昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 (ゆーじ(女神候補生推し))
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#01 少女たち

薄紫色の壁と天井、薄橙色の床とパステルカラーで彩られた二十畳程の大きな部屋。

 

ところどころに可愛らしい動物のぬいぐるみが置いてあり、明るく少女趣味な部屋だ。

 

部屋の中にはクッキーと紅茶の甘い香りが漂っている。

 

 

 そんな甘くて可愛らしい部屋には、雰囲気に通りの可愛らしい四人の少女が居る。

 

 

 部屋の中央には丸い机と一人掛のソファーが二つあり、そのソファーの一つに一人の少女が椅子に座って本を読んでいた。

 

年のころは十四歳ほどで身長は150センチちょっと、体形は年相応でバランスのよい健康的な女の子の体。

 

髪は薄紫色の絹のように綺麗なストレートロングヘアーに、頭の左側にゲームのコントローラーの方向キーのような十字型の白いアクセサリーを付けている。

 

瞳は紫色で肌の色はやや白めの薄橙色と、黄色人種のアニメキャラクターのような美少女だ。

 

 

 服は白い生地に襟などの一部が紫色セーラー服を模したワンピースに黄色いスカーフを付けており、靴下は白とピンクのストライプのニーソックスをはいている。

 

顔も体の作りも美しく、傷やシミしわなど一つもない綺麗な肌をしている。

 

身なりもキチンと整えられており、誰からも好感が持たれる【清楚な美少女】といった感じの女の子である。

 

 

 彼女が読んでいた本を閉じると、少し後ろにいた二人の少女がその時を待っていたかのように手を上げて声を出す。

 

 

「ネプギア、これ読んでー!」

 

「……読んでほしい……(もじもじ)」

 

 

 片方の少女はとても元気よく大きな声で、もう片方の少女は少し恥ずかしそうにもじもじしながら小さな声で、なぜか擬音まで口にしていた。

 

声は対照的だが二人の容姿はとてもよく似ていた。

 

二人とも身長130センチぐらい、年齢は七歳程度で小柄な体。

 

薄い茶色のストレートの髪に青い瞳に、肌の色は先程の少女よりも更に白めの薄橙色。

 

服もお揃いで、白いブラウスとグレーの吊りスカートに白いタイツをはいていた。

 

 

 二人の違いは髪型とブラウスの襟とネクタイの色ぐらいだった。

 

元気な少女がロングヘアーでピンクの襟とネクタイ。

 

大人しい少女がミデアムヘアーで水色の襟とネクタイ。

 

二人とも年相応の体つきをしており、最初の少女とは少し違う意味で愛らしい美少女だ。

 

 

 顔はそっくりでも仕草や表情で、元気な方は活発で健康的な印象を。

 

大人しい方は保護欲をかきたてる少女で、その正反対な様子が彼女達の魅力を互いに引き立てているようだった。

 

二人とも仲がよいようで、室内にも関わらず元気な少女の右手が大人しい少女の左手をしっかり握っており、大人しい少女もそれを握り返している。

 

 

「いいよ。二人ともこっちにおいで」

 

 

 ネプギアと呼ばれた薄紫色の髪の少女は振り向き手招きをする。

 

見た目通りの柔らかく優しい声だ。

 

 

「「わーい」」

 

 

 二人の少女は声を揃えて嬉しそうに喜びを表現するようにバンザイをする。

 

元気なロングヘアーの少女が左手にA4サイズの絵本をもってネプギアに近づく。

 

 

「ラムちゃんの持ってる絵本を読めばいいのかな?」

 

 

 ネプギアが言うと、「うん、わたしもロムちゃんも読めない字があるの」と言ってラムと呼ばれた元気な少女がネプギアに絵本を手渡す。

 

 

「それにネプギアちゃんに読んでもらうと心があったかくなる(ほかほか)」

 

 

 ロムと呼ばれた大人しい少女はネプギア座っているソファーの右隣に座り込んで、甘えるように彼女に抱きつくと頬ずりをする。

 

ネプギアの鼻にロムの甘いミルクのような香りがした。

 

ネプギアはその匂いを心地よく感じながらロムの頭に右の手のひらを置く。

 

 

「そう? ありがとう」

 

 

 ネプギアはロムの褒め言葉にお礼を言うと、その手でロムの頭を優しくなでる。サラサラの髪が心地よい。

 

 

「えへへ……(てれてれ)」

 

 

 ロムが嬉しそうに目を細める。

 

彼女はいつも穏やかで優しいネプギアが大好きであった。

 

ロムのしゃべる擬音は心の声と呼ばれており、その時の気分を表しているらしい。

 

正確なところは本人も忘れてしまい、癖となっているのでよくわらなかったりする。

 

 

 気持ちよさそうなでられているロムを見たラムも、「わたしも」と言ってロムとは逆側から同じようにネプギアに抱きついた。

 

ラムもロムと同じような甘いミルクの香りがする。

 

ネプギアは二人の匂いを心地よく感じながら、左手でラムの頭も撫でてあげる。

 

ラムの髪もサラサラで気持ちよかった。

 

 

 ラムは元気いっぱいの少女で強気で子供扱いを嫌うが、ネプギアの前では甘えん坊さんになる。

 

大半の生き物は誰かに甘えたいもので、プライドの高くかっこつけて赤いロボットに乗ってる人も、ある少女に甘えていたものである。

 

ラムにとってそれがネプギアであり、それを隠しもせず【ネプギアが甘えてほしそうだから甘えてあげている】との言いようである。

 

 

 ロムとラムは双子の仲良し姉妹。ネプギアは彼女達のお姉さんといった関係である。

 

清楚な見た目どおり心優しいネプギアに、この双子の姉妹はとてもよくなついていた。

 

 

「ふたりともいい匂いがするね。それに髪もサラサラで触り心地が凄くいいよ」

 

 

 ネプギアは二人の頭を撫で続けながら素直な感想を言うと、「そう? シャンプーもセッケンも変えてないわよ」ラムが小首を傾げながら言う。

 

ラムは更にネプギアのロングヘアーの後ろ髪に手を入れると、「それに髪の毛なら、ネプギアの方がサラサラよ」と楽しそうにネプギアの髪の毛を上下に撫でる。

 

ロムも、「うん、ネプギアちゃんの髪すごく綺麗(さらさら)」と気持ちよさそうにネプギアの後ろ髪に頬ずりする。

 

 

 ロムは髪に頬ずりしながら鼻をひくひくさせて、「ネプギアちゃんもいい匂いがする……お花の匂い……(くんくん)」と言う。

 

ネプギアは右手の人差し指をあごにあてて少し考えるそぶりをしながら、「セッケンの匂いかな? ライラックの花の匂いなんだよ」とロムとラムに説明をしてあげる。

 

ラムもロムと同じく鼻をひくひく動かして、「ふーん、これがライラックって花の匂いなんだー」と ネプギアの匂いを嗅いでいる。

 

ロムが、「いい匂い(ほわほわ)」とうっとりした顔で言うと、「わたしもこの匂い好き。ネプギアの匂いー」とラムも嬉しそうに言う。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアはそう言って嬉しそうに微笑み、「それじゃあ、読むね」と手渡された絵本の表紙に目を向けた。

 

ラムは急かすように両腕を振り、「はやくはやくー!」と言う。

 

ロムは、「楽しみ……(どきどき)」と祈るように両手を組んで期待に目を輝かせていた。

 

 

 ネプギアが膝の上に絵本を乗せると、ロムとラムはソファーのひざ掛け部分に両手とあごを乗せて絵本をじっと見る。

 

ロムとラムに挟まれたネプギアの様子は【愛らしい双子に本を読み聞かせる美少女】といった感じでとても絵になっていた。

 

 

「ゲイムギョウ界の歴史」

 

 

 ネプギアは優しく落ち着いた声で絵本のタイトルを読み上げると表紙をめくる。

 

するとネプギアの向かいのソファーに座っていた四人目の少女が読んでいた本から目を離して、ネプギアに声をかける。

 

 

「なにそれ、歴史の絵本?」

 

 

 その少女はネプギアと同じ年ごろだが、身長は5センチほど低かった。

 

赤い瞳にウエーブのかかった黒いロングヘアーを、黒い生地に白いラインの入ったリボンでツーサイドアップに結わえいる。

 

肌の色はネプギアと同じくらいの薄橙色。

 

 

 服はリボンと同じ、黒い生地に白いラインの入ったオフショルダーのワンピースを着て、同じデザインのハイソックスをはいていた。

 

ネプギアに負けず劣らずの美少女で少し身長が低いこともあり、ネプギアに比べてやや線が細い。

 

 

 清楚で穏やかな天使のようなネプギアに対して、強気な印象を受ける赤い瞳に黒くて肩を露出した少し大胆な衣装の彼女はネプギアとは反対の悪魔的なかわいさがあった。

 

白とパステルカラーの美少女ネプギアとこの黒の美少女が向き合っている姿は、異なる魅力がお互いを引き立て合っていて、とても絵になっていた。

 

題名は【天使と小悪魔】といった感じだ。

 

 

 明るめの色でコーディネートされたネプギアとロムとラムの三人に対して、黒でコーディネートされた彼女はやや浮いているようには見えなくもない。

 

しかし、彼女はそれが気にならないほどの美少女であり、そのギャップが美しくもあった。

 

 

「そうみたいだよ。ユニちゃんも興味ある?」

 

 

 ネプギアは顔を上げてユニと呼んだ黒髪の少女の質問に答えながら目を向ける。

 

ユニと呼ばれた黒髪の少女は、「ちょっと興味あるわね、一緒に聞かせてくれる」と読んでいた本に栞をはさむと本を閉じる。

 

【ゲイムギョウ界】とは今彼女達が住んでいる世界の名前である。

 

国の名前ではなく世界の名前。神が住む天界や妖精などが住む妖精界のように我々が住む世界とはまったく別の場所にある世界だ。

 

その為、ゲイムギョウ界の歴史と書かれたこの絵本は歴史を題材にしたものなのだ。

 

 

 ユニは栞を挟んだ本を机の上に置くと、右手で軽く髪をかき上げる。

 

するとネプギアに清涼感のあるミントの香りが漂ってくる。ユニのシャンプーの匂いだろう。

 

彼女は小悪魔的な見た目に反して努力家で自己鍛錬を欠かさないので、運動後のシャワーで爽快感のあるもの使っているのだろう。

 

ネプギアはユニのミントの香りに心地良い清涼感を感じている間に、彼女が聞く態勢になったのを確認すると再び本に目を向けて読みはじめる。



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#02-01 教えて、ギアユニ(二進数の巻)

「ゲイムギョウ界は遥か昔に誕生しました」

 

 

 ロムとラムは真剣に絵本を見ながらネプギアの声に耳を傾ける。 

 

 

「最初は0と呼ばれる数字しかありませんでした」

 

 

 ユニは机に両肘を置き両手を組んで大人しくネプギアの声を聞いている。

 

 

「そこに1という数字が生まれてきました。0と1は協力して二進数作り、様々な数字を生み出しました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むとラムが突然手を上げて声を上げ、「【にしんすう】ってなに?」と質問をする。

 

元気で積極的な上に好奇心旺盛なラムは疑問に思ったことはすぐに質問してくる。

 

 

「おさかなの仲間?」

 

 

 ロムが小首をかしげてそう言うと、その勘違いが面白かったのかネプギアが【くすり】と優しく微笑むと口を開く。

 

 

「そのニシンじゃないよ、数字の2に、進む【すすむ】の進に数、【かず】の数で二進数」

 

 

 ネプギアはそう言ってやんわり否定しながら正確な答えを言うと、「0と1ですべての数字を表現する方法よ」とユニが更に説明を付け加える。

 

しかし、ラムが不思議そうに首を傾げながら、「えー? 数字って1から10だよね」と反論する。

 

 

「ラムちゃん、0から9だと思うよ」

 

 

 ロムが少し自信なさそうにラムに向かって言うと、「え? そうなの?」とラムが意外そうな表情を浮かべる。

 

ネプギアは、「うん、ロムちゃんの言う通りだよ」とゆっくりと頷き、「数字には0が必要だし、10は1と0の組み合わせだから」と続ける。

 

ラムはハッと驚いた顔をすると、「そっか! すごーい! さすがはロムちゃんね」と嬉しそうにロムを褒める。

 

ロムも嬉しそうに、「えへへ(てれてれ)」と顔を赤くする。

 

 

 ネプギアはその二人の光景を楽しそうに眺めながら、「普段私達が使っている数字は、0から9の十個の数字を使った十進数」と説明を始める。

 

話ながらネプギアは両手を胸の前に出して、右手の人差し指を立てて1を作り、左手は親指と人差し指で0を作る。

 

 

「二進数は0と1の二つだけで数を数えるの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ロムとラムは不思議な物を見るような目でネプギアの両手を眺める。

 

ネプギアは優しい声で、「0があって1があって、次は桁が上がるの。その代わり2進数は桁が一つ左へ移動する毎に値の重みが2倍になるの」と説明を続ける。

 

ロムとラムはネプギアの話を真剣に聞いている。

 

 

「だから、2を現すのは【10】」

 

 

 ネプギアはそう言うと、右の人差し指と中指を立てて2を作った後に、両手の指を広げて10を作る。

 

ラムは難しい顔で、「じゃあ、3は?」とネプギア尋ねる。

 

 

「3はさっきの10に1を加えて【11】」

 

 

 ネプギアは右の人差し指と中指と薬指を立てて3を作った後に両手の指を広げて10を作り、その後で右手の人差し指を上げて1を作り11を表現する。

 

今度はロムが少し困った顔で、「4は?」とラムと同じようにネプギアに尋ねる。

 

 

「4になるとまた桁を上げて値の重みを2倍にして【100】ってするの」

 

 

 ネプギアが今度は右手の親指だけ伏せて4を作ると、今度は左手の人差し指で宙に100を書くようにして説明を続ける。

 

言葉と一緒に右手と左手を巧みに使って説明をするネプギア。

 

彼女は右利きだが様々な経験を積んだ末にほとんど両利きに近いので左手の動きもスムーズである。

 

 

「じゃ、じゃあ……5は101?」

 

 

 ロムが少し自信なさそうにもじもじ言うと、「あたりだよ。凄いねロムちゃん!」とネプギアはやや大げさにロムを褒める。

 

ロムは顔を赤くして、「えへへ……(てれてれ)」と照れると、「なら、6は110でしょー!」ラムが自信満々に言うと、「ラムちゃんもあたり。すごい、すごい!」とネプギアは拍手をして褒める。

 

ラムは腰に手を当てて、「これぐらい当然よ」と嬉しそうに笑う。

 

 

 ユニはそんな三人を見つめながら溜息を吐いて、「相変わらずのメカオタぶりね」と呆れたように言う。

 

ネプギアはユニの方に振り向くと、「えー? これぐらい普通だよ、それにこれはメカじゃなくてコンピューターの話だよ」と口を尖らせて反論する。

 

清楚な見た目からは少し意外だが、彼女は機械やコンピューターが好きで色々と勉強をしている。

 

 

 ユニも見た目からは想像できないが銃器の類が好きで収集している。

 

銃への興味からネプギアとユニは趣味が合って、二人でジャンクショップやガンショップを回って買い物をすることがある。

 

 

「それにユニちゃんだってできるよ、例えば【1101】は?」

 

 

 ネプギアがユニに質問する。

 

ネプギアはユニのことを友人としても一人の人ととしても高く評価しているので、ロムとラムより少し難しい問題を出す、

 

ユニがしばらく考え始め、「えっと……は8+4+0+1で13かしら?」とユニが答えると、「あたり! さすがはユニちゃん」とネプギアが手を叩いて拍手をする。

 

 

「うー! 何となくはわかったけど、大きい数字になるとちんぷんかんぷんよー」

 

 

 ラムはユニのように少し難しい問題にスラリと答えが出なかったことを少し悔しそうに首を左右に振りながらそう言う。

 

ロムも、「わたしも……ちょっと難しい(しゅん)」と落ち込んでしまう。

 

二人とも二進数の基礎は理解できたようだが、数が多くなると理解が追いつかないようだ。

 

 

「でも、どうしてこんな暗号みたいなことするのー? 桁が多くてわかりづらいじゃない」

 

 

 ラムが不思議そうに首を傾げて言うと、「うん、不思議?」とロムも小首を傾げる。

 

ネプギアは二人に同意するように頷くと、「そうだね。私達には少しわかりづらいよね」と言う。

 

ラムは、「じゃあなんでー?」と質問すると、「桁が多くてもコンピューターには0と1の二つの状態の組み合わせで数値を表現する二進数の方がわかりやすいの」とネプギアが答える。

 

ネプギアは続けて、「この本でもゲイムギョウ界には0と1しかいなかったから、0と1が頑張って二進数で色々な数字を生んだんだよ」と説明しながら話を絵本の方に戻そうとする。

 

 

「「おおー」」

 

 

 ネプギアの説明を理解できたロムとラムが揃えて感嘆の声をあげる。

 

その反応を見たネプギアは本の続きを読み始める。

 

ロムとラムに物を教えながら本を読んであげるその姿は、まるで教育テレビのお姉さんのようだ。



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#02-02 教えて、ギアユニ(ビットと二次元、三次元の巻

「ゲイムギョウ界は0と1が生み出した数字を使って、音や色をもったドットを作り、それがたくさん集まり大陸や生き物を生み出しました。これが初期の8ビット世界です」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「ビットってなに?」とラムが腕を組んで首を傾げる。

 

ユニが、「情報量の最小単位よ」と答えると、「この数字が大きくなればなるほど、ゲイムギョウ界は広大で精巧で綺麗になるんだよ」とネプギアがそれに続く。

 

 

「今は何ビット世界なの?」

 

 

 今度はロムがあごに右手をあてながら質問すると、「ビット世界の最高は128ビットね」とユニが腕を組んで得意そうに言うと【ふん】と鼻を鳴らす。

 

ユニは続けて、「もちろん、アタシ達ラステイションによる力よ」と自信満々に言う。

 

ラステイションというのはユニの住んでいる国の名前、そしてビット数などのゲイムギョウ界の規模は国の発展に比例していく。

 

つまり、ユニは自分の住んでいる国がいかに優れているかを自慢したいのだ。

 

 

「でも、128ビットは性能過剰って言われて今は64ビットのとかCPUをたくさん使うマルチコア世界なんだよ」

 

 

 ネプギアがそんなユニに対して落ち着いて、ロムとラムに向かって言うと、「「まるちこあ?」」とロムとラムが同時に首を傾げる。

 

CPUとは我々の世界で言えば地球の意思のようなものであり、これがゲイムギョウ界の森羅万象を作り続けている。

 

ゲイムギョウ界の国が発展することで、CPUも成長しゲイムギョウ界全体が発展をしていくのだ。

 

 

「128ビット一つのCPUに全部世界を作らせるより、64ビットのCPUをたくさん使って役割分担した方が、より世界がよくなるってことなの」

 

 

 ネプギアが説明を続けると、「わたし達みたいに協力するのね!」とラムが嬉しそうに言い、「みんなで協力!」とロムも嬉しそうに続く。

 

ネプギアはそれを嬉しそうに眺めながら、「うん、ラムちゃんが絵を描いて、ロムちゃんがお話書いて、私が音楽作って、ユニちゃんがゲームシステム作る感じ」と頷く。

 

 

「で、マルチコアになってから、CPUの構成が複雑化してきているの。だからビット数に関して細かい数値を出すのが難しいんだよ」

 

 

 ネプギアが続けて言うと、「ちょっと、人が自慢してるところに水を差さないでくれる」と話においていかれたユニが不満そうな顔をする。

 

ネプギアは少し困った顔で、「でも、今の世界がどうなのか知りたいみたいだし……」と答える。

 

彼女は真面目過ぎて少し空気の読めないところがある。

 

 

「まぁ、いいわ。続き読んでちょうだい」

 

 

 ユニはそんなネプギアのことをよく知っているようで、あっさりと引き下がり絵本の続きを読むようにうながす。

 

ネプギアは絵本のページをめくると本にはドット絵で地図や生き物が描かれていた。

 

すると、「あ、マーリョだ」とラムが嬉しそうに絵本に指差すと、ロムも同じく指を差しながら、「こっちはニテール」と言う。

 

彼女達が指差したところには帽子をかぶった赤と緑の二人の男性が描かれていた。

 

彼らはマーリョとニテールと言い古くからゲイムギョウ界にいる有名人である。

 

ちなみに赤い方がマーリョ、緑の方がニテールである。

 

ネプギアはロムとラムが絵本の絵を一通り楽しんだのを確認して、本の続きを読み始める。

 

 

「こうしてゲイムギョウ界に二次元世界が完成しました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「【にじげんせかい】ってなに?」とまたもラムが左手を上げて質問をしてくる。

 

 

「二次元世界って言うのはね、縦方向と横方向の二つの座標を持つ空間で平面的な世界なの」

 

 

 ネプギアが右の人差し指で宙に縦線と横線を描きながら質問に答える。

 

続けてユニが、「たまに薄いペラペラの生き物いるでしょ? あれが縦と横しかなかった二次元世界の名残の生き物なのよ」と付け加える。

 

ゲイムギョウ界には、紙に書いた絵のような生き物や、テレビ画面に映ったようなほとんど厚みのない生命体が居る。

 

 

「今、私達が住んでいるのは、そこに奥行きを加えて【縦と横と奥行き】の三つの空間のある世界で三次元世界なんだよ」

 

 

 ネプギアが今度は右の人差し指で奥行きを現すように前後に動かしながら言うと、ロムが、「ネプギアちゃんもユニちゃんも物知り」と言って感心する。

 

ネプギアとユニは真面目な努力家で色々と勉強しているので、ロムとラムの質問には大抵答えることができた。

 

ロムとラムはネプギアとユニを素直に頼りにして、ネプギアとユニも頼られることを嬉しく思っており、四人の関係は良好である。

 

そして、二人が自分達の説明で納得したのを確認したネプギアは本を読み続ける。



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#02-03 教えて、ギアユニ(女神と国家、年号の巻)

「ゲイムギョウ界の人々はゲームをしながら平和に暮らしていました。しかしそれを脅かすものがいましたモンスターです」

 

 

 モンスターは基本的に人間や女神の敵として認知されている異形の生命体。

 

人や作物を襲い害をなす。

 

その姿は大型化した植物や昆虫、動物などの他にドラゴンなどの我々の世界では空想上生き物も存在する。

 

中にはロボットやゲイムギョウ界独自のデータ系と呼ばれる、先ほど話に出た紙に書いた絵のような生き物や、テレビ画面に映ったようなほとんど厚みのないものもいる。

 

 

「モンスターは人々を襲いました。人々は抵抗しましたがモンスターはとても強く歯が立ちません」

 

 

 ネプギアの声を聴きながら、ロムとラムは話の続きが気になるらしく、「どうなっちゃうんだろ?」とラムが言うと、「気になる(どきどき)」とロムがそれに続く。

 

 

「追いつめられた人々は必死に祈りました。【どうか安らかにゲームを楽しめる平和をお与え下さい】と。その時一つのゲーム機が空に浮かび上がりキラキラと輝き始めました」

 

 

 ネプギアが更に読み続けると、「「おお~!」」とロムとラムが感嘆の声を上げる。

 

 

「ゲーム機はとても美しい女性の姿になりました。その女性はとても強く、あっという間にモンスターを倒してしまいました、人々は喜びの声をあげます【女神様】と」

 

 

 ネプギアが読みながら絵本のページをめくる。

 

すると今度は女神様と思われる女性が描かれていた、「おおー、女神様だ」とラムが言うと、「きれい……(ほれぼれ)」とロムが続く。

 

二人とも女神の絵に釘付けのようだった。

 

ネプギアはロムとラムが落ち着くのを待ってから絵本の続きを読む。

 

 

「女神様は強いだけでなく、とても賢い女性でした。女神様はその知恵で人々をまとめ上げ国を作りました。女神様はその国を【プラネテューヌ】と名付けました」

 

 

 ユニが、「その本、プラネテューヌの本なの?」と質問すると、「プラネテューヌの図書館にあったのを借りてきたのよ」とラムが答える。

 

続けてロムが、「ネプギアちゃんに貸出カード借りたの」と言う。

 

プラネテューヌとは先ほど出てきたラステイションと同じくゲイムギョウ界の国の一つである。

 

 

 ロムとラムはプラネテューヌに住んでおらず、プラネテューヌにはネプギアの住んでいるので彼女の図書カード借りたのだ。

 

ユニはロムとラムの回答に、「なるほどね」と納得するとネプギアに向かって、「それで終わり?」と質問する。

 

 

「まだまだページがあるから続くみたいだよ」

 

 

 ネプギアはユニの質問に答えると続きを読み始める。

 

 

「人々が女神様を褒め称えて信仰すればするほど、女神様の力は強くなりました。そうしていく内にプラネテューヌはどんどん大きくなりました」

 

 

 ネプギアがページをめくると女神を褒め称えている民衆の絵が描かれていた。

 

 

「シェアエネルギーってやつね」

 

 

 ユニが腕組みをしながら納得するように頷くと、ネプギアが、「うん、シェアエネルギーは女神の大切な力の源だからね」と続く。

 

ゲイムギョウ界の女神は住人からの信仰を【シェアエネルギー】という力にして受け取ることができる。

 

女神はこのシェアエネルギーを自らの力として国や国民たちを守り導き、人々の信仰が途絶えない限り、女神は不老不死として半永久的に存在することができる。

 

 

 ネプギアは絵本のページをめくると続きを読み始める。

 

 

「しかし、そこで事件が起きました。なんと女神様は一人ではなかったのです。他にも四人の女神様がいてそれぞれ国を持っていたのです」

 

 

 絵本にはプラネテューヌの女神に立ちはだかるように四人の女性が描かれている。

 

 

「四つの国は【ルウィー】、【タリ】、【ピジョン】、【カルディア】と呼ばれました」

 

 

 更に絵本を読み続けるネプギアにラムが嬉しそうに、「あっ、ルウィーが出てきた」と声を出すと、「ルウィーどうなるのかな?(どきどき)」とロムもそれに続く。

 

ロムとラムはルウィーに住んでいるので自分の国が出てきたのが嬉しいのだろう。

 

 

「ラステイションはまだ出ないみたいね。プラネテューヌとルウィーに比べれば歴史は浅いから仕方ないか」

 

 

 ユニは少し残念そうにしながら言う。

 

彼女の言う通りラステイションは比較的新しい国なのでまだ出てこないようだった。

 

 

「そういえば、タリって聞いたことがあるような……」

 

 

 ラムが腕を組んで考え込むと、「確か、神次元にあった古い国だったと思う」とロムがラムの疑問に答える。

 

ラムは右の手のひらを左手のこぶしでポンと叩くと、「そうそう、それそれ。さすがはロムちゃん」と思い出したように言う。

 

神次元と言うのは以前にネプギアが迷い込んだ別の次元で、ネプギアはそこで様々な事件を解決して戻って来たのだ。

 

ちなみにネプギア達が今住んでいるこの次元は超次元と呼ばれている。

 

 

「ピジョンとカルディアは聞いたことがないわね」

 

 

 ユニはあごに右手を当てながら考え込むと、「ルウィーとタリと合わせて、紀元前のゲイムギョウ界の四国家だったって、いーすんさんに聞いたことがあるよ」とネプギアが答える。

 

ロムが、「きげんぜん?」と首を傾げ、ラムが、「賞味期限前にちゃんと食べること?」と質問する。

 

ユニは少し呆れた声で、「違うわよ。今のG.C.より前の時代だから紀元前って言うの」と説明すると。

 

更に、「G.C.は今のゲイムギョウ界の繁栄の元を作った二代目のルウィー女神の文子様の誕生した年に合わせて作られたんだよ」とネプギアが続く。

 

G.C.【ジーシー】とは我々の世界では西暦を現すA.D.と同じく年の呼称に使われる。

 

 

 ロムが、「ルウィーの文子……様がゲイムギョウ界の元を作ったの?」と質問する。

 

それに対して、「うん、ゲイムギョウ界の存在が他の世界に認められ始めたのは、二代目ルウィー女神の文子様とその妹の音子様の活躍のおかげなんだよ」とネプギアが答える。

 

ゲイムギョウ界は以前よりあったが、その存在が広く認められたのはルウィーという国の二代目女神の力があってこそであった。

 

勿論、彼女だけの力ではないが、一番の功労者と言って差し支えないだろう。

 

 

「ところで、じーしーってなに?」

 

 

 今度はラムが左手を上げて質問すると、「ゲームの世紀。Game Century【ゲーム・センチュリー】の略よ」とユニが答える。

 

先ほどと同じように、「紀元前はB.G.で、Before Game【ビフォー・ゲーム】になるの」とネプギアがそれに続く。

 

西暦がイエス・キリストの誕生年からと定められたことと同じように、ルウィーの二代目女神の活躍を称して彼女の誕生年の翌年をゲームの世紀の始まりとして、G.C.と名付けたのだ。

 

 

 今まで出て来た、ゲイムギョウ界という世界、マーリョというキャラクター、文子と呼ばれる女神。

 

これらのキーワードで西暦1970~80年頃の生まれの方は何か思い当たる節があると思う。

 

察しの通り、ゲイムギョウ界は我々の住む世界のコンピューターゲームと深い関わりがある世界だ。

 

ルウィーの二代目女神の文子は1983年に発売した有名家庭用ゲーム機のゲイムギョウ界での姿となる。

 

その為、西暦1983がG.C.の始まりになる。

 

昔は現実世界とゲイムギョウ界の時間の流れの早さは別々になっていたが、ここ最近になって現実世界とゲイムギョウ界の時間の流れが完全に同期した。

 

それにより、西暦2019年の現在のゲイムギョウ界もG.C.2019年となっている。

 

 

 尚、ゲイムギョウ界の太陽暦も今はグレゴリオ暦が使用されており、一年は約三百六十五日となり一日も同じく二十四時間となる。

 

気候は雪国であるルウィーを除けば、現実世界の日本と同じく春夏秋冬の順で季節が巡って来る。

 

 

「それじゃあ、プラネテューヌは紀元前の国にならないの?」

 

 

 ロムとラムの質問に答え終わったユニが話を戻してネプギアに質問する。

 

それに対してネプギアは、「うん、プラネテューヌの初代女神様とルウィーの二代目女神様は同い年の生まれなんだって」と答える。

 

 

「紀元前の国の中ではどこが一番古いの?」

 

 

 ラムがネプギアとユニの間に身を乗り出しながら質問すると、「いーすんさんは、タリって言ってたよ」とネプギアが答える。

 

続けてロムは、「じゃあ、タリがゲイムギョウ界で一番古い国?」と質問する。

 

ネプギアはゆっくりと首を左右に振ると、「ううん、それより前に、オデュッセイアって国があって、これがゲイムギョウ界の初めての国って言われているんだって」と答える。

 

ユニは腕を組んで、「アンタ、なかなか物知りね」と感心すると、「最近は、いーすんさんに歴史も習ってるんだ」とネプギアは嬉しそうに言う。

 

ユニはネプギアの知識にライバル心が刺激され、ネプギアはユニに褒められたのが素直に嬉しいようだ。

 

ネプギアとユニは、仲の良い友人としても互いを高めあうライバルとしても良好な関係を築き続けていた。



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#02-04 教えて、ギアユニ(女神と国民の巻)

「ねーねー。続き続き~」

 

 

 ラムがネプギアの左手を引っ張りながら絵本の続きを読むようにせがむと、「気になる気になる……」とロムも期待に目を輝かせる。

 

ネプギアは、「じゃあ、読むね」と言うと再び絵本に目を向けて読み始める。

 

 

「五人の女神様は集まって、ゲイムギョウ界の今後について話し合いを始めました」

 

 

 ネプギアがページをめくると話し合いをする五人の女神が描かれている。 

 

 

「しかし、どの女神様も自分が一番強く自分がゲイムギョウ界のリーダーになると譲らずに争いになってしまいました。こうして第一次ハード戦争が起こりました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞いてラムが興奮気味に、「おお、せんそーだ、せんそー」と言うと、「どこが勝つのかな?」とロムが小首を傾げる。

 

 

「最初はタリの国がとても有利でした」

 

 

 ネプギアが読むのに対して、「ちょっと意外ね」とユニが右手をあごにあてながら言う。

 

先述したように昔のゲイムギョウ界はルウィーがとても強く、てっきりルウィーがスタートダッシュをすると思っていたようだ。

 

 

「しかし、タリの女神様は戦争に勝つために国民に信仰を強要して信仰しない人には厳しい罰を与えました。その上に高い税金も定めていました。そのことが国民の怒りを買いました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムがまた、「それってどんなふうに悪いの?」質問をする。

 

ラムには信仰の強要や高い税金という言葉がピンとこないらしい。

 

 

「そうだね……。例えばちょっと意見に反対しただけでお尻ペンペンされたり、いきなり、おこづかい半分にされたら、ロムちゃんもラムちゃんも怒るよね?」

 

 

ネプギアがそう例えると、ロムは、「うん、怒る(ぷんぷん)」と言い、ラムは、「ロムちゃんにそんなことするヤツは、わたしがやっつけるわ」と憤る。

 

 

「タリの国の人たちはそんなことをされたんだよ」

 

 

 ネプギアが言うと、ロムとラムが、「「なるほどー」」と声を揃えて頷く。

 

ネプギアはそんな二人の反応を確認して続きを読む。

 

 

「怒った国民は女神様を信仰しなくなってしまいました。信仰の無くなったタリの女神様はあっという間に弱くなってしまい、ルウィーの女神様にあっさりと負けてしまいました」

 

 

 それを聞いたラムが、「お~! ルウィー、つよーい!」とバンザイと両手を上げると、ロムも、「つよい、つよい(にこにこ)」と拍手をする。

 

女神がゲイムギョウ界の住人から得ることの出来るシェアエネルギーは前述のように人々の信仰心からなるもの。

 

人々をモンスターなどの脅威から守り、そして人々の生活を豊かにするよう導くことで得ることができる。

 

だが、好かれるだけではなく、時には神として堂々たる威厳を見せ、異端者や犯罪者を厳しく罰して人々に畏怖の念を抱かせることも必要なことがある。

 

その舵取りは女神やその側近の裁量次第となる。

 

タリのような恐怖政治を行うと、人心は離れてしまい信仰が無くなってシェアエネルギーを得られなくなって女神は弱って滅びてしまうのが常であった。

 

 

「悪い専制政治のお手本みたいな終わり方ね」

 

 

 ユニが頷きながら言うと、ネプギアも同じように頷いて、「そうだね。人あっての国と女神だもんね」と答える。

 

ネプギアとユニは見た目より知識と教養が豊富で、本の内容から反面教師となる部分をしっかりと理解しているようだった。

 

 

「【せんせーせーじ】ってなに?」

 

 

 それを聞いたラムがまたも質問すると、ロムも、「気になる……」と続く。

 

ラムが少し考えて、「先生が、せーじって名前?」と言って首を傾げるが、「違うわよ」とユニが少し呆れた声で答える。

 

そこにネプギアが、「政治って言うのは国のルールとか作って、世の中をよくしようとすることだよ」と二人の質問に答える。

 

続いてユニが、「で、専制政治っていうのは王様とか偉い身分の人が思いのままに政治を決めることよ。身分が血統っていう親子とかの血の繋がりとかで最初から決まってね」と言う。

 

 

 ロムとラムが、「「ふーん」」と声を合わせて言うと、ユニは「男爵とか侯爵とか聞いたことない?」とロムとラムに質問する。

 

ラムが左手を上げて、「あるある!」と言うと、ロムも右手を上げると、「おイモ」と答える。

 

ネプギアは苦笑いを浮かべながら、「それも男爵だけど違うかな……人の身分の名前のことだよ、称号とかそんな感じの」とやんわりと否定しながら説明を付け加える。

 

ラムはそれを聞くと、「じゃあ、あっちよ、あっち。びよーんって、帽子かぶってるの」と両手を頭の上で伸ばして丈の長い帽子を表現する。

 

ロムもそれに合わせて、「シルクハットで、びよよーんって長いおヒゲしてるんだよね」と付け加えながら、両手の人差し指を長いひげを表すように左右に動かす。

 

 

「それよそれ、少し偏見入ってるけどね」

 

 

 思い通りの回答をえられたユニが嬉しそうにそう言う。

 

しかし、ラムが更に、「それで手品師なんだよね」と言うと、ロムが、「【へるすまじしゃん】ってミナちゃんが言ってた」と言う。

 

ユニは一転して呆れ顔で、「なにそれ……」と呆然としてしまう。

 

ネプギアは少し考えた後に「それ多分、ヘルスじゃなくて、【ヘルズマジシャン】じゃないかな?」と言うと、「あっ、それそれ」とラムがうなずく。

 

それを見たネプギアは、「それは漫画とかだけの特殊な設定だと思うよ」とユニと同じく少し呆れながら答える。

 

 

「とにかく、生まれた時から偉い人が決まってるから、性格の悪い人や頭の悪い人でも偉くなれちゃうのよ」

 

 

 ユニが気を取り直して両腕を組みながら言うと、「で、悪い人は自分勝手なルールを作って国をメチャクチャにして国民を苦しませるのよ」と続けて言う。

 

ネプギアは、「タリは女神がそんなふうに悪い人だったから、国民に見捨てられて負けちゃったんだよ」とロムとラムに言い聞かせるように付け加える。

 

更に、「女神と国民は持ちつ持たれつなんだから、女神だからってあんまり勝手なことしちゃダメなんだよ」と付け加えた。



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#02-05 教えて、ギアユニ(女神と教祖の巻)

「でも、お姉ちゃんみたいに良い女神様ならいいんだよね」

 

 

 ラムが言うと、ロムも、「お姉ちゃんなら大丈夫(こくこく)」と続いた。

 

自分の姉を女神と呼ぶロムとラムはルウィーの女神の妹である。

 

 

「そうだね、うちのお姉ちゃんも安心だよ」

 

 

 それにネプギアも続くと、ユニも、「アタシのお姉ちゃんは完璧だからね」と自慢気言う。

 

彼女達二人も女神の妹で、ネプギアはプラネテューヌのユニはラステイションの女神の妹なのだ。

 

 

 ちなみにまだ半人前なので、一人前の女神は【守護女神】と呼ばれるが彼女達四人は【女神候補生】と呼ばれている。

 

神とはいっても姿形は人間と変わりない。

 

女神化と呼ばれる変身を行うと多少は人間との違いは出てくるが、それでも大差はない。

 

 

「って、ネプギアのところはダメでしょ……」

 

 

 ユニはすかさずネプギアにツッコミをいれると、「ええっ!? なんで! お姉ちゃんダメじゃないよ!」とネプギアは反論する。

 

 

「いつも勝手なことして貿易赤字出してるって、お姉ちゃんが言ってるわよ」

 

 

 ユニは落ち着いてネプギアの反論に答えるとネプギアは、「うっ……」と言葉に詰まってしまう。

 

ユニの言う通りネプギアの姉はかなり自由奔放な性格で、思い付きで国の方針などを勝手に決めてしまうのだ。

 

専制政治みたいな感じではあるが悪意や我欲などではなく、本人は純粋に名案だと思って止める間の無くノリノリで突き進んでしまうのだ。

 

しかし、ユニの言う通り毎回失敗に終わっており、その後はネプギア達プラネテューヌの要職クラスがフォローに奔走するのがお決まりになっていた。

 

 

 ネプギアが怯んでいる隙に、「悪い人じゃないけど、政治経済においては頭が悪いわよね」ユニがキッパリそう言う。

 

ネプギアは肩を落とすと、「ううっ……ごめんね、お姉ちゃん。私、フォローできないよ」とうなだれてしょんぼりしてしまう。

 

素直で真面目なネプギアはウソをついてまで姉をかばえなかった。

 

 

「でも、プラネテューヌって滅びたりしないよね?」

 

 

 ネプギアとユニのやりとりを見ていたラムがそう言って腕組みして首を傾げると、ロムも、「ネプテューヌちゃん、面白い人だからかな?」と小首をかしげる。

 

 

「そうだよ! お姉ちゃん、頭は悪いかもだけど、すっごく面白いから!」

 

 

 ネプギアはロムとラムの言葉に何とかフォローを思い付いたようだ。

 

ちなみにネプテューヌとはネプギアの姉の名前である。

 

 

「頭が悪いことは正直に認めるのね」

 

 

 そこにユニは意地悪そうな笑みを浮かべて言うと、ネプギアは、「……う~……あんまりイジメなんでよ」と恨めしそうな声を出す。

 

 

「ごめん、ごめん。でも……」

 

 

 ユニは素直に謝りながら、「でも、プラネテューヌが保ってるのは、どっちかって言うと教祖のおかげじゃないの?」と言葉を続ける。

 

 

「そうだね、いーすんさんにはお世話になりっぱなしだね」

 

 

 ネプギアはその言葉に自分の国の教祖である【イストワール】に感謝をする。

 

ネプギアのいう【いーすん】とはイストワールのあだ名である。

 

先程から何度か名前が出ているが、優秀で物知りな人物でネプギアも色々と教えて貰うことがある。

 

毎回ネプテューヌの自由奔放に振り回され、ネプギアと共にフォローに奔走する苦労人。

 

 

「教祖が優秀なら問題ないって点は民主的よね」

 

 

 ユニがそう言うと、またまたラムが、「みんしゅてきってなーに?」質問すると、ロムも「気になる気になる(なぞなぞ)」と続く。

 

 

「えーと、国とか政治とかのみんなのことには、みんなが話し合って決めるってことを、【民主主義】って言って、その通りになってることを【民主的】って言うの」

 

 

 ネプギアはロムとラムも疑問に丁寧に答えると、「さっきの専制政治に対して、国民のみんなも政治に参加できるのよ」ユニがそれに続く。

 

こうやって幼いロムとラムが分からないことを質問して、真面目で勉強家のネプギアとユニがそれに答える会話は四人の中で定型化していた。

 

 

「みんなの代表になって女神に政治とかの意見ができる教祖とか教団の偉い人は、国民が選挙で決めるから、みんなで決める民主的ってことよ」

 

 

 ユニがロムとラムに説明をする。

 

【教祖】は各国の女神に仕える機関である【教会】のリーダー。

 

女神に次ぐ権限が与えられ、女神のよき相談役となる。

 

選ばれる条件は国ごとに様々で、女神が直に指名する場合もあれば世襲の場合もある。

 

ただし、国民による信任投票は行われており、能力の無い者や我欲に溺れている者がなれることは基本的に無い。

 

 

「プラネテューヌは信任投票で、国民のほぼ100%が【いーすんさんでいいよ】って言ってくれてるんだよ」

 

 

 ネプギアが自分達の教祖であるイストワールが国民に信用されていることを自慢気に言う。

 

プラネテューヌの女神であるネプギアの姉ネプテューヌは先程ユニが言ったように政治向きの人物で無いので、国民は彼女のフォローをし続けるイストワールを心から信用している。 

 

 

「ウチは75%だったかしら? ケイが悪いってわけじゃないんだけど、ちょっとドライすぎるところがあるから誤解受けやすいのよね」

 

 

 ユニはあごに右人差し指をあてて思い出しながら言う。

 

ケイとは【神宮寺ケイ】というラステイションの教祖の名前である。

 

ユニの言う通り、神宮寺ケイはイストワールに負けず劣らずの優秀な人物だがビジネスライクな人物であり、ユニの言うようにドライな性格が、いらぬ誤解を受けることがある。

 

 

「しんにんとーひょーってミナちゃんどれぐらいだったっけ?」

 

 

 ラムが腕を組むと、ロムが、「……たしか60%だったと思う」と答える。

 

それを聞いてユニは、「ルウィーの紳士はブレないわね」と呆れると、「でも、小さくないのに60%も獲得してるミナさんも凄いと思うよ」とネプギアが言う。

 

 

 ミナとは【西沢ミナ】というルウィーの教祖の名前で、見た目は二十歳前後の女性である。

 

しかし、ルウィーの国民はロムとラムのような小さな子が好きなのでミナのような大人の女性が支持を得るのは大変なことなのだ。

 

それだけ彼女が優秀であり、その働きが国民に認められていると言っていい。

 

 

「私達もタリみたいにならないように、国民のみんなが選んだ教祖の人達と一緒によく考えて物事を決めようね」

 

 

 ネプギアは言うとユニが、「女神は強いだけじゃなくて、為政者としても優れていないとダメなのよ」と続くと、ロムが、「いせいしゃ?」と不思議そうに首を傾げる。

 

ラムも、「威勢のいいお医者さん?」と言いながら首を傾げる。

 

続けて両手叩いてを鳴らすとすると大きな声で、「いらっしゃい、いらっしゃい! 今日は手術の大出血サービスよ!」と言って魚屋の客引きのような真似をする。

 

ユニは右手をこめかみに当てながら、「手術の大出血なんて、サービスじゃないわよ」と呆れてしまう。

 

続けてネプギアが、「為政者って言うのは政治をする人の中でも、特に偉くて決定権をもつ人のことを言うの。だから女神がそれにあたるんだよ」と説明する。

 

 

「「なるほどー」」

 

 

 ロムとラムが納得するのを見たネプギアは本のページをめくる。



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#02-06 教えて、ギアユニ(犯罪神マジェコンヌと違法コピーの巻)

「タリを倒したルウィーはその勢いでカルディアも倒し、ルウィーはゲイムギョウ界で一番強い国になりました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムは、「さすがはルウィーね」と左手でガッツポーズを作り、ロムも、「ルウィーつよい」とバンザイして喜ぶ。

 

 

「ルウィーの強さの秘密はたくさんのメーカーが力を貸したからです。メーカーによって多くのゲームが作られ、ルウィーの信仰はますます上がりました」

 

 

 本の続きを読み始めるネプギア。

 

【メーカー】とは本国以外でゲームソフトを作ってくれる企業や団体である。

 

各国のゲーム機に対応したゲームを作ることで、ゲーム機の面白さが増してその国のゲーム機の人気が上がる。

 

 

 女神が信仰を得るには人々を守り導く他に、女神の分身とも言える自国のゲーム機の人気を上げる必要がある。

 

ゲイムギョウ界の名の通り、人々はゲームを楽しむためにこの世界で生きているのでゲーム機の人気を上げることは非常に重要なことだ。

 

 

 ゲーム機の人気を上げる為に必要な物は面白いゲームソフトを沢山作ること。

 

その為には本国だけでなくメーカーのような民間の企業などの協力も必要になってくる。

 

メーカーの協力を得るには優れたゲーム機を作るだけでなく、交渉術なども重要になってくる。

 

 

 その為に女神がシェアエネルギーを得る為には、戦闘が強いだけでなく内政や外交など各方面に高い能力を有し、優れた人材を扱うことも必要となってくる。

 

ちなみに現在のゲイムギョウ界では、テレビ画面でゲームができる家庭用ゲーム機となる据え置きゲーム機が守護女神の分身。

 

携帯型ゲーム機が女神候補生の分身と言われている。

 

 

「特に【RPG革命】で作られ現在も続編が作られている【ドラゴンクエスチョン】や【ファイナリストファンタジア】を筆頭とするRPGゲームは人々の心を魅了しました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞いていたユニは腕組みをしながら、「RPGの人気は不動よね~。お姉ちゃんも大好きだし」と感心する。

 

ネプギアも同じように、「そうだね。今のゲームはどこかしらにRPG要素があるよね」と感心する。

 

 

 RPGとは【ロールプレイングゲーム】の略。

 

プレイヤーが主人公とその仲間を操作し、障害として立ちふさがるモンスターとの戦闘を繰り返しながら【経験値】や【お金】などを蓄積してパワーアップする。

 

そして徐々に行動範囲を広げていき最終的に目標を達成するというものである。

 

ゲイムギョウ界では圧倒的な人気を誇るジャンルで、後に様々な革命が起きてもRPGは衰退する気配を見せない。

 

このRPG革命により、ゲームに少しずつ育成をしていきながら先に進めるという概念の物が生まれ始める。

 

 

「こうして、ゲイムギョウ界=ルウィーと呼ばれるほどにルウィーは強大になりました」

 

 

 ネプギアが続きを読みながら次のページをめくると、黒い魔女のような姿が描かれていた。

 

 

「このままルウィーがゲイムギョウ界の覇者になるかと思われた時に事件が起きました。【犯罪神マジェコンヌ】の誕生です」

 

 

 ネプギアが更に続きを読むと、「犯罪神がルウィーで誕生したことは聞いてたけど、こんな昔に生まれたのね」とユニが右手をあごに当てながら言う。

 

犯罪神マジェコンヌとはゲイムギョウ界の邪神で女神であるネプギア達は彼女達と死闘を繰り広げたことがある。

 

 

「マジェコンヌは突如としてルウィーに現れ、【マジェコン】と呼ばれるほとんどのゲームをコピーできる悪い機械を広めました」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

自分のよく知る邪神のことを読むその声と表情はやや緊張しているようだった。

 

マジェコンとは、マジェコンヌの力で大半の物を複製できてしまうコピーツール。

 

これによりゲイムギョウ界の物の価値が暴落して市場破壊を招き、ゲイムギョウ界全体が危機に瀕した。 

 

 

「マジェコンはルウィーの国民の心を壊してしまいました」

 

 

 ネプギアが少し悲しそうな声で読む。

 

絵本の中とは言え、ゲイムギョウ界の人々がマジェコンの誘惑に負けてしまったのが悲しいのだろう。

 

 

「それによりゲームショップは枯れ果て、ゲームメーカーやゲームクリエイターは飢え苦しみ、ルウィーは滅亡の危機にさらされました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムが、「犯罪神はやっぱり悪いヤツね」と腕を組んで憤慨し、ロムも、「ゆるせない(ぷんぷん)」と怒っているようだった。

 

ラムはそこで思いついたように左手を上げて、「なんでコピーツールが広まると国が亡んじゃうの?」と質問する。

 

ロムも、「そういえば、わたしも知らない」と不思議そうに首を傾げる。

 

 

「まずマジェコンを手に入れるのは、女神への信仰を捨てて犯罪神を信仰しなきゃならないのよ。この時点で女神のシェアエネルギーが落ちちゃうでしょ?」

 

 

 ユニが右手の人差し指を上げて説明を始める。

 

ロムとラムはユニの説明に納得したようにこくこくと首を縦に振る。

 

更にネプギアが、「次にゲームをコピーされちゃうと、元になったゲームが売れないよね? そうすると国やメーカーにお金が入らなくなって国もメーカーも弱っちゃうの」と説明する。

 

 

「コピーする方は軽い気持ちだろうけど、ゲームに限らず商品はクリエイター知恵と技と努力の結晶なのよ。それを対価であるお金を払わずに手に入れるなんて最低よ」

 

 

 ユニはそう言いながら腕を組んで憤りをあらわにする。

 

ネプギアは少し悲しい顔と声で、「クリエイターさんも人間だからお金が入らないと、ご飯が食べられなくて困っちゃうの」と言う。

 

ロムとラムはネプギアとユニの言うことを理解できているようで、うんうんとしきりに頷く。

 

ネプギアはそんな二人を見ながら、「クリエイターさんもそれで元気がなくなっちゃって面白いゲームが作れなくなっちゃうの」と説明を続ける。

 

更に、「それによって、面白いゲームがなくなってゲイムギョウ界全体が衰退しちゃうんだよ」と続けて説明する。

 

 

 ユニは憤慨するように軽く右手で机をバンと叩くと、「要するに、悪貨が良貨を駆逐するってヤツよ」と言い放つ。

 

続けて、「悪くて能力のないマジェコン信仰者がルールを破って善良で優秀なクリエイター達に迷惑を掛けて滅ぼそうとしてるのよ」と言い捨てる。

 

ネプギアがあごに右手の人差し指を当てながら、「元は悪い人じゃない人がコピーツールの誘惑に負けて悪い人になっちゃうのも問題だよね」と言う。

 

ユニはうなずくと、「そうね。特に何も知らない子供を標的にするのは最悪よね」と答える。

 

ロムとラムはネプギアとユニの説明に納得したようで、「じゃあ、わたし達女神は違法コピーをやっつけるのにもがんばるのね」と力強く言う。

 

ロムも、「がんばる(ぐっ)」と言いながら二人とも胸の前で両手でガッツポーズをする。

 

ネプギアはその二人の姿を心強く思う。そして、「そうだね。一緒にがんばろうね」と言うと本の続きを読む。



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#02-07 教えて、ギアユニ(転換期と国家の誕生と滅亡の巻)

「ルウィーの危機にプラネテューヌの女神様達とピジョンの女神様達が助けにきました」

 

 

 ラムは嬉しそうに、「戦争してても、こういう時はちゃんと協力できるのね」と言うと、「よかった(ほっ)」とロムも安堵のため息をつく。

 

 

「ルウィーの女神様の姉妹、ピジョンの女神様の姉妹、そしてプラネテューヌの三姉妹の女神様、七人の女神様が犯罪神と激しい戦いを繰り広げました」

 

 

 ネプギアがページをめくると、魔女と戦う七人の女性が描かれていた。

 

 

「七人の女神様達は協力して犯罪神を封印しましたが、戦いの中でピジョンの女神様は二人とも死んでしまい、その結果ピジョンは滅びてしまいました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「やっぱり、犯罪神に滅ぼされた国っていうのもあるのね」とユニが深刻な顔で呟く。

 

 

「プラネテューヌも長女と次女を失い、傷ついた三女の女神様だけが残され、ルウィーの女神様達も深い傷を負ってしまいました」

 

 

 ネプギアは更に読み続ける。

 

ユニは少し心配そうな顔で、「勝ったはいいけど、ゲイムギョウ界全体が満身創痍ね」とつぶやく。

 

 

「それにより、残されたプラネテューヌもルウィーもモンスターから国を守ることが難しくなってしまいました。ここでゲイムギョウ界に転換期が訪れます」

 

 

 ラムが首を傾げながら、「転換期ってなんだっけ? 最近聞いたような気がするんだけど」と言うと、「……病気の名前で聞いたことがあるかも」とロムが自信なさそうに言う。

 

 

「その、【てんかん】じゃないわよ。転換期は人々が新しい女神を望んで女神や国がそれに応える時期のことを言うのよ」

 

 

 ユニがそう言うと、ネプギアは、「お姉ちゃん達はネクストフォームに進化する形で、みんなの期待に応えたけど昔は違ったみたいだね」と言いながら本の続きを読む。

 

【転換期】とは人々が今まで信仰して女神ではなく新しい女神を求めるようになる時期のことで、既存の女神に対するネガティブな嘘やデマが出回る。

 

ネガティブな嘘やデマというのは、既存の女神に対する力不足を指摘することが多い。

 

この場合は犯罪神による大きな被害を受けた国と女神がこの先国を守ることが難しいのではないか? という疑問の声から人々の不安や不満が噴出したのだろう。

 

 

「人々は犯罪神のような脅威に負けないように、今の女神様より更に強い女神の誕生を願いました。その願いにより新しい女神様が誕生しました」

 

 

 ネプギアは絵本を読み続ける。

 

女神は人々の信仰心によって生まれる。

 

その為、人々の強い願いがあれば新しい女神が生まれるのだ。

 

とは言え、既存の女神が大きな実績を上げて、【この国に新しい女神が生まれて欲しい】という願いが無いと後継者となる女神は生まれない。

 

例えばピジョンはルウィーに大きくシェアを奪われた末に犯罪神との戦いで姉妹共に命を落としてしまった。

 

それにより、国民の多くがルウィーやプラネテューヌに宗旨替えをしてしまいピジョンに対する信仰が足りず新しい女神が生まれず滅んでしまったのだ。

 

無情とも言えるかもしれないが、これがゲイムギョウ界で女神が生まれる法則の一つである。

 

 

「プラネテューヌの女神様もルウィーの女神様も、素直に国民の願いにより生まれた新しい女神様に国を譲り引退し、新しい女神様が国を継ぎました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「引退した女神様ってどうなるの?」とラムが質問する。

 

ユニが、「どこかで隠居してるって聞いたことがあるわ」と答えると、今度はロムが、「いんきょ?」と首を傾げる。

 

今度はネプギアが、「若い世代に仕事を譲って、のんびりと暮らすことだよ」と答える。

 

 

 ゲイムギョウ界の女神は国民の願いにより誕生し、人々を守り導き信仰を受け、転換期までに次の女神が生まれるだけの実績を上げる。

 

そして新しい女神に国を譲るというサイクルを繰り返し長年に渡り国を維持してきた。

 

引退した女神はユニの言う通りどこかで隠居しており、人々の心に残った偉大な業績がシェアエネルギーとなって今も生き続けているらしい。

 

 

 ネプギアはロムとラムが納得したのを見て絵本を読み続ける。

 

 

「それと同じ頃に一つのメーカーが新しい女神様を生み出し【エディン】という国を建てます」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「あれ? それもどこかで聞いたことがあるような……」とラムが首をひねる。

 

ロムが少し自信なさそうに、「……ピーシェちゃんの昔の国……だったと思う」とラムの疑問に答える。

 

ラムはまた右の手のひらを左手のこぶしでポンと叩くと、「すっごーい。さすがはロムちゃんね」とロムを褒める。

 

ネプギアも、「うん、すごい、すごい」と右手でロムも頭をなでてあげると、「えへへ(てれてれ)」とロムは気持ちよさそうに目を細める。

 

ピーシェとは神次元で出会った女神で、ネプギア達とは友好的な関係を結んでいる。

 

神次元は超次元とよく似たところがあり、存在する人の名前と容姿や国の名前が同じことも珍しくない。

 

 

 女神が生まれるもう一つの法則に、エディンのようなメーカーや他のギョウ界から来た団体が技術と資金を使って新しいゲーム機と女神を生み出すことがある。

 

ユニのラステイションも元々は別のギョウ界の巨大な組織がゲイムギョウ界で新しい国を興したものである。

 

現在のゲイムギョウ界にある四つの国、プラネテューヌとルウィーは古くからゲイムギョウ界にある国。

 

ラステイションとリーンボックスは他のギョウ界の大組織がゲイムギョウ界に進出して新しい国を興して出来たものだ。



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#02-08 教えて、ギアユニ(女神は流行に敏感にの巻)

ネプギアは絵本のページをめくるとそこには戦う三人の女神の姿が描かれていた。

 

 

「新しい女神様達も戦いが好きで、様々なメーカーを巻き込んで第二次ハード戦争を始めてしまいました。ルウィーが優位ながらも他の二国も互いに譲らず戦いは長きに渡りました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「やっぱり、この時期はルウィーが強いわね」とユニが納得するように頷く。

 

ネプギアは更に、「ここでゲイムギョウ界二つ目の革命、【格闘ゲーム革命】がおこります。人々はゲームセンターで格闘ゲームに熱狂しました」と読み上げる。

 

すると、「……格闘ゲーム、ちょっと苦手……」とロムがしょんぼりしたようと言うと、反対にラムは、「わたしは得意よ」と胸をはる。

 

 

 格闘ゲームとは格闘技などを身に付けたキャラを操作し、主に一対一で戦い、攻撃とガードを駆使して相手を倒すことを目的としたゲーム。

 

対人戦で反応速度などの技術と、駆け引きなどの知恵を競い合うことで大きな人気を博した。

 

この格闘ゲーム革命により、ゲイムギョウ界で対人戦は強く意識されるようになる。

 

対人戦自体は、スパイ同士が戦ったり、電車で旅行しながら貧乏神から逃げるゲームなどがあったが、格闘ゲームのような一瞬の攻防で戦い続けるものは珍しくあった。

 

格闘ゲーム自体は長いブームを経た後に衰退してしまうが、対人戦の概要は今も強くゲイムギョウ界に根付いている。

 

 

 ネプギアは少し渋い顔で、「私も格闘ゲームは少し苦手かな」とロムに同意する。

 

ユニが少し呆れたように、「アンタは対人ゲームは総じて苦手よね」と言い、「協力したり、対人でもチーム組んで戦うゲームは妙に上手いのにね」と今度は不思議そうに言う。

 

ラムも、「うん! ネプギアはガアンダム【戦闘の絆】とか【ヴァーサスシリーズ】だと凄く上手いよね」と言い、ロムも、「わたしもいつも助けてもらってる」と嬉しそうに言う。

 

 

 ガアンダムというのは現実世界やアニメギョウ界で四十年以上続いている人気ロボットアニメシリーズ。

 

勧善懲悪モノではなく、未来の人類が様々な理由で人類同士の戦争をする話で、その戦争に巨大ロボットが出て来るのだ。

 

メカ以外にストーリーも評価が高く、大人から子供まで人気があり、更に女性ファンも多いロボットアニメの金字塔である。

 

ゲイムギョウ界もその影響を強く受けて、G.C.初期から多種多様なガアンダムのゲームが作られており、最近はチームを組んで敵味方に分かれて戦う作品が流行っている。

 

ネプギア達はこのガアンダムのチームを組んで戦うゲームをよく一緒にプレイしている。

 

ユニ達はネプギアは一対一の対戦ゲームは強くないが、仲間と協力するゲームになると急に強くなると評価しているのである。

 

ネプギアはSFなどのロボットアニメが好きで、特にこのガアンダムシリーズは大好きである。

 

ちなみにメカオタの少年が戦いの中で一人前の男性に成長していくという初代ガアンダムが主人公にシンパシーを感じるので好きらしい。

 

 

 ネプギアは、「あはは、何でだろうね。みんなと一緒だと力が湧いてくるのかな?」と恥ずかしそうに言うと、「じゃあ、続きを読むね」と絵本を読む。

 

 

「しかし、格闘ゲームはその時代の家庭用ゲーム機で再現することが難しいものでした。そこで格闘ゲームに特化した新たなる女神様と国の【ネオジェネシス】が生まれました」

 

 

 そこでロムが、「また知らない国が出て来た……」と少し困った顔をし、ラムも首を傾げて、「ねおじゃねしすってどんな国?」と質問する。

 

ユニが、「ネプギアの言った通り格闘ゲームに特化した国よ。特に2D格闘ゲームにおいてかなりシェアを独占していたそうよ」と答える。

 

ネプギアも、「格闘ゲームのブームの時には凄い発展をして、専用のゲームセンターや巨大なアミューズメントパークとかも経営してたんだって」と付け加える。

 

 

「でも、今は無いわよね」

 

 

 ネプギアとユニの高い評価に対して、ラムがあっさりと斬り捨てると、「うん、わたしも知らなかった」とロムが頷く。

 

ネプギアは右手をあごに当てて少し考え込むと、「ゲイムギョウ界には色々なゲームがあるからね。2D格闘ゲームだけでやっていくのは苦しかったのかな」と答える。

 

ユニもネプギアの言葉に軽く頷くと、「そうね。特化って言うのはハマれば凄いけど、それだけでやっていけるほどゲイムギョウ界のユーザーは甘くないわ」と同意する。

 

更に、「稼いだ資金を他のジャンルの技術開発に充てていれば結果は違ったかもしれないわね」と言う。

 

今度はネプギアがユニの言葉に頷いて、「うん、そうだね」と言うと、「どういうこと?」とラムが首を傾げる。

 

ネプギアが、「ルウィーだって、ユーザーさんが飽きないように色々な種類のゲームを作るでしょ?」とロムとラムに向けて言う。 

 

ネプギアとユニの説明に、「うん、マーリョも色々してる」とロムが頷く。

 

ラムも腕組みしながら、「マーリョって本当に色々してるわよね。何回もお姫様助けに行ったり、お医者さんしたり、テニスやゴルフもするし、カートにも乗るわね」と感心する。

 

ラムの言う通り、ルウィーの看板キャラクターであるマーリョはG.C.初期から約二千年以上様々な種類のゲームに出演している。

 

 

「じゃあ、色々なゲームをガンガン作ればいいのね」

 

 

 ラムが自信満々に言うが、「それは少し違うかな」とネプギアがやんわりとダメ出しをしてしまう。

 

ラムは頬を膨らませると、「えー? なんでよー」と不満そうに言う。

 

ネプギアは右手を唇に当てて少し考え込むと、「ロムちゃん、ラムちゃん、美味しいご飯を作るコツって何だと思う?」とロムとラムに質問する。

 

ラムは、「え?」と何で料理の話? といった感じで不思議そうに首を傾げるが、ロムが、「……愛情(てれてれ)」と素直に答えるので、自分も真面目に考えることにする。

 

ネプギアはロムに向けて少し残念そうな顔をすると、「愛情は大切だけど、コツとは少し違うかな」とロムが落ち込まないよう優しい声で言う。

 

ロムは少し残念そうな顔をするが、「ふみ~~(しゅん)」と唸るだけで、そこまでは落ち込んでいないようだ。

 

その時にラムが思いついたように左手を上げると、「そんなの簡単よ。食べたい時に食べたいものを作ればいいのよ」と自信満々に答える。

 

ユニは、「はぁ……」と溜息を吐くと、「そんな単純な答えな訳ないでしょ」と呆れるが、「おしい」とネプギアが言うので、「えっ!?」と驚いてしまう。

 

ラムは、「やったー!」と喜ぶと、「じゃあ、次はユニちゃんね」とユニの方を見る。

 

ユニは疑問顔で、「アタシも答えるの?」と首を傾げるが、「ユニちゃんなら分かると思うよ」とネプギアが言うので少し考えてみる。

 

数十秒考えたユニが、右手のこぶしで左の手のひらをポンと叩くと、「なるほどね。わかったわ」と言う。ネプギアが、「それじゃあ、ユニちゃん答えは?」とネプギアが尋ねる。

 

ユニは自信満々に、「食べる人が食べたいものを、出来立てで用意するのよ」と答える。

 

ネプギアは拍手すると、「当たり、さすがはユニちゃん」と嬉しそうに言う。

 

 

 前述したようにネプギアはユニを高く評価している。その上で尊敬し、友人としてとても好いている

 

ユニも口には出さないが同じように、ネプギアを高く評価し尊敬し、そして好いている。

 

二人は互いを尊敬しあい、時に応じて協力しあい競争し互いを高めあっている。

 

その為にネプギアはロムとラムに自分の言いたいことを伝える為に、ユニを巻き込むような行動をしたのだ。

 

 

「つまり、ゲームを作るのも料理と同じで、ユーザーの求めているものを出来立てで提供するのよ」

 

 

 ユニは、ネプギアが突然料理の話を持ち出したネプギアの真意をロムとラムに伝えると、「「おお~~」」とまたもロムとラムは声を揃えて感心をする。

 

ネプギアが、「ユーザーさんからのアンケートとかで市場調査して、作るゲームを決めて、そのゲームの流行が終わらない内に販売するんだよ」と言う。

 

更に、「要はむやみやたらにガンガン作るのじゃなくて、考えて作れってことよ」とユニが続ける。

 

ロムとラムは、「「なるほどー」」とまた声を揃えて感心すると、「流行が終わったゲームは冷めた料理なの?」とロムが質問する。

 

ユニは、「そうよ。客に冷めた料理を出すマヌケな料理屋なんて、すぐに潰れちゃうわ。ネオジェネシスが今無い理由は恐らくこの辺りね」と答える。

 

今度はラムが、「じゃあ、移植やリメイクは?」と質問する。

 

ネプギアが、「移植やリメイクもユーザーからの熱望があるようなら作るべきだろうけど、あまり作り過ぎるのはよくないかも」と答える。

 

ラムは不思議そうに、「なんで?」と首を傾げる。

 

ネプギアは、「移植とかは昔の料理を作り直すだけだから、懐かしい味はするけど、みんな散々食べた味だからね。やり過ぎると本当に飽きちゃうよ」と再び答える。

 

ロムが少し残念そうな顔で、「ゲーム作るの難しいんだね」と言うと、「ロムちゃんもラムちゃんも勉強していけば自然と分かるようになるよ」とネプギアが慰める。

 

ネプギアの慰めを受けたラムは自信を取り戻し、「そうよね。勉強して美味しい料理になるゲームを作るわ!」と左手を高々と上げる。

 

ロムも頷くと、「おー!」とラムと一緒に右手を上げる。

 

ネプギアはその可愛らしい姿に【くすり】と微笑むと、「それじゃあ、続きを読むね」と絵本に目を落とす。



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#02-09 教えて、ギアユニ(三次元世界の巻)

「ネオジェネシスが乱入し、四国での争いとなった第二次ハード戦争は熾烈を極めましたが、最終的にルウィーが勝者となりました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「いえーい! ルウィーがナンバーワンよ!」ラムはルウィーが勝利したことを素直にバンザイで喜ぶ。

 

ロムも、「わーい(ぱちぱちぱち)」と小さく拍手をして喜んでいる。

 

 

 しかしネプギアは少し不満そうに、「落ち物パズルについては書いてないんだ……」と肩を落とす。

 

向かいに座るユニは、「まぁ、格ゲーに比べれば影が薄いから仕方ないわよ」と慰めるように言う。

 

落ち物パズルとは、上から落ちてくるブロック等を並べルールに従って消していくゲームで、これも対人戦が盛り上がり人気を集めた。

 

しかし、格闘ゲームに比べると影の薄さは否めない。

 

ネプギアはこの落ち者パズルが大好きなので、本に載っていないことで少し残念な気持ちになってしまったようだ。

 

 

「そういえば、対人ゲームでも落ち物パズルは鬼のように強いわよねアンタ」

 

 

 ユニが思いついたように言う。

 

ネプギアは落ち物パズルが好きなだけなだけでなく、非常に上手い。

 

 

「ああいう何かを作り上げて行って臨機応変に対応するってロジックはゲームに関わらず好きだからかかな? ちょっとプログラミングに似てるし」

 

 

 ネプギアが答えると、「ああ、確かに。アンタ好きよねそういうの」とユニが納得する。

 

メカやコンピューターが好きなネプギアは何かを組み上げるという行為が好きで、パズルゲームもその一環となっているようだ。

 

ネプギアは気を取り直して本の続きを読む。

 

 

「第二次ハード戦争が終わるとゲイムギョウ界に二度目の転換期が訪れました。プラネテューヌとエディンとネオジェネシスの三つの国はルウィーに勝てる女神の誕生を強く願いました」

 

 

 ユニは腕を組んで、「国と国民が打倒ルウィーに燃えたってことね」と言う。

 

それに対して、「そうだね。それと、この時期だともっと質の高い対戦ゲームが家でやりたいってこともあるかも」とネプギアが答える。

 

ネプギアの言う通り、この時期は家庭用ゲーム機とゲームセンターの筐体の能力の差が大きく画像や音声が雲泥の差であった。

 

それを可能にしたのがネオジェネシスではあるのだが、ネオジェネシスはハードが高額なこととソフトのラインナップが格闘ゲームのみというネックがあった。

 

 

「プラネテューヌとエディンとネオジェネシスの三つの国はROMカセットに代わる技術、安価で高性能なCDソフトの研究を進めつつ、新たな女神様への世代交代を行いました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「ようやくCDソフトの登場ね」とユニが腕を組みながら言い、「これからはラステイションの時代よ」と、【ふふっ】と楽しそうに笑う。

 

 

「一方、ルウィーは勝利の余韻に浸り転換期が起こらず、今の女神様が治め続けました」

 

 

 ネプギアが読むのを聞きながら、「そうやってられるのも今のうちよ」とユニが先ほどと同じように笑う。

 

 

「そして三つの国が新しい女神様でルウィーに反撃をしようとしたところに、またも新しい国が四つも現れたのです」

 

 

 ネプギアが更に読み続けると、「「四つも?」」とロムとラムが声を揃えて驚く。

 

 

「同じくCDソフトを開発した【ラステイション】と【サンダイオー】に復興したタリとカルディアです」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

タリやカルディアのように過去に滅んだ国も新たな信者や資産を調えて再興することがある。

 

特にカルディアはゲイムギョウ界外に巨大な母体があり、その組織が前述したガアンダムのゲームや他にも多くのアニメのゲームを作る権利を持っている。

 

その上にモケイギョウ界などに強大な勢力を築いている。

 

その為カルディアは滅んでも、メーカーとしてガアンダムのゲームなどで力を蓄え、更に別のギョウ界からの援助で再び国を興すということを繰り返している。

 

しかし、現在のゲイムギョウ界ではカルディアは滅んでおり再興の気配は見せない。

 

今はゲイムギョウ界の老舗メーカーと合併して、ガアンダムなどのアニメゲームの他も色々なゲームを作っており、今はアイドル育成ゲームが特に勢いがある。

 

 

「ふふん、ようやくラステイションの登場ね」

 

 

 ユニは先程言ったラステイションの登場の予感が的中すると、嬉しそうに笑いながら右手をあごに当てる。

 

 

「八国による群雄割拠の戦い、これが第三次ハード戦争となります」

 

 

 ネプギアが絵本を読み続けると、「ぐんゆーかっきょってなに?」ラムが首を傾げる。

 

ユニはラムの方を向くと、「沢山の実力者たちが、競い合っている状態のことよ」と答える。

 

 

「お姉ちゃん達もぐんゆーかっきょ?」

 

 

 今度はロムが質問すると、「お姉ちゃん達は四人で競い合ってるから、この第三次ハード戦争に比べると群雄割拠ではないかもね」とネプギアが質問に答えると続きを読み始める。

 

 

「この戦争からゲイムギョウ界全体に大きな変化が起こります。ローポリゴンによる三次元世界への移行です」

 

 

 そこでネプギアは自分の右腕の袖が引っ張られていることに気付く、ロムが【くいっくいっ】と可愛らしく引っ張っているのだ。

 

 

「なあに? ロムちゃん」

 

 

 ネプギアは優しくロムに問いかけると、ロムは、「ローポリゴンってなに?」と質問する。

 

たまにはラムからではなく自分から質問したかったのだろう。

 

 

「ポリゴンっていうのは三角形とか四角形みたいな多角形のことで、三次元を表現するのに使われるてるものなの」

 

 

 ネプギアは両手の人差し指を使って、宙に三角形や四角形を描きながら説明を始める。

 

 

「ポリゴンの数が増えるほど細かいな表現ができるようになるんだけど、ローポリゴンっていうのは少ないポリゴン数で作られた物のことを言うんだよ」

 

 

 ネプギアはそう言いながら両手の人差し指で自分の顔の周囲を角ばったように線を引きながら「たまにすごくカクカクして角ばった人とかいるでしょ?」と言う。

 

ネプギアの問いかけに、「いるいるー! カクカクしてて面白いよねー!」とラムが答え、「ああいうのが、その時代の名残。ローポリゴンよ」とユニが付け加える。

 

ロムが、「ああいうのが、ローポリゴンなんだね」と納得をする。

 

ネプギアはロムとラムが納得したのを確認するとページをめくり絵本を読み進める。

 

 

「まずはプラネテューヌがポリゴンを使った格闘ゲーム【バーチャルバトラー】でスタートダッシュをかけました」

 

 

 ネプギアが少し嬉しそうに声を弾ませる、ここまでイマイチ良いところがなかったプラネテューヌの活躍が嬉しいようだ。

 

 

「新世界である三次元と格闘ゲームの組み合わせは大人気を呼び、これにより他の国に大きく差をつけました」

 

 

 ネプギアの声にユニが関心したように腕組みをすると、「3D格闘はプラネテューヌが先駆けだからね」と言う。

 

それに対して、「先進的な技術ではプラネテューヌは強いよ」とネプギアが自分の国を自慢するかのように言う。

 

ネプギアの言う通り、プラネテューヌは常に先を見据えた技術を開発しゲイムギョウ界一の先進国家と呼ばれている。

 

 

「その勢いでプラネテューヌの女神様はサンダイオーとタリとカルディアの三国もの女神様を一挙に倒してしまいました」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに、「プラネテューヌ大活躍だね」と言うと、「ラステイションの活躍はまだなの?」とユニが少し不満そうに言う。

 

ネプギアは、「えーと……次のページかな?」と言うとページをめくり、続きを読み始める。

 

 

「サンダイオーとタリは滅びてしまいましたが、カルディアは何とか滅びずに済みました。この大勝利によりプラネテューヌは大きくリードしました」

 

 

 ネプギアの読むのを聞いたロムが、「サンダイオーって出てきてすぐに負けちゃうなんて少しかわいそうだね」と言う。

 

ラムは、「ぽっと出が勝てるほどゲイムギョウ界は甘くないのよ」と堂々と言う。

 

その姿はやはり歴史あるルウィーへの自信があるようだ。

 

 

「しかし、そのすぐ後ろには巧みな交渉術で色々なメーカーの協力をとりつけたラステイションがたくさんのゲームソフトを出して後を追いかけました」

 

 

 ネプギアがそこまで読んだとき、「流石はラステイションね。最初から上位をキープしてるわ」とユニが嬉しそうに言う。

 

彼女もネプギアと同じように自分の国を自慢したいようだった。

 

ラステイションは開国から地道に勢力を伸ばし維持し続けてきた強国である。

 

母体である巨大な組織からのバックアップもあったが、それ以上にラステイションの舵取りが優れていたのだ。

 

現にサンダイオーもラステイションの母体と同じぐらいの大組織からバックアップを受けていたが、あえなく敗れてしまっている、

 

 

「ルウィーだって負けてないわよ」

 

 

 ラムが負けじとそう言うと、ロムも、「負けない(きりっ)」と続く。

 

ルウィーは前述の通りゲイムギョウ界に古くからある歴史ある国家なのだ。

 

自分の国を自慢する四人は自国に対する思い入れは強いようだ。

 

 

「うん、みんなで切磋琢磨していこうね」

 

 

 ネプギアがそう答えると今度はネプギアの左腕の袖が引っ張られていることに気付く。

 

ラムが【ぶんぶん】と上下に思いっきり引っ張っているのだ、どうやらさっきのロムの真似をしたいようだが元気が有り余っているラムにはロムのように大人しくはできないらしい。

 

 

「ラ、ラムちゃん、そんなに引っ張ると服伸びちゃうから……えっと、切磋琢磨のことが分からないの?」

 

 

ネプギアは少し慌てながら、ラムの意図を読んだかのように質問すると、ラムは「うん!」と元気よくうなずいて袖を離してくれる。

 

 

「切磋琢磨っていうのはね、仲間が互いに協力したり競ったりして、力や技や知識を高め合うことだよ」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「みんなで一緒に強くなろうってこと?」とロムが言うと、「そんなところね」とユニが締めくくる。

 

二人が納得したのを見たネプギアが続きを読む。



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#02-10 教えて、ギアユニ(プラネテューヌVSラステイションの巻)

「プラネテューヌとラステイションは新技術の3Dゲームを主力に応酬を繰り返します」

 

 

 ネプギアが絵本のページをめくるとローポリゴンで描かれた様々な物が本一面に描かれていた。

 

 

「巨大な3Dフィールドをロボットが駆け抜けるゲームや飛行機が3Dの大空を飛び回るゲーム。リアルな建物でゾンビや殺人鬼から逃げるゲームや敵を罠に嵌めるゲーム」

 

 

 ネプギアが絵本を読み続ける。

 

 

「3Dになるとゲームの広さが一気に広がるわよね。ラステイションでもロボットのウサギが凄い高さまでジャンプするゲームとか出してたらしいし」

 

 

 ユニはあごに右手を当てながら感心するように言う。

 

ネプギアも同じく感心するように頷くと、「無双系とか狩りゲーも3Dの広さがあってのものだからね」とユニに答える。

 

 

 無双系とはプレイヤーが百人から千人近い敵を薙ぎ倒して行くゲームで、その一騎当千を演じる爽快感は並外れたものだった。

 

狩りゲーとは多彩な攻撃をしてくる強力で巨大なモンスターと広いフィールドで戦うというもので、その迫力と緊張感で人気を博している。

 

どちらも3Dだからこそ出来たゲームと言える。

 

ちなみに、技術力の関係で無双系も狩りゲーも発売されるのは次の世代になるが、3Dゲームの基礎はこの世代で培われている。

 

 

「今までの2Dのゲームに比べて広大なスケールで展開される3Dゲームは人々を驚かせ魅了し、人々はこぞってプラネテューヌとラステイションのゲームを楽しみました」

 

 

 ネプギアの話を大人しく聞いてるロムとラムだが、「……なんかルウィーが置いてけぼり……(しゅん)」とロムが寂しそうに言う。

 

ラムが慌てて、「き、きっとすぐに活躍するわよ」とそれを慰める。

 

現在のロムとラムの言うように、この時期のルウィーは出遅れた感があった。

 

携帯ゲームは独占していたが、据え置き型ではあっという間に時代遅れになりつつあった。

 

前の世代交代はグラフィックやサウンドの強化が主だったが、今回は3D化という大きな変化があった。

 

それにより、人々の関心や信仰はあっという間にプラネテューヌとラステイションに移ってしまったのだ。

 

 

「プラネテューヌと拮抗するラステイションに好機が訪れます。ラステイションで発売された【ときめきメモリーR】から発生した三つ目の革命、【美少女ゲーム革命】です」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、ラムが腕を組んで、「ギャルゲーってルウィーにはないよね」と言うとロムは首を傾げながら、「規制が厳しいからってミナちゃんが言ってた」と答える。

 

ギャルゲーというのは主に魅力的な女性が登場することを売り物とするゲーム。

 

育成ゲームやノベルタイプのアドベンチャーゲームなど美少女と疑似的なコミュニケーションするギャルゲーは沢山の男性を魅了した。

 

また美少女だけではなく、逆に主人公が女性で美少年や美青年とコミュニケーションを取る、乙女ゲームというジャンルも同時に生まれた。

 

これによりゲイムギョウ界にも女性ユーザーが増え始めた。

 

 

 伝統を重んじ性教育に厳しいルウィーでは、当時ギャルゲーはふしだらと規制されてしまいこの革命の波に乗らず独自の道を行った。

 

今は多少緩くなってはいるが、それでも他の国に比べれば遥かに厳しい。

 

 

 この美少女ゲーム革命により、今までは男性キャラクターが中心だったゲイムギョウ界に可愛らしい女性キャラクターが急増する。

 

更に今まであったRPGなどにも、ヒロインとの恋愛要素が付きストーリーにも恋愛要素が深く絡むようになってくる。

 

格闘ゲームと同じく長いブームの後に育成やノベルタイプのギャルゲーは衰退するが、先述の通り様々なジャンルのゲームに魅力的な女性が多く出演するようになる。

 

この時代では3Dの技術力が足りず2Dのイラストが主だが、二世代後からは技術も上がり美しい3Dの美男美女が現れる。

 

その美形キャラが華麗に戦ったり歌ったり踊ったりなどしてプレイヤーの目を楽しませている。

 

また、この革命はゲイムギョウ界だけに留まらず萌えという文化となり様々な世界に大きな影響を与えることになる。

 

 

「ときめきメモリーRは、元々はエディンで発売したものだったのですが、革命が起きたのはラステイションでした」

 

 

 当時はエディンがゲームによる萌えの文化の先駆け者であったが、先述のようにたくさんのメーカーの協力を得たラステイションはその技術を巧みに吸収してしまう。

 

 

「その為、エディンのギャルゲーのシェアはラステイションに取られてしまい、エディンの女神様はラステイションの女神様に負けてしまいました」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、ユニは右手をあごに当てながら、「ギャルゲーはラステイションとプラネテューヌの二国の争いよね」と言う。

 

ネプギアも、「そうだね。本にもそう書いてあるよ」と頷いて絵本の続きを読む。

 

 

「これによりラステイションがプラネテューヌに追い抜きましたが、プラネテューヌも負けじとギャルゲーを取り入れて後を追いかけます」

 

 

 ネプギアが本を読み続けると、「もーーー! プラネテューヌとラステイションばっかりー! ルウィーは?」とラムが両手を上げて不満そうに頬を膨らませる。

 

先程はロムを慰めていたが、あまり気の長くないラムは堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。

 

ネプギアが優しい声で、「もうちょっと待ってね」と上手くラムをあやす。

 

ユニも少し優し気な声で、「この時期は時代の流れが早すぎて、流石のルウィーも時代の波に乗り遅れていたのよ」と慰めるように言う。

 

 

「他の国はこの二国の勢いには及びませんでした」

 

 

 ネプギアがページをめくると挫折したような姿の女神達が描かれていた。

 

 

「カルディアは新しい女神様を迎えて再興しましたがすぐに滅びてしまい、ネオジェネシスは格闘ゲームの衰退と同時に勢いを失い、ルウィーも国を守るだけで精一杯でした」

 

 

 ラムは少し悲しそうな声で、「うぅ~、ユニちゃんの言う通りだ……ルウィーが苦戦しているー……」と呟く。

 

続けてロムが、「どんどん国が少なくなっていくね。もう半分しか残ってないよ」と言う。

 

ラムは気を取り直して、「こーゆーの【ジンギスカンな戦い】って言うのよね」と得意げに答える。

 

それを聞いたユニは、「それは【仁義なき戦い】よ」と呆れながら訂正を加える。

 

更にネプギアが、「【仁義】って言うのは思いやりとか情けとかの道徳的な意味だから、仁義なき戦いって言うのはそれを無視したルール無用の争いのこと言うんだよ」と説明をする。

 

 

「凄くて怖い戦いのこと言うんじゃないの?」

 

 

 ラムが質問すると、「ヤクザとか怖い人の戦いの映画でよく使われるキャッチコピーだから、そういうイメージがあるのかもね」とネプギアが答える。

 

そこにロムが、「わたし達も仁義なき戦いになったりする? (おろおろ)」と不安そうに質問する。

 

ユニは落ち着いた声で、「アタシやお姉ちゃん達はちゃんとルールとか道徳を守って競ってるから、そんなことにはならないわよ」と答える。

 

ロムが、「よかった(ほっ)」と安心したのを見てネプギアが本の続きを読む。



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#02-11 教えて、ギアユニ(ラステイションの台頭の巻)

「更にラステイションに追い風が吹きます。大物RPGの【ファイナリストファンタジア】が今までのルウィーではなくラステイションのゲームで発売されることになりました」

 

 

 それを聞いたラムは両手を上げて、「えー? なんでー!」と憤慨しながら抗議の声を上げる。

 

ユニは対照的に落ち着いて腕を組んで、「技術の差ね。国全体が転換期を甘く見たのが敗因だったのよ」と言う。

 

ネプギアも、「そうだね。メーカーさんも勢いのあるハードで新作を出したいだろうし。それにこの本にも似たようなことが書いてあるよ」と言って続きを読む。

 

 

「プラネテューヌとラステイションの台頭に危機感を覚えたルウィーにもようやく転換期を迎えて、新しい女神様とハードを生み出しましたが、転換期が遅すぎたのです」

 

 

 ロムが首を傾げながら、「遅すぎたから腐っちゃったの?」と言うと、「それは早すぎたでしょ……」とユニが呆れた声を出す。

 

ネプギアも苦笑いをしながら、「それに国やハードは腐ったりしないよ」とやんわりと説明してあげる。

 

早すぎて腐るというのは有名なアニメの台詞で、パロディなどで色々と使われている。

 

 

「転換期が遅すぎたからどうなったの?」

 

 

 今度はラムが質問すると、「それはこれから読む続きに書いてあるよ」とネプギアが答えて、絵本の続きを読み始める。

 

 

「既にゲイムギョウ界はプラネテューヌとラステイションが勢力を持ってしまい、ほとんどのメーカーがルウィーを去ってしまったのです」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、ロムは「がっかり(しょぼん)」と肩を落としてしまう。

 

ラムは頬を膨らませながら、「なによー。冷たいわねー!」とルウィーを去ったメーカー達に抗議の声を上げる。

 

 

「メーカーが冷たい訳じゃないわ。ルウィーの転換期が遅すぎたって本にも書いてあるでしょ?」

 

 

 ユニが憤慨するラムに冷静に声を掛ける。

 

ネプギアも落ち着いた声で、「メーカーさんや技術者さんもやるなら性能の高いハードで、今までにない新しいことをしてユーザーさんの関心を得たいんだよ」と付け加える。

 

それでも不満そうな顔をするラムに、「さっきの料理の話にすれば、料理屋が冬になっても夏物メニュー続けていれば、お客も離れちゃうし、店員も辞めちゃうわ」とユニが言う。

 

更にネプギアが、「それに時代の流れが早くなりすぎてたんだよ。ユニちゃんの言い方で言えば、お店側が気付かない内に冬になってたって感じかな」と付け加える。

 

 

「まぁ、一番の要因はラステイションの技術力の高さとメーカー達との交渉術の上手さでしょうけどね」

 

 

 ユニが腕を組んで得意気に鼻を【フン】と鳴らすと、「むぅ~~! くーやーしーい!!」とラムが両手をバタバタさせながら暴れる。

 

ロムは祈るように両手を組んで、「ユニちゃんがいじめる……(うるうる)」と目を潤ませる。

 

ネプギアは、「はぁ……」と溜息を吐き、「ユニちゃん、大人げないよ」と呆れてしまう。

 

ユニは、「ごめん。ラステイションの活躍が嬉しくてつい……」と少しバツの悪そうな顔で右手の人差し指で右頬を掻く。

 

 

 ネプギアは絵本を机の上に置くとロムとラムに手を伸ばし、右手でロム、左手でラムの頭を抱きかかえると胸元に寄せる。

 

ネプギアが、「ごめんねー。ユニちゃんが意地悪だったねー」と子供をあやすように優しい声で言う。

 

ロムとラムはネプギアにされるままに彼女の胸に顔をうずめると、二人の顔に柔らかいネプギアの胸の感触が当たり、ネプギアのライラックの香りが二人を包む。

 

ネプギア胸は78のCカップと特別大きい訳ではないが、幼いロムとラムには十分な大きさだった。

 

 

「よしよし……」

 

 

 ロムとラムの頭を優しく撫でるネプギア。

 

やや内気で恥ずかしがり屋のネプギアとしては同性の年下とはいえ胸に触れられるのに抵抗が無い訳ではないが、悲しんでいる子供を癒す方が優先である。

 

意外ではあるが彼女には子育ての経験があり、こうすれば大抵の子供が落ち着くというのを知っていての行為だった。

 

 

「ほら、ユニちゃん、謝って」

 

 

 ネプギアがやや厳しい口調で言うと、「二人ともごめんね。少し調子に乗り過ぎたわ」とユニが素直かつ丁寧に謝る。

 

更に、「ルウィーはこれだけ劣勢になっても今もあるんだから、地力が凄いんだよ」とネプギアがロムとラムを励ますように力強くフォローする。

 

 

「そうよね! 最後に勝つのはルウィーなんだから」

 

 

 ネプギアの励ましでラムが機嫌を治すと、「うん、そうだね」とロムもそれに続く。

 

二人ともネプギアのフォローで機嫌を直したようだった。

 

 

「それじゃあ、続き読むよ」

 

 

 ネプギアがそう言ってロムとラムの頭から手を放そうとすると、「もう少しー!」とラムが左手でネプギアの左手を掴んで、再び自分の頭に置く。

 

ロムは更にネプギアの胸に顔をうずめると、「ネプギアちゃんのなでなで気持ちいいし、お胸も柔らかい(ふかふか)」と気持ちよさそうにネプギアの胸に顔を擦りつける。

 

ラムも、「わたし、これ好きー!」とネプギアの胸に頬ずりすると、「あんっ……そんなに激しくしちゃダメ」とネプギアが少し色っぽい声でロムとラムを注意する。

 

 

「いつまで甘えてるのよ」

 

 

 ネプギアの向かいに座っているユニが不満顔をしながら呆れた声で言うと、「ユニちゃんもする?」とラムが言い、「すごく気持ちいいよ」とロムも誘ってくる。

 

 

「ええっ!? ゆ、ユニちゃんもしたいの?」

 

 

 ネプギアが驚きの声を上げる。

 

流石に同年代のユニに触られるのは少し恥ずかしいらしい。

 

ネプギアは頬を赤く染めながら、「ゆ、ユニちゃんがどうしてもって言うならいいよ……」と小声で言うと、少し不安そうな顔で、「でも、やさしくしてね?」と付け加える。

 

健全な男子であればネプギアのような清楚な美少女にこんなこと言われてしまえば色々なところが収まらなくなるだろう。

 

 

「そんな訳ないでしょ……」

 

 

 ユニは落ち着いてそう言うと、「ほら、離れてなさい」と右手でラムをネプギアから引きはがし、左手でロムを引きはがす。

 

ラムが口を尖らせて、「むぅ~、ユニちゃんの意地悪~」と言うと、「気持ちよかったのに……」とロムも不満そうに言う。

 

 

「あれ? ユニちゃん、甘えてくれないの?」

 

 

 ネプギアがユニを見ながらやや残念そうに言うと、「アタシがいつ甘えたいって言ったのよ。アンタの早とちりよ」とユニが呆れながら言う。

 

ユニは更に腕を組むと、「女の子がやすやすと胸なんて触らせるものじゃないわよ」とネプギアを軽く注意する。

 

ネプギアはにこやかに微笑むと、「ありがとうユニちゃん。次からは気を付けるね」とお礼を言う。ユニが心配してくれたのが嬉しかったようだ。

 

 

「でも、ユニちゃんならいいって言うのは本当だよ。ユニちゃんが癒してほしかったらいつでも言ってね。私、頑張って癒してあげるから」

 

 

 ネプギアが続けて言うと、ユニは顔を横に逸らして、「見くびらないでよ。アンタに癒してもらう程アタシは弱くないわよ」と素っ気なく言い放つ。

 

正直を言えば友人の優しい気遣いが嬉しくはあるのだが、ユニなりのプライドがあり、それをやすやすと認める訳には行かないのだ。

 

ネプギアは少し困った顔で、「けど、ノワールさんにもケイさんにもユニちゃんの事よろしくって言われてるし」と言う。

 

すると、「もぅ……。お姉ちゃんもケイも余計なこと吹きこんで……」とユニが少し不満そうな顔をする。

 

 

「何よりユニちゃんは大事な友達だから、落ち込んでいる時とかあったら力になってあげたいな」

 

 

 ネプギアがユニをウソ偽りの無い純粋な目で見ながら言うと、ユニは少し顔が赤くなるような気がした。ネプギアの真摯な気持ちが素直に嬉しいのだ、

 

 

「わかったわ。なら少しヘコんだことがあったら買い物でも付き合ってよ」

 

 

 ユニは素っ気なく言う。

 

本当は【ありがとう】と言って手を握るなり抱き着くなりしたいぐらいなのだが、前述したように彼女にもプライドがある。

 

 

「うん、わかった。いつでも言ってね」

 

 

 ネプギアがそう言って、ニッコリと微笑む。

 

 

「ネプギアー! 続きー!」

 

 

 二人の話が終わったのを見測ってラムが素早く声を掛けて来る。

 

ロムも上目遣いで、「続き、気になる……」とネプギアに催促をすると、「ごめんね。今から読むから」とネプギアは本の続きを読みだす。

 

 

「これが決め手となりラステイションはプラネテューヌを引き離し、第三次ハード戦争はラステイションの勝利になりました」

 

 

 ユニが嬉しそうに、「やったわ、流石はラステイションね」と言うと、「ラステイションはやっぱり強いね」とネプギアが素直に称賛する。

 

それに対してユニは、「当り前よ、プラネテューヌには負けられないわ」と声高々に言う。

 

ネプギアがあごに人差し指を当てながら、「プラネテューヌとラステイションのライバル関係はこの頃からあったのかな?」と言う。

 

 

 ラステイションはプラネテューヌをライバル視しており何かと競争したがる。

 

現にユニはネプギアをライバル視しており、ユニの姉もネプギアの姉であるネプテューヌをライバル視している。

 

実際に第三次ハード戦争でプラネテューヌがラステイションに対抗できなければ、全ゲイムギョウ界がラステイションの勢いに呑まれルウィーですら滅んでいたかもしれない。

 

第三次ハード戦争で後手に回ったルウィーはなかなか反撃の糸口が掴めず、ルウィーが再びゲイムギョウ界のトップ争いに加わるのは第五次ハード戦争まで待つことになる。

 

その間ラステイションに対抗していたのはプラネテューヌであった。

 

その為、ラステイションは長い間競い続けてきたプラネテューヌをライバルとしているのだ。

 

逆にラステイションの躍進がなければ、プラネテューヌがルウィーを抜いて全ゲイムギョウ界を治めていたかもしれない。

 

そう考えて、ラステイションをライバル視するプラネテューヌの国民も多くいる。



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#02-12 教えて、ギアユニ(ネットゲームの巻)

「ラステイションに引き離されてしまったプラネテューヌは反撃をする為に、いち早く転換期を迎えようとしました」

 

 

 ネプギアは絵本を読みながらページをめくる。

 

すると、見覚えのあるオレンジ色の髪をした女性が描かれていた。

 

ネプギアはその絵が多少気になったが、とりあえず絵本の続きを読むことにする。

 

 

「プラネテューヌの全ての人々がラステイションに勝てる女神様の誕生を願います。すると、妄想力という自分の妄想を現実にしてしまうという強力な女神様が生まれました」

 

 

 ネプギアはそこまで読むと何か思いついたように考え込む。

 

するとユニがあごに右手を当てながら、「妄想力って、うずめのこと?」と不思議そうに尋ねる。

 

ネプギアはユニの言葉に小さく頷くと、「多分そうだよ。このことが書いてあるってことは最近の本なのかなこれ?」と答える。

 

 

 【うずめ】とは【天王星うずめ】という名前の女神でネプギア達からすると二世代前のプラネテューヌの女神なのだが、ある事情でネプギアは彼女に出会うことになる。

 

ネプギアはうずめと一緒に行動している内に、超次元の人々が、うずめが女神だった頃の記憶を失い、更に記録までも消失していたことを知る。

 

このことが発覚したのはごく最近のことなので、これが書かれたのが最近なのだとネプギアは推測したようだ。

 

 

「とりあえず、続き読んでみて」

 

 

 ユニがそう言うと、「うん」とネプギアは頷き絵本を読む。

 

 

「更に最先端の技術を駆使してインターネットをゲームに取り入れ、またもプラネテューヌが先行する形で次の大戦、第四次ハード戦争が始まりました」

 

 

 ユニとロムとラムは今まで以上にネプギアの声を真剣に聞いていた。

 

 

「妄想力はとても凄い力でした。その力は封印を解かれた犯罪神をも一人で倒してしまう程でした」

 

 

 それを聞いたラムは、「一人で? 凄いねー」と感心をし、「うずめちゃん、強い」とロムも関心をする。

 

 

「しかし、女神様は妄想力うまくコントロールができず暴走をして、ゲイムギョウ界の破壊を繰り返してしまいます」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「やっぱりそうなっちゃうのね……」とユニが悲しそうな声で言う。

 

ネプギアもロムとラムも同じく悲しい気持ちのようで表情が暗い。

 

うずめと出会ったネプギア達は暴走のことを知っており、当時のうずめがそれに悩んだことを知っているのだ。

 

 

 「更にプラネテューヌのゲームもインターネットはこの頃は技術力不足で回線のスピードや料金に問題が多く、なかなか普及しませんでした」

 

 

 ネプギアが気を取り直して続きを読むと、「この頃は光回線とかないみたいだしね」とユニも気を取り直したようで意見言う。

 

ラムが、「この頃の回線と今の回線ってどれぐらい違うの?」と質問する。

 

 

「この頃の回線との速度差は二十倍以上かな。つまり、今は読み込みが三秒で済むことが一分以上かかっちゃうんだよ」

 

 

 ネプギアが答えると、「それじゃあ、ゲームするの難しいね」とロムが言う。

 

インターネットの回線速度は今の技術でも、まだまだ遅いと言うプレイヤーも多い。

 

特に対戦のアクションゲームともなれば一瞬の遅れが勝敗を分けるし、回線の遅さによるコントロールとのタイムラグが大きなストレスになる。

 

その為に回線速度の遅いプレイヤーとのプレイを断ったりする光景も見られる。

 

この時代では更に遅いので、人々の不満も大きかったのだ。

 

 

「価格も今みたいな安い定額制がなくて大変だったみたいよ」

 

 

 ユニが更に説明すると、「プラネテューヌの技術に時代がついていけなかったんだよね。ブロードバンド時代にならないとインターネットゲームは難しいよ」とネプギアが続ける。

 

 

「ぶろーどばんど?」

 

 

 ロムが首を傾げ、「なにそれ? ブロードソードの仲間?」とラムが質問する。

 

ネプギアはくすっ小さく笑うと、「武器じゃないよ。ブロードバンドは高速で大容量の情報が送受信できる通信網のことを言うんだよ」と質問に答える。

 

 

「時代を待てなかったプラネテューヌの失敗ね」

 

 

 ユニは辛辣な意見を言うが、ネプギアは素直にユニの言葉に頷き、「そうだね。プラネテューヌの技術は凄いけど、もっとよく周りを見ないとね」と言う。

 

 

「プラネテューヌが転換期に失敗し、ルウィーも転換期を迎えられず苦戦しているところに、ラステイションは転換期を無事に向かえ、その差はますます開いてしまいました」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、「ラステイションは地道で堅実な発展を遂げているわね」とユニが満足そうに頷く。

 

 

「プラネテューヌは妄想力の暴走とゲームの不振で滅亡に危機に陥りましたが、女神様は自らの意思で眠りにつき、別の女神様を生み出すことで何とか滅亡せずに済みました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「うずめはこの時に封印されちゃったんだよね」とラムが悲しそうに言うと、「ゲイムギョウ界の為とは言えやるせないよね」とネプギアが答える。

 

 

「でも、今はうずめちゃんも、元気元気(にこにこ)」

 

 

 ロムが明るい声でそう言うと、「そうね、救い出せてよかったわ」とユニが続けて言う。

 

彼女達の言う通り、当時の天王星うずめは妄想力が制御できず封印されるが、数年前にネプギア達により封印は解かれ今は元気に暮らしている。

 

それにより超次元の人々もうずめのことを思い出したりするようになった。

 

うずめがプラネテューヌを治めていたのはG.C.1955~1988頃まで。

 

今のG.C.2019では当時は子供だった男の子が老人になっていたが、しっかりとうずめのことを覚えていたらしい。



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#02-13 教えて、ギアユニ(超次元の巻)

「この間に、新しい国が現れました」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「リーンボックスかな?」とロムが首を傾げる。

 

 

「前大戦で滅びたカルディアの女神様の妹が携帯ゲーム中心の国を再興しました」

 

 

 ネプギアが続きを読み上げる。

 

 

「このカルディアって国、強くないけどタフねー」

 

 

 ユニの言うように前述した通りカルディアには巨大なバックがいるのでゲイムギョウ界で滅亡と再興を繰り返している。

 

 

「しかし、携帯ゲーム機ではルウィーに敵いませんでした」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「本当に弱い……」とロムが呟く。

 

カルディアは何度も再興はするものの運や実力に恵まれないのか短期で滅びてしまう。

 

 

「携帯ゲームでルウィーに挑戦なんて100万光年早いのよ」

 

 

 ラムが自信満々に言うが、「ラムちゃん、光年は時間じゃなくて距離だよ」とネプギアにツッコミされてしまう。

 

 

「第四次ハード戦争も第三次から引き続きラステイションが有利となります」

 

 

 ネプギアがページをめくると、ユニの姉によく似た女性が堂々と仁王立ちをしていた。

 

これが当時のラステイションの女神だろう。

 

 

「ネオジェネシスは転換期を迎えることなく滅びてしまい、カルディアは手も足も出ず、プラネテューヌとルウィーは自国の守りで精一杯でした」

 

 

 続きを読むネプギア。

 

それを聞いたユニが、「ラステイション一強ね」と腕を組んで自慢気に言うが、「しかし、ここで事件が起きました」とネプギアが更に続きを読むと、「えっ?」とユニが驚く。

 

 

「なんと、プラネテューヌの女神様が妄想力で倒した筈の犯罪神が蘇ったのです」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「また犯罪神~? せっかくラステイションがイイ感じだったのに」とユニは忌々し気にそう言う。

 

 

「プラネテューヌの女神様、ラステイションの女神様、そしてルウィーの女神様とその妹の四人の女神様が協力して、犯罪神に戦いを挑みました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「あれ? カルディアの女神は?」とラムが首を傾げる。

 

それに対して、「カルディアの女神様は犯罪神との戦いにはついてこれそうもないので置いていきました」とネプギアが読み上げる。

 

 

「どこかの超能力使う武闘家みたいな扱いね……」

 

 

 ユニが哀れそうにそう言う。

 

 

「犯罪神は以前に比べて、とてつもなく強くなっており四人の女神様でも歯が立ちません」

 

 

 ネプギアが更に続きを読むと、「ええっ? 犯罪神に負けちゃうの?」ラムが心配そうに言い、「どうしよう(おろおろ)」とロムも困ったようにオロオロする。

 

 

「女神様達は死を覚悟で最後の力を振り絞って、犯罪神を再び封印しようとしました」

 

 

 ネプギアがページをめくると、巨大な犯罪神を囲むように四人の女神が描かれていた。

 

 

「封印は無事に成功しましたが、プラネテューヌの女神様を除く三人の女神様が戦いで倒れ、残ったプラネテューヌの女神様も封印で力を使い果たし死んでしまいました」

 

 

 ネプギアはそこまで読むと、「このプラネテューヌの女神様って多分ウラヌスさんのことだよね」と言うと、「そうね、アタシもそう思うわ」とユニも頷いてそれに答える。

 

ネプギア達はある事件でこのプラネテューヌの女神の魂と会話したことがある。

 

その時の話と似ていたので、そうではないかとの予想をしたのだった。

 

 

「ねぇ? 女神様が全員死んじゃったよ?」

 

 

 ラムが不安そうに言うと、ロムも「どうなっちゃうの?」と同じように言い、それを聞いたネプギアは本の続きを読み始める。

 

 

「残ったカルディアは漁夫の利を得たように見えました」

 

 

 ユニが、「そう言えば残ってたわね」と思い出したように言う。

 

 

「そこに新たな国と女神様が現れます、【リーンボックス】です。リーンボックスは瞬く間にカルディアを滅ぼしゲイムギョウ界の覇権を握ってしまいます」

 

 

 ネプギアが本の続きを読むと、ラムが「えー! ベールさん、ずるーい! 菓子屋泥棒!」と抗議の声を上げる。

 

 

「これは昔のリーンボックスの話で、ベールさんは関係ないから……。それと菓子屋泥棒じゃなくて、火事場泥棒ね」

 

 

 ネプギアが丁寧にフォローとツッコミを入れる。

 

ベールとは現在のリーンボックスの女神の名前である。

 

更に続きを読むネプギア。

 

 

「リーンボックスの台頭は続き、女神不在のプラネテューヌ、ラステイション、ルウィーの三国にも手を伸ばしました」

 

 

 ユニは右手をあごに当てながら興味深く、「どうなるのかしら?」と呟き、ロムとラムも興味津々にネプギアの話を聞いている。

 

 

「三つの国はそれぞれの国は教祖が中心となり、国民が一丸となって国を守り続け、女神様の復活を一心に願いしました」

 

 

 ネプギアがページをめくると祈りを捧げる人々が描かれていた。

 

 

「その信仰の心が力となり、それぞれの国に新しい女神様が誕生しました」

 

 

 それを聞いたロムは、「四つの国の女神様が揃った」嬉しそうに言う。

 

現在、ネプギア達が住んでいるゲイムギョウ界には四つの国があり、彼女達が住む三つの国とリーンボックスがそれに当たる。

 

馴染みの深い国の女神が揃ったのが嬉しいのだろう。

 

 

「三人の女神様はひとまず協力して、リーンボックスの女神様を倒しました」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、「とりあえず、リーンボックスの進行は防げたのね」とユニが少し安心したように言う。

 

更にネプギアが、「しかし、三人の女神様が協力したのはそこまででした」と読むと、「え?」とユニが声を上げる。何か嫌な予感がしていた。

 

 

「女神様達は今までの女神様と同じく自分が一番優れていると言い出し、三人共戦いを始めてしまいました」

 

 

 ネプギアが読み続けると、ユニは嫌な予感が当たったといわんがばかりに右手で頭を抱える。

 

 

「女神っていつも自分が一番優れているって言いだして戦うわよね……どうしてこうもプライドが高いのかしら……」

 

 

 ユニは本の中の女神達に対して少し呆れた声で言う。 

 

 

「更に転換期を迎え新しい女神様で反撃しようとするリーンボックスを加えて、四国での戦争となり、第五次ハード戦争が始まってしまいました」

 

 

 ネプギアが読み上げるのを聞いたラムは、「五回も戦争するなんて、女神様はみんな戦争が好きなのね」とユニと同じように少し呆れたように言う。

 

 

「まだまだ戦争は続いたみたいだよ」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「まぁ、お姉ちゃん達も基本仲いいけど、自国のゲームのことになると延々と言い争うしね」とユニが言う。

 

ネプギアがページをめくると四人の女神が戦う姿が描かれていたが、その姿には見覚えがあった。

 

 

「これって……お姉ちゃん達?」

 

 

 ロム首が傾げて質問する。

 

 

「そうみたいだよ、ここに書いてあるね。この四人が現在のゲイムギョウ界の女神様、パープルハート様、ブラックハート様、ホワイトハート様、グリーンハート様になります」

 

 

 ネプギアがロムの質問に答える形で本の続きを読む。

 

ユニはネプギアの説明に複雑な表情をすると、「もぅ……お姉ちゃんまでそんな理由で戦争始めたの?」と呆れた声を出す。

 

先程言ったようにユニは女神達の戦う理由に辟易しているようで、「どうせネプテューヌさんに煽られたんでしょうけど……」と続けて言うと肩を落とす。

 

ユニは今でこそこんなもの言いをするが、昔はネプギアに凄まじいライバル意識を持っていた。

 

しかし、常に優しく穏やかに一緒に頑張ろうと協力と協調を呼びかけるネプギアに少しずつ心を開くと同時に毒気を抜かれていき今に至る。

 

 

「四つの国の女神様達は、ゲイムギョウ界に大きな繁栄をもたらすが、同時にゲイムギョウ界の覇権を巡り果てしない戦いも繰り返しました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと、「この果てしない戦いとかのせいで、わたし達ネプギアのことを敵だって教え込まれてたのよね」とラムが少し迷惑そうに言う。

 

ロムとラムも今はネプギアにべっとりだが、はじめて会った時は別の国の女神と名乗っただけでネプギアに襲い掛かって来たのだ。

 

その後、ネプギアが困っているロムとラムを何度か助け、ロムはすぐにネプギアに懐いたがラムはなかなか懐かずにいた。

 

ラム自身もネプギアに好意を持っていたが、自分に素直になれないことと、ネプギアと仲良くしているロムに嫉妬してしまい、なかなか上手く行かずにいた。

 

しかし、いざ素直になればあっさりと懐き、更に今まで嫌っていた態度を気にもせず受け入れてくれたネプギアに心の底から感謝と信頼を置いている。

 

 

 ユニとロムとラムがネプギアと仲良くなる経緯を知りたい方は、プレイステーション3用ソフト【超次元ゲイム ネプテューヌmk2】をプレイされたし。

 

 

「その長い年月の中で一つの現象が確認されました【超次元現象】です」

 

 

 ネプギアが続きを読むと、ロムが、「超次元ってわたし達の住んでる次元のことだよね?」と言うと「うん、そうだよ」とネプギアが答える。

 

ゲイムギョウ界には数々の次元が存在し、それぞれに人や国が存在する。

 

現在は超次元の他に、神次元【かみじげん】と零次元と心次元とVR次元の五つの次元が確認されている。

 

 

「超次元現象って、なにが起こるの?」

 

 

 ラムが首を傾げて質問すると、「ゲイムギョウ界で起きた出来事が、他の世界にも強く影響を及ぼすんだよ」とネプギアが答える。

 

 

「ゲイムギョウ界が影響を与えるのは、どの異世界においてもゲームに関することで、ゲイムギョウ界の出来事が異世界のゲーム技術やゲーム業界に影響を与えるのよ」

 

 

 ユニがネプギアに続けるように説明すると、「他の世界って、アニメギョウ界とかマンガギョウ界とかオンガクギョウ界とか?」とラムが指折り数えながら言う。

 

そこに、「あと現実世界もね」とユニが付け加える。

 

ゲイムギョウ界の他にも、【ギョウ界線】という世界線を越えて様々な娯楽に対応するギョウ界が存在する。

 

このゲイムギョウ界にもマンガやアニメがあるように、異世界にもゲームはあり、超次元のゲイムギョウ界で起きた出来事がそれに影響を与えるのだ。

 

勿論、我々が住む高位次元の現実世界も超次元ゲイムギョウ界の影響を受ける。

 

現時点ではゲイムギョウ界と現実世界を行き来する方法は無いが、数年前にある人物により偶然にもゲイムギョウ界と現実世界がコンタクトを取れる【VR次元】が発見される。

 

更にはラステイションで発売されたVRの周辺機器と守護女神の力で、守護女神のみだが何度かVR次元に行くことに成功している。

 

 

「例えば、どんなことが起こるの?」

 

 

 今度はロムが首を質問する。

 

 

「例えばゲイムギョウ界である国家が消滅すると、どこかの世界ではメーカーがゲーム機の販売を中止したり、酷いときにはメーカー自体がつぶれることがあるんだよ」

 

 

 ネプギアがロムの質問に答えると、「なるほどー(ふむふむ)」とロムはうんうんと頷いて納得する。

 

ネプギアは続けて、「後は格闘ゲームが流行れば、スポーツギョウ界や現実世界でも格闘ゲームが流行って、それによって格闘技が人気になったりもするんだよ」と説明する。

 

 

「何かファッションリーダーみたいでカッコいい!」

 

 

 ラムが目を輝かせると、「他には? 他には?」とネプギアに話をせがむ。

 

ネプギアは唇に右手の人差し指を当てて少し考える。

 

 

「ロボットゲームが流行ればアニメギョウ界にもそれが流行って、ロボットアニメが人気になったり、美少女ゲームなら、美少女アニメの人気が出るようになるんだよ」

 

 

 ネプギアが答えると、「うわー、すごーい」とラムが更に目を輝かせる。

 

今度はユニが、「でも、いいことばかりじゃないのよ。ゲイムギョウ界でマジェコンが広まれば、どこかの世界でもマジェコンに似たコピーツールが広まっちゃうのよ」と付け加える。

 

 

「そっちはインフルエンザみたーい」

 

 

 ラムがウンザリした顔で言うと、「ネプギアちゃん、お話は?」とロムが絵本の続きを読むようお願いする。

 

ネプギアは再び本に目を落とす。

 

 

「こうして四つの国は十数年の間戦いと繁栄を繰り返し、G.C.2009年、再び犯罪神復活の兆候が現れました」

 

 

 ネプギアがそこまで読むと「あれ? それってアタシ達の話?」とユニが反応する。

 

前述したが、今はG.C.2019であり、十年前の2009年から2010年にかけてネプギア達女神候補生は姉達守護女神と共に犯罪神と戦ったのだ。

 

ラムが興奮気味に、「えー! なになに! 早く読んで!」と言うと、「気になる(わくわく)」とロムもやや興奮している、自分達の活躍が気になるようだ。

 

 

 ネプギアは絵本を読み続ける。そこには犯罪神の復活を企む犯罪組織とネプギア達の戦いが書かれていた。

 

三年前のG.C.2006年に四人の姉が犯罪組織に敗れ絶望したこと。

 

G.C.2009年に救出されたネプギアが姉達を救う為に立ち上がったこと。

 

女神候補生達が最初は仲違いしたこと。

 

女神候補生が協力して姉達を救い出したこと。

 

復活した犯罪神をネプギアが倒したこと。

 

 

「こうして、ゲイムギョウ界に平和が戻りました。今もゲイムギョウ界が平和であるのは女神様のおかげなのです。……おしまい」

 

 

 ネプギアはそう言って本を閉じると「あー! 楽しかった。ロムちゃん大活躍だったね」と元気よくラムが言うと、「ラムちゃんも大活躍(ぽっ)」とロムは少し照れながら言う。

 

ロムとラムは、同時にネプギアを見ると、「でも、一番はネプギア【ちゃん】が大活躍~~」と言いながらネプギアに抱き着く。

 

ネプギアは、「わわっ!?」と驚きながらも、右手でロムを左手でラムをしっかりと受け止める。

 

ロムとラムは抱き着いたのをいいことに、再びネプギアの胸に顔をうずめる。

 

二人ともネプギアの胸が相当気に入ったようだ。

 

ネプギアは特に嫌がる様子を見せず、胸に顔をうずめるロムとラムの頭を撫でてあげると、二人とも気持ちよさそうに目を細める。

 

 

「それにしても、もう十年近く前の話かー。アンタ達本当に変わってないわよね」

 

 

 ユニがそう言いながら三人の顔を見ると、「ユニちゃんだって変わらないよー」とネプギアが返す。

 

女神は不老不死であり、国民たちの信仰や願いが具現化したものなので、つねに国民に愛される美しい姿を維持できる。

 

 

「ロムとラムも少しは勉強とかしないさいよ」

 

 

 ユニがロムとラムに対して言う、そろそろ難しい漢字も読めるようになりなさいとの意味をこめてである。

 

それに対してラムはネプギアの胸に顔をうずめながら、「わたし達忙しいもん。ゲームしたり、絵本読んだり、お姉ちゃんにいたずらしたりー」と指折り数えながら返す。

 

そこにネプギアが、「それは遊んでるんじゃないかな……」とやんわりとツッコミをする。

 

同じようにネプギアの胸に顔をうずめているロムが、「お姉ちゃんお仕事教えてくれない」と少し寂しそうに言う。

 

続けてラムも、「いつまでも子供扱いするのよねー」と不満そうに続ける。

 

 

「あと、魔法のお勉強も忙しいのよ」

 

 

 ラムが続けて言うと、「うん、新しい魔法とか考えるの難しい……」とロムも続く。

 

彼女達女神はモンスターなどの外敵と戦う為に剣術や魔法などの戦闘術を優先的に習得しなければならないので、一般的な教育は後回しにされる。

 

 

「ユニちゃん、私達もまだ一人前じゃないんだし、ロムちゃんとラムちゃんのこと言えないよ」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ユニも「まぁ、そうなんだけどね。いつになったら一人前になれるのしら……」と言うと、みんな黙ってしまう。

 

 

「それより、この本って誰が書いたんだろう?」

 

 

 ネプギアが少し落ち込んだ場の空気を和ませる為に話題を変えると、「えーと、イストワール……って、いーすんさんがこれ書いたの?」ネプギアは作者名を見て驚いてしまう。

 

 

「そうなの! じゃあじゃあ、何でこんな本書いたのか本人に聞いてみましょうよ」

 

 

 ラムが言うと、「インタビュー(どきどき)」とロムがそれに続く。

 

 

「そうだね。忙しいかもだけど、興味あるしちょっと聞いてみようか?」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「早速行きましょう」とユニが言い、ユニを先頭に四人は部屋を出ていく。



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#03 イストワール

 部屋を出たネプギア達。

 

部屋の中は薄紫のメルヘンチックで女の子らしい甘い匂いがした部屋だが、外に出るとオフィスビルのようなガラス張りで無臭な通路が広がっている。

 

いくつか絵画や置物などの嗜好品のようなものがあるが、先程の部屋からすれば別世界のようだった。

 

 

 ネプギア達が居た部屋はプラネテューヌにある象徴的建造物の【プラネタワー】内のネプギアの自室であった。その為に少女趣味な部屋だったのだ。

 

プラネタワーは象徴の他にも政治機関も担っており、ネプギアの私室があるフロア以外は役所のような作りになっている。そして教祖のイストワールもこのタワーの中にいるのだ。

 

 

「こっちだよ」

 

 

 ネプギアがそう言って通路を進んでいくと、三人もその後に着いて良く。

 

ネプギア達はイストワールに話を聞くためにイストワールが居ると思われる彼女の執務室に向かった。

 

 

***

 

 

 ネプギア達四人はプラネタワー内を移動して、イストワールの執務室を訪れていた。

 

部屋の前のプレートには教祖室と書かれており、その横には在席を示す緑のランプが点いていた、

 

ネプギアが扉の横にあるインターホンの呼び出しボタンを押すと【ピンポーン】とチャイムの音が鳴る。

 

 

「いーすんさん、少しお時間ありますか?」

 

 

 ネプギアがインターホンの横のマイクに向かって話しかけると、「ネプギアさん、なにか御用でしょうか?」とスピーカーから、落ち着いた女性の声が聞こえてくる。

 

 

「いーすんさんの書いた絵本のことで聞きたいことがあるんです」

 

 

 ネプギアがマイクに向かって言うと、「わかりました。今開けます」と返事が返ってきた。

 

同時に自動ドアが【プシュ】と音を立て横にスライドして開く。

 

ネプギアが、「失礼します」と言いながら室内に入る。

 

続いて、「おじゃまします」とユニも入り、「おっじゃましまーす!」とラムが入って、「おじゃまします(もじもじ)」と最後にロムが入って行くと扉が自動で閉まる。

 

 

「みなさん、お揃いでしたか」

 

 

 室内から先程スピーカーから聞こえてきた落ち着いた声がネプギア達にかけられる。

 

しかし、室内に人影は見当たらない。

 

 

 十畳ほどの部屋にあるものは中央の机とそれ用の四つの椅子、あとは奥にある業務に使うであろう椅子と机。

 

絵画や置物も置いてあり、教祖が仕事をするに相応しい威厳のある部屋だ。

 

しかし、奥の業務机の上にはこの部屋にはやや不釣り合いな金色の髪の毛をした女の子の人形が置いてあった。

 

開いた本に腰をかけた50センチ程の大きさの人形だ。

 

 

「私が書いた絵本というのは、【ゲイムギョウ界の歴史】のことですね」

 

 

 なおもネプギア達に声がかけられる。

 

その声の発生源は金色の髪の人形のようだった。

 

よく見ると、その人形は瞬きをしている。

 

 

「あいかわらず、ちっちゃいわねー」

 

 

ラムが人形に声をかけると、「かわいい(どきどき)」とロムもそれに続く。

 

すると、「ありがとうございます」と人形が微笑み、お礼を言う。

 

口もしっかりと動いており、紛れもなく先程までのイストワールの言葉は彼女が発したものだ。

 

 

 そう。この人形こそがプラネテューヌの教祖の【イストワール】なのである。

 

人形のように見える彼女は人工生命体。

 

ゲイムギョウ界には人工生命体を作り出す技術があり、イストワールはプラネテューヌの古代の女神が作りだしたものである。

 

 

 大きさ以外は人間そのもので、少しウェーブのかかった金色の髪をツインテールにし、瞳の色は青。

 

小さな姿に合わせて体形も凹凸の無い少女のものであった。

 

服装はナースキャップのような帽子をかぶり、紫色のオフショルダーのワンピースに緑色のネクタイを締めて白いニーソックスをはいている。

 

普通の人間と一番違うのは背中に浮かぶ薄紫色の蝶のようで機械的な形をした光の羽である。

 

 

「どうしてあの本を書こうと思ったんですか?」

 

 

 ネプギアがイストワールに質問をすると、イストワールが腰かけていた本と一緒に机の上から浮かび上がる。

 

小さいイストワールの基本的な移動手段は宙に浮いて移動することである。

 

ゲイムギョウ界には魔法と呼ばれる技術があり、イストワールが宙に浮くのは魔法の力で重力を調整し、同じく魔力を推進剤にして動いているのだ。

 

イストワールのような小さく軽い物体なら暫くの間浮いていることが可能だが、人間サイズとなると難しくなる。

 

その為、魔法があるこの世界でもネプギア達の移動手段は足を使った歩行である。

 

 

 宙に浮かんだイストワールは滑るように前進するとネプギア達の目の前でピタリと止まって、その場で浮遊する。

 

 

「立ち話もなんですし、まずはお座り下さい」

 

 

 イストワールがそう勧めると、ネプギア達四人は中央にある四つの椅子に腰かける。

 

イストワールはネプギア達が座ったことを確認すると口を開く。

 

 

「あの本を書こうとしたきっかけは、四年前のうずめさんの事件があってからですね」

 

 

イストワールがそう言うと、「やっぱり、皆さんの記憶が操作された時の為ですか?」とネプギアがイストワールの言葉に対して質問をする。

 

 

「そうです。あの件によってこういった別媒体の記録も必要だと感じました。なので三年かけて記録を整理した際にこの本を書いたのです」

 

 

 イストワールの答えに、「でも、記録も消したって言わなかったっけ?」とユニが首を傾げる。

 

イストワールは落ち着いた声で、「そうですが、どれか一つでも難を逃れることができれば残ります」と答え、「バックアップみたいなものですね」とネプギアが頷く。

 

四年前に、先述した天王星うずめとの出会いから始まる一連の事件で、ゲイムギョウ界全体の歴史からうずめが女神だった頃の記録と記憶が抹消されていることが発覚したのだ。

 

イストワールはそれを憂いて、今後同じようなことがないようにこのような本を書いたと言うのだ。

 

 

「それに、ネプギアさんが大分お仕事が出来るようになってきたので、私の負担もかなり減りましたし」

 

 

 イストワールがネプギアに向かってニッコリと微笑みながら言うと、「そんな、私なんてまだまだですよ……」とネプギアが恥ずかしそうに謙遜をする。

 

ユニはそんなネプギアを見ながら腕を組み、「むむっ……アンタもなかなか頑張ってるみたいね。アタシも負けてられないわ」とネプギアに対してのライバル心を燃やしているようだ。

 

 

 ネプギアはG.C.1996年の生まれだが、G.C.2006までは殆どプラネタワー内で箱入り娘のように暮らし、イストワールの手伝いをする程度であった。

 

彼女が外界に出て本格的な女神の活動を始めたのは、G.C.2009の犯罪組織との戦いの旅からである。

 

旅に同行した友人のアイエフとコンパに仕事であるクエストのことなどを一から教わりつつ、仕事をこなしてきたのだ。

 

後に、時間の流れが違う神次元に行った際に二十年近い仕事の経験を積み、ネプギアの女神としてのキャリアは三十年近くになる。

 

真面目で努力家の彼女は地道に積んだ経験で、ここ最近はイストワールを唸らせる程の仕事ぶりを見せている。

 

 

 ユニはネプギアと同じくG.C.1996年の生まれでネプギアよりは早く仕事を始めているが、神次元へ行っておらすネプギアと二十年近い経験の差がある。

 

しかし、ネプギアは自分が神次元で積んだ経験を惜しみなくユニに伝え、ユニもネプギアに負けじと努力を続けたことにより、二人の差は大きく開いてはいない。

 

 

 ロムとラムはネプギア達より少し遅れたG.C.2000年の生まれで、ネプギアと同じく仕事を始めたのがG.C.2009となる。

 

彼女達もユニと同じようにネプギアから色々と教わってはいるが、ユニほどネプギアに対するライバル心がないので、色々とネプギアとユニに頼ることが多い。

 

 

「あと、なりより一人でも多くの人にゲイムギョウ界の歴史を知ってもらいたいとの思いからです」

 

 

 イストワールは話を続けながら、椅子に腰かけた四人の女神候補生達を見渡す。

 

 

「皆さん、この本で少しはゲイムギョウ界の歴史のことが分かっていただけましたか?」

 

 

 イストワールは穏やかな声で四人の女神候補生に対して質問をする。

 

 

「うん! わかった!」

 

 

 ラムがいち早く元気よく左手を上げて言い、「それに楽しかった(うきうき)」とロムがそれに続く。

 

 

「やっぱり、ラステイションが一番だってことがよくわかりました」

 

 

 ユニが腕を組んで鼻高々に言うと、「そう言っていられるのも今の内よ。すぐにルウィーが狂い咲くんだから!」とラム言い、「狂い咲くよ!」とロムも続く。

 

 

「狂ってどうするのよ……」

 

 

 ユニが呆れ顔で溜息をつくと、「それを言うなら返り咲きだよ」とネプギアがフォローする。

 

 

「ふふふ……狂い咲きも間違いではありませんが、この場合は返り咲きが正しいでしょう」

 

 

 イストワールは仲良くしつつも競争心を忘れない女神候補生達に対して、嬉しそうな微笑みを浮かべながら言う。

 

 

「もう一つ言うと、私の容量の限界と言うこともあります」

 

 

 イストワールはそう言って話を戻す。

 

 

「そっか、いーすんさん長生きですもんね」

 

 

 ネプギアが納得したように言うと、「プラネテューヌの始まりから歴史を記録してるんだから、膨大なデータ量になりますよね」とユニも続く。

 

 

「はい、それに以前は記録と女神様の補佐をしていたのですが、ネプテューヌさんが女神様になってから、補佐どころか国政全体まで見なくてはならない有様になりまして……」

 

 

 イストワールはそう言って【頭が痛い】と言わんがばかりに右手を額に当てる。

 

ユニはすべてを察したよう額に右手をあてながら、「あー……」と声を上げ、「お姉ちゃんがいつも迷惑かけてごめんなさい」ネプギアが平謝りする。

 

 

「どういうこと?」

 

 

 ロムが首を傾げると、「わたしも分からなーい!」とラムが左手を上げる。

 

 

「えーと、いーすんさんはお姉ちゃんが仕事してくれないから、いっぱいいっぱいなの」

 

 

 ネプギアが説明をすると、「どれぐらい、いっぱいいっぱいなの?」とロムが質問してくる。

 

ネプギアは右手をあごにあてて数秒考え込む。

 

 

「例えるなら、前は本を読んでるだけでよかったのが、今は本を読みながら洗濯して掃除してご飯作って買い物にも行かないといけなくなっちゃったんだよ」

 

 

 ネプギアが例えで説明をすると、「はわわ、大変そう」とロムがあわあわと驚きをあらわにする。

 

ラムは腕を組んで、「孫の手も借りたいってヤツね」と自信満々に言うが、「それを言うなら猫の手よ」とユニに訂正を受けてしまう。

 

 

「この前も次元移動の反動で熱暴走してしまいましたし」

 

 

 イストワールはそう言って肩を落とす。

 

イストワールには別の次元に干渉できる能力が備わっており、先述した神次元や零次元で事件が起きた時もその能力でネプギア達を助けている。

 

しかし、その能力はイストワール自身を酷使するようで、使った後にイストワールが不具合を起こすことがある。

 

 

「でも、あの時はサンシローの入魂パッチでしたっけ? あれで何とかなりましたし」

 

 

 ネプギアはそう言ってイストワールをフォローする。

 

しかし、イストワールの表情は暗く、「更に言うと、記録の整理が追い付かずウラヌスさんのことまでド忘れした上に古の女神様と間違ってしまうなんて恥ずかしいです」と肩を落とす。

 

ウラヌスはうずめの次の女神であり、一世代前の女神となる。

 

ネプギア犯罪神と戦った際に、過去に犯罪神と戦った彼女の経験談が犯罪神を倒す鍵となったのだが、その存在をルウィーの教祖の西沢ミナに言われるまで気付かなかったのである。

 

長きに渡って歴史を記録してきたイストワールは定期的に記憶を整理する必要があるのだが、その量が増えすぎて整理が追い付かずに記憶が混乱していたのだ。

 

 

「ド忘れなんて誰にでもありますよ。ウラヌスさんも気にしてないって言ってくれたじゃないですか」

 

 

 ネプギアが再びイストワールをフォローする。

 

ウラヌスは肉体を失った意識だけの存在で、ネプギア達が犯罪神を倒して後は、以前より彼女の意識が住んでいたギャザリング城にとどまり続けている。

 

ギャザリング城に住み着いたモンスターはネプギア達女神候補生が駆除して、綺麗に掃除をした後に、今はプラネテューヌの職員が数人城に駐在してお供え物や掃除をしている。

 

ネプギアも度々ウラヌスの元を訪れて、今のゲイムギョウ界やプラネテューヌの状況を話したり、女神としてアドバイスを貰ったりしている。

 

 

 ネプギアのフォローにイストワールは首を静かに横に振り、「いいえ、毎回毎回あのような失態を晒すわけにはいきません」と答える

 

 

「そういうことで、少しでも容量を空ける為に過去の記録の別端末への移動と共に、このような紙にも記録を残しているんです。これらがこの絵本を書いた理由です」

 

 

 イストワールがそう締めくくると、「私に何か手伝えることがあったら言って下さい。なんでもしますから」とネプギアが提案する。

 

姉のネプテューヌのせいで苦労を掛けている償いもあるのだろう。

 

 

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

 

 

 イストワールが丁寧に一礼すると、ラムが突然左手を上げ、「ねーねー! 容量が足りないなら増やせばいいじゃない」と言う。

 

ロムも両手をポンと叩いて、「うん、すごいラムちゃん天才」とそれに同意する。

 

 

「増やすって……そう簡単にできるものじゃないでしょ」

 

 

 ユニが首を傾げ不思議そうな顔で言うと、「そうだね、私もいーすんさんみたいな人工生命体のことはよく分からないし」とネプギアも困惑顔をする。

 

機械やコンピューター全般に詳しいネプギアだが、今のところ人工生命体に対しての知識はあまりないようだ、

 

 

「だったら、勉強すればいいじゃない」

 

 

 ラムが事もなげに言うと、「ネプギアちゃんならできるよ、イストワールちゃんを魔改造できる(こくこく)」とロムも続けて言う。

 

二人の言葉に、「魔改造……いーすんさんを魔改造……」とネプギアは考え込んでしまう。

 

その横でユニが、「アンタ、本当に魔改造とかリミッター解除とか、そーゆーキーワードに弱いわね……」と肩を落としながら呆れる。

 

ネプギアの機械好きは前述した通りだが、最先端の技術を持つプラネテューヌの力を駆使するネプギアの改造は魔改造じみた方向に向かうことが稀にある。

 

魔改造とは、時にいろんな意味で無理があったり、常軌を逸した改造のことをいう。

 

 

「あの……できれば【魔】は無い方向でお願いします」

 

 

 イストワールが冷や汗を流しながら提案してくると、「あ、ごめんなさい。つい……」正気に戻ったネプギアが苦笑いを浮かべる。

 

 

「……ですが、そうですね」

 

 

 イストワールは少し考えてからそう言うと、「ネプギアさんがもう少し大人になったら、私の設計図を見てもらってバージョンアップをしてもらいましょうか」と続ける。

 

イストワールはプラネテューヌの初代女神の頃から存在しているが、今まで彼女をバージョンアップできる程の知識と技能を持った人物は存在しなかった。

 

その為に、イストワール自身が作った細かなアップデートに留まっている。

 

 

「本当ですか!」

 

 

 喜びの声を上げるネプギアに、「ええ」と優しく微笑むイストワール。

 

ネプギアの知識と技能、そして人格を信頼している目だった。

 

 

「えっと、胸をミサイルにしてもいいですか!」

 

 

 ネプギアが小さくガッツポーズをして興奮気味にイストワールに言い寄ると、イストワールは肩を落として、「やっぱり、考え直させて下さい」と言う。

 

 

「じょ、冗談ですよ、冗談!」

 

 

 ネプギアが胸の前で両手を振りながら言うと、「アンタのは冗談に聞こえないのよ」とユニが呆れながら右手で額を抑える。

 

 

「イストワールを作った女神様って、どんな人なの?」

 

 

 ラムが質問すると、「わたしも気になる(こくこく)とロムが頷き、「確かプラネテューヌの昔の女神様でしたよね?」とユニがそれに続く。

 

ネプギアがあごに指を当てながら、「えーと、SG三姉妹でしたっけ?」と言う。

 

 

「はい、プラネテューヌの初代女神のサウザンドハート・ワンのソレイユ様、その次女のサウザンドハート・ツーのルナ様、そして三女のサウザンドハート・スリーのエルデ様がSG三姉妹と呼ばれています」

 

 

 イストワールが答えると、「SGってなに?」とロムが質問し、「スーパーグレードとか?」とラムが首を傾げる。

 

 

「SGはシザシー・ジェネシス【Syzygy Genesis】の意味で、シザジーは、地球、太陽、月の三つが一線上に並んだ配置のことで、ジェネシスは創世を意味します」

 

 

 イストワールがそう言うと、「なるほど、太陽のソレイユと月のルナ、そして地球のエルデで、プラネテューヌの始まりだから創世なのね」とユニが腕を組みながら納得したように頷く。

 

 

「創世ってなに? ソーセージの仲間?」

 

 

 ラムが首を傾げると、ネプギアが「創世はね、世界を最初に作ることって意味があるの。だから、プラネテューヌを作った女神様達だから創世って言われているんだよ」と説明する。

 

ロムがネプギアの説明に、「ふんふん(こくこく)」と頷く。

 

 

「私を作ったのは三女のエルデ様になります。ルナ様もソレイユ様も関わりましたが、殆どはエルデ様です」

 

 

 イストワールが説明を続けると、「どんな方だったんですか?」とユニが質問をする。

 

 

「エルデ様は、優しく、穏やかで 少し甘えん坊なところがあって 機械をいじるのが好きな女神様であり優秀な研究者でもありました」

 

 

 イストワールが話を続けると、「優しく、穏やかで 少し甘えん坊なところがあって 機械をいじるのが好き……誰かに似てるような……」とラムが腕を組んで考え込む。

 

ロムは思いついたように両手をポンと叩くと、「それって、ネプギアちゃん?」と言う。

 

 

「そうですね、よく似ていますね」

 

 

 イストワールが静かに頷く。

 

彼女はネプギアの顔を眺めながら、ネプギアとエルデの姿を重ねているようだ。

 

 

「そう言えば超レア素材に、森羅万象ってこの世のありとあらゆる情報が詰まっていると言われているデータ結晶のエルデクリスタルってありますよね。何か関係あるんですか?」

 

 

 ネプギアはそんなイストワールの意図には気づかず自分の思いついたことを質問する。

 

 

「よくお気づきになられましたね。お察しの通り、エルデクリスタルはエルデ様が発見したことにより、その名前が付けられた名前です」

 

 

 イストワールはそう言いながら右の手のひらを開くと、そこから三人の女性のホログラムが現れ、「これがSG三姉妹の方々です」と説明する。

 

 

「これは、ネプギア? それにネプテューヌさんにプルルートさんも」

 

 

 ユニはホログラムを見ながら驚いたように言う、ユニが言うようにその三人はネプギア達が女神化した時の姿によく似ていた。

 

ちなみにプルルートとは別の世界のプラネテューヌの女神である。

 

 

「でも、ちょっと違うわ」

 

 

 ラムがそう言うと、「うん、髪型とか少し違う」とロムがそれに続く。

 

 

「私に似た人は同じロングだけど小さいお団子が二つあるし、お姉ちゃんに似た人はおさげが一本だし、プルルートさんに似た人は眼鏡かけてベレー帽かぶってるね」

 

 

 ネプギアが目立った違いを解説し、「やっぱり、同じプラネテューヌの女神だから似てるんでしょうか?」と質問をする。

 

イストワールは小さくうなずくと、「そうですね。次の世代のマース様はうずめさんに似ていましたし」と答える。

 

 

 

「ところで皆さん、先日ゲイムギョウ界は新作期を迎えましたが、鍛錬の方は怠っておりませんか?」

 

 

 イストワールが話を変えて、女神候補生の四人に向けて質問をする。

 

すると、「しんさくき? 何かの収穫?」とラムが首を傾げ、「……こないだお姉ちゃんがそんな感じのこと言ってた気がする」とロムが少し自信なさそうに言う。

 

 

「新作期って言うのはね、ゲイムギョウ界の住人の強さがリセットされちゃう時期のことを言うの。具体的に言うとレベルが1に戻ることなんだよ」

 

 

 ネプギアは考え込んでいるロムとラムに対して丁寧に説明をする。

 

【レベル】とはゲイムギョウ界の強さの基準で、鍛錬や戦闘訓練、それに実際の戦闘で敵を倒すことで得られる【経験値】を基準値まで得ることで上昇する。

 

それに合わせて【攻撃力】や【体力】や【技量】などの心身の能力値が上がっていくのである。

 

 

「えー! レベルが1に戻るなんて、今まで上げてきたレベルはー!」

 

 

 ラムが口を尖らせて抗議すると同時に、「無駄になっちゃうの(しくしく)」とロムが悲しそうな顔をする。

 

 

「ただ戻るだけではないのよ。リセットされる前の強さを基準に初期能力や成長率が上がって、リセットされる前は使えなかった技能が使えるようになったりするのよ」

 

 

 ユニはロムとラムを落ち着かせるよう、いつもより優し気な声で言うと、「だから無駄にはならないわ」と励ますように言う。

 

 

「だから、新作期前のレベル99より新作期後のレベル99の方が遥かに強くなるんだよ」

 

 

 ネプギアが続けて説明をすると、「日本一から言わせれば【転生】するってことらしいわ」とユニが付け加える。

 

転生とは生まれ変わることではあるが、【日本一】という以前にネプギア達と共に戦った友人がこの現象のことをそう呼んでいる。

 

彼女の好きなゲームに、同じようにレベルを何度もリセットしてキャラクターを強くしていくものがあり、そのシステムが転生と呼ばれていたのでそこから引用したようだ。

 

 

「その様子じゃアンタ達は気付いてないでしょうけど、今まで新作期は二回もあったのよ」

 

 

 ユニが少し呆れながら言うと、「ロムちゃんもラムちゃんも新しい必殺魔法憶えて、凄く強くなったでしょ」とネプギアが続けて説明をする。

 

すると、「「そういえば」」とロムとラムが声を揃えて柏手を打つ。

 

 

「私も最初は怠けていたからレベルが下がったのかなって慌てたから、気付かないもの無理ないよ」

 

 

 ネプギアがそう言ってフォローする。

 

彼女が初めて新作期を迎えたのは犯罪組織との戦いの二年後である。

 

その頃のネプギアは犯罪神を退けて平和となった世界で、やや怠惰な生活を甘受していた。

 

 

「怠けていてもレベルは下がりますよ。特にネプテューヌさんみたいな人は」

 

 

 ネプギアの言葉にイストワールがやや厳しい声色で忠告する。

 

彼女はネプギアの姉であるネプテューヌの怠けぶりに常日頃頭を悩ませており、こういう話になるとつい彼女の名前が出てしまう。

 

 

「あはは……お姉ちゃんの場合は成長力がもの凄い反面、怠ける時はとことん怠けるから一気にレベルが下がるんですよね……」

 

 

 正直なネプギアはフォローになってるかなってないか分からない発言をしてしまう。

 

 

「ロムさんもラムさんも難しいことは考えずに、ネプギアさんとユニさんと一緒に成長していただければ問題ありませんよ」

 

 

 イストワールは気を取り直してロムとラムに向けて優しく言うと、「わかったわ! みんなで、切磋琢磨するのね!」とラムが元気よく言う。

 

 

「おや? 難しい言葉を知っていますね」

 

 

 イストワールがラムの言葉に感心をすると、「ネプギアちゃんとユニちゃんに教えてもらったの(にこにこ)」とロムが嬉しそうに言う。

 

 

「そうですか。みなさん、その調子でお願いしますね。ゲイムギョウ界の未来はみなさんの双肩に掛かっているのですから」

 

 

 イストワールが微笑みながら言うと、「双剣? わたし達の武器は杖よ」ラムが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「武器の剣じゃなくて、体の肩よ」

 

 

 ユニが説明すると、「双肩って言うのは、責任や義務を負うもののたとえで、私達がゲイムギョウ界の未来を肩に乗せてかついでるって感じかな」とネプギアが続ける。

 

 

「おみこし?(わっしょいわっしょい)」

 

 

 ロムが嬉しそうに言うと、「おまつり大好き! わたし達に任せて! わっしょいわっしょい!」とラムがそれに続く。

 

ロムとラムはおみこしを担ぐ真似をしてリズムをとって楽しそうに踊っている。

 

ちなみにラムの言う双剣とは短めの剣を二刀流すること、ゲイムギョウ界では人気のある武器なので同じように勘違いする子供もいるかもしれない。

 

 

「でも、私達の双肩って言いますけど、どっちかって言うとそれはお姉ちゃん達のことじゃないですか?」

 

 

 ネプギアがそう言って首を傾げると、「ネプテューヌさんは毎日ぐーたらしてますし、他の女神様もご自分の趣味が関わると仕事がおろそかになりがちなので……」とイストワールは肩を落として言う。

 

守護女神達はネプテューヌを除いて不真面目ではないのだが、自分の趣味に確固たるプライドをもっており、それに没頭しすぎると国が傾いたりする。

 

また気位が高い上に個性も強く、他人の風下に立つことを快しとしないので協力させるにも一苦労する。

 

仲が悪い訳ではないのだが、四人が四人とも【自分がこそがナンバーワン】と譲らないのである。

 

そんな彼女達が協力する場合は、大体ネプテューヌが厄介ごとに首を突っ込み他の三人を巻き込んで引きずる形になる。

 

そのように扱いの難しい守護女神達に対して、ネプギアを中心に純粋で素直な女神候補生達の方に期待してしまうのも仕方ないことなのかもしれない。

 

 

 その後、 女神候補生達はイストワールを交えて会話を続け、ユニとロムとラムの三人は帰宅時間になり、それぞれの国へ帰って行った。

 

 

 このお話はネプギアを中心とする女神候補生達がゲイムギョウ界で巻き起こる事件を力を合わせて解決していく物語である。

 



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#04 優等生ネプギア

 ネプギアがロムとラムに絵本を読み聞かせてから三日後。

 

プラネタワー内の一室にネプギアが居た。

 

彼女は椅子に座り、机の上のノートパソコンを華麗なブラインドタッチで操作している。

 

 

 ユニ、ロム、ラムは三日前の休日を合わせて集まっていたので、今は自分の国に帰りそれぞれの生活や仕事をしている。

 

その為、今この部屋にいるのはネプギアだけである。

 

 

 彼女が今居る部屋は、先日居たパステルカラーの自室とは少し違う。

 

ガラス張りの景色のよいオフィス風の十畳程の部屋にパソコンの乗った机と椅子が二組あり、他にはプリンターやコピー機がある、いかにも仕事をする為の部屋といった雰囲気だ。

 

もちろん、女の子らしい甘い匂いもせず、消臭剤により無臭の空間になっていた。ただ、ネプギアの周囲には彼女の長い髪からライラックの香りが漂っている。

 

 

 ここはネプギアとその姉であるネプテューヌの執務室である。

 

綺麗に整頓されたネプギアの机とは対照的にネプテューヌのものであろう机には、ひとつ振動をあたえれば雪崩のように崩れそうな書類の山が置かれていた。

 

 

 部屋の中にはネプギアがキーボード操作するカチャカチャという音だけが鳴っているが、それにしては騒がしい。

 

よく見ると、ネプギアの左右には同じようなノートパソコンが一つずつ置かれており、それが操作音を立てているのだ。

 

 

 部屋にいるのはネプギアだけなのに、キーボード操作する音は三人分聞こえてくる。

 

ゲイムギョウ界には幽霊の類も実在するが、これはそれではない。

 

 

 左右のノートパソコンのキーボードを見ると、両方に計十本のペンが宙を浮きながらキーボードを叩いていた。

 

キーを叩く他にも、器用にタッチパッドの操作もしている。

 

 

 以前に書いたとおりゲイムギョウ界には魔法が実在している。

 

このペンは魔法の力とプラネテューヌの科学力をネプギア合わせて作った、【ペンネル】と呼ばれる魔道具だ。

 

魔道具とは魔法使いが魔法の力である魔力を高める為の道具。

 

ペンネルはインクの代わりに魔法の粉が入っており、使用者の意思に応じて、地面や宙に魔法陣を描いてくれる。

 

魔法陣は描くことにより魔法の威力や範囲を強化したり、通常では使えない強力な魔法を使うことができるようになる触媒のようなもの。

 

 

 ペンネルという名前は以前に書いたロボットアニメの金字塔ガアンダムに出て来る脳波コントロールする無人砲台から来ている。

 

その武器の形状が漏斗に似てたため、それを英語にした【ファンネル】と呼ばれたので、それを参考にネプギアがペンネルと名付けたのだ。

 

ガアンダムはゲイムギョウ界でも大人気のアニメなので、この製品名はすぐに浸透した。

 

 

 ペンネルはガアンダムのアニメと同じように脳波コントロールがされており、今のゲイムギョウ界ではブレイマシンインタフェースと呼ばれている技術でそれをおこなっている。

 

ブレイマシンインタフェースは脳波等の検出・あるいは逆に脳への刺激などといった手法により、脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称。

 

これにより、脳内でイメージするだけでペンネルを動かすことができる。

 

 

 ネプギアはそれぞれのペンネルの中に小型カメラを仕込み画面のイメージをペンネルのカメラからの映像を直接脳に送ってもらい、キーボード操作させる。

 

ペンネルの本来の目的は魔法陣を描くことだが、魔法の粉が出るのを止めればパソコンのキーボードを叩くのに使えると思いついた。

 

それにより、ペンネルを改造し自らを被検体にして性能のチェックを行っているのだ。

 

しかし、この実験でOKが出ても直ぐに実用化は難しいだろう。

 

 

 脳波コントロールで動かせるとはいったが、精密な動作ができるのは適性がある者か修練を積んだ者だけである。

 

基本的なペンネルの使い方は携帯端末に記憶された複数の魔法陣のイメージから一つを選択して、描く場所や大きさなどを指定してペンネルに指示を送ると自動でペンネルが動くというもの。

 

今のネプギアが使っているようなマニュアル操作をして一本一本のペンネルでキーボードのキーを押すような動作が出来る者はかなり限られている。

 

 

「よしっ、チェック完了」

 

 

 部屋の中でネプギアがパソコンの画面を見ながらつぶやく。

 

ネプギアは印刷の操作をして椅子から立ち上がると、絹のような薄紫色のストレートロングヘアーが揺れる。

 

 

「あれ? 紙切れ」

 

 

 ネプギアがパソコン画面を見ながら困ったように首を傾げる。

 

両隣のペンネルも停止して、ネプギアに対して紙切れ知らせる信号をネプギアの脳に送っている。

 

 

 ネプギアが紙を補充しようと思ったと同時にネプギアの後ろから、ウィーンウィーンと機械が動くような音と同時に、「ワタシニオマカセクダサイ」と機械音声が聞こえてくる。

 

その声は機械音声ながらも、ネプギアによく似ていた。

 

 

「ありがとう、ネプギアンダム」

 

 

 ネプギアは後ろを振り返りながらにこやかに微笑むと椅子に座りなおす。

 

その視線の先には、1メートル程のネプギアの服と同じデザインしたレトロなロボットが立っていた。

 

長方形の頭には二本の角がついており、先っぽは電球のように丸くなっている。

 

顔には人が驚いたような顔が描かれており、これはネプギアが以前にしていた顔芸を模したものだ。

 

胴体は寸胴で飾り気はほとんどなく、手も簡単な構成で玩具のマジックハンドのようなCの形二本指となっており、それで物などを挟んで持つ。

 

足もそれ程長くなく、歩行の安定性を高める為に足の裏はやや大きめだ。

 

お尻の部分には尻尾のような電源コードが付いている。

 

 

「アリガトウゴザイマス」

 

 

 ネプギアンダムと呼ばれたレトロなロボットは嬉しそうに両手を上げるとプリンターの置いてある机に向かう。

 

ウィーンウィーンという機械音と共に二足歩行をするネプギアンダム。

 

やや滑稽に見えるが、その足取りは安定しており転倒する気配は見せない。

 

 

「A4サイズ紙を補充してね」

 

 

 ネプギアは椅子に座ってネプギアンダムに向けて優し気な声で言うと、「リョウカイシマシタ」とネプギアンダムが答える。

 

その様子は子供のお手伝いを眺めている母親のようだ。

 

 

 ネプギアンダムはC型の手でプリンターのA4サイズの棚を開けると、プリンターの隣にあるA4サイズの紙の束が入った包みを持ち器用に紙を補充するとプリンターの棚を閉じる。

 

 

「カンリョウシマシタ」

 

 

 ネプギアンダムが先程とおなじように嬉しそうに両手を上げて報告すると、「ありがとう、ネプギアンダム」とネプギアがニッコリと微笑む。

 

ネプギアンダムはネプギアのお礼の言葉に、嬉しそうに頭の二本の角を点滅させる。見た目はレトロだが、その仕事ぶりは優秀なお手伝いロボットだ。

 

 

 ゲイムギョウ界とはいえ、ネプギアンダムのようなお手伝いロボットは未だ普及はしていない。

 

そもそもネプギアンダムはロボットではあるが、召喚獣でもあるのだ。

 

召喚獣とは召喚魔法と呼ばれる魔法により、異世界の住人を呼び出し戦いの手助けをしてもらうものだ。

 

ゲイムギョウ界では有名RPGファイナリストファンタジアの三作目で登場して以来、人気を博し様々なゲームに出ると同時にゲイムギョウ界自体でもその技術が研究された。

 

 

 その中で召喚魔法をメインに取り扱った、【サモンライト】というゲームが生まれ、そのゲームの技術を巧みに操る、【ふらぷら】と呼ばれる人物が登場する。

 

しかし、彼女は犯罪組織の台頭していた頃に命を落としてしまい、同時にその技も失われてしまった。

 

 

 犯罪組織を倒した後にネプギアは神次元に行くことになるが、そこでふらぷらと瓜二つの人物と出会う。

 

前述したが神次元はネプギアの住む超次元とよく似ており、同姓同名かつ性格や容姿や能力までソックリな人物が多数存在する。

 

 

 ネプギアは彼女が超次元と同じように命を落とさないように密かに保護し、その結果神次元では彼女は生き延びることができた。

 

そのお礼にネプギアはふらぷらから彼女の使う召喚魔法を教わり、超次元に帰還後にその技を再び甦らすことに成功する。

 

その際に協力してくれたのが、超次元のふらぷらの友人であった、ステラいう名前の少女とフェリスと言う名前の猫であった。

 

 

 ふらぷらの編み出した召喚魔法は四つの異界から召喚獣を呼び出す魔法。

 

その一つに【機界フレイラル】と呼ばれる高度な機械による文明を持つ世界がある。

 

ネプギアはこのフレイラルに対する召喚の適性があった。

 

更にフレイラルの住人はふらぷらを保護したネプギアに感謝し、特別な護衛獣を作ると申し出る。

 

護衛獣とは、名前の通り主を守護する召喚獣で身の回りの世話などもしてくれる。

 

 

 ネプギアは最初丁重に断るが、フレイラルの住人の熱意に負けて申し出を受けることになった。

 

その際にネプギアはフレイラルから護衛獣の要望を聞かれ、ネプギアは信頼性と耐久性の高さと、メンテナンスやアップデートが容易なように、できるだけ既存のプラネテューヌの技術を使用することを求めた。

 

デザインに関しては、ネプギアはフレイラル側にあまり負担をかけないよう、彼女の好きなガアンダムの特徴である、【目が二つでアンテナも二つ付けて色は白】と要望したのみだったが、これが良くなかった。

 

 

 その後、ネプギアは神次元でのある戦いに苦戦を強いられる。

 

その危機を救ったのが、目の前に居るネプギアンダムであった。

 

ネプギアの召喚魔法で現れたネプギアンダムは見た目にそぐわぬ強さでネプギアの危機を救うが、流石のネプギアもこの見た目には物申したいところであった。

 

 

 だが、完成度に自信満々で悪意の一欠けらもないフレイラルの技術者達と、なにより学習型の人工知能を持ったネプギアンダムに対して、【カッコ悪いから作り直して】とは心優しく控えめなネプギアには言えず、そのまま受け入れることになる。

 

見た目はアレだが、ネプギアの要望した通り、信頼性、耐久性、メンテナンス性は非常に高く汎用性の高い優秀なロボットだったことも理由にある。

 

そして、ネプギアは自分だけの護衛獣であるこのロボットに自分の名前とガアンダムを合わせた、ネプギアンダムと名前を付ける。

 

更に自分の声を機械音声として登録し、自分に似た声で喋ることができるようにする。

 

 

 姉のネプテューヌが悪ノリして、このネプギアンダムのプラモデルを広めるが、意外と好評で超次元、神次元共に人気がある。

 

デザインはともかく真面目で勤勉な女神であるネプギアの持っているアイテムというのが重要だったかもしれない。

 

後にネプギアはアトランジャーと呼ばれるロボットを発掘する。

 

しかし、自分にはネプギアンダムがいるし、人工知能を持つネプギアンダムがヤキモチを焼くかもしれないので、これをネプテューヌに譲っている。

 

 

 尚、ネプギアンダムは戦闘の際には10メートル近い大型のネプギアンダムと合体し、巨体から繰り出される圧倒的なパワーで敵を粉砕し、目から出るビームで敵を薙ぎ払う。

 

強力ではあるのだが、それが災いして前回の新作期で追加されたネプギアの新しい技は、このネプギアンダムの召喚になってしまった。

 

他の女神達は華麗な新技を使う中、彼女のネプギアンダムは圧倒的なネタ枠として浮いていたが、使っていく内に慣れて今ではノリノリで使っている。

 

現在、大型のネプギアンダムは新作期に合わせてオーバーホール中で使うことはできない。

 

ネプギアンダムのように人や物を見た目や噂などの偏見で判断せず、じっくりと中身を精査して美点を探し出し、そこに敬意を払うことができるのは彼女の長所の一つである。

 

しかし、たまにそれが災いして、時にはある人物にそそのかされて、裸の執事が出てくるゲームにハマらされてしまったことがある。

 

ユニに指摘されて目が覚め今はハマっていないが、ネプギアはこういう時に自分にストップをかけてくれる、ユニのような友人をとても大事に思っている。

 

「オモチシマシタ」

 

 

 ネプギアンダムは紙が補充されたことにより、印刷された紙の束をネプギアに手渡す。

 

その紙には、しわ一つ付いていない。

 

玩具みたいな手だが微妙な力加減も可能で卵を割ることもできる。

 

 

「お疲れ様」

 

 

 ネプギアはネプギアンダムから右手で紙を受け取ると、左手でその頭を優しく撫でる。

 

先程と同じようにネプギアンダムの角が嬉しそうに点滅する。

 

学習型の人工知能を持ったネプギアンダムは人間に近い感情を持っており褒められたりすると子供のように喜ぶ。

 

 

「私、いーすんさんのところに言ってくるから、充電しながらお留守番しててね」

 

 

 ネプギアがネプギアンダムに向けて言うと、「リョウカイシマシタ」とネプギアンダムはコンセントの側まで歩いて行き、尻尾の電源コードをコンセントに刺す。

 

すると、その場に両足を投げ出すように座り込む。

 

ネプギアンダムの優秀なところの一つに、尻尾の電源コードで簡単にエネルギーを補給できることがある。

 

またエネルギー効率も良く稼働時間も長い。某有名人型決戦兵器のように数分で止まるようなことはない。

 

 

 ネプギアはA4サイズの書類をクリアファイルに収めて持ち出すと、ネプテューヌの書類の山を崩さないようにゆっくりと歩いて執務室を出ていく。

 

ネプギアが向かった先は、先日訪れたイストワールの執務室である。

 

 

「いーすんさん、今日の分の事務が終わりました」

 

 

 ネプギアはインターホンを鳴らし、スピーカーに向かってイストワールに話しかける。

 

 

「ご苦労様です、ネプギアさん」

 

 

 イストワールがそう返事をすると、執務室のドアが横にスライドして開く。

 

 

「失礼します」

 

 

 ネプギアは部屋の中に入り、イストワールの側まで歩いて行くと、「チェックよろしくお願いします」と書類を収めたクリアファイルを差し出す。

 

 

「わかりました」

 

 

 イストワールが座っている本ごと浮き上がり、書類を受け取るとペラペラとめくってその内容を読み始める。

 

小さいイストワールにはA4の紙も大きいので、読むたびに頭が動き、毛先にウエーブのかかった金髪のツインテールが揺れる。

 

 

「はい、問題ありません。流石はネプギアさんですね」

 

 

 読み終わったイストワールは小さな子供を褒めるようにニコリと微笑むとネプギアと目を合わせる。

 

 

「よかった」

 

 

 ネプギアはホッと胸を撫でおろすと、「ネプギアさんはいつも真面目で丁寧な仕事をしてくれるので助かります」とイストワールが嬉しそうに言う。

 

 

「そっ、そんなことないですよ。私なんてまだまだです」

 

 

 イストワールの褒め言葉に、ネプギアは胸の前で手をあわあわ振って謙遜する。

 

しかし、イストワールはそんなネプギアに構わず、「そうでしょうか? ネプギアさんの真面目さは私の知る限りでは五指に入りますよ」と言いながら首を傾げる。

 

 

「私、真面目なことぐらいしか取り柄がありませんから……」

 

 

 イストワールはネプギアを素直に褒めてあげたいのだが、当のネプギア本人は謙虚すぎて素直に喜ぶことができないようだ。

 

 

「……いーすんさん、私、女神としてちゃんと出来ているでしょうか?」

 

 

 ネプギアは少し不安そうにイストワールに問いかける。

 

ネプギアは優しさと謙虚さが過ぎて他人の良いところは過剰に評価するが、自分の良いところは過小評価するところがある。

 

その為、特に大きな失敗をしなくても自分の仕事ぶりが不足しているのではないかと疑問に感じてしまうことがある。

 

 

「出来ていますよ。ネプギアさんの仕事ぶりや戦いぶりは女神として百点満点です。教祖の名に掛けて断言できます」

 

 

 イストワールはそんなネプギアの不安を払拭するかのように素早くそして力強く即答する。

 

現にネプギアはプラネテューヌの女神として他の女神や教祖達と協力してゲイムギョウ界の平和を何度も守ってきたのである。

 

その実績を踏まえてイストワールは心から正直にネプギアに答えたのだ。

 

 

「ありがとうございます。嬉しいです」

 

 

 イストワールのその姿にネプギアは本当に嬉しそうに笑顔を向ける。

 

信頼し尊敬をしているイストワールの率直な言葉に安心したようだ。

 

 

 ネプギアは物事の呑み込み早い上に、真面目で勤勉なのでどんなことでも真剣に学ぶ為、大抵のことはすぐに覚えてそつなくこなしてしまう。

 

しかし、それが仇になり自分を器用貧乏と思い込んでしまっている節がある。

 

彼女の周りには強い個性を持った優秀な人物が沢山いるのも原因である。

 

 

「私、これからも女神として頑張ります!」

 

 

 ネプギアは気を取り直して小さくガッツポーズをすると、「それじゃあ、早速クエストに行ってきますね」と意気揚々と言う。

 

クエストとは、本来は【探求】、【探索】を意味するが、ゲイムギョウ界では【他者からの依頼による仕事】のようなものになっている。

 

女神としてのクエストの内容は主にモンスターと呼ばれる人を襲う異形の生命体の退治である。

 

 

「気を付けてください、新作期になってレベルも落ちている筈ですから、無理はしないで下さいね」

 

 

 イストワールは少し心配そうな顔をする。

 

その姿はネプギアの母親のように見える。

 

ネプギアはイストワールの言葉に、「はい」と素直に返事をする。

 

 

「あっ、変なところないかな?」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、壁に備え付けられたスタンドミラーに自分の姿を映す。

 

髪の毛はキチンとセットされている、右側に少しクセがあるけど直らないし自分でも気に入っているのでこのままにしている。

 

 

「いってきまーす」

 

 

 ネプギアが元気よく右手を上げて左右に振りながら部屋を出ていくと、「いってらっしゃい」とイストワールは小さく手を振って答える。

 

その姿は愛娘の登校を見守る母親のようだった。

 

 

「ネプギアさんは真面目に仕事をしてくれるので助かりますね」

 

 

 イストワールは嬉しそうに言う。

 

時計を見ると九時半過ぎ、ネプギアは朝八時前から事務仕事を始めて今はそれを終わらせて今度はクエストに向かった。

 

ペンネルを駆使して三つのパソコンを同時操作しているとは言え、一日分の事務仕事を二時間掛からず終わらせてしまうのは彼女の優秀さが伺える。

 

 

「……それに比べてネプテューヌさんは……」

 

 

 そう言うとイストワールは一転して暗い顔になり、胃が痛くなるような気がした。

 

前述したように現在九時を過ぎている。

 

プラネテューヌの職員たちは九時始業の十七時終業の八時間勤務となる。

 

女神であるネプテューヌに就業規則は当てはまらないだろうが、イストワールとしてはもう少し上の者として、周りに示しを付けて欲しいと思ってしまうのだった。

 



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#05 ギルド

 イストワールの執務室を出たネプギアはそのままプラネタワーを降りて、プラネテューヌの街へ出かける。

 

プラネテューヌの街はプラネタワーを中心に、白を基調しつつ薄紫などの明るい色をした独創的な形の建物が多くある。

 

その光景は近未来のようで、ゲイムギョウ界一の先進国家と呼ばれるに相応しい街並みであった。

 

 

 ネプギアはプラネタワーから出ると歩道を歩く。

 

近未来的な見た目の街であるが、施設は現実世界の日本の街と大きく変わりがない。

 

歩道には人々が歩き、その横にはビルや商店が並び、車道には車やバイクが通っている。

 

 

現在ゲイムギョウ界はG.C.2019の三月二十七日水曜日。

 

快晴で風も無く、ネプギアは穏やかで温かい春の匂いを感じながら日当たりの良い歩道をゆっくりと歩いて行く。

 

 

 ネプギアは幼い頃からイストワールから女神としての立ち居振る舞いを教え込まれ、自然と優雅な動作を取ることができる。

 

過度に格好良く見せるようなものではなく、あくまで自然な動きである。

 

清楚で可憐なネプギアが姿勢よく淑やかに綺麗な髪を揺らしながら歩く姿は、それだけで行きかう人々を振り向かせる。

 

 

****

 

 

 ネプギアは暫く歩くと、【ギルド】と書かれた看板のある店のような建物の前で立ち止まる。

 

ネプギアが左腕に着けた服と同じカラーをした可愛らしい腕時計を確認すると、時間は九時五十分だった。

 

建物のシャッターは開いているが、開店時間のopenの表示が10:00となっているので、律義な彼女は店側と通行人の邪魔にならないように端に寄って開店を待とうとする。

 

すると店の中から、店員と思われる紺のジャケットを羽織った中年でやせ気味の男性が、まだ作動していないガラス張りの自動ドアを手で空けてくる。

 

 

「おはようございます、ネプギア様。今日もお早いですね」

 

 

 男性は軽く頭を下げてネプギアに挨拶をすると、「おはようございます。今日もクエストを探しにきました」ネプギアも丁寧に軽く一礼して挨拶を返し、簡潔に用件を伝える。

 

ネプギアはユニ達やイストワールなどの親しい人達には少し砕けた態度で接するが、普段は礼儀正しく前述したようにイストワールに教え込まれた礼儀作法をキチンと守っている。

 

今も、姿勢正しく両手は下に降ろし右手を左手でカバーするように前で重ねており、可愛らしくも上品な印象を受ける。

 

 

「どうぞ中にお入り下さい」

 

 

 男性は自動ドアをネプギアが通れる広さに開けるとネプギアを招き入れる。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアはお礼を言うと素直に自動ドアをくぐり店内に入った。

 

男性はこの店の受付担当のようで、ネプギアを招き入れると奥の受付カウンターに入る。

 

 

「ネプギア様は、ご自分からお仕事を探しに来ていただけるので本当に助かりますよ」

 

 

 受付の男性はネプギアの方を向いて、にこやかに話しかける。

 

女神と呼ばれているが、現在のゲイムギョウ界の女神は、今のように人間とのコミュニケーションを普通におこなっている。

 

しかし、十年ほど前は、女神は人間との距離をおいており、人前には女神化という変身した姿で現れ、今のネプギアという人間の姿は世を忍ぶ仮の姿であったのだ。

 

主な理由は騒がれずに自由に行動が出来ることと、女神化していない隙を突かれた暗殺を避けるためであった。

 

現に天王星うずめが女神だった頃は、人間の姿でリアカーを引いたりするパフォーマンスを見せたりしたが、それが仇になり反対勢力から何度か暗殺をされそうになったことがある。

 

 

 それにより近年は女神化する前の人間時の姿は非公開が普通だった。

 

しかし、当時の女神達の敵であった【犯罪組織マジェコンヌ】に対抗する為の旅で、その姿はゲイムギョウ界の住人の知るところとなってしまった。

 

主な原因はネプギア達女神候補生が人間の姿のままで女神と名乗りコンサートに出演したり、姉である守護女神達が互いの人気の優劣を競う為に選挙を開いたことなどだ。

 

その為に今は開き直って人間の姿のままでテレビなどのメディアに出演したり、ライブなどのイベントもしている。

 

 

「少しでも早く困ってる人を助けたいですし、それに直接ギルドに来ないとわからない依頼とかもありますから」

 

 

 ネプギアは受付の男性に向けてそう答えると、ゆっくりと歩いて備え付け端末に移動するとタッチパネルを操作し始める。

 

 

 ギルドは冒険者にクエストを仲介したり、何かあったときに情報を提供してくれるという組織である。

 

クエストの内容は多種多様で、大はモンスター退治から小は犬の散歩や草むしりまであり、要約すれば【何でも屋の仲介業者】になる。

 

ギルドは冒険者には手に負えないようなモンスター退治を、教祖を通して女神にクエストを依頼をする。

 

 

 その為、待っていればネプギアの元にクエストの連絡は来るのだが、ネプギアは少しでも姉やゲイムギョウ界の人々の力になりたくて、こうして足しげくギルドに通っている。

 

彼女は自分宛てに届いたクエストは昨日の内に済ませており、今はフリーなのでギルドまで直接足を運んで自分にできるクエストはないかを探しているのだ。

 

今でこそ直接足を運ぶまでになったネプギアだが、十年前の犯罪組織に対抗する旅を始めたころはギルドの存在すら知らず、友人のアイエフに色々と教わっていた。

 

 

 受付の男性はそんなネプギアの横顔を嬉しそうに眺めている。

 

プラネテューヌの街中でもそうだったが、彼女の可愛らしくも上品な振る舞いは人々を惹きつけるものがある。

 

立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言うのはネプギアのような子のことを言うのだろう。

 

更に毎日真面目に仕事を探しに来るとくれば好感度が高いのも当然だ。

 

 

 しかし、彼女も昔からここまで真剣にクエストに取り組んでいた訳ではない。

 

以前からしっかり者で自分の仕事はちゃんとしていたが、自分の分が終わると大好きな姉のネプテューヌの世話を焼いていた。

 

それが、少し度が過ぎておりイストワールの悩みの種であった。

 

それが変わったのが、神次元に行ってからである。

 

 

 今までは殆ど姉と二人きりだったが、神次元にはネプテューヌと気が合う【プルルート】という女神がいた。

 

ネプテューヌはプルルートと遊ぶことに夢中になり、それによりネプギアと過ごす時間が減ってしまった。

 

最初はネプギアも寂しいとは思ったが、姉も楽しそうな姿に満足し、ネプテューヌの世話が減ったことによる空いた時間に、女神の仕事に励んだり同居する子供の面倒を見ていた。

 

ネプギアは一人で女神の仕事に励む内に、仕事をして人の役に立つことや人に感謝されることへの喜びと素晴らしさを改めて知ることになる。

 

そして女神の仕事をとてもやりがいのある仕事だと思うようになる。

 

その後に天王星うずめとの出会い、命がけで世界を守ろうとする彼女の生き様に強い影響を受けて、更に女神に対する意識を高めて行く。

 

現在、うずめは自らが生み出した零次元と心次元を復興する為に日々努力を続けており、ネプギアもそれに負けないよう更に仕事に打ち込むようになる。

 

甘えん坊の彼女は今のネプテューヌの世話を焼きたい気持ちが無くもないが、仕事に励むことでネプテューヌも喜ぶので基本的には仕事をすることを優先している。

 



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#06 クエスト

 ネプギアが暫くの間クエストを探していると、カウンターに一人の小奇麗な老婆が訪れていた。

 

 

「あのぅ……クエストを頼みたいんじゃが……」

 

 

 老婆はギルドに来るのは初めてのようで、たどたどしく受付の男性に話しかける。

 

 

「はい、どのようなご用件で?」

 

 

 受付の男性が笑顔で丁寧に対応すると、老婆は少し安心したように表情を緩め、「家にある時計を直してほしいのじゃ……おじいさんとの思い出の品でのぉ」と伝える。

 

受付の男性は、「それなら、時計屋さんに連絡をしてみてはいかがでしょうか?」と勧めてみると、「時計屋は旅行に行っていておらんのじゃ……」と老婆は切なそうに言う。

 

恐らく朝一番で時計屋を訪れたが、休日のお知らせを見て、途方に暮れワラにすがる思いでギルドを訪れたのだろう。

 

 

「でしたら、機械に強い冒険者を探してみますので少々お待ちください」

 

 

 受付の男性はカウンターのコンソールを操作してギルドに登録している冒険者の一覧を呼び出す。

 

午後にもなれば、たくさんの冒険者がギルドを訪れ、時計の修理程度なら誰か一人ぐらい手を上げてくれるのだが、今は午前中でしかも開店したばかり。

 

ギルドの中にはネプギアと受付の男性、そして老婆の三人しかいない。

 

 

 ネプギアはタッチパネルの操作を止めて老婆と受付の男性のやり取りを遠目に眺めていた。

 

受付の男性はスマートフォンでクエストを受けてくれそうな冒険者に連絡を取っているようだが、誰も出てくれないようだ。

 

冒険者の多くは夜遅くまで仕事をしており、朝起きるのは遅い者が多い。

 

 

 受付の男性が何度目かの電話を切ると、「無理かのぉ……」と老婆が再び切なそうな声を出す。

 

老婆が肩を落とし背中を丸くする様は、悲しみが漂っていた。

 

その姿にネプギアはとっさに声を出す。

 

 

「あの、私でよければみますけど?」

 

 

 ネプギアは老婆の切なそうな声に同情して、本当に大切な時計なんだと思い自分から名乗り出たのだ。

 

老婆が、「おお、お嬢ちゃんできるのかい?」と嬉しそうな声を出す。

 

しかし、受付の男性はカウンターを出てネプギアに近づくと、「ネプギア様にしていただくような依頼じゃありませんよ」と耳打ちする。

 

 

 男性の言う通り、女神などの高い戦闘能力を持つ者はモンスター退治などの荒事になるクエストを担当する。

 

このようなお使いクエストは駆け出しの冒険者などに譲るのが定例である。

 

 

「こういうお仕事は新米の冒険者さんに譲るべきなのはわかってますけど、おばあさん困ってるみたいなので……」

 

 

 ネプギアはそう言うが、「そうは言われてもねぇ……」と受付の男性は難しい顔をする。

 

受付の男性も心優しいネプギアの気持ちは分かるが、このような雑用クエストを女神にさせたと上に知られたら減俸ものである。

 

 

「もう少し待ってもらって……」

 

 

 受付の男性はネプギアを説得しようとするが、「お願いします。やらせて下さい」とネプギアが大きく頭を下げる。

 

 

「わわわ! 頭を上げて下さい、わかりました! お任せしますから」

 

 

 受付の男性は慌ててネプギアに言う。

 

女神とも普通にコミュニケーションをとるが、さすがに頭を下げてもらうのは恐れ多いようだ。

 

心優しく感受性や共感力が高いネプギアは困っている人を助けるためなら、自分の立場も構わずに行動してしまう。

 

 

「それでは準備しますので、こちらにご記入をお願いします」

 

 

 受付の男性はそう言うとA4サイズの依頼書を老婆に手渡すが、「ううん? どう書けばいいんじゃ……」と老婆は困惑顔になる。

 

 

「それじゃあ、私が説明しますね。こっちに来て下さい」

 

 

 ネプギアはそう言うと老婆の手を優しく引いてペンの置いてある机に誘導していく。

 

 

「いや~……本当にいい子だな。女神様じゃなければほっておかないんだが」

 

 

 その姿を見ながら受付の男性はしみじみとつぶやく。

 

受付で毎日のように真面目なネプギアの仕事ぶりを見ている彼はすっかりネプギアの信者になっているようだ。

 

その間に、老婆はネプギアの丁寧な説明に従って依頼書の空白を埋めていく。

 

 

「お嬢ちゃんは若いのに礼儀正しくて親切じゃのぉ……」

 

 

 老婆はネプギアを眺めながら嬉しそうな顔で言う。

 

彼女は親切かつ可愛らしく上品な振る舞いのネプギアのことをすっかり気に入ったようだ。

 

 

「ありがとうございます。私もおばあさんのお役に立てて嬉しいです」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、先程の様子からこの老婆は自分が女神だということを知らないようなので、余計な気遣いをさせないよう、このまま言わないことにしようと思った。

 

テレビなどのメディアに出演しているとはいえ、出ているのは主に姉達守護女神でネプギア達女神候補生はあまりメディアに出ることはあまりない。

 

その為、知らない人がいても不思議ではない。

 

 

 老婆は依頼書を埋めて受付の男性に提出すると、男性はキーボードを操作して依頼書の情報を端末に入力していく。

 

 

「はい、登録できましたので受注入力して下さい」

 

 

 受付の男性がネプギアにそう言うと、ネプギアは、「はい」と答えて、右の太ももに付けている専用のケースから携帯ゲーム機型万能デバイス【Nギア】を取り出す。

 

携帯ゲーム機型万能デバイスとは簡単に言えばスマートフォンである。

 

先程、受付の男性が持っていたようにゲイムギョウ界にもスマートフォンはあるので、競合する形になっている。

 

携帯ゲーム機型万能デバイスはスマートフォンに比べて専用のゲームソフトが遊べ、ゲームに関する機能が優れている。しかし、その分他の機能がやや劣るところがある。

 

その為、子供やゲーム好きの大人は携帯ゲーム機型万能デバイスを好んで使い、その他の人々はスマートフォンを使っている。

 

 

 ネプギアはNギアに付いているボタンとタッチパネルの操作で素早く、【クエスト】と表示されたアプリケーションを選択する。

 

すると、【NEW】の表示がされた【時計の修理依頼】の項目にタッチする。

 

ネプギアはクエストの説明文、期限、報酬額を全て確認した上で【受注する】のボタンをタッチした。

 

これにより正式にギルドからクエストを受けたことになる。

 

 

「はい、受注終わりました」

 

 

 クエストの受注操作が終わったネプギアはNギアをケースにしまうと、「おばあさん、直す時計はどこにありますか?」と早速クエストに取り掛かるべく老婆に時計のことを聞き始める。

 

 

「家にあるんじゃ……大きな古時計でな、おじいさんが生まれた時から百年休まず動いていたんじゃが……」

 

 

 老婆が説明をすると、「じゃあ、おばあさんの家におじゃましますね」とネプギアが言い、先程と同じように優しく老婆の手を引いて行く。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアは老婆に道案内してもらい街中を進みながら、老婆の夫で先日亡くなったという、おじいさんとの思い出話に耳を傾けていた。

 

 

「いいおじいさんだったんですね」

 

 

 ネプギアがしみじみと老婆に答えながら頷く。

 

真面目なネプギアは真剣に老婆の話を聞き、あいづちをうったり感想を述べたりしていた。

 

そうしている内に老婆の家に着いたネプギアは老婆に案内されて、修理する古時計のある部屋に案内される。

 

確かに古いが綺麗に掃除されておりアンティークとして十分価値がありそうな逸品であった。

 

老婆の家も上品なアロマの匂いがして、時計の雰囲気とマッチしていた。

 

 

「わー、すごく立派な時計ですね」

 

 

 ネプギアはそう言って素直に関心すると、「じゃあ、さっそく見させてもらいますね」と言ってNギア取り出して操作する。

 

画面の【ポケット】と表示されたアプリケーションを選択し、【ネプギア特製工作ツール】を選択するとネプギアの手元に工具一式が現れる。

 

 

 携帯ゲーム機から工具が出てくるのは非常識に見えるが、ゲイムギョウ界では常識である。

 

これはNギアにインストールされている【ポケット】と呼ばれるアプリケーションによる機能だ。

 

ポケットはゲイムギョウ界では【アイテム】と呼ばれる様々な道具を、ミニゲートを使用して保管や出し入れをする倉庫サービスの一つ。

 

グローバルゲートネットワークを通じて、インベントリと呼ばれる倉庫に保管するので大量の保管が可能。

 

だが、ネットワークがパンクしないようにアイテムの大きさによって出し入れの回数制限が設けられている。

 

このような便利な携帯端末が流通する前は道具袋にアイテムを保管していた。

 

冒険者は装備の他に傷薬や鍵などのアイテムを細かく管理し、持ちきれないアイテムを預かる【預かり所】などの商売があったとされている。

 

 

「ええと……ふんふん……なるほど」

 

 

 ネプギアは古時計を分解して構造を確認しながらつぶやく。

 

 

「どうかのぉ……直りそうかい?」

 

 

 老婆が心配そうに尋ねると、「大丈夫です。何個かすり減ったパーツがあるので、それを交換すれば直るはずです」とネプギアが老婆を安心させようと力強く言う。

 

 

「おお、頼もしいのぉ~」

 

 

 老婆もネプギアの言葉に安心したのか嬉しそうに微笑む。

 

 

「それじゃあ、私パーツを探しにジャンクショップに行ってきますので少し待っていて下さい」

 

 

 ネプギアはそう言って立ち上がると、「ジャンクショップ?」と老婆が質問をする。

 

 

「ジャンク品って言う、そのままじゃ使える見込みがないパーツや古くて使い道がない品物が売っているんですよ。この時計古いですからピッタリなパーツがあると思います」

 

 

 ネプギアが説明すると、「お代はどうしたらいいかねぇ?」と老婆が心配そうに言う。

 

ネプギアはニコリと微笑んで老婆を安心させると、「領収書を切ってもらいますから心配しないで下さい」と言う。

 

そして、時計の修理に必要な部品を再チェックしながらNギアにメモをしていく。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアは老婆の家を後にするとプラネテューヌの街のジャンクショップに向かう。

 

ネプギアがジャンクショップの自動ドアを通ると、少し暗めの店内に鉄の匂いがしてくる。

 

同時に、眼鏡をかけて私服の上に店の名前が書いてあるエプロンを付けている男性が、「いらっしゃいませネプギア様、今日は何をお探しで?」と声をかけてくる。

 

 

 機械が好きなネプギアはジャンクショップの常連である。

 

彼女は女神という立場でありながら贅沢な高級品はあまり使用せず、ジャンクショップに足しげく通ってリサイクルできる部品を探しているのだ。

 

真面目で堅実な彼女の考え方は作る機械にも表れており、常に最新で最高の性能を有する部品よりも、確実に動作する信頼性の高い部品を選んで使う。

 

その為、ジャンクショップには思いがけないお宝があることがあるのだ。

 

ちなみに以前に話した魔改造はするが、無謀な改造ではなく、信頼できる部品で確実に動作する形で作っているので暴走などの危険性はほとんどない。

 

信頼できる部品をプラネテューヌの最先端技術で改造する彼女の魔改造は、改造後の方が動作が安定することがあるほどだ。

 

 

「こんにちは店長さん。今日は歯車を見に来たんです」

 

 

 ネプギアは挨拶をした後に用件を伝えると、「じゃあ、こちらですね」と店長はネプギアを案内する。

 

ネプギアは、「ありがとうございます」とお礼を言いながら店長の後ろに付いて行く。

 

ネプギアが案内された場所には箱の中に大量の歯車が無造作に入っていた。

 

ネプギアはNギアから取り出した軍手をはめると、それを一つ一つ手に取って状態や寸法を調べ、使えるものと使えないものを分けていく。

 

 

「ネプギア様楽しそうですね」

 

 

 店長は楽しそうに作業するネプギアを見て声を掛ける。

 

ジャンクショップ自体あまり人が大挙して訪れる場所ではない。

 

その上に今は午前中ということで、暇を持て余している店長は歯車を選別するネプギアを邪魔にならない程度の距離から眺めていた。

 

 

 この店長もギルドの受付の同様にネプギアの信者である。

 

ジャンクショップのような女っ気のない店で、ネプギアのような真面目で朗らかな美少女が常連客ともなればファンになってしまうもの仕方ないことかもしれない。

 

 

「はい、私歯車って大好きです。一つ一つは小さいけど、たくさん組み合わせて大きな仕掛け動かす姿を見ると、どんなに大変ことでもみんなで協力すればできるんだって思えるんです」

 

 

 ネプギアは店長の言葉に嬉しそうにそう答える。

 

 

「ネプギア様の名前にも【ギア】って付いていますしね」

 

 

 店長はネプギアの名前に歯車を意味するギアの文字が入っていること言う。

 

すると、「はい、私この名前大好きです。私も歯車みたいに、みんなと一緒に楽しくて平和なゲイムギョウ界を作りたいです」とネプギア答える。

 

 

「社会の歯車になるのが嫌だって言う人が多い中で、ネプギア様のような立派な考えを持ってる子は貴重だね」

 

 

 店長はネプギアの考え方に感心したように何度も頷きながら言う。

 

 

「ありがとうございます。でも、私は一人じゃ怖くて何も出来なくて、すぐにお姉ちゃんや友達を頼っちゃうから、そう思うだけで立派なんかじゃありませんよ」

 

 

 店長の誉め言葉に対してネプギアは丁寧に謙遜をする。

 

店長はそんなネプギアを見ながら嬉しそうに微笑んだ。

 

ネプギアの言動や行動が彼の琴線に触れたようだ。

 

 

 先述したが、ネプギアは神次元から戻って来て頻繁に街に顔を出して仕事をするようになった。

 

それによりG.C.2012からギルドやジャンクショップ等の彼女がよく訪れる場所でネプギアの信者は少しずつ増え始めていた。

 

尖った特徴は無いが、内面も外面も非の打ち所がない彼女は、この店長と同じように多くの人に好意的に受け入れられている。

 

逆にネプギアの優等生ぶりが鼻に付く言う人物もいるが、それはごく僅かである。

 

 

「あっ、これで揃いました」

 

 

 ネプギアは会話しながらも歯車の選別をしており、ちょうどその作業が終わったようだった。

 

ネプギアは歯車を購入して領収書を切ってもらうと、Nギアを操作して、ポケットアプリを呼び出すと購入した部品をインベントリ倉庫に収めるとジャンクショップから出る。



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#07 パピリオ

 ネプギアは早速老婆の家に戻ろうとするのだが、彼女の視界に一人の少女が入ってくる。

 

年のころはロムとラムと同じくらいの六~七歳程度、身長も同じくらいで130センチ前後。

 

髪は薄い金髪を腰まで届くお団子ツインテールにして、前髪は長めの姫カットで綺麗に揃えられている。瞳の色も金色で年相応の幼い顔をしている。

 

肌は雪のように白く、美しい金髪と相成って人形のような印象を受ける。

 

ロムとラムに負けず劣らずの愛らしさだが、その美しさは脆く儚いようにも見えた。

 

青のゴスロリドレスを身にまとい、お団子ツインテールにも同じデザインの可愛らしい髪飾りがかぶさっており、可愛らしい動物の耳か蝶の羽のようにも見える。

 

両手には自分と同じデザインの服を着た白いウサギのぬいぐるみを抱えている。

 

ウサギのぬいぐるみは時計を持っており、不思議の国のアリスの時計ウサギのように見えた。

 

良家のお嬢様のように見えるが、近未来的な建物とカジュアルな服装の住人の多いプラネテューヌではやや浮いている雰囲気がある。

 

 

「あの子、迷子かな?」

 

 

 最初は物珍しさで見ていたネプギアだが、少女が困った顔で辺りをキョロキョロしているのに気付いて、迷子だと思ったようだ。

 

 

(おばあさんのクエストの途中だけど、声だけかけてみよう)

 

 

 ネプギアはそう決めると少女を警戒させないようにゆっくりと近づく。

 

そして少女の目の前に立つと、しゃがんで少女と目線を合わせにっこりと微笑む。

 

 

「?」

 

 

 少女は困惑の顔を浮かべるが、驚いた様子はなく逃げるようなそぶりも見せない。

 

ネプギアは若いながらも子供の扱いが上手い。

 

ロムとラムと友達だからというのもあるが、彼女は神次元で赤ん坊を三人育てたことがある。

 

 

 勿論、彼女の子供ではないのだが、神次元の居候先であるプルルートの教会が託児所をしていたのだ。

 

しかし、託児所を始めたのに自分以外の人手は、遊び人であるネプテューヌと寝ぼすけのプルルートしかいないので、遊ぶ時以外に子供の面倒を見てくれない。

 

かといって赤ん坊を放り出す訳にも行かないので、育児のほとんどをネプギアがやったのだ。

 

当然初めての経験ではあるが、彼女らしく真面目かつ真剣に勉強して子供達と向き合い育てて来た。

 

三人の子供の他にも、彼女達の友達やその親達と交流していく内に、子育てや子供に接する時のスキルを学んだのだ。

 

 

「お嬢ちゃん、迷子かな?」

 

 

 ネプギアはゆっくりと優しい声で少女に質問をすると、少女は左右に首を振る。

 

首を振ったことによりお団子ツインテールが揺れて、同時にネプギアの鼻にロムとラムと同じような子供特有の甘い匂いがする。

 

 

「そうなんだ。じゃあ、誰か探してるの?」

 

 

 ネプギア次の質問をすると、少女は首を上下に振る。

 

ネプギアの優しく穏やかな雰囲気と声により、少女はネプギアに対して警戒心が薄くなったようだ。

 

 

「そうなんだ」

 

 

 少女の答えにネプギアは頷くと、(両親とはぐれちゃったのかな? まだ迷子って自覚はないみたいだけど……)と少女の状況を自分なりに分析する。

 

ネプギアはおばあさんには悪いとは思ったが、先にこの子の両親を探すか、それがダメなら警察やギルドなりに保護してもらった方が良いと思った。

 

 

「誰を探してるのかな? お母さん、それともお父さん?」

 

 

 そう決めたネプギアは少女との会話を続ける。

 

 

「……姉様」

 

 

 少女が初めて口を開く、見た目通りの幼い声だ。

 

 

「……プラエはプロテノール姉様を探しているの」

 

 

 少女が続けて言う。

 

その瞳は心細くて、ネプギアにすがりつきたいように見える。

 

ネプギアは少女の心境を察してか、優しく両手を少女の両肩に置くと、「お姉さんか……どこで、はぐれたか分かるかな?」と質問をする。

 

少女が勇気を出して自分に心を開いてくれたのだから、その期待に応えて近くにいるようなら自分が見つけてあげたいと思っての行為だ。

 

 

「……ずっと前から帰ってこないの。もう十年も……」

 

 

 少女の予想外の言葉に、「えっ……」とネプギアは驚きの声を上げてしまう。

 

親とはぐれたと思っていた子供が十年前から帰って来ない姉を探していることにも驚いたが、目の前の少女はどう見ても十歳以下である。

 

人を疑うことを知らないネプギアには、この少女がウソをついているという考えは浮かんでこなかった。

 

 

「……お姉さんは姉様のことを知らない?」

 

 

 少女は悲しそうな声でネプギアに質問をする。

 

 

「お姉さんはプロテノールさんって言うの?」

 

 

 ネプギアが少女の姉の名前を確認すると、少女は小さく頷く。

 

ネプギアは一呼吸して、「ごめんね。お姉さん、プロテノールさんって名前の人のこと知らないの」と正直に少女に伝えると、少女は悲しそうに目を伏せてしまう。

 

 

「でも、お姉さん人探しが得意な友達を知ってるの。その人に聞けば分かるかもしれないよ」

 

 

 ネプギアは少女を励ますように少し明るい声で言うと、少女は顔を上げて、「本当に?」と質問をする。

 

ネプギアは優しく微笑みながら、「うん」と頷くと、「だけど、お姉さん、今おつかいの途中なの。それが終わるまで待っててくれるかな?」と続けて言う。

 

 

「……うん、待ってる。お姉さん凄くいい人だから信じる」

 

 

 少女は少し嬉しそうな顔で頷く。

 

今までのやりとりで少女はネプギアのことを信用したようだ。

 

 

「お姉さんの名前はネプギアって言うの。あなたはプラエちゃんでいいのかな?」

 

 

 ネプギアは自分の名前を名乗ると、少女が少し前に口にした自分の名前であろうものを確認する。

 

 

「うん、わたしの名前はプラエ。プラエ=パピリオって言うの」

 

 

 プラエと名乗った少女が頷くと、「よろしくね、プラエちゃん」とネプギアが微笑む。

 

 

「うん……」

 

 

 プラエが少し恥ずかしそうに頷く。

 

 

(パピリオか……本当に蝶々みたいに可愛らしい子だなぁ)

 

 

 ネプギアはその姿を見ながら、プラエの姓が蝶を意味するパピリオであることに思いを巡らせる。

 

 

「それじゃあ、私はおつかいを済ませちゃうからね。プラエちゃんはどこかで待ってる? それとも私と一緒に来る?」

 

 

 ネプギアがプラエに問いかけると、「プラエ、ネプギアお姉さんの側がいい。ネプギアお姉さん好き」と即答する。

 

どうやら思っていた以上に懐いてくれたようだ。

 

 

 プラエは両手に抱いていたウサギのぬいぐるみを左手だけで持つと、右手でネプギアのスカートの端をちょんとつまむ。

 

ネプギアはそのプラエの姿を見て微笑む。

 

 

「私もプラエちゃんのこと好きだよ」

 

 

 ネプギアは左手で自分のスカートをつまんだプラエの右手を握ろうとするが、「あっ……」とプラエは手を引っ込めてしまう。

 

 

「ごめんね。嫌だったかな?」

 

 

 ネプギアが申し訳なさそうにプラエに謝る。

 

すると、プラエは激しく首を左右に振って、「そうじゃないの……プラエの指、人と違うから……ネプギアお姉さんに嫌われちゃうかなって……」と悲しそうに答える。

 

ネプギアはゆっくりと首を左右に振ると、「そんなことないよ。プラエちゃんの指が人と違っても、私は絶対にプラエちゃんのこと嫌いにならないよ」と力強く言う。

 

プラエはそのネプギアの言葉を信じたようで、ぬいぐるみを脇に抱えるとおずおずと両手の甲をネプギア見せる。

 

小さくて可愛らしく傷やシミ一つない綺麗な手。

 

しかし、確かにプラエの言う通り、人とは違っていた。

 

 

「六本指……」

 

 

 ネプギアが少し驚いたように呟く。

 

彼女の言うようにプラエの両手には、小指の隣に親指のような指が生えており指が六本あった。

 

 

「……っ……」

 

 

 驚いたネプギアを見てプラエは慌てて両手を引っ込めてしまう。

 

 

「ごめんね! 少し驚いただけだから。プラエちゃんのこと嫌いになったりしてないよ!」

 

 

 ネプギアは慌てつつも力強くプラエにそう言うと、「……本当」とプラエが不安そうに問いかける。

 

 

「うん、だから手繋いで行こう」

 

 

 ネプギアがニッコリと微笑んでゆっくりと左手を差し出すと、プラエはおずおずと右手でネプギアの手を握る。

 

 

「それじゃ、行こっか?」

 

 

 ネプギアが優しくも力強くプラエの手を握ると、「うん」とプラエもネプギアの手を握り返す。

 

僅か十数分の出来事ではあったが、プラエはネプギアに対してかなり好意を抱いてくれたようだ

 

これも、優しく穏やかな態度でプラエのことを真剣に心配したネプギアの行動の賜物だろう。



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#08 時指

 ネプギアはプラエと手を繋いで老婆の家に戻りインターホンを鳴らす。

 

 

「お帰り。どうだったかの?」

 

 

 玄関を空けた老婆が質問すると、「大丈夫です。これで直りますよ」とネプギアは老婆を安心させるように言う。

 

 

「そっちのお嬢ちゃんは?」

 

 

 プラエに気付いた老婆が不思議そうに首を傾げる。

 

ネプギアは、「お姉さんを探しているそうなんです。おばあさんの時計を直し終わったら手伝ってあげようと思って」と簡単にプラエのことを説明する。

 

 

「そうなのかい? お嬢ちゃんは働き者だねぇ」

 

 

 老婆はネプギアに対して感心の声を上げると、今度はプラエの方を見て、「お嬢ちゃん、お菓子食べるかい?」と質問をする。

 

老婆は小さくて人形のように可愛らしいプラエのことが気に行ったようだ。

 

 

「……いいの?」

 

 

 プラエがやや遠慮気味に言うと、「いいよ、たくさん余ってるから、いっぱいお食べ」と老婆が微笑む。

 

 

「それじゃあ、その間に時計直しちゃいますから、プラエちゃんはおばあさんとお話してて」

 

 

 ネプギアはそう言うと、Nギアを取り出して、ポケットアプリを使い、先程ジャンクショップで購入した歯車と、自分用の工具を呼び出し手に取る。

 

プラエは老婆に別の部屋に案内され、お茶とお菓子をご馳走になっているようだ。プラエは老婆のことも気に入ったようだが、六本指は気付かれないように隠していた。

 

 

 それから十数分後……。

 

ネプギアは古時計の修理を終えて、その蓋を閉じる、

 

工具を片付けて、老婆の居る部屋に行くと、「直りましたよ」と老婆に伝える。

 

 

「本当かい?」

 

 

 老婆は嬉しそうに時計を見に来ると、「おお、ちゃんと動いておる」と動いている時計に感激の声を出す。

 

 

「よかったですね、おばあさん」

 

 

 ネプギアは自分のことのように微笑むと、「その時計さん、凄く長い間生きているんだね」とプラエが時計をまじまじと眺める。

 

 

「そうだよ。おじいさんが生まれた時に買って来たらしいよ」

 

 

 老婆が少し誇らしげにプラエに説明をする。

 

プラエはニッコリと笑うと、「……うん、おじいさんが居なくなって寂しいけど、これからはおばあさんと一緒に時を刻むって言ってるよ」と言う。

 

 

「そうかいそうかい。ありがとよ、お嬢ちゃん」

 

 

 老婆はプラエの言葉を本気で信じているわけではないが、彼女の励ましの言葉が嬉しくて、【うんうん】と頷きながら答える。

 

 

「それじゃあ、お代を……」

 

 

 老婆がネプギアの方を向くと財布を取り出す。

 

しかし、ネプギアは、「報酬はギルドからもらいますから、おばあさんは後でギルドから連絡が来たらお支払いをお願いします」と老婆に説明をする。

 

ギルドは基本的には成功報酬となっており、クエストが成功するとギルドが冒険者等に報酬を支払い、後日にギルドが依頼者に料金を請求する形になる。

 

 

「そういえば、お嬢ちゃん名前は?」

 

 

 老婆が思いついたようにネプギアに尋ねる。

 

ネプギアはややためらいながらも、「ネプギアです」と正直に答える。

 

すると老婆は驚いた表情になり、「おおう! 女神様だったとはこれは失礼しました」とかしこまる。

 

ネプギアはそんな老婆を見ながら、「そんなにかしこまらないで下さい。私は当然のことをしただけですから」と言う。

 

だが、老婆は両手を合わせて、「ありがたや、ありがたや……」とネプギアを一心に拝む。

 

 

「おばあさんの気持ち、ちゃんとシェアエネルギーになって伝わってきます」

 

 

 ネプギアは胸に手を当ててしみじみとそう言う。

 

シェアエネルギーは人々の信仰心から生まれ、その大きさや強さに応じて女神の力が左右される。

 

その為、老婆の強い信仰心が力になるのをネプギアは感じられるのだ。

 

これで彼女の信者がまた一人増えたことになるだろう。

 

 

「これは次の老人会で、みんなに話してあげないとねぇ」

 

 

 老婆が嬉しそうにそう言うと、「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」とネプギアは一礼し、隣にいたプラエの左手を右手で優しく握ると、「プラエちゃん、行こう」と言う。

 

ネプギア達は老婆に玄関まで見送られ、ギルドへの帰路につく。

 

 

****

 

 

 

「……ネプギアお姉さんは女神様だったの?」

 

 

 プラエが不思議そうな顔でネプギアを見上げながら尋ねる。

 

 

「うん、まだ候補生なんだけどね」

 

 

 ネプギアが気恥ずかしそうに言うと、「女神様って、悪いモンスター達からみんなを守る凄い人なんだよね」とプラエが目を輝かせながら言う。

 

ネプギアは相変わらず恥ずかしそうに、「凄いのはお姉ちゃん達で、私はそんなに凄くないよ」と謙遜をする。

 

真面目で謙虚な彼女は、女神だからと言って自慢したり偉ぶった態度をすることがない。

 

むしろ、自分のような特徴のない子が女神なんて、おこがましいとすら思っているところがある。

 

 

「ネプギアお姉さんは凄いよ。プラエ、ネプギアお姉さんと一緒にいると、心がフワッとして胸がポカポカする。これ女神様の魔法?」

 

 

 プラエが不思議そうにネプギアに尋ねると、「それは好きな人と一緒にいるとなるんだよ。私もプラエちゃんと一緒にいると心が温まるよ」とネプギアがニッコリ笑いながら答える。

 

人を安心させて信頼させる。これは優しく穏やかで真面目なネプギアの人徳によるものだが、彼女はそれを当たり前のことだと思い特別視をしていない。

 

 

「そういえば、プラエちゃんは時計さんとお話が出来るの?」

 

 

 ネプギアが話題を変える。

 

先程、老婆の家で言ったプラエの時計と会話できるような発言、ネプギアはちゃんと信じており、どういうことなのかと本人に聞いてみる。

 

 

「時計じゃなくて、時間とお話が出来るの。プラエは時間とお友達なの。あの時計の側にあった時間が、おばあさんと時を刻みたいって言ってたの」

 

 

 ネプギアの問いかけにプラエは真面目な声で答える。

 

ネプギアも同じように真面目な顔で頷くと、「そうなんだ。プラエちゃんはどうしてそんなことができるの?」と興味深そうに質問を続ける。

 

 

「分からない。生まれた時から出来るの」

 

 

 プラエはそう言って首を左右に振ると、「姉様やあんみつは、この六本目の指のことを【時指(ときゆび)】って呼んでいて時間に干渉できる力があるって言ってるの」と説明を続ける。

 

 

「そうなんだ……時間と同じ十二本のある指が関係しているのかな?」

 

 

 ネプギアは頷いて自分なりに思ったことを言うと、「ところで、あんみつって誰のこと? お友達」と別の質問をする。

 

プラエは少し困ったように首を傾げると、口を開く。

 

 

「えっと、あんみつは、葛切あんみつって名前でプラエは友達だって思ってるけど、あんみつは自分のことをプラエに仕えるメイドだっていつも言ってる……」

 

 

 プラエは少し寂しそうに答える。

 

 

「大丈夫だよ。プラエちゃんが友達だと思ってるなら友達だよ。きっと、あんみつさんはお仕事があるからそう言ってるけど、本当にプラエちゃんのこと大事にしてるんだよ」

 

 

 ネプギアは優しく励ますように言う。

 

彼女としても何の根拠も無い訳では無く、素直で育ちの良いプラエを見て大事に育てられているんだなと思っての発言だ。

 

 

(やっぱり、一人で暮らしてるって訳ないよね)

 

 

 ネプギアは心のなかで呟く。

 

 

(多分、あんみつさんも心配してるだろうから、プラネタワーに戻って、いーすんさんとプロテノールさんのこと調べながら、探し人のクエストとかもチェックしてみよう)

 

 

 ネプギアは続けてそう考えるとプラエの願いである姉を探しつつ、保護者と思われるあんみつのことを調べることに決めた。

 

彼女がプラエに今まで保護者のことを尋ねなかったのは、プラエが真剣に姉を探しているという気持ちを最優先していた為である。

 

保護者の心配も分かるが、プラエも真剣なのだから、まずはそれに答えてあげよう。

 

その為に、保護者のことを聞くのは家に帰されると思わせてしまうので今まで聞かなかったのだ。

 

 

「……あのね、時指のことは本当は秘密なんだけど、ネプギアお姉さんいい人だからお話したの」

 

 

 プラエが顔を赤くして少し恥ずかしそうに言う。

 

六本目の指のこともあまり隠そうとしなかったし、時間のことも重要な秘密であろうが、彼女はネプギアのことを相当気に入ったらしく素直に話してしまったようだ。

 

 

「うん、ありがとう。じゃあ、私も秘密にしておくね。誰にも言わないよ」

 

 

 ネプギアもその事に気付いており、プラエの信頼に応えるように優しく言いながら力強く頷く。

 



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#09 バトル

 ネプギアとプラエはギルドまで戻って来ると店内に入る。

 

店内は相変わらず人は少ないが、開店時と違って数人の従業員が掃除や端末のチェックをしている。

 

ネプギアはカウンターまで行くと受付の男性に、「さっきのおばあさんのクエスト成功しました」と伝える。

 

 

「ご苦労様です、なにか経費が掛かりましたか?」

 

 

 受付の男性がそう質問するとネプギアはジャンクショップの領収書を机の上に置いて、「これだけです」と伝える。

 

 

「了解です。それでは報酬をお支払いしますね」

 

 

 受付の男性は請求書を受け取るとキーボードを操作する。

 

同時にネプギアはNギアを取り出して画面を確認すると、金色の硬貨に【C】と書かれたアイコンの横の数字が増加する。

 

 

 これは【クレジット】と呼ばれるゲイムギョウ界の通貨で、四つの国共通のお金である。

 

ギルドの仕事に成功したので、ネプギアに報酬が支払われたのだ。

 

ギルドは後でそれに仲介手数料を加えて依頼者である老婆に請求書を送るのだ。

 

 

「報酬受け取りました。ありがとうございます」

 

 

 ネプギアは報酬のクレジットが入ったのを確認して受付の男性にお礼を言うと、「こちらこそありがとうございます。またよろしくお願いします」と受付の男性が嬉しそうに笑う。

 

以前からゲイムギョウ界を救う為の冒険をしているネプギアやその仲間達は過去に大量のクレジットやアイテムを持っていた。

 

しかし、平和になるとそれら全てを荒れ果てた地域の復興や福祉に当てている。

 

 

「ところで、その子は?」

 

 

 受付の男性がネプギアと手を繋いでいるプラエを見ながら言う。

 

 

「迷子なら預かりますけど」

 

 

 男性がそう言うと、プラエは不安そうな顔でネプギアの顔を見上げると手を強く、【ぎゅっ】と握る。

 

ネプギアは安心するようにプラエに微笑むと、優しく手を握り返す。

 

 

「お姉さんを探しているそうなんです。プロテノール=パピリオって名前らしいんですけど、ギルドのデータベースに何か情報はありませんか?」

 

 

 ネプギアは受付の男性に質問に答えると同時に、プラエの姉のことを尋ねる。

 

受付の男性は、「冒険者と過去の依頼者の名前から検索してみますね。少しお時間かかりますので、お好きなところで休んでいて下さい」とカウンターのコンソールを操作し始める。

 

プラエの捜索願いのことに関して尋ねなかったのは、前述したようにプラエの姉探しの気持ちを優先させてあげたい為だ。

 

 

「それじゃあ、その間に他のクエストを探してみます」

 

 

 ネプギアはそう言ってギルドの備え付けの端末に移動してクエストを探す。

 

ネプギアがコンソールを操作するのに合わせて、プラエは素直に手を離すが彼女の隣を離れようとはせず、ネプギアの服の端をちょんと摘まむ。

 

暫くクエストを探していると、先程は無かったクエストを見つける。

 

 

「あれ? モンスター退治のクエストが入ってますね」

 

 

 ネプギアが受付の男性に声をかける。

 

 

「ネプギア様が出かけている時に入ったんですよ。街の入り口なんですけど、相手がひよこ虫一匹だけなんで衛兵にでも回そうかなと思ってたところです」

 

 

 受付の男性がコンソールを操作しながら説明をする。

 

ゲイムギョウ界の国を護るのは女神だけではない。

 

女神と共に国を護りたいという有志が集まり軍を組織しており、女神や教祖は時にはそれを率いて強大なモンスターと戦うこともある。

 

その為、大して強くないモンスターは街を警備する衛兵が倒すなり追い払うなりするのである。

 

駆け出しの冒険者が居れば、そちらに回したかもしれないが、先述したように午前中は冒険者が少なく今もギルドには誰も来ていないので、ギルドは衛兵に仕事を回そうとしたのだ。

 

 

 ちなみに女神が普段は兵士を同行させないのは、女神達が物々しい雰囲気を好まず自由に行動したいこと。

 

それと、軍隊の力ではなく【女神の偉大なる力で国民を護っている】ということを人々に示す為である。

 

また女神のハイレベルな戦闘についてこられる人間は少なく、逆に足手まといになったりするのだ。

 

 

「プラエちゃん、モンスターが出て困ってる人がいっぱいいるから助けに行ってもいいかな?」

 

 

 ネプギアがプラエに向かってそう言うと、「いいよ。ネプギアお姉さん優しいもんね」とプラエは快く頷く。

 

しかし、同時に右手でネプギアの左手を握ると、「でも、プラエも連れて行ってね? 一人にしないで」と上目遣いですがりつく。

 

ネプギアは優しく微笑んで、「うん、もちろんだよ」と答える。

 

 

「そのクエスト、私が行ってきます」

 

 

 プラエの快諾を得たネプギアが受付の男性にクエストの受注を申し出る。

 

ひよこ虫というのは強力なモンスターではないが、街の入り口とのことなので一般人に被害が出ないよう早急に対処する必要があるからである。

 

 

「わかりました。それじゃあ、お願いしますね」

 

 

 受付の男性がそう言うと、ネプギアは先程と同じようにNギアを取り出してクエストの受注の操作をする。

 

 

「行ってきます」

 

 

 そう言ってネプギアがプラエを連れてギルドから出ていくと、「お気を付けください」と受付の男性がネプギアを見送る。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアはクエストの現場に到着すると、街のすぐ側に一体の生き物がいた

 

それは体長一メートルほどで、丸くデフォルメされたエビのような姿をし、つぶらな瞳をして、ニワトリの様なトサカが生えた生き物だった。

 

 

 これが【ひよこ虫】である。

 

前述したとおり強力なモンスターではないが、群れをなして襲ってきたりすると少々厄介になる。

 

 

 街の人々がニ十メートルほど遠巻きにひよこ虫を眺めている。

 

その様子はモンスターに対して不安を募らせているようだった。

 

 

(まずは街の人達を避難させなくちゃ)

 

 

 そう思ったネプギアは遠巻きにひよこ虫を見ている人達に近づいて、「これから討伐をしますので、安心して下さい。危ないのでみなさんは下がっていて下さい」と言う。

 

すると街の人々は「おお、ネプギア様だ」、「ネプギア様が退治して下さるんですか」と口々に喜びの声をあげる。

 

 

「はい、任せて下さい」

 

 

 ネプギアは人々を安心させるように力強くそう言うと、ひよこ虫に向かって行く。

 

同時に人々がネプギアに対して道を空けていく。

 

 

 こうやってネプギアが緊急のモンスター退治をするのはこれが初めてではない。

 

前述したが、神次元から帰って来たG.C.2012より、今まで姉にべっとりだったネプギアはクエストに励むようになり、今日のようにこまめにギルドに足を運んでいる。

 

その為、このような事態には何度も遭遇しており、その度に街の人々もネプギアがモンスターを退治する姿を見ており、彼女の知名度も上がっている。

 

こうやって人々が素直に道を開けるのも彼女に対する信頼の証だろう。

 

 

 ネプギアは人垣を抜けると、プラエの手を離して、「プラエちゃんはここで待っててね」と諭すように言う。

 

プラエは素直に頷いて、「うん」と言う。

 

 

 ネプギアは数歩歩いて、人垣とひよこ虫との間に立つ。

 

街の人達はネプギアの雄姿が見たいようで帰る者はいないようだ

 

 

 ネプギアは、右手を前に出して人差し指を立てる。

 

すると人差し指が白く光り、同時にネプギアはその光を使って宙に模様を描き始める。

 

その模様は十センチ程の円の中に五芒星がある、【魔法陣】である。

 

ペンネルの時にも説明したが、魔法陣は魔法を使う為の触媒であり、今ネプギアは魔法を使おうとしているのだ。

 

 

「来て、ネプギアンダム」

 

 

 ネプギアがそう言うと、魔法陣が光り輝きその中から何かが盛り上がるように出て来る。

 

魔法陣から出て来たのは、先程プラネタワーにいたネプギアンダムであった。ネプギアンダムは地面に着地すると、「タダイマサンジョウシマシタ」とネプギアに応える。

 

ネプギアンダムはロボットであると同時に召喚獣でもあるので、ネプギアの召喚魔法に応じて現れたのだ。

 

 

「今からモンスター退治をするから、何かあった時は街の人達を避難させてあげて」

 

 

 ネプギアがそう言うと、ネプギアンダムは首を九十度動かして人垣を見る。

 

 

「ニンムリョウカイ」

 

 

 ネプギアンダムは角を光らせながら応答すると、人垣の方に向かって歩いて行く。

 

ネプギアンダムは街の人々の前で足を止めると、両手を大きく開いて大の字になり、「キケンデスカラ、ワタシヨリマエニデナイデクダサイ」と人々に呼びかける。

 

 

「ネプギアンダムだー!」

 

「ネプギアンダムー!」

 

 

 同時に人垣から、子供達の高い声が聞こえてくる。

 

手を振る子供たちに対して、手を振り返すネプギアンダム。

 

 

 ネプギアは慎重な性格で、どんな些細なモンスター退治でも一般人が居る際はネプギアンダムに彼等を守らせている。

 

それが幸いしてかネプギアの知名度と同時にネプギアンダムの知名度も上がり、プラモデルや超合金の売り上げに貢献している。

 

見た目はアレだが、ネプギアンダムはネプギアと同じく穏やかで友好的な性格をしているので子供は勿論、保護者達にもウケが良い。

 

デザインがシンプルなので、子供でも簡単に描けて、おもちゃも複雑な部分が無いので安価で頑丈なものが作れるからだ。

 

 

 

 ネプギアンダムが人々に呼びかけたのを確認したネプギアは、更にひよこ虫に近づき、その距離は五メートル程に縮まる。

 

ひよこ虫も遠巻きに見ていた人々に気付いており、その中から近づいてくるネプギアに対して、「ぴー!」と威嚇の咆哮を上げる。

 

やや迫力に欠けるが叫びだが戦意は十分のようで逃げるような気配はないようだ。

 

 

(逃げてくれれば、傷つけずに済んだんだけど……)

 

 

 ネプギアは心の中でそうつぶやく。

 

心優しいネプギアは相手がモンスターといえども傷つけることをためらってしまう。

 

 

(でも、みんなを守る為に頑張らないと)

 

 

 ネプギアはそう思い自分を奮い立たせる。

 

同時にネプギアの右手に金属で出来た剣の柄が現れる。

 

それは彼女の着ているセーラー服型のワンピース【セーラーワンピ】によく似た色合いで、グリップの先に付いている円盤のような部分にはネプギアの【N】と書かれていた。

 

ネプギアはその剣のグリップをしっかり握ると、円盤の部分から一メートルほどのピンク色の光の刀身が現れる。

 

これがネプギアの武器である【ビームソード】である。

 

 

 プラネテューヌの最新技術を使った光の剣で、金属の剣より軽い上に切れ味も抜群なのである。

 

一瞬で手に現れたのは、倉庫サービスアプリを利用して取り出したものだが、今まで使っていたポケットではなく【ポーチ】と呼ばれる携帯型圧縮空間倉庫サービスを使用している。

 

ポーチはブレインマシンインタフェースで操作する。

 

その為、Nギアなどの携帯端末から手動で操作するポケットと違い、所有者が思考するだけで瞬時にアイテムを呼び出すことができる。

 

とっさの事態に対応できるように武器などの戦闘で使う道具などはこのサービスを利用する。

 

しかし、ゲートネットワークがローカルなので、ポケットのような出し入れの制限も無いが容量が少ない。

 

 

 ポーチの携帯倉庫のユニットは装飾品の一部として使用されている。

 

ネプギアの場合は【ヴァイオレットリング】という名前のイストワールからプレゼントされたシンプルなスミレ色をした腕輪の中に収められている。

 

遠隔操作も可能であり、ユニット本体から多少離れていても武器等を呼び出すことが出来る。

 

尚、ゲイムギョウ界では腕輪などの装飾品が防具として機能し、防御力などが上昇するので、物々しい鎧などを装備する必要がない。

 

 

「さあ、行きますよ」

 

 

ネプギアはそう言うとビームソードを下段に構える。

 

ひよこ虫は地を這うように動くモンスターなので、攻撃するには下段の構えが有効なのだ。

 

 

 ひよこ虫はそれに合わせて、「ぴー!」と雄叫びを上げると左右にある四本ずつ計八本の足を動かして地面を走りネプギアに向かって来る。

 

走ってきたひよこ虫が五メートルの距離を埋め正面から体当たりでネプギアに飛び掛かる。

 

 

 ネプギアはそれを左手でガードして、「くっ!」と受け止めると、ネプギアのすぐ横に【30】という数字が現れる。

 

同時に緑色のバーも現れ、それが一割ほど赤くなる。

 

 

 この緑色のバーは【HPゲージ】と呼ばれるゲイムギョウ界の生き物の生命力である。

 

ゲイムギョウ界では生命力が【HP(ヒットポイント)】と呼ばれるもので数字化されており、攻撃を受けると直接傷は負わないものの【ダメージ】という形でHPが減少するのだ。

 

今のは、ひよこ虫の攻撃をネプギアが受けて30のダメージを受けたことになる。

 

 

 HPゲージはHPをゲージ化したもので、最大HPが300あるネプギアが30ダメージを受けたので一割赤くなったのだ。

 

ゲージの色は、最初は緑色だが、HPの減少に合わせて緑から黄色、黄色から赤と変色していく。

 

ゲージがすべて赤くなるとHPが0となり戦闘不能になって、助けてくれる味方がいない場合はそのまま消滅して死亡してしまう。

 

または戦闘不能の状態で、頭を吹き飛ばされたり心臓を貫かれるなどの致命的損傷を受けた際にも死亡してしまう。

 

逆を言うとHPがある戦闘不能状態でなければ銃で撃たれても剣で切られても即死することはない。

 

 

「やりますね、今度はこっちの番です」

 

 

 ネプギアは下段に構えたビームソードで、体当たりから着地したばかりのひよこ虫を素早く薙ぎ払う。

 

ひよこ虫が、「ぴぎゃっ」と悲鳴を上げると同時に120とダメージが現れ、ひよこ虫のHPゲージが三割減っていく。

 

 

「ぴー!」

 

 

 再びひよこ虫が雄叫びを上げてネプギアに攻撃しようとする。

 

 

「……っ!」

 

 

 ネプギアは咄嗟に左手を上げて先ほどと同じくガード態勢に入る。

 

 

「ぴいいいーーー!」

 

 

 しかし、ひよこ虫は八本の足を巧みに動かしてネプギアの右側に回り込む。

 

 

「しまった!」

 

 

 驚きの声を上げるネプギア。

 

ひよこ虫は右側面に回り込むことで、ガードをさせず、更に側面からの攻撃によって攻撃の威力と命中率を上げようというのだ。

 

側面や背後など優位な場所から攻撃することは戦闘の初歩とは言え、ひよこ虫のような低レベルなモンスターがこのような戦法を使ってきたことに驚いようだ。

 

 

「ぴーーーーーー!」

 

 

 ひよこ虫はネプギアの驚きように、勝ち誇ったように雄叫びを上げながら飛び掛かる。

 

 

「ごめんなさい! フェイントなんです!」

 

 

 ネプギアはそう叫ぶと同時にガードを解いて左側にサイドステップする。

 

 

「ぴっ!?」

 

 

 ネプギアの思いがけない回避運動に、ひよこ虫の体当たりが空振りをすると、【avoid】と表示される。

 

これは【アボイド】と読み回避を意味する。見ての通り、ネプギアがひよこ虫の攻撃を避けたので、この表示が出たのだ。

 

 いくらネプギアが真面目で素直でウソのつけない性格でも、超次元と神次元で合わせて二十年以上の戦闘経験のある彼女は戦いにおいて、フェイントやブラフが必要なのは理解している。

 

また自分が常に正攻法で勝てると思っているほどの自信家でもないので、フェイントなどもスキルとしてしっかりと身に着けているのだ。

 

 

「ていっ!」

 

 

 体当たりを避けられて、無防備で宙に浮いているひよこ虫に対してネプギアはビームソードで素早い突きを繰り出す。

 

 

「ぴぃぃぃぃぃ!?」

 

 

 渾身の攻撃を避けられて完全に死に体になっているひよこ虫の正面にビームソードが突き刺さる。

 

ひよこ虫に214のダメージが当たると同時に、【counter】と表示される。

 

これは【カウンター】と読み、カウンターアタックを意味する。相手の攻撃モーション中に攻撃を当てることで発生し通常より高いダメージを出すことが出来る。

 

ひよこ虫のHPゲージが一気に減少し赤くなる。

 

 

「とどめです!」

 

 

 ネプギアがビームソードを引き抜くと同時に体を捻る。

 

 

「たああああっ!」

 

 

 左足を軸にしたネプギアの右回し蹴りが、ひよこ虫に襲い掛かる。

 

刺突攻撃は速度が速く、大きな隙を晒したひよこ虫に対して更に追撃が可能なのだ。

 

 

「ぷぃぃぃぃ~!!!」

 

 

 未だ空中で無防備を晒しているひよこ虫に避けられる筈もなく、ひよこ虫は158のダメージを受けるとHPゲージがゼロになる。

 

更に回し蹴りの勢いで、サッカーボールのように大きく放物線上に吹き飛ばされるひよこ虫。

 

 

(勝てた。先制攻撃を受けちゃったけど、その後に回避からのカウンターも入れたからシェアも伸びるはず)

 

 

 ネプギアが軽く今の戦闘を振り返る。

 

先述した新作期でネプギアはレベルも1になっているが、新作期の度に真面目に自己を磨いてきたネプギアはレベル1とは言え初期パラメータが高い。

 

その為、この程度のモンスターなら難なく撃退できる。

 

 

 しかし、女神たるもの、ただ勝つだけではなく華麗に勝たねばならない。

 

華麗に勝つことにより、強さと美しさを魅せつけ信者の尊敬を集めシェアを上げることが出来るのだ。

 

このようなギャラリーが多い戦闘はまたとないチャンスだろう。

 

だが、ネプギアはこれ以上何かをするつもりはなく、危なげなく終われたことに感謝していた。

 

それに何かをしようにも、吹き飛んでいるひよこ虫には何もできない筈だった。

 



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#10 オーバーキル

「ネプギアお姉さん! まだ行けるよ!」

 

 

 後ろからプラエがネプギアに向けて叫ぶ。

 

同時にネプギアは不思議な感覚に襲われる。

 

吹き飛んでいるひよこ虫が非常に遅く見えるのだ。

 

 

(追いつける!)

 

 

 ネプギアは一瞬でそう判断する。

 

 

「オーバーキル!」

 

 

 プラエが続けて叫ぶ。

 

 

「シルフィードフェザー!」

 

 

 プラエに応えるようにネプギアが叫ぶ。

 

それと同時に彼女の両足のくるぶしに小さな白い羽が現れる。

 

続いてネプギアは一瞬で思考してビームソードをポーチにしまうと駆け出す。

 

素早く飛び出すその姿は野生の豹のようだった。走る速度も一瞬で時速60km以上に到達し、まさに豹だ。

 

ちなみに我々の世界のオリンピック100メートルの金メダリストのトップスピードの時速が45kmだと言うのだから、その速さが異常なのが分かるだろう。

 

【シルフィードフェザー】は風属性の補助魔法。

 

素早さを上げる魔法で、使うことで今のネプギアのような高速ダッシュが一時的に可能になる。

 

 

「「おおっ!!」」 

 

 

 ギャラリーが、吹き飛んでいくひよこ虫にグングンと追いついていくネプギアに驚きの声をあげる。

 

 

「たああっ!」

 

 

 ネプギアが落下を始めているひよこ虫に飛び掛かる。

 

 

「ごめんなさい! オーバーキルさせてもらいます!」

 

 

 ひよこ虫に覆いかぶさるように跳躍したネプギアの右パンチがひよこ虫に炸裂する。

 

ひよこ虫は103ダメージ受けると地面に叩きつけられてバウンドをする。

 

着地したネプギアは、「アッパー!」と言いながら左手でバウンドしたひよこ虫をアッパーパンチですくい上げ、84ダメージを与える。

 

続けて小さくしゃがみ込んでタメを作ると、右手で「りゅーしょーけーーーん!」と大きくカエル跳びアッパーを食らわせる。

 

ひよこ虫は198ダメージを受けながら、今度は大きく上空に吹き飛ばされる。

 

 

「「「おおおおおおーーーーー!!!」」」

 

 

 後方のギャラリーが沸き上がる。

 

 

「あれは格ゲーの伝統的連続技【ジャンプ強パンチからのアッパー龍昇拳】!」

 

 

 ギャラリーから声が上がる。

 

格闘ゲームにおいて、【ジャンプ攻撃→着地後の攻撃→前の攻撃をキャンセルした発生の速い必殺技】、は連続攻撃のセオリーである。

 

その中でも龍昇拳は格闘ゲームの黎明期から続く、【ストリームバトラー2】の主人公の必殺技でギャラリーの言う通り、アッパー龍昇拳は伝統的な連続技名になる。

 

 

 ギャラリーが沸き立つ中、ネプギアはその歓声には応えず次の行動に移っていた。

 

 

「ペンネル射出! グラビティカット! エアリアルレイヴ始動!!」

 

 

 そう叫ぶと同時にネプギアはジャンプして、龍昇拳で上空に吹き飛んだひよこ虫を更に追う。

 

その跳躍力は常人を遥かに超えており、十メートル以上飛んでいたひよこ虫にあっという間に追いつく。

 

 

「ビームソード」

 

 

 ひよこ虫に追いついたネプギアがそう言うと再びネプギアの右手にビームソードが現れる。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ネプギアが空中のひよこ虫をビームソードで切りつける。

 

続けて、「えいっ!」と左手で正拳突きを当てると、「とおっ!」と次に右足で蹴りを当てる。

 

 

「おおっ! なんて基本に忠実なチェーンコンボ! 安定したエアリアルレイヴだぜ」

 

 

 ギャラリーの一人が熱い声援をネプギアに送る。

 

チェーンコンボとは弱攻撃→中攻撃→強攻撃→‥‥のように速くて軽い攻撃から強くて重い攻撃に繋げて連続して技を出すこと。

 

エアリアルレイヴとは、今のひよこ虫のように上空に打ち上げた相手を追撃して連続攻撃をしていくことだ。

 

 

「すごいわ。さっきのジャンプも今のエアリアルレイヴも重力魔法を使ってて、普通のエアリアルレイヴより速くて高くて長い」

 

 

 別のギャラリーが声を出す。

 

先程のネプギアの【グラビティカット】というのは、先日にイストワールが宙に浮いていたように魔法で重力を調整したもの。

 

それにより、いつもより高いジャンプが出来た上に、重力の調整範囲に巻き込んだひよこ虫を空中に浮遊させて、より長くエアリアルレイヴをしていられるのだ。

 

 

「それだけじゃない。ペンネルがあそこで魔法陣を描いてるぞ。きっと魔法で連続攻撃のトドメを決めるんだ」

 

 

 更に別のギャラリーが、ネプギアがエアリアルレイヴをしている最中の真下を指さす。

 

そこには複数のペンネルが地面に直径五メートル程の五芒星の魔法陣と、その中に細かい模様を描いていた。

 

 

「すごいな。斬撃、刺突、打撃の他にも補助魔法。更にエアリアルレイヴ中に魔法陣を用いた攻撃魔法の準備。こんなマルチタスクな戦いが出来るのはネプギア様ぐらいなものだ」

 

 

 ギャラリー達がネプギアを褒め称えるのを、プラエは嬉しそうに眺めていた。

 

ギャラリー達が沸き立っている間に、ネプギアは、「渦巻旋風脚!」と叫びながらエアリアルレイヴの最後の攻撃となる、左足を軸にバレリーナのように回転する連続の回し蹴りをひよこ虫に当てて叩き落とす。

 

ひよこ虫は157ダメージを受けながら、ペンネルの描いた魔法陣の真ん中に落ちていく。

 

 

「これで終わりです!」

 

 

 重力魔法の影響で、ふわふわとゆっくり自由落下するネプギアが叫ぶ。

 

続けて、左手を前に突き出しながら、「グラングランクエクエイクノームル……」と呪文を唱えると、「大地に眠る力よ、我が呼びかけに応え敵を貫け! アースグレイヴ!!」と叫ぶ。

 

すると魔法陣の描かれた地面が茶色に発光し隆起して槍のようになると、その尖端がひよこ虫に襲いかかかる。

 

 

ザクッ!!!

 

 

 豪快に突き刺さる音と共に大地の槍がひよこ虫を貫く。

 

【アースグレイヴ】は地属性の攻撃魔法。巨大な土の槍で敵を貫く。

 

本来レベル1、しかも本職が魔法使いでもないネプギアが使える魔法ではないのだが、魔法陣を触媒として発動させたのだ。

 

アースグレイヴで、ひよこ虫に489のダメージが当たると、【15HIT COMBO TOTAL 1587】と表示される。

 

これは15回の連続攻撃で合計1587のダメージを与えたことを意味する。

 

コンボ(COMBO)とは、コンビネーション(COMBINATION)の略語で、集合体、組み合わせなどの意味を持つ英語。

 

ゲイムギョウ界において、一繋がりの連続攻撃など、まとまった成功を連続させることをコンボと呼ぶ。

 

今回は、ネプギアのカウンター刺突からアースグレイヴまでがコンボとして繋がったのだ。

 

続けて、【OVER KILL × 3】と表示が現れる。

 

これは相手のHPをゼロにしてから、更に相手の最大HPの三倍のダメージを与えたことになる。

 

最大HPが400と予測されるひよこ虫を倒した後に、消滅するまでに1200以上のダメージを与えたことになる。

 

プラエが叫んだ、オーバーキルとはこの意味で、プラエの叫びにネプギアが応えたのだ。

 

 

「ぴー」

 

 

 ひよこ虫が断末魔を上げて消滅する。

 

戦闘不能から助けてくれる味方がいないひよこ虫は戦闘不能になった時点で死亡してしまったのだ。

 

 

「勝ちました!」

 

 

 着地したネプギアが嬉しそうに右手でVサインをすると、ギャラリーから、「わああああああああ!」と大歓声が上がる。

 

 

「すごいわ! 新作期でレベルが低いはずなのにオーバーキルなんて、さすがはネプギア様ね」

 

 

 ギャラリーの一人がそう言うと、「華麗なエアリアルレイヴだったなー」、「単に力技じゃなくて、補助魔法や攻撃魔法を使いこなしてるもの素晴らしいね」と他のギャラリーも沸き立つ。

 

そんな中、ネプギアはひよこ虫が消えた場所を見ると、少しだけ心の中で悲しい顔をした。

 

 

(ごめんね。オーバーキルなんてひどいことしちゃって)

 

 

 ネプギアは心の中で呟く。心優しいネプギアはあまりオーバーキルを好まない。

 

確かにオーバーキルは死体蹴りのようなもので、その内容によってはシェアが落ちることがある。

 

例えば延々と小技でいたぶるようにオーバーキルしたり、同じパターンでハメてオーバーキルすると人々に美しくないと思われ落ちる可能性が高い。

 

あくまで、女神の全力全開を出し切った高速の連続攻撃や渾身の一撃で、美しく華麗にオーバーキルさせなくてはならない。

 

ちなみにHPゼロから戦闘不能と判断されるまでがオーバーキルの受付時間で、その間のダメージは身体の欠損や即死には繋がらない。

 

 

(でも、あなたの死は決して無駄にはしません)

 

 

 沸き立つギャラリーを見ての通り、華麗にオーバーキルを決めることにより、ネプギアは信者の尊敬を集め大きくシェアを上げることに成功したのだ。

 

更にボスモンスターや特定のモンスターをオーバーキルで倒すと、その場所は女神の加護に護られしばらくはモンスターが近づけなくなる。

 

今回のひよこ虫はその対象であったようで、ネプギアはこの場所が自分の加護で護られたことを感じていた。

 

これによって、しばらくはプラネテューヌの街にはモンスターは近づかないだろう。

 

 

(これでしばらくはプラネテューヌの人達も安全だし、無用な殺生もせずに済むよね)

 

 

 ネプギアはそう思いながら、ギャラリーの待つプラネテューヌの街に歩き出す。 

 

同時にネプギアの右手からビームソードが消滅する。

 

戦闘が終了したのでネプギアがポーチの中に収納したのだ。

 

 

「ネプギア様お疲れ様でした!」

 

「さすがはネプギア様だ!」

 

 

 人々の近くまで戻ってきたネプギアに対して、人々が口々に感謝の言葉を述べながら駆け寄って行く。

 

モンスターは倒したので、ネプギアンダムも止めるような野暮な真似はしないようだ。

 

 

「ネプギア様お怪我は大丈夫ですか?」

 

 

 人々からネプギアを心配する声があがったので、「これぐらい大丈夫ですよ」とネプギアが答えると、「ヒール」と呟く。

 

するとネプギアの周りに緑色の光の粒子が現れて、一割ほど赤くなって減っていたネプギアのHPゲージが全て緑色になる。

 

【ヒール】とは傷を癒す魔法で、この魔法を唱えると減少したHPを回復することができる。

 

 

「おお、HPが回復したぞ」

 

 

「うんうん、ネプギア様は攻撃と防御のバランスがよいですね」

 

 

 人々から自分でHPを回復したネプギアに対して周囲から感心の声が上がる。

 

 

 ネプギアがヒールを唱えた後に今度は青いバーが現れる。

 

そのバーは既に四割ほど赤くなっていたが、今のヒールで更に六割まで赤くなる。

 

これは【MPゲージ】と呼ばれるゲイムギョウ界で魔法を使う源である【MP(マジックポイント)】を表すものである。

 

HP同様にMPも数字化されており、MPを消耗する魔法を使うたびに減少していく。

 

四割ほど赤かったのは、先程シルフィードフェザーやグラビティカットにアースグレイヴを使用したからだ。

 

 

「ネプギア様、龍昇拳や渦巻旋風脚なんていつ覚えたんですか?」

 

 

 人々から質問が出ると、「ゴールドサァドのシーシャさんから教わったんです。エアリアルレイヴも同じです。それを自分流にアレンジしました」とネプギアが答える。

 

すると人々は再び、わっと沸き、「あの勇者ゴールドサァドからか!」、「教わってすぐものにしてしまうなんて、さすがはネプギア様だ」と感心の声が次々と上がる。

 

ゴールドサァドとは四年前の天王星うずめの事件で関わり、最初はネプギア達の敵であったが後に心強い味方になった四人組の女性だ。

 

今は女神を助けた勇者として慕われている。

 

シーシャはその中でもリーダー格の人物で格闘技や様々な武器を扱うことに長けている。

 

 

「魔法もかなり強力でしたけど、これはラム様から教わったんですか?」

 

 

 人々が沸き立つ間にも別の質問が出る。

 

ネプギアは立て続けの質問にも嫌な顔一つせずに、「はい、ラムちゃんから教わりました」とにこやかに答える。

 

更に、「四女神オンラインで、魔法使いをしてる内に魔法にものめり込んじゃいまして」と続ける。

 

 

 彼等の言う通り、ラムは非常に強力な攻撃魔法の使い手だ。ちなみにロムは回復魔法が得意。

 

又、ネプギアの言う【四女神オンライン】とはゲイムギョウ界で大人気のインターネットを使用したMMORPGだ。

 

MMORPGとは【Massively Multiplayer Online Role-Playing Game (マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)】の略称。

 

大規模多人数同時参加型オンラインRPGで一人一人が色々な職業を選んで、他の人達と協力してゲームを進めるものである。

 

ネプギアはこれを女神候補生の友人や姉達守護女神と一緒にプレイしている。

 

その中で彼女は魔法使いを選んでプレイする内に、魔法への興味や理解を深め、今のように実際の戦闘でも使用するに至っている。

 

 

 人々に囲まれて質問に答えるネプギア。

 

その姿を少し離れた場所でプラエが、つまらなそうにウサギの人形の耳をいじくりながら眺めていた。

 

明らかに拗ねている表情だ。彼女もネプギアに駆け寄ろうと思ったが出遅れてしまったのだ。

 

 

 ネプギアの視界にそんなプラエの姿が映ると、「あっ……」と声を上げる。

 

声を上げたネプギアに人々が不思議そうな顔をすると、「ごめんなさい。私、そろそろ行かないと」とネプギアが人々に言う。

 

その言葉に、人々もネプギアのあまりの活躍に熱狂し彼女を引き留めてしまったことに気付く。

 

人々は、「お引き留めして申し訳ありません」などと口々に謝ると、ネプギアに対して道を開ける。

 

 

 ネプギアはその道を小走りに通るとプラエの元に行き、「待たせちゃって、ごめんね!」と真剣に謝る。

 

プラエはその姿に感動をしたのか、一転して花が咲いたような笑顔を浮かべ、「ネプギアお姉さん、すごくカッコよかった!!」と目を輝かせながら言う。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアはニッコリと微笑む。

 

しかし、すぐに真面目な顔に戻ると、「でも、私なんてまだまだだよ。お姉ちゃんなら、きっとノーダメージで倒してたよ」と謙遜の言葉を続ける。

 

ネプギアは今度はネプギアンダムの方を向き、「ネプギアンダムご苦労様。戻っていいよ」と言うと、先程と同じように右手の人差し指で光の魔法陣を描く。

 

すると、ネプギアンダムが魔法陣に吸い込まれるように消えていく。

 

 

「それじゃあ、みなさん。私はこれで失礼します」

 

 

 ネプギアは人々にそう言うと、左手でプラエの右手を握り、プラエと二人で来た道を歩いて戻って行く。

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

「ネプギア様のおかげで安心して暮らせます」

 

 

 ネプギアは背中に人々の感謝の言葉を受けながら、人垣から離れて行く。

 



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#11 謙虚な女神

 ひよこ虫を退治してクエストを達成したネプギアはプラエの手を引いてギルドへ向かっていた。

 

 

「すごーい。ネプギアお姉さんは本当に女神様なんだね。強いし、いっぱいの人に好かれてる」

 

 

 暫くしてプラエが興奮しながら言う。

 

しかし、ネプギアは、「みんなが私を信仰してくれるから、みんなを守る力が貰えるんだよ。わたし一人だけが凄いんじゃないの」と落ち着いて声で答える。

 

ネプギアは子供の世話をしたことがあるので、子供は基本的に強い人が派手で自信満々の態度を好むのは知ってはいるが、彼女の謙虚さは子供の前でも失われない。

 

しかし、プラエはネプギアの言葉に少し困ったような顔をする。

 

 

(ちょっと失敗しちゃったかな……せっかく褒めてくれたのに)

 

 

 ネプギアは内心でそう思う。

 

見せかけだけでも、そういう態度をとった方が人々も安心するし、子供が喜ぶとは分かっていても、真面目過ぎてそれが出来ないのだ。

 

彼女自身もそういう柔軟さが無い自分の性格を少し自己嫌悪していたりする。

 

 

「ネプギアお姉さんはこんなに凄いのに、何で自慢しないの?」

 

 

 プラエが心底不思議そうな顔で小首を傾げる。

 

ネプギアの態度に不満があるようではなく、本当に不思議なようだ。

 

 

「うーん、そういう性格だからかな? あと、私って調子に乗るといい事ないから出来るだけ自重してるの」

 

 

 プラエがガッカリしてないことに少し安心したネプギアは自分なりの考え方を彼女に伝える。

 

プラエは相変わらず不思議そうな顔で、「調子に乗るといいことないの?」と尋ねる。

 

 

「私はね。お姉ちゃん達はその勢いで何でもできちゃうけど、私はダメみたい」

 

 

 ネプギアが続けて質問に答える。

 

彼女の姉であるネプテューヌを始めとする守護女神は強気でテンションが高く、勢いに任せて無理難題もこなしてしまうことが多い。

 

対してネプギアは純粋さからくる感情的な面はあるものの、基本的には冷静な彼女は無理難題に挑む前に、どうしても理知的に分析をして慎重な行動を取ってしまう。

 

 

「どんなふうにダメなの?」

 

 

 プラエが更に質問を続ける。

 

ネプギアは眉を八の字にして苦笑いをして困ってしまう。

 

 

(うーん……これを話すのは少し恥ずかしいんだけど)

 

 

 ネプギアは心の中で呟く。

 

説明するには、自分の失敗談を話すことになるので、少々恥ずかしいのである。

 

 

(でも、プラエちゃんも自分の秘密を話してくれたんだし……)

 

 

 ネプギアはそう思いながら、ちらりと左腕の時計見る。

 

時計は十一時五分を示していた。

 

 

(お昼にはまだ時間はあるし、ギルドで調べてもらってるプロテノールさんの件もまだ時間かかるだろうから、少しお話しする時間はあるかな?)

 

 

 そう判断したネプギアは、「少し長くなるけどいいかな?」とプラエに問いかける。

 

プラエは素直に頷くと、「うん、ネプギアお姉さんのお話聞きたい」と即答する。

 

 

「それじゃあ、あっちの公園でお話しよっか?」

 

 

 ネプギアが今歩いてる方向とは別の方向を指差すと、プラエが、「うん」と頷く。

 

 

 

****

 

 

 

 

 ネプギアとプラエが向かった先はプラネテューヌの中央公園。

 

綺麗に整備された芝生と木が並び、爽やかな草木の匂いがする。

 

中央には大きな噴水があるプラネテューヌ市民の憩いの場だ。

 

 

 お昼前ということもあり人はまばらで、ネプギアは噴水の前の日当たりの良いベンチを指差すと、「あそこでお話しよっか?」と言う。

 

プラエが、「いいよ」と頷くと二人はベンチに移動する。

 

 

 ベンチに着いたネプギアは、「ちょっと待ってね」と言うとセーラーワンピのポケットから白いハンカチを取り出す。

 

ネプギアはハンカチでベンチの汚れを払うと、そのハンカチをベンチに敷く。

 

 

「ここに座って」

 

 

 ネプギアがハンカチを敷いた場所にプラエを座らせると、プラエはニコニコと微笑む。

 

高級そうな服が汚れないようにとのネプギアの些細な気遣いがプラエには嬉しかったようだ。

 

ネプギアはプラエの隣に座ると、「今日はあったかくて気持ちいいね」とプラエに話しかける。

 

プラエは空を見上げながら、「うん、あったかい」と目を細める。

 

 

「プラエちゃんは犯罪組織マジェコンヌって知ってる?」

 

 

 ネプギアがプラエに質問をすると、プラエは【ぷるぷる】と首を左右に振り、「知らない」と答える。

 

 

「簡単に言うと、人の物を盗む悪い人達なの。今から十年前その人達のせいでゲイムギョウ界はめちゃくちゃにされちゃったの」

 

 

 ネプギアが簡単に犯罪組織の説明をすると、プラエは興味深そうにそれを聞いている。

 

ネプギアはプラエが話を聞いているのを見ながら、「私はその犯罪組織に負けて捕まったお姉ちゃん達を助ける為に友達と協力して旅をしてたんだ」と話を続ける。

 

 

「色々あったけど、旅は順調に進んで、私も少し自信が付いて来た時に、調子に乗って失敗しちゃったの」

 

 

 ネプギアは少し恥ずかしそうに眉を八の字にする。

 

 

「リーンボックスって国で、教祖に変装した犯罪組織の人に私が凄く優秀で噂になってるっておだてられたら、その気になって一人で強いモンスターに戦いを挑んじゃったんだ」

 

 

 ネプギアが少し自嘲気味に話を続ける。

 

プラエは少し意外そうな顔をして、「それでどうなったの?」と質問する。

 

ネプギアは相変わらず恥ずかしそうな顔で、「全然敵わなくて、友達に助けてもらったの」と答えると苦笑いする。

 

 

「ネプギアお姉さんがそんなことするなんて、意外」

 

 

 プラエはポカンとした顔でネプギアを見る。

 

ネプギアは照れくさそうに、「私って、よくしっかりしてるって言われるけど、全然そんなことなくって、周りの人に助けてもらったり、いっぱい失敗したりしてるんだよ」と答える。

 

 

「ネプギアお姉さんがいっぱい失敗するの?」

 

 

 プラエはまたもポカンとした顔でネプギアを見る。

 

出会ってから優しくて頼りがいがある上に女神であった女性が失敗ばかりというのが信じられないようだ。

 

 

「私、機械をいじるのが好きで色々作ったりするんだけど、それも成功より失敗の方が多いんだよ」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「何度も何度も失敗して、数えられないぐらいのトライアンドエラーを繰り返してようやく成功するの」と続ける。

 

そして恥ずかしそうに右手の人差し指で頬を掻くと、「女神なんて言われてるけど、私はほとんど普通の女の子と変わらなくて、お姉ちゃん達みたいなスーパーマンじゃないの」と言う。

 

 

「ごめんね。少しガッカリさせちゃったかな?」

 

 

 ネプギアが申し訳なさそうに謝ると、プラエは激しく首を左右に振って、「そんなことない」と即答する。

 

更にプラエは、「もっと、ネプギアお姉さんの話聞きたい」と願い出る。

 

 

「でも、そろそろお昼の時間……」

 

 

 ネプギアがそう言って左腕の腕時計を見ると、時計は十一時十五分を示している。

 

ネプギアは不思議そうに首を傾げる。

 

彼女の感覚では先程時計を確認してから、三十分近くは経っているだろうと思ったのに、その三分の一しか過ぎていないのだ。

 

 

(おかしいな……そんなに急いで話したつもりはないのに……)

 

 

 ネプギアがそう思っていると、「時間ならまだあるよ」とプラエが言う。

 

しかし、その直後にプラエは、「こほっこほっ……」とせき込んでしまう。

 

 

「大丈夫!?」

 

 

 ネプギアはとっさに両手でプラエの両肩を持つ。

 

プラエはやや辛そうな顔をしているものの、「大丈夫だよ。お話して」と再びネプギアにお願いをする。

 

ネプギアは数秒考えた後に右手をプラエの額に当ててる。

 

 

「あっ……」

 

 

 プラエはそう呟いて恥ずかしそう頬を赤く染める。

 

ネプギアは少し安心したように、「お熱はないね」と言うと右手を引っ込めて、今度はポケットの中に入れると、あめ玉を一つ取り出す。

 

 

「のど飴だけど、舐める?」

 

 

 ネプギアがプラエに質問すると、プラエは返事の代わりに恥ずかしそうに小さく口を開ける。

 

ネプギアは少し戸惑うものの、プラエの可愛らしいお願いに【クスッ】と微笑むと、飴の包装を剥がして、右手であめ玉をプラエの口の中に入れる。

 

 

「おいしー」

 

 

 プラエが嬉しそうに飴を舐めると、「それじゃあ、もう少しお話しよっか」とネプギアが言う。

 

プラエは飴を舐めながら、「うん」と元気よく頷く。



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#12 罪と罰。そして誓い

 ネプギアはプラエとの話を続ける。

 

この先は、更に自分の未熟さを告白することになるので、あまり人に話すようなことではないが、自分に秘密を話してくれたプラエの気持ちに応える為に正直に話すことを決めていた。

 

 

「私達はお姉ちゃん達を助けて、そのあと犯罪組織も倒したんだけど、そこでまた私は調子に乗っちゃうの」

 

 

ネプギアが話を続けると、「今度はどんなふうに?」とプラエが質問をする。

 

 

「四つの国の守護女神様と私達四人の女神候補生、この八人の女神が揃えば何も怖くない。どんな困難でも乗り越えられるって」

 

 

 ネプギアがそう言うと、プラエは不思議そうな顔で、「それはどこがいけないの?」と質問をする。

 

先程のように一人で無謀な戦いをする訳でもないのに、どこが調子に乗ったのかが分からないようだ。

 

 

「犯罪組織を倒した後、お姉ちゃんは遊んでばかりで、他の女神様もよく遊びに来ていたんだ」

 

 

 ネプギアはその時のことを思い出しながら少し苦笑いをする。

 

楽しそうに遊んでいる姉達が微笑ましかったようだ。

 

 

「けど、私はそれでもみんなが居れば大丈夫だって楽観的に考えてて、みんなのお世話をするだけで注意も何もしなかったの」

 

 

 しかし、今度はその時のことを反省するかのように沈んだ声で言うと、「本当は国民のみんなの為にお仕事しなきゃいけないのに、女神失格だよ……」と肩を落とす。

 

プラエはそんなネプギアの落ち込んだ様子を見ながら黙って話を聞いている。

 

 

「そんな時、お姉ちゃんが行方不明になる事件が起きたの。急にお姉ちゃんが居なくなって、私はオロオロ慌てた挙句に落ち込んでばかり」

 

 

 ネプギアが気を取り直して話を続けると、「プラエも昔は姉様が戻って来なくて、泣いてばかりいたよ」とプラエがネプギアを励ますように言う。

 

ネプギアはプラエの励ましに、「ありがとう」と言うと、「でも、私の場合はそれだけじゃないの」と続ける。

 

 

「お姉ちゃんの居場所は分かったんだけど、そこは神次元って言う別の次元で、戻って来るにはたくさんのエネルギーで作った次元を行き来する道を使う必要があったの」

 

 

 ネプギアは話を続け、プラエも大人しく話を聞いている。

 

 

「その次元を行き来する道を作った時、私はお姉ちゃんに会いたい一心で取り乱しちゃって、誤って、私がその道を使って神次元に行っちゃったの」

 

 

 ネプギアは自己嫌悪して肩を落とすと、「それで道は何度も作れないから暫くお姉ちゃんと私は神次元に滞在することになっちゃったんだ」と続ける。

 

 

 ネプギアはそう言うと、「本当にダメな子だよね、私」と言ってがっくりと項垂れてしまう。

 

 

「う、うーんと、それでどうなったの?」

 

 

 プラエも上手いフォローが思いつかなかったようで、眉を八の字にして困った顔をしながら話を先に進めるよう促す。

 

 

「長い間、神次元で頑張ってシェアを溜めて、超次元に戻ることは出来たの」

 

 

 ネプギアはそう言うと、とても悲しそうな顔をし、「……でもね」と続けて一旦口を閉じてしまう。

 

プラエはネプギアの本当に悲しそうな顔に息を吞む。

 

ネプギアは一呼吸おくと、再び口を開く。

 

 

「私達が戻った時にはプラネテューヌの街は悪い人にボロボロに壊されていたの」

 

 

 ネプギアはそう言いながら俯いてしまう。

 

 

「その時になって私は自分の大きな過ちに気付いたの。女神でありながらお姉ちゃんに会いたい一心で、国とそこに住む人々を見捨ててしまったんだって」

 

 

 ネプギアは悲しい声で懺悔するかのように言った。

 

プラエはそれを黙って聞いており、ネプギアはそんなプラエの様子を少し気にしながらも、「……私が超次元に残って街を守っていればあんなことにはならなかったって……」と言う。

 

 

 ネプギアは悲しそうな顔で公園の噴水を眺めながら、「この公園もボロボロにされちゃったの……」と呟く。

 

更に、「店や家も壊されて……亡くなった人は居なかったって、いーすんさんは言ってたけど、怪我した人や怖い思いをした人もいっぱいいると思うの」と言う。

 

 

「神次元では少し辛い目に遭ったけど、それは国を見捨てた私に対する罰なんだって……罪の意識で眠れなかった日もあったよ」

 

 

 そう言ったネプギアの目は少し潤んでいて泣きそうだった。

 

プラエは何も声を掛けることが出来ず、ただネプギアの横顔を眺めるだけだった。

 

ネプギアはあまりプラエに心配を掛けないように、少し無理をして微笑む。

 

そして、「でも、後悔してるだけじゃ何も始まらないから、みんなを励ます為にお姉ちゃんとライブを開いたり、仕事に一生懸命励むようにしたの」と言う。

 

当時はネプギア自身も神次元で女神の仕事のやりがいを覚えたところなので、彼女としては仕事に励むことが一番の償いであった。

 

また余計なことを考えて落ち込むことを避ける為に何かに熱中するのは必要なことでもあった。

 

 

「今はプラネテューヌの街も綺麗に戻ったけど、あの時、私は誓ったの。二度と自惚れたり自分の甘えを優先するようなことはしないように、そして次こそみんなを護る。誰も傷つけさせないって」

 

 

 ネプギアは力強くそう言うと、「でも、このことがあったおかげで、あの時うずめさんを助けられたんだなって思うと、こんな私でも成長できるんだなって思えるんだ」と続ける。

 

プラエは不思議そうな顔で、「うずめさん?」と首を傾げる。

 

 

「あっ、ごめんね。うずめさんって言うのは零次元っていう、また別の次元の人なの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「色々な次元があるんだね」とプラエは興味深そうに頷く。

 

その様子を見たネプギアは、「今度、機会があったら別次元のことお話してあげるね」と言うと、「うん」とプラエは嬉しそうに頷く。

 

 

「少し前なんだけど、私とお姉ちゃんは今度は零次元って次元に迷い込んだの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギアお姉さんは事故に巻き込まれやすいの?」とプラエが首を傾げて質問する。

 

ネプギアはくすっ、と小さく笑うと、「そうかも。でも、巻き込まれ体質なのはお姉ちゃんの方かな?」と答える。

 

 

「それで、色々あって超次元に帰れることになったんだけど、その時、零次元でお世話になった、うずめさんっていう人がピンチになっちゃったの」

 

 

 ネプギアが話を続けると、「それをネプギアお姉さんが助けたの?」とプラエが言うと、「うん」とネプギアが頷く。

 

 

「その時お姉ちゃんに甘えたい、お姉ちゃんと一緒に超次元に帰りたい。……って気持ちを抑えることが出来たんだ」

 

 

 ネプギアはその時の自分を褒めるように力強く言うと、「それで気が付くとお姉ちゃんの隣から離れて、うずめさんを助けに走ってたの」と続ける

 

 

「昔の私だったらお姉ちゃんのことで頭がいっぱいで出来なかったと思う」

 

 

 そう言うネプギアの姿に、「ネプギアお姉さんはいっぱい失敗するけど、その分成長するんだね」とプラエが納得したように頷く。

 

 

「うん、私は平凡な子だから、そうしないと成長できないの」

 

 

 ネプギアは小さく頷いて苦笑いする。

 

 

「それに、まだまだ治さなきゃいけないところがいっぱい。その後にうずめさんに化けた悪い人がお姉ちゃん達をさらった時は、取り乱して友達に色々とフォローしてもらったりしたし」

 

 

 更にそう続けると、「そういうことだから、私はあんまり自慢とかして調子に乗らないようにしているの」と話を締めくくる。

 

 

「うん、わかった」

 

 

 プラエが頷くと、「ごめんね。頼りになる女神じゃなくて」とネプギアが申し訳なさそうに言う。

 

しかし、プラエは激しく首を左右に振って、「プラエ、ネプギアお姉さんの事もっと好きになっちゃった」と微笑む。

 

 

「そうなの?」

 

 

 ネプギアは不思議そうに首を傾げながら、時間が気になったので左腕の時計を確認すると、時計は十一時三十五分を示していた。

 

 

(やっぱり時間が流れるのが少し遅い気がする)

 

 

 ネプギアはそう思いながらも、「そろそろギルドに戻ってプロテノールさんの情報が無かったか聞いてみようか」と言って立ち上がりながら、プラエに向けて左手を差し出す。

 

 

「うん」

 

 

 プラエは頷いて右手でネプギアの左手を取って立ち上がろうとするが、「あっ……」とバランスを崩してしまう。

 

ネプギアがとっさにプラエを支えたので転倒はしなかったが、ネプギアがプラエの顔を見ると少し苦しそうに見える。

 

 

「プラエちゃん、大丈夫? 疲れちゃった」

 

 

 ネプギアが心配そうにプラエに尋ねると、「……うん、そうかも」とプラエが呟く。

 

ネプギアはベンチのハンカチをポケットにしまうと、プラエの前にしゃがみ込んで、「じゃあ、おんぶしてあげるから、ギルドまで頑張れる?」と尋ねる。

 

プラエが、「いいの?」と質問をすると、「もちろんだよ。そしたら柔らかいソファーで休も」とネプギアが頷きながら言う。

 

 

「えへへ……」

 

 

 プラエは嬉しそうにネプギアにおぶさると、ネプギアはプラエをおぶって立ち上がる。 

 

プラエはネプギアの首にしっかり両手を回すと、ネプギアの後ろ髪に顔をうずめて、「ネプギアお姉さん、いい匂いがする」と頬ずりをする。

 

 

「うふふ、くすぐったいよ」

 

 

 ネプギアは楽しそうに笑い、プラエは頬ずりを続ける。

 

 

(何だか、神次元で子育てしてたこと思い出すな……)

 

 

 ネプギアが心の中で呟く。

 

 

(あの時はピーシェちゃんに髪を引っ張られたり、居眠りしちゃってヨダレで髪を汚されたりして大変だっけど、プラエちゃんは大人しいから助かるな)

 

 

 ネプギアはプラエをおぶりながら、神次元での子育てのことを思い出しつつ、ギルドへ向かって行った。

 



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#13 女神?

 ギルドに着いたネプギアは自動ドアをくぐり、受付カウンターに向かう。

 

受付の男性はプラエをおぶっているネプギアを一瞬驚きの目で見るが、彼女の人となりを考えると不思議ではないと思い、その姿を微笑ましく見つめる。

 

 

「クエスト完了しました」

 

 

 ネプギアが受付の男性にひよこ虫討伐のクエスト完了の連絡をすると、「ありがとうございます」と受付の男性は頭を下げてお礼を言う。

 

 

「プラエちゃん、このソファーで休んでてくれるかな」

 

 

 ネプギアがそう言いながら受付カウンターから少し離れたソファーまで近づいてしゃがみ込むと、「うん」と言ってプラエは素直にネプギアの背中から降りるとソファーに座る。

 

 

(よかった……大分回復したみたい)

 

 

 プラエは公園からギルドまで、ネプギアにおぶられている間に体調が回復したようだった。

 

それに安心したネプギアは再び受付カウンターに向かうと、Nギアを取り出してクエスト完了の操作をする。

 

クレジットの入金を確認したネプギアは、「報酬受け取りました。ありがとうございます」と丁寧にお礼を言う。

 

 

「あの、お願いしていたプロテノール=パピリオさんの件はどうなりましたか?」

 

 

 ネプギアが受付の男性に質問をすると、「申し訳ございません。プロテノールと言う方は冒険者にも依頼者にも見当たらないようです」と男性は申し訳なさそうに答える。

 

 

「そうですか……」

 

 

 ネプギアは右手をあごに当てながら少し残念そうに考え込むと、「でも、パピリオって姓は一つだけ該当するものがありました」と受付の男性が話を続ける。

 

 

「本当ですか!」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに言うと、男性は少し暗い顔で、「ですが、G.C.1950年代に滅びたネオジェネシスの守護女神様の名前らしいですよ」と言う。

 

さすがに昔過ぎる上に女神の名前では参考にならないと思ったのだろう。

 

だが、ネプギアは心の中で、(プラエちゃんも女神だから、年をとらない?)と呟くと、最初にプラエに会った時の見た目に対する違和感が解けた気がした。

 

 

「それでもいいので教えて下さい!」

 

 

 ネプギアが真剣に訴えると、その迫力に押された受付の男性は、「クストゥス=パピリオって言うんですけど……あと、妹にアテネって子が居たらしいです」と素直に答える。

 

次に受付の男性はカウンターを出てネプギアに近づく。

 

そして小さな声で、「あと、あの子のことですけど、捜索願いのクエストとかは来ていないみたいです」とプラエに聞こえないように言う。

 

ネプギアは男性の気配りに感謝し、「色々ありがとうございます」と軽く頭を下げる。

 

 

「後はプラネタワーに戻ってデータベースにアクセスしてみます。また何か情報があったら教えて下さい」

 

 

 ネプギアは男性にそう言うとプラエの座っているソファーに近づく。

 

プラエと目線を合わせるようにしゃがみ込むと、「ごめんね。ここにもプロテノールさんを見たって人はいなかったみたい」と少し申し訳なさそうに言う。

 

プラエは【ぷるぷる】と首を左右に振ると、「いいの。ネプギアお姉さんは凄く頑張ってくれたった分かるから」と言う。

 

その様子を見て少し安心したネプギアは、「プラエちゃんは、クストゥス=パピリオさんって人知ってる? あとアテネって人も」とさっきの受付の男性に聞いた名前を質問してみる。

 

プラエはまたも【ぷるぷる】と首を左右に振ると、「知らない。プラエはプロテノール姉様しか知らないの。パパとママの名前も知らないの」と答える。

 

 

「そうなんだ……」

 

 

 ネプギアは両親の名前も知らないプラエのことを可哀そうに思った。

 

そして、(お姉さんとメイドのあんみつさんの三人で暮らしてて、それでお姉さんが行方不明になって今はあんみつさんと二人で暮らしてるのかな?)とプラエの境遇を分析する。

 

それと同時に、【くぅ~】と可愛らしい音がする。

 

ネプギアがその音で我に返ると、プラエが恥ずかしそうにお腹を押さえて俯いていた。彼女の腹の音が鳴ったらしい。

 

 

「私のお家でお昼ご飯食べる?」

 

 

 ネプギアが優しい声でプラエに言うと、「……いいの?」とプラエが控えめに問いかける。

 

ネプギアは軽く頷くと、「うん、もちろん。私もプラエちゃんとご飯食べたいし」と微笑みかける。

 

するとプラエは花の咲いたように微笑み、「うん! プラエもネプギアお姉さんとご飯食べたい!」と元気よく言う。

 

 

「それじゃ、行こっか。立てる?」

 

 

 ネプギアが問いかけると、「うん」と言ってプラエは元気よくソファーから立ち上がり、今までと同じように右手でネプギアの左手を握る。

 

ネプギア達はギルドを後にすると、プラネタワーに向かって歩いて行った。

 



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#14 人助けをするロボット

 ネプギアとプラエがプラネタワーに近づくと、男の子一人と女の子二人の合計三人の子供を連れた母親の姿が彼女達の目に映る。

 

両手に大量の荷物を持ちつつ、子供達から目を離さないようにしている母親は傍目に見ても大変そうだった。

 

アイテム保管に便利な携帯端末のポケットがあるものの、物を保管するにはインベントリ倉庫のスペースが必要となる。

 

無料分はあるものの当然あまりスペースは無く、子供の三人を養う家の買い出し分の荷物を収めるのは難しいだろう。

 

更によく見れば男の子が街路樹を見上げて泣き叫んでいる。

 

 

「プラエちゃん」

 

 

 ネプギアがプラエに向けて彼女達の手伝いをしたいと申し出ようとすると、「ネプギアお姉さんはあの人たちをお手伝いするんだよね」とプラエがネプギア言うより早く答えてしまう。

 

更には、「プラエもお手伝いしたい」と自らも手伝いを願い出る。

 

ネプギアはプラエの言動に驚きながらも素直に、「ありがとう」とまずはお礼を言う。

 

 

(お姉さんとあんみつさんの教育がいいのかな?)

 

 

 ネプギアはそう考えつつプラエと一緒に母親に近づくと、「どうかしましたか?」とネプギアが母親に話しかける。

 

母親は困った顔で、「それがウチの子の風船が木に引っ掛かってしまって……」と振り向くがネプギアの顔を見ると、「こ、これはネプギア様!」と慌てて頭を下げる。

 

ネプギアは落ち着いた声で、「そんなにかしこまらないで下さい」と言う。

 

そして、街路樹を見上げて泣き叫んでいる男の子に、「あの風船を取ればいいのかな?」と木に引っ掛かった風船を右手で指差しながら優しい声で問いかける。

 

男の子は一旦泣くのを止めて、「お姉ちゃんできるの?」と答える。ネプギアは力強く、「うん」と頷く。

 

続いて右手で先程のひよこ虫戦の前で見せた光る魔法陣を宙に描くと、魔法陣が盛り上がりネプギアンダムが現れる。

 

母親と子供達はその光景を驚きの顔で眺めている。

 

その間にネプギアンダムは着地し、「オヨビデスカ」とネプギアに質問をする。

 

 

「あの風船を取ってあげて」

 

 

 ネプギアが木に引っ掛かった風船を指差しながら言うと、「ニンムリョウカイ」とネプギアンダムが返事をする。

 

ネプギアンダムが風船に向けて右手を上げ、「ターゲットロックオン」と言うと、「センジュツレベルサイダイコウカヲカクニン」と続ける。

 

 

「ハッシャ」

 

 

ネプギアンダムの声と同時に右手がアンカーのように伸びる。

 

 

「「「わー!」」」

 

 

 子供達が感嘆の声を上げる。

 

ネプギアンダムの右手がどんどんと風船の紐に近づく。

 

突然、風が吹く。

 

風船が風に飛ばされて、ネプギアンダムの右手からどんどんと遠ざかっていく。

 

 

「ピー、イレギュラーハッセイ。タダチニダイニシャヲヨウイシマス」

 

 

ネプギンダムは少し慌てたように今度は左手を風船に向ける、

 

 

(ダメ、間に合わない!)

 

 

 一瞬で判断するネプギア。

 

すかさず、「プロセッサユニット」と叫ぶ。

 

 

「ダメ!」

 

 

 同時にプラエも叫ぶ。

 

 

「え……」

 

 

 ネプギアが驚いてプラエの顔を見ると、彼女の目が蒼い光を放っているのが見えた。

 

ネプギアはその蒼い瞳を綺麗だと思いつつも、直ぐに我に返り風船を見上げる。

 

 

 この一瞬で高くまで飛んでしまったと思っていた風船が、ふわふわと宙に留まっている。

 

 

(止まってる?)

 

 

 一見止まっているように見えた風船は微妙に上昇をしていた。

 

 

(止まっているんじゃなくて、もの凄く動きが遅い……)

 

 

 それはまるでビデオのスローモーションのようだった。 

 

 

(さっきのひよこ虫と同じ……?)

 

 

 ネプギアが宙に留まっている風船を不思議そうに眺めている間に、ネプギアンダムの第二射である左手が発射されると風船の紐に追い付き、それをキャッチする。

 

すると、「やったー!」と泣いていた男の子が嬉しそうな歓声を上げる。

 

ネプギアンダムの両手がスルスルと手元に戻って来て、「ニンムカンリョウ」とネプギアンダムがネプギアに報告をする。

 

 

「……っと、風船をそこの男の子に渡してあげて」

 

 

 風船の不思議な挙動を考え込んでいたネプギアだが、ネプギアンダムの声で考えるのを一旦止めて指示を出す。

 

 

「ドウゾ」

 

 

 ネプギアンダムが男の子に左手に持った風船を差し出すと、「ありがとう、ネプギアンダム!」と男の子が元気よくお礼を言う。

 

 

「ネプギアンダム、カッコイイ!」

 

「ネプギアンダム、すごーい」

 

 

 二人の女の子がネプギアンダムを嬉しそうに褒める。

 

男女問わず子供達の間でネプギアンダムの人気は高く、女の子達もネプギアンダムの活躍に大喜びだった。

 

その横で母親がネプギアに頭を下げて、「ありがとうございます。ネプギア様」とお礼を言う。

 

 

「いえ、大したことじゃありませんし、女神として……人として当然の事をしただけです」

 

 

 ネプギアが落ち着いてそう答えると、母親は感激の顔でネプギアの顔を眺める。

 

しかし、「わー! ネプギアンダムー!」と子供達が楽しそうにネプギアンダムをペタペタ触るので、「こら! 勝手に触っちゃダメでしょ!」と慌てて子供達を叱る。

 

 

「いいんですよ。それより、御自宅までネプギアンダムに荷物を運ばせますね」

 

 

 ネプギアがそう申し出ると、母親は驚いた顔で、「そ、そんなことまでしていただくわけには……女神様の貴重なロボットなのに」と恐縮してしまう。

 

ネプギアはゆっくりと左右に首を振ると、「いいんです。この子は人助けをするロボット。人に喜ばれる為のロボットですから」と言うと、ネプギアンダムの方を向く。

 

 

「ね? ネプギアンダム」

 

 

 ネプギアがそう問いかける。

 

ネプギアンダムは嬉しそうに角をピカピカ点滅させると、「ソノトオリデス。オマカセクダサイ」と力強くガッツポーズをする。

 

 

「で、では……お言葉に甘えて……」

 

 

 母親も重い荷物と子供達の面倒に疲れていたのか、あっさりとネプギアの厚意を受ける。

 

すると、ネプギアンダムが母親に向けて両手を突き出し、「オニモツ、オモチシマス」と言う。

 

 

「それではお願いします」

 

 

 母親が遠慮気味に荷物を差し出すと、「リョウカイシマシタ」とネプギアンダムは軽々と荷物を両手に持つ。

 

 

「それじゃあ、その人達を自宅に送り届けたら召喚のサインを送ってね」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「リョウカイシマシタ」とネプギアンダムが答える。

 

母親が、「こちらです」と先導すると、ネプギアンダムは子供達の相手もしながら母親の後を付いて行く。

 

ネプギアは、そんなネプギアンダムの姿を誇らしい思いで見つめていた。

 

それと同時に、ネプギアの腰に【とさっ】と何かがもたれかかって来る。

 

 

「?」

 

 

 ネプギアがとっさに腰に目を向けると、プラエがネプギアの腰にもたれかかっていた。

 

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 

 プラエは荒い呼吸をして顔も少し青ざめ汗もかいているようだ。

 

ネプギアは慌ててしゃがみ込んで両手でプラエの両肩を持つと、「大丈夫? どうしたのプラエちゃん」と必死に問いかける。

 

 

「……だいじょ……ぶ……だよ。……ふうせん……よかった……ね」

 

 

 プラエは力なく微笑みながら、先程の風船のことを喜ぶと同時に【ガクリ】と全身の力が抜ける。

 

 

「プラエちゃん!」

 

 

 ネプギアは慌てて両手でプラエを抱きしめる。

 

ネプギアの首筋にプラエの浅い呼吸が当たる。

 

 

(どうしてこんな急に……)

 

 

 ネプギアはプラエの体調の急激な変化に戸惑うが、(とにかく、どこかで休ませないと)と考えを切り替える。

 

一瞬考えて、(ここからならプラネタワーまですぐだから、私の部屋で!)と決めると、優しくプラエをお姫様抱っこすると、早足でプラネタワーに戻る。

 



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#15 スタミナ

 プラエを抱きかかえたネプギアはプラネタワーの自室に戻ると、彼女を自分の寝る場所である二段ベッドの下の段にプラエを寝かせる。

 

ネプギアは目視でプラエに外傷が無いことを確認すると、「何が原因なの?」とやや焦りながら、Nギアを取り出して操作をする。

 

画面の中の【アナライザー】のアプリを選択しNギアをプラエに向ける。

 

画面に【解析中】と表示されると、次々と数値が表示される。

 

これはネプギア自作のアプリケーションでゲイムギョウ界の生き物の能力をある程度解析することが出来る。

 

ネプギアはその表示を目で追って行く。

 

 

NAME:プラエ

 

ELEMENTAL:ICE

 

CLASS:???

 

LV:1

 

HP:150/150

 

 

 ここまで見てネプギアは【ホッ】と胸をなでおろす。

 

HPがゼロではないので、とりあえず命にかかわる状態ではないようだからである。

 

彼女の適正である、CLASS【クラス】が不明なのは気にはなったが、後回しにして引き続き表示を追う。

 

 

MP:200/200

 

ST:0/50

 

CONDITION:FATIGUE【LV2】

 

 

「スタミナが0のまま回復してない? どうして……」

 

 

 ネプギアが不安げに画面を眺める。

 

新作期を迎えたゲイムギョウ界には、スタミナという概念が追加された。画面にSTと表示されているのがそれである。

 

これは、走る、攻撃、防御、回避などの身体を使う激しい運動をすることで減少していき、休んだり、攻撃などの激しいアクションを止めることで自然に回復していく。

 

現実世界の人間のスタミナとほぼ同じ意味となり、最前線で動き回る近接攻撃をする者にとっては攻守において重要な能力。

 

以前はSPという数値を消耗した必殺技も、今回はこのスタミナを消費するようになり、スタミナ管理は近接職の必須項目と言われている。

 

 

 昔のゲームはこのようなシステムは取り入れることは少なく、近年の高難易度ゲームに取り入れられている。

 

スタミナが取り入れられている代表的な作品は、【モンンスターハングリー】と【デビルソウル】で、どちらも高難易度ゲームとして有名だ。

 

これらの作品は、今までは敵と戦う時に攻撃と防御と回避を使い分けるだけなのに対して、スタミナの管理が加わってくる。

 

スタミナが少ないと思うように行動できず、更にスタミナが無くなると一定時間行動不能になって大きな隙を晒してしまう。

 

大きな隙を晒すとは言え、プラエが倒れてからかなりの時間が経っている。

 

これだけの時間がかかってもスタミナが回復しないというのは普通ではありえない現象だった。

 

 

「ファティーグ?」

 

 

 ネプギアは【CONDITION】の項目に示された、【FATIGUE】の項目に首を傾げる。

 

CONDITIONはそのままコンディションで現在の体調であり、毒や麻痺などの状態異常が表示される。

 

 

「これは、スタミナ関係の新しいバッドステータスかな?」

 

 

 ネプギアはNギアを操作して、先日イストワールから渡された新作期についてのマニュアル、名付けて【おしえて、いーすん】でファティーグについて調べ始める。

 

ファティーグについての項目を見つけたネプギアはその項目を読み始める。

 

 

「えーと……。スタミナを消費する行動を限界以上に使用した際に起こる現象。極度に疲労した状態で長時間の休憩が必要になる。特効薬や治療する魔法も無く、食事がとれるようになったら、水分補給と柔らかい食事を与え休息を取ること……」

 

 

 ファティーグについて調べ終わったネプギアは、「ファティーグって名前の通り疲労してるから栄養と休息が必要なんだ……」と呟く。

 

スタミナ関係にもバッドステータスがあり、ファイティーグの他にも空腹で力が出ないことを示すHUNGRY【ハングリー】がある。

 

 

 ネプギアはぐったりとベットに横たわるプラエの顔を覗き込み、「プラエちゃん、お食事とお水用意するから待っててね」と優しく小声で言うと、それを用意する為に厨房に向かう。

 

 

****

 

 

 ネプギアが厨房に入るとコック姿の男性が、「おかえりなさいませ。お食事の準備はできております」と深々と頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい。食事はもう少し待って下さい」

 

 

 ネプギアは申し訳なさそうにコックの男性に言うと、「おかゆを作りたいんですけど、ご飯は余っていますか? あと卵もあったらください」と質問をする。

 

それを聞いたコックの男性は、「ありますが、それなら私達がご用意します」と申し出るが、「いえ、私にやらせて下さい」とネプギアがやや強い口調で言う。

ネプギアはプラエの不調は自分が彼女をよく見ていなかったせいだと責任を感じており、自分が診てあげるべきだと思っていた。

 

ネプギアにしては強い口調にコックの男性は、「わかりました」と大人しく引き下がる。

 

そして、小さめの土鍋を持つと炊飯器からご飯をよそり、「これぐらいでいいですか?」とネプギアに確認をする。

 

ネプギアが、「はい」と答えるとコックの男性はネプギアに土鍋を渡すと、次に冷蔵庫から取り出した卵も渡す。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアはそれを受け取るとコンロに火を点けて、卵おかゆを作りはじめる。

 

何でもそつなくこなすネプギアだが、料理はあまり得意ではない。

 

しかし、壊滅的に下手と言う訳ではないしネプギアはマニュアルには忠実に従う性格なので、マニュアルさえあれば普通に作ることができる。

 

ユニ達とお菓子作りをすることもあり、得意ではないが嫌いという訳でもない。

 

 

「お姉ちゃんといーすんさんはもう食べましたか?」

 

 

 ネプギアはおかゆを作りながら、少し心配そうにネプギアを見守るコックの男性に質問する。

 

ネプギアは基本的には姉のネプテューヌと教祖のイストワールと一緒に食事を取るのだが、先程の親子を手助けしプラエの容態を調べたことで、二人が待てずに先に食べたかもと思ったようだ、

 

コックの男性は少し困った顔で、「それがまだでして……担当部署の者によりますと、二時間ほど前にイストワール様がネプテューヌ様を呼びに行ってから戻っていないそうで……」と男性が答える。

 

 

「いつもすみません……」

 

 

 ネプギアがせっかく料理を用意してくれたコックに対して少し申し訳なさそうに謝ると、「いえ、いつものことですし……」とコックの男性は諦めたふうに言う。

 

ギルドの男性に対してもそうであったが、ネプギアは女神という身分でありながらもそれに奢ることはなく、一般人に対しても悪いと思ったことには素直に謝るし、何かを頼むときは頭も下げる。

 

悪く言えば威厳がないとも言えるが、清楚で穏やかそうな見た目どおりの性格は多くの人に好意的に受け入れられている。

 

 

「ところで、なぜおかゆを?」

 

 

 今度はコックの男性が質問すると、「衰弱した子供がいるので、その子に食べさせようと」とネプギアが素直に答える。

 

ネプギアのことをよく知る男性はそれで大体の事情を察したようで、「そうですか」と心優しいネプギアの行動に感心したように頷くと、「差し出がましいようですが、イストワール様にはキチンと報告した方がいいですよ」と忠告をする。

 

 

「はい、落ち着いたらそうします」

 

 

 ネプギアがそう言ってコンロの火を止める。

 

それを見たコックの男性は病人でも水を飲めるように吸い飲みと水の入ったポットを用意すると、それをお盆に乗せてネプギアに、「どうぞ」と差し出した。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアはそう言うと両手にミトンをはめて、土鍋をお盆に乗せると、それを持ってプラエの待つ自室に向かう。

 



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#16 告白

 ネプギアはお盆を右手に持って左手でそーっと自室のドアを開ける。

 

部屋は先程出た時と変わらず、二段ベッドの下の段にプラエが横になってる。

 

ネプギアは丸型の机にお盆を置くと、ゆっくりとベットに近づき、「プラエちゃん?」とプラエの顔を覗き込む。

 

 

「……ネプギアお姉さん……」

 

 

 プラエは力なく返事をするが、先程よりは顔色は良いようだ。

 

ネプギアは【ホッ】と胸をなでおろし、「気が付いたんだね。よかった」と安心した声を出す。

 

 

「……ここは、ネプギアお姉さんのお部屋?」

 

 

 プラエが尋ねると、「そうだけど、よくわかったね?」とネプギアが不思議そうに質問する。

 

プラエは鼻を【ひくひく】と小さく動かすと、「このお布団、ネプギアお姉さんの匂いがする……」と呟く。

 

 

「あっ、嫌だったかな? ごめんね。他に寝かせられる場所が思いつかなくて」

 

 

 ネプギアが少し恥ずかしそうに言うと、「ううん、凄くいい匂いがして安心する」とプラエが微笑むと掛け布団に顔をうずめる。

 

ここまで会話できるまで回復したプラエにネプギアは少し安心をすると、「お水とおかゆ持ってきたけど、食べられそう?」とプラエに尋ねる。

 

 

「……うん、食べたい。おいしそうな匂いがする」

 

 

 プラエがそう言うと、ネプギアは机に乗せたお盆を持って来て、ベットの前にしゃがみ込み、その隣にお盆を置く。

 

 

「まずはお水飲もうか」

 

 

 ネプギアが水の入った吸い飲みを両手で持って寝ているプラエの口元に当てると、プラエは少し恥ずかしそうにするが素直に口を開けると吸い飲みを咥えてゆっくりと水を飲む。

 

水を飲んだプラエが吸い飲みから口を離すと、ネプギアも吸い飲みをお盆に戻す。

 

次にネプギアが土鍋の蓋を開けると、アツアツの湯気が立つお粥が現れ、その匂いがより一層漂ってくる。

 

 

「おいしそう」

 

 

 プラエが素直な感想を言うと、「ちょっと熱いかな?」とネプギアがれんげで、土鍋からおかゆをすくう。

 

そして自分の口元に持って来て、「ふぅーふぅー……」と息をかけておかゆを冷ます。

 

 

「はい、あーん」

 

 

 プラエは嬉し恥ずかしといった感じで顔を赤くするが、「あーーん」と素直に大きく口を開く。

 

ネプギアはゆっくりと丁寧にプラエの口の中にれんげを入れると、プラエは【ぱくっ】と口を閉じて、おかゆを食べる。

 

プラエの咀嚼が終わっておかゆを飲み込むと、「おいしい?」とネプギアたずねる。

 

 

「おいしーー」

 

 

 プラエは元気よく言うと、おかゆを要求するように、また口を開く。

 

ネプギアは元気になって来たプラエに安堵と喜びを感じつつ、次のおかゆをすくうと、「ふぅーふぅー……」と先程のように息をかけておかゆを冷ます。

 

そんなやり取りを繰り返して、プラエは土鍋に入ったおかゆを完食する。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

 プラエが横になりながらも丁寧に両手を合わせて言うと、「お粗末さまでした」とネプギア微笑みながら、お盆を机の上に置きに行く。

 

お盆を机の上に置いたネプギアは再びプラエの側によると、「食べた後だけど、少しプラエちゃんのこと聞いていいかな?」とプラエに向かって質問する。

 

プラエは小さく頷くと、「いいよ」と答えベットから上半身だけ起こす。

 

「プラエちゃんは時間とお友達で時間に干渉できる力があるって言ったけど、それって時間の流れる早さとかを変えられるってこと?」

 

 

 ネプギアはプラエが正直答えてくれるのを祈るかのように両手を合わせて真剣な声で尋ねる。

 

彼女はプラエと出会ってから何度か感じた時間の流れの遅さはプラエの力ではないかと思っていた。

 

 

「……やっぱり気づかれちゃった……ネプギアお姉さん頭いいね」

 

 

 プラエがうなずきながら素直に認めると、「プラエちゃんから時間のこと言われなければ、気づいてたかどうかわからないけど」とネプギアが答える。

 

 

「それで、その力を使うともの凄く疲れちゃうんだよね。それが倒れた原因?」

 

 

 ネプギアは続けて質問すると、「うん……あんみつには時間操作は一日二回までって言われてるけど、今日四回もしちゃった」

 

 

 プラエが少し反省しているかのように、声のトーンを落としながら答える。

 

 

「ひよこ虫の戦いの時に一回、私との話で二回、そして風船の時に一回で合計四回?」

 

 

 ネプギアが確認するように尋ねると、「うん、ネプギアお姉さん、やっぱり頭がいい」とプラエが頷く。

 

 

「最初以外は、プラエちゃんの具合が悪くなったタイミングと時間の流れが変だった時を合わせてみただけだよ」

 

 

 ネプギアは落ち着て答えると、「どうしてそんなに無茶したの? 一日二回って言われていたんだよね」とネプギアが尋ねる。

 

その声は優しく穏やかであったが、真剣に心配している気持ちがプラエには十二分に伝わってきた。

 

 

「……ネプギアお姉さんのこと好きになっちゃったから……」

 

 

 プラエは恥ずかしそうに掛け布団で顔の下半分を隠しながら言う。

 

 

「優しくて綺麗で一緒にいると凄く安心する……だから、好きになっちゃって、お手伝いしたくてモンスターや風船の時間を遅くしたり、お話いっぱい聞きたくて、プラエとネプギアお姉さんだけ時間を速くしたり……」

 

 

 プラエの告白を真剣な顔で聞くネプギア。

 

見てのとおり、ネプギアは男女関わらずモテる。

 

彼女が本格的な女神の活動を始めるG.C.2009より前ですら、その存在を知る一部の人に告白を受けたりラブレターをたくさん貰ったりして、姉のネプテューヌを驚かせた程だ。

 

プラエのような子供に関しても、ロムとラムに好かれるだけではなく神次元で三人の赤ん坊の面倒を見た時にも様々な告白の経験を受けている。

 

面倒を見た三人の子供は残念ながらネプギアには懐かなかったが、彼女達の友人からは男女問わず何度も告白を受けている。

 

とは言え、出会ったその日にこんな熱烈なアプローチを受けるのは初めてのことであった。

 

 

「ありがとう。プラエちゃんの気持ち、もの凄く伝わってくるよ」

 

 

 ネプギアはそう言いながら目を閉じて両手を胸の中心に重ねるように置く。

 

その姿はプラエの想いを真正面から受け止めているように見えた。

 

 

「私は女神だから、一人の女の子としてはプラエちゃんの気持ちに応えることはできないけど、女神としてプラエちゃんのことを愛し護り続けることを誓うよ」

 

 

 ネプギアは優しく穏やかかつ真剣な声でそう言うと、プラエの頭を優しく撫でる。

 

 

「ありがとう、ネプギアお姉さん。出会ったばかりのプラエにそこまで言ってくれて嬉しい」

 

 

 プラエはその答えに満足したように、嬉しそうに目を細めて、ネプギアに頭を撫でられ続ける。

 

 

「……でも、少し慣れた感じがする。やっぱり、ネプギアお姉さんモテるの?」

 

 

 プラエは頬を膨らませて少し不満そうに言う。

 

 

「あはは……。お姉ちゃんから言わせればモテるみたい」

 

 

 ネプギア右手の人差し指で頬をかきながら言う。

 

先述したように何度も告白を受けてラブレターをもらってはいるが、自己評価が低めな彼女は自分自身をモテモテな子とは認めにくいらしい。

 

 

「でも、テンプレじゃないよ? プラエちゃんの言葉を受け取った上で出てきた気持ちと言葉だから」

 

 

 ネプギアが真剣な続けて言うと、「うん、わかってる。プラエにもネプギアお姉さんの本当の気持ち伝わってくるから」とプラエが目を閉じて右手を胸に当てながら言う。

 

【テンプレ】とは【テンプレート】の略語で定型文やひな形という意味がある。

 

普段からよく告白されるので、その時の為に用意してある共通の言葉ではないとネプギアが主張し、プラエもそれを理解してくれたのだ。

 

 

「ネプギアお姉さんは今まで何人ぐらいの人から告白されたの?」

 

 

 プラエが不思議そうに尋ねると、「聞きたい?」とネプギアが言う。

 

プラエは素直に頷いて、「うん」と答える。

 

 

「昨日までの時点で、99,822人だよ」

 

 

 ネプギアはそう言って急にドヤ顔を決める。

 

 

「へ?」

 

 

 プラエが目を丸くすると、ネプギアが悲しそうに目頭を押さえ、「私を好きだと言ってくれた人は全員記憶してるよ。ノペンタ、セプデム、へンティ、トーリアン、ワッカー、オウトー、ブンド……みんな、忘れられぬ人達」としみじみと答える。

 

 

「……ネプギアお姉さん?」

 

 

 プラエは訝し気にネプギアを眺める。

 

 

「私は死者に対し、哀悼の意を表することしかできない。けど、プラエちゃんもこれだけは知っていてほしいの。彼等は決して無駄死になどしていない。そして……」

 

 

 ネプギアが続けて言うと、「……何で死んじゃったことになるの!」とプラエがツッコミするように、【ぺちん】とネプギアの頭を軽く叩く。

 

 

「あはは、私の冗談もまだまだかな」

 

 

 プラエに叩かれたネプギアが苦笑いすると、「よくわからないけど、ネプギアお姉さんおもしろーい」とプラエがニコニコと笑う。

 

ネプギアが、「私の好きなアニメのパロディなんだ」と言うと同時に右太もものNギアのケースから【ピピピピピピ……】と電子音が鳴る。

 



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#17 花冠 

 ネプギアはNギアを取り出して画面を確認する。

 

 

「ネプギアンダムのおつかいが終わったみたい」

 

 

 ネプギアはそう言うと今までと同じく右手で魔法陣を描いてネプギアンダムを呼び出す。

 

 

「ニンムカンリョウシマシタ」

 

 

 呼び出されたネプギアンダムを見て、「わっ、折り紙がいっぱい」とプラエが驚きの声を出す。

 

ネプギアンダムの角や腕にはたくさんの折り紙で出来たメダルのようなものが垂れ下がっていた。

 

 

「オコサマタチニ、クンショウヲイタダキマシタ」

 

 

 ネプギアンダムは機械的な声で説明をするが、心なしか嬉しそうに聞こえる。

 

プラエは更にネプギアンダムの頭を指さすと、「お花の冠や首飾りもある……」と少し羨ましそうな声を出す。

 

恐らく子供たちが以前に作って保管していたものをお礼として貰ってきたのだろう。

 

 

「サシアゲマショウカ」

 

 

 プラエの気持ちを察したネプギアンダムが言うと、「いいの!?」とプラエが驚きと喜びの混じった声を上げる。

 

 

「ハイ。マスターモ、ヨロシイデスネ」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「うん、もちろんだよ」とネプギアが微笑む。

 

 

「それじゃあ、私が付けてあげるね。どれがいい?」

 

 

 ネプギアがそう言いながらネプギアンダムに近づくと、「その……青いお花の冠……」とプラエがおずおずと青い花の冠を指差す。

 

 

「これだね」

 

 

 ネプギアがネプギアンダムの角に掛かっている青い花の冠を取る。

 

更に、「それなら、こっちの首飾りもセットの方がいいかな」とネプギアンダムの右手に掛かっていた同じ花を使った首飾りも取る。

 

 

「二つもいいの?」

 

 

プラエが驚きの声を上げると、「うん、プラエちゃんが付けた方が似合うと思うし」とネプギアが微笑みながら花の冠と首飾りをプラエに持っていく。

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

 ネプギアはプラエの頭から首飾りを通すと、続けて頭に冠を乗せる。

 

プラエは嬉しさで顔を真っ赤にしていた。

 

 

「うん、似合う似合う。すごくよく似合うよ」

 

 

 花冠と首飾りを付けたプラエを見て、ネプギアは嬉しそうに両手を合わせる。

 

 

「カガミヲオモチシマシタ」

 

 

 ネプギアンダムが部屋にある手鏡を持ってきてネプギアに手渡す。

 

 

「ありがとう」

 

 

 ネプギアはネプギアンダムにお礼を言うと、「はい、プラエちゃん」とその手鏡をプラエに手渡す。

 

 

「わぁ……」

 

 

 手鏡で自分の姿を見たプラエは喜びの声を上げた。

 

自分の思っていた以上に似合っていたからだ。

 

 

「ネプギアお姉さん、ありがとう。プラエ、これ宝物にする」

 

 

 プラエは喜びの頂点と言った顔でネプギアにお礼を言うと、今度はネプギアンダムを見て「ネプギアンダムもありがとう」とお礼を言う。

 

 

「どういたしまして」

 

 

 ネプギアがそう応えると、「オヤクニタテテウレシイデス」とネプギアンダムも角を光らせながら応える。

 

 

「マスター、オテガミヲアズカッテイマス」

 

 

 ネプギアンダムはそう言うと、便せんを持った右手をネプギアに差し出す。

 

 

「ありがと」

 

 

 ネプギアはお礼を言うと封を開けて手紙を読み始める。

 

最初は子供達の元気で無邪気なお礼の言葉が書かれていた。

 

あの後、母親からネプギアが女神であることを聞いたらしい。

 

 

「ふふっ……」

 

 

 子供達の純粋な気持ちにネプギアは思わず笑みがこぼれてしまう。

 

続けて母親からの丁寧なお礼が書かれていた。

 

またネプギアに対する称賛の言葉が多数書かれており、これからネプギアを更に信仰し周りにも布教しますと締めくくられていた。

 

 

「ここまで褒めてくれなくてもいいのに……」

 

 

 ネプギアは恥ずかしそうにそう言うと手紙をしまう。

 

 

「ネプギアお姉さんはそれだけのことをしたんだよ。もっと胸を張っていいと思うな」

 

 

 プラエがそう言うと、「え? 見えちゃった」とネプギアが驚きの表情を浮かべる。

 

プラエはすぐ側にはいるが、手紙をのぞき見できる角度とは思えなかった。

 

 

「ううん、なんとなくだけど、書いてあることわかるよ。あのお母さん凄く感謝してたから」

 

 

 ネプギアはその言葉に更に驚き、「そんなことわかるの?」とプラエに問いかける。

 

 

「うん、なんとなくだけど、人の心の色が見えるの。ネプギアお姉さんは髪の色と同じでピンクに近い薄紫色。とっても温かくて優しい光を放ってる」

 

 

 プラエはそう言うと、「姉さまは紅蓮の炎のように燃えてるの。あんみつは茶色でちょっと美味しそう」と続ける。

 



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#18 ネプギアの目指す世界

「姉さまはクールだけど心の中に熱い情熱を持っている人だから、ゲイムギョウ界は常に戦い続け、強いものが治めるべきだって言ってた」

 

 

 プラエが更にしゃべり続ける。

 

 

ネプギアは、今はプラエの話を聞くべきだと思い、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「でも、プラエはそれは少し違うと思ってた。それを姉さまに言ったら、じゃあ、プラエはどうしたい? って質問されて、その時プラエは何も言えなかった」

 

 

 プラエの独白が続く。

 

 

ネプギアは真剣にプラエの話を聞きながら、彼女の目を真っ直ぐに見つめる。

 

 

「姉さまは何も言えなかったプラエにこう言ったの。【私が戻らなくなって十年経ったら、プラネテューヌを訪れろ。そこにお前の求める答えと進むべき道がある】って」

 

 

 プラエは両手を胸に当てて、「その時は、姉さまが居なくなるなんて嫌って、泣いて話が終わっちゃったけど……次の日から姉さまは帰って来なかった」と悲しそうに言う。

 

 

「……ネプギアお姉さん、教えて。プラエの求める答えと進むべき道を」

 

 

 プラエはネプギアの目を真っ直ぐに見つめ返す。

 

 

彼女は姉の言った言葉を信じ、その答えを持つ者がネプギアだと確信したようだ。

 

 

「………」

 

 

 ネプギアは暫くの間黙ったままだった。

 

プラエに言うべき答えを真剣に考えているのだ。

 

普段の彼女なら他人の運命を決めるような重大な選択肢に尻込みしてしまうところだが、今の彼女は違った。

 

 

(プラエちゃんの為に、私の想いを乗せた言葉を!)

 

 

 ネプギアはプラエのことを知りすぎたし、何より今さっき彼女を護ると誓ったのだ。

 

ユニやうずめは、このように迷いのないネプギアは誰よりの強いと言っている。

 

 

「私も、プラエちゃんとおんなじだよ。プロテノールさんの考えは少し間違ってると思う」

 

 

 ネプギアがそう言って小さく頷くと、プラエは少し明るい表情を浮かべる。

 

 

「話は少し変わっちゃうけど、ネプギアンダムの作られた世界は機界フレイラルって言って、昔は高度な機械による文明を誇ったの」

 

 

 ネプギアは更に話を続け、プラエも静かに話に耳を傾ける。

 

 

「召喚獣として呼び出すロボット達もどれもカッコよくって凄い武器を持ってた。でも、大規模な戦争によって荒廃しちゃって廃墟の世界になっちゃったの」

 

 

 ネプギアはそう言いながらNギアを操作してホログラムを呼び出す。

 

そこには倒壊したビルや壊れた工場の並ぶフレイラルの光景と、フレイラルから呼び出される強そうな戦闘用ロボットの数々が映っていた。

 

プラエはそのホログラムを真剣な顔で眺めながら、「だから戦い続けるのはよくない?」と質問をする。

 

 

「うん、そうだね。でも、それだけじゃないの」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「ある日、そんなフレイラルの最新鋭の護衛ロボットを私の召喚獣してくれるって言われた時、すごいワクワクした」と続ける。

 

プラエは再び大人しくネプギアの話に耳を傾けた。

 

 

「その時出来たのが、このネプギアンダムなんだよ」

 

 

 ネプギアの言葉に、「最新鋭???」とプラエが訝しげに首を傾げる。

 

 

「私も最初はそう思った。もっと自由とか正義とか運命みたいな感じのロボットが出来ると思ってたから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「自由? 正義? 運命???」とプラエは更に意味が分からないと言った感じの顔をする。

 

 

「あっ、分かりにくいよね、ごめんね。とにかくカッコよくて、武器がいっぱい付いてるのを想像してたの」

 

 

 ネプギアが説明をすると、「あっ、うん。プラエもそう思ってた」とプラエがようやく理解できたという顔をした。

 

 

「正直すごくガッカリしたけど、フレイラルの人達は【ネプギアンダムこそが、より良い未来を作るロボットだ】って自身満々だったから、とりあえずそのまま受け取ったの」

 

 

 ネプギアはそう言った後少し恥ずかしそうに右人差し指で右の頬をかく。

 

 

「でもね、ネプギアンダムのマニュアルを見て、私、自分がすっごく恥ずかしくなっちゃったんだ」

 

 

 ネプギアの態度と言葉に、「どうして?」とプラエは不思議そうに問いかける。

 

 

「そこには、人の役に立つこと、困っている人を助けること、人を護ることが山ほど書かれていたの」

 

 

 ネプギアは静かに胸の中心に両手を重なるように当てながら目を閉じる。

 

 

「その時、私、気付いたの。いつの間にかロボットを戦いの道具として見てたことを。本当のロボットは人を幸せにする物であるべきだって」

 

 

 ネプギアの言葉にプラエも【ハッ】と驚いた表情を浮かべ、「プラエもそう思った……そうだよね。人を幸せにするロボットの方がいいよね」と【うんうん】としきりに頷く。

 

 

「ネプギアンダムには、世界を戦争によって荒廃させてしまったフレイラルの技術者の人達の後悔と警告の意味が込められていて、それを私に伝えようとしてくれたんだって思う」

 

 

 ネプギアはしみじみと言うと、「それに固定火器をたくさん積むより、シンプルな素体に換装パーツを付ける方が拡張性や汎用性が……」と早口にしゃべり始める。

 

プラエが慌てて、「お姉さん、お姉さん、話がズレてるよ!」と止めると、「はうあっ! ご、ごめんね! ロボットのことになるとつい我を忘れちゃって……」と正気に戻るネプギア。

 

 

「こほんっ……」

 

 

 ネプギアは咳払いをして気を取り直すと、「私はそれを見て女神も同じなんじゃないかって思ったの」と言う。

 

 

「女神も遥か昔から、人々を護る為、ゲイムギョウ界の覇権を握る為に戦い続けて来たけど、それだけじゃダメなんだって」

 

 

 ネプギアは祈るように目を閉じて両手を組んでしゃべり続ける。

 

 

「女神の持てる力を戦いや国の発展で争うことに使うだけじゃなくて、調和と協調に使えばゲイムギョウ界をもっと良くできるんじゃないかって」

 

 

 そう言ったネプギアをプラエは尊いモノをみるような目で見つめていた。

 

 

「私達女神だけじゃなくて、信者の人たち。それに今は悪いことをしている人たちやモンスターですら心を入れ替えて手を取り合って暮らせる世界」

 

 

 ネプギアはゆっくりと目を開けて、「私は女神の力をそんな世界を作るために使いたい。今はお姉ちゃんに甘えて目の前の人達を護るだけで精一杯だけど、いつかきっと!」と力強く宣言する。

 

 

「それに、超次元現象を使えば、ゲームの世界から別のギョウ界とかにも調和と協調による平和を呼び掛けられると思うの。だから、私はこの夢を諦めない」

 

 

 ネプギアがそう言い切ると、「それだよ……!プラエの求めてた答えと進むべき道は、やっぱりネプギアお姉さんが持ってた!!」とプラエがネプギアの両手を握る。

 

 

「お願い。プラエをネプギアお姉さんの側に置いて。プラエ、エスパーだから役に立つよ!」

 

 

 プラエが熱っぽくそう言うと、「でも、お姉さんは?」とネプギアが問いかける。

 

プラエは静かに首を左右に振ると、「プラエもそこまで子供じゃないよ。十年も帰って来なかった姉さまがすぐに見つかるなんて思ってないよ」と答える。

 

更に、「諦めた訳じゃないけど、姉さまはネプギアお姉さんに協力しながら見つける。多分そうした方が見つかると思うの」と言う。

 

 

「そっか……」

 

 

 ネプギアはそう言うと、プラエの手を握り返し「それじゃあ、プラエちゃん、私に力を貸してくれる?」とプラエに問いかける。

 

プラエは満身の笑顔で、「うん! もちろんだよ」と頷いた。



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#19 プラネテューヌの守護女神

 「プラエ、何したらいい? プラエ、ネプギアお姉さんの為なら何でもするよ!」

 

 

 プラエが元気よくそう言うと、「気持ちはわかるけど、今日は休んでなきゃダメだよ」とネプギアがたしなめるように言う。

 

続けてNギアでアナライザーを起動してプラエを再び解析すると、Nギアにプラエの状態が映し出される。

 

 

NAME:プラエ

 

ELEMENTAL:ICE

 

CLASS:エスパー

 

LV:1

 

HP:150/150

 

MP:200/200

 

ST:25/50

 

CONDITION:FATIGUE【LV1】

 

 

 ネプギアは先程と比べて、クラスが判明したことと、スタミナが半分まで回復し、ファティーグのレベルが下がっていたことに、「ほっ……」と安堵のため息をつく。

 

 

「今日一日休めばファティーグも治ると思うから、ネプギアンダムと一緒にゆっくりしてて」

 

 

 ネプギアが優しい声で言うと、「……うん」とプラエは素直に頷く。

 

 

「マスター、オショクジヲトッテクダサイ。アト10プンデ、ハングリーノバッドステータスガフヨサレマス」

 

 

 今まで黙っていたネプギアンダムがネプギアに言う。

 

その声は機械的ではあったが、ネプギアを心配するように聞こえる。

 

 

「あっ……、ごめんね。プラエのせいでご飯遅くなっちゃったよね」

 

 

 プラエが申し訳なさそうに小さくなって謝ると、「今から食べれば全然平気だよ」とネプギアが優しく微笑む。

 

 

「プラエサマハワタシニマカセテ、ハヤクオショクジヲ」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「ありがとう、ネプギアンダム。それじゃあ、食べてくるね」とネプギアがプラエとネプギアンダムに小さく手を振って部屋を出ていく。

 

プラエとネプギアンダムが手を振り返すと、ネプギアはゆっくりと部屋のドアを閉める。

 

 

「お姉ちゃんといーすんさんは食べたかな?」

 

 

 ドアを閉めたネプギアはそう呟くと、テレビとゲーム機が置いてある女神用のリビングに向かう。

 

 

 

****

 

 

 

「ネプテユーヌさんっ!」

 

 

 ネプギアがリビングの扉を開けると同時に叱りつけるような大きな声が聞こえてくる。

 

声の発生源は部屋の中で浮いているイストワールのようだ。

 

 

「ちょっと、聞いているんですか!」

 

 

 イストワールが再び怒号を向けた先にはネプテユーヌと呼ばれた小柄な少女がテレビゲームに夢中になっていた。

 

髪は紫色で、ショートカットだが前髪の両サイドだけ首の辺りまで伸ばしていて、全体的に癖あって跳ね上がっている。

 

頭にはネプギアと同じ十字型のゲームコントローラーのような髪飾りを左右に二つして、瞳の色は紫色。

 

肌はネプギアと同じ薄橙色だが、ネプギアに比べると僅かに濃く、良く言えば健康的に見える。

 

身長は140センチ程度で、白い生地に紫色の模様が入ったパーカーを着て水色と白のストライプのニーソックスをはいていた。

 

パーカーがワンピースのようになっているのでズボンやスカートの類は穿いていない。

 

ある意味刺激的な姿であったが、何故か違和感はなかった。

 

 

 そのネプテユーヌはイストワールの怒号を意にも介せず、ゲームのコントローラーを握りしめ、顔もゲーム画面に釘付けである。

 

 

「今日が期限のお仕事はどうしたんですか!」

 

 

 なおもネプテューヌに詰め寄るイストワール。

 

小さいながらも浮いているので、その姿はネプテユーヌの顔の真横まで迫る。

 

 

「よっ! ほっ! たーーー!」

 

 

 しかし、ネプテューヌはイストワールの問いかけにも、いかにも【聞いていませんよ】と言わんがばかりにテレビゲームに向けて掛け声を上げる。

 

そんなネプテユーヌの態度に、イストワールは怒りでわなわなと肩を震わせる。

 

 

「まあまあ、いーすんさん」

 

 

 怒り心頭のイストワールとネプテユーヌの間にネプギアが割って入る。

 

 

「ネプギアさん」

 

 

 イストワールはネプギアの存在を確認すると少し表情が和らぐ、怪我もなく帰ってきたのが嬉しいのだろう。

 

 

「お姉ちゃん、やる時はやる人ですから、その時が来たらキチンとやりますよ」

 

 

まずはネプテューヌを擁護するネプギア。

 

 

 何度か前述はしているが、ネプテューヌを【お姉ちゃん】と呼ぶネプギアはネプテューヌの妹。

 

身長140センチ台の小柄なネプテューヌに対して150センチ台のネプギア。

 

落ち着いた雰囲気のあるネプギアに対して子供っぽいネプテューヌ。

 

どうみても姉妹逆なのだが、ネプギアが妹である。

 

 

「やる時とかその時とか、一体いつですか!」

 

 

 ネプギアのフォローに対して、食ってかかるイストワール。

 

 

「えーと……、世界の危機とかにはちゃんと立ち向かってくれますし、ほら! この前の転換期を含めた一連の騒動も乗り越えられたじゃないですか」

 

 

 イストワールの剣幕に圧されながらも、何とかしてネプテューヌを庇おうとするネプギア。

 

 

「女神様は用心棒とは違うんです! 平和でもやるべきことはいっぱいあるんです!」

 

 

 だが、イストワールには焼け石に水どころか火に油を注ぐ結果になってしまっていた。

 

イストワールに予想以上の反論を受けて小さくなってしまうネプギア。

 

そして、我関せずの顔でゲームを楽しむネプテューヌ。

 

こう見えてもネプギアの姉であるネプテューヌは守護女神であり、このプラネテューヌの守護者であり統治者なのである。

 

 

「私は女神として最低限の責務を果たして下さいとお願いしているだけなんです!」

 

 

 なおもネプギアに食ってかかるイストワール。

 

かなりストレスが溜まっているようで顔が真っ赤であった。

 

 

「それは分かりますけど……」

 

 

 ネプギアはイストワールの剣幕に押されて続け、もう何も言えなくなっていた。

 

要はイストワールの言うことは全て正論であり、反論の余地がないのだ。

 

 

 国や国民たちを守り導く守護女神、その仕事はゲイムギョウ界にとって非常に重要なもの。

 

イストワールはその仕事をせずに毎日遊んでいるネプテューヌを教祖として諫めているのである。

 

 

 確かにネプギアのフォローするように、ネプテューヌはゲイムギョウ界に大きな事件があった時には、他の三国の女神やネプギア達女神候補生達と協力しそれを退けている。

 

 

「それを毎日毎日遊んでばかり! 書類の決裁とかモンスター退治なんて、もう山盛りなんですよ!」

 

 

 しかし、ネプテューヌの不真面目さはそれを差し引いても余りあるもので、イストワールも堪忍袋の緒が切れているのである。

 

女神用の執務室にあった書類の山、あれは全てネプテューヌの女神としての仕事であり、放置しすぎてあんな状態になっているのだ。

 

 

「それに他の女神様達にも差を付けられる一方です!」

 

 

 更にゲイムギョウ界は、平時は四つの国が切磋琢磨し競い合う関係なのである。

 

ネプテューヌがこうして怠けている間に他の三国は着々と国力を蓄えているのだ。

 

ゲイムギョウ界の四国の立場は基本的に対等であり、危機を乗り越えたのもネプテューヌだけの力ではない。

 

 

 つまり、ネプテューヌだけがこうして仕事をせずにゲームに没頭しているのは十分な職務怠慢なのだ。

 

又、以前にネプギアが絵本で読んだように過去にゲイムギョウ界は何度も国家間の戦争が繰り広げられている。

 

今は戦争時ではないが、こんな状態で他国に攻められたら手も足もでないだろう。

 

 

「ごめんなさい! 私の力不足です!」

 

 

 流石に庇いきれないと思ったネプギアがイストワールに向かって頭を下げる。

 

女神候補生であるネプギアは女神に近い仕事をしている。

 

今日の書類の決裁やクエストなどがそれにあたる。

 

ネプテューヌと違い真面目で勤勉なネプギアは自分の仕事を全部こなしつつ、たまにネプテューヌの仕事も肩代わりしている。

 

ネプギアはその力が足りなかったと感じたのだろう。

 

【仕事をしないネプテューヌが悪い】の一言で片付く問題なのだが、ネプギアはネプテューヌのことを慕っており事あるごとに姉を甘やかしている。

 

現に今もこうして、女神という立場に構わずネプテューヌの代わりにイストワールに頭を下げているのだ。

 

 

「あ、頭を上げて下さい! ネプギアさんの所為じゃありませんよ」

 

 

 必死で頭を下げるネプギアに慌てるイストワール。

 

実際にネプギアはよくやっている。

 

物事の飲み込みが早く何でも要領よくこなすネプギアは候補生以上の働きを見せているが、それでも他国の守護女神には及ばない。

 

それに候補生では権限の及ばない仕事もある。

 



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#20 ネプテューヌとイストワール

「あー! いーすんがネプギアいじめたー! いーけないんだいけないんだ! イジメかっこわるーい」

 

 

 ネプテューヌはゲーム一旦止めて、ここぞとばかりに小学生のようにイストワールを煽る。

 

 

「ネプテューヌさんがお仕事をしてくれないから、こんなことになっているんです!」

 

 

 その態度にイストワールは更に顔を真っ赤にしながら、ネプテューヌに詰め寄るが、ネプテューヌは、「えー? またこのパターン?」と、うんざりしたように答える。

 

 

「パターン化しているのは、ネプテューヌさんのせいです!」

 

 

 イストワールが素早くツッコミを入れる。

 

実際その通りであり、何度イストワールが叱ってもネプテューヌの放蕩癖は治る気配を見せない。

 

 

「でもさー、毎回同じじゃ見てる人も飽きちゃうよ? マンガやアニメも入れたらこのパターン一万回くらいやってる気がするよ」

 

 

 ネプテューヌお得意のメタ発言。

 

彼女はこの手のネタを使うことが多い。

 

なぜ彼女がこのようは発言が出来るのかは謎である。

 

 

「流石に一万回は盛りすぎだと思うよ……」

 

 

 ネプギアは少しためらいながらもツッコミを入れるが、「いやいや! このシリーズも、もう十年過ぎてるし、それぐらいは行くでしょ」とネプテューヌは自分が叱られていることをドヤ顔で自慢する。

 

 

「それでも毎日三回は怒られてることになるんじゃないかな……」

 

 

 一年が365日、10年間毎日3回怒られたら10,950回、と丁寧に暗算して答えるネプギア。

 

 

「それにそんなに怒ったら、いーすんさんの胃が持たないよ」

 

 

 更に冷静にツッコミをするネプギア。

 

 

「……私も好きで怒ってる訳じゃないんですよ」

 

 

 イストワールはそんな二人のやり取りをみて呆れたように言う。

 

 

「だったら、そろそろ別パターン考えない? わたしって褒めて伸ばすタイプだから褒めた方が良いと思うよ」

 

 

 ネプテューヌはさも名案というように自信満々に提案してくるが、「ネプテューヌさんを褒める要素がまるで見当たりません」イストワールはネプテューヌの提案を即答で切り捨てる。

 

その態度に情けのひとかけらも感じなかった。

 

 

「ガーン!」

 

 

 ショックを受けるネプテューヌ。

 

流石の彼女もこれには堪えたようだ。

 

 

「いいですか、ネプテューヌさん、【働かざる者食うべからず】女神様も同じです。シェアエネルギーが尽きたらどうするおつもりなんですか?」

 

 

 シェアエネルギーは人々の守護女神に対する信仰心からなるエネルギーであり、守護女神の力の源である。

 

基本的にはクエストなどをこなして、国や国民を守り導くことで得ることが出来る。

 

つまり、イストワールの言うお仕事をしないとネプテューヌも弱っていく筈なのだが……。

 

 

「いーすんはわかってないな。わたしはありのままの姿が国民に受け入れられているんだよ。真面目に仕事をするわたしなんてわたしじゃないね」

 

 

 自らの不真面目をドヤ顔で宣言するネプテューヌは、「それに、わたしみたいな美少女を養えるって、国民のみんなにとって至高の幸せだと思うよ」と続けて言う。

 

ネプテューヌ的には【今のままで十分にシェアエネルギーを確保できてるんだからいいじゃん】らしい。

 

 

「更に、わたし主人公だよ」

 

 

 更にネプテューヌは両手を腰に当てて自信満々に言い放つが、「主人公なら、少しはネプギアさんを見習ってそれ相応の働きをして下さい」とイストワールは素早くツッコミを入れる。

 

 

「いーすんは本当にわかってないなー。主人公っていうのはちょっと欠点があった方が共感が得られて人気が出るんだよ。逆にネプギアみたいな完璧超人は主人公としては失格なんだよ」

 

 

 ネプテューヌがうんちくを語るように偉そうに言うと、「……私、完璧じゃないけど、お姉ちゃんに主人公失格って言われると落ち込むよ」とネプギアは【しゅん】と落ち込んでしまう。

 

 

「落ち込む必要ないってば、ネプギアには攻略難度Sクラスのヒロイン役が似合ってるよ。試しに【一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし】って言ってみて」

 

 

 ネプテューヌはそう言ってネプギアの肩を優しく叩くと、「さあ、言ってみて」ともう一度要望する。

 

 

「えっと……い、一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし?」

 

 

 ネプギアは訳も分からず、素直にネプテューヌの言う通りに言ってしまう。

 

 

「いいねいいね! 今度は好感度上げて【家も隣同士だし、たまには一緒に帰ろうかなって】」

 

 

 調子に乗ったネプテューヌは更にネプギアに要望を出すと、「い、家も隣同士だし、たまには一緒に帰ろうかなって……?」とまたも要望に応えてしまうネプギア。

 

本当に素直な子である。

 

 

「いい加減にしてください!」

 

 

 イストワールは話を脱線させて妹で遊んでいるネプテューヌを注意する。

 

 

「仮にネプテューヌさんの言う通りだとしても、現に国民のみなさんからお仕事のお願いが届いているんです。これを何日も放置して、どう顔向けするおつもりなのですか?」

 

 

 イストワールは説得の方法を変えてみる。

 

確かにプラネテューヌでのネプテューヌの人気は相当なものである。

 

しかし、それだけでは女神は務まらない。

 

国民の要望に応え信頼を得る必要もあるのだ。

 

 

「ゲームに夢中でお仕事忘れちゃった~♪」

 

 

 ネプテューヌはそう言うと、自分の頭を右手で軽く小突くと、「てへぺろ」と言って舌を出してウインクする。

 

 

「はぁ~……」

 

 

 説得の方法を変えても相変わらずなネプテューヌに対して、イストワールは大きなため息を付き肩を落とす。

 

怒りを通り越して呆れている様だった。

 

ネプテューヌと毎日こんなやり取りが続くイストワールは自分用の胃薬が手放せない。

 



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#21 ネプテューヌの女神論

「それに、わたしは国の象徴として君臨してればいいんだよー」

 

 

 ネプテューヌが自信満々に言い放つ。

 

しかし、イストワールが冷ややかな視線を向け、「ネプテューヌさん、まさかとは思いますが、世の中の国の象徴と言われる王室や皇室の人々が一日中寝て食べて遊んでいると思っているのですか?」と言う。

 

 

「え? 違うの? 【パンがなければプリンを食べればいいじゃない】とか言ってればいいんだよね?」

 

 

 ネプテューヌが不思議そうに問い返すと、「……それはあんまり良い王妃様の言葉じゃないんだよ」とネプギアが眉毛をハの字にして困った顔でツッコミをする。

 

 

「冗談だよ冗談。国の象徴って言うのは、たまーにお祭りとかに出て、国民に手を振れば良い簡単なお仕事だよね」

 

 

 ネプテューヌが両手を後頭部に置きながら気楽そうに言うと、「はぁ~~……、そんなことだろうと思いました……」とイストワールが盛大なため息を吐く。

 

 

「え? 違うの?」

 

 

 ネプテューヌが心底不思議そうに問いかけると、「えっとね、書類の決裁とか、偉い人の任命とか色々な仕事があるんだよ。朝早いし残業もあるみたいだよ」とネプギアが説明をする。

 

 

「えー? 労働条件が聞いてた話が違うー。労働基準法違反だよー! 訴訟も辞さない!」

 

 

 ネプテューヌが右手を振り上げて抗議するようにいうが、「お姉ちゃん……誰も手を振るだけなんて労働条件出してないと思うよ……」とネプギアが至極真っ当なツッコミをしてくる。

 

 

「でもさ、女神って、もっと華やかな仕事をするべきだと思うんだよね。書類決裁は地味だし、モンスター退治も害虫駆除みたいじゃん」

 

 

 ネプテューヌは腕組みをしながら、【うんうん】と自分を納得させるように何度も頷く。

 

ネプギアは少し困った顔で、「女神には国民のみんなから与えられたシェアエネルギーで、モンスターと戦う力と英知があるから……」と説得を試みる。

 

 

「いや! わたしにはスポットライトが似合う! わたしを光当たる場所へ! もっと光をーーー!」

 

しかし、途中でネプテューヌが訴えるように叫び説得は脆くも失敗してしまう。。

 

 

「はぁ……なんで、ネプテューヌさんは、ああ言えばこう言うんでしょうか……」

 

 

 イストワールはため息をつくと、心底困ったように右手で額を押さえる。

 

 

「それは、わたしの戦いが自由を求める崇高なものだからだー!」

 

 

 イストワールの愚痴に素早く訴えるネプテューヌ。

 

しかし、即座にイストワールに、「仕事をしたくないから、駄々をこねているだけじゃないですか!」と反論されてしまう。

 

ネプテューヌは負けじと、「そんなことないよー。わたしは、いーすんからの不等な圧力には断じて屈しない!」と右手で力強いガッツポーズを作る。

 

 

「お姉ちゃん、その情熱を少しでもお仕事に傾けられないかな? そうすれば全て解決すると思うんだけど……」

 

 

 二人を見ていたネプギアがそう提案をするが、「無理」と即座にネプテューヌに切り捨てられてしまう。

 

 

「即答なの!?」

 

 

 あまりの切り捨てぶりに驚きの声を上げてしまうネプギア。

 

 

「我が軍に降伏の二文字はない! さあ、働かざる者達よ、わたしに続け! もしも、わたしが倒れるような事があれば、わたしの屍を越えてゆくのだ!」

 

 

 ネプテューヌが演説をするように両手を広げながら言うが、「……屍になるくらいなら素直に働いた方が良いと思うんだけど……」とネプギアに呆れた声でツッコミを受けてしまう。

 

 

「わたしには自分の世界があるんだよ。例えるなら、空をかける一筋の流れプリンなんだよ!」

 

 

 そんなネプギアに対して、どこぞの怪盗の歌のような意味不明な主張をするネプテューヌ。

 

ネプギアは律義にも、「流れプリンって? プリンって空を流れるものなの?」と話しに乗ってくる。

 

ネプテューヌはネプギアの疑問に両手を腰に当てて自信満々に、「流れるよー。宇宙魔界には他にもハンバーガーやお寿司も流れてるんだから」と答える。

 

 

「宇宙魔界って、日本一さんやがすとさんが話してくれた、戦女神リーゼリアルと犬魔王カナタの話だよね」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの話から、かっての仲間から聞いた話を思い出す。

 

するとネプテューヌは、さも当然かのようにドヤ顔で、「そう、その宇宙魔界にプリンが流れてるから、ゲイムギョウ界の空にもプリンは流れるんだよ」と宣言する。

 

ネプギアは右手の人差し指を唇に当てながら、「そういうものなのかな?」と半ば納得してしまったようだ。

 

こんな感じで少々流されやすいところのあるネプギアは、しょっちゅう姉の勢いに流されて、いろいろなデタラメを信じてしまう。

 

 

「うーん。ネプギアにはまだ早かったかな? とにかく、孤独な笑みをプリンにさらして、背中で泣いてる、わたしの美学なんだよ」

 

 

 イマイチ煮え切らないネプギアに対して更なる追い打ちをかけるネプテューヌ。

 

しかし、ネプギアは困った顔で、「そっちもよく分からないよ」と首を傾げてしまう。

 

 

「風をはらい、荒れ狂うプリンの世界で、都会の闇に体を溶かして、プリンを食べてる、わたしの美学の方がよかった?」

 

 

 そんなネプギアに再度追い打ちをするネプテューヌだが、「えっと、プリンは街の暗いところで食べない方がいいと思うよ」とネプギアからやや的の外れたツッコミを受けてしまう。

 

 

「ネプギアさんで遊ばないで下さい!」

 

 

 さすがのイストワールも堪忍袋の緒が切れ大声でネプテューヌを叱る。

 

そして、「はぁ……」とため息を吐いて、「まったく困ったものです……そもそもどこが不等なんですか? 私は国民から選ばれた教祖としての義務を果たしているだけです」と呆れた声を上げる。

 

 

「とか言いながら、本当はわたしに期待してるんでしょ。なんてったって、わたしは主人公だからね。わたしが居ないとゲイムギョウ界は始まらないよ」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら期待を込めた眼差しをイストワールに送る。

 

しかし、「いえ、国を治めてくれるなら、ネプテューヌさんでなくても構いませんよ」とイストワールは冷ややかな対応をする。

 

 

「もー、いーすんのツンデレ~」

 

 

 ネプテューヌはイストワールが照れ隠しにそんな冷たい態度を取っているのだと言った感じで言うが、「……」とイストワールは冷たい沈黙を返すだけだった。

 

ちなみにツンデレとは、特定の人間関係において敵対的な態度【ツンツン】と過度に好意的な態度【デレデレ】の二つの性質を持つ様子、またはそうした人物を指す。

 

 

「え……なに? その沈黙は?」

 

 

 さすがのネプテューヌもイストワールの沈黙に不安げな物言いをしてしまう。

 

そこに、「そう言えば、ゴールドサァドの人達がゲイムギョウ界を治めてた時、いーすんさん、お姉ちゃんのこと憶えてたのに、探さずに普通にビーシャさんと一緒にプラネテューヌ治めてたような……」とネプギアが無自覚の追い打ちをかけてくる。

 

 

「ネプギアーーー! それ今言う必要ある?」

 

 

 悲しさ全開の絶叫をするネプテューヌ。

 

ネプギアは今になって失言に気付いたらしく、「あっ、ごめんね。つい……」と胸の前に両手を出して、申し訳なさそうに【あわあわ】と左右に振る。

 

以前のユニの時もそうであったが、ネプギアは素直で真面目過ぎるゆえの無自覚な毒舌がたまに出る。

 

ちなみにビーシャとはゴールドサァドの一人で、以前に出たシーシャの友人でもある。

 

四年前ゴールドサァドは守護女神に代わり四つの国を治めていたことがある。

 

その際に人々の記憶から女神の記憶が無くなっており、素直にゴールドサァドの統治を受け入れていた。

 

しかし、イストワールはネプテューヌのことを憶えていたのだが、プラネテューヌの統治を優先し、特別なアクションを起こさずにゴールドサァドに従っていたのだ。

 



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#22 いざクエストへ! わたしがとは言っていない。byネプテューヌ

「お姉ちゃん、少しはやる気出そうよ。このままじゃ、いーすんさんかわいそうだよ」

 

 

 基本的にネプテューヌの味方であるネプギアだが、今回はさすがにイストワールが気の毒なのでイストワールに味方することにしたようだ。

 

 

「えー? ネプギアまでそんなこと言うのー?」

 

 

 ネプテューヌは不満そうに口を尖らすが、「だって、いーすんさん本当にかわいそうだし……」ネプギアは真剣にイストワールのこと思って悲しい顔をする。

 

 

「あー! そんな顔しちゃダメダメ。ネプギアは笑ってた方がかわいいよ」

 

 

 ネプテューヌは手を横に振りながらそう言うが、「だって……」と言ってネプギアは黙ってしまう。

 

 

「仕方ない。それじゃ、クエストに行こうかなーー」

 

 

 ネプテューヌが観念したかのように立ち上がって伸びをすると、「本当!」とネプギアの顔が喜びの表情に変わる。

 

 

「ほんとほんと」

 

 

ネプテューヌはそう言うと、直後に「うっ!」と、呻いてお腹を抱えてうずくまる。

 

 

「お姉ちゃん? どうしたの!」

 

 

 ネプギアがとっさに心配の声を上げると、「クエストに行こうとしたらお腹が……これはちょっと無理かも……」とネプテューヌはとても残念そうに言う。

 

ネプギアも、「そんな……」と落胆の声を出す。

 

 

「ああっ……だれか代わりにやってくれないかな……」

 

 

ネプテューヌはうずくまりながらそう言うと、「チラッチラッ」と言ってネプギアに視線を向ける。

 

 

「へ? 私?」

 

 

 ネプギアはキョトンとした顔で言うと、少し考えるような仕草をして、「ええと、お姉ちゃん行けそうもないので、私に出来るお仕事でしたら私がやりますけど……」とイストワールに提案する。

 

優しく純粋なネプギアは人を疑うことを知らない。

 

 

「……そうですね……お願いできますでしょうか」

 

 

イストワールからすれば、ネプテューヌの行動はバレバレの芝居なのだが、それを指摘するもの疲れたようで素直にネプギアの提案に乗る。

 

 

「やったー! じゃ、お姉ちゃんはゲームの続きしてるねー!」

 

 

 ネプテューヌはこれ幸いとバンザイするとゲームに戻る。

 

遊びに夢中のネプテューヌ。

 

それを諫めるイストワール。

 

両者の間を取り持って仕事に励むネプギア。

 

プラネテューヌではこれがいつもの光景である。

 

 

「あ、そうだ。お姉ちゃん、お昼ご飯できてるよ」

 

 

 ネプギアが本来の目的を思い出してネプテューヌに伝えると、「これが終わったら行く~」ネプテューヌはゲームをしながら返事をする。

 

 

「それでは私達二人で先に食べてしまいましょう。それで食休みをしたら一緒に行きましょうか」

 

 

 イストワールはそう言ってネプギアの顔の真横まで飛んでくると、「え? いーすんさんも来るんですか?」と自分一人で行くつもりだったネプギアはイストワールの同行を驚く。

 

 

「最近は運動不足ですし、何よりストレスが溜まっていますから」

 

 

 イストワールはちらりとネプテューヌの方を見るが、肝心のネプテューヌは我関せずの顔で口笛を吹いてゲームをしている。

 

 

「あはは……発散のお手伝いが出来るよう頑張ります」

 

 

 ネプギアは苦笑いを返しながらそう言ってイストワールと一緒に食事の置いてある部屋に向かった。

 

 

****

 

 

 昼食をとりながらネプギアはプラエのことをイストワールに話した。

 

 

「……まずはネプギアさん」

 

 

 食事を終えて専用の箸を置いたイストワールが神妙な顔でネプギアを見ながら口を開く。

 

 

「はい……」

 

 

 同じく食事を終えたネプギア。

 

こういう時は軽くお説教をされると知っているので、元気のない返事をしながら小さくなる。

 

 

「プラネタワーは国の中枢であり、国家機密も山ほどあります。その内部に部外者を入れるというのは感心できませんよ」

 

 

 ネプギアの予想通りお説教を始めるイストワール。

 

更に、「それが例え衰弱した子供とは言えです。病院なり他に適切な方法があったと思います」と言葉を続ける。

 

 

「……ごめんなさい。以後気を付けます」

 

 

 素直に頭を下げて謝るネプギア。

 

プラエのことを信用していたとは言え、少し軽率であったことは彼女も理解したようだ。

 

 

「教祖としてのお説教はこれぐらいにしまして……」

 

 

 イストワールの表情がにこやかなものに変わると、「困った子供を助けるという行為、一人の人としてとても感心できます。よくできましたね、ネプギアさん」とネプギアを褒める。

 

その姿は子供を褒める母親のようであった。

 

 

「街中でも目立っていたらしく、モンスター退治と合わせて、【みんつぶ】で話題になっていますよ」

 

 

 イストワールは更に笑顔になってネプギアを褒めた。

 

時には叱ることもあるが、基本的にはネプギアは褒められることの方が多い。

 

イストワールとしても、ネプギアを褒めるとネプテューヌの相手で溜まったストレスが癒されるので少々ネプギアには甘いところもある。

 

ちなみに【みんつぶ】とは色々なことを呟けるゲイムギョウ界のSNSで、現実世界のツイッターのようなもの。

 

大抵の人が自分によく似たアバターを使い他者との交流を行っている。

 

イストワールは人口生命体の能力で、手を使わずにこのようなSNSの閲覧ができるので、食事をしつつ、ネプギアの話を聞きながらも、みんつぶを見ていたのだ。

 

 

「本当だ。好意的な意見がいっぱい……うれしいな」

 

 

 イストワールに言われて、Nギアを使って、みんつぶを確認するネプギア。

 

そこには好意的な意見が山ほど書かれていた。

 

 

「あっ……なんだかシェアエネルギーが上がっている気がします」

 

 

 ネプギアがつぶやく。

 

ネプギアの行為が、みんつぶで拡散されたことにより彼女に対する信仰が上がり、シェアエネルギーを得ることが出来たのだ。

 

 

「ふふっ、この調子でよろしくお願いしますね」

 

 

 イストワールはそう言って微笑むと、「それではプラエさんと直接面会をしましょうか」と提案をする。



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#23 プロテノールと葛切あんみつ

 昼食をとったネプギアとイストワール。

 

二人はプラエに会う為にネプギアの部屋を訪れていた。

 

休息の為にベッドに座った状態のプラエの側でネプギアとイストワールが立って会話をしている。

 

 

「なるほど……。話はわかりました」

 

 

 イストワールが納得したように小さく頷く。

 

プラエ本人を交えた三人で今までの経緯を事細かにイストワールに話したのだ。

 

 

「それでプラエちゃんのこと暫く預かりたいんですけど、どうでしょうか?」

 

 

 ネプギアがイストワールに尋ねる。

 

イストワール少し申し訳なさそうな顔をして、「申し訳ありませんが快諾は出来ません。身元を始め不明な要素が多すぎます」と冷静に答える。

 

 

「……っ」

 

 

 プラエはイストワールの言葉に、しゅんと縮んでしまう。

 

ネプギアもガックリと肩を落とし、「そんな……」と呟く。

 

 

「分かってください。私は教祖として女神様の安全を最優先する義務があるのです」

 

 

 イストワールはそう言うと、「最低でも、本人か保護者の身分証明書を提示していただきませんと」と続ける。

 

更にプラエを見ると、「プラエさん、貴方は何者なのですか? 時間を操る超能力者であり、外見も十歳以上に見えません」と質問をする。

 

 

「プラエはプラエなの。気付いた頃から時間と友達なの……」

 

 

 プラエがハの字眉毛の困った顔で質問に答えると、イストワールもハの字眉毛の困った顔で、「やはり、保護者と思われる、葛切あんみつさんからお話を伺うしかないですね」と言う。

 

 

「幸い、葛切あんみつという名前には聞き覚えがあります」

 

 

 イストワールが続けて言うと、ネプギアもプラエも驚いた顔をし、「そうなんですか?」とネプギアが尋ねる。

 

イストワールは小さく頷き、「はい、フィナンシェさんから伺ったことがあります」と答える。

 

フィナンシェとはルウィーに勤めるメイドで主に守護女神のブランとロムとラムの世話をしている女性だ。

 

イストワールとも交流があり、何年も前からメル友として交流をしている。

 

 

「今からすると十年以上前の友人で犯罪組織の暴漢から逃げる時に囮になって自分を逃がしてくれたと。その後音信不通で探し続けているけど見つからないと嘆いておりました」

 

 

 イストワールの説明に、「それなら、フィナンシェさんも大喜びですね」とネプギアがフィナンシェとあんみつが再開できることを、まるで自分のことかのように喜ぶ。

 

 

「ええ、それにフィナンシェさんにあんみつさん本人であることを確認出来た上で、あんみつさんに身分証明書を提示していただければ、身元の保証が出来ます」

 

 

 イストワールがそう言うと、ネプギアは明るい声で、「そうすれば……!」と言う。

 

イストワールはネプギアの言葉に頷くと、「はい、お二人のご希望を叶えることが出来るでしょう」と微笑む。

 

 

「そうなの!」

 

 

 プラエは喜びの声を上げると、「プラエどうしたらいい? 何したらいいの?」と逸る気持ちを抑えられないかのようにイストワールに問いかける。

 

イストワールは右手で軽くプラエを制すると、「できれば、あんみつさんのお写真などをいただけないでしょうか? フィナンシェさんをお呼びするにも何か証拠が欲しいので」と言う。

 

 

「あんみつの写真ならあるよ!」

 

 

 プラエはいそいそと服の下に入っていたペンダントを取り出して外そうとする。

 

 

「んしょんしょ!」

 

 

 逸るあまりペンダントを上手く取り出せないプラエを見かねたネプギアは、「プラエちゃん、落ち着いて。深呼吸」と優しく語り掛けながら彼女の肩に右手を置く。

 

 

「うんっ……すぅはぁすぅはぁ……すぅぅぅ……はぁぁぁぁ……」

 

 

 プラエは素直にネプギアの言うことを聞いて深呼吸を始める。

 

 

「しょっと、……このペンダントの中にプラエと姉さま、それと、あんみつが写ってる写真があるよ」

 

 

 深呼吸のおかげか、落ち着きを取り戻したプラエはスムーズに服からペンダントを取り出し、首からそれを外すと、「これだよ」とネプギアに手渡す。

 

 

「それじゃあ、ちょっと見せてもらうね」

 

 

 ネプギアはそう言いながらペンダントを開ける。

 

そこには一枚の写真が入っており、今とまったく変わらない姿のプラエが椅子に座り、その右隣に長身で赤いゴスロリ衣装の銀髪の女性、左隣に黒髪で和服の女性が立っていた。

 

 

「この黒い髪の人があんみつさん?」

 

 

 ネプギアは写真の和服の女性を指差してプラエに尋ねる。

 

プラエは、「うん」と頷き、「あんみつはプラエと姉さまに仕えるメイドで、大和魂の大和撫子で武士道なの」と答える。

 

 

「確かに、和メイドって感じだね」

 

 

 ネプギアが頷きながら納得する。

 

よく見ると、着物の上にエプロンを付けてヘッドドレスを付けている。

 

その姿はお洒落な甘味処の店員によく見られる和メイドの姿であった。

 

 

「大和魂の大和撫子で武士道……フィナンシェさんの言っていた口癖とも一致します。同一人物である可能性が極めて高いですね」

 

 

 イストワールが右手にあごを当てながら頷く。

 

ネプギアはその言葉に笑顔を浮かべると、「それじゃあ、この写真を画像データにして、見やすいように加工したら、いーすんさんに送りますね」とNギアを操作する。

 

 

「反対側の銀髪の方がプロテノールさんですか?」

 

 

 イストワールがプラエに尋ねると、「うん、姉さま。見たことあるの?」とプラエが期待を込めた声で尋ねる。

 

イストワールは少し困った顔をして、「申し訳ありません。今の私のデータベースに該当する方はおりません」と謝ると、プラエは、「そうなの……」とガックリとうなだれてしまう。

 

 

「しかし、十年前の無名だった頃のネプギアさんを知り、ネプギアさんが今の理想を持つであろうことを見抜いていた人物……謎ですね」

 

 

 イストワールが難しい顔で腕を組んで首を傾げる。

 

 

「それにしても、二人とも綺麗な人だね」

 

 

 Nギアの操作を終えたネプギアがプラエにペンダントを返しながら言う。

 

続けてイストワールに、「写真のデータ送りました」と伝えた。

 

 

「了解しました。早速フィナンシェさんにメールを送っておきます」

 

 

 イストワールがそう言うと同時に、彼女の目の色が薄い緑色になり瞳の中に電波のような波が描かれる。

 

これは人口生命体であるイストワールが機械的な能力を使う時に現れる現象である。

 

フィナンシェへのメールを作成し、それを送信しているのだろう。

 

 

「あんみつさんは、綺麗で長い黒髪に着物が似合ってて素敵だし、プロテノールさんは褐色の肌にプラチナに近い長い銀髪が神秘的で凄くカッコいい」

 

 

 ネプギアが再度、あんみつとプロテノールの容姿を褒めると、「うん、あんみつも姉さまも素敵な人だから」とプラエが自分のことのように嬉しそうに微笑む。

 

そしてプラエは両手でネプギアの右手を握ると、「姉さまの肌の色を差別しないネプギアお姉さんは、やっぱりいい人」と言う。

 

 

「肌の色? 差別???」

 

 

 ネプギアが心底不思議そうに首を傾げる。

 

するとプラエはネプギアからゆっくりと手を離し、「本当はプラエもよく分からないんだけど、姉さまのように黒やそれに近い肌の人はカラードとか呼ばれて差別されるって言ってた」と説明をしてくれる。

 

 

「そんな肌の色だけで……」

 

 

 ネプギアが悲しそうな顔をすると、「悲しい話ですが事実です」とメールを送信し終わったイストワールが話に加わってくる。

 

 

「人は自分と違う者を恐れ排他する習性があります。そして、黒や灰色の肌は悪魔や魔物を連想させると蔑まれるのです」

 

 

 イストワールがそう言うと、「姉さまは強く気高い人だから自分の肌の色に誇りを持って、差別された人達の拠り所になって戦い続けてるって言ってた」とプラエが言う。

 

イストワールは右手をあごに当てて考える仕草をすると、「そのあたりから、何かの事件に巻き込まれた可能性もありますね」と呟く。

 

 

「そんな……」

 

 

 プラエが悲しそうに言うと、ネプギアは優しい声で、「きっと大丈夫だよ。プロテノールさんはプラエちゃんを置いて行ったりしないよ」とプラエを励ます。

 

プラエを励ましつつ、ネプギアは別のことを考えていた。

 

 

(確かに私の親しい人達って、私と同じ黄色人種かベールさんやプラエちゃんみたいな白色人種だ……)

 

 

 ネプギアは次に黒や灰色の肌の人物がいないか記憶を探るが出てきた四人は全員ネプギアと敵対した者だった。

 

 

(黒い肌はクロワールさん、灰色の肌は下っ端にマジック・ザ・ハードとマジェコンヌ……)

 

 

 クロワールは今はある人物に捕まって改心してるかもと思える。

 

マジェコンヌは神次元に限っては改心したと言うか、ナスの栽培にハマっている。

 

マジック・ザ・ハードはネプギアに敗れ死亡。

 

下っ端は未だに指名手配犯で逃げ回っていると、友人のアイエフから聞いている。

 

どれも完全に改心したという確証のある人物はいない。

 

ネプギアはそこまで考えると、肌の色に人格が関わっているのかもと思ってしまう。

 

 

(……そんな筈ない。肌の色だけで人格が決まるなんて、そんな差別的な考え方よくないよ)

 

 

 そんなふうに思っていると、プラエが心配そうな顔でネプギアを見てくる。

 

 

「ネプギアお姉さん、どうしたの? 何か辛そうな顔してる」

 

 

 プラエの言葉に、「……心配させちゃってごめんね。ただ、私の会った灰色の肌の人達は前に言った犯罪組織の関係者が多くて……」とネプギアは少し落ち込んだ声を出す。

 

 

「姉さま言ってたよ、差別されると人格が歪んで悪い人になっちゃうって。だから、姉さまはその悪い連鎖を断ち切る為に戦うって」

 

 

 プラエがそう言うと、ネプギアは【ハッ】とした顔になり、「そっか、プロテノールさんってカッコいいだけじゃなくて立派な人なんだね」とただ沈んでいた自分に対して、行動をおこしていたプロテノールを尊敬するように言う。

 

プラエは誇らしげに、「うん、姉さまは立派な人」と言うが、すぐに声のトーンを落として、「でも、姉さまのやり方だけじゃきっとダメなんだと思う。だから、姉さまとネプギアお姉さんを合わせて二人の力で調和と協調の道を探して欲しいと思う」と続ける。

 

 

「そっか、私もプロテノールさんに会って色々お話したいな。そうすれば、私の迷いや弱いところも改められる気がする」

 

 

 ネプギアが心の底からそう思い頷きながら答える。

 

 

「お話は変わりますが、あんみつさんと連絡を取る方法はありますか? 出来れば今すぐにスマホか携帯ゲーム機で直接話せれば良いのですが……」

 

 

 イストワールが話を、あんみつのことに戻す。

 

プラエは申し訳なさそうに、「ごめんなさい。プラエ、スマホも携帯ゲーム機も持ってないの」と答える。

 

イストワールは、「あんみつさんは?」と尋ねるが、「あんみつも持ってない……と思う。プラエ達、森の中に隠れるみたいに暮らしてるから」とプラエが答える。

 

 

「でも、お家にはプラネテューヌの街に行ってきますってメモしてきたから、お買い物から戻ってきた、あんみつがそれを見てプラエを探しに来てるかも」

 

 

 プラエの話に、「そうですか……」とイストワールは肩を落とす。

 

しかし、すぐに頭を切り替えて「街やみんつぶで、ネプギアさんとプラエさんのことは話題になっていましたし、ギルドや衛兵達にも、あんみつさんを見かけたら連絡するようお願いしておきましょう」と提案する。

 

同時にイストワールの目が先ほどと同じ薄い緑色になり通信モードに変わる。

 

ギルドや衛兵へ連絡をしているのだろう。

 

 

「オハナシチュウモウシワケアリマセン。プラエサマニヒロウノイロガミラレマス。キュウケイサレルコトヲテイアンシマス」

 

 

 今まで黙っていたネプギアンダムがそう言うと、「プラエ別に疲れてなんか……」とプラエが抗議しようとするが、「無理しちゃダメだよ。ネプギアンダムのメディカルチェックは優秀なんだから」とネプギアが右手でプラエをベットに寝かせるように優しく制する。

 

 

「……うん……ちょっと疲れたかも」

 

 

 プラエはそう言いながら、ネプギアに促されるままにベッドに横になる。

 

 

「それでは、プラエさんはネプギアンダムに任せて、私達はクエストへ向かいましょう」

 

 

 通信を終えたイストワールがそう言うと、「行っちゃうの?」とプラエが少し寂しそうに言う。

 

 

「ごめんね。また困ってる人がいるから助けに行かなきゃいけないの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「うん、わかった。プラエいい子で待ってるから早く帰ってきてね」とプラエは素直に聞き分けをしてくれる。

 

 

「……本来なら、ネプテューヌさんが行くべきクエストで、ネプギアさんはプラエさんを診るなり、あんみつさんを探すなり出来た筈なんですけどね……」

 

 

 そんな二人を見ながら、イストワールが肩を落とす。

 

ネプテューヌの放蕩ぶりは勿論、それを止めることの出来ない自分の無力さを嘆いてるようだ。



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#24 イストワールとクエストへ

 ネプギアとイストワールはプラネタワーを後にしてプラネテューヌの街に出かける。

 

プラネテューヌの街は一見平和のようだが、国のトップのネプテューヌがあんな感じな上に突如ナナメ上の発想で突き進み産業や貿易で大きな赤字を出すことがある。

 

その度に教祖であるイストワールが頭を悩ませながら国を立て直している。

 

イストワールが居なければ、この平和も発展もなく、他国の侵略を受けていたかもしれない。

 

 

「ところで今日のお仕事はどうでしたか?」

 

 

 イストワールはネプギアの午前中の仕事が気になったので尋ねてみると、「はい、特に問題なく終わりました。明日の予定もバッチリです」ネプギアは素早く答える。

 

 

「流石はネプギアさんですね」

 

 

 ネプギアの期待通りの答えにイストワールは嬉しそうに頷く。

 

ネプギアは、「これぐらい普通ですよ」と謙遜すると、「ところで、書類の決裁で聞きたいことがあるんですけど……」とイストワールに尋ねる。

 

イストワールは優しい声で、「なんでしょう?」とネプギアの質問を聞いた。

 

二人はそんなふうに仕事の進捗の確認や質問を交わしながらプラネテューヌのギルドに向かう。

 

 

「それにしても、ネプテューヌさん宛のクエストならネプテューヌさんにやらせた方がいいと思いますけど」

 

 

 イストワールがネプギアに忠告をする。

 

ネプギアは午前中にギルドを訪れた際に、是非ともネプテューヌにやってほしいというクエストを数件見つけたのだ。

 

依頼者からの冒険者や女神の指名は自由であり、その辺りの調整もギルドの仕事である。

 

基本的には難易度の高いクエストが女神に回されるが、その中でも指名があると優先度が高くなる。

 

ネプテューヌは人気があるので、彼女に仕事を頼む者は多いのだが、本人があの調子なのでクエストが停滞を起こしており、ギルドも教会まで連絡ができずに一般冒険者を頼っている。

 

ネプギアはそのクエストも受けたいとイストワールに懇願したのだ。

 

 

「こんなことをしても、ネプテューヌさんの為にならないと思いますが……」

 

 

 イストワールが再び忠告をする。

 

あまり姉を甘やかさない方がいいと言いたいようだ。

 

イストワールの言いたいことを理解しているネプギアは小さく苦笑いをしながら、「でも、やるならいっぺんにやった方が効率がいいと思うんです」と答える。

 

 

「それはそうですが……」

 

 

 なおも難色を示すイストワール。

 

ネプギアは真面目な顔で、「それに困ってる人は一日でも早く助けたいですから」と言う。

 

 

「ですが、ネプテューヌさん宛のクエストであり……」

 

 

 まだ納得をしてくれないイストワールに、「サンタさんだって忙しいから、お父さんやお母さんが代わりをしてくれるんじゃないですか。それと同じです」とネプギアが大真面目な顔で言う。

 

見ての通り、ネプギアは今でもサンタクロースを信じている。

 

彼女はボランティアでプラネテューヌの子供にプレゼントを配ることもするが、それはあくまでもサンタクロースの代わりであり、本当はサンタクロースがいないからと思っているわけではない。

 

サンタクロースが来ないのは、彼が本当に恵まれない子供たちに優先的にプレゼントを配って忙しい為だと思っている。

 

その為、女神が庇護しているプラネテューヌの子供に関しては自分達が代わりをすべきだと考えているのだ。

 

サンタクロースが来ないから居ないじゃなく、彼にも理由があると考え、更にそれを手助けしようという考えに至るのは彼女らしいと言えば彼女らしい。

 

イストワールはそんなネプギアのピュアな心にほだされたようで、「わかりました……」と渋々と折れる。

 

 

(不真面目なサンタクロースもいたものです……)

 

 

 イストワールはネプテューヌのことをサンタクロースに当てはめて、心の中で愚痴をこぼした。

 

 

 

****

 

 

 

 ギルドに着いたネプギア達は建物の中に入る。

 

午後になったおかげか、何人かの冒険者がクエスト探して端末を操作していた。

 

 

「こんにちは」

 

 

 ネプギアはそんな冒険者達に明るく声をかける。

 

冒険者達は、「こんにちは!」、「お疲れ様です」などと返事を返したり、労いの言葉をネプギアにかけてくれる。

 

ネプギアはカウンターに向かい、「こんにちは」と午前中も対応をしてくれた受付の男性に声を掛ける。

 

 

「あっ! ネプギア様、今日は本当にありがとうございます。おばあさんも喜んでいましたよ」

 

 

 男性はネプギアに嬉しそうに話掛ける。

 

どうやらあの後、老婆に請求の連絡をしたところ大変感謝をされたようだ。

 

 

「なにかあったのですか?」

 

 

 イストワールは男性の態度が気になり、ネプギアに問いかける。

 

ネプギアは、「おばあさんが壊れた古時計を直して欲しいって、一般向けのクエストがあったんですけど、それを私が受けたんです」と午前中の出来事をイストワールに話す。

 

このクエストはプラエとほぼ無関係なので、先程の説明からは端折られていた。

 

 

「おじいさんとの思い出の時計だったそうで、一刻も早く治してあげたくて……勝手なことしてごめんなさい」

 

 

 ネプギアは女神でありながら雑用的なクエスト受けてしまったことをイストワールに謝る。

 

前述したが、女神はそれ相応のクエストを受けるべきだし、このような雑用までしてしまったら、依頼者からの女神に対する指名も増えてギルドにも迷惑が掛かるのだ。

 

 

「謝ることはありませんよ。時にはこういった小さな人助けも大切です。でも、本来のお仕事に影響しない程度でお願いしますね」

 

 

 しかし、イストワールはネプギアの行動を認めつつも、軽くたしなめる。

 

ネプギアの優しさを尊重し、その判断を信用している言葉であった。

 

前述もしたが、やはりイストワールは少々ネプギアには甘い。

 

 

「おばあさんには女神様の立場を伝えた上で、今回は特別ですよと説明しておいたので大丈夫でしょう」

 

 

 受付の男性はそう言うと、今度は不思議そうな顔で、「それにしても、午後もクエストですか?」とネプギアに尋ねる。

 

更に今度は心配そうな顔になると、「少しは休まれた方がいいですよ」と毎日真面目にクエストをこなしているネプギアの体を心配するように言った。

 

 

「えっと……忘れてたお仕事があって……」

 

 

 ネプギアは流石に姉の仕事を肩代わりとは言いにくいので、言葉を濁す。

 

しかし、「ははーん、さてはネプテューヌ様がまたサボってるんだな」と受付の男性はお見通しと言わんがばかりにネプギアの隠し事を言い当てる。

 

更に、「それで教会に送ったクエストと合わせて、ギルドにあるネプテューヌ様宛の仕事も片づけておこうってところですかね」とズバリとネプギアの行動を全て当てて見せる。

 

 

「ど、どうしてわかったんですか!」

 

 

 ネプギアは心底驚いたようだが、「ネプギア様はわかりやすいからな。それにネプテューヌ様の仕事の代わりなんて昨日今日の話じゃないですしね」と受付の男性は笑いながら言う。

 

 

「そんなに分かりやすいかな、私……」

 

 

 ネプギアはそう言うと両手を頬に当て肩を落とす。

 

良くも悪くも素直なネプギア、隠し事はあまり得意な方ではない。

 

 

「そんなに落ち込まないで下さいよ。それにこちらでも今日が期限のクエストを把握してますから、いつネプテューヌ様が来るか待っていたんですから」

 

 

 受付の男性がそう答えると、ネプギアは、「あっ……」と呟きながら気まずそうな顔をする。

 

とっさの事とは言え、隠し事をする相手が悪かったようだ。

 

 

「ギルドにもご迷惑をお掛けしているようで申し訳ありません」

 

 

 ネプギアの横にいたイストワールが受付の男性に頭を下げるが、「こんなのプラネテューヌでは日常茶飯事だぜ」と男性はイストワールに対して陽気に笑いかける。

 

 

「やっぱり、お姉ちゃんはありのままが受け入れられているんですね。私も見習わなきゃ」

 

 

 そんな男性の姿に、ネプギアは目を輝かせて姉に感心をする。

 

ネプギア姉びいきは少々度が過ぎており、冷静に考えれば明らかにダメなことでもネプテューヌのすることなら感心してしまうことたまにある。

 

 

「見習わないで下さい! ネプギアさんがネプテューヌさんみたいになってしまったらプラネテューヌはお終いです」

 

 

 イストワールは、そんなネプギアに慌ててストップを掛ける。

 

受付の男性はそれを見ながら、「ははは、違いない」と笑うと、「今のプラネテューヌの女神様へのお仕事は全部ネプギア様が片付けているからな」とイストワールの意見に同意する。

 

 

「笑い事ではありませんよ」

 

 

 イストワールがそう言って眉をハの字に曲げると、そこにネプギアが、「でも、国民のみなさんには受け入れられていますし……」とそれとなくネプテューヌをフォローする。

 

 

「そこが問題なんです! 国全体がこんな状況に馴染んでしまったら、国家としての成長が望めなくなります!」

 

 

 しかし、イストワールはすぐさまにネプギアに反論をぶつけると、「はいっ!」とネプギアはイストワールの剣幕に圧されて思わず背筋が伸びてしまう。

 

 

「現にプラネテューヌの競争力はゲイムギョウ界で最下位なんです!」

 

 

 イストワールはそう叫ぶと、「それをなんとか改善しようと、毎日頭を悩ませているのにネプテューヌさんときたら……」とブツブツと愚痴を言い始める。

 

イストワールが危惧しているのはネプテューヌが仕事をしないことがプラネテューヌで当たり前になり、国の成長や競争力が失われることである。

 

 

「あぅぅ……やぶへびだったかな……」

 

 

 荒々しく肩を怒らせるイストワールを見ながら、ガックリと肩を落とすネプギア。

 

 

「ええと……ネプテューヌ様へのお仕事って言うとこれでいいのかな」

 

 

 受付の男性が苦笑いをしながらコンソールを操作すると、カウンターのモニターにクエストの詳細が書かれている画面を映し出される。

 

 

「はい、間違いありません」

 

 

 ネプギアが気を取り直すと画面を確認してOKを出す。

 

ネプギアはNギアを取り出して受注を済ませ、「えっと……採取クエストが二件ですね」とクエストの内容を確認する。

 

 

ピロリロリン!

 

 

 ネプギアがクエスト確認している最中に、Nギアから電子音が鳴ると、「達成したクエストがあります」と電子音声が聞こえてくる。

 

 

「あっ、この採取クエストのアイテム、私持ってます。さっきのひよこ虫との戦いで手に入れたみたいです」

 

 

 ネプギアはそう言うとNギアを操作する。

 

すると、Nギアから動物の皮らしき物が出てくる。

 

倉庫サービスのポケットを利用して取り出したものである。

 

ネプギアがその皮をギルドのカウンターに置くと、「はい、これで間違いありません」と受付の男性は嬉しそうに頷く。

 

 

「オーバーキルのボーナスアイテムかな? プラエちゃんに感謝しなきゃ」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに呟く。

 

先程のオーバーキルだが、シェアや加護の他にも、対象の落とすアイテムが増えることがある。

 

それがボーナスアイテムであり、これにより女神以外の冒険者なども積極的にオーバーキルを狙うことがある。

 

とは言えオーバーキルはスタミナやMPを大量に消費するので、ボスのトドメにするのがセオリーである。

 

ちなみに、最初にクエストを確認したときは、ひよこ虫と戦う前だったので、このアイテムを所持していなかったのだ。

 

 

ピロリロリン!

 

 

 続けてNギアから電子音と共に、「クエストに必要なアイテムが合成可能です」と電子音声が聞こえてくる。

 

 

「このクエストも達成可能みたいです。これもボーナスアイテムのおかげかな」

 

 

 ネプギアそう言うと、またNギアを操作して機械の部品と工具を呼び出す。

 

 

「今作っちゃいますね」

 

 

 ネプギアはそう言うと部品をカウンターに並べ、工具を鮮やかな手つきで操り部品を組み立てて行く。

 

 

「できました!」

 

 

 あっという間に筒形の機械が出来あがる。

 

ネプギアはその機械をカウンターに置くと、「ん? ちょっと違うようですけど……」受付の男性は今度は訝しげにその品物を見る。

 

 

「あっ! わかりますか! 実は出力が30%増しで追加機能が……」

 

 

 ネプギアは男性の表情を無視して嬉しそうに語りだす。

 

プラエと話した時にもあったが、機械の話になると我を忘れて生き生きするのはネプギアの癖である。

 

 

「と、とにかく凄いのはわかりました……依頼主にはよく説明しておきます」

 

 

 受付の男性はネプギアに気圧されながら何とか話を切り上げるが、「電子マニュアルもありますから安心ですよ」とネプギアは男性の引き気味な態度に気付かずニコニコしながら説明を続ける。

 

 

「クエストに必要なアイテムを合成可能かを自動検索できるなんて、また改造をしたのですか?」

 

 

 イストワールがネプギアに尋ねると、「はい! この子の性能はゲイムギョウ界一です」とネプギアが自身満々に答えながら右手でNギアを高く掲げる。

 

ネプギアが所持しているNギアは彼女の趣味によって改造されており、夕飯の献立からハッキングまでなんでもござれな超ハイスペック仕様になっている。

 

しかも日々バージョンアップを重ねて成長中である。

 

 

「これであとは最初にあった討伐クエストだけですね」

 

 

 偶然とはいえネプギア活躍で一挙に二件のクエストが解決したイストワールはすっかり上機嫌になったようだ。

 

 

「それじゃあ、クエストに向かいましょう」

 

 

 ネプギアがクエストに向かうよう提案し、ギルドを出て行こうとすると、「ネプギア様、大丈夫ですか?」と受付の男性は心配そうに声を掛ける。

 

 

「私だけじゃ頼りないかもしれませんけど、いーすんさんも一緒ですから」

 

 

 本来はネプテューヌが受ける討伐クエストは自分には荷が重いと思ったネプギアは、イストワールが同行するから大丈夫だと主張する。

 

イストワールは優秀な魔法使いで、女神程ではないが高い戦闘能力を持っているのだ。

 

 

「いえ、ネプギア様の実力を疑っているわけじゃないんです」

 

 

 しかし、受付の男性の心配事は別のようであった。

 

何が心配なのか分からないネプギアは頭に?マークを浮かべて、「え?」と言って首を傾げる。

 

 

「最近、お仕事ばかりでキツくありませんか? 私達の方で期限を延ばすようにも出来ますし、今日はもう休まれては?」

 

 

 受付の男性は真面目すぎるネプギアの体の心配をしていたのである。

 

 

「ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。私がお仕事をすることでプラネテューヌやゲイムギョウ界が少しでも良くなって、お姉ちゃんや国民のみなさんが喜んでくれるならそれで幸せですから」

 

 

 ネプギアが迷いのない純粋な瞳で答えると、「くぅ~! 尊い! 尊いねぇ! 流石は女神様だ。尊過ぎて心臓発作を起こしそうだ」と言いながら男性は左胸を押える仕草をする。

 

 

「えええっ! 大丈夫ですか! 救急車呼びましょうか?」

 

 

 ネプギアは本気で心配して、病院に連絡するようNギアを取り出すが、「演技ですから心配しなくて平気ですよ」とイストワールは男性の見え見えの演技に騙されるネプギアを微笑ましく思いながら、ギルドの外に出るように促す。

 

本当に良くも悪くも素直な子である。



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#25 母と娘

 ギルドを後にしたネプギアとイストワールはプラネテューヌの街を出て、クエストの目的地であるバーチャフォレストに向かう。

 

バーチャフォレストはその名の通り自然溢れる森である。

 

 

「んー! 天気が良くて気持ちいいですね」

 

 

 ネプギアが太陽の光を浴びながら、気持ちよさそうに伸びをする。

 

するとイストワールが、「そうですね。今度ピクニックで来ましょうか」とにこやかに提案する。

 

 

「わあー! いいですねそれ。私、お弁当作りますね」

 

 

 本当に嬉しそうに同意するネプギアを見ながら、「ふふっ……楽しみです」と微笑むイストワール。

 

大きさで言えば圧倒的にネプギアの方が大きいのだが、ネプギアに接するイストワールの姿は保護者のようだった。

 

実際に昔から生きているイストワールの方が年長者なのだが。

 

 

「いーすんさん、機嫌直ったんですね」

 

 

 微笑むイストワールを見て機嫌が直ったことを安堵するネプギア。

 

先程まではネプテューヌをフォローするネプギアにでさえ食って掛かるほどにいきり立っており、常に怒りの漫符が付いていた程だ。

 

 

「ネプギアさんのおかげです」

 

 

 イストワールは目を閉じて胸に両手を当てながら、ネプギアに感謝の言葉を述べる。

 

ネプギアは、「え? 私何かしましたか?」と頭に?マークを浮かべながら首を傾げる。

 

ネプギアの中に特に心当たりになる行動や言動は思い浮かばないようだ。

 

 

「ネプギアさんが素直で良い子に育ってくれて本当に嬉しいのですよ」

 

 

 イストワールは今日のネプギアの何気ないが素直で真面目な行動に心癒されていた。

 

それがネプテューヌの不真面目さに対する負の感情を上回ったようだ。

 

 

「私、そんなに良い子でしょうか? 普通だと思います」

 

 

 ネプギアは唇に右手を当てながら不思議そうに言う。

 

彼女は自分のことを特別良い子だと思えなかった。

 

当たり前のことをしているだけだと思っている。

 

 

「その普通が出来ることが大切なのですよ。ネプギアさんならきっと良い女神様になれます」

 

 

 イストワールはネプギアに優しく微笑む。

 

しかし、逆にネプギアは表情を曇らせると、「……そうでしょうか……女神様って言うのは私みたいに地味な子じゃなくて、お姉ちゃんみたいに強くて明るくて綺麗な人じゃないと務まらないと思います……」と自信なさげに答える。

 

ネプギアにとって姉は女神の理想像であった。

 

それに比べて自分な華が無いと思っているのである。

 

 

「ネプギアさんにはネプギアさんの良いところがあります。それにネプギアさんはまだまだ成長段階です。自信を持ってください」

 

 

 イストワールはそんなネプギアを優しく励ますと、ネプギアは元気を取り戻し、「はい、私、少しでも立派な女神様になれるよう頑張ります」とイストワールの励ましを素直に受け取る。

 

その心中には大好きなゲイムギョウ界を守る女神として精進しようという決意が秘められていた。

 

 

「頑張って下さい。私も教祖として母としてネプギアさんを導きますから」

 

 

 イストワールはネプギアに満面の笑みを向ける。

 

 

「ありがとうござい……え? 母?」

 

 

 お礼を言おうとしたネプギアだが、途中でイストワールの発言を不思議に思い小首を傾げる。

 

 

「し、失礼しました! つい! 女神様に母などとおこがましいことを……」

 

 

 イストワールが顔を真っ赤にして頭を下げると、「い、いいんですよ! その……嬉しかったですし……」と素直な感想を伝えるネプギア。

 

嘘偽りの無い彼女の本心だった。

 

 

「嬉しかった……」

 

 

 ゆっくりと頭を上げるイストワールに、「はい! 私もいーすんさんのことお母さんがみたいに思ってます」とネプギアはイストワールにしっかり目を合わせて自分の思いを伝える。

 

ネプギアにとってイストワールは、小さいころから見守ってくれて色々教えてくれた、母のようで先生のような存在であった。

 

面白く奔放なネプテューヌとは別の意味でネプギアの育ての親と言っても過言でない。

 

イストワールの失言もネプギアを娘のように愛していることの表れであった。

 

その気持ちを察したネプギアは本当に嬉しかったのである。

 

 

「そう言っていただけると、心が救われます」

 

 

 イストワールは笑顔でそう答えると、「じゃあ、お母さんって呼んで甘えていいですか?」といきなり踏み込んだ提案をするネプギア。

 

 

「……え?」

 

 

 突然かつ大胆な提案に少し引き気味のイストワールに、「早速お願いします」ネプギアはイストワール向かって頭を突き出す。

 

 

「???」

 

 

 ネプギアの行動がイマイチ分からないイストワール。

 

 

「頭を撫でて褒めて下さい。お母さんみたいに」

 

 

 ネプギアはそんなイストワールに素直に言葉で要求をするが、「ええと……」とイストワールは困惑してしまう。

 

 

「さっきの採取クエストで活躍したから褒めて欲しいです」

 

 

 ネプギアが更にイストワール向けて頭を突き出す。

 

イストワールは観念したかのようにネプギアの頭に右手を伸ばした。

 

 

「えらいえらい。ネプギアさんが良い子に育ってくれて、お母さん嬉しいですよ」

 

 

 イストワールはそう言いながら、ネプギアの頭を優しく撫でる。

 

色々な葛藤はあったようだが、いざ撫で始めるとイストワールも嬉しそうに右手を動かしながら微笑んだ。

 

 

「えへへ……お母さんの教育のおかげです」

 

 

 嬉しそうに目を細めるネプギアに、「しっかり者のようで、まだまだ甘えん坊さんですね」とイストワールは呆れつつもどこか嬉しそうであった。

 

 

「だって……お姉ちゃん、忙しくて構ってくれない時があるし……」

 

 

 ネプギアは恥ずかしそうに両指をいじる。

 

真面目でしっかり者の優等生ネプギア。

 

一見隙の無いようだが、実はかなりの甘えん坊だったりする。

 

ちなみにネプテューヌの忙しいは勿論【遊ぶのに忙しい】である。

 

現にゲームしてる時に、カーペットにジュースをこぼしても、ゲームに手いっぱいと言ってネプギアに拭かせることもある。

 

 

「ふぅ……ネプテューヌさんはダメなお姉さんですね。妹にこんな寂しい思いをさせるなんて」

 

 

 イストワールがネプギアの頭を撫でながらあやすような声で言うと、「そうですよ」と珍しくネプギアがワガママになる。

 

 

「お姉ちゃんは私を一日三回甘やかすことって法律作って下さい」

 

 

 普段のネプギアなら絶対に言わないようなワガママだが、甘えモードに入った彼女は平気でそれを言ってくる。

 

勿論、本気ではなくイストワールなら冗談と分かってくれるから言っているのだ。

 

イストワールもそれを分かってくれており、叱ったりツッコミをせず、「ふふっ……」と優しい微笑みを浮かべる。

 

 

「ダメですよ。そんな法律を作ってしまったら、ネプギアさんが甘えん坊な子になってしまいますし、何より私の可愛いネプギアさんがネプテューヌさんに取られてしまいます」

 

 

 イストワールもイストワールで母親役にノリノリなようで、撫でるだけじゃ足りないのか右手を止めると、ネプギアの頭に抱擁するように抱きつく。

 

ネプギアの鼻にイストワールの優しく甘い母親の匂いが漂ってくる。

 

 

「いーす……お母さん……」

 

 

 ネプギアは少し驚いたようだが、素直にイストワールの抱擁を受け入れると、目を閉じて気持ちよさそうにイストワールに身を委ねる。

 

その姿は大好きな飼い主に抱かれている子猫のようだ。

 

 

 十数分ほどそうしていた後に、ネプギアはゆっくりとイストワールから離れて、「うーーーーーん」気持ち良さそうに伸びをし、「充電完了です。いーすんさん、ありがとうございます」とイストワールにお礼を言う。

 

彼女の中の【甘えん坊成分】のようなものが十分にチャージされたらしい。

 

 

「どういたしまして」

 

 

 イストワールはそう言って微笑むと、「疲れたら、いつでも私のところに来てください」とネプギアに言う。

 

 

「はい!」

 

 

 ネプギアが嬉しそうに頷く。

 

 

「ただし、甘えてばかりだと、お母さん怒りますよ」

 

 

 イストワールは少し真面目な顔でそう言うと、ネプギアも真面目な顔で、「はい、気を付けます」と返事をする。

 

その姿は本当の仲良し親子のようであった。



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#26 器用貧乏

 バーチャフォレストの奥に向かうネプギアとイストワール。

 

仲間と一緒に行動する【パーティ】で戦いに臨むにはフォーメーションと役割分担が重要である。

 

 

 HPや防御力の高い者は前衛となり敵の正面に立ち、近接武器で攻撃を与えつつも敵の攻撃も受け止める役目がある。

 

対して後衛は前衛に守ってもらいながら遠距離攻撃したり、前衛のHPを回復したりなどの支援をする。

 

 

 今回はHPが高く、更に敵から受けるダメージを軽減する【防御力】も高いネプギアが前衛。

 

HPも防御力も低いが、遠距離から強力な魔法を得意とするイストワールが後衛というフォーメーションである。

 

 

「この先からモンスターがいるみたいですね」

 

 

 ネプギアはNギアの画面を見ながら言う。

 

Nギアにはレーダー機能が搭載されており、モンスターの動きを察知できる。

 

レーダーには自分を中心にして、前方に敵がいることを示す小さな赤い点が点滅をしている。

 

 

 モンスターは基本的に人間や女神の敵として認知されているが積極的に掃討するようなことはない。

 

人間の生活を脅かすような者がギルドに報告され、クエストとして女神や冒険者達に討伐される。

 

中にはモンスターの持つ希少アイテムが欲しいのでギルドにそれを依頼する者もいる。

 

 

「近隣の農家の皆さんが畑を荒らされたり、遊びに来た子供が入り口付近でもモンスターを見かけたそうですよ」

 

 

 イストワールがクエストの依頼された理由を説明してくれる。

 

彼女の言うように今回のクエストは前者であり、人間の生活を脅かすと思われるモンスターを退治して欲しいとのことである。

 

バーチャフォレストは自然豊かな場所なので、先程ネプギアやイストワールが話したようにピクニックに来る者もいる。

 

普段なら入り口付近はモンスターが近寄らないのだが、数が増えたらしく、入り口付近まで出てきたようだ。

 

畑を荒らされたという実害も出ているので、今回のクエストを依頼したらしい。

 

そろそろ、四月でピクニック日和となるので依頼の期限が今日だったのだ。

 

 

「気を引き締めていきましょう」

 

 

 イストワールが真面目な顔で言うと、ネプギアも真剣な声で、「はい」とうなずいて答える。

 

暫く歩くとネプギアの視界に、体長一メートルほどで巨大な水滴に犬の耳と尻尾と顔が付いたような生き物が映る。

 

 

「いました。スライヌです」

 

 

 これはスライヌと呼ばれるゲイムギョウ界では定番のモンスターである。

 

ひよこ虫に同様に強くはないが、徒党を組まれると厄介なモンスターである。

 

 

「ぬら~」

 

 

 スライヌが気の抜けるような声を上げる。

 

まだこちらに気付いてないようで、水滴のような体をボールのように弾ませて周囲をウロウロしている。

 

跳ねるたびに尻尾や耳が揺れて可愛らしい印象を受けるが、これでもモンスターである。

 

戦う力を持たない者が対峙すれば命を落とすこともありうる。

 

とは言え姿は可愛らしいので、スライヌのぬいぐるみやクッションなどのグッズも販売されている。

 

 

 クエストと立派な名前で呼ばれてはいるが、その実は野犬退治のようなもので、目立ちたがり屋で派手好きなネプテューヌが嫌がるのも仕方ないと言えば仕方ない。

 

しかし、こういう地道な市民の安全の確保や治安維持は大切なことだと言うのはイストワールが口を酸っぱくして説明している事だ。

 

真面目なネプギアは素直に理解を示してくれるが、快楽主義者的なネプテューヌはゲームなどで遊ぶ方を優先してしまう。

 

勿論、目の前で困ってる人がいればネプテューヌは快く手助けをするが、こういう事前に災いの芽を摘むというのは地味に思えて気が進まないようだ。

 

 

「ネプギアさん、落ち着いて先制攻撃を」

 

 

 イストワールはこちらに気付いていない様子のスライヌに対して、先制攻撃を提案する。

 

ネプギアは、「はい、お母さん」と真剣な顔で答えるが、イストワールは肩を落として脱力する。

 

 

「……呼んでいいとはいいましたが、クエスト中は止めて下さい」

 

 

 ハの字眉毛の困り顔で注意するイストワールに、「てへっ、嬉しくてつい……」と いたずらっぽく笑って舌を出すネプギア。

 

確信犯、彼女なりのお茶目である。

 

真面目な性格とは言え、彼女はできれば姉のように人を楽しませるようなことができるようになりたいと願っており、日々模索と努力を繰り返している。

 

 

「ネプギアさん!」

 

 

 ネプギアの名前を呼ぶイストワール。

 

怒っているのではない、スライヌが真後ろを向いたのだ。

 

 

「はいっ!」

 

 

 ネプギアは短く返事をすると駆け出す。

 

走るネプギアの表情は真剣そのものであった。

 

スライヌの姿が近づく。

 

ネプギアの右手にポーチから呼び出したビームソードが現れる。

 

スライヌはまだ振り向かない。

 

 

(捉えた! 行ける!)

 

 

 ネプギアはそう確信してビームソードを振り上げる。

 

 

「たあっ!」

 

 

 ネプギアは気合の入った叫びと共に、間合いに入ったスライヌに対してビームソードを振り下ろす。

 

 

「ぬらーーー!」

 

 

 避けることも防ぐことも出来なかったスライヌは434と大ダメージを受けて絶叫を上げる。

 

敵に気付かれていない状態での攻撃は【ハイドアタック】という不意打ちになり、普段より大きなダメージが出る。

 

以前にも書いたが、ネプギアは真面目な性格ではあるが常に正攻法で戦う程の自信家でもない。

 

本心では大好きな姉のように刀を振るい華麗な一撃必殺の戦いを夢見ているが、姉の真似をしても戦いに勝てないことを理解している。

 

しかし、謙虚なネプギアでも、自分が人より少し器用で、ある程度のことはそつなくこなせることは自任している。

 

その為、色々なところから貪欲に技術と知識を吸収し、勝つための手札を増やし、それを適切かつ惜しみなく使うのがネプギアの戦い方だ。

 

今のハイドアタックも近寄り方や気配の消し方を友人のアイエフに習って習得したものになる。

 

 

「ぬ、ら、ら……」

 

 

 大ダメージを受けながらも振り返るスライヌ。

 

 

「一撃じゃダメなの?」

 

 

 ネプギアが焦りの声を上げる。

 

見事なハイドアタックであったが、まだ倒してはいない。

 

スライヌのHPゲージはほとんど赤くなっているが、まだ二割ほど残ってる。

 

しかし、すぐさま炎がスライヌを包み、154のダメージが当たる。

 

 

「ぬら~~……」

 

 

 HPゲージが真っ赤になり地に伏せるスライヌ。

 

そしてその姿が消滅する。

 

 

「ふぅ……上手くいきましたね」

 

 

 安堵のため息を吐くイストワール。

 

炎を放ったのは彼女であった、【ファイアー】と呼ばれる初歩的な火属性の攻撃魔法である。

 

ネプギアの攻撃するタイミングに合わせた連携攻撃であった。

 

イストワールの手には武器の類は握られておらず、丸腰に見えるが座っている本が魔力を持っており、それが触媒となり魔法を強化する。

 

イストワールのような魔法使いは初歩的な魔法なら剣を振るうように即座に出すことが出来る。

 

これは詠唱破棄と呼ばれる技術で、詠唱をせずに魔法を放つことが出来る反面、威力や範囲が劣ってしまう。

 

その為に今のような連携や牽制などに使われるのが主で、魔法使いの見せ場である高威力広範囲の大魔法を使う時は詠唱を行い魔法陣なども準備する必要がある。

 

ちなみに、術者の力が強大になると上級の魔法も詠唱破棄を行い強烈な魔法を連発することも出来る。

 

 

「いーすんさん、アシストありがとうございます」

 

 

 ネプギアはイストワールの見事なアシストに感謝の言葉を述べると、「前衛のネプギアさんの働きがあってこそです」とイストワールが言い互いを称賛する。

 

ネプギアがイストワールに手のひらを向けると、イストワールも手のひらを向けて軽くタッチを交わす。

 

 

「今の様子からすると、スライヌに斬属性と火属性は有効のようですね。この二つの攻撃属性で押していきましょう」

 

 

 イストワールがそう言うと、ネプギアも、「はい」と頷く。

 

【属性】とは攻撃の種類であり、剣で斬るなら【斬】、炎で燃やすなら【火】と割り当てられており、それぞれ、行使する者の得手不得手や、受ける側の耐性などの相性がある。

 

今の戦闘で、ネプギアのビームソードによる斬属性の攻撃と、イストワールのファイアーによる火属性の攻撃が通じたので、今後も同じ攻撃で行こうと言うのだ。

 

 

「ドロップアイテムがあるようですね」

 

 

 イストワールはそう言いながら、スライヌが消滅した場所を見ると、そこには透明な正六面体の箱が浮いていた。

 

正六面体の箱は浮かび上がり、ネプギアの右太ももに付いているNギアの中に吸い込まれるように消えて行く。

 

Nギアのポケットのアプリでミニゲートを通して、インベントリに保管したのだ。

 

 

【ドロップアイテム】とは敵を倒した時に落ちるアイテムのことである。

 

殆どは合成に使う素材や売却することでクレジットを得ることのできる素材だが、ごく稀にレアアイテムという希少なアイテムを手に入れることが出来る。

 

 

「やった! レベルが上がりました!」

 

 

 ネプギアは嬉しそうに右手を上げて言うと、「私も上がったようですね」とイストワールも続く。

 

モンスターを倒したことで経験値を入手して、経験値が一定値に達したのでレベルが上昇したのだ。

 

ネプギアはNギアを見ながら、レベルアップによる能力値の上昇を確認する。

 

Nギアには自分の能力を確認することが出来る機能があり、レベルアップすると各能力の上昇やスキルの習得を知らせてくれる。

 

ゲイムギョウ界の住人はレベルアップによる能力の上昇やスキルの習得により、行動の幅を広げ成長をしていく。

 

 

「ネプギアさんは、近接、射撃の攻撃力の他に魔法攻撃力の上昇も良いようですね」

 

 

 ネプギアの隣で画面を覗いていたイストワールが感心したように頷く。

 

Nギアには近接攻撃力を表す【POWER】の数値が150以上、射撃を示す【SHOT】と魔法攻撃を示す【MAGIC】が130以上の数値を示していた。

 

一般的な冒険者の専門職のレベル1の平均的な数値が100になる。

 

例えば近接攻撃を得意とする戦士ならPOWERが100、魔法を得意とする魔法使いならMAGICが100。

 

それと比較すればいかにネプギアが優秀なのかがわかるだろう。

 

 

「最近は四女神オンラインで魔法使いしたり、ラムちゃんやいーすんさんに攻撃魔法を習ったので、その成果が出たみたいです」

 

 

 ネプギアは嬉しそうに両手で小さくガッツポーズをする。

 

彼女の言う通り、努力の成果が数字として出たのが素直に嬉しいのだろう。

 

 

「それにHPと物理防御力と魔法防御力などの防御関連の上昇は素晴らしいですね」

 

 

 イストワールが更にネプギアを褒める。

 

彼女の言うように物理防御を示す【DEFENSE】は180を超え、魔法防御の【RESIST】も180近い数値であった。

 

 

「いーすんさんや、お姉ちゃん、それに他のみんなを守る為に、この数値は欠かせません」

 

 

 ネプギアは少し誇らしげに言う。

 

彼女の攻撃は物理攻撃がメインだが、それ以上に大切なのはパーティの盾となって仲間を守ることだ。

 

ネプギアはそのことを誇りに思っており、自主鍛錬でも重点的に特訓する。

 

 

「更に、回復・補助能力に素早さや命中、回避、技量などの数値もそつなく上がって隙がありませんね」

 

 

 イストワールの言うように他の数値もかなりの高水準だった。

 

回復・補助能力の【SUPPORT】が130以上。

 

移動速度の【SPEED】が140以上。

 

命中率の【ACCURACY】が130以上。

 

回避率の【AVOIDANCE】が150以上。

 

技量の【DEXTERITY】が140以上の数値であった。

 

 

「弱体化・状態異常能力と運の伸びはあまりよくないみたいですが、それでも平均以上になりましたね」

 

 

 今度は少し数値が下がって、弱体化・状態異常能力の【WEAKENED】と運の【LUCK】が110を少し上回る程度になる。

 

しかし、以前のネプギアはこの二項目を苦手としており、以前までは平均以下だったのだが、弱点を克服する為に努力を続け今回の新作期になって平均以上まで持ってきたのだ。

 

 

「とても高水準でバランスの良い能力値です。これからの活躍が期待できますね」

 

 

 イストワールはネプギアのバランスの良い能力値の上昇をまるで自分のことのように喜んでいた。

 

しかし、ネプギアは少し表情を曇らせて、「でも、これって器用貧乏ですよね……」と悲しそうに呟く。

 

彼女は物事の飲み込みが早く、勉強や戦闘をはじめ、何でも要領よくこなせてしまう。

 

しかし、裏を返せば良くも悪くも尖った部分が無く、それが彼女のコンプレックスになっている。

 

基本的にパーティーは色々な分野を得意とする仲間達を集め、役割分担をしてそれぞれの長所と活かしつつ短所を補うもの。

 

だが、ネプギアは自分がその役割分担が曖昧なのが不安なようだ。

 

現に目の前のイストワールは魔法が得意で、同じレベル2でMAGICが200を超えている。

 

他にもネプテューヌのレベル1の数値を見た時、POWER、DEXTERITYが190を超えており、LUCKに至ってはレベル1で200を超えていた。

 

攻撃力と技量と運を活かした一撃必殺の戦士のネプテューヌに相応しい特化型の能力値だった。

 

更に自信を持っている防御関係もルウィーの守護女神のブランなら更に上の数値だろう。

 

他にも、SHOTとACCURACYならユニ。

 

MAGICならラム。

 

SUPPORTならロム。

 

SPEEDとAVOIDANCEならベール。

 

WEAKENEDならプルルートがレベル1でも200を超えていると思われた。

 

そんなメンバーが集まった時、自分の居場所が無いような気がしてならないのだ。

 

 

「器用貧乏とは、何事もうまくできるためにあちこちに手を出し、どれも中途半端となって大成しないことを言いますよね」

 

 

 イストワールが落ち着いた口調で言うと、「そうなんですよ。やっぱり一芸に秀でた方が良いですよね」とネプギアがしょんぼりしながら答える。

 

イストワールはそんなネプギアを優しい目で見つめながら、「ネプギアさんは十分に一芸に秀でていますよ」と言う。

 

ネプギアが心底不思議そうに、「え? どこがですか?」と質問すると、イストワールがニッコリと微笑み、「誰かの役に立ちたいという気持ちです」と答える。

 

ネプギアがイストワールの言葉に目を丸くすると、イストワールは、「ネプギアさんが色々なことに挑戦するのは、誰か役に立ち、誰かを守りたい為ですよね?」と質問する。

 

ネプギアが、「はい」と頷いて返事をすると、イストワールはネプギアに近づき右手で優しく頭を撫でてくれる。

 

 

「その強い気持ちがある限り、中途半端に終わることなどありません。ネプギアさんは全てに強い多芸多才なオールラウンダーになると、お母さんは信じていますよ」

 

 

 イストワールは微笑みながらそう言う。

 

ネプギアが顔を綻ばせ、「……お母さん……」と呟くと、「ですから、諦めずに頑張って下さい」とイストワールは頭を撫で続ける。

 

その言葉にネプギアは自信を取り戻し、「はい! 頑張ります」とネプギアは力強く頷く。

 

 

「それでは先に進みましょう」

 

 

イストワールがそう言うと、ネプギアは「はい!」と元気よく答える。



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#27 汚染モンスター

 ネプギアとイストワールはバーチャフォレストを道なりに進みながらスライヌを倒し、最深部まで向かっていく。

 

バーチャフォレストは一般人や冒険者も訪れることの多い場所なので、道もそれほど険しくなく障害となるスライヌを慎重に倒して行った二人は怪我もなく最深部に辿り着いた。

 

 

「多分あれが最後のスライヌです」

 

 

 ネプギアがNギアのレーダーを眺めながら言うと、「六体ですか……数的に不利ですね」とイストワールは難しい顔をする。

 

そこには六匹のスライヌが集まっていた。

 

二対六で数的な不利を不安に思っているようだった。

 

 

「でも、ここまでの戦いでレベルも上がってますし、慎重に戦えば大丈夫だと思います」

 

 

 ネプギアはイストワールの不安を払うかのように力強く言う。

 

ネプギアの言う通り、スライヌを倒しながら進んでいく内にネプギア達のレベルは3になっていた。

 

 

「ふむ……」

 

 

 イストワールは右手を口に当てて考え込むが、「そうですね。連携を乱さずに慎重に行きましょう」とネプギアの考えに同意する。

 

続いて、「では、今まで通り一体一体誘き寄せて倒しましょう」と提案する。

 

 

 ネプギア達は今までの道のりの中でも二、三体のスライヌの群れに出会ったが、その際には慎重に様子を見て、群れから離れた一体だけを攻撃して誘き寄せる戦法を使っていた。

 

これは昔からアクションゲームなどでよく見られるテクニックで誘引技などと呼ばれる基本戦法だ。

 

このテクニックを使わなかった為に格下のモンスターに囲まれて命を落とす冒険者も少なくない。

 

 

「はい、慎重にこつこつ行きましょう」

 

 

 ネプギアがそう言って頷いた時だった。

 

スライヌの群れの中の一体が黒い霧に包まれる。

 

 

「あれは!」

 

 

 イストワールが驚きの声を上げる。

 

 

「汚染!?」

 

 

 続いてネプギアが叫ぶ。

 

【汚染】とは過去に存在した犯罪神マジェコンヌへの邪な信仰心の影響でモンスターが狂暴化してパワーアップする現象だ。

 

ネプギア達が犯罪神を倒して以降は発生件数が下がったが、それでもゼロにはならない。

 

これはゲイムギョウ界のどこかにまだ犯罪神を崇める者が残っていることを意味する。

 

 

「くっ……こんな時に」

 

 

 イストワールが唇を噛む。

 

その間にも、黒い霧はスライヌを包む。

 

 

「ぬらああああああ!!!」

 

 

 スライヌが苦しそうな叫びを上げる同時に全身が黒く変色してしまう。

 

これが汚染である。

 

 

「ぬらあーーーーーー!」

 

 

 汚染されたスライヌはスライヌのものとは思えない荒々しい雄叫びを上げる。

 

 

「ネプギアさん、汚染モンスターは倒さないと増え続けてしまいます!」

 

 

 イストワールが焦りの叫びを上げる。

 

汚染モンスターは感染するように他のモンスターを汚染させていく。

 

その為に放置は厳禁で速やかに倒す必要があるのだ。

 

 

「はい、わかっています!」

 

 

 ネプギアが汚染スライヌに向かって走り出す。

 

ネプギアに気付いた汚染スライヌが振り向く。

 

 

(気付かれた! でも、もう遅い!)

 

 

 既にネプギアは汚染スライヌをビームソードの間合いに捉えていた。

 

本来ならハイドアタックを狙いたいところではあったが、何かの間違いで汚染モンスターを逃がすような間違いをすることは避けたかった。

 

 

「はあっ!」

 

 

ネプギアのビームソードが、振り返った汚染スライヌを切り裂くと168ダメージが当たる。

 

 

「ファイアー!」

 

 

 立て続けにイストワールのファイアーが汚染スライヌに当たると、「ぬらああ!」と炎に包まれた汚染スライヌが雄叫びを上げ、198のダメージを与えるが倒すには至らない。

 

汚染してパワーアップしたせいで、耐久力も上がっているのだ。

 

汚染スライヌのHPゲージはまだ五割ほど残っている。

 

 

「ぬがーーーーー!」

 

 

 汚染スライヌが荒々しい叫びと共にネプギアの右足に噛みつく。

 

 

「いたっ!?」

 

 

 苦悶の表情を浮かべるネプギア。

 

148のダメージを受けるとネプギアのHPゲージが三割ほど減少する。

 

 

「ぬららっ!」

 

「ぬらー!」

 

 

 更に、残った五体のスライヌがネプギアに気付いて襲い掛かる。

 

まず一匹目が、汚染スライヌの後ろから飛び跳ねて、ネプギアに正面からの体当たり攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「きゃっ!」

 

 

 ネプギアに105ダメージが当たり、ネプギアのHPゲージが残り五割まで減少する。

 

続けて二匹目がネプギアの左側から迫り、同じように体当たりを仕掛けてくる。

 

 

「あうっ!」

 

 

二匹目の攻撃で110ダメージを受けたネプギアのHPゲージが残り三割まで減ってしまう。

 

 

(このまま攻撃を受け続けたら負けちゃう……)

 

 

 ネプギアは真剣な顔で、これから攻撃をしようとしている残り三体のスライヌを見る。

 

三体が同時にネプギアの右側から迫ってくる。

 

 

「お願い、効いて! ダミーバルーン!」

 

 

 ネプギアが祈るように叫ぶ。

 

同時にネプギアの右手から小さな風船が飛び出す。

 

風船はあっと言う間に膨れ上がると、人の形になる。

 

 

「「「ぬらあ!?」」」

 

 

 驚愕の声を上げるスライヌ達。

 

三体のスライヌはネプギアへの攻撃を一旦止めて、突然登場した巨大な風船に向けて、「ぬらー!」と威嚇の叫びを上げる。

 

風船は雑ではあるが色合いと雰囲気はネプギアに似せているので、スライヌ達からすれば突然敵の援軍が現れたように見えたのだ。

 

 

「騙されてくれた……」

 

 

 ネプギアが安堵の声を上げる。

 

【ダミーバルーン】とは名前の通り、替え玉人形の風船である。

 

アニメのガアンダムに出てくる兵装を参考にネプギアが作ったもの。

 

スライヌのように知能が低い相手や、知能が高い相手でも視界の悪い場所や、乱戦や遠距離などからなら、騙して攻撃を逸らすことが出来る。

 

少し狡い手のような気もするが、ネプギアにとっては勝つための、そして仲間を守る為の大事な手札である。

 

 

「今回復します」

 

 

 その隙にイストワールがそう言うと、「天の恵み!」と叫ぶ。

 

同時に白い光がネプギアを包む。

 

するとネプギアHPが八割近くまで回復する。

 

【天の恵み】とはイストワール専用の光属性の回復魔法である。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ネプギアは三体のスライヌと対峙しながら手短にイストワールにお礼を言う。

 

HPが回復して余裕のできたネプギアは、再び汚染スライヌに狙いを絞り、右側から回り込む。

 

ネプギアは走って距離を一気に詰める。

 

 

「てえええぃ!」

 

 

 気合を入れて思いっきり上段からビームソードを斬り下ろす。

 

 

ザシュゥ!

 

 

 斬り付ける音が豪快に響くと、汚染スライヌに321の大ダメージが当たる。

 

 

「ぬらーーーー!」

 

 

汚染スライヌは絶叫を上げて戦闘不能になる。

 

 

「やったあ! クリティカルヒット!」

 

 

 左手で小さくガッツポーズをしながら喜ぶネプギア。

 

【クリティカルヒット】とは低確率で通常よりも大きなダメージが与えられることである。

 

基本的には低確率で稀なことではあるが、技量や運または装備品によりその確率を上げることも出来る。

 

 

「ぬらー!」

 

 

 残ったスライヌの一匹が怒ったようにネプギアに体当たり攻撃を仕掛けるが、「見切りました!」と言いながらネプギアはビームソードを巧みに使ってスライヌの攻撃を受け流す。

 

するとネプギアに対してダメージは表示されず【parry】と表示される。

 

 

 これは【パリイ】と読み、今のネプギアのように武器を使って受け流したり弾いたりすることを意味する。

 

これもクリティカルヒットと同様に低確率で発生し、技量に素早さに運、それに装備品によりその確率を上げることも出来る。

 

又、パリイもアボイドも受ける側が何度も攻撃を見て、相手の攻撃を見切ると更に発動率が上がる。

 

これを学習能力と言い、真面目で何事もそつなくこなすネプギアはどんなタイプの敵の攻撃もすぐに学習するので、この数値が高い。

 

パラメータでは、LEARNINGと表示され、現在のネプギアは210もの数値がある。

 

その為、短時間でスライヌの攻撃を見切ったのだ。この数値の差が高ければ高いほど長期戦の命中率と回避率が高くなる。

 

ちなみに、勘と閃き、そして運による戦いを得意とするネプテューヌはこの数値が残念なことになっておりレベル1でも50しかない。

 

それにより、短期決戦ならネプテューヌの方が有利だが、長期戦になると学習能力が活きてくるネプギアの方が有利になる。

 

 

「ていっ!」

 

 

 更に無防備になったスライヌにカウンターの刺突攻撃を当てる。

 

スライヌは、「ぬらっ」と悲鳴を上げて、285のダメージを受ける。

 

 

「とどめです!」

 

 

 ネプギアがビームソードを引き抜くと同時に体を捻る。

 

 

「たああああっ!」

 

 

 左足を軸にしたネプギアの右回し蹴りが、スライヌに襲い掛かる。

 

ひよこ虫との戦いでも見せたカウンター連続攻撃だ。

 

 

「ぬら~~!!!」

 

 

 当然スライヌも避けられず、197のダメージを受けると大きく放物線上に吹き飛ばされる。

 

残念ながらスライヌのHPは僅かに残っていた。

 

 

「お見事です、ネプギアさん」

 

 

 だが、イストワールがネプギアを称賛しながらファイアーを放つ。

 

 

「ぬーーらーーーー!!!」

 

 

 空中で炎に包まれたスライヌは227ダメージを受けて戦闘不能になりながら落下をする。

 

 

「ぬらら……!」

 

 

 残った一匹のスライヌはネプギア達の見事な連携に腰が引けてしまったようだ。

 

ダミーバルーンに騙された三匹は未だに風船に向けて威嚇をしている。

 

 

(お願い、逃げて。そうすれば倒さずに済むから)

 

 

 ネプギアはスライヌに向けて祈った。

 

心優しい彼女は無益な殺生を好まない。

 

このバーチャフォレストから去ってくれれば倒さずに済む。そう思っていた。

 

 

「ぬがああああ!」

 

 

 しかし、その願いは空しく、スライヌが苦しそうな叫びを上げる同時に全身が黒く変色してしまう。

 

既に感染していたのだ。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 ネプギアは悲しみを抑えて、汚染した以上倒せなくてはいけないという判断を素早く下すと、ジャンプしてスライヌに襲い掛かる。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ネプギアの右足によるジャンプキックが汚染スライヌに命中する。

 

汚染スライヌに167のダメージが当たると同時にネプギアは着地して、「アッパー」と左手によるアッパーを汚染スライヌに当てて、更に141のダメージを与える。

 

 

「この一撃で決めます! ミラージュダンス!」

 

 

 ネプギアがくるくると回転しながら舞うような剣技を次々と汚染スライヌに当てる。

 

最後に強烈な切り抜け攻撃と共に419の大ダメージが当たる。

 

【ミラージュダンス】はネプギアのオリジナル必殺技。

 

舞うような剣技が相手を幻惑しつつ切り裂く、斬属性の技。

 

アッパー龍昇拳の応用で、アッパーミラージュダンスと言ったところだろう。

 

 

「ぬがあぁぁぁぁ!?」

 

 

 汚染してパワーアップしたスライヌもこれにはたまらず戦闘不能になる。

 

 

「あと三体!」

 

 

 ネプギアは素早く残り三体のスライヌに振り向く。

 

そこには、未だにダミーバルーンに騙されて吠えてる三体のスライヌがいた。

 

 

「あはは……思った以上に効果があったみたい」

 

 

 脱力して左肩を落とすネプギア。

 

 

(敵の戦力は半減してるし、これで逃げてくれれば……)

 

 

 ネプギアは再びスライヌが戦意喪失して逃げてくれることを願う。

 

しかし、その願いはまたしても叶わなかった。

 

 

「ぬらああああああ!!!」

 

 

 三体のスライヌが同時に苦しむと色が黒く変色し始める。

 

 

(汚染スライヌ三体は不利!)

 

 

 ネプギアは素早く頭を切り替えると、汚染中のスライヌ一体に狙いを絞り左手を突き出す。

 

 

「止まって、トリモチ!」

 

 

 ネプギアの左手から白い塊が汚染スライヌ目掛けて飛んでいく。

 

 

ベチャ!

 

 

 白い塊は粘着的な音を立てると、汚染スライヌとダミーバルーンに張り付く。

 

 

「ぬららら!?」

 

 

 汚染スライヌが困惑の声を上げる。

 

白い塊はガムのように伸びて、ダミーバルーンに張り付けられた汚染スライヌは上手く動けないのだ。

 

【トリモチ】は鳥や昆虫を捕まえるのに使う粘着性の物質。

 

それをネプギアがモンスター用に大型化改良したもの。

 

これも、ガアンダムに出てくる兵装なので、そこからも影響を受けている。

 

相手を傷付けずに無力化できる点はネプギアらしいとも言える。

 

 

「「ぬらああああああ!!!」」

 

 

 残ったに二体の汚染スライヌがネプギアに襲い掛かる。

 

 

「いーすんさん!」

 

 

 ネプギアが後衛のイストワールに大声を掛けると、イストワールは、「了解しました」と素早く答えながら頷く。

 

同時にイストワールから二本のペンネルが発射され、彼女の真下に魔法陣を描き始める。

 

 

「ここは通しません」

 

 

 ネプギアはイストワールを守るように、二体の汚染スライヌに立ち塞がる。

 

その間に、イストワールは目を閉じて精神を集中させる。

 

するとイストワールの真下に赤く光る線で描かれた五芒星が点滅を始める。

 

 

「フレイフレイヴォルヴォルサラマード……」

 

 

 イストワールは静かに魔法の言葉を唱える。

 

 

「我が記憶に眠る地獄の業火よ……爆炎となりて、敵を焼き尽くせ……」

 

 

 イストワールの詠唱中、ネプギアは不用意に攻撃をせず、回避と防御に徹しており上手な足止めと時間稼ぎをしている。

 

 

「炎の記録よ!」

 

 

 イストワールが叫ぶと同時に三体の汚染スライヌの周囲に巨大な炎が吹き上がる。

 

炎に焼かれた汚染スライヌ達に700以上のダメージが表示され、三体とも悲鳴を上げる間もなく一撃で戦闘不能になる。

 

 

 【炎の記録】とはイストワール専用の火属性の攻撃魔法である。

 

魔法陣と本を触媒に更に詠唱をして放つ強力な魔法。

 

強力な反面当然のように時間が掛かり、今のネプギアのような前衛の足止めや時間稼ぎのサポートが必須となる。

 

このような役割分担をするのがパーティの真骨頂だ。

 

 

 全滅したスライヌの群れが次々と消滅していく。

 

それを見ながら、「ふぅ……こんなものでしょうか?」とネプギアが軽く息をつく。

 

 

「そうですね。帰りま……」

 

「ぬらーーーーー!」

 

 

 イストワールがそれに答えようとした瞬間、イストワールの背後からスライヌが襲い掛かる。

 

 

「あうっ!」

 

 

 体当たり攻撃を受けて悲鳴を上げるイストワール。

 

ダメージも216とかなり大きなもので、イストワールのHPゲージが九割以上減ってしまう。

 

 

「しまった! バックアタック!」

 

 

 慌てて後ろを振り返るネプギア。

 

【バックアタック】敵の奇襲攻撃である。

 

隠れていたスライヌを見落としていたようだ。

 

バックアタックを受けると陣形が乱れる上に敵に先制攻撃を受け不利な状況に陥ってしまう。

 

陣形が乱れたせいもあり、イストワールはダメージが増加する背後から攻撃を受けてしまったのだ。

 

 

「ネプギアさん、落ち着いて下さい。まずは回復を!」

 

 

 イストワールは大ダメージの苦痛に顔を歪めながらもネプギアに指示を出すと、「はい!」とネプギアが頷き、続けて「ヒール!」と素早く回復魔法を唱える。

 

イストワールが光に包まれHPゲージが七割近くまで回復する。

 

現在のイストワールのHPが178、彼女の防御力の低さでは、正面からでも次のスライヌの一撃に耐えられるかは微妙なところだ。

 

 

「ぬらっ!」

 

 

 イストワールに対して二撃目の体当たりを行おうとするスライヌ。

 

 

「いーすんさんはやらせません!」

 

 

 それに対してイストワールが素早く後方に下がり、ネプギアが前に出る。

 

 

 間一髪。

 

ネプギアがイストワールとスライヌの間に入り込みスライヌの攻撃を防ぐ。

 

これはネプギアの職業とも言える【CLASS】である【ナイト】の特別な能力で、弱った味方を素早く庇うことができる。

 

 

 ビームソードの刀身でスライヌの体当たりを防ぐネプギア。

 

互いの攻撃がぶつかり合っているこの状態を【鍔迫り合い】と言い、力比べを行い負けた方は大きな隙を晒すことになる。

 

 

「えーい!」

 

 

 ネプギアが力を籠めてスライヌを押し返すと、「ぬらー!」とスライヌは叫びながら大きく体勢を崩す。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ネプギアは体勢を崩したスライヌに素早くビームソードで突きを繰り出す。

 

無防備なスライヌに278ダメージ当たる。

 

更にセオリー通りに右回し蹴りを当てると、「ぬら~~!!!」とスライヌは201のダメージを受け放物線上に吹き飛ばされる。

 

 

「ファイアー!」

 

 

 そして当然のようにイストワールのファイアーの追撃が入る。

 

228ダメージが当たりスライヌは消滅する。

 

 

「いーすんさん大丈夫ですか!」

 

 

 ダメージを受けたイストワールを心配し駆け寄るネプギアに、「大丈夫です。ネプギアさんの回復魔法のおかげですね」とイストワールは落ち着いて、ネプギアに答える。

 

 

「バックアタックを受けるなんて油断していました……」

 

 

 ネプギアが素直に自分のミスを反省すると、「私もです」とイストワールもそれに続く。

 

 

「次は失敗しないように、もっとよくレーダーを確認しないと」

 

 

 ネプギアがそう言ってNギアのレーダーを見直す。

 

さすがにもう隠れている敵は居ないようだ。

 

 

「そうですね」

 

 

 イストワールがネプギアにそう答えると、二人はプラネテューヌの街への帰路に就く。

 

最後に油断はあったが、クエストは大成功である。

 



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#28 ゲイム記者

 ネプギアとイストワールがプラネテューヌの街へ戻ってくる頃には日は落ちていた。

 

 

「少し遅くなっちゃいましたね」

 

 

 ネプギアが腕時計を確認すると時間は18:00を過ぎていた。

 

 

「そうですね。ギルドに報告をしたら真っ直ぐ帰りましょう」

 

 

 イストワールがそう答えると、二人はギルドを目指して歩き始める。

 

 

「お仕事終わりました」

 

 

 意気揚々とギルドで成功の報告をするネプギア。

 

 

「助かりましたよ。ありがとうございますネプギア様」

 

 

 ギルドの受付の男性はコンソールを操作してネプギアにクエストの報酬を渡す。

 

 

「少し色を付けておきましたから、何か美味しいものを食べて下さい」

 

 

 ネプギアがNギアで金額を確認すると確かに少し多い。

 

ネプギアは慌てて、「そんな、悪いですよ。期限だってギリギリでしたのに……」と言って首を左右に振って遠慮をする。

 

 

「毎日頑張ってるネプギア様への感謝の気持ちですよ」

 

 

 男性はにこやかに言うが、「でも……、私だけ贔屓されるなんて……」とネプギアはまだ遠慮をしているようだ。

 

 

「プリンでも買って帰ればネプテューヌ様も喜ぶんじゃないかな?」

 

 

 しかし、受付の男性の方が一枚上手のようで、上手くネプテューヌの名前を出す。

 

すると、「そういうことでしたら……」とネプギアは遠慮しながらも、姉の為と自分を納得させて素直に受け取ることにした。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 ネプギアは受付の男性に深々とお辞儀をする。

 

イストワールはそんなネプギアを優しい目で見守っていた。

 

自慢の娘が皆に認められているのが嬉しいようだ。

 

しかし、すぐに真面目な顔に戻ると、受付の男性に向かって、「今日のクエストで汚染モンスターが現れました。冒険者の方々にも注意喚起をお願いします」と伝える。

 

 

「汚染モンスターですか……」

 

 

 受付の男性は心底困ったと言った顔と声で言う。

 

ギルドに勤める彼は汚染モンスターにより、クエストを失敗したり最悪命を落とした冒険者を何人も知っているのだ。

 

 

「分かりました。口頭や張り紙で注意するよう伝えます」

 

 

 受付の男性はそう言うと、「未だに犯罪神を信仰して、汚染モンスターを作り出すマジェコン信者なんて消えてなくなればいいんですよね」と愚痴をこぼす。

 

 

「言いたいことは分かりますけど、出来れば改心して欲しいです。私は彼等に罪を償ってもらった後にみんなと同じゲイムギョウ界を愛する仲間として迎え入れたいです」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ぐわっ!? 尊い! 尊すぎて心臓発作がーーー!」と受付の男性が右胸を抑える。

 

イストワールは冷ややかに、「心臓は左胸ですよ」とツッコミを入れるが、「大変です! 救急車を呼びましょう!」とネプギアは真に受けてNギアを操作しようとする。

 

 

「あはは! 冗談ですよ」

 

 

 受付の男性は笑いながらそう言うと、「もぅ、そういう冗談は止めて下さい!」とネプギアはが頬を膨らます。

 

そんなネプギアを愛しそうに見つめる受付の男性を見て、イストワールはまた同じことをするだろうと思って、「やれやれ……」と言いながらお手上げのポーズをする。

 

 

パチパチパチ

 

 

 同時に拍手の音が聞こえてくる。

 

ネプギアが振り向くと、茶色い髪をポニーテールにして王冠のような髪飾りを付けた女性がいた。

 

瞳の色は緑色で、服装は赤と白の半袖シャツを着ておりファッションなのか少し腹部が見える。下は青い吊りスカートと白いニーソックスをはいていた。

 

 

「いやー、素晴らしい。優しく謙虚で礼儀正しくて姉思い。プラネテューヌの女神候補生様は噂通りだね」

 

 

 そう言いながら、女性はネプギアに近づいてくると、「あなたは?」とネプギアは女性に問いかける。

 

 

「私はファミ通、ゲイム記者をしています」

 

 

 ファミ通と名乗った女性は、「突然ですけどネプギア様を取材させていただけませんか」と言ってペンとメモを取り出す。

 

 

「しゅ、取材ですか? そんなこと急に言われても……」

 

 

 取材と言う言葉に気後れしてしまうネプギア。

 

戸惑うネプギアとファミ通の間に、「ファミ通さん、候補生とは言えネプギアさんは女神様です。取材と言うなら、まずは教祖の私に話を通して下さい」とイストワールが割って入る。

 

 

「失礼しました。まずは名刺を……」

 

 

 ファミ通は一歩下がって、ネプギアとイストワールに名刺を差し出す。

 

 

「ふむふむ……」

 

 

 イストワールの目の色が薄い緑色になると同時に瞳の中に波形が現れる。

 

メモリーにアクセスして情報を調べているのだ。

 

 

「ちゃんとした記者さんようですね」

 

 

 イストワールが安心したように言うと、「でも、週刊ファミ通ってゲイムギョウ界一の老舗ゲーム情報誌ですよね。それが私に?」とネプギアが驚きの表情を浮かべる。

 

イストワールはネプギアを安心させるよう微笑むと、「正式な記者であることは間違いありません。まずはお話を伺ってみませんか」と優しく言い聞かせるように言う。

 

ネプギアはその言葉に安心したのか、「はい、わかりました」と頷いた。

 

 

「では、ファミ通さんのご意向をお伺いしましょうか」

 

 

 イストワールがファミ通の取材の目的を問いかける。

 

するとファミ通は拳を握りしめながら、「女神様の陰に隠れてしまっていますが、候補生の皆さんの活躍は素晴らしいと思うんです」と力説する。

 

 

「そんな……他の候補生のみんなはともかく、私は素晴らしいと言う程じゃ……」

 

 

 ファミ通の迫力に若干引き気味のネプギア。

 

しかし、「そんなことはありません! ネプギア様はゲイムギョウ界を犯罪組織マジェコンヌの魔の手から救った英雄ですよ!」とファミ通は更に強く力説する。

 

何度か話には出てきているが、【犯罪組織マジェコンヌ】とは犯罪神マジェコンヌを崇拝しその復活を企む犯罪組織。

 

違法コピーツールの【マジェコン】をゲイムギョウ界中に広め一時は世界の八割以上を支配していた。

 

その力は四人の女神を上回り、討伐に向かった女神を返り討ちにして捕らえる程であった。

 

 

 女神達に同行したネプギアも一緒に囚われてしまう。

 

そんな絶望的な状況の中、友人達の助けにより唯一ネプギアだけが救出される。

 

救出はされたが、四人の女神を圧倒した犯罪組織の力はネプギアのトラウマになってしまう。

 

 

 それでも女神達を救う為に立ち上がるネプギア。

 

ネプギアは長く苦しい旅の中で仲間達と助け合って成長していく。

 

そしてトラウマを乗り越え、ついには女神を救出し犯罪組織を壊滅させることに成功する。

 

最終的に犯罪神は復活してしまうが、ネプギアがゲイムギョウ界への想いの力で撃破する。

 

今は僅かな残党が水面下で活動しているだけである。

 

 

「……確かに犯罪組織は倒しましたけど、私だけの力じゃありません。多くの人達が力を貸してくれたおかげです」

 

 

 犯罪組織の壊滅後、ネプギアはゲイムギョウ界を救った勇者と騒がれた時期があった。

 

しかし彼女は決して驕らず仲間を尊重し、姉であるネプテューヌと他の国の女神を立て続けた。

 

 

 その結果、時間が経つにつれ、元々人気も高く自己主張の強い女神達に話題が移りネプギアの活躍は過去のものとされていった。

 

人々の中には犯罪神を倒したのは四女神だと思っている者も少なくはない。

 

しかし、ネプギアはそのことを不満に思ったことは一度もない。

 

平和な元の世界が戻ったことが喜ばしいと思っているほどであった。

 

 

「その多くの人達はなぜ力を貸してくれたのでしょうか?」

 

 

 今度はイストワールがネプギアの答えに質問を出す。

 

 

「それは……みんなも女神様を助けてゲイムギョウ界を救いたかったから?」

 

 

 ネプギアは少し考えてから自信なさそうに答える。

 

本当に多くの人達が力を貸してくれた。

 

友達の為、正義の為、ただのお節介だと言うものや商売の為と言う人も居た。

 

その中で理由を一つ選ぶとしたら、これしか思いつかなかった。

 

 

「それもありますが、私はネプギアさんの真摯な思いと行動に心打たれたからではないかと思っています」

 

 

 イストワールがそう言うと、「私もそう思います」とファミ通も即座に同意する。

 

 

「年よりくさい言い方かもしれませんけど、若い子がひたむきに頑張ってる姿って心打たれるものがあります。私は女神候補生の皆さんにそれを求めているんです!」

 

 

 ファミ通はずずいとネプギアに詰め寄る。

 

 

「私にファミ通さんの期待に応えることが出来るでしょうか……?」

 

 

 未だに自信が無さそうに答えるネプギアに、「ネプギア様でないとできません!」とファミ通は即答する。

 

 

(うぅ……そこまで持ち上げられると、その気になっちゃいそう……)

 

 

 少し流されやすいところのあるネプギア。

 

ファミ通の押しに、まんざらでもない気持ちになってきていた。

 

そこに、「私は良いと思いますよ」とイストワールまで加わってくる。

 

 

「いーすんさんまで……」

 

 

 少し困り気味のネプギアだが、最初の頃より表情が柔らかい。

 

 

「自己主張が弱いところはネプギアさんの女神としての弱点でもあります。ここはファミ通さんの力を借りてみては?」

 

 

 イストワールは落ち着いた声でネプギアに提案をする。

 

ネプギアの謙虚さは美徳ではあるが、それにより時には活躍をアピールすることも必要な女神としては自己主張が物足りないところがある。

 

 

「任せて下さい。私の記事でネプギア様の魅力を全世界中に伝えてみせます」

 

 

 イストワールの援護を得たファミ通はここぞとばかりに押し込んで来た。

 

その上に、「弱点を補う為に人の力を借りるのは恥ずかしいことではありませんし、女神様としても必要な資質でもあります」と更にイストワールの説得も続く。

 

ネプギアの心は完全に傾いていた。

 

 

「わかりました。自信はありませんが、全力で頑張ります」

 

 

 ハの字眉毛で困り顔だったネプギアの表情が引き締まり、小さくガッツポーズをしながら力強く答える。

 

 

「ありがとうございます! では簡単な自己紹介と、先ほどクエストに行かれたそうですが、その時のお話をお願いします」

 

 

 すかさずペンとメモを取り出し取材を始めるファミ通。

 

 

「ええっ! いきなりですか?」

 

 

 流石に今すぐだと思わなかったネプギアは心の準備が出来ていなかったようで大慌てをしてしまう。

 

そんなネプギアにお構いなしに、「ネタは新鮮さが命ですから!」と詰め寄るファミ通。

 

 

「ファミ通さん。プラネタワーに一室設けますので、そこでお話しましょう。ネプギアさん、私もお付き合いしますから一緒に頑張りましょう」

 

 

 イストワールがすかさず二人に対して妥協案を出すと、「そうですね。落ち着ける場所の方が良い話が聴けますよね」とファミ通が、「はい、頑張ります」とネプギアが言ってイストワールの妥協案に乗る。

 

その後、ネプギアはネプテューヌへのお土産のプリンを忘れずに買い、イストワールと共にファミ通の取材を受ける為にプラネタワーに向かうのだった。



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#29 強襲

 ネプギア達がプラネタワーに向かっている頃。

 

ネプテューヌは変わらずゲームに没頭をしていた。

 

 

「うっそー! このボス強すぎー! 絶対チートだよ」

 

 

 ネプテューヌが画面に向けて不満そうに叫ぶ。

 

【チート】とはずるいこと。 いかさまをすること。

 

コンピューターゲームの場合はゲームに改造を施し、自らに有利な動きをさせることを指すこと。

 

市販されているゲームなので、そんな筈はないのだが、そう思わせる程にネプテューヌはゲームオーバーを繰り返していた。

 

 

「あーあ、ベールに攻略法でも聞こうかなー」

 

 

 ネプテューヌは軽くコントローラーを放り投げると両手を後頭部で組んで後ろに倒れて寝転がる。

 

リーンボックスの守護女神であるベールはネプテューヌ以上のゲーマーで、その実力は世界屈指とも言われている。

 

 

「でも、ベールの言うことって難しいんだよねー」

 

 

 しかし、前述したがネプテューヌはやや頭が弱く学習能力が低い。

 

その為、敵の行動パターン憶えて攻略する憶えゲーはやや苦手。

 

 

「それに、こういうのって自力でやってナンボだよね。【プラ拳ねぷ】の凄さを見せてあげようかな」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながら起き上がる。

 

彼女は憶えるのは苦手だが、その強運とひらめきで、普通の人には出来ない攻略法を編み出したりもする。

 

一昔前で言えば裏技と呼ばれる技だ。

 

ちなみに、プラ拳ねぷとはG.C.初期にルウィーの子供向けの雑誌で掲載していたゲーム漫画、【文拳リュウ】を自分用にアレンジしたものだ。

 

 

「そう言えばお腹が空いたなー」

 

 

 ネプテューヌはそう言いながらお腹を押さえつつ、可愛らしい壁掛け時計を見ると時間は19:00を少し過ぎたところだった。

 

お腹を満たそうにも、用意したお菓子は食べ尽くして、空き袋が散乱しているだけだった。

 

 

「ネプギアもいーすんも遅いな~。どこで油買ってるんだろ……」

 

 

 ネプテューヌが不満そうに口を尖らせると、「それを言うなら、油を売っているです」と背後から聞き覚えのない声がする。

 

 

「あーそれそれ。でも、油売って石油王になれるならいっかー」

 

 

 聞き覚えのない声であったが、ネプテューヌは一ミリも気にせずに振り返らずテレビ画面を見ながらコントローラーを握ってゲームを再開しようとする。

 

彼女のこの大胆な性格が誰とでも打ち解けられる秘密なのかもしれない。

 

 

「なぜ故に石油王なのです?」

 

 

 聞き覚えのない声が質問をしてくる。

 

ネプテューヌはゲームのスタート画面を呼び出すと、「そりゃ、油って言ったら石油でしょ。わたしヤバイよ。女神で石油王って最強じゃね」とドヤ顔で言い放つ。

 

 

「やはり、其方がプラネテューヌの女神か。我が主プラエ様を返していただこう」

 

 

 聞き覚えのない声はそう言うと、カチャと小さな金属の擦れる音を立てる。

 

 

「プラエ? そう言えばネプギアがプラスチックの原料は石油って言ってたよーな」

 

 

 ネプテューヌはゲームをプレイしながらそう言うと、「ってことはそれプラスチックの新商品? ちょっと待ってねー。そーゆーのは、石油王になってからー」と軽いノリで言う。

 

 

「我が主を愚弄するか! いいから抜け。いざ、尋常に勝負だ」

 

 

 聞き覚えの無い声が興奮しながら言う。

 

ネプテューヌは【勝負】の台詞にピクリと反応すると、「わたしと対戦したいの? もー、人気者は辛いなー」と言いつつゲームを一旦止めて、二つ目のコントローラーを持って振り向く。

 

 

「あれ? お姉さんだれ?」

 

 

 ネプテューヌはそこに来て見知らぬ女性が部屋にいることに気付く。

 

しかも、その女性は刀を持って中段の構えで切っ先をネプテューヌに向けていた。

 

 

「ちょっ!?」

 

 

 さすがのネプテューヌも驚きの声を上げる。

 

 

「なになに? なにごと!? ゲームをプレイせずにリアルファイトに発展とか、ガアンダム動物園でもありえないんですけどー!」

 

 

 動揺するネプテューヌはコントローラーを放り投げて、素早く2メートルほど後ずさる。

 

【ガアンダム動物園】とはゲームセンターでプレイナマナーの悪い、ガアンダムの対戦ゲームのプレイヤーが集まることを言う。

 

怒号が飛び交いケンカに発展する様を揶揄して動物園と呼ばれているのだ。

 

 

「女神がプラエ様らしき人物をかどわかしたのは街の者から聞いている。狙いは何だ? プラエ様の力か!」

 

 

 刀を持った人物が凛とした声でネプテューヌを睨みつける。

 

 

「ちょっと、人違いだってばー! わたしはそんなことしてないって~」

 

 

 ネプテューヌは不満そうに口を尖らせて刀を持った女性の人違いを指摘する。

 

 

「今更とぼけるか! 卑怯者め」

 

 

 しかし、その行為が相手の逆鱗に触れたようだ。

 

刀を持った女性は、「武器を持たぬ相手を斬るのは我が武士道に反するが、もはや問答無用!」と叫ぶ。

 

 

「我が名は、葛切あんみつ。いざ尋常に勝負!!」

 

 

 葛切あんみつと名乗った女性はネプテューヌとの距離を一気に詰めると、刀を振り下ろす。



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#30 ネプテューヌVSあんみつ

 葛切あんみつがネプテューヌに襲い掛かる少し前。

 

 

ネプギアの部屋ではネプギアンダムがプラエに絵本を読み聞かせていた。

 

 

「オシマイオシマイ……」

 

 

 ネプギアンダムが本を読み終えると、「ネプギアンダム読むの上手ー!」とプラエが嬉しそうに拍手をする。

 

プラエは絵本の内容より、ロボットが上手に本を読むことが楽しかったようだ。

 

 

「ビーッ、ビーッ、ビーッ!!!」

 

 

 突然、ネプギアンダムが大きな警報音を鳴らす。

 

 

「ひゃあっ!」

 

 

 プラエはビクッとして驚くと、「ど、どうしたの?」とネプギアンダムに尋ねる。

 

 

「メガミサマノリビングデ、セントウオンヲカクニンシマシタ。ネプテューヌサマガオソワレテイルモヨウ」

 

 

 ネプギアンダムがそう答えると、「戦闘……ネプテューヌ様?」とプラエが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「イマカラエングンニムカイマス。プラエサマハココデオマチヲ」

 

 

 ネプギアンダムはそう言うと動き出そうとするが、「待って、プラエも行く。ネプテューヌってネプギアお姉さんのお姉さんだよね。だったらプラエが助ける」とプラエが叫ぶ。

 

 

「リョウカイシマシタ。 ケッシテワタシカラハナレテハイケマセン」

 

 

 ネプギアンダムはそう言うと、両手でプラエを掴んでおぶる。

 

 

「わわっ!?」

 

 

 驚きの声を上げるプラエ。

 

そのままネプギアンダムの首にぶら下がるように、おぶられる。

 

 

「イソギマス。テヲハナサナイデクダサイ」

 

 

 ネプギアンダムはそう言うと、がっちょんがっちょんと音を立てながら走って、ネプテューヌの居るリビングに向かう。

 

走るたびに、プラエが揺れて、「わっ! わっ! わーー!」と驚きの声を上げる。

 

 

 

****

 

 

 

 その頃、女神のリビング。

 

 

キンッ!

 

 

 間一髪。

 

 

ネプテューヌがポーチから呼び出した刀が、葛切あんみつの振り下ろした刀を防ぐ。

 

 

「あのタイミングから防御が間に合う? なんという反応速度!」

 

 

 あんみつは刀を引くと素早くニ撃目の袈裟斬りを繰り出す。

 

 

「おわっとっとっと!?」

 

 

 ネプテューヌはおっかなびっくりな声をあげつつも、上半身を捻ってそれを避ける。

 

 

「もー! いい加減にしないと、温厚さに定評があるわたしでも怒るよー!」

 

 

 ネプテューヌは先ほどまでとは雰囲気が変わり、真面目な声で言う。

 

同時に刀を振り下ろして、あんみつに反撃をする。

 

 

「ちいっ!」

 

 

 あんみつは刀を使って、ネプテューヌの攻撃を防ぐ。

 

ネプテューヌの刀とあんみつの刀が激しい火花を散らしてぶつかり合う。

 

 

「眠れるねぷ子さんを起こした代償は大きいよー! プリン一か月分はもらわないと!」

 

 

 ネプテューヌは一旦刀を引くと、素早くあんみつの左側に回り込む。

 

 

「パープルチャリオット!」

 

 

 同時にネプテューヌの高速の刺突があんみつに襲い掛かる。

 

ちなみに【パープルチャリオット】と言うのはノリで叫んだ言葉で、ただの突きで特別な技ではない。

 

 

「なんの!」

 

 

 あんみつはネプテューヌの素早い攻撃を見事に刀で受け止める。

 

 

「わお! 今のを防ぐなんて、なかなかやるね」

 

 

 ネプテューヌが驚きと称賛の入り混じった声を上げる。

 

普段は【ちゃらんぽらん】としているが、いざ戦いとなると真面目になるネプテューヌ。

 

あんみつの技量の高さに、彼女のテンションも上がってきたようだ。

 

 

「ぬかせっ!」

 

 

 あんみつは刀で受け止めながら、左足でネプテューヌに蹴りを繰り出す。

 

 

「おっとーーー!」

 

 

 ネプテューヌは素早く刀を引きつつバックステップで、あんみつの蹴りを避ける。

 

 

「できる……さすがは女神」

 

 

 あんみつは驚きの表情を浮かべて後ずさり距離を取る。

 

先程からの激しい攻防でスタミナを消費したので一旦回復しようというのだ。

 

 

「ふざけた態度は敵を欺く為のモノか……あなどれん」

 

 

 あんみつがそう言うと、「ふざけてなんかないってばー。わたしはいつでも大真面目!」とネプテューヌが口を尖らす。

 

スタミナを消費したのはネプテューヌも同じで、口ではこう言っていても、彼女もあんみつと同じくスタミナの回復に集中している。

 

二人とも疲れた表情一つ見せないのは互いに戦い慣れしているからだろう。

 

 

 「奥義、旋風裂剣」

 

 

 突然あんみつが刀を大きく振り回す。

 

すると彼女の身長と同じ160センチ程の高さの小さな竜巻が起こり、それがネプテューヌ向けて飛んでいく。

 

 

「わわっ!」

 

 

 ネプテューヌは驚きつつも、横っ飛びでそれを避けると、「いきなり奥義とかズルくない!」と立ち上がりながら文句を言う。

 

 

「せめて、【女神が相手なら、旋風裂剣を使わざるを得ない】ぐらいの前口上は言うべきでしょー!」

 

 

 ネプテューヌは激しく大声で抗議をするが、あんみつはお構いなしに二発目三発目の竜巻を飛ばしてくる。

 

 

「わっ、とっ、とーーーーー!」

 

 

 迫りくる竜巻を左右の移動と、垂直ジャンプを駆使して避け続けるネプテューヌ。

 

 

「どうした? 避けているだけか?」

 

 

 あんみつが挑発をするように言うと、「そんなわけないで……」とネプテューヌはしゃがんで力を溜める。

 

そして、「しょっ!」と大きく飛び上がり、天井を使った三角跳びで、竜巻を飛び越えて避けるとあんみつに襲い掛かる。

 

 

「もらったーーー! ねぷねぷダイナマイトキーーーーック!」

 

 

 ネプテューヌの右足による急降下攻撃。

 

あんみつは旋風裂剣を撃ったばかりで動けないようだ。

 

 

「短慮!」

 

 

 あんみつが叫ぶ。

 

 

「奥義、弧月剣!」

 

 

 あんみつは弧を描くように刀を振り上げつつ跳び上がっていく。

 

ネプテューヌの顔が一瞬で青ざめる。

 

 

(やばっ! このわたしが、飛び道具からの対空技なんてベタな戦法にハマるなんて!)

 

 

 ネプテューヌが心の中で舌打ちをする。

 

彼女の言う通り、格闘ゲームにおいて飛び道具で相手のジャンプ攻撃を誘い対空技で落とすのは戦術の初歩であった。

 

 

(しかもこれ、当たったら一発でHPゼロで戦闘不能っぽい!? )

 

 

 優秀なアタッカーであるネプテューヌだが、その反面耐久力は低め。更に現在レベル1なので致命傷を受けたら戦闘不能は免れない。

 

 

 

 あんみつの刀がネプテューヌに迫る。

 

 

「ナマステ!!」

 

 

 ネプテューヌが叫ぶ。

 

しかし、この場合は【南無三】が正しいだろう。

 



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#31 捕縛

ザシュッ!

 

 

 刀が切り裂く音が部屋中に響き渡る。

 

床に倒れるネプテューヌ。

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ネプテューヌさんっ!!」

 

 

 そこへ、ネプギアとイストワールが走って駆けつけてくる。

 

プラネタワーの入り口で、あんみつに気絶させられた警備の兵を見て、慌ててここまで来たのだ。

 

ファミ通には入り口で待機してもらいつつ、警備の兵を看てもらっている。

 

 

 

 ネプテューヌはうつ伏せになって、ピクリとも動かない。

 

 

 

「そんな……お姉ちゃん……」

 

 

 

 ネプギアが絶望の声と表情で崩れ落ちる。

 

 

「浅い!?」

 

 

 

 突然、あんみつが叫ぶ。

 

 

「馬鹿なあれを避けられる筈は……」

 

 

 あんみつがそう言うと同時に、「とりゃーーーー!」と倒れていたネプテューヌがあんみつに飛び掛かる。

 

ネプテューヌはあんみつを掴むと、「くんずほぐれつ! モンゴル相撲ーーーー!」と縦四方固めを決める。

 

 

「お姉ちゃん、それ柔道だよ」

 

 

 ネプギアが律義にツッコミをしてくる。

 

ネプテューヌの無事を理解できたようで落ち着きを取り戻したようだ。

 

 

「ネプテューヌさん! 服! 服がっ!」

 

 

 イストワールが慌てた声で叫ぶ。

 

よく見ればネプテューヌの服は正面から袈裟斬りに切り裂かれており、その状態で寝技に持ち込んだせいか服が破れてしまい下着姿になってしまっている。

 

あんみつの刀が切り裂いたのはどうやらネプテューヌのパーカーワンピだけだったようだ。

 

 

「服なんて、あとあと! それよりこのお姉さん、賊だよ賊! 賊って言っても珍走団の方じゃないからね」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、あんみつは、「このようなところで捕らわれるとは……プラエ様、お助けできず申し訳ありません」と呟く。

 

どうやら、ネプギア達が来た上に縦四方固めが極まったことで潔く諦めたようだ。

 

 

「プラエ……?」

 

 

 ネプギアがあんみつの言葉に首を傾げながら、縦四方固めでネプテューヌのお腹に隠れた彼女の顔を覗き込む。

 

 

「あっ! 葛切あんみつさん!」

 

 

 プラエに見せてもらった写真のあんみつにソックリだったので、思わず声を上げる。

 

 

「え? もしかしてお知り合い」

 

 

 半裸のネプテューヌが不思議そうに首を傾げる。

 

しかし、油断して縦四方固めを緩める気がないのは、さすが熟練の戦士だ。

 

 

「お姉ちゃんにはまだ話してなかったけど、今日迷子で知り合った子の保護者なの」

 

 

 ネプギアが簡単に説明をすると、「なに? かどわかしたのではないのか?」とあんみつが質問してくる。

 

 

「誤解です! 私はプロテノールさんを探しに来たプラエちゃんに協力しただけです!」

 

 

 ネプギアが両手を胸に当てて、自らの潔白を証明するよう精一杯訴える。

 

 

「だが、街の者は【女神様がまた新しい幼女に手を出した。想像が捗るぜ。夏の祭典は女神様のおねロリ漫画で決まりだぜムッハーーー】と言っていたぞ」

 

 

 それを聞いたイストワールは頭が痛いと言わんがばかりに右手で額を押さえると、「それは情報の入手元が悪いです……」と呟く。

 

さすがのネプテューヌも縦四方固めを解くと、「なんで、そういう特殊性癖なお兄さん達の言うこと真に受けちゃうかな~」とハの字眉毛の困った顔をする。

 

 

「え? え? ……どういうこと?」

 

 

 話についていけず置いてけぼりなネプギアはイストワールとネプテューヌを交互に見ながら質問をする。

 

 

「ほら、ルウィー寄りなプラネテューヌ民の中には、ネプギアがロムちゃんとラムちゃんにエッチなことしてるように見える人もいるんだよー」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、ネプギアは激しく首を左右に振って、「エッチなことなんてしてないよ。たまにお泊りして、一緒にお風呂入って寝るだけだよ」と言って慌てる。

 

 

「や、その時点で特殊性癖なお兄さん達の妄想は限界突破のR-18なんだって。で、そこにプラエちゃんって子が加わって、ネプギアのおねロリハーレムが充実しちゃった感じ」

 

 

 ネプテューヌが何も知らないネプギアに呆れるように言う。

 

R-18の【R】とは【Restricted(リストリクティッド)】の略で【制限、規制】などを意味する単語である。この場合はポルノ関係の意味だ。

 

そして、おねロリはお姉さんと少女という組合せのカップリングを示す。

 

つまり、ネプギアが年下好き同性愛者で、新しい女の子に手を出したと【一部】の界隈で話題になっていたものを、あんみつが信じてしまったのだ。

 

 

「えっ? えっ!? えーーーー?」

 

 

 ネプギアはネプテューヌの言うことに理解と理性が追いつかず、ぐるぐる目で慌てながら、頭から蒸気が噴き出すぐらい真っ赤になってしまう。

 

 

 そこへ突然何者かが割って入る。

 

激しいブレーキ音で停止したのは、ネプギアンダムであった。

 

 

「エマージェンシー! エマージェンシー! マスター。プラエサマノゴヨウダイガアッカシテオリマス」

 

 

 そう言うネプギアンダムの両手には、「はぁはぁはぁ……」と苦しそうな呼吸をするプラエが抱かれていた。

 

 

「プラエちゃん!」

 

 

 ネプギアは一瞬で正気に戻り、プラエの手を握る。

 

 

「AEDデソセイヲシマシタガ、スイジャクガヒドイデス」

 

 

 ネプギアンダムがそう言うと、「プラエ様! まさか時間を!?」とあんみつが大声で叫ぶ。

 

 

「みえたの……あんみつが、ねぷ、てゅー、ぬ、さんをこげつけんで、きるところ……、だから、すこしでいいから、あんみつのじかんをおそく……くはっ!」

 

 

 プラエが息も絶え絶えで言うと、「私のせいでプラエ様がご無理を……」とあんみつがガクリと肩を落とす。

 

完璧なタイミングであった、あんみつの対空迎撃が外れたのはプラエがあんみつの時間を遅くしたせいだったのだ。

 

だが、それを考慮しても、あれを紙一重で避けたネプテューヌの反射神経と幸運は並外れたモノだろう。

 

 

「ファティーグがレベル3です。そこのソファーで休ませてください!」

 

 

 イストワールがそう言うと、ネプギアンダムが優しくプラエをソファーに寝かせる。

 

 

「プラエちゃん、もう少し我慢して。私が治してあげるから」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「グラングランクエクエイクノームル……」と呪文を唱え始める。

 

 

「ネプギアさん? ファティーグに効く魔法は、まだ発明されて……」

 

 

 イストワールがそう言うと、「だから新しく作りました」とネプギアが詠唱の合間に手短に答える。

 

イストワールが、「えっ!?」と驚きの声を上げる。

 

 

「発芽の力よ、我が声に応え、衰弱した者を救え……! スプラウト!!」

 

 

 ネプギアが魔法を発動させると同時に彼女の手が緑色の光に包まれる。

 

光がプラエを包み込むと、プラエの呼吸がゆっくりになって、「あ……」と言いながら目を開ける。

 

 

「なんと!?」

 

 

 あんみつが驚きの声を上げる。

 

 

「植物の発芽のエネルギーを人為的に与える……だから、スプラウト」

 

 

 イストワールが驚きつつも、ネプギアの使った魔法を解析する。

 

 

「よかった。効いてくれた」

 

 

 ネプギアがホッと息をすると、「ネプギアお姉さん凄い!」とプラエが抱きついて来る。

 

 

「ネプギアお姉さん大好き! ちゅっ、ちゅっ」

 

 

 更にネプギアの頬に何度も接吻をしてくる。

 

 

「ふ、ふふふしだらな!! やはり、かどわかして!!」

 

 

 顔を真っ赤にして激高するあんみつに、「……これじゃあ、特殊性癖のお兄さん達に誤解されるのも仕方ないよねー」と呆れた声でお手上げのポーズをするネプテューヌ。



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#32 詫び入れ

 

「申し訳ございません!!!」

 

 

 あんみつがネプギア達に見事な土下座をする。

 

プラエが回復したことにより、ネプギアとプラエが今までの経緯を事細かにあんみつに説明したのだ。

 

そして、自分の勘違いを猛省したあんみつがもの凄い勢いで土下座してきたのだ。

 

 

「おおっ! これって土下座? 土下座だよね。わたし初めて見たよ」

 

 

 ネプテューヌが物珍しそうに、あんみつの前後左右に移動して土下座をする彼女をしげしげと眺める。

 

ちなみに、服はネプギアが新しいパーカーワンピを持ってきて着せている。

 

 

「お姉ちゃん、あんみつさんに失礼だよ」

 

 

 ネプギアが叱るような口調でネプテューヌを注意する。

 

しかし、「けど、土下座なんて滅多に見られるモノじゃないよ。ねぇねぇ、写メ撮っていい?」とネプテューヌは止める気配を見せない。

 

こういう場を注意するのはいつもイストワールだが、彼女は待たせてあったファミ通の取材をネプギアの代わりに受けていた。

 

 

「もー! ダメだってば~」

 

 

 さすがに、写メはあんみつがかわいそうなので、ネプギアは慌ててネプテューヌの構えたNギアを取り上げる。

 

 

「ネプテューヌさん、本当にネプギアお姉さんのお姉さんなの? プラエより子供みたい」

 

 

 プラエがジト目でネプテューヌを見つめる。

 

ネプギアには【お姉さん】が付くのに、ネプテューヌにはそれが付かないので、彼女のネプテューヌに対する評価はお察しである。

 

 

「葛切あんみつ、一生の不覚」

 

 

 あんみつはゆっくりと頭を上げると、「この場は腹を切ってお詫び申し上げます!」と右手で脇差を抜く。

 

 

「女神に対しての刃傷沙汰。私の命だけでは償えませぬとは思いますが、どうかプラエ様には寛大なるご処置を!!」

 

 

 ネプギアが、「わわわわ!? ダメですってば!」と慌ててあんみつに飛び掛かり、両手で脇差を持った右手を押さえる。

 

 

「しかし、それでは女神としての示しがつきますまい」

 

 

 あんみつが真面目な顔で言うと、「そんな示しなんかより、あんみつさんの命の方が大事です!」とネプギアがキッパリと言う。

 

 

「そうそう。それに切腹なんてしたら、血がどぴゃどぴゃの内臓どばー、でR-18Gになっちゃうよ」

 

 

 必死のネプギアに対して割と軽いノリで止めるネプテューヌ。

 

【R-18G】とは18歳以上にしか見せてはいけないようなグロテスクなものの意味である。

 

 

「ですが……」

 

 

 まだ切腹を諦めないあんみつに、「ダメです! プラエちゃんがプロテノールさんに会って幸せな生活に戻るまで、あなたの命、私が預かります!」とネプギアが一喝する。

 

 

「ネプギア殿……」

 

 

 あんみつは少女にしか見えない目の前の女神候補生が予想以上に強い言葉を使うので、呆気にとられてしまう。

 

 

「ネプギアお姉さんカッコいい……」

 

 

 プラエは祈るように両手を組んでネプギアに熱い眼差しを送る。

 

 

「いい話なんだけど、ガアンダムのパロなんだよね、これ」

 

 

 ネプテューヌはお手上げのポーズで、やれやれと言わんがばかりに言う。

 

 

「お、お姉ちゃん、それは言わないお約束だよ~」

 

 

 ネプギアがは顔を赤くしてネプテューヌの方を向くと彼女に抗議をする。

 

姉である彼女はネプギアのガアンダムオタクぶりを知っており、時折無意識に劇中の台詞を言ってしまうことを知っていた。

 

 

「承知致しました。この命は既に主君であるプロテノール様とプラエ様に捧げたモノではありますが、この場の処置はネプギア殿に預けましょう」

 

 

 あんみつがそう言うと、ネプギアは手を離し、あんみつも脇差をしまう。

 

 

「再度確認しますが、プラエ様は暫くネプギア殿と行動を共にしたいと言うのですね」

 

 

 あんみつがそう言うと、「うん、ネプギアお姉さんの力になりたい。そして、一緒に姉さまを見つけるの」とプラエがハッキリと言う。

 

 

「……そうですか……」

 

 

 あんみつが辛そうな顔をする。

 

ネプギアはあんみつがあまりにも辛そうな顔をするので、「どうかしましたか?」とやや控えめに問いかける。

 

 

「何でもありません。プラエ様がそう望むのであればメイドである私も命を掛けて、ネプギア殿をお助けしましょう」

 

 

 あんみつはそう言うと、「粗忽者ではありますが、よろしくお願いいたします」とネプギアに深々と頭を下げる。

 

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 ネプギアもそう言って頭を下げると、右手を差し出す。

 

 

「プラエちゃんの為に一緒に頑張りましょう」

 

 

 ネプギアがにこやかに言う。

 

その行為は上下関係無しに、プラエの為に行動しようと言う意思の表れであった。

 

 

「かたじけない」

 

 

 それを理解したあんみつも右手を出して、二人はガッチリと握手を交わす。

 



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#33 ヴァーミリオン

 プラエとあんみつの件が解決したので、ネプギアは二人を連れてイストワールと合流し、みんなで夕食をとりながらファミ通の取材を受けていた。

 

ネプテューヌは先程まで遊んでいたゲームのボスにリベンジをすべく、食べてすぐにリビングに戻って行った。

 

 

「今日の取材はこれで終わりです。ご協力ありがとうございました」

 

 

 ファミ通が深々と頭を下げると、「夕食までご馳走になってしまって、本当にありがとうございます」と続けて言う。

 

 

「待たせてしまったのはこちらですから」

 

 

 イストワールがそう言うと、「私の勘違いで皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません」とあんみつが頭を下げる。

 

 

「それで、何かご質問とかありますか?」

 

 

 ファミ通がそう言うと、特に誰も手を上げる雰囲気はなかった。

 

それを確認したネプギアは、「はい」と右手を上げる。

 

 

「なんでしょう? 何でも聞いて下さい」

 

 

 ファミ通がそう言うと、ネプギアは少し申し訳なさそうに、「取材のことじゃないんですけど、ファミ通さんに聞きたいことがあるんです」と言う。

 

控えめな彼女は取材に関係ない質問なので、他の誰も手を上げないのを確認してから質問をしたのだ。

 

 

「いいですよ。私に答えられることなら何でも答えますよ」

 

 

 ファミ通がにこやかにそう言うと、「ありがとうございます。ファミ通さんはプロテノール=パピリオって名前の方は知っていますか?」とネプギアが質問する。

 

プラエとあんみつを取材に同席させたのは、この話をする為であった。

 

記者であるファミ通は情報通で何か知っているかもしれないと考え質問をしたのだ。

 

 

「プロテノール=パピリオ……? 申し訳ないのですが聞き覚えがありませんね」

 

 

 ファミ通はそう答えると、「その方がどうかしたのですか?」とネプギアに質問をする。

 

 

「プラエちゃんがお姉さんを探してるって話をしましたよね。その人の名前がプロテノール=パピリオって言うんです」

 

 

 ネプギアはそう言うと、プラエのことを超能力のことを隠しつつファミ通に話す。

 

ファミ通もその話に興味があったのか、真剣に聞きながらメモを取る。

 

 

「危ない危ない。こんな良いネタを仕入れ損なうなんて、私の記者としての勘もまだまだですね」

 

 

 ファミ通はそう言いながらしきりに頷くと、「良ければ、そのプロテノール=パピリオさんを探す件、私の記事で協力させてもらっていいですか?」と言った。

 

 

「えっ……!?」

 

 

 突然の申し出に慌ててしまうネプギア。

 

 

「ネプギア様の保護した謎の美少女の姉をみんなで探す企画。多分、編集部でも通ると思うんですよね」

 

 

 ファミ通は陽気に言うが、ネプギアは少し複雑な顔をする。

 

その表情を見たファミ通は、「ダメですかね? もちろん無理にとは言いません」と付け加えた。

 

 

「プラエちゃん、どうかな? 週刊ファミ通って言うのは凄く歴史のある有名な雑誌で、ここに協力して貰えば、かなり見つかりやすくなると思うんだ」

 

 

 ネプギアは好意的な意見を付け加えながら、プラエに尋ねる。

 

 

「しかし、プロテノール様は既に……」

 

 

 あんみつがそこまで言うと、「そんなことない! 姉様は絶対に生きてる!」とプラエが大声で叫ぶ。

 

 

「……失礼しました」

 

 

 あんみつは自らの失言を悔いるように頭を下げて謝罪する。

 

 

「……プラエ、よくわからない。ネプギアお姉さんに決めて欲しい……」

 

 

 プラエがすがるような上目遣いでネプギアを見る。

 

ネプギアは少し考えた後に、「それじゃあ、協力してもらうことにするね」と答えた。

 

 

「いいんですか?」

 

 

 ファミ通が念のための確認をすると、「うん、ネプギアお姉さんがそう言うなら」とプラエも頷く。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ファミ通は嬉しそうにお礼を言うと、「それで話してる間に思い出したんですけど、パピリオって姓なら私知ってますよ」と続けて言う。

 

 

「えっと、ネオジェネシスの守護女神様、クストゥス=パピリオさんとその妹のアテネさんですか」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「おおっ、お若いのに博識で……さすがは女神様」とファミ通が驚きの顔をする。

 

 

「今日、ギルドの方に聞いたんです。名前だけしか知りません」

 

 

 ネプギアが正直に答えると、「それでも凄いですよ」とファミ通が称賛する。

 

 

「ファミ通さんは詳しいんですか?」

 

 

 ネプギアがそう尋ねると、「そりゃ、記者ですからそれなりに。ウチの雑誌でも何度も取り上げてたみたいですから」とファミ通が答える。

 

 

「知っている範囲で構いませんので、話してもらえませんか」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「勿論いいですよ。私も話すつもりでしたし」とファミ通が快く頷く。

 

 

「ネオジェネシスを語るうえで外せないのが、当時大流行した年に一度の闘技イベントの【ゴッド・オブ・ウォリアーズ】です」

 

 

 ファミ通が話を始めると、全員が黙って話に耳を傾ける。

 

 

「三人一組のチームで、ゲイムギョウ界最強を目指して戦う大会で、当時大隆盛を誇っていたネオジェネシスが大々的に行ったんで凄い盛り上がりを見せたんですよ」

 

 

 ファミ通が熱っぽく語る。

 

記者だけあって話し上手なようで、ネプギア達はファミ通の話に引き込まれていった。

 

 

「なので優勝チームには莫大な栄誉と賞金が与えられるのですが、それだけじゃないんです。なんと当時謎に包まれていたネオジェネシスの守護女神とのエキシビションマッチの権利が与えられるんです」

 

 

 ファミ通がそこまで話すと、「えっ!? チームと戦うって一対三ですか? しかも優勝したチームと?」とネプギアが驚きの声を上げる。

 

 

「そうですよね。普通はネオジェネシスの守護女神が不利だと思いますよね」

 

 

 ファミ通が思わせぶりな言い方をすると、「その言い方って……もしかして勝っちゃうんですか?」とネプギアが恐る恐る尋ねる。

 

 

「ええ、最初は優勝チームが優勢なんです。ですが、途中でクストゥスが女神化するんです。血のような朱色の髪を持った隻眼の女神【ヴァーミリオンハート】に」

 

 

 ファミ通が真剣な顔で話すのを全員が固唾を飲んで聞いている。

 

 

「そして勝つんです。しかも圧勝で。なんのズルもなく圧倒的な力で優勝チームを捻じ伏せるんです」

 

 

 ファミ通の言葉に、「圧勝……」とネプギアが驚きの表情を浮かべる。

 

更にファミ通は、「特に、彼女の使う必殺技【ジェノサイダーカッター】は何者も寄せ付けず、優勝チームに恐怖を植え付けたそうですよ」と続ける。

 

 

「こうして、ネオジェネシスの守護女神クストゥス=パピリオことヴァーミリオンハートは華々しいデビュー戦を飾りました」

 

 

 ファミ通がそこまで話すと、「しかし、各国の女神様達はそれを指を咥えて見ているだけではなかった」とイストワールが話に入ってくる。

 

 

「翌年からは各国が精鋭チームを大会に紛れ込ませ、ヴァーミリオンハートを公衆の面前で打ち倒すよう指示をしたのです」

 

 

 ファミ通が、「さすがはイストワール様よくご存じで」そう言ってイストワールと称賛すると、「当事者ですから。しかし、思い出したくない苦い記憶ですね」とイストワールが暗い顔をする。

 

 

「……苦い記憶? もしかして……」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ええ、勝てませんでした。プラネテューヌもルウィーもラステイションまでもが一流の戦士を送り込みましたが、毎年ヴァーミリオンハートのHPを半分も減らせませんでした」とイストワールが答えた。

 

 

「今でも魔法の天才はフラッグハート。戦いの天才はヴァーミリオンハートと言われていますからね」

 

 

 ファミ通の言葉に、「フラッグハート?」とネプギアが首を傾げる。

 

 

「ルウィーの二代目女神の文子様のことです。現実世界の日本の国旗を模した白と赤の色を持った女神様なので、そう名乗っていたのです」

 

 

 イストワールがネプギアの質問に答える。

 

 

「しかし、ヴァーミリオンハートの快進撃はいつまでも続かなかった。格闘ゲームブームの終焉と共にヴァーミリオンハートも力を失い次第に苦戦し、妹のアテネを加えた二対三形式にするも辛勝が続くようになってきた」

 

 

 ファミ通がヴァーミリオンハートの話を続けると、「だが、倒すには至らなかった」とイストワールが続ける。

 

ファミ通が頷いて、「ええ」と言うと、「格闘ゲームブームの終焉でネオジェネシスの運命は風前の灯火でした」とイストワールが言う。

 

 

「このままシェア低下によるネオジェネシスの滅亡を待つよりも、戦士としての敬意を表して最後に一戦を望んだプラネテューヌ、ルウィー、ラステイションの女神様は三人でチームを組み大会に参加し、ヴァーミリオン姉妹に勝利したのです」

 

 

 ファミ通がそう言って締めくくると、「最後にヴァーミリオン姉妹は自爆し行方不明。ネオジェネシスはそのまま滅亡しました」とイストワールが付け加える。

 

 

「何か参考になりましたか?」

 

 

 ファミ通がネプギアとプラエに尋ねる。

 

 

「よくわかりませんが、ヴァーミリオンハートが恐ろしく強かったと言うのは凄く伝わってきました」

 

 

 ネプギアがそう答えると、「ヴァーミリオンハート……仲間を頼らず一人で戦うの少し姉さまに似てる……」とプラエが答えた。

 

 

「…………」

 

 

 あんみつはそんなプラエを悲しそうな顔で黙って見つめていた。

 



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#34 ネプギアとあんみつ

 ファミ通の取材を終えたネプギアはプラエとあんみつを客室に案内していた。

 

 

「この部屋を自由に使ってください」

 

 

 ネプギアが案内した部屋は広さ四十畳程のスィートルーム。

 

家具も充実しており、一流ホテルのような佇まいだ。

 

 

「何から何までかたじけない」

 

 

 あんみつが深々と頭を下げるが、プラエは不安そうな顔でネプギアを眺める。

 

 

「うん? どうしたの? なにか欲しいものでもあるのかな」

 

 

 ネプギアが優しい声で問いかけると、「……ネプギアお姉さんと一緒がいい」とプラエが上目遣いでネプギアのスカートの端をを摘まむ。

 

 

「プラエ様! そのようなワガママ……」

 

 

 あんみつがそう言いかけるが、「それじゃ、今日は一緒にお風呂入って寝よっか?」とネプギアがプラエの頭を撫でると、「うんっ!」とプラエは花の咲いた笑顔を見せる。

 

 

「…………」

 

 

 呆気にとられて黙ってしまうあんみつに、「やっぱり色々と不安なんだと思います。暫く一緒にいようと思います」とネプギアが答える。

 

 

「しかし、ネプギア殿にも都合が……女神であらせられる貴女には様々な責務があるのでは?」

 

 

 あんみつがそう言うと、「それだったら、いくらでも調整しますから。安心して下さい」とネプギアが事も無げに言う。

 

 

「プラエもお手伝いする!」

 

 

 プラエがネプギアに続いて言うと、「ありがとう」とネプギアが微笑む。

 

 

「それじゃ、お風呂入ろっか?」

 

 

 ネプギアが左手でプラエの右手を握ると、「うん!」とプラエが握り返し、二人は浴室に入って行く。

 

 

「……優しすぎる……」

 

 

 あんみつはそう呟くと、「プロテノール様は何を思って、あの二人を引き合わせるようなことを……」と言って二人の入って行った浴室のドアを眺めていた。

 

 

****

 

 

 翌朝。

 

G.C.2019の三月二十八日木曜日。

 

 

ピピッ!

 

 

 時計から朝のアラームが一回鳴ったが、その音は即座に止められる。

 

 

「……いけないいけない。アラーム止め忘れてたよ」

 

 

 アラームを止めたネプギアが小さな声で呟く。

 

時計は6:30を示していた。

 

ネプギアの朝は早い。

 

以前は姉のネプテューヌと一緒に八時頃まで寝ていたが、ネプギアが真剣に仕事に取り組むようになったG.C.2012頃から早起きをするようになった。

 

 

 時計のアラームより早く起きた彼女は着替えも殆ど終えており、あとはセーラーワンピの前ボタンを閉めるだけだった。

 

昨晩はプラエと一緒に寝たので、しがみついた彼女を優しく放し、Nギアのライトで朝の支度をしていた。

 

ネプギアがセーラーワンピのボタンを閉めて着替えを終えると、「ネプギア殿」と声がかけられる。あんみつが寝ているベッドからだ。

 

 

「あっ、起こしちゃいましたか。ごめんなさい」

 

 

 ネプギアが小声で謝ると、「いえ、既に起きていました。いつもはプラエ様の朝食の支度があるので」とあんみつも小声で答えながら上体を起こす。

 

 

「こんな朝早くから仕事ですか?」

 

 

 あんみつが質問をすると、「これから朝ごはんを食べたら、ネットニュースで情報を集めて、八時ちょっと前に仕事を始めます」とネプギアが丁寧に質問に答える。

 

 

「……プラエ様のせいでご迷惑をお掛けします」

 

 

 あんみつが申し訳なさそうに言うと、「いえ、これはいつものことですから」とネプギアが事も無げ言う。

 

 

「毎朝このような時間から?」

 

 

 あんみつが少し驚いたように言うと、「朝の空気は気持ちいいですから。それに朝早いと時間を有効に使っている気がするんです」とネプギアが微笑みながら言う。

 

 

「もっと朝が早くて今頃通勤電車に揺られてる人だっているだろうし、それに比べればなんてことありません」

 

 

 更に小さくガッツポーズをしながら言うネプギア。

 

 

「感心ですね」

 

 

 あんみつがそう呟くと、「お引き留めして申し訳ありません。プラエ様のことは私に任せて、ご自由になさって下さい」と続けて言う。

 

 

「ありがとうございます。ここに書置きを置いておきますので、プラエちゃんが起きたら教えてあげて下さい」

 

 

 ネプギアが時計の下にピンク色の可愛らしいメモ書きを挟む。

 

そこには、プラエに朝早くから仕事に行くことを謝ることと、自分がプラネタワーの何処にいるか、呼び出すにはどうするか、などが丁寧に書かれていた。

 

 

「何から何まで、かたじけない」

 

 

 あんみつが深々と頭を下げるが、「頭を上げて下さい。私はプラエちゃんのことを守るって約束したんですから、これぐらい当然ですよ」とネプギアが優しい声で言う。

 

 

「それじゃあ、私、行きますね」

 

 

 ネプギアはそう言ってNギアを右太もものケースにしまうと部屋を出ていく。

 

 

「……疑うのが恥ずかしくなるぐらい真面目で純粋な子だ……」

 

 

 そう言って布団の中に手を入れるあんみつ。

 

そこには彼女の刀が置かれていた。

 

 

「しかし、プラエ様の為にもう暫く様子を見なければ……」

 

 

 あんみつはそう言いながら刀の柄を握りしめる。

 

 

「いや、違うな。私は斬りたいんだ彼女を…………プロテノール様の……である彼女を」

 

 

 あんみつはそう言いながら、安らかな寝息を立てるプラエの顔を眺めていた。



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#35 プラエの初仕事

 ネプギアは昨日の午後から溜まっていた書類関係の仕事を、ペンネルを駆使して九時前には終わらせる。

 

そしてイストワールに提出をすると、プラエとあんみつの部屋を訪れていた。

 

 

「申し訳ありません。プラエ様はまだお目覚めでなく……」

 

 

 部屋を訪れたネプギアにあんみつ心底申し訳ないと言った感じで頭を下げながら言う。

 

 

「いいんですよ。昨日は色々あって疲れたでしょうし、ファティーグになった影響もあると思います」

 

 

 ネプギアはまったく気にしていないと言わんがばかりに微笑みながらそう言うと、「寝る子は育つっていいますし」と続けて言う。

 

 

「ですが、せっかく朝食までご用意していただいたのに……」

 

 

 あんみつは変わらず申し訳なさそうに言う。

 

コックからプラエとあんみつがまだ食事をとっていないことを聞いたネプギアは二人分の食事を台車に乗せて運んで来たのだ。

 

 

「女神とあろう方に、このような給仕のような真似をさせてしまうなんて」

 

 

 あんみつがそう言うと、「私が好きでやっているんですから気にしないで下さい」とネプギアが優し気な声で言う。

 

更に、「それに私の朝の分のお仕事なら終わらせてきましたから」と言いながらテーブルに一人分の食事を並べて、「あんみつさんだけでも食べて下さい。プラエちゃんは私が見ていますから」と言う。

 

 

「しかし、メイドである私がプラエ様より先に食事をとるなど……」

 

 

 あんみつは困った顔をするが、「あんみつさんにも事情はあると思いますけど、あんみつさんは私のお客様でもありますから、出来れば食べて欲しいです」とネプギアが再度お願いをする。

 

 

「私のワガママで、プラエ様の恩人を困らせるのは本意ではありません。プラエ様には申し訳ありませんが先にいただきます」

 

 

 あんみつはそういいながら、椅子に座ると両手を合わせて、「いただきます」と言って食事をとりはじめる。

 

それを確認したネプギアはプラエの寝ているベッドに近づいて行った。

 

 

「プラエちゃんはまだおねむかな~?」

 

 

 ネプギアが子供をあやすような優しい声で寝ているプラエに話しかける。

 

すると、「……おねむ……」とやや寝ぼけた声でプラエが返事をする。

 

 

「ん? おっきしたのかな?」

 

 

 ネプギアが優しい声で尋ねると、プラエは、「……う~……」と唸りながら首をもぞもぞと左右に振る。

 

寝る為に髪をほどいているので、長く綺麗な金髪が波のように揺れる。

 

 

「うふふ、可愛いなぁ」

 

 

 ネプギアはそう言って微笑むと、「どうしたら、おっきしてくれまちゅか~」と赤ちゃん言葉で問いかける。

 

 

「……だっこ……」

 

 

 プラエはそう言ってネプギアを求めるかのように両腕を突き出す。

 

 

「だっこでちゅか~?」

 

 

 ネプギアはすぐには抱っこせずに、少しじらすかのように確認をすると、プラエはこくこくと何度も首を上下に振って頷く。

 

 

「じゃあ、だっこしまちゅから、おっきしまちょうねー」

 

 

 ネプギアはそう言いながら、ベッドで寝ているプラエの上半身をゆっくり優しく抱きかかえて起こす。

 

プラエの上半身を起こしたネプギアは手を離すと、「はい、おっきできまちゅたねー。えらいえらい」と手を叩いてプラエを褒める。

 

 

「えへへ……」

 

 

 プラエは眠そうな顔で目を擦りながら微笑む。

 

 

「朝ごはん出来てるから、向こうで食べようね」

 

 

 ネプギアは口調を元に戻してテーブルのある場所を指差して言う。

 

プラエは相変わらず眠そうな顔をして、「……おんぶ……」と呟く。

 

 

「もー、しょうがないなぁ」

 

 

 ネプギアは嫌な顔どころかむしろ嬉しそうな顔で、プラエに背中を向ける。

 

プラエも嬉しそうに笑顔を浮かべると、いそいそとネプギアの背中に乗った。

 

 

「プラエ様?! 何を?」

 

 

 プラエを背負ったネプギアがあんみつのいるテーブルに向かうと食事を終えたあんみつが驚きの声を上げる。

 

 

「おんぶー」

 

 

 プラエが恥ずかし気もなく言うと、「また、ネプギア殿にご迷惑を……」とあんみつは困った顔をした。

 

 

「いいんですよ。甘えてくれた方が嬉しいですし」

 

 

 ネプギアはそう言いながらプラエを降ろすと、プラエは素直に降りて椅子に座る。

 

 

「…………」

 

 

 しかし、朝食を見たプラエは少し不満そうな顔をした。

 

 

「どうしたの? 嫌いな食べ物でもあった?」

 

 

 ネプギアが優しい声で尋ねると、「ネプギアお姉さんのおかゆが食べたい……」とプラエが呟く。

 

 

「プラエ様! そのようなワガママを言ってはいけません!」

 

 

 あんみつが叱るようにプラエに言うが、「いいよ。少し時間掛かるけど待てるかな?」とネプギアがにこやかに言う。

 

 

「ネプギア殿は優し過ぎます……」

 

 

 あんみつが右手で頭を抱えながら言うと、「いいですか、プラエ様、あまり甘えてばかりだと、いくらネプギア殿でも愛想をつかされてしまいますよ」と注意するように言う。

 

 

 「……ネプギアお姉さんは甘えん坊な子はキライ?」

 

 

 プラエがすがるような上目づかいでネプギアに訴えると、「ううん、大好き」とネプギアが笑顔で即答をする。

 

その光景に、あんみつはガクリと肩を落としてしまう。

 

毎日ネプテューヌを甘やかしているネプギアにはこのぐらいは序の口であった。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアの作ったおかゆと朝食を食べたプラエは、「ごちそうさまでした」と満身の笑顔で言う。

 

髪は食事の間に、あんみつが手入れをしていつものお団子ツインテールになっている。

 

 

「ネプギアお姉さん、今日は何をするの? プラエ役に立つよ」

 

 

 食事を終えたプラエが小さくガッツポーズをしながら元気よく言う。

 

 

「じゃあ、タワー内便を手伝ってくれるかな?」

 

 

 ネプギアは既にプラエの為の仕事を考えていたらしく即答をする。

 

 

「タワー内便ってなに?」

 

 

 プラエが不思議そうにネプギアに質問をする。

 

 

「プラネタワーっていうのは凄く大きいでしょ。だから、その中で郵便屋さんをするの」

 

 

 ネプギアが簡単な説明をすると、「楽しそう」とプラエが目を輝かせる。

 

プラネタワーはゲイムギョウ界屈指の巨大建造物で、その高さ624メートルに及び120階の階層がある。

 

高さで言えば東京スカイツリーより低いが、円錐形の塔で敷地面積は広く100,000平方メートル以上になる。

 

不格好な言い方にはなるが、二倍の大きさの東京ドームの中心に東京スカイツリーが建っているようなものだ。

 

その広大な内部にはいくつものプラネテューヌ教会の施設や部署があるので、その間を郵送する部署も存在する。

 

ネプギアは定期的にその手伝いをしており、今日はその手伝いをプラエと一緒にしようというのだ。

 

 

「女神様が郵便? なぜ故そのようなことを……」

 

 

 あんみつが心底不思議そうに首を傾げると、「やってみれば分かりますよ」とネプギアがにこやかに答える。

 

 

 

****

 

 

 

「郵便でーす」

 

 

 ネプギアの綺麗で透き通った声がプラネタワーの一室に響き渡る。

 

同時にその部屋で業務をしていた信者が一斉に立ち上がり、ネプギアの元に寄ってくる。

 

 

「みなさん、お疲れ様です。郵便を持ってきました」

 

 

 寄ってきた信者に笑顔で応えるネプギア。

 

 

「この封筒は星野さん」

 

 

 ネプギアがそう言うと、大柄で少し太り気味の男性信者が、「はい!」元気よく手を上げる。

 

 

「星野さん、今日も元気そうですね」

 

 

 ネプギアがにこやかに笑いながら封筒を手渡すと、星野と呼ばれた信者が、「ありがとうございます」と封筒を受け取る。

 

 

「この小包は三島さん」

 

 

 ネプギアが次の荷物を持ちながら言うと、「はーい」と二十歳ぐらいの痩せ気味の男性信者が手を上げる。

 

 

「三島さんは少し顔色が良くないような。睡眠時間は取れてますか?」

 

 

 ネプギアが少し心配そうに言うと、「あはは、昨日はネットにハマってしまって……今日は帰ってすぐ寝ますんで」と言いながら小包を受け取る。

 

ネプギアはその後も一人一人丁寧に軽い会話をしながら荷物を配っていった。

 

 

「信者の人達もネプギアお姉さんも楽しそう」

 

 

 その光景を少し離れたところで見ていたプラエが呟くと、「イキイキとして、活気に溢れておりますね」とあんみつも同意する。

 

そうして全て配り終えたネプギアは、「それではお仕事頑張ってください」と言いながら部屋を出ていくと、プラエとあんみつの側まで行く。

 

 

「こんな感じでね、信者の人達とコミュニケーションを取りながら荷物を渡してあげるの。そうすると、信者の人達のことを少しでも知れるし、信者の人達にも私のことを知ってもらえるから」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「ネプギアお姉さんって本当に偉いね」とプラエが感心し、「感服いたしました」とあんみつもそれに続く。

 

 

「偉くなんてないよ。お姉ちゃんの真似をしているだけだから」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ええっ!? ネプテューヌさんもタワー内便配ってるの」とプラエが驚きの声を上げる。

 

 

「ううん、お姉ちゃんの場合は何もしなくても、信者の人達と仲良くできちゃうの」

 

 

 尊敬する姉のことを話すネプギアの顔はイキイキとしていた。

 

 

「私はそんなふうにできないから、こういう事務仕事をやらせてもらいながら、みんなとお話させてもらって少しずつ仲良くなって行きたいなって、自分なりにお姉ちゃんの真似をしてるの」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギア殿、その努力と行動力心底感服いたしましたぞ」とあんみつが拍手をすると、プラエも「ネプギアお姉さん偉い」とプラエも拍手をする。

 

二人ともネプギアの努力と行動力に感心をしたようだ。

 

 

「私が凄いんじゃないよ。この努力と行動力を教えてくれたのは、ユニちゃん達やうずめさんとかだから」

 

 

 そう言って謙遜するネプギア。

 

彼女は超次元、神次元、零次元などを旅して仲間と接していく内に今の努力や行動力を仲間から教えてもらい、それを実践しているのだ。

 

 

「うん! プラエ、ネプギアお姉さんのお手伝いいっぱいする!」

 

 

 プラエがそう言って、小さくガッツポーズすると、「ありがとう。それじゃあ、お願いしちゃおっかな」とネプギアが微笑む。

 

次の部屋からはプラエがネプギアに荷物を手渡したりして、手伝いをするのだった。

 

あんみつは荷物の入った重い台車を押してくれただけでも十分な手伝いであった。

 

 

「お菓子いっぱい貰っちゃった」

 

 

 プラエが嬉しそうに微笑む。

 

小動物のように可愛らしく一生懸命にネプギアの手伝いをするプラエはプラネテューヌ職員の琴線に触れたようで、次々と彼女にお菓子などをくれたのだ。

 

こうしてプラエの初仕事は大成功で終わるのだった。



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#36 修羅場?

 タワー内便を配り終えたネプギア達は昼食を食べていた。

 

 

「おいしー」

 

 

 プラエが口と右手を一生懸命に動かしてカレーライスを頬張る。

 

 

「プラエ様、もう少しゆっくり食べて下さい。お行儀がよくないですし、消化にもよくないです」

 

 

 右隣のあんみつが軽く注意をするが、「だって、美味しいんだもーん」と満身の笑顔を返すプラエ。

 

 

「たくさん動いた後のご飯って美味しいよね」

 

 

 左隣に座ったネプギアが一生懸命にご飯を食べるプラエを見ながら微笑む。

 

プラエはネプギアの方を向くと、「うん、プラエこんなの初めて」と笑顔で頷く。

 

 

「午後もいっぱいお手伝いするよ」

 

 

 プラエが元気よく言うと、「ごめんね。午後からは外でクエストだから」とネプギアが申し訳なさそうに答える。

 

 

「プラエ、一緒に行けないの?」

 

 

 プラエが残念そうに言うと、「あんみつさんには身分証明書を提示していただきましたが、フィナンシェさんにあんみつさんのことを確認していただくまでは、外でクエストと言うのは許可できません」と向かいに座ったイストワールがキッパリと答える。

 

あんみつが身分証明書を提示して、彼女がプラネテューヌの国境際の村の外れに在住しておりプラエはその養子になっていることの確認が取れたが、女神と共に外で行動するには信用が不足している。

 

現に今も二人には監視の兵と監視カメラの二重で監視をされている。

 

 

「大丈夫だよ。すぐに帰ってくるから」

 

 

 ネプギアがにこやかに言うと、「だって、今日はお姉ちゃんが一緒なんだもん」と続けて言う。

 

 

「がんばってねー」

 

 

 ネプテューヌがカレーを食べながら、左手をひらひらと振っておざなりな応援をすると、「うん、頑張るね」とネプギアが笑顔で小さくガッツポーズをしながら言う。

 

 

「って! お姉ちゃんも一緒に行くんだよ!」

 

 

 すかさずツッコミを入れるネプギアに、「なんで?」と心底不思議そうに答えるネプテューヌ。

 

 

「なんでって……元々はお姉ちゃんのクエストで、私はそのお手伝いなんだけど……」

 

 

 ネプテューヌのあっけらかんとした態度に腹も立てずに丁寧に説明するネプギアだが、ネプテューヌは、「あー、パスパス。今日は無理無理」と言いながら右手を左右に振り拒否のジェスチャーをする。

 

 

「どうして? またお腹痛いの?」

 

 

 心配そうに尋ねるネプギアに、「や、違うよ。今日って木曜日でしょ」とネプテューヌがカレーを食べながら言う。

 

 

「うん……木曜日だけど」

 

 

 ネプギアがそう言って頷くと、「木曜日と言えば新作ゲームの発売日。こんな日に仕事とかありえないでしょ」とネプテューヌが答える。

 

 

「そもそも、ゲイムギョウ界なのに木曜日が休みじゃないって間違ってると思うんだ。ゲイムギョウ界を名乗るなら、木曜日から日曜日まで休みであるべきじゃない」

 

 

 ネプテューヌが高説を言っていると言わんがばかりのドヤ顔で言うと、「そっか、それならしょうがないね……」と残念ながらも納得してしまうネプギア。

 

 

「そんなことをしたら、経済が止まってしまいます! ネプギアさんもあっさりと納得しないで下さい!!」

 

 

 当然のようにイストワールが怒りの漫符を浮かべながら叫ぶ。

 

 

「ネプテューヌさんって、本当にネプギアお姉さんと同じ女神様なの? ニートの人みたい」

 

 

 プラエがジト目でネプテューヌを見ると、「これでもやる時はやる人なんだよ」とネプギアがフォローを入れる。

 

ネプギアはフォローを入れつつも、「ほら、お口の周りにソースが付いてるよ」とティッシュペーパーでプラエの口元を拭いてあげる。

 

 

「なんかもうラブラブだねー」

 

 

 その光景を見ながらネプテューヌが呆れながら言うと、「ロムさんとラムさんがヤキモチを焼いてしまいますよ」とイストワールが続いて言う。

 

 

「そうだねー。ネプギアがプラエちゃんおんぶしてる画像なんて、みんつぶのトレンド入りしてたし」

 

 

 ネプテューヌがそう言うと、「ロムちゃんもラムちゃんも、もう大人だから、ヤキモチなんて焼かないよ」とネプギアが苦笑いしながら、カレーを食べる。

 

 

「うん、今日のカレーは一段と美味しいですね」

 

 

 ネプギアがそう言って頷くと、「神次元の初代コンパさんから良い材料が届いたと、シェフが言っていましたね」とイストワールが答える。

 

【初代コンパ】とは、以前に話したふらぷらと同じく、超次元で命を落としたが神次元でネプギアに保護されて生き延びることができた人物。

 

カレーが好きで、その材料をたまに分けてくれたりする。

 

 

「それなら、ユニちゃんにも教えてあげないとですね」

 

 

 ネプギアがイストワールに答える。

 

ユニもカレー好きで、食べるだけじゃなく作ることもする。

 

 

「その必要はないわよ」

 

 

 突然、ネプギアの耳に聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

 

「ユニちゃん!」

 

 

 ネプギアが驚いてその人物の名前を呼ぶ。

 

今はラステイションに居る筈のユニが目の前にいるのだ。

 

 

「どうしたの? もしかして、カレーの匂いに誘われて?」

 

 

 ネプギアが真剣な声で尋ねるが、「そんなわけないでしょ……。アタシは戦隊モノのイエローじゃないんだから」と心底呆れた声で返すユニ。

 

 

「じゃあ、なんで?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに小首を傾げると、「それはこの二人に聞いてちょうだい」とユニが後ろを指差すと、そこにはロムとラム、それにセミロングの金髪でメイド服を着た女性が立っていた

 

「ロムちゃん、ラムちゃん。それにフィナンシェさんまで!」

 

 

 ネプギアが驚きの声を上げる。

 

しかし、ラムは不機嫌そうに腕を組むと、「気安く呼ばないでよ。この浮気者ーーー!」とネプギアに向かって叫ぶ。

 

ロムも悲しそうな顔で、「ネプギアちゃんが、わたしの知らない子をおんぶしてた……(しくしく)」とネプギアを見つめる。

 

 

「え? え? え?」

 

 

 ネプギアはロムとラムの態度に困惑してしまう。

 

 

「ネプギアお姉さん。この人達誰?」

 

 

 そこにプラエが不安そうにネプギアの袖を握ると、「あーーー! またネプギアと仲良くしてるーーー! このネットリのドロボウネコーーーー!!」とラムが怒りの叫びを上げる。

 

 

「ねっとり?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに首を傾げると、「寝取りって言いたいんじゃないの」とネプテューヌが気楽そうに言う。

 

 

「ネトリ? なにそれ? 家具屋さんの親戚」

 

 

 ネプギアは更に不思議そうな顔で質問する。

 

 

「うわ……さすがはネプギア、そっち方面の知識ゼロだね」

 

 

 ネプテューヌが呆れたように言う。

 

知識豊富なネプギアだが、その方面には関心がなく小学生以下の知識しかなかったりする。

 

 

「え……ね、ネプギアも知らないの? ど、どうしようロムちゃん、台本と違うよ」

 

 

 ラムは急にあわあわしながらロムにそう言うと、「待って、今台本出すから……(あろおろ)」とロムがポーチからメモ帳を取り出す。

 

 

「ええと……」

 

 

 ラムはロムに手渡されたメモ帳を見ながら、ネプギアを指差して、「わたしたちのことはあそびだったのね。うったえてやるわ。うったえてほしくなかったら、いますぐそのおんなとわかれて」と棒読みする。

 

 

「……ラム、それって昼ドラの台詞写してきたの」

 

 

 ユニは呆れた声で言うと、ラムの持っていたメモ帳を取り上げる。

 

 

「ああっ! 返してよー!」

 

 

 ラムは両手を伸ばすが、身長差で届かない。

 

 

「なになに……認知して、私達の子よ。あなたを殺して私も死ぬわ……コテコテの昼ドラの台詞ねー」

 

 

 ユニがそう言って呆れると、「ロム様、ラム様、お二人の勘違いですよ。こんなこと止めましょうよ」と後ろのフィナンシェと呼ばれたメイドの女性が二人を説得しようとする。

 

 

「勘違いなんかじゃないもん。今のわたしとロムちゃんはネプギアと修練場なの!」

 

 

 ラムがそう言うと、「えっと、よくわからないんだけど、一緒に練習すれば許してくれるのかな?」とネプギアが言い、「それを言うなら修羅場よ」とユニがツッコミを入れる。

 

 

「うわーーーーーん! これで勝ったと思わないでよねーーーー! この天然ジンゴロウの女ったらしのネプギアめーーー!」

 

 

 ラムは泣きながら捨て台詞を言って去って行ってしまう。

 

 

「ジンゴロウ? 私、ヤドカリなの?」

 

 

 ネプギアがラムの言うことに思わず首を傾げると、「多分、ジゴロの間違いよ」とユニが冷静にツッコミを入れてくる。

 

 

「ら、ラムちゃん、待ってー!(あわあわ)」

 

 

 その間にロムもラムの後を追って去ってしまう。

 

 

「あっ、待って!」

 

 

 ネプギアは慌てて二人の後を追おうと席を立つが、「止めときなさい。今は二人とも頭を冷やした方がいいわ」とユニがネプギアの肩に手を置いて止める。

 

 

「どうして……ピーシェちゃんの時はヤキモチなんて焼かなかったのに……むしろお姉さんになってくれて……」

 

 

 ネプギアが困ったように言うと、「ピーシェはネプテューヌさんに懐いてて、アンタを取ろうって訳じゃなかったからね」とユニが答える。

 

ロムとラムは以前に自分より幼いピーシェという子に出会った時には、一緒に遊んだりもしたが、時には年上らしく振舞って精神的な成長を見せてくれた。

 

ネプギアはプラエもピーシェと同じように受け入れてくれると思ったのだが、そうも行かなかったようだ。

 

 

「そんな……どうしよう、ユニちゃん」

 

 

 ネプギアは困った顔でユニを上目づかいで見上げると、「今はそっとしときましょ」とユニが言う。

 

 

「でも!」

 

 

 ネプギアは反論するが、「アタシが付いてるわ。大丈夫よ」とユニが言うと、「……ありがとうユニちゃん。うん、私も少し頭を冷やした方がいいよね」と納得する。

 

 

「……ユニちゃん、もしかしてこの為にここまで来てくれたの?」

 

 

 ネプギアがおずおずと尋ねると、「ま、まあね……」とユニが少し恥ずかしそうに右手の人差し指で頬をかく。

 

続いて、「ロムとラムが、【ネプギアが浮気した】ってすごい剣幕だったし、アタシたちはチームだから……」とユニがそこまで言いかけると、「ユニちゃーーーん、ありがとう! やっぱりこういう時に一番頼りになるのはユニちゃんだよー!」とネプギアはユニに抱き着く。

 

 

「こ、こら! 離れなさい!」

 

 

 ユニは鬱陶しそうに言うが、その表情は少し嬉しそうだった。

 

 

「ネプギアお姉さん、どういうことなの?」

 

 

 プラエが少し悲しそうな顔で説明を求めると、「そうだね。プラエちゃんにもちゃんと説明しないとね」と落ち着きを取り戻したネプギアが答える。

 

 

「あんみつ……本当にあんみつなの?」

 

 

 フィナンシェがふるふると震えながらあんみつを見つめると、「久しぶりですねフィナンシェ」とあんみつが言う。

 

 

「最強の甘味は!」

 

 

 突然、フィナンシェが叫ぶと、「和菓子」と涼しい顔であんみつが答える。

 

 

「本当にあんみつなんですね!」

 

 

 フィナンシェはそう言いながら、あんみつに抱き着く。

 

 

「今のでOKなんだ……」

 

 

 少し呆れ気味にユニが言うと、「二人だけに通じる何かがあるんだよきっと」とネプギアが答えた。



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#37 ロムとラムに認めてもらうには

 ネプギアがプラエにロムとラムやユニのことを説明し、あんみつが全員に自分とプラエのことをプラエの超能力を明かした上で説明をする。

 

 

「なるほど。そのプラエさんが超能力者で隠れ住む必要があったんですね」

 

 

 フィナンシェがあんみつに確認をすると、「あなたにも秘密にするのは心苦しかったけど、万が一の場合もあるから」とあんみつが答える。

 

 

「いいんです、納得できましたから。あんみつの行動はメイド道として正しいものだと思います」

 

 

 フィナンシェがそう言うと、「ありがとう、フィナンシェ」とあんみつがお礼を言った。

 

 

「とりあえず、今はロムとラムね」

 

 

 ユニがそう言うと、「ごめんなさい……プラエがネプギアお姉さんにいっぱい甘えちゃったから」とプラエが肩を落とす。

 

 

「プラエちゃんは悪くないよ。私がロムちゃんとラムちゃんに上手く説明できなかったのがいけないんだよ」

 

 

 ネプギアは右手でプラエの頭を撫でながら言う。

 

 

「仲の良い友達が知らない人と知らない間に、こんなふうに親密になってたら少なからずショックよね」

 

 

 その光景を見ながら、ユニが右手をあごに当てて頷きながら呟く。

 

 

「えっ!? それってもしかして、ユニちゃんもショックだったりするの?」

 

 

 ネプギアが何故か嬉しそうに身を乗り出してユニに問いかけると、「アタシは別に何ともないわよ」とユニが腕を組みながら冷たく突き放す。

 

 

「ガーン……私とユニちゃんって仲の良い友達じゃないの~。私はユニちゃん事すごく大事な友達だと思ってるのに……」

 

 

 ネプギアはこの世の終わりのような顔でガックリとうなだれてしまう。

 

 

「あーー、もう、めんどくさいわねアンタは。アタシはプラエみたいな小さな子に嫉妬するほど子供じゃないってことよ」

 

 

 ユニが心底鬱陶しそうに言うと、「ホントに?」とネプギアが心配そうにユニを見つめる。

 

 

「そうよ! うずめの時はアタシの言葉に耳を貸さずに、うずめさんうずめさんって本当にイライラさせられたんだからね!!」

 

 

 ユニは両手を腰に当てながら憤慨するが、「あっ……」と自分の失言に気付いたらしく口元に手を当てる。

 

 

「べ、別にネプギアのことが好きだからじゃないんだからね。友達としてよ! あくまで友達として!」

 

 

 ユニは慌てて腕を組みながらそっぽを向いて言い直すが、時すでに遅し。

 

ユニの言葉に感動したネプギアが、「ユニちゃーーーん」とユニに抱き着いてくる。

 

 

「ああもう、まとわりつかないでよ! 鬱陶しいわね!」

 

 

 ユニは内心は少し嬉しそうにしながらも、ネプギアを押し退けようとするが、「やっぱり、ユニちゃん大好きー」と言ってネプギアはユニから離れようとしなかった。

 

 

「ふふっ……ネプギアさんとユニさんは相変わらずですね」

 

 

 その光景を見ながらイストワールが微笑むと、「ノワールもこれぐらい素直だったらいいのにねー」とネプテューヌがしみじみと呟くが、「ネプテューヌさんの態度にも問題があると思います」と即座にイストワールにツッコミを受けてしまう。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「で、アンタはどうするつもりなの?」

 

 

 ひとしきり抱き着いて満足したネプギアがユニから離れると、ユニは右手で髪の毛をかき上げながらネプギアに質問をする。

 

 

「やっぱり、ロムちゃんとラムちゃんにちゃんと事情を話して、プラエちゃんのこと分かってもらうようにする」

 

 

 ネプギアが小さくガッツポーズをしながら力強く言うと、「相変わらずの正攻法ね。でも、それだけじゃ弱いわ」とユニが腕組みをする。

 

 

「ユニちゃんは他に考えがあるの?」

 

 

 ネプギアがユニに質問をすると、「当然よ。アタシを誰だと思ってるのよ」とユニが鼻高々に言う。

 

 

「なになに? 教えてユニちゃん」

 

 

 ネプギアがせがむように言うと、「ズバリ、プラエの力や想いをあの二人に認めさせるのよ」とユニが自信満々に言い放つ。

 

 

「プラエの力と想い……」

 

 

 プラエが少し不思議そうに首を傾げる。

 

 

「ロムとラムが、ネプギアやアタシやうずめのことを認めたのは、お姉ちゃんを助けるとかダークメガミを倒すとか強い意思の力を、そしてウソ偽りのない実力を見せたからよ」

 

 

 ユニがそう言うと、「確かにそうかも……」とネプギアが頷く。

 

ネプギアと出会った頃の二人は、ロムはともかく、ラムはなかなか懐かなかった。

 

だが、ネプギアの共闘と協調を呼び掛ける真剣な訴えと、ルウィーの危機を何度も救ってくれた実力を認めた上で仲間になってくれたのだ。

 

うずめに対しても、姉を誘拐した疑いがあったにも関わらず、打倒ダークメガミの為にユニの脅しにも屈せずに堂々とした態度で向かって来たのが、二人の心に届いたのだろう。

 

 

「さすがはユニちゃん、目の付け所が鋭いね」

 

 

 ネプギアがそう言って感心すると、「アタシも似たようなものだしね」とユニが答える。

 

 

「似たようなもの?」

 

 

 ネプギアが不思議そうに小首を傾げると、「アタシがネプギアのことを認めたのも、お姉ちゃん達を助けるって強い意思と、そしてそれに見合う実力を見せてもらったからよ」とユニは答えた。

 

 

「ねーねー。いーすん、わたしゲームしに戻っていーい?」

 

 

 ネプテューヌが退屈そうにカレーのスプーンを口に咥えながら、イストワールに向かって言う。

 

自分が蚊帳の外なので面白くないようだ。

 

 

「ネプテューヌさん、今は大切な話をしているのですよ。妹達のこととは言え、女神同士が認め合うと言うのは……」

 

 

 イストワールがたしなめるように言うが、「わたしはそーゆーの無くて大丈夫。だって主人公だもん」とネプテューヌはあっけらかんと言い放つ。

 

 

「主人公なら、戦う目的が全宇宙の美女をハーレムに入れることでも、敵が【スケールがデカい】とか言って感服しちゃうんだから」

 

 

 ネプテューヌが気楽そうにそう言うと、「では、ネプテューヌさんが戦う目的は全宇宙のプリンを自分のものにすることですか?」と質問すると、「イエスアイドゥー!」とネプテューヌがウインクしながらサムズアップで答える。

 

 

「はぁ……頭痛がしてきました……」

 

 

 イストワールは心底呆れたように右手で頭を押さえてうなだれてしまう。

 

 

「わかった。プラエ、ロムさんとラムさんにプラエの想いと超能力を認めてもらう」

 

 

 プラエが小さくガッツポーズをしながら意気込みを見せると、「うん、頑張ろうね、私もロムちゃんとラムちゃんにプラエちゃんのこと分かってもらうようお願いするから」とネプギアが答える。

 

 

「よし、決まりね」

 

 

 ユニがそう言うと、フィナンシェがスマホを取り出して、「お二人の位置はGPSで掴んでいます。そうと決まれば急ぎましょう」と訴える。

 

フィナンシェとしてはすぐにロムとラムの後を追いたかったが、ネプギアの話をちゃんと聞くべきだと判断したので今まで追わなかったのだ。

 

 

「プラネタワーからは出て行ってないみたいね」

 

 

 ユニが少し安心したふうに言うと、「多分、追ってきてほしいんだと思います。お二人ともネプギア様のことを心の底から慕っていますから」とフィナンシェが答える。

 

 

「うん、二人に嫌われないようしっかり話さなきゃ。フィナンシェさん、先導お願いします」

 

 

 ネプギアがそう言うと、フィナンシェを先頭にロムとラムの捜索に向かうのだった。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 フィナンシェのGPSを頼りにロムとラムを探すネプギア達。

 

 

「この先の部屋にお二人は居るようです」

 

 

 フィナンシェがそう言うと、「この先は空き部屋で施錠済みだった筈ですが……」とイストワールが不思議そうに首を傾げる。

 

 

「鍵が開けられてるわ」

 

 

 目の良いスナイパーのユニが扉を確認して言うと、「魔力を感じます。開錠魔法で開けたんだと思います」とすかさずネプギアが答える。

 

 

「ユニお姉さんもネプギアお姉さんもすごーい」

 

 

 プラエが拍手をして二人を褒めると、「ムムムッ……」とネプテューヌが右手をあごに当てながら不満そうに唸る。

 

 

「お姉ちゃん?」

 

 

 ネプギアはそんなネプテューヌの様子が気になったのか、彼女の顔を覗き込むように様子を伺うと、「そろそろ、わたしの主人公力【ぢから】を見せなきゃいけないみたいだね」とネプテューヌが珍しく真剣な顔と声で言う。

 

どうやら、ネプギアとユニの活躍で自分の立場に危機感を覚えたようだ。

 

 

「主人公ぢから~? 何ですそれ?」

 

 

 ユニが如何わしいモノでも見るかのようにネプテューヌに尋ねると、「超スーパーで偉大でグレートな奇跡を起こすミラクルパワーだよ」ネプテューヌは両手を腰に当てて自信満々のドヤ顔を決め込む。

 

しかし、「お姉ちゃん……超とスーパーは同じ意味だよ。あと偉大とグレート、奇跡とミラクルもおんなじだよ」とあっさりとネプギアにツッコミを受けてしまう。

 

 

「主人公オブ主人公のわたしの溢れだす主人公補正をもってすれば、主人公力はマルチプラケーションされアディションされサブトラクションされディビジョンされるんだよ」

 

 

 ネプギアのツッコミを無視してサムズアップで言い放つネプテューヌ。

 

だが今度は、「それ、なんて竜頭蛇尾ですか……」とユニは右手で頭を抱えて呆れてしまう。

 

 

「あ、あれ? ここは賞賛の嵐じゃないの?」

 

 

 ネプテューヌが不可思議そうな顔で尋ねる。

 

ネプギアは残念そうな顔で、「お姉ちゃん……マルチプラケーションとアディションは乗算と加算だからいいけど、サブトラクションとディビジョンは減算と除算だよ……」と説明をする。

 

 

「ジョーさんとか火山とか、源さんとか徐さんとか分からない! わたしにわかるように説明せよ」

 

 

 何故か偉そうに要求するネプテューヌに、「えっと……足し算と掛け算の後に、引き算と割り算したら意味がないんじゃないかなってことなんだけど」と丁寧に説明してくれるネプギア。

 

 

「…………」

 

 

 さすがのネプテューヌも黙ってしまい、他のメンバーも残念なモノを見るような目でネプテューヌを見る。

 

除算と加算も知らないのにゲームで覚えた英語をテキトーにそれっぽく使ったのが良くなかったのだろう。

 

 

「とにかく! ここはわたしに任せて。ロムちゃんもラムちゃんもわたしの主人公力で、バシッと説得しちゃうから!」

 

 

 ネプテューヌは気まずい空気を払うかのように大声で言うと、「ねぷ子少尉吶喊します!」と扉に向けて走り出す。

 

 

「あっ! お姉ちゃん、鍵が開いてるってことはロムちゃんとラムちゃんのことだから、何かイタズラと言うか罠が……」

 

 

 ネプギアはそこまで言いかけるが、ネプテューヌは耳を貸さず、「たのもーーー!」と豪快にドアを開く。



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#38 白くべたつくなにか

 ドアを開けたネプテューヌの視界が真っ白になる。

 

 

「ねぷっ!?」

 

 

 突然のことに驚きの声を上げるネプテューヌ。

 

 

べちゃ!!

 

 

 そして粘着質な音と共に視界が塞がれ真っ暗になってしまう。

 

 

「ふぐぐっ!?」

 

 

 同時に鼻と口も塞がれたネプテューヌは息苦しげな呻きを上げる。

 

 

「いえーい! 命中よ。ぶいっ」

 

 

 部屋の中には手を叩いて喜ぶラムと、「ラムちゃん、すごい(ぱちぱち)」と言いながら両手でクリームパイを持ったロムが居た。

 

どうやら、そのクリームパイがネプテューヌの顔面に当たったようだ。

 

 

「お、お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 

 慌ててネプテューヌを助けに行くネプギア。

 

クリーンヒットしたパイは今もネプテューヌの顔面を見事に覆い隠している。

 

 

「あっ……ネプギアちゃん」

 

「ネプギア!」

 

 

 ネプギアの姿を確認したロムとラムが少し嬉しそうな表情を浮かべる。

 

ちゃんと自分達のことを追って来てくれたのが嬉しいようだ。

 

しかし、プラエの姿を確認すると、ロムは「あの子も一緒……」と悲しそうな顔になってしまう。

 

ラムは不満そうにぷくーっと頬を膨らませると、ロムの手からクリームパイを取り上げて、「もーーーー! この浮気者ーーー!」とそれをネプギアに投げつける。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 ネプテューヌを助けようとしているネプギアの頭にクリームパイが命中する。

 

ネプギアは怯まずに、「ごめんね。お姉ちゃんを避難させたら、すぐ来るから」と二人に言いつつネプテューヌを掴みながら一先ず部屋の外に避難する。

 

 

「あーっ! そうやって、またネプテューヌちゃんを優先するーーーー! ネプギアのバカーーーーー!」

 

 

 ラムの甲高い声が部屋中にこだまする。

 

ネプギアの良かれと思って放った言葉が、またもラムの癪に障ったようだ。

 

 

「ちょっと失敗しちゃったかな……」

 

 

 ネプギアはロムとラムに対して申し訳なさそうに言いながら、ドアを閉めてネプテューヌの安全を確保する。

 

 

「ネプテューヌ殿の失策に比べれば些細なものでしょう」

 

 

 あんみつが呆れながらネプテューヌを見ると、「見事に張り付いてますね」とフィナンシェも呆れ顔でパイの張り付いたネプテューヌを眺める。

 

 

「ネプギアお姉さん、頭にパイが……」

 

 

 プラエが心配そうにネプギアに尋ねると、「これぐらい平気だよ」とネプギアは頭に付いたパイをゆっくりとはがす。

 

 

「何でパイがあるんですか?」

 

 

 ユニがイストワールに尋ねると、「それが、食堂にあったものが台車ごと盗まれたようです」とイストワールが答える。

 

それを聞いたフィナンシェは猛烈な勢いで頭を下げて、「申し訳ありません!!」と謝った。

 

 

「むぐーむぐー!」

 

 

 そこにネプテューヌの息苦しそうな抗議の声が響く。

 

早くパイをはがして欲しいようだ。

 

 

「あ、ごめんね、お姉ちゃん」

 

 

 ネプギアはそう言いながらネプテューヌの顔面に張り付いたパイを引っ張ると、【ポン】と景気の良い音と共にパイがはがれた。

 

 

「ぷはー。死ぬかと思ったよ。美少女主人公の死因が【白くべたつくなにか】だなんて、青少年の股間を刺激しすぎちゃうよ」

 

 

 ネプテューヌが気楽そうに言うと、「パイですよ、クリームパイ。いちいち如何わしい言い方に変えないで下さい」とユニが少し恥ずかしそうな顔でツッコミを入れる。

 

 

「……で、どうするの?」

 

 

 ユニはそのままネプギアの方を向いて尋ねると、「もちろん、今からロムちゃんとラムちゃんを説得するよ。二人とも良い子だから絶対に分かってくれると思うから」とネプギアが強い意思を込めた瞳で断言する。

 

 

「相変わらずの正攻法ね……」

 

 

 ユニは少し呆れたふうに言うが、「こういうことで搦め手って良くないと思うから」とネプギアがキッパリと答える。

 

それを聞いたユニは少し嬉しそうに微笑むと、「いいわ、アタシも手伝ってあげる」と言ってハンカチでネプギアの髪に付いたパイを拭いてくれた。

 

 

「プラエどうしたらいい? プラエのせいだもん。何でもするよ」

 

 

 プラエが心配そうにネプギアとユニを上目づかいで見ると、「大丈夫だよ。まずは私とユニちゃんに任せて」とネプギアが微笑む。

 

そしてネプギアはユニと一緒にドアの前に立つと、コンコンと二回ノックをして、「ロムちゃんとラムちゃん、お願いだから私の話を聞いて」と優しく呼び掛ける。

 

その光景は拗ねて部屋に閉じこもってしまった子供に呼び掛ける母親のようであった。

 

神次元で子育てをしたネプギアには似たような経験があったのだろう。

 

 

「ムムム……ネコシエイターよ。どうするロムちゃん」

 

 

 ネプギアの声を聞いたラムが腕組みをしながら唸ると、「ねこしえいたー?」とロムが小首を傾げる。

 

 

「今のネプギアみたいに説得しに来る人をそう言うのよ」

 

 

 ラムの説明に、「……それを言うならネゴシエイターよ」と扉の向こうからユニのツッコミが聞こえて来る。

 

スナイパーのユニは音にも敏感だ。それ以上にラムの声が大きいと言うのもあるが。

 

 

「なによー! ユニちゃんのバカー! せっかくわたし達のレイシーズダンスに加えてあげようと思ったのにー!」

 

 

 ラムは扉の向こうのユニに向けて叫ぶが、「そこはレジスタンスでしょ……レイシーズダンスはウチのお姉ちゃんの技よ……」と再度ツッコミを受けてしまう。

 

 

「とにかく、わたしたちは、そんなよーきゅーに答えないわ!」

 

 

 ラムはそう言って扉の向こうにいるであろうネプギアとユニを指差すと、「ネプギアがその子と別れるまで徹底光線よ! びーーーっ!びーーっ!」と言って両手の人差し指と中指を額に当てて某超人が光線を発射するポーズをする。

 

 

「ほら、ロムちゃんも徹底光線発射よ」

 

 

 ラムがそう言うと、ロムもラムと同じポーズで、「て、徹底光線……(びーーーっ)」と扉に向けて言う。

 

 

「はぁ……もう、ツッコミ疲れたわ」

 

 

 扉の向こうのユニがお手上げのポーズでそう言うと、「あはは……」とネプギアが苦笑いをする。

 

 

「とりあえず、ドア開けていいかな? ちゃんと顔見てお話しよ。顔を見ればそんなイライラも忘れちゃうから」

 

 

 ネプギアが再び優しく問いかける。

 

こうやって地道に少しづつ距離を詰めていくのは彼女らしい方法だろう。

 

 

「大人はキライよ! ずる賢いから! わたし達の知らないところで他の子と仲良くするなんてずる賢いんだから!!」

 

 

 ラムが不機嫌そうに叫ぶ。

 

彼女は一歩も引く気はないらしい。

 

 

「ねぇ、ラムちゃん……わたし、ネプギアちゃんのお話聞いた方がいいと思う……」

 

 

 しかし、ロムにはネプギアの言葉が届いたようで、そう呟く。

 

だが、「何言ってるの! 徹底光線って決めたでしょ!」とラムが叫ぶ。

 

 

「でも、わたし、ネプギアちゃんとケンカしたくないし……それにネプギアちゃんとお話したい……お願いラムちゃん」

 

 

 ロムがうるんだ目で祈るように両手を組んでラムにお願いをする。

 

すると、「仕方ないわね……ジョジョ酌量の余地ありってことで、話だけ聞いてあげるわ」とラムが素直に折れる。

 

 

「それを言うなら、情状酌量の余地よ。ジョジョじゃ奇妙な冒険になっちゃうわよ」

 

 

 ユニが呆れた声を上げながらおもむろにドアを開ける。

 

 

「あっ! ドアまで開けて良いって言ってないのに~」

 

 

 ラムは不満そうに叫ぶが、「……ネプギアちゃん」とロムはネプギアの顔を見て微笑む。

 

 

「二人ともごめんね」

 

 

 ネプギアはそう言って素直に頭を下げると、「わたしも神次元でお姉ちゃんとプルルートさんが凄く仲良くなってたことに、少しショックだったから二人の気持ちよく分かるよ」と続ける。

 

更にもう一度頭を下げて、「本当にごめんね」と言った。

 

先程のユニの言葉を聞いて自分も思い当たる節があったので、素直に悪いと思って謝っているのだ。

 

相手が年下の子供でも悪いことは悪いと素直に頭を下げて謝れるのは彼女らしい美点だ。

 

 

「ううん! わたしの方こそ怒ったりしてごめんなさい」

 

 

 ロムはネプギアの謝罪に感銘を受けたようで、即座に謝り返すと足早にネプギアの元に駆け寄る。

 

ネプギアは駆け寄って来たロムを抱きとめると、「ありがとう、ロムちゃん」と右手で優しく頭を撫でてあげる。

 

するとロムは、「くすん……本当は寂しかったの(しくしく)」と泣いてしまう。

 

ネプギアはロムの頭を撫で続けて、「うん、本当にごめんね」ともう一度謝る。

 

 

「うーーー! やっぱり大人ってずる賢い! そんなふうに謝られたら怒れなじゃない~~」

 

 

 ラムもラムでネプギアの謝罪に感銘を受けたが、ロムのようにすぐに素直にはなれないようだ。

 

 

「みんなで一緒に仲良くしよ? プラエちゃん良い子だし、ラムちゃんとも仲良くできると思うから、ね?」

 

 

 ネプギアがそう言って微笑みながら、ラムに向かって左手を伸ばす。

 

 

「う、うー! でもでも、徹底光線って決めたし~!」

 

 

 ラムは両手を上下左右に激しく動かして困り果てながら、最後に先程の某超人が光線を発射するポーズをする。

 

 

「じゃあ、私はビーム吸収で、徹底光線吸収しちゃう」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ロムから手を離して両手を突き出してボールを受け止めるようなポーズを取る。

 

小学生同士のごっこ遊びのようなやり取りだが、その中にはラムの怒りや悲しみを受け止めるネプギアの心情が現れていた。

 

 

「う、う、うわーーーーん! ネプギアのバカーーー! 浮気なんかしないでよー! 本当はわたしとロムちゃんだけに優しくしてほしいのに~~」

 

 

 ラムはそう言って泣きながら、ネプギアの胸に飛び込んでいく。

 

ネプギアも飛び込んできたラムをガッチリと受け止めた。

 

 

「ごめんね。でも、困ってる人や傷ついた人には優しくしてあげなきゃ。そうでしょ?」

 

 

 ネプギアはラムに優しく言い聞かせるように言う。

 

ラムはこくこくと頷き、「ネプギアが誰にでも優しいの知ってるけど、不安なの~」とネプギアにしがみつく。

 

 

「一件落着ね。とりあえず、正攻法だけで何とかなったわね」

 

 

 ユニが腕組みしながら安堵のため息を吐く。

 

しかし、「でもでも! ネプギアは許したけど、まだその子のこと認めた訳じゃないんだからね。ただの迷子とかなら早くお家に帰ってよー」とラムが最後の抵抗を試みる。

 

 

「っと……そう簡単にはいかないわね」

 

 

 ユニはそう言うとプラエの方を見て、「プラエ、ここからはアンタの出番よ」と言う。

 

 

「うん、ユニお姉さん。プラエのことラムさんにもロムさんにも分かってもらうから」

 

 

 プラエはそう言って小さくガッツポーズをする。

 

 

「言っとくけど、わたしとロムちゃんのハードルは山よりも高く海よりも深いんだからね」

 

 

 ラムが腕組みしながら言うが、「深くてどうするのよ……」とユニにツッコミを受けてしまう。

 

 

「頑張ってお話するね」

 

 

 プラエはそう言うと、自分のことを一生懸命にロムとラムに説明をしはじめる。

 

姉が十年前から行方不明なこと。

 

その姉の言付けで十年後にプラネテューヌを訪れたこと。

 

そしてネプギアに出会い、その行動と優しさ、そして彼女の思想に感嘆を受けて心の底から手助けをしたいと思ったこと。

 

プラエは身振り手振りを交えて必死にロムとラムに説明し、二人もそれを真剣に聞いていた。

 

 

 

****

 

 

 

 話を聞き終えたロムとラムは両手でプラエの手を握ると笑顔を向ける。

 

 

「今日からプラエはわたし達の仲間よ!」

 

「何でも聞いてね。わたし、先輩だから頑張る(ぐっ)」

 

 

 二人ともプラエの境遇と想いを理解してくれたようで、温かく迎えてくれたようだ。

 

 

「これで本当の一件落着だね」

 

 

 ネプギアは三人の様子を見ながら微笑む。

 

ユニが、「意外とあっさりと納得したわね」と少し拍子抜けしたように言うと、「それだけプラエちゃんが真剣だったってことだし、何よりロムちゃんもラムちゃんも優しい子だから」とネプギアが答える。

 

 

「これぞ、必殺手のひら返し!!」

 

 

 ネプテューヌがドヤ顔で言い放つと、「もう少しまともな言い方はないんですか……」と隣のイストワールが頭を抱えてうなだれる。

 

 

「それより、アンタ、シャワーでも浴びてきなさいよ。髪がベトベトよ」

 

 

 ユニがネプギアの頭を指差して言うと、「あっ! それならわたし達が洗ってあげるわ!」とラムが言い、「わたし達のせいだもんね」とロムがそれに続く。

 

それを聞いたプラエも、「プラエも一緒に入りたい」と言う。

 

 

「じゃあ、みんなで仲直りのお風呂に入ろっか」

 

 

 ネプギアは笑顔で提案するが、「アタシはパス」とユニが冷めた声で言ってくる。

 

 

「……ユニちゃん冷たい……」

 

 

 ネプギアは一気に意気消沈してしまうが、「だって、アタシ特に汚れてないし」とユニの態度は変わらない。

 

 

「じゃあ、汚しちゃえばいいのね!」

 

 

 ラムはニヤリと笑うと、「とりゃー!」とユニの後頭部にパイを投げつける。

 

 

べちゃ!

 

 

「なっ!?」

 

 

 完全に油断していたかつ背後からの攻撃なので、さすがのユニも避けられず見事に後頭部にパイが直撃する。

 

ユニが驚いている間に、「更に追撃!」とラムが言うと、今度はロムが、「えいっ」とユニに向けてパイを投げつける。

 

 

べちゃ!

 

 

 今度はユニの胸にパイが当たると、「ユニちゃんのお胸に当たったわ。これが本当のペチャパイね!」とラムがドヤ顔で言い放つ。

 

 

「だーれーがー、ペチャパイよ!」

 

 

 ユニは鬼の形相で台車からパイを二つ奪うと、それをロムとラムに立て続けに投げつける。

 

 

「きゃっ!?」

 

「わぷっ!?」

 

 

 一つはロムの頭に、もう一つはラムの顔面に命中する。

 

 

「やったわね~」

 

 

 ラムが顔に張り付いたパイをはがしながら楽しそうに笑うと、「それはこっちの台詞よ」とユニが言い返す。

 

そして二人は互いにパイを持つと、投げ合いを始めてしまう。

 

当然のようにロムも加わり三人でパイ投げの応酬が始まる。

 

 

「わわわっ、どうしよう、ネプギアお姉さん」

 

 

 プラエがオロオロとネプギアに尋ねると、「えっと、このままじゃユニちゃんが不利だから、私がユニちゃんに加勢するよ。でも、そうするとロムちゃんとラムちゃんがかわいそうだから、プラエちゃんはロムちゃんとラムちゃんチームね」とネプギアが答える。

 

 

「ふえっ!? ネプギアお姉さん、何言ってるの?」

 

 

 ネプギアの思いがけない言葉に驚くプラエだが、「ネプギア参戦!」と言いながらネプギアがユニの側に付いてパイ投げに参加してしまう。

 

 

「ふわぁ~、本当にネプギアお姉さんまで始めちゃった」

 

 

 真面目なネプギアの思いがけない行動に呆然としてしまうプラエ。

 

そこにネプテューヌが、「うん? もしかして、ネプギアと一緒がいいの? なら、わたしがロムちゃんラムちゃんチームに入るから、プラエちゃんはネプギアチームね」と言うと、「ネプテューヌ参戦!」と言いながら、ネプテューヌはロムとラム側に付いてパイ投げに参加する。

 

 

「おおっ! ネプテューヌちゃんが来た。これで百人力よ」

 

 

 ラムがネプテューヌの加勢に息巻くと、「わたしとラムちゃんのイタズラパワーが合体すれば、100万パワーが1200万パワーになって勝ち確定だよ」とネプテューヌも同じように息巻く。

 

 

「おおっ、よく分からないけど、何かスゴイ」

 

 

 ラムがそう言って驚くと、「わたしは?」とロムが少し寂しそうな顔をする。

 

 

「当然、そこにロムちゃんが加わって1200万パワーの二乗!!」

 

 

 ネプテューヌがノリノリで返事をすると、「「おお~~」」とロムとラムが声を合わせて驚く。

 

 

「1200万パワーの二乗で!」

 

 

 ネプテューヌがこぶしを突き上げながらドヤ顔で宣言すると、「「1200万パワーの二乗で?」」とロムとラムが期待を込めた顔でそれに続く。

 

 

「えーと……2400万パワー?」

 

 

 ネプテューヌが急に自信なさげに言うと、「お姉ちゃん、それただの二倍だよ」とネプギアのツッコミが入る。

 

更に、「二乗なら1億4400万パワーかな。12の二乗が144って覚えておくと楽だよ」と丁寧に答えてくれるネプギア。

 

 

「そんなの覚えて何の役に立つの~?」

 

 

 教えてもらったのに、やや不満顔のネプテューヌ。

 

しかし、「えっと、今お姉ちゃんの役に立ったかな?」とネプギアに言われると、「…………」と黙ってしまう。

 

 

「とりゃー! 隙あり!」

 

 

 ネプテューヌが誤魔化すようにパイをネプギアに投げつけると、「お姉ちゃん、ズルい!」とネプギアが頬を膨らませて抗議する。

 

 

「わぷっ!?」

 

 

 同時にユニの投げたパイが見事にネプテューヌの顔面に命中する。

 

さすがはスナイパーである。

 

それを皮切りに再びパイ投げが始まる。

 

 

「わわわっ!? やっぱりお姉ちゃんとラムちゃんのコンビ強いよ。助けてプラエちゃん!」

 

 

 状況不利に陥ったネプギアがプラエに助けを呼ぶと、「は、はいっ!」とプラエもパイ投げに加わってしまう。

 

 

「プラエ様!?」

 

 

 慌てて止めようとするあんみつだが、「良いじゃありませんか。友情を深める儀式みたいなものですよ」とフィナンシェがあんみつを手で制する。

 

 

「しかし、お召し物が……」

 

 

 あんみつが困った声を上げるが、「それこそ、私達メイドの腕の見せ所ですよ。頑張ってお洗濯しましょ、あんみつ」とフィナンシェが微笑むと、あんみつも諦めて「……わかりました」とため息を吐く。

 

 

 こうしてパイが無くなるまでパイ投げが行われた。

 

パイ投げが終わったネプギア達はクリームだらけになりながらも笑いあい、みんなで仲良くお風呂に入ったのだった。

 

ただし、お風呂から上がった後はイストワールから【食べ物を粗末にしてはいけません】と軽くお説教を受けてしまった。



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#39 ファミ通の記事

 プラエと出会いファミ通の取材を受けてから約一週間。

 

G.C.2019年4月5日金曜日。

 

ネプギア達はプラネタワー内の一室で朝食をとっていた。

 

味噌汁の美味しそうな匂いのする和食で、あんみつが作ってくれたものだ。

 

彼女は名前と見た目通り和食が得意で、和食のメニューの際には厨房の手伝いをさせてほしいと申し出たのだ。

 

ネプギアの右隣にネプテューヌ、左隣にプラエ、そして向かいにはイストワールとあんみつが並んで座っている。

 

 

「ネプギアさん、良い報告があります」

 

 

 イストワールがネプギアに朗報があると切り出すと、「なんですか?」ネプギアは箸を止めイストワールの話を聞く。

 

 

「先日、プラネテューヌのシェアが大きく上がりました」

 

 

 イストワールの報告にネプギアが、「ホントですか!」と素直に喜びの声を上げる。

 

【シェア】とはシェアエネルギーの略称、主にこちらの呼び方で呼ばれることが多い。

 

ちなみによくグラフにされており、紫色がプラネテューヌ、黒がラステイション、白がルウィー、緑がリーンボックスで表される。

 

 

「諜報部の調査によると……」

 

 

 イストワールが詳細の説明をしようとすると、一緒に食事をしていたネプテューヌが頬張っていたご飯を飲み込み、「いやー! わたしの溢れ出す魅力がゲイムギョウ界のみんなに伝わっちゃたかなー!」と口を挟む。

 

 

「私はネプギアさんとお話をしているんです。この件にネプテューヌさんは微塵も関係ありません」

 

 

 この一週間もまったく仕事をしなかったネプテューヌに対してのイストワールの態度は手厳しい。

 

 

「私もネプテューヌ殿は関わっていないと思います」

 

 

 あんみつも冷静にそう言うと、「ネプテューヌさん全然頑張ってない」とプラエもそれに続く。

 

ちなみにこの一週間で、プラエ達は引っ越しを済ませつつネプギアのクエストの手伝いをしていた。

 

先週のパイ投げの日のクエストも、後日にネプギアとプラエ達がこなしていた。

 

 

「えー! わたしも頑張ったよー!」

 

 

 三人の塩対応を受けてもめげずに話を続けようとするネプテューヌだが、「何をです?」と問いかけるイストワールの態度は変わらず冷たい。顔も真顔である。

 

 

「ゲームとかー、おやつとかー、お昼寝とかー」

 

 

 ネプテューヌは指折りしながらここ数日の自分の行動を振り返るが、「……お姉ちゃん、それ頑張りの方向が違うと思うよ……」とネプギアが苦笑いをしながらツッコミをする。

 

 

「……ですから、そんな余計なお肉が付いてしまったんですね」

 

 

 イストワールは冷ややかにネプテューヌのほっぺたを見つける。

 

 

「え……わたし太った?」

 

 

 ネプテューヌと言えど、女の子の端くれである。

 

太ったなどと言われては慌ててしまう。

 

女神は国民に愛される姿を維持できる不老不死の存在とは言え、食べるものを食べて運動しなければ太ってしまう。

 

女神の体もそこまで便利ではないのだ。

 

 

「そんなことないよね?」

 

 

 周りに同意を求めるネプテューヌだが、プラエはご飯を口に入れ、あんみつは味噌汁をすすり、無言の圧力を加えてくる。

 

 

「ね! ね? ネプギア、お姉ちゃん太ってないよね?」

 

 

 ネプテューヌは最後の頼みの綱であるネプギアに助けを求めようとするが、「ええと……」と困った表情のネプギア。

 

イストワールの言う通り、ここ数日でネプテューヌは控えめ見てもふくよかになっていた。

 

 

「私、太ったお姉ちゃんも好きだよ」

 

 

 ウソのつけないネプギアの精一杯のフォロー。

 

 

「うわああああん!!」

 

 

 不幸にもそれが痛烈な皮肉になってしまったようで、ネプテューヌは泣きながら洗面所に向かう。

 

 

「……ちょっと失敗しちゃったかな……」

 

 

 困り顔で冷や汗を流すネプギアに対して、「ネプテューヌさんには、いい薬です」とイストワールは冷静だった。

 

更に、「右に同じく」とあんみつが続き、「プラエも右に同じなの」とプラエまでもが後に続く。

 

 

「きゃーーーー! わたしの魅惑のパーフェクトボディが~~!」

 

 

 そして、洗面所で体重計に乗って現実を確認したネプテューヌの絶叫が響き渡る。

 

 

「……話の続きになりますが、調査によると昨日発売された雑誌の効果のようです」

 

 

 何事もなかったように話を戻すイストワール。

 

 

「雑誌? どんな雑誌ですか」

 

 

 ネプギアはイストワールの言う雑誌に興味を示すと、「これです。付箋の貼ってあるページを読んでみて下さい」とイストワールはそれを予測していたようなタイミングで雑誌を取り出す。

 

表紙にキツネのマスコットキャラクターが描かれている週刊誌のようだ。

 

 

「ええと……【頑張る女神候補生特集】……あ! これ、週刊ファミ通ですか!」

 

 

 記事の内容からファミ通の書いた自分の記事だと察したネプギアは少し恥ずかしい気持ちになりながら文章に目を通す。

 

 

「え! 見せて見せて、プラエも見たい」

 

 

 プラエが興味津々に席を立ってネプギアの見ている雑誌を覗き込む。

 

 

「ぷ、プラエ様、食事中ですよ。お行儀が悪いです」

 

 

 あんみつは慌てて止めようとするが、「良いではないですか。あんみつさんもご一緒に見られては」とイストワールに仲介されると、「……イストワール殿がそう言うのでしたら」とあんみつもネプギアの隣に行き雑誌を覗き込む。

 

 

「ネプギアさんの真面目さ、誠実さ、それに先日のクエストの活躍も好意的に紹介された良い内容だと思いますよ」

 

 

 イストワールは率直に好意的な感想を述べる。

 

そこには先日のイストワールと一緒に行ったクエストの活躍の他にも、どこで聞きつけたのか午前中にした老婆の古時計を直した事やひよこ虫と戦った事まで書かれており、老婆やギルドの受付の男性達の好意的なインタビューも書かれていた。

 

 

「そ、そんなこと言われると、ちょっと恥ずかしいです」

 

 

 恥ずかしさで顔を赤くするネプギアは、「でも、嬉しいな。こんなに良い記事書いて貰っていいのかな……」と続ける。

 

 

「現にネプギアさんはそれだけのお仕事をしているんです。正当な評価です。自信を持って下さい」

 

 

 イストワールは微笑みながらネプギアを称賛する。

 

この記事の内容でシェアが大きく上がったのは間違いなく事実であった。

 

 

「……そんなに褒めないでください」

 

 

 イストワールの褒め言葉で更に顔を赤くするネプギア。

 

 

「今日の午後からもファミ通さんの取材がありますから、一緒に頑張りましょう」

 

 

 先日の取材の後、今度は実際にクエスト同行して取材したいと言うファミ通の要望を受け、今日の午後で約束をしているのである。

 

 

「はい! 頑張ります!」

 

 

 元気よく返事をするネプギア。やる気満々である。

 

 

「プラエ様のことも書かれておりますね。【姉を探し求める謎の美少女】と」

 

 

 あんみつがプラエの事が書いてある記事に目を通すと、「……プラエも少し恥ずかしいな……」とプラエも顔を赤くする。

 

 

「プラエちゃんの超能力のことどうしましょう? 私はファミ通さんなら話してもいいと思うんですけど」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「そうですね。隠し通せるものでもありませんし、機を見てお話ししましょうか」とイストワールが答える。

 

 

「大丈夫でしょうか?」

 

 

 あんみつが不安そうに質問すると、「女神様の協力者なら、超能力が使えても不思議ではありませんよ。プラエさんが奇異の目で見られることはありません」とイストワールが答える。

 

 

「……でも、ちょっと怖い」

 

 

 プラエがうつむいて両指をいじると、「大丈夫だよ。何があっても私が守るから」とネプギアが優しく右手でプラエの肩を叩く。

 

 

「うんっ!」

 

 

 ネプギアの気持ちが嬉しかったのか、プラエは元気よく頷いて返事をする。

 

すると、「ネプギア~、お姉ちゃんの体重も守って~」とガックリとうなだれたネプテューヌが戻ってくる。

 

 

「えっと……、それならこれから一緒にクエスト行く?」

 

 

 ネプギアはやや控えめに尋ねるが、ネプテューヌは即座に両手でバッテンを作ると、「それはパス!」と断固拒否の構えを取る。

 

太るのは嫌だが、仕事をするのはもっと嫌なようだ。

 

 

「もっと、楽に痩せられる方法プリーズ。ほら、お腹とかに張り付けて電気送るエイトパットだっけ? それ系のヤツ」

 

 

 ネプテューヌは右手の人差し指を上げながらネプギアに提案するが、「あれは運動の補助で、楽に痩せられるとはちょっと違うと思うんだけど……」とネプギアが困り顔で答える。

 

 

「えー? ポテトチップス食べながら痩せられるとか広告であったよ」

 

 

 ネプテューヌが口を尖らせて抗議するが、「……それは模造品の過大広告だと思うよ」とネプギアが答える。

 

 

「電気を送るのでしたら、いっそのこと、数百億ボルト程流してみてはどうでしょうか?」

 

 

 イストワールがにこやかな顔で提案をする。

 

さすがにこの期に及んで仕事を拒否するネプテューヌに怒りが沸いたようだ。

 

ちなみに雷ですら十億ボルトなので、イストワール怒りがいかに激しいものだとわかるだろう。

 

 

「そんな電流流されたら死んじゃうってば! いーすん怖いよ!」

 

 

 ネプテューヌは顔を真っ青にして抗議するが、「お姉ちゃん、ボルトは電圧だよ。電流はアンペア」とネプギアのツッコミを受けてしまう。

 

 

「もうー、ネプギアは細かいなー。そういう科学の専門的な話はオタクに任せておけばいいの」

 

 

 ネプテューヌがお手上げのポーズで【やれやれ】と言った感じで言うが、「お姉ちゃん、ボルトとアンペアは科学以前に理科の話だよ」とツッコミをされてしまう。

 

 

「そ、そーだっけ! とりあえず、お姉ちゃんはゲームしながら痩せられる方法を考えるから、ネプギアは頑張ってクエストして来てー」

 

 

 ネプテューヌはそう言うと、そそくさと部屋を出て行ってしまう。

 

 

「うーん……もう少しでお姉ちゃんをクエストに連れて行けそうだったのにな」

 

 

 ネプギアがあごに右手を当てながら残念そうに言うが、「気を落とさないで下さい。ネプテューヌさんのことですから、何かと理由を付けて行かなかったと思いますよ」とイストワールが言う。

 

更に、「右に同じく」とあんみつが続き、「プラエも右に同じなの」とプラエも後に続く。

 

この一週間で、プラエもあんみつもネプテューヌの行動パターンが大体分かってきたようだった。

 

ちなみに、ネプギアはクエストに向かう前にネプテューヌの様子を見に行ったが、そこには逆立ちして足でコントローラーを操作するネプテューヌの姿があった。

 

その方法で痩せられるかは疑問だが、その努力を少しでも仕事に回して欲しいと思うネプギアであった。



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#40 戦場の記者

 ネプギア達はファミ通と合流する為にクエストの現地である【サクラナミキ】へ向かう。

 

サクラナミキは名前の通り桜が咲き誇る観光名所である。

 

この季節になると、あちこちで開き始めそうな桜のつぼみが出来始めており、春の訪れを予感させている。

 

 

「ファミ通さーん」

 

 

 ネプギアはサクラナミキの入り口にいたファミ通を見つけると右手を大きく振りながら声を掛ける。

 

それに気づいたファミ通は小さく右手を振り返す。

 

ネプギアがファミ通に駆け寄り、イストワール達もそれに付いて行く。

 

 

「ネプギア様、お待ちしておりました」

 

 

 ファミ通はペコリと丁寧に頭を下げる。

 

 

「今日のクエストでもご活躍を期待していますよ」

 

 

 頭を上げたファミ通は続けてそう言うと、にっこり笑いながらネプギアに期待の眼差しを送る。

 

 

「はい! 頑張ります」

 

 

 ネプギアは力強くそう言うと同時に、「……その前に一つお願いがあるんですが……」と言って両手を胸の前で祈るように組んでファミ通を正面から見据える。

 

 

「なんでしょう?」

 

 

 ファミ通はネプギアの改まった態度を不思議に思いながら問いかける。

 

 

「私に対して敬語は止めて貰えませんか?」

 

 

 ネプギアは真剣な顔をしてファミ通にそうお願いすると、「なぜでしょうか?」と心底不思議そうに首を傾げるファミ通。

 

候補生ではあるが、高貴な身分の女神に敬語を使うのは当然だと思っている為である。

 

 

「そういうのあまり得意じゃないし、ファミ通さんともっと打ち解けたいんです」

 

 

 ネプギアの謙虚な性格からすると、敬語を使われるのは少しむずがゆいし、ネプギアは常に人と対等な立場で接したいと思っているのだ。

 

 

「わかったよ。ネプギア様は思ったよりフランクな人なんだね」

 

 

 ファミ通は本来のものであろう口調に戻り、ニッコリと微笑みながらネプギアの要望に応える。

 

すると、「私にも特に敬語は必要ありません。私に敬語を使ってネプギアさんに使わないのも変ですし」イストワールも続けてファミ通に提案する。

 

 

「うん、わかったよ。よろしくね、イストワール様」

 

 

 ファミ通はイストワールにも微笑みかけると、サムズアップを決める。

 

 

「では、今回のクエストの説明をします」

 

 

 イストワールがそう言うと、何もないところにホログラム映像が浮かび上がる。

 

そこにはサクラナミキの地図と、シンプルな緑色のドット絵で描かれ黄色い角の生えた、世間一般でインベーダーと呼ばれる宇宙人のようなモンスターが映っていた。

 

これは【ベーダー】と呼ばれ、二次元時代のゲイムギョウ界の名残があるモンスターで、二次元から抜け出たように厚みが無く平たい。

 

その為、全長は1mほどあるが厚さはほとんどなく紙のようなものなのである。

 

その歴史はゲイムギョウ界ではスライヌより古く紀元前より生きていたと言われている。

 

 

「このサクラナミキに大量のベーダー系のモンスターとボスと思われる巨大ベーダーが発生していますので、それの退治になります」

 

 

 イストワールがクエストの詳細を説明すると、「分かりました! 折角のお花見の季節なのにモンスターが居たら困りますもんね」とネプギアは小さくガッツポーズを決めて意気込みを示す。

 

その姿には、お花見を楽しみにしている人達の為に頑張ろうという意気込みが強く表れているようだった。

 

 

パシャパシャ!

 

 

 その瞬間とカメラのフラッシュとその音が鳴る。

 

 

「いいねいいねー。いい絵が撮れたよ。その調子でよろしくお願いするよ」

 

 

 ファミ通がカメラを構え撮影をしていたのである。

 

 

「わかりました。でも、戦闘中は危ないので離れていて下さいね」

 

 

 ネプギアはファミ通のカメラの腕に感心しつつ、戦闘で危険が無いよう忠告するが、「大丈夫だよ。私、戦えるから」とファミ通が言うと、彼女の背中に巨大なエビのようなものが現れる。

 

ファミ通がポーチから呼び出したものだろう。

 

 

「え……そのエビが武器なんですか!?」

 

 

 ネプギアが目を丸くして驚くと、「こう見えても、腕にはそれなりの自信があるんだ!」ファミ通は背中に背負ったエビの尻尾の部分を持つと、両手で太刀のように中段に構える。

 

 

「「「…………」」」

 

 

そのシュールな絵面にイストワールもプラエもあんみつも言葉を失っているようだ。

 

 

「さー! 私の準備はいつでも良いよ。戦場の記者の強さを見せてあげるよ」

 

 

 ファミ通はネプギア達の反応を気にすることなく、エビをゴルフのスイングのように元気よく振る。

 

 

「今まで会った人の中で一番インパクトある武器かも……」

 

 

 ネプギアがそうつぶやくと、「そうですね……」とイストワールもそれに続く。

 

ネプギアもイストワールも今まで色々な人と戦ってきたがここまで衝撃的な武器は初めてだった。

 

 

「あんみつ、アレって珍しい武器なの?」

 

 

 世間知らずのプラエがあんみつに尋ねると、「ええ……とても摩訶不思議で奇天烈な武器ですね」とあんみつも首を傾げながら答える。

 

 

「こほん……」

 

 

 イストワールが場を仕切り直す意味で咳ばらいを一つすると、「戦えるとはいいますが、ファミ通さんのレベルはいくつになりますか?」とファミ通に尋ねる。

 

 

「今は4だよ。VRトレーニングジムでビシバシ鍛えてきたんだ」

 

 

 ファミ通が自信満々に鼻の下を擦りながら言う。

 

【VRトレーニングジム】とはお金を払って安全な仮想空間でモンスターと戦ってレベルを上げられる施設。

 

リーンボックスで作られたゲームを元に四国共同で限りなく実戦に近い状況で訓練できるマシンが置いてある。

 

レベルの高い冒険者が携帯端末を使い実在するモンスターのデータを集めて、それを元に仮想空間で再現するので、レベルの高い訓練が可能だ。

 

ネプギアも情報提供に協力しており、彼女の改造した高性能のNギアからもたらされるハイレベルなデータは、全国のトレーニングジムで重宝されている。

 

 

「普段記者のお仕事をしながらそれってスゴイですよ。クエストがお仕事の私達だって5なんですから」

 

 

 ネプギアが柏手を打ってファミ通を褒める。

 

この一週間、ネプギア達も土日以外は毎日クエストに励んでいたのに、一般人であるファミ通がレベル1しか違わないのは凄いことなのだ。

 

ちなみに土日でも緊急事態ならば当然出動する。

 

 

「それだけ、私もこの取材に期待してるってことですよ」

 

 

 ファミ通が再びエビをゴルフスイングする。

 

その雰囲気はサラリーマンが調子の良いときに傘でスイングをする様に似ていた。

 

 

「これは期待に応えないとですね。ね? ネプギアさん」

 

 

 イストワールは微笑みながらネプギアに言うが、「が、がんばりましゅ!」とネプギアは噛んでしまう。

 

どうやら、ファミ通の意気込みにプレッシャーを感じてしまったようだ。

 

 

「ご、ごめんなしゃい……あっ、また噛んじゃっったよ~~……うぅ、カッコ悪いなぁ……」

 

 

 慌てて謝ろうとするネプギアだが更に噛んでしまう。

 

真面目だけど、やや内気なネプギアはこういうプレッシャーに弱い。

 

 

「あははっ、ネプギア様は可愛いなぁ。今のバッチリ記事に書かせてもらいますよ」

 

 

 ファミ通が笑いながら言うと、「や、止めて下さい~。恥ずかしすぎて死んじゃいそうです~~」とネプギアが目をバッテンにさせて慌ててしまう。

 

 

「意外とシェアが上がると思うよ」

 

 

 ファミ通は涼し気にそう言うが、「それでも嫌ですよ~」とネプギアは更に抗議を続ける。

 

 

「冗談はさておき、そんなに硬くならずにリラックスしていきましょう」

 

 

 ファミ通は笑顔で両手を胸の前で上げ下げして、リラックスのようなジェスチャーをしながら言う。

 

 

「は、はい……」

 

 

 ネプギアはファミ通の笑顔とジェスチャーで少し緊張がほぐれたようで、表情がいつも通りに戻ったようだった。

 

 

「では、続けてファミ通さんの得意分野を教えてもらいますか?」

 

 

 イストワールがそう言った瞬間に、「はい! それなら私が調べられます!」とネプギアが元気よく右手を上げる。

 

先程の名誉挽回とでも言いたいようだ。

 

 

「調べるってどうするの?」

 

 

 プラエが不思議そうな顔でネプギアを見ると、「この一週間でNギアのアナライザーを改良して、新作期に合わせた各パラメータの現時点の評価をS~Eの六段階評価で出せるようにしたんだよ」とネプギアがNギアを取り出しつつVサインを決める。

 

 

「おお~。それは楽しみですね。早速お願いします」

 

 

 ファミ通は興味津々と言わんがばかりにネプギアの目の前に立つ。

 

 

「それじゃあ、始めますね」

 

 

ネプギアはそう言うとNギアを操作して、画面の中のアナライザーのアプリを選択しNギアをファミ通に向ける。

 

画面に【解析中】と表示されると、次々と文字が表示される。

 

 

 

【ファミ通】

elemental(属性):地

 

character class(クラス):ナイト【HPと防御力が高く仲間を守る。スーパーアーマーあり】

 

growth(成長タイプ):普通

 

hit point(HP):A

 

magic point(MP):E

 

power(攻撃力):B

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):E

 

support(回復&補助能力):C

 

weakened(弱体化&状態異常):E

 

defense(防御力):A

 

resist(魔法防御力):A

 

speed(スピード):D

 

stamina(スタミナ):A

 

accuracy(命中精度):C

 

avoidance(回避精度):C

 

capacity(最大シェア):E

 

dexterity(クリティカル率):C

 

cooperation(連携、合体技補正):B

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):B

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):A

 

guts(HP減少時の能力補正):A

 

casting speed(詠唱速度):C

 

memory(記憶力):A

 

tactics(戦術):B

 

strategy(戦略):B

 

command(指揮):C

 

zone of control(ZOC):A

 

trick(策略):A

 

adaptation(適応力):A

 

learning(学習能力):A

 

viability(生活能力):A

 

politics(政治):B

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):C

 

 

 

「ふわぁ~、なんかいっぱい出てきたよ」

 

 

 次々に表示される文字にプラエは驚きの声を上げる。

 

 

「これを見るに、ファミ通さんはHPと防御力が高くて味方を守るのが得意なようです。あと、記者の人らしく頭がいいので頭脳プレイも向いてるみたいです」

 

 

 ネプギアはそう言うと、「とりあえず、私と一緒に最前線でタンクをしつつ、何か良い作戦があったら教えて下さい」と続ける。

 

【タンク】とは敵の攻撃を一手に引き付け他の仲間を守る盾の役目。

 

 

「おお……そのアプリだけでそこまでわかってしまうんですね。なるほどなるほど……」

 

 

 ファミ通はネプギアの予想を遥かに上行く解析に驚きを隠せないが、そこは記者らしく落ち着いて対処しつつ、しっかりとメモを取る。

 

 

「文字が多すぎて、プラエ、ちんぷんかんぷん……」

 

 

 プラエがしょんぼりしたように言うと、「項目の解説書はこれだよ」とネプギアがNギアの画面を変えてプラエに見せてくれる。

 

画面には先程のファミ通のアナライズしたモノの各項目に短い説明文が付いていた。

 

 

 

 

elemental(属性):キャラクターの属性、地形による恩恵や属性に対するダメージ補正がある。

 

character class(クラス):適性の高いクラス。

 

growth(成長タイプ):成長のしかた、早熟、普通、晩成の三種。普通=平均的、早熟=前半は+補正だが後半は-補正、挽回=前半は-補正だが後半は+補正

 

hit point(HP):ヒットポイント、ダメージを受けると減る。

 

magic point(MP):マジックポイント、魔法を使うと消耗する。

 

power(攻撃力):近接攻撃の攻撃力。近接攻撃にはスタミナを消耗する。

 

shot(射撃力):射撃攻撃の攻撃力。射撃武器は弾数やエネルギーが無くなると使えなくなる。

 

magic(魔法攻撃力):魔法攻撃の攻撃力。魔法はMPが残ってないと使えない。

 

support(回復&補助能力):回復魔法と能力アップ魔法の力。

 

weakened(弱体化&状態異常):能力ダウンや状態異常を起こす魔法や弾の威力。

 

defense(防御力):近接と射撃の防御力と状態異常耐性。

 

resist(魔法防御力):魔法に対しての防御力と状態異常耐性。

 

speed(スピード):歩きや走るスピード。

 

stamina(スタミナ):スタミナの量。スタミナは走ったり近接攻撃をすると減る。歩いていれば自然回復する。

 

accuracy(命中精度):狙いの正確さ、攻撃を命中させる時の主になる数値になる。

 

avoidance(回避精度):回避行動の正確さ、攻撃を回避する時の主になる数値になる。

 

capacity(最大シェア):シェアエネルギーの許容量。某ロボゲーの気力みたいなもの。基本的に女神が高い。

 

dexterity(クリティカル率):クリティカルヒットやパリイ等が発生する確率の主な数値になる。

 

cooperation(連携、合体技補正):連携技と合体技の成功率と威力、命中、クリティカル率に影響。

 

luck(運):命中、回避、クリティカル率に影響

 

Intuition(直感):命中、回避、クリティカル率に影響

 

tension(シェア増加率):有利な状況の際のシェアエネルギーアップ率。

 

cool(シェア減少率):不利な状況の際のシェアエネルギーダウン率。

 

guts(HP減少時の能力補正):HPが減少すると、各能力が上昇する。某ロボゲーの底力みたいなもの。

 

casting speed(詠唱速度):魔法を使う速さ、詠唱時間の短縮。

 

memory(記憶力):技や魔法を覚えることのできる数

 

tactics(戦術):攻撃、防御の行動の多彩さ。戦闘時に高い方がダメージ&被ダメージ、命中、回避、クリティカル率にボーナス。

 

strategy(戦略):戦略の能力、高い方のパーティーが先制攻撃出来る。差が大きいとバックアタック出来る。逆もありうる。

 

command(指揮):指揮能力、リーダー、サブリーダーのみ有効。高い方のパーティーの命中、回避、クリティカル率にボーナス。

 

zone of control(ZOC):高い方が強いZOC(ゾーンオブコントロール)を発揮できる。

 

trick(策略):罠の設置や誘引の上手さ。罠や捕獲の威力と成功率。ダミーバルーンや機雷、分身の術等も含む。

 

adaptation(適応力):パーティメンバーに馴染む力、好感度アップ率に影響。

 

learning(学習能力):敵の行動を見極める力と平和時の仕事能率。2回目以降の攻防時に高い方が、ダメージ&被ダメージ、命中、回避、クリティカル率にアドバンテージ。

 

viability(生活能力):平和時の生活能力。所持クレジットの減少率に影響。

 

politics(政治):平和時の政治能力。内政の上昇率や外交の成功率に影響。人口や信仰の増加に影響。

 

mechanic(機械技術):機械を扱う力。銃器を主に一部の武器の改造するのに必要。高いと機械の武器の威力、命中ボーナス。

 

computer(コンピューター技術):コンピューターを扱う力。電子機器を搭載した一部の武器の改造するのに必要。高いと電子機器の武器の威力、命中ボーナス。

 

 

 

S-トップクラス

A-超得意

B-得意

C-平均並み

D-苦手

E-超苦手

 

 

 

 

 

「少しわかったけど……。こんなにも項目があるの?」

 

 

 解説書を一通り読んだプラエがネプギアに質問をすると、「うん、先行してる冒険者の人達の情報によるとこれだけあるの」とネプギアが答える。

 

 

「でも、全部出来る必要は全然無いんだよ。みんなで協力するのが大事なんだから」

 

 

 ネプギアは優しく諭すようにプラエにそう言うと、「それに、これは現時点での評価だから、今後の努力次第でいくらでも伸びるし」と続ける。

 

 

「プラエのNギアにはないの?」

 

 

 プラエが服の中からNギアを取り出して操作をする。

 

 

「プラエちゃんにあげたのは少し古いから、アナライザー自体がないの。ごめんね」

 

 

 ネプギアがそう言って謝ると、プラエはぷるぷると首を左右に振って、「貰えただけでも凄く嬉しいの。これはプラエの宝物だよ」と答える。

 

ネプギアは携帯端末を持っていないというプラエに、自分の予備のNギアをプレゼントしたのだ。

 

元は壊れていたジャンク品をネプギアが修理した物だ。

 

 

「ネプギアお姉さん、プラエの事もアナライザーで見てアドバイスが欲しいな」

 

 

 プラエが少し甘えるように上目遣いでネプギアに言うと、「うん、いいよ」とネプギアが答えNギアを操作してプラエに向ける。

 

 

 

【プラエ】

elemental(属性):氷

 

character class(クラス):エスパー【プラエ専用。時間の操作ができる】

 

growth(成長タイプ):晩成

 

hit point(HP):D

 

magic point(MP):A

 

power(攻撃力):C

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):A

 

support(回復&補助能力):C

 

weakened(弱体化&状態異常):C

 

defense(防御力):D

 

resist(魔法防御力):B

 

speed(スピード):C

 

stamina(スタミナ):C

 

accuracy(命中精度):A

 

avoidance(回避精度):A

 

capacity(最大シェア):E

 

dexterity(クリティカル率):C

 

cooperation(連携、合体技補正):A

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):A

 

tension(シェア増加率):D

 

cool(シェア減少率):D

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):A

 

memory(記憶力):A

 

tactics(戦術):D

 

strategy(戦略):E

 

command(指揮):E

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):D

 

adaptation(適応力):C

 

learning(学習能力):C

 

viability(生活能力):C

 

politics(政治):C

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):C

 

 

 

 

「えっとね、プラエちゃんは魔法攻撃が凄く得意なの。あと、物理攻撃力もあるから状況合わせて使い分けて」

 

 

 ネプギアが優しい声でプラエに説明をすると、「うん!」とプラエが頷く。

 

実際のことろはこの一週間一緒に戦っているので、プラエの立ち回りはお互いに知っているが、それでもこういう機械で再確認するもの悪くないとお互い思っているようだ。

 

 

「でも、HPが低めで防御力も高くないし、スピードもスタミナも普通だからタンクの私からあんまり離れちゃダメだよ」

 

 

 続けてネプギアが少し厳しめな声で注意点をプラエに説明すると、「わかった!」と元気よくプラエが答えた。

 

 

「少し気弱でシェアが落ちやすいけど、私が守ってあげるね」

 

 

 更に説明を続けるネプギア。

 

シェアエネルギーは基本的には女神の力の源だが、一般人にも多少影響がある。

 

現に犯罪組織が台頭していたころに、下っ端と呼ばれた幹部の構成員と初めて会った時に、ネプギア、アイエフ、コンパの三人がかりでも彼女に一度敗北している。

 

これは当時は犯罪組織マジェコンヌのシェアが全世界の八割をも占めていたことが影響をしていた。

 

 

「時間操作はいざという時の為にとっておいて。私の指示か緊急回避以外に無暗に使っちゃダメだよ」

 

 

 ネプギアがそこまで言うと、ファミ通の耳がピクリと動く。

 

 

「「あ……」」

 

 

 しまった。と言った感じで右手で口を覆うネプギアとプラエ。

 

だが、時すでに遅くファミ通はペンとメモを両手にネプギアとプラエに迫ると、「時間操作って? それはどういうことですか!」と真剣な顔で説明を求めてくる。

 

イストワールはハの字眉毛で困った顔をするが、「予定より少し早いですが説明しても良いでしょう」と穏やかな声でネプギアに言う。

 

 

 イストワールの言葉を受けて、ネプギアとプラエがファミ通にプラエの超能力の説明をする。

 

ファミ通は驚きつつも、「これは特ダネですね」と嬉しそうに微笑む。

 

 

 説明が終わると、「そろそろ出発しましょう。細かいお話は進みながらということで」とイストワールが提案する。

 

ファミ通が、「了解しました」と頷くと、ネプギアは、「それではファミ通さんは私と一緒に前衛に立って下さい」とファミ通に言う。

 

ファミ通は素直に従いネプギアの隣に立つと、「では、プラエ様ご一緒に中衛を担いましょう」とあんみつがプラエの手を取り、ネプギア達の後ろに移動する。

 

最後にイストワールが、プラエ達の後ろに移動すると、「私は回復を最優先しつつ、出来るだけ攻撃に加わります」と言う。

 

 

 前衛のネプギアとファミ通が敵の攻撃を防ぎ、中衛のプラエとあんみつが攻撃、後衛のイストワールが回復と攻撃と言うバランスの取れたフォーメーションだ。

 

フォーメーションを確認したネプギアが歩き始めると、プラエ達もその後をついて来る。

 



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#41 大丈夫! ファミ通だよ

 ネプギア達の50メートル程先に、先程イストワールがホログラムで見せてくれたシカベーダーが三体立ちはだかる。

 

厚みが無い為に立てないので、僅かに宙に浮いている。

 

 

「来ます!」

 

 

 

 ネプギアがそう言うと同時にシカベーダーの一体が宙を滑るようにネプギア達に近づく。

 

ネプギアは、「みんなは私が守ります」と言うと同時に前進をして、シカベーダーの前に立ちはだかる。

 

進路を塞がれたシカベーダーは、「ベーダー!」と不機嫌そうに唸るとネプギアに体当たりで攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「くっ!」

 

 

 ネプギアに147のダメージが当たるとHPゲージが二割ほど減少する。

 

更にもう一体のシカベーダーがネプギアに追い打ちしようと動き出した。

 

 

「おっと、そうはいかないよ」

 

 

 ファミ通はその動きに合わせて前進をすると、ネプギアを守るように立ち塞がった。

 

予定が狂ったシカベーダーは怒りの声で、「ベダダー!」とファミ通に体当たりを仕掛ける。

 

 

「これぐらいっ……」

 

 

 ファミ通に164のダメージが当たり、HPゲージが三割減少する。

 

レベルが1低い為かネプギアよりダメージが大きいようだ。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアがファミ通を心配するように叫ぶと、「この程度でやられないよ。残り二体は私が足止めするから、そっちの一体撃破しちゃって」とファミ通は冷静に答える。

 

ネプギアに攻撃をしたシカベーダーを分断して、各個撃破しようと言うのだろう。

 

 

「わかりました!」

 

 

 ネプギアはそう言って頷くと、「プラエちゃん、あんみつさん、いーすんさん。連携攻撃で一気に決めましょう」と叫ぶ。

 

プラエが、「うん」と頷くと、ネプギアを襲ったシカベーダーに向けて右手を突き出す。

 

同時にプラエの親指から一本の白銀の鎖が、シカベーダーに向かって伸びていく。

 

 

「時の鎖(クロックチェーン)。一時! 敵を切り裂いて!」

 

 

 プラエが叫ぶと同時に直進していた鎖が蛇行を始める。

 

 

「べだ!?」

 

 

 真っ直ぐに向かってくると思った鎖が急に不規則な動きを始めたことに動揺するシカベーダー。

 

その隙をついて蛇行していた鎖が、シカベーダーを上空から襲う。

 

 

ザシュッ!

 

 

 シカベーダーを切り裂く音が響き渡る。

 

鎖の先端には切れ味の良さそうな刃物が付いており、これがシカベーダーを切り裂いたのだ。

 

シカベーダーに157ダメージが当たりHPゲージが二割減少する。

 

 

「脇が甘い!」

 

 

 同時にいつの間にかシカベーダーに肉薄していた、あんみつが刀を振り下ろす。

 

シカベーダーが鎖の不規則な動きに気を取られている間に接近したのだ。

 

 

ザシュッ!

 

 

 先程のプラエのものより豪快な切り裂く音がする。

 

袈裟斬りに切られたシカベーダーは、「べだぁー」と悲鳴を上げ277のダメージを受けるとHPゲージが一気に半分以下になる。

 

 

「行きます、龍昇拳!」

 

 

 更に今度はネプギアのかえる跳びアッパーが当たると、シカベーダーは229のダメージと共に上空に吹き飛ばされる。

 

シカベーダーのHPゲージは残り一割程度まで減少していた。

 

 

「これでトドメです!」

 

 

 今度はイストワールが上空のシカベーダーに向けて、右手を突き出すと、そこから水流が伸びる。

 

 

「ウォーターガン!」

 

 

 水流がシカベーダーを貫くと、シカベーダーは247のダメージを受けHPゲージがゼロになり戦闘不能になる。

 

そのまま地面に落ちるシカベーダー。

 

 

 その間に最前線で二体のシカベーダーを相手にしているファミ通のHPゲージが残り三割以下になっていた。

 

ファミ通も、「くっ……」とやや苦しそうな表情を浮かべている。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアが叫ぶ。

 

このまま二体を相手にし続けたら間違いなく戦闘不能になるだろう。

 

ネプギアは素早くファミ通に向けて右手を向けると、「ヒール!」と叫ぶ。

 

 

「えっ……」

 

 

 驚きの声を上げるファミ通。

 

同時に彼女のHPが六割程まで回復する。

 

 

「ベダーーー!」

 

 

 予想外の回復行為に怒ったシカベーダーがファミ通を放ってネプギアに突進してくる。

 

モンスターの多くは回復行為を嫌い、それを行った者は優先的に狙われることが多い。

 

 

「時の鎖(クロックチェーン)。二時! 敵を貫け!」

 

 

 プラエの右手の人差し指からもの凄い勢いで白銀の鎖が伸びていく。

 

今度は蛇行もせずに真っ直ぐに、ネプギアを襲おうとするシカベーダーに向かう。

 

その先端には鋭利な穂先が付いていた。

 

 

「浅慮!」

 

 

 更にあんみつも同じシカベーダーに側面から切りかかる。

 

 

ザクッ! ザシュッ!

 

 

 プラエの鎖がシカベーダーを貫くと同時にあんみつの横切りがシカベーダーを切り裂き、合計で429ダメージが当たる。

 

更に、「ウインド!」とイストワールが叫ぶと同時に風の刃がシカベーダーを切り裂き251のダメージが当たる。

 

 

「べぶだっ!?」

 

 

 怒涛の三連攻撃に、シカベーダーの突進が止まる。

 

HPゲージも一気に残り一割以下になる。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 その隙を付いてネプギアが正面から袈裟斬りでシカベーダーを切り裂くと、205のダメージと共にシカベーダーのHPゲージがゼロになって戦闘不能になる。

 

 

「グラビティカット! ファミ通さん、敵を打ち上げて下さい」

 

 

 立て続けにネプギアがファミ通に向けて叫ぶ。

 

ファミ通はやや慌てた様子を見せながらも、「う、うん!」と頷くとゴルフスイングの構えを取る。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ファミ通のエビのスイングが、残った一体のシカベーダーに炸裂する。

 

194ダメージ受けたシカベーダーは、「ベーダー!」と悲鳴を上げながらサッカーボールのように十メートル近く上空に打ち上げられる。

 

 

「あんなに飛んだ……!」

 

 

 吹き飛ばしたファミ通自身も驚きの声を上げる。

 

続けて、「そうかグラビティカットで敵を軽くしてくれたのか……」とやや落ち着きを取り戻して呟く。

 

 

「ナイスです!」

 

 

 ネプギアはファミ通に称賛を送ると、彼女を追い抜きシカベーダーを追って上空に飛び上がり接近する。

 

ゲイムギョウ界の住人は身体能力が高い者が多く、女神とまでになると五メートルぐらいは軽々と飛び上がり無事に着地することが出来る。

 

しかし、弱いものはとことん弱く、自分の膝くらいの高さから落ちるだけで死んだり、コウモリのフンに当たって死ぬこともある。

 

 

 更に、ゲイムギョウ界には無属性魔法に重力を操作する魔法と、風属性に大気を操る魔法があり、それによりジャンプ力アップと滞空時間の増加をすることが出来る。

 

他にも巨大な敵を浮かしたりするときにも重力魔法と大気を操る魔法が役に立つ。近接攻撃も魔法も得意なネプギアはこれを活かした空中コンボを得意とする。

 

以前に見せたエアリアルレイヴもその類だ。

 

 

「ラピッドラッシュ!」

 

 

 空中で身動きの取れないシカベーダーに、ネプギアの連続攻撃が炸裂する。

 

【ラピッドラッシュ】は素早い五連続攻撃。

 

右手のビームソードと左手のパンチによる交互の攻撃で40前後のダメージが四回当たり、シカベーダーのHPゲージが残り四割まで減少する。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ネプギアは最後に連続攻撃の締めの回し蹴り入れると同時にシカベーダーに向けて、「グラビティアペンド」と叫ぶ。

 

グラビティカットの逆で重力を追加させる魔法だ。重力が増したシカベーダーが回し蹴りの勢いで急速に地面に向けて落下する。

 

 

ドカン!

 

 

 激しい音と土煙と共にシカベーダーが墜落すると112ダメージが当たる。

 

同時に、「計算通りです」とイストワールが言うと、続けて「シャイン!」と攻撃魔法を発動させる。

 

イストワールの手から飛んだ白い光線がシカベーダーを貫くと278のダメージが当たり、total:751と表示される。

 

ファミ通の打ち上げからの連携攻撃の合計ダメージだ。

 

当然のようにシカベーダーのHPゲージが真っ赤になる。

 

 

「べ……だ……」

 

 

 最後のシカベーダーが戦闘不能になると、三体全部のシカベーダーが消滅する。

 

同時にネプギアが地面に着地すると、「やりました大勝利です!」と笑顔を見せて右手でVサインを決める。

 

 

「やったー!」

 

 

 プラエも笑顔を浮かべながら小さく飛び跳ねて、拍手をする。

 

イストワールもあんみつも初戦の勝利に安堵の笑顔を浮かべていた。

 

 

「はぁ……。勝った……の」

 

 

 しかし、ファミ通はどっと疲れた顔で片膝を付いてしまう。

 

 

「ファミ通さん?」

 

 

 ネプギア達は不思議そうな顔をしながら、小走りにファミ通に駆け寄って行った。

 

ファミ通は近づいてきたネプギア達に、「いやぁ……、実戦って緊張するものだね。まだ手が震えてるよ」と乾いた笑いを浮かべた。

 

 

「プラエも初めての時は緊張したよ。でも、平気だった。ネプギアお姉さんが守ってくれるって言ったし、あんみつも隣に居てくれたから」

 

 

 プラエが少し誇らしげに言う。

 

ネプギアは微笑んで、「うん、プラエちゃんは凄く頑張って偉かったよ」と言いながらプラエの頭を優しく撫でてあげる。

 

プラエは、「えへへ」と嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

 

「適性があるとは言え、初の実戦でタンクは厳しかったですよね。ごめんなさい」

 

 

 ネプギアがファミ通に向かって丁寧に頭を下げる。

 

タンクは最前線に立つので一番危険が高く、その分実戦の恐怖も大きい。

 

ネプギアはそのことを気にして、ファミ通に謝った。

 

しかし、ファミ通は慌てて、「そんな! ネプギア様は何も悪くないよ。VRジムのインストラクターにもタンク一択って言われてたし」と言って両手をあわあわと左右に振る。

 

 

「私が実際の戦いに尻込みして、ヒールドリンクを落としたりしなければ、もう少し余裕があった筈なんだ」

 

 

 ファミ通はそう言いながら足元に落ちている栄養ドリンクのような瓶を拾う。

 

これは【ヒールドリンク】と言い飲むことで迅速にHPを回復できる優れモノだ。

 

ファミ通は戦いの最中にこれでHPを回復する予定だったが、誤って落としてしまったことでHPが三割まで減少してしまったようだ。

 

 

「しかし、最初の分断からの判断は初心者とは思えませんでした。私も思わず攻撃に回ってしまいましたし」

 

 

 イストワールがそう言うと、「これでもそれなりに立ち回りの研究もしてきたんだ。でも、知識はあっても実技が追いついてなかったよ」とファミ通は肩を落とす。

 

あんみつはそんなファミ通の肩を叩くと、「それぐらいの失敗なら、我々で助けられます。あまり気を落としてはいけません」と励ます。

 

 

「今の戦いでシカベーダーの能力も大体測定できましたし、暫くの間はタンクは私一人でいきましょう」

 

 

 ネプギアが落ち着いた声でファミ通にそう言うと、「ファミ通さんは中衛でアタッカーをしながら、戦闘の空気に慣れて下さい」と続ける。

 

【アタッカー】とは、攻撃に集中して敵に対して大きなダメージを与える役割。

 

先程の戦闘では、プラエやあんみつの立ち回りがそれに当たるだろう。タンクに比べれば敵の攻撃を受ける機会は少なく安全と言える。

 

 

「いいの? ネプギア様一人でタンクなんて大変じゃないかな?」

 

 

 ファミ通が少し遠慮気味に言う。

 

彼女としても、一度中衛に下がって落ち着きたい気持ちはあるものの、ネプギアのことが心配のようだ。

 

 

「大丈夫ですよ。こう見えてもブランさんにタンクの立ち回りとか心得とか教えてもらっているんですから」

 

 

 ネプギアは小さくガッツポーズをしながら言う。

 

ルウィーの守護女神のブランは守りの硬さに定評があり、その力はゲイムギョウ界最硬とも呼ばれている。

 

ネプギアは人の良い点に目を向けて、尊敬できる面があれば取り入れ必要であれば師事をお願いする。

 

以前には一流の冒険者であり剣の達人であるファルコムという人物に剣の特訓を頼んだこともある。

 

ブランに関してもそれと同じで、タンクとして他の女神候補生であるユニ達を守る為に、タンクとして尊敬するブランに頭を下げて師事をお願いし学んで来たのだ。

 

 

「ブランさん程の硬さはありませんけど、足りない分はダミーバルーンとか小手先の技で補いますし」

 

 

 ネプギアが更に自己PRを続ける。

 

ブランの硬さは天性の才能もあるので、そこまでは出来なくても、ネプギアなりの方法は色々と考えていると言いたいのだ。

 

 

「それならお願いしちゃおうかな……」

 

 

 ネプギアの好意に素直に甘えるファミ通、「でも、危なかったら言ってよ。初心者だけど頑張ってタンクするからさ」続けてファミ通はそう言いながら、ペンとメモを取り出して色々と書き始める。

 

 

「何を書いてるの?」

 

 

 プラエがファミ通に尋ねると、「ネプギア様の優しさと気配りの良さだよ」とファミ通が答える。

 

更に、「私の失敗はカッコ悪いけど、記事としてはいい感じに書けそうだよ」とファミ通が微笑む。

 

 

「今のも記事にされるのですか?」

 

 

 今度はあんみつがファミ通に質問をすると、「当然だよ。私の失敗を隠すために、ネプギア様の良さをみんなに伝えられないなんて記者失格だしね」とファミ通が即答する。

 

 

「良い記者の方のようで安心しました」

 

 

 イストワールがそう言うと、「これぐらいは当然。週刊ファミ通の歴史に泥を塗る訳にはいかないしね。ミスはするけどウソは付かないが私の信条だからね」とファミ通は答える。

 

 

「ミスはするんですか?」

 

 

 少し不安そうにネプギアが尋ねると、「大丈夫! ファミ通の記事だよ」とファミ通が爽やかかつ力強くサムズアップする。

 

 

「あはは……」

 

 

 ファミ通のハイテンションなリアクションに若干引き気味のネプギアは、乾いた笑いを浮かべると、「できるだけミスはない方向でお願いします」と続けた。

 



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#42 器用な子

 再びネプギア達の前にシカベーダーの群れが現れる。

 

今度は四体と数は多いがシカベーダー達はまだネプギア達に気付いていないようだ。

 

シカベーダーとの距離は約100メートル。

 

 

「それでは私が前衛で突撃しますので、後は打ち合わせ通りにお願いします」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「こちらの方はお任せ下さい。ネプギアさんは生存を第一にタンクとしての役割を果たして下さい」とイストワールが落ち着いて答える。

 

続けてファミ通が、「私も頑張ってみるよ」と意気込む。

 

 

「それでは行きます!」

 

 

 ネプギアがシカベーダーの群れに向けて走り出す。他のメンバーもネプギアと距離を保ちつつ付いてきた。

 

シカベーダー達との距離が50メートル程まで縮まると、シカベーダーの一体がネプギアに気付く。

 

 

「べー!」

 

 

 ネプギアに気付いたシカベーダーが雄叫びを上げると、同時に他の三体のシカベーダーがネプギアに振り向こうとする。

 

 

「ダミー!」

 

 

 ネプギアが走りながら叫ぶ。

 

同時にポーチから呼び出されたダミーバルーンの一つがネプギアの左手から発射されて人の形になる。

 

 

「べー!」

 

「ベダー!」

 

「ベイダーー!」

 

 

 シカベーダーの内の三体がネプギアに向かってくる。

 

 

「べー!!」

 

 

 残り一体はダミーバルーンに向けて突っ込んで来るようだ。

 

 

「予定通り。やりますね、ネプギア殿」

 

 

 あんみつはニヤリと笑うとダミーバルーンに騙されたシカベーダーに向けて走る。

 

残ったメンバーもあんみつを先頭に進行方向を騙されているシカベーダーに変更した。

 

 

「ベーダー!」

 

 

 シカベーダーがダミーバルーンに攻撃を仕掛けようとする。

 

 

パアンッ!

 

 

 その寸前にダミーバルーンが破裂して大きな破裂音が響き渡る。

 

ダミーバルーンにも様々な種類があり、割られるまで漂っているものと、敵の接近に合わせて破裂して脅かすような物もある。

 

 

「べ~~!」

 

 

 ダミーバルーンの破裂に驚くシカベーダー。

 

猫だましをされたような状態で目を閉じている。

 

 

「御免!」

 

 

 そこに素早く、あんみつが切りかかる。

 

あんみつの袈裟斬りがシカベーダーを切り裂き、280のダメージが当たる。

 

 

「ファミ通殿!」

 

 

 あんみつの掛け声と同時に、「どりゃああ!」という叫びと共にファミ通が野球のようなスイングでシカベーダーを殴る。

 

シカベーダーに179のダメージ当たる。

 

 

「うまいよ、ファミ通さん!」

 

 

 プラエが嬉しそうな声で声援を上げると同時に彼女の右人差し指から鎖が伸びる。

 

鎖は先程と同じように直進をして、シカベーダーを貫いて追撃し、165のダメージを当てた。

 

 

「最後は任せて下さい」

 

 

 イストワールがそう言いながら右手を突き出し、「サンダー!」と叫ぶと彼女の手から電撃が放たれシカベーダーに命中し、255のダメージが当たる。

 

 

「べーーー!」

 

 

 絶叫と共にシカベーダーに4hit・total:879と表示がされ、シカベーダーが戦闘不能になる。

 

 

「やった!」

 

 

 ファミ通が嬉しそうに右手でガッツポーズを決める。

 

 

「油断しないで下さい。次が来ます!」

 

 

 イストワールが叫ぶ。

 

同時に味方を倒されたシカベーダーの一体が怒りの形相でファミ通達に向かってくる。

 

 

「わわっ! 来たよ!」

 

 

 思わず慌ててしまうファミ通。

 

 

「あんみつさん!」

 

 

 ネプギアが叫ぶと同時に、「承知!」とあんみつが頷く。

 

 

「よそ見なんて、迂闊ですよ!」

 

 

 ネプギアはそう言うとファミ通達の方向に向かったシカベーダーを追って走り出す。

 

合わせて残り二体のシカベーダーもネプギアを追おうとするが、ネプギアが走りながら左手の人差し指で素早く小さな魔法陣を描く。

 

そして魔法陣が完成すると、「アースウォール!」と叫ぶ。

 

すると、1メートル弱の低めではあるが土の壁がハードルのように数枚現れ、ネプギアを追うシカベーダーの進路を妨害する。

 

そしてネプギアはシカベーダーに追いつくと同時に「ギアキーーーーック!」とサッカーボールのように、シカベーダーを背後から蹴り飛ばす。

 

 

「べだーーーーー!」

 

 

 背後から蹴られたシカベーダーは268のダメージを受けると、あんみつに向けて吹き飛ばされて行く。

 

 

「奥義、弧月剣!」

 

 

 あんみつがネプテューヌとの戦いでも見せた対空剣技を出すと、見事にシカベーダーに命中する。

 

 

「べぇぇぇぇ~!」

 

 

 452ダメージを受けたシカベーダーは2hit・total:720の表示と共に戦闘不能になる。

 

 

「うわ、強っ!」

 

 

 あんみつの大ダメージに驚くファミ通。

 

 

「そっちの一体お願いします」

 

 

 ネプギアはそう言いながらHPゲージが満タンなシカベーダーを指差す。

 

更に、「こっちは私一人で倒しますから」と続けて言うと、HPゲージが半分程残っているシカベーダーに向かっていく。

 

ネプギアはタンクをしながら、一体に狙いを絞りダメージを与え続けたので、そちらにトドメを刺す間に連携攻撃でHP満タンの一体を倒して欲しいとのことだ。

 

 

「ファミ通殿、最初の連携攻撃と同じ呼吸でいきますよ」

 

 

 あんみつがそう言うと、「うん、わかったよ」とファミ通もその後に続く。

 

 

 

****

 

 

 

 ネプギアの言う通りに、ファミ通達が最初と同じ連携攻撃で敵を倒した頃にはネプギアも一体のシカベーダーを一人で倒していた。

 

ネプギアは、「ふぅ……」と安堵のため息を吐くと、「大勝利です!」と嬉しそうにVサインを決める。

 

 

「おお~~。流石はネプギア様戦い慣れてますね。HPも八割以上残ってますし」

 

 

 ファミ通がネプギアに感嘆の拍手を送ると、「ブランさん程じゃありませんけど、少しでもタンクのお手本になれたら嬉しいです」と微笑んだ。

 

 

「凄く参考になりましたよ。それにイイ記事にもなりますよ」

 

 

 ファミ通は嬉しそうにペンとメモを取り出して書き込みを始める。

 

 

 

****

 

 

 

 その後もネプギア達は同様のフォーメーションで安定した勝利を重ねつつ、奥に進んでいく。

 

 

「またも快勝! 流石は女神様のパーティ強いね」

 

 

 ファミ通が嬉しそうにメモを取る。

 

 

「ファミ通さんもなかなかの腕ですよ。戦いの才能がありますね。最初は途中で止めるつもりでしたが、このレベルなら今後の取材の際にも戦闘に参加して欲しいぐらいです」

 

 

 イストワールが微笑みながらファミ通を褒める。

 

すると、ファミ通は右手で後頭部をかきながら、「足手まといになるなら、止めるつもりだったけど、そう言われちゃうとやる気になっちゃうな~」と嬉しそうに言った。

 

 

「ネプギア殿の【あならいず】の通り、連携などの協調性が高めで頭脳明晰。こちらの指示をしっかりと理解してくれるので助かります」

 

 

 あんみつもそう言ってファミ通を褒めると、「頭脳明晰なんて、そんなそんな」とファミ通が顔を赤くして謙遜する。

 

 

「連携と言えば、ネプギア様の考えた連携攻撃がバッチリ決まったね!」

 

 

 ファミ通は嬉しそうにサムズアップを決めると、「Nギアに搭載した連携攻撃シミュレーションから最善のパターンを使っただけですよ」と興奮気味のファミ通に対して、ネプギアは落ち着いて答える。

 

 

「でも、それって市販品には無い機能ですよね? それを作れるだけで凄いですよ」

 

 

 ファミ通はネプギアを更に褒め続けるが、「このプログラムは私だけの力じゃないですよ。色々な連携パターンを提供してくれた人達の協力があってのものです」とネプギアはあくまで控えめな態度を崩さない。

 

 

「ネプギア様って本当に謙遜なんだね」

 

 

 ファミ通は心底不思議そうにメモを取る。

 

 

「……謙虚と言うか、私にはそこまで人に誇れるようなものがありませんし……」

 

 

 ネプギアは少し落ち込んでいるような雰囲気でそう言うと、ファミ通は、「私の知ってる女神様は自分に絶対的な自信を持っていて、それを隠さずアピールする人ばかりだったから、ネプギア様のような女神様は新鮮だよ」と答える。

 

ファミ通も今までネプテューヌなどの守護女神達を取材したことがあり、それを思い出しながらネプギアに対しての感想を言う。

 

 

「女神らしくなくてごめんなさい。頼りないですよねこんなのじゃ……」

 

 

 ネプギアは肩を落としながら言うが、「いやいや、私はこれはこれでいいと思うよ」とファミ通は首を横に振って、ネプギアをフォローしようとする。

 

 

ビーッ! ビーッ!

 

 

 その時、Nギアから警報音が鳴り響く。

 

 

「敵が来ます! 三時の方向!」

 

 

 ネプギアがレーダーを確認して、敵が来る方向をクロックポジションで伝える。

 

【クロックポジション】とは観測者を水平なアナログ時計の中心に置き、観測者の正面を十二時方向とした時、対象物や目標方向が時計の何時の方向であるかの方位を提示する手法である。

 

つまり三時の方向とは右である。

 

 

「遠い!」

 

 

 あんみつも敵の姿を目で確認するが、100メートル以上の距離があり、近接タイプのあんみつが攻撃するには少し遠い。

 

 

「ベダー!」

 

 

 シカベーダーが雄叫びを上げると頭に生えた角から光線を放ってくる。

 

 

「ひゃっ!」

 

 

 プラエが悲鳴を上げる。

 

光線はプラエを狙っているようだ。

 

 

「ここは私に任せて」

 

 

 ファミ通が、プラエを庇うように前に出る。

 

ファミ通のクラスであるナイトの特殊技能【かばう】が発動したのだ。

 

光線がファミ通に当たると80ダメージを受けHPゲージが一割ほど減少する。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアはとっさに声を上げるが、「大丈夫。ネプギア様が方向を知らせてくれたから、ちゃんと防御できてるよ」とファミ通はニッコリ笑いながら答える。

 

ダメージ二桁で済んだのはネプギアがいち早く敵の方向を知らせたので、ファミ通がそれに対応できたからである。

 

もし、プラエやイストワールが側面や背後から無防備で奇襲を受けていたら、HPゲージが半分以上減っていただろう。

 

 

「ネプギアさん」

 

 

 イストワールの呼びかけに、ネプギアが、「はい、わかっています」と頷くと、ネプギア左右から50センチメートル程の小型の円錐状の機械が現れる。

 

 

「行って、Gビット!」

 

 

 ネプギアがそう叫ぶと、二つの円錐状の機械は後部のブースターでシカベーダーに向かって飛翔しながら、バーニアで位置調整をしてシカベーダーの死角に回り込む。

 

死角に回り込んだ二個の円錐形の機械は連携しながら、シカベーダーの死角から死角へ移動しながら連続でビーム光線を放つ。

 

 

「べだーーーー!」

 

 

 死角から連続攻撃を受けたシカベーダーはなす術もなく714のダメージを受けて消滅する。

 

 

「ありとうGビット、戻って来て」

 

 

 ネプギアがそう言うと円錐状の機械は旋回してネプギアの元に戻ると姿を消す。

 

この円錐状の機械はネプギアが作って、【Gビット】と名付けた無線で遠隔操作を行う自走式のビーム砲台。

 

Gはネプギアの【GEAR】であり、某機動新世紀に出てくるものとは無関係である。

 

 

 ビームソードと同じくポーチに収納されており、ネプギアの意思で自由に出し入れできる。

 

小型故に隠密性が高く、素早く敵の死角に入り込んで急所をビーム光線で貫くので大ダメージを与えられる。

 

その反面エネルギーの容量が少なく、一度使うとポーチ中に収納し暫く充電する必要がある。

 

 

「……おみごと……」

 

 

 ファミ通はネプギアを自分と同じ近接向けの戦士タイプだと思っていたので予想外の強力な遠距離攻撃に呆然と驚く。

 

 

ビーッ! ビーッ!

 

 

 再びNギアのから警報音が鳴り響く。

 

 

「次、十時の方向です。数が多い?」

 

 

 ネプギアが再びレーダーを確認すると、今度は逆方向から六匹のシカベーダーが押し寄せてくる。

 

 

「ベーダーー!」

 

 

 シカベーダー達が一斉にビームを放ってくる。

 

ネプギア達に凄まじい弾幕が襲い掛かる。

 

 

「ボム!」

 

 

ネプギアがそう言うと、彼女の左手に手のひらに収まる程度の球状の機械が現れる。

 

ネプギアはそれをシカベーダーの放った弾幕に対して放物線状に投擲すると、【ドカン】と爆音を立てて大爆発を起こす。

 

その爆発が盾となりシカベーダーの弾幕を全て打ち消す。

 

ネプギアの投げた機械は【ボム】と呼ばれる、ネプギア特製の手榴弾で攻撃にも盾にもなる便利な物である。

 

 

 ゲイムギョウ界のボムは主にシューティングゲームで敵の弾を打ち消すもの。

 

ネプギアのものはプラネテューヌのゲームの【バーチャロボ】に出てくる主役ロボットのものを参考にして作られている。

 

これもポーチに保管れており、容量の空きに何個かこれをセットしている。

 

 

「ファミ通さん、あんみつさん、プラエさん、爆風を盾に接近して攪乱して下さい。ネプギアさんは私と合体魔法を!」

 

 

 爆弾が爆発すると同時にイストワールが素早く指示を飛ばす。

 

 

「承知!」

 

 

 あんみつは駆けだして爆風で怯んだシカベーダーの群れに突っ込む。

 

更にファミ通とプラエもその後に続く。

 

 

「了解です」

 

 

 それに対してネプギアはイストワールの指示に頷くと後方に下がり、イストワールの隣に並ぶ。

 

 

「行くよラジカルエアライド!」

 

 

 ファミ通が叫ぶと彼女の武器である巨大なエビが宙に浮く。

 

ファミ通は浮いているエビに乗ると、エビが前進を始めシカベーダーの群れに正面から突っ込んでいく。

 

更にサーフィンで波に乗るようにシカベーダーの群れを轢いて行き、轢かれたシカベーダー達は、「「「べだだだ~」」」と悲鳴を上げる。

 

【ラジカルエアライド】は巨大な武器をサーフィンのように扱い一撃離脱で敵を轢き逃げする技である。

 

 

「ほらほら、こっちこっちー!」

 

 

 ファミ通はシカベーダーの群れに100前後のダメージを与えつつ、右へ左へとジグザクに動きシカベーダー達を翻弄する。

 

あんみつも翻弄されているシカベーダーを刀で敵を切り裂き、プラエも後方から鎖でファミ通とあんみつの援護をする。

 

その更に後ろでは、ネプギアとイストワールが目を閉じ声を合わせて呪文の詠唱をしている。

 

 

「「フレイボルトヴォルサンダラーサラマードバリバリシア……天より来たれし雷よ……爆炎と共に、敵を打ち倒せ……」」

 

 

 ネプギアとイストワールの周囲で、ペンネルによって赤の光の線で描かれた五芒星の魔法陣と黄色の光の線で描かれた五芒星の魔法陣が交錯する。

 

これは火属性の魔力と雷属性の魔力が共鳴しているのだ。

 

 

 

「「サンダーフレア!」」

 

 

 ネプギアとイストワールが同時に叫ぶと魔法を発動する。

 

魔法の発動と同時にシカベーダーの群れに何本もの稲妻が広範囲に落ちる。

 

稲妻が落ちると同時に爆発が起こり周囲一面が燃え上がる。

 

 

「べーーーーだーーー!」

 

 

 シカベーダー達は600前後のダメージを受け絶叫を上げて全て消滅する。

 

【サンダーフレア】とは火と雷の【合体魔法】、稲妻を落とした後に炎で敵を焼き尽くす。

 

合体魔法とは二人以上の術者が力を合わせて強力な魔法を行使すること。

 

 

「これで、この辺りの敵は倒しましたね」

 

 

 ネプギアはレーダーをよく確認しながら言うと、「そろそろはボスとの戦いですから、ここで休憩にしましょう」と周囲の安全を確認したイストワールは休憩を提案する。

 

プラエが「うん、そうしようよ。プラエ疲れちゃった」と賛同すると、「そうだね、スタミナも回復しないと」とファミ通も同意する。

 

 

 ゲイムギョウ界とは言え疲労は存在する。

 

【スタミナ】と呼ばれているものがあり、これもゲージ化されており、走ったり武器を振ったりする体を使う行動をすると減少する。

 

減少したスタミナは時間と共に回復するが、休憩をしないと疲労と空腹でスタミナの最大値が下がって、行動の幅が下がってしまうのだ。

 

 

「私、おにぎりを作って来たので、みんなで食べましょう」

 

 

 ネプギアがNギアを操作すると、レジャーシートとランチボックスが現れる。

 

ポケットでは食料品の保管も可能だ。

 

ちなみに何でも収納できるポケットだが、きちんと購入して自分のアイテムにしてからでないと収納できないので盗難などには悪用はされない。



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#43 優等生

「いやーー! 凄い凄い。予想を遥かに上回る大活躍だね」

 

 

 レジャーシートを敷き全員が座ると、ファミ通は嬉しそうにネプギアに話しかける。

 

 

「正直、もっと初々しくて危なっかしい感じを期待してたんだけどさ」

 

 

 ファミ通が苦笑いをしながらそう言うと、「えっ……? そうなんですか、ごめんなさい」とネプギアが期待に添えられなかったことを素直に謝る。

 

 

「いやいや! いい意味で期待外れだよ。これならプラチナ殿堂入りの記事が書けそうだよ」

 

 

 ファミ通は慌てて両手を左右に振って否定をする。

 

ちなみに【プラチナ殿堂入り】とはファミ通達が書いている雑誌にある週刊ファミ通のゲーム及び記事の評価である。

 

高い評価の物は殿堂入りとなり、その中でもランクがあり、シルバー→ゴールド→プラチナの順でランクが高い。

 

つまりプラチナ殿堂入りとは、ファミ通がネプギアで最高の記事を書けると称賛しているのだ。

 

 

「そ、そんな面白い記事が書けるんですか? 私で?」

 

 

ファミ通の言葉に驚きを隠せないネプギアだが、「私から言わせてみれば今の活躍で面白い記事が書けない方が不思議だよ」とファミ通はさも当然かのように平然と言い放つ。

 

 

「でも、私はお姉ちゃんみたいに凄い強い訳じゃないし……」

 

 

 ファミ通の言葉にネプギアは自信なさそうに答える。

 

 

「何言ってるんですか? 私のフォローに見事なタンクの立ち回り、それに素早い索敵からの見事な遠距離攻撃と爆弾による防御壁、さらには強力な合体魔法。隙がありませんよ」

 

 

 ファミ通はネプギアに詰め寄り熱弁をするが、「そうでしょか……」とネプギアは自信なさそうに首を傾げてしまう。

 

 

「ネプギアさんは、近接攻撃においては斬、突、打。射撃攻撃においても貫通、爆発。魔法においても火、水、風、土、氷、雷、光に闇に無属性どれも万能にこなせますよ」

 

 

 そこにイストワールが自信満々に口を挟んでくる。

 

ちなみに片手にはネプギア特製のイストワール用の小さなおにぎりが握られていた。

 

 

「おおー! 流石ですね」

 

 

 ファミ通はイストワールの説明に嬉しそうにメモを取る。

 

ゲイムギョウ界の戦闘スタイルは基本的には三つある。

 

一つはファミ通やあんみつが得意とする前衛に出て戦う近接攻撃。単体への威力が高く、技を使うのにスタミナを使うのでペース配分が重要となる。又、後衛に敵を近づけない為の足止めも請け負う。

 

二つ目は先程ネプギアが行ったGビットやボム等による射撃攻撃。弾丸などの飛翔物を飛ばすので、近接攻撃が届かない場所からの攻撃や高い部位などをピンポイントに狙い撃ちすることが出来る。こちらは弾数や銃器のエネルギーを管理する必要がある。

 

三つ目はイストワールが得意とする魔法攻撃。広範囲に渡る攻撃やHPの回復や味方の強化など様々な魔法を扱う。行使するにはMPが必要で、また強力な魔法は詠唱時間や触媒が必要になる。

 

大抵の人はどれか一つしか扱えないのだが、ネプギアは、基本は近接攻撃を行いつつ、状況に応じて射撃と魔法を使い分けることが出来る。

 

 

 またそれぞれの攻撃にも属性があり標的との相性がある。

 

近接攻撃が斬撃による【斬】、刺突による【突き】、打撃による【打】。

 

射撃攻撃が弾丸やビームによる【貫通】、バズーカや爆弾にる【爆発】。

 

そして魔法攻撃は扱う種類により、【火】【水】【風】【土】【氷】【雷】【光】【闇】【無】と様々な属性があるので標的の弱点を突きやすい。

 

イストワールはネプギアがそれら全てを扱うことが出来るとファミ通にアピールしているのだ。

 

 

「……私の場合は器用貧乏なだけで、そんなに誇れるようなことじゃないですよ」

 

 

 だが、ネプギアはイストワールの思惑とは裏腹に謙遜気味に答えるが、「そんなことありませんよ。私なんて打撃しかできないですから羨ましい限りです」とファミ通は心底羨ましそうに言う。

 

ファミ通の武器は巨大なエビなので、斬ったり突いたりできず、棍棒のように殴るだけである。

 

ただ、それ故に打撃に特化しているので打撃に弱い相手には非常に強くなる。

 

 

「ネプギアさんの優れているところはその全て技を敵味方の状況に合わせて使えるところです」

 

 

 イストワールはネプギアの万能ぶりを更にファミ通にアピールし続ける。

 

 

「……確かに……初心者の私も戦いやすかったし、自分の実力以上の力が出せた気がします。これがネプギア様の強さだと言うんですね」

 

 

 ファミ通は今までの戦いで、ネプギアが適材適所でサポートしてくれたことを思い出して、しみじみと頷く。

 

 

「はい。どんな事態にも柔軟に対応できるネプギアさんの万能性は女神様の中でも屈指のものですよ」

 

 

 ネプギアのことを話すイストワールは心なしか嬉しそうである。

 

母親が娘を自慢するかのようだった。

 

 

 ネプギアも最初から万能型であった訳ではない。

 

最初は憧れの姉であるネプテューヌと同じく、敵に対して高ダメージを出す【アタッカー】寄りの近接タイプを目指していたのだ。

 

しかし、ネプテューヌの役に立ちたいという思いから、ネプテューヌをサポートできるように、射撃と回復魔法を憶えたのだ。

 

 

 更に、同じ女神候補生のユニ、ロム、ラムが全員後衛向けなので、彼女達を守る為に敵の攻撃を受け止める【タンク】の技術も身につけた。

 

次にタンクをしていく上で、自分の回復魔法の力不足を感じ、それを補う為に回復魔法が得意なロムに色々と習った。

 

相手が年下の子供でも素直に敬意を払って教えを乞うことができるのは彼女の美徳の一つである。

 

 

 又、以前に守護女神達四人の戦闘スタイルが物理的な近接攻撃に偏っていることにより、それが効かない敵に苦戦を強いられていたことがあった。

 

次はそれをフォローできるようにと、ゲームで魔法使いをプレイしてみたり、攻撃魔法が得意なラムやイストワールに教えを乞うて色々な攻撃魔法が使えるようになったのだ。

 

ちなみにその苦戦した戦いというのは守護女神達四人がネクストフォームという新形態に覚醒したという晴れ舞台であった。

 

だが、物理攻撃が効かず魔法が得意な女神候補生達にタッチしたというアクシデントがあったのだ。

 

勿論、このことは世間一般には語られず、ネプギアもこの件が魔法を勉強するきっかけになったと語ることもない。

 

 

 このように彼女は一つの分野で活躍するより、仲間をサポートし誰かを守るために様々な技術を磨いてきたのである。

 

ネプギア自身が何事もそつなくこなすことが出来ることもあるが、それ以上に【誰かを守りたい役に立ちたい】、という強い意志からくる努力の賜物なのだ。

 

そのお陰で今のネプギアはマルチな戦士として活躍でき、相手によって無力化するような事態は殆どない。

 

 

「そんなにおだてないで下さい……私なんて全然なんですから……」

 

 

 イストワールとファミ通の二人に褒められ続けて真っ赤になって俯いてしまうネプギア。

 

照れ隠しに、俯きながら【もぐもぐ】とおにぎりを食べる。

 

 

「そうは言いますけど、ネプギア様の能力ってかなりのものなんじゃありませんか。試しにアナライザーで見せて下さいよ」

 

 

 ファミ通が興味津々と言った感じで言うと、「プラエも気になるー!」とプラエも元気よく右手を上げる。

 

あんみつも、「私も興味があります」と言う。

 

 

「あっ……えっとその……私の測定だけ故障してるみたいなんですよ……」

 

 

 ネプギアはそう言いながら気まずそうに両指をいじくる。

 

そこにイストワールが、「ネプギアさんのことですから、かなりのものなのでしょう」と言い、「その評価が自分で信じられないだけで合っていると私は思いますよ」と続けて言う。

 

 

「あう……」

 

 

 ネプギアが困ったように肩を落とす。

 

イストワールの言う通りなのだろう。

 

 

「そうなの。見せて見せて、プラエ、ネプギアお姉さんのスゴイところ見たい」

 

 

 プラエが嬉しそうに言うと、ネプギアは観念したかのようにNギアを操作してアナライザーを呼び出すと、「あ、あんまり信用しないで下さいね。私の測定だけ壊れているんですよきっと……」と言って自分の能力評価の欄を呼び出す。

 

彼女自身も自作のアプリ自体には自信があるのだが、自分の評価が高すぎて素直に受け入れられないのだ。

 

 

【ネプギア】

elemental(属性):地

 

character class(クラス):ナイト【HPと防御力が高く仲間を守る。スーパーアーマーあり】

 

growth(成長タイプ):晩成

 

hit point(HP):A

 

magic point(MP):B

 

power(攻撃力):A

 

shot(射撃力):B

 

magic(魔法攻撃力):B

 

support(回復&補助能力):A

 

weakened(弱体化&状態異常):C

 

defense(防御力):A

 

resist(魔法防御力):A

 

speed(スピード):B

 

stamina(スタミナ):A

 

accuracy(命中精度):B

 

avoidance(回避精度):A

 

capacity(最大シェア):S

 

dexterity(クリティカル率):B

 

cooperation(連携、合体技補正):S

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):A

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):C

 

guts(HP減少時の能力補正):S

 

casting speed(詠唱速度):B

 

memory(記憶力):S

 

tactics(戦術):B

 

strategy(戦略):B

 

command(指揮):A

 

zone of control(ZOC):S

 

trick(策略):B

 

adaptation(適応力):S

 

learning(学習能力):S

 

viability(生活能力):S

 

politics(政治):B

 

mechanic(機械技術):S

 

computer(コンピューター技術):S

 

 

 

「これはこれは!!」

 

 

 ファミ通が喜々とした目で測定結果を素早くメモに書き写す。

 

 

「殆どがAとB、それにSもかなりの数がありますよ」

 

 

 あんみつが目を丸くして驚く、「ネプギアお姉さんスゴーーーイ! やっぱり、ネプギアお姉さんはプラエの憧れだよ」とプラエは飛び跳ねて喜ぶ。

 

三人の反応に慌てたネプギアは、「だから、測定ミスだよ~」と言って、あわあわと胸の前で両手を左右に振って恥ずかしがる。

 

 

「測定ミスなどではありませんよ。犯罪組織との戦いから今まで、ネプギアさんの地道な努力が実を結んだのです」

 

 

 イストワールがそう言って優しく微笑むと、ネプギアは顔を真っ赤にしながらも、「……はい」と頷く。

 

それを見たファミ通は嬉しそうな顔で、「タンク職のナイトなのに攻撃力がAで、射撃も魔法もBってスゴイですよ。銃戦士やソルジャーだって、射撃か魔法なのに」と言う。

 

 

 銃戦士とは近接攻撃メインで銃も得意なクラスで、現在はラステイションの守護女神ノワールとリーンボックスの守護女神のベールが激しいトップ争いをしているクラスだ。

 

ソルジャーはリーンボックスから発祥したクラスで、近接攻撃メインで魔法も得意なクラス、一番の実力者はゴールドサァドのエスーシャと言われているが、現在彼女は旅に出ており連絡が取れない。

 

 

「機動力や命中回避も、ファミ通殿よりワンランク上ですね」

 

 

 あんみつが右手をあごに当てながら頷くと、「確かにネプギア様にはナイトの鈍重なイメージは無いね」とファミ通も頷く。

 

 

「も、もういいじゃないですか~。この辺にして、別の話をしましょうよ~」

 

 

 ネプギアが恥ずかしそうに抗議するが、他のメンバーは話を止める気配を見せてくれない。

 

それどころか、「ここからがいいところだよ、ネプギアお姉さん」とプラエが言い、「最大シェアなんてSだよ」と嬉しそうに続けて言うと、ネプギアが泣きそうな声で、「こ、これは絶対に測定間違いだよ~。私なんかがSの筈ないよ~」言う。

 

 

「ネプギアさんは犯罪神を倒すときに、全ゲイムギョウ界の願いの力をその身一つで受け止めています。そこから地道な努力を続けていたとなればSでも不思議ではありませんよ」

 

 

 イストワールが落ち着いた声でそう言うと、「それはそうかもしれませんけど……」とネプギアは恥ずかしそうに俯いてしまう。

 

 

「連携がSで戦術や指揮が高いって言うのは納得ですね。初心者の私がここまで戦えたのもネプギア様のおかげですし」

 

 

 ファミ通が楽しそうにメモを取りながら言うと、「その……私とユニちゃんは女神候補生の年長組だから、ロムちゃんとラムちゃんを引っ張って行く為に二人で色々勉強しましたから……」とネプギアが恥ずかしそうに小さな声で答える。

 

もう自分のアナライズの話を止めさせることは諦めたようだ。

 

 

「ダミーバルーンなども上手に扱っていましたから、策略も高いんですね」

 

 

 あんみつがそう言うと、「適応力や生活能力、学習能力が高いのも優等生のネプギアさんらしいです」とイストワールが続く。

 

 

「機械とかコンピューターにも、もの凄く強いんだね」

 

 

 プラエがそう言うと、「そうなの! そこはすっごく嬉しいんだ!」とネプギアが急に前のめりになる。

 

プラエは目を丸くして、「ふあっ!?」と驚くが、「これなら波動砲とかコロニーレーザーとか使えると思うんだけどどうかな!」とネプギアは早口でまくしたてる。

 

 

「……ネプギア様、得意分野に入ったオタクみたいですね……」

 

 

 ファミ通がやや呆れ気味に呟くと、「コレとネプテューヌさんに甘すぎることが無ければ完璧なのですが……」とイストワールがハの字眉毛で困ったように言う。

 

 

「いつかは空間跳躍とか量子化とかうんたらかんたら………」

 

 

 ネプギアの熱弁は暫く続いたが、その間他のメンバーは食事と休憩をとっていた。



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#44 みんなの能力

 休憩を取ったネプギア達は更に奥に進む。

 

Nギアのレーダーでは周囲に敵の反応は無く、暫く敵に遭うことはないようなので、皆リラックスしているようだ。

 

時期がもう少し遅ければ、桜を楽しむことも出来ただろう。

 

 

「そういえば、あんみつさんは攻撃力すっごく高いですけど、やっぱり戦士かハンターなんですか?」

 

 

 歩きながらファミ通があんみつに尋ねる。

 

あんみつは不思議そうに、「私は戦士ですけど、私のことなどが気になりますか?」とファミ通に質問を返す。

 

 

「ええ、謎の美少女に従う凄腕の和メイド。気になります。今までの戦いでも、あんみつさんの攻撃力の高さに助けられた場面も多いですし」

 

 

 ファミ通が素直に質問に答える。

 

ちなみに戦士とは近接攻撃力が非常に高いクラス。

 

そしてハンターと言うのはルウィーで発祥されたクラスで戦士程の近接攻撃力は無いが、HPも高くナイトと同じように一部スーパーアーマーを持っている。

 

スーパーアーマーと言うのは、普通は相手から攻撃を受けると【のけぞる】、【よろめく】、【ダウンする】、などが発生し攻撃や移動などのアクションがキャンセル(中止)されてしまう事がある。

 

しかし、スーパーアーマー持ちとされるクラスには、このようなキャンセルが発生せず、即座に行動に転じられるという利点がある。

 

常時スーパーアーマーと言うのは稀で、ナイトの【かばう】などの一部の特別な技や技能の発動時にスーパーアーマーになる。

 

その為、ハンターは初心者向けの近接クラスで、戦士は玄人向けの攻撃クラスになる。

 

尚、戦士の最強はネプテューヌと噂されているが彼女自身があまり表立って活動しないので謎に包まれている。

 

ハンターはシーシャが最強と言われているが、彼女はエスーシャと共に旅に出ている。

 

 

「とりあえず、ネプギア様のアナライザーで見てもいいですか?」

 

 

 ファミ通がそう提案すると、「どうぞ」とあんみつが短く答える。

 

 

「じゃあ、ちょっと失礼しますね」

 

 

 ネプギアがそう言うとNギアを操作してアナライザーを起動させてあんみつを測定する。

 

 

【葛切あんみつ】

elemental(属性):水

 

character class(クラス):戦士【近接攻撃力が高い】

 

growth(成長タイプ):普通

 

hit point(HP):B

 

magic point(MP):E

 

power(攻撃力):S

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):E

 

support(回復&補助能力):E

 

weakened(弱体化&状態異常):E

 

defense(防御力):C

 

resist(魔法防御力):C

 

speed(スピード):B

 

stamina(スタミナ):B

 

accuracy(命中精度):A

 

avoidance(回避精度):B

 

capacity(最大シェア):E

 

dexterity(クリティカル率):S

 

cooperation(連携、合体技補正):C

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):B

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):B

 

guts(HP減少時の能力補正):B

 

casting speed(詠唱速度):C

 

memory(記憶力):C

 

tactics(戦術):B

 

strategy(戦略):C

 

command(指揮):C

 

zone of control(ZOC):C

 

trick(策略):E

 

adaptation(適応力):B

 

learning(学習能力):B

 

viability(生活能力):S

 

politics(政治):C

 

mechanic(機械技術):E

 

computer(コンピューター技術):E

 

 

 

「おお~、潔いぐらいに近接攻撃向けの評価ですね」

 

 

 ファミ通がそう言いながらメモを取ると、「葛切一刀流は刀と体術だけで戦う流派ですから」とあんみつが答える。

 

 

「あんみつはすっごく強いよ」

 

 

 プラエが自慢気に言うと、「うん、能力も経験も凄いと思う。いつか私も剣を習おうなかって思ってるし」とネプギアが答える。

 

 

「なるほどなるほど」

 

 

 ファミ通が頷きながらメモを取る。

 

メモを取りながら、「確かに今まで一度も被弾が無い上に、高い攻撃力でダメージ稼いでくれてますもんね」と言って再度頷いて納得する。

 

 

「ところで、機械技術とコンピューター技術が両方ともEなんですけど、これってもしかして……」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「……う……」と、あんみつが気まずそうな顔をする。

 

 

「そうなの。あんみつはメカ音痴なの。逆を言えばメカを壊す天才なの」

 

 

 プラエが無邪気に言うと、「私、あんみつさんの年で、らくらく電話持ってる人初めて見ました」とネプギアが続いて言う。

 

 

「……このようなものは電話が出来れば良いのです」

 

 

 あんみつは恥ずかしそうに言うが、「でも、ポケットは使えないとアイテム保管に困りますし、ポーチの使い方もちゃんと覚えた方がいいですよ。今度また教えますから、しっかり覚えましょうね」とネプギアに言われてしまう。

 

 

「……承知しております。かたじけない」

 

 

 あんみつが申し訳なさそうに言う。

 

以前にもプラエと共にスマホや携帯ゲーム機などの端末操作をネプギアから教わったのだが、プラエはすぐに覚えたのに対して、あんみつはさっぱり覚えられなかったのだ。

 

 

(ネプギア様が教えて覚えられないって、どれだけ音痴なんだ……)

 

 

 ファミ通はそんなことを考えながら、「戦士と言えばネプテューヌ様はどれぐらいスゴイんですか?」と質問をする。

 

その質問にネプギアの耳がピクリと動く。

 

 

「記者の間でも謎に包まれているんで差し支えなかったら教えて……」

 

 

 ファミ通がそこまで言いかけると、「お姉ちゃんはとってもスゴイんですよ! 見て下さいコレ」とネプギアがいそいそとアナライザーのデータを呼び出す。

 

 

【ネプテューヌ】

elemental(属性):光

 

character class(クラス):戦士【近接攻撃力が高い】

 

growth(成長タイプ):早熟

 

hit point(HP):A

 

magic point(MP):E

 

power(攻撃力):S

 

shot(射撃力):C

 

magic(魔法攻撃力):E

 

support(回復&補助能力):C

 

weakened(弱体化&状態異常):E

 

defense(防御力):C

 

resist(魔法防御力):D

 

speed(スピード):A

 

stamina(スタミナ):C

 

accuracy(命中精度):A

 

avoidance(回避精度):A

 

capacity(最大シェア):A

 

dexterity(クリティカル率):S

 

cooperation(連携、合体技補正):A

 

luck(運):S

 

Intuition(直感):S

 

tension(シェア増加率):S

 

cool(シェア減少率):B

 

guts(HP減少時の能力補正):B

 

casting speed(詠唱速度):C

 

zone of control(ZOC):C

 

mechanic(機械技術):D

 

computer(コンピューター技術):D

 

 

「攻撃力が凄まじい上に、クリティカル率も運も抜群。防御は低いですけど、回避と命中が高いですから、当たらなければどうと言うことはありません! 一対一では最強間違いなしです!」

 

 

 ネプギアがもの凄い早口でまくしたてる。

 

 

「ネプギアお姉さんがまたオタクの人になった」

 

 

 プラエが少し残念そうな目でネプギアを見るが、ネプギアは気にせず、「あと、すっごく可愛いですし、プリン食べてる幸せそうな顔なんてもう……うんたらかんたら……」と語り始めてしまう。

 

 

「そ、そうなんですか~~。あはは……」

 

 

 ネプギアの勢いにドン引きのファミ通。

 

 

「あれ? でも、このデータ少ないよ」

 

 

 プラエがそう言うと、「ぎくっ……」とネプギアの動きと喋りがピタリと止まる。

 

 

「こほん……」

 

 

 イストワールが咳ばらいを一つすると、「ネプギアさん、都合の悪いデータを隠すのは感心しませんよ」とネプギアに厳しい視線を向ける。

 

すると、「……ごめんなさい」とネプギアは素直に謝る。

 

イストワールは更に、「お母さん怒りませんから、ちゃんと全部見せて下さい」と諭すように言う。

 

 

「私じゃなくて、お姉ちゃんが怒られるんじゃないかなって……」

 

 

 ネプギアが恐る恐る言うと、「大丈夫です。期待していませんから」とイストワールが冷静に言い放つ。

 

ネプギアは肩を落とすと、「それはそれで切ないような……」と両指をいじくる。

 

 

「なんて言うか、完全に親子ですね」

 

 

 ファミ通がそう言うと、「姉の不出来を必死に隠す妹と言うのはいじらしいですけどね」とあんみつがそれに続く。

 

 

「えっと、これが残りのデータです」

 

 

 ネプギアはそう言ってデータを呼び出す。 

 

 

memory(記憶力):E

 

tactics(戦術):D

 

strategy(戦略):E

 

command(指揮):D

 

trick(策略):D

 

adaptation(適応力):S

 

learning(学習能力):E

 

viability(生活能力):E

 

politics(政治):E

 

 

 

 良かれと思って隠したのだが、逆に別々に見せることにより、ネプテューヌのダメな面が際立ってしまったようだ。

 

 

「これは何と言いますか……」

 

 

 ファミ通がかなり微妙な表情を浮かべる。相手が女神なので言葉を選んでいるようだ。

 

しかし、「ネプテューヌさんは頭が悪いの」とプラエが遠慮なしに言い放つ。

 

 

「誰とでも仲良くなれるから、適応力は高いんですよ!」

 

 

 ネプギアが必死にフォローするが、「体育だけ高い子の通知票みたいですね」とあんみつが呟くと、「ううっ……」と意気消沈してしまう。

 

 

「期待はしていませんでしたが、予想以上にヒドイですね」

 

 

 イストワールはそう言うと肩を落とす。

 

毎日ネプテューヌに悩まされている彼女は、【実は天才でした】というオチには微塵も期待していなかったようだ。

 

現に、ネプテューヌが政治や国の運営に口を出すと大体と言うか全て失敗に終わっていた。

 

 

「やっぱり、人には向き不向きがありますし……」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「とは言え、ハンコを押すだけの書類ぐらいはキチンと処理して欲しいですね」とイストワールが素早く切り返す。

 

ネプギアは肩を落として、「あうぅ……」と呻いてしまう。

 

少しでもネプテューヌをフォローしたいのだが、イストワールの方が数段上手のようだ。

 

 

「国のトップがこれではプラネテューヌも前途多難ですね」

 

 

 あんみつが腕を組みながら呆れまじりに言う。

 

すると、ネプギアが、「大丈夫です。いーすんさんがいますから」と再びNギアを操作してアナライザーを呼び出す。

 

 

そこにはイストワールのデータが記録されていた。

 

 

 

【イストワール】

elemental(属性):光

 

character class(クラス):魔法使い【攻撃魔法重視】

 

growth(成長タイプ):普通

 

hit point(HP):E

 

magic point(MP):A

 

power(攻撃力):E

 

shot(射撃力):E

 

magic(魔法攻撃力):A

 

support(回復&補助能力):A

 

weakened(弱体化&状態異常):C

 

defense(防御力):E

 

resist(魔法防御力):A

 

speed(スピード):C

 

stamina(スタミナ):D

 

accuracy(命中精度):C

 

avoidance(回避精度):A

 

capacity(最大シェア):C

 

dexterity(クリティカル率):B

 

cooperation(連携、合体技補正):B

 

luck(運):C

 

Intuition(直感):D

 

tension(シェア増加率):C

 

cool(シェア減少率):A

 

guts(HP減少時の能力補正):E

 

casting speed(詠唱速度):A

 

memory(記憶力):S

 

tactics(戦術):B

 

strategy(戦略):S

 

command(指揮):B

 

zone of control(ZOC):E

 

trick(策略):A

 

adaptation(適応力):A

 

learning(学習能力):S

 

viability(生活能力):S

 

politics(政治):S

 

mechanic(機械技術):C

 

computer(コンピューター技術):A

 

 

 

「見事なまでにネプテューヌ様の出来ないところを補ってますね」

 

 

 ファミ通は無難な言葉を選び回答をするが、「イストワールさん頭いい~。ネプテューヌさんと大違い」とプラエは相変わらず遠慮なしの感想を述べてくる。

 

 

「昔は歴史を記録するだけでしたから、ここまでのことはできなかったのですが……ネプテューヌさんの放蕩ぶりに付き合っている内に政治などにも詳しくなってしまって……」

 

 

 イストワールが肩を落として愚痴をこぼすように言う。

 

自分のスキルが伸びたのは喜ばしいが、その原因を考えると素直に喜べないようだ。

 

あんみつは同情の眼差しで、「その苦労理解できます」とイストワールに言う。

 

プラエも、「イストワールさん、お疲れ様」と労いの言葉を掛ける。

 

二人ともこの一週間でのネプテューヌとイストワールのやり取りを見ていて、彼女はかなり苦労しているのだろうと理解していた。

 

 

「そもそも、ネプテューヌさんは……」

 

 

 イストワールが愚痴を続けようとすると、「待ってください」とネプギアがイストワールを手で制する。

 

 

「レーダーに巨大な敵反応があります。ボスモンスターだと思います」

 

 

 ネプギアがNギアを操作しながら続けて言う。

 

すると、全員の雰囲気が引き締まる。

 

 

「十二時の方向。距離800です」

 

 

 ネプギアがクロックポジションで敵の位置を伝えながら更にNギアを操作してポケットから双眼鏡を呼び出す。

 

ネプギアが双眼鏡をのぞくと、そこには今までより遥かに大きい全長5メートル前後の巨大なベーダー系のモンスターが一体ウロウロしている。

 

これがボスモンスター【ギガベーダー】である。

 

 

「こいつを倒せばクエスト終了か。取材も正念場だね」

 

 

 同じように携帯望遠鏡でギガベーダーを発見したファミ通がカメラやペンを入念にチェックする。

 

 

「準備はいいですか?」

 

 

 イストワールがそう言って全員に確認をするとネプギアが、「はい」と頷き、他のメンバーも次々と頷く。

 

道中でレベルも8にアップし、前衛のネプギアのHPも1000近くになっていた。

 

先程、休憩も食事もしたので準備は万端と言ったところだ。

 

 

「吶喊します!」

 

 

 ネプギアはそう言うとギガベーダーに向かって小走りに向かって行き、他のメンバーもその後に続く。

 

 

「ベダーーーーーーーー!」

 

 

 ネプギアに気付いたギガベーダーが大きな咆哮を上げて威嚇をしてくる。

 

 

「あなたに恨みはありませんけど、みんなが安全にお花見を楽しむために倒させてもらいます!」

 

 

 ネプギアはそう言うと、走る速度を上げて更にギガベーダーに近づいて行った。



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#45 パープルシスター

 ギガベーダーに近づくネプギア。

 

それを迎え撃つようにギガベーダーもネプギアに滑るように近づいて行く。

 

 

「ベーダー!」

 

 

 ギガベーダーが勢いに任せた体当たり攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「はあっ!」

 

 

 刀身で攻撃を受け止めるネプギア。

 

ガードはしているが、それでも254ダメージを受けてしまう。

 

ネプギアはそのまま鍔迫り合いに持ち込んで、ギガベーダーの動きを止める。

 

 

「流石です」

 

 

 あんみつがギガベーダーの動きを止めたネプギアに賞賛を送ると同時に、ギガベーダの左側に回り込み、真横から袈裟斬りをする。

 

ギガベーダーに279のダメージが当たる。しかし、ボスであるギガベーダーにはスーパーアーマーの能力があり、この程度では怯まない。

 

あんみつの攻撃が当たると同時に、「プラエはこっちから!」とプラエが叫ぶとプラエの右中指から鎖が伸びる。

 

 

「クロックチェーン三時! 敵を粉砕して!」

 

 

 鎖の先には重そうな分銅が付いており、それが弧を描くようにギガベーダーの右側から襲い掛かる。

 

ギガベーダーに162のダメージが当たると、「よし背後を取れた!」とファミ通の嬉しそうな声が響く。

 

二人が攻撃をしている間に後ろに回り込んだのだ。

 

 

「とりゃー!」

 

 

 ファミ通のエビによるフルスイングがギガベーダーに直撃すると189のダメージが当たる。

 

 

「ベダッ!?」

 

 

 過剰なダメージを受けたことにより、スーパーアーマーが解除されて前のめりに態勢を崩すギガベーダー。

 

いかにスーパーアーマーといえど限界はあるのだ。

 

 

「はああああ!」

 

 

 ネプギアはその隙を逃さずに力を籠めてギガベーダーを押し返すと、ギガベーダーは押し返された勢いで転倒する。

 

 

「隙だらけです! フォーミュラーエッジ!!」

 

 

 ネプギアは一瞬にして間合いを詰めて、まだ倒れているギガベーダーに斬撃の乱舞を食らわせる。

 

【フォーミュラーエッジ】は斬属性の連続攻撃。40以上の細かいダメージが六連続で命中し合計で262のダメージが当たる。

 

 

「ベーーーダーーー!」

 

 

 悲鳴に近い咆哮を上げるギガベーダー。HPゲージが五割近くまで減少する。

 

 

「好機!」

 

 

 あんみつが叫ぶと同時に、「弧月剣!」と刀で弧を描きながら上昇をしギガベーダーを切り裂く。

 

ギガベーダーに306の大ダメージが当たると同時に、ギガベーダーが小さく浮き上がる。

 

重力魔法は使用していないが、あんみつの攻撃の威力で浮き上がったのだ。

 

 

「クロックチェーン三時! 敵を叩き落として!」

 

 

 すかさずプラエが分銅の付いた鎖でギガベーダーを叩き落とすと155のダメージが当たる。

 

プラエとあんみつの長年の付き合いがなせる息の合ったコンビネーションだ。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアの呼び声にファミ通がラジカルライドの準備をする。

 

 

「オッケー! いくよー! ラジカルライド!」

 

 

 そのまま波に乗るように突撃して、倒れているギガベーダーを背後から轢き逃げして100前後のダメージを二回与え186のダメージが当たる。

 

ファミ通が通り過ぎたと同時に、「グラビティカット。怒りの鉄拳! ギアナックル!」とネプギアが力を溜めた正拳突きをお見舞いする。

 

 

「ベダダダーーー!」

 

 

 巨大なギガベーダーが嘘のように転がって吹き飛ばされる。

 

【ギアナックル】とは打属性のパンチ、ノックバック効果がある。

 

【ノックバック】とは攻撃を受けた対象が吹き飛ばされ移動すること。

 

重力魔法の効果で巨大なギガベーダーを吹き飛ばすことができたのだ。210ダメージが当たりギガベーダーのHPゲージが三割以下になる。

 

 

「グラングランクエクエイクノームル……我が記憶に眠る雄大なる大地よ……その力を持って、敵を穿て……」

 

 

 今まで攻撃に参加していなかったイストワール。

 

彼女は後方で魔法の詠唱をしていたのである。

 

ペンネルで描かれた五芒星の魔法陣が茶色い光を放つ。

 

 

「大地の記憶よ!」

 

 

 イストワールの手が光るとギガベーダーの吹き飛ばされた先の地面にも茶色い光を放つ五芒星の魔方陣が現れる。

 

魔方陣が光ると、地面が凄い勢いで隆起して鋭い槍が何本もできあがる。

 

【大地の記憶】とはイストワール専用の地属性魔法。

 

 

ザクザクザクッ!

 

 

 凄まじい音と共に無数の大地の槍で串刺しになったギガベーダーは535のダメージを受ける。

 

17hit total:2,284と表示がされて、ギガベーダーのHPゲージは0になっているようだった。

 

 

「終わったのかな……?」

 

 

 ファミ通が安心したように一息つくと、「思ったより簡単だったね」と言い肩の力を抜いた瞬間、串刺しになっているギガベーダーが身震いをする。

 

 

「まだです! 来ます!」

 

 

 ネプギアがそう言うと同時に、ギガベーダーは突き刺さった槍を強引にへし折って突撃してくる。

 

 

「「きゃーーーー!」」

 

 

 巨体を生かした広範囲の突撃を受けて、前衛のネプギアと前に出ていたファミ通が直撃を受けて吹き飛ばされる。

 

 

「ファミ通さん、大丈夫ですか」

 

「いたた……流石はボス、思ったより手強いね」

 

 

 立ち上がるネプギアとファミ通。

 

強力な攻撃を受けた二人は500近いダメージを受けて、HPゲージが半分近く減ってしまう。

 

ゲージの色もやや危険域を示す黄色に変化する。

 

 

「まずは回復を。天の恵み」

 

「ヒール」

 

 

 ネプギアは自分自身を、イストワールはファミ通を魔法で回復する。

 

二人のHPが八割近くまで回復する。

 

 

「おかしいな、倒したと思ったのにな~?」

 

 

 ファミ通が首を傾げると、「ボスモンスターはHPゲージが何本もあります。それら全てをゼロにしないと倒せません」とイストワールが説明をする。

 

イストワールの言う通り、ボスモンスターのHPゲージは何重にもあり何回もゲージをゼロにしないと倒せないのである。

 

その為、一般のモンスターと比べるとHPの最大値が分かりにくい。

 

 

「そっか……なかなか手強いんだね」

 

 

 ファミ通は武器を構えて気を取り直すと、ネプギアも、「でも、勝てない相手じゃありません。体当たりに巻き込まれないようにしつつ、連携と回復を崩さず慎重にいきましょう」と言ってビームソードを構え直す。

 

突撃による広範囲攻撃で、先程のように二人以上が同時に大ダメージを受けないように注意して、減少したHPを回復しつつ繰り返し連携攻撃でダメージを与えていけば勝てるとの考えだ。

 

 

「プラエちゃんは念の為、後列に下がって魔法重視の戦いに切り替えて」

 

 

 ネプギアがプラエに指示を出すと、「うん、わかった」とプラエは素直に後列に下がる。

 

超能力による鎖の攻撃では、もしかしたらギガベーダーの攻撃に巻き込まれるかもしれないので、長距離攻撃の出来る魔法に切り換えようというのだ。

 

 

「ネプギア殿の言う通り、迂闊な行動は控え慎重に攻めていきましょう」

 

 

 あんみつもネプギアの言うことに同意すると刀を中段に構えて戦闘態勢を取る。

 

 

「いえ、ここは短期決戦で決めましょう」

 

 

 イストワールがそう意見をすると、ネプギアは、「女神化ですか?」とイストワールの考えを確認する。

 

 

「はい、今こそ女神様の威光を示す時です!」

 

 

 イストワールは力強くネプギアを鼓舞するように言うと、ネプギアは、「わかりました!」とイストワールの言葉に頷く。

 

 

「ファミ通さん、あんみつさん、私と一緒に時間稼ぎをして下さい」

 

 

 ネプギアが了承したのを確認したイストワールがファミ通達に指示をすると、「プラエちゃんは私の時間を速くして」とネプギアがプラエに指示をする。

 

状況の分からないファミ通は、「一体なにを……?」とは首をかしげる。

 

プラエも、「ネプギアお姉さん、何をするの?」と不思議そうな顔でネプギアを見る。

 

 

「ネプギアさんの真の力を見せてあげます」

 

 

 イストワールがファミ通に手短に説明をすると、ファミ通は頷いて、「わかったよ。とりあえず時間を稼げばいいんだね」と了解する。

 

あんみつも詳しくは聞かずに、「承知しました」と答える。

 

そしてファミ通を前衛に三人はギガベーダーに立ち向かって行く。

 

 

「ベダーー!」

 

 

 ギガベーダーが前衛のファミ通に体当たりで襲い掛かる。

 

 

「くっ……私だって防御くらい」

 

 

 ファミ通はエビで防御態勢をして攻撃を受け止める。

 

防御しているのでダメージは264で済んでいる。

 

流石に、ネプギアのように鍔迫り合いまでは持っていけないが時間稼ぎとしては上出来だ。

 

 

「奥義、旋風裂剣」

 

 

 あんみつが刀を大きく振り回すと竜巻が現れ、ギガベーダーに襲い掛かる。

 

ネプテューヌとの戦いでも見せて、飛び道具の剣技だ。

 

 

「ベダー!」

 

 

 竜巻が当たると、ギガベーダーは284のダメージを受ける。

 

 

「まだまだ、疾風怒濤の攻めをみせましょう!」

 

 

 あんみつは竜巻を盾にギガベーダーに接近しており、そう叫ぶと同時に跳躍する。

 

 

「ひとつ!」

 

 

 跳躍からの右蹴りがギガベーダーに命中すると、225のダメージ当たり、「ふたつ!」と着地して直ぐに袈裟斬りで切り裂く。

 

ギガベーダーは更に278のダメージを受け、「みっつ! 弧月剣!」とあんみつは素早く弧月剣に繋げて上昇をする。

 

以前にネプギアの使ったジャンプ強パンチからのアッパー龍昇拳のあんみつ版と言ったところだ。

 

315のダメージを受けたギガベーダーは、「ぶぇだーーー」と悲鳴を上げると、スーパーアーマーが解除され、弧月剣の勢いで上昇する。

 

 

「イストワール殿!」

 

 

 弧月剣から着地したあんみつが叫ぶ。

 

 

「さすがはあんみつさん。素晴らしい攻めです! 私も力を見せなければ」

 

 

 イストワールはそう言うと、「クルクルフルフリーザーフローズン……凍えつく大気よ、我が呼びかけに応え、敵の動きを封じよ……」イストワールが呪文の詠唱を始める。

 

同時にペンネルがイストワール周りに青白い五芒星の魔法陣を描いている。

 

ギガベーダーは弧月剣の勢いで浮いたのち落下をして仰向けに倒れていた。

 

 

「アイスホールド!」

 

 

 イストワールが魔法を唱えると、ギガベーダー落下した場所にも青白い五芒星の魔法陣が現れる。

 

 

「べだっ!?」

 

 

 凍結する音と共にギガベーダーの倒れている部分が氷により凍りつき225ダメージが当たる。

 

【アイスホールド】は氷系の攻撃と障害を併せ持つ魔法。

 

ダメージを与えながらも凍結により相手の動きを妨害する。

 

 

「よし! 足が止まった!」

 

 

 ギガベーダーの足が止まったことを確認したファミ通はバックステップで距離を取り、そのまま待機する。

 

あんみつも、「良い判断出すぞ、ファミ通殿」と言いながら後ろに下がる。

 

凍結したモンスターに下手に衝撃を与えると凍結が解除されてしまうので、時間稼ぎをしたいときは手を出さないのがセオリーである。

 

凍りついて動けずにもがくギガベーダー。

 

 

「今です、ネプギアさん!」

 

 

 イストワールは後方のネプギアに声を掛ける。

 

 

「はいっ!」

 

 

 ネプギアそう答えると、「プラエちゃん、私の時間を!」と言いながら右腕を上げる。

 

プラエは目を閉じて両手を突き出す。プラエの目が蒼く光り、両手の十二本の指も同じように輝き始める。

 

 

「時間さん、プラエのお願いを聞いて。ネプギアお姉さんの時間を速くしてあげて」

 

 

 プラエがそう言った瞬間にネプギアの感覚に変化が起こる。

 

全てのものがスローモーションに見えるようになったのだ。

 

それを確認したネプギアが、「刮目して下さい!」と叫ぶ。すると高く掲げた右の手のひらに電源マークのようなクリスタルが落ちてくる。

 

ネプギアはそのクリスタルを自分の胸に押し当てるとクリスタルはネプギアに吸い込まれるようにネプギアの体に入ってくる。

 

同時にネプギアの体が空中に浮かび上がり激しく発光する。

 

 

 光が収まるとネプギアの姿に変化が起こる。

 

瞳は蒼くなり、その奥には電源マークのような模様が浮かび上がっている。

 

電源マークに白い光が灯るが、それは完全ではなく右側の曲線部分だけは光らない、これは女神候補生の特性で、完全な守護女神は電源マーク全てに白い光が灯る。

 

元々長かった髪は更に伸びて、肩甲骨のあたりで左右わかれていて綺麗な背中がよく見える。色も薄紫から殆どピンクに近い紫色になっていた。

 

着ている服もラバーのような光沢がある素材で胸元の開いたレオタードのようなものになる。色は白く所々に薄紫色の模様が付いている。

 

手には同じくラバーのような素材で指先から二の腕の半分まで覆う長い手袋をはめて、足も同じ素材のサイハイブーツをはいていた。

 

 

 続いて足、腰、肩、背中、頭と次々に白に紫の模様が入った機械のパーツが装着される。

 

両足には鳥の羽を意匠したようなパーツ。

 

腰には鎧の草摺のような細長いパーツが左右に三つずつ合計六個。

 

両肩には肩パッドのような丸みのあるパーツ。

 

背中には、透明で薄紫色に光るモンシロチョウの羽のような扇形の羽のパーツ。

 

最後に頭の左側に、丸い髪飾りに鳥の羽を意匠したものが付いたようなパーツが装着される。

 

頭の髪飾り以外の各パーツは体に密着しているのではなく、体からやや離れた場所に浮遊している。

 

 

「プロセッサユニット装着完了!」

 

 

 パーツの装着が完了したネプギアはビシッとポーズを決める。

 

変身前の清楚な雰囲気は残しつつも、均等の取れた体のラインが綺麗に見える衣装に、周囲に浮遊している機械のパーツや光り輝く羽を纏うその姿は神秘的で女神と呼ぶに相応しかった。

 

宝石などの光り物を身に纏う古代の神とは違う、機械を身に纏う近代の神と言ったところだ。

 

完全に変身が完了するまでには、やや時間がかかるものの、プラエの能力により大幅に時間の短縮がされている。

 

 

「これが……女神様……」

 

 

 ファミ通がネプギアの変化に目を丸くする。

 

女神候補生はあまりメディアへの出演が多くない上に殆ど変身した姿を見せないので、ファミ通もこの姿を見るのは初めてだった。

 

 

「そうです、これがネプギアさんの真の姿。プラネテューヌの女神候補生パープルシスター様です」

 

 

 イストワールは誇らしげに女神化したネプギアの名を紹介する。

 

パープルシスターとは女神化で変身したネプギアの名前である。

 

ただ、この名前で呼ばれることは少なく変身後も元の名前であるネプギアと呼ばれることの方が多い。

 

これはネプギアに限らず他の女神達もそうである。

 

 

「プラエちゃん、時間を戻していいよ。ありがとね」

 

 

 ネプギアがプラエの頭を撫でながら言うと、「うん!」とプラエが嬉しそうに頷く。

 

 

「ネプギアお姉さん凄く綺麗!! 髪も胸も手も足も全部ぜぇぇぇんぶ素敵! キラキラに輝いてるよ!」

 

 

 プラエが全力でネプギアを褒めると、「ありがとう」とネプギアが微笑む。

 

 

「……なるほど、変身の為の時間稼ぎだったのですね」

 

 

 あんみつがそう言って納得をすると、「見た目の可憐さとは裏腹に凄まじいパワーを感じる……これが女神の力……」と言って軽く身震いをする。



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#46 女神の力

「手加減はしません。本気で行きます!」

 

 

ネプギアはそう言いながら空中に浮かび上がると、そのまま上空に上って行く。

 

女神化すると姿形が変わるだけで無く空を飛んで移動できるようになる。

 

空中で停止したネプギアは、右手に持っている白い巨大な武器をギガベーダーに向けて構える。

 

 

「行くよ、M.P.B.L」

 

 

 ネプギアは自分の相棒である武器に語りかける。

 

M.P.B.L【エムピービーエル】

 

マルチプルビームランチャーの略称。

 

女神化したネプギアのメイン武器である。

 

ビームに実弾等様々な弾を発射できる銃の下部に近接戦闘用のブレードが付いた銃剣。

 

この武器により変身前より遠距離攻撃が格段にパワーアップする。

 

形状がやや特殊で、直角二等辺三角形ような形をしており、直角の縦線にあたる部分にグリップとトリガーが付いている。

 

そして底辺の先にブレードがくっついている。

 

 

 これもボムを同じく、バーチャロボに出てくるロボットのものを参考にして作られている。

 

ちなみにそのゲームではM.P.B.Lとボムを持つロボットは主役機として活躍している。

 

 

「当たって!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、M.P.B.Lの銃口から二発のビームが放たれた。

 

凍結して避けることの出来なかったギガベーダーはビームの直撃を受ける。

 

 

「ベーーーダーーー!」

 

 

 ギガベーダーが絶叫を上げる。

 

一発あたり1,500近いダメージが当たり合計ダメージが3,000を超える。

 

そのダメージ量はHPゲージ一本以上で、先程の五人での連携攻撃よりも上であった。

 

 

「……たった二発であんな……」

 

 

 初めて女神の力を間近で見るファミ通は震えが止まらなかった。

 

 

「続けていきます!」

 

 

 銃撃が当たると同時にネプギアは急降下して、正面からギガベーダーに接近していた。

 

ネプギアの降下した軌道には美しい薄紫色の光が残されている。

 

ギガベーダーは攻撃により凍結は解除されて立ち上がっていたが、ネプギアの接近が速すぎて反応が出来ない。

 

 

「はあっ!」

 

 

 ネプギアは落下スピードに乗ったまま、M.P.B.Lのブレード部分を使いギガベーダーを正面から斬り抜ける。

 

 

「べだっ!?」

 

 

 その一撃で1,723ダメージが当たる。

 

 

「もう一撃!」

 

 

 背後に回ったネプギアは素早く旋回して再度ギガベーダーの背中に接近する。

 

 

「ネプギアお姉さん、とっても綺麗……」

 

 

 プラエが呟く。

 

ネプギアの通った場所に残す美しい光の軌跡は、離れた場所で戦いを見守るプラエ達を魅了していた。

 

 

「高速剣! フォーミュラーエッジ!」

 

 

 ギガベーダーの背中に接近したネプギアが叫ぶ。

 

ギガベーダーは振り向く間もなくフォーミュラーエッジの直撃を受ける。

 

 

「べぇぇぇぇだぁぁぁ!!」

 

 

 ネプギアだった頃と威力とスピードが桁違いなのが、ギガベーダーの悲鳴とグングン減少するHPゲージが物語っている。

 

一発あたり600近いダメージが当たり合計で3,600以上のダメージが当たる。

 

 

「ベーダー!!」

 

 

 ギガベーダーもやられてばかりではない。態勢を整えるとネプギアに向かって体を大きく震わせて大暴れをする。

 

 

「はっ!」

 

 

 avoid。

 

しかし、ネプギアは華麗なバク転で攻撃を避ける。

 

女神化により攻撃力だけではなく回避力もアップしていた。

 

 

「べだー!」

 

 

 ギガベーダーはバク転で後方に下がったネプギアに対して、突っ込んで体当たり攻撃を繰り出してくる。

 

 

「止まって見えます」

 

 

 avoid、今度は側転で避けるネプギア。

 

 

「べだだだだだだだだだ!」

 

 

 ムキになったギガベーダーは無茶苦茶に体当たりの連続攻撃を仕掛けて来た。

 

 

「よっ! はっ! ふっ!」

 

 

 avoid、avoid、avoid、avoid。

 

ネプギアは、側転、バク転、スウェーを巧みに使い全ての攻撃を避ける。

 

薄紫色の光の軌跡は回避の度にも光輝き、その美しさは妖精の踊りのように幻想的であった。

 

 

「すごい! すごいよ!」

 

 

 ファミ通はカメラを撮りながら女神化したネプギアの活躍に興奮している。

 

カメラのシャッター音とフラッシュの光が連続する。

 

 

「ところで、ネプギア様の周りに浮いているあの機械はなんなんですか?」

 

 

 ファミ通は写真を取りながらイストワールに質問をする。

 

 

「あれはプロセッサユニット、女神様の力の増幅装置です」

 

 

 【プロセッサユニット】はパープルシスターになったネプギアに装着され周囲に浮いているパーツのことである。

 

このパーツにより女神の力が増幅される神器と言ってよいもの。

 

 

 現在、コア、ヘッド、バック、ショルダー、ウエスト、レッグの六種を装備できる。

 

犯罪神マジェコンヌに対抗するために各国が独自に開発した女神専用対マジェコンヌ装備。

 

公には各国が独自に開発したことにされているが、実際はイストワールの技術開発によるもの。

 

 

 プラネテューヌでは以前から実用化されている技術だが、プラネテューヌの技術だけでは限界を感じたイストワールにより、プロセッサユニットの技術を極秘裏に各国に流された。

 

それにより各国の技術が取り入れられたプロセッサユニットが開発されたのだ。

 

 

「空を飛べるのもプロセッサユニットの機能ですか?」

 

 

 ファミ通の質問にイストワールは頷くと、「はい、ネプギアさんの考えたGGシステムとシェアエネルギーフライトで空を飛べるようになりました」と答える。

 

G.C.2012頃までは女神は地上をホバリングで浮遊するだけであったが、G.C.2015にはプロセッサユニットに【GGシステム】と呼ばれる反重力装置を組み込み、更にバーニアを使った【シェアエネルギーフライト】で空を自由に飛んで海を渡ったりすることができるようになる。

 

 

 実質的に経った期間は三年だが、この技術は三年間で開発された物ではない。

 

ネプギアが以前に行った神次元は、当時は超次元との時間の流れが違っており、神次元の一年が超次元の一日に当たる時間の流れの差だったのだ。

 

その為、ネプギアが神次元に居た時間は約二十年に及ぶ。

 

彼女はその時間の流れの差を有効に利用し、家事や子供の世話に女神の仕事をこなす合間に超次元と神次元のプロセッサユニットの技術の折衷を行っていたのだ。

 

 

 約二十年の間にネプギアは神次元の開発者達と共にプロセッサユニットの研究に励んだ。

 

それにより、プロセッサユニットに内蔵可能な小ささでシェアエネルギーと重力魔法の二つのエネルギーで動くGGシステムの基礎を作り上げた。

 

これは当時の強大な敵であったエディンの女神への対抗策となる予定だったが、間に合わずに戦いが終わってしまう。

 

 

 ちなみにGGシステムは、グラビティ・ギア・システムの略。

 

当初はグラビティ・コントロール・システムだったが、開発者達の熱望で基礎理論を作ったネプギアのギアの文字と変速機を合わせることで、グラビティ・ギア・システムの名前になった。

 

魔法による重力コントロールは一瞬から数分が限界なのに対して、この機械は長時間の間、重力を軽くして浮くことが出来る。

 

ブレインマシンインターフェースにより使用者にかかる重力を任意に変更ができる為、これにより飛行が可能になる。

 

 

 戦いを終えて、超次元に戻ったネプギアはプロセッサユニットの開発者であるイストワールと共にGGシステム更なる改良を行う。

 

ネプギアとイストワールの考えた改良案に、プラネテューヌの科学力、ラステイションの技術力、ルウィーの魔法力、リーンボックスの軍事力を更に折衷させて、プロセッサユニットに小型高性能のGGシステムと推進機のバーニアを搭載することに成功した。

 

これがシェアエネルギーフライトである。先程からネプギアが見せている薄紫色の光はシェアエネルギーによるバーニアの噴射光なのだ。

 

このシェアエネルギーフライトを使った機動力は、女神本人の素早さの他に、推進機とGGシステムを動かすシェアエネルギーの多さ、重力魔法の上げ下げ調整の三つの要素によって左右される。

 

ちなみに魔法が得意じゃない女神に対しては、重力魔法はオートで制御されている。

 

 

 シェアエネルギーフライトは重力のコントロールと推進機により自由な機動を実現できる。

 

マニュアルとオートマチックがあり、マニュアルはコントロールが難しいが高度な機動が可能になる。

 

下降の際には故意に重力を上げて重力加速度で下降速度を上げることも出来る。

 

急激に重力を変えるのは体の負担が大きいので普段はオートマチックを使う。

 

これを動かすのには莫大なエネルギーが必要であり、現時点では女神のシェアエネルギーで動かすか、大型の物を作り巨大な戦艦に積む等の方法しかない。

 

 

 先ほどのネプギアの高速の急降下や旋回に連続した回避も、内蔵されたメインバーニアによる直線的な加速、姿勢制御用のサブバーニアによるに精密な回避運動、重力魔法の調整による急上昇と急下降のスピードアップを駆使したものだ。

 

 

 ネプギアはGGシステムの他に、プロセッサユニットの強化案や局地用のプロセッサユニットやクエストに合わせた高機動型や重装備型の案を作成し、それは今もプラネテューヌを中心に研究が進められている。

 

他にも超次元に帰る為に次元移動の研究も独自に行って、それをプロセッサユニットに搭載できないかと研究をしていたが、実現には至らなかった。

 

しかし、そこで次元座標などの次元移動に関する基礎的な知識は身に付けたらしい。

 

尚、プロセッサユニットを含めた女神用の装備は変身前の武器と同じく、ポーチに収納されている。

 

 

 

「べ~~だぁ……べーだぁぁ……」

 

 

 攻撃をしすぎたギガベーダーは呼吸を荒くしている。

 

スタミナゲージが0になっているのでスタミナ切れである。

 

この状態になると暫く身動きが取れなくなる。

 

 

 対するネプギアは汗一つかいていない。

 

女神になるとスタミナも上がるだけでなく、プロセッサユニットのバーニアの噴射による回避は素早い上に女神本体のスタミナ消費が少ないのである。

 

尚、バーニアも女神の意思一つで手足のように自由に噴射できる。

 

 

「ネプギアさん、私が力を貸します。一気に決めて下さい」

 

 

 イストワールがネプギアに声を掛けると、「はいっ!」とネプギアは返事をすると同時に、上空に飛び上がる。

 

 

「あなたに力を……」

 

 

 イストワールは祈るように目を閉じる。

 

それと同時に、ネプギアは上昇を止めて、「発射シークエンス入ります。ロングレンジバレル、シェアエネルギー受信システム転送!」と言うとM.P.B.Lの銃口に長い銃身、後部にはリフレクターが装着される。

 

 

「シェアエネルギー来ます!」

 

 

 イストワールの言葉と同時にプラネテューヌ方面から一筋の光がM.P.B.Lに注がれる。

 

すると装着したリフレクターが薄紫色の光を放つ。

 

 

「べだーーーー!」

 

 

 しかし、スタミナ切れから回復したギガベーダーが大きな角をネプギアの方に向ける。

 

ネプギアに向けて角から巨大な電撃が放たれる。

 

 

「危ない!」

 

 

 あんみつが叫ぶ。

 

 

「Gビット! 私を護って!」

 

 

 ネプギアがそう言うと、背中から五基のGビットが発射される。

 

五基のGビットはバーニアを吹かして移動し、ネプギアの四方で四つ、真上に一つと配置すると、それぞれが光線を発射し、ネプギアが光の線で描かれた四角推に囲まれたようになる。

 

光の線からピンク色の光の膜が広がり、それが繋がるとピンク色に光るピラミッド形成される。

 

 

 飛んで来た電撃がピラミッドに接触するが、ピラミッドの膜はびくともせずに電撃を打ち消す。

 

ダメージが0と表示されネプギアへのダメージはまったくないようだ。

 

 

「わわっ! スゴイ! なにあれバリア?」

 

 

 プラエがその光景に歓声を上げると、「あれはNG粒子によるビームバリアです」とイストワールが説明を加える。

 

 

「NG粒子って何ですか?」

 

 

 ファミ通がイストワールに質問すると、「NG粒子は以前にネプギアさんが発見したNP粒子を進化させたものです。このNG粒子にはビームなどを強化する性質があります。それによりバリアが作れるまでの出力を得られたのです」と答える。

 

 

 【NG粒子】イストワールの言う通り、ネプギアが以前に発見したNP粒子を改良したものである。

 

以前のNP粒子は一部の武器に試験的に運用されただけだが、武器以外の用途にも転用を可能にしたものがNG粒子である。

 

 

 その一つにビームの出力を上げる効果があり、Gビットによるバリア機能はその恩恵によるもの。

 

NGとはノーグッドのNo Goodではなく改良したネプギアの【Nep Gear】の意味のNG。

 

イストワールの言うようにビーム等を増強することから、多数の成長を意味するニューモラス・グロー【Numerous Grow】のNG。

 

他にも遺伝子に良い効果をもたらす性質も見つかっており、新しいの他に復活やリニューアルを意味するNeoと遺伝子のGeneをあわせたネオ・ジーン【Neo Gene】のNG。

 

それにより新世代のエネルギーとして期待されたニュー・ジェネレーション【New Generation】の四つの意味を持ったNGなのである。

 

決してGとNを逆にしてはいけない。

 

 

 イストワールがNG粒子のことを説明している間に、ネプギアのM.P.B.Lに装着されたリフレクターが更に激しく発光する。

 

ネプギアは両手でM.P.B.Lを構えると、ネプギアの視界にグリーンの線で描かれたレティクルが現れる。

 

両手に持ったM.P.B.Lを動かすと、それに連動してレティクルも動く。

 

ネプギアはレティクルを慎重に動かし照準の真ん中にギガベーダーを捉える。

 

 

ピー!

 

 

警告音と共に【Lock on】と赤い文字が点滅する。

 

 

「照準、発射態勢……オールクリア!」

 

 

 ネプギアがつぶやく。

 

女神化したネプギアはFCS【ファイアーコントロールシステム】を使うことが出来る。

 

FCSとは射撃統制システムと呼ばれ、目標に対して効果的な射撃を行うために射撃計算をすることである。

 

その為、女神化したネプギアは機械のように精密な予測射撃を行うことができる。

 

 

「エネルギー充電100%。撃てます」

 

 

 M.P.B.Lから機械音声が聞こえてくる。

 

 

「シェアエネルギーキャノン発射!」

 

 

 ネプギアがM.P.B.Lのトリガーが引くと巨大なエネルギーがギガベーダーを襲う。

 

 

「????!!!!」

 

 

 ギガベーダーは絶叫を上げる暇もなくエネルギーの奔流に呑まれる。

 

ネプギアはエネルギーの照射の反動に耐える為に、両足で踏ん張りつつプロセッサユニットのバーニアも後方に噴射させる。

 

 

「くぅぅぅ!」

 

 

 数秒のエネルギーの照射が終わるとギガベーダーは20,000以上のダメージを受けて、【Over kill】の表示と共に消滅する。

 

ギガベーダーが居た場所には抉られた地面だけが残っていた。

 

 

「これが女神の力……」

 

 

 あんみつが驚きの声を上げる。

 

ネプギアとイストワールの合体技【シェアエネルギーキャノン】。

 

プラネテューヌのシェアエネルギーを直接M.P.B.Lに送り極大のビームを放つ技。

 

現在のプラネテューヌのシェアの状況により、威力やチャージ時間が変化する。

 

 

 照射が終わり、ネプギアがM.P.B.Lの銃口を降ろすと同時に背中にある羽のプロセッサユニットとM.P.B.Lのリフレクターから大量の薄紫の粒子が放出される。

 

シェアエネルギーキャノンの余剰エネルギーが排出されたのだ。

 

 

 その余剰エネルギーが桜の木に降り注ぐと、桜の花が咲き始める。

 

 

「おおっ!?」

 

 

 ファミ通が驚きの声を上げ、「わあっ!」とプラエが歓声を上げる。

 

 

「これは……」

 

 

 上空のネプギアもその現象に気付くと、「よしっ!」と意気込み、更に空高く舞い上がると周囲に粒子を振りまくように旋回を始めた。

 

振りまかれた粒子が次々と花を咲かせる。

 

 

「現代の花さか爺さんのようですね。さしずめ花さか女神と言ったところでしょうか」

 

 

 あんみつが上空を眺めながら呟くと、「いいですね~。それいただきです」とファミ通が写真を撮りながらサムズアップを決める。

 

プラエも上空のネプギアを見ながら、「ネプギアお姉さん素敵……」と惚れ惚れしたように顔を赤くする。

 

粒子は風に流されてサクラナミキ全体に花を咲かせる。

 

 

「サクラナミキ全体がネプギアさんの勝利を祝福しているようにも見えますね」

 

 

 イストワールが嬉しそうに言う。

 

ネプギアは余剰エネルギーが 無くなるまで旋回を続け、ファミ通はそれを嬉しそうに写真におさめる。

 

プラエはネプギアに見とれ、イストワールとあんみつは桜の開花を楽しんでいた。

 

 

 暫くして、余剰エネルギーが無くなったネプギアが降下してくる。

 

 

「少しやりすぎだったでしょうか?」

 

 

 咲き乱れる桜とシェアエネルギーキャノンで抉れた地表を眺めながらネプギアがイストワールに尋ねる。

 

 

「大丈夫です、問題ありません。人々は女神様による桜の開花を喜びますよ。それにこれだけの力を見せつければ暫くモンスターも近寄らないでしょう」

 

 

 心配そうにしているネプギアに対してイストワールは安心するよう助言する。

 

 

「それならよかったです。オーバーキルによる加護でも暫くモンスターは近づかないでしょうし、みんなが安全にお花見を楽しめますね」

 

 

 そう言ってネプギアは安心をする。

 

イストワールは更に、「それにオーバーキルによるボーナスポイントでシェアエネルギーは大きく上昇するでしょう」と続けて答える。

 

 

「ネプギア様、凄いね! これならいい記事が書けそうだよ!」

 

 

 着地したネプギアにファミ通が興奮気味に言い寄って来る。

 

 

「私が凄いんじゃないですよ。これは私達を信仰してシェアエネルギーを与えてくれる国民のみなさんの力ですから」

 

 

 ネプギアは興奮しているファミ通を宥めるように言うが、イストワールは、「ネプギアさんらしい言い方ですが、もう少しご自分を誇られても良いのではないでしょうか?」と進言する。

 

ネプギアには、もう少し堂々と構えて欲しかったイストワールは少し不満そうだ。

 

 

「ですけど、国民のみなさんへの感謝の気持ちは常に忘れないようにしたいですから」

 

 

 しかし、ネプギアは自分のスタンスを変えるつもりはないようだった。

 

女神化することで少し強気になり、変身前より自分の意見をハッキリと言えるようになる。

 

 

「流石はネプギア様、その謙虚さは記事にもバッチリ書かせてもらうよ」

 

 

 だがファミ通はネプギアの性格を好意的に捉えており、控えめな態度も満足なようだった。

 

 

「ふふっ……どうやら私の杞憂だったようですね」

 

 

 ファミ通がネプギアに派手なパフォーマンスを期待しているものと考えていたイストワールはファミ通の言葉に安心したようだ。

 

 

「どうやら、私の期待通りの記者さんだったようです」

 

 

 イストワールはネプギアの性格を受け入れてくれたファミ通に感謝をした。

 

 

「ネプギア殿、お見事です。これなら、安心してプラエ様を任せることができます」

 

 

 あんみつが明るい声でネプギアを賞賛すると、「そんな……結婚なんて、プラエまだ早いよ……」とプラエが顔を真っ赤にして両手でほっぺたを持ちつつ首を左右に振る。

 

 

「いえ……そう言う意味では……」

 

 

 あんみつは困った顔をし、「申し訳ありません。ネプギア殿が変身されてから、プラエ様はずっとこのような調子で……」と続ける。

 

 

「だって、ネプギアお姉さんは、ただでさえ素敵なのに、女神様になるときらきらのぴかぴかですっごく強いだもん」

 

 

 プラエはそう言うと再び両手でほっぺたを持ちつつ首を左右に振る。

 

 

「ありがとう、プラエちゃん、私って女神になっても変化が少ないこと気にしてたんだけど、プラエちゃんみたいに褒めてくれる人がいるなら、このままでもいいかな」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「ネプギアお姉さんは元々素敵なんだから変わる必要なんてないよ。これぐらいで十分だよ」とプラエが断言する。

 

 

「しかし、ここまでの力とは驚きましたよ」

 

 

 あんみつがネプギアにそう言うと、「隠していた訳じゃないんです。さっきも言いましたけど、この力は私達を信仰してシェアエネルギーを与えてくれる国民のみなさんの力ですから、おいそれと使うわけにはいかないんです」とネプギアが答える。

 

 

「自分が楽をしたいとか見せびらかしたいとか、そういう理由で使っていい力じゃ無いんです。あくまでゲイムギョウ界とそこに住む人達の為に使う力だと私は思っています」

 

 

 ネプギアがそう言うと、あんみつは拍手をして、「立派なお考えですぞ」と頷く。

 

イストワールも、「さすがはネプギアさん、素晴らしいお考えです」と拍手をする。

 

 

「うん、ネプギアお姉さん偉い」

 

 

 プラエがそう言って拍手をすると、「私もそう思うよ。記事にもバッチリ書くから見ててね」とファミ通も拍手をする。

 

 

「そ、そんなに褒めないで下さい……」

 

 

 みんなに拍手をされたネプギアは俯いて顔を赤くしてしまう。

 

 

「そういうところも、可愛くてグーですよ」

 

 

 ファミ通はそう言いながら写真を取った。

 

 

「も、もうっ……ファミ通さん」

 

 

 更に顔を赤くするネプギア。

 

こうして今回のクエストと取材は大成功に終わったのだった。



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#47 女神候補生と音楽

 サクラナミキのクエストから二日後。

 

G.C.2019年4月7日日曜日。

 

 

 ネプギアとプラエ、そしてあんみつはユニの誘いにより、ラステイションを訪れていた。

 

ラステイションは重工業を主な産業とする国。居住地区を囲むように工業地区が広がっており、場所によっては鉄骨がむき出しになったような街並みもある。

 

他の三国と国境が接している為に、貿易の中枢も担っている。経済的にも発展しており、国民は活気に満ち溢れている。

 

 

 ゲイムギョウ界の総面積は、我が日本と同じく約37万8,000平方キロメートルの広さがある。

 

日本とは形状は違うが陸続きでプラネテューヌ、ラステイション、ルウィーがあり、そして海を隔ててリーンボックスがある。

 

その中心にあるのが、ラステイションなのだ。

 

 

「ここがラステイション……黒くて重厚な感じがする街だね」

 

 

 送迎車の後部座席に乗ったプラエが物珍しそうにラステイションの街並みを眺める。

 

ラステイションの街は白と黒の建物が多く、プラエの言うように重厚な印象を受ける街だ。

 

 

「プラエちゃんはラステイションは初めて?」

 

 

 隣に座っているネプギアがプラエに尋ねると、「うん、プラエはずっとお屋敷に居たから、プラネテューヌも初めてだったの」とプラエが答える。

 

 

「そうなんだ。よくプラネテューヌまで一人で来れたね?」

 

 

 ネプギアがそう尋ねると、「姉さまが全部用意してくれてたの。プラエはその通りにしただけ」とプラエは答えた。

 

 

「それにしても、私にまでお誘いが来るとは……ユニ殿はなにを考えているのでしょうか?」

 

 

 助手席のあんみつが不思議そうに呟く。

 

彼女の言う通り、ネプギアはプラエとあんみつを連れてくるようにユニから言われているのだ。

 

 

「ユニちゃん、とにかく連れて来ての一点張りで……」

 

 

 ネプギアも詳細は知らないらしく、同じように首を傾げた。

 

 

「もうすぐ着きますから、ユニちゃん本人に聞いてみましょう」

 

 

 ネプギアがそう言うと、「あっ! お城が見える!」とプラエが歓声を上げる。

 

そこには街と同じように重厚な機械で出来た城が見えていた。

 

 

「あれが、ラステイションの教会。ユニちゃんが住んでるところだよ」

 

 

 ネプギアがそう説明をすると、「へー、ここにユニお姉さんが住んでるんだー」とプラエは興味津々とラステイションの教会を眺めた。

 

 

 送迎車はラステイションの教会に入ると、メイド達がネプギア達を丁重に降ろして、教会内のユニの部屋まで案内する。

 

メイドが扉をノックすると、「ユニ様、ネプギア様達がいらっしゃいました」とユニに声を掛ける。

 

 

「ご苦労様。入ってもらって。あなた達は下がっていいわ」

 

 

 部屋の中からユニの声がすると、メイド達はネプギア達に丁寧に頭を下げると去っていく。

 

 

「ユニちゃーん、入るよ」

 

 

 ネプギアはそう言うと、ユニの部屋の扉を開く。

 

 

パン! パパパパーン!!

 

 

 同時に乾いた破裂音が何度も響く。

 

 

「ひゃっ!」

 

 

 驚くプラエ。

 

 

「何事!」

 

 

 あんみつは戦闘態勢を取るが、「落ち着いて、あんみつ」と女性の声がすると、素直に戦闘態勢を解く。

 

 

「フィナンシェ……? これは一体?」

 

 

 あんみつが声の元の女性に問いかける。

 

そこには以前にプラネテューヌに来ていたルウィーのメイド、フィナンシェが居た。

 

 

「今日は、あんみつとプラエ様の歓迎会よ」

 

 

 フィナンシェがニッコリ笑いながら言うと、「いえーい! 驚いたー!」とラムが、「ドッキリ成功(にこにこ)」とロムがクラッカーを持って微笑んでいる。

 

先程の乾いた音の元はこのクラッカーだったようだ。

 

よく見れば、ネプギア達の頭に紙切れがいくつも乗っかっており、部屋の奥にはプラエとあんみつを歓迎する花輪付きの垂れ幕があった。

 

 

「なるほど、……そういうことだったんだ」

 

 

 ネプギアが頭に付いた紙切れを落としながら言うと、「私にくらい教えてくれてもよかったのに、みんなの意地悪~」と拗ねた声を出す。

 

 

「アンタは素直すぎるから、言ったら態度とかで絶対にバレるし」

 

 

 ユニが落ち着いた声で言うと、ネプギアは口を尖らせて、「む~! そんなことないもん。ユニちゃんのいぢわるぅ~」と更に拗ねた声で抗議する。

 

 

「さあ、ケーキもお菓子もいっぱいありますから、楽しんで行って下さいね」

 

 

 フィナンシェはそう言うと、机の上にあるケーキを切り分け始める。

 

ネプギア達は食事をとりながら、ワイワイと談笑を始める。

 

 

「ねーねー! プラエって何が得意なの?」

 

 

 ラムが興味津々とプラエに尋ねると、「わたしも知りたい(わくわく)」とロムも期待の眼差しでプラエを見る。

 

 

「わたし達はお絵描きが得意なのよ」

 

 

 ラムはそう言うと、「今度、プラエちゃんも描いてあげるね」とロムが言う。