─インフィニット・ストラトス─ 温羅物語(仮題) (バリスタ)
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1話  IS学園生活開始

一夏

「俺、織斑一夏、同じ男同士仲良くしようぜ!」

 

「…私は君が嫌いだ…織斑一夏…」

 

一夏

「あ、あはは…」

 

 

 

どうやら俺は嫌われてるらしい

 

 

 

 

数分前

 

 

一夏

「あ、えっと…織斑一夏です!」

 

「…あえ?それだけ?」

 

一夏

「…ダメでした?」

 

スパーン!

 

「…この愚弟は…全く…」

 

一夏

「うげっ!?千冬姉!」

 

スパーン!

 

千冬

「ここでは先生と呼べ…いいな」

 

 

『きゃぁ!千冬様よ!』

 

『この学校入ってよかったァ!』

 

『あ、もうムリ…』

 

 

 

すげぇ人気だな…千冬姉…

 

 

 

千冬

「山田先生、遅れてすまなかった…」

 

山田

「いえいえ、お気になさらず」

 

千冬

「自己紹介は全員済んだか?」

 

山田

「いえ、あと一人…彼です」

 

千冬

「…篠宮、自己紹介しろ」

 

 

 

篠宮

「篠宮翔…あまり目立ちたくないので…

 

 覚えないでください」

 

 

千冬

「…それはどういう意味だ?」

 

篠宮

「…そのまんまの意味です…」

 

千冬

「…とりあえず自己紹介は終わったな

 

 …キリもいい、次の時間はクラス代表を決める

 

 自他推薦なんでも構わん、考えとけ」

 

 

「はい!」

 

 

 

休み時間

 

 

一夏

「俺、織斑一夏、同じ男同士仲良くしようぜ!」

 

篠宮

「…私は君が嫌いだ…織斑一夏…」

 

一夏

「…あは…ははは…」

 

 

差し出した手は空気を握る…

 

 

篠宮

「…間違えた…

 

 君みたいに眩しいイケメンは嫌いだ…」

 

一夏

「お、おう?」

 

篠宮

「まぁ…よろしく、織斑一夏」

 

 

差し出した手を握り返してくれた

 

 

 

篠宮

「…よろしくついでに聞いていいか?」

 

一夏

「おう、なんだ?」

 

篠宮

「…君はなんでISを動かした」

 

一夏

「…あー…なんというか…

 

 置いてあったものに触ったら動いてな…」

 

篠宮

「……そうか…そうかそうか!

 

 あー、変に君を恨まなくてよかったよ!」

 

 

目付きが変わり刺すような視線は無くなった

 

 

一夏

「うお、急に雰囲気が…」

 

篠宮

「…まぁ、仕方ない…

 

 もう入学したんだから、腹括るか…」

 

一夏

「…なんで俺、恨まれることになるんだ?」

 

篠宮

「…あのな…君が動かしたせいで

 

 男性も一応の適性検査が行われたの

 

 それで俺に適性があるってわかったから

 

 強制的に入学させたれた…

 

 要は君に人生狂わされたわけだ…が…

 

 君も自発的に動かしたんじゃなく…

 

 色々重なって動かせちゃったって分かったらね…」

 

 

一夏

「…その…なんか…ごめん…」

 

篠宮

「ふむ、その言葉を謝罪の言葉として受け取っとくよ

 

 だからこれからよろしくな、織斑一夏」

 

一夏

「…おう!」

 

 

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

一夏

「ん?」

 

「まぁ!なんですのその返事は!」

 

篠宮

「…いや…死角から話しかけられたら

 

 大概そういう反応になると思うが…」

 

「うっ……」

 

篠宮

「…とりあえず、どっちに用ですか?

 

 ミス・オルコット」

 

オルコット

「あら、貴方は礼儀がなってますのね」

 

篠宮

「あくまで一般的な礼儀作法ですがね」

 

一夏

「…なぁ、篠宮…この人…誰だ?」

 

篠宮

「セシリア・オルコット、イギリスの代表候補生だよ」

 

一夏

「へぇ…代表候補生ってなんだ?」

 

 

ズルッ

 

…気のせいか?皆コケた?

 

 

篠宮

「…あのな…織斑…読んで字のごとく…国の代表の候補生」

 

 

 

ずっげぇ呆れた顔してる…

 

 

一夏

「あー、なるほど!」

 

 

セシリア

「…はぁ…」

 

篠宮

「…で、要件は?」

 

セシリア

「いえ、日本のお猿さんがどのようなものか

 

 見に来ただけですわ…」

 

一夏

「なっ!」

 

篠宮

「…ミス・オルコット…発言には気を付けた方が良いかと…」

 

セシリア

「はい?」

 

篠宮

「…仮にも国の代表候補…貴女の発言は国の発言になり得る事を

 

 自覚しておいた方が身のためですよ…ミス・オルコット」

 

セシリア

「っ!…」

 

篠宮

「…そろそろ席に戻りましょうか、出席簿で叩かれたくないので…」

 

一夏

「…おう…あれは1日1回でいい…」

 

背が縮んだ気がするよ…1センチぐらい…

 

 

セシリア

「っ……また後で来ますわ!

 

 逃げないことね!よくって!」

 

 

授業だから逃げようなくね?

 

 

 

2時限目

 

 

千冬

「というわけで、クラス代表を決める

 

 自他推薦なんでも構わん」

 

 

 

 

「はい!織斑くんがいいと思います!」

 

「じゃあ、篠宮くん!」

 

 

 

篠宮

「…なんかついで感を感じる……」

 

 

 

セシリア

「納得いきませんわ!」

 

 

 

一夏

「クラス代表ってなんだ?」

 

篠宮

「クラスの代表、学級委員みたいなものか…な?」

 

一夏

「へぇ…って俺推薦されてんの!?」

 

篠宮

「おう、ついでに俺もな…」

 

 

 

 

セシリア

「この様な選出は認められません!

 

 大体、男がクラス代表なんて恥さらしですわ!」

 

 

篠宮

「ひでぇ言い様だな…」

 

一夏

「お前、なんでそんな冷静でいられるんだよ…」

 

篠宮

「ん?拒否権は無さそうだから推薦された時点で

 

 こうなると思ってた…実力のある彼女じゃ

 

 俺達が推薦されるのは納得出来ないだろうなって」

 

一夏

「…目が死んでるぞ…」

 

 

セシリア

「大体、文化としても後進的な国で

 

 暮らさなくてはいけないこと自体、

 

 私にとっては耐え難い苦痛で ───」

 

篠宮

「…担任の教師はその君が言う後進的な国の人だぞ

 

 ミス・オルコット」

 

セシリア

「…っ!また私に恥をかかせましたわね!」

 

一夏

「自滅じゃねぇの?これ…」

 

セシリア

「決闘ですわ!」

 

篠宮

「…俺らの一存じゃなんともできないんじゃないか?」

 

千冬

「…ふむ…来週、アリーナを使うか…」

 

篠宮

「あ、決まったわ…」

 

千冬

「ついでに織斑、お前も混ざって乱闘形式だ」

 

一夏

「うぇ!?」

 

セシリア

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使い──

 

 いえ、奴隷にしますわよ」

 

篠宮

「そうか、じゃあ手加減しなくていいな?」

 

 

 

「し、篠宮くん…それ本気で言ってる?」

 

 

「男が女より強かったのって大昔の話だよ?」

 

 

「織斑くんや篠宮くんは…確かにISを使えるかもしれないけど…

 さすがにそれは言い過ぎよ…」

 

 

 

 

みんな本気で笑ってる…

 

 

一夏

「…なんだよこの雰囲気…」

 

篠宮

「んー?大丈夫大丈夫、

 

 ほんの一、二年動かした程度の新人には負けないから」

 

セシリア

「!?」

 

千冬

「…篠宮…貴様…」

 

篠宮

「こちとら4年ちょいの大ベテランだからな」

 

セシリア

「はぁ!?」

 

千冬

「それはどういう意味だ…篠宮…返答次第では──」

 

篠宮

「『鬼』の噂って聞いた事あります?」

 

千冬

「…紛争地域にいきなり現れては

 

 その地域の武器や資材を全て消し去り

 

 姿を消す…鬼の様なIS…だったか?」

 

篠宮

「はい、そのISです」

 

千冬

「だが…あれはどの国にもデータの無い機体…

 

 コアすらデータベースにない機体…

 

 都市伝説だろ?」

 

 

篠宮

「まぁ…来週をお楽しみにって奴ですよ」

 

千冬

「…まさか!」

 

篠宮

「と言うことでミス・オルコット」

 

セシリア

「は、はい!」

 

篠宮

「織斑含めた乱戦形式の決闘でいいね?」

 

セシリア

「え…えぇ…構いませんわ…」

 

 



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2話  ルームメイト

放課後

 

 

 

篠宮

「…あ、帰宅か…」

 

山田

「あ、その事でお話が」

 

篠宮

「ヤマヤ先生」

 

山田

「一応、仮の部屋割りが決まったので…そちらに

 

 荷物は生活必需品とパジャマ、それから…その…

 

 だ、男性用の…ぱ…パンツを各種揃えてあります!」

 

篠宮

「…なんかすいません…」

 

山田

「いえ…その…男性とのお付き合いの経験がなくて…

 

 どれがいいのかわからなくて…3種類ほど…」

 

篠宮

「ちなみに…部屋は織斑と同室ですか?」

 

 

 

 

 

山田

「…あー…そのー…すいません…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

篠宮

「…はぁ…仕方ないか…」

 

ドアをノックする

 

 

『あ、相部屋の方ですわね

 

 お待ちくださいませ!』

 

 

扉が開く

 

 

セシリア

「お待た…せ致……しまし…」

 

篠宮

「…やぁ…」

 

セシリア

「…なんの用ですの」

 

部屋番の書かれた鍵を差し出す

 

セシリア

「!?」

 

篠宮

「…出来る限りの抗議はした」

 

セシリア

「…な、なんで!」

 

篠宮

「文句は織斑先生に言ってくれ…

 

 寮長は織斑先生だから…」

 

セシリア

「…くっ…」

 

篠宮

「…ま、荷物だけ持って外で野営でもするよ…

 

 春先にしては暖かいし…

 

 …最悪…ISの生命維持機能を使って…」

 

セシリア

「…おまちなさい!」

 

篠宮

「?」

 

セシリア

「構いませんわ、同居人として認めてあげますわ!」

 

篠宮

「…え?」

 

セシリア

「負けの言い訳は減らさせてもらいますわ」

 

篠宮

「…なるほどね…

 

 じゃあ…まぁ…とりあえずよろしく」

 

セシリア

「えぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「………」

 

セシリア

「………」

 

 

 

篠宮

「(…なんなんだよこの地獄は!)」

 

セシリア

「…あの」

 

篠宮

「うおっ!はい!」

 

セシリア

「…そろそろ夕食にしませんか?」

 

 

 

時計は午後7時を指していた

 

 

篠宮

「…そうだな」

 

 

 

セシリア

「…ふふっ」

 

 

不意にセシリアが笑う

 

 

篠宮

「ん?」

 

セシリア

「いえ、奇妙な縁もある物だなと思いまして…」

 

篠宮

「確かにな…IS学園生活一日目で言い争いした相手と

 

 同室とかな…」

 

セシリア

「えぇ…」

 

篠宮

「…今日は…その、俺、色々言うタイミングが悪かった」

 

セシリア

「いえ、私も自分の立場を理解せず…

 

 好き放題言ったのは事実ですわ…」

 

篠宮

「………」

 

セシリア

「………」

 

 

 

篠宮

「…ふっ…」

 

セシリア

「ふふっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂

 

 

 

 

一夏

「…あれ?篠宮……とセシリア・オルコットさん?」

 

「…昼間喧嘩してなかったか…あの二人…」

 

一夏

「…あぁ…箒…どういうことだろう…

 

 …なんかパッと見仲良く見えるぞ…」

 

「…一体何が…っておい一夏!」

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…篠宮?」

 

篠宮

「ん?あ、織斑か、お前も飯か

 

 っと、食い終わったし俺らは退くよ

 

 帰ろっか、セシリア」

 

セシリア

「えぇ、ご機嫌よう、織斑さん」

 

 

一夏

「…………」

 

 

スゥゥゥゥ___

 

 

一夏

「えぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり…篠宮のルームメイトは

 

 セシリア・オルコットという訳か…」

 

 

一夏

「…そうなるよな…あの感じ…」

 

「…いや…しかし…」

 

一夏

「…まぁ、仲直りでもしたんだろ」

 

「そういうものなのだろうか…」

 

一夏

「そういうもんだろ」

 

 



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3話  決戦!クラス代表戦

ちと…書きすぎたかな…

…まぁ、地の文はいつも通り無いけども









教室にて

 

 

セシリア

「とまぁ、こんな感じですが…

 

 分からないことはありませんか?」

 

篠宮

「ありがとう、セシリア

 

 自習だけじゃそろそろ限界だったし助かったよ」

 

セシリア

「助けになれたのなら光栄ですわ」

 

 

 

 

女子ズ

「…え?あれ?」

 

 

あたりが騒然とする

 

 

そりゃそうだわな…昨日の今日でこれだものな…

 

 

 

 

放課後

 

 

 

篠宮

「おん?織斑じゃん何やってんだ?

 

 こんな時間に…ってくっさ!」

 

一夏

「あぁ、剣道場で感覚取り戻すためにな…

 

 匂いに関しては…わりぃ…剣道の防具は…

 

 こうなる宿命なんだろうな…」

 

 

篠宮

「手入れの問題では…」

 

 

 

一夏

「っとそうだ篠宮」

 

篠宮

「なんだ?」

 

一夏

「お前、いつセシリア・オルコットさんと和解したんだ?」

 

篠宮

「あぁ、相部屋でね

 

 お互いに謝りあって和解した」

 

一夏

「やっぱり同じ部屋だったのか…」

 

篠宮

「お前の方は、幼馴染でDr.束の妹さんと相部屋だっけ?」

 

一夏

「あぁ、箒と同じ部屋だぜ」

 

篠宮

「…あの子…面倒くさそうな性格してそうだよな…」

 

一夏

「…あは…あはは…はは…」

 

「誰がめんどくさいって?」

 

篠宮

「…オット…そろそろ鼻が曲がりそうだからじゃあな」

 

「おい待て貴様!」

 

篠宮

「バーイ!」

 

 

一夏

「あはは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで1週間後

 

 

 

 

 

 

 

セシリア

「…全力でいかせてもらいますわ」

 

篠宮

「おうとも」

 

一夏

「…少しは…初心者に優しく…」

 

篠宮

「…んで、織斑…お前の機体…まだなの?」

 

 

 

 

千冬

「…最終調整にあと1時間かかるそうだ」

 

 

 

篠宮

「…これ…俺らで先やった方が良くない?」

 

セシリア

「そうですわね…」

 

篠宮

「強制的に織斑がシードになるけど

 

 織斑先生的には嬉しい限りでしょ?」

 

 

千冬

「……」

 

 

篠宮を睨みつける千冬

 

 

 

篠宮

「オット、余計なこと言ったかな…」

 

千冬

「…まぁそうだな、織斑は初心者だ

 

 練度の高い操縦者の試合を見て参考にしろ」

 

一夏

「はい!」

 

千冬

「では、先に2人の試合を始める、準備しろ!」

 

セシリア・篠宮

『はい!』

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…来い!酒呑」

 

 

全体的に刺々しい紫色の機体

 

顔には赤い鬼の面で隠されていた

 

 

 

篠宮

「発進!」

 

 

ピットから飛び立つ篠宮

 

 

セシリア

「…随分と刺々しい機体ですわ…」

 

篠宮

「性能も尖ってるぜ」

 

セシリア

「楽しみにしてますわ!」

 

 

 

 

摩耶

『それでは…試合開始!』

 

開始の合図が鳴る

 

 

セシリア

「踊りなさい!ブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」

 

 

前方から4発のレーザーが迫る

 

 

篠宮

「悪いが手取り足取り教えてくれよ」

 

帯刀していた刀を構える篠宮

 

 

セシリア

「まさか…レーザーを切るつもりですの!?」

 

篠宮

「あー…食べ(・・)切る」

 

セシリア

「!?」

 

 

レーザーが篠宮の構えた刀に触れた瞬間、消失する

 

セシリア

「…一体…いや…なんでも喰らう鬼の噂…

 

 文字通り食べたのですわね!」

 

篠宮

「あぁ、たいがい何でも食えるな

 

 まぁ、発射されたミサイルとかは

 

 タイミングが難しいからあんま食いたくないけどな」

 

 

セシリア

「…それはいいことを聞きましたわ

 

 篠宮さん、好き嫌いはいけませんわ!

 

 しっかり…ご堪能ください!」

 

スカート部が展開しミサイルポットが露見する

 

篠宮

「oh......」

 

セシリア

「fire!」

 

 

篠宮

「しっかり調べておくべきだった!」

 

 

 

全力で逃げる篠宮

 

それを追うミサイル2基

 

 

 

篠宮

「ホーミングタイプ…ってことは

 

 セシリアに当てれもしないだろうな!」

 

 

確実に距離を縮めてくるミサイル

 

 

篠宮

「あぁ!もう!

 

 来い!」

 

 

顔に手を当てる篠宮

 

 

 

次の瞬間

 

爆炎が上がる

 

 

 

 

 

管制室

 

「やったか…」

 

摩耶

「いえ…篠宮君の機体にあまりダメージがありません…」

 

千冬

「…あの爆発でか?」

 

一夏

「え?どういうこと?」

 

「…!

 煙が晴れるぞ!」

 

 

 

再びアリーナ

 

 

 

篠宮

「いやぁ…何とか間に合った」

 

飄々と喋る篠宮

 

セシリア

「…その姿は…」

 

そこに立っていたのは

 

白い狐面をした

 

先程と違う見た目をした機体だった

 

 

篠宮

「んー…遠距離用フォーム…かな?」

 

セシリア

「…形態…変化…ですの?」

 

篠宮

「正解!さっきまでが近接特化型なら

 

 こっちは遠距離特化型の機体」

 

セシリア

「…遠距離特化機体同士の戦いですか…」

 

篠宮

「…まぁ、決着はすぐ着くよ!」

 

セシリア

「…っ!」

 

背後からの攻撃を紙一重で躱すセシリア

 

 

篠宮

「あらァ…」

 

セシリア

「BT兵器…」

 

篠宮

「ふっふーん…とっておきを見せてあげよう!」

 

篠宮の周囲にビットが集まりだす

 

セシリア

「…1...2.……」

 

篠宮

射撃兵装(シューター・タイプ)9基

 

 防御兵装(シールド・タイプ)3基

 

 計12基」

 

セシリア

「…12…!?」

 

 

 

 

 

 

 

再び管制室

 

千冬

「…なんだあの姿は…」

 

摩耶

「…機体データは…変わってません…

 

 …ですが…」

 

 

 

一夏

「…勝てる気がしねぇ!」

 

「…弱音を吐くな…と言いたいが…」

 

 

千冬

「…12基のビット……うち3つは形状が違う…」

 

摩耶

「…あ、えっと9基が射撃型、3基が防御型だそうです」

 

千冬

「……どうなってるんだ…奴の機体は…」

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ

 

 

 

 

篠宮

「……さて…どうしたものか…」

 

セシリア

「…妙に焦ってますわね…」

 

篠宮

「いやぁ…この形態まだ調整段階でね…

 

 エネルギー馬鹿みたいに食うのよ…」

 

セシリア

「…あー…」

 

篠宮

「正直…もう食った分使い切ってるから

 

 酒呑に戻しても 具現維持限界(リミット・ダウン)までスグだよ」

 

セシリア

「…この一週間で調整しなかったのですか?」

 

篠宮

「使わんと思ってた!完全に油断したわ!」

 

セシリア

「……フフ…」

 

篠宮

「…いや参ったね…」

 

セシリア

「…貴方をここまで追い詰めれただけで十分ですわ

 

 織斑先生!私はこの試合を降ります!」

 

 

篠宮

「…えぇ!?」

 

 

 

千冬

『…いいのか?オルコット』

 

セシリア

「万全な状態の私に彼は半端な状態で挑み

 

 対等な試合をした…それはつまり

 

 彼が万全なら私は負けていた事になりますわ」

 

千冬

『…篠宮、意見はあるか?』

 

篠宮

「あー…正直半端なのは俺の怠慢ですし…

 

 …俺も降りたいのが本音ですかね…」

 

 

 

 

本音

「ん?」

 

清水

「違う違う!」

 

本音

「およよ…」

 

 

 

 

 

 

教室

 

 

 

千冬

「…という訳で、クラス代表は織斑だ」

 

一夏

「ウソダドンドコドーン!」

 

千冬

「うるさい!

 

 …篠宮もオルコットも降りた以上…

 

 残ったお前しかないだろ」

 

篠宮

「悪りぃ」

 

セシリア

「…ごめんなさい…」

 

 

一夏

「…えー…そりゃないよ…篠宮…」

 

篠宮

「機体制御なんかの面倒は見るから許してくれ」

 

一夏

「…まぁ…そういうことなら…」

 

セシリア

「私も、暇があれば練習にお付き合い致しますわ」

 

一夏

「それはありがたい」

 

 

 

千冬

「…覚悟は決まったか?織斑」

 

一夏

「…鍛えてもらえるって言われたのに

 

 『はい』って答えないのは…失礼だもんな」

 

 

千冬

「…では、クラス代表、あとは頼んだ」

 

 

一夏

「あ?え?え?」

 

摩耶

「クラスの委員決めです…

 

 と言ってもあまり無いんですがね

 

 保健委員と図書委員だけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、整備室

 

 

 

 

篠宮

「…あーん?これがこいつで?こっちがこれ?

 

 んでもってここが本体?…多過ぎんだろぉ!」

 

 

セシリア

「篠宮さん?」

 

篠宮

「あぁ…悪い…うるさかったか?」

 

セシリア

「いえ…あの形態の調整ですか?」

 

篠宮

「あぁ…シッポが多すぎて…エネルギーの割り振りが…」

 

セシリア

「しっぽ?」

 

 

篠宮

「あぁ…あの機体は九尾モチーフだから

 

 攻撃用ビットはしっぽ、シールドは鏡モチーフ…らしい」

 

セシリア

「らしい?」

 

篠宮

「なんか色々混ざってるらしいから詳しくは知らんのよね…」

 

セシリア

「はぁ…なるほど?」

 

篠宮

「…こんな感じかな…いや、シールドに振りすぎか?」

 

セシリア

「……」

 

篠宮

「…んじゃ、ここを絞れば…いやでも待てよ…

 

 シールドを薄くしちゃ駄目だよな…」

 

セシリア

「…大変そうですわね…」

 

篠宮

「…その時その時で出力を変えれればいいんだが…

 

 さすがにそこまで器用じゃないからな…

 

 慣れるまではこうして調整しながらじゃないとな…」

 

 

セシリア

「篠宮さん…」

 

篠宮

「ん?何?」

 

セシリア

「篠宮さんは…クラス代表降りてよかったのですか?」

 

篠宮

「あー…縛られるのは苦手でね…

 

 俺、自由が好きだから!」

 

 

セシリア

「………」

 

篠宮

「ま、面倒くさそうだったからね」

 

セシリア

「…フフ」

 

篠宮

「よし!完了!

 

 部屋に帰ろっか、セシリア」

 

 

セシリア

「…はい!」

 

 



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4話  乾杯の音頭

 
 
 
 



セシリア・篠宮の部屋

 

 

 

…6時半そろそろいい時間ですわね

 

セシリア

「…篠宮さん」

 

 

…自分の専用機のメンテナンス後、

 

解けるように眠ってしまいましたが…

 

 

…遅刻するのはよくありませんものね

 

 

篠宮

「ん?」

 

セシリア

「そろそろ、お時間ですわよ」

 

篠宮

「もうそんな時間か」

 

 

 

 

 

セシリア

「行きましょう」

 

篠宮

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂

 

 

 

本音

「ではでは〜僭越ながら〜

 

 私が〜乾杯の音頭を〜」

 

 

篠宮

「乾杯!」

 

『カンパーイ!』

 

本音

「盗られた〜!」

 

篠宮

「のほほんさん…長いよ…」

 

本音

「だからって〜台詞とらないでよ〜かけるん!」

 

セシリア

「のほほん?かけるん?」

 

篠宮

「ほら、布仏本音さんだから『のほ ほん』さん」

 

本音

「翔だから『かけるん』!」

 

セシリア

「…おふたりは幼馴染なのですか?」

 

篠宮

「いんや全然?」

 

本音

「出会って1週間ちょっとの間柄だよ〜」

 

セシリア

「………」

 

おふたりとも社交性が高過ぎますわ!

 

 

 

本音

「まぁまぁ〜、セッシーも楽しも〜!」

 

セシリア

「セッシー…」

 

本音

「あれ?嫌だった?」

 

セシリア

「…いえ……渾名で呼ばれたのが嬉しくて…」

 

本音

「そっか!それは良かった!」

 

セシリア

「ありがとうございます…本音さん…」

 

 

あれ…何ででしょう…涙が…

 

 

 

本音

「およよ!?泣いちゃった!?」

 

清水

「あ!本音がオルコットさん泣かせた!」

 

本音

「ひーん!誤解だよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…………」モグモグ ガツガツ ムシャムシャ

 

一夏

「…ジュース飲んでるだけなのになんでそんな音出んだよ」

 

篠宮

「酒呑から出力した音声です」

 

一夏

「…そんな機能までついてるのか…その機体は…」

 

篠宮

「…一体こんな部屋の隅で1人佇んでる人間に何用かね?」

 

 

 

一夏

「…随分と粋なことするな…篠宮…」

 

篠宮

「…さて…なんのことやら?」

 

一夏

「のほほんさんにオルコットさんを

 

 渾名呼びする様に頼んだんだろ?」

 

篠宮

「…」

 

一夏

「あんな事を言ったことを謝ったが

 

 クラスから浮いてしまったオルコットさんを

 

 クラスに打ち解けられる様にのほほんさんに

 

 頼み込んでたの見てたぜ…」

 

篠宮

「…」

 

一夏

「知ってんのはのほほんさんと俺と篠宮だけ…

 

 もっとちゃんと皆に伝えなきゃ!」

 

 

篠宮

「そういうもんは黙っとくもんだぞ、織斑

 

 俺は、そんな事してないし、

 そんな気の利く人間じゃ無い

 

 それが真実で十分だ…」

 

一夏

「…そういうもんかね…」

 

篠宮

「そういうもんさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシャッ!

 

 

篠宮

「目がぁッ!」

 

一夏

「フラッシュ!」

 

 

 

セシリア

「篠宮さん!織斑さん!」

 

「あれ?フラッシュたいてないよ?」

 

篠宮

「冗談です」

 

一夏

「流れで…」

 

セシリア

「驚かさないでください!」

 

篠宮

「すまん…」

 

「…そろそろいいかな?

 

 君が織斑君で合ってるかな?」

 

一夏

「はい」

 

薫子

「はじめまして、新聞部2年、黛薫子でーす」

 

一夏

「あ、はい…はじめまして、織斑一夏です…」

 

篠宮

「おー、織斑、有名人じゃん」

 

薫子

「もちろん織斑の後に取材させてもらうよ」

 

篠宮

「oh......」

 

セシリア

「今のは随分いい発音でしたわね」

 

 



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5話  天賦の才

 

 

 

 

千冬

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう

 

 …専用機持ちは機体を展開後飛んでみせろ」

 

 

 

今日はISの飛行実習だとか言われたが…

 

習ったの昨日だぞ…

 

 

 

篠宮

「よっ!」

 

セシリア

「…あら?一夏さん?」

 

 

 

2人とも展開早いな…俺も急がないと怒られる…

 

 

一夏

「っ!やっと出た…」

 

千冬

「遅い、織斑

 

 熟練者なら展開まで1秒とかからないぞ

 

 …では、飛べ」

 

 

 

 

2人とも随分早いな…

 

 

セシリアはまだしも…

 

…なんでそんな手馴れてんだよ…篠宮…

 

 

 

 

千冬

「何をやっている、スペック上の出力は

 

 ほかの2人の機体より白式の方が上だぞ」

 

 

そうは言われても…空を飛ぶイメージなんて想像できねぇよ!

 

 

篠宮

「まぁ、何回も飛んでたら感覚は掴めるよ…」

 

セシリア

「そうですわね」

 

一夏

「…習うより慣れろ…か…」

 

 

千冬

『篠宮…瞬時加速(イグニッション・ブースト)出来るか?』

 

 

篠宮

「えっと…一応出来ますけど…普通のでいいですか??」

 

千冬

『…リボルバーを修得してるのか…貴様は…』

 

 

篠宮

「俺のリロードは革命(レボリューション)だ!」

 

 

 

千冬

『放課後、貴様はこのアリーナに来い

 

 とりあえず2回やってみせろ』

 

 

 

 

四宮が目の前で瞬間移動したぞ!?

 

 

セシリア

「…もう驚きませんわ…」

 

 

 

 

 

千冬

「…では急降下からの完全停止をやってみろ」

 

セシリア

「はい

 

 ではお先に!」

 

 

 

みるみる離れてって…ビタァっ!と止まる…

 

え、これやるの?

 

 

篠宮

「んじゃ、俺も」

 

 

 

 

…本当に…平然とやってのけるなよ…

 

 

 

 

一夏

「うし、俺も!」

 

 

 

……どこら辺で止まればいいんだ?

 

 

 

 

篠宮

「…あ、こりゃダメだ…」

 

 

 

 

 

 

一夏

「いっ…たくない?」

 

篠宮

「先に降りといて良かったわ…」

 

 

 

地面に刀を刺していた

 

 

千冬

「衝突のエネルギーを吸収した…か…」

 

篠宮

「ちょっと失敗して地面に刺しちゃったけど…

 

 ま、いっか!」

 

 

千冬

「良かったな織斑、グラウンド整備する必要が無くなったな」

 

 

篠宮

「……にしてもなんの抵抗もなく刺さったな…」

 

 

千冬

「さて、次は…よし、装備を展開しろ」

 

 

篠宮

「…先生…俺の武器、常時展開型なんですが」

 

千冬

「狐は」

 

篠宮

「あっちはそもそもBT兵装だし…展開武器無いんですよね…」

 

千冬

領域(ストレージ)容量は…」

 

篠宮

「吸収は別枠なんでスッカラカンです」

 

千冬

「織斑の頭と同じか」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「武装はしまわんのか?」

 

篠宮

「…えっと天羽魅(あまはみ)…こいつ仕舞うと中から壊れます」

 

千冬

「なんでもいいのか…」

 

篠宮

「悪食です」

 

千冬

「…つまり…他兵装を入れても…そいつが喰らい尽くすと…」

 

篠宮

「はい、その通りです…戦略の幅がクソ狭いです…」

 

千冬

「制御は?」

 

篠宮

「これでも昔よりマシです」

 

 

 

千冬

「…ほか2人、武装を展開しろ!」

 

セシリア

「…えっと…」

 

 

腕を真上にあげ、苦戦するセシリア

 

 

千冬

「どうしたオルコット」

 

セシリア

「篠宮さんに武装展開時の事を注意されまして…

 

 展開方法を変えたのですが…まだ感覚が馴染んでいなくて…

 

 やっと出ましたわ…」

 

千冬

「前はどうしてたんだ」

 

篠宮

「真横でした」

 

千冬

「…少し腕を下げるだけでよかったのではないか?」

 

篠宮

「!!」

 

千冬

「…『盲点!』みたいな顔してるな…

 

 

 オルコット、近距離兵装も展開しろ」

 

 

セシリア

「はい!」

 

一瞬でインター・セプターを展開したセシリア

 

千冬

「…武器の展開時間…逆転して無いか?」

 

セシリア

「はい…」

 

千冬

「まぁいい、次は織斑お前だ」

 

一夏

「はい!

 

 …っ!」

 

ちょっとかかったが雪片弐型を展開する織斑

 

千冬

「…まぁいいだろう」

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

千冬

「…時間か…次回から打鉄、ラファール・リブァイブを使い

 

 歩行訓練から行う!では解散!」

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

 

篠宮

「織斑先生」

 

千冬

「…瞬時加速(イグニッション・ブースト)についてどう理解してる」

 

篠宮

「えっと…爆風加速?」

 

 

千冬

「…まあ…よしとしよう…」

 

 

あながち間違えでは無い…

 

 

 

篠宮

「いや違うな…風船…かめはめ波?」

 

千冬

「… 個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)はそれを連続で行う」

 

篠宮

「…あ」

 

千冬

「そうだ、お前が皆に見せたのはリボルバーだ…が」

 

篠宮

「が?」

 

千冬

「リボルバー含め瞬時加速(イグニッション・ブースト)は直進のみだ」

 

篠宮

「…」

 

千冬

「…お前のそれは…曲線を描いていた…」

 

篠宮

「…気のせいじゃないっすかね…」

 

千冬

「…貴様の剣は吸収を得意とする…

 

 もしそれが操作可能でなおかつ、空間にも適用されるなら…」

 

 

 

鍛えればそれは武器になる…とても強く有用な武器に

 

 

 

篠宮

「…あー…操作は可能です…けど、瞬時加速(イグニッション・ブースト)の軌道が

 

 少し曲がってたのは副作用的なやつです」

 

千冬

「…副作用だと?」

 

篠宮

「少しでも燃費を良くするために空気抵抗なんかの機体にかかる力を吸収

 

 ただまだ吸収にムラがあって、そのせいで軌道がズレるんですよ…」

 

千冬

瞬時加速(イグニッション・ブースト)を普通に使用することは可能か?」

 

篠宮

「可能です」

 

千冬

「…逆に逸れるのを利用したりなどはどうだ?」

 

篠宮

「…瞬時加速(イグニッション・ブースト)の機動力で回避や突進、

 

 しかも軌道が直線じゃない…」

 

千冬

「…可能か?」

 

篠宮

「可能にします…だから時間をください」

 

千冬

「…無理はするな

 

 今から2時間は私が貸切っている…存分に修練に励め」

 

 

篠宮

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二時間後

 

夜7時

 

 

 

 

 

千冬

「…」

 

篠宮

「シャァ!」

 

 

 

完成させただと!?…いや焚き付けたのは私だ…

 

だが…2時間で仕上げただと?

 

 

 

千冬

「…成功率はどれくらいだ?」

 

篠宮

「6〜8割ですね、今は」

 

千冬

「そうか…」

 

 

コイツは…化けるぞ…

 

千冬

「…今日はここまでにするぞ」

 

篠宮

「はい」

 

千冬

「明日もやるか?」

 

篠宮

「…そうですね…この感覚を忘れない内に…」

 

 

 

コイツの成長速度は…才能と呼べるそれだろう…

 

 

千冬

「それはお前だけの武器だ…いわゆる必殺技とも呼べる

 

 今後、活躍する機会があるだろう…精進しろ!」

 

篠宮

「はい!」

 

千冬

「では解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室にて

 

 

 

 

 

篠宮

「疲れたぁ…」

 

セシリア

「お帰りなさいませ、篠宮さん」

 

篠宮

「あれ?

 

 セシリア…飯行ってなかったの?」

 

セシリア

「はい、篠宮さんを待ってましたわ」

 

篠宮

「遅くなるから先に行っててって…」

 

セシリア

「私は篠宮さんと食べたかったので…」

 

篠宮

「…」

 

セシリア

「さあ、行きましょう」

 

篠宮

「…俺汗臭くない?」

 

セシリア

「…」

 

 

セシリアが寄ってくる

 

セシリアの頭からシャンプーの匂いが鼻を抜ける

 

 

セシリア

「…とてもいい匂いですわ」

 

篠宮

「…そう…か…なら飯食ってからシャワー浴びるか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後2人は妙にギクシャクしながら晩御飯を食べ

 

部屋に帰ったという……

 

(食堂のおばちゃん談)













いつかここの自室にてのセシリア側の心象書くわ








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6話  転校生はセカンド幼馴染み

祝賀会から2日後

 

 

「ねぇねぇ聞いた?」

「え?なになに?」

 

 

一夏

「なんだ?ざわついてんな」

 

篠宮

「ん?あぁ、隣のクラスの転校生の事じゃねぇかな?」

 

一夏

「へぇ…」

 

セシリア

「確か…中国の代表候補生…でしたわね」

 

篠宮

「名前は…確か…凰 鈴音(ファン リンイン)だったかな?」

 

一夏

「…え?」

 

ガラッ!

 

「織斑一夏居るかしら?」

 

一夏

「イマセン」

 

「そう…って騙されるか!」

 

一夏

「…ダメかぁ…」

 

篠宮

「………?」

 

一夏

「えっと…久しぶりだな、鈴」

 

「そうね、久しぶり」

 

一夏

「…なんか用か?」

 

「いや、顔見に来ただけ」

 

一夏

「そうか…」

 

「じゃ、私はクラスに戻るわ」

 

一夏

「おう…」

 

 

凰鈴音と思われる少女が去る

 

 

篠宮

「んーと…なんかあったん?」

 

一夏

「…まぁ…ちょっとな」

 

篠宮

「…そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア

「え、終わりですの!?」

 

篠宮

「んえ?」

 

セシリア

「詳細気になりませんか!?」

 

篠宮

「気になるけど…当人達の問題だろうし…

 

 あまり首を突っ込むのも…アレだしね…」

 

一夏

「あいつが転校する時…ケンカしてな…

 

 ちょっと気まずいんだ…」

 

「私はあんな奴知らないぞ!」

 

一夏

「あー…箒と入れ替わる感じで転校してきたんだ」

 

篠宮

「あんな奴…ねぇ…」

 

一夏

「まぁ…喧嘩の原因は俺にあるんだけどな…」

 

篠宮

「…ん…先生来るから詳しい話は後で聞かせてくれ」

 

一夏

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「一夏、あんた昼1人?」

 

一夏

「いや…篠宮達と…」

 

篠宮

「…あ、やまやんに頼まれてた用事思い出した」

 

セシリア

「流石にわざとらしすぎますわよ」

 

篠宮

「ダメかぁ…」

 

「別に気を使わなくてもいいわよ」

 

篠宮

「そう?」

 

「…」

 

 

無言で一夏の隣に座る篠ノ之

 

 

篠宮

「……」

 

セシリア

「…えっと幼なじみ…でよろしいのでしょうか?」

 

「えぇ、そうね…小4…5から中学2年までの間だけどね」

 

一夏

「あと一人友達…弾を入れた3人で良く遊んでたよな」

 

「そうね…」

 

篠宮

「喧嘩別れしたって言う割には結構穏やかな雰囲気だな」

 

「喧嘩別れって言ってもそんな激しい喧嘩した訳じゃないわよ

 

 ただ単純に私が我儘言って一夏に怒られたってだけよ」

 

セシリア

「…あれ?一夏さん自分に非があるって仰ってませんでしたか?」

 

一夏

「いや…実際宥めることだって出来たのに

 

 そうしなかったから…な…」

 

篠宮

「…フゥ…ご馳走様でした…」

 

一夏

「早っ!?5分と経ってねぇぞ!?」

 

篠宮

「あぁ、軽く済ませた…食べ過ぎると眠くなるし」

 

一夏

「…一理ある…」

 

「相変わらずあんたの周りは賑やかね…」

 

一夏

「なんでだろうな…」

 

 

篠宮

「人柄だろ」

セシリア

「人柄ですわね」

「人柄ね」

 

 

一夏

「満場一致か…」

 

 

 

 

 

 

そんな他愛もない話をしつつ食事を終える一行

 

 

一夏

「さて、教室に戻るか!」

 

「…そうだ一夏、あんた専用機持ってるんでしょ?

 

 放課後、面倒見てあげようか?」

 

「それは私が!」

 

篠宮

「いいんじゃね?セシリアは遠距離が得意分野だし

 

 俺は機体性能的には近くても戦い方に癖があるし」

 

一夏

「んー…」

 

篠宮

「代表候補生に特訓してもらえる機会なんざ

 

 欲しくても手に入らんぞ、幼馴染特権ってやつだろ」

 

一夏

「あー…んじゃ頼むわ、鈴」

 

「任せなさい!」

 

 

そんな約束を交わし各々の教室に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…なんであいつがいるの?」

 

「……」

 

セシリア

「…さぁ…気付いたら居ましたわ…」

 

 

「ま、個人練でもするんでしょ」

 

一夏

「…なんかずっとこっち見てねえか?

 

 っておい待て!」

 

 

 

バンッ!

 

 

 

篠宮

「よっと…やっぱりか」

 

 

篠ノ之箒が凰鈴音に向け実弾を発砲した

 

 

「邪魔するな!」

 

セシリア

「…」

 

「怖っ…」

 

一夏

「何やってんだ!箒!」

 

「なんでそいつばっかなんでそいつばっかなんでそいつばっか

 なんでそいつばっかなんでそいつばっかなんでそいつばっか」

 

篠宮

「…手の施しようがないな…もう…」

 

「一夏は渡さない!」

 

 

 

セシリア

「…恋は盲目とよく言ったものですわね…」

 

「それは…皮肉かしら?」

 

篠宮

「…ありゃ狂気の域だろ…」

 

 

一夏

「お前ら落ち着き過ぎだろ!」

 

 

篠宮

「負ける気しねぇし」

 

 

代表候補生ⅹ2+同等もしくはそれ以上の実力者+雪片弐型持ち

 

VS

 

訓練機

 

 

一夏

「…いやまぁ確かにそうだけども!」

 

 

篠宮

「んー…とりあえず、俺が止めてくるわ

 

 2人とも一夏の特訓頑張ってね〜」

 

セシリア

「えぇ…お気をつけて」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

 

なんで邪魔をする!

 

篠宮

「おい、篠ノ乃箒」

 

「お前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前がお前が!」

 

 

お前が居なければ!

 

 

篠宮ん

「…そうだよ、俺が意図的にお前を織斑から引き離した」

 

「…邪魔を…するなぁ!」

 

 

一太刀で捩じ伏せる!

 

 

篠宮

「…いい加減落ち着けアホンダラ!」

 

「…!」

 

 

私の剣はいとも容易く弾き飛ばされた

 

 

 

篠宮

「感情で動くな!」

 

 

「…」

 

 

 

篠宮

「…少しは落ち着いたか?」

 

「……」

 

篠宮の声で私は…

 

ほんの少しだけ…正気に戻った気がする

 

 

 

 

篠宮

「お前みたいな織斑至上主義者、鈴と並ばせてみろ

 

 わざわざ距離空けてこれ…どうなるかわかったもんじゃない」

 

「……」

 

篠宮

「お前は、自分の友達や大切な仲間殺すような奴と…

 

 殺そうとする奴と仲良くなれるか?」

 

「…いや…」

 

考えればわかる事だ…そんな者…私から願い下げだ…

 

 

なのに私は…

 

 

そんなものに私はなろうとしていた…

 

篠宮

「あまり衝動で動くな、大概失敗するから」

 

「私は…なんて事を…」

 

私は…取り返しのつかない事をしようとした

 

 

 

篠宮

「まぁ、織斑には適当に言っとくから

 

 凰や、オルコットにはしっかり謝っとけよ?」

 

「…お前は…私を叱らないのか…」

 

 

私のしようとした事はとても…

 

…許されるようなことでは無い…

 

 

篠宮

「…んー…責任的には俺が原因な訳だし

 

 こうなることを予測出来なかった俺のせいな訳だし…」

 

「…」

 

 

何故だ…

 

 

篠宮

「それに説教はオルコットがしてくれるだろうし…

 

 説教ばかりは辛いでしょ?」

 

 

なんだ…その目は…

 

 

「私が…」

 

 

なんでそんな

 

 

篠宮

「…」

 

 

 

「私が悪いんだ!」

 

 

なんでお前が…そんな悲しい目をしている!

 

 

篠宮

「…そう…」

 

「…なのに…なんで…

 

 そんな…寂しい目をしてるんだ…お前は…」

 

篠宮

「…!…」

 

「なんでお前は…人と距離をとるんだ…」

 

 

篠宮

「…」

 

「…お前は…」

 

 

篠宮

「…もう何も失いたくないから」

 

「……」

 

篠宮

「…俺みたいになるなよ、篠ノ乃…

 

 お前は…大事なモン…しっかり守れ…」

 

 

 

 

去っていく…

 

 

「…ふざけるな…」

 

 

離れていく背中に投げつける

 

 

「逃げるな!」

 

 

篠宮

「…!」

 

「だからなんだ!お前は強い!

 それは紛れもない事実だろう!」

 

篠宮

「…それだけじゃどうにもならないのが

 

 …この世の中なんだよ」

 

「……」

 

篠宮

「強いだけじゃ…何も守れない…

 

 覚えておくといいよ…」

 

「…私は…何も知らない…

 

 私は…力しか知らない」

 

篠宮

「……」

 

「でも…それでも…」

 

篠宮

「…何かあるなら…せめて今ある問題を解決してからな」

 

 

去っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後

 

 

「凰、本当に申し訳なかった…」

 

セシリア

「oh......Japanese土下座…」

 

「別に気にしてないわよ」

 

「だが!」

 

「気が済まないなら…うーん…そうだ

 

 明日のお昼お弁当作ってきて、それでチャラね」

 

 

セシリア

「…まぁ、鈴さんがそう言うのでしたら

 

 私からは何も言う事はありませんわね」

 

「……」

 

「…まぁ、篠宮が説教しただろうしね」

 

セシリア

「さて、顔を上げて下さいませ、箒さん」

 

「…あぁ…」

 

 

 

少しだけ…仲良くなれた

 

 

 



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7話  乙女回路暴走(ガールズ・オーバーヒート)

 

2日後

 

 

 

 

放課後

 

教室にて

 

 

「…篠宮」

 

篠宮

「んお?」

 

「少し…付き合ってくれ」

 

篠宮

「?」

 

 

 

え、何、お説教?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更衣室にて

 

「少し…目を閉じててくれ」

 

篠宮

「…んん?」

 

 

なんか怒られるような事…したっちゃしたな…

 

 

 

「…目を開けてくれ」

 

 

 

目を開けた

 

 

上半身裸の箒が立っていた

 

 

目を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「ンンンンンンンンンンン!?」

 

「…お前には感謝している…

 

 だが私には何も無い…

 

 だからせめてこの体で!」

 

 

 

足音でわかる…寄ってきてる…

 

何考えてんのこの子!?

 

 

篠宮

「いいから服着てくれ!」

 

「安心しろ!ニップレスだ!」

 

篠宮

「そうじゃない!」

 

「なんでも言うことを聞く!

 

 私の体を好きなようにしてくれて構わない!」

 

篠宮

「そういうのは織斑にしてあげなさいよ!」

 

 

腕を持たれた…ガッツリホールドされてらァ…

 

 

セシリア

「…えっと…どう言う状況で?」

 

 

セシリアが入ってきた…

 

…グッバイ青春

 

 

 

「恩返しだ!」

 

セシリア

「…襲ってるように見えますが…」

 

「こいつがなかなか受け入れてくれなくてな」

 

セシリア

「…えっと…何か手伝いましょうか?」

 

 

 

え、そっち側なの?

 

いや、目閉じてるから何が何だか分からないけども…

 

 

 

「ズボンを脱がす、手伝ってくれ」

 

 

それだけは禁忌だよ!

 

 

こうなりゃ久遠の尻尾で箒を引き離……

 

…目が見えなきゃ操作出来ねぇじゃねぇ!

 

 

セシリア

「…異性のベルト外すの…

 

 なんと言うかイケナイ事をしてる気分になりますわ!」

 

 

 

 

 

何ワクワクしてんの!?セシリアさん!

 

いや、立ってる状態でベルト外されたら1発で脱げるよ!?

 

いやそれより手を弾かな…そういえば強ぇなぁ!動かせねぇ!

 

 

 

 

篠宮

「冷静になって!2人とも!?ここ人来るでしょ!?」

 

違うそうじゃない…絶対そうじゃない…

 

 

「…ふむ言われてみれば…」

 

セシリア

「でしたら私たちの部屋で」

 

 

悪手だったァ…逃げ場無くなったァ…

 

 

 

篠宮

「…終わったぁ…」

 

 

 

静寂…

 

 

 

「…篠宮、もう目を開けて大丈夫よ」

 

篠宮

「…え?鈴…」

 

「……」

 

篠宮

「……」

 

 

目を開けた

 

鈴が居た

 

そして上裸の箒

 

セシリアも半脱ぎ

 

再び目を閉じる

 

 

篠宮

「なんでさ!」

 

「恩返しだ!」

 

篠宮

「答えになってねぇ!」

 

「…据え膳食わぬは男の恥よ」

 

篠宮

「なんで俺宛の据え膳なんだよ!

 

 相手は織斑であれ!」

 

 

夢から醒めてくれ!

 

 

 

織斑

「……お前ら…何してんだ?」

 

篠宮

「おり、フグ!?」

 

口を塞がれた!…何で塞がれてんだこれ?

 

 

織斑

「なんか外までドタバタ聞こえてるぞ」

 

 

「あぁ、すまない…

 

 ストレッチを鈴とセシリアとでしてたんだがな

 

 思ったより痛くてな!」

 

 

織斑

「無理に伸ばし過ぎると逆に良くないから程々にな?」

 

「あぁ、程々にしてく」

 

織斑

「んじゃ、また後でな!」

 

足音が遠のいていく

 

 

 

 

 

篠宮

「プハァ!今何で口閉じさせた!?」

 

「それは…その…」

 

篠宮

「こんな事しといて今更恥ずかしがるの!?」

 

「…逆になんだと思うの?」

 

篠宮

「………」

 

「…むっつりスケベ」

 

篠宮

「いや、不可避じゃねぇか!」

 

 

避けようがねぇよ!

 

 

 

篠宮

「…もう疲れた…わかったよ恩返しでもなんでも受けるよ」

 

「よし、では!」

 

篠宮

「ただし一般常識の範囲で!」

 

「…だがしかし…」

 

篠宮

「…なんでも聞いてくれるなら…まず服を着てくれ」

 

「むぅ…」

 

セシリア

「惜しかったですわ…」

 

「…セシリア、今なんて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア・篠宮部屋にて

 

 

「…何でもするぞ!奉仕でもなんでも!」

 

篠宮

「箒ってこういう子だったっけ?」

 

「…混乱してんのよ」

 

篠宮

「…淫乱では?」

 

「今まで優しくされたことがなかったから

 

 何がなんでもお返ししなきゃって」

 

セシリア

「……」

 

篠宮

「んでセシリアも手伝おうとしたと」

 

「いや、あれは便乗して

 

 既成事実を作ろうとしてただけよ」

 

セシリア

「……」

 

篠宮

「あー…跡継ぎって奴か」

 

「何で他人事なのよ!あんた喰われかけてたのよ」

 

篠宮

「いや、セシリアなら別に…構わんし…」

 

 

 

「あんたらそういう関係!?」

セシリア

「いえまだ!」

 

「早…」

 

「…私を忘れていないか?」

 

篠宮

「…んー…箒にして欲しい事ねぇ…」

 

「なんでも言ってくれ!」

 

篠宮

「無いな!」

 

「……」

 

篠宮

「大体何でも出来るし」

 

「…おのれ万能の天才(オールマイティ)

 

篠宮

「しいて言うなら、今まで通り接してくれ」

 

「…むぅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

消灯時間手前

 

 

「んじゃ、帰るわ」

 

「…私も帰るとしよう」

 

 

セシリア

「ではまた明日」

 

篠宮

「おやすみ」

 

 

2人

「おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア

「…その…鈴さんの言った事は…」

 

篠宮

「聞かなかった事にしとくよ…」

 

セシリア

「………」

 

篠宮

「……おやすみ、セシリア」

 

セシリア

「はい、おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑

「そういや昨日は箒とどっか行かなかったか?」

 

篠宮

「あー…この間の事で謝罪と恩返しがしたいって言われて

 

 断った」

 

織斑

「断ったのか…」

 

篠宮

「まぁ、恩返しされるような事はしてないし」

 

織斑

「そうなのか…」

 

 

「篠宮」

 

篠宮

「何?」

 

「放課後、時間あるか?」

 

篠宮

「今日は酒呑で戦闘訓練を予定してるけど?」

 

「私に戦い方を教えてくれ」

 

篠宮

「え?」

 

 

 

 

 



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8話  潜在的魔性(ハート・スナイパー)

放課後

 

アリーナにて

 

 

篠宮

「…いや確かに基本剣士スタイルだから

 

 教えられるには教えられるけど…」

 

 

 

箒の剣戟を捌く篠宮

 

 

 

「…少しでも強くなりたいんだ」

 

篠宮

「…いや…センスなら…」

 

「センスはなんの足しにもならん」

 

篠宮

「…果たしてそうかな?」

 

「?」

 

篠宮

「俺の機体のスペックは未調整なら

 

 クラスの専用機持ちの中で断トツの最下位

 

 調整してギリギリ燃費だけ白式よりマシって程度だ」

 

「!?」

 

篠宮

「もし織斑先生が乗った白式が相手なら1分と持たない性能だ」

 

「…いや、織斑先生なら…」

 

篠宮

「…どうして織斑先生ならそうなると思う?」

 

「…どうして……戦闘スキル?」

 

篠宮

「例えば?」

 

「…判断力とか?」

 

篠宮

「…まぁ…よしとしよう

 

 早い話がセンスだ」

 

「……センス…」

 

篠宮

「冷静な判断力、迅速な対応

 

 相手の苦手を突く洞察力、観察眼

 

 

 機体の性能も大切だ…だけどそれを動かすのは

 

 人間だ…センス、才能、スキルがなければ

 

 いくら機体が強かろうといずれ敗ける」

 

「……そうなると私には…何も…」

 

篠宮

「…センスは磨くもの、才能は開花させるもの

 

 …とあるスポーツ漫画のセリフだ」

 

「……」

 

篠宮

「センス…所謂感覚だ

 

 聴覚、嗅覚、視覚、味覚、触覚…これもセンスだし

 

 織斑の直感はセンスだな

 

 あれはこれから何度も戦闘訓練や実践を経て

 

 より高度に洗練されていく、磨かれていく

 

 

 逆にあいつの剣技は才能だ

 

 剣道を習った事で開花した物だ」

 

 

「…」

 

篠宮

「センス無いと嘆くなら

 

 まずは自分の得意を見つけろ、それは才能になりうる物だ」

 

「自分の…得意…」

 

篠宮

「上を見るのは構わんが、まずは足元を固めろ

 

 土台がなきゃ何も建たない」

 

「……」

 

篠宮

「どんなに小さかろうと1歩ずつ進むことが大事だ」

 

 

「……1歩ずつ…」

 

篠宮

「まぁ、あくまで精神論だがな」

 

「いや、おかげで目が覚めた」

 

篠宮

「ほう…」

 

「…少し待っててくれ」

 

 

一旦ピット内に戻る箒

 

 

篠宮

「…さてと…焚き付けはこんぐらいでいいかな…」

 

 

 

 

 

「待たせたな」

 

剣を2本持っている箒

 

俗に言う二刀流

 

 

 

 

篠宮

「二刀流ねぇ…」

 

「やるだけやってみる…だ!」

 

篠宮

「ン〜」

 

「行くぞ!」

 

篠宮

「来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

 

 

篠宮

「だはぁ!疲れたぁ!」

 

 

アリーナに倒れ込む篠宮

 

 

「あぁ…全力を出し切った…だが…」

 

篠宮

「そこは仕方ないだろ、訓練機と専用機だ

 

 そこのスペック差はパイロットのセンスが

 

 織斑先生クラスじゃなきゃどうしようも出来ない」

 

「…悔しいなぁ…だが不思議だ…心が軽い…」

 

篠宮

「後腐れないって訳だ」

 

「あぁ…楽しかった…」

 

篠宮

「またいつでも相手になるよ」

 

「…しばらくはいいな…

 

 これを連続は身体がもたない…」

 

篠宮

「…だな」

 

立ち上がりピットに向かう篠宮

 

 

篠宮

「あ、そうだ箒」

 

「ん?」

 

篠宮

「お前は目がいい、ちゃんと見て動けてる

 

 

 

 いいセンスだ」

 

 

「…ありがとう」

 

 

篠宮

「あとそれから」

 

「?」

 

篠宮

「お前は笑ってた方が可愛いぞ」

 

「な!?」

 

篠宮

「じゃ明日」

 

アリーナを後にする篠宮

 

 

「…まったく…フフ…」

 

 

 

箒はしばらくニヤニヤしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋にて

 

夜7時頃

 

 

篠宮

「……zzZ」

 

セシリア

「帰ってきて早々溶けましたわ…

 

 今日は篠ノ之さんの特訓に付き合って…

 

 泥のように眠る…かなりハードでしたのね」

 

 

篠宮

「んにゃ…むにゃ…Zzz…」

 

 

セシリア

「………」

 

…ダメですわよ…寝込みを襲っては…!

 

 

セシリア

「…額にキスするくらいなら…」

 

 

 

…起きませんわよね?

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

セシリア

「………」

 

 

何やってるんですの私!?

 

 

この間…篠宮さんの匂いを

嗅いだ時からおかしいですわ!

 

 

セシリア

「……スンスン」

 

 

 

…なんで私…篠宮さんの

首筋の匂い嗅いでますの!?

 

あ、でも…ダメ…

 

セシリア

「…ん…あっ…ンンッ//」

 

 

身体の中が疼く…

 

セシリア

「ダメ…離れなきゃ…でも…」

 

篠宮

「…そろそろいい?」

 

セシリア

「あひゃぁ!」

 

 

 

びっくりしましたわ!

 

 

 

篠宮

「おはよう…まだ夜だけど…」

 

セシリア

「えっとその…一体いつから…」

 

篠宮

「…流石に耳元で喘がれたら…ねぇ

 

 …俺だって男な訳だし…ねぇ…」

 

 

恥ずかしい…恥ずかしいですわ!消えたいくらい!

 

セシリア

「…あ…う…えっと…」

 

篠宮

「飯いこ」

 

セシリア

「は、はい!」

 

篠宮

「……」

 

セシリア

「……」

 

 

お互い向き合って…

 

気まずいですわ…

 

 

篠宮

「セシリア」

 

セシリア

「はい!」

 

 

え、顔が近くありませんか!?

 

あ、耳に息が!

 

 

篠宮

「言ってくれればいつでもどうぞ」

 

セシリア

「ひゃう!」

 

 

小悪魔のような笑顔を見せる篠宮さん…

 

ズルいですわ…その表情…

 

 

 

 

 

 

 

 

顔が真っ赤なセシリアさんと

 

ニコニコ楽しそうな篠宮くんが

 

学食に来ました

《学食のおばちゃん談》









セシリア
「何もしてませんから!」

篠宮
「知ってる」






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9話  笑顔のキミ

教室にて

 

 

 

 

一夏

「……篠宮…」

 

篠宮

「ん?」

 

一夏

「俺にも特訓してくれないか?」

 

篠宮

「あ?何やらかした」

 

一夏

「いや…鈴別クラスだし…」

 

篠宮

「あー…忘れてた…」

 

一夏

「いよいよ来週だし…」

 

篠宮

「クラス対抗か…頑張れ」

 

一夏

「いやいやいや!」

 

篠宮

「お前は基本をやっとけ」

 

一夏

「なんでさ!」

 

篠宮

「箒を見てみろ」

 

一夏

「え?」

 

箒を見る一夏

 

「…………」

 

 

机に突っ伏し微動だにしない箒

 

 

篠宮

「あんな感じになるぞ」

 

一夏

「…箒があんなになるなんて…

 

 一体何やったんだよ…」

 

篠宮

「そりゃお互い全力で果てるまでやりあったから」

 

セシリア

「え!?」

 

篠宮

「…語弊があったかな?」

 

一夏

「…えっと?」

 

篠宮

「スパーリングが…正しい表記かな?」

 

 

本音

「あ〜、確かに昨日は〜

 

 Cアリーナ殺気凄かったもんね〜」

 

一夏

「殺気て…」

 

篠宮

「…まぁ…箒があんな感じだし

 

 特訓見るぐらいならしてやるよ」

 

一夏

「お、おう…」

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

セシリア

「…鈴さんは手強い相手ですわ…

 

 付け焼き刃の技術は役に立ちませんわ」

 

一夏

「…あぁ…ここ数日で実感してる…」

 

篠宮

「…織斑」

 

一夏

「ん?」

 

篠宮

イグニッション・ブースト(瞬時加速)は出来るか?」

 

一夏

「…千冬姉が教えてくれたんだけど…

 

 精度はイマイチ…」

 

篠宮

「…ちなみにどう認識してる」

 

一夏

「んー…スラスターで潜水する時の呼吸?」

 

篠宮

「………?」

 

一夏

「ほら、1度出したものを溜めて出すだろ?」

 

篠宮

「……言わんとしてることはわかった…」

 

一夏

「でもイマイチスピードが出ないで

 

 エネルギーだけ消費するんだよ…」

 

篠宮

「難しく考えるな

 

 …そうだな…織斑、背中でかめはめ波撃て」

 

一夏

「・・・・・!」

 

セシリア

「へ?なんですの、それは…」

 

篠宮

「昔やってたアニメの主人公の必殺技

 

 こう…手と手の間に力を貯めて、一直線に放つ技」

 

セシリア

「ん〜…確かに感覚は似てそうですわね…」

 

篠宮

「…1週間で物にしてもらう」

 

セシリア

「…なるでしょか?」

 

篠宮

「…させるさ」

 

 

 

 

ドゴン!

 

 

 

 

一夏

「キュウ…」

 

篠宮

「…そうだった…急停止の問題があったな…」

 

 

 

 

 

 

保健室

 

 

 

 

校医

「…絶対防御に鼻をぶつけて鼻血ねぇ…

 

 器用な事するね…キミ…」

 

篠宮

「なんも守れてないじゃないか…」

 

校医

「…コレでヨシ!…んー…まぁ10分位したら止まるでしょ

 

 折れてる訳じゃないし」

 

 

 

 

 

という訳で退室

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…瞬時加速(イグニッション・ブースト)のコツは掴めたからあとは…

 

 残る課題はその後の勢いのいなし方だな」

 

篠宮

「エネルギーの分配率も考えろ」

 

一夏

「さっきのは溜めすぎた…」

 

篠宮

「…あと…見えない砲撃か…」

 

一夏

「え?」

 

篠宮

「アイツの兵装だ」

 

一夏

「何だそれ?」

 

篠宮

「まぁ…特訓じゃ見せねぇわな…」

 

一夏

「…なんでお前がそんなの知ってんだ?」

 

篠宮

「なんでも知ってる知り合いが居てね…

 

 まぁ、こんなのが有るって情報だけで

 

 攻略なんかは全く分からないって言われたけどね」

 

一夏

「…でも知らないのと知ってるじゃ対策のしようは

 

 大きく変わるぞ…」

 

篠宮

「…乗りかかった船だ…最後まで付き合ってやるよ…」

 

一夏

「マジで!ありがとうな!」

 

篠宮

「ビシバシ行くからな?」

 

一夏

「ドンと来い!」

 

 

 

2時間後

 

 

 

 

一夏

「…う…ぐ…」バタッ

 

セシリア

「…わたく…し…まで…」

 

 

篠宮

「だらしないなぁ…」

 

 

セシリア

「…いや…あの速度と量の射撃を捌くか避ける特訓は

 

 いくら何でも疲れますわ…

 

 私も途中から巻き込まれてましたし…」

 

篠宮

「回避しながらの射撃の良い特訓になったろ?」

 

セシリア

「…えぇ…まぁ…」

 

篠宮

「まぁ…本来は1週間とかかけて密度増やしてくんだけどな」

 

セシリア

「圧縮し過ぎですわ!」

 

一夏

「…無理だ…動けねぇ…」

 

篠宮

「試合2日前までこの方向でやるぞ?」

 

一夏

「スパルタ!」

 

篠宮

「明日は瞬時加速(イグニッション・ブースト)も織り交ぜて

 

 回避をしてもらう…あ、それから飯食って部屋に帰ったら

 

 すぐ寝ろ」

 

一夏

「……言われずとももう落ちそう…」

 

篠宮

「ヨシ、今日は終了!」

 

一夏

「…おう…」

 

セシリア

「…はい…」

 

 

篠宮

「俺は少し自主練するから先に帰っててね、セシリア」

 

 

セシリア

「わかりましたわ…」

 

 

 

 

1時間後

 

 

 

 

千冬

「篠宮、そろそろ時間だ…というかその殺気少し抑えろ」

 

篠宮

「…うす」

 

 

千冬

「そんなになるまで何をやってるんだ?」

 

 

所々装甲が焦げている

 

 

篠宮

「あはは…色々失敗しまして…」

 

千冬

「…メンテナンスはしっかりしろ?」

 

篠宮

「…時間も時間なんで…」

 

千冬

「焦げ付き位は落としとけ」

 

篠宮

「はい…」

 

 

 

 

 

 

焦げ落とし中

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…しっかしあんなこびりついてるとは…」

 

 

グスッ

 

 

篠宮

「ん?」

 

 

鈴が居た

 

 

おそらくパジャマか部屋着と思われる薄着の

 

 

鈴が居た

 

 

 

篠宮

「…シャワー浴びて寝よ…」

 

 

「…気にしなさいよ…グスッ」

 

 

篠宮

「織斑が何しでかした?」

 

「よく一夏絡みだってわかったわね…」

 

篠宮

「適当に言った」

 

「フフッ…」

 

篠宮

「笑ったな、ヨシ帰る」

 

 

ポンポン

 

 

篠宮

「……」

 

「隣座って」

 

篠宮

「…ハァ…」

 

「ダメ?」

 

篠宮

「…愚痴なら聞いやる」

 

 

 

 

 

 

十数分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「約束を勘違いしてたのは百歩譲っていいとしても

 

 私の体型のことを言うのは酷くない!?」

 

篠宮

「…女性の身体に関することは男は言っちゃいかんだろ」

 

「私ってそんなに魅力ないかしら!」

 

グイッと篠宮に詰め寄る鈴

 

 

篠宮

「…昔から織斑先生を見てるせいで感覚麻痺ってるんだろ」

 

 

 

遠くを見つめる篠宮

 

 

 

「目を逸らすなぁ!」

 

 

無理やり顔を向けられる

 

 

篠宮

「あのな…俺だって男なんだぞ

 

 そんな薄着で意識しない方が難しいわ」

 

「…へ?」

 

篠宮

「…魅力どうこうの前に君は女の子なんだ

 

 もっと自分を大切にしろよ…」

 

 

「その…ごめん…」

 

腕で前を少し隠す鈴

 

 

篠宮

「あのバカは死んでも治らねぇから

 

 諦めるか悟れ」

 

席を立つ篠宮

 

 

「…愚痴聞いてくれてありがとう」

 

篠宮

「また溜まったら聞いてやる…それと」

 

 

「ん?」

 

 

篠宮

「お前に泣き顔は似合わねぇな

 

 笑え、笑顔の方が俺は好きだぞ…

 

 じゃあな〜」

 

 

 

 

 

 

廊下を曲がる篠宮

 

 

 

「…大人ね…一夏も見習ってほしいわ

 

 …ありがとう」

 

 

その顔は笑顔だった

 

 

 



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10話  ココロナキ

一夏

「密度が濃すぎる!

 

 それと明らかな殺意を感じる!」

 

 

 

確実にタマを潰しにかかる弾道

 

 

 

 

篠宮

「気のせいだ」

 

セシリア

「昨日の倍以上ありませんか!?」

 

 

 

 

 

「…恐ろしい特訓をしているのだな…一夏」

 

一夏

「さすがに死ぬかと思った」

 

篠宮

「せいぜい半殺しにしかしないから安心しろ」

 

一夏

「安心出来ねぇよ!」

 

篠宮

「よし、まだ元気だな、続きやるぞ」

 

一夏

「悪意を感じる!」

 

 

 

 

 

悲鳴を上げながら回避を続ける一夏

 

 

 

 

「で、その殺気の理由は?」

 

篠宮

「昨日、鈴が泣いてた」

 

「あぁ…昨日のアレか…」

 

篠宮

「男としてどうかと思うわ…」

 

「それは同意見だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…さて、じゃあ次の段階に行こうか」

 

一夏

「…ちょっと休ませてくれ」

 

篠宮

「1週間を切ってるんでな…そんな暇無い」

 

一夏

「わっ!ちょっ!」

 

目隠しをされどこか別の場所に移動させられる一夏

 

 

篠宮

「今度は気配や空気の流れを感じる特訓な〜」

 

一夏

「絶対適当に言ってるだろ!」

 

篠宮

「じゃあ、箒よろしくね」

 

「あぁ、任せろ」

 

一夏

「さすがに無理だから!」

 

篠宮

「あ、一夏お前は攻撃並びに反撃禁止な

 

 絶対ラッキースケベ起こすか」

 

「ひうッ!」

 

 

胸を触っていた

 

 

篠宮

「あーあ…」

 

 

 

 

 

 

 

保健室

 

 

 

校医

「…うーん迷いなく人体の急所を突いてる…

 

 いい太刀筋だよ…」

 

一夏

「……」

 

 

白目剥いて気絶する織斑一夏

 

 

篠宮

「しかしまぁ…盛大に気絶したな…」

 

「…その…すまん…」

 

篠宮

「…開始の合図を出してもないのに

 

 無闇に手を伸ばしたこのバカの責任だ、気に病むな」

 

セシリア

「…で、クラス対抗迄には間に合いますの?」

 

篠宮

「いつ目を覚ますかだが…まぁ、無理だろうな」

 

 

 

「一夏!」

 

篠宮

「お?」

 

「あ…その…」

 

篠宮

「……箒、しばらくこのバカは起きねえだろうし

 

 特訓すんぞ〜」

 

「わっ!ちょっ!襟を引くな!」

 

 

 

 

 

 

保健室から離れアリーナに戻る3人

 

 

 

 

 

 

「鈴と一夏を2人きりにするのはマズイだろ!」

 

篠宮

「…大丈夫だろ、せいぜいあってキスくらいだろ」

 

「…なんというか篠宮、ボーダーラインがかなり甘くないか?」

 

セシリア

「…………」

 

 

真っ赤になるセシリア

 

 

「…ほう…」

 

篠宮

「箒は織斑のことが好きなんだったよな?」

 

「わっ!いや!…いや、篠宮にはバレていたな…」

 

セシリア

「あぁ…やっぱり…」

 

「…あんな事があれば普通は気付くか…」

 

篠宮

「あの唐変木(織斑一夏)が異常なだけだ…」

 

「…あぁ、私は一夏の事が好きだ…」

 

篠宮

「…そうか、頑張れ」

 

セシリア

「応援しますわ!」

 

「…本人に言える自信はないがな…」

 

セシリア

「手伝いますわよ!」

 

篠宮

「やめとけ、セシリア」

 

セシリア

「何でですの!」

 

篠宮

「自分の力で幸せを掴み取れないような奴は

 

 いつか取り零す」

 

セシリア

「…それは…」

 

「いいんだ、セシリア…これは私個人の欲望だ

 

 私一人で何とでもするさ」

 

篠宮

「まぁ…結婚式の招待状(いつかの未来)が届いたら祝福してやるよ」

 

「言ったな!」

 

セシリア

「私も聞きましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と、セシリアは篠宮の事が好きなのか?」

 

セシリア

「ピャァ!」

 

篠宮

「すっげぇ声出したな…」

 

セシリア

「そそそんなことああありませんわよ!」

 

「…ものすごく動揺してるではないか…」

 

篠宮

「知ってるよ、何となく」

 

セシリア

「あう…」

 

「なら!」

 

篠宮

「…でも、すぐには答えられないや…色々問題があってね…」

 

 

「…問題とは?」

 

篠宮

「…」

 

セシリア

「…大丈夫ですわ、無理にお話にならなくても」

 

篠宮

「…いや、話すよ…

 

 家庭の事情で俺の戸籍…無いんだ何処にも、どの国にも」

 

 

彼はどこか悲しそうな顔をしていた

 

 

「…は?」

 

セシリア

「どういうことですの!?」

 

篠宮

「…本家の人達的には俺は死人扱いかな?

 

 まぁ、複雑な事情でね…すぐに答えれない」

 

 

寂しい目をする篠宮

 

 

 

セシリア

「でしたらどうやって学園に!」

 

篠宮

「色んな人との縁で…理事長だったり…Dr.束だったりね…」

 

「ふぁ!?」

 

セシリア

「とんでもない名前が上がりましたわ!?」

 

篠宮

「1回捕まってね…解体されかけた…」

 

「…姉が迷惑をかけた…」

 

篠宮

「ん?出会い方は散々だったけどおかげで

 

 俺は今ここにいるから気にしてないよ」

 

 

セシリア

「…あれ?でも、適性検査はいつ何処で…」

 

篠宮

「あぁ、理事長が旅先で出会った特殊な子って事で

 

 学園の設備で検査して適正『S-』って出た」

 

「マイナスとはいえSだと!?」

 

セシリア

「…いやまぁ、もう驚きませんわ…」

 

篠宮

「高いの?」

 

セシリア

「理解してなかったんですの!?

 

 そっちに驚きですわ!」

 

「…織斑先生クラスの選手が適正『S』だったか?」

 

 

篠宮

「…うわ高かったんだ、だから皆驚いてたんか」

 

セシリア

「要するに、世界最強に匹敵する適正

 

 機体性能をそれだけ引き出せるということですわね…

 

 納得ですわ」

 

 

 

 

 

 

時間は進み日没

 

 

 

 

 

セシリア

「…っと、私先に戻ってますわね」

 

篠宮

「ん、了解」

 

 

 

アリーナから出ていくセシリア

 

 

 

「…篠宮」

 

篠宮

「ん?」

 

「…何か嘘をついてないか?」

 

 

篠宮

「…顔に出てたか?」

 

「僅かに」

 

篠宮

「…はぁ…オルコットは騙せたけど篠ノ乃さんは無理だったか…」

 

「…まぁ無理には聞かん、いつか話す気になったら話してくれ」

 

 

アリーナから出ようとする箒

 

 

篠宮

「…オルコットの俺への好意、あれ…幻覚」

 

「…なんだと?」

 

篠宮

「…正確に言うなら…俺から魅了を受けた…かな?」

 

「どういう意味だ」

 

篠宮

「これはもう…呪いと言うべきだろうね

 

 俺の体は無意識下で特殊なフェロモンを出してるんだ

 

 …だから意識があるうちは問題ないけど…

 

 寝たり気絶したりしたら最後、異性は魅了される…

 

 

 ファンタジーみたいでしょ?」

 

「…つまり…オルコットは」

 

篠宮

「そう、もう影響下にある…

 

 …なるべく寝ないようにしてはいたんだけどね…

 

 君との特訓の疲れと寝不足で寝てしまった時があってね」

 

「…寝ないように…だと?」

 

篠宮

「ん、あぁ…学園来てからは寮の部屋で寝てないだけ

 

 外で寝ればそもそも留まらないから寝れる時に寝てる」

 

「…それはつまり…慢性的な寝不足ではないか?」

 

篠宮

「…まぁ…ぶっちゃけね…」

 

「…お前の意思は…どうなんだ…」

 

篠宮

「…わかんない…俺…そういうの苦手…

 

 …てかそういう感情知らないからさ…」

 

「…知らない…だと?」

 

篠宮

「あ、いや、概念は知ってるよ?

 

 体験した事ないだけ…他人(ヒト)を好きになった事が無いだけ」

 

 

「お前は…一体…」

 

篠宮

「…ただ生まれる家を間違えた運の無い奴だよ…」

 

「……篠宮…」

 

篠宮

「…箒…この話は誰にも言わないでね」

 

 

そう言い残しアリーナから出ていく篠宮

 

 

 

「…言える訳ないだろう…こんな話」



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11話  緊急事態(エマージェンシー)

放課後

 

食堂

 

 

一夏

「復活!」

 

篠宮

「…はぁぁぁぁぁ…」

 

一夏

「すっげぇ長い溜息だなオイ!」

 

篠宮

「…んで…どうするよ…明日だぞ…」

 

一夏

「まさかドクターストップかかるなんてな…」

 

篠宮

「…後で寮の屋上に来い」

 

立ち上がる篠宮

 

 

一夏

「ん?」

 

篠宮

「1発限りで必中する必殺技を教える」

 

 

 

 

寮入口

 

 

「一夏」

 

一夏

「…鈴…」

 

「私勝つから、勝ってアンタにこの間の事謝らせるから!」

 

一夏

「…あぁ…でも俺も負けねぇからな!」

 

 

 

 

 

 

 

屋上

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…本当にそんなんで鈴に勝てるのか?」

 

篠宮

「相手を倒す技じゃねえ、勝つ為の技だ

 

 あとはお前がこれを完全じゃなくとも

 

 タイミングを取れさえすれば、戦闘の主導権はお前が握れる」

 

一夏

「…勝つ為の技…」

 

篠宮

「早い話、相手の調子を狂わす技だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦当日

 

 

ビット内

 

 

セシリア

「結局、1週間特訓出来ませんでしたわ…」

 

篠宮

「…まぁ、何とかなるさ」

 

セシリア

「だといいんですが…」

 

一夏

「…よし、行ってくる!」

 

セシリア

「いってらっしゃいませ!」

 

篠宮

「逝ってら〜」

 

一夏

「気のせいじゃなきゃ悪意を感じるんだが?」

 

篠宮

「おう!特盛だ」

 

一夏

「悪びれる様子無し!」

 

篠宮

「いっぺん死んでこい!」

 

一夏

「悪化した!」

 

篠宮

「…まぁ、冗談はさておき…

 

 全力出してこいよ、手抜いたら特訓強化するからな」

 

一夏

「それはイヤ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ上空

 

 

「来たわね!」

 

一夏

「あぁ」

 

「全力で来なさい!」

 

一夏

「言われずとも!」

 

 

 

 

千冬

『試合開始!』

 

 

 

 

「先手必勝!」

 

 

一夏

「ふごっ!?」

 

 

腹部に何かがぶつかった感触を感じる一夏

 

 

一夏

「これか…」

 

「どう?見えない砲弾の威力は!」

 

一夏

「この間の箒の連撃の方が痛かったな!」

 

ドヤ顔する一夏

 

 

 

 

 

 

 

観客席

 

 

篠宮

「なんだあのムカつくドヤ顔」

 

「…何を言ってるのだろうな…」

 

セシリア

「まぁ、しょうもない事だと思いますわ…」

 

 

 

 

 

 

再びアリーナ

 

 

 

 

 

 

一夏

「…っ…攻め入る隙がねぇ!」

 

 

2本の青龍刀による乱舞に押される一夏

 

 

「ほらほらほらほら!このままじゃジリ貧よ!」

 

一夏

「…やるなら今しか!」

 

 

 

以下回想

 

 

 

篠宮

「重要なのは踏み込み

 

 相手を確実に射程に入れる事

 

 ただし、初手射程内からは使わない事

 

 助走、とまではいかなくとも踏み込める距離は取ること」

 

一夏

『なんで初手射程内じゃダメなんだ?』

 

篠宮

『相手が太刀筋を見切ることが重要だからだ』

 

 

 

 

 

 

一夏

「今だ!」

 

僅かに後ろに下がる一夏

 

「おわっ!」

 

一夏

「はぁぁ!」

 

 

踏み込み振るう太刀筋は横薙ぎ

 

「見切れないとでも思ってるの!」

 

一夏

「見切るって信じてる!」

 

振るう一閃

 

「!!?」

 

 

ガードをした

 

だがその眼前を通ったのは

 

素手だった

 

 

「ガハッ!?」

 

次の瞬間横っ腹に鈍い痛みが走る

 

そこにはガードしたはずの雪片弐型があった

 

 

 

 

 

 

 

一夏

『ンゴハッ!?』

 

篠宮

『とまぁ、こんな感じ』

 

一夏

『確実にガードしたはずなんだが…何やったんだ』

 

篠宮

『やった事は…そうだな、わかりやすく言えば

 

 横薙ぎの瞬間、持ち手を変える

 

 んで元々持っていた方の手は、そのまま振り抜く

 

 それだけだ』

 

一夏

『フェイント?』

 

篠宮

『…まぁ、そうだな』

 

一夏

『本当にそんなんで鈴に勝てるのか?』

 

 

 

 

 

「小賢しい真似を!」

 

一夏

「まだだァ!」

 

雪片弐型が輝く

 

 

 

 

瞬間アリーナに爆発音が鳴り響く

 

 

 

 

 

篠宮

「なんだ…あれ」

 

「分からん…ただ、危険なのは分かる!」

 

 

奇形…人としての形をしていなかった

 

左右で腕の長さが違い、

 

人が乗るには適さない関節の位置

 

 

篠宮

「…ハッキング?」

 

セシリア

「え?」

 

篠宮

「扉が開かなくなってるな…」

 

 

女生徒1

「なんで開かないのよ!」

 

女生徒2

「逃げなきゃなのに!」

 

 

 

セシリア

「なんでわかったのですか?」

 

篠宮

「酒呑のセンサー、結構特殊でね

 

 電気系統の感知能力高いんだわ…」

 

「だが、お前に対してのハッキングではないでは無いか」

 

篠宮

「うん、だからあのデカブツが見えたタイミングで

 

 床経由でアリーナ全域を探知した」

 

セシリア

「なるほど…で、どうしますの?」

 

篠宮

「こうする」

 

その手には天羽美が握られていた

 

「扉を切るのか?」

 

篠宮

「それは弁償が面倒…

 

 こっからクラッキング仕掛ける」

 

セシリア

「ここで?」

 

篠宮

「流石に扉経由でね…と言う訳で

 

 すいませーん、ちょっと通してくださいなぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「鈴…どうする…」

 

「やるに決まってるでしょ!」

 

千冬

『何をしている!早く下がれ!』

 

一夏

「こいつを放置しておくわけにもいかない!」

 

「とりあえず、警備部隊が入ってくるまで

 

 押さておくわ!」

 

千冬

「いいから下がれ!」

 

一夏

「悪い、千冬姉…通信切るから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア

「…で、どうしますの?」

 

篠宮

「これをこうしてこうじゃ!」

 

 

天羽美を扉に突き刺す

 

「結局刺してるではないか!」

 

篠宮

「まぁまぁ、さて、

 

 検索

 

 範囲指定、アリーナ

 

 動作箇所、観客席出入り用扉

 

 

 

 っと、これ…か……うげ…」

 

 

ディスプレイに映し出される

 

おびただしい桁のプログラム

 

 

「…何だこれは…」

 

セシリア

「扉の開閉にこんなにプログラム要るのですか?」

 

 

篠宮

「んー…元はもっと簡単だったと思うよ

 

 ハッキングで書き換えられて複雑化した感じだね…」

 

セシリア

「プログラムに精通してるのですね」

 

 

篠宮

「やらざるを得ない状況に陥った事があってね…

 

 っと、ココがこうで…あれ?上書きされた…ん?

 

 えっと…あー…これかな?…面倒だな…天羽美

 

 とりあえず、ここと…えっとココ、それとココを食え」

 

 

一瞬で空白が生まれる

 

 

「今、何をした?」

 

篠宮

「書き直しても書き換えされるプログラムが

 

 複数箇所仕込まれててね

 

 とりあえず、それを同時に消した

 

 …よし、書き換え無し、再構築開始!」

 

 

数秒後、観客席の扉が全て開く

 

 

篠宮

「あー、目がシパシパする」

 

女生徒1

「開いた!ありがとう後輩くん!」

 

女生徒2

「とりあえず避難優先よ!」

 

 

 

 

 

「…避難しなくていいのか?」

 

篠宮

「この揉みくちゃの中、男の俺が通るのもねぇ…」

 

セシリア

「これからどうしますの?」

 

篠宮

「織斑の援護にでも行くかね」

 

セシリア

「なら私も!」

 

篠宮

「セシリアは外から、1番得意な距離で狙撃準備しといて」

 

セシリア

「むぅ…分かりましたわ…」

 

「…私は…」

 

篠宮

「んー、好きにするといい…織斑の応援とかね」

 

「むっ…」

 

篠宮

「冗談、避難しといて」

 

「分かった」

 



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12話  備えあれば憂いなし(もはや予知)

 

 

 

 

 

 

一夏

「…全部捌かれる」

 

「本当に時間稼ぎにしかならないじゃない!」

 

篠宮

「本当よ、全く」

 

 

………

 

 

一夏

「いつの間に!?」

 

千冬

『観客席もハッキングの対象だったはずだ!

 

 まさか、切ってきたのか!』

 

篠宮

「いんや、クラッキングして出てきました

 

 んで、ここに至ると」

 

千冬

『な…』

 

 

 

篠宮

「ほれ、倒すんだろ?手貸すぞ」

 

一夏

「あ、あぁ!」

 

「…で、どうするの?」

 

篠宮

「あれ、多分無人機だろ」

 

一夏

「え?」

 

「何言ってんのよ!そんな物

 

 どこの国も作り上げられるわけないじゃない!」

 

篠宮

「姉貴s´なら…

 

 いやまぁ、反応的に人の感じしないしさ」

 

一夏

「…確かに…今攻撃のチャンスなのに観察してる感じするな」

 

「でも、なんのために?」

 

篠宮

「さぁ?そんな代物作れる人間の思考は解らんよ

 

 まぁ、とりあえず…倒すぞ」

 

 

一夏

「あぁ!」

 

「…あぁもう!分かったわよ!

 

 援護するわ!」

 

篠宮

「とりあえず、瞬時加速(イグニッション・ブースト)のスピードで切ってくるわ!」

 

「思ったより力技!」

 

 

 

高速移動による剣戟をいとも容易く受け止める謎の機体

 

 

篠宮

「あらぁ…簡単に止めてくれちゃって!」

 

「篠宮!」

 

 

龍砲の援護により離脱した篠宮

 

 

篠宮

「天羽美を恐れず受け止めるとは…

 

 俺が機能切ってるのを察知しやがったか?

 

 

 …いや、姉貴s´なら…頭痛くなってきた…」

 

一夏

「…どうする?」

 

「あんたの天羽美で一発でしょ!」

 

篠宮

「いや、避けられる…その可能性が高い…」

 

「じゃあ、どうすんのよ!」

 

篠宮

「一夏、いっぺん死んでこい」

 

一夏

「はぁ!?」

 

篠宮

「久遠」

 

仮面が変わり装甲が変化する

 

 

一夏

「…そういうことか…分かった!」

 

「え?は?どういう事?」

 

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

謎の機体の周囲に射撃の嵐が吹き荒れる

 

 

 

 

 

真耶

『…9機全使用による制圧射撃…』

 

千冬

『…いや、12機だ…

 

 シールドで数発反射している…』

 

 

 

 

「は?え?」

 

 

篠宮

「名付けて…嵐舞(Tempest)!……いや、ダサいな…」

 

 

一夏

「…1週間前に比べて弾幕薄くないか?」

 

 

平然と避け切る一夏

 

「…なんで避けれてんのよ!」

 

 

無人機(推定)は徐々に被弾し始める

 

 

一夏

「ここだァ!」

 

雪片弐型が相手の装甲を切り裂く

 

 

コアが露出する

 

 

一夏

「エネルギーが足んない!一旦引く!」

 

篠宮

「OK、酒呑!」

 

 即座に仮面を変え天羽美をアリーナの

 

 シールド目掛けてぶん投げる!

 

一夏

「!」

 

「セシリア!」

 

篠宮

「狙いは?」

 

セシリア

「完璧ですわ!」

 

 

無人機はコアが撃ち抜かれ停止した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬

「馬鹿者!」

 

篠宮

「…全く…」

 

千冬

「貴様もだ!」

 

篠宮

「アリーナのハッキング解除したのに…」

 

千冬

「それは別だ!」

 

一夏

「ごめん…千冬姉…」

 

「ごめんなさい」

 

千冬

「…全く…無事だったから良かったが…

 

 次は無いと思え!」

 

一夏

「はい!」

 

「はい…」

 

篠宮

「ういっす…」

 

千冬

「解散!」

 

 

篠宮

「逃げ」

 

千冬

「貴様は別件で事情聴取だ」

 

篠宮

「oh......」

 

 

 

 

 

 

 

放課後

学食

 

 

セシリア

「お疲れ様です」

 

篠宮

「反省文がなかっただけ良かったよ…」

 

「何をしていたんだ?」

 

篠宮

「コードの書き換えによるアリーナ全体のエラーの処理と

 

 セキュリティの向上

 

 並びに今回ハッキングで使われた自己蘇生型プログラムの

 

 セキュリティへの流用、と、技術科への勧誘を受けてた…」

 

 

 

一夏

「…なんというか…大変だったんだな…」

 

「さも当然のようにやってのけてる事に

 

 驚かなくなってる私が居る…」

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…めっちゃ眠い」

 

「…ここで寝るなよ?」

 

セシリア

「なら、そろそろ解散しましょうか」

 

一夏

「んー!明日は臨時休校だしぐっすり眠れるな!」

 

篠宮

「…ん」

 

「マジで眠いのね…」

 

 

 

 

 

 

 

部屋にて

 

 

セシリア

「……」

 

篠宮

「Zzz…」

 

セシリア

「……」

 

 

 

いけませんわ…

 

 

 

篠宮

「むにゃ…」

 

セシリア

「……」

 

とっとと寝てしまいましょう…

 

 

篠宮

「…ごめ……オル……ト…」

 

 

セシリア

「え…」

 

篠宮

「Zzz…」

 

 

今、間違いなく私の姓を呼びましたわよね…

 

それに謝罪…

 

 

いえ…きっと気のせいですわ…

 

私、篠宮さんに謝られる様な事、されてませんもの…

 

 

篠宮

「…っ!」ガバッ!

 

 

突然左腕を押え起き上がる

 

 

セシリア

「ひゃう!」

 

篠宮

「あ、すまん…起こしたか?」

 

セシリア

「…いえ、これから寝るところですわ」

 

篠宮

「…そうか、おやすみ」

 

セシリア

「はい」

 

 

 

 

きっと私の妄想ですわ…きっと…

 

ズキッ

 

…都合のいい妄想…ですわ…

 

 

 

 

 



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13話   Schwarzer Hase(黒兎)

 

 

千冬

「いきなりだが転校生を紹介する」

 

篠宮

「唐突!」

 

千冬

「入れ!」

 

 

 

そう言われ入ってきたのは

 

金髪の美形と銀髪の美形だった

 

 

篠宮

「…げ…」

 

銀髪にめちゃくちゃ見つめられる篠宮

 

 

セシリア

「お知り合いですの?」

 

篠宮

「出来れば再会したくなかった…」

 

 

 

千冬

「自己紹介を…デュノアから」

 

 

デュノア

「シャルル・デュノアです

 

 僕と同じ男性パイロットが居ると言う事で

 

 編入と言う形で入らせて頂きました。

 

 1年間よろしくお願いします」

 

 

篠宮

「…おぉ、爽やかイケメ…ン?」

 

 

キャァァァァ!

 

 

篠宮

「耳がァ!!」

 

 

千冬

「喧しい!

 

 次、ボーデヴィッヒ」

 

ラウラ

「はい、教官

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 

………

 

 

セシリア

「…それだけですの?」

 

ラウラ

「質問は後で答えよう

 

 …それから…」

 

 

まっすぐ篠宮に近寄るボーデヴィッヒ

 

 

 

 

ラウラ

Es ist lange her, Ogre(お久しぶりです、オーガ)

 

  Ich freue mich, Sie wiederzusehen(またお会い出来て嬉しいです)

 

 

篠宮

Ich wollte mich nicht treffen(俺は会いたくなかったよ)

 

 

ラウラ

Mit stärkeren Worten ...(もっと強い言葉で…)

 

 

篠宮

Ich hasse es wirklich(ほんと嫌…)

 

 

ラウラ

Oh ... dieser verachtete Blick ... gut ...(あぁ…その蔑むような表情…良い)

 

 

篠宮

「… Ist das genug(もういい)?」

 

ラウラ

Ja, dazu später mehr(えぇ、続きは後ほど)

 

 

千冬

「しれっとドイツ語でトンデモナイ会話するな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュノア

「やぁ、僕、シャルル・デュノア」

 

篠宮

「挨拶はあとだ、移動教室だぞ」

 

デュノア

「んえ?」

 

篠宮

「女子が着替えるんだ、社会的に死ぬぞ」

 

デュノア

「………あぁ!」

 

一夏

「遅れると千冬姉に怒られんぞぉ…」

 

デュノア

「それは…嫌だな…」

 

篠宮

「……」

 

デュノア

「…?」

 

篠宮

「多分今回も来るだろ…一夏、囮頼む」

 

一夏

「うげ…分かったよ、引き受けた!」

 

篠宮

「…んじゃ、デュノア、こっちから隠れて移動な」

 

 

 

 

 

 

移動中

 

 

 

篠宮

「うし、ここからは普通にしてても大丈夫」

 

デュノア

「…織斑君の方は大丈夫なの?」

 

篠宮

「先輩その他に追いかけられながら更衣室に向かってるよ」

 

デュノア

「そうなんだ…」

 

篠宮

「ほんじゃま、俺らもそれなりに急ごうか」

 

デュノアの手を引く

 

デュノア

「うわぁぁ!」

 

篠宮

「そんなに驚くなよ…」

 

デュノア

「…ご、ゴメン…」

 

篠宮

Tu es une fille, n'est-ce pas ? (君、女の子だろ?)

 

デュノア

「え…」

 

篠宮

Garde ça secret(秘密にしておくよ)

 

デュノア

「ありがとう…ところで…何ヶ国語話せるの?」

 

篠宮

「あー…数えた事ねぇや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ

 

 

 

千冬

「そうだな…凰、オルコット」

 

セシリア

「はい!」

 

「はい?」

 

千冬

「先日の一件で援護に回った2人に課題だ」

 

「む…」

 

千冬

「これから来る教師に勝て」

 

セシリア

「えっと…どちらに?」

 

 

 

「きゃぁぁ!だ、誰か助けてぇ!」

 

 

 

篠宮

「緑色の…ラファール…ってこのままじゃ

 

 俺、直撃コースやんけ!久遠!」

 

 

9つのシッポで包み込み減速させる

 

 

デュノア

「あれが…ナインテイル…」

 

真耶

「はふぅ…助かりました、篠宮君ありがとうございます」

 

篠宮

「どうやったら空中制御失うんすか…」

 

真耶

「えへへへへ…」

 

篠宮

「…ってあれ?この機体…」

 

 

訓練機のラファールでは無かった

 

 

 

 

「…え、山田先生と戦うの?」

 

セシリア

「…なんというか…今のを見てると勝てそうな気も…」

 

千冬

「…普段は抜けてるが戦闘技術は貴様らよりずば抜けている」

 

真耶

「織斑先生、一言多いです!」

 

千冬

「…これでも元日本代表候補だ、貴様らならこの意味解るな?」

 

 

セシリア

「…気の抜けない相手…ですわね…」

 

「織斑先生世代の代表候補…」ゴクッ

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

 

 

山田

「そこ!」

 

セシリア

「な!?」

 

「ちょっ!?」

 

 

 

2機同時に撃ち落とされる

 

 

 

 

 

篠宮

「…2人とも連携って知ってる?」

 

「うぅ…」

 

セシリア

「…息が合いませんでしたわ」

 

山田

「まだまだ若い子には負けません!」

 

篠宮

「言うて、5歳差程度でしょうに…」

 

デュノア

「篠宮君なら山田先生相手に勝てる?」

 

篠宮

銃央矛塵(キリング・シールド) 絶対制空領域(シャッタード・スカイ)

 

 対応出来る兵装が無い…捕まったら最後だな…」

 

山田

「何でその名前知ってるんですかァ!?」

 

 

 

 

 

 

千冬

「抜けていて天然だが実力は折り紙つきだ…

 

 舐めた口聞かないように!」

 

 

『はい!』

 

 

千冬

「さて、1時間目もまだ半分ある…」ジロッ

 

 

篠宮を見据える千冬

 

 

篠宮

「…え?」

 

千冬

「山田先生、まだ行けますか?」

 

山田

「えっと…少しだけエネルギー充填させてください」

 

千冬

「わかりました…篠宮」

 

篠宮

「…はい…」

 

千冬

「5分後、山田先生と試合をしろ」

 

篠宮

「…今しがた勝てないって言ったじゃないですか!」

 

千冬

「やれるだけやってみろ、お前なら可能性はあるだろ?」

 

篠宮

「…あぁ!もう!わかりました!

 

 やるだけやってやりますよ!」

 

 

 

 

 






篠宮
「やってやろうじゃねえかこの野郎!」



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14話  スペック不足(アタマイタイ)

 

 

 

篠宮

「…ほら言わんこっちゃない!」

 

捕まっていた…非固定武装(アンロック・ユニット)のシールドに囲まれて

 

 

篠宮

「鬼が居るから、国は山田先生に専用機

 

 ラファール=リヴァイヴ・スペシャル『幕は上げられた(ショウ・マスト・ゴー・オン)

 

 を再び託してるのか…

 

 

 

 さて… 絶対制空領域(シャッタード・スカイ)…どう対抗するか…

 

 弾切れまで吸収…いや、全方位の跳弾による制圧だから

 

 流石に後ろの防御が間に合わ………いや、そうか!」

 

山田

「FIRE!」

 

篠宮

「一か八か!天羽美!

 

 吸収範囲指定、球状全面!」

 

 

天羽美の纏っていたエネルギーが篠宮の周りに展開し球状を成す

 

 

 

 

 

 

 

 

山田

「全弾吸収されちゃった!?」

 

篠宮

「…ウップ…吐きそう…」

 

吸収した物の情報量に脳がやられていた

 

 

篠宮

「…オロロロロロロ」

 

山田

「きゃぁ!私の機体に吐かないでください!篠宮君!」

 

篠宮

「すみまオロロロロロロ」

 

山田

「今出しますから!」

 

 

拘束を解除した

 

篠宮

「チョロいっすね」

 

中から最高速で首に剣を振るう篠宮

 

山田

「な!?」

 

篠宮

「ウップ…吐きそうではあるけどまだ吐いてないっすよ

 

 意外と演技、上手でしょ?」

 

山田

「騙したんですね…私の良心につけこんで…」

 

篠宮

「吐きそうなんで手段を選んでる暇なんて無かったんで…ウップ…」

 

山田

「…なるほど…じゃあ終わりにしましょう!」

 

篠宮

「…とっとと切っときゃ良かった!」

 

 

腹部に銃口を突き付けられていた

 

 

篠宮

「喰いつくせ、天羽美!」

 

山田

「FIRE!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…ウップ…オロ」キラキラキラキラ

 

 

セシリア

「篠宮さん!?」

 

千冬

「今、どこからモザイク音を出した…」

 

篠宮

「酒呑からで…オロ」キラキラキラキラ

 

千冬

「…で何故そんな事になっている?」

 

篠宮

「…フゥ…弾幕1発1発吸収したせいで

 

 吸収した物の情報がアホほど流れ込んで来まして…

 

 パンクしました…ウップ…思い出したらまた吐き気が…オロ」キラキラキラ

 

千冬

「しかし…吐きすぎではないか?」

 

山田

「大丈夫ですか?篠宮君…」

 

篠宮

「ダメそう…目眩までしてきた…」

 

千冬

「…まぁ、あの状況で勝つとは思わなかったが…

 

 よくやった、篠宮」

 

篠宮

「…天羽美…強くなってる気がするんですが…」

 

千冬

「…その辺は放課後に確認しろ」

 

篠宮

「了解…です…」

 

千冬

「…少し頭を冷やして横になっとけ」

 

篠宮

「はい…」

 

「篠宮、付き添うか?」

 

篠宮

「…あぁ…箒なら大丈夫か…頼む」

 

千冬

「…ふむ、なら篠ノ之、篠宮の面倒を見といてくれ」

 

「はい」

 

セシリア

「………」

 

 

 

ズキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…頭痛い…」

 

「目を閉じて眠れ、閉鎖空間ではあるが更衣室だ

 

 一夏とシャルルだけだ問題ないだろ?」

 

 

更衣室の横長椅子に横になり頭に濡れタオルを乗せる篠宮

 

 

篠宮

「…いや、デュノアは女の子だ…」

 

「…な!?」

 

篠宮 

「俺か織斑、どちらかが部屋替えする事になる…」

 

「…一夏だろうな…クラス代表だしな」

 

篠宮

「…あぁ…そういやそうだったな…箒はいいのか?」

 

「あの朴念仁なら心配いらんだろ」

 

篠宮

「はは…確かにな…箒、少し寝ていいか?」

 

「なら、扉を開けて換気するか」

 

篠宮

「…箒、デュノアの事…」

 

「誰にも言わん、心配するな

 

 お前は寝て調子を戻すことに専念しろ」

 

篠宮

「悪いな箒、迷惑かける…」

 

「…あぁ、全くだ」

 

 

更衣室の扉を開く

 

 

 

 

セシリア

「……箒さん」

 

 

そこには虚ろな目のセシリアが立っていた

 

 

 



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15話  孤独(ノロイ)

「セシリア…」

 

セシリア

「…どちらに行かれるのですか?」

 

「いやなに、体冷ますために換気をな」

 

セシリア

「更衣室は冷房も完備されています…それで十分なハズですが?」

 

「…篠宮たっての希望でだ」

 

セシリア

「…そうですか」

 

「ただ、離れる訳にもいかんからな…

 

 篠宮が起きるまでここに居るつもりだ」

 

セシリア

「……」

 

ギリッ

 

 

「……」

 

拳を握り締めるセシリア

 

その拳から血が滴る

 

 

 

「……オルコット…お前にとって篠宮は何だ?」

 

 

セシリア

「…急になんです?」

 

「……」

 

セシリア

「…あぁ…そういう事ですのね…」

 

インター・セプターを構えるセシリア

 

 

セシリア

「貴女が篠宮さんの1番ですのね!」

 

 

振り下ろされるインター・セプター

 

 

 

「な!?」ギャリン!

 

ギリギリで回避をする箒

 

「何を言っている!」

 

セシリア

「あぁ…貴女を消せば…」

 

瞳孔が開いているセシリア

 

「目を覚ませセシリア!」

 

ラウラ

「無駄だ…」

 

「ボーデヴィッヒ!」

 

ラウラ

「あの状態になってしまったら最後だ

 

 もうどうしようも無い…」

 

 

「何!?」

 

セシリア

「ああああああああぁぁぁ!」

 

ラウラ

「…!」

 

手をかざす、すると動きが不自然に止まるセシリア

 

セシリア

「…!」

 

ラウラ

「…篠ノ乃」

 

「なんだ…」

 

ラウラ

「解決方法があるとすればお前が死ぬしかない」

 

「…だろうな…」

 

セシリア

「ああああああああぁぁぁ!」

 

ラウラ

「どうする?」

 

 

「私は…セシリアを信じる」

 

ラウラ

「…いいんだな?」

 

「あぁ…大丈夫だ」

 

 

手をおろすラウラ

 

動き出すセシリア

 

 

「セシリア…」

 

セシリア

「ああああああああぁぁぁ!」

 

 

再び振り下ろされるインター・セプター

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

セシリア

「ぐっ…ぐああァ!」

 

ギリギリで止まるインター・セプター

 

セシリア

「に…げて…ください!」

 

ラウラ

「な…」

 

「私は逃げん、お前を信じている…セシリア」

 

セシリア

「…ああああ…ああああぁぁぁ!」

 

ラウラ

「篠ノ乃!オルコットを殴れ!」

 

「は?」

 

ラウラ

「篠宮のあれは精神干渉と精神汚染を有する!

 

 だからこの状況で一瞬とはいえ拮抗したオルコットになら

 

 強い衝撃で正気に戻る可能性は大いにある!」

 

「いや、しかし!」

 

セシリア

「ああああああああぁぁぁ!」

 

「ええい!なるようになれ!」

 

 

右フックがセシリアの左頬を的確に打ち抜く

 

セシリア

「っ!」

 

 

ふらつき、倒れるセシリア

 

 

「大丈夫か!セシリア!」

 

セシリア

「…痛い…ですわ…」

 

「その…すまなかった…」

 

セシリア

「…謝らないでくださいませ…

 

 自我を失った私の責任ですわ…」

 

 

ラウラ

「…あの時より薄いのか?」

 

「…ボーデヴィッヒ…お前、なぜ篠宮のあれを知っている…」

 

ラウラ

「…オルコット…貴様は篠宮と同室だったな?」

 

セシリア

「え、えぇ…」

 

ラウラ

「…なるほどな…」

 

篠宮

「…ラウラ、余計な事はするな」

 

「篠宮、もう良いのか?」

 

篠宮

「扉開いた状態で叫ばれたら寝れないよ…」

 

セシリア

「…篠宮さん…説明してくださいませんか?」

 

篠宮

「全部ボーデヴィッヒの言った通りだよ…」

 

セシリア

「…なんですの…それ…」

 

「…セシリア」

 

篠宮

「これ以上話す事は無い…」

 

セシリア

「ちゃんと説明してくださいませ!」

 

篠宮

「…はぁ…めんどくさ…

 

 分かったよ、言うよ」

 

セシリア

「!?」

 

篠宮

「オルコット、君の俺への感情…あれ、偽物だから

 

 俺に都合のいい女になる様に植え付けた認識なだけで

 

 別に俺、お前の事どうでもいいんだわ

 

 

 だから答えを曖昧にして流してたの…

 

 それも気付かないでさ、いつ答えてくれるんだろうって

 

 答え待ち続けてるの滑稽だったわ!」

 

 

セシリア

「っ!」

 

「篠宮…」

 

ラウラ

「……」

 

 

篠宮

「まぁ…バレちゃったしもういいや

 

 別のオモチャ探すわ」

 

 

セシリア

「……!」

 

無言で篠宮にビンタをするセシリア

 

篠宮

「痛ってぇ…」

 

セシリア

「最っ低ですわね!」

 

そう言い残し去っていくセシリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいのか?篠宮」

 

篠宮

「…まぁ…これで二度と俺の影響は受けないだろうし

 

 俺の周りから人は居なくなるから一石二鳥だよね」

 

 

ラウラ

「…いくら何でもやり過ぎだと思うが…」

 

 

篠宮

「…織斑先生の耳に入ったら退学かね…

 

 まぁ、そうなったらまた旅に出ればいいし

 

 俺的には結果オーライだわ」

 

 

「…もう少し何とかならんかったか?」

 

 

篠宮

「中途半端にやったらバレるでしょ?」

 

 

ラウラ

「…はぁ…私たちが影響を受けないとは言え…

 

 もう少し慎重に行動をしろ…」

 

篠宮

「…ビンタで頭揺れたっぽいからもう少し寝るわ…」

 

 

 

 

 

 

更衣室前

 

 

ラウラ

「……そろそろ授業も終わる時間か…」

 

「そういえばボーデヴィッヒ」

 

ラウラ

「ラウラで構わん」

 

「…ラウラ、お前は授業出なくていいのか?」

 

ラウラ

「…昔からの篠宮の体の不調を知っていると言って

 

 こっちに来ている…あながち嘘では無いからな」

 

「…あとはセシリアがどう判断するかだ…」

 

ラウラ

「どっちに転ぼうと篠宮の希望通りにはなるが…」

 

「…いや待て……

 

 万に一つの可能性はないか」

 

ラウラ

「…何を言っている…奴の予測能力は群を抜いている…」

 

「鈴だ…2組の凰鈴音…

 

 篠宮は鈴の事を完全には考慮に入れていない…

 

 セシリアが誰かに言う前に鈴なら気付く…

 

 奴はそういうやつだから」

 

ラウラ

「…だとしても…その凰がどう動くか分からんだろう…」

 

「いや、必ず直談判しに来る…セシリアを連れて

 

 なんならセシリアに対して謝らせる為に動くだろう」

 

ラウラ

「…なぜそう言いきれる?」

 

「篠宮と交流が少ない…そして

 

 私と同様に篠宮の能力に対して

 

 抵抗出来る可能性があるからだ

 

 もしそうなら…嫌悪感は伝播しない」

 

ラウラ

「なるほど、確かに一理ある、が…」

 

「…問題はその後だ…」

 

ラウラ

「…おそらく憎まれ役を演じるだろうな」

 

「…どうすればいいんだ…」

 

ラウラ

「篠宮の事は私が対処する

 

 篠ノ乃、お前はオルコット達の方を頼む」

 

「…いいのか?」

 

ラウラ

「構わん、今日は転校初日だからな…

 

 私の方が都合がいい」

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

アリーナ

 

 

 

 

 

「篠宮!」

 

篠宮

「…何?」

 

「事情は知らないし詳細も知らないから

 

 偉そうなことは言えないけど

 

 アンタ、何でもかんでも自分の中で

 

 完結させるのは止めなさいよ!」

 

篠宮

「……話はそれだけか?」

 

「な…アンタねぇ!」

 

ラウラ

「貴様が凰鈴音か」

 

「…アンタは…転校生」

 

ラウラ

「…あぁ…」

 

「…邪魔するの?」

 

ラウラ

「悪いな…」

 

「…!」

 

身動きひとつ取れなくなる鈴

 

篠宮

「…」

 

 

無言でアリーナを去る篠宮

 

 

「…絶対セシリアに謝らせるから!」

 

ラウラ

「…」

 

「うおっ」

 

見えない拘束が解け動けるようになった鈴

 

「アンタ、なんか事情知ってるんでしょ!」

 

ラウラ

「…悪いが…今は言えない…すまない…」

 

「…何よそれ…」

 

ラウラ

「…すまない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上

 

 

 

「あーもう!なんなのよアイツ!

 

 急に人が変わったみたいに冷たくなってさぁ!」

 

シャルル

「何かあったのかな?」

 

「さぁね、セシリアも精神的に参っちゃってて

 

 話もあまり聞けなかったし…」

 

「…セシリアは何を言ったんだ?」

 

「『私の気持ち弄ばれていました』と一言ね

 

 箒はその場に居たんだからわかるわよね」

 

「…篠宮がセシリアの気持ちを弄んだのは…

 

 ある意味正解かもしれない…だが…」

 

「何よ、勿体ぶらずに言いなさいよ!」

 

「そこにあいつの意思は存在しない…」

 

「…何よそれ…」

 

「私も詳しくは分からない…ただ、これだけは確かだ」

 

シャルル

「…篠宮君…」



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16話  乖離

千冬

「来週予定されていた学年別トーナメントが少し変わった」

 

本音

「何が変わったんですか〜?」

 

千冬

「元々は1VS1だったのだが、先日の襲撃事件を踏まえ

 

 タッグマッチ形式に変更となった」

 

「参加資格等は?」

 

千冬

「特にない、訓練機でも出場可能だ

 

 その他質問は無いか?」

 

一夏

「あ、クラスで一組ずつとかですか?」

 

千冬

「いや、何組でも一応出場可能だ

 

 まぁ、うち(このクラス)以外専用機持ちは少ないがな…」

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

一夏

「…とは言え…篠宮が出るだろうし勝てっこないよな…」

 

「…だが、今の奴との力量差がわかる分無駄ではないだろう?」

 

一夏

「それもそうか…よし!箒!」

 

「…私は出ない…それこそ…私は無力だろう」

 

一夏

「…そうか…ってなると…」

 

シャルル

「僕と組まない?」

 

一夏

「お、シャルル!いいのか?」

 

シャルル

「うん、僕としても篠宮君の本気を見てみたいしね…」

 

一夏

「そうなりゃ放課後早速特訓だ!箒も一緒にな!」

 

「う、うむ…」

 

 

 

 

 

 

 

「…セシリア、私と組みなさい!」

 

セシリア

「…ですが…」

 

「あいつを殴って謝らせるいい機会じゃない!」

 

セシリア

「でも…」

 

「あぁもう!焦れったい!アンタはどうしたいのよ!」

 

セシリア

「…真実が知りたいです…」

 

「ならそれこそ、アイツに勝つのが絶対条件でしょ!」

 

セシリア

「…そう…ですわね…」

 

「んじゃ早速放課後練習よ!」

 

セシリア

「…えぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

ラウラ

「…篠宮」

 

篠宮

「…なんだ?」

 

ラウラ

「授業は…出た方が…」

 

篠宮

「そもそも…IS理論は全部束さんから教わったし…

 

 束さんから織斑先生に連絡入ってるから

 

 俺、授業受けるだけ時間の無駄なんだわ」

 

ラウラ

「……そうか…」

 

 

「篠宮!」

 

篠宮

「…久遠」

 

禍々しい形態へと変異している久遠

 

セシリア

「…あれは…久遠…なのですか?」

 

「少なくとも…このピリピリする感じ…敵意丸出しね…」

 

ラウラ

「篠宮、ここは私が!」

 

篠宮

「邪魔するな…」

 

ラウラ

「…っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「いやぁ…すまねぇ…」

 

シャルル

「びっくりしたよ…急に転ぶんだもん…」

 

「…しかし縁起悪いな…靴紐が切れるなんて…」

 

 

 

 

 

ドォォオン!

 

 

一夏

「アリーナからだ!」

 

シャルル

「行こう!」

 

「…あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…なんだよこれ…」

 

そこには無惨に投げ捨てられた龍砲の残骸

 

そしてアリーナの中心では篠宮が鈴を踏み潰し

 

セシリアの顔を握っていた

 

セシリア

「…篠……宮…さん…」

 

篠宮

「もう二度と…俺に関わるな…」

 

「…グッ…生憎、何も聞かされないでそう言われて

 

『はい分かりました』なんて言えるほど素直じゃなくてね!」

 

篠宮

「…なら、二度と人前に出れないようにしてやる…」

 

左腕が紅く光り出す

 

「セシリア!」

 

篠宮

灼花(しゃっか)

 

一夏

「何やってんだァ!」

 

篠宮

「…」

 

その場から引く篠宮

 

 

篠宮

「英雄様は遅れて登場ってやつかい?」

 

一夏

「何言ってんだ!」

 

篠宮

「いやなに、遅れてやって来てまるで

 

 ヒーローみたいだって言ってんの」

 

一夏

「お前…自分が何したか分かってんのか!」

 

篠宮

「何って、しつこいから力業でねじ伏せただけだけど?」

 

シャルル

「いくら何でもやり過ぎだよ…」

 

篠宮

「やり過ぎ?生きてんだから問題無いでしょ?」

 

一夏

「お前!」

 

篠宮

「はぁ…てめぇらみてぇな平和に生きてきた人間が

 

 てめぇらの尺度で物事語んなよ」

 

一夏

「っ!?」

 

篠宮

「生きてんだからそれでいいだろ?

 

 やり過ぎ?笑わせるな、死にかけた事も無いやつが語んな」

 

シャルル

「篠宮君…そんな人だったなんて…」

 

篠宮

「そんな人?てめぇは俺の何を知ってんだ?

 

 何も知らねぇ癖に知ったような口聞くな、屑野郎」

 

 

「…もういいだろう…篠宮、この場にいる誰もが

 

 お前に敵意を持ったんだ…もう十分だろう」

 

 

篠宮

「…良かったな、織斑

 

 箒が居なかったらお前もそうなってたぜ」

 

セシリア達を指差し嘲笑う篠宮

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ…絶対泣かす!」

 

一夏

「とりあえず、無事でよかった…」

 

デュノア

「…あれが篠宮君の本性なの?」

 

一夏

「…分からねぇ…アイツは自分の事を人に話さないタイプだからな…」

 

「…しかしあの技はなんだ…」

 

「一発しか見れなかったけど…火球を飛ばす技みたいだったわ」

 

セシリア

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

山田

「…映像は見ましたが…些か信じられませんね…織斑先生」

 

千冬

「…だが、篠宮は認めた…」

 

山田

「…彼は今…何処に?」

 

千冬

「地下の懲罰房だ…1週間はいてもらう」

 

山田

「ボーデヴィッヒさんは?」

 

千冬

「止めなかった問題もあるが…

 

 通話ログを聞く限り生徒間のトラブルだろう…

 

 故に今回は不問とした…」

 

山田

「…篠宮君…一体何を隠しているのでしょうか…」

 

千冬

「…奴に聞いてみるか…保護責任者を名乗っている以上

 

 何か知ってるはずだ…」

 

山田

「とりあえずオルコットさん達の機体の修理の為

 

 回収してきます」

 

千冬

「あぁ、頼む」

 

 

 

おもむろに携帯を取り出しどこかに電話をかける千冬

 

千冬

「……」

 

ガチャ

 

「珍しいね…ちーちゃんから電話してくるなんて」

 

千冬

「…束」



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17話  居場所

山田

「うーん…とてもじゃないですが…1週間じゃ修理出来ません…」

 

「じゃあこのまま出ます!」

 

山田

「ダメです!」

 

セシリア

「……」

 

山田

「理由はお分かりですよね?」

 

「…っ…はい…」

 

一夏

「…なぁ…なんでだ?」

 

シャルル

「ISはデータを集積してそれを反映させるでしょ?

 

 だから無茶し過ぎると機体がそう覚えちゃうの…」

 

一夏

「…1回ぐらい…いいんじゃないか?」

 

シャルル

「…確かに損傷具合次第ではいいかもしれないけど…今回は

 

 セシリアさんのBT兵器や凰さんの非固定武装(アンロック・ユニット)

 

 その他各部装甲の破損…人間で例えるなら…そうだね…

 

 骨が折れて、それが飛び出てる様なものかな…

 

 そんな状態で無理したらどうなるかわかるよね?」

 

一夏

「…最後の喩えは要らなかったかも…想像しちまった

 

 でも何となくわかった…

 

 かすり傷程度ならまだしも骨が折れてたら、絶対安静だな」

 

 

「……ごめん…セシリア…」

 

セシリア

「構いませんわ…最初から敵うとは思っていませんでしたし…」

 

「ごめん…本当にごめん…」

 

 

シャルル

「2人はなんで篠宮君に固執するの?」

 

「私はただ、訳分からないのが嫌なだけ」

 

セシリア

「…私は……私…は…」

 

 

一夏

「よく分かんねぇけど、篠宮を一発殴ればいいんだな?」

 

「話が飛躍しすぎだ!」

 

シャルル

「…でも、それが最適解じゃないかな?」

 

一夏

「あぁ、勝って話させる!」

 

「…負けたら承知しないからね」

 

セシリア

「…無理だけはなさらないでください…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学食

 

一夏

「と、啖呵を切ったが…」

 

シャルル

「ん?」

 

一夏

「俺の技とか…割と篠宮に教わったり真似したりで

 

 オリジナリティが無ぇ…」

 

「ちょうどいい相手が居るではないか、目の前に」

 

シャルル

「んえ?」

 

「篠宮は一夏、お前の射撃は見ていないだろう?」

 

シャルル

「あー…でも付け焼き刃で勝てる相手じゃ…」

 

「それをメインに据える訳じゃない

 

 奴の知らない手を戦術に組み込み

 

 不意を突く、雪片弐型なら突けさえすれば

 

 こっちのものだろう?」

 

一夏

「…あぁ…なるほどな…」

 

シャルル

「…とりあえず、作戦は明日考えよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

山田

「えっと部屋替えです」

 

「そんな気はしてました」

 

一夏

「あー…そうだよな…昨日転校してきたばっかだもんな…

 

 すっかり忘れてた…」

 

シャルル

「濃密過ぎたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

室内

 

 

一夏

「んじゃ、改めてよろしくな、シャルル」

 

シャルル

「うん、織斑君」

 

一夏

「一夏でいいぜ…っとシャワー浴びないとな」

 

シャルル

「う、うん」

 

一夏

「…あ、先入っといてくれ、ちょっとやる事あるから」

 

シャルル

「わかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「……あ、そういやボディソープ切れかけてたな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルル

「…篠宮君…良い人だと思ったのに…一体何が…」

 

一夏

「おーい、シャルル」

 

シャルル

「ウヒィッ!?」

 

一夏

「ボディソープ切れかけてるから変え持ってきた」

 

シャルル

「あ、ありがとう」

 

ガチャ

 

一夏

「こ…れ……」

 

シャルル

「あ…」

 

一夏

「す、すまん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルル

「………」

 

一夏

「……」

 

シャルル

「…あ、あの…一夏」

 

一夏

「は、はい!」

 

シャルル

「…篠宮君はね…初日に気付いてた」

 

一夏

「…マジで何者なんだ…アイツ…」

 

シャルル

「…一夏…ごめん…僕…」

 

一夏

「…いや、謝るべきなのは俺の方!」

 

シャルル

「いや、僕だって!」

 

一夏

「いや、俺!」

 

シャルル

「…フフっ」

 

一夏

「…ハハッ」

 

 

 

 

 

 

シャルル

「…一夏、僕の本名はね、シャルロット

 

 シャルロット・デュノア」

 

一夏

「シャルロット…」

 

シャル

「だから、シャルって呼んで?」

 

一夏

「わかった、シャル」

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…シャルは…俺や篠宮の機体データを取る為に

 

 学園に来たのか?」

 

シャル

「うん…ごめん…騙して…」

 

一夏

「…騙されたなんて思ってないよ…

 

 …これも篠宮は気付いてそうだな…」

 

シャル

「…でも、気付かれちゃった以上…もう学園には居れないかな…」

 

一夏

「……いや、確か…」

 

生徒手帳をめくる織斑

 

 

一夏

「あった!学園内に居るうちは

 

 何処の国も命令権を持たないって書いてある!」

 

シャル

「よく覚えてるね…」

 

一夏

「いや…篠宮に言われてな…校則とかをいくつかピックアップして

 

 覚えとけって言われた内の一つだっただけだ…」

 

シャル

「偶然…なの?」

 

一夏

「予知でもしてるんじゃないか…アイツ…」

 

シャル

「…でも…僕…居ていいんだ…」

 

一夏

「あぁ、守ってやる!」

 

シャル

「ふふっ…頼もしいね、一夏」

 

 

 

 

 

 

 



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18話  戦う理由(逃げる理由)

 

 

 

 

 

千冬

「…貴様…ふざけてるのか!?」

 

「いや…至って真面目だよ…」

 

千冬

「そんなおとぎ話を信じろというのか!」

 

「信じるも信じないも…ちーちゃん次第だよ」

 

千冬

「…ッ!」

 

「箒ちゃんや銀髪の子にでも聞いてみたらどうかな?」

 

千冬

「…なぜボーデヴィッヒが出てくる」

 

「会った事あるから」

 

千冬

「……」

 

「彼女、かけるんに協力的だからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…当たらん」

 

標的にカスリもしない

 

「逆に凄いな…」

 

シャル

「んー…もう少し脇を締めて」

 

一夏

「こう?」

 

シャル

「そんな感じ!」

 

 

バババババッ

 

 

 

 

一夏

「えぇ…」

 

「…もはや芸術的だな」

 

シャル

「あはははは…」

 

 

標的の外枠のみを撃ち抜く射撃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「……」

 

椅子に磔にされている篠宮

 

千冬

「篠宮」

 

篠宮

「……」

 

千冬

「貴様、目的は何だ」

 

篠宮

「……」

 

千冬

「答えろ!」

 

千冬のビンタが頬を撃つ

 

篠宮

「……」

 

 

千冬

「……ッ!」

 

篠宮

「…消えたい…それだけ…」

 

千冬

「…………それは…」

 

 

 

 

篠宮

「…1人にしてくれ…もう…俺に構わないでくれ…」

 

千冬

「……篠宮…」

 

 

その顔は虚ろだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

千冬

「…明日のトーナメント表を貼り出しておく

 

 各自確認する様に」

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…おいおい…」

 

シャル

「…うわぁ…」

 

 

 

初戦で篠宮とぶつかる

 

 

ラウラ

「…なんだこれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千冬

「…織斑、デュノア…来い」

 

一夏

「はい?」

 

シャル

「なんでしょうか?」

 

 

 

 

空き教室

 

 

千冬

「篠宮を止めてやってくれ…」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「あいつは…」

 

 

 

 

ラウラ

「…自ら嫌われ、悪役を演じている

 

 それだけの事だ…」

 

シャル

「それって…」

 

「…どういう意味よ!それ!」

 

セシリア

「……」

 

一夏

「鈴、セシリア…」

 

千冬

「…お前達にも聞く権利はある…

 

 

 

 束から幾つかあいつの背負っているモノについて聞いた

 

 そして…ボーデヴィッヒ、お前の今の言葉で確信した…

 

 事実だと…」

 

 

ラウラ

「教官…」

 

千冬

「私自身飲み込みきれていない…

 

 故に曖昧な説明になるかもしれんが構わんか?」

 

「はい」

 

セシリア

「…はい」

 

 

 

 

千冬

「…奴の家系は呪われているそうだ…

 

 

 …篠宮に対しての感情、思いが強くなる…という…

 

 ここに居る何人かは思い当たる節があるだろう…」

 

 

 

セシリア

「!」

 

「セシリア…」

 

「…篠宮に対して…恋愛感情を抱いていたよな、セシリア」

 

セシリア

「ほ、箒さん!」

 

「でも…それと今との関係が見えて来ないんですけど?」

 

千冬

「…オルコット…監視カメラの映像を確認させてもらった…」

 

セシリア

「…やはり…そういう事でしたのね…」

 

「え?え??」

 

セシリア

「おそらく、特定の感情は誰かを傷付けかねない…ですわね?」

 

千冬

「あぁ、その通りだ……それと…

 

 感情のベクトルの上がり方は近くで過ごせば過ごす分だけ

 

 上がっていく…これでも遅い方らしい…」

 

「って事はつまり、セシリアは誰かを傷付けかけたから

 

 感情の方向を変えさせる為に篠宮は悪役を演じてるって事?」

 

一夏

「…呪い…なのか?」

 

千冬

「…いや…正確には祝福(ギフト)と呼ぶそうだ…」

 

「考えてみろ…人の生き方を曲げてしまえるんだ…

 

 最早それは呪いと変わらんだろう」

 

一夏

「…確かに」

 

シャル

「えっと…現状…影響を受けてるのは…セシリアとラウラ?」

 

セシリア

「でしょうね…」

 

ラウラ

「いや、箒…お前もだ」

 

「な!?」

 

ラウラ

「安心しろ、私達とは違う」

 

セシリア

「…信頼ですかね」

 

「…そうね…まぁ…ある程度の度合いを知らないから

 

 何とも言えないけど…まぁ…

 

 篠宮をこの中で1番信じてるのはアンタね」

 

「…となると鈴やシャルルは?」

 

シャル

「!?」

 

セシリア

「なぜ、デュノアさんの名前が?」

 

「…忘れてくれ…素で間違えた…」

 

一夏

「単純に同じ空間にいる時間が短いからって事か?」

 

ラウラ

「だけでは無い、篠宮は多くの人が居る場合蓋を閉じている

 

 気を失う、もしくは寝てしまった場合蓋が完全に開いてしまう」

 

一夏

「…なるほど?」

 

首を傾げる一夏

 

 

ラウラ

「…一夏、納得してない様だな?」

 

一夏

「いや、セシリアは同室でラウラは過去に

 

 同室になったんだろうけど…

 

 箒はいつ影響を受けたんだ?」

 

ラウラ

「それは…確かに…」

 

「…言われてみれば…アイツの気絶してる所を

 

 見た事ない…」

 

シャル

「って事は、他に何か3人に共通点があるって事だよね?」

 

一夏

「…なぁ、ラウラ」

 

ラウラ

「…ん?なんだ?」

 

一夏

「篠宮と本気で戦闘した事あるか?」

 

ラウラ

「…私が本気を出した事なら有る…奴の本気は見た事ないな…

 

 だがそれがどうした?」

 

一夏

「セシリアはクラス代表戦の時」

 

セシリア

「…なるほど…」

 

「…なら、私は暴走した日か」

 

「あー…そうなると私もかな?この間のボロボロになった日」

 

一夏

「…んー…本気で挑む事がステップ1で

 

 同じ空間にいることがステップ2…かな?」

 

ラウラ

「…まぁ…確かにそれなら箒が影響を受けている理由にも

 

 それなりに納得できるな…」

 

「…あ…更衣室のアレか」

 

「…私とセシリアの差を考えると

 

 ある程度の時間を共に過ごすことががステップ3と言った所か?」

 

ラウラ

「…なるほど…鈴は1、箒は2、私とセシリアは3という訳か…」

 

シャル

「んー…って事は…篠宮君は別に制御しなくていいって事?」

 

ラウラ

「…変質した可能性は有り得るだろうな」

 

『…なるほどねぇ…それは考慮してなかったな…』

 

「!?」

 

千冬

「情報共有はしとくべきだと判断した」

 

『…臨海学校が近々あったよね?』

 

千冬

「あぁ…」

 

『その時にでも検査しよう…

 

 とりあえず今は…』

 

一夏

「勝つ!ただそれだけだ!」



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19話  左腕

 

 

 

タッグマッチトーナメント当日

 

 

一夏

「篠宮は俺がやる」

 

シャル

「私はラウラね、了解」

 

一夏

「頼んだぞ」

 

 

 

ピットから4つの機体が飛び立つ

 

 

 

篠宮

「……」

 

刺々しい形状に変化している酒呑

 

一夏

「…これが…」

 

 

先日束から聞いた話を思い出す

 

 

『今の酒呑や久遠は多分出力30%に近づいてると思う』

 

一夏

「出力?適正とかシンクロ率とかじゃなくて?」

 

『あれはオーバーテクノロジーだからね

 

 最初から最大出力出したらパイロットが消し飛ぶ』

 

一夏

「け…消し飛ぶって」

 

『…でも逆に言えば30%は超えない』

 

一夏

「え?」

 

『あの機体は30%が上限だから

 

 どう頑張っても超えない

 

 もし超えたら自壊する』

 

 

 

 

 

 

 

一夏

「…とりあえず、正面だ!」

 

 

千冬

『試合開始!』

 

一夏

「零落白夜!」

 

篠宮

「……」

 

難なく受け止める篠宮

 

一夏

「まぁ…そりゃ受け止めるよな…」

 

ラウラ

「これはタッグマッチだぞ!」

 

レールガンを構えるラウラ

 

シャル

「そうだね!」

 

ラウラ

「ッ…シャルル!」

 

ラウラを撃ち抜くシャルル

 

一夏

「頼んだぞ!」

 

シャル

「うん、任せて!」

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…久遠」

 

一夏

「!?」

 

左手から熱気を放つ篠宮

 

 

一夏

「…もっと詳しく機体情報聞いとくべきだった!」

 

篠宮

「…束か」

 

一夏

「あぁ、頼まれたんだよ」

 

篠宮

「…」

 

一夏

「とりあえず、お前を助ける!」

 

篠宮

「助ける?俺がいつ頼んだ」

 

一夏

「うるせぇ!俺が助けたいから助けんだ!」

 

ギギッ

 

篠宮

「!?」

 

 

少しずつ押され始める篠宮

 

一夏

「お前が何に苦しんでるか知らねぇがな

 

 俺達を頼れよ!仲間だろうが!」

 

篠宮

「ッ!…頼れる訳無いだろ!」

 

ジジッ

 

スパークし始める久遠

 

篠宮

「ギッ…誰がこんなモノ信じるんだ!」

 

一夏

「知るか!」

 

篠宮

「ッ!?」

 

一夏

「少なくともお前が苦しんでる!

 

 それは事実だろうが!」

 

篠宮

「……」

 

一夏

「歯ァ食いしばれェ!」

 

拳を構える一夏

 

篠宮

「!」

ドガッ!

 

思い切り殴り飛ばされる篠宮

 

篠宮

「…痛ってぇなァ!」

 

一夏を殴り返す篠宮

 

 

 

シャル

「…なんで殴り合ってんの…」

 

ラウラ

「あ…あぁ…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」

 

バチン!?

 

シャル

「キャッ!?」

 

 

 

 

篠宮

「!」

 

一夏

「…なんだよ…アレ…」

 

 

ドロドロした泥のような何かに取り込まれるラウラ

 

 

篠宮

「VTシステム…いや何で…」

 

シャル

「VTシステム!?」

 

一夏

「なんだそれ?」

 

篠宮

 V ・ T (ヴァルキリー・トレース)システム

 

 モンドグロッソ優勝者の動きをトレースするシステム

 

 早い話織斑先生のコピーだ…」

 

シャル

「…今の僕達に勝てる代物じゃ無い…」

 

篠宮

「…まぁ…お前らの逃げる時間位は稼いでやるよ

 

 だからとっとと逃げろ」

 

シャル

「何言ってんの!?そういう次元の強さじゃないんだよ!」

 

篠宮

「だからこそだ…」

 

一夏

「シャル、逃げるぞ」

 

篠宮

「…あとは頼んだぞ、一夏(・・)

 

 

左手をヒラヒラと振る篠宮

 

 

 

 

 

 

篠宮

「一応確認の為に…」

 

両手を広げる篠宮

 

 

VT

『……』

 

動きを見せないVTシステム

 

篠宮

「…あ、反撃(カウンター)式だっけか?」

 

近づく篠宮

 

VT

『……』

 

動きを見せないVTシステム

 

篠宮

「…あれ?

 

 射程内だよな?」

 

手を伸ばせば届く距離

 

篠宮

「…まぁ、いっか」

 

左手を上げる篠宮

 

 

篠宮

「『灼花』!」

 

爆煙が辺りを包む

 

 

 

 

 

「無茶苦茶すぎる、いや知ってはいたけども!」

 

セシリア

「………」

 

 

 

 

煙が晴れる

 

 

 

 

 

一夏

「……」

 

篠宮

「…ふぃ…」

 

 

ラウラ

「……」

 

そこには裸のラウラと左腕の無い篠宮

 

そして雪片弐型を持った織斑が立っていた

 

 

「なっ!?」

 

 

ザワザワ

 

 

 

 

篠宮

「おーい、とりあえずラウラを包む布くれ〜」

 

シャル

「いや!篠宮君、腕!」

 

篠宮

「…ん?あぁ、肩から先、元々無いよ?

 

 束から聞いてない?」

 

一夏

「聞いたのは俺だけだ、篠宮」

 

篠宮

「あ、そうなの」

 

 

 

シャル

「な…え?」

 

 

 

セシリア

「…あれは…幻肢痛で起きたのですわね…」

 

「…箒は…知ってた?」

 

「…私も知らない…」

 

 

 

 
















篠宮
「ポロリもあるよ!」

一夏
「効果音が違ぇ!」



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20話  キカイ

 

 

 

 

一夏

「…もう少し分かりやすく合図くれよな?」

 

篠宮

「お前なら伝わると思ったからさ」

 

 

千冬

「説明しろ…何がどうなってあの形になった…」

 

篠宮

「えっと…俺がVTに「灼花」します」

 

「灼花が動詞になってる…」

 

篠宮

「それに対してVTがカウンターで左腕を切り飛ばします」

 

「…サラッと恐ろしい事を…」

 

篠宮

「んで、灼花の威力でラウラの位置を

 

 少しだけ後ろにずらして

 

 そこを一夏に零落白夜でズドンと」

 

 

山田

「…各機体戦闘記録と一致します」

 

 

セシリア

「…篠宮さん…いつから義手だったのです?」

 

篠宮

「…えっと…5…6年?」

 

「…全く気づかなかったわよ…」

 

篠宮

「まぁ…束製だからね…」

 

シャル

「……篠宮君…口調戻ってない?」

 

篠宮

「…ん?」

 

「…確かに、危うく流すところだった…」

 

篠宮

「…いやぁ…悪役(ヒール)演じるの疲れたのが1つ

 

 あとはまぁ…信じる事にしたから、皆を」

 

シャル

「……」

 

セシリアと鈴の方を見るシャルル

 

「それで、納得するとでも?」

 

篠宮

「いや、思ってない…少なくとも

 

 ブン殴られる覚悟はしてる」

 

「…ってよ、セシリア」

 

セシリア

「…私は既に篠宮さんを叩いてますわ」

 

「あっそ…なら私も別にいいわ」

 

篠宮

「…すまない」

 

 

千冬

「…となると…あとは、ボーデヴィッヒのメンタルケアか」

 

一夏

「…多分原因俺達だろうしな…」

 

セシリア

「なら、箒さんならどうでしょう?」

 

「…む?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‌…という訳で私がいる」

 

ラウラ

「…なるほど?」

 

「で、調子はどうだ?」

 

ラウラ

「…良くは無い…だろうな

 

だがまぁ、限界を超えた力を望んだ代償だ」

 

「そうか…」

 

ラウラ

「だがまあ…篠宮が

 

 皆と共に歩むと決めたのなら私はそれに従うまでだ」

 

「…そう…だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…さて…どうしたもんかね…」

 

 

整備室

 

 

 

 

篠宮

「片手じゃ直せねぇw」

 

本音

「かけるんお困り〜?」

 

篠宮

「おや、のほほんさん」

 

本音

「やぁ〜」

 

篠宮

「…確か…こういうの得意だったよね?」

 

本音

「…よく覚えてるねぇ〜」

 

篠宮

「…忘れたフリしてただけさ、どこで繋がってるか分からないしね

 

 特に更識家とかね」

 

?

「……」

 

 

本音

「…で、ど〜する〜?」

 

篠宮

「とりあえず、日常生活が出来る程度でいいよ

 

 修理は夏休みにでもあの人捕まえに行くから」

 

本音

「お〜け〜、ロケットパンチ付けとくねぇ〜」

 

篠宮

「日常のドコで使うの!?」

 

 

 

 

食堂

 

シャル

「大変な1週間だったなぁ…」

 

「ああ…色々ありすぎた…」

 

机につっ伏す箒

 

一夏

「…………」

 

「どうした?一夏」

 

一夏

「いや…アイツの秘密主義って原因なんなんだろうなって」

 

シャル

「…秘密主義というか…自分を殺し続けてるようにも見えるよ…」

 

「篠宮は…あいつは…悪い奴ではないのは確かなんだがな…」

 

篠宮

「呼んだ?」

 

一夏

「お、篠宮、これから飯か」

 

篠宮

「義手の簡易修理の発注かけてきたらこんな時間」

 

シャル

「…そういえば転校初日ぶりだよね僕達」

 

篠宮

「………!?」

 

「あー…謹慎1週間だったものな…」

 

篠宮

「…あ、そうだ、シャルル…えっと…

 

 …そうか、左か…すまん一夏、左ポケットの中のもの

 

 取ってくれねえか?」

 

一夏

「ん?ああ………なんだこれ?」

 

篠宮

「さんきゅ」

 

シャル

「篠宮くん、これは?」

 

篠宮

「酒呑のデータ」

 

「は?」

 

一夏

「ん?」

 

シャル

「えぇ!?」



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21話‌  入浴

「篠宮、自分が何言ってるか分かってるのか!?」

 

篠宮

「あ、いや、さすがにタダじゃねぇよ?」

 

 

席に座りサンドウィッチをつまむ篠宮

 

 

一夏

「…っと、そんな量で足りるのか?」

 

席に座り直す一夏

 

篠宮

「…んー、足りねえかな?」

 

一夏

「持ってきてやろうか?」

 

篠宮

「いや、いいよ」

 

 

シャル

「…対価は何?」

 

篠宮

「んー…酒呑用の盾が欲しい打鉄みたいなやつ」

 

シャル

「…そんなのでいいの?」

 

篠宮

「そんなのでいいの」

 

 

 

真耶

「あ、皆さんちょうどいい所に!」

 

篠宮

「風呂か」

 

真耶

「なんで先に言っちゃうんですか!」

 

篠宮

「合ってたァ…」

 

真耶

「んん、気を取り直して

 

 男子の大浴場が解禁になりました!」

 

篠宮

「工事してたようには見えなかったがな…」

 

真耶

「単純に時間での交代です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「とはいえ、俺はこれだし部屋でシャワーでも浴びるかね」

 

一夏

「背中ぐらいなら洗ってやるぞ?」

 

篠宮

「そ?」

 

一夏

「あぁ、先に行って待っててくれ」

 

篠宮

「ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「…嫌な予感が…

 

 まぁいい、頭ぐらいは片手で洗えるか?」

 

目を閉じ頭を洗う篠宮

 

 

ガラガラ

 

 

篠宮

「ん?一夏か?」

 

 

シャコシャコ

 

 

篠宮

「なんの音?泡立ててるん?

 

 え、頭洗ってる状態で背中行くん?」

 

 

ゴシゴシ

 

 

篠宮

「え、せめて合図くれない?

 

 いや、俺が言えた口じゃないけどもさ

 

 あ、流すなら頭から頼むわ」

 

 

 

ザバァ

 

 

 

篠宮

「ぷはぁ、一夏よ、だから合図…」

 

 

 

シャル

「………」

 

篠宮

「………」

 

鏡越しにシャルルの裸体が映る

 

篠宮

「セルフ目潰し!」

 

 

 

シャル

「ま、待って!」

 

 

 

 

篠宮

「なんでいつも俺こういう案件に巻き込まれるの!?」

 

慌てて顔を伏せる篠宮

 

シャル

「篠宮君にはお礼がしたいの…」

 

篠宮

「いや、だから!」

 

シャル

「ISの事だけじゃない、一夏に校則をピックアップして

 

 覚えさせてたこともそう…あなたが居なかったら私…」

 

篠宮

「クシッ」

 

シャル

「え?」

 

篠宮

「一旦湯船に浸からせて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「まぁ、言いたいことは分かった…

 

 一夏は最初からこのつもりだったんだな?」

 

シャル

「うん」

 

 

湯船の中、背中合わせで会話する2人

 

 

…背中合わせだよな?

 

 

篠宮

「校則に関しては織斑がしっかり覚えてたからこそだろ?」

 

シャル

「でも」

 

篠宮

「ISだってそう、単純にシャルしか候補が居なかったから」

 

シャル

「……でも…」

 

篠宮

「てか、何する気だったの…」

 

シャル

「…この体で…」

 

篠宮

「…はいストップ

 

 なんなの…代表候補生って皆そうなの?

 

 体で支払うように教わってんの?

 

 あ、箒は違うか…」

 

シャル

「…やっぱ僕の体だけじゃ足りないかな?」

 

篠宮

「話がとんでもない方向に行きそうだァ!

 

 あーもう分かったよ!」

 

シャル

「篠宮くん…////」

 

ザバッと音がする

 

 

…え、振り向いただけだよね?

 

抱きつきに来ようとしてないよね?

 

篠宮

「…!」

 

抱きついてきやがったァ!

 

 

胸!背中に胸!たわわ!やわらか!

 

篠宮

「…」

 

般若波羅蜜多…

 

はら…

 

腹…

 

 

腰に腹が!!え、なにこれ…新感覚…

 

 

 

篠宮

「…」

 

3.1415926535……

 

 

腕ェ!?俺の胸ナデマワサナイデェ!?

 

 

篠宮

「!」

 

下にズレ始め…あかんそれ以上は!

 

篠宮

「だっしゅt」

 

 

身体が引かれる

 

 

篠宮

「ウグッ!?」

 

シャルの顔が視界に割り込んでくる

 

 

唇がしける

 

 

舌が縺れる

 

 

シャル

「…ん…」

 

篠宮

「ンンン!?」

 

左側!?

 

 

顔を押し返したいけど手が掴まれてらァ!

 

ボディはコンプラ的に無理!

 

 

 

 

シャル

「……フゥ…」

 

篠宮

「…」

 

顔真っ赤っか…

 

シャル

「私の初めて…今はこれくら…」

 

篠宮

「…」

 

 

いきなり手を引き壁に押し付ける

 

 

 

篠宮

「今は片手だから逃げれるだろうけど

 

 もし俺が万全だったらどうするつもりだった?」

 

シャル

「受け入れるよ」

 

篠宮

「…まぁ、万全でも何もしないんだけども」

 

シャル

「!?」

 

篠宮

「身体を使えば魅了できるとでも思ったかい?」

 

シャル

「ぼ、僕はそんなつもりは!」

 

篠宮

「悪いね、生まれつき鈍い質でね」

 

シャル

「でも…」

 

篠宮

「そりゃ、一般常識的な反応はするさ

 

 世間的に浮くからね」

 

シャル

「…」

 

篠宮

「あ、だからって気にしないでね?

 

 デュノア、君は充分魅力的だ…いや今言う事でもじゃねえな

 

 でも俺、君の笑顔が見たいかな

 

 そんな苦しそうな辛そうな顔は見たくない」

 

シャル

「…っ」

 

手が離れる

 

篠宮

「笑え、笑った方が人生楽しいぞ!

 

 だから、今は胸につっかえてるモノ全部吐き出せ」

 

 

湯船から上がり風呂場を出る篠宮

 

 

篠宮

「幸い、一夏は来ねぇ…ゆっくり入ってな」

 

右手を振り去っていく

 

 

シャル

「ーーーー」

 

 

 

声は湯船に溶けていく

 

 

 

 

 

 

 



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22話  ショック療法(物理で殴る)

 

 

 

 

篠宮

「…だはぁ…風呂入ったのに疲れた…

 

 あと一夏は殴る」

 

「…どの面下げて…」

 

篠宮

「…?」

 

振り向く

 

誰もいない

 

篠宮

「え、何、心霊現象?」

 

「……」

 

篠宮

「…どの面ねぇ、言われる覚えが無いわ」

 

「ッ!」

 

篠宮

「さて、帰って一応塩まくか」

 

「篠宮翔!」

 

 

廊下の角から現れる

 

 

篠宮

「…やっぱり君か…更識簪」

 

「どの面下げて今ここに居る!」

 

篠宮

「この面かね?」

 

「巫山戯てるの!?」

 

篠宮

「ふざけるも何も、もう俺君達と関係無いし」

 

「…っ!貴方のせいでお姉ちゃんは!」

 

篠宮

「…これしか無かったんだよ」

 

「なに?」

 

篠宮

「…」

 

「何とか言いなさいよ!」

 

篠宮

「俺は死人でここには居ない、それ以上もそれ以下も無い」

 

「…ッ!」

 

 

拳を大きく振りかぶる

 

本音

「かんちゃん」

 

手を引かれる

 

「本音!?邪魔しないで!」

 

 

本音

「かんちゃん、そこに私たちの知る篠宮翔は居ないよ〜

 

 そこにいるのは同じ名前の男の子だよ〜」

 

「本音まで私をバカにするの!?」

 

篠宮

「少なくとも昔の俺なら会話は出来ねぇだろうな」

 

「!!」

 

篠宮

「まぁ、今は君が会話出来そうにないがな」

 

本音

「落ち着いて〜、かんちゃん」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「んで、刀奈がどうしたって?」

 

本音

「かけるんが入学してから〜なんかね〜狂った〜」

 

篠宮

「…?」

 

「………」

 

篠宮

「狂った?なんで?」

 

本音

「ん〜なんか〜、旧篠宮翔の幻覚を見てる〜

 

 妄想癖〜?なんかそうな感じ〜」

 

篠宮

「…なんで、旧俺?」

 

「ッ!」

 

篠宮

「…ぶっちゃけ昔の記憶なんて人名と顔以外

 

 ほぼ無いからわかんないんだけど…なんかあった?」

 

「やっぱり殴る!」

 

篠宮

「いやまじで、だってあの頃そもそも薬で

 

 自我なんて希薄だったし」

 

「!?」

 

篠宮

「これでもリハビリ頑張った方よ?

 

 10年以上薬漬けを数年で抜いて自我を1年で形成って

 

 姉さんもだいぶ狂ったタイムスケジュール組んだもんよ…」

 

「…今、なんて?」

 

篠宮

「え?

 

 姉さんもだいぶ狂ったタイムスケジュール組んだもんよ?」

 

「違う!もっと前!」

 

篠宮

「あぁ、薬漬けの話?」

 

「何よそれ!?」

 

篠宮

「ん?何言ってんの?あの薬、更識印の処刑薬でしょ?」

 

「…なに…それ」

 

篠宮

「…ん?いや、更識家って暗殺組織的な側面有るだろ?」

 

「え?」

 

篠宮

「…Hey、のほほん…簪ガールは真実を知らない感じかい?これ」

 

本音

「そうだね〜、楯無会長の〜意向で〜知らないよ〜」

 

篠宮

「よしなるほど、噛み合わない訳だ」

 

「…どういう…こと?」

 

篠宮

「これ以上は有料コンテンツです」

 

「ふざけないでよ!」

 

篠宮

「いやまじで、凄惨な話だからね、未成年NG」

 

「じゃあ、なんで貴方は」

 

篠宮

「仮にも元当主ですし…記憶は曖昧だけど

 

 凄惨な話だってのは頭で理解してる」

 

本音

「あ〜!」

 

篠宮

「狂った理由に気が付いたか?」

 

本音

「責任感〜」

 

篠宮

「多分な」

 

「…まさか、お父様が?」

 

篠宮

「いんや、家に来てたのは下っ端的な人達

 

 だから多分俺が壊れるまで知らなかったと思う

 

 んでそれを、楯無の名を継承した時に知ったんだろう

 

 でそんなある日その当人が、死んだはずの当人が現れたら

 

 まぁ…そりゃ狂うだろうよ」

 

「…じゃあどうすればいいの!」

 

篠宮

「ショック療法だ(物理)」

 

本音

「なんか今〜、不穏な(かっこ)が着いた気がする〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

楯無

「…あら、こうして会うのは始めてね、1年生の篠宮翔くん」

 

篠宮

「はい、はじめまして、生徒会長」

 

楯無

「で、何用かしら?」

 

篠宮

「手合わせ願います」

 

楯無

「会長の座が欲しいのかしら?」

 

篠宮

「いや、自分の今の実力を知るためです

 

 おれ、縛られるの嫌いですし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ

 

 

 

 

「…物理的…ショック療法…」

 

 

 

 

 

 

篠宮

「さて…全力でいきますか!」

 

本音

「あ、かける〜ん」

 

篠宮

「ん?」

 

本音

「お求めの品〜」

 

義手を差し出す本音

 

篠宮

「お、早いな」

 

本音

「ちゃんとロケットパンチつけたよ〜」

 

篠宮

「だからどこで使うの!?」

 

本音

「肘のぶつけると痛い所をね〜

 

 押すと発射するよ〜」

 

篠宮

「マジでついてるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「さて…いきます!」

 

楯無

「えぇ、来なさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…普通に戦ってる…」

 

本音

「だろうね〜」

 

「え?」

 

本音

「そのうちわかるよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠宮

「灼華!」

 

楯無

清き激情(クリア・パッション)!」

 

篠宮

「っ!?」

 

灼華の炎が大きく膨張する

 

篠宮

「なにこれ!?」

 

 

瞬間爆発する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

 

篠宮

「…なんだったんだ…あれ…」

 

楯無

「んー、灼華の機能って?」

 

篠宮

「えっと確か…あー、エネルギーの操作…

 

 操作の許容量超過か」

 

 

 

 

「普通に話してる…」

 

本音

「そうだね〜」

 

「どういうこと…」

 

 

篠宮の首がグリンとこっちを向く

 

 

「うわっ!」

 

 

篠宮

「学園に居るかもしれない

 

 内通者を炙り出すためさ」

 

楯無

「簪ちゃん、心配かけたわね」

 

「え?え?」

 

篠宮

「入学前に計画してたのさ」

 

楯無

「とはいえ、学園内に内通者は居なかったんだけどね」

 

「だから…会いに行ったの?」

 

楯無

「狂ったフリも大変なのよ」

 

篠宮

「本音に義手を発注した時に刀奈が影に隠れてたからな」

 

楯無

「…あの…本名…」

 

篠宮

「スミン、楯無」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり…彼は…生きてたって事でいいの?」

 

楯無

「えぇ、あの時見つかった彼の左手は

 

 本当に彼のだったけれどもね…」

 

「…あぁ!頭痛い!情報量が多い!」

 

楯無

「まぁ…彼は 篠宮翔 本人って事だけ分かってれば

 

 ひとまず大丈夫よ」



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