」

 

敵はEI-15*1の模倣品で、疑似ゾンダーメタルで稼働しているが人は取り込まれていないとのこと。

 

「なら容赦は要らねぇな!」

 

「あっ、雪兎さんズルいです!」

 

「俺もいくぜ!」

 

機動力のあるメンバーが先行してガオガイゴーとジェイデッカーのフォローに回る。

特にスピードに秀でた雪兎とエルとマサキが即座に疑似ゾンダーロボと交戦に入る。

 

「そこっ!」

 

「ありがとうございます………えっと」

 

「天野雪兎だ………会えて光栄だ、天海護さんに戒道幾巳さん」

 

「僕らの事を知ってるんですか?」

 

「そっちの方が年上だし、敬語じゃなくてもいいですよ?」

 

「二人とも、話は後だ!」

 

そうして疑似ゾンダーロボを減らしているとデスマグネと追加のゾンダーロボが現れる。

護と幾巳によればあの疑似ゾンダーロボにはコアとなった人がいるらしく、能力は他の疑似ゾンダーロボより高いとの事。

 

「となると、コア持ちはガオガイゴーに任せて残りの雑魚を片付けるとしますかね!」

 

その後、ガオガイゴーのヘルアンドヘブンでコアを摘出すると、護がコアの浄解を行う。

 

「クーラティオー!テネリタース・セクティオー・サルース………コクトゥーラ!」

 

「生浄解を見れるのは嬉しいが………なんか嫌な予感がする」

 

その雪兎の勘は的中した。

 

「あひゃひゃ」

 

「こいつは………バイオネット総帥、ドクター・タナトス!」

 

普通なら総帥自らがコアになっているのもおかしな点ではあるが、アニメでお馴染みの浄解後のストレスをなくしやった事を後悔する素振りが見えない。

タナトスを捕らえようとした護だったが、逆にタナトスが護に襲い掛かろうとしたその時、何者かがタナトスを気絶させる。

 

「あれは………ベターマン・ラミア!?」

 

〈この者はいただいていく〉

 

そしてガオガイゴーからタナトスを掻っ攫っていく。

 

「今のはリミピッドチャンネルか!」

 

「タナトスを奪って、どうするつもりなの!?」

 

〈来るべき対決のために………〉

 

そう言い残しラミアは去っていき、ガオガイゴーはラミアを追っていく。

 

「ちっ!艦長、俺も追う!」

 

「は、はい!」

 

そのガオガイゴーを追って雪兎もラミアを追跡するとラミアと護達の他にも七人のベターマン………ソムニウムがいた。

 

〈ほう、お前もきたか、輪廻を超えし者〉

 

「俺の事も知っているだと?」

 

〈シャーラ、このタナトスというヒトに咲いたアニムスはどうだ?〉

 

そこでラミアはシャーラというソムニウムにタナトスに咲いたアニムスの実を見せる。

 

「あれはアニムスの実!?タナトスがおかしかったのはアルジャーノンを発症していたからか!」

 

アルジャーノン、それはベターマンにて登場する奇病の一種で、発症すると破滅的な言動をする性格になってしまうというもので、最終的にはアニムスの花から実をつけソムニウムらを呼び出す。

これはソムニウムらがアニムスの実からしか接種できないD型アミノ酸を糧としている事から、地球が危機に際してソムニウムらを呼び出す免疫行動なのだが、この世界では知っている者はいない。

また、実の種類によっては接種する事で特殊な能力を使える形態に変身する事も可能で、ラミアが求めているのはシャーラというソムニウムに適合する特殊な実なのだ。

 

〈間違いない………これはソキウスの実………これで私は、ソキウスの路を開く事が出来る………〉

 

タナトスから生成された実は御眼鏡に叶う実だったようで、ラミア達はタナトスを連れESウィンドウを開き、“ヒトが正しき生命の選択を望むならば、覇界王と戦うのだ。生命の宝石によって導かれし空へ向かえ”とだけ言い残し去っていってしまう。

 

「覇界王………」

 

「それに雪兎さん、輪廻を超えし者とは………」

 

「ここだけのオフレコで頼む」

 

雪兎は護と幾巳だけには自身が転生者である事を明かす。

ついでに他の皆にも行なった説明も行ない、先程の疑惑を晴らしておく。

 

「アルジャーノンや二人の事を知っていたのはそういう訳さ」

 

「なるほど、それで………」

 

「って事は雪兎さんは僕らより年上なんだ」

 

「ややこしいし、お互い対等って事にしないか?」

 

「そうだな、雪兎と呼ばせてもらうよ」

 

「僕も護でいいよ」

 

「よろしくな、護、幾巳」

 

こうして新たな勇者王をメンバーに迎えたドライクロイツだったが、直ぐに新たな火種と遭遇することとなる。

 

***

 

今やナナリーを代表とする国家へと生まれ変わったブリタニア。

そのナナリーが難民キャンプを視察中に襲撃を受け、護衛をしていたゼロも謎のKMFに敗れて囚われたとの事。

そのKMFを製造可能な国としてジルクスタンという国が疑われる事となったのだが、ジルクスタンはその査察として入国申請を行なったドライクロイツを拒絶したという。

 

「(あのゼロ(スザク)が敗けた!?)」

 

ゼロレクイエム以降のゼロは死を偽りゼロに扮した枢木スザクであり、作中でもとんでもない実力を有していた彼が敗れたというのが雪兎には衝撃だった。

 

「(となると、相手は最低限カレンレベルか………にしても、今更ナナリーを攫うって事は考えうる限り“Cの世界”絡みだろうな………)」

 

ミツバは潜入捜査を潜入してもバレ難いエッジと傭兵をしていた雪兎とシャルロット*2に依頼し、先行で潜入しているというチームと合流する。

 

「………あんた達がドライクロイツから派遣されたエージェント?」

 

「まあ、そんな所だ」

 

そこで待っていたのは大学生となっていた紅月カレンと篠崎咲世子の二人だった。

 

「(うわぁ………これ、絶対アフター系の劇場版か何かだろ!?)」

 

思いっきりコードギアス関連のメンバーで雪兎は少しだけ依頼を受けた事を後悔していた。

 

「そっちのは………」

 

「天野雪兎………一応傭兵って事になってる」

 

「その声………どっかの誰かにそっくりね」

 

「あ〜、確かに似てるかもな」*3

 

「………皆様、何者かが包囲の輪を狭めています」

 

「えっ!?」

 

「余程探られたくないくらい真っ黒って事かね、この国の腹ん中は」

 

ジルクスタンの兵と思われる一団に襲われた雪兎達は咄嗟に宿の一室に飛び込んだのだが、そこにいたのはまさかのC.C.だった。

 

「(ハイ確定!更に奥にも気配あるけど、まずは敵の対処からかね!)」

 

カレンとC.C.が話しているところに隊長と思しき男が現れC.C.を撃ち抜く。

雪兎はC.C.が死んではいないのを知っていたのでシャルロットにC.C.を任せ、カレンや咲世子とジルクスタン兵を伴ってそこから外に飛び出し隊長以外の兵を全滅させる。

 

「ほう………私の部下が、ほぼ全滅とはやるもんだな」

 

「明らかに俺らが一般人じゃないってわかった対応だな?」

 

「地球連邦の犬に余程の手練が混ざっていたようだな」

 

「それなりに修羅場は潜ってるんでな」

 

そして、雪兎が隊長に仕掛けようとしたその時、隊長の右眼に赤いVのような紋様が浮かび上がる。

 

「(ギアスユーザーかよ!?)」

 

「雪兎!?」

 

隊長のギアスを受けてしまった雪兎を心配してシャルロットが飛び出してきたのだが、雪兎にはその姿が隊長の男に視えてしまう。

 

「(ちっ、認識阻害………いや、認識置換系のギアスかよ!)」

 

そう、隊長の男ことクジャパットのギアスは自身と他人の見た目をすり替えるギアス。

すり替えたシャルロットの姿で雪兎に近付こうとするクジャパットだったが………彼は気付いていなかった。

自分が踏んだのはとんでもない虎の尾であるという事に………

 

「………そこ」

 

「なっ!?」

 

近付いたシャルロットの姿のクジャパットに雪兎はなんの躊躇いもなく鋭い蹴りを叩き込んだのだ。

 

「な、何故!?ギアスは確実に掛かったはず!?」

 

「俺がその程度でシャルを見誤るとでも?」

 

何とこの兎、クジャパットのギアスで認識が置換されようが、その動きの癖でシャルロットではないと見抜き容赦の無い一撃をお見舞いしたのである。

 

「な、何なんだコイツは!?」

 

「ギアスユーザーって事は饗団関係者か?まあいい、捕らえて尋問すりゃ済む………先に面倒なギアスは封じておくべきか?多分右眼が起点の視覚型認識置換だろう………起点の右眼を潰せばそのギアスは使えねぇよな?」

 

「ひっ!?」

 

完全に己のギアスが見破られた事と雪兎が発する視覚化できそうなレベルの怒りのオーラに恐怖するクジャパット。

即座に逃げに回るが………

 

「丁度いい、私もソイツには聞きたい事がある」

 

復活したC.C.が追い詰め。

 

「………逃げられると思ってんのか?」

 

「ギィヤァアアアア!?」

 

雪兎に右眼を細い釘の投擲で射貫かれてしまう。

痛みでのたうち回るクジャパットの頭を雪兎は容赦無く踏み押さえ、そのまま我に返ったカレンに拘束され気絶させられる。

 

「アイツ、やるな………」

 

それを見ていたタキシードの男がいたのだが、彼は仲間と思われる者達に連れられて去っていってしまった。

 

「今のは………まあいい、用があるのはこの野郎だからな」

 

「………あんた、思ったより過激なんだね」

 

そんな雪兎にカレンはドン引きだった。

 

***

 

とりあえずクジャパットを簀巻きにして拘束すると、死なず右眼が使えない程度に治療してエッジに見張りをさせておき、別の問題の対処をしていた。

 

「………まさかルルーシュが生きてるとはなぁ」

 

そう、雪兎が察知していたC.C.の連れの正体は心を失った状態で生きながらえてしまったルルーシュだったのだ。

C.C.が言うにはコードの継承が未確定状態でギアスを行使可能なままゼロレクイエムが行われ、その事後にシャーリーがジェレミアの確保していた場所にルルーシュの身体を運び込み、コード継承者の特権であるCの世界での再構築を行なったのだが、Cの世界の神をルルーシュが殺していた影響か不完全な状態での復活となり、今の心だけを失った抜け殻状態になってしまったのだという。

そこでC.C.はルルーシュの状態を何とかするべく現存するCの世界へのアクセスシステムであるアラムの門を求めて旅をしており、ギアス饗団から分派したファルラフという組織が管理する門を求めてジルクスタンを訪れたのだという。

その門があるという場所は嘆きの大監獄と呼ばれるところにあるそうで、ドライストレーガーには陽動を行なってもらっている間に潜入する事となった。*4

なし崩しに潜入メンバーに加わってしまった雪兎は門までの護衛を務めたのだが、騒ぎを起こさせる為に脱獄させた囚人が実は獄長だったり、カギ爪の男の一派が現れたり、それを追ってきたタキシードの男ことヴァンやレイが乱入してきたりとめちゃくちゃな事になる。

 

「うわぁ、なにこれ………」

 

「今の内に逃げるよ!」

 

その騒動に紛れてC.C.、カレンと逃走を図るも、C.C.が撃たれ身動きを封じられてしまう。

 

「ここで行き止まりか………」

 

そこでC.C.は旅の終わりを覚悟するも………

 

「間違っているぞ、それは」

 

「!」

 

「この声………!」

 

「あ〜あ、終わったな、これ」

 

あの男が甦った。

 

「ナリタを思い出すな。あの時もお前は俺を庇って傷ついた………不死身だからとはいえ、簡単に血を流しすぎだ」

 

ルルーシュという一発逆転の一手を持つ男が。

 

『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!俺の敵よ、今すぐこの場にて死ぬがよい!』

 

「「ナム・ジャラ・ラタック!」」

 

ルルーシュのギアスによってルルーシュの眼を見てしまったジルクスタン兵達は次々にジルクスタン特有の権力者への礼をとりながらこめかみに銃を当て自害していく。

 

「(うわぁ………両眼ともギアスのマーク浮かんでる上に完全に制御下じゃんかよ………

)」

 

カギ爪の男一派はルルーシュに敵対していなかったせいか無事だったが、形勢が不利と判断し撤退していき、ヴァンとレイは一派を追っていく。

 

「とりあえず情報を得たい………そこのお前」

 

「天野雪兎だ。必要なのはこの監獄の構造と………コイツの居場所、だろ?」

 

「ほう、手間が省けたな」

 

「(あ、この二人、組ませたらマズイんじゃ………)」

 

短い付き合いではあったが、なんとなく雪兎がどういう人間なのかわかってきたカレンは雪兎とルルーシュは会わせてはいけなかったような気がした。

 

***

 

その後、ドライクロイツにいちゃもんをつけていた親衛隊隊長シェスタール・フォーグナーをルルーシュは話術に嵌め、監獄に仕掛けられていた仕掛けを利用して崖崩れを起こし一網打尽にしてしまう。

 

「うっわぁ………ここまで鮮やかに決まるとは………流石はゼロ」

 

そこにヨロイの軍勢が現れ、ドライクロイツと監獄にあったKMFで出撃したカレンが迎撃しようとするが、それに呼応するようにヴァンのダン・オブ・サーズディが現れる。

 

「なら………カロリナ、俺のブランをこっちに射出しろ」

 

「ラジャ」

 

雪兎もドライストレーガーのカタパルトで監獄の前に射出したブランに乗り込み戦線に加わる。

 

「そんなKMFでよくやるわ」

 

「あんたこそ、そんな機体持ってたのね」

 

「そっちのはあん時の………」

 

「雪兎だ。よろしくな、ヴァンさんよ」

 

「あんたの声、知り合いにそっくりなんだが?」

 

「最近よく言われる」*5

 

そのままヨロイを率いていたジョーとの交戦の最中、スザクを破ったKMFがジルクスタンの部隊を率いてやってきた。

その機体に乗る国王シャリオはナナリーは国賓として招いたと詭弁を告げ、カレンと交戦するも、本来の機体でないカレンが不利………そう思われていたが、そこへもう一人の潜入班のロイドがカレンのKMFである紅蓮を持って現れた。

その紅蓮への乗り換えを阻もうとするシャリオだったが、ヴァンの「最強を目指す男がポンコツを甚振って喜んでんじゃねえよ!」という言葉で隙を見せてしまう。

そして、その隙をこの男も見逃さない。

 

「乗り換えイベントを邪魔するのは無粋ってもんだろうがよっ!」

 

「くっ!?何だこの機体は!?僕のナギド・シュ・メインが押されているだと!?」

 

「ナイスアシスト!恩に着るよ、『夜明けのヴァン』!雪兎!」

 

そうして現れたのは聖天八極式を超える新たな紅蓮………

 

「やるよ、紅蓮特式!」

 

カレンの紅蓮と雪兎のブランがシャリオのナギド・シュ・メインを襲う。

 

「ふ〜ん、ゼロレクイエム以降の技術のごった煮か………カレンの特式よりは唆られないな。こんなのでほんとにゼロに勝ったのか?」

 

「こ、こいつ!」

 

「あんたの相手は雪兎だけじゃないよ!」

 

「くっ………姉さんの予言さえあれば!」

 

「姉さん姉さんとシスコンかよ、シスコンキング」

 

「お前ぇええええ!」

 

どうも雪兎はジルクスタンという国そのものを敵と見なしたようで、先程からシャリオを的確に煽る。

 

「師匠、的確にあの子に挑発してる………」

 

「ほんと怒ってるね、雪兎」

 

クジャパットのギアスにも、シャリオのやり方にも、闘争の中でしか生きようとできない国の在り方にも、ジルクスタンという国そのものが雪兎からしたら不愉快でしかなかったのだ。

 

「その姉さんとやらに伝えておけ………その予言とかいう化けの皮、引っ剥がしてやるから覚悟しておけとな!」

 

「いっけぇ!」

 

カレンとの即興のコンビネーション攻撃でナギド・シュ・メインに大ダメージを与えたが、完全撃破はせずあえて逃走させる雪兎。

しかし、シャリオは連邦軍がジルクスタンに手出しができないと負け惜しみを告げ去っていく。

一方で、ジョーはヴァンが倒すも、最後には自爆されてしまい、ヴァンは目的のカギ爪の男について知る事は叶わなくなってしまった。

 

「とりあえず今回はここまでか………だが、覚えておけよ、ジルクスタン………お前らが求めるような世界は決して成立しないって事を」

 

そして、雪兎はジルクスタンという国そのものを敵と認定した。

その後、ヴァンはルルーシュにカギ爪の男について調べてもらう見返りにドライクロイツに加わり、カレンと監獄に囚われていたスザクはルルーシュがC.C.と共にジルクスタンについて探り、色々と判明したら手を貸す代わりに加入する事となる。

その後………

 

「雪兎と言ったな」

 

「ああ、ルルーシュか………何か用か?」

 

雪兎はルルーシュと二人きりで話す機会を得た。

 

「お前はギアスについて知っていたそうだな?」

 

「まあ、俺も訳ありなんでな………お得意のギアスとやらで聞き出すか?そんな事しなくても話すけどな」

 

そして、護や幾巳に話したのと同じ事をルルーシュにも話す。

 

「なるほどな………それを与太話と片付けるのは簡単だが、似たようなのような事例は知っているからな」

 

「マリアンヌのギアスか」

 

「そうだ」

 

ルルーシュの母マリアンヌが持っていたのは他者に乗り移るギアス。

それを使いラウンズの一人に潜伏していたのだ。

 

「しかし、今回の一件は知らないとなると」

 

「おそらく俺の死後に語られた続編のシナリオだろうな、これは」

 

「そうか………しかし、お前と話すと違和感があるな」

 

「今後もなんか言われそうな気がするんだよなぁ、それ」

 

それから雪兎は情報収集に使えそうなツールをいくつかルルーシュに貸し出す等の個人的な協力をするのを誓うのであった。

*1
予備のガオーマシンを素材に誕生したゾンダーロボ

*2
シャルロットが一緒いくときかなかったので

*3
雪兎のイメージCVがスザクと同じなせい

*4
クジャパットはドライストレーガーの牢屋に放り込んできた

*5
レイのCVもスザクや雪兎と同じ




兎、色々エンカウントする。

護や幾巳、ルルーシュには転生者と明かしました。
クジャパットはほんとギアスを使った相手がヴァン並みに意味の無い相手だった上に特大の地雷でした。
このあとにルルーシュへと情報源として丸投げされてます。
ジルクスタン、兎からすると地雷しかねぇ国です。
ナギド・シュ・メインに関しては珍しく興味を持ってません。
多分、あのサソリの方が興味持ちそうなくらいです。



今日のオリジナル機体紹介
カロリナ専用機
ハイペリオンGC

ハイペリオンGをベースに雪兎とカロリナがカスタムした専用機。
バックパックのAL(アルミューレリュミエール)発生装置をダブルオークアンタのGNシールドのようにサブアームで保持したシールドに内蔵しており、左右に配置し全方位は無理でも幅広い範囲をカバーできるようにしてある。
それとは別にビームキャノン・フォルファントリーを小型化したものもそれぞれ左右に取り付けている。
左右の腕には多機能シールド・ゴルゴネイオンが装備されており、先端にはパンツァーアイゼンⅢ、展開ギミックとして5連装拡散ビーム砲・ハーフディバイダーが仕込まれている。
足裏にもピンポイントバリア発生装置が仕込まれており、左右のパンツァーアイゼンⅢで掴んだ相手にワイヤーを巻き取りながら全速力で突撃し足裏に展開したピンポイントバリアで蹴り抜くピンポイントバリアキックなる技を使用する。
膝のビームナイフは取り外し、代わりに折りたたみ式アーマーシュナイダーとビームソードを組み合わせ、ビームソードの共振器の反対側に刃が展開するマルチシュナイダーを腰のサイドアーマーに格納している。

武装
グレネードランチャー付きビームマシンガン✕1
ビームソード兼アーマーシュナイダー・マルチシュナイダー✕2
フォルファントリー改✕2
多機能シールド・ゴルゴネイオン✕2


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スパロボ30⑧ 勇者の心

何とか年内最後の投稿間に合いました………
今回も地上でのお話で、3つ分くらい一気に進行します。


ジルクスタンを後にしたドライクロイツはアフリカ・カイロに進路を取っていた。

これは機械獣の拠点を叩きに向かった剣鉄也と兜シローが率いる第5次機械獣調査隊と合流し、拠点を叩いた後に二人をドライクロイツにスカウトする為である。

 

「機械獣の生産プラントか………」

 

「どうしたの?雪兎」

 

「それが再起動しただけってのはおかしいと思ってな」

 

INFINITYは雪兎も生前に一度見ただけでそこまで詳しく覚えてる訳ではなく、ほとんど知識が無いに等しい作品であり、少しずつ記憶を辿ってはいるものの、詳細を思い出せずにいた。

だが、Dr.ヘルが復活してINFINITYと呼ばれる遺産で何かしようとしているのだけは覚えている。

 

「雪兎、やはりヤツが?」

 

「ああ、それは間違いない………だが、詳しくは思い出せないんだ。すまない」

 

「気にするな。本来なら判るはずのない事がある程度知れるだけでも十分助かってるんだから」

 

甲児にそう言われ雪兎は気を取り直し状況把握を続ける。

元々量産型機械獣等というのは存在しておらず、量産型は過去の機械獣より高性能化している点や南原コネクションにて遭遇したタイターンG9もかなりの強化が施されていた事から機械獣を作った張本人であるDr.ヘルが生存しているのは確定事項。

問題はその戦力がどれほどのものになっているかなのだが………

 

「警報!?」

 

「敵さんもプラントは攻撃されたくないと見える」

 

「いくぞ、皆!」

 

各機が出撃すると、生産プラントの近くというのもあってかかなりの数の機械獣がおり、その後方にはやはり復活したと思われるジェイサーJ1の姿があった。

 

「ジェイサーJ1は交戦経験のある俺が抑える。皆はその間に他の機械獣を頼む」

 

「マジンガーじゃないんだから無茶はしないで下さいよ?」

 

「わーってるよ」

 

そうして機械獣軍団と交戦になるが、そこに新たな機影が現れる。

 

「あれはジェットファイヤーP1!いや、違う!」

 

「そう………ジェットファイヤーP1は、Dr.ヘル様が私を偲んで造られた機械獣………だが、このアシュラーP1はこの私のために造られた超機械獣だ」

 

「お前は………!」

 

「我こそは、あしゅら男爵!」

 

それはヘル事変で倒れたはずの甲児とマジンガーZの宿敵であるあしゅら男爵とそれを模したアシュラーP1だった。

そこから甲児はあしゅら男爵の誘いに乗ったフリをして密かに近付いていた鉄也のグレートマジンガーのサンダーブレークの間合いに誘き出し、その直撃を食らわせる事に成功する。

その兄弟機の連携にエルが感激し、グレートマジンガーと共にやってきたイチナナ式に乗るシローは護と幾巳との再会を喜ぶ。

 

「サンダーブレークの直撃を食らってまだ動くとは………超機械獣というのも伊達じゃないらしい」

 

「関心するのはそこなんだ………」

 

「とりあえず量産型を片付けるぞ」

 

量産型を片付けたあとはジェイサーJ1とアシュラーP1に向けて戦力を分けて攻撃する。

雪兎達は雪兎はアシュラーP1、ジェイサーJ1にはシャルロットとカロリナが割り振られた。

 

「あんたがあしゅら男爵か………ほんとに左右半分ずつなんだな」

 

「な、なんだこの男は………このあしゅらの攻撃がかすりもしないだと!?」

 

「左右の機体バランスから攻撃モーションの癖があるのは把握させてもらった。左右に分かれる攻撃も似たようなのを知ってるんでね!」

 

「ぬぅ」

 

「今だ、三人とも!」

 

「おう!いくぜ、鉄也!シロー!」

 

「わかった!」

 

「OKだアニキ!」

 

「「ブレストファイヤー!!」」

 

「ブレストバァァァン!!」

 

雪兎に翻弄されている間に甲児達に囲まれたアシュラーP1はブレストファイヤーとバーンの連携攻撃を受ける。

 

「終わりだ、あしゅら!」

 

「フ………フフフ………ハハハハハ!ハハハハハハハ!」

 

「何がおかしい!?」

 

「これが笑わずにいられるか!終わりではない!始まるのだ!このあしゅらが闇から陽の光の下に出てきた事の意味を理解しろ!今、この時より世界は動き始める!恐怖で彩られ、真実が剥き出しになるのだ!」

 

そう言い残し、あしゅらはジェイサーJ1を連れて撤退していく。

 

「逃したか………」

 

「ごめん、こっちも逃げられちゃった」

 

「大きさの割に逃げ足は速かった」

 

「流石にここで倒せるとは思ってなかったが、これで機械獣の一件の黒幕は確定だな………」

 

その後、着艦した鉄也とシローは調査隊での任務を終えたという事でドライクロイツに合流する事となった。

そして、顔馴染みとの交流が済んだ鉄也は雪兎のところへやってくる。

 

「あんたがさっきの白い機体のパイロットか」

 

「天野雪兎です。よろしく頼みます、鉄也さん」

 

「ああ、よろしく頼む。先程の援護は見事だった」

 

「あのあしゅら相手にあれだけ立ち回れるのはスゲーよ!あっ、俺はアニキ………兜甲児の弟の兜シローだ。よろしくな!」

 

そこへシローもやってきて自己紹介を済ませる。

 

「二人共ここにいたのか」

 

「あ、アニキ」

 

「甲児もきたか」

 

更に甲児も加わり、雪兎はマジンガーブラザーズと交流を深めるのであった。

 

***

 

アフリカを後にしたドライクロイツは一度日本へと戻ろうとしたのだが、航路に問題が発生した為にオーストラリア方面へと迂回する事となり、その際にブルーホールの近くで戦闘が発生していると知り、そちらへ向かう事に。

 

「ブルーホールって事はまさか」

 

「おそらくはジャロウデクとザガート一派………そして、彼女達でしょう」

 

現場に到着すれば、そこには赤、青、緑の魔神とジャロウデク軍、そしてゴーレムを率いるイノーバという構図。

直ぐ様出撃して魔神の援護に入るドライクロイツ。

 

「光!海、風!大丈夫!?」

 

「銀凰騎士団のみんな!」

 

「エル達も、ここに跳ばされてきたんだね!」

 

顔馴染みの銀凰騎士団の面々と再会して喜ぶ魔法騎士(マジックナイト)の三人だったが、グレートマジンガーの存在を見て自分達が跳ばされてきたのはセフィーロに召喚される前の自分達の世界であると気付く。

それをイノーバも肯定し、ブルーホールで繋がった二つの世界は表裏一体であると明かす。

 

「(イノーバ………既にあの姿なのか、というかデカくね?)ってか、魔法騎士の三人はこの世界出身なのかよ………」

 

魔法騎士の三人と協力してジャロウデク軍とザガート一派を迎撃する事となったドライクロイツ。

セフィーロの魔神の戦闘は幻晶騎士の魔法よりも一般的にイメージされる魔法と剣を使うド派手なもので、初見の皆は唖然としている。

 

「まあ、普通そうなるわな」

 

「ですね」

 

ジャロウデク軍はエルがケルヒルトを退けると撤退していき、残ったゴーレムとイノーバの相手をすることに。

 

「所詮は土塊………ブランの相手には不足ってな!」

 

「凄い………魔物の相手は初めてのはずなのに」

 

「的確にゴーレムのコアを攻撃して倒しています」

 

「私達も負けてられないわ!」

 

雪兎がゴーレムを簡単に蹴散らすと魔法騎士の三人も負けてはいられないとゴーレムを撃破していく。

 

「図に乗るなよ、人間ども!」

 

ゴーレムを全滅させると稲妻を纏ったイノーバが突撃してくる。

 

「速くはあるが、ブランで躱せない程じゃねぇ!」

 

イノーバの突撃を躱すとすれ違いざまにソードライフルで数発を叩き込み隙を作る。

 

「「はぁ!」」

 

そこへ魔法騎士達が切り込み………

 

「これはオマケです!」

 

エルがソーデッドカノンを撃ち込みイノーバを撃退する。

そこで戦闘終了かと思えば、光がアルシオーネというザガート一派の一人を見つけ、魔法騎士達とアルシオーネが生身でぶつかる。

しかし、ケルヒルトが乱入してきた事でアルシオーネを取り逃がしてしまう。

 

「ザガート一派までこっちに来るとはな………狙いはやはり」

 

その後、ドライストレーガーにやってきた魔法騎士、獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風の三人はこのままドライクロイツに協力する事となるのだが、どうも勇太の姉であるくるみと光がクラスメイトらしく、勇太と光には面識があったという事実が発覚する。

 

「世の中って狭いんだね………」

 

「………そうだな」

 

「雪兎?」

 

だが、雪兎の魔法騎士達………特に光を見る視線はどこか厳しいものであった。

 

***

 

ブルーホールでの一件の後、日本近海へと戻ったドライクロイツに冴島総監より新たなブレイブポリスであるビルドチームの完成が告げられ、彼らと合流すべく合流地点の金沢へと移動を開始する。

 

「ビルドチームか」

 

「勇者ロボシリーズの定番三体合体二号ロボ」

 

「追加でもう一体増えるのもお約束ですね」

 

いつものように集まっている雪兎達に加えて雪兎と縁の深いエルを混じえた対策会議。

これはそれぞれが覚えている原作知識を共有する事で知識に抜けが無いか確認する場でもあった。

 

「おそらく登場回と合体回の複合回だろう………となればシャドウ丸とカゲロウのエピソードもまとめてくるだろうな」

 

「やはり先輩はスパロボ特有の救済を狙うんですか?」

 

「カゲロウか………俺個人としては助かってほしいもんだ。アイツの原作エピソードは………」

 

カゲロウというのはシャドウ丸のプロトタイプ兼シャドウ丸の教導役となるBP-500番代のロボで、教導終了後にAIをリセットして再配備される自身の処遇に異議を申し立てた事で離反したロボなのだ。

その後、敵組織にいいように利用された挙句に別のボディに移されて使い捨てられたという悲しい運命を辿った。

 

「とりあえずカゲロウについては後にしよう。ビルドチームは原作通りの人員に任せた方があいつらの人格形成には良いだろうしな」

 

という事で今回は原作とは違うイレギュラーが発生した場合のフォローするということで対策会議は終了した。

 

***

 

金沢試験場

 

「とりあえずお披露目は順調と」

 

エルが知ってはいても生での新型のお披露目とあって興奮していたりはしたが、ビルドチームのお披露目は順調そうだ。

 

「うん?あれはあっちの裕太と………」

 

ふと見るとグリッドマン同盟の方の裕太に一人の少女が親しげに話しかけていた。

 

「響、その娘、知り合いか?」

 

「何よ、今は私が響君と話してるんだけど?」

 

そこへ声を掛けると、少女の方は不満そうな顔をする。

 

「えっと、こっちは僕らのクラスメイトの新庄茜さん………で、こっちは」

 

「こいつらと同じ艦に乗ってる天野だ」

 

「ふ〜ん」

 

明らかに「どうでもいいからあっちいけ!」という顔をしている茜だが、雪兎も色々と茜に疑いを懐いていた。

 

「(こいつが藤堂武史枠か)」

 

そんな時、警報が鳴り響き、デッカードとビルドチームが迎撃に出るもパワーが足らず、やはり冴島総監から合体指示が飛ぶも息が合わずに失敗してしまう。

 

「やっぱり失敗したか………」

 

更にそこへカゲロウとシャドウ丸が乱入してくるもすぐに姿を消してしまい、敵ロボットもドライストレーガーが到着してすぐに撤退していっていく。

 

「超AIのメンタルケアは専門外だし、ビルドチームのメンタル問題は適任者に任せるか………」

 

翌日、ビルドチームの提案で合体のお披露目を囮にカゲロウや敵ロボット軍団を誘き出す作戦が結構され、狙い通りロボット軍団は釣れたのだが、カゲロウの姿は見えない。

とりあえずロボット軍団の迎撃にビルドチームは再び合体を試みるも、やはり失敗してしまう。

仕方なくビルドチームを下げ、ドライクロイツが迎撃に出るとカゲロウが姿を現す。

やはり記憶を消されるのは死ぬのと同義と新庄健を通じて敵になったようだ。

 

「ロボットだって生きてるんだ………造った人間だからって、その生命を好きにしていいなんて事はないんだ………」

 

カゲロウの言い分に豹馬はかつての敵であったガルーダを思い出しているようだ。

結局、カゲロウとシャドウ丸がぶつかる事になり、それをグリッドマンが止めに入ろうとするのだが、そこへロボット軍団とは別で現れた怪獣と思われる存在に阻まれてしまう。

 

「グリッドマン!貴様は俺が倒す!」

 

「か、怪獣がしゃべった!」

 

「(対グリッドマン用に調整された怪獣ってとこか………やっぱりあの小娘が造ったんだろうな)」

 

新庄茜の関与の疑いを深めた雪兎はとりあえず怪獣への嫌がらせを敢行する。

 

「おらよっと!」

 

「こんなもの!」

 

雪兎が放ったグレネードを怪獣は爪を伸ばして切り払うも、中に詰まっていたのはトリモチネットで、それによって怪獣は身動きが取れなくなってしまう。

 

「くっ、なんだこれは!?」

 

「特製のトリモチ弾だ。少し大人しくしてな」

 

追加で閃光弾まで浴びせて雪兎は怪獣を飛び越えてカゲロウとシャドウ丸のところへと飛ぶ。

 

「邪魔するぜ!」

 

「何!?」

 

「助太刀は無用!」

 

「俺が用あんのはカゲロウの方でね!」

 

「俺に用だと?」

 

二体の間に割って入った雪兎はカゲロウへ言いたい事をぶちまける。

 

「守りたいのはシャドウ丸との思い出なんだろ!なのに敵対なんぞして本末転倒な事してんじゃねぇよ!」

 

「「!?」」

 

「それがシャドウ丸を苦しめるとは何故思わない!?」

 

「そ、それは………だが、記憶を奪われるのは死ぬのと変わらない!」

 

そう言ってカゲロウは抵抗するが、雪兎の言葉で動揺したのかシャドウ丸に押され気味となってしまう。

 

「投降しろ、カゲロウ」

 

「ダメだ………それは俺の死を意味する」

 

「冴島総監達は既にお前への記憶消去に関しては反省してるんだ。それにお前の記憶を守る手段はある!」

 

「そうだよカゲロウ!僕がカゲロウの記憶を守ってみせるから!そして、僕達と一緒にブレイブポリスで………ドライクロイツで戦おうよ!」

 

そう、ブレイブポリス外部にカゲロウの記憶が流失するのが問題なのであって、ブレイブポリスやそれに関連するドライクロイツへ所属となればカゲロウの記憶を消去する必要はない。

シャドウ丸も説得に加わり、カゲロウへ投降を呼び掛けるが、カゲロウは犯した罪は償わなければならないとそれを断ろうとする。

そこへ………

 

「その必要はない」

 

ブレイブポリスの超AIの開発者にしてカゲロウをロボット軍団に引き込んだ張本人である新庄健が現れ、カゲロウを整備する際に取り付けた服従回路によってカゲロウのコントロールを奪う。

そして、カゲロウの戦闘データをコピーしたアビスガードと超AIを外部から書き換えられリミッターを外されたカゲロウがドライクロイツに立ちはだかる。

だが、新庄健は怒らせてはならない者達を怒らせた。

 

「………んな」

 

「ん?」

 

「巫山戯んなって言ったんだよ!このクソ眼鏡ェ!」

 

「ええ許せませんとも!心を持ったロボットの心を強引に書き換えるなど僕の美学に反します!」

 

そう、雪兎とエルである。

 

「ひ、ヒェ!?」

 

「僕達だって許しはしない!」

 

「ああ、気分の良いものじゃないな!」

 

そして超AIの勇者達と絆を育んでいた護と幾巳も同様である。

 

「シャドウ丸!」

 

「はい!」

 

「クソ眼鏡と雑魚共は俺達に任せてカゲロウを止めろ!超AIのユニットさえ残ってりゃ俺が何とかしてやる!だから何としてでもテメエの兄弟を止めろ!」

 

「雪兎兄ちゃん………シャドウ丸!カゲロウを止めるんだ!」

 

「了解です、チビボス!」

 

雪兎達がカゲロウの量産仕様ともいえるアビスガードを止めていると、ビルドチームが自分達にもやれることをと飛び出してくるが、それを不快に思った新庄健によってカゲロウが観客達へと攻撃を仕掛けようとする。

それをビルドチームは自身を盾にして守る。

そこで「守りたい人達がいる」という気持ちを一つにした事でビルドチームはビルドタイガーへの合体を成功させる。

 

「やるじゃねぇか、ビルドタイガー」

 

ビルドタイガーも戦線に加わり、アビスガード軍団は押されていきシャドウ丸とカゲロウの一騎打ちが成立する。

その間にグリッドマンもキャリバーを使い怪獣を退ける。

 

「カゲロウ!」

 

「アヒャヒャヒャ!」

 

「必ずお前を止めてみせる!」

 

シャドウ丸の多段変形攻撃が決めてとなり、ついにカゲロウは倒れる。

だが、シャドウ丸の最後の一撃はカゲロウがわざと攻撃を受けたような気がした。

 

「これで………いいんだ………シャドウ丸」

 

「お前………やはり、意識が戻っていたんだな」

 

「途切れ………途切れだった………がな」

 

ビルドチームの勇気にカゲロウの超AIが揺さぶられ、それがカゲロウの意識を呼び覚ましたようだ。

その薄い意識の中、カゲロウはビルドチームの合体を促し、シャドウ丸の攻撃をわざと食らったのだ。

 

「あの程度、で………俺の………罪が、許されるはずも………ないがな」

 

それはカゲロウなりの償いだったのだろう。

しかし………

 

「カゲロウ………」

 

「こんな………俺を、ブレイブポリスに………誘ってくれた、あなたの言葉………嬉しかった………生まれ変わったら………あなたの事を………ボスと、呼びた………い………」

 

自身を守ると、仲間に誘ってくれた勇太に感謝を告げ、カゲロウは機能停止する。

 

「カゲロウ………」

 

「カロリナ!カゲロウを収容しろ!」

 

「ガッテン!」

 

「生まれ変わったら!?絶対に生まれ変わらせてやる!こんな最後、俺は認めねぇ!」

 

その後、新庄健はシャドウ丸に現行犯逮捕される事となり………

 

***

 

「こうして直接会うのは初めてかな?天野雪兎君」

 

「お会い出来て光栄です、冴島総監」

 

翌日、雪兎は冴島総監達と面会をしていた。

 

「で、どうだったかね?」

 

「この通りですよ」

 

雪兎の処置の速さが幸いしてカゲロウの超AIは無事に回収が出来た。

 

「すまないね………元は我々がカゲロウの事をもう少し考えていれば良かった事だというのに」

 

「過ぎた事は仕方ありません。今は次の教訓としましょう」

 

「そうだな」

 

「それでこれなんですけど」

 

「ほう、これは………」

 

「なるほど………そういう事か」

 

カゲロウの超AIのコアユニットの他に雪兎が差し出したものを冴島と藤堂は興味深そうに見る。

 

「どうせ生まれ変わるなら強くしてやった方がいいでしょ?」

 

「よくもまあこの短時間にこれだけのプランを練られたものだ」

 

「超AIの回収がてらカゲロウの構造は把握させてもらいましたから」

 

こうして密かな兎の企みが進行するのだった。




果たしてカゲロウはどうなってしまうのか?

年明けの投稿分は少し地上で寄り道してから宇宙に向かう事になると思います。

今回はオリメカ出てないので紹介はカットです。

では皆さん、良いお年を………


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スパロボ30⑨ ゲッターと宇宙

年明けて一月半も空きましたが、やっと書けました。
仕事忙しかったり、家の事でドタバタしたり、今後出す予定の機体をガンプラで作ってみたりとしてました。

今回は予告通り宇宙へ上がるまでのお話となります。


そろそろ宇宙にも活動の場を拡げようという事になったドライクロイツ。

ドライストレーガー自体に大気圏突破能力があるのだが、ドライストレーガー計画の責任者であるファイクス准将と会う為にジブラルタルを経由するという事らしい。

その前にブラジリアにて反連邦思想のテロリストやゲリラ組織の掃討活動中のゲッターチームをスカウトする事となり、ブラジリアに向かう。

一部からは鬼のような三人組と認識されているが、ある意味間違ってはいないので否定する者はいなかった。

特に豹馬はやはり彼らに扱かれた経験があるようで好き勝手言っているが、雪兎はそれをちゃっかりボイスレコーダーに録音していたりする。

ブラジリアに到着したドライクロイツが見たのは真ゲッターではない未知のゲッターロボ・真ゲッタードラゴンでメタルビーストと戦う流竜馬の姿であった。

どうやら神隼人や車弁慶は真ゲッターでの戦闘中に負傷してしまったらしく、竜馬単独で操縦しているとのこと。

その後、メタルビースト等を撃退して話を聞くと、メタルビーストの攻撃でピンチに陥った真ゲッターの元に突然現れたのだと言う。

 

「見た目からして真ドラゴンにくっついてた上半身に通常の下半身をくっつけたようなデザインをしてるな………それに、真ドラゴンを圧縮して無理矢理このサイズにしたような密度を感じる」

 

「おそらくゲッターロボ大戦の真ゲッタードラゴンも元になっているのでしょうね」

 

「ゲッターロボ大戦って、お前そんなのまでやってたのかよ」

 

「そういえば雪兎さんは昔のハードはあまり持っていなかったんでしたね」

 

「あの頃は色々と余裕が無かったからな」

 

エルと真ゲッタードラゴンを見上げてそんな会話をしていると、そのパイロットである竜馬がやってくる。

 

「お前らはあの白いのと蒼いのに乗ってたやつか」

 

「白いのことラフトクランズ・ブランに乗ってる天野雪兎です」

 

「蒼いのことイガルガに乗っていますエルネスティ・エチェバルリアです」

 

「おう、流竜馬だ。よろしく頼む」

 

隼人と弁慶は結局負傷が酷く入院する事になったそうで、しばらくは竜馬のみがドライクロイツに加入するとのこと。

そうしてようやく宇宙に上がるべくドライクロイツはジブラルタルへと進路を取った。

 

***

 

ジブラルタルはイベリア半島南東端にある小半島でイギリスの海外領土だった土地で、宇宙世紀世界ではマスドライバーを保有する基地の一つとして登場し、Vガンダムではシュラク隊の二名が戦死する事になったが、この世界ではどうなっていることやら………

 

「あれがジブラルタルのマスドライバーか………」

 

宇宙への打ち上げ施設とあって雪兎も少しばかりテンションが上がっている。

ジブラルタルに入港するとドライストレーガーにファイクス准将がやってきて労いの言葉を告げた後、ミツバを連れマスドライバー施設へと向かっていった。

 

「あれがファイクス准将か………まあ、これだけの艦を独立部隊として好き勝手させるだけの権力と頑固さはありそうだな」

 

「でも、きっとそれだけじゃない」

 

「ああ、このドライストレーガーやあのヒュッケバイン30にはきっと秘密があるんだろうな」

 

すると、エッジがジークンやメイヴィー達と揉めているのが目に入った。

 

「どうしたんだよ?」

 

「いや、エッジがファイクス准将に話があるとか言い出してな」

 

「その態度がちょっとアレだったし、身体検査がまだだから後にしろって話してたのさ」

 

「まだ検査やってなかったのか?エッジ」

 

「だから俺は検査ってのは嫌いなんだよ」

 

結局は手早く検査を済ませるという事に落ち着きエッジはメイヴィーを連れて去っていった。

 

「(やっぱりエッジにも何かあるみたいだな………それもファイクス准将に関係のある何かが)」

 

エッジがマスドライバー施設に向かってしばらくするとマスドライバー施設に敵襲の警報が鳴り響き、ドライクロイツはその迎撃に出撃する。

先日もザンスカールがリガ・ミリティアと一戦交えたというのに再びマスドライバー施設を襲撃しに来た敵に皆怒りを露わにするが、一際キレている者がいた。

 

「な、なぁ………雪兎のやつ、いつにも増してキレてねぇか?」

 

「そういえば、彼マスドライバー見るの物凄く楽しみにしてたもんね………」

 

「元の世界で宇宙進出を目標に色々やってるって言ってたしな………」

 

そう、宇宙大好き兎こと雪兎である。

 

「ネオジオン残党に機械獣か………機械獣は兎も角、ネオジオン残党は余程死にたいみたいだな?」

 

「師匠、やっちゃう?」

 

最近ではすっかり雪兎の影響を受けてしまっているカロリナも同様であった。

 

「艦長、ご指示を」

 

「………」

 

「艦長………」

 

それとは対照的にミツバは何処か心ここにあらずといった様子。

 

「しっかりしろ、ミツバ!出来る事を精一杯だ!」

 

だが、エッジの喝で何とか正気になり指揮を取る。

 

「ギラ・ドーガでこのブランの相手が務まるかよ!」

 

「う、うわぁ!?」

 

機械獣は特機タイプの面々に任せ、ネオジオン残党の方へと向かった雪兎はすれ違いざまに一機をソードライフルで切り裂く。

 

「こ、この!」

 

「おっと」

 

「なっ!?」

 

そこへ別のギラ・ドーガがビームアックスで攻撃を仕掛けるも、シールドのアンカーハングで切り捨てたギラ・ドーガを拾いそれを盾にするという浅倉式ガードベントで受け止め、そのギラ・ドーガのパイロットが動揺した隙にライフルモードでコックピットを容赦無く穿く。

 

「あ、あいつは血も涙もないのか!?」

 

「マスドライバーという人類の財産に仕掛けておいてそれは身勝手過ぎ」

 

「ンギャアアアア!?」

 

カロリナは両腕のパンツァーアイゼンⅢで別のギラ・ドーガを掴まえ、引き戻す勢いと自機の加速で一気に距離を詰め、アルミューレ・リュミエールを展開してぶつけるというエゲツない攻撃を敢行する。

 

「………あいつらが敵でなくて良かった」

 

その後、ネオジオン残党と機械獣は始末出来たのだが、そこへ例のアンノウン達が現れ、ドライストレーガーを集中攻撃し始める。

エッジのヒュッケバイン30がカバーに入り何とか体勢を整えると、ドライストレーガーは事前にファイクス准将から承認を得て開放された主砲を放ちその半数を焼き払う。

 

「威力が桁外れ過ぎる………」

 

そんな中、敵の指揮官機と思われる腕の付いた機体からオープンチャンネルで通信が入る。

 

『ほう………私が出て来た意味があったようだよ』

 

「有人機、だと?」

 

『いい機会だ。君達の力を試そう』

 

その上から目線な発言にドライクロイツの面々は苛立つ。

当然雪兎もその一人である。

 

「何様か知らねぇが、ネオジオン残党相手じゃ不完全燃焼だったんだ………少しは楽しませろよな!」

 

無人機の方はドライクロイツの面々には大した事はなかったが、有人機の方は手練が乗っているのか動きが違った。

更には腕からビームの刃を伸ばしたスパイク攻撃等のこれまでの機体とは別の動きもしてくる点が厄介だった。

 

「コイツ………強い」

 

『ほう、私についてこれるのか』

 

それからしばらくしてアンノウン・リーダーと呼称された機体は一度ドライクロイツの面々から距離を取る。

 

『なるほど………有意義な結果が得られたよ。では、また会おう』

 

「逃がすかよ!」

 

撤退していくアンノウン・リーダーをエッジが単独で追う。

 

「一人で行かせて良かったのか?」

 

「エッジならきっと大丈夫です」

 

その後、エッジは少し機体にダメージを負ってはいたものの無事に帰還した。

戦闘ログからこれまで使えなかった武装が使えるようになっていたりとドライストレーガーと似たような状態で雪兎は両者にある秘密について疑念を深める。

 

「アンノウンか………やはり鍵を握ってるのはファイクス准将、あんたなんだろうな」

 

個人的に話す機会はなかったが、ファイクス准将がドライストレーガーやヒュッケバイン30の秘密の鍵を握っていると確信する。

そんな想いを懐きつつ、雪兎はドライクロイツの面々と共に宇宙へと上がる。

 

「宇宙か………聖剣の時の一件以来になるが………何が待っているんだろうな」

 




ジブラルタルのマスドライバーって非戦闘エリアの割に色々やられてるんですよねぇ………
30だとVガンダムは宇宙からの話になるのでジブラルタルの話はカットされていますが、ザンスカールの酷さがよく判るエピソードなんだよなぁ

次回はそんなリガ・ミリティアと宇宙の兎達が登場予定です。


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スパロボ30編⑩ ゲリラとザンネン兎

前回から大分時間が空いてしまいましたが、ようやく書けたので投稿です。

少ししたらお詫びも兼ねたオマケを投稿する予定なのでよろしくお願いします。


宇宙に上がったドライクロイツはまず宇宙でザンスカール帝国と戦いを繰り広げているL3エライア宙域にて活動中のゲリラ組織であるリガ・ミリティアと接触を試みた。

リガ・ミリティアとは火星よりも外側から侵攻してくるウルガルやネオ・ジオン残党、地上で暗躍する機械獣やそれに便乗するジオン共和国への睨みを続ける地球連邦軍の隙を突いて台頭したザンスカール帝国に対抗するゲリラ組織ではあるが、ただのゲリラ組織ではなく大口のスポンサーを持ち、元アナハイムや元サナリィの技術者を有し独自にMSを開発出来るくらいには力を持った組織だ。

その創始者にして指導者のジン・ジャハナムは複数の幹部が名乗るコードネームのようなもので、これは組織のリーダーの暗殺を防ぐという目的がある。

実働部隊にいるジン・ジャハナムを名乗る人物は姿を知られていないのを良いことに用意された影武者のような人物だ。

その真のジン・ジャハナムとされる人物はハンゲルグ・エヴィン。

これから接触予定のリガ・ミリティアの実働部隊に所属するウッソ・エヴィンの父親だったりするのだが*1、それを知るのは我らが兎一行とエルだけ。

 

「ザンスカールはほっとくとろくなことにならんからなぁ」

 

「ギロチン、地球クリーン作戦、エンジェル・ハイロゥ………どれも放置は危険」

 

ザンスカール帝国はマリア主義という飴とギロチンによる恐怖政治という鞭を使い分ける人類統治を目的とする勢力で、独自のMSや装備によって地球連邦やリガ・ミリティアを苦しめた。

地球クリーン作戦という巨大なタイヤを持つ戦艦やMAによって地球を真っ平らに整地するという正気を疑う作戦を実行しようとしたり、エンジェル・ハイロゥと多数の超能力者を使ったサイコウェーブで地球人の精神を幼児退行させてその隙に侵略しようとかヤバい事を平然とやるような連中なのでほんとに質が悪い。

 

「なのにザンスカール以外にもウルガルやネオ・ジオン残党にあのアンノウンを率いてるらしき奴らもいるとかほんと勘弁してほしいよ」

 

そんな事をブリーフィングルームの端っこで話していると、そのリガ・ミリティアとザンスカールが交戦していると判り、ミツバの判断でその戦闘に介入する事となった。

 

***

 

戦闘宙域に辿り着くとそこにはV'ガンダムとV'ガンダムヘキサ、数機のガンブラスターがコンティオとゾロアットの部隊と交戦していた。

更にはネオ・ジオン残党までもザンスカールと組んでいると判明する。

 

「コンティオに乗ってるのはクロノクルにピピニーデンか、それにあっちはルペ・シノまでいんのかよ………クロノクルの方はウッソにお熱のようだし、ピピニーデンの方はこっちで抑えるか。シャルはルペ、カロリナはネオ・ジオンの方を頼む」

 

潔癖シスコンのクロノクルに小者のピピニーデンはともかく、ルペ・シノは後にウッソに色々と厄介なちょっかいを出す人物である為、雪兎からは他の二人よりも警戒対象になっていたりする。

というかVガンダムの敵女性パイロットはルペ以外にもカテジナやファラ等軒並み厄介な人物が多いので警戒するのも無理はないのだが………

 

「というわけでお邪魔させてもらうぞ!」

 

「なっ、敵の援軍だと!?」

 

仕掛けた雪兎に対しピピニーデンは両肩に搭載されたショットクローで迎撃を試みるが、容易く回避された挙句、有線コントロール用のワイヤーを切断されてしまう。

そのまま切り込む雪兎だったが、ピピニーデンは左腕のビームシールド発生装置で防御され、ビームシールドを貫通したソードライフルによって左腕を切り落としたものの、本体にはダメージを与えられなかった。

 

「ちっ、腐っても部隊指揮官って訳か」

 

その後、クロノクルもウッソに撃退され、ザンスカール軍は撤退していった。

 

「ここで仕留めても後々の状況が変わってしまうおそれもあるし、撤退してくれたのはある意味助かったかな」

 

そうは言いつつも切り落としたコンティオの左腕とワイヤーの切れたショットクローはちゃっかり回収している雪兎。

 

「ん?あそこにあるのは………」

 

そんな時、雪兎はスペースデブリの中からあるものを見つける。

 

「これって………」

 

それは今となってはレア物となっているとあるMSの残骸だった。

 

「大分破損してるが、直せば使えそうだな………どうせなら“アレ”に改造するのもアリだな」

 

というわけで、雪兎はその残骸を持ち帰る事にしたのであった。

 

***********************

 

戦闘後に合流したリガ・ミリティアのメンバーはドライクロイツに編入される事となった。

しかし、Vガンダムの重要人物の1人であるシャクティ・カリンがスージィ、カルルマンの2人と密航しており、その痕跡がリーンホースの損傷した移住ブロックで確認された。

ノーマルスーツは着用していたようなのでもしかしたら生存して宇宙を漂流しているかもしれないとリガ・ミリティアのメンバーが話していたが………

 

「無事は無事なんだが、なぁ………」

 

「ですね」

 

実はシャクティはザンスカールの女王であるマリアの娘であり、高いニュータイプ能力を有しているのだ。

その為、ザンスカールで保護されはするのだが………

 

「まあ、合流前の事じゃ、俺にはどうしようもねぇがな」

 

***********************

 

続けてドライクロイツはファイクス准将の依頼で地球圏最外縁部であるコロンブス宙域へとやってきた。

聞けば連邦軍、ザンスカールの両軍の機体の残骸が多数発見されたとの事で、その調査となっているが………

 

「まあ、ウルガルだろうな………となるとMJP………チームラビッツか」

 

何の因果か兎の名を冠した者同士が遭遇する事となる。

その後、GDFのシモン大佐の救援要請を受けて指定宙域に向かえばやはりウルガルとそれに対峙するアッシュに搭乗したチームラビッツがいた。

 

「あれがウルガル………」

 

「こんな形で初めての異星文明と接触する事になったのは不本意だが、ウルガル相手なら容赦は要らないな!」

 

ウルガルは他の文明惑星を相手に“狩り”と称した侵攻を行なう厄介な異星人で、それを疑問視した一部の者が地球に亡命し技術提供を行って完成したのがチームラビッツの操るアッシュである。

 

「あのピンクの大きな機体、私と戦闘スタイルが似てる?」

 

「あの大きさに惑星間航行用の大型ブースターだから威力は向こうの方が上だろうな」

 

「負けない」

 

「カロリナが対抗意識燃やしてる………」

 

何故かローズスリーに対抗意識を持つカロリナ。

途中に民間船が迷い込むというハプニングもありながらなんとかウルガルを撃退したドライクロイツとチームラビッツ。

更にそのままチームラビッツはドライクロイツ預かりとなり、部隊はまた賑やかとなった。

 

「実際に見るとほんと普段はザンネンだな、こいつら………」

 

「あっ、君があの白い機体の」

 

「ヒタチ・イズルか。まあ、よろしく頼むわ」

 

「う、うん………」

 

雪兎はチームラビッツとは最低限の挨拶を交わしてその場を去る。

 

「何か気に障る事をしたかな?」

 

「単にあいつも“兎”だから一緒にされたくなかったんじゃねぇか?」

 

「あり得る………」

 

「(それだけとは思えないけどね………MJPは色々きな臭い噂もあるし、情報通の彼ならその辺詳しそうだものね)」

 

皆が茶化す中、メイヴィーだけは雪兎の態度に心当たりがあるようではあった。

 

***********************

 

それからファイクス准将からの通信で火星のデウテロニクス海に突如未確認の建造物が確認されたとのことで、その調査も兼ねて太陽系圏内までの行動許可が降りたとのこと。

この世界では火星も既にテラフォーミングが済んでおり、ガン✕ソードの主な舞台も惑星エンドレスイリュージョンから火星に置き換えられているらしく、ヴァン達も火星が気掛かりな様子である。

そんな中、ドライクロイツは火星の艦船と思われる謎の建造物調査の前にもう少し戦力を集めようと、ロンデニオンに向かい、とある“ガンダム”を迎え入れる事なるのだが………

*1
実は親子揃って同じリガ・ミリティアに所属している事すら再会するまで知らなかったりする




という事で次回はナラティブからとなります。
その他にも宇宙で加入するDLCの面々等も増える予定なのでお楽しみに。

回収した残骸?
これについては後に判明します。


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スパロボ30編 中断メッセージ集①

というわけでオマケの雪兎達関連の中断メッセージ集その1です。


①兎達の労い

 

雪兎「おっ、ここで中断するのか?まあ、そろそろ疲れてくる頃だし、ゆっくり休めよ」

シャル「うんうん、ちゃんとした休息を取らないと効率が悪くなっちゃうもんね」

カロリナ「シャルロット、師匠の影響大分受けてる?」

シャル「はっ!?」

雪兎「悪影響みたいに言わんでくれるかな?ともあれ、プレイヤー諸君はしっかり休息を取ってから戦線に復帰してほしい」

カロリナ「またね」

 

 

②兎と銀凰

 

エル「はぁ〜、スーパーロボット大戦………夢にまでみた舞台に僕も参戦出来るとは思いませんでした」

雪兎「ほんと嬉しそうだな、エル」

エル「先輩は嬉しくないんですか?」

雪兎「夢の舞台というのは同感だが、何か思惑があって巻き込まれた身としては素直に喜びにくくてな」

エル「あ〜、そうでしたね」

雪兎「まあ、お前とこんな形で再会するとは夢にも思わなかったがな」

エル「そこはお互い様ということで」

 

 

③兎とザンネン兎達

 

イズル「雪兎も名前に兎って入ってるし、ある意味チームラビッツの一員だね!」

アタル「二つ名も“兎の皮を被った災害”だもんな」

雪兎「チームザンネンの一員とか御免被るんだが!?」

タマキ「失礼なのら!」

ケイ「そうよ!」

イズル「色は白いからホワイト6かな?」

雪兎「勝手に話進めんな!それにホワイトは0だろ」

チームラビッツ「?」

雪兎「あっ、言わん方が良かったな、これ」

イズル「えっ!?」

アタル「他にも何か知ってそうだな」

雪兎「ちなみに6は黒な」*1

ケイ「6人目、ほんとにいるのね………」

雪兎「更に言えばまだいるんだが………」

タマキ「ハイ!パイロットはイケメンですか!?」

アサギ「現状で手一杯なのにまだ増えるのか………胃が痛い」

 

 

④中の人、その1

 

エル「そういえば先輩の声ってよく似た人が多いですね」

雪兎「この作品だと俺含めて4人はいるからな」*2

エル「多いですね」

雪兎「そういうお前は前世の声がウッソそっくりだろうに………今の声は某盾後輩だが」*3

エル「あ〜、確かに少し複雑ですね」

雪兎「他にも同じ声の連中はいるが」

エル「エッジさんとブリットさんやマサキさんとグリッドマンとかですね」*4

雪兎「まあ、これは俺達特有の問題だわな」

エル「ですね〜」

 

 

⑤そういえば………

 

シャル「そういえば、雪兎」

雪兎「ん?」

シャル「冴島総監達と色々話してたみたいだけど、何を話してたの?」

雪兎「ああ、それか………それは今後のお楽しみってやつさ」

シャル「え〜」

雪兎「まあ、直にわかるさ………早く知りたいならジェイデッカーとビルドタイガー、それとグリッドマンを活躍させてみるといい」

シャル「プレイヤーの皆さん、是非とも雪兎の言う条件を頑張ってみて下さいね!」

*1
アンジュ参戦前

*2
CV:櫻井孝宏

*3
阪口大助と高橋李依

*4
杉田智和と緑川光




こんな感じでまたしばらくしたらまた中断メッセージ集を出すと思うので雪兎達と各参戦作品キャラの絡みをお楽しみに。


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スパロボ30編⑪雷光の名を冠する者

スパロボ30をプレイしながら執筆していたのですが、途中でメモアプリに保存してた文章が巻き戻る等のトラブルで少し難航しておりました。
という事で今回はロンデニオン〜シャイアン基地のお話となります。
上記の関係で少し間は飛ばし気味かつ色々とオリジナル要素ぶっ込んでいるのでご了承下さい。

前話の末尾に少し間違いがあったので修正されています。


火星の調査の前にロンデニオンを訪れる事となったドライクロイツ。

どうもロンデニオンに駐留しているロンド・ベルへ協力を要請しに行くつもりのようだが、現在はシャアの反乱にてアムロ・レイが行方不明、先のラプラスの騒乱での越権行為もあって戦力がほとんど残されていないという。

我らが兎としてはブライト・ノアや何故かスパロボでは生存している事の多いロンド・ベルの名メカニックであるアストナージと会えるだけでも十分に楽しみではあるが、何やらきな臭い空気を感じつつもシャルロットのシュヴァリエールのサポートメカとして開発中であったアーマードガンナーの調整を行っていた。

 

「中々上手くいかないな」

 

機体自体は既に完成しているのだが、一部の機能にエラーが発生しており、そのせいでまだロールアウトが出来ずにいたのだ。

 

「これだけ複雑な機構だからな」

 

「求められる役割を考えれば妥協はできませんからね」

 

甲児やエルネスティ達も手を貸してはくれているのだが、ISとの違いもあって苦戦していた。

 

「ISやバイザーなら問題なく起動出来たんだが………サイズの違いはやっぱ大きいな」

 

「ISってのは雪兎達の世界で開発されたっていうパワードスーツで、バイザーは前に雪兎達が行った異世界で使われてたアムドライバーってパワードスーツの補助武装だったか?」

 

「そうですね、IS………正式名称インフィニット・ストラトス。無限の成層圏の名を冠する宙間活動用パワードスーツ!僕も使ってみたかったのですが………」

 

「残念ながら今は予備のISコアは持ってないし、基本的に女性にしか使えないからな、アレ………エルならワンチャン使えてもおかしくはないかもしれんが」

 

***********************

 

ロンド・ベルがルオ商会から持ち込まれた新型のガンダムのテスト中にネオ・ジオン残党と思われる勢力の襲撃を受けていると聞き救援に駆けつけたのだが………

 

「ミツバ艦長、気合入ってる………」

 

「そりゃあ、連邦軍でロンド・ベルといや憧れもあるだろうしな」

 

いつにも増してミツバの気合が凄まじい。以前にアムロの話になった時の反応からしてファンの可能が高い。

 

「にしても、大分盛ってんな、あのガンダム………系統からしてνガンダムと同じ系譜か?」

 

フレーム構造やヘッド等、νガンダムに似た新型ことナラティブと呼称されたガンダム。

その下半身は大型のユニットに接続されており、かなりゴツイ。

 

「ロンデニオンも近いし、早く片付けよう」

 

結局、袖付き仕様の専用機と思われるギラ・ズールが撤退したのを機にネオ・ジオン兵達は引き上げていった。

 

「袖付き………多分共和国側の偽装だろうな。でも、何故そんな回りくどい真似を………」

 

テロリストに偽装したその行動、ナラティブといい雪兎の知らない物語のようだ。

 

***********************

 

その後、ロンド・ベルはそのままドライクロイツに合流する事となり、ナラティブとそのパイロットであるヨナ・バシュタ、提供元であるルオ商会のミシェル・ルオらもドライクロイツに加わったのだが、どうも彼らナラティブ組には別の思惑があるようだ。

そして、ミシェルの要望で一度地球に戻り、ルオ商会のオフィスを訪ねる事となったのだが、我らが兎は我関さずととある人物を訪ねていた。

 

「お会いできて光栄です!アストナージ・メドッソさん」

 

「お噂はかねがね!」

 

「わざわざ俺を訪ねてくるなんて珍しい子達だなぁ」

 

その人物とはロンド・ベルの名メカニックであるアストナージであった。

 

「俺達はパイロットもしていますが、どちらかと言うと技術者でして」

 

「なるほど………確かに君らの機体はよく整備されているね」

 

「ありがとうございます!」

 

流石の雪兎もグリプス戦役からシャアの反乱まで多種多様なМSの整備を行ってきたアストナージには尊敬の眼差しを向けており、そんな彼からの褒め言葉は純粋に嬉しそうであった。

 

「そんなアストナージさんにちょっと相談がありまして」

 

「相談?」

 

「ええ、これなんですけど………」

 

そう言って雪兎が見せたのは先日回収して改修作業をしていたとあるМSであった。

 

「これは………かなり手が加えられているが………“リ・ガズィ”」

 

シャアの反乱の序盤にアムロが搭乗し、後に彼の妻であるケーラやチェーン・アギ等も乗る事になったМSで、アストナージとは中々に縁深い機体。

そんなリ・ガズィではあるが、目の前のそれは大きく手が加えられており、あまり原型を留めていない。

その機体はとあるシリーズにてリ・ガズィをベースに改造されたある“ガンプラ”を元にしたものであった。

 

「“ライトニングガンダム”か………」

 

雪兎から手渡されたPADに表示されたデータにはそう表記されていた。

そう、それはビルドファイターズトライにてコウサカ・ユウマが使用したライトニングガンダムだ。

 

「リゼルの高性能センサー等を取り入れた長距離射撃をメインとしたガンダムタイプ………バックウェポンシステムを発展させたパージを必要としない変形ギミック………なるほどこれは面白い機体だ」

 

「趣味で造っていた機体なので本体もまだまだ未完成で、バックウェポンシステムの方は全然でして」

 

「それでリ・ガズィの整備経験のある俺に相談しにきたという訳だね?」

 

「はい」

 

「わかった。俺に出来る事なら手を貸そう」

 

「いいんですか?」

 

「その分、他の機体の整備も手伝ってもらうけどね………それに、俺の勘がコイツが必要な時がくるって言ってるのさ」

 

「この機体が?」

 

こうしてアストナージという心強い味方を得た雪兎らは地球への降下中にライトニングガンダムの改修作業を行うのであった。

 

***********************

 

サンフランシスコのルオ商会のオフィスを訪れたドライクロイツはミシェルの姉であるステファニーとの話し合いに向かったのだが、その途中でまたしてもネオ・ジオンが襲撃してきた。

付近に連邦の施設等もなく、ドライクロイツを狙ってきたという訳でもなく、何故か異様に気合の入った彼らの様子からネオ・ジオンの狙いがルオ商会にあると判断したミツバとブライトは各員に迎撃を指示する。

 

「ナラティブのB装備………バックパックのインコムユニット以外は普通だな」

 

例のゴツ盛り装備ことA装備は宇宙専用であるらしく、換装したB装備は割と真っ当なガンダムだった。

そこはさておき、ネオ・ジオンの目的はやはりドライクロイツではなく、その先のサンフランシスコ………ルオ商会であろう。

 

「くっ!我らはあの方を!」

 

「あの方?(もしかしてあの男も生きているのか?)」

 

雪兎のその考えを肯定するかの如く戦場にルオ商会側から金色のМSが飛来する。

そのМSはFA-100S フルアーマー百式改と呼ばれる機体で、嘗てあの男がエゥーゴ時代に使っていた機体の後継機の強化装甲装備だ。

そして、その機体から聞こえてきた声は想像通りの声だった。

 

「ドライクロイツ、こちらは元エゥーゴパイロット、“クワトロ・バジーナ”大尉だ」

 

そう、その名はシャア・アズナブルがエゥーゴ時代に名乗っていたもの。

ネオ・ジオン達の狙いはルオ商会に保護されていた彼の身柄であり、彼を再び旗印にせんとしていたのだ。

そんな彼の登場に敵味方関係無く驚くが、一年戦争、グリプス戦役、シャアの反乱と彼の動向をよく見ていた者達からすれば到底許される事ではなかった。

 

「シャア!てめえっ!」

 

「よくもまあ俺達の前に顔を出せたものだな!」

 

特にアムロとも親しかった竜馬と甲児は目に見えて怒りを露わにしていた。

だが、ブライトの一声で今はネオ・ジオンの相手を優先する事となる。

 

「(まあ、甲児さん達からすれば許されざる裏切り者だもんなぁ………)」

 

エゥーゴ時代は共闘もし、仲間と認めたはずなのにシャアの反乱では再度敵となりアクシズ落とし等という凶行に走ったシャア。

それが生きており、また嘗ての名を名乗っていたのだから怒るのも無理はなかろう。

 

「お二人共、このファミコンが生きてるって事はあの人も生きてるって事です。どうもその所在も知ってそうですからここは抑えて下さい」

 

「確かに………」

 

「言われてみればそうか………ところでファミコンって?」

 

「ファミリーコンプレックス………つまりは家族に飢えて理想の家族になりえた人に固執してるブラコンやシスコンの亜種みたいなもんです」

 

「「あぁ………」」

 

「………」

 

雪兎個人としてもアクシズ落としには思う所があるので受け入れ難いが、彼が生きているという事は必然的にあの戦いで行方知れずとなったもう1人も生きているという証拠でもある。

ファミコン云々はとあるガンダムシリーズの外伝作にてシャアに対する評価として言われた言葉である。

これにはシャアも肯定も否定も出来ず黙るしかなかった。

その後、ネオ・ジオンの迎撃を終えると、シャアは脱出していたネオ・ジオンパイロット達に「シャア・アズナブルはもういない」と告げ、彼らと決別の意を示した。

彼のドライクロイツへの加入に甲児達は難色を示すも、手土産としてアムロ・レイとカミーユ・ビダンの所在の情報を持ち出されては流石に断れず、加入は認めるが許しはしないという形で終息した。

 

「クワトロ大尉」

 

「君は………先程の事、感謝する」

 

「別に話がややこしくなりそうだったから止めただけですよ………それに俺個人としてもアクシズ落としには色々思う所があります。でも、俺は貴方個人とは初対面ですからね」

 

「そうか」

 

「………貴方がネオ・ジオンのシャア・アズナブルではなく、元エゥーゴのクワトロ・バジーナとして生きるというなら、今後の行動で示して下さい」

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

クワトロとの会話を終えた雪兎はアストナージと約束した各機体の整備へと向かう。

 

***********************

 

クワトロの情報からまずはサンフランシスコに程近いシャイアン基地に幽閉されているというアムロとチェーンを解放すべくドライクロイツはシャイアン基地を目指して移動を開始した。

その途中で機械獣の襲撃を受けていると報告を受け、シャイアン基地へと急いだのだが………既に機械獣は残骸と化しており、基地を襲っていたのはまたしてもネオ・ジオンのギラ・ドーガだった。

 

「アイツら、性懲りも無く………って、あ、あの機体は!?」

 

そこでギラ・ドーガと戦うおそらく機械獣も倒したと思われる機体を見て雪兎は絶句する。

何故ならその機体は………RX-78-2 ガンダムだったからだ。

 

「やっぱりアムロか」

 

「アムロのヤツ、ガンダムでお出迎えとは洒落てるじゃねぇか」

 

甲児と竜馬はガンダムでギラ・ドーガ相手に無双するアムロに笑みを浮かべているが、雪兎はいつになく驚愕していた。

 

「えっ?嘘だろ!?いくらアムロ・レイとはいえファーストガンダムでギラ・ドーガ相手に無双!?」

 

外見はガンダムであれど、おそらく中身はある程度アップデートされていると思われるが、ガンダムのカタログスペックは一年戦争末期に開発されたゲルググと同等と言われており、3世代以上は世代差のあるギラ・ドーガ相手に全く被弾していないどころか背後に眼があるかのようなカウンタースナイプ、ビームライフルで回避ルートコントロールしバズーカを当てる等アムロはやはり異常と言う他なかった。

 

「師匠から話には聞いてたけど………想像の数倍やばかった」

 

「あれがアムロ・レイ………」

 

出撃はしたものの、結局はアムロにほとんどのギラ・ドーガを倒されてしまい、「これ、俺達必要だった?」となるドライクロイツの面々。

だが、戦闘が終了すると突然ガンダムのカメラアイの光が消え、機能停止してしまう。

 

「カロリナ、ガンダムをドライストレーガーに運ぶぞ!」

 

「合点承知!」

 

ブランとハイペリオンGCの2機でガンダムを搬送すると、アストナージとシャイアン基地からシャルロットが連れてきたチェーンがガンダムに駆け寄る。

幸いにもコックピットハッチは中から開けたようで、アムロが外に出てくる。

 

「実戦機動は可能な様に調整はしていたが、流石に無茶をさせすぎたか」

 

「大尉!」

 

「アムロ大尉!」

 

「チェーンにアストナージか、心配をかけたな………それと君達も助かったよ」

 

「いえ………」

 

その後、アムロはブライトや甲児、竜馬といった昔馴染との再会を喜んでいた。

また、シャイアン基地は襲撃でボロボロとなってしまったのでこのままドライクロイツに参加する事にしたそうだ。

文句を言ってくる者がいればルオ商会とファイクス准将が黙らせてくれるだろう。

 

「それでアストナージ、ガンダムは直りそうか?」

 

「駄目ですね、いくつかの回路が焼き切れてしまっていますし、例え直っても出撃する度にこうなりますよ」

 

「そうか………」

 

作り直された機体とはいえ思い出深い機体ではあるので少し残念そうにするアムロ。

 

「代わりの機体は何かあるか?」

 

うち(ロンド・ベル)としては無いですが、使える機体はありますよ」

 

「ん?どういう事だ?」

 

そうしてアストナージに連れられてやってきたのは雪兎やカロリナがチェーンとアレコレ調整をしているライトニングガンダムの前であった。

 

「この機体は………」

 

前はまだ塗装もされていない未完成で金属色だったライトニングだが、今はνガンダムと同じカラーリングに塗装されており、バックウェポンシステム以外は万全の状態となっていた。

 

「ライトニングガンダムというそうですよ。ベースとなった機体がリ・ガズィなので大尉にも馴染み深いでしょう」

 

「彼がこれを大尉に提供してくれるそうです」

 

アストナージの勘を信じてドライクロイツのメカニック達で早急に組み上げられたライトニングガンダムは丁度機体が無いアムロへと譲渡される事となったのだ。

雪兎もアムロが使うのならばと快くライトニングを提供しただけでなく、アムロ用の調整やバックウェポンシステムもアムロ用に専用のものを設計中との事だ。

 

「アムロさん、細かい調整とかしたいので一度乗ってもらってもいいですか?」

 

「ああ、わかった」

 

次なる目的地はオーガスタ。

クワトロの情報によればオーガスタのニュータイプ研究所にカミーユ・ビダンとファ・ユイリィの2人が軟禁されているのだとか。

アムロがそうであったようにここもネオ・ジオンに襲撃される可能性が高い以上、戦力は少しでも多いに越したことは無い。

 

「これからよろしく頼むぞ、ライトニング」




今回のオリジナルメカ紹介

ライトニングガンダム(アムロ・レイ専用機)

アムロが使用していたガンダムが機械獣とネオ・ジオンとの連戦での無茶が祟り使えなくなってしまったためにアムロの乗機として雪兎が回収していたリ・ガズィをライトニングガンダムに改修していたものを更にアムロ様に調整・改良を加えた機体。
コックピット周りを少量のサイコフレームを使用して反応速度を向上させており、サイコミュシステムも一応は使用可能。
見た目はライトニングガンダムのままだが、カラーリングはνガンダムカラー。


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