葛葉家に生まれ落ちてたんだが… (ぎっしり腰)
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2006年(p3本編3年前)
俺は僕?僕は俺?


初めましての人は初めまして。これまで読み専だったけど何を思ったか書いてみたくなりました。という事で人生初投稿なので初投稿です。


「……知らない天井だ…。」

いや、まて、俺は昨日何をしていた?

 

昨日はたしか…キョウジおじさんにジュネスの屋上でやってたフェザーマンのショーへ連れてかれたんだっけ…?

 

……? なんだこの記憶、俺?僕?…思い出した…昨日帰ってきて熱が出たんだっけ。そして寝ている間に長ーい夢を見た気がしたんだった。いや、あれは夢だったのか?夢だったならこの違和感はなんだ?夢の自分と今の自分があまりにもかけ離れて感じる。

 

「えぇ…なんでこんなに若い姿なのよ…」

 

ふと見上げた鏡台に映る姿を見てつい声が出てしまった。何かよくわからんがとにかくトラブルに巻き込まれてるらしい。どうやらそこそこ成熟した記憶とこの身体が持つ記憶とが混ざってしまったようだ。寝てる間にすり合わせ?が起きてたんだかシチュエーション程テンパってない自分がまるでひと事だ。

 

 

 

落ち着いてきたらだんだん頭がスッキリしてきた。どうやらこの混ざった記憶の持ち主はなかなかユニークな脳みそをしていたらしくパラレルワールドとか人の認知とかいった哲学めいた事を趣味で考えてたらしい。そのきっかけが学生時分にちょっとハマったゲームだって言うんだから傑作だ。…こんな状況じゃ笑ってられたんだけどね。どうやら俺たちは同じ名前をしているらしい。そう、葛葉涼介(リョウスケ)って立派な名前だよ。

 

…そう、葛葉って名前のキャラクターって言ったらそりゃあれだよ、いわゆる女神転生シリーズでちょくちょく主人公になる一族とおんなじ苗字なんだよ。葛葉って言っても記憶の持ち主だったリョウスケの世界には悪魔なんて居なかったハズだし、COMPとか悪魔召喚プログラムなんてないしもちろん東京だって崩壊してないよ。…そうなんだよね、昨日俺を「ジュネス」の「フェザーマンショー」に連れて行ってくれたおじさんは葛葉キョウジって言うんだよ。

 

…どうやらこの世界は神秘に満ち溢れてるかもしれない。キョウジおじさんだけじゃない、ジュネスもフェザーマンも知っているんだ…。ジュネスもフェザーマンもペルソナシリーズで出てくる奴じゃないか…。俺は女神転生シリーズっぽい世界だから女神(に)転生(させられた)とでも言って笑えばいいのか?それともアマラ経絡を通してマガツヒ化した記憶が落ちてきたのか?

 

もしこの世界が女神転生、あるいはペルソナの世界に近しい物だとしたら…ダメだ、どう考えても前世の記憶を持つ人間を転生させるなんて生ぬるい事をするカミサマがいるわけない。それよりも幾つもの奇跡が重なって別世界からの電波受信したって方が自然なのが恐ろしい…

 

とにかくもう少し状況を把握しようか。アッチの葛葉一族はともかくコッチの葛葉一族はかのデビルサマナー葛葉ライドウを排出…なんてことはないけども本家は平安時代から代々続いた由緒正しい旧家だ。ま、俺は分家の分家らしいけども。そんな葛葉一族に生まれ落ちたんだがなんの因果か両親が海外へ移住するにあたって日本で学生生活を送るようキョウジおじさんへ押し付け…もとい預けられたんだ。それが去年の春の事か。幸いおじさんとは仲も良いしすぐ居なくなる両親よりよっぽど親子やってるとも言えるか…。

 

あー、どうやらこっちの俺も結構デンパだったんだな。コッチもアッチも俺は勉強は出来るけど何処か変わり者。今の状況パラレルワールドの自分の記憶を受け取ったって納得しかけてるあたりホントに歩んだ過程が違う同一人物だから起きた奇跡なのかもしれないね。こうなるとどうだろう、キョウジおじさんは変化に気付くかな?かと言って説明の仕様もないか…この世界で本当にゲームみたいなことが起きるかどうか当事者以外わからないんだから…影時間は適正だっけ?マヨナカテレビはイザナミによる介入?イセカイナビはそもそもスマホがまだ普及してないから俺がペルソナ使いかどうかなんてのもわかんないもんなぁ。何にせよフィレモンかイゴールに招かれたりしないと行けないのか?

 

長々と考えごとをしていたら結構時間たったな。朝ごはんにはちょっと遅いけどちょっと食べよう。

 

さて、もう少し現状把握にでも努めようか。そうだ、ニュースでも見て何が起きてるか見ようか。

 

『今日から班目一流斎画伯による新作発表を記念した個展が始まっております。見てください、この行列。班目画伯の最新作「サユリ」を一目見ようとした観客が大勢集まっています』

 

「班目一流斎?それってあのマダラメか?」

 

…ちょっと他の番組も見てみようか。

 

『今日はバレーボール日本代表を率いる鴨志田選手に来ていただいております』

 

「バレーボールの鴨志田ねぇ…これもやっぱあのカモシダだよなぁ」

 

サユリって祐介が産まれてすぐに描き上げられたんだよな。って事はあの「喜多川祐介」が高校生になるのは10年は先だよなぁ。俺中学3年だもんズレてるなぁ。いま2005年だから世代としてはペルソナ3が一番近いのか…そりゃあそうか。何てったって通ってる学校『月光館学園中等部』だもんな。

 

この世界が何にせよペルソナシリーズっぽい事は起きそうだ…

 

しかし困った…俺ペルソナシリーズは4からしかやってないんだよなぁ…

 

 

 




見切り発車も良いところですが自分の中でキリの良いところまで続けられたらなぁと思います

整合性取れなくなりそうなのでリョウスケ君は中3になってもらいます。


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働け灰色の脳細胞

影時間になりそうなので初投稿です。


起き抜けから頭が痛くなりそうだ…

 

この世界がペルソナっぽいってことはわかった。次に考えるのは何故こんな記憶が流れてきたかだ。さっきは奇跡に奇跡が起きたって思ったけど俺は本当に俺か?俺がキャラクターじゃないって証拠が無いじゃないか…俺は上位存在にモニタリングされているのでは無いか?そこにゲームをモデルにした世界とゲームの知識を持つ人間を持ち込んだ時どうなるか観察されているのではないか?

 

………まて、落ち着け俺。このイタイ考えは2年前通ったぞ。涼介も中学生の時通ってたな。俺は俺だ。偉大なる哲学者デカルトの言う通りじゃ無いか。「コギトエルゴスム(我思うゆえに我あり)」だ。…そうか俺は俺か。何かに導かれようとも観察されてようとも俺は俺として生きるしか無いか。まさにケセラセラだな。

 

 

あー、なるほどな、自らのペルソナとの対話が「我は汝、汝は我」で始まるわけだ。仮面を被るように抑圧していた自分の本質、本性と向き合う事がきっかけとなって自分が持つペルソナを認知することがペルソナ使いへの覚醒になるのか。自我の認識さえできればおそらく誰でも発現するんだろうな。まぁペルソナの力に目覚めるきっかけは人それぞれだろうけどもだ。

 

しかしだ、俺はこの世界には「ペルソナ」という力があると認識してしまっている。そしてこんな事を考えてるからこそ自分の内と対話をしていることになるのではないか?そう、まさに認知訶学だ。何てったってモルガナが猫の姿をしててもモルガナなんだから喋って当たり前という認知だけで猫が喋っているようになる世界なんだから。

 

…俺の場合はどうなるんだろう、彼ら怪盗団にモルガナを紹介されたとしたら喋ってくれるのかな?「猫じゃねーし!!」って言われたい気持ちはあるから少し楽しみだな。認知の力といえばクマも忘れてはいけないな。シャドウでしか無かったクマが思いの力で人の形を成したんだから。マヨナカテレビの中という特殊な世界の中でとは言え人の様に接してさらにペルソナ覚醒まで果たしたのだからな。人は必ずどんな形であれペルソナを持つのだからどんな存在であったとはいえペルソナを持つならばそれは人であることを身をもって証明したんだ。

 

考えがそれてきたな。もう一度落ち着こうか。

 

…この神秘の溢れた世界において認知訶学という力が持つ影響力は思ってたより大きいな。しかもどう考えても権力者との相性が良すぎるじゃないか…一方的なアクション、それも知らなければ防ぎ様すらない。集合無意識を操る事ができるとなれば一躍カリスマ間違いなしだな。そりゃあ獅童が一色若葉から研究結果を奪うわけだよ。こんなモノ自分の手元以外にあるって考えたらゾッとするよ。祐介と佐倉双葉の年齢から考えたら事件が起きるのはそう遠くはないのか?

 

…何かできる事があるのか?たかが中学生の俺に…。起きるかも分からない事件で表向きは新進気鋭の政治家に喧嘩を売るのは無謀って言葉でも足りないぞ。下手するとジョーカーのように傷害事件のでっち上げとまではいかないかもしれないが精神病院に打ち込まれるかもしれんな…例えキョウジおじさんを動かすとしてもそれでもたかが私立探偵に過ぎないし、おじさんにもどうやって依頼すれば良いかもわからん。依頼できても事件が起きてからしか無理だな…。いや、それだけじゃない。確か獅童へのテコ入れはヤルダバオトによるものがあるんだったな…。イゴールが捕われるのはまだ先の話とはいえあの偽神による干渉を跳ね除けられるのはやはりジョーカーなのだろう。俺は世界にとって切り札というよりもイレギュラーだものな。偽神とはいえ神格を持つにまで至る存在なんだ、イレギュラーくらいじゃなんともならんのかもしれん…

 

やはり若葉氏に働きかけるという事もおそらくは無駄なんだろう…学問としても認知訶学は好奇心を刺激しすぎる。自身に危険が迫っていると分かっても簡単にやめられないのだろう…それも若葉氏ほどの天才となればなおさらだ。…そうか、ヤルダバオトは若葉氏ほどの天才の興味を認知訶学に向けた訳か。それが自分の力に繋がるのだから。…これは手の出しようが無いかもしれん。現状の俺はペルソナの力に目覚めたわけでも特別なコネクションがあるわけでも無いちょっと勉強のできるデンパな中学生だもの…。

 

ダメだな、考えがまとまらなくなってきた…少し出かけようか。そうだ、近所にあるじゃないか。女神転生といえば外せないスポット、そう将門塚が。

 



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紙媒体もいいもんだ

スティーブンが怖くなってきたので初投稿です


そうだ、将門公のお参りの前に図書館でも行くか。もう少し詳しくこの世界でなにが起きたか知りたいな。南条コンツェルンと桐条グループについて調べよう。月光館学園に通ってるんだ、多分あるんだろうけどもな。あとは…やはりスティーブンとガイア教かな。俺がこうして東京に居るってだけでなにも起きなかった世界の証明になるんだろうか。

 

 

……これ、間違いなくムーンライトブリッジの事故じゃねーか。それにこっちの記事にある原因不明の病気も無気力症だわな。てことは2010年には解決…解決でいいんだろうか。とにかくあと4、5年くらいでタルタロスにまつわる事件が終息するんだろう。こうして整理するとやっぱり被らないんだな。結局このムーンライトブリッジの生存者が動かなきゃ物語も進まないんだろう…

 

あー、そうか、いま個展やってるくらいなんだから図書館でも「マダラメ」の画集置いてるよな。ここまでアピールされてると嫌でも目に入るなぁ。休憩ついでにちょっと見てみるか。…明らかに「サユリ」だけ画風変わってんぞ。とはいえ、この画集の作品もほとんど弟子からの搾取なのか?まだそこまで違和感無いな。……「サユリ」が認められたせいで止まらなくなったのかもしれんか。

 

あー、よかった。この世界にスティーブンはいなさそうだ。そもそもターミナルなんてモノの研究が進んでなさそう。物質転送装置なんてシロモノの研究だからあんまりオープンにできないかもしれん。まぁ、スティーブンが動いてるなら間違いなくモノが出来上がるはずだろうし文献が見つからないだけでも居ない根拠になるか。…あそこまでぶっ飛んだ人?なんだ、間違ってもインターネットなんて物で調べてしまったら別の世界から接触してくる可能性だってあるからこれ以上はやめておこう。

 

デカイ事件ほどオカルト雑誌頼りになるから図書館にきてよかったな。そうなんだよなぁ…女神転生シリーズってちょっとアカシックレコードに干渉できる奴出てき過ぎて無かったことになってそうな事件多いんだよ。……ジプスとか無いだろうな?いや、アレも悪魔召喚プログラムとターミナルがある世界の話になるのか。ニカイアもイセカイナビも人が当たり前に持つツールを上位存在が利用している事には違いないか。なんなんだこの世界、パラレルワールドが恐ろしすぎる…。

 

お、これガイア教の記事か?すげーな、オカルト雑誌って。新興宗教団体のインタビューまで載せてるぞ。あー、でもちょっと過激になりつつある所を氷川って奴の逮捕と共に勢いも下火になったのか。

 

ちょっと資料片っ端から持ってき過ぎたな、片付けも大変だわ。

 

さて、この世界がペルソナっぽいって線が本命で良さそうかな。対抗で葛葉涼介が妄想のあまり脳内でリョウスケ君の世界を作った。大穴で楽園とかでヘッドセット付けられて現実と思わせられてるとか?うーん、だとしたらディストピアだな。とはいえ、俺の仮説が正しければだ。自我を人のレベルで持ってるならばペルソナの力が覚醒するってことは間違いないんだ。この世界が脳内世界でもおそらく涼介ならそういう設定にしてるはずだ。なんせ、「俺は俺」なんだからな。

 

うーんちょっとお腹も空いてきたな。お参りの前になにか食べようかな。せっかくなんだしルブランでも探してみるのもアリだなぁ。まだ無いかもしれないけどなー。あるなら多分知る人ぞ知る喫茶店の特集に載ってるんじゃないか?…お、これが四軒茶屋の特集か。またえらく都合よく見つかるもんだな。……おー、あるんだ。ふむふむ名物のカレーとコーヒーは一食の価値ありと。行くっきゃないなー。もう俺の口はカレーしか受け付けないぞ。

 

……キョウジおじさんは放任主義だから少しくらい帰り遅くても問題ないけどお参りはあんまり遅いと失礼だよな、寄り道もほどほどにしないとな。

 

 




インターネット使うと

??「おや?私が存在しないはずの世界からアクセスがありますね。すこし覗いてみますか。」

こうなる可能性が高まります。


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食欲に勝るもの無し

カレーが食べたいので初投稿です


おー、ここがルブランかー。画面から見てた感じだと結構趣ある喫茶店だったけど思ってたより洒落てるなー。…自分が思ってたよりも憧れてたみたいだ、ちょっと緊張してきたぞ。いざ行かん!てか。

 

カランカラン

 

「…らっしゃい。1人か?好きなとこ座ってくれ。」

 

客商売としていいのかってくらい無愛想じゃねーか…。フランクな総二郎ってのも想像つかないしこれもお約束か。まぁいいや、頼むものは決めてたんだ。

 

「カレーとコーヒーセット。コーヒーは食後にホットで。」

 

「あいよ。豆は俺の気分でいいな?」

 

そーいや俺まだガキだもんな、中々お一人様ってのも珍しいか。マスターから見りゃコーヒーも含めて背伸びしてるようにしか見えないわな。

 

 

「お待たせ、定番の頼み方したんだ。ウチのこれが目当てだったんだろ?コーヒーは頃合い見て淹れてやるよゆっくり食ってきな。」

 

…コワモテで不器用な感じが無愛想な接客に感じるだけでいい雰囲気じゃねーか。これで学校からもうちょっと近いと確実に通ってるわ。馴染める人にはたまらんぞこの店。

 

「いただきまーす。」

 

美味えな。美味えわ。そりゃあジョーカーもこんなカレーのレシピ仕込んでもらえたなら高校生としてモテるわなぁ。まぁいいや、今は目の前のカレーだ。

 

「あいよ、コーヒーだ。今日のはブレンド。お前さん初めてだからな、とりあえずウチの味ってのを体験してくれ。まぁガキには早いかも知れんがな。」

 

「あ、ありがとうございます。カレー美味かったっす。」

 

「カレーが美味いのは当たり前だ。これでも研究はずっと続けてたんだ。」

 

…ぶっきらぼうだけど、照れてるのか?オッサンの照れとか誰得なんだって思ってたけどちょっと良いもん見れた気がする。さて、コーヒーは涼介の時も好きだったから楽しみなんだよな。………ルブランのコーヒーってこんなに美味いんだな。なんというか満たされたって感じか?幸せ物質が分泌されてる気がするぞ。

 

「どうやら気に入ってくれたみたいだな。味に自信はあるんだが実際にガキでも満足してる姿見れて良かったよ。」

 

「いやー、すごいですね。満ち足りたってこういうことなんですかね?ごちそう様でした。おいくらですか?」

 

「セットで1000円だよ。また来てくれ。今度は親御さんでも連れてきてくれや。」

 

「そうですね、是非連れてきますよ。改めてごちそうさまでした。」

 

いい店だわルブラン。…今度ホントにキョウジおじさん連れてきてやろう。あの人こういう雰囲気好きだったしな。…ちょっと探偵事務所からは遠いけど。

 

 

 

 

さてさて、ちょっと寄り道しすぎたけどここが将門塚か。やっぱり厳かな雰囲気はあるなぁ。…お参りの作法って神社と同じでいいのよね?

 

 

………まぁ、いくらペルソナっぽい世界だからってマサカド公からお声がかかる訳ないか。実際声かけられた方が色々ハードな展開になりそうだと思えばよかったのか?この場所で認知してると言っても実際に体験するまでは中々分からんモノなのかも知れん。現実世界じゃ干渉力が足りていない可能性もあるんだ。異世界で改めて訪れてみても何かあるかもしれないな。

 

何にせよ来てみたかったって目的は果たせたんだ、朝から悩んでたけどいい気分転換になったな。さて今日はもう予定も無いし帰って飯の準備と……ドタバタしてたけど、忘れてた今って春休みなんだな。もうすぐ高校生なんじゃねーか…。急に受験予定あったりするよりいいか。このタイミングで良かったくらいだな。

 

 

 

なんだかんだ色々あった一日だったなー。…結局はなるようにしかならんという事以上の確信が得られなかったのはどうなんだ?幸いまだ学校生活までまだ時間もあるしちょっとおじさんにお願いして本家に連れて行ってもらうのもアリかも知れん…。なんだ?猛烈に嫌な予感がしてきたぞ…本家屋敷ってどこにあるんだっけ?………沖奈市?沖奈市って八十稲羽の隣町じゃねーか!!いったら行ったでなんかありそうだなぁ…

 

 

まぁいいや俺が出来る事には限りがあるんだ…、キャラクターという形で知っているとはいえその身に迫る不幸を全て取り払うなんて事はそれこそ全知全能だったりアカシックレコードの書き換えでもしない限り無理なんだ。……出来る事を増やすための努力ってのは初めるつもりはあるんだがな。そのためにも本家いったり自分を見つめたり学生生活を送ったり色々やらなきゃならんか。学生を体験した記憶があってもまだまだ退屈する事は無さそうだな。

 




??『今時ワシの塚を参る子供とは珍しいな。……コヤツ狐憑きか?この地に災いをもたらすと言うなら見逃す事は出来んな。今少し様子を見る必要があるな』

スティーブンがいると向こうからのアクションが大きくなるのでいきなりヤバイ悪魔交渉みたいな状況もありえます。


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三面六臂の活躍を期待しててくれ

寒くなって毛布を出したので初投稿です


さて…ある意味目覚めから始まって色々あったが長かった一日ももう終わりだな。…まぁまだこの休みの期間で沖奈市にある本家に行くことを自分で決めてしまったということがかなり不安ではあるんだよな…。だって土地の名家だって言うなら色々と知らなかった繋がりも出てくるんだろうなぁ。仮に葛葉家が葛葉ライドウのようにデビルサマナーとして活動しているのならばマヨナカテレビの事件に出張らないなんて事あり得るのか?可能性としてはこの世界の葛葉家は神秘の世界に踏み入れていない、或いは何処かで断絶してしまった。もしくは、あの事件の黒幕イザナミが干渉されないようにしていた辺りかな?俺というイレギュラーもそうだがキョウジなんて聞き覚えのある名前からして断絶してしまったってのが妥当なセンかな?……ゴウトみたいな喋る猫いないのかな?アレはモルガナと違ってデビルサマナーとしての素質があると喋って聞こえるんだよな。という事はやはり神秘の世界を認知していることが鍵となっていたんだろう。

 

 

いかんいかん、どうしても考えがそれてしまう。とにかく俺の俺なりのこの世界の理解についてまとめなければ…。知ってしまったからってわけじゃないが誰かの意思によって自分の選択が歪められるなんてまっぴらだよ。何もしないでいるなら運命付けられたような滅びの未来や偽神の言いなりに進むルートが待っている。けれどもだ、それだけじゃない。この可能性については考えたく無かったんだけどな、下手をすると俺にオレのデンパを受信させてまるで聞いたことのあるような世界に混ぜ込んでその結果を実験のように見守っているヤツが居るかもしれないんだ。つまり自分で選んだ結果すら用意されたレールからしか選んでいない可能性って事だ。……はっきり言ってそんなヤツが居るなら対処の仕様も無いかも知れん。足掻くだけ足掻いている姿を見せる事こそソイツを喜ばすだけなのかもしれん。だからといって足掻くことすらしないのは趣味じゃあないんだ。

 

 

今の俺を形成しているのは葛葉涼介としての記憶と葛葉リョウスケとしての記憶が混ざったものであることはもうなってしまったことなんだ。俺は僕で、僕も俺だ。そうだ「俺/僕たちはオレで、オレは俺/僕なんだ。」

 

 

 そうだ…汝の自我はワレ1人。しかしワレを形成するのは1人では無いのだ。汝は混ざりモノとして異質である事を認めながら自らの運命を見つけ出そうとするタビビトである。

 汝はワレ、ワレは汝。今ここに汝の旅の行方をワレが持つ6つの眼で見届けようぞ。ワレはアスラ王。汝の旅の行く末に世界はあるのだ。しかしワレはまだ汝の事を見守るだけ。努努忘れるな、ワレの旅もまだ終わっておらん。

 

 

………なるほどな。やはり自分が持つシャドウと正しく向き合う事ができれば自我はペルソナとして力を貸してくれるのか。……上等だ、ここまでお膳立てされて黙ってられるか。健全な精神は健全な肉体に宿るって話だ、幸い葛葉旧い家なんだからデビルサマナーとしての役目が断絶していたとしても伝承か何か残っているかもしれん。今はもう手当たり次第でもいい、やれる事をやるだけだ。

 

 

ところで俺にはワイルドの素質ってもんは無さそうなのかな?あったなら夢の中で鍵を渡されるんだっけ?俺予想じゃ困難に巻き込まれようとも仲間たちを見つけその仲間たちと絆を育む事が出来るようなヤツなんだろうな。中には絆を育みすぎるやつも出てくるんだろうな。…可能性で言えば修羅場メーカーになり得るくらい人と繋がりを作り続けかねないんだかな。

 

しかし、まぁ一日の最後にデカいイベントがあったもんだな。流石に疲れたな。もういい時間だ寝よう。

 

 

 

 

『……たまえ、…き…たまえ。ゆめ……で…ゆ……みると…きよ……。』

 

 

??誰だ?何をいっている?

 

 

『お、起きたかね。ここは不思議な世界ベルベットルーム。夢と現実、精神と物質の狭間の場所さリョウスケ君。』

 

 

「ベルベットルーム⁉︎なぜ俺が?」

 

『やはり知っているようだね。君も君に近しい人間も訪れたこともないのに何故なんだろうな。そうだ、私の名前を告げていなかったね。私はフィレモンだ。この部屋はイゴールに譲渡していたんだが、どうしても君の事が気になってね。無茶を言って招いてもらったんだ。……どうしたんだい?私の肩に何か着いているかな?』

 

(フィレモンって言われた瞬間肩幅が気になったってのは流石に言えねぇ…)「いや、そのマスクに目が取られそうになったんですが失礼かと思って目線を下げようとしていたので…」

 

『…本当のことを言っていないようだけど意味のない嘘でも無さそうだからいいか。なんだか失礼な事を考えられたような気がしないでも無いんだけど話も進めたいからね。さて、わかっているとは思うんだけどこうして私がまたこの部屋で客人を迎えることになったのは他でも無い君のためなのだよ。君の心の中にある力はペルソナの力と言ってね、おっと、君はもうすでに知っていたようだね。結構なことだよ、その年齢でまっすぐ自分と向き合った結果がその力だ。』

 

 

「それはそれはわざわざお招きいただき光栄ですよ。まぁ、そんな事を言うためだけって事じゃ無さそうですね…。」

 

『まぁそんなに急がなくても大丈夫だよ。さっきも言ったとおりここは夢と現実の狭間の世界なのさ、焦らなくても現実の君が目覚めるまで時間はたっぷりある。ゆっくり語ろうじゃ無いか』

 

 

 

 




??「三つの心を一つにして力が覚醒したのか?ゲッター線に導かれる運命もあったのやもしれん」

ゲッターがペルソナ覚醒した場合どうあがいても虚無の運命と立ち向かうしかないのでダントツでヤバイです。

フィレモンのキャラクターとか口調合ってるかんにゃぴ…わかんないです。ただメタ的な視点で肩幅言わせたいから出しただけです。許してください(ry




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肩幅と長鼻

真っ青な部屋に招かれたので初投稿です。


「話…ですか?」

 

『そう、話してみたまえ。君は随分と数奇な体験をしているんだろう?いまこのベルベットルームには私しか居ない。部屋の主人であるイゴールや他の住人にも伝わらないから安心したまえ。もちろん無理に話せとは言わないがね。』

 

いきなり核心を突いてくるんだな…でも、そうだな。誰にも話さないでいられるとは思ってもいなかったんだ。そうか、誰かに聞いて欲しかったから無意識のうちに将門塚に行こうとしたのかもしれない。現実世界の住人より話やすいのは間違いないもんな。わざわざセッティングまでしてもらえたんだ、こうなったら話してみるか。

 

 

「…何から言えばいいか分からないですけど、今日?起きた時自分の中にいままで無かったはずの記憶があったんです。そして記憶の持ち主は『葛葉涼介君…だね。』…はい。俺、葛葉リョウスケと同じ名前でした。…」

 

そして俺はフィレモンに自分の中で起きたことやこの状況についての自分なりの考察を語った。彼は難しい顔をしているものの時折頷いている。…とはいえここからが本題みたいなもんだからな…

 

 

「そして、その記憶の中にこの世界で起きた出来事を物語として体験していた記憶もあるんです。涼介はパラレルワールドについての研究をしていました。そして世界は認知できていないだけで無数に枝分かれしているとも…。ニュースから俺の耳に飛び込んできたのは物語の中でよく聞いた名前だったんですよ。涼介の世界ではいなかったはずの人物たちの名前です。」

 

『なるほど、その物語を知っていたのならこの世界では力に目覚める事ができるかもしれない、このベルベットルームがあるかもしれない。そう思ったわけだね。』

 

「と言ってもこの状況がどういった理由で成り立っているのかはわかりません。けれども俺は、今この瞬間を生きている俺は俺以外の生き方はできそうにないんです。」

 

 

『……なるほど、目覚めた力が随分と大きいと思ったんだ。思ってた以上に状況を把握できているんだね。…君を招いたのは君がどこへ向かうのか聞いてみたかったんだよ。少し前にこの世界で暗躍した這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)の名を持つ彼のように君という存在がこの世界には刺激が強すぎるのではないか知りたかったんだ。この世界を外から見た事がある存在と話ができたのはよかったよ。…それに君の事もよく分かった。君は君なんだね。それ以上でもそれ以下でもなく君は君として精一杯生きようと決意している。その思いこそが君が人間である証だよ。それがわかったからもう僕は安心できる。』

 

 

「ははは、安心していただけてよかった。……最初から気にはなっていたんですけど、このベルベットルームは列車の中なんですね。」

 

『この部屋は君の状況を表しているからね。君は旅の途中だ。そして列車の旅は終点とそこまでに停車駅もある。…これから君が立ち向かわなければならない困難が一つではないかもしれないことの表れなのかもしれないと思うとあまり風情にひたってもいられないね。さて、随分話し込んでしまったよ。せっかくだから彼のことを紹介しておこう。イゴール、今日は部屋を貸してくれてありがとう。』

 

「ほほほ、ただいま紹介に預かりましたワタクシイゴールと申すものです。遅ればせながらようこそ我がベルベットルームへ。客人のお陰で久々にフィレモン様と同席させていただく事ができました。フィレモン様、またいつでもこの部屋をお使いください。」

 

 

『…ありがとうイゴール。けれどもうこの部屋は君のものだ。彼があまりにも数奇な体験をしていたものだからね。これは最初で最後さ。それにもう君も従者を持つ身なんだ、あんまり畏まらないでくれたまえ。ほら彼女たちの事も紹介してくれないか?』

 

 

「……!失礼いたしました。お前たち、このお方はフィレモン様。かつてワタクシの主人であらせられた方であり、ベルベットルームの主人の前任者でございます。フィレモン様そしてお客人、彼女たちは長姉マーガレット、次女エリザベス、次弟テオドア、そして末妹のラヴェンツァでございます。ワタクシの補佐として頼りになる者達でございます。」

 

 

『君も立派に主人をやっているようで安心したよ。名残惜しいが私はそろそろお暇するよ。過去の存在があまり我が物顔をするのは気持ちの良いものではないからね。イゴール今日はありがとう、君にこの部屋を任せてよかった。それではリョウスケ君さようなら、また会う日まで達者でいてくれたまえ。』

 

 

そう言い残すとフィレモンはいつのまにか合ったドアから出て行ってしまった。

 

「…えっと、俺はどうすれば良いのかな?」

 

「ほほほ、こうしてこの部屋に訪れなさったのも何かの縁でございます。これはこのベルベットルームの鍵、お客人はこの部屋に訪れる必要があったということ。それもワタクシの従者が集うことは滅多にございません。お客人がよろしければは是非この者たちの話し相手になってはいただけませんか?この者たちにとってだけでなくお客人にとっても良き糧となることでございましょう。こちらがこのベルベットルームの鍵でございます。訪れたいと願った時この鍵が部屋への入り口へと導いてくれるでしょう。」

 

 

「これがベルベットルームの鍵、ありがとうイゴールさん。」

 

「ほほほ、ワタクシのことはイゴールで構いません。ついでと言っては何でございますがお客人のこれからの旅路を占って見せましょう。」

 

 

…すごい一日だ、今日という日は忘れられそうにないな。

 

 

 




…イゴールさんとフィレモンさんのやり取りは想像です。キャラあってなくても許してクレメンス…


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寝ても覚めても休まらない(物理)

とりあえず一週間続いたので初投稿です。


「タロットカードによる占いでございます。常に同じカードを操っておるはずが、まみえる結果はその都度変化します。…ふふふ、まさに人生のようでございますな。さて、お客人の未来はどのようになっているのでしょう……。ほぅ!1枚めは愚者のアルカナ、それも逆位置。お客人は自らの力で精神的に目覚めなさったのですかな?なるほど、この部屋へとわざわざフィレモン様が招かれた理由はここにあるのですな。ふむ、お客人はさらに何かを求めて旅をつづけなさるのでしょう。そして次の未来はどうなっているのでしょうか………むっ⁉︎この様な事はワタクシも多くの方の未来を見てまいりましたが初めてでございます。心して聞いてくださいますかな?」

 

 

「えぇ?なんだか随分と不安を煽るんですね。まぁここまで来たら何が待っていようとも俺は精一杯生き切るだけって決意はもうしてますよ。

イゴールさんが俺の人生からどんなことを汲み取ったのかはわかりません、けれど俺の生き方はもう決めたんです。そうですね、その結果は聞いても聞かなくても変わらないですよ。」

 

 

「ほほほ、これは失礼いたしました。まだお客人のことを理解しておりませんでした。確かにタロットの結果は未来を示しております。しかしその未来を書き換える事が出来ないわけではございませんからな。ならばワタクシから言える事はただ一つ、お客人の旅路に幸あれ、と言わせていただきますな。…フム、いつまでもお客人では少々他人行儀でございますな、これよりリョウスケ様とお呼びさせていただきとうございますな。」

 

 

「はは、困難しかなさそうな俺の旅路の無事を祈ってくれるって酔狂な人を無下にはできんね。ありがとうイゴールさん、好きに呼んでくれ。」

 

「…リョウスケ様をこのまま手ぶらで返すのは主人として認められませんな。ここベルベットルームではリョウスケ様のお持ちになっているペルソナの力を鍛える事ができるのです。ペルソナとはヒトの心を映した仮面の様なもの、しかし中にはヒトはヒトと付き合う上で仮面を付け替える事が出来る人もおるのです。これはペルソナの力でも同様、ワタクシ達はワイルドの素養を持つ者と呼んでおります。もちろんリョウスケ様にもその素質はございます。しかしながら貴方が今お持ちのペルソナは余りにも強大で他の力を持つだけの余裕がございません。それどころかペルソナ本来の力を発揮する事すら難しいことでございます。こればかりはリョウスケ様ご自身で力を引き出しワイルドの素養を磨く他ございません。そこでワタクシから提案がございます。」

 

 

やっべぇ、この部屋にいるみんなから満面の笑みを送られてるのに冷や汗と寒気止まらんのだけど…。数多の困難って今から始まるであろう修行(リンチ)の事と錯覚すらしてしまうぞ…。

 

 

「おや、ワタクシの考える事くらいお見通しという事ですかな?さすがはフィレモン様がお招きになっただけはありますな。そう、このワタクシの従者達と軽いエクササイズでもいかがですかな?この者達は力を司ると言った一面を持っております、必ずやリョウスケ様の糧となるでしょう。」

 

 

は、はやくなぁい?いやいや確かにゲーム的な面で言えばアスラ王ってすっげぇ最後で手に入るレベルよ?真・女神転生で言えばラスボスクラスだった事もあるよ?けど力を司る者ってエンドコンテンツレベルじゃねーか!!うおおお、まだ決意して初日だぜ?最後のイベントが随分と重たいじゃないの…。

 

「ほほほ、どうやらワタクシの提案はお気に召してくださった様ですな。まぁ今日はもう目覚めもそう遠くないでしょう顔合わせ程度で終わらせておきましょうかな。フム、そうですな、ラヴェンツァ、リョウスケ様とのやり取りはまずお前に任せるとしよう。リョウスケ様、この者はまだ従者として日が浅いですが素質では姉達に引けを取る事はございません。しかし何事にも初めてというものは存在いたします。力を貸すと申し出ておきながら何とも恥ずかしい提案ではございますが、リョウスケ様もラヴェンツァの糧となってはいただけませんかな?」

 

「!!わかりました我が主人。このラヴェンツァ、役目努めさせていただきます。リョウスケ様よろしくお願いいたしますね。」

 

ラヴェンツァはイゴールの脇に控えている従者達の中でも一際小柄で一見すると可愛らしい少女の様にしか見えない。だが従者達には確かに繋がりがあるのだろう、皆プラチナブロンドの髪と金の瞳を持っている。そのラヴェンツァはやる気に満ち溢れた顔でこちらを見ている。姉であるマーガレットはそんな妹が自分の事の様に誇らしいようでリョウスケを見る目は随分と力が込められている様に見える

 

あっという間に俺の予定が決まっていったぞ…しかも選択肢が()()()Y()E()S()しか無いタイプだ。なんだよあのマーガレットさんの目…超こえーぞ、俺は一つ賢くなったな。目は口程にモノを言うって本当なんだな。

 

「あら?どうされましたかリョウスケ様不肖の妹ではございますが何か問題でもございますか?」

 

おっと、現実逃避してる場合じゃないぞ俺。マーガレットさんが痺れを切らしてしまうではないか。本当に現実からおさらばするわけにはいかん。

 

「ん、申し訳ないですね、返事をする前に考え事をしまって失礼でした。もちろんですよ、ラヴェンツァ嬢。こちらこそよろしくお願いするよ。」

 

そういって俺は彼女に右手を差し出した。ついやってしまった癖の様なモノ。よろしくと言い合った仲として握手を求めた。何気ない挨拶でしかないハズだった。()()()()()()()()()()()。この日俺はまた一つ、いや二つ賢くなった。いついかなる時も気を抜いてはいけないということ、それと理不尽から逃れる術は無いということ、この二つを身をもって知る事となった…。

 

 

 




テオドア「ラヴェンツァはしっかり者だなぁ。」ホンワカしている
マーガレット「ラヴェンツァがやる気を出しているわ。可愛げが無くなったテオに比べて何とも愛らしい。姉としてしっかりフォローしてあげなくてはね。」何故かラヴェンツァより気合が入っている
ラヴェンツァ「主人から大役を任されました。これは私にとっても試練なのでしょう。」ふんすっふんすっ
エリザベス「妹が仕事を任されたのですから私も負けてはいられません、お客様に修行をつけるとの事でしたね、メギドラオンの使用許可を取りましょうか!」妹に負けじと気合が入っている


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善意の暴走は止まらない止められない

初めて評価が付いたので初投稿です


「…はい、よろしくお願いしますね。握手を求められたのは初めての事です、何とも言えない気持ちになるものですね。我が主人が私の糧にとおっしゃった意味がわかった様な気がします。貴方と共に歩みましょう。」

 

「まぁ、ラヴェンツァもいつの間にか大人になったのですね。しかし、姉としてまだ追い抜かれるわけには参りませんよ!そういうわけでございます、お客様。私の溢れる熱意を受け取ってください!さぁ訓練を始めますよー、ラヴェンツァよく見ておいてください、この私、姉エリザベスの頼れる様を!」

 

え?いや、もう顔合わせで終わるんじゃないの?なんでこうなってんの?いやいや、なんでもうそんなにみなぎってるの?

 

「えーっとエリザベスさん、今日はもう色々あったし…お開きってわけには?そ、そうですよね、マーガレットさん。……マーガレットさん?」

 

 

「(…ラヴェンツァが大人になってしまいました。リョウスケ様には責任を取って頂かなくてはならないのではないでしょうか?)は、はい、いいえ。リョウスケ様、私たち姉妹の紹介として私たちの力を目にすることこそ私たちのことを知っていただく上で必要でございます。心配ありませんわリョウスケ様。私たち姉妹が力を司ると言われているには理由がございます。エリザベス、遠慮はいりません、貴方の力を見せてあげなさい。」

 

ニッコリと満面の笑みで死刑宣告を告げるマーガレットさん。目に見えるほど気合が溢れてるエリザベスさん、って本当にオーラみたいなのが立ち上ってるぞ…止められそうに無い姉2人を見てオロオロしているテオドアさん。…居たんだ。一言も喋ってねぇぞ…。ゆ、唯一この状況から救ってくれるのはラヴェンツァ嬢だけか?

 

「あら、お姉様たちもそこまで親身に協力してくださるのですね。こうしてエリザベスお姉様の力を見れる事になるとは思ってもありませんでした。私にとって良き学びの機会となるでしょう、お願いしますお姉様。」

 

 

…終わった。最後の最後でダメ押し入った…やべぇ。なんだ、あのお姉様方からしたら可愛い可愛い妹の言葉はバフの効果でもあるのか?

 

「……えっとお三方、せめてこれだけは聞かせてくれませんかね?この世界での経験は現実世界にどういったフィードバックがあるんですか?」

 

「あら私としたことが粗相をいたしましたね。現実世界のリョウスケ様、貴方の身体は眠ったままでございます。今の貴方は精神エネルギー体の様なモノ。しかし貴方は自らペルソナの力に目覚めるほどの強き心の持ち主でございます。つまり、この場で負った傷が貴方様の普段の生活に影響をもたらす事は(ほぼ)ありません。ご安心くださいね。」

 

マーガレットさんの慈母神かの様な微笑みで告げる内容は

「この場で死んでもヘーキヘーキ、エリザベスやっちゃえ」

にしか聞こえない…

 

(…リョウスケ様、貴方様の力になれぬ不甲斐ないテオドアをお許しください。ああなった姉上たちに止める術はございません…。せめて、せめてもの償いとして現実世界で目覚めるまでに貴方様の傷は全て癒しておきます…。)

 

…テオドアが姉妹の暴走とも言える事態の尻拭いとしてせめてアフターフォローだけでもという善意がさらなる苦難を呼び起こすとはリョウスケにもテオドアにもまだわからなかった。

 

 

「準備はよろしいですかリョウスケ様、ご安心ください。私は姉妹の中でも力を管理する役割を拝命しております。さぁ、遠慮は無用!にございます。と言ってもまだ貴方様は目覚めたてのヒナの様なもの。本日はここまで至れるという目標として、壁として私たちをその身に感じていただきます。準備はよろしいですね?」

 

なるようにしかならない(諦感)

「お、お願いします。」

 

「さぁラヴェンツァ、頼りになるお姉ちゃんの勇姿見ておきなさい!!

いきなりではございますが、フィナーレといきましょう。ペルソナカードドロー!マサカド!メギドラオンでございます!」

 

 

あっ、これがメギドラオンかぁ。そりゃそうだよね、ペナルティじゃなくても使おうと思えば使えるけど強すぎるからエリザベスが使わないようにしてるってだけだよね……無事に起きれるかなぁ。

 

 

 

 

 

………気合の乗ったエリザベスの一撃を受けたリョウスケは耐えられるはずもなくその場に崩れ落ちた。しかしこの状況で満足そうな表情しているものは1人もいない。リョウスケはこの絶望的な状況を知らずにいられたことは幸せだったのかもしれない。

 

 

「エリザベスご苦労様でした。…しかし、ラヴェンツァを任せるのならもう少し気概を見せていただきたかったですね。」

 

「いえ、マーガレットお姉様。まだ力を引き出すことができました。あの方なら思う存分ぶつけられる気がするのです!こうしてはいられませんわね。テオ、何をしているの?早く来なさい訓練に付き合ってもらうわ。」

 

「わ、私ですか?…少々お待ち下さい姉上、リョウスケ様を回復して差し上げなければなりません。そして無事に現実世界へ送り届けておきませんと…。」

 

「さすがはエリザベスお姉様でした。まだまだ私では鍛錬不足ですね。テオお兄様、エリザベスお姉様との関連の際私も同席してもよろしいですか?」

 

「えっ⁉︎ラヴェンツァもかい?…も、もちろん構わないよ。は、はは。この兄で良ければ胸を貸そう。」

 

「あら、姉妹みんな仲良くして結構ですわ。けれど、私だけ除け者にするなんて、お姉ちゃん寂しいわ。私も仲間に入れてもらいますね。構いませんわねテオ。」

 

「⁉︎も、もちろんですとも姉上。むしろこちらから参加していただきたいとお願いするべきでした、失念しておりました。では、リョウスケ様をすぐ送り届けて参りますので。」

 

 

ベルベットルームの姉妹たちは愉快なやり取りを続けている。時折青年の悲鳴のようなものが聞こえて来るのはきっと気のせいなんだろう…。

 

 

 

 

 

 

「うわああああ!!!」

 

な、なんて寝覚めが悪いんだ。夢で誰かにぶっ飛ばされた様な……ん?なんで俺寝起きで手に何か持ってるんだ?

 

「夢じゃなかったのか…夢であって欲しかった…。ベルベットルームの鍵がこれか…。」

 



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非常識に脅かされる日常

毎日投稿続けていきたいので初投稿です


ひ、ひどい目あった事を思い出したぞ…訪れるたびにメギドラオン浴びなきゃならんのか?…多分大人数で客を相手する事が無かったから張り切ってたんだろうけど…ぶつけられる身にもなってほしいやね。

 

 

 

ん?、手紙?なんだなんだ。

 

『親愛なるお客人リョウスケ様へ。

貴方にベルベットルームへの訪れ方を説明しておりませんでした。お目覚めになられてこれをお読みになっていらっしゃる事かと思われますが、その際手に持っておられた鍵をお持ちの方はいついかなる時も私たちのもと、ベルベットルームへと訪れる事ができます。そしてそのベルベットルームへの入り口となるドアなのですが、誠に勝手ながらリョウスケ様がお住まいになっているこちらの探偵事務所の屋上に設置させていただいております。事後報告となってしまい申し訳ありません。それでは我々一同またのお越しを心よりお待ちしております。

出来るならばテオと呼んでもらいたいテオドア』

「手紙には書きませんでしたがあまり間隔を開けてしまいますと姉たちの気合いが溜まってしまいますのでお気をつけください。」

 

 

「うわああああ!!!な、何で居るんですかテオドアさん⁉︎ていうかなんでそんなどうでし○うの24時間生CMみたいな格好してるんですか⁉︎」

 

「……姉上たちから貴方様を送り届けるようお願い(命令)された後、さすがに落ち着いて焦ったのかやり過ぎてしまったと心配になりこうして私に見守る様にと連絡を受けました故でございます。この格好についてはお客様の部屋に訪れるとあっては景観を乱してはいけないからとこんな時のために準備しておいたものでございます。どうでしょう、違和感ありませんでしたか?」

 

 

「…無かった物があるんだから違和感はあるのかもしれないけど俺が落ち着く前に声出しちゃったらそれ以前なんだよなぁ…」

 

 

「フム、まだまだ改良の余地はございますな。安心してください、また訪れる際けしてお邪魔にはなりませんとも、見事部屋に馴染んで見せますよ!」

 

お邪魔するってそういう物理的な意味か?まぁあんな満面の笑みで言い切られたら何にも言えねぇよ……まぁこんなイケメンが某事務所の会長みたいなことやってるの馬鹿馬鹿しくてもう少し見たいからそれでも良いや…

 

 

「まぁ、何にせよ送ってくださりありがとうございました。…せっかくだし朝食でもいかがです?簡単な物で申し訳ないですけど」

 

「おや、よろしいのですか?こうして食事に招かれるなどもはや友人といっても差し支えないのかもしれませんね!いやぁ、私感動でございます。」

 

 

…テオドアも姉妹に苦労かけられてはいるけどだいぶマイペースだな。

 

「えっと、テオドアさん「テオとお呼びください」…テオさん、こっち側にこれるのは何も貴方だけってことじゃあないですよね?」

 

「もちろんですとも。しかし、しばらく訪れる事はないでしょう。主イゴールより色々と準備を申し付けられておりますのでいつ頃とは申せませんが…。」

 

(歴代担当されるまだ見ぬ主人公たちよ挫けるなよ…)

 

「まぁ、いいですよ…俺が言って何か変えられそうな人たちでは無さそうですし、…よっと、これが一般的な朝食ですね。俺は食べる方なんでテオさん多かったら言ってください。」

 

「わざわざ私のため、そう友人である私のために用意してくださったと思うと感動で箸がつけられません!!」

 

何が琴線に引っ掛かったんだか感激してるな…やっぱ全員濃いわ…。まだラヴェンツァだけが救いか?でもあの子も中身はカロリーヌとジュスティーヌの一面を持ってるんだよなぁ…色々不安だ…

 

「はは、1人分も2人分もそんなに手間変わらないですんで気にしないで食べちゃってくださいよ。」

 

 

よく分からんところでテンションの上がるテオを横目に朝食をすましたが朝から疲れたぜ…

 

 

「いやぁ、すっかりご馳走になってしまいました。友人というものは素晴らしい物ですねぇ。しまった、姉上に言われていたのにすっかりお邪魔してしまいました。それでは我々一同ベルベットルームにてお待ちしておりますのでいつでもお越し下さい。」

 

朝からヘビーだったぜ…本家の方はいつ行こうかなぁ?あんまり先延ばししてもロクなことにならなそうだけどちょっとだけ日を空けよう…さすがにこれ以上イベントが押し寄せて来ると厳しそうだ…

 

…かと言って何もしないのは良くないな。あの図書館で筋トレとか瞑想とか自己鍛錬の本でも読みに行こう。



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いざゆかんルーツの旅

寒くなってきたので初投稿です


テオの襲来から3日、ようやっと沖奈市に行く算段がついた。…一応逃げたと思われたくないから昨日ベルベットルームで一週間ほど来れないかも知れないという報告した。なお

「心配せずとも扉はあくまでも入り口の一つに過ぎません、貴方様の近くに現れるでしょうし、何より私たちは何時でも招く事ができます」

というありがたーい金言をいただいてしまった。

 

 

「それじゃ行ってきます。俺が居ないからって散らかさないでくださいねキョウジおじさん。」

 

「わーってるよ。可愛げ無くなりやがって…誰に似たんだか。」

 

「洗面台行けば鏡あるよ?まぁ行きたくないって言ってた本家に連絡入れてくれたりしたのは感謝してるよ。…けど俺を預けたら天城屋旅館でまったりプランはどうかと思うんだよね。」

 

「げ…そこまで読んでやがったか。ほらほら早く行ってこい、電車間に合わんぞー」

 

 

「まぁいいや、行ってきます」

 

 

 

 

 

「やーっと着いたか。まだちょっと時間あるな…っとここってあのたっけーメニューのある喫茶店シャガールか?どうやったら5000円も使えるんだよな…まぁいいか。せっかくだし普通のコーヒーでも頼んでルブランと比較してみるか。」

 

なるほど、たしかに落ち着く系統ではあるな。ここもルブランもいいところだ、これは好みの問題かも知れんな。

 

さてと、そろそろお迎えも来てるかなっと、お、あれか。

「ありがとうございます、葛葉リョウスケです。お迎えの方ですよね?」

 

「おー、君がリョウスケ君かい?キョウジから聞いているよ。なんでも本家に行ってみたいんだって?僕が言うのもなんだけど古いだけの家だよ?本家とか言ってるけどさ。ほら乗った乗った、ここからもうちょっと車でかかるからね。」

 

車に押し込まれて小一時間ほどしたころそこそこ立派な道場が見えてきた。

 

「ここ、ですか?」

 

「そう、由緒だけは正しい葛葉流の道場さ。昔お役目みたいなのはあったらしいんだけどいまはこの道場と流派しか残ってないのよ。その辺は俺より親父の方が詳しいからさ、そっちに聞いてくれるかい?」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

そう言われて道場に入るとそこには初老と言うには失礼なくらい若々しい男性が座っていた。

 

「君がリョウスケ君かの?なんでも我が家の歴史に興味があるとか…ひょっとして伝わっているお役目の事かな?だとすると儂はそのお役目に興味を持った君に興味がある。なんせそのお役目を信じとるやつはほとんどおらんのだよ。なんせ胡散臭いとキョウジの奴もなかなか寄り付かん。とにかくしばらくおるのだろう?おいおい話そうではないかね。」

 

 

「はい、お世話になります。俺もお話がしたくて訪ねたので。あと、流派が有るってのは知らなかったのでそちらの鍛錬とか体験出来たりしますか?」

 

「おお!なんじゃい入門希望があるのかの?最近はとんとすくのうてなぁ…興味を持ってくれるだけでも嬉しいのぉ。となれば自己紹介せねばならまいて、儂は葛葉流古武術の当主をしておる葛葉ライゴウじゃ。先程迎えにやったのが倅の宗一じゃ。」

 

 

「よろしくお願いします。運動経験はすこししかないんですがかまいませんか?」

 

「かまわん、始めてみようと言う心意気が大事である。リョウスケ君や、何かなりたい物でもあるのかね?」

 

「当主の方に武術ならなんでも良かったって言うのは失礼なんですけど、タイミングが良すぎたのが一番ですね。筋トレとか座禅みたいな自己鍛錬のやり方って調べてみてもイマイチわかんなくってですね…」

 

「…まぁその辺もおいおい話してくれるのかね?三四日ほどおるって話じゃったがやれるだけのことはやろうかの。とはいえ1日身体は動かせんからの、やり遂げたら褒美にいい温泉に連れて行ってやろう。付き合いがある旅館なんじゃが近くでのぉ。可愛らしい女将までおるんじゃよ」

 

 

「…天城屋旅館ですか?」

 

「ほ?知っておったか。うむうむ、有名になってきたもんだの。」

 

「キョウジおじさん来てたら面白かったのに…命拾いしやがったな」

 

「まぁ今日は遠くから疲れたろう。飯を食って休むと良い。明日から早いぞ」

 

「は、はい、ありがとうございます。」

 

 

さーて、明日からの練習頑張らなきゃな。まさか天城屋旅館連れてってもらえるとは思わなかったけど…色々打ち明けるならソコかなぁ?どこまで話せばいいんだろうか…。まぁなるようにしかならんな。




キャラの名前が一番難産でした…


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簡単に聞こえること程難しい

毎日投稿する人を尊敬しているので初投稿です


……何かあるかも知れない、あったらいいな位の理由で訪れてみた葛葉本家だが実際のところ道場で訓練のやり方を少しでも教えてくれるってだけでも儲け物だったな。なんせペルソナの力を使おうと思っても十全に発揮できるほどの身体能力も精神力もまだ備わってないんだ…イゴールにも言われたように付け替えるほどの余裕もないってことを考えたらだ、異世界にぶち込まれた時にペルソナは何もできないって事なんだ…もちろんこれはゲームでもないんだ、ペルソナを発現させてぶん殴るってことも出来るには出来るだろう。けれどもそれはそれで俺の身体にどんなフィードバックがあるかもわからん上に現状簡単に試すことができないからな。そんな中でも出来ることなんて手探りでも何でもいいから色々試したかったんだよな、そして訪れたいと思っていた葛葉本家で武術を教えているんだ。けどなぁ、ここまでタイミングがいいと作為的な物感じるなって言っても無理があるよなぁ…かと言って他にツテも無いからなぁ。まぁまだライゴウさんには体験してみたいって話しかしてないんだ。それに本格的に入門しようと思ってもここまで通いってハードルは高いんだよなぁ…。やるなら長期休みで泊まり込み位しか無いよなぁ。これ以上は考えだけ進めてても仕方ないか。やめだやめ!今日はもう寝ようか。

 

 

 

「おはようリョウスケ君、昨日はよく眠れたかな?若い子に指導ができるって親父も張り切ってるよなぁ、ノリノリで準備してたけど慣れてない子にはこの時間早いでしょ?無理なら無理って言ってやらないとダメだよー。」

 

「あー、まぁちょっとびっくりしてます。なんか、お寺の修行みたいな雰囲気してますよね。」

 

「なるほどね、あながち間違ってないかも。ウチの葛葉流ってなによりも最初教えるの瞑想の方法なんだよ。やり方は座禅とかその人に合った方法探すところから始めるのよ。ここって絶妙に通いにくいからねぇ。興味持ってくれて門下生になりたいって人の為にもまずはウチに必須な技能でもあるし試金石として自分だけで続けられるかってのを見る為にちょうどいいのよ。」

 

「おうおう、宗一、儂の役割を取りおって。せっかく色々説明しようと思っておったのに。年寄りの楽しみを奪う酷い奴よの」

 

「親父がはしゃぎすぎたのが悪い。だってアンタ、起きる時間しか伝えてないでしょうに…」

 

「……それを言っちゃあいかんぞ宗一よ。…しまらんがリョウスケ君や、普段着でもかまわんから道場へ行こうかの。」

 

「わかりました、えーっと、ライゴウさんの事はなんてお呼びすれば?」

 

「そうじゃの、まぁ師範じゃ固すぎるしライゴウでも爺さんでもかまわんぞ」

 

「ライゴウ爺さんでもいいですかね?…なんだかんだ付き合いも長くなりそうな気がするんです。」

 

「ふーむ、ま、その辺もおいおいじゃ。焦る事はなかろう。」

 

そして道場へと向かう。道場はすこしひんやりした空気でいっぱいだが

重い感じはしない。すこし神聖な雰囲気すら漂っている。

 

「さてと、始まるとしようかの。リョウスケ君には葛葉流のおこりについても話した方がよかろうの。宗一の奴から少し聞いておったかもしれんが、葛葉家は退魔の家系でもあったんじゃ。今の世では考えられんかも知れんが人ならざる物によると思われる物を解決するお役目を担っておった。その辺の仕事は明治期に終わりを迎えてしもうたらしいがの。その中で使っておった技術でも途絶えるといざと言う時ロクな事にならんという事らしいの。」

 

「…そんな所まで言って良かったんですか?まだ体験生の段階ですけど。」

 

「不思議な事になぁ、葛葉の名を持つ者でここを訪れる者は大抵何かに巻き込まれよる。そこまで多くはないがの。かくいうキョウジの奴もなんか言うとったの。だからじゃろうかここに寄り付かんのよ。」

 

「キョウジおじさんもそんな事が…探偵って事で色々巻き込まれやすいってだけじゃないんですね。」

 

「まぁあやつはあやつよ。単純に間と運が悪いのよ。と言う事での、葛葉流は心構えから入る事が多いの。それに他流試合とかやっとるわけでもないからの、技術的な話は二の次よ。ま、ウチの心構えを弁えた上で他の武道やる分には一向にかまわんから学校のクラブ活動で剣道とかに携わってくれると指導者としては嬉しいのぉ。」

 

「なるほど…。では、短い間ですが今日、明日とよろしくお願いします。」

 

「固いの。気合は見事じゃが瞑想はリラックスが重要じゃぞ。もっと力を抜く方が良い。やらねばならんという観念よりも日常の延長位の気持ちでやる方が良い。まぁまずはぼーっとしてみるが良い。そして次に目を閉じて自分の心から聴こえてくる声に耳を傾ける。最後はその声と対話をする、つまりは内なる自分と向き合うということじゃの。極意というには大袈裟じゃがゴールではあるの。この向き合うという事を繰り返す内に精神は鍛えられる。なんせ自分の心内を把握している内に見たくない所まで見てしまうかもしらんが続けてるには必ず乗り越えられる。まぁ考えすぎない事も大事なんじゃがやってみるかの。」

 

やってみるか……………




リョウスケ君は頭でっかち理論派なので瞑想が一番苦手かも知れません


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湯けむりとともに悩みをはらそう

リョウスケ君の年齢が不安になってきたけど初投稿です


瞑想って難しいんだなぁ…ライゴウ爺さんに教えてもらいながらあっという間に3日経ったけど上手く行ってる感全然ない。考えだけが進んでしまうのが悪いっぽいってのだけはわかったんだけどな…

 

「おいおい、焦りすぎだの。たった数日でマスターされたら指導者の意味も無くなってしまうからの。リョウスケ君が焦るには君しかわからん理由があるんじゃろうの。年寄りの戯言と思って聞き流しても構わんが、人間やれる事なんてその時までわからんもんなんじゃよ。おい先短いから割り切れると思われてしもうたらどうしようもないんじゃがの。」

 

カラカラと笑いながら声をかけられた。いつのまにか見られていたらしい…ちょっと恥ずかしくなってきた…。でもそうか、焦ってたんだな俺。それもあったばかりの人にも分かるくらい…

 

「どうしても考えだけが先走ってしまうみたいです。…これは俺の事話した方が良いんですかね?」

 

「ほれ、また焦っておる。そう言った決心は確かに重要じゃ。君はひょっとして困難が待ち受けておる事を知っているのかの?まぁ話そうとしてくれた辺りにあるんじゃろうの。まぁまだ話す必要は無いわい、しかるべきタイミングは必ず来るからの。そんな事より今日でもう帰ってしまうんじゃ、初日に言っておった温泉に行くぞ。おーい、宗一、車の用意じゃ!」

 

「焦りすぎ…か。難しいもんですね…。今日は温泉楽しむとしますよ。ちょっとずつでも意識変えられるようですね。」

 

「儂に言わせりゃまだ固いがの、一歩、いや半歩前進ってとこかの。ほれ、いくぞー。準備はええかの?」

 

「はい!宗一さんお願いします!」

 

「…まぁ準備してたからいいんだけどさぁ、親父ちょっと浮かれすぎじゃない?リョウスケ君も楽しそうだからいいけどさぁ。はぁ、乗った乗った、行くよ。温泉のあと駅まで送るからね。支度は済ませてあるよね?」

 

 

 

男三人で道場から天城屋旅館まで向かう。さっきあんな事言ったんだ、ここでうだうだ考えはしない、それよりも温泉だ。…色々楽しみだよ、ホント。お、着きそうかな?

 

「さーて、もう着くぞー。親父は風呂上がり飲みすぎんなよ。リョウスケ君は着替えだけで大丈夫だからね。」

 

「わかっとるわい。お前がおらなんだら飲む事も出来んかったから言う事は聞いてやるぞ。」

 

「…これはライゴウ爺さんが行きたかったんですね?」

 

「あ、わかる?理由つけて何かと行きたがるのよ。まぁいいところってのは全面的に認めるけどね」

 

「うるさいぞお前ら、儂は地元の名所に貢献する義務があるんじゃい」

 

ライゴウ爺さんの扱いが分かってきた気がする…いいや、旅館に入っちゃえ

 

「い、いらっしゃいませ。ほ、本日はようこそお越しくださいました。」

 

「ありがとう、ライゴウ爺さんが言ってた可愛いらしい女将さんは君の事だね?今日は日帰りだけどよろしくね。」

 

「おいおい、師匠である儂を放ったらかしていい身分じゃのぉ。今日はよろしくの雪子ちゃん。コヤツは儂の孫みたいなもんじゃ。ほれ、リョウスケ君も自己紹介しとけい。」

 

「葛葉リョウスケだよ。この爺さんとは親戚で道場でお世話になるんだ。といっても住んでるのは東京だから長期休みとかしか道場まで来れないんだけどね。よろしくね雪子ちゃん。」

 

「は、はい!よろしくおねがいします。それではご案内しますね。いいですか、ライゴウおじいさん?」

 

「おう、頼むぞ雪子ちゃん。」

 

雪子ちゃんに案内されて温泉へと向かう。いい旅館だわここ。…雪子ちゃんあれだけ似合ってると周りから期待されるよなぁ、そりゃプレッシャー積み重なったらシャドウも暴発するよなぁ…。焦るな焦るな…言われたばっかりじゃ無いか。問題が顕在化してからでも遅くは無いだろう…下手に夢を持たせる方が残酷な事になるかもしれんしな。俺ができるのは悩んでるなら相談に乗ってやるくらいだな。今は温泉はいるか。

 

「…まーたうだうだ考えておったのか?」

 

「いえ、温泉が楽しみなだけですよ」

 

「ならええがの。ほれほれ昼間の露天はええもんじゃぞ」

 

おー、すげー。この身体になってからここまでリラックス出来たこと無かったわ。気持ちいいなぁ。

 

 

 

たっぷり温泉を満喫した後お土産でもみようかと思って覗いた。ここいらの特産だろうか織物の商品が多く見える。すると雪子ちゃんが説明を始めてくれた。

 

「えっとね、これはね、巽屋のおばさんが作ったの!すっごい優しくてかわいいの作ってくれるの!」

 

「へー、巽屋さんっていい感じの作るんだね、そうだ、この色違いのしおりセット貰えるかな?お土産にちょうど良さそうだからさ。」

 

「はい!雪子もね、このしおりで本読むの好きなの!…うんしょ、お待たせしました商品です。えっと、1500円になります。」

 

「はい、1500円。ありがとう、今日は楽しかったよ。また爺さんに連れてきてもらうからね。」

 

「じゅーぎょーいん一同お待ちしております!」

 

元気いっぱいの雪子ちゃんに俺も元気をもらったな。にしてもいいお土産見つかったな。あそこの連中気に入ってくれたらいいけども…間空いたから機嫌を取りにいったわけじゃないんだぞ?本当だからな⁉︎

 

 

 

「ほれ、リョウスケ君気をつけてな。キョウジの奴にもたまに来るよう言うといてくれんか?」

 

「お疲れさん、田舎で大変だったでしょ?親父に気を使って何度も来なくても大丈夫だからねー。」

 

「いえ、本当にお世話になりました。間違いなく来てよかったと言えます。瞑想も続けます。高校のクラブか近くの道場も覗いてみます。…それから、またお世話になりに来てもいいですか?」

 

「おう、いつでも来るがいいぞ。」

 

「待ってるよー」

 

「短い間でしたが、ありがとうございました!」

 

さて、キョウジおじさんのところに帰ろう。まずは目の前にあるやれる事に取り組まないとな。まだ来てない困難に不安がっても仕方ない!

 




雪子ちゃんは10歳ですね。ダジャレがツボです。


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目の前にむきあってれば時間は早い

左肩が痛くなってきたので初投稿です


ライゴウ爺さんのところから帰ってきてすぐベルベットルームの住人たちにお土産を渡してきた。概ね反応は良さげだったものの結果テンション上げた姉によってボコボコにされたのはこの俺の目をもってして見抜けなかった……

 

そんな風にドタバタしてるうちに俺の高校生活の始まりが近づいてきている。結局俺は月光館学園高等部にそのまま通う事となっている。…とくに問題がなければこの事務所から通うつもりだ。胡散臭い理事長あたりにちょっかいかけられなければってところだけどもな。

 

そういえばキョウジおじさんとも少し話をした。俺の雰囲気が変わったことは何となく分かっていたらしい。ちょっと前にどっかの都市部で起きたサイコキラー事件の捜査に携わってから第六感が効くようになったと笑っていた。…多分ペルソナ2の事件だと思う。そりゃサイコによる犯行だって以外解決ないよなぁ。この世界における葛葉家はトラブルに好かれる体質持ちが多いらしい。キョウジおじさんなんてほぼ一般人なのにな…そういや半分くらい除霊士みたいな仕事回されてるってボヤいてたけど、なんか目覚めたのかな?

 

…ちなみにだけどそのサイコキラー事件で白鐘って言う結構な大御所探偵とバッティングしたらしく孫の直斗君が探偵ごっこをせがんで来て犯人役は大変だったと言っていた。その時の俺は絶妙に微妙な顔をしていたようで

「なんだぁ?犯人ははまり役かぁ?俺は悪人ヅラじゃなくてキリッとしてるんだよ」

と怒られてしまった。俺が引っかかってるのはそこじゃあ無いんだが今言えることじゃ無いよな…。まぁ直斗君か直斗ちゃんかは分からんわけだし、会うことが有ったらの話なんだけどさ。あたりまえなんだけど会った事もない子に対して言える事なんて無いんだよね…、そんな事も忘れかけてたらしい。

 

……覚悟が決まったらキョウジおじさんにも話、しないといけないよなぁ。まあいいか、その時の俺がなんとかするだろ。

 

 

 

ともあれ、爺さんから教えられた瞑想を自分なりに続けている。始めたばっかりで効果はまだまだ分からんけどな。明日は高校のクラブ説明会なんだよな。あっという間にもう高校生かよ。俺がリョウスケとして覚醒してからはほとんど学校無かったもんだし内部進学だしで長い休みのタイミングで助かった。さすがに学校生活しながらだと折り合いをつけられた自信ないもん。

 

直近の問題としては影時間なんだよなぁ。幸い無気力病と思われる被害者は全然出てない。おそらくだが影時間の影響力はニュクスの封印と関係しているんだろう。…つまりどうあがいても主人公君による刺激が不可欠なんだよ。実際に調査してみないと分からない部分もあるけどそれだけは間違いないって確信があるんだ。そもそも覚醒してからこっち影時間なんて経験してないんだよなぁ…。干渉範囲内で夜中を迎えた事ないからってのもあるけどな。その辺は美鶴さんとか真田くんあたりが高校生になるまで接触も難しいしなぁ。何より幾月とかその辺に目をつけられるデメリットの方がデカそうで憂鬱になるぞ。

 

 

 

ん?手紙?名前も書いてないけどこの蝶のサインはあの姉妹達からか。なになに…

「リョウスケ様、如何お過ごしですか?よく眠れていますか?エリザベスは心配でございます。何せ貴方様はすぐお倒れになってしまいますので…。」

心配の仕方がオカンかな?そして倒れているのは全部あんたのメギドラオンのせいなんだよなぁ…

「私の全力を受け止められるようになるまで続けさせていただきますのでご安心ください。」

……これは瞑想も鍛錬も急務だわ。殺る気満々やん…主人公君はよ来てくれんか…?いや、でも、俺で加減を覚えてもらわないとそれもそれでヤバいんじゃあ?……今考える事じゃ無い、その時の俺がなんとかするはず。続き続き、っと、筆跡違うな。エリザベス、こっそり忍ばせたのか。ちゃっかり上にくるように…、考えるだけ不毛だ、読もう。

「明日は暦の上でも貴方様の生活の上でも大きな節目であります。我ら姉妹一同よりささやかながら贈り物をご用意いたしました。是非とも今夜お受け取りにいらして下さい。ふふふ、私もこのように文を殿方に贈るだなんて良い経験をさせていただきましたわ。」

これはマーガレットさんだな。…浮かれてらっしゃる。光栄だと思っておくのが一番良さそうだな。

 

「おや、お読みになったようですね?」

 

「うおぉ!!びっくりしたぁ…テオさん何をしてるんで?」

 

今回は本棚の仮装をしているテオドアに声をかけられ飛び上がる程驚いてしまった

 

「いえ、姉達が返事が欲しいようでございまして。こうして、私が遣わされたのです。しかし存在感を出してしまうと催促しているようで失礼なのではないかと考えたので変装しておりました。」

 

…ほんと自由な連中だよ。

 

「テオさん、あんまり待たせたら悪いから返事として俺を連れて行ってくれるかい?」

 

さて何が待ち受けているのやら。

 

 



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新生活で変化するのは生活だけじゃない

まだまだ続けたいので初投稿です


ベルベットルームで待ち受けていたのは相変わらず張り切った三姉妹。ラヴェンツァは課題を考えるのに余念がなく、エリザベスはその課題として立ち塞がる気が満々で…そしてマーガレットは浮かれている。

 

「お待たせしましたかね?」

珍しいことに声をかけるまで気がつかなかったらしい。

 

「あら、テオ、一緒なら先に連絡を入れておきなさい。リョウスケ様、はしたないところをお見せして申し訳ありませんでした。」

 

「も、申し訳ありません姉上」

 

「いや、手紙を見る限り待たせちゃ悪いと思ってテオさんについて来たからあんまり言わないであげてくださいよ。」

 

「お気遣いいただきありがとうございますね。主人がこの部屋を任されて以来私達はヒトとの関わり合いが増えては来たですよ?しかし、比べてしまうようで申し訳ないのですが、リョウスケ様ほどの方はあまりおられず…。ついはしゃいでしまいます。」

 

 

「…まぁ若輩者ですが甘えられるような気概見せていけるよう頑張りますよ。」

 

「うふふ、やはりご実家のお爺様にお会いになられたとおっしゃってから少し大人になりましたね。やはりヒトは繋がりを紡ぐことで強くなる事が出来るのです。貴方様の旅路はこれから先訪れるであろうお客様方よりも遥かに長い旅路になると主人より聞いております。貴方だけの繋がりを、世界を作っていく事が必ずや力となるでしょう。」

 

「…お姉様?私が説明する事が無くなってしまいます。コホン、ここからは私ラヴェンツァが説明いたします。お客様、いえ、お姉様が言った通り貴方様は旅人(ワンダラー)です。それも長い旅が今より始まるのです。旅路にてこのベルベットルームへと訪れる他の方々と繋がりを持つ事もあるでしょう。その繋がりによって出来た世界で担う役割は見る人が違えばまた変わるものです。」

 

「…自分の中だけで完結しても自分の枠は破れない。他人と付き合う内に殻は破れる可能性が出てくるって事?」

 

「ええ、概ねそのような認識でも構いません。初めて訪れた時と比べると見違えるような精神をしておりますがそれはあくまでも自分の中だけで起きた変化によるものに過ぎません。貴方にはまだまだ可能性があります。旅人(ワンダラー)の旅路が少しでも平穏なものであるよう私達姉妹も協力いたします。という事で私達姉妹から依頼という形でワガママを聞いてはもらえませんか?日々成長していく貴方の姿を見て私たちも変われるのではないかと思うようになりました。エリザベスお姉様お願いします。……お姉様?コホン、少々お待ちを。」

 

向こうでこっちまでピリピリするくらい集中(コンセントレイト)しているエリザベスにはラヴェンツァの声が届いてなかったようだ。…その集中(コンセントレイト)した結果は想像したくもない、ただでさえ耐えられてないのにまだ威力を上げるのか…。やめてくれよ(絶望)

 

「あはは、これは失礼してしまいました。ラヴェンツァもごめんなさいね。いえね?リョウスケ様が来られると分かっているならば気合を入れずにはいられましょうか?」

 

「エリザベス、落ち着きなさい。テオ、エリザベスの余ったやる気を受け止めて上げなさい。埃が舞うといけないから離れた所でお願いね。」

 

あっ…テオさん、すまねぇ、あなたの犠牲は無駄にしない!!

 

「リョウスケ様、話が進まなくて申し訳ありませんね。改めて貴方様の状況を説明させていただきます。手紙でお知らせした通り今貴方様は変化の節目に立っております。新しい生活の場で新しい出会いが待っているでしょう。積極的に他人と関わっていく事をお勧めします。さすればお互いに成長することでしょう。私たちのワガママはおいおい余裕のある時にお付き合いください。…テオお兄様が食事をご馳走になった事があると聞いて驚きました。とりあえずですが私たち姉妹を食事に誘ってくださいませんか?それにそろそろ私たちにももう少し砕けた口調を使ってくださいませんか?」

 

ラヴェンツァちゃんもマイペース!すっげぇ衝撃の余波飛んできてるのに…これはテオさんにご馳走した事でみんな羨ましがってるのか。これはみんなに悪いことしたなぁ。…よし。

 

「わかりました…いや、分かったよラヴェンツァ。マーガレットさんも。今はいないけどエリザベスもね。テオさんと差をつけ…た方が良さそうだからちょっと気合を入れた晩ご飯でも作って呼ばせてもらうよ。いいタイミングがあったら声をかけるよ。」

 

「あら、私までありがとうございますね。よかったわねラヴェンツァ。」

 

「リョウスケ様よろしいのですか?…ワガママを聞いてもらえるとはこんな気持ちなんでしょうかお姉様?」

 

「私もまだあまり経験がないからわからないわ。私たちも色々と教えてもらいましょうラヴェンツァ。…あの子達には私から説明いたしますので心配なさらないでくださいな。」

 

「あー、まだ終わりそうにないか。それじゃお願いするねマーガレットさん。今日はもう帰るよ。おやすみ…でいいのかな?お二人さん。」

 

「「はい、おやすみなさい」」

 

 

 

初めてだよ、寝落ちしないでベルベットルームから帰ってこれたよ…。

 

 

そろそろ高校生だもんな。そうなるとやっぱりガラッと変わるんだろうな。ま、未来に思いを馳せても起こってない事には何も出来ないんだ。精一杯生きようじゃないか。

 

 

…その為にもきちんと瞑想してから寝よう。




コンセントレイト…使用すると次の魔法ダメージを倍以上にする効果。


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人間強度が下がるなんて嘘っぱち

高校は割と飛ばしていくので初投稿です


広い。とにかく印象がデカいんだ。さすがは天下の桐条グループが作っただけはあるな。なんだかんだこんなことになってから来たのは初めてってのもあるけど都内でこんな敷地用意してるってのはすごいわ。それに、通いでも全然辛くないな距離は。けれど、満員電車ってのはいつ乗っても辟易するわ…。

 

 

入学式というか進級式といえばいいのか、とにかくセレモニーは終わった。担任は…鳥海先生。国語科担当なのか。クラス替えとか無いらしく、このまま三年間同じメンツらしい。まぁ出来てからそんなに経ってない学校だから色々試しながらやってるからってのが理由だって説明されたけど。

 

クラブ説明会か。どうしようかなぁ、色々と活用が効きそうなのがやっぱり格闘技系かなぁ?うーん、剣道、陸上、水泳、ボクシング、フェンシング、弓道か。どれにも魅力あるもんなぁ…難しい。とりあえず一通り説明会に顔出してみよう。こうなったら勢いと雰囲気で決めるのもアリかも知れないし。ん?まだあったのか、合気道部?へー、まだ出来て2年目の新しい部活か。なるほどなるほど

 

……疲れた。なんでこんなに広いんだよこの学校。まぁ広い分無茶苦茶設備整ってるけどさ。色々見たけどやっぱり合気道かな?なんというか、一番しっくり来た。なにより高校の部活できちんと所作とか儀礼を重んじてる所が今の俺にピッタリだろう。他の部活は割と競技の比重が大きくなってたしなぁ、新設の学校として名前売らなきゃならないってのもあるからか部員もだけど顧問もなんかガツガツしてたのがなぁ…これ見よがしに定員のアピールしてくるのもなんか鼻についたし。まぁ高校生として悪いとは言わないけどさ。よし、決めた。部活は合気道だな。

 

 

帰ってきてからちょっと調べてみたら部活の古牧先生ってめちゃくちゃすげー人じゃねぇか。学校じゃ用務員さんらしいけど実は他の格闘技系の先生集めても勝てないとかヤクザだかカタギだかわからないけど無茶苦茶に強い弟子がいるとか。……なんでこの学校来たんだ?桐条グループからのアプローチなのかなぁ?あー、警備員だと物々しすぎるから用務員って形で来てもらったとか?まさかねぇ?そうだ、ライゴウ爺さんに連絡しておこうか。大分気にかけてもらったし部活も決めたことだしなぁ。もしかしたら古牧先生のこと知ってるかも知れないし。

 

 

「もしもし、お久しぶりです、リョウスケです。高校生活が始まったって言うのとあと部活は合気道に決めました。それでなんですけどライゴウ爺さんにお聞きしたい事がありまして…」

 

「おー、元気でやっとるようでなによりじゃの。わざわざ電話までしてなんじゃい?」

 

「顧問というか指導してくれる先生なんですけど古牧って言う方でして、ライゴウ爺さんならどんな人か知ってるかなぁと。」

 

「古牧…?あの、古牧か?アヤツ今はそんな事をしておるのか…。いや、アヤツなら心配いらん。技術面でもそうじゃがなにより学ぶものの精神面をきちんと考えとる。リョウスケ君にとっては最適と言っても過言でないくらいのぉ。どうにも放浪癖があるのがたまに傷なんじゃが指導者としても武闘家としても一流に間違いは無いの。」

 

「そ、そんなにすごい人なんですか?…なおさらなんでウチなんかにいるのか不思議ですね。」

 

「大方金が無くなりその日暮しを続けておった所学校関係者に拾われたんじゃろ。何年おるかわからんが雇われとる内は確実におるから安心せい。儂もリョウスケ君がおる内に顔出そうかのぉ。」

 

「なるほど、いい話が聞けました。ありがとうございます。夏休み入ったらまた行きますので待っててください。」

 

「おう、待っとるぞ。その時は組み手でも始めようかの。」

 

 

ふむ、無茶苦茶ラッキーらしい。この巡り合わせに感謝して部活やってみようか。…部活だけじゃなくてバイトもやんなきゃな。苦学生ってわけでも無いけどキョウジおじさんのヒモってのはやだからなぁ。まぁハウスキープしてるからセーフと思いたいんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

そんなこんなで高校1年生の春は新しい事をやってる間に過ぎて行ってもうすぐ夏休みなんて頃に差し掛かった。期末テストは涼介の無駄に溜め込んだ無駄な知識のおかげもあって楽々…とはいかなかったもののトップクラスをゲット。大体は教師陣が個性的すぎるのが悪い。なんだ江戸川先生のテスト。あれは保健体育でもなんでもねぇぞ…。まぁテストと言うイベントは恙無く終わったさ。目下のところ問題は友達がいないんだよな…。居ないと言うと語弊がある。少ないんだ…。原因は、古牧先生の指導を学内で見られてドン引きされたって事なんだよなぁ。やってる側からするとそこまでキツくも無いんだけど側から見てるとそうは見えないらしい。それに、中学の頃の友達とはどうしてもよそよそしくなってしまう所がなぁ…。難しいぜ学生生活。

 

あとなんでかベルベットルームとの繋がりがどうも不安定だったらしく半ば習慣化されてしまったノックダウン方式のトレーニングは数を減らし、約束していた食事もまだセッティング出来ていない…。もう少しで落ち着くらしいんだがどうなってるんだろう。夏休み中には済ませたいな。待たせた分と時間がある分ちょっと気合入れなきゃならんな。

 




古牧先生は如くの古牧先生っぽい人です。なお東条会はありませし、ミレニアムタワーも無いです。あったらジェイルどころじゃ無いからね。という事でセガワールドベースなので似たような人に来てもらいました。


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俺にだって友達は居る

当たり障りの無い学生生活はカットしたので初投稿です


人間目の前の事に集中してるとやっぱり時の流れははやい。高校生に上がったかと思えばもう夏休みだからな。よかった事と言えばやっぱり合気道部の古牧先生だな。オカルト面の経験なんてこれっぽっちもないらしいけど単純にすごい強い。この先生に勝つ事が古牧流、古牧先生の本当の流派は古牧流古武術って言うみたいだが、その流派の免許皆伝の条件らしいんだが、どう考えても壁が高すぎるんだよなぁ。…そこまで極まったらそれこそ武術家として生きていくのもアリだろうなぁ。それで夏休み中の部活なんだが合宿とか無いらしい。なんでも古牧先生がアングラな大会に出るらしく指導の時間が取れないらしい。あの人について考えることはもうやめよう。深く考えると頭悪くなりそうだ…

 

夏休みなんだが8月1日から20日までの間また道場にお世話になることになった。しかも天城屋旅館でアルバイト付きだ。短いけど構わないそうだ。リゾートバイト見たいなもんなんだよな。まぁ旅館の手伝いより雪子ちゃんの家庭教師をお願いしたいらしい。夏休みの宿題をお願いしたいってことらしい。どうしても田舎って事で家庭教師も中々見つからないらしいしお手伝いがあるから塾も厳しいらしい。まぁそれくらいならお安い御用だけどな。

 

 

 

 

………終業式の今日、暑い中体育館に詰め込まれて聞かされるありがたーい長話は筆舌にしがたいものがあるね。簡単に言うと辛いで終わってしまうけどな。それから教室に戻ってから担任の鳥海先生からのお話だ。頼むからはしゃぎすぎないでくれという事らしい。まぁ教師として高校一年生がはしゃいでめんどくさくなった事は何度も見てきたのだろう。あとやたらとソワソワしてるから何となく聞いてみたら何でも楽しみにしていたネットゲームのビッグタイトルがそろそろ始まるらしい。夏休みで普段より余裕があるからいいタイミングらしい。…この時代ネットゲームできるパソコンは社会人じゃ無いと厳しいよなぁ。しかし初めて見たな鳥海先生がこんなにしゃべってるの。同僚が結婚するとかしないとかでピリピリしてたもんなぁ…。

 

「おーい、葛葉。お前夏休みはどうすんの?」

 

ホームルームも終わって各々が帰り支度をしている中、クラスメイトかつまだ残っている数少ない合気道部員の芝原が声を掛けてきた。彼が部活を続けている理由は彼の実家も道場をやっていて古牧先生の強さに惚れ込んだかららしい。…そう、彼は現状数少ない友人の1人である。

 

「俺?俺は親戚の道場で面倒見てもらいながら近くの旅館でアルバイトで半分くらい終わるかな?」

 

「へー、もう予定組んでるんだな。いいなぁアルバイト、どこの旅館よ?俺なんて親父に道場の手伝いって言われても投げられるだけ出しなぁ。」

 

「八十稲羽ってとこの天城屋旅館だよ。偶然らしいんだけどこの学校の運動部はたまに合宿で使うこともあるらしいぞ。まぁ親父さんからしたら使い勝手の良いアシスタントだわな。」

 

「そうなんだよなぁ…。」

 

「あー、お前も来るか?全部ってのは無理でもさ、3日4日くらい来ないか?」

 

「え、お前が許可出したら良いの?」

 

「旅館のバイトは分からんけど男手は何時でも欲しがってる感じだしなぁ。どっちかというと家庭教師役の方が重要っぽいから増える分には良いかも知れん。道場の方はいつでも大丈夫って爺さんに言われてる。」

 

「マジかよ、ちょっと親父に言ってみるわ。めちゃくちゃ魅力的じゃん。八十稲羽ってどんくらいかかるの?」

 

「東京駅から3時間位かな?駅から道場というか親戚の家まではちょっとかかるけど」

 

「……なあ、そのまま合気道部でさ自主合宿にでもしねぇ?確かに古牧先生いないけど葛葉の爺さんいるんだろ?」

 

「まぁ古牧先生も合気道が専門ってわけじゃないからウチの爺さんにも教えられるかも知れないけどさぁ、さすがにちょっと急かなぁと思ったし一年坊主が提案する内容でも無いかなぁと思って言わなかったんよね…」

 

「うーん、でもそこの環境が絶妙に合宿スポットなんだよなぁ。でもさぁ、この後道場で言ってみようぜ?」

 

「人数増えるなら流石に聞かないとわからんぞ?男は雑魚寝で文句言わさねーけど女の部員はまずいでしょ。それに部活として行くならやっぱ責任者も必要じゃね?」

 

「あー、やっぱ古牧先生都合つかないのが痛いかぁ」

 

「冬とか春の休みなら聞いとくからさ。まぁ個人的に集まる分には俺らの責任って事で集まれなくも無いとは思うけど」

 

「うーん、まぁどっちにせよ話だそうぜ?部活としてどうなるか分かんないけど、俺は行っても良いんだよな?」

 

「1人2人の男友達なら大丈夫大丈夫。ホラ、人数増えたら準備とかってすぐできねぇからさ。落ち着けって」

 

「ちぇー、せっかく楽しみなイベントあるかと思ったのに…。冬だぞ冬。リベンジすっからな」

 

芝原と馬鹿話をしながら武道場へ赴く。今日は部活ないとは言え終業式の日という事でみんないる。丁度いいのでさっきの話を持ちかけてみた。三年生の部長は受験もあるから無理そうと少し寂しそうにしている。二年生の先輩方は前向きに考えてみるとの事。

 

「あ、その道場がある親戚の家なんですけど、一応神社なんで冬休みなら神社でアルバイト出来ますよ。年始は結構忙しくなるらしく割もいいから誰か居ないか聞かれてたんでどうですか?」

 

とライゴウ爺さんから頼まれてた正月のバイト探している情報を出すと大分ポジティブな反応だ。

 

「バイトの内容なんですけど男手はモノ運んだり簡単な警備案内と女手は巫女さんの臨時バイトですね」

 

「おいおい、先輩方の巫女さんコスプレかよ」

 

「芝原ー、コスプレじゃねーから。本物だから」

 

芝原のちゃちゃもあったが先輩方も好印象だ。これは本格的にライゴウ爺さんに話をしてもいいだろう。とりあえずこの夏来るのは下見も兼ねて芝原だけが泊まりに来ることになった。まぁ場所は教えてあるから先輩方も暇を持て余してたらきてくれると何というか嬉しいんだけどな。

 

 

武道場で話し込んでたらあっという間に夕方だ。そろそろ帰らないと電車がエライことになってしまうから帰ろうか。

 

 

 

っと、ちょっと混んでたけど何とかラッシュからは外せたな。…ん?あれは…ラヴェンツァ?こっちに来れたのか。あ、見つかったらしい。何か話があるようだ…

 




芝原くんはゲームならコミュアルカナ持ちになれる存在です。でもリョウスケ君にはその辺の認知がまだ出来ていません。


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これで俺も脱ボッチ!

そろそろここがキツくなって来たので初投稿です


ベルベットルームとこの世界の接続が不安定だったらしく今年度が始まってから今日まで彼女たちに会うことができていなかった。そんな時にラヴェンツァが俺の前に姿を現した。

 

 

「お久しぶりですね。いかがお過ごしでしたか?」

 

「あー、ラヴェンツァがこっち来れたって事は接続落ち着いたのか?」

 

「そうですね、本日はその事についてお知らせに参りました。不思議なことに私たちがこの世界に干渉できなくなった時間と貴方がこちらにいらっしゃる事ができなくなった時間とは幾分ズレがあったようです。そもそもの話ではございますが、私たち部屋の住人は時間の流れというものに疎いのでございます。しかし、リョウスケ様と関わりを持ってから人を待つという行為に意味が出てきたのです。扉が閉ざされた時間は4ヶ月ほどの様ですが、私たちが感じた時間はほぼ一週間と言ったところでございました」

 

「あ、そういうズレなんだ。まぁ…そうだよな、よく考えたら同じ時間の流れのハズがないか」

 

「はい、ということですのでお姉様たちもそれほどフラストレーションが溜まっているわけでもございませんので安心なさってくださいな。…そのかわりテオお兄様は幾分苦労をなされた様ですが、まぁいたって普段通りの有様でございましたね」

 

「…サンキューテオさん。って事はよかった…のか?いやさ、心配してたんだよ、ご馳走するって約束したのにそっから連絡とれなくなってさ」

 

「…!!本当にその私たちのワガママを叶えてくださるのですか⁉︎」

 

「もちろんそのつもりだったさ。連絡の取りようがなくて不安だったんだよ。これでもそっちのみんなのこと心配してたんだって。まぁ待たせた事に違いはないし、俺も学校が休みになるから時間が取れる様になったんだ、これなら1日がかりで色々できるしな。ってわけで招待したいんだがいつが良い?」

 

「それはそれは実に楽しみでございます。私どもはいつでもよろしいのでリョウスケ様の都合の良き頃合いにてお誘いくださいな。……できれば前もってお知らせくださる方が嬉しいですね。失礼ながら補足としましてお知らせしたい事がございました、普段入り口として利用なさっている屋上ならば私たち皆こちらの世界にお邪魔できるかと思われます」

 

「屋上かー。ならいっその事バーベキューでもやるかい?人目にもつかない分君らもはしゃぎやすいと思うんだ。…飲み物はジュースでいいよね?」

 

「……お酒はリョウスケ様がお飲みになれる頃までの楽しみといたしましょう?貴方様の旅路はそれ程までに長いのですから道中に楽しみを見出すのもまた旅の醍醐味ですからね」

 

「なるほどね、そりゃあ楽しみだ。…そうだね初めての酒のお相手は君たちで予約しとくよ。あと5年くらいか。そんな楽しみがあればあっという間かも知れないな」

 

「そのように思っていただけてこちらこそ光栄です。いけません、つい話し込んでしまいました。お姉様たちにもリョウスケ様が約束してくださったことを伝えなければなりませんので失礼いたしますね」

 

「ああ、そうだな。エリザベスとマーガレットにもお願いするよ。あー、そうだな、テオには手伝ってほしい事があるからその日来てくれって言っておいてくれるかい?」

 

「はい、であればテオお兄様もキチンと参加していただけますものね」

 

「流石に仲間外れには出来ないからね。じゃあよろしく頼むよラヴェンツァ。気を付けて……ってどうやって帰るのさ?屋上の扉からなら同じ方向じゃあないの?」

 

「うふふ、そこは乙女の秘密です」

 

「あー、なら聞かないさ、気を付けて」

 

 

そう告げてラヴェンツァと別れる。八月までまだ日はあるとは言え悠長にしてる程の余裕は無い…この足でホームセンターにでも行ってバーベキューセットの下調べでもしよう。おじさんから何か借りれないかな?いや、八十稲羽でバイトするんだし安いセットあったら買っちゃおうかな。それこそこれから色々と使えそうだし、借り物で招くよりいいよな。よし、どっか近くにあったかなぁ?

 




なお他人からは1人バーベキューをやっているようにしか見えない模様


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パーティーは(まだ)始まらない

世間はクリスマスなので初投稿です


さて、ベルベットルームの姉妹たちを招待する準備は整った。…まぁ準備にテンション上がって色々買ってしまったのはいいだろう。あとは食材だけだし、おじさんの予定も調べてあるから2日後か3日後どっちがいいか聞きに行くとしようか。

 

 

「という事でこっちとしてはその2日の内どっちがみんなの都合いいんだい?」

 

「あら、どちらでも良いならば少しでも良き日を選びましょう。……2日後ですね。そちらの方が催しを妨げる様な物は見えませんわ」

 

…マーガレットさん何を見たんだ?て、天気予報かなぁ?

 

「お姉様、せっかくですから私たちもリョウスケ様に手料理を振る舞いませんか?」

 

「あー、もちろん嬉しいよ。けど、改めて言うけどアルコールは無しだからね?」

 

「エリザベスよかったわね、となれば私たちも準備してみましょうか。何かやってみたいことあるかしら?」

 

「おっと、その辺の作戦会議は当日の楽しみにしたいから今日はお暇するよ」

 

「あら、そうですの?……そうですわね、途切れていた間の積もる話はそれこそ、その日でよろしいですもの」

 

「おや、今日も私のメギドラオンは不発ということですか?」

 

「エリザベス、訓練はまた頼むよ。と言ってももう少し後になるけどその分少しは成長した姿見せられると思うからさ。…まぁフルスロットルのエリザベスだと吹き飛ばされるのに変わりはないかも知れないけどさ。ま、その辺も2日後話そうよ。じゃあちょっと早いけどこれで」

 

エリザベスは不満そうだったが準備もあるのに気絶してちゃあね…という事で部屋を辞した。逃げたわけじゃあ無いんだよ?ただ…そうだな、エンカウントを回避したんだよ(震え声)

 

 

誰に届くとも無い弁明によってなんとか精神状態を保ち、催しの日当日を迎える事ができた。この日は真夏とは言えちょうど日差しも柔らかく比較的過ごしやすいようだ。とは言え炎天下である事に違いはないので始まりは夕方の5時ごろには来てくれと告げてある。それまでにやる事はあるしな。下ごしらえとセッティングしないと。

 

 

 

時刻はちょうど約束の30分前。準備は完全に終わらせてあるし、なんなら炭起こしだって完璧だ。うーん、俺ってこんなに凝り性だったか?…まぁいいや。この手の手間を楽しめるに越した事はない。っとそろそろ時間かな?

 

「本日は私どもをお招きいただきありがとうございます。お姉様たちも楽しみにしておりました」

 

「やぁ、いらっしゃい。悪かったね約束まで時間かかっちゃってさ」

 

「いえ、申し上げた通り仕方のない事。むしろこのタイミングでお誘いいただける事こそ必然だっただけですから」

 

「そう言ってもらえるとこっちもありがたいね。そう睨まないでくれよ…悪かったなエリザベス」

 

「いえ、睨んでいるわけでも機嫌が悪いわけでもございません。ただ、貴方様が訪れなかった間に少しばかり目つきが悪くなっただけでございます。何せ貴方様はまたしばらく部屋にいらっしゃらないとおっしゃいましたので」

 

「まぁ…その辺の話も食べながら話そうか。あ、そうだテオさんちょっと手伝ってくれない?」

 

「…仕方ありませんね、貴方様の余命…もとい弁明の時間はもう少し引き伸ばして差し上げましょう。決して、断じて、間違ってもリョウスケ様が用意なされた料理の数々に免じてというわけではございませんので。食事というものに興味がアリアリだなんて思わないでいただきとうございます。ほらテオご指名ですよ、貴方は既にご馳走になった事があるんですから対価として働きなさい」

 

すっごい早口でテンプレな言い訳をいただいたぞ。そうか、エリザベスは食いしん坊さんか。っても途中余命とか言ってたから割とギリギリのとこ渡ってたんじゃねーか。そしてテオさんにご飯出したのだいぶ根に持たれてる…

 

「はい、リョウスケ様何なりと申し付けください。バーベキューに使う肉といえば新鮮なものが良いかと思いまして私なんとか捕まえてまいったのです」

 

「ちょっと待とうか。テオさん。いや、テオ…何を捕まえて来たとかもう怖くて聞きたくないし、新鮮な肉のために捕まえて来た何かをどうするのか想像もしたくないし仮になんかやっても今使えるわけねーから。とりあえずソレは元いたところに返して来なさい。手伝いとかいいから今すぐ返してなさい」

 

ヤベーよ、ヤベーって。なんだよ明らか聞き覚えのない鳴き声してんぞ、捕まえたのって多分人の精神に住み着いた悪魔か何かだろ…なんかいたか食えそうな悪魔?

 

「おや?そうなのですか?肉といえば新鮮なものの方が良いかと思いまして私張り切って捕まえて参りましたのに…あ、こう言うのってジビエって言うんですよね」

 

「テオ?何をしているの?リョウスケ様が返して来なさいとおっしゃったわよ?エリザベスも落ち込まないの。アレはリョウスケ様が食すには些かハードルが高いわ。一緒に食べたいならそこまで強くなっていただけば良い話よ」

 

「おっといけません、その事をすっかり失念しておりましたね。では放して参りますので先に始めください」

 

 

「リョウスケ様、アレはエリザベスお姉様も一緒に張り切って捕まえてらしたのです。すこし空回りしてしまっただけなのでお姉様は悪くありませんよ?」

 

「わかってるよラヴェンツァ。みんな本当に楽しみにしててくれたのが伝わってきてこっちも嬉しいさ。ただ、俺の肉体はまだ一般人の範疇だからね?…まぁ今日は無理でもいつか…行けるようになるのか?」

 

「……よく考えたらこちらの世界のヒトが食べたと言う事はあまり耳にした事がございませんが、まぁおそらくリョウスケ様なら大丈夫だというお姉様なりの信頼があったのでしょう」

 

「訓練の時といい随分とエリザベスは信頼してくれてるんだなー(棒)」

 

やっべ、自分でも驚くくらい乾いた声しか出せねぇ。き、切り替えようじゃないか。こんな段階でダメージを受けてる場合じゃねぇ!さぁパーティはここからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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食事が進むとと会話も弾む

p5 系がセールになったので初投稿です


バーベキューは始まったばかりだがなかなかの盛り上がりを見せている。まぁ、まがりなりにも葛葉一族の端くれだからテオが持ってきたこっちの世界のものじゃない食材を食べても平気な可能性が無いわけでは無いかもしれない…

 

 

「さて、不測の事態はあったが改めて始めようじゃないか。バーベキューったら各々で好きな食材を乗せてワイワイやるのも好きなんだが今回は招待したんだ。俺がトング奉行を務めようじゃないか」

 

「はい、お奉行様下知をいただけますか!とりあえず私は肉を所望するであります!マーベラスなビーフ、ワンダフルなポーク、ビューティフルにチキンと言うのもいかがでしょうか!」

 

「エリザベス、落ち着きなさいな。貴方…そんなに食欲を持て余していたの?」

 

「そうだぞ、待ち遠しくしてくれるのは嬉しいけど落ち着いてくれって。食材は逃げやしないんだしさ。…君たちってどれくらい食べるのか分かんないから満足できる程用意出来たのか分かんないし、高級食材も無いんだけど楽しんでくれよ」

 

「…仕方ありませんね。しかし、嫌いな人など居ないと言われるソーセージ!これはあるんですよね?あるならば許して差し上げましょう」

 

「あるぞ。すぐ食べられるようボイルもしてある。パリッと食べたきゃ網の前で待ってなさい。もちろんソーセージだけじゃなくて牛豚鳥は揃えてあるぞ。マーガレットさんとラヴェンツァは何かあるかい?」

 

「…私はこちらの鉄板で何を作ってくださるのか興味があります。あと…何か甘い物なんて用意しておりませんか?」

 

「ふふ、この雰囲気この天気ならさっぱりしたお酒をいただきたかったのですがそれはリョウスケ様が飲めるようになってからのお楽しみという事でしたわね。私はそうですね、お魚なんてありませんか?」

 

「ラヴェンツァ、鉄板に目をつけるとはやるじゃないか。コイツは焼きそばを作ろうと思って用意してあるんだ。蒸し焼きとかバリエーション増やせて便利なんだよ。甘い物も取っておきの焼きリンゴをさっき炭の周りに置いたんだ。一通り食べた後ちょうど食べごろだろう。そしてさっぱり口直し用にフルーツポンチも作っておいたから好きな時に言ってくれ。マーガレットさん、俺はまだ飲めないからと言って何にもしないわけじゃないんだ。せっかくフルーツもあるからそれを使ったカクテル風ドリンクを用意したぞ。ウェルカムドリンクって言うにはちょっと野暮ったいしカッコいいグラスなんて物までは用意できてないけどな。後は魚もホイル焼きの下ごしらえをしてある。網に置いて火が通ったら召し上がれ」

 

バイト代も入るしここ3ヶ月ほどの小遣いもあんまり使って無かったから割と色々と奮発してしまった…まぁ後悔はしてないからいいんだけどな。なんだかんだ料理はなんだかんだ得意だし。涼介としてもリョウスケとしても自炊多かったもんなぁ。それだけに誰かに食べてもらうってイベントに対するモチベーションが高くなってしまった…

 

「さぁ、焼くぞー。とりあえずは特製のタレに漬け込んだ肉と塩胡椒と焼くから好みのを食べてくれ。ホイル焼きとかも並行して焼くから食べごろには声かけるよ」

 

「「「それではいただきます」」」

 

みんな楽しそうにしている。いやぁ、良かった良かった。とりあえずワガママは叶えられたかな?…まじか、ちょっと張り切り過ぎたと思ってた食材がみるみるうちに無くなってくぞ?それも網の上も鉄板の上も出来上がった先からキレイにだ。

 

「すごいね、ちょっと作り過ぎたかなと思ってたくらいなんだが、お三方はまだ食べられるの?」

 

「私はまだまだイケますよ?ご遠慮なさらずどんどん来ても構いませんね」

底無しだなエリザベス。しかも喰い気味に来た…

 

「まぁ一通り出したんだ。とりあえずすこしペース落として話のターンといこうじゃないか。俺もなんで扉が無かったのか聞きたいし、その間の話もしたいしさ」

 

「…そうでしたわね、つい食事に夢中になってしまっていましたわ。コホン。何故不安定になっていたかと申しますと申しますと、どうやらこの世界とはまた別の世界からの迷い人がいらしたのです。人…と言ってもリョウスケ様のような人間というわけではありません。そして、我々姉妹にはわかるのですが彼女は造魔、つまりは創られた存在であるのです」

居住まいを正したマーガレットさんが原因について語り出した

 

「そりゃあまた一大事だわなぁ。別世界からの迷い人ねぇ、その人は今なにを?」

 

「彼女も我々の様に従者を生業としていた模様でしてこちらの世界に馴染むまではしばらくベルベットルームにて暮らす予定をしております。何やら世話をされることに慣れていない様子でして、我らや主人の身の回りの事をしてくださっております」

 

「へぇー、って言う事はこないだも居たんだ。…その迷い込んだ元の世界へは帰る目処あるのかい?」

 

「はい、おりました。しかしまだ上手く馴染んでいない模様でして休眠状態に陥る事がしばらく続きそうです。そして、目処ですが…わかっておりません」

 

「そりゃあ分かんないよなぁ。よしんば分かったとしてもその世界にはどう行けばいいのやらって所からだよなぁ…。迷い込んだ原因は分かってるの?」

 

俺が言えることじゃないんだけどな。迷い込んだ人の心配できる程俺もこの世界で生きていく覚悟ができたからかな?

 

 

俺の問いに対してマーガレットから引き継ぐようにラヴェンツァが答えてくれるようだ。……エリザベスはまだ食べている。この話に入ってくる気はあんまりなさそうだ。

 

 

 

 

 




料理は無駄に高スキルを持っているものの発揮するタイミングが無いため友人ができるきっかけをのがしています


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盛り上がった後の片付けは大変

自動保存機能に助けられたので初投稿です


扉が無かった理由は別世界と近づいたからだったらしい。しかもそっちの世界からお客さん付きだそうだ…

 

「そーいや、そのお客さんの名前とかはあるのかい?」

 

「メアリ。メアリと申すようです」

 

「メアリ?……なーんか聞いたことあるような…。どんな人なの?」

 

「あら、女性の名前と聞いて興味を示すのは紳士としていかがなものかと思いますよお奉行様」

 

…たしかに奉行を名乗ったがここで引っ張るのかエリザベス。

 

「お姉様、この流れであれば気になるのはさほど不思議でもないかと思いますよ?メアリさんは先に申しました通り他者によって作られた存在。その外見でいうならば人形のように白い肌をした赤い眼を持つメイドでございます」

 

「………あっ!もしかして造物主はヴィクトルか!」

 

「やはりご存じでございましたか。違う世界ながら何故迷い込んだのか不思議だったのですが、腑に落ちましたね」

 

「あー、俺の魂がちょっとばかり歪なのは知ってるよな?その混じった記憶の中にメアリに付いてのモノが有ったんだ。それがメアリでヴィクトル・フォン・フランケンシュタインに造られたってヤツなのよ。んで迷い込んだのは知ってる存在がいる世界に引っ張られた可能性があるって事か?」

 

「おそらくは」

 

「はぁ、悪いことしたなぁ。この世界自体が綻び始めてるとかそう言うのは大丈夫なわけ?」

 

「現段階では揺らぎは落ち着いております。この先世界がどうなるか…はヒトの数だけ可能性がありますとしかいえませんわね」

 

「世界の可能性は無数にあるとは言え、リョウスケ様のお陰で中々スリリングな可能性も生まれてまいりましたね」

 

「え、エリザベス俺のせいなのか?」

 

「1人の肩によって世界の行く末が決まるとは考えたくも有りませんが、さすがに貴方様の状況下においてそこを考えないのはいくらなんでもチキン野郎でございますよ?」

 

「言わんとする事は分かってるさ。その為って訳じゃないけど色々やってんだし。なんとかして足掻ける様にはなれるようにさ」

 

「…分かっておいでならよろしいのでございますよ。そろそろ私のメギドラオンが恋しいのでは?私はいつでもウズウズしておりますよ」

 

「……とりあえず久しぶりの手合わせは夏休みの終わり頃頼むよ。身体と精神を少しでも鍛えられそうなんだ、その後の方がまだ良い。もっといえば訓練は手合わせよりもっとマイルドにしてほしいくらいなんだぞ?」

 

「ズバズバ言われて私悲しいです。傷ついた心を癒す為にも何か甘いものを食べなければなりません。ラヴェンツァも食べたそうですよ?」

 

「お姉様!」

 

「おっと、忘れてた訳じゃないぞラヴェンツァ。丁度頃合いだしみんな食事はもう満足出来たか?そろそろシメるぞ。焼きリンゴはトロトロだぞ。トッピングにアイスクリーム、マシュマロ、ブランデー、シナモン、あー、後、チョコレートも用意してあるから色々試してくれ。とりあえず今は食べようか」

 

「あら、私はブランデーを試してみますわ」

 

「ビターにシナモン?いえ、キュートにマシュマロ?スイートにチョコレートでしょうか?」

 

「…あの、全部乗せてもよろしいですか?」

 

「「!!」」

 

「おー、いいぞ。ならちょっと待っててくれるか?そこまでやるなら鉄板もあるしパンケーキ焼こう。焼きリンゴも一緒に乗っけた方が美味いと思うんだ」

 

「「「それです」わ」ね」

 

 

 

結局ずっと食べっぱなしだった様な気もするが色々話せたし大分と俺と彼女たちの距離感も縮まった様な気がする。ま、何より楽しかったしな。機会があればまた企画したいくらいだ。次はきちんとテオと…メアリも誘えたらいいな。

 

 

「本日は誠にありがとうございました。我ら一同堪能いたしましたわ」

 

「ええ、お姉様の言う通り大変楽しかったです。私たちのワガママを一つ叶えてくださいましたね」

 

「私の胃袋を掴むとは認めて差し上げましょう。その腕に免じてメギドラオンではなくメギドラにてお相手して差し上げます」

 

「お、おう…光栄だよ?とはいえ耐えられる様になるのはまだまだ遠そうだ。ま、皆さん楽しんでいただけたようで何よりだ。ラヴェンツァも次のワガママ考えておいてくれ。今日みたいなのは俺も楽しかったしまた企画したら来てくれるかい?」

 

「…!よろしいのですか?」

 

「そりゃあこういうのはワイワイやるのが楽しいからな」

 

「ふふ、それは楽しみです。ぜひお誘いください。改めまして本日はありがとうございました。名残惜しいですがそろそろお暇させていただきます」

 

 

 

そう言って三人と別れた。今日は張り切りすぎたからちょっと疲れたし片付けは明日でいいか……そういやテオさんどこまで行ったんだ?いや、考えるのはやめておこう。



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やっぱり夏休みは盛りだくさん

とりあえず年明けまでは毎日投稿したいので初投稿です


ベルベットルームの住人たち、…テオは不慮の事故によって来てなかったが、とにかく彼女たちとの約束を一つ叶える事が出来た。色々とやってるうちにワガママなんて出てくるんだ。長い付き合いになりそうだし、ゆっくり考えて欲しいね。

 

 

 

さて、なんだかんだで今日からまた20日間ほど爺さんにお世話になる訳なんだが、今回はなんでも八十稲羽の方に取りに行く物があるとかで八十稲羽で拾ってくれるらしい。という事で三十分ほどこの間よりも電車に乗ってる訳だが…まぁ中々閑静、いや、人気が無いって言えるか。宗一さんとの約束までまだちょっとあるな。商店街でもぶらついてみようか。

 

 

お、ここが巽屋か。あの完二君の家っていうよりしおりセットのお店の印象の方が強いな。お土産の下見でもしようかな?

 

「ごめんくださーい」

 

「いらっしゃい!」

 

「お、少年店の人かな?」

 

「そうだ!兄ちゃんは客か?見た事ないから外の人か?」

 

「あー、うん。今日この街に東京から来てね、近くの親戚の家に泊まるんだけど、来てばっかりで帰りのこと考えるのもなんだが、お土産の下見でもと思ってさ。一度ここのは買ったことあるんだよ。天城屋旅館さんにも置いてるだろう?そこの雪子ちゃんは知ってるかい?あの子にオススメされてしおりセットをもらった事があるんだ」

 

「おー、天城屋旅館なら知ってる!たまに母ちゃんと一緒に商品持ってくんだ。そーいや兄ちゃん名前は?俺は完二ってんだ」

 

「おー、完二君か、俺はリョウスケ。よろしくな。お土産買うときにでも色々説明してくれるかい?」

 

「おうよ!今日はいいのか?」

 

「今日はまだ下見さ。じゃあまた会おうな完二少年」

 

 

ふらっと立ち寄ってみればなんとあの完二が店番をしてるとは思わなかったな。素直ないい子、ちょっと元気は余ってそうって位の印象だなぁ。お、愛屋だ。まぁ今は食べるタイミングでも無いけど。ボチボチ人通りもあるいい街だなぁ。あ、丸久豆腐と四六商店にだいだら,と既視感たっぷりの街並みだなぁ。…そろそろ時間かな?待ち合わせはもう少し行ったところのガソリンスタンドだったな。もう行っておこう。

 

 

「お久しぶりです宗一さん」

 

「よく来たねー。お、ちょっとは男らしくはなったかい?さぁ乗った乗った、親父が待ち遠しそうで鬱陶しいんだ」

 

「ありがとうございます、今回はちょっと長いですけどよろしくお願いします」

 

 

挨拶を交わして車へと乗り込む。すると宗一さんから声をかけられた

 

 

「僕が来るまでどっか見てたのかい?あ、そうそうリョウスケ君東京から来たじゃない、あの商店街の豆腐屋さんのお孫さん今度東京でアイドルやるんだってさー、会うことあるんじゃないの?」

 

「宗一さん…東京ってどんだけ人いると思ってるんですか…」

 

「うーん、何となくなんだけど、いずれ会いそうなんだよねー」

 

「そうですか、ま、覚えておきますよ」

 

「あ、これからの予定なんだけど朝御飯と晩御飯前に瞑想、稽古はまぁその時々だね。日中は天城さんとこ行くんでしょ?そこまでは走っていくといい。ガソリンも節約できてリョウスケ君もトレーニングなるから効率がいいよね!大体30分くらいだから無理な範囲でも無いし丁度いいのよ」

 

「わかりました。毎度毎度送ってもらうわけにも行きませんからね」

 

「お、言うねぇ。慣れるまではちょっと疲れるけどそれもトレーニングさ」

 

夏とはいえ山だからそこまで暑くもない。丁度いいかもしれないな。

 

 

「あ、言い忘れてた。今日はこれから天城さんとこ行くから挨拶しときなよ。雇い主なんだしさ」

 

 

 

 

「こんにちわー、天城さんお届け者でーす」

 

「宗一さん、俺のこと言ってます?…まぁいいや、天城さん、しばらくお世話になります」

 

「宗一くん、ありがとうね。リョウスケ君もよろしくね。この辺り塾も中々ないから雪子のこと心配だったのよ。旅館の方も手伝ってくれるんでしょう?助かるわぁ」

 

「お手伝いなんですけど、同じ部活に暇してるヤツいまして道場を合宿先の下見に来るんですよ。ソイツ、力なら余ってる様なんでよければ使ってやってもらえませんか?」

 

「あら、お友達まで紹介してくれるの?アルバイトも中々集まらないからほんと助かるわぁ」

 

「いえ、こちらとしてもバイト代いただけるなんてありがたいですよ。東京って言っても高校生なんて中々バイト見つからないんですから…それにバイトも学校に申請とかややこしいんですけどこっちならお手伝いで通せますから…」

 

「それじゃ色々と働いてもらおうかしらね。とりあえずは雪子の夏休みの宿題を見てもらおうかしら。雪子ー、いらっしゃーい」

 

「あ、お兄さんこんにちは。お勉強見てくれるんだって?」

 

「お、雪子ちゃんこんにちは。久しぶりだね、こう見えても結構勉強できるからなんでも聞いておくれ」

 

「あ、あのお母さん、お兄さんに見てもらう時なんだけど…千枝も呼んでいいかな?」

 

「千枝ちゃん?私は構わないけれど、リョウスケ君は迷惑じゃないかしら?」

 

「俺は大丈夫ですよ。持論ですけど小学生は1人でやるより少人数でやった方が伸びがいいんですよ。まぁ雇い主は天城さんなんで雪子ちゃんの方にウェイト置きますけどね」

 

「リョウスケ君ありがとうね。千枝ちゃんって雪子と仲良くしてくれてる子なの。千枝ちゃんのお母さんには私からも連絡しておくわね」

 

「それじゃあよろしくお願いします。雪子ちゃんもしばらくよろしくな」

 

「リョウスケ君そろそろ行くけどいいかい?」

 

「はい、今行きます。じゃあ明日からだね。道覚え切ってないからちょっと遅くなっちゃうかもしれないけどまたね」

 

 

 

そう言って2人に別れを告げ車で道場へと向かった。これからしばらくはこっちでの生活だ。稽古もバイトもいい思い出になりそうだな。

 

 

 



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赤と緑のコンビネーション

背中の痛みがヤバいので初投稿です


「おはようございます」

 

「うむ、おはよう。では瞑想から始めようかの」

 

爺さんのところに来て初日の朝。言われた通り朝御飯の前に道場で瞑想から始まる。昨日は挨拶と芝原の相談で終わってしまったから今日から本番だ…………

 

「2人ともそろそろしまいにしよう、飯できたぞ」

 

「呼ばれたから終わりじゃの。随分良くなったんじゃないかの?古牧のヤツからいい指導も受け取るようだわの」

 

「はい、お疲れ様でした。宗一さんご飯とか手伝ったりはしなくていいんですか?」

 

「お?いいのかい?お袋も喜ぶよ」

 

「いえ、お世話になりますし、それに料理するの好きなんですよ。昨日言ってた芝原たちウチの部員がここの施設でお世話になるとするならある程度自炊も考えてますし」

 

「おー、おー、男は台所に入らんと言い張るどっかの親父に聞かせてやりたいねぇ。そこまで考えてるなら合宿先として使ってもいいんじゃない?高校生だから引率とか必要かもしれないけど顧問の先生いるんだろ?」

 

「うるさいのぉ、儂は母さんのメシが好物だから邪魔をしないようにじゃな……」

 

「で、どうなのよ親父、受け入れ昨日から考えてたんだろ?」

 

「む、そうじゃの、儂も良いとは思っとるんじゃ。あとは部長や古牧のヤツとの話次第かの。その芝原君がウチに来る時下見も兼ねとると言うとったし儂らも若い子らと稽古するのもええもんじゃしな。ま、朝稽古はこの辺にしてメシじゃの。食べたら天城さんところへ行くのかの?」

 

「はい、昼までに来てくれればと言われてます」

 

「ならば大丈夫かの。歩いても1時間もかからんからの、走れば山道とは言え30分。ま、今日は道を覚えるためにゆっくり行けば良いわい。気をつけての」

 

 

 

 

朝御飯を食べ、少しの荷物と共に葛葉家をでた。まだ慣れてないからメモ通り…と言ってもほぼ一本道なんだけどな。なるほど、これを20日も続ければ基礎体力は大分鍛えられそうだ。

 

 

ふぅ、そろそろかな?山道とは言え夏だからやっぱり暑いな。着替えとタオル増やしておくか。お、ここまで来ればもうわかるな。もうすぐだ

 

 

 

「こんにちはー、リョウスケです。今日からお世話になります」

 

「こんにちは。今日はお客さんも少ない予定なのよ。それにね、昨日言ってた千枝ちゃんもきてるから雪子とお勉強の日って言うことでいいかしらね?その前にご飯かしら。…そう言えば何で来たの?宗一さんに送ってもらったのかしら?」

 

「いえ、走って来ました。初めてだったんで時間かかりましたけどもう覚えたんでもう少し早くなりますよ」

 

「ええ⁉︎山道を小一時間も走るなんて若いわねぇ。じゃあ軽く汗流してきなさい。ウチは入浴施設だけは自慢なのよ。上がったら子供たちとご飯食べてからでいいからよろしくね」

 

「ええ!こちらこそそこまでお世話してもらってなんだか申し訳ないですよ…」

 

「いいのよ、温泉も結局人が来なくても変わらないし使ってもらう方が色々とね。ご飯も賄いだから大したもんじゃないし気にしないで」

 

「ありがとうございます」

 

 

うーん、朝から瞑想して軽くランニングからの温泉で汗流してご飯食べてお勉強会か…なんだこの充実した予定は。しかもバイト代までもらえるんだぞ?このプラン世が世なら金払って体験する人いるレベルじゃないか……

 

 

「ごちそうさまでした、美味しかったです。それじゃ雪子ちゃんとその千枝ちゃんとはどこで教えればいいですか?」

 

「ウチの居間使ってもらえるかしら?あの子たちも準備してるはずだから」

 

「わかりました、それじゃ行って来ますね」

 

 

 

「あ、お兄さん、今日からよろしくお願いします。こっちが千枝。ほら、千枝も挨拶して」

 

「あ、あたし千枝です!お、オス!よろしくお願いします!」

 

「千枝ちゃんね、よろしく。雪子ちゃんもだけど俺がこっちにいるまで旅館の手伝いが無い日ならいつでも声かけてくれて構わないから。じゃあとりあえず夏休みの宿題を終わらせようか」

 

「うえー、今日は顔合わせって事で外いこーよー。おにーさんも一緒にドラゴンごっこするんだ!」

 

「千枝…あんたの為にお勉強見てもらうのに…」

 

「確かに遊ぶのは楽しいけどさ、そうだな、宿題終わったらなにかご褒美でも考えておこうかな」

 

「えー、何々なんか貰えるのか?雪子あんたはなんだと思う?」

 

「もう、千枝、宿題終わらせないとご褒美も無いんだよ?」

 

「うっ、そっかぁ…」

 

「まぁ1人でやるよりみんなでワイワイやると案外楽しいもんさ。一応臨時の家庭教師なんだ。分かんない事があったら何でも聞きな」

 

 

まぁ元気な印象が強い千枝ちゃんは予想通り勉強を嫌がったがエサをぶら下げる事でやる気を促す事ができたと思う。3人で夕方までしっかり宿題を進められた。

 

「はい、お疲れ様。今日はこの辺りにしておこうか。夏とは言え山だし暗くなると危ないからな」

 

「「お疲れ様でした」」

 

「まあまあ進んだかい?こういう感じならそこまでやなモノじゃないだろう?じゃあまたね2人とも。天城さん今日はこれで失礼します」

 

 

 

 

こうしてこっちでの生活1日目が終わった。しかし千枝ちゃんはほんと想像通りの元気っ子だなぁ。赤と緑でいいコンビじゃないか。あんな姿を見たからこそ他人には分からないコンプレックスも出来るんだろうなぁ。…まぁ目の前で悩んでたら話くらい聞いてやろう。そうじゃなかったら解消するタイミングときっかけは俺じゃないってだけだしなぁ……

 

 

 

 

 



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集合合気道部

靴が壊れたので初投稿です


ライゴウ爺さんに瞑想の仕方をそれなりに認めてもらい古武術の基礎の基礎を教えてもらい始めたり、旅館の風呂掃除をしたり、旅館の板さんに料理を仕込まれたり…この十日間なかなかハードだったな。そして今日は芝原たちが来るから迎えに行かなきゃならん。そう、結局2年と3年の先輩も2人来ることになった。流石に3年は合宿してる余裕も無いんだが最後の夏休みということで来ることになったらしい。まぁ3年の先輩成績良いもんなぁ。3年の九条先輩ことヒナコさんと2年の志島先輩ことダイチさん。正直初めて名前聞いた時死ぬほど驚いたんだけど良く顔に出さなかったと今でも思うね。この2人も世界線次第じゃヤバイことになってた可能性があったんだなぁって思うと…。ちなみにヒナコさんは関西の人で別の部入ってたけど古牧さんが顧問なった時迷わず入ってきたらしい。

 

 

「お、葛葉くんやんかー、出迎えありがとうな。ウチも最後の夏の思い出にと思って付いてきたんよ」

 

コテコテの関西弁でしゃべるヒナコさん。実家は舞踊の名家らしいけど古武術も通ずる所があると言って今は古牧さんの教えを喜んで受けてる。無茶苦茶美人だし練習着の袴姿見たさに入ってきた体験入部者がリタイアしまくったのはもはや笑い話。

 

「おー、リョウスケー。案内頼むよー」

 

ゆるーい雰囲気で話すダイチさん。普段は頼りないけど実は色々気配りしてくれるホントに良い人。そんでもって実は結構頑固な所もある。腹括ったときがホントに凄い人

 

「ようこそ八十稲羽へー…って俺の出身ってわけでも無いんですけどね。実は皆さんに朗報です。何と天城屋旅館さん泊めていただけるそうです。もちろん2部屋用意してくれるとのことですよ」

 

「ホンマに!実はウチ温泉に目がないねん。しかも天城屋旅館って結構有名なんやってなー、葛葉くんやるやんかー」

 

「いやぁ爺さんに神社の宿舎借りようと思ってたんですけど、会話の流れで天城さんに連れてこいって言われちゃいましてね。ご飯は使って良い材料あれば自分たちで作っても良いし、ここらで食べてからでも良いって言われてます」

 

「えー、俺料理できないよ?…ヒナコさんも無理そうだし、芝原はできる?リョウスケ、この辺どっかお店あるの?」

 

「ダイチ!ウチの料理スキル舐めたらアカンで、タコ焼きならお手のもんやわ」

 

「ダイチ先輩、俺も自信無いっすよ」

 

「一応俺できるんですけどねぇ…最近板さんにしごかれ初めて何の稽古してるのか分からなくなりそうなんですよ…。あとヒナコさん、タコ焼き器は無いのでスキルの披露は別の機会にお願いしまーす。で、この辺なら愛家って中華屋さんが身体動かす学生向け…何ですけどヒナコさんイケます?」

 

「うーん、あんまり脂っこい中華屋さんは得意やないわぁ。せや!君ら合宿やるんやったら作る練習しといた方がええんちゃう?葛葉くんには負担やけど色々見てくれへん?…みんなでご飯作ったが楽しそうやし」

 

「俺は良いですよ。とりあえず何が使っていいかは分かんないんで、材料はこっちで買いましょうよ。旅館に向かうバスも商店街から出るんで

丁度いいですし」

 

「ほな決まりやね!せっかくやし地物使いたいわぁ。あとなんかええ感じのお土産ありそうなお店もあらへん?2人もそれでええ?」

 

「俺は良いよー。でも確かにリョウスケに料理までさせて合宿先の手配までさせてる先輩って情けないなぁ…俺も料理頑張るからちょっと教えてくんない?」

 

「葛葉、俺も頼むわ。無理いって来させてもらったのに世話ばっかりかけて申し訳ねぇし」

 

「ヒナコさんが寂しそうなんでみんなで料理やりましょうか。簡単な汁物と炒め物、焼き物くらいで良いでしょ。ご飯とお漬物だけは絶対にあるし、板さんが出汁引いてくれてるんで色々簡単に出来ますよ。そんで、お土産屋さんなら巽屋さんがこの辺の織物扱ってていい感じの多いですよ」

 

「あら?ウチそんな寂しそうにしてた?なんや、恥ずかしいわぁ…。恥ずかしついでにもう買い物行くで!」

 

「ヒナコさーん、待ってよー。リョウスケが先に行かないと道分かんないじゃーん」

 

「芝原、よくここまで来れたな…」

 

「ホントだぜ…ヒナコさん自由すぎんだよ…。あれでつえーんだからタチ悪りぃし」

 

「ま、お疲れさん。ヒナコさーん、こっちの豆腐屋さんから行きましょー」

 

そう声をかけて商店街の中にある店で食材を物色した。それからバスで旅館に向う中ざっくりと考えた予定を告げる。

 

「朝起きたら軽く爺さんの道場まで走る予定何ですけど良いですか?山道ですけど30分くらいなんで。朝ごはんは葛葉家でいただく予定です」

 

「朝から走るのかよー、いやでも暑くなる前だしいいのかなぁ?」

 

「流石に少しくらい稽古もせんかったらウチらホンマに旅行来ただけやししゃーないって」

 

「俺は元々道場の方に世話になる予定だったんでむしろ今日が特別だしなぁ。あ、旅館の手伝いとかどーなってんの?」

 

「なんや、葛葉くんアルバイトもやってたんかいな。満喫してんなぁ羨ましいわ」

 

「俺は家庭教師半分手伝い半分ってとこですけど、芝原には力仕事が待ってるぞ。あそこの温泉は磨きがいいあるくらい広いから楽しみにしとけー」

 

「…まじかぁ。まぁ泊めてくれる上にアルバイトさせてもらえるだけありがてぇか」

 

「そうだぞー、お前らだけずっこいじゃんか」

 

「まぁダイチさん、今回はお試し、下見なんですから…冬なら道場の方のバイトも有りますからそっちもアリですよ」

 

「ええ?道場でなんかやるバイトあるっけ?稽古相手はやだなぁ…」

 

「いえ、そもそも道場何ですけど神社の中なんでそこの手伝いっすね。ヒナコさんも受験なけりゃ巫女さんの手伝いとか出来ますよ」

 

「それも楽しそうやわ、大学決まってたらお願いしよかなぁ?」

 

「えっヒナコさん冬もくるんすか?」

 

「ダイチー、葛葉くん、悲しいわぁ。芝原がいじめよるわ…」

 

ワイワイ騒いでる内にバスもそろそろ旅行に着く頃だ。挨拶してご飯作ってやる事はまだまだあるけど楽しい夜になりそうだ。




やっぱり好きなんですよデビサバ2 。世代も似たような感じなので可能性として来てもらいました。なお峰津院家はあるかもしれませんが、ジプスは無いです。ターミナルと悪魔召喚出来ないので仕方ないです。


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温泉イベントなんてなかった

餅をついたので初投稿だす


「さ、ここがお世話になる天城屋旅館です。女将さーん、みんな来ましたよー」

 

「ええ、リョウスケェほんとに俺ら泊まっていいのぉ?無茶苦茶良さそうなんだけど…」

 

「ホンマやで葛葉くん、泊まろおもたら結構するんちゃうの?流石に悪いで、ウチも手伝いやれる事あらへんか?」

 

「あら、リョウスケ君いらっしゃい。この子たちね、せっかく八十稲羽まで来てくれたんだから楽しんでもらいたいのは地元の願いだから構わないのよ。どうしてもって言うならお手伝いしてもらえるかしら?」

 

「こんにちはっす、芝原です、しばらくよろしくお願いします!」

 

「まぁ、いけないこんなところで話して無いで案内しなきゃね。雪子お願いできる?」

 

「うん!お兄さんこっち!」

 

「雪子ちゃんよろしくね。あ、女将さん、晩ご飯何ですけどみんなで料理することになりました、厨房借りても大丈夫ですか?」

 

「7時頃なら落ち着いて大丈夫よ。私から板さんに言っておくわね」

 

「お母さん、あのね、私もお兄さんたちと食べたいかなって」

 

「雪子がそんな事言うなんて珍しいわね…リョウスケ君迷惑じゃ無いかしら?」

 

「俺は全然構いませんよ。みんなはどう?」

 

「ウチは大歓迎やでー。雪子ちゃんよろしくな。ウチは九条ヒナコ。ヒナコお姉さんって呼んでな」

 

「俺もいいよー。雪子ちゃんよろしくね。俺は志島ダイチ。一応リョウスケの先輩なんだよ」

 

「俺は芝原だ。よろしく雪子ちゃん。一応ここでコイツとアルバイトもする事になってる」

 

「いいの!ありがとうお兄さん達にお姉さん!じゃあ案内するね」

 

雪子ちゃんに案内されて部屋まで行く。俺も部屋の掃除は手伝った事はあるが泊まった事なんてもちろんないので楽しみだ。まずはヒナコさんの部屋から。

 

「ええ!こんなええとこ泊まった事ないわぁ。しかも温泉もオススメなんやろ?せや!雪子ちゃん、一緒に入ろうや!広い温泉1人ってのも寂しいやんか」

 

「うん!お姉さんお風呂も案内するよ!」

 

なんて会話が中から聞こえてきたが、ヒナコさんは荷物を置いてこっちの部屋に来るつもりのようだ

 

「お兄さんたちはこっちの部屋だよ。ご飯食べる時は呼んでくれる?」

 

「おう、雪子ちゃんありがとう。板さんに厨房は危ないって止められてるもんだし、出来上がったら呼ぶから運ぶの手伝ってくれるかい?」

 

「うん!楽しみにしてるね。じゃあそれまでは旅館のお手伝いしてくる」

 

雪子ちゃんは楽しみにしてくれてるのかいつもにもまして元気に去っていった。

 

「で、どうですかここ。合気道の合宿とバイトと一緒に出来るんですよ、いいと思いません?」

 

「葛葉くんなんで一年なんやの、こんなええとこはよ教えて欲しかったわ。本気でOGとして来年からも来よかな?」

 

「リョウスケホントにいいのかよ?ちょっと良いところ過ぎて落ち着かないんだけど?」

 

「まぁそのかわりお手伝いとか有りますし…」

 

「まぁええわ、ウチは温泉楽しみやわー。雪子ちゃんもかわいいし、ええ女将さんなりそうやんか」

 

「ええ、一生懸命でいい子ですよ。あ、そうだ晩ご飯までまだ有りますしこの辺歩きますか?下見のテイで来てるんですからこの辺見て回りましょうよ」

 

 

そんな話をしながら旅館の散策をして晩ご飯を作る時間だ

 

「板さん、よろしくお願いします。すいませんお邪魔しちゃって」

 

「なーに、かまやせんさ。なんせリョウスケ君が来てからこっちお嬢も楽しそうで俺たちもうれしいんだ。と言うわけだ、ここくらいならいくらでも使ってくれ。もちろん忙しい時は厳しいがな」

 

「ありがとうございます、早速何ですけど今日はみんなで晩ご飯作ろうってなってまして借りますね」

 

板さんは快く厨房を貸してくれた。そしてみんなですこし苦労しながらも料理が出来上がった。予定通りの定食みたいなラインナップだが、板さんが野菜のお浸しとか色々と小鉢を付けてくれた。

 

「よーし、出来たから雪子ちゃんよろしくね」

 

「案外ウチらでも出来るんやなぁ」

 

「いやいや、ヒナコさーん、ほとんどリョウスケと板さんのおかげだよー?」

 

「ホントっすよ、俺もダイチさんもアワアワしてる間にリョウスケがパパッとやっちゃうんだもんな…」

 

「いやぁ、すまん、思ってたよりも勝手に身体が…。ま、まぁ味は保証するからさ?」

 

…ちょっと認識のズレがあったが無事晩ご飯をみんなで食べる事ができた。雪子ちゃんはずいぶんヒナコさんに懐いているようだ。

 

「いやー、美味しかったわぁ。葛葉くん、お嫁さんに欲しいくらいやわ」

 

「いや、ヒナコさんとリョウスケ逆じゃないっすか」

 

「あはは、いやぁ、美味い美味い言ってくれるんのは嬉しいもんですよ。雪子ちゃんも楽しかったかい?」

 

「うん!ごちそうさまでした。お兄さんが板さんに気に入られるの分かった気がする。あ!そろそろ露天風呂行っていいって言われた時間だよ、ヒナコお姉さん行こうよ!」

 

「せやな、一緒に行こうか。ほなお先にいただいてくるわー」

 

 

「あっという間に行っちまった…葛葉、俺たちも行こうぜ」

 

「そうだな、リョウスケ案内頼むぜー」

 

「…んじゃ荷物持って行きますか」

 

 

 

 

ま、露天風呂だからってこれと言ったトラブルもなくみんな満喫したようだ。明日からは稽古とバイトが始まるしあんまりはしゃがない様って思ってもみんな程々に浮かれてるから難しそうかな?

 

 



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簡単そうに見える事って大体難しいね

今年最後の投稿なので初投稿です


「いやぁー、いいお湯だったぞー。これは冬本当にお願いするよー」

 

風呂から上がってきてダイチさんはすぐ言い出した。

 

「ダイチさん…せめて葛葉んとこの道場見てから言いましょうや…」

 

「ええやん、芝原くんはなんか不満でもあるんか?」

 

いつのまにか風呂上がりのヒナコさんが入り口にいた。

 

「あれ?ヒナコさんどうしたの?湯冷めしますよ、朝6時集合って伝えましたよね?」」

 

「ホカホカやからかまへんよ。いやもう、ちょっと感動の共有をしたなったんよ。先輩からのおせっかいやけどあんたらここで合宿出来るの部のウリにしぃ。めちゃくちゃええとこやわ。というかウチは普通に客としてもこれから来ること決めたからな。お母ちゃん連れてくるんや」

 

「そこまで気に入ってもらえてなんか俺もここ紹介して嬉しい限りですよ。雪子ちゃんもいい子でしょ?みんなが来るまでの二週間ほどの内半分くらい夏だけの家庭教師みたいなことやってたんですよ」

 

「はぇー、そんな事もやってたのかよリョウスケ。あ!だから俺たちを力仕事で使うつもりだったのかよぉ」

 

「あはは、まぁほら、俺以外はほんの数日しか居ませんからそうなっても仕方ないですって。でも、ここまでしてもらってバイト代もらえるんですよ?やりますよね?」

 

「そりゃあやるぜ。来年は俺も半月以上は来たいくらいだもん」

 

「芝原お前はそれだけ余裕なら二学期のテスト頑張れよー」

 

「うぐっ、オメー成績いいもんなぁ…そりゃ俺みたいな馬鹿より家庭教師も向いてるわけだよ…」

 

「そうだよなぁ、リョウスケなら普通に学校の勉強楽勝だろ?情けないけど俺より頭良いもんなぁ」

 

「なんやなんや男ども情けないなぁ。勉強なんてやれば出来るようならんやからやってへんだけやないの。なぁ葛葉くん」

 

「まぁ勉強に関してはその通りですよねぇ。さて、話が弾むのも分かりますけど朝は早いんでそろそろ解散と行きましょうか。おやすみなさいヒナコさん」

 

「…せやな、朝から軽く走って道場やっけ?荷物は置いててええのん?」

 

「一応明日は神社の宿舎使う予定何ですけど爺さんが温泉来たがって仕方ないんで夕方車で来るつもりらしいんですよ。そんときに回収ですね。ほら、芝原もダイチさんも聞いてますかー?」

 

「「うーい」」

 

「よっしゃ、わかったわ。ほなおやすみなさいやね」

 

 

 

色々あったがみんな楽しんでもらえてた様子で招いた身としてホッとした。明日は言った通り早いし、今日はもう寝よう。

 

 

 

 

「ダイチさーん、芝原ー、起きろー。時間だぞ」

 

「ううん、あれ?もう、そんな時間?悪いなリョウスケ。芝原起きろー」

 

「おはようございまーす…着替えますかぁ。ヒナコさんは玄関で待ってた方がいいっすかね?」

 

「心配せんでええで。みんなおはようさん、よう寝れたわ」

 

「んじゃもう少ししたら出発しましょうか。身体起きてないウチから無理する事ないんで最初の方は歩きながらですけど」

 

 

 

 

そう言ってみんなで道場へと向かう。途中女将さんには挨拶したが雪子ちゃんはまだ寝てるとの事で挨拶できなかったヒナコさんがチョッピリ寂しそうだった。

 

 

「さ、ここが道場っすよ。おはよーございまーす」

 

「おう、よう来たのう。ん?聞いてたより人数増えとるのか。嬢ちゃんは客間使ってくれい」

 

「えらい気ぃつこてもろてすんませんなぁ。ウチは九条ヒナコです。葛葉くんらの先輩やらしてもらってます」

 

「あ、えーっと。俺は志島ダイチっす!合宿に使っても構わないって話聞いて飛んできました。よろしくお願いします!」

 

「俺は芝原です!葛葉とは同級生っす、よろしくお願いします!」

 

「かっかっ、みんな元気があってよろしい。儂の方こそコヤツ、リョウスケをみんなによろしく頼むわい。リョウスケから聞いておるかもしれんが葛葉流は古武術じゃ。合気道に通ずるところはもちろんあるが技術的な面で専門的な指導は望めんと思ってくれい。まぁ、古牧のヤツと似たようなもんではあるがの。まぁ儂は内面の面倒を見ることに関しては随一じゃと自負しておる。というわけでここに来るのならそう言った稽古を見てやろうと思っておる」

 

「つーわけで、爺さん朝の瞑想みてもらってもいい?俺は見本になるか分かんないけど先に始めないと婆ちゃんの手伝いがあるから…」

 

「お前もたいへんじゃのぉ、まぁ料理楽しそうにやっとるからええのか?では始まるかの。各々力の入らない体勢で座るが良い……」

 

爺さんが説明してる横で瞑想を始める、だんだんと何も聞こえなくなってゆく.そして内面の自分と………っ!!まだここまでか。大分出来るようになった気はするが自在に対話出来るほどまででは無いようだ。集中も切れたが朝ごはんにはいい時間だ、みんなが悪戦苦闘してる姿を横目になるべく音を立てず道場を後にした。

 

 

 

「できましたよーっと…あー、まぁこうなるよなぁ」

 

道場にみんなを呼びに行くとみんなうつらうつらしている。そりゃあ朝早くから軽く動かしてリラックスすりゃ気持ちよーく眠れるか

 

「コホン、爺さんお願いします」

 

「うむ、喝っ!」

 

「「「!!!」」」

 

「まぁ初めてやったらそうもなるわい。ま、朝飯を食べて軽くもう少し身体動かしてみるかの。リョウスケもメシの後は稽古に混ざるんじゃぞ」

 

「まぁ俺も半年くらい前から毎日ずーっと続けてもまだ出来てませんからねぇ。簡単そうに見えるんですけどねぇ…ま、今は食べましょうよ。お腹空いてるでしょ?」

 

 

そう言ってみんなを食堂へと連れて行く。ま、体験会みたいな感じで今日明日はみんな頑張ってもらおうかな。

 




来年もよろしくお願いします


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出会いも有れば別れもあるけど一期一会とも言う

新年初の初投稿です


「どうでした、初めて瞑想やってみて」

 

「いやぁ、葛葉くんがスッと入ったの見てイケるかなぁと思ったんやけどねぇ」

 

「ヒナコさんでも寝ちゃってましたもんねぇ。リョウスケもいつの間にかいなくなっててビックリしたけどなー」

 

「なぁにコイツもまだまだじゃ。リョウスケにも説明したんじゃが説明してすぐ出来るようになったら指導者がいらんくなるからの。ウチの流派の基礎も基礎じゃから一番難しいとも言えるんじゃよ。儂から言える事はここで学んだやり方を普段から少しずつ取り組む事で精神を鍛える事が肝要という事よの」

 

「なるほどやねぇ、葛葉くんがしっかりしてるんはそういうわけやったんかなぁ」

 

「ほんとほんと、リョウスケ俺よりしっかりしてるもんなぁ」

 

「ダイチさんはもっとキリッとしてくださいよ」

 

「うるせぇ芝原、お前には言われたくねーつっーの」

 

「かっかっ、仲が良くて何よりじゃの。基礎の鍛錬は一生続ける必要あるもんじゃからな、気長にやるしかあるまいて。食後は君らがやっとる型を見せて貰えんかの?昼からは山登りでもして夕方には温泉行こうかの。帰りは宗一のヤツに車を出させるから安心せい」

 

 

 

半ば爺さんによる思い付きで皆んなが滞在中の予定を組み上げていく。ま、合宿として予定したものじゃないしこう言う行き当たりばったりなの俺は嫌いじゃないんだけど、ま、お試しだからいっか。

 

 

そして色々とやってるうちに1日も終わりを迎える。

 

「みんなどうでした?合宿って言うより別流派の体験入門みたいな感じになってたような気もするけど…」

 

「リョウスケここいる時ずっとこんな事やってたのかよ…」

 

「言っても毎日続けてるの瞑想くらいですよ?」

 

「でも来てよかったわ。ええ話聞かせてもろたし、ウチの心構えにも一本芯通せるよう瞑想続けたいもん」

 

「そうっすねぇ、今思えばうちの親父も似たような事やってるんですかねぇ?やっぱメンタル面鍛えるのって大事なんすねぇ」

 

「芝原は煽りに弱そうだもんなぁー」

 

「うるさいっすよぉ、自覚はしてるんですから…ダイチさんは煽りには強いっすもんねぇ」

 

「まあ、話は尽きないでしょうけど明日の予定どうなってんです?ダイチさんとヒナコさん帰る日でしょう?」

 

「あぁ…せやったなぁ、2泊なんてあっという間やなぁ。いやぁ、楽しかったわ、改めてありがとうな葛葉くん」

 

「ほんとだよ、サンキューなリョウスケ。芝原はもう少し残るんだろ?いいよなぁ、ちょっとしんどいけど充実した夏休みじゃん」

 

「あ、葛葉くんの心配してないけど芝原は宿題ちゃんとやらなあかんで?部活として学業疎かにするのは認められへんからな」

 

「あ、言った通り芝原課題持ってきたか?」

 

「うぐっ、持ってきたけどさぁ…」

 

「俺はもう終わらせたから教えてやる事は出来るぞ」

 

「さすがやなぁ葛葉くん。芝原、写すのは認めへんからな?」

 

「う、うっす」

 

「それは俺もさせないんで大丈夫っすよ。いい時間ですし今日はもう寝ましょうか。朝は昨日と同じくらいに起きてからストレッチと軽いジョギングしてから瞑想やりますんで」

 

「「「はーい」」」

 

 

先輩ら2人は明日の昼過ぎの電車で帰る予定だ。実は女将さん達旅館の面々に帰るんならウチの料理を一度は食べていけって言われてるので昼前にまた訪れるプランを組んである。ま、雪子ちゃんもヒナコさんに懐いてたからな、お別れも言えないってなると寂しいもんだしこれくらいお膳立てしてもいいでしょ

 

 

そんなこんなで朝稽古を終えた頃に予定を告げた

 

「えー、ほんまに?ニクい事してくれるやんか葛葉くん。ウチも気にはなってたんよ、雪子ちゃんも中々会えへんから最後に顔見たかったんよ」

 

「ほんとだよ。俺も冬に来るつもりだったから挨拶しておきたいしなぁ」

 

「俺は?」

 

「芝原にはバイトの説明とかあるから安心しろ」

 

「へーい」

 

「ま、まだもうちょい身体動かしてからですから」

 

「おいおいリョウスケェ俺はアッシー君じゃないんだぞ?」

 

「あ、宗一さんにはホント感謝してますから」

 

「まぁいいんだけどね、もう少ししたら出発だからみんなそろそろ準備しておくれよー」

 

「あ、言うの忘れてた、俺と芝原は走りだから。まぁヒナコさんとダイチさんも荷物車に乗せて走ってもいいですよ。その後のお風呂は夜と違っていいもんですよ」

 

「うわー、俺走っちゃおう。なんかハマっちゃいそうなんだよなぁ温泉」

 

「ダイチも分かるようなったなぁ。ウチは言われんでも走ってからひとっ風呂よばれてから帰るつもりや」

 

「君らも物好きだねぇ。まぁ、あそこの温泉が気持ちいいのは認めるけどわざわざ汗かかなくてもいいもんだよ?まぁそれなら車に荷物積んでおきなさいな、どっちにせよ親父はこばにゃならんからね」

 

 

という事で最後もみんなで旅館へと向かうことに。随分気に入ってもらえて良かったよ。俺はまだ一週間くらいいるけど雪子ちゃんや千枝ちゃんは寂しがってくれるだろうか?そんなことを考えていたらあっという間に旅館まで着いた。慣れたらほんとにちょうどいい距離だなぁ。

 

「…葛葉、俺いる間ずっと走るのか?」

 

「ん?キツイか?」

 

「(マジかよ、なんでコイツケロッとしてんだ)いや、頑張るわ…」

 

「ウチでもそこまでキツイわけちゃうから単に芝原が怠けてただけやないんかー?」

 

「ふぅ…ほ、ホントだぜ芝原、リョウスケを見習って基礎練やるんだなぁ」

 

「膝笑ってるダイチさんに言われたくねーっすよぉ…」

 

「ほら、たるんだ2人でじゃれてないで風呂行ってこんかい。そのままご飯食べるつもりか?」

 

「「う、うっす」」

 

あ、ヒナコさんが珍しくイラッとしてる。不甲斐ない後輩と楽しみの邪魔がよっぽど腹に据えかねたのかな?そんなこんなでみんな温泉を楽しんだ後女将さんの好意で用意してくれたご飯をいただく。そろそろ駅に向かう時間だというころやっと雪子ちゃんが顔を出した。

 

「ヒナコお姉さん行っちゃうの?」

 

あ、ヒナコさんにクリティカルヒットした。初めて見たぞ胸抑える人。

 

「うぅっ、こんな事ならもっと予定切っとくんやったわ…ごめんなぁ雪子ちゃん。ウチも寂しいんやけど冬休みは絶対来るからなぁ」

 

 

感動?の別れをしている2人をなんとか引き剥がしヒナコさんとダイチさんを送る為にバスへと一緒に乗り込む。

 

「短い間でしたけどお疲れ様でしたね、これで部活の合宿予定地って事でいいですかダイチさん」

 

「お、おう。すっかり楽しんでて忘れてたけど文句なんて一つもないぜ」

 

「当たり前や、ウチの雪子ちゃんに文句付けるヤツおったらしばいたるわ!」

 

いつの間にヒナコさんの雪子ちゃんに?まぁいいやお気に召したようだ。この人たちは帰ってしまうが芝原はしばらく残るし俺もまだ居るには居るしな。

 

「それじゃお二人共東京まで気をつけてくださいねー」

 

「ほな、葛葉くん、いや、リョウスケありがとうな。楽しかったわ」

 

「おう、お前も頑張ってなー」

 

さーて俺も旅館まで帰るかぁ。明日は雪子ちゃんと千枝ちゃんと勉強半分遊び半分くらいにしようかな?芝原には働いといてもらうけどな

 



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定番イベントは外せないわな

ダンシングスターナイトが難しいので初投稿です


ダイチさんとヒナコさんが帰ったのもついこの間だと思ったし、芝原ももう東京に帰った。つまり俺ももう帰る日が近いんだよなぁ。ちょっと予定を延ばしたとはいえあっという間だったなぁ。本来なら明日の20日に帰る予定だったんだけども雪子ちゃんと千枝ちゃんからどうしても辰姫神社の夏祭りに連れて行って欲しいとせがまれてしまっては仕方ないか。まぁ予定の組み方として夏祭りのある日に帰るってのは流石に俺が無粋だわ。

 

そんなこんなでお祭りの日。千枝ちゃんはバス停で待ち合わせだけど雪子ちゃんは旅館まで迎えにきた。

 

 

「リョウスケ君、今日はありがとうね。雪子のワガママ聞いてくれて」

 

「いえ、俺も随分旅館のみんなにはお世話していただきましたからね。このまま帰ったらちょっと寂しいかなと思っていましたので誘ってもらえて良かったくらいですよ」

 

「雪子も随分楽しそうにしてたからねぇ。けど夏祭りって事はもう夏休みも終わりだわね…」

 

「そうですねぇ。俺にはあっという間でしたけどね。でも冬も春も長い休みには来るつもりしてますから、またその時お願いしますよ」

 

「そうね、そうなったらまたよろしくね。雪子、そろそろ準備できたかしら?」

 

「う、うん。お待たせ、お兄さん、お祭り行こっ、千枝も待ってるし」

 

「そうだね、行こうか。バスもちょうどいい時間だし」

 

 

今日のお祭りが楽しみだったみたいでここまでお手伝いを頑張ってきた雪子ちゃんはバスの中でもずっとソワソワしていた。

 

「千枝ー、お待たせ!って、千枝も浴衣着てきたの!」

 

「雪子あんたが着てこいって言ったんでしょ。あ、兄ーさんこんにちは!」

 

「おう、千枝ちゃんもこんにちは。2人とも浴衣似合ってるぞ。せっかくだからヒナコさんとかダイチさんに見せてやりたいからそこに並んでくれるかい?」

 

「お、私の魅力は高校生も届いてしまったかー」

 

「はっはっはっ」

 

「笑い飛ばされちゃった…」

 

「プククッ」

 

「雪子にまで笑われた…」

 

「ほら千枝、ショック受けてないで鳥居の前で写真撮ってもらおっ」

 

「あはは、ごめんごめん。そのかわりってわけじゃないけど2人とも今日はお兄さんが屋台をご馳走してあげよう。ほら、千枝ちゃん浴衣を汚す前に写真に収めておかないと」

 

「ほんと!お兄さんありがとう。…ヒナコお姉さんにも見てもらうんなら可愛く撮ってくださいね」

 

「やったー!お肉食べたいよお肉!………?なんで私だけ汚すことに⁉︎」

 

「ほら並んだ並んだ」

 

「またゴマカシた!」

 

「はい、チーズ…よーし、可愛く撮れたぞー。じゃあ屋台で食べるぞー、諸君我が軍の資金は豊富だ、安心して突撃せよー」

 

「あー、もう食べる、おにーさんの財布だから我慢してたやつ食べてやる!」

 

「千枝ったら行っちゃった…」

 

「ほら雪子ちゃんも行っておいで。遠慮しなくていいからねー、夏休みこうして遊べるのも最後だからねぇ」

 

「そっか…じゃあ楽しまないと!千枝待ってよー」

 

「そうそう、元気が一番ってね。ほらそこに隠れてる完二くん君もおいで」

 

「!!!、気づいてたんすか…」

 

「君んとこのお母さんにもお土産でお世話なったからねぇ、食べたいもの有ったら好きにいいなよ」

 

「マジっすか!!ご馳走っす!!」

 

「お、千枝ちゃんは唐揚げと串焼きか、好みが全面にでてるなー。雪子ちゃんはりんご飴とたこ焼きね、定番中の定番だねぇ。完二くんはイカ焼きに焼きそば、ボリューム重視かな?ま、みんな楽しんで何よりだよ」

 

「もごもご」

 

「こら、千枝行儀悪いよ」

 

「ごくん、おにーさんご馳走!」

 

「お、俺もご馳走さまっす」

 

「あ、流れで誘ったけどこの子巽屋さんの子どもの完二くん。たしか君らの一個下だよ」

 

「あ、やっぱり完二くんだったの、久しぶり、天城雪子だよ」

 

「あたし、里中千枝、雪子の親友!」

 

「う、うっす、巽完二っす。リョウスケさんとはお店でたまに話するくらいですけど今日は楽しかったっす」

 

「まあ、雪子ちゃんも千枝ちゃんも来年から中学生だからあんまり会わないかも知れないけどな。そろそろ花火の時間だし移動しようか、この辺ランニングしてる間にいいところ見つけたんだ」

 

 

 

4人で展望台の方へと向かう。そこはちょうど出来たばかりらしく穴場だったようで俺たちの他にはチラホラとしかいない。花火はちょうど始まりかけていてなんとか間に合った。快適な環境で

 

「へぇー、こんなとこあったんだ。この時期のお客さんに教えてあげられるね!」

 

「うー、あたしより町に詳しいかも…」

 

「へぇー、キレーっすねぇ」

 

「伊達に毎日この街走ってないさ、さて、花火も終わったし帰ろうか。いやぁ、この街は楽しかったよ。雪子ちゃんありがとうね」

 

「えー!おにーさん帰っちゃうの?」

 

「そりゃあ帰るさ。これでも東京の高校生だからねぇ」

 

「そっすよねぇ、夏休みも終わりって事っすねぇ。やっべぇ、宿題やってねぇ!」

 

「はっはっはっ頑張りたまえ少年。もう手伝ってあげる時間なんて無いからなぁ。ま、また長い休みの時期には来るさ。その時また色々とやろうじゃないのさ」

 

「あたしもおにーさんに見てもらってなかったら宿題やばかったかも……?雪子どしたの?」

 

「ここ最近毎日見てた人が居なくなると寂しいなぁって」

 

「まぁ心配なさんな、少女たち爺さんの家がすぐ近くなんだからしょっちゅう来ることになるさ。さ、俺たちはここでバス乗るから君たちも気をつけるんだよ」

 

「はーい、さよならおにーさん」

 

「ありがとうございましたっす」

 

 

チョッピリ寂しそうな雪子ちゃんだったけど夏祭りではしゃぎすぎたのかバスに乗ってすぐ眠ってしまった。旅館に到着して揺すっても起きないので仕方なくおんぶして降りる事に。

 

「あら、雪子ったら疲れて眠ってるの?」

 

「随分と楽しかったみたいですんで、結構ぐっすり寝てますね。じゃあ俺はこれで、明日また帰る前に挨拶きますんで」

 

「暗いから気をつけてね、雪子の事ありがとう」

 

 

もう明日東京に帰るのかぁ。雪子ちゃんたちにはああ言ったけど寂しいもんだねぇ、たった20日間程度なのになぁ。とはいえ東京で待ってる人も居てくれるんだし帰らないわけにもいかないな。ちゃんとお土産だって準備したんだし。気になるのは身体的、精神的成長がきちんと現れるかどうかって事かね。…その辺は住人たちに対面すりゃ嫌でもわからされるだろうしなぁ…

 



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徐々に広がる知り合いの輪

三ヶ日が終わるので初投稿です


「ライゴウ爺さん、婆ちゃん、宗一さん。長らくお世話になりました」

 

「なんのなんの楽しかったわい。半年前とはえらい違いように儂も驚きじゃわ」

 

「まぁ、休みになったらまた来るんだろ?待ってるよ」

 

「リョウちゃん身体に気をつけてね。こんどはキョウジも連れてきてくれんかね?」

 

「あはは、何度か言ったんですけどこの夏はなんか仕事が入りっぱなしらしくて。また、冬休みには来ます。それじゃあ」

 

「リョウスケやい、部活の子らなら大丈夫じゃよ。いつでも連れてきなさい」

 

「ありがとうございます。みんな随分と楽しかったみたいでホントに予定組むつもりって連絡いっぱいもらいました」

 

「リョウスケくん、車乗ってくれー。もう出すよー」

 

「じゃあこれで」

 

「よーし、あ、天城さんとこまででいいんだっけ?」

 

「はい、そっからバス乗るんで大丈夫ですね」

 

「りょーかい。リョウスケくんのアッシーは免許までだかんなー」

 

「いやぁ、感謝してますよ」

 

葛葉家のみんなに感謝と別れを告げてこの夏お世話になりまくった天城屋旅館へと向かう。

 

 

「女将さん、板さん、そして雪子ちゃんに千枝ちゃんも。お世話になりました。まぁ、また冬休みには来るんですけどやっぱここにはすっごいお世話になったんで改めて挨拶しておきたくって来ました」

 

「いえいえ、うちもお手伝いしてもらって雪子の面倒見てもらってこちらこそ世話になったわ」

 

「おめぇさん、筋が良いんだ。こっちの道で食ってくなら知り合いの店紹介してやるぜ」

 

「うーん、そっちは考えてないんですけどそこまで気にかけてくださってありがとうございます」

 

「おにーさん、あたしも雪子と一緒に遊んでくれてありがとう!また冬休み来るなら遊んでよ」

 

「お兄さん、私も楽しかったよ!冬休みも来てくれるの待ってるからね」

 

「ま、今日は寂しいかもしれないけどまたすぐ会える日も来るさ。それじゃお世話になりました」

 

 

バスに乗り込み駅へと向かう。出発して見えなくなるまで雪子ちゃんと千枝ちゃんは手を振ってくれていた。随分と2人ともは仲良くなれたかな。いやぁ、やっぱりこういう別れから日常に戻るまでの時間はなんとも言えない寂しさが有るなぁ……東京戻ったら何をしようか考えて気を紛らすかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと、やーっと着いたぜ東京に。うーん、さすがに今日は夕飯は外で済まして帰ろう。久しぶりにルブランでも行くかな?四茶からなら事務所ビルも歩けない距離じゃ無いし……ん?八十稲羽の生活のせいで徒歩圏が広がってない?…ま、いっか。もう俺はカレーの口なんだ、誰にも止められんぞ!

 

 

 

「マスター、カレーのセット。コーヒーは…アイスを食前に、カレーはもちろん大盛りで」

 

「あいよ。随分と久しぶりじゃねぇか坊主、すっかり日に焼けちまってゴキゲンな夏休みってか?すぐできるから座って待ってろ」

 

「三週間ほど親戚の道場で稽古とその近くの旅館の手伝いをずーっとしてたもんで、山道走り回ってましたからねぇ」

 

「若いねぇ。俺もやっとこさ旅館と温泉の風情ってもんがわかってきたんだ、そこどんなとこなんだ?あいよ、カレーの大盛りとアイスコーヒー、今日はグアテマラだ」

 

「お、いただきまーす。いやぁ、ここのカレー食べると家で作る気なくなるんですよねぇ…ホントうまいっす。で、旅館は八十稲羽ってとこにある天城屋旅館さんでお世話になってたんですよ。なんと言っても温泉はすごいですねぇ、森山ならではの匂いと静けさたまんないっす」

 

「随分じじクセェ坊主になっちまったなぁ。いや、オトナのシュミになったって言ってやるか。…しっかし相変わらず旨そうに食いやがって」

 

「いや、春先に食べて以来定期的に食べたくなるんですよねぇ」

 

「そこまで言ってくれるなら冥利に尽きるってもんだな。…坊主、そんなに気になるなら教えてやろうか?つってもまだまだ改良の余地は有るって思っててよ、どうしても旨いって言わせたい奴がいてなぁ。でだ、どうだ、高校生なら土日の昼からバイトでもしてみないか?バイト代とおまけにレシピも付けてやるぞ」

 

「ホントっすか!部活と学校あるんで毎週は無理かもしんないですけどお願いします!来るなら何時くらいから来たら良いですか⁉︎」

 

「すげぇ食いつきだなぁ、おい。まぁ、忙しい時間と片付け手伝ってくれりゃ良いんだ。とりあえずは11時から17時ってとこでどうだ?あ、ここまで聞いてなんだがお前、バイトしても良いのか?」

 

「まぁ、大丈夫っすよ。嘘偽りなくレシピ教わるために手伝ってるって言い切れるんで」

 

「…まぁお前がいいならそれでいいか。じゃあこれから頼むぞ」

 

「こちらこそお願いします。じゃあご馳走さまでした。お代置いときますんで」

 

「あいよ、気をつけてな」

 

 

 

なんたることか、ルブランでバイトが決まってしまったじゃ無いか。しかもあの激ウマカレーのレシピ付きで。二つ返事だわこんなもん。さーて、今度こそ帰ろうか。明日は久々にベルベットルーム行くか。お土産もあるし…なんか手料理も一緒に持って行こうかな




そうじろうはまだそんなにスレてません。若葉生きてますし


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異分子たちの邂逅

ちょっと時間取れなかったので初投稿です


さて、大体一月ぶりになるのかな、ベルベットルームへと訪れるのは。今回はお土産もそこそこにメインは手料理だ。随分とバーベキューパーティも気に入ってくれてたしなぁ。こんどはお菓子作りにも手を出してみようかな?…やたら所帯染みたスキルレベルが高まった1ヶ月のような気もするけど、気にしない。あ、そういやメアリが増えたんだっけ。今日は彼女とも会うんだろうな、まぁあんまりこれといって知ってることも少ないんだけどな。さてと、そろそろ行ってみますかね。

 

 

「あら、随分とご無沙汰でしたね。エリザベスお姉様が随分と待ってらしたようですよ?」

 

「久しぶりだねラヴェンツァ。まぁ予定延ばして向こうに滞在したのは事実だしなぁ、それについては申し訳ないね」

 

「おや、随分と久しぶりではありませんか。……ふふ、最後にお会いした時から随分と様変わりなさったようで私としては待った甲斐があったというものですわ。エリザベスが来るまでにメアリの紹介をいたしましょうか」

 

「あー、マーガレットさんもお久しぶり。そうだなぁ、身体は動かして自分を見つめなおして色んな人と交流した1ヶ月だったから。そうやってマーガレットさんから見て分かるくらい変化が出てるならこっちこそ待たせた甲斐があったかな?で、メアリさんは?」

 

「はじめまして」

 

「うおっ⁉︎いつの間に…」

 

「貴方様がこの部屋に訪れる葛葉一族でございますね。訪れる頻度の少ないもてなし甲斐の無いお客様だと伺っております」

 

「誰から吹き込まれたんだよ…そうだな、俺は確かに葛葉一族で、いまは葛葉キョウジおじさんにお世話になってるね」

 

「葛葉キョウジ…。彼はデビルサマナーですか?」

 

「いや、おじさんはただの探偵だね。ちなみに言うと葛葉一族にライドウって先祖はいたらしいけど特に悪魔祓いみたいなことを生業になんて事は無いんだ」

 

「なるほど。今初めて実感したかもしれません、私は本当に別の世界へと訪れたのですね」

 

「いい機会だから俺の境遇も改めて説明するよ。俺は君がヴィクトルの助手として業魔殿で働いていた世界を記憶として一部ではあるが知っているんだ。この世界も俺が居なかったら何が起きていた世界だったのかという可能性を見たことがある。まず言える事はこの世界とメアリが元いた世界は極々近しいって事、それこそ同じ世界がたった一つの分岐から別れたくらい近い世界同士なんだと思う」

 

「エリザベス、いつまでも遊んで無いでいらっしゃい。リョウスケ様から話を聞くいい機会ですよ」

 

「あー、そうだね、ベルベットルームのみんなに聞いてもらった方がいいよな。ちょっと待っててねメアリ、ありがとうマーガレットさん。そして久しぶりだねエリザベス」

 

「リョウスケ様ったら私の事を忘れてしまっていたのでは無いかと震えておりました、なにせこの場に私がいなかったにも関わらず随分と核心に迫るようなお話をしておいでではありませんか…これは私のメギドラオンが火を噴きますよ?」

 

「う、それを言われると…いや、ここで何を言っても言い訳だな、甘んじて受けよう…ただもう少し猶予をくれないか?」

 

「…仕方ありません。遺言と思ってくださっても構いませんよ?お話に納得できるようなら手心を加えなくもありませんので頑張ってください」

 

 

相変わらず俺はこの部屋に来るとピンチになる定めらしい、それも逃れる術は無さそうだ…俺なりに俺が置かれている状況についての解釈を説明した。ざっくり言えば記憶が混ざったから元の人格とは大きく変わったが人格を形成している要素が混ざる前と後で3つの状態によるものであると言う話だ。問題はここからなんだよな…

 

 

「という事で、俺の根幹には別世界の体験があるんだ。だから自分の持つペルソナが肉体と釣り合ってない理由の一つだろうと思ってる。ここで、なぜメアリが迷い込んでしまったと言う話になるんだ」

 

「ここで私が出てくるのですか?」

 

「さっきも言ったように俺の記憶の中にはこの世界とメアリの世界におけるある可能性を辿った結果を見たものがある。ごく一部だけどな。そして、メアリと葛葉一族の間で結ばれている繋がりと俺がメアリの記憶を持っているという二つがあって世界の狭間にいた君はこの世界で顕現したのでは無いかと考えたんだ」

 

「と言う事はリョウスケ様がいらっしゃらなければ私は狭間に飲み込まれていた…と?」

 

「いやぁ、多分俺が居なけりゃ狭間が出来てない筈だ。おそらく記憶が世界を渡った時にできた歪が世界の裂け目となってしまったんじゃ無いかなぁ……」

 

「要するにリョウスケ様が悪いわけでございますね」

 

「…まぁ俺が悪いで済めばいいんだがなエリザベス、俺の中でミックスジュースを作った奴がいたとしたら大変なんだよ…。文字通り世界を股に掛けて影響力を持つ存在による干渉の結果だとしたら」

 

「……むぅ」

 

「ま、俺としては今のこの生活を楽しんでるのは事実だけどな。もしそうだとしたらその時後悔しないように色々と手を出してるってのが本当かな」

 

「………と言う事は私はむしろメギドラオンをぶっ放した方がリョウスケ様の為になると言う事でございますね?」

 

「え゛っ」

 

「あぁお姉様が張り切ってらっしゃいます…どうかお気をつけてリョウスケ様」

 

「え、ラヴェンツァ?もう始まるの?このタイミングで?」

 

「骨は綺麗にして差し上げますのでご安心ください。手土産としていただきましたお品はこちらで配膳させていただきます」

 

「まって、メアリ、急にメイド感出さないで!」

 

「もう、エリザベスったら」

 

「マ、マーガレットさん!」

 

「随分と成長してらっしゃいます、ギアを上げなさいな」

 

「マーガレットさん⁉︎」

 

フリフリ

 

「もはやテオは存在感を出してくれ!」

 

 

 

 

 

おれの叫びも虚しく響くだけ。エリザベスに引きずられいつもの場所へ。いつにもまして漲っているエリザベスはメギドラオンだけでなくおれ1人に向けて属性魔法の最高位であるインフェルノ(火)ダイアモンドダスト(氷)真理の雷(雷)万物流転(風)サイコキネシス(念動)アトミックフレア(核熱)を全てお見舞いしてくれた……ありがたい事にペルソナ『アスラおう』がもつ耐性も何もかもぶち抜くおまけ付きで涙が出そうだ………

 

 



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探偵のたまご?ヒヨコ?

丁度1ヶ月続いたので初投稿です


き、昨日はえらい目にあった…間隔を開けるとヤバいのかな?定期的にガス抜きしないと本当にまずい事になるかもしれんのか…ま、まぁ最初期より耐えることができたのという収穫があった事だけは言っておこう

 

 

 

 

「世話になった大御所探偵の孫を預かる事になった?」

 

「そうなんだ、つっても向こうもまだ小学生だし月末までなんだけどな。悪いんだが日中見てやってくんないか?」

 

「まぁ、構わないけど。ちなみになんて子なのさ」

 

「白鐘さんって探偵のお孫さんで直斗…だったかな?なんでも探偵に憧れてるみたいでなぁ、若手で?有望な?俺の姿を見せてやりたいんだってさ?」

 

「……ふーん、若手で有望ねぇ」

 

「あぁん?なんか言いたい事でもあんのか?」

 

「若者の夢は夢のままで居て欲しいって思った」

 

「…コイツ、言いやがった。まぁ白鐘さんには頭あがんねぇんだよ、少し前にも世話になったし。つーわけで、ちょっと協力してくれ」

 

「はーい。いつくんのさ?」

 

「んー、もうすぐ」

 

「は⁉︎」

 

ピンポーン、事務所の呼び鈴が鳴らされる。

「いやいやすぐにも程があるでしょうよ!」

 

「白鐘直斗です!今日から3日間お世話になります!」

 

「おー、直斗くん久しぶりだなぁ、おっきくなったじゃ無いか」

 

「初めまして、直斗くん。いや…ここは直斗って呼ぼうか、俺はリョウスケ。ここの…管理人かな?」

 

「初めまして、キョウジさんの助手さんですか?」

 

「雑用やってるって意味じゃ似たようなもんだ、荷物置いてこい。リョウスケ、部屋はお前の隣のとこ綺麗だったよな?案内してやれ」

 

「ったく、もう少し早く行ってくれりゃ準備くらいしたのに」

 

 

直斗を部屋へと案内する。まぁ、特殊な社会見学みたいなもんなのかな?インターン的な?

「リョウスケさんは探偵ってどう思いますか?」

 

「俺かぁ、身近な探偵がおじさんだからなぁ。むしろ仕事モードのあの人ほとんど見たことないんだよ」

 

「そうなんですか…。わた、僕は探偵をやってるお爺さまと暮らしているのですがお爺さまは家でもカッコいいのです!」

 

「常に探偵とは斯く在るべしと振る舞ってるのはすごいねぇ。そりゃあさぞカッコいいんだろうねぇ」

 

「はい、とても尊敬しています!」

 

「はは、また改めて話聞かせてもらうよ。ここが部屋だ、まめに掃除してあるからそんなにホコリっぽく無いと思うけど何か足りないものあったら言ってね」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「はは、なんでも言ってくれればいいから。ちょっと荷ほどきしとくといいよ、また呼びにくるからさ」

 

 

直斗()()を部屋へ案内した後、デスクでタバコをふかしてるダメな探偵に小言を言う

 

「キョウジおじさんさぁ、直斗に君は無いでしょ…」

 

「…へ?」

 

「いやまぁ、直斗って名前だけど女の子だよ?」

 

「え⁉︎うそ⁉︎でも確かに孫って…」

 

「それ、孫娘とも孫息子とも言ってないんじゃ無いの?」

 

「……あ!!確かに」

 

「本当にこの探偵の見学していいのかよ…」

 

「うるせー、俺は現場型なんだよ」

 

「ま、直斗ちゃんはこれまで通り接して欲しいみたいだから態度変えないでいいみたいだけどね」

 

「…ならいいけどよ。で、今日はこれから出なきゃなんねぇからどっか案内してやってくれるか?」

 

「りょーかい」

 

 

ふーむ、ちょっと早いけどお昼ご飯食べに行くのも兼ねて俺がキョウジおじさんに教わった街歩きの方法でもレクチャーしようかな。

 

「直斗、ちょっと出かけようか。お昼ご飯食べに行こう」

 

「わかりました、すぐ用意します!」

 

「おすすめのカレーがあってね、いい雰囲気なんだ。まるでアジトとかそんな雰囲気でね、カッコいいんだ」

 

「へぇー、行ってみたいです!」

 

「よし、行こうか。近くまでは地下鉄で向かうからね」

 

 

 

うんうん、困った時のルブランだな。なんせ雰囲気はいいし、カレーも美味いんだから。ま、直斗ちゃんなら騒ぐこともないだろうし大丈夫だろう。それにちょっと奥まった所って言うのが更に今回ピッタリだ。街歩きの題材にもなりそうだしな

 

 

「らっしゃい、珍しいじゃねぇか、お友達かい?」

 

「はい、つってもまだ今日会ったばかりなんですけど」

 

「…お前、それだけ聞くと良くない風にしか聞こえねぇぞ?」

 

「あぁ、居候先に社会見学に来たんですけどとりあえず俺にお鉢が回ってきたんですよ」

 

「はい!リョウスケさんが美味しいカレーを食べさせてくれるって連れてきてもらいました!」

 

「はっはっはっ、元気なこった。お前さんはいつものでいいのか?こっちの坊主は甘口にしておこうか。ドリンクは何がいい?ウチはコーヒーが売りなんだがココアもイケるぞ」

 

「…コーヒーでお願いします」

 

「あいよ、待ってな。すぐ出来るからよ」

 

 

 

「…直斗くん。いや、直斗ちゃんって言った方がいいかな?」

 

「⁉︎気付いていたんですか…」

 

「まぁ、こう見えても古武術をならっていてね、その師匠に相手の体格から情報を得る方法を叩き込まれてね。…一応キョウジおじさんをごまかしていたからすごいけどね」

 

「…そうですか。僕って変ですか?お爺さまのような探偵になりたいんですよ。そうだ、少し相談に乗ってもらえませんか?」

 

 

 

ふーむ、これは付き合い短いけど事情を知ってしまったからこの際聞いてしまおうってことかな?うーん、とりあえず色々話してみるか




探偵繋がりと言うことで登場した直斗ちゃんです


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答えの無い相談は難しい

毎日投稿してる人を尊敬しているので初投稿です


「ふーむ、結構長くなりそうだな。食べながらでもいいからゆっくり話そうか。言っちゃあなんだが君が抱えてる悩みってのは下手するとこれからもずーっと付き纏うんだ。俺は俺なりに精一杯の答えを出すつもりをしているけど、それが直斗ちゃんにとっての正解になるかは分からない。それでもいいかい?」

 

「…わかりました、じゃあ今回のところは軽い相談程度でにしておきます」

 

「そうかい?お、マスターがカレー持って来てくれたぞ。コイツは熱いウチに食べなきゃ失礼だからな。さ、食べてごらん」

 

「悪かったな坊主なんて言っちまって、お詫びと言っちゃなんだが食後にデザート持って来てやるよ。ほら、これがルブラン自慢のカレーだ。とりあえず食ってみてくれ」

 

「いえ、僕は気にしてないですから。それじゃカレーいただきます…‼︎美味しい…」

 

「はっはっはっ、どうやら嬢ちゃんの口にも合ったみたいだな。大人の立場から言わせてもらえば悩めるときに悩んでおけってだけだ。あとはお前さんが答えてやりな」

 

…マスターの後話しにくいなぁ、なんだよあのダンディな去り際。うわ、タバコまで吸い出したぞ…ちょっとカッコつけすぎて照れてるのか?

 

「コホン、直斗ちゃんは何で迷ってるのか自分で分かるかい?」

 

「えっと、えっと…」

 

「まぁ、無理に言葉にする事もないよ、それに悩んでることを言葉にできるってのは大人でも難しいさ。それじゃあ一つずつ聞いていくから答えてくれるかい?まず、探偵になりたいのは憧れているから、どうかな?」

 

「はい、僕はお爺さまの探偵姿に憧れました。それから探偵というものに興味を持って色んな推理小説を読んでるんです。子供っぽいですか?」

 

実に微笑ましい動機じゃないか。子供っぽいというより純粋なんだろうな

 

「いやいや、憧れのきっかけなんてそんなものさ。どんな小説が好きなんだい?」

 

「シャーロックホームズが一番好きです!あとはやっぱり江戸川乱歩の少年探偵団の真似をして色々な探偵道具を作ったりしてました…やっぱり子供っぽいですね…」

 

ふーむ、さっきからちょいちょい子供っぽいって所がコンプレックスなのかな?あとは憧れる対象が全部男探偵ってのもポイントっぽい…。うーん、まぁここで解決するような悩みじゃないなぁ。せいぜいマヨナカテレビ事件の頃の直斗ちゃんが最初から少しだけ人当たり柔らかくするくらいの効果しか無さそうだけど…まぁ俺なりの答えを言ってみるか。

 

「ふーむ、なるほどねぇ。直斗ちゃんは探偵に憧れてる、それは間違いないけど自分の憧れている探偵像が自分には到底なれそうに無いから不安ってとこなのかな?」

 

「……そう、なんですかね。…そうですね。リョウスケさんに言われてちょっと納得できたかもしれません」

 

「まぁ、俺の考えも結局は人の意見でしかないんだ。だからこの悩みを本当に解決したかったら自分で折り合いをつけるしかないかもしれない」

 

「……難しいんですね」

 

「そうだなぁ、はっきり言って直斗ちゃんが探偵として活動してからが本当に悩むんだと思うんだよ。要するに今は憧れに対する不安を感じているけど、これから先は探偵という現実に対する不安が出てくるかもしれない…」

 

「……」

 

「ごめんごめん、相談に乗るって言ったのに不安にさせて。言いたいのは直斗ちゃんが困ったり迷ったりした時は誰か話を聞いてくれる人を作っておきなって事さ。おっと、答えの先延ばしに思えるかもしれないけど、本当に解決したいのなら直面した時に対応する事が一番だと思ってるからさ」

 

「…よくわからないけどわかりました。じゃあ迷ったりしたときリョウスケさんに相談してもいいですか?」

 

「もちろんさ、その時はいつでも構わないさ。さ、カレー美味しかったろ?ここから散歩がてらキョウジおじさんに教えてもらった探偵の街歩きをレクチャーしてあげようじゃないか。白鐘流とは違う視点があるかもしれないよ?」

 

「…はい!ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」

 

「マスター、ご馳走さま。直斗ちゃんも大満足したみたいっすよ」

 

「当たり前だ。このカレーはそれだけ手をかけてるんだからな。ほら、言ったろサービスのシャーベットだ。カレーの後スッとしていいぞ。外は暑いからな」

 

うーん、このイケオジマスター。にくいねぇ

 

「なんか言ったか!ったく、顔に描いてあんだよ」

 

「あはは、ほら直斗ちゃん慌てなくていいから。食べたら行こうか」

 

「はい、あの、マスターさんご馳走さまでした。今度はお爺さまと一緒に来れたらいいなって思ってます!お爺さまならこういうお店好きだと思うので…」

 

「おう、連れて来い。しかしお前、高校生のガキのくせして随分とスレた考えしてんだなぁ」

 

「スレたというかなんというか…答えの無い問題って結局出会ってみないと分からないっていうのがわかったんですよなぁ」

 

「…本当に高校生か?まぁいいや、気をつけてな。あ、お前、バイト来るなら9月からでいいぞ」

 

「ごちそうさまでした、バイト了解です」

 

ルブランを後にして路地をうろつく。直斗ちゃんには言えないけど街歩きって葛葉探偵事務所流ペット探しの奥義だけどな。

 

「いいお店でしたね。僕もなんだかあんなお店の人に覚えてもらいたくなりました」

 

「案外君のお爺さんは自分だけの行きつけ持ってるかもよ?」

 

「くすっ、そうかもしれません。カッコいいお爺さまですけど、イタズラも大好きですから」

 

 

 

 

どうだろう、少しくらい心の重荷を軽く出来たのかな?悩み相談つって起きても無い問題を具体的に答えるわけにもいかんからこれ以上どうしようもない部分あるからなぁ。…名前知らないから便宜上番長くんと呼ぼう、後はその彼に期待しよう。他にも直斗ちゃんの出会い次第かな?




直斗ちゃんのコンプレックスは現時点で解決できるわけもないですし、パーティメンバーとして完全解消も出来ないので中途半端になってしまいます


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不意打ちはどんな形であれ効く

UAが1万を超えたので初投稿です


直斗ちゃんはルブランへ行って話をしてから少しだけ年相応な反応を見せてくれるようになった気がする。偉大すぎる身内はその跡を追うなら中々に越えがたい壁となってしまうんだなぁ…

 

 

「短い間な上目的のキョウジおじさんの仕事もあんまり見れなかったけど楽しかったかい?」

 

「あはは、たしかにキョウジさんのお仕事はあんまり見れませんでしたね。でも、探偵たるもの部外者に軽々しく手の内を明かさない方がカッコいいと思うのでこれでよかったのかもしれないです」

 

「お、随分と考え方が柔らかくなったね」

 

「たった3日で自分でも何か変わったのかまだよくわからないんですけど、少しだけ自分のなりたい探偵の姿が見えたような気もします」

 

「そっか、最後にこれだけは覚えておいてくれ。今直斗ちゃんが見ている夢ってのは憧れの姿だ。その憧れに自分がなれないってなった時、自分を否定しちゃいけない。そうなった時夢は枷になるからね。…最後まで説教くさくなっちゃったかな、俺がいうのもなんだけどいつでもこの事務所においでさ。ここの探偵さんは来るものは拒まない主義だからね」

 

「…はい、3日間ありがとうございました」

 

 

直斗ちゃんは迎えの人と帰っていった。…いやぁ、相談ってのは難しいな。しかも別世界とはいえ将来の可能性を見た人の相談ってなると本当に正解が分からん…ここで相談になったけれども結局マヨナカテレビで自分と向き合う事になるのなら俺の相談は意味があったのか分からんよなぁ…ダメだダメだ。起こってもない事に後悔すること程不毛なことはないって学習したじゃないか。結局その時に合わせて動くしかないんだからその時取れる選択肢を増やしていく為にも自分を磨くんだ。もう1週間もしないうちに学校も始まる。それまでに一度合気道部に顔でも出しておこうかな?

 

 

 

「こんちわーっす。ダイチさんだけっすか?」

 

「お、リョウスケー久しぶりじゃーん。この間はありがとうなー、部のみんなにも話したからあとは古牧先生がオッケー出したら合宿も本決まりだぜー」

 

「お、本当ですか?良かったですよ、向こうのみんなも楽しかったみたいで今度はお祭りの案内するんだって張り切ってましたよ」

 

「おいおい、まだイベントあるのかよー。そうそう、俺も帰って来てから背筋が良くなったって古牧先生に褒められたんだ、来てない奴らも驚かせることできたぜー」

 

「おおー、地味ですけどやっぱり効果ありましたか。それを聞くとライゴウ爺さんも喜びますよ」

 

「おう、よろしく伝えてくれよー。で、今日はどうしたの?俺が言えたことじゃないけどさ」

 

「いや、そろそろ学校始まるしずっと向こうにいたもんですから久々に顔出しときたくなっただけなんですけど…ダイチさんだけっすか」

 

「二回も言うなっつーの。暇ならさ、ちょっと手伝ってくんない?古牧先生からなんか街の道場に届けてほしいモノあるんだってさ」

 

「いいっすよー。どこにあるんです?」

 

「んー、まぁメモ通りに行けば大丈夫でしょ」

 

 

ま、言われた通り暇してるからな。それに街道場ってのもちょっと見てみたいし。ちょっと不安だけど…

 

 

 

 

「ここっすかぁ?無茶苦茶遠回りしましたねぇ…。なーんでさっさとメモを見せてくれないのやら…」

 

「う、悪かったってば。今度昼飯奢るから許してくれって…」

 

「ごちでーす。で、ここに何を?」

 

「えっと、この包みを届けて欲しいって言われてたんだよ」

 

「?何入ってるんです?」

 

「…さぁ?頼まれただけだし別になんでもいいんじゃない?」

 

「さすがダイチさんだわ、大物なのか人が良いのか分かんないけど。入りましょうか、幸い稽古の声聞こえるしちょうどいいんじゃないですかね?」

 

「どう言う意味だよー!ったく先輩を敬えよなぁ。まぁいいか…失礼しまーす」

 

「はい、どちら様ですか?」

 

「あ、えっと、僕ら月光館学園の合気道部員なんですけど、そこの先生からここに届け物してくれって言われてまして…」

 

「あら、そうなの。ありがとうございますね、きっと先生宛だと思うのだけれど今走りに出ちゃっててね…中身は何か聞いてる?」

 

「いやー、頼まれて中身何か聞いてないんですよ、すいません。先生からは渡せばわかるとだけ言われて…」

 

「困ったわね…、大事なものだったら私が受け取る訳にもいかないものね」

 

「あのー、僕ら時間あるんで大丈夫ですよ。ついでっちゃ悪いんですけどどんな稽古してるか見せてもらったりできませんかね?いいですよねダイチさん」

 

「お、おお。中身聞いてなかった僕が悪いんで待たせてもらいますよ」

 

「悪いわね…、じゃあ好きなだけ見学していって構わないわ。私は新島冴よ。大学生になってから少し通う頻度は減っているのだけど今は夏休みだし妹について来たのよ」

 

「へぇー、あ、あの子が妹さんですか?」

 

「ううん、その隣の小柄な子よ。あの子が妹の真、歳が離れているからよく驚かれるのよ。真!今どんなお稽古やってるか見せてもらえるかしら?」

 

「あ、お姉ちゃん!えっと、お客様?」

 

「うん、先生へのお届け物なんだって、でもさっきロードワーク行ってしまったでしょう?だから待っていてくれるんだけど、その間見学したいんですって。今ここで基礎をやっているのは貴方だから見せてあげてほしいのよ」

 

「うん、分かった!」

 

 

 

基礎稽古を見学している内にいつのまにかここの先生が帰ってきたらしく古牧先生のお使いを果たす事ができた。なんでも古い知り合いだったらしく届け物もお互いに貸し借りし合っている技術書だったらしい。まだ稽古は続くらしいので流石に邪魔をする訳にも行かないので俺たちは帰ることにした。しっかしまさか新島姉妹と出会うとは…。この夏休み信じられないくらい出会ってるなぁ。すっかり忘れてたよあの姉妹合気道経験あったんだったから東京でやってりゃ可能性あるわなぁ…

 

「今日はありがとなー、学校始まったらビッグバンハンバーガー奢ってやるから許してくれー。じゃあな、気をつけて帰れよー」

 

「お疲れ様でしたー」

 

 

これからも色んな出会いが有るって言われてたとはいえ中々盛りだくさんな夏休みだわ…これからもっとペース上がったりするんかねぇ?

 

 




新島姉妹は12歳が離れてる事としています。冴が20歳、真は8歳です


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模範的高校生の仲間入りだ!

お気に入りが100超えたので初投稿です


夏休みももう終わりか。かつてないくらい盛りだくさんだったなぁ…。天城雪子、里中千枝、巽完二、白鐘直斗、新島冴と新島真に会ったのか。こりゃあこれからもまだまだ増えるんだろうなぁ…。とはいえ幼少期どこにいたのか分かってる人間もそんなに居ないし出会うべくして出会ってるのかねぇ?巡り合わせってモノがあるんならほんとすごいね。

 

 

 

さてと、今日から学校だ。と言っても二学期だろうとやる事は学校行って部活して週末バイトをする予定だ。実に模範的高校生の予定だろう?唯一どうにもならないのが同い年の友人が明らかに少ないんだよなぁ…

 

 

 

 

「お、葛葉くん久しぶりやんか。八十稲羽んときはありがとうなー」

 

「あ、ヒナコさん。お久しぶりっす。とりあえず部活の合宿先として合格もらえたみたいで良かったですよ」

 

「それ!ウチもいくからな?なんとか大学の目処もたったから冬休み余裕できたんや。せやけどほかの子ら追い込みあったりするからな…ってなんやのその顔は!」

 

「一人で高校最後の冬休みが過ぎてくの寂しいんだろうなぁって思った顔です」

 

「なっ…!!失礼な後輩やなぁ。アンタ、こないだお邪魔してからえらい遠慮なくなったやん、ウチとしてはそっちの方が好感もてるで?ただ、もう少し先輩に対する敬いは持つべきやで!」

 

「痛い痛い痛い!申し訳ありませんでしたー」

 

「お、ヒナコさーん。あり?リョウスケに何してんの?」

 

「教育的指導や!」

 

「お前、ヒナコさんにまでズバズバ言ったのかよ…ご愁傷さまー」

 

「どや、先輩の偉大さ思い知ったやろ」

 

「す、すいませんでした」

 

「ヒナコさんもリョウスケも気がすんだかー?遊んでないで武道場行こうぜー」

 

 

 

こんな一幕が急に増えた気がする…、どこかで俺が壁を作っていたのかも知れない。それが夏休みを機にかなり打ち解けた結果だろう。

 

 

「む、葛葉か、久しいの。見んうちに随分とたくましくなりおったのう」

 

3人で武道場へと向かう道すがら用務員姿の古牧先生から声をかけられた。この人仕事中もすぐ気配を消すから声を掛けられないと気が付かないんだよなぁ…

 

「「「こんにちわー」」」

 

「わしからもお前には礼を言っておかねばならんからの。合宿先として提示してくれた件じゃ、お前だけでなくそこの2人を見ても十分いい経験が積めたのじゃろうて。しかしのぉ、機械にとんと疎くてライゴウの奴には伝えておいてくれんかの?」

 

「わかりました。俺から爺さんには伝えておきますよ。冬の合宿には先生来るんですか?」

 

「休みはやはり別件が入りそうでのぉ…部活動を受け持つ際にそっちの仕事を優先する条件ではあったとはいえ一生懸命な若人を蔑ろにしてるようで少し困っておったのじゃよ。そういう意味でも合宿の申し出がどれほどありがたいか。本来なら学校からの指導者が付く必要もあるんじゃが受け入れ先が信用できるのでな、そこは通せるのよ」

 

「そうそう、そういう意味でも俺とヒナコさんが下見に行った甲斐もあったってもんだぜー」

 

「ま、まぁ旅館でバイトとかあんまり学校側からしたら歓迎できそうにもない事もありますからね」

 

「なーに、その辺は精神鍛錬の一環と言い張れば良いのじゃよ」

 

「確かに風呂掃除は足腰鍛えられたっすよー、古牧先生こんちわー」

 

「あれ?芝原だけが風呂掃除してたの?リョウスケは?」

 

「俺は芝原がいる時は家庭教師ばっかりでしたね。いない時はやってましたよ?そんな事よりそろそろ行きましょうか」

 

 

 

 

こんな感じの普通の高校生らしい生活を謳歌しつつたまにベルベットルームへと訪れてはエリザベスからありがたい一撃をもらう日々が続いた、そんなある日の事だった。

 

「お祭りに行きたい?」

 

「…はい、世間には縁日というモノがございますでしょう?」

 

「まぁ、あるにはあるぞ。どうしてまた興味が出たんだ?」

 

「夏休みに貴方様からお祭りの話をお聞きしましたでしょう?あの話を聞いてからというモノいつの間にかエリザベスお姉様がこちらの世界に出歩いて満喫なさっておりまして…それでマーガレットお姉様が少し機嫌を損ねておりまして」

 

「あぁ、なるほど、エリザベスが勝ち誇ってる姿が目に浮かぶよ…。という事はマーガレットとラヴェンツァの2人を案内すれば良いのかな?」

 

「よろしいのですか?こちらは私どもの久方ぶりのワガママとなりますね」

 

「ただ、不安は2人だけを招いたという事がエリザベスにどう見えるか…」

 

「…そこはお兄様に頑張っていただきますので大丈夫かと」

 

「…い、一応俺個人がエリザベスへお土産の準備する分にはいいだろ」

 

「念のため主人からお遣いを頼んでいただきましょうか?」

 

「…いや、やめておこう。イゴールを巻き込むのは忍びないし。お土産でもエリザベスの気が収まりつかないならまた何かイベントを考えればいいだろう」

 

「ふふ、ならそれもまたよろしいですね」

 

「じゃあ頃合いの時期に良さそうな場所でやってるお祭り探しておくよ。見つかったら知らせるよ」

 

 

 

まさかお祭りに行きたいってリクエストが来るとは思わなかったな。縁日に憧れてるみたいだし屋台が並ぶお祭りって何かないかな、誰か知ってる人はいないだろうか?



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打ち合わせは大事

書き上げがギリギリになってきたので初投稿です


「ダイチさんってこの辺の生まれですよね?」

 

「ん?そうだよ、どうしたのさ」

 

「いや、この辺でいわゆる縁日みたいなのって近々どっかで有ったりしません?」

 

「んー、あ、ちょうど来週末に学校近くの神社、長鳴神社ってとこで月見祭あったと思うよ。あそこの秋祭りは結構ベタなお祭りって感じだったなぁ。誰かと行くの?」

 

「いやぁ、世話になってる人たちがお祭りに興味あるみたいで探してたんですよ。でも東京のお祭りで情報出てくるのはおっきいお祭りばっかりであんまり縁日って感じないじゃないっすか。それで地元の人代表としてダイチさんの意見を採用したいと思います」

 

「じゃあちょうど良いかもなー。それに結構マイナーだから学校の人もあんまり知らないんだよ。てか、神社なら葛葉神社でもお祭りとかやってたんじゃないの?」

 

「やってるんですかね?俺からは聞いてないんですけど先方の都合の良いタイミングが近いうちって話なんですよ。だからタイミングに合わせたお祭りが見つかってよかったですよ」

 

「あ、そうだ。お遣いの時のお詫びに奢るからハンバーガーでも食べようぜー」

 

「ごちになりまーす。どこのバーガー屋ですか?」

 

「最近できたビッグバンハンバーガー行ってみたかったんだよ」

 

「あそこチェーン店なのにチャレンジメニューがウリなんでしたっけ?まぁとりあえず今日は普通の食べてみましょうよ」

 

 

 

感想はといえばデカさがウリだろうけど普通に美味しい。そういえばここの母体であるオクムラフーズが躍進には秘密があったんだよな。急激な業績成長と規模の拡大が見え始めたら獅童が動き始めた可能性のバロメーターには十分なるか?

 

「どうしたんだよ難しい顔して」

 

「あ、ああ、えっと、通常メニューでこの満足度ならチャレンジメニューどうなってんのか想像してました」

 

「確かに…大食いってすごいよなぁ」

 

 

ま、暗いこと考えてても良いことないよな。

「ダイチさんごちそうさまでした。また今度みんなで来ましょうか、それこそあの街道場で出稽古でもした帰りに」

 

「お、いいねぇ。実はさ、俺あの新島ってお姉さんとヒナコさんのマッチアップ見たかったんだよ。なんとかして実現させようぜー」

 

「あはは、良いっすね。それは迫力ありそう、いや、見応えありそうですねぇ。見た感じ剛っぽい流派だったんでいいかもしんないですねぇ」

 

なんて他愛もない話をしつつハンバーガーを食べ切った。ダイチさんとは店先で別れ、俺はマーガレットさんとラヴェンツァをエスコートする為の準備として色々と小道具を揃えに街を散策してから帰った。

 

 

「というわけで俺が通ってる学校の近くの神社にちょうど良さそうなお祭りがあることが判明したんだ、それを知らせに来たんだけど、君たちってどっから出発するわけ?」

 

「扉の設置についてですか?基本的にではありますが私どもは鍵を渡したお客様達が訪れやすいところに設置致しております。しかし、扉というモノは本来鍵をもつお客様が利用する為のものでございます。ですので私どもがここの世界を離れる時は行きたいところへ直接行ってしまうことが多いですわね」

 

「そりゃあ便利だね…、でも突然現れたりしたらびっくりされない?ただでさえ目を引くじゃないの君たちの容姿じゃ」

 

「ウフフ、スパッと褒めていただいてもよろしくてよ?それに私どもは滅多なことでは見る事もできませんから」

 

「あ、そんな風になってるのね。それって任意的にどうこうしてるわけかな?」

 

「もちろん、でなければあまりに不便というものでございますからね。まぁ、テオが色々と雑事を買って出てくれていたのでそこまで苦労することもありませんでしたし、近頃で言えばメアリが色々と手伝ってくれているので」

 

「そう言えば最近メアリ見かけないけど何を?」

 

「そうですわね、メアリも最近は忙しそうにしておりましたわ…リョウスケ様の負担になってしまいますかもしれませんができれば私たちに加えてメアリも連れて行ってはくれませんか?」

 

「そうだなぁ、バーベキューもメアリはまだ居なかったもんなぁ。ま、大丈夫だよ。問題はエリザベスが拗ねないかって事なんだよなぁ…」

 

「あら、今回に関してはエリザベスが先走った結果ですから構いませんわ。それに流石にはしゃぎすぎた自覚があったみたいで大人しく留守番すると自ら申し出ておりましたの」

 

「へー、そうなの。ま、でも流石にかわいそうだからお土産はなんか見繕ってやろうか」

 

「ふふ、お優しいですわね、まぁ私もオニではございませんしお土産についてはやぶさかではありませんわね」

 

「その辺はしっかり姉やってるんだなぁマーガレットさん」

 

「!!そうストレートに言われると気恥ずかしいものがありますね…」

 

「おや、珍しいものが見れたかな?そろそろ帰るよ。祭りの日はさっき伝えた通りだからその日のお昼頃に待ち合わせでいいかな?神社の入り口で待ってるから」

 

「はい、ではそのように。ラヴェンツァにも伝えておきますわ」

 

 

 

なんとか予定も組み上がったな。ルブランのバイトも始まったし甲斐性の見せ所かな?

 

 



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屋台のマリンカリンには敵わない

本当に寒いので初投稿です


「大分ウチの仕事にも慣れた頃だな。そろそろコーヒーの淹れ方から覚えてみるか?」

 

「いいんですか?」

 

「おう、お前さん随分こなれてて助かってるんだよ。来週あたりどうだ?」

 

「あー、来週はちょっとお世話になってる人と約束しててまして…」

 

「そうか、なら仕方ないわな。ま、まだ高校生なんだよな。苦学生ってわけでも無いんだし休みの日にバイトばっかってのもツマランわな」

 

「ありがとうございますマスター」

 

「そうは言ってもお前がいなけりゃ屋根裏部屋とか物置にもならなかったんだ」

 

「…いやぁ、あの惨状を見たらほっとけなかったんですもの」

 

「店の事はやれるんだがどうにもその辺は無精でなぁ。まぁ、また忘れた頃に頼むかも知れんがよろしくな」

 

「はは、お安い御用ですよ」

 

「んじゃ今日もお疲れさん、どうする、食って帰るか?」

 

「あ、いただきます!」

 

マーガレットさんたちをエスコートする日が来週に迫った中今日はルブランのバイトだった。総二郎さん(マスターって呼べって言われてる)に誘われてから早一月ほど。天城屋旅館の板さんたちに仕込まれたこともあって随分と店に慣れるのは早かったし、その様子を見てコーヒーの事から教えてくれるらしい。どうやらルブランではコーヒーをマスターしてからカレーを教えてくれるらしい。ってそりゃそうか、喫茶店だしな。とはいえ残念ながら予定が被ったからコレからすぐってわけにはいかないけれど新しい事にトライするってのは楽しみだな。

 

 

 

 

さてと、今日がお祭りの日になるんだが少し早くなるがもう待ち合わせの場所に行っておこう。待つのも甲斐性ってね。ま、あちらさんはこっちの世界の時間の概念なんて関係無さそうなんだけどな。

 

「申し訳ありません、待たせてしまいましたか?」

 

「いや、大丈夫だラヴェンツァ。そんな事は無いさ」

 

「おや?こういう時男性ならば「今来たところさ」と返すのが定番と私の世界では言われておりましたよ?」

 

「おや、やり直しますか?」

 

「いや、大丈夫だから。メアリの言ってる事は気にしなくて大丈夫だよマーガレットさん。それにメアリ、残念ながらそのネタはもう古いんだよ…」

 

「そうでございましたか、それは危うくリョウスケ様に恥をかかせてしまうところでした」

 

「あ、恥をかくのは俺なんだ…。まぁ、こんなところでコントやってても仕方ないし縁日の会場へ行こうじゃないか。3人とも食べたいものがあったら遠慮なく言ってくれよ」

 

「あ、あの。私はリンゴ飴と綿飴なるものに興味がございます…」

 

「ラヴェンツァは甘味ですか。でしたら、私はタコ焼きですわね。私たちの世界でいうアレを食すことができる機会なんて早々にありませんもの」

 

「従者の身でありながら僭越ではございますが、お二方は現世における祭りの作法というものがまだお分かりでは無い様子。まずは射的とくじ引きのラインナップを確認せねばなりません」

 

「メアリは随分と玄人志向だな…。まぁまずは腹ごしらえからってのが相場だと俺は思ってるんでな。とりあえずみんなで摘めそうなタコ焼き、焼きそばあたりから攻めようか」

 

 

 

屋台を色々と物色しているうちに分かったのだが、どうやら3人の姿はぼんやりとしか認識されていないらしく人目を引くこともなければ独り言を言ってる様にも見られていない。随分と気を遣ってくれているようだ。そろそろ腰を落ち着けて両手いっぱいの食べ物たちに取り掛かろうかというころラヴェンツァが何やら落ち着かない様子だったので声をかけてみた。

 

 

「ラヴェンツァたのしくなかったか?」

 

「いえ、もちろん楽しいのですが、何か物足りないような…」

 

「あ、あー、なるほど、なるほど。そういう事か。そうだな、みんな一緒の方が良いよな。もう少し買い込んでウチの屋上で食べようか。確か花火もあるはずだし遠くはなるけど見晴らしはいいし空いてるからな。そこならエリザベス達も呼んだらいいさ」

 

「…!!ふふっ、ありがとうございます。よろしいでしょうかお姉様?」

 

「仕方ありませんね、少し買い過ぎてしまいましたから私たちだけでは持て余してしまうかもしれませんし…ここはエリザベスとテオも協力させましょう」

 

「なんだかんだいっても姉妹なんだ、やっぱり一緒がいいんだろうな。メアリ、悪いけど構わないかい?」

 

「私は従者でございます、構いません。どうしてもと仰るならまたこのようなお出掛けの機会を設けられないこともありませんが」

 

「はは、今度こっちの連中と何か催すなら時期的にもクリスマスかな?その時は準備手伝ってくれないかい?」

 

「なぜ私が会ったこともない聖人の生誕を祝わなければならないのか甚だ疑問ではございますが、その様な催しがあるのならばお手伝いさせていただくのもやぶさかではありません」

 

「その時は頼むよ。よし、もう足りないものはないかな?じゃあ帰ろうか。ま、ここまで来たんだフルーツ飴くらいつまみ食いしてもバチは当たらんさ、どうぞラヴェンツァ。…コレは失礼、お二人ももちろんどうぞ」

 

「ふふ、そこまで仰るならいただきます。…なるほど、このような味だったのですね、知識でしか知らないものを体験するのは良いものですね」

 

 

 

急遽予定を変更し、事務所ビルまで戻ることにした。個人的にリンゴ飴とかは食べながら帰るものって認識があるからそれを3人に勧めてみた。黙々と3人が飴を食べてる絵面ってのは中々シュールな物があるけど俺以外にははっきり見えてないらしいしいいだろう。丁度食べ終わった頃ビルの近くまで来た辺りでラヴェンツァはエリザベスに知らせに行くと先に行ってしまった。

 

「じゃあ俺たちはそこで飲み物買ってから屋上行こうか。お祭りの食べ物美味しいんだけど喉乾くからなぁ」

 

「そういえばリョウスケ様はカレーの修行中と伺いましたが進捗はいかがでしょうか?」

 

「…どこでみたんだ?まだまだその段階じゃないんだ。その前段階の修行ってとこだな。ま、そう遠くないうちにマスターしてご馳走するさ」

 

「それは良い事を聞きました」

 

「ま、今はコレ持って上行こうじゃないの」

 

 

さっきはああ言ったけど花火なんて本当にあるのかわからんまま適当に理由つけたんだよなぁ…なんとかなってくれれば良いけど。

 



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試練は唐突に訪れる

「お、エリザベス、お腹は空いてるか?ちょっと買い過ぎちゃってな」

 

「それはいけません、食べ物を粗末にする事は何よりも忌避すべき行いですから」

 

「相変わらずパワフルだなぁ。ま、それでこそエリザベスだわな」

 

「??褒められていますか??ならばお礼を言って差し上げましょう」

 

「あー、あと言いにくいんだけどラヴェンツァ、マーガレットさん、花火って今日じゃなかったみたいなんだ…」

 

「くすくす、わかっておりますとも。今日ではありませんでしたわね、またその日は招いていただきますよ?ラヴェンツァもよろしいですわね?」

 

「ええ、これ以上リョウスケ様に甘えてしまっては流石に無粋というものです」

 

「メアリも悪かったな、お詫びってわけじゃないがこっちの世界の東京と元の世界と何か違いがあるか教えてもらえないか?」

 

「ふふ、私も従者の嗜みとして把握しておりましたとも。それにこの街についてはまだ知りたいこともございますのでぜひお誘いください」

 

「そうだな、その時を楽しみにしてるよ。お、テオも食べてるかい?」

 

「ええ、いただいておりますよ。以前の催しでは私の手土産がお気に召していただけなかった様でしたので、不作法ではありますが手ぶらで参加させていただいております」

 

「そんなに固く考えなくても構わないさ。俺こそそっちのみんなには世話になってるからそのお礼ってのも兼ねてるんだし。…まぁあんな形容し難いナニカを持ってくるのはやめてくれた方が助かる」

 

「ふむ、そういえば姉上たちも最近はあちらのモノよりもこちらのモノを所望する頻度が増えているような?」

 

「色々と興味がでてきたのかね?それならそれでテオも色々試してみるといいさ」

 

 

 

行き当たりばったりな対応をしてしまった部分もあったけど姉妹の優しさに助けられたかな?とはいえ嘘をついてしまったのは事実だし早いところ本当にこのビルから観れる花火大会探さないと俺の気がすまんな…

 

 

 

 

 

 

ふとした時俺は本当に異世界でシャドウと戦えるのか不安を覚えラヴェンツァに相談してみた。いわば俺はシミュレーターばっかりやってる訓練生とおんなじだからな。本当にふと思っただけでそこまで深い意味を持たせるつもりは無かったんだ。なのに、なぜ俺はメメントスにいるのだろう…

 

 

「ご存じの様ですが、こちらはメメントスと我々は呼んでおります。ここがいつから存在しているのか私たちも把握しておりません。おそらくではありますがここは人の集合無意識が集まる事によって形成されているのではないかと私たちは考えております。何せここ東京という街は人がよく動きますので…」

 

「…俺はここの浅い所で実戦をしろって事かい」

 

「ええ、理解が早くて何よりです。と、申しましてもリョウスケ様にとっては初陣でございますので、少々お膳立てさせていただきますのでご安心ください。それでは初めてください」

 

 

!!おいおいこれが人生初エンカってかぁ?相手は……ピクシーらしきシャドウが三体か、落ち着け俺、いくら相手が殺す気だろうとエリザベスの圧にくらべりゃなんて事ない!!

 

「きゃはは、ジオ!」

 

「くっ、ゲームとは違う技も使うか。けど想定内だぞ…ここだ!」

 

思ったより手応えは軽かったが難なく一体を撃破できた。しかしまだ戦いの中でペルソナの力を使う余裕も無いな。仕方ない、もう二体もこのまま体術で押し切る!

 

「きゃーっ!」

 

あと一つ!これで最後だ!

 

「つまんなーい」

 

断末魔?を上げて最後のシャドウが姿を消していく。振り返ってみれば随分格下の相手だったのだろう、しかし必要以上に消耗してしまっている…

 

「お見事です。安心ください、貴方は確実に強さを身につけています」

 

「は、はは。やっと実感が持てたかもしれないかな。けどその分足りないところも見えたよ。一人で行動してる分安全マージンは多く取るべきだし、そのためにもペルソナの発動にもたついてちゃ意味がないんだ」

 

「ふふ、今の段階ではそこを自覚できているだけでも十分です。たしかにお一人で戦闘をなさる上でのスキは致命的とも言えますがそれもこれからの訓練次第というものです。何より初めから全てこなせる様では私たちも協力しがいがありません」

 

「あぁ、そうだな、まだ焦るところじゃないか。まだまだよろしく頼むよ」

 

「では反省会と参りましょう。先の戦闘の様子はお姉様方もご覧になっておりますのでベルベットルームへと戻りますよ。伝え忘れておりました、現状メメントスへのアクセスは私たち姉妹の誰かを伴っていない限り制限させていただきます」

 

「そりゃあそうか。俺自身異世界へのアクセス方法ないもんな。それに一人で倒れでもしたらどうしようもないしな」

 

「ええ、私たちが見守っている限りそれほどの危機に陥る事はそうは無いと思いますが、現状一人で挑むには無謀が過ぎるというものですから」

 

「そうだな、その辺はまたお願いすることにするよ。とりあえず反省会に赴くとしますか」

 

 

ベルベットルームに戻ると満足そうなマーガレットさんと対照的に不満そうなエリザベスに出迎えられた。なんでもマーガレットさんの想定より動けていたって言う事が嬉しかったらしい。しかしエリザベスとしてはいつもやってる模擬戦でもさっき程のキレを見せて欲しいとの事だった。それはまぁ今後に期待してくれとしか返せなかったなぁ…

 

 

 

 

 

 




ヤルダバオトが悪神として力を蓄えられたという事はメメントス自体は随分と以前からあってもおかしくないので登場です。しかしソロパーティでヒーラーも居ないのであんまり修行に適していません


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時の流れは早い

初実戦を終えて反省会?が開かれている。様相としては吊し上げに近い気もしないでも無い。なんせひたすらにエリザベスからのダメ出しを喰らい続けたからな…。まぁ個人的に思う課題は言うまでもなくメインスタイルの体術スキルアップとペルソナのラグをなくす事。もっともペルソナの発現トリガーを持ってない分苦労するだろうけどな。もちろん反省以外にも収穫はあった。現状あのレベルのシャドウなら徒手空拳でも何とかなる。相手のレベルが上がるとそう簡単にもいかないんだろうけどな。そういう意味でも武器を使うことも考えないといけないかもしれないな。

 

 

「まぁ私との対峙でももう少し先ほどのような動きを幾分か見せていただきたいという事は伝わったと思います。その上でリョウスケ様ご自身で考えられる課題はどの様なものがあるでしょうか?」

 

「ペルソナの発現速度と武器を使った戦闘かな。一人で動くならダメージ回避のためにもスキは減らさないといけないし、さっき敵の魔法攻撃を受けた時もそれ以上の威力を知ってたから動けたけど素手だとどうしても相対できる数にも限りが出てくるよ。そういう意味ではエリザベスに吹っ飛ばされ続けた甲斐はあったかな?」

 

「むぅ、私個人としましては望んだ結果では無いので不満であることを表明しておきます」

 

「ふふ、エリザベス落ち着きなさい。まだ訓練を始めて一年も経っていないのに初めての実戦で成果を出された事を喜びましょう。課題の一つである発現に関してですがアプローチを変えて見るのも一つかと思い提案させていただきますわ。勘違いなさらないでいただきたいのですが、現在行っておられる瞑想の様に内面を鍛えるという事は十分効果的ではあります。最大の要因は貴方がお持ちのペルソナの力が強大過ぎるということに尽きます」

 

「…まぁそうだよな、仮に万全の準備をして発現させたとしても多分すぐ空っけつになるってのが感覚でも分かるくらい強大な力は感じてるよ」

 

「そこまで自覚してらっしゃる様なら大丈夫でしょう。それにまだ焦る必要も無い程の時間もございます。こうしてたまにメメントスで実戦を行うトレーニングを設けるだけでも十分かと存じますわ」

 

「…そうだな。認知世界で身体を動かす為にも今の稽古は続けるつもりだし、師匠の爺さん方が頃合い見て武器の指導もしてくれるだろうし…」

 

「ええ、みるみるうちに成長なさっている様ですので良き方に師事なされておりますわね」

 

「そうだな。縁の力ってやつなのかね?」

 

「ふふ、ええ、その通りです。縁を紡ぐ事が力になるのです。さぁ、今日はお疲れでしょう?ゆっくりお休みくださいませ」

 

「あぁ、そうさせてもらうよ。ありがとうみんな」

 

 

礼を告げベルベットルームから帰る。なるほど確かに疲労感がすごい、この状態で動き回るのは億劫だな。…この疲労感をどうにかしてしまうべっきぃのマッサージってすごいかも知れないんだな。

 

 

こうして俺の予定にメメントスでの訓練が加わることになった。と言ってもルブランのバイトもあるからそこまで頻繁に行われる事は無いと思う。こうしてみると日々やる事があるもんだから先の事を考えてる暇もないうちに冬も近くなった。ま、冬休み入るまでにあった事なんてそれこそ期末試験くらいなもの。それだってそこまで苦労する事も無かった。…芝原はひいひい言ってたけど、アイツは自業自得だ。あれだけ言ったのに準備しない奴に救いは無いな。

 

 

「お疲れ様でしたー。じゃあ俺は先に向こうで待ってますんで」

 

「おう頼むぜー。俺たちは道覚えてるから初めてな連中連れて行くよ」

 

「ホンマやったらウチが車出してあげたいんやけど間に合わんかったんよねぇ」

 

「いやぁ、この時期にあの山を初心者で運転は怖いっすよ?結構積もるらしいんで」

 

「げ、そうなの?じゃあ荷物持って道場向かうの厳しい?」

 

「最近教えてもらったんですけど神社近くにまで沖奈駅からバスあるらしいんで大丈夫ですよ。てかこないだも言いましたよダイチさん」

 

「あはは、そうだっけ?」

 

「しっかりしぃな、あんた部長やろ…。大丈夫かいな、不安になってきたで」

 

「うっ、精進します…」

 

「まあまあ、ヒナコさん、はじめての合宿で色々負担かけてますから…。その辺にしておかないとうるさいOG扱いされますよ」

 

「しゃーないなぁ、そこまで言われたらかなわんわ…」

 

「ううっ、リョウスケありがとなぁ」

 

「ま、そんなわけなんでお先失礼しますねー」

 

 

そんなわけで俺は先にこの道場へと来ている。予定ではみんなが来るのは明後日の25日から30日までとなっている。中には残って年始のバイトをするって人…今回はダイチさんが居るみたいだ。ヒナコさんは相変わらずタイミングが悪いと言うか大阪の実家に顔を出さなければならないらしく残念そうにしていた。あの人も実家が結構な家らしいからなぁ、仕方ないか。

 

 

 

 



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カミングアウトは突然に

昨日は投稿時間を間違えたので初投稿です


「今回もよろしくお願いします」

 

「おう、よう来たのうって、このやりとりは夏もやったわい」

 

「今回は明後日から部員も本格的にお世話になりますからね。その為にも宿舎の準備くらいはしとかないと」

 

「結構、結構、よい心がけじゃ。まぁ儂らとしても食費くらいで構わんのじゃがの」

 

「いえ、学校の部活としてお世話になるからこそ指導料から宿泊費までしっかりしないといけないですから。ま、その分昼間のアルバイトとかで相殺してるとこもありますけどね」

 

「儂も母さんも賑やかなのは嫌いではないからの。若いもんが張り切っとる姿を見るのはいつでも楽しいわい。それよりリョウスケ君や、また随分と見違えたのぉ。なんというか一山超えたような雰囲気をしておるわ」

 

「一山ですか?……あー、これから言うこと何ですけどかなり荒唐無稽な事になるんですが俺は正常なんで安心してください。まず初めになんですが前に聞いたこの葛葉家が任せられていたお役目って陰陽的というか霊的というか悪魔祓いみたいな事…ですよね?」

 

「ほう…、何故知っておるのか気になるのぉ。まぁその通りじゃよ。世の中から神秘が失われた結果それら見えないナニカによる被害も減った為次第に無くなっていったと聞いておるよ」

 

「それで似たようなナニカと相対する事がありました…と言っても信頼できる方の監督の元ではありましたが」

 

「ふむ…、カタチはどうあれ実戦を経験しおったか。そういえばキョウジの奴も似たような事を言っておった気がするのぉ。それが何年か前にあった事件に関係しておったと…」

 

「神話に出てくる悪魔も神も元は人の心から産まれたモノですから…人の心が集まれば似たような事が悪魔のようなモノが出てきても不思議では無い…そう思っていただければ…」

 

「ふーむ、そうか、それで春先にウチを訪れたのか。葛葉家にそれと相対する技術があるかもしれんからと」

 

「…はい。何というか、葛葉家が悪魔祓いをしていた可能性がある世界を垣間見たんです。それでもしかしたらと思いました」

 

「確かに荒唐無稽じゃのぉ、しかし嘘をついてるようにも見えん。というか嘘をつくならもう少しマシな話を考えるわい。するとここに来たのはそれらナニカに立ち向かう為かの?」

 

「最初は…そうですね、俺が葛葉家として生まれた理由を知りたかったんです。そしたら葛葉流があった。それが理由ですかね」

 

「なんじゃい、成り行きか。ふーむ、にわかには信じられん話ではあるが儂ら葛葉家のお役目のことを考えると時代を開けて科学によって失われた神秘が科学によって戻ってきたのかもしれんなぁ」

 

「すいません、打ち明けるのがこんなタイミングで」

 

「そういえば初めて会った時も言い淀んであったのはこれか。その割に随分すんなり話したという事はあの時に比べて肝が座ったという事かの?」

 

「そうかもしれません、自分でも思ってたよりすんなり打ち明けられましたね」

 

「儂以外に知っとるものは?」

 

「信頼できる監督者の方々くらいです。…ちなみに現世の人ではないです。性質は善性なので大丈夫ですよ」

 

「聞けば聞くほど驚いたわ…」

 

「私見ですけど…これから先俺はちょっとオカルトじみた世界のトラブルに巻き込まれます。これだけは間違いありません…」

 

「そうか…、しかしその困難に立ち向かう腹づもりなんじゃな。…こっちの技術は宗一で終わりかと思っておったんじゃが、リョウスケで最後かの。よし、そこまで腹を割ってもろうては儂もその覚悟に応えようじゃないか。確かに葛葉家はお役目を終えたがその牙を鈍らせたわけではないのじゃ。葛葉流の中には刀術と短銃術、まぁ平成のこの世で使う事なんてほぼないワザではあるが残してきておる」

 

「お、教えていただけるんですか?」

 

「うむ、まぁ基礎は今と変わらん。しかし始めが早いわけではないからなまだまだ続かねばならんし、型だけでも教えればここに居らんでも出来るじゃろ」

 

「ありがとうございます!!」

 

「とはいえ儂も実際に使ったことなんぞありはせん。しかしリョウスケは使う事ができるんじゃ、そっちの方が得るものも多いのは間違いない。まぁ危険が多いのも事実なんじゃがその監督者とやらがおるならやる価値もあるじゃろ。それに刀術なら古牧もおるからのアヤツにも見てもらえるなら十分よ」

 

「俺は恵まれてますね…よろしくお願いします!!」

 

「ま、今日のところは受け入れの準備をしておいてくれ。その間に書物と道具の工面をしておくわい」

 

 

 

 

なんというか爺さんにも言われたけど成り行きでカミングアウトしてしまった。というか見ただけで実戦を経験した事を見切った人にゴマカシが出来るわけもなかったので仕方ないんだけど…。でも結果は最上だ。古武術って言ってた葛葉流には武器術がキチンと伝わっていたし、教えてもらえることになったんだ。……俺もゴウト童子みたいな猫探さんといかんのか?モルガナと対談させるのも面白…落ち着け。いかん、変なとこに考えが飛んだ。とにかくステップアップのきっかけをもらえたことを喜ぼう。合宿頑張りますかー。準備して明日には天城さんに挨拶もしないとな。



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パーソナルカラーは赤と緑の2人

睡眠習慣が無茶苦茶になったので初投稿です


ひょんな事からライゴウ爺さんに俺の状況のほとんどをカミングアウトする事になったが結果はいい方に転んだ。そして宿舎の準備は整ったので今日やる事は買い出しと指導だったんだが、爺さんの準備が思いの外かかるみたいなので先に買い出しに行く事に。

 

 

 

買い出しから帰ってきた俺は爺さんに呼ばれて道場へと向かった。そこには木刀を振る爺さんと宗一さんの姿が

 

 

「あはは、まさかリョウスケ君にこっちの術教えることになるとはなんとなーく予感してたんだけどホントになっちゃったねぇ」

 

「宗一さんが見てくれるんですか?」

 

「んー、俺は打ち込みの相手かな?そして親父が教える型の見本も兼ねてるよ」

 

「葛葉流は片手で日本刀を操る必要があった故、少々変わった刀術の流派になっとるの」

 

「んで、俺も変わった型なんだなぁって思ってたんだよ。だけどさ、そりゃ変わった型のはずなんだよ、だって斬る相手の想定がヒト型だけじゃないんだから」

 

「ま、そうじゃの。神秘の世界を儂らは知らん。知らんが故に教えられるのは神秘の世界で使われておった技術だけ。その技術を神秘の世界で使うのはリョウスケ君じゃよ。そういう意味では長らくおらなんだ葛葉流の正当後継者になるのかの?」

 

「お、いいじゃん、この道場継いじゃう?応援してるよー」

 

 

なんて軽口を叩かれながら一通り型を見せてもらったあと見様見真似で宗一さんへと打ち込んでいく。しかし木刀なんて握ったのは初めてのことで軸もブレブレ、へなへなの軌道でしかない。兎にも角にも武器に振り回されてるって事だ。

 

 

「仕方ないとは言えまだまだ振り回されてるねぇ」

 

「じゃの。両手でコレじゃから片手で満足に扱うまでは中々遠いかの?今日のとこはここまでにしておくか」

 

「はぁ、はぁ、ありがとうございました」

 

「そうそう、その木刀あげるから使いなよ。結構重たく作ってあるから疲れたでしょ」

 

「あー、やっぱり重たいんですかこれ…わかりました。にしても素振りも習慣になりそうですよ」

 

「かっかっ、いい心がけじゃ。ま、この年末でどれだけ型を覚えられるかのう」

 

 

随分と武道家みたいな習慣なってきたなぁ。まぁ悪い気はしないけど。しかし木刀って重いんだと思ってたら弄ってあったんだな。訓練用なのかね?ま、今日のところはこれでしまいだ。明日も早いし風呂入って寝ようか。

 

 

 

そして翌日、朝から瞑想と新たな習慣となるだろう素振りを済ませる。慣れてない上に片手で行う素振りは思ってたよりキツイ。うーん、体幹トレーニングとかも考えなきゃいかんかな?ま、成果が見られないようなら考えようか。さて、天城さんとこまで走ろうか。うーん、軽く体動かしてからだと冷たい空気が気持ちいいな。

 

 

「いらっしゃいませ…っ!!お兄さん!!」

 

「やあ雪子ちゃん、久しぶりだね。冬休みもよろしく頼むよ」

 

「あら、リョウスケ君いらっしゃい」

 

「天城さん、またよろしくお願いします。明日から部活の連中も来ますんで」

 

「また賑やかになるわね。そうだ、板さんも待ってたわよ、雪子案内してあげて」

 

「うん!」

 

 

もはや勝手知ったる旅館となりつつあるけど雪子ちゃんに案内されて板さんにも挨拶をする。危なかった、雪子ちゃんがいなければ流れで手伝うことになっていた…。

 

「おっと、雪子ちゃん。メリークリスマス。ま、ちょっとしたモノだけどね。あと、今日は千枝ちゃんは来るのかい?」

 

「わっ、ありがとう!うんとね、千枝はお昼に来るって言ってたよ。コレあげてもいい?」

 

「うん、開けていいよ。千枝ちゃんの分もあるから心配しなくていいさ。でもなぁ、完二君の分もあるんだけどあんまり今回は八十稲羽の商店街行けなさそうなんだ」

 

「あ!巽屋のおばさんも今日来るってお母さん言ってたよ」

 

「おお、色々とタイミングいいじゃないか。どうする、千枝ちゃんと一緒に開けるかい?」

 

「んー、じゃあ千枝を待つね。そっちの方が楽しそう!ねえねえ、ヒナコお姉さんとダイチ君は?」

 

「いつの間にダイチさんはお兄さんから降格したんだ…。まぁあの人気安いから仕方ないな。もちろんその2人も来るよ明日から来る他の部員と一緒にね」

 

「雪子ー、千枝ちゃん来たわよー」

 

「あ、お母さんが呼んでる、千枝来たって!」

 

「お、じゃあ一緒にお出迎え行こうか」

 

「おっす、雪子ーって、おにーさん来てるじゃん!お久しぶりです」

 

「相変わらず元気そうだね千枝ちゃん。千枝ちゃんにもメリークリスマスだ。雪子ちゃんは一緒に開けたいから待っててくれたぞ?」

 

「そうなの、千枝早く開けようよ」

 

「ほんと!ありがとうおにーさん、んじゃあたしも早速。おおー、たぬきのぬいぐるみ。かわいい!」

 

「私のはキツネのぬいぐるみ。赤いワンポイントがかわいいね。ありがとうお兄さん」

 

「気に入ってもらえたら何よりだよ。今回も家庭教師するのかい?」

 

「冬休みはあんまり宿題ないけど、中学校のお勉強がちょっと出たの」

 

「うっ、でもあたしも夏休み明けて初めて褒められたもんなぁ、雪子もやるならあたしも頑張る!」

 

 

 

2人と話してるうちに巽屋さんも来たのでおばさんに完二君へのプレゼントを渡しておいた。中身はちょっと厳つ目のキーホルダー。さすがは東京、修学旅行で木刀買っちゃいそうな子供に刺さるデザインの奴にしておいた。もうしばらくこの2人と話をして遊んだら道場へ帰ろうか。またしばらく毎日来るしな。

 

 

 

 

 



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全員集合葛葉道場

腰痛がひどいので初投稿です


昨日は雪子ちゃんと千枝ちゃんと少しだけ遊んだんだが2人は物足りなさそうだった。まぁ、まだ2週間ほどいるから許してほしいね。朝から日課を済ませたころそろそろ到着予定時刻になろうかという頃ケータイが鳴った。そろそろ着くとのこと。せっかくなので出迎えるとするか。一応爺さんたちには声をかけておく。

 

「ようこそ、月光館学園高等部合気道部の方々。お待ちしておりましたよ」

 

「おーっす、リョウスケ、世話んなるよ」

 

「頼むで。せやけどなんやの今のうさんくさい前口上」

 

「あはは、まぁ雰囲気ですよ雰囲気」

 

「男部員はこっちの部屋、女性部員は向こうの建物になってます。んでこちらが道場主の葛葉ライゴウさんと宗一さんです」

 

「おう、何人か見た顔もあるがここにいる間指導する事になっておるライゴウじゃ」

 

「宗一です、よろしくねー」

 

こうして部員と爺さんたちの紹介が進んでいき、相変わらず葛葉流の基礎も基礎、瞑想から始まる。とうとう指導側に回された俺は夏に来たメンツの面倒を見ることになった。そりゃ一度指導されてる連中の監督ならまだ負担も少ないもんな

 

「リョウスケは俺ら見てる間何すんの?」

 

「俺はコレっす」

 

「木刀?一応合気道部の合宿やのにええのん?」

 

「まぁ、俺は現地スタッフだと思ってもらえたら…。つっても剣道と色々勝手も違うんで大丈夫ですって」

 

「大丈夫ってそこじゃねぇだろ…」

 

「ま、リラックスしてくださいな。各々初めてくださいよ。乱れてる場合はちゃんと見てますんで。こないだよりやる事多くなってますから早い方がいいですよー」

 

 

 

こんなやりとりをしつつ朝練を終え、組手練習とロードワークとに別れる。流石に全員同時に指導は2人じゃ無理があるしな。とりあえずオススメの1時間ほどのルートを流す。久々にこのコースを走ったら中々疲れるな。

 

「相変わらず体力あんなぁ、リョウスケ…」

 

「ほ、ホンマやで。ウチらかてそんな鈍ってるわけでもないけど結構ハードやわ…。それに初めてのルートやったし、あの後見つけたん?」

 

「そうですよ。夏休み散々走りましたからね。でも冬の方が中々疲れますね」

 

「ケロっとしといてよく言うぜ…」

 

「よーし、芝原には長さは変わらんがよりハードなコースをだな…」

 

「や、やめろ。ロードワークで1日終わらせたくねえって…」

 

「ほらほらみんな天城屋旅館行くんでしょ?お昼食べたらまた走りますよー」

 

「リョウスケ元気すぎる…」

 

「か、かなわんで…」

 

「良くも悪くも葛葉流の教えって基本をひたすら繰り返すんで一回コツ教えた人に対してやれる事って限られてますからねぇ。ま、武道の根っこは同じらしいんでメンタル合宿みたいになってますけどね」

 

「部長の俺が言っていいのか分かんないけどうちの部活は結果を求められてる部活じゃないもんなぁ…」

 

「アンタ、それ言うたらおしまいやで…。本腰は舞踊のウチが言うてもしゃーないけど」

 

 

 

こんな軽口を交わし合ってるのも息を整えるためだからな。さてと、リフレッシュにリラックスの為にも天城屋旅館まで走らせますか。

 

 

「リョウスケェ、ぜえっ、ぜえっ、こないだよりペース早えんじゃねぇか?」

 

「…気にすんな」

 

「まぁ、合宿って感じするじゃんか、芝原がんばろーぜ」

 

「ダイチは大物やなぁ。考えてないだけか知らんけど…」

 

「ほらほら、入りますよーっと。お邪魔しまーす」

 

「あ、お兄さんいらっしゃい。ヒナコお姉さん!!ダイチくんもいるー」

 

「ゆ、雪子ちゃん俺は?」

 

「芝…芝…芝刈さん?」

 

「「「……ドンマイ」」」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「よーし、みんな温泉だぞー。ほら、芝刈くんも項垂れてないで行った行った」

 

「うるせー!!俺は芝原だっ!大体、ダイチさんだって君付けじゃねーかよ」

 

「ほらほら、雪子ちゃんこんな怖い人ほっといて一緒にお風呂いこーや」

 

「構わないよ、いっといで」

 

「うん、ありがとうお母さん」

 

「はーい男衆はこっちね。女衆はヒナコさんと雪子ちゃんについて行ってね。スケジュールは伝えておいた通りに今日はゆっくり目なんで堪能しててくださいね」

 

 

 

各々が温泉を堪能する。まぁこれを予定に組み込んでるのは飴だ。仮にも合宿だし、慣れてないウチに葛葉流の瞑想を続けてると無茶苦茶疲れるし身体も強張っちゃうんだよな。それをほぐしてリラックスするにほんとちょうどいいんだよ。明日からは夕飯前に来る予定をしてるから俺の普段とは勝手が違うんだけど、旅館で飯を食うときは借り出されるので結局俺だけは確定で昼前からこっち来るんだけどな。

 

 

 

「ほんと、夏に来てから温泉の良さがわかったんだよなぁ」

 

「ホンマやわ。冬もええ湯加減やし景色も良かったわ。雪子ちゃんも楽しそうやったし」

 

「フツーの合宿じゃありえねぇスケジュールっすよね。ま、ここでやるなら欠かせないってのは同意しますけど」

 

「いやいや、途中でガス抜きしないと頭フラフラするぞ。とにかく集中するから瞑想慣れてきたあたりが1番疲れるんだよ。だから朝やって身体動かして温泉で疲れをとって夕方もっかい瞑想ってのがここでのサイクルですね。ま、合宿なんでもうちょい詰め込んでますけど。それにずーっと練習は効率も良くないですから」

 

 

 

こうして合宿が始まった。ほかの部活からしたらびっくりする様な内容だろうけど個人的には結構キツイと思ってる。さっきも言ったけどガス抜きを強制的にでも挟まないと本当に頭が保たない時が来るんだよ…。ま、何人が最終日にケロっとしてられるかね?

 



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年が明けるのは早い

低気圧でくしゃみが止まらないので初投稿です


合宿も残すところ明日までとなってしまった。部員のみんなほとんどは帰ることになっていて、ダイチさんだけが居残って正月の神社でアルバイトをする予定になっている。流石にお正月は家族で迎えることになってる家庭も多いから少ないのも仕方ない。特にヒナコさんなんて実家は関西だからな。

 

「いやぁ、初日の和気藹々とした空気から見事に死屍累々って感じですなぁ」

 

「リョウスケくらいじゃねーかピンピンしてんの…」

 

「タフすぎんぜ…」

 

「流石にウチも疲れたわ…」

 

「ダイチさん居残って大丈夫なんです?体力的にも家庭的にも」

 

「あぁ、ウチは大丈夫。そんなにお正月っぽい事ももうしてないからさ。新年の挨拶してお雑煮食べるくらいだもん。こっちで色々やってる方が年明けの感じしそうなんだよなぁ」

 

「ウチは正月の挨拶は色んな人にしとかなあかんからなぁ。流石に帰らんとまずいんよねぇ。とりあえず高校卒業するまではってとこなんやけど」

 

「俺んとこも親父と門下生に挨拶あるもんなぁ…。結構家によって違うモンなんすねぇ」

 

「そりゃそーさ。正月程地域色、家庭色の出るイベントも中々ないぞ。お雑煮とか隣町で変わる事すらあるからな」

 

「へー、みんなおすましじゃないの?」

 

「は?雑煮いうたら白味噌やろ」

 

「え、雑煮って小豆じゃねーんすか?」

 

「ほら。全然違うでしょ?ちなみにここは白味噌っすね。葛葉家のルーツは関西なんで」

 

「へー、正月に家族以外と飯ってあんまりないから全然知らなかったよ」

 

「ほら、そろそろロードワーク行きますよ。今日でみんなは最後なんですから」

 

 

ま、話しながらとはいえストレッチしてたわけなんだが、疲れてる様でみんなは身体が重たそうだったので話も弾んだわけなんだが合宿なんだしもう少し追い込んでもいいだろうという爺さんの判断のもとちょっとキツめのコースを選んだ。ロードワークっていうかほぼ山登りなんだけどな。幸い雪も積もってないからできるんだけどな。そして今日のゴールは温泉でリフレッシュだ。…なんだかんだこんなロードワークなんて合宿じゃないと出来ないわけだしまぁ高地トレーニングと思えばいいだろう。

 

 

 

「そっかぁ、ヒナコお姉さんもう明日で帰っちゃうのかぁ…」

 

「年明けまで残るのは俺とダイチさんだけだからね」

 

「まぁ、またきてくれるさ」

 

「ほら、温泉上がってもまだぐったりしてるみんなを案内してやってもらえるかな?」

 

 

寂しそうな雪子ちゃんに声をかけていると板さんに見つかってしまった。

 

「おう、リョウ、お嬢と居たのか。そろそろお節の作り方教えてやるから着いてこい」

 

「うっす、板さん。じゃあね雪子ちゃん、そうだ、年賀状なんて描いて送ってあげれば喜ぶんじゃない?」

 

「そっか、そうする!」

 

 

まだケータイも小学生が持つほど普及してないから連絡方法もまだまだアナログだったりする分こうして気を紛らすことができたかな?

 

 

そして今日はもうみんなが帰る日。年の瀬って事もあって道場の大掃除をみんなでやってもらったんだが、1番嬉しそうなのは宗一さんだったな。まぁ俺が来るまで二人でやってたことを思うとそりゃあ楽になったんだろう。

 

 

「5日間ありがとうございました!って言っても俺だけまだ残るんですけどね…」

 

「ダイチ、わざわざ言わんでもよろしい。アンタは代表として言えばええの」

 

「相変わらず締まらない先輩だなぁ」

 

「うるせーぞ芝原、しょーがねーだろ」

 

 

最後の最後でグダグダした気もするが何事もなく?合宿も終わった。年の瀬って事で町にイベントが無い分ちょっと打ち上げみたいな事もできてないのが少し残念だ。

 

「君らが体験したのは初歩も初歩。それでも立ち合いの前に行う事が出来れば随分と集中できる様になっとるはずじゃ」

 

「ま、それよりもリョウスケ君に走らされた方が辛そうだったけどね」

 

「せっかくこの辺でやってるんですから環境利用しない手はないでしょうよ」

 

「ウチらも大分体力ついた気するわ…」

 

「走り込みも瞑想も続けなければいかんぞ。次来ることがある面々はどれだけ続けたか分るからのぅ。かっかっかっ」

 

「「「はいっ!」」」

 

「うむ、良き返事よ。儂らも楽しかったわ。それでは気をつけて帰るんじゃの」

 

「んじゃ俺たちもせめて荷物持ちとして駅まで送りますかね。いいでしょ、ダイチさん」

 

「オッケーだよ。それくらいはやんなきゃねぇ」

 

 

 

部員たちがほとんど帰ったあとも俺がやることはあんまり変わらないんだけどな。ダイチさんがちょっと旅館のアルバイトをやったり三ヶ日は神社の手伝いの予定があるくらいで。手伝いっても小さな神社だからそこまでやる事もないんだけどな。でも中には葛葉の御守りは御利益があるってんで毎年来てる人もいるらしい。

 

 

 

「なんか大晦日なのに家族以外といるの不思議な感覚だわー」

 

「実家でゆっくりが普通…まぁ俺からしたら実家みたいなモンなんですけど」

 

「その言い方だと俺が入り込んでるみたいじゃん…」

 

「あはは、いえ、助かってますよ。道場以外の掃除も手伝ってもらいましたし」

 

「まぁ、これだけ世話になったら流石にってもんだよ」

 

 

とかなんとか言ってるウチにもうテレビではカウントダウンが始まる。この辺お寺はないから除夜の鐘は聞こえないみたいだな。お、年明けかー。

 

「「「「あけましておめでとうございます」」」」

 

みんなで挨拶を交わしたところで初詣だな。まぁほとんど境内だしすぐなんだけどな。山の神社だから夜はやる事ないのでそろそろ寝ようかな。

 



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正月は他の味が欲しくなる

アレルギーの薬を飲んだら眠たくなったので初投稿です


年が明けたわけなんだが、男4人で道場に赴き初稽古だ。一応爺さんは神職なんだから初詣の参拝客の相手をしなきゃいけないんじゃないのかと思ったけど、宗一さん曰く俺もダイチさんも居ることで爺さんがすこしはしゃいでるらしい。それに朝早くから来る場所じゃないってさ。…仮にも自分の一族が守ってきた神社じゃないのか?と思わないでもないが、まぁ、便利な場所とは言いにくいのも事実だな…。とはいえ、お昼にはそこそこ来るらしいので初稽古を終えてみんなでお雑煮を頂いた。…不思議な事に涼介の記憶にある味と似ている。こんなところでも共通点があったとは流石に不意打ちを食らった気分だったよ。それから夕方まで神社の手伝いをして夜にはおせちを食べて1日が終わった。明日は天城さんに手伝いをお願いされているし、爺さんたちにも行ってこいと言われているのでダイチさんと向かう予定をしている。

 

 

 

 

「やあ、明けましておめでとう雪子ちゃん。今年もよろしく」

 

「おめでとうね、雪子ちゃん」

 

「お兄さんにダイチ君だ!あけましておめでとうございます。よろしくね」

 

「ちょっと、おにーさんたち、アタシもいるよ!」

 

「ゴメンゴメン、千枝ちゃんも明けましておめでとう」

 

 

ついつい千枝ちゃんをからかってしまう…。いいリアクションするんだよなぁ。今日はなんでも子供たちを初詣に連れて行ってやって欲しいんだとか。俺もダイチさんも八十稲羽の神社で初詣はまだしてないし、ダイチさんも行ったことあったからどうかすら定かではないのでちょうどいい機会だと思ってる。

 

「今日は君たちを連れて辰姫神社に行って欲しいってお願いされてるから準備は出来てるかい?お年玉って程でもないけど君たちが屋台で食べたいもの位はお兄さんたちがごちそうしようじゃないか」

 

「そうそう、遠慮しないでいいからねー」

 

「やった!夏祭りの時食べられなかったモノリベンジするよ雪子!」

 

「千枝ったらすぐ機嫌なおしちゃった…」

 

「ほらほらバスが来ちゃうから行くよ」

 

 

4人でバスに乗り込み神社へと向かう。実はこの後宗一さんが迎えに来る事になっていてウチの神社にも来る事になっているのだが、知っているのは俺だけ。ドッキリって言うほどのものでもないけど、爺さんがお年玉をあげたいらしく何とかして連れてこいって話らしい。

 

 

「うわー、夏祭りの時も迷ったけどお正月のラインナップも迷うなぁ」

 

「千枝、はしゃぎすぎ。はぐれたらどうするのよ」

 

「大丈夫、大丈夫。そんなに広くないんだしさ」

 

「おっと、ダイチさんすこし見といてもらえます?俺近くのお世話になったお店の子供連れてくるんで」

 

「あいよー、ほらほら二人ともダイチお兄さんを置いてかないでくれー」

 

 

多分完二君は暇を持て余した寝正月してるだろうと思っていたけど予想通りだったな。おばさんも快く送り出してくれた

 

 

「お待たせ、どうせ暇してるだろうと思ったから連れてきたんだ。ダイチさん、この子は完二君。そこの染物屋さんの子供で天城屋旅館にも卸してるようなお店さん」

 

「へー、すごいじゃん。よろしくね完二君」

 

「う、うっす」

 

「あー、完二、久しぶりじゃん」

 

「私は旅館について来た時たまに会うよ」

 

「へ、へん、リョウの兄ちゃんに連れ出されただけなんだからな」

 

「こらこら、誘われるかもしれないからっておかわり少なくしてたって聞いたぞ?新年早々喧嘩しない」

 

「げっ、母ちゃん何で喋ったんだよ!!」

 

「はっはっは、やっぱりそうか、屋台に随分気を取られてるからカマをかけただけさ」

 

「おいおい、リョウスケ子供相手になんて大人気ない…」

 

「うわー、お兄さんエゲツない…」

 

「おにーさん、こわっ!」

 

「素直になれない少年をからかっただけなんだがなぁ…」

 

「うがーっ!!」

 

「完二くんが暴れてるよ千枝」

 

「でもあっさり取り押さえられちゃったね雪子」

 

「ほらほらここでお腹空かせてないで食べに行こうじゃないの。君たちもお節飽きただろう?あんまり子供向けじゃないからね正月料理は」

 

「お前、すっげー誤魔化しかたするのな…」

 

「まぁ不器用な照れ隠しですよこの子の場合。じゃれてくる程度かわいいもんですって」

 

「お前が本当に後輩なのかわかんねぇや…」

 

「ま、食べる前にお参りは済ませましょうかね」

 

 

 

初詣を済ませて5人で色んな屋台を冷やかした。やはり年末年始の料理はイマイチだったらしくみんな結構食べてる。そういう俺は嫌いではないんだがこの雰囲気だとつい食べたくなるよな…

 

 

「よーし、次はあっちの肉!」

 

「千枝まだ食べるの?」

 

「俺はイカ焼きもう一本!」

 

「よく食べるなぁ君たち。ほら、リョウスケ君お迎えだよー」

 

「宗一さん、ありがとうございます。ほら、その食べ物持ってこのおじさんの車乗った乗った、こっちの神社にも初詣行こう。何かいい事あるかもしれんぞー」

 

「おじさん…、まぁ俺もおじさんかぁ。キョウジのことおじさんって呼んでるもんなぁ…。少年少女たち、安心したまえ、帰りはこのおじさんがまたここまで送ってあげるから。雪子ちゃんも大丈夫だよ」

 

 

爺さんたちへのお土産に焼きそばやタコ焼きを抱えて車へ乗り葛葉神社へ。そういえばみんながウチの神社に来る事ってこれまであったっけ?どんなリアクションするか楽しみだな。

 




完二くんは不器用です


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もうすぐ一年

胃痛に苛まれているので初投稿です


「ほっほ、明けましておめでとう雪子ちゃん。その子が千枝ちゃんかの?リョウスケから元気いっぱいの子と聞いておるよ。加えてこの子が巽の倅か。こっちもわんぱくそうなツラをしておるの」

 

「うー、おにーさんのせいで恥ずかしい」

 

「何もんだこのじーさん」

 

「この人が俺の…爺さん。この神社の宮司さんであっちの道場主」

 

「へー、カッコよさそう!」

 

「でも千枝ちゃんには向いてないと思うよ?」

 

「なんでよ!」

 

「だって、1時間ずーっと動かないとかそんな修行ばっかりだよ?」

 

「あはは、それは千枝には無理そうね」

 

「うー、おにーさんも雪子もひどいや…。アタシの味方はこのダイチおにーさんだけなんだ!」

 

「え、えーっと、ライゴウさんの前で言うのもなんだけどここの修行すっっごい地味だよ?元気そうな君には辛いんじゃ…」

 

「ガーン…」

 

「お前ら、そこまで言わんでもいいじゃろ…。やはり地味よなぁ。でもそうしないと精神を鍛えるのも難しいのじゃよ…」

 

「さてと、初詣でもしましょうか。(ほら、ライゴウ爺さんはみんなになんか渡すものあったんでしょ?)」

 

「「「はーい」」」

 

「リョウスケってほんと容赦ねーのな…」

 

 

ダイチさんが何か言ってるが気にせずみんなでお参りへと詣でる。俺たちは昨日も参ったけどお参りは何回したってバチはあたらんさ。

 

 

「さてと、嬢ちゃんたちには、宮司の言葉よりもホレこっちの方がええじゃろ、お年玉じゃ。ま、そんな入ってるわけでもないからのぅ、好きに使うと良い。お前さんらには帰る日にバイト代を渡してやるわい」

 

「うわー、アタシにも貰えるの⁉︎お爺さんありがとう!」

 

「ありがとうライゴウお爺さん!!」

 

「ありがとなじーちゃん!」

 

「かっかっ、こうまで喜んでもらえるなら何よりじゃよ。早うワシの孫も見たいんじゃがのぅ…」

 

「あ、宗一さんなら車の準備に行きましたよ?」

 

「…アヤツめ。宗一もキョウジもいい加減落ち着かんかのぅ…。いかんいかん、新年早々辛気臭いのは良くないわい。さてもうすこし時間があれば良かったのじゃが冬の山は暗くなるのが早いからの、宗一に送ってもらうとよい。気をつけての」

 

「「「ありがとうございましたー」」」

 

「ほら、車まで案内してあげよう」

 

「うふふ、お兄さん今日は色々ありがとう。でも、もうすぐ帰っちゃうんだよね…」

 

「ホント、学校の奴らよりずーっと遊んでて楽しいし」

 

「大人!って感じだよな」

 

「ま、今度は春休みに来るさ。その頃はここも桜が綺麗な頃だろう?楽しみにしてるんだよ、どこかいい場所見つけておいてくれないかい?腕によりをかけて弁当こしらえてダイチさんやヒナコさんも一緒にお花見でも行こうじゃないのさ」

 

「うわー、楽しそう!ヒナコお姉さん来てくれるかな?」

 

「アタシは肉いっぱいがいい!!」

 

「俺も行っていいのか⁉︎なら見つけとくぜ!」

 

「ヒナコさんならすっ飛んでくるさ。千枝ちゃん、さすがに気が早過ぎるぞ。完二くんもちろんおいでさ」

 

 

そう言ってちびっ子達を送り出した。さっきも言った通り俺たちもそろそろ東京へと帰らなきゃならない日は近くなっている。それまでに少しでも型の感覚を叩き込んでおきたいな。まだまだ実戦投入の段階にはならないだろうけど確実に成長してる実感はあるんだ…

 

 

 

「お世話になりました」

 

「俺もお世話になりました。俺だけみんなより長く居ちゃってなんかすいませんでしたね…」

 

「なぁに、リョウスケも楽しそうだったし儂等も楽しかったしの。それに若いモンがあるおかげで中々出来んかった事もやっておく事が出来て助かったわい。いい経験になったかの?」

 

「そりゃもう!バイト代まで貰っちゃって、ホントにありがとうございました」

 

「ま、その感謝の心を忘れん事じゃな。古牧のヤツにもよろしく言うといてくれ。それと、リョウスケ、お前さんにはコレをやろう。今まで稽古で振ってた木刀は重たくしてあるだけじゃが、この木刀は御神木を使ってあるんじゃ。それを抱えて瞑想してみい、気が引き締まる事間違いなしじゃ。…気をつけてな」

 

「…はい!ありがとうございました。また、春に来ますんで」

 

「俺たちも春また来ますからー」

 

「んじゃ、沖奈駅まで送ってくから乗った乗った」

 

 

 

 

 

今回は2週間も居なかったけど随分濃い滞在になったな。帰ったら帰ったでエリザベス達に成果も見せたいのはもちろん、餞別にもらった神木でできたとか言う木刀が気になるよな…。ま、まだ試しが出来る程余裕があるわけでもないからな。それこそ春にまた来るまで一度試せていたら御の字くらいの気持ちで良さそうだな。

 

 

 

「おう、明けましておめでとう…って柄でもねぇけどな」

 

「明けましておめでとうございます。ただいま戻りました。…事務所の大掃除出来なくてすんませんでしたね」

 

「…いやぁ、お前さんが普段からやってくれるおかげでだいぶ楽だったぜ?あと、ほれ、年玉だ。今年も手伝ってくれよなって意味だぜ」

 

「…ありがとうございます。まぁいいんですけどね。よっぽどめんどくさいのはごめんですけど」

 

「そんなヤマ、ポンポンきてたまるかってんだよ…。そういやお前さんの高校大分物物しくなってんのなんかあったんか?」

 

「あー、アレじゃないっすか?来年から桐条グループのご令嬢が一年生なるって噂なってましたから」

 

「ほー、なるほど。そりゃ自分の持ってる自慢のガッコにお嬢様を通わせるわなぁ。なんとかツテでも作っとけよ?絶対役に立つぜ」

 

「…良くも悪くも部活の顧問が目立ちますからねぇ、ウワサ通り品行方正で杓子定規なら多少衝突もするから顔くらいは売れるでしょ」

 

「俺から言ってなんだけどいいのか…?」

 

「そもそも治安維持の為の人を顧問にしたようなもんで、その件を娘さんは知らないとなると1回はぶつかると見てますよ」

 

「……ならいいけどよ。そういやジッさまなんか言ってたか?」

 

「そろそろ孫の顔がーって」

 

「帰ってきて疲れたろ、荷ほどきして飯でも行くぞ」

 

「アンタもはぐらかすのか…。まぁいいやゴチになりますっと」

 

 

 

 

誘われたので近くのファミレスで夕食を済ませ、部屋へと戻る。…ちょっと疲れてるけどベルベットルームに顔だけでも出しておこうか。

 



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俺って実は普通じゃないらしい

寒くて仕方ないので初投稿です


「やあ、久しぶりになったかな、マーガレットさん」

 

「おや、そう、お久しぶりになりますわね。ラヴェンツァもエリザベスも寂しがっておりましたわ。ふふ、もちろん私もですよ?」

 

「そりゃあ、待たせちゃって申し訳ないね。…申し訳ついでなんだけど、今日は帰って来たばっかりで顔を出してちょっとしたら帰ろうと思ってるんだ。新年の挨拶ってヤツだよ。ちょっと遅くなっちゃったけどね」

 

「ならば私だけがその言葉を受け取るわけには参りませんわ、少々お待ち下さい、すぐ妹達を呼んで参りますから」

 

「悪いね、手間かけさせちゃって。なんだかいつ来てもみんな揃ってる印象だから思い立ったタイミングで来ちゃうんだよ…」

 

「それでは期待に応えられなかった私たちのせいでお姉様の手を煩わせてしまったと?」

 

「出遅れてしまいまして申し訳ありません。…?如何致しましたか?」

 

「うふふ、エリザベスが照れ隠ししたのに貴方が素直に謝ってしまったものだから引っ込みがつかなくなったのよ。エリザベスったらどうするのかしらね?」

 

「……お久しぶりですね、リョウスケ様。人の世では年が変わったとか。その挨拶に訪れたのでしょうか?」

 

「俺が悪かったよエリザベス、次からちょっと訪問期間が空く時は帰ってくる時間をあらかじめ伝えておくからさ」

 

「…?何かございましたか?しかし、リョウスケ様がその様に配慮してくださるのなら感謝感激でございます」

 

「流石はお姉様ですね、何事もなかったかの様に進行なさってます…」

 

「…まぁみんな揃ってる事だしいいけどさ。いつのまにかメアリとテオも居るし…。改めて久しぶり、今年もよろしくな。って言いたいだけだったんだけどここまで大事になるとは思わなかったよ…」

 

「では、改めて一戦交えますか?」

 

「いや、今日はホントにコレだけだったんだよ…」

 

「むぅ…そうでしたか。ではそれまでに高めておかなければなりません。テオ!ついて来なさい!」

 

「相変わらずだなぁ…エリザベス。っと、悪かったねちょっと顔出しただけでこんなに騒いで」

 

「ふふ、アレも照れ隠しですわ。やはり力を司るという役割をもった存在である以上それを身内以外に振るうことができるのが楽しいのでしょう」

 

「ええ、リョウスケ様が訪れる前とは、こう、なんと言いますか…お姉様は少々エキセントリックでは有りましたが人間味が増したと言えばよろしいのでしょうか…」

 

「…その変化はエリザベスだけなのかい?」

 

「…ふふ、もちろん私も。そしてマーガレットお姉様もです。…まぁテオお兄様は変化したエリザベスお姉様に振り回されている影響が強そうですけど」

 

「そっか、そりゃあ良かったよ。さてと、顔出すだけのつもりだったけど話し込んじゃったな。そろそろ帰るよ。明日はキチンと成長を見せられると思うさ。あといつものお土産もあるし」

 

「それは色々と楽しみですね。お姉様にも伝えておきますわ」

 

「それじゃ」

 

 

ついつい長居してしまったが本命は明日。さすがにエリザベスとの立ち合いで武器を使うつもりは更々ないんだけど、無手の動きなら少しはマシになって来たんだ。クリーンヒットとまでは言わないけど一当てくらいは何とかならんかなぁ。

 

 

ま、この願いは叶った様な微妙な感じだったと同時に絶大な死亡フラグでもあったわけなんだが…。

 

 

 

「ぐわーっ」

 

「っ!!申し訳ありません、少し驚かされてしまいついつい力を込めすぎてしまいました」

 

「リカーム。…目が覚めるまではもう少しかかりそうですね」

 

「ありがとうラヴェンツァ。私も悪気はなかったのですよ?驚いた拍子に力が入るのは誰でもあり得ると思うのですよ」

 

「それにしては随分ではなくて?ひょっとして想定よりも動きましたか?」

 

「…ええ、姉様。わずか一年も満たずに、そしてほぼ実戦と言えば私との立ち合いしか経験していないという事でしたが…これはもう少し成長性を評価すべきかもしれません」

 

「……その、お姉様との立ち合いが何よりの経験である可能性は?」

 

「……だとすると何故リョウスケ様はペルソナを自由に扱えないのでしょう?」

 

「でも、言っては何ですが、随分と人間離れした身体能力をしてきたような気も致します。お姉様ともあろう方が認知世界とは言えヒトの範疇で驚かされるとは思えません…」

 

「確かに、私は驚かされてしまいましたわね、自分でもそう言いました…。ひょっとしてリョウスケ様のペルソナの使い方は従来の発現とは違う可能性が?」

 

「…憶測でこれ以上話を進めても仕方ありません、そろそろ目を覚ます頃でしょう。エリザベス、ラヴェンツァこの話はまたの機会にいたしましょう」

 

「ええ、そうですね姉様」

 

「私も少し考えておきます」

 

 

 

 

ゔー、まだクラクラするぜ…。エリザベスとの間合いをいつもより詰められたと思ったんだがなぁ。飛び込んだ分カウンターになったからか久々に気を失ってたらしい。目を覚ましてから何故か三人の俺を見る目が実験対象とか研究対象をみるようでなんだか落ち着かないんだけど…。

 

「おめでとうございます」

 

「??何がかな、エリザベス」

 

「リョウスケ様の著しい成長性を見込んで私エリザベスによる特別トレーニング難易度ハードが解禁されました」

 

「……ちなみに内容は?」

 

「立ち合い形式ならば私による属性魔法の使用が増えます。メメントスでのシャドウ討伐ならばリョウスケ様にデバフを掛けさせていただきます」

 

「…お姉様、今までの訓練はノーマルだったのですか?」

 

「ふふ、エリザベスったら随分と考えていたのね」

 

「流石に本日はもうオシマイではありますが、次回から遠慮なくハードモードをお選びください」

 

「…か、考えとくよ」

 

 

 

な、何があったんだ?…俺が気を失ってる間か?わからん。わからんが、とにかくエリザベスのやる気が漲ってるって事だけはわかるぞ…。スパルタスタイルが増していくのか………

 




リカーム…いわゆる復活魔法。体力の半分回復。メガテンなら死亡者に使うけどペルソナなら気付けくらいの位置付け。戦闘不能でもバックアップに回れる猫もいたし多少はね?


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そろそろカレーの宣教師って言われそう

むせただけのせきでも気をつかうので初投稿です


久しぶりに意識が飛んだあの日から宣言通りエリザベス達のシゴキがキツくなった。幸いと言っていいのか帰り際にメディアラハンをかけてくれる様になった、まぁ何故今頃になってサービスが良くなったのかはわからんけど、とにかく肉体的な疲れを残す事は殆どなくなった。あくまでも肉体的な分でありベルベットルームから帰ってきた時は決まって精神的にはクタクタになっている。それも瞑想で少し回復するって気付いてからは大分負担も減った。ホント学校始まった1週間くらいは正月ボケが抜けてないんじゃないかって言われまくったくらいだったんだ。

 

 

そんな三学期も始まって仕舞えばあっという間に1月が終わりを迎える。正月はルブランに行けなかった分、まだまだコーヒーの合格点までは遠そうなんだよな…。でもそろそろルブランカレーの教えを受けたいもんなんだがなぁ。っとヒナコさんじゃないか、あの人卒業も進学も決まってるから学校じゃあんまり会わなくなったんだよな。まぁ部活好きな人だからちょくちょくそっちでは会うんだけどさ。

 

「おーい、ヒナコさん。なにしてんすか?」

 

「んー?おー!リョウスケやんか、アンタ珍しいなこんなとこで会うなんて」

 

「まぁヒナコさんは学校の寮ですけど俺通いですからむしろこの辺の方が良くいますよ」

 

「それもそうかぁ。いやな、ウチの知り合いでピアノやってる子が東京観光したいって言うから案内役の為に待ち合わせしてるんよ」

 

「へー、知り合いって地元の大阪っすか?」

 

「いいや、その子は名古屋の子なんよ。音楽で食べてくつもりあるならどうしても東京は通らなあかん道やし、あ、その子アイリって言うんやけどな、アイリも早いうちに観光した方がええんちゃうって誘ったんやわ。今の時期ならウチも暇してるしな」

 

「ヒナコさんが気にかけるレベルでピアノやってる子って…ひょっとして業界じゃ結構有望株だったり?」

 

「ウチの眼はそんな大層なモンでもないけどアイリは有望やで。ちょっと伸び悩んでるらしいから環境変えることも踏まえて高校も月光館見に行くつもりもしてるらしいんよ」

 

「って事はいま中3っすか。それじゃヒナコさんと入れ違いになっちゃうんですね」

 

「そうなんよ…そこがどうにもアイリも引っかかってるみたいでなぁ。せや、アイリが来ることなったらアンタ先輩やろ?この後時間あらへんか?どっかでお昼でも食べながらちょっと話したってくれへん?」

 

「いいですけど、責任重大っすねぇ」

 

「アンタはええ先輩気質しとるで。雪子ちゃんと千枝ちゃんの事よう見て接しとるやないの。ウチかてリョウスケみたいな先輩おったらもっと楽しかったって思ってるくらいやで」

 

「あはは、それはそれはヒナコさんにまでそう言ってもらえるとは光栄ですねぇ。じゃあ幻滅されない様に未来の後輩候補の悩みを聞いてみますかねぇ」

 

「おおきにやで、いやー、ホンマええとこで会ったわ。そういえばどっか行く途中やったんか?」

 

「いや、その、バイト先なんですけどルブランって喫茶店のカレー食いに行こうかなって。ちょっと間空いちゃって無性に食べたいんですよねぇ」

 

「カレーか、ええなぁ。ほなウチらもそこ行こかな。遠いん?」

 

「四茶なんで地下鉄乗ってすぐですよ」

 

「ええとこやん、絶妙に学校にもバレへんええ場所やないの」

 

「そもそもはカレーのレシピ教えて欲しくて手伝い始めさせてもらった様なモンなんで親戚の店手伝ってるくらいのモンですからセーフですよ」

 

「相変わらず要領ええなぁ…っと、来た来た、アイリー!こっちやでー」

 

「ヒナポッポの馬鹿!大きい声でよばないで!!んもうっ」

 

「あはは、せやけどこうでもせなアンタ気い付かへんやんか」

 

「うー、うるさいうるさい!んで何よコイツは」

 

「コイツはウチのかわいいかわいい後輩や。もっともアイリが月光館来るなら先輩になるけどな」

 

「どーも、ヒナコさんにかわいがられてるらしい葛葉リョウスケです」

 

「…ホントにヒナかわいいって思ってる?今のやり取りかわい気なさそう」

 

「まぁこの辺の遠慮のなさはウチを信頼してくれとるからやって」

 

「んじゃ立ち話もなんですしお店行きましょうか」

 

 

 

流れでヒナコさんとアイリちゃんをルブランへと連れて行く事になった。なんだかんだ知り合いを連れて行ったのって直斗ちゃんくらいか?ま、ここ二人にも布教してカレーの沼へと引き摺り込んでやるか…

 

 

「おう、今日バイトじゃねーのに来やがったのか?お前も物好きだなぁって、何だよコレか?随分べっぴんさんじゃねーか」

 

「あはは、違いますよ。先輩と後輩候補ってとこです。東京観光する後輩ちゃんを案内する前の腹ごしらえってとこですよ」

 

「はじめまして、葛葉くんの先輩の九条ヒナコです。この子が伴アイリ。たまたま葛葉くんと会いまして案内お願いしたらここを勧められましたんですよ」

 

「…こんにちわ」

 

「そっちの嬢ちゃんは随分シャイなのか?知り合いの娘が人前にでた時みたいになってるぜ」

 

「あはは、すぐ慣れますんで」

 

「マスター、とりあえずスタンダードなセットを三つお願いしまーす」

 

「ったく、仕方ねぇな、今日はお前に使われてやるよ。女を連れてる男ってのはそれだけで偉いんだよ」

 

「えらいシブイマスターやなぁ」

 

「面白いでしょ。あ、聞くの忘れてましたけど二人ともコーヒー大丈夫?」

 

「ウチは大好きやで。店入った時からええ匂いしてたから気になってたんよ」

 

「ア、アタシはミルクと砂糖が有れば…」

 

「おっけー、それなら大丈夫だ」

 

「うわ、アイリええ匂いしてきたで!」

 

「ヒナはしゃぎすぎ…、ほんと変わってないんだから」

 

「そういや2人は付き合い長いんです?」

 

「んー?まぁこうやって中学生の一人旅任されるくらいには付き合い長いなぁ」

 

「…うん、ヒナの踊りにアタシが伴奏したのが最初。もう5年前」

 

「で、ヒナコさんが気に入っちゃったってわけですか?」

 

「ようわかってんなー、せやで。そん時はちょくちょく会う事もあったけどウチがこっち来てしもたからそれこそ休みの時期くらいしか無かったんよ」

 

「うん…まぁ、そんなとこ」

 

「ま、その辺は食べながらでいいでしょ。美味いんだからここのカレーは」

 

「ったく、よくわかってるじゃねぇか。コイツの言う通りカレーには自信あるぞ。コーヒーは食後だ。ミルクと砂糖はコイツに持って来させてくれ」

 

「りょーかいっす」

 

「うわ、むちゃむちゃ美味しそうやん」

 

「いい匂い」

 

「じゃ「「いただきまーす」」」

 

 

 

 

 

 

 




伴アイリ、デビサバ2のキャラでヒナコとユニット組んで音楽やってた世界も有る


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新しい後輩ちゃんが出来るかな?

10万字超えたので初投稿です


「「美味しい」」

 

「だってさ、マスター」

 

「ふんっ、当然だ」

 

「いや、ホンマ美味しいわぁ」

 

「うん、とっても美味しい…です」

 

「でしょう?」

 

「相変わらずええ趣味してんなぁリョウスケは、ホンマどっから情報持ってくるんやろか」

 

「ここは偶々ですかね?去年の春休み色々と探検してたもんですから」

 

「ちょっとヒナ、このカレーが美味しいのは分かるけどアタシの話きいてよ!」

 

「よっしゃ、アイリもええ感じにリョウスケに遠慮なくなってきたからちょうどええやろ」

 

「そうですね、大分話しやすくなったんじゃないですか?」

 

「むー、確かにこの人にも話しやすくなったけど……。1番アタシが気になってるのって結局ヒナと入れ違いになるって事なの!」

 

「まぁ、結局知らないところに飛び込んで寮生活って事になるかぁ。そこが1番の不安ポイントだね」

 

「うん…」

 

「その辺はヒナコさんはどうだったんです?今でこそ部活でワイワイやってますけど一年の頃とか」

 

「ウチかぁ。アイリに言うのもなんやけど最初全然馴染めへんかったんやで。まぁそれでもかまへんってつもりしてたんやけどな。結局は日舞の留学みたいなもんでこっち来てたわけやし、そんなもん関係あるかっ!って気持ちで飛び込んできたからなぁ」

 

「その辺のバイタリティは人それぞれですからねぇ。詳しくないんですけど、月光館って専門科があるわけじゃないんですよね?」

 

「学校でやる事は普通やけど桐条グループが持ってはる設備で練習できるんよ。そこの先生が結構な有名処集まっててなぁ」

 

「そーいや、変な所で実はすごい経歴の教師とかいますもんね。ウチの顧問とかほんとどっから拾ってきたってレベルですし。んで、アイリちゃんもそういう形で誘われてらって事?」

 

「うん…、桐条がスポンサーになってる所で先生に教えてもらう事ができるって言われてるの」

 

「なるほど。じゃあヒナコさん、寮生活とか学校生活楽しかったですか?」

 

「せやなぁ、ウチは楽しかったな。兄弟もおらんかったし共同生活ってのもあんまり体験できひんかった事やしなぁ。何より寮生活は朝がゆっくりなのは助かったなぁ。学校生活も普通に楽しい高校生してたつもりやけど最近の部活がなんやかんや1番楽しかったで」

 

「その1番楽しい部活の一員で光栄ですなぁ」

 

「そこ!そこなんだけど、なんでヒナ部活、それも合気道やってるの?」

 

「ウチかて最初は興味なかったんやけど2年の時に偶々顧問の先生の立ち振る舞いとか立たずまい見てしもてなぁ、コレはウチの踊りに必要やって思ったからなんやのよ」

 

「ふーん?でも確かにお正月に見たヒナの踊りキレとか良くなってたかも…」

 

「まぁコレに関しては相性が良かったのが大っきいなぁ。あとその繋がりでリョウスケの親戚にメンタルトレーニングも教えてもろたのもあるけど」

 

「へぇー、そんなことがあったんだ」

 

「へー、ヒナコさんでもそんなに変わったんですか」

 

「まぁ、あんまり部員の前で披露する事も無いからなぁ。ウチの実感で言うならあんまり身体のラインにでぇへん筋肉が付いた分今までやったらブレてしまう所をイメージ通りできるようなったんやで」

 

「うん、新年の舞は本当に凄かった」

 

「なんや、そないストレートに言われると照れてまうわ」

 

「結論としてですけどヒナコさんは環境変えて後悔してますか?」

 

「全くしてへん。むしろ決断したあの時のウチを全力で褒めてやりたいくらいやで」

 

「補足するとだけど、自分の周囲の環境をガラッと変えることができるのって若いウチの方が簡単なんだよね。もちろん変えた事による影響が全部プラスの作用になるかどうかは分からないけどね」

 

「せやなぁ、そりゃ苦労もしたけど今やったらええ経験やったって笑えるで」

 

「ヒナ…。うん、わかった。アタシも飛び込んでみる」

 

「ホンマか!これでアイリも後輩かー」

 

「寮生活の事とかはヒナコさんなら教えられるしいいんじゃないです?」

 

「勉強やったらリョウスケに任せたら問題無いな」

 

「普通の学校やったら間違いなくトップクラスやで。残念ながら変な先生多いからちょっと苦労しとるみたいやけど」

 

「保健体育のテストでフロイト心理学は流石に苦労しましたねぇ…」

 

「何それ…?」

 

「まぁその辺は試験対策で部活のメンツと一緒に色々と見てやるさ」

 

「うーん、コレは合気道部のお母ちゃんやなぁ」

 

「え、俺そんな事言われてんすか?」

 

「いやぁ、これから卒業までに広めたろかなって思ってるだけやで?」

 

「うわぁ、コレは何言っても無駄な奴ですね…」

 

「あははは!不安になってたアタシが馬鹿みたいじゃないのよ。ヒナポッポ見てたら安心しちゃった。ねぇ、せっかく東京来たんだから色々と案内しなさいよね」

 

「おいおい、まだコーヒー飲んでねぇだろ。嬢ちゃん焦っちゃいけねぇよ。ほら、ちょっと食休みした方が歩きやすくもなるってんだ」

 

「そうそう、ここはカレー食べたあとコーヒー飲まなきゃ締められないくらいですから」

 

「せやで、アイリあんた一息ついとき」

 

「う、うう、わかったわよ…」

 

 

 

どうやらルブランはお気に召して頂けたようで連れてきた身としては何よりだな。それにアイリちゃんも内心は来るつもりだったんだろうけどだれも知らないって不安が解消されて初めて会った時より随分表情も軽くなったように見えるな。

 

 

 

 

「アイリちゃんはヒナコさんが泊めるんでしょ?じゃあ夕方に学校着くようなルート考えます?それとも晩ご飯は外ですか?」

 

「せやで部屋泊める手続きもしてるし休みの日やから食事もでんから外行くつもりやったけど?」

 

「何だったらなんか作りましょうか?有り合わせでリクエストに応えられる範囲でいいならですけど」

 

「ええのん?さっすがオカンや!」

 

「それ、引っ張るんですね…」

 

「ふふ、アイツ見たい。けどアイツよりよっぽどお喋りだけど」

 

「アイツ?」

 

「うん、地元の友達でジュンゴって言うの。ヒナと同い年なんだけどちょっと変なヤツなのよ。いいヤツなんだけど事あるごとに茶碗蒸し出してくる無口なヤツなの」

 

「…そりゃ変わった人だな」

 

「お母ちゃん、ウチ和食がええなぁ」

 

「はいはい、関西風のうどんにでもしましょうかね。こっちのツユ真っ黒で慣れてないでしょ?」

 

「ええな!真っ黒なツユはいつまでも慣れへんから楽しみやわぁ」

 

「お口に合えばいいですけどねぇ」

 

 

 

なんだかんだ満足して頂けたようでホクホクした顔でヒナコさんは帰っていった。流石にピアノやってる子がウチの部活に入るってことは無いだろうけどここまで事情知ったら先輩やりますかね。

 

 

…しかしジュンゴ君ね。そりゃ居るよなぁ。けど何というかヤバそうなアプリも流行ってないし幸せそうで何よりだよ。あの世界もポラリスによって分岐したりしてたから救われる世界が一つくらいあってもいいよな。

 




ジュンゴ君はそんなに絡む予定は無いです


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やっぱり基礎動作を疎かにしてはいけない

ギリギリまで時間かかったのは初投稿です


「ふむ、リョウスケ刀術の方はどうじゃ?」

 

「へっ?」

 

「何を呆けておる。いくつか型を習ったんじゃろう?」

 

「は、はい。と言ってもまだ素振りしかしてませんよ?」

 

「一度見せてみい。と言っても剣道部に借りてこいとは言いにくいの。明日いつも使うてる木刀を持ってくるんじゃ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

言われた通り翌日俺は木刀を持って通学した。芝原やダイチさんはともかくやり取りを知らない人からは剣道部に移籍したのかとしきりに聞かれてしまった。なんでだ?

 

 

 

「それが訓練用か…ふむ、中々良く出来とるの。重さや間合いもそっくりに作ってある。しかしいきなりこれから始めるのはお主でなければ酷であったろうに…」

 

「そうなんですか?」

 

「考えてもみい、竹刀も木刀も本物の刀に比べて扱いやすく出来ておる。それに比べてコレは重心までそっくりに作ってある故、扱い易いとは言い難いんじゃ」

 

「そう、ですね。まだまだ振るだけでもブレます」

 

「しかも葛葉流の刀術の型をやってるのじゃろ?噂でしか聞いたことがないんじゃが、葛葉流は対人を想定していないのではないかとな。そんな流派の型であるならば一筋縄ではいかんことは容易に想像できるわい」

 

「では一通り振ってみます」

 

 

ライゴウ爺さんに教わった通りの型を振ってみる。どうしても短銃術と組み合わせて使う型が出てきてしまい、バランスを崩してしまったがどうだろう?

 

 

「ふむ、思ってた以上に特殊な型じゃのぉ。確かに対人を想定しておらぬと言われるだけはある…」

 

「なあなぁ、リョウスケ。何やんのかなぁって思ったら向こうで習ってたヤツ古牧先生に見せてんのか?」

 

「そうですよ、昨日から言われてたんですよ」

 

「でもさー、確かに剣道部の連中とは全然違うんだな」

 

「まぁそれらしいのもあるんですけどね?ベースが古流な分急所狙いが露骨だったりするんですよ」

 

「なんだよそれ、おっかねぇなぁ…」

 

「そりゃ日本刀でやってた流派ってなるとそうでしょ」

 

「何やえらい事やってんなぁ、始めたてかいな?」

 

「あ、ヒナコさん」

 

「お疲れ様です」

 

「葛葉のお爺ちゃんから教えてもろてる型か?ウチには剣舞あらへんけどキレのいい型は見れるわぁ」

 

「そんな見せるほどのもんでもないですよ?爺さんに見せてもらった時のイメージはまだまだ遠いんですから」

 

「そうなんかぁ、中々目標高いんやねぇ」

 

「いや、そう焦らんでもよい。中々筋がええじゃないか。まだ振り始めて一月ほどと思えば十分じゃよ」

 

「そうなんですか。他人と比べる事も中々出来てないんで自信無かったんですよ」

 

「じゃろうなぁ。古今あらゆる武術が存在しておるがマイナーなモノはトコトンマイナーじゃし、中には門外不出として秘匿されとるモノすらあるからの。そういう儂の古牧流も本質で言えば人に伝えることはほぼ行っておらんからの」

 

「ですよねぇ。古武術って結構危険な技多いですもん。向こうでの稽古も打ち込みはほとんど出来ませんでしたからね」

 

「それも仕方あるまい、マイナー武術の宿命じゃよ…」

 

「うわぁ、おい、リョウスケ、先生が黄昏てるぞ」

 

「あかんで、あの背中。煤けてるやん」

 

「あー、で、先生、俺の素振りで何か気をつけないといけない事ってありますか?」

 

「んー?あぁ、そうじゃったの。型について言える事は儂には無い。葛葉流に詳しくない故に特殊な流派に口出しする事が悪影響をもたらす可能性すらあるからの。儂から言える事はいわゆる基本の太刀筋をなぞる回数を増やす事じゃの。基本動作を行うことによって刀を扱う事に必要な筋肉を鍛えることとなるからの」

 

「なるほど。使う筋肉は使って鍛えろって事ですね。ありがとうございます」

 

「すまんの、結局基本をやれとしか言えんかったわい。まぁ少しくらい自信が付いたら打ち込みの受け役くらいはしてやれるわい」

 

「その時はぜひお願いします」

 

「そう遠くない話になる事を期待しておるぞ」

 

「良かったじゃん。カッコよかったぜ」

 

「でもさぁ、リョウスケって色々やってるからか組み手やるとすっげぇ疲れるんだよなぁ」

 

「あー、せやなぁ。お爺ちゃんの教えってメンタル鍛えた分そっちから揺さぶってくる細かい技多いよなぁ」

 

「確かに…。そのくせフェイントとか全然釣られてくれないからなぁ…。先輩として自信無くしちゃうよ」

 

「いやぁ、俺だって中学まで親父にしごかれてましたけどここまで出来る同年代なんて居ませんでしたよ?それがここ一年でここまできてるってジェラシーっすよ」

 

「なんやの、芝原のジェラシーって気色悪いで」

 

「ほんとだよ」

 

「ひでー先輩たちだ…」

 

「ふぅ、楽しそうっすねぇあんた達は」

 

「おうお疲れさん、そろそろ上がろうぜ」

 

「邪魔したなぁ、片付け終わったらウチもそろそろ帰るわ。お疲れさん」

 

 

 

むぅ、慣れて無いからまたマメが潰れた。やっと重さに慣れてきたんだけどなぁ。おっと、そろそろバレンタインか。別に彼女居るわけでも無いし同級生なんて女子はおろか友人すらほとんどいないからなぁ…。…その分みんなが羨んでるヒナコさんと仲が良いって事で俺の精神衛生を保とう。まぁまだ彼女とか言ってる場合でも無いんだよなぁ。うーん、一応お菓子でも作ってベルベットルームへ遊びに行こうかな?



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バレンタインにテンプレは無かった

本格的に毎日が厳しくなってきてますけど初投稿です


世間でいうなら今日はバレンタイン。通学途中で見かける同じ制服の連中もソワソワしている。…当日にソワソワしたところで何にもならんと思うんだかな。そうこう言ってるウチに学校も目の前だ。え、えぇ…芝原何やってんだよ、ソワソワ通り越して不審者じゃねぇか…。

 

 

「おい、落ち着けバカ」

 

「お、おぅ?お前かよ。俺は普通だ」

 

「嘘つけ、ニワトリみたいな首振りやがって…完全に周囲の目を気にする逃亡犯だったぞ」

 

「うぐっ…、仕方ねーだろ。高校生にもなったなら俺に春だってきても良いじゃねーか!」

 

「そのへんのガッつきっぷりがなぁ…」

 

「テメーはいいよなぁ、どうせ貰えんだろ?」

 

「どうかなぁ。同級生の女子ほとんどしらねぇし、別にどうしても欲しいって程でも無いしな」

 

「ケッ、よゆーのある御人の言う事は違うねぇ」

 

「おーい、お前ら仲良く登校か?って、なんで芝原は荒ぶってんの?」

 

「ダイチさん、あんたも俺の敵か?」

 

「ほら、今日ってバレンタインでしょ?ガッついてるだけですよ」

 

「あー、なるほどねぇ。当日焦ってもどうにもならないんじゃね?」

 

「ですよねぇ」

 

「よゆーのある奴らは敵だ!うおおおー」

 

「あー、行っちゃった…」

 

「…まぁ恥ずかしいヤツが勝手にどっか行ったと言う事で学校行きましょうか」

 

 

勝手に暴走したアイツはほっといて学校についた。ふむ、芝原だけがソワソワしてるのかと思いきや割と男達はみんなあんな感じだったんだな。のはほんとしてるダイチさんと特に気にしてない俺くらいがいつも通りにしてる感じだ。俺としては壁を作ってるつもりもないんだけどどうにも威圧感みたいなのがあるらしくキッカケが無いと話しかけづらい人ナンバーワンとかいうなんとも悲しい称号を得ている。そんな俺にチョコレートを渡す同級生なんてほとんどおらず、同じ女子部員もヒナコさんが高嶺の花らしく仲の良い俺を遠ざけてるフシもあるから望み薄とかいう響きは悲しいね…

 

 

 

「辛気臭いでー、男ども。この合気道部のアイドルが恵んでやろやないか」

 

「良いんだ、俺はヒナコさんから貰えたってだけで勝ち組だ…」

 

「なんやの芝原の奴、どないしたん?」

 

「花の学生生活を夢見て散った男どもですよ」

 

「あー、なるほどなぁ…。そういう割にリョウスケ、アンタは余裕やんか。もらえる予定でもあるんか?」

 

「俺はどーにも取っ付きにくく見えてる上につるんでる人たちも中々のメンツしてるんでハードル上がってるらしいんですよねぇ」

 

「なんやつまらん反応してんなぁ。まぁええか、アンタには世話なったし大っき目の義理を渡しとくわ。サイズ差付けたのは内緒やで」

 

「あ、ありがとうございます。お返し期待しててくださいね」

 

「その辺ソツ無いんがアンタらしいなぁ。まぁ期待しといたるわ」

 

 

ちなみに言っておくが俺とヒナコさんの間に恋愛フラグみたいなモノは今のところ全く無い。というかそもそもヒナコさんに恋愛願望が無いんだよな。まだまだ自分で手一杯らしいんだけどそれを知ってる人はほとんど居ない訳だから寄ってくる男達をバッサリ返り討ちにするから辻斬りヒナコなんて一部界隈では言われてたりするらしい。本人は知らない…と思うけど。

 

 

 

さて、学校も終わって昨日から準備していたチョコケーキでも持ってベルベットルームへと行きますか。あれだけ言われてたのに結局事前告知してない俺もどうかと思うんだがこの手のイベントは伝えるのも面白くないから仕方ないよな…

 

「今日はみんな揃ってるかな?」

 

「おや、本日も修練に?」

 

「いや、世間の暦通り動いてみようと思ってね。バレンタインってやつさ。別に女性が義理で渡すことがあるなら男性が世話になってる人たちに持ってきても不思議じゃないだろう?」

 

「ふふ、その物言い実にリョウスケ様らしいですわね。しかし女性からお菓子を渡すイベントですか、そのようなものが有るとは存じ上げておりませんでした。長姉として不甲斐ないですわ…」

 

「まぁ、俺がこの部屋に通うのもまだまだ続きそうなんだからあんまり気にしないでくれって。それでも今年一年で大分と俗っぽいイベントやっただろう?」

 

「ええ、改めて人の世とは暦とのつながりを感じる一年でしたわ。立ち話もなんですわね、せっかく持ってきていただいたのですからメアリにお茶をお願いいたしましょう」

 

「あぁ、お願い出来るかな?」

 

「すぐ準備致しますわね」

 

 

 

本当にスグ準備は終わった。すげぇ、あっという間に切り分けとか全てのセッティングが終わってる…

 

 

「あー、どうだい?まだそこまで自信ないんだけどね。いま手伝ってる店で教えてもらったケーキのレシピなんだよ」

 

「ウフフ、美味しいですわ。これだけのものをいただけるだけでも十分役得と言えます。ほら、エリザベスたくさん持ってきていただいたのだから落ち着きなさい」

 

「もむもむもむ」

 

「お姉様…はしたないですよ。しかし、随分と芸達者でいらっしゃいますね」

 

「まぁ、元々料理とか作るのも興味あったしなぁ。バイト先もそういう意味じゃ飲食店だし。それに家だと自炊だからさ。身体作りやってる身としては食にもこだわりたくなったら止まんなくなっちゃったんだよね」

 

「ごくん。その恩恵に預かることができるのですから誠に良き客人でございますわね」

 

「調子のよろしいことで。そこまでみんなが気に入ってくれる様ならまたレパートリー増えたら持ってくるさ」

 

 

 

 

よかったよ、随分と気に入ってもらえて。リクエストが飛び交ってるがそれは俺の気分だから全スルーだけど…。もう2月も中頃、ってことはそろそろ卒業式なんだよなぁ、寂しくなるってもんだね。

 



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試運転に試練は付き物

運動不足なので初投稿です


年が明けたと思ったらもう三月だ。そう、卒業式だな。と言っても付き合いの深い人と言えば部の先輩くらいだし、それもヒナコさんが1番多い。それにヒナコさんは卒業してもなんだかんだ付き合いが続きそうなんだよな。とはいえ節目は節目だしなんだかんだでヒナコさんも寂しそうにしてたんだよな。そんなわけで合気道部としても先輩方の送別会としてちょっとした贈り物をみんなで用意した。

 

「卒業おめでとうございます」

 

仮にも部長の座を引き継いだダイチさんを代表に声をかけさせる。あの人やる時はやるんだけど中々腰が重たいのだけがね…

 

「ううっ、ありがとうなぁ」

 

「はは、泣きすぎですよヒナコさん。今生の別れってわけでもないんですし」

 

「せやけど、いざ卒業ってなると…ううっ。ウチかて自分がこんな涙脆いなんて知らんかったわ」

 

「ほら、ヒナコさん泣きすぎて他の人が落ち着いちゃってますから」

 

「薄情な後輩を持ったもんやわ…もうちょい涙を流す乙女を労ってもバチあたらんで?」

 

「でもこんな気安いやり取りも減っちゃうと思うと確かに寂しいですけどねぇ」

 

「ううっ、またそんなこと言う…」

 

 

中々泣き止まないヒナコさんをなんとか宥めつつ送別会を進める。実際ヒナコさんはこっちの大学に進学だしちょくちょく葛葉家にも顔を出すのだから卒業しても俺とヒナコさんが紡いだ縁はむしろより太くなっていくのはまたこれからの話。

 

 

 

そして卒業しない高校生に待っているのは期末試験。相変わらずなヤツもいたが、まぁ問題なくこなした。けれどこれからもトップクラスで居ようと思うならもう少し力を入れないといけないかもしれないけどな。

 

 

そして春休み。合宿自体は部として行わない事になったが何人かは顔を出す予定らしい。中には家族旅行で天城屋旅館に行くついでっていうプランを考えた猛者もいるらしい。もちろん俺も向こうに行くんだが今回は1週間位の予定と短い。外部指導って事で以前届け物をした真ちゃんや冴さんがいた道場に行く用事やルブランのバイトなど東京での予定が多くなってしまった。そんなわけで春休みが始まったら直ぐに出発する予定だったから良い機会かと思ってメメントスでの武器の使用を試してみようと思って提案したんだ。

 

 

「良い機会かと思いますわ。ちょうどまた現世において修練の場へと赴く日も近いのでしょう?ならばそれを前にして試してみるのも頃合いかと」

 

「うん、まだ3ヶ月ほどしか振ってないんだから付け焼き刃も良いところだと思うんだよ。けど実戦で試すことができる上に君たちみたいな信頼できる監督がいるんだからここが冒険時かなって」

 

「そこまで考えてらっしゃるのでしたら…。わかりました、お姉様、本日は私が見届けさせていただきます」

 

「ええ、貴女も気をつけてね、ラヴェンツァ」

 

「頼むよラヴェンツァ。無理はしないつもりだけれど自分じゃわからないからね」

 

「お待ちを、今回は私もついていきます」

 

「エリザベス?なんでまた急に」

 

「いえ、1番立ち会うことの多い私がリョウスケ様が新しいことをなさると言う時こそ見ておく必要を感じました。…それに、何か感じるのです、行った方が良いと。おかしいでしょうか?私がそのような事を申すのは」

 

「…いや、ありがとう。じゃあ2人で頼むよ」

 

 

 

そうして三人でメメントスへと向かう。イセカイナビがあるなら渋谷のような人が集まるところからアクセスできるが俺たちが居たのはベルベットルーム、精神世界と現実世界の狭間の世界。幸いな事にアクセスはベルベットルームから簡単にできた。もっともメメントスとも近いからこそヤルダバオトに一部封じられたりもしたんだが、それはまだ先の話…

 

 

「ではそろそろ使ってみますか?」

 

「ええ、この辺りのシャドウ相手ならば大事はないと思います」

 

「しかし、相変わらず私相手にもそのようなキレで動いて欲しいものですわ」

 

「…一度素晴らしいキレを見せたリョウスケ様を沈めたのはお姉様ですよ?」

 

「…あの時のようなマネは致しません」

 

 

 

ふぅ、なんか聞こえるがそろそろ使い所か。次のシャドウに使うか。

 

 

 

!!来たっ。コイツはジャックフロストじゃないか。ははっ、お誂え向きだな。

 

「ヒーホー!オマエナンダホ??オモチャニシテヤルホー!!!」

 

「やれるもんならやってみな、行くぞっ、煉獄撃・刃!!」

 

「ヒー、ホー、イタイホー」

 

「まだまだ行くぞっ、煉獄撃・壊!」

 

「ウワー、ヤラレタホー…」

 

「はあっ、はあっ、……ふぅーーー」

 

「お見事です」

 

「ラヴェンツァ、甘やかしてはいけません。斬撃の一つ一つは研鑽の結果がでておられるようでした。しかし、今の技は連撃こそが要と見ました。その繋がりはまだまだ甘いですわ」

 

「はは、厳しいな、さすがはエリザベスだ。確かに繋ぐ意識は疎かだった。ありがとう。もう少し見てもらっても良いかな?」

 

「ええ、構いません。忘れてはなりませんでしたね、ネーミング、グッドでございます。分かっておられますわね、やはり技の名前を叫ぶあたり…」

 

「…やめてくれ、その辺の分析を…!!」

 

「「!!」」

 

「これは…シャドウ?いえ、その割には随分と反応がはっきりしてるな」

 

「ギャハハ!!ナンダオメーラ、ウマソーナエサガアルイテルジャネーカ!!」

 

「コイツは…シャドウじゃない、悪魔だ!」

 

「「!!」」

 

「オ?オレサマノコトワカッテルジャネーカ、オレサマハ『ガキ』!!オボエルヒツヨウハネーゼ、クッテヤルカラナ!!」

 

 

そりゃあそうか、こんな空間シャドウ以外出てきてもおかしくないわな。悪魔もシャドウも人の心が作り出した存在に違いはない。しかもここ メメントスはヒトが生み出すマガツヒで満ちてるって考え方も十分できるんだ…、ま、その辺の考察は後だ。今はコイツを倒すだけ!

 

 

『……その覚悟やよし』




初エンカ…悪魔…やっぱガキでしょ(様式美)
ないガキパトは(ない)です


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スタンドと言うよりも憑依合体

寒かったり暖かかったりややこしいので初投稿です


「とりあえずは仕掛ける!」

 

「イッテェェェ!!ヤリヤガッタナ!!」

 

「ぐうっ…」

 

「お姉様、如何致しますか?」

 

「待ちなさい、悪魔とは言えそれほど格の高いモノでは無いようですし、何よりリョウスケ様が仕掛けたという事はあの悪魔を知っているやもしれません」

 

 

 

こりゃあこの神木の木刀で本当に良かったな。ガキになんとかダメージが入ってる。けれどシャドウとは存在格が全然違うぞ…。シャドウのジャックフロストなら終わってたくらいは入れてるのにまだ平気そうだ…

 

「チィーッ、エサノクセニウットウシイゼ。コレデモクラエ、アギッ!!」

 

「ぐっ、中々効く。けど流石にエリザベス程じゃないな」

 

「ええ、当たり前です。降って湧いた困難ではありますが乗り越えて見せてくださるのでしょう?」

 

「お姉様っ!!」

 

「心配無用だ、ラヴェンツァ、そこまで言われちゃ引き下がるわけにはいかないってなぁ!!」

 

ドクンッ

 

「カハッ」

 

「ナンダァ?ヤッパリオレサマガコワクナッタカ?」

 

『その覚悟ぞ。ワレを宿し、ワレを使役するのならばその覚悟を持ってしてワレを呼ぶが良い」

 

「…そうか、そういう事だったのか。要するに俺には足りないものがまだまだ有ったんだ。サンキュー、アスラおう…。お前の初陣にしちゃ役不足だけどな…」

 

今ここに呼びださん、三面六臂の天魔の王よ!汝の前に立ち塞がるものを打倒せよ!アスラおう!!!

 

『ふふふ、その覚悟しかと受け取った。汝よワレを使いこなしてみせよ』

 

「リョウスケ様と召喚したペルソナが重なっている…?」

 

「お姉様でもご存知無い…、一体なにが?」

 

「なるほど、すっげー力だな。けれどこれは長時間なんて無理だ…。速攻で決めるぞ、羅刹龍転斬!!!」

 

「ウッギャアア……」

 

「はぁ、はぁ、ぐうっ。スマン、アスラおう引いてくれるか?」

 

『ふむ、まだまだワレを使うには身体が足りておらんか。精進せい、さもなくば汝は運命に呑まれるサダメからは逃れられぬぞ』

 

「あぁ、わかってるよ…」

 

「リョウスケ様!!」

 

「いけません、お姉様、直ぐにベルベットルームまで運びましょう!」

 

 

 

 

 

「ううっ、ここは、ベルベットルームか?」

 

「お目覚めになられたようですね」

 

「ああ、ガキを倒した後アスラおうを引っ込めたらぶっ倒れたってのは覚えてるんだが…」

 

「ええ、きちんと説明致します。けれど、出来るだけ妹たちには感謝の意を示してやってください。あの子達はリョウスケ様に無理をさせすぎたのでは無いかと悔やんでおりますの…」

 

「ああ、もちろん。無茶をしたのは俺の意思だよ。俺こそ2人が見ててくれたからこそできた無茶だってのもわかってるつもりさ。謝るのは俺だよ、俺が甘えただけなのに2人が悔やむ必要は無いからな」

 

マーガレットさんから説明を受けたところ、どうやらペルソナ召喚とアスラおうが強すぎたが故にとんでもない負担が身体にかかったらしくガキを倒してすぐに気を失ってしまっていたらしい。この辺は記憶通りだった。ここからは俺の戦いを見ていた2人による所見なんだが、俺のペルソナ召喚は普通のソレとはちょっと違うらしい。外から見ていた2人によると俺が召喚したアスラおうは随分と自律してるように見えたらしい。それにペルソナ使いがなんらかのトリガーによって現れたペルソナ

に技を使わせたりするらしい。しかし、俺の場合は俺の身体に取り憑いて戦っているように見えたんだとさ。…それこそ守護霊のように見えたとか。

 

 

「なるほど、そりゃあ普通じゃ無いらしいな…。それはそうと、エリザベス、ラヴェンツァ、すまなかった。後ろに2人がいるからって無茶をしすぎたよ、心配かけて悪かった。それにありがとう。2人のおかげでそこまで大事ないみたいだし…」

 

「いえ、私も悪いのです…。リョウスケ様ならばと思いラヴェンツァの介入を引き止めてしまいました…」

 

「それは不甲斐なかった俺のせいだな…」

 

「むぅ、それでは私の気が…」

 

「ほらエリザベスもリョウスケ様も落ち着きなさい、話が進みませんわ。とにかく、リョウスケ様はペルソナ召喚の反動が如何程かはっきりするまで使用しないこと、エリザベスはメメントスでの監督には当面の間不適格であることとします」

 

 

「…わかりましたわ、確かに監督者としては不適格な振る舞いでしたわね」

 

「そうだな、覚悟が足りないとはアスラ王に言われたんだが、足りないのはまだまだある…。事態が動くまで余裕がある風に思ってたけど、そりゃ、イレギュラーだってあるよな。そこの想定も甘かったよ。けど実際に悪魔と対面してわかった、多分俺がメメントスみたいにマガツヒで満たされた場所へ行くと悪魔を寄せる。感覚だけど間違いない」

 

「と、なりますとお姉様、しばらくは避けた方がよろしいでしょうか?」

 

「…いえ、避けた事によって現世にどのような影響が出てしまうかは計り知れないでしょう。こうなってしまってはリョウスケ様には悪魔を祓っていただいた方が良いかもしれません。低級の内に狩っておかないともしもの事が起きた場合我らでもどうにもならない可能性すら出て参ります」

 

「ははは、葛葉の家に産まれた俺が役目を解かれたこの世界で人知れず役目を果たすのか。確かに俺が適任に間違い無いな。むしろ俺以外に居ない。そのためにもまだまだ強くならないといけないな。ちょうど良かった、葛葉の道場へはまたすぐ行くんだ。まだまだ教えてもらってない技だってあるんだ。それにアスラおうだって俺に応えてくれるようになった。って事は今までやってきた事は無駄じゃ無い、まだまだやる事がたくさんあるじゃ無いか」

 

 

 

ふふ、葛葉ライドウになんとも言えないシンパシーを感じていたと思ったら居ない世界で彼のようなことをやる事になるとはわからんもんだね。とりあえずは身体を休めて爺さんの元へと行きますかね




というわけでリョウスケくんプチ覚醒です。とはいえリスクはまだまだ無くなりません。ペルソナのステータス風に言うと召喚してる時間ごとにSPが減ります。マガツヒが濃いほど速度はマシになります。


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物が多いところから探すのは辛い

眠たいので初投稿です


さて、なんだかんだあの道場に初めて来たのも一年前か。早かったのやら長かったのやら…。昨日ちょっと無茶をしたからなぁ。まぁ身体は問題ないし起きてから瞑想したら少し体調も良くなったからアスラおうの召喚で負荷がかかってるのは精神面が大きそうだな。

 

 

そういえば今回は俺が早めに行く事もあってあんまり部員とスケジュールがあわなかったんだよな。一応ダイチさんとヒナコさんとはかぶる日が有るから良い日が有れば雪子ちゃん達と花見行きたいもんだけど…ちょっと早いかなぁ?…まぁなんとかなることを期待しよう。

 

 

「おう、リョウスケが来ると世間は休みなんじゃなぁと思えるくらいにはなったぞ」

 

「ははは、この一年長期休暇には毎回来てましたからね」

 

「それにしてもまだ誰も来らんのかの?お前さんが来る時大概誰かおると思ったんじゃが」

 

「一応この間の冬休みは最初俺だけでしたよ?まぁ、部活として合宿は無いんですけど自主練とか温泉旅行のついでにここに来る人はいるみたいですよ」

 

「かっかっかっ、随分とこんな辺鄙なところを気に入ってもろうたようじゃの。嬉しい限りじゃわい。さてと荷物を置いて道場へ来なさい、何かあったのじゃろう?」

 

 

やっぱ爺さんに隠し事は無理かぁ。この人ホントはこっそり悪魔祓いやってんじゃ無いのか?…ギリギリ伝聞で現役世代を見たことがある可能性ならあるのか?だとしたらなんか残ってたりしないのかねぇ?それかお役目だって葛葉家だけでやるのは土台無理な話なんだし、同じような境遇の家へのツテがあるかも知れないな。まずは現状説明と相談かな?

 

「えっと、どう言えばいいのか…、そう、ライゴウ師範から教わった葛葉流は本来の役割を果たしました」

 

「ふむ…、魔なる物は神秘が薄れたとは言え無くなったわけでは無かったか…。それも当然よな、本来魔なる物とは人の心が生み出した物、無くなるわけも有るまいか。むしろ東京のように人が集まる場ならばさもありなん…」

 

「…そうですね。出会ったところは人の集合無意識と欲望が渦巻いた物を具現化したような場でしたので人の歪んだ想いが募ると魔なる物…俺は悪魔と呼んでいますが、いわゆる伝承に合ったような悪魔が現れる事もあるのだと思います」

 

「…なるほど、科学が神秘を解き明かしても人の心が変わらなければそれらを糧にしとる、その悪魔は現れるのも道理よな。ふぅ、ワシとしては技を残しておいて良かったと思うべきか技を使わなければならない事に悲しむべきか…」

 

「俺は抗う術を教えてもらえて感謝してますよ?運命って言葉はあんまり好きじゃ無いんですけど、技を教えてもらった俺が悪魔と対峙するのには意味があると思うんですよ。それにアレを放置する事はよろしくなさそうでしたからね…」

 

「因果なもんじゃのぉ、危険も覚悟の上か…」

 

「ええ、むしろ不十分な意識で相対する方がよっぽど危険です。かと言って自己犠牲なんてするつもりは微塵もないですから」

 

「覚悟は覚悟でも生きる覚悟か。ならばよかろう」

 

「はい、まだ教えていただけますか?」

 

「うむ、もう少し段階を踏むつもりをしておったが少々詰め込むとしようかの。型を知ってるだけの儂よりも型を使う事ができるリョウスケの方が習得も早いはずじゃ。後は…蔵をひっくり返せばなにかあるやも知れんが…」

 

「蔵なんて…そりゃありますか。けど、どうしたんです?」

 

「あの蔵をひっくり返すのはホネじゃぞ…それこそ2、3日じゃ終わりそうにもないんじゃ…」

 

「まぁ、時間をかけてやっていきますよ。幸い焦るほどの事態は起きてませんし」

 

「ならば良いがの。鍵ならばいつでも言うてくれ。時間がある時にいつでもやればよかろう。それでは今日は瞑想して仕舞いにしようかの」

 

 

 

 

あれから3日間、みっちり刀術の型を見せてもらった。念のために持ってきたビデオカメラが役に立ったよ。爺さんは照れてたけどな。見せてもらった型を実際に繋げるのは俺の感覚らしい。後は触りだけ槍術を見せてもらったし、実際に立ち会ってみた。すっごいやりにくいんだなリーチの差って。とにかく懐が遠い上に飛び込んだとしても待ち構えてるのが無手術だからタチが悪いよ。そして今日はダイチさんとヒナコさんが来る日。昼には来るらしいからそれまでは蔵の家探しでもしてみようかな。

 

 

えーっと、蔵ってここか。ご開帳ってね…ってうわぁ、これは2、3日どころじゃないな。物が多すぎてどこから手をつけていいのか分からんぞ…。うーん、手を出してもひとブロックくらいかな…手前からやるか、奥からやるか…。よし、ここはあえて奥のブロックに手を出してみよう。とりあえず暗いし外に出してみるか……。んー、この辺は掛け軸とか古い着物とかか。良くも悪くも昔のものってだけで特別な感じはしないなぁ。この箱はなんだ?おお!これは…お役目の記録のまとめか?し、しかし読めないぞ…草書体はマジでわからん…。とりあえず爺さんのところに持っていってみる分として置いておこう。あとは、どうだろう…可能性があるってだけで一つ一つ見ていくのか…気が遠くなるな。



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楽しむ為には準備が大事

いつのまにか50日続いていたので初投稿です


結局書物が入っていた箱を爺さんに見せたところ残念ながら爺さんでも読む事は難しいとのこと。しかし、コピーを取れば持って帰っても構わないとの事なので帰るまでにせこせこ作業だ。…古牧先生ならひょっとすると読める可能性十分にあるよな。なんとなく古文書作ったり集めたりしてそうだし。あの人なら見せても構わらない気がする。

 

 

そうこうしてる間に2人が来た。時間としては昼過ぎなので今日は軽いウォーミングアップと瞑想をして練習を終えたらみんなで旅館に行こうと思う。なんとびっくりヒナコさんが免許を取ったから使ってない時なら車を貸してくれる事となったので夜に旅館へ行きやすくなった。せっかく夜に温泉入ったのに汗かいて戻ってくるのは不毛な気がしてたからこういう時は良いね。というわけでお花見の打ち合わせも兼ねて夕方には行く事としましょうか。

 

 

 

 

「車案外大丈夫でしたね」

 

「ほんまか?良かったわぁ、人乗せるんはじめてでなぁ、ちょっと緊張しててん」

 

「えぇ…ヒナコさん、俺たちで練習しないでくださいよぉ…」

 

「ほらほら、そんな事置いといてお風呂行こかー。ほんでお花見の話するんやろ?」

 

「ええ、一応俺は俺でリサーチしておいたんですけどそれはあの子達が見つけてなかった時用のとっておきって事で」

 

「相変わらず気配り上手な後輩だなぁ…」

 

「ま、汗流してロビーで集合しましょうよ」

 

 

 

 

 

「お兄さん、久しぶり!あのね、雪子たちお花見の穴場教えてもらったよ!」

 

「ホントかい?そこはどうやって行くの?」

 

「商店街の近くにある川の土手を歩いて行くとあるの」

 

「なるほど、じゃあ千枝ちゃんと完二君には連絡しておいてくれるかい?明日の10時に…そうだなぁ、商店街のバス停に集合しようか」

 

「うん!そう言えばヒナコお姉さんとダイチくんは?」

 

「あれ?ヒナコさんはまだお風呂じゃない?ダイチさんは…さっきまで居たんだけどな」

 

「悪い悪い、ついついボーッとしちゃっててさ」

 

「あ、雪子ちゃん久しぶりやなぁ。元気してたか?」

 

「噂をすればなんとやらってかな。2人とも来たじゃないの」

 

「うふふ、ホントだ。ヒナコお姉さんも久しぶり」

 

「雪子ちゃん、そのスポットまでは遠いかい?」

 

「うーんと、ちょっと歩くって聞いたよ」

 

「じゃあ明日はその場所までピクニックも兼ねてって事でどうだい?」

 

「うん!楽しみだね、ヒナコお姉さん!…そういえばお花見のご飯はどうするの?」

 

「ふふ、それは明日のお楽しみさ。ま、心配ご無用ってね」

 

「まーたなんか企んでるんやなぁ。雪子ちゃんはこんな捻くれたらあかんで?」

 

「ほんとほんと、素直が1番ですよねヒナコさん」

 

「こうやって後輩を追い詰めて行くのはパワハラって言うんですよ先輩方…。さてと、もうすぐ真っ暗になりますし不慣れな運転で怖い思いする前に帰りましょうかね」

 

「すぐそうやって切り返すからなぁこの子は…」

 

「ほらほら、ヒナコさん初心者で夜の山道はハードル高いですよ?」

 

「くー、正論やわ、ほな今日は帰ろか。また明日やで雪子ちゃん」

 

「はーい、楽しみにしてるね!」

 

 

 

 

 

道場へともどった俺たちは明日の昼ご飯をどうするか相談していた。相談って言っても俺たちが弁当を作るのは決まっていて中身の相談だ。幸いお重や弁当箱に使える物ならいくらでもあるからどうとでもなるんだが…

 

「せっかくなんで3人が別々のを作って持っていきましょうか?」

 

「それもおもろいやん。初めてここで合宿してからウチも自炊には力入れてるんやで?」

 

「おおぃ、2人とも乗り気なのかよぉ…」

 

「まあ、もちろん勝負ってわけでも無いですしなんなら手伝いますから」

 

「出来る男は違うな…けど俺だって結構やるようになったんだ、頑張ってみるよ」

 

「よう言うた!ほな被らへんよう話しよか」

 

「高校生が3人と小学生が3人…うち2人はよく食べるんで、まぁ普通に6人前って考えても良いでしょ」

 

「せやなぁ、ご飯だけでも結構な量なりそうやし、ちょっと歩くんやろ?当たり前やけど汁の無い奴やないとな」

 

「弁当作るのって色々考えないといけないんだなぁ…帰ったら母さんに感謝しようっと」

 

「ダイチ、心掛けはええけどアンタはなんか食べたいもんあるか?」

 

「お花見ですよねぇ、唐揚げとかハンバーグみたいな王道でいいんじゃないです?」

 

「…せやなぁ、奇を衒う必要もあらへんか。ほな、あとは卵焼きとご飯はおにぎりといなり寿司もええんちゃう?」

 

「良いですねぇ。せっかく唐揚げで油使うならもう一つ何か…、大学いもでもデザートに作りますか。芋つながりであとはポテトサラダも。汁っけ無いですし色味あっていいですよ」

 

「おお、ええなぁ。結構まとまってきたんやない?」

 

「いいじゃんいいじゃん、俺でも作れそうなのあるし。で、リョウスケいつから作んの?」

 

「そりゃ明日の朝からでしょ。どうせ朝練で早く起きるし集合時間までは十分時間もありますよ。けど初めてで心配ですし今のうちにに仕込む物だけパパッとやっときましょうか。材料だって買わないといけないですし」

 

「よっしゃ、ほなウチは買いもん行ってくるで。ダイチ付いてき、荷物持ちや」

 

「はーい。なんか買い足すものあるならリョウスケ連絡くれよな」

 

「りょーかいですよ。じゃ、お願いしますね」

 

 

 

さてと明日は晴れそうだし、弁当も上手いこといけばいいけどな。悪魔関連でやらなきゃならんこともなくは無いんだろうけどそう言うのは日常生活を謳歌した上での話だと思うんだよな。自己犠牲でやれる事って結局身の丈以上の成果も得られんだろうし。それにこうして人と交友を深める事が大事ってあの連中にも言われてるしな。うん、まずは私生活の充実を優先すべきだな。

 



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季節のイベントはハズレない

書いてるとお花見したくなったので初投稿です


「いやぁ、お弁当を朝から作るって大変ですねぇ」

 

「なんやのんいきなり。まぁ実際にやってみて大変やなぁって思ったけどさ。せやけど夜のうちに揚げ物とか作っておいてほんま正解やったな」

 

「だなぁ。思ったよりもバタバタしちゃって大変だったよ…」

 

「ま、その分お昼は美味しくいただきましょうか。そろそろいい時間ですから宗一さんに送ってもらわないと。ついでが有るから楽できましたねぇ」

 

「ホンマやで。昨日の申し出助かったわ」

 

 

 

そう、おれたちは苦労しながらも弁当を作り切った。思ってたより苦戦してしまったが送ってくれるという宗一さんの助けによって余裕を持って作りきる事ができて何よりだ。…ちょっと多いかもしれないのはご愛嬌かな?余ったらオヤツに食べてもいいだろ。

 

 

「じゃあ宗一さんこの辺で」

 

「あいよー、いやぁ、今日の昼ごはんは君たちが多めに作ったお弁当にご相伴だよ。うーん、この年で女子の手作りお弁当を食べられるとは思わなかったねぇ」

 

「いややわぁ、そんな大層なもんやありませんって。車借りたり送ってもろたりえらいありがとうございます」

 

「ははは、これくらいでお礼を言ってもらえるなら安いもんさ。じゃ楽しんでおいでー」

 

「ありがとうございましたー」

 

「…相変わらずだなぁ宗一さん」

 

「ホントだよ。俺のこと見えてないんじゃないか?」

 

「そのへん気にしたら無駄っすよダイチさん」

 

「そろそろ時間やけどもう来てるやろか」

 

「あ、雪子、おにーさんたち来たよ!」

 

「ホントだ、みんなおはよう」

 

「う、うーっす」

 

「お、みんな揃ってるね。じゃあ雪子ちゃん、千枝ちゃん、案内してもらえるかな?」

 

「「はーい」」

 

「あれ、俺は何すればいいんすか?」

 

「完二くんはほら、こっちの荷物持ちだよ。ジュースも買ってあるからお願いするよ」

 

「うっす!」

 

 

3人とも随分と楽しみにしていてくれたみたいで道中ははしゃぎっぱなしだった。ま、花より団子ってところらしいんだけど。天気も小春日和で実に気持ちいいもんだよ。

 

 

 

「あ、そろそろだよ」

 

「ほら、もう着くんだから中身何入ってるか教えてくれてもいいでしょ〜」

 

「うう、やっと食えるぜ」

 

「お弁当作っただけでもこんなに楽しみにしてくれるんだなぁ」

 

「作った側にすれば本望でしょ?」

 

「せやなぁ、これで美味しいって言われたらもう悔いはないで」

 

「おー、君たち本当にいい場所じゃないの。ちょっと不便な分空いてるからゆったり場所を取れるし騒いでも大丈夫そうだし。ほら、まずはシートを引かないと。とりあえずは荷物置いて喉を潤そうか」

 

 

 

1時間ほど歩いたせいでちょうどよくお腹を空かせた腹ペコドモがはしゃいでいる。ま、俺たちもお腹を空かせてるのはおんなじだしちょっと早いけど食べ始めようかな?

 

 

「仕方ないですね、もう食べ始めましょうか。じゃないとあの子達落ち着かないでしょ」

 

「せやなぁ、ウチもあの子らの元気舐めとったわ…」

 

「まあまあ、俺たちだって食べたいのは事実なんだし2人とも素直に食べようぜー」

 

「そうしましょうか。おーい、食べ始めるぞー」

 

「ええ!おにーさん抜け駆けはズルイよ!」

 

「そっすよ!オレなんて楽しみでしかたなかったんっすよ!!」

 

「ま、お兄さんお姉さんたちで丹精込めて作ったお弁当だ、はち切れるまで食べるがいいさ」

 

「うわー!!肉がいっぱい!唐揚げとハンバーグ美味しそー!」

 

「うわぁ、お稲荷さんだ!」

 

「うまそー!!ポテトサラダ好きなんスよ」

 

「こらこら、アンタら食べる前に一言あるやろ?」

 

「「「いただきまーす」」」

 

 

 

すごい勢いで弁当箱から中身が減って行く。「うまーい」「ウメー!!」「美味しい!」たしかに歩いてお腹を空かせはしたけれどここまでとは思わなかったな。作りすぎた心配ももはや杞憂でしかないぞ。

 

「いやぁ、あれだ、自分たちの努力が報われるのが目に見えるっていいな」

 

「ダイチもこれを機にお母さんにご飯作ったりしたらええやん」

 

「ふふ、そろそろ甘いものも出しておきますか」

 

「お、味見した時でも美味しかったアレか?」

 

「出来立てより冷まして馴染んだ方が美味しいんやなぁ」

 

「うわぁ、大学いも!」

 

「おにーさん達のおかげでアタシは満足です!」

 

「オレはまだまだ食えるっす!!」

 

「まあまあ、君らは退屈かも知れないけど食べたらちょっとゆっくり景色でも見ようか。ほら、お花見に来ただろう?」

 

「せやなぁ、賑やかなんもええけどまったりしたのもええなぁ」

 

「ま、飽きたらボール持ってきたしそれ使ってもいいしな」

 

 

 

あれだけ作った弁当も帰る頃には空っぽになった。食べ終わってからはみんなが思い思いの事をして小春日和の中過ごす。まったりおしゃべりもすればボールを使って遊んだりもして中々に充実した会になったんじゃないかな?…そろそろ帰らないと暗くなるな。名残惜しいけどこの位で帰る方がいい思い出になる気がするな。

 

 

「じゃあそろそろ帰ろうか。またこっから歩かないといけないしね」

 

「せやなぁ。あんまり遅くなってもあかんし春って言うても陽が落ちたら寒くもなるしな」

 

「こういうのも楽しいモンだったな、リョウスケ、またなんか考えてくれよー」

 

「まぁ、タイミング次第でしょ。つってもダイチさんは受験生になるんですからそんなに余裕ないかも知れないですよ?」

 

「うぐ…、考えないようにしてたのに…」

 

「まあ、たまにやったらええんちゃう?…っと片付けも終わったし君らも帰るでー。

 

「「「はーい」」」

 

「ま、こっちに来ること有ればまた色々思いつくでしょ」

 

「おにーさん、また誘ってよね!その時のお弁当は…肉をお願いするよ!今日はごちそうさまでした」

 

「千枝ったらいつでも肉って言うんだから…。でも私も楽しかったよ。ごちそうさまでした」

 

「うっす、ごちそうさまでしたっす。こういうワイワイするのもイイっすね」

 

 

 

帰り道もあれが美味しかっただの、次はこんな事がしたいだの話題が尽きることもなく荷物も軽くなったことも相まってあっという間にバス停まで帰ってこれた。そこで千枝ちゃんと完二くんとは別れ、俺たちは旅館までバスで向かう。

 

 

 

「今日は雪子の事ありがとうね、あの子随分楽しみにしてたし楽しかったのかずっと思い出話してくれるのよ」

 

「いやぁ、いい場所教えてほしいってお願いしたのはこっちですからね」

 

「もう東京戻っちゃうんでしょ?今度は夏休みまで来ないと思うと寂しくなるわね」

 

「あはは、来れる時は出来るだけ時間取れる時の方が都合もいいですからねぇ。そのかわりこの間お世話になった連中は何人か家族で来るっていってましたよ」

 

「あら、宣伝までやってくれるなんて本当助かるわ。またアルバイトもよろしくね、向こう帰っても元気でやるのよ」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いしますよ。それでは」

 

 

 

別れを告げ道場へと帰る。俺はもう明日には戻る予定をしてるんだがいつもは見送る立場だっただけにヒナコさんやダイチさんがまだいる中帰る違和感がすごい。今回は短かったけれどその分濃い収穫もあったしな。この書物のコピー、なんとか読めたらいいんだけど。



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良くも悪くもイメージ通り

まだまだ寒いので初投稿です


「じゃあお先に帰りますね。なんだか違和感ありますけどもう高校でヒナコさんとは会わないんですねぇ」

 

「せやなぁ、まぁアンタの事やから色々なとこで会う気もしてるで。ホンマ一年間の付き合いとは思われへんな。それにアイリの事を頼むし、それこそあの子とのつながりで顔合わすこともありそうやしな」

 

「およ?アイリって誰っすか?」

 

「あー、ウチの知り合いで来年からアンタらの後輩になる生意気やけど可愛い子やで。たまたま東京案内する時リョウスケに出会してそのまま一緒に相談乗ってもろたからそのまま世話係を任せたんや」

 

「へぇー、そんな事あったんすねぇ。その子も合気道やるんですか?」

 

「いいや、多分やらへんと思うけど親元離れてあの学校来るから知ってる先輩捕まえといた方がええやろと思ったんや。話聞いたからにはダイチも頼むで」

 

「ほーい、イイっすよ。…なんか話ズレちゃったけど、リョウスケお疲れさん。なんかお前をここで見送る側になるの違和感あるなぁ」

 

「あはは、そうですよね、いっつもホスト役やってましたから。ま、こんな事が慣れてくれば俺が卒業してもここが合宿先として使えそうになっていいんじゃないですかね?」

 

「それもそうだな、リョウスケ居なくなったら使えなくなるって勿体ないもん」

 

「せやなぁ、まだ見ぬ後輩達のためにも評価稼いどくわ。ほなリョウスケおつかれさん」

 

「爺さんも色々とお世話になりました。蔵はまた時間取れる時にガッツリやりますよ」

 

「おう、気をつけてな。儂も何かあったら連絡するわい。なんなら蔵の手伝いはキョウジにもさせればよいんじゃよ。探偵として依頼を出して仕舞えばええじゃろ」

 

「おー、それも手ですね。ではまた」

 

 

 

 

みんなに別れを告げ東京へと帰る。道すがら録画した型を見てイメージトレーニングをしていたらあっという間に着いていた。とりあえず今日は身体を休めることにしよう……

 

 

「おう、悪ぃな手伝ってもらってよ。ちょっと知り合いに子供の面倒みてくれって頼まれてな、お前がいた方が色々都合良さそうだと思ってな」

 

「いや、俺こそ結構自由にバイトさせてもらってましたからそういう時くらいは手伝いますよ」

 

「そう言ってくれると助かるぜ。昼くらいにくるんだ。まぁ、ちょっと人見知りすらかも知れねぇけど仲良くしてやってくれ」

 

「ちなみにどんな子なんです?」

 

「一色双葉つって6歳だったかそんくらいの女の子だ。母親とは長い付き合いでな、お前さんがどハマりしてるカレーのレシピだってその母親の協力があったからだ。仕事でちょっと忙しくなって面倒みててくれってことらしい」

 

「ええ!マジっすか、その時点で好感度無茶苦茶高いっすよ。うーん、でも子供来るってわかったら色々と準備出来たんですけどねぇ…。まぁ、人見知りって言うならその辺は焦らないでおきますか」

 

「へぇ、結構面倒見いいんだなお前。ま、頼むわ」

 

 

 

 

「ゴメンゴメン、総二郎遅くなったわね。本当なら私もカレー食べてから行きたかったんだけど時間ないから双葉の事お願いするわ…。双葉、お母さんまたちょっと行ってくるわね。今度は一緒にカレー食べましょ」

 

「…うん。いってらっしゃい…」

 

「なんだ、若葉のヤツ忙しないったらありゃしねぇ、もう行っちまった…。あー、双葉、カレー食うか?」

 

「そうじろー、カレー食べたい。…ヒッ!」

 

「あー、コイツは最近雇ったバイトだ。ほら、お前もなんか言えよ」

 

「こんにちは、双葉ちゃん」

 

「ヒッ!(…よ、ヨロシク)」

 

「おいおい、双葉を怖がらせてるんじゃねーぞ」

 

「マスター…そりゃあねーっすよ…。ま、こんなおっか…頼れる保護者がいるなら双葉ちゃんも安心だろ」

 

「うるせーぞ。ったくこんな事なら頼まなきゃよかったか?」

 

「うーん、マスターが別人のようだ…。ほら双葉ちゃん、カレーだよ。マスターの特製カレー美味しいよね」

 

「お、おうっ!そうじろうのカレーは世界一だぞ!」

 

「そうだよなぁ、本当美味しいよな」

 

「オマエ、そうじろうのカレーが解るなんて中々見どころあるじゃないか」

 

「そりゃこのカレーを作りたくてバイトしてるくらいだからな」

 

「むむっ!!オマエスパイなのか⁉︎そうじろうの味は渡さんぞ!」

 

「ふふ、この俺を止められるかな?」

 

「私の目が黒いうちは好きにはさせんぞー!」

 

「おいおい、遊んでねぇでカレー食えよ双葉、冷めちまうぞ」

 

「おお!しまった私とした事が。そうじろう、いただきまーす」

 

 

 

「…へっ、やるじゃねぇか。双葉を初対面であれだけやりとりできるなんてよ」

 

「あはは、まぁ一歩目のラインさえ越えてしまえば仲良くなれそうですよ」

 

「ま、俺も店やってると目の届くところにしか置いてやれないからよ、頼むわ」

 

 

 

「お、おい!スパイ!オマエ名前は?」

 

「スパイの疑いを晴らすのは遠そうだな…、俺は葛葉リョウスケ。よろしくな双葉ちゃん」

 

「…うん、よろしく。…ま、まだスパイの事は信じてやらないからな!」

 

「ふふ、気長に信頼を得るとするさ。…そうだなぁ、君の趣味が少しでも解ると好感度アップイベントでも起きそうな気もするんだけどな」

 

「ムムム!私の好感度を上げてスパイ活動をしやすくするつもりか、卑怯だぞ!」

 

「ふふふ、アルバイトをしている高校生の財力を舐めるなよ?」

 

「くっ、これは強敵だ…」

 

「なんだ、お前らすっかり仲良くなっちまったのか。双葉のヤツ俺には全然慣れなかったくせに…」

 

「む!このスパイよりもそうじろうの好感度の方が上だぞ!」

 

「だそうですよ、ポッと出じゃ胃袋まで掴んだマスターにゃ敵いませんよ」

 

「…ったく、あたりめーだ。ほら今日はコイツもいるからよ、やりたがってた屋根裏の探検でも行ってこい」

 

「ほんとか!仕方ない、いくぞスパイ!スパイなら探検に使えそうだしな。そうじろう、ごちそうさま!」

 

「なんだよ、随分とはしゃいでるじゃねぇか。結構散らかってるからよ、怪我しねぇよう見ててやってくれ」

 

「りょーかいですよっと」

 

「こらー、スパイ、オマエが遅れてどーする!」

 

 

はは、随分と元気じゃないか。…やっぱり母親の死は重すぎるだろ。その時に予兆でも有ればなんとかしてやれるだろうか…

 

「はいはい、今行くよ」

 

 

縁を紡ぐことで運命を変える事ができるかも知れないってことかも知れない…

 

 




双葉ちゃんは6歳です。地頭がいいので良くも悪くもp5の時とあんまり変わらないです


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信頼度を稼ぐことは焦ってはいけない

通算UAが2万いったので初投稿です


「ふふふ、ここを双葉の秘密基地とする!…って、あれ、あんまり物が無いぞ!」

 

「あー、マスターに頼まれてたまに片付けしてるから…」

 

「ぐぬぬ、やるなスパイ。私の秘密基地計画を防ぐとは…」

 

「まぁ、散らかってない分自分でカスタマイズ出来ると思えるでしょ?」

 

「おお!その手があったかー、やるなスパイ」

 

「そうすると探検はどうする?」

 

「うーむ、今日は何にも装備がない…。スパイ、なんかないのかー?」

 

「そうだなぁ、マスターに聞いてすぐそこのジャンク屋で探してみるかい?」

 

「むむ…、それも悪くない。いや、今日は少し話をしたい。あの…その、不思議なんだ、私他人が苦手なんだけど、オマエとはしゃ、喋れるんだ…」

 

「他人が苦手ねぇ…」

 

「だから…あんまり…と、友達とかいないんだ」

 

「なるほど、難しい相談だ。なんせ俺も同年代の友達は少ないからな。どうにも近寄り難い雰囲気をしているらしい」

 

「そ、そうだったのか。やはりスパイは孤独な存在なんだな…」

 

「その言い方はやめなさい。少ないのは同級生ばっかりで上にも下にも友達はいるから」

 

「そ、そうか。でも、どうしたら良いのかな?私はもうすぐ小学生になるんだ、そこでも友達が出来なかったら…お母さんに心配かけたくないんだ…」

 

「時に双葉ちゃんや、君に得意な物や趣味はあるかい?」

 

「ムム、私はアニメやゲーム、いわゆるサブカルなら任せてくれ」

 

「うーん、小学生には少し早すぎるな…」

 

「なぜだ⁉︎フェザーマンシリーズならポージングからカット割りまで語れるぞ⁉︎」

 

「そうだなぁ、残念ながら世の中の小学生が戦隊モノを見て得る感想は『カッコイイ』で終わるんだよ」

 

「し、知らなかった…」

 

「それであんまり同年代と遊んでもあんまり楽しくなかっただろう?そうだなぁ、またこうしてマスターが預かる事があるなら出かけたりしてみようか?」

 

「む、むう。いきなりハードモードじゃないか?」

 

「いや、さっき言ったまずはルブラン周辺くらいだよ。あんまり遠くはマスターが許さないさ」

 

「…考えておく」

 

「お前ら、ちょっと降りてこい。おやつ出してやるぞー」

 

「お、マスターが呼んでるな。さ、手を洗っておやつ食べに行こうか」

 

「…うん」

 

 

 

思ってたよりも屋根裏で話をしていたらしく普段なら上がってる時間になっていたらしい。今日は客足もそこまでだし双葉の面倒を見たいこともあって早めに店を閉めるらしい。多少は仲良くなれたんだろうけど気安い関係とまではまだまだいかないようだったから気長にだな。

 

 

 

 

 

今日は久々にメメントスでの訓練予定。と言っても変わった事なんてそんなに多くない。せいぜい付け焼き刃の技を教え込まれたくらいな物だ。

 

「本日は私とマーガレットお姉様で監督させていただきます。以前のように悪魔がいつ来てもよろしい様にメアリからいくつか情報を得ておきました。それによりますと概ねメメントスに現れるシャドウと同じ対処法でよろしいようです。しかし、やはりと言いますか、シャドウに比べて存在格が高く強力で悪意をもって襲ってくる事が多いようです」

 

「ええ、たしかに強敵ではありますが強力な分捕捉しやすいため早めの対処は可能であると見ています。これは我々からの依頼と思っていただいて構いません、悪魔を見かけ倒せるようなら倒してしまってくださいますか?」

 

「言われなくてもさ。…ま、ヤバそうなら後回しにするかもしれないけど。それにまだ見つけて無いから説得力もないんだけど、封印することが出来るかもしれない」

 

「なるほど、脅威を取り除いたという点ではそれでも構いません。さてと、そろそろ始めるといたしましょう。そう言えば私が監督するのは久しぶりですわね、ラヴェンツァ、あなたは周囲の警戒を。私が監督を務めますわ」

 

「わかりましたお姉様。それではリョウスケ様、お気をつけて」

 

「っしゃあ!」

 

 

 

ま、そうぽんぽんエンカウントする様ならもっと大変なことになってるわけで。今日のところは普通にシャドウを狩っただけだったな。一つできる様になったことといえば、短銃術のお試しだ。ふと思いついてエアガンをキョウジおじさんから借りてみたんだ。あの人曰くまだまだちゃちいおもちゃレベルらしいんだけど、撃てるわけなんだよな。それも短銃術として見た分明らかにエフェクト掛かった一発が出たのは驚いたよ。これも要検証だよ。

 

 

そうそう、爺さんのとこでとった書物のコピーの一部で読めるところがあった。それはそれで問題なんだがな。『霊剣荒鷹』『光刀無形』『神刀滅却』『舞蹴拾参号』『妖刀村雨』とか刀の目録や『封魔管』『タクヒの杖』みたいな道具の目録だった奴があった。これがあるって事は現物があるかもしれない。なんせお役目を終えたとはいえ技は残してきたんだ。その他戦う術を消し去った時取り返しがつかなくなることを恐れていた可能性は十分にあるしな。問題はこの載ってる各種品目がどこにあるかはサッパリなんだよな…。あと読めてない部分もやっぱりいろんな人に聞いて回ることはよした方が良さそうだしなぁ、行き詰まったら古牧先生に聞いてみるか…。

 

 

……あとなんだっけなぁ、この武器の名前。なんでこんなに聞いたことあるんだ?




分かる人には分かる霊剣たちです。リョウスケ君の手元に来るかは決めてません


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たまに振り返るのも悪くない

睡眠サイクルがズタズタなので初投稿です


…しまったな、すっかり予定が空いてしまった。バイトも無いしメメントスも行ったばっかりで日を空ける様にも言われてるしな。そう言えば俺がオレとして動き始めたのもそろそろ一年か。去年は班目の個展とか鴨志田のニュースとか見て混乱したっけ。早かったなぁ。ふむ、気が滅入ってるわけでなんでも無いけど今日は一日アテも無くブラブラしようかな。

 

 

ふむ、いい天気だなぁ、ベルベットルームのメンツを花見に連れて行ってやりたいんだがいい場所が無いんだよなぁ…流石に人混みにあの人数はちょっとどうなるか分からないし…。まぁ今年じゃなくても何とかなるか…。

 

 

ちょっと飲み物でも買って座るか。俺ももうすぐ高2か。一応勉強もしてるしデンパのおかげで大学入試はそこまで苦労も無さそうなんだけどどーすっかなぁ。認知訶学の方向?AI?この世界じゃ厄ネタだけど面白いんだろなぁ…。全く関係無いけどやたらと教師をすすめられるのはなぜだ?

 

 

そう言えば俺が悪魔狩りを続けるとしたら1人じゃ厳しくなるよな…。ヤベーレベルの奴らなんて下手すりゃこっちの世界に顕現するもんなぁ。…そういやシャドウと悪魔の違いってなんだろうか。この間マーガレットさんの説明の中じゃ存在格が違うって話だったよな。その割に同じ姿をした奴等もいるし。人が感じる不安を自己投影したのがシャドウで漠然とした不安を与えてきた存在が悪魔とか?結局は人の感情から生み出されたモノであることは共通してんのか…。分からんなぁ、でもアレだよな、シャドウはやっぱり人の意識から生まれてるからベースの人間が持つ本性みたいな性格だけど悪魔は色んな個性があるよな…。ふーむ、体形として分類するならペルソナのラスボス級の連中は悪魔だったのかもしれんね。ということはやはり現実世界に影響を及ぼす事が出来るレベルの存在を悪魔と考えるべきならやっぱり格の話になるのか…

 

 

 

考え事をしながら歩いてたら腹減ったな。なんか食べよう。…カレーもいいけどやっぱりラーメンも旨い。

 

 

 

ふー、色々考えてプラプラするだけの日ってあんまり無かったしこんな日を作るのも悪くないな。

 

…もう少し戦闘面について考えようかな。俺のスタイルは現状は刀術や無手術のインファイトがメインで、後先考えなかったらアスラおうでぶっ放しによるメガンテ戦法があるけどソロで動いてる俺に取れる事ではないな。あとはペルソナ解放で身体能力無理やりあげる方法も同じく回復手段が乏しすぎる現状使いにくいことこの上ないんだよな…。

 

 

ふーむ、俺の課題はアスラおう以外のペルソナもしくは悪魔を使役する事で割と何とかなる…か?アウトレンジは短銃術の方でもなんとかならなくは無いからやっぱりそこだよなぁ。そーいやワイルドの素質はあるって言われてたっけ?今んとこまだ新しいペルソナを使えそうになるキャパシティありそうな感じ全然無いんだよなぁ…。となると使役の方向かぁ。一応目録に封魔管って見つけたから蔵にあるかもしれないんだよな…。つってもそれがあっても使い方なんて独学でなんとかなるのかなぁ?その辺を聞くなら同じくお役目を任ぜられていた別の家探した方が早いのかねぇ?

 

 

んー、っと?ほぉ、日本の仏像展ねぇ。なんとなく気になるし色々とみてみようか。

 

 

 

 

改めて仏像を見たんだけど実際に不思議な力を体感した身としてはなんだろうか、荘厳な雰囲気ってのを改めて感じるね。…まぁひょっとしたら話しかけられたりするんじゃないかとか言うデンパな期待がないわけじゃなかったんだけど、そんなことあったらちょっとどころじゃ無いくらいヤバイよなぁ。…でも悪魔が現世に干渉しやすくなって同名の依代があったら誰だって利用するよな、俺だってそーするさ。なんせ現世との結び付きが強い上に信仰をたっぷり溜めた極上の依代だもんな…。神として善性だったとしてもそれが人の善性と一致するかは別の話だしなぁ…。やっぱり知った以上は悪魔祓いをやれるだけやった方が良さそうだな…

 

 

 

そして出口に差し掛かるとき物販として展示仏が本来納められているお寺のお守りが陳列されているのを目にした。

 

 

「こういうお守りとか破魔矢って割と効果発揮するんだよなぁ…。そうか、神聖なモノとして認知されてるから本当にそんな効果を発揮してもおかしくないのか」

 

ちょっと色々と試してみようかな…。なんか打開策とまではいかないまでも新しい切り口になるかもしれない。

 

 

 

 

 

そろそろ夕方かぁ、一日歩き通して色々考えた日になったなぁ。振り返るにはいい日だったな。試して見たいことも見つかったし、こんな日も悪くない。さて、俺の高2はどんな一年になるのかねぇ…

 



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縁同士を繋ぐ事もある

ちょっと短いので初投稿です


今日は学校の退寮日らしい。大学生とはいえ節約できるところはしたいとの事で俺はヒナコさんに呼び出された。とはいえ新居はまだ入る事が出来ないので荷物の置き場を探していたみたいでウチ…というかおじさんの雑居ビルなら使っても良いと許可を得たので運び込んでいる。

 

「ほんま助かったわ。荷物預けるのも安くないからなぁ。キョウジさんもありがとうございます」

 

「使えるとこは使ってくださいよ。まぁ俺だって間借りしてる身ですんで偉そうに言えた義理でもないんですけど」

 

「なぁに、気にすんな。空いてるスペースは有効に使えばいいさ。それもこんなべっぴんさんからお礼言われるなら文句もねーさ。それよりリョウスケよぉ、こんな子知り合いなら早く連れてこいよなぁ」

 

「…だから連れてこないんですよ?」

 

「青春しやがってよぉ」

 

「うーん、おじさんも道場くれば色々高校生と交流もてますよ?」

 

「そうですねぇ、ウチも随分お爺さんにお世話なってますわぁ」

 

「くっそ、俺もジジイんとこ顔出しときゃよかったぜ…。まぁ、いいや、リョウスケ、ヒナコちゃんの荷物見といてやれよ、俺はちょっと出かけるからよ」

 

「はーい」

 

「ありがとうございましたー」

 

「ってことらしいんで引き取りはそんなに焦んなくても大丈夫ですね」

 

「なんやえらいオモロい人やなぁ。ちょっとうさんくさいけど。ほなよろしく頼むわ。また入居んときもよろしくやで。せや、お礼にご飯でもいこか」

 

「お、いいですねぇ。お任せしますよ」

 

 

 

 

「そういやアイリちゃんはいつこっちに?」

 

「入寮の日はたしか4月から入学式までってなってるはずやから、そろそろやと思うで。ひょっとして手伝ってあげるんか?」

 

「いや、まぁ顔合わせた事のある人間いた方がいいでしょ?女子寮に入らなくても手伝える事はありますし」

 

「さすがは部のオカンやなぁ」

 

「まだそれ引っ張るんですか」

 

「まぁ、アイリから連絡あったらウチから知らせるわ。出来るだけはよ知らせるから良かったら頼むわな」

 

 

 

食事を終えたところで以前いった道場が近いことを思い出したのでヒナコさんを誘って見たところ行ってみたい様なので2人で向かう。

 

「ここですよ。前古牧先生にお遣い頼まれた先の道場です。ヒナコさんも大学で部活とかサークルほどやるつもり無くても身体動かすなら道場知って置いた方がいいでしょ?」

 

「そっか、そんな事考えてなかったわ。卒業生がいつまでも高校の道場入り浸るわけにもいかんもんなぁ、こう言うところ知っとくに越した事あらへんやんか」

 

「んじゃ入りましょうか。失礼します!」

 

 

お遣いの事を覚えていてくれたようでここの師範にヒナコさんは紹介でき、練習の場として使う事を快諾してもらえた。

 

 

「いやぁ、ええ先生やなぁ。古牧先生と付き合いあるんが不思議な位やんか」

 

「あの人もよくわかんないですもんねぇ」

 

「こんにちわー、っとお兄さんお久しぶりです!」

 

「…あんた行く先々でちびっ子の面倒見てるからオカン言われるんやで?」

 

「??お姉さんもお客さんですか?」

 

「あぁ、ゴメンな。ウチは九条ヒナコ。ヒナコお姉ちゃんって呼んでくれたらええよ。たまにここの道場にお世話ならからよろしくやね。かわいい先輩ちゃん」

 

「せ、先輩ですか⁉︎が、頑張ります!新島真7歳です!」

 

「ウフフ、真ちゃんよろしくな」

 

「そういえば真ちゃん、お姉さんは一緒じゃないのかい?」

 

「えっと、お姉ちゃんは最近一緒じゃないんです。大学のお勉強が忙しいみたいで…」

 

「ほぉか、せやけど真ちゃん一人でしっかりしてるやんか。ここに来てるときはウチと仲良くしたってや」

 

「はい!」

 

「ヒナコさんも面倒見の点じゃ変わんないでしょうに」

 

「なんやろなぁ、アンタが目ぇかける子って庇護欲?そそられるんよねぇ」

 

「ヒナコお姉さん、一緒に練習しましょう」

 

「お、せやなぁ。真ちゃんとりあえずここの練習教えてくれるか?リョウスケはどないするん?」

 

「俺も軽くやって行きますよ。荷物持ってきて良かったでしょう?」

 

 

この日は言った通り軽く練習しみんなと別れた。…そういやヒナコさん寮も新居はまだなんだよな、どこ泊まるんだろ…。まぁ俺が心配することでもないか。さて、帰って飯でも食べますかね。

 

 

 

そして今日はメメントスで訓練する春休み最後の日。色々と気になった事を試して行きたいね。一応持ってきたのは破魔矢と御守りと御札だ。御守りは阿修羅についてのもの、御札はタケミカヅチにまつわるものが用意できた。どうなるか分からんがとりあえず持ち込んで意見を聞いてみようと思う。

 

 

 

「ふむ、神仏にまつわる品を持ち込んだ訳ですか」

 

「ああ、認知してることによって効果を発揮してるわけだろう?モデルガンだって本物じゃないのに威力を発揮するって事なら何らかの効果を持つんじゃないかなと」

 

「なるほど、人々の認知として魔を祓う力を持つ品々であればメメントスならばというわけですね」

 

「ああ、俺のペルソナ、アスラおうは感覚としてなんだけど降霊術とか御霊降ろしみたいな部分がある気がするんだよ。でないと流石にあそこまで人間やめた動きはまだ出来ないさ」

 

「そういう認識をなさっているのですね。確かに我々が受けた印象と近いかもしれません。しかしそれらの品々は悪魔を寄せてはしまいませんか?」

 

「マーガレットお姉様、私はこの試みは今だからこそやるべきかと思いますわ」

 

「そうかしら?貴方は悪魔と闘ったリョウスケ様を見たのでしょう?いささか危険過ぎはしませんか?」

 

「リョウスケ様として選択肢を増やす為の試みですし、ここがリョウスケ様の言葉を借りれば無理のしどころかと思います」

 

「…わかりました。しかし持ち込む物を制限させていただきます」

 

「まぁ、持ってきたのは手当たり次第だったわけで相談したかったからさ。とりあえずは破魔矢と…阿修羅の御守りにするかな」

 

「いかがです、お姉様?」

 

「その程度ならばよろしいかと。余り荷物を抱えて戦闘を行うというのもよろしくはないですし。では参りましょう」

 

 

 



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不思議アイテムの検証は大事

2月2日が節分なのは初体験なので初投稿です


「ふぅ、大分感覚を掴めてきたような気がするよ」

 

「そうですね、武器を持った間合いに随分と慣れたように見受けられます。そろそろ持ち込みのお試しをなさいますか?」

 

「そうだな、次のシャドウに破魔矢を使ってみようと思うよ」

 

「ラヴェンツァ、悪魔の反応は?」

 

「ございません。今ならちょうどよろしいかと」

 

「よっし、やってみるか!」

 

 

 

 

 

「…これほどまでとは」

 

「これは…メギドの火でしょうか?お姉様のメギドラオン程ではないにせよ似ていますわ」

 

「…あー、なるほど。()()()()使()()()()()()()()()()()()()()を俺がしてるからかもしれない」

 

「おや、確信がお有りでしたか?」

 

「しかし、もうその破魔矢も使えそうにありませんわね」

 

「まぁ、説明が難しいんだけど、破魔矢を使えば万能属性の炎で敵を焼く事ができる物だと俺の中では認識してたみたいだわ」

 

「なるほど、これほどまでなら十分実戦に使えそうですね」

 

「ええ、消耗品を消費するだけでこの威力なら十分ですわね。…お姉様が見てしまうと対抗意識を燃やしそうな気も致しますが…」

 

「まぁいざと言う時に使えそうだな。…ただ、現実的に考えるとだ。一人の人間が破魔矢を大量購入は出来ないからなぁ」

 

「なるほど、その観点はありませんでしたわね」

 

「…まだ悪魔の反応はございません。御守りもお試しになりますか?」

 

「そうだな、試してみるよ」

 

 

 

そう言って俺は御守りを身につけたままシャドウと闘ってみる。感覚としては余り変化は感じないな。使い方が違うのか?今度はアスラおうを召喚してみるか。……ん?少しこの間に比べて負担が少し軽いか?まぁ、召喚中は考えにふける余裕はないんだ、さっさと終わらせて話を聞こう。

 

 

 

「どう見えました、ラヴェンツァ」

 

「…以前見た時とリョウスケ様のペルソナが放つチカラは変わったようには見えませんでした。しかし、それと引き換えに消耗が激しいものでしたが…。見る限りではまだ抑えられているようです。それが持ち込まれた御守りによる効果なのかはまだわかりません。一度召喚を経験された事によって制御を何となく掴んだ事によることかもしれませんし…」

 

「なるほど。では御守りを預かってもう一度試していただきましょうか」

 

 

戻ってくると考察は終わってたらしい。そのまま御守りを預けてもう一度召喚を行った…。

 

 

「ど、どうかねぇ。俺としてはあった方が召喚は楽になってたような気がするんだが。まぁ、この楽さって言うのが残ったキャパシティの違いかもしれないんだけどさ」

 

「以前の初召喚の日から何度か召喚後のお姿を拝見いたしましたが、やはり御守りを所持しているときが1番消耗が少なかった印象ですね。お姉様はいかがですか?」

 

「私はそこまで見比べているわけではありませんが所持自体は別段負担となっているわけでもありませんしよろしいのではないかと思いますわ。それに悪魔を引き寄せる事を懸念しておりましたが今のところ杞憂で済んでおりますし」

 

「なるほどなぁ、やはり御守りとペルソナに関連があるから親和性を高めてくれているくらいの認識でいいのかな?」

 

「現時点で考えられるのはそう言う事でしょう」

 

「ええ、でも私といたしましてはもう少し検証を重ねたいところですわ」

 

「まぁ、まだソロで活動出来るほど自惚れてないからなぁ。そういう意味でもこっちから検証の手伝いをお願いしたいくらいだよ。俺で試しておけば他のベルベットルームの客人にもアドバイスしやすくなるんじゃないか?」

 

「あら、お気遣いありがとうございます。確かに、実際に色々試していただけるとなると私たちとしても助かりますわ」

 

「うふふ、それでは色々と協力していただくことも我々からのワガママとして時折依頼いたします」

 

「ああ、ここまで色々協力してもらってる身だからな、俺だって協力できる事はするさ」

 

「では今日はそろそろ上がりましょう。多少消耗が抑えられてるとはいえそれ以上は厳しいでしょう?」

 

「…お姉様の言う通りでしたね、つい話を優先してしまいました」

 

「ああ、ありがとう。今日もお疲れ様」

 

 

 

この日はこれで訓練と検証を終えた。実際問題俺だって身体張ってるんだ色んな外部ツールによるサポートは正しいだろう。…あとはどんなリスクがあるかなんだな。今のところ不調を訴える事も無ければ違和感もないんだが…。この御守りがそんなに役に立つ…って、あれ?なんか少しほつれてるぞ。ひょっとして御守りも消耗品か、キャパシティみたいな物があるのかもしれない。これはさっき気付かなかったから要報告だな。

 

 

 

ヒナコさんの引っ越しの手伝いも終え、アイリちゃんの手伝いもやって春休みももう終わる。…なんだよ、引っ越しの手伝いばっかしてんな俺。蔵の捜索も含めて荷物運んでばっかりな春休みだったな。今日は入学式なんだが…ふむ、入学生代表の挨拶ねぇ。去年あったっけ?まぁ、そりゃ学校の持ち主のお嬢様が入ってくるなら挨拶もさせるわな。俺の今年一年はどんな年になるんだろうねぇ…

 



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2007年(p3本編2年前)
荒療治も必要かな?


漫画の収集がしたくなってきたので初投稿です


「…ダイチさん、ウチって部活アピールしなくていいんすか?」

 

「ええ?まぁ興味あるやつなら来るんじゃないの?」

 

「うーん、このノーテンキな部長め。一応ある程度部員いなきゃ部費とか問題ならないんですか?」

 

「ウチはエンジョイ系部活だしなぁ。そもそも高校の大会が少ないから仕方ないんだけどさ」

 

「まぁアピールが仲の良さとか楽しい合宿とか雰囲気を謳い出すとどう見てもヤベー企業のアピールにしか見えませんもんね…」

 

「あはは、そうだよなぁ。だから待つくらいでいいんじゃない?それにさ、お前も合気道以外の武術練習増えたよなぁ」

 

「…アレは俺って言うより古牧先生からのオファーなんですけどね…」

 

「ほら、話を聞きに来た新入生達にはちゃんと説明するからいいだろぉ?」

 

「うーん、なんかパフォーマンスでもやります?」

 

「あんまり向いてなくない?芝原ぶん投げるくらいしかないような…。そんなのやってたら怖がられちゃうよ?」

 

「…ですかね」

 

 

俺とダイチさんがうだうだとしているのは新入生を部活に取り込む為の説明会だ。知らない間に副部長と化した俺は部長のダイチさんとここにいるわけだ。アピールポイントを考えるほどブラック企業みたいな謳い文句しか出てこなくて軽い絶望感を覚えてるのが現状だな。

 

 

「あ、いた。アンタ、ヒナが居てもこんな姿見せてるの?」

 

「あ、アイリちゃん。ヒナコさんは黙ってても華やぐチカラがあったからなぁ。…まぁそれに釣られた連中はことごとく辞めてったんだけどさ」

 

「んー?この子誰?ヒナコさんとリョウスケの知り合い?」

 

「ほら、ヒナコさんの知り合いが一年生で来るって言ってたでしょ。伴アイリちゃんですよ」

 

「ほら、シャキッとしなさいよ!」

 

「えっとアイリちゃんは入ってくれるの?」

 

「…アタシは手を怪我するとダメだから」

 

「まぁピアノの為に東京来てるんだもんね、ヒナコさんからも聴いてるから大丈夫だよ」

 

「まぁ、気にしないで部員じゃなくても遊びに来てくれたら良いからさ」

 

「ほら、部長のお墨付きも貰えたから遊びに来なよ。知ってる先輩が居ると色々と便利だぞ。こう見えて試験成績はいいんだからな」

 

「うっ、試験…。分かった、ありがと…」

 

「まぁ、コイツと違って三年生は声かけにくいかもしんないけど気にしないでいいからねー」

 

「んじゃ、アイリちゃんまたねー」

 

「あの子がヒナコさんの知り合いかー。何となく仲良くなれそうな気するなぁ」

 

「でしょ?まぁ良くも悪くも年の差を埋めてくる子ですよ。っと、そこのガタイのいい一年生、どうだい、合気道で身体の使い方学んで見ないかい?」

 

「あ?俺っすか?」

 

「うわぁ、ホントすごいね、いいじゃん、ウチ楽しいよ?」

 

「俺は入るつもりねぇんで、アキお前は?」

 

「俺はボクシング部に決めているぞシンジ」

 

「振られちゃったなぁリョウスケ、あ、あの新入生代表やってたお嬢さんはどうかなぁ。ヒナコさんがやってたんだし入ってくんないかな?」

 

「…あの子アレでフェンシング有名なんですよ?そりゃあフェンシング部入るに決まってんでしょ」

 

「そっかぁ…じゃあしょうがないなぁ」

 

「あのよ、先輩、一年の俺が言うこっちゃねぇけどさ、こんな人が部長の席でいいのかよ?」

 

「分からんぞシンジ、やはり武道の部活なのだから1番強いのが理由かも知れん」

 

「いやいや君たち部員として部長への失礼な言動見過ごせないなぁ」

 

「えぇ、俺じゃなくてリョウスケが噛みつくの?」

 

「いやぁ、パフォーマンス的に丁度いいかなぁって。まぁ、高校生の部活に強くなれるってだけでどれだけ人集められるか知らないですけどね」

 

「おいおい、先輩、勝手な事言ってくれてんじゃねーか」

 

「お、釣れた」

 

「おい、シンジ!」

 

「アキは黙ってろよ、美鶴にも言うんじゃねーぞ」

 

「始めるなら武道場じゃないと。投げられたら危険だよ?」

 

「ああん⁉︎」

 

「(なんかリョウスケがここまで煽んの珍しいね、なんかあんの?)」

 

「(ま、持て余してそうだったなって言うのと、ちょっと思うところ有りましてね)ほら、道場は向こうだよ、心配しなくてもいいさ、場所は俺たちのホームかもしれないけど顧問の先生は武に関しては極めてニュートラルだ。それに気になるならお嬢様も招待すれば良いさ」

 

「…⁉︎シンジ、まだ始めるなよ、美鶴を呼んでくる」

 

「えぇ!すっごい大事にしたのねリョウスケ…。ちなみに自信はあんの?あの一年生おっかなくね?」

 

「一応言っときますけど俺らって良くも悪くも内輪でしか組み手やってないでしょ?教えてもらってる爺さん方がバケモンなのをいい加減自覚してほしいってのもあるんですよね…。まぁ、焚きつけたの俺なんで今回は俺がやりますけど」

 

「ふぅん?」

 

「荒垣!一体何があったんだ、明彦の説明では要領を得んぞ!」

 

「お、オーディエンスも来たねぇ。なぁに俺が招待したのさ、色々と持て余してそうだったからね」

 

「なんじゃい、お前さんにしては随分乱暴じゃの。まぁ、言わんとしとる事はわかるがの」

 

「まぁ体験会だと思ってくれればいいよ…。さぁ!」

 

「舐めてんじゃねーぞ!!」




三年生組のトラウマを回避の為に色々やろうとしたら学園モノの噛ませムーブになった件について…


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小物ムーブが噛ませとは限らない

過去最大にギリギリに初投稿です


思うところがあって荒垣と真田の二人を煽って桐条まで巻き込んだ。この3人にはまつわるトラブルがある。責任を背負い込み過ぎた桐条、自身への過信と状況認識の甘さからくる怪我をした真田、…そして自分の力を制限出来ない事、向き合わない事が悲劇を巻き起こした荒垣。まだ無気力症の患者、つまりはタルタロス由来のシャドウによる被害者も増えてない今テコ入れでも出来たらと思って煽ったんだ。と言っても未だに影時間を認識した事は無いんだけどな。

 

 

「さて、そろそろ準備はいいかい?」

 

「うむ、ワシが見ておるから安心せい、いくら力自慢であろうと素人にやられるような鍛え方はしておらんしの」

 

「なんだよ、センパイだけじゃなくセンコーまで舐めやがって…!!」

 

「シンジだけでなく俺も素人だってのか⁉︎」

 

「何故だ⁉︎何故お前たちはそんなに熱くなっている!先生方も何故煽るんだ!!」

 

「…ま、思うところがあるってだけ今は言わせてもらうさ。おいおい説明も出来ると思うし」

 

「ええい、もう怪我をしても知らんぞ!荒垣、やり過ぎるなよ!!」

 

「ほら、いつでもどうぞ?」

 

「ぶっ潰してやる!」

 

 

うーん、ここまで綺麗に『挑発』が決まるとは思ってなかったな。この子たちがペルソナ使いとしてどの段階に居るかは知らないけど…タルタロスの低層で怪我をするレベルにすら至ってないんだからな。ま、これで油断して被弾でもしたら俺も笑えやしないんだ。キッチリ見せてあげようじゃないの。

 

「始めっ!!」

 

対峙する荒垣くん。構えらしい構えは無いがずいぶんと拳に力が入ってるのは見ててもわかる。古牧先生の掛け声と共に凄い勢いで突っ込んできた。勢いそのままに大振りの右を繰り出してきた…。

 

「おいおい、煽ったとはいえ頭真っ白になり過ぎじゃないかい?」

 

これでも俺たちは合気道部だし、無策で突っ込んでくるとは思わなかったな。大振りの右をいなして袖を掴み体勢を崩す。古牧先生とやってたらこのまま追撃が飛んでくるんだけどな。

 

「ほら、立って。まだ終わりじゃ無いだろ?」

 

「くっそ、つまづいちまっただけだよ!」

 

 

闘牛士さながらに腕を振り回して突っ込んでくる荒垣くんをいなし続けていた。

 

「うわぁ、大丈夫かなぁ、あの一年生君。うけに回ったリョウスケほんと崩せ無いんだよなぁ…」

 

「…なぁ、明彦。私たちは一体何を見せられてるんだ?荒垣とはあんな簡単に手玉に取られるような奴だったか?」

 

「わ、わからん。俺もあんなシンジを見たことない…」

 

「ふぅ、まだやるかい?そろそろ交代してもいいんだよ?」

 

「はぁ、はぁ、てんめぇ!!」

 

「うーん、体力と負けん気はすごいね。けど、やっぱり自分の力に振り回されてる…。っと、やべ、綺麗に入っちゃった」

 

捌き打ちが綺麗にカウンターとして決まっちゃったみたいで荒垣くんは膝から落ちた。

 

「て、てめぇ、ナニモンだよ?」

 

「あ、一瞬トンだせいで落ち着いちゃったかな?まぁ、その辺は一通りやっておいてからだね。ほら、真田くん、ボクシングで有望株ってのを見せておくれよ」

 

「荒垣は少し休んでいるがいい。明彦を侮るなよ?」

 

「シンジの仇は俺がとる!!」

 

「…おい、アキ、俺を勝手に殺すんじゃねぇぞ」

 

 

 

なるほど、真田くんは確かに強そうだな。おお、中々早いステップじゃないの。だけどこちとらタイマンだけは超格上とずーっとやってきてるんだ、彼くらいは完封しないとな!!

 

 

「おいおい、マジかよ、アキでもてんでダメじゃねーか。つか、俺もあんなんだったか?」

 

「あ?先ほどのお前ならばさながら猛る牛の如くだったぞ」

 

「マジかよ、なんだよ、あのセンパイ化けもんかよ…」

 

「あー、後輩くんたち、ウチの部でもあんなに強いのアイツだけだからね?」

 

 

 

なんか言われてるな…。さてと、真田くんもずっと捌いてる割にまだまだ元気だな。なるほど、確かにボクサーとしては強いんだろうな。ま、現状ならこんなもんか。

 

 

「さて、そろそろボクシングならゴングかな?終わらせようじゃないの」

 

「くっ、まだ足りんか…」

 

「うわぁ、リョウスケが悪役みたいになってる…」

 

「明彦までも…」

 

「ふむ、二人ともいい素材じゃの。興味あるなら儂が鍛えてやってもよいぞ?」

 

「ほら、先生、真田くんはボクシング部らしいですから」

 

「むぅ、なら仕方ないのぉ」

 

「おい、桐条。なんだよ、合気道部ってなんかおっかねぇぞ…」

 

「私も知らんぞ!!お父様からは古牧先生は信頼できるとしか聞いておらんのだ!!」

 

 

 

「さ、これで終わりかな」

 

「くっ…、まいった」

 

「さて、お嬢さんはどうする?」

 

「このままでは引き下がれん。しかし私は得物を使わせていただくぞ?」

 

「どうぞどうぞ。そこの先生に対武器も仕込まれてるさ」

 

「…甘くみて怪我をしない事だっ!!!」

 

「有効打の判定は先生お願いしますねっと」

 

 

桐条さんはフェンシング。要するに刺突がメインなんだが…。1番冷静だな。あれだけ挑発かましたらもう少しアツくなるかと思ってたがそれまでに二人とのやり取りを見て冷静になっちゃったかな?それに、センスで言うなら1番あるかもしれんな。

 

「おい、アキ、お前はどうだったんだよ…」

 

「わからん、いいようにやられてた印象しか無い。これでも同じ高校生相手に負ける気なかったんだけどな…」

 

「みろよ、桐条が攻めあぐねてるぞ。俺たちがいいようにやられ過ぎたせいかもな…」

 

 

 

 

 

「ふむ、頃合いかの。ヤメっ!」

 

「くっ、何にも出来なかったか…」

 

「うーん、まあさすがにフェンシング以外の対人戦はちょっとズルかったかな?」

 

「うへー、結局三人抜きかぁ。リョウスケが1番おっかないや」

 

「顧問として言わせてもらうがの、君ら3人を一度負かしてくれんかと頼まれておっての。ちょうど良かったのがあやつよ。まぁ、これから説明があるんじゃが…ワシと志島はこの後行かねばならんからの。反省会で話を聞いてやってくれ」

 

 

 

「ありゃ、先生バラしたんですか?まぁ、悪かったね。と言っても俺は先生にお願いされただけなんだけどね。そうだね、ちょっとモールのファストフードで話でもしようか」

 

 

 

そう、実は悪役ムーブで因縁吹っかけたのは依頼が有ったから。噛ませキャラみたいな絡みしか出来なかったけどなぁ…。事態が飲み込みきれてない3人が復帰するまでもう少し待ってるかね…。



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勢いで先輩ポジに収まろうと頑張る

お酒が入っての初投稿です


「さ、行こうじゃないの。思うところはあると思うけどついてきてくれるかい?」

 

 

「あ?一体なんだっつーんだよ」

 

「わからん、しかしここは従っておこう…。美鶴は大丈夫か?」

 

「あ、ああ。私も一体何がなんだかさっぱりなんだが…」

 

「その辺も含めてこれから話をするのさ。ほら、行くよ」

 

こう言うのは勢いで混乱してるうちに押し切ってしまうに限るな。俺だって脈絡もなしに因縁吹っかけたのは悪いと思ってるんだし…。確か、ビッグバンハンバーガー有ったろ、そこでいいかな。

 

 

 

 

「なあ、明彦、ここでは何を頼めばいいのだ?恥ずかしながらファストフードというものに来たことがなくてな。このコメットバーガーというのが良いのか?」

 

「わからんが、チャレンジと書いてあるんだ、試すか?」

 

「…お前ら、それはやめておけ。そのチャレンジってのは大食いメニューだ」

 

「あれ、みんな決めたかい?ここは結構ボリュームあるから初めてならオーソドックスなセットがいいよ。俺は…今日はグラビティバーガーのメニューにしたかったけど話には向いてないよな…。ま、ダブルにしとくか。そうそう、今日は迷惑かけたからね、会計は俺持ちだから気にしないでいいよー」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「やべぇよ、コメットでも無茶苦茶だぞ…。グラビティとか胃袋もバケモンかよ…」

 

「む、私もご馳走していただけるのか…」

 

「ま、話をする前に食べてからにしよう。君たちもお腹空いただろう?」

 

「あ、ああ。ではいただきます」

 

「ちょっと待った、何かけようとしてんの?」

 

「え?いや、身体を動かしたのでプロテインを摂取しようと思いまして」

 

「…アキ、飯時に合わせて食うもんじゃねえっていつも言ってんだろ」

 

「む、美味い!エクセレント!」

 

「桐条もマイペースかよ…」

 

「ありゃ、案外常識枠は荒垣くんだったんだねぇ。ほら君も世話焼いてないでお食べよ。冷めちゃうよ?」

 

「う、うっす。ってもう食べ切ってる⁉︎」

 

「ん?そりゃチャレンジメニューイケるんだからこのくらいはね?ま、こっちの事は気にしないこった。ほら、2人とも食べ終わっちゃうよ?」

 

「ーーーっ!いただきます!」

 

 

 

「さて、そろそろ食事もひと段落したかな?いやぁ、悪かったね、因縁吹っかけてさ。ざっくりネタバラシはされたけれど、俺は先生に頼まれたわけなんだ。んで先生は…、お嬢さん。貴女の父親に頼まれたってさ」

 

「なっ!お父様がそんな事をするはずがっ!」

 

「まぁ、待ちたまえ、悪意から来るものじゃない。むしろ心配されてたんだからさ。じゃないとこんなネタバラシが許される訳ないでしょ?」

 

「美鶴、とりあえずは落ち着け」

 

「危機感を持って欲しいってのが本意だろうね。実際どうだった?割と完封するくらいのつもりだったんだけど」

 

「確かによぉ、タイマンであれだけ何も出来なかったのは初めてだよ…。アキだってそうじゃねぇか?」

 

「俺は…あの結果に異論はない。強さを求めてはいたんだが敵わない相手がいるものだと思い知ったよ」

 

「むう、私も素手の相手にあそこまで何もできないモノだとは知らなかった…。しかし私はこの程度で折れているようでは…!!」

 

「だから落ち着きなさいって。…あんまりヤバい橋渡るつもりないんだけどなぁ。ズバッといこうか。君たち、普通じゃないよね?」

 

「「「!!」」」

 

「な、なにを急に…」

 

「そ、そうっすよ」

 

「いやぁ、普通の学生がこんなモンぶら下げてうろつかないって」

 

「いつの間に俺のを⁉︎」

 

「んー、ついさっきだね。さすがにお嬢さんまさぐってスルわけにも行かないから荒垣くんのを拝借したんだけど…。オモチャ…で済みそうにないよね?」

 

「悪りぃ、アキ、桐条、ヘマしちまったぜ」

 

「美鶴どうする?」

 

「し、しかし…」

 

「いや、どうするつもりも俺にはないのさ。ま、大方あの学校と無気力症候群との関係性アタリが怪しいと踏んでるんだけど。その様子じゃビンゴかな?」

 

「お、おいこんなとこで話していいのか?」

 

「いやいや、こういう雑踏だからいいのさ。案外周囲の話してなんて聞こうとしてないと耳に入らないモノなのさ」

 

「先輩は「あぁ、葛葉リョウスケだよ。葛葉でもリョウスケでも先輩でも、好きに呼んでおくれ。俺は…今のところ美鶴ちゃんと呼んでおこうか」…コホン。私は構いません。葛葉先輩はどこまでご存知なのですか?」

 

「知ってる事はそこまで多くないさ。けど違和感を感じている部分はある。あ、さすがに外で美鶴ちゃんの家名言うと耳を引くことあるから荒垣くん気をつけてね。それで、違和感なんだけど、美鶴ちゃんの親御さんが気合入れ過ぎなんだよね。自分とこで学校作っちゃうってよっぽどだよ?それに合わせて都市計画するなんてそれこそ正気とは思えないさ。あとは場所だね。わりと曰く付き…とまでは行かないけど気合いれてる割にこの辺って訳ありじゃない。よっぽどこだわるナニカがあるんじゃないのかって思う人間も少なからずいるんじゃないかな?」

 

「……」

 

「それに君たち3人のつながりだよ。友人関係はもちろん自由さ。けど取り合わせとしてはやっぱりきっかけが気になるよね」

 

「ほ、本当に、先輩、貴方は普通の人間なのですか?」

 

「普通ではないかな?」

 

「では、先輩も1日が24時間でない事をご存知で?」

 

「いや、一日は24時間でしょ?…っと真面目に言ってるねぇ」

 

「影時間については知らないか…。ではペルソナという言葉は?」

 

「フロイト心理学かい?詳しく知りたいなら保健体育の江戸川先生に聞くといいさ。ま、授業でも触れるだろうけどね」

 

「くっ…、では本当に何もご存知ではない?」

 

「うーん、逆に質問しちゃって悪いんだけどさ、君たちって悪魔が悪さしてるって知ってる?」

 

「は?悪魔…?シンジはわかるか?」

 

「いやぁ、わかんねぇ」

 

「悪魔…ってお伽話じゃないんでしょうか?」

 

「葛葉家…といってもだいぶ前らしいけど、ウチはその悪魔祓いをやってたんだよねぇ。そんで俺もその仕事…他人からお金貰ってないから仕事ではないかな。まぁとにかく似たような事やってるんだ」

 

「突然何を?質問の意図が読めませんのですが…」

 

「だろう?人は自分の理解が及ばない事を質問されても分からないのさ。しかしさっきのペルソナ…だったね。語源からしてもう1人の自分にまつわるナニカ、つまりは心の擬人化みたいなモノなのかな?」

 

「心の擬人化…言い当て妙ですね。その通りです」

 

「だとするとだ、健全なる精神は健全なる肉体に宿る。この言葉はわかるだろう?どっちも不十分じゃあないかい?足元を疎かにしてるように見えたから一度危機感を持たせてくれって頼みが出てくるんだよ」

 

「そう…なの…でしょうか?」

 

「まぁまだ君たちも高校生になったばっかりだしなぁ。よーし、メンタルトレーニングでも見てあげようか?これでも葛葉流の鍛錬法には詳しいんだ」

 

「えっ!!」

 

「俺は実戦をお願いしたいのだが」

 

「真田くんもまだまだメンタル面が弱いよ。立ち合いなんて早い早い」

 

「ちっ、俺はそんな怠いこといらねーっすよ」

 

「荒垣くん、君こそ必要なんじゃないか?己を律する事が出来ないと持て余した力はどこへ向くかわかんないんだ」

 

「私にはそんな時間は…」

 

「美鶴ちゃん、余裕がないという事だからこそだよ。心を鍛える事でゆとりを持たないと。ゆとりの無い心じゃ視野も狭くなるさ」

 

「俺は構わんのだが…。美鶴とシンジはどうする?」

 

「…たまになら構わねーよ」

 

「そこまで言われるのであれば…」

 

「ま、試してみて合わないならそれでもいいさ。そうだ、連絡先…これでいいや。作っといてよかったわ」

 

「葛葉探偵事務所事務員葛葉リョウスケ…。探偵は家業で?」

 

「うーん、親戚の叔父さんがやってるんでそこの居候なのさ。ただ飯くらいもなんだから色々と手伝っているわけだね。さて、そろそろ解散しようか、いい時間になっちゃたね。その番号なら…出来るだけいつでも出るようにするから」

 

「は、はい」

 

 

 

…混乱してるウチに煙に巻いちゃってごめんよ。悪魔祓いの事はホントだけどね。言って聞かせてなんとかなるトラブルじゃないから勢いとなし崩しでゴリ押すっきゃないね。理事長に目をつけられたらめんどくさいけど…もう遅いかね?




後輩たち「何言ってるか分からんけど強くてオカルトのヤベー人。詐欺師じゃないよね?」


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特訓イベントのフラグをたてる

肩こりが激しいので初投稿です


いやぁ、昨日はやり過ぎちゃったかねぇ。まぁ彼らがどの程度ペルソナの力に目覚めてるかもしらないし桐条グループがどれだけ動いてるかも分かんないからなぁ…。うさんくさい程度で目をつけられなきゃいいんだけど、無理かねぇ?つっても影時間は本当に知らないからなぁ。

 

…多分だけどタルタロスの影響力がまだまだ小さいからなんだと思うんだよなぁ。いわゆるp3の主人公君がこっちの学校に来ることによって活性化すると共にアルカナシャドウを撃破する事による封印の弱まりが影響力を広げるんだと思ってる。相変わらず学校の近くで24時を迎える事が無いから分かんないんだけど認知の世界だとすると影時間の存在っていうのが未だによくわかってないからってのもあんのかなぁ?

 

 

 

 

 

「リョウスケ…あんた何やったの?桐条のお嬢様からあんたの知り合いって事で話をしたいって言われたんだけど!」

 

「あはは、ごめんよアイリちゃん。部活関係…かなぁ?」

 

「うーん、昨日のリョウスケは悪者みたいでイキイキしてたなぁ」

 

「ヒデーなダイチさん。…楽しんでなかったとは言えないけどさ」

 

「結局アンタが悪いんじゃないのよ…」

 

「あ、噂をしてたら…真田くんと荒垣くんだっけ?」

 

「美鶴ちゃんは居ないみたいだね」

 

「ええ、あの人の事もうそんな呼び方してんの?ヒナ…私を任せる奴こんなヤバい人でよかったの?」

 

「あはは、リョウスケさんざん言われてるね。お前にも敵わない人って居たんだなぁ」

 

「やっぱヒデーや。っと、2人来ましたね」

 

「…うーっす」

 

「こんにちは、隣いいですか?」

 

「荒垣くんと真田くんどうぞどうぞ。改めてこっちが部長の志島ダイチさん。こっちは君らの同級生の伴アイリちゃんだよー」

 

「…真次でいいっすよ」

 

「俺もアキでも明彦でも呼んでください」

 

「そうだねぇ。そっちの方がいいか。でー、真次くんは部活入るのかい?明彦くんはボクシングだもんね」

 

「いやぁ、俺は入るつもり無いっす」

 

「そうかい?まぁ身体動かしたくなったら道場来ればいいよ。ですよねぇ部長?」

 

「ええ!俺⁉︎まぁいいと思うけどさぁ」

 

「…ゆるい部活なんすね」

 

「いやいや、コイツだからゆるいで済むんだって。練習とかキツイんだよ?先生と稽古なんてなったら昨日の3人より酷いことになるんだからさ」

 

「え…?」

 

「ま、まさかあの顧問の先生ですか?」

 

「そうだよ。ちなみにリョウスケでもポンポン投げられるよ」

 

「「……」」

 

「…ねぇ、どうしたの2人は」

 

「うーん、手も足も出なかった相手でも敵わない相手がいる現実にショックだったんだろうねぇ」

 

「ふーん、そういうもんなの?」

 

「まぁアイリちゃんだったらコンクールで負けた相手の師匠が無名なのに無茶苦茶上手で負けた相手とは比べものにならないって言われたようなもんじゃない?」

 

「ああ!だったらわかる。けど練習すればいいじゃん」

 

「「…」」

 

「あぁ、2人がさらに落ち込んだー!」

 

「ま、その辺のメンタル面は2人よりアイリちゃんの方がよっぽど立派じゃないすか?」

 

「あーあー、リョウスケがトドメを…」

 

「…おいアキ、言われっぱなしで良いのかよ」

 

「いや、俺もこんなにダメージ負うとは思ってなかった…。フィジカル

だけじゃ足りないのか?」

 

「うーん、結局立派なフィジカル持ってても動かす精神が未熟だとやりようならあるよ。ほら、昨日だって挑発にすぐ乗っただろ?」

 

「「うっ」」

 

「まぁ気になるから来たんだろう。美鶴ちゃんは君たちが見違えるようになれば顔も出しやすくなるさ」

 

「見透かされ過ぎてて言いにくいぜ…」

 

「…昨日の俺たちから変われますか?」

 

「もちろんさ、始めるのに遅いも早いもないよ。…でも道場では瞑想教えるタイミング無いんだよなぁ。そうだ、週末あいてるかい?」

 

「あ、ああ、俺は大丈夫っす。アキ、お前は?」

 

「練習終わって昼からなら大丈夫です」

 

「んー、じゃあ夕方からやろうか。まとめてやった方が効率もいいだろうし」

 

「うっす」

 

「お願いします」

 

「…私もきょーみあるんだけど。ヒナがすっごい集中力ついたのってやっぱりそれよね?」

 

「おお、構わないよ。やり方とコツ教えたら俺は横で素振りでもしてるし…。そうだ、その後ご飯でも連れて行ってあげよう。ほら、アイリちゃんは食べたろ、あのカレー」

 

「…ああ!行きたい!」

 

「え、俺知らないんだけど?」

 

「ダイチさんも行きます?自分の分は出してくださいよ」

 

「流石に年下にご馳走にはならないよー。でも俺も行きたいから来るよ」

 

「君たちも良いかい?」

 

「カレーっすか…。海牛とかじゃダメなんすか?」

 

「混んでるだろう?それに他の店を開拓するのも良いもんさ。…アイリちゃんは2回目だけど。ちなみに惚れ込み過ぎてレシピ教えて欲しさに手伝いをしている店でもある」

 

「リョウスケってほんと色々とやってんなぁ。これで成績もいいんだからずるいよなぁ」

 

「なーに言ってんすか。ダイチさんは今年受験なんですから頑張らないとダメでしょ?」

 

「わかってるんだけどなぁ…」

 

「なんか、思ってたより悪くねー先輩なんだな」

 

「…おいシンジ」

 

「あっはっは、言われてるぞー」

 

「よーし、カレーの代金半分出させてやる」

 

「ちょ、まじかよ!」

 

「いやぁ持つべき者は頼りになる先輩だなぁ、そう思うだろう君たち」

 

「…いやコイツ性格はこれが素よ」

 

「…みてーだな」

 

「そんな言い方してていいのか?仮にも先輩だぞ?」

 

「アキ、オメーが1番失礼な発言してることに気付け…」

 

 

 

…多少他人からの評価というものが気になり始めたところではあるが、なんとか繋がりを作ることが出来たかな?まぁどうなるかはこれからだしな。この程度じゃ何にも変わらんと言われたらそれまでなんだけど、やれる事はやろうじゃないのさ

 



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後輩が出来たんだもの俺だって進歩する

花粉が辛くなってきたので初投稿です


んー、週末は瞑想と型の確認に時間取れそうだしなぁ。今日はベルベットルームに行こうか。そろそろもう少しメメントスにも踏み込んで見たいしそこの相談もしたいんだよな。余裕が出てきた…とか、そういう訳じゃないんだが、流石に得るものとリスクのトレードオフが成立してないんだよな…。ちょっと深く潜る事でも危険である事には違い無いんだが、劇的に危険になるかって言われるとそうでも無いんだよな。あー、でもそうなると成長を見せるって事になるよなぁ…。はぁ、流石にエリザベスとタイマンだよなぁ。そろそろエリザベスに対しても武器使うことも考えないとなぁ。物理でダメージ入れようと思ったらペルソナ憑依させてフルパワーで一撃いれて何とか入るんじゃないか?ってレベルだもんなぁ…。そういう意味じゃ武器使っても誤差にしかならんけど文字通り後先考えない渾身の一撃と大差無いんだからそっちで手数稼ぐ方がまだ良いよな…。ま、格ゲーならネタ枠にもならん弱キャラとガチガチのハイスペックキャラとのマッチアップだしな、他で埋めなきゃ話にならんよ。

 

そろそろ解読の方にも手を出したいんだけどなぁ。やっぱりとりあえず古牧先生からだよな。変にポロニアンモールの骨董品屋とか桐条の息が掛かってそうな所は遠慮したいしな…

 

 

 

 

 

「くーっ、まだまだ足りないよなぁ。いやぁキッツイよ。どれだけ攻めてもアドバンテージにもなりゃしないんだから…」

 

「ふふん、まだまだ。で、ございます」

 

「あらあら、エリザベスったら久しぶりに出番が来て張り切ってるわね」

 

「おお、姉上のドヤ顔という奴ですね!グホッ…」

 

「テオ兄様…、余計なことをおっしゃるから」

 

「久しぶりに声を聞いたと思ったらテオさん…。まぁいいや、ある意味いつも通りだし。で、エリザベスどうだった?」

 

「はっきり申しまして、驚きです。高々一年ちょっとで我々力を司る者たちとの()()()()()()()()のですから。とはいえ、我々姉妹すべてが面倒を見ているのですからこのくらいやってもらわなければなりませんけれども」

 

「それで少し深層へと向かいたいとの事でしたが…、良いでしょう。とは言え貴方も我々も徒歩ですからそこまで範囲を広げる事は中々に困難ではありますが」

 

「だよなぁ。それにシャドウも悪魔も狩りながらってなると探索範囲もそこまで取れないのは仕方ないけど目的はそっちじゃないしな」

 

「私たちも力が入りますわねお姉様」

 

「ふふ、でも私たちが空回りしてはいけませんわ」

 

「おお、認めてくれるんだな。けど、深くなればなるほど現界する悪魔も強くなってるだろうな…。そいつらが溢れること考えたら弱気も言ってられねーか。今日はありがとうな。…そうだ、こっちの暦で言うゴールデンウィークあたりにカレーをご馳走させて貰えないか?マスターから習ったレシピもいい感じに自分のものに出来てきたんだよ」

 

「あら、それは楽しみですわね」

 

「では師匠としてトッピングの優先権を行使させていただきます」

 

「姉上のことですから自称なのでは?…グハッ」

 

「また不用意な一言を…。それでこそテオ兄様ですわね…」

 

「いつものことですわ、ラヴェンツァ、放っておきなさい。けれど、リョウスケ様、あの子が以前の事で気を揉んでいたのも事実、優遇とは申しません、少しだけ気をやっては頂けませんか?」

 

「ふふっ」

 

「ム、何かおかしかったでしょうか?」

 

「いや、俺はここのみんなに感謝してるんだよ。そう言った意味で腕を奮いたいのさ。だから俺は精一杯気持ちを込めるだけさ」

 

「ふふ、申し訳ありませんでしたわ。私の方が失礼な言をしてしまっていたのですね、笑われても致し方ありませんわね」

 

「ム、取り分の話ですか?姉上といえども抜け駆けはなりませんよ!」

 

「…エリザベス、貴女ねえ」

 

「ふふ、お姉様らしいですわ」

 

「ははっ、違いないな」

 

 

 

こうして賑やかなうちに俺はベルベットルームを辞した。割と普通にしてたけどやっぱりエリザベスに吹っ飛ばされるのはキツいからな。肉体的と言うよりも精神的な疲労は中々回復しないんだよ…

 

 

 

 

 

 

 

そして今日は約束の日。一年生たちに瞑想の指導を約束した時間より少し前。古牧先生に例の書物の写しを見せてみた。

 

「ふぅむ、これが蔵から出てきたのか…」

 

「いやぁ、どうにも古い文字って全然読めなくってですね…。あ、一部蔵に納めてある目録…だと思う部分は読めました」

 

「ほぉ、おー、ここか。なるほど確かに目録じゃの。…しかしオヌシよ、葛葉の蔵とはそこまでなのかの?…下手すると国宝指定されそうなモンまで書いてあるぞい」

 

「え、そんなんまであるんですか?」

 

「うむ、ワシは術具と言ったモノには詳しくは無いが霊剣であれば武具じゃからそこそこ名前は知っておる。そんな()()()()()()()()()でも知っておる刀なんぞ国宝Gメンが飛んできよるぞ?」

 

「…先生、言わないでくださいよ?」

 

「分かっておるわい。代々伝えてきたモノが歴史的価値があるからと言って使えないようにしてしまっては今の世まで残してきた意味がのうなってしまうからの。それにしても…うーむ、一度拝んでみたいのぉ」

 

「先生が葛葉神社に来てくだされば蔵は開けますよ。…まぁまだその目録にあるモノがどこに有るか分かんないんですけどね」

 

「かっかっか、じゃろうの。…うーむ、しかしこの目録があった蔵以外にもどこか保管しているところが有るんじゃないかの?」

 

「……あり得ますね。ほか読めそうなところありますか?」

 

「む…この辺は術具か…『後の世の為封魔管を残す。願わくば子孫がこの封を解くこと無き世を。』ふむ場所は書いておらんの。封魔管とは聞いても良いのかの?」

 

「…お役目で必要だった、必須だった道具でしょうね。ありがとうございます、それが遺してあるって分かっただけでもすごい収穫ですよ」

 

「まぁ、これくらいはの。顧問の割にオヌシに世話になっとるからの。…あとその目録はあまり人に見せん方がええわい。知らん奴が手を出すとエライ目に遭いそうな品ばっかりじゃが宝物には違い無いからの、目が眩んだ阿呆はどこにでもおるもんじゃ。今日はもう帰るのか?」

 

「いえ、この間の一年生を含めた3人に瞑想を少し教えるんでまだ残ります」

 

「ほ、なら気をつけての」

 

 

 

いやぁ、マジか、封魔管遺してあるのか…。無茶苦茶動揺しちゃったな。うーん、いつまでも先生に頼るわけにもいかないし、何とか読めるように勉強するかぁ。…何で練習すりゃいいんだろ。

 

 

「うーっす、センパイいますかー?」

 

「リョウスケみんな来たよー」

 

っと、みんな来たみたいだな。とりあえずはやり方を教えるか。ダイチさんなら見本にもなるから助かったな。




メメントスの階層は悪神によって設けられたと考えているので現状は無いので自己判断です。

移動手段の確保…モルガナカー…実質モルカーですね、間違いない


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地味なモノは難しい

投稿時刻ミスは2回目なので初投稿です


「さて、瞑想って外から見てると地味だけど…、ダイチさん、やり始めてなんか変わりました?」

 

「へ?俺かぁ。うーん、まず、瞑想してから始める練習はよく動けたかなぁ。まぁ、外部の人と組み打ちってあんまりしてないからどこまで変わったのかわかんないんだけどね。あ、でも集中力は上がったなぁ」

 

「あ、それヒナも言ってた。集中力上がったって。あと舞踊のキレが凄いことになってたのってやっぱり?」

 

「まぁ、そこまで劇的に変わる効果があるモンじゃないよ?なんて言うかなぁ…自分のスキルを積み上げる土台をしっかりとさせる作業ってのが1番近いかな?地味だしぱっと見効果も分かりづらいけど実感できる頃には色んな所に効果が出てるような感じかな?」

 

「そう言うものですか…」

 

「おいおい明彦くん、効果のあるトレーニングほど地味で続けないと意味がないんだぞ?筋トレだってロードワークだって積み重ねが大事なのは知ってるだろう?鍛えるモノが見えづらいだけで気をつけることはおんなじさ」

 

「うっ、そうでしたね…」

 

「まぁ、強さを求める事は別に否定しないさ。けれどそんな時ほど足元を固めておくべきだと俺は思うね」

 

「……はい」

 

「さてと、前口上はこの辺にしておいて始めようか。ダイチさん、見本お願いしますね」

 

「ほーい。…なんか見られてる中やるのって緊張するんだな」

 

「…おお、いい感じに集中入りましたね。ダイチさんもちゃんと続けてるんですねぇ」

 

「…ねぇ、これで終わり?簡単そうに見えるけど…」

 

「この難しさはやってみないとわからんよ?とりあえずはリラックスして身体を落ち着ける所から始めようか」

 

「え、なんかそれ以上にないんすか?」

 

「うーん、リラックスの仕方って結局は自分でしか自分に合うの見つけられないと思ってるんだよね。そう言う意味でもリラックスする方法を見つけるのも大事だよ?ほら、ダイチさん見てみな。横で喋ってても動じてないでしょ?」

 

「えー、寝てんじゃ無いの?」

 

「ほらほら、各々初めて初めて」

 

 

 

さて、どうかね。手探りで続けられるかな?意地悪なようだけど最初は失敗から始めないと進まないんだよなぁコレ。とりあえず30分くらいは素振りしてよう。そのあたりに一度声をかけるか

 

 

 

パシンッ!

「よーし、どうかな、なんか分かったかい?」

 

「うーん、集中集中って考えてたらよくわかんなくなった…」

 

「そうやって考えちゃうと瞑想にならないからなぁ」

 

「俺も言われてリラックスするって難しいって知りました」

 

「こっちのセンパイがあんまり簡単そうにやるもんだからもっと、簡単かと思ったぜ…」

 

「ほら、ダイチさーん、尊敬ポイント集まってますよー」

 

「やめろってリョウスケ…」

 

「ま、瞑想するには兎にも角にもリラックスに入ることが大事だからね。それにそう簡単に習得されちゃ指導者要らなくなるだろう?そんなすぐ身につくもんでも無いから気長にやるくらいの気持ちでいてくれ」

 

「むー、そんなオイシイ話ないかぁ。でも集中力は私も欲しいから続けたい、お願いしていい?」

 

「あー、俺も頼んます。アンタにくるっくるにやられっぱなしってのもシャクだからよ、とりあえず一つでも追いつきてぇし。アキはどうする?」

 

「俺も頼みます。ワガママついでなんですが、アガリ前に一戦お願い出来ますか?」

 

「アキもこりねぇなぁ」

 

「えー、見てみたいんだけど!ダイチさん、解説とかできる?」

 

「ええ⁉︎俺がそんな役回りすんの?」

 

「いいじゃないですか、見るのも大事っすから。まぁもう少し君らの瞑想訓練してからだけどね」

 

 

 

この後インターバルを挟みつつ何セットか瞑想の練習をしてみたが、まだまだ修得までは遠そうだな。ちなみに明彦くんのリベンジマッチだが…真次くんが哀れな眼で見つめており、ダイチさんからは出来るわけねぇって怒られた。アイリちゃんだけは楽しそうにはしゃいでいたけど。

 

 

 

 

「さて、そろそろお腹も空いたよね、メシいこっか」

 

「おう、俺楽しみにしてたんだよなぁー」

 

「俺も美味いメシは好きなんで興味あるっす。…アキ、プロテインだすなよ?」

 

「わ、分かってる」

 

「アンタ御飯時にやめなさいよ…。ホントにオイシイ店なんだからね」

 

「さてと、そろそろ…っとついたついた。マスター5人いけます?」

 

「おおん?なんだよ、お前か。随分と連れてきやがって…。丁度暇だ、好きな所座ってろ。注文はいつものか?」

 

「あー、大盛りと普通と有るけど…アイリちゃんだけ普通ね、りょーかい。コーヒーは食後にホットでいいよな?よしいつものセット大盛り4普通1で」

 

「あいよ、出来たら声かけてやるからお前も運ぶの手伝えよ?」

 

「うーっす」

 

「あぁ、ここがリョウスケのバイト先かぁ」

 

「あれ、ウチのガッコバイト大丈夫でしたっけ?」

 

「さぁ、でもリョウスケの事だし何とかしちゃったんじゃない?」

 

「何モンなのよ…」

 

 

 

ふふ、随分と仲良くなってきたじゃないのさ。どうかねぇ、彼らの気持ちが少しでも軽くなったりしたらいいんだが…。差し障りのないあたりならちょっとたべてるあいだに聞いてみるか。

 

「おい、コーヒーならお前がやるか?」

 

「え、いいんですか?」

 

「カッコイイ先輩を見せてやれって」

 

「うっす!」

 

おいおい、それどころじゃないじゃないか。マスターが俺が連れてきたとはいえ客にゴーサインだすなんて。ちょっと緊張してきたじゃないのさ…

 



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もはやカレーは洗礼

ギリギリセーフなので初投稿です


「おい、出来たぞ運ぶの手伝えよ」

 

「うっす」

 

「これがリョウスケがハマってるカレーかぁ。ウマソー」

 

「かっ、美味そうじゃなくて美味いんだよ。連れてくるなら教えとけよ」

 

「いやいや、ちゃんと教えてますって。匂いと見た目だけでも、やられたってことっすよ」

 

「ったく調子のいい奴だ。ほらよ、せっかく大盛り頼んでるんだ、残さず食えよ」

 

「「「「ありがとうございます」」」」

 

「ほれ、冷める前に食べないとなー」

 

「「「「「「いただきます」」」」」

 

「うまっ!早く教えてくれよー」

 

「マジだ、美味いっすね…。俺もレシピ知りてぇな…」

 

「……!!」

 

「これよ、これ。久しぶりだから美味しー!」

 

「ははっ、みんな満足しててよかったよ。毎週…はちょっとわからんから隔週でこういう日作ろうか」

 

「本当ですか?俺は来ますよ」

 

「正直こっちの方が目当てになりそうっすけどね」

 

「あ、あたしも行ける時あったら行っていい?」

 

「もちろん構わないよ。ダイチさんは?」

 

「俺も勉強の気分転換で顔出すかもー」

 

「りょーかいですよ。身体動かしたくなったら適当に相手しますし丁度いいでしょ」

 

「ええー、リョウスケの相手疲れるんだもん…」

 

「ダイチさんの時は合気道以外も使いますからねぇ」

 

「…あの、美鶴に声は…」

 

「ん?あぁ、美鶴ちゃんが興味出てきたならぜひ来てくれって言っておいてくれるかい?」

 

「ありがとうございます」

 

「美鶴って、あの桐条美鶴よね?お堅そうな雰囲気しててピリピリしてるのよね…」

 

「…まぁ、見られる人種ってのを自覚してるからじゃないか?それに、ほら、立場的な意味でも気を張ってるんだろうさ。1番近いのは舐められるわけにはいかないからって威嚇してる動物みたいなモンさ」

 

「ふふっ、あの天下の桐条のオジョウサマをそんな風に評価するのアンタくらいでしょ」

 

「はっはっは、ホントだぜ、センパイオモシレーよ」

 

「…はぁ、シンジ、美鶴に言いつけるぞ」

 

「なっ、アキそりゃねーだろ!」

 

「さっすがリョウスケ、あっという間に馴染んじゃったなー」

 

「あー、ホントっすね。第一印象で言えば最悪に近かったくらいですし」

 

「…俺はそこまでじゃなかったですよ?」

 

「アンタ、ホント何したのよ?」

 

「何って、さんざん煽って立ち稽古に持ち込んで、その稽古でぐうの音も出ないくらい完封?」

 

「…そりや第一印象も悪くなるわね」

 

「リョウスケ、ノリノリだったからねぇ」

 

「ま、あれだけやられても稽古のおかわりができる明彦くんはいいタフさしてるよ」

 

「負けたままではいられないですから」

 

「俺だってアキと一緒の気持ちっすよ?一矢くらい報わないと気が済まねーっす」

 

 

「ふふ、楽しみにしてようじゃないのさ。もちろん美鶴ちゃんも構わないからね」

 

「おい、食後のコーヒー淹れてやれよ。豆はどうする?」

 

「そりゃ初めてが多いんですからブレンドでしょ。マスター特製ルブランスペシャルっすよ」

 

「ったく生意気言いやがって、そこまで言うんだ、だらしない淹れ方しやがったら承知しねぇぞ?」

 

「もちろんっすよ!」

 

「へー、リョウスケそこま任されてんのか、すげーじゃん」

 

「お前さんたちも文句あったら遠慮なく言ってやれよ」

 

「へへ、俺は厳しく行かせてもらうぜ」

 

「シンジ、コーヒーの味わかるのか⁉︎」

 

「あん?まぁ、少しくらいならな。桐条ほどじゃねーけど」

 

「へー、荒垣くんすごいや。俺なんてやっとブラック飲めるようになったくらいなのに」

 

「……」

 

「あり、アイリちゃんどうしたの?」

 

「…なんでもない」

 

「はっはっは、ウチのコーヒーは美味いけれどよ、飲み方は人それぞれでかまわねぇのさ。だからお嬢ちゃんは気にせずこないだみたいにミルクと砂糖を入れたらいいさ」

 

「…ありがとうございます」

 

「はーい、お待たせ。ミルクと砂糖はこれね。好きに飲んでくださいなっと。はいマスターも」

 

「お前、ほんっといい度胸してんなぁ。ま、俺の採点は激辛だから覚悟しとけよ」

 

「ちゃんと全部同じように淹れてますから」

 

「ふん、まあまあだな。この程度で満足してちゃバイトとしては困るんだがな」

 

「オイシ」

 

「…くっそ、俺にゃ何が問題かわかんねぇ」

 

「うまい」

 

「リョウスケほんと多才だわ」

 

「おー、よかったよかった。マスターももちろんですよ。まだ豆の準備は全然ですからね」

 

「ふん、わかってんならいいけどよ。ほら、お前も座って話してこいよ」

 

「うっす」

 

「でもさー、君らも焦らない方がいいよ?俺らは合宿で葛葉流の師範…リョウスケの親戚のお爺さんからみっちり教えてもらって何とか身についたんだからさ。学んだ身から言える事は…分かんないなりにも毎日朝夕続けること…かな?」

 

「言わして貰えば隔週での会でやるつもりなのは間違った様子が有れば指摘するとかそんなレベルでしかできないから習得には自分でやる事が大事だよ。ちなみに俺も最初はクッタクタに疲れたもんさ」

 

「あはは、俺も俺も。でも急にわかるよね、スッーっと入るって感じ。人それぞれ違うっぽいからあんまりアドバイス出来ないけど」

 

「いや、十分ですよ、ありがとうございます」

 

「…あざっす。俺もやれるだけはやってみます」

 

「ふーん、ダイチくんが始めて大人っぽく見えた。頼りにしてるよセンパイ達っ」

 

「こりゃしたたかだなぁ。ま、何にせよ有意義と思えて貰えたっぽいね良かった良かった。っと、そうだ。学校でも話しにくい事あったらこれに連絡してくれ。俺の仕事用ケータイの番号だから」

 

「そんなの持ってんのか、ホントに後輩かわかんねぇな」

 

「あざっす」

 

「…そうだなぁ、できれば直接渡した君たちまでに留めておいて欲しいけどね」

 

「探偵事務所?探偵までやってるんですか?」

 

「んにゃ、住み込み先が親戚の探偵事務所でそこの事務員みたいな手伝いをしてるって言ったら顧客に作られただけ」

 

「…アタシも貰っていい?」

 

「ん、どーぞ」

 

「まー、とにかくだ。悩んでる時は案外関係ない所に話したりするのも大事だぜ?…そろそろ帰るか。寮生が遅くなりすぎてもダメでしょ?」

 

「あー、俺らは大丈夫っすけどね、このくらいの時間なら」

 

「日付跨がなければ大丈夫って言われてます」

 

「えー、何それこっちの女子寮と全然違うじゃん!オジョウサマ関係?」

 

「え、あ、いや…」

 

「俺らの寮が特別寮だからだよ。そんで管理してる奴がその辺テキトーだからってだけ。…間違っても来ない方がいいけどな」

 

「ふーん、なんか訳あり?」

 

「ほら、そろそろ帰るぞー。マスターごちそうさまでしたー」

 

「「「「ごちそうさま」」」」

 

「あいよ、また来てくれ。コイツ居なくてもいいからよ。お前は…また頼むわ」

 

「うっす」

 

 

 

 

ルブランをでてみんなと別れる。ちょっとずつでもいい、彼らの心が強くなるようにやれる事くらいはやってあげようじゃないのさ。…そろそろ俺も次の層に行くための準備考えないといけないけどな。なんか良さそうなアイテムないかしら…。



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良い人材のスカウトにはリスクもある

2ヶ月続けられたので初投稿です


一年生達の面倒を見ることになってもうすぐ一月ほど。合気道部も新入部員が大分馴染んできたようで何よりだ。まぁ、俺と言えばあんまり関係ない事ばっかりやってるからあんまり合気道部員っぽくなくなってきたんだけどな。…ちなみに俺にやらせると殆どやり切ってしまいそうだから次期部長は芝原を指名するつもりらしい。俺は副部長になるらしいんだけど。

 

 

そして世の中はゴールデンウィークという所…俺は気合を入れてメメントスの探索を進めようと思う。…しかしだ、マーガレットとラヴェンツァが監督としてついてきてくれるとは言えマッピングに索敵、アイテムの管理など1人じゃ厳しいんだよな…。かと言って誰かを誘うわけにもいかないしなぁ。手数を増やすって意味じゃ悪魔の使役が1番の近道なんだろうな。ま、現物はあっちの蔵を家捜しするしかないんだし、それはもう夏休みに何とかするつもりで割り切った。仲間…ねぇ。素質でいうなら実はダイチさん、ヒナコさん、アイリちゃん達ってデビルサマナーになり得たんだよな。まぁこの世界には悪魔召喚アプリなんてモノもニカイアとかいう死に顔アプリってのも無いしあの人達には知って欲しく無い世界だしな。……後は峰津院家かな。確か葛葉家と同じでお役目を担ってたらしいんだよな。葛葉が攻めなら峰津院は守りの要だとか。うーん、峰津院家にカチコムってのもやり方として考えておくべきだよな。……少なくとも悪魔が現界してないとは言え存在を確認してしまったんだし相談する相手としては間違いない…か。これは爺さんに峰津院家の所在を聞くべきだな。これも夏休みかな?

 

 

うーん、後はサポート出来る人…一ノ瀬さんとかか?いや、まだまだAIなんて10年は先だしなぁ。それにソフィアクラスの自我を持ったAIなんてもはや付喪神とかそんなレベルだし一歩間違うと聖杯化不可避だしなぁ。あと心当たりの有る技術者畑の人…菅野フミさん?…ダイチさんたちは巻き込みたくないって言っておいてフミさんは良いのかってなるしなぁ。でもあの人ヤバイ方向に天才だからなぁ…ってあの世界でターミナル作ったのフミさんじゃないっけ?…やべぇ、スティーブン居ないから大丈夫って思ってたけどそんな甘いこと無かったじゃねーか。ちょっと調べるっきゃねーわ。

 

 

……うーん、調べてみたけど論文とかにあんまり名前出てこないんだな。ただ飛び級で大学でたってのは分かったんだけど。でもあの人が桐条に拾われたりしたらもう何が起きるか分からん。どう考えてもロクな事になる気がしない。今はこっちの大学で研究室貰ってるらしいけど…そこのページ見てもパッとした結果なんて今んとこ見当たらない。()()健全な範囲だよな。んー、ちょっと怖いけど飛び込むか。打算的な話だけどフミさんクラスの天才がバックアップ、サポートに回ってくれること程ありがたい事もないし…。知識欲って話なら認知世界の事かウチの悪魔関連か?出来るならその辺にあんまり興味持って欲しく無いんだけどなぁ…。

 

 

 

 

はぁ、緊張する。フミさんの事を思い出してメメントスの予定すっ飛ばして大学の訪問にしたよ。幸い高校生だし大学ってだけなら興味があるって事で入るのは簡単だし。よーし、行くか。

 

「失礼します、菅野フミさんですか?」

 

「んー?そうだよ。会ったことないねキミ。でも私を知ってるの?」

 

「えーっと、海外で飛び級してこっちの大学で研究室貰ったって事くらいは知ってます」

 

「あら、私そんなに有名なったの?それで、何か聞きたいことでも有るの?アタシまどろっこしいのキライだからズバッと言ってくれない?」

 

「…認知訶学って知ってます?」

 

「認知?あぁ、誰だっけ、一色さんだったっけ?マイナー分野だけどそれが?」

 

「その、認知訶学による世界…認知世界の観測データに興味有りませんか?」

 

「……へぇ?でもなんでアタシに?」

 

「一色さん、一色若葉さんは第一人者です。だからこそ目を惹きすぎるんですよ。アレのヤバさを知ってる身からすると権力者が飛びつきます。それも結果だけを求めて」

 

「ふうん、いいね、ちょっと興味でた。続けて」

 

「そもそもなんですけど、この世界に神秘的な存在…いわゆる悪魔とかいった連中は居ます」

 

「…急にオカルトになってきたけど?」

 

「まあまあ待ってください。うちの家系…葛葉家なんですけど、その悪魔を祓う仕事を任されてた一族なんですよ。まぁ、もうそのお役目は終わった()()だったんですけどね」

 

()()ねぇ…。どっかで見た…ああ、認知世界で」

 

「そうです。認知世界で確認しました。話は変わりますけど…無気力症候群って知ってます?」

 

「無気力症候群?東京の一部でウワサされてる原因不明の感染症だっけ?」

 

「アレって認知世界から現実世界への干渉の結果なんですよ。認知世界が形成されたとき、それを認知していない人間は認知世界の存在から影響を、特に悪影響を受けた場合どうなると思います?」

 

「そりゃ現実まで干渉するくらいの力があるなら人間だって…‼︎…なるほど、無気力症候群の患者が出来上がるワケね」

 

「ええ、概ねですけどそんな感じのハズです」

 

「なんてアンタがそんな詳しいのかってのが1番興味あるんだけど…?」

 

「そこは、またおいおいって事じゃダメですかね?」

 

「まぁ、イイけど。で、アタシに認知世界のデータ持ってきて何をさせたいの?その無気力症候群の事?」

 

「いえ、別件です。そっちはもう取りかかってる連中いるんで。認知世界ってモノは基本的には集合無意識によって構成されるんですよ。それも莫大な人数が集まる所ってわかります?」

 

「ふぅん、高校生のキミが実地データ集められるんだから…渋谷とか新宿とか?」

 

「流石ですね。俺が活動しているのは渋谷の認知世界です」

 

「へぇ、あんなとこにねぇ。根本的にわかんないんだけど、その世界とか悪魔ってほっといたらどーなるのよ?」

 

「…ペルソナとシャドウです。人が誰しも持っているモノですよね。そんなモノが認知世界ではうろついてるワケですよ。そして特定個人のシャドウないしペルソナを認知世界に干渉する事ができる奴が消滅させてしまうとどうなると思います?」

 

「人を構成しているシャドウ…それも精神の現し身と言ってもいいモノよね。そんなモノがなくなっちゃったら……なるほど無気力症候群ね」

 

「それで済んだらいいですよね。一方的に証拠も何もかもない完全犯罪だって可能ですよ、主に殺人のですけど」

 

「…だからって研究を止められるワケないわよね。アタシも研究者だものどれだけヤバイネタでも興味や知識欲は止まんないわ。そりゃ一色さんとか行けないわね。ってかあの人ひょっとしてヤバイんじゃないの?」

 

「現時点はまだ大丈夫でしょうけどね」

 

「結果が出るまでは安全か…。嫌んなるわね」

 

「すいません、こんなヤバイネタ持ってきて」

 

「んーん、アタシも研究者って言ったでしょ?後追いになるから手を出してなかったんだけど…ちょっとやってみても良いかなって。でもやっぱりなんでアタシなのよ?自慢じゃないけど確かにアタシは天才って自負はあるけど…他にも居ない事はないはずよ。そんな中アタシを選んだ理由を聞かせて欲しいわね」

 

「……もっと荒唐無稽な話ですし、長くなりますけど良いですか?」

 

「だいじょーぶ、ココって誰も近寄らないのよね」

 

「わかりました。それじゃですね…」

 

 

 

 




デビサバ2 のヤバイサイエンティスト、フミさん登場です。21歳でターミナル造るとかバケモンですよ。幸いジプスみたいな巨大組織のバックアップが無いためこの世界ではそんなモノ作ってないです。


…巨大組織…桐条グループ…可能性としてはあり得ましたね。現時点では埋もれていた才能で済んでいます


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協力者の確保とその恩恵をプレゼンする

すっごい勢いで色々増えてたので初投稿です


「パラレルワールドって概念わかります?」

 

「バカにしてんの?分かるわよ。()()()の世界でしょ?無数に枝分かれした別の結果が待ってる世界。コインを投げて表が出た結果の世界と裏が出た世界…これだけしか今は違わないのにどっちかは明日滅んでるかもしれない…そんな話よね」

 

「ええ、そんなパラレルワールド、可能性の世界の話です。ところで、フミさん、小説とか物語って読みます?」

 

「…最近は読んで無いわね。それが?」

 

「作者の中には『降りて来た』って表現をして作品を作り上げた人が稀に居ますよね。その『降りて来た』って言うのが『降ろされた』モノだったとしたら?」

 

「…ホントに神サマや悪魔みたいな存在からインスピレーションを受けたとでも言うつもり?」

 

「まだフミさんは悪魔を目にしていませんから信じがたいのも無理はないです。けれど実際にパラレルワールド…あったかもしれない世界の事を無意識に創作として世に送り出した作品があったのかも知れないですよね」

 

「…そんな事言い出したらなんでもアリよ?」

 

「ええ、そして俺はそんな作品を手に取ったんですよ。()()()でですけど」

 

「…アンタはパラレルワールドの人間って事?」

 

「人格の半分くらいはそうです。同じ世界から枝分かれしていたならば同じ人間がいる訳で…そんな向こうの俺の記憶をインストールした…みたいな感じですね」

 

「にわかには信じがたいわね…。なんか証拠でもあるの?って言いたいけど、アンタが無気力症候群とかにやたら詳しいのはそう言う訳?」

 

「ええ、そうです。ぶっちゃけカンニングみたいな所ですよ」

 

「なるほどねぇ。じゃあこれからこの世界で何が起きるかも知ってる訳?」

 

「大筋…って程でも無いですよ。これから起き得る世界レベルの異変のタイミングくらいです」

 

「…何それ、世界の危機ってそんな身近なモンになったのは知らなかったわよ。でもなんでアンタはそんな状況になった訳?」

 

「…そこ気になりますよね。俺だってなんで俺にオレの記憶が入って来たんだろうって考えました。さっきの『降ろされた』って事があるなら…この世界が何者かが作った()()なんじゃないかって思い至った訳ですよ」

 

「……アタシたちは誰かに観察されてて、そこにアンタみたいな異物をぶち込んでみたって事?実験する側だからその気持ちは分からなくないけど…される側だったら不愉快極まりないわね」

 

「ええ、面白くないでしょ?ま、ホントに居るかどうかは分からないんですけど」

 

「まぁ、言わんとする事は分かるわ。黒幕きどりなんて蹴り飛ばしたくもなるわね。…もし居るならこの世界もソイツが飽きたら終わりって事でしょ?しかもソイツに対策取れるのもアンタだけ…そしてアンタに協力して研究するのも認知訶学も面白そう。それに悪魔とかも興味あるわね」

 

「…興味持ってくれたのは嬉しいですけど、個人的に悪魔の研究はやめていただきたいですね。特に利用、制御しようなんて方向は特に」

 

「なんでよ、そんなチカラがあるなら制御してみようって思うモンじゃないのよ」

 

「…イカロスの翼になるだけですよ。それの結果が無気力症候群と世界の危機って言っても過言じゃないんですし」

 

「…アタシはその辺の奴らと違うって言いたいところだけど、アタシの事を知ってて来たんでしょ?アタシ、何をやったの?」

 

「ある世界の話です。貴女は物質転送装置…ターミナルと呼ばれるモノを開発したんですが、それによって悪魔が現界します」

 

「……それ、アタシが諸悪の根源じゃない?」

 

「…悪魔がいる世界だからこそターミナルってモノが作れるんですけど、それすら悪魔が現界する為に知恵を与えた可能性有りますけどね」

 

「……」

 

「要するにそんな奴らを使役するなんてのはまだまだ早いんですよ」

 

「…ここはムキになっても仕方なさそうね。とりあえず…シャドウと悪魔の違い聞きたいんだけど…もうこんな時間か。アンタ連絡先は?」

 

「これです」

 

「りょーかい。流石に高校生を遅くまで連れ回すのは良くないからね…近いうちにまた話を聞かせなさい。これだけネタ振っといてお預けなんて事したら許さないからね」

 

「協力してくれるんですか⁉︎」

 

「アタシの興味を惹いたアンタの勝ち。これからよろしくねリョースケ」

 

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

「はいはい、じゃ気をつけて帰りな」

 

 

 

 

 

 

まさかフミさんの協力をこんなすんなり得られるとは思わなかったよ。俺ができる話なんて荒唐無稽な事ばっかりだったしな。誰だって物語の登場人物だって言われて飲み込める訳ないんだけど…流石フミさんだよ、そんな事より知識欲が勝ったんだから。デビサバ2 の世界よりも大分マイルドになってたような気もするけどね。

 

なによりフミさんって言う才能を敵に回す事が現状無くなるってのが大っきいよ。あの人が桐条とか入ったと思うとゾッとするよ…。ホントに取り返しのつかない所まで研究を進められる人だからなぁ。

 

 

 

 

「協力者を得た…ですか?」

 

「ああ、協力者と言ってもパーティーメンバーって訳じゃ無いよ。バックアップ…というか調査の協力者だね。…本人はデビルサマナーの才能なくも無いんだけど、俺としては葛葉流召喚術を広めるつもりも無いし、悪魔召喚プログラムを作らせるつもりも無いんだ。…現時点ではだけど。悪魔が活発になった時俺で手に負えない様なら考えないといけないだろうし」

 

「ふむ、調査の協力とはどう言ったモノをお考えでしょう?」

 

「まずはシャドウや悪魔の残滓の解析かな?それと認知世界で拾える物質とかを考えてる。…後はこっちの世界に持ち込んで使える道具類の変化を調べてもらいたいと思ってるよ。不思議じゃない?破魔矢とかお守りってどうなって効果を発揮してるのかとか」

 

「言われてみれば…といった具合ですわね。なるほど、我々でもできない調査、科学的アプローチはそちらの世界の専売特許と言っても差し支えありませんからね」

 

「うん、仮になんだけど…メンバーが見つかった場合ってどうやってメメントス連れて行けば良いんだ?」

 

「ふむ、現状リョウスケ様がお客人であるが故にベルベットルームを経由しておりますが…客人でない場合のことを考慮しておりませんでしたわね」

 

「うん、そこも含めて科学的アプローチ出来たらと思って協力を取り付けたってのもあるんだ。…結局入り口は集合無意識による歪みがある訳じゃない、それを検知さえ出来れば…って思ってるんだけどね」

 

「なるほど、それであれば可能かもしれませんわね…。妹たちにも意見を聞いておきますわ」

 

「ま、メンバーも見つかってなければ技術的な見通しも全然無いんだけど、考えておかないよりはいいかなって」

 

「ふふ、でもそうしてメンバーが見つかってしまうと我々の監督もおしまいとなってしまうのでしょうか?」

 

「…あー、その事考えてなかったや。ま、メンバーが見つかったとしても都合がいつでもつく訳じゃ無いって思えば…その時はって感じは?」

 

「あら、それでは我々がいつでも都合がつくと言われている様ではありませんか」

 

「ええ!!いや、そんな意味で言ったわけじゃ…」

 

「エリザベスでは有りませんがこれでは少し拗ねてしまいますわよ?」

 

「参ったなぁ…。そうだな、そろそろまたワガママを聞かせてくれないか?」

 

「おや、そうですわね、今回は少し考える時間を頂けますか?」

 

「…ああ、じっくり考えて納得いくお題を出してくれ、誠意を持って叶えさせてもらおうじゃないのさ」

 

 

 

いやぁ、言葉ってのは考えて使わないといけないね。危うく機嫌を損ねてしまう所だったよ…。彼女たちにはホント頭が上がらないからなぁ。何にせよ、人との縁が俺の行動を広げるってのは間違い無いんだな、何としてもフミさんから信頼される様なりたいもんだよ…

 

 

 

 



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実質縛りプレイは大変

誤字指摘を初めて頂いたので初投稿です


フミさんに渡すための素材集めも大切だけど、実際問題メメントスに毎日潜るなんて事は無理だ。体力的、精神的なモノでだ。幸い時間経過が緩やからしく体力の許す限り探索を続けても寝る時間に困る事は無いんだけど。とはいえ1人で潜ってる以上無理をすればゲームオーバー…で済まないんだからな。

 

 

そんなわけで今日はメメントスでの探索を進めたんだが…新たに現れたシャドウも少なくない。中でも死にぞこないの粘着肉(スライム)は物理攻撃がメインの俺にとっちゃ時間がかかって仕方ないし、たわけた山伏(コッパテング)の群れも範囲攻撃が乏しい俺には難敵だった。…ま、戦えて良かった、と言うべきかな?ちょっと嬉しく思えたのはあざ笑う雪だるま(ジャックフロスト)、いわゆるヒーホーくんと戦えた事かな。他にも色々いたんだが、ソロって事もあったから苦戦はしたとしても勝てる見込みの高い奴しか相手取ってなくてこれだからな。舐めてたわけじゃあ無いんだがちょっとシャドウが強くなるだけでも負担はこれまでの比じゃなかったってのが分かったのが収穫って言えるかな。魔法攻撃を使える様になればもう少し変わるんだろうが…精神力の余裕がまだまだ足りない。アスラ王を顕現させるだけでもすり減って行くし探索中に回復させる事も容易じゃないからな。悪魔が現れる可能性があるから考え無しに魔法を使えないのが現状だよ。その為にも色々と道具も試したいんだけど、切り札とも言える破魔矢以外効果的なモノが見つかってないんだよなぁ。じゃ無いと凶事まねく憑代(シキオウジ)なんて倒し様無いんだよな。…案外ライターとか使えたりするんじゃ無いのか?そう言う身近なモノも試してみるか。

 

 

そして、浅い層では『ガキ』くらいにしか襲われる事は無かったんだが…少し進んで現れたのは『オンリョウ』だった。その時はラヴェンツァが索敵に引っかかったヤツをどうするか聞かれたんだが…俺は戦闘を選んだんだ。幸いにも装備していた御神木の木刀が持つ神聖な属性が効果的だった様でダメージを与える事が出来、倒すことができた。そこで流石に消耗が激しくなったので撤退を決めた。

 

 

 

 

「本日は如何でしたか?」

 

「ああ、ラヴェンツァ、今日もありがとう。おかげで悪魔とアンブッシュする事なくこちらから仕掛ける事ができたから何とか倒せたよ」

 

「ふふ、お役に立てて何よりです。しかし、無理に倒す必要は無かったのでは有りませんか?」

 

「まぁ、無理はしたつもりは無いんだけどね。むしろ道具や体力に余裕があったタイミングだからこそ仕掛けたわけだし。中々の経験を得たと思ってるよ」

 

「……お姉様から伺いました、共に戦う仲間が見つかるかもしれないと。悪魔を祓う、それは並大抵の事ではございません、願わくば見つかる事を祈っております」

 

「ふふ、ありがとうラヴェンツァ。…マーガレットさんには怒られたんだけどさ、仲間が見つかっても俺とまた探索に付き合ってくれないかい、俺からのワガママになるのかな?」

 

「‼︎…仕方ありませんわね。リョウスケ様は我々のお客人、それも一年以上長い付き合いをしているのは貴方様が初めてかもしれないとの事です。そんなお方からのワガママと有れば叶えない訳には参りませんわ。…私たちのワガママも聞いて頂いておりますものね」

 

「マーガレットさんにまたワガママを考えておいてくれって言ってあるんだ、ラヴェンツァもエリザベスと3人で考えておいてくれるかい?ああ、マーガレットさんに伝えておいて欲しいんだけど、この間言ってたカレーをご馳走するって話はこっちで言うゴールデンウィークの最終日にする予定で、これはまたワガママとは別のつもりしてるからってね」

 

「あら、それは楽しみですわ。リョウスケ様にも色々と動きが有ったので我々もどうなることかと思っておりましたのです」

 

「いやぁ、ゴメンゴメン。どうしても休日って事で時間取れる分大きく動ける所もあったからさ。こっちから持ち出した話を流す事なくなりそうで良かったよ。…それじゃ今日は帰るとするか」

 

「ええ、お疲れ様でございました。おやすみなさいませ」

 

 

 

危うく出来ない口約束をした情けない男になるとこだったよ…。とはいえなんとか取り付ける事もできて良かった良かった。明日のルブランでまたちょっとマスターに質問するかぁ。

 

 

 

 

「おう、今日も頼むわ。また、双葉を預かる事になってなぁ。今はウチにいるんだが…預かった子どもをほったらかしって訳にもいかねぇだろ?相手してやってくれねぇか?」

 

「分かりました。…そうですね、この辺の案内とかしてあげても良いですか?そしてお昼ごろにここでカレーって言うと思うんですけど」

 

「ああ、流石に他の街まで行かれると困っちまうけどここら辺りならかまわんよ。それに双葉にも昼はカレーって言われてるよ」

 

「じゃあ迎えに行ってきますね、マスターの家って…」

 

「すぐそこの古い家だ。そこの角曲がったらわかる。表札に佐倉ってあるしな」

 

「分かりました」

 

 

 

…インターホン鳴らすか。

 

「反応ないな。…ひょっとしてインターホンの音に驚いてどっか隠れたんじゃねーか?小動物かよ…」

 

んー、仕方ない、入るとするか。

 

「お邪魔しまーす、双葉ちゃーん、でーておいでー」

 

「ヒィッ!!」

 

「あ、いる事は分かった。ほら、ルブランのバイトのリョウスケお兄さんですよー」

 

「…スパイか?」

 

「まーだその呼び方覚えていたか」

 

「…あー、怖かった。コホン。ムムッ‼︎とうとうそうじろうの家まで侵入して来たのか!ワタシがいる間は好きにはさせんぞ‼︎」

 

「知ってる顔ってわかると途端に元気になったなぁ」

 

「うるさい!人見知りの本気をオマエが知らなかっただけだ!」

 

「そんだけ元気ならいいか。ほら、出掛けるよ」

 

「ええ⁉︎ワタシが外に行くにはレベル足らなくないか?」

 

「大丈夫、ルブラン周辺だけだから。それにほら、スポット参戦の強キャラいるんだから大丈夫だって」

 

「むむむ…、その辺でエンカウントするスライムとかゴブリンに負けたりしないか?ワタシはクリボーだって踏めないぞ、自慢じゃないがジャンプなんて大の苦手だ」

 

「そんな時の為のお助けキャラさ。パパスなんて目じゃないぞ」

 

「ならば別れのセリフは『ぬわーーっっ!!』で頼むぞ」

 

「そのセリフだったら俺死んでるじゃねぇか…。別れってそう言う事じゃねーから」

 

「むぅ、スパイはワガママだなぁ。仕方ない、我の供をせよー、出立だー」

 

「って言いながら俺の背中に隠れるんじゃないよ…。ほらルブランの屋根裏に置ける何か良さそうなモノをあの胡散臭いリサイクル屋とかでみようじゃないの」

 

「ええ!あそこって入っても捕まらないのか⁉︎」

 

「誰が捕まえるんだよ…。ほら、行こうか」

 

「…なぁ、手ぇ繋いでいいかな?」

 

「んん、いいよ、ほら」

 

「…ありがとう」

 

 

 

シングルマザーで母親にワガママも言えずマスターにも積極的に甘えることができてなかったんだろうな…。こうしてタイミングが合うのもいい機会だし父親…には若いな。兄貴分として甘やかそうじゃないのさ。

 

 

 

 

 




フタバちゃんは動かしやすいですね。

シャドウはルビ振りの方針で行きます。


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大型連休こそ人とのイベントがあるもんだ

沢山の誤字指摘をいただきありがとうございますの意を込めた初投稿です


「ほら、ここ、このリサイクル屋だよ。気になるよねぇ。なーんか良さげなモノあるかもよ?」

 

「わかる、わかるぞー。うおー、レトロゲーのセットじゃないか!!……えっと…あの…」

 

「んー、スーファミのセットか。ソフトは福袋形式で1万円…。悪くないけどさ、あの部屋テレビ無いからそっからじゃ無いと」

 

「しまったー、無ければ意味ないじゃないか…」

 

「うーん、流石にテレビまで持ち込んでいいかどうかはわからんからなぁ。そこは確認してからじゃないと」

 

「ぐぬぬ、そうじろうに聞いてくればいいのか?」

 

「そうだなぁ。マスターと相談してからかなぁ」

 

「しょぼーん。…じゃあこれは?初代フェザーマンのフィギュアセット!アタシは特撮もイケるぞ」

 

「おお、そうだなこれくらいならいいだろ。今日のレベルアップ報酬ってとこだな」

 

「おお!てれってってー、フタバはレベルアップー♪ってことか!!」

 

「はは、そうだなぁ、レベルを上げてけばもっと色んなところ行っても良くなるんだろうけど…俺の方針は焦らずレベリング派だからな」

 

「ムム!たしかに。アタシもお出かけはハードモードだからな!」

 

「よし、お腹も空いて来たろ?マスターにたかりに行こうか」

 

「おー!まってろー、そうじろう!カレーを用意するのだ!」

 

 

 

 

「おいおい、どうしたゴキゲンじゃないか双葉」

 

「うむ、そうじろー、お腹すいたぞ!カレー食べさせて!」

 

「ふふん、外でハラ空かせてきたのか。楽しかったみたいだな。カレーなら用意するから手を洗ってまってろ」

 

「早えな双葉ちゃん。マスターただいま」

 

「おお、双葉のやつどうしたんだ?随分とこう…元気いっぱいじゃねぇか」

 

「あー、一時的なもんですけど…そう、はしゃいでるんですよ。子供らしくね」

 

「はっはっは、双葉もちゃんと子供らしく出来たのか…。アイツも若葉に心配かけまいと気ぃ張ってんだなぁ…」

 

「なんだ!どうしたんだ、そうじろう⁉︎スパイ、オマエの仕業かー‼︎」

 

「ったく、何でもねぇよ。双葉座ってろ、すぐカレー出してやる。オマエも隣座って待ってな」

 

「うっす、ごちそうさまです」

 

「???…まぁいいか。カレー♪カレー♪」

 

「俺も手を洗ってくるか。あ、双葉ちゃん、マスターには自分から聞けるかい?」

 

「ゔっ…、オマエがいる時でもいいか?」

 

「はは、お助けキャラだって言ったろ?」

 

「うむ、存分に役に立ててやるぞ!でも腹ごしらえをしてからだな」

 

「よーし、いただきます」

 

「おいおい、よく噛んで食えよ」

 

 

 

 

「ごちそうさまー、そうじろう、美味しかった!」

 

「ごちそうさまです。目標は未だ遠いってトコですよ」

 

「ふん、当たり前だ」

 

「…あのさ、そうじろう、使ってないテレビとか無いか?」

 

「テレビだぁ?ウチに有ったとは思うが。何に使うんだ?」

 

「…屋根裏部屋秘密基地計画の為だ!」

 

「…ったく、オマエ、双葉に余計な事教えたんじゃねーのか?」

 

「ちっ、違う!ワタシがやりたいって思った事なんだ。…でもこんなワガママお母さんにもそうじろうにもした事なくって」

 

「…分かった、用意しといてやる。次来るまでの間にな」

 

「ありがとうそうじろう!」

 

 

 

双葉ちゃんははしゃぎすぎたみたいで食べ終わったらすぐ電池が切れたように寝てしまった。そんな双葉ちゃんをマスターは大事そうに抱えて家に寝かして来ると告げて向かってしまった。…マスターと若葉さんがくっついちゃえば良いのにって思うけど、若葉さんの危うい立場ってモノを考えると素直に応援できないのが悲しいよな…。そのためにも何とかなるような準備を整えておきたいもんだね。

 

 

 

 

 

 

今日でゴールデンウィークも最後。とりあえず集めたシャドウや悪魔の残滓やメメントスで拾った()()()()()()()()()()を持って再びフミさんのところに訪れた。んだが…見せた瞬間に奪い取られてもはや俺の言葉は耳に入ってない様子だった。そりゃそうだよな。見たことない不思議物質が並んでたらそりゃ飛びつくのも無理ないか。この使った破魔矢と使ってない破魔矢とかのデータ比較やって欲しいとか色々注文あったんだけどな。仕方ないからメモとメールで連絡しておこう。

 

 

…ふぅ、困った。完全に予定が狂った。質問責めをくらう予定だったのに放り出されたからなぁ。このまま帰るのも何だかなぁ。っと電話だ。…ヒナコさん?どうしたんだろ。

 

「もしもし、どうしました?」

 

『あんた今日暇か?』

 

「ええ、予定無くなったんで暇してますよ」

 

『ちょうどええやんか、ちょっと付き合うてくれへんか?』

 

「いいですけど…どこで待ち合わせます?」

 

『上野の美術館行きたいから…新宿なんてどない?』

 

「りょーかいです。なんか見たいのあるんですか?」

 

『実家の方から斑目センセの美術展のチケット送って来たんやけど…ウチの周りで見れそうな人って言うたらリョウスケくらいしか思いつかんかったんよね』

 

「……へぇ、斑目一流斎の美術展っすか。良いっすね、一度見ておきたかったんですよ」

 

『ほら、そんなリアクションしてくれんのアンタくらいやねん。大学の新しい友達もイマイチその辺興味薄いみたいでなぁ。ほんなら新宿で待ってるで、着いたら連絡ちょーだい』

 

「はーい」

 

 

 

まさか斑目の美術展かぁ。斑目もなぁ、良くは無いけど悪いほうに人生変えられたんだろうな、『サユリ』に。本人がいるかどうかはわからんが一度見ておきたかったのは間違いないんだ。良い機会じゃないの。

 

 

「お、こっちやでー」

 

「いやぁ、待たせましたか?」

 

「まぁ、ボチボチや。急に誘ったんはウチやしな、気にせんといて」

 

「しかし、よく貰えましたね斑目のチケットなんて」

 

「人気すごいらしいなぁ、実家の付き合いでもろたらしいけど東京のチケット入ってたらしく送ってきてん」

 

「へぇ、やっぱ芸術やる人は他分野の芸術に触れるもんなんですか?」

 

「せやなぁ、ウチ自身踊りに活かすつもりで合気道始めたくらいやからなぁ。芸術作品に触れるんは基本やろなぁ」

 

「なるほど、それじゃ楽しみなんですか?」

 

「うーん、ウチはあんまり好かんのよねぇ、斑目さんの作品。何て言ったらええんやろ…何となくやけど斑目センセ以外の顔が見えてくるんよね。そういう訳やけど、付き合うてもろて助かるんよ。行かんわけにも無いから困ってたんよ」

 

「…まぁ暇だったし、ヒナコさんがそう評価するってトコにもっと興味湧きましたけどね」

 

「付き合わせて悪かったからお昼はご馳走させてもらうで。美術展の後でええよな?」

 

「お、いいんすか、ご馳走です」

 

 

ひょんな事から班目の美術展かぁ。…そーいやあの人のニュースを見たら図書館で特集されてるの見て俺は状況を飲み込んだんだっけ?何にせよ良い機会だ。ま、今の俺に何か出来る事があるかは分からんがね…




誤字は出来るだけ気を付けてたんですが…結構あるんですねぇ



一昨日から急にUAが増えたんで驚いております…


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興味のままで終えておく方が良かった事例

バレンタインは姪っ子に貰っただけなので初投稿です


「うわ、上野の美術館でしかもこれだけ人集めるってすごいっすね」

 

「まぁ、せやなぁ。あの『サユリ』出すまではそんな人気ある人でも無かったんやけどなぁ。ウチとしてはまだそれまでの方が班目センセの顔見えるんやけど…」

 

すげぇな、ヒナコさん、ほぼほぼ完璧に見抜いてるじゃねぇか…。ネームバリューとバックの権力が有ると違和感って言えなくなるもんなのかね

 

「ふぅん、ブレイクのきっかけの前から知ってたんですか?」

 

「まぁ今回みたいな大きいハコの美術展ってチケットもらえるんよね。よっぽど見たいやつは東京しか無くてももろてたから色々と見て回ってたからなぁ。結構見る目…審美眼ってのには自信あるで。アホらしい特技やけど1番高い作品とか割と当てられるんよ」

 

「それは、さすが大阪人って突っ込む所ですかね?」

 

「ビミョーやなぁ。大阪人やからってみんながガメツイわけあるかい!って言わんなあかんくなる気もするしな」

 

「えぇ、ヒナコさんがアホらしい特技披露アピールしたんでしょ?」

 

「分かっとるからビミョーや言うたやんか。っとそろそろ着くで、チケットコレやから入ろか」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

二人で馬鹿話してたらもう美術展の入り口に。何気にいいチケットだったらしく長蛇の列を横目に入れるようだ。

 

なるほどねぇ。うーん、ここまでいろんなジャンルに手を出してるって普通に考えて違和感なかったんだろうか…。元々は良くも悪くも普通の日本画家って感じなんだなぁ。つっても『サユリ』以前の作品はほとんどないみたいだし。なるほど、ヒナコさんが他人の顔が見えて来るって言ってた意味が分かったかもしれない。俺はカンニングしたようなもんだけどさ…。

 

 

「どないやった?」

 

「ヒナコさんの言ってる事考えながら見たらなるほどって納得して…出来ちゃいましたね」

 

「せやろ?どうにもうさんくさいスジから()()されとるみたいでなぁ、そのあたりも気にくわんねん」

 

「なるほどねぇ。ところでなんですけど…ちょーっと声のトーン落としてくれませんかねぇ?周りの皆さんがつめたーい目を向けてるんで」

 

「スマンスマン、ホナ出よか。話もご飯食べながらしよか」

 

「まぁ、なんとなくイライラしてそうなのは伝わりましたから…」

 

 

 

珍しく不機嫌なヒナコさんを宥めながらお昼を食べた。出るわ出るわ不満が。よっぽど辛かったらしい…

 

 

「口直し…って表現でいいかわかんないですけど、どっか別んとこ行きましょうよ」

 

「…せやな。スマンかったわ、急に誘った先輩の憂さ晴らしに付き合わせてしもて」

 

「いえ、俺も興味はあったって言ったし大丈夫ですって。ほら、終わったことよりこれからの予定考えましょうよ。その方が建設的ですって」

 

「上野はウチがブッキングしたんやし…次はリョウスケにお願いしてもええか?」

 

「そうですねぇ…方向性としては同じく美術展、もちろん別の美術館のですけど。もう一つは皇居か明治神宮みたいな建物も有りかなぁと」

 

「せやなぁ…せっかくやし皇居でも行ってみよか。近くまでは行ったことあるけど中入るんは経験ないんよね」

 

「よし、じゃ行きましょうか」

 

 

 

ちょうど皇居の中を見るツアーがあり、タイミングよく参加できた。前世…涼介として来たことはあるので久しぶり…という表現でいいのかはわからないけどな。

 

「へぇ、観れる範囲とは言えここにお殿様住んではったのも100年ちょっと前って思ったらすごいもんやなぁ」

 

「まぁ、そこまで遡るとお侍さんの時代ですもんねぇ。いやぁ、こんなすごい建物よく手で建てますよねぇ」

 

「ホンマやなぁ。ええもんはホンマにええもんやなぁ。ウチの目的の一つにここに招かれる様な舞踊家になるって項目追加せなあかんわ」

 

「御前舞踊って事っすか?特等席…は厳しいでしょうけどぜひ俺も観に行きますよ」

 

「当たり前や、ま、チケットは買うてもらうけどな」

 

「ご祝儀がわりで良いですよね?」

 

「かー、そう返されたら敵わんわ。っと、そろそろ終わりみたいやな」

 

「みたいですね、うーん、まだ時間あるしこうなったら明治神宮も行きましょうか」

 

「せやな、ええ天気してるしお参りするんもええわな」

 

 

 

こうしてお上りさんの様な定番東京観光を2人で楽しみこの日は終わった。随分とイライラしてたなぁヒナコさん。あんまり悪感情表に出さない人なんだけど珍しい事もあるもんだね。ま、皇居と明治神宮回って帰り際にはゴキゲンだったし大丈夫だろ。しっかしホント、あそこまで班目の本質見抜けるモノなんだなぁ。逆に絵に対する固定観念とか無いからなのかな?

 

 

ん、メール?ってフミさんか。やっと落ち着いたのかな?

 

 

『いやー、悪かったわね。アンタいつの間に帰ったのよ、全然気づかなかったんだから。とりあえずこの破魔矢の分析はわかったわ。しっかしちょっと解析かけてみたけどこの魔石ってのはサッパリわからないわね。ただ…物凄いエネルギーを包括してるってだけは分かるけれど…。あとこのへんの宝石類も認知世界産なのよね?成分とか比べるのもう少し時間かかるわよ。楽しくなって来たわ、アンタに協力して正解だわ。ま、アタシは自分の知識欲さえ満たせれば発表なんて出来なくっても構わないからもっと持ってきなさい。モノによっちゃ報酬だって出せるわよ。あとアンタ、こっちの世界でも魔法?使えたりしないの?アンタが使ったって言う物品は認知世界に持ち込んで初めて特殊な働きをするんでしょう?それも魔法?の様な。ならその魔法のデータが欲しいんだけど…何とかなるかしら?ま、出来るならよろしくー』

 

 

……軽い。メールで済ます内容か?それにしても、うーん、こっちの世界で魔法かぁ。ペルソナが発現する…と思うんだけど、準備必要だよなぁ。マグネタイト…マガツヒ…あ、魔石か。アレ使えばちょっとは楽にアスラおう召喚出来るかも?でもアスラおうの魔法とかちょっとした実験に向いてねぇぞ…それに場所も無いな。色々と考えないと出来ないなぁ…

 

 

 

 

 

 



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大人が隠す核心に迫る

花粉の兆候を感じ始めたので初投稿です


ゴールデンウィークも終わって学校かぁ。もうすぐ中間試験だなぁ。…またアイツは騒ぐんだろうなぁ…

 

 

「頼む!勉強見てくれー」

 

「知ってた」

 

「あん?見てくれるのか?」

 

「…頼むぜ次期部長芝原くんよ」

 

「え?次期部長ってお前じゃないの?」

 

「ほら、次期部長が赤点とか笑えないよ?見てやるから。何がわからんのさ」

 

「数学、化学、物理、英語!」

 

「ほとんど主要科目全部じゃねーか」

 

「頼むってよー」

 

「わかったわかった、離れろ暑苦しい」

 

「助かるぜー」

 

「…先輩何やってんスカ?ここ食堂っすよ」

 

「お、真次君に明彦君じゃないか。合気道部の阿呆に勉強の大事さを説いてる所。去年はクラス一緒だったんだが変わったからこういうよく会うとこですがるようになったんだよ。部活で聞いてこないのかって?部活に頭一杯でそんな事まで考えてないからコイツ」

 

「テメー一年生に向かってまでバラしてんじゃねーぞ!」

 

「あん?もういいのか?」

 

「嘘嘘嘘、お願いしますよー」

 

「…君らはこんな高校生ならないよう勉強するんだぞ」

 

「俺、ちょっとやろうかな…アキ付き合ってくれっか?」

 

「お、おう。見習うべきは反面教師の姿か…」

 

「…一年生にまで反面教師って言われちまったぜ」

 

「さもありなん。ちなみにだけどこんなんでもまだ君らよりは立ち稽古なら負けないと思うよ?」

 

「マジっすか?」

 

「……」

 

「ん?こいつらも格闘技やんのかって、こっちボクシング部のホープ君じゃねーか。お前知り合いだったのなら引っ張って来いよ」

 

「明彦君は元々決めてたから無理無理。ほら、いつまでもこうしてないで飯行くぞ、混んじゃうからな。君らも来るかい?」

 

「ウッス」

 

「お願いします」

 

 

 

ま、いつまで経っても勉強しない阿呆はギリギリになって騒ぐんだ…。試験前には殊勝な事言うけど何度でも繰り返す、悲しいねぇ。こんな思いを抱きながら学校生活は過ぎていく…。

 

 

学校生活があるとどうしても時間が大きく取れないからなぁ。俺に大きな動きはこれと言って無かった。フミさんにお願いしてる調査もまずは基礎データの収集をしないとどうしようもないから時間かかるし機材の持ち込みも未だメドがたってないからな。訓練だってそうだ。日々少しずつ成長はしてるんだろうが大きな変化は中々見えてこない。

 

 

そして夏休みまであと一月ほどというかところ…今年の夏は合宿を行うことが決定された。俺ももちろん参加はするが夏休み中向こうに滞在は出来るだろうか…。本格的に蔵の捜索したいんだがなぁ。うーん、合宿含め3週間くらいは向こうに居たいな。何とか予定を組むかぁ。

 

 

そう思ってたところ真次君から相談を受けた。

 

「あのよ、先輩、ちょっと時間ねぇっすか?」

 

「…どうしたんだい、随分と神妙な雰囲気じゃないのさ」

 

「どっか話出来るとこ…はがくれでも行きましょうや」

 

「ふむ、構わないよ。実はこの辺の店知らないから助かるね」

 

 

 

 

 

「さて、話もいいけど…ここのオススメは?」

 

「初めてならやっぱりスタンダードにラーメンからっす」

 

「じゃあそれをいただこうか。…で、何の話だい?」

 

「あ、俺もラーメンお願いします。…話ってのは他でもないっす。桐、美鶴やアキは誤魔化されたみたいっすけど、先輩さ、ペルソナの事ホントは知ってんだろ?」

 

「…んー、その話かぁ。一応聞いておこうかな、そう思った根拠を聞かせてくれるかい?」

 

「そうっすね…最初の印象悪かったってのは間違い無いっすけど、頼まれたにしちゃあ俺らの事情に詳しすぎんじゃねぇかって思ったんすよ。で、俺とアキを面倒見てくれてるし…美鶴だって構わないって言ってくれてる。やっぱワケシリじゃないと中々出来るこっちゃ無いと思ったワケっす」

 

「なるほどねぇ…。自分で気づいた分にはいいんだが真次君からあの2人…いや、他の人には種明かししないでくれるかい?」

 

「って事はやっぱりっすか」

 

「ああ、知ってるねぇ。ペルソナの能力。特殊な能力に目覚めた人間は何も自分たちやその周りだけじゃ無いって事さ。で、そのことを俺に聞いてどうしたいんだい?」

 

「ペルソナ能力の訓練に付き合っちゃ貰えませんか?」

 

「なるほどねぇ。ちなみに…どこでやるんだい?」

 

「俺たちは深夜0時…影時間ってのになると現れるタルタロスっつーとこや学校周辺でシャドウを狩ってます。んで…アキと美鶴も能力持ってんですけど、俺だけ制御し切れてねぇんですよ」

 

「ふうん、それで…どうなりたいんだい?」

 

「そりゃあ制御出来るようになって…」

 

「まぁ…制御に関しちゃ俺も人に言えるほどの事は無いんだけどね…。制御ができない。そうなってる原因、要因を考えるべきだろうね。俺の場合は…肉体レベルに釣り合ってないのさ。俺の制御ができないっていうのは消耗が激しすぎたりって言うところかな。真次君は?」

 

「俺は…俺のペルソナ『カストール』っつーんですけど、振り回されてます。言うことを聞かねぇっていうか。それで影時間の活動を支援してくれてる…顧問、実は理事長の幾月なんすけど、あの人に相談したら薬、弱い制御薬貰って何とかやってます」

 

「…()()()ねぇ。それ、一つもらって良いかい?いやぁ、性分でさ、よく分からないモノは調べたくなるんだよ。ちょっと知り合いに研究者がいるからそっちに任せてみようかなと思ってさ」

 

「あ、あぁ。構わないっす。なんか封印する為の薬だったらしいんですけど…そこまで効果無かったから俺に回してるって言ってました」

 

「なるほどねぇ、幾月ってあの学校の理事長だよね?何者なのさ」

 

「美鶴んとこで研究者やってたらしいんですけど…その結果タルタロスっつー訳わかんないモノとシャドウが出てきて被害者まで出てきちまったからサポートに回ってるって言ってました。なんでも影時間はわかるらしいんですが、ペルソナ能力は無いって言ってましたね。…後ダジャレがクッソウザいっす」

 

「ふむふむ、まずは…やっぱり瞑想だね。ペルソナって言うのは自己を映し出したモノ…人が誰しも持っている人格が具現化したみたいな存在だ。それを制御するって事は自己の抑圧に繋がるんだよね…。それは良くない。抑圧された自己はいずれ破裂するかもしれない。制御というアプローチが違うのさ。今1番真次君に必要なのは自己との対話だ。君の『カストール』も自分なんだって認識を改めるとこから始めないといけない。…と俺は考えてるね。自己発現した能力なら大抵は何とかなると思うよ。()()()()がないって前提の下だけどね」

 

「…あの瞑想ってそこまで意味あったんすか。俺の『カストール』も俺の一部…か。んで、やけに引っかかってますけど何が?」

 

「制御薬だね。大体そんなもん研究してる段階でペルソナを、いや、ペルソナ能力者をどうにかしてやろうって魂胆が見えて仕方ないよ。美鶴ちゃんのトコもデカイ組織だからね、そりゃ裏に繋がる部分もあるだろうさ…」

 

「……けど、美鶴は!」

 

「いやまぁ、美鶴ちゃんがピリピリしてるのは責任感だろう?自分の所…尻拭いをしなければって感じかな?それ自体は悪くない。能力があるからって高一の子に任せないといけない状況にしてる辺りは気に食わないけどね」

 

「…あのよ、先輩はタルタロスに来るつもり「無いよ」…⁉︎」

 

「な、何でっすか⁉︎」

 

「まずは…影時間だね。俺に適性があるかどうか知らない。仮にあるとしても俺は未だ体験していないんだ。つまり、影響範囲は狭いと予想が立てられる。そんな中活動しようと思ったらこの辺に近寄る必要があるんだが…美鶴ちゃんはともかくそれ以外の大人にまだ近寄りたく無い。それに、異世界は影時間だけじゃあ無い」

 

「‼︎マジで言ってんすか?」

 

「うん、そっちの方で手一杯なのさ今は。特に深夜に動く必要があるだろう?他の活動に大きな負担が出てしまうからね」

 

「…そうだったんすか」

 

「そう、言っちゃあなんだが…ペルソナ能力者って言うのも君たちが初めて確認されたって訳でも無い。絡みの事件は過去にもあったんだよ。大体は怪事件扱いだけどね」

 

「全然知らなかったっす…」

 

「そういう意味で言うなら真次君は周りに相談できていいと思うよ。特別感、使命感で動き出すってのも結局は自己の抑圧につながるのさ。悩んで答えを探すのは自分にしか出来ないからね」

 

「……話、聞いてくれてあざっした」

 

「いやいや、またいつでも…良いとは言えないけど聞いてくれれば時間は作るさ。ま、今日の話はあんまり吹聴しないでほしいけどね」

 

「ウッス、でも何であの時はぐらかしたんで?」

 

「うーん、美鶴ちゃんの目がねぇ。その手のチカラ、能力を持ってるなら人々の為に使うべきって言いそうな目をしてたからねぇ」

 

「……」

 

「ま、それ以外のカタチで協力はしてるさ。瞑想だってホント意味があるから教えてるんだし、コッチの世界で出来る訓練なんて限られてるからね」

 

「…そっすね、今日は色々とありがとうございました」

 

「いや、俺も話せてよかったよ。薬の調査は…ま、わかったら連絡するさ。それじゃ」

 

 

 

 

 



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出来る人は出来る人を知る

目の違和感が絶えないので初投稿です


真次君の相談は…天田少年との関係性に関わってくるんだろうなぁ。確かに可能性としてペルソナ暴走が人の命を奪う事件が起きた世界を知ってる。だが()()()()()()なんだよな。根幹にあるのは真次君がうまく向き合う事ができていれば起きない問題だから、俺が真次君のフォローに回って防いだ所で根本は解決しない…。彼がキチンと使いこなせるように手助けする方がよっぽど俺らしいやり方だと思うしなぁ。何より直接的に防ぐには『いつ』の事件なのかがサッパリだからなぁ。手の届く範囲なら人助けはしたいとそりゃあ思ってるがこのケースはこれ以上わからんよ…。ま、なるべく大事にならないよう真次君にはビシバシ行くしかないかねぇ?

 

 

それと…もう薬渡されてたのか。弱めの制御薬…ペルソナの能力を鈍くさせる薬ねぇ。ペルソナって自己の精神を投影してるんだぞ…そんな存在の能力を鈍くするって自己を薄めるって言ってるような薬だよなぁ。下手すりゃ自我崩壊まであるんじゃないのか?うーん、これの解析は早めにお願いしておくか。とりあえずはコレ無しでも大丈夫って自信を持ってもらえるようにならんとね。……幾月はほーんと避けとかないとな

 

とりあえずフミさんに制御薬の調査をお願いしようとしたんだが…とりあえず今週は待ってくれと言われてしまっては仕方ないか。それか…知り合いの医者にお願いする選択肢を提示された。何でも新薬、製薬に随分詳しいらしく、出来すぎて煙たがられるくらいの女医らしい。

 

…なんだろう、既視感がすごいぞ、その女医さん。倫理的に危なっかしい所がなくも無いとか言う不穏な一言を添えられたが、随分信頼は出来るらしく、フミさん自身も薬の事なら専門家の方が良いんじゃ無いのかと推して来たので紹介してもらう事に。

 

「…あ、来たわね。アンタ?フミから薬の分析してやってくれないかって頼まれたんだけど。ふーん、フミってアンタみたいなのが好みなワケ?じゃないとあの子からお願いされるなんて考えられないんだケド。どう言う関係なの?」

 

「えっと、貴女がフミさんから紹介してもらった女医さんで?」

 

「そうよ…って、こんな格好してるから信じられないかしら?」

 

「大分思ってたよりパンクっす…、てお名前は?」

 

「あ、忘れてた。って言うかフミも言ってないの?アタシは武見、武見妙よ」

 

…ヤッパリか。つかもう女医さんなんだな。いや、これ以上考える事はよそう、協力してくださるって仰ってるんだ。

 

「えっと、フミさんからはなんと?」

 

「持ってくるものが興味深すぎて手が足りない、仕方ないからアタシにも回してあげるって」

 

「えぇ…そんな説明だったんですか?」

 

「ふふ、どうかしらね」

 

「えっと、それで()()何ですけど…成分とか薬効の調査お願いできます?」

 

「ふぅん、ま、任せて、キミは将来性ありそうだから貸しにしておいてあげる」

 

「…高く付きそうっすね」

 

「あら、女に頼み事は高く付くのよ。賢くなったわね」

 

「お手上げです、じゃあよろしくお願いします」

 

「任された以上はやり遂げるわ。わかったら連絡するから。アンタの連絡先はフミに聞いてあるからもう行っていいよ」

 

「…ありがとうございました」

 

ダメだ、この人に勝てる気がしないぞ。頼りになりそうなのは間違い無いけど…。ひょっとしたらジョーカーみたく薬の調達お願い出来るかも知れないけどね。ホントに()()で払うハメになりそうだけど…

 

 

 

 

打って変わって今日こそご馳走をする日。俺から打診した日はゴールデンウィーク最終日だったんだが何故かベルベットルームが不安定と言われて先延ばしになってしまっていたんだ。それで延び延びになった約束をやっとこさ今日履行できるって事。

 

「申し訳ありませんでした…せっかくのお誘いの日でしたのに」

 

「まあ不安定な日があるってのは仕方ないさ。前回は…たしかメアリが迷い込んだんだろう?マーガレットさん、今回また何かあったのかい?」

 

「どうにも安定しなかった理由がはっきりとしなかったのですが…何やら異界との接続があったようなのです」

 

「異界?それはメメントスとか集合無意識によるモノとはまた別クチかい?」

 

「ええ。どうにも私達姉妹では入り口の安定化は出来ても中に入る事は能わず…」

 

「って事は内部…どこに繋がってるかって調査は俺がやろうか?」

 

「……難しいですわね。おそらく別の世界へと繋がっているのでは無いかと予想しているのですが…」

 

「…帰ってこれる保証は無いなら流石に行けないかな」

 

「いえ、安定化は出来ますので帰ってくる事は可能です。しかし…どんな世界に繋がってるか分からない上に我々のサポートも期待できない事を覚悟した上であれば…と言った状況でございます」

 

「えっとそれってほっといても大丈夫なの?」

 

「不安定な分安定化を辞めて数日中に消えてしまいましたわ…」

 

「何ともそりゃあ難しいなぁ。そうだなぁ、俺がもっと強くなって仲魔を増やすことができたのなら…飛び込んでみる必要もあるのかね?」

 

「その頃で有れば私達も安定化の技術を確立しておく事を保証致します」

 

「そりゃあ頼もしい。十分なサポートじゃないのさ。帰る場所の確保ってのは大事よ」

 

「そう仰ってくださるのなら…」

 

「お姉様、あの例の空間の話ですか?」

 

「ええ、リョウスケ様がいずれ調査に向かってくださるとの事ですわ」

 

「なんと!原因を究明しないと行けませんものね…。私たちが出来ることと言えば…歪みが生じるタイミングを測ることと、リョウスケ様が調査されている間閉じること無いようにする事ですね」

 

「ええ、ラヴェンツァ、お願い出来るかしら?」

 

「お任せください」

 

「あれ、そういえばエリザベスは?」

 

「エリザベスお姉様なら、お腹を空かせると仰ってテオ兄様を連れて行かれました」

 

「…相変わらずなんだな」

 

「じゃあ準備してる間に呼んでおいてくれるかい?」

 

「承知致しました」

 

 

 

ったくほんとはしゃぎ過ぎなんだよなぁ。まぁ、それが良いとこなんだろうけど…本人には言えないかな

 




武見妙さん。p5じゃ開業医をやってるお医者さん。思い切ってもうもう出てもらいました。あんまり若過ぎると開業医ってのもどうかと思う年齢になるので…。この作品では冴さんより年上ですね。


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やっぱり薬は厄ネタだったよ…

寒暖の差が激しいので初投稿です


「はむっ、これがリョウスケ様が習得なされた一子相伝のカレーですか…。実に美味でございます」

 

「いやいや、そんな厳かなもんじゃないよ?」

 

「お腹を空かせた甲斐もございました。私に協力できてテオも喜んでいることでしょう」

 

「お姉様…もしや、取り分を増やす為にテオ兄様を…⁉︎」

 

「貴女たち…テオならそこでケロっとしてる上に黙々と食べてるわよ」

 

「リョウスケ様、美味しゅうございますね。いやぁ、エリザベス姉上と身体を動かした後ですから染み渡るようですよ」

 

「「⁉︎」」

 

「君らも随分と人間味が強くなったと言うか、俗っぽくなったと言うか…。ま、まぁそこそこの分量作ってきたつもりだから満足行くよう食べてくれよ。メアリも手伝ってくれてありがとう」

 

「いえ、私もこの方々にはお世話になっておりますから。…それに」

 

「ん?それに、どうしたのさ」

 

「エリザベスさんにオタマを渡してしまっては暴君が生まれそうな予感がしてなりません…」

 

「…確かに、絶対的支配権を所有したと思い込んだ振る舞いをしそうではあるな」

 

「テオさんに対してはご飯にご飯をかける暴挙すらも…」

 

「ここに来ておかゆライスネタを聞くとはね…。キミも大概馴染んできたんだなぁ」

 

「ふふ、皆が楽しそうですわね」

 

「あー、まぁ、楽しんでもらえたなら何よりだよ。で、さっきの話なんだけど…繋がった先の世界に見当は?」

 

「…ありません。貴方様の記憶の元となった世界やメアリが元いた世界かと思えばそうでないような。まるで()()()()()()()()()()()()()そんな先に繋がっているようです」

 

「うーん、別世界への入り口ってトコかぁ」

 

「そうですわね…おそらくと言った段階ではありますが。まぁ、これで2度歪みを体験した訳ですので私たちも兆候を感じ取る事は出来そうです。その時にまたどうされるかお聞きいたしますわね」

 

「ああ、そうだな。そう言った場面にも対応出来るよう研鑽を積むよう心がけるさ。……その別世界にいった場合、こっちの世界との時間のズレってどうなるの?」

 

「ベルベットルームや認知世界で過ごされた時ほどのズレにて収まると思われます。短時間ならば気に留めるほどズレませんし、大凡ですが、1年以上こちらにいて1時間ほどあちらの世界で経った程度だと考えております」

 

「えっと、でも、その場合俺は1年以上は生きてるんだけどどうなるのさ?」

 

「ふふ、ここベルベットルームは精神と物質の狭間の世界でございますよ。そんなここからさらに別世界へと赴くのですからリョウスケ様の精神体を改めて受肉させて活動する…と言った対応を取らせていただきますので肉体的な寿命の損失はございませんわ」

 

「……それはそれで大丈夫なのか?」

 

「そこはメアリのおかげですわね。限りなく人間に近い器を用意し、それを使って探索する…と申しましても、このベルベットルームからさらに異世界へと向かうからこそ出来る荒業ではあります」

 

「……ちょっと考えさせてくれ、ま、まだ時間はあるんだろう?」

 

「はい、ご安心を。またしばらくは安定しておりますので。また歪みが近づく頃にはお知らせ致します」

 

「ま、そん時はそん時だなぁ。いやぁ、色々と気を使ってもらってありがとう、マーガレットさん。ほら、貴女もカレー食べてきてくださいよ。…エリザベスが飲む機械と化してるんで」

 

「あらあら、全くエリザベスったら仕方ありませんわね。それでは私もご相伴に預からせていただきますわね。私もリョウスケ様の催しは楽しみにしておりますのよ」

 

「そりゃ光栄だ、またしばらくしたら計画するさ。…やる事が増えてきてちょっと足が遠のいちゃってるけどね」

 

「ふふ、それも仕方ない事ですわ。なぜならリョウスケ様が作る輪が広がったが故ですから…」

 

「…なるほどね。ま、今日は楽しんでおくれ」

 

 

 

確かに歪みとその先の世界の事は気になるけど…今できる事をしっかりやりますか。1年の面倒を見る事にかまけ過ぎないで自分の足元疎かにしてたら意味ないよな。とりあえず夏休み迄は今やれる事を改めて取り組もう。

 

 

 

 

 

約束通り隔週で一年生達と共に練習をする習慣も随分慣れたな。この間真次君と話してからというもの、彼も随分打ち込み度合いが変わった様だ。あの制御薬も元々はいざという時に服用する程度だったみたいだが、最近は必要になりそうになる前に一歩退くことができる様になったらしい。良い事じゃないか。しかし、3人でどういう攻略、というか探索してるんだろう。……あれ?逆に考えてRPGゲームやらせた方が探索の為になったりするんじゃないか?手探りでやるよりよっぽど良いんじゃないか?データベースや攻略本を禁止して手探りで攻略していく…アリかも知れないな。ちょっと考えておこうか。大人たちも攻略してもらいたいのかさせたくないのかよく分からんしなぁ。…そこらは俺も影時間に入る事になったら考えるくらいでいいかな。

 

 

 

 

中間試験も終わって梅雨も真っ只中…妙さんにお願いしてた制御薬の調査がひと段落したらしい。それで妙さんが勤める大学病院の近くの喫茶店へと向かった。ホントはフミさんも色々と報告する事があったらしいんだがなんでも東京を1週間程離れているらしく、帰ってきてからにすると言われている。

 

 

「ありがとうございました。…それで、どうでしたか?」

 

「イロイロ言いたい事有るけど…これ飲んでるのはアンタ?」

 

「いえ、俺では無いです。けど知り合いですね」

 

「そう、とりあえずその子に伝えなさい、死にたく無かったら今すぐ飲むのをやめろって」

 

「…やっぱりですか」

 

「中にはアタシも知らない成分…解析かけても不明なトコロがあるとかホント訳分かんないんだけど、医者として断言するわ、この薬を作ったやつはロクなやつじゃ無いわね。というか、大丈夫?その知り合いって。ヤクザかなんかなの?いや、ヤクザにしちゃあ高度すぎるか。誰から貰ったのよ」

 

「…出所は桐条グループにあった研究所に所属していた研究者からもらったみたいです。多分その本人が渡したんでしょうね」

 

「うわぁ、聞かなきゃよかったかしら…。やっぱりデカイ組織って後ろ暗いことやってんのかしらね。で、ワカンナイ成分はキミは知ってるの?」

 

「…フミさんに依頼してる調査と被ってるんじゃないかというのが俺の予想です」

 

「ふーん、キミも結構ヤバイとこ踏み込んでるんだ。……ねぇ、体力とか自信あるんじゃないの?」

 

「えっ、まさか」

 

「あら、察しがいいのね。言わなくても分かってくれるって素敵だわ。そう、色々と薬作ってみたんだけど…貴方試してみない?使用感についてはレポートを書けとは言わないわ、それは言葉でも十分。問診にもなるしね」

 

「ええ…、ちなみにどんなのがあるんですか?」

 

「うーん、試して欲しいのはねコレ。ナオール錠よ。…なによ、名前に文句でもあるのかしら?」

 

「いえ…薬の成分調査お願いした俺が薬の治験頼まれるっておかしくないですかね?」

 

「あら、そうかしら?アタシの薬は成分表と薬効表をまとめて渡してあげても構わないわよ。キミが持ってきたのは…アタシからすれば薬とも言えないモノだし」

 

「……わかりましたよ、機会が有れば試してみます。どんな時に使うんです?内服ですか?」

 

「ふふん、聞いて驚きなさい、外傷に効く内服薬よ」

 

「………」

 

「何よ、その沈黙は。とりあえずワンシート…10錠渡してあげる。50mgの方だから…そんなに効き目は強く作ってないわよ。……多分」

 

「何かで試したりとかは…?」

 

「キミが初めてなの…光栄に思ってくれるかしら?」

 

「は、はは、お手柔らかにお願いしますね?」

 

「ダーメ、せっかくの善意の協力者(モルモット)だもの。逃さないわ、それにこっちのキミから貰った方…狙いが何なのか分からない以上代替薬も何も分からないけれど専門家の知識は役に立つわよ?」

 

「……わかりました、感想は使い切った辺りまた」

 

 

 

まだ見ぬジョーカー君よ…キミが購入するであろう薬品は俺の尊い犠牲の元に成り立っている事をここに記しておく。そうなんだよ、どう考えてもおかしいんだよな、現実世界で全体回復の薬品が手に入るとか訳わかんないもんな。そりゃ誰かか何かで試したんだろう…この世界では俺ってこった‼︎

 

 

…中々勇気が必要な案件が転がり込んできたなぁ。でもこういう道具も必要だよなぁ…ハラくくるか。

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘をいただきまして、荒垣真次郎君の事を慎二君と表記していたため、修正いたしました。既存キャラの名前を間違えてしまい申し訳ありません


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情報源の信頼が揺らぐと怖い話

アンケート機能を使ってみたので初投稿です


妙さんから貰った情報を真次君に渡さないわけにはいかないよな。だけど、内容が内容なだけに軽々しく学校の近くで話も出来そうにない。そんなわけで事務所近くのファミレスへと呼び出す事にした。

 

 

「あの薬…しばらくは使ってないんだよね?」

 

「どーかしましたかね?最近は飲んでないっす。瞑想とトレーニングして、自分と向き合うってことの意味を考えてたら以前に比べりゃだいぶ調子も良くなったんで」

 

「ふむ、それは何よりだね…。とりあえず俺から調査をしてもらった結果なんだけど…このファイルに書いてあるから読んでくれるかい?こんなやり方してる理由も読めばわかると思うよ」

 

「……マジ…かよ…」

 

「ね?口にしない方が良かったろう?そのファイルも読んだら処分したいんだが良いかな?」

 

「……」

 

「まぁ、こうなると他人が信じられなくなるよね…。俺の考えだけど良いかい?」

 

「…まだあるんすか?」

 

「まあまあ、聞いてくれよ。例のトコロの攻略を目指してるのは君たち実働部隊、そのサポートをしてる例の顧問、そして美鶴ちゃんのパパさん達トップ層…ざっと分けても3つのグループに分けられるじゃない?」

 

「…ああ、そうっすね」

 

「俺はその中でも実働部隊の3人しか知らないわけだけど…、大人たちが信頼出来るのかどうか考えないといけないかも知れないね…」

 

「…」

 

「俺としては真次君、キミが1番適任かなと見たわけなんだよ。明彦君は…そこまで器用じゃ無さそうだし、美鶴ちゃんは多分冷静な判断が出来ないだろうしね」

 

「…俺がやるんすか?」

 

「身もふたもない話なんだけどさ、真次君の立場からすると俺も怪しく見えてくる訳じゃない?まぁ俺も完全なる善意で手伝ってるとも言い切れないしねぇ…。俺から言えるのは善意だけで近寄ってくる奴なんて信用しちゃいけない、利用してくるつもりで来る奴の方がよっぽどマシだね。…程度にもよるけど」

 

「…結局アンタは何が言いたいんすか?はっきり言ってくださいよ、俺は今ちょっと何にも信じられそうにねぇっすよ」

 

「ま、俺も異界に携わってるって言ったじゃない、でも今んとこ1人でやってると辛いし無茶苦茶広いんだよねぇ…。まぁ1人で何とかなる範囲でしかやってないとはいえ、手伝ってくれる人欲しいんだよ。ま、君らに関してはタルタロスのカタが付くまではそのつもりはないんだけど」

 

 

「それが先輩の打算っすか」

 

「そうだね、シャドウや悪魔と戦う術を持つ人なんて中々居ないからね。恩を売って俺の手伝いでもしてくれるようになったら儲け物じゃない。…ま、タルタロスみたいなヤバそうなものに取り掛かる人間のレベルアップを図りたいってのもなくは無いけどね」

 

「…タルタロスってヤバイんすか?」

 

「うーん、その影時間って君たちペルソナ使い以外にも巻き込むだけの影響力があるんだろう?」

 

「まあ、そうっすね、実際被害者も…無気力症候群の患者としてでてますけど」

 

「そう、実際に被害を出せる異界を作り上げてるんだ。それも()()()()()()()()()にも関わらず」

 

「‼︎…どういう事っすか⁉︎」

 

「君らの実力で探索出来てる辺りが根拠かな。出来た要因が違うから何とも言えないけど…異界ってのは根源に近寄るほど歪みも大きくなるのさ。そしてその歪みが引きつけるシャドウや悪魔も必然的に強大な力を持つケースが多いのよね」

 

「だとするとだ、タルタロスと影時間という異界を作り上げてしまうほどの()()()による被害者が…無気力症候群の患者程度で済むと思うかい?」

 

「………」

 

「そう言えば、異界発生の原因は説明受けたんだっけ?」

 

「あ、ああ、幾月のヤロー曰く桐条グループの研究所で起きた事故を止めた時にその副産物としてどうのこうのって言ってたけど…」

 

「その事故の原因だね。大方ヒトの手に余るような存在を思い通りにしようとしたツケかきたんだろうさ。幾月の目的も…何かあるんだろうねぇ」

 

「じゃあアイツをとっちめりゃあ!」

 

「まちなさいって。幾月の事…美鶴ちゃんは信頼してるだろう?」

 

「あ、あぁ。そうっすね、信頼してると思いますよ」

 

「そんな信頼してる大人だ。しかも一族のグループでも重鎮で学園理事長だ。そんな人間を疑って高々一つ年上のよく知らない高校生に言われても…ねぇ?」

 

「…そう、言われるとそうっすけど、どうすりゃ良いんですか!」

 

「まぁ君1人にストッパーになれとは言わないさ。けど、1人くらいは一歩引いて冷静に考えることが出来る人間がいた方がいいと思わないかい?」

 

「…」

 

「ま、俺の考えってだけで真次君がどう行動するかはもちろん自由なんだけどね」

 

「…わかりました。ちょっと俺も考えてみるっス。とにかく、調査の件は助かりました」

 

「うん、俺の話も聞いた上で考えると良いさ。本当は仲間と相談してもらいたいんだけど…内容が内容なだけに不和を招きかねないから難しいのは申し訳ないね」

 

「いや、こんな話してもらえて無かったら()()使って俺もひどい目に合ってたかも知んないんですよ。俺としてはあのヤローより先輩の方が信じられるっすね」

 

「ふふ、そう言ってくれるのか。ま、君も明彦君も美鶴ちゃんも訓練には変わらず来てもらって構わないからね」

 

「ウッス、助かります。…俺もアキみたいに立ち稽古お願いしても良いっすか?」

 

「もちろんさ。どんな動きをしたいか言ってくれれば想定できる範囲で協力してあげようじゃないの」

 

「あざっす」

 

「…あと、元々苦手だったんだろう幾月の事。変に意識する必要は無いよ。無駄に幾月を警戒させるなんて事、したくないだろう?ま、状況証拠…にしちゃあ随分と真っ黒なモノを真次君は貰ってるけど、確実な証拠ってのは無いからね。あくまでも渡される情報を鵜呑みにする事はよそうって話だからね」

 

「そうでしたね…。カンペキに悪者として見なすトコでしたよ…。今日はありがとうございました、得意じゃあねぇんですけど、俺なりに考えてみます」

 

「そうだね、俺は俺なりに見返りを期待して話をしてるだけだから気にしなくていいよ」

 

「ははっ、やっぱり先輩はいい人っすよ。それじゃ帰ります」

 

「うん、気を付けてね」

 

 

 

とりあえずは真次君がペルソナを暴走させてしまう事故と薬による衰弱を減らす事は出来たんだろうか…?都合が良すぎるんだよなぁ、ペルソナによって殺されてしまった人物の息子がペルソナ使いとして覚醒し、手元に置くことが出来るのって。幾月が仕組んでいたって言っても不思議じゃない。ホントかどうかはわかんないけど…。でも真次君が抗う力を持っていれば最悪は回避出来るかも知れない。…流石に真次君に「君がペルソナ暴走させて人を巻き込む事故を起こすからそれまで着いてく」何て説明できる訳ないからね。こんな周りクドイやり方しかできない先輩で申し訳ないよ…。

 

 




アンケートは御先祖様がいざという時のために遺して置いてくださった仲魔です。いわゆる初期メンですね。ポ○モンの御三家みたいなもんです。
唯一ゴウトだけは直接戦闘に役立ちませんがリョウスケ君の師匠兼相棒として活躍します。


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大きく動く為には準備も必要

寒くて眠いので初投稿です


真次君と話をしてから様子が変わるかと思っていたが、俺がみる限りでは普段どおりの振る舞いを続けているらしく、明彦君が違和感を覚える事もないみたいだ。元々幾月のことを避け気味だったのか功を奏したみたいだが、幾月を信頼している美鶴ちゃんからすると何とか仲を取り持ちたいという思いがなくも無いんじゃないかと聞いた。

 

 

そして間もなく一学期も期末に差し掛かろうかというところ…成長しない部長候補はもはや風物詩とも言える様になってきたな。まぁあのアホ(芝原)の事はもう諦めの段階なんだ。ある意味高校生という今を全力で謳歌しているとも言える。…フォローする身からすればたまったモンじゃないんだがね。

 

 

夏休みも時間が取れる!…と思って無計画だと後悔するからなぁ、色々と考えないと。合宿はちょうど7月の26日から31日までの6日間。もちろん俺としては前乗りするか、居残りして向こうでしか出来ない事を色々やりたい。何よりも葛葉家が遺したモノを探すのは急務と言っても過言ではないだろうし…。それにメメントスの様な異界も()()無いのは分かってる。あの辺りの異界といえばもちろんマヨナカテレビなんだが、出所がハッキリしない噂話のことを耳にしていないからな。とは言え山奥で神社の敷地なら多少の無茶をしても何とかなるかも知れないからフミさんを呼んでこっちの世界でもアスラおうを発現させる試みもアリかと思っているんだよな。…1番の障害はフミさんをあそこまで連れて行く事なんだけど。ペルソナ自体は要するに能力者、覚醒者の心を具現化したものってことに違いは無いからな。試してみた事はないが他の能力者にできて俺にできないって事は無いハズだ。その為にもマガツヒの代替として魔石を用意しておかないといけないけどな。

 

…うーん、やっぱり前乗りにしようかな。終業式からすぐ爺さんの所へ向かおう。その為にフミさんにも話を通さないと。

 

「という訳なんですけど…実際こっちの世界で試してみるなら場所の候補として考えてる場所なんですよ」

 

「ふーん、たしかに外に出るしか無いわよね」

 

「ええ、それで俺の親戚の爺さんがやってる神社が持ってる山なら、と思った訳なんです」

 

「うーん、なるほどねぇ、たしかにアタシもこの目で見てみたいのは間違いないんだけども…歩き?」

 

「山…ですからね」

 

「仕方ない、歩くかぁ。このアタシを歩かせるんだからそれなりに結果出してもらわないと困るんだけど?」

 

「も、もちろんですよ。機材とかはどうなります?」

 

「あー、人に触らせたくないやつもあるんだけど…調べるにしてもある程度は必要よね。アタシとアンタで運べる量考えておくわ」

 

「お願いします。出来るだけアクセスの良いところを探す様にはしますので」

 

「じゃあよろしくー。あとその神社にいろんなお宝あるのよね?それも調べたいんだけど?」

 

「それに関しては探してみないとなんとも…」

 

「ま、その辺の道具類はこっちに持ってくるつもりでしょう?その時でもいいから」

 

「は、はは、その際はよろしくお願いします」

 

「そういえばアンタ、妙に何渡したのよ。色々聞かれて困ったんだけど」

 

「えっと、異界で活動する為に自分の精神を神話とかに出てくる神や英雄に投影して具現化する能力者が居るって説明したじゃないですか。その具現化したものを『ペルソナ』と呼んでいるわけで」

 

「うん、それは聞いた。まだこの目で見てないから何とも言えないんだけど」

 

「で、ウチの学校に()()()に集められてるんですよ。俺は違うんですけどね。その能力者の1人が発現した『ペルソナ』が強力すぎて制御しきれない時が有ると相談した所渡された薬です」

 

「…聞いてるだけでもヤバそうね。だって薬で制御出来るって事はその材料もどうせ異界産なんじゃないかしら?それにその『ペルソナ』?って元は人の精神なんでしょ?それを制御する薬をホイホイ渡すってどうかしてるわよ」

 

「まぁ、ですよね。それで妙さんからも劇薬、今すぐに服用を止めろ、これで弱めの調整とか何を考えてるのってお怒りでして」

 

「なるほどねぇ、それでアタシに素材の心当たり無いか聞いてきたのね。…先にアンタから異界のモノ貰ってなかったらこんな考えにも至らなかったんだろうけど、その飲まされてたコよかったわねアンタみたいな人が居て。薬の強さ次第でその能力の暴走を調()()出来ちゃうじゃない。少なくとも人でなしのやる事なら都合が良いところで暴走させるわよ」

 

「……」

 

「何よ、黙っちゃって。心当たりでもあんの?」

 

「いえ、たしかに同じ薬しか渡してこないって考えしかなかったんで、俺もまだまだ考えが足りなかったなぁって」

 

「アタシも研究者だからねぇ、時と場合と手段を考えないならって想定の話だから本当かどうかはわかんないわよ」

 

「現物の調査はまた手に入り次第お願いします」

 

「はーい、んじゃ向こうでもよろしくー」

 

フミさんにお礼を告げて帰る。…なるほど、薬に頼ってたら文字通り生命線を握らせてる訳になったんだな。もし、幾月がペルソナ能力者候補を見つける事ができる術を持っているならあながち間違いでも無さそうだな。実際に暴走の兆候が少なくなってる真次君に対して何らかのアクションを取ってくる可能性も考えておかないとな。

 

 

 

 

そして、今日は試験前最後のルブランバイトの日。今日から8月まではしばらく来れないからな。最近ではしょっちゅう面倒をみる事になってる双葉ちゃんにも説明しないとなぁ…。




アンケート、ピクシーはやっぱり強いですねぇ。あとヤタガラスは思ってた以上に票が入りました。アンケートはもう2、3日置いておきます。


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やっぱり試験から逃れられない。学生だもの

三寒四温がぴったりになってきたので初投稿です


「この間言ってた様にこれから試験とその後沖奈の方の親戚の家に行くんで来月までは手伝いに来れそうに無いんですよ、すいません」

 

「ま、なら仕方ねぇよ。一応オマエも高校生だしな。本分は勉強だ。それに親戚付き合いってのも疎かにしてっと後で苦労するからなぁ。ただ…双葉の奴寂しがるかもなぁ」

 

「双葉ちゃん最近よく来るんですか?」

 

「ああ、若葉の方が今忙しいらしくてな。ウチに来る方が安心もできて双葉も楽しそうだからな」

 

「まぁ、いくらしっかりしてても一人で家に置いとくよりはまだ良いですかねぇ」

 

「まぁなぁ、アイツも小学校じゃ友達も少ないみたいだからなぁ。まだオマエと喋る様になってだいぶ健全になったとも思ってるんだが」

 

「若葉さんって何してる人でしたっけ?」

 

「あん?研究者だ。何の研究をしてるかってまでは詳しく聞いてねぇけどよ、今が一番大事な時期なんだとさ。何でもそろそろある程度の成果を見せないといけねぇみたいでよ。たしかに双葉の事放り出してる様に見えなくもねぇけど、若葉もシングルマザーとして収入を確保しなきゃなんねぇからな。アイツも心苦しいんだよ、寂しい思いをさせちまってるってのは分かってる。けど結果を出さないと生活が…ってこった。もう少し俺を頼ってくれりゃあ良いんだが…って、ガキに聞かせる話でもねぇな、つい口が軽くなっちまった。オマエも双葉と仲良くやってくれてるから助かってるってこった」

 

「なるほど、ま、周りが何とかできてる間は頼ってもらってりゃいいんじゃないですか?」

 

「ふん、オマエに言われなくても分かってる!ほら、手ェ止まってんぞ」

 

「うっす、あ、双葉ちゃんにはお土産まっててって伝えて置いてくださいね」

 

「分かったよ、そんくらい無かったらアイツなだめるのも大変だからな」

 

 

なるほど、若葉さんも双葉ちゃんの事を育てたいからこそ頑張ってるんだな。…目をつけた奴が悪いのはもちろんだけど、流石に出来る事がヤバすぎる研究って自覚はしてほしいもんだよ。でも獅童の指示で自在に個人のシャドウを消す事が出来たって事は…獅童側には認知世界に入る術があったって事だよな?悪神にもたらされたイセカイナビとは別口の。獅童の性格からして知りすぎた手駒を消した後、認知世界に干渉する術を確保していない訳が無いんだから。その辺がマディス社の『EMMA』に流用されてるんだろう。って事はどっかのタイミングで若葉さんが開発してるのか。ホントに天才過ぎるな、…自分の首をキレイに絞めてるって事さえ除けば。

 

 

…もしも若葉さんに()()あった時遺産や補助金目当ての叔父じゃなくて何としてもマスターに引き取ってもらえるようにできないモノかね?もちろん若葉さんに何にも無い事が一番なのは分かってるんだが…この手の想定はまずい事をしておくに限るよな。そもそもマスターが若葉さんとくっつけば問題無いんだよなぁ。プレイボーイ気取ってるくせに本命には迂遠なアプローチしてるからなぁ…。最終手段は双葉ちゃん使って何とか出来ないだろうか?

 

 

 

そしてバイトを休んでまで試験対策をしなければならないのかというと…

 

「いやぁ、頼りにすべきは出来る同級生だわ」

 

「えへへ、ヒナも困ったらリョウスケに泣きつけって言ってたし」

 

「はぁ…期末に至ってはアイリちゃんもかよ」

 

「お、センパイだ、ちょっと聞きてーことあるんすけど…」

 

「おいおい真次君、君もなのかい?」

 

「?いや、試験終わったら夏休みの間どんな感じで稽古日の予定組んでもらえっかなと思って聞きにきたんですけど…?」

 

「良かった、さすがに一人で3人の面倒見るのは辛いものがあるからね。とりあえずだけど、俺は8月の頭まではこっちに居ないんだ。今月末は部の合宿だしね。だから月が変わってからになるんだけど…君もそんな先の予定は分からないだろう?適当に聞いてもらえれば都合の良い日を答えるさ」

 

「あざっす。伴と芝原センパイは試験対策っすか?…はぁ」

 

「なによー、悪かったわね!中間で酷い目にあったのよ!何なのよあのテスト…ほとんど科目関係ないじゃないのよ!」

 

「なんだよ、ボクシング部のホープ君の友達はお勉強も出来んのかぁ…良いなぁ」

 

「俺らは不甲斐ないと美鶴に『処刑』されっからなぁ…」

 

「えぇ、何よそれ、おジョー様の『処刑』とか怖いわね…」

 

「なんだよ、おっかねぇな」

 

「ふぅん、俺も普段からもう少し締めたほうが良いのかな?」

 

「ええ!リョウスケはそのままでいてよ!」

 

「そうだぜ…お前がそこも厳しくしたら息詰まっちまうじゃねぇか」

 

「うーん、この件に関しては君らの普段の行いが悪いんじゃないかな?」

 

「「うぐっ…」」

 

「そうっすよ、甘やかしてるだけ無駄っすよ」

 

「良い事言うじゃない真次君…そうだねぇ、この期末結果が振るわなかったらちょっと俺も考えようかな」

 

「ヤバイ、リョウスケもおっかねぇんだ…」

 

「アタシの高校生活の為にも頑張らなきゃ…そうだ、最悪ヒナにも助けて…」

 

「『アイリー、勉強はやるって約束したやんなぁ?自分の不始末でウチに助けて貰えると思ってたらアカンでー』とのお言葉をヒナコさんには頂いてあるぞ」

 

「……ガンバリマス」

 

「十分おっかねぇよ…」

 

「何か、言ったかな?」

 

「…何でもねぇっす」

 

 

はぁ…夏休みに向けてって思ったけど先にこいつら何とかしてからか。赤点とったら合宿にも響くしなぁ、ちょっとムチ入れますかね




はえー、やっぱりピクシーの人気強いっすねぇ。


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挨拶回りは忘れちゃいけない

花粉が本格化してきたと思うとぞっとしてきたので初投稿です


まめに去年のテストとノートを取っておいたおかげもあってアイリちゃんの負担は軽かった。問題は芝原だったんだ…。もうそろそろダイチさんから部長の座を受けるってーのにこのザマで良いんだろうか…。流石に俺にやれって言われてもちょっと職務をまっとう出来る気がしてないから頑張ってもらいたいんだが…。

 

 

ともあれ、何とか終業式も無事に迎えることができたんだ。俺は早速葛葉家へと向かう事にしてある。…蔵の整理に時間取りたいからね。それに刀術とか短銃術とかを見てもらうのに流石に合宿中はタイミング悪いだろうし。…そういえば雪子ちゃんも千枝ちゃんももう中学生なってるのか。良くも悪くもあんまり変わってなさそうだけどな。夏休みの宿題見てあげた方が良さそうな気もするな。ま、その辺は行ってからかな。

 

 

「またキョウジおじさんは帰んないんですか?」

 

「仕方ねーだろ仕事だ仕事。俺もそろそろ顔出すのもって思ってるし天城屋旅館でゆっくりしてーんだ。けどなぁ…こういう時に限って仕事って入るもんなんだよ。それにまた白鐘のじっさまにお嬢ちゃんの面倒見てくれって言われてよぉ。お前居ねーんだから余計に事務所空けられねぇんだよ」

 

「あぁ、そりゃあ仕方ないですねぇ。けど…一人で大丈夫ですか?」

 

「…善処するよ」

 

「不安だなぁ…、いつまで遊びに来るんです?」

 

「じっさまのヤマ次第だろうなぁ。この間遊びに来たのが楽しかったらしくてな。夏休みってのもあってあんまりほったらかしってのもかわいそうだって相談されちまってよぉ…頭あがんねぇし気の毒だし断れねぇんだよなぁ」

 

「とりあえず8月までは帰ってこれないんでねぇ。それからなら良いんですけど。それか…向こう連れて行きますか?」

 

「流石に東京から外はなぁ。お前が車でも使えりゃ良いんだが…」

 

「車はまだ…ですからねぇ」

 

「ま、何とかやるさ。お前が世話焼くまでは何とか一人でやってたんだし」

 

「…最悪家事代行サービスなんてのも世の中にはあるんでアリですよ」

 

「…覚えとくよ」

 

 

さて、しばらくこれないって話はベルベットルームのみんなにもしておかなきゃな。無理を言えば向こうでも扉を設けてもらう事は可能なんだろうけど…歪みと不安定が解決していない今はまだ早いだろうな。

 

 

 

「しばらくはまた東京を離れるよ。2、3週間ってトコかな」

 

「ふふ、欠かさずお知らせいただきありがとうございます。全く、エリザベスお姉様ったら近頃は手合わせの機会も減ってしまい拗ねておりますの…、せっかく挨拶に来て頂いたのですから、顔くらいだせばよろしいと申し上げたのですが」

 

「まぁ、仕方ないさ。中々時間取れなくなったのは俺が悪いんだし」

 

「それではいってらっしゃいませ、成長を期待しておりますわ」

 

「あぁ、色々と身につけて帰ってくるよ。新しい事も見つかるかも知れないし」

 

 

挨拶する程の期間でも無いんだけどな。ま、この辺は礼儀だしな。さて、俺は沖奈へと向かうか。向こうは向こうで爺さんに話をしてフミさんの泊まる手配を旅館にお願いしたりしないといけないしな。

 

 

久しぶり…かな?いわゆる帰省みたいなタイミングで行ってるしなぁ。まぁ、偶にしか行けないって事が計画的に動けるって事もなくも無いか。

 

 

「お久しぶりです、またお世話になります」

 

「おう、まだ合宿までは時間あるんじゃろ?ほれ、それまでにどれだけ腕を磨いたか見せてみぃ」

 

「それはもちろんです。あ、あと古牧先生に頼んでこの間持って帰った分の書物を読んでいただきました」

 

「ほう、何かわかったかの?」

 

「ええ、蔵に納められてると思われる品々と…葛葉の名を持つ者が再び魔の物を祓わなければならなくなった時の為に遺しておいた物があるという事が分かりました。古牧先生は口外しないと約束してくださったんですが、その代わりに蔵にある霊刀や古刀を機会があったら見せてくれとだけ言われましたけど」

 

「ほほう、そんな物が蔵にのぉ。うーん、しかしどこの辺にあるか分からんのではないか?」

 

「ええ、その為にも明日から本気で取り掛かるつもりです。天気予報もちょうど曇りなんで都合いいと思いますし、出せるだけ外に出しますよ」

 

「うーむ、儂らこそほったらかして来てしもうたからのぉ。出来るだけ手伝うわい、宗一には言うておくか」

 

「ありがとうございます。それで、向こうで研究者と渡りをつける事ができまして、合宿までの間に来ていただく事になってます」

 

「ほう!世の中は広いのぉ、そんな突拍子も無い事を研究しとるとは物好きなんじゃろうか」

 

「科学の時代だからこそ解明されてない事象に携われる事が楽しくって仕方ない様でしたね」

 

「変わりモンそうじゃの」

 

「…それは否定しませんけどね。後…その人菅野フミさんって言うんですけど、わざわざ苦労をかけてこっち来て頂いてるんで天城屋さんにお願いもしてあるんで挨拶行ってきます」

 

「ほうほう、そりゃあ大事じゃの。しかし、よう知り合えたのぉ」

 

「ほんっと幸運でしたね。…そういえば聞きたかったんですけど、神秘やオカルトに対するお役目って任されてた家は葛葉家だけ…何ですか?」

 

「うーむ、何時しか儂も爺さんから聞いたんじゃがのぉ…ライバルみたいな関係と言っておったのが…ほ、ほ、「峰津院ですか?」それじゃ!!峰津院家と言っておったわ。何でも西日本担当だったらしくての、よく担当の境界では衝突したと聞かされておってのぉ。峰津院家の者に負けるとそれはそれは恐ろしい目に合わすと脅されたもんじゃよ。ま、近頃はそう言った付き合いも遠のいておるがの」

 

「峰津院家と連絡って取れませんか?葛葉家が遺してあるなら向こうも同じ事をやっていても不思議じゃあありませんし」

 

「そうじゃなぁ、儂は爺様らから伝えられた事は忘れてはおらんが伝えられておらん事はどうしようも無いからの。向こうでも必要になっておるならば同じ事だろうて。どれ、峰津院家への橋渡しは儂がやるとしようかの」

 

「ありがとうございます。じゃあ俺は一走り天城屋さんまで行ってきますね」

 

「忙しないのぉ…。気をつけてな」

 

 

 

 

 

天城屋旅館で女将さんに挨拶を済ませた。家庭教師とバイト神社の片付けが落ち着いてなお時間が有ればでいいと言ってくれたので本当にありがたい。今日は雪子ちゃんが出掛けていたらしく会えなかったのは残念だったな。まぁ、時間ある時の方がいいか。仕方ないけど今日は帰って明日からの片付けに備えるか…

 




アンケートありがとうございました。初期仲魔はピクシーさんです


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こちらこそコンゴトモヨロシク

小春日和なので初投稿です


さて、探す…というかあれだな、中に入ってるもの全部出す勢いで作業しないといけないなぁ。日に当てると良くなさそうなものもいっぱいあるだろうけど…ちょっとずつ運び出すかぁ。

 

「お、やってるねぇ、親父に言われて来たけど…確かに俺たちがやってこなかった事だよなぁ。しかし改めてでっけぇなぁ」

 

「あはは、一人でやってて途方に暮れてるトコでしたよ」

 

「まぁ虫干しもやんなきゃならなかったんだけど物が多すぎて後回しにしてきたツケだよなぁ。リョウスケ君がやる気じゃあ無かったら何時になってた事やら…。俺たちがいえた事じゃ無いけどご先祖様にドヤされるところだね」

 

「はは、それじゃあがんばりましょうよ。とりあえずは何が納められてるか把握するところら始めたいんで一通り運び出しからですね」

 

「だね、やりますかぁ」

 

「あ、マスクと軍手ならそこに置いてありますんで」

 

「気が利くねぇ、助かるよ」

 

 

 

二人で黙々と運び出す。最初一人でやってたよりも当たり前だけど効率は倍以上だ。と言ってもまだまだ終わりは見えそうに無い。…それに出て来てる物にまだ不思議そうな物がありそうな気配は無いな。

 

「おーい、一休みせんか?儂も手伝いに来たぞい」

 

「おー、そうだねぇ、息抜きも入れないと続かないよ」

 

「…そうっすね、まだまだ終わりも遠そうですからね」

 

 

こうして休みを挟みつつ3人で運び出しを続け、あっという間にに昼も過ぎた。やっと終わりも見えて来たんだが…まだお役目で使ってたような道具が出てくる気配が無い。…本当にあるんだろうか。不安になって来たな。

 

 

「ふぅ、これであらかた運んだんじゃ無いかい?親父、これは俺たちマメにやってなきゃならなかったでしょ」

 

「じゃのう。まだここから目録を改めるのと納め直しをせねばならんがの」

 

「ま、そうだねぇ。さて、せっかくだし空っぽな蔵もお掃除しますかねっと」

 

「ふむ、浮かない顔じゃが…目当ての物が今のところ見つかっておらんのか?」

 

「ええ…ここに無ければどこにあるんだろうと思いまして」

 

「んん?こんなとこに床下あったの?親父、知ってる?」

 

「…もしかして、ですかね?」

 

「実にタイムリーじゃの、かもしれんな。宗一、待っとれ。ランプを持って行くわい」

 

「ここここ。いや、これ一回ひっくり返さないと無理だったねぇ。まだ荷物あったのかぁ。もう一踏ん張りやりますかぁ」

 

「まぁ落ち着け、まずは中に何があるか…じゃろ」

 

「えっと、鍵とかは無さそう…ですね。用心深いんだか不用心なんだか…。でもあれだけ荷物が有れば鍵なんてむしろ壊れそうですかね」

 

「かもしれんの。開けてみるかの」

 

「んー、暗いなぁ。親父、これ床下って言うより地下じゃない?」

 

「そうっすね…、行ってみましょうか」

 

「うーん、宗一とリョウスケで行ってくれんか?儂はここで待っておこうかの」

 

「そうね、親父も入ったら狭いかも…」

 

「手持ちのライトで大丈夫ですかね?」

 

「うーん、大丈夫じゃない?何か出るほど広くも無さそうだし」

 

 

 

二人で床にあった戸をくぐる。…ひんやりしてるんだな。それに結構降りたか?ちょうど1階層分くらい降りたな…うーん、洞窟?

 

「すっげぇ、こんなとこあったんだねぇ。秘密基地かな?ん、ここロウソク立てかな?」

 

「あ、ホントですね。…風流れてるんで蝋燭くらいなら大丈夫そうですしつけましょうよ」

 

「こういう時は喫煙者ならパッとライター出てくるからいいでしょ」

 

「まるで自分を正当化しているようですねぇ」

 

「いいじゃないのさ、田舎だしタバコくらいしかやる事もないんだよ。ま、新しく勧めるつもりはないけどねぇ」

 

「ま、ライター助かりましたよっと。結構広いっすね。…お、ここ何か書いてありますよ」

 

「お、何々?うーん、照らしてくれるかい?えっと『葛葉ノ霊具ココニ封ズ』…何のことか知ってる?」

 

「ここか!!あ、すんません。俺はここにある物が欲しくて蔵をひっくり返していたんですよ。思ったよりも広いし爺さん呼んできます!」

 

「ほーい」

 

 

 

 

「ほぉ、ここか。こんなところがあったのも驚きじゃしな。ふぅむ、入ってみるかの」

 

「そうね、いやぁ年甲斐もなく宝探しみたいで楽しくなって来ちゃったねぇ」

 

「いやほんとですね、ドキドキですよ。…あんまりはしゃぐと蔵に戻す作業まだあるんでやばいですけど」

 

「うわぁ、それ言う?現実っておじさんやだなぁ」

 

「ええい、やかましいぞ宗一。さてと…この部屋じゃがやはり入るのはリョウスケからが良いじゃろ。この部屋を求めていたのも君だけじゃしの。儂らはお役目を解かれたとはいえ先祖の想いを疎かにしてしもうとる気がするでのぉ。ほれ、宗一。儂らは虫干しも終わったアレらを片付けるぞい」

 

「えー!ここまで来てかよ。…まぁしゃーねぇか。リョウスケくん、なんかすごいのあったら見せてねー。あ、ちゃんと入り口は開けておくからね」

 

「…ありがとうございます」

 

 

 

まさか一人にしてくれるとは思わなかったな。ありがとうライゴウ爺さん。さて、この部屋には何が納められてるかわからんが…開けてみますか。

 

 

「思ったより物があるな。こっちは武器の棚で、こっちは服…防具かな?そして…ここが霊具のコーナーってとこかな?」

 

「これは…『葛葉トシテ魔ナル物ヲ祓ワント欲スルナラバ封魔ノ術ヲ知ルベシ』…このハコか」

 

息を飲んでしまうな。開けるぞ…。思ったよりたくさん入ってる。ん?これだけ中身が入ってるぞ。…この封魔管開けてもいいのか?またメモがある

 

『先ズハ此ノ封魔管ノ封ヲ切ルベシ』

 

言われた通りにやってみようか。……一応霊刀だけは身につけておこう。何が起きるか分かんないからな。

 

「これは緊張するねぇ。よーし、開けるぞ!」

 

……うおっ!光った‼︎

 

「ふわあああ、良く寝たー!アレ?此処は…ドコかしら?って貴方誰?ライドウちゃんは居ないのかしら?あ、そうそうこんにちは」

 

「えーっと、こんにちは」

 

「アハッ、ニンゲンって挨拶が大事なんでしょ?ライドウちゃんから教わったもんねー。ふわあああ、ニャムニャム。ねえねえ、今って明治何年?アタシ寝坊しちゃったのかしら?」

 

「えっと、明治はもう85年前に終わったよ?」

 

「えっ⁉︎」

 

「ええっ⁉︎その、ライドウさんから何も聞いてないの?」

 

「………あー!思い出した!そうだったわ、ライドウちゃんからここで寝てていいけど起こされた時に協力してやれって言われてたんだった。アタシ、『ピクシー』コンゴトモヨロシクネッ!」

 

「あー、よろしく。とりあえずピクシーは味方で良いのかな?」

 

「そうねぇ、君お名前は?」

 

「あっと、名乗り返さなきゃいけなかったね。俺は葛葉、葛葉リョウスケ」

 

「リョウスケちゃんね、覚えたわよ。スンスン、君なんだかライドウちゃんと()()がそっくりね。それにリョウスケちゃんが持つマガツヒすっごーいのね。…でも殆ど中の人が出した側から飲み込んじゃってる?ねえねえ、お話、しましょ?アタシったらたくさん寝てたみたいだから今の事知りたいの!」

 

 

封魔管を開けたら出てきたピクシー、これが仲魔か。思ってたよりも陽気だしおしゃべりだなぁ。でも存在感見たいなのはメメントスで倒した悪魔なんかよりよっぽど強い気がする。ぽやぽやしてるけど頼りになりそうだな。…知識面はちょっと忘れっぽいみたいだから心配だな

 



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会話は大事、葛葉の基本

花粉症の薬で半日寝てたので初投稿です


「ねぇねぇ、リョウスケちゃん、ワタシお腹すいたの!」

 

「えっと、何を食べるの?」

 

「うーん、寝てる間はライドウちゃんがたーっぷり封魔管の中に貯めておいてくれたマグネタイト…マガツヒでお腹いっぱいだったんだけどね、お外出てきたらなんだかお腹空いちゃったの」

 

「うーん、一応マガツヒの塊と思われる…魔石はあるけど」

 

「そうねぇ、寝起きにはちょうどいいかしら?おひとついただくわね」

 

「は、はい」

 

「うーん、満たされた中でプカプカ眠るのも良いけど…やっぱり直接食べるのも良いわねぇ」

 

「後は…オヤツかな?」

 

「ええ!オヤツあるの!」

 

「あ、ああ。ほら、悪魔…いや仲魔って何が好みか分からないからさ、色々と準備してきたんだよ」

 

「早く言ってよぉ、楽しみだわぁ。100年位経ってるんでしょう?何があるのかしらぁ」

 

「うーん、今あるのはちょっとだけだけど…、これから付いてきてくれるなら、そうだな、定期的にオヤツは用意するけど…どう?」

 

「ほんとぉ⁉︎そうよねぇ…ライドウちゃんにお願いされて眠って待ってたんだもの、それくらいの役得良いわよねぇ」

 

「それと、ライドウさんには他何か言って無かったの?」

 

「えーっと……、あ!そうそう、ライドウちゃんにはね、アタシを久々に開けた人と契約してって頼まれてたのよ!」

 

「本当かい?…じゃあ俺と契約をしてくれるのかな?」

 

「そうねぇ、リョウスケちゃんもたーっぷりマグネタイト持ってるから良いんだけど…その、中に居るヒト?とお話させてくれるかしら?」

 

「…分かった。ちょっと待っててくれるかな」

 

…ふぅ、この空間はピクシーが現界してる、いや()()()()んだ。出来ないって思ってりゃ出来るわけない。試す必要なんか無い…そうだろうアスラおう、お前は俺のペルソナ、お前もまた俺の心だ。俺が今心を奮わせれば出来るッ‼︎

 

「来いっ‼︎アスラおう‼︎」

 

「うわーっ!スッゴイね、リョウスケちゃんの守護霊(ガーディアン)かしら?初めまして、アタシはピクシーよ、ヨロシクネッ!」

 

『ワレは此奴のペルソナ、ココロのウツシミ也。そしてココロに宿るモノでもある。異界のモノよワレに如何なる用か』

 

「ううん、貴方がスッゴイ存在感持ってるの外からわかっちゃったから、ご挨拶にねっ!貴方がリョウスケちゃんの生体マグネタイトたーくさん使っちゃってるみたいだから…ちょっと分けてもらいたくってね」

 

『ワレは構わん。しかしオヌシがワケマエを欲するならば此奴を鍛え上げる方が手っ取り早かろうな』

 

「なるほどー、協力すればリョウスケちゃんが強くなって生体マグネタイトをもーっと作れるようになるのねぇ。分かったわ、協力してあげる!」

 

『ではな、フフ、此奴がワレを現世(ウツシヨ)にて初めて呼び出した理由がオヌシとの対話の為か…。愉快よの、しかしまだまだ足りぬ。オヌシよ、此奴に精進を期待しておる旨を伝えておいてくれ、ではな』

 

「ばいばーい。っとと、リョウスケちゃん大丈夫?うーんと、ディア!これで少し楽になったかしら?」

 

「あ、ああ。ハハッ、やろうと思えば呼び出せたみたいだな。もっとも殆ど意識も無かったしアスラおうも自律行動してたような気もするけど…」

 

「うーん、そうねぇ、リョウスケちゃんじゃまだまだ足りてないってアスラおうさんも言ってたわよ。アタシと一緒に頑張りましょ!」

 

「そうか、協力…いや、契約してくれるかい?」

 

「ライドウちゃんにお願いされてたけど、ううん、それとは別。アタシがリョウスケちゃんの事なんとなーく気に入っちゃった。じゃあね、契約の方法教えてあげる。()()アタシはピクシー。妖精のピクシーよ。アタシに問いかけてくれる?仲魔になってくれって。そうしてアタシ達悪魔が答え返すのが契約なの」

 

「分かった。ピクシー、俺の仲魔になってくれるか?」

 

「うん!アタシは妖精ピクシー、コンゴトモヨロシク!」

 

「って何か変わった?」

 

「んもう、ヨーシキビってやつよ!リョウスケちゃんが初めて契約を結んだんだからフンイキだって大事でしょ!全く、その辺はライドウちゃんとそっくりね‼︎」

 

「すまんすまん、そうだよな、俺のはじめての契約、はじめての仲魔だもんな。これからもよろしく。普段はその中に居てもらってもいいかな?近頃は悪魔も殆ど現れてないからなぁ」

 

「そっかぁ、なら仕方ないかぁ。アタシも封魔管でのんびりするのは好きよぉ、だから許してあげる。…ケド、アタシ達が見えるヒトってのも他に居るのか知りたいなぁ」

 

「あぁ、その機会は必ずあるよ。それに異界は今の世にも…あるからこそピクシーや封魔管を探したわけだし」

 

「ふーん、ま、アタシも久々の現世楽しませてもらうわねぇ」

 

「ああ、ピクシーがライドウさんと動いてた時代とは全然違うだろうから楽しいだろうね」

 

「ウフフ、楽しみにしてるわねー。そろそろ呼ばれるわよ、じゃあアタシは中に入ってるからー。また、いつでも呼んでね!」

 

「ああ、ありがとう」

 

「おーい、リョウスケ君ずいぶん長い事いるけど大丈夫かーい?」

 

「今行きまーす!」

 

っと、アスラおうを現世で呼ぶとトランス状態見たいな感じになるのか?ちょっとふらつくな。けど今日は色々と進展があったな。……とりあえずは蔵に荷物を戻す作業を手伝うか。



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悪魔とペルソナ…どっちがすごいの?

寒い方が花粉無いので嬉しいから初投稿です


「ほ、ずいぶん疲れた様子じゃが…その分だと成果はあったかの?」

 

「はい、すいません。ずいぶん下にいたみたいで。片付け…俺から始めたのに大分任せちゃったカタチになりましたね…」

 

「なぁに、構わん構わん、本来なら儂らがやっておかねばならんかった事じゃしの」

 

「そうそう、俺達葛葉家の怠慢だからさ。キッカケがなきゃ今でもやってなかった事だもん。むしろ謝らなきゃなんないのは俺達だわなぁ」

 

「うむ…。それに随分と大事なモノを見つけてくれたみたいじゃしのぉ」

 

「うんうん、それに…俺も親父もあの部屋のモノに触る資格無さそうって言ったでしょ?だからあの中のモノはリョウスケ君、君が好きにすればいいと思うよ?」

 

「…ありがとうございます。でも、報告はさせて下さいよ?」

 

「あはは、もちろん。俺も不思議な話って嫌いじゃ無いし、むしろ興味あるくらいだもん」

 

「じゃの、儂ら葛葉のご先祖が何と戦って何を遺して来たのかは知りたいの」

 

「まずは、霊刀や霊剣と呼ばれる刀剣類はたくさんありました。不自然なくらいキレイでしたよ」

 

「ほぉ、さすがはと言ったところじゃの。とりあえずどれか持って帰ってみるかの?」

 

「ええっ⁉︎仮にも真剣ですよ?持って帰って問題無いんですか?」

 

「あるか無いかで言えば…あるんじゃろうがもはや美術品扱いじゃから平気じゃろうて」

 

「それはそれでプレッシャーですよ?」

 

「まぁ、誰も本物とは思わんじゃろうて」

 

「そんなんで良いんですか?」

 

「大丈夫でしょ、見分けられるくらいの目を持ってるならよっぽどのオツムしてなきゃ手を出さないって。それにさ、ほぼ100パーアシ付くだろうさ」

 

「…えっと、せめて一番心の負担が軽いやつにしておきます」

 

「ま、それならそれで構わんがの。他には何かあったりしたのかの?」

 

「あとは…封魔管、そしてその中に葛葉の先祖がお役目が途絶えた後に悪魔の力が必要となった時の為に遺しておいてくださった悪魔…いえ、仲魔がいました」

 

「……いっきなりぶっとんだねぇ、それって俺達に見えたりするかい?」

 

「まてまて宗一よ、遺してくださったご先祖とは誰か書いておるか?」

 

「えっと、とりあえずその仲魔は契約を結んでくれたので味方です。ちょっと呼んで見ますので待っててください」

 

『来いッ‼︎ピクシー‼︎』

 

「はいはーい、随分と早いお呼び出しじゃないのリョウスケちゃん。どうしたのー?」

 

「ほら、この2人がライドウさんが遺してくれたあの部屋を守ってくれていた人たちさ」

 

「ふーん、そうなの。なんとなーく面影…あるようなないような」

 

「あ、2人とも見えてます?」

 

「んー、俺にゃぜーんぜん。親父は?」

 

「うーむ、何かがおる…くらいの違和感かのぉ?」

 

「やっぱりか…」

 

「あらー、まぁ、ライドウちゃんの家族でも見えないヒトって居たわよ?そういう意味ではリョウスケちゃんが一番そっくりなのかしら?でもこっちのヒトは頑張ったら素質あったのかしら?」

 

「…えっと、ライゴウ爺さんは悪魔を見る素質あるんじゃないかって言ってます。あと葛葉家でも全員が見えてたって訳でも無かったみたいですし」

 

「ふーむ、しかしこの歳から悪魔を見る為に努力というのも面白いかの」

 

「えーっと、俺は?完全にいなかった事になってない?」

 

「多分なんですけど…悪魔ってヒトを見た目で区別しにくいんだと思うんですよ。だから精神的な波長やらを見てると思うんですが…」

 

「そっから言ってよぉ。いーよ、俺は堅実に生きるんだ!」

 

「これ宗一、良い大人が拗ねてどうする。そのピクシーを呼ぶのに負担は無いのか?疲れておるのはそれが原因ではないのかの?」

 

「ピクシー、わざわざありがとう。戻って良いよ」

 

「はーい。ばいばーい」

 

「うわ、すっかり忘れてたケド、リョウスケ君が触ってないのにその管が開いたり閉じたりしてんじゃん!何かいたんじゃん!」

 

「ええい、やかましい!」

 

「あはは、それでなんですけど、ピクシーに限らず悪魔を喚ぶにあたって俺自身に負担は殆ど無いです。そのかわり、現界する為に必要な物質を集めておく必要があります。さっき殆どって言ったのは人間が誰しももつ精神エネルギーの中でも余剰分を使って賄えるくらいに手加減してくれてるからですね。強力な悪魔…それこそ神話とかに出てくるような神や英雄、悪魔なんかを喚ぶとなるとそれだけじゃ足りなくなるでしょうね」

 

「ふぅむ、なるほどのぉ。それで葛葉流の根幹には瞑想があるのか。つまり宗一はまだまだ浅いという事じゃの」

 

「ええ⁉︎こんな時にそこかよ!」

 

「それで…疲れていた理由なんですけど、俺の精神にその悪魔や神と言った神話の登場人物を投影し、守護霊の様なモノとして同じく精神体や悪魔と戦ったりしていたわけなんですけど…」

 

「えぇ、リョウスケ君ここでそんなカミングアウトしちゃうの⁉︎主人公かよ!」

 

「あー、この能力…ペルソナ能力って言うんですが、能力者は割と居ます」

 

「マジかよ、でもアレじゃん、そのペルソナも持ってて悪魔も召喚出来るってやっぱ主人公じゃん?」

 

「どうなんですかね?まぁ俺は俺のやれる事をやる為に色々やってるんですよ」

 

「やべぇ、完全に負けた。俺よりキョウジより大人だよ、リョウスケ君」

 

「宗一、話の腰を折るでないわっ!」

 

「まあまあ、話しやすい雰囲気にしてくれてるんですよ。そのペルソナ能力ってのが俺の身の丈に合ってないんですよね…。強すぎるんですよ」

 

「それでか。ふむ、急ぐことも無しと思っておったが瞑想を一段深くするかの?さすれば幾分かはそのぺるそな?を使うにも楽にならんか。宗一、お前も一からじゃぞ」

 

「やっべ、マジかよ…。はぁ、まぁしゃーねーか。オジサンも付き合ってあげるよ」

 

「そんなのあるんですか⁉︎是非お願いします!」

 

「まぁ、それよりも今は此奴らの片付けじゃの。地下への入り口は簡単なモノじゃが隠す様に物を置くとしようかの」

 

「あー、そうね、話に驚いて忘れてたや」

 

「俺はちょうどいい一休みできましたよ」

 

 

この後どうやって蔵に収まっていたのか分からないくらいの物を何とか元に戻すことが出来た。なお夕食に間に合ったと思っていたが3人とも汗と土埃でドロドロになっていた為婆さんから風呂入ってこいと叩き出された。流石に温泉も行く時間でもないから家のお風呂で済ました。いやぁ盛り沢山な1日だったぜ。とりあえずはフミさんが来ても収穫と言えるものは準備できたなっと

 



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応用技術も基本が大事。料理もね

くしゃみしすぎて首が痛いので初投稿です


さて、昨日爺さんから瞑想を深めた方法がある…と言われたので朝から道場に来た。とりあえずいつもやっている事は済ませた。するといつの間にか2人が来ていた。

 

「ほれみい宗一、お前に足らんのは真面目さじゃな」

 

「うわ、昨日今日で俺達待ってて瞑想してるじゃん…何にも言えねえや」

 

「宗一も準備せい、始めるぞ」

 

「おっけー、ほら、リョウスケ君おはよう、師範が説明してくれるから話聞こうか」

 

「へ?あ、ああ、いつの間に」

 

「来たばっかりだよ。今から説明…俺がするんだったな。はぁ、リョウスケ君や合気道部員の彼らに教えてるのはまだまだリラックスの延長線でしかないんだよね。んでー、親父が言う深い瞑想ってのは雑念をはらうトコまで行くのよ」

 

「雑念を払えておらんからお前もこうしてやってる訳じゃ」

 

「はぁ…、まぁ俺が未熟って話なんだけど」

 

「で、何をすれば良いんですか?」

 

「まぁカタチはどうあれ瞑想に違いは無いんでの。言える事とすれば内面深くまで潜るイメージかのぉ?」

 

「なるほど。やってみます」

 

 

言われた様にいつも通り瞑想から入る。ここから更に内面へと深く潜る……うーん、まだ難しいな。どうにもイメージが掴めない。

 

「ま、一度で出来るほど簡単では宗一の肩身がなくなってしまうわい」

 

「ほら、兄弟子として心折れちゃうから助かったよ」

 

「でもこれから瞑想をする時トライしていきますよ」

 

「そうじゃの、冬こちらに来る頃にはカタチになってるかもしれんな」

 

「兄弟子として、師範代としてちょっと打ち込まないとヤバそう…」

 

「ったく、積み重ねが大事と言うのに…。朝はここいらで終わりにしとくかの。その研究者のお客人はいつ来るんじゃ?」

 

「えっと、明日からって言ってました。旅館にもそう言ってありますんで」

 

「そうか、リョウスケ君が信頼しとるならこれ以上は言わんよ」

 

 

こうして朝の稽古を終えた。フミさんや部活のみんなが世話になるんだから手伝いにでも行こうか。そう思い天城屋旅館へと向かった。

 

 

 

「こんにちわー」

 

「あーっ⁉︎雪子、おにーさん来たよー!」

 

「もー、千枝騒ぎすぎ、どうしたの?」

 

「どうしたのじゃないって、ほら、おにーさん来てる!っておわぁ!」

 

「わぁ!久しぶり!」

 

「…やる様になったわね雪子」

 

「??千枝どうしたのよ」

 

「しかも、天然⁉︎手強くなったわ…」

 

「あはは、仲が良さそうで何よりだよ。久しぶりだね2人とも。中学校は楽しいかい?」

 

「うーん、ほら、田舎の中学校だから変わりばえもしなくって…イマイチ実感ないのよねぇ」

 

「そうなのよね、結局千枝と一緒にいる事多いからね」

 

「そうかぁ。何か部活とか始めたりはしないの?」

 

「私はここのお手伝いあるから部活はちょっと…」

 

「アタシもあんまりなぁ…身体動かすのは好きなんだけど。そうだ!おにーさん、知り合いにカンフーやってるヒト居ませんか?アチョー!」

 

「…雪子ちゃん、あの子どしたのさ?」

 

「なんか香港映画ハマっちゃったみたいで。特にカンフー系の」

 

「へぇ、随分渋いねぇ。ジャッキーかい?それともリー?」

 

「そりゃあリーでしょ!『考えるな感じろ!』うーん、カッコイイよね!それよりおにーさんも見たの⁉︎周りに話せる人居なくってさぁ」

 

「まぁカンフー映画は中々なぁ。それこそレンタルショップとかこの辺じゃああんまり見ないし」

 

「そーなのよー、色々みたいんだけど品揃えが悪くって」

 

「ねぇ、お兄さん、ここで話し込んでてイイの?」

 

「何よぉ、雪子今いいとこなのにー」

 

「つい久しぶりに会うと話しちゃうなぁ。そうだったね、明日から知り合いがここに泊まるから改めてお礼を言いに来たのと今日は時間空いたから手伝いに来たって女将さんに言いに来たんだよ」

 

「そっか、じゃあお母さん呼んでくるね」

 

「うん、お願い。ありがとう雪子ちゃん」

 

「じゃあそれまでカンフー談義をしよう!」

 

「いや、すぐ来るでしょ女将さん」

 

「いやいや、そのちょっとでも話せる人がアタシには居なかったんですよ〜」

 

「あら、リョウスケ君。千枝ちゃんもこんにちわ。…千枝ちゃんはどうしたの?」

 

「お母さん、千枝は放っておいていいよ」

 

「そう?じゃあリョウスケ君、今日はお昼まで板さんのお手伝いお願い出来るかしら?その後は雪子のお勉強すこし見てもらいたいのだけど…」

 

「わかりました。じゃあご飯を食べたら夏休みの課題ちょっとみようか」

 

「分かった!お願いするねお兄さん」

 

「はぁーい…」

 

「あはは!千枝ったら凹みすぎよ」

 

「アタシはお預けを喰らった上に嫌いなモノが待ってるんだもの、凹みもするわよ…。もう、雪子笑いすぎ!」

 

「あははは!」

 

「あー、ダメだ…ツボに入っちゃった」

 

「元気な千枝ちゃんが落ち込んでる姿がもの珍しかったんじゃない?」

 

「ケド…友達の凹んだ姿がツボってどう思いますかおにーさん」

 

「うーん、ツボは人それぞれだしなぁ。それに…」

 

「それに?」

 

「雪子ちゃんと千枝ちゃんだし」

 

「どーゆー意味ですかおにーさん!」

 

「あはは!」

 

「じゃ、まだ笑ってる雪子ちゃんは任せたよー、俺板さんのとこ行く前に汗流さないと行けないからね」

 

「えぇ⁉︎ちょっと雪子、いつまで笑ってんのよ!おにーさんも行っちゃったよ⁉︎」

 

「あはは、千枝が落ち込んでる…あはは、あれ?」

 

 

あの場は千枝ちゃんに任せさっと汗を流してから厨房の手伝いへと向かう。流石に夏にランニングした後のままの姿で手伝いは不衛生だしな。こういう意味でも温泉使わせてもらえるのは役得だわ。そして板さんの手伝いをこなしもう昼に差し掛かる時。

 

「おう、リョウ、お前さん俺らにメシ作ってくれねぇか?」

 

「え⁉︎まかないっすか、10人分くらいですよね?」

 

「あー、20人前だ。悪りぃな、まだちょっと手が離せねぇんだが昼飯抜きは仲居さんも女将さんもお嬢も困っちまう。頼むわ。材料はそこにあるやつならなんでもいいからよ」

 

「20人前…わかりました、何とかやってみます」

 



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こういう日常もペルソナっぽいね

またUAがグッと増えたので初投稿です


「こんな感じでどうですか?」

 

「おお、いいんじゃねぇか?俺は気に入ったぜ、中華丼とか懐かしいな」

 

「じゃあみんなの分よそっておきます」

 

「おう、リョウはお嬢達と食べてきてくれてかまわねぇからな」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

「お、雪子ちゃん居た居た。お昼食べていいってさ、千枝ちゃん呼んできてもらえるかな?」

 

「はーい、お兄さんは食堂で待っててね」

 

「肉の匂いがするよ!」

 

「もう、千枝、犬じゃないんだから…」

 

「すごいね、そんなに匂いしたかな?」

 

「美味しそうな匂いと話がしたの!」

 

「…真面目に考えると頭が痛くなりそうだな、雪子ちゃん食べよう」

 

「…そうだね。今日は何かな?」

 

「今日は中華丼。板さんにはオッケー貰ったからおいしいと思うよ」

 

「ええ⁉︎おにーさんの手料理なの⁉︎」

 

「もう、千枝うるさいよ。それより今日はお兄さん担当だったんだ。すごいね、私なんて包丁も握らせて貰えないから…」

 

「ほらほら、食べる前から暗くならない。冷める前に食べてくれないかな?」

 

「美味しいよ!頂いてまーすおにーさん」

 

「はやっ!いつの間に…」

 

「ほら、雪子も食べよーよ。美味しいよ。あんまり遅いと無くなっちゃうよ?」

 

「もう!いただきます、お兄さん。っ!美味しい!」

 

「そりゃ良かった。俺も食べようかな。んー、中々悪くないな」

 

「おにーさん、今度は肉丼お願い!肉丼!」

 

「はは、相変わらずだなぁ千枝ちゃんは。ま、考えておくよ。俺がまかない担当してその時に千枝ちゃんがいる時があればね?」

 

「むむむ、中々厳しいことをおっしゃる…。おかわりってありますかー?」

 

「多めに作ってあるから大丈夫。行っておいで」

 

「うおー!」

 

「すごいなぁ、ほんと千枝はよく食べるんだから」

 

「さて、食べたら軽く勉強しよっか。夏休みの課題出てるでしょ?」

 

「うん、お願いします」

 

「もぐもぐもぐ」

 

「ほら、千枝も知らんふりしてないで食べたらやるよ?」

 

「うっ…、はーい」

 

「ふふ、仲良くて何よりだよ。勉強した後はちょっと遊ぼうか」

 

「よーし、頑張るっ!」

 

「ゲンキンだなぁ…」

 

 

お昼を食べて満腹感に襲われてうとうとしている千枝ちゃんを起こしつつ勉強を見た。まぁ、中学1年の夏休みの宿題だ、そこまで量も無いし難しくも無いので簡単に説明をして終わらせた。

 

 

「いやー、終わった終わった。アタシってばエライ!」

 

「千枝はうとうとしすぎ。あんなに食べるから…」

 

「うー、あれは美味しいご飯を作ったおにーさんが悪いと思います!」

 

「アレで俺のせいにされるのはなぁ…おかわりしていいとは言ったけど遠慮なく食べまくったのは千枝ちゃんだよ?」

 

「むむむ、2対1とは卑怯なり!」

 

「何言ってるのよ…」

 

「ほら、時間なくなるよ?」

 

「わー、待って待って!」

 

 

 

勉強がよほど辛かったらしくはしゃぐ千枝ちゃん。雪子ちゃんも一緒に遊べて楽しいみたいだ。…確かに格闘技やってるけど、やってる人がみんな功夫積んでるわけでもないからね?木人拳もやってないから。俺で修行をしようとするんじゃないよ…。

 

 

一頻り遊んだ後、明日はお客さんを連れてくる事を雪子ちゃんに伝え今日は帰る時間になった。そりゃ俺は神社まで走らなきゃならないし千枝ちゃんもバスで帰るからあんまり遅くなっちゃいけないからな。

 

 

 

 

 

そして今日はフミさんがくる。荷物もあるからとりあえず八十稲羽駅で待ってる。そろそろかな。

 

「ちょっと、来たんだったら手伝ってくんない?」

 

「すいません、こんなとこまで呼び出して…。これ運びますね」

 

「はー、朝も早いし荷物は重いし大変だったわ。で、アンタは何か収穫あったの?」

 

「あー、ありました。それもとびっきりの」

 

「へぇ、そりゃ楽しみね。で、こっからどうするのよ」

 

「もうちょうどバスが来るんで、それでフミさんの宿まで行きますよ。着いたらチェックイン出来るようお願いしてありますから」

 

「ほんと?助かるわぁ。あ、あと実験場は心当たりあるの?」

 

「ちょっと山登ることになりますけど…ちょうどいいスペースはありました」

 

「ふーん、じゃあ今日は…どうしようかしら、部屋で出来ることあるならそっちやってもいいんだけど」

 

「移動でお疲れですもんね…霊具の解析とかってお願いできますか?あとまだ聴いてない結果とかも有れば」

 

「そうねぇ、今日は軽めにして明日から動いた方が良いわね」

 

「そうしますか。じゃあフミさんが休憩と準備してる間に色々取って来ますんで」

 

「そうねぇ、それがいいわね。旅館って朝からお風呂入れるの?」

 

「大丈夫だと思いますよ?」

 

「せっかくだしゆっくりするわ。アタシもこんな機会無いと外出なんて全然しないし」

 

「じゃあお昼過ぎにまた来ますよ。…昼前に来ちゃうとメシ作らされちゃうんで」

 

「あら、アンタそんなことやってんのね。って結構良さげなとこじゃん。いい機会だしリフレッシュして行こうかしら」

 

「んじゃ着きましたんで降りますよ」

 

「荷物頼むわね」

 

 

 

「あら、リョウスケ君。この人がお客さん?いらっしゃいませ。遠かったでしょう?」

 

「よろしくお願いしますね。…着いて早々ですけどお風呂よばれてもよろしいですか?」

 

「もちろん!雪子ー、お部屋とお風呂案内お願い」

 

「はーい、いらっしゃいませ!お兄さん、任せてね!」

 

「あら、可愛らしい女将さん。ふふ、よろしくね」

 

「じゃあゆっくりしててください。荷物取ってくるんで。雪子ちゃんお願いね」

 

 

 

さて、霊具色々と…封魔管取りにいきますか。流石にフミさんも満足行くでしょうってくらいの成果だからな。



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基礎データはコツコツと

喉が痒くて仕方ないので初投稿です


「さて、フミさん。お願いします」

 

「んー、この辺の刀とか?以前アンタから頼まれた破魔矢とかお守りとかとおんなじ解析かけてみるわね」

 

「お願いしておいてなんですけど…割とどこでも出来るんですね」

 

「まぁ設備をおおっぴらに使えそうなネタでもないしね。なんとかやってみたらできたってのが実際よ。…へぇ、すごいわね。便宜上アンタが持って来た道具が内包してるエネルギーを霊力、物質、素材に宿った力を魔力って呼んでたんだけど、実態はほぼおんなじ…アンタがいう『マガツヒ』ってヤツ。つまり魔石を解析かけられたおかげなんだけどね」

 

「なるほど」

 

「ま、もう少しガッツリ調べたいからもっと魔石持ってきて欲しいわねぇ」

 

「魔石っすか、ちょうど見てもらいたいモノにも使うんですよね…」

 

「あら、そういえば魔石ってどう使ってるのよ?」

 

「精神エネルギーの塊みたいなモノなんで、ペルソナに吸収させたりする事で疲弊した分を補充出来るんです。要するに回復ですね」

 

「ふーん、回復ねぇ。大事だとは思うけど…」

 

「まぁ、その辺は妙さん紹介してくれたおかげでカバーできそうですから」

 

「なら良かった。でも、さっきの言い分じゃまだ使い道ありそうだったわね」

 

「それは明日現地で見せますよ」

 

「そ、じゃ楽しみにしておくわ。他に解析して欲しいモノは?」

 

「あとはこれです。封魔管って言うんですよ。使い道は調伏した悪魔を封印し使役する為に持ち運ぶ為の霊具です」

 

「へぇ…、貸して。……これ中がマガツヒで満たす構造になってるわけ?どう言う素材使ってるのかしら」

 

「その辺も分からないんで見て欲しかったんですよ。今現在作る術が無くって現存してる分しか無いとなると…」

 

「そりゃ不安だわね。これって誰でも使えるの?」

 

使()()()だけなら多分誰でも使えます。けど使役する悪魔、仲魔も見えない人間が使った所で悪魔にそっぽ向かれて終わりです。下手すりゃ喰い殺されますよ」

 

「…そりゃ、危ないわね。下手な欲かいて死んじゃったら意味ないわ」

 

「そっすね、こうして道具見せたりしてますけど悪魔の使役とか利用に関しては全力で止めさせてもらいますよ」

 

「………分かったわ」

 

「手に負えないレベルの連中ってキリがないんです。ちょっとした欲をつついて現界しようとするんで。ほら、『悪魔のささやき』とか言うじゃないですか」

 

「そ。アタシも気をつけるわ。アンタもいざと言う時は止めて頂戴。じゃ、今日やる事やって行くわよ」

 

 

この後も持って来た道具を色々と解析してもらった。おかげで認知世界で役に立ちそうなアイテムの予想と傾向が立てられそうだ。解析を進めて行く為にももっと魔石や素材が欲しいとの事。これからは出来るだけ取っておかないとな。なんなら真次君から買い取りもアリだな…。

 

 

 

 

そして、今日は俺のペルソナとピクシーの調査の日。朝早くからフミさんと山をちょっと行ったところにあった開けた川の近くまで向かった。

 

 

「ここならちょっとくらい荒れても大丈夫かなぁと思いまして」

 

「いいんじゃない?で、ここまで人目につかない所でやりたい事って昨日見せてくれた封魔管の中身の事かしら?それともアンタが持つペルソナ?」

 

「両方ですよ。まずは…仲魔から行きます。来いっ!ピクシー‼︎」

 

「はいはーい。今日は何するのー?」

 

「今日は色々調べたいんだけど協力してくれるかな?協力って言ってもその場から魔法を2、3回使うだけでいいんだけど」

 

「わかったわよー。って、あれ、知らない人が居る」

 

「ああ、この人は偉い学者先生でさ、悪魔のデータを取ってもらってるんだ。時代も変わっただろ?」

 

「すっごーい!ねぇねぇ、アタシの事見えるようになるのかな?」

 

「あー、今って見えてます?」

 

「いんや。ただただ独り言言ってるヤバい奴にしか見えてないわよ。…ケドデータじゃ喋りかけてる先にマガツヒの反応が有るからそこに居るのかしら?」

 

「‼︎なるほど…可視化とまでは行かないまでも反応を見つけることはできたわけですか。じゃあ次は魔法です。ピクシー、ジオだ!あの岩に向かって撃てっ‼︎」

 

「えーい!」

 

ピクシーの力の抜けるような掛け声とは裏腹に小規模な落雷の様な現象が岩に向かって放たれた。

 

「………すごいわね、これが魔法」

 

「これが『ジオ』…分類するならば雷や電気に近い性質の魔法です」

 

「流石に解析なんかはこんなノートパソコンじゃ出来ないからデータ集められるだけ集めさせてもらうわよ」

 

「後は…ピクシー、ディア。俺に向かってお願い」

 

「自分で傷つけるのはどうかと思うんだよリョウスケちゃん。今回だけだからね」

 

そう言って俺は自分の手のひらから血が出るくらいに切った

 

「アンタ、何をして、ん、の……ってマジ⁉︎」

 

「ゴメンねピクシー、ありがとう。今日はもう戻っていいよ。コレお礼の魔石だから」

 

「はーい。ずーっと眠ってて退屈してたから頼られるって楽しいわね!また待ってるわー」

 

「…アンタ、傷もうなんともないの?」

 

「はい。今のは『ディア』。回復魔法ってトコです」

 

「すごいわね。魔法、世の中変わるわよ」

 

「いやいや、こんなのオープンにしたら絶対に欲をかいたやつがヤバい悪魔に手を出して世の中もっと大変なことになっちゃいますって」

 

「…そうね。あまりのインパクトに目が眩んだわ。それで今の魔法に制限はあるのかしら?」

 

「そもそも悪魔が使えるモノじゃないといけないってのは当たり前です。後は精神力によって干渉しているんで仲魔のそれが枯渇したら使えなくなるってトコですね。じゃあペルソナの方行きますよ」

 

「もうなんでも来なさい」

 

「来いっ‼︎アスラおう‼︎ギガントマキア‼︎」

 

そう高らか俺が宣言したとともにアスラおうは赤い腕を狙い定めた岩に向かって振り下ろした。…もちろん岩は木っ端微塵。俺も体力空っけつだけどな。なんとか1発だけなら撃てるようになった気がしたんだが成功して良かったよ。

 

「……何が来ても驚くつもりは無かったケド、これは絶句ね」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

「あぁ、喋んなくていいから。なるほど、さっきのピクシーと違ってペルソナは自分の内なる力って言ってたのはその消耗を見れば分かり易いわね。アンタの体力と精神力で動いてるってわけか」

 

「はい、そーです。つってもたったワンアクションでヘトヘトになるのはペルソナと俺自身の心と身体の強さが釣り合ってないからですよ。普通は一緒に成長するんでここまで負担にはならないハズです」

 

「ふーん、なるほどねぇ。後輩に何人か居るって言ってたわね…その子らのと比べてみたいけど、桐条のツバ付きって話だもんねぇ。まだコトを構えるには早いか」

 

「それもいずれチャンスはあると思います。ちょっと先の話かもしれないですけど」

 

「ま、楽しみにしておくわ。さて、帰るわよ。アンタも大分しんどそうだしね。お風呂でゆっくりしてから戻りなさいよ」

 

「そうですね、そうします」

 

 

俺としては見てもらいたいモノを一通りやった。後はフミさんにまかせよう。俺も疲れた、いけると思ったけどギガントマキアはやり過ぎだったな…。



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仲間に引き入れてみようと思うなら話術を使うのがデビルサマナー

5万UA達成したので初投稿です


フミさんは色々と見せたあの日からすぐ東京へとまさに飛んで帰ってしまった。そして俺がこっちでやった事と言えば…新しいトレーニングが加わったものの特に去年と変わることは無かった。

 

 

そして夏合宿もつつがなく終え、俺も東京へと帰った。

 

 

 

そんな俺を待っていたのは一年生の3()()()だった。3人は俺を以前に行ったポロニアンモールのビッグバンハンバーガーへと誘うつもりだった様だが適当な理由をつけて渋谷のセントラル街まで呼びつけた。

 

 

「3人揃って俺んとこ来るのは珍しいね」

 

「いや、夏休みなんでセンパイも時間あるんじゃねぇかなって思ってさ」

 

「あぁ、美鶴も思う所が無いではないみたいだが俺たちの成長を見て負けてられないと思ったらしくて」

 

「…どうか私も鍛えてはもらえないだろうか。厚かましいことを言っている自覚はある。しかし、私はやらなければならない使命のためにももっと強くならねばいけないのですよ」

 

「ふぅん、なるほど。その使命ってのは…聞かない方が良さそうだね。ま、俺としては構わないよ。ウソかホントかよく分からないけど、真次君からは不思議な事してる話を聞いたからね」

 

「…‼︎(おいおい口止めしてたのセンパイじゃねーか!)」

 

「シンジ、そこまで相談したのか?」

 

「あー、いや、あのよ、相談するにしてもあんまりにも内容がぼんやりしちまったからさ…。それにこの人なら大丈夫だろうと思ってさ」

 

「荒垣がそこまで心を許しているとは…」

 

「…なんつーか、世話んなった人だから嘘つきたくねーって思ったんだよ」

 

「シンジ、その割にはイマイチ信じてもらえてないんじゃないか?」

 

「うるせー!幾月みたいな事言いやがって」

 

「??…‼︎俺はそんなつもりじゃないぞ‼︎」

 

「ったく、お前らは、私が緊張しているのが馬鹿馬鹿しいではないか…」

 

「はは、いい友達じゃないか。で…どうしたいんだい?」

 

「先ほどの通りお願い致したい。…その為にも夏休みの間だけでも我々の特別寮へと来ては頂けないだろうか?」

 

おっと…ここでそのお誘いかぁ。乗った場合はほぼ間違いなくタルタロス…影時間入りだよな。それに幾月に目を付けられるだろうし。とりあえずは聞き出してみるかね。

 

 

「うーん、そりゃまたなんでだい?そこまでしないといけないのかい?」

 

「いや、その…」

 

「美鶴は幾月のヤローに言われてんスよ。『その頼りになりそうな先輩君に来てもらったら良いじゃないか』って」

 

「おい、シンジそこは幾月先生の発言は正確にだな…」

 

「いいんだよ、くだらねーシャレなんて言伝してどうすんだよ」

 

「お前ら…、後は私が話す。そうだ。幾月さんからそう提言されたのだ…。して、いかがですか?」

 

 

さすがに真次君絡みで動きすぎたか。もう目を付けられたか。…うーん、けどタルタロスって死神(ニュクス)の因子を持った彼…あるいは彼女か来てアルカナシャドウの活動と共に攻略を進めるようになるトコだもんなぁ。今の段階で行った所でタルタロス攻略に旨味は無いよなぁ。出来て影時間のパトロールくらいか?それか影時間に現れる悪魔狩り?どっちにしても幾月が俺を監視下に置きたいって状況でやるこっちゃ無いかなぁ。

 

 

「うーん、夏休み中ねぇ、あと一月ほどだけどってことかい?」

 

「はい。特に困るような話でも無いと思いますが?」

 

「その寮って誰が居るの?」

 

「今は…我々3人と寮長として幾月先生が居ます」

 

「……俺をペルソナ能力者とやらだったり影時間の適性持ちだったり予想して連れて来いとでも言われた?」

 

「……⁉︎」

 

「ははっ、顔に出過ぎだよ美鶴ちゃん。個人的に幾月さんには思うところがあってねぇ、ニガテなのさ。だから遠慮したいんだ…って言っても納得はしてくれなさそうだね」

 

「そうですね、私としてもその理由では引き下がれません」

 

「その前にさ、君ら幾月さんから貰ったモノとか無い?」

 

「俺はありません」

 

「俺もねぇな」

 

「私も特に…」

 

「…いや、桐条は定期的に御守りみてーなの貰ってなかったっけか?」

 

「あ、ああ、それならこれだ。私が影時間で活動するならばいざという時に使いなさいとお父様から頂いたモノだと聞かされている。まだ実験段階だから定期的に交換して効果と損耗を調べているのだとか」

 

「悪いんだけど…それちょーっと調べていい?」

 

「……ふむ、壊さないで頂けるなら」

 

「壊さないよ。前に名刺渡したでしょ?あの事務所の主…俺のおじさんなんだけど探偵さんなわけで、その人にちょっとした調べ物のしかた教えてもらったんだよね」

 

「はぁ、それと今がどう繋がるのですか?それは…ラジオ?」

 

「うん、まぁ簡単に言うと盗聴機の調べ物。反応しないこともあるんだけど…このノイズはアタリかな?ちょっと中身開けるよ。…うん、コレは御守りには似つかわしく無い機械出てきちゃったね」

 

「なっ……⁉︎何かの間違いでは有りませんか⁉︎お父様が、幾月さんがそんなモノを私に渡す意味が有りません‼︎」

 

「まあまあ落ち着きなさいって。……幾月さんって寮長やってるって言ってたよね。じゃあ親機もそっちかな。この小型ならそこまで強く無いから範囲も学園内までってトコかな?いや、下手したらポロニアンモールくらいまでなら届いてたカモ?」

 

「う、嘘だ…」

 

「ま、幾月さんからしたら幾らでも理由はあるでしょ。ペルソナ使い達のアフターケアとして必要な情報を集める為だとかなんだかんだ言えるよ」

 

「そ、そうですか」

 

「ま、違うだろうケドね。……そういえば真次君、()()最近貰ってるの?」

 

()()…?ああ、最近は調査の度に渡してきますね。おかげさまで頼る事無いんで溜まってばっかりっスけど」

 

()()?荒垣なんの話だ?」

 

「シンジ、一体何を?」

 

「ふーん、真次君には黙っておいた方が良いと言ったけど…幾月サン、この2人に伝えてないんじゃさっきのアフターケアって線も薄そうだね」

 

「シンジ、お前何を隠していた⁉︎」

 

「荒垣‼︎私がそんなに頼りないのか⁉︎」

 

うわー、かき乱したのは俺だけどちょっとこの子ら不安定過ぎやしませんかね?こうなったら…この2人も抱き込んでしまおうか。出来るだけ幾月は泳がせたいんだけど、まぁ、今はニュクスをどう活性化させるかで頭いっぱいだろうから何とかなるかね?



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会話交渉がスムーズにいく世界なワケがない

総合評価の仕組みはよくわかってませんが1000を超えていたので初投稿です


「あー、センパイもハラくくったみてーだしなぁ。俺も言うかぁ。なぁ、アキ、俺の『カストール』の制御が甘かったろ?」

 

「あ、あぁ。確かに度々シンジの意図しない行動を取っていたな」

 

「それで…幾月のヤローに相談した、いや今思うとさせられたんだろうな。ホラ、制御について悩んでる俺に『影時間の活動で困っていることは無いか』って聞かれりゃ言うだろうよ」

 

「…それで幾月さんはどのような対応を?」

 

「こえー聞き方すんなよ美鶴。そうしたらクスリをくれたのさ。()()()()()()()ってクスリをさ」

 

「制御薬?そんなモノが開発されていたのか。では近頃の落ち着きはそれのおかげという事か?」

 

「いや、美鶴違うんじゃ無いか?さっきアキは先輩に対して()()()()()と発言したんだ。制御に関して言えば俺もうまく出来るようになった事を考えれば先輩の指導によるモノでは無いか?」

 

「ああ、制御がだいぶマシになったのはセンパイのおかげ。元はと言えば俺…いや、俺たちのペルソナに対する無理解と考えの足りなさが原因みてーなモンだったけどな」

 

「…すると幾月先生の好意は空回りという事になるのでは?」

 

「…それですんだら良かったろうぜ。俺も最初の頃はちょっと使ってたんだよ。ホラ、俺1人ジャケット辞めるの遅かった事があったろ。ちょうどあの頃だよ」

 

「………どういう意味だ」

 

「実際に制御に関する効果はある…んだと思うんだけどよ、それ以上にやべーんだってよ。まさしく寿命を削るクスリだってさ」

 

「「なっ…‼︎」」

 

「まぁ、それもセンパイに調べてもらったんだけどよ」

 

「やはり、信じられません…」

 

「シンジ、大丈夫だったのか⁉︎」

 

「ああ、問題ねーぜ。ま、服薬を続けてりゃ…2、3年で廃人だろうなってレベルのクスリなんでしたっけ?」

 

「どうだろうね、そこまで()()のも『カストール』が強い力を持っているからかもね。…逆を言うとそんなペルソナを持つ真次君だからこそクスリを渡したんだと思うよ」

 

「…どう言う意味でしょう」

 

「そりゃ人体実験だろうね。強いペルソナに対するいいデータが取れるチャンスだと思ったんじゃ無い?それに…その手のクスリ頼りになった真次君はもう言いなりだろうね」

 

「…あー、でしょうね。多分ずっと付き纏う不安感と戦うためにクスリ頼り。そんでポックリ逝けりゃ御の字っすね」

 

「…後ねぇ、コレは俺も想定してなかったんだけど、調査をしてくれた医者に言われたのさ。効用の強さを弄る事もあり得る、()()()暴走する程度のクスリを処方される可能性もあるんじゃないかってさ」

 

「……そいつは、ありえねぇ話じゃ無さそうっすね」

 

「……嘘だ」

 

「美鶴?」

 

「幾月さんがその様な人のはずが…」

 

「美鶴ちゃん、辛い様だけどまだまだ続けるよ。さっきの医者の話なんだけど、そのクスリ…解析しても素材が()()()()()()()んだってさ。解析不能になる素材ってなんだと思う?この科学文明で分からない素材ってさ」

 

「………ま、まさか」

 

「そう、影時間由来だろうね」

 

「…先程までは信じておられない様でしたが?」

 

「そりゃさっきの小道具みたいなのあったら嫌だもん、警戒するでしょ」

 

「……そうですか、それで影時間の事はご存知なのですか?」

 

「実際に体験した事は無いね」

 

コレは嘘じゃ無い。

 

「その辺は俺がセンパイに説明もしたぜ」

 

「…そうか」

 

「それで、君たちは影時間というモノ…いや、シャドウとペルソナについてどこまで説明を受けてるんだい?」

 

「…8年前の我がグループのある人物が起こした事件によって影時間が誕生し、その世界の中では異形の化け物として影時間に迷い込んだ生きた人間を襲うそれがシャドウであり、そのシャドウに対抗する力としてペルソナを召喚できる我々がペルソナ使いとして事態の収集にあたっています。私としてはこの認識です」

 

「なるほどなるほど。それは幾月さんから説明されたのかな?」

 

「…はい。彼が我らの知る限り一番なシャドウとペルソナの専門家ですから」

 

「俺が初めて会った時に言ったことを覚えているかな?」

 

「…わかりません」

 

「ユング心理学。シャドウとペルソナって名付けたのはすごいセンスだと思うよ。確かに対の存在だから相応しいだろうし。ケド…シャドウは異形の化け物なんてモノじゃない」

 

「何を知っているんですか‼︎」

 

「落ち着け美鶴、今は話を聞いてみよう」

 

「ありがとう明彦君。ペルソナはいわば自己の意識を過去の英雄や英霊として投影し、具現化したモノだ。あ、そうそう、ペルソナ使いってのは君たちしか居ないって事じゃないよ」

 

「「なっ‼︎」」

 

「まぁ、想像でしかないんだけどね。過去にそれらしき人たちによって人知れず解決された不思議な事件があったのさ。ま、俺も()()おじさんが関わったから知っただけだからね」

 

「その人達と連絡は?」

 

「分からない。その辺は守秘義務もあるだろうしおじさんもそこまで口は軽くないさ。ポイントは君たちだけ…君たちしか居ない特別な能力って事じゃ無いって自覚をしてほしいのさ。ま、レアなのは間違い無いけどね」

 

「…しかし、私は、お父様、グループの為にもっ‼︎」

 

「美鶴ちゃん、そこだよ。俺が気に入らないのは」

 

「貴方に何がっ‼︎」

 

「大人がしでかした後始末をなんで子どもに全部任せてるのかって事さ」

 

「そ、それは私に解決に寄与できるチカラがあるからで…」

 

「力を持つモノはその分責任を果たさなきゃならないって事かい?」

 

「…はい、加えて私は次期当主の身でもあります。責任を果たすと言う意味でも相応しいではありませんか?」

 

「…けっ、責任感のお強いこって」

 

「シンジ‼︎そんな言い方ないだろう…」

 

「大人の都合で身体張ってるのは俺達には違いないんだぜアキ。強くなる、なりてぇって目的でもない限りよ」

 

「荒垣もそう思っていたのか…」

 

「まぁ、責任感が強いってのは良いことでしょ。それが次期当主って話なら一国民としてはその時に享受できる利益の方が大きそうじゃないのさ。…自分でコントロールできてるって話ならだけどね」

 

「…やはり幾月さんの事に帰結しますか?」

 

「ああ。余りにも…()()()()過ぎる。人間善意の仮面(ペルソナ)着けてる方がその腹の内で何考えてるのか分からないもんさ。俗物的だけど対価を要求してくる人の方がよっぽど信用できるね」

 

「…しかし、お父様も信頼なさっておりますし」

 

「まぁ…上手いことやったんだろうね。そういや幾月さんってその…事故を起こした研究所の人間じゃないの?」

 

「いえ、そんな話は聞いておりませんが」

 

「…嘘だろうな。そうでない人間に…それもペルソナの適性がない人間がどこで第一人者になれる程研究するのさ」

 

「…ま、まさか、私だけでなく、お父様まで騙していると言うのですか⁉︎」

 

「状況証拠ばっかりだから明言は出来ないね。そんなことしたら探偵のおじさんに怒られるよ。ふう、喋りすぎたね。ちょっと一息入れようか。下でジュースでも買ってくるよ」

 

 

さーて、こっからだな。理想は幾月は据え置きのままだ。あんな奴見えないところに追いやる方が何やるか分からん。その辺を納得できるかどうかだな。夏休みだし、少なくとも時間は稼げるだろ。その間に対応を考えられたらってとこかな。

 

 




説明をすっかり忘れていましたが、以前ベルベットルームが異なる世界に繋がったので不安定になったと言う話を入れましたが、アレは私が気が向いた時に番外として他作品のクロスオーバーをぶち込むための設定です。本編に関わることはありません。

…ホラ、リョウスケ君が葛葉ライドウムーブで動くと面白そうな作品がチラホラあるじゃないですか。


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とりあえず第一次交渉を終えて

雨の日鼻の調子は悪くなるので初投稿です


「いやぁ、喋りすぎて疲れたねぇ」

 

「「…」」

 

「あら、真次君、ずっとこの調子?」

 

「ああ、そうっすよ」

 

「まぁ、話の続きはするけれど…ちょっと休憩って事で君たちが影時間でどんなことやってるか教えてもらっても構わないかな?」

 

「あ、ああ。構いません。主に影時間に取り込まれてしまった一般人の救出を行っています。どうしても取り込まれた人間はシャドウを引きつける様でして迅速に発見しなければ…また無気力症候群の患者となってしまいます」

 

「なるほど、救助活動か。その時出てくるシャドウってのはどんな連中か説明できる?」

 

「…そうですね。どうしても我々で名付けた個体が多いですが…今度まとめたデータをお見せ致しますよ」

 

「おや、外部に見せて良いのかい?じゃあそのデータは見せてもらうとして…強さは?それは君たちからの感想を聞きたいね」

 

「私は…前線というよりサポートに回っていますのでそれはこの2人の方が詳しいでしょう」

 

「俺には手強いレベルがたまに居ます。特に連戦となるとガス欠になりますね」

 

「俺も…そうっすね、やっぱり続けて出てこられると厳しいっすね」

 

「君らさ、え?3人しか居ないんだよね?それでさらに分割してんの⁉︎」

 

「しかし、こうでもしなければ探索範囲を広げる事が出来ません」

 

「いやぁ、びっくりだよ。言っちゃなんだが…前線に出る段階じゃないね。そりゃ適性持ちが少ないって事だから仕方ないかも知れないけど余りにもズサンだよ」

 

「…そこまで言われるほどでしょうか?」

 

「現時点で影時間の影響範囲…タルタロスを起点とするなら最遠部の把握くらいしているだろう?」

 

「…港区を出ることはないと思われます」

 

「そのレベルかよ…。影響下にあるかどうかは影時間がわかる人間なら外からでも調べられそうなモンだけど…グループって言ってもこりゃ大した支援期待出来ないな」

 

「なっ⁉︎」

 

「いやいや、救助活動するにしてもカバーできる範囲が限られてるからこそエリアを正しく把握しとかにゃいかんでしょうよ…」

 

「うっ…。進言してみます」

 

「それに、連戦が厳しいって事は個別行動に余裕が無いって事だろう?そんな調子だと対処に余裕が出た時痛い目にあうのも目に見えてるよ…。真次君はその辺結構叩き込んだから大丈夫じゃないかな?」

 

「そ、そっすね、確かにセンパイにゃ『カストール』出して挑んでも返り討ちだろうなぁ」

 

「荒垣でもそう言うのか…貴方は一体何者なんですか?」

 

「そうだなぁ…葛葉流退魔術師、デビルサマナー葛葉リョウスケってとこかな?あ、オフレコだよ?」

 

「「……」」

 

「なんだい人が真面目に答えたって言うのに」

 

「いえ、何を言っているのか分からないとこのような感情になるのですね」

 

「デビルサマナーとはそんなに強いのですか?」

 

「まぁ、悪魔を祓うって結局はソッチがモノを言うのさ」

 

「おいおい、センパイはあれだぞ、ホントの事を全部言っちゃくれねぇけど大事なウソはついてねぇ人だぞ」

 

「その言い草はどうかと思うなぁ真次君。一応初対面のあの時にも似たような事は言ったハズだけどね。ウソというなら…影時間とタルタロスの存在()知ってたけどね」

 

「なっ⁉︎ではなぜですか‼︎」

 

「そりゃ簡単さ。あの手の異界…影時間だけじゃないからだよ」

 

「「なっ‼︎」」

 

「おーおー、お前らでもやっぱりそうなるよなぁ」

 

「シンジは聞いていたのか?」

 

「あのクスリの相談した時に教えてもらった」

 

「…そうか」

 

「ま、そういうわけでそっちの方までは無理なわけさ。分かってもらえたかな?」

 

「そちらへと我々が行くことは…?」

 

「現状手段が無いね。別口でアプローチをかけてはいるけどまだ俺以外を案内する方法が無いんだ」

 

「そうですか…」

 

「まあ出来た経緯が違うから()()直接の被害者は出てこないハズだから心配しなくても良いさ」

 

「…異界についてご存知なのですか?」

 

「完全には知らないけどね。大きく違うのは人為的なモノじゃないって事さ」

 

「影時間を人為的とおっしゃりますか‼︎」

 

「今回は故意か事故がによらず人の手がキッカケかどうかの話だよ。どうにも冷静さを欠く話題みたいだね」

 

「…くっ、申し訳ない」

 

「俺が知ってる方…『メメントス』と呼んでるけど、それは人の集合無意識が原因だね。これ以上は講義になっちゃうから今日はいいでしょ。そろそろペルソナとシャドウの話をしようか」

 

「それを聞けば…幾月さんの狙いが分かるのですか?」

 

「うーん、狙いまでは分からないけどね。それは本人にしか分からないでしょ。分かるのは幾月さんが君たちにさせている事の本当の事かな。いいかい話しても」

 

「…お願いします。ここまで来たのなら聞かずにはいかないでしょう」

 

「そうかい。じゃあ結論から言うと…ペルソナとシャドウ、元は同じだよ。つまり生み出したのは人間ってわけだね」

 

「「「なっ‼︎」」」

 

「まぁ由来は一緒でも過程が違うからね。ペルソナは色んなキッカケを踏まえて自分の心と向き合った結果生み出されたケースがほとんどだろうね。それでシャドウなんだけど、人の負の感情が集まって()の様なモノとして実体化したと考えるといいよ。シャドウが何故人を襲うかと言うと人の心から生まれたんだ、同じような感情を持つ人間に惹かれて行くのも不思議じゃあない。結果シャドウは沢山の心から生まれた分チカラが強い。強い心のチカラであるペルソナを持っていなければ負の感情に飲み込まれるだろう?」

 

「…その結果無気力症候群患者というわけですか」

 

「ま、状況からの推理だけどね。人は誰しもがペルソナとシャドウを持っているのさ。チカラの大小は別にして。さて、そんなペルソナを制御するクスリってどう言うモノだと思う?」

 

「…まさか、ペルソナの元が心、自我であるならそれを薄めるようなクスリという事でしょうか?」

 

「それもある。もう一つは自我との融合を進めるんだ。心とペルソナとシャドウを混ぜてしまう。そうすれば制御出来そうだろう?そうなると真次君、君に足りなかった要素は…なんだったかな?」

 

「そりゃ俺が『カストール』を制御するんですからシャドウの要素を…ってマジかよ、なんつーもん飲ませてやがったんだ」

 

「そ、おそらくはシャドウを原材料に使ってたんじゃないかな。で、シャドウだけど君たち提供してたかい?」

 

「…いえ、データくらいでそれ以外は。それに、残骸も残滓も残す事の方が稀ですし」

 

「そりゃあ不思議だ。じゃあ誰が調達してるんだろうね」

 

「「「‼︎」」」

 

「多分…私兵のペルソナ使いがいるんだろう。どうだい、シャドウの利用方法とペルソナ使いとのツテ。これだけ揃えるのにグループの研究所に居なかった人間ってのは無理筋でしょ」

 

「…では何故我々に黙っているのでしょうか」

 

「君たちを表向きに動かしておきたいんだろうね。影時間の発生から8年弱でしょ?美鶴ちゃんのお父上サマをそれだけ誤魔化してきたんだ、君たち高校生がつついたって無駄だよ。それにお父上サマからのアプローチもまだやめた方がいいね」

 

「何故ですか‼︎」

 

「簡単さ、それだけの用意をしてる人間がわざわざ表に出てきてくれてるんだから。下手に暴いて見えない活動をされる方がよっぽど厄介だよ」

 

「そっすね、確かにあのロクでもねぇ野郎の事だ、身軽にしたらもっとロクでもなくなるに決まってるぜ」

 

「そう、こんな話聞かされて昨日までの様に振る舞ってほしいってのは難しいかな?」

 

「…いえ、確かにそれが必要である事を理解しました。やって見せましょう」

 

「すごいね美鶴ちゃん、カッコイイ。お父上サマに対する報告は…まだ早そうかな。仮にも上に立つ人だ。俺みたいな信用の無い人間の推理だけで今までの右腕を疑えってのは無理だね」

 

「…そうですね、お父様の分も私が気を払います」

 

「美鶴、力が入りすぎでは無いか?」

 

「ふむ、平常心を保つにはやっぱり瞑想だよ。よし、美鶴ちゃんも指導してあげようじゃないの」

 

「よろしくお願いします」

 

「おっと随分と話し込んじゃったね、もういい時間だ。そろそろお開きでいいかな?まぁ夏休みの昼間なら時間作って色々見てあげようか。毎日って訳にはいかないケド。それはそっちも同じだろう?」

 

「そうですね。俺もボクシング部がありますので」

 

「私もフェンシング部が有ります。とは言え明彦と荒垣に出遅れているのは間違いない、特別に見てもらえませんか?」

 

「そう言ってるけど2人は?」

 

「俺は別に構わないっすよ」

 

「俺もです。美鶴が強くなってくれるに越したことはないですね」

 

「ま、そっちから連絡入れてくれる?これ俺のアドレスだから」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃ気をつけてね」

 

 

 

これは引き込めたって事でいいのかな?とりあえず幾月に対する不信感を植え付けられたって感じかな?我ながら怪しいんだけど言える範囲で説明するとこうなるよなぁ。…最悪はピクシーにお願いするか、1番の説得力だろ。あの子達が見えるなら…大丈夫だよな?

 




一応うまく回っていたグループのトップと実働部隊に不和の種を植えるリョウスケ君…黒幕かな?


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ピクシーとメギドラオンは混ぜてはいけない

そろそろ毎日がキツくなってきたので頑張りどころと思うからこそ初投稿です


さて…あの3人には大方の思うところを明かしたんだがどうなるかね?そりゃあ理想はバレないように幾月に首輪をかけてニュクスを何とかするって事なんだけどな。…俺の知識としてある幾月の目的が正しいならばまだまだペルソナ使いを集めるハズだし、ニュクス覚醒のキッカケとなる主人公が来るまでは裏に隠れることも出来ないと思いたい。ま、そうならなかった事も考えて動けるようにしておかなきゃならんよな。結局は俺が強くなることが大事って話に帰結するんだなぁ…

 

 

 

さて、あの3人と話をしたけれど、話をするなら外せないのがベルベットルームの住人達だ。彼女たちも認知世界に現れた悪魔の動向は気になるだろうし、友好的な悪魔と接する機会は設けた方が良いだろうな。

 

 

 

 

「おや、お久しぶりでございますね」

 

「そう言わないでくれって、こっちを離れているだけの成果は得たつもりだよ」

 

「ふふ、責めているように聞こえてしまいましたか?」

 

「はぁ…ラヴェンツァも随分と言うようになったなぁ」

 

「ふふ、一年以上もお付き合いしていればこのくらいは私たちにも変化はございます」

 

「君らの成長を俺は喜べばいいのか複雑だよ。さてと、成果とそれに関する話をしたいんだけど…マーガレットさんとエリザベスは居る?」

 

「はい、少々お待ち下さい」

 

「それには及びませんよラヴェンツァ。お久しぶりですねリョウスケ様、お待ちしておりました」

 

「全くでございます。私達は呼びつけられるほど安くは有りませんので呼ばれる前に参上した次第であります」

 

「それで良いのか?…まぁいいや、エリザベスの考えは分かったよ。さて、3人とも…って、さっき言い忘れてたけどテオは?」

 

「テオ兄様でしたら…どちらでしょうか?お姉様達はご存知ですか?」

 

「テオ?私も知りません。エリザベスは何か知っていて?」

 

「テオですか?でしたら私がお遣いを頼んでおりますのでおりませんよ?…多分しばらくは帰ってこないのではないでしょうか」

 

「貴女、いったい何を頼んだと言うの…。はぁ、まぁ居ないので有れば仕方ありませんね」

 

「…まぁ居ないなら仕方ないか。まぁこうしてみんなを集めたのは他でもないんだ。葛葉本家で封魔管、つまり悪魔召喚のための術を見つけてね、それを話せる()()()を連れてきたのさ」

 

「連れてきた?このベルベットルームにですか?いったいどの様に…」

 

「あらラヴェンツァ、まだまだですわね。リョウスケ様は一言もヒトとは申し上げておられませんよ?」

 

「あっ‼︎…失礼致しました」

 

「おや、おやおやおやおや、いつも澄ました妹の顔が真っ赤ではありませんか」

 

「もう、お姉様‼︎」

 

「はいはい、落ち着きなさいな2人とも。リョウスケ様申し訳ありませんね、話を続けて下さいな」

 

「ああ、ま、勿体ぶった言い方をした俺も悪いんだ、ほら、ラヴェンツァ落ち着いてくれって。で、その()()なんだけど呼び出しても良いかな?」

 

「この空間で、呼び出す事が可能なのですか?」

 

「うん、この場なら出来るはず。来いっ‼︎ピクシー!」

 

「はーい!呼ばれて飛び出てピクシーちゃん!ただ今参上!」

 

「どこで知ったんだよそのネタは…。ここは俺の協力者達の世界。簡単にピクシーの事と悪魔の説明をしてくれるか?」

 

「お任せー。改めてアタシは妖精ピクシー、コンゴトモヨロシクネッ!前はライドウちゃんと契約してた仲魔だったんだけど、ライドウちゃんが相手をするような悪いヤツがいなくなっちゃったけどもしかしたらこの先また出てくるかもしれないって思ってたからアタシはリョウスケちゃんをずっと待ってたのよ」

 

「なるほど、では貴女はリョウスケ様の『仲魔』というわけですか。たしかにこれだけの存在感、シャドウのピクシーは貴女を模したと言っても良さそうなほどですわね」

 

「なぁに?アタシのそっくりさんがいるの?」

 

「ああ、シャドウって言ってヒトの心…感情が集まって出来たヤツの中に居るね。そっくりというか…ピクシーの姿を象ってるから似てるのも当たり前だと思う。悪魔も人間の心が生み出したモノに違いはないけど、それぞれが自我を持ってるだろう?結局感情を寄せ集めて形作ったシャドウと心から生まれ自我を持つまでに成長した悪魔…どっちが強いのか明白じゃないかな?」

 

「それがリョウスケ様の見解ですか。なるほど、そう言われると納得がいく部分も多いですわね」

 

「??どうしましたかエリザベスお姉様」

 

「いえ、なんというか…この子に私はメギドラオンを伝授しなければならないような使命感のような感情がふつふつと湧いてくるのです…これが恋?」

 

「エリザベス落ち着け。自分でその感情の答えを言ってる使命感だって。ってかそこじゃねぇや、なんだよその使命感って」

 

「わかりません、このピクシーを見た途端何故だかしなければならないような気持ちになってしまったのです」

 

「なぁに、お姉さんメギドラオンってあのバーって来てゴーっとなってドカーンって奴?」

 

「ええ、一般的にはそうです。しかし私のメギドラオンは更にゴージャス!楽しみにしておいてください」

 

「まてまて、エリザベスそれはまだ先でもいいだろ?ピクシーも現状2人しか戦えないんだから広域高威力の魔法は待ってくれ」

 

「ぶーっ、リョウスケちゃんったら仕方ないなぁ」

 

「全くです。せっかく興が乗り始めたところでしたのに」

 

「俺をダシに仲良くなったなぁ…」

 

「ピクシーさん、貴女の様な仲魔を増やす事は出来ますか?」

 

「んーとね、ライドウちゃんは仲魔になっても良いって悪魔を見つけてはぶっ飛ばして、脅して、閉じ込めて、呼びつけてたよ!」

 

「リョウスケ様、貴方もまさか…」

 

「ピクシーも言い方ァ!まずは仲魔になっても良いって悪魔を見つけるって所までは良いんだよ。その次は使役できるだけの力を持ってる証明としてソイツより強いってアピールをして、会話交渉による契約を交わして、封魔管に封印する事で持ち運び出来るようにして、戦闘になったら呼び出すって事だよ!」

 

「そうでしたか。てっきり私はリョウスケ様も友好的な悪魔を見つけては悪魔よりも悪魔じみた行いによって支配していくのかと…そしてそんなお人に妹達を預けても良いのか心配してしまいましたわ」

 

「マーガレットさんも分かって言ってるなぁコレ…」

 

 

 

心配してたよりも仲良くなって何よりだ。顔合わせも済んだ事だし近いうちにピクシーを連れてメメントスへ行くとしますかね

 

 



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大事な情報も吹っ飛ぶインパクトはズルイ

なんだかんだ3ヶ月続けられたので初投稿です


まだかしましくピクシーとエリザベスはしゃべっている。…よっぽど波長が合うらしい。ふと疑問に思っていた事を聞いてみた。シャドウがヒトの感情を寄せ集めて形作ったモノであるから似た感情を集めていけば同じシャドウが存在するのもわかる。でも悪魔は違う。さっき独立した存在の様なモノであると確認できたハズ。それに、ピクシー以外のライドウさんの仲魔はどうしたのだろうか。全て答えてもらえるかは分からないが聞いてみようか。

 

 

 

 

「なぁ、ピクシー、ずっと不思議だったんだが、なんで同じ名前の悪魔が居るんだ?」

 

「それは私も気になりますわね、ピーちゃん教えてくださるかしら?」

 

「リョウスケちゃんにエリちゃんまで…いいわよー、このピクシー族1番の博識ピクシーにお任せあれ!」

 

…ちょっと目を離していた間に愛称で呼び合う仲になってる。もう深く考えるのはやめようか。それより話が聞きたいしな

 

 

「んーとね、アタシ達みたいなのは伝承とか神話で出てきても『群体』みたいな描写されたりするのよね、だから同族がいるのも不思議じゃないでしょ?でもアタシ達妖精にも王様と女王様がいるんだけど…あのヒト達とおんなじカタチの悪魔がいっぱいいたらおかしいでしょ?でもアタシもライドウちゃんと一緒に何回か戦った事ある訳」

 

「へぇ、ピーちゃんの武勇伝気になりますわね」

 

オベロンとかティターニアとの交戦経験アリ…ライドウさん、アンタどんなピクシー残したんだよ…

 

「ウフフ、エリちゃんそのお話は今度にしましょ、リョウスケちゃんにお菓子用意してもらって女の子同士お話しするの…ジョシカイってやつよ!」

 

「まぁ!それは楽しみですね。楽しみですねリョウスケ様。チラッチラッ」

 

「分かった分かったお菓子なら今度用意するから、今はピクシーの話を聞かせてくれって」

 

「そうですわエリザベス、貴女1人約束してズルイではありませんか」

 

「まぁ、マーガレット姉上、ラヴェンツァだってキチンとお誘い致しますわよ」

 

「ウフフ、楽しみー。リョウスケちゃんと契約してよかったわぁ。アレ?なんの話してたっけ」

 

「妖精王や女王が何故何体もいるのかって話」

 

「そうそう、リョウスケちゃんありがとうね。んーと、結論から言うと別モノなんだって。ライドウちゃんは『ワケミタマ』見たいなモノだって言ってたの」

 

「ワケミタマ‼︎そう言うことかぁ、なるほどなぁ、そりゃ同じ悪魔として居てもおかしくはないか。その同族の悪魔って記憶とかは共通したりしてるのか?」

 

「そうねぇ、一度倒されて本体に戻った後に出てきたワケミタマなら覚えてるんじゃないかしら?アタシもそこまでは詳しくないのよ、ごめんねリョウスケちゃん」

 

「いやいや、貴重な話が聞けたよ。それと、ピクシー以外のライドウさんの仲魔ってどうなったんだ?」

 

「あー、リョウスケちゃんったらアタシがいるのにもうウワキかしら!」

 

「ええ⁉︎仲魔を増やすのって浮気なのか?」

 

「んー、わかんない。エリちゃんがこう言う時に使える言葉って教わったの!」

 

「エリザベス…」

 

「貴女ったら…」

 

「お姉様…」

 

「んー、お話し続けるよー?ライドウちゃんと一緒にいたお友達はねぇ、ワケミタマの子達も多かったから日本各地の祀られてる所に返しに行ってたわよー」

 

「…ピクシー、スッゴイ話をサラッとするんだな。って事は仲魔が祀られてる神社仏閣に行けば可能性はあるのか?」

 

「多分ー?ライドウちゃんの事忘れてる友達は居ないと思うケド…中にはリョウスケちゃんにチカラを見せてくる事を求めてくるかもー?」

 

「結局調伏しなきゃなんないのか…。いやでもありがとう。仲間に誰が居たか覚えてるか?」

 

「ライドウちゃんってば色々手を出してたからなぁ…誰が居たっけ?」

 

「…まぁ今すぐ探すのも実力的にも不安だし思い出したらまた教えてくれるか?」

 

「うんうん、?エリちゃんなーに?」

 

「コソコソ」

 

「うんうん。えっとね、リョウスケちゃんがお菓子用意してくれたらアタシ思い出すかもー!」

 

「……エリザベスェ。いや、そうだな、対価もナシってのはムシがいいか。分かったさっきのとは別に用意するよ。まぁ、教えてもらってさえすれば伝承とか調べることも出来るからすぐに向かうってのは難しいかもしれないか」

 

「あ!後ねぇ、強さ以外にも要求してくる友達もいるかも!」

 

「…例えばアマテラスを迎えにいくなら、アメノウズメが必要とか?」

 

「なるほど、古事記からの引用ですか」

 

「うーん?気分屋の子達ばっかりだからその時になんないとわかんないかも!」

 

「そうなると遠い所に祀られてる様な連中は大変だなぁ。ま、ついでと言っちゃなんだけどその時にはその地方で悪魔の活動を探るようにするかぁ。ピクシー、そろそろ帰ろうか。随分と話をしたしな。メメントスは明日行くとするよ」

 

「はーい。エリちゃんばいばーい!マーガレットちゃんもラヴェンツァちゃんもね」

 

「ピーちゃんばいばーい」

 

「…ええ、承知致しました。私がついて参りますわね」

 

「よろしく頼むよラヴェンツァ」

 

 

 

…ここまで噛み合うんだってのが今日の印象だよ。他の仲魔の手がかりも凄い情報だったさ。それ以上にピクシーとエリザベスが全部持っていったよ。まぁ、明日はピクシーの復帰戦ってところか。たしかに新戦力の加入だし俺も『備前長船』持ってきたから底上げはできた。だからこそ慎重に動く事を今から意識しておくかね。

 

 




悪魔が分霊、ワケミタマとして居るってのは私の解釈です。こうすることによって他世界の同じ神、悪魔が違う姿をしている事すら説明出来ますので…


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初陣で張り切り過ぎた模様

ティッシュの消費が尋常じゃないので初投稿です


「じゃあよろしくなラヴェンツァ」

 

「ええ、本日は悪魔の探索を重視致します」

 

「ああ。ピクシーもよろしくな」

 

「まっかせなさーい。100年ぶりにアタシの魔法が火を吹くわ!」

 

 

そう、ピクシーの初陣としてメメントスへと来た。悪魔に対して有力な手段となるはず…。言動がどうにも軽いんだよなぁ、魔法が火を吹くってアギでも使えるのかね?そこまで考えてもなさそうか。

 

 

 

「ほえー、ここがメメントスねぇ。スッゴイわね…マガツヒでいっぱい。こんな所が出来てたのならそりゃ悪魔もよってくるわねぇ」

 

「やっぱりそうだよなぁ。まだ手が出せない程の悪魔は見たことないんだ。けどいつまでもそうとは限らないだろ?」

 

「そうねぇ、昨日話したみたいにライドウちゃんが昔やっつけちゃったヤツラもまた出てこないとも限んないわねぇ…」

 

「マジか、それは骨が折れそうな相手だろうなぁ…」

 

「そりゃそーよ。ライドウちゃんも強かったし仲魔もたくさーん居てやーっと何とかしたんだもの」

 

「…エリザベスじゃないけどさ、俺もピクシーの武勇伝聴きたいわ。というか聞いておかないといけなさそうだわ」

 

「そうかしら?…そうかも?」

 

「まぁ、それはまたの機会。シャドウが来るぞっ‼︎」

 

「この子達かー。たしかにちょっと弱そう。でーも、張り切って行ってみよー!えーい、『マハジオンガ』‼︎」

 

「「…」」

 

「えっと…終わり?てへっ、やり過ぎちゃった」

 

「ピクシーさんの『マハジオンガ』…本当に『マハジオンガ』なのですか?」

 

「本人がそう言ってるからそうだろう…エリザベスの『マハジオダイン』くらいあったぞ」

 

「ふいー、イイトコ見せたくって力入れ過ぎちゃったや」

 

「…そりゃそうか。ゲームじゃないんだし込めるチカラの具合で威力も変わるのか」

 

「でもー、アタシもずーっと寝てた訳じゃない、やっぱり鈍ってるわねぇ」

 

「それでこの威力か。後何発くらい魔法使えそうなんだ?」

 

「うーん、今のアタシなら普通の『マハジオンガ』を5発くらいかなぁ?でもシャドウって悪魔より倒した時アタシの気分が良くなるの!」

 

「ひょっとしてシャドウを構成して居るのがヒトの感情だからか?マガツヒも精神エネルギーだから近いのかもな。気分が良くなるってのも倒したからマガツヒを取り込んでるってトコか?」

 

「なるほどー、リョウスケちゃんってばあったま良いー!」

 

「ところでピクシーさん、貴女は先程の技以外に何を使えますか?」

 

「『メディラマ』とー、『ポズムディ』とー、さっきの『マハジオンガ』でしょー、あとは『マハザン』くらいかしら。もうちょっと使えたと思うんだけど…寝てる間に忘れちゃったのかしら?おっかしいなぁ、火を出せた様な気がしたんだけど…まぁいっか」

 

「『マハザン』?どの様な魔法でしょうか」

 

「あれぇ?ラブちゃんも知らない魔法なのかな。ビューって衝撃波が広がる魔法だよ!」

 

「ラ、ラブちゃん?私の事でしょうか?」

 

「ラヴェンツァちゃんだもんラブちゃん!アタシの事は好きに呼んで!」

 

「こ、光栄ですわ。それで、『ザン』という魔法の系統は我々が知る『ガル』と近いのでしょうね。それと『ポズムディ』も初耳ですね」

 

「ふーん、似た魔法ってあるんだ。『ポズムディ』は解毒魔法だよー。解毒魔法知らないってヤバくない?君たち大丈夫なの?」

 

「…どういう訳か毒を使うシャドウに出会った事も無いし聞いたこともないな。そう言った直接的な状態異常をしてこないのはやっぱり感情由来だからかもしれない。属性魔法の延長はともかくシャドウの状態異常攻撃って精神に影響するものばっかりなんだよ」

 

「へー、そんな所にも違いあるのねぇ。でもこれから悪魔と戦うならソッチの対策も考えておきなさいよねー」

 

「…だな。伝承や神話にまつわる事象でも恐ろしい状態異常あるもんな。現状俺とピクシーだけじゃ対処出来ない奴なら逃げるしか無いし」

 

「うんうん。無理をするのが1番ダメってライドウちゃんも言ってたわー」

 

「そう言う対処の得意な仲魔って居なかったのか?」

 

「うーんと、うーんと。…ウズメンとかキクリン!あの2人はそういうの得意だったハズよ!」

 

「ウズメン?キクリン?」

 

「あー、ラヴェンツァ、多分だけどアメノウズメとキクリヒメだろう。しかし今日は悪魔が居ないのか」

 

「そうですね。随分と進んだにもかかわらず見かけませんね」

 

「そうねぇ、シャドウはたーくさん倒したケドやっぱり悪魔とは手応え?なんとなーく違うのかしら?」

 

「やっぱりピクシーからしたら弱く感じるのか…」

 

「そうかも?…ねえねえ、リョウスケちゃん、ラブちゃん、ひょっとして今日って新月じゃ無いかしら?」

 

「あ、ああそういや新月だったけど…ってまさか⁉︎」

 

「だから悪魔も大人しいのかも?うっかりしてたわねぇ。契約してたらそんな事無いんだけど野良の悪魔でそんなに強く無いヤツラってそう言う影響受けやすいのよねぇ」

 

「なるほど、月齢による影響もあるのですね」

 

「うんうん、ごめんねー、言い忘れちゃってて」

 

「いや、むしろ教えてくれて助かった。狩りたいなら新月を外せばいいんだな。…って事は満月は活発になるのか?」

 

「そうそう。野良の連中だったら荒ぶって仕方ないかも?」

 

「なるほど、それが分かっただけでも十分だ。じゃあそろそろ帰ろうか」

 

 

 

悪魔と戦うって予定は果たせなかったがピクシーの初陣は十分に収穫は有ったな。…むしろ強すぎてビックリだよ。アレで鈍ってるって言うから末恐ろしいよ。

 

あとは…仲魔候補にキクリヒメとアメノウズメか。関東に関係ある神社ってあるのかな?あるなら夏休みのうちに行ってしまうのもアリかもしれないな…。



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立ち止まって考える時間も必要

花粉症で口と喉の乾燥が止まらないので初投稿です


夏休みは普段と違ってやれる事が多い。だからこそどれを選択するのかが難しい。考えられる事はたくさんあるしな。

 

まずは、ピクシーから聞いた仲魔の手がかりをたどり協力を願う事。これはメメントスだけでなく俺が悪魔と対峙してかなければならない上でも必要な事だろう。…しかしピクシーと契約を結んだばかり。マガツヒの管理方法や魔石のストックが十分とは言えない今慌てて契約を結んだ結果、誰も召喚できないなんてことになったら目も当てられない。そう考えたらここで飛びつくのはダメだな。一度落ち着いて俺自身のレベルアップと今できる事をしっかり認識すべきだな。

 

 

メメントスや影時間みたいな認知世界。今現在週一くらいのペースで行ってるんだがこれを増やすべきなのか?夏休みだから普段より日中の余裕はたしかにある…。かと言って回数を増やすことが良いのかと言われるとなぁ、それなら一度の探索の質を高めた方が良いだろ。幸にして時間の流れが違うおかげで長時間潜るのは可能だしな。という事は…その質を高めるためにできる事を考えようか。

 

 

まずは自分の事。当たり前だけど大事だよな。初めて『備前長船』を使ったけどそれまでの霊木から作ったらしい木刀とはやっぱり勝手が違った。あそこに有った霊刀の中ではランクの低い刀だけど…真剣なんだよな。流石に真剣を使った立ち回りなんてなぁ。古牧先生なら或いはってトコも有るにはあるが結局は対人以外の想定なんてしてる訳無いからな。…そう言った技の書物もあるんだろうか。あの時は全然他の事に目がいかなかったし思いもよらなかったからなぁ。探すとしても夏休み中には無理。

 

 

後は…道具関係か。良くわからんがとにかく効く回復薬。よく考えたら凄い不安感しか無いコピーだよな。とはいえ今はそれに縋るしか無い。ピクシーが『ディア』を使える事が分かったとはいえだ。魔法を節約する手段があるならそれに越した事はない。…効果を確かめるためには妙さんの協力に応じなきゃならんよなぁ。いやいや、ピクシーにも色々な対策を考える事は大事だと言われたばかり。ここはハラをくくって申し出よう。これは…近いうちにやるか。

 

 

道具って言えば妙さんだけじゃ無い。もちろんフミさんもだよな。そういやデータ取ってもらってからまだ会ってないな。コレも近いうちに済まそう。

 

 

フミさんの事で思い出したぞ。御守りによる負担の軽減の件についてだ。ピクシーやラヴェンツァ達と話をして感じたんだが…俺の『アスラおう』は随分と特殊なケースなのだろう。純粋にペルソナであるならば召喚も要するに自身の心を投影する訳であるから俺みたいに負担がキツイってのは考えにくい。そもそも俺の人格を形成したのが涼介の記憶と混ざるまでのリョウスケと混ざってからのリョウスケ…この3つが核となっているんだから特殊でも間違いないんだろうけどな。それでも俺の心には違いないんだがどうにも辛い。

 

なのにだ、『アスラおう』に所縁のある御守り…さしづめ『阿修羅の御守り』を身につけている方が幾分楽になる。この理由は何だったんだろう。フミさんに破魔矢とか向こうで使った道具と一緒に色々な解析をかけてもらったんだが御守りに関しては変化は見られなかったらしい。まだマガツヒの分析手段が確立していないからなんとも言えないけど…使い切りの道具と違って特に違和感も無ければ取り替えた効果も特に感じなかったんだよな。…つまり御守りは召喚補助の触媒と考えると辻褄が合うのか?歴々のライドウさん達一流からは認められても居ないんだが俺も自称とはいえ葛葉家のデビルサマナーだ。自身に関する悪魔との関係の秘密くらい解き明かしてみせるさ。…この件は夏休みなんて期間で終わる話じゃないな。ゆっくり考えよう。

 

 

まぁ自分の為にできる事って言えばこんなもんか。と言ってもずーっと自分の為に時間を充てるなんて出来るわけないしな。バイトも部活も探偵事務所の手伝いだってある。そっちを疎かにするって事は自分の『世界』を限定するって事に他ならない。マーガレットさん達にも言われてるしな。縁を紡ぐって事で受けた恩恵はこれまででも十分に分かってるからな。

 

 

ま、先ずはピクシーとエリザベスたちが満足するお菓子を選びに行きますか。あと明日のバイトで簡単に作れるレシピをマスターに聞いてみるとしますかね。

 

 




書いてて思いましたが『龍が如く』シリーズの回復のメカニズムって認知世界のメカニズムのまんま何ですよね。特に最新作の龍が如く7なんてほぼ主人公の春日一番の認知世界なんですよね。仲間キャラにも「思い込み」って突っ込まれてるんですがバトルが始まると姿が変わるんですよ。でもリョウスケ君は非現実的な現実と思ってしまっているため回復アイテムの選択肢が狭くなっています。いつか使える事に気がつくかもしれませんけどね


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何気ない日にこそ転換点はあるかもしれない

畑仕事をして腰が痛いので初投稿です


さて、今日はマスターになーにを教えてもらおうかな…っと電話?誰だ、珍しいなこんな朝からって美鶴ちゃん?何だろ。

 

「もしもーし、どうしたの?」

 

『おはようございます。本日、お時間はよろしいでしょうか?』

 

「時間?うーん、どのくらいだい?」

 

『…分かりません。もう少し先輩の考えを伺いたいのです。今までは義務感でシャドウと闘っておりました。しかしその義務感とは何なのか分からなくなって来たのです』

 

「なるほどねぇ。時間かぁ…3時ごろ四軒茶屋に来れる?場所は真次君の方が覚えてるだろうから詳しくは聞いてもらったら良いんだけど『ルブラン』って喫茶店に来てくれる?」

 

『分かりました。ではそのように』

 

 

話をしてから大分悩んじゃったみたいだねぇ。まぁ活動の原点を揺るがすような話だからなぁ。そんな話をした俺がアフターケアはしないとダメだわな。…ついでだ、味見でもしてってもらうか。お嬢様だし、舌は確かでしょ。

 

 

 

 

「オマエもここの手伝いカレコレ一年くらいか。コーヒーも大分マシになって来たな」

 

「どうしたんですか急に。まぁ確かにコーヒーもカレーも大分仕込まれましたからね」

 

「あんまりバイト入れるつもり無かったんだがよ、こういうのもアリなんだなって思っただけだ」

 

「まぁ俺も受験あるんで後一年は無理ですしねぇ」

 

「…だよなぁ。また考えなきゃならんなぁ」

 

「この流れで何ですけど、マスター、なんかデザートの作り方って教えてもらえませんか?」

 

「何だよ急に、色気付いたのか?」

 

「いや、まぁちょっとなんか食わせろって頼まれちゃいまして。オイシイお店のも良いんですけどそれだけってのもツマンナイじゃないですか」

 

「ふーん、まぁ良いけどよ。つっても俺もあんまり得意じゃねぇんだけどな。…そうだな、せっかくコーヒーをマシに淹れられる様になったんだ、ウマイコーヒーゼリーにでもするか。喫茶店っぽいじゃねえか」

 

「良いですね、涼しげで」

 

「久しぶりに俺も作るか。ちょっとクリーム足せば若葉も大丈夫だろ」

 

「あ、3時くらいに知り合いの子来るんでその時出しても良いですか?」

 

「構わねぇけど…コレか?」

 

「だとしてもバイト先に呼びつけないですって」

 

「何だよつまんねぇな。しっかしオマエ色んな知り合い多いんだな」

 

「そうですねぇ。聞いた話ですけど人の輪を広げるってのが自分の世界を広げるんですって」

 

「…ふーん、生意気な事言いやがって。ま、おかげで双葉も楽しそうにしてるしな」

 

「それなんですけど…若葉さんとはどうなんですか?」

 

「なっ⁉︎ガキがからかってんじゃねぇ‼︎」

 

「いや、あれだけ頻繁に双葉ちゃん預かりもしてたら聞くでしょうよ」

 

「ぐっ…いやまぁ、このままで良いんだよ!ほら、準備したから作るぞ!」

 

あらー、まだ進展はしないのかな?双葉ちゃんもなぁ…若葉さんに不幸が有った場合引き取り先が地雷しか無い叔父だからな。まぁバイト来れなくなるまでに進んでくれたら良いなぁ…

 

 

 

 

「で、コレで冷やしておきゃ3時に食べ頃だろ」

 

「へー、思ってたより簡単ですねぇ」

 

「だろ、当たり前だけどコーヒーの味が決め手だからな。ま、オマエならソコソコの味で出せるだろ。知り合いに出すって言うんだったら豆…持って帰っていいぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

カランカラン…

 

「っと、いらっしゃい。お一人かい?」

 

「あ、ああ。すまない、ここに葛葉リョウスケさんと待ち合わせしてるんだが…」

 

「あん?アイツが言ってた知り合いって君か。オイ!オマエに客だぞ」

 

「おー、すいません、美鶴ちゃんいらっしゃい」

 

「待ち合わせって、ここでアルバイトしていたんですか⁉︎校則違反では?」

 

「いやいや、俺がここのカレーのレシピを教えて欲しくって手伝わせてくれって頼み込んだだけだから。ほら、美鶴ちゃんだけここ連れて来てなかったからさ、コーヒーで良い?」

 

「ほら、コーヒーとゼリーなら俺が用意してやるからそっちで座ってろ」

 

「ありがとうございますマスター」

 

「それで、美鶴ちゃん1人かい?」

 

「はい、荒垣は先に話をしていた様ですし、明彦は…そもそも求めていた物があった様でそこまで悩んでおりませんので」

 

「ま、俺が言うのもなんだけどあんな話したらそりゃ悩むわな」

 

「あいよ、このコーヒーゼリー、コイツが作ったんだ。味はまぁ保証できる範囲だが食ってみてくれ。おい、こんな別嬪な嬢ちゃん泣かすんじゃねぇぞ」

 

「分かってますって。コーヒーありがとうございます。ほら、先に食べようか。悩みすぎてて力入りっぱなしだったろ?」

 

「…はい、頂きます」

 

「お、中々の出来。どう?初めて作ったんだけど。まぁマスターに教えてもらいながらだけどね」

 

「美味しいですよ。私は紅茶党ですのであまり詳しい事は言えませんが」

 

「あら、そんな美鶴ちゃんのお墨付きをもらえるくらいに頑張らなきゃね」

 

「ふふ、楽しみにしておりますよ」

 

「ちょっと軽くなったかな?さて、そろそろ話をしようか。大丈夫、この店結構安全だから」

 

流石に気もそぞろなままでタルタロスに向かえなんて言えないよな。もう少し深い話をしなきゃならんかも知れないけど…それもまぁ良いでしょ。話の転び方次第じゃ当主様の所にまで行かなきゃならないかもしれないけど、その時はその時かね。



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勢いで懐に飛び込むのもタイミング

翌日に筋肉痛がきて安心したので初投稿です


「さて、この間話をしてからだけど…また行ったのかい?」

 

「はい…思うところは色々と出て参りましたが動かないと言うのも出来ません」

 

「そりゃご立派。幾月さんとは話したりしたの?」

 

「いえ、まだ…」

 

「ま、簡単じゃないわな。お父上ともまだ?」

 

「はい、お父様にお話しするならばせめて私がもう少し納得出来てからと思っております」

 

「ま、流石にね。そういや、なんで幾月さんって重用されてるのさ。仕事ができてシャドウとペルソナに詳しいってだけじゃないんでしょ?」

 

「対シャドウの機動兵器を作る事が出来たりする人材でもありますから…」

 

「へー、そんなもん作ってんの。でも実戦投入はしてないの?」

 

「なんでも以前起きた事故の時に大破してしまいまだ再稼働のメドがたっていないとの事ですよ」

 

「そりゃよっぽど気合入れて作ったんだろなぁ。…そもそも何で動くのさ。影時間って認知世界だろう?時間軸もズレてりゃ機械なんてマトモに動かないだろうに」

 

「それならば…この召喚器にも使用されているのですが、『黄昏の羽根』と呼んでいますモノを使用しておりますので」

 

「『黄昏の羽根』ねぇ…。それの正体とかは分かってるの?」

 

「いえ…かなり貴重なモノであり、影時間で活動する上で重要な物資であると言う事くらいですね」

 

「…分からないまま使ってるのか、どうにも君んとこは行き当たりばったりだなぁ。ちょっと見せてもらってもいいかな?」

 

「はい。ちなみに銃の形を模しているのは我々ペルソナ使いが発現させる際に自己の死をイメージする事がきっかけとなるからでして…」

 

「なるほどね、君らのペルソナのイメージはそこにあるのか。ちなみにそれを使わずして召喚は?」

 

「出来ません…。もしや、リョウスケさんは可能なのですか?」

 

「そもそも俺が召喚するのに自身の死を覚悟しなきゃならないって事はないからね。ちなみに召喚は影時間内だけでしか出来ないのかな?」

 

「まさか⁉︎…それも出来るのですか‼︎」

 

「それも言っちゃえば覚悟の問題だからね。できるモノだと思えば出来るのさ。ま、簡単じゃないと思うけど」

 

「…リョウスケさんはペルソナ使いとして随分と我々よりも先を行かれている様ですね」

 

「一人で色々やらなきゃならない分色々試してるからなぁ。でもバックアップがあるって大事だよ?俺は回復手段を用意するのも一苦労だったんだから」

 

「なるほど…その様な苦労が。そう言う点では我々は恵まれていたのか…」

 

「まぁ、幾月さんの目的が何であれ影時間で君たちに活動してほしいと思っている事は間違い無いんだ。それに…まだ動く時期じゃないって言ったろ?」

 

「その時期についての予測はありますか?」

 

「こんな言い方は君には酷だろうけど…無気力症候群の被害者が増え出すタイミングだろうね」

 

「くっ…」

 

「被害者が増えるって事はタルタロスの活動が活発になっている証拠だ。それに、タルタロスの調査も進んでないんだろう?」

 

「…はい、何をしても開かない扉の様なモノがありそこから先へと立ち入る事が出来ておりません」

 

「そういう意味でも()()なのさ。歯痒いだろうけど今は現状の問題に対処する以上の事は出来ないんだよ。それに…言っちゃあなんだが異界を創り出してるナニカってのはこの世界に対して干渉するだけの影響力を持っていると予想できる。そんな相手に君たち3人で何とかなると思うかい?」

 

「……焦っていたのでしょうか」

 

「それは間違いなくだね。ま、グループの一族として背負い込むのも無理は無いんだけど、他に身体を張れる一族がいないんじゃしょうがないよね。ふーむ、美鶴ちゃん、ちょっとトレーニングしようか」

 

「トレーニングですか?」

 

「うん。強くなったり出来る事が増えれば多少は焦りもマシになるさ。ちなみにどっか良い場所ある?」

 

「…でしたら我が屋敷はいかがでしょう。あそこならば人目にも付きませんし場所もあります」

 

「…美鶴ちゃんさぁ、常識無いって言われない?」

 

「なっ⁉︎何か至らない所でもございましたか?」

 

「君んとこ見たいなお家に娘が連れてきた男一人ってどんな目で見られると思う?」

 

「……‼︎」

 

「ね?…ならあの2人も連れて行こうか。そうすればまだマシでしょ」

 

「そ、そうしましょう‼︎いま迎えを手配しますのでお待ちください!」

 

 

顔真っ赤にしてでてっちゃった…。おいおい大丈夫かよ。

 

「何だよ、随分と可愛らしいお嬢ちゃんじゃねぇのさ」

 

「後輩ですよ。…まぁ多少浮世離れもしてますよ。何てったって桐条のお嬢さんですからね」

 

「マジかよ、ガチガチのお嬢様じゃねぇか。俺のコーヒーで良かったのか?」

 

「紅茶党らしいですよ」

 

「それもそれでなんだか悔しいじゃねぇか」

 

「お待たせしました、もう参りますので」

 

「という事ですんで今日は失礼します」

 

「おう、お疲れさん。また頼むわ。さっきの嬢ちゃんにもよろしくな。次はもっとウマイコーヒー飲ませてやるって言っといてくれ」

 

 

 

美鶴ちゃんの家かぁ。ひょっとして当主様とエンカウントしちゃうんだろうか?ま、そこはそうなった時だな。まぁ流石にバチバチに舌戦出来る自信は無いんだが…

 

 

 

 



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本丸に乗り込んだんだもの、トップが出てきてもおかしくない

家庭菜園の玉ねぎが収穫できたので初投稿です


「うわぁ。まさしくお屋敷って感じ」

 

「そうでしょうか?これでもお祖父様は随分抑えたとおっしゃっておりましたが…」

 

「…それ、あんまり人に言わない方がいいよ?まぁ美鶴ちゃんほどまで突っ切ったら嫌味にもならないか。あんまり他人の家行ったことないでしょ?」

 

「他人の家と言いますと…パーティに招かれた時くらいでしょうか」

 

「ダメだ、ガチガチのセレブだってこと忘れてた。つーか凄いね、敷地入ってから降りるまでまだかかるんだ」

 

「稽古という事ですので直接離れの道場へと向かっておりますから」

 

「聞いた俺が言うのもなんだけど普通敷地に道場なんてないからね?」

 

「??確か先輩のご実家…葛葉神社でしたか?そちらには道場がお有りなのでしょう?」

 

「いやあるけどさ、あるけどさぁ…。うーむ、ウチも特殊だからそのセンでは何とも言いにくくなっちゃったじゃないか。…まぁいいか。真次君と明彦君は来たことあるの?」

 

「寮に迎えを手配しましたので大丈夫ですよ」

 

「…そう。ならよかった。まずは…軽く手合わせして待っていようか」

 

「お願いします。春の様には行きませんよ」

 

「ふふ、そりゃあ楽しみだ」

 

 

 

道場へと案内された俺は美鶴ちゃんが用意を済ませるまで瞑想していた。ん?美鶴ちゃんが来たか?

 

「っと、お待たせしてしまいましたか?」

 

「構わないよ。ちょうどいい具合に瞑想が出来た。さ、早速始めるかい?」

 

「はい、お願いします‼︎」

 

「っ!確かに春の頃よりキレてるね。でもまだ出所が見え見えだよっと」

 

「くっ、まだまだぁ‼︎」

 

「ほら、その程度じゃ攻めきれてないよ?」

 

 

美鶴ちゃんの容赦無い突きをいなし続け、美鶴ちゃんに疲れと焦りが見え始めた頃、ちょうど突きが伸びきった所でレイピアを袖に絡めて奪い取る。

 

「はい、おしまい。ありがとうございました」

 

「はぁ、はぁ、ありがとう、ございました」

 

「完全に受けに回ったけど…攻めにくかったかい?」

 

「はい、どのタイミングで突いてもいなされてしまうので…。あの、怖くは無いのですか?」

 

「まぁ当たり所が悪けりゃ大怪我するだろうけど、美鶴ちゃんの技量を見てる限りお手本の様に綺麗だったから俺も丁寧に処理すれば大丈夫だろうと思ったまでさ。後は動作をもっと広い視点で捉えてるからね。だから後の先を取ってられるのさ」

 

「はぁ、ふぅ、これでもフェンシングには自信があったんですが、無くしてしまいそうですよ」

 

「はは、無手を相手取る練習なんてした事ないからだよ。もう少し手合わせして立ち回り覚えれば全然変わるさ」

 

「そういうものですか…」

 

「まぁ、その立ち合いを実際に出来てお互いに怪我しないってなると俺か古牧先生くらいしか居ないかもね」

 

「古牧先生…それほどですか」

 

「それほどだねぇ。あの爺さんほーんと強いよ。っと、2人来たみたいだね」

 

「その様ですね」

 

「うぃーす」

 

「美鶴、リョウスケさんよろしく」

 

「おう、よろしく。軽く身体あっためたら早速かかってきなよ」

 

「俺は、いつでも良いっすよ」

 

「そう?じゃ始めようか」

 

 

そして真次君から始まって明彦君、美鶴ちゃんと手合わせを繰り返した。勝ち残り方式にして次々と入れ替えて行った。さすがに俺も途中からは疲れもあって入れ替わったりしたんだけどね。

 

 

「いやぁ、つい張り切っちゃったねぇ。こんな疲れる稽古久々だよ」

 

「ぜぇ、ぜぇ、やっぱセンパイやべぇすね。一番稽古してたのに一番ケロっとしてんじゃねぇっすか」

 

「お、俺もボクシングで敵なしと思っていましたが…、まだまだですね」

 

「お前たち、私なんて模造刀を使っているのにこの有様だぞ…」

 

「まぁ、身体能力については多少おかしな事になってるからズルイっちゃズルイんだけどね」

 

「そう、なのですか?」

 

「そうでも無いと悪魔祓いなんて出来ないさ」

 

「それは俺でも強くなれますか?」

 

「いやぁ、オススメしないね。俺だって高尚な目的あってこんな事やってるわけじゃ無いけど、強くなりたいってだけなら割りに合わないよ。はっきり言って悪魔はほんっとに殺しにかかって来るからね」

 

「…」

 

「アキ、強さを求めるのもいいけどよ、あんまり急いでも自分のチカラにならねーぞ」

 

「シンジ…」

 

「うんうん、幸にしてまだ出会ってないけど石化や毒とか使ってくる悪魔も居るからねぇ。多分ペルソナ使いなら悪魔を見ることが出来るんだと思う。けれど、見えるって事は悪魔にとってもご馳走に見えてるのさ。中途半端に強いだけならそのままバクっといかれて終わりだろうね」

 

「…」

 

「…それは凄まじいですね。にわかには信じがたいですが」

 

「そうだなぁ、いい加減俺がデビルサマナーって話も胡散臭くなってきた頃だし紹介しようか。…あと美鶴ちゃん、今入って来たのはお父上かい?」

 

「え⁉︎…っ‼︎お父様‼︎いらしていたのですか」

 

「……。一年生の事は知っているが君は何者かね」

 

「俺ですか?俺はこの一年生達の一つ先輩の葛葉リョウスケですよ。貴方が招聘してくださった古牧先生から指導を受けております」

 

「ふむ、君もペルソナ使いなのかね?幾月からその様な報告は無かったが」

 

「俺ですか?…そうですね、俺は『デビルサマナー』ですよ。ペルソナも使えますけど」

 

 

 

ま、こんな事になる様な気はしてた。美鶴ちゃんへのアタリを見た感じ巨大なグループトップの割には不器用な感じなのかな?なら十分にチャンスはあるか。さぁ、どうなるかね



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説明不足の父親は何とかした方がいい

ここのネタ切れが激しいので初投稿です


「デ、デビルサマナー?」

 

「そうですよ。ま、にわかに信じられないと思います。…ケド、ペルソナ使いやシャドウとの戦いを知ってる人ならそこまで不思議でもないでしょう?」

 

「ム、それもそうか。では君もペルソナを使えるのかね?」

 

「まぁ、使えますよ」

 

「では、誰かから召喚器を預かったのかな?」

 

「いや、()()()()()使わなくたって出来ますよ。見たところ補助輪見たいなモノですからね。イメージと覚悟…そして()()()っていう自信が有れば」

 

「むう、それでこの場にいるという事は影時間で活動しているのかね?」

 

「いえ、してませんね。入ったことも無いです」

 

「何だと?ではなぜペルソナが使えるのかね。まさか現実世界で召喚すらできるとでもいうつもりか⁉︎」

 

「出来るかどうかで言えば出来るんでしょうけど…やる意味はないですよね」

 

「ふん、誤魔化している様にしか聞こえん」

 

「おや、影時間の様な異界…本当に唯一だとお思いで?」

 

「何を言っている」

 

「異界の発生…、それだけのナニカがあった故に影時間が出来たのでしょう。しかし、それに匹敵…いや、それ以上に強いチカラがあるんですよ。何か分かりますか?」

 

「…()()以上に強いチカラだと?君は随分と詳しい様だね。この様な立場にいる私の不勉強からくる無理解だよ、済まないがご教授頂けるかな?」

 

「人の想いですよ。確かに人が持つ想いの力は微々たるものです。中にはペルソナ使いの様に強い想いを具現化する事ができる様な人間も居ますけど。その人が数多く活動しているならばそこに生まれるのは集合無意識。まさにチリも積もればって奴ですよ」

 

「ま、まさかそんな事があるわけ…」

 

「中には人ならざるモノ…私は『悪魔』と呼称していますが、その悪魔によって引き起こされる事も有るでしょうがね。でもそう言った事例も人の想いを集めた結果だったりするんですよ。ところで、影時間の原因って何でしょうね?」

 

「…アレは事故だ。確かに我々桐条が引き起こしてしまった故に事態の収束を図ってはいるがね」

 

「事故ですか。そういうしでかした人は決まって言いますよね」

 

「…リョウスケさんは原因をご存知なのですか?」

 

「おや、娘さんには話していないのですか?」

 

「…私が必要無いと判断した」

 

「お、お父様…」

 

「ま、こういうのは人が手を出してはいけない領域に踏み込んだ結果…もっと手に負えない事になった…っていうのが相場だよ。まぁ、想像ですけど…違いますかね?」

 

「ッ‼︎良く言うよ。想像と言う割にほとんど把握しているのではないかね?」

 

「確証のない話ですから。それに後輩達の手前、カッコつけて大外れってのも恥ずかしいじゃないですか」

 

「フフ、じゃあ私はもっと恥ずかしい大人になってしまうな」

 

「ま、部外者で歳の変わらない俺が言うのも何ですけど…どうにも大人の尻拭いを子供がやってる様にしか見えなかったものでしてね。こうして顔を合わせる事が無かったら言うつもりは無かったんですけどね」

 

「はぁ、それではつい顔を出してしまった私が悪いという訳…、いや、それだけじゃないな、美鶴に何も話していない私が馬鹿だったな」

 

「まぁ、それ以上は俺たちが居ない時にでもしてくださいよ。貴方見たいな立場の方は隠さなきゃならない所でしょう?」

 

「ふふ、参ったな。大人の面目が立たないね。…美鶴、いい先輩が居たんだな」

 

「…はい」

 

「ま、美鶴ちゃんもキチンと話をした方がいいよ。義務感で身体張るなんてやる事ないさ。まぁ、家族間のすれ違いが何とかなりそうなのは喜ばしい事ですけど…もう少し話をしましょうか。皆さん気になっていたでしょ、『悪魔』と呼称したナニカとそれに対する様な俺の『デビルサマナー』という肩書き」

 

「リョウスケさん、それを証明する何かをお持ちなのですか?」

 

「まぁ、こんな事もあろうかとってね。なんて、ホントの事を言うと、目の届かない所に置いておくなんて怖い事出来ないから持ち歩いてるんだけどね」

 

「持ち歩く…。君は『悪魔』を持ち歩いているのか?」

 

「契約した『悪魔』は『仲魔』ってデビルサマナーは呼んでますね。ま、今この現代に俺以外のデビルサマナーがいるかは分かりませんけど。そして、この封魔管。ここに俺が契約した仲魔が居ます」

 

「ふむ、見せて頂けると言う事かな?」

 

「この場に限ってですけど。あ、言っときますけど…渡す気サラサラありませんからね?」

 

「…ッ‼︎すまない、そんなつもりは無いよ。幾月が居たらそうは言わなかったかも知れないが…」

 

「ははっ、ご冗談を。さっき申し上げたでしょ、人が手を出してはいけない領域の話を。ご先祖の二の舞になるだけですよ?」

 

「…君は知っているのか。父の…父が犯した罪を」

 

「ふむ、そうですね、悪魔の話に繋がるので先に想像と推理の話をしましょうか。タルタロスや影時間の現出、それはおそらくですけど制御出来ると思い上がった人間が手痛いしっぺ返しを食らった…当事者、それもその息子さんや実際に被害を食い止めている面々に対しては余りに簡単な表現になってしまいますけどね」

 

「あー、センパイ、その当事者ってーのは美鶴の…」

 

「…荒垣君、私の父だよ。そして美鶴の祖父だ。いや、私も同罪だよ、止める事が出来てないばかりか高校生になったばかりの娘とその同級生に負担を強いているんだから」

 

「お、お父様…」

 

「ここに来る前、美鶴ちゃんに召喚器を見せてもらいました。そこに使われてる『黄昏の羽根』…アレ、何か分かって使ってます?」

 

「…いや、影時間の様な異空間でも機械が使える様になる程のエネルギー体、それだけではないのですか?」

 

「えっと、当主サマ…「武治だ。この場には娘もいる、桐条では呼びにくいだろう」失礼、武治さんはご存知ですか?」

 

「父がアレを手に入れてから狂ったのだと今ならわかる。なるほど…悪魔とは言い得て妙だ。手にした人を狂わすだけの魅力を持ち…そして破滅させる。なんとも悪魔的じゃないか」

 

「おそらく…黄昏の羽根は悪魔の残滓だと思いますよ。それもこうしてそのカケラですら凄い力を持っている…かなり凄そうな悪魔でしょうね」

 

 

 

さて、ここからが核心だ。涼介が持っていたこの出来事に関する知識と俺が認知世界や悪魔と接する事で感じた俺の見解がほとんどだけど…これで武治さんと話を付けられるかな。この場に美鶴ちゃんやほかの2人がいたおかげで武治さんがちょっと落ち着いて無いのが助かるな。



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インパクト的には信用できない部下より目の前の悪魔

自転車のサドルでズレたので初投稿です


「さて、ここまで勿体ぶった言い方をしていたのにも理由がある…というか、確証が無かったからなんですよね。ほら、これだけ色々話して結局のとこみんなが悪魔を見えないってなると笑えないでしょ?」

 

「む、確かにそうだな。ここまで来て実際に確認できないとなると道化にもならんか」

 

「リョウスケさんは我々には見えると思っているのですよね?」

 

「だろうな、今だから言うけどよ、そうでもなきゃ影時間のカタが付いた時にセンパイのヤマにスカウトされたりしねぇわな」

 

「何だと?シンジは声をかけられていたのか」

 

「タイミングだろうな。自分で言うのもなんだけどよ、俺もアキも戦力の違いなんてセンパイから見りゃ誤差にしかならねぇだろ。そんな中俺はあのヤローからクスリを貰っていた。俺に借りを作りやすかったんじゃねーか?」

 

「ま、そう言う狙いがあった事は否定しないけどね。武治さん、貴方は罪滅ぼしの気持ちや責任感があるから色々と彼らに便宜を図ってるみたいだけど、末端に届くまでに悪意を挟んでいたらどうなりますかね?」

 

「なんだと?その様な事があれば組織は立ちいかなくなる…だけで済めばいい方だろう。先程のクスリという事に繋がるのかね?」

 

「ああ、そうですね。不思議だったんですよ。真次君…はペルソナ制御薬なんてモノを貰ったんですが、なぜそんなクスリが存在しているんでしょうかね。桐条グループでソレを必要とする部署…()()()なペルソナ使いを作ったりしようとしましたか?」

 

「「なっ‼︎」」

 

「お父様!本当ですか⁉︎」

 

「…元はと言えばそう言った研究をしていた部署が起こした事故がきっかけなのだ。言い訳にもならないが私の代になって閉鎖させたよ。しかしそうなるとクスリは誰から…?」

 

「…お父様、幾月さんに手配の指示を出したのでは無いのですか?」

 

「幾月が荒垣君に渡したのかね⁉︎」

 

「そのクスリ、どういうモノかはご存知で?」

 

「あ、ああ、全国各地から素養を持った人間を集めていたのだが中には制御が効かず暴走してしまう者も居たそうだ。そんな彼らのために作られたと聞いている。…しかし、彼らも8年前の事故で亡くなってしまったのだろう」

 

「はっは、いや、笑い事じゃ無いってのは分かってるんですけどね。随分と都合の良い部分しか報告されてないんですね」

 

「何だと?」

 

「結論から言いましょう、そのクスリを服用していたペルソナ使いや服用を続けざるを得なくなっていたかもしれない真次君はそう遠く無いうちに死んでましたよ」

 

「なっ‼︎美鶴たちは聞いていたのか?」

 

「あー、まぁ、この子達からすればメンバーにそんな危機があったんですから一応話はしましたね。で、そのクスリを手配できる幾月さんってなんなんですかね?」

 

「……」

 

「そうですねぇ、影時間を生み出す様なナニカを利用しようとする人間、ベタな物語なら…ソレを使って新しい世界を作り出しその創造者として君臨したい、もしくは制御出来ないからこそそのまま暴走させて何もかも終わらせたい破滅願望。大穴は情報を握ったアドバンテージを活かして貴方の様な大物に取り入る小物…とかどうでしょうね」

 

「ま、まさかそんな?幾月が?」

 

「お父様、幾月さんを信用した要因は何だったのですか?」

 

「…あの事故を境にペルソナ、シャドウ部門において頭角を表したのだ。そして、事故の瞬間の動画を見つけた様でな。研究室にいた『岳羽』という男による暴走が原因と分かった、と今の今まではそう思っていたよ。なるほど…末端に届くまでに挟まった悪意か。私も娘を笑えんな」

 

「お父様…岳羽とは中等部の?」

 

「ああ、あの事故を起こした責任は死んでしまって取る事も出来なかったのだが、家族にまで罪を問う必要は無いと幾月に言われ学園に通える様手配していたよ。…リョウスケ君、確かに幾月の都合のいい様に動いてしまって居た様だ。まだ取り返しはつくかね?」

 

「まぁ、大丈夫でしょう。俺の見立てでは影時間もタルタロスもまだ休眠してます。時間はありますからね。あとその岳羽さんの子供…多分素養持ちなんでしょうね。ここに来て運命論じゃあないんですが、ペルソナの素養を持つ人間って惹かれ合うというか…世間は狭いみたいな感じで集まりやすい傾向があるんですよね。それに、その子…影時間に対する恨みは相当なモノでしょう?やはり強い感情によって発露するモノでもありますからね」

 

「リョウスケさん、そうなると幾月さんは何故分かったのですか?」

 

「そりゃあ幾月はその研究所に居たんだよ。そうでもなきゃ説明がつかない様な事が多すぎるからね」

 

「ああ、リョウスケ君の言う通り。奴は研究所唯一の生き残りだ。私自身重用したのも申し訳なさとある種のシンパシーを持っていたつもりだったんだが…一方的なモノだった様だ」

 

「ああ、そうそう、美鶴ちゃん達にはお願いしてあるんですけど…幾月さん泳がしておいて欲しいんですよね」

 

「何だと?これだけ裏がある奴だったのだろう?何故そんなことを」

 

「いや、どうにも影時間とタルタロスに固執してる様ですんで今のまま自分が手綱を握ってると思わせてる方がいいと思うんですよね。今でさえどこまで手を広げてるか分かんないんですよ、目の届かない所に行かれたらそれこそ何を企んでるか分かりませんよ」

 

「…なるほど。しかしこれまでとは違うものな。奴が手綱を握ってるつもりということを知っている。分かった、私もそのように動こう」

 

「ありがとうございます。…そう言えば仲魔を見せる話でしたね」

 

「…そうだったな。しかし、かと言って幾月の話を放っておくわけにも行かなかっただろう」

 

「まぁ、そうですね。ホントは話は後でするつもりだったんですよ。前後しちゃいましたけど。来い、ピクシー‼︎」

 

「はいはーい!今日はなぁに?ってこの人たちはお友達?」

 

「「「「おぉ‼︎」」」」

 

「わ、すごーい。みーんなアタシの事見えちゃうのね‼︎」

 

「やっぱり影時間の様な異界に適性があるなら見えるみたいですねぇ良かった良かった」

 

 

まさかピクシーを見せる前に話を進める事になるとは思わなかったな。どうにも詰めが甘いおかげでボロを指摘できたから何とかなったし、ピクシーも見えてるみたいだ。このままの勢いで何とかしてしまおうか。



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俺の活動が少しでもやり易くなればいいな

前話はタイトル入れ忘れてましたので初投稿です


「なぁに、貴方達、あんまりレディの姿をじろじろ見るのはどうなのよ!」

 

「そうですよ、武治さん」

 

「おっとすまないな。何分驚きが大きすぎて恥ずかしながら固まってしまったよ。それで、シャドウとは違うのですかな?」

 

「むー!あーんなヨワヨワな連中と一緒にしないでほしーな!」

 

「まぁ、実際に戦ってないと分かんないかもしれませんね。君らペルソナ使いなら存在感の違いがわかると思うんだけど…?」

 

「…センパイが俺らの事を戦力として見てない理由が分かった気がしますね。味方なんすよね?はは、冷や汗が止まんねぇっすわ」

 

「…驕っていました。強くなる手っ取り早い手段に良いのではないか、少し強くなった今なら無理をして狩りを続けても大丈夫なのではないかと。こんな相手が居たら俺にはどうしようもないですね」

 

「…お父様、正直リョウスケさんと契約をしているという話がなければと思うと血の気が引きましたよ。リョウスケさんはこのピクシーと共に戦ってらっしゃるのですか?」

 

「…そんなに怯えなくても良いじゃんね。リョウスケちゃん可哀想なアタシを慰めてよー」

 

「あー、美鶴ちゃん、甘い紅茶とお茶菓子を用意してくれない?ピクシーはそういうのに今ハマってるからさ。それに、俺も喋りっぱなしで疲れたしさ」

 

「ここは私にもてなさせてくれないか?不躾なお詫びの意味も込めてすぐ手配しよう」

 

「ありがとうございます。ピクシー、俺なんかじゃ用意できそうに無いお菓子が食べられるぞ」

 

「ホント!わーいわーい」

 

「ではお父様、私が案内致します。…道中はそのままで向かわれますか?」

 

「うーん、どうしよっか。多分…他の人には見えないから大丈夫だと思うけど、ピクシーどうする?」

 

「うーん、あれね、マガツヒが薄いのね。またお菓子の場所で呼んでくれるかしら?」

 

「わかった、じゃあ戻っておいて」

 

「じゃ、またねー」

 

「「…」」

 

「…すごいですね」

 

「まぁ、ピクシーは俺の先祖って言って良いのかな?葛葉家最後のデビルサマナーがわざわざ遺してくれた仲魔だからね。そりゃそこらの野良悪魔やシャドウとは比べ物にならないさ」

 

「…非常に興味深いです。では客室へと案内しますので詳しく聞かせて居ただけますか?」

 

「そりゃね、まぁ俺も何もかも知ってるわけじゃ無いけど」

 

 

とりあえず詳しい話はせっかくの機会なのに武治さんが居ない所でやっても仕方ないからな。美鶴ちゃんの案内について行って客間…もはや来賓用の館だな。ガチガチのセレブほんと怖いよ…

 

 

 

「美鶴、ご苦労様。リョウスケ君、客人をもてなす事もしなくて申し訳なかったね。ここなら人目を憚る事もない、ピクシーを呼んでもらっても構わないかな?」

 

「わかりました。ほら、ピクシー着いたよ」

 

「はいはーい。うわぁ、美味しそう‼︎」

 

「さっきは申し訳なかったね、私たちの事は気にせず楽しんでいて構わないよ」

 

「はーい」

 

「はは、ピクシーあんまり食べ過ぎて俺の用意した方に文句付けないでくれよ?」

 

「ふふ、そうなったらまた私に頼んでくれないか?いつでも用意させてもらうよ」

 

「本当ですか?そうなったら甘えてしまうかもしれませんね。さて、俺がデビルサマナーって事は納得してもらえましたか?」

 

「ああ、実物を…それも私ですら見える。しかも影時間でも無いにも関わらずだ。君のいう事が随分と信憑性を帯びてきたよ。それにこの子達を気にかけてくれて居た様だね、ありがとう」

 

「ま、先達ってほどでも無いですけど」

 

「…リョウスケさん、悪魔とシャドウの大きな違いとはなんだろうか?」

 

「そうだな、シャドウが活動するには異界が必要だ。しかし、悪魔は異界が無くても問題…無い事もないが活動出来る。つまり現実世界に干渉できるかどうかが脅威度の話かな」

 

「なるほど。では、デビルサマナーとしての見識を伺いたいのだが、悪魔はこれから現世に現れるのかね?」

 

「情け無い話分かりません。まぁ予想で良いならですけど…影時間じゃない俺が探索している異界、メメントスは人の集合無意識によって生み出された異界です。そこには悪魔にとって養分となるヒトの想いが結晶化した様なエネルギー『マガツヒ』で溢れています。対して現世はそのマガツヒが薄い。そして、弱い悪魔こそヒトの欲望を具現化した様な性質を持っているため直接的な活動をしますが…本当に、本当に強い悪魔、それこそ神話に出てくる様なモノが現れた時現世への影響はあり得るでしょう」

 

ピクシーの存在感ですら自信を失いかけた3人からだけで無く目の前の武治さんからもゴクリと息を飲む音がした。無理もない、スケールがデカい上に想像もよらなかった話だからな。

 

「影時間の出現…要するに現世への干渉です。それを果たした元凶は悪魔でしょうね。それも休眠してなおこの影響力。とてつもないモノでしょう。まぁ、武治さんや美鶴ちゃんの前でアレなんですが…とてつもないしっぺ返しを東京の人間…いや日本、ヘタをすると世界中に振り撒く可能性があるんですよ。分かってくれましたか、俺が悪魔を研究しようとする事に対して拒絶している事を」

 

「……わ、私の父がしでかしたツケはそこまでのモノになると?」

 

「そもそもその悪魔に興味を持つ様に仕向けたのか偶然なのかはたまた運命かは分かりませんが、黄昏の羽根…アレの大元でしょうね。話を聞く限り影時間との親和性が()()()()んですよ」

 

「…確かに影時間で活動をするにあたって都合が良過ぎる点は多かった。()()()()とはよく言ったモノだ。父が魅入ったと思っていたが、父が利用されていたのか」

 

「そこまでの存在になると意思疎通なんて出来ませんけどね。文字通り次元が違うんですよ。見てる視点も違うんです」

 

「君が思う活性化はいつかね?」

 

「近いうち…でしょうね。幾月さんがご執心な対シャドウ兵器もそうですが、あの人が準備を終え出した頃でしょうね」

 

「…なるほど、泳がせていた方が都合が良いわけだ」

 

「えっと、5年くらい泳がされていたんですからやり返してやりましょうよ」

 

「ふふっ、耳が痛いな。確かに思い通りに動かしていると思っている人間ほど分かりやすい事は無い」

 

「でしょう?ペルソナ使いを見つけ出すノウハウは未だあの人しか握ってませんからね、失伝してしまうくらいなら有効に使ってやりましょう」

 

「ふふ、君がデビルサマナーでないと言うなら是非ウチに来てもらいたいよ」

 

「センパイこえぇ…」

 

「一年違うだけでこうも変わるのか?」

 

「お父様、リョウスケさんが困っています」

 

「いや、ウチに来なくても構わないから美鶴をもらってはくれないか?」

 

「お父様‼︎」

 

「なになに、おもしろソーな話?」

 

「ピクシー、もう満足したのか?」

 

「あんまりアタシだけ食べちゃったらエリちゃんに悪いじゃ無い。ここで止めておこうかしらと思ったの。オジサマありがとうね」

 

「リョウスケ君といつでも来てくれて構わないよ。君たちは名前で来れる様にしておくから。…美鶴の部屋が知りたくなったらこっそり」

 

「お、お父様‼︎何をおっしゃっておられますか‼︎」

 

「美鶴がここまで取り乱した姿を初めて見たな」

 

「すげぇ、親父さんとセンパイにかかっちゃ完璧超人もカタナシじゃねぇか」

 

「う、うるさいぞ!お前たちまでっ‼︎ゔー、しょ、処刑だ‼︎」

 

「美鶴そんな言葉遣いを教えた覚えは無い。…リョウスケ君の前じゃないか」

 

「う、う、ゔー‼︎」

 

「あー、顔真っ赤にして出てっちゃいましたね。久しぶりの親娘のコミュニケーションだとしてもちょっと不器用すぎますよ?」

 

「…それもお見通しか。ここまで家族らしい事もしてやれなかったからな。今日はいい話ができた。ありがとう。本当にありがとう」

 

「やめてくださいよ。ま、美鶴ちゃんの事は抜きにしてもよろしくお願いします」

 

「抜きにするのかい?私としては構わないのだが」

 

「さぁ、明彦君、真次君、お暇しようか。帰りなんか食べて帰ろうじゃないの」

 

「…いいんすか?」  

 

「…よく考えてみろ、不器用だけどゴリッゴリのセレブだ。それも俺たちの想像も付かない。何をしてくるか本当に分からん。だからさっさと帰ろう。ピクシー、帰るぞー」

 

「はーい、じゃ戻るわね」

 

 

どうなる事かと思ったけど勢いでなんとかなってしまいそうだったな。…最後の方は勢いつきすぎな気もするけど。ま、大きく動くまでは俺はメメントスかな。たまに彼らの訓練って感じになると思うけど…




何故だ…美鶴ちゃんがお目目グルグルしてそうなキャラになってしまった


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世間は狭いと言うけどこう言うことは想像していない

そろそろ100日連続が近づいていると言う事で初投稿です


紆余曲折…色々と有ったが概ね上手く行ったんじゃ無いか。…ま、そう思って油断してると足元を掬われる、なんてありきたりな事は避けなきゃならんけどな。とはいえ何が出来るのかを考えても彼ら一年生ペルソナ使い組は現状維持、せいぜいパトロールに重きを置くくらい。あとは俺と訓練するくらいか。シャドウと戦うならあんまり対人は為にならないんだけど、美鶴ちゃんも明彦君も部活にかこつけてトレーニングってカタチにした方が幾月さんからは目立たないかな?…古牧先生と合気道部ってだけで十分目立ってるって言われたらお終いだけどさ。

 

 

そういえばメメントスって未だに果て、というか行き止まり…に出くわしてないけど、おそらく聖杯がまだ不完全だからこそなんだろうか。イゴールが成り代わられ、ラヴェンツァがカロリーヌとジュスティーヌに分けられてしまう悪神による侵攻、そうなった世界を知ってる俺だからこそタイミングは八十稲羽で起きたマヨナカテレビにまつわる事件の後に起こると知っているんだ、改めて俺が知っていた世界の経緯を説明することにした。

 

「ご心配なさらずとも結構でございます。それもまた運命、我々とここを訪れることになるであろうお客人が乗り越えるべき試練なのでございます」

 

ときっぱりイゴールには言われてしまった。…確かに悪神ヤルダバオトがベルベットルームに侵攻しようとしたからこそ倒された、と考えることも出来るのか。

 

「なるほどリョウスケ様がその出来事についてご存知なのも理由があるのでしょう。しかし、その事件すらニンゲンよって解決する事が出来たのでございます。私めと致しましてはその可能性に賭けたいと思います。何、結果を知る貴方様も居るのでございます。これ程分の良い勝負は無いでしょう」

 

「そうか…。ラヴェンツァはそれでも良いのか?」

 

「不安が無い…とは言えません。しかし、そうなっても貴方様やその時…悪神に魅入られてなおその手を振り解き全てを解放してくれるトリックスターが現れ、助けてくださるのでしょう?」

 

「…っ‼︎そんなこと言われちゃ俺から言えるのは任せとけ以外無いなぁ。参ったなぁ、ラヴェンツァがどんどん口達者になってしまった」

 

「ふふふ、私たちもリョウスケ様と交流を続けて成長しておりますから」

 

「そうだな、まぁとりあえず先の話だな。その時後悔しない様にもメメントス行くとするか」

 

「ええ、参りましょう」

 

 

 

 

この日もメメントスの探索を行い、見かけたシャドウと倒せそうな悪魔を倒した。俺自信中々実感出来てなかったんだが大分と強くはなっていた様だ。何よりピクシーが居るって事による立ち回りに慣れたことが大きい。なんだかんだ彼女はライドウさんと活動していたんだ。俺なんかよりよっぽど場慣れしているからな。あらかた体力と気力の余裕が無くなりかけるところで探索を終え再びベルベットルームへと帰ってきた。

 

 

 

 

「ねえねえ、リョウスケちゃんってどうやって技覚えたの?」

 

「ん?俺が使ってるのはじいさんから教わったのがほとんどだよ。ピクシーの知ってるライドウさんの技とは違う?」

 

「なんていうのかなぁ…アタシってばカタナの使い方知らないからなぁ。けど、なんとなーく違うというか、物足りないというか」

 

「…あ、短銃術を使ってないからか?」

 

「あー‼︎それよそれ。なんで使わないの?」

 

「そこまで器用じゃ無いから…って言うのと、持ち出してきたカタナに慣れるので精一杯だからかな」

 

「なるほどぉ。…うーん、リョウスケちゃんに教えてあげられそうな子居なかったっけ?」

 

「それはライドウさんの仲魔にカタナの扱いを教わると?」

 

「それもいいんじゃないかしら。うーん、 誰が居たかしらねぇ」

 

「えっと、この間聞いたのは『キクリヒメ』と『アメノウズメ』だったな。うーん、夏休みももうあと少ししか無い。いまピクシーがまた思い出しても全部訪れることは無理だろうな…」

 

「うーん…うーん…誰だったかなぁ…ごめんね、ちょっと思い出せそうに無いや」

 

「いや、大丈夫、一つずつやっていくさ。まぁ、ピクシーのおかげでマガツヒの確保も以前に比べて楽になったんだし俺自身のスキルアップしてからにするさ」

 

「思い出したらまた言うわねー。じゃあ今日はお疲れ様ー。エリちゃんもばいばーい」

 

「ピーちゃんバイバーイ」

 

「じゃあ俺も帰るか。今日もありがとう」

 

「…」

 

「な、なんだよエリザベス」

 

「いえ、貴方にバイバーイも何か違うなと思いまして。次迄に丁度良い挨拶を探しておきますのでお楽しみにください」

 

「…おう、じゃあ帰るわ」

 

…次迄に考える前に飽きてそうだな。考えても仕方ない。帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、リョウスケ、おめー今日暇か?」

 

「なんです?まぁひまっちゃひまですけど」

 

「聞いといてなんだけど夏休みも終わりだろ、宿題は?」

 

「そんなもん始まってすぐ終わらせてありますよ」

 

「…な、なんて計画性の有る奴なんだ。おっと、慄いてる場合じゃねぇや、悪いんだけどちょっと付いてきて来れねぇか?今日色んな人に会う予定しててよ、メモ係欲しいんだわ」

 

「良いですけど…レコーダーとか使えば、って書き起こしを俺に頼むなら二度手間ですね。行きましょうか」

 

 

 

珍しく朝からキョウジおじさんの仕事を手伝う事になった。まぁ、探偵業って言っても実際の事件に首突っ込んで推理をして解決なんて事はフィクションだからな。せいぜい依頼された素行調査とか踏み込んでも聞き込みくらいだしな。

 

 

「げっ‼︎」

 

「どうしたんすか?」

 

「アイツ居んじゃねぇか、やりづれぇな」

 

「誰です?」

 

「長谷川だよ。素行調査中にアイツに職質されてよぉ…あんな失態初めてやらかしたんだ」

 

「おやぁ、こないだの探偵サンじゃないですかぁ。こっちの子は初めましてだな、俺は長谷川、長谷川善吉だ。階級は巡査長だ」

 

 

 

…えぇ、こんな形で出会うのか。下手すると一番長い付き合いになるかもしれんじゃねーか‼︎

 




長谷川善吉…p5sのキャラクター。原作では40歳くらいで警部補との事なので現在では巡査長に。警察組織の階級知識なんてこち亀くらいでしか知らないので適当ですで申し訳ありません


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余裕なんて持つ余裕がなさそう

点鼻薬が快適なので初投稿です


「あ、どうも。…まぁ警察官とよろしくってあんまりしたくは無いですけど」

 

「はっ、そりゃあそうだな。俺も君をお世話する事無いに越した事は無いな」

 

「はぁ、挨拶もそこそこにリョウスケ、行くぞ」

 

「なぁ、探偵、この間はタイミングが悪かっただけだ。そこまで邪険にするこたねーだろ」

 

「よく言うぜ、あの時わざわざ俺に声かけやがって。おかげであの後どれだけ大変だったか」

 

「探偵も仕事だろうが、俺だってそうさ。市民の安全を守らなきゃならんかったからな。…あの時は探偵が一番違和感が無さすぎたから話を聞きに行っただけだ」

 

「ほら、刑事さんもそう言ってますって。上手く馴染みすぎたからですって」

 

「…ったく、おい長谷川、なんか有ったのか?」

 

「いや、プライベート…ってわけでもねぇがお前とかち合ったのは偶々だ。だからそんなに警戒するんじゃねぇよ。それに何か有っても言えるわけねぇだろ」

 

「ちっ…。相変わらずガードの固いやつだ」

 

「バカにすんじゃねーよ。お前ら一般人にホイホイ話なんて出来っかよ」

 

「はぁ、もういいだろ。リョウスケ行くぞ」

 

「うっす、失礼します」

 

 

 

 

「なんであんなにつっけんどんなんです?」

 

「ああ?なんでも何もとにかく相性が悪いんだよ。もうちょっとくらい目溢ししたって良いだろうよ」

 

「それは…若い刑事さんがしっかりしてるだけじゃあ?」

 

「うるせぇ、俺だってイチャモン付けてるって事くらいわかってらぁ」

 

 

 

どうにも合わないのが気に食わないらしい。…子供じゃ無いんだからさ。結局この後はおじさんのお手伝いはつつがなく終わったんだけど、俺としては長谷川善吉に出会った事がインパクトデカすぎて飛んでったよ。

 

 

 

 

 

 

夏休みも終わりが近い。出来なかった事ばっかり気にしてしまうけど、よくよく考えたら俺の環境はガラッと変わったな。いかんいかん、俺こそ焦ってたらしい。色んな人に焦ってるって話をしたんだ、俺も落ち着かないといけないな。幸いにして影時間やメメントスを解決しなきゃならんまでの時間はまだまだ有るんだしな。色々と手を広げる事も大事だけど…しっかり基礎を固めるか。

 

 

 

って思ってたんだけど…今年修学旅行じゃねぇか。それも京都。普通の高校生や毎度毎度京都に行ってる先生方はツマランだろうなぁ。けど俺にはすごいチャンスなんじゃ無いか?あんまり自由行動は無いらしいけど神社仏閣巡りするにはぴったりだよな。…あと他のお役目、京都みたいな土地に無いわけないよな。その辺りも聞いてみるか。そうだ!ヒナコさんにも声かけちゃえ、関西の案内ならあの人以上に適任は居ないだろ。

 

 

まずは…俺のペルソナ、アスラおう。性格としてはガーディアンの方が近いかもしれないけど所縁のある御守りによる効果はたしかに有ったんだ。日本でも特に有名なアスラおうを祀っているお寺…つまり阿修羅像がある所となると京都の三十三間堂か奈良の興福寺だよな。少なくとも片方は行ける様にここはチェックしとかなきゃならんだろ。

 

 

次はピクシーが言っていた仲魔候補のキクリヒメとアメノウズメに所縁のある場所。キクリヒメは関西圏なら白山神社という名前で色々な所で祀られてるみたいだな。アメノウズメは…芸事の神様として祀られてるみたいだな。

 

 

うーん、これはさっと決められるモノでも無いか。それに自由行動は集団行動なのかな?その辺が分かったから決めても十分間に合うだろう。

 

 

 

 

さて、あとはお役目のお家だよなぁ。…こればっかりはうだうだしてても埒が開かないからな。仕方ない、強引だけどじいさんに聞いてみるか。

 

 

 

『ああ、葛葉家以外のお役目の話か。一応関西に合った家なら連絡付きそうなんじゃが…お前さんがそっちに行く事は中々無さそうじゃから後回しにしておったんじゃが…都合付いたのか?』

 

「ええ、すっかり忘れてたんですけど今年修学旅行なんですよ。それも京都に」

 

『そりゃまたなんとも。丁度ええかの。…しかし修学旅行の合間じゃ顔通しくらいしか出来そうに無いが、構わんのか?』

 

「…まぁ、いきなり行ってお役目でやってた事を教えろなんて言うより顔を出してから向こうの出方見ないと話もできないでしょ?」

 

『それもそうじゃの。…とりあえず向こうには儂から一報を入れておく。そうじゃ、向こうもウチと同じく神社をやっとるはずじゃ。そういう意味では修学旅行でも行きやすいかもしれんの』

 

「お名前は?」

 

『神社の名前までは知らん。…まぁ今の時代調べればわかるじゃろ。その家の名前は峰津院。峰津院家じゃ』

 

「………ありがとうございます。こっちでも調べてみます」

 

 

 

 

結局のところ峰津院家に乗り込む事になるのか…それはそれでまたどうなることやら。…はぁ、一応関西方面でも異界や悪魔発生の事例があるかどうかって事も調べとかないといけないよな。それにスカウトするならピクシーだって必要だし、流石に目の届かないところに置いておくのも怖いしなぁ。あー、こりゃ先のこと考えてる余裕なんてねーわ、俺は俺でやれることやるしか無いって結論でちまったよ…。

 

 




峰津院…デビルサバイバー2における葛葉家みたいな一族。対霊組織をずっと続けていた。特に本拠地に付いての言及は無いので関西の抑えに回ってもらいました


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思ってたのと違うけど結果が出たからヨシ‼︎

この時期はメガネが花粉で汚れるので初投稿です


俺にとっては実りのある夏休みだった。色々な意味でも環境が変わったしな。とはいえ、俺がやる事はそこまで変わらなかった。それも当たり前っちゃ当たり前、所詮は高校生に過ぎないしな。

 

 

そんなわけで二学期が始まった訳なんだが日常生活に大きな変化はそこまで無い。強いて言えば隔週で見ていた真次君と明彦君の会に美鶴ちゃんが顔を出す様になった事くらい。幾月に警戒させない為に俺と武治さんは接点を持たない様にしている。3人による影時間の活動は順調に行ってると言っていたけど…そういう時こそ落とし穴を見落としがちだという話をしておこうかな。

 

 

 

まぁ、あとはダイチさん達三年生が部活を引退したくらいかな?もともと厳しい部活じゃないからあんまり派手な追い出しもなかったけどね。部長も予定通り芝原。まぁ、頑張ってもらおう。

 

 

そんな感じで多少は環境が変わったんだが、俺としてはいつも通りに生活していたら修学旅行まではあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

月光館学園の修学旅行は実にヘンテコなシステムだ。2年に一度…3年生と2年生まとめて向かう行事になっている。そして自由行動なんだが届出さえ出せば個人行動を取っても構わないとかいうなんとも俺に都合のいいシステムだった。とはいえ京都市内で出来るだけまとめて欲しいというのが学校側の方針みたいだ。それを考慮した上で予定を組まなきゃ行けないな。

 

 

そしてそんな自由行動で俺がとるのはもちろん…峰津院家への顔繋ぎ。神社をやっている様で助かった。しっかりルートとして認めてもらえたからな。時間が有ればその後三十三間堂や芸事の神様詣に向かうとしよう。

 

 

 

「ここか。ここが峰津院家。…見てくれは普通にある神社かな。すいません」

 

「はい、いらっしゃい。修学旅行生かい?珍しいね、ウチみたいな神社にわざわざ」

 

「他でも無いここに来る必要があったんです。葛葉の爺さん…葛葉ライゴウから連絡は入っていませんか?」

 

「君が…‼︎そうか、そうだね、社務所においで。立ち話もなんだしね」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「僕が当代の峰津院家当主…って程の家でも無いんだけどね。いやぁ、びっくりしたよ。僕も顔を合わせた事は無かった葛葉の家から連絡を貰ったからね」

 

「えっと、貴方はお役目の事を聞いてらっしゃるのですか?」

 

「うん、まあ話だけで僕も実際に体験した事も見た事も無いけど。それでも僕もジジイから無いとは思うけど()()()の時に何にも出来なくなると困るから忘れちゃいけないよって言われてたくらいなんだけどなぁ…。葛葉から連絡来ちゃったら()()()なんだろうなぁ」

 

「…そうですね、そのまさかです。俺は何回か悪魔と出くわしてますし、祓ってもいます」

 

「はぁ…まさか僕の代でそんな事が起きるなんてね。…あ、名前いって無かったね僕は峰津院雅。君はリョウスケ君だね、ライゴウさんから聞いていたよ。で、ウチに何を聞きに来たんだい?」

 

「正直なところ峰津院家がお役目を終えてもその目的がきちんと今まで伝わっている事がわかっただけでも十分なんですけどね。…それにそちらの峰津院家が遺していた技術や知識を当時どうだったかまでは知りませんけど他家の俺によこせなんて厚かましい事は言えませんし」

 

「ははは、そりゃいきなり来てそんな事言われた日にはぶぶ漬け出してただろうね」

 

「でしょう?実際に俺、いや、デビルサマナー以外にも悪魔に対するだけの力を持つ人間は少なからず居るようです。しかし、そういった人間だからといって悪魔との戦いに駆り出すつもりもありません」

 

「そうか、まぁ僕も実情を知らないからなんとも言えないけどね。けど、君がそういう覚悟を持ってるってのは分かったよ」

 

「力を持つモノはそれだけの責任を持たなきゃならないって嫌いなんですよね。そんな押し付けられた様な責任感で動いてる奴より覚悟を決めた人の方がよっぽどいいです」

 

「…君は悪魔との戦いで覚悟はしているのかい?」

 

「あぁ、俺の覚悟はここで、こんなところで終わらないって覚悟です。死ぬ覚悟なんてしてやいませんよ。人間死ぬ気でやってもたかが知れてますって。相手をするのも超常のモノですからね。それならどんな手を使ってでもって考えた方がよっぽど良いですよ」

 

「あはは、君は面白いね。本当に高校生かい?よし、出稽古ってカタチにしちゃおう。そうすれば技術交流になるからご先祖様も文句言わないでしょ。実際悪魔が出てきて困ることになって対処できる人間なんてほんと少ないんだろうし。いつか来れる日あるかな?…でも東京の子だもんなぁ。あ、それに来年受験生じゃないか…」

 

「そうですね…近いうちなら春休みなら時間取れそうです」

 

「そうかぁ、ま、葛葉さんとこも冬はお正月あるから仕方ないか。ま、まだ先の話だね、また連絡してくれるかな?葛葉さんは僕の連絡先知ってるしね。そろそろ他の所にも回らなきゃならないでしょ?せっかくの修学旅行だもの、僕が言うのもなんだけどここだけで済ませたらツマラナイでしょ」

 

「ありがとうございます。ではまたよろしくお願いしますね」

 

 

 

 




峰津院雅さん…オリキャラです。デビルサバイバー2には出てません。


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これも一つの悪魔交渉

100話達成したので初投稿です


雅さんは概ね好意的だったから良かったな。次に訪れるのは春休みになりそうだけどその時には是非とも色々と収穫を得たいものだね。

 

 

さて、アメノウズメが祀られてる神社…京都だと車折神社の中に祀られてるみたいだな。それも芸能、芸事の神様として。そうなるとあの人を呼んでおいて良かった。

 

「おお!リョウスケ、久しぶりやなぁ。なんかアンタと関西で会うのも変な感じするなぁ」

 

そう。ヒナコさん。関西生まれで日本舞踊の大家の生まれで自身も踊りの様な芸事に熱心な合気道部時代の先輩。これほど都合がいい人も中々いないよね。

 

「…なんやの、ウチについて変な事思とる気ぃするで」

 

「いやいや、すいませんわざわざ呼びつけちゃったみたいで申し訳なくって」

 

「…まぁ、ええけど。ウチかて誘ってもらわんかったら中々足運ばへんかったやろし。せやけどアンタも物好きやなぁ、ウズメはん詣したいって」

 

「いやぁ、ちょっとたまたま興味持つきっかけがありましてね。うちの修学旅行って京都じゃないですか、せっかくという事でね。ヒナコさんはまさかっていうくらいの気持ちで声かけたらオッケーもらってびっくりですよ」

 

「まぁウチも偶々実家おる時期やなかったら来てへんけどな。ほな案内したるわ」

 

 

 

 

なるほど慣れてるというだけあってヒナコさんの案内は実に為になるモノだった。ガイド形なしだな。

 

「ほんで、ここがウズメはんのお社やで」

 

「ここですか。…とりあえずって言い方は失礼かもしれませんけど、お参りしましょうか」

 

「せやな」

 

 

さて、ピクシーが言う様に分霊が仲魔で、祀られてる所に行けばアクションが有るかも知れないという話だったがどうだろうか…

 

 

 

 

『あら、懐かしい気配がするかと思えば…葛葉の系譜に連なるモノかしらね』

 

「なっ⁉︎」

 

『安心なさい、今貴方の考えに割り込んでいるだけだから。終わってみればあっという間よ』

 

「…なるほど。では改めて。俺は葛葉リョウスケ。先代…と言っていいのかはわからないけど、葛葉の知識は俺が引き継いだ事になってる。ピクシーに貴女が仲魔にいた事を聞いてね、これも縁かと思ってお参りに来たんだ」

 

『あら、あの子…そういえば最後まであの人に付いて行ってたわね…。そして葛葉の退魔師がわざわざ訪れたという事は…』

 

「ええ、何度か悪魔と戦っています。もちろんピクシーともいっしょに」

 

『それだけじゃ無さそうね。…なんだか貴方の身の内からものすごい気配を感じるわ』

 

「俺自身の精神を投影して戦う術、ペルソナ召喚を使っています。…最近は降霊術とか憑依術って表現する方が近そうですけど。そしてその投影した時に現れるのは俺の場合はアスラおうです。その気配でしょうかね」

 

『うーん、阿修羅ねぇ…言われるとそんな感じかしら?まぁ本題は私を仲魔としたいという事よね?』

 

「ええ、現状仲魔もピクシーだけ…俺が倒してきた悪魔も言葉が通じる様な悪魔も今のところ出会って無いんです。そんなわけで葛葉ライドウさんの仲魔を訪れているわけです」

 

『そうねぇ、私としては頷いてあげても構わないんだけど…仲魔になるとしても分霊を一つ連れて行ってもらうだけだしね。でもそれじゃあここで芸事の神様としてはツマラナイわよね?』

 

「…な、何をお望みで?」

 

『一緒に来た女の子、踊りが上手なんでしょ?貴方と仲も良さそうだし…その子の踊りで私が満足出来たらってのはどうかしら?』

 

「本気ですか?」

 

『あら、私の神話なら有名でしょう?それに…神楽みたいなものだと思えば不思議じゃないわよ。それにここなら奉納神楽もあるからちょうど良いわよ?』

 

「お、お願いしてみますのでお手柔らかに」

 

『あ、あと帰るまでに私の御札授かって帰りなさい。流石にここで封魔管に入るのも目立つからそれに私の御霊を分けておくから…そして私の社の運営に貢献なさいな』

 

「…俗っぽい」

 

『何言ってんのよ人の心から生み出された私たちが俗っぽいのはヒトが俗っぽいからよ。それじゃよろしくねー』

 

 

はぁ、中々にとんでもない事を頼まれたなぁ。でも言ってしまえばほぼノーリスクの悪魔交渉かな。イノチを吸わせろだの宝石よこせだの言われるよりも難易度はマシか。…ヒナコさん居なかったらどうなっていた事やら

 

 

 

「…スケ、…ョウスケ、リョウスケ‼︎」

 

「は、はい⁉︎」

 

「アンタ、偉い熱心にお参りしてんのか思ってたらぼーっとして。疲れとるんか?」

 

「あ、あはは、大丈夫ですよ」

 

「気ぃつけや?」

 

「ありがとうございますね。…あ、ヒナコさんここって奉納神楽なんてあるんですね」

 

「えらいまた急やなぁ、せやで。そらウズメはん言うたら天岩戸伝説でも踊りで有名な神さんやからなぁ。神前で舞うのもお供えになるんよね」

 

「…やらないんですか?」

 

「この流れでウチが⁉︎」

 

「いや、ほら、なんだかんだヒナコさんの舞って見る機会無かったじゃないですか、見たかったんですよね。…だめですか?」

 

「えぇ…、そんな事考えて無かったわぁ…。しゃあないなぁ、九条の踊り見せたろか‼︎」

 

「おおヒナコさんカッコいい‼︎」

 

「ほな、ちょっと申し込んで来るわ」

 

 

 

 

まさか本当にオーケーが貰えるとは…。それに、この神社もそういう芸事の奉納を受け付けてる所を見ると芸事の神様なんだなぁ。

 

 

…そういえばヒナコさんってデビルサバイバーの世界でも神様に踊りを披露してたような?シヴァだったっけか。インド神話の超大物ですら満足させた舞踊家になれるヒナコさん…アメノウズメにはどう見えるかな?




作中の神社に奉納神楽は本当にあるかどうか知りません、この世界特有のイベントだと思ってください




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成果が得られる事は実に喜ばしいね

朝が早いので短めの初投稿です


お願いをした俺がいうのもなんだけどヒナコさんが舞を披露してくれる事に。ヒナコさんって実は高校の人たちにほとんど見せてないような気がする。まぁ、改めてお願いされても照れくさいのかな?ま、俺も初めて見る事になるし、アメノウズメからの頼みだとしても楽しみにさせてもらおうかな。

 

 

「はぁ、いきなりやとしてもウチがウズメはんの前で舞うんや、腑抜けた事はできひんからな。リョウスケ、アンタもよう見ときや、こんな特等席で観れるん滅多にあらへんで!」

 

「お願いしたのは俺ですからね、そりゃもうしっかりと拝見させてもらいますよ」

 

「ほな、行くで‼︎」

 

 

 

ヒナコさんが気合を入れた途端あたりが一気に静まった気がする…。始まった‼︎参ったな、こういう時に知識が無いと中々にヒナコさんの舞を上手く表現できない自分がなぁ…。

 

 

とにかく引き込まれるようだった…、それ以上に言葉が出ない。俺だけじゃない、終わった時は周りの観光客も皆んなで拍手をしたよ。

 

 

『ほほ、見事よの。約束通りついて行こうではないか。忘れずに授与所に寄ると良いぞ』

 

…俗っぽい神様に余韻を台無しにされたけどな。

 

 

「いやぁ、ヒナコさん、凄かったです。すいません、これ以外に言葉が出てこなくって」

 

「せやろ?ウチの踊りは凄いんやで?見直しくれたか?」

 

「もちろんですよ。さぞかし天鈿女命も喜んでると思いますよ」

 

「リョウスケにそこまで褒められたらなんやかゆなってきたで。まぁ、ウズメはんも喜んでくれはったらええな」

 

「いやぁ、ヒナコさんに来てもらって本当よかったですよ」

 

「で、ここの次はどこ行くん?」

 

「あ、三十三間堂です。阿修羅さんが見たかったんですよ」

 

「へー、あそこ言うたら千手観音見に行く人多いのに、ええ趣味してるやん。よっしゃほんじゃ行くで」

 

 

 

ヒナコさんの案内で向かう。その途中ダイチさんと合流した。…なんだかいつものメンツで集まったからあんまり修学旅行感なかったな。ま、こんなのも悪くないか。残り短い自由行動を俺たちらしく過ごした。…知り合いが多い分お土産を選ぶのに苦労したよ。

 

 

ヒナコさんと別れる際こんな話をされた。なんでも大阪に敵なしの高校生ボクサーがいるらしくその子がえらく生意気でなんとか鼻っ柱をへし折ってほしいらしい。

 

「なぁ、何とかならへん?」

 

「高校生ボクサーで敵なし…、なぁ、リョウスケ、なーんか聞いたことあるような」

 

「びっくりするほどピッタリな後輩いますねぇ。ちょうどその後輩も無敗の高校生ボクサーですよ」

 

「なんやの、敵なしと無敗…そんなん同世代におるって事はただその2人がカチ合わんかっただけやないの?」

 

「まぁ、西と東で逢わない事もあるんじゃないですかね?お互い高一なんでしょ?全国大会見たいな機会無かったんじゃないですか?」

 

「そうやろなぁ…。あ、ソイツ『和久井ケイタ』言うんやけど、あんたらの後輩となんとかセッティング出来ひんやろか」

 

「…とりあえず俺は後輩、明彦君に大阪にそんなヤツが居るって話をしておきますよ。でも階級とかソッチをどう合わせるのか詳しくないんでマッチングできるか分かんないですよ?それでもいいですか?」

 

「かまへんかまへん、とりあえず東に相手になるかもしれん奴がおるってだけでも全然ちゃうからな」

 

「わかりました。…最悪俺でも良いですしね。あ、それなら春休み俺こっちに来る用事あるんで何とか明彦君も一緒に引っ張って来ますよ」

 

「おお、ウチも言うとくわ。ま、その辺の調整は追々やろうか。ケイタもその後輩君のこと興味持つやろうし。ほな、またな。ダイチも受験がんばりやー」

 

「そうですね、今日はありがとうございました」

 

「ヒナコさんじゃあねー、俺もリョウスケと同学年はヤダから頑張るよー」

 

 

自由行動の日はこれで終わり、明後日の帰る日までは学校が決めたルートを回る事になっている。…随分と戦国時代に関係してるスポットが多い気がするけど、これは某先生の圧力なんだろうな。これ楽しめない人にとってはホント辛そうだぞ…。

 

 

 

こうして修学旅行は終わって行った。うん、俺にとっては良い旅だったよ。帰りの新幹線の車内はルートを決めた先生達に対する怨嗟の声が絶えなかったのもウチの修学旅行の風物詩らしい。

 

…ま、アメノウズメの本格的な契約は帰ってからゆっくりやるとするか。そういえばピクシーは元々封魔管に入っていたからそういう意味で言えば初めての交渉だったんだよな。その辺りの手順見たいなのは教えてもらいながらやって行くか。仲魔が増えたらもう少し探索範囲を広げるのもアリだな。

 



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新戦力の加入といえば…

眠たいので短めの初投稿です


修学旅行から帰ってきた俺は京都のお土産と共にアメノウズメに言われた御札を持って俺はベルベットルームへと向かった。御霊とはいえ実体化するならば少しでもマガツヒに溢れたメメントスの方が良いのではないかと思ったからだ。そしてお土産を渡しつつこの後で契約と召喚を行うと言う話をしたところ本日はマーガレットが付いてくる事になった。

 

 

「うふふ、この世界では途絶えかけていた悪魔との契約、目の当たりにできるとは実に役得…いえ、これも我が役目ですわ」

 

「仕方ありません、今回は業腹ではありますがお姉様にお譲り致します。ピーちゃん頑張ってくださいね」

 

「エリちゃんまたねー」

 

「…平和的で何よりだよ」

 

「では参りましょうか。ラヴェンツァ、エリザベスのことを頼みましたよ」

 

「…お任せくださいお姉様」

 

 

 

三姉妹の中で色々とやり取りがあったみたいだな。…藪蛇は勘弁してほしいから触れないに限るな。

 

 

 

「さて、ここいらはセーフティーゾーン見たいな場所だと思ってるんだが、ピクシー、マーガレットさんどうかな?」

 

「ええ、シャドウも悪魔も気配は致しません」

 

「うん、ここならウズメんも呼んでも大丈夫なくらいマガツヒはたーっぷりね‼︎」

 

「じゃあ、出でよ、アメノウズメ‼︎」

 

「うーん、久しぶりの外だわぁ。それにしても凄いところね」

 

「わぁ、ウズメん久しぶりー」

 

「はぁ、貴女も相変わらずなのね。お久しぶりねピクシー」

 

「さて、改めて問おうアメノウズメ、俺との契約に応じるか?」

 

「ええ、其方は私の願いに答え満足行く贄を差し出した。其方との契約…今ここに成されたり‼︎」

 

「リョウスケちゃん、封魔管を開けてウズメんに向けて。そうすれば完了するわよ」

 

「わかった。来い、アメノウズメ‼︎」

 

 

アメノウズメは封魔管に吸い込まれる様に消えていった。しかしキチンと封魔管の中にアメノウズメの気配を感じる。契約は上手くいったみたいだな。ほっと一安心だよ。

 

 

「過去に縁があったとはいえ、リョウスケ様が初めて成した契約、おめでとうございます。実に良いものを見せていただきました」

 

「ほんとほんと。まぁ、ウズメんが初めてで良かったかもね。喧嘩っ早い子達だともっと大変だったわよ…」

 

「とりあえず、改めて呼び出してみるか。アメノウズメ‼︎」

 

「ふぅ、久しぶりねこの感覚。.ワタシ、アメノウズメ。コンゴトモヨロシク」

 

「…その言い回し以前にもピクシーさんがおっしゃってましたわね。何か意味がありますの?」

 

「意味なんて…ないわよ?」

 

「強いて言うなら…様式美かしら?」

 

「本能みたいなものじゃないの?」

 

「あー、そうかな?ピクシー」

 

「うん、そうかもね、ウズメん」

 

「そ、そう言うものですか」

 

「ま、気にするほどの事でも無いんじゃない?」

 

「うーん、リョウスケちゃんに言われると何だかなぁって感じだけど…」

 

「そうねぇ、その通りだもんねぇ」

 

「で、アメノウズメはどんな事が出来るんだ?」

 

「ワタシ?ワタシが得意なのは回復の魔法と風の魔法よ」

 

「あ、後石化解除も得意でしょ‼︎」

 

「そう、とにかく魔法ね。あんまり直接の切った張ったは得意じゃないわね」

 

「石化…悪魔はそんな恐ろしい技を持つ事もあるのですね」

 

「うん、ニンゲンに石化を解く手段なんて中々ないでしょ?」

 

「…私の知る限りではほぼありませんわね、それこそアムリタの魔法を使えば或いは?」

 

「どうだろう、それで治れば良いけど治らなかった時を考えないわけにも行かないからね。そう言うわけもあってソッチ方面に明るい仲魔をピクシーに教えてもらっていたのさ」

 

「なるほどねぇ、そう言う事なの。確かにココならいやらしい悪魔出てきそうね…」

 

「そう言うわけでよろしくなアメノウズメ」

 

「ええ、こちらこそ」

 

「ワタシもよ‼︎また久しぶりに肩を並べましょウズメん‼︎」

 

「うふ、そうねピクシー」

 

 

 

 



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試運転は好調でなにより

戦闘描写が難しすぎで笑えてきたので初投稿です


「よし、慣らし…って事でもないがアメノウズメの初陣と行こうか」

 

「ええ、久しぶりに腕が鳴るわね」

 

「ならば次のフロアに悪魔の気配が致します」

 

「ちょうどいいわね、ウズメん行きましょ‼︎途中のヨワヨワシャドウなんて吹っ飛ばしていくわよー!」

 

「お、おい、飛ばすなよ?」

 

「アハハ!このピクシー様に任せなさーい」

 

 

…なんだかピクシーがハイだ。大丈夫か?満月ってわけでもないし…久々の友達?と一緒ではしゃいでるってとこか?うーん、フォローをするって訳でも無いけど気にかけておくか。

 

 

 

「この先ですわね」

 

「…あれは、確か『ファントム』だな。ちょうど風と神聖魔法が弱点だったはず。アメノウズメの初陣にはピッタリじゃないか」

 

「あら、ほーんと悪魔ね。まだ浮遊してるだけだけど…悪性のモノね。倒しちゃおっか」

 

「そうねぇ、ここはウズメんに譲ってあげる」

 

「ウフフ、久々だもの張り切っちゃうわよー」

 

「…マーガレットさん、ほかに反応は?」

 

「周囲にはシャドウの反応はありますが…‼︎失礼致しました、悪魔は一体だけでは無い様です、3体居ますわ」

 

「あら、問題無いわよ。ウフフ、仮にも八百万の神の一柱…ワタシの力を見せてあげるのにちょうど良いわ」

 

「そうよ、ウズメんと言ったら大人数を魔法でばったばったの薙ぎ払って行ったのが懐かしいわねぇ」

 

「こら、ピクシー。そんな事してなかったでしょ。むしろ暴れ回ってたのは…」

 

「ふんふーん…」

 

「…まぁ、話は終わってからにしようか。行くぞ、アメノウズメ‼︎」

 

「ええ、挨拶がわりよ…『マハザンマ』‼︎」

 

「グァァァ‼︎」

 

「俺も行くぞ‼︎ッシャァ!」

 

「リョウスケちゃん‼︎そいつら物理攻撃効きにくいわよ‼︎気をつけて‼︎」

 

「わかってるよピクシー、その為のペルソナだ。来いアスラおう‼︎『アギダイン』‼︎」

 

「ギェェェ‼︎」

 

「ギョオオォ‼︎」

 

「っと危ねぇ。ま、ピクシーの方がおっかないぞっと‼︎」

 

「仕方ないわね、おかわりよ、『マハザンマ』‼︎」

 

「「ギェェェ」」

 

「終わったか?」

 

「ええ、反応もありません。お見事です」

 

「もう、2人で周りのシャドウまでやっつけちゃうんだもの…アタシがホンモノのジオダインを見せてあげたかったわ」

 

「ま、これから先いくらでも機会はあるからさ」

 

「そうね、今日のところはこのくらいにしておいてあげる!」

 

「どうかしら、私の魔法は」

 

「流石だよ。先代…っていうと誰がライドウを継ぐんだってなるなぁ。とにかく頼りにしてるよアメノウズメ」

 

「ウフフ、君も我流で良くやってるわ。あの人の若い頃そっくり。心配ないと思うけど治療しておく?」

 

「あ、ワタシがやるー。ちょっと気合いいれてー『ディアラマ』‼︎」

 

「うお、これが回復魔法か。ありがとう2人とも。これからどうしようか。まだ余裕あるしもう少し狩ってから帰ろうか」

 

「はーい」

 

「そうね、久しぶりに体動かすのも楽しくなってきたわ」

 

「マーガレットさん、悪魔の反応は?」

 

「…ありませんわ。先程の三体だけだった様ですわね」

 

「じゃ、シャドウだな。もう少し進みながら行くぞ!」

 

 

もちろん勢いで進んで痛い目に会うのは俺だからな、ちゃんと体力も物資も使い切るまでは進まなかった。…そういや兼業ヒーラーが増えたおかげで妙さんから預かってる薬の試しができないな。うーん、自傷たり怪我も無しに飲むとキチンと怒ってくれそうな人だしなぁ。真次君…は薬にいい印象無さそうだし、美鶴ちゃんは、あの子に薬を渡すとか言うシチュエーションがもう危なそう。仕方ない明彦君、君に頑張ってもらおう。大丈夫、効果のほどは保証できるから…

 

 

 

「どうだった久しぶりの仲魔としての活動は」

 

「そうねぇ、ま、退屈してたって訳でもないけど…こういうのも悪くないわね」

 

「そうよ、ウズメん。歓迎会しましょ!エリちゃーん、準備はいーい?」

 

「ピーちゃん、お任せあれ!でございます。私とメアリとで飾り付けまで済ませてありますよ‼︎」

 

「あー、ウズメも向こう行ってきてくれて構わないよ。主賓がいなきゃ始まらないし…ピクシーも久しぶりではしゃいでるみたいだからさ」

 

「ウフフ、そうね、貴方もこれからもよろしくね」

 

 

 

これからか。ま、悪魔合体とかできる施設なんて無いしなぁ。業魔館とか邪教の館なんて見た事もないからどうにもならんか。

 

 

それにしても…あの飾り付け本当に盆と正月が一緒に来たような飾り付けだな。アレでいいのか?そういう意味の言葉じゃないんだが…深く考えるのはやめようか。




私が忘却食らったためリョウスケ君がとぼけたことを言ってしまっておりました。申し訳ありませんでした。

ファントム君…喋らない悪魔やりにくいですねぇ…


ふと思って調べましたが善吉と堂島さんの世代ですが、流石にちょっと堂島さんが上で良さそうですね。娘はほぼ同世代だと思いますが


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小さな事でも大きな変化を生む

眠気が止まらないので初投稿です


あの後ノリノリなエリザベスとピクシーにいろんなお遣いをさせられた事以外は何事もなくアメノウズメの初陣は無事に終わった。

 

 

そして修学旅行も終わればあっという間に二学期も終わる。この時期は三年生はもちろん受験に勤しむし、それ以外も期末試験が待ち受けている。テスト前に慌てるのも学生の風物詩とも言えるんだが…。

 

「テスト前にいうのもなんだけどさぁ、お前に学習能力というモノは無いのか?」

 

「アハハ、すまねぇって。感謝してるぜぇ」

 

「これで感謝の気持ちも持てない様ならぶん投げてるから安心しろ」

 

「は、はは…マジ?」

 

「マジ」

 

芝原とのやりとりももう何度目かわからない。しかし今回はコイツだけじゃ無い。

 

「ねぇ、教えてよぉ。リョウスケなら去年受けた試験でしょ?」

 

「はぁ…。ヒナコさんに面倒を見てくれと頼まれはしたけどこういう事とは思ってなかったぞ」

 

「ぶぅ、アタシはピアノが出来たら…」

 

「いやいや、表現をする人間だろう?見識を広げておかないと行けないでしょ。そのためにも勉強はしておかないと。そもそも芸術なんて発展したのはインテリのおかげだからある意味勉強できておかないといけないんじゃ無い?」

 

「むぅ…そんなこと言われても。数学とかワケワカンナイし…」

 

「はぁ…時間もないから詰め込みでやるぞ」 

 

そう。アイリちゃんも来た。どうにも友達に素直に聞ける性格をしていない様で俺を頼ってきた。一応美鶴ちゃんとも付き合いは出来ているんだが…あの子にお願いする方が怖そうだから俺を選んだそうだ。別に構わないんだが、なんだなかなぁって感じだ。

 

 

「ちーっす、センパイ暇っすか?」

 

「はっはっは、真次君、これでも暇そうに見えるかな?」

 

「大人気っすね…」

 

「君も参加希望かな?」

 

「違いますよ。アキと美鶴にしっかりやらされてますんで大丈夫っす」

 

「うん?じゃあ心当たり無いんだけど?」

 

「あー、まぁ()()()()相談 の延長っすよ」

 

「ふむ、急ぎかな?」

 

「終わってからでも大丈夫っすよ」

 

「そ。じゃおわったらまた連絡するよ」

 

「うっす」

 

「さて、休憩も終わり。続き始めるよ」

 

「「はぁい…」」

 

 

真次君…なんだろうか。それほど深刻そうな感じでもなかったんだが…本当に心当たりないしな。ま、とりあえずコイツらの面倒見るのを終わらせないとな。

 

 

 

 

 

「お待たせ、それでわざわざどうしたのかな?」

 

「いや、ちょっと俺もどうしたら良いのか分かんなくって困ってんスよ…」

 

「??何があったのさ」

 

「いや、懐かれちまったンすよ」

 

「はぁ…、いや君が猫や犬をそれはもう可愛がってるのは知ってるけど…、それの事?」

 

「ゲッ⁉︎誰にもバレてねぇと思ったのに…」

 

「まぁその辺は俺だからで納得しておきなさいな」

 

「…アイツらには言わないでくれます?」

 

「見つかったら観念した方がいいと思うけど…、俺からは言わないさ。で、犬や猫じゃないなら…何に?」

 

「ガキっす」

 

「ガキ?」

 

「影時間で助けたガキなんスけど…覚えてるっぽくて懐かれちまったんスよ」

 

 

 

 

…これはまさか天田君の事か?しかも助ける事が出来た…。詳しく話を聞く必要ありそうだね。




すいません、体調がよろしくないのでいつもの半分くらいで今日は終わりです


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ジョークを挟むと真面目な話をしやすくなると思う

雨の低気圧にやられているので初投稿です


「さて、何があったのか説明してくれるかな?」

 

要領を得ない真次君の説明じゃ話が掴めなかったからな。とりあえず落ち着いて話をしてほしいものだね。

 

「あー、ついこの間の話何スけど…、俺らが影時間でパトロールしてた時の事でして。…美鶴とかアキにゃ向いてない場所ってのがあるじゃないっすか」

 

「あー、そうだねぇ。真面目そうなあの2人には厳しそうって言えば…繁華街辺りかい?」

 

「そうっす…。影時間つっても美鶴にゃ近寄らせない方が良いでしょうし、アキも苦手そうなんで」

 

「いい判断じゃない?その辺のフォロー出来るようになってていい事だね。で…その影時間で何があったのかな?」

 

「そうそう、そこにシャドウに追っかけられてた親子が居たんスよ。もちろんシャドウはぶっ飛ばしましたよ?最近は制御も大分落ち着いてたんでシャドウ戦には何の問題も無かったんスけど…」

 

「なるほど、その子供に懐かれた…って事か。影時間って適性無いと記憶が消えるって話だったよね。じゃ、その子…」

 

「…多分そうっスよね。ペルソナ使いの素質アリかどうかまでは分かんないっスけど、影時間の適性はあると思いますねぇ」

 

「だろうね。その…その子の親の方は?」

 

「母子家庭みたいだったんですけど、ソッチはなんともっスねぇ。…どーしたらいいんですかねぇ」

 

「うーん、まぁ、その襲われてた繁華街の辺りに住んでた母子家庭かぁ。放置はダメだろうなぁ…。少なくとも影時間の影響範囲外に住まわせるくらいしないとマズいだろうな」

 

「あ‼︎そうっすよね…やっべぇ、考えてなかったぞ」

 

「今まではどうしてたんだい?」

 

「記憶もちの被害者が初めてなんですよねぇ。いつもの被害者ならあのヤロー(幾月)に任せてたんですけど…」

 

「ペルソナの素質有りそうな子をむざむざアッチの手の内に送り込むなんてバカな事ないよなぁ」

 

「でしょう?親子の救助をしたって話は美鶴に言ったんスけど…記憶残ってるって話はまだセンパイにだけっスよ」

 

「うーん、仕方ない。とりあえず美鶴ちゃん呼ぼうか。幾月を頼らないならあの子から武治さんにお願いするしかない」

 

「…そっスね。じゃあ、お願い出来ますかね?」

 

「うん。……あ、美鶴ちゃん?今時間ある?…いける?ちょっと相談事あるんだけど…今渋谷のいつもの店にいるんだけど、来れない?あ、ホント?ありがとう。…うん。…じゃあお願いするよ。はい。…大丈夫、すぐ来るってさ」

 

「…俺いる事ワザと言わなかっただろアンタ、やっぱコエー人だよ」

 

 

向かいの高校生が何か言っているが聞こえないな。さーて、すぐ来るって言ってたし、あの子の性格からしてホントにすぐ来るだろ。

 

 

「お待たせ致しま…し…た……、なぜここにいる荒垣?」

 

「おや、真次君がいるって事を言い忘れていたか。ゴメンよ美鶴ちゃん」

 

「…アンタくらいだよ、美鶴をからかって無事なのは…」

 

「うるさいぞ、荒垣」

 

「まぁ、君らの仲も4月の頃からするとホント見違えたねぇ。うん。いい事じゃないのさ。さて、呼び出したのは他でも無い…真次君、説明しなよ」

 

「リョウスケさんの相談では無いのですか?…荒垣なんの話だ?」

 

「あー、まぁ、そうだな。俺が説明すんのがスジか。こないだ救助の報告した親子いたろ?一応あの後確認に病院へ行ったらよ、そん時のガキにお礼言われたんだ。言っちゃなんだがよ、俺はこんなナリだ。ガキなんて怖がって滅多に近寄っちゃこない。それでもそのガキは俺に向かって礼を言ったんだよ…()()()()()()()()()()()ってよ」

 

「…まさか⁉︎」

 

「ああ、センパイもおそらくはペルソナの素質アリなんじゃねぇかってさ。俺1人じゃ分かんねぇからセンパイに相談したら、お前を呼び出したんだよ。だから俺が居るんだ。……言わなかったのはこの人のイタズラだろ」

 

「なっ⁉︎…リョウスケさん、私を余り揶揄われますといつか痛い目にお会いしますよ?」

 

「おお、冷やっとするねぇ。…でも話易かっただろう?」

 

「そりゃ、神妙な空気よかぁマシっスね」

 

「むぅ…」

 

「ほらほら、これから方針を固めないと。一度でも襲われた人たちなんだ、次がないとも限らないだろう?かと言って毎日警戒しに行くのも大変だ。さ、話し合いを始めようじゃないか」

 

 

 

ついつい美鶴ちゃんはからかってしまうんだよなぁ。大分雰囲気も柔らかくなって来たってのも有るからかな?ま、それよりも天田親子だよ。入院の手配とかは流石に幾月がやってるだろうから現時点ではまだ被害者親子って認識でしかない。それをどうやって警戒されずに離すか…考えないとな。

 

 

 



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実を結んだ結果は下準備のおかげ

衣替えの見極めが難しいので初投稿です


「まず考えなければならないのはその親子の身の安全だね」

 

「もちろんですね。わがグループが手配し、別の住まいを…」

 

「そんな簡単に行きそーにねぇからセンパイに相談したんだよ…」

 

「そうなのか?」

 

「まぁ、繁華街に住んでいる母子家庭ってなるとそれなりの訳ありだろうからね。パッと別のところに住んでくれってお願いしたところで頷いてくれないだろうな」

 

「…では如何様になさるおつもりですか?」

 

「まぁ、偉そうなことを言ってるけど最終的に美鶴ちゃんの所に頼む事になるとは思う。結局は俺たち高校生が扶養するなんて無理な話だからね。それと…何とかしてでも子供を育てようとしているお母さんだ。外野が良かれと思って援助を申し出た所で余計なお世話だと反発されるかもしれない」

 

「そーっスよねぇ…。かと言って影時間の説明なんて通じるわけないでしょうし…」

 

「それに…その子まだ小学生なんだろう?そんな子を好き好んで危ない目に合わせる様な親でも無さそうだ。かと言ってほったらかしにしておく訳にも行かない。難しいだろう?」

 

「…安易な考えでは行かないのですね」

 

「君の所は良くも悪くも影響力が強すぎるからね。そんなにしょんぼりしなくたってそこを頼りにもしているさ」

 

「…はい。では、その親子に納得してもらえるような流れを作らなければならないという事でしょうか?」

 

「だね。真次君、その親子のプロフィールは?」

 

「あー、親の名前は分かんなかったっス。ガキの方は天田乾…だったかな?」

 

「なるほど。…いまはグループの息がかかった病院に入院させているんだろう?どんな反応、リアクションをしていたかわかる?」

 

「あー、そこまで付き添ってねぇんで分かんねぇっス」

 

「あ、それならば私のところに報告が。なんでも母親の方は随分とボロボロらしく、シャドウに襲われた件に関係なくすぐ入院させるべきだとの事です」

 

「子供を育てるために無茶してたって事かよ…」

 

「だろうね。子供の方は?」

 

「入院しているときは大人しい様ですが…誰かさんが見舞いに来た時は年相応にはしゃいでた様です」

 

「ふふ、随分懐かれてるみたいだな。…ひょっとして真次君、ヒーローにでも見えたんじゃないか?」

 

「ふふ、ヒーローとは随分と強面なんですね。過分にして知りませんでしたよ」

 

「うるせぇぞ‼︎」

 

「うるさいのお前だ荒垣」

 

「チッ…」

 

「ほんと仲良くなったなぁ。少なくとも入院してる間は時間稼げる訳か。理想としては天田少年を学園の初等部に入れてしまう事なんだと思うよ。流石に小学生で知識もないままに影時間にまた取り込まれてしまう様では今回助けた意味も無くなってしまうだろう?」

 

「確かに、少年には初等部に入ってもらう方がよろしいですね」

 

「でもよぉ、美鶴。だからってガキを俺らの活動に加えるのか?そりゃあ俺たちゃ戦力が足りてねぇよ。だからってガキまで引っ張り出すこたぁねぇだろうよ」

 

「分かっている。しかし、変に知らないままの方が危険なのでは無いかと思うのだ…」

 

「そりゃあ…そうかもしれねぇけどよ」

 

「だろうねぇ。それに遠ざけた所で()()()がちょっかい掛けてきたらめんどくさいぞ?それなら目の届くところに置く方がまだマシだと思うよ」

 

「「確かに」」

 

「うーん、これ以上は俺たちじゃ進まないかも知れないな。仕方ない、美鶴ちゃん、武治さんに話をしてもらえないかな?大人の方が上手い手を打てるかもしれないし」

 

「そうですね、お父様ならばいい考えがあるかもしれません」

 

「荒垣もそれでいいか?」

 

「ああ、すまねぇ、頼むわ。センパイも相談ありがとうございました」

 

「ま、このくらいはね。って言っても結局は他人任せになってるけど」

 

「それでも私達だけでは方針も立たなかったかもしれません」

 

「実戦で力にならない分こう言う所で働かないと…先輩らしく無いだろ?さ、方向は固まったし、そろそろ解散しようか。真次君もいいよね?」

 

「うっス。また、今度稽古お願いします」

 

「経過報告は致しますので」

 

「俺も気にはかけるけど…よろしくね」

 

 

 

 

…何気にここは俺が知る世界でも大きく変わった要素の一つかもしれないな。なんせ…天田君と真次君の間に蟠りがない。あえてゲーム的な言い方をするならば彼の死亡フラグをへし折ったんだ。制御剤も使ってない今彼が死ぬ可能性は無くなった…とは言い切れないか。なんせシャドウと戦うのも危険だし、悪魔だって出てきたらよりな。とにかく彼について言えるのは運命から解き放たれたんじゃないかって事だ。これがどう言う影響になるのかは分からん。が、それこそ生きてるって事だろ。



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報告と相談は大事

寒いのか暖かいのかはっきりしないので初投稿です


「武治さんが呼んでる?」

 

「ええ、お父様が例の親子の件について話をしたいと」

 

「俺に通す様な話あったかなぁ?まぁいいや。いつ行けばいいの?」

 

「早いうちに…と言いたいところですが学園から向かってしまうと()()()に動向を知らせてしまいかねませんので…明日の休日に自宅から向かっていただけますか?」

 

「分かったよ。とりあえず…名前を出せば行ける?」

 

「はい、その様に手配しておきます」

 

 

 

うーん、どうなったのかは気になるけど…俺に何の話だろうか。高々1週間ほど前に相談されてからもう動きが決まったのかな?考えても仕方ない、明日話を聞けば分かるか。

 

 

 

「わざわざ来てもらってすまないね」

 

「いえ、俺こそそちらにお願いした身ですからね。…それに武治さんが動いた方が人目を引きますから」

 

「それもそうだな。ではまず報告からと行こうか。娘から相談された件についてだが、とりあえずは我がグループの不手際に巻き込まれたという事にして親子にはしばらくの保証を申し出ようと思う。その際子供は別のグループ関係の所に置こうと思っているのだが…どうだろうか」

 

「悪くは無いと思います。俺としてもやはり小学生にやらせる様な活動では無いですからね。ただ…」

 

「…そうか、やはり君も奴が不安か」

 

「そうですね。どうしても小学生ですからね、ぽろっと影時間に巻き込まれた話をしてしまうかもしれません。そうなるとやはりペルソナの素質がある事が分かってしまうかも知れませんね」

 

「…ふむ、だからこそ遠ざけることは得策では無いと思うわけか」

 

「はい。遠ざけて戻ってきた時にどう言った印象を持たれるか…を考えるとある程度、内情見せた方が良いのかもしれません。もちろんある程度分別がつく年齢になってからになるとは思いますが」

 

「なるほど。そういう意味で学園においてしてしまう方が良いと考えたわけか…。うむ、やはり息子の方は学園に置くとしよう。それと、変に遠ざける訳ではなく、幾月にも知らせてしまおう。荒垣君からの報告と言う形でだ」

 

「リスクはありますがそれが一番かも知れませんね…。そうなると、俺はあんまり見れませんが」

 

「ふむ、そこは娘達に期待しようでは無いか。あまり過保護にしても成長は見込めんからな」

 

「…そう、ですね。彼らを信じましょう。最悪出張って仕舞えば何とかなるでしょう」

 

「ふふ、君、本当に娘の一つ上なのかい?随分と大人びている。しかし、その通りだな。娘を信頼はしている。が、失敗した時に何とかしてやるのが大人…いや親の役目だ」

 

「そうですね、俺も先輩として恥ずかしくない様研鑽を積んでおきますよ」

 

「それは心強いな。…私に前線に出る力は無いからな。危険な役目は君や娘に任せてしまう。桐条グループ当主とはいえ何とも無力なものだ」

 

「ま、その辺は適材適所ですよ。兵站を担える人物があの子達の後ろに居るってのはそれは大きいですからね。何より危険な事をやってる分サポートはありがたいですよ」

 

「そうか、そう言ってくれるのなら君も私からの援助を受けてもらいたいものだが……、はぁ、わかっているよ。幾月の目がある以上は無理だな」

 

「そこまでやってもらっちゃうと言い逃れも出来そうに有りませんから仕方ないですよ。ま、俺は俺で何人か協力者を見つけてあるんで現時点では困って無いですよ」

 

「ふむ、君の事だ。さぞ有能な人物を捕まえているのだろうね。ぜひ事が終われば会いたいものだ」

 

「…ふふ、事が終わればですね」

 

「何かおかしな事を言ったかね?」

 

「事を終わらせる事ができる…そう信じる事が出来る様になっていたみたいですから」

 

「…‼︎確かに、前向きになれたかもしれんな。……いかんな、浮ついている様では幾月に気取られるやも知れん。名残惜しいがそろそろお開きとしようか」

 

「ええ、では天田親子の事よろしくお願いします」

 

「言われなくとも。君の無事を祈っているよ」

 

 

 

うん、大分いい方向に転がったんじゃ無いかな?…ま、ここから起きる事が俺の知らない事って当たり前だしな。わかってる事と言えば俺が悪魔やシャドウと戦わなければならないだろうという事くらい。だったら負けない様準備をするだけ…そう、それだけでいいのさ。

 

 



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不定命でも封印は辛そう

しばらくは短めで行くので初投稿です


修学旅行も終わり、天田親子についての話し合いも済ませた。後は期末を終わらせて仕舞えばもう年の瀬…冬休みだ。春休みはいけないかも知れないからな、それを考えに入れたらやれる事なんて少ないな。とりあえずは例の倉庫にアメノウズメを連れて行ってみようかな。

 

 

その前に…ピクシーやエリザベス達からおねだりされていたクリスマスパーティだ。本当なら美鶴ちゃんや武治さんに誘われてたんだが…さすがの上流階級の催しには気後れしてしまったので断りを入れた。ま、向こうもまだ来るとは思ってなかったみたいなんだけどな。俺が気兼ねなく参加できるのも2年、いや3年後からかな。こんな展望を実現させるためにも頑張らなきゃならないね。

 

 

 

 

「ふんふーん」

 

「ゴキゲンだなピクシー」

 

「もっちろん‼︎封魔管の中でダラダラしてるのも悪くは無かったんだけど…こうしてオモテで色々できる方が楽しいから‼︎」

 

「そうか。そりゃ封を解いた俺もほっとするよ。ほら、そろそろ封魔管に戻ってくれるか?ベルベットルームへと行くからさ」

 

「はーい。ねぇ、リョウスケちゃん、着いたらすぐ呼んでよね‼︎」

 

「了解。ま、すぐだから待ってな」

 

 

…ま、大正時代とか明治時代からタイムスリップしてきた様なもんだからな。クリスマスパーティなんてハイカラなモノが楽しみで仕方ないらしい。何たって家にいる時からずーっとはしゃいで外に出てたんだから。せっかくだから楽しんで欲しいけどな。…ピクシーやウズメ、エリザベス達からしたら他神の誕生日なんて祝ってどうするんだって感じかも知れないけど、日本のクリスマスなんて形骸化の極みみたいな所あるからな。ただただ託けてお菓子を食べる会として楽しんでもらえたらいいだろ。

 

 

 

……結果だけで言おう。クリスマス会は何とか終わった、終わらせる事ができた。はしゃぎすぎたピクシーとエリザベスを引き離す事があれほど大変だとは思わなかった。なまじ時間の流れに無頓着な分中々お開きにならない事が大変だとは思わなかった…。実際長い1日だったぞ、すっげぇ疲れた。…はぁ、明日には沖奈へ向かうのに起きれるかな。

 

 

「むぅ、エリちゃんともう少し遊びたかったのに…」

 

「また、出てきたのか。まぁ、それは良いんだけど。エリザベスと遊ぶのはこれからいくらでも機会はあるって。何も今日一日で満足しなくっても大丈夫だって」

 

 

物足りなかった様子のピクシーが出てきたみたいだ。…自分から出てきてるけど、これ封魔管として役割果たしてるのか?まぁ、悪さをするでも無いし、ピクシーはマガツヒを浪費するってほどでもないからな。100年近く暇を持て余していた事を考えたらこのくらいは構わないんだけど。

 

 

「ねぇ、リョウスケちゃん。まだ…遊ぶだけの時間はあるの?」

 

「そうだなぁ。少なくとも5年はベルベットルームとの付き合いは続くんじゃないか?仮に俺があの部屋の客人で無くなったとしてもデビルサマナーとしての活動が無くなるかなんて分からないからな。どうしたんだ急に」

 

「…なんだか楽しすぎちゃって、アタシ、夢でも見てるのかなぁって。眠っちゃったらそのまま起こされるまで起きないのかなぁって思っちゃったら…寂しくなっちゃった」

 

「…うーん、こりゃああれだな、出会う事が出来るならば先代のライドウさんには1発ぶちかます案件だなぁ。ピクシー、俺がデビルサマナーを引退する時はさ、キチンとお目付役見たいな式神でもなんでも作れる様にしておくよ。そしたらピクシー、お前は自由にしてくれて構わないからさ」

 

「リョウスケちゃん…。えへへ、ありがとう。うん、その時、楽しみにしてる。……よーし、明日から頑張るっ‼︎じゃ、おやすみ」

 

「ああ」

 

 

俺がいなかったらずーっと封印されて忘れられていったのかと考えるとゾッとするなぁ。恨むよライドウさん…。




そろそろ10マンUAですね。本当にありがとうございます


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会話を行う事で行動が増えるのメガテンだなぁって実感した

10マンUA達成したので初投稿です


「うわー、こうして此処に帰ってくる事を懐かしく思えるなんて…ふっしぎー‼︎」

 

「そうね、私もほんと久しぶりね…。ライドウ君からお別れ告げられて以来かしら」

 

俺はピクシーとアメノウズメを蔵の地下にあったあの部屋に連れてきた。

 

「とりあえず封魔管は遺してもらった分しかないからなぁ…。仲魔をガンガン増やすわけにも行かないんだよ」

 

「あー、そんな事言ってたわねぇ」

 

「あら、そんな貴重な封魔管の枠に選んでもらえたの?」

 

「それについては巡り合わせ…かな?前にも言った様に状態異常に対応できる仲魔が欲しかったのと…仲魔になってくれそうな候補をピクシーから聞いて、たまたま祀られてる場所に行くことが出来たからなぁ」

 

「それはまたすごい巡り合わせね。おかげさまでいいモノ見せてもらえたのね」

 

「リョウスケちゃん、なんかやったの?」

 

「ん?あ、ああ。ウズメに仲魔になる条件を付けられてな。たまたま知り合いの日本舞踊家と一緒に行ったらその人の踊りを奉納する事だったんだ。それがたいそうお気に召してもらえた様でな」

 

「へー、そんな事してたんだ。アタシも見たーい」

 

「あー、今度その人…ヒナコさんが踊る時こっそり呼ぶから」

 

「私もいいわよね?」

 

「…ウズメくらい存在感あると厳しいかも。あ、今の世の中録画とか簡単に出来るからさ、それでかんべんしてもらえないか?」

 

「録画?なぁに、それ。ウズメん、わかる?」

 

「あー、たまにウチの神社に来てたわねぇ。うーん、ピクシーに説明するなら活動写真よ。…たぶん」

 

「活動写真‼︎リョウスケちゃん、そんなの撮れるの?」

 

「そうだなぁ、ライドウさんと動いていた頃に比べたらそれこそ誰だって撮れるな」

 

「へー、すごいのねぇ。…アタシ達も映るのかしら?」

 

「えー、ピクシーそれは無理じゃ無いかしら?」

 

「どうだろう。そんな未来も遠く無いかも知れないな。ほら、ピクシーはデータ採りに付き合ったフミさんを覚えてるだろ?あの人ならそんな技術を作ってくれると思う。分析するにしても歪みとしか認識できないより映像で姿が見える方が捗るものもあるだろうし」

 

「んー、よく分かんないけど…楽しみにしてればいーの?」

 

「…ははっ、そうだな。そんな未来も近いってこった」

 

「ウフフ、ほーんとついて来てよかったわぁ。そう言えば…リョウスケ君、貴方、葛葉流の技あんまり教わってないの?」

 

「あー、ほら、ライゴウ爺さんに伝わってる葛葉流ってあくまでも対人を想定した技しか無いと言ってもいいレベルなんだよ。ま、これでも十分古流剣術としても変わってるんだけどさ。とにかく教わってないというより道具みたいに残ってないんだ」

 

「あらそうなの?ピクシー、対策に私を出したのもいいけど、あの子いたじゃないの、テングのクラマ君」

 

「クラマ…クラマ…って、あー‼︎そうそうクラマテングね‼︎あはは、すっかり忘れちゃってたわ…」

 

「クラマテングか。クラマって名前を冠してる位だしひょっとして京都か?」

 

「そうね。私からするとご近所さん見たいなモノだったし。…でも京都ならあんまり行けないかしら?」

 

「いや、ちょうどいい。実は京都でウズメに会いに行く前に訪れた場所…峰津院家にまた春休み行くことになってる。つまりまた京都には行くのさ」

 

「あら、バッチリじゃない。クラマ君は教えたがりだし。ほら、ピクシーライドウ君がちっちゃい頃良く吹っ飛ばされてたでしょ?」

 

「そうだっけ?…そんな事あったような」

 

「貴女…まだ寝ぼけてるの?あの時より随分忘れっぽくなってるわよ」

 

「あはは…」

 

 

 

2人の会話をよそに俺はクラマテングの情報について考えていた。俺自身のパワーアップに繋がるような仲魔候補か…。実現するとこれは大きいだろうな。実際技の面では頭打ちって程でもないけど実際に悪魔と闘ってない爺さん達には教えられない様な技が多いみたいだからな。

 

「ちょっとー!リョウスケちゃん、聞いてるのー⁉︎」

 

「あ、悪い、考え事してた」

 

さて、そろそろ上に戻るか。



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俺にも帰るところがある…

開幕戦が始まったので初投稿です


「あけましておめでとう」

 

「おめでとうございます」

 

「去年もよう来てくれたの。毎度言っておるが見違える程成長したのぉ。全く、すっかり成長してしまって儂らには教える事も殆ど無くなってしもうたわ」

 

「いえ、たまにしか来ない俺に色々と良くしてもらって何よりですよ」

 

「ほんとほんと、もうリョウスケ君が継いでも良いんじゃないかな?」

 

「あはは、それはどうなるか分かんないですねぇ。()()()()がどう落ち着くかも分からないですから。まぁ、俺としては此処に帰ってきたい気持ちは有るんですけどね」

 

「何を今更、いつでも帰って来なさい」

 

「あはは、そうそう。親父の言う通り。君なら歓迎だね」

 

「…ありがとうございます。色々と…今年もお世話になります」

 

「うむ」

 

 

 

いや、ほんとあったかい人達で良かったよ。実家と呼べる場所があって、そこにいつでも帰ってきて良いと言われる。ありがたい話だ。

 

 

 

この冬休み、俺が葛葉神社に滞在して得られた…と言える程の事は、強いて言えば改めて本拠地として認識できたという事とクラマテングについての情報を得た事か。たしかに武術に関しては悪魔を狩ってる恩恵と言って良いのか分からないが、身体能力が向上してるから此処での稽古は少し頭打ち気味なのは間違いないからな。ま、元々精神鍛錬に重きを置いてたらしいからそういう意味でも仕方ないかも知れないな。かと言っても此処はもう実家だからな。別に稽古が目的で無くとも帰って来ればいいな。

 

 

冬休みは短いからな。休みボケなんて出来る前に学校が始まった。あ、ダイチさんが居る。せっかくだし挨拶しとくか。

 

「あけおめー」

 

「明けましておめでとうございます、ダイチさん。もうすぐセンター試験でしょ?大丈夫ですか?」

 

「ゔっ…、準備はやって来たんだけど、不安は無くなんないなぁ」

 

「まぁ、落ち着いてくださいよ。ほら、俺たちは落ち着く方法知ってるでしょ?」

 

「おお!そうだったなぁ。たしかに…」

 

「本番はそうやって落ち着いてくださいよー」

 

「ありがとなー」

 

 

ダイチさん、相変わらずだなぁ。あの人らしいけどさ。あ、美鶴ちゃん達だ。

 

「やあ、あけましておめでとう」

 

「ちーっす、あけおめっす」

 

「あけましておめでとうございます。おい、荒垣なんだその挨拶は。一年の計は元旦にありと言うだろ、新年の挨拶を疎かにするな」

 

「あけましておめでとうございます、今年もスパーお願いします」

 

「あはは、まぁ、美鶴ちゃんもそんな気にしなくっても良いよ」

 

「いえ、此処で締めておきませんと弛みっぱなしですのでそうはいきません。私ももうすぐ生徒会に入る事になっておりますから、こう言う目の届くところから始めようと思います」

 

「だってさ、真次君、少しは美鶴ちゃん見習ってみたら?」

 

「いやぁ、俺にゃ固苦しいのはどうも性に合わねぇんすよ…」

 

「あ、そうだ、あの親子だけど…何か動き合った?」

 

「あー、どうにも母親の体調がまだ良くならないみたいでしてねぇ、ガキも病院から遠くない施設で預かって学園に通ってるみたいっすよ」

 

「ふーん、随分詳しいね真次君」

 

「えっ⁉︎あ、いや、その」

 

「なんだ、アキ、偶に面倒みてやってる事を言ってないのか?」

 

「荒垣の料理なら好き嫌いなく食べれるって喜んでたじゃないか」

 

「ふふ、心配要らなかったかな?真次君もちゃんとお兄ちゃんやってるじゃない」

 

「…ケッ、俺ぁ先行きますよ‼︎」

 

「不器用な照れ隠しだこと…」

 

「でも先輩と会ってからシンジは随分丸くなりましたよ」

 

「明彦、丸くなった…というより我々も少しだけ大人になったんだ」

 

「…ああ、そうだな」

 

「何だよ、新年早々誉め殺しか?ダメだね、俺まで背中痒くなりそうだ、また週末にでも詳しい話聞かせてくれる?」

 

「もちろんです」

 

「俺はいつでもスパー待ってますんで」

 

「ははっ、考えとくよ。じゃあね」

 

 

うん、彼ら3人も随分頼もしくなった。これなら彼らもキチンとペルソナ使いの後輩を導いてあげられるだろう。…問題児が居るなら一声くらい掛けてもらっても良いんだけどね。




ちょっと時間が飛び飛びで申し訳無いです。


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踏み出す一歩の先がちょっと濃い

お腹が痛いので初投稿です


年も明け、俺の高校2年ももう終わりかけだ。仲魔と共にメメントスの探索を行うのにも随分慣れたな。ただ…現状でもマガツヒはギリギリだ。これから仲魔が増えたとしても召喚して共に戦うメンツを増やすのは後一柱で限界かも知れないな。悪魔が強くなるほどこっちの仲魔も強くしないといけないからそうなるとマガツヒの消費も増えちゃうから仕方ないんだけどな。

 

 

久々にマスターから双葉ちゃんの相手をしてほしいとの事で呼び出しを受けた。バイトの日にお願いされる事はこれまでもちょいちょい有ったんだが、わざわざお願いされるってのも珍しいな。

 

 

 

「おう、悪りぃな。フタバがお願いするもんだからよ。なかなかワガママ言わねぇアイツに頼まれたらお前も叶えてやりてぇだろ?」

 

「え、なんかお願い事ですか?珍しいっすね。何かは聞いてます?」

 

「あー、聞いちゃいるけど、俺が言うのは筋違いだろ。アイツから直接聞いてくれ」

 

「分かりました。もう来るんですか?」

 

「おう、コーヒー飲んで待っててくれや。今日は奢ってやる」

 

「お、いただきます」

 

 

うーん、美味しいなぁ。此処でのバイトももう少しだしなぁ。ま、おかげさまでカレーもコーヒーも覚えられたけどさ。

 

 

「おーっす!そうじろうよろしくな‼︎」

 

随分と元気な登場だな。ま、元気で何よりだけど。

 

「おう、ほら、リョウスケはもう待ってるぞ」

 

「おはよう双葉ちゃん」

 

「うむ‼︎ワタシより早く来ていて何より‼︎」

 

「おい、何かいう事あるんじゃねぇのか?」

 

「そうじろう、分かってる。でもワタシにも準備時間というモノが必要で…」

 

「なんだよ、早くしねぇと昼になっちまうぞ」

 

「あー、うー、えーっと…あの、お出かけに連れてって欲しい‼︎」

 

「いいよ」

 

「ほら、アタシこんなんだからお母さんも心配しちゃうから無理だけど…そうじろうがね、リョウスケが居たら良いんじゃないかって言ってくれてさ、だから、一緒に行ってくれないか?」

 

「だから良いよ」

 

「ああ、あのさ…ってえ?」

 

「ほら、お出かけしたいんだろ?どこに行きたいのさ」

 

「ほ、ほんとか?」

 

「ほら、俺ももうすぐ高3になったら受験あるからあんまり此処に来れなくなるしな」

 

「そ、そうなのか…」

 

「流石に受験前にバイト来いって言う程俺も鬼じゃねぇからな。…まぁそのせいでフタバは少し寂しくなっちまうか」

 

「…でもそれなら仕方ないな。うん、じゃあ今日、アタシは頑張ってお出かけする‼︎それについて来てくれ‼︎」

 

「おうよ。それでどこ行きたいのさ?」

 

「うむ、秋葉原だ‼︎」

 

「…まーた、ディープな所を。たしかに小学生1人に行かせて良い様な街じゃないか」

 

「ま、お前が居るなら大丈夫だろ。気をつけて行ってこいよ」

 

「えへへ、ありがとう!」

 

「準備は出来てるの?」

 

「うん、バッチリだ。下調べも済んであるぞ」

 

「何か目的が有るのか。よし、じゃあ行こうか」

 

「おー‼︎」

 

 

あれだけ人見知りだったフタバちゃんも一緒にお出かけ出来るようになったのはすごい進歩だろ。まだ若葉さんの周辺もきな臭くなってないみたいだけど、いつどうなるか分からないからな。ま、今日はフタバちゃんにお付き合いするとしますかね。



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まだ電気街の側面が強い秋葉原

復活したので初投稿です


「ムフフー」

 

「フタバちゃんゴキゲンだね」

 

「よくぞ聴いてくれた。ワタシはずっと秋葉原に行きたかったのだ‼︎…それに、パソコンに強くなったらお母さんの手伝いだって出来るかも知れないし」

 

「なるほどね。それで日本でも屈指の電気街か。ま、俺は詳しくないから荷物持ちだな。…あ、パソコンのパーツってフタバちゃんのお小遣いで何とかなる範囲なの?」

 

「うっ…。それは…、その…」

 

「あはは、ま、今日下見、下調べだ。そうしようじゃないの。そういうパーツって型落ちとか早いんじゃないの?フタバちゃんが欲しいスペックにするといくらくらいするのか知らないけどさ」

 

「しまった、ワタシの要求スペックを満たしたパソコンは…ワタシでは買えない‼︎」

 

「…どんまい。ま、お出かけはこのまま行こうか」

 

「…うん」

 

 

 

パソコンの知識が有ればお母さんの手助けになるかも知れないからって本当にマスターしてしまうあたり天才の子は天才なんだな。…ちょっと抜けてるのもそれっぽいか。まぁ、本人にとってもお出かけ自体ハードルの高いミッションでそれにいっぱいになってたから予算の事忘れ去ってたってのもありそうだけどね。

 

 

「ほーほー、凄いなこの街は。ニッチなニオイしかしないぞ」

 

「うーん、フタバちゃんだけで来れる所ではないね。マスターでも厳しいんじゃない?」

 

「そうじろうなら…眼光で…行けると思う」

 

「くくっ、たしかにあのひと睨みならいけるか。さて、何処に行くんだい?」

 

「ウム!とりあえずはあそことそこの電気屋だ‼︎知識はつめたんだが…やはりカタログスペックを把握してるだけに過ぎんからな。その道の人間に聞いてみたいんだ。…だめか?」

 

「ま、まだ店員さんに聞くのはレベルが足りないか?ならお助けキャラの出番だから安心しなって」

 

「う、ウム。そうだな、こ、ここはリョ…リョウスケに任せるぞ!」

 

「任せたまえ。…その前に聞きたい事を知りたいから先に現物をみてからにしよう」

 

 

 

という事て2人で色々と秋葉原の街を見て回った。流石に見知らぬ店員との会話はまだまだ難易度が高いみたいで俺の後ろに隠れっぱなしだったけどな。まぁ、元々の人見知り気質は仕方ないし、店員も愛想が良いとは言えない感じだしな。うーん、俺にもっと知識が有ったらアングラな所で調達も出来なくないんだけどな。今回は出かけてみたかったっていう気持ちの方が大きかったみたいだけど…本格的に取り掛かるならフミさんとかに聞いても良いかもな。…桐条のルートも悪くないんだけどデカい人を動かすと人目を惹いちゃうかも知れないしな。

 

 

 

「うーん、ワタシの知識じゃまだまだだったのか…」

 

「いやぁ、俺も詳しくないからなんとも言えないなぁ…。とりあえずちょっと疲れたろ?どこかでお昼食べて休憩しようか」

 

「そうだな。ワタシもお腹が空いたぞー。…ウーム何がいいかなカレー!…はそうじろうのが一番だし…」

 

「ま、無難にファミレスかチェーン店でいいでしょ。そういうジャンクなの…嫌いかな?」

 

「大好きだ‼︎よーし、ジャンクフードの王様ハンバーガーにしよう!あ、バーガークイーン‼︎」

 

「分かった分かった、そうしようか」

 

 

バーガークイーン…ビッグバンハンバーガーと違って炭火焼きのパティがウリのチェーン店。美味いんだけど店が少ないのがね。あと俺が本気で食うなら向こうのチャレンジメニューがコスパ良くなるからあんまり来ないんだ。味は好きよ。

 

 

「ふぅ、美味かったぞ!」

 

「うん、俺も久々にクイーンに行ったな。味はやっぱりここだなぁ。さて…どうする?」

 

「うーん…」

 

「ちょっと疲れて来たか。ま、まだ昼過ぎだし…ちょっとゆっくり家電量販店でも覗くかい?」

 

「うん、そこなら玩具屋もあるしな!」

 

 

 

いわゆる大型家電量販店を下から上までウインドウショッピングした。もちろんゲームコーナーに一番長く居た様な気がするけど。

 

 

そろそろ帰ろうか…と思いフタバちゃんを見たら随分と眠そうだ。仕方ないか、元々はインドアでまだ小2だったはずだし何よりずーっとフルスロットルだったしな。

 

 

 

「さて、そろそろ夕方だし、帰ろうか」

 

「……うん」

 

「あー、ちょっと疲れたか。ほら…おぶさって。寝てていいから」

 

「…うん」

 

 

フタバちゃんをおぶってルブランまで帰る。ほんと電池が切れた様にと表現するのにピッタリだ。ここまで体力使い切ってくれる程楽しかったのかな?

 

 

「おう、らっしゃい…ってお前か。おかえりっと、フタバ寝てるのか?」

 

「はい、はしゃぎ過ぎたみたいでおぶったらコテンと。楽しそうでしたよ」

 

「そりゃ、良かった。俺も店がなきゃ色々連れてってやるんだがな…」

 

「とりあえずボックス席で寝かしますよ?」

 

「おう、奥の席使ってくれ。…お前に任せて俺が連れてくのもアリか?」

 

「いや、流石に1人は自信ないっすよ?」

 

「しかしなぁ…。まぁ、今日はお疲れさん。コーヒー飲んでくれ」

 

「いただきます。俺も楽しかったんで…たまにはまた連れてってあげられそうならいいですよ」

 

「本当か‼︎」

 

「お、起きたか。ほれフタバ、ココアだ」

 

「ありがとうそうじろう。リョウスケ、また連れてってくれるのか?…迷惑じゃ無かったか?」

 

「ああ、またな。…俺も受験があるからそこまで頻繁には無理だけど」

 

「うん、それでもいい。…ホントは、ううん何でもない」

 

「…約束だな」

 

「うん‼︎今日はありがとうな、リョウスケ」

 

「ああ、それじゃそろそろ帰るよ。マスター、コーヒーごちそうさま」

 

「おう、今日はありがとな」

 

「バイバイ」

 

 

 

ま、こんな1日が有ってもいいよな。…これからは間違いなくパソコンの時代は来るしなぁ。これを機に勉強するのも悪くないのか?さて、もう少しで3学期も終わり。京都での修行はどうなることやら…

 

 




心配おかけ致しました。毎日投稿は間を開けると一気に辛くなりそうな予感しかしないのでまた頑張ります。


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別れもあれば出会いもある…かも?

今日は花粉がひどいので初投稿です


春休みの前に忘れちゃいけないのが卒業式。俺と関係があるって言えばもちろんダイチさんだ。

 

「卒業おめでとうございますダイチさん」

 

「おー、ありがとなー。リョウスケとは…2年前からの付き合いだった気がしないなぁ。お前はいい後輩だよホント」

 

「あはは、なんとなくですけど…俺もダイチさんとはなんだかんだこれからも付き合い続きそうな気がしてますよ」

 

「お、嬉しいこと言ってくれるじゃん。でも、何となく言ってる事わかるな。俺もリョウスケと…ヒナコさん、この3人は付き合い長くなる気がしてる」

 

「ですよね。お、アイリちゃんも来てくれてますよ」

 

「そ、卒業おめでとう」

 

「あはは、アイリちゃんもありがとうね」

 

「仕方ないとは言え…寂しいわね」

 

「ま、卒業なんてそんなもんでしょ」

 

「…うん、ダイチに湿っぽいのなんて似合わないもんね」

 

「おいおい、何だよー、どういう意味だよー」

 

「まぁ…微妙なラインですけどギリ褒め言葉じゃないですかね?」

 

「相変わらず一番ヒデー事言う人だなセンパイは。志島さん卒業おめでとうっす」

 

「おめでとうございます」

 

「おー、荒垣君に真田君。君たちもわざわざありがとう」

 

「いやぁ、俺らは部員でもねぇのにお世話になりまくりましたからね」

 

「回数は少ないとは言え志島さんには色々と教えていただきましたよ」

 

「君たちに言われるとなんだか…一番…泣けてくる…」

 

「あー!なによ!何で私よりこんなゴリラの言葉の方が感動するの⁉︎」

 

「なっ⁉︎誰がゴリラだ‼︎」

 

「アンタに決まってんでしょ‼︎」

 

「おい、シンジ…」

 

「あはは、いやいや、そうだよな。俺は笑って卒業するよ。ありがとうみんな」

 

 

 

 

何はともあれいい卒業式かな。いよいよ俺が最高学年なんだなぁ。来年はどんな子が入ってくるのやら…。ま、その前にまた関西に行くんだけどな。

 

 

 

 

さて…関西に向かうならそれなりの準備をしないとな。もちろん峰津院で修行するんだし…いつものメメントス装備は持っていくし、一応空の封魔管もいくつか持って行こうか。クラマテングしか心当たりは無いけど関西に行って時間取れるのもしばらく無いからな。何があるか分からないなら持っていこう。

 

 

「あー、リョウスケちゃん何してるのー?」

 

「ん?ほら、春休みにまた関西行くからその準備。ピクシーはクラマテングの好きなものとか…何お供えしたらいいかとか知ってる?」

 

「んー、クラマテングの好物かぁ…、あの子何してたっけなぁ……」

 

「天狗って言えば酒?」

 

「お酒?ライドウちゃんと飲んでたかしら?…あーでも、何か飲んでたわね。ウズメんにも聞いてみましょ?」

 

「すごいわね、今代のデビルサマナーって、クラマ君の趣味を聞くためだけに呼び出しちゃうのね」

 

「あはは、聞いていたのか。ま、先祖だからね先代のライドウさん。話を聞けるなら手土産くらい何でも無いさ」

 

「全く、友達に会いに行くみたいに言うのね。クラマ君はテングのぶんにもお酒も好きなんだけど、飲み過ぎてライドウ君に怒られちゃってから以来お茶にハマったのよ」

 

「お茶?ふーん、そんな事してたのかー」

 

「まぁ、お茶って言っても色々試してたわよ。そもそもあたしはピクシーみたいに甘いのが好きって訳でも無いし。あ、あと新しいモノ好きね」

 

「えー、意外!ずーっとしかめっ面してるのにかわいいところあったのね」

 

「新しいモノ好きか…。お茶系には違いないだろ、マスター仕込みのコーヒーを淹れてみようかな」

 

「あら、いいんじゃない?楽しそうよ」

 

「よし、じゃあルブランで豆貰っていかなきゃな。山でコーヒーってのもオツだろ」

 

 

どうなるか分からないけど…なんだかんだで楽しそうだし実りのある春休みになりそうな気がして来たぞ。

 

 

 

 



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見える人見えない人

桜が散り出したので初投稿です


「どうぞ、よろしくお願いします」

 

「やあ、いらっしゃい。よく来てくれたね。ほら、大和、挨拶しないか」

 

「フン」

 

「おいっ」

 

「あー、まぁ気にしないでください。ところで…今の子は?」

 

「うん、大和って言ってね。ウチの息子。もうすぐ高2だから…リョウスケ君が一つ上かな?ちょっと気難しいところがあってね、あんまり気にしないで貰えるとありがたいかな」

 

「まぁ、大丈夫ですけど…なんか気に食わない事しましたっけ?」

 

「どうだろう、大和にも一応お役目の話をしたからそれでライバル意識でもないけど…なんか思うところがあるのかな?まぁ僕だって実際に見たことがないんだから信じがたい所は無くは無いからね。…それを思うと今この平成の現代で年寄りの言う事が信じられない上に、そんなウチに学びに来た君が理解できないとか…かなぁ?」

 

「ず、随分な評価を息子さんにしてらっしゃるんですね…」

 

「まぁ、僕も通った道だからね…。僕も爺ちゃんに伝えられた時はとうとうボケたかと思ったものさ」

 

「…確かにって言ったら失礼かも知れませんけど、悪魔が存在してたなんて妄言にしか思えなくても無理ないですもんね」

 

「うん。まぁ僕は爺ちゃんからカミングアウトされてから色んな書物読まされて半信半疑くらいにはなったんだよ。流石にイタズラやドッキリにしては手が入りすぎててね。なんだかんだで僕もそんな時代が有ったんだろうなって思うようになったんだ」

 

「普通に話を飲み込んでくれる人の方がよっぽどですよね…。最近でこそ俺も身を持って体験してますし、俺以外にも異界の体験している人間も何人か知ってますからもう悪魔やその類の不思議な世界は一部になっちゃいましたけどね」

 

「うーん、ホント凄いね。僕はそんな世界、時代が来るだなんて思ってなかったからなぁ…。ウチのご先祖もそっちのご先祖もこう言う事を見越して技術を遺してくれていたんだなぁ」

 

「そうですね、葛葉家ではどうしても異形に対する武術は書物だけでしたけど…悪魔の封印と契約の方法、それに退魔に役立つ霊具を遺してくれてましたね。武術の基本はライゴウ爺さんに教わりましたけど」

 

「なるほど…確かに悪魔なんて人のカタチ取ってる方が少ないか。そんな悪魔に有効な技を遺すのは難しいよね。ふーん、葛葉さんはそう言う方向性だったのか。…ねえ、リョウスケ君、僕って悪魔見えるのかな?」

 

「どうでしょう。…そうだ、召喚してみましょうか?」

 

「召喚って…悪魔を⁉︎出来るのかい⁉︎」

 

「ええ、契約した悪魔…仲魔を葛葉家最後のデビルサマナー、ライドウさんが遺しておいてくださっていて、その仲魔と改めて契約してます」

 

「ほ、本当に?…どうしよう、僕、年甲斐も無く緊張してきたよ」

 

「まぁ大丈夫ですよ。いいヤツですし。一応葛葉家なら当代当主のライゴウ爺さんは存在が何となくわかる程度で、その息子の宗一さんはぼんやりとしたくらいの認識でしたね」

 

「って事はそれなりに修行を積んでいたら分からなくも無いのかな?」

 

「東京で異界の件に携わってる人間が持つ()()()()があれば別かも知れませんが、峰津院家みたいに霊的な家系なら行けると思いますよ」

 

 

とりあえずはピクシーを紹介してみようか。…見えるかどうか分かんないけどね。



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仲魔が見えない人に説明って難しいね

ベイスが初勝利したので初投稿です


「出でよ、ピクシー、アメノウズメ‼︎」

 

「はいはーい。っとここは?」

 

「あら、クラマ君の所じゃないのね」

 

「ああ。ここは葛葉家みたいに西日本で退魔をしていた家の峰津院なんだ。…で、こっちの人がその当主雅さん。一応君ら仲魔が見えるかどうかわからないから召喚したんだ。どうですかね、雅さん…見えたりしてます?」

 

「……そこに何か居るのは解る。いや、解ってしまった。なるほど、見えないナニカ…悪魔ってのは存在したのか」

 

「あらー、この人もライゴウちゃんとおんなじで見えてない感じ?」

 

「見たいね。やっぱり今の世の中見える人って少ないのかしら」

 

「だと思う。それも仕方ないんじゃ無いかな?」

 

「今のは会話してるのかい?」

 

「ええ、そうですよ。側からみたら完全にアブナイ人ですけどちゃんと相手居ますからね?一応ですけど、仲魔達は普通の人には見えない存在ですけどこっちの世界に干渉するくらいの力は持ってますんで、コミュニケーションは手段を考えなきゃ取れなくも無いですよ?」

 

「えぇ、リョウスケちゃん、何考えてるのよ…?」

 

「いや、ペンでも筆でも使えば筆談くらい出来なくも無いでしょ?それこそ『こっくりさん』とか『お告げ』とかってこう言った存在の干渉によるモノなんですよ。…事情を知らなかったらポルターガイストにしか見えないかも知れないですけどね」

 

「むっ!ワタシをあんな低級悪魔と一緒にしないでー‼︎」

 

「わかってるわかってる、霊による物体の浮遊現象をポルターガイストって名前付けられてるけど、そんな悪魔が居るのはわかってるよ」

 

「…『ポルターガイスト』って悪魔いるんだね。って僕も意思疎通取れるの⁉︎」

 

「ええ、出来ると思いますよ。なぁ?」

 

「うん、出来るよー」

 

「出来るって言ってますよ」

 

「ちょちょちょ、ちょっと待っててくれるかな⁉︎」

 

「あー、落ち着いてください。ケータイのメール打ち込んでもらう方が手っ取り早いんでそうしましょう」

 

「…な、慣れてるんだね。ちょっと緊張して来たよ」

 

「ほら、ピクシー、あんまりエキセントリックな発言するなよ?」

 

「うーん?ピクシー、そんなの分かんなーい」

 

「…まぁ、いいや。あんまり雅さんを困らせるなよ?」

 

「わーい」

 

 

 

ちょっと雅さんが落ち着くまではそっとしておこう。…何の会話してるんだ?雅さんの落ち着いたキャラが崩れかかってるじゃないか。とりあえずはこれで雅さんにも悪魔の存在って納得してもらえるだろう。だからといってこの峰津院家が伝えて来た技を教えてもらえるとは思わないけど…。触りだけでも教えてもらえないかな?



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LAWとCHAOSのお手本の様な説明

世間は新生活なので初投稿です


「いや、恥ずかしいね、年甲斐も無くはしゃいでしまったよ…」

 

「まぁ、仕方ないんじゃないですかね?色々と情報盛りだくさんでしたし。ピクシーとは話出来たでしょ?」

 

「そうだね、僕もびっくりだよ。しかも文明の利器とは恐ろしいね…」

 

「ワタシもびっくりだよー」

 

「ええ、ニンゲンの世界も進んだのねぇ」

 

「はは、仲魔の2人も驚いてますよ。研究を突き詰めればいずれ可視化出来たりする世の中もあり得るんですけど…」

 

「うん?そんな世界は乗り気じゃ無いのかい?」

 

「ええ。悪魔を認識できる人間が増え、そんな技術が開発されてしまった時、手に負えないような事件も起きかねませんからね」

 

「…なるほど。そんな世界は確かに恐ろしいか。そうならない為に僕たち退魔の家系があったんだろうけど、今じゃ見る影も無いからね」

 

「正直なところ、人が悪魔を知らないからこそ悪魔も力を持っていないと考えています。対抗策も少ないままに悪魔に力を与えてしまうとヘタをするとこっちの世界が異界に飲まれてしまいますからね」

 

「…そこまでの事態になりうるのかい?」

 

「リョウスケちゃん、そんな事まで考えてたのねー」

 

「ヒトが持つ想いの力ってのは微々たるモノですよ。けれど、ちりも積もればって言葉が有ります。山となった想いの力を糧に悪魔が力を付けるとどうなるかわかったモノじゃ無いですね」

 

「なるほど、悪魔に関する話で言うならリョウスケ君が第一人者だものね。そんな君が言うなら少なからずそうなる可能性があるんだね。世界の危機が少なからず有るって事でキチンと動いていて頼もしいよ。…ちなみになんだけど、その想いの力っていわゆる悪いヤツが使うとダメっぽいけど…いい神様に使って守ってもらうってのはどうなの?」

 

「その場合はガチガチの管理階級社会になりそうですね。西洋神話における善性神は秩序を好むんです。その秩序を乱す存在は全て悪になってしまうと思います」

 

「…それは本当かい?」

 

「リョウスケ君、よく分かってるわね、応仁の乱の頃なんて海の向こうからその手の尖兵が来て大変だったんだから…」

 

「あー、嬉しく無い事にアメノウズメから実体験の話が出てしまいましたね…、西洋宗教の渡来とともに悪魔の中でも衝突があったみたいです」

 

「それはまた凄い話だね…。現地神話を悪魔としてた()()()()なら無理もないか」

 

「かと言って個の力を尊ぶ荒神や争いを好む神が想いの力を糧にした場合は力こそ正義と言う理論がまかり通る世界になるでしょうね」

 

「…それに順応した人間が支配してしまいそうだね」

 

「そうそう、あんな乱暴モノが威張る様になっちゃったら大変なのよリョウスケちゃん」

 

「ピクシーはそんな悪魔と戦った経験がありそうですよ…」

 

「ふふ、リョウスケ君の悪魔…いや仲魔は随分と経験豊富だね。それでこそ葛葉家か。峰津院に遺っている技術で君の為になる様なのなんて有るのかい?」

 

「藁にもすがる…ってわけじゃ無いですけどやれる事が少しでも増やせたらなと思って来させてもらいました。本当にちょっとした事とかでも構いません。特に峰津院家()()で見たことのないような行事や作法が有ればそこに何か有るんじゃないかと思っています」

 

「…そうか。よし、じゃあウチの神社でやってる儀式でも手伝ってもらおうかな。はっきり言って僕の代では既にリョウスケ君が言う隠された意味が途絶えてしまってるかも知れないからね」

 

「わかりました。短い間ですけど、お手伝いさせてもらいます」

 

「うん、よろしくね」

 

 

 

遺されてきた伝統にはそれなりの意味があったりするもんさ。それを読み取る事が出来れば間違いなく力にはなるだろう。ま、今回だけで全部拾う必要もない。一通り手伝う事から始めますか。



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どこからでも始める事は基本から

雨の日は鼻が辛いので初投稿です


「俺は何を手伝いましょうか」

 

「そうだなぁ…、とりあえずで何だけど、祝詞から始めようか。神道の基本だしね。葛葉さんの所でも色々手伝って来たみたいだからこそ基本と何が違っているか解るかも知れないからね」

 

「なるほど。そうですね、色々と経験させてください」

 

「ふふ、大和はあんまり手伝ってくれないから助かるよ」

 

「そうなんですか…、それは最近の話ですか?」

 

「うん?そうだね、中学生の頃まではウチでの習い事もやってたけど…高校生になってからは遠のいちゃったかなぁ。思春期って難しいんだよ」

 

「…それ、歳の変わらない俺に言わないでくださいよ」

 

「あはは、なんだかしっかりしてる様だからついね。あ、そういえばここ以外どこか用事有るのかい?」

 

「鞍馬山には行くつもりです」

 

「鞍馬山ね…。まさか天狗に会うつもりかい?」

 

「ええ、そのまさかですよ。クラマテングも過去に仲魔だった様でして。そして、クラマテングならヒト以外に使える武術を教えてもらえるのではないか…とアメノウズメから聞きまして」

 

「なるほど、鞍馬山の天狗といえばかの牛若丸を鍛えたと言われてるくらいだものね。本当に協力を得られたのなら凄い事じゃないか。…ちなみに僕もお会い出来るかなぁ?」

 

「仲魔になってもらえないとしても何か教わりたいんですけど、どうにもまだクラマテングがどんな悪魔かは分かりませんからね。だから現時点ではなんとも言えませんね」

 

「そうかぁ…。いやぁ、この年になって僕がミーハー気質って事が分かっちゃったよ」

 

「どうしても強い悪魔って有名ですからね。やっぱり認知度が高い分想いの力は集まるので。そんな有名な悪魔が見れる話せるってなるとテンション上がっても仕方ないんじゃないですか?」

 

「うーん、息子くらいの子に諭されてしまった…。やっぱり君、歳偽ってるよね?」

 

「あはは」

 

「まぁ、いいか。じゃあ改めて、お手伝いをよろしくね。鞍馬山までは自分で行くのかい?」

 

「はい、行事の少ない日に行こうと思ってます」

 

「えーっと、リョウスケ君がここに滞在する日程の中じゃあ…、お、ちょうど最終日の前日、つまり四日後かな?」

 

「わかりました、その日朝から行ってきます」

 

「帰ってきたら是非その体験談を聞かせて欲しいね」

 

「もちろんですよ」

 

「よし、じゃあまずは境内を一通り周ろうか。まずはウチの神社の事を知ってもらうことから始めよう」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

雅さんに連れられて一通り見て回った。地域的な違いや歴史の長さからか葛葉家の神社とは大分違うな。あっちは山中だからってのもあるかな?京都なんて歴史深い街で今に残る神社…それに『峰津院』という家名。俺の予想だが陰陽術に関係の深い家だったんじゃないか?この短期間じゃあホントこの神社で行われてる行事しか体験する事は出来なさそうだけど、全部をいきなりは出来ないからな。…来年の春休みにガッツリと成果を出す事ができれば美鶴ちゃんや主人公君達の影時間の本格的攻略には間に合うな。うん、焦る事は無いな。




しばらくは短目になります


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伝統は意味が有るから残っている話

花粉がまだまだ終わらないので初投稿です


俺は雅さんから神社の説明を受け、基本的な行事の手伝いを始めた。昨日今日の手伝いの中には葛葉の神社と特に変わる様な所も見られなく、本当に基本的な事だった。雅さんによると時期的にも特有の祭事が無いらしいから無理もないか…。鞍馬山への訪問を明日に控え、一通り神社の普段を分かった俺はちょっとアプローチを変えて雅さんに質問してみる事にした。

 

 

「この神社で観光客が増える行事ってありますか?」

 

「ウチにかい?そうだなぁ、春先には藤の花の名所として賑わうね。あとは節分とか桃の節句とかかなぁ?その辺りはそこそこ参拝客には来ていただくね」

 

「地元の人がお参りする日とかはありますか?」

 

「あー、ウチで特有の毎月の祭事があったね。いつから続いてるか僕もよく分かってないんだけど、神社では満月の日にちょっとした祭事が有るけど、割と厄払い効果があるって評判かな?言われて意識したけどご近所さんがよくいらしてるね」

 

「満月ですか。その祭事は多分悪魔を鎮める事に役立っていたと思いますよ」

 

「本当かい?どうしてまた」

 

「満月の日にやってるって事が何よりです。悪魔って満月になると活性化するんです。凶暴化と言ってもいいかもしれませんけどね」

 

「何だって⁉︎じゃあウチがその日に合わせて儀式を行なっているって事は…」

 

「ええ、お役目を任されていた峰津院家が民間に向けてやっていた事を考えると、悪魔を鎮める為の儀式でしょうね。しかも京都ですからね、かなりの役割を持っていたと思いますよ」

 

「なるほどねぇ。リョウスケ君が行事に意味があるって言ってた事がやっと分かって来たよ」

 

「今回の旅程じゃあ満月は被ってないみたいですね…」

 

「そうか、残念だねぇ…。そういえば、祭事の内容とかは伝わってるまま続けているんだけど、僕みたいに本当の意味を忘れていても大丈夫なのかい?」

 

「おそらく大丈夫だと思いますよ。お役目が終わった頃には悪魔が現界するだけの環境はほぼなくなった様ですからね。それに儀式に必要なのは思いよりも形式です。祝詞と作法を峰津院のご先祖が整えておいて下さったようですからね」

 

「それは感謝しないと行けないね。でも、君は悪魔と戦って居るんだろう?それは東京だろうけど、こっちの方だって大阪も京都も都会だ。大丈夫なのかい?」

 

「東京で悪魔が出現していると言っても、まずは悪魔にとって環境のいい異界が形成されないと今のご時世では厳しいみたいですよ。なんせ誰も悪魔が存在するって言っても信じてませんからね。そんな世界には悪魔といえども…いえ、悪魔だからこそ現れる事ができないんです。それに東京の異界と言うのも特殊な外的要因によって形成されたモノですからね。それこそ京都の街で大事件を起こすくらいじゃないと無理ですよ」

 

「そうなのか。それを聞くとホッとするよ」

 

「何よりここの神社が毎月鎮めて下さっていたおかげですね。ピクシーにも聞きましたが、これだけ神社仏閣がひしめき合った街にも関わらず悪魔関連のトラブルが起きていない事が証拠だと思いますよ」

 

「ふふ、そうか、ありがとう。なんだか報われた様な気がするよ。リョウスケ君、お疲れ様。明日は鞍馬山だったね。気をつけて」

 

「はい、行ってきます。土産話出来るよう頑張りますよ」

 

「それはいいね、是非聞かせておくれ」



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京都の山って寺が無いとこあるんだろうか

鞍馬山の石碑とかの件は想像なので初投稿です


さて、封魔管も持った。お供えって程でも無いけど山コーヒーセットと一応お茶も用意した。鞍馬山へと向かいますかね。

 

 

鞍馬山とクラマテングの逸話といえばなんと言っても牛若丸…源義経を鍛え上げたテングだな。実際にテングだったのか山伏だったのかは今となっては分からないが日本人なら誰でも知ってる英雄とその師匠と言ってもいいような伝承だ。それにテングも悪魔…日本で言うなら妖怪としても無茶苦茶ポピュラーだしな。有名って事はそれだけチカラがある事に直結するのが悪魔の性質でもある。つまり…無茶苦茶強いだろう悪魔の所へと向かってるわけだ。ま、葛葉の縁があるし、ウズメの話からしても気性が荒い訳でもなさそうってのが実際に会うって決め手になったけどな。

 

 

それに目的地はテングにゆかりのある場所、祀られてる鞍馬寺…。山にあるとは言え、アクセス自体も葛葉神社と比べちゃ行けないくらい行きやすいな。

 

 

「ここが鞍馬寺か。…なあウズメ、何処の辺りにクラマテングが居るかわかるか?」

 

「うーん、ここのお寺はクラマ君の気配はするわね。でも、ちょっと弱いかしら。もう少し山奥の方が気配がするかしら。あら?…ふふ、そう言う事ね。リョウスケ君、少し道から外れるけれど私が案内するから安心してくれる?」

 

「ひょっとして、呼びかけでもあったか?分かったよ。どっちの方だ?」

 

「うん、このお寺の奥の方から上に登れるみたい。そっちの方ね」

 

「ちょっと住職さんに話聞いてくる。流石に何も言わずに奥には行けないしな。幸い、雅さんから名前を出しても構わないって言われてるから何とかなるだろ」

 

 

 

どうやらそこまで深い山でも無いってのもあるが割とテング伝説に興味があったり義経マニアみたいな連中が入山する事があるらしく住職さんはあっさりと構わないと言ってくれた。

 

 

そしてウズメを呼ぶ声に従って案内された先の少し開けたところに小さな石碑があった。

 

「これは…テングを祀ってるのか」

 

「そうだ」

 

「⁉︎」

 

「葛葉の末裔か?その血筋を見たのは久しいな。それにアメノウズメと…小うるさいピクシーまで連れてるじゃねぇか」

 

「クラマテングか…。あー、俺はたしかに葛葉家だ…葛葉リョウスケ。それと手探りながらデビルサマナーをやってるよ」

 

「ふうん、それで何だよ。こんな時代に。ライドウがもう戦う相手が居ねえっつーから俺はこっちに帰って来たんだが…」

 

「あら、随分な言い様じゃない」

 

「ゲッ、ウズメかよ…」

 

「何よ、私を呼んでおいてその言い方。大方クラマ君も暇してたんでしょ?ほら、ちょっと顔貸しなさい」

 

「クラマ、アンタってまだウズメんに頭上がんないのね」

 

「えーっと、どう言う関係?」

 

「まぁ、ライドウちゃんの所いた時にクラマとウズメんは()()()()あったのよ」

 

「そうね、仲良くしてたわね」

 

「俺の口からは勘弁してくれ…。で、なんでまた俺んトコに」

 

「まぁ、クラマテングも薄々分かっちゃいると思うが、東京で悪魔が出る事態になりつつあるんだ。出るって言ってもマガツヒまみれの異界が形成されてからの話なんだけどな」

 

「ふぅん、でも俺まで必要か?そいつらでも十分なんじゃねーの?」

 

「確かにピクシーもウズメは強力だ。俺がクラマテングに会いに来たのは葛葉の技を教えてはくれないか頼みに来たんだ」

 

「俺が技をねぇ…、ふぅん、面白そーじゃねぇの。葛葉の技ってのはちょっと気に食わねーけど」

 

「って事は良いのか?」

 

「つってもすんなり頷いても面白くねーわな」

 

「あら、勿体ぶるわね。クラマ君らしいけど」

 

「一応俺だって大妖怪だぜ?ちょっとくらいお供え物でもくれて興味引いてみなよ」

 

 

これも悪魔交渉か。何とか頷いてもらいたいな。…準備して来て良かったぜ



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こういうパターンの交渉もある

まだまだ寒いので初投稿です


「で、どうだい。なんかあるか?」

 

「えっと、ウズメに聞いたんだが、クラマテングは酒を控える様ライドウさんに言われて新しいモノ好きって事で合ってる?」

 

「…そこまで知ってんのかよ。まぁ、ここに居ると酒も茶も供える奴ぁいねぇから久しく飲んでねぇな」

 

「で…俺の特技と言っても良いくらいに自信が有るコーヒーを淹れようと思ってるんだ。ま、気に入らなくてもピクシーやアメノウズメと積もる話もあるだろうからゆっくり楽しんでくれ」

 

「へぇ…珈琲ねぇ。ライドウの奴と喫茶店にゃ行かなかったからな。飲んだ事ねぇんだよ」

 

「ちょうど普及した頃に活動が終わったんだろうな。って事は初めて飲むコーヒーが俺のか。印象決まっちゃうと思うと責任重大だなぁ」

 

「リョウスケちゃん、そんなに深く考えなくても大丈夫よ。どーせクラマに味なんて分かんないわよ」

 

「ウフフ、確かにね。クラマ君ってばいつから変わったのかしら」

 

「俺だって100年もありゃ多少は成長してんだよ!」

 

「盛り上がってる所悪いけど、はいどうぞ。山だからな、アウトドア用マグ四つ持って来て良かったよ」

 

「えー、アタシ苦いの苦手だよー」

 

「ピクシーだって俺の舌に文句言えねぇくらいのお子ちゃまじゃねぇか」

 

「ピクシーも安心しろってきちんとシロップとお茶菓子も用意してあるから」

 

「わーい‼︎」

 

「リョウスケ君はライドウ君よりマメなのよね」

 

「ライドウに比べたら誰だってマメになるんじゃねぇか?」

 

「…確かにそうかも」

 

「…そうね、ライドウ君に比べたら失礼だわ」

 

「どんな人だったんだよ…。まぁ、いいか。ほれ、用意も済んだから各々召し上がってくれ」

 

「おっ、これがコーヒーねぇ…。ふぅん、随分と香るんだな」

 

「ねぇ、リョウスケちゃん、牛乳はないの?」

 

「流石に牛乳は持って来れなかったからフレッシュで勘弁してくれ」

 

「仕方ないなぁ。許してあげよう」

 

「クラマテングはどうする?」

 

「俺はとりあえずそのまま飲んでみるぜ」

 

「私もシロップいただけるかしら?」

 

 

仲魔達はコーヒーとお菓子を片手にここ暫くの話では盛り上がっている様だ。所々俺に理解できない言葉で喋ってる様だが、久しぶりに会ってはしゃいでるだけだろう。そんな3人を横目に俺は呼吸を整え精神を研いでいた。クラマテングは随分フランクな雰囲気をしていたが、時に挑発…って程でも無い程度に俺の反応を伺っていたからだ。

 

 

「なぁ、葛葉の。珈琲、初めて飲んだけどまあまあじゃねぇの。…けどよ、俺がお前に教えるってんならお前は教わる下地を見せてくれやしねぇか?」

 

「クラマ君ってば…」

 

「ウズメん、大丈夫。リョウスケちゃんは分かってるよ」

 

「もちろん。準備はもう出来てる」

 

「かっかっ、結構なこった…。いつでも来な」

 

「よろしく…なっ‼︎」

 

 

何となくこうなる気はしてたさ。力を見せる事を求められてる。流石に勝てない勝負ってのは肌で分かる。けど…ちょっとくらい驚かしてやりてえな!

 

 



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ぶっ飛ばされる稽古は慣れっこだ

物書きの難しさを認識したので初投稿です


俺の目の前で挑発するかの様に佇んでいるのはクラマテング。はっきり言って完全な格上だ。仮に魔反鏡や物反鏡を持ち込みまくったところで泥試合に持ち込めるかどうかってレベルの相手。それに今回はピクシーもアメノウズメにも力を貸してもらう様頼むつもりは無いし2人だってクラマテングの狙いが分かってるから手を出してこないだろうな。

 

 

…やべぇな、古牧先生すら優しく見えそうなくらいどっしり構えてら。おそらくはある程度基礎ができてるかどうかを見たいんだろう。かと言って負けても良いからなんて甘い考えをしてたらそのまま再起不能にまでさせられそうだ…

 

 

「おいおい、勢いあったの最初だけか?」

 

「まだまだ‼︎」

 

爺さんから教わった刀術をクラマテングに見せる様に使う…。正直直撃した所でダメージが与えられそうにも無い。けれどだからって手を出さない訳にも行かないからな。

 

 

「へぇ…、お前さん、ライドウのその辺の技は残ってたか…」

 

「これならっ…煉獄撃‼︎」

 

「ほっ、甘い甘い。踏み込みが足りねぇよ‼︎」

 

「ぐっ…」

 

「クラマ君‼︎」

 

「まだまだぁ‼︎磁霊突き‼︎」

 

「ふぅん、まあまあじゃねぇか?」

 

「…わかっちゃいたけど全然足りないか?」

 

「俺の判断基準になると比較対象はライドウだぞ?アイツに比べりゃ誰だってまだまだ甘ちゃんだぜ?」

 

「先人が偉大だと苦労するな…。ふぅ、来い‼︎『アスラおう』‼︎」

 

「それだよ、気になってたんだぜ。葛葉の連中といた時にゃ見た記憶のねぇ技だ」

 

「山火事はゴメンだからな、流石に魔法はナシだけど…、行けっ‼︎」

 

「っと、中々の威力だな。ちったあ痛そうじゃねぇの」

 

「…まだまだ足りないか。アスラおう、『ギガントマキア』だぁ‼︎」

 

 

俺がアスラおうを呼び出した時に使える最高威力の技、虎の子の必殺技だ。これならクラマテングでもダメージは与えられるだろう、そんな展望を持っていた。しかし俺の渾身の一撃は直撃したかの様に見えたクラマテングにガードこそさせていたがあっさりと抑えられていた。

 

 

「おいおい、流石にちょっとびっくりしたぜ。ミエミエの力の動きの分反応できたが…中々の威力じゃねえか?」

 

「マジか、これ以上の威力は出せねぇわ。それこそ仲魔が必要になる」

 

「お、アタシの出番?やっちゃうよー、クラマ相手に『ジオ』は…効果バツグンだからねぇ」

 

「あら、私の『ザン』は相性悪いのよね…そうなると支援に回ろうかしら?」

 

「ゲッ、お前ら相手にすんのは勘弁しろって‼︎特にピクシー、テメェの雷おっかなくて仕方ねぇんだよ‼︎」

 

「あー、2人ともとりあえず一旦は終わりだ。クラマテングに見せられるだけは見せたよ」

 

「ひやっとしたぜ…。俺は雷だけはダメなんだよ…。あー、気もそがれたしお前さんの評価に入ろうか」

 

 

俺にやれるだけの事はやった。毎日コツコツ続けていた稽古のおかげでこっちの世界で『アスラおう』を呼ぶのも大分スムーズになったし、呼ぶだけなら消耗だって少なくなった。現にちょっと前まではギガントマキア1発でヘロヘロになってたからな。その辺の変化はクラマテングには分からない。だからこそ現時点の俺の評価をしてくれるだろう。




作品によって弱点属性がブレブレなクラマ君。今回は雷が苦手な彼にしました。だから雷が得意なピクシーに頭が上がりません


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いわゆるステータスが足りてない

いい加減花粉が終わって欲しいので初投稿です


「で、クラマ君。貴方から見てどうだったのよ」

 

「あ、アタシも聞きたい」

 

「俺はライドウがヘッポコだった時から知ってるけどよ、そこそこのトコまでは来てんじゃねぇか?葛葉の一族とはいえタダのニンゲンから教わったにしちゃあ十分じゃねぇの。けどよ、お前らはそう思ってねぇんだろ?」

 

「そうね、今でこそ低級悪魔と悪魔のニセモノ連中だから十分といえば十分だけど…」

 

「ある程度強くなる範囲ならリョウスケちゃんが成長する範疇で収まるんだけどね…」

 

「あぁ…急につえーの出てきたら困るよなぁ」

 

「まぁ、2柱の言う通り現時点で困ってるわけじゃないんだ。だが、困ってから鍛えても間に合わないだろう?成長の余地って言うならあの『アスラおう』を使った戦い方もまだまだ甘いってのは自分でも思ってるし」

 

「そうだ、()()なんだよ…。流石にびっくりしたぜ。お前の力量なら手傷負うこたぁねえと踏んでたんだがな」

 

「ああ、ペルソナの事か。俺の精神を具現化したってのが簡単な話かな。精神を神話の登場する様な神や悪魔に投影してるから『アスラおう』なんだよ」

 

「それでアスラおうか。…流石にあの旦那程の力は無さそうだな」

 

「実際にアスラさんを身に宿すには流石に厳しそうじゃない?」

 

「アスラさんだもんねぇ…」

 

「旦那だもんなぁ…」

 

「みんなは知り合いなのか?」

 

「まぁ、アスラの旦那はライドウの奴の仲魔でも切り札ミテェな人だったからなぁ…。旦那を使う時なんてよっぽどもよっぽどのヤベェヤマん時だったな」

 

「そうねぇ、私ら見たいな戦闘向きじゃない仲魔は出番も無かったわね」

 

「おいおい、ウズメやピクシーだけじゃねえって。俺だって旦那が出るような戦いなんて役に立たちゃしねぇよ」

 

「えっと、そんな仲魔と戦わなきゃならない事件があったのか?」

 

「まぁな、そんなことは良いんだよ。お前のぺるそな?だったっけ、アスラの旦那に似てるけどアレは俺ら悪魔にも十分効果がありそうだぜ」

 

「なーに勿体ぶってんのよ、そんな事はアタシもリョウスケちゃんも知ってるわよ。実際に使って戦ってるんだから」

 

「待て待て、そのぺるそな頼りにしてたらキツそうだから色々と模索してんだろ?」

 

「そうだな。ペルソナに頼ってるとどうしても長く動いてられないのさ」

 

「だろうよ、ありゃあお前さんのマガツヒを大分食ってたぜ。最初に見せた葛葉の技もまあまあなキレだったしなぁ。ま、ライドウ程身体が出来てない分俺にゃあ届かねぇってだけだわな」

 

「…なんかクラマな奴ってば嫌味ぃ」

 

「で…だ、俺としても仲魔になってやっても構わない気はある。ケド…」

 

「さっさと言いなさいってば‼︎」

 

「分かってるよ、ちったあカッコつけさせろって」

 

「むぅ…」

 

「ほら、ピクシー、落ち着きなさいって」

 

「ここ、鞍馬山に来れば稽古はつけてやる。そん時に刀で俺に傷を付けられたら仲魔になってやるよ」

 

「もがもがもが‼︎」

 

「ふふ、ピクシーそう怒らないで構わないって。そっか、分かったよ。来年にはまた来る。その時に頷かせて見せるさ」

 

「おう、その間にライドウの技を思い出しといてやらぁ」

 

 

 

なんて事はない、俺の力不足による失敗ってトコか。ま、仕方ないか。それでも悪くない印象だったし稽古も付けてくれたんだ。十分に得るものは合ったさ。ピクシーのフラストレーションが爆発する前に退散するとしますかね…

 



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人の記憶に残る事

ゴルフ知らない私でも感動したので初投稿です


クラマテングが仲魔となってくれるには俺のスペックが足りなかった様だ。それでも見込みがない訳ではないみたいだからこそ稽古を付けてくれたんだろう。まぁ…稽古といってもぶっ飛ばされるだけだったけどな。それもエリザベスとのやり取りで慣れたもんだしな…悲しいけど。

そして、夕方に差し掛かるころ俺はクラマテングの下を去った。

 

 

そして改めて峰津院の家へと帰ってきた。…話が気になって仕方ないのか雅さんが既にスタンバイしてるぞ。実は悪魔関係に興味津々な人だったんだなぁ。

 

 

 

「ねぇ、リョウスケ君…テングは本当に居たのかい?」

 

「…随分がっついてますね。まぁ、気になるのも分かりますけど」

 

「何だい、構わないじゃないか。僕に悪魔が存在するって教えたのは君だよ?それに、鞍馬山のテングなんて無茶苦茶有名じゃないか。それに土産話を期待させたのも君だろ?」

 

「そうですけど、あんまりにもがっつかれて驚いたんですよ…。それで、クラマテングですか。きちんと会えましたよ」

 

「っと、その言い方だと仲魔にはなってもらえなかったのかい?」

 

「ええ。もう少し俺自身が戦える様になってからなら考えてもいいって感じの話でしたね」

 

「ふぅん、そうなのか。やっぱりテングだけあって強いのかい?」

 

「戦闘面で言うならお見せした2人の仲魔よりもよっぽどですね。魔法の相性があるので実際に戦うとまた話は変わりますけど」

 

「へぇ…そういう事もあるのか。で、義経伝説の話は聞いた?」

 

「…そんな話はしなかったですね。確かに鞍馬山の天狗は伝承に出てきますし、その伝承によってクラマテングが形成されてる部分もありますけど、それとクラマテング本人が同じって事にはなりませんよ。それこそ記憶があったとしても伝説上のヨシツネとの関係性でしょうね」

 

「えっと…伝説上の登場人物になると話が変わるのかい?」

 

「そうですね、伝説、伝承に語られた人物って人々に話をされる事でカタチ創られるんですよ。その辺りは神話と一緒ですけど、その物語の中の人物像って実際とは解離しているわけですよね。人間にはどだい無理な逸話だって残ったりしてるじゃないですか」

 

「まぁ…ロマンは無いけど、言いたい事は分かるよ。実際の源義経と義経伝説の義経はある意味で別人って訳だね」

 

「そうですね。便宜上伝説になってる様な人物は英雄や英霊と言ったカタチで悪魔となっていますね」

 

「ん?英雄も悪魔なのかい?」

 

「これまた便宜上なんですけどね。物語によく出てくる様なヤギ頭の悪魔はバフォメットっていうちゃんとした名前があるんですよ。俺や歴々の悪魔召喚師が言う悪魔って個を確立している精神生命体みたいな奴らの総称ですよ」

 

「なるほどね…悪魔っていいイメージのない言葉だったけど、君が使うのは総称としてだったんだ。…って事は英雄も仲魔になるのかい?」

 

「なるでしょう。もちろん、相手が出す条件を全て満たせばですけどね」

 

「うわぁ…それはまたすごい話だなぁ。いやぁ、リョウスケ君が来て一番楽しんだのは僕かも知れないなぁ。疲れてるのにごめんね」

 

「あはは、大丈夫ですよ。短い間でしたけどお世話になりました」

 

「あっという間だったね。明日帰っちゃうのか。ま、学生の本分も忘れちゃいけないからね。次来る時までには僕も少し家捜ししておくよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

雅さんとの話もそこそこに峰津院に滞在する最後の夜は終わった。明日からはまた東京だ。流石に八十稲羽に寄る時間もないからな。そろそろ高3。また学園には色々と入ってくるんだろうな…。



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2008年(p3本編1年前)
新生活と振り返り


お久しぶりに初投稿です

忙しさと体調不良で筆が止まってなかなか踏み出す事が出来ず申し訳ありませんでした。以前のように毎日…とはいかず、不定期になってしまうかもしれませんがまた再開したいと思っております。


早いものでもう高校三年生か。つまり、この不可思議な世界ではっきりと自覚を持って動き出して3年目な訳だ。色々と俺自身を取り巻く環境は()()()()()()()部分もなくは無いんだが…そこはお膳立てされたと思って利用してやるくらいの気持ちで行けばいいだろう。

 

 

そういえばこの間のクラマテングは初見で仲魔になる条件を満たせなかったはじめてのケースだったな。まぁ、ピクシーはともかくアメノウズメに関しては協力的な上にヒナコさんって言う俺の交友範囲の中だけでなく舞踊の専門家としても屈指の人が居たからなんとかなったんだけどな。アレは今考えてもラッキーだったのか()()()()()()()のかは今となっても分からないし、これから先も分からないままだろうし、そこに関して深く考えても仕方ないんだけどな。

 

…俺としては強くなったつもりだったし、実際この2年で強くなったのも間違いは無いんだ。けれど、葛葉ライドウさんと共に戦っていたゴリゴリの戦闘向き仲魔であるクラマテングからすればまだまだ足りないって事なんだろうな。まぁ、戦い方を教えてもらう為に京都に行ったんだがクラマテングからすれば身体のレベルが足りて無いから出直してこいって感じなんだろうな。俺としてもアスラおうのフルパワーでもかすり傷程度にしかならなかった事を考えたらまだまだ強くならなきゃならないんだろうな。

 

とはいえ、これから受験ってなるとなぁ…。流石にほっぽらかしてメメントスで狩りを続けるわけにもいかないしな。関東圏で国公立って考えると選択肢あんまり無いしなぁ。幸い高校は進学校だし普通に対策をすれば何とかはなるだろう。メメントスとベルベットルームに関しては夏休みを過ぎたら息抜き程度だな。

 

 

…そういえば武治さんとかには話したけれど、4月には岳羽ゆかりと伊織順平が入学してくるんだな。順平に関してはペルソナの覚醒はまだ先だろうからそこまで気をつける必要は今のところ無いんだが…、問題のゆかりはなぁ、間違いなく幾月は把握してるだろうしなぁ。なんせ幾月が罪を()()()()()()研究者の娘だ。桐条のお偉いさん方も岳羽家に上手いフォローができてない分幾月に入り込まれてる可能性は十分にあるからな。ま、俺がどれだけ考えをこねくり回したところでどうせ向こうから美鶴ちゃんや明彦君に接触してくるのは既定事項みたいなもんか。既にペルソナ使いとして覚醒しているのかどうかは分からないけど()()の時点であの慌てようだし幾月もストレガの連中と違って過保護にもしてるだろうから実戦経験はナシなのかな?俺が知ってる世界に比べて美鶴ちゃん世代も大分頼りになるレベルなうえに探索範囲も入り口も入り口だから大丈夫だろう。あの子らに気をつけるよう伝えておけば十分かな。

 

 

足が遠のく話は協力してくれてる皆に話をしとかなきゃならんな。…フミさんとか妙さんには「そんな事なんてどうでもいいから来なさい」って言われそうな気もするけど、そうなったら何か興味を引くモノで気を逸らそう。あの人達には敵わないからなぁ。

 

しっかし、気晴らしでシャドウ狩りするかも知れないと思うと俺も大分バイオレンスな思考になってきてしまったのか?…自分の変化ほど自覚することは難しいからこれ以上考えるのはよそう。それにメメントスは集合無意識で構成されてるからこそ多くの人の気分に出てくるシャドウも引き摺られるからな。

 

…なんせインフルエンザが流行してるシーズンなんて気鬱が「刈り取る者」にすら伝染するからな。タルタロスやマヨナカテレビに出てくる奴を見習ってほしいくらい…ってペルソナ5Rじゃあ修正されてたっけ。この世界はゲームの世界じゃあなくて、あのシリーズ似たような歴史を辿ってきた世界…だとするならば「刈り取る者」がどうなるかなんて分からんか。ベットしてるのはコンテニューできるゲームなんかじゃあ無いんだ、予想出来るポイントで楽観するのはよくないな。ヤバイ奴から逃げる方法も考えとかないと行けないな。

 

となると『トラフーリ』の魔法か。確か、ハイピクシーとかモスマンが覚えたっけか?それか、怪盗団よろしく『ドロン玉』とか『煙幕』あたりの道具でも作ってみるか。シャドウ由来の素材を使えばそれらしいモノができるかも知れないし、こういう異界で役立つ道具の恩恵は俺以外にも与れるだろうし。モルガナの手で作れたんだろうし、そう言ったアプローチが出来そうだという相談をフミさんにしておこう。

 

 

…ま、先のことばっかり考えてても仕方ないか。いらないヘマしでかさないように足元にも気をつけてこの一年頑張りますかね。

 

 

 

 

 




間隔が空きまくったのでざっくりとしたリョウスケ君のスペックです。
リョウスケ君はペルソナ使いでありサマナーでもあります。

現時点の仲魔など…
ペルソナ   アスラおう
仲魔 ピクシー アメノウズメ 
協力者 クラマテング 菅野フミ 葛葉一族 ベルベットルームの住人たち

世界観はペルソナ世界の流れの中デビルサバイバー2のキャラクターが生活しています。スティーブンはいませんし、フミさんもターミナルを作って無いです。なので悪魔召喚プログラムは人間側から生み出されることはありません。すなわち悪魔を使役するには古来の召喚術に頼ることになりますし、悪魔合体も現状難しいです。

登場しているペルソナ使い達とは成長の仕組みが違うのでリョウスケ君は肉体的に強くなってます。ペルソナシリーズはシステム上ペルソナが成長するので仕方ないですけどね。
決定的に違うのはペルソナ使いでありながら本人も魔法が打てる素養があることです。ここも成長の仕組みが違うからこそです。

悪魔とシャドウの違いについて

いわゆるメガテンやデビサバ2と言った世界で登場する『悪魔』は神話や伝承に登場している『悪魔の分霊』です。一方『シャドウ』はヒトの心が集まって『悪魔の形を模したモノ』です。ですのでこの作品に於いては基本的に悪魔の方が強いです。しかしシャドウを象るココロのリソース次第ではひっくり返るかもしれません。1番の違いは現世への影響力を基準に考えております。つまり、影響力があるモノを『悪魔』ないモノを『シャドウ』と区別しています。なのでペルソナ本編に出てくるようなラスボスクラスの連中は本作では『悪魔』として認識しております。


刈り取る者…ダンジョンに出現する超強力エネミー。ガチンコで倒すならシリーズラスボスなんかよりよっぽど強い。状態異常無効なハズがメメントスの日程特殊イベントで戦闘開始時に付与される状態異常を無効に出来なかったので特定日にシチュエーションを揃えるだけで勝手に自滅してしまう事がある。この方法を使うと経験値を荒稼ぎ出来てしまうのでゲームバランスが崩壊するレベルでチョロかった。流石にバージョンアップ版のロイヤルでは修正されて見事復権を果たす。



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俺が居なくても時間は進む

ちょっとずつ書き始めたので初投稿です


「ふーん、キミが持ち込んできてる素材を使って開発して欲しい…ねぇ?」

 

「はい…。と言っても実現できたらいいなぁくらいで思ってますけど」

 

今年一年の方針を考えた所でフミさんに相談すべき事柄もあったので4月に入ってすぐ相談へと向かっていた。相談とはもちろん便利なアイテムが作れないかどうかについて。一応記憶と想像を頼りに『ドロン玉』や『煙幕』らしきモノを拵えてきている。

 

「あ、アタシにそんな事言っちゃうんだ?」

 

「いや、フミさんのことはもちろん信頼してますし、フミさんならモノにしてくれると思ってます。ただ、流石に今年ばっかりは今までのペースで動けなくなるんで…」

 

「ま、そこら辺はアタシだからね。それに、スタートとゴールが揃ってるなら何とでもなるわよ。…忘れてたけどキミ、受験生なのよね。別に日本の大学なんて行かなくってもいいんじゃ無いの」

 

「俺の活動に活かせるんじゃ無いかと思いましたね。民俗学とか神学、仏教学なんて分野…大学くらいじゃ無いとできませんから」

 

「言っちゃあなんだけどニッチだもんね。まずもってお金にならないし…。資料なんかも一般人よか手に入りやすいのは間違いないわね。…仕方ない、許してあげる」

 

「フットワーク軽い方が方々で()()()絡みの異変起きた時に動きやすいですしね」

 

「確かにねぇ…、滅多にあるもんじゃ無いと思いたいけどひと知れず起きてる異変はあるのかしらね?」

 

「いわゆる怪事件のいくつに神秘(オカルト)が関与してるかは分からないですけど、あるでしょうね。それこそセベク事件とか珠閒瑠の事件とかはそうですからね」

 

神秘(オカルト)が起こした事件が何よりヤバいのは、解決出来たら()()()()()()()()()()()()()()()事になりがちな事だ。事象改編…それも全人類に対して行われたレベルの可能性すらあると思うとゾッとする。…それもそのハズか。『女神転生シリーズ』の黒幕って言えばアカシックレコードの編纂くらいやってのける連中ばっかりだもんな。なんならデビルサバイバー2の『ポラリス』なんてアカシックレコード其の物みたいなモンだったしなぁ…。ペルソナシリーズも人の想いが集まって具現化したような連中ばっかりだし、悪魔よりタチが悪い部分もたくさん有るな…。

 

 

「ま、このアタシにかかればどんなオカルトも解明してあげるわよ。実行部隊はアンタってとこね」

 

ちょっと考え込んでいたらそう言われてしまった。確かに俺1人じゃ大変だろうがこうして協力してくれる人がいる。

 

「ええ、頼りにしてます。とりあえずは依頼の品お願いしますね」

 

「うん、他にも素材と雛型でも有れば作ってあげられるかもしれないからいつでも相談に来なさい」

 

 

 

フミさんにお願いする事と直近の方針について話す事ができた。後輩君たちにもタルタロスで手に入るアイテムを少し見せてもらえないか頼んでみよう。採れる選択肢が増えるのはいい事だからな。

 

 

 

 

分かってはいた事だが、高校三年生ともなると中々時間が取りにくくなってしまったな。何とか鈍らない程度に身体を動かしてはあるんだが、クラマテングに認めてもらえるようになるには随分と延びてしまったかもしれないな。…メタいが主人公が大体高校二年生で物語が始まるのは先輩後輩がいるに加え時間がある事が不自然じゃないからだろうな。まぁ、『番長』に先輩居なかった気もするけど。

 

 

なんて何でもない事を考えてると声をかけられた。

 

「お、センパイじゃねぇっすか」

 

「ん?真次君か、そちらはどうだい?新人とか入ってきたんだろう?」

 

 

声を掛けてきたのは真次君。去年の今頃は制御薬の服用もあってか近寄らせない雰囲気もあったが、大分丸くなったもんだな。そんな彼、彼らのチームに()()()()新人が来たみたいだ。

 

「そうっす、1人来ましたよ。岳羽ゆかりって後輩ッス」

 

「ホラ、例の寮住まいでかつ弓道部みたいだからね。部活動の方でネットワークもあるのさ」

 

「…まぁ、特別寮住まいじゃあウワサにもなりますわね」

 

 

ちょっと新人ちゃん絡みで苦労してるみたいだ。元々面倒見が良い性分に加え精神的な成長をしている分、良くない雰囲気に当てられてる様なものかな?

 

「雰囲気は…あんまり良くなさそうだね」

 

「…そっすね、どうにも美鶴と()()が合ってないみたいなんで」

 

「…大人が悪意を持って情報を偏らせる事の怖さここに極まれりだね。とはいえ現時点どうしようもないし、俺も接点なんて無いからね。君と明彦君任せにはなっちゃうか。ま、君らも去年よりちゃんと大人だし先輩らしい事をしてみなよ」

 

「そりゃあ重大っスね」

 

「美鶴ちゃんはともかく君たち2人の悪感情は植え付けられてないだろうから、やっぱり君たちの役目だよ」

 

「まぁ、俺もアキもセンパイに助けてもらった様なモンですからね。俺らも後輩の面倒を見る番ってことっスね」

 

「ふふ、面倒を見る側になる事で見えてくるものあるさ。それに君たちの近くにいるあてにならない大人(幾月修治)はともかく、失敗してもまだ取り返しはつくさ」

 

「そんなもんですかね?」

 

「そう、そんなもんなんだ。取り返しがつかない事なんて殆ど無い。あるとすればタルタロスを甘くみた時…位だろうさ」

 

「……そうっすね、慣れた頃にってのは良く聞きますし。またアキのやつコテンパンにしてやってください」

 

「そうだね、事故が起きる前に一度君たちまとめて相手してあげようか」

 

「うげっ、ヤブヘビじゃねぇっすか!」

 

「はは、この一年の成長を見せてくれよ。じゃあ、また」

 

「はぁ、マジかよ…。…あざっした」

 

 

 

告げた通り頃合いを見てまとめて相手をしようか。現世で召喚出来るなら良いんだけど、タルタロスや影時間で動くにはちょっと派手だろうし…。桐条の施設もまだそこまで信用できないしな。何か考えておこう。



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こういうタイミングもある

背中の痛みがヤバイので初投稿です


高校生最後の一年はあっという間に時間が過ぎていく。ゴールデンウィークも過ぎてもうあっという間に部活の引退時期だ。ま、一応副部長だったとは言え、この一年は古牧先生に色々な所に派遣されっぱなしであんまり居ない人だったんだよなぁ…。特に一年生からはやたら強いヤベー奴って認識されてるっぽい。と言うのも既に学園内外で有名高校生ボクサーになってる明彦君が武道場にいる俺を見つけるとしょっちゅう挑みにくるからだ。美鶴ちゃんは嗜めてくれてるみたいなんだがどうにも堪える様子は無いようで、改善の傾向は見られてないのが俺のウワサに貢献してるよね…。露骨に一年生が避けてく様子は流石に心にクルモノがあるよね。

 

 

 

「俺たちももう引退かぁ…」

 

「流石は芝原合気道部部長、後輩達に惜しまれてたからなぁ」

 

「リョウスケの場合中身知ってもらえるまで避けられてるからなぁ。部内最強はダテじゃねーわ」

 

「俺そんなに厳しくしてないんだけどなぁ…」

 

「…お前そりゃあの先生とやり合ったり真田とやり合ったりしてんのみんな知ってるからだよ」

 

「どっちも向こうから来るから仕方ないだろ…。これで引退したって言ってもまだ場所の都合付けて来そうなのがあり得るんだよなぁ」

 

「こうやって人外センパイ伝説が生まれてくのか…」

 

「嘘だろ…そこまで言われてんのかよ…」

 

「自覚ねーのか?先生も大概だけどその大概の先生とバチバチの組み手やってりゃそう言われるって。っておい、なんだよその可哀想なモノを見る目は?」

 

こう言う話をしてると本人が後ろにいるってのはお約束だけど、ホントに鉢合わせすると可哀想なモノを見る以外のリアクション取れないもんだな。

 

「…ほう、追い出しの稽古は遠慮しておいてやろうかと思っておったが流石は先代部長殿よ、自ら所望するとはな」

 

「うぇっ⁉︎セ、先生⁉︎」

 

「がんばれ芝原、俺は別件だ」

 

「仕方ない、リョウスケの分まで堪能してもらおうかの」

 

「マジかよ〜…」

 

 

 

うん、まさに不必要な発言が首を絞める事になったな。…物理的にもだが。しかしあれだな、高校三年生の立場になると良く普段の生活と並行して異世界関連の事件に取りかかれるもんなんだな。まぁ、その普段の生活が脅かされると思えば不思議でもないのか?むしろ俺がそこまで焦ってなんとかしようとしてないからなのかもしれない…。

 

 

 

 

「お久しぶりでございます。…もう少し客人としての意識をもっていただきたいですが、ヒトの世界で生きるために必要な事。ええ、私たちの元に訪れる頻度が少なくなっている事は仕方ありません。ええ、姉上もラヴェンツァも、もちろん私もナニも思うところなど有りませんとも、ええ」

 

 

帰ろうとした矢先、見慣れた青い扉が探偵事務所のある雑居ビルの脇にあると思えばこんな事を言われた。…言葉通りに受け取れるほど甘くは無さそうな感情がこもってるな。彼女ら()()()()の住人が放つ恨み節はちょっと背筋が冷えるな。

 

「…あー、悪かったよ、エリザベス。すまないとは思ってるさ」

 

「おや、謝罪なさるという事は…何か悪い事をなさっているのですか?」

 

「そういうわけじゃ無いけどさ、何というか申し訳なさは感じてる…とでも言えばいいかな」

 

「ふぅむ、左様でございますか。…呑気な回答であるのならまだしも嘘では無さそうなですわね」

 

「お姉様、リョウスケ様を困らせて楽しむのはそこまでにしてくださいますか?」

 

 

エリザベスの軽口とはいえ、協力してもらっている身にも関わらず俺の都合で身動きが取りづらくなってしまっている現状に申し訳なさを覚えているからこそ謝ることしかできないと思っていたら扉からもう1人、ラヴェンツァが出てきて声をかけて来た。

 

 

「あら、私としてはそんなつもりしかありませんでしたが…何か不味かったでしょうかリョウスケ様?」

 

「…わかってる、負い目を見せた俺が悪い。それこそありきたりな埋め合わせは必ずする…これくらいしか言えねぇよ」

 

「はぁ、お姉様ったら。寂しいからと言って本人で気を晴らすのはおやめ下さい」

 

「むぅ…しばらくはこの方法でタカ…おねだりするつもりでございましたが…、妹に見つかってしまっては姉として少々よろしく無いですね。仕方ありません、探偵事務所のポストに入っていたコチラのチラシ…ケーキセットをいただければ私の機嫌もたちまち良くなるかも知れません」

 

「…エリザベス、他人ん家のポストを開けるのは良くないぞ」

 

「はっ⁉︎いえ、これは、その…そう、見えてしまったからです。ですから仕方ありません。ええ、きっと日頃の行いが良い私に見えるよう投函された…言わば私に見つかる運命だったのでしょう‼︎」

 

「お姉様……そうだったのですね‼︎」

 

「ラヴェンツァ⁉︎」

 

「ええ、貴女なら分かってくれると思いました。さあ、リョウスケ様、如何でしょう?」

 

 

ストッパーになるはずのラヴェンツァもまさかの天然を発揮し何故か追い込まれてしまった…。まぁいいんだけどさ。俺としても今年の方針の相談と報告したかったし。

 

「分かったよ、好きなのを選んでくれ。ピクシー、君も行ってきな」

 

「わーい、エリちゃん選びましょ‼︎」

 

「それはいいんだが、エリザベス、用件は他にないの?」

 

「…?これ以上何か優先するべき事項がありますか?」

 

「…あー、うん、邪魔して悪かった存分に選んでくれ」

 

「(これで手打ちと致します。人の世でなすべき事をなさってからまたおいでください)」

 

「お姉様、選びましょう‼︎」

 

「エリちゃーん、早く早く!」

 

「…ありがとう、エリザベス」

 

「(ふふ、たまには宜しいでしょう。)さぁ、私も手加減は致しませんよ!」

 

 

 

エリザベスなりに気を遣ってくれたらしい。…もしエリザベスが担当を受け持つならこんな風にやり取りする機会も減るだろうか。…エリザベスだしなぁ、普通に街ですれ違いそうな気がするな。ふふ、そんな未来もあるだろうな。…()との邂逅はどうなるのか、それもまた楽しみになって来た。

 



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羽を伸ばしてたら考えが捗る

涼しくなってきたので初投稿です


構わないと言ったとはいえ容赦なく注文したなぁ…。ケーキ屋さんにさぞめでたい事があったのか聞かれたくらいだ。まぁ、ベルベットルームの三姉妹とピクシーにアメノウズメが居ればそんな事にもなるか。去年までは準備に時間かけられたけど今年の趣向は世の中の体験とでもすればいいか…。力を司る者が現世に興味を持つのは最早伝統だし、それが3人も居るとなると賑やかだな。相変わらず割を食ってるテオに差し入れだけは忘れないようにしておかないとな。

 

 

 

 

こうして夏休みまであっという間に時間は過ぎた。ま、夏休みだからって出来る事は特に変わらなかったんだけどな。どうしても行きたい大学は国立な分対策は疎かに出来ないし。とはいえ気分転換も必要という事でサッと温泉でも行くかと思い2、3日ほど神社に訪れる事にした。当然道場へと連れ込まれた訳なんだが…

 

 

「ふむ、思ったよりも鈍っておらんの。それもまた学生らしいものかと思っておったが…、()()()の影響もあるんかの?」

 

「確かにトレーニングは減りましたけど、瞑想と時々古牧先生に呼び出しされてるおかげ(せい)ですかね。…あとは()()()の活動で肉体レベルが上がってる部分も確かにあると思います」

 

「まぁ、リョウスケならそこまでウカツな振る舞いもせんじゃろうて」

 

「実際に顕現する悪魔が出て来たら別ですけどね。それに身体動かして食ってくつもりも有りませんから…よっぽどの事がない限り人並みの動きしかしませんよ」

 

「そのよっぽどが来なきゃええがの…。それより今年はすぐ帰るんじゃろ?時間もないんじゃ、早う温泉でも行って来い」

 

「はい、じゃあ行ってきます」

 

 

もう神社から旅館までの道程をランニングするのも慣れたな。夏…とはいえ山中だから風が心地良いくらいの気温で走りやすいんだ。ま、冬は辛いけど。こう言った寒さって氷結魔法の耐性持てば平気なったりするもんなのかね?なんて事を考えてたら着いたな。…バイト断っておいてる身ながら歓迎してくれるなんていいところだよ、ほんと。

 

 

「あら、お久しぶりね。…お手伝い残念だけど受験なら仕方ないわね。あの子ならすぐ来るから。雪子!リョウスケ君来てるわよ!」

 

「いやぁ、厚かましく遊びに来ちゃって…、板さんにも謝らなきゃと思ってます。っと、雪子ちゃん久しぶり。中学は楽しい?」

 

「久しぶりだね、お兄さん。もう、小学生じゃないんだから……楽しいけど。千枝も居るしね」

 

「今回はすぐ東京帰っちゃうからなぁ。とりあえず雪子ちゃんと千枝ちゃんと…完二君にお土産。出来たら渡したいけど…出来るか分からないからなぁ」

 

「うふふ、明日3人で約束してるの!みんなで川遊びでもって。お兄さん居るならお母さんも良いって言ってくれたから。…どうかな?」

 

「ホントかい!いやぁ、今年はタイミング合わないかも…って思ってたんだけど気を利かしてくれてありがとう。あ、そうだ、ダイチさんとヒナコさんは部活の合宿に顔出すかもしれないって言ってたから来たらここにも顔出すだろうね」

 

「ホント‼︎」

 

「絶対って話まで聞いてないんだけど…雪子ちゃんが楽しみしてるって伝えておくよ」

 

「雪子、そろそろ案内なさいな。お風呂入ってからゆっくりしてもらいなさい」

 

「いけない!そうだった。じゃあどうぞ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

やっぱり温泉良いものだ。人間リフレッシュ必要だな。…流石に高3でコレは疲れ過ぎか?まぁ、志望校もギリギリってわけじゃないし偶に息抜きもいいだろ。東京から離れて束の間の…若しくは鬼の居ぬ間に…ってやつかな?

 

 

温泉にピクニックと楽しい数日間だった。とはいえ中学生になった雪子ちゃんと千枝ちゃんを見るとこっちでの事件もそう遠く無い事が頭にチラつくのがな…。それと、残念な事にヒナコさんやダイチさんとは入れ替わりになってしまう事になったが。さっさと受験終わらせて皆んなで集まれるといいけどな。

 

 

帰り際の電車の中、俺なりに考察を進めていた。…八十稲羽の街はいつからおかしなことになるのか。今のところそんな気配は無いんだけど、確か…伊邪那美大神、いや、土地神イザナミが集合無意識から生み出されたんだったか。時代の流れが背景なんだろうが、郊外に出来た大型商業施設…「ジュネス」が地元の経済に直撃したのもきっかけの一つなんだろうな。土着の神様と人々の意識…それだけであんな事態になるって言うなら日本各地でもっとオカルト事件が蔓延してるんだろうけど、ウチの神社が近いって事はここら一帯が霊的なパワースポットだったのかもしれないな。というかそれ位の理由が有ってくれないと気にしないといけない範囲が多すぎる事になるぞ…。

 

 

少し考えが飛んだが、結論として八十稲羽は様々な偶然が折り重なる舞台なんだろうなという事だ。そしてその事件の解決は…俺1人じゃ難しい、というか()()()()()だろうな。その土地に住む人が緩やかな破滅を望んでいる様なものだからだ。結果八十稲羽にある集合無意識が生み出した異界がマヨナカテレビとしてイザナミに利用されたんだろう。…ある意味、集合無意識こそが人の望みってのは間違いないんだが、どうにも『人間』じゃない連中はハッキリした答えを求め過ぎるんだよな。それを見せる意味でもイザナミが目を付けた「番長」が答えを出さないと行けないのかもしれない…。

 

 

 



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一足お先に…

寒暖の差が激しいので初投稿です


夏休みはつい八十稲羽をめぐる問題について考えすぎたけれど目下のところ考えるべきはタルタロスの方だったな。もう一年とそこそこでなんとかしないといけないからな。ストレガの連中と幾月の動きが把握出来てないってのは後手に回る原因だわなぁ…。まぁ、真次君のトラブルを防いだ分そこの接触がイマイチわからなくなった所為でもあるんだが。

 

 

滅亡思想のストレガと自分なら制御できると思い込んでる黒幕気取り…どっちもどっちだなぁ。武治さんには改良型の制御薬と薬に頼らない方法をそれとなく流したんだがストレガの連中まではどうにも届いて無いっぽいらしい。タカヤとしても今更アフターケアされたところで、幾月としても紐付きを逃すつもりも無いってな思惑の兼ね合いだろうか。まぁ、武治さんがグループの黒いところを御しきれなかったのが悪い。そりゃあ助けられるなら助けてやりたいが、助かる気が無いってんなら骨を折る気にならんよ。

 

 

ここ2年ほどメメントスで活動してきて思う所もある。異界を生み出すほど集合無意識ってのは侮れないんだ。まぁ、数の暴力の恐ろしさもあるし、東京って土地だからこそ構成されたってのもあるんだろうが、タルタロスがもたらす影響はそこまで強いのか疑問ではある。シャドウの母体、ニュクスだったと思うんだが、たしかに概念を与えた存在であるならば強大な悪魔だと言える。実際、休眠状態でありながら異界の形成と現世の人間に影響を与えるだけの力があるんだからな。

 

けれども、それにしては範囲が狭いような気もするんだよな。無気力症候群にしても影時間に迷い込んだ一般人からシャドウが抜き取られてしまう…そんなところだろうか。まぁ、低く見積もってニュクスが到来することによって引き起こされる滅びを試すわけにもいかないしな。やれる事があるのならやるだけなんだが…、どんな事が出来るかねぇ。流石に影時間で活動できないなんて事は無いと思うんだが、どうにも入るタイミングが無かったのがな…。

 

 

…結局のところ来年タルタロスが動き出してからか。その時になるまで分からないってのは中々辛いな。出来ることも俺自身を強くする位しか無いな。うーん、物事の可能性を知っていたとて出来ることが備えるだけってのはもどかしい。まぁ真次君が離脱してない、明彦君や美鶴ちゃんがちょっと強くなってるってだけでもマシか。…スポット参戦するならそれなりに強キャラじゃないとがっかりだよな?不甲斐ないと後が怖いな。メギドラオン何発飛んでくるか分からんぞ…、受験終わったらすぐリハビリ出来るプラン考えなきゃな。

 

 

 

 

 

 

夏休みが終わったと思えば時間の流れは早い。去年なら修学旅行も有ったが今年は無いから余計にあっという間だ。大学の受験もいよいよだ。…国立大学でマイナー学部だからこそ推薦の枠が学園に来てるって素晴らしい。一般より3ヶ月位早く終わる可能性が出てきたんだから。コレに関しては桐条様々だ。…理事長にも一応感謝しておかなきゃか?うん、思う存分叩き直す事が俺なりの礼だと思ってもらおう。

 

 

「あ、葛葉君。貴方、大学受かってるわよ。さっき連絡があったから」

 

「鳥海先生、ホントですか?連絡、ありがとうございます」

 

「君は手がかからなかったから内申も良かったしね。…いけない、今のは聞かなかったことにしてね」

 

「あはは、ありがとうございます…。マイナー分野なんで枠も少なくて心配だったんですよ」

 

「そこはウチのブランドよね。それじゃ、また連絡があると思うから」

 

「はい、わかりました」

 

 

 

…備えあればという事で一般の準備もしていたんだがそれも要らなくなったな。やったぜ。という事で各所に報告と行くか。

 

「ま、お主なら当然じゃわな」

 

「ずりーなぁ、リョウスケもう勉強しなくていいんだろ?」

 

「それなりに課題はあるんだがな。ま、各地伝承とか十八番だからそこまで苦労はないな」

 

「…どっちもどっちだな。はぁ…早く俺もキャンパスライフを楽しみたいぜ」

 

 

芝原からは最早定形文をもらった。古牧先生は信頼しててくれたらしい。

 

 

「ブリリアント!おめでとうございます」

 

「…では、久しぶりにスパー、構いませんか?」

 

「アキ、順番おかしいぞ…。あー、おめでとうっす」

 

「あはは、ありがとう。明彦君らしいじゃないの。けど流石にサビ落としさせて貰いたいね。そしたら君たちまとめて久しぶりに相手しようじゃないのさ」

 

「うげぇ、アキ、要らねぇ事言いやがって」

 

「俺としては願ったり叶ったりですよ」

 

「ったく、お前たち、この場はめでたい話の場ではないか。それなのにお前たちと来たら…」

 

「何故だ?美鶴も随分と待ち遠しかったと言ってたじゃないか」

 

「なっ‼︎何を言う‼︎こ、これ以上変な事を言うなら処刑も辞さんぞ‼︎」

 

「ふふ、君たちも随分仲が良くなったな」

 

「…っ、先輩までおっしゃいますか‼︎」

 

「ごめんごめん、一年半前…君たちが入学してきた時とは随分雰囲気が良くなったんじゃないかと思ってね」

 

「…確かにアキがシャドウを舐めて掛かる事も減ったし、桐条のサポートも分かりやすくなったッスね」

 

「それを言うならシンジこそ連携を意識出来てるじゃないか」

 

「そうだな、普段もアレ位素直になれば荒垣にも可愛げがあると言うもの」

 

「チッ、うるせーぞ」

 

「ホラ、まただ」

 

「あー、そういえば一年生はどうなんだい?」

 

 

 

近況を話し合っている内に気になる事も聞いておこう。岳羽ゆかり…彼女はどうなんだろうか。彼女はハナっから桐条の関係者を恨んでると言ってもいい精神状態だからな。そこをひっくり返すにはしっかりした証拠が必要なんだが、それは屋久島に行かないとどうにもならないってのがな。他愛のない話ならともかく、武道系部活のよしみもあるとはいえ、ペルソナやタルタロスを知ってる人間に対して壁を作ってるだろうしな。

 

「単独行動は許可してませんね」

 

「岳羽かぁ…、危なっかしいッスね」

 

「そう…ですね、彼女とその父親の話は父上からも聞いております。しかし、ああも敵意を示されると中々に堪えるものと知る事が出来ました」

 

 

 

美鶴ちゃんは寂しそうな表情でそう言った。やはり壁は分厚いか。それこそ()()()()()()()()が解きほぐしてくれる事を待つしか無い…か。

 

「ふーむ、高校一年生、それもペルソナみたいなトクベツな力を持ち、目の前で起きてる異常事態の原因が父親だと知らされた…、まぁ、こじれるよね。コレばっかりは外部の俺が手を出す方がややこしいな」

 

「やはり、そうでしたか」

 

「まあ、どう考えても一番怪しいからね俺が。詳しく知りすぎな癖に証拠を出してこないんだから。その上外部協力者でタルタロスは未経験と来たら…信じないでしょ?」

 

「「…そうですね」」

 

「うわぁ、無茶苦茶胡散臭ぇッスね」

 

 

ったく酷い後輩たちだな。こんなに親身に応えていると言うのに。これは後日の組み手少しギア上げても仕方ないな。うん。

 

 

まぁ、もう少し話をしてこれからの方針を固めるとしましょうか。まだまだ聞きたい事ありそうな雰囲気してるし。

 

 



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最悪に備えておく為にも

キャラが独り立ちして来たので初投稿です


「それに、今のところタルタロスって殆ど調査出来てないんだろう?なんせ、扉が開かないんだから」

 

誰からも聞いていないのに困ってる原因を言い当てられ困惑した様子の美鶴ちゃん。俺が知ってるのはズルみたいなもんだしな。ま、それだけじゃ無いけど。

 

 

「なっ⁉︎ご存知だったのですか?それとも荒垣から相談でも?」

 

「知ってたと言えば知ってたね。それに予測もつく」

 

「予測ッスか?」

 

「ああ、まず君たちの戦力だ。バックアップも満足に居ないのに本格的な調査は大変だよ?特に終わりが見えない異界はね」

 

「あー、なるほどッスね。確かに岳羽も勘定に入れてやっとこさ4人は厳しいッスよ」

 

「だろう?だからメインは影時間のパトロールになってるだろうと予測ができる」

 

「なるほど、確かに我々の活動は迷い込んだ人が居ないか見回ってシャドウの討伐をしています。現状、タルタロスでは扉の変化を確認するくらいしかしてませんね」

 

「そうなるのも仕方ないからね。俺から言わせれば良く腐らずに続けてると思うよ」

 

「けど、先輩も渋谷の異界探索してらっしゃるのですよね?」

 

「ご無沙汰だったけどね。あそこに限らず集合無意識が生み出した異界は出来るだけ把握しておきたいからね。…終わりは全く見えないけど」

 

「そういや手伝って欲しいって言ってましたもんねぇ」

 

「シンジ、そうなのか?リョウスケさん俺も手伝いますよ」

 

「明彦、他のところで腕試ししたいのが透けて見えてるぞ」

 

「あー、センパイが俺だけに声かけた理由が分かったッス」

 

「なっ⁉︎俺では不足ですか?」

 

「真次君でも十分とは…いや、俺ですらまだまだ力不足だからねぇ。タルタロスでもそうだろうけど進めば進むほど出てくるシャドウは強くなるからなぁ。タルタロスは分からないけど、人が持つ深層意識って深くなればなるほどシンプルで共通してくるからね、集合無意識が構成している異界も同様に深層程強くなるんだろうさ」

 

「葛葉先輩ですらまだ…それは仲魔の皆さんと合わせてもですか?」

 

「不甲斐ない事になるけどまだまだだね、深さもそうだけどフロアの広さも中々のもんでね。色々試行錯誤しながら少しずつやってるから時間がかかるのさ。…偶に出てくる悪魔も厄介極まりないからさ」

 

「……」

 

「ほらよ、アキ、桐条、俺たちはとりあえず影時間何とかしてから考えようぜ」

 

「ふっ、荒垣に言われるとはな」

 

「ああ、シンジも変わったな」

 

「けっ、ウルセーよ」

 

「ふふ、ま、とにかく、タルタロスが動きを見せた頃俺も動くさ。そうでなくてもヤバけりゃ呼んでくれたらいい。オカルト対策としての活動を本格化出来てるかも知れないし」

 

「それは…‼︎何よりの朗報ですね」

 

「ああ、そうだな」

 

「…幾月のヤローはどうすんですか?」

 

「ん、理事長は理事長で目的があるだろうから動き出すだろうね。さながら今は色んなところに種蒔きしてる様なモノさ。そうしてやっと馬脚を表すだろうね。…とは言えムーンライトブリッジの事件から周りを騙してきたんだ。気をつけるに越した事はないね」

 

「ケッ、アイツに見せる隙なんてねぇッスよ」

 

「…しかし、幾月さんはペルソナ使いでもありませんし、影時間ならばペルソナを使える我々が遅れを取る事も無いのでは?」

 

「甘い、甘いよ美鶴ちゃん。ペルソナ使いに善悪なんて必要無い。必要なのは強い意志の力ときっかけだ。自らの目的に邁進している人間…その目の前に障害が現れたらどうすると思う?」

 

「…立ち向かいます。まさか⁉︎」

 

「そう、そのタイミングで打開を図る可能性もある」

 

「マジかよ…」

 

「可能性さ。そもそもあれだけ嘘をついている人間、能力が無いってのも信憑性に欠ける」

 

「…確かに。私もお父様も信頼しておりました。そこまで取り入る事が出来る人間ならば備えていても不思議じゃありませんね」

 

 

 

…真次君が居るから言いにくいけど制御薬の改良が後押しになったかもな。野望を持つ人間は寿命をベットする事は無いけど、そのリスクが無くなったら?それに人工ペルソナ使いだって手駒の作成と言うよりは自らに対してリスクを減らすための人体実験だと考えた方がよっぽど自然だ。

 

 

「まぁ、最悪の事態を考えたらそんなところじゃないかって俺の予想さ」

 

「…美鶴、シンジ俺たちがやる事に何か変わりが出るのか?」

 

「ったく、悩んでる俺がバカみてぇじゃねぇか」

 

「ああ、私たちは目の前の事をやるべきだな。…幾月さんが力を隠しているのと同様に私たちも先輩が力を貸してくれる」

 

「だろう、やはりトレーニングに限るな。力を高めておく事が何よりの備えだ」

 

「「はぁ…」」

 

「ま、やる事なんてそうそう大きく変わらないってことさ」

 

「まぁ、まだ被害者だってゼロじゃねーしな。そういや、聞きたかったんスけど、無気力症候群って治るんスか?その辺先輩はどう考えてるのか聞きたいッスね」

 

「そうですね、私も聞きたいです」

 

 

ふむ、そう言えばその話はしてこなかったか。予測でしかないケド構わないみたいなので話してみようか。

 

 

「影時間のシャドウが何によって生み出された存在なのかによるかな。人間のもう一つの人格とも言えるシャドウ、つまりシャドウがおかしくなると本人に影響が出ることは分かるかな?」

 

「って事は俺たちが倒してるのはマズイのですか?」

 

「いや、影時間のシャドウはまた別だと思う。メメントス見たいな集合無意識なら人のシャドウってもいるんだ。それでこの無気力症候群はシャドウが迷い込んだ人を襲って引き起こされる事例だろう?」

 

「はい、我々の救助が間に合わず…」

 

「影時間の範囲に対して実働部隊が少なすぎるからね…。それで、ペルソナの様なシャドウへの対抗手段が無いとシャドウに襲われ、その人のシャドウが抜き取られる…とでも言うのかな。シャドウの行動原理は分からないけどそうなったら人は抜け殻の様になってしまう…だろうね」

 

「そ、そうだったのですか⁉︎では、その抜き出されたシャドウを戻してやれば…」

 

「可能性の一つではあるよ。そのシャドウがどこにいるのか分からないけど」

 

「いえ、私たちではその可能性すら分かりませんでしたから」

 

「…一応ここだけの話ね」

 

「お父様にも話してはいけませんか?」

 

「武治さんは良くても周りがね。権力者に知られると厄介なのさ。なんせ、ほぼ完全犯罪だよ?口封じにはもってこいだろう?」

 

「「「…」」」

 

「だからこそ集合無意識を放置出来ないって分かってくれたかな?」

 

 

そう、俺が危惧しているのは『改心』。プロセスとしては無気力症候群も同じだと思っている。…人工ペルソナ使いのカードを持つ桐条に気づかれてしまうことがどれだけ危険か。武治さんはともかくグループ全体で後ろ暗い所もあるからな。3人は思いもやらない話で固まっちゃったな。もう少し話したいんだが、大丈夫かな?



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解禁日。そしてトリを飾るのはもちろん…

電車に乗る時間が戻ってきたので初投稿です


シャドウを利用できる事がいかに危険かを説明した。…もちろん具体的な話はぼやかしている。美鶴ちゃんなんかは匂わせるだけで調べようとしてしまいそうなんだけど無知である事の危険性とを天秤にかけた結果だ。

 

 

「ほ、本当にそんな事が出来てしまうのでしょうか?」

 

「マジかよ…」

 

「し、信じられん…」

 

「驚くのも分かる。けれど影時間に連れ込む事が出来る人間が居たらどうなる?」

 

 

そう、俺が話したのはマヨナカテレビが利用されたケース、つまり生田目や足立が行った事だな。元はと言えば伊邪那美がヒトを弄んだ結果なんだけどな。

 

「…発見された場合、そのまま入院ですね」

 

「…おい、俺たちが助けられなかった連中に居るのかよ?」

 

「分からん。しかし、迷い込んだ人間だけかと思っていたがそう言ったケースもあり得るのか…」

 

「無気力症候群患者として捜査されるだろうからその患者周辺にトラブルが有れば調査されるだろうさ。警察内部でも証拠不十分な案件になってるのかもしれないけど。ま、前提として連れ込む人間がペルソナ使い、もしくはそれ並みに戦闘能力が必要だろうから非常に稀だろうけど」

 

「…なるほど。影時間の事が解決したとしても、いえ、解決した後でもペルソナを使える者として、桐条の一員として努めなければなりませんね」

 

「ふっ、美鶴、俺も協力させてもらう。なんせ「腕を試すにはもってこいだから…だろ?」」

 

「なっ⁉︎分かるのか?」

 

「アキは分かりやすいんだっつーの。ま、俺もそんな先のこと考えられるようになったら協力もやぶさかじゃねーぞ」

 

「ふふ、お前たちらしい。先輩、改めておめでとうございます。私たちにはハードな話もありましたが影時間を()()()()()の話を考えられるようになりましたからね。まだまだ話したい所ではありますが挨拶は私たち以外いらっしゃるでしょうし」

 

「そうだな。ではまた手合わせよろしくお願いします」

 

「…このまま忘れといてもらおうと思ったのにアキ、要らねぇ事言いやがって。あー、おめでとっした、俺の事も偶には見てくださいよ」

 

「そうだな。美鶴ちゃん気を遣ってくれてありがとう。話し始めると中々止まらないし、話したい事もあるからなぁ…。その辺も含めて手合わせの時でも良いしね」

 

 

話を始めると中々終わらないもんだ。久しぶりってのもあったけど最近になって考えた事、分かった事も有ったからなぁ。…美鶴ちゃんのあの考え、シャドウワーカーの事に繋がるのかな?それに解決について背負い込んでた頃に比べたら随分と余裕が出来て見えたな。

 

 

さて、学内の知り合いには粗方挨拶も終わったか。…よし、カレー解禁だな。ついでに話をしに行こう。

 

 

 

「らっしゃい…って、お前かよ。わかってる、いつものだな、待ってろすぐ出してやる」

 

 

流石マスター、何にも言わずともいつものセットだ。ま、次来る時は受験終わった解禁日にって伝えてあったし。一年…は空いてないけど久しぶりだな。

 

「いやぁ、すいません、大学決まったんですけどマスターに説明するより先にカレー食いたいってなっちゃって」

 

「仕方ねぇなぁ。男が来て喜ぶシュミなんてねぇんだぞ?双葉が気にしてたから呼んでくらぁ、お前も俺なんかよりアイツに声掛けてやってくれ。ホレお待たせ」

 

「いただきまーす、双葉ちゃん預かってるんです?良いですよ、久しぶりに会いたかったですし」

 

「食って待ってろ。…客も居ねぇしな」

 

「もごもごもご」

 

「…聞いちゃいねぇ。まぁいいや、ごゆっくり」

 

 

目の前にルブランのカレーがあってがっつかない奴が居るのか?居ないね。…双葉ちゃんって今年9歳か。あれだけ頭の回転早いと小学校じゃ苦労するだろうなぁ。今思えば若葉さんとか丸喜…さんの研究ってシャドウワーカーが出来たからこそ進んだ部分もありそうだなぁ。精神暴走事件みたいな悪意のある改心って本人のシャドウが居るところまでどうやって行ってるのかねぇ、パレスやジェイルがあるならまだしも対立勢力の不手際にしたいだけの標的だから歪んでない奴も居たろうに…。

いかん、考え込んでる場合じゃない、今は目の前のカレー食べるのよ。

 

 

カラン…カラン…

 

「おーっす!スパイ元気だったかー!」

 

「おい双葉、客が居たらどうすんだよ」

 

「だーいじょうぶだ、そうじろう。客は来ない」

 

「おい!」

 

「美味いカレーに美味いコーヒー、静かな店最高ですねぇ」

 

「もうお前らに出さねぇぞ」

 

「いやぁ良い店だ、なぁ双葉ちゃん」

 

「そうだな、ちょっとコワモテのそうじろうがアクセントだ」

 

「ったくお前ら。またうるさいのが帰ってきやがったな。おい、食い終わったら上行ってこい、お前が居なかったから手が足りなくてよ、さっと掃除してくれ」

 

「あー、わかりました。双葉ちゃん、モップ持ってってくれるかい?」

 

「らじゃー」

 

 

あんな事言ってたけど、マスターは物置にはしてなかったみたいだな。埃はらうくらいでキレイになるな。

 

「…なぁ、またルブランに来るようになるのか?」

 

「うん?そうだなぁ、来年大学通うようになっても来るなぁ。バイトみたいにしょっちゅう来れるかは分かんないかな。けど、…カレー食べたいし来るだろうね」

 

「ホントか!なぁ、また探検しよう!」

 

「この辺に友達は居ないのかい?」

 

「学校つまんないし。…友達もいない。スパイとならまだ遊べる」

 

 

…こういう場合の正解が分からんなぁ。まぁ小学校の友達が全てって訳でも無いし、双葉ちゃんみたいなタイプだと余計になぁ。

 

「俺もそんなにパソコン詳しく無いんだけどなぁ。まぁ、そうだな秋葉原今度行こうか」

 

「ムム!パソコンの話をしていないのにワタシが詳しい事を知っているとは…やるな、スパイ。それはそうとホントか⁉︎ふふーん行こう!」

 

「俺でもわかるような中古漁りでもしようか」

 

「仕方ない、部品は勘弁してやるか。土日は大体そうじろうの家に居るから声をかけてくれ。アニメと特撮の時間じゃなければすぐ行こう」

 

「…まぁそんなに早く行っても店が開いてないから丁度いいか。さ、最後ここのソファーを拭いて終わりだ。スッキリしたなぁ」

 

「うむ、そうじろうがサボってたからな。まったくワタシとお母さんがいないとだらしないんだ」

 

「はは、ルブランのマスターもかたなしだな。よーし、終わった。お疲れ様」

 

「ふふん、ワタシもこれくらいのお掃除なら出来るんだ」

 

「よし、マスターに飲み物を集ろうか」

 

「うむ、良い事を言う。では、突撃だ!そうじろう、喉が渇いたぞー!」

 

「終わったのか。アイスココア淹れてやるよ。手洗って待ってな」

 

「ありがとうございます」

 

「礼を言うのはこっちだ。俺も店なんかやってると預かってる身ながら双葉の事見てやれなくてな。…あんな子供だ周りのガキに馴染めそうにねぇだろ?お前とは遊べるみたいでな。これからも偶に来て遊んでやってくれ」

 

「はい、大学も決まりましたし、偶に来ますよ。双葉ちゃんと約束もしましたし」

 

「んぐんぐ、ぷはっ、そうだぞ。良い子にしてたらアキバに連れてってもらえるんだ」

 

「良いのか?」

 

「もちろんその位は。…偶にお出かけもしないとつまらないですからね」

 

「助かるぜ…」

 

「マスターも双葉ちゃんだけじゃなく若葉さん誘ってどっか出掛けたら良いんじゃないですか」

 

「ああん⁉︎俺は店あるし、若葉も忙しそうだしよ…」

 

「まぁ、考えといてください。ちょっと食事に出掛ける間くらいの店番ならできますよ」

 

「…考えとく」

 

「あ!もう夕方アニメの時間だ。ではスパイまたな。…サラダ、バー」

 

「こけるなよ」

 

「じゃあ俺も。カレーとコーヒーごちそうさまでした」

 

「おう、また頼むぜ」

 

 

 

満足。開放感と安心感?とにかく満足な昼下がりだった。双葉ちゃんも元気そうだったし。…若葉さんは何とか守ってやりたいんだがなぁ。個人のシャドウを特定し、実際に接触する方法…俺も探さなきゃならんが、ヤルダバオトが明智だけに与えた能力と言われたらどうしようか…。フミさんと話し合い案件かなこれは。

 

 

ルブランから家に帰る途中ビックバンハンバーガーでお土産を買ってると()()()()()()が俺を呼んだ気がする。…分かってる、もちろん挨拶に行くさ。話したいことは沢山あるんだから。

 

 




前話で勢いのまま書いていたら何故か幾月ペルソナ使い説が出てきてしまいました。何にしよう…。あと筆者がp5rを履修したので丸喜先生は出ます。


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力を持て余しがちな者達

急に寒くなったので初投稿です


ベルベットルームの鍵に催促される様な気がする…。歩みを早めてキョウジおじさんと住んでる家、まぁ事務所も入った雑居ビルなんだが、そのビルの屋上に何故か佇む青い扉を開けて中に入る。

 

 

「久方ぶりでございます。我々姉妹もまたリョウスケ様が気軽に訪れる日を待ち遠しく思っておりました」

 

「全くでございます。もう少し客人としての自覚をお持ちになってはいかがですか?」

 

「ふふ、エリザベスお姉様はいつも気にしてらしたんですよ。リョウスケ様が帰ってきた時の為に気合を入れてテオ兄様と手合わせしておりましたもの」

 

それでテオがここに居ないのか。…もしかして、視界の端に見える青いボロ雑巾もしかしてテオの成れの果て?気合を入れたエリザベス…お、恐ろしい。

 

「ラヴェンツァ、なんて事を言うのですか‼︎ネタバレをする悪い子にはこうです」

 

「ふぉねぇしゃま、やめへぇくらひゃい!ひょうしゅけしゃまふぁみふぇいまふ」

 

「いいえ、この口が悪いのですからこうです。えい」

 

「あー、エリザベス、その辺にしてやってくれないか?お土産にハンバーガーいっぱい買ってきたし」

 

「さぁ、いただきましょう。ラヴェンツァ、姉上を呼んできてもらえるかしら?」

 

「エリザベスお姉様、ひどいです…。はぁ、呼んで参ります、リョウスケ様、しばしお待ちください」

 

「あはは、よろしく。話は揃ってからにしようか」

 

 

 

ラヴェンツァがマーガレットを呼びに行っている間抜け駆けしようとするエリザベスからハンバーガーを守りながら準備を進めていた。

 

「あら、エリザベス抜け駆けですか?」

 

「いえ?リョウスケ様に限ってありえないとは思いますが毒見の役を買って出ただけですわ」

 

「…」

 

「あらあら、リョウスケ様の苦労が手にとる様に分かるわね。全くせっかくなんですから揃っていただきましょう。テオ、いつまで寝てるのかしら?」

 

「(取り分が少なくなると姉上が…)いえ、せっかくですので私もいただきましょう。リョウスケ様ありがとうございます」

 

いつの間にかボロ雑巾がなくなっている‼︎ちょいちょいエリザベスが牽制してたのは取り分を増やす為だったのか…

 

「まぁ、またたまに持って来るから。それより、お待たせ」

 

「そうですね、いただきましょうか」

 

「エリザベス…、はあ、貴女らしいわね。リョウスケ様、またよろしくお願いしますわ」

 

「ええ、リョウスケ様、また貴方の歩みを見せていただきます」

 

 

 

 

久々とはいえ結構な量を持ってきたんだがなぁ。…こういった色んな思い出をラヴェンツァが持っていれば「ジョーカー」にカロリーヌとジュスティーヌとして色んなところに連れて行かれた時、何か感じるところがあるかも知れないのか?

 

 

「さて、とりあえずまたここに来てメメントスにも行ける様になった訳なんだが、とりあえずは慣らし運転からだな。…エリザベス、お手柔らかに頼めるかな?」

 

「ふむ、自ずから私を選んだことは流石ですね。仕方ありません、付き合って差し上げましょう。…私としてもちょうど良い所ではありました」

 

「ん、何かあるのか?」

 

「いえ、主人様によると新たなる客人の気配が強くなりつつあるとの事でして、私かテオが担当することになりそう、と申し付けられておりまして」

 

「ええ、私はまだ手を離すことができない案件があり、ラヴェンツァもメメントスに詳しくなって欲しい我々の想いとの兼ね合いがございまして。エリザベスとテオドアに任せても良いだろうとの判断が下されたのです」

 

 

なるほど、いずれにせよエリザベスかテオがイゴールの補佐を務める訳か。まぁ、2人揃っているならテオが盾になってくれるだろう。…じゃ無いと俺基準で手加減を覚えたって自信満々なのが裏目になりそうだしな。

 

 

「そうなのか、じゃあ来年は中々相手してもらえなさそうだな」

 

「あら、ご安心ください。私たちが担当することになるであろう客人とバッティングさえしなければ存分にお相手いたしますので」

 

「……よろしく」

 

 

甘かった。よくよく考えたら力を司る者としてその力を見せるだけの相手なんて中々いないわけで、丈夫さだけは自信のある俺なんて都合がいいわけだ。

 

「ええ、おかげさまでニンゲンを相手にする自信がつきました」

 

「そうですね、リョウスケ様のお陰で私もお姉様達に引けを取らない自信が付きました」

 

「あー、流石に相手の事見極めてやってからにしてくれよ?…俺を基準にしてまだ見ぬ後輩に恨まれたくないぞ」

 

「そうでしょうか?」

 

「ふむ、まずは私とテオで試してみましょう。その機会は直ぐですからね」

 

 

すまない、これからベルベットルームを訪れる後輩達よ…、立ちはだかる壁は高くなってしまったかもしれない。

 

 

 

「それじゃ俺は戻るとするよ。近々メメントスに行くからよろしくなラヴェンツァ」

 

「はい、お待ちしております」

 

「あら、私よりもラヴェンツァですか。そうですか…」

 

「待て待て、不穏なオーラを纏うんじゃない。エリザベスとの訓練が先だから安心?してくれ」

 

「ふむ、殊勝な心がけですね」

 

「そりゃ、死ぬほどキツイけど死ぬ事は無いからな」

 

「では許して差し上げましょう。…お待ちしておりますので」

 

 

 

 

俺はベルベットルームを出た。今日はこうして色んな人と話が出来て良かったな。高校生としての生活が終わっても異界や悪魔関連の事件なんて流石にほっとけないしな。…葛葉の一員としてもだ。何と言っても俺がオレである為にも俺がやりたい事をやらなきゃならない。この世界で生きていくんだからな。

 

 

……?

 




リョウスケ君はステータスが耐速型です(嘘)


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マニアックな代物はマニアに頼もう

いつの間にかUAが20万に達したので初投稿です


受験のサビを落とす訓練は順調に終えた。そして久々のメメントス、これも特に変わった事は無かったな。ま、俺よりピクシーとアメノウズメの方が張り切ってたんだけどな。想定よりも身体が動いて何よりだったよ。

 

 

そんな久しぶりの探索から戻ってくるとエリザベスに呼び出された。…随分とピリついた空気をしていたけど何だろうか。

 

 

「お時間、ありがとうございます」

 

「構わないさ。どうしたんだ一体」

 

「思う所がございまして…。私も客人を持つ身となりますので、3月の

吉日を見計らって少し本気でお相手させていただきたく思い、声をかけた次第でございます」

 

「…この3年の結果を見せろってことかな?分かった、俺も不甲斐ない所を見せて心配かけたくはないしな」

 

「場所は追って案内致します」

 

「その日までに更なる成長をしてみせるさ」

 

 

流石に客人そっちのけで他の人間とバトってるってのも案内人として許せないんだろう。ま、俺としてもいい機会だ。エリザベス相手にどこまで食い下がれるか、少し本気って言ってたが本腰を入れてくるのかもな。こう言っちゃ何だが高火力の魔法なんて当たれば終了な相手だ、出来る出来ないは別にして殺すくらいの心算じゃ無いとあっという間に終わりそうだな。…そろそろ試してみたかった銃術にも手を出してみるか。見たところピクシーとアメノウズメの連携もスムーズでメメントスの浅い所なら問題なく試せるだろう。

 

 

出来るならエリザベスの前にクラマテングに色々と教えてもらいたいんだがな。まぁ、去年出会った時からほとんど活動できてないから認めてもらえるレベルに達してはないんだろうけど、自主登校期間になったら京都に行こうか。その前に葛葉の本家に行っておく必要がありそうだ、もう少し蔵の家探しもしておきたいしな。

 

 

 

 

そろそろ感覚も戻ったし3人に声をかけようか?っと、すっかり忘れてたんだが流石に人間同士の立ち合いでいつもの長船使うわけにもいかんよな。うん、少しでも感覚の合う木刀か模造刀でも探しに行こうか。

 

うーん、まずは渋谷の裏通りのミリショップでもっと。お、アンタッチャブルじゃないか。もうあるんだな、…そりゃそうか、子供を引き取ったタイミングで足抜けしたんだっけ。確か…薫君がジョーカーと同世代だったかな?

 

とはいえ今は2008年、世間はオタク文化が浸透し始める頃。とはいえミリショップやオタクショップはまだまだアングラな分野だ。元筋モノが開くミリショップだもの、()()にマーク位はされてるかもな。

 

店に入ると()()()()()()()警官らしき人と店主がやり取りをしていた。タイミング悪かったか?

 

「おい客だ、サツはいつから営業妨害するようになったんだ?」

 

「チッ、岩井、テメェの尻尾掴んでやるからな」

 

「はっ、ありもしねぇモン探してやがれ。オイ、お前何見に来たんだ」

 

「あん?お前…あの探偵のとこの。高校生だろ、こんなとこ来るのはえーんじゃねぇか?」

 

まさか長谷川善吉がこの店に来てるとは…。まぁ、世間的にも風当たりが強いジャンルだし仕方ないのか?しかし、すごい組み合わせだな。

 

「あー、長谷川さんでしたっけ?俺のやってる古武術で使う小道具見に来たんですよ。こういうお店の方があるかもしれないんで」

 

「あん?お前合気道じゃねーのか?」

 

…もう調べられてんのかよ。キョウジおじさんの関係者だからってちょっとマークされ過ぎじゃない?おっかねぇな。

 

「学校でやってるだけですよ。マイナー武道なんて部活にないですから」

 

「ふーん、客が来ちまったんなら仕方ねぇか。おい、岩井、またくるから」

 

「ケッ」

 

「おい、探偵に()()()()な」

 

「あー、はい」

 

 

心が折れて燻った時期が有ったのにそこからペルソナを発現させただけはあるな。その折れる前だもん雰囲気バリバリでおっかないわ。

 

「あー、助かった。あのサツしつこくてな、客でも来ねぇと追い出せなかったんだ。何が見てぇんだ?…言っておくが法に触れるモンなんてねぇぞ?」

 

「そんなモン要りませんよ…。見たいのは短銃のモデルガンとか模造刀ですね。あります?」

 

「あん?随分とマニアックな注文だな。流石にそんなもんゲンブツねぇぞ。何に使うんだ、鑑賞か?」

 

「チラッと話してた古武術の演舞に使いたいんですよ」

 

「古武術ねぇ…刀と銃を使うのか。変わってんな」

 

「あはは、まぁ細々引き継いでるだけですからね。ちょっと型を見せる機会が出来たんですけど木刀じゃ見映え悪いですし、真剣も持ち出すには手間ですから」

 

「ポン刀もってんのか、そりゃ本格的だな。…最近のハンドガンばっかり弄ってたけどここらで変わり種も面白ぇか。いいぜ、やってやる。希望するデザインはあるのか?」

 

「いいんですか!そうですね、短銃って言っても海賊漫画みたいな奴と()()()()()()()()の2つお願いできますか?」

 

「おう、ちょっと時間もらうけど構わねぇぞ。模造刀の方はどうする?」

 

「演舞で振りますからね、重心のバランスとか見たいんですけどそこまでは言えないですよ」

 

「なるほど、俺も数は置いてねぇしなぁ。知り合いの刀剣マニアの店教えてやるからそっち行ってみな」

 

「助かります」

 

「ま、ムシの居所が良くなったからな。お前が来なきゃあのサツにまだ詰められてたぜ…」

 

「探偵やってる叔父も煙たがってましたねぇ」

 

「はっ、気が合いそうだぜ。それより金持ってんのか?これ以上のサービスは出来ねぇぞ」

 

「大丈夫ですよ。いつ頃準備できそうですかね?」

 

「あー、来週来てくれや。1週間もありゃなんとかなる。…そんなに忙しくねぇし、流行らせる気もそんなにねぇしな」

 

「…わかりました。ではお願いします」

 

 

うん、善吉さんのおかげ?でスムーズに事が運んだな。すっかり忘れてたけどメメントスは認知の世界、精巧なモデルガンならばこそ弾は戦ってても補充が出来るかもしれない。…それにデザインによって打ち出す弾の属性を弄れる、そんな可能性まであったんだ。ま、とりあえずはノーマルから初めていければいいか。

 




途中息切れしましたがまさか20万UAまで来るとは自分でも驚きです。これからも毎日とはいかないかもしれませんがよろしくお願いします。


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現実世界で武器屋は珍しい

日間で21位まで上がってビビったので初投稿です。
ひぇ、11位になってる…


アンタッチャブルを訪れてオーダーをしてからちょうど約束の日、俺は店を訪れた。もちろん()()()()の影がないか確認はしている。…素人ながらにだけど。そろそろおじさんに探偵街歩きの指南でもお願いするかなぁ。

 

 

「おう、よく来たな。頼まれてたブツはコイツだ」

 

「ありがとうございます」

 

「まずはコイツだ、いわゆる日本の骨董品だな。短筒って方がメジャーか。ま、モデルガンだし打ち出す事はもちろん出来ねぇが機構の方はこだわって動くんだ。カッコいいだろ」

 

「すごいですね、ここまでリアルなモデル作り上げるなんて」

 

「なあに昔とった何とやらだ。それで次がコイツだ、大正時代の拳銃って事だったからな、日本軍で採用されてた二十六年式拳銃だ。コイツもダブルアクションで動く様作ってあるぜ」

 

「これもすごい、まるで本物ですね。…ちょっとお聞きしますけど、骨董品のお手入れ出来ます?」

 

「出来るか出来ねぇかで言うなら出来るが…、そんなモンあんのか?お前の実家ヤクザか何かか?」

 

「ヤクザとは違いますよ。実家は神社と古武術の家です。…まぁ、外から見たら大分うさんくさいのは否定しませんけど」

 

「まぁ、ホンモノを綺麗にしちまうと撃てる様になっちまってめんどくさいんだよな」

 

「あー、そう言う事ですか」

 

「おう、まだ店も開けたばっかでサツにも目をつけられてる中やるのもな」

 

「そうですか、すいません無理言って」

 

「構わねぇよ。…こんなナリして客商売してっとお前みたいに普通の対応する奴いなくてよ」

 

「…武道をやる上で心は鍛えさせられましたからね。そんじょそこらの大人でも引きませんよ」

 

「はっ、いい度胸してやがるぜ。今時お前みたいなヤクザも居ねぇよ」

 

「…そういえば合気道部の顧問が昔伝説のヤクザに武術の手解きしてたって話聞いたことありますね。あの人に比べりゃ、なんて事ないですよ」

 

「…お前の周りも大概だな。それで刀の方はどうすんだ?お前もあのサツに目ぇつけられてんだ、モデルガン持って刀なんて見てたらしょっぴかれても不思議じゃねぇぞ?」

 

「そうでしたね、職質された時の事考えてませんでしたよ。俺も長谷川さんにマークされてるでしょうし、模造刀は一度荷物置いてからにします」

 

「分かってるとは思うがモデルガンとは言え人に向けんじゃねぇぞ?模造刀だってそうだ。刃は潰してあるが重いし刺突にゃ十分の凶器だ、俺らミリ屋の肩身はまだまだ狭いんだから頼むぜ」

 

「気をつけます、お世話になりました」

 

「おう、また来い。珍しいモン見つけたら持ってこい、見てやる」

 

 

岩井さん、ちょっと話せると分かると思ったより気さくな人だな。おかげさまで新しい攻撃方法が試せるな。…そりゃライドウモデルのコルトライトニングなんて綺麗にしちゃったら実銃だもんダメだわな。それこそモデルにしたモデルガン作ってもらおう。()()ライドウが使った銃って事は悪魔連中に対して特攻付いてる可能性もあるしな。

 

 

 

そして模造刀を見に行った。なるほど岩井さんが紹介するだけはあってすごい品揃えだし、そもそも紹介が無いと来れなさそうだな。ワークス上山…なんか聞いたことあるんだがなんでだろう。

 

「な、何が、ほ、欲しいの?」

 

「模造刀です。人前の演舞で使うんで練習で使ってるモノと出来るだけ似た重心のモノを探してまして」

 

「わ、わかったよ。い、岩井くんの、しょ、紹介だからね。に、握って良いから、え、選んで」

 

…裏向きの顔がありそうな店だなぁ。まぁ、()()()()()用はないし黙っておくか。とりあえず案内されたコーナーの模造刀を手に取ってみる。

 

「振っても?」

 

「う、うん。ぼ、僕も、み、見てみたいから、いいよ」

 

一本一本軽く振り下ろす。…これだな、こいつが一番しっくりくる。

 

「コレ、貰えますか?」

 

「‼︎…ふ、ふふ、す、すごいね。き、君、普段、し、真剣振ってるね?」

 

「…振った事はありますよ、習ってる古武術に有りますもんで」

 

「う、ううん、き、君はもっと、ふ、振ってる。そ、それ、ぼ、僕がこだわって、し、真剣そっくりに作ったんだ。え、選んだのが証拠だよ」

 

「参ったなぁ、白状しますと多少振る機会が多いですね。けれど誓って人に向けた事はないですよ」

 

「う、うふふ、ひ、久々に、み、見せても良い人が来たんだな。そ、それに、こ、古牧のお爺さんが抑えてるなら、い、いいんだな」

 

「古牧先生の知り合いでしたか」

 

「う、うん。こ、こう見えても、ぶ、武器の扱いには自信あるんだ。き、君が使ってる刀のメンテナンス、し、してあげる」

 

マジか、シャドウはともかく悪魔を斬り伏せた後のメンテはたしかに大変だったからな。無茶苦茶助かるんだが…

 

「どうしてそこまでサービスを?」

 

「む、昔、き、君みたいな人に協力してたんだ。い、岩井くんと古牧さんの知り合いなら、も、文句ないんだな」

 

「ありがとうございます、助かります」

 

「そ、その代わり、め、珍しい武器なんて有れば、み、見せて欲しいんだな」

 

「…珍しい武器ですね、覚えておきます」

 

なるほど、俺に粉をかけておけば珍しい武器に巡り会えそうな気がしたのか。ま、その勘はバッチリだろうな。

 

「じゅ、銃より、と、刀剣類の方が自信あるから…よ、よろしく」

 

「刀剣類ですね、銃は岩井さんに相談します。今日は持ってませんがよく使っているのは備前長船です。この模造刀が一番感覚近いんですよ」

 

「び、備前長船‼︎す、すごいよ、是非見せて欲しいな」

 

まてよ、無闇にクリーニングするのも良くないのか?悪魔を斬り伏せてるからこそ悪魔特攻がついてる様なモノだったりするんだろうか。

 

「あー、事情が特殊なもんですから刃はちょっと…」

 

「み、見てから手が出せなさそうならそうするよ」

 

「それでも構わないならよろしくお願いします」

 

「た、楽しみにしてるんだな。こ、この店は不定休だから、あ、開いてなかったらごめんね」

 

 

 

 

まさか刀と銃を扱ってる店と付き合いが出来るとは。流石東京だわ。アンタッチャブルはともかく上山さんの店は結構ヤバそうだからこそ日が高いうちに行く方がいいかもしれないな。うん、また蔵の遺産漁らないといけないな。




岩井宗久…アンタッチャブル店主。p5におけるコープ「刑死者」を担当し、武器防具、取得物の換金を担っていた。p3における黒沢巡査、p4におけるだいだら.のポジション

上山…龍が如くに出てくる武器屋さん。見た目はステレオタイプなオタクで吃音症だが武器の扱いは闘技場でもトップクラスで武器の製作までこなすエキスパート。p5からセガが出してるからセーフだ


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VRなんて目じゃないけどリスクが重すぎる世界

たまにくるUAの波に驚いたので初投稿です


現実世界でもギリギリ警察沙汰にならない装備を手に入れる事ができた。まぁ、リアルすぎて職質されたらアウトな気がしないでもないんだけど。模造刀はともかくモデルガンを持ってメメントスに向かってみるとしようか。

 

メメントスで銃の確認をしているとピクシーとアメノウズメから不思議そうな目で見られた。仕方ないだろ人目につかない所で装備しないと行けないんだから。

「へー、それがリョウスケちゃんの新しいブキ?」

 

「ああ、ライドウさんも使ってたんじゃないか?まぁ時代が違うんだけど一応蔵に有った銃に近いモノを選んでみたんだ」

 

「うーん、でもそのブキってお店で何か買わないといけないんじゃないのかしら?ライドウちゃんもワタシ達連れて良く行ってたもの」

 

「ああ、ホンモノの銃ならな。コレは偽物で弾こそ撃ち出せないけどホンモノそっくりだろう?作った人もこだわり抜いてるから尚のこと撃てそうな位に」

 

「そうね、あの人に向けられた事思い出しそうなくらい…」

 

「確かに…アタシ達ピクシーはそのバーンってなる奴ニガテだからなぁ」

 

「でだ、大事なのは撃てそうなくらい精巧な代物って事なんだ。ここメメントスは認知の世界、シャドウも悪魔も向けられたら撃たれそうって認知してしまうんだ。つまり、実銃じゃなくても撃てる…ハズだ」

 

「…リョウスケちゃん自信無いの?」

 

「自信は有るが試してないからな」

 

「でも私達に当たらないのかしら?」

 

「…そこは要練習だし、乱戦じゃ使わないから安心してくれ」

 

「皆様方よろしいですか?」

 

メメントスの入り口で作業を終えた所ラヴェンツァから声をかけられた。

「どうした?何か反応が?」

 

「いえ、これといって大きな反応は有りませんが、お願い事がございます。これまでは同行しておりましたがこれよりはこの入り口にて待たせていただきたいのです」

 

「そうかぁ。これまでついてきてもらって随分助かったよ。けど、なんでまた?」

 

「なによりもリョウスケ様が我等の想像よりも早く強くなられた…、喜ばしいことに守られるような存在ではすでに無くなったという訳です。

そして貴方様がここメメントスの活動を広げていく内に我らもよりここを知る必要が有ると考えたのです」

 

「うんうん、アタシと契約した時から随分強くなったよ。まだまだライドウちゃん程じゃないけどね」

 

「ええ、もうそろそろクラマテングにも認められるでしょうね」

 

「そうか、手のかかる赤ん坊から見守る子供位にはなれたか。それでメメントスの調査か。何か異変でもあるのか?」

 

「異変…と言えるほどでは有りません。ここメメントスが人の集合無意識によって作り出された異界、人の歩みを見届ける我ら力を司る者として変化を知る必要が有ると考えました。お姉様方とも相談済みです」

 

「そうか…。確かに東京のど真ん中に形成された集合無意識、大衆の意識がもたらす影響は計り知れないからな」

 

「ええ。探索に同行する事でリョウスケ様が仰った通り大衆の望みは侮れない事が分かりました」

 

「なにより人の意識が集まると悪魔が顕現する可能性あるからな。それも同じ方向の願いならさぞかし強大なヤツになるだろうさ」

 

「…リョウスケ様はそれを見越して悪魔を討伐されているのですか?」

 

「あ、確かに。リョウスケちゃんが頑張る理由はアタシも聞きたーい」

 

「そうね、葛葉の生まれって言っても私たちまで引っ張り出してるし、苦労して強くなろうとしてるものね」

 

「そうだなぁ、何もかも含めて縁なんだろうな。この世界、この時代、そして戦うだけの力を持って俺が存在している。それこそ神性存在の遊びでこうなったのか悪意でこうなったのか分からない。ま、偶然に偶然が重なりまくった可能性もあるんだけど。とにかく、奇跡的なバランスと子供って言ってもいい連中の献身で綱渡りが続いていく世界なんだ、1人位心強い大人が居てもいいじゃないか」

 

「リョウスケちゃんって変わってるのね」

 

「ほんと、ライドウくんは義務感と責任感があったのは間違いないけど、リョウスケくんみたいなサマナーも悪くないわね」

 

「ま、それでもこの世界で顕現しかけてるような神性存在を倒すにはまだまだ強さ足りてないんだけどな」

 

「確かにそうね、せめてスサノオさんと殴り合える位は必要かしら」

 

「では、リョウスケ様自らが諸問題の解決に乗り出す訳じゃないのですか?」

 

「神性存在って間違いなく強大なんだが、完全無欠なんかじゃ無いんだ。むしろ明確な弱点、相対すべき存在が居る。神性が有るからこそ相対すべき存在ならばギリギリ乗り越えられると思っている。そんな彼らの助けになれたらいいじゃないか。…ま、俺が単独で神殺しまで上り詰められたら苦労も減るかもしれないが、その分神性存在も手が付けられないかもしれないんだが。さて、話もそこそこに行こうか。ラヴェンツァは此処に居てくれて構わない。今日は試しだけだからそこまで行かないし」

 

「わかりました、お待ちしております」

 

 

さっきまで語っていたのが俺の動機。この世界、惰眠を貪るにはいささか滅びの危機が多すぎる。知識と環境が揃ってるんだ、うまく使わないといけないだろ。それに人間の輝く様を見る特等席が用意されてるんだ、多少苦労したとて価値は十分だろ。…これは誰にも言えないな、愉悦って訳でもないが自慢できるような目的でもない。さて、俺も切り替えてシャドウと戦う準備をしないとな。



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メガテンは力押しより搦手が大事

感想がモチベに変わったので初投稿です。


試すって言ってもある程度の威力も見たいから探索済みフロアの中盤位にしようか。ここいらはp5で言うならマダラメパレスで見かけたシャドウが出てくるようなフロアだ。シャドウで言うなら『凶事まねく憑代(シキオウジ)』に気をつける位か。元ネタが陰陽師のシキガミだから物理の効果が薄くて魔法に弱い、刀と銃…後は過剰威力の魔法しか手段のない俺には仲魔頼りになってしまう厄介なヤツだ。…あとは『とり憑く犬霊(イヌガミ)』と『つけ狙う狼霊(マカミ)』も確か銃が効かなかったっけ?試す武器が効かない相手をするのは無意味だからな、とりあえず手頃な相手を探すしかないんだが、シャドウも悪魔も接敵するまでカタチ取らないのが厄介なんだよな。あらかじめわかる様ならいいんだが。…サポートとか観測に特化した仲魔も探さないとな。

 

 

ウォームアップも兼ねて出てきたシャドウの相手をしていたが出てくるのが銃撃無効ばっかじゃねぇか!

 

「ねぇリョウスケちゃん、まだ試さないの?」

 

「初めて使うから威力見たいんだよ。今のところ出てきてるシャドウどれも耐性持ちでさ」

 

「ねぇ、それなら的としては十分使えるんじゃないかしら?だって()()()()()()()()倒れないんでしょう?」

 

「はっ‼︎その発想は無かった。確かにそうだ、別に無効化されたからって俺の体勢が崩れる訳でもない。威力の確認はともかく立ち回りとしては最高に確認しやすいじゃないか」

 

「おおー、ウズメンかしこーい」

 

「ほら、ちょうどシャドウが…ってフロストのシャドウじゃないの」

 

「うー、なんかモヤモヤするこの感じ…何?」

 

「欲しいと思ってるヤツがとことん外れる…そういうもんさ。さて、お前に恨みは無いけど錆にしてくれる‼︎」

 

「オイラになんの恨みがホー‼︎」

 

「…ねぇウズメン、銃って錆びるの?」

 

「さぁ、ニンゲンの冗句は難しいわね。…あのシャドウとも噛み合ってないし」

 

 

何か散々言われてるが気にするな俺。…銃の試しだから言葉の綾でそう言っただけなのに、難しいぜ。相対するはあざ笑う雪だるま(ジャックフロスト)。シャドウとしては大して強くも無いからちょうどいいな。

 

「まずはこっちの短筒から」

 

短筒をシャドウに向けて放つ。大きな破裂音とともに発射された弾はシャドウの胴体に当たったかと思ったらそのまま吹き飛ばした。

 

「やったのかしら?」

 

「痛いホー。もう怒ったホー‼︎」

 

…見た目と音の割に威力はそこまででもなさそうか。それに連射出来ない上にクールタイムもそこそこ必要な感覚がする。まぁ、ホンモノの短筒自体威力があるシロモノでも無いっけ。けどシャドウの様子がおかしいな。

 

「暴れまくるホー‼︎」

 

「あら、なんだか怒ったみたいよ」

 

「みたいだな。なるほど、状態異常付与ってところか。シャドウや悪魔の性格にも依りそうだが、虚仮威しな分挑発になったりそれこそ脅しの効果がありそうだ」

 

「すごーい‼︎ライドウちゃんはそんな事出来なかった気がする…」

 

「…ねぇ、アレそろそろトドメ刺してあげたら?」

 

「…そうだな」

 

俺は見境なく暴れまくるフロストに近づくとそのまま刀を一振りした。

 

「やられたホー…」

 

まぁこのレベルの相手で挑発状態なら一撃か。うーん、短筒の相性にもよるけどこれは強力な手段だな。ゲーム的に言うならデビルスマイルか挑発の効果ってとこか?威力は無さそうだから…当てると挑発、外して脅すとデビルスマイルか。使い所が問われるがいい装備だ。

 

 

「なるほど、短筒はこんな感じか。単発式のデメリットはほとんどなさそうだ」

 

「ねぇ、それって銃が効かないヤツラにはどうなのかな?」

 

「弾に特殊な効果があったりする訳じゃなくて音と衝撃さえ伝われば効果はあるかもしれない。ただ、効かない連中には脅し効果にならないかもな。まぁ、格上に試す事でも無いんだ、おいおい確認すればいいさ」

 

「ほら、また来たわよ」

 

「今度は…ウズメンそっくりなの来ちゃった‼︎」

 

「アレは憂き世忘れの踊り子(アメノウズメ)か。ちょうど良いか?」

 

「アレは私を象るシャドウであってワケミタマの私じゃ無いから‼︎というかムカつくからサッサと倒しましょ‼︎」

 

どうにもおんなじ姿をしてるが中身が伴ってない分気に食わないらしい。ともかくアメノウズメの姿をしてるが気にする事なく二十六年式拳銃の引き鉄を引いた。陸軍で採用されていた事もあって使いやすいがとりあえず3発を打ち込んでもダメージにはなっているが倒しきれそうには無いな。

 

「ウウ…ヨクモォ‼︎マハジオ‼︎…ギャッ⁉︎」

 

相手が魔法を使ってきそうなところに残った3発を撃ち込んだ。するとシャドウは体勢を崩し魔法は不完全に終わった。なるほど二十六年式拳銃は威力が低い逸話の通り決め手になるほどでも無いがタイミングを掴めれば相手の攻勢を阻害できそうだな。

 

「あら?不発…というよりリョウスケくんのソレで邪魔をしたのかしらね。なら確認できたでしょう、ワタシの前から消えなさい、ザンマ‼︎」

 

「ギャアアア…」

 

「あー、ウズメン怒ってたのね」

 

「みたいだな。ま、確認はできたから良いか。ありがとう」

 

「ううん、なんだか恥ずかしい所見せちゃったわね」

 

「アタシもピクシー型シャドウの群はムカつくから分かるー」

 

「いつもならもっとバッサリやってるからかもしれないな。さて、考察は後にしてもう少し狩りを進めてから戻るとしようか。動きながらとか刀の合間の使い方も見てみたいし」

 

「そうね、そうしましょ。私ももう少し暴れたいわ」

 

「アタシもやっちゃうぞー!」

 

 

俺たちはそのままにシャドウの出現層が変わって少し先まで狩りを進めた所で入り口まで引き返した。

 

 

「お疲れ様でした。如何でしたか?」

 

「十分有用って事が分かったよ。使い所を見極めたらそれこそ戦局を左右できるレベルだね」

 

「それは喜ばしいですね。私も初めてここからメメントスの観測を行なっておりましたがまだまだ分からない事がたくさんあります。これからもご一緒してよろしいですか?」

 

「ああ、こっちこそ。メメントス、いや、集合無意識はまだまだ分からないことが多すぎるからな。少しでも解明を進めるのは必要だしな。…それにベルベットルームを経由しないとまだ俺達だけで帰れないしな」

 

「ふふ、そうでしたね。ではまた、よろしくお願い致します」

 

 

 

 

メメントスから帰って来たんだが…飯でも食いながら二つの銃の使い方を考えるとしようか。状態異常付与か相手の行動阻害か…、サブウェポンとしては十分じゃないか。懸念していた立ち回りでの使い方なんだが、サポートの面が強いからこそ切り込む前に使うからあんまり考えなくて済む。ま、気にするなら命中率位だが、短筒なら外しても意味があるから使いやすいかもな。うーん、テトラカーン使える仲魔か『ランダ』や『ギリメカラ』が居るなら挑発効果なんてエゲツないシナジー発揮するんだけど俺の避けるスタイルとも相性がいいからな。クールタイムだって一戦終わる頃には済んでるし、とりあえずは短筒を使おうか。

 

 

…短筒に刀装備、俺は幕末から来たのか?むしろ明治期か?サーベルにピストルって言う大正期の装備の方が新しくて笑えるな。

 

 

 




リョウスケくんはゲームシステム的に言えば肉体レベルとペルソナレベルの二つがあります。なので同レベル帯のペルソナ使いでも強さが異なります。



バトル描写むず過ぎますねぇ…。


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どう見ても悪の大幹部

年代別に章を入れてみたので初投稿です。


短筒と二十八年式拳銃の使い所は仲魔のメンツ次第で柔軟な選択をして行くか。何となく銃の性能がどういう傾向をしているか見えてきたな。となるとライドウさんが好んで使っていたコルトライトニングなら威力があるかもしれないな。あとは岩井さんのカスタム次第でまだまだ広がるけど、その為には岩井さんからもう少し信頼を勝ち取らないと。

 

 

そろそろ模造刀にも慣れたし、あの3人に声をかけてみようかな。これから年末にかけて忙しくなる前にちょうどいいだろう。…俺はまぁ時間あるからいつでもいいんだけどあんまり延ばしても仕方ないしな。と言う訳で3人とビッグバンハンバーガーで喋る事にした。

 

 

「というわけでそろそろ手合わせしようか」

 

「うぇ⁉︎もう戻したんスか?」

 

「俺は何時でも構いません」

 

「私もかつての無様は見せません、望む所ですよ。場所は如何致しますか?」

 

「立ち入り制限した道場とか思ったんだけど、君たちに武器を使った立ち回りも考えると人が来ない空き地の方がいいかな。どっか知らない?」

 

「ならばグループの所有している採石場は如何ですか?然程遠くも無く人目も付きません。多少荒れた所で問題も有りませんよ」

 

「…採石場でツエー人にボコられるって特撮みたいッスね」

 

「ふむ、確かフェザーマンとやらの撮影も行われていた場所ですね」

 

「俺は怪人かい?じゃあ期待に応えて負けイベントにしてしまおうかな。そこでやろうか。君らはフル装備で構わない。ま、俺も模造刀は使うけどね」

 

「…それでも3対1ならなんとかなるんじゃないか?俺たちだって強くなった」

 

「アキ、そこまで甘くねぇって。俺たちも確かに強くなったけどよ、この人が強くなってねぇ訳ねぇんだからよ」

 

「確かに荒垣の言う通りだな。明彦、この人相手に備えは幾らあっても困らないだろう」

 

「うん、ま、反省会を挟みながら何戦かやろうか。回復も仲魔に頼めば模擬戦位のケガなら現世でも何とかなるだろう」

 

 

 

そう告げると彼らは俺対策の打ち合わせを始めてしまった。…俺はボスモンスターかな?まだまだだなぁ、目の前で対策教えてくれるだなんて。まぁ、言わないけどね。ハンバーガーでも食べてよっと。

 

 

 

 

 

「さて準備は良いかな?」

 

採石場というシチュエーションにはしゃいだ俺は小高い所から3人を見下ろしそう告げた。

 

「…ホントに悪役ッスね」

 

「いやぁ、鈍器構えた真次君に言われたくはないかなぁ?」

 

「こちらから行かせて貰いますよ‼︎」

 

「待て、明彦‼︎」

 

 

おや、明彦君は先走ったのか作戦か。ま、どっちでも良いか。結局の所ペルソナが使えないと距離を詰めないと何もできないヤバさが分かるだろう。

 

「行きます‼︎」

 

気迫漲る勢いのままに明彦君はこちらに駆け上がって来た。せっかくだ、俺から出迎えに行こう。

 

「やぁ、いらっしゃい」

 

長物を持つ俺が明彦君の間合いにまで飛び込んで来るとは思っても見なかったみたいで後ろの2人の動きが止まる。明彦君のラッシュを捌きながら少しずつダメージを与えて行く。

 

「くっ、明彦、いったん下がれ‼︎荒垣‼︎前衛の交代だ‼︎」

 

「おうよ!」

 

さすが、長い事組んでる事だけはある。明彦君ごと潰してしまうような一撃を繰り出す事で俺の体勢を崩して入れ替わるつもりだった見たいだ。…誤算は模造刀だからこそ出来る受けだろう。そのまま受け流して逆に真次君の体勢を崩してやった。

 

「ぬわっ⁉︎」

 

「シンジ!くっ…」

 

「ふふ、どうする。このままだと前衛は壊滅だよ?」

 

「…2人とも撤退だ。一度この場を離れて建て直すしか無い」

 

「させると?」

 

「早速コレを使わされるとは思いませんでしたよ…」

 

そう言って美鶴ちゃんが取り出し叩きつけたのは煙幕だ。ふむ、ここまで差があるとは思って無かった見たいだな。それでも仕切り直し用に備えてあった訳か。

 

「おや、逃げられたか。ふぅん、よし、初戦はここまでにしようか」

 

「プハァ…センパイ、ドンだけ力有るんスか。ゼェ…俺だって自信有ったンスよ?ゼェ…」

 

「くっ、済まない、切り込みとして役割が果たせなかった」

 

「…私も戦力差の見積もりが甘かった。これでは作戦立案に支障が出てしまうな」

 

「ほらほら、水分補給して。一応みんな治療しておこうか。アメノウズメ、メディアを頼む」

 

「ええ、でも溢れるマガツヒが少ないから効果も薄いわよ?」

 

「大丈夫かな?」

 

「…あー、大丈夫ッス」

 

「よし、じゃあ反省会だ。君たちに何が足りなかった?」

 

「…我々3人共クロスレンジでしか攻撃手段がありませんでした。その為思うような援護が出来ず逆に距離を潰した事による同士討ちを警戒しなければならない我々の動きを制限されてしまった事です」

 

「うん、まぁ、それが狙いで潰したからね。ちなみに最初の明彦君が先走った様に見せたのは指示通りかい?」

 

「はい、俺の性格を知っているなら作戦か迷ってもらえるのでは無いかと考えました」

 

「なるほどねぇ。悪くはない。が、結局明彦君1人で受け持つ事が出来るなら上策だった」

 

「やはり私の甘さが…」

 

「うーん、引き際と備えの良さは見事だったよ。正直一番大事だと思うね」

 

「そうでしょうか…」

 

どうやら美鶴ちゃんは自分の判断に自信がないらしい。他の2人がインファイターだから必然的に後衛を務める美鶴ちゃんが司令塔な訳だが見事な撤退だと思ったくらいだ。

 

「桐条よぉ、結局は俺たち2人が弱過ぎたってだけなんだ。タルタロスでイキってだけどまだまだ甘かったんだよ」

 

「…そうだ、不甲斐ないのは俺たちの方だ」

 

「お前たち…」

 

「そうだね、美鶴ちゃんと戦う前にチームが崩壊寸前だったけど撤退の判断は良かったと思うよ。君たちに一番必要なのは犠牲を出した勝利じゃない、犠牲なく拾う情報だ。そうだろう?そう言う意味で模擬戦ながらいい判断が出来ていたと思うよ」

 

「私は出来ていますか?」

 

「おいおい、俺たち2年生のリーダーだろ桐条。自信持って俺らを動かしてくれや」

 

「ああ、頼む」

 

「お前たち…」

 

…まぁ、鉄砲玉みたいな2人だからなぁ。ちょっと慎重な司令塔でちょうどいいでしょう。

 

「ま、この場の結果なんてタルタロスの活動とは別物だよ」

 

「そうなんですか?」

 

「決定的に違うのはペルソナが使える事だよ。使えるならまた組み立ても変わるさ」

 

「そりゃそーっスね」

 

「…しかし、なんらかの理由でペルソナが使えなくなるシチュエーションも想定するならうってつけですね」

 

「お、よく気が付いた。よし、そろそろもう一戦いこうか」

 

「はい‼︎」

 

さっきは美鶴ちゃんと剣を交える前に終わっちゃったからな。あっさり終わらせるんじゃなくてジワジワとやりましょうかね

 

 

 

 

 



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反省を糧に

評価バーの赤色の壁は高いので初投稿です


あの後チーム戦だけでなくタイマンも何度かやってると流石に疲れたな。肉体的なダメージは回復出来たが精神的にヘトヘトみたいだな。

 

「ゼェ…ゼェ…、な、何で…アンタ…そんなピンピン…してんスか?」

 

「……げ、減量より、キツイ」

 

「…………」

 

美鶴ちゃん大丈夫かな?一番精神的にすり減った役割だったしなぁ。とりあえずお腹も空いたしコーヒーブレイクでもしようか。甘いものも用意しておいたし、アメノウズメにも出さなきゃならんし。

 

「ほら、へたり込んでないで。甘いものを用意しておいたから食べようか。疲れもマシになる」

 

俺が丈夫なのは間違いなく肉体レベルのおかげだな。後は慣れの問題か。ひと心地ついたらみんな少し元気を取り戻した様だ。

 

「無様な姿をお見せしてしまいました…」

 

「あはは、追い込む為だったからね。訓練でもなけりゃあそこまで疲弊出来なかっただろう?」

 

「俺たちと何が違うんスか?」

 

「そうだなぁ、君たちがシャドウと戦う事が出来る最大の理由はペルソナだろう?そのペルソナを宿してるからこそ生身でシャドウとやり合う事が出来てる。そして倒して得られる経験は心の成長…すなわちペルソナの成長だ」

 

「けど、それは先輩も同じではありませんか?」

 

「…いいや、忘れたのか明彦。決定的に違う、悪魔との戦いはこの人しかしていない」

 

「そうだ、そこが一番の理由だろうね。…ま、オススメなんて一切しないけど」

 

「…強くなれるんでしょう?」

 

「バカかアキ、こんだけツエー先輩ですら無茶苦茶警戒してんだぞ?リスクデカ過ぎんだろ」

 

「うむ、明彦が強さを求めるのも分かるが一足飛びで得る物でもなかろう」

 

「そもそも君たちが悪魔を倒して俺の様に強さの糧にできるかは分からないからなぁ。よしんば出来るとしても倒すのは大変だし…。俺だってご先祖さまのおかげで何とか出来る相手を何とかしてる位さ。ま、強くなりたいならしっかりトレーニングする事だよ」

 

「…わかりました」

 

「ったく、焦んじゃねぇぞ?」

 

「すまんなシンジ、つい強くなれるならと思ってしまう」

 

この影時間を解決したレベルに至ってるならともかく今段階の彼等を悪魔の前に連れては行けない。中途半端に意思が強いニンゲンなんてただのご馳走にしかならない…。そろそろ反省会を始めようか。

 

「ほらほら、総評をしようか。まずは君たちに聞いてみようか、どうだった?」

 

「力押しじゃなんともならねぇ相手もいるんスね…」

 

「かと言って俺のスピードだけでも何とも…」

 

「私なんてレイピア使わせてもらったのに何とか掠らせた位だぞ?」

 

「まあまあ、勝てない相手にどうすれば良いかは考えられる様になったかな?ポイントはシャドウにも相性がある事だ」

 

「あー、俺はカウンター狙って待ちだな。上手いこといけば形成逆転出来るだろうし」

 

「私が氷結魔法、明彦は電撃魔法。なるほどシャドウの弱点を突く事で有利に運ぶ訳ですか」

 

「他にも相手の能力を下げてしまうのも大事だよ。実力差を埋める若しくは引き離す有効な手段だ」

 

「それは俺の役目ですね」

 

「そうなるとこの3人で動くなら真次君が前衛、明彦君が中衛、美鶴ちゃんが後衛となる訳だ。なかなか良いバランスしてるじゃないの。そういえば岳羽さんのペルソナはどう言う能力なんだい?」

 

「彼女のペルソナは『イオ』…確か衝撃魔法と回復を得意としておりました」

 

「おー、ヒーラーも入るのか。随分とバランス良いじゃないのさ」

 

「えぇ…、まぁ…そうではありますが」

 

「まぁ、桐条はソリが合わねぇからな。一応いろんな理由つけて組む回数減らしちゃいるんスよ」

 

「…俺たちとしても何とかしてやりたくはあるんですが、壁を感じてますね」

 

なるほど、まだまだ確執は深そうだな。…そこは幾月さんの墓穴待ちだからなぁ。今のところ信用している大人と信用できない仲間たちの間で色んな事に耐えてるのかな。

 

「時間だけじゃなく何かきっかけが必要だろう…ってありきたりな事しか言えないな」

 

「そうですね、分かってはいるんですがどうにも歯痒いのです」

 

「ま、それはそれとして君たちの総評だ。ソロで動くにはまだ足りない部分もあるけど、探索、調査ならそれでも十分。退路の確保さえ意識してれば良いんじゃない?チームとしても大分良い感じなんじゃないかな。ま、来年度どんな新しい子が来るのかにもよると思うけど…君たちなら上手く回せそうだな」

 

「ありがとうございます」

 

「ま、俺たちも先輩に扱かれましたからね…」

 

「ふふ、影時間では役に立ててないからね。それくらいはさせてもらうさ」

 

「しっかし、先輩って刀持たせた方がエグいんスね…」

 

「ああ、しかも踏み込んだとて体術もすごいですからね」

 

「うむ、私もフェンシングに自信は有ったんだがああも見切られるとは思わなかった」

 

「色んな所で振らされてるからなぁ。期間は短いけど結局は内容の濃さだよ」

 

 

型だけは叩き込まれたけれど実践の内容が濃いからな。認知世界はイメージと噛み合うと上達が早いんだ。

 

 

「さて、そろそろ帰ろうか。お互い大きな怪我もなくて何よりだよ」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「ま、また機会を見つけてやってもいいしね。後輩が増えてからでも楽しそうだ」

 

「…トラウマ植え付けられそうっスね」

 

「…まさか、そこまでしない…と思うよ?」

 

「いやぁ、俺らん時も大概だったっスよ?なぁ」

 

「俺は高校に来てこれほど強い人が居るのかと嬉しかったぞ?」

 

「アキはそうだろうぜ…」

 

「…今思えば中々な初対面でしたね」

 

「頼まれたから色々考えたのに…、酷い後輩たちだ」

 

「それでも今となっては感謝しか有りません。私達活動部が行き詰まる時、一つ壁を超えたい時お声かけさせて頂きます」

 

「ふふん、任せたまえ。…そうだなぁ、()()()()に目覚めたからって浮かれてる様なヤツが居たらその鼻っ柱へし折ってあげようか?」

 

「辞めてやってくれ…ぜってートラウマになるから」

 

「…流石に心を折るのはどうかと思います」

 

むう、痛い目見ないと分からんと思うんだけどな。しかし散々な言いようだな。…羨ましそうな目で見てくる明彦君は放置に限る。

 

 

「それでは」

 

「ああ、お疲れ様」

 

「あざっした」

 

「ありがとうございました」

 

 

俺にとってもいい経験になったな。ふふん、メンツが揃ってからは楽しみだ…。そうなるとエリザベス焚き付けるのも面白いか?

 




初期メンバー3人は4月時点でレベル20中盤位あります。ま、レベル差補正ですぐ追いつかれますけどね


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時間経過とか体力削る系イベント戦

庭の柿が熟れたので初投稿です


もうそろそろ年の瀬だ。すっかり寒くなってきた。鈍った身体ももうバッチリかな。年末にはエリザベスに3年の成果見せられるだろう。…とはいえ裏ボスとしての力を司る者を倒せる程にまで至っていると自惚れてる訳じゃない。たとえピクシーとアメノウズメを合わせた3人でも厳しいだろう。ま、目的は倒す事じゃないしな。来年度担当を持つ事になったエリザベスにどれだけ成長したかを見せる為だからな。訓練と称したシゴキも久しくやってないから今の俺がどれだけ通用するか楽しみだな。

 

 

 

さて、明日はクリスマス。そんな中俺はベルベットルームへと来た訳だ。もちろん目的はエリザベスとの一戦、気合も入る。

 

「お待ちしておりました。ふふ、随分と鋭い空気を纏う様になりましたね。さぁ、成長した証、見せてくださいませ」

 

「エリザベス、暴れるのはアリーナに行ってからにしなさいな。せっかく用意したでしょう?」

 

「そうですね、では参りましょうか。本日はお一人ですか?それともお仲魔もご一緒に?」

 

「今日はチームで挑ませてもらう。ま、それで勝てるとは思っちゃ居ない。…けど、あっさり負けるつもりも無い」

 

「ええ、それでこそ。我らのお客人ならばこそ挑んで頂きたく存じます」

 

エリザベスもいつもの雰囲気と違って刺す様な空気を放っている。…やべぇ、流石にここまでマジモードとは思ってなかったぞ。ふぅ、やってやるっきゃねぇか。久々に『アスラおう』も出し惜しみナシだ。刀は長船、銃は二十八年式だ…挑発は流石に自殺行為にしかならんからな。

 

 

「さぁ、お姉様、リョウスケ様、用意はよろしいですか?私ラヴェンツァが立ち合いますので」

 

「さぁ、リョウスケ様、貴方の軌跡を見せてくださいませ?」

 

「言われずとも…‼︎来いっ、ピクシー‼︎アメノウズメ‼︎」

 

「よーし、アタシもやっちゃうぞー!エリちゃん、負けないぞー‼︎」

 

「こうしてカタチは違えど人の守り手と手合わせするとは思わなかったわ。ふふ、だから人の世は面白いのよ」

 

「2人とも最初っからフルスロットルだ‼︎俺が前で2人が後ろ‼︎」

 

「はーい」「了解」

 

「さぁ、まずはペルソナカードドロー…『スルト』‼︎参りましょう」

 

 

スルト、火属性とパワーに優れたペルソナだ。…そもそも優れてないペルソナが無かったな。

 

「『アスラおう』‼︎マハスクカジャ‼︎」

 

「アタシは…ラクンダ‼︎よーし、エリちゃんの防御下がったよ‼︎」

 

「私の自慢の舞よ…セクシーダンス‼︎」

 

「流石の連携ですね…ならば『スルト』焼き払いなさい、マハラギダイン‼︎」

 

広範囲魔法だが着弾点は俺たちの中心…なら懐に飛び込めば良い‼︎

 

「うわっち‼︎むー、お返しよ…ジオダイン‼︎」

 

「私は立て直しを…メディラマ」

 

「む、爆炎に乗じてここまでいらっしゃいましたか…」

 

「ああ、どこまで届くか試させてくれ」

 

刀を構えてエリザベスへと向かって行く。葛葉流煉獄撃から修羅虎突きへと繋げるが手応えはほとんど無い。上手くガードされてしまった。やっぱり…()()()()だ。

 

「この程度ですか?『スルト』お返しに斬撃を…なっ⁉︎」

 

「ここだっ‼︎」

 

大きく見せた攻撃の隙に食いついたエリザベスがペルソナに指示を出した。ここだ。ここでエリザベスの体勢を崩す。二八年式を撃ち込み行動の阻害に成功した。

 

「『アスラおう』ギガントマキアァァァァ!!!!」

 

崩れた所に俺自身が放てる最大の一撃をお見舞いしてやった。ウズメには指示してある通りすぐ回復魔法を使ってくれた。

 

「……お見事です。これは一本取られましたね」

 

「まぁ、やっぱりピンピンしてるわなぁ」

 

「いえ、正直申しましてここまで綺麗に一撃を頂くとは思っておりませんでした」

 

「ちょっと煤けた程度か…。しかも初見だから決まっただけだしなぁ」

 

「それでも十分に驚かされました。ふふっ、ここからはリョウスケ様の得意分野でお相手致します。ペルソナカードドロー『ヨシツネ』。これが私の知る刀術の極み。さぁ今度はこちらから参ります…『ヨシツネ』アサルトダイブ‼︎」

 

 

エリザベスが召喚したペルソナ『ヨシツネ』が放つ攻撃が俺に迫る。不味いと思った瞬間には吹っ飛ばされていた。

 

「リョウスケちゃん⁉︎ウズメン回復ー‼︎」

 

「ディアラマよ‼︎間に合って…」

 

「痛ぅ…なんて威力だ、マトモに喰らったら身体泣き別れてたぞ」

 

「良かった…、コラー‼︎エリちゃん‼︎」

 

「ピーちゃん、リョウスケ様はアレ位で死ぬ程ヤワでは有りません。現にほら…あのタイミングで放った私の攻撃に反応してガードを差し込んだばかりか追撃を防ぐ一発を頂いてしまいました」

 

「痛た…ペルソナチェンジをした瞬間イヤーな気配がしたもんでな。刀が何とか間に合ったんだよ。思ったより威力が逃がせそうだし頼りになるヒーラーも居るからな、ダメージを受けてもエリザベスの足を止める方が大事だと思った訳さ」

 

「お見事です。ですが…その刀でまだ受け切れますか?」

 

「分かってる。この一合でお開きにしようか」

 

そう、長船で受けたまでは良かったんだがな…。他の事に意識を向け過ぎたのもあって刀はボロボロになってしまっている。すまない、長船、もう少しだけ付き合ってくれ。

 

 

「参ります…『ヨシツネ』八艘飛び‼︎」

 

「『アスラおう』万物屠り‼︎」

 

その名の通り8連撃を繰り出してくる『ヨシツネ』。ペルソナシリーズ通して最強クラスの技だ。対して俺は『アスラおう』に強大な一撃を指示した。確かペルソナの『アスラおう』には()()()()()のはずだが何故か使える気がしたんだ。

 

 

 

 

 

この世界はゲームじゃない…8連撃のスキルは『ヨシツネ』が振るう刀から飛んで来る。まぁ早すぎてほぼ一振りにしか見えなかったんだけどな。刀で何発か外らせる事ができるんじゃないかって俺の賭けは流石に見通しが甘かったらしい。…2発目を受けた時長船が折れた。例え少し威力を削る事は出来た所で俺を気絶させるには十分だった様だ。

 

 

「お目覚めの様ですね」

 

「もう少し耐えられると思ったんだけどな…」

 

「いえ、お姉様が()()ペルソナを持ち出す事となるとは思いも寄りませんでした」

 

「いやぁ、流石に源平合戦の英雄を象ったペルソナだ…スゴい技だった」

 

「あー‼︎リョウスケちゃん起きてる‼︎」

 

「もう、びっくりさせないでよ…。ライドウくんでもあんな無茶…()()()()しなかったわよ」

 

「はは、悪かった。…なんというか無茶のしどころな気がしたんだ」

 

 

 

エリザベスとの一戦は俺のKO負けで幕を閉じた。色々と気になる所もあるしエリザベスにも話を聞いてみたい…、とりあえず向かおうか。

 




ターン数を耐えるかエリザベスの体力をある程度削る事が条件のイベント戦でした。なおリョウスケ君はやり過ぎた為セルフハードモード突入した模様


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一山越えたらまた山がある

前話でちょっと支離滅裂な所が有りましたが指摘の上修正出来ましたので初投稿です


「どうだった、俺の刀は」

 

エリザベスを見つけたのでそう声をかけた。ま、格上なら古牧先生とかウチの爺さんとか居るんだけど、その気は無いにしてもサマナーとして、ペルソナ使いとしての全てをぶつけて届かない相手なんて滅多にいないからな。(ここにはいっぱい居るけど)そんな格上にどこまで迫ったかは聞きたいよな。

 

 

「驚かされました。本当ならば『ヨシツネ』を使うつもりはございませんでしたが…、様子見をしていたとはいえ私にあそこまでダメージを与えるものですから。つい衝動的に私が知る中で最も刀の扱いに優れたペルソナを選んでしまいました」

 

「…ちなみに『ヨシツネ』じゃなかったら?」

 

「その場合は『ジークフリート』でございます」

 

 

…大して変わってない様な気がしないでも無いぞ?どっちも物理ペルソナの最高峰じゃねぇか‼︎強いて言うなら連撃の『ヨシツネ』と一撃の『ジークフリート』ってところか?いやまあ『ヨシツネ』の技を見られたってだけでも収穫はあったけどさぁ

 

「ところで、先程の刀は?」

 

「あー、流石にポッキリ真っ二つ。八艘飛びの2発目受けたまでは覚えてるんだけど、多分そこで折れたんだと思う」

 

「それは…申し訳ありませんでした。お詫びと言っては何ですが私のコレクションから進呈致しましょう」

 

「コレクション?」

 

「ええ、認知世界には本物と見紛う程の産物が沢山ございます。そんな中でも人の世で逸話のついた品を見かけるとつい欲しくなってしまい…どんな手を使ってでも集めたくなってしまうのです。ですから来年から担当する事になるであろう客人にはそう言った期待もしております。あぁ、学び舎に生まれた認知世界…しかもそこには歴史オタクと呼べる教師もいるとの事。さぞかし素晴らしい品がある事でしょう」

 

 

これ、p3でお願いされる「エリザベスのお使い」クエストの事か⁉︎ちゃっかり自分の役得まで考えてる辺り流石だわ。…天下五剣なんて認知の産物でも無きゃ使えねぇよな。けど、葛葉の武器を試してみたい気持ちもあるんだよなぁ。

 

「ありがたいんだが、もうすぐ冬休みだから神社の蔵から持ってくるつもりだったんだけど」

 

「それはそれで使えばよろしい。大事なのは私のコレクションを一つ、貴方に譲っても構わないと言う事‼︎でございます」

 

「そっか、ありがとう。ちなみに何があるんだ?」

 

「そうですねぇ……、うん、そうです。コレがよろしいかと」

 

「コレは…?『ヨシツネ』が待っていた刀か?」

 

「よくご覧になっておいでです。左様。膝丸と言う刀なのですが、義経が薄緑と名付けたり頼光が土蜘蛛退治では蜘蛛切と呼ばれたりした伝承がございます。事これに関しましては薄緑と呼称すべきですね」

 

「…スゴいな。吸い込まれそうだ」

 

「しかし…いつの間に私のコレクション入りしていたのでしょう?これだけの品ならば記憶しているはずなのですが…。ま、リョウスケ様の元へと行く運命だったのでしょうから構いませんか」

 

 

だ、大丈夫か?エリザベスすら覚えがないって、ガチモンの妖刀じゃないのか?

 

「ねえねえリョウスケちゃん、コレ…多分アレかも。ねぇ、ウズメンも分かるよね?」

 

「あー、そうかも。周りくどいのは相変わらずなのね…」

 

「ピーちゃん、心当たりが?」

 

「うん…。多分だけどヨッシー、ヨシツネからの言伝だと思う」

 

「それ使えるようになっとけって事かしらね?彼もライドウくんと相性良かったから」

 

「ペルソナ『ヨシツネ』に認められたと言う事でしょうか。…という事は先程呼び出した『ヨシツネ』がこの刀を忍ばせた?私の預かり知らぬ所でその様な行動が出来るとは思えません」

 

「日本で源義経と言えば知らない人間なんて居ないくらいの英雄だ…、英霊とも言えるヨシツネを象ったペルソナだからこそ干渉出来たのかも知れない」

 

「ヨッシーのナワバリってこの辺だっけ?」

 

「ナワバリってピクシー、そんな言い方でいいのか?まぁ、神奈川県に主祭神となってる神社が有るな。この辺ならマサカド公の方が影響力ありそうだが、ここベルベットルームならそこまで厳密って訳でも無いんじゃないか?」

 

「多分だけど、ソレ使える様になったら顔見せに来いって事なんだと思うの」

 

「なるほど、そうなると薄緑は厳密には私のコレクションではありませんでしたね。むぅ、如何致しましょうか」

 

「そんなに武器をコロコロ取り替えられるほど器用じゃ無いんだよなぁ。まぁ、今回は俺の不明でもあるし俺とヨシツネの縁を結んでくれたから十分感謝してるぞ?」

 

「いいえ!私の気が済まないのでございます」

 

「お姉様、防具や装飾品は如何でしょう?」

 

「良い事を言いました。ふむ、時間はまだ3()()()はございますね。餞別も兼ねて一等の防具を差し上げます。…テオ!参りますよ!」

 

 

うわ、どこからともなくかっ飛んで来たぞ…。振り回されてるなぁ。

 

「……まったく、エリザベスに何を吹き込んだのですかラヴェンツァ。あれで本当に客人を担当出来るのでしょうか」

 

「申し訳ありません、良い案かと思いつい口を挟んでしまったのです」

 

「まぁ、ちょっと破天荒なくらいがエリザベスらしいだろ。それにここに来るような人間、エリザベスのキャラ位で動じたりしないさ。…それはそれとしてもう少し模擬戦の印象聞きたかったんだけどな」

 

 

たしかにびっくりイベント合って話それたのも分かるけどな。実際に戦った相手から聞きたかったんだよ

 

 

「そうですねぇ、私にギアを上げさせた…これだけでも誇って宜しいかと存じますよ?そこいらのシャドウに引けは取らないでしょう。…悪魔に関しては何とも申せませんが」

 

「「「⁉︎」」」

 

い、いつの間に後ろでスタンバイしてたんだよ。マーガレットもラヴェンツァも気付いてなかったぞ…。

 

「付け加えるならば…仲魔の方々にもう少しバリエーションは欲しいでしょうか。現時点では疾風属性と雷属性の魔法タイプが2柱…回復や補助は揃っておりますがいささか足りてないと思われます」

 

「お、おう。そうなんだよなぁ…たしかに足りてないんだよ。繋がりがある相手もクラマテングで疾風属性なんだよな。あとは()()持ってヨシツネ詣ではしてみるけれど」

 

「ペルソナではない『ヨシツネ』ですか…やはりもう少し属性の選択肢が欲しい所では有ります。ご存知の通り私が挑まれた場合用いるペルソナは属性のローテーションだけでなく物理、万能と対策をしなければならないが、手が無い訳でも無い様取り揃えておりますから…」

 

 

エリザベスに限らずここの住人たちは各属性の最高峰を取り揃えているからな。今でこそピクシーとアメノウズメの2柱、そして俺の物理で何とかなってると言えるけど手が出せないヤツも居るだろうしな…。『ギリメカラ』とか『ランダ』なんて俺の天敵に違いないわ。

 

「そうだよなぁ…。ま、クラマテングとかヨシツネにも話を聞きながらこれから仲魔探しするさ。大学なら融通も効くからな」

 

「ええ、それがよろしいかと。……刀と銃のコンビネーション、エクセレントでございました。術理はそのまま修練を続け、操るリョウスケ様の力は悪魔と対峙し続ける事でいつしか私にもその刃は届くでしょう」

 

「そっ…か。ありがとう、キチンと成長出来てることが実感できた。…ってあれ、エリザベスは?」

 

「…お姉様ならもう走り出してしまいました」

 

「はぁ、あの子ったら…」

 

「ははっ、エリザベスはこう出なくっちゃな。よし、ちょっとまだふらつくけど帰るわ。また、年明けにな」

 

「ふふ、そうですね。それでこそお姉様です。ではまたお会いしましょう」

 

「ふぅ、アレも妹の個性ですか。そう思える様になった私も変わったのでしょう。リョウスケ様もお達者で」

 

 

死ぬほど疲れたけど…やり切った。課題も見えた。薄緑のことも有る…また色々考えるか。

 

 




マスコット?ライバル?枠でライホー君採用するかどうか久々にアンケートを使ってみました。仲魔にはならないです。たまにちょっかいかけてくる奴です

ちなみにライホー君とは葛葉ライドウのコスプレをしたジャックフロストですね


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色んなタイミングだから節目って言う

ライホーくんの人気は確かなものと分かったので初投稿です


もう少しで年末だな。今年中にこんなにゆっくりなるとは思わなかったな。神社に帰ったら何をしようか…。とりあえず大掃除と称してもう少し蔵の発掘をしようか。それともう一本刀を見繕おう。薄緑が使え使えとうるさい気がするんだが、なんとなくヨシツネに直接会ってからの方がいい気がするんだよな。こう言う直感は大事にした方が良さそうだしな。

 

 

 

「そういえばキョウジさん、今年も顔出さないんですか?」

 

「ああん?めんどくせーからパスだよ」

 

「またそんな事を…。ほったらかしてると爺さんから乗り込んで来ますよ?」

 

「へっ、そんなコトなる前に雲隠れしてやらぁ」

 

「大の大人がかくれんぼですか?」

 

「うるせぇ…。オレにだってタイミングっつーもんがあんだよ。そういやお前さん、来年からもまだここ住むのか?オレとしちゃあデキの良いアシスタントがいて助かるけどよ」

 

「大学も都内ですからね、まだ厄介になって良いのなら」

 

「空き部屋だらけだしなこのビルも…。賃貸募集しても音沙汰ねぇから

 

「…(あんまり雰囲気良く無いからなぁ)」

 

「…ま、ココの場所も曰く付きだったらしいから仕方ねぇか」

 

「あー、やっぱそうなんですね」

 

「言ってなかったっけか?鎮め石じゃねぇけど、ちょっと霊的に脆いスポットなんだとよ。それでご先祖が此処にビルを建てたって訳さ」

 

「なるほど…それでか。色々と納得できました」

 

「…納得しちまう出来事あったのかよ」

 

「まぁ、それなりに?それじゃ行ってきますんで、また汚さないでくださいよ?」

 

「おう、気が向いたらな。ジジイに落ち着けって言っといてくれ」

 

「自分で言えばいいのに…、それじゃ良いお年を」

 

 

 

サラッと重要な話を言われた気がするけどな。なるほど確かに色々不安定な土地なんだろう、どうりで仲魔達も普通にしてるしベルベットルームの連中も良く来る訳だ。そんな土地で生活出来て落ち着かせる事が出来たるキョウジさんも十分霊能力者だな。…どっかの異界に繋がってるとかじゃ無いといいけど。

 

 

 

 

 

 

今年はダイチさんも遊びに来るらしい。…よし、あの人なら蔵の掃除手伝ってもらえそうな気がする。もちろんややこしい所は爺さんと宗一さんとやるしか無いんだけどな。

 

 

 

「よーう、リョウスケ‼︎久しぶりー」

 

「こっちで待ち合わせってのも不思議なモンですね」

 

「確かになー。部活は顔出してんの?」

 

「なんでか知らないんですけど怖がられたり古牧先生に捕まったらするだけなんであんまりですね」

 

「…そりゃあの先生とやり合ってるの見せられたら普通の高校生引くからな?」

 

「…分かってますって。ま、それに引退した世代がでしゃばるのもどうかと思いましてね。それでも合宿の手配手伝ったりしてるんですよ?」

 

「その辺見せないのもリョウスケらしいか。んじゃまた年末年始よろしくなー」

 

「はい、こちらこそ」

 

「…なんだか嫌な予感がするんだけど、気のせい?」

 

しまった、満面の笑みでアピールしすぎた。落ち着け…せっかくの労働力なんだ、逃す手は無いぞ。訝しむダイチさんを連れて神社へと向かった。

 

「そういやクリスマスも有ったのに大学生として何にもなかったんですか?」

 

「うるせー!新田しゃんは久世と仲良さそうだったんだもん…」

 

新田…久世…デビサバ2 の人たちか。普通の大学生活を送れてるってだけでもホッとするな。乙女さんとか真琴さんとかこの世界ではどうしてんだろうかな。ケイタはボクシングやってるらしいし、ジュンゴも料理人目指してる。ジョーさんとロナウドはわかんないや。…ヤマトはムッツリしてたっけな。

 

 

 

 

「ようきたのう。今日のところはゆっくりして行け。明日からは手伝うてもらうぞ」

 

「よろしくお願いしますー」

 

「なんの、ワシこそ頼むわい。若いモンの力は助かるのう」

 

「…そこいらの若者よりよっぽどパワフルでしょうに」

 

「何か言ったかの?リョウスケにも期待しとるぞ」

 

「もちろんですとも」

 

「…ところでなんじゃいその物騒な気配は」

 

「え、お前なんか持ってんの?」

 

「あはは、ちょっと縁が有ってオレの手元に来た日本刀が…」

 

「良く東京から持ってきたなぁ…」

 

「お祓いか?」

 

「いや、()()()たくて。似たようなモノを蔵でみたんですよね」

 

「ふぅむ、気をつけるんじゃぞ。切れる刀は魅入るとも言うからの」

 

「ひぇ⁉︎おっかないなぁ…」

 

「その辺は大丈夫だと思います」

 

「そうか、分かっとるなら良い」

 

 

 

 

神社の手伝いをしながら年の瀬を過ごしているとあっという間に大晦日。蔵の掃除は少しずつ進めていたんだが氷山の一角をようやく把握できたくらいでまだまだ先は長そうだ。ダイチさんもせっせと運ぶの手伝ってくれてホント助かったな。

 

 

「ふぃー、今日はゆっくりしていいんだって?」

 

「はい、あらかた正月の色んな物品運び終わりましたからね。二年参りの参拝客は居るけど境内空けておくだけの対応みたいなんで」

 

「ここまで夜中来るのすごいなぁ…」

 

「度胸試しでも無いですけどそう言う気合の需要もあるみたいですからねぇ」

 

「ところでさ、あの蔵って何であんなに荷物多いんだ?結構やったけど…全然進まないじゃん」

 

「代々の荷物とガラクタと忘れ去られた大事なモノとが一緒くたになってますよ。古いところなんて江戸時代のままらしいですからね…。ほとんど地層ですよ」

 

「ひぇー、それもすごいなぁ。まぁ、なんか歴史の実習みたいで楽しかったけどさ」

 

「宗一さんとか爺さんともコツコツやってたんだけど…果てしなくって、ほんと助かりますよ。部活の連中駆り出すのもなんだかなぁって感じでしたから」

 

「はは、確かに大変だったもん。ま、おかげでバイト代も貰えるから気にすんなって」

 

 

そんな話をしていたら遠くから鐘の音が聞こえてきた。もうすぐ年明けか。色々と動く年なんだろうな…。

 

「…い、おーい‼︎目の前でボーッとすんなよー」

 

考えこんでたらそう言われてしまった。

 

 

「すいません…。あ、ダイチさん雪降ってきましたね」

 

「うわぁ、寒いわけじゃん…。ヒナコさんもこればよかったのになぁ」

 

「明後日来るらしいっすよ」

 

「そうなの⁉︎」

 

「家族の集まり終わらせたらすぐ向かうって。聞いてなかったんですか?」

 

「あはは…。あ、明けた。あけおめー、ことよろー」

 

「…強引に誤魔化しましたねぇ。あけましておめでとうございます、こちらこそよろしく頼みますよ」

 

 

 

話してる間に年が明けたみたいだった。朝も早いので俺たちは寝ることにした。…この時の俺は朝起きたら外が大変なことになってるとは思いもよらなかった。

 

 

ま、事が起きてからしか何とも出来なかっただろうけどな。

 




無事ライホーくんは登場の方が強くなりました。以下ライホーくんの意気込みです

「クマ?モルガナ?アマノザコ?ハヤタロウ?違うホー‼︎アトラスのマスコットはオイラ達ジャックフロストだホー‼︎そんなフロストの中でもオイラは15代葛葉ライホーだから一番人気間違いナシだホー」



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悪魔でもコミュニケーション

街中で自分だけやたら薄着なので初投稿です


「明けましておめでとう、すごい雪ですね」

 

「おう、おめでとう。じゃのう。ここまではワシもしらんわい」

 

「ライゾウさん、明けましておめでとうございます。なぁ、リョウスケ、これってお客さんとか大丈夫なのかな?」

 

「どうですかね、雪降ってるから諦めるんじゃないです?というかニュース見ましょうよ」

 

「おお、そうじゃったな」

 

 

テレビをつけると民放は相変わらず正月特番をやっているので国営放送に切り替える。すると観測史上でも滅多にない豪雪だそう。随分と分厚い雲が停滞しているようで晴れ間が見えて来るのは見通しが立たないらしい。

 

 

「ふうむ、そんな珍しい事になっとるのか」

 

「ひええ、大丈夫かよ。あ、雪子ちゃんとこも大丈夫なのかな?」

 

「どうですかね、近くの山ですけど温泉宿ですから風情が出て多少の降雪は歓迎じゃないですか?」

 

「だと良いがの…。リョウスケ、何か思うところが?」

 

「…いや、お祓いじゃないけど神社だから()()()()あるんじゃないかって思って。ちょっと外の様子見てきても?」

 

「えぇ、リョウスケ大丈夫かよ」

 

「気をつけいよ?ではダイチ君は雪下ろしの手伝いをしてくれるかの?」

 

「分かりました、リョウスケも気をつけてな」

 

 

爺さんには俺が心当たりある事が伝わった見たいだ。俺の懸念が確かなら準備が必要だ…。多分だけどこの豪雪の中心地は半ば異界化してる気がする。幸いにも神社だから破魔矢を数本と念のために持ってきていた傷薬に…()()、備えはしておくものだな。

 

「ねぇ、リョウスケちゃんどうしたの?」

 

「ああ、外の雪すごいだろ?多分だけど原因は悪魔なんじゃないかって思ってさ。限定的すぎる豪雪と薄いながらも偶に感じる悪魔特有の気配

…状況証拠でもこれだけ揃ってりゃ俺たちなら解決の糸口位は見つけられそうじゃないか?」

 

「なるほどね…。確かに、悪魔の仕業だとしたらリョウスケくんの…いえ、私たちの役目かもね。けど、危険よ?」

 

「承知の上さ。打算的な面もある…、正直な話感じる気配もそこまで強大じゃないからこそ行けるんじゃないかってな。ここ神社だからな、御守りと破魔矢の補充は出来るし、行く前に地下の部屋に行ける」

 

「うーん、なんだろう…なんでか知ってる気配なのよねぇ…。雪、イタズラ、思い出せそうで出来ないのもどかしいー!」

 

 

 

爺さんは変な顔をしていたが破魔矢を数本と健康祈願の御守り、倉庫にあった火の紋様が入った石を数個ほどとピクシー曰く氷よけの加護が付いている襟巻きを拝借してきた。回復薬も癖でいつも持っててよかったよ。…ぶっつけで薄緑の初陣は少し不安だけどな。

 

 

 

「…ここ‼︎ここから異界に入れそう‼︎」

 

「結界みたいになってるな…。襟巻きのおかげで大分寒さもマシだ、このまま入ろうか」

 

 

異常気象を起こすまでに至る異界に足を踏み入れた。メメントスとは雰囲気が全然違うな。安直だが雪山ダンジョンって所だな。

 

「ヒーホー!オマエラ誰だホー?」

 

「フロスト?ここは?」

 

「ホントだ、フロストね。…シャドウのフロストより暴れそうに無いね」

 

「久々に召集かけられたからオイラ達の住みやすい環境に冷やしてるホー」

 

「…誰が召集を?」

 

「ホー?アイツは変わり者のフロストだホー。今の世の中オイラ達も中々集まらないから張り切ってるホー」

 

「変わり者のフロストね…。ちょっと位なら悪くなかったんだが、流石にやり過ぎだぞ」

 

「ホー、そんな事言われても盛り上がったオイラ達は止まらないホー!」

 

「ねえねえ、リョウスケちゃん、こうなったら()()手段しか無いと思うわよ?」

 

「分かってる、聞き分けの悪い悪魔にやる事なんて一つだ…退治されたくなけりゃさっさと止めてもらおうか」

 

「お断りホー、久々の現世楽しんでるのに邪魔するなホー‼︎オマエラみんな氷漬けにしてやるホー‼︎」

 

「行くぞ、ピクシー!アメノウズメ!」

 

 

入り口にいたジャックフロストから得た情報は首謀者はココいらに縁のあるフロストらしい事くらいか。とりあえず強さの調査にもなるし目の前のフロストを退治しよう。

 

 

「まとめて凍っちゃえホー!マハブフ!」

 

「この程度の範囲なら当たりはしない!お返しだ、薄緑の錆となれ!」

 

「ホッ⁉︎」

 

うっわ、スゲェ切れ味だ。一太刀でフロストが目に見えるほど弱ったぞ。

 

「ホ、ホー、オ、オイラ消えるホー?久々の現世もっと遊びたいホー」

 

「もう悪さしないか?」

 

「しないホー、反省したホー」

 

「リョウスケくん、まさか?」

 

「ああ、なぁフロスト、俺に使役される気は無いか?」

 

「ホー?オイラを仲魔にするのかホー?…ソッチの方がアイツの言いなりより楽しそうホー‼︎」

 

「よし、ならこの封魔管に入ってくれるか?」

 

「分かったホー。オイラ、妖精ジャックフロスト…コンゴトモヨロシクホー!」

 

「ふぅ、なんとか上手くいったか」

 

「リョウスケちゃん、良かったの?」

 

「ああ、フロストともあれば間違いなく氷属性のエキスパートだしな。それに今の個体は随分と知的っぽかったし」

 

 

 

ジャックフロストを仲魔に加えこの雪山ダンジョンを進んで行く。結構時間経ったと思っていたが時計を見ても明らかに進んでいない。しっかしフロストばっかりだなここ。変わり者って話じゃなきゃキングフロストでも居るのかと思ったけどそういう風でも無いしな。

 

 

「リョウスケ、この先にアイツはいるホー」

 

「助かるフロスト。しかしお前は同族倒しても良いのか?」

 

「オイラ達は雪の妖精ホー。雪が降る所なら幾らでも沸いてくるから気にしないホー」

 

「そんなもんなのか」

 

「そんなもんよ。それにリョウスケちゃんに退治されたって言っても死んじゃうわけじゃ無いから。特にアタシのピクシー族やフロスト族は数もいっぱいいるしね」

 

「基本的にオイラ達に個性は無いホー。けどサマナーの仲魔になったりこの奥に居るアイツみたいに変わり者もたまーに居るんだホー。そういう奴らは倒されちゃってもおんなじ個体としてまた出てこれるらしいホー」

 

「へー、消滅させられてもユニーク個体ならおんなじ個体を呼び出せるのか」

 

「詳しく知らないけどそうらしいホー」

 

「なるほどなぁ。よし、一休み出来たし入ろうか」

 

 

一際気配のする広場は目の前だ。何が出てくるのやら…ってフロストの変わり種だろうけど。でもユニーク個体だから経験豊富な可能性が有るみたいだしな、気をつけないと。…フロストにフロストぶつけても仕方ないしな。

 




やっぱりフロスト君は1人欲しくなりますよね


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正月に初陣は縁起が良いのかどうか

ライホー君が出せて満足なので初投稿です


「ヒーホー!オマエラ何者だホー?」

 

…あれが元凶だろうな。()()()()だけど、一応聞いておこうか。はぁ、気が進まない。

 

「俺はこの大雪の原因を調べにきた、見たところフロストの異常発生が原因っぽいけど…首謀者はお前か?」

 

「失礼な奴だホー。オイラは15代葛葉ライホーだホー。ライホー君と呼ばないと戦争も辞さないホー」

 

「自分でそう名乗ってる変なヤツホー」

 

「オマエこそ仲魔に成り下がるとは恥ずかしいヤツホー」

 

 

やっぱりライホーだったか。蔵をひっくり返したからかもしれん…。ウチのフロストとはソリが合わないのか小競り合いをしている。見ている分には愛らしいんだけどコイツら天候に悪影響及ぼすレベルでおっかないからな。

 

「あー、名乗られたなら俺も名乗ろう。俺は葛葉リョウスケ…駆け出しサマナーって所か」

 

「オマエも葛葉だったのかホー。けど、ライドウも居ない今オイラこそが真の葛葉ライホーだホー」

 

「ライドウさんの頃からいたのか…ピクシー、アメノウズメ、見覚えは?」

 

「あー⁉︎事あるごとににライドウちゃんにイタズラ仕掛けようとして返り討ちになってたあのフロスト‼︎」

 

「居たわねそんなの…、ライドウ君の持ってた外套と学生服着込んでたフロスト。なんでまた今頃出てきたのかしら」

 

「…倉庫整理の所為だろう。()()()()()()()を虫干ししたんだよ。それと冬の寒さが呼び込んだんじゃないか?」

 

 

まさか倉庫整理がこんな出来事を引き起こすとは思わなかったな。…まぁ駆け出しとはいえサマナーの俺がいるタイミングでよかったと考えよう。

 

「ヒーホー!オマエ達、オイラ達のお祭りを邪魔するつもりホー?」

 

「ああ、これ以上フロスト達がはしゃぐと俺たちニンゲンも正月が楽しめないからな」

 

「オイラ、ライドウが居なくなってからブランクが有るけどライドウのニセモノ何かには負けないホー」

 

「…ライホーに偽物呼ばわりされるのか」

 

「今、呼び捨てにしたホー‼︎もう怒ったホー!オイラライホー君と呼ばないと許さないホー!…言っておくけどライライホーも違うホー」

 

 

なんとも気の抜ける…が周りのフロストが急に殺気だった。ユニーク個体なだけある、しっかりと統率しているらしい。

 

「そうかい…先手必勝だ、道具を使わせてもらうぞ」

 

あらかじめ持ってきていたフロスト達がいっぱい出てきた時のための火の石…おそらくはマハラギストーンだろう…をばら撒く。

 

「ヒーホー…」

 

周囲のフロストはマハラギストーンだけで虫の息だ。…コイツら生まれたてか。そういう意味ならこのライホー…君も生き延びてきた個体じゃないのか。…ああ、ブランクってそういう。尚更コイツらが成長する前に数を減らさないとな。

 

 

「グヌヌ、偽物のくせに卑怯だホー!こうなったら精鋭の出番ホー!」

 

そう言うとライホー君は随分とスタイリッシュなフロストを呼び出した。…出立ちは強そうだけどさっきの奴ら強さはと変わらないような?

 

「アイツら自分でフロストエースを名乗ってるけど、実際ただのコスプレホー」

 

こっちのフロストがぼやいてる間にアメノウズメのマハザンによって

吹き飛ばされていった。

 

「…随分な精鋭だことで」

 

「グムム、こうなったらオイラの出番ホー!後は冬将軍に援軍を頼むホー‼︎」

 

 

なんだ、切り札を呼び出そうとした様だが動きがない。…ははーん、フロストの数を減らしたのが効いたか?

 

「ちょ、ちょっと待つホー!…オマエラどうなってるホー?」

 

「オイラ達が減らされた所為で外の世界が晴れてきたみたいですホー」

 

「気温がどんどん上がって冬将軍が動かないですホー」

 

「な、なんだって⁉︎ホー!」

 

「もう良いかな。ライホー君、君には反省してもらうとしよう」

 

「ヒホッ⁉︎ま、まだオマエがライドウ程強いと決まったわけじゃ無いホー!オイラが決めてやるホー!」

 

ライホー君が身に着けている物を傷つけるのは忍びないからな、峰打ちで済まそう。魔法を使おうとしている所に二八年式を当てない様撃ち込み峰で打ち据える。

 

 

「や、やられたホー」

 

「ふう、これでこの異常気象も落ち着くかな?」

 

「そうじゃ無いと困るわよねぇ」

 

「私としてはもう少しフロストの数を減らすべきかと思うけど…」

 

「ウズメの姐さんおっかないホー…」

 

「ホー、反省したホー…。オイラ、大人しく15代目葛葉ライホーとして生きていく事にするホー。オマエもキチンと葛葉として認めてやるホー」

 

「ライホー君に認められなくても俺が葛葉というのは変わらないぞ?」

 

「オイラまだまだ修行不足だったホー…。強くなってまたオマエに挑みに来るホー」

 

 

そう言うとライホー君はこの場に残っていたフロストを引き連れて去っていった。まさに嵐の如し出来事だな。

 

「フロストも居なくなったしこれで天気も戻るかな?」

 

「多分大丈夫ホー。それより、アイツが居なくなったからこの異界も閉じちゃうから早く出た方がいいホー」

 

「確かに、ここを形成していた連中が居なくなったからな。よし、急いで撤収するか」

 

 

フロストが案内した道を戻る。帰り道は何にも出てくる事が無かったのであっという間に現世に帰ってこれた。出てきた途端歪みを見せていた空間は落ち着きを取り戻した様だ。

 

 

「よし、しっかり晴れてる。まぁ正月のドカ雪位で話題も終わってくれそうかな?」

 

「多分そうかも?」

 

「リョウスケ君のサマナー初仕事にはちょうど良かったかしら?」

 

「顕現したてってのが助かったな。…そう思うとこの仲魔になったフロストって結構ベテランたったのか」

 

「ヒホ?オイラは季節に合わせて偶に遊びに来てただけホー」

 

「…リョウスケちゃん、結構スゴいヤツ仲魔にしたかもね」

 

 

まさかの拾い物か?ま、大ごとになる前に解決出来た事を喜ぶとしようか。神社に戻って報告を…って時間あんまり経ってないんだな。

 

「なぁ、異界って時間の進みが違うのか?」

 

「うーん、モノにもよるんじゃ無いかしら。あ、でも早くなるってのは聞いたことないよ!」

 

「そうね、思ったより時間が進んで無いってライドウ君も最初の頃は言ってたかしら。…あんまり私たち悪魔に時間の概念って無いからよくわからないのよね」

 

「なるほど、概念が無いから悪魔が作った異界は時間の流れが緩やかなのかもしれない。さて、お疲れさん、封魔管に戻ってくれ。神社に帰るとするよ」

 

「はーい」

 

「分かったわ」

 

「ヒーホー」

 

 

さて、積もった雪はどうしようもないが、事件は終わった。この雪じゃお客さんも来ないだろうし流石に疲れたから今日はもうお節とお雑煮食べてゆっくりしたいもんだよ。

 

 



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元日にゆっくりなんて出来やしない

アンケートがここまで割れたの見た事ないので初投稿です


神社に帰ると参道を整備する爺さんがいた。ダイチさんはどこ行ったのかな?

 

「帰ってきおったか。何か有ったか?」

 

「ええ、なんの因果か蔵にあった古い学生服にゆかりの有る雪の悪魔がいました。早めに退治出来たんで被害も収まったと思いますよ」

 

「…半分くらいはワシらの所為か?」

 

「どうですかね、流石にそこまで予見するのは無理でしょうから…。それにせいぜいドカ雪位で済んだじゃないですか」

 

「まぁ、そんなもんかの。ダイチに雪下ろしをしてもろうておるんじゃが…リョウスケは出来そうか?」

 

「コッチの世界の影響まで解決してこそのサマナーですから、もう一踏ん張りしますよ」

 

 

ライホー君のしでかした事を爺さんに報告し、その後除雪を行った。悪魔が降らせたからか随分綺麗な雪だな。…こんな景色で温泉はたまらんだろう。そんな事を考えて作業を続けると昼過ぎには何とかひと段落と言ったところ。今日はぐっすり寝れそうだ。

 

 

 

 

「こんなもんかの。これで屋根の心配もあるまい、婆さんが雑煮拵えとるじゃろうしあったまるとするかの」

 

「疲れたー。明日から身体バキバキだー」

 

「流石に俺も疲れましたよ…」

 

「宗一に車出させようかの、ワシも温泉に浸かりたいわい」

 

「おお!良いっすねぇ」

 

「そうしましょう、そうしましょう」

 

 

爺さんの提案通り車を出してもらった。俺も車かバイクか免許取らなきゃな。この時代あった方が間違いなく便利だし。

 

 

 

「あら、葛葉の皆さん!あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いしますね」

 

「あけましておめでとうございます。こちらこそ頼むわい。ここの温泉はワシの楽しみじゃからの」

 

「「あけましておめでとうございます」」

 

「あら、リョウスケ君とダイチ君も、あけましておめでとうございます。そっちは雪大丈夫だったの?」

 

「朝から除雪してましたよ…。もう今日は温泉でみんなリフレッシュしようと思いまして。しかし、お正月でも大変ですねぇ」

 

「一山越えただけでスゴい雪だったんですってね、ご苦労様です。これもいつもの事だからねぇ…、お正月だからこそ温泉旅館に行きたがる人もいらっしゃるもの。流石に雪子には悪いから千枝ちゃんと遊びに行ってるわ」

 

「そうでしたか、俺も受験が無事に終わったんでまた遊びにきますよ」

 

「助かるわ…。もう中学生だから遊び相手とは言わないけれど、またお勉強見てやって欲しいのよ。やっぱり田舎で山だからどうしても不便なのよ」

 

「それくらいならお安い御用ですよ」

 

「おーい、リョウスケー、早く行こーぜー!」

 

「あはは、じゃあ女将さん、お風呂よばれてきます」

 

「あら、話し込んじゃってごめんなさいね、ゆっくりしていって」

 

 

 

八十稲羽はそんなに降ってなかったってことはやっぱり悪魔が引き起こす異常事態はホントに局所的だったんだなぁ。

 

 

「ふいー、気持ちいいー」

 

「疲れましたもん、そりゃ気持ちも良いですって」

 

「若いモンが何を…とは言えんのぉ。あれだけの雪は骨が折れるわ。2人がおらなんだらどうなった事やら…」

 

「あはは、確かに。こういう時に部活の後輩が居たら良かったのになぁ…」

 

「それならそれで筋トレ見たいなモンで押し通しましょう」

 

「かっかっ、違いないわ」

 

 

 

 

風呂から上がってぼーっとしてたら雪子ちゃんが帰ってきたらしい。どうやら初詣に行ってきたようだ。()()お稲荷さんかな?

 

 

「あ!お兄さん、ダイチさん、お爺さん、あけましておめでとうございます」

 

「はい、雪子ちゃんもあけましておめでとう」

 

「あけおめー。雪子ちゃん、すっごい似合ってるじゃん」

 

「ワシにもご丁寧に、あけましておめでとう。ホレ、ワシと婆さんからじゃ」

 

「あ、俺からも」

 

「ええ⁉︎リョウスケ準備してたの⁉︎」

 

「そりゃするでしょうよ…、ほら、ダイチさんポチ袋」

 

「うわぁ!お兄さんもお爺さんもありがとう!」

 

「まぁ、ありがとうございます。雪子、良かったわね」

 

「うん!」

 

「あ、千枝ちゃんとか完二君の分もあるから気にしなくてもいいからね」

 

「ホント!ありがとう!」

 

「ああ、明後日位にヒナコさんも一緒にまた来るからその時にかな?」

 

「そうそう、みんなで商店街行こうぜー」

 

「ね、お母さん、いい?」

 

「仕方ないわねぇ、行ってらっしゃい」

 

「おっと、そろそろ帰るか。流石に神社も開けっ放しはマズイわい」

 

 

 

雪子ちゃんを交えて会話していたらあっという間に帰る時間だ。宗一さんの車に乗って帰る。冬の山は日が落ちるのも早いからな。

 

 

 

「いやぁ、俺もう寝そう…」

 

「朝から疲れましたよね…」

 

「んだし、お節でお腹いっぱいだもん、ふわぁ…」

 

 

帰って晩御飯を食べたらもう眠たい。朝から動いたからなぁ…。ライホー君退治に除雪は疲れた。()()()()もすぐに「今日はもう寝ようぜ」って言うわけだよ、こんな状態じゃ捗らないわ。…ここまでヘトヘトな身体をリフレッシュさせるべっきぃ恐るべしだな。

 

 

いかん、考えがとっ散らかるだけだ。今日はモルガナに倣って寝るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あけましておめでとうございます」

 

いつの間にか目の前にエリザベスがいる。忘れてた、ベルベットルームの住人って夢に入ってくるんだった。うわっ、あの門松テオだ。喋ってるとそれとなく存在感のアピールをしてくるのが非常に気が散る…。

 

「…あー、あけましておめでとう」

 

「もう少し喜んで頂けると思いましたのに…」

 

「いや、ちょっとビックリの方が勝ってるんだよ。今日は特にイベントが多くってな」

 

「やはり、何かございましたか?」

 

「ああ、ちょっとした悪魔のゴタゴタがね。解決は出来たから大丈夫」

 

 

 

やはり何があったか位は説明しておこう。悪魔関連は彼女達も気になるだろう。はぁ、長い元日だな。

 




若干キタロー優勢ですかね?ほんとギリギリの戦いですなぁ


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夢の世界は便利

アンケート結果が開いたと思えばまた狭まっているので初投稿です


眠ったと思ったらベルベットルームにいた。なるほど、知ってはいたがビックリするなコレ。まぁ、鍵の所有者だから招いたり近くに扉を置けるようになってるんだろう。エリザベスやマーガレットよりラヴェンツァやカロリーヌとジュスティーヌはホント色んなところに扉置いてたからな。…流石にハワイには無かったハズだけど。

 

 

「現世に悪魔が現れてしまいましたか…」

 

「まぁ、かなり特殊なケースだったけどな。まずベースがジャックフロストって言う自然現象の一面が悪魔となったヤツって事。加えてウチの蔵にユニーク個体として生まれるきっかけみたいな品があった事。おまけに冬の寒い日としておあつらえ向きだった。ま、召喚する位に状況が整ってた訳だったんだ」

 

「なるほど、その様なケースが。リョウスケ様あけましておめでとうございますね」

 

「マーガレットもあけましておめでとう。滅多にある事じゃないさ」

 

「ふふ、頻繁に起きてしまっては困ってしまいます。リョウスケ様、あけましておめでとうございます」

 

「おっと、ラヴェンツァもあけましておめでとう。そうだな、しょっちゅうあるならサマナーが廃れる事もなかったか」

 

「ふむ、場所などの要因はございましたか?」

 

「基本的に龍脈とか霊的なスポットの方が可能性高いだろうな。そう言う場所ってこの時代じゃあかつてのサマナーの末裔が居を構えたりしてる場合が多いんだ。そんな連中が居るからこそ所縁のある悪魔が現出する事になるんだと思う」

 

「なるほど。となると、リョウスケ様から見たタルタロス…かの異界化は何が原因であるとお考えでしょう?」

 

「エリザベスとしちゃ気になるわな。推測が多くを占めてるんだが、始まりとしては権力者が全能感による勘違いで手を出しちゃいけない所を突いたってとこだろう。ま、制御できると思ってる人間ほどあっさり操られたりするもんさ」

 

「…何故ニンゲンはその様な行いを?」

 

ここの住人は根本的にニンゲンの味方だからな。どうにも愚かさが信じられないのかもしれない。

 

「シャドウやペルソナ、引いては悪魔の力なんてまさに超常現象と言ってもおかしくないからな。ヒトは科学でそう言った神秘を駆逐してきた歴史も確かにある…だからこそ権力者は自分なら大丈夫って過信できるのさ」

 

メタ的な知識で補完してる部分も有るがスタートとしてはこんなモンだったハズ。

 

「ここからは想像なんだが、魔に魅入られたんだろうな。元々は利用が目的だったんだろうがいつの間にか利用されていたんだろう」

 

「…恐ろしいモノですね。願わくばニンゲンには力に溺れずいてもらいたいモノでございます」

 

「ま、皆が皆そうって訳じゃないさ。さ、湿っぽい話はもうやめよう。せっかくのめでたい日だからな」

 

ヘビーな話題は今日じゃなくてもいいじゃないか。挨拶もそこそこに退出を促された。どうやら朝が近いらしい。普段訪れる時と時間の流れはまた違うようだ。

 

 

 

 

元日が例の豪雪で閉ざされていた分の反動か三ヶ日は去年よりも賑わった気がする。そんな中予定通りヒナコさんと合流出来たんだがせっかくの機会だからと奉納舞をお願いした。…アメノウズメも見ているしな。

 

 

「任しとき!」

 

男前な返事に対して舞は見事なモノだった。去年のソレよりも迫力が増した様な気がする。

 

(うふふ、この私が気に入った舞だもの。少しくらいサービスしても構わないでしょ?)

 

 

どうやらヒナコさんにアメノウズメから何かしらのご利益があったらしい。迫力が増した理由はどうやらそこの様だ。

 

「ス、スゲー!ヒナコさんなんか無茶苦茶キレイになってんじゃん!」

 

「ふわぁ…」

 

「…か、カッコいい」

 

「……」

 

ダイチさんだけじゃなく八十稲羽の3人組も心を動かされた様だ。完二君なんて語彙が死んでる。

 

「ほぉ、見事いや、美事なもんじゃ。いや、こりゃええもんを納めて頂いたわ」

 

「ウチも此処にはお世話なりましたから。それになんや、えらい身が引き締まる気がしたもんですから粗相してへんか心配ですわ」

 

(あら、何となく勘づいたのかしら?)

 

(舞踊の大家らしいからヒナコさん自身気付いてない霊感はあるかもしれないからな。何か勘働でもしたかもよ)

 

「ヒナコお姉さん‼︎スゴいスゴい‼︎」

 

「おねーさん、いやもうヒナコお姉様だわ…凄すぎるよ…」

 

「………」

 

「ありゃー、完二壊れちゃった?」

 

「ホントだ。…えい‼︎」

 

「うわっ⁉︎な、何だよ‼︎」

 

「完二くん固まっちゃってたから」

 

「いや、でも…あ、あの、凄かったッス‼︎」

 

「えへへ、おおきに。ウチも中々のモンやったやろ」

 

 

謙遜してる風なのにドヤ顔、実にヒナコさんらしいな。舞を終えたヒナコさんも合流して八十稲羽の商店街をみんなでうろついた。食べ盛りの千枝ちゃんと完二君が惣菜大学の前でするアピールときたら…。

 

 

 

「あー、楽しかった!おにーさん達ごちそうさま!お節は肉が足りないのよね」

 

「千枝、季節感ないよ?」

 

「俺も愛家の中華の方が好きっすよ」

 

どうやら八十稲羽の面々にお節はまだ早い様だ。ま、子供の頃は辛い食卓には違いないか。…まだ商店街は活気がある。玩具屋や酒屋だってハレの日だからって賑わってるな。難しい話だな、ジュネス見たいな商業施設が出来た方が嬉しいって人間は少なくないだろう。仮に出店が取り止められたとてこの規模の商店街とこの八十稲羽の町が成長していくのは難しいだろう。

 

 

「ほら、おにーさん、考え事してないで‼︎」

 

「おっと、悪い悪い」

 

正月らしく凧揚げをしていながらつい考えにふけってしまったら千枝ちゃんに怒られた。いかん、此処にくるとどうにも考え事をしてしまう様だ。

 

 

 

「オイラこんな風に雪降らせて喜ばれるの初めてホー」

 

フロストに山に雪を降らせて遊んだりもした。ダイチさんなんかはちょっと不思議そうな反応してたけどついこの間ヘンな事あったばかりだからそう言うモノと思った様だ。しかし改めて悪魔の持つ力の恐ろしさを感じるよな。言っちゃなんだがゲームじゃ良く出る雑魚キャラのフロストでもこうして気象に影響を持つんだから。

 

「ヒホ?」

 

(何でもない、お疲れさん)

 

「こんなシゴトならいくらでもいいホー」

 

冬休みはこんな風に穏やかに過ぎた。…ライホー君は出直すとか言ってたからまた出てくるんだろうか。都市部で大豪雪なんてやられるとたまらんよなぁ。出来ればこっちでお願いしたいが仮にもフロスト族、気まぐれだろうからなぁ。

 

 

 

さて、東京に帰ったら義経詣でだな。おかげさまで助かったのは間違いないし。俺に渡した意図も気になる。…もし、仲魔になってくれる様なら心強いしクラマテングとの話にも繋がるだろうしどうにか協力を得たいものだがな。



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悪魔を見てきたら長鼻くらい何とも思わない

アンケート結果に満足したので初投稿です


東京に帰ってきてから改めてベルベットルームへと訪れたんだが、珍しい事にイゴールから話があると呼び出された。

 

「何かあったんだろうな。朗報を期待したいんだけど、判断に困る話かな?」

 

「流石でございます。貴方様はかつてないほど長くこの部屋の住人と接してこられた。加えて我が主人、フィレモン様が直々に話を伺う事になった理由が少し見えたのでございます」

 

「なるほど。イゴールにも出会いがあったのか」

 

「おっしゃる通り。そもそもここに訪れる事が出来るヒトは何かしら立ち塞がる運命がございます。中でも彼は…」

 

「そうか…」

 

「はい。彼のお客人を待ち受ける運命はあまりにも過酷なものでございました。エリザベスも暫しの間落ち着かない様子、心当たりはございますでしょう?」

 

「ああ、人の世界で言う正月に俺の夢に出てきたよ。…今思えば、どうにも誰かに話をしたかったのかもしれないな」

 

「ええ、力を司る者としての我が従者達も貴方様との交流を重ねる上で随分と成長したようでございます。…成長したからこそ苦しい思いをしてあるのでしょう。それもまたあの者の糧となるハズ、ワタクシも期待しておりますから」

 

「…で、こっからなんだろう?本当に話したいことは。わざわざ客人の俺とサシなんだからさ」

 

「申し訳ありません、ついお客人と話す時回りくどくなってしまいます。左様、本題と参りましょう。…彼の客人の未来を見たのですが、どうにも揺らぐのでございます。担う役目の為にも自身の成長と縁を紡ぐ事が必要なのですが、交わるハズの無かった運命が待ち受ける壁を取り払う、その様な未来もあるのではないかと…。次なる客人を確信するほどの未来を見たのも初めてではございましたが、その未来に自信が持てないのも初めてでございました」

 

「…で、イゴールとしてはイレギュラーが俺なんじゃ無いかと思うようになったわけか」

 

「左様。貴方も実に素晴らしい客人である事に間違いは無いと確信しておりましたが、もしかすると我々ベルベットルームの住人やその客人達の一助となる…その様な役回りなのでは無いかと思う様に至ったのでございます」

 

 

なるほど、俺のこれまでの行動とここの姉妹達の変化がイゴールにとっても想定外だったのか。まぁ、たしかにベルベットルームに複数年渡って厄介になるのって「p4u」や「p5s」とかの短期間だものな。それだって異例の話だったろうに俺なんて既に三年目…下手すりゃまだまだ長い付き合いになるんだろう。それにしてもイゴールが見た未来に影響を及ぼす可能性が出てきたのか。やはり俺は俺でこれから起こる大事件のラスボスと戦う必要がありそうだ。…彼らは彼らだけで乗り越えていたが過酷な運命、少しでも助けになるんだろうか。

 

 

「どうやら、貴方様にも思い当たるフシがございましたな?」

 

「ああ、なんの因果か戦うだけのチカラとここに訪れる客人達が迎える試練の事を()()()()()()()()()。それに彼らが迎える試練、俺の知識じゃあ何とかなってたけれど、これからもその通りになるとはとても思えなくてさ」

 

「なるほど、お客人も随分と悩んでらした」

 

「ああ、こんな話できる相手も居なくてさ」

 

「ワタクシで良ければいつでも話を致しましょう。我が従者達を導いて下さっているお礼としては物足りないかもしれませんが。ワタクシもこの部屋の主人としてもてなしを致しましょう」

 

「そうか、何であんまり接点がないのかと思えば俺が『ワイルド』の素養が無いからか」

 

「言われてみれば…。客人がこの部屋に訪れる目的と言えば得たペルソナの力を新たなるペルソナへと変化させる事、たしかに貴方様には必要が無い。ともすればワタクシと顔を合わす機会もありませんでしたな」

 

「…まぁ似たような話なら過去のサマナーは錬金術師みたいな連中の協力を得て仲魔を生贄にしてより強い悪魔を召喚していたみたいだけどな」

 

「ふぅむ、流石に我々と言えど悪魔合体はしたことがありませんな…」

 

「いやいいんだ、俺は仲間を合体に使うつもりは無い。今の世の中目的の悪魔に所縁のある場所なんて然程見つからないモノじゃ無いからな」

 

「なるほど…、確かに人の世は荒廃しておりませんからな。自ら仲魔となってくれる様行脚なさるのも方法の一つでしょう」

 

「ああ。この間はそちらのエリザベスのコレクションにメッセージを紛れ込ませるなんて器用な事をする奴が居たよ」

 

「あの気配…、やはり外なる者でしたか。我々はペルソナ使いと出会い記録した全書から使うペルソナを呼び出しているのです。確か、貴方様が我が従者と対峙された時でしたな。一瞬、それも気のせいかと思うほどの間に違和感を覚えたのです」

 

さすがは力を司る者達の主人にしてこの部屋の主人、招いていない客の気配には敏感か。

 

「流石だな。俺もエリザベスも全く分からなかったのに」

 

「ほっほ、ワタクシはここベルベットルームの管理人。それくらい成さねばフィレモン様に顔向けできません」

 

ずっと考えてきた事がある。イゴールに姉妹達が居てもベルベットルームがヤルダバオトに乗っ取られるのって何で何だろうか。強さで言えば勝てるわけ無い…、たとえ数人不在であっても誰かは残るだろう。ラヴェンツァの経験が足りなかったから?だから敗北して2つに分けられた?

 

 

多分違う。ここの住人達は基本的に善性なんだ。人間の持つ可能性と希望を見捨てる事ができないんだ。ま、元々人の無意識をポジティブサイドとネガティブサイドに分けてフィレモンとニャルラトホテプが象徴となっていたんだから、そのフィレモンの後継だから当たり前なんだろうけど。見捨てる事が出来ないからこそ莫大な人数が抱えるネガティブな無意識を少しづつ溜めて神格を得た偽神にして悪神『ヤルダバオト』に勝てなかった。そしてゲームを持ちかけられた…って事なんじゃ無いのか。

 

変な話悪魔や神様見たいな連中同士が持つ相性って絶対的に近いんだよな。圧倒的悪相性の相手に窮地に追い込まれる…ってのがこの部屋に訪れる試練だろうか。

 

 

「…なぁ、イゴール。ヒトってさ、弱いんだ。弱い連中の方が圧倒的に多いんだ。でも中には眩しい位強い奴がいる。だから人間の可能性、未来を諦めないで見ていてくれるか?」

 

「…⁉︎ヒトとは弱きモノ。この部屋に訪れるヒトを見ていたばかりその様な考えには至りませんでした。貴方様が改めてワタクシに仰せつかった、その意味を考えさせていただきましょう。でも一言だけ、ワタクシ達はいつまでもヒトの可能性を信じておりますぞ」

 

「その一言で十分。俺は新人サマナーだけどさ、姉妹達で何ともならん問題が出てきたら頼んでくれよ」

 

「ええ、貴方様は客人にして友人と言える存在なのかもしれません」

 

「依頼を出すならそっちが客だな。それも初めてだろ?」

 

「ほっほ、それは面白い。ワタクシが客人になるとは…。ならば依頼を考えておきましょう。本日は良い話が出来ました」

 

「ああ、こちらこそ。色々と整理になったし覚悟もついた」

 

「では、貴方様の良き旅路を願っております…」

 

 

 

まさかイゴールとこんな話をするなんてな。ベルベットルームもようやく形が定まったと思えば洋館だからなぁ。「ルーム」とは何か考えさせられるよ。部屋から出るとこちらを伺うわざとらしいエリザベスの姿が見える。そうだよな、向こうとも話をしておこう。

 

 

 



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まとめてみると改めて濃さに驚く

寒くて仕方ないので初登校です


エリザベスも話をしたそうな雰囲気をしている。イゴールと同じ様に自分が担当する事になる客人と立ち会ったのだろう。

 

「おや、我が主人と随分話し込まれていた様子…。何を話していらしたのやら」

 

「ん、いやイゴールと改めて話す機会って無かったからな。色々と()()()実りのある話が出来たよ。エリザベスも担当する客人の顔見せしたんだろう?」

 

「おや、我が主人はそこまでお話しになられたのですか。…なんだかネタバラシをされた気分ですが、その通りです。とはいえ、あまりに突然の出来事な上にいささか刺激の強い話もございました。それゆえに我々の判断として彼の客人が持つ出会いの記憶は封じております」

 

「まぁ、俺みたいにここに通った人間でも無いなら夢の中で青い部屋に招かれて不思議な人物と不思議な話をしたところでよく分からないままだろうしな」

 

「なんと、リョウスケ様はそんな風にお考えでしたか。…すると我がお客人も混乱の極みに?」

 

「まぁいきなりで落ち着いてられる程の図太い神経持ってる人間だからこそ招かれたかもな。ま、どうせこれから長い付き合いになるんだろう?俺の時とは違う信頼の築き方ってのを考えたらいいと思う」

 

「…長い付き合い…ですか。失礼ですが、我が主人が見通した未来についてお聞きでは?」

 

「その話についてももちろん聞いたさ。…だが、その未来に()()()()()()()。違うかな?」

 

「…‼︎」

 

「ま、自分が色んな意味でイレギュラーだってことは理解してる。イゴールが見た未来に居なかった俺がどこまでやれるか分からんが、やれるだけの事はやる。そんなつもりだ」

 

「…ふふ、私に吹き飛ばされ続けて来た方に諭されるとは思いもよりませんでした」

 

「役目とまで自惚れては無いさ。ただ、待ち受ける未来ってストーリーに対して抗いたいだけだよ。ま、君たちここの住人に『ニンゲン』の可能性ってものを見せつけてやるさ。…仲魔の力は借りるけどな」

 

「反逆の精神…、ヒトが持つココロのチカラ…」

 

「ま、そこまで大層なものじゃないさ。ただ意地っ張りなだけだろうよ」

 

「なるほど…。我が客人にもリョウスケ様の様な輝きを見せてくれるでしょうか?」

 

「そりゃ大丈夫だろう。既に頼りになるペルソナ使いだって居る。ま、周囲の人間達と縁を紡ぐには本人の努力次第だろうけど」

 

「ふふ、リョウスケ様も共に見守る立場でございますか」

 

「タネは蒔いておいた。芽が出てるだろうがそれを利用するかどうかはそのお客さん次第だよ」

 

「なるほど、これがツンデレという奴ですか」

 

「…あんまりツンもデレもしてないと思うんだけどなぁ。と言うかまだ会ってない奴にデレてどうするのか」

 

「そこは……いかが致しましょう?私が萌えましょうか?」

 

「いや、いいや。うん、ま、エリザベスもスッキリしただろ。俺はそろそろ帰るとするよ」

 

「ええ、ありがとうございました。…私も我が客人の事を自慢できる様鍛えねばなりません。気合が入ると言うものです」

 

「最初っから飛ばすなよ?じゃ、お疲れさん」

 

 

エリザベスのやる気スイッチが入ったらしい。…すまんなキタロー君。君は本来よりエキセントリックでエスカレートしたエリザベスが担当だ。強く()間違いなく成れるが苦労は増えたかもしれん。

 

 

そろそろキタロー君の周囲についてまとめておくか。流石に個人の交友関係まで面倒は見てられん、踏み出すのはキタロー君の意思が不可欠だ。けれど美鶴ちゃん、真次君、明彦君達はだいぶ頼り甲斐のある人間になってるハズだ。まぁ、他のペルソナ使い候補達がクセ強そうなんだよな。

 

『伊織順平』は日常から非日常へ連れ込まれてからの展開が急すぎるしなぁ。全能感に満たされたと思えば圧倒的格上のキタロー君も同時期に出てくる劣等感。そりゃ自尊心の為にも無茶はするか…。そういうのは失敗でもしないと変わらんだろうな。…強いシャドウと戦う前に俺が正体不明に扮して新人組と戦うか?うん、美鶴ちゃんに相談しよう。

 

まずは『天田乾』もお母さんの不幸は防げたとはいえ被害者に違いない。そんな立場でペルソナ使いの素養があるならやっぱり幾月から粉をかけられてるだろう。小学生にお母さんを襲ったバケモノを撲滅させよう、その力が君にはあるって諭すとかするだろうなぁ。

 

次に『山岸風花』だったか、学園じゃあんまりいい噂を聞かない連中にいじめられてるって聞くんだよなぁ。高一の女の子に俺とか明彦君見たいな無駄に顔の売れてる先輩が手を貸す方が卒業後どうなるか分からんからなぁ。美鶴ちゃんに学園の風紀がどうのこうの言っておいたから少しはマシになればいいけど。

 

そして『コロマル』。あのワンちゃんは…どうなんだろう。影時間の街中見廻りを増やせたおかげか救援には間に合ったらしい。が、何にせよ神社の神職さんが襲われた際に抵抗してみせたのは間違いない。乾君の母親といい神職さんといい死亡者リスト入りしなかったが、意識不明で快復の見通しも難しいらしい。…症状としては無気力症候群のその先、p5で言う廃人化の域にまで達したらしい。被害者のシャドウを見つけられるかどうかで希望が見えるんだが、影時間に入れる様になれば調査したいところだな。

 

 

後は『アイギス』か。桐条が、そして幾月が誇る対シャドウ兵器。そしてココロを持つヒトならざるヒトガタ。ムーンライトブリッジでニュクスを退けキタロー君と共に因果に囚われている存在…。現時点では屋久島だかにある研究所でメンテナンスを続けているとか。この子に関してはなぁ…。まぁ、人造物にしてペルソナを宿すまでの存在だ。アイギス自身の人格に手を加えて肝心のペルソナ消失なんて笑えないだろうから幾月もそこまでのリスクは取らないだろう。せいぜいメモリーの改ざん位に気をつけるべきだろう。

 

 

ああ、『ストレガ』の連中も居たか。影時間ってモノが未だに分からん俺は学園周辺の調査に向いて無さすぎて情報が全然ないんだよ。一応真次君経由でリスクの低い制御薬の情報は流してあるんだが…全然動きが無い。破滅思考からか今更とか思ってるんだろうか。俺もぶつかるかもしれんし、後輩たちは間違いなくぶつかる事になる。どうするのが正解なんだろうか。助かるつもりもない人間を助ける…それも簡単じゃない話だな。

 

 

そして最後に『幾月修治』。コイツが引っ掻き回してややこしくした元凶だ。俺からすれば何故自信満々でニュクス見たいな概念級の悪魔を制御できると思っているのか…。リスクの低い制御薬と桐条の実験データを重ね合わせて余計な事になってなきゃいいが。まぁ、武治さんの目もある中、今更()()()()使()()()人工ペルソナ使いを増やす事はしてないだろう。…最悪の場合は自身に発現させた可能性か。幾月がペルソナ使いという存在をどう捉えてるかにもよるが、あり得ない話じゃないか。

 

 

うん、こんなところか。まったく、改めて考えると大変だな。ニュクスとの因果…コイツを何とかしないとキタロー君1人生贄にしてこれからの世界が回っていく。エリザベスやイゴールにも啖呵をきったんだ、やってやろうじゃないのさ。



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頭が上がらない人を味方につけよう

Kindleの魔力に囚われたのでサボりがちながら初投稿です


これから起こるタルタロスと影時間にまつわる騒動の為にも俺の、俺たちの戦力増強は不可欠だ。現状仲魔は『ピクシー』『アメノウズメ』『ジャックフロスト』の三柱。それぞれ別の属性魔法が得意だし回復だって出来る。このメンツに加えて俺が前衛を務めるのが今のパーティーだ。なんだかんだ良いバランスをしてるしメメントスの()()には不足もない。

 

しかし、悪魔の討伐となると途端に火力不足な気がしてしまうな。ついこの間のライホー君事件じゃあ何とかなったが、アレはライホー君自体のレベルが低かったおかげだろう。それに俺以外にもう1人物理アタッカーが居ると戦いの幅が広がるだろう。まぁ、戦闘の場で何柱まで召喚してられるのかは分からんが、入れ替えながら戦えるというのは大きいだろう。

 

 

 

という事で東京に戻ってきた俺は関東にあるヨシツネ所縁の神社に訪れた。…世の中神社参拝に刀を持ち込む人間が居るんだろうか。まぁ、この薄緑は招待状だろうしお礼も言いたいからな。ピクシーは相変わらず顔見知りとの事なのであらかじめ召喚しておいた。

 

 

「んー、リョウスケちゃん。ヨッシーってば待ってるっぽいよ」

 

「そうか…、待たせてたのか」

 

「まぁ、待ってたのはヨッシーの勝手だから気にしなくてダイジョーブ!」

 

 

相変わらずピクシーの立ち位置が分からん。思ってるより強い…というか古参…なのかな?契約を結べて良かったと思おう。

 

 

ここまで来れば俺でも分かる。祀られている御堂の入り口が歪んで見える。周りに人気もない…、無意識で避けてるのか人避け見たいな術があるのか。今がちょうど良さそうだ、入ってみよう。

 

 

「やーっと来やがったか。俺っち待ちくたびれちまったぜ」

 

「そうか、待たせて悪かった。俺は葛葉リョウスケ。ま、見習いサマナーってとこかな。機会をと思うと中々無くてな。改めてこの『薄緑』、ありがとうな。お陰で助かったんだよ」

 

「ああ、ソイツか。いや、俺っちのソックリさんを通して見させてもらったのさ。ついつい感心しちまったぜ、アイツ以外にもニンゲンで動ける奴なんて居るんだなぁってよ」

 

「とは言っても受け切れたのは一太刀だったけどな」

 

「バカ言っちゃいけねぇ。あのソックリさん、流石は俺っちのソックリさんだぜ?良いキレしてやがったじゃねぇのさ。それによ、オマエさんの刀がもう少しマシならもうちょい受けられたろ?」

 

「…どうだろうな。自信が無いとは言わないけどな」

 

「なーに気取ってんのよヨッシー」

 

「あー、オメーも居たんだなぁ。ピの字、俺っちソックリだからってバリバリやりやがって…」

 

「ま、アンタと似てるから力入っちゃったのは否定しないわよ」

 

「その場に居なかったってのに寒気がしたぜ…」

 

「ピクシー、何か因縁でもあるのか?」

 

「うーんとねぇ、ヨッシーがヤンチャだった時ライドウちゃんとそれはそれは苦労したのよ…」

 

「ヤンチャ…」

 

「ピの字やめてくれぃ…。若気の至りって奴さ」

 

「…悪魔に若気って有るのか?」

 

「有るのよ」

 

「有るぜ」

 

「有るんだ…」

 

よく分からんが有るものは有るみたいだ。悪魔に年齢の概念無かった様な気もするしなぁ。有ったとしても高々数十年で変わるのか?…考えても仕方ないか、本人?が有るって言ってるんだし。

 

 

「まぁ、なんだ、2人の関係性は何となく分かったんだが…、俺の気を引いた理由を聞きたくてさ」

 

「いや、ピの字もウズメの姐さんも楽しそうな事してんじゃねーかと思ってよぉ」

 

「ヨッシー、回りくどい」

 

「…あー、なんだ、俺っちも連れてってくんねぇか?」

 

「…良いのか?」

 

「近頃暇なんだよなぁ…。悪魔も減っちまったからサマナーも居ねぇし」

 

「…そんな理由かよ」

 

「もちろんそれだけじゃねぇぜ?葛葉の血族が気張ってんだ、俺っちだって疼くってもんよ」

 

「そうか…、願ったり叶ったりだ」

 

「もう、ヨッシー、アタシたち遊んでる訳じゃないのよ?」

 

「分かってらぁ。そこでだ、リョウの字。俺っちと手合わせしようぜ。ソックリさんとだけってのはズルいじゃねぇのさ」

 

「ま、そう言うだろうと思ってた。俺もそのつもりだよ」

 

「話が分かるねぇ」

 

「ま、お互いの力合わせだ、俺1人でやるよ」

 

「もう、ヨッシーなんてやっつけちゃえ!」

 

 

目の前のヨシツネが腰に下げた薄緑を抜いて肩にかけてステップを刻んでいる。ゾクゾクする様な雰囲気だ。…俺もいつのまにか戦闘狂の気質が出てきたのか、こう言う場面ですこし昂る事が増えてきたか?

 

 

「俺から行くぞ!」

 

「おう、かかって来い」

 

 

今回に限っては銃も使わない。俺も薄緑を構えて突っ込む。ヨシツネも待っていたのかニヤリと笑った。

 

「リョウの字、良い度胸してるぜ」

 

ペルソナの『ヨシツネ』とはまた違う雰囲気だ。数合打ち合っただけだが何というか、変幻自在という印象を受ける。そうか、ペルソナは意思で動くと言ってもある程度決まった型があるが、悪魔はそれ自身が意思を持つからか。

 

「おいおい、考え事かい?寂しいじゃねぇのさ、今は俺っちの事見ててくれよ」

 

「っと悪かったな、ついペルソナの『ヨシツネ』と比べちまったよ」

 

「へぇ…ソックリさんと」

 

「まぁ、なんだ、力強さはアレを操ってたペルソナ使いに依存してる部分もあるから何とも言えないが技の巧みさは圧倒的に厄介だわ」

 

「そ、そうだろう?わかってるじゃねぇの」

 

ステータス的な部分で言うならエリザベスのおかげもあってペルソナの『ヨシツネ』の一撃は重かった。対してこっちのヨシツネは受ける事に関して言えばそこまで重くは感じなかった。重いのは変わらないんだけどな。それよりも何処から次の刀が襲ってくるか分からなさの方が凄い。

 

 

「ヨッシーも煽てりゃ木に登るわね…」

 

「ピの字、そりゃないぜ…」

 

…どうやら随分と良い調子をした性格らしい。

 

 

仕切り直しとして葛葉の技を繰り出した!するとヨシツネは驚いた顔を見せたと思いきや不敵な笑みを浮かべた。ヤバいと思った瞬間俺はガードの体勢を取ったが吹き飛ばされていた。

 

「やるじゃないの、俺っちびっくりしちゃった」

 

「イタタ、前の長船だったら受け切れてなかったかな」

 

「あったりまえよ。俺っちの愛刀だからな」

 

どうやらヨシツネの琴線に触れるだけの力量は見せられた様か?

 

「はいはい、リョウスケちゃんもヨッシーもお仕舞い!もう、これ以上やったらボロボロになっちゃうよ!」

 

「えー、もうちょい良いじゃねぇの?なぁ、リョウの字」

 

「ボロボロになるのはリョウスケちゃんだけど、その後アタシがヨッシーをボロボロにするの!」

 

「ヒェッ…」

 

「あはは、そうだな。お互いの力は試すくらいにはなったか?」

 

「ま、そうだな。鍛えがいがありそうだって所かな?」

 

「そうか…、是非ともお願いするよ。クラマテングにも合格貰いたいしな」

 

「あん、お師匠知ってんのか?あの爺さんも粉かけてんなら上等よ。俺っちがしっかり鍛えてやるぜ」

 

「頼む。じゃあ俺と契約してくれるか?」

 

「おうよ…俺っちは英雄『ヨシツネ』。コンゴトモヨロシク…」

 

 

 

ピクシーが居なかったらもっと大変だったかもしれないが順調に契約までしてもらえた。しかも武技の師匠にもなってくれるとあっては大助かりだ。問題はヨシツネを召喚した時どれだけ俺からマガツヒ持ってかれるかどうかだが…、そこばっかりは試してみるしかないか。早いうちにメメントスに連れて行こう。…おっとフロストも忘れちゃいけないな。

 

 

 

 



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ディスイズマスコット

タイミング逃して投稿間隔空いたので初投稿です


「ああん、ダメだダメだ!そんなモンじゃあとてもじゃねぇがお師匠の許しなんて貰えねぇよ」

 

「ちょっとー、ヨッシーやり過ぎじゃないの?」

 

「ピの字よぉ、リョウの字が言ったんだぜ、ビシビシ頼むって。それに刀使う人型の悪魔なんて俺っちくらいしかいねぇじゃねぇか。そりゃ、俺っちより後世の武士も居るには居るだろうけど神格化ってなると別じゃねぇのさ」

 

「むう…、リョウスケちゃん大丈夫?」

 

「ああ、身体はキツいがまだ大丈夫。傷なら回復もしてもらえるからこそ出来る無茶だったかな」

 

「サマナー稼業も大変だホー」

 

「それにしても…すげぇんだなココ。マグネタイト…今はマガツヒって言うんだっけ?とにかく満ち満ちてらぁ」

 

「ああ、言うなれば無数の人間が無意識に放出しているマガツヒが集まって形成された異界だからな」

 

「どうりでなぁ…、こりゃあリョウの字がほっといたら悪魔の巣窟になっちまう心配もするわけだぜ」

 

「まさに集合無意識だからな。ココを利用する、出来る奴が出て来たら流石に俺1人ではどうにもならん。だからこそ草の根運動としてぽこぽこ湧いてくる内に間引きしておかないとな」

 

 

 

俺はヨシツネを仲魔に迎え入れてすぐにメメントスへと訪れていた。メインで活動してる場所だからって言うのと仲魔の魔法がよく効くからな。そのおかげで無茶な訓練が出来ると言うべきかさせられてると言うべきか…。ちなみにフロストも改めて連れてきたんだが誰も気付かない間にエリザベスに抱えられていた。なんでも「刺さった」らしい。なんとか回収してこっちに来たんだけど帰りも召喚しながら来いというアピールをずっとされてたんだよなぁ。

 

 

 

 

 

「リョウの字よぉ、お前さんこれで刀持って3年位ってホントか?」

 

「それは事実だな。本格的に振ったり実戦って考えたらもっと短いけどな」

 

「なるほど…、やっぱり俺っちの薄緑渡して正解だったぜ。やっぱりニンゲンもマガツヒ吸ったら強くなんのかね?」

 

「さぁ…、俺以外に悪魔を倒してるニンゲンなんて見たことないからなぁ。まぁでも、似たような活動しててシャドウ倒してる連中は俺程身体能力がおかしな事になっちゃないからそうかもな」

 

「シャドウねぇ…、アイツら弱っちい癖に数だけは一丁前だもんなぁ。つか、そんな奴ら居んのかよ。…ああ、それで俺っちのソックリさんを使える奴がいるって事かい?」

 

「ああ、その通り。ペルソナ使いって言うんだけどな。ま、それこそペルソナの『ヨシツネ』を召喚できる人間なんて()()()1()()だろうよ」

 

「ふぅん?そいつらとやり合えるのかい?」

 

「まぁ、ペルソナ使いとは()()()()衝突しないだろ。模擬戦位なら別に出来なくも無いけど…」

 

「ヨッシー、アンタやり過ぎるからダメ」

 

「なんだよ、ピの字。そんな事ねぇって」

 

「絶対ウソ。リョウスケちゃんでギリギリだったでしょ?他の子なんて死んじゃうから」

 

「何だよ、ニンゲンってリョウの字とかライの字見たいな奴らじゃねぇのか?」

 

「どっちも基準にしちゃイケナイレベルじゃないの…」

 

「それじゃ、ソックリさん使ってたお嬢ちゃんは?」

 

「エリちゃんも()()()()だもの。まぁ機会はあるわよ。ねぇリョウスケちゃん」

 

「ああ、ヨシツネをメンツに加え入れた事でどこまで戦えるか楽しみではある」

 

「そこにオイラの出番はあるホー?」

 

「…エリザベスに捕まえられそうだな」

 

「それは困るホー…」

 

「エリちゃん珍しく荒ぶってたもんね…」

 

「で、俺っちの出番はあるんだな?」 

 

「ん、ああ。もちろん頼りにしてるさ。それに…ココ以外にも異界はあるだろうしな」

 

「そうかぁ、そいつぁ腕がなるねぇ」

 

「さて、今日はもうそろそろベルベットルームに戻ろうか」

 

「そうかい、ま、仕方ねぇか。リョウの字、刀振る時ゃいつでも俺っち呼び出すんだぜ?」

 

「…考えとくよ。とりあえず姉妹たちに改めて紹介するからこのまま行こうか」

 

 

 

未だにメメントスはベルベットルームからしか行けないんだよな。うーむ、人間に集合無意識のアクセス方法を作り出す方が難しいか。「マディス」が「EMMA」を作り出したのもまだ10年は先か…、ってスマホなんて言葉すら無いっけか。模索するにしてもデバイスからの開発…?余計に現実離れしてきたな。

 

 

 

「おかえりなさいませ♪」

 

「…ノータイムでフロストを抱えたなエリザベス」

 

「なすすべも無かったホー」

 

「申し訳ありません、なぜかこのフォルムを見るとつい…」

 

「まぁ、フロストも困惑はしてるが嫌がって無いからいいけどさ」

 

「オイラ、モテモテで悪い気はしないホー」

 

「不思議よねぇ、フロスト属のぬいぐるみとか何で現世にあるのかしら?」

 

「インスピレーションが降りて来たんだろうさ。仮にも悪魔な訳だし」

 

「仮にもとは心外だホー。オイラは立派なフロストだホー」

 

「そうですよリョウスケ様、こんな愛らしいフロストちゃんが唯の悪魔のはずがございません。…そしてピーちゃん、聞き捨てならない事がございます」

 

「どうしたのよエリちゃん、随分と食い気味にきたじゃないの」

 

「ぬいぐるみが溢れてるとは真でございますか?」

 

「う、うん。ねぇ、リョウスケちゃんあったわよね?」

 

「そうだな。実際のぬいぐるみとかゲームセンターのプライズとかでよく見るよ」

 

「オイラの人気は止まる事を知らないホー」

 

「ああ、満足気なフロストちゃんもよろしいですねぇ」

 

「…なぁ、俺っちは?」

 

 

忘れていた訳じゃ無いんだがフロストの話題で盛り上がってしまったせいで後回しになってしまったな。…どちらかと言えば置いてけぼりか?

 

 

「ああそうだ、エリザベス。コイツが新しく仲魔になったヨシツネだ。刀術の良い相手になってくれるし頼もしい仲魔だ」

 

「おうよ、俺っちが紹介に預かったヨシツネってもんだ。あー、嬢ちゃんが俺っちのソックリさん使ってるおかげで良い出会いが出来たぜ。ありがとよ」

 

「それはようございました。…しかし私の目を盗んでコレクションに紛れ込ませるとは」

 

「もう一度やれって言われても難しいぜ?あん時ゃ嬢ちゃんも予想だにしてなかったから出来ただけさ。…おっかねぇ嬢ちゃんだ、もう俺っちの気配覚えたろ?」

 

「あら、お分かりになりますか?おかげさまで私も引き締まりましたので」

 

「へぇ…いいねぇ、この魔力。これでこそリョウの字の仲魔になった甲斐があるってモンじゃねぇか」

 

 

 

エリザベスとヨシツネが互いに魔力を高め合っている⁉︎すわ勃発かと思いきやだった。

 

「なーにやってんの‼︎」

 

「全く、貴女は何をしているのです」

 

ヨシツネはピクシーにしばかれ、エリザベスはマーガレットに嗜められた。どうにも戦闘狂は視野が狭くなるフシがあるよなぁ…。ま、ここが安全地帯だからじゃれてるだけっぽいから良いか。

 

「イデェなピの字‼︎」

 

「むぅ、お姉様、カワイイ妹のジョークじゃありませんか」

 

「痛くしてるのよ!」

 

「貴女に新しい客人を任せて大丈夫なのでしょうか…」

 

「まあまあ、初対面とはいえ雰囲気も悪くないみたいだし。お互いの力量を確かめる機会はまた俺からお願いするさ」

 

「なら楽しみにしとくとするぜ。嬢ちゃん、俺っちの太刀筋はソックリさんと一緒にしないでくれよ?」

 

「あら、それはそれは…。それではその日を楽しみにお待ちしておりますねリョウスケ様」

 

「ああ。そうだな、エリザベスが客人を迎える事になる直前…3月31日にしよう。それと、フロスト帰るぞ」

 

「ええ⁉︎帰ってしまうのですか?」

 

「オイラのおウチはリョウスケが持ってる管の中ホー。というかオマエシモヤケしないホー?」

 

「名残惜しいですわね…。仕方ありません、断腸の思いではございますがお別れと致しましょう。あと、私の強靭なボディ、氷結対策もバッチリでございますのでご安心を」

 

「…抜かりないようで何より。じゃあな」

 

 

俺のせいでエリザベスのフロスト愛が過熱したかもしれん…。まぁ苦労するのはキタロー君とフロスト本人だからいっか、フォローはするしな。

 

 

ヨシツネの方は予想通りというか予想以上に強いわ。葛葉流の刀の戦い方を知ってるだけでなく本人も上手い。源平合戦の英雄は伊達じゃないな。乱戦もタイマンもお手の物。全てが高水準だからこそ打たれ弱く見えてしまうけれどそもそも攻撃を喰らわない立ち回りも上手い。身近にこんなお手本が居る事は実に幸運だ。

 

 

キタロー君との接触を機にもうすぐタルタロスも活性化する。そうなれば俺も影時間に入れるようになるだろう…。大学生活もあるし忙しい一年になりそうだな。

 




ヨシツネさんは悪魔ですのでペルソナシリーズ程高レベルではありません。もちろん強いんですけどね。


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高校最後のイベントバトル

まさかの一周年を迎えていたので初投稿です


ヨシツネとフロストを仲魔に加え入れてもう2ヶ月程になる。早いものでもう卒業式だ。美鶴ちゃんの見事な送辞やTPOを弁え無い理事長のありがたーい挨拶もあった。…本人の卒業式ってわけでもないのに()()()()()()()()()()()がいたりトラブルも無くは無かったが式は恙無く終了した。芝原や鳥海先生そして古牧先生等と話をした後、活動部所属の後輩達から声をかけられた。俺が言えた事じゃないが物凄い目を引いてる。…流石に大っぴらに話せる内容でも無い、俺の挨拶回りも終わった事だし場所を移した。

 

 

「先輩、卒業おめでとうございます」

 

「ありがとう。美鶴ちゃんこそ立派な送辞だったよ」

 

「いえ、お世話になった事を思えばあれだけではとても足りません」

 

「そこまででもないつもりなんだけどね。君たちなら俺が居なくてもいずれ立派になってたさ」

 

「いやいや俺に関しちゃ先輩居なかったらヤバかったでしょうよ…。ハンパなクスリ握らされてヤローに良いようにされてたと思うとゾッとするッスね」

 

「シンジも天田と仲良くしてるじゃ無いか。たしかに先輩と出会う前からは考えもよらないな」

 

「うるせーぞアキ」

 

「まったくお前たちはこういう日ばかりは大人しくせんか…」

 

「ふふ、その様子じゃあ大丈夫そうだ。ま、ヤバそうなら声をかけてくれりゃいい。その時は駆け付けてやるさ」

 

「頼もしい限りで」

 

「へっ、俺たちが居るならそんな事無くしてやりますよ」

 

「ああ、先輩の手を煩わせるまでもありませんよ」

 

 

うん、人間成長するもんだな。これならキタロー君が来ても大丈夫だろう。ま、たまに見にくるとしよう、俺も俺で影時間の捜査はしたいからな。

 

 

卒業したということでいろんな人に挨拶をしたなぁ。この3年、俺が俺として生きるようになってあっという間に過ぎた。それにいろんな出会いが有った…。当たり前なんだがこのペルソナがある世界は一続きの世界という事を理解させられたとも言える。今更ゲームの登場人物だとは思わないし思えない、この世界に生きてる人間だ。月光館学園の活動部の面々、八十稲羽の特捜隊達、未来の怪盗団、そして彼らを取り巻く人々。

 

本来と言うべきか正史というべきかは分からないが、キタロー君や番長、ジョーカーが紡ぐ縁は横軸だけだった…。しかし、今ならそれだけには収まらないだろう。なんせ俺が橋渡しをしているからな。もうルブランのマスターと活動部は顔見知りだし、さらに言えば真次君なんて武見妙さんのおかげで健康とも言える。

 

 

ま、正史がどうの登場人物がどうの思うなんて今更なんだよな。それに知ってる人間に訪れる不幸くらいなんとかしてやりたいじゃないのさ。…まぁ、丸喜先生みたいに世界中から不幸を無くしてやるって思えるほど独善的でもないけどさ。結局獅童に振り回された人間ばっかりって訳か。うーん、だからと言って桐条のパワーで圧力をかけるのも違うよな。それじゃあ何にも変わらない、その場凌ぎでしか無い。イゴール達との約束もある、人間が持つ輝きを見せるにはどうすりゃ良いんだろう…。俺にできる事はシャドウを襲う事で引き起こされる精神暴走事件の被害を少しでも減らす事くらいなのかね?

 

 

 

 

 

卒業してからというもの俺はなんとなくこの三年間で世話になった人たちへの挨拶をしていた。バイト先のマスターや研究をしてくれているフミさん、クスリの協力者妙さん、もちろん居候先のキョウジおじさんにも。…あとはばったり出会った善吉さんにも。これっきりの関係ってわけでもないんだけどなんとなく節目を感じたからな。

 

 

 

 

 

 

さて、新生活を迎える前に済ませなきゃならない事がある。そう、こっちも担当を持つことになってしばらくお預けになる事を考えたら今しかない…、エリザベスとのリベンジマッチだ。ま、随分と早いんだが、ある意味3年間の集大成、見せてやりたいじゃないか。

 

 

「最初は1人でもいいかな?」

 

「では私もペルソナは使わないでおきましょう」

 

「すぐその全書開かせてやるよ」

 

「管を開く準備をしておいてください」

 

「行くぞ!」

 

「参ります!」

 

 

挨拶がわりに挑発し合う。改めて武技のみでエリザベスとやり合うのは実は殆どないんだよな。前哨戦とはいえヨシツネに無様な姿は見せられない。

 

 

エリザベスの攻撃はスピードこそ無いものの一撃は重たい…。が、避けられない程じゃあない。焦れてきたエリザベスの攻撃が少しずつ大振りになって来た。そこで古牧先生直伝の捌き打ちを叩き込む。なるほど、生身だけならニンゲンの技は通用するか。

 

「むう、やはり私たち力を司る者たちもペルソナの力に頼らない強さも必要かも知れませんね。対人訓練なさってるリョウスケ様とはいえここまで何も出来ませんか…」

 

「最近はすごい仲魔が出来たんでな。葛葉としても人型相手に遅れをとるわけには行かないさ」

 

「ニンゲンの術理とは面白いモノですね。我らも何か修めるべきでしょうか?幸い身体構造は同じですし」

 

「キミらはニンゲンの強いココロを具現化したような強さなんだし本分はペルソナを使ってこそだろう?そんな必要無いだろうさ。ま、シュミなら止めやしないけど…なっ‼︎」

 

「くっ、やはり競り負けますか…。そうですね、シュミなら構いませんか。決して、決っしてこのまま負けっぱなしと言うのも悔しいからと言うわけではありませんからね?勘違いしないでいただきとうございます」

 

「…お姉様、そんなに悔しいのですか?」

 

「…ラヴェンツァ、貴女にもいずれ分かる日が参ります」

 

「なるほど…」

 

「はぁ…、貴女たち。わたくし達はヒトを導くためにありますのよ?実を結んだ…まさに結果、結晶ですわ」

 

「マーガレットお姉様、それは私も承知しております。が、いざこうして迫られ、上回られてみると分かっていただけるかと。…そう、コレがヒトの感情なのでしょうか」

 

「お姉様!…やっぱり悔しかったんですね」

 

 

 

「なぁ…リョウの字、随分と愉快な嬢ちゃん達なんだなぁ」

 

ヨシツネはすこし呆れた様子で語りかけてきた。…いつの間に出てきたんだと言う思いもあったがヨシツネ自身はどこ吹く風。

 

「まぁ、彼女たちも色々と成長過程なのさ。それに、ニンゲンらしくて良いじゃないか」

 

「なるほどねぇ…」

 

「次は俺も召喚するし、向こうもペルソナを使ってくる。そうなったら嫌でも強さを思い知らされるさ」

 

「いいねぇ。俺っち、そっくりさんとの一戦、楽しみにしてたんだぜ?」

 

打ち合わせって程でもない話をしているとラヴェンツァが1人やってきた。

 

「申し訳ありませんでした、お姉様方が盛り上がってしまいまして…。見たところ障りは無さそうですね、それではエリザベスお姉様ともう一試合…始められますか?」

 

「ああ、頼む。ピクシー!アメノウズメ!お前たちも出てきてくれ」

 

「はーい」

 

「任せて」

 

 

相変わらず三体同時召喚は結構ハードだ。探索とかなら二体で入れ替えながらやりくりするんだけどそうも言ってられないからな。

 

 

「コホン、準備はよろしい様ですね。それでは参りましょう…本日のグランドフィナーレでございます!」

 

 

なんとか膝くらい突かせてやろうじゃないのさ。

 



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始まったばかり、終わりはまだ先

今年最後の更新になると思うので初投稿です


「それでは参りましょう…。ペルソナカードドロー『スルト』。以前にもお見せしましたが…、如何なされますか?」

 

「まずはフロスト、防炎の壁だ!ウズメはヨシツネにタルカジャ。ヨシツネは鎧通しを頼む!」

 

「任せるホー。オイラだってアチアチはゴメンだホー」

 

「ヨシ君よろしくね」

 

「あいよぉ、俺っちに任せときなっと」

 

「まだまだ、その程度では私の攻撃の手は止まりませんよ?『スルト』インフェルノ!」

 

 

おいおい、マハラギダインじゃないのかよ…。ゲーム世界じゃあ3の時点であったかどうかも覚えてねぇな。ま、何にせよ広範囲高威力の火炎魔法って事に違いはない。これから先の属性魔法も変わってるだろうな…。

 

「お前ら食らってないか?」

 

「壁張ってて良かったホー…じゃなかったらオイラ溶けてたホー」

 

「私もヘーキ。リョウスケ君は?」

 

「俺とヨシツネはちゃんとのがれたよ。しっかしえげつねぇ一撃だなぁおい。うかうかと踏み込むのもおっかない」

 

「おいおいリョウの字、そんな事言いながら随分と楽しそうじゃないの?」

 

「ま、発表会みたいなもんだからな。気合も入るし、命の危険だってそれ程無いんだったら楽しんだ方が良い…だろう?」

 

「カーッ、分かってるねぇ…。俺っちも久々にヒリついて来たぜ。さぁて、リョウの字上手く使ってくれよ?」

 

「おう…、フロストはブフーラ、ヨシツネは牙折り、アメノウズメはメディラマだ。俺も突っ込むからな」

 

「ヒーホー‼︎地獄の業火も凍りつかせてやるホー!」

 

「よっしゃぁ‼︎奴さんの出鼻挫いてやろうじゃない」

 

「俺も続くぞ!」

 

『スルト』がフロストの魔法によって体制を崩した所にヨシツネと俺の攻撃が刺さる。幾分か効いた様子が見えるがまだまだエリザベスの余裕は崩れそうにない。

 

「ほら、すぐ構えないと」

 

「流石のコンビネーションですね。なるほど、数的不利なんて考えた事もございませんでしたがこれほどの使い手に囲まれると…私もまだまだだったようです。『スルト』インフェルノ‼︎」

 

「おっと、ソイツはもう見た、フロスト、ブフダインで妨害だ‼︎」

 

「オイラの見せ場だホー!」

 

「くっ、『スルト』⁉︎…まだまだ侮っておりましたか。では、仕切り直しと参りましょうか。私、なんとカッコかわいいペルソナを見つけてしまいまして。この場を借りて披露させていただきたく…ペルソナカードドロー‼︎『ジャアクフロスト』‼︎ふふ、如何でしょう?フロストちゃんも可愛いですがこちらのジャアくんのなんとも言えないちょいワルな感じたまらないでしょう?」

 

 

おいおい氷結属性はジャアクフロストが担当か。コイツ弱点が無いから厄介なんだよ。ま、無いなら無いで何とかしますか。

 

「こ、コイツはすごいホー‼︎オイラもフロストの可能性に打ち震えるホー‼︎でも、コイツと戦うのにオイラ役に立たないホー」

 

「分かってる、ピクシー、フロストと入れ替わりだ」

 

「はいはーい、うーん、エリちゃんもやる気ねぇ…。リョウスケちゃん、作戦は?」

 

「あー、フロスト族だからって火炎属性が()()()()()()俺ら誰も使えないからな。ここは正攻法だな。ヨシツネは隙を見て牙折りと鎧通し、アメノウズメは俺とヨシツネにタルカジャを掛けて、ピクシーも俺とヨシツネにラクカジャを頼む。回復は早めを心がけようか」

 

「そうなるとリョウスケちゃんとヨッシー、頼むわよ!ラクカジャ!」

 

「ええ、サポートなら任せなさいタルカジャ!」

 

「ま、相手の嫌がる事をやるってのは基本だ。そこをちゃんと指示してくれるなら助かるぜ」

 

「むう、私とジャアくんを見て怯むどころかますます苛烈な…。しかし、負けていられません‼︎『ジャアクフロスト』ダイアモンドダスト‼︎」

 

 

やっぱり魔法も使うペルソナもアップデートされてると思った方が良いな。しかしえげつねぇ威力だ。しまったな、補助に割り切ってフロスト出しておいた方が良かったかもしれん。しかも『スルト』の時より発動が早かった分ヨシツネが逃げきれなかったみたいだ。何とか耐えはしたが…立て直さないといけないか。

 

「ぐわっ⁉︎っちぃ、突っ込みすぎたか…」

 

「もう、ヨッシー油断が命取りなんだからね‼︎ディアラマ‼︎」

 

「すまねぇ、ピの字。ちーっとナメてたわ」

 

「おいおい、ヨシツネ。エリザベスはそんな甘い相手じゃないぞ?」

 

「面目ねぇ…。リョウの字、次、俺っちに任せてくれるか?」

 

「いけるか?」

 

「任せろ」

 

「もう立て直しを…。ある程度の被弾も織り込み済みという事でしょうか。うふふ、リョウスケ様と果し合いをするならば我々姉妹でパーティを組まねばなりませんかね?」

 

「勘弁してくれよ…、1人でもこんだけひいひい言ってんだぞ?」

 

「そうでしょうか?追い込まれているのは私なのでは?」

 

「まだ半分どころじゃないだろうに…よく言うぜ。ヨシツネ、八艘跳びを頼む‼︎」

 

「任せろリョウスケ‼︎ヨシツネ、参る‼︎」

 

「くっ、きゃあああ⁉︎」

 

「ヨッシーやるじゃん‼︎」

 

「そこまでにキチンとエリザベスちゃんの防御キチンと下げたしヨシ君を強くした甲斐があったわね。回復しておかないと、メディラマ」

 

「へっ、情けない姿ばっかりは見せてらんねぇからな」

 

「おいおい、そこまでだ。まだ終わっちゃ居ないぞ」

 

ヨシツネが放った八艘跳びによって舞い上がった砂埃がようやっと晴れて来た。いくらデバフとバフを合いがけした所でエリザベスはまだまだ余力を残しているという確信はあった。むしろ小手調べが今終わった位だろう。

 

「ふう、お強くなりましたねリョウスケ様。まさか私の2つ目まで抜かれるまでに至っているとは思いもよりませんでしたよ。もはや私に吹き飛ばされていた頃が遥か昔の様…。ふむ、これが懐かしいという感情でしょうか」

 

「おいおい俺っちの八艘跳び、キッチリ決めたぜ?自信無くなっちまうな」

 

「嘘つけ、ニヤついてるぞ」

 

「ヨッシー、浮かれ過ぎじゃない?」

 

「悪魔が少ねえって聞いたがこんな強者と戦えるサマナーと契約出来た俺っちってば幸せだなぁ」

 

「しかも姉妹みんな強いぞ?」

 

「カーッ、たまんねぇ。だから現世ってのは楽しいのよ‼︎」

 

ヨシツネの戦意は高揚している。前のめりになりそうだけど守勢に回るより良いだろう。ま、攻めなきゃ話にはならんか。

 

 

「ならばこちらは如何でしょうか。ペルソナカードドロー『オーディン』。さぁグングニルの錆にして差し上げましょう」

 

 

北欧神話のトップと来たか。ま、幸いこっちは雷撃には強いメンツが多い。サポートに回ってみるか。しっかしやっと折り返しに来たかどうかってところか、恐ろしいぜ。姉妹でパーティ戦なんてまさに夢の様だな。




間隔空いたりした一年でしたが読んでくださりありがとうございました。来年もどうぞコンゴトモヨロシク


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原作始まる前に挑むエンドコンテンツ

あけましておめでたいので初投稿です。


さぁて、エリザベスは『オーディン』を召喚して来た。これまでの流れ、オーディンという神が持つ属性から考えても電撃が飛んでくるんだろう。ヨシツネはともかくアメノウズメとピクシーは耐えられるのか?シリーズや作品によって弱点が揺らぐ印象がある…。なんせ前作の印象で弱点だと思い込んだら無効化して来た事だってあるからな。まぁ、ピクシーなら群生?している分個体差って事も考えられるんだがアメノウズメに関してはどうなんだろう。考えを巡らせていると頼もしい声が掛かった。

 

「うふ、リョウスケ君。私たち日本神にとって雷なんてなんて事無いのよ?私もワケミタマとして天鈿女命の一面でしか無いけれど、野良のワケミタマや更にそれを象ったペルソナみたいにヤワじゃないわ。貴方はワザワザ作られたワケミタマの私を仲魔にしたのよ」

 

「そーそー、ワタシだって雷使い。あんまり効かないのよ」

 

「そこは俺っち達みたいに無視できるって程じゃあねぇだろう?ピの字よ。ま、俺っちに関して言やぁ苦手なモンってのが無いからねぇ。…強いて言えば兄上くらいか」

 

「頼もしいなウズメにピクシー。…あとヨシツネはアレだな、歴史が物語るってヤツだな。よし、じゃあ俺が後衛に回ろう。前をウズメとヨシツネだ。ピクシーはバランスを見てくれ」

 

「おうよ。さぁてまだまだおかわりはたぁんとあるぞ‼︎」

 

「貴女のお人形にこの魔法をご馳走するわね…ザンマ‼︎」

 

「えーっと、ヨッシーの防御力はまだ大丈夫だから…ウズメン!ラクカジャ!エリちゃんの攻撃に気をつけてね!」

 

 

 

ヨシツネの役割は変わらない。エリザベスの攻撃力と防御力を下げつつダメージを与える。今回アメノウズメは攻撃に回った分回復が手薄になった分俺の道具でフォローできると良いんだが…。エリザベスは属性を切り替えて戦って来ている。元々腕試しだからだろう、順番に切り替えて戦ってくれているだけ有情か。

 

 

「くっ、いささか『オーディン』では分が悪い様ですね。示し合わせた訳では無さそうですがこちらの雷撃への対策はバッチリとは…、なるほどこの苦戦は次の客人に対する課題と致しましょうか」

 

 

まーた物騒なことを…。エンドコンテンツが更なる無理ゲーと化すのか、すまんなキタロー君。

 

うん?エリザベスの注意がヨシツネに向いてる。ここがチャンスだ…距離を詰めるっ‼︎不意打ちも相まって決まった一撃は良いダメージになった様だ。

 

 

「エリザベス、一本だな」

 

「なっ⁉︎リョウスケ様に隙を見せすぎてしまった様ですね。こんなに苦戦しているのも学びなのですね。ふふ、申し訳ありません、はしたないとは思っておりますが…笑いが止まりません。本来ならばもう少し順序立てるつもりでありました…、しかし私が堪えられません。気が早いようではありますがグランドフィナーレと参りましょう…ペルソナカードドロー『マサカド』。さぁ、ニンゲンの力を見せてくださいますか?」

 

 

「おいおい、一気にひっくり返して来たじゃ無いのさ…。俺っちのそっくりさんはどうしたんだよ」

 

「どうやらエリザベスも本気も本気なんだろうな。というかやべぇな…あの状態のエリザベスにダメージを入れられるビジョンが見えないな」

 

「うわぁ…エリちゃん凄い‼︎あんなのライドウちゃんと一緒の時でも()()()出くわさなかったのに…」

 

()()()か。居るには居るのかあのレベルの奴。その話も実に気になるが…とりあえずどうすりゃいいかな。『マサカド』に替えてからというものバキバキのオーラもあってダメージが通るどころか攻撃が入ってる様子が無い。はっきり言って手詰まりだな。

 

 

「どうするの?なんか…ヤバげな気配してるけど」

 

「大技だろうなぁ。いやぁ、ダメージが入る様なら何とか体勢も崩せるんだが…」

 

「…ぶちかまされる前に何とか削るしか無いんじゃ無い?」

 

「だよなぁ…。ふぅ、スマン弱気になってた。あてられたかな?ま、幸い食らっても死にはしないよな。よし、当たって砕けるか。悪りぃな、ヨシツネ、一番前付き合ってくれよ」

 

「良いじゃない…。負け戦も逃して貰った身だからなぁ、こういうシチュエーション憧れてたんだ」

 

「本気?あのエリちゃん相手じゃあ無駄に…」

 

「ふふ、ピクシー…貴女らしくないわよ?昔なら張り切ってた場面じゃなかったかしら?」

 

「そ…そんな事…。だ、だって、リョウスケちゃんはライドウちゃんみたいに使命に生きてる訳じゃ無いじゃない!」

 

ピクシーには無謀とも言える俺たちの試みを止めたい様だった。然もありなん…まだまだ葛葉家のサマナーとしてはひよっこも良いところだからな。最強と言われたライドウさんに使役されてた身としては頼りないんだろう。()()()()()行かなきゃならない。

 

 

「そんな事言うなよ。砕けるつもりだってないんだぜ?それに…分の悪い賭けだが…試すにはうってつけだろ?」

 

「リョウスケちゃん…。わかった、ワタシもうじうじ言わない!うん…うん!今なら()()使えるかも‼︎」

 

()()?」

 

「ふふん、ワタシはそんじょそこらのピクシーじゃあないのよ!ライドウちゃんと大暴れした内に覚えた誰にでも効く魔法…メギドラなら何とか1発行けるわよ!」

 

 

気持ちが入ったおかげか1つタガが外れたらしい。これでもまだまだ眠っていたブランクを埋め切ってないって言うから恐ろしい。…だが、敗色濃厚から贔屓目に見て不利って所までなら行けるか?やってみようじゃ無いか。

 

 

「ウズメはタルカジャを俺とピクシーに‼︎ヨシツネは八艘跳びでエリザベスの気を逸らしてくれ‼︎」

 

「任せろ‼︎そっくりさんとの場はまーた頼んだぜ?」

 

「ふふ、なんだかライドウ君みたいね。補助は任せなさい」

 

「ピクシーはヨシツネの八艘跳びが入った後メギドラを‼︎」

 

「ピの字‼︎悪い、全然効いてねぇ‼︎」

 

「ヨッシーに期待なんてしてないわよ!へへん、エリちゃん…今のアタシの全力よ!メギドラ‼︎」

 

「まだまだぁ‼︎ここだ、来い『アスラおう』‼︎全部絞り切ってやる…万物屠り‼︎」

 

 

最早部屋とは言えない規模だがベルベットルーム内に設けられた模擬戦場とはいえ凄い砂煙が舞っている。その中心にはもちろんエリザベスがいるのだが…どうだろう、様子見の時とは違って確かな手応えはあったんだが。

 

 

「ふ、ふふ、ふふふ。まさかでございますよリョウスケ様。この…今の私にダメージを与える事ができるとは。いけませんね、本来は貴方様の成長を見せていただくはずの場であった…。しかし、どうやら私が教えられた事の方が多い様です。ええ、これは是非ともお返しをさせていただきましょう。かつて貴方様に手取り足取り…まさに戯れていた頃に放ったモノとは別モノですよ?ふふ、グランドフィナーレに相応しいこの技、受け切ってくださいまし…。メギドラオンでございます‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホンネンモヨロシク。
余談ですが初詣に、行く地元のデカい神社は武甕槌命と経津主命も祀られてるとの事。なんでか縁深いですねぇ。


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節目と始まり

バタバタしておりますので初投稿です


「くっ…、何がどうなった…。気を失ってたのか」

 

目を覚ましあたりを見回すと仲魔達はおらず、場所も戦った所じゃなかった。初めてだが雰囲気から言って医務室…か?なるほど見覚えが有る様な無い様な不思議な感覚は俺の記憶から再現しているからか。どうやらエリザベスのメギドラオンに耐える事が出来なかったらしい。ま、やれる所まではやったんだがな…。仲魔達は封魔管に戻っている様で安心したがしばらくは休養かな?

 

 

「お目覚めになりましたか」

 

「負けたなぁ…」

 

「ええ、私が勝ちました」

 

「あの一撃、アレが本気かぁ」

 

「ふふ、中々のものでしたでしょう?」

 

「何が起きたか分かってないくらいだよ…。そうかぁ、悔しいなぁ」

 

「ふふん、悔しいですか?今はその敗北の味を噛み締めていただきたいですね」

 

 

いつものエリザベスならドヤ顔かました上に煽ってきてただろうがそんな余裕もないのか?ならそこそこに追い込めたのかな。しかしあそこまで強い一撃だと回復どころじゃないんだなぁ。ますます攻撃を喰らわない立ち回りを考えなきゃならんな。

 

 

「…ピーちゃん達はいかが致しましたか?」

 

「うん?まぁ、眠ってる…みたいなもんかな。魔石…マガツヒの塊とか魔力をたっぷり含んだ宝玉なんか有れば回復も早いんだけど、生憎探索中分以外の余剰が無くてな。ま、もう少ししたら忙しくなる…、それまでの休息でもしてもらおうと思ってな」

 

「そうですか。いえ、ならばまたの機会に致しましょうか…」

 

「ピクシーが使ったメギドラの話か?」

 

「な、なんの事でしょうか。いえ、私もペルソナカードを使わずとも放てる様になるかと思った訳では有りませんよ?強大なペルソナではなく私自身をグランドフィナーレに持ち出すならば生身で放てる様になるとカッコ良さそう…コホン、もとい、私達力を司る者として目標とすべきではないかと思った次第で有りまして」

 

 

随分と早口で捲し立てられた…。誤魔化し切れてない上に物凄い展望を語られた気もするがもう諦めた。うん、しばらくエリザベスのオモチャになるキタロー君には荷が重いかもしれないが君なら行けると信じてるぞ。まだ見ぬキタロー君の活躍を願わざるを得ない、それくらいエリザベスがウキウキしてるんだ。

 

 

エリザベスやマーガレット、ラヴェンツァ…そしてテオドア。彼女たちは強者として完成()()()()。しかし、エリザベスは俺との戦闘中に成長したフシがある。ベルベットルームの住人はヒトの導き手で有りながら俺との長い付き合いの間に様々な学習だってしてきた。おそらくそれが楽しくて仕方ないんだろう。

 

 

 

「どうなんだろう、ペルソナナシでも魔法使えるかどうかは分からん。俺が魔法使えるなら参考にもなるんだろうが…、分からんしなぁ。エリザベス達の在り方はどちらかと言えばピクシー達悪魔寄りだから望みは無くはないかも知れんが」

 

「それはそれは…、なんとも楽しみな話が聞けましたね…」

 

「…なぁ」

 

「…はい」

 

「俺は強くなってたか?」

 

「ええ、それはもう。本来ならば『マサカド』のペルソナカード…使うつもりは有りませんでした。あそこまで早く追い込まれるとは私…いえ、私達姉妹だけで無く主人の想定すらを超えておりました」

 

「…」

 

「リョウスケ様がベルベットルームに訪れてからの3年…いえ、サマナーとして活動なされてからで言えば1年と少しでしょうか。なのに目の前の方は随分と落ち込んでらっしゃる。その程度の期間で乗り越えられる簡単な障害だと思われていたのかと…私、涙が止まりません」

 

「…」

 

「ええ、むしろ私を追い詰めた事を誇っていただきたい位です。…まぁ、そんなことをする様ならもう一度フィナーレが訪れるやもしれませんが」

 

「ふふっ、そうか。いや、なんだかんだ全力で勝ちに行って負けたのが初めて…でな、整理がつかなかったんだ。そうかぁ、強くなってたか」

 

「ええ、これならば自信を持って姉上へと引き継ぎが出来ます」

 

「…引き継ぎ?」

 

「おや、私だけで満足されたと言うなら冥利に尽きますが…、リョウスケ様はそんなツマラナイお人では有りませんよね?」

 

「そりゃあそうだな。何より負けっぱなしってのは性に合わん。エリザベスが客人対応をしてるうちに追い付かせてもらうとするよ」

 

「ふふん、私、このエリザベスをかの一戦までの私と同じに考えないでくださいますか?そう言わば私はエリザベスの中のエリザベス、スーパーエリザベス‼︎戦いを通して成長したのはリョウスケ様だけでは有りません。…追い付けますか?」

 

「はっ、追い越してやるよ」

 

「ふふ、それでこそ。それでこそ貴方様は我々のお客人。願わくば私だけで無く姉妹達…弟にも新しい風をもたらしてくれる事を」

 

「ああ」

 

「よろしい。身体のお加減も良さそうです。それではまた相見える日まで…」

 

「ありがとう」

 

 

エリザベスからはそれ以上の言葉は不要だと目で言われた気がした。別れって訳でも無いがなんだかんだ3年間で一番世話になった。ケジメ…って程でも無いし今生の別れでも無いから変な感じだが、お互いのやる事をやろうって別れにはなった。…まぁ、しれっと出会うのがエリザベスな気もする。それこそポロニアンモールでバッタリとか。それにしても引き継ぎかぁ。まさかマーガレットさんと役割交代かぁ。まぁラヴェンツァはメメントスの観察してる事を思えば手隙なのは違いないか?まぁどっちにも勝つってのは目標にしちゃちょうどいいな。…さてと、帰るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は4月7日……、とうとう物語が動き出す。影時間が訪れるまではあと少し。俺はこの日までこの時間この地域へと来る事は無かった。訪れてはいけない気がしてならなかったからだ。拒否反応すら身体が起こしていた様にも思える。それがどうだ…こうしてここに居れる。ニュクスに拒絶されていたかも知れないがそれどころじゃ無くなったか?

 

 

 

 

 



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2009年(p3本編開始)
初めての場所は調査から


バタバタしまくっているので初投稿です


ここが影時間。この規模の異界化を毎日同時刻に…。この異界が閉じるまでの2時間程度は現実世界での時間経過ナシ。ま、ありがちな歪みだな。

 

「うわぁ、ブキミねぇ」

 

「辛気臭いねぇ…。それに、なんだあの棺桶みてぇなの」

 

「何かしらね…」

 

「薄暗いホー。ここのヌシはセンス無さそうホー。オイラならもっと陽気な異界作りたいホー」

 

仲魔達は思い思いの事を言っている。まぁ言わんとする事はわかる。そもそも作り出した元凶が『デス』だか『ニュクス』だかの概念としての死を司る悪魔だろうしな。…なるほど、この棺桶が適性を持たない人間をこっちの世界から見た時の姿か。ふむ、推定悪魔が原因の異界に一般人が迷い込んでしまい犠牲者が出る…うん、十分葛葉案件だな。俺もこうして入れる様になった訳だし、美鶴ちゃん達と情報交換でもすべきかな。それにしてもちっこいシャドウしかまだ居ないか。

 

 

「うん、気配も感じない。ちょっと散開して周囲を見てきてくれるか?ピクシーなんかは上空からも見てくれ」

 

「まっかせなさーい」

 

「ここのシャドウはなんだか形容し難いカタチしてるわねぇ…」

 

「ソックリさんもいねぇなぁ。ま、考えるのはリョウの字のシゴトだ。俺っちはうろついてくるぜ」

 

「オイラはリョウスケと一緒にいるホー」

 

「よし、じゃあ頼む。…そろそろって頃に合図は出すよ。じゃあ俺たちは気にしない様にしていた懐かしの母校へと赴こうか。…ここからでも見える程様変わりしてるけど」

 

 

 

とりあえずタルタロスを覗きに行こうか。異様としか形容できないなこれは。異界の原因ってのはえてして分かりやすいんだが…明らかに異常だなぁこれ。ふぅん、中はこんな感じか。今日は誰も来ていないな、うん、気配もない。あんまり時間をかけて取り残される様だと厄介だしとりあえず様子見だけにしようか。

 

 

「ヒーホー、コイツら弱っちぃホー。あ、リョウスケ階段あったホー」

 

「ま、入り口だし、シャドウも強くは無いな。というかシャドウには逃げられてるな。ま、明らかに弱いから本能的なモノかな?楽でいいだろ」

 

「そうだホー。でもオイラ歩き疲れたホー。封魔管で休んでもいいホー?」

 

「…悪魔って歩き疲れるもんなのか?」

 

「そういうキブンだホー」

 

「まぁ、いいけどさ。駆け抜けてるばっかだし」

 

「何か出てきたら呼んで欲しいホー」

 

苦戦しそうにも無いからフロストの召喚を解除しておこうか。ほかの3柱を好きにさせてるとマガツヒも食うからな…。ここいらのシャドウは逃げてばっかだし倒してもスズメの涙だしな。

 

 

 

 

 

とくに変わった様子もなく15階までは駆け抜けただけだった。タワー型の異界は階段ばっかりで嫌になるな…。メメントスとは違った厄介さだ。中の陰鬱な雰囲気と相まって一人で歩くとウンザリしてくる。あのポータルっぽいのも動いてないから尚更疲れるな。そんな思いを抱きながら16階へと足を踏み入れた所扉が待ち構えていた。押しても引いても何の手応えも得られない。

 

 

「なるほど、タルタロス自体まだ寝起きってとこか」

 

 

異界としての影時間、タルタロスの封印は緩み始めたとはいえまだまだなんだろう。封印の鍵としての役割を持つアルカナシャドウはキタロー君の中に『デス』を感じて襲っているのか?封印されてなおここまで強烈な影響力を持つ悪魔が引き起こす異界か…封印自体緩んできてるって事を考えるとリスキーだけど封印を解いて倒すしかないのか。

 

 

……なるほど、倒す術が無かったからこその「大いなる封印」か。駆け出しサマナーとはいえ始まりは巻き込まれただけの一般人の犠牲で日常を守る事になるってのは我慢ならないよな?いいだろう、やってやろうじゃない。概念を司る規模の悪魔だろうととことん足掻いてやる。自惚れでもなく「力を司る者」と勝負が成立するくらいのサマナーが居れば戦局は大きく変わるに違いない。ペルソナ使い以外のアプローチだって出来るんだ、可能性の一つ位は出てくるだろう。

 

 

 

 

 

考え事をしながらタルタロスを脱出すると入り口には散開した仲魔が集まっていた。

 

 

「あ、リョウスケちゃん!フロスト居なくなってるけど…やられちゃったの?」

 

「いや、あんまりにも何にも無かったから戻ってもらっただけだ。俺の方はキッカケが無きゃどうにもならない感じだな。封印の数がどれだけあるかわからんが先は長そうだったな」

 

「そうなのね。アタシも空飛んでみたけどへんてこシャドウも居ないし薄暗いし。でも広かったわねぇ」

 

「だよなぁ。俺っちも走り回って見たものの人っ子1人見なかったぜ?あとシャドウは蜘蛛の子散らす勢いで逃げ惑ってやがったな」

 

「私の方も。街並みは変わらないしどこまで異界範囲なのかまだ分からなかったわね」

 

「なるほど…。広いって事が分かっただけでも収穫だな。幸い迷い込んだ一般人も居なかったみたいだし。シャドウに関して言えば俺の方もそんな感じだったぞ。ま、発してるマガツヒに恐れ慄いたって所だろ。さてそろそろ戻るか。体感じゃあ2時間くらいだと思うんだが取り残される方が面倒臭いし早めにお暇しとかないとな」

 

 

 

学園が落ち着いたら美鶴ちゃん達と情報交換しないといけないな。なにより影時間で使える時計が欲しい。止まった時間を計る時計とかいう矛盾しかないけど…有るかな?



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シンボルエンカウントで助かった話

時間が取れたので初投稿です


4月9日

 

…今日は満月。月の魔力ってのはバカに出来ない。それも満月ともなれば、だ。気のせいだろうかやけに大きく見えるな。影時間とメメントスで迷ったんだが俺はメメントスに行く事にした。キタロー君が初めて訪れるにはピッタリの日で有る事には間違いないんだが、今日の段階で俺が居ても仕方ない。

 

 

 

「うーん、なんかザワザワしてるね」

 

「リョウの字、こんな事あったか?」

 

「メメントスに出てくるシャドウが軒並み強くなってるな。こんな事は初めてだ」

 

「…それに、何かしら…鎖の音?」

 

「鎖の…音?…⁉︎マズイ‼︎」

 

「どうしたのよ?」

 

「いいから‼︎アイツか!逃げるぞ‼︎」

 

「何だ何だ、説明してくれんだろうな?」

 

「もちろん。でも今は逃げるぞ。幸い満月のせいかシャドウも俺たちに然程興味ナシだ。…あと少し走るぞ」

 

「リョウスケ速いホー」

 

「…アンタも飛べば?」

 

「‼︎オイラすっかり忘れてたホー」

 

俺は急いですっかりメメントスの出入り口になっているベルベットルームへと戻ってきた。途中気の抜けそうなやり取りが聞こえたが気にしてない。マイペースなのは悪魔ならではだ。実際問題走るって言っても俺しか走らないしな。

 

 

「リョウの字、なんだってんだよ」

 

「そうよ、リョウスケちゃん説明してくれない?」

 

「何かメメントスで動きがございましたか?尋常ではない様子でしたが…」

 

「マーガレットか。ちょうどいい、説明させてもらうとするよ。アイツは『刈り取る者』。影時間の元凶が活発になりつつあるからこそ動き出したシャドウだ」

 

「えっと、影時間のヌシが活発なったらなんでメメントスにも出てくるの?」

 

「直接的な関係はないだろう。ただ、影時間が動き出した事によって『刈り取る者』ってシャドウが形作られたんだろうな。アレは人の無意識の中にある死って概念だけを抜き取って凝縮したシャドウ。影時間で象られたアイツは他の集合無意識でも同じく『刈り取る者』として存在できるようになったんだろう」

 

「なるほど、ニンゲンは命ある者ですから死からは逃れられません。そうなると集合無意識には必ず含まれる要素…その要素がシャドウとして現れたわけですか」

 

「ああ、そういう意味でいうなら関係は無くは無いのかな?」

 

「リョウの字よぉ、あんだけ慌てたって事は奴さん強えのかい?」

 

「ま、ニンゲンなら誰しもが持つ意識だからな。俺だって考えた事あるし。そんな意識からできたシャドウ…集合無意識による異界が有るからそこでうろついているけど現界する様なら悪魔にカテゴライズできるレベルだろう。それも強い方だな」

 

「なるほどねぇ。だからリョウスケ君も慌てた訳だったのね」

 

「まぁな。ぶっちゃけ倒したところでも根絶できる訳ないしなぁ。リスクだけデカくてリターンが分からんもの。これから忙しくなるって時に戦う相手じゃないだろ」

 

「リョウの字がそう判断したなら文句ないぜ。ま、剣戟を交えて見たいってのは覚えておいて欲しいけどよ」

 

「そうだなぁ、メメントスでも出てきたならタルタロスにも居るだろう。これから先の他の集合無意識であってもだ…。慌てる事はないぞヨシツネ」

 

「そいつはいい。じゃあ俺っちはそんな先の話であってもいの一番に選ばれる仲魔で有りたいね」

 

「メンツに悩める位仲魔が増えるなら歓迎だよ…」

 

 

仲魔達に大凡の説明を終えた所マーガレットから質問があった。ま、この『刈り取る者』についての考えはゲームとして知っていただけで無くサマナーとして動いていた時も考えていたしこうして影時間と共に現れたんだから大体合ってるだろう。新しいシャドウ…まさにイレギュラーシャドウだし明らかにネガティブサイドの象徴だから余計にベルベットルームの住人達は情報が無かった様だ。

 

「なるほど、『刈り取る者』ですか。この話はエリザベスには…?」

 

「いや、してない。鎖の音と姿の確認は今日が初めてだ。ま、そういう奴が居るって話だけでも客人に聞かせてやってくれ」

 

「かしこまりました。出現する原因はご存知でしょうか?」

 

「異界毎に違いはあるだろう。けど一番ダメなのは状態や情報が変わらない事だろうな。特に俺みたいなマガツヒ放出量の多いサマナーや保有量の多いペルソナ使い何かが1箇所から動きを見せないと呼び水になる可能性はある」

 

「なるほど…。注意としましては場所を変える事ですか?」

 

「切り替わりが有れば良いはずだ。タルタロスは上に登る塔、メメントスは終わりの見えない穴として違いはあれど細かく見れば階層に分かれている。階層を切り替えたと認識できれば『刈り取る者』が彷徨いだすまでの時間をリセットできるんだと思うぞ」

 

「それだけ分かっているなら然程脅威ではありませんか?」

 

「いや、これはあくまでも基本的な事。シャドウにしろ悪魔にしろこっちが想定する基本なんてあってない様なもんだ。イレギュラーはある。それこそ今日みたいな満月だったりフロア自体がザワついていればその限りじゃ無くすぐ現れるだろうよ」

 

「…今のリョウスケ様でも回避を選択されると言うので有れば客人には注意喚起しておく必要がありそうですね」

 

「ああ。備えも無いなら脇目も振らず逃げ一択だ。俺に言わせりゃ腕試しとかバカみたいな理由以外で相手をする必要も無いさ」

 

「ふふ、エリザベスをあそこまで追い詰めたお方とは思えないわね」

 

「それなりにチカラを持ったからこそ使い所を考えてるだけさ。さて、今日は帰るよ。メメントスで満月の影響が有ったんだ、外を大きく異界化している影時間でも何かあったかもしれんしな。だとするとそっちメインで動いてる子達からの連絡が有るかもしれんし」

 

「確かに…主人もエリザベスもどことなく忙しない様子」

 

「客人に何か有ったとしたら…?」

 

「有り得ますわね。私の方でも確認しておきます」

 

「俺もな。じゃあ」

 

 

 

 

 

ベルベットルームからの帰路、時刻は丁度深夜を回った所で俺の携帯電話が鳴り響く…。画面には桐条美鶴の名前。影時間が現実世界で時間が動いていない証を実感した所で電話に出る。

 

 

「もしもし?」

 

 



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初邂逅は一方的に

毎日書いてた去年に驚愕したので初投稿です


「もしもし?」

 

『良かった!今どちらにいらっしゃいますか?』

 

「うん?自宅だけども…厄介事かい?」

 

『はい…。影時間でトラブルが起きてしまいまして』

 

「そりゃ穏やかじゃないな。で、俺に連絡してきたって事は助っ人要請かな?そっちの状況を教えてほしいね」

 

『此方の状況としては1人新人がシャドウに襲われてしまいました。彼は一昨日に入寮する事となった転入生でして…』

 

「新人が襲われる様な事態に?そりゃダメだろう」

 

『ええ、弁解のしようもありません。先輩の教えを無駄にしてしまいました』

 

「まぁ、君の事だ最低限の備えをしていたつもりだったがカバー出来なかったって所かな?」

 

『…何処かで見ておりましたか?まさにその通りです。()()()()()が寮へと連れてきたのですしペルソナ使いである可能性は高いと踏んでおりました。しかし訓練をしていないのですから寮から出ない様厳命し、岳羽を備えとして側につけておりましたが…』

 

「寮に攻め込まれた…」

 

『…はい』

 

 

なるほど。ストーリー性に溢れちゃいるが当事者からすれば不自然極まり無いな。

 

 

「これまで寮が攻められた事は?」

 

『ありません…。言い訳にもなりませんが初めての事です』

 

「なるほど…。とりあえずそっちに向かおうか。その間に俺の方でも考えを整理しておくよ」

 

『ありがとうございます』

 

 

 

 

頼られたら先輩、先達として応えてやりたいよな。それはそれとしてイレギュラーシャドウに襲われた…か。やはりキタロー君が持つ因子に惹かれて来たのかね?それとも誰かさんがチョッカイかけて来たか?分からんなぁ。ま、事実はどうあれ意識のない高校生がいるなら病院かね?

 

 

 

 

 

「襲われた訳じゃない?どういう事かな美鶴ちゃん」

 

「申し訳ありません、岳羽も随分と動転していた様で、襲われた所強大なペルソナを召喚しシャドウを食べてしまった様に見えたとの事です」

 

「って事は無理矢理覚醒したからそのリバウンドかな?ま、確かに外傷も無いし寝息も整ってる。とりあえずは目が覚めるまで入院させてやりな」

 

「手配はしております。‼︎そうだ、岳羽、此方が葛葉リョウスケ先輩だ」

 

「おっと、初めまして。って訳でも無いか。とは言っても部活で偶に見かける位の間柄だけどな」

 

「は、はい!岳羽ゆかりです!…えっと先輩も活動部だったんですか?」

 

「んー、活動部では無かったけど3人組とはちょっと付き合いが有ってね」

 

「…ちょっと桐条先輩、無関係の人を呼びつけて良いんですか?」

 

「ああ、この人なら心配いらない。信頼しているし、何よりこの手の事態に誰よりも詳しいスペシャリストだからな」

 

「そんな方だったんですか?知らなかった…」

 

「まぁ、大っぴらにできる話でも無いからな」

 

「じゃあ、葛葉先輩は幾月先生とも連絡を?」

 

「うん?ああ、学園で俺が気にかけているのは後輩達位かな。あの辺の大人はどうにもね…。コトがコトだけに組織の紐付いた人間からは距離を置く様にしてるのさ」

 

「幾月先生は嫌な大人とは違います!」

 

ふーむ、随分と幾月の肩を持つなぁ。迷惑をかけた大人が自分の父親でその尻拭いをしていると()()()()人間なら仕方もないか。今ははぐらかしておこう。こんな事言いながら武治さんと付き合いが有るって知れると余計に反発されそうだしな。

 

 

「ほら、今はそこじゃ無いだろう?まず彼の事だ。岳羽さんがシャドウに襲われていた所、召喚器を使った彼がとんでもないペルソナを呼び出した。すると本人がそのチカラに耐えきれず気絶してしまった…これが今の状況だ」

 

「ええ、間の悪い事に私たち3人が居なかった事もありましたね…」

 

「満月の夜か…。シャドウも狂うのかね?」

 

「満月の夜…ですか?」

 

「おや、月の魔力を知らないと不思議に思うか。満月ってのは悪魔も狂わす魔力を持ってるのさ。そういう夜はいつもと違う事が起きやすい。それは影時間だけに限らなく」

 

「影時間だけじゃ…ない?他にもこんな世界があるんですか?」

 

「そりゃあここが特別な事に違いは無いけど唯一って事は証明出来ないだろう?ある所にはあるんだよこういう異界は」

 

「はぁ、先輩も後輩を混乱させないように。岳羽、この人は後輩を困らせる悪い癖があるんだ。そこさえなければ完璧なんだがな…」

 

「え、じゃあ嘘なんですか?」

 

「全てが嘘じゃ無いからタチが悪いんだ…」

 

「おいおい困ったからって呼びつけた先輩にその言い草はないんじゃ無いか?」

 

「それを言われてしまうと…」

 

「ま、構わないんだけど。っとうん、これなら大丈夫かな。数日は目を覚さないかもしれないけど」

 

「ならば私がやる事はこれ以上ありませんか。わざわざお呼びたてして申し訳ありません。…なんです、その目は」

 

「いや、君も他人に頼る事ができる様になったんだなぁってさ」

 

「ええ、1人で背負い込める事なんてしれてると教わりましたから」

 

「…桐条先輩ってこんな人だったっけ?」

 

「この人の前で気負っていても仕方ないからな。なんせ私たち3人がかりでも勝てないんだから」

 

「ええ⁉︎3人って真田先輩や荒垣先輩もまとめて⁉︎…想像できない」

 

「ま、その辺はいずれ分かるさ。さて、車も来た様だし部外者の俺は帰るとするよ。寮生でもないからややこしそうだし」

 

「ええ、今日はありがとうございました」

 

「あ、ありがとうございました」

 

「夜はもう深い。精神をしっかり休めないとペルソナにも響くから気をつけるんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

急に連絡があったのには驚いたな。そりゃ安全な所に配置したつもりだったのに目を覚さないってなると美鶴ちゃんでもパニックになるか?いや、頭が混乱したままのゆかりちゃんに紹介したかったのかな?真次君や明彦君が居なかった事からお膳立てしていた事すら可能性としてあるな。確かにあの場で幾月とやり取りしてたらややこしい事態になるのは目に浮かぶ。だとすると随分と強かになったな、頼もしい限りだ。

 

 

 

影時間の方はキタロー君が目覚めるまでこれ以上の動きも無いだろう。なんなら次の満月に出てくるアルカナシャドウを倒すまでかもしれない…。俺も大学とか自身のスキルアップとか時間はいくら有っても足りないな。ま、だからと言って影時間見たいな歪みはゴメンだけど。

 

 



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この世界に生きる身として

30万UA到達したので初投稿です


4月11日

 

美鶴ちゃんから改めて連絡が有った。キタロー君は数日中に目覚めるだろうとさ。ま、想像通りで何よりだよ。しかし転入して即入院ってのも目立つだろうに…。

 

 

しばらくは無理もしないだろうし本当にヤバそうならまた連絡があるだろう。

 

 

4月12日

 

久々にルブランへと訪れた。マスターからは大学入って落ち着いたんならまたバイトに来ないかとありがたい誘いが来ている。実際問題ゲームと違ってシャドウや悪魔が落とすお金を使って良いのかよく分からないんだよな。それなら金目の物の方が岩井さんとかフミさんに買い取ってもらう方がよっぽどマシなんだよな。変な話メガテン準拠なら悪魔がマッカを落とすのも分かる。だがなぁ…シャドウが落としたお金なんて証明は出来ないけど本物でもないだろうに。ロンダリングまでするのも馬鹿馬鹿しいしなぁ。

 

 

と言うわけで俺の金欠をカバーする為にバイトは必要だ。ヤタガラス見たいなバックも無いしなぁ。一応桐条グループなら任せられない事もないけどそれも幾月が居なくなってからの話。当面は苦しいままだなぁ…。大学入ったしキョウジおじさんの探偵業も手伝おうかな?

 

 

「おう、よく来たな」

 

「またお願いしますよ」

 

「なぁに、頼むのはこっちの方さ。オマエが居るとフタバも楽しそうだしな」

 

「おーっす、元気してたかー?アタシは元気だ!…インドアだけどな」

 

「ははっ、フタバちゃん、ちょっとおっきくなったんじゃないか?」

 

「むむ?そうなのか?お母さんもそうじろうも何も言わないから分からなかった」

 

「そういえば…いつの間にかカウンターから顔が見えるようになってるな。早えもんだ」

 

「そうじろう…じじ臭いぞ」

 

「じじっ⁉︎まだそんなトシじゃねぇよ‼︎」

 

「そうじろうが怒ったー、スパイ基地に撤退だ‼︎」

 

双葉ちゃんはマスターを揶揄うと二階へと駆け出した。若葉さんに構ってもらえない事を納得できる程賢いからこそ甘えられる所に甘えてるんだろうな。…久しぶりに会うたびに何とか若葉さんの不幸を阻止してやりたくなる。打算的な事を言えば俺の活動とこの世界に対して認知「訶」学の専門家を失う事なんてとんでもない。一歩間違えばすぐ世界崩壊、滅亡の危機が隣り合わせしながら学生生活をエンジョイしてる様な世界だからな。

 

 

「ったく、はしゃぎやがって。すまねぇが2階の掃除しといてくれ。物は溜めてねぇがホコリはな」

 

「わかりました。若葉さん、まだ忙しいんですか?」

 

「ん?あぁ、そうだな。フタバの奴も学校に馴染めなくなって来たからウチで預かる事も増えたんだよ。フタバなりにワカバに気を遣ってやがるんだ。ったく、賢い子だよホント」

 

「まぁ、頭の回転とかはぶっちぎりですもんねぇ」

 

「…しかも仲の良かった子が転校しちまったらしくてなぁ。余計に楽しくないんだとよ」

 

「そりゃあ…仕方ないとはいえ寂しいでしょうに」

 

「…ま、ホントなら()()()()()()()が良かったんだがオマエさんでも我慢してやるよ」

 

「…あのフタバちゃんの兄貴は大変そうですね」

 

「違ぇねぇな」

 

「まーた、そうじろうと喋ってるのかー‼︎スパイ来てくれー‼︎」

 

「はいはい、今行きますとも」

 

「ったく大声出して。客が居たらどうすんだ」

 

 

 

この日はフタバちゃんの相手やマスターの手伝いをしていたらあっという間に過ぎた。この日常が壊れること無くワカバさんが生きてりゃマスターとくっつくかもな。…それこそ丸喜先生の都合の良い世界みたいだが与えられたモノと模索し尽くして勝ち取ったモノとは違う。

 

 

そりゃあペルソナ使いは身近に不幸を感じながら理不尽な抑圧を受けた人がほとんどだ。その抑圧を跳ね除けるだけのココロの強さが具現化した様なモノだから当たり前っちゃあそうなんだが、その理不尽を少し位和らげてやれたら良いよな。

 

 

 

 

 

4月20日

 

 

この1週間と言うと特筆する事は無かったな。流石に大学を1年の春から疎かにする訳にもいかないから重きをおいていたらあっという間だった。美鶴ちゃんによるともうキタロー君は退院したらしい。そしてもう1人ペルソナ使いが見つかったそうだ。それも学園生に。そのもう1人ってのは「伊織順平」。彼は3人組の様に推薦でも無ければ「岳羽ゆかり」の様に縁も無い。更に言えば「天田乾」の様な被害者ですら無い。本当に一般人が急に素養を発現したのだと言う。

 

 

…幾月の事だからペルソナ因子や影時間への適性を加味した受験内容にしていた気がしてならない。今までは眠っていた因子がキタロー君と接触した事によって目覚めたのかもしれない。

 

 

そりゃいきなりペルソナ使える様になったら全能感も覚えるし、同じく経験の無いキタロー君がワイルドの素養を持ってりゃ劣等感も抱くわなぁ。…流石に失敗する前に教育するのも理不尽過ぎるな。明彦君も真次君もフォローに回れるんだし。

 

 

 

 

 

ま、それはそれとしてバカをやるならみんな纏めて教育だな。新兵の責任は先任にも連帯責任だ。新人が来たのならやらなきゃならない事を疎かにしたのは三人組も同じ。俺もせっかく影時間に入れる様になったし異界なら魔法で治療もしやすい。…人と戦う事もあるだろうし経験しておいて損はないだろ。

 

 

 

 

 

 

4月21日

 

 

メメントスに向かおうと思いベルベットルームへと訪れると珍しくイゴールから話をしないかと誘われた。丁度キタロー君が訪れ始めた頃だからか話をしたいのだろうか?

 

 

「ほほ、ようこそ我がベルベットルームへ。新たな客人と出会いは済まされましたかな?」

 

「一方的にならな。向こうは気を失っていたから」

 

「左様でしたか。私と従者共々話をしたのですが、彼の客人は本人のペルソナとはまた別のペルソナをお持ちである事はご存知ですな?」

 

「ああ。ひょんなことから彼の中に封印される事になった『死神』、その一部が本人のペルソナ覚醒と共に目覚め始めたんだろう?そしてその『死神』をまた眠りにつかせる為の1週間だった訳だ」

 

「ええ、その通りでございます。ご覧になっては無いようですが、そのペルソナは『タナトス』。まさに死神ですな」

 

「大元を考えたら可愛い方なのかもな」

 

「ふむ、まさしく影時間の元凶となったシャドウ…いえ、リョウスケ様の分類では悪魔に該当するのでしたな、その悪魔は『死』そのものなのでしょう」

 

「はた迷惑な話だよ。『死』に取り憑かれた老人とバカの尻拭いをしなきゃならないんだから。なぁ、イゴール。その尻拭いに一番最初に()()()()()()だけの人間がなんでまだ身を削らにゃならん?彼は既に家族を奪われてる。因縁のケリを着けるってんなら分かる。だがそれまでで十分だろ」

 

キタロー君の境遇については知っていた部分もあったが改めて調べると何とも悲惨なモノだ。まだヤルダバオトやイザナミがテコ入れしてた方が恨む相手が居るだけマシとさえ思ってしまった。だって()()()()()巻き込まれたのが始まりなんだから。

 

「なるほど。…私や従者が出来るのは運命に抗う手助けでございます。それ以上は出来ません。しかし、運命を壊すと言うならそれは生きたニンゲンになら出来るのやもしれません」

 

「ああ、そのつもりだ。ちょっとくらい先達として良い所見せてやりたいしな」

 

「ええ、私どもはそれを特等席で観させていただきますとも。…ところでリョウスケ様、私、貴方にはワイルドの素養があると申しましたが…『アスラおう』以外何かございましたか?」

 

 

…言われるまで忘れてた。確かに言われてたな。けれどペルソナを新たに獲得した事もなければ『アスラおう』もどうにもペルソナっぽく無い。どうなってるんだ?

 



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思い込みはきっかけがないと改まらない

ランキングがかつてない事になってびっくりしたので初投稿です


「不思議だったんだ。ワイルドの素養があると言われはしたものの新たにペルソナを獲得した事もない。それに…『アスラおう』は強力なペルソナなのは分かるし、俺に見合って無いのかも知れないが、どうにもペルソナっぽく無いし消耗が激し過ぎるような気もするんだよ」

 

「なるほど…。どれ、せっかくでございます。ここは私がタロットカードにて占ってご覧に入れましょう。……出てきたカードは愚者、それも正位置。やはりリョウスケ様はワイルドの素養がお有りですな」

 

「そうなのか。…じゃあ俺のペルソナはどうなってるんだ?」

 

「ふむ、ではもう一枚。…むむ⁉︎どうした事か次のカードをめくることが叶わないですぞ。これはリョウスケ様のこれから先はまだまだわからないという事なのでしょうか?」

 

「…ひょっとして俺は本当の意味でペルソナ覚醒を果たしていないのか?それとも覚醒を果たしているがオモテに出てきてないとか?」

 

ワイルドみたいに何色にでもなるというよりかはどんな風にもなれる。そんな可能性を示唆しているような気もする。やはり自分のことが一番分からないのか。

 

「ふうむ、どうやらワタクシ達にも計り知れない何かがまだある様ですな」

 

「…考えられるのなら俺という人間、人格の成り立ちの所為かも知れない」

 

「人格とおっしゃると…我らが世界を観測していた世界における『葛葉涼介』。この世界に生きていた『葛葉涼介』。そしてそれらが統合された事による貴方『葛葉リョウスケ』…と考えてらっしゃるのでしたかな?」

 

「ああ。俺は俺だと自覚はしているがな。人格ってものはその人間が生きてきた時間が作り出すんだと思うんだが…そうなると俺って特殊だろう?」

 

「確かにそうですな。かの世界で生きてきた涼介様として生きてきた記憶とその記憶が統合されるまでこの世界で生きてきた涼介様とそれからのリョウスケ様では確かに3様の人格と言えるやもしれませんな」

 

「俺自身は三重人格って訳でも無いけどな。…多分だけどさ。俺は俺として生きてるつもりだったけど、そう言う前の世界とかこの世界とかそう言った考え全部包括出来るようになったら本当の意味でペルソナが目覚めるのかねぇ?」

 

「ご自身の中では折り合いがついたと思われていたが…ココロの内ではそうでは無かったと?」

 

「うーん、分からん。けれどこうして考えてみると後一歩なのかねぇ?…そうなると『アスラおう』お前は何者なんだ?」

 

「ある意味仮初の人格という訳でしたらペルソナもそうなっているのでしょうか?もしくは()()()()()()()()()()()()()()とすればいかがですかな?」

 

「あー…その考えは無かったな。確かにペルソナじゃ無かった可能性を考えた事無い。となると、悪魔なのか?」

 

イゴールに指摘されるまで『アスラおう』がペルソナだって思い込んでた。確かに違う可能性だっていくらでも有る。近くの世界じゃ魔神ルーグの依代になった高校生もいればガーディアンとして守護悪魔を憑依させる事で復活してきた高校生だって居た。

 

 

アスラおうと言えばインド神話における阿修羅族の王。日本じゃ興福寺の阿修羅像なんかが有名な三面六臂で俺が覚醒した時も使役だの言ってたんだよな。それに召喚って言うより俺に憑依した様な状態だった訳で。…考えれば考えるほど俺の中にいる『アスラおう』は分霊だった可能性が出てきたな。ライドウさんの縁なのかそれとも俺と言う人格が3人分に見えたから興味を持たれたのか。…それとも眠るペルソナに関係あるのか。

 

 

「ほほ、どうやら答えが見えてきたようですな」

 

「ああ、スッキリした。助かったよイゴール」

 

「部屋の主人としての務めに過ぎませんな。礼を言われるほどのことでも有りません。なんせリョウスケ様と関わることで我々の本懐とも言えるココロの在り方について随分と学ばせていただきました。エリザベスも様変わりしたでしょう?これからあの子は新たな客人と縁を結びます。それがどの様な芽を咲かすか共に楽しみにしようでは有りませんか」

 

「ふふ、そりゃいい。…そうなったら()()だからってエリザベスの顔が曇ってちゃ意味ないよな?」

 

「ええ、いささか期待はずれと言えるでしょうな」

 

「そうか、そうだな。俺はもう少し俺のことを考えてみる。そして、()()()()()やる。それだけだ。…あ、今のはイゴールも人間臭かったぞ?」

 

 

去り際に放ったセリフ、イゴールも丸い目をもっと丸くしてたなぁ。ありゃあもっと驚かせたら溢れる心配しないとな。

 

 

 

 

そうか、悪魔だとするなら阿修羅像のある所に行かないとな。なるべく三面六臂の像がいいよな。これまでとは認知の違いが現れるだろうから一度見に行って何にもなかった仏像でも構わないんだけど…。そんな事を考えながら事務所の郵便受けを整理していると上野美術館の大盛況っぷりが新聞の一面を飾っていた。記事によるとなんでも憂いを含んだ阿修羅像の表情は一見の価値ありだとか。開催期間は6月7日まで…なんともドンピシャじゃないか。そうだな、次の満月までには訪れるとしよう。




リアルで興福寺展の年と一致してたのはびっくりですね

ルーグの依代→新田維緒。デビサバ2 のヒロイン。なおイベントをミスると割とグロく死んでしまう

ガーディアン使いの高校生→真・女神転生ifの主人公。初代ペルソナの世界線の基点。


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俺が入り浸る理由

赤バー達成したので初投稿です


4月24日

 

方針の相談がしたいと美鶴ちゃんから連絡があった。ちょうどいい、見返りって訳じゃあないが桐条の力で興福寺展の閉館時間に入ることができないかお願いしてみよう。ちなみに場所はルブランだ。マスターからはまた生暖かい目が向けられてるが気にしない。なんせ後ろの席じゃ真次君が真剣な顔して味を盗もうとしているからな。そろそろ話し出す頃合いだろう。

 

 

「構いませんよ。我がグループでも協賛をしていたハズですので。少々お待ちを」

 

 

美鶴ちゃんはそう言うと携帯電話を取り出して話を始めた。

 

 

「…ああ、そうだ。行けるか?分かった。ならば本日閉館後に向かわせてもらう。ふぅ、大丈夫です。この後参りましょう」

 

「本当かい?そりゃ助かるよ」

 

「いえ、先輩からお願いされる事なんて滅多にありませんしこのくらいなら何ともありませんよ。しかしまた話題とは言え興味がお有りで?…それとも()()()()の関係ですか?」

 

「ま、そうだね。()()()案件だ。流石にただ見たいからってお願いはしないさ。あんまり人が多い中仏像の前で急に居なくなったりは出来ないだろう?」

 

「い、居なくなる?そんな事が起こりうるのですか?」

 

「可能性としてさ。俺のペルソナは見せたことあったっけ?まぁ、ソレと縁深くてね、ちょっと悪魔としてのアスラおうにお目通りしないといけなくなったのさ」

 

「なるほど。と、なると陳列されている仏像はどれも悪魔を宿しているのでしょうか?」

 

「そうだなぁ、ベースが同じ仏は神を象った像なら大体宿しているというか分霊が顔を出せるんだよ。と、言っても悪魔がいる事、宿してる事を認知出来る人が居ないと実際に出ては来れないさ。その辺は神秘が薄れたからこそだろう。じゃなければもっと悪魔の被害があったかもしれないな」

 

「そうでしたか。それは現状に感謝した方が良さそうですね。影時間でさえいっぱいいっぱいですのに…」

 

「うーん、因縁ない様なら無理して解決に向かわないといけないとは思わないんだけどねぇ。異界による被害を見つけるのは大変だよ?」

 

「しかし、私は桐条として、ペルソナという力を持つ者としての責任を果たす必要があるのでは…」

 

「俺が言いたいのは自分の置かれてる環境や状況なんてモノで自分の命を張る事なんて無いって事さ」

 

「…では何故先輩はそこまでなさるので?」

 

俺の行動原理かぁ。まぁ一番は自分の為だろうか。なんせこの世界、いつ何処で世界が危なくなる事になり得るか分からない恐ろしさが有るからなぁ。それを思うとただ他人に任せるだけってのはおっかないし性に合わない。…なにより認知世界、こんな面白い所があるなら見逃せない、身の危険はあれどもな。浮かれてるのかな?

 

「先輩?」

 

「ああ、ごめんごめん。いざ行動原理を聞かれたからねぇ、言葉にしようと思うとつい考えさせられたのさ」

 

「ほう、では、お聞かせいただきたいですね」

 

「一言で言えば自分の為、だねぇやっぱり」

 

「自分の為?」

 

「ああ。自分の為。自分の将来、命、興味、とにかくそう言った欲求だったりを満たす所が認知世界なのかな」

 

「そ、そんなつもりで‼︎」

 

「おい、桐条落ち着けよ。この人のコトだぜ?言ってないだけでお節介も入ってるだろうよ」

 

「あ、ああすまない。マスター、大きな声を出して申し訳ありません」

 

「ったく、どうせコイツの事だ、デリカシーのない事お嬢ちゃんに言ったんじゃねぇのか?ココで働いてるってのにソッチの方だけは育たねぇんだよなぁ」

 

「いえ、恥ずかしながらカッとなってしまった私が」

 

「桐条よぉ、俺たちも元は自分の為だぜ?お前だって果たすべき責任って思ってるかも知れねぇけど、結局の所()()が解決したいんだろ?そりゃあ行動の途中で救われる人間も居るだろうけど助けられた連中からすりゃどうだっていい事じゃねぇの?」

 

「⁉︎」

 

「真次君も言う様になったじゃない。ま、個人的な話だけど人の為とか世界の為とか言ってる連中が信用ならなくて仕方ないから自分に正直な答えを考えたら自分の為ってなっただけさ」

 

「政治家なんて清廉潔白アピールしてる奴ほど後ろ暗いってのは相場が決まってる。都合の悪いコトを揉み消してりゃ潔白にもなるだろうさ」

 

 

吐き捨てる様に言うマスター。すでに獅童絡みで何か?いや、元々公務に近い人だったらしいからソッチで嫌な思いをした可能性もあるか。

 

「違いないっすね。あの()()()()()だって外ヅラだけは完璧だしな」

 

「モチベーションの保ち方に繋がるし美鶴ちゃん達に誤魔化したく無かったから答えたんだよ。君は君で答えを出せば良い。ま、真次君の言う通り動機なんて他人には関係ないのさ。それでいて結果を出してくれるならそれは()()でも問題ないだろう?中には手に負えない様なのも居るけどアイツらは基本的に享楽的だしな」

 

「なるほど…、良い話を聞きました。なぁ、荒垣。私は私の意識を押し付けてしまっていたのだろうか」

 

「まぁ、そんな時期もあったんじゃねぇか?それこそセンパイに会うまでは仲間っつー程の間じゃ無かった気もする。それは俺たちの主義が合わなかったからなんじゃねーか?」

 

「…ふふ、荒垣にそんな事を言われるとはな。これ以上は私の心の問題か。思いがけず良い話が出来ました。私は学園に戻ります、迎えの手配は済ませておりますのでそちらで上野へ向かって下さい」

 

「美鶴ちゃんの相談ってのは?」

 

「既に乗っていただけましたよ。ありがとうございました、マスターもごちそうさま」

 

「あいよ」

 

「そうか、手配ありがとう。…うん、ちょっとはスッキリした顔になったんじゃない?なぁ真次君」

 

「違いないッスね。マスター、美味かったッス。まだまだ盗ませてもらいますよ」

 

「まだまだお前さんに盗まれる程浅くねぇぞ?また来な」

 

 

 

2人は出て行った。いきなり巻き込まれた人間とある程度内情を知ってる人間とは温度差が出るって話だわなぁ。それを押し付けても上手く行くはずも無い。…ま、それでも周りをピンチに巻き込む様なら出張ってやるさ。

 

 

「いい子じゃないの。狙ってんのか?」

 

…マスターは相変わらずだなぁ。

 

「いい子なのは認めますよ」

 

マスターのニヤニヤは美鶴ちゃんが手配した迎えが来るまで続きそうだ。



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俺だけボスクラスが強すぎる

ちょっとサボっていたので初投稿です


「ありがとうございました」

 

「いえ、お嬢様から命じられた事ですから。美術館はこれから1時間貴方様のみとなっております。ごゆるりと」

 

「何から何までありがとうございます」

 

 

美鶴ちゃんが手配してくれた車で上野まで送ってくれた。まさか俺以外誰もいない様にしてくれるとは。すげーな桐条グループって。とりあえず仲魔を呼んでおこう。ここはウズメとピクシーだけでいいか。

 

 

 

「すごーい、きゃはは!」

 

「おいおいあんまりはしゃぎ過ぎないでくれよ?」

 

「ほら、落ち着きなさい」

 

「えへへ、ごめんなさーい」

 

「さて、阿修羅像に向かうぞ?」

 

 

さて鬼が出るか蛇が出るか。…出るのは阿修羅か。

 

 

「これか。うーん、たしかに凄いな。表情がなんとも言えないじゃないか」

 

「アスラおうがモデルだなんて思えないわね…、ニンゲン風に言うならイケメンにしすぎじゃ無いかしら?」

 

「ウズメン言うわね。…でもたしかに。もっとこわーいイメージだったのだけど、コレから出てこれるのかしら?」

 

「…来た‼︎」

 

目の前の像から発せられるマガツヒと広がる異界化。間違いなく目の前にアスラおうが顕現する。

 

「言わせておけば随分じゃのう…。ワレのミタマを宿しモノよ、よう参った」

 

「…やっぱりアスラおうの分霊だったのか?」

 

「左様。ヌシはワレの憑代の様なモノよ」

 

「つまり俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…んだな?」

 

「ペルソナか…。ヌシの為よ、未だ早い。業腹じゃが彼奴らは強い、強すぎる」

 

「彼奴()?やはり思っていた通り3体なのか」

 

「ワレから言えるのはそこまでよ。ヌシの身体がもそっと育つまではワレのミタマを使うが良い。ワレ程とは言えぬが使いこなせればそこいらの凡百なんぞ相手にはならん」

 

「…その為には貴方に認めてもらう必要がありそうだな」

 

「左様。とはいえ、悪魔の減った現世にてこうして顕現出来るのもヌシのおかげよ。しかし、ワレを満足させる闘争が足らんのだ。ヌシは満足させてくれるかの?」

 

「…力を貸してくれていたお礼くらいしないと行けないな。全力で相手させてもらう」

 

「フフ、想定の内か。安心せい、ワレとの闘争は異界で行う。周りに被害は出ん」

 

「それじゃあ心置きなくやらせてもらう‼︎来い、ヨシツネ‼︎ジャックフロスト‼︎」

 

「アシュラ様とやれるたぁ懐かしいじゃねぇの‼︎」

 

「何処ぞの次元でやり合うたかの?カカ、良き仲魔がおるようじゃ。ワレに力を見せてみよ‼︎」

 

 

アスラおうが顕現するとともに空間の歪みを感じた。さすがは天魔アスラおう、あっという間に作り上げてしまった。この異界なら現実世界への影響も無い、存分に力を見せてあげようじゃないか。どうしても格上相手な分召喚も全力だ。ヨシツネは何処かの次元でアスラおうとやり合ったみたいだな。その経験も頼りにさせてもらおう。

 

 

「さぁて、リョウの字どうする?奴さん強えぞ?」

 

「そりゃそうだろう。セオリーなら俺とヨシツネで翻弄すべきなんだろうが…」

 

「望みは薄そうね…、ほら、あのお顔はよく見えそうだもん」

 

「だろうな。けどやらないわけにはいかないな。よし、俺とヨシツネは左右対角、ウズメはサポートを。ピクシーとフロストは魔法で攻撃を続けてくれ‼︎」

 

 

格上相手ばっかりしてる気がするな。ま、エリザベスのおかげでこう言う相手に対する定石は大方固まっている。ピクシーのラクカジャとウズメのタルカジャと三属性の魔法が有ればある程度の組み立ては出来る。さて、弱点は突けるか?

 

 

「ジオンガ‼︎むー、リョウスケちゃん‼︎雷効果薄い‼︎」

 

「ちっ、じゃあピクシーは回復をメインに‼︎」

 

「ブフーラ‼︎オイラの魔法は効いたっぽいホー‼︎」

 

「よし、魔法はフロストがメインで組み立てるぞ」

 

「この程度効いた内に入らんぞ?大炎上‼︎」

 

「マズッ⁉︎距離を取れ‼︎」

 

 

チャージが長かったおかげだな…。とはいえ、なんとか直撃を避けられはしたが1発で仕切り直しさせられた。

 

 

「おっと、俺っちを忘れなさんな。牙折り!」

 

アスラおうの攻撃範囲から逃れていたヨシツネが懐に飛び込んでいる。普通なら不意打ちが綺麗に決まったところだろう。しかし、相手はアスラおう、その三面六臂は伊達じゃ無い…、ヨシツネの剣戟を独鈷杵で受け止めてしまった。

 

「俺のも食らってもらおう‼︎葛葉流刀術、煉獄撃‼︎」

 

 

()()()()受けた。流石にこれで注意もそれたか?

 

「私も攻撃できないわけじゃ無いのよ。ザンマ‼︎」

 

俺たち4人がかりでなんとか一つ魔法を直撃させただけか…、こりゃあ大変だ。

 

 

「ヌゥ、思いの外やる様だの。ヌシは仲魔を使うのが殊更上手い。…ワレに方針を聞かせる事すら誘導か」

 

「まぁね。こうして会話できる相手の前で作戦の披露なんて口じゃもったいないでしょうに」

 

「中々面白きサマナーよ。フム、日の本はおろか全世界においてすらサマナーなぞとうに消え去りワレ等悪魔もなんの干渉も出来んと思っておったが…、やるではないか」

 

そう言ったアスラおうにダメージは見られない。どうやら物理攻撃も有効じゃないらしい。こりゃあ参ったな、なんとか打開策を考えなきゃならん。まさかここまで物理に強いとは思わなかったぞ…。



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何とか猫を噛みたい鼠達

寒い日が続いているので初投稿です


「さぁて、リョウの字どーするよ?」

 

ヨシツネも決定打を打てない事が気になったようだ。物理メインなのは俺も同じ。加えて視界が多くて手数も文字通り多いだけじゃなく技術がすごい…。俺たちは有効打は与えられないが向こうは一撃で十分。絶望的だな。

 

「リョウスケちゃんもヨッシーも厳しそうね…」

 

「ヌシらの連携は良かった。が、それまでよの。ワレを驚かすだけで仕舞いか?」

 

「はぁぁ、仕方ない…なんて言ってられないな。こっからはメメントスで拾った不可思議アイテムに持ち込んだ不思議グッズもガンガン使う。出し惜しみなんてしてる場合じゃない。ヨシツネ…いけるか?」

 

「って事は俺っちが1人でアシュラ様と斬り結ぶのかよ?…カハッ、燃えてくるじゃない。俺はヨシツネ…いや、源九郎判官義経よ!俺っち、逆境にはつえーぞ?」

 

「カカッ、良き気迫よ。ヨシツネ、いや、義経と申したの。その魂まさしく英雄よ。ワレを満足させてくれよ?」

 

ヨシツネ…気合が漲ってるな。っておいおい、すげえ勢いで俺からマガツヒ持ってってやがる。とはいえ、それで保たせてくれるなら悪くはない。

 

「ヨッシーやるじゃん!アタシもやっちゃうわよー‼︎」

 

「ピクシー、何かあるのか?」

 

「アタシだってエリちゃんと遊んでただけじゃないのよ!コンセントレーション‼︎」

 

「いつの間に…‼︎」

 

コンセントレーション、文字通り集中する事でこれから自身が放つ魔法の威力を2倍にする魔法。エリザベスの時にはメギドラも打ってたな。十分な威力の万能魔法にはなるな。だが…まだ、まだ崩せてない。

 

「リョウスケ、オイラも何かやりたいホー」

 

「フロスト、ブフーラと防炎の壁以外何かできるか?」

 

「…オイラ、刀に氷を纏わせられるホー‼︎」

 

「よし、ヨシツネの刀にやってくれ。氷結魔法は多少効果が見えたからな」

 

「助かるぜ‼︎はっはっ、もっと速く疾く‼︎これならどうだい、アシュラの旦那、雹魔八艘跳び‼︎」

 

「効いてるホー‼︎さっすがオイラだホー!…ヨシツネも褒めてあげるホー」

 

「手応えは今までより有ったが…」

 

「面白き、げに面白き闘争よ。生半可なサマナーではワレに傷つける事すら能わぬと言うに。この期に及んで新たな業まで見せてもろうた。…なればこそ、ワレの馳走をたんと食うてもらおう」

 

「かぁ…マジかよ。自信あったんだぜ?」

 

ヨシツネの渾身の八艘跳びとフロストの氷結付与による合体攻撃。氷結付与によってアスラおうも斬撃を受け止めた先から氷結魔法を食らった様なもの。ぶっつけとはいえ中々に効果は見込める()()だったんだがな。

 

「俺から見ても完璧だったと思う。…計算違いはアスラおうの強さだな」

 

「違いねぇ」

 

俺はヨシツネにフロントを任せた後仲魔達への指示やアスラおうに嫌がらせの様な銃撃やアイテムの使用を続けていた。結局は嫌がらせにしかならなかったな。そりゃそうだ、俺たちの攻撃なんて体力で受けたとしても然程影響は無いくらいにかけ離れた強さなんだから。

 

「ふむ、この程度で死んでくれるなよ?冥界波‼︎」

 

アスラおうがモーションに入ったと同時に凄まじい衝撃派が俺たちを襲った。地面を介した衝撃の伝播は浮いていない俺やフロスト、アスラおうの近くにいたヨシツネに重大なダメージを与える。

 

「ぐっ、マジかよ、全然見えなかったぞ…」

 

「大丈夫?メディラマ‼︎」

 

幸い浮いていたアメノウズメやピクシーは大丈夫だった様で即座に回復してくれた。しかし、フロストは比較的打たれ弱かったのかダウンしてしまった。

 

「オイラ悔しいけどリタイアホー。管の中から応援するホー」

 

「ほう、思いの外残ったか。どれ、もう1発…」

 

「ピクシー‼︎メギドラだ‼︎」

 

「うん、メギドラ‼︎」

 

「ヌゥ、ぬかったか」

 

「ふぅ、何とか止められたわね‼︎」

 

とはいえ何とか向こうの攻撃を止める為だけにも必要なのか。…正直ここまで強さに差があるとは思わなかった。ゴリゴリの闘神、天魔アスラおうはここまで強いのか。こっちはボロボロ、アイテムも大分放出した。対する向こうは身体があったまって来たってところか。

 

「フム、ヌシはいささか悪魔との戦闘経験が少ないのだろうな。それは仕方あるまい。少なくともワレやワレに匹敵する悪魔が今の世において現界できる事なぞほぼあるまい。それこそヌシが出入りしておる異界を食い物にでもすれば別だがの。ワレも

この世に干渉する時間には限りがある。ヌシは先人も居らぬなりにようやっておるのだろう、もう少し闘争が楽しめると思っておったがの」

 

 

アスラおうはすこし呆れられた様に告げた。その一言は俺の逆鱗に触れた。それはもう完全に触れた。絶対に一泡吹かせてやる。

 

 

「ヨシツネ、チャージ、出来るか?」

 

「チャージィ?どんな感じだよ」

 

「要は気合を溜めてからぶちかましてくれって事。ピクシーも集中した後は魔法が強くなってただろう?」

 

「なるほどねぇ…俺っちもアシュラ様とはいえコケにされっぱなしは我慢ならねぇのよ。何とかやってみようかね」

 

「ウズメ、残った魔力は俺とヨシツネが飛び込んだ時に衝撃魔法でありったけを頼む」

 

「任せなさい、日本神の底力見せてあげる。インド神話がナンボのモノよ‼︎」

 

「ピクシーはもう1発コンセントレーションからのメギドラだ。…ほらとっておきのチャクラドロップ。これで行けるか?」

 

「うん、ちょうど行けそう。…回復なんて後回しになっちゃうよ?」

 

「いいさ、出し切る。ここで認めてもらえない方が俺が納得できない」

 

「ふふん、付き合ってあげる」

 

 

良い仲魔達だ。ま、志としては低いかもしれないが俺達がそう簡単に諦めちゃだめだ。少なくとも一矢、なんとか一泡吹かせようじゃない。

 

 



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土壇場で輝くテンプレはいいモノだ

寒さが応えるので初投稿です


かつてないほどの苦戦を強いられている。エリザベスも強かったがどこか手加減を感じた。まさかエリザベスの優しさをこんな時に身をもって感じるとはな。

 

 

現状有効打もフロストによる付与を施したヨシツネの攻撃とウズメの魔法くらいか。それでもダメージと言える程でもない。ここに一石を投じるならば…俺に宿るアスラおうを使うしかないか。それでも本物のアスラおうを驚かせる位がせいぜいだろう。今こうして考える余裕がある程に膠着しているのも向こうさんが勝負を決めるつもりが無いからに過ぎない。

 

 

「カーッ‼︎なるほど、こんな感じか。何とか『チャージ』の感覚分かった。けど、これで八艘跳びかましたらもう俺っちもカンバンだぜ?」

 

「カンバン?ああ、ヨッシーも振り絞ってるもんね。アタシも回復してもらって何とかだもんね…」

 

「この後の事なんて考える余裕すら無い…ここまでこんな追い込まれた事が無かったのは良かったのかね?」

 

「どうかしら、ニンゲンの世界からすれば危機がなくって良かったんじゃ無い?」

 

「そうかもな。…悪いな、お膳立て頼む」

 

「かっ、任せろ。俺っちは負け戦ほど燃えるのよ」

 

「サマナーだもん、仲魔に任せなさい」

 

「ふふ、そろそろ私じゃ力不足かもしれないけれど、やれるところまで付き合うわよ」

 

「よかろう、ヌシらの覚悟しかと見届けよう。ワレを楽しませてみよ‼︎」

 

 

全くいい仲魔達だよ。使役関係とはいえ信頼を築けたのが良かったのだろう。そんな仲魔達がアスラおうに立ち向かって俺に必要な時間を稼いでくれている。

 

「俺の中で聞いてるんだろう、アスラおう。依代が不甲斐ない所為で目の前のアスラおうよりも力の無い分霊なのは申し訳なく思ってる。けど、窮鼠猫を噛むって言うだろ?少しでも良い、力を貸してくれ。そして、あのツエー奴をビックリさせてやろうじゃないのさ」

 

『…フン、ワレはワケミタマとしては極小も良いところよ。そのワレとヌシで像に宿っておったワケミタマに一泡なんぞ吹かせられるものか』

 

「おいおい、目の前のアスラおうと違って随分と卑屈じゃないか。俺の身体借りてたんなら少しくらい賃料として頼むぜ?」

 

『何を言うか。偶に使うておったではないか』

 

「そりゃお前さんを俺と誤認していたこれまでと俺とお前が協力して攻撃するんじゃ全然違うだろ?フロストとヨシツネの合体技見てたろ?どっちかだけじゃあそこまでアスラおうに肉薄なんて出来やしなかった。戦力として2人合わせたよりも効果的だったのは協力が上手くいったからさ」

 

『…ヌシは何をするつもりだ』

 

「とりあえずあんたが本当の意味で俺と協力、正しく憑依した『アスラおう』の力を把握しないと何とも言えない」

 

『…ヌシらは馬鹿げておる。そんな薄氷の可能性とすら言えない事象に期待をしてああして身を削っておるのか』

 

「俺から言うのもなんだが、信じてもらってるのさ。頼られてる。もちろん俺もアンタの事を信じてるぜ?」

 

『……フンッ、ワレの事はヴィローチャナと呼べ。今ヌシが相対しておるワレこそが真の王なる姿よ。このワレ程度で王を語るには他のアスラ王に申し訳がたたぬ』

 

「‼︎頼むぜヴィローチャナ。…有効打、ありそうか?」

 

まさか名を教えてくれるとは。なんだかんだで3年以上も一緒だった事に違いはなかったから気に入ってくれたのだろうか?まぁ、今は好感触を得られた事を喜ぼう。

 

 

『強さと言うならワレの時点でほぼ完成しておる。真なるワレに関しては弱点なぞ有ろうはずが無い。せいぜいこの場を作り上げ、顕現しておる時間くらいだろうて。…しかし、ヌシは時間切れまで指を咥えて耐えるだけのツマラン男では無いのだろう?』

 

「もちろん、今こうして時間を稼いでもらってるのも準備の為さ。…ヴィローチャナが協力してくれるなら可能性も高まる」

 

『…ヌシがワレを喚んで偶に使っておった万物屠り。真なるワレに有効打を入れたいなら万能属性しかあるまいよ。となるとワレが使えたのは幸いよの』

 

「やっぱりソレだよな。でも…()()の技じゃないよな?」

 

『そうよ、先の合体技を見て思うところがある。ワレもヌシと合わせて見たい』

 

「…憑依の度合いを深めるってコトか?」

 

『そうなる。今はほぼワレはヌシの傀儡よ。しかも傀儡が動く事に従順で無いときた。そこをワレがヌシの動きを手助けする様に力を貸す。さらにヌシの身体を使って万物屠りを放てばかつてのモノとは比べ物にならんだろうて』

 

「…なるほど、それなら多少は芽があるか。とはいえ、リスクはありそうだな」

 

『いくらヌシがサマナーとしてレベルが上がっておるとはいえまだまだワレほどの力や耐久を持っておる訳では無いからの。多少はガタが来るかもしれん』

 

「ま、だろうな。…五体満足で終わるよな?」

 

『それは大丈夫だろう。ま、ヘタをすると真なるワレに与えられたダメージより重いかもしれんが』

 

「マジか…、はぁやってやるしか無いか。アスラおうが言う俺の中に眠るペルソナを使う事考えたら尻込みしてる場合じゃないか。…よし、やってやるよ。そろそろ駆けつけないと時間稼いでくれた意味もなくなる」

 

『ふん、そう思うのならさっさと真なるワレを使いこなせるまでに成長するのだ』

 

「まったく、退屈しなさそうな相棒だよ」

 

 

俺たちがアスラおうの元へと向かうとタイミングを見計らっていたのだろう、アスラおうは俺の仲魔達をまとめて吹き飛ばして来た。

 

「すまねぇ、向こうの温情で何とか場が保ってただけだった。俺っちもまだまだ強くならねぇといけねぇな」

 

「ゴメンなさい、アタシももうダメ…」

 

「私も気合い入れてたけどホンモノの闘神には敵わなかったわ…」

 

「もう少しだけそうして見ててくれ。少なくとも一泡吹かせる所まではな。フロスト、お前も出て来い」

 

「ヒーホー、オイラも応援するホー」

 

「ほう、まだ楽しませてくれるのか?ヌシの仲魔達は惜しかったが、ヌシはどうであろう?」

 

「はっ、アスラおう、アンタも時間いっぱいだろう?俺の…俺たちのありったけを見せてやるよ。なぁ、ヴィローチャナ」

 

「ほう、ヌシの中におるワレは名を明かしたか。随分と気に入ったようではないか。見せてみよ!ワレ、アスラの王に‼︎」

 

ふふん、どうやら真っ正面から受け止めてくれるらしい。お言葉に甘えて全力でぶちかます。なるほど、この感覚が憑依を深くするって事か。すごい全能感だな。だが、身体のレベルを上げたからこそ目の前のアスラおうがとんでもないって余計に思い知らされた。

 

『ワレの動きをなぞれば良い』

 

身体の動かし方がなんとなく分かる。このまま言われた通りだけでなく、そうすればいいと直感を信じてマガツヒを乗せられるだけ乗せてやった。

 

『ワレの前に万物一切の命無し』

 

「アスラ憑依術万物屠り‼︎」

 

「ヌゥ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

正真正銘のありったけ。身体も酷使し、さらにはマガツヒまで絞り切った。仲間達の声が遠くに聞こえる。視界もハッキリとしない…。そんな状態でもはっきりと認識出来たモノが目の前を舞っている。()()()だ。

 

「ふふ、私達姉妹以外に負ける事は許しませんよ?妹の雪辱を晴らす機会が無くなってしまうのは困りますから。今回は特に良きココロを見せてくださったのでサービスです。それではまた()()でお待ちしております」

 

 

 

 

 

「…ちゃん!」

 

「…の字‼︎」

 

『呼ばれておるぞ』

 

どうやら振り絞り過ぎたらしいがマーガレットが助けてくれたらしい。こりゃあ頭が上がらない。身体の方もひどい筋肉痛以外特に問題無いな。今すぐ動けなくも無い。

 

「聞こえてるよ。心配かけたな」

 

目を開けると異界は閉じていた。なんだろう、目の前の阿修羅像が心なしか満足気な表情に見えるが…気のせいだろうか?

 

「さて、どうなったんだ?」

 

気を失ってたみたいだし、現状の把握をしないといけない。

 

 

 

 

 

 

 




ボツセリフ
俺の身体をお前にに貸すぞ!…女の名前に間違えられて軍人殴りそう

初代メガテンのカオスヒーローっぽいですが合体まではしてませんので。そろそろ人間辞めそうな肉体レベルにはなりつつありますが


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身体を張った甲斐もあった

ちょっとサボりすぎたので初投稿です


危うい状況に陥りかけたものの何とかなった。リザルトはこっちの完敗なんだが勝利目的がアスラおうに認めてもらう事だったのでそれは達したからだ。しかし、こんな戦い方じゃまだまだ行けない。していい無茶としてはいけない無茶があるからさっきのはダメな無茶だろう。アスラおうはたしかに強かった同じような悪魔が出てきた時、それも俺を殺す気で来るような相手に一々俺の命を振り絞ってたらそれこそキリがない。新しい仲魔を考える必要があるのかもしれないな。

 

 

「俺はどのくらい気を失ってた?」

 

「リョウスケちゃん!心配したんだから…」

 

「気ぃ失ってたのはほんの3分ほどだった。…あの()は嬢ちゃん達かい?」

 

「どうやら俺のことを観察してたらしい。同じく異界での事だから干渉しやすかったんじゃないか?」

 

「…お礼言わなきゃ行けないわね」

 

「そうだな。菓子折りもって行かなきゃな」

 

仲魔との会話が出来るのも生きていれたからこそ。これから先命をベットする様な戦いに出会したくないな。それ為にももっと強くなる必要があるか。目の前にある阿修羅像へと目を向ける。

 

 

「フフ、ヌシの最後の輝きは良かった。中々のモノであったぞ」

 

「お顔が晴れやかになってますよ。…顔変わったら俺怒られますから」

 

「ヌ?いかんいかん、ヒトが求めていたのは憂いの顔だったか。ヌシが去ってから直しておくとしよう」

 

「…ネガイの詰まった仏像のカタチ変わる程満足してもらえたら本望ですよ」

 

「フフ、まぁ、合格としておこうかの。ヌシの中におるワレと上手くやっていく事が出来ればヌシの強さに繋がるであろうよ。それに強いチカラに慣れておけば振り回される事も無くなろうて」

 

「ありがとうございました」

 

「フム、観測者に治してもうた様では有るがそれも一時的なもの。身体を労わる必要があろうて」

 

『まだワレを十全に扱うことは能わぬという事よ』

 

「…そうか、帰ってゆっくり養生するさ。無理を押してメメントスに行かなきゃならない程切羽詰まってるわけでもないしな」

 

「…メメントスか。主人のおらぬ大異界よ。もしも主人が現れるならばゆめゆめ気をつける事よ。ではまた強くなったら来ると良い若きサマナーよ。ワレを楽しませる事が出来ればそれなりの褒美を用意しておいてやろう」

 

「そりゃ身が入る。しばらくは先になりそうだけどな」

 

 

そうして俺たちは阿修羅像の前を辞した。戦った時間は長かった気がするが現実じゃあ30分ほど。少し早めに切り上げよう、仲魔達も管に戻しておく。そして美鶴ちゃんが手配した人にお願いして事務所のある雑居ビルの近くまで送ってもらった。

 

 

帰ってきた俺はベットに飛び込むとそのままいつの間にか眠っていた様だ。

 

 

 

 

5月1日

 

アスラおうと戦って1週間ほど、ようやく身体のダメージが抜けた様だ。…まぁダメージの大半が反動ってことを考えるとなんとも情けない話だけどな。とりあえずしばらくは身体の確認でもしますかね。感覚が変わった…いや、器が広がった?とにかく試してみたいが、逸る前にコッチの世界でも出来る確認してからにしよう。

 

 

 

5月8日

 

明日は満月。美鶴ちゃん達からのヘルプも無い。とはいえ慣らし運転をしておこう。ようやっと馴染んできた所だ、メメントスに行ってみようかな。…ウズメが戦力不足な事を気にし出した様だ。相手が悪いとはいえ本来サポートを期待していた訳だったしなぁ。始まり悪魔の石化とか毒攻撃への対策として仲魔を探していた所偶々京都でヒナコさんの奉納舞のおかげで契約出来たんだよな。とはいえ仲魔の強さに直結するのがメンタル面。そこが揺らいでいるウズメはこれ以上の強敵とは難しいのかもしれん。日本神にはもっと戦闘力に振り切ったのも居ればサポートだって最上位クラスも居る。神使だってそこらの悪魔を蹴散らすレベルだったりするからな。…業魔殿も邪教の館もなければ悪魔合体なんて出来やしないからなぁ。そこの所は探さないと行けないだろう。

 

 

 

 

メメントスでの活動は何の問題も無く進んだ。むしろスムーズになった位だ。一度俺の身体を使って無理をしたおかげだろう。あとは単純にヴィローチャナの力を借り受けられるキャパシティが増えたからだろう。そろそろ本格的に人間を辞めそうな身体能力をしてきた気がする。力の巧い使い方を古牧先生に教わっておいて良かった。段階を踏んでる分日常で制御不能って事は無さそうだ。

 

 

 

満月…か。いわゆるアルカナシャドウが現れる頃だろう。とりあえずは明彦君も動けるし真次君も居る。だったら美鶴ちゃんだって満足に動けるだろう。…とはいえなんとも言えない不安感が拭えない。一応影時間でも動けるようにしておこう。俺だって無駄な被害が出るのを座視できる人間じゃ無い。

 

 

 

5月9日

 

今日は月が大きい、仲魔達もどこかソワソワしている。影時間の前にできる準備はしっかりしておこう。刀の確認と薬の補充は十分。防具に使ってるマントと葛葉の衣装が流石に少し傷んで来ているか。コレも解れを直して使ってるけどグレードアップ出来るのかね?俺のスタイルから言って重い防具は向いてないからなぁ。ちょっとスゴい素材なんかはフミさんに心当たりが無いか聞いておかないとな。

 

 

 

 

…コトが起きるって知ってる分俺が一番緊張してるかもしれない。不足の事態が起きる事を想定してタルタロスや街のシャドウでも違和感のある所は俺が対処しよう。そっちの方が3年生達もバックアップとして動きやすいだろ。



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他人がやってるゲームを見てる気分

寒い日が続くので初投稿です


影時間でシャドウ狩りを続けていた。()()()そこそこの反応がある駅付近には近付かずにシャドウが溜まっている所を蹴散らす。まだ経験が浅いながらにシャドウが集まる様子に違和感を覚える。やはり活動部のメンバーを散らそうとした()()の小細工だろうか?…あんまり気張りすぎて幾月のマークが厳しくなるのはまだ早い、塩梅が難しいな。仲魔は…ヨシツネにしておこう。魔法は目立つからな、物理メインの方が良いだろう。

 

 

 

街中のシャドウをヨシツネと蹴散らしていると見知った気配がした。…真次君かな?

 

 

「うぉ⁉︎なんだよ、センパイだったんスか。シャドウの様子がおかしいって桐条が言うもんで飛んできたんスよ」

 

「どうにもギリギリ君たち先輩組の戦力を分散すれば対処出来る位のシャドウの集団が用意されてたみたいでね。()()()思惑に乗るなんてツマラナイだろう?根底を覆そうとしたんだが…」

 

「センパイの反応に俺が派遣されちまった訳ですか」

 

「やり過ぎたらしい」

 

「…そりゃそうっすよ。なんスかそっちのサムライ、マジ勝てる気しねぇっス」

 

「ああ、初めてか。コッチはヨシツネ。かの九郎判官義経公が英雄、英霊として祀られた結果悪魔として象られたのさ」

 

「超メジャーじゃないっすか…」

 

「流石は英雄、強いぞ?今度揉んでもらうといい」

 

「…え、えぇ?マジで言ってます?」

 

「影時間で俺と模擬戦するなら召喚するだろうからね。先に体験しておけるならしておいた方がいい」

 

そう告げると真次君は悟り切った目をして遠くを見つめ始めた。心が鍛えられているようで何より、そう俺は目を逸らしながら確信した。

 

「ところで、美鶴ちゃん達は?」

 

「桐条は全体のサポートっス。アイツの『ペンテシレイア』で無理くり索敵やら解析やらやってますし、良くやってるんですけどね。専門じゃないんで仕方ないッスよ」

 

「なるほど。まぁ情報収集に秀でたペルソナなら知ってる反応とか強い反応なら分かるか。明彦君は?」

 

「アキは桐条の直衛ッス。ベースにチョッカイかけてくるシャドウがいたんで。っと連絡来ましたんですんません」

 

「ああ、取るといい。…俺のことは伏せといてね」

 

「ウッス。…ああ、こちら荒垣、異常解消。ああ。駅?時間かかるぞ、足ねぇしよ。ああ、なんだって⁉︎ちくしょう…分かった、向かう。アイツら…絞めてやる。アキは?…マジかよ、ああ、分かった」

 

 

どうやら美鶴ちゃん達の所でトラブルがあったらしい。アルカナシャドウが現れたかな?

 

 

「あー、ここは心配無さそうなんでついてきてもらっても良いっすか?新人どもが無茶しやがったみたいで…。俺とかアキが動けないうちにサブの新人どもが暴走列車に乗ってるらしいんスよ」

 

…結局新人3人だけで乗り込む事になったか。乗り越えなければならない試練…なのかね?まぁキタロー君は対峙しなければならない理由はあるからむしろ巻き込まれた岳羽さんとややこしくした伊織君って所か。

 

 

「構わないよ。…ま、まだ幾月と顔を合わせるつもりは無いからねぇ。ちょっと怪しいけど天狗の面でもつけておくけど気にしないで」

 

「そりゃあ無理があるんじゃ?…まぁいいや。たのんます」

 

「どうする?()()モノレールくらいなら飛び乗れるけれど…」

 

「マジかよ…。しゃーねぇ、俺だけでも乗っけてください。結城の奴はすげぇが岳羽も伊織も居て足並みが揃う訳ねぇんスよ」

 

「なるほどねぇ…。とりあえず線路へと向かおう。そうすればどっちへ向かえば良いか分かるだろう」

 

「そっスね」

 

 

俺たちはは近くの線路へと向かうとちょうど美鶴ちゃんから連絡があった。ちょうどモノレールは目の前を通り過ぎたところ。あの速度なら駅までもう6分も無い。それまでにアルカナシャドウを倒さないとモノレールは止まらない…そう細工でもされたんだろう。

 

 

「やっべぇ、行っちまいましたよ⁉︎」

 

「心配ない、あれくらいなら追いつく。ヨシツネ、悪いけどコイツ運んでやって」

 

「仕方ねぇな…、ほれ、しっかり気をもてよ?」

 

「は?え?」

 

状況を飲み込めていない真次君をそのままに俺とヨシツネはモノレールを追いかける。…ホントに人間辞めてきたかもしれないな俺。ま、ここは異界だからこそ自分の能力を信じれば出来るんだけど。

 

 

「…ここ数ヶ月で更にエグいっすね。フツーモノレールに追いつける訳無いっすよ?」

 

「はは、多少人間離れした自覚はあるけどここが異界だからこそ出来る無茶さ。現実世界じゃあこうはならんさ。それに暴走してるとは言えモノレールが出せる速度なんてしれてるからね」

 

「だからってここまで出来る気しねぇっすよ?」

 

「やってみればやれるかもよ?ま、そんな事はともかく先頭車両まで向かうよ?俺は上を走っていくから。それと、俺も見ておくから手助けはギリギリまで待ってよう。君は後方車両から邪魔するシャドウを食い止めておいてくれたらそれでいい」

 

「了解っスって、はええなぁ。ったく」

 

 

モノレールの屋根つたいに先頭まで向かう。ここは雑魚シャドウも居なくて快適だな。…ふーん、おあつらえむきに先頭車両はデカいんだな。多少歪みも出てるみたいだな。なるほど、異界での出来事とはいえコイツが事故ったら影響も出そうだ。

 

 

あと4分くらいで駅が見えて来る。残り1分まで倒せそうに無かったら俺が手を出そう。あの程度のアルカナシャドウ(プリーステス)ならたかが知れてるな。

 

 

俺は3人がプリーステスと戦っている様子を見ていた。伊織君とキタロー君のペルソナが放つ火炎魔法は取り巻きには効果がなく、取り巻きに効果的な氷結魔法は…お、あれがペルソナチェンジか。キタロー君がアプサラスに変えてブフを放つ事で取り巻きを薙ぎ払った。伊織君は自慢の魔法が効かなかった事でショックを受けてる?うーん、戦闘中にソレはいただけない。岳羽さんも指示待ちだなぁ、弱点が付けないなら回復するなり攻撃に回ればいいのに。せっかく弓を持ってるんだから。

 

 

うーん、経験不足だなぁ。あとはデカいプリーステスだけと思ったら再召喚されちゃったか。あーあー、時間無いからって伊織君焦ってプリーステスに突撃しちゃダメでしょう。ほら、待ってた様にプリンパだ。混乱させられたら手数も減る上にフォローもしないといけないぞ?…お、キタロー君が岳羽さんにパトラを使う様に指示したな。なるほどなぁ、こりゃキタロー君が戦闘中指示した方が良さそうだ。

 

 

さて…俺が手を出すまで後2分。どうする?



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どうしてイレギュラーは発生するんだろう

三日連続の初投稿です


おお!キタロー君がプリーステスに集中する事を決めたか。うん、それがいい。しかし、いやらしい事にプリーステスは取り巻きと違って氷結魔法を跳ね返すんだ。ま、プリーステスが氷結魔法を使って来るから想定は出来ていたみたいだな。それでもキタロー君は上手く『アプサラス』のブフを取り巻きに使って場を有利にしていく。岳羽さんには回復と攻撃を、伊織君は弱点を突かれ無い様警戒しながら攻撃を指示。良い判断出来てるじゃない。美鶴ちゃんも慣れないなりに助言してるようだし。

 

 

このままだったら介入しなくても大丈夫かな?そう思える程に戦いの流れを引き寄せていた。元にプリーステスの反応も弱々しく、制限時間で言えばまだ2分程余裕を残して倒せるだろう。こりゃ真次君すら要らないか?

 

 

プリーステスに最後の一撃をキタロー君が与えた。それと同時にモノレールは徐々にスピードを落としていき、事態は解決した…様に思えた。

 

 

「ちっ、いかに影時間が主人持ちの異界とはいえここまでデカいエサがあると悪魔も沸くか」

 

「後輩ちゃん達が倒したおっきいシャドウの残骸…残飯漁りかしらね?」

 

「だろうな。仕方ない、アレは流石に荷が重いだろう。それに、アイツらは俺の職分だ」

 

 

 

プリーステス、つまりアルカナシャドウは『デス』の破片。元々はキタロー君の中に眠る『デス』と融合しようと襲ってきたんだろう。キタロー君がペルソナ覚醒を果たした時に暴走した『タナトス』に食われたシャドウもアルカナシャドウ『マジシャン』だったらしい。そう考えるとシャドウを倒す事でも融合は進むのか。封印されたままだと事態は停滞する一方だからな。影時間の根本を解決するなら封印は解かなきゃならん。その分難易度も上がるだろうが、俺はこのまま大いなる封印なんて結末で終わらせるつもりは無い。

 

 

それはともかく目の前の事態だ。『デス』の破片の破片…現界するにも精一杯の悪魔からすればご馳走だろう。しかも目の前にはおあつらえむきに弱そうな肉体と強い精神を持ったペルソナ使いがいる。

 

 

「ウケケケケケケケ‼︎ニクニクニク‼︎ヨコセヨコセヨコセ⁉︎」

 

「な、なんだよコイツら…⁉︎お、おい、岳羽、コイツらシャドウじゃねーのか?」

 

「し、知らない‼︎こんな奴ら知らないわよ‼︎」

 

「……戦うしか無いか」

 

『どうした⁉︎何があった⁉︎』

 

「イレギュラーが発生した。イレギュラーシャドウは倒しましたが、正体不明のエネミー複数体が現れ敵対されそうだ」

 

『なんだと⁉︎くっ、モノレールはもう駅に着く、私とアキが合流するまで耐えてくれ‼︎』

 

「…了解」

 

おっと、出遅れちゃいけない、アイツらはレギオンか。怨霊の塊だからな、見てくれの醜悪さだけならシャドウっぽくもあるか。そんな事を思いながらレギオン達に向けて銃撃する。レギオンと言う悪魔の性質上複数体で現出してしまった様だが負ける気はしないな。

 

 

「イテエエエエエエ⁉︎」

 

「今度は何だよ⁉︎」

 

「み、味方?」

 

「……」

 

「ふふん、君たちはさっきまで大物とやってたろう?ここは俺に任せておきなさい。ピクシー、マハジオンガ‼︎ヨシツネは…臨機応変に」

 

「任せて‼︎えーい‼︎」

 

「俺っちには雑だなぁ⁉︎まぁ、これだけ狭けりゃ仕方ねえ。ピの字当てんなよ?」

 

「ヨッシーは効かないんだから気にしないで突っ込みなさい」

 

「ひでぇ奴だぜ。まぁ、若人達を取って食うのは俺っちの前で出来ると思わないこった」

 

「さあ、もう少し下がってもらおう。余波までは防げないし…俺も行くからな」

 

「うわぁ、何だよ、バケモンとバケモンが戦ってんのか⁉︎」

 

「…あの人、まさか?」

 

「あの人がエリザベスの言っていた?」

 

後ろの方から色々と聴こえて来る。バケモンとは失礼だな、まだそこまで人間辞めてない…ハズだぞ?流石に面をしてても声までは変えてないから分かっちゃうか?まぁ、顔さえ隠せたら良いんだけど。エリザベスの説明が一番気になる。

 

 

ま、雑念は捨てて目の前の悪魔だ。虎視眈々と現界のチャンスを伺っていただけあって中々強大な悪魔だな。幸いピクシーの電撃魔法が弱点だから有利な展開に持ち込める。似たような悪魔に物理に強いコロンゾンが居るが、レギオンにそんな耐性は無い為俺とヨシツネでも十分なダメージを与えられる。

 

 

「グエエエエ…シニタクナイィィィィ…。ニクニク、ニクヨコセー‼︎」

 

「ヒィ⁉︎コッチに来た‼︎」

 

俺たちに狩られていたレギオンの一匹が破れ被れだろう、伊織君の方へと飛びかかろうとしていた。

 

「ペルソナチェンジ『ピクシー』ジオ‼︎」

 

「ギャアアアア…」

 

 

するとキタロー君が足止めをしてくれた様だ。まぁ、そこにはウズメを伏せておいたんだが

 

「ウズメ、ハマで送ってやりな」

 

「ええ、浄化されなさい。ハマ‼︎」

 

「ギィイヤァァァァ…キエルキエルキエル…」

 

レギオンは外道だったり幽鬼だったり分類が安定しない事もあるが共通して破魔属性に弱い。仲魔でもハマを使えるアメノウズメを後輩ちゃん達の前に伏せておいた訳だ。キタロー君のおかげで飛び出した奴も余裕を持って祓う事ができたし、俺たちもレギオンを全て片付けられた。

 

「うお⁉︎い、いつの間に」

 

「びっくりさせた様で申し訳ないね。それより、ナイス判断。良い動きだったぞ」

 

「…気にしてない。それに、抑えも用意してたみたいだし」

 

「まぁ、コイツらは弱い所を見せたら飛びつくからな。戦力に余裕があるなら備えは無駄になった方がいいだろ?」

 

「ゆ、結城、よくフツーに喋れるな」

 

「…あ、あの、ひょっとして…」

 

「大丈夫かお前たち‼︎」

 

全くタイミングが良いのか悪いのか。全て片付けた所に美鶴ちゃんと明彦君が来た様だ。真次君は俺が居るからって合わせやがった。まぁ、良いけど。

 

 

 

 



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こんなキャラの濃いNPCが居てたまるか

バレンタインデーだったらしいのでムドオンチョコと共に初投稿です


アルカナシャドウを倒したと思ったら沸いて出てきた悪魔に襲われ、そこに天狗の面を着けた怪しい人物が明らかな人外を使役して倒して一息つけるタイミングで上官みたいな人が血相を変えて飛び込んで来たら普通テンパるよね。

 

「大丈夫でした。この人のお陰ですけど…」

 

 

キタロー君は全く動じないで応答してるけど…。

 

 

「結城、何があった?」

 

「モノレールを暴走させていたシャドウは倒したんだけど、その残骸を狙うかの様にバケモノが沸いて来て俺たちに襲い掛かろうかと言う時に…、そこの天狗さんが倒してくれたんですよ」

 

「てん…ぐ?」

 

ふむ、ここまで怪しい風体をしているのに目に入ってなかったのか。美鶴ちゃんの視野はまだまだ狭い様だ。

 

「…強いな。あの人といい勝負をするかもしれん」

 

…何故明彦君は気付かないのか。ピクシーとか見たことあるハズなんだけどな。

 

「あー、桐条、報告する前にモノレールで異常が出たから遅れちまったけどよ。街中でシャドウがザワついてたのはこの人がシャドウの群れを狩ってたからだったぜ。俺が向かった時ゃ静かなもんだったよ」

 

「…そういえば荒垣は何故後方車両から来たんだ?」

 

「この人にモノレールまで届けられたんだよ…アトラクションみてーだったぞ」

 

「…暴走したモノレールに届けられた?」

 

「ヒョイヒョイって屋根走ったと思ったら最後部に着いてたぜ」

 

「人間じゃねぇよ…」

 

伊織君は真っ青な顔で呟く。その声を真次君も聞き取ったのか後の事を想像したのか可哀想なモノを見る様な目をしている。

 

「どうして私たちとイレギュラーシャドウの戦いに割って入ってくれなかったんですか⁉︎」

 

苦戦していた事を思えば自分達より強い真次君が参戦してくれたらさぞ助かっただろう。とはいえあのくらいのシャドウは3人でも余裕を持って倒して欲しかったけどな。

 

「ゆかり、先輩は後ろから来る敵を止めてくれていたんだと思う。順平を追いかける時に倒したシャドウに挟み撃ちされたらもっと大変だった」

 

「…まぁな。一応ヤバそうならカチ込むつもりだったってのは嘘じゃねぇよ。俺も暴走モノレール乗ってんだしな」

 

「…そうでしたね」

 

「それに、そうなってたらコッチの人がバッサリやってたろうぜ…」

 

「…俺たちに倒させたかった?」

 

「ふむ、結城君と言ったか。良い。判断もそうだし、()()()()だけの人間と違って覚悟がある。…いや、使命感かな?」

 

「クソッ…、俺だって…」

 

あら、そこそこ危ない目にあったけどまだ現実味が無いのかな?まぁ、いきなり特別な力があるって言われて一月もしない内に同じスタートを切った奴にぶっちぎられたら腐りもするのは分かる。けど、探索も戦闘も遊びの延長じゃあ済まない。もう少しつついて色々吐き出させよう。

 

「…シャドウとの戦闘、異界の探索は遊びじゃない。見たところ新人(ニューピー)か」

 

「だから何だってんだよ‼︎」

 

「伊織‼︎元はと言えば3人で戦わなければならなくなったのはお前の突出が原因だろう‼︎」

 

「け、けど倒せたじゃねーっすか‼︎」

 

「結果で物を語るな!それだって結城と岳羽が駆け付けたおかげではないか!」

 

「なんでコイツばっかりなんだよ…。ゆかりっちは俺たちより早かったから分かりますけど…結城と俺と何が違うっていうんですか‼︎」

 

 

うーん、やっぱりニンゲン相手の挑発は良く効くなぁ。あ、真次君は苦い顔をして俺を見ているな。ちょうど2年前に似たような事をされた記憶を思い出した様だ。美鶴ちゃんとの言い合いはまだ続いている。

 

「大体、なんなんだお前‼︎そんな怪しい格好しやがって…」

 

「ちょ、ちょっと、順平、やめなって」

 

「いいや、言ってやらねぇと気が済まない。高みの見物してやがって、良いとこどりのつもりかよ‼︎」

 

「高みの見物という意味ならそうだろう。ま、君たちで間に合わないなら手を出していたさ。この程度のシャドウに勝てないようじゃあこれから先やっていけないだろうし」

 

「な、何言ってんだよ。またこんな奴出て来るって言うのかよ⁉︎」

 

「そりゃそうだろう?影時間にはこの街だけでなくもっと不可思議な場所があるじゃないか。これから先あの塔を探索するなら今の奴程度ゴロゴロしてるんじゃあないか?」

 

「う、嘘だろ⁉︎俺はスゲー力に目覚めたんじゃ無いのかよ!俺は選ばれたんじゃないのかよ⁉︎なぁ、もう影時間なんてそっとしておけば良いんじゃねーのかよ‼︎」

 

「それはダメだよ順平。影時間は解決しなきゃいけない」

 

「何でだよ‼︎結城、お前に何がわかるんだよ!」

 

「…何となくとしか言えないけれど、ここを放置することはマズイ気がするんだ」

 

キタロー君は何となく嫌な雰囲気という物を感じ取っている様だ。もう少し情報を出しておこう。

 

「…この学園付近で起きている無気力症候群、アレはここに迷い込んだ一般人がシャドウに襲われた結果だろう。そして、この影時間の範囲は日々広がっているんだ。そして迷い込む人間もこれから増えていくだろう」

 

「マジかよ…、それじゃあやるしかねぇのかよ⁉︎」

 

「やっぱり。こうなった元凶ってお兄さんは知ってるの?」

 

「…」

 

ゆかりちゃんが酷く憂鬱な顔をしている。責められている気分なんだろう。

 

「元凶か。まぁ、登ってくださいと言わんばかりのあの塔に手掛かりがあるんじゃないか?今日ここで大きなシャドウを倒した事で何か変化があるかも知れないよ?」

 

「…お兄さんは登らないの?」

 

「俺かい?俺はまた別の日に登るさ。満月って言うのはシャドウやさっきの悪魔が活発になるんでね、街中に沸いて無いか見て回らないといけない」

 

「忙しいんだね。…一緒に回ってくれるのかと思ったけれど」

 

「そうするには戦力差があり過ぎる。足並みを揃えるよりもバラバラの方が効率いいだろう?ま、タルタロスで出会う事が有れば回復位はしてあげよう。あと…どうしてもと言うなら力試しに挑んで来ると良い」

 

友好的なNPCみたいだな俺。まぁ、それくらいの立ち位置が丁度いい。力を示してくれるのならご褒美にヘンテコ便利アイテムとかあげようかな。

 

「…ふーん、いつでも良いの?」

 

「おい、勝手に決めんなよ!」

 

「ふふん、俺がいる時なら何時でもいいさ。そうだな、モチベーションの為にも報酬を出そうか。まずは…()()()()()()()()()()()にしよう」

 

「…自信あるんだね」

 

「そりゃね。俺もこの手の異界での活動はそこそこ長いのさ。俺の事は後から来た3人に聞くと良い。俺が言った難易度は()()()()()()()はずさ。さてと、影時間ももう少しか。一回りしてから抜けるからここいらで失礼するよ」

 

 

そう告げ俺はこの場を去る。一瞬で有れば()()()()の速さを出せるからな。彼らの不意を突いたこともあって消えた様に感じたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

影時間から戻ると美鶴ちゃんと真次くんからは手加減を頼む旨の連絡があった。力試しの話の時には真っ青な顔をしていたからなぁ。…後明彦君はウキウキと天狗の強そうな人の報告をして来たんだが、まだ俺って気付いていないのか⁉︎




天狗面の人…日にちはランダムながらタルタロスで会えることもある。会った時は体力や疲労、状態異常の回復、更にはspの回復までしてくれる。そんな彼に挑む事もでき、彼が設定したお題を達成すると珍しいアイテムをくれたりする。


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倒せないなら倒せる様にする

もう少し体重を落としたいので初投稿です


5月10日

 

 

影時間での邂逅は面白いものだった。一応?善意の協力者…って立場にはなってるはずだけれど胡散臭過ぎたかな?ま、俺と出会った話はエリザベスとイゴールからは伝わるだろう。それに、キタロー君だけじゃなくて他のメンバーにも強くなってもらいたいからな。いわゆる正史との乖離が進んでる今これから先どうなるか検討もつかない。そうなった時にモノを言うのが結局強さなんだから。伊織君も岳羽さんも抱えてるモノを吐き出さないといけないと思うんだ。

 

 

…キタロー君、いや理君か。彼が持つ『愚者』のアルカナ…それと彼が紡ぐ絆。大いなる封印の時にはチカラとなって『宇宙(ユニバース)』となった訳なんだが、そこにペルソナ使いクラスとの絆があれば……、いや、それだけでも足りないのか。確かifとはいえハム子ちゃんだった世界では活動部全員と絆を深めることが出来たはず。それでも封印までだったな。…もう少し色々と調べる必要がありそうだ。葛葉家ならヤバそうな荒神と戦った記録とか無いかな?あ、そうだ俺には頼りになる守護霊がいるじゃないか。

 

『誰がヌシの守護霊であるか』

 

「似たような状態じゃないか?他に表すなら憑神だけど…」

 

『…。で、何ぞ?ワレに聞きたい事があるのであろう?』

 

「ああ、昨日俺を通して影時間を見ただろう?アレの主人をどうしたものかと思ってな」

 

『あの異界か…。ヌシはアレの主人をどこまで知っておるのだ?』

 

「俺が知ってる限りならば、『ニュクス』と呼ばれる悪魔だろう」

 

『夜魔かの?』

 

「いいや、そっちじゃあない。『死』を司る者としてそう呼んでいるようだ。本体はいかにもな雰囲気を出している()()()らしい」

 

『ほう、道理で。満月とはいえあそこまで狂わせる魔力を放っている訳だの』

 

「そして、その『ニュクス』の核となる『(デス)』が同じくカケラであるアルカナシャドウを倒し吸収することで本当の覚醒を果たすハズだ」

 

『なるほど、随分と回りくどく封印されておるな。かの少年は何故人柱に選ばれたのかは知っておるか?』

 

「…偶々だ」

 

『は?』

 

ヴィローチャナが理解し難い顔をしているのは伝わる。そりゃそうだよな。偶々で封印してもいいヤツじゃない。少なくとも因縁があるから選ばれたとか人柱としての覚悟が出来ているだとかは必要だとは俺も思う。

 

「バカが死の化身とも言えるニュクスを召喚してしまい一般人に被害を出しまくってなお手が付けられなかった。そんな被害者の1人として生き延びたと思ったら封印に使われたんだ」

 

『…考えられん。これもヤタガラスが居なくなった弊害か?斯様にも愚かな振る舞いを聞くとは思わんかったぞ』

 

「そうだろう?悪魔による被害が見られなくなった故に恐ろしさを忘れたんだ。若しくは自分なら使いこなせると自負でもしていたのかもしれんけどな」

 

こんどは呆れたようだ。そりゃそんな感情にもなる。

 

『愚かにも程があるわ…。明らかにヒトに手に負える存在ではなかろうて』

 

「破滅願望でも植え付けられたんじゃないかと踏んでるけどね。とにかく『死』に近づき過ぎたのさ」

 

『…何とも壮大な自殺よ。それで後世にまで災いを残すとは呆れてモノも言えんわ。ヌシが救いたがる理由がようやっと分かったわ。まさしく人柱を押し付けられただけではないか』

 

「だろう?しかもだ、結局彼を使い潰した所で出来るのは再封印まで。結局は先送りしか出来ないと来た。それは救えないだろう?」

 

そう、結局はキタロー君は救われないんだよ。繋がりを持った故に世界を守りたくなったのかも知れないが、その守りたい世界に居れなくなる…。そんな悲しい事はないだろう?なんせまだ高校2年生、10年前から(デス)に振り回され続けてようやく世界に光が見えたと思えたんだぞ?これからって時じゃないか。

 

 

『随分と意気込んでおるな。まぁ、ワレもヌシと共に或るが故にヌシの心の動きがよう伝わる。となると、元凶を倒す術を探さねばならんわけか』

 

「そう言う訳なんだよ。何か知らないかなと思ってさ」

 

『定番ならば受肉させた後に倒すであろうな。しかしそれも結局は人柱が必要である』

 

「その場合親和性が高い方がいいのか?ヴィローチャナのように身体に宿した結果手がつけられないくらい強くなったりしないか?」

 

『そこは仕方あるまいて。概念を司る悪魔を滅するにはそれ相応の危険を孕むのも当然よ』

 

「人柱にしても良いヤツがいれば…」

 

『まぁそう言う事ではある。まだ他にも術はある。業腹極まりない事ではあるのだが、天使と彼奴らを束ねる神…いわゆるLAW陣営がよくやっておった手段ではあるが、堕とすのよ。信仰を邪教と蔑め神としての力を弱め侵略しておったわ。存在意義を揺るがしてやれば倒しやすくなる事は間違いないの』

 

「なるほど。随分と詳しいが当事者だったのか?」

 

『この次元のワレでは無いがな。ワレ自身、真なるワレの時CHAOS陣営を束ねる立場にあった次元もある。真なるワレが倒された次元も有れば真なるワレがそのまま世界束ねた次元もある。しかしこの次元ではLAW陣営もCHAOS陣営もそんな余裕すらないまま忘れ去られたのよ。まぁ、ニンゲンにとっては幸い…であろう。かの魔人(スティーブン)がおらぬだけでマシな気もするわ』

 

「ヴィローチャナも色んな世界を知ってるのか」

 

『知っておるとも言えるがそうで無いとも言える。特にこの次元や近くに於いては悪魔のチカラが失われておる。その分なのかワレも知らぬ世界や次元との繋がりを感じるわ。…だからこそヌシがこの世界に居るのやもしれん』

 

「この世界は中々に特殊な訳か。うん、それの方がいい。俺と言う特異点が居る事で()()()()()()()をひっくり返せそうじゃ無いか。倒す方法は受肉させた後倒すか堕として倒すか。参考になったよ」

 

『ふん、この世界で現界し、良き闘争を愉しむならばヌシに加勢するのが良さそうと思ったまでよ。ま、惜しむらくはヌシとの闘争が出来ん事ではあるがその分得難い経験を出来そうである故に勘弁してやろう』

 

「…ま、嫌でも色んなヤツとやり合うだろうさ。この一件が終わればエリザベスとも改めて再戦もある。そん時は期待してるよ」

 

『カカカ、あの者か。それは良い。あの時とは違うワレを使いこなせる様励めよ?』

 

 

うん、ヴィローチャナとは良い語らいが出来たんでは無かろうか。キタロー君の境遇については言葉も無かった様だしな。とりあえずの目標として封印以外のニュクスをどうにかする方法の参考にはなったか。本当に出来るかどうかは別だ。…人柱なんてそうそう選べるものじゃない。結局そいつを殺すに等しい選択を俺が出来るのか?しばらくは答えが出ないかもしれない。

 

 



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客人同士の語らい

ソウルハッカーズ2はps4で出来るのが嬉しいので初投稿です


5月12日

 

俺は1人タルタロスへと訪れていた。つい先日の満月までは通らなかったフロアが開通している。やはりアルカナシャドウを倒す事でより高層へと向かう事ができる様になっている。このタルタロス自体がニュクス降臨の儀式場なのか向かう為の場所なのかはわからないがやはりアルカナシャドウを倒す事で『物語』は進む。それだけは間違いなさそうだな。

 

 

ただ…、アルカナシャドウの役割は封印の鍵、もしくは目覚めに必要な生贄なんだろう。新たに進める先はそれまでよりも少しシャドウの趣が変わっている。見たことのない奴もいるし全体的に強くなってるのは間違いない。タルタロスが活発になる事が引き起こす現実世界への影響も調べておいた方が良さそうだな。…ちょうど試験期間も近いな。明けた日に結果が出る様調べるとするか。

 

 

そこそこ登った頃にまた行き止まりに着いた。ここから先はアルカナシャドウを倒さないと進まないと言うかまだ目覚めてないんだろうな。仕方ない、ここで切り上げるしかないな。

 

 

…ニュクスやタルタロスが深く眠っていた場所へと進む程これから先のシャドウは強くなるんだろうな。ゲームシステム的には当然だが俺からすればより深層意識へと進んでる様なものだからな。そりゃ深く根ざした意識から生み出されたシャドウは強力か。しかし、仲魔を散開させて進んできたとは言え面倒な塔だ。足がつかない様ポータルの使用を控えるってのが一番キツい。これから先を考えるとゾッとするね。

 

 

5月18日

 

今日から学園じゃ試験だっけか?残念ながら満月の日から今日に至るまでタイミングは合わなかったな。…せっかく揉んでやろうと思ったのに。試験明けには来るだろうしその時を楽しみにしていよう。

 

 

そういえば美鶴ちゃん、新人達に戦う為の身体の使い方を教えて欲しいって言ってたっけ。俺もずっと見てられる訳じゃないからやたらと豊富な武道系部活を進めたんだが問題ないのかね?大学にも無いような部活ある位学園には豊富なんだよなぁ。

 

 

さて、卒業生だからという理由でうろつかせてもらおう。大きな変化は無さそう…と言いたかったが、これは綻びか?侵食と表した方が近いか?影時間の影響が大きく出ることになるかもしれんな。2体のアルカナシャドウを倒しただけでも干渉力の変化が出たか。これから先ひょっとすると学生も迷い込んでしまうかもしれん。行方不明者が出るかもしれないという話だけでもしておこう。

 

 

 

 

5月23日

 

とりあえず俺が調べた限りの情報を美鶴ちゃんに渡す。できることなら被害者が出ない様に動きたいものだよ。テストが終わったばかりというのに中々ヘビーな話題を渡す事になって申し訳ないけどね。そして美鶴ちゃんと別れようかという時、丁度キタロー君がやって来た。

 

 

「…こんにちわ」

 

「やあ」

 

「美鶴先輩と知り合いだったんだ」

 

「そうか、結城は転校生だから知らなかったのか。葛葉リョウスケ先輩、この間卒業なされたからちょうど入れ違った訳だな」

 

「葛葉…リョウスケ…、先輩も活動部だったの?」

 

「いいや、寮生じゃ無かったよ」

 

(…ねぇ、()()()の人…だよね?桐条先輩もしってるの?)

 

「ふふ、ここじゃあ何だな。美鶴ちゃん、ちょっと彼、借りてくよ?」

 

「…わかりました。あまり遅くまで連れ回さないでくださいよ?」

 

「あー、そうなりそうなら連絡するよ。それじゃあね。…美鶴ちゃん、事態は動き出した、もうここから先は目の前の事にね」

 

「…はい」

 

「よし、結城君、行こうか。君、良く食うんだって?美味いカレーでも食べながら話そうか」

 

「マコトでいいですよ?」

 

む、まさか名前が被るとは。新島真に結城理、出会ってないけど迫さんも真琴だったな?…まぁ、真ちゃんと揃う事なんてそうそう無いか。

 

「マコト君ね、よろしく頼むよ。俺の事も葛葉でもリョウスケでも好きに呼べばいいさ」

 

「…あの改めて、この間の助けてくれたヒト…ですよね?」

 

「うん、そうだね。君たちがデッカいシャドウを倒す所を見物させてもらっていたよ」

 

「…リョウスケさんもペルソナ使いなんですか?」

 

「そうだと言えるし現時点じゃあ違うとも言える。深い話はメシ食いながらしよう。学園周辺はともかく東京はそこまで慣れてないだろう?良く見ておくと良い」

 

「わかりました」

 

 

もちろん連れて行くのはルブラン。あそこなら美味いメシだけじゃなく外じゃ話しにくい事も出来る。…まぁ双葉ちゃんが盗聴機仕掛け始めると話は変わってくるんだが、それは流石に()()大丈夫みたいだし。

 

 

 

「後輩か?…そんなナリして良く食うなぁ。ま、オレからすると嬉しいこった。ま、ゆっくりしていけよ。コーヒー飲みたかったらコイツに淹れてもらえ。俺はタバコ買ってくる」

 

マスターもびっくりしてる。まぁ、タバコ吸いながらニヤニヤしてるのはご愛嬌だ。それもそのはず、マコト君はペロっと3人前完食したようだ。たしかにこの見てくれでこんなに食べる様だと驚くよな。俺は食後のコーヒーの準備を進める。

 

 

「ご馳走様でした。リョウスケさん、ここ美味しいですね」

 

「だろう?活動部のみんなも気に入ってる。ほら、コーヒー。ポロニアンモールにある喫茶店のとはちょっと違うぞ」

 

「…うん、ホッとする味だ。ねぇ、リョウスケさん…」

 

焦らすつもりは無かったんだがな。活動部の寮や学園周辺で踏み込んだ話はしたく無かったとはいえ待たせて申し訳ない。随分と聞きたがっている事が多そうだ。

 

「改めて、俺は葛葉リョウスケ。この間学園を卒業した大学生で…知る限り最後のデビルサマナー兼ペルソナ使い…かな」

 

「デビル、サマナー…?」

 

「この間のレギオンとかああいった連中が引き起こす悪さを解決する人さ。時には実力で、時には悪魔を召喚し使役する。だからデビルサマナーさ」

 

「あの悪魔…シャドウとは違うの?」

 

「シャドウはヒトの心が持つネガティブな意識が集まった存在…位に思っておけば良い。まぁ悪魔も神話や伝承、伝説に登場する怪物達になぞらえて呼ばれているだけだし、存在する為にはヒトの意識が必要だったりで似たようなモノと言えばそれまでなんだけどな」

 

「…でも僕の攻撃じゃあ効果があんまり」

 

「そこだ。存在強度とでも言おうか。とにかくシャドウに比べると悪魔は強いんだ。一番の違いは現実世界への干渉が出来るかどうかだな。そのラインを超えたら俺は悪魔だと思っている」

 

「じゃあ影時間って⁉︎」

 

「影時間の主人は悪魔だろうさ。それもとびっきり強い」

 

「…勝てますか?」

 

「…勝つ。負けないだけなら方法はいくらでもある。だけど、勝つ為に色々と考えてる最中なのさ」

 

「…どこまで知っていますか?」

 

「…ズルいけれど、知ってる様で知らない事も多い。そして知っているからと言って情報を与える事が出来るかどうかはまた別だね。ま、一つだけ。()()()()()()()には色々と聞くといいよ。時にはおねだりもされるだろうがそれも良い経験になる」

 

「やっぱりエリザベスの事を知ってるんだ」

 

「まぁね。ちょっと前までの研修担当…みたいな関係かな?」

 

「ふぅん、でもまだペルソナを使えないのにリョウスケさんは何であの部屋に?」

 

「そりゃあ固定観念に囚われすぎだ。ベルベットルーム…つまり物質と精神の狭間の世界。やれる事はペルソナ合体や人生相談だけじゃ無い。ま、その辺は自分で見つけないといけないだろうけど」

 

「そうだったんだ」

 

「そんな君にヒント…かな。マコト君はワイルド、つまりペルソナを付け替える事が出来る。シャドウなんて奴らは心の隙間から生まれてきたモンスターみたいなモノさ。奴らは弱点を突かれると脆い。それを意識した準備をしておけば良い」

 

「なるほどね。ありがとう」

 

「そうだ、この間言ってた手合わせのご褒美に君には質問する権利を加えようか。()()()()()質問なら答えるからよく考えてするといい」

 

「それってリョウスケさんが設定した条件をクリアしたらって奴?」

 

「そう。サマナーなりの話聞いてみたいか?サービスだ、一ついいぞ。あ、でもあんまり大っきい質問は困る。影時間やタルタロスの調査はまだ始めたばかりだしな」

 

「シャドウと悪魔の話聞いちゃったしなぁ。…じゃあ、影時間みたいなところって他にもあるの?」

 

これは答えられる。なんなら一番詳しいまである話だ。

 

 



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レクチャー(講義と実技)

親知らずの抜歯に震えているので初投稿です


「影時間とは違う異界か…そりゃああるさ」

 

「やっぱりあるんだ。リョウスケさんはそっちも詳しいの?」

 

「まぁ、色んなところに首を突っ込めるニンゲンが他に居ないからな。俺が調査しているところはまだ主人も居ないし大きなトラブルは起きてないかな」

 

「ふぅん、主人が居ない異界ってあるんだね」

 

「異界の成り立ちから説明しようか。そもそも異界というのは大きく分けて2つの成り立ちがあるんだ。1つは影時間の様に強大なシャドウ、悪魔が現界する事によって引き起こされる歪みがそのまま異界となるパターン。大規模なモノなら影時間、小規模ならうっかり出てきた悪魔が街中でこっそり作り出すパターンもある」

 

「そのタイプは主人を倒すとどうなるの?」

 

「基本的には歪みは修正され異界は無くなる…ハズなんだが、ここでもう一つのパターンと絡んでくる。影時間程大きな異界は元々ある異界を飲み込んだり歪みが歪みを作り出す事例もあるからな」

 

「…そっか、倒しておしまいって訳には行かないんだ」

 

「倒さないと解決に繋がらないのも事実だけどな。それで、もう一つは…ニンゲンの意識、集合無意識って奴が異界として現界するパターンだ」

 

「集合無意識?どこかで聞いたような…」

 

「学園生なら江戸川先生に聞くといい。心理学から神学、オカルトまで精通してる。それもコッチの世界の事を知らずにな」

 

月光館学園の名物教師だよな江戸川先生。まぁ、保健体育の授業に相応しいとは思わないし試験も無茶苦茶だったから普通の学生からすれば迷惑な話なんだけどな。

 

「ああ!それだ!…授業って役に立つんですね」

 

「…あの人の場合は特殊だけどな」

 

「ま、その集合無意識ってのはバカにならなくてな。特に東京みたいな大都市、ヒト1人が持つチカラなんてしれてるがチリも積もればって奴だよ」

 

「ってことは東京の街中にあるの?」

 

「ここ数年調査をしてきたのはそうだな。3年くらいは活動してるがまだ終わりが見えてこない位には深いな」

 

「…タルタロスもそうなのかな?」

 

「タルタロスは外見と中身が一致していないからな。そういえばこの間の満月にアルカナシャドウを倒してから登ったのかい?」

 

「昨日に行きました。僕たちのチームに真田さんがついてきてくれる話になったからお互いの確認としてね。やっぱり先輩は経験も積んでるから強かったよ」

 

「はは、そうだろう?あの3人はたまに現実世界で稽古を付けてたからね。ペルソナ使いとして強くなる方法はシャドウ討伐で経験を積むだけじゃない。ココロの強さを鍛える事が大事だと覚えておけば良い」

 

「なるほどね。…順平やゆかりも部活で武道やってるけれどちゃんと役に立つんだ」

 

「武道ってのはココロを鍛える事に繋がるからね。もちろん技術的な面で戦闘に使えるって事もあるんだが、俺が修めてる古武術と違って人以外の存在に対する型なんて無いから戸惑う事もあるだろうけど」

 

「リョウスケさんは古武術?やってるんだ」

 

「学園では合気道部にいたんだよ。個人的に修めてるのはまた別で葛葉流って言うのさ」

 

「葛葉…?それって」

 

「ああ、葛葉一族はかつての退魔の一族だったのさ。ま、今でこそ俺以外にはいないんだけどな」

 

「ふーん。何でいなくなっちゃったの?」

 

「簡単な話さ。悪魔がほとんど出てこなくなったから。役目を任じなければならない程じゃなくなった訳」

 

「…」

 

「ま、俺がサマナーとして活動できる様になったのも最近だし、そもそも自称だしな。…随分とサービスしちゃったな。ま、他にも聞きたい事はあるだろうがそれはまたの機会にだな」

 

「…うん、そうだね。リョウスケさんから教えてもらえる様頑張るよ」

 

「ああ、それでいい。…一応力試しだからセーブはするけれど俺だって強くなる事を忘れない様にな」

 

「それは大変だね。…ひょっとして先輩達より強い?」

 

「ああ、あの3人?それなら聞いてみると良い。影時間でやるならまた違った戦い方になるとだけ言っておいてくれ。さ、そろそろお腹もこなれただろう?そろそろ帰ろうか」

 

「うわぁ…大丈夫かな?ご馳走様でした」

 

「ふふ、あんまり弱気だとエリザベスがおっかない事になるぞ?」

 

「…確かに、それもおっかないね」

 

 

 

俺たちはルブランを出た。マコト君もカレーを気に入った様で何よりだ。ついつい喋りすぎてしまったのはワイルドだからだろうか?そうなると俺も何かアルカナを担当するのかね?ま、それに関してはマコト君の心の内の話になるし。…俺から聞く事でも無いしな。

 

 

学園の近くまで歩いて行くとちょうど活動部の面々がいた。この間は仮面もしてたしこうして「葛葉リョウスケ」として会うのは初めてか。

 

「ようやく帰ってきたか」

 

「お、結城も先輩に連れてってもらったのか?うめぇよなあそこのカレー」

 

「あん、結城どっか行ってたのかよ…って、葛葉先輩じゃねぇか⁉︎」

 

「あれ、順平知ってるの?」

 

「無茶苦茶有名人だぜ?お前こそってそっか、先輩と入れ違いか」

 

「そんなに有名になる事あったっけ?」

 

「ええ…あの無茶苦茶な合気道部はおろか学園最強って有名っすよ?」

 

「確かに俺もアキも勝てて無いな」

 

「ほら…。つか真田先輩でも勝てねぇってマジかよ」

 

「伊織君だっけ、剣道始めたって聞いたけど見てあげようか?」

 

「え゛っ⁉︎いや…えっと…その…」

 

「む、伊織羨ましいぞ。先輩から声をかけてもらえるなんてな」

 

「アキはしょっちゅう言ってるからじゃねぇか」

 

「良い機会だ、伊織、お前も叩き直してもらうか?…定期試験の結果次第ではアリだな」

 

「…ゆかりっち、結城、俺もうダメかも」

 

「ほ、ほらそこまで怖い人じゃ無いと…思うよ?」

 

「オレとアキと桐条が転がされる位ツエー人だぞ」

 

「…俺ダメみたい」

 

「ふぅん、ま、それも良いかもね。休みの日にでもどこかで身体動かせるところが有ればそういう機会を設けてもいいよ?」

 

「ほう、言ってみるモノですね。言い出した以上私が場所を提供しよう。…明日なんてどうでしょう?」

 

「日曜日だけど…急に行けるのかい?」

 

「私達は大丈夫ですが、二年生達は?言っておくが伊織に選択権は無い」

 

「強権発動されちゃあ俺はもうお手上げ侍っすよぉ…」

 

「私は大丈夫ですけど…」

 

「僕も大丈夫」

 

「よし、では体育館を借りておきます。朝には来ていただけますか?」

 

「分かった。それじゃあ俺は帰るとするよ。あんまり()()()()出歩かない様にな」

 

 

 

そう告げ別れる。まさかこんなことになるとは。ま、これも縁か。…模造刀は一応持っておこう。って言っても俺が異界を知ってる事を知らないのは伊織君だけか?流石にそろそろ幾月に気取られてもおかしくは無いか、もう開き直っても良いかもしれん。流石に目的を知ってるのは反則技のおかげだから猫は被ってくるだろう。はぁ、悪魔よりも悪意を持つニンゲンの方が怖いんだから。気が重いね。



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ペルソナ使い使えなければただの人

親知らずが無くなったので初投稿です


5月24日

 

美鶴ちゃんが抑えた運動場は桐条が協賛してる場所…になりかけたので普通の体育館に変えてもらった。高々10人も居ないのにそんなにはいらないからな。学園からは近いから活動部メンバー達をしごいても問題なさそうだな。アップがわりに軽くランニングして向かうか。

 

 

 

「おはようございます」

 

ロードワークを終えたのだろうか明彦君と先に鉢合わせた。鍛える事が習慣になってるのは素晴らしい事だ。…プロテインの摂り方だけは認められないけどな。時間まではまだ30分はあるな。

 

「おはよう。揃うまで軽くヤルかい?」

 

「良いんですか⁉︎」

 

「軽くな軽く。そっちに合わせるからマススパーで良い?」

 

「願ってもありませんよ」

 

明彦君はバネの様に飛び出してきた、瞬発力は大分上がった様だな。お、フェイントも増えた、こりゃ高校生の部活レベルなんてとっくに超えてるぞ。ま、それで通用するのは()()()()()まで。ペルソナを使うならまた違うんだろうが、もう少しズルくなって欲しいね。

 

「くっ、余裕ですね」

 

「まぁ、ボクシングって競技上当たる範囲と何となくのダメージ量がわかるからね。肉を切らせて骨を断つってわけじゃないけど捌かなくて良い攻撃にまで意識を向けすぎてるから手数が足りなくなるのさ」

 

「なるほど…」

 

「おいおい、アキ抜け掛けか?」

 

「身体あったまってるなら来るといいよ?」

 

「ケッ、相変わらず…。センパイと闘るってんなら卑怯だなんだ言ってられねぇよなぁ‼︎」

 

「荒垣の言う通り。お前たち、あの人は我々だけなんて歯牙にも掛けないんだ。頃合いを見て入ってくると良い。私も参加させてもらいます」

 

俺と明彦君が始めてるのを見るや否や真次君と美鶴ちゃんは参戦を決めた。こっちも少しギアを上げよう。二年生達はオロオロしてる様だが…

 

 

「僕たちは準備ができてない。順平、ゆかり、早速アップしよう」

 

「お…おう!」

 

「わ、分かったわ」

 

ほう、良いね。やっぱりマコト君は判断が早い。参加しなきゃ攻撃されないならされない内に準備すれば良い。…俺も複数を相手取るいい稽古になるしな、合流まで待とうか。

 

 

「ちっ、相変わらずっスね‼︎」

 

「ははは、そりゃ君たちも強くなったかもしれないけど…、俺だってまだまだ伸び代はあるんだから当然だろう?」

 

「全く、何故登山中の山が高くなるのですか‼︎理不尽な‼︎」

 

「ふふん、君たちの前に立ちはだかろうと思えば止まらない方がいいだろう?ほら、明彦君、バテて来たかい?」

 

「くっ、まだまだぁ!」

 

 

軽くとはいえ真っ先に始めていた明彦君はガス欠が近い。…さぁどうする?

 

 

「真田先輩は後ろに!ゆかりは弓で牽制を、順平と荒垣先輩でリョウスケさんを受け止めて。美鶴先輩は2人のフォローを、僕も出ます‼︎」

 

 

そうだよ、その判断‼︎指揮を振るうには迷っちゃいけないんだ。実に良いじゃないか。一つ掻き回してみようか。

 

 

「おっと、ここからが本番かな?…先に言っておこう。岳羽さん、遠慮なく射ってくれば良い。この距離ならあたりはしないさ」

 

「な⁉︎舐めてるとケガしますからね‼︎」

 

うーん、「挑発」は対策を取ってないと効くなぁ。システム的な話で有れば彼らが登場していた作品には()()()()()だからかもしれない。あーあ、だからって乱れ射ってどうするのさ当たらないのは俺だけど…前衛の2人は気もそぞろになるぞ?

 

「お、おい危ないってゆかりっち‼︎」

 

「バカ伊織‼︎目を離すな‼︎」

 

「へ?」

 

真次君は狙いが分かってたみたいだが伊織君は見事にハマって俺から目線を切ってしまった。新人とはいえ隙を見せたら相手は加減してくれないよ?ケガにはならない程度に投げる。

 

「ぐえええ…」

 

古牧先生から嫌ほどやられた呼吸が出来なくなる落とし方だ。ケガにはならないが無茶苦茶痛い。…痛みを抱えた上で動けるかどうかってのを知っておく必要があるからな。痕にならないだけマシかな?

 

「ゆかり、落ち着いて。美鶴先輩は順平を安全な場所に。真田先輩はもう一度前に」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「気にするな、あの人の常套手段だ。幸いにもこれは稽古、実戦で気をつければ良い。結城、私は伊織を回収して下がる!」

 

「真次君は手ぶらでいいのかい?」

 

「へっ、アンタ相手に考えた結果だぜ。振り回しても牽制にならねぇんだからな!」

 

真次君と明彦君は見事なコンビネーションで俺に後衛を狙わせないように動く。この2人にならもう少し強めに当たっても良さそうだ。…岳羽さんは萎縮しちゃって攻撃のタイミングが掴めてないな。まぁ人に向けて射つなんて経験無い方がいいに決まってるんだが彼女はそうも言ってられない。

 

 

「やべぇ!抜かれた‼︎」

 

「くっ、間に合わんか…」

 

2人をいなしまごついていた岳羽さんを投げ飛ばそうと近づいた所マコト君が割り込んで来た。()()()()だね。

 

「いらっしゃい」

 

「しまった⁉︎かはっ…」

 

「結城君!」

 

「ほら、気を抜いた」

 

「きゃっ⁉︎」

 

「これで残るは3年生だけ。さぁ、どうする?」

 

「センパイ、アンタ年々悪役が板について来てやがるな…」

 

「くっ、時間稼ぎも出来んか…。美鶴、来れるか?」

 

「…せめて我々の足掻きを彼らが観れるよう整えて構いませんか?」

 

「ああ。見ることも大事だからね。ダメージが残る様にしちゃあいない、投げられた3人は観てるといい」

 

 

マコト君にはこの状態を見て各個撃破されていく時どうすればいいか少しでも考えて欲しいね。倒せない相手に出会った場合なんてこれから先あるだろうし。

 

 

 

 

 

 

「な、なんだかわかんねぇ内に投げ飛ばされちまったよ…。ホントに目が回るんだな…」

 

「…私も何も出来なかった。それどころか、順平、結城君足引っ張っちゃってごめんね」

 

「…闘ってる時に周り見るのって難しいんだな」

 

「僕も釣り出されちゃったから何も言えないよ。リョウスケさんは周りをよく観てるよ。ゆかりがパニックになったフォローを上手く読まれちゃった」

 

「…ひょっとしてあの場面って私を見捨てるのが正解?」

 

「マジかよ、えげつなさすぎんだろ⁉︎」

 

「…かも。助けようとして2人やられちゃったからね。それなら大人数で隙を見て態勢を整える方が良かったのかな?」

 

「…隙、あんの?」

 

「…シャドウの方が優しいかもね」

 

「そりゃあお手上げ侍だ…。あ、真田先輩も投げ飛ばされた」

 

「うわ、桐条先輩レイピア持って…って、距離詰められちゃったよ⁉︎」

 

「…あの人怖くねーのかな?」

 

「…多分僕たちなんかよりすごい人と稽古して来たんだと思う」

 

「け、けどよ俺たちにはペルソナがあるんだぜ?」

 

「コッチで出せればでしょ?…葛葉先輩ならそれでもなんとかしそうだけどね」

 

「うわ、荒垣先輩と真正面からやり合ってる。最後まで残った方がスゲーよもう」

 

「(なるほど、エリザベスが気合入れる訳だよ)…負けてられないな」

 

「うわ、あっという間に三年生まで片付いちまった…」

 

 

 

 

 

俺と三年生組がやり合ってる様子をぼんやりとでも観れたかな?まぁ個人の強さなんてたかが知れてる、重要なのは立ち回り。シャドウも悪魔も相手に行動させない事、そうすれば闘いの主導権を握れるって事分かってもらえただろうか。さ、反省会と個人トレかな?

 

 

 



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負けイベを成長イベントにしよう

眠い1日だったので初投稿です


とりあえず全員投げ飛ばしを食らった所で反省会。どんな意見が出てくるやら…。

 

 

「やはりまだ届きませんか」

 

「そりゃね?俺も()()場数を踏んだのさ」

 

「…場数?葛葉先輩ってヤベー人と絡んでんすか?」

 

「まぁヤバイ人の知り合いは居ないから大丈夫だよ?」

 

…ヤベー人の師匠だった古牧先生とか元ヤベー人岩井さんとか現役居ないからセーフでしょ?

 

 

「…人数に頼ってもあっさり減らされた」

 

「あっさり減らされて悪かったでござる…」

 

「まぁ、孤立するよう仕向けたとはいえ後衛の岳羽さんはちょっと視野が狭かったな。挑発と誘導に引っかかったのもある」

 

「…はい。どうすればいいですか?あと私はゆかりで構いません」

 

「弓の技術なんて直ぐは変わらない。けれど心なら鍛えられるハズ、落ち着いた心を保つのは武道の精神さ。ま、簡単じゃないのは間違い無いけどねゆかりちゃん」

 

「あのぉ、俺は?」

 

「…君は基礎固めかな?パニックになっても身体が動く位叩き込む方がいいかも知れない」

 

「え゛ぇ⁉︎地味…っすねぇ」

 

「派手なのがいい?じゃあ俺と刀で打ち合う?」

 

「オス‼︎素振りすればいいっすか?」

 

「順平…」

 

「はぁ、伊織の監督は我々で受け持ちましょう」

 

「よろしく。三年生達はだいぶ良くなったんじゃない?結果はともかく過程は随分変わっただろう?」

 

「…まぁ、考えナシに大物振り回したって当たらねぇなら邪魔っすから」

 

「俺も多少は粘れる様になりましたか?」

 

「結城に助けられた部分もありましたが、状況の把握は上手くなりました」

 

「うん、そういう事。ま、俺にフィジカルで勝てないのは()()()()で済ませておいてくれればいいさ」

 

「…そういえばリョウスケさんって素手?が主流なの?」

 

「無手術は学園合気道部の妖怪先生に叩き込まれたのさ。本格的にやってるのは葛葉流刀術かな?」

 

「え、それって…、ガチの侍剣術っすか?」

 

「えっと、葛葉先輩はなんで剣道部じゃあ無いんでしょう?」

 

「侍…も居ただろうけど修験道とかの方が近いかな?剣道部に関して言えば古流武術で動けるとスポーツ剣道なんて反則ばっかりで動けなくなるからねぇ」

 

「ひええええ…」

 

「ま、刀を剣を持つからって崇高な意識は必要無いと思う。けれどそれを振るう、振るわない結果に対しての覚悟を持つ事が鈍らない一番の秘訣かな?」

 

「…よく分かんないっすね」

 

「はっはっは、順平君に関しては考える暇なんて要らない。身体に染み付くまで振り続けるだけだから」

 

「……お手柔らかお願いします」

 

なんだか受刑者みたいな雰囲気を出しているが死ぬほど辛いが死にはしないから安心してほしいね。

 

 

「僕はどうすればいいですか?」

 

「んー、マコト君は周りも見えてるし、覚悟も持ってる目をしてる。…よし、そのまま動かないでくれるか?」

 

俺はそういうとマコト君にキャップを被らせた。メメントスで拾ったキャップだからそこそこ雑に扱っても耐えてきたがそろそろ限界も近そうだし、使い()()()しまおう。

 

 

「…これでいいですか?」

 

「直ぐ終わる。ま、見てるといい…シッ‼︎」

 

 

そう言うと俺は薄緑を構えマコト君に被らせたキャップのツバを切った。チンと音を鳴らせ流れる様に納刀する。

 

 

身体の使い方は本当に上手くなった。もちろんヨシツネと打ち合ったり強敵との戦いを経て成長したのもあるが、最近はイメージと身体の動きがピッタリハマるんだ。

 

 

「…?」

 

「…なんかやったんすか?」

 

「マコト君、キャップ脱いでごらん」

 

「え⁉︎」

 

「うそ⁉︎」

 

マコト君が言われた通りキャップを脱ごうとツバに手をかけようとするとツバはスパっと切れていた。岳羽さん…ゆかりちゃんや順平君はアゴが外れるんじゃ無いかって程に口を開けてる。離れて見てた2人の方がいつ切ったか分かり易いハズなんだが…。

 

 

「ま、こんなもんは曲芸みたいなもんだけど…切ったのは見えなかったろ?」

 

「いつですか?」

 

「声をかけて少し気合入れた時。鍔鳴りは聞こえたろ?」

 

「はい」

 

「ま、君らも鍛えればいつかはここまで来れるさ。俺なんか通過点って言える様なってほしいね」

 

「嘘だぁ…だったら剣道部とか剣豪の集まりになっちゃいますよ⁉︎」

 

「お望みとあらば?」

 

「伊織順平、追加の素振り行って来まーす‼︎」

 

「順平ってば調子いいんだから…。でも、葛葉先輩の場合身体能力もすごいんじゃないでしょうか?」

 

「まぁ、多少自信はある。けれどその身体能力を十全に動かすには繰り返しの練習とそれを操る心が育ってないといけない。ゆかりちゃん、弓道と違って動く的を射るなんて難しいだろう?放たれた矢を動かすことができるなら別だけどそうもいかない。手に持つ剣でも迷いが出るんだ、放たれた矢は距離がある程正直だよ?」

 

「…」

 

「…ま、1日2日で出来る話じゃないさ。もう少し時間があるなら葛葉流でまず最初にやる瞑想を教えてもいいんだけどね」

 

「分かりました、今度お願いします。私も少し身体を動かして来ますね」

 

「ああ、クタクタになるまで動くのも頭を空っぽにする一つの方法だよ」

 

ゆかりちゃんの迷いは根深そうだな。こればっかりは幾月がアイギス動かすまでどうにもならんな。武治さんと違って動かぬ証拠でも無ければきっかけにならないだろうしなぁ。

 

 

「リョウスケさん、2人を追い払って何か話したい事でも?」

 

「特にそんな意図は無かったんだが…ちょうど良い、俺が割と人間離れした動きが出来る理由を言っておこう」

 

「…悪魔を倒してるから?」

 

流石に察するか。ついでだ、初戦のお祝いに質問コーナーとしよう。

 



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時間はお得に使おう

花粉に震える時期が来たので初投稿です


「その事も含めて質問コーナーと行こう。さ、何が聞きたい?今日は君の判断能力に驚かされたからね。この間の続きでも新しい質問でもさっきの話でも構わないよ?」

 

「いいの?…僕も順平の事をあんまり言えた立場じゃないんだ。僕達、ペルソナって力に目覚めたんだし、ちょっとは特別なのかなって。その割にリョウスケさんにコテンパンにされちゃったし」

 

「文字通り経験値が違うからね。スタートラインが違う人間を強さだけで判断はしないさ。勝てない相手ならそれなりに考えて何とか工夫していたから十分さ。それこそ考えナシに突っ込んで来るようなら赤点だったかな」

 

「じゃあ…リョウスケさんの強さは悪魔を倒してるからって質問にする」

 

「ふむ、答えだけを言うならイエスだね。まぁまず他人に勧めないけど」

 

「やっぱり危ないの?」

 

「危ないのは間違いない。まずシャドウなんかよりよっぽど手強い奴らだからな。そして悪魔は人間を狩る事に慣れてる。アイツらが使ってくる魔法はそりゃあエグいモノばっかりだからな」

 

「…じゃあ僕には無理かな?」

 

「そりゃやってやれない事は無い。けれどリスクがあるだけで見返りなんてほとんど無い様なモノだね。…今夜影時間に、いや、ベルベットルームにしよう。俺の()()を紹介しよう」

 

「仲間?」

 

「ま、それは来てみれば分かるさ。さ、問答の続きはその時。今はせっかくなんだし他のメンバーと組み手なりしてくると良い」

 

「はぁ、分かりました。それじゃあよろしくお願いします」

 

 

この後もみんなの様子を見て回っているとあっという間に時間が来た。今日一回で劇的に変わる事は無いかも知れない。それでも彼らの心構えが少しでも良い方に向かった事を願う限りだ。

 

 

 

そしてその夜、約束通りベルベットルームでマコト君との待ち合わせだ。待ち合わせと言っても別の所からアクセスしても落ち合う事が出来るから俺からすれば無茶苦茶楽なんだよ。イゴールに使わせて欲しい事を申し出に行った所、客人同士が巡り合う、それは非常に珍しい事だと興奮していたな。そもそも俺みたいな長期間お世話になる奴が稀だもんなぁ。

 

 

マコト君を待っているとエリザベスが先にやって来た。こうして此処で出会うのも久しぶりだな。

 

「お久しぶりです。随分と私の客人を気にかけていただいている様で…」

 

「エリザベスも接するうちに運命を見たろ?ただ巻き込まれただけの一般人には重すぎるさ」

 

「…ええ、我ら住人に出来る事は可能性の中でも最善を選べる様協力するまででしか出来ません。幸い…なのかどうか私達に判断出来ませんが、リョウスケ様との絆を深めることで訪れる運命がどんどん読めなくなりつつ有ります」

 

「ふふ、よっぽどのイレギュラーなんだろうな俺は。ま、俺がこの世界でサマナーとして生きて行くなら目を逸らしちゃいけないだろ。俺からすればマコト君を縛り付けてるヤツは悪魔に該当する。なら足掻かないとな」

 

「ええ、それでこそ。とはいえ、()()()()()()()()()みたいですが…」

 

「あー、まぁ確かにな。アレは間一髪だった。ホント助かったよ」

 

「…それほどの強敵でしたか」

 

「まぁな。かの闘神、天魔アスラおうを相手にしたもんだからな」

 

「あら、私、妬けてしまいますよ?」

 

「よく言うよ。あの時の俺じゃまだまだ本気にさせられなかっただろう?俺もまだまだ成長するつもりだし、エリザベスもマコト君を担当して…変わるんだろ?」

 

「ふふふ、ええ、そうですね。私達住人は『時』という概念に囚われておりません。が、その時がますます楽しみになって参りました。願わくば我が客人とその時を迎えられる様…、いえ、らしく有りませんでした。私はニンゲンの可能性を信じると致しましょう。さて、ちょうど我が客人も訪れます。それでは…」

 

「聞くだけでもいいから居てくれよ。俺の話もマコト君に関する事ばかり、エリザベスの役に立つかも知れないからな」

 

エリザベスが退出しようとしていたが引き止める。話を聞くだけでもいいから居てもらおうと思ったからな。

 

 

「そうですか、ではお言葉に甘えて。…オヤツは有りませんか?」

 

「…クッキー持ってきて有るから食っててくれ」

 

この自由さに懐かしさを覚えるってヤバいか?まぁ、いいか。

 

 

さてと、そろそろ来るかな。時間の流れが無茶苦茶になってる影時間から更に狭間の世界。ここでの話は時間がほぼ流れないのは便利だよな。

 

 

「お待たせしました?あ、エリザベスも居るんだ」

 

「ええ、私の事は壁の花とでも思っていてください」

 

「…その割にずっとサクサク聞こえるんだけど?」

 

「リョウスケ様は気が利くのでこうして手土産をお持ちいただく事があるのです。ええ、それはもう気が利くので」

 

「…高校生に集るんじゃねぇよ」

 

「あら、失礼致しました」

 

「ま、マコト君も余裕のある時に何か持ってきてあげな。影時間で拾った出所の説明がよく分からんお金とか溜まった時でいいから」

 

「そうするよ。それで、話って?」

 

「そうだな…まずは俺の仲魔達だ」

 

俺はそう言うと召喚した仲魔達を紹介した。マコト君は当たり前だけど驚いているな。

 

「仲間じゃ無くて仲魔だったんだ。ああ、サマナーってそう言う事か」

 

「そう言う事。エリちゃーん久しぶりー‼︎」

 

「お元気ですかピーちゃん。ふふ、見ないうちに随分と強くなった様ですね」

 

「まぁね。でもでもイッチバン調子が良かった時はまだまだなんだけど…」

 

エリザベスとピクシーは姦しく話をしている。そんな様子を見ていたマコト君は未だにポカンとしている。

 

「まぁ、悪魔にも友好的な連中も居るには居る。ウチの仲魔達なんてのはほとんどそうだしな。とはいえ今の世の中サマナー契約をしている悪魔なんて皆無と言っていい。つまり、異界で出会う悪魔はみーんな敵対的ってわけだ」

 

「…あの妖精さん、ひょっとして僕たちより」

 

「ああ、強いぞ。ピクシーだけでも君ら活動部が今のままじゃあ勝てない位にはな」

 

「…」

 

うーん、分かりやすいように仲魔を出したが…インパクト強すぎたか?

 

 

「はっ⁉︎またオイラ撫でられてるホー。油断隙も無いホー」

 

「私の前で召喚されたジャッ君は私の膝の上が定位置ですから」

 

「オイラはジャッ君じゃないホー!由緒正しいジャックフロストだホー!」

 

 

…はっちゃけエリザベスを見てびっくりしてるだけかもしれん。

 

 



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悪魔とペルソナ使い

40万UA突破したので初投稿です


「エリザベスの事を気にしてたら疲れるぞ?ま、今はウチのフロストを愛でてるから気にしないでいいさ」

 

「は、はい。…でもあのフロスト?って悪魔、いえ、仲魔どこかで見た事あるような?」

 

「まぁ愛くるしい見た目してるからな。大方どこかのデザイナーの前に姿を現した時にインスピレーションを与えたんだろうさ」

 

「なるほど、そういう事もあるんですね」

 

「そりゃな、今よりまだ世界が神秘を信じていた時代が有ったのさ。とはいえ、フロストは雪の妖精が具現化したもの、自然が持つ厳しさを忘れちゃいけないからな」

 

「そうなんですね。他の仲魔はどんな名前なんですか?」

 

「エリザベスと喋ってる正に妖精って姿をしてるのがピクシー。その隣で舞う様に佇んでいるのがアメノウズメ。そして、こっちの鎧武者がヨシツネだ」

 

「ピクシー、アメノウズメ、ヨシツネ…すごい、僕でも名前を知ってる。というかヨシツネって?」

 

「ヨシツネは源平合戦の英雄源義経が現代に語り継がれるまでに英霊としての格を得た存在…かな?」

 

「はっは、俺っちはヨシツネさ。コンゴトモヨロシク!」

 

ヨシツネは愛想良くマコト君に挨拶をするが、あまりのネームバリューのせいか少し緊張してる様に見える。

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

「おいおい、俺っち達は悪魔だけど取って食うわけじゃねぇんだから力抜きな?」

 

「ヨシツネはこの時代における知名度を認識してほしいね。日本人なら誰でも名前知ってるレベルなんだからそうなるのも無理はないって」

 

「そんなもんかねぇ?我が事はよく分からんのよ」

 

「ま、ウズメもそうだけど神本人って訳じゃない。コイツら以外にも同じ名前姿の悪魔が存在する事もあるんだが…不思議だろう?」

 

「確かに。ピクシーやジャックフロストはともかくアメノウズメなんかは固有名詞ですもんね。祀られている所から居なくなっちゃったんじゃないかって思ったんですよ」

 

ま、同じ名前の悪魔がいっぱい出てくるって不思議だよな。俺なりの解釈でしか無いけど解釈できる人間が俺以外ほとんどいなくなってるからなぁ…。

 

 

「神話の登場人物や英雄、神様仏様…どんなカテゴリーであれヒトが想像で作り上げた存在ってのは色んな側面を持ってるのさ。そのうちの一つ一つがワケミタマとして現界する…。そんなワケミタマの一つを仲魔にしてるって訳だ」

 

「へぇー、じゃあ神社やお寺から居なくなった訳じゃないんですね」

 

「そういう事」

 

「どうせ殆どのニンゲンに俺たちゃ見えやしねーけどよ」

 

「加えてヨシツネが言った通り、今の世の中、一般人が目にすることなんてほぼ有り得ない。それこそ異界化した空間でしか出て来れる環境に無いのさ」

 

「…」

 

「さて、仲魔はこれで以上だ。何か質問でも?」

 

「どうやって仲魔になってもらったんですか?」

 

「一般的な方法は悪魔との交渉の末だ。悪魔が要求する供物を捧げる事で仲魔になってもらう…これがそうだな。だが、この方法には重大な欠点がある。分かるか?」

 

「えっと…交渉のテーブルに着いてもらえない?」

 

「なかなか分かってるな。根本的に話ができる悪魔としか成立しないのさ。この間のレギオンなんかあの日でも理性的な方だったんだぞ?」

 

「え⁉︎同じ単語の連続位しか発してませんでしたよ?」

 

「普段の連中なんて単語すら話せないんだから。あの日は満月だったろ?月の魔力が豊富な日にはそんな事もあるのさ」

 

「そうなんですね。…僕たちでも交渉って可能なんでしょうか?」

 

「可能かどうかって話なら可能だ。これに関しては断定してもいい。が、その為の道具が何もかも足りない。俺が使ってるやつも今んとこ有るだけだから供出する気も無いしな」

 

「あん?俺っち達悪魔と契約希望か?やめとけやめとけ。リョウの字よぉ、少なくとも最低条件が抜けてるじゃねーか」

 

「順番に説明するんだよ。ま、その交渉のテーブルに着くかどうかってのは…結局のところパワープレイなのさ。要するに力ずくさ」

 

「そう、リョウの字くれーのウデがなきゃ取って食われてポイも有るんだぜ?」

 

「…それは怖いですね」

 

「俺っち達リョウの字の仲魔だけ見てりゃそう思えねーかも知れんが、基本的に野良の悪魔なんて居たら真っ先にリョウの字の討伐対象よ。ヒトを食ったりしてチカラ付けたらめんどくせーからな。お前さんらペルソナ使い…悪魔から見りゃご馳走だから気をつけろよ?」

 

「え?そうなんですか?」

 

いきなり切り込みやがって、順番に喋ってる途中だったろうに。ヨシツネを責める様な視線を向けてもなしのつぶて、これ以上は無駄か。

 

「…まぁ、ペルソナの力ってのは精神力に依存してる。精神力の高いニンゲンってのは生体マグネタイト…俺はマガツヒって呼んでるヤツをたっぷり持ってるニンゲンなのさ。そしてそのマガツヒってのは…」

 

「悪魔にとって大事なご飯…そりゃ僕たちがご馳走なわけですね」

 

「そういう事。そうならないでくれよ?俺も出来るだけ沸いて出た悪魔を潰しちゃ居るんだけどな。ま、影時間だけならこれから先はそうそう無いだろう」

 

「どうしてですか?」

 

「そりゃ影時間は主人が居るからな。それも強大な。そいつが目覚め始めた今、他所からちょっかいかけられる様な悪魔も減るさ。そういう意味ではそこまで心配しなくていい」

 

「…ちょっとホッとしました。僕たちだけじゃあのレギオンでも大変そうですし」

 

「ああ、アイツらか。俺たちはあっさり倒しに行ったけど理由が有ってな。速攻を極めないと強烈な呪殺魔法を使ってくるからなのさ。あと見境なく暴れ回るのもめんどくさいし」

 

「え…じゃあ、僕たちだけだったら?」

 

「…分からん。運が良けりゃ怪我人程度で済んだかもしれんが、ひょっとしたら再起不能、下手すりゃあ死人の可能性だってあるんだ」

 

「…」

 

そう、レギオンとか外道にカテゴライズされる連中は『ムド』を遠慮なく使ってくる。しかも悪魔の呪詛だ、抵抗するなら対策は必須だろう。もしそれがなかったら…考えたく無いね。

 

「ま、分かったろう?リスクが高すぎるって事を。基本的にエサと見て襲ってくるやつを腕っぷしで返り討ちに出来て初めて交渉が始められるのさ。強くはなれるがそんな奴ら相手してまで得られる成長が必要なほど差し迫っているかい?」

 

「いや、まだ…」

 

「だろう?まだ焦る時間じゃ無いさ。昼にも似たようなことは言ったんだが、ペルソナ使いにとって大事なのはココロの力を鍛える事。特に君はワイルドの力を持ってる。今は色んな人との出会いとコミュニケーションを大事にすると良い。他人を知る事は自分の世界を広げる事になるから」

 

「まだよく分からないですけど、そうなんですね。…リョウスケさんとの話はいつも不思議ですね」

 

「ははっ。まぁ、違う()()の話に聞こえるかもな。けど、自分が自分の中に世界を持つように他人も世界を持つ。自分の世界広げるには閉じこもってちゃいけないって事さ。さぁ、そろそろお開きとしよう。ここじゃあ時間は殆ど流れない。けれど長居は精神に良くないからな」

 

「失礼ですね、我が客人はリョウスケ様ほど精神がニブくなく繊細、なのですから」

 

「はいはい、じゃあな。…()()()()()()には気をつけろよ?」

 

「?はい、ありがとうございました」

 

 

つい喋りすぎてしまうな。

 

「過保護な先達ですね」

 

「うるさいぞ」

 

…エリザベスにも言われてしまったな。

 



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こう言う時の単独戦力

花粉の気配を感じたので初投稿です


6月6日

 

 

明後日は今年度3回目の満月。アルカナシャドウが出てくる日だ。残念ながらこの間に活動部を扱いてからというもの、影時間で鉢合わせること無く今日を迎える事になった。まぁ、現世の俺にすら満足な展開に持ち込めてない今サマナーの俺は荷が重すぎるか。

 

そんな事よりとうとう行方不明者が出てきてしまった様だ。幸い…でもないが家出常習者だからこそ騒ぎになってないだけ、と言った所らしい。ポロニアンモールの路地裏や溜まり場をベースにしていた真次君が普通に寮住まいの分情報が少なそうだな。まぁ、あの辺で悪さする奴なんて古牧先生に文字通り畳まれてたから治安は悪くないハズなんだがな。

 

…行方不明が単なる家出ならまだ良かったんだがな。

 

今回は行方不明者が影時間に迷い込んでるケース。そりゃあ普通に捜索した所で見つかる訳が無い。それもそのはず、山岸風花…彼女はいじめの被害者だった。よりにもよってタルタロスのお膝元の学園内に閉じ込められ、オマケに不完全とはいえペルソナ使いだ。シャドウや悪魔からすればご馳走でしかないだろう。

 

 

情報を得た俺は影時間で山岸さんの捜索を行う事にした。…怖いのがペルソナの特性だ。確か索敵に優れていたペルソナを持つからこそシャドウから逃げ切れたんだったハズ。俺や仲魔達がその網に引っかかって逃げられやしないかって事なんだよな。そうなりそうなら集るシャドウや悪魔とマコト君達が来るまでの根比べだな。

 

 

見つからないなら影時間の可能性を考慮する様臭わせておこうか。ま、いつかは影時間で日を跨いだらどうなるかの調査もしておきたかったからちょうど良いさ。

 

 

「もしもし、美鶴ちゃん。行方不明者の捜索は…捗ってるかい?」

 

『もう、ご存知でしたか。残念ながら手掛かりは少しずつ集まりながらも中々…』

 

「おいおい、そこまで状況証拠が集まってるのに見つからないうってつけの場所があるだろう?」

 

『まさか…⁉︎影時間に⁉︎』

 

「ま、可能性さ。これまでも迷い込む一般人が居たんだ。学園が変性してタルタロスになってしまう影時間、そのタイミングで学園内に居た適応者はどうなると思う?」

 

『…ぷつりと足取りが途絶えてしまう』

 

「学園内でそんな事が起こる理由…、無意識にでも排除して考えてたのかね?とはいえ俺の話も可能性に過ぎない。だからもう一日君らはコッチで探しておけばいい。俺は調べたい事も有ったから()()に影時間に居てみることにするさ」

 

『な⁉︎危険過ぎます‼︎』

 

「…満月が近い、君らはまたイレギュラー…アルカナシャドウを警戒しておいた方が良い」

 

『くっ…、仕方ありませんか。無理はなさらないでくださいよ‼︎』

 

「もちろん、引き際は弁えてるさ。そっちも負けるなよ?」

 

 

これで良い、遅くとも明後日の晩には来てくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

さてと、どこに迷い込んでるのやら。諜報能力に長けた仲魔が居ないから人海戦術しかないか。とりあえず機動力の有るヨシツネとピクシーをフリーにして動き回らせよう。残りの俺たちはタルタロス内で騒ぎを起こそう。…あんまり同じフロアに長居して無いと良いんだが。最悪は刈り取る者相手に撤退戦かな?

 

 

「って事で頼む。シャドウや悪魔が引きつけられてる様な場所を探ってくれ。俺達はここで大立ち回りさ」

 

「俺っちもソッチの楽しそうなのが良かったんだが、仕方ねぇ。これでも学問の神様の一柱として見逃せねぇしよ」

 

「アタシも飛び回って探すから!…競争‼︎ってのはデリカシーが無いわね」

 

「頼む。ウズメとフロストもここに引き付けただけ安全になるから気張ってくれよ?」

 

「任せるホー」

 

「ええ、私だってこんな所で若い命が失われるのは見たくないわ」

 

「助かる。さぁ、行きましょうかね‼︎」

 

 

 

とりあえず入り口から行けるフロアまで全部だ。それでも見つからないなら俺の推理が間違ってるか、フロア以外の所か…だな。それより影時間が閉じた後どうなるのか。実際に体験してみないとな。影時間だけじゃない、これから先引き起こされる異界にシャドウに無防備な人間が迷い込む事はある。現実世界との時間のズレや心の疲労度とか貴重なデータになるな。まぁ、解析なんかは優秀すぎるブレーンにお任せするんだけど。

 

 

「リョウスケ君も強くなったわね。ここらのシャドウ位じゃあいくら集まっても相手にならないわね」

 

「無双状態ホー」

 

「まぁ、まだタルタロス全体から見れば低層だしな。この位のシャドウならメメントスでとっくに経験してるってのもある。しかし全然気配なんて無いな…。向こうの方はどうなってるのやら」

 

入り口から現状閉ざされた40階層まで駆け登った。道中に出てくるシャドウは文字通り蹴散らす事が出来たからあっという間だったな。

 

「そろそろ現実世界でいう1時間か。手巻きの時計持ってきてて良かったよ」

 

「あら、ライドウ君の懐中時計かしら?なんだか懐かしい気がするわね」

 

「そうなのかな?地下蔵にあったマントと同じところに閉まってあったから持ってきてたんだ。大事に使わしてもらってるよ。…そろそろ影時間が閉じる。一応警戒をしておこう、何があるか分からんからな」

 

「ええ。ピクシーとヨシツネは大丈夫かしら?」

 

「ま、アイツらは息もあってるから大丈夫。ヨシツネは乱戦も得意だしな。…来たみたいだ」

 

 

影時間が閉じる時間、俺達は外の様子も見たかったのでタルタロスのエントランスで待っていた。見たところ変化は無さそうだが?

 

「あら、リョウスケ君。外出れなくなってるわよ」

 

「なるほど、嫌でも耐久戦だな。望むところさ。今日はコンディション抜群だからな」



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人形は主神を求め彷徨う

暑くなりすぎなので初投稿です


6月7日

 

 

不思議なもんだな、こうして閉じていく異界を内側から見るのは。あれだけ群がってきたシャドウもあっという間にどこかに行ってしまった。静かなもんだ…。

 

 

「ピクシーとヨシツネは何処かしらね?」

 

「タルタロス内にいるとは思うんだがな…。しかし、閉じた異界ってのは更にも増してあらゆる気配がしないな」

 

「そうね…、黄泉比良坂とはまた違うけれどやっぱり静かね」

 

「…オイラこんな空気耐えられないホー。陽気な方が楽しいホー」

 

「これだけ静かだと動くモノの気配、()()()()()()よな?」

 

 

シャドウすら隠れなきゃならない理由はそこか?目立つと狩られる…、だとするとピクシー達との合流を急ぐべきだな。

 

 

「…アイツらとの繋がりは上だな。急ぐぞ!」

 

 

もし予想が当たっていたら厄介だな。あり得るな、現世との繋がりが薄い時間帯の分強いシャドウや悪魔が出てくるのかもしれん。

 

 

 

フロアを駆け上がっていくと剣戟の音と雷が落ちたような音が聞こえてきた。このフロアにいる様だ。しかも何かと戦ってる。やはり予想が当たっていたか。

 

 

 

「ちっ、ちったあホネのある奴らじゃねーか」

 

「むー、数は少ないケド…!」

 

「待たせたな!っとコイツは天使か…」

 

「リョウの字!」

 

「リョウスケちゃん!」

 

「フジョウナルモノニスクイォォォォ‼︎」

 

 

天使系悪魔との対峙は初めてだな。コイツは、アークエンジェルか。メシア教勢力の存在は確認できてないしはぐれか?あー、学園のホールは教会系だったからソッチか?…流石に聖遺物で実験してたから寄ってきたとかじゃないだろうな?上級天使なんてまだ勝てるか分からんぞ…。

 

 

「助かるぜ、コイツら中々丈夫でよ。ピの字のジオ系はいい感じなんだが相互に回復しやがってさ…」

 

「なるほど。たしかにタフだな。一撃も重いし…何より神聖魔法が厄介だ」

 

「リョウの字は気をつけろよ?アイツらの文字通り昇天させられちまうからよ」

 

 

俺とヨシツネは軽口を叩きながらアークエンジェルの群に切り込む。元々のタフさに加えて回復能力があるから一気に決めないとズルズル長引くな。ハマを喰らうなんて体験なんかは少なくとも俺自身で試したくないし、いつ他の横槍が来るか分からん。

 

 

「ヴィローチャナ‼︎」

 

『おうおう、ワレを使う程でも無かろうて』

 

「慣らし運転さ。お前も天使は嫌いだろう?」

 

『カカッ、確かに。哀れな人形どもよ、ワレが浄土送りしてやろうぞ』

 

「さぁ、行くぞ!」

 

『おうともよ…、冥界波‼︎』

 

「ヒュー!すげぇな旦那。リョウの字、まだ行けそうか?」

 

「おう、合わせるぞ。ウズメ、タルカジャ頼む」

 

「任せて」

 

「いよっし、憂さ晴らしといくぜぇ‼︎」

 

「行くぞヨシツネ‼︎葛葉流刀術…十文字斬り‼︎」

 

「シトナルワレラガフジョウナルモノタチニィィィィ‼︎」

 

畳み掛けた事でタフなアークエンジェル達を倒し切ることが出来た。流石に悪魔、コイツらでもこんなに手こずるか。こんな奴らですら序の口だろうな…。

 

 

「よし、場所を変えるぞ。騒いだ分また別の奴らがやってきそうだ」

 

「そりゃいけねぇや」

 

「そうね、大人しくしましょ!」

 

「ああ、そこでこれまでの話を聞かせてくれ」

 

 

 

俺たちはアークエンジェルと戦った場所から急いで離れた。やはりエントランスに近づくほど強い気配は薄いな。とはいえいつ湧いて出てくるか分からないからみんな気を抜いてない。

 

 

まだ閉じてから1時間も経ってないが結構な気配がゴロゴロしてる。こりゃ上から降りてきてやがるか?閉じた分セキュリティに穴が出来てるのかもしれん。だから悪魔も出てきてるのかもな。

 

 

「で、何か見つかったか?」

 

「俺っちはピの字が動きやすい様掻き回してただけなんだが…、どうにも俺っち以外に向かってる連中はいたかもしれねぇな」

 

「アタシも飛び回ったけど確かに探し回ってるようなシャドウ居たわ。ひょっとして…」

 

「迷い込んでる子が居るな。…一般人なら良かったんだが、目の前の暴れてるヨシツネより優先されてるって事からやっぱりペルソナ使い候補だろうな」

 

「候補なの?どうしてリョウスケちゃん」

 

「まず覚醒者なら完全に逃げに徹するのが不自然だ。閉じる前ですら戦闘の気配が無かったんだ、戦う術が無いからこそだろう」

 

「なるほど。確かにそうかもなぁ…、って最悪じゃねぇか⁉︎」

 

「ああ、シャドウも悪魔も性質として残虐な面がある。逃げ惑うエサなんて食いつくに決まってるさ」

 

「どうするのよ⁉︎」

 

「落ち着けピクシー。今この閉じた時間で捜索を派手にやった所で俺たちが悪魔引き連れていっちゃあ意味が無いからな。しばらくは悪魔やシャドウの頭数を減らそう」

 

「後ろからバッサリ行くホー‼︎」

 

「ジャの字よぉ、バッサリやるのは俺っちじゃねーか」

 

「オイラが付与してやるホー」

 

「ったく調子がいいねぇ」

 

「魔法よりも忍び寄ってバッサリの方が良いだろ。不意打ちで先手を取った上で畳み掛ける。なぁにいつもの事じゃないか」

 

「…そうね」

 

「だな」

 

「ヨシツネ、お前に目もくれなかったシャドウはどっちに行ったか分かるか?」

 

「…上だな。そうだ、上だ‼︎」

 

「なる程、実際保護、合流は現実世界が影時間に入ってからの方が良いんだが…見つけられても居ない今皮算用だな」

 

「そうね、でも私たちの安全が先よ?メディア」

 

「ありがとうウズメ。よし、バレない様に上へと進もうか」

 

 

 

心理的なモノだろう、パニックになった人間は奥へ奥へと逃げてしまうらしい。今回の遭難者も御多分に洩れずその通りらしい。しかも虫の知らせで安全なルートが見えると来たら…、最悪もう一泊だな。ま、明けるまでの時間次第かもしれんが。

 

 

…閉じてから1時間か。ここで焦っちゃならん、落ち着かないと助けられるものもそうはいかなくなる。さぁ、慎重に進んでいくか。

 

 

 

 



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かくれんぼはしばらくいらない

ワクチン3回目を迎える身なので初投稿です


閉じた影時間は正に混沌だった。逃げ惑う弱いシャドウに我が物顔の強いシャドウ。そしてそいつらを気まぐれに倒しては食う悪魔が闊歩する。そんな有様だ。

 

 

「全然進まないな…」

 

「仕方ねぇよ。流石に俺っち達でも倒してもキリねぇもんな」

 

「そうよね…でも、普段と違う道がある様な気がするのよ。ねぇ、ヨッシーも違和感無い?」

 

「あん?細けー事わかんねぇんだよなぁ。階層自体が不定形だからよく分からんぜ」

 

「こう言う時に役に立たないんだから…。とにかく、リョウスケちゃん!アタシの事に賭けてみれる?」

 

「マジか?って事は閉じた時に行ける所が怪しいよな?よし、とりあえず今日…って言えるのか分からんが、今日のところは時間をしっかり計っておこう。とりあえず2時間経った位だな」

 

「そうね、今のところシャドウがざわついてる様子も無いし、行方不明者も差し迫って危ない訳じゃ無さそうだわ」

 

「よし、もう少し隠密行動だな」

 

「…そろそろリョウスケちゃんが忍者みたいになってきたわね」

 

「…リョウの字がいりゃあ俺っちもスケの兄貴にやられやしなかったんだろなー」

 

「流石に源平合戦の勝者には恐れ多すぎるぜ…。さ、行くか」

 

 

 

さらに調査を続けること2時間、あれだけいたシャドウ達は波が引く様に戻っていった。そろそろ再び影時間に突入かな?

 

 

ゴゴゴゴ…

 

外からすごい音が聞こえてきた。タルタロスが再び顔を覗かせたんだろう。それと同時に影時間が始まった訳なんだが…今のうちに休息を取ろう。エントランスにベルベットルームへの扉があるはずなんだが…シャドウの変化を見逃したく無い。仕方ないがタルタロス内で安全地帯を探すしか無いな。

 

 

「ふぃー、流石に疲れたわね」

 

「まぁ、ここまで探索続けた事なんて滅多に無いからな。幸い相手がそこまで強く無いって事だな」

 

「そうだな。リョウの字は準備がいいんだが、道具で回復すんのとはまたちげーもんな」

 

「そうね、私も気を張りっぱなしなのは久しぶりよ」

 

「オイラも疲れたホー」

 

 

現実世界における時間で言ってももう5時間位は潜ってるからな。そりゃ腹も減るよ。

 

「こんな事もあろうかとってな。俺の軽食とお前ら向けのオヤツだ。ま、軽めなのは勘弁してくれ。合流出来た時の事を考えたら必要だから全部出すわけにはいかんのさ。ま、明日の満月乗り越えたらパーっと食おう」

 

「いいわねぇ‼︎」

 

「そろそろ俺っちも酒なんてモノを一つ」

 

「あら、私もお酒は欲しいわね。日本神とは切り離せないわよ?」

 

「アタシはとびっきり甘いモノ‼︎」

 

「オイラはキンキンに冷たいヤツがいいホー!」

 

「分かった分かった、それも万事済んでからだ。ちょっと息を抜いたらまた一息入れなきゃならんな」

 

 

持ち込みのジュースと軽食でリフレッシュ。長期戦を想定しておいて良かった。流石にここからもう5時間はやってやれない事は無くても辛い事は辛いからな。

 

 

「そろそろ動き出そうか。切り替えはしないとな」

 

「だな。しっかし中々ホネのある異界だぜ…広くって仕方ねぇな」

 

「そうよねぇ…、マコトちゃんとか来れる時間帯のシャドウはそんなに強く無いケド…」

 

「広いわよねぇ…。メメントスもそうだけど、ニンゲンの深層心理って凄いのね」

 

「まぁ、ここに関して言えば『死』って概念はニンゲンと切り離せないからだろうな。結局どこまで掘り下げたとしても付き纏う。そして、最上部、この異界の中心に『死』を司るニュクスが居る。そういう事だろう」

 

「…やっぱりニンゲンって難しいわね」

 

「さ、そろそろ行くぞ。とりあえず調べるべきは閉じた後のもう少し上の方だな」

 

「ええ、そうね。今度は固まって動くのかしら?」

 

「ああ。ここまで見つからない位なら散開して動いた方が余計に息を潜めそうだからな」

 

 

リフレッシュした俺たちは再び訪れる影時間の終わりを待つ。その間にも活動部の連中が入ってくる事は無かった。という事は現実世界での捜索にリソースを割いたんだろう。

 

 

 

「さぁ、気合入れなきゃな。違和感と気配にもっと気を配るぞ」

 

「任せて!とりあえず違和感のあった所まで行きましょ‼︎」

 

 

ピクシーが覚えた違和感は僅かなモノだった様で比べて初めて違和感だと思った様だ。場所は行き止まり近くのフロアだった。何の手がかりも見つかってないから藁にもすがるそんな気持ちでフロアに踏み込んだその時だった。

 

キャー‼︎

 

…遠くから叫び声が聞こえてきた。アタリだがついでにピンチだ。

 

 

「急ぐぞ!」

 

「おうよ!」

 

 

さぁて何に追いかけられてるのやら…

 

 



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ヤツは来る

3回目ワクチンは無事に乗り切ったので初投稿です


訪れた影時間が終わる時。それももう潜って2回目ともなれば休憩したとはいえ消耗は隠せない。だからって助けに行かない理由にはならないけどな。

 

「もう少しか⁉︎」

 

「逃げてるから仕方ないけど…ルート選定が的確過ぎるな」

 

「全くよ‼︎」

 

「ヨシツネ、先行してくれるか?」

 

「切込隊長は俺っちのシゴトだよなぁ⁉︎任せろい‼︎」

 

「俺たちは集まるシャドウ共を後ろから削って行く‼︎」

 

「オッケー!」

 

「分かったわ!」

 

「頑張るホー‼︎」

 

 

単独でも十分過ぎるほどの戦力となりスピードも申し分ないヨシツネを先行させて何とか被害が出ない様にしたいんだが…。

 

「まずいわ…この先行き止まりよ‼︎」

 

「追い詰められちゃったホー⁉︎」

 

「お前たちもヨシツネに合流してくれ。俺は遅滞戦略を採る。ま、まだアイテムはたっぷりあるし、頃合い見て合流するさ」

 

「…気をつけてね。ラクカジャ」

 

「ええ、信じてる。タルカジャ」

 

「オ、オイラも何かやるホー!ディアラマ」

 

「助かる」

 

 

この先が袋小路なのに対して通じる道が複数有るのは厄介だ。仕方なく対応力が一番高い俺1人で敵の数を減らす選択を採るしか無かった。

 

『おいおい、ワレを忘れるでない』

 

「…すまんな、手数って意味じゃどうにもならんだろ?」

 

『ふん、この程度の有象無象に手数など必要あるまい。波に飲まれそうなら更に大きな波を生み出し飲み込んでしまえば良い』

 

「…簡単に言ってくれる」

 

『如何に此奴らがどれだけ居ようと関係あるまい。ワレは若輩とはいえ破壊の権化よ…、ワレの真髄は一心不乱の大破壊。正に万物を屠る者よ‼︎』

 

「分かった。そこまでいうならもっと引き付けてやるぞ?」

 

『カカッ、それでこそワレの宿主に相応しい。ヌシにはもそっとふてぶてしくなって欲しいものよ』

 

 

ヴィローチャナに乗せられてしまったか?確かに尻込みし過ぎていたか。単純に強さだけでどうにかなる世界じゃないとは思っていたが力で何とかなる部分が有るのも事実だったな。安全マージンを大きく取り過ぎる様になっていたらしい。

 

 

「引き付け過ぎたか?」

 

『カカカカ、この程度肩慣らしにしかならん。ワレの手の内よ』

 

「そうか、そろそろタルカジャも切れるな。行くぞ‼︎」

 

『任せい、ギガントマキアァァァァ‼︎』

 

 

俺自身がいい具合に()()出来ていた。タルカジャによる攻撃力のバフも相まって通路に所狭しと押しかけてきていたシャドウは殆どが消し飛んだ。中には物理に耐性を持つ奴もいたはずだが…

 

 

『カカ、無効や反射ならいざ知らず、耐性程度でワレの一撃を堪えられる訳無かろう。しかし、ワレが単独で顕現しておる時よりも気持ちの良い一撃であった。なる程、ヌシとの相乗効果とはこういう事か。面白い』

 

「ハァ、ハァ、ハァ…。ふぅ、さすがだなヴィローチャナ。あれだけいたシャドウもほとんど消し飛んでる」

 

『当然よ。ヌシもいつぞやに比べて消耗も減っておるではないか。中々に鍛錬を積んでおる様だの』

 

「まぁな。目標となる奴らと真正面から戦うってんならまだまだ足りないけどよ」

 

『…まぁ、真なるワレに挑むのなら当然よ。フフフ、真楽しみよ』

 

「高い壁はいくつも有るなぁ…。さ、アイツらの所へ向かうぞ」

 

『ムゥ、もう暫し感傷に浸らせてくれても良いものを…』

 

「まだこれからだからな。頼りにしてるぜ」

 

『フンッ』

 

 

とりあえず目の前の通路を通ってきていたシャドウは片付けた。他のルートから流れ込んでくる分の処理をしないとな。…チッ、反動は流石に重たいが回復でなんとかなる、急ごう。

 

 

 

剣戟や魔法の破壊音が聞こえてくる。もうそこだな。…あーシャドウの群がりっぷりで分かるなこりゃ。

 

 

「よい…しょっとおぉ!」

 

ヴィローチャナの振り下ろしによって仲魔との間に道を作り合流する。何とか間に合ったな。うん、この場所なら守りやすい。

 

「リョウの字‼︎」

 

「お待たせ。ピクシー、デカいの頼む。ウズメは回復してもらえるか?」

 

「オッケー‼︎まっかせてー、メギドラ‼︎」

 

「全く、ディアラマ!ほら、もう大丈夫でしょう?」

 

「助かった。さぁ、ここから先は通さんよ?っと、あー、大丈夫かい?」

 

いけないいけない、安否の確認はしとかなきゃならん。

 

「な、何なんですか⁉︎ここは⁉︎貴方は⁉︎私が何をしたって言うんですか‼︎」

 

「ふむ、ここはタルタロス。まぁ月光館学園に()()()()()()()で居る事、かつ適性…と言えば良いのか?まぁ霊感見たいなモノを持ってるならば迷い込んでしまう異空間って所だな。俺は葛葉リョウスケ。こう言う()()()()()を解決する専門家…のヒヨッコかな?コイツらはそんな俺の愉快な仲魔達さ」

 

「葛葉…リョウスケ先輩⁉︎あの先輩ですか⁉︎」

 

「…親族以外に葛葉姓は知らないから多分()()()()だな。そして君()なにもしていない。が、コイツら、シャドウって言うんだけど、どうやら君に用があるらしい」

 

「…捕まったらどうなるんですか?」

 

「コイツらなら…まぁ、良くて無気力症候群患者。最悪は…」

 

「ヒッ⁉︎」

 

「しかし、良く逃げてたよ。良くやった。君が逃げていたから俺たちは間に合ったんだ。…名前は?」

 

「や、山岸風花です…。こ、怖かったんですよ…」

 

シュミの悪いお化け屋敷に10時間くらい1人で正に命懸けの鬼ごっこ。そりゃ精神も擦り切れるな。

 

「まぁ、何はともあれ合流できたんだ。…コッチの世界で大凡12時間、向こうじゃ居なくなって3日目、いや、4日目だな」

 

「4日も⁉︎」

 

「まぁ、聞きたい事は山ほどあるだろうが、こんな現象分かってない事の方が多い。それにココは専門のチームも有るからな。何にせよ説明は出てからにしよう。さぁ、飲み物と軽食を用意しておいた。少しずつでも良いから摂るように」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「さ、もうひと踏ん張りしますかね」

 

 

山岸風花ちゃんと合流し、一息つかせることができて俺もホッとした。このまま何ともなきゃ良いんだが…そんなうまい話、無いだろうなぁ。

 

 

シャドウの襲撃も落ち着きを見せ始め、影時間の始まりまであと30分といった所、落ち着いた事により周りの状況を知る余裕ができた風花ちゃんから声がかけられた。

 

「…あの、この音ってなんですか?」

 

「音?」

 

「はい、なんていうか…金属を、引き摺る様な音…聞こえませんか?」

 

「…例えば鎖なんて引き摺ったらそんな音鳴りそう?」

 

「ああ!そうですね鎖です!…何か知ってるんですか?」

 

「今からもうすぐ一番めんどくさいのが来る。あと30分。あと30分でまた現実世界と影時間が交わる。その時までもう少しじっとしててもらえるかな?…君の事を気にかける余裕が無いかもしれん」

 

「…何が来るんですか?」

 

「一言で言うなら…『死神』だな」



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来るのが分かってるならそりゃ準備する

健康的な生活が続いているので初投稿です


…チャリ……チャリ……

 

 

響く様な鎖の擦れる音。ペルソナシリーズといえば…と連想される位には有名になった()()()()が近付いて来ている証拠だ。なるほど、聴こえてくるというより脳に響くこの感じ、本能的な部分で察知しているのかもしれない。となると本能で危険回避をして来ていた風花ちゃんが俺より早く察知したのも頷ける。

 

 

「し、死神?ま、まさかそんな…」

 

「奴さんはまさしく命を刈り取るモノ。対極に存在するからこそ命を持つニンゲンに引き寄せられて来るのさ」

 

「だ、大丈夫ですよね?」

 

「そりゃ負ける気なんて無い。負けたらどうなるかなんて分かりきってるからな。そりゃ使える手は何だってするさ」

 

「逃げましょう⁉︎」

 

「そりゃ確かに選択の1つだ。ただ、いつまで?どこまで?少なくとも当て無く30分は走り回らなきゃならないが…君のフォローをしつつとなると中々のリスクがあるんだが、それでも?」

 

「ゔっ…ごめんなさい」

 

「まぁ、その辺を評価に入れた答えが一当てしてから逃げる!だ」

 

カチャカチャ…

 

「何か違うんですか?」

 

「追いかけて来るより()()()()()()()()()のさ」

 

カチャカチャ…

 

「あの、さっきから何を?」

 

「簡単なトラップさ。倒すのはおろか、ダメージも期待できる代物じゃあないけど」

 

「じゃあなんでですか?」

 

「一瞬でも足止めできればそれで良いのさ」

 

「そんなの効果有るんですか?さっきまでの化物達に効果ありそうなのって…」

 

「まあ、効いたら儲け物位でいいのさ。それに…気を逸らすってだけならやり様はある。君は…そうだな、ガラッと雰囲気が変わる瞬間が来る。それを察知したらコレを投げてくれ」

 

「これは…?」

 

知り合い(菅野フミ)にもらった手榴弾」

 

「え⁉︎危険ですよ‼︎」

 

「まあ、特別なヤツでね。中身は火薬じゃ無いから安心してくれ。…多分大丈夫だ」

 

「一気に不安になりましたよ…」

 

とっておき…という使い所が無かったフミさんが作ったブツ。曰く…

 

『一度アタシの技術力を実地で試してくんない?キミから貰ったデータから計算したところ効果は有るハズだから…安心して』

 

らしい。

 

 

おっかなくて使えなかった…って部分もなくは無いんだがな。弱いヤツに使っても分かりにくいから後腐れないヤツ(刈り取る者)で試すに限る。

 

 

…ま、訳の分からないまま一番エグいヤツと出くわす羽目になってるんだし、何か頼み事でもあった方が気が紛れるだろう。試すのも出来たら良い位の気持ちだし。

 

 

 

ジャラジャラ……

 

 

ジャラジャラ……

 

 

鎖の音が俺にすら聞こえるレベルになって来た。風花ちゃんは青い顔をして不安そうに渡した手榴弾を握っている。

 

「…いきなりコイツとエンカウントはヘビーだよなぁ。とりあえずやれるだけやりますか」

 

「き、気をつけて下さい」

 

「…はっはっは」

 

「何がおかしいんですか‼︎」

 

「そんな真っ青で言われても…ってね。冗談冗談。さぁ、もう来る。準備をしておこうか」

 

 

強敵と合間見える事となったら定番の準備、バフをかけておくのは基本だな。後回しにしてたけどスタイルから言ってスクカジャ使える仲魔が欲しかったね…。

 

 

 

「リョウの字よぉ、この音は遠巻きに見たアイツかい?」

 

「そう。あの時は戦う理由が無かったけど、今日は違う。少なくとも勝たなくても良いからマシかな?」

 

「なんだかリョウスケちゃんと居るとそんなのばっかり相手するわね…」

 

「悪かったな。もうちょい俺自身が強けりゃ展開も変わるんだろうが…」

 

「というより、ライドウ君の時より大きな問題が多いのかしら?」

 

「ヒホ?オイラは…」

 

「アンタは乗っかんなくていいの!」

 

「良い感じに力も抜けたな。さぁて、おいでなすった!」

 

ジャララ…ジャラジャラ…

 

通路の向こうから近付いて来るのが分かる。無機質な目…ただただイノチある者を刈るだけの死神。

 

不吉、不幸、不安、不気味…あらゆる負の感情を掻き立てる様なオーラをしている。

 

「ひっっ⁉︎」

 

 

まともに()()()()()()風花ちゃんにはいささか刺激が強すぎたか。見よう見まねで陣地を作ったつもりだったが…これ以上は仕方ないな。

 

俺たちパーティは刈り取る者の前に立つ。向こうさんも待ち受けられた経験は無いらしくわずかだが動揺が見られた。せっかくだ、カッコつけるならここだろ。

 

「俺の命、簡単に刈れる程ヤワじゃねーぞ?」

 

俺の啖呵と共に仲魔達は攻撃に移る。あらかじめ準備していたバフや方針は決まると気持ちいいんだ。

 

 

「…⁉︎」

 

「おいおい、ニンゲン舐めんなよ?ただただ刈られるだけの存在じゃ無いんだよ。ヨシツネ‼︎」

 

「任せろ…気合ため(チャージ)も済んだ俺っちの奥義、お腹いっぱいどうよ。八艘飛び‼︎」

 

「アタシも集中(コンセントレイト)バッチリよ‼︎メギドラ!」

 

「ブフーラ‼︎」

 

「ジオンガ‼︎」

 

「ヴィローチャナ、行くぞ‼︎」

 

『おうともよ、震えるわ。死神よ、ワレの拳はちと重たいぞ?万物屠り‼︎』

 

「……⁉︎⁉︎⁉︎」

 

初っ端から遠慮無しに火力のある攻撃を叩き込んだ。このコンビネーションはエリザベスやアスラおうにすら通用した。手応えもあったが…

 

「や、やりましたか?」

 

…砂煙が落ち着いて来るとそこには多少ダメージを負った様子はあるものの未だ健在の刈り取る者が。風花ちゃんはまた真っ青な顔をしてる。ま、想定内だ。

 

「そんな簡単じゃ無いよな。さぁ、こっからが本番だ…来るぞ‼︎」

 

 

 

 

 



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浮き彫りになる課題

一足先に新生活始まっているので初投稿です


「……!!!!」

 

戦闘態勢に入った刈り取る者は奴のアイコンと言っても良い手にした長い銃身のリボルバーをこちらに向けて放つ。予備動作と方向が分かり易いからなんとか避けられたが中々ヤバそうな威力を感じるな。それに、射線に気をつけないとダメそうか。まあ、行き止まりまではまだ少しある位で接敵したから大丈夫だとは思うんだがな。

 

 

「こりゃ固まらない方が良いな。各自散開しつつ嫌がらせだ」

 

「まーかせるホー!」

 

イタズラをさせれば陽気な妖精フロストは一級品。()()しにくいだろう?

 

とはいえあのマスケット、振り回すだけでも凄い威力だな。

 

 

「懐かしいねぇ、この感じ。バチバチに殺意を向けられる…くぅ、痺れるぜ」

 

「ヨッシー、あてられてるんじゃないのよ!ったく」

 

「悪りぃ悪りぃ。青い嬢ちゃんともアスラの旦那とも違う、コッチを殺すって意思しか感じくてよ、ついアガっちまった」

 

「そりゃコイツは人間に降り掛かる突然の『死』を具現化した様なヤツだからな。感じる意思なんてそれくらいだろうさ」

 

「ま、何だって構わねぇよ。俺っちはこんな奴が相手で満足してるぜ?」

 

「おいおい、倒すのが目的じゃないぞ?」

 

「全く、落ち着きなさいよね」

 

 

しかし、実際に対峙するとコイツの強さが分かるな。純粋に強いってこんなに厄介なのか。ありとあらゆる属性魔法に加えて広範囲の物理攻撃…、こっちに状態異常を仕掛けてこそ来ないだけまだマシってとこか。更に言うなら弱点らしい弱点が無いのも面倒だ。隙を作ろうにもコツコツ体勢を崩す位しか無さそうなのがな。

 

 

 

 

「ちっ…。中々痛いな」

 

「メディラマ!大丈夫リョウスケ君」

 

「助かる。ああ、ガードしてもこのダメージだから侮れないな」

 

「しかもタフだもんね…」

 

「だよなぁ。何とも攻撃が荒いから酷いことになって無いが…正直決め手に欠けるよな」

 

「硬すぎるぜ…。ったく、終わりが見えやしねぇな…」

 

 

闘いが始まってからというもの、大きな動きはあまり見られなかった。刈り取る者の攻撃はよっぽどタイミングや体勢が悪くなきゃそうそうに当たりはしないが、俺たちの攻撃も中々ダメージとして通らない。誰かのセリフじゃ無いが何とも言えない感情になるな。

 

 

「こりゃこの時間内に倒し切るのは無理だな」

 

「ちっ、仕方ねぇか」

 

「……そうね」

 

「ああ、俺たちの攻撃力不足だ。加えてコンディションも条件も良くない。方針を切り替えようか」

 

 

格上というかシンプルに強い連中に勝ち切れない事が続く。俺の精進が足りてないのは間違い無いが、新しい仲魔を考えないといけない。…どうにも感傷的になり過ぎてその事を無意識的に避けてたのかもしれない。封魔管が貴重ならそこを()()()()()()()。それだけの話だったんだが、中々踏み出せなかった。特にこうしてコミュニケーションを重ねた仲魔だと思うと余計にな。

 

 

っと、危ない。今はぼんやりしてる余裕なんて無かったな。考えるのはこの後。

 

 

「大丈夫?変なとこ当たった?」

 

「いや、大丈夫。ダメージは無い。らしくもなく戦闘中に意識を別のところにやってしまったのさ」

 

「おうおう、油断だぜ、そりゃあ」

 

「分かってる。ふぅ、こっちの状況は?」

 

「俺っちはまだまだイケるぜ」

 

「アタシは魔法もう少しで売り切れー」

 

「私も」

 

「オイラもホー」

 

「…影時間に再突入まであと3分。大バーゲンでちょうど良さそうか」

 

「隊列は?」

 

「俺が後。他は前だ」

 

「了解!」

 

「さぁもう一踏ん張りだ」

 

 

俺が後衛に回って刈り取る者の攻撃始動に合わせて銃撃する事で阻害を狙う。後は薬だな。妙さんの不思議な元気の出る薬はなんでか仲魔にも効果が有るのは助かる。まだ種類も効果も全然無いんだけど、手段として選べるだけありがたい。

 

 

 

「そ、そろそろです‼︎」

 

突入時刻まであと少しと言うところで約束通り風花ちゃんが声をかけてくれた。

 

「い、行きます‼︎えいっ‼︎」

 

力みに力んだフォームから投擲された手榴弾はどう見ても届きそうに無い。

 

「あっ…」

 

そんな声と共に手榴弾は俺の目の前に。下がっておいてよかったな。

 

「あー、ナイスパスって事で。ほれ、おあがりよ」

 

仕切り直しとして俺が投げつける。中身は特製の()()()()だ。なんでも粘性だけなら車だって抜け出せなくなるらしい。…なんでそんなモン一介の科学者が趣味で作ってるんだよおっかない。

 

「ナーイスショット‼︎」

 

「ひえー、ありゃ食らいたくねぇな」

 

「よーし、お前ら…逃げるぞ!」

 

「スタコラサッサホー!」

 

「えっ、えっ⁉︎」

 

「ほら、貴女もボーッとしてないで…逃げるわよ。もう、ヨシツネ君よろしく」

 

「ほれ、嬢ちゃん舌噛むんじゃねぇぞ?」

 

「………!!!!」

 

トリモチ爆弾で絡め取れる時間がどれだけ有るかは分からないから一目散に俺たちは逃げた。頃合いとしてはちょうど再突入の時間だが…?

 

 

「な、何か…へ、変でふ‼︎…痛っ」

 

「おいおい、ホントに噛んじまったのかよ。嬢ちゃん大丈夫か?」

 

「よし、全員ストップだ。そろそろ再突入らしいな。さて、どこに出るかな?」

 

 

ゴゴゴゴゴ………

 

タルタロスは地響きをたてながらその容貌を変化させていく…。

 

「見覚えある奴いるか?」

 

「うーん、多分上の方だと思うんだけど…」

 

「とりあえず階段探すか…」

 

「葛葉さん‼︎さっきのヤツが来ます‼︎」

 

「チッ、思ったよりすぐ抜け出して来やがったな」

 

「あっ、反対方向から誰か来ます‼︎」

 

「マジか…って。助かったぞ風花ちゃん。コレは知ってる気配だ」

 

「リョウスケさん⁉︎それに君は…すごい状態だね」

 

「こ、これは⁉︎違っ、降ろして下さい!」

 

「いんや、どうせまだ走らなきゃならんだろ?なぁリョウの字」

 

「ま、もう少しだから我慢してもらおう。マコト君、出口分かるね?」

 

「あー、はい。行きましょう」

 

「ゴメン、急ぎで頼む。ちょっとめんどくさいのに追っかけられててさ」

 

「………!!!!」

 

「やべ、来た」

 

「何ですかアレ⁉︎コッチです‼︎」

 

 

なんとかなりそうかな。いや、良いとこで来てくれたよホント。さて、とりあえずは色んな報告からかな?

 

 




ドロン玉ってどんなものだろうと思えばこういうグッズかなぁと。トラフーリとはまた違いますね。


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覚醒シーンに水差し野郎は必要ない

お待たせしすぎたので初投稿です


俺たちはマコト君のお陰でなんとか通常のタルタロス領域へと帰ってこれた。

 

「いやぁ、流石に疲れたよ。まだまだ見積り甘かったね」

 

「…ひょっとしてリョウスケさん、2日前から?」

 

「お、こうして言われると時間軸のズレを実感できるなぁ。たしかに俺は6月6日に影時間へと入ってから外に出ていない」

 

「なんだか含みのある言い方ですね…」

 

「俺は10時間ちょっと。少なくとも12時間以上動いていた訳じゃない。それに、あの子…山岸風花ちゃん、ペルソナで()()()()人間が丸3日、72時間も居たらもっと消耗してるだろ?まぁ今は目を回してるけどさ」

 

「まさか、それを調べるためにずっと入ってたんですか⁉︎」

 

「もちろん根底は救助目的さ。あとはいつも通り現世と繋がる時間帯じゃあ見つからなかったってのもあるけど」

 

「…どうでしたか?」

 

「中々、いや、大分キツいね。一番は最後追っかけて来てた()()だけどさ」

 

「エリザベスに気を付けろと忠告されていました…、ハッキリと理由がわかりましたよ」

 

「ま、今はそれが分かるだけでも十分さ。俺だって倒し切れなかったから隙作って逃げて来たんだし」

 

「リョウスケさんでも勝てないんですか⁉︎」

 

「そりゃいくらでも居るさ。勝てないって分かってるならそういう戦い方をすれば良い。死ななきゃ安いさ」

 

「死ななきゃ…安いですか?」

 

「何でもかんでも1人で出来る事なんてしれてるのさ。たしかに俺は君らより強いかもしれない。けどそれでどう変わるかって言えば選択肢が増える位のもんさ。…ま、()()()()ってのをベットする前に足掻くタイプなだけだよ」

 

少なくとも命を使わない選択肢を持ってくれない事にはこっちがどれだけ動いたところで無駄になりかねない。これは俺からの課題…かな?

 

「…」

 

「よし、ここまで来れば入り口まですぐだな。ほれ、風花ちゃん、大丈夫か?」

 

「う、うーん。ここは?」

 

「ここもタルタロスさ。ま、普通のね。で、なんでマコト君だけコッチ来たの?」

 

「手がかりから体育館で張ってたんです。そしたらあんな所に」

 

「なるほどね。とりあえずロビーに行くか。動きやすいだろ」

 

「そうですね…」

 

俺たちはエントランスに向かってどんどん降りていく。…しかしなんだこの違和感。どうにも嫌な予感がするが、脱出しない訳にはいかない。虎穴に飛び込むしかなさそうだな。

 

 

「ここが出口ですか?」

 

「…来たな」

 

「リョウスケさん?」

 

「葛葉さん?」

 

「どうやらすんなり返してくれる気はないらしい。全く、俺は早くゆっくりしたいのに」

 

「結城‼︎無事だったか!」

 

「結城見つかった…ってええ‼︎何でセンパイがここにいるんすか⁉︎」

 

「その話は後。ほれ、来るぞ」

 

「へ?」

 

うっかり変装の仮面を忘れてたお陰でバレてしまったがまぁいい。いつまでも隠すつもりも無かったしな。それよりアルカナシャドウのおでましだ。

 

「な、なんだよコイツら」

 

「さぁ、マコト君。()()()()()

 

「…僕たち3人でやらせてください。僕の…僕たちの相手です」

 

「な、何なんですか⁉︎さっきのとは違う?」

 

「アレはそうだな、このタルタロスに満月の日現れるトクベツなシャドウってところだな」

 

「順平、真田先輩来ます!」

 

「指示は任せたぞ結城」

 

「お、おう!やってやるぜ!」

 

マコト君はアルカナシャドウを自分達で何とかする事に決めたようだ。コイツらは確か…『エンペラー』と『エンプレス』だっけ?なんか厄介な事あったっけな?

 

 

「っしゃあ!何だコイツら、弱点ばっかりじゃねーの?」

 

「これならさっさと決めるか。結城!タイミングは⁉︎」

 

「よし、こっちもダウンを…」

 

「ダメです‼︎」

 

「ええ⁉︎今行けそうだったじゃん…って」

 

「なるほど、よく分かったね風花ちゃん」

 

「リョウスケさん?」

 

思い出した。コイツら弱点入れ替えて来るんだったな。…ん?エントランスから走って来るのは…誰だ?後から追いかけて来るのは美鶴ちゃんか。って事は風花ちゃんをいじめてた連中の1人かな?

 

「風花!」

 

「あん、あの子って確か…」

 

「森山さん⁉︎どうして…」

 

「くっ、危険だ!」

 

「おいおいやべぇんじゃねぇの⁉︎あの子見えてねーのかよ⁉︎どうすんだよ結城!」

 

()()()()()()んじゃないかな?此処で動ける程度の適性じゃあシャドウを認識出来なかった。…マズイね」

 

 

さすがに一般人…いじめの主犯としても…が巻き込まれることになるのは不本意だ。そう思い手を出そうとした時だった。俺が思うより早く風花ちゃんが飛び出した。まさか…ここで覚醒か?思い当たるフシが有る俺はいつでも飛び出せる様に備えながら事態を見守る事にしよう。

 

 

森山夏紀という少女は風花ちゃんをいじめてはいたものの実際に行方知れずになり、更にはいじめに同調していた友人達がどんどん事故に遭うなんて境遇に遭ったらしい。思いの丈を吐露していき、風花ちゃんに謝った所『エンプレス』と『エンペラー』は森山さんを盾にするかの様に位置取りを変えてきた。

 

 

「ふざけないで…、貴方達の好きになんかさせない…。私のこの力で皆んなを守る…お願い『ルキア』‼︎」

 

「ま、マジかよ⁉︎」

 

「そうか、彼女も能力者だったのか」

 

「すごいね。これで戦いも少しは有利になりそうかな」

 

「…皆さん、私の『ルキア』は相手の弱い所が分かるみたいです!効果的な作戦を お願いします!」

 

 

やるじゃない。気弱な子かと思ったけど、一本芯が通っていた様だ。ペルソナに覚醒する輝きはなんとも惹きつけられる。…それはもちろんニンゲンだけじゃない。ココロの輝き…まさしくマガツヒ大爆発だ。

 

 

「フフフ…ササゲヨ…ササゲヨォォォ…!!!!」

 

「おいおい、お呼びじゃないんだよ。それに…変身シーンは手出し無用だろ?」

 

天使の群れが湧いて出てきた。無粋な連中だ…メガテン世界においてコイツらだけは野放しにしておかない方がいい種族の筆頭だからな。

 

「全くだぜ…。俺っちもいい気分だったのによぉ…」

 

「ほーんと。せっかくこれからってトコロなのに…」

 

「ま、場を整えるのも俺たちの役目って事で。鬱憤はコイツらで晴らさせてもらおうじゃない」

 

そう仲魔達に告げ俺たちはシャドウと戦いを続けるマコト君のチームを標的にした天使達を倒し始めた。

 

『水差しに遠慮はいるまい?』

 

どうやらヴィローチャナもご立腹らしい。注意が逸れているうちに決めよう。

 

「『万物屠り‼︎』」

 

「いよっしゃあ!!」

 

俺が大技を出し殲滅を終えたのと同時に聞こえてきたのは順平君の戦いを終えた歓声だった。



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山を超えた谷間でもやる事はある

急に暑いので初投稿です


全く…弱くも無いくせに数も纏まって出てくる。ほーんと厄介だよ天使族は。()()()()()は神々しいのも救われたいニンゲンのココロのスキマを狙うためだろうしな。

 

 

俺達はボヤキながらも惹かれて集まってきた天使族の殲滅を果たした。ある意味1番の盛り上がり、そして仲間の成長、覚醒によって盤面をひっくり返す…なんてカタルシスを味わう所に水を差された恨みをぶつけた。

 

「やんなっちゃうわね!」

 

「全くだぜ…、かっといって羽付きどもはライの字も苦労してたからなぁ」

 

「この国じゃあマシだったけれど他の国の土着神達からの評判は最悪だもの。傲慢で自信過剰で…自身が正義である事を疑わず、その身を捧げる事すら当然の事の様に享受する。正に悪魔みたいな奴らだもの」

 

「…やっぱり良い印象無いんだな。ま、だろうなとしか言えないな。幸いなのは風花ちゃんクラスの贄をなりふり構わず取りに来た事からそこまで天使族が強い勢力って訳でも無さそうだな。流石の連中も終末思想が流行らなかった世界じゃ干渉もロクに出来ない。幅を利かせる世界じゃあ無いって事だろうな」

 

 

天使とかLAW属性とこの世界の相性はいやな意味でバツグンだ。秩序を司りたい奴らに暴力装置を持たせるのはホント危険だよ。何がきっかけで勢力拡大するか分からない。見かけたら潰すに限るよホント。

 

 

「あーあ、アタシも見たかったなー」

 

「…って先輩なんでこんなトコいるんすか⁉︎つかソイツらって…」

 

「なんだ、伊織は知らなかったのか」

 

「へ、真田先輩は知ってたんすか?…結城は?」

 

「僕も知ってたよ?」

 

「…マ、マジかよ」

 

「ふむ、今度から俺たちはペルソナ有りで挑ませてもらおうか。もう皆んな知った様だから受けてくれるだろう」

 

「…真田先輩は変わんねぇっすね」

 

「む?目標にすべき人が近くに居るんだ、何が気に入らないんだ?」

 

「いや、別に…。ただ、そんだけツエーんならあの人に任せちまえば良いんじゃねーのかなぁって」

 

「ダメだよ順平。人任せじゃいつまでもこんな事が続いちゃう。…それに」

 

「それに?何だよ…」

 

「俺が首を突っ込んでる異界はここだけじゃないのさ。…何があるか、何が起きるか分からない。そんな異界はここだけじゃない。あっち(メメントス)はもっと根本的な異界だ。余計なリスクは減らすに限る」

 

「そうだぞ。とはいえ、葛葉先輩は我々が困っている時に頼れるそんな方だ」

 

盛り上がっている所に俺と丁度シャドウに割り込んだ女の子の処置を終えた美鶴ちゃんが会話に加わった。

 

「そこまで言うかい?参ったなぁ。流石にココに関して言えばソッチが握ってる情報の方が多いだろう?」

 

「かも知れません。が手持ちだけで何とかなさるんでしょう?だからこそ既に彼女の救出へいち早く動き出した」

 

「…こりゃホントに参ったなぁ。ま、ついでに調査したかった事もあったからね。無茶のしどころって訳だったのさ」

 

「何が気になったんですか?」

 

「おいおい、話が気になるのは分かるけど今は休息が必要な人間がいるだろう?俺だって流石に疲れてるんだ、場を改めて話をしようじゃない」

 

「…申し訳ありません。逸っておりましたか」

 

「救出と撃破…大きなヤマを乗り越えたんだ。そうなるのも分かるが先ずは一息かな。風花ちゃんも気を張ってるから何とか立ってるが…ギリギリだろう?」

 

「そうですね。では、話はどちらで?」

 

「この間の運動場、また借りれるかい?話だけで済みそうって雰囲気にならないと思えば丁度良いだろう」

 

「分かりました。伊織、今は納得しておけるか?」

 

「…何かもう良く分んねぇっすよ。お手上げ侍っす」

 

「そう言う訳だ、俺も疲れた。先に帰らせてもらうけどもう大丈夫だろう?」

 

「はい、お任せください。こちらは我らで事足りるでしょう。ありがとうございました」

 

「あっ!助けてくださってありがとうございました」

 

美鶴ちゃんに別れを告げこの場から立ち去ろうとした所声をかけられた。

 

「いや、良い覚悟だったよ。あの気持ち、忘れない様にな」

 

「はい。私の『ルキア』と一緒に歩いて行きます」

 

「ここは広大だ。君のペルソナは大事な役割を担うだろうね。とはいえ今日はもう休むと良い。多分、2、3日は身体を動かすのも一苦労だからね。ま、詳しい話はまたこれからかな?」

 

「え?」

 

 

俺はそれだけ言い放ち立ち去る。流石に今日はもう寝たい。多少身体能力も精神面も一般人より強い自負はあるがそれとこれとは別なくらい疲れたな。

 

 

 

 

6月13日

 

 

ようやく活動部のメンバーと話をする時間が取れた。

 

「さぁ、どこから話そうか。って言っても知ってる人間の方がもう多いのか」

 

「へ?俺と結城とゆかりっち、それで風花ちゃん…じゃないんすか?」

 

「僕は話をしたよ?」

 

「なんだよここでも結城かよ…」

 

「まあまあ順平落ち着きなって」

 

「マコト君に関して言えばちょっと特殊でね。実は共通の知人(エリザベス)がいたおかげなのさ。ま、加えて言えばどうにも狙われてるフシが有ったからね」

 

「狙われてるって…」

 

「アルカナシャドウ。アレはマコト君がこっちに来てからの出来事…だよな美鶴ちゃん」

 

「ええ、間違いなく。我々もあんな事は初めてでした」

 

「あのモノレールの時のヤツらも結城くん目当てだったんですか?」

 

「悪魔に関して言えばニンゲンが影時間のような異界で強い力を発すると寄ってくるから何とも言えないな。風花ちゃんがペルソナに目覚めた時も来てたんだよ?」

 

「マジかよ…」

 

「ちなみに友好的だったり、見た目が綺麗だったりしても信じるなよ?天使や妖精なんて言葉で分類されちゃいるがニンゲンなんて利用するだけの使い捨て位にしかしない連中だからな」

 

「マ、マジっすか…?」

 

「脅しでも何でもない、君たちペルソナ使いは悪魔からすればご馳走さ。幸い強大な悪魔ってのはそうそうお目にかかる事はない位かな。…ま、君らはどんな悪魔でも一目散に逃げた方がいい」

 

「…まだダメですか?」

 

「チカラ関係で言うならまぁ、何とかはなる奴も居る。けれど、悪魔の本領は搦手なんだ。対処を把握していないと文字通り食い物にされるぞ?」

 

少し気を込めて言うと息を飲む音がする。俺というイレギュラーのせいか、この世界の成り立ちからそうなのかは分からない。が、実際に悪魔は出てくる。気をつけるに越した事はない。

 

 

「ああ、そうだ俺の仲魔達を改めて紹介しておこう」

 

見てもらう方が早い。そう思い俺は封魔管を取り出し仲魔達を召喚する。…サマナーはマガツヒを消費して召喚するんだが、俺も随分と慣れてきたもんだ。良く見た事ないメンツは目が落ちそうな程驚いてるな。さて、とりあえずは…自己紹介か?



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解き明かせない謎の世界

5月なので初投稿です


仲魔の紹介を始めた。順平君にゆかりちゃんはポカンとした表情をしている。無理もない、自慢の仲魔達の名前だけは聞き覚えのあるものばかりだからな。ヨシツネなんて知らない日本人はいないだろう。

 

 

「すごっ…」

 

「あ、あの時の‼︎」

 

「あ、改めて紹介されるとエグいっすね…」

 

「うむ、俺達も強くなったと思ったがまだまだ足りないことを自覚させられる」

 

「ケッ、相変わらず嫌になるくらいの気配してやがるな」

 

「荒垣そういうな、私たちにとっては頼れる存在だろう?」

 

それぞれが思い思いのリアクションをしている。仲魔達も注目されてまんざらでもない様子だ。

 

「ヒホ?リョウスケイタズラしてもイイのかホ?」

 

「やだっ、カワイイ‼︎」

 

「ゆ、雪だるま?こんな奴のイタズラなら大丈夫なんじゃ無いんすか?」

 

「コイツはジャックフロスト。分類で言うなら妖精族だな。…ちなみにコイツが言うイタズラを食らうと雪だるまの仲間入りだぞ?」

 

「なんかカワイイ響きですけど…」

 

()()()()()雪だるまになるんだ。…わかるか?」

 

そう。ジャックフロストは雪の妖精として可愛らしい…が同時に冬の厳しさも側面として持っている。

 

「え…」

 

「うそ…」

 

「ヒホ?」

 

「そうよ、こんなトボケた顔してても悪魔は怖ーいんだから!」

 

「ってまた別のカワイイのが!」

 

「こっちはピクシー。まさしく妖精だ」

 

「まさかこの子も…?」

 

「伝承なら小さい子供と楽しく遊んでたら知らない間に別の世界…とかは定番か?」

 

「アタシはそんな事しないわよ!」

 

「分かってる。こっちの武士っぽいのがヨシツネで、今にも舞そうなのがアメノウズメだ」

 

「すご…私でも名前知ってる」

 

「さ、流石に俺でも知ってるっつーの」

 

流石に高校生ともなれば名前は聞いた事はあるようだ。悪魔という存在は有名であればある程強いから当然とも言えるか。

 

「…どうやって仲魔?にするんです?まさか何とかモンスターみたいにその管に捕まえるワケじゃ無いんすよね?」

 

()()()()()()()だな。前提としてソイツとガチンコしてイイ勝負位の強さは必要だけどな」

 

「…え?」

 

「ま、まさか?」

 

「まだ俺っちの方がツエーけどな」

 

「相性の問題じゃないの。ヨッシーの方が刀術修めた時間だって長いんだから」

 

「ま、その内追い越してやるよ」

 

「へっ、あんまり待たすんじゃねーぞ?」

 

「す、凄いんですね葛葉先輩って」

 

「いやいや、俺達もこの人こんな無茶苦茶な強さ持ってるなんて知らなかったから!」

 

「…ねえ、ひょっとして3年生3人がかりで勝てないってもしかして」

 

「ああ、葛葉さんの本職はサマナーなんだ。召喚すらしていないにも関わらず勝ち目が見えない…」

 

「しかもチームワークが良いんだよ…。そこは結城のリーダーセンスに期待だな」

 

「僕?…一度みんなで挑んでみる?」

 

「ホントは仮面の姿でチョッカイかけようかと思っていたんだが…バレちゃったし今更か。ま、やるならタルタロスでやろうか。あそこなら影響も少ないだろう」

 

…まぁ、避け続けてきたが俺も幾月と直接やり取りをしなきゃならないだろうな。個人的にタイミングはアイギスが加入した頃が良いんだが。俺もそろそろ戦力の更新を考えさせられる状況に有る。…ウズメも自身の力不足を自覚してしまっているだけでなく、それを俺も気付いてしまっている。

 

「リョウスケさん、どうかした?」

 

「…いや、ちょっと今後のプランを考えていただけさ」

 

少し考え込んだ間を心配されてしまったようだ、今は説明の途中だったな。

 

 

「さて、何か気になる事は?」

 

「えっと、私達が戦ってきたシャドウより…強いんですか?」

 

「ゆかりっちナイス!俺も聞きたかったっす!」

 

「そうだな…有象無象のシャドウなんかは間違いなく相手にならない。それにアルカナシャドウ、あのモノレールの奴とかこの間の風花ちゃんの時に出てきた奴。あのクラスでもヨシツネなら楽勝だろう。支援が得手なピクシーでも負けはしないだろう」

 

「すご…」

 

「ま、まじすか。そ、そんなのに加えてセンパイまで相手にって…もうお手上げ侍っすよぉ…」

 

「それじゃ、どうして先輩が倒しちゃわないんですか?」

 

「そこか。不満に思う所もあるだろうが、俺は影時間において君らの直接的な手助けをするつもりは無い。…いや、しても構わないんだがその場凌ぎにしかならんからな」

 

「リョウスケさん、その場しのぎってどういう事?」

 

「俺はこの影時間という異界と()が薄いんだ」

 

「縁が薄いとどうなんですか?」

 

「そうか、その辺の話は美鶴ちゃん達にもしてなかったか。そうだな、まず異界の出来方から説明しないといけないな。当たり前の様だが、影時間の様な異界ってのは()為的なものと偶々出来上がったものの二つあるんだ」

 

「人為的?まさか人間でそんな事…」

 

「ああ、俺が使った言葉は神様のジンだ。ま、悪魔に寄るものと思ってくれ」

 

「ここで悪魔が絡んでくるのか…」

 

「えっと、偶々出来上がった異界ってあるんですか?」

 

「まぁ、それをメインに調査しているのが俺の活動内容なんだ。そこは今回絡んでこないからまたの機会にしよう。それで、影時間は原因がある。そしてその核となる悪魔が作り出した異界が現世と結びつくために必要なのが縁なのさ」

 

「…」

 

「ま、そんな訳で縁の薄い俺が気張った所でその場凌ぎにしかならないって訳だ。なんせ今年に入るまで影時間から避けられてる所すらあったからな」

 

「そんな事が…」

 

「え、俺とかゆかりっち、結城影時間に縁が有るって事っすか⁉︎」

 

「⁉︎あ、私は…その…」

 

無意識だろうが順平君の何気ない一言は見事に刺さった様だ。知らないってのは恐ろしいな…。

 

「まぁ、そうだろう。少なからず心当たりはあるんじゃないか?」

 

「…無いんすけど」

 

「となると、これからなのかもしれないな。影時間にまつわる何かによって大きな変化が君に訪れる…そんな可能性もあるかもしれない」

 

「…なんか難しいっすね」

 

「まぁ、分からないことばかりだ。研究なんてロクに進んじゃあいないし、大っぴらに出来る事でも無い。こればっかりは時間と共に起きる事に当たるしか無いのさ」

 

 

場当たり的な対処しかできないサマナーとしての力不足をつい吐き出してしまった。

 

「っと、さて、何か聞きたいかな?」

 

ちょっと空気を悪くした俺が言うのもなんだが流れを変えて質問コーナーとでもしよう。踏み込んだ話はマコト君と同じく俺に力を見せたらという事にしようかな。



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固定イベントを知っていると受け身にしか出来ないもどかしさ

ゴールデンウィークも終わりそうなので初投稿です


こちらから切り出した事もあって随分と空気は穏やかになったかな?脅したけれどフロストが気になって仕方ない女子高生達、扇情的()なウズメのことが気になる男子高校生も居る。…ヨシツネに挑む2人も見える。ま、どんな形であれ悪魔って存在を正しく知ってもらうにはちょうどいいか。

 

 

「リョウスケちゃん、ペルソナに目覚める子達って図太いのかしら?」

 

「まぁ、精神的にタフなのは違いないんじゃ無いか?」

 

「それともイマドキの子達だからなのかしら?」

 

「さぁ、この子達だから…じゃないか?」

 

「リョウスケさん、少し良いですか?」

 

ピクシーと話をしているとマコト君から声をかけられた。

 

「どうした?何か聞きたい事でも?」

 

「うん。リョウスケさんは何となく僕とココの関係が分かってるんですか?」

 

ズバッと来たなぁ。まぁ、予測とある程度の調査結果、…()()()()も加えてしまえばほぼ答えは出せるとも言える。

 

「僕がこの街に来てから不思議なことが多過ぎます。…リョウスケさん、僕しか知らない人間が居るって言ったら信じてくれますか?」

 

 

マコト君しか知らない…?そうか、『ファルロス』が前に現れた頃合いだったか。随分とニュクスも動きが活発になって来た様だな。

 

「そうだな…、ベルベットルームを知るお互いだからこそ自分にしか見えない存在が居るって話を否定は出来ない」

 

「フフッ、確かに。あ、リョウスケさんは知ってるかな?…僕たち客人がベルベットルームに訪れてる時って周りから見るとボーッとしてる様にしか見えないんだって」

 

 

定番のアレだな。ベルベットルームなんて精神世界へとアクセスしてる訳に加えて時間の流れも違うんだから当然起きてる現象なんだろうな()()なら。…いやまぁ、ベルベットルームの客人は最早普通なんかじゃないんだけど。

 

「あー、悪い、俺の場合肉体ごとベルベットルームのある異界へと直接訪れてるんだ。だからハタから見たってのが無いんだわ」

 

「ええ⁉︎…なんだかズルいような?」

 

「うーん、俺が言えた事じゃ無いんだが、通常の世界と違った次元に慣れるってのは良くないんだよ。特にベルベットルームなんて精神と物質の狭間の世界。中途半端なマガツヒ保有で直接訪れるとそのまま世界の構成に還元されちゃうかもしれん」

 

肉体の強さと精神の強さは一致する事の方が多いんだが、どちらかの強さが突出した場合感覚が強い方に引っ張られてしまいかねない。その感覚で下手をこいたら…ゾッとするね。

 

「そう聞くと結構リスクなんだ?」

 

「まぁ、客人としての資格を持つ位なら精神は大丈夫なんだ。だから精神だけが招かれてるとも言えるんだけどな。ま、俺の場合は色々な要因もあって肉体レベルが底上げされてるからこそ許されてるのもあるんだけどな」

 

「…そういえばリョウスケさんのペルソナって?」

 

「俺のペルソナか。それに関しちゃ俺との手合わせで実際に使う所まで追い込んでもらいたいね。ま、この間チラッと見たはずなんだけどな」

 

「『刈り取る者』への時‼︎確か、あの時感じたのは力強さと反抗心。後は…慈しみ?なんていうか敵いそうにも無い位の力を感じたけれど何処となく優しさを感じた気がする」

 

 

すげぇな…。ほぼほぼ完璧に感じ取ってるじゃねーか。

 

(だってよヴィローチャナ)

 

(五月蝿いぞ…)

 

「ククッ」

 

「どうしたの?」

 

「いや、どうにも小っ恥ずかしかったらしい」

 

「??」

 

ま、ヴィローチャナは厳密にはペルソナじゃないからな。ペルソナは内なる自分の具象化で実際に意思を持った動きを見せる事はあんまり無いが、ヴィローチャナは同居人みたいなモノだしな。

 

「…良く分かんないけどまぁ良いです。あ、そういえば僕が来る前ってどんな感じだったんですか?」

 

「ああ、影時間が閉じた後の話か。今思い返しても寒気がする様な世界だったな」

 

「寒気…?」

 

「まず、タルタロスの階層によって分けられてたっぽいシャドウの分布、コレが役に立たなくなったな。これは俺のせいかもしれないからなんとも言えないんだが、悪魔の現出も有ったしな」

 

「ここでも悪魔ですか…」

 

「現実世界とのリンクが切れてる分悪魔も入り込みやすい状況なんだろうと思う。まぁ、一般人よりマガツヒ放出量が比べ物にならない俺やペルソナ使いが留まらない限りはそんな事無いと思うんだけどな」

 

「…」

 

「そんな訳だ、余りギリギリまで残らない様にな。幸い、風花ちゃんのペルソナ…『ルキア』は探索に長けてるって話じゃないか。大事にしとけよ?」

 

「…はい」

 

どうにも気がせいてるな。仕方ない、分かりやすい目標を見せておこうか。

 

「…この間倒した事で全部で4体。満月の度に現れるアルカナシャドウはいつが打ち止めだと思う?」

 

「えっと、偶に複数現れる事を考えたら…」

 

「そう、そんな遠い話じゃないだろ?とはいえこれから先、どんどん強い相手が増えてくる。…ま、今のところ言えるのはこれくらいだな。もう少し聞きたいのならチカラを見せてくれ。今度は仲間と一緒で構わないさ」

 

 

まだ迷いが晴れたようでは無いが時間が必要な事だからな。もどかしいかもしれないがこれ以上俺が出来ることも無いか。今のところはマコト君が仲間たちと成長する事を願うばかり。

 

 

「ありがとうございました」

 

「どうだい、活動部の雰囲気は」

 

「まだまだな部分も有りますが…今はチームとして動けているのでは無いかと思いますよ」

 

終わり際に美鶴ちゃんへと話しかける。

 

「そもそもが特殊な力、対応できる能力が有るってだけの高校生に身体張らせるのがおかしいだけさ。この分野において一日の長がある人間が1人くらい味方しても良いだろう?」

 

「…ええ、助かります」

 

「…そろそろ向こう(幾月)も動くんじゃ無いか?アルカナシャドウを倒す数が増えると明らかな変化が見えるだろう?そしてそのアルカナシャドウが現れるタイミングも予想がついてる」

 

「…今でもどこか信じたいと思ってしまう私は弱いのでしょう」

 

「迷うのは大いに結構、その迷いが晴れた時、人のココロは前に進める。()()()()()()()()ならせいぜい美鶴ちゃんもこき使ってやれば良い」

 

「クスッ、そうですね。私も桐条の一員としてそれくらい強かでありたいものです」

 

「なれるさ」

 

「ふふ、では期待に応えねばなりませんか」

 

「そうだな、授業料として見届けさせてもらおうか」

 

そう告げ俺は仲魔達を回収し立ち去る。俺とだけでなく活動部のメンツ同士も親睦が深められたんじゃなかろうか。満足気な俺は軽い足取りで帰路へと着いた。

 

 

 

 

 

 

「全く、ズルいお人だ…」

 

 

美鶴ちゃんの呟きは俺には届かなかった。

 



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お酒はほどほどにしよう

大和君が勝手に動き出しかけたので初投稿です。


 

 

7月1日

 

顔合わせをした日から中々時間が取れない日が続いてしまった。あっという間に満月を1週間後に控えている。しかも残念な事にその日は東京から離れなければならない事になってしまった。まぁ、今のマコト君達なら大丈夫だろう。

 

 

「ふぅ、しっかし暑いな。こう蒸すと本格的な夏は想像するだけでウンザリする」

 

 

つい独り言を言ってしまう位に茹だる様な暑さにやられている。そう、俺はいま京都に来ている。しかも丸っと来週までの予定だ。大学で伝承なんかを自分の足で探す体験みたいな課外学習らしい。…例年ツチノコとかカッパの目撃談やはてはUFOについてレポートが有ったらしいがそのレベルで自由らしい。

 

 

「やあ、久しぶりだね。…なんだか雰囲気変わったかな?」

 

「お久しぶりです、雅さん。今回はよろしくお願いします」

 

 

そうとなれば自前のツテを使う方が良いに決まってる。しかも相手は旧家も旧家。葛葉家並みに連綿と続く峰津院家だ。

 

「面白い大学だねぇ。そうやってかき集めるのかい?」

 

「今年はたまたま京都だっただけみたいですよ。去年は奈良だったり、その前は四国や東北、なんて年もあったらしいですから」

 

「そりゃまた。…キミのとこの先生、事情を知ってる人なのかい?」

 

「いえ、むしろオカルト否定派として始めた研究らしいんですけどどうにも否定しにくいデータが定期的に拾えてしまうのが悔しいらしくて」

 

「あっはっは、さもありなん。こうしてサマナーのキミまで居るんだ、カガクで解明できない事の一つや二つや三つ位出てくるだろうに」

 

「ま、流石に直接的な話は持っていかないですよ?多くの人の目に晒す訳には行きませんからね。せいぜい先祖が活躍した事件のわらべ唄位ですとも」

 

「それが良い、下手に刺激してワンサカ出てこられても峰津院としても困るもの。サマナーのマトモな戦力もリョウスケ君位だろう?」

 

「メリットだけを見せつけて迫って取り返しつかない顛末…なんてあり得る話ですからね。」

 

「過ぎたる力は恐ろしいね…。君に言うことじゃないが気をつけて。何にも出来ない大人が言うことじゃないか…」

 

「いえ、雅さんには助けてもらってます。俺の言う事を信じてくれたのもそうですし、峰津院家が持ってる書物をこうして読ませてもらえるんですから」

 

「お役目を忘れたとはいえ同じ目的の為に身体を張っていたんだから。今はこうしたカタチでしか支援できないのが心苦しい位だよ」

 

 

ありがたい話だ。現在で「人間の技」を紡いでいるのは過去お役目を務めていた家が残している書物と…縁の深い仲魔が覚えている程度。葛葉は古武術として落とし込んだ部分があるから助かる方だ。サマナーが廃れたからこそ他家に公開してくれているのもあるんだろう。

 

 

やはり峰津院は陰陽道系のデビルサマナーだったようだ。葛葉が神道系だから全然違うな。まず契約と召喚の流れが違う。

 

葛葉流の契約と言えば交渉が基本だ。まぁ相手も悪魔だから荒っぽい事も含むんだが。そして契約を結んだワケミタマをマガツヒで満たした封魔管に居を移してもらい、戦闘となれば解き放ち共闘する。前提として裏切られても痛い目に合わせるだけの実力が無いと伴わないスタイルなんだ。中には先祖のお陰で友好関係にある種族なんかはオマケしてくれてる位か。

 

 

対して峰津院の陰陽道による悪魔の使役は式神としての召喚らしい。ベタな悪魔ならイヌガミ、マカミ、シキオウジ。そしてオニにフウキ、スイキ、キンキ…とっておきのオンギョウキ。コイツらが峰津院というか陰陽道系サマナーが好んで使う悪魔みたいだ。どちらかと言えば同じ名前で複数同時に存在しても問題の無い様な悪魔が多いようだな。

 

 

「なるほど。いや、面白いな」

 

「むー、リョウスケちゃんが浮気の算段してるわよ!」

 

「あら、イケナイ人ね」

 

「おいおい、参考になるかどうか分からないから学んでるだけだっての」

 

「カッカッ、リョウの字、それこそ浮気を詰められてるみてーだぞ?」

 

「そうよそうよ!お詫びに何か持ってこーい!」

 

「全く。ほら、酒買っておいたから呑んでな。もう少し読ませてくれ」

 

「仕方ないわねぇ…。あっ、コレ美味しそう!」

 

「…ちょろいぞピの字」

 

「うるさいわねぇ。せっかく現界出来るんだから楽しんだって良いでしょ!」

 

「…いやぁ、どうにも京都の街ってのは落ち着かなくてよぉ」

 

たしかにヨシツネはコッチに来てからというもの落ち着かない様子だった。歴史を考えるのなら当然か。鞍馬の山にはおっかない天狗の師匠に、魑魅魍魎蔓延る古都京都で権力争いに負けた()()こそがヨシツネを神格化させたようなモノだしな。…まさしく判官贔屓だな。

 

「それに…この気配…」

 

「なんだなんだ、酒の香りと上質なマガツヒに釣られてくりゃあ懐かしい顔じゃねぇか。ウシワカァ、俺はお前さんをあの程度の軍勢に遅れを取る様な鍛え方してねぇぞ?」

 

「ゲッ⁉︎お、お師匠⁉︎」

 

「あー、どうも。クラマテングさん、お久しぶりです」

 

「クラマ君じゃない。呑みましょう?ほらほら、ヨシツネ君と積もる話もあるでしょう?」

 

「なんだよ、コイツらもう出来上がってんのか?ったく羨ましいぜ。…俺ぁもう飲まねぇって決めたんだ。ウシワカと酌み交わすってのは愉しそうだが、まだな」

 

「あー、クラマったらまーだ引きずってるの?まぁでもあの時はヤタガラスの連中に追いかけ回されてライドウちゃんに誅滅されかけたんだっけ?」

 

「思い出させるな‼︎後にも先にもあんなおっかない思いしたのはあの時こっきりなんだよ…」

 

「お、お師匠何したんですか…」

 

「クラマの奴酔っ払って台風持ってきたのよ。呑みすぎて風が足りないとか言い出して。当然そんな事すれば目をつけられるわよね?」

 

「…あの時ゃ俺もどうかしてたんだよ」

 

「そりゃあダメでしょうよ…」

 

 

 

どうやら酒の失敗は悪魔もするらしい。…規模が全然違う様だけどな。



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強敵相手ほど基本的な戦法が有効だ。

サボりすぎにも程があったので初投稿です。


 

結局この間と同じ様にコーヒーを準備する。あの時は山だったが今は街。趣きがあってアウトドアでのコーヒーもいいモノだが本当なら正当な味を楽しんで欲しかっただけにちょうどよかったな。

 

…様子を伺い続けている雅さんに声をかけよう。世話になってるしあの人ならクラマテングも無碍にはしないだろう。

 

 

「へぇ、コイツが峰津院の党首…ねぇ?」

 

「な、何か…?」

 

「…いや、何でもねぇよ」

 

「クラマテングは仲魔として闘った経験も豊富ですからね。東の葛葉、西の峰津院と言われていた事を思えば信じられないのでしょう」

 

「そうは言われても峰津院の技を捨てた選択をしたのはご先祖様だしなぁ…」

 

「いや、オレたちの働きでこの国に平和が訪れた結果なんだろ?それをとやかく言うつもりはねぇよ」

 

 

どうやら照れているらしい。クラマテングはその名の通りテングの中でも鞍馬山で修行していた修験者がベースの悪魔…妖怪だからだろうか随分と人間くさい所があるな。

 

「まぁ、今この現世(うつしよ)でサマナーって言えそうなのがコイツだけってーのはよく分かった。寂しいんだか嬉しいんだかわかんねぇが…まぁ、アイツらの頑張りが実ったんだろうぜ」

 

「…クラマテングさん。ありがとう、ご先祖様達もそう言ってくれて喜んでると思うよ」

 

「しかし、そうなるとお前さんの周りは随分キナくさいんだろうなぁ」

 

「そりゃそうだぜお師匠。ま、俺っちは楽しませてもらってるけどよ」

 

「…ウシワカ、ちったぁ落ち着くかと思ったが変んねぇなおメェはよ」

 

「すごい、鞍馬山の天狗と牛若丸…。お二方のやりとりがこの目で見れるなんて…‼︎」

 

 

雅さんは感動している様だ。まぁ、京都の人間じゃなくても感動するシチュエーションに違いないか。

 

 

「で、葛葉の。お前さんは何が目的なんだ?」

 

「…流石にここから先は僕は聞かない様にするよ。リョウスケ君、この場を設けてくれてありがとう」

 

「此方こそお世話になりっぱなしで…。気を遣ってもらって申し訳ありません」

 

「…お師匠、流石に前のめりすぎるぜ?」

 

「オレもウシワカに嗜められる様じゃオシマイかぁ?オレも錆びてたか」

 

名残惜しそうなまま雅さんは部屋を出て行った。

 

気を取り直して話を進める。どうにも仲魔になってくれそうな雰囲気って訳じゃあ無さそうなんだが…、となると何の様だろうか。

 

「…お前さんも初めて見た時よりは多少はやる様になったようじゃねぇか。ま、まだオレを連れてくには足りねぇけどな」

 

「多少強くなった自信は有りましたけど…だからこそクラマさんの強さが分かりますね。確かに勝てないでしょう。けど、オレは()()()()ですよ?」

 

「カカッ、それがわかる様なら問題ねぇな。よし、お前さんはライドウの子供みたいなもんだろ?鍛えてやらぁ。…ウシワカァ‼︎オメェも一緒だ‼︎」

 

「俺っち関係ねぇでしょうよ!」

 

「ああん?オメェ、師匠に成長した姿の一つや二つ見せてみる気概ねぇのか?」

 

「いや…その…俺っちはさぁ…」

 

「京の山奥にすら届いて来たんだぜ、一ノ谷、壇ノ浦…奥州は負け戦だったがよ。ま、それを含めて『ヨシツネ』っつー英雄が出来上がったんだ。見せてみながれ」

 

「おいおい、ここで始めるつもりか?流石に今は平成の世の中なんだ。むやみやたらに街中で騒ぎを起こすわけにもいかないんだよ。ヤタガラスだってもう無いんだ、それに他所の家でなんてもっての外だ」

 

「しゃあねぇ、『トラポート』だ。ウシワカなら懐かしいあの古寺へと行くぞ」

 

「へっ⁉︎」

 

クラマテングが唱えた魔法はトラポート。訪れた事のある所へとワープしてしまう魔法だ。ナントカの翼を放り投げて飛び去るようなタイプと違ってそれこそ空間を自分の場所と行きたい場所の空間を異次元空間を経由して移動するタイプの魔法らしい。

 

「ま、この寺には思い入れがあるからな。出口を作るだけの情報とマガツヒが工面出来るってもんよ」

 

「ちょ、ちょっと待っててくれ。流石に家主に一言声を掛けてから行かせてくれ。それに装備だって外してるんだからさ」

 

「仕方ねぇ、準備ができたら声をかけてくんな」

 

 

慌てて雅さんにお礼を告げると彼には魔法の効果が伝わりにくかった様でハッキリとしない様子だったが無理もないか。ここからいきなり山に連れていかれるとか言われても信じ難いだろう。とはいえ荷物を纏めて再びクラマテングに声を掛けるとしよう。

 

 

「もういいのか?じゃあ行くとするか。『トラポート』」

 

ゲームじゃ無いと不便な魔法だけど現実で無制限に使えるなんて甘い事は無かったか。クラマテングもほぼ拠点に帰る為だけに使う様だしな。異界の中でなら使いようがあるかも知れんが現世で使う為に異界をいちいち広げなきゃならない魔法は使えないな。京都の街で短距離だからこそ影響も少なそうだが濫用する訳には行かないな。…実質ターミナルシステムの代用だとするなら要らないリスクを背負い込みたくはない。

 

 

 

 

「さぁ、始めるとするかい?」

 

「ああ、是非とも挑ませてもらう。来い!」

 

俺は仲魔を召喚しクラマテングに挑む。

 

「ケケッ、コッパァ!来やがれ!」

 

クラマテングは眷属とでも言うべきコッパテングを呼びつけるとその号令に馳せ参じた悪魔が3体。これで4対4…。数的優位は無くなったか。

 

 

「カッ、動揺しねぇのは褒めてやるが新米にしちゃあ可愛げがねぇ…なぁ‼︎」

 

クラマテングは1対1をお望みのようだ。どうやらヨシツネと迷ったようだが俺の前にきた。

 

クラマテングは錫杖を取り出し振り下ろしてくる。技の鋭さは流石の一言に尽きる。ヨシツネと討ち合いをしていない頃なら受けられなかっただろうな。

 

まだ様子見程度の打ち合いだ。とはいえ、甘い所を見せる訳には行かないな。

 

「こちらから行かせてもらおうか」

 

ヴィローチャナにマガツヒを注ぐ感覚…。それだけでも俺の身体能力は向上する。短銃による牽制をしつつ俺から踏み込む‼︎

 

「ほぉ、少しはやるじゃねぇの」

 

「当たり前だ、俺っちとどれだけやってると思いやがる」

 

「…⁉︎驚いたぜ、もうコッパ共を片づけやがったのか‼︎」

 

「ふふーんだ。アタシ達だってやるのよ」

 

「…こりゃあオレ切り替えねぇといけねぇか」

 

クラマテングが()()()()を放つ。

 

「…空気が変わったな。ビリビリと刺す様にすら感じるマガツヒだ」

 

『おい、ありゃさっきまでとは別モンだぞ‼︎』

 

「お師匠め、もうそのモードかよ⁉︎」

 

どうやら本気モードって所か。戦闘担当の仲魔も警戒している。顔見知りのヨシツネすら冷や汗を浮かべていそうな様子だ。

 

「おいおい、落ち着け。俺とヨシツネが前、ピクシーは後。ウズメはラクカジャを使った後にフロストと交代だ!」

 

「カカッ、そう、それでこそ召喚師、デビルサマナーよ‼︎いっとうハラが座ってなきゃ務まらねぇのよ‼︎」

 

仲魔達は指示通りに動く。俺とヨシツネ2人がかりで斬りかかっても受けられる。俺はともかくヨシツネは太刀筋を完全に把握されている。…でもそれは()()()()()までの事。()()()()はそこから成長した先なんだ。だろう?

 

「ピクシー、雷撃で隙を作れ!」

 

「まっかせなさい、ジオンガ!」

 

「ぐぅっ…」

 

「助かるぜピの字。さて、お師匠。俺っちも成長したところ見せねぇとな。八艘跳び‼︎」

 

「マズ…、ぐわぁぁぁぁ!」

 

弱点を突く事で出来た隙に大技を叩き込む。ま、基本だわな。

 

「やるじゃねえか…、侮ってたのはオレだったか?だが…もう終わ…っ⁉︎」

 

「いいや、まだ終わらせない」

 

せっかくの攻勢、畳み掛けるのも基本だろう?

 

『行くぜ‼︎』

 

「ヴィローチャナ‼︎」

 

『万物屠り‼︎』

 

「ぐおおおお…」

 

「えげつねぇなリョウの字…」

 

「挑む身分だ、与えられたチャンスを逃す訳にはいかないだろ?」

 

「効いたぜぇ…、なるほどオマエは確かにサマナーだ。その容赦のなさ、ライドウの奴にそっくりじゃねぇか」

 

 

少しは認められたかな?とはいえまだやる気なら更に後先考えないで絞り出す必要がありそうだな。

 

「まぁ、認めてやってもいいんだが…、オレももう少し楽しんだって良いだろう?」

 

…やっぱりまだ終わりとはいかないか。もう一踏ん張りしますかね。

 

 

 




ソウルハッカーズ2やってるんですがリョウスケ君ほぼリンゴちゃん式サマナーで草。まぁAionが生まれる世界とソフィアが生まれる世界、メガテンの世界はどうとでもなる可能性があるからセーフでしょう。


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思いもよらない落とし穴は存在する

本年はペースが落ちまくって申し訳ありません。なので最後の初投稿です


 

俺たちの中でも最大火力をぶつけた訳だが決め手にはまだ早かった様だ。効いてない訳じゃ無さそうだが…

 

 

「カカッ、何時ぞや見えた頃から斯様なまでに成長しおったか。サマナーも居らぬ世とはいえ良くぞ練り上げたものよ。しかし、まだ仕舞には早いわな?コッパァ‼︎」

 

…コッパテングは倒したところでキリがないか。こうなると厄介だな。

 

 

「親分、何時ものアレいきやすぜ!」

 

「タルカジャ‼︎」

 

「ラクカジャ‼︎」

 

「スクカジャ‼︎」

 

分散させたところですぐ勝負が着くならまとめて支援させる様に方針を変えてきたか…。確かにコッパテングだけならすぐ片付けられるが倒した所ですぐ呼び出されるだろう。

 

「ここからがホンバンってわけね…」

 

「お師匠もマジな訳だが…、リョウの字どうする?」

 

「どうもこうも無い、こんなシチュエーションで出来るのは基本位だ。弱点を突いて隙を生み出して纏めて攻撃。…これしか無いだろ」

 

都合の良いギミックなんか有るわけもない。となればやれるのはこっちも振り絞るだけ。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…、どんだけ居るのよあのコッパテング達‼︎」

 

「ピの字、何だもう泣き言か?」

 

「アンタだってもうヘロヘロでしょ⁉︎」

 

「へっ、まだまだよゆーだっての…‼︎」

 

「カカ、コッパ共もヒマしておったからのぉ。いくらでもおるぞ?」

 

「厄介だな…放っておくには鬱陶しすぎるが…」

 

「どうするのリョウスケちゃん?」

 

「俺たちの中に範囲攻撃が得意な仲魔は少ないのが辛い所だな…。減らしても湧いてくるなら本丸に絞るしかないだろう…‼︎」

 

「カカカカ、その意気や良し‼︎」

 

コッパテングをいくら倒したところですぐさま補充されるのならば呼び出す奴を倒すしか無い。ピクシーのメギドラは確かにまとめて吹っ飛ばせるがその威力の分だけ連発がきかない。

 

「とはいえクラマテングだって無傷って訳じゃない。押し切るぞ‼︎」

 

「おう!俺っちも気張っていくぜ!」

 

「アタシも行くわよ!」

 

「オイラも頑張るホー!」

 

しかしヨシツネの決め技は乱れ打ちタイプ。コッパテングがたくさんある分ターゲットが分散してしまい有効打にはなりにくい。ここは『からたけ割り』とピクシーの『マハジオンガ』を軸に攻め立てる。タイミングが合えばちょうど全体魔法でコッパテングを一掃出来る。…そこが攻めどきだ。

 

俺はピクシーとヨシツネに視線を送る。二柱とも解ってくれた様だ。そこまではフロストは回復と補助に専念させて凌ぎつつダメージを与えてもジリ貧だからな。

 

俺たちもそろそろガス欠になろうかというところ、現状を打開するタイミングが訪れる。

 

コッパテングもクラマテングも電撃魔法の痺れが出ている…‼︎

 

ギャンブルになるがここで全てを出し切る。十中八九仕留め切れるとは思うが足りない場合は虎の子のチャクラポットを使うか。

 

「今がチャンスだな、ピクシーは集中(コンセントレイト)、ヨシツネは力を貯めて(チャージ)だ!」

 

「おう‼︎はぁぁぁぁ‼︎」

 

「行くわよ!」

 

「チィ、やるじゃねぇか‼︎」

 

ヨシツネの大技をクラマテングに集める為にも周りを蹴散らす。つまり…

 

「ピクシー、お見舞いしてやれ‼︎」

 

「ええ、いっけー‼︎『メギドラ‼︎』」

 

コンセントレイトによるダメージの増量とターゲットの数をものともしない中級万能属性魔法。チクチク与えていたダメージのおかげもあってかクラマテングと共に戦線に参加しているコッパテング達を一掃できた。

 

ここで俺が繰り出す技は…

 

「行くぞ、ヴィローチャナ‼︎」

 

『任せろ、ヌシの歩みと共にワレも歩みを進めておる。故にここはこの技を使う、アスラ族の王たるワレ、闘神の拳を受けよ‼︎』

 

「『ゴッドハンド‼︎』」

 

まさに怒れる闘神の一撃、俺の気力とヴィローチャナの魔力を乗せた攻撃は拳の形を具現化し痺れとダメージの抜けていないクラマテングに直撃した。

 

「ぐおおおお…、や、やる様になったじゃねぇか…。だが、俺を倒すにはまだ…」

 

「まだ終わっちゃいない…、ヨシツネ‼︎見せてやれよ?」

 

「おうとも!さぁ、お師匠、俺っちの全力受け切ってくれよ?『八艘跳び』‼︎」

 

ピクシーのメギドラによってコッパテング達は一掃されている。ヨシツネの八艘跳びは自身にも制御しきれない程の乱れ打ちだが…目標が単独。そしてその攻撃一つ一つにバフが乗っているともなれば…?

 

「ぐはぁっ⁉︎…はぁ、はぁ、はぁ。こりゃあナメてたのはコッチだったかのぉ…。ここまでやるとは流石は葛葉を冠するサマナーよ…」

 

「…まだまだ自称の域だよ。で…まだやるかい?」

 

「…いや、これ以上はどっちかが死ぬまでになる。ここでやめとこうや」

 

そういうとクラマテングはどかりと腰を下ろしてしまった。その様子を見て俺たちは初めて警戒を解いた。

 

「いいねぇ、アクマの言う事を全部信じない。それが出来る奴はいいサマナーになれる」

 

「そりゃどうも。しかし、現界してるアクマはやっぱり強いなぁ…倒せるとは思ってなかったけどもう少しダメージは与えられると思ってたよ」

 

「カカッ、これでもかれこれ1000年の死に損ない。そうやすやすとくたばりはせんよ」

 

流石に俺たちも疲れた。とはいえここにいつまでも滞在しておくわけにもいかない…頃合いを見て街に戻ろう。

 

「すっかり楽しんでしもうたな。カカッ、満足させてもろうた礼…という訳にはならんかもしれんがコッパを1柱連れて行くが良い。小器用なヤツで便利ぞ?合体の材料にするなり仲魔としてこき使うなり好きにすると良い」

 

「…悪魔にとって合体ってそんな感じなのか?」

 

「俺やウシワカ…や、ヨシツネみたいなほぼ個人を指す悪魔ですら伝承からのワケミタマだからなぁ。ま、イケニエになったところでいつのまにか縁のある所に戻ってる。そんなもんさ」

 

「案外軽いんだな…」

 

「固有だからこそ複数個体存在できねぇってだけで居なくなったらすぐワケミタマが産まれるし、そのワケミタマも記憶は本体から還元されてっから安心しろ」

 

「まぁリョウの字が気になるのも仕方ねぇけど俺っちたち悪魔はまた感覚がちげーからなぁ」

 

「たしかに分からん感覚だ。けどなぁ…」

 

「?どうしたんだ?」

 

「いや、イケニエとかの話はともかく…設備が無いんだ」

 

「…は?ってコトはお前さん交渉で仲魔にしてからそのままでここまでやってきてるってのか?」

 

「ああ…。サマナーが忘れられた様に悪魔合体の術も失われたんじゃ無いかと思う」

 

「そりゃあ…、厄介だな…。デビルサマナーとしての強みが半分位になっちまう」

 

「…葛葉ライドウはどんな手段で?」

 

「アイツはヴィクトルの旦那に任せてたっけな。ヴィクトルかぁ…確かにサマナーが必要とされなくなった世界からはいなくなっちまいそうなヤツだったわ」

 

「…その事なんだけどワタシに心当たりがあるの」

 

「ウズメ?」

 

 

ウズメは何か思い当たる事がある様で神妙な面持ちで声をかけてきた。

 




仕事が始まったりで筆が進まず申し訳ありません…。ペースは落ちますが細々続けていければなと思います。気長にお待ちいただけると幸いです…


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