ダンジョンで聖剣を抜刀するのは間違っているだろうか (クロウド、)
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始まりに炎の剣士あり

どっちかというとジオウよりこっちのほうがダンまちとはあってるのかなと……。


「はぁっ!」

 

『『『グルオァ!!!』』』

 

 僕は迫りくる三体の半獣半人のモンスターコボルトに剣を構えて走り出す。一体目のコボルトを避け、二体目のコボルトは剣で弾く、そして、三体目に剣を振り下ろす。

 

 ―――まず一匹。

 

 続いて踵を返し、僕に噛みつこうと迫ってくる二匹のコボルト僕は剣でそれを受け止め、腹に蹴りを入れて離れたところで胴体を切り裂く。

 

 ―――二匹目。

 

 そして、切り裂いたコボルトの背後から最後の一匹が迫ってくる。僕は突きを放ち、コボルトの頭部を貫通した。

 

 ―――コレで三匹目。

 

 僕は血のついてしまった愛剣『火炎剣烈火』の血を払うように一振りする。身体から崩れていくコボルトの身体から紫紺色の結晶『魔石』を回収していく。

 

「ふぅ、今日も調子がいいな」

 

 五層はまだ早いと思ったけど、これなら、アレを使わなくてもなんとかなりそうだな。

 

『ヴヴォォォォォォォォォォォ!!』

 

 しかし、突如放たれた凄まじい咆哮でそんな僕の甘い考えは吹き飛ばされた。声の方向を見てみると、そこには半人半牛の巨人がこちらに向かって向かってきていた。

 

「ミノタウロスゥゥゥ!!!?」

 

 ミノタウロス、Lv2相当の力を持つモンスター。

 

 なんでこんな上層に!?あのモンスターってもっと下にいるってエイナさんの講習で習ったのに。

 

 ミノタウロスは一直線に僕の方向に向かってくる。完全にターゲットにされてしまったようだ。そのまま拳を振り上げ迫ってくる。僕は地面を転がり、拳を回避する。

 

「あっぶな……!」

 

 アレを喰らえば潰れたトマトみたいにぺしゃんこだったな。

 

 ダンジョンのモンスターって下から上に上がってくる事があるなんて聞いてないぞ!Lv1の僕じゃ、アレ相手に逃げられるとは思えないし、仮に逃げられてもコレを上に連れて行くことになるし……。

 

「―――やるしかないか」

 

 神様から誰かに見られると厄介だからあんまりダンジョンでは使うなって言われてたけど、今回は仕方ないよね。

 

 

 

『聖剣ソードライバー!』

 

 

 

 僕が覚悟を決めると、火炎剣烈火がバックルへと変化する。僕がそれを腰に押し当てるとベルトが現れ腰に固定される。さらに、ポケットから手のひらに乗るサイズの赤い本を取り出す。表紙には赤い竜が描かれている。

 

 

 

 

ブレイブドラゴン!』『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた

 

 

 

 

 

 取り出すと同時に題名、表紙を開くと内容を一人で読み上げるこの不思議な本、『ワンダーライドブック』。僕は開いたその表紙をもう一度閉じベルトの一番右側のスロットに差し込む。

 

 エネルギーが聖剣に伝わる音が響き、背後には巨大なワンダーライドブックが現れる。僕は火炎剣烈火の柄を掴む。そして、勢いよく剣を抜き放ち剣舞を舞う。

 

 

 

烈火抜刀!』

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

ブレイブドラゴン!

 

 

 

 

 炎を纏って抜剣された火炎剣烈火で十字に振るうと空中に炎の斬撃として残り、背後の本から飛び出してきた赤い竜が僕の周りを炎とともに旋回する。そしてその炎が消えると僕の姿が仮面の戦士のものへと変わる。左半身が僕の周りを飛んていた竜をもした鎧で覆われ最後にさっき放った斬撃が仮面に刻まれる。

 

 

 

 

烈火一冊!』『勇気の竜と火炎剣烈火が交わりし時、真紅の剣が悪を貫く!

 

 

 

 

火炎剣烈火

 

 

 

 

 

 それは火炎剣烈火の抜刀と同時に新たなページが展開されたブレイブドラゴンに記された戦士と同じ姿だった。

 

 ―――その戦士の名は、セイバー。

 

「行くよっ、火炎剣烈火ッ!」

 

 愛剣の名を叫びながら僕は強化された脚力で地面を強く踏みしめ駆け出す。

 

「はぁっ!」

 

 変身し強化された脚力で地面を切ってミノタウロスに肉薄し、胴体を斬りつける。炎を纏った斬撃によって傷口が燃え上がり、ミノタウロスは絶叫を上げる。

 

 僕は追い打ちをかけるようにドライバーで展開されたブレイブドラゴンのページを押し込む。

 

 

 

 

ブレイブドラゴン!

 

 

 

 

ドラゴンワンダー!

 

 

 

 

 右手に炎が収束し、それが竜の姿となってミノタウロスに襲いかかった。全身に火傷を喰らい膝をつくミノタウロス。

 

「一気に決める!」

 

 

 

 

『必冊読破!』

 

 

 

 

 ドライバーに火炎剣烈火を収め、柄にあるトリガーを引く。そして、再び勢いよく剣を抜剣する。

 

 

 

 

烈火抜刀!』『ドラゴン!一冊斬り!』『ファイアー!

 

 

 

 

火炎十字斬!

 

 

 

 

 炎の力を極限まで高めた火炎剣烈火を構え、一気に駆け出す。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 縦横無尽に走り回り、ミノタウロスを斬りつけていく。燃え上がる剣に何度も斬りつけられミノタウロスは絶叫とともに崩れ落ちた。倒れたミノタウロスの身体が崩れ、あとには鮮やかな色の石――魔石――が残る。

 

「ふぅ……。」

 

 火炎剣烈火を肩に担ぎ僕はキョロキョロとあたりを見回す。

 

「誰も見てない、よね?よか「あの……」った?」

 

 ギギギと擬音がなりそうな音で背後を振り返る。

 

 そこにいたのは、金髪の女性。整った顔立ちの、おそらくは僕とそう年の違わない長い綺麗な金髪が特徴的な人族の女性だった。その手に握られた細剣からして彼女もまた冒険者なのだろう。しかも、何処かで見た覚えがある、まだオラリオに来たばかりの新米冒険者である僕に見覚えがあるってことは多分ギルドの掲示板かなにかで見たと思う。つまり、かなりなの知れた上級冒険者。

 

 多分、仮面の下の僕の顔はコレ以上ないほどに間抜けな顔になっているだろうと思う。だけど、唖然と知られていたのは一瞬だった。

 

「見てました?」

 

「……うん」

 

「何処から、ですかね……?」

 

「貴方がミノタウロスを押してるところから、かな?」

 

 なるほど、つまり変身を見られたわけじゃない。正体が知られたわけじゃないと。……よし、今ならまだなんとかなる!

 

 

 

猿飛佐助!』『ふむふむ……』

 

 

 

 

 僕は反射的に腰のホルダーに収めてあった緑色のワンダーライドブックを火炎剣烈火の剣先の銀色のマークにかざし、そのままトリガーを引く。

 

 

 

 

『習得一閃!』

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 僕の身体は剣から放たれた疾風が僕の姿を隠した。突如放たれた、疾風に金髪の女性は目をつむり、そのスキにワンダーライドブックの力で壁に同化して隠れる。いわゆる、隠れ身の術と言うやつだ。

 

「あれ?」

 

 一瞬で目の前から消えた僕に女性はキョロキョロとあたりを見回す。逃げ切れるかどうかまだわからないからここで息を潜めて隠れることにした。ヘファイストス様と椿さんがいうには第一級冒険者でも初見では気づかれないほどに気配も消せるらしい。

 

「おい、アイズ。ミノタウロスはどうした?」

 

「あっ、ベートさん……。」

 

 すると、金髪の女性を追ってきたのか今度は鋭い目つきが印象的な銀髪の狼人の男性が現れる。獣人って確か嗅覚が鋭いよね?しかも、この人も絶対強い。気づいてないよね?バレないよね?

 

「片付けたんならとっとと戻るぞ」

 

「あっ……。」

 

 狼人の男性の方はすぐに身を翻し、女性の方は僕を探しているのか少し視線を右往左往させるが、僕の姿は見つけられずに仕方なく男性の後を追う。姿が完全に見えなくなると、ライドブックの力を消して姿を表す。

 

「……生きた心地がしなかった」

 

 ドライバーで展開されたブレイブドラゴンのワンダーライドブックを閉じてドライバーから引き抜くと、変身が解除されもとの僕の姿へと戻った。

 

「なんとか正体がバレずによかったぁ……。」

 

 安心して脱力し、壁にもたれかかる。そして、手の中にあるブレイブドラゴンと猿飛忍者伝、二冊のワンダーライドブックを見る。コレは僕に凄い力を与えてくれるけど……神様たちいわく他の神様に知られたらどんな手を使ってでも引き入れてもおかしくないほど珍しいスキルらしいからホントにバレなくてよかったぁ。

 

「きれいな人だったなぁ、何処で見たんだっけ?……そういえば、ミノタウロスの魔石……持っていかなかったよね?」

 

 ひょっとして、まだ近くにいたの感づいて譲ってくれたのか。これ、持っていってもいいよね?僕が倒したんだもんね?でもレベル1の僕がこんな物持ってたら怪しまれるよね。

 

 元々、ミノタウロスはレベル2相当のモンスター。本来なら僕が絶対にかてない相手だっただけど、ホントに不思議な剣だよね、この剣。ベルトになったり、本を読み込んだり。

 

「そういえば、ヴェルフ。うまくいってるかな?」

 

 剣といえば僕はこの剣について神様の神友である鍛治神ヘファイストス様のもとへいったとき知り合った鍛冶師の友人のことを思い浮かべる。『今ならすげぇ剣が撃てそうな気がする!』って言って、僕からワンダーライドブックを二冊借りていったけど……。

 

 今日はこのへんでもどって様子を見に行こうかな。




セイバーとゼロワンの映画、素晴らしかったです。もうね、最高。ライダー組はもちろん、福添社長もかっこよかったです。
あっ、感想評価お待ちしてます。


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イカズチの剣

はい、二本目の聖剣です。


 迷宮都市オラリオ。

 

『ダンジョン』と通称される地下迷宮を保有する、いや迷宮の上に築き上げられた巨大都市。

 

 都市ひいてはダンジョンを管理する『ギルド』を中核にして栄えるこの都市は、ヒューマンを含めるあらゆる種族の亜人が生活を営んでいる。

 

 と、学の乏しい僕が説明できるのはこのくらい。

 

 そして、その『ダンジョン』にそこから得た収入で生計を立てている人間を総じて冒険者と呼ぶ。僕『ベル・クラネル』もまたその一人だ。

 

 僕は今、ダンジョンでの探索をいつもより早く切り上げてオラリオで双璧をなす鍛冶系ファミリア【ヘファイストス・ファミリア】の工房に来ている。平屋が並ぶその場所はオラリオの端だからか、まだ日が高いのに薄暗い。それぞれが与えられた工房で鉄を打つカーンと言う音があたりに響く。

 

「えっと、確か……。」

 

 僕は以前一回だけ来たことのある彼の工房の前で足を止めた。

 

 僕がその扉を開くと凄まじい熱が僕の肌を焼く。

 

 凄まじい炉の熱が離れた場所にいたベルにも届く。まるでここだけ空間が違うかのように温度が違った。

 

 そして、その炉の前で一人の鍛冶師が鉄を打っていた。炉に燃え盛る炎と同じように赤い髪、浅く焼けた褐色の肌。その手に握られたハンマーで刃を打つ。

 

 見てみると、そこにあったのは僕の身の丈ほどある巨大な剣。

 

「ん、ベルか?」

 

「あ、ごめん。邪魔して」

 

「いや、気にすんな。丁度終わったところだ」

 

 一通りの作業が終わったのか、ハンマーを下ろす鍛冶師。

 

 そして、さっきまでの鬼気迫る表情から一転ニヤリと笑顔になって僕の方を向く。

 

 彼の名前はヴェルフ・クロッゾ。【ヘファイストス・ファミリア】の本人言うところによればまだ下っ端の鍛冶師、らしい。以前一度だけ僕の火炎剣烈火を鍛冶の神である彼の主神であるヘファイストス様に見てもらおうとそのホームに行ったとき偶然知り合った。

 

 僕がこの迷宮都市で初めて出来た友達だ。僕の火炎剣烈火と、ワンダーライドブックについて凄く興味深そうにして、僕から本を借りて工房にこもっていた。

 

「その剣が、前に言ってたすごい剣?」

 

「いや、ちょっと違うな。だが、出来てるぜ。俺のこれまでの人生最大の傑作がな!」

 

 そういってヴェルフが持ってきたのは一本の剣、僕の火炎剣烈火とそっくりだが刀身が赤ではなく黄色で、つけられているエンブレムも僕の烈火の炎のような形をした赤いエンブレムではなく、稲妻のような形をした黄色のエンブレム。剣先の銀色のマークまで同じだ。

 

「僕の火炎剣烈火にそっくりだね」

 

「俺もなんでこんな形になったかはわからないんだけどな、なんか、剣の声が聞こえた気がするっていうのかな。気づいたらこいつが出来てた」

 

「もしかして……。」

 

 僕は火炎剣烈火と同じ銀色のマークにポケットから取り出した黄色のライドブックを翳してみる。

 

 

 

ヘッジホッグ!』『ふむふむ……』

 

 

 

 

「ライドブックを読み込める!」

 

「おう!自分でも驚いたぜ、まさか、こんな剣を作れるとはな。おまけに魔剣みてぇに使っても砕けねぇし、ヘファイストス様にはお前の烈火も総じてその本の力を使える剣を『聖剣』って呼ぶのはどうかって言われたよ」

 

「『聖剣』か、なんかかっこいいね!」

 

「ベル、この剣はお前が持っててくれ」

 

「いいの?こんな凄そうな剣?」

 

「元々、お前の本がなきゃ完成しなかった剣だ。それに、俺は単純にお前がその剣で戦うところが見てみたい」

 

「わかった、ありがたく使わせてもらうよ」

 

 僕はヴェルフに差し出された黄色の剣をを受け取る。うん、なんだかしっくりくる感じがする。それをキラキラした目で見ていると、ふと聞き忘れたことを思い出す。

 

「この剣、名前は……?」

 

「候補が二つあるんだ、1つ目は『ビリビリ丸』――「却下!」――即答かよ。」

 

 ヴェルフが言い終えるよりも前に間髪入れずに拒否する。流石にそれはダメ、だって片手に火炎剣烈火、片手にビリビリ丸はいくらなんでも……。

 

「まぁ、本命は別にあるんだ」

 

 ヴェルフはその剣を取り、刀身を見つめその本命の名前を僕に告げる。

 

「―――『雷鳴剣黄雷』、なんてどうだ?」

 

「イカズチ、雷の剣、いいね!凄くいい!」

 

 雷鳴の剣、黄雷―――なんだかすっごいしっくりくる!

 

「だろ?それにこの剣、この本に共鳴するように時々ビリビリ帯電しててな」

 

 そう言ってヴェルフは僕が預けていた三冊の本のうちの一冊、魔法のランプが描かれた『ランプ・ド・アランジーナ』のワンダーライドブックを僕に差し出す。

 

「多分だが、火炎剣烈火とブレイブドラゴンみたいに本と剣には相性があるんじゃねぇかと思うんだ」

 

 確かに火炎剣烈火は『ブレイブドラゴン』のワンダーライドブックを使わなければ変身できない。赤い剣と赤い本で相性がいいってことかな程度には思ってたけど。

 

『ランプ・ド・アランジーナ』を受け取りながら、そんな事を考える。

 

「そういえば、渡した本って三冊あったよね?」

 

 ワンダーライドブックには大きく分けて三つの種類がある。『神獣』、『生物』、『物語』の三種類だ。それぞれソードライバーのスロットに指す場所が決まっている。『神獣』は一番右、『生物』は中央、『物語』が一番左、使った場所によって装備も変わるようになっている。

 

 ヴェルフには『神獣』ジャンルの『玄武神話』、『生物』ジャンルの『ライオン戦記』、そして『物語』ジャンルの『ランプ・ド・アランジーナ』を預けていた。

 

「残りの本はどうしたの?」

 

「あぁ、残りの二冊も今作ってる剣と共鳴してるみたいでな、悪いけどしばらくは返せそうにないんだ」

 

「いいよ、全然。他にも本は沢山あるし」

 

「……お前、それ一種の魔導書だってわかってるか?」

 

 魔導書、使用した人間に魔法を発言させる使い捨ての魔導具。僕は現物を見たことはないけど、物凄く高価らしい。確かに、使用者に魔法にも似た力を与えるワンダーライドブックは確かにその一種かもしれない。

 

「そんなこと言ったらこの剣も一種の魔剣でしょ」

 

「相場だと魔導書のほうが高いぞ」

 

「あ、そうなんだ」

 

 僕のは使い捨てじゃないから見方によってはそれ以上の値がつくので、バレたら間違いなくどこか派閥が取り込みに来ると言ってたから僕はこの本の力を今日みたいなことがない限りあまり使っていない。

 

 ―――今日は剣を受け取り、ヴェルフに礼を言うと僕は彼の工房をあとにした。

 

 

 

 

 

「さて、俺もこいつを完成させるか」

 

 ベルが去った工房でヴェルフはさっきまで自分が打っていた大剣を見る。そして、ポケットから彼から借り受けた『玄武神話』のワンダーライドブックを取り出し強く握りしめた。




感想、評価、アドバイスお願いします。
聖剣の持ち主案としては
ベル……烈火、流水、黄雷。
ヴェルフ……激土
リリ……流水(ベルから譲り受ける)
命……翠風
ダフネ……黄雷(ベルから譲り受ける)
カサンドラ……錫音

これならちょうどいい塩梅にならないかなって思ったんですが……。


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炎の剣士、篝火のもとで

当初考えてた話と少し変えたので前の話をいくつか添削しました。


 ヴェルフから『雷鳴剣黄雷』を受け取りギルドでの換金を終た僕はえメインストリートを抜け、細道をいくつも曲がりベルは目的の場所にたどり着いた。

 

 そこにはもはや廃墟といっても刺し違えのないもの、かつては神様たちを々を崇めるために作られたはずの教会は人々の記憶から忘れ去られた哀愁が漂っていた。

 

 正面玄関にあるボロボロの女神の像は顔が崩れながらもほほえみながら僕を見下ろしている。

 

 中に入るとそこは外見に負けず劣らずの半壊状態で割れた床のタイルからは雑草が繁茂している。崩れた天井の大穴から、まだ日が高い陽光が覗いている。

 

 僕はすたすたと部屋の奥に行くと地下室へと向かう階段を降り始める。

 

 そして、地下室の扉に手をかける。

 

 ―――その扉を開くと歪んだ空間が広がっていた、床、壁、天井全てが本棚に覆われている。その異常な空間に僕は一切戸惑うことなくそこへ飛び込んだ。僕の体は浮遊し、一人での空間の奥に向かっていく。最初は不思議だったその感覚もいつの間にやら慣れていた。

 

 しばらくの浮遊の空間が切り替わり目的地の廊下に出た。そのまま真っすぐ進み、扉を開くとそこはまるで図書館のような部屋、本棚が並んだ二階から一階が見下ろせるようになっており、一階の中央には様々な機器が繋がれた大きなテーブルがある。更には僕より大きな本が壁の周りに何冊も並んでいる。

 

「あっ、ベル君おかえり!」

 

 部屋を一度ぐるっと見回すと二階の本棚を見ている小さな人影があり、その人物は僕が部屋に入ったのを見て手すりから僕を見下ろすと、とてとてと階段を降りてくる。

 

 僕の前に走り寄ってきたツインテールがトレードマークの彼女こそ僕の主神、神ヘスティア様だ。

 

「只今戻りました神様」

 

「今日の収穫はどうだったんだい?」

 

「いつもどおりですけど、ちょっとイレギュラーに巻き込まれて変身しちゃいまして」

 

 神様に報告しながら僕は入り口から一番手前のパネルの付いた引き出しを引く。そこには鉄製の小さな本棚があり、丁度ワンダーライドブックがすっぽり入るくらいの大きさだ。僕はポケットから『ニードルヘッジホッグ』、『猿飛忍者伝』そしてヴェルフから返してもらった『ランプド・アランジーナ』を取り出し収納する。

 

ニードルヘッジホッグ!

 

猿飛忍者伝!

 

ランプド・アランジーナ!

 

 こうしておけば無くす必要もないからワンダーライドブックは基本ここに収納している。

 

「イレギュラーって?」

 

「五層でミノタウロスに遭遇してしまいまして……。」

 

「そっかぁ、ならしょうがないね……なんにせよ君が無事で本当に良かったよ。君が死んだら僕は途方に暮れてしまうからね」

 

「大丈夫です、伊達に『リベラシオン』で修行してませんから」

 

 神様を安心させるために胸を張ってそう答えると、神様は優しく微笑んでくれた。すると、何かを思い出したようにテーブルの縁の箱を見る。

 

「あっ、そういえばベル君。新しい本が出来てたぜ」

 

「本当ですか!?」

 

 僕は神様の言葉を聞くと箱に駆け寄り、中に入っていたワンダーライドブックを取り出す。今朝まで何も書かれていなかったブランクの本が青色に変わっていた。

 

ピーターファンタジスタ!

 

 僕は新たに完成したワンダーライドブックを取り出すと代わりに何も書かれていないブランクのブックを代わりに収納しておく。こうしておくといつの間にか新しいワンダーライドブックが出来て完成するとひとりでに箱が開く仕組みになっているようだ。

 

 新しく完成した本は青いワンダーライドブックで表紙である『ガードバインディング』には手をつないだ少年少女の姿が描かれていた。ジャンルは……『物語』か。

 

「それにしてもここは本当にすごいよね、見たことがない本が沢山あるし聞いたこともない知識が山のようにある。ボク達にとっては宝の山だよ」

 

 この場所は寝室もシャワーも教会よりも遥かにいい、実質こっちが僕たち【ヘスティア・ファミリア】のホームと言ってもいいかもしれない。

 

 寝室に入ると、そこには一人の小さな女性が室の良いベッドで横になり広場にあった本を読みふけっていた。僕が部屋に入ったのに気づいた彼女は

 

「それにしてもここは本当にすごいよね、見たことがない本が沢山あるし聞いたこともない知識が山のようにある。ボク達にとっては宝の山だよ」

 

「ハハハ。まぁ、僕も良くはわかってないんですけどね」

 

 ―――一年前のあの日、おじいちゃんが事故で亡くなった日変な男の人が現れた。

 

 その人はピンクの帽子にピンクのシャツ、そして肩当て付きのジャケットを着た恐ろしく派手な格好をした男性でちょび髭とメガネが特に印象に残った。その人は、唐突に僕に一冊の本の渡してきた。

 

『ボンヌレクチュール、僕はタッセル!ベル・クラネル君、君にコレをプレゼントしよう!』

 

 そういって男の人が僕に渡してきたのは『ブックゲート』という題名と穴のような絵が書かれていたワンダーライドブック。

 

『これをなんでもいいから扉の前で開いてみると面白いことが起きるよ〜!』

 

『面白いことってなに……って、あれ?』

 

 うつむいて本を見ていた僕が視線を上げると、既にその人の姿はなかった。

 

 そして、男の人に言われたとおり扉の前で本を開くとこの空間に繋がりそこに火炎剣烈火とワンダーライドブックがあった。

 

 初めて火炎剣烈火を手にしたときのことはよく覚えている。まるで自分を待っていたかのように二階の奥の部屋に突き立てられていた烈火、僕もまたこの剣を探し求めていたような感覚に襲われた。そしてなぜか最初から使い方を知っていたようにセイバーへと変身することができるようになったのだ。

 

 それから僕は一年、この場所に居座った。本を読み漁ったり一階の奥の部屋、修練場『リベラシオン』で修行したりして半月前にオラリオにやってきた。

 

 昔、おじいちゃんが話してくれた英雄の生まれる場所、『オラリオ』。僕もおじいちゃんがよく読み聞かせてくれた英雄譚に出てくる英雄のようになりたくてこの場所に来た。

 

 そこで僕はヘスティア様に誘われ、彼女の眷属になった。

 

『ブックゲート』で作った入り口は僕の意思で固定も解除もできるらしく今はこのホームの地下室の入り口に設定してある。

 

「さて、そろそろ夕ご飯にしようじゃないか。今日は売上が良かったからジャが丸くんをボーナスでもらったんだ」

 

「あ、すみません神様、夕食前に『リベラシオン』に籠もっていていいですか?」

 

「えっ!?ま、またかい!?」

 

 夕飯の支度をしようと部屋を飛び出そうとした神様は呼び止めた僕の言葉にぎょっとする。

 

「大丈夫ですよ、夕食までには戻ります。こっちではすぐですから」

 

「でも……君あそこに籠もるとダンジョン潜ったあとよりボロボロになって出てくるじゃないか……。」

 

 修練場『リベラシオン』、外の空間とは断絶された場所で外と中とでは時間の流れが違うので修行にうってつけではあるがその分精神力を消費する故に危険な場所でもある。

 

「大丈夫です、少しずつだけどコツも掴めてきたので」

 

「……ほんとに気をつけてくれよ。君に何かあったら僕は悲しいぜ」

 

「はい、わかってます」

 

 神様にお許しを得ると僕は引き出しの中の本棚から二冊の赤いワンダーライドブックを取り出す。

 

ストームイーグル!

 

西遊ジャーニー!

 

 一つは勇ましい大鷲が羽ばたく姿が描かれた『生物』ジャンルの本『ストームイーグル』、そしてもう一つは雲に乗った猿とその仲間たちが描かれた『物語』ジャンルの本『西遊ジャーニー』。そして、僕が持つ『神獣』ジャンル『ブレイブドラゴン』で三冊の赤い本が揃った。

 

「早くこの力を使いこなせるようにならないと……。」

 

 二冊の赤い本を強く握りしめ僕は『リベラシオン』への扉をくぐった。




闇黒剣月闇の持ち主誰にしよう……まぁ、行けそうな人ひとりしか思いつかんスけどね


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【ステータス】

この作品ではリベラシオン万能説で行きたいと思います。


「はぁ……はぁ……。」

 

「もう言わんこっちゃないんだからぁ……。」

 

「す、すみませぇん……。」

 

 情けない声で僕に肩を貸してくれる神様に謝罪する。リベラシオンから出てきた僕は神さまの言うとおりボロボロになって出てきて、歩くのもつらい状態だからだ。

 

 あれから外の空間では多分三十分くらいだと思うが、僕はリベラシオンの中でもかなり深い場所で修行していたのでおそらく五時間以上ぶっ続けで修行していたと思う。

 

 リベラシオンは深い場所ほど外での時間の流れがゆっくりになる、その分精神力の消費は凄まじいがそこで普通の鍛錬をするだけなら僕はもう慣れた。

 

 だけど、流石にコレの修行はこたえると、腰のソードライバーにさされた三冊の赤いワンダーライドブックを見ながら思う。おかげで歩くのもままならずこうして神様の手を煩わせてしまっている次第である。

 

「ホントに大丈夫かい?」

 

「はい、リベラシオンから出たおかげでもうだいぶ楽になりました」

 

 寝室に連れてこられた僕は室の良いベッドに座らされる。火炎剣烈火を手にしてから身体能力だけじゃなく、回復力も異常に上がったし『リベラシオン』の中に比べたら外の空間はいるだけで体力が回復するくらい楽だ。

 

「そうか、じゃ、今のうちにステータスの更新やっちゃおっか」

 

「そうですね」

 

「じゃあいつものように服を脱いで寝っ転がっちゃって〜」

 

 神様の言葉に同意して僕は上半身に着込んだアーマーやインナーを脱ぎ去る。寝室にある大きな姿見に僕の背中が映し出されている、そこにあるのはびっしりと書き込まれた黒い文字群。

 

 これが神々に恩恵を受けたという証、その神の家族。すなわち【神の眷属(ファミリア)】になったことの証だ。

 

 僕はうつ伏せになってベッドに寝っ転がるとピョンっと僕の背中にのり僕の背中を二度三度撫でる。そして、チャリという金属音が背後から聞こえる。神様がご自身の指に針を指して血を流しているのだろう。

 

 神様たちが扱う【神聖文字(ヒエログリフ)】は自らの血を媒体とすることで対象の能力を引き上げる。

 

 そして、様々な経験から得られる不可視の【経験値(エクセリア)】というものを使って、【恩恵】を付け足し塗り替え、強化するそれが【神の眷属】の成長ということだ。

 

 僕たち冒険者はモンスターを倒すことで得られる【経験値】をもとに自身を強化してダンジョンに潜るというのがオラリオの一般的な常識だ。

 

「ごめんねえ、こんないい場所で暮らさせてもらってるのに君にばっかり負担をかけさせて。」

 

「気にしないでくださいよ、神様だってアルバイトを頑張ってくれてるじゃないですか」

 

 もう分かると思うが、現在この【ファミリア】の眷属は僕一人だ。

 

 神様は最近天界から地上に降りてきた神様で、眷属が見つからず神友であった【ヘファイストス・ファミリア】で世話になっていたらしいがいい加減に追い出されて途方に暮れていたところで僕と出会ったらしい。

 

 ここに繋がる廃教会はヘファイストス様が最後にくれた慈悲らしい。

 

 本来、眷属は神からもらった恩恵に報いるために神様を養う必要があるが、知っての通り暮らしこそいいものの僕らは零細ファミリア。神と眷属、それぞれが働くことで生計をたてているのだ。

 

「はい、もういいよ」

 

 神様は用紙に僕の背中の【神聖文字】を写すと、今度はそれを【共通言語(コイネー)】に書き換えを始める。僕は【神聖文字】なんて読めないからね。

 

 その間に着替えると神様が書き終えた僕のステータスの写しを僕に渡しくれる。

 

ベル・クラネル

 

力:F 342→F 394 耐久:G 232→G 235 器用:G 222→G 282 敏捷:F 347→F 373 魔力 E 412→E 473

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

【仮面ライダー聖刃(セイバー)】

・火炎剣烈火とワンダーライドブックを使い仮面ライダー聖刃へと変身できる。

・変身中ステータスが大幅上昇。

・変身による戦闘で得られる【経験値】の獲得量上昇。

 

「相変わらず早い成長だねぇ、今回は変身したってこともあって経験値の量も多いしね」

 

「やっぱり、そうなんですかね……。」

 

 はっきりって僕は成長が早いと言われてもまだよくわからない。なにせ、僕以外の人のステータスなんて見たことがないからだ。でも前にコレをみたヘファイストス様が額を抑えていたので普通じゃないことだけは確かだと思う。

 

「ああ、そうそう。わかってると思うけど、人目のあるところで派手に変身しちゃダメだぜ?神なんてどいつもこいつも君のことを知ったら何をやらかすかわからないやつばっかりなんだから」

 

「わかりました、神様!」

 

「よし、それじゃあ夕食にしよう!」

 

 神様は僕の言葉に満足気に頷くと、キッチンに向かって歩き出す。僕もその後を追いかけていった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「『聖剣』?」

 

「はい、僕の火炎剣烈火やヴェルフが打った雷鳴剣黄雷みたいなワンダーライドブックの力を引き出せる剣のことをヘファイストス様がそう呼んでいるそうです」

 

 僕は夕食の途中で今日ヴェルフの工房で話したことを神様に伝えていた、『聖剣』という名前のこと『雷鳴剣黄雷』のこと、そしてヴェルフが新たに二本の聖剣を打っていること、そして、剣とワンダーライドブックは共鳴関係にあるらしいことのできるだけ細かく説明した。

 

「流石はクロッゾってことなのかなぁ……。確かに数回使うと壊れる『魔剣』とは似て非なるものだから、そのほうがわかりやすいね。……しかし、この場所といい剣といい本といい一体何なんだろうね?」

 

 神様の言葉に僕も心のなかで頷く。成り行きで手に入れた本と剣だけど、それに関する謎は未だに尽きない。

 

 因みにこの空間のことはまだ神様にしか話していない、もちろんヴェルフやヘファイストス様も同じだ。神様いわく、この場所のことを知れば間違いなく奪いに現れる派閥が現れるとのことだ。ヘファイストス様達を信じていないわけではないが、情報の漏洩はできるだけさけるべきだと神様と僕の総意だ。

 

 この力は強大でたしかに誰もが求める力だと思う。しかし、その中にはこの力を悪用しようとするものも現れるだろう。だけど僕は絶対にそんなことはしない、おじいちゃんと神様に約束した。この力を正しく使い必ず『英雄』になると。

 

 僕は『ブレイブドラゴン』のワンダーライドブックを強く握りしめ改めてそう決心した。

 

 

 

 

「ッ!」

 

 ―――その瞬間、僕の脳裏に誰かの姿が映った。

 

 白く長い髪の女性、逆光のせいなのか顔はわからない。その人は僕の頭を撫でるとどこかへと去っていこうとする、幼い僕はそれを呼び止めようとして何かを叫んでいる。

 

 すると、女の人は一度こちらを振り向き僕に小指だけを開いた右手を差し出す、僕はそれに答えるように同じようにした右手を差し出し自身の小指と女の人の小指を絡める。

 

 東洋で伝えられているゆびきりげんまんという約束をする時の風習だ。

 

 

 

 

「ハッ……!」

 

 そこで脳裏に流れる映像が途切れ、意識が現実に戻ってくる。目の前ではじゃが丸くんを食べる神様の姿が映った、どうやら僕の異変には気づいていないようだ。

 

 何だったんだ今の……僕の、記憶?だけど、僕はあんな女の人、あった覚えがないし……。

 

「あっ、そうだベル君」

 

「!はい、なんですか神様?」

 

「君明日はダンジョン潜るの終わったら外で外食でもしてきなさい」

 

「え?」

 

「君最近、あの部屋にこもりっぱなしでほとんど休んでないからね。たまには休んで外で美味しいご飯でも食べなさい。僕も明日はミアハ達でも誘ってどこかで食べてくるから」

 

「……そう、ですね。わかりました、神様」

 

 最近ずっとダンジョンに帰ったら『リベラシオン』にこもって修行のルーティーンだったので休む時間がなかったというのはたしかにそのとおりだ。おまけにあの修行を始めてからいつもボロボロになって出てくるから神様にも心配をかけてしまったと神様の言うことに素直にうなずいた。




やっぱり闇の聖剣はアイズさん何じゃないかなと思うのよ……確かにアイズさんに【ジャアクドラゴン】なんて最悪中の厄ネタにしかならないだろうけど、他に味方サイドで剣を渡せる人がこの人しかいない気がする。
なのでアンケート取ろうと思います。


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SIDE ●●●●●

いろいろ考えましたがカリバーの正体は決まりました。
さて、誰かわかるでしょうか?


 ―――時空の狭間。

 

 オラリオの存在する世界とも●●●●ワールドとも違う次元に存在する異世界。どこまでも砂丘のような砂の足場が続く寂しい世界に砂の色にも負けない白い外套をかぶった男がそこに立っていた。

 

 男は頭上に輝く太陽のような眩しい光を見つめる。

 

『………。』

 

「―――来たか」

 

 男は背後の砂を踏む音に背後を振り向く。そこにいたのは紫の鎧を身に纏った鉄仮面の剣士、右肩には龍の頭部が模されており、そのシルエットはまるでベルが変身するセイバーを彷彿とさせる。しかし、その手に持っている剣はセイバーの『火炎剣烈火』とは似ても似つかない禍々しいオーラを放っている。

 

 ―――その剣の名は『闇黒剣月闇』。●●●●ワールドで生まれた始まりの剣の一太刀。

 

 紫の鎧の戦士は外套の男のもとに歩み寄る。

 

「久しぶりだな、『闇の剣士』カリバー」

 

『―――私をその名で呼んでくれることを感謝しよう。我が唯一の友、『光の剣』』

 

 明らかに地声ではないどこかくぐもった声で男『光の剣』の言葉に答える『闇の剣士』カリバー。

 

『―――あの小僧がオラリオで活動を始めた』

 

「そうか……ついに動き出したか、『英雄の物語』が」

 

『そうなるかはあの小僧次第だ』

 

 カリバーの唐突な報告に『光の剣』は感慨深げに再び空を眺める。

 

「あれからどれほどの時間がたった?」

 

『……五年だ』

 

「酷く長い五年だったな……俺がここにいたのが一瞬に思えるほどの」

 

『―――お前とビクトールには感謝している……お前たちが●●●●●●と残してくれた『火炎剣烈火』のお陰で()()()()()()()()唯一の可能性を残してくれた』

 

「カリバー……。」

 

『グッ……!』

 

「カリバー!?」

 

 男がカリバーに語りかけようとした瞬間、カリバーが突如胸を抑えて地面に座り込む。『光の剣』は同じようにそばに座り込み心配そうにその肩に手をおいた。

 

「お前の体はすでに……。」

 

『……まだ終わるわけには行かない。あの小僧が私の、いや、私達の望む次元にたどり着くまでは』

 

『光の剣』に肩をかされながら立ち上がり、意思のこもった口調で話すカリバー。

 

「なかなかに酷なことを言うな……それはお前にもできなかったことだろうに」

 

『超えてもらわなければ困る……それが私が今に至るまで生きている唯一の理由なのだから』

 

「しかし、残りの剣士はどうする?」

 

『問題ない、すでに残りの三人は見つけ出した』

 

 カリバーは懐から三冊のワンダーライドブックを取り出す。

 

 ―――一冊は燃え盛る不死鳥の姿が描かれた『Eternal Phoenix』という本。

 

 ―――一冊は幻想的な蝶の描かれた『昆虫大百科』という本。

 

 ―――そして、無数の海の生物が描かれた『OCEAN HISTORY』という本。

 

『あとは彼に剣を打ってもらうだけだ、残りの剣と剣士も小僧のもとに自然と集まることだろう。そちらこそ、例の本をあいつから受け取ったのか?』

 

「なかなかごねられたがな……。」

 

『光の剣』は懐から一冊の本を取り出す。その本の表紙には巨大な爪痕があり、まるで骨のようなものが内側から生えている。

 

 それをカリバーが確認すると互いに背を向けて逆の方向にあるき出す。

 

 

 

 

 

 

「ついに揃う、十三人の剣士と十三の聖剣。そして、禁断の書」

 

 

 

 

 

『世界を救う英雄の物語の』

 

 

 

 

 

「『始まりだ』」

 

 

 

 

 




ヒントはそこら中に残しておきました、さぁて、誰なのでしょうか


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ネタバレ注意 設定集(剣士)

もうね、このままじゃえたりそうなのでネタバレを覚悟で投稿します。


ベル・クラネル……火炎剣烈火の持ち主。仮面ライダーセイバー。

 

カリバーを伝ってタッセルに渡されたワンダーワールドにある聖地への『ブックゲート』を託された少年。

幼き日、アルフィアとザルドそして、老神ゼウスと暮らしていたがエレボスにより二人が連れて行かれ、一時期酷く落ち込む、その記憶をカリバーに消され正史と同じように英雄を目指す普通の少年となる。

火炎剣烈火の正体はユーリがワンダーワールドに持ち帰った原初の英雄の炎の魔剣がワンダーワールドの力を吸収して変質したもの。

 

レオ・ブレイズ……水勢剣流水の持ち主。仮面ライダーブレイズ。

 

ガネーシャ・ファミリア所属。後にウォーゲームでベルに力を貸すためにヘスティア・ファミリアに改宗。

新堂倫太郎のような青年。レベル5。誰よりもオラリオの平和を愛する剣士。大の甘党。

偶然、怪物祭でベルが変身する姿を目撃し、あとをつけ聖地へとたどり着き、ライドブックや聖剣について知る。彼の人柄を気に入り、なにかと世話を焼く。リヴェラの街でベルがレヴィスに弾き飛ばされた水勢剣とライオン戦記を手にし、ベルの見様見真似で変身する。二つ名は『番獅子』。

 

ジン・アラビア……雷鳴剣黄雷の持ち主。仮面ライダーエスパーダ。

 

ヘルメス・ファミリア所属。後にウォーゲームでベルに力を貸すためにヘスティア・ファミリアに改宗。

富加宮賢人のような青年。レベル5。ベルと同じ村の出身で彼の出生の秘密を知る数少ない人間。

アルフィアとザルドが去ったあと、二人が死んだあとにオラリオに着き、いずれオラリオに来るベルの夢を手助けるために力をつけようといつでもやめれるという一時的な契約でヘルメス・ファミリアに入信した。

レオと同じように怪物祭でベルがオラリオに来たことを確認し、同じように後をつけ聖地で再会する。変身の経緯もレオと同じくレヴィスに弾かれた雷鳴剣とランプドアランジーナで変身する。二つ名は『雷鳴』。

 

ヴェルフ・クロッゾ……土豪剣激土の持ち主。仮面ライダーバスター。

 

ヘファイストス・ファミリア所属。後にウォーゲームでベルに力を貸すためにヘスティア・ファミリアに改宗。

ヘスティアがベルの火炎剣についてヘファイストスを訪ねたときにベルと知り合い、預けられたライドブックを通じてワンダーワールドの力に干渉し聖剣やそれに通ずるアイテム(キングエクスカリバー、ドラゴニックブースター等)を作れるようになる。

ジンとは同じベルの兄貴分としていい友人である。

 

リリルカ・アーデ……音銃剣錫音の持ち主。仮面ライダースラッシュ。

 

ソーマ・ファミリア所属。レオたちとの協力によってソーマファミリアを脱退しヘスティア・ファミリアに改宗。

正史とはあまり変わらない流れだが、音銃剣を手にしてから戦闘に積極的に参加するようになる。戦争遊戯の際にブレーメンのロックバンドを使っている姿を見られ『狂騒曲』の二つ名を与えられる。

 

ヤマト・命……風双剣風の持ち主。仮面ライダー剣斬。

 

タケミカズチ・ファミリア所属。後に戦争遊戯の際にベルに力を貸すために一年限定でヘスティア・ファミリアに改宗。

戦争遊戯に望む際に風双剣を託される。正史とはあまり変わらない。

 

仮面ライダーカリバー

 

オラリオに出没する謎の剣士。その正体は未来のベル・クラネル。オラリオが滅んだ未来からやってきた。

仲間たちとともに倒れたはずなのに気づけば一人ワンダーワールドで倒れ暗黒剣を手にした。そして、禁忌の術を使い肉体を失う代わりに過去に戻った。未来を救うために仲間たちの幸せのために暗躍した(アストレア・ファミリアの壊滅を防ぐ等)。

だが、暗黒剣の力をつかうたびにその未来を見る力であらゆる未来を見せられ、どうあっても自分と同じ未来にたどり着くことを見せられる、だが、唯一ベルが英雄となり十一本の聖剣と禁書が揃った未来だけはその先が見えなかった。そのためその唯一の希望につなげるためにベルを英雄にするために暗躍する。アルフィアとザルドとの記憶を消したのも妙なトラウマを持ったままオラリオに来られては困るため。

ベルを完膚なきまでに叩きのめして挫折を与えることで奮起させたり、覚悟を問うことで聖剣を覚醒させたり、ライドブックを託したりする役目を担っている。



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《ネタバレ注意》セイバーVSカリバー

時系列としては戦争遊戯のちょいあとくらいにしようかと思っています


「カリバーッ!!」

 

「来たか、ベル・クラネル」

 

 カリバーが待つアヴァロンに通じる次元の狭間に辿り着いたベル達。アヴァロンへの扉である光の下で闇黒剣を肩に担ぎ彼はそこに立っていた。

 

「あの本は一体何だッ!?」

 

 ベルはカリバーの言葉に反応せず、今もオラリオの上空で徐々に開きつつある巨大な本について問いただす。カリバーはその質問が来ることを理解していたようで隠す様子もなくベルの質問に答える。

 

「お前が以前、アヴァロンに来たときにビクトールに説明されただろう。かつて、ワンダーワールドで全知全能の書がバラバラになったときにワンダーライドブックとともにできたできた禁書の一つ、『破滅の本』」

 

「『破滅の本』だと……?」

 

 そのあからさまに危険なニュアンスの名前にリヴェリアやフィンたちの表情が歪む。

 

「アレは文字通り全知全能の書の『破滅』のページが変化したもの。すなわち、アレが開いた時、オラリオを……いや、世界を完全に消滅させるまで決して閉じることのないもの。故に生まれたときから封印されていた禁書だ」

 

 カリバーに答えにその場にいた全員に血の気が引く、そんな危険なものがもうすぐ開こうとしている。それを開こうとしているカリバーの正気を疑った。

 

「そんな本を何故開いた!?お前の目的はベル・クラネルに火炎剣を覚醒させることじゃなかったのかッ!」

 

「確かにソイツは力をつけた、しかし、まだ足りない。実際ソイツは好きなタイミングで聖剣を覚醒させることはできない」

 

 カリバーの言葉にベルは顔を歪める。事実、ベルは火炎剣を好きなタイミングで剣を光らせる、覚醒させることができない。そのせいで今回の一件を引き起こしてしまったと自分を攻めるが、その頭の上にポンと手を置く人物がいた。

 

 それは【アストレア・ファミリア】団長のアリーゼ。彼女は真っ直ぐとカリバーを見ながら、ベルの頭を優しく撫でる彼にとって姉のような存在。

 

 正直、ベルは彼女たち【アストレア・ファミリア】をここにつれてくるのは反対だった。彼が何を考えたにしても【アストレア・ファミリア】を【厄災】から救ったのは他ならぬカリバーなのだ。自分は今からその彼と命をかけた一騎打ちの戦いをする。そんなところを彼女たちに見せたいと思うものはいないだろう。

 

「そんなことを聞かされたらますますベル一人に戦わせるわけには行かないわね」

 

「……貴様らにこの戦いに参加する資格はない」

 

 そう言ってカリバーはもう片方の手で持っていた本をベルたちに向ける。瞬間、光が放たれる。

 

「ぐわぁッ!」

 

 ベルは光に弾き飛ばされて地面を転がるが、すぐに皆の方向に視線を向ける。そして、そこには光の檻に閉じ込められた仲間達の姿だった。

 

「皆っ!!」

 

「勝負が終わるまでお前達はそこから出られない」

 

「こんなもんぶっ壊してッ……!」

 

 ティオネが檻を殴りつけるがヒビ一つつかないその高度に全員が驚愕を顕にする。

 

「この本も全知全能の書の一部。貴様ら如きにどうにかできる代物ではない」

 

「嵌められたね……カリバー、君の目的はなんだッ」

 

「簡単なことだ、小僧を追い詰め火炎剣を覚醒させる」

 

 淡々と言いながらベルを見る。その視線は険しい。

 

「今まで火炎剣はソイツの感情に呼応して力を発揮していた。だからこそ、この舞台を用意した。

 

 それに、これは一種の慈悲でもある」

 

「慈悲、だと」

 

「どのみち、その小僧が覚醒しなければこの世界は滅びる。ならばせめて、苦しまずに消してやるのがせめてもの情けだと思わないか?」

 

「勝手なことを……!今貴方が行おうとしていることは闇派閥と何も変わりません!」

 

「ふっ……闇派閥か。闇に堕ちた私にはおあつらえむきじゃないか」

 

 レオの非難の言葉に自嘲気味な笑みを浮かべて返す。

 

「そもそも、貴方が見た未来が全てではないはずだ!クラネルさんにそれほどの負担を強いなくても他に方法などいくらでも……」

 

「そんなものはないッ!!」

 

『!?』

 

 リューの言葉にカリバーが初めて声を荒げる。その表情は怒りを顕にしながら苦痛をこらえるようにも見えた。闇黒剣を握っていない方の手は爪が手のひらに食い込み血が流れるまで強く握りしめられている。

 

「ならば聞こう!お前たちの中に一人でも私が見た未来を変えられたものはいるのか!?」

 

「ッ……それは……。」

 

「お前達自身が証明しているはずだ。私の見た未来、それが全てだと」

 

 カリバーは今まで先に起こるであろうオラリオの事件に誰よりも早く関与していた。それは、その事件に関与しそれが起きなかったルートに変えてるに過ぎない。結局、未来の結果を変えているわけではないのだ。

 

「どのみち未来で世界が滅んだのも私が闇黒剣で未来を見たのも神達は嘘ではないと証言している。ソイツが十一の聖剣を束ねない限り、世界が存続する道はない」

 

 沈黙する面々、その中でジンが言葉を発する。

 

「お前の言い分は理解した。確かにやろうとしていることも信念もオラリオの住人を巻き込む以外は理解できなくはない」

 

『だがな』とジンは続け、歯を食いしばり、拳を握ってキッとした視線でカリバーを睨みつけ問いただす。

 

「その剣で未来を見たなら……なんで、なんで……あの二人がやろうとしていることをわかっていて止めなかった!?」

 

 あの二人、それが誰であるかは聞かずともわかった。そして、その答えはベルも聞きたかった答えだ。

 

 そして、カリバーからの返答は感情の乗っていない冷たいものだった。

 

「……どの道あの二人は毒と病魔に蝕まれ残り短い命だった。ならば、わざわざ歴史を変えるリスクを伴う必要はないと考えたまでだ」

 

『!?』

 

「だが、感謝はしている。あの二人との約束という『誓い』のお陰でソイツは覚悟を決め、ワンダーコンボを完全に扱えるにまで至った」

 

 その言葉に怒りが爆発しそうだったのはジンだけではなかった、あの五年前の悲劇を知っているものからすれば被害を減らせたはずの人物がそれを知らずに何もしなかった。それを聞いて、【ロキ・ファミリア】も都市の秩序を守る役目を担っている【アストレア・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】も感情が爆発する寸前だった。

 

 だが、それと同時に目の前の男が本当に自分たちが知っているベル・クラネルなのかという疑念も生まれた。彼の人柄を知っていれば決してこんな事は言わないだろう。一体、未来になにがあったのかそれに対する疑惑が大きくなる。

 

 そして、今のベル・クラネルを見てみると彼は火炎剣を強く握りしめカリバーを睨んでいた。

 

「なら……だったら、なんで僕の記憶を消したんだ!?」

 

「決まっているだろう?下手なトラウマを残してオラリオに来なくなったら元も子もない、だからこそ、お前の力が最大限発揮できるように記憶を封印したのさ」

 

「そのために……家族との記憶を消したっていうの!?」

 

「あぁ。寧ろ感謝されてもいいはずだ、トラウマを残すだけではあの二人は正真正銘―――『無駄死』になった……」

 

 そこから先を言おうとしたカリバーにジンは雷鳴剣を抜き、檻など無視して斬りかかろうとしたがそれよりも先にその隣を熱風がすり抜けていった。

 

「ッ!!」

 

「べ、ベルッ!?」

 

 ジンたちは飛び出したものの姿を見て驚愕の表情を浮かべる。

 

 カリバーに斬りかかったのは仲間たちが今までに見たことのない表情で火炎剣烈火を握りしめたこの時代のベル・クラネルだった。カリバーは火炎剣を闇黒剣で受け止めながらその表情を見て感心したように息を漏らす。

 

「ほう、そんな表情もできたのか」

 

「それ以上、お前が二人を語るなッ!!」

 

 ベルは怒りをむき出しにしカリバーを睨む、対するカリバーは眼を細めると闇黒剣を振り抜きベルから距離を取る。そして、今度は侮蔑のこもった眼差しでベルを見る。

 

「相変わらず、甘い小僧だ。決着を付ける前に教えておいてやる、お前に足りないもの……それは、強さへの渇望だ」

 

「強さへの、渇望……?」

 

「そう、他者を圧倒する力。それを手にするためにどんな犠牲を厭わない。強さへの貪欲な渇望が貴様には決定的に欠けている」

 

「僕は力がほしいから戦っているんじゃない!大切な人達を護るために……!」

 

「笑止!力がないものに守れるものなどなにもないっ!その甘い考えが自らに限界を作っているなぜわからない!?」

 

「そんなことはないっ!誰かを護りたい……その想いがいつだって僕を強くしてくれた。想いの強さが僕の力になる!」

 

「ならば目の前にいる私をどう説明する!?力なき故にたった一人残された未来のお前の成れの果てを!?」

 

 論争を繰り広げるベルとカリバー。そして、二人は悟っていた。彼らの戦いは剣でのみ決着をつけることができる。

 

「これ以上、どんな言葉を並べても無意味だな」

 

「あぁ」

 

「故に、ここから剣で語るとしよう」

 

 その言葉にベルはソードライバーを腰に巻きブレイブドラゴンを構える。そして、同じようにジャアクドラゴンを構えるカリバー。

 

「お前を倒して証明する、僕は決してお前にはならない……!」

 

「ならば見せてみろ、お前のその生ぬるい考えでどこまでできるか!」

 

『ブレイブドラゴン!』『かつて世界を滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた』

 

『ジャアクドラゴン!』『かつて世界を覆い尽くすほどの暗闇を生み出したのはたった一体の神獣だった』

 

 それぞれが険しい表情でガードディバインドを開き二人の間の沈黙にライドスペルの朗読が流れる。それぞれのベルトにライドブックが装填されると二人の背後に巨大な本が実体化する。そして、ベルは火炎剣を抜き放ち、カリバーは暗黒剣のグリップエンドでライドブックを展開する。

 

『烈火抜刀!』

 

『闇黒剣月闇!』

 

「「変身!」」

 

『ブレイブドラゴン!』『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わるとき、真紅の剣が悪を貫く!』

 

『Get go under conquer than get keen.(月光!暗黒!斬撃!)』『ジャアクドラゴン!』『月闇翻訳!光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する』

 

 二人が放った斬撃と、展開されたライドブックから二体のドラゴンが空中でぶつかり合いながら二人をそれぞれの色の炎に包んでセイバーとカリバーに変身させた。

 

「はあぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 最初に動いたのはセイバーの方だった。セイバーはエスパーダ程ではないが目にも止まらない速さで斬り込む。

 

「速いっ!?」

 

「戦争遊戯の時よりも更に速くなっている……。」

 

 檻の中から戦いを見守っている者達はその速さに目を見開いた。

 

 しかし、その速度のセイバーの攻撃をこともなげに受け止める。そこから、真紅の炎と漆黒の炎を纏う剣戟が繰り広げられる。空中にそれぞれの炎が残した火花が軌跡を残しながらぶつかり合う。

 

「ハァッ!」

 

「フッ!!」

 

『月闇居合!』

 

「フッ!」

 

『読後一線!』

 

 セイバーが横薙ぎを払う瞬間にカリバーが背後に飛んで暗黒剣をドライバーの横についたホルダーにさして、闇の斬撃をセイバーに放つ。直撃し、粉塵がセイバーの姿を隠す。

 

「ベル!」

 

「ベル様ッ!」

 

 攻撃を受けたセイバーの身をあんじてリリルカとヴェルフが叫び声を上げるが、だが、

 

『二冊の本が重なりし時、聖なる剣に力が宿る!』『ドラゴン!アーサー王!』

 

 煙を切り裂いて現れたのは烈火とキングエクスカリバーを構えた仮面ライダーセイバー・ドラゴンアーサー。直撃したと思われた斬撃はキングエクスカリバーの斬撃によって相殺されていたのだ。

 

「上手いッ!」

 

「ベルめ、あの攻撃を完璧に防ぎきったな」

 

 リューと輝夜が称賛する中、ドラゴンアーサーは二本の剣を使ってカリバーに攻撃を仕掛ける。二本の剣を巧みに使いこなすセイバー、使い慣れた烈火による斬撃とキングエクスカリバーによる思い一撃による攻撃、まさしく剛柔一体の剣戟がカリバーに決まりカリバーの鎧から火花が散る。

 

「クッ!」

 

 斬られた部分を抑えながら後ずさるカリバー、だがセイバーは決して攻撃の手を緩めない。

 

「ゼリャァ!!」

 

 巨大なキングエクスカリバーを召喚し、それを横薙ぎに奮ってカリバーを攻撃する。しかし、カリバーは回転しながら飛び上がり空中でそれを回避する。さらに、着地したカリバーに上空からキングエクスカリバーを振り下ろすがカリバーはそれを受け止め刃を傾けて地面に滑落とした。

 

「まだまだァ!!」

 

『キングスラッシュ!』

 

「フッ……!!ハアアァァァァァ!ハァッ!」

 

 今度は正面からキングエクスカリバーを弾丸のように発射する。だが、カリバーは闇黒剣から発せられた闇でその攻撃を受け止め、剣舞を舞ってキングエクスカリバーをそのままセイバーに向かって打ち返した。

 

「なっ!?ぐわぁぁぁぁ!!」

 

「ベルッ!!?」

 

 防ぐすべをなく、そのまま自分の攻撃が直撃してしまう。今度こそ直撃を喰らったセイバーにジンは檻の間から身を乗り出して心配する声を上げる。セイバーは片膝を付きながら必死に立ち上がる。

 

「どうした、お前の力とやらはその程度かッ!?」

 

「そんなわけがッ、あるかぁ!!」

 

 カリバーの挑発に激昂にも似た声で立ち上がったセイバーはワンダーコンボのライドブックを装填して、勢いよく聖剣を抜き放つ。

 

『ストームイーグル!』『西遊ジャーニー!』

 

『烈火抜刀!』『語り継がれし神獣のその名はクリムゾンドラゴン!』

 

 ワンダーコンボ、セイバー・クリムゾンドラゴンに変身し三度、カリバーに斬りかかる。爆炎が地面に斬撃を残しながらカリバーに灼熱の炎による攻撃を叩き込む。しかし、カリバーも自身の闇黒の炎で相殺する。お互いの炎が舞い散る。その姿は雄々しくも幻想的と言えるものだった。

 

 ―――だが、この戦いはオラリオの未来を決める戦い。そんな感情が入り込む余地はない。

 

 しかし、それ以上に……。

 

「ヘスティア様……。」

 

 リリルカは無言で二人の戦いを見守るヘスティアに不安げな視線を向ける。いつもなら憎まれ口を叩きあう二人だが

 

(この戦いはヘスティア様にとって辛いものになるだろうな……どっちが勝つにしてもベルなんだからな)

 

 そして、それをわかっているヴェルフも声をかけずにその姿を見守っている。もちろん、レオも命も他のファミリアも言葉をかけることができない。

 

「皆、心配しないでくれ」

 

 ヘスティアはセイバーとカリバーの戦いを見ながら澄んだ声色でその場にいた全員に告げた。思いがけない、ヘスティアからの言葉に皆は目を見開いて彼女の方を見る。

 

「これはボクが見届けるべき戦いだ」

 

 その瞳は覚悟を決めたものの目だった。はじめから覚悟を決めていたのだろう、彼の正体が未来のベルだとわかったときからこの戦いは避けることができないことだと。

 

 ―――炎と闇の戦いは激しさを増していく。



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