巫女に消される (ゾウブタ)
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#1 終わりの始まり
パンパン!と乾いた音が鳴り響く。同時に反動のせいで俺は後ろへ吹っ飛んでしまう。油断したからか思い切り背中を打ってしまった。かなり痛い。
「大丈夫か?」
俺の後ろに立っていた兄貴は俺に手を差し伸べてくる。相変わらず手がでけえな。クソデカビッグハンドを掴むと思い切り引き上げられ、今度は腕が痛くなった。パキパキって変な音したし。文句の一つも言いたくなったがそれより先に尋ねることがある。
「大丈夫。で、次はどうするの?何をすればいいの?」
#1 終わりの始まり
目が覚める。気づけばびっしょりと汗をかいていた。ここ最近は夜でも暑い。とりあえずずっとこうしてはいられないので朝支度をすることにする。といっても朝食を作るのと顔洗いと歯磨きだけだが。
玄関から出て井戸から水を掬い、部屋へと運ぶ。そこそこ重いが、俺は今朝見た夢のことを思い出していた。
兄貴は今、元気でやっているだろうか。今何してんだろう。どっかでのたれ死んでないかな。そんなしょーもないことを考えていると家の柱にぶつかってしまい、水を盛大にぶちこぼしてしまった。
「うっわ…最悪だ…」
どうやら兄貴は夢の中でも俺に面倒事を引き起こさせるらしい。ひでえ。
とりあえず風邪をひいてはたまらないので服を取り替える。というか水もくみなおしだ。めんどくせ。愚痴なんて言ってられないのでさっさと水を汲みに行く。本日2度目の玄関を出ると、近所の人と鉢合わせた。近所付き合いが苦手なので気づかなかったが、隣は本の貸し出しをやってるらしい。手に本を持っていることから、そこの人なのだろう。
「こんにちは!」
そいつは俺を見るなり挨拶をしてくる。最近人と会話してなかったせいか、少しキョドってしまう。
「こんちは」
俺は軽く頭を下げてすぐに立ち去る。こんなことにエネルギーを使ってはいられない。水を汲み、すぐに朝食を作る。そして休憩。作った朝飯を食いながら、半ば無理やり契約させられた新聞を読む。これが日課。変わらないルーティーン。これを妨げる奴は何人たりとも──
『ジリリリリ!』
まさかのタイミングで激しい警鐘が鳴った。原因はおそらく話の通じない妖怪が里に入ってきたのだろう。
ていうか自警団何やってんだよ。無能かよ。
愚痴をこぼしていてもしょうがない。死にたくなければ逃げるだけ。幸い家にはほとんど荷物がないのでほぼ手ぶら状態。
ラッキーだ。
さっさと玄関を飛び出すと、隣の本屋は大慌て。何故かガキどもが泣いたり暴れたりしていた。構っている暇はないがふと見ると看板には『読み聞かせ』の文字。ご愁傷様としか言いようがない。どっかのバカが火をつけっぱなしにして逃げたのか知らんが、火が燃え広がっている。燃えちまえばどんなに価値がある本も全部塵。未来(笑)ある子供達も全部塵だ。
だが俺はそこまで非情ではない。しかしどこからか悪魔が俺に囁く。「めんどくせえな」「逃げちまおうか?」
ガキと自分の命。究極の二択。なら。
俺は何を思ったのか、化け物の方へ突っ込んでいく。だんだん熱くなる。
まぁ、まだ主人公ムーブしてますがこれから落としていくんで大丈夫です。
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