妄想~にじさんじKING~ (緋衣灰人)
しおりを挟む

前説という名のこんな妄想

Kanaria様およびにじさんじライバー様を誹謗中傷する意図はなく、あくまでも個人の感想を基に作成させて頂いております。

ただし、にじさんじライバー様およびKanaria様に迷惑が掛かった場合、こちらは削除いたします。(関係者ではないと思われる場合は受付るかどうかは未定です)
因みにJPおよびIDおよびKRに関してライバー様の情報(公式・非公式含め)を見ずに2回聞いて、書いていますが、JPは一部のライバー様の前情報を知ってしまっているため、若干その影響を排除しきれていません。
IDとKRに関しては全くの無知だったので、曲の歌い方やイラストからのイメージが先行しています。が、もしIDまたはKRおよびライバー様本人のタブーに触れていた場合は申し訳ありません。(この場合は削除ないしは訂正をさせていただきます)



敬称略

 

 

JP

 

鷹宮リオン

 

国の悪徳令嬢。

王座に興味はあっても、王子に興味はなくて

婚約破棄を口実に国からとんずらしようと画策する。

 

 

黒井しば

 

王座の番犬。

冷徹に政務をこなす澄まし顔の宰相。

真顔から笑い顔になると、何人かの首が飛ぶとの噂。

 

 

町田ちま

 

国の女王。

幼く見える自分の容姿すら利用しながら国の舵を取っている。

有能な人材にも恵まれている模様。

 

 

弦月藤士郎

 

王族の末端に座す王子。

王位とか全く興味はないけど、周囲は自分の行動で一喜一憂する。

そこにウンザリし始め、王座を深紅に染めることに決めた。

 

国の宰相。

愚かなる友のことを思い、国を正す。

それが例え、王座を深紅に染めて、友にお前が王だという時が来たとしても。

 

 

本間ひまわり

 

悪役令嬢にいじめられていたと思われていた令嬢。

実際いじめはなかったし、逆に王族に転がり込めてよかったと思ってる。

そして乗っ取る。周囲の信頼を勝ち取り、王座に就く。

 

自由奔放な王女。

無邪気なまま育ち、無邪気のまま狂気を振りまく。

ある種の信仰対象にまでなる。

 

 

鈴鹿詩子

 

王族の相次ぐ急死によって祭り上げられた若き王。

無知のまま、操り人形のように、従順な振る舞いをしていた。

だがある程度地盤固めと裏工作がなって強権を行使し、周囲を一掃。

 

 

メリッサ・キンレンカ

 

異世界召喚され、男と間違われた女子学生。

勇者としての活動を嬉々としてやる。

そして魔王を倒した後、その座にそのまま座る。

 

魔物の軍を率いる人間

VRMMOで魔物の軍を率いていたら、いつの間にかその世界に転生。

始めは保身が主だったが、なんかいけそうと思い、過激な本性が。

 

 

ニュイ・ソシエール

 

王宮の魔女。

教育係を兼任しながら、王宮の書庫を探索する日々を過ごす。

善か悪かは見る人によるが、本人は怠惰に知を探究している。

 

 

葛葉

 

国の王座に長き日々座した王。

王の中の王と称えられ、冷徹に勅命を下す様は城下でも話題に。

変わらない美貌で魅了される臣下が続出する。

 

 

西園チグサ

 

男装の麗人。

王族の中で性別を偽って登記されている王女。

最近はそれを逆手に人生を楽しんでいる。

 

 

健屋花那

 

戦で傷付いた兵士や民を救済した王女。

ただし戦時や即位中は行方不明者の数が多く、

一説には聖女とも、魔女とも、歴史家の間では議論が絶えない。

 

 

雪城眞尋

 

嗜虐的な女王。

遊戯によって先王を負かした新たな女王。

たまにその手のゲームに紛れ込み、愉しんでいる。

 

 

甲斐田晴

 

愚王とも賢王とも言われる王。

いつもニコニコとしながらも外交で平等な関係を維持。

ただ、時たま冗談を呟き、家臣団を戦慄させる。

 

 

レヴィ・エリファ

 

冷徹な亜人の女帝。

ただし昔は結構ヤンチャをしており、帝位に着くとともに

現在の冷静に状況を俯瞰する女帝へとなった。

 

 

桜凛月

 

双子の皇女皇子。

双子は王家を割る不吉として、片方を従者に。

お互いが相手を王として相応しいと思っている。

 

 

早瀬走

 

王位簒奪を目論んだ第三王妃。

自分の子の継承権を取り上げられたことに激怒。

激情型に見せかけ、綿密に計画を立てる。

 

 

長尾景

 

王国の地方貴族。

王国内の権力に日和見主義や事なかれ主義。

だが、国境を越える内外の敵に対しては冷酷無比。

 

 

ベルモンド・バンデラス

 

魔王として恐れられる大臣。

物腰は穏やかだが、相対すると目が物語る。

益が有るうちは有効活用を考えるが、害は許さない。

 

 

フレン・E・ルスタリオ

 

騎士として戦う第二皇女。

戦場において敵無し。政事において形無し。

戦果が知りたければ、無惨なモノか、氷漬けのモノを見ればわかる。

 

 

白雪巴

 

北壁と名高い冷酷で高潔な女王。

寒冷地に於ける軍馬と兵士の育成が盛ん。

その国の北に何があるのか、知るものは少ない。

 

 

成瀬鳴

 

新興国家の年若き王。

争いではなく、誰も手を出さなかった場所を開拓した国家。

ただ背後に大国の支援があったのではと噂されている。

 

 

星川サラ

 

過酷な運命を背負った幼女王。

暗殺、追放、幽閉、処刑などの様々な危機の中で、生き残った。

その為、肉体と精神に過度な負荷により幼い容姿のままだという。

 

 

奈羅花

 

王を支える姿幼き女王。

実態は契約を結んだ異界の存在。

契約内容は明らかでは無いが一応の平和に変なものではない模様。

 

 

 

ID

 

Etna Crimson

 

異国から嫁いできた幼き姫。

無邪気に笑いながらも、心の中では冷徹なまでに冷めている。

嫁ぎ先の栄枯盛衰を感じ取って、衰えたらすぐ去る予定。

 

 

Miyu Ottavia

 

国の図書司書、または後宮の侍女。

国の栄枯盛衰を他人事のように見つめる。

陰から操るとかはなく一喜一憂を冷静に見つめる。

 

 

ZEA Cornelia

 

旅の一座で踊り子の美姫。

国の王族に呼ばれる程に有名である。

諸国を回っているため、結構国の情勢を把握して立ち回っている。

 

 

Nara Haramaung

 

国を一手に掌握している女王。

実力主義の中を、王族として勝ち上がった。

敵か味方かの極端な力関係の座の上に座っている。

 

 

Taka Radjiman

 

王子たちの教育係。

陰ながら支えているように見せつつ、内紛を煽っている。

ただし証拠は残さないし、用意周到に立ち回りを行っている。

 

 

Hana Macchia

 

国の第〇王女(継承権が遠い)。

自由気ままにあるがままに生きる。

でも、腹の内は解らない。

 

 

Layla Alstroemeria

 

国の貴族令嬢。

気品にあふれ、皆の手本のような令嬢と呼ばれる。

でも、実際は心の中も含め、結構ハチャメチャだったりする。

 

 

Amicia Michella

 

国にいる魔女の一人。

滅多に表に出ないし、出たくない。

国がどうこうとか全く興味ないし、ただただ今の生活を壊したくない。

 

 

 

KR

 

Nari Yang

 

国の貴族令嬢。

無邪気に周囲を振り回し、振り回される周囲を見て喜ぶ。

でも遊びが終わると途端に冷淡に周囲をまとめ上げる。

 

 

Gaon

 

レジスタンスに与する王子。

政争とかに全く興味はないが、知らない間に国が荒れるのは不服。

だからレジスタンス内部で、流れとか、結末を操作しようと画策中。

 

 

Seffyna

 

国一番の商人の娘。

実際は裏で手を回して、商会を押し上げた陰の実力者。

壮絶な過去や他の商会との鎬の削りあいがあったとかなかったとか。

 

 

 

 

IN

 

Noor

 

年齢不詳の女王。

元は普通の女王だったが、呪いか、禁忌に触れてか

身体に紋様が浮かんでからは一切歳をとった様子が無いという。

 




今後歌われた場合、順次追加しようかと思います。
多大なるにじさんじ様及びライバーの皆様、素敵な歌をありがとうございます。
Kanaria様、素敵な楽曲を生んでくれて、誠にありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING鷹宮リオン

まずは土下座します。鷹宮リオン様、ファンである方々、リスナーの方々広い心を持ち、お許しください。確実に寄せる努力を放棄してしまいました。しかも短い。
言い訳:貴族親子の会話が想像がつかないのと非公式の方を見て、語録使かってしまうとなんか違う感が出るのと利用していいのか…


鷹宮家と言えば、国において知らぬ者はいない有名な貴族の家である。

ただし良い意味でという事ではなく、悪い意味でだが。

家の起こり自体は、武勇などではなく、金銭によって国から貴族の位を戴いている。

それも国の建国時において、国を支える程だったため、侯爵相当まで行った。

だが王宮において有能な人材だったとしても、市井においては悪評が煙のように立ち上っている。

曰く「鷹宮家に奉公に出た者は二度と姿を見ない」「金銭融資を持ち掛けられた家はある日忽然と姿を消す」「鷹宮家には隠し部屋があり、そこには様々な表に出せないコレクションが飾られている」など。

誰が言ったか、鷹宮家は悪徳の家。悪なのに徳を国から受けていると。

 

だが実際は……?

 

「ちょっと、お父様」

 

「ん?何だリオン、淑女にあるまじき所作だぞ」

 

「はん、我が鷹宮家は今でこそ貴族として国に登録されていますが、その実商売や金融を生業にしてる一資産家ってだけでしょ」

 

「いやいや、国の建国時から品行方正に影ながら支えてきた名家だよ家は」

 

「領地を持たない法衣貴族の間違いでは?というか先祖代々領地経営を拒んで、国との距離を置いておいて、他の方々から家が何て呼ばれてるかご存じなのですか」

 

「領地経営をすれば、そこに縛られるし、才覚が必要だ。それに国との距離感は適切な距離だよ。それと家の評判は王族、貴族、市井で別れすぎているから、どれのことかな」

 

「貴族からで、国のへその緒だって、これってもう必要とされてないってことでしょ」

 

「確かに、建国の折の莫大な資源提供をしたっきり当家としては粛々と生業に力を注いでいただけなのだけどね。因みに度々の国へのフォローもしてるはずだよ」

 

「それが日陰過ぎるからこんなこと言われるんです」

 

「それで?そんな愚痴を言いに来ただけかい、リオン」

 

「話がずれました。そんな慎重だった我が家がなぜ、王族と婚姻を結ぼうとしているのですか、お父様」

 

「問題かな?」

 

「私の問題ですよ!!」

 

「いやいや、嫌いかい?」

 

「王座に興味はあるとは言いましたが、王子にこれっぽっちも興味をひかれませんわ」

 

「王配は嫌だったか……まあ、そんなことだとは思っていたけどさ」

 

「お父様何を」

 

「さてリオン、かねてより進めていた計画を我が代で完遂させようと思うのだよ」

 

そう言いながら仄暗い笑みを浮かべる父親を、言葉の意味が分かったのか、リオンもまた満面の笑みで見返したのだった。

 

 

そして、学園の卒業ダンスパーティーにて、何故か無事に婚約は破棄された。

リオンとしては身に覚えのない誹謗中傷をさんざん言われたが、実家の件で慣れきってしまった身としては、学生の戯言ごときに心動かされることは無かった。

でも、王子に興味はなかったが、王座というモノには

 

「残念ですが承知しました」

 

そう言い残し、リオンは会場を颯爽と去っていった。

立つ鳥跡を濁さず、そんな言葉が似あうほどに乱れることなく、学園の会場前に横付けされていた家の車に乗り込んだ。

 

「お嬢様?」

 

運転手からの問いに

 

「残念だけどうまく事が運んだと、お父様に伝えて頂戴。私はこれからの為に眠るわ」

 

「畏まりました。では邸に着いたら起こさせていただきます」

 

そう言って車は静かに走り出す。

 

そう言えば、唯一心残りは、王子の後ろにいた令嬢だったが、すぐさま眠気の方が勝り、すっかり忘れ去ることとなる。

 

 

そしてその数日後、国の歴史から、鷹宮家という貴族が抹消された。

 

 

 

 

「それにしても」

 

「ん?何だいリオン」

 

「外国に拠点を複数個もって、それから国を出ようなんて、よく国が許したものねと」

 

「外国に拠点は奉公人や金融取引の家が融通してくれてるんだから、別に困る事でもないじゃないか。それに国はそこまで束縛できるわけがないじゃないか」

 

「……はぁ、お父様の辣腕具合が恐ろしくも頼もしいですわ」

 

「恐ろしいとは、リオンのコレクションに比べれば可愛いものだと思うけどね」

 

「あら、誰も引き受けない、捨て去ったもの、それをどうしようが所有者の自由でしょう?」

 

そう言いながら目的地に向かう一団とリオンのコレクションのモノ達であった。




蛇足
鷹宮家は一応まともな部類の貴族家
悪名はあえて放置して、そう言った輩を近づける、もしくは遠ざける為
噂一、奉公に来た奴のうち、優秀な奴を外の商会に派遣していたから
噂二、金銭融資は有用なら外国展開させ、輩なら粛々と制裁していたから
噂三、国の裏側文章&隠し財源&リオンの個人コレクション(表でいわくつきで出回っていたやつ&奴隷含む人材)が混じって伝わった
鷹宮家の悲願:国の外に拠点を移す
リオン個人:王座ってどんなもんだい?

国の思惑:出ていっても商会は撤退しないから別にそこまでの損害にはならない&市井、他貴族の不満解消に一役買う……あと他の国も似たような暗部とか、恥部持ってるし、嫌になったら帰って来るやろ(目クソ鼻クソ感)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING黒井しば

国において番犬と呼ばれるのは多くいるが、こと王宮においては3つが該当する。

一つは王族を守護する近衛騎士、武勇に優れ、他の兵団と全面衝突しても拮抗すると言われるほど精強な軍団である。

もう一つは隠密集団、諜報防諜に長けた集団であり、国を陰から支える影の集団である。

最後の一つは宰相。すまし顔の黒衣を着た冷徹な犬面の女である。国の正常なる運営を司り、もしも彼女の笑い顔が出た日には、何人かの首が、文字通り飛ぶとか。

因みに、彼女の犬面は先天的ではなく、魔女に幼い頃に掛けられた呪いだとか、今の地位に上り詰めるための代償だとか、国の中枢を知ったための首輪だとか、噂が絶えない。

そんな彼女が久々に仕事に追われることなく、ゆっくりと執務室でくつろいでいると

 

「ヤッホー」

 

闖入者がノック無しで入ってくる。本来であればチクリと小言の一つでも零すところだが

 

「はぁ」

 

溜息を一つ吐き、部屋に控えていた侍女に合図を手で出す。静々と部屋を後にする侍女。

変わるようにずかずかと近寄ってくる闖入者。

 

「溜息吐くと幸せが逃げるよ」

 

「アンタが入ってきた時点でもう逃げ去った後だよ、魔女様」

 

「ふむ、そういう考え方もあるか」

 

「それでわざわざ私の執務室まで来て、何の御用で」

 

「……くつろぎに」

 

「滅多に図書室から出ないアンタが?用事があれば使い魔に来いって言わせて来るのに?」

 

「ふぅー……黒狼の宰相は手厳しいね、さて侍女が茶菓子を持ってくる前に、本題を話そう。君のそれの解決方法を姫様経由で依頼されていてね。どうするか聞きに来たんだよ」

 

「解決、ね。要らぬ世話と言いたいところだが、姫様の好奇心にも困ったものだ」

 

「愛じゃない?」

 

「彼女が私を愛する?冗談は私の顔だけにして欲しいものだよ。そして答えはノーだ。この姿でも政務は滞りなく終わる、むしろこの顔のおかげで助かってる部分の方が大きい。そして今更姿を変えてそれこそ君が言う、姫様の愛がなくなったら、君、責任、取れるの?」

 

ザワッと宰相の毛が立つ。丁寧な言葉の奥底に憤怒というか、仄暗い感情が見え隠れしている。

ソレに魔女は

 

「ん~、噛まれるのは勘弁」

 

「こっちも不味そうな魔女の血肉はごめんだよ、意思の確認は取れたんだ、さっさと侍女が持ってきたお茶でも飲んで、図書室に帰ってくれ」

 

その言葉が終わった瞬間、扉がノックされ、侍女がワゴンカートを押して入ってくる。

乗っているのは一口で済みそうなクッキーやマカロンなどの茶請けと、湯気御立てる紅茶とコーヒーだった。

 

「ちなみにどちらがどちらだい」

 

「見てわかるだろう、自分がコーヒーだよ、それともコーヒーの方が良かったかい」

 

「いや、これ以上犬の尾を踏むことは避けたかったからね、じゃあ、戴いてくよ」

 

そう言いながら、スイッと手を振ると、紅茶を含む茶請けのほとんどを宙に浮かし、出ていった。

あとにはコーヒーと少々残った茶請けとそれを運んできた侍女しか残らなかった。

 

「はぁ~」

 

溜息を吐きながらも、椅子に深くもたれかかる黒井しば。侍女はチラリとみた後、接客スペースの机の上にワゴンの上のものを並べながら

 

「よろしかったのですか」

 

「姿を戻す件なら断ったよ」

 

「いえ、そちらではなく」

 

ためらうように言葉を選ぶ侍女だったが、いつの間にか黒井は接客スペースまで来ており、おもむろに侍女の前に座ると

 

「本当にイタズラにも困ったものだ、君もどうだ、休みのはずなのに熱心に私に付き合ってくれてる侍女君」

 

「宰相様のお誘いでしたら光栄です」

 

そう言って侍女も席に着き、その日の執務室はそれだけだった。

 

 

 

図書館にて

魔女が入っていき、司書のいるべきスペースまで浮かしていた紅茶と茶請けを魔女の前にそっと置いた。

 

「お疲れさま、それで、お願いは聴いてもらえ……無かったみたいだね~」

 

司書スペースの魔女は入ってきた自分とうり二つの、ただしふくれっ面の魔女にそう声をかける。

 

「好奇心だって、愛なんかじゃないって言われた」

 

「ふむ、でもそういうけど、君のそれは愛とは違うんじゃない」

 

「……そうかも、でも残念ね、しばの本当の姿ってみてみたかったのに」

 

「あまり突っつくと君でも噛まれるんじゃないかな、王女様」

 

そう司書スペースの魔女が言いながら指を鳴らすと、ふくれっ面から戻った魔女が縮尺が小さくなった。

幼子、と言えるか、少女というのか、別れる年頃の姿の女の子になった。

 

「あぁ~、もうちょっとあの身体楽しみたかったのに」

 

「ん~、質量を持った幻術魔法だけど、自分の身体を好き勝手する王女様はあんまり、見たくないかな。あとで宰相が激怒顔で突入してきても困るし」

 

「?」

 

「彼女の感覚を騙すにはまだまだだったようだね、ほら」

 

そう言いながら、魔女は手元に来ていた茶請けの下に紛れていた一枚のカードを引っ張り出した。

 

毒味は済ませてありますので、ご心配なくお食べください

 

そう綺麗な筆跡で書かれていた。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING町田ちま

幼くして王族が王座を継ぐことはままある事ではあるが、彼女に関しては異例と言えるだろう。

妖精王女と呼ばれる程、かわいらしさを滲ませていた一桁台の年齢の時に王座に就くことになった。

詳しくは省くが、本人からすれば「押し付けられた」の一言で済んでしまう事柄だった。

というか、「周りが優秀で、しかもそこまで野望とか野心もってなくて、周辺国もこっちに干渉してる暇がない状態だったからよかったけど、普通国家運営任せるとか、ヤベー奴らだよ、両親含めて」とご成長された王女が言ったとか言わないとか。

ソレに対して「王女様ご成長なさって、私は嬉しゅうございます」と感涙する宰相がいたとかいないとか。

 

そんな女王も16の齢になられた。相変わらず妖精女王だとか、ハーフリングの先祖返りだとか、セイレーンやハーピーの先祖返りだなんて声もあるにはあるが。そんな王女の一室では問題が起きていた。

 

「いやーーー!!」

 

「我が儘を言うんじゃありません」

 

「ヤダヤダ結婚なんて」

 

「あくまで今の段階じゃあ婚約」

 

「婚約も結婚も同じようなモノでしょ、身分考えなよ」

 

「でもそろそろ身を固めないと」

 

「ダメダメ、まだ十六歳だよ」

 

「もう十六歳なんだよ、他の貴族や他国の王族は一桁台の頃から決められた許嫁がいるって言うのに」

 

「よそはよそ、うちはうちです」

 

「両親の許可は取ったのに、何で」

 

「私の目が黒い内はそんな勝手は許しません」

 

「……因みに要望は?」

 

「身長差5㎝、容姿問わず、学の有無もこの際求めず、ちま女王の事を第一に考え、命を賭して守れる、野心無く国家の礎足らんとする、私との時間を邪魔しない。あと政務を幼子に投げようとか考えない常識とかがあれば尚可」

 

「私用満載で最後のは両親にぶっ刺さるのと流れ弾がこっちにも来てるんだけど、宰相?」

 

「はははッ、冗談ですよッ、ちま女王」

 

「言葉がなんかおかしいけど、そんなに私が婚約を結ぶの嫌?」

 

「国家の犬と言われた私に鳥肌を立てさせるくらいの物事ですね」

 

「さっきチキンだったからすでに手遅れじゃ?」

 

「政変とかに対して風見鶏だった記憶はございませんよ」

 

「……祝ってくれないの」

 

「くっ、祝いますよ(相手は呪いますが)」

 

「副音声……ってか普通宰相の方から提案してくる話でしょ、これって」

 

「ちま女王、そんなことより城下町とか、お部屋のバルコニーで歌を歌うの好きじゃないですか、それを邪魔する存在を入れるのはどうかと」

 

「邪魔するかな」

 

「跡継ぎ問題や夫婦別々じゃない時点で、今の様には歌えないのでは?」

 

「ん~」

 

「同じ曲を規定数までとか、縛りを設けて歌い続けたり、歌うことで夜明けを迎えることはちょっと」

 

「……保留?いやでも国民の常識だし」

 

「我が家の常識、外では非常識、みたいな言葉が頭を過りますよ、それ」

 

「その常識を照らし合わせて、選考したはずなんだけど」

 

「ちょっと書類見せてください……ちま王女」

 

「ん?何?」

 

「先方明らかに私宛で送ってきてますよ、これ」

 

「…………え!?」

 

 

こうして、ちま女王の婚約話は宰相に振られることになった。

ちなみにこの婚約がうまくいったかどうかは謎、そしてちま女王の浮いた話が出るのはまだまだ先の様である。最悪、魔女に依頼してほれ薬か、分家筋から優秀な子を養子に入れようかと考えるまであと1000日。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING弦月藤士郎

王は多くの人々に必要とされる。その為、王族を増やす事は安定とともに、不穏分子を身内に入れる事がある。でも、中には市井に血を分ける場合がある。所謂庶子である。

ただこれは王族に限らず、貴族の中にも庶子がたくさんいるとのことだが、認知率は王族よりも劣る。ただし、王族は国によっては一挙に断絶する可能性があるため、隠されたままの場合がままある。

そしてそんな王族の庶子の一人である、とある男は王城の離宮の傍で暇を持て余していた。

 

「暇なんだけど、なんかない?」

 

「申し訳ありません。一侍女に何を求めているのでしょうか?」

 

「暇つぶし」

 

「宮廷楽曲や遊技場なんかはどうです」

 

「曲が降りてこない、遊技場は姿を隠して出入りしてたけど、出禁になってもうた」

 

「出禁って、どんだけ荒らしたんですか」

 

「う~ん、うちの家計を火計から救う程度?」

 

「……あぁ、だから浪費できてるんですね、あの方たち」

 

「そうだね、尽きないと思ってるんだね、まあ僕には関係ないことだけど」

 

「あなたが王座に着けばと私個人としては思っているのですが」

 

「日陰者、陰干しされてる僕にはあんまり期待してほしくないかな」

 

「ぶっちゃけると?」

 

「血に塗れた、クソの積もった、火刑に処されそうな、とかの冠詞が付きそうな王座はノーセンキュー」

 

「……まあ、そうでしょうね、ですがバタバタとした動きに乗じてあなたが王座に就くことだって」

 

「できれば、逃げたいね、その時が来たら」

 

「……やる気ないですね~」

 

「やる気起きると思う?当人になってみたら」

 

「無いですね、私ももし闘争時は逃走しますね」

 

「巻き込まれは嫌でしょ?」

 

「でも、お兄様方は」

 

「何が魅力的に思えるんだろうね、あの王宮の人々は」

 

「さぁ、浅慮な私には思いもつきません」

 

「というか、僕を祭り上げた挙句無事王位に着いたらそいつら一掃するか、処断するよ、結構マジな話」

 

「貧乏籤を引かせた奴も貧乏籤をって、どっかの亡国の法律ですか」

 

「まあ、早々引く気はないし、表に出る気もないよ」

 

「……」

 

「今日も一日平凡に暇を謳歌する、日陰者は楽をしたい」

 

 

 

 

 

「……って言ったはずなんだけどね」

 

王座に座る弦月王家の第7代目王として即位した弦月藤士郎がそう独り言ちる。

 

「どうしてだよッ!!って何回言ったかな、ねえ侍女君?」

 

「浅慮な私に振られても、23回くらいじゃないですか?絶叫はそのうちの7回ぐらいですけど」

 

「……君も大概だよね、あの混乱期に逃げればいいのに」

 

「無駄なことは致しません、貴方が逃がすとも思えませんし」

 

「うん、逃げても無駄だよって言えなかったのはちょっぴり残念かなって思いながら、無駄に手数を割かなくて良かったのは僥倖かな」

 

「それはようございました。でもまさか祭り上げられる前に王家が全滅するとは、想像できませんでした」

 

「そうだね、まさか王家祝賀パーティーで出された珍味のキノコが、特定のお酒を飲んだ後だと中毒化するとは、魔女が解析してくれなかったら、原因不明で僕が暗殺したとか後世の歴史で叩かれてたんじゃないかな」

 

「暗愚や狂った王よりはましとか、逆に英雄扱いされてるんじゃ」

 

「はははっ、累積損益を押し付けられた感が強くて、国の正常化に終始して、今この王座に座ってる自分が?信じられねぇ」

 

「まあ、過去の英雄や偉人もそんな感想を持っているかもしれませんよ」

 

「もうさ、王政とかやめて、貴族による合議制とか、今度提案してみようかな」

 

「多分ご乱心として片づけられますよ、それ」

 

「だよね~」

 

「では私は次の謁見者ための準備に行ってきます」

 

そう言って侍女は王座の間を後にして、扉が閉まった瞬間ぽつりと

 

「中毒死の原因のお酒も珍味のキノコも、発注したのは結局誰だったんでしょうね?」

 

そう呟き、本来の侍女の仕事へといそいそと向かっていった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING本間ひまわり

本間王家は祝福されている。そう評される王家がある。

才覚やその治世によって長く続く王家だ。そしてそんな王家に新たに生まれた王女がいた。

 

「鳥は何で飛べるの?」

 

「この料理はもっと○○した方がいいよ」

 

「水浴び気持ちいい」

 

「○○可愛い」

 

そんな風に無邪気に、でもすくすくと育って

 

「おっ?ライン越えか」

 

元気に育っていった。育っていくにつれ、名前の通りの可憐で無邪気な笑顔が人々を魅了していった。

そして運命の歯車とは残酷なものと、のちの歴史家が評するのは、彼女の教育係たちの運のなさだった。

王家とは、貴人とは、貴方様とは、そう歪んだ情報を嘯いていった。だがそんな歪んだ情報の正誤も彼女は理解していたと思われる。

 

最初の犠牲者は、王女に偽りの言葉で惑わそうとした教育係一だった。

 

「鳥が飛べるのに、彼女は跳んだだけだったよ」

 

七番目の犠牲者は、王女を毒殺しようとした料理番だった。

 

「私が食べたものを料理長にも上げたんだよ」

 

十二番目の犠牲者は、王女を溺死させようとした侍女だった。

 

「水浴びが気持ちいいって教えてあげたんだよ」

 

十七番目の犠牲者は、可愛くなくなった側仕えだった。

 

「可愛いままがいいよね」

 

 

明るい雰囲気のまま、彼女は無邪気に狂気を振りまいた。一時期他国への輿入れも噂されたが、何故か相手方の国がごたごたしたせいで、噂も白紙に戻った。

 

運命の歯車は回る、何を巻き込もうとも止まることなく回り続ける。

 

 

 

本間王家は呪われている。そう評される王家があった。

 

 

 

明るい暖かい太陽も近づきすぎれば溶けて、燃えて、焦げてしまう。直視し続ければ目は焼かれ、盲目になる。そう、この王女はその類のものだった。あまねくすべてに温かさを享受させつつ、信仰の対象として君臨し、盲信をさせていった。

だがいずれ、太陽も地平線に沈む。その時、その場所に立ち会えないことを嬉しく思うべきだろうか。哀しめばいいのか。私も判断がつかなくなっている。明日の処刑でこの文も途絶える。

できることであれば、この文章が日の目を見ないことを祈る。

 

名もなき政治犯の独房日記より

 

 

 

今日、第二宰相が処刑された。女王様はニコニコとその様子を報告に来た処刑人の話を聞いていた。私は初めて女王様を何か別の存在に感じた。人ならざるなにか、私達常人には想像を絶する存在に感じられた。

ああ、この方こそ我々を導いてくれる方なのだと。

国民の多くに支持され、そして今なおこの国をよりよく浄化しているこの方こそ、この国をより繁栄発展させる、希望の太陽なのだ。

太陽に逆らう、神に近しい存在に逆らうなど、全く意味のないことだったのだと、今迄の罪人たちを見てきたからわかる。

ああ、この栄誉ある大役をこれからも永く、永く続けられることを願ってやまない。

 

とあるお世話係の日誌より

 

 

 

 

「変なの~、私は私がいいと思ったことをしてきただけなのに。周りが許せないなら言えばいいんだよ。何も理由なく処罰を下すわけじゃないのに。同じ事をされる度胸がないなら、すべきじゃないよ。命を軽んじるのであれば、軽んじられると、命を狙うのであれば、命を狙われるのだと、王座から引き摺り下ろすなら、同じく引き摺り下ろされる覚悟を持たなきゃ。ね?」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KING鈴鹿詩子

王族の急死というのはいつの世も起こり得る出来事である。それが立て続けば必然だが、稀に偶然降って湧く場合がある。

 

「この文章を書いた奴は未来予知能力でもあるのかね?」

 

歴代各国王族史という分厚い本を机の上に投げ出しながらそう独り言を呟く。

まさにそれと同じ状況になったのが鈴鹿詩子だった。父親、つまり先帝は酒を好み、それが原因で病死。母親、女帝はそれを哀しみ、衰弱死。他の兄弟たちは、それぞれ戦死、圧死、転落死、中毒死、焼死、そして一番笑えないのが

 

「腹上死って、お盛ん過ぎないか、私と4つも変わらないだろ、第六皇子よ」

 

鈴鹿詩子15歳の呟きである。

 

「皇太子は葬儀に向かってくる途中のがけ崩れで土石による圧死、第二皇子は武功をあげようと功を焦り矢の集中砲火による戦死、第三皇子は城の階段を踏み間違えての転落死、第四皇子は葬儀後の食事会で食材に当たり中毒死、第五皇子は住まいが全焼の上、焼死。どれも不自然なようで、調べても全く不審点が出ないという、偶然とはかくも残酷なり」

 

そう頭を抱えていたが、ガチャリと扉が開く音がして

 

「鈴鹿家第七皇子、ウタ様準備整いました」

 

「ああ、判った、今から向かうよ」

 

鈴鹿詩子、改めて、鈴鹿ウタの戴冠式が行われる。教会隣国諸侯貴族、国民の全てが自分の登場を待っている。第七皇子としての自分を。本来であれば第一皇女として15歳を迎えて近日中に発表を行う予定だったのに。バタバタとぶっ倒れになるばかりに、発表は見送り、そして直系がいないため、今まで甘い汁を吸ってきた連中が次に集る場所として私を御輿に挙げた。

 

「はぁ~、果たして本当に父や母、お兄様方は偶然だったのか、疑っちゃうじゃないか」

 

そう愚痴りながらも、ズンズンと王城のバルコニーへと出て、少しでも威厳のある様に振る舞い、全国民へと顔見せを済ませる。今日この日から仮面を被る。

 

「さて、それじゃあ、僕は何をすればいい?」

 

無能な王、傀儡国家の様に周囲に敵を作らず、蜜を吸いに来た奴らにも一定のラインであれば許容した。

そしてそんな陰で、錬金術師、魔女、医者など多くのモノを引き込んだ。表向きは呪われているのではないかと様々な分野の者達に声をかけ、臆病に王城に引きこもる王。だが裏では、あの裏取りと、自分の性別をどのように誤魔化せばいいのかを知恵を借りている状態だ。ただし王としての雑事も降ってかかってくる。お世継ぎというモノをこさえなければならない。事情を知らない諸侯貴族たちの中には、自分の家の令嬢をといったものもあったし、私の正体を知っている奴らからは、従者としての男の子ともいえる者や、護衛の名のもとに騎士として等、様々な理由を基に送られてきた。

なお、招致した各部門の専門家監修のもと、事を起こす前に、事が起きないように、愉しみながらも、節度を守って行っている。まあ、そのまま返すのも無作法というモノ、精神である。決して第六皇子の二の前になろうというわけではない。若干怒られることもあったし、専門家ならではの楽しさを教えてもらうなど、ある意味社会勉強ともいえる。

 

 

そして、9年の月日が流れ、王城に諸侯貴族の集まる機会を作った。生誕祭および重要な発表をすると公布して。

 

「僕は、今日ここに宣言する。第七皇子鈴鹿ウタは偽りの皇子だった。かの日の王族史における虐殺事件の首謀者たちによって、私は偽りの仮面を被ることとなった。次の標的が自分にならないように、慎重に調査を進めなければならず、9年もの歳月をかけてしまった。私を支持する基盤も盤石になり、今日この日に首謀者たちを捕らえる事にした」

 

その宣言が終了すると、今まで好き勝手をし、蜜を吸い続けていた諸侯貴族を素早く城の警備に当たっていた兵士たちが拘束する。

そして王冠を取っ払い長い髪を靡かせ、

 

「今日ここに第七皇子鈴鹿ウタは第一皇女鈴鹿詩子に戻る。偽りの仮面をはがし、真実の私としてこれからは王政を執行していく。まず第一に首謀者たちの罪状より、刑を執行する」

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?」

 

「何だ?」

 

「あの件に首謀者なんていたのか?」

 

「いや、あれは本当にほぼ偶然に起こった事故みたいなものさ」

 

「じゃあ首謀者って?」

 

「蜜を吸えていたのは皇子の生命を握っていたから、そうした方が民衆や他の貴族達に同情的になるだろ?9年間洗い出しして何の証拠もなく、甘い蜜を吸ったからだけで一掃はできないだろ?」

 

「裏じゃ、好色王って言われてていたのに、表じゃ粛清王として名が通っていて、良いのかね?」

 

「別に二度目が無ければいいさ。なんせ、偶然様々な勢力が暴走したことや本当の偶然が絡まった事件だったからな、あの王族断絶寸前まで行ったのは」

 

「はぁ~、偶然重なるとはあいつらも思わなかっただろうしな」

 

「さぁ?人の心なんて丸裸にできる方が珍しいさ、褥ですら真実を紡ぐことが少ないんだから」

 

「好色王のいう事は説得力がちげぇや」

 

 

のちに、王族断絶寸前から一気に復興した国の伝説の一つに面白いものがある。様々な技術者の秘術を使ったのか。嫁いできた貴族令嬢を含む、結構な女性を懐妊させ、送られてきた男の子に、騎士を含め、全員を相手にしながら、朝日を一人でベランダで迎える女帝がたびたび目撃されたとか。

それに触発されたのか、彼女が王座についている間は、国の出生率が極端に上がったという。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KINGメリッサ・キンレンカ

それは突然の出来事だった。日本に短期留学中にまさかこんなことが起きるなんて。

本国でもあまり見られない荘厳な神殿のような建物に自分は立っていた。

 

「おお、勇者様、アナタをお待ちしておりました。アナタのお名前をお聞かせください」

 

偉そうな格好の、王様?の様なモノがそう言いながら手を広げた。

 

「レンですが、この状況は?」

 

そう、家でくつろいでいたら、何故か眩しい光で妙な紋様が床に浮かび上がり、眩しさに目を瞑ったらこの有様である。今日日マジックショーやドッキリの類ではないとは言い切れないが、明らかに空気感が違うのだ。しかも、王様(暫定)だけでなく、騎士やローブを着た怪しげな奴ら、そして明らかに人間じゃない奴らが少し離れた場所で倒れ伏しているのだから。

 

「それはですな」

 

ザッと纏めると、ここは異世界であり、突如別大陸にて魔王を名乗るモノが台頭。大小様々な大陸や島国が侵略され、残るはこの国のある大陸のみであり、魔王を倒しうる存在を求めて禁忌の召喚術を使ったとの事。なおこの術式は現在魔王が台頭した別大陸からの避難民が持ち合わせていた書物の中に紛れ込んでいた怪しげな本に書かれており、蜘蛛の糸を掴むように行ったとの事。

 

「じゃあ、俺は戻れないと?」

 

「はい、現時点ではそうなります。ですが侵略された他の国々や魔王のいると思われる別大陸に帰還用の技術があるかもしれません」

 

そう言われて、帰還目的のためにこの世界を巡ることになったわけだが、その間に色々と紆余曲折があった。まず性別を間違えられたまま物事が進んで、途中で明かすも、勇者として喧伝した後だったためそのままにされ、身分制度に奴隷階級があり戸惑ったり、魔王信奉の人々と出会ったり、ファンタジー特有の様々な出来事があったりで、どうにかこうにか

 

「魔王様、またです」

 

「え~、今年に入って何人目?」

 

魔王に就任している。

 

「四人目の勇者軍団で、人数は一人です」

 

「え?珍しいね。私の時ですらお供に数人ついたのに」

 

「監視に数人の間違いでは?」

 

「そこはほら、捉え方次第だから、荷物持ってもらったり、野営の準備だったり、解放後の交渉だったりで必要な人材ではあったと思うし」

 

「物は言いようですね。まあ確かに貴女が就任してからも常に数人から数十人でご来場になられておりましたが、たまに本物が混じる事もおありでしょう」

 

「今回はその本物?」

 

「いえ、血生臭い感じではなく、物騒とも程遠い方かと」

 

「あ~、暗殺者じゃなくて、また召喚しちゃったパターンか」

 

そう、薄々というか、後々完全に解ったことだが、あの胡散臭い本による私の召喚。アレは魔王に対抗する存在を呼び出す召還陣ではなく、魔王と同等の力を持つことが出来る存在を呼び出すための召喚術あり、この側近になったモノ(元・魔王)も別大陸で奴隷階級の子供達が贄となり、呼び出されたとの事。

私の時も召喚場所に倒れ伏していたのも、後々思い返せば奴隷階級のモノたちだった。まあ私の時は衰弱は激しかったがあの時点では死んではいなかった、と思われる。多分大人と子供の差や人数の差じゃないかとは思うが、検証する気にはなれない。

 

「それでどうします?排除しますか?」

 

「う~ん、いきなり召喚されたのなら再考の余地はあるけど、被害とかは出てないんでしょ」

 

「強盗殺傷の類は全く報告などはないかと、というか召喚元の大陸のすぐ隣にこの城を作ったのなら起きようは無いかと」

 

「そりゃ、奥の方に引っ込んでたら、また奴隷階級の人々が出来ちゃうでしょ」

 

「本音は?」

 

「育ちきるまで待つなんてとんでもない。玄関開けたらそこに立っていたのは魔王でした、が一番効率良いでしょ。何より、あの大陸に押し留められるなら、楽だし」

 

「はぁ~、何でこんな変な奴がトップに立つんだか」

 

「え~、だって君負けたら、好きにしろって言ったから、生殺与奪権を手放したら、有能なら手に入れるでしょ」

 

「過去の自分を怨めばいいのか、喜べばいいのか。判断が分かれますね」

 

「ま、来客を待たせたままってのもいい加減あれだし、そろそろ通しちゃって」

 

 

そうして、魔王として君臨し続ける暴君(名君)は今日も感情豊かに平凡な王生を過ごしているのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KINGニュイ・ソシエール

王城の一室。

 

「それでは、これで今日の授業は終了になります」

 

魔女はそう言いながら、いそいそと教材を片付け、さっさと出ていく。

仮にも王族並びに貴族の子弟がいる部屋からの迅速な撤退である。

 

(ザワッ……)

 

少し騒がしくなったが、概ね予定調和である。彼女は時として誓約を重んじる。

彼女の誓約は、この国にいる間に彼女自身の知識を落とし込んで国に還元する。その代わり彼女には国での自由と、城内部の禁書を含む図書館の蔵書の閲覧の自由が確約されている。因みに禁書の類は国としての恥部から精神崩壊を起こすもの、外敵排除行動を起こすもの、書としての装丁を逸脱したもの等の魔女などや一部の人々にしか閲覧できない類のものである。

 

 

そして図書館

 

「はぁ~、疲れた~」

 

空気の抜けたような擬音が出てきそうなほど、ダラッと自作の司書スペースに倒れ込む魔女。

先程までの冷淡な美しさからは決して想像しがたいお姿である。因みに講義の類では淡々とした口調とともに、子弟達の質疑応答を行う姿から『冷笑の魔女』などと呼ばれているとか、いないとか。

 

まあ実際のところは、知識を求めて東奔西走、南船北馬していたら、今回はこの国に腰掛けている状況なだけだったりする。そして彼女は

 

「~♪」

 

常人には聞き取れない、いや理解すれば激しい頭痛に襲われること間違いなしの、術式を呟き、手を軽く振ることで、周囲に本が舞うことになる。

 

「……ん~、やっぱりここが一番落ち着く、雑事はないし、蔵書は読み放題、たまに準禁書の類がシレッとおいてあったりするけど、そのおかげで滅多に人も寄り付かないし、知識を満たすうえで、他の奴らとブッキングもしてない。離れるのが惜しいくらい」

 

『なら離れなくてもいいんですよ?』

 

シレッとその場にいるのは胡散臭い笑顔を仮面にしたかのような微動だにしない表情を浮かべたローブを着た。

 

「魔法使い……相変わらずの神出鬼没っぷりはどうにかならないの?」

 

『ハハッ、私の性格はなんとなくわかるでしょうに?』

 

「悦楽主義、かと思ったら困った問題をさっと解決したり、よりややこしくしたり、貴方を深く知る事は時間の無駄と先代からも言われてるわ」

 

『うんそうだね?でだ、この国を出るのかい?』

 

「一所に留まる事勿れ、もし留まるとしたら、次代を担うモノを育成する時か、骨を埋める場所のみに」

 

『魔女の掟か』

 

「あなたも同じようなモノでしょうに」

 

『僕はまだ次代を必要としてないし、僕の場合は呪いに近い形で一か所に留まったら、周りがね?』

 

「はぁ~、世界中の珍名所の解き明かせないモノは、大体あなたのせい」

 

『間違いない』

 

ケラケラと表情は変わらないのに笑う姿はまるで人形劇を見ているようだ。

 

『でも冷笑の魔女が去った後この国どうなるんだろうね?』

 

「知りません、誓約はもう十分果たして、利益も十分もらい受けました。発展するにせよ、衰退するにせよ、群雄割拠の内紛になろうとも、それを見るのは私ではありません。風の噂で流れてくる程度でしょうし」

 

『う~ん、君は本当に』

 

「何ですか?もしこの国の王が新たに誓約を望んでも、断ります。私を満たす見返りをこの国が用意できると思いませんし」

 

『まあそうだね。向こう数十年から百数十年単位で、魔女の求める見返りがあるとは言えないし、君が求めるモノは移ろい易いから何とも言えないけど』

 

「まあ、今の代じゃなく次代か次々代になるのは確か」

 

『じゃあ、また縁が交わればその時にでも』

 

「できれば百年単位であなたには会いたくないわ」

 

現れた時と同じく、フッとまるでその場にいなかったかのように消え去った魔法使い。

濃密とまで言える魔力の濃度が緩む。

 

「魔法使いが国の中枢に出現したら、ここが魔都に改名されちゃうでしょうが。郊外でも害、都市部ではもっと害、本当に魔法使いは度し難い」

 

因みに、彼女が国を去る際に皮肉交じりに『馬でも芋でもなくなりましたから、この微笑みをもって、誓約は完了となります』と言ったとか言わないとか。

なお魔女が去った国の図書館には、国の恥部になる禁書以外の冒涜的な禁書に関しては厳重な封印処置や隔離がなされていたそうで、重篤な被害はなく、たまに若干世界の根幹を覗き見る程度の準禁書の軽い被害はあったそうだが、概ね図書館の利用が簡単になったとのことだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。