破壊王子ベジータ☆マギカ (うー)
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一話














お菓子の魔女の結界、その深部。

辺りを見渡せば、人の倍以上もある巨大なクッキー、両手で抱えるサイズのドロップ、高台に乗ったケーキがそこら中に散らばった、お菓子だらけの不気味でメルヘンな世界が広がっている。むせ返るような甘い匂いの中、クリームの地面の上で、一人の男が目を覚ました。

 

「…どこだここは」

 

彼の名はベジータ。

かつて高度な文明を築き上げ、最先端の科学兵器を大量に揃え徹底抗戦したツフル星人を、その強靭な肉体のみで真正面から叩き潰し、滅ぼし、一つの惑星を支配した戦闘民族サイヤ人、その生き残りの王子である。

 

「ぐっ…頭が割れるように痛い…クソ、ブルマの野郎、無理矢理酒なんぞ飲ませやがって…」

 

昨晩のパーティはベジータにとってまさに地獄であった。妻主催のパーティに夫が参加しないのは体裁が悪いとゴネられ、仕方なく参加したのだが、悪酔いした妻に酒瓶を口に突っ込まれ、普段飲み慣れない酒を大量に飲んでしまった。結果、大いに体調を崩し、気分は最悪、記憶も飛ぶで散々、恨み言の一つや二つ言わずにはいられなかった。

立ち上がろうとするが、前日の疲れとアルコールが抜け切らず、身体が思うように動かない。おまけに吐き気も酷く、満身創痍の状態である。

 

「酔っ払って妙な場所に迷い込んだか…さっさと家に帰って寝直そう」

 

二度とパーティには参加しないことを誓いながら、なんとか重い体を持ち上げ、ふらふらと歩き始める。が、数歩進んだところで違和感を覚える。

 

「…? ブルマの気が見つからないだと?」

 

全ての生物が体内に持つ不可視のエネルギーを、彼らは気と呼ぶ。通常、一般人が認識することはないが、ベジータはそれを感知、操作することができる。一度覚えた気は地球上のどこにいても見つけられるはずだが、どういうわけかどこを探しても見知った気はどこにも見当たらなかった。そこでようやく脳が醒め、自らの置かれた状況の異常性に気付く。

 

「一体どうなってやがる…なぜ俺はこんな空間に閉じ込められているんだ」

 

ぶつぶつと独り言を言っているベジータの後ろ姿を、物陰から観察している青髪の少女がいた。

 

(な、なにあの人…ど、ど、どうしよう、声かけた方がいいのかな…でも明らかにやばい雰囲気漂ってるし…)

 

魔女の結界の中で一般人が隠れもせず突っ立っているのは非常に危険なことである。それを知る彼女は当然見過ごせるはずもなく、隠れるよう警告しようかと考える。

 

しかしこの男、なんと全裸であった。

恐らく中年男性と思われる筋肉質の人物が、独り言を呟きながら全裸で闊歩している光景はお世辞にも近寄りがたく、女子中学生である彼女が声をかけるのを躊躇うのも無理はなかった。

 

しかし、いくら変態といえど、殺されるのは流石に不憫というもの。少々迷った後、勇気を振り絞って飛び出した。

 

「あ、あの! そこにいたらあぶ…ない…です…よ?」

 

「あ? なんだ貴様は」

 

忠告を受けた第一声が高圧的なだけでなく、あまつさえ睨みつけてきたことに面食らう。全裸ながら鋭い眼光を放つ様相は迫力があり、かなりビビりながら、震える声で話しを続けようとする。

 

「えっと、私は…そ、それより、ここは危険な生き物がいるので、そうやって堂々と歩くのは…」

 

「いらん世話だ、とっとと失せろ」

 

「アッハイ」

 

親切心をばっさりと切って捨てられ、それ以上特に何も言えず黙り込んだ。ベジータが放つ威圧感のあまりの凄まじさに、無碍にされた怒りすら湧かない。

 

「ちっ…寒いな…」

 

じゃあ服着ろよ、と心の中でツッコむ。

 

「ところでお前、その後ろにいる生物はなんだ」

 

「へっ!?」

 

思わず、隠し事がバレた時のように素っ頓狂な声を上げる。

 

『ちょっと、このおっさんキュゥべえが見えるの!? あんた、魔法少女の素質がない人には自分の姿は見えないって言ってたじゃない』

 

『いや、確かに姿は見せてないはずだよ。 おかしいな、なんでバレたんだろう』

 

自分達以外には見えないと信じ切っていたキュゥべえの存在を、目の前の男が認識したことに彼女は驚愕し、慌ててキュゥべえにテレパシーを繋げる。

 

「何か知らんがコソコソやってないで見せろ。 癪に障る」

 

「えっと…なんて言ったらいいか…」

 

「きゅ? きゅきゅきゅっきゅ!」

 

「!?」

 

どう取り繕おうか考えていた矢先、これまで人語を話していたキュゥべえが突如愛玩動物の猿真似をし始めたことに二度驚く。

 

『え、ちょっとあんた何やってんの』

 

『彼を混乱させないためにはこれが最適だと思ってね。 彼がなぜ僕に気づいたのかは分からないけど、ひとまず一般人として考えると、ここは普通の小動物のふりをした方がよさそうだ』

 

「きゅ〜!」

 

「………………この子はうちのペットです」

 

あまりの変貌ぶりに正直言って軽く引いていたが、この子はマジカルな魔法マスコットですと素直に言うわけにもいかないので、話を合わせることにする。

 

「そうか」

 

聞きはしたものの最初から大して興味がなかったのか、淡白な反応を返す。少しイラっとしたが、とりあえず演技がバレなかったことに安心し深く息を吐いた。

 

そんなやり取りがあってやや緊張感が薄れ始めた頃、地鳴りが始まり、天井の絵から何かが蠢き始めた。

 

「!? やばっ、もう孵化が始まる!」

 

「おい、一体何が起こりやがるんだ」

 

少女はキュゥべえを抱え身を隠し、ベジータは訳が分からないといった様子で仁王立ちを続ける。

 

「お待たせ!美樹さ…!? へ、変態!!」

 

「なんだと!? おい貴様! 誰が変態だと言った!」

 

そこへ新たに二人、一人は桃色の髪の制服を着た、もう一人は中世ヨーロッパの銃士のような衣装に身を包んだ、金髪ロールの少女がやってくるが、開口一番に変態呼ばわりされたことに、ベジータは憤る。

 

「どう考えてもあなたに決まってるじゃない! こんな所で裸になるなんて変態以外の何者でもないわ!」

 

「知るか! 好きでこんな格好をしているわけじゃない!」

 

顔を真っ赤にして露出狂を非難する少女と、心外だと怒るベジータが言い争う。他二人はおろおろしながらその応酬を見守る。

 

「好きでやってるわけじゃないですって…? 信用ならないわ…まさか! 美樹さん! 無事!?」

 

「い、一応は」

 

「よかった…何もされてないのね」

 

「待て貴様。 何を想像してやがる」

 

青髪の少女を庇うように金髪の少女が立ち、きっと男を睨みつける。こめかみに青筋が立ち、いよいよ噴火する寸前かと思われたその時、先ほどとは比べものにならない大きさの地鳴りが鳴る。

 

「マ、マミさん!」

 

「分かってるわ…申し訳ないけど」

 

「ぬ?」

 

途端、どこからともなく無数のリボンが現れ、ベジータに巻き付き縛り上げる。

 

「……………」

 

「放って置いたら何しでかすか分からないから…その、暴れないでね」

 

若干気まずそうに目を伏せた後、天井の絵に相対する。

スン、とベジータの表情が消える。ただならぬ様子を察知したのか、青髪の少女は顔を青くする。

 

「お、終わったら解放してくれるから…落ち着いて」

 

「さやかちゃん…あんまり話しかけない方が…」

 

「……………」

 

ぶら下げられた蓑虫をなだめようとするが、返事は返ってこない。自分より遥か歳下の女に変態呼ばわりされた挙句、晒し者にされ、怒りを通り越して無感情になっていた。

 

そんなことは露知らず、金髪の少女は銃を取り出し臨戦体制に入る。

 

「さあもう準備はできてるわよ。 出てきなさい!」

 

少女の声に呼応するかのように、絵が裂け始め、やがて中から魔女が現れた。

 

 

お菓子の魔女

 

〜charlotte〜

 

裂けた穴から、可愛いらしいぬいぐるみのような魔女が降りてくる。

容姿は魔女というには小柄で、いたって無害そうに映る。

 

「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて…もらうわよ!」

 

一瞬の隙も許さない。

着地した瞬間を狙い、台座ごと蹴り飛ばす。足場を失い落ちてきたところをマスケット銃で殴りつけ、流れるようにリボンで空中に運ぶ。

 

美しい。

 

二人は隣に佇む男も忘れ、動作の一つ一つに見惚れていた。

 

間髪置かず銃口を構え、追撃の弾を撃つ。全弾命中し、ダメージを負ってふらふらと地面に落ちた魔女の頭に、無慈悲にも銃口を突きつけ、引き金を引く。銃弾は頭部を貫通したが、驚くことにまだ生きている。

 

「だったら、最後は大技でとどめをさしてあげるわ」

 

小さな体を魔法のリボンで拘束し、ある高さまで押し上げる。少女から見て約斜め45°。距離も十分。フィナーレを決めるには絶好の位置だ。

持っていたマスケット銃を、火力に特化した巨大サイズに変化させる。

 

少女は勝利を確信して微笑む。少し離れた場所からも黄色い声援が上がる。

 

よく狙いをつけ、一撃必殺の大砲を放った。

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

砲弾は真っ直ぐに飛び、無抵抗な魔女の胴体へ突き刺さった。

 

 

 

我に帰ったベジータはわなわなと震えていた。

 

「…い…一般人を…こ、ここ、殺すなと…常日頃から…ブ、ブルマに言われてきたが…」

 

「ブ、ブルマ?」

 

脈絡もなく女性用の衣服の名前が出てきたことを不審に思い、そのワードを復唱する。しかし目の前の戦いが今まさに最高潮を迎えようとする所で、少女達の意識からはすぐに外れる。

 

「こ、このような屈辱を…このような屈辱を受けて…」

 

身体を縛るリボンがミシミシと音を鳴らし、ちぎれ始める。

 

 

 

魔法少女、巴マミは自分に酔っていた。今この瞬間、自分は世界中の誰よりも輝いている自信があった。

 

そういった慢心が油断を生んだ。

 

マミの必殺技が魔女を貫いた瞬間、砲弾に押し出されるように、恵方巻きのような黒い巨体が小さな魔女の口から飛び出した。

 

お菓子の魔女。

可愛い外見は仮初の姿。本体は身体の中に隠れたおぞましい大蛇。

 

マミは眼前にその巨大な口が迫るまで、自分が辿るであろう最期に気づくことはできなかった。

 

だがそこで、あるイレギュラーが生じた。

 

「このような屈辱を受けて…黙っていられるかああああああ!!!」

 

次の瞬間、ベジータを中心に爆風が起きた。

 

今にもマミの頭部に食らいつかんとする黒い巨体は、その風に吹かれたことにより数mずれ、虚空を噛み砕いた。

 

カチリ、と運命の変わる音がどこかで鳴った。

 

「…ぇ?」

 

「小娘が…ここまで俺を虚仮にした馬鹿は初めてだぞ」

 

鬼の形相でマミを睨み付ける。

一方、食事を邪魔された魔女は大いに怒った。爆心地の方を見て、その中心に一匹の人間がいることを確認する。

 

「uǝʇoʇ ʇzʇǝſ! uǝʇoʇ! uǝʇoʇ!」

 

訳の分からない奇声を発しながら、大口を開けてベジータに襲い掛かろうとする。

その瞬間、ベジータの中でターゲットが切り替わった。

 

「今の俺に喧嘩を売るとは余程死にたいらしいな木偶の坊が…! いいだろうお望み通りぶっ殺してやる!」

 

肉薄する牙を前に、ベジータは気を解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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二話

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ


地面が、空間全体が揺れる。

 

「はあああああああああ……!!」

 

溢れ出るオーラに気圧され、今にも食らいつく寸前だった魔女の動きがピタリと止まる。

 

「今更怖気付いても遅い…! 恨むなら数秒前の自分自身を恨むんだな!」

 

魔女の視界からベジータが消える。瞬間、脇腹に強烈な衝撃を食らい、くの字に折れ曲がって吹っ飛ぶ。

 

勢いは全く弱まることなく、そのまま壁に強く打ち付けらる。結界中に轟音が鳴り響き、巨大な芋虫がごろんと地面に倒れる。

 

魔女はなんとか身体を持ち上げ体勢を整えようとするが、どういうわけか動くことかできない。もがきながら自分の身体を見下ろし、恐ろしい事実に気づく。

 

攻撃を食らった場所から下が、無くなっている。

 

たった一発。たった一発の蹴りで魔女の半身は消し飛んだ。

 

「ほう、まだ生きてるのか」

 

ゾクりと神経が逆立つ。

見上げると、まるで最初からそこにいましたと言わんばかりに、ベジータが空中で佇んでいた。

 

「じゃあもう一発食らってみるか!」

 

右足を後ろにゆっくり下げる。口角を上げ、にやりと笑うのが見えた。

この時、今まで憎しみしか知らなかった魔女の中で、明確に恐怖という感情が生まれた。

 

そんなことはお構いなしに、溜めた右足で顔を蹴り上げる。二回目の攻撃は、顔面の半分を抉り取った。

 

「え…あ…なんなのこれ…」

 

マミは目の前で起こっている状況が理解できなかった。

魔女に食べられそうになったかと思えば、突然横から突風が吹いてきて、恐る恐る見上げると、魔女の身体が吹き飛んでいた。

更にその付近には、先ほど拘束したはずの露出狂が空中浮遊しているというおまけつき。

 

「…はっ!」

 

ベジータの気を至近距離で浴び、気絶していた二人のうち、青髪の方が目を覚ます。

 

「マミさん! 大丈夫ですか!」

 

「わ…わたしは大丈夫よ…」

 

声が上擦っている。死の危機に陥った恐怖がまだ抜けないのか、腰が抜けて立つことができない。

 

「そ、そうだ、魔女はどこに!」

 

「あそこ…」

 

カタカタと震える手で青髪の少女の後ろを指差す。振り返ると、そこには身体の1/4もなくなった魔女が萎びれていた。

 

「フフフ…ハハハハハハハ!」

 

悪魔のような高笑いが響き渡る。魔女は次の攻撃で自分が死ぬことを理解していた。動く力はもうほとんど残っていない。だが相手が油断している今なら、もしかすると。もはやこれしか生き残る道はない。

 

「ⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯⱯ!!!」

 

決死の覚悟でベジータに飛び掛かる。5m、4m、3m、2m、1m、反撃してこない、これなら──

 

「──そろそろ殺すか」

 

──目が合った。

 

魔女は、世界がスローモーションになったかのような感覚に襲われた。

 

「どうせなら派手に逝かせてやろう」

 

邪悪な笑みを浮かべ、自分に向かって来る巨大な口を避けようともせず、片手を突き出す。

 

「消えてなくなれ!ビッグバン・アタック!!」

 

そう叫ぶと、掌から青白い光の球が飛び出し、大口を開けていた黒い巨体の口へ入り込む。

 

「??!!?!?!??!」

 

限界まで凝縮されたエネルギー弾は、魔女の口内で大爆発を引き起こした。

 

「へっ、汚ねぇ花火だ」

 

こうしてお菓子の魔女は、ある一人のサイヤ人によってこの世から抹消された。

 

 

 

 

 

「景色が…戻っていく…」

 

お菓子だらけの世界が歪み、元の病院の景色に変わる。

魔女の結界は消え、マミ達は現世に戻ってきた。

 

「マミさん…わ、私たち、帰ってこれたの?」

 

「ええ…」

 

「い、生きて?」

 

「ええ…!」

 

「…っはぁ…疲れたぁ…」

 

緊張が解けたのか、道端にも関わらずぐったりと倒れ込んだ。

 

「そういえば、鹿目さんはどこに?」

 

「ああ…まどかならそこに転がってますよ」

 

「きゅー…」

 

桃色の髪の少女は、まだ目を回して気絶していた。

 

「だ、大丈夫かしら…」

 

「うーん…そのうち目覚ますんじゃないでしょうか」

 

たはは、と笑う。三人全員無事で帰ってこられた安心感で、ほのぼのとした空気が流れる。

 

「クソッタレ…あの気色悪い空間から抜けたと思ったら、一体ここはどこだ。 地球じゃないのか?」

 

「「!!!」」

 

もう一人いた男の存在を思い出し、さっきの緩い空気はどこへやら、一気に緊張感が高まる。

 

「おい、そこの餓鬼。 金髪の方だ」

 

「は、はひっ!」

 

いきなり話しかけられたことで声が裏返る。

 

「家に上がらせろ。 服が欲しい」

 

「…えっと…お家は…」

 

「見つからん。 いいからとっとと案内しろ」

 

有無を言わさぬ圧力をマミが襲う。

 

「…はい…」

 

「…まどかは私が担いできますので…」

 

びくびくしながらベジータと共に帰路についた。

 

 

 

 

 

「さっきは大変失礼しました! どうか命だけは!」

 

「私からもお願いします!」

 

家に入るなり、二人は玄関口で土下座した。特にマミは地面に擦り付けんばかりに深く頭を下げた。

 

 

 

「とりあえず、入ってもらえるかしら」

 

お菓子の魔女の結界から出たベジータ達はマミの家に招待された

 

「俺に指図するな。…まぁ入るが」

 

「いや入るのかよ」

 

さやかが突っ込んだがベジータはスルーした

 

 

「で?俺に何の用なんだ?」

 

「…まずは、さっきは助けてくれてありがとう。」

 

ベジータはふん、と鼻を鳴らして

 

「あんなモノついでだ。俺はあの馬鹿デカイ化け物に興味があっただけだ」

 

「それでもよ。私はあなたに凄く感謝しているわ。あのままだったら私…ぅ」

 

マミはさっきの光景を思い出して震え始めた

 

「マ、マミさん!もう魔女はいませんから!安心して下さいよ!」

 

「そ、そうですよ!大丈夫です!」

 

「…ええ、ありがとう、もう少し落ち着いたわ。駄目ね、こんな先輩じゃ」

 

「そんなことないですよ!マミさん」

 

「で、他の用は何なんだ」

 

まどかは続けて何か言おうとしたがベジータが遮った

 

「そうね、こっちが本題」

 

マミがふう、と一息ついて、

 

 

 

「貴方は一体何者なの?」

 

 

 

マミは真っ直ぐベジータの眼を見て言った。

 

「俺はサイヤ人の王子、ベジータだ」

 

 

 

沈黙。

 

マミとまどかとさやかがポカンとした表情でベジータを見る

 

「用件は済んだか?じゃあな」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

「何だ、まだ用があるなら早く言え」

 

「そのサイヤ人?てのは何なの?そういう人種?」

 

「ああ、戦闘民族サイヤ人だ。だからてめぇらよりかは遥かに強い」

 

「いやいやいや…」

 

「あの…手から光を出したのって…どうやったんですか?」

 

まどかが尋ねる。

 

「体中の気を手のひらに集めて圧縮し撃った、それだけだ」

 

「「「???」」」

 

「そのキってやつはさ、一体何なの?」

 

さやかも尋ねる。

 

「さっきから質問してばかりだな貴様ら。説明するのもめんどくせぇ、てめぇで勝手に想像しやがれ」

 

「いいから説明してよ!」

 

「黙れ、俺に指図するな」

 

「ちょ、ちょっと喧嘩しないで!さやかちゃん!あの、教えてくれませんか?」

 

「…ちっ、まあいい、教えてやろう。」

 

ベジータは話す。

 

「気というのは全ての生き物が持っている体内エネルギーのことだ。それを俺は操ることができる。さっきは気の塊をぶっ放してあいつを倒した」

 

「…にわかには信じがたいわね」

 

「俺からしたらてめぇらの方が不思議だ。何もねぇところから銃を出したり瞬間移動しやがったり」

 

「…そういえば、私も魔法の原理はよく知らないのよね。キュゥべえ?」

 

「話せば長くなるし、きっと君たちには理解できないだろうから話す必要性は無いと思うな」

 

「ま、てめぇらには理解できないこともあるって事だ。信じるかどうかはてめぇの勝手にしやがれ」

 

「…まあ、信じるしかないでしょうね。実際に見たわけだし」

 

「わ、わたしも信じます」

 

「な、ならあたしも!」

 

「お、おうそうか」

 

2人が食い気味に言うので、少し戸惑った

 

「じゃあ、あなたの事も教えてもらったし、魔法少女のこt「興味が無い」そ、そう」

 

 

 

「…ふぅ、それより」

 

「あのテンコウセイだったか?あいつ、ずっとこっちを見てやがるぞ」

 

そう言って遠くのビルの屋上をを向く

 

釣られて3人もその方角を向く

 

「出てこいよ。何か話があるんだろう?」

 

トン。

 

ベジータがそう言った途端、どこからともなく、黒い魔法少女、暁美ほむらが現れた。

 

 

 



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あなたは何者なの?

3話でございます


「とりあえず、入ってもらえるかしら」

 

お菓子の魔女の結界から出たベジータ達はマミの家に招待された

 

「俺に指図するな。…まぁ入るが」

 

「いや入るのかよ」

 

さやかが突っ込んだがベジータはスルーした

 

 

「で?俺に何の用なんだ?」

 

「…まずは、さっきは助けてくれてありがとう。」

 

ベジータはふん、と鼻を鳴らして

 

「あんなモノついでだ。俺はあの馬鹿デカイ化け物に興味があっただけだ」

 

「それでもよ。私はあなたに凄く感謝しているわ。あのままだったら私…ぅ」

 

マミはさっきの光景を思い出して震え始めた

 

「マ、マミさん!もう魔女はいませんから!安心して下さいよ!」

 

「そ、そうですよ!大丈夫です!」

 

「…ええ、ありがとう、もう少し落ち着いたわ。駄目ね、こんな先輩じゃ」

 

「そんなことないですよ!マミさん」

 

「で、他の用は何なんだ」

 

まどかは続けて何か言おうとしたがベジータが遮った

 

「そうね、こっちが本題」

 

マミがふう、と一息ついて、

 

 

 

「貴方は一体何者なの?」

 

 

 

マミは真っ直ぐベジータの眼を見て言った。

 

「俺はサイヤ人の王子、ベジータだ」

 

 

 

沈黙。

 

マミとまどかとさやかがポカンとした表情でベジータを見る

 

「用件は済んだか?じゃあな」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

「何だ、まだ用があるなら早く言え」

 

「そのサイヤ人?てのは何なの?そういう人種?」

 

「ああ、戦闘民族サイヤ人だ。だからてめぇらよりかは遥かに強い」

 

「いやいやいや…」

 

「あの…手から光を出したのって…どうやったんですか?」

 

まどかが尋ねる。

 

「体中の気を手のひらに集めて圧縮し撃った、それだけだ」

 

「「「???」」」

 

「そのキってやつはさ、一体何なの?」

 

さやかも尋ねる。

 

「さっきから質問してばかりだな貴様ら。説明するのもめんどくせぇ、てめぇで勝手に想像しやがれ」

 

「いいから説明してよ!」

 

「黙れ、俺に指図するな」

 

「ちょ、ちょっと喧嘩しないで!さやかちゃん!あの、教えてくれませんか?」

 

「…ちっ、まあいい、教えてやろう。」

 

ベジータは話す。

 

「気というのは全ての生き物が持っている体内エネルギーのことだ。それを俺は操ることができる。さっきは気の塊をぶっ放してあいつを倒した」

 

「…にわかには信じがたいわね」

 

「俺からしたらてめぇらの方が不思議だ。何もねぇところから銃を出したり瞬間移動しやがったり」

 

「…そういえば、私も魔法の原理はよく知らないのよね。キュゥべえ?」

 

「話せば長くなるし、きっと君たちには理解できないだろうから話す必要性は無いと思うな」

 

「ま、てめぇらには理解できないこともあるって事だ。信じるかどうかはてめぇの勝手にしやがれ」

 

「…まあ、信じるしかないでしょうね。実際に見たわけだし」

 

「わ、わたしも信じます」

 

「な、ならあたしも!」

 

「お、おうそうか」

 

2人が食い気味に言うので、少し戸惑った

 

「じゃあ、あなたの事も教えてもらったし、魔法少女のこt「興味が無い」そ、そう」

 

 

 

「…ふぅ、それより」

 

「あのテンコウセイだったか?あいつ、ずっとこっちを見てやがるぞ」

 

そう言って遠くのビルの屋上をを向く

 

釣られて3人もその方角を向く

 

「出てこいよ。何か話があるんだろう?」

 

トン。

 

ベジータがそう言った途端、どこからともなく、黒い魔法少女、暁美ほむらが現れた。

 

 

 

 




バトルシーンを書きたいです(書けるとは言っていない)


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黒いイレギュラー

4話です


「!!!暁美さん、貴方!」

 

「何で転校生がここに!」

 

マミは警戒的な、さやかは敵対的な、まどかは不安げな視線をほむらへ向けた

 

「あんた、私たちの周りをちょろちょろして…一体何が目的なのよ!」

 

「…鹿目まどか、あなたは魔法少女になってはいけない」

 

ビクッ身を震わせるまどかの前にマミが立つ

 

「いい加減にしてもらえるかしら。魔法少女になるかどうかは鹿目さん自身が決めることよ。貴方が口出しすることじゃない」

 

「彼女は、魔法少女になってはいけない」

 

「それは貴方の都合でしょう?」

 

「……」

 

黙りこくるほむら

 

「あの、ほむらちゃん、何で私は魔法少女になっちゃいけないの?」

 

「…それをしてしまえば、あなたは全てを失う」

 

「どうして」

 

「とにかく、契約はしないで。私からはそれだけ。…じゃあ」

 

玄関に向かって歩き出すほむら、途中で振り向き、

 

「それと、ベジータだったかしら。貴方に聞きたいことがある。着いてきてもらえるかしら」

 

「…いいだろう。それじゃ、邪魔したな」

 

「あ、ちょっと…」

 

そう言ってほむらとベジータは扉から出て行った

 

 

 

 

「…おい、どこまで行くんだ」

 

路地裏を歩くほむらとベジータ

 

「そうね、この辺でいいわ、ここなら人目も付かなそうだし」

 

ほむらは振り返る

 

「それじゃあ」

 

 

 

ガチャ。

 

ベジータの額に拳銃が突きつけられる

 

 

「質問に答えてもらおうかしら」

 

 

ベジータの表情は変わらない

 

 

「まず一つ目、貴方は何者?私の見間違いでなければ、あの魔女は貴方が倒したようだけど」

 

「なんだ、てっきりさっきの会話を聞いていたのかと思ったが」

 

「ええ、聞いていたわ。でも私はサイヤ人などといった戯言を聞きたいわけじゃないの。貴方の本当の正体を聞きたい」

 

「悪いな、さっきのが真実だ、嘘なんぞ何一つついちゃいねぇ」

 

 

拳銃に込められる力が強くなる

 

 

「もしかして、これをオモチャか何かと勘違いしているのかしら。残念だけどこれは本物。私が引き金を引けば貴方は死ぬ。いつでも貴方を殺せる」

 

 

 

 

 

 

 

ズン

 

ベジータの様子が一変する

 

 

「…いつでも殺せる、そう言ったのか?」

 

 

ほむらは思わず後ずさった

 

 

「舐めるなよ小娘」

 

 

(こいつは、危険)

 

 

「二度とその減らず口がきけなくしてやろう」

 

 

(何者だろうが関係ない、今ここで殺さなくては)

 

 

丁度その時、使い魔の結界が開き、二人はその中に巻き込まれて行く

 

 

「さあ、死ぬ準備はできたか?

 

この俺に舐めた口を聞いたことを後悔するがいい」

 

 

黒い魔法少女、暁美ほむら

 

サイヤ人の王子、ベジータ

 

二人のイレギュラーが今ここで、対決する。

 

 

 

 

 

 

 




語彙力ってどうやって鍛えるんですかね

次回 破壊王子ベジータ☆マギカ ほむら対ベジータ! デュエルスタンバイ!


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戦闘民族サイヤ人

5話ですぜ


 

 

  カシャン

 

時を止めてベジータの周りに爆弾を数個設置する

 

念の為ベジータの背後に回り、ショットガンを構える

 

  カシャン

 

 

「!?どこだ…」

 

ピッ ドーン

 

その瞬間、爆弾が一斉に爆発し、ベジータはそれに飲まれる

 

(やった…?)

 

 

しかし、爆発の炎は中から掻き消される

 

「中々面白いことをしてくれるじゃないか、これが貴様の魔法とやらか」

 

(無傷!?弱い魔女なら消し飛ぶ程の威力のはず…)

 

気を取り直して、ほむらはベジータ目掛けて構えていたショットガンを放つ

 

 ダァン!

 

が、放った弾はベジータの親指と人差し指の間に挟まれていた

 

(ッ!?これも駄目!?なら次はっ!)

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダ 

 

軽機関銃を取り出しベジータ目掛けて乱射する、しかし、

 

「はっ!」

 

ベジータが身体中から気を放ち、弾は全てベジータに当たる前に吹き飛んだ

 

(くっ、ことごとく防がれる!本当に奴は何者!?)

 

 

 

「今度はこっちから行くぞ」

 

 

 

それは恐怖の宣告だった

 

ベジータはほむらへと急スピードで接近する

 

  カシャン

 

辛うじて時を止めたが、ベジータの手刀がほむらの首付近まで来ていた

 

(何て速さ…もう少し時を止めるのが遅ければやられていた…!)

 

(これ以上続けると危ない、今ここで勝負を決める…!)

 

(今度はさっきよりも強く魔力を込める、そうすればダメージは通るはず)

 

爆弾を数十個、ショットガンの弾を数十発撃ち込み、

 

(念の為、これも)

 

タンクローリーも飛ばす

 

(少々やり過ぎな気もするけど、悪く思わない事ね)

 

(さあ、これで終わりよ)

 

時は動き出す

 

  カシャン

 

 

「__」

 

 

瞬間、凄まじい爆発音が鳴り響いた

 

 

ビルなら数十棟吹き飛ぶ程の爆発

 

 

辺りは火の海になった

 

 

これを食らって生きていられるわけがない

 

 

そうほむらは確信した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_だが、その確信は外れた

 

「随分と派手にやってくれたな…小娘」

 

「っ、なっ」

 

「だがその程度の攻撃では俺にかすり傷一つ負わせれんぞ」

 

ベジータは生きていた

 

いや、それどころか全くの無傷であった

 

「さぁ、せいぜい足掻けよ?」

 

呆然と立ち尽くすほむらにベジータは突進した

 

「っ!」

 

  カシャン

 

 

(化け物、こいつには勝てない)

 

 

  カシャン

 

 

「後ろに移動したか…だが無駄なことだ、貴様が瞬間移動するよりも速く貴様の顔にパンチをお見舞いしてやろう」

 

「…降参よ」

 

「…なんだと?」

 

ベジータは顔を歪める

 

「…降参すると言ったのよ、どうやっても貴方には勝てそうにない」

 

いつの間にか、使い魔の結界は消えていた

 

「…ふん、やっと理解したか、弱虫野郎」

 

「っ」

 

弱虫、というワードを聞いてほむらは悔しそうに表情を歪める

 

「それで?お前の目的は何なんだ?なぜ俺の正体を知りたがる?」

 

「…彼女を、守るためよ」

 

「……」

 

「…鹿目まどか、さっき貴方が話していたピンク色の髪の女の子よ」

 

「…つまり、俺があいつに危害を加えることを危惧して俺を監視してたというわけか」

 

「そういうことよ。あなたは得体が知れないから」

 

「だが守ると言っているわりにあいつはお前に怯えているぞ?」

 

「…そうでしょうね、私はキュゥべえを攻撃したから」

 

「あいつは魔法少女の味方かと思っていたが」

 

「表向きはそうよ。私達は願いを何でも一つあいつに叶えてもらい魔法少女になる。だけど、その代償として私達は残酷な運命を背負わされる」

 

「言ってしまえばあいつは詐欺師。今までに多くの少女があいつと契約し、絶望に飲まれて魔女になった」

 

「…魔女に?」

 

 

「やあ、ベジータ」

 

ふと、上から声がした

 

「てめぇは…」

 

「君に話があるんだ、ベジータ」

 

二人が見上げると、そこにはキュゥべえが佇んでいた

 

 

 




まともに戦闘シーン書いたの初めてだ…上手く書けてるかな?
つかベジータが察し良すぎるかな?
まあ、この小説のベジータは出来るベジータ様って事で

追記.さっきの第12話は誤爆です、忘れて下さい


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キュゥべえの取引

6話です


「話?」

 

 

ベジータが尋ねる

 

「そうさ、だけどその前に確かめたいことがある」

 

「遠くの区域を担当している僕達にコンタクトをとって君の身元を調べさせてもらった。君は惑星ベジータ出身、元フリーザ軍サイヤ人のベジータ王子で合っているかい?」

 

「ああ、そうだが」

 

「それは良かったよ。全く、どうしてこんな辺境の星にいるんだか」

 

「っ!?じゃあ貴方は宇宙人なの!?」

 

「?そんなにおかしいか、宇宙に住んでいるのは」

 

「さて、本題に入るよ」

 

 

 

「君には、この星から出ていってもらいたいんだ」

 

 

 

「ふむ」

 

「僕達にとって鹿目まどかと契約することは最重要事項なんだ。だが、強大な力を持つサイヤ人の君という不確定要素がいると、鹿目まどかの勧誘に支障が出る可能性が高い。君はすごく邪魔な存在なんだよ」

 

「宇宙船は僕達が用意しよう。それで君は元居た星に帰るといい。だから、彼女達には関わらないでくれ」

 

 

 

ベジータはしばし思案する

 

「確かに、俺は地球に帰りたいと思っている。特に積極的にこいつらと関わるつもりも無かった」

 

「そうかい、それなら「だが断る」…どうしてだい?」

 

「理由は二つ。てめぇが信用出来ねぇこと、てめぇが気に食わねぇことだ。」

 

「…暁美ほむらに何を聞いたのか知らないけど、君は彼女の言っている事が本当だと思うのかい?」

 

「まあな。それに、俺はてめぇみたいにコソコソ動く奴が大嫌いなんだ。虫唾が走る」

 

「やれやれ、とても理性的な判断だとは言えないな。まあいいさ、気が変わったら教えておくれよ。いつでも君を地球へ帰してあげよう」

 

そう言ってキュゥべえは帰っていった

 

「小娘、さっき魔女になったとか言ってたが、あれはどういう事なんだ?」

 

「…キュゥべえは二つのことを隠しているわ。」

 

 

一つ、ソウルジェムについて。

ソウルジェムは魔法少女の契約によって生み出される宝石。

魔力の源であり、変身のために必要な道具。というのがキュゥべえの説明。

しかし、実際には契約者本人の魂を身体から抜き取って結晶化したものであり、魂を抜かれた身体はソウルジェム(本体)操り人形(ゾンビ)となる。

 

二つ、魔女について。

魔女とは、人々の負の感情が具現化した、呪いから産まれる存在、というのがキュゥべえの説明。

しかし、その正体は、魔力を使い果たすか、絶望に支配されることによって濁り切ったソウルジェムが変化したもの。つまり、魔女の正体は魔法少女であり、魔法少女の末路が魔女である。

 

 

「…こんなところよ」

 

「なかなかの悪党じゃないか、そんな事を黙っていやがるなんて」

 

「…一つ聞かせて、貴方の目的は何?」

 

「…地球に帰る、こと、だ。別に急いではいないがな。」

 

「…ねぇ、貴方にお願いしたい事があるの」

 

ほむらは一拍置いてこう言った。

 

 

「私に力を貸してくれないかしら」

 

 

 




なんか違和感がすごい…まあいいや

ちなみにベジータは宇宙人というのはそのまんま宇宙に住んでいる人間だと思っています


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ベジータという人間

7話だよ


 

「力を貸してくれ、だと?」

 

 

 

「ええ、近い内にワルプルギスの夜という、強大な魔女が現れる。私はこれまで何度も戦ってきたけど、勝てた事は一度も無かった」

 

「だけど、もしかしてあなたなら倒せるかもしれない」

 

「私はどうしてもその魔女を倒したい、だから」

 

「どうか、助けて」

 

そう言ってほむらは頭を下げた

 

 

 

沈黙が流れる。

 

「…おかしな奴だ、さっきまで殺し合いをしていた相手に助けを乞うなんて」

 

「…分かっているわ」

 

「だがまぁ…あのキュゥべえとかいう奴に一泡吹かせてやるのも悪くない」

 

「!!」

 

ほむらははっと顔を上げる

 

「そのワルプ…とかいう奴にも少し興味があるしな…いいだろう、力を貸してやる」

 

「ありがとう…本当にありがとう」

 

「勘違いするな、あくまで俺がそうしたいというだけだ」

 

ほむらはもう一度決心する

 

(今度こそ…今度こそ、奴を倒す!)

 

 

 

 

「それじゃあ、電話番号交換しましょう」

 

「?悪いな、そんな形状の通信機は持っていない」

 

ほむらははぁ、と息を吐く

 

「そういえばあなたは宇宙人だったわね…いいわ」

 

 

 

「あなた、私の家に住みなさい」

 

「ああ、分かった」

 

「…そういうのはもうちょっと遠慮するものじゃないの?」

 

「知るか、さっさと家へ案内しやがれ」

 

「…この人は…」

 

そこからは特に会話も無く、ほむらの家へたどり着いた

 

 

 

「ここが私の部屋」

 

「随分殺風景だな、この部屋」

 

「必要ないもの…夜ご飯は何にする?と言ってもカップ麺とカロリーメイトしかないけれど」

 

「カップ麺なら食った事がある、それを出せ」

 

「偉そうに…」

 

(まあ、住めと言ったのは私だけど)

 

ほむらははぁ、と今日二度目のため息を吐いた

 

 

 

「出来たわよ」

 

二つあるうち一つの熱いカップ麺がベジータに差し出された

 

「よし…いただきます」

 

そう言って箸を持ちながら目の前に両手を合わせる

 

「あら、随分礼儀正しいのね…意外だわ」

 

「…家に口うるさい奴がいたもんでな」

 

ベジータは遠くに住んでいるであろうブルマの事を思った

 

(…くだらん、あんな奴などどうでもいい)

 

 

ベジータは気づかない

 

自分がマミやほむらを助けようと思った本当の理由に

 

こうやって誰かと一緒にいること安心感を覚えていることに

 

数年間の地球での暮らしで自分が変わりつつあることに

 

 

「麺、伸びるわよ」

 

声をかけられ、ベジータは手が止まっていることに気づいた

 

「それはいかんな」

 

そう言ってベジータは麺を啜り始める

 

「やはり美味いな、カップ麺というのは」

 

「そんなに好きなの…別に高価なものというわけでもないのに」

 

(こうやって麺を啜る姿はただのおっさんね…さっきとは似ても似つかない)

 

 

この後カップ麺のおかわりを大量に要求し、さらに食べ終わったベジータは片付けを全くせず寝てしまい、ほむらに今日三度目のため息を吐かせるのだった

 

 




うーん、ちょっと無理矢理感あるな…
まあ見逃してください

因みに帰り道にほむらは自分の過去について話しました
いや…省略しないと話ばっかになっちゃうからな、仕方ないね
特に感動的な場面というわけでもなく普通に話してそうか、という感じでした


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作戦会議

8話だい


 

 

 

 

「さて、今後の行動について検討していくわ」

 

不自然な程広くて白い部屋の中央に、ほむらとベジータが座った

 

「今後の行動?」

 

「ええ、ワルプルギスの夜の撃破、鹿目まどかの契約の阻止。この二つを達成するために作戦を立てるの」

 

「まず、鹿目まどかの契約阻止。これは私にとって一番重要なことだけど、彼女には好印象を持たれていないから、私の忠告は恐らくあまり意味が無い」

 

「そこで、あなたには鹿目まどか達に接触してほしい」

 

「具体的にはどうするんだ」

 

「そうね…彼女は巴マミと一緒にいる事が多いわ。だから、巴マミの魔女退治に協力してほしい。彼女は信頼できる仲間を求めているから」

 

「俺は信頼されていると?」

 

「恐らくね。あなたは彼女の命を救ったじゃない」

 

「…別に俺は鹿目まどかの契約阻止に協力すると言った覚えはないんだがな…まあいいだろう。もののついでだ」

 

「感謝するわ。では、早速行ってきて」

 

「…は?どこに?」

 

「巴マミの家よ」

 

 

 

夕方、午後五時。

 

ピーンポーン

 

「はい、どちら様ですか?」

 

「ベジータだ、中へ入れやがれ」

 

「あら、ベジータさん?どうぞ、鍵は開いてるわ」

 

ベジータはマミの家の扉を開けた

 

 

「邪魔するぞ」

 

「あ、ベジータさん!?あの後大丈夫だったんですか!?」

 

さやかがベジータを見るなり大きな声で言った

 

「?どの後か知らんが俺は無事だぞ」

 

「良かったー、ま、ベジータさんの強さなら、転校生なんかに負けないと思うけどね!」

 

(ああ、そういう事か。まあ、ややこしくなるだけだし黙っておこう)

 

 

「で、今日はどうしたの?」

 

「てめぇに協力してやる」

 

「?」

 

唐突に変な事を言われて困惑するマミ

 

「だから、てめぇの魔女退治とやらに協力してやると言ったんだ」

 

その言葉を聞いてマミは驚いた表情になる

 

「ええと…気持ちは嬉しいけど、本当にいいの?あなたは魔法少女とは関係ない人間なのよ?」

 

「そんな事はどうでもいい。いいのか悪いのかはっきりしやがれ」

 

 

「な、ならお願いするわ!一緒に戦いましょ!」

 

マミはとてもいい笑顔になった

 

「…ふん、感謝しろ」

 

ベジータは照れ隠しのようなそっけない態度をとった

 

「で、でも本当に大丈夫なんですか?もしかしたら死んじゃうかもしれないんですよ?」

 

まどかが心配そうに尋ねるが、

 

「大丈夫だって!まどかも見たでしょ!ベジータさんが手からバーン!って光を出して魔女を倒すとこ!」

 

何故かさやかにフォローされた

 

 

「では、早速征伐しに出かける!後に続けベジータ!」

 

「…おい、どうしたんだ急に?」

 

「…なんでもないわ、忘れて」

 

久しぶりの仲間が出来て、マミはとても浮かれているようだ

 

 

 




ちなみにベジータが来る前に

まどか「ごめんなさい…私、やっぱり魔法少女になるのは怖いです」

マミ「そう…よね、あんなことがあったんだもの」

まどか「でも、マミさんの家にはまた遊びに来ていいですか?」

マミ「…!いいわ、大歓迎よ!」

みたいな会話がありました


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たった一撃

9話だゾ


 

 

「かなり強い魔力の波動だわ…間違いない、ここよ」

 

マミとベジータが壁の前に立つ、そしてその後ろには、

 

「この奥に魔女がいるんですね…」

 

「マミさん、ベジータさん、頑張ってください!」

 

まどかとさやかがいた

 

 

「…あの、無理してついて来なくていいのよ?考えたくはないけど、もし私が死んだらあなたたちを守ってあげられないし…」

 

もし、あの時自分が死んでいたら、二人はどうなっていただろう。もちろん魔法少女でもない二人があの魔女を倒すことは出来ない。自分の都合で二人を連れ回して、結果彼女を危険に晒した。二人は気にしないと言ってくれたけど、やっぱり…

 

「だったら、そうならないように、マミさんが生きて私達を守ってください!」

 

「鹿目さん…」

 

「それに、マミさんには仲間がいるじゃないですか!」

 

「美樹さん…ええ、そうね」

 

そうだ。私はもう一人じゃない。一緒に戦ってくれる仲間がいる。私のことを理解してくれる後輩がいる。

 

「ありがとう、私、もう何も怖くないわ!」

 

「…とっとと入るぞ」

 

ベジータがさっさとしろ、と言わんばかりにマミをじろっと見ていた

 

「ええ、行くわよ!ハッ!」

 

マミの声に合わせて、橙色の蝶の模様の入り口が現れた

 

「さあ、突撃よー!」

 

「…何でそんなにテンションが高いんだ」

 

 

シュン

 

「魔女の結界に入るのは二度目だが…結界ってのはどこもかしこもこんな気持ち悪い所ばかりなのか」

 

「ここは…前倒した魔女の結界と同じ場所ね」

 

結界の中は薄暗いビル街のような所で、所々に蔦が巻きついている

 

「さて、一気に進んでいきましょう」

 

四人は走る

 

「む、こいつらは」

 

白い綿毛に髭を生やした不気味な生き物がにじり寄ってきた

 

「魔女の使い魔、いわば手下よ。雑魚だからさっさと片付けてしまいましょう」

 

マミはマスケット銃を取り出し、

 

バン!バン!

 

一発一発正確に使い魔へ命中させていく

 

「ほう。大した命中精度だな」

 

「マミさん流石です!」

 

「ええ、ありが、とう!」

 

あっという間に使い魔は一掃されていった

 

四人はまた走り出す

 

「さあ、そろそろ最深部よ」

 

赤い扉が自動で開いていき、魔女が姿を現した

 

 

 

薔薇園の魔女

〜gertrud〜

 

 

深緑色の頭、巨大な芋虫のような胴体、蝶のような羽、無数に生えた触手のような黒い足

 

見ていて吐き気がするようなおどろおどろしい外観だった

 

 

 

「結界が気持ち悪けりゃてめぇ自身も気持ち悪いのか、想像はついていたが、これは予想以上のものだ」

 

「だったら、さっさと片付けちゃいましょう!」

 

そう言ってマミはマスケット銃を取り出す、が、

 

「ああ、そうだな」

 

 

ボシュッ

 

 

ズドーン!

 

 

ベジータは片手で気弾を放って魔女に直撃し、爆発した

 

たったそれだけで魔女は消え去ってしまった

 

 

「「「……」」」

 

 

周りの景色が元の廃ビルに戻っていく

 

 

「ふう、戻ったぜ」

 

「…あなた、強すぎない?」

 

「言っておくが俺は実力の1%だって出しちゃいないぞ。あんなゴミを片付けるくらい朝飯前だ」

 

「せっかく張り切って行ったのに…はぁ…」

 

「さっさと片付けろと言ったのはお前だろうが。よくわからん奴だ」

 

「…ま、魔女も倒したことだし、帰りましょうか。あなたはこれからどうするの?」

 

「俺は帰るとする。ほむらを家で待たせているんでな」

 

「…え?」

 

「じゃあな」

 

ベジータがそう言うと、人には視認出来ない速さでベジータは飛び立って行った

 

「どういう…こと?」

 

その場に呆然と立ち尽くしながら、今度ベジータに会ったら問い詰めなくては、そうマミは思うのだった。

 

 




マミは実力の1%というのは冗談だと思っています
まあ、そりゃあね?流石に誇張だと思うよね?


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カップ麺と成果報告

10話になりました
気になるんですけどUAって何なんですかね?


 

 

 

「巴マミと仲間になり一緒に魔女を倒したと…上出来ね」

 

白くて広い部屋の中央でほむらとベジータは一緒にカップ麺を啜っている

 

「ああ…しかしこれは本当に美味いな」

 

「体に悪いから本当は食べ過ぎは良くないのだけどね」

 

またカップ麺を啜る

 

「それで?この後はどうすればいいんだ?」

 

「そうね…しばらくはそのまま魔女退治をしていていいわ。それと、お茶に誘われたりしたら行っておきなさい。出来るだけ彼女達と交友関係を築いて」

 

「善処しよう…ちっ、もう無くなりやがった、もう一つ寄越せ」

 

「…今日はもうお終いにして頂戴。昨日みたいに十何個も食べられては一瞬でストックが無くなるわ」

 

「なんだと?まだ五つしか食っていないんだ。そんな量で腹が膨れるか」

 

「我慢して…全く、どうなっているのよその体は」

 

「…ちっ、我慢してやるよ、じゃあな、俺は歯を磨いて寝る」

 

「分かったわ…おやすみ」

 

「ああ」

 

 

 

一人になったほむらは考える

 

(さて、私はこれからどうするか)

 

とりあえずは美樹さやかの契約阻止。彼女は幼なじみのバイオリニスト、上條恭介の不自由になった腕を治すためにキュゥべえと契約するだろう。彼女も出来れば契約して欲しくない。それに、彼女が契約すればまどかは自分だけ契約していないのを負い目に感じて自分も契約する恐れがある。それは避けなければならない。明日は上條恭介が屋上から飛び降り自殺を試みる日だ。まずはそれを阻止しよう。その後は…ベジータに頼みましょうか。巴マミの仲間になったというならば恐らく彼は美樹さやかにも信頼されているだろう。彼に出来るかは分からないけど、美樹さやかが魔法少女にならないよう説得してもらおう。その間に私は佐倉杏子と接触する。それなりの見返りを用意すれば、彼女はきっとワルプルギスの夜討伐に参加してくれるはず。後は、ベジータに私と巴マミ達の仲を取り繕ってもらい、彼女にも協力を要請する。これで戦力は整う。私、巴マミ、佐倉杏子、そしてベジータ。これだけの戦力があればきっとあいつにも…いや、期待しすぎるのはよそう。そうでないと、失敗した時に心が折れてしまう。さて、問題は…

 

(ベジータにどれだけのコミュニケーション能力があるかよね)

 

正直言ってこの計画はベジータ頼りだ。彼が彼女達の信頼を失うような事があればすぐに破綻してしまう。また、彼に美樹さやかを説得出来るだけの力、そして私という存在を彼女達に認めさせるだけの力が無いといけない。

 

(これまでの時間軸で彼と出会った事は一度も無かった。恐らく、この時間軸を逃せば彼に会う事は二度と出来ない)

 

頼れるだけ頼ってみよう、そう思うほむらであった




私はカレーヌードルが一番好きです
スライスチーズを入れたり、残ったスープにご飯を入れたりするとめちゃくちゃ美味しいです
ぜひやってみて下さい、本当に旨いですから


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だってあなたは、私の命の恩人だもの

11話
いいわ


…くだらねー


 

 

 

(上條恭介の自殺は止められたわね)

 

時間を止めてその場から離れながら思う

 

(さて、彼は上手くやっているかしら)

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぞ」

 

昨日と同じようにインターホンを鳴らし、マミの家へと入るベジータ

 

そして昨日と同じようにマミの家にいるまどかとさやか

 

「いらっしゃい、ベジータさん。紅茶でもいかかがしら?」

 

「コウチャが何か知らんがとりあえず貰おう」

 

「ええ、じゃあ淹れるわね…」

 

 

 

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」

 

「ああ、じゃあ早速…熱ッ!?」

 

「…今言ったじゃない、もう」

 

ふーふー、と息をかけて、ベジータは紅茶を飲んだ

 

「ねえベジータさん、昨日言ってた…」

 

「美樹さん、それは今から私が聞くわ」

 

マミは一つ息をついて、尋ねた

 

 

「暁美さんと一緒に住んでいるってどう言う事なの?」

 

 

不安がるような目でベジータを見る

 

「ん、そういえばお前らはほむらのことを敵視していたな。安心しろ、ほむらはお前らが思うような奴じゃない」

 

「でっ、でもあいつはキュゥべえを殺そうとしたんだよ!?それにまどかも…!」

 

さやかが声を張り上げて言う

 

「ま、それ相応の理由があいつにはあったという事だ。不安ならキュゥべえに攻撃しないよう俺から言っておいてやろう。それと、あいつはまどかを殺す気など全くないぞ」

 

「…それは本当なの?」

 

「ああ、信じてくれていい」

 

「…分かったわ。信じましょう」

 

 

マミは安心したようにはー、と息を吐く

 

「随分簡単に信用するんだな」

 

「ええ、だってあなたのいう事だもの」

 

「…何故俺が言うと信用できるんだ?」

 

マミはふふ、と微笑んで

 

 

「だってあなたは、私の命の恩人で、仲間だもの」

 

 

そう言った

 

(…命の恩人というのはこんなにも信用されるものなんだな)

 

「…ベジータさんが言うなら、私も信じる」

 

「そうか…まどか、お前はどうだ?」

 

「私は正直、まだほむらちゃんがちょっと怖いけど…でも、信じるよ」

 

(ふむ、恐らくこれはいい傾向だな)

 

ベジータは事態がうまく行っているであろうことを嬉しく思った

 

「…それにしても、キュゥべえは一体どこに行ったのかしら」

 

「まさか、転校生に殺されたんじゃ…!」

 

「さ、さやかちゃん!疑うのは良くないよ!信じるんでしょ?」

 

「…そうだね、ちょっと早とちりしすぎたかも」

 

(そういえば見かけんな…どれ、少し探ってみるか)

 

ベジータは地球上の全ての気を探る、が

 

(…どこにもいない?なら、他の星にいるのか?)

 

そう考え、他の星の気も探ろうとするが、

 

(…ま、どうでもいいだろう)

 

必要ないと考え、探る事をやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、数年前に起こったナメック星の消滅にベジータ、君が関与していたとはね」

 

 

「他にも彼が消した星がたくさんあるようだ。彼は宇宙にとって危険な存在だね。強大な力を持っている事は分かっていたけど、流石にこれは度を越しているよ」

 

 

「目的は変更だ。鹿目まどかの契約は中止。ベジータ、君を殺す事に専念する」

 

 

宇宙にあるどこかの星で、キュゥべえ(インキュベーター)はそう呟いた。




小説書くのは初めてですけど、なんやかんやで書けるものですね、完成度がどうなるかは分かりませんが


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対談

12話だー


 

「暁美さんと話して欲しい?」

 

 

 

マミは驚いたように言った

 

「ああ、そうだ」

 

「…具体的に何を話すの?」

 

「それはあっちで考える、とにかく話をしやがれ」

 

「えー…確かに信用するとは言ったけど」

 

「信用しているのならいいだろう、案内してやるから今すぐついて来い」

 

「今からなの!?」

 

「さっさとしろ、まどか、さやか、お前らもだ」

 

「…そもそも何で急に話せとか言うのさ」

 

さやかが不満そうに言う

 

「あいつはお前らと友好的な関係を築きたいようだからな、早い方がいいだろう」

 

「…何でなのかしら」

 

「それは直接本人から聞け。いいからさっさと行くぞ」

 

「…本当に大丈夫なのよね?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「…分かったわ、話してみましょう」

 

 

 

「よし、じゃあ着いてこい!」

 

そう言ってベジータは窓から音速を遥かに超えるスピードでほむらの家へ向かった

 

 

 

 

「「「……」」」

 

数十秒後、ベジータが戻ってきた

 

「そういえばお前らのスピードに合わせなければいかんかったな。今度はゆっくり飛んでやるから着いてこい」

 

そう言って、ベジータは音速くらいのスピードでほむらの家へ向かった

 

 

 

 

 

「「「…」」」

 

数十秒後、ベジータが戻ってきた

 

「おい、今のスピードなら流石に着いて来れるだろう、何故来ない」

 

「…着いていけないしそもそも私たちは飛べないわよ」

 

「なんだと?俺の周りに居た奴は全員出来たぞ」

 

「それはそいつらがおかしいんだ」

 

さやかが呆れたように言った

 

「チッ…面倒だが歩いて行くぞ」

 

ベジータがやれやれ、と言った調子で言ったが三人は心の中で当たり前だ、と思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはりベジータに私と巴マミ達の仲を取り持ってもらうのは難しいかしら…キュゥべえに攻撃したことで私は完全に敵とみなされているし…かと言ってやはりワルプルギスの夜を倒す為の戦力は多い方がいい、私が接触するよりもベジータに説得してもらう方が恐らく成功する可能性は高い…よし、ベジータが帰ってきたら早速巴マミ達と話し合えるように頼…)

 

ピーンポーン

 

ほむらの家のチャイムが鳴った

 

「どちら様?」

 

「開けろ、客を連れてきた」

 

(客…?まさか…)「…ええ、いいわ、入って」

 

「…お邪魔するわ、暁美さん」

 

「…どうぞ、その辺の椅子に掛けて」

 

少し重い空気が流れる

 

「ちょ、ちょっとこの部屋どんだけ広いのさ!」

 

「うわぁ…写真が浮いてる…」

 

まどかとさやかは明らかに普通でない部屋に驚いているようだ

 

「…それで、暁美さん、私たちと友好的な関係を築きたいというのは本当?」

 

(た、頼まなくてもやってくれた…もしかして、ベジータって結構凄い?)

 

ほむらはベジータの行動力を少しだけ尊敬した

 

「…暁美さん?どうしたの?黙っちゃって」

 

「…あ、いえ、失礼したわ。ええ、私があなたと友好的な関係を築きたいというのは本当よ」

 

 

「…なら、その前に聞くことがあるわ。何故あなたはキュゥべえを襲ったの?」

 

(…どう説明しましょうか)

 

 

 

まどかを守る為、と言えば大して接点の無いまどかをどうして守ろうとしたのか、という話になってくるし、そうなると必然的にほむらの過去も話さなければならない。しかし過去をそのまま話せば魔法少女が魔女になるという事がマミにバレてしまう。もし、彼女がその真実を知ってしまえばきっと彼女の精神は正常を保てないだろう。かつての時間軸で真実を知ったマミが錯乱して仲間を撃ち殺す瞬間を目の当たりにしたほむらはそれが分かっていた。そして何より信じてもらえる可能性が低い。ならばこう言おう。

 

 

 

「…本当の命懸けの戦いというのを彼女たちは知らない。それを知らずに契約すればきっと後悔すると思った」

 

「だったら…」

 

最初からそれを彼女達に言えばよかったじゃない、マミがそう言おうとした時、

 

 

 

 

「?お前が俺にした話をこいつらにもすればいいじゃないか。なぜわざわざ嘘をつくんだ?」

 

空気を読まずベジータが乱入してきた

 

 

マミ達が不審そうな顔をする

 

三人のどう言うこと?という視線がほむらに突き刺さる

 

 

 

三人の視線を集中して受けたほむらは…

 

 

 

「…ごめんなさい、お手洗いに行ってくるわ」

 

席を立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何故だ…どうしてもまどかが空気になってしまう…

展開が無理矢理なのはいつもの事なので見逃してください(無責任)


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もう一度、全てを話そう

13話ェ


 

 

 

 

ほむらはトイレで考え込んでいた

 

(空気読みなさいよ…あいつ…!)

 

どうしても話せないから誤魔化したというのに、あの男は空気を読まずに嘘をついていると暴露してしまった

 

(今トイレに籠らなくちゃいけないのもあの男のせいよ…ちっ)

 

とはいえ、今考えなければいけないのはベジータの無神経さについてではなく現状の打開策である

 

(あまり長くは考えていられない…きっと不審がられる)

 

ほむらは思考する

 

 

(…そうだ)

 

立ち上がって、魔法少女に変身する

 

(時間停止!)

 

  カシャン

 

世界の時間が止まる

 

(…まずはベジータ、あいつをこちらの時間へ連れて来ましょう)

 

リビングに戻り、マミ達の後ろで腕組みをして突っ立っているベジータに触れる

 

「_む?なぜ魔法少女になっているんだ?」

 

止まった世界の中で、ベジータも動き出した

 

「時間を止めているのよ。今この世界で動けるのは私と貴方だけ。」

 

「じゃああの時お前は時間を止めてやがったのか、確かに瞬間移動にしては違和感があった気がする」

 

「まあ、それは置いておいて、頼みたいことがある」

 

「なんだ?」

 

「…これから私は彼女達に全てを話す。その時に巴マミが錯乱して暴れる可能性がある。もしそうなったら、彼女を止めて欲しい。もちろん、殺さずに」

 

「なぜそんなことが…お前は過去から来たんだったな」

 

「ええ…では、頼んだわよ」

 

「了解した」

 

(…大丈夫よね、彼の強さなら)

 

ほむらは少し不安を抱えながらトイレに戻り、時間を動かす

 

  カシャン

 

ほむらはリビングに戻る

 

「戻ったわ」

 

「遅かったわね…で、何故魔法少女になっているのかしら」

 

マミはいつでも変身できるように準備している

 

(…すごい警戒してるわね…まあ、当然よね)

 

嘘をついていると言われた瞬間にトイレへ行き、長いこと籠ってやっと出てきたと思ったら魔法少女に変身して戻ってきたのだ。戦闘態勢に入られても当然である

 

「おい、落ち着きやがれマミ」

 

「せめて理由を言ってくれないかしら、私にはあなたが今から私達を攻撃しようとしているようにしか見えないのだけど」

 

「…保険よ、今から私は魔法少女についてすごく重要なことを話す。それはとても残酷な事で、もしかしたらあなたはその真実に耐えられないかもしれない。そうなった時にあなたを止めるために魔法少女になっている」

 

「…話は聞いてあげるわ。その代わり、」

 

マミが指輪をソウルジェムに変化させ、変身する

 

「私も魔法少女の姿でいるわ」

 

ここでやめて、と言えば今度こそほむらへの評価は地に落ち、話し合いはもう出来ないだろう。むしろベジータのおかげでこうやって話が出来ている事自体が奇跡のようなものである

 

「…ええ、構わないわ」

 

ほむらはベジータへアイコンタクトを送る

 

ベジータは心配するな、というような目でほむらを見る

 

 

 

「…では…」

 

ほむらは話した。

 

自分が過去から来たことを。

 

自分が元々凄く弱い少女だったことを。

 

クラスに馴染めなかった自分をまどかが助けてくれたことを。

 

魔女に襲われた自分をマミとまどかが助けてくれたこと、まどかと親友になったこと、ワルプルギスの夜という強大な魔女が二人を殺した事、過去に戻って魔法少女が魔女になるということを知ったこと、みんながキュゥべえに騙されているということ、また過去に戻ってみんなにそれを伝えたが信じてもらえなかったこと、しかしさやかが魔女になるという最悪の形で信じてもらえたこと、マミが錯乱して仲間を撃ち殺したこと。

 

そして、「キュゥべえに騙される前の馬鹿な私を助けて」というまどかの願い。

 

交わした約束を果たすために何度も過去へ遡っていること。

 

全部、全部、全部を話した

 

 

 

 

 

 




思ったんですけど、サイバイマンと鬼舞辻無惨が戦ったらどっちが勝つんですかね
すごいどうでもいいんですけどなんか気になりました


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貴方には分からない

ウィィィィィッス!どうも、14話でーす。


 

 

辺りは静寂につつまれた

 

 

「…これが、私が隠していたことの全てよ」

 

誰も、嘘だとは思わなかった。さやかはすごく悲しそうな目でほむらを見つめ、まどかは泣き出してしまった。

 

 

 

 

そしてマミは_

 

 

 

 

 

「魔法少女が、魔女になる?」

 

様子がおかしかった

 

(!これは不味いかもしれない!)

 

 

「おい、マミ」

 

 

ベジータがマミに話しかけるがマミには聞こえていない

 

 

「今まで倒してきた魔女は、みんな魔法少女だったってこと?」

 

 

「落ち着きなさい、巴マミ」

 

 

「私も、いずれ魔女になるの?」

 

 

「マミさん!落ち着いてください!」

 

 

「ソウルジェムが魔女を産むなら…」

 

 

(!!)

 

_ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!_

 

ほむらの脳裏によぎる過去の記憶

 

 

「みんな死ぬしかないじゃない!」

 

 

そしてマミはマスケット銃をほむらに向けた

 

 

(っ不味っ…)

 

 

時間停止はもう間に合わない

 

 

そしてほむらの頭へ弾が放たれ…

 

 

 

 

「頭を冷やしやがれ、馬鹿野郎が」

 

ベジータの手のひらに収まった

 

「いいか、マミ…」

 

「邪魔しないでよ…魔女になるなら魔法少女は全員殺すしか…」

 

「いいから聞け!魔女になると言っても今じゃない、だから今そんな風に考える必要は…」

 

「貴方に、何がわかるというの?」

 

ベジータは押し黙る

 

「魔法少女でもない貴方に、何がわかると言うの?」

 

「……」

 

「…ほら、結局、誰も私の気持ちなんて分かってくれない。昔っからそうだったもの。所詮仲間なんてのはただのまやかしだったのよ、偽物だった」

 

 

 

誰も、何も言えなかった

 

「…っ!」

 

そんな皆の様子を見て、マミは今にも泣きそうな顔で駆け出していった

 

「あ!待って…」

 

まどかがそういうが、既にマミは家から出てしまった

 

 

 

ベジータは俯いたまま動かない

 

「っ何してんだよあんた!今すぐ追いかけないと!」

 

さやかが怒鳴るような大声で叫ぶ

 

「だが俺は…」

 

「マミさんの顔見なかったの!?あんなこと言ってたけど、助けて欲しそうな顔してたよ!?」

 

 

ベジータは何も答えない

 

 

「あのままじゃマミさん死んじゃうよ!!自殺する!!」

 

ベジータが少し動揺する

 

「今行かないと駄目なんだよ!!早く追いかけないと間に合わない!!」

 

 

 

 

ベジータはしばらく下を見続けた、が決心したように顔を上げた

 

「…ああ、分かったさ」

 

「!それじゃあ…」

 

「俺に掴まれ。マミの場所は気で分かる。飛んで行くから落ちるなよ」

 

「分かった!」

 

三人はベジータの腕へ掴まる

 

 

 

「待ってやがれ、馬鹿野郎、無理矢理にでも連れ戻してやるからな。覚悟しろ」

 

 

 

 

 




次回予告(大嘘)
マミを助けるためマミの元へ向かうベジータ達。
空を飛んだ疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、
車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは・・・


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巴マミ

15話です。


マミは公園のベンチに座り込む

 

 

辺りは既に陽が落ちていて夜の暗さになっている

 

 

「…何やってるのかしら、私」

 

 

街灯が辺りを薄く照らしている

 

 

「今まで倒してきた魔女が魔法少女だったなんて…じゃあ、私のしてきたことは一体なんだったの…?」

 

 

虫の鳴き声が聞こえる

 

 

「…こんなの…どうやって受け入れられるっていうのよ」

 

 

ふと、自分のソウルジェムがかなり濁っていることに気づいた

 

 

「確か…これが濁り切ると魔女になるんだったわね」

 

 

指輪をソウルジェムに変化させ、手に取って持ち上げる

 

 

「これが私の魂かぁ…ははっ、私もう死んでたんだ」

 

 

ソウルジェムを隣に置く

 

 

「そりゃあ…人と分かり合えるわけないわよね…」

 

 

ソウルジェムの濁りが進んで行く。

 

 

「あはははは…もうこのまま魔女になってもいいかなぁ…」

 

 

もう生きることを放棄したかのようにだらんとベンチに体を預ける

 

 

「…さようなら、みんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何がさようならだ、大馬鹿野郎が」

 

ベジータ達がマミの元に着いた

 

ほむらはグリーフシードを取り出し、マミのソウルジェムに当てる

 

「…やめて…もういいのよ…」

 

「うるさいわね、黙って浄化されなさい」

 

ソウルジェムの濁りがみるみる無くなり、元の黄色い輝きを取り戻していく

 

 

 

 

「…やめてって、言ってるじゃない!」

 

パンッ

 

浄化を続けるほむらの手を思いっきり払う

 

 

「……」

 

 

 

「私は、もう生きる意味なんて無いのよ…生きる、意味なんて…」

 

マミは俯き、目元に涙を浮かばせる

 

 

 

「…ねぇ、マミさん」

 

さやかが口を開く

 

「私、マミさんに凄く感謝してるんですよ。あの時、マミさんが来てくれなかったら私とまどかは魔女に殺されて死んでたんです。」

 

 

マミの脳裏に、今までの思い出が蘇る

 

 

「さっきマミさんは生きている価値なんてないって言ってたけど、絶対にそんな事無いです。私はマミさんに会えて心の底から良かったと思ってます。私も、まどかも、ベジータも、多分転校生もマミさんに死んで欲しくないです。私達はあなたのことをすごく大切に思ってるんです、だから、」

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬなんて…言わないでくださいよ…」

 

さやかは涙をぽろぽろ零しながら言った

 

「…美樹、さん」

 

「私からもお願いです、死なないでください」

 

まどかも泣いている

 

「…鹿目さん」

 

 

 

 

 

 

 

(…なんだか、馬鹿らしくなってきちゃった)

 

さっきまでの絶望感が、嘘のように晴れやかになっていた

 

「美樹さん、鹿目さん、ベジータさん、暁美さん」

 

「ごめんね、もう死ぬなんて言わない」

 

そう言ってマミは満面の笑みを浮かべた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、みんな」

 

 

 

「っ!うわあああああああああああん!」

 

さやかとまどかが泣きながら抱きついてくる

 

「わっ!ちょっと、全くもう…」

 

満更でもない顔でマミは笑った

 

「だって、だって、マミさんが死んじゃうかと…」

 

「安心して。私はもうどこにも行かないから」

 

「っ、うわあああああああああん!」

 

夜の公園に、二人の少女の泣き声が響き渡った

 

 

 

 

「暁美さんも、ごめんなさいね。今まで疑っちゃったりして」

 

「…別に」

 

「…今までずっと一人で戦ってきたもの。寂しかったでしょう。」

 

「…私は」

 

「ワルプルギスの夜の戦い、私も参加するわ。これからは一緒に戦いましょう?」

 

「…ありが、とう」

 

「ふふっ、暁美さんも今度一緒にお茶しない?せっかく仲間になったことだし、何よりあなたも心を休める時が必要でしょう?」

 

「仲間…?」

 

「ええ、仲間」

 

「…」

 

こうやって、彼女に好意を向けられたのはいつぶりだろう。

 

そうだ、これが本来の巴さんなんだ。いつも敵意を向けられていたから、すっかり忘れてしまっていた。

 

私にとって一番大切な人はまどか。でも、それと同じくらい私は巴さんも大切だった。私にとても優しくしてくれた人だ。

 

戻りたい。また、巴さん達と一緒にいたい。

 

私は、人に戻れるのだろうか。戻っていいのだろうか。

 

「いい、の?私が、仲間で」

 

「ええ、もちろん」

 

限界だった。

 

例え冷酷な仮面を付けていても、その下ではずっと傷ついていた。

 

けれど、時間を繰り返していく内に、その心の痛みに気づかなくなっていった。

 

彼女の心は、ずっと助けを求めていた。

 

 

 

「巴、さん、うわあああああああああん!」

 

「ええ!?暁美さんまで!?」

 

ほむらは大声をあげて泣いた。

 

今までの辛さを全て解放するように。

 

マミは胸に顔を埋めるほむらの頭をそっと撫でた。

 

 

 

「今まで、よく頑張ったわね」

 

「ううっ、わああああああああああん!」

 

ほむらの仮面は剥がれ落ちた。

 

「ふふふ、ほむらちゃんって本当は泣き虫さんだったんだ」

 

「ほむらのやつー、可愛いとこあるじゃん!」

 

ほむらと他のみんなとの心の壁は、もう無くなった。

 

 

 

 

 

 

「…ベジータ、あなたのおかげで私はまた彼女達と仲間になれた。本当にありがとう」

 

ほむらはベジータに言う

 

「……」

 

が、ベジータは返事を返さない

 

「…ベジータ?返事くらいして欲しいわよ、お礼をしてるのに」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…俺は何も出来なかった

 

結局マミを救ったのはさやかだ

 

そしてほむらを救ったのはマミだ

 

俺は何にも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待て。

 

そもそも何故俺はこんな事で悩んでいるんだ。

 

別に奴らがどうなろうと俺には関係のない事だろうが。

 

そうだ、くだらん。実に下らん。

 

俺はワルプルギスさえぶっ殺せばそれでいいんだ。

 

こいつらの友情ごっこになんぞ興味は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ほむら」

 

「…どうしたの?」

 

様子が変わったベジータに困惑するほむら

 

「ワルプルギスの夜が来るのはあと何日だ」

 

「…あと、18日だけど…」

 

「そうか、ならその日にまたここに来る。あばよ」

 

「えっ、待っ…」

 

ベジータはほむらの言葉には耳を貸さず、飛び立って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当に、何をしていたんだ俺は)

 

自分がしていた行動のあまりの馬鹿らしさに、くつくつと笑いが込み上げてくる

 

(俺はサイヤ人の王子、ベジータだ。糞餓鬼共の友達などではない)

 

その笑みは、彼本来のサイヤ人としての邪悪な笑みそのものだった。

 




この小説にはMURもTNOKも出てきません。
期待された方、申し訳ございませんでした。

ちなみにパキッはベジータが地面に降りた時に木の枝を踏んだ音です


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奇跡がなくても

16話やに


「さやかはさぁ…」

 

ベッドの上に座っている少年が、さやかに対して忌々しげに言う

 

「え?」

 

突然彼から発せられた怒気を孕んだ声に、さやかは戸惑った

 

「さやかは、僕を苛めてるのかい?」

 

苛めている?どういう事?私が恭介を苛めてるってこと?どうして急にそんな事を?

 

さやかの頭の中で思考がぐるぐる回る

 

「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」

 

八つ当たりだった。彼の言っていることは無茶苦茶だ。だけど、その言葉は彼女の心をえぐった。

 

「だって恭介、音楽好きだから…」

 

必死に弁解しようとするが、

 

「もう聴きたくなんかないんだよ!」

 

恭介の怒鳴り声によってかき消された

 

「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて、僕は…僕は…っ!」

 

良かれと思ってしていた事が彼を傷つけていたことにさやかはショックを受ける

 

「動かないんだ…もう、痛みさえ感じない。こんな手なんてっ」

 

「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか…」

 

「諦めろって言われたのさ」

 

…え?そんなまさか…

 

「もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」

 

「僕の手はもう二度と動かない。奇跡か、魔法でもない限り治らない」

 

そんな。どうして。

 

「恭介…」

 

「…出て行ってくれ」

 

「恭介」

 

「しばらく、誰にも会いたくない」

 

何で恭介なのよ、私の指なんていくら動いてたって何の役にも立たないのに

 

どうして、どうして

 

 

 

奇跡を起こしてくれる小動物は、もういない

 

 

 

さやかは病院を出て、家へ歩き出していた

 

「さやかちゃん?」

 

顔を上げると、そこには親友のまどかがいた

 

「どうしたの?さやちゃん、元気無いみたいだけど」

 

「…えー?そんなわけないじゃん!さやかちゃんはいつでも元気いっぱいで…」

 

「さやかちゃん」

 

まどかが真剣な目でさやかを見る

 

「そういうの、良くないよ、一人で抱え込んじゃ駄目だよ、マミさんみたいになっちゃうよ」

 

「…はは、まどかにはやっぱりバレちゃうかー」

 

さやかの表情が影を落とす

 

「…恭介の指、もう治らないんだって」

 

それを聞いたまどかは目を見開く

 

「医者から直々に言われたんだってさ。もうバイオリンは諦めろって」

 

「なんで、なんで恭介なのかなぁ…!なんで恭介の指は動かなくて私の指はこんなに簡単に動くのかなぁ…!」

 

さやかは嗚咽を漏らす

 

「悔しいよ…あたし悔しいよ…」

 

さやかはまどかに抱きつく

 

「さやかちゃん…」

 

しばらく経って、さやかは泣き止み、手を離した

 

「ありがと。ごめんね。もう大丈夫。スッキリしたから」

 

「さやかちゃん」

 

まどかが言う

 

「上條君のお見舞い、明日一緒に行こう?」

 

「…え、でも」

 

「いいから!明日学校の帰りに病院行くよ!」

 

「…まどかってこんなぐいぐいくる子だったっけなー、成長したなーまどか、さやかさんは嬉しいぞー?」

 

「ちょ、ちょっと、茶化さないでよ!」

 

まどかが顔を赤くして怒る。柄じゃない事が分かっていたのだろう

 

「あははは!ありがと、まどか。うん、明日一緒に行こ!」

 

「…てぃひひ!良かった!さやかちゃん笑ってくれて!」

 

「生意気だぞー!まどかのくせにー!」

 

「ちょ、さやかちゃん、やめ、あはははははは!」

 

さやかの心の平穏は保たれている

 

きっと、彼女は絶望なんてしないだろう。

 

 

 




昨日気づいたんですけど進撃の巨人season final始まってたんですね
今度Netflixで見よ


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パーカー少女

17話ンゴ


ほむらは玄関の扉を開けて中に入る

 

「ただいま…」

 

しかし、返事をする者は誰もいない

 

(…つい癖で言ってしまったわ)

 

少し前までほむらの家に住んでいたベジータだが、マミの家出騒動が終わった後、何故か忽然と姿を消してしまった

 

(…彼がいたのはほんの数日だったけど…居なくなると少し寂しいわね…)

 

何度も何度もこの一ヶ月間を繰り返し、長い間たった独りで戦っていたほむらにとって、自分の事情を知りながら味方をしてくれる存在がいる事は救いになっていた

 

「…なんで、急に居なくなるのよ」

 

誰もいない広い部屋で、ほむらは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなってやがんだ、一体」

 

赤髪ポニーテール、パーカーとホットパンツを身につけた少女がソウルジェムを持って歩いている

 

「くそッ!何で魔女がいないんだよ!」

 

怒りに身を任せて近くにあったゴミ箱を蹴飛ばす

 

「グリーフシードのストックもそろそろ尽きる…今日こそ見つけないと」

 

苛立ちを隠しきれない様子でまた歩いて行く

 

だが、ふと立ち止まって、悪戯を思いついた幼稚園児のような顔になる

 

「そうか…!風見野に魔女がいないんなら、見滝原に行けばいいじゃないか!」

 

ニヤリと笑って、歩いてきた道を引き返す

 

「待ってろよマミ、テメェを倒して見滝原は貰う!」

 

 

 

 

 

見滝原に着いた少女だが、一時間歩き回っても魔女は見つけられなかった

 

「ここもいないのかよ…!マミの野郎、魔女も使い魔全部狩っちまったんじゃないだろうな…!」

 

 

「…佐倉さん?」

 

と、その時少女に声をかけた者がいた

 

 

「…よぉ、マミ」

 

一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに好戦的な笑みへと変わった

 

「…あなたがここに来るなんて、一体どういう風の吹き回しかしら」

 

マミが鋭い目つきで佐倉さんと呼んだ少女を睨む

 

「はっ…魔法少女が他の魔法少女のテリトリーに入る理由なんて一つだろうが」

 

 

 

真っ赤なソウルジェムを掲げ、少女、佐倉杏子は魔法少女へと変身する

 

 

 

「テメェから見滝原を奪いに来たんだよ!」

 

そう叫ぶと共に、袖のない真紅の魔法少女衣装へと変身した

 

シュッ!

 

杏子は自分の身長よりも長い槍をマミに向かって突き出す

 

「っ!!」

 

マミはそれをギリギリで躱し、自分も魔法少女へと変身する

 

「…貴女にこの街を渡すわけにはいかない」

 

「はっ、だったら守ってみやがれってんだ!」

 

ブンッ

 

杏子の槍が数カ所で折れ曲がり、前方を薙ぎ払うようにして攻撃する

 

サッ バンバン!

 

マミは後ろへ飛んでそれを回避し、マスケット銃を取り出して杏子へと撃つ

 

マミはソウルジェムの真実を知っているため、そこさえ外せば相手が死ぬ事はないと分かっていた

 

だが、杏子はそれを知らない

 

「うおっ!…そっちも本気ってわけだな…!じゃあこっちも殺す気で行くぜ!」

 

シュシュシュッ!

 

杏子はさっき出したものとは比べ物にならない速さで突きを繰り出して行く

 

対してマミはそれを避けながら冷静に距離を取り、杏子の足元からリボンを出現させる

 

「!ちっ!」

 

杏子は後ろに下がるが、そこの地面からまたリボンが出てくる

 

「しつけぇなオイ!」

 

杏子は建物の壁へと追い込まれ、上へと跳ぶ

 

 

 

 

「あら、駄目じゃない、空中に逃げ場はないのよ?」

 

 

マミは杏子の頭へと狙いをつける

 

 

 

「!あっ…」

 

 

バン

 

 

そうしてマミは、銃弾を放った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい」

 

杏子が不機嫌そうに尋ねる

 

「…さっきの弾、なんで外しやがった。わざとだろ、お前」

 

マミはそっけなく答える

 

「私、人殺しにはなりたくないもの。当てた方が良かったかしら?」

 

「…腹立つ野郎だ」

 

マミのそっけない態度に一抹の寂しさを覚えるが、それに気づかないフリをする

 

「今ここで手を引くというのなら、見逃してあげてもいいけど」

 

 

 

だが、そういうわけにはいかない。

 

 

 

「生憎と引く気はねぇよ。風見野にはもう魔女がいねぇんだ、グリーフシードを手に入れるにはここを奪うしかない」

 

 

 

槍の柄を握り直す。

 

 

「さあ、第二ラウンドと行こうぜ!マミ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いえ、貴女には手を引いて貰うわ、佐倉杏子」

 

 

杏子の背後には、ほむらが立っていた

 

 




ンゴを最初に語尾につけようと思った人って誰なんだろ

あ、ベジータはしばらく出ないと思われます


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杏子との交渉

18話です


「っ誰だ!」

 

杏子は後ろを振り返る

 

「佐倉杏子、貴女に話がある」

 

「唐突に現れて何を言ってやがんだテメェは…ていうか、何でアタシの名前を知ってるんだ」

 

杏子は目つきを鋭くし、ほむらに槍を向ける

 

「暁美さん、もしかして…」

 

「ええ、あなたが思っている通りよ、巴さん。彼女をワルプルギスの夜の討伐へ勧誘する」

 

「…ワルプルギスの夜だと?」

 

「ええ、貴女も知っているでしょう。単独の魔法少女では対処しきれない超弩級の魔女。二週間後、それがこの見滝原に来る。私達はそれを倒さなければいけない。

 

「…そいつを倒すのにアタシも協力しろってか」

 

「ええ、そう言うこと」

 

杏子は一息ついて、

 

「お断りだね。そいつを倒したところで、アタシに見返りがないじゃないか。意味も無く協力する気は無い」

 

言外に、彼女はそれ相応の見返りを用意しろ、と言っている

 

「見返りなら…」

 

思い出す、今まで彼女と共闘する為にどんな見返りを用意していたかを

 

確か…

 

不味い、どうしよう。巴さんと仲間なのに見滝原を譲るなんて言えない

 

なら…代わりの物を言うしかない

 

「ワルプルギスの夜が落とすグリーフシード、興味ない?伝説級の魔女となれば、その分落とすグリーフシードも大きいはず」

 

「グリーフシードねぇ…」

 

杏子は考える

 

普段ならそんな危険を冒してまでグリーフシードを手に入れようとは思わない

 

だが、今は状況が状況だ

 

このまま魔女を見つけられなければ、グリーフシードは底を尽きる

 

そうなったら…そうなったらどうなるんだ?

 

 

杏子が思案していると、ほむらがもう一つ提示してきた

 

「それと…キュゥべえが隠していた魔法少女の秘密について教える。それならどうかしら」

 

「…なんだと?」

 

杏子は怪訝そうな顔をする

 

「どうかしら。十分協力する価値はあると思うけど」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

三人の間に沈黙が流れる

 

だが、しばらくして、杏子が沈黙を破った

 

「…いいよ、協力したげる。その代わり、もう一つ。アンタらが持ってるグリーフシードをちょっと分けてくれよ。アタシはストックがそろそろ底が尽きるんだ」

 

「構わないわ。では、よろしく」

 

「ああ、よろしく」

 

そうして二人は握手を交わした

 

 

 

「…とてもこの前私の胸で大泣きしていた人には見えないわね」

 

「…茶化さないでよ」

 

マミにからかわれて、ほむらは少し拗ねたように言った

 

 

 

 

ほむら達は近くのカフェの席へ座った

 

「私は紅茶にするわ」

 

「私はコーヒー…貴女は?」

 

「悪いけどアタシ金持ってないんだよ。食い逃げは顔がバレるから出来ないし」

 

「そのくらい奢るわよ…好きなの頼みなさい」

 

「へぇ?気前がいいんだね。じゃあアタシはオレンジジュースで」

 

「分かったわ。すみませーん」

 

 

 

 

「ジュース飲むのは久しぶりだな、うまい」

 

「それは良かったわ」

 

「最近は水ばっか飲んでたからねぇ…まあ、そんなことはどうでもいいんだ」

 

杏子はほむらへ向き直る

 

「早速聞かせてくれよ。魔法少女の真実ってのは一体なんなんだ?」

 




最近ちょっとあとがきでふざけすぎましたね
しばらく大人しくします


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向き合う

19話、始まります


「…嘘、だろ」

 

ほむらから語られた真実を聞き杏子はショックを受けた

 

「…残念だけど、これが真実よ。キュゥべえは私達を騙していたの」

 

「……」

 

「…すぐに受け入れられないのは分かるわ。少しの間落ち着いてからまた会いましょう」

 

「…ああ、そうするよ」

 

杏子は暗い表情をしながら店を出て行った

 

「暁美さん、彼女は大丈夫かしら…」

 

「…彼女はショックを受けながらも、どの時間軸でも立ち直ることが出来ているわ。心配ないでしょう」

 

「…なら、いいのだけど…」

 

マミは少し不安そうに言った

 

「…前々から気になっていたのだけど」

 

ほむらが口を開く

 

「あなたと杏子ってどういう関係なの?いつも何か因縁がありそうな雰囲気だったのだけど」

 

マミは少し悲しい表情になる

 

「…そうね、あなたには話しておくべきよね」

 

 

 

彼女と初めて会ったのは2年ほど前だったかしら。

 

私がいつものように一人で魔女結界に入ると、彼女はその中で魔女と戦っていたわ。

 

苦戦していたようだから助けてあげたのだけど、そうしたらあの子急に弟子にしてくれなんて言い出したのよ。

 

驚いたけど、いい子そうだったし、私も私で寂しかったから、二つ返事でOKしたわ。

 

それから私と彼女は一緒に魔女退治をするようになった。それ以外にもお茶したり、一緒にご飯食べたり、すごく仲が良かったのよ。

 

彼女は私を慕ってくれたし、私もマミさん、マミさんと呼んでくれるあの子が好きだった。

 

だけど、ある日突然彼女は言った。アンタとはもう一緒に戦わないって。

 

突然そんなことを言われてショックだったし戸惑ったし、私は彼女を問い詰めた。何があったの?って。

 

けれど彼女は口を割らなかった。何度聴いてもアンタには関係無いの一点張りで。

 

そして彼女はこう宣言してきた。私はもう甘っちょろい正義は掲げない。これからは自分の為だけにこの力を使う。二度と人助けなんかするもんか。と。

 

私は彼女を止めようとしたわ。だけど、彼女の目を見ると何も言えなくなってしまった。

 

彼女の目は怒りと諦めで染まっていた。

 

それからは、一度も彼女と会っていない。

 

 

 

 

「…なるほど、そういうことだったのね」

 

「…私は、もう一度あの子と仲良くなりたい。だけど、アンタのことなんかどうでもいいって拒絶されるのが怖くてたまらない。さっきだって多分私を本気で殺そうとしてた。だからそっけない態度も取ってしまった」

 

マミが震えた声で言う

 

「…私が言うのも何だけど、とにかく話してみるのが一番だと思うわよ。そうじゃなきゃ何も変わらないし」

 

「でも、やっぱり…」

 

「きっと大丈夫だと思うわよ。彼女は無理して悪がってるだけで、恐らく本質はあなたの知っている杏子と変わらない。彼女は利己的だけど、優しさはあるもの」

 

「……」

 

「今度会う時までに仲直りする練習でもしたらどう?」

 

「…ふふっ、仲直りの練習って何するのよ」

 

マミの顔に笑顔が戻る

 

「…さぁ?」

 

「ありがとう、暁美さん。私、ちゃんとあの子と向き合うわ。もう逃げたりしない」

 

「ええ、それは良かっ…あ」

 

「?どうかしたの?」

 

「…杏子とどうやって連絡を取るのかしら」

 

「…テレパシーで」

 

「それが使えないのよ。恐らくあれは私達の能力じゃなくてキュゥべえが中継してたのよ」

 

ほむらははぁ、とため息を吐き

 

「まぁ、そのうち会えるでしょう」

 

考えることをやめるのだった。




ベジータはまたちゃんと出てくるので心配しないでください


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ごめんね

20話


 

「よお」

 

ほむらとマミが歩いていると、杏子が声を掛けてきた

 

「ちょっと話あんだけどさ…いいかな?」

 

「分かったわ。なら着いてきて。私の家で話しましょう」

 

「…ん」

 

 

 

 

 

「入って」

 

マミは家の扉を開ける

 

「…いいのかよ?」

 

杏子が言う

 

「何が?」

 

「その…あたしを家に入れてさ」

 

「別にいいわよ、魔法少女二人いて貴女に負けるはずがないもの」

 

マミが無表情で言う

 

二人の間はどこかぎこちない

 

「…じゃあ、失礼、します」

 

杏子がおずおずと入っていった

 

 

 

 

 

 

三人が机でケーキを食べていると、杏子が切り出した

 

「その、さ、魔法少女の真実ってやつ」

 

ほむらとマミが杏子へ顔を向ける

 

「あたし受け入れるよ。もう大丈夫だ」

 

「そう、なら良かった」

 

「ええ」

 

「……」

 

会話はそれだけで途切れる

 

 

 

 

 

沈黙に耐えきれなくなり今度はほむらが切り出した

 

 

「そういえば杏子、巴さんから貴女に話があるそうよ」

 

「ぶーーっ!?」

 

マミが紅茶を噴き出した

 

「うわあっ!あっつ!」

 

噴き出た紅茶は杏子にかかる

 

「ちょ、ちょっと暁美さん急にどうしたのよ!?」

 

「何すんだよマミ!汚ねぇじゃねぇか!」

 

「どうしたって…分かるでしょ?」

 

「分かるけど急にそんなこと言わなくていいじゃない!」

 

「おい!聞いてんのか!」

 

「こうでもしないとあなた永遠に黙ったまんまじゃない」

 

「だから急すぎるのよ!」

 

「マ」

 

「うるさいわね!いじいじしてないでさっさと言いなさい!見ててイライラするのよ!」

 

ほむらがバン、と机を叩き、ほむらのカップが倒れる

 

倒れたカップから液体がこぼれ杏子の膝にかかる

 

「……」

 

杏子がわなわなと震える

 

「あなたに言われたくないわよ!第一」

 

 

 

「なぁ」

 

杏子が低い声を出す

 

「さささ佐倉さん今のは暁美さん…の…」

 

マミは杏子の方を見て固まる

 

同じくほむらも杏子の方を見て固まる

 

「「あっ」」

 

 

そこには鬼の形相で二人を睨むビショビショの杏子がいた

 

 

「…何か言う事はないか?」

 

 

「「…ごめんなさい」」

 

二人は深々と頭を下げて謝った

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?さっきほむらが言ってたのは何だったんだ?」

 

マミの服に着替えた杏子が言った

 

「それは…暁美さんが勝手に…」

 

マミはちらりとほむらの方を向いた

 

ほむらはジト目でマミを見つめる

 

マミは観念したかのようにはぁ、と息をつく

 

「言うわ、言うわよ。すー、はー…」

 

深呼吸を不自然に長くしてから

 

 

「…その…もう一回…仲間になって…くれないかしら…?」

 

 

マミがたどたどしく言った

 

「……」

 

杏子は沈黙し、マミはすがるように杏子を見る

 

「…仲間にはもうなってるだろ、何言ってんだ?ついこの前手を組むって話を」

 

 

「そういう事じゃない」

 

 

マミがきっぱりと言った

 

杏子が驚いた目でマミを見る

 

 

「私はまたあなたに側にいてほしい。一緒に魔女退治したり、一緒にお茶したり、一緒におしゃべりしたり。あなたがいなくなってから私はすごく寂しかった」

 

必死に言葉を紡いでいく

 

「……」

 

 

「だから…また、一緒にいて」

 

 

「……」

 

「……」

 

沈黙する杏子、不安が押し寄せてきたマミ

 

「……許してくれるのか?」

 

杏子が震えた声で言う

 

「あの日、アンタの前から勝手にいなくなったアタシを許してくれるのか?」

 

「…ええ」

 

「そっか…うん、また一緒にいよう」

 

杏子が安心したように言った

 

「結局あたしも寂しかったんだ。一人で自由に生きても、魔法少女の力を好き勝手に使っても、何一つ満たされなかった。心のどこかで、またあの日々に戻りたいと思ってたんだ」

 

「多分、マミが言ってくれなかったら、あたしはずっと寂しさに気づかないフリをしてた。ずっと意地張って一人で生きてた。多分そんなのは長くは続かない。きっとどこかで限界が来てただろうさ」

 

「ありがとう、マミ。許してくれて」

 

「…なんだ、こんな簡単なことだったんじゃない、あたしってほんと馬鹿ね」

 

マミはふふ、と微笑んだ

 

「こっちこそありがとう。また一緒にいると言ってくれて」

 

杏子は照れくさそうに頬を掻いた

 

 

 

 

 

「さ、話は終わった事だしケーキおかわり」

 

「台無しよ!」

 

マミが立ち上がってツッコんだ

 

だがその雰囲気はとても幸せそうだった。

 

 




今まで勢いで書いてたのでこれから更新は遅くなると思います。
エタるわけではないのでこれからも読んでください。


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あと一週間

21話です


「さて、今日もパトロールに行くわよ」

 

マミの家で、マミがほむらと杏子に言う

 

「分かったわ…杏子、あなたはどうするの?」

 

杏子はかつて人のためにキュゥべえに奇跡を願い、人のために魔法少女として戦っていた。だが、その結果かえって人を不幸にしてしまい、全てを失った。その結果彼女は人のために魔法を使うことをやめ、何がなんでも自分のためだけに生きる道を選んだ。だが、

 

「あたしも行くよ。もう一度信じたいんだ。この力は人を傷つける力じゃなくて、人を助ける力だって事をさ」

 

彼女はもう一度決心した。人のために魔法少女として戦うことを。

 

「そう…なら早速行きましょう、魔女退治へ」

 

そう言ってマミ達は扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

「で、今日もいないのね」

 

ほむらがやっぱりね、という様子で言う

 

「なんでいないのかしらねぇ…これだけいないと流石に異常だわ」

 

「キュゥべえがいなくなったことと関係あるのかしら」

 

「グリーフシードは大丈夫なのか…?」

 

「もうしばらくは持ちそうだけど…ワルプルギスの夜を倒した後は厳しいわね」

 

三人はうーんと唸る

 

「…とりあえず、帰りましょうか。これ以上探しても恐らく無意味だし」

 

結局諦めて帰ることになった

 

 

 

 

 

 

「「「「あ」」」」

 

「お?」

 

三人が歩いていると、まどかとさやかに出会った

 

「こんにちはマミさん!とほむらと…もう一人は?」

 

「この子は佐倉杏子。新しい魔法少女の仲間よ」

 

「佐倉杏子だ、あんたらもしかして魔法少女候補か?」

 

「うん、そうだよ」

 

「そうなんだけどさー、キュゥべえがいないから契約出来ないんだよ」

 

さやかが少し暗い声で言う

 

「ま、それでいいと思うよ。無理に魔法少女になる必要はない」

 

「それより、暇なら家寄ってかない?ケーキご馳走するけど」

 

「いいんですか!行きます行きます!」

 

「さやかちゃん、ケーキに食いつきすぎだよ…」

 

まどかがあはは、と苦笑いする

 

 

 

 

 

 

 

「んーっ!やっぱりマミさんのケーキは美味い!」

 

さやかが満面の笑みで言う

 

「ふふ、ありがとう。まだあるからもっと食べていいわよ」

 

「いいのか?じゃあもらうぜ」

 

すかさず杏子がケーキを切って自分の皿に乗せる

 

「佐倉さん…もうちょっと味わって食べてよ」

 

「気にすんな」

 

杏子は一口で半分くらい食べた

 

「もう…」

 

 

 

「そういえばほむらちゃん、ワルプルギスの夜…って魔女、いつ来るの?」

 

まどかがふいにそう尋ねる

 

「そうね…あと一週間よ」

 

「じゃあもうすぐじゃん…大丈夫なの?」

 

さやかが心配そうに尋ねる

 

「…ええ、大丈夫。私と巴さんと杏子と…」

 

ベジータ。彼は一体どこへ行ったのだろう。彼は本当に来るのだろうか。そもそも何故いなくなってしまったのだろうか。私には分からない。どうして…

 

「大丈夫よ、暁美さん」

 

マミがほむらの肩に手を置く

 

「信じていればきっと来るわよ。それに、たとえ来なくても私達三人ならきっと倒せる。心配はいらないわ」

 

「…ありがとう」

 

「なあ、来るって誰のこと言ってんだ?」

 

ベジータに会ったことのない杏子が不審そうに尋ねる

 

「んーと、まあ…」

 

「うーん…」

 

「んー、」

 

「…そうね」

 

「「「「世界最強の男(だ)よ」」」」

 

「……はあ?」

 

何を言ってるんだこいつらは、と杏子は思うのであった。

 

 

 

 




最近りりごくにハマりました


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見滝原最後の日

一週間後、22話です。


 

 

「よう」

 

渦巻き始めた空の下に、その男は立っていた

 

「あなた…どうして急に」

 

「悪いが俺は貴様らとおしゃべりしにきたんじゃないんだ。ワルプルギスをぶっ飛ばすのが俺の目的だ。邪魔だからどこかへ行ってろ」

 

「私達も戦いに来たのよ。ワルプルギスの夜と。だから」

 

急に光がほむら達の足元へ飛んだ

 

その地面は爆発し、ほむら達は後ろへ避けた

 

「テメェ…なにもんだ」

 

「さて、な。ともかく俺は奴と一対一で戦う。貴様らが茶々を入れようとするなら俺は容赦せんぞ」

 

「勝手なこと言ってんじゃねえぞテメ」

 

その瞬間、杏子の体はベジータのキックによって避難所の方まで飛ばされた

 

「!!あなたなんで」

 

「テメェらも一緒に飛んでいけ」

 

反応する間もなく、まずほむら、次にマミが吹き飛ばされた

 

「まあ、しばらくは起きんだろう…さて、そろそろ現れる頃か」

 

「その通りさ」

 

ベジータの足元に今まで姿を見せなかったキュゥべえが現れた

 

「キュゥべえだったか…鹿目まどかの契約はいいのか?」

 

「うん、それは中止になったんだ」

 

ベジータはほんの少しだけ眉を動かす

 

「じゃあ貴様の目的はなんなんだ?」

 

「僕の目的かい?それはね…」

 

 

 

「君を殺す事だよ」

 

 

ベジータは眉を大きく釣り上げる

 

「ほう?俺を殺すと来たか」

 

「その通りさ。君の持つ力は強大すぎる。それこそ宇宙全体に影響を及ぼしかねない程にね。君を野放しにしては、さらに多くの星が破壊される恐れがある。もっと早く気づくべきだったよ、君達サイヤ人の存在に」

 

「俺の力が宇宙全体に影響を及ぼすという判断は間違いないだろうな、俺は貴様らにとって危険な存在だろう。だが…」

 

くっくっく、とベジータは笑い出す

 

「急に笑い出してどうしたんだい?」

 

「くっくっく…はーっはっはっは!俺を殺せると思ったのは大間違いだな!俺はサイヤ人の王子、そして宇宙最強の戦士ベジータだ!貴様らが頭をくるくる回転させたところで俺を殺すことはできない!ワルプルギスが俺を倒せると思っているのかもしれんがそれはありえん事だ、残念だったな?」

 

ベジータがニヤリと笑う

 

「そうだね、本来予定していたワルプルギスの夜なら君を倒す事など不可能だろう」

 

「…何?それはどういう事だ」

 

「僕に聞くより実際に戦ってみる方が早いんじゃないかな。さあ、もうすぐ来るよ」

 

 

 

黒い風が鳴き、灰色の空は渦巻く

 

 

ワルプルギスの夜が、来る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワルプルギスの夜、開演。

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 

「五月蝿い声を上げやがる…今すぐ黙らせてやるから待ってやがれ」

 

 

 

 

 

全ての運命の不幸を無くそうとする、地上をマホウで埋め尽くし、

全人類を戯曲の中へ取り込もうとする、動く舞台装置。

 

この世の全てが戯曲ならば悲しい事など何もない。

悲劇ではあるかもしれないけれど、ただ、そおいう脚本を演じただけ。

ワルプルギスの夜で芝居は止まって、もう地球は一周だって回転しない。

物語は転換しない。

明日も明後日も、ワルプルギスの夜。

 

 

 



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舞台

23話


黒い触手が高速でベジータに迫る

 

「!ぐっ…!」

 

避けきれず、ベジータの腹部に触手が追突する

 

更に次々と多数の触手がベジータへ迫る

 

「ちっ!邪魔だあああ!」

 

ベジータは両手を前に出し、砲撃のような気功波を放つ

 

だが、動きを止めるにすら至らない

 

「なっ!ぐはっ!うっ!」

 

触手が次々と直撃する

 

(ちっ、距離を取ろう)

 

ベジータは舞空術でその場から離れる

 

ベジータに迫ってきていた触手は、二体の黒い魔法少女の姿をした使い魔へと変化した

 

「まとめて潰すか…」

 

一体の影魔法少女の後ろへ移動し、上空へと背中を蹴り上げる

 

もう一体の影魔法少女がベジータに剣を振る

 

が、これを避け、同じ場所へと殴り飛ばす

 

「さっきのとは比べ物にならんぞ!つああああああ!」

 

ベジータの手から出された気功波が二体の影魔法少女を呑み込んだ。

 

「クソッタレが…これで雑魚二体片付けただけか…」

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

無力なベジータを嘲笑うかのように、ワルプルギスの夜は高笑いを続けている

 

 

「さっきから五月蝿ぇ…これで黙りやがれぇ!」

 

ベジータはワルプルギスの夜に接近する

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

だが、ワルプルギスの夜が体からオーラのようなものを放ち、ベジータは吹き飛ばされる

 

「な!うああああああああああ!」

 

超スピードで飛ばされたベジータはビルへと激突した

 

そして、そのままベジータは動かなかった。

 

 

 

 

 

「ふむ、流石のベジータでもこのワルプルギスの夜には敵わないか」

 

二週間半前、キュゥべえ達は全員母星である惑星キューブへと帰還し、「ベジータ」という人間の個体の情報を共有した。

 

「ベジータ」の力の大きさは、最低でも星を一つ、下手をすれば一つの銀河を消し飛ばすほどであると推測された。

 

キュゥべえ達が考えた結果、何よりも優先して「ベジータ」をこの世から抹消すべきだという結論に至った。

 

しかし、仮に銀河を一つ消し飛ばせる程の力を持つとすれば「ベジータ」の抹消は極めて困難なものとなる。

 

キュゥべえ達のもつ科学力をどう応用しても「ベジータ」を抹消できる程の武器は作れなかった。

 

そこでキュゥべえ達はワルプルギスの夜を利用しようと考えた。

 

本来鹿目まどかの契約のための交渉材料に使う予定であったが、キュゥべえ達はこの魔女を強化することによって「ベジータ」を抹消しようと考えた。

 

まず、宇宙に点在する全ての魔女をワルプルギスの夜と融合させた。

 

この時点で「ベジータ」は恐らく抹消できると考えられたが、失敗した時のリスクを回避するため、もう一つの作戦を立てた。それは_

 

 

「まあ、その必要はなかったみたいだけどね」

 

キュゥべえはビルから動かなくなったベジータを見下ろしている

 

「やれやれ、もったいないなぁ、これじゃあ」

 

その時、ビルが吹き飛んだ

 

 

 

「…くっくっく、こいつは予想以上だ、まさかあんな雑魚どもの親玉がこれほどの強さだとはな」

 

 

その中からベジータが出てくる

 

 

「だが、これで終わりだと思うなよ?」

 

 

ベジータは力を込め始める

 

 

「はああああああああ…」

 

 

砕けたビルの破片がベジータの周りに浮上する

 

 

「あああああああああ…」

 

 

地面が、大気が揺れる

 

 

「あああああああっ!」

 

 

その瞬間、ベジータの纏う気が黄金に輝く

 

 

シュインシュインシュイン、と小気味のいい音が鳴る

 

 

髪は金色に染まり、瞳は碧と化す

 

 

「さあ、第二ラウンドと行こうか」

 

 

_超ベジータ、始動。

 

 

 




ワルプルギスの夜の戦い方あんまり覚えてないんですよね…
なのでpixiv百科を参考にしました
チガウヨーって所があっても見逃して下さい


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金髪碧眼の戦士

24話


大量の使い魔がベジータを殺さんと押し寄せてくる

 

「テメェらに用はねぇ、死ね!」

 

だがベジータは体中から気を爆発させ、使い魔を一匹残らず駆逐した

 

「!!!どうなっているんだ!?」

 

キュゥべえが驚きの声を上げる

 

ベジータはまたワルプルギスの夜へと向かっていく

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

その道を阻もうと炎の槍、倒壊したビルを飛ばす

 

「!!!」

 

それらは全てベジータに直撃した

 

「ふん、この程度か?」

 

だが、ベジータには通じない

 

「!さっきとは別人のようだ…髪の色が変化した事と関係があるのか?」

 

「超サイヤ人になってしまえばこんなものか…」

 

ベジータはつまらなさそうに吐き捨てる

 

「超…サイヤ人…?…まさか」

 

「これ以上貴様と遊んでも楽しめなさそうなんでな…」

 

ベジータは上空へと飛び上がって、両手を後ろに構える

 

その両手の中で稲妻がバチバチと音を立てる

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

ワルプルギスの夜はありったけの攻撃を仕掛け、ベジータの攻撃を止めようとする

 

影魔法少女、触手、アカハナ、槍、象、ビル

 

だがどれもこれもベジータの付近で消滅してしまう

 

「ようやく貴様の下品な笑い声が聞けなくなると思うと清々するぜ…」

 

やがて稲妻は紫の光球へと変わる

 

「食らえ…」

 

ベジータの原点とも言える技。

 

「これが俺の…」

 

かつて孫悟空と戦ったときに使った技。

 

人生で一度しか打ち破られることのなかったこの技。

 

それが今、ワルプルギスの夜という魔女へと、

 

「ギャリック砲だああああああ!」

 

放たれた。

 

「アハハハハハハハハハハハ_」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の魔女は、消えた

 

「やれやれ、君には参ったよ、まさかこんな切り札を残していたとはね。それにしても、君が伝説の超サイヤ人だったとは驚きだよ」

 

静かになった崩壊した見滝原の街で、キュゥべえはベジータに言った

 

「随分詳しいんだな、俺達サイヤ人のことに」

 

変身を解いて黒髪に戻ったベジータが答える

 

「君達の住む銀河は未知の領域だったから、最低限の情報しか集めてないんだけどね。けれど伝説の超サイヤ人というのはかなり有名な話だったみたいだから、すぐに情報として手に入った」

 

「そうか…ともかく、これで貴様らの望みは潰えたってわけだ。_今どんな気持ちだ?」

 

ベジータは嗜虐的な目でキュゥべえを見る

 

「生憎と僕等には感情というものが存在しないんだ。だからどういう気持ちかと言われても答えようがない」

 

「ふん、強がりやがって、そんな生物など存在するものか」

 

ベジータは少しつまらなさそうに鼻息を鳴らした

 

「それと、僕達の望みはまだ潰えていないよ」

 

「なんだと?」

 

「ほら、あれが僕達の最後の希望だ」

 

キュゥべえは空を見上げる

 

「あれは…」

 

そこには。

 

大きな球体が二つ、空を飛んでいた。

 

「ベジィタァ…」

 

 




本当はワルプルギスをもっと強化する方で行こうとしたんですが、ちょっと盛り上がりに欠けるかなーと思いまして。
それで彼等を連れてくることにしました


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降り立ったモノ

25話


「あれは…」

 

一人用のポッドが二つ、ベジータ達の近くに落ちた

 

ウィーン

 

扉が開き、中から人が出てくる

 

「…ふふふ、ようやくこの日が来た」

 

一人は、茶色い肌を持ち、髭を蓄え、右手に金色の装置を付けた男。

 

「…ベジィタァ」

 

一人は、上半身裸で、腹筋が割れ、頭に輪っかを付けた、細身で長身の男。

 

「…サイヤ人、だと?」

 

既にサイヤ人の生き残りは俺ととカカロットしかいないはずだ。

 

運良く見つからなかった下級戦士の飛ばし子か?

 

…いや、茶色い方は見覚えがある

 

「まず自己紹介をした方がよろしいかな?ベジータ王子。私の名は_」

 

そうだ、思い出した。こいつは、こいつらは…

 

「_パラガスでございます。こちらは息子のブロリー」

 

 

 

ブロリー。

 

彼の戦闘力は産まれた時点で一万を超えていた。

 

これは異常といっても差し支えがないほど高く、ベジータ王の戦闘力、そしてその息子のベジータ王子の戦闘力すら超えていた。

 

父親のパラガスは大いに喜んだ。

 

戦闘力で人間としての価値が決まるサイヤ人達にとって、赤子の時点で戦闘力一万を超えるブロリーはもはや畏怖の対象だった。

 

ベジータ王は、それを快く思わなかった。

 

嫉妬した彼は、自らの手でブロリーを抹殺しようとした。

 

戦闘力一万といえど、所詮は赤子。戦い方すら知らないブロリーが自分を殺そうとする相手に敵うわけがなかった。

 

ブロリーの処遇に大激怒したパラガスも、ベジータ王により処刑された。

 

反逆者となった親子二人の動かなくなった体は、惑星ベジータのゴミ捨て場へと捨てられた。

 

そしてしばらくそのままだった。

 

だが、彼等は生きていた。

 

フリーザによって惑星ベジータが破壊される直前、ブロリーの潜在能力が覚醒し、パラガスと共に惑星ベジータを脱出した。

 

そして今、

 

「本日は_貴方様に復讐しにやってきました」

 

元凶となったベジータ王の息子へと、30年前の怨みを果たすべく、この星へとやってきた

 

「…これが貴様の最後の希望とやらか、キュゥべえ」

 

「うん、その通りだ」

 

キュゥべえが情緒を感じさせない無機質な声で言う

 

「なるほど?サイヤ人にはサイヤ人をぶつけるというわけか。まあ、確かにそれが一番効果的だろうな」

 

「ベジィタァ…」

 

ブロリーが唸る

 

「だがな…こんな雑魚共を用意した所で俺には傷一つつかんぞ?さっきのワルプルギスの夜の方がまだ暇を潰せそうだが」

 

「ほう?それは聞き捨てなりませんなあ?」

 

パラガスがニヤリと嗤う

 

「ブロリーの力を舐めているだろう。こいつは正真正銘の伝説の超サイヤ人。いくら貴様といえどそう易々と倒せるものではないぞ」

 

パラガスが制御装置を解除する

 

「こんなものは必要ない」

 

その途端、ブロリーの気が爆発的に増加する

 

「うううううう…おおおおおおお…」

 

大地が震える。

 

「うううううう…」

 

突風が吹く。

 

「ううううあああああああ…」

 

ブロリーの筋肉が膨れ上がる。

 

「な…に…」

 

地面にヒビが入る。

 

「さあ、全力でやれ、ブロリー」

 

瞬間、

 

「うおおおおおおおおおおああああああああああ!」

 

爆発音が鳴り響き、ブロリーは伝説の超サイヤ人となった。

 

「なんだ…なんなんだこれは…」

 

伝説の超サイヤ人。

 

緑色の気を放ち、白目を剥き、筋肉ははちきれんばかりに膨れ上がる。

 

孫悟空やベジータがなる超サイヤ人とは根本的に性質がちがうもの。

 

正真正銘、1000年に一度現れる伝説の戦士。

 

「ベジィィィィィタァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

血と殺戮を好む、破壊の神。

 

かつて南の銀河を恐怖におとしめた、最凶の悪魔が、見滝原に降り立った。

 




ベジータに敵うとすればこいつぐらいしかいないよね?


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狂戦士

26話


ブロリーが右の豪腕を振り上げる

 

「!!!」

 

ベジータは一目散に逃げ、振り下ろされた腕を回避する

 

が、

 

「どこへ行くんだぁ?」

 

ベジータの左脚はしっかりとブロリーに掴まれていた

 

「あ…あああ…」

 

ベジータはもう片方の足で掴んでいる腕を蹴り飛ばそうとするが、びくともしない

 

(!!!そうだ!!!超サイヤ人だ!なぜ今まで変身していなかった!!変身さえすれば!)

 

シュイン!

 

ベジータは超サイヤ人へと変化した

 

「離しやがれ!」

 

ブロリーの顎を全力のキックで蹴り上げる

 

だが、それもブロリーの顎を少し持ち上げるだけに終わった

 

「な」

 

それどころかブロリーが顔を戻そうとして顎で逆に押し返される始末だった

 

「楽には死なさんぞォ…」

 

ブロリーは脚を両手で持ち、ベジータをブンブンと回し始めた

 

「あああああああああああああ!やめろおおおおおおお!」

 

全く抵抗出来ぬまま、ベジータを回す速度は更に加速していく

 

「ハハハハハハハハハハハ!!!」

 

ついにブロリーの周辺にトルネードが起き始めた

 

「あああああああああああああ!」

 

「ハハハハハハハハハハハ!!!飛べぇ!!!」

 

ブロリーの手が離される

 

「あああああああああああああ!」

 

ベジータはビルに激突し、周りに巨大なクレーターが出来る

 

「これで終わりだと思うなよ…?」

 

 

 

「  」

 

ベジータは戦意を失っていた。

 

本能的に奴には勝てないと理解した。

 

かつてフリーザとの戦いで感じた絶望…それすらも遥かに上回る絶望だった。

 

もうベジータにプライドなど残っていなかった。

 

彼の頭の中にあるのは、恐怖。ただそれだけだった。

 

シュイン

 

超サイヤ人が解ける

 

そこへ、巨体が飛来してくる

 

「よう、また会ったなぁ?」

 

「あああ…ああ…」

 

ベジータは涙を流して震えた。

 

これから自分は殺されるのだ、と完全に理解してしまった。

 

「フフフフフフ…」

 

「もうだめだ…おしまいだあ…」

 

ベジータは恐怖のあまり意識を失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

シュッ

 

その時、ブロリーに矢が飛んできた

 

「!!!」

 

それはブロリーに直撃し、爆発する

 

 

 

「助けに…来たよ…!ベジータさん!」

 

 

 

ピンク色のドレスを着た魔法少女。

 

世界最高の素質を持った少女。

 

鹿目まどか。

 

「ぬううううう…なんなんだぁ今のはぁ?」

 

しかし、ブロリーにダメージが通った様子はない。

 

 

 

 

 

「最優先はベジータの抹殺だったけど、ブロリーの強さを見るに鹿目まどかとの契約を実行しても戦局が変わることはないだろう。それならば彼女との契約を果たすべきだね。折角の逸材を逃す手はない」

 

「ただ心配なのは、まどかが魔力を使い果たす前にブロリーに殺される事だね。それだとエネルギーが回収できない」

 

「一番の理想はまどかがブロリーと交戦中に魔女になり、ブロリーがベジータを殺す。そして僕達がこの星を破壊しブロリー達を消す。さて、上手くいくかな」

 

 

 

 

 

「あなたなんかに…みんなは殺させない!」

 

「私達もいるわ」

 

「!マミさん、ほむらちゃん、杏子ちゃん!」

 

「おっと!私を忘れてもらっちゃあ困るなぁ?」

 

「!さやかちゃんまで!契約したの!?」

 

「親友が命懸けの戦いをしに行くってのに黙って見てられるわけないでしょ?私も戦うよ」

 

「みんな…うん」

 

五人はブロリーへ向き直る

 

「…たった五匹の蟻が恐竜に勝てると思っているのか?」

 

そこにはただの雑魚に攻撃を止められたことで怒り心頭のブロリーがいた

 

「雑魚は雑魚らしく」

 

「みんな!行くよ!」

 

「「「「ええ(うん)(おう)!!」」」」

 

「一瞬で死ねええええええええ!!!」

 

見滝原の五人の魔法少女は。

 

伝説の超サイヤ人に勝てるのか。

 

 

 

 

 

 




まどかの強さって具体的にどれぐらいか分からんので勝手に決めてます


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それでも

26話


「ふむ、考えたね、まどか」

 

 

ブロリーとまどか達は互角に戦っている

 

「ぬうううううううう!!!」

 

「こっちよ」

 

「何だと!?」

 

ほむらからロケットランチャーをくらい、ブロリーはほんの少しだけ怯む

 

「鬱陶しいぞ蝿どもがああああああ!!!」

 

怒りに任せブロリーは気弾を全方位へと放つ

 

だが、滅茶苦茶な攻撃は五人には当たらない

 

「ちょっと動くのを、やめてもらっていいかしら!」

 

「らああ!」

 

マミのリボンと杏子の多節槍がブロリーを拘束する

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

ほんの一瞬で拘束は破壊したものの、自分がいいようにされているという事実にどうしようもなく怒り狂い、ブロリーの理性はゼロとなる

 

 

「自分の魔力を他人に分け与える魔法か…まどか専用だとも言える能力だね。彼女でなければ魔法の持ち主の魔力が一瞬で枯渇してしまう。そうならないのはひとえに彼女の魔力の多さにあるだろう」

 

「この魔法によってほむら達はギリギリブロリーに対抗できるほどの力を持った…しかし」

 

「相手はかつて南の銀河を破壊し尽くした本物の化け物だ。そんな彼に対抗するのに、一体どれだけの魔力を消費しているのだろうね」

 

 

「く…なんなんだあの小娘共は…」

 

パラガスは苛立ちながら戦況を見守る

 

「ブロリー!!冷静になればこんな奴らなど敵ではないだろう!!さっさとこの世から消し去ってしまえ!」

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

理性を失い獣となったブロリーにその声は届かない。

 

彼の頭は怒りと目の前の相手を壊すことしかない。

 

「だめ…全然刃が通らない…」

 

「ガアアアアアアアアアア!!!ウガアアアアアアアアアア!!!」

 

ブロリーの攻撃は全て外れ、五人の攻撃は何度もブロリーに命中している

 

しかしその実、ブロリーに全くダメージは通っておらず、むしろ追い詰められているのは五人の方であった。

 

「一度でも当たると不味いわね…」

 

「どれだけ硬いんだよ…こいつ…!」

 

まどかの魔力も長くは持たない。

 

五人の危機にベジータは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くぅ」

 

 

ようやく目を覚ました。

 

 

ベジータは戦いの光景を見つめる。

 

 

それを見てベジータは愕然とした。

 

 

「…あ、あんな餓鬼共ですら戦っているというのに…俺は…」

 

 

ベジータは拳を握りしめ、わなわなと震える

 

 

 

「俺は…」

 

 

 

大地がもう一度揺れる。

 

 

 

「俺が…」

 

 

 

ベジータの体から金色のオーラが噴き出す

 

 

 

 

 

 

 

「俺がベジータだあああああああ!ちゃあああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

超ベジータが、もう一度戦場へ向かう。

 

 

 

「待っていろよお!!!ブロリィィィィィ!!!」

 

 

 

 



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一人の人間として

28話


「うおおおおおおお!!!」

 

ベジータがブロリーに突進していく

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

暴れ狂うブロリーはベジータの姿など見えていない

 

「ぜあああああああああ!!!」

 

勢いの乗った右ストレートがブロリーの顔面にぶつかる

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

ブロリーは気にも留めず、丸太のような腕を腕を振り回す

 

「がっ」

 

防御に入る前に横腹に入れられ、ベジータのあばら骨が砕ける

 

「ウオアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブロリーは体を反転させ、地面へとベジータを蹴り落とす

 

そしてベジータが地面に衝突するよりも先にブロリーが回り込みサッカーをするように前へ蹴飛ばす

 

「ドゥアアアア!!」

 

地面を転がっていくベジータ

 

身体中が悲鳴をあげるが、堪えて足を地面につける

 

その目前には巨体が走ってきている

 

「てりゃあああ!!」

 

気弾を投げつける

 

直撃。

 

無傷。

 

「ちゃああああ!!」

 

直撃。

 

勢いすら弱まらず。

 

「くうっ!」

 

距離をとるため後ろへ飛ぶ。

 

だが、追いつかれる。

 

「ふ」

 

絶叫が聞こえるよりも先にブロリーのラリアットが炸裂した

 

ヒュー

 

ドーン

 

見滝原中学校の壁へとベジータは叩きつけられた

 

「おおお…」

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

顔を押さえつけられたまま腹を殴られる

 

「あ…」

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

「待てえええええ!!」

 

さやか達が追いつきブロリーに攻撃を掛ける

 

「オオオオオオオオオ!!!」

 

ブロリーはボロ雑巾となった男を顔を持ったまま投げ飛ばし、また魔法少女達へ襲いかかる

 

「!ベジータさん!」

 

「おい!何しに来たんだよあいつ!」

 

「…彼でも奴を倒せないなんて…!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃない!来るよ!」

 

ブロリーが前方に大量の気弾を放つ

 

「わっ!くそッ!避けるのに精一杯で攻撃に移れねぇ!」

 

もし、ブロリーが冷静に戦っていれば、彼女達は十秒も持たぬうちにこの世から消えていただろう

 

「ちょ!掠った!今掠った!」

 

こうして彼女達が生きているのは、ブロリーが理性を失い滅茶苦茶な攻撃を仕掛けているからであった。

 

「グオアアアアアアアアアアア!!!」

 

つまり、こうしてブロリーと戦いが成立していること自体奇跡のようなものである。

 

「ボンバルダメント!」

 

「これでも…食らいなさい!」

 

銃による遠距離攻撃ができるほむらとマミは隙を見て攻撃をしていく

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

しかし、当たったかどうかも怪しいほどのダメージしか彼には通らない

 

「いい加減に…!」

 

相手の攻撃に当たればその瞬間命が消える。

 

そんなギリギリの攻防が、長く続くはずがなかった。

 

「ガアアアアアアアアアア!!!」

 

ブロリーは気弾ではなく、自分の体で突進していく

 

その方向には。

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん!前!」

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ…ぐふっ…はあ…はあ…」

 

ベジータは立ち上がろうとするが、足に力が入らない

 

「くそが…あれだけの攻撃で…このザマか…よ…」

 

自分の弱さと情けなさを感じ、惨めな気持ちになる

 

「はあ…はあ…はあ…」

 

もう一度足に力を込める

 

「ぐぐぐぐぐ…」

 

足がぶるぶる震えながらゆっくりと立ち上がる

 

「まだだ…もう一度…」

 

 

 

 

 

 

 

その時、

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオン。

 

 

 

 

 

 

ベジータの横を何かが超スピードで通り抜けていった。

 

 

 

 

 

「…なんだ、今のは」

 

 

ベジータは後ろへ振り返り、音のした方へ歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身の無くなった魔法少女がいた。

 

 

 

 

 

「これは…多分、ほむらだな…」

 

 

 

 

 

その下半身には血で濡れた薄紫と白のスカート、黒いストッキングが身につけられていた。

 

 

 

 

 

「…ふん、出しゃばって余計な真似をするからだ」

 

 

 

 

 

変身が解けたのか、下半身は光に包まれ、スカートはチェック柄に変化した

 

 

 

 

 

「馬鹿な奴だ…弱いくせにな…ぜ…」

 

 

 

 

 

 

その時、ベジータの双瞳から一筋の水が流れた

 

 

 

 

 

 

「…なんだ、これは」

 

 

 

 

 

目元を拭う。

 

 

 

 

 

 

「…どうして、こんなものが」

 

 

 

 

 

その涙はなぜ流れたものなのか。

 

 

 

 

ブロリーに勝てない悔しさか。

 

 

 

 

違う。

 

 

 

 

 

死への恐怖からか。

 

 

 

 

違う。

 

 

 

 

 

「そうか…俺は、こんな奴一人死んだだけで悲しむ甘ちゃんになっちまったのか…」

 

 

 

 

それは、ベジータが人間として流した初めての涙だった。

 

 

 

 

ほむらと過ごした時間は短かった。

 

 

 

 

それでも、心の底で一人の人間としてほむらのことを助けたいと本気で思っていた。

 

 

 

 

 

だが、こうして彼女は死んだ。

 

 

 

 

「ははは…」

 

 

 

 

カカロット、貴様のせいだぞ。

 

 

 

 

昔の俺なら、こんな感情は抱かなかった。

 

 

 

 

 

共に過ごしただけの他人の死に心を動かされることはなかった。

 

 

 

ピシャーン

 

 

 

雷が落ちる。

 

 

 

 

俺にもっと力があれば…

 

 

 

 

ベジータは俯きながら震える。

 

 

 

 

俺にもっと力があれば…こいつは死なずに済んだ

 

 

 

ピシャーン

 

 

 

また雷が落ちる。

 

 

 

 

俺に力が無かったから…こいつは死んだ

 

 

 

 

 

ピシャーン

 

 

 

 

 

ベジータの髪が逆立つ。

 

 

 

 

 

そうだ…奴が殺した。こいつは奴に殺された

 

 

 

 

ベジータは目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむら…お前の仇はあいつだろ…?」

 

 

 

 

 

 

ドーン

 

 

ベジータの後ろに、特大の雷が落ちる。

 

 

 

 

プチン

 

 

 

シュイン

 

 

 

 

目を開ける。

 

 

 

 

「_今殺してくるから、待ってろ」

 

 

 

 

 

_悲壮な覚悟、超サイヤ人2。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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壮烈な決意

29話


「何だ…この気は…」

 

 

暴れ狂っていたブロリーは、突如現れた巨大な気に動きを止める

 

 

 

「っ今のうちだよ!ほむらの生死は後だ!とにかく今は_」

 

 

 

「その必要はない」

 

 

 

 

ベジータが、ブロリーと四人の間に立っていた

 

 

 

 

「!どうやって出てきたんだよ今!」

 

 

 

「何をした…貴様…」

 

 

 

この中で、ベジータが現れるところを視認できた者はいなかった

 

 

 

「…お前ら、下がっていろ」

 

 

 

二人の質問には答えず、杏子へと忠告する

 

 

 

「冗談じゃないよ!私らは…」

 

 

 

四人はベジータの顔を見て黙り込む

 

 

 

 

「行ってくれ」

 

 

 

 

四人は気を失くしたようにその場を離れる

 

 

 

「貴様…何故それだけのパワーを持っている…」

 

 

 

「…さあな、気づいたら強くなっていたんだ」

 

 

 

ベジータの気はブロリーを少し上回る程まで上昇していた

 

 

 

「ベジータ…ううううううう」

 

 

 

ブロリーはどうしようもなく腹立たしく感じた

 

 

 

自分の力を上回る目の前の男に

 

 

 

「うううううううう」

 

 

 

「…さあ、これで一対一だ」

 

 

 

「おおおおおおオオオオオオ!!!」

 

 

 

「_今度こそ、貴様を殺す」

 

 

 

 

 

ブロリーは腕を前へかざし、緑色の気弾を放つ

 

 

ベジータも気弾を放ち、相殺する

 

 

 

「ぬうううううううう!!!」

 

 

 

ブロリーがベジータ目掛けて腕を振り下ろす

 

 

「ふっ」

 

 

ベジータは腕を曲げて防御し、カウンターに腹部へとキックを突き刺す

 

 

「ぐおおおお…うおあああああ!!!」

 

 

だがブロリーもそれだけでは終わらない

 

 

 

ベジータへと突進していきパンチを連続して繰り出していく

 

 

 

ベジータも応戦し、防御を交えつつ自分も攻撃していく

 

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

「らあああああああああああ!!!」

 

 

拳が飛び、それを防御し、蹴りが出され、それを避けて。

 

 

その打ち合いに勝ったのはブロリーだった。

 

 

 

「オオオオオオオオアアアアアア!!!」

 

 

「ぐうっ!!!」

 

 

ブロリーのパンチが顔面に直撃し、ベジータは体勢を崩す

 

 

ブロリーは両手を組み、腕を振り上げ、ベジータの背中へと振り下ろす

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

「うがああああっ!!!」

 

 

ベジータは真下へと墜落していく

 

 

 

「フーっ、フーっ」

 

 

疲れの見えるブロリーが上空に飛んでいる

 

 

 

「フウウウウウウウウウウ」

 

 

手をパーに開き、掌の中で緑色の気弾を圧縮する

 

 

 

 

「…まだだ、俺はまだ倒れん」

 

 

ベジータは起き上がり、上空のブロリーを睨みつける

 

 

「…あれは」

 

 

ブロリーは最大限まで気を溜め、最強の気弾を生成している

 

 

「…あれを食らうと、まずいな」

 

 

「…ここは避けるか」

 

 

しかし、ベジータが動き始める瞬間、ブロリーはそれを放った

 

 

「死ねえええええええ!!イレイザーキャノンッッッッッ!!」

 

 

「!!この野郎、星ごと消し飛ばすつもりか…!」

 

 

ブロリーは星が消し飛ぶ事を考えていない。怒りでそれどころではなかったからだ。

 

 

「クソッタレが…!」

 

 

生き残るには。ブロリーに打ち勝つには。

 

 

「これを…跳ね返さなければならない…!」

 

 

両手を横に開き、腕を前へ突き出す

 

 

「負けるか…負けてたまるか…!」

 

 

そして

 

 

「負けてたまるかああああああっ!!!ファイナルフラアアアアアアッシュ!!!」

 

 

ベジータ最高の技が、迫り来る気弾へと放たれた。

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ最終回かな


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終わり

第30話、最終回


ファイナルフラッシュにぶつかった掌サイズの気弾は、巨大隕石ほどのサイズへと膨張した。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

ベジータは両手からありったけの気を発し続ける。

 

 

 

「オオオオオオ!オオオオオオ!」

 

 

 

ブロリーは続けて気弾を放ち追撃する

 

 

 

 

「っ!駄目だ、押し返される!」

 

 

 

巨大気弾はじりじりとベジータへ迫ってくる

 

 

 

「ぐううううううううう!!!」

 

 

 

 

 

 

 

クソが。

 

 

 

俺は誓ったんだ。

 

 

 

 

あいつの仇を取ると。

 

 

 

 

諦めて、たまるかよ。

 

 

 

 

俺は…俺は…あいつに…

 

 

 

 

「誓った!!!」

 

 

 

ベジータの手から気が爆発する。

 

 

 

「!!!ナニィ!!」

 

 

その爆発は、イレイザーキャノンをぐんぐん押していく。

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

ブロリーは更にイレイザーキャノンを放っていく。

 

 

 

「うあああああああああああああああ!!!」

 

 

 

だがそれでもファイナルフラッシュは止まらない。

 

 

 

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

ついに、イレイザーキャノンがブロリーの元へ到達した。

 

 

 

「グアアアアアアアアアアアアア!?!?」

 

 

 

ファイナルフラッシュは、ブロリーの放ったイレイザーキャノンごとブロリーを押し飛ばしていく

 

 

「りゃああああああああああああああ!!!」

 

 

 

そして、ブロリーは宇宙まで飛んでいく

 

 

 

「!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

その後ろには太陽が。

 

 

 

「べ、べ、べ」

 

 

ブロリーは己の運命を悟り、最後に咆哮を上げる。

 

 

 

「ベエエエエエエエエエエジイイイイイイイイイイタアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

伝説の超サイヤ人は、太陽に飲まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わった。

 

 

全てが終わった。

 

 

 

「全く、君達は本当に予測不可能だ。こんな結末、一体どうやって予測しろと言うんだい?」

 

 

 

力を使い果たし倒れ込むベジータの側に、キュゥべえが寄る。

 

 

 

「ふん…人間を数値で測るからそうなる。人間という種族は無限の可能性を秘めているのだ」

 

 

 

「確かに、そうかもしれないね。現に、君はあのブロリーを倒した」

 

 

 

「舐めるなよ?小動物如きが…」

 

 

 

ベジータが力無さそうに言う

 

 

 

「だけど、僕達にはまだ勝機がある。惑星破壊用のレーザーでこの星を破壊すれば」

 

 

 

 

「ふん、残念だったな…」

 

 

 

ベジータは指からビームを出しこの惑星に照準を定めている宇宙船を破壊した。

 

 

 

「…今度こそお手上げだよ。僕は君にアレを破壊するだけの力は残っていないと思ったんだけどな」

 

 

 

「へっ、ざまあみやがれ」

 

 

 

ベジータは悪態をつく

 

 

 

そこへ、四人の魔法少女が駆け寄ってくる。

 

 

 

 

「!!!ベジータさん!!大丈夫ですか!?あいつは…」

 

 

 

「安心しろ、俺が跡形もなく消し去ってやった」

 

 

 

へっ、とベジータは笑う

 

 

 

「あー良かった、そういえばほむ…って何あれ!?」

 

 

 

全員が空を見上げると、そこには緑色の胴体を持った巨大な龍が浮かんでいた。

 

 

 

「「ベジータ、遠くの地でお前を呼ぶ者がいる」」

 

 

「ふん…まさかあいつらが俺を呼び戻そうとするなんてな…」

 

 

「「さあ、一緒に来てもらおう」」

 

 

神龍がそう言うと、ベジータの体は透け始める。

 

 

「えっ!?何が起こっているの!?」

 

 

「…マミ、まどか、さやか…貴様らと過ごした時間は短かったが…悪くなかったぜ…」

 

 

 

「何が起こって_」

 

 

 

「_さらばだ、魔法少女達」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球では、ブルマとトランクス、悟飯やピッコロ、ヤムチャやクリリンまで多くの人がドラゴンボールを囲んでいた。

 

 

 

「…お」

 

 

 

「「「「「「ベジータ!!!」」」」」」

 

 

 

「あんた今までどこ行ってたのよ!」

 

 

「わーん!パパー!」

 

 

「おうふ、…トランクス」

 

 

「おい貴様、何かまたろくでもないことを企んでいたんじゃないだろうな」

 

 

「っておい!酷い怪我だぞ!大丈夫なのか!」

 

 

次々とみんながベジータへ群がっていく。

 

 

「ええい黙れ貴様らっ!鬱陶しいぞっ!」

 

 

「「…後二つの願いは」」

 

 

放っておかれた神龍が口を開く。

 

 

「あ、そうだ。えーと…」

 

 

ブルマが次の願いを考える。

 

 

「おい神龍…俺の願いを叶えやがれ…」

 

 

ベジータがふらふらと立ち上がりながら神龍に言う

 

 

「暁美ほむらを生き返らせてくれ…それと、魔法少女を全員人間に戻してくれ…」

 

 

「ちょっと!何勝手に願い使ってるのよ!…ん?」

 

 

神龍の目が赤く光る。

 

 

「「願いは叶えてやった…さらばだ」」

 

 

神龍は消え、ドラゴンボールはまた世界のどこかへ散らばっていく。

 

 

「ねえ?さっき言ってた暁美ほむらっていう人と、魔法少女ってのは何なの?」

 

 

「ふん_」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、ほむらちゃん。

 

私ね、「ほむらちゃんを助けてくれる人が現れて欲しい」って願ったんだ。

 

私は、もうほむらちゃんと会うことはできないけれど。

 

きっと、ほむらちゃんは、もう時間を繰り返さなくて良くなるよね?

 

ほむらちゃん。あなたが_

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せに暮らせていると、いいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破壊王子ベジータ☆マギカ、完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




終わったよん


解説しておくと、前の時間軸でまどかが「ほむらちゃんを助けてくれる人が現れて欲しい」という願いで契約して、その結果ベジータがほむら達の元へ連れてこられたというわけです。


小説書くの初めてだからめちゃくちゃ大変だったけど、なんとか書き終えることができてよかったです。

今まで読んでくださった方、お気に入り登録してくださった方、感想をくださった方、ありがとうございました!

次回作書く時までにはもうちょっと表現力磨いておきます。


では、さようなら。


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