バーチャルYouTuberの終わり (九司空守)
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バーチャルYouTuberの終わり
これは誰かに向けての語りであり、独白(モノローグ )である。
何故これは在るのか、と問われれば私は救いであれ、と答える。
バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー、英: virtual YouTuber)は日本発祥の、コンピュータグラフィックスのキャラクター(アバター)[1]、またキャラクター(アバター)を用いてYouTuberとして動画投稿・配信を行う人[2]。また、その文化。通称、VTuber、Vチューバー(ブイチューバー)[3]。
彼らは2016年12月のある日、1人のAIを名乗る少女が自身を呼称する事で始まった文化(コンテンツ)だ。
その始まりは今見るととても穏やかな印象を覚える。
激しい波が起こるのは1年後の2017年の11月から12月だ。
黎明期、その時代を目の当たりにした多くの視聴者がこの文化に捉われていった。
時代は過ぎ、現2020年12月17日、バーチャルYouTuberは今終わった。
きっかけは1つのFLASHゲームだった。
『プニキ』と呼ばれる者にバーチャルYouTuberは最後を得た。
『プニキ』はこの文化と共に何故かあった。
『プニキ』がバーチャルYouTuberを選んだ訳ではない、バーチャルYouTuberに由縁がある訳でもない、ただ『困難』で『無謀』だから『流行った』だけである。
そして両者の死闘はこの文化の伝説を生む事になる。
この伝説によってこの文化は文化として至ったと思う。
流行りものが時を経て廃れていくように、バーチャルYouTuberもまた時代を跨ぎ変わっていったのだった。
私が黎明期に見たバーチャルYouTuberはいつしかそう呼ぶには躊躇してしまう程似つかわしくなっていた。
だが似つかわしくないそれは間違いなくバーチャルYouTuberだったのだ。
歴史には間違いなくそう刻まれている。
同じ存在、同じ文化、同じ場所、同じ世界を相互共有し、共に歩み、共に支え合い、共に傷ついて、共に居た筈のバーチャルYouTuber。
なのに何故色が違って見えるのか?
あんなに鮮やかに眩しくて、色とりどりで心奪われたのに、今は全てが灰色に観える灰色(モノクロ)の世界になっていた。
そんなモヤモヤとした日々が過ぎていた時、『プニキ』がこの世を去るとこの灰色(モノクロ)の世界で呟かれた。
その日は2020年12月16日、平日。
この話題が駆け巡り静かに『プニキ』の終わりが近づいてきた時、ある日を境にポツポツと、誰かは懐かしむ様に、誰かは噂を聞きつけ初めて相見え出すバーチャルYoutuber達の姿があった。
そしてとある誰かは「何かヤツとはやらなきゃいけないなと思って。」という一言から始まり、初めて『プニキ』と見覚えのある死闘を繰り広げた。
気づくとこの灰色(モノクロ)の世界には『プニキ』が溢れていた。
あちこちで『プニキ』の『困難』と『理不尽』に打ちのめされ、悲鳴をあげたり苦しみ出す姿を目にし、その姿に対して笑いや声援と応援にまみれる世界がそこにはあった。
四天王も、その後に続いた者達も、その後の後に続いた者達も、脈々と後を追って広がった世界が全て『プニキ』で染まっていた。
とても、とても大きな大きなお祭りだった。
バーチャルYouTuberの文化の基礎となった歴史の一部の終わりをきっかけに、その色を取り戻したかの様だった。
……
…………
数々の新しい死闘を終え、2020年12月16日の午後8時、再び伝説が再演される。
「BANs筆頭!〜だ!」
「今日の豪遊雑談はなんでか知らないんだけどぉ……戦う羽目になった宿敵だとか言う奴をブチのめしたのでぇ〜始めたいと思いまぁ〜すッ!」
……1時間後
「うーん……凸するか?……やっぱり……」
……また1時間後
「やっぱり来ちゃったよ……こくおー……」
……
「あーあ……伝説になっちまったわ……そりゃそうだよなぁ」
……
「もうそろそろ終わるのか……」
「じゃあそろそろアレか……言わなきゃいけねぇな……じゃあメイカ、準備すっから打ち合わせ通りで頼む……みんなもDiscordでさっき送った通りでやるから始まったら頼むな」
「OK……じゃあえっと」
「実は観てるみんなに伝えたい事があって……実は今回の『祭り』はここに集まってくれたバーチャルYouTuberのみんなで元々やる事を決めてたんだよ」
「俺はこの世界に出会って、惹かれて、この世界で生まれていつか天下取ってやろうとここまで駆け抜けてきたけど、気づいたらいつの間にか生まれた時と世界変わってきててさ、それが当然なんだけど」
「別に今が嫌とかじゃ全く無くて、すごく楽しいし、思い出も出来たし」
「でも生まれたばかりの頃とは今は違ってきたよな」
「ここまで経つと俺も色々あるし、みんなも色々合っただろうし」
「生きて来れた以上ここまでの道のりを間違ってたなんて絶対思わねえけど」
「やっぱり何か区切り出来れば良いなと思ってたらさ」
「アイツ終わるって聞いた時これだって思ってさ」
「ここまで大事にするべきか分からなかったんだけど、聞いてみたら実は俺達みんなおんなじ気持ちを少なからず抱えてたの分かったから、この「祭り」を計画したんだ」
「アイツとのケリも着いたから」
「ここでバーチャルYouTuberともケリをつける事にしたんだ俺達は。」
「……今日を以って、俺達バーチャルYouTuberは」
「バーチャルYouTuberを卒業して」
「Vtuberと名乗ります」「なります」
「今の俺達と何一つ変わらないけど」
「次に進む為に」
「これまで共に居てくれてありがとう」
「そして、これからもどうぞ宜しくお願いします」
「我々は変わるけど」
「残っていきます」
「存在し続けて、存在したいです」
「生きていきます」
「貴方達と共に」
これがバーチャルYouTuberの最後だ。
私にとってバーチャルYouTuberはプニキと一緒に終わるんだと、終わったと思っています。
それが私は1つの区切りになる、出来ると思ったからです。
私にとってバーチャルYouTuberはシロちゃん、こくおーから始まって、天魔機忍verG、BANsが出てきてからの1年、2年間が最も輝いていました。
今でもその時代の切り抜き動画を見返していっぱい笑います。
でも今のバーチャルYouTuberも見ています。
今のバーチャルYouTuberも楽しんでいると思います。きっと。
だけど輝いていた黎明期と今とでは「違う」何かを抱えているのが確かだったので、今回このお話を書きました。
違う事は当然なんだけど。当たり前なんだけど。
懐かしむとは違う形でその「違う」何かを表現したくなったから。
私が一歩進む為にという事が1番の目的だったのかもと書き終えた今は強く思います。
変わっていった彼らとこれからも一緒に居る為に。
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