ポケットモンスター蟲【本編完結】 (放仮ごdz)
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第一章:ジムチャレンジの章
VSユニラン


どうも、性懲りも無く新作を出した放仮ごです。今さらになってポケモン剣を購入してハマったので書くことになりました。デンチュラが推しになったので虫パです。

何気にTSという初めての試み。では、楽しんでいただけると幸いです。


 俺は桂樹月(かつらいつき)。日本人の高校生だった。…そう、だっただ。趣味が蜘蛛やら蠍やら百足やら虫、それも多足類の蟲を集める事だった俺は、不注意から飼っていたシドニージョウゴグモの毒であっけなく死んでしまった…はずだったんだが、何の因果か生まれ変わった。

 

 何故か性別が変わってしまったが些細な問題だ。何故って?子供の頃に出くわしてしまったんだ。小さな黄色い蜘蛛の様な不思議な生き物…今や俺の相棒であるバチュル、そうポケモンに。

 

 ポケットモンスター。縮めてポケモン。前世では多くの人に親しまれた国民的ゲームシリーズだ。つまりゲームの世界に俺は転生してしまったらしい。そして運が悪いことに、俺はブラック&ホワイト…つまり、DSでできる第五世代までしかやってない。ガラル地方って場所なのはわかったが、知らないポケモンがたくさんいることからブラホワ後のバージョンなのだろう。俺のポケモン知識は偏っていて知ってるポケモンの知識も怪しいからスクールとかで苦労した。

 

 そして11歳になった今世の俺は今、ジムチャレンジの開会式に出ていた。理由なんて簡単だ。幼少期から我が故郷であるこのエンジンシティで行われてきた開会式を客として見るたび、ある疑問が湧いたからだ。誰も彼もがチャンピオンとその相棒のリザードンを褒め称えるが──

 

虫ポケモンの方が強いだろ?と。

 

かっこいいだろ、かわいいだろ、最っ高だろ?(いつか日曜朝に見たヒーロー風)

そう親に言ってみたら割と真面目に嘆かれ説教された。解せぬ。

 

 たしかにリザードン、ほのお・ひこうタイプはどちらも虫の天敵だ。だがそれでも虫ポケモンは最高だ。最強なんだ。誰が何と言おうとこれは真理だ。

 

 

 諸君。私は蟲が好きだ。虫ポケモンが好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。虫ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと。

 

 虫ポケモンのよさその一。トレーナー歴一年未満の俺でも捕まえやすく、育てやすい。俺はエンジンシティのすぐ側のワイルドエリアでとある一匹のポケモンを捕まえてから開会式に参加していた。ルビーサファイア時代で好んで使っていた、とある虫ポケモンだ。

 

 

 さて、あの胡散臭い印象のローズ委員長の開会宣言が終わり、選手入場となる訳だが。絶対あの人、慈善事業のトップに見せかけたラスボスだろ(偏見)とは思うが、マクロコスモスという会社の社長にしてガラルポケモンリーグを取り仕切る委員長でもあるガラルの顔とも言うべき人だ。昔の試合のビデオを見た時にシュバルゴ持ってたから多分仲良くなれる。

 

 

 スタジアム内に入る俺達の目の前に立ちはだかるは、七人のジムリーダー。くさ、みず、ほのお、かくとう、フェアリー、いわ、ドラゴン。一人足りないがそうそうたる顔ぶれだ。しかし何度でも思うのだ。フェアリーって何ぞや?ピッピってノーマルじゃなかったっけ?……この世に生を受けて長年疑問に思ってることだが気にしてもしょうがない。気張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。俺は最初のジムに挑む前に立ち寄ったガラル鉱山出口付近で変な奴に絡まれていた。開会式でも見かけた、ウールーみたいな頭をした紫?ピンク?の高そうな服と腕時計を身に着けた小生意気な態度の少年だ。

 

 

「君の持ってるねがいぼしを置いて行けば見逃しますよ?どうします?」

 

「テッカニン。つるぎのまい」

 

「くっ、無視とはいい度胸ですね…ユニラン、ねんりき!」

 

「虫だけに、な」

 

「はい?」

 

 

 ビートと名乗った少年の繰り出したユニランが、俺のワイルドエリアで仲間になったポケモン、テッカニンにねんりきを繰り出してくるが気にしない。もしやビートよ、エリートぶってるがタイプ相性をご存じで無い?

 

 

「その態度、気に入りませんね…さっさと終わらせてくださいよ」

 

「OK。テッカニン、れんぞくぎり」

 

「え?」

 

 

 瞬間、目にも留まらぬ加速をしたテッカニンの一撃がユニランを斬り飛ばしていた。戦闘不能になったユニランを信じられない、といった顔で戻すビート。しかしすぐに気を取り直して不敵に笑んで見せる。

 

 

「…貴方のポケモンにも見せ場くらいあげないとね」

 

「声が震えてるぞー」

 

「っ、なら、僕の相棒がお相手しましょう!ミブリム!」

 

「れんぞくぎり」

 

 

 出て来た次のポケモンも、三段階加速し、二段階攻撃力を上げたテッカニンの餌食になる。こうなったテッカニンは誰にも止められない。それを俺は、よく知っている。

 

 

「くっ…ゴチム!」

 

「れんぞくぎり」

 

 

 なにもさせることなく、さらに威力が上がった斬撃が炸裂し、ビートのポケモンは全滅した。目の前が真っ暗になった様で立ち尽くすビート。

 

 

「…あー、えっと…入り口に親切なお姉さんがいたから回復してもらうといいぞ」

 

「な、なるほどいいんじゃないですか?こ、こちらも本気ではあ、ありませんし?」

 

「まあ、でも気持ちは分かるよ。好きなタイプを極めたくなるよな、わかるわかる。俺にとってはそれが虫で、ビートにとってはエスパーだったってだけだ。相性が悪かった」

 

「…そうですね。僕が負けた訳ではありません、相性の差で負けたんです!」

 

「好きなら相性の差ぐらい覆さないとだけどな」

 

「ぐっ!?」

 

 

 言ってやるとショックを受けてへこむビート。わかりやすい奴だな。今作?に当たるであろうシリーズのライバル枠だろうか?

 

 

「じゃ、俺は行くぞ」

 

「待ってください。貴方の名は?」

 

「あー、俺か?俺の名は…」

 

 

 去り際に問いかけて来たので立ちどまりつつ、頭の上にバチュルを、傍らにテッカニンを侍らせて振り返る。外から光と風がいい感じに舞い込んで、めんどくさくて伸ばしている髪が帽子から出てふわりと浮いたが、それよりも影に映るテッカニンの羽ばたきの方が綺麗だった。

 

 

「虫タイプ使いのラウラだ。じゃあまた会えたらバトルしよう、ビート」

 

「お、女…!?」

 

 

 今更なことに驚愕しているビートを置いて、俺はターフタウンへと向かうのだった。




・ラウラ
元は桂樹月(かつらいつき)という名の男子高校生で転生者。BWまでしかプレイ経験がなく、フェアリータイプの存在も知らなかった。一番好きなポケモンはデンチュラ。
めんどくさいからという理由で伸ばした肩までかかる赤い髪を帽子に隠してボーイッシュな服装を取る少女。クラスで四番目くらいの美人だが自身に興味がなく、虫ポケモン、特に最初の相棒であるバチュルに愛情を捧げている。一人称は「俺」。かしこまる時は「私」。名前は月桂樹とそのラテン語から。


・テッカニン♀
とくせい:かそく
わざ:つるぎのまい
   バトンタッチ
   れんぞくぎり
   かげぶんしん
もちもの:ひかりのこな
備考:せっかちな性格。暴れるのが好き。テッカニンの状態で捕まえたためヌケニンはいない。ラウラのパーティーの先方にしてサポーター。とにかく積んでとにかく避ける。

・ビート
ポケモン剣盾のライバルの一人。ガラル鉱山で主人公の前に立ち塞がる前にラウラに遭遇。自慢のポケモンたちが一撃でやられて意気消沈。ラウラのことは男だと思っていた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSワタシラガ

どうも、実はまだ購入したポケモンソードをクリアしていない放仮ごです。実況動画で見てるとトーナメント前に寄り道したくなるよね。

今回はVSヤロー。では、楽しんでいただけると幸いです。


『本日のターフスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ここまで一匹のみ、一撃でジムトレーナーを打ち倒してきたラウラ選手!対するはジムリーダー、ヤロー!2VS2のシングルバトルです!』

 

 

 大枚はたいて買ったむしタイプのユニフォームに身を包み、スタジアムに入ると実況の名乗り上げと共に歓声が上がる。ウールーの群れを誘導して先に進むとかいうジムミッションを、途中待ち構えているジムトレーナーを一蹴しながらクリアして辿り着いたスタジアムで待っていたのは温厚な顔に似合わずガタイがいい麦わら帽子の青年。確か、背番号831。ファイティングファーマー・ヤロー。戦う農家か。…虫の天敵かもな。頭上のバチュルもなんか威嚇しているし。

 

 

「ぼくのポケモンジムは初めのジムなので次々にチャレンジャーが来るのです。ですからジムミッションも割と厳しめにしとるのですが…それをあっさりクリアしたどころか、見た所虫統一という珍しい構成。ぼくが草タイプの使い手と知ってか、それとも本人のこだわりか…どっちにしてもこりゃあ手強い勝負になる!ぼくもダイマックスを使わねば」

 

「御託はいい。さっさと始めようぜ」

 

 

▽ジムリーダーの ヤローが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くんじゃい、ヒメンカ!」

 

「蹂躙しろ、テッカニン!」

 

 

 豪快な振り上げと共に繰り出されたのは、はなかざりの様なポケモン。体力的、相性的に問題ないと思った俺はいつも通りに指示をする。

 

 

「ヒメンカ、りんしょうじゃい!」

 

「テッカニン、上空に避けてかられんぞくぎりだ!」

 

 

 初手ノーマル技。さすがに覚えているよな。だったらこっちは空飛べる飛行タイプのアドバンテージを利用するまでだ。だがさすがジムリーダーのポケモン、一発耐えられてしまった。積んでから行くべきだったか。

 

 

「むう、さすがに制空権を取られるとどうしようもなさそうじゃ。マジカルリーフ!」

 

「つるぎのまいで弾き返せ!」

 

 

 放たれる、不可思議で不可避な魔法の葉っぱを、つるぎのまいを利用して迎撃する。なにもゲームじゃないんだ、こういうこともできる。それに上空に向けて放たれて威力が減衰されたマジカルリーフぐらいなら訳ない。

 

 

「むっ、避けるんじゃヒメンカ!」

 

「避けられるかな?かげぶんしんしてから…れんぞくぎりだ!」

 

 

 すばやさが三段階、攻撃が二段階上がり、かげぶんしんで取り囲んで四方八方からのれんぞくぎり。避けきれず、ヒメンカはダウンする。よし、準備完了。これで次に来るであろうアレにも耐えられる。

 

 

「ウオオ!僕たちは粘る!農業は粘り腰なんじゃ!さあダイマックスだ!根こそぎ刈り取ってやる!」

 

「まあ、くるよな」

 

 

 バンドから送り込まれるエネルギーで巨大化したボールを収穫した野菜のように撫でて後ろに投擲、現れるのは超巨大なワタシラガ。ダイマックス。この地方独自の文化で、ポケモンが一時的に巨大化する現象を指す。空模様がマゼンタ色の渦巻く暗雲へと変わるのも、もはや見慣れた光景ではあるが、怪獣映画さながらの巨体にたじろぐ。俺も使うべきか迷うが、作戦通りに行くとする。

 

 

「驚けよ、たまげろよ!これがダイマックスの技じゃあ!ダイソウゲン!」

 

「はっ!空に逃げろ、襲ってくる植物はつるぎのまいで迎撃だ!テッカニン!」

 

 

 放たれる巨大な種の様な物が地面に撃ち込まれ、巨大なキノコや草が生えてテッカニンを襲うが、襲いくる草をつるぎのまいでいなしながらそれよりも上空に逃れる。

 

 

「頃合いか。バトンタッチだ、テッカニン!」

 

「むっ、ダイアタックじゃ!」

 

 

 上空のテッカニンがボールに戻り、その直前に頭から飛び出したバチュルと交差、そこを突いて地面が罅割れる攻撃を叩き込んでくるが…関係ない。すばやさとこうげきが四段階、回避率が一段階上がっているんだ。

 

 

「バトンを受け取った俺のバチュルに敵はいねえ!避けてこうそくいどうで壁を這い回れ!」

 

 

 さらにこうそくいどうですばやさを上げつつ目にも留まらぬスピードでダイアタックを避けて観客席下の壁を小さな姿で這い回ってワタシラガを翻弄する。元々ちっこい上に、あの巨体だ。追い切れるはずがねえ。そして、ダイマックス中に使える技は三度までだ。あと一発凌げばほぼ勝ちだ。

 

 

「くっ、ぼくのヒメンカはうっかり起点にされていたと…本当にジムチャレンジ初参加かい?」

 

「生憎、知識だけはあるもんでね。追い切れないだろ?さらにこいつだ、連続でエレキネット!」

 

 

 雷光の如くすばやさで壁を這い回るバチュルから放たれる、四方八方からの電撃帯びた蜘蛛の巣。相手のすばやさを下げ、その場に拘束する。そして目いっぱい加速してから空中に飛び出すバチュルを、ヤローは見逃さなかった。

 

 

「そこだ!ダイソウゲン!」

 

「掻い潜れ!きゅうけつだ!」

 

 

 わざレコード、というものがある。ブラホワ時代のわざマシンより以前のわざマシンと同じく、一回使うと壊れてしまうわざを覚えさせるツールだ。テッカニンを捕まえた時にそれの“きゅうけつ”を手に入れていたのだ。かげぶんしんで回避率を上げ、すばやさも上げ、さらに複眼で複数の情報を処理できるバチュルを捉え切れるはずもなく、巨大なワタシラガは四段階上がった攻撃力の“きゅうけつ”が炸裂。

 

 大爆発を起こし、ワタシラガは縮んでボールに戻って行く。そして着地し、俺目掛けて飛び込んできたバチュルを受け止める。

 

 

「よくやったバチュル!お前は強い!最強だ!」

 

 

 目一杯の笑顔でわしゃわしゃと撫でていると、参った、といった顔でヤローが近づいてきた。

 

 

 

「草の力みんなしおれた…ダイマックスも使わずに勝利するとは、なんというジムチャレンジャーじゃ!」

 

「むしタイプの持ち味は素早さによる翻弄だからな。それができないダイマックスは極力使わないようにしているんだ。やるとしても相手のダイマックスが終わってから…です」

 

「むしタイプの事を理解しているんだな。これは完敗じゃ…今度は本気で戦いたいもんじゃ」

 

「私も、次があったらぜひ戦いたいです」

 

「かしこまらなくてもいいよ。君は自然体の方が一番だ。うん、いいチームだ。ジムチャレンジにおいてジムリーダーに勝った証としてくさバッジをお渡しするんだわ!」

 

 

 その言葉とともにバッジを受け取り、握手する。くさバッジ…むしバッジはないのかな?ないかあ…

 

 

「ジムバッジを8個集めるのがジムチャレンジ突破の条件。むしタイプだけで頑張るならこれから苦労もあるだろうけど、他のジムリーダーにも挑み見事、勝利を手にするんじゃ!」

 

「当たり前だ。俺は、いや私は、蟲たちでチャンピオンのリザードンに勝って虫タイプの素晴らしさを証明するために参加したんだからな!」

 

「おや、思っていたより目標は大きいんだな。個人的にも応援しとるよ」

 

 

 そうして、俺の初めてのジムチャレンジは勝利で幕を閉じたのだった。




ヤローの口調がとにかく難しかった今回。

・ラウラ
むしタイプのユニフォームを愛用している蟲好きトレーナー。テッカバトンの使い手。ダイマックスの殴り合いはむしタイプは逆に不利になると思ってるため回避に重きを置いている。

・バチュル♂
とくせい:ふくがん
わざ:エレキネット
   こうそくいどう
   きゅうけつ
   いとをはく
もちもの:ぎんのこな
備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。むし好きなオーラを察知して懐いた。翻弄して相手を拘束してから確実に仕留める生粋のハンター。

・ヤロー
くさタイプジムリーダー。むしタイプを極めようとするラウラに好印象。ダイマックスを使わずダイマックスを攻略する手法に度肝を抜く。作者的にはむしタイプが農家的に天敵なのでは?と思ってる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSジメレオン

どうも、なんとかデンチュラを入れたパーティーでチャンピオンを倒して殿堂入りした放仮ごです。ダンデが異様に強かった。それはそうとお気に入り50突破、評価ともにありがとうございます。

今回は主人公とは別視点となります。では、楽しんでいただけると幸いです。

※12/26 とぎすます→つめとぎに修正しました


 凄い物を見た。ガラル鉱山でビートを退け、ウールーを追いかけてきたヤローさんと出会い、ソニアさんとの談義?を終えてジムリーダーとの対決を目前にした私が見たのは、昨日行われたというベストバウトの試合映像。

 

 ダイマックス。私もワイルドエリアで体験したことがあるが、基本、ダイマックスポケモンにはダイマックスしたポケモンのわざじゃないと対抗できない。それを、いともあっさり覆して見せたのは、少々小柄なれど私と同じぐらいの齢の少女。自分のことを俺って呼んでいるけど間違いなく少女だ。俺っ娘という奴だろう。長くて紅い綺麗な髪と、十人中七人が振り返る整った顔。それが気にならないぐらいにその強さは、今まで戦ったトレーナーとは別格だった。

 

 ほじょわざを使いこなし、それぞれのポケモンの役割を決め、ダイマックスポケモンさえも普通サイズのポケモンの一撃を以って倒す。圧巻だった。そんな戦い方が在るのだと、新米トレーナーの自分には刺激的だった。

 

 ジムリーダーに挑む前に彼女と戦ってみたい。ポケモンバトルに魅せられた私がそう思ったのは道理で。慌てて、次のジムがあるバウタウンへの五番道路へ駆け出した。ジムチャレンジを巡るなら、この道を通る筈だ。ワイルドエリアに戻っていたらどうしようもないけど…この道に賭ける。

 

 

 そしてワイルドエリアを一望できる巨大な橋に差し掛かり、見つけた。頭にバチュルを乗せた、麦わら帽子を被ってむしタイプのユニフォームを身に着けた紅色の髪の女の子。確か、名前は…

 

 

「待って、ラウラさん!」

 

「んー?」

 

 

 歩いていたところを引き留めると、欠伸をしながら振り返るラウラさん。私を見ると興味深げに眉を顰め、首を傾げた。

 

 

「えっと…どこかで会った?」

 

「い、いえ!昨日の試合の映像を見て、どうしても会いたくなって…」

 

「お、おう。君もジムチャレンジャー?」

 

「はい!ユウリっていいます。まだジムバッジを手に入れてないんですけど…私と、戦ってくれませんか!」

 

 

 私の熱意に「おおう」とたじろぐラウラさんは頭の上のバチュルを手に取ると撫で回し、熟考する。私のお願いを一蹴せず、考えてくれている。いい人なんだな、と納得した。

 

 

「…うん、俺のポケモンたちもいい経験になるだろうしその勝負、受けるわ。二対二でいいか?たしか君、エンジンスタジアムのロビーで見たのを覚えてるけど、チャンピオンの推薦なんだろ?俺の戦い方を見て、対策を立てた上で戦いを申し込んできたんだろ?それはちょっと楽しみだ」

 

「うっ…そんなことはなかったりするんですけど…」

 

「え?あ、うん。まあいいや。チャンピオンの推薦したチャレンジャーがどれほどの腕か、拝見だ!」

 

 

▽むしつかいの ラウラが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いけ、テッカニン!」

 

「いって、ココガラ!」

 

 

 彼女が繰り出したテッカニンに対して私が繰り出したのは、旅の初めに仲間にしたココガラ。ひこうタイプならあのスピードにも対抗できるはず…

 

 

「なんて思ってたら見当違いだぞ?つるぎのまい」

 

「なっ!?え、えっと…ついばむこうげき!」

 

 

 弱点タイプのココガラがいるのに、つるぎのまいを始めるテッカニンに面食らうも、すぐさま攻撃を指示。しかし簡単に避けられてしまう。なんで…!

 

 

「とくせいとか関係なく、虫ってのは複眼を持っていてな?視界が広いんだ。そしてなによりテッカニンのとくせいはかそく。時間が経てば経つほど速くなる。捉え切れると思うなよ?れんぞくぎりだ」

 

「…ココガラ、つめとぎ!」

 

 

 周りを高速で飛びながられんぞくぎりを繰り出すテッカニンに対し、私はつめとぎを選択。攻撃力と命中力を上げる。速さに特化してるってことは、それだけ防御も薄いという事…!

 

 

「いけえ!つけあがる!」

 

「カウンターでれんぞくぎり!」

 

 

 能力を上げれば上げる程威力が上がるつけあがる攻撃が命中する、しかしそれでもれんぞくぎりがカウンターで炸裂、ココガラがふらつく。何とかダメージを与えた物の瀕死には至らない…ってことは、不味い。

 

 

「命中率を上げてその能力上昇を利用した一撃、か。チャンピオンが推薦しただけはあるな。バトンタッチ」

 

「止められなかった…!」

 

 

 一撃で倒す、それがあのバトンタッチに対する対抗手段だった。最初からつめとぎを指示しとけばあるいは…いや、今はあのバチュルをどう倒すかを考えないと。

 

 

「ココガラ、とにかく当てて!みだれづき!」

 

「橋の端にいとをはくだ、バチュル!」

 

 

 避けきれない弾幕ともいえるみだれづきを、射程外に逃げられて回避される。あんなこともできるのか、あのバチュル見た目よりもすばしっこいかもしれない。

 

 

「追いかけて、ついばむ!」

 

「エレキネットで迎え撃て」

 

 

 しまった、と思った時にはもう遅い。こちらの攻撃が届く前にこうかばつぐんの一撃がココガラに直撃。さらに電撃を帯びた蜘蛛巣で覆われ、そのまま勢いのままにバチュルについばむ攻撃を何とか当てるものの、そのまま崩れ落ちた。忘れていた、知っていたはずなのに、目先のことに気を取られて忘れてしまっていた。ココガラをボールに戻し、取り出すのはパートナーの入ったボール。

 

 

「…おつかれさま、ココガラ。おねがい、メッソン!」

 

「…ひこうとみずタイプだけで俺のバチュルに勝負を挑んでくるのは無謀だぞ」

 

「分かってます…!」

 

 

 ココガラとメッソン以外にあと1匹いるけど、タネボー…くさタイプっていう、むしが苦手なポケモンしかいないからしょうがなかったのだ。根本的にラウラさんのポケモンと相性が悪い。それでも、どこまでやれるか試したい。自然と、口元に笑みが浮かぶ。するとラウラさんも楽しそうに笑った。

 

 

「ピンチな時ほど不敵に笑む。まるでジムリーダーみたいだな、ユウリ!」

 

「そっちこそ、ジムリーダーだと言われても信じてしまうぐらいに強いです!でも、勝ちます!勝ってみせます!メッソン、しめつける攻撃!」

 

「バチュル、避けながらいとをはく!」

 

 

 私の指示で舌を伸ばしてバチュルを捕らえようとするが、かなりの速さで逃げられながら糸に巻かれ、メッソンのすばやさが下がって行く。でも、だったら、逃げられる場所を限定すればいい。

 

 

「空に向けて、みずのはどう!」

 

「なに!?」

 

 

 頭上に向けてみずのはどうを飛ばし、私達もろとも橋の上一帯がびしょ濡れになる。そしてバチュルは電気タイプだ、水たまりに入って漏電したくないはずだ。

 

 

「そこに目掛けてしめつける!」

 

「しまった!?」

 

 

 分かりやすく水を避けて移動したバチュル目掛けて舌を伸ばして今度こそ拘束。もう逃がさない!

 

 

「敵の頭上にエレキネットだ!」

 

「引き寄せて、はたく攻撃!」

 

 

 バチュルがメッソンの頭上目掛けて電気が奔る蜘蛛の巣を飛ばし、その前にと、引き寄せて手を振りかぶるメッソン。その時、不思議なことが起こった。メッソンの姿が光り輝いてその姿を変えたのだ。

 

 

「メッソン…いや、ジメレオン!みずのはどう!」

 

「そんなのありか…!?」

 

 

 進化して攻撃力が上がったジメレオンのはたく攻撃、からの零距離みずのはどうがバチュルに炸裂。水飛沫が飛び、落ちてきたエレキネットの電流に晒されながらもその小さな体を橋に叩きつけ、バチュルは目を回して倒れた。

 

 

「やっ、た……やったあ!やったよ、ジメレオン!」

 

「れんぞくぎり」

 

「え?」

 

 

 その次の瞬間には、エレキネットのダメージも相まってテッカニンの一撃で崩れ落ちるジメレオンが目に入る。

 

 

「…俺の、勝ちだな」

 

「はい…」

 

 

 油断した、敗北だ。バトルマネーを支払い、そのまま落ち込んでいると手が差し伸べられ、顔を上げる。そこには苦虫を噛み潰した様な顔のラウラさんがいた。

 

 

「…まさか、俺のバチュルが有利なみずタイプ相手に倒されるなんてな。試合に勝って勝負に負けた気分だよ。課題も見つかった、礼を言う。さすがはチャンピオンの推薦したトレーナーだ」

 

「い、いえ!こちらこそ、ありがとうございました!」

 

「今回は俺も油断していた。今度戦う時は容赦しないぞ。じゃあな、ジムチャレンジ頑張れよ」

 

 

 そう言ってバチュルにきずぐすりをかけながら去って行くラウラさん。ちょうど夕暮れ時で、夕日に映えて絵の様になっていた。この戦いは双方ともにいい経験になったようだ。…タイプ相性を覆す戦い方、考えないと。ジムチャレンジは…明日でいいかな。そう気を取り直して、私はターフタウンへの帰路につくのだった。




というわけで原作主人公との激突でした。やはりむしタイプ、無双とまではいきません。

・ラウラ
開会式前にユウリとホップのちょっとした騒ぎを見ていた人。普段は麦わら帽子を被っている。バトルは基本的に受けであり、自分から戦おうとはしない繊細な性格。趣味はむしポケモンに囲まれての昼寝。ターフジムクリア後、五番道路で昼寝していた。

・ユウリ
原作女主人公。奇策を行う、土壇場で進化するなど主人公としての実力を持つが向上心が強い。礼儀正しい性格だが、ポケモンバトルに魅せられたバトルジャンキー。ちなみに格好は銀髪のデフォルトのまま。手持ちはジメレオン、ココガラ、タネボーとラウラの得意タイプ。一つの事を成し遂げると頭がいっぱいになるがその分集中力は高い。手持ちは放仮ごの旅パまんまである。

・メッソン→ジメレオン♀
とくせい:げきりゅう
わざ:みずのはどう
   みずでっぽう
   はたく
   しめつける
もちもの:しんぴのしずく
備考:おくびょうな性格。辛抱強い。ユウリの相棒。ユウリの事が大好きで、期待されると実力以上の力を発揮する。

・ココガラ♂
とくせい:きんちょうかん
わざ:ついばむ
   つめとぎ
   つけあがる
   みだれづき
もちもの:なし
備考:てれやな性格。負けん気が強い。ターフジム戦用に先方だった。テッカニンの速さに負けん気の強さを発揮した。

・タネボー♂
とくせい:はやおき
わざ:たいあたり
   かたくなる
   すいとる
   おどろかす
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。食べるのが大好き。今回出番がなかったユウリの手持ちの一匹。将来ラウラキラーになるかも…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカジリガメ

どうも、昔みたいに連日投稿出来ていることに驚きを隠せていない放仮ごです、UA1500越えありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。

今回はVSルリナ。では、楽しんでいただけると幸いです。


 巨大な橋を渡り、真夜中のバウタウンに辿り着いた俺達。だがすぐにそらとぶタクシーを呼び出した。目的地はワイルドエリアだ。

 

 昨日、主人公みたいな奴と戦った。いや、主人公じゃないのかあれは。戦ってる途中で御三家っぽいポケモンが進化するとか主人公以外にいるか?…いや、ライバル枠がいるか…いやいや、あんな普通そうで実は美人なビジュアル、間違いなく主人公だ。

 

 課題が出来た。やはりというかなんというか、むしポケモンは耐久力が低すぎる。タンクが必要だ。もしくはテッカニンのつるぎのまいバトンタッチを十全に活かせる物理アタッカーが。バチュルのメインウェポンのきゅうけつがあまり通じないひこうタイプ相手だとエレキネットメインで戦わないといけないため、噛み合わなかったのだ。そろそろ三匹に増やしてもいいと思うのだ。

 

 

 ワイルドエリア駅にやってきて、うららか草原ので光の柱が立つ巣穴を見つけ、中に入る。そこにいたのは、巨大な蜘蛛の様なポケモン。

 

 

「早速出くわすとは運がいいな…バチュル!ダイマックスだ!」

 

 

 俺は普通のポケモンバトルならともかく、ダイマックスバトルは得意ではない。ダイマックスの使いどころ、ダイマックスわざの天候操作に能力上昇下降、ダイウォールの使いどころなど戦略性はあるっちゃあるが、俺がプレイしてきたものとは違いすぎたからだ。

 

なので単純に、こんな広い空間だと小細工も出来ないのでごり押ししかない。

 

 

「バチュル、ダイサンダー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数刻後。激闘の末に目標のポケモンを捕まえた俺は朝になるまでワイルドエリアを巡った後、早朝にバウジムに挑んでいた。ややこしい水仕掛けを何とか攻略し、ジムトレーナーをバウタウンで拾った「じしゃく」を持たせたバチュルの威力が上がったエレキネットで蹴散らしながらゴールに辿り着く。

 

 

『本日のバウスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!超新星とも噂されるむしつかい、ラウラ選手!対するはジムリーダー、ルリナ!3VS3のシングルバトルです!』

 

 

 スタジアムの中心に立った俺の前に立つのは、黒と青が混ざったロングヘアーと褐色肌が特徴的な鋭い目つきの女性。身に着けているユニフォームは陸上選手みたいだ。たしか背番号049。レイジングウェイブ・ルリナ。以前見た試合だとグソクムシャを使っていた。仲良くなれそうだ。

 

 

「朝早くからご苦労様。よくぞいらっしゃいました!貴方がヤローくんをダイマックスなしで倒したっていうラウラさんね。私のミッション、控えめに言っても難しいのによくクリアしたわね。あなた、ポケモントレーナーとして冴えた頭脳の持ち主なのね」

 

「いや、あの仕掛け普通に難しかったぞ。抜けれたのは偶々だ」

 

「あら、そうなの。でも、ダイマックスなしでダイマックスポケモンを倒すなんていう冴えた頭脳でどんな作戦を繰りだそうとも、私と自慢のパートナーが全て流し去ってあげるから!」

 

 

▽ジムリーダーの ルリナが 勝負を しかけてきた!

 

 

 左足を頭上まで上げて野球のピッチングのように大きく腕を振り抜いて豪快に投げられたダイブボールから飛び出したのは、トサキント。空中に浮いているのはさすが不思議な生き物といったところか。ならばと俺は、ここまで温存してきた新入りの入ったネットボールを手にする。

 

 

「初陣だ!暴れろ、オニシズクモ!」

 

 

 出てきたのは、頭部を水泡で覆った大きな蜘蛛の様なポケモン。とくせい:すいほう。ほのおタイプの技で受けるダメージを半減し、やけど状態にならず、みずタイプの技の威力を2倍にする強力な特性を持ったみず・むしタイプのポケモンだ。

 

 

「テッカニンじゃ…ない!?」

 

「俺の試合を見て警戒していたようだが残念だったな、とびかかる!」

 

 

 そしてなにより、とくぼうが高い。とくこうわざが多いみずタイプとの相性はバツグンだ。

 

 

「つのでつくで応戦しなさい!」

 

「かみついてやれ!」

 

 

 応戦として突き出されたつのを、噛み付いて文字通り白歯どり。振り放そうと暴れるトサキントに喰らい付く。

 

 

「そのまま零距離からバブルこうせんだ、ぶっ放せ!」

 

「くっ、こうそくいどうで振り放しなさい!」

 

 

 トサキントはこうそくで空中を泳いで振り放そうとするが、突き出された前足からダメージがある泡がまるで機関銃の如く放たれてパンパンパンパンと破裂。体勢が崩れた所で、オニシズクモは足でがっしりと地面を掴み、頭を振り上げた。

 

 

「決めろ、すいほうからバブルこうせん!」

 

 

 そして落ちてきたトサキントにすいほうが泡立って放たれた巨大な泡の連撃が炸裂。トサキントは戦闘不能となった。

 

 

「なんてこと…みずタイプだからその威力が分かってはいたけど、むしポケモンをああも使いこなすなんて…いきなさい、サシカマス!」

 

「交代だ、バチュル!」

 

 

 次に出てきたのは、鋭いダーツの様なマスの様なポケモン。たしか、すばやさに優れていたはずだ。オニシズクモはすばやいポケモンではないので、単純に相性有利なバチュルを繰り出す。

 

 

「アクアジェット!」

 

「地面にエレキネット!」

 

 

 水を纏って高速で突撃してきた攻撃を、地面にエレキネットを張ることにより、トランポリンの様に空中に飛び出し回避。真っ直ぐ突っ込んできたサシカマスはエレキネットの電流を浴びて弱り、これ幸いと俺はバチュルをボールに戻した。

 

 

「準備しようか、テッカニン!」

 

「しまっ…いや、なにもさせずに倒すのよ!アクアジェットからのみだれづき!」

 

「つるぎのまいで弾き返せ!」

 

 

 水を纏った高速のみだれづきという大雨の様な連打が襲いくるも、つるぎのまいで防御。

 

 

「怯ませなさい!かみつく!」

 

「こっちの方が速い!かげぶんしん!」

 

 

 その勢いのままのかみつきも、かげぶんしんで回避。着々と準備を進める。

 

 

「つるぎのま…」

 

「なら逃がさないわ!うずしお!」

 

「っ!させるな、れんぞくぎり!」

 

 

 高速の一撃が、渦巻いた水の奔流を形作っていたサシカマスを斬り裂き戦闘不能にする。危なかった。もしうずしおを繰り出されていたらバトンタッチで逃げられないところだった。さすがに対策は持ってたか。

 

 

「最後の一匹じゃないの、隠し玉のポケモンなのよ!こうなったら正々堂々、真正面から打ち破るわ!スタジアムを海に変えましょう!カジリガメ、ダイマックスなさい!」

 

 

 最後に巨大化したボールから繰り出されたのは、顎が立派な巨大なカメの様なポケモン。みず・いわタイプのポケモン、カジリガメ。前に見たキョダイマックスじゃないのか。なら、勝機はある。

 

 

「私達からのおくりもの、全身で受け止めてよ!ダイストリーム!」

 

「ノーサンキューだ。上空に逃げてバトンタッチだ。暴れろ、オニシズクモ!」

 

 

 巨大な鉄砲水を何とか避けて、オニシズクモに交換することはできたが、フィールドを雨にしてきた。みずタイプのわざの威力を上げて来たか。だったらそれ以上の速さで攻略するまでだ。

 

 

「っ、バチュルじゃないのね。ダイストリーム…いや、ダイロック!」

 

「判断が遅い!アクアブレイクだ!」

 

 

 瞬間、足元を高速で駆け抜け懐に潜り込んだオニシズクモの、すいほうに包まれた頭部による渾身の一撃が炸裂。テッカバトンによるつるぎのまいの攻撃二倍+すいほうによる威力二倍だ。耐えきれるはずもなく、大爆発を起こしたカジリガメはみるみる縮んで崩れ落ち、ボールに戻る。

 

 

「なっ…!なんたることっ!!自慢の最強メンバーなのにまとめて押し流されちゃった!…完敗ね」

 

 

 頭を掻きむしりながら悔しそうな表情を見せたかと思うと、すぐ冷静に戻るルリナ。面白い人だな。

 

 

「ふぅ。手合わせして分かりました。オニシズクモ…ヤローくんとの試合で見なかった子だけど、よく鍛えられてるわね。大方、ワイルドエリアで捕まえた後に鍛錬でもしたのかしら?」

 

「はい。今の俺…私に足りない物を、突貫だけど補いました。次は本気の貴方と…特に、グソクムシャと戦ってみたいです」

 

「あら。本当にむしポケモンが好きなのね。すばらしいスピリットを見せてもらったわ。ジムチャレンジに勝ち進みチャンピオンに挑むのも夢じゃない。あなたたち…ジムバッジを受け取るのにふさわしいのよ!」

 

 

 そう言って握手を交わす。危ない、と思うシーンが何度かあったバトルだった。でもカブさんに挑む前にオニシズクモのいいデモンストレーションになった。…俺を推薦してくれたカブさんに、あのマルヤクデに、俺は勝てるのだろうか。いや、勝つんだ。

 

 

 第二鉱山で鍛えてから向かうとするかな、と目処を付け、俺はバウスタジアムから出るのであった。




 今後苦手タイプ相手のメインウェポンとなるオニシズクモのお披露目回。

・ラウラ
夕方にユウリ戦、夜にダイマックスオニシズクモとの激闘、朝方までワイルドエリアの野生ポケモンとバトルを繰り広げて徹夜テンションだった人。エンジンシティのジムリーダー・カブに推薦された。カブさんは憧れの人で恩人。

・オニシズクモ♀
とくせい:すいほう
わざ:とびかかる
   アクアブレイク
   バブルこうせん
   かみつく
もちもの:おうじゃのしるし
備考:おだやかな性格。打たれ強い。アグレッシブな戦法が得意で、自分にこうげきりょくとすばやさを与えてくれるラウラを慕っている。うららか草原の巣穴に生息していた。モデルは放仮ごが捕獲した☆5オニシズクモ。

・ルリナ
みずタイプのジムりーダー。自分がライバルと認めるヤローの敵討ちをする気満々だったが、空回りして翻弄されまくる。最終的にラウラのことを認めた他、みず・むしタイプの使い手として好印象を抱いた模様。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSパッチラゴン

どうも、二週目としてむしタイプ統一の旅を始めた放仮ごです。UA2000、お気に入り70突破ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。

今回は第二鉱山での一幕。ラウラ以外のオリトレーナーが登場します。では、楽しんでいただけると幸いです。


 第二鉱山。バウタウンとエンジンシティを繋ぐガラル鉱山に次ぐ鉱山である。前のガラル鉱山と違って水源に恵まれ、みずタイプのポケモンやトレーナー同士の戦いも盛んなところだ。ちなみに生息しているむしタイプはコソクムシぐらいだ。ちょっと残念。

 

 

「グソクムシャか…選択肢としてはありなんだがな」

 

 

 麦わら帽子に乗せたバチュルを撫でながら思考する。コソクムシの進化系、グソクムシャはむしタイプでも珍しい人型に近いポケモンだ。殴り合いとかも可能な体格で、「ききかいひ」というとくせいで危なくなったら逃げることもできる。だが、オニシズクモとタイプが被っているという大きな問題がある。被るにしてももう少し別のタイプを増やしてからにしたい。タイプの偏りが原因で負けたとか洒落にならないからな。

 

 マッギョとかいう天然の罠に気を付けて避けながら襲いくる野生ポケモンを迎撃しながら先に進むと、開けた場所に出た。そこには、ラクライという四足歩行のポケモンと共に足に挟まったマッギョを必死に引き離そうとしている…なんだ、ゴスロリファッションで眼帯を付けたわかりやすい格好の、金髪を雷みたいなジグザグなツインテールにしている少女がいた。厄ネタの気配がしたのでスルーして先に進もうとすると、涙目でこちらに振り向いてきた。

 

 

「ま、まって、まってくれ!我はモコウという!たすけて!」

 

「ええ……」

 

 

 そのモコウと名乗った少女は今にも泣きだしそうだった。なんか可哀想になったので、バチュルでマッギョにきゅうけつして戦闘不能にし助けてやった。大方、電撃攻撃ばかりでラクライも主人を巻き込むから迂闊に攻撃できなかったんだろうな。

 

 

「マッギョが跋扈していることぐらい有名だろ、ここ。これからは気を付けろよ」

 

「む、むう…こんな小さな女子(おなご)に助けられるとは…んん?そのバチュル、むぎわら帽子、赤い髪、むしタイプのユニフォーム…むしつかいのラウラ殿とお見受けした!恩人なのに悪いが、勝負してくれ!」

 

「俺を知っているのか?」

 

「我らジムチャレンジャーの間では有名だぞ!むしタイプでダイマックスも使わずヤローを撃破した風雲児、もしくは超新星!この我もダイマックスなしでは越えられなかったというのに…そのバチュル、みればわかる。凄まじく鍛えておろう!溢れるでんきがその証拠だ!改めて名乗ろう!」

 

 

 そう言って服に手をかけ、バサッと翻すモコウ。慌てて目を覆い隠すが、そこにはでんきタイプのユニフォームに身を包んだモコウの、眼帯を付けたドヤ顔で踏ん反り返る姿。

 

 

「我はジムチャレンジを一番に乗り越えし者!人呼んで雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)!我はでんきタイプ使いのモコウだ!同じ、ひとつのタイプを極めしラウラ殿と勝負願いたい!」

 

「でんきのアホウドリ?」

 

「ライトニング・アルバトロス!このかっこよさがわからんのか!」

 

「お前がそう言う奴だってのは何となくわかるよ」

 

 

 面倒な奴に絡まれたな。えっと、つまりはジムチャレンジャーの中でも最速でバウジムを越えてここにいる、でんき統一使いのトレーナーってことか。………あれ、最後のジムリーダー・キバナってたしか…まあいいか。

 

 

▽でんきつかいの モコウが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いくぞ、三対三のシングルだ!問答無用!ラクライ!」

 

「いや、まあいいけどさ…テッカニン」

 

 

 まだ了承してないのに仕掛けてきた。あれか、目と目があったらバトルが礼儀ってやつか。俺の手持ち二体にとっては弱点タイプなので、油断はしない。ユウリの時の様に油断で負けるなど、むしポケモンたちに申し訳ない。

 

 

「かげぶんしんだ!」

 

「ほのおのきば!」

 

 

 かげぶんしんしたテッカニンの分身を、炎を纏った牙が掻き消す。どうやってでんき統一で草タイプを突破したのか謎だったが、あのわざがあるなら納得だ。危ないから早々に倒させてもらおう。

 

 

「つるぎのまい」

 

「隙あり!でんげきはだ!」

 

 

 つるぎのまいをしたところに不可避の電撃が繰り出されるが、一発耐えられるなら問題はない。二回行動した、つまりは二段階加速だ。もう追い付けない!

 

 

「れんぞくぎりだ!」

 

「でんこうせっかとかみなりのきばで迎え撃て!」

 

 

 テッカニンの刃とラクライの牙がぶつかり、競り合いとなる。テッカニンは元々力で押すタイプではない、つるぎのまいによるバフで何とか張り合えているだけだ。迸る電撃で弱り始めたのを見て、すぐさま対応する。

 

 

「バトンタッチ、喉元にきゅうけつだバチュル!」

 

 

 やられる前にバトンタッチ、小柄なバチュルは空ぶったラクライの下に潜り込んで高火力のきゅうけつが炸裂。ラクライを戦闘不能にした。しかし手強い。才能だけならジムリーダーに匹敵するんじゃないのか?

 

 

「中々やるな。ならば次だ、パルスワン!」

 

「一気に決めるぞ、天井と壁を這い回っていとをはく!」

 

 

 洞窟であることを利用し、四方八方からいとを吐いてパルスワンの動きを遅めていく。パルスワン、洞窟じゃない広い場所なら速度で負けていたんだろうが、生憎バチュルの得意な狭い場所だ。自慢の素早さもここなら関係ない!

 

 

「そこだ、きゅうけつ!」

 

「待っていたぞ、ほえる!」

 

「なに!?」

 

 

 強制的にポケモンを交代させる技、ほえるが避けきれないタイミングで放たれた。能力上昇がリセットされ、交代されたのはテッカニン。いきなり出されて戸惑っている、可愛い。じゃない、不味い…!?

 

 

「そこだ、でんこうせっか!」

 

「テッカニン!?」

 

 

 目にも留まらぬ体当たりが炸裂、崩れ落ちるテッカニン。ほえるを警戒しなかった俺のミスだ。

 

 

「今のうちにじゅうでんだパルスワン!」

 

「…さすがは最速攻略者、正直見た目でなめてたぞ…」

 

「なめられやすい虫取り少年っぽい格好している(ぬし)が何を言うか。それに我の一張羅は強そうだろ、訂正を求む!」

 

「なら容赦はしないぞ。オニシズクモ、バブルこうせんだ!」

 

「なんの、スパークだ!」

 

 

 次に繰り出したオニシズクモの前足から放たれたバブルこうせんに、真っ直ぐ電撃を纏ったパルスワンが突っ込んでくる。だがそれは悪手だぞ。

 

 

「キャイン!?」

 

「なに!?」

 

「残念ながらもちものはおうじゃのしるしだ。隙ありだ、アクアブレイク!」

 

 

 電撃に触れて破裂したバブルに怯んで止まってしまったパルスワンに、渾身の一撃が炸裂。天井に叩きつけて戦闘不能にする。オニシズクモは鈍足のポケモンだ、素早い相手に対する対策をしてない訳がない。

 

 

「…クフフッ、ハハハハハッ!やるではないか、ラウラよ!ならばこちらも本気を出そう…いでよ、パッチラゴン!」

 

 

 パッチラゴン?知らない名だな、と身構えていると、出てきたのはなんというか…黄色い鳥?の上半身に、断面丸見えのドラゴンの様な下半身をくっつけた、あまりにも不思議すぎるポケモンだった。

 

 

「なんだそのポケモン、その断面!?」

 

「知らんのか?先月にウカッツ博士が論文で発表していたカセキメラの一体、パッチラゴンだ」

 

「生命に対する冒涜だろそれ!?」

 

「まあよい、いくぞ!でんげきくちばし!」

 

「っ、バブルこうせんだ!」

 

 

 繰り出してきたのは全く知らないわざ。電撃を纏った嘴で突っ込んでくるという、さっきのスパークに似た技だったので同じ方法で迎撃。しかし、怯んだパッチラゴンはその場に止まると今度は岩石を飛ばしてきた。

 

 

「たたみかけろ、げんしのちから!」

 

「避けろ!」

 

 

 …あれ?鈍足のオニシズクモでもなんか簡単に避けれたぞ?まさかとくせい、はりきりか?ならまだ、勝機はある。

 

 

「むっ…近づいてからと思ったが…でんげきくちばしからの、つばめがえし!」

 

「っ、上だ!とびかかる攻撃」

 

 

 オニシズクモに効果抜群のひこうタイプの必中技、つばめがえし。だがそれはゲームの中だけの話だ。マジカルリーフと違い、ぶつりわざであるつばめがえしは、そもそも届かなければ当たらない。バブルこうせんを弾こうとしていたのだろう、でんげきくちばしは跳躍して天井に逆さにくっついたオニシズクモには当たらず、盛大にからぶって隙だらけの背中にとびかかるオニシズクモ。

 

 

「しまっ…ドラゴンテールで引き離せ!」

 

「叩き込め!アクアブレイク!」

 

 

 そして零距離から振り上げられたすいほうに包まれた頭部による一撃が炸裂。パッチラゴンの小柄な上半身が地面とすいほうに挟まれ叩き潰される。やったか?

 

 

「…むう、完敗だ。ま、まさかむしタイプに負けるとは…」

 

「ほえるにドラゴンテール…俺のテッカバトンの対策は完璧だったようだがこっちには新入りがいてな。おお、よしよし。よくやったオニシズクモ」

 

 

 オニシズクモが褒めて褒めてとでも言う様にひょこひょこ近づいてきたので、すいほうに優しく手を入れて頭部を撫でてやる。あんなに強いのにこんなにかわいいんだからずるいやつめ。

 

 

「その愛が強さの理由か。色んな意味で完敗だ…我にはでんきタイプへの愛がまだ足りないらしい」

 

「いや、パッチラゴンを使っている時点で相当なもんだぞ。少なくとも俺は好まない」

 

「そっちこそ女子(おなご)の癖にむしを使うなど…我は全然触れもせんというのに」

 

「なんでだ。こんなにかわいいのに」

 

「我からしたら蟲を愛でる(ぬし)の方が可愛いが」

 

「俺のことはどうでもいいんだよ。それよりお前も虫の可愛さに目覚めろ」

 

「遠慮する。我はエンジンジムに急ぐのでな。最速最強の名を欲しいがままにするのだ!」

 

「そうか。残念だ。頑張れ、お前なら出来るぞ、多分」

 

 

・・・俺の記憶が正しければ、最後のジムリーダーがじめんタイプを二体ぐらい持ってたと思うからだいぶきついと思うが…まあ、なんとかなるだろ、こいつの才能なら。

 

 

「ではまたな!我が最強であるためにお前にまた挑み、勝つからな!」

 

「おーう。またな」

 

 

 ビートといい、ユウリといい、モコウといい、才能に溢れるチャレンジャーばかりだな。俺はそう思いながら去って行くモコウを見送るのだった。あ、こけた。足元がお留守だな。




ラウラにとって苦手なタイプであるでんきタイプの使い手との対決でした。

・ラウラ
だんだん有名になってきたジムチャレンジャーの風雲児。パッチラゴンの衝撃的な見た目に度肝を抜いた。他の女子がむしタイプを好まないのを本気で謎に思っている。生前好きだった漫画はムシブギョー。

・モコウ
でんきタイプ使いのトレーナーにして最速でジムを突破しているジムチャレンジャー。ラウラの事をライバル視している。ラテラルタウン出身。一人称は「我」で自称雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)を名乗る厨二病。超がつく程のドジっ子で足元が見えてないタイプ。手持ち全員にじしゃくを持たせている。名前の由来はワレモコウから。

・ラクライ♂
とくせい:せいでんき
わざ:でんこうせっか
   ほのおのきば
   かみなりのきば
   でんげきは
もちもの:じしゃく
備考:すなおな性格。逃げるのがはやい。モコウの相棒。

・パルスワン♀
とくせい:がんじょうあご
わざ:でんこうせっか
   ほえる
   スパーク
   じゅうでん
もちもの:じしゃく
備考:てれやな性格。とてもきちょうめん。ほえるは対ラウラ用という訳ではなく、単純にジム戦で相手のテンポを崩すためのもの。

・パッチラゴン
とくせい:はりきり
わざ:でんげきくちばし
   げんしのちから
   つばめがえし
   ドラゴンテール
もちもの:じしゃく
備考:れいせいな性格。暴れることが好き。論文を見るなり化石を集めてウカッツ博士の元に訪れて手に入れたポケモンでモコウの切札。ダイマックス時に必ず使い、ラウラ以外に負けなし。モコウの最初のポケモン。

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VSマルヤクデ

どうも、野生のキョダイマックスポケモンとまだ一度も会えていない放仮ごです。

今回はVSカブ。では、楽しんでいただけると幸いです。


 ついに戻ってきたエンジンシティ。実家に寄って旅で疲れた体を癒すついでに、テッカニンとオニシズクモを両親に見せると何とも微妙な顔となった。解せぬ。やっぱりチャンピオンに勝って証明するしかないのか。

 

 ところで、ガラル地方は基本的に寒冷な地方だから、虫使いの代名詞「むしとりしょうねん」がいない。短パン小僧はいても、割とシリーズ常駐だったむしとりしょうねんはいないのだ。つまりどういうことかというと…むしとりしょうねんリスペクトの麦わら帽子は、凄い目立つ。超目立つ。頭上にバチュルを乗せていたら猶更だ。昔から住んでた街だというのに、ひそひそと俺を指差しながら噂話する人間ばかり。……邪魔な髪を纏めるために被ってるけど、もういらないかもしれないなあ。

 

 

 そんなことを思いながら早朝の街並みを抜け、やってきたのは開会式も行われたエンジンスタジアム。ポケモンの捕獲でポイントを稼ぐという珍しいジムミッションだ。5ポイント稼ぐとクリアで、捕まえると2ポイント、倒すと1ポイントだというので、ジムトレーナーの妨害を受けながらしょうがなく好みじゃないロコンやヒトモシといったほのおポケモンを捕まえていると、運命の出会いがあった。

 

 ヤクデ。はつねつポケモン。とくせい:もらいびもしくはしろいけむり。名の通りヤスデの様なほのお・むしタイプのポケモン。見つけるなり、妨害のジムトレーナーをオニシズクモで一撃で沈めて、持ってるネットボールを総動員。無傷でゲットすることに成功した。生息地である3番道路で見つけられなかったので半ば諦めていたポケモンだった。カブさん、俺はアンタに何度ありがとうと言えばいいんだ。

 

 

 麦わら帽子を外したむしタイプのユニフォーム姿でスタジアムの選手入場口に立ち、乱れた髪を整えていると、横に気配が。そちらに顔を向けると、深呼吸しているカブさんがいた。

 

 

「カブさん」

 

「やあ。ぼくの期待に応えてよくここまできたね、ラウラ。ダイマックスなしであの二人をしりぞけるなんてやるじゃないか」

 

「いえ、私もまだまだです。憧れのカブさんに勝てるかどうかも、わからない」

 

 

 話しながらコートの真ん中に辿り着き、向かい合う俺達。背番号187。いつまでも燃える男、カブさん。間違いなく強敵だ。

 

 

「ここからは知り合いのおじさんではなく、ジムリーダーとして話させてもらうよ。どのトレーナーもどのポケモンも勝つためにトレーニングしているだろう!だが戦う相手も同じように努力している!勝負の分かれ目は本番でどれだけ実力を出せるかだ!」

 

「ああ、私…いや、俺達の努力を見せてやりますよ、カブさん!」

 

 

 幼少期、まだジムリーダーのことを知らなかった俺が街中で遊んでた時に出会った、優しいおじさん。それがカブさんだ。むしが好きな俺を邪険にせず接してくれた大人であるカブさんは貴重な存在で、マルヤクデを見せてもらったり、バトルを見せてもらったりした。ジムチャレンジに挑むと決心した時には推薦状もくれた。紛れもない恩人だ。だからその恩に報いるためにも、勝利してみせる!

 

 

『本日のエンジンスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ジムチャレンジャーの風雲児!ラウラ選手!対するはジムリーダー、カブ!3VS3のシングルバトルです!』

 

 

▽ジムリーダーの カブが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いけ、テッカニン!」

 

「いってこい、キュウコン!」

 

 

 野球の投球フォームの様な投げ方で繰り出されたのは、キュウコン。対して俺はいつものテッカニンだ。そして、カブさんなら初手は必ず…

 

 

「バトンタッチ」

 

「おにび…むっ!?」

 

 

 初手やけどを負わせてくる。分かっていて対策しない筈がない。バトンタッチで交代したのはオニシズクモ。すいほうのとくせいでやけどにはならない。

 

 

「一気にたたみかけろ!アクアブレイク!」

 

「ならば、ほのおのうず!」

 

 

 打点がないためか、拘束するためにほのおのうずを繰り出してくるカブさん。鈍足なのが祟ってほのおのうずを喰らいながらアクアブレイクをキュウコンに叩き込み戦闘不能にする。だが、オニシズクモを包み込むほのおのうずでじわじわとダメージを与えられる。不味い、オニシズクモを倒されたら俺の手持ちじゃきつすぎる。

 

 

「次だ、ウインディ!」

 

「ほのおのうずを掻き消せ!地面にアクアブレイク!」

 

 

 地面にアクアブレイクを叩きつけて水飛沫を上げさせ、ほのおのうずを消火していると、いつの間にか接近していたウインディが口を大きく開く。

 

 

「かみつく!」

 

「なっ!?」

 

 

 指示されたのは、効果がいまいちのあくタイプのわざ。なんでだ?と思った直後、カブさんが不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「そのまま…かえんぐるまだ!」

 

「ッ、バブルこうせんで怯ませろ!」

 

 

 足にかみついたまま、そのまま炎を纏ってグルグル縦に回り大車輪の如くオニシズクモを何度もフィールドに叩きつけていくウインディ。何とかバブルこうせんを放って怯んだところを脱出できたが、軽くはないダメージを負ってしまった。そんな戦い方があるなんて…

 

 

「とどめだ、かえんぐるま!」

 

「っ、交代だ。バチュル!エレキネット!」

 

 

 とどめを刺される直前に、バチュルに交代。突っ込んでくるウインディ目掛けてエレキネットを放たせる。エレキネットに見事絡まったウインディは電流に痺れて動きが止まり、それを好機だと直感した。

 

 

「こうそくいどうで周りを走りつつ、いとをはくだ!」

 

「こっちもこうそくいどうで振りほどくんだ!」

 

 

 どちらもこうそくいどうを選択。こちらは糸を吐きながら縦横無尽に駆け巡り、ウインディはそれに引っかかりつつも勢いで振りほどいて行くが、それでも絡まりスピードが遅くなっていく。

 

 

「かえんぐるま!」

 

「っ!?」

 

 

 こうそくいどうしながら炎を纏い回転、こうそくいどうしていたバチュルと激突、戦闘不能になってしまう。スピードを利用して当てるとは。さすがカブさんだ。だけど、ウインディの持ち味であるスピードを奪ってくれた。

 

 

「よくやったバチュル。後は任せてくれ。交代だ、テッカニン!ウインディの動きを警戒しつつ、つるぎのまい、連続だ!」

 

 

 今がチャンスだ。スピードが遅くなった今のウインディにテッカニンが捉え切れるわけがない。つるぎのまいをひたすら積む。二回積み、かそくですばやさも二段階上げる。

 

 

「こうそくいどうで追い縋れ!」

 

「遅い!バトンタッチ!」

 

 

 ここだ、こうそくいどうで突っ込んでくる瞬間。交代したのはもちろんオニシズクモ。真っ直ぐ突っ込んでくるウインディに、避けようのない一撃が叩き込まれる。

 

 

「アクアブレイクだ!」

 

「っ…ここまでとは。あの小さかった少女が…強くなったものだ。カブよ頭を燃やせ!動かせ!勝てる道筋を探すんだ!」

 

 

 頬を叩き、気合いを込めて次のボールを構えるカブさん。俺も、ボールを構える。別にダイマックスを使わないのはポリシーではない。大きくならなくても虫は強いのだ。だがしかし、相手も虫だ。むしポケモンの使い手だ。そしてなにより、姿も変わるキョダイマックスだ。ならばこちらも、全力で挑まねばなるまい!

 

 

「マルヤクデ、燃え盛れ!キョダイマックスで姿も変えろ!」

 

「今回ばかりは全力だ!行くぞオニシズクモ、ダイマックス!」

 

 

 俺はボールにオニシズクモを戻し、カブさんと共に同時にボールを巨大化させ、背後に投擲。ワイルドエリアでも見た、オニシズクモの巨大な姿が目に入る。カマキラス、クモンガ…生前に見た特撮怪獣を思い出すフォルム。ああ、お前は何てかっこいいんだ、美しいんだ、最高だ!対してカブさんはまるで東洋の龍の様に姿を変えた、こちらもまたあまりにも長大な美しい姿のキョダイマルヤクデを侍らせる。ああ、最高だ。こんな戦いを、俺は望んでいた!

 

 

「同じ虫好きとして、負けられない!オニシズクモ!アクアブレイクのダイストリームだ!」

 

「炎は上に燃え上がる!僕らも上を目指す!わかるね!マルヤクデ!キョダイヒャッカだ!」

 

 

 長い身体を波状に折り畳み、高温の腹部を一斉に向けて放たれる高温の火炎と、オニシズクモのすいほうに包まれた頭部から放たれた水流が激突。ほのおのうずの効果があろうが、関係ない。テッカニンの渡した火力で、押し切る!

 

 

「いっけええええええええええ!」

 

 

 俺の雄叫びと共に、せめぎ合っていた炎と水が、わずかに水が上回り炎を飲み込んでマルヤクデに炸裂。大きな水の渦が発生し、その巨体を押し流す。

 

 

「…俺の、勝ちだ」

 

「ああ。そして僕の敗北だ」

 

 

 勝ったん、だな。あの、カブさんに。ジムチャレンジの登竜門にしてむしタイプ使いの関門、ほのおジムに、俺は勝ったんだ!激闘を制した俺は、あまりの喜びに感動に打ち震えるのだった。




ラウラ、ジム戦での初ダイマックス。カブさんはそれだけの相手。

・ラウラ
両親との仲はそれなり。麦わら帽子はむしとりしょうねんをリスペクトしている。ジムチャレンジ前はエンジンシティで変人として有名だった。カブさんとキョダイマルヤクデが大好き。

・ヤクデ♀
とくせい:しろいけむり
わざ:ひのこ
   えんまく
   まきつく
   むしくい
もちもの:なし
備考:うっかりやな性格。暴れることが好き。…実はカブがラウラのために誂えた特別なポケモン。

・カブ
ほのおタイプのジムリーダー。ラウラとは近所の優しいおじさんと子供といった関係。ラウラならできると信じて推薦状をあげた。相棒のマルヤクデを好いてくれるラウラを気に入っている。手加減なく全力で戦い、負けたことに満足した。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSドラピオン

どうも、高評価とお気に入り登録の雨で正気を失いかけてます放仮ごです。一週間もたたずに赤評価はFGO×バイオ以来です、本当にありがとうございます。お気に入りがあっさり100越え、昨日の日刊86位もいただきましたありがとうございます!

そんなわけで今回は野生ポケモン戦。あのキャラも再登場します。では、楽しんでいただけると幸いです。


 エンジンスタジアムで憧れの男、カブさんに勝利した俺は、観客の目を気にせずオニシズクモに抱き着いた。よくやった、本当によくやった!お前を仲間にしてよかった!

 

 

「いいポケモン。いいトレーナーだ。君達は勝って当然だよ、ラウラ!」

 

 

 そう笑顔で俺を称えてくれるカブさんに、自然と笑顔になり脱力する。しかしまだ終わってないことを思い出して立ち上がり、シャキッと緩んだ顔を整えるとカブさんは笑っていた。

 

 

「ジムチャレンジ初めの関門と呼ばれるこのカブに勝つとは!僕の長年の経験をラウラ、君の才能が上回ったな!僕もまだまだ学ばないとね!」

 

「みんなのおかげです。私は全然すごくない、だけどむしポケモンたちの可能性が、私を強くしてくれたんです」

 

「それもある、がその愛ゆえに虫ポケモンたちを使いこなせる才能は君の物だよラウラ。君達は間違いなく最高のチームになる!今日は戦えてよかったよ!僕に勝った証としてほのおバッジを贈ろう!」

 

 

 握手して、ほのおバッジを受け取る。ああ、本当に…勝ったんだな。

 

 

「ダイマックスを使わない、と聞いてもしかして苦手なのかと思っていたがそんなことはなかったね。ダイマックスによって僕たちのポケモン勝負はガラル地方の文化となった。そして文化を担うのは君達、若いトレーナーの役目だよ」

 

 

 そう言って観客席に視線を向けるカブさん。釣られて見てみると、そこには見覚えのある顔が。というか、ゴスロリ服が俺の麦わら帽子並に目立っている。先に行ってるはずのモコウが何でいるんだ…。

 

 

「もっとも、ただ守るのではなく君達でより良いものにするんだ。僕たち大人は支えるから!君達なら出来る。君達の才能は僕が保証しよう」

 

 

 そう言って笑うカブさんに、心が温かくなった。この人は俺を信頼してくれているのだと。

 

 

 

 

 

 

 受付フロアに戻り、記念品としておにびのわざマシンとユニフォームのほのおセットをもらっていると、そこに満面の笑みを浮かべたモコウがやってきた。

 

 

「モコウ。どうしたんだこんなところで油を売っていて」

 

「ラウラ!お前とバチュルたちなら大丈夫!と分かっていても、さすがにむしでほのおにどう勝つのか気になってな。ラテラルジムを突破して、どうせ早朝に挑むのだろうと見に来たのだ」

 

「早いな。もう四つ目のジム突破か」

 

「我の地元だからな。ひとっとびで戻れるんだ。お前はこれからどうするんだ?」

 

「バッジを手に入れたらどうしても欲しいポケモンがワイルドエリアにいてな。そいつを捕獲してからナックルシティに向かうよ」

 

「ちょうどよかった。我もワイルドエリアに欲しいポケモンがいて捕獲しようと思ってたんだ。ついていっていいか?」

 

「別に面白くもなんともないと思うが…いいぞ?」

 

 

 そんな会話をして共にワイルドエリアに向かっていると、ふと振り返ったモコウが「ん?」と声を上げて立ちどまる。なんなのか気になって振り向くと、そこにはカブさんが走って来ていた。

 

 

「カブさん?」

 

「ジムリーダーなのに見送りか?」

 

「はっはっは。モコウ、君はあまりにも速すぎてできなかったのでね。話を聞いたところサイトウまで撃破しているようだが、ラウラと一緒に見送らせてくれ。ジムバッジを三個も集められずにジムチャレンジを挫折したトレーナーは数多くいる…だから僕に勝ったものはみんな見送ることにしているんだよ」

 

「そうだったのか、それはすまないことをした。なにぶん、最速最強を自負していてだな」

 

 

 モコウが踏ん反り返っていると、そこにルリナさんとヤローさんがやってくる。息も絶え絶えなところを見ると、急いでやって来たらしい。

 

 

「ふう、間に合った…そらとぶタクシーさまさまだよ。今度は間に合ったようね。ラウラにモコウ、おめでとう!カブさんに勝つなんて凄いよ!」

 

「カブさんからジムバッジをもらえるジムチャレンジャーは本当に少ないんだ。だから応援の意味でみんなで見送りをするんだな。今現在、君たち二人だけがカブさんを突破している、誇るべきことだよ」

 

 

 そうなのか、一番はモコウだろうとは思ってたけど、俺は二番乗りなのか。さすが登竜門と呼ばれるだけはあるな、カブさん。

 

 

「ということで君達に声援を贈ろう!いけいけ!モコウ!やれやれ!ラウラ!…君達を待ち構えるジムリーダーはツワモノぞろいだ。だが君達なら勝ちぬける!ポケモンを信じて突き進め!」

 

「ふむ、礼を言うぞカブ殿たち!我ら二人で決勝戦をするためガンガン勝ち続けてみせよう!」

 

「俺達が最後に残るって決まったわけじゃないけどな。…まあ、期待に応えられるよう、頑張ります」

 

 

 そう言って、俺達はワイルドエリアに旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日。モコウとは目的地が違ったため既にちょっと前に別れて、俺はワイルドエリア北への入り口の橋付近で立ち往生していた。目的のポケモンが強すぎたためである。

 

 

「バチュル、エレキネット!テッカニン、れんぞくぎり!オニシズクモ、バブルこうせん!ヤクデ、ひのこ!」

 

 

 手持ち総動員で立ち向かう。ゲームではできない強力な戦法だが、その分全てのポケモンに気を配らないといけないため、かなりの重労働だ。そうでもしないと勝てないポケモンだった。

 

 

「野生のドラピオン…ここまで強いとはな。三日三晩戦ってるっていうのに全然応えてない」

 

 

 ドラピオン。ばけさそりポケモン。タイプはどく・あくとむしタイプではないが、立派な蟲ポケモンの一体だ。タンクになる高火力の蟲ポケモンを思い浮かべた時、ワイルドエリアでたびたび見かけたこのポケモンを思い出したのだ。どく・あくタイプは弱点がじめんタイプだけと少ない。何より防御力が高くタフだ。何せうちのポケモン総動員して、こっちはきずぐすりなどを何度も使ってるのに、奴は回復なしで三日三晩耐えているのだ。今日は一度撤退してボールもありったけ買って来た。今日こそゲットしてやる。

 

 

「テッカニン、バチュルを掴んでかげぶんしん!バチュルはいとをはくだ!」

 

 

 作戦を変える。ひんしにするのではなく、身動きを封じる。四方八方から糸で雁字搦めにされ、嫌がり拘束を解こうと暴れるドラピオン。

 

 

「オニシズクモ、背後からとびかかる!」

 

 

 さらに追撃を指示し、オニシズクモが背中に飛び乗るも、尻尾で迎撃されてしまう。ならばと俺は、新入りに指示を出した。

 

 

「ヤクデ!奴の腕にまきついてひのこだ!」

 

 

 言われるなり、小柄な体を目いっぱい飛び跳ねさせてドラピオンの振り回す腕に巻きつき、零距離で火の粉を放つヤクデ。まだ小さいから戦力外だと思っていたがそんなことはなく、かなり動けるポテンシャルの持ち主だった。カブさんに感謝しかない。

 

 

「っ!」

 

 

 すると不思議なことが起こった。ヤクデが光り輝き、ドラピオンとタメを張れる大きさになったのだ。カブさんの相棒でもあるマルヤクデだ。この戦いで相当経験値を稼いだらしい。

 

 

「マルヤクデ!まきつく攻撃!」

 

 

 その巨体でグルグルとドラピオンの全身を這い回るマルヤクデ。ただ巻きつくだけではない、ひのこがほのおのうずに変わり、バチュル達が離れた所を炎で閉じ込めてしまった。ああ、何度俺を魅了すれば気がすむんだお前たちは!

 

 

「今は夜、ならこいつだ…ダークボール!」

 

 

 そして投擲。いつもはネットボールを使うのだが、むしタイプではないのでそれ相応の物を用意した。ドラピオンはボールにすんなり入り、諦めたのかカチッと音を立ててボールの揺れが静まる。三日三晩をかけた激闘を制し、俺はそのまま草むらに倒れて熟睡するのだった。




むし統一と言ったな。あれは嘘だ。正確には蟲統一だ。

・ラウラ
また三日三晩戦い続けるとかいう人間離れしていることをやってる二番手の女。ポケモンなんじゃないかなってぐらい体力あるが、虫が絡んだ時限定。ドラピオン以外はネットボールで捕獲している。ちなみに今更だが背番号はそのまま064(ムシ)である。

・モコウ
一日だけでほのおジムとかくとうジムをクリアした最速の女。ナックルシティ入口のリーグスタッフにジムバッジを見せた後ラテラルタウンにそらとぶタクシーで帰還し、その帰りにエンジンシティに舞い戻った。ライバルの動向が気になるお年頃。我は友人が欲しかったのだ…(どっかの巨神風)

・マルヤクデ♀
とくせい:しろいけむり
わざ:ほのおのうず
   えんまく
   まきつく
   おにび
もちもの:もくたん
備考:うっかりやな性格。暴れることが好き。ドラピオンとの戦いで急成長。わざマシンでおにびを覚えてドラピオン戦で貢献していた。まきついてからのほのおのうずが凶悪。特殊な個体。図鑑で見るとボールと名前の間に変なマークがついてる。

・ドラピオン♀
とくせい:カブトアーマー
わざ:クロスポイズン
   ミサイルばり
   つじぎり
   こおりのきば
もちもの:くろいヘドロ
備考:れいせいな性格。我慢強い。くろいヘドロで異様にしぶとかったエンジンリバーサイドの主の様なポケモン。人間嫌いだが、三日三晩己の相手をしたラウラに心を許し始めた。あまり言うことを聞かないためもっとバッジを集めよう。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSフォクスライ

どうも、前回に引き続き高評価とお気に入り登録の嵐で一度正気を失いました放仮ごです。お気に入りがあっさり200を越えて300に迫る勢い、UAも6000突破、昨日の日刊39位、今日の日刊32位もいただきましたありがとうございます!

そんなわけで今回はエール団戦。では、楽しんでいただけると幸いです。


傍らに手持ちの虫ポケモンたちを置いて、ワイルドエリアのエンジンリバーサイドで昼寝していたらいつの間にか夜になっていた。四日間もワイルドエリアで立ち往生していたわけだ。

 

 

「うーん、どうするかな」

 

 

 ドラピオンをボールから出してみたものの、そっぽを向いて言うことを聞いてくれない。無理やり捕まえたが、本来ならバッジをたくさん集めてから捕獲するべきレベルのポケモンらしい。だが、襲っては来ないのでバッジが後一個もあれば言うことを聞いてくれそうだ。

 

 

「そろそろ向かうか。ナックルシティ」

 

 

 モコウはもうどこまで行ったんだろうか。もう最後のジムまで行ってたりしてな。そう思いながらナックルシティに足を踏み入れると、道のど真ん中で項垂れている見覚えのあるゴスロリ姿があった。噂をすれば、だ。何故か通行人からは見慣れた風景の様な視線を向けられているのが気になるが。

 

 

「よう、モコウ。元気か?」

 

「ん?おおう、ラウラか。まさか今ワイルドエリアからやってきたのか?元気かと言われたら…元気じゃないな、うん」

 

 

 あの自信に満ちていた表情が疲弊しきって、なんかドンヨリしている。どうしたというのか。

 

 

「…あのあと、アラベスク、キルクス、スパイクと攻略してここまで戻ってきたんだが…キバナ殿が強すぎてな」

 

「一週間も経たずに攻略してるのか…たしかダブルバトルなんだっけか。お前、一匹を扱うのは得意だけど二匹同時は苦手そうだもんな」

 

「それだけではない…なんでドラゴンジムなのに地面単タイプがおるのだ!?ただでさえドラゴンにはでんきの通りは悪いというのに!いまだにキバナ殿の相棒であるジュラルドンまで引き出せないのだ!」

 

「未だにってどれぐらい挑んだんだ?」

 

「…50近く。いまだに我しかここまで辿り着いた者がいないから毎日毎時間挑んでいるが、心が折れそうだ…」

 

「もうジムトレーナーの顔見知りになってそうだな…あれから仲間は増やしたのか?」

 

「ああ、パッチルドン、ロトム、ストリンダー…仲間は揃ったのだ。だけど、どう足掻いても勝てんのだ…!」

 

 

 もう泣きそうになってるモコウに、慰めようとして、やめる。こいつは強い奴だ。なにより、ライバルに慰められることをこいつはよしとしないだろう。すぐに立ち直って、また挑むだろう。できることは、なにもない。するとぷるぷると震えながらついに泣き出すモコウ。

 

 

「…私は挑むぞ、何度でも。最速の称号を手に入れるんだ。じゃないと、私には何の価値も…!」

 

「落ち着け。口調が崩れてるぞ。何がトラウマなのか知らないが、お前はすごいよ。多分、過去のジムチャレンジでもトップクラスの速さだと思うぞ。あのチャンピオンダンデだってこんなに速くはない」

 

「そ、そうか?我、すごい?」

 

「ああ、すごい。俺なんか三日三晩一匹のポケモンと戦ってたんだぞ。その間に三つも踏破するなんて本当にすごいよ」

 

 

 そう褒め称えてると元気を取り戻すモコウ。脳が小さい昆虫の様に単純な奴だな。いやまあ、本当にすごいんだが。雷の様に凄まじく速い。その速さだけはチャンピオンをも超えているだろう。キバナという大きな壁にぶつかってしまったが、それすらも貫く雷になるだろう。

 

 

「いいや、全然すごくないからさっさと諦めーる!」

 

「悪いこと言わないからジムチャレンジをすぐやめーる!」

 

「あ?」

 

 

 せっかくモコウが自信を取り戻してきた矢先にかけられる否定の言葉。振り向くと、そこにいたのはパンクロッカー風の服装に身を包んだ変なメイクをしている男女。たしか…迷惑サポーター集団のエール団、だったか。

 

 

「なんだお前ら。モコウはすごい奴だ。それを否定するなら許さないぞ」

 

「貴方達、噂のジムチャレンジャーのモコウとラウラであってーる?だったら酷い目に遭わせてやーる!」

 

「我らがマリィを勝たせるためエールを届けーる我らエール団の凄さ恐ろしさ、じっくりたっぷり教えーる!」

 

 

 問答無用だと言わんばかりに、街中だというのにガラルのマッスグマとフォクスライを繰り出すエール団二人。俺達をコテンパンにして自信を失くそうというのかいい度胸だ。すると怒りに顔を歪ませたモコウが立ち上がる。

 

 

「頭に来たぞ。我を怒らせたな?ちょうどいい、ダブルバトルの練習だ。付き合えラウラ!」

 

「ああ、やるぞ。迷惑サポーターにはうんざりだ」

 

「見えーる!おまえたちの敗北が!かみくだく!」

 

「聞こえーる!おまえたちの泣き声が!!バークアウト!」

 

 

 モコウが繰り出したのはストリンダー。俺が繰り出したのはバチュル。愚直に攻撃してくるマッスグマとフォクスライに対し、互いに目配せし、指示をする。

 

 

「バチュル、エレキネット!」

 

「そこに叩き込めストリンダー!オーバードライブ!」

 

 

 エレキネットで動きを阻害し、そこに叩き込まれるのは胸の弦の様な器官を掻き鳴らして放つ、強力な激しく響く大きな振動が二体に炸裂。大きく吹き飛ばした。

 

 

「なあ!?」

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

「とどめだ、きゅうけつ!」

 

「我を怒らせたことを後悔させてやる!どくづきだ!」

 

 

 そして致命の一撃が炸裂。戦闘不能になった己のポケモンに、信じられないという表情を向けるエール団二人に、俺とモコウは睨みを利かせると、そのまま逃げて行った。

 

 

「口ほどにもない奴らめ。我を馬鹿にするならそれ相応の実力を持ってこい。奴らの応援するジムチャレンジャーもろくでもない奴なんだろうな」

 

「そうだな。…ところでモコウよ」

 

「なんだ」

 

「今俺達がやったのはマルチバトルだ。ダブルバトルじゃないぞ」

 

「なにぃ!?」

 

 

 気付いてなかったのか。トレーナーが別々に指示するのと、トレーナー1人が二体に指示するダブルバトルは全然別物だぞ。

 

 

「でもストリンダーの音技は二体に同時に炸裂するからいいと思うぞ。ひかりのかべとかリフレクターを検討するか、逆に天候を利用するといいかもだ。雨で必中のかみなりとかな」

 

「なるほど?…やはりラウラよ、お前のバトルの知識は中々のものだな」

 

 

 …そりゃあ、前世でバトルサブウェイを勝ち進むために勉強したからな。今の環境は知らないが、基本的な戦術なら身に着けている。その知識と、ほぼ直感の指示でなんとかなってきたが、そろそろきついかもしれないな。

 

 

「そうでもないさ。俺はまだまだアマチュアだ、実戦の経験を多く積んだジムリーダーとは比べ物にならない。それをむしタイプ達の可能性で埋めてるんだ。俺は全然凄くない。お前と違ってな」

 

「むう?違うぞ。我は我のライバルであるお前を、すごいと認めているのだ。それを否定するのは許さんぞ?」

 

 

 さっきエール団に言い放ったことを自信満々な顔で返され、顔が赤くなる。…ああ、なんだ。カブさんといい、ジムリーダーたちといい…認めてもらえるってのは、こんなにも…!こそばゆくなった俺は荷物の入ったリュックサックを担ぎ直し、西へ向かう。

 

 

「お、俺はもうラテラルタウンに向かうからな。俺が戻ってくるまでにキバナを攻略してなかったら承知しないぞ」

 

「うむ!お前のおかげで突破口が開けた気がする!礼を言うぞラウラよ!」

 

「礼を言われるようなことは何もしてないって…なあ、バチュル?」

 

 

 麦わら帽子の鍔まで下りてきたバチュルの顎を撫でながら駆け足で街並みを抜ける。ブティックとかカフェとかは完全に無視だ。ライバルに負けないためにも、モコウとの約束を守るためにも、必ずラテラルタウンとアラベスクタウンのジムリーダーを攻略して戻って来てやる!そう決意した俺は旅路を急ぐのだった。




さすがにエール団は敵じゃない。

・ラウラ
リュックサックを愛用している褒め上手。バトルサブウェイを攻略してるぐらいにはポケモン廃人。認めてもらえることに感激しているようだが…?

・モコウ
キバナで完全に詰んで立ち往生していた現最速攻略者。あまりの速さにキバナもビビった。あまりにも挑み過ぎててジムトレーナーとはもはや顔見知り。本当の一人称は「私」で、実はラテラルタウンの名家の出。だからウカッツ博士の論文なども読んでいた。落ち込むと自分に価値を見いだせなくなるタイプ。ちなみにラクライがライボルトに進化した。

・ストリンダ―(ハイなすがた)♀
とくせい:パンクロック
わざ:オーバードライブ
   ばくおんぱ
   どくづき
   ほっぺすりすり
もちもの:じしゃく
備考:ようきな性格。イタズラが好き。モコウがアラベスクジム攻略のためにワイルドエリアでゲットしたエレズンが進化したポケモン。パッチラゴンと双璧を為す主砲の一人。

・パッチルドン
とくせい:ちくでん
わざ:フリーズドライ
   ゆきなだれ
   じゅうでん
   でんきショック
もちもの:じしゃく
備考:れいせいな性格。暴れることが好き。今回は出てこなかったが、モコウがドラゴン対策にと化石を集めて再びウカッツ博士に復元してもらったポケモン。なお、ギガイアスで即座に倒されてる模様。

・ウォッシュロトム
とくせい:ふゆう
わざ:たたりめ
   ほうでん
   みがわり
   ハイドロポンプ
もちもの:じしゃく
備考:むじゃきな性格。すこしお調子者。今回は出てこなかったが、モコウが地面対策に入れたポケモン。ワイルドエリアを渡ってる際に自分からでんき好きの性質を見抜いて寄ってきた。キバナ相手には一番善戦しているが肝心な時にハイドロポンプが当たらない。

・エール団
男女のコンビ。マリィの障害になるであろうラウラとモコウを潰しに来たら返り討ちにされた。オーバードライブを一回耐えるなど結構強い構成員である。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゴロンダ

どうも、前回に引き続きお気に入り登録の嵐に戦々恐々している放仮ごです。お気に入りがあっさり500を突破、UAも10000突破、日刊9位もいただきましたありがとうございます!

今回はVSサイトウ前半戦。楽しんでいただけると幸いです。


 グルグル回って目が回る。ラテラルジムのジムミッションを踏破した俺は、激しく酔っていた。平衡感覚が狂って足取りがおぼつかない。ドラピオン戦でれんぞくぎりを忘れたテッカニンが新たに覚えた「つばめがえし」でジムトレーナーを一蹴したが、思わぬ強敵だった。吐き気がする。気持ち悪い。なんで回って跳ねて縦横無尽に吹っ飛ばされないといけないのか。それともどんな状況でもポケモンを扱えるのかテストしているのか。こんな状態でポケモンバトルが出来てたまるか。

 

 バトルフィールドに入る前に通された選手控室で回復を待ちつつ、ポケモンたちのコンディションをロトム図鑑で見やる。テッカニンが道中の戦いで結構ダメージをもらったから、極力温存しないといけない。初手はバチュルで様子見がいいな。かくとうタイプだから、力比べができるオニシズクモをメインに考える。おにびでやけどにして攻撃力を半減できるマルヤクデの使いどころも大事だな。

 

 

「…大丈夫だ、俺はみんなを信じて指示をすればいい」

 

 

 そう思い立って選手控室を後にする。バチュルを頭に乗せ、バトルフィールドに足を踏み入れた。

 

 

『本日のラテラルスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!数日間行方不明だと噂されていたむしつかい、ラウラ選手!対するはジムリーダー、サイトウ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 行方不明だったのは三日三晩ドラピオンと戦ってたからだな、反省してます。中心で待つのは少し焼けたような褐色の肌に灰色の髪。上着のジャージを結び、筋肉が浮き出た中の黒いシャツを出している、女性にしてはがっしりとした印象の少女。たしか背番号193。ガラル空手の申し子・サイトウ。テレビで彼女の使っていたタイレーツを見て虫!?と思ったのが懐かしい。しかし4VS4か…ドラピオン以外のメンバー総出撃になりそうだ。

 

 

「ようこそチャレンジャー。私はサイトウです。貴方がラウラさんですね、お噂はかねがね。貴方達の心、どんな攻撃にも騒がないのか私が試すとしましょう」

 

 

▽ジムリーダーのサイトウが 勝負を しかけてきた!

 

 

 ピッチャーのように腕を大きく回してからのアンダースローで投げられたハイパーボールから飛び出したのは、カポエラー。頭の角を地面に立てて回転する姿に、俺はあることを思いついて頭の上のバチュルを掌の上に乗せて突き出した。

 

 

「行って来い、バチュル!いとをはくだ!」

 

「でんこうせっか!」

 

 

 絡ませようと糸を繰り出すが、凄まじい速度で回転しながら回避行動を取り突撃してきたため失敗に終わる。

 

 

「周囲にエレキネットだ!」

 

 

 ならばと、エレキネットをばら撒いて身動きを制限させる。搦め手を使うこちらに、恐らく常套手段なのだろう「カウンター」や「リベンジ」を指示できないのか、表情を苦々しく歪めたサイトウは、深呼吸してカッと目を見開いた。

 

 

「突撃ですカポエラー!トリプルキック!」

 

「真正面からエレキネットだ!」

 

 

 エレキネットを物ともせずに放たれたのは蹴りの三連撃。少しでも勢いを弱めるため直接エレキネットをかけて痺れさせる。回転が遅まり、ぐらついたところにチャンスと見た俺はバチュルをボールに戻し、テッカニンと交代する。

 

 

「テッカニン、つるぎのまい!」

 

「させません!リベンジ!」

 

「かげぶんしんだ!」

 

 

 でんげきのダメージを上乗せした強烈な蹴り上げがテッカニンを襲うも、つるぎのまいを中断してかげぶんしんで回避。空中でつるぎのまいを再開し、着地したカポエラーに好機を見出す。

 

 

「つばめがえし!」

 

「待っていました!カウンター!」

 

 

 鋭い一撃と、逆さまの下段から繰り出される拳が交差する。わずか先にリーチの差でこちらが先に炸裂し、戦闘不能になったその拳の威力は減衰してテッカニンに当たるも、ちょっとふらつくだけですんだ。

 

 

「鋭く、速いですね。ならばこちらは…いきなさい、ゴロンダ!」

 

「っ、ならこっちはバトンタッチ!オニシズクモだ!」

 

 

 出てきたのはたしかあく・かくとうタイプのゴロンダ。むしタイプが有利なポケモンだが、ただものではない雰囲気を感じる。テッカニンではあの巨体に分が悪いと感じ、パワー勝負が得意なオニシズクモに交代する。ジリジリと対峙するオニシズクモとゴロンダ。埒が明かない、先手必勝だ。

 

 

「そこだ、とびかかる!」

 

「バレットパンチ!」

 

 

 不思議なことが起こった。オニシズクモのとびかかりを、ゴロンダはまるで分っていたかの様な動きで回避、鋼の様な拳をオニシズクモの腹に叩き込んで殴り飛ばしたのだ。

 

 

「負けるな、アクアブレイク!」

 

「ともえなげ!」

 

 

 強力な一撃も、軽く横に避けられて持ち上げられ、地面に向けて巴投げで叩きつけられるオニシズクモ。何とか受け身を取ってダメージは避けているが、それでも、何かが可笑しい。

 

 

「逃がすな、壁を利用してとびかかる!」

 

「バレットパンチ」

 

「かみついてやれ!」

 

 

 壁を利用して上空に跳ねて、襲いくるオニシズクモをゴロンダは的確に拳で迎撃。ならばとかみつかせるがそれも避けられてしまう。こちらのダメージが蓄積される一方で攻撃がまるで当たらないことに驚愕する俺に、深呼吸したサイトウが語る。

 

 

「ゴロンダは口に咥えた竹の葉っぱで敵の動きを察知する能力があります。そして私から見ても、貴方の考えていることはわかりやすい。私達は明鏡止水の心でそれに応じればよいだけのこと」

 

「っ…バブルこうせん!」

 

「つじぎりで迎撃し、ともなえげです!」

 

 

 そんな生態があるのか。そんなに俺は分かりやすいのか。距離を取ってみるが、放たれた泡攻撃は十字を描く手刀で斬り裂かれて防がれ、突進からの巴投げでフィールドに叩きつけられオニシズクモがダウンしてしまう。慌ててボールに戻すが、動きを読まれるなんて冗談じゃない。考えろ、どうすれば…待てよ?あの葉っぱで動きが読まれる?なら、やることはひとつだけじゃないか。

 

 

「初陣だ、暴れろマルヤクデ!」

 

 

 マルヤクデを出すと同時に、しろいけむりが辺りに充満する。あんまり意味はないが、これで能力低下は無くなった。やる気満々と言うように体を発熱させるマルヤクデに頷き、指示を出す。

 

 

「えんまく、からのほのおのうずだ!」

 

「っ、避けなさい!」

 

「ならまきつく攻撃!」

 

 

 えんまくを纏って攻撃の瞬間を悟られないようにしつつ、蜷局を巻いて放たれたほのおのうずを分かりやすく全力で回避するゴロンダに、えんまくから飛び出したマルヤクデが蜷局を巻いた勢いのまま全身に巻きつく。発熱してるからそのままでもダメージはあるだろうが、目的は葉っぱのみだ。

 

 

「くっ、ふるいたてなさい!ともえなげ!」

 

「離れるなマルヤクデ!おにびからのほのおのうず!」

 

 

 まきついた状態からのおにびと、ほのおのうずがゴロンダの全身を焼き尽くす。葉っぱが燃えて目に見えて意気消沈するゴロンダをしめつけ、焼き続けるマルヤクデ。体力が尽きたのかゴロンダは崩れ落ちた。

 

 

「どんな攻撃もゴロンダで受け切ると考えていましたが…どうやら驕りだったようです。私も本気で貴方に挑ませてもらいます!ネギガナイト!」

 

「こっちだって負けられないんだ、虫ポケモンの強さを証明するために!」

 

 

 繰り出されたのはガラル地方のカモネギの進化系、ネギガナイト。ネギの様な槍の様な武器と、盾が特徴のポケモンだ。アレとやり合えるのは俺の手持ちには一匹しかいない。

 

 

「がんばれ、テッカニン!つばめがえし!」

 

「ネギガナイト!ぶんまわす!」

 

 

 そして、テッカニンの刃とネギガナイトのネギがかち合った。




ネギ。それはとてもすごいネギ。地面に刺して呪文を唱えたら通信できそう。

・ラウラ
三半規管が弱い人。ドラピオン戦で快進撃が止まった上にワイルドエリアに三日三晩いたため行方不明扱いされていた。ドラピオン戦でテッカニンに念願のつばめがえしを覚えさせることに成功。つばめがえしはひこうタイプが使って必中なのだと認識を改める。

・サイトウ
かくとうタイプのジムリーダー。明鏡止水を心がける空手家。その心持ちがゴロンダの生態と相性が良かった。ラウラに対しては心の起伏が激しい楽しい人という認識。ちなみにモコウ相手にはパッチラゴンのつばめがえし一辺倒で倒され激しく動揺したとかなんとか。

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VSカイリキー

どうも、帰郷した妹にゲーム機本体ごとポケモンを貸していてプレイが出来てない放仮ごです。今年最後の投稿となります。

今回はVSサイトウ後半戦。楽しんでいただけると幸いです。


「テッカニン!」

 

 

 つばめがえしとぶんまわすがかち合い、勢いよく振り回されたネギでテッカニンが弾き飛ばされる。リーチを活かした遠心力を加えた一撃だ、威力が今一つでも体勢を崩す効果がある。しかし、テッカニンは空を飛ぶポケモンだ。すぐに体勢を建て直し、ネギガナイトに刃を振るう。

 

 

「つばめがえし!」

 

「みきりなさい!」

 

 

 しかし構えられた盾で防がれ、押しのけられる。駄目だ、攻めきれない。すると空手の様な動きを取るサイトウと連動して構えを変えるネギガナイト。

 

 

「叩き落としなさい、つるぎのまい!」

 

「つるぎのまいで迎え撃て!」

 

 

 得物の乱舞がテッカニンを巻き込むように放たれ、同じ技で対抗。本来攻撃技ではないが、舞いに使われるのは鋭い得物だ。必然的に壮絶な斬り合いを演じるテッカニンとネギガナイト。それぞれにダメージが蓄積されて行き、一撃で落とせるであろうダメージ圏まで追い込まれたことを察知。おそらくサイトウも同じだろう。ならば先に仕留める!

 

 

「下段からつばめがえし!」

 

「耐えなさい!リベンジです!」

 

 

 かそくで上がったスピードで地面すれすれを飛び、ネギガナイトに肉薄するテッカニン。対してネギガナイトは左手の盾を押し付けて対抗し、盾で押し止めれてしまったテッカニンに得物を振り下ろす一撃が炸裂。テッカニンは叩き潰される。勝利を確信したように笑みを浮かべるサイトウ。だが、俺の不敵な笑みを見て怪訝そうに首を傾げた。

 

 

「…かげぶんしん」

 

「なっ!?」

 

 

 潰されたテッカニンの姿が掻き消え、ネギガナイト共にその顔が驚愕に歪む。指示も無く、かげぶんしんを行使する。これはドラピオン戦で身に着けたテッカニンの危機回避行動だ。かそくのとくせいで速度を上げて、分身といつの間にか入れ替わる。騙し討ちとして最適だ。

 

 

「つばめがえし!」

 

「っ、みきり!」

 

 

 そして天井近くの上空に上がっていたテッカニンの、超高速の急降下からの一撃がネギガナイトに炸裂。みきりで一撃目は防がれるも、急旋回して返しの二撃目が腹部に炸裂。ネギガナイトの体力を削る。

 

 

「負けないでくださいネギガナイト!リベンジ!」

 

「なっ!?」

 

 

 しかし、攻撃を浴びせた直後は回避行動をとれるはずもなく、渾身の勢いで振りかぶられたネギが後頭部に炸裂。沈むテッカニン。かくとうタイプに対する切札を、失った。まさか根性で返してくるとは。さすがジムリーダーのポケモンだ。

 

 

「…おつかれ、テッカニン。やれるか、バチュル?」

 

 

 テッカニンをボールに戻し、取り出したネットボールの中にいるバチュルの意思を確認する。カポエラー戦でのダメージが残っているが、こいつはやれる子だ。やる気満々といった表情のバチュルを確認し、ボールを投げて繰り出す。相手は疲弊しきっているとはいえ、あのテッカニンの猛攻を凌いだネギガナイト。相手にとって不足無しだ。

 

 

「こうそくいどうで懐に潜り込め!」

 

「ぶんまわす!」

 

 

 かなり小さいバチュルの、こうそくいどう。見切れないと踏んだのか、ぶんまわすで迎撃を指示するサイトウ。だがこちとら蜘蛛だ。地上からの攻撃だけが能じゃない。

 

 

「奴のネギにいとをはく!そのまま振り回されろ!」

 

「なっ!?」

 

 

 ネギガナイトのネギに糸を引っ掛け、ぶんまわすを利用して糸を巻き取らせ懐に飛び込む。これで決める!

 

 

「きゅうけつだ!」

 

 

 巻き取られた勢いのままに、どてっ腹に飛び込み牙を突きたてるバチュル。ネギガナイトの残りの体力を奪い取り、戦闘不能にした。

 

 

「ここまでとは…ふんばりどころです!私も一緒に頑張ります!カイリキー!」

 

 

 最後に繰り出されたのは、カイリキー。ここまでこちらはテッカニンのみ戦闘不能、バチュルとオニシズクモは結構ダメージをもらっていて、ほぼ無傷なのはマルヤクデだけ。有利とはいえ厳しいけど、やるしかない。

 

 

「がんばれ、マルヤクデ!ダイマックスだ!」

 

「もう全部壊しましょう!尊敬を込めてキョダイマックス!」

 

 

 テッカバトンによる高火力攻撃が出来ないので、ダイマックスを選択。サイトウもキョダイマックスを発動し、カイリキーの姿が大きく変わる。巨大な腕と強面の威圧感が凄まじい。すると、マルヤクデに不思議なことが起こった。カブさんのマルヤクデと同じように姿を変えたのだ。

 

 

「キョダイマックス…!?カブさん、アンタはどこまで…!」

 

「いきます!私のカラテとパートナーの技を重ねるッ!キョダイシンゲキ!」

 

「ええっと、たしか…キョダイヒャッカだ!」

 

 

 繰り出される拳の一撃に、キョダイマルヤクデの火球で対抗。火球は巨拳に触れると破裂してほのおのうずとなりキョダイカイリキーを拘束。

 

 

「再び、キョダイシンゲキ!」

 

「キョダイヒャッカ!」

 

 

キョダイマックスワザをぶつけ合い、ド迫力の戦いが繰り広げられる。あと一回しかキョダイマックスしたまま技を使えない。何か策を考えないと。そして、勢いを増したほのおのうずがキョダイカイリキーを拘束しつつダメージを与えているのを見てあることを思いついた俺は、本来はあり得ない指示を出すことにした。

 

 

「マルヤクデ、巻き付いてやれ!」

 

「なっ!?」

 

 

 技でもなんでもない、単に巻きつくという行動。キョダイマックスしたことにより長大化した全身でキョダイカイリキーをその四本の剛腕ごと締め上げ、客席から歓声が上がる。技の撃ち合いしかしてこなかったダイマックスで、初ともいえる格闘戦になったのだから当たり前だろう。キョダイカイリキーは逃れようと暴れるが、赤熱するキョダイマルヤクデの拘束は外れず、ほのおのうずと共に逆にダメージを与えていく。超高熱の身体とほのおのうずによる拘束だ。逃れようとすればするほど、ダメージは倍増する。

 

 

「くっ、自分の体にキョダイシンゲキ!」

 

「離れろ!ダイアタックだ!」

 

 

 キョダイマルヤクデの巻き付いている自分のボディに攻撃を加えようとするキョダイカイリキーから離れ、自身の攻撃で揺らいだところに強烈な一撃が叩き込まれ、大爆発。キョダイカイリキーはみるみる縮み、ボールに戻って行った。

 

 

「よくやった、マルヤクデ!お前、キョダイマックスできるなんて聞いてないぞ、このこの!」

 

 

 元のサイズに戻ったマルヤクデの身体を、火傷しそうになりながらもワシャワシャ撫でていると、カイリキーをボールに戻し終えたサイトウが歩いてきた。

 

 

「参りました。まさか、ダイマックスポケモンでわざもなにもない格闘戦を行うなんて…目から鱗です。貴方が率いるポケモンから武芸の魂を感じました。ええ、どのポケモンもよく鍛えられている」

 

 

 一礼したサイトウがそう言って笑みを浮かべる。武芸というか、今回は力でぶつかるしかなかったというか…テッカニンの搦め手を使っても負けそうになったからな。

 

 

「手合わせして分かりました。貴方達との立ち合いで私…思わず心が躍っていた様です。騒がないのも勝負であれば楽しむのも勝負ですね」

 

「私も、何が起こるかまるで分からない戦い、楽しかったです」

 

「こちらこそ、ありがとうございました。かくとうバッジをお受け取りください」

 

 

 握手を交わし、差し出されたかくとうバッジを受け取る。これで、ドラピオンが言う事を聞いてくれるといいんだが…そこはこれからだな。

 

 

「これからも様々な出会いと試合があるでしょう。それら全てが貴方達の心の糧となりますように」

 

 

 サイトウの言葉には思うことがある。虫たちは成長が早い。色んな経験を力にして、育っていく。俺も、そうできればいいんだけどな。…俺は、虫ポケモン達と共に成長できているだろうか?

 

 そんなことを考えながらジムの外に出ると、ちょうど入ろうとしていた少女と向かい合う形になった。俺を見て驚く少女。傍らにはにめんポケモンのモルペコがいた。

 

 

「あっ」

 

「ん?」

 

 

 知り合いだっただろうか?と首を傾げ、会ったことのないはずの少女にどこかで見たような気がしてあるぇー?と悩む俺に、同じく何かを悩んでいた少女が意を決して話しかけてきた。

 

 

「あ、あの!あんた、ラウラ選手とね?よかったらちょいとあたしにつきあってほしか!」

 

「お、おう…?」

 

 

 …ビートといい、ユウリといい、モコウといい、ジムチャレンジャーによく勝負を申し込まれるなあ、と遠い目になる俺の頭上で呆れた様な鳴き声を上げるバチュル。俺はそれを撫でつつ、マリィと名乗ったどこか聞き覚えのある彼女に続いて6番道路に向かうのだった。




ダイマックス同士で格闘戦してもいいじゃない。マリィの口調ってこれであってるかな?

・ラウラ
勝手にかげぶんしんを使うようになったテッカニンを扱える人。かげぶんしんと何時入れ替わったかわかる蟲限定眼力の持ち主。カブさんと同じキョダイマルヤクデにテンションフォルテッシモ。ダイマックス状態で格闘戦するという暴挙に出た。

・サイトウ
明鏡止水を心がけつつ、全然心が落ち着いていられなかった人。穏やかじゃないですね。カブさんに続いてラウラを大苦戦させた実力者。ダイマックスの認識がちょっと変わった。

・マリィ
ついに登場。エール団のアイドル。ラウラは天敵と言ってもいい存在。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。よいお年を。


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VSモルペコ

どうも、あけましておめでとうございます、放感ごです。お気に入りが600を超え、UAも15000を行きましたありがとうございます!

そんなわけで今回は次回の続きから。VSマリィ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 マリィと名乗った少女に連れられてやってきたのは、六番道路名物のディグダ像前。そして思い出した、マリィってあれだ。エール団に応援されてる子だ。タオルにこの子が描かれていたから見覚えがあったんだ。いい子そうだからあの蛮行はエール団が勝手にやってることなんだな。向き直ったマリィの第一声は、「あたしと戦ってほしい」だった。うん、知ってた。

 

 

「一応聞くけど…なんで?」

 

「あたし、極力あくタイプだけでジムチャレンジに挑んでたんだけど、フェアリータイプ対策に一匹だけあくタイプじゃなくて…ここまでむしタイプだけでジムチャレンジを突破してきたラウラ選手とあたし、何が違うのか知りたいと!」

 

「といっても、使ってないだけで俺も蟲だけど虫タイプじゃないの持ってるしなあ。あくタイプ使いか、俺がむしタイプ使いと知っての挑戦か?」

 

「むしろ、苦手なタイプに勝ててこそ、じゃなかと?」

 

「それもそうだな、気に行った!見たところ三匹しかいないみたいだし3VS3でいいか?」

 

 

 俺の得意タイプを知らずにエスパーで挑んだビート、俺の実力差を知りながら自分の実力を試そうと挑んできたユウリ、好きなタイプでどこまでごり押せるか挑んできたモコウのどれとも違う、俺のポケモンを知りながら自分が勝てると信じてるマリィ。なるほど、エール団に応援されているのも分かる気がする。

 

 

▽ポケモントレーナーの マリィが 勝負を しかけてきた!

 

 

「なら俺も、こいつの試運転をさせてもらおう!行って来い、ドラピオン!」

 

「行って、ズルッグ!」

 

 

 野球のように豪快なフォームで繰り出されたのは、あく・かくとうタイプのズルッグ。対して俺が繰り出したのは言うことを聞くようになったはずのドラピオン。相性は不利だが、このドラピオンなら問題ない。しかしこのサソリの様なフォルム、美しい。ドラピオンの雄姿に恍惚していると、マリィが仕掛けてきた。

 

 

「負けると不機嫌になるからね……ま、あたしが負ける訳ないけど!ズルッグ、ずつき!」

 

「つじぎりだ」

 

 

 繰り出されたずつきを、両手による十字を描く斬撃が連続で炸裂。一撃目で弾き、二撃目で吹き飛ばす。このドラピオンが使うと攻防一体の極致となるこの技。よし、ちゃんと言うことを聞いてるな。しかし相性が悪すぎたのか、普通に耐えられてしまう。なら効果抜群を狙おうか。

 

 

「尻尾を振るって距離を取れ!ミサイルばり!」

 

「下に避けてけたぐり!」

 

 

 両手尻尾の爪を光らせて複数同時に放ったミサイルばりを、体勢を低くして地面を駆けて懐に飛び込むズルッグ。でもいいのか?そんな前に出て。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「なっ!?」

 

 

 地面を叩き割る毒を纏った両腕の振り下ろしがズルッグに炸裂、戦闘不能になる。まだ体力がありあまっていたはずのズルッグが一撃で落とされたことに驚愕するマリィ。

 

 

「俺のドラピオンは俺の手持ち四体と三日三晩戦っても衰えなかった驚異のパワーファイターだ。蹂躙されてくれるなよ?」

 

「くっ、グレッグル!」

 

 

 次に繰り出されたのはどく・かくとうのグレッグル。さっき言ってたあくタイプじゃない手持ちはこいつか。同じ毒タイプとはいえ、かくとうタイプはドラピオンはあまり得意じゃない。まずは様子見だな。

 

 

「ミサイルばりだ」

 

「ふいうち!」

 

 

 ふいうち、確定で先手を取れる技。跳び上がってからのアッパーカットが炸裂し、それによりドラピオンの意識が一瞬途切れた。ポケモンの世界でも、顎というのは急所なのだ。ドラピオンの首が据わってなければ脳震盪でも起こしてただろう。だが、近づいたな?

 

 

「こおりのきば」

 

「グレッグル!?」

 

 

 首に叩きつけられた拳が離れる前に、冷気を纏った牙で噛み付くドラピオン。逃がさないという意思の宿った目は怒りに満ちている。主に俺に対しての。悪かったって。お前の雄姿に見とれてたんだ許して。

 

 

「クロスポイズンだ」

 

 

 冷気で凍り付いたグレッグルに、急所に当たりやすい交差した斬撃が炸裂。地面に叩きつけるドラピオン。しかし氷が砕けた物の、グレッグルの目にはいまだに闘志の炎が宿る。愕然としていたマリィもそれを見て気を取り戻したのか、熱い指示を出してきた。

 

 

「こんな強敵…終わっちゃうのつまらん!だからネバっちゃうよ、あたしたち!リベンジ!」

 

「っ!?」

 

 

 サイトウ戦でも嫌というほど味わった。喰らった攻撃の分倍返しする渾身の一撃がドラピオンのどてっ腹に炸裂。強烈な衝撃で地面が揺れる。それでもドラピオンは倒れない。やっぱり、こいつはタンクとして最高だ!

 

 

「これぐらいで倒れるようなら、三日三晩も戦っていないんだよ!ミサイルばり!」

 

「どくばりで迎撃して!」

 

 

 再び放たれる六筋の光弾。グレッグルは口から吐き出す紫色の針で迎撃していくも、捌ききれずに一発、二発と胴体に炸裂。その体が揺らぎ、戦闘不能になる。

 

 

「がんばれ、モルペコ!オーラぐるま!」

 

「クロスポイズンで迎え撃て!」

 

 

 最後に繰り出されたのはモルペコ。ハムスターの回転車のようなエネルギーを纏って突撃してきたので、クロスポイズンで迎撃。一瞬拮抗するも、弾き飛ばすとドラピオンは急接近、驚くモルペコに迫る。

 

 

「でんきショック…!」

 

「こおりのきばだ!」

 

 

 そして空中で逃げ場のないモルペコの放った電撃を物ともせずに冷気を纏った牙で噛み付き、戦闘不能にした。交代なしで倒すという、ビート戦以来の圧勝だった。

 

 

「一匹だけでマリィに勝つなんて…すごい、強すぎる…」

 

「今のはドラピオンのスペックでごり押した様な物だけどな」

 

「でも、そいつ捕まえたのはラウラ選手なんでしょ?あたし、強いあくタイプは見慣れてるけどそのドラピオンは別格…アニキといい勝負できるかも」

 

「アニキ?」

 

「あたし、スパイクタウンのジムリーダー…ネズの妹なんだ。このモルペコもアニキからもらったポケモン」

 

「なるほど、だからあくタイプ統一か」

 

 

 言われて納得する。じゃあそのマリィのサポーターであるエール団は…考えない様にしよう。

 

 

「で、タイプ相性の覆し方だったな。今回はドラピオンのあく技がマリィのかくとうタイプ二体にあまり通じない事だったが…使い方次第だ」

 

「使い方次第?」

 

「威力が弱い技でも弾いて体勢を崩すぐらいはできるってことさ。あと、スピードだな。どんなに苦手な技でも避けてしまえば関係ない。だから俺から教えられるのは、怯ませること、応用力、すばやさの重要度だ。あくタイプには詳しくないけど、怯ませることに関しては十八番のはずだ。マリィのチームでもそこそこやれるだろうさ」

 

 

 正直、サイトウの時点で詰んでいる気がするが。いや、サイトウは搦め手に弱いからあくタイプならそこを突ければいけるかも…?するとマリィは合点が行ったのか、顔を輝かせる。

 

 

「なるほど…参考になったと、ありがとうラウラ選手」

 

「他人行儀じゃなくていいぞ。ライバルなんだからな」

 

 

 そうだ、ドラピオンを使った申し訳なさから教えてしまったけど、マリィはビートやユウリ、モコウと同じくセミファイナルトーナメントで戦うかもしれないライバルだ。もしかしなくてもやってしまったか?

 

 

「うん…じゃあラウラ!あたしはラテラルジムに挑んでくるけんね。あんたも気張って残りのジムを踏破するったい!」

 

「お、おう。マリィの応援はなんだか元気が出るな。その応援があればポケモン達も頑張れるさ。今度戦う時も容赦しないぞ」

 

「望むところったい!」

 

 

 そうして俺達は別れた。マリィはラテラルシティにとんぼ返り、俺も続こうとして…周囲の惨状が目に入る。ドラピオンが暴れたせいで穴ぼこだらけになっていた。ギャラドスかなにかかな?

 

 

「…ここ、一応道路だからな。直さないと…」

 

 

ディグダ像に攻撃が当たらずにすんでよかったと心底胸を撫で下ろす。そうして補修を終えた俺は次のアラベスクジムを目指すべく、ルミナスメイズの森に足を踏み入れるのだった。虫ポケモンがいるか楽しみだ。




マリィの口調はポケスペのサファイアを参考にしました。あってるかな?今回はちょっと難産でした。

・ラウラ
ドラピオンで俺TUEEEしたけど申し訳なさの方が大きかった小心者。初めて使うドラピオンを扱いきれてない上に、ドラピオンが勝手に動いたことによりモルペコの撃破に繋がった体たらく。マリィは友達兼弟子っぽいライバルという認識。教えたことはこの世界でバトルをして学んだこと。

・マリィ
むしタイプに挑むはずがドラピオンで全タテされてしまった不運なアイドル。エール団が見てたらブチ切れてたけど、本人は強敵にワクワクしていた。ラウラから苦手なタイプの対処法を聞かされたためパワーアップ。ラウラは友達兼ライバル。実はモコウとも戦ってボコボコにされており、ユウリ共々リベンジを狙っている。
割と真面目に、ゲーム本編のマリィがどうやってサイトウとポプラを撃破したのか凄い不思議。

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VSウォーグル

どうも、放仮ごです。お気に入り数700を越えましたありがとうございます!

今回は胸糞注意回。新たなライバル登場です。楽しんでいただけると幸いです。


「森なのに虫が一匹もいないとかふざけんなよマジで!」

 

 

 ブチ切れながらルミナスメイズの森のフェアリーポケモンたちを退け、ズンズン進む。森だからと期待してたのに、虫ポケモンの影も形も無い。隠れているだけかもしれないが、間違いなくいて一種類ぐらいだろう。いるのは未だによくわかってないフェアリータイプのポケモンだけだ。…フェアリータイプと言えば、次のジムもフェアリータイプだ。正直よくわかってない。

 最強のタイプであったはずのドラゴンの技を無効化するとかいうチートで、ドラゴンには効果抜群の天敵。あくタイプとかくとうタイプにも効果抜群を取れ、逆にはがねタイプとどくタイプに弱い。あと、むしタイプのわざがいまいち通らない。…正直、ドラピオンがいて五分五分と言ったところだろう。

 

 

「邪魔するな!」

 

 

 飛びかかってきたベロバーを、頭上のバチュルがエレキネットで雁字搦めにして放置する。暗い森の中で襲ってくるポケモンをなんとかできているのはバチュルがいるおかげだ。そして、森の出口に差しかかろうとした時だった。

 

 

「参りました、霧で空を飛ぶことも叶わないとは」

 

 

 バサッと、翼を広げて、彼女は降り立った。ウォーグルに肩を掴まらせた、黒髪をポニーテールに纏め、フライトスーツを身に着けた長身の少女だった。大きく開けられた胸元には、ひこうタイプのユニフォームが見えるところから見てジムチャレンジャーらしい。彼女は俺に気付くと見下した目でこちらを見やり、俺がチビなせいで見上げる形になる。

 

 

「おや失礼。小さすぎて見えませんでした。ふむ?ふむふむふむ…その格好、もしや貴方がラウラ選手?むしタイプなんて糞雑魚で矮小な存在で勝ち残った運がいいだけの話題のジムチャレンジャーですよね?」

 

「あ?」

 

「おや失敬。そんな糞雑魚の虫さんに負けるジムリーダーの方が弱いんでしたね。そうですよね、そうじゃないと虫さんたちで勝ち残るなんて無理ですしね?」

 

 

 開口一番、思いっきり貶してきた彼女の言葉にカチンとくる。むしタイプが何だって?糞雑魚?矮小な存在?言ったなこいつ。さすがに頭に来たぞ。俺のことをチビと言ったのはどうでもいいが、むしタイプを貶されるのだけは許せねえ。

 

 

「てめえ、表に出ろ。その蟲の底力を見せてやんよ」

 

「ここは表ですけど、まあいいですよ、この私、ひこうタイプ使いのムツキにボコボコにされて現実を思い知ってください!」

 

 

▽ひこうつかいの ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行って来い、テッカニン!」

 

「力の差を見せつけなさい、オンバーン」

 

 

 ウォーグルをボールに戻して繰り出されたのは、ひこう・ドラゴンのオンバーン。対して俺が繰り出したのはテッカニン。明らかに不利だが、やるしかない。何故かムツキは地べたに座っているが、そんなの知ったことではない。

 

 

「つるぎのまい―――」

 

「エアスラッシュ」

 

 

 何が起こったのか分からなかった。奴の攻撃は、速すぎた。一撃の風の刃で、テッカニンは戦闘不能になっていた。テッカニンなら容易く避けられると、慢心していた。

 

 

「なっ…」

 

「速さに自信があったようですが、こちらもオンバットの頃から育ててますので練度はかなりのものですよ。そんなこともわからないとは…せっかくなので交代しましょう。見せつけなさい、フワライド」

 

「ッ…オニシズクモ!」

 

 

 唯一空中戦ができるテッカニンを失ったのはでかい。それでも、ここの木々を利用して空中殺法ができる身軽なオニシズクモを繰り出す。対して余裕綽々のムツキが繰り出したのはフワライド。まずは一勝をもぎ取らないといけない。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「フワライド、いつものです」

 

 

 最大火力で突撃、水飛沫を上げてフワライドの姿が見えなくなる。やったか!?

 

 

「アハハ、そんな間抜けな顔でどうしたんですか?もしかして勝ったとでも?」

 

「なに?」

 

 

 水飛沫が収まった時、そこにフワライドの姿はなく、あるのは影のみ。オニシズクモと共に慌てて上を見やるが、そこにはいない。なんで…?と思った次の瞬間だった。

 

 

「ゴーストダイブ、です」

 

「なっ!?」

 

 

 慌てて前を向くと、オニシズクモの足元まで移動した影からフワライドが飛び出してきてオニシズクモを強襲。強烈な一撃が叩き込まれ、ダウンする。馬鹿な、オニシズクモだぞ?なんでこんないとも簡単に…そして思い至る。ポケモンの世界で絶対なる力。レベルの差というものに。

 

 

「…お前、どれだけ鍛えたんだ…?」

 

「私は賢いので開会式後ワイルドエリアに籠りまして。私のポケモン達の練度(レベル)は数値にして60を優に超えています。貴方の弱小雑魚蟲ポケモンでは太刀打ちできるはずがないのです。遊んでやりなさい、ルチャブル」

 

「くっ…ドラピオン!」

 

 

 ならばと、俺の手持ちの中で最もレベルが高いであろうドラピオンを繰り出す。こいつで駄目なら…そう、頭に過るも頭を振って嫌な想像を掻き消す。蟲を馬鹿にされて、このまま負けてたまるか!

 

 

「ドラピオン、ミサイルばりだ!」

 

「ルチャブル、とびひざげり!」

 

 

 牽制として放ったミサイルばりによる爆撃の中を駆け抜け、ひざを叩き込んでくるルチャブル。まけじとドラピオンは身体を捩り尻尾を前に伸ばして受け止め、返しに腕を振りかぶる。

 

 

「クロスポイズンだ!」

 

「フライングプレス」

 

 

 しかし、斬撃の交差が炸裂する瞬間。ルチャブルの姿が消えた。いや、慌てて上を見やると、頭上の濃霧の中に、ルチャブルは跳んでいた。そして急降下のボディプレスがドラピオンに炸裂。森の地面にクレーターが生まれた。なんて速さと威力だ…!?

 

 

「大丈夫か、ドラピオン!」

 

「たたみかけなさい、つばめがえし!とびひざげり!」

 

 

 ふらつくドラピオンに、容赦なく鋭い爪の一撃が顎に決まったかと思えば零距離からの膝が胴体に叩き込まれて吹き飛ばされるドラピオン。あの巨体が、いとも簡単に吹き飛び戦闘不能になった光景に、理解が追い付かない。俺の手持ちを総動員したポケモンだぞ?それが、こんな簡単に…

 

 

「っ…マルヤクデ!」

 

「次です、シンボラー」

 

 

 もうほとんど負けが確定していたが、俺は諦めない。マルヤクデを繰り出すと、ムツキはエスパー・ひこうタイプのシンボラーを出してきた。エスパーにはむしは効果抜群だが、生憎とマルヤクデはむしわざを覚えてない上に、ひこうタイプで等倍にされている。じり貧だった。

 

 

「ほのおのうず!」

 

「サイコキネシス」

 

 

 放ったほのおのうずも、焼け石に水とばかりに掻き消されたばかりか、マルヤクデの体が持ち上げられ、地面に叩きつけられて戦闘不能になる。最後のバチュルに伸ばした手が、震えていた。

 

 

「最後はでんき・むしのバチュルですか。でんきは怖いですね~下手したら負けてしまいます。行きなさい、ウォーグル(相棒)

 

 

 大袈裟に怯えて見せるムツキが不敵な笑みを浮かべて繰り出したのは、さっき肩を掴ませて飛んでいたウォーグル。バチュルと同じ、ブラック&ホワイトから登場したポケモンの一体だ。その、ワシボンからの進化条件はレベル54。明らかに、格上だった。

 

 

「バチュル、エレキネット…」

 

「ブレイククロー」

 

 

 弱点であるはずのエレキネットを真正面から受けながらも、突撃しその右足で飛び蹴りの様にバチュルを押し潰すウォーグル。速すぎた、見えなかった。

 

 

「なーんて、この程度の練度で私のウォーグルに勝てる訳ないんですけどね。思い知りました?私のひこうタイプのポケモン達の強さ。自由に空を駆る翼!制空権という絶対的アドバンテージ!そして圧倒的な速さ!ゲフッ、ゴホッ!?」

 

 

 なんか興奮して捲し立てていたムツキが突如吐血してウォーグルの翼に背中を擦られていたが、俺はよたよたと戦闘不能になったバチュルを抱き上げ、その場で立ち尽くす。

 

 

「ガハッ!?…さ、さすがに興奮しすぎました…貴方、弱すぎる虫けらの癖に人を殺す気ですか…でも目障りな虫を思いっきり叩きのめすことが出来ました。私は満足です。ところで地図とか持ってます?私、スマホロトム持ってなくてどっちを目指せばいいかもわからなくて…」

 

「…アラベスクタウンに行くなら北だ」

 

「なんと、ありがとうございます!ではでは、むしタイプで頑張って勝ち残ってくださいね?貴方みたいな雑魚には無理でしょうが。応援はしてあげます、弱い人間が足掻く様を見るのは面白いですので」

 

 

 俺に礼とも思えぬ礼を言ってムツキはウォーグルに肩を掴まらせ、空を飛んで去って行った。そのまま立ち尽くす。…俺は、チャンピオンでもジムリーダーですらないただのトレーナーに、負けたのか。

 

 

 目の前が真っ暗になった。




アニポケにおけるシンジタイプのライバル枠、ムツキの登場。ラウラの初敗北でした。そろそろこんなキャラを出して挫折させる時期かなと。

・ラウラ
ルミナスメイズの森の詐欺にいきり立っていたら、蟲ポケモンや尊敬しているジムリーダーたちも馬鹿にされた上で初の敗北を味わった主人公。レベルという概念を思い出したが時すでに遅し。ポケモントレーナーとしての自信と蟲ポケモンへの信頼を粉々に破壊された。煽られると冷静さを失うなど、過去に何かあった様子。ちなみに手持ちのレベルは40前後。

・ムツキ
ですます口調の、本人は自覚してないナチュラルクズ。傍若無人な性格ながらも病弱で歩く事すら困難でウォーグルに掴まって移動する。そのため辛抱強い代わりに、自分と違って歩いたり色んなことが出来るのにポケモンバトルが弱い輩を見下しており、特にひこうタイプとは正反対なむしタイプが大嫌い。
 空を自由に駆るひこうポケモンに憧れて親にも内緒でワシボンと共に病院から抜け出した後、ローズ委員長に見込まれてジムチャレンジに参加することにした。ビートと違ってローズに心酔もしていなければ感謝もしてない。ちなみにフライトスーツを着ているがコスプレである。
 野生ポケモンとの戦闘でレベルを上げに上げまくってから遅れてジムチャレンジに参戦した。レベルを上げて物理で殴れを地で行くタイプ。レベルのことを「練度」と呼び、それこそ全てだと断じているため、技の応用とかは苦手。名前の由来はムラサキツユクサと某最強のライダー、自作小説の主人公の名から。見た目と口調は似てるけど性格は真逆。


・ウォーグル♂
とくせい:するどいめ
わざ:ゴッドバード
   ブレイククロー
   フリーウォール
   ばかぢから
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。打たれ強い。ムツキの相棒。親から与えられたポケモンでワシボンの頃から一緒にいる。もっぱら移動手段として使われる。レベル65。

・オンバーン♂
とくせい:すりぬけ
わざ:エアスラッシュ
   ばくおんぱ
   ぼうふう
   りゅうのはどう
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。体が丈夫。オンバットの頃から育てられた初期メンバー。先鋒として数多のポケモンを屠ってきた。レベル62。

・フワライド♀
とくせい:かるわざ
わざ:ゴーストダイブ
   そらをとぶ
   シャドーボール
   ちからをすいとる
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。駆けっこが好き。フワンテの頃から育てられた初期メンバー。ゴーストダイブで敵を翻弄するのが得意。レベル60。

・ルチャブル♂
とくせい:じゅうなん
わざ:フライングプレス
   つばめがえし
   とびひざげり
   とびはねる
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。ものをよく散らかす。地上を空を舞うように駆け抜け、スピードで翻弄して強力な一撃で落とすムツキの手持ち随一の実力者。レベル64。

・シンボラー♀
とくせい:マジックガード
わざ:サイコキネシス
   エアカッター
   リフレクター
   ひかりのかべ
もちもの:なし
備考:さみしがりな性格。気が強い。ダブルバトル用に捕まえたポケモン。レベル60。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSクチート

どうも、前回でお気に入りが減ってちょっとナイーブになってる放仮ごです。でもムツキがちょっと人気?になってるようでなにより。あとUAが20000を軽く超えましたありがとうございます!

今回はVSポプラ前半戦。四体いるジムはこれからも前半後半に分かれます。楽しんでいただけると幸いです。


 目の前が真っ暗になりながら、出口近くだったこともあって急いでアラベスクタウンに足を踏み入れ、ポケモンセンターに向かった。ポケモン達を回復している間にロビーの椅子に座って頭を抱え、考える。正直、トーナメントで当たるであろうあんな奴に勝てるのかと、そう思った。

 

 

「…いや、レベルの問題だったらなんとかなる。俺も鍛えればいい話だ。相性は…バチュルが、進化すればなあ」

 

 

 バチュルさえ進化すれば、レベルも上げていれば5タテも可能だ。そろそろ進化してもいいはずだが…何か足りないのだろうか。

 

 

「ラウラさん?ラウラさん。お預かりのポケモンの皆、元気になりましたよ」

 

「あ、ありがとうございます。ジョーイさん」

 

 

 いつの間にか寝ていて、一夜が明けていた。起こしてくれたジョーイさんからバチュル達の入ったボールを受け取り、頭の上にバチュルを乗せて外に出る。アラベスクタウンは不思議な雰囲気の町だった。正直、綺麗だがあまり好きではない。その奥に聳えるアラベスクスタジアムを見やる。

 

 

「…行くしかないか」

 

 

 正直、ムツキとの実力差に自信を粉々に粉砕された。蟲ポケモンへの信頼が揺らいでしまっている。こんな状態で勝てるのかどうかは分からない。それでも俺は、むしタイプが最強である、最高であると証明するために勝ち進まなければならない。

 

 

「ごめんな…俺、もう負けないから…」

 

 

 そう決意を固めて拳を握る俺を心配そうに見ているバチュルに、俺は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな朝早くからご苦労様なことだよピンク不足のジムチャレンジャー。どうやら元気がないようだけど大丈夫かい?」

 

「ええ、まあ…」

 

 

 ジムに入って早々、骨張った長い鼻と白髪が特徴の、いかにも魔術師といった風貌の老齢の女性がいた。紫のファーと帽子がお洒落だ。たしか背番号910。ファンタスティックシアター・ポプラ。ジムリーダーが最初からいるのは珍しいと思っていると、どうやら後継者を探していて、今回のジムミッションは次のジムリーダーを決めるオーディションも兼ねていてクイズが行われるらしい。

 …何度でも言おう、俺はフェアリータイプがジムリーダー共々よくわからない。まるで舞台の上の様なセットの中で戦うことになった。しかもバトル中に問題を出すからそれに答えろときた。俺はフェアリータイプのジムリーダーになる気はないんだが!あと一応女子だけどピンクは嫌いだし!

 

 

「私はジムトレーナーのコト!問題!フェアリータイプの弱点はどくかはがねか?!」

 

「え?どっちもだろ?どく!」

 

「正解!」

 

 

 正解したらなんか知らんけど、俺のドラピオンの攻撃と特攻がぐーんと上がった。……どういう仕組み?フェアリータイプポケモンの不思議な力?俺、よく、わからない。

 

 

「私はジムトレーナーのチヨ!問題!さっきのトレーナーの名前はコト?ココ?」

 

「覚えてるわけないだろ、ココ!」

 

「不正解!」

 

 

 不正解したらなんか知らんけど、俺のドラピオンのすばやさががくっと下がった。…だからどういうことだってばよ?

 

 

「私はジムトレーナーのタチ!私が毎朝食べているものはカレー?オムレツ?」

 

「どうせ流行のカレーだろ!」

 

「不正解!最近、チーズオムレツに目がなくて…」

 

「知るか!」

 

 

 今度はドラピオンの防御と特防ががくっと下がった。いやまあ、一撃で倒してるから問題ないけど。…もしかしてジムリーダー戦もこんなのか?ただでさえテンションがだだ下がりなのだ、勘弁してほしい。

 

 

 

 

 

 

『本日のアラベスクスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!もはや知らぬ者の方が少ないむしつかい、ラウラ選手!対するはジムリーダー、ポプラ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 三人のジムトレーナーに勝って辿り着いたスタジアムの中心。そこにはポプラさんが杖を突いて待っていた。

 

 

「今更だけど名乗るかね。ジムリーダーのポプラさ。クイズに答えたアンタのリアクションを見せてもらったよ」

 

「色々卑怯だと思います」

 

「まあ、元気がよくていいことさ。ここまでジムリーダーを倒してきたとは思えない覇気の無さだったからちょっと心配だったけど大丈夫そうでなによりだよ。昨日来たチャレンジャーはクイズに答えるたびに吐血して心配だったからねえ。最後の試練はあたし…相棒のポケモンにどんなふるまいをさせるのか、ちょいと見せておくれよ」

 

 

▽ジムリーダーの ポプラが 勝負を しかけてきた!

 

 

 一度視線を向けてから放られたハイパーボールから繰り出されたのは、ガラル地方のマタドガス。どく・フェアリー…だったはずだ。

 

 

「頼むぞ、ドラピオン!」

 

 

 対して俺が繰り出したのはドラピオン。ムツキに負けて、その憤りをぶつけるようにここまでジムトレーナーを一撃で沈めてきた。こいつならいけるはずだ。

 

 

「距離を取りながらようせいのかぜだよ」

 

「近づいてクロスポイズンだ!」

 

 

 距離を取ろうとするマタドガスの懐に飛び込み、両腕の交差を叩き込むドラピオン。こうかばつぐんとまでは行かないが、今ので完全に体勢が崩れた。しかし浮遊する相手…昨日のフワライドを思い出し、追撃を躊躇してしまう。

 

 

「? ようせいのかぜだよ、マタドガス」

 

「しまっ…つじぎり!」

 

 

 間一髪。マタドガスの攻撃が通る前に、ドラピオンは十字に斬り裂いて戦闘不能に追い込んだ。一息つくが、こちらに向いたドラピオンは明らかに怒っていた。集中しろと、そう言いたいのか。それができるなら、どれだけ楽か…連想してしまえば、すぐにあの光景を思い出す。足が竦む。だが今は試合中だ、流されるな、俺。

 

 

「次だよ、クチート」

 

「なら、マルヤクデ!」

 

「さあ余計なことを考えているところ悪いけど問題だ。あんた…あたしのあだ名、知ってるかい?」

 

「…魔法使い?」

 

「ブブー。残念だねえ」

 

 

 次に出されたはがねタイプ…にフェアリーが追加されたクチートに気を取られていたところに問いかけられた問題に不正解。マルヤクデのすばやさががくっと下がってしまう。ついでにいかくされて攻撃力を下げられてしまった。こいつはきつい…!?

 

 

「まきつく!」

 

「避けてかみくだくだよ」

 

 

 すばやさが下がっているマルヤクデは案の定あっさり避けられて、胴体を噛み砕かれてしまう。効果はいまいちとはいえ、防御まで下げられた。やばい、どうする…!?

 

 

「問題!あたしの好きな色は?」

 

「え?…ピンク?」

 

「人には求めるがあたしはそうじゃないよ」

 

「ふざけんな!?」

 

 

 今度は防御と特防ががくっと下げられた。なんだ、なんなんだこのジムは!?

 

 

「終わらせようかねえ。ドレインキッスだよ」

 

「っ、そうだ!近づいてきたところをまきついてやれ!そのままおにびだ!」

 

 

 咄嗟に思いついた機転。近づいてきたところに、その大きな後ろ顎と小さな胴体に巻き付いて拘束し、さらにおにびでやけどにするマルヤクデ。そうだ、こいつはこの戦い方でいいんだ。俺が、ムツキと同じように戦おうとしてたから失敗したんだ。

 

 

「そこだ、ほのおのうず!」

 

 

 そうだ、あいつの言う通り蟲は弱いかもしれない。だけど、工夫次第で最強になれる!そうだろ、俺はそんな蟲ポケモンが好きだからここにいる!

 

 

「っ、中々やるね若いの」

 

「…よくやった、マルヤクデ」

 

 

 黒こげになり倒れるクチートと、ドレインキッスをぼうぎょが三段階も下がった状態で受けて相打ちとなったマルヤクデをそれぞれボールに戻しながら俺達は向かい合う。勝負はここからだ。

 

 

「行くんだよ、トゲキッス」

 

 

 そのポケモンが繰り出された瞬間、俺の頭は真っ白になった。そんな俺を心配してか頭上から飛び出したのは、バチュルだった。




皆のトラウマ、まひるみキッス

・ラウラ
完全にひこうタイプがトラウマになっている人。クイズは苦手。ごり押しというムツキと同じ戦法でジムトレーナーたちを蹴散らしていたが、ドラピオンの怒りの視線やマルヤクデの頑張りを見て一応戦い方は思い出したけどトゲキッスの登場でまた頭真っ白に。

・ムツキ
今回出番はないけどアラベスクジムではジム戦のクイズに答えるたび吐血していて心配されてる人。ちなみに全問正解。アラベスクタウンに入った昨日のうちに攻略してまた旅立った。

・ポプラ
フェアリータイプのジムリーダー。心配させてくるトレーナーが二日連続で押しかけてきて心労がひどいことになってる婆さん。ちなみにモコウには全問正解で上がりまくった能力でごり押しして勝利された。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSトゲキッス

どうも、ムツキの扱いをどうしたものか迷ってる放仮ごです。プロット書き直した結果、早めに痛い目を見ることになりました。こうご期待?

今回はVSポプラ後半戦。ラウラはトラウマを乗り越えることが出来るのか。楽しんでいただけると幸いです。


 生前の俺は、いわゆる引き籠もりだった。ムツキが言った様な心無い言葉に傷つき、高校生になって一学期を終えてすぐに不登校になった、そんな弱い男だった。DSしか持ってないゲームを毎日続け、BWのバトルサブウェイを完全攻略するぐらいにはやりこんだ。そんな孤独な俺の心の傷を癒してくれたのが、蟲たちだった。

 

 中古でゲームを買った帰りにふらりと訪れたペットショップで出会った蜘蛛や蠍といった虫達の動き、生態、容姿。元々デンチュラやペンドラーで惹かれていたとはいえ、現実のそれら全てに心底惚れた。それから俺は蟲に憑りつかれた。親の反対を押し切ってメジャーなものからマイナーなものまで狂ったように蟲を揃えた。そして、不注意とはいえその蟲が原因で死んだ。間抜けな最期だとは思うが、個人的には本望だった。

 

 何の因果か生まれ変わった世界で、現実にいるバチュル達と邂逅した。その時の感動は忘れられない。忘れられないんだ、お前と出会った時のことを。お前と心を通わせて、共に過ごすようになった日のことも…!

 

 

「バチュル!!いや、お前は…!」

 

 

 お前は何時だって、俺の希望なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポプラが繰り出したのは、トゲキッス。知らない筈がない、ダイヤモンド&パールから追加された、トゲチックがひかりのいしで進化するしゅくふくポケモン。元ノーマル・ひこうタイプ。現フェアリー・ひこうタイプ。「まひるみ」という害悪戦法を得意とするいわゆるガチポケモンの一体。たまらず、真っ白な頭が思考する、前世と今世で培った情報を集める。

 勝てるのか?ひこう使いのジムチャレンジャーに負けた俺が、ひこうタイプを使うジムリーダーに勝てるのか?そう嫌な考えが頭に過るが、フィールドに降り立ってやる気満々のバチュルを見て、頭を振る。いや、違う。そうじゃない、俺はこいつを乗り越えて、このトラウマを払拭する!

 

 

「頼むぞ、バチュル!こうそくいどうで壁を這い回れ!」

 

「トゲキッス、制空権を取るんだよ。フィールド全体にエアスラッシュ」

 

 

 バチュルがフィールドを高速で駆け抜け、それを追い詰めるように風の刃が放たれる。ポケモンの技に耐える設計のフィールドをズタズタに引き裂いて行くその威力は一発でも浴びれば致命傷だろう。観客に当たらないように観客席の壁にも炸裂し、粉塵が舞う。テッカニンを出す前にバチュルが自分から出てしまったから速度と攻撃力が足りない。仕留めるには、持たせているじしゃくで威力が上がっているエレキネットを真面に浴びせる必要がある。

 

 

「糸の先端にエレキネットを付けていとをはく!」

 

「避けるんだよ!」

 

 

 ならば趣向を変える。俺の唐突な無茶な注文にしっかり応えてくれるバチュル。糸が付いたエレキネットがスルスルと勢いよくトゲキッスに飛んでいくが、ふわりと上昇することで避けられる。だが、ただ糸を付けた訳じゃない。

 

 

「糸を伸ばしながら振り回せ!」

 

「なっ!?」

 

 

 遠心力を加えた糸が撓んでトゲキッスに急襲。エレキネットに引っ掛かり電撃が襲いかかる。やったか!?

 

 

「止まってしまったねえ。げんしのちからだよ」

 

「しまっ…」

 

 

 瞬間、止まっていたバチュルへと岩石が放たれまともに喰らってしまった。吹き飛ぶバチュルに思わず手を伸ばす。いわタイプ、ひこうタイプの技と違って効果抜群の技だ。さすがに終わってしまったかと覚悟する。だがしかし、バチュルは倒れなかった。

 

 

「バチュル…!」

 

 

 ボロボロのフラフラで名残惜しそうにこちらに振り向くバチュル。その目はまだ死んでいない。俺は、相棒を、信じることもできないのか?蟲ポケモンを信じる心も折られたのか?

 

 

「否、否!答えは否だ!そうだよなバチュル!」

 

「ほう、耐えたかい。ちょうどいい、問題をしたそうだからしてやるよ。さてと……あたしの年齢は?二択だよ。88歳か16歳か」

 

「はあ?そんなの…」

 

 

 いや待て。ピンクを強要する癖に自分は違う意地悪な婆さんのことだ。これは心理を突く問題。なら答えは…

 

 

「16歳だ!」

 

「あんた…良い答えだよ!」

 

 

 バチュルの攻撃と特攻がぐーんと上がる。そして、今のがきっかけとなったのか、バチュルの姿が光り始めた。お前は何時だって、俺の希望だ。

 

 

「バチュル!!いや、お前は…!」

 

「連続でエアスラッシュだよ!」

 

 

 光り輝いたままバチュルがこうそくいどうで駆け出し、風の刃の猛攻を避けていく。そしてその真下に差し掛かった時完全にその姿が変わり、バチバチと帯電して体勢を低く構えていた。その技を、覚えたのか。お前って奴は本当に…!

 

 

「デンチュラ!ほうでんだぁああああああああ!」

 

 

 雷が落ちたかの様な轟音と共に、膨大な電気が放出。真上にいたトゲキッスは避けることも叶わず、電撃が直撃して黒焦げとなり落下。俺達は、トラウマになっていたひこうタイプを完全に打倒した。

 

 

「やった、やったぞデンチュラ!」

 

 

 いつものノリで飛びかかってきたデンチュラの大きな体を受け止める。ああ、お前を頭に乗せることはできなそうだ。それがわかったのか、シュンとするデンチュラ。かわいい。っと、それどころじゃなかった。

 

 

「勝った雰囲気でいるところ悪いけどね。眠気覚ましのモーニングティー、ようやく効いてきたようだよ。マホイップ!」

 

「…デンチュラ、戻れ。行くぞドラピオン、お前も…ありがとう」

 

 

 ポプラが最後に繰り出したのはフェアリータイプのマホイップ。俺はデンチュラを戻してドラピオンを繰り出すと、ドラピオンは俺の方を向いて不機嫌に鼻を鳴らした。ようやくわかったか、とでも言っているのかな。お前にも、みんなにも、感謝してもし足りない…!

 

 

「腹を括ったかい?ちょいと楽しませてもらうよ!」

 

「行くぞ、ダイマックスだドラピオン!」

 

 

 そしてマホイップはキョダイマックスを、ドラピオンはダイマックスを発動。巨大なウェディングケーキの様な姿になったマホイップと、巨大化して威圧感が上がったドラピオンが睨み合う。

 

 

「あんたらに足りないピンク、あたしらがプレゼントしてやるよ。キョダイダンエン!」

 

「謹んでお断りさせていただく!ダイアイス!」

 

 

 クリームのデコレーションの様な攻撃と、巨大な氷塊が激突。クリームを凍らせて砕き、まるで雪の様に散ってマホイップを吹き飛ばす。その巨体がぐらりと揺れ、倒れる。ケーキみたいな見た目だったから咄嗟にダイアイスを選択したけど間違いじゃなかった。

 

 

「そこだ!ダイアシッド!」

 

 

 そして、直撃する巨大な毒流。マホイップはそのまま崩れ落ち、縮んで戦闘不能になった。

 

 

「ピンクは足りないけどアンタら、いいトレーナーとポケモンだよ!」

 

 

 マホイップをボールに戻しながらそう笑うポプラさん。俺は元のサイズに戻ったドラピオンに駆け寄り、Vの字を指で作って突きつけると、ドラピオンは呆れたようにそっぽを向いた。ああ、お前はそう言う奴だったな。駄目なご主人でごめんな。これから、頑張るから。敗北を糧にし恐怖を受け入れ、前に進む勇気を手に入れた。だからもう、大丈夫だ。

 

 

「はい、おつかれさま。なるほどね、悪くはない。特にデンチュラとのコンビネーションは目を見張るものがあった。だけどオーディションは不合格。そもそもアンタは虫のエキスパートだ、こんなところで収まる器でもないんだろうさ」

 

「ああ、俺は虫タイプ以外を極める気はない」

 

「結果は残念だったけどね、記念にフェアリーバッジをあげるよ」

 

 

 フェアリーバッジを受け取った俺は、ボールから出て頭に乗っかろうとするデンチュラを窘めながらアラベスクジムを後にするのだった。……重いけど、乗せられないことはない…か?




 ラウラ完全復活&ついにデンチュラに進化。心機一転です。

・ラウラ
生前は引き籠もりで蟲を心の拠り所にしていたポケモン廃人。そりゃ普通の人間が蟲を飼っているはずがないよね。蟲ポケモン達を信じることでトラウマを払拭した。奇策の天才ここにあり。ちなみに裏モチーフはポケスペのイエロー・デ・トキワグローブ。ひこう…というか鳥ポケモンのトラウマはブルー。

・デンチュラ♂
とくせい:ふくがん
わざ:エレキネット
   こうそくいどう→ほうでん
   きゅうけつ
   いとをはく
もちもの:じしゃく(バウタウンで拾ったもの)
備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。実は進化条件をとっくに満たしていたが、ラウラの頭がお気に入りなため進化しなかった。今回、ラウラを勝たせるために進化を決意し、同時にほうでんを覚えた。進化しても頭に乗る気満々。

・ドラピオン♀
姐さん。今回の一件でラウラに完全に懐いたけど素直じゃない。

・ポプラ
ラウラ曰く意地悪な婆さん。吹っ切れたラウラを見て満足げ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSポニータ

どうも、今回書いていて楽しかった放仮ごです。ビートくん書きやすくて好き。

という訳で今回は原作イベント介入回。VSビートです。いつもより長いですが楽しんでいただけると幸いです。


 ルミナスメイズの森を抜け、ラテラルタウンに戻ってきた。そらとぶタクシーでもよかったのだが、のんびり市場で掘り出し物のどうぐでもないか見て回るつもりだ。ちなみに頭にデンチュラを乗せてみたが普通に重すぎたため、しかたなくボールに入れている。頭の軽さが寂しいなあ。そんなことを考えていると、ジム前をすれ違った時、見覚えのある顔と遭遇した。

 

 

「もしかして…ユウリか?」

 

「あれ、ラウラさん?」

 

「ユウリ?こちらの人ってまさか…」

 

 

 そこにいたのはユウリだけでなかった。ハートの飾りを散らしたオレンジ色のサイドテールで頭の上にサングラスをかけている、丈が若干短いへそ出しの緑色のニットと茶色の上着、水色のジーンズとブーツを身に着けた、傍らにワンパチを連れた女性がいた。

 

 

「あ、どうも…ラウラです」

 

「やっぱり!むしポケモンだけでジムリーダーを撃破してるっていう噂のチャレンジャー!あ、私ソニアと言います。ポケモン博士の助手…をやってるわ。よろしくね」

 

「はあ、よろしく…ユウリはラテラルジムを突破したところか?」

 

「うん!ラウラさんはアラベスクジム帰り?あれ、バチュルはどうしたんですか?」

 

「前に言い忘れたけど呼び捨てでいいよ、同い年だろ?バチュルは進化して頭に乗せられなくなって…」

 

「ああ…私もココガラが進化してから大変だったからわかる。ラウラも大変だね…」

 

 

 しみじみとユウリと2人して語り合っていると、ソニアさんがなにやらいいことを思いついたように顔を輝かせた。

 

 

「そうだ、ラウラも来る?これからユウリとラテラルタウンの遺跡を見ようと思ってたんだ。貴方の視点なら面白い意見も聞けるかもだし、一緒にどうかな?」

 

「まあ、ナックルシティに戻るだけだったんでいいですけど…」

 

 

 その時だった。ドウーン!!という爆音が聞こえてきたのは。

 

 

「今のは!?」

 

「遺跡の方から聞こえたけど…行ってみよ!おいで、ワンパチ!」

 

「ええ…」

 

 

 ソニアさんとユウリが駆けて行くので、慌てて追いかける。…まさか、今更になって悪の組織でも暴れ出したのか?エール団がそうじゃないかと思ってたがこんな派手な悪事まで起こすようには見えなかったが…過去にプレイしたポケモンの、ロケット団、アクア団、マグマ団、ギンガ団、プラズマ団といったテロリスト紛いのことを平気で行っていた悪の組織を思い出して焦燥する。行かなくてもいいんだろうが、知り合ったばかりとはいえ知り合いだけを危険な場所に行かせるわけにもいかない。

 

 

 

 

 長い階段を登り終え、目にしたのはダイオウドウと言われる象の様なポケモンを連れた、いつしか見たウールー頭の少年。そこにあるよくわからない落書きの描かれた遺跡の壁を破壊しようとしている光景だった。

 

 

「もっと!もっと壊しなさい!ねがいぼしを掘り出すのです!ねがいぼしを集めれば委員長が認めてくれます!ダイオウドウ!あなたも委員長のポケモンならばねがいぼしを探せることを心から喜ぶべきなのです!」

 

「お前、たしか…えっと…」

 

「ビート!一体何してるの!?」

 

「そうだ、ビートだ!盛大な独り言言ってたがよくわからないぞ!」

 

「ん?やれやれ、たしか…むしつかいのラウラさんとユウリさん、でしたか。今からでもねがいぼしを集め委員長に気に入られたい…そういうことですか。なるほど、考えたものですね」

 

「え?」

 

「いや、俺そんなことに興味ないけど」

 

「わ、わたしも…」

 

 

 こちらに気付いたかと思ったらなんか見当違いなことを言ってきたビートに、二人して首を傾げる。ユウリはチャンピオン、俺はジムリーダーから推薦をもらえているけど、委員長から推薦状をもらったとか言っていたビートがなんでそこまで固執するのかよくわからない。

 

 

 

「委員長なんかより蟲ポケに好かれたくないか?え、違う?」

 

「ラウラさん、あなた…委員長が虫けら以下だと?愚の骨頂ですね!貴方達の言い訳も聞き飽きました。ですがそんなことは認めません!誰にも邪魔はさせないのです!」

 

「あ?ユウリとソニアさんは下がってろ。蟲を馬鹿にしやがったこいつは許せん」

 

「「う、うん…」」

 

 

▽ポケモントレーナーの ビートが 勝負を しかけてきた!

 

 

「フッ、リベンジマッチですか。いいでしょう。いきなさい、ダブラン!」

 

「リベンジマッチ?いいや、これは蹂躙だ。ドラピオン!」

 

 

 キラキラした目で俺を見るユウリと、困惑しているソニアさんを置いて始まったポケモンバトル。ビートが繰り出したのは、以前出したユニランが進化したであろうダブラン。対して俺はポプラ戦から変えていないドラピオン。勝負は決まったといってもいいだろう。

 

 

「くっ…サイコショック!」

 

「こうかがないと知って撃ってくるか、それもまたよしだ!つじぎり!」

 

 

 物理ダメージもある念動力で大地を砕いて物理で攻撃してきたが、ドラピオンは物ともせずに突っ込んで十字の斬撃を叩き込む。あっさり戦闘不能になったダブランを戻し、苦虫を噛み潰した様な顔になるビート。それもそうだろう、なにせあくタイプにエスパータイプの技は効果がないのだから。

 

 

「あなたたちの実力…今のでほぼほぼ理解しましたよ。以前と何もお変わり無いようで。愚直に突っ込んでくるだけとは」

 

「その何もお変わり無い奴の蟲ポケモンにお前は負けるんだよ。宣言する、俺はこの一匹だけでお前に勝つ」

 

「はっ!言ってなさい!そんな口ぶりでいれるのも今だけです!行きなさい、テブリム!」

 

 

 繰り出されたのはミブリムが進化したのだろうテブリム。さすがにエスパー技だけじゃなさそうだ。

 

 

「僕の相棒が放つわざはさぞかしご機嫌でしょうよ!マジカルシャインです!」

 

「こおりのきばで防御だ!」

 

 

 放たれる眩い光を、ドラピオンは冷気を纏った牙を大地に突きたてて氷壁を展開。完全に防ぐと氷壁を砕きながら突撃し、爪を振りかぶる。

 

 

「なっ…!?」

 

「つじぎりだ!」

 

 

 戦闘不能になるテブリムに、ギリリと唇を噛み締めるビート。むしタイプもそうだが、あくタイプとエスパータイプ程優劣の差がはっきりしているタイプ相性もそうないだろう。まあ、マジカルシャインもあくタイプには効果抜群だがどくタイプで半減できるので急所に当たらない限り効かないんだろうが念のために防がせてもらった。よし、フェアリータイプをなんとか理解できてきたぞ。

 

 

「ご、ゴチミル!がんせきふうじです!」

 

「ミサイルばりで打ち砕け!」

 

 

 次に繰り出したのはゴチムが進化したであろうゴチミル。こちらのすばやさを下げようとしたのか、岩石を降らせてきたが、ミサイルばりで打ち壊しながら攻撃。岩を砕いても衰えない威力で全弾命中し、戦闘不能。ユウリとソニアさんも顛末が見えたのかビートを哀れそうに見ていた。

 

 

「委員長のために勝ちます!僕の生きる道を塞がせるか!ポニータ!」

 

 

 そう叫んで繰り出したのは、新顔であろうガラル地方のポニータ。たしかエスパータイプだったはずだ。ポニータはドラピオンの周囲を走り回り、翻弄しようとしてきた。不思議な風が吹き荒れる。これは…

 

 

「ようせいのかぜです!あくタイプ対策をしてないはずがないでしょう!」

 

「…あー、悪い。ドラピオンはどくタイプでもあるんだ。地面にクロスポイズン。そのあとこおりのきばだ」

 

 

 俺の指示に、毒滴を纏った爪を振り下ろすドラピオン。すると毒飛沫が周りに飛び散り、ようせいのかぜを打ち消した。そして走り回るポニータに、再び大地に突きたてられた冷気を纏った牙から氷結していきポニータを拘束。動けなくなったところにのしのしと歩み寄ったドラピオンは両手を振りかぶる。

 

 

「つじぎりだ」

 

「…!これはなにかのミスです!やり直しを要求します!」

 

 

 戦闘不能になったポニータをボールに戻し、俺に掴みかかってくるビート。それを止めようとユウリが引きはがそうとし、それには目もくれずビートは続ける。小さい体が持ち上げられてぐわんぐわんする。ドラピオンも止めようとしたので手を制した。さすがにダイレクトアタックは駄目だ。

 

 

「あなたは!貴女という人は!僕から自信も、勝利も、心も、委員長からの信頼も、全てを奪っていく!なんなんですか貴女は!この悪魔め!」

 

「ビート、それぐらいにしようよ!ラウラが困ってるって!」

 

「…いやまあ、前回も今回も圧勝して悪いとは思っているけどさ…蟲を馬鹿にしたのは許してないぞ」

 

「なぜ…どうして僕が邪魔されるのです!?委員長に選ばれ、いずれはチャンピオンにも勝つ…いわばガラルを背負って立つエリートの僕なのに…!」

 

「ビート選手!」

 

 

 そこに聞こえてきたのは、聞き覚えの無い女性の声。やってきたのは、リーグスタッフを数人引き連れたローズ委員長と、たしかその秘書であるオリーヴさんだった。どうしてここに…?いや、ガラルの文化遺産だとかいうこの遺跡が壊されそうになったんだから当然か。冷静になったのか俺を下ろして振り向いたビートに、続けるオリーヴさん。

 

 

「ローズ委員長のダイオウドウをお借りしたいって何事かと思えば…まさか遺跡を壊すだなんて!」

 

「1000年先の未来に比べ遺跡が何だと言うんですか!?そのようにあまいかおりよりも甘ったるい考えで委員長をサポートできますか?なぜ秘書をしているんです?」

 

 

 ちょっと待て。なんで1000年後の話が出てくる?と尋ねたかったが、掴み上げられた影響で呼吸が整わずへたりこんで見上げることしか出来ない。そんな俺を介抱してくれるユウリとソニアさんには感謝してもし足りないな。すると黙っていたローズ委員長が静かな面持ちで口を開いた。

 

 

「ビートくん。声を絞り出すけれど本当に残念ですよ。たしかに幼い頃、孤独だった君を見出した。才能を伸ばすためトレーナースクールにも通わせたし、昔のわたくしを思い出しチャンスも与えましたよね。ですが遺跡を壊すような、ガラルを愛していない…君のような選手はジムチャレンジにふさわしくない!追って処分を決めるからすぐナックルシティに戻りなさい」

 

「嘘………ですよね?」

 

 

 その言葉に目を見開き、ぷるぷると身体を震わせるビート。…事情は分かった。恩人である委員長に報いようとしたら暴走しすぎた。なんというか…同情はできないな。やったことがやったことだ。あと蟲ポケを虫けら言うな。

 

 

「僕が失格ということは選んだ貴方のミスですよ?100ある選択肢の中でもっとも最悪のチョイスです!あ、あいつなんかより劣っているというんですか?この僕が!?あんな、病弱だから委員長に取り入れた女に!?」

 

「君にムツキくんを悪く言う資格はないよ、ビートくん。本当に残念だ」

 

「ビート選手。貴方が集めていたねがいぼしは預かっておきます」

 

 

 その言葉と共にリーグスタッフに連行されていくビート。…というかムツキも委員長の推薦だったんだな。

 

 

「ソニアくん。ユウリくん。そして初めましてだね、ラウラくん。とんだトラブルでしたね」

 

「俺のことを知って…?」

 

「もちろん。ガラルを盛り上げてくれるであろう期待のジムチャレンジャーだからね。こんな形でジムチャレンジャーが消えていくのは寂しい限りだが、大会はフェアでないとね。じゃあ二人とも、期待しているよ」

 

 

 そう言って去って行くローズ委員長とそれに続くオリーヴさん。…悪い人じゃなさそうなんだよな。

 

 

「ビート…なんであんなことを…」

 

「いつだったか、ビート選手の試合で実況が言っていたけど身寄りがなくて引き取ってくれたローズ委員長のために戦うって」

 

「なるほどね…」

 

「ビート…もう戦えないのかな…」

 

 

 なんか言ってるユウリはバトルジャンキーなのは間違いない。俺と戦いたいのかうずうずしているし。

 

 

「それよりも、遺跡は無事かしら?」

 

 

 そう、ソニアさんの台詞に振り向いた矢先だった。ガラガラと音を立てて遺跡が崩れ、中から異様なものが姿を現したのは。




色々初登場が多かった回。

・ラウラ
完全復活して調子がいい我らが主人公。さすがにデンチュラを頭に乗せることは叶わなかった。蟲ポケモンを虫けらとバカにしたビートに怒り心頭。ドラピオンで蹂躙した。粗暴ながらも目上の人にはさん付けするいい子。ローズ委員長にも目を向けられていた。ビートに悪魔呼ばわりされるが全く気にしてない。

・ユウリ
久々登場原作主人公。3回目のビート戦をラウラに取られる形に。相変わらずラウラの強さに興味津々。ラウラと呼び捨てに言い合える友人になれて嬉しい生粋のバトルジャンキー。

・ソニア
初登場、マグノリア博士の孫にして助手。元ジムチャレンジャーなので、むしポケモンでジムチャレンジを勝ち進んでいるラウラを尊敬している。

・ビート
1話以来の登場ライバルの一人。ラウラに自信を砕かれ結構気にしていて素直にリベンジマッチを挑んだが、せっかくテッカニン他むしタイプ対策はしていたのに最悪な相手であるドラピオンに全タテされてラウラを悪魔と罵倒し殴りかかった。同僚?のムツキが気に入らないが、あちらからは認識すらされていない。暴走したことにより委員長直々にジムチャレンジ失格を言い渡される。ピンク(重要)

・ローズ
名前だけ出ていたけど初登場、ガラルリーグの委員長にして大企業マクロコスモスの社長。ビートとムツキに推薦状を渡した人。一応ムツキの親にもマクロコスモスの関係者だったため連絡を取って仮の保護者になっている。ラウラのことはガラル地方を盛り上げてくれる人間だと期待している。最近、エリート社員の一人が従順すぎて怖いらしい。

・オリーヴ
初登場、ローズ委員長の秘書。ビートとムツキへの連絡係でもある。直接の部下であるエリート社員の方が仕事ができて秘書の座を奪われそうになっているとかなんとか。

布石は大事。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSダーテング

どうも、最近某実況者のポケモン剣盾DLCを見て書きたいなあとか思ってる放仮ごです。なんでDLC収録版を買わなかったのか後悔してます。ちょっと過去に戻りたい。あ、UAが25000を越えましたありがとうございます!

……ところで前回のビートくんの爆弾発言には誰も気づかなかったようで残念。

今回はVSユウリ二戦目。成長したユウリがラウラに牙を剥きます。楽しんでいただけると幸いです。


 遺跡が崩れ、現れた謎の石像。蟲じゃなかったので興味が出なかったため、二人に任せてその場を去って市場で掘り出しものを巡っていると、ソニアさんとの会話を終えたらしいユウリが走って駆けよってきた。

 

 

「どうしたんだユウリ。そんなに慌てて」

 

「はあ、はあ…あの!私と、勝負してくれないかな!?」

 

「そう言うと思ったよ」

 

 

 手にしていた割れたポットを店のおっちゃんに返しながら以前マリィと戦った六番道路名物のディグダ像前に向かう。戦えそうなフィールドにはそこしか心当たりがなかった。

 

 

「5VS5のフルバトル、でいいか?」

 

「うん!不利だろうがなんだろうが覆して見せる!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ユウリが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いけ、ドラピオン」

 

「いって、ジメレオン!」

 

 

 初手はビート戦と同じくドラピオン。ユウリはエースから先に出す性格なのかジメレオン。以前、バチュルが倒され辛酸を舐めさせられた相手だ。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「とんぼがえり!」

 

 

 クロスポイズンが直撃する直前、効果抜群とまでは行かないまでも結構効果があるむしタイプのとんぼがえりが炸裂、した上に空振り逃げられてしまう。バトンタッチと違い攻撃しながらボールに戻る技。なるほど、エースなのに様子見だったのか。

 

 

「お願い、ストリンダー!」

 

 

 そして繰り出されたのは、モコウも持っているストリンダー。だがモコウのストリンダーと異なり黄色のハイのすがたではなく水色に電撃が輝くローのすがただ。おとわざを凶悪な威力にするポケモンだ。要注意だな。

 

 

「オーバードライブ!」

 

「こおりのきばだ!」

 

「それはわかっていたよ!続けてばくおんぱ!」

 

 

 電撃を纏った音の攻撃をこおりのきばを大地に突きたて生成した氷壁で防ぐも、破壊された瞬間を狙って爆音が轟いて巨大な衝撃波がドラピオンに炸裂。その巨体が揺らぐ。

 

 

「もう一回、ばくおんぱ!」

 

「体勢を低くしてつじぎりだ!」

 

 

 再び放たれた衝撃波の届く範囲を覚えた俺は体勢を低くして駆け抜けることを指示。自由に動く体を活かして地面と並列になったドラピオンは疾走し斬撃を叩き込む。ストリンダーはとっこうに優れているが防御はそこまでないポケモンだ。一撃で落とす。

 

 

「なら…ダーテング!」

 

「はっ!格好の餌食だ!クロスポイズン!」

 

 

 次に繰り出されたくさ・あくタイプのダーテングに、タイプ相性がいいことに俺は油断した。油断してしまった。

 

 

「ねこだまし!」

 

「なっ!?」

 

 

 パンッ!と乾いた音がして、攻撃を繰り出そうとしていたドラピオンが怯む。その一瞬の隙は、命中率が低い技でも当てるには最適だった。

 

 

「ぼうふう!」

 

「…やるじゃないか」

 

 

 空に打ち上げられて地面に叩きつけられ、戦闘不能になったドラピオンをボールに戻して戦慄する。ミサイルばりで牽制していればこうはならなかった。油断することを見越してくさタイプのダーテングを出したのだとしたら…とんでもないやり手だ。このユウリという少女、以前より明らかに成長している。これが主人公か…

 

 

「油断するな、マルヤクデ!」

 

 

 相性に置いては絶対的なものがあるほのお・むしのマルヤクデを繰り出す。ねこだましを警戒し、ぼうふうにさえ当たらなければ取るに足らない相手のはずだ。すばやさでは勝っているはずだから、打ってくるとしたら先手を取れるふいうちか…?なら変化技で…

 

 

「おにび!」

 

「じんつうりき!」

 

「なに!?」

 

 

 ふいうちではなかった。俺が状態異常にしてくるだろうことを見越してのじんつうりき。効果はいまいちだが、怯んでしまう。怯ませて確実に攻撃を当てる、がメイン戦法なのだと気付くには遅かった。

 

 

「ぼうふう!」

 

「…さすがだな」

 

 

 打ち上げられて戦闘不能になったマルヤクデをボールに戻しつつ戦慄する。まるでこちらの手を先読みしているかの如き戦術眼。的確に最適な技を選ぶセンス。相性不利を物ともしない戦略。ああ、これだ。俺が求めているのは、ムツキやこの先のジムリーダーに勝つために必要なのは、それだ。

 

 

「これ以上はさせないぞ、テッカニン。つばめがえし」

 

「速い…!?」

 

 

 目にも留まらない速度でテッカニンが一撃で仕留める。ストリンダ―を倒した今、こいつに対抗できるポケモンはいないはず…

 

 

「トロッゴン!」

 

「は?」

 

 

 予想外の、いわ・ほのおタイプのトロッコの様なポケモンを繰り出してきた。だがよく考えたら、前回テッカニン…というかむしタイプに負けたのだから、それ対策をしてないはずがなかった。ユウリは完全に、俺に勝ちに来てる。

 

 

「ロックブラスト!」

 

「かげぶんしんからのつるぎのまいだ!」

 

 

 連続で放たれる岩石を、分身して回避。さらに連続で放たれる岩をつるぎのまいで防御しつつ攻撃力を上げていく。前世の赤い人が言っていた。当たらなければどうということはないと!

 

 

「バトンタッチ!オニシズクモ、アクアブレイクだ!」

 

「しまっ…ニトロチャージ!」

 

 

 交代して、すばやさとこうげきりょくが上昇しているオニシズクモが凄まじい速度で炎を纏って突撃してきたトロッゴンと正面衝突、水飛沫を上げて吹き飛ばす。こうなるともう、俺の蟲ポケモンは止まらない。

 

 

「アオガラス!ドリルくちばし!」

 

「ディグダ像を利用してとびかかれ!」

 

 

 続けて出された、以前のココガラが進化したであろうアオガラスの回転しながらの突撃を、オニシズクモはディグダ像の壁面に引っ付いて回避。回転が止まったところにその背中にとびかかりガッシリとしがみ付く。さすがにこれは読めなかっただろ?重要な文化遺産を使うなんてな。

 

 

「なっ!?ドリルくちばしで振り払って!」

 

「遅い!かみつく!」

 

 

 さらに背中から首元に噛み付き、アオガラスは地面に崩れ落ちてオニシズクモは華麗に着地。威嚇の様に前足を掲げる。可愛い。そしてこうなれば勝敗は必然で。

 

 

「くっ…お願い、ジメレオン!みずのはどう!」

 

「決めてやれ、デンチュラ。ほうでんだ!」

 

 

 最後の対決の勝敗はあっけなく、一撃で決まった。

 

 

「…たはー!やっぱり強い!さすがだね、ラウラ!」

 

「ユウリこそ…負けるかと思って冷や冷やしたぞ」

 

「つるぎのまいで防御は読めなかったなあ。あんなこともできるんだ」

 

「ダーテングであそこまでやられるとは思わなかった。いいポケモンだ」

 

 

 才能あふれるライバルの屈託のない笑顔に、ああ、こいつは負けすらすぐに飲み込めるんだなと感心する。引きずった俺とは大違いだ。こいつは間違いなく、同期の中で最も才能に溢れている。今は俺が勝ってるが、そのうち俺どころかモコウやあのムツキすら乗り越えて、ユウリは同期のトップに立つだろう。超えないといけない壁が増えたな。

 

 

「じゃあ俺は行くよ。また課題が出来た。いつもユウリのおかげだ、ありがとう」

 

「もしかして、私のせいでラウラがどんどん強くなってる!?」

 

「いや、まあ、そんなことは…ある、かな?」

 

「やっぱり!?…うーん、ホップも手持ちを入れ替えて頑張ってるみたいだし、私もなにか考えないとかなあ…」

 

「ホップ?」

 

「うん、私のお隣さんで一番のライバル!チャンピオンダンデの弟なんだ!…でも、ビートに負けて自信を無くしちゃって…」

 

「…その気持ちは、ちょっとわかるなあ」

 

 

 そのホップも、自分より優れた奴と戦って差を感じてしまった類だろう。チャンピオンの弟ならなおさらだ。さんざん馬鹿にされて、卑下されて、自信を粉々にされたんだろう。だけど、だけどだ。

 

 

「そのホップって奴も、俺と同じようにポケモンを信じる心が残ってるなら大丈夫だ。きっとな」

 

「うん!そうだね!ところでなにがあったの?」

 

「理不尽な台風みたいな奴と戦って惨敗してな。ユウリもひこうタイプ使いには気を付けろよ」

 

「わかった。心配してくれてありがとう。じゃあまた会おうね、ラウラ!」

 

「ああ、またな。クイズと婆さんには気を付けろよ、マジで」

 

「???」

 

 

 疑問符を浮かべ目が点になったユウリを背に置いて旅立つ。目的地はナックルシティ、そしてワイルドエリアの砂塵の窪地だ。そろそろ六匹目も検討しないといけない時期だ。今の手持ちで次のジムに勝てるビジョンが見えないからな。…そういやモコウはキバナに勝ったのだろうか、などと考えつつナックルシティへの帰路につくのだった。




ダーテングで相性が悪い蟲ポケモン二体を倒すユウリの化け物っぷりよ。

・ラウラ
ユウリの才能を再確認して戦慄する我らが主人公。遺跡にはまるで興味ない。同期が最速攻略者、レべリングの鬼、才能の塊と化け物揃いで戦々恐々している。そろそろ六匹目追加予定。

・ユウリ
相手が次に出してくるポケモンが分かる予知にも近い直感、敵の手を先読みしているか如き戦術眼、的確に最適な技を選ぶセンス、相性不利を物ともしない戦略、と才能溢れるラウラのライバルの一人。手持ちのポケモンが妙にごついのは、本人曰く可愛いポケモン捕まえていたら進化したらごつくなっただけ。幼馴染のホップを心配してる。

・ストリンダー(ローなすがた)♀
とくせい:パンクロック
わざ:オーバードライブ
   ばくおんぱ
   どくづき
   ほっぺすりすり
もちもの:シルクのスカーフ
備考:さみしがりな性格。イタズラが好き。前回の戦いの直後から赤ん坊の頃から育てたユウリの新たな主砲。モコウのストリンダーはハイなすがたなので差別化してる。

・ダーテング♂
とくせい:はやおき
わざ:ねこだまし
   リーフブレード
   じんつうりき
   ぼうふう
もちもの:こうかくレンズ
備考:おだやかな性格。食べるのが大好き。以前出番がなかったタネボーが進化した。現時点でのユウリの切札。

・トロッゴン♀
とくせい:じょうききかん
わざ:ニトロチャージ
   ロックブラスト
   うちおとす
   やきつくす
もちもの:たべのこし
備考:てれやな性格。ケンカをするのが好き。前回の戦いの直後ラウラ対策に捕まえたタンドンが進化したポケモン。ユウリのチームのタンクを務める。

・アオガラス♂
とくせい:きんちょうかん
わざ:ついばむ
   つめとぎ
   つけあがる
   ドリルくちばし
もちもの:するどいくちばし
備考:てれやな性格。負けん気が強い。ココガラが進化した。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオーロット

どうも、放仮ごです。評価でアドバイスをいただいた方々ありがとうございます!これからの展開の参考になりました。テッカバトン使いすぎはちょっと考えてたのでわかる…なので今回、テッカバトンが攻略される話にしてみました。

今回はついにホップが登場。VSホップ前半戦となります。楽しんでいただけると幸いです。


 砂塵の窪地。砂嵐が吹き荒れる文字通りの窪地で、いわ、じめん、はがね、ドラゴンタイプの屈強なポケモンが数多く生息しているワイルドエリアの危険地帯だ。そんな中を2日ほど彷徨いながら、俺はナックルシティに戻った時のことを思い返していた。

 

 

「遅かったなラウラよ!どうだ!私が、じゃない、我が一番乗りだ!」

 

「おお、やったのか」

 

 

 道路の中心に立っていたかと思えば、俺を見つけるなり全てを揃えるとメダルの形状になるジムバッジを掲げ、にんまり笑うモコウに笑みを返す。こいつは、やりとげたんだな。

 

 

「最速!最強!それがこの我、でんきつかいのモコウだ!」

 

「ああ、お前は本当にすごいよ。間違いなく、ジムチャレンジ最速だ。だけど、最強ってのはいただけないな。トーナメントで勝つのはこの俺だ」

 

「ほう、言うではないかラウラよ。ならばとっとと集めてこい!我は一足先にシュートシティに向かって調整をするのでな!」

 

 

 そんな会話の後にモコウとは別れた。今頃最後の町、シュートシティに向かっていることだろう。あいつは俺がジムバッジを揃えることを当たり前だと認識してくれていた。なんというか、負けられないな。そんなことを考えながら覗いた巣穴で見つけた、目的のポケモンを。その強固な身体に息をのむ。正直むしポケモンでダメージを与えられる気がしないが、やるしかない。

 

 

「行くぞオニシズクモ!ダイマックス!」

 

 

 さて、強敵だがドラピオンの時よりはマシだろう。気張って行くぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた…」

 

 

 わかってはいたがダイマックスしていたこともあり堅すぎて時間が相当かかった。半日ぐらい費やしていたかもしれん。ボロボロになりながらナックルシティに戻ると、そこにはユウリと、なぜかポプラさんとビートの姿が。なんかポプラさんがビートにセクハラまがいのピンク!の押し付けをしたかと思うとそのまま連れて行ってしまった。…なんだったんだ?

 

 

「ユウリ、今のは…なんだったんだ?」

 

「あ、ラウラ。えっと…オーディションかな?それよりどうしたのこんなところで?」

 

「ちょっとワイルドエリアでポケモンを探していたんだ。2日も経てば追い付かれるか…」

 

「六匹目かあ。私はこれ!って感じのポケモンがいないんだよね…」

 

「じゃあ俺はポケモンセンターに向かうから。またな」

 

「うん、またね」

 

 

 ユウリと別れてポケモンセンターで一休み。なんか揺れたけど地震かな?と自己完結してロトム図鑑で新しい仲間のステータスとわざを確認、次のジムの対策を練る。

 

 

「キョダイセキタンザンのキョダイフンセキ…いわタイプ以外のポケモンにスリップダメージを与える技か。きあいのタスキを持たせたテッカニンでも耐えられないな…うん?いわタイプ以外?」

 

 

 新しいポケモンと、その情報を見比べる。そしてリュックの中のわざレコードも見比べる。…あれ、これセキタンザンまでこいつを出さずに行けば勝機あるんじゃ…。

 

 

「どこかで試したいな」

 

 

 リュックを担ぎ、地図を見ながらポケモンセンターを出て、東の七番道路を目指す。七番道路を北上すれば次の町、キルクスタウンか。ふむ、温泉街か、砂塵の窪地で汚れたし蟲ポケモンたちをゆっくり湯に浸からせたいな。

 

 

「ん?」

 

 

 七番道路の橋に差し掛かると、ユウリがチャンピオンにそっくりな少年と戦っていた。もしかしてアレがホップか?

 

 

「ホップ、いくよ!インテレオン!ねらいうち!」

 

「エースバーン!怖気づくな!かえんボールだぞ!」

 

 

 ユウリの、ジメレオンが進化したであろうインテレオンと、ホップと思われる少年の兎の様なサッカー選手の様なエースバーンが繰り出した技がぶつかり、水蒸気が発生。何も見えなくなる。

 

 

「アクロバットだぞ!」

 

「ふいうち!」

 

 

 そして決着は意外なほどあっさりついた。ユウリの勝ちだ。負けたというのにホップは満足げな笑みを浮かべている。いいライバルなんだな、と思った。

 

 

「旅に出る前…テレビで見ている兄貴はただただ強く眩しかった。今ならどれだけ強いのか…俺になにが足りないのか分かる。お前が言った、ラウラって人の言葉のおかげだ!だけどユウリだけじゃない、俺も強くなっているぞ!お前よりスピードは遅くてもな。相手にしてくれてサンキューだ!決めた!キルクスタウンでジムバッジを勝ち取ったらまたお前にビシッと戦いを挑むぞ!」

 

「もちろん、こっちこそ!答えを見つけられたみたいでよかったよ、ホップ!」

 

「ああ、いい勝負だった。俺も負けられないな、ユウリ」

 

 

 各々自分のポケモン達を回復する二人に歩み寄ると、二人は目に見えて驚愕した。こっそり見るつもりはなかったが、橋のど真ん中で戦っているのが悪い。

 

 

「ラウラ。追い付いてきたんだ」

 

「方針は決まったからな。そっちがホップってやつか?」

 

「そういうそっちはラウラだな。礼を言うぞ!ユウリから聞かされたアンタの言葉で俺の願いが分かってきた…俺は兄貴と戦いたい…!いや、無敵のチャンピオンである兄貴に勝ちたいんだ!勝つんだ!そのためにも俺は強くなる!頼む!俺と戦ってほしいんだぞ!」

 

「望むところだ。ユウリ、悪いが立会人してくれるか?」

 

「いいよ。ホップもラウラと戦ったらなにか掴めると思うよ!」

 

「それは買いかぶりすぎだ」

 

 

 俺は蟲ポケモンが好きなだけのただのジムチャレンジャーだからな。むしろユウリと戦った方が何か掴める気がする。

 

 

「5VS5!先に全部倒された方の負け!それでいい?」

 

「ああ、いくぞ!」

 

「来い、チャンピオンの弟!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ホップが 勝負を しかけてきた!

 

 

 ホップが繰り出したのはくさ・ゴーストのオーロット。対して俺はテッカニン。タイプ相性も悪くないしいつものようにテッカバトンで一気に決める。

 

 

「つるぎのまい」

 

「あやしいひかり!」

 

「しまっ!?」

 

 

 つるぎのまいで上げた攻撃力が(あだ)になった。こんらんして自らを攻撃力の上がった刃で傷つけてしまうテッカニン。このホップという少年、俺の戦い方を熟知している…?!

 

 

「ラウラ選手のテッカニンのバトンタッチはあまりにも有名なんだぞシャドークロー!」

 

「そうかい。俺も焼きが回ったな。交代だ、ドラピオン」

 

 

 ゆっくりと歩いて迫ってきたオーロットの影を纏った爪を、交代したドラピオンが受け止める。体躯はほぼ互角。力勝負だ。

 

 

「尻尾からミサイルばりだ!」

 

「ウッドホーンで押しのけるんだぞ!」

 

 

 体力を吸い取る枝角と、尻尾の爪から放たれる光弾が同時に炸裂。効果抜群だが体力を吸い取られた。大してダメージは入ってないと見ていいだろう。

 

 

「あやしいひかりだぞ!」

 

「目を瞑って俺を信じろ!前に一メートル直進、クロスポイズンだ!」

 

 

 あやしいひかりも、ドラピオンが俺の指示通りに動いてオーロットを仕留めたことで攻略。ポケモンが判断できないならトレーナーが判断すればいい。

 

 

「いくんだぞ、カビゴン!」

 

「あくまでパワー勝負か、面白い!」

 

 

 続けて出されたのは初代ポケモンから強ポケモンと知られているノーマルタイプのカビゴン。ドラピオンをも超える巨体に一瞬怖気づくも、すぐに気を取り直して指示する。

 

 

「距離を取れ、クロスポイズン!」

 

「のしかかりだぞ!」

 

 

 間一髪。圧倒的重量から放たれるのしかかりをすんでのところで回避。その後頭部に毒を纏った交差した斬撃を浴びせ、毒状態にする。これで鈍いカビゴンから逃げ続ければいずれ毒で倒れる。そう思ってテッカニンに交代して、後悔した。

 

 

「ヘビーボンバーだぞ!」

 

「あの巨体で跳べるのか!?」

 

 

 ヘビーボンバー。相手より重ければ重いほど威力が上がる技。交代したばかりのテッカニンは天高く跳躍して視界から消えたカビゴンを追い切れず、押し潰されてしまった。よく橋が崩れないな。もちろん戦闘不能。その技を考慮しなかった俺のミスだ。ごめん、テッカニン。

 

 

「なら作戦変更だ。デンチュラ!」

 

「たくわえるだぞ!」

 

「エレキネットだ」

 

 

 たくわえてとくぼうとぼうぎょを上げてきたホップだが、こちらは目的が違う。カビゴンはもともと鈍いポケモンだ。跳躍時のすばやささえ奪ってしまえば脅威はない。足元をエレキネットで拘束され動けなくなったカビゴンに慌てるホップ。もう遅い!

 

 

「倒れるまでほうでんだ!」

 

「た、たくわえる!」

 

 

 時間はかかったがなんとかカビゴンを倒すことに成功。そして次に繰り出されたのはクイタラン。むしポケモン、アイアントの天敵だ。正念場だな。あいつを出すか。

 

 

「初陣だ、イワパレス!」

 

 

 俺の六匹目。イワパレス。此処に降臨だ。




ストーリー調整のためだけにワイルドエリアに閉じこもってるラウラには悪いと思ってる。だが私は謝らない。アイアントとかイオルブとか候補は色々いたんですがイワパレスになりました。ステータスは次回にて。

・ラウラ
六匹目捕獲のために砂嵐の中にいたため麦わら帽子を失くしそうになった人。ナックルシティが揺れたのにまるで気にせず、六匹目であるイワパレスを捕獲し、いわタイプのジムの攻略法も思いつく。有名になりすぎて対策を簡単に取られる羽目に。

・モコウ
無事キバナを攻略。今季のジムチャレンジ突破第一号となった。その日数、実に2週間。ふうせんなどのどうぐやらわざましん・わざレコードやらを総動員して攻略した。意外とまひが通ったりあまごいで天気を変えたりが刺さった模様。フライゴンは当分戦いたくないトラウマになった模様。

・ビート
背景でポプラさんに連行された人。ちなみに前々回、「心が奪われた」と爆弾発言かましてる。

・ユウリ
ラウラと再会した後ホップとバトル、圧勝した。前回との間にジメレオンがインテレオンに進化した。

・ホップ
今回初登場、ユウリのお隣さんにして一番のライバル。チャンピオンの弟。ビートと色々あって自信を無くしていたがラウラの言葉をユウリから受けて復活。そのためラウラは恩人に近い。話題のチャレンジャーであるラウラの攻略法はしっかり頭に入っているぞ!勤勉なんだな!

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VSエースバーン

どうも、虫パ統一の旅をしていたらクワガノンの強さに今更気付いた放仮ごです。かみなりのいしで進化できるようになったの知らんかった…ウルトラムーンでも手持ちにしていたポケモンなんですが、序盤からあの火力使えるのは最強だ。あとUAが30000を越えましたありがとうございます!

今回はVSホップ後半戦、イワパレスの初陣となります。楽しんでいただけると幸いです。


「ほのおのムチ!」

 

「受け止めろ!」

 

 

 クイタランの炎を受け止めるイワパレス。その程度ではビクともしない。こいつの防御力は俺のオニシズクモのアクアブレイクダイストリームでもビクともしなかったんだ、折り紙つきだ。

 

 

「なら、したでなめるでまひさせるんだぞ!」

 

「ステルスロックだ」

 

 

 鋭く尖った岩の破片を相手の周囲に飛ばし、透明にして見えなくさせるイワパレス。これでクイタランは近づけない。イワパレスは動けるポケモンじゃない、要塞の様に耐えて強力な一撃を叩き込むポケモンだ。あとはこのまま仕留める。

 

 

「がんせきほうだ!」

 

「なっ、きりさくだぞ!」

 

 

 両手の間に岩石を集めて巨大な砲弾にしたイワパレスの一撃が放たれる。反動はでかいがはかいこうせん並の威力があるそれをきりさこうとするクイタランだが焼け石に水、まともに喰らって崩れ落ちた。

 

 

「これがラウラの六匹目…つよい!」

 

「新メンバーか…情報にない相手、わくわくするぞ!」

 

「悪いが交代だ」

 

 

 がんせきほうは威力は高いが反動がでかすぎて動けなくなる。エースバーン相手にとっとかないとな。

 

 

「行け、ドラピオン!」

 

「がんばれ、パルスワン!」

 

 

 続けて出されたのは、モコウも持っているパルスワン。対して俺はドラピオン。スピードはステルスロックで封じているからゆっくりと攻める。以前はほえるにしてやられたが、同じ轍は踏まない。

 

 

「ダメージ覚悟で突撃だぞ!スパーク!」

 

「ミサイルばりだ!」

 

 

 ステルスロックで傷つくことを気にせずに電撃を纏って突撃してくるパルスワンに、両腕と尻尾、合わせて六つの光弾を放つ。しかしパルスワンは銃弾飛び交う戦場を駆け抜けるように掻い潜り、ドラピオンに激突。苦痛に唸るドラピオン。

 

 

「クロスポイズン!」

 

 

 激突して怯んだ隙を突いて毒を纏った爪を繰り出さんとするドラピオン。明確な隙だからこそ、その技が頭から抜けていた。

 

 

「ほえるだぞ!」

 

「なっ!?」

 

「そのまま出て来た奴にかみくだくだ!」

 

 

 また、してやられた。直撃する寸前に強制的に戻され、出てくるのはデンチュラ。狼狽えているデンチュラの右前脚を噛み砕かれる。夥しい傷を負って呻くデンチュラをさらに振り回し、橋に叩きつけるパルスワン。……やってくれたなあ!

 

 

「わざを急所に喰らうことも考えていたかよ?」

 

「デンチュラ、糸を使って外に回れ!いとをはく!」

 

 

 橋の縁に糸を飛ばしてパルスワンから逃げると外側に飛び出し、橋の下をぐるりと遠心力のままに回るデンチュラ。前世に見たスパイダー●ンの動きだ、足が怪我してようが関係ない!パルスワンが警戒する橋の縁の反対側から飛び出したデンチュラを、確認した俺は間髪入れず指示をした。

 

 

「そこだ、きゅうけつ!」

 

「パルスワン、後ろだぞ!」

 

 

 ホップが警告の声を上げるがもう遅い。遠心力で加速したデンチュラの一撃が無防備なパルスワンの背中に炸裂。体力を吸い取って削りきる。どうだ、蜘蛛には蜘蛛なりの戦い方があるんだ。

 

 

「本当にすごい戦い方をする奴だぞ…なんだ今の動き。でも、ピンチから勝利してこそ炎の逆転ファイターだぞ!」

 

「逆転できるものならしてみろ!このままいくぞ、デンチュラ!」

 

 

 イワパレスを温存できるならしておいた方がいい。繰り出されたのは先程ユウリのインテレオンと熱いバトルを繰り広げていたエースバーン。たしかわざはかえんボールとアクロバット…問題は残りの技か。

 

 

「エースバーン、かえんボールだぞ!」

 

「デンチュラ、さっきと同じようにいとをはく!」

 

 

 蹴りつけられた火球を、再びスパイダー●ン戦法で回避。再び死角からの攻撃を目論むが…簡単にはさせてもらえないだろうな。

 

 

「そこだ!こうそくいどう、ずつきだぞ!」

 

 

 すると、顔を出した瞬間にこうそくで跳んで接近し、ヘディングの如く頭部を叩き込むエースバーン。怯んで空中に打ち上げられてしまったデンチュラに、石ころを蹴って炎を纏わせたエースバーンがシュートの体勢となる。

 

 

「かえんボール!」

 

「ほうでんだ!」

 

 

 雷鳴が轟き、広範囲に電撃が放たれるが、かえんボールはむしろ電撃を纏って威力を上げてデンチュラの胴体に炸裂。炎が舞ってデンチュラが橋の上に落下する。

 

 

「よくがんばった、デンチュラ。…相棒対決はお前の勝ちだ、ホップ。だがこいつは倒せるかな?イワパレス!」

 

 

 再びイワパレスを繰り出す。五体までだから残りのオニシズクモかマルヤクデでもいいのだが、このエースバーンは特に鍛えられている。タイプ相性で押して行かないと多分勝てない。

 

 

「かえんボールだぞ!」

 

「からをやぶるだ!」

 

 

 迫る火球に対し、ポンッと音がした。イワパレスが、己の背負っている四角いブロック状の岩盤から抜け出した音だった。空中に飛び出したイワパレスの本体が、赤く光り輝いてまるで脱皮したかの様に光の殻が弾ける。防御力を捨てて、攻撃・特攻・すばやさを2段階上げる技だ。

 

 

「突っ込め!がんせきほう!」

 

「近づいてくれるなら…ずつきだぞ!」

 

 

 テッカニンにも迫るスピードで、六本足を駆使して突っ込むイワパレス。ホップはかえんボールを当てることを諦めたのか、近づいたところを狙うらしい。…だがそれは悪手だぞ。

 

 

「ホップ、イワパレスのとくせいを知ってるか?」

 

「いきなり、なんだぞ?」

 

「がんじょうだ」

 

「!」

 

 

 その瞬間、イワパレスの両手の間に形成された岩石の砲弾と、エースバーンのずつきが激突。エースバーンはホップへの信愛故かギリギリ耐えたが、それはこちらも同じ。防御力を捨てたから本来なら一撃なんだろうが、がんじょうというとくせいのおかげで持ち堪えたイワパレスは俺の意を汲んで構えていて。

 

 

「かえんボール…」

 

「いわなだれだ!」

 

 

 空中に出現した複数の岩の雪崩が炸裂。エースバーンはまともに浴びて戦闘不能となった。

 

 

「エースバーン戦闘不能!ラウラの勝ち!」

 

「おつかれ、エースバーン。いやあ、参ったぞ。俺もポケモンの知識がまだまだ足りないな。五匹目を引き出すことも出来なかった。話に聞いていた通りラウラはとても強いんだな!むしのポケモンだけでそこまで戦えるの、素直に尊敬するぞ!」

 

「そんなに褒めるな、照れる…俺がすごいんじゃない、蟲ポケモンのみんなが強いだけだ」

 

 

 俺はその強さを引き出しているだけだ。蟲ってのは元々、人間サイズになると圧倒的に強い奴等ばかりなんだ。ポケモンでもなおさらだ。ポテンシャルは元々高いんだよ。そう伝えたかったが、前世の知識ありきなので言えなかった。

 

 

「ラウラ?どうしたの?」

 

「いや、なんでもない。そろそろ俺はキルクスタウンに向かうとするよ。ライバルと約束なんだ、さっさと追い付いて来いってさ」

 

「それってもしかして最速攻略者のモコウ選手か?インタビューで答えてたぞ」

 

 

 そう言ってホップの差し出してきたスマホロトムを見てみる。シュートシティに着いたらしいモコウがシュートスタジアムの前で笑顔で「我がライバルよ!我はここで待ってるぞ!」と踏ん反り返っている姿が映っていた。…全国放映で何やってるんだアイツは。

 

 

「ラウラのライバルだったんだ、道理で凄いはずだよ」

 

「そうじゃない…と言いたいところだが、まあな」

 

 

 あんな凄い奴が、俺が追い付いてくるって信じてるんだ。やるしかないよなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてユウリとホップと別れ、8番道路を北上しキルクスタウンに入ると、異様な光景が在った。

 

 

「…どうしたんだ、ムツキ」

 

「あ、ああ…蟲の人ですか…」

 

 

 なんかベンチに、目に見えて落ち込んでいるムツキが座っていた。雪が積もっていることから長い時間そこにいたのがわかる。それを見て、ナックルシティでのキバナに負け続けたモコウを思い出しデジャヴを感じた。あの自信満々だった奴がなにがあったのやら。…とりあえず、ホテルに連れて行くか。




最初のプロットの予定変更してムツキがここに再登場。

・ラウラ
蟲のポテンシャルを誰よりも信じている女。デンチュラに重傷を負わされたことからキレて橋という立地からデンチュラにスパイダー●ン戦法することを思いついた。ほえるに弱い。好きな映画はサムライミ版スパイダー●ン三部作。特に2が好き。

・ユウリ
今回の立会人。イワパレスの強さに興味津々。

・ホップ
イワパレスの試運転に使われたユウリのライバル。五匹目を引き摺り出せなかったのが悔しい。エースバーンは信頼し合ってる第二の相棒。むしポケモンだけで戦い己に勝利したラウラのことを素直に尊敬している。何気にほのおタイプ二体というラウラの天敵編成だった。

・モコウ
全国放送でラウラに伝えたいことを伝えた馬鹿。これでも名家のお嬢様。両親は頭を抱えていたとか。

・ムツキ
ひこうつかい。キルクスタウンの公園で項垂れていた。辛うじて返事をしたがまるで屍の様だ。

・イワパレス♀
とくせい:がんじょう(体力八割以上の際に致命傷になる一撃を耐えられる)
わざ:からをやぶる
   がんせきほう
   ステルスロック
   いわなだれ
もちもの:かたいいわ
備考:まじめな性格。好奇心が強い。ステルスロックで近づかせず、からをやぶるからのがんせきほうで仕留める要塞型。ドラピオンを優に超える防御力を持つ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガメノデス

どうも、設定を考えるのがとにかく楽しい放仮ごです。今回新たにオリキャラが名前だけ登場しますが設定考えるの楽しかったです。

今回はムツキの過去話。そしてマクワ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 ずるずると足を引きずるムツキに手を貸しながらホテルに連れていき、夜になりつつあったこともありしょうがないので二人部屋で泊まり部屋に着くと、二つ並んだ備え付けのベッドの一つに横たわるムツキ。…同年代にしては長身かと思っていたが、シークレットブーツだったのか。身長は俺とそう変わらないな。それによく見たら痩せ細っていてお世辞にも健康的とは言えない。こんな体でよく旅しているもんだ。そう観察していると、手で目元を隠していたムツキが、ぽつりと呟いた。

 

 

「…癪ですが、礼を言います」

 

「お前、吐血もしていたし病弱なんだろ。あんなところにいたら悪化するぞ」

 

「いいんですよ、今の私なんか死んだも同然です」

 

「なにがあったんだ…」

 

 

 目元をゴシゴシこすると、こちらを睨みつけるムツキ。その目元は赤くなっていて、泣いていたことがわかった。

 

 

「…私の母親は昔、ジムリーダーだったんです…」

 

「そうなのか」

 

「信じてませんね。グランドウォール・キリエ…知りませんか?」

 

「ああ、子供が病弱だったから看病のためにキバナがジムリーダーになるのと入れ替わるように引退したとかいう、ダンデがジムチャレンジャーだった時代最強のジムリーダー…それが本当なら道理でお前、ポケモンを育てるのが上手いはずだよ」

 

「ええ、貴女みたいな一般人とは違いますので」

 

「口を開けば罵倒しか出来ないのかお前は」

 

 

 元気になった途端罵倒するムツキに、妙な安心感を感じながら返す。そんな出自があるならあのレベルまで鍛えられたのも納得だ。バトルの才能は受け継いでないようだが。

 

 

「私、家出娘だって言いましたっけ…?」

 

「聞いてないぞ」

 

「父親はマクロコスモス所属の病院の医者、母親は元ジムリーダーで現在はマクロコスモスのエリート社員…私が安静にしていれば大丈夫だとわかれば、二人は父親の所属する大きな病院に私を入院させて、私の治療費のために仕事に没頭するようになりました。私はそんな両親が、嫌いだった」

 

「それはまたどうして」

 

「私を、病院に閉じ込めたからです」

 

 

 そう語り上半身を持ち上げたムツキの目には怒りが宿っていた。聞けば、一生を病院で終えるかもしれなかったのだという。治る見込みもない病のために、一生を閉じ込められる…それはたしかに、息が詰まる。空に憧れるのもわかる。

 

 

「私は自分が死のうとも、自由が欲しかった。ひこうタイプのポケモンに夢を見た。自由になるために病院を抜け出したんです。そして、ローズ委員長に出会い…ジムチャレンジに参加することにした。母のいないジムチャレンジなど、取るに足らない物なのだと、証明するために」

 

「んん?」

 

 

 自由になりたい、空に憧れたから抜けだした→わかる。母親がいないジムチャレンジが取るに足らないものだと証明するために参加した→???…お前、実は母親大好きだな?

 

 

「私のためにジムリーダーをやめたことを後悔させてやろうと思ったんです。あと、地を這うじめんタイプよりも自由に空を飛べるひこうタイプの方が好きです。母親とは正反対なひこうタイプだけで全てのジムを軽くねじ伏せてチャンピオンになれば、証明できる…そう思っていたら、マクワに負けました。どんなに練度を上げても、タイプ相性の差はそう簡単に覆せないのです。あの人がいないジムチャレンジで負けた、その事実が、私には…」

 

「…お前がなんであんな死んだ風だったのかと、母親を好きなのはわかった」

 

 

 とりあえず話を聞いてて分かった事実を言ってみる。口では嫌いだと言っていても、言葉の端々に母親への怒りと尊敬を感じる。するとムツキはガーッ!と威嚇しながらキレた。

 

 

「はあ!?あんな母親大嫌いですし!?私を閉じ込めたんですよ聞いてました!?その耳腐ってるんですか!?」

 

「お前口を開くたび罵倒するのやめろって。自分のせいで母親がジムリーダーをやめたことが嫌なんだろ?それが許せないから、その母親がいないジムチャレンジで敗北して落ち込んでんだろ。なら好きなんじゃないか」

 

「うっ…うるせーですよ!どっちにしろ、私はもう終わりです!」

 

 

 そっぽを向いてそう言うムツキ。元気は取り戻したのに随分弱気になってるな。

 

 

「なんでだ」

 

「悔しいですが…あのマクワには勝てる気がしないです。一応鍛えてはみますしなんか六匹目のポケモンを見繕いますが、ひこうタイプだけというポリシーのままだと勝てる気がしません」

 

「一回負けたぐらいで何だ。手の内が分かったなら対策すればいい話だろう。ジムリーダーってのは何度も客の前で試合するから手の内も事前に調べればわかるぞ」

 

「調べるなんて弱者のすることです。私は地に足をつけないひこうタイプを操る強者なのです。それが勝てないなら諦めるしかないでしょう。貴女もむしだけなんてポリシー守ってるとあの人には勝てませんよ」

 

「いいや?俺は確かな勝算を持って勝ちに来たんだが」

 

 

 そう言うと驚きに目を見開くムツキ。しかしすぐに三白眼になって捲し立ててきた。

 

 

「ひこうがいわに勝てるわけない、同じ理由でむしがいわに勝てるはずないんですよ!私にも勝てなかった貴方が勝てるとでも?タイプ相性ご存知ですか虫頭!」

 

「むしろ褒め言葉だが虫を罵倒に使うなキレるぞ。なら俺が勝てばお前を越えたことになるな」

 

「そんなことあるわけがないでしょう!だったら、すぐにでもこの町を出てワイルドエリアに向かうつもりでしたが貴女が負けるところを見届けてやりますよ!」

 

「おういいぞ!…ところで急いでて同じ部屋を頼んだんだがそんな態度で大丈夫か?」

 

「え」

 

 

 言わなくても、ムツキの宿代を俺が担っていると気付いたらしいムツキはそのままベッドの上で縮こまった。…こいつ、恩義だけは感じるタイプなのな。自分より弱い奴は見下しまくるけど、上と認識した相手には大人しくなるのか。他人を見下して罵倒するのも病弱故、ね。許す気にはなれないが納得はした。

 

 

「とりあえず、体を温かくして寝るんだぞ」

 

「余計なお世話です!」

 

「お前も俺のライバルなんだ。リベンジマッチする前に死なれたら困るんだよ」

 

「むっ…私に手も足も出なかった貴女を私はライバルだなんて認めませんから」

 

「へいへい。弱くて悪かったな。明日認めさせてやるから覚悟しとけよ。お前なんかすぐに越してやるからな」

 

「……貴女みたいなチビに越されるつもりはないです」

 

「言ったなこのやろ」

 

「私は野郎じゃないです。黙っていれば美人なのにその下品な口調と来たら…」

 

「よし表に出ろ」

 

「さっき温かくしろと言ったのはどこのどいつですか。記憶力もないんですかあ?」

 

「てめっ…」

 

「あ、図星です?」

 

 

 それから延々と口喧嘩して、あまりの騒々しさにホテルマンに怒られるのだが、それはまた別の話。ちなみに口喧嘩は負けた。罵倒で奴に勝てる気がしない。キリエってジムリーダーは礼儀正しい真面目な人だったはずだが…………似てるのは口調だけだな、この女。

 

 

「なにか失礼なこと考えてません?」

 

「いいから寝ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日早朝。俺達は二人そろってキルクススタジアムに来ていた。ムツキはいつものひこうタイプユニフォームの上からフライトスーツを着てさらにポニーテールをほどいてフライトキャップを被りマフラーグルグル巻きだ。俺も今回ばかりはこの町のブティックで買ったボルドーの7ぶたけシャツの上からグリーンのもこもこボアコートを上に着ている。もちろん麦わら帽子は外してない。この町は寒すぎる。

 

 

「では私は観客席から貴方の醜態を見させてもらいましょう」

 

「せいぜい蟲ポケモンの雄姿を見届けろ」

 

「貴女の雄姿じゃないんですね…」

 

 

 なんだか呆れられながらムツキと別れる。そしていつものユニフォームに着替えて、落とし穴探知マシンとやらを使って視界の悪いフィールドの落とし穴に落ちないように進みジムトレーナーを蹴散らすというジムミッションをささっと抜けて、ゴールに辿り着く。オニシズクモのおかげでノーダメージで来れた。俺は落とし穴に落ちまくってボロボロだが。ムツキの奴今頃爆笑してるだろ間違いない。

 

 

『本日のキルクススタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ご存じ、ここまで負けなし!しかし今回ばかりは怪しいか?むしつかい、ラウラ選手!対するはジムリーダー、マクワ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 スタジアムの中央に立ちはだかるは、サングラスをかけたチャラチャラした印象の金髪が目立つぼっちゃり体型の男性。背番号188。ハードロック・クラッシャー、マクワ。若手のホープと呼ばれているいわタイプ使いのジムリーダー。間違いなくトップクラスのジムリーダーだ。作戦が決まってるとはいえ油断はできない。…あ、ムツキがいた。踏ん反り返っているがお前、昨日ここで負けたんじゃなかったっけ?あとマフラーグルグル巻きで可愛いだけだぞ。

 

 

「マクワといいます。君の噂はよく聞いてますよ、ラウラさん」

 

「それはどうも」

 

「むしタイプを使うのだとか。貴女には申し訳ないが、僕のポケモンたちの強さをアピールする戦いをしますのでさっさと終わらせましょう」

 

 

▽ジムリーダーの マクワが 勝負を しかけてきた!

 

 

「上等!今日ばかりは負けられないんだ、さっさと終わらせてやりますよ」

 

 

 こちらを完全に侮っていることがわかる。ああ、たしかにひこうタイプと同じくむしはいわに絶対的に弱いさ。だけどな、この世に絶対なんて道理はねえ。

 

 

「デンチュラ!」

 

「ガメノデス!」

 

 

 無駄にアクロバティックな動きで繰り出されたのは、いわ・みずタイプのガメノデス。俺が繰り出したのはでんき・むしのデンチュラ。タイプ相性というのは、そう簡単に覆るものではないってなあ!

 

 

「むっ!?がんせきふうじ…」

 

「最初にそいつを出すのは予習済みなんだよ!ほうでんだ!」

 

 

 すばやさはこちらが上。上から効果抜群を叩き込む。さあ、ムツキ。見ていろよ、前は見せられなかった蟲の底力をなあ!




ちょっとマクワには個人的にデンチュラをやられた恨みがあるので容赦なく行きます。

・ラウラ
因縁の敵であるムツキの宿代も払ったお人好し。雪の町なのでフォルムチェンジ。なお半ズボンのままなので足元がくっそ寒い。前世のポケモンの知識が若干アレなのと、地味にチビなのを気にしている。今回ばかりは情報収集してガチで攻略しにかかってる。

・ムツキ
一回負けただけで挫折した、過去の最強のジムリーダーの娘。病院に一生入院するレベルの大病を患っている。父は優秀な医者で母は最強のジムリーダーというハイブリッドな生まれ。口では恨んでいるが幼少期のかっこよかった母を忘れられずにいる。父については医者のくせに自分の病気を治せないと本気で嫌ってる。実は痩せ細っており、身長はラウラよりちょっと大きいくらいで長身だったのはシークレットブーツだった。恩義は素直に感じるタイプ。ちなみに裏モチーフはポケスペのエメラルド。

・キリエ
名前だけ登場。ムツキの母親でじめんタイプのエキスパート。グランドウォールと称された、ダンデ時代のジムチャレンジ最後の壁。本人も絶壁。ムツキが入院した後の現在はマクロコスモスにスカウトされてエリート社員をやっており、ムツキを保護したローズに忠誠を尽くして粉骨砕身働いている。過去最強クラスのジムリーダーで、ポケモンを強く育てるのが上手くフィールドを支配する戦法を取る。どれぐらいすごいかというとじしんでひこうタイプを倒すほど。切札はキョダイサダイジャ。名前の由来はオトギリソウと、過去作のオリキャラ(由来はギリシア語の主よ)から。ムツキの母親という関係性は知る人からしたら信じられなそうなもの。

・マクワ
いわタイプのジムリーダー。挑発してきたムツキ相手に大人げなくボコボコにした。基本的に礼儀正しい性格の好青年で若手のホープ。自信家で何故かエドモン立ち。ラウラのことは侮る気はなかったが無意識に油断してしまった。

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VSイシヘンジン

どうも、放仮ごです。お気に入りが800を越えましたありがとうございます!今回は久々に序盤のラウラらしい戦い方がお送りできるかと思います。強い(確信)

今回は全編ムツキ視点、最後だけラウラ視点でお送りします。VSマクワ後半戦。楽しんでいただけると幸いです。


 私が観戦する中で始まったラウラとマクワの対決。どうせ一方的に負けるだろうと思っていたら、予想外の方向に試合は傾いていた。

 

 

「まさか一撃で倒されるとは…僕もまだまだですね。ツボツボ!」

 

「ツボツボか。存分に語りたいけど今は…このままいくぞ、エレキネット!」

 

 

 私のルチャブルが、からをやぶるからのシェルブレードを急所にもらい敗れたガメノデス。それを一撃で倒して見せたデンチュラと、対峙するツボツボ。相性もあるんだろうけど、技の選択が上手い。今もツボツボの小さな体をエレキネットで拘束してなにもできないようにしている。

 

 

「なにもできないとお思いですか?ツボツボの細い体はエレキネットから抜け出せますよ!がんせきふうじ!」

 

「わかっていたさ、いとをはく!」

 

 

 繰り出された岩石の取り囲むような攻撃を、いとを壁に伸ばして引っ張ることで回避するデンチュラ。一撃でも当たれば終わることがわかっているのか、回避に重きを置いている。私のノーガード戦法とはまた違う。これが、母さんもしていた戦術による戦い。周りの観客席から歓声が上がる。話を聞くにラウラは人気のチャレンジャーなんだとか。私よりも弱いのに、凄い人気ですね…

 

 

「逃がすな、ストーンエッジ!」

 

「連続でいとをはく!撃ってくるのは五発だ!お前のふくがんならやれる、デンチュラ!お前の判断で逃げ切れ!」

 

 

 次々と地面を突き破る致命の岩の刃を、糸を伸ばして巧みに避けていくデンチュラに、思わず魅せられた。天蓋にも糸を伸ばして空を舞う姿は、どことなくひこうタイプのポケモンを思わせたのだ。

 

 

「なんという速さ…!」

 

「いわタイプは堅牢な代わりに鈍重なポケモンだ。避け続ければ、勝機はある!」

 

 

 そして五発目が放たれ、がんせきふうじに切り替えようとするマクワの隙をラウラは見逃さなかった。

 

 

「上空からほうでんだ!」

 

「がんせきふうじ!」

 

 

 雷鳴が轟き、まるでかみなりと見紛う電撃がツボツボに炸裂。黒焦げにして戦闘不能にする。あれはじしゃくでも持たせているのでしょうか。むしタイプ一体で、いわタイプ二体を倒してしまった。その事実が、私に圧し掛かる。…彼女は、本当に弱いのか?

 

 

「ここまでとはね…どうやら、こちらも本気で行かねばならないようだ。イシヘンジン!」

 

 

 出た。繰り出されたのは、防御の鬼。石造りの遺跡の様な、変な姿のイシヘンジン。ガメノデスとツボツボはなんとか倒せたのに、アイツに私は手も足も出ずに3タテされて、マクワの最後のポケモンを引き出せなかった…!ルチャブルがいてもあの堅さの前では駄目だろうと感じさせる、そんな防御力。それほどの強固で堅牢な壁だ。母さんの手持ちにも匹敵する防御力をあのポケモンは持っている。

 

 

「ステルスロックだ」

 

「…まあやるよな」

 

 

 地面と空中、フィールドの一帯にばら撒かれすぐ透明になる尖った岩石。交代するだけで傷付く上に空を飛ぶと言うアドバンテージを完全に崩されるアレを攻略しないと、私は勝てない。すると、自身の側に戻ったデンチュラに、ラウラが何事かぼそっと呟いたのを、病院暮らしで培った地獄耳が拾った。

 

 

「…デンチュラ、覚えたか?」

 

 

 その言葉に頷くデンチュラ。…まさか、いや、ありえない。だが覚えるものなんて一つしかなくて…

 

 

「あんたのことを調べて、その手を攻略しないで来たとでも?」

 

「なんだって?」

 

「デンチュラ、いとをはく。イシヘンジンを翻弄しろ」

 

 

 その瞬間、観客席からどよめきが起こった。見えないはずのステルスロックに糸を伸ばしたデンチュラが、まるでなにもない空間を空飛ぶように高速でスイングし始めたのだ。さらに空中で身を捻り、それに引っ張られた何かと地上の何かが衝突して粉々に砕け散る。まさか、ステルスロックの場所を覚えて、ステルスロック同士をぶつけて破壊した!?

 

 

「なあ!?」

 

「俺のポケモンもステルスロックを覚えていてね。此処に来るまでに死ぬほど練習したんだ。アンタを攻略するためだけにな!」

 

「ほうでんに備えろ!ワンダールーム!」

 

 

 ステルスロックが完全に破壊される間にマクワが使ったのは確か、空間内のとくぼうとぼうぎょを入れ替える技だ。防御力の塊であるイシヘンジンを特防の鬼にした。それほどデンチュラのほうでんは脅威だと考えたのだろう、私も同じだ。今の手持ちで、あのほうでんに勝てるかと言われたらNOだ。先手で倒さないと私の手持ちの練度でも一撃で倒される。

 

 

「ありがとよマクワさん。交代だ、オニシズクモ!」

 

「しまっ…のしかかり!」

 

「遅い!アクアブレイク!」

 

 

 とくぼうとぼうぎょが入れ替わる。それはつまり、ぼうぎょが弱くなることと同義。調べてみたがとくしゅ方面では紙もいいところなポケモンだ。そんなとくぼうとぼうぎょが入れ替わってるのだ。オニシズクモのアクアブレイクの前ではひとたまりもなく、イシヘンジンは一撃で落とされてしまった。後出しで放った全体重を乗せたのしかかりがオニシズクモにダメージを与えたが、それが何だというのか。

 

 

「まだよ!まだ崩れ去って砂とはなってない!戦う!いでよセキタンザン!」

 

 

 そして繰り出されたのは、ほのお・いわのセキタンザン。……六匹目、アーマーガアが適任かと思ってましたがほのおタイプがいるならやめるべき?いや、でも…そう考えていたら、ラウラはオニシズクモをそのままで行くつもりらしい。確かに水は四倍ダメージだが、そう一筋縄でいくだろうか?いや、いかないでほしい。ラウラが強すぎてさっきから何も罵倒が出てこないのだ。

 

 

「山の様な岩となれ!ええい!キョダイマックス!」

 

「ダイマックスだ、ワンダールームを利用するぞオニシズクモ!」

 

 

 ラウラは叩きつけるように、マクワはサングラスをかけ直しながら、両者共に巨大化したボールを放り投げ、己のポケモンを巨大化させる。初めて観客席で見ましたが、これほどの大迫力なのですね…セキタンザンはダルマストーブの様な姿となり、目がオレンジ色に輝く。うーん、やっぱりひこうタイプの方がかっこいいです…なんか好きになれない。

 

 

「でかい体そのものが強さ!全身で痛みを味わえ!キョダイフンセキ!」

 

「いくぞ!ダイストリーム!」

 

 

 二つの一撃が炸裂するかと思われた瞬間、オニシズクモの動きが止まった。あれは…麻痺?のしかかりの時に麻痺ってしまったのか?ワンダールームのおかげか、オニシズクモは行動できなかったがなんとか耐えきったものの、キョダイフンセキの追加ダメージを受けて倒れてしまい、大爆発に包まれ縮んでいく。これは…さすがにラウラのむしポケモンたちじゃ終わったか?いや、ドラピオンがいましたっけ。それでも耐えきれそうにないですが。

 

 

「…じゃあ、作戦通りにいくとするか」

 

「「え?」」

 

 

 聞こえてきたその声に、得意げにしていたマクワと、私の呟きが重なった。ダイマックスは切って、それをまひで無駄に使ってしまって、唯一とも言っていいいわタイプへの打点であるオニシズクモを倒されたというのに、まだ勝ち筋が?

 

 

「ジム戦でもムツキにも、まだ見せたことがない俺の新入りだ。頼むぞ!イワパレス!」

 

 

 繰り出されたのはいわ・むしタイプのイワパレス。打点があるとは思えないのですが…?すると目に見えて狼狽えるマクワ。そんなに強いポケモンなんです?

 

 

「そのイワパレスは…まさか!」

 

「いわタイプ使いなら知ってるよな。からをやぶるだ」

 

「キョダイフンセキ!」

 

 

 背負っていた岩石から抜け出して赤い光に包まれたイワパレスに襲いかかる巨大な岩盤。叩き潰されてしまったというのに、ラウラの顔から余裕が崩れない。なんで…?

 

 

「がんじょう、ですか」

 

「御名答。そしてイワパレスはいわタイプだ。キョダイフンセキの追加効果は受けない」

 

 

 岩盤が崩れ去ったそこにはボロボロのイワパレスがそこにいて。しかししっかり立ってキョダイセキタンザンを見上げていた。息をのむ観客席。私も、あまりの光景に開いた口が塞がらない。

 

 

「とどめだ。わざマシンで覚えさせた…あなをほる!」

 

「キョダイフンセキ。…ダイマックスは三回撃つか交代するまで切れない。僕の負けですね」

 

 

 再び放たれるが、そこにはもう既にイワパレスの姿はなく。通常サイズに戻ったセキタンザンの真下から強烈な一撃が叩き込まれ、重いはずのセキタンザンが宙を舞った。オニシズクモが倒されただけの完全試合とも言っていい内容に、拍手が爆音の如く轟いた。…ああ、これは。

 

 

 

 

 

―――――完敗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穴があったら入りたい…いや、ここは落ちてしまいたい、か。完敗です。おみごと…でした。決まりですので、いわバッジを渡します!…僕のことは気にしないでください。トレーニングに励むだけですので」

 

「…アンタは強かった。むしポケモンじゃ勝てないと思った。だから全力で対策したんだ」

 

「そうですか。それは…嬉しい言葉ですね」

 

 

 いわバッジを受け取り、外に出ると、そこには空を見上げて黄昏ているムツキがいた。俺に気付くと振り向き、ジトッと睨み付けてくる。…なんか悪いことしたか?

 

 

「どうだった、俺の戦い」

 

「……正直、感服しました。以前言ったことを訂正します…貴女は強い。私なんかよりよっぽど強いです。むしタイプを馬鹿にした事は少しだけ、ほんの少しだけ認識を改めましょう」

 

 

 そう言ったムツキの顔は晴れやかな笑顔だった。…こいつの純粋な笑顔を見るのは初めてだな。するとウォーグルを出して自分の肩に掴まらせ、空に浮かび上がりながらムツキは言った。

 

 

「しかし、それでもひこうタイプこそが一番であると主張させてもらいます。それこそが私の夢であり、誇りであり、意思ですので!チャンピオンになるのはこの私です!貴女とはセミファイナルトーナメントで決着を付けましょう!もう、一回負けたぐらいでへこたれませんよ!それはそれとして、言い過ぎたことは謝ります。では」

 

「…お前、どこまで素直じゃないんだよ」

 

 

 ワイルドエリアに飛び去って行くムツキを見送り、満足げな笑みを浮かべながら俺はキルクスタウンの温泉へと足を進めるのだった。




ついに認めて謝罪したムツキ。ここからようやく本当のライバル関係になれました。

・ムツキ
今回の主役。ルチャブルで4タテしてやると慢心してたらガメノデスにやられ、イシヘンジンに残りのポケモンをボコボコにされる。ラウラの戦法はとても真似できないと半ば諦めて自分なりのスタイルを探すことにした模様。むしタイプだからとバカにするのはやめた。六匹目はアーマーガアの予定。笑顔が可愛い。

・ラウラ
ステルスロックを攻略するために自分で覚えるんじゃなくポケモン達に全てを任せることにしたチャレンジャー。相性が何ぼのもんじゃい。使えるものはなんだって使う。スパイダー●ン戦法が意外と有用だということに気付いた。まひするなど天運には見放されている。

・マクワ
別に侮ってはいないけど完全攻略された人。むしタイプの天敵だからしょうがないね。このあとガッツリ落ち込んで閉じこもった。

・イワパレス♀
とくせい:がんじょう(体力八割以上の際に致命傷になる一撃を耐えられる)
わざ:からをやぶる
   がんせきほう
   ステルスロック
   いわなだれ→あなをほる
もちもの:かたいいわ
備考:まじめな性格。好奇心が強い。セキタンザンに四倍ダメージのあなをほるをわざマシンで覚えた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカラマネロ

どうも、放仮ごです。今回の話にサブタイトルを付けるとしたら油断大敵。この一言に尽きます。個人的ガラル地方最強のジムリーダーの登場です。

今回はVSネズ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 キルクスの温泉を(ポケモン達が)満喫して、9番道路の氷海をオニシズクモに乗せてもらって抜けてきたわけだが。なんか、締め出されていた。七番目のジムがある田舎町、スパイクタウン。その入り口がシャッターで締め切られていた。……いや、中の人が外に出るための出入り口がどっかにあるだろ。

 

 

「みんな、でてこい」

 

 

 六個のネットボールとダークボールを放る。出て来たデンチュラ、テッカニン、オニシズクモ、マルヤクデ、ドラピオン、イワパレスと共に周囲を探索する。デンチュラは壁に張り付き、テッカニンは空を飛び回り、後は俺も含めて地に足を付けて探す。するとデンチュラが一声鳴き声を上げ、俺達がその場所に辿り着くと、裏道が存在していた。

 

 

「よくやったデンチュラ」

 

 

皆をボールに戻し、一応テッカニンだけ側に侍らせて中に入ると、そこにはたくさんのエール団が屯していた。なるほど、こいつらの仕業か。

 

 

「なっ、ジムチャレンジャー!?なんで地元の俺達しか知らない道から来ーる…!?」

 

「しかもあいつ、この前ボコボコにされたラウラ選手だ!俺達みんなでボコボコにしてやーる!」

 

「おいおい、俺はただジム戦にきただけだぞ?」

 

 

 問答無用だとばかりに襲ってくる二十体近くのあくタイプのポケモンを、テッカニンがつるぎのまいで応戦する。デンチュラも繰り出してほうでんしてやろうかと考えていると、奥から一人の青年が出て来た。

 

 

「やめなさい、みんな」

 

 

 猫背で痩せ身の男性で、白黒の凄い髪型が目立つが、それ以上に目元の隈が目立つ。あくタイプのユニフォームを着ていることから、もしかして…

 

 

「アンタがジムリーダーか?こいつらはジムトレーナーってところか?」

 

「ギクゥ!?な、なぜ俺達の完璧な変装がばれーる!」

 

「いやまあ、あくタイプのポケモンばっか使ってるし?」

 

「部下が大変失礼をしました。お詫びにジムミッションなしで戦いましょうか」

 

「いいのか?」

 

「ええ。アンタには俺も興味があってね…」

 

 

 なんか暗いというか、不気味な人だな。彼について行くと、いつものスタジアムではなく、ライブ会場の様な開けた場所に出た。なるほど、町全体がジムみたいな感じか。その割には閑散としているが…ここで戦うのかな。背番号は061か。

 

 

「さて。4VS4でいいかな。俺…ほんと駄目な奴だからさ。少し前に来たでんきタイプ使いの娘にはあっさり負けちゃうし、それからばったり誰も来なくなってさ。だから誰も来ないんだ、そんな想いが強かったね」

 

「はあ…」

 

「ダイマックスが使えないジムスタジアムだからさ。ダイマックスを使わずダイマックスポケモンを倒したっていう君には期待してるんだよね。シンプルな戦いになるんだけどちょっとは楽しんでほしいよね」

 

「望むところです。俺も、ダイマックスなしのバトルの方が慣れている」

 

「そいつぁ嬉しいね。気を悪くしてもらいたくないんだけど、君と俺は同類だ。ふぅ…」

 

 

 そしてどこからともなく取り出したマイクスタンドを握るジムリーダー。その瞬間、雰囲気ががらりと変わった。先程までしなかった強者の気配がビシバシ伝わってくる。金網の外にいるエール団が湧き立ち騒ぎ出す。

 

 

「俺は!スパイクタウンジムリーダー!あくタイプポケモンの天才、人呼んで哀愁のネズ!!負けると分かっていても挑む愚かなお前のために、ウキウキな仲間と共に行くぜー!スパイクタウン!!」

 

 

▽ジムリーダーの ネズが 勝負を しかけてきた!

 

 

「頼むぞ、テッカニン!」

 

「皆も名前を呼んでくれ!いくぜ!ズルズキン!いかくだ!」

 

 

 俺はテッカニン。ネズはダークボールからズルズキンを繰り出す。しかしあのパフォーマンスは凄いな。ファンになりそうだ。いかくか…なら攻撃力を上げるしかない。

 

 

「つるぎのまい!」

 

「ねこだましだ!」

 

 

 ユウリのダーテングの時と同じ、乾いた音がしてテッカニンが怯む。しまっ…つるぎのまいを邪魔された。だがかそくですばやさはあがる。もう一度だ。

 

 

「つるぎのまい!」

 

「すなかけ!」

 

 

 すなかけで命中率を下げられる。ゲームならつばめがえしで問題はないが、ここは現実。複眼のテッカニンにはただの砂でもダメージになる。目つぶしをされた、これじゃあせっかくのすばやさを回避に使えない。もってくれよ…!?

 

 

「もう一度、つるぎのまいだ!」

 

「そんな悠長にしてると、痛い攻撃が待ってるぜ!しっぺがえしだ!」

 

 

 今度はすばやさを利用された。後出しの際に威力が上がるしっぺがえしがテッカニンを襲う。なんて人だ、あくタイプの天才を名乗るだけはある。だが準備は整った。

 

 

「真っ直ぐ直線だ!つばめがえし!」

 

 

 目を潰されたテッカニンに指示をして、攻撃を当てる。三段階上がってる攻撃力で繰り出されたつばめがえしは一撃でズルズキンを落とし、なんとか一体目を撃破する。あくタイプだからと油断していたらこれだ。この人は、決して油断できる相手じゃない。

 

 

「特性、あまのじゃく!カラマネロ、ひねくれちゃいましょ!」

 

「テッカニン、バトンタッチだ」

 

 

 続けて出されたカラマネロに、俺はバトンタッチでデンチュラと交代する。このまま畳み掛ける!

 

 

「きゅうけつ!」

 

「攻撃力は上げるだけ上げてくれて結構だぜ!イカサマ!」

 

「なっ!?」

 

 

 しまった、と思った瞬間にはデンチュラのきゅうけつが届く前に長い触手の一撃が炸裂。一撃でデンチュラは戦闘不能となってしまう。失念していた。このカラマネロに、テッカバトンやからをやぶるはむしろ悪手だ。いや、だがイワパレスならがんじょうで…

 

 

「イワパレス!からをやぶるだ!何とか避けてくれ!」

 

「特性はがんじょうか!?いい判断だが俺達のやることは変わらねえ!イカサマだ!」

 

 

 カラマネロの二本の触手がフィールドを縦横無尽に駆け巡り、イワパレスはすばやさをフルに生かしてそれを回避し続ける。イワパレスはむしわざを持っていない、だから一撃で決める!

 

 

「がんせきほうだ!」

 

「横がお留守だぜ!」

 

 

 がんせきほうが直撃した瞬間に、横から伸びてきた触手がイワパレスに炸裂。かなあみまで吹き飛ばす。がんじょうじゃなかったらやられていた。

 

 

「皆、におうけどいいよな!?ふいうち、どくどくだスカタンク!」

 

「しまっ…」

 

 

 と思った瞬間には、瞬時にイワパレスに近づいたスカタンクによるふいうちで沈められていた。手の内を明かしてくれたのはいいが、どくどくもあるだと?なら短期決戦で倒すしかない。

 

 

「テッカニン!つばめがえしだ!」

 

「いやなおとだぜ、轟かせろスカタンク!」

 

 

 ガラスを爪でひっかいたような、生理的に嫌な音が響き渡りテッカニンの狙いが逸れる。くそっ、ゲームなら当たっていたのに!現実という壁が、俺の前に立ち塞がる。強い、強すぎる。今までのジムリーダー戦がまるで遊びの様だ。

 

 

「つばめがえし!」

 

「そいつは迂闊だ!防御が落ちた所で終わらせるぜ!ふいうちだ!」

 

「避けろ!?」

 

 

 いやなおとが効いていたのか、焦って指示してしまった俺の悲痛の叫び虚しく、いやなおとで怯んでいたところをふいうちを受けて倒れるテッカニン。…どくどくされて逃げ回れたら詰みだ。毒が効かないポケモンを繰り出すしかない。

 

 

「ドラピオン!」

 

「いいな!お前もあくタイプを使うのか!なら遠慮なく行こうぜ!バークアウト!」

 

「ミサイルばりだ!」

 

 

 捲し立てるように怒鳴りつけられた衝撃波が、ミサイルばりと相殺。ならばと接近させる。急所を狙う!

 

 

「近づいてクロスポイズンだ!」

 

「ふいうち!」

 

 

 スカタンクのふいうちの方が先に入ったが、きゅうしょに両腕を叩きつけてスカタンクを撃破。ゆうばくでダメージを受けてしまったが、あと一体…!

 

 

「ネズにはアンコールはないのだ!歌も!技も!ポケモンも!!メンバー紹介!甲高い唸り声が自慢のタチフサグマ!」

 

 

 そして繰り出されたのは、タチフサグマ。ガラルのマッスグマが進化したポケモンだ。こいつがネズの切札か。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「ここから先は敗北への一方通行だ!ブロッキング!」

 

「なっ!?」

 

 

 毒を纏った両腕の振り下ろしは、頭部の前で交差した両腕に防がれ、弾かれてしまう。明らかな隙を、ジムリーダーが突かない訳がなく。俺は敗北を悟った。

 

 

「ラストコールだ!シャドークロー!」

 

 

 影を纏った爪の斬撃が胴体に炸裂。ドラピオンは崩れ落ちた。………俺は目の前が真っ暗になった。

 

 

「俺もメンバーも出し切りましたよ。いい勝負でした。またいつか、会いましょう」

 

「…ああ、アンタは凄いジムリーダーだ。完敗です」

 

 

 ドラピオンをボールに戻し、ポケモンセンターへと足を進める。ネズ…ネズさんに勝つビジョンが、まるで見えなかった。……いや、俺はムツキに負けた時に学んだじゃないか。俺のポケモンを信じるだけだって。次こそは、必ず。そう俺はリベンジを誓うのだった。




この敗北イベントは最初から決めてました。あくに負けて立ち上がってこそむし(ヒーロー)は映える。

・ラウラ
前回のマクワ見たく、相性有利だからと内心油断してしまった主人公。ねこだましにも弱いしイカサマは天敵。予期しなかったイワパレスの敗北からペースを完全に崩されてしまった。打倒ネズを誓う。

・ネズ
あくタイプのジムリーダーにしてあくタイプの天才、哀愁のネズ。その力を遺憾なく発揮、相性不利を覆した。ラウラをむしタイプの天才だと認識しあらかじめ戦法が分かっていたからこそ作戦を決めて迎え撃つことが出来た。ちなみにモコウ相手は圧倒的なスピードと火力で小手先がまるで通じなかったことが敗因。

・エール団
実はスパイクタウンのジムトレーナー。モコウが来た際は速すぎてシャッターを閉じることが出来てなかった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSホルード

どうも、放仮ごです。ゼノブレイドDEを買ってプレイしていたせいで執筆が滞って徹夜でこれを書き上げました申し訳ねえ。

今回は修行回。VSネズ戦リベンジ序盤。楽しんでいただけると幸いです。


 スパイクタウンの外、裏口近くの広場で俺は手持ちを全部出して考える。初手のねこだましからしてまずきつい。確実にダメージを与えられてしまう。ふいうちも厄介だ。ネズさんは確実にダメージを稼ぐ方法が上手い。使うタイミングを分かっているというべきか。

 

 

「メンバーのタイプとわざ構成はわかった。気を付ければ脅威じゃないってのに戦ってから気付くなんてな」

 

 

 あの、ネタバレともいうべきシャウトで惑わされていたのもある。どくどく、と言われてドラピオンを出さざるを得なかった。冷静に考えればあそこで虫タイプのアドバンテージを失うのは痛い。

 

 

「メンバーは使う技さえ気を付ければテッカニン、デンチュラ、イワパレスはそのままでよさそうだ。ドラピオンだけ交代で、オニシズクモ。これでいこう」

 

「あら、随分安直ですね」

 

「!?」

 

 

 背後から囁かれて思わず振り返る。そこには、パンツスタイルのスーツを着こなした、紫色のメッシュが入った黒髪をおさげにして兎の髪留めを付けた女性が和やかに微笑んでいた。そしてその顔は見覚えがあった。

 

 

「…グランドウォール・キリエ…?」

 

「私の昔の通り名を知ってるなんて博識なんですね、ラウラ選手」

 

 

 ムツキの母親にして、じめんタイプ使いのかつて最強だったジムリーダー。一児の母親とは思えない若さと美貌、一見男と見紛う如きスラリとした体躯が綺麗だ。胸だけ残念だが…そんな彼女がなぜここに…?

 

 

「どうしてこんな田舎に?という顔ですね。ちょっとお仕事でネズくんにお話がありまして。そしたら話題のチャレンジャーがいるんですもの。どうしたんです?もしかしてネズくんに敗北しました?」

 

「…」

 

 

 ニコニコと笑顔で問いかけてくるキリエさんに、思わずしかめっ面になる。この親子は煽り癖でもあるのだろうか。キリエさんのは確実に興味本位なのだろうが。

 

 

「あ、すみません。そんなつもりは。私も彼がチャレンジャー時代に戦ったことがありまして。そのときは搦め手にしてやられちゃいました。ダンデ君みたいにまっすぐじゃないトレーナーは実にやりにくくて…でもね、搦め手を使うってことはつまり素の火力は低いことを表してます」

 

「!」

 

 

 言われてみればそうだ。ネズさんのポケモンの使う技はこちらを利用した技が多かった。いや、むしろ狙いのわざを引き出されて利用されてしまったというべきか。

 

 

「彼の話術はそれを補うためのものです。警戒させて判断を誤らせる、相手のペースを崩す。貴女もそんな風に負けたんじゃないかしら?」

 

「…何か対策でも?」

 

「簡単ですよ。相手の出方を窺って動くよりも、こちらがどっしり構えてしまえばいいのです。何があっても心を崩さず、ポケモンを信じ抜く。それだけで、ポケモンは期待に応えて本領以上の力を発揮します。こんな風にね。ホルード!」

 

 

 そう言ってボールを取り出し、落としたかと思えばスイッチ部を蹴りつけるという独特な方法でノーマル・じめんタイプのホルードを繰り出すキリエさん。

 

 

「なにを?」

 

「実践して見せましょうと思いまして。どうぞ、効果抜群の技をもらいましょう」

 

「…オニシズクモ。アクアブレイクだ」

 

 

 なめられていると悟った俺は、言われるままにオニシズクモの最大火力技を叩き込む。さすがにこれは平静を保っていられるはずがない。しかしキリエさんは何も指示をせず、ホルードは腕の様な形の両耳でアクアブレイクを受け止めてしまい、ギョッとするオニシズクモを投げ飛ばした。

 

 

「でんこうせっか」

 

 

 ゴシャッという音と共に、空中を舞っていたオニシズクモの胴体に耳腕の重い拳が叩き込まれ地面に叩きつけられ戦闘不能になってしまう。い、今のがでんこうせっかだと!?

 

 

「この様に、受けてから返すのです。効果抜群だろうが不意を突かれようが関係なく、ポケモンを信じれば応えてくれます。それがポケモントレーナーです」

 

「…地力が違いすぎる…」

 

「はい。地力…いわゆる練度ですね。練度を鍛えるのももちろんいいです。ここら辺のポケモンは中々に練度が高いので修練になると思いますよ。ただし、ポケモンの練度だけでなくトレーナーの裁量も大事です。貴女ならそれを理解していると思いますが?」

 

「それはまあ…なんでこんなに親身に?」

 

「うちの娘を介抱してくれたお礼です。素直じゃない子だけど、いいライバルでいてあげてくださいね?」

 

 

 …もしやムツキ、監視されてる?いや、考えない様にしよう…。

 

 

「ところでシャッターで締め出されているのですが。中に入る方法を知りませんか?」

 

「あ、それならそこに裏道が…」

 

「ありがとう、ジムチャレンジ応援してるわ。ネズくんもだけど、キバナくんも強いから油断しちゃ駄目よ?」

 

 

 そう言ってホルードを連れてスパイクタウンに入って行くキリエさん。すぐにエール団が殺到していたが、逆に一撃でホルードが沈めて笑顔のまま進んで行った。…なんて実力だ、でんこうせっかでさえ重すぎる。末恐ろしい人だ。そう思いながら俺は9番道路の草むらに向かう。

 

 

「…練度が足りない、ね。それは薄々気づいていたさ」

 

 

 ムツキとの戦いでレベルというものを思い出して数日…あれから一切鍛えずここまできた。だが強力な野生ポケモン、野良トレーナー。経験値を溜めるために必要なものは揃ってる。やってみるか、修行。タブンネでもいればいいんだがな。

 

 

 

 

 

 それから。ヒドイデの毒にやられたりオトスパスに拘束されそうになったり、途中で何故か自転車で水上を渡ってきたユウリと一戦交えて勝ったりしながら三日。体感で数値にして5は上がったと思う。そしてなにがあったのかシャッターが開け放たれたスパイクタウンに戻ってきた。リベンジの時は来た。

 

 

「来ましたね。言葉は不要、ですかね?」

 

「ああ、ネズさん。今度は勝たせてもらいますよ!」

 

 

▽ジムリーダーの ネズが 勝負を しかけてきた!

 

 

「負けると分かっていても挑む愚かなお前のために、何度でも敗北を見せてやろう!トップはお前だ!皆も名前を呼んでくれ!いくぜ!ズルズキン!いかくだ!」

 

「まずはお前だ、デンチュラ!」

 

 

 いかくもちのズルズキンが初手に繰り出すのはねこだまし。なので、素で交代する。

 

 

「ねこだまし!」

 

「交代だ、イワパレス!」

 

 

 いわタイプでノーマル技のねこだましを受ける。これが多分、最適解。それだけじゃない、奴は接近戦しか出来ないから、この手が有効だ。

 

 

「ステルスロックだ!」

 

 

 地面と空中、フィールドの一帯にすぐ透明になる尖った岩石をばら撒く。これでそう簡単に近づけない筈だ。すると警戒するズルズキンを見てから、ネズは仰け反りマイクを手にシャウトする。

 

 

「砂糖をかけたケーキの様に甘いぜ!すなかけだ!」

 

「なにを…!?」

 

 

 砂がばら撒かれ、透明な岩石の居場所が砂煙に浮かび上がる。やられた。だが、対処には時間がかかる筈だ。

 

 

「かわらわりで砕きながら進むんだぜ!」

 

「交代だデンチュラ。いくぞ!」

 

 

 再び繰り出すとデンチュラは頷き、跳んだ。正確には糸を使ってステルスロックを足場に、広場の上空に舞い上がった。

 

 

「キリエさんと出会って思いついたんだ。何も馬鹿正直に相手の得意なフィールドで戦うことはない、俺たちの得意なフィールドにすればいいんだってな!エレキネット!」

 

「ちいっ!しっぺがえしで迎撃だ!」

 

 

 空中のステルスロックを駆りながら、エレキネットで四方八方から襲いかかるデンチュラ。ズルズキンは見えるエレキネットの対処に追われ、対処しきれないステルスロックで地味にダメージを受けていく。

 

 

「いとをはくで拘束だ!」

 

 

 グルグルグルグルと、周囲を跳び回って中心にいるズルズキンの腕を縛り拘束して行く。完全に拘束しきったところを、引っ張り上げた。

 

 

「引っ張り上げろ、きゅうけつだ!」

 

 

 そして力の限り空中に引っ張り上げ、身動きが取れないところに喰らい付き体力を絞りきる。

 

 

「まずは一匹…!」

 

「お前の戦術!(ココ)に響いたぜ!だったらこっちはとことんひねくれちゃいましょ!カラマネロ!」

 

「このままいくぞ、デンチュラ!」

 

 

 俺の叫びにデンチュラが呼応して、いかくのつもりなのか両前足を振り上げる。勝負はここからだ!




というわけで元最強のジムリーダー・キリエの登場でした。実力的にはキバナ以上ダンデ未満といったところ。

・ラウラ
元最強のジムリーダーからもらったアドバイスを物にしたジムチャレンジャー。今更レベル上げを実施した。ムツキへのキリエの過保護っぷりにちょっと同情。キリエの強さに戦慄する。マクワ戦の経験からステルスロックを足場として利用するスタイルを取ることにした。

・キリエ
元ガラル最強のジムリーダー。どっしり構えて受け止めた上で手痛い一撃を返すカウンター戦法を取る。ムツキの様にですます口調で話すが素は優しいお姉さん口調。その心は大地の様に不動、ただし娘が関わると愛情が爆発する。マクロコスモスのエリート社員であることを利用してムツキを(監視して)見守っている。今回はネズに今からでもいいからスパイクタウンをパワースポットに移動しないかとローズに代わりお願いしに来たが断られた。ダンデ世代のトレーナーを子供扱いしている大物。ダンデのリザードンを倒したことがある。ボールを蹴りつけてポケモンを繰り出す。

・ユウリ
名前だけ登場。ラウラに惨敗した後に色々あってネズに挑み、無事勝利してラウラを越した。ちなみにダイマックスポケモンが暴れる事件も起きているがラウラは興味がない。

・ネズ
キリエの来訪でローズにイライラしていたため、三日経ってリベンジに来たラウラに内心楽しみにしていた。ユウリとマリィとは既にジム戦を終えている。前回とはまるで違うラウラの戦い方に翻弄される。

・エール団
キリエのことをまさか元最強のジムリーダーとは知らずに襲いかかりボコボコにされる。全員でんこうせっかで倒されてトラウマになった模様。

・ホルード♀
とくせい:ちからもち
わざ:でんこうせっか
   あなをほる
   じならし
   じしん
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。考え事が多い。ホルビーの頃から育てられたキリエの相棒ポケモン。でんこうせっかがでんこうせっかしてない。じしんをひこうタイプに当てることができ、ダンデのリザードンを倒した張本兎。

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VSスカタンク

どうも、放仮ごです。実はプロットだけ書いててあとは書いてすぐ投稿というスタイルを取ってます。書き溜め苦手です。なので最近連続投稿が途切れないかちょっと心配してます。一ヶ月はこのペースを保ちたい。

今回はVSネズ戦リベンジ最終戦。楽しんでいただけると幸いです。


 ステルスロックに乗って空中に浮くようにして警戒するデンチュラと、それを見上げるカラマネロ。ステルスロックでカラマネロは身動きが取れず、トレーナー同士、相手の出方を窺う。痺れを切らしたのはネズさんだった。

 

 

「カラマネロ!サイコカッター!」

 

「避けてぶつけろ、デンチュラ!」

 

 

 触手が三日月を描くように振るわれ放たれた念動力の刃を上空に跳び上がることで回避、糸を伸ばしてステルスロックに引っ掛けて空中で一回転することで遠心力をつけてカラマネロに叩きつけるデンチュラ。

 

 

「そんなものぶっ壊せ!つじぎりだ!」

 

「少し右を向いていとをはく!」

 

 

 十字に斬り裂かれ、透明な岩石が姿を現し粉塵が舞う。俺はデンチュラの位置を覚え、カラマネロの右触手の場所を指示。糸を巻き付かせ、カラマネロは嫌がって振り払おうとする。

 

 

「待て、カラマネロ!」

 

「もう遅い!きゅうけつだ!」

 

 

 引っ張られ、糸を縮ませた勢いで粉塵から飛び出してきたデンチュラがカラマネロに喰らい付く。

 

 

「冷静にしっぺがえしだ!」

 

「ほうでんで寄せ付けるな!」

 

 

 体力を吸い取ってる間にも触手によるしっぺが襲いかかろうとするが、ほうでんさせて退ける。なにかされたら厄介なのなら、相手に好き勝手させなければいい。カラマネロが倒れ、続けて繰り出されたスカタンクに尖った岩が食い込む。

 

 

「…随分とスタイルが変わったな!その成長は祝おう!だが次は越えられるかな!?ふいうち、どくどくだスカタンク!」

 

「いとをはくで上に逃げろ!」

 

 

 文字通り、ふいうちでスカタンクが襲ってきたので、それを受けつつステルスロックの足場に逃げるデンチュラ。どくどくをギリギリ回避する。俺が待ちのスタイルを取ってることに気付いて耐久戦にしようとしてきたか。

 

 

「ならお前の音色を響かせろスカタンク!いやなおととバークアウトだ!」

 

「なっ!?」

 

 

 同時に二つの音攻撃を放ってきたスカタンクに、デンチュラが硬直してしまう。

 

 

「落ち着いてエレキネットだ、スカタンクを拘束しろ!」

 

「バークアウトで迎撃して、回り込め!」

 

 

 エレキネットで拘束を試みるが、声の衝撃波で吹き飛ばされてしまう。音で怯んでいる間にデンチュラの死角である背後に移動するスカタンク。

 

 

「ふいうち!」

 

「交代だ!」

 

 

 ゲームのポケモンとしてだが、ふいうちの対処法はある。まずは変化技を使うこと。これは現実においては意味をなさない。攻撃する時に成功率が上がるだけで別に単に不意を突いて攻撃することが出来るからだ。もう一つが、ポケモンを交代することだ。攻撃対象がいなくなれば空ぶる。自明の理だ。

 

 

「イワパレス!」

 

「またそいつか!だがそれなら容赦はしないぜ!どくどくだスカタンク!」

 

 

 交代したイワパレスがまともに毒を浴びてしまう。だが、問題ない。体力が尽きるまでに終わらせるまでだ。なにせ、からをやぶるを使わなくても、効果抜群の技を持っているのだから。

 

 

「ふいうち!」

 

「あなをほるだ!」

 

「なにっ!?」

 

 

 攻撃をその防御力で受けながらも地面に潜るイワパレス。時間をかければ猛毒が回る。だけど焦ったら避けられて反撃される。ネズとスカタンクは地面の起伏を見て警戒している。…ならこれはどうだ?

 

 

「背後を取れ!がんせきほう!」

 

「バークアウトだ!」

 

 

 言われるままにスカタンクの背後に飛び出し、岩石を集束させた砲弾を叩き込むイワパレス。スカタンクは死角からの攻撃を避けきれずにまともに受けるも、戦闘不能にはならず返しのバークアウトが襲う。イワパレスは防御に比べると特防が低いポケモンだ。結構ダメージが入り、猛毒のダメージも喰らう。そしてなにより、俺は賭けに負けた。

 

 

「がんせきほうの反動でイワパレスは動けないよなあ?!もう一発、バークアウトだ!」

 

「…よくやった」

 

 

 がんせきほうははかいこうせんと同じで反動がでかい技だ。結果、猛毒のダメージも響きスカタンクを倒しきれずにイワパレスが倒されてしまった。

 

 

「…アンタのスカタンクは厄介だ。倒すと誘爆してこっちにまで被害が出る。だから」

 

 

 そう言ってボールを放り投げると、出てきたのはマルヤクデ。今回の修行で新たな技を覚えたこいつなら、やれる。

 

 

「遠くからやらせてもらう。ほのおのムチ!」

 

「っ!?」

 

 

 本来、ゲームならばスカタンクに炎の技はいまいち通じない。だがこれは現実だ。ガスを武器にするスカタンクには、文字通り炎は誘爆する(・・・・)。大爆発が起きて、マルヤクデは咄嗟に屈んで衝撃から逃れる。肝が据わっているというか、妙にタフなスカタンクに一気にとどめを刺すには、あなをほるかこれしかないと思った。あなをほるはタイミング次第で避けられてしまうってのが辛い所で実際そうなったから次点の策として用意したが、効果は抜群だったようだ。

 

 

「スカタンク!…まさか、そんなクレイジーな方法で倒しに来るとはな…だったらコイツでフィナーレだ!こんじょう(・・・・・)見せろよタチフサグマ!」

 

「間髪入れずおにびだ!」

 

 

 来た。ネズさんの切札、タチフサグマ。ステルスロックでダメージを与えた所に、まずはやけどで攻撃力を奪う。まだこちらは三体残ってる。あとはじっくりと攻めれば行けるはずだ。

 

 

「まきついてほのおのうず!」

 

「ブロッキング!」

 

 

 繰り出したのはマルヤクデの十八番。むしわざは覚えていないが、マルヤクデにはこれがある。防御体勢のまま縛り上げ、ほのおのうずに包み込む。やったか!?

 

 

「残念ながらそいつは悪手だ。じごくづき!」

 

 

 グエッと、マルヤクデが短い悲鳴を上げて拘束を解いてしまう。喉元に強烈な一撃が叩き込まれたのだ。気管を攻撃されて怯まないポケモンなどいない、えげつない技だ…いや待て。なんで、やけど状態のはずなのにあんなに威力が出る?

 

 

「ほのおのムチ!」

 

「シャドークローだ!」

 

 

 咄嗟に指示をするが、炎の鞭は影を纏った爪で掻き消され、そのまま一撃で落とされてしまう。あの火力は異常だ。するとネズさんがマイクを手にシャウトする。

 

 

「特性、こんじょう!やけどはむしろサンキューだ!」

 

「なるほどな…!」

 

 

 特性も調べておくべきだった。やけどにしたのは悪手か。だけどステルスロックやほのおのうずにやけどのダメージも馬鹿にならない筈だ。

 

 

「たのむぞ、オニシズクモ!」

 

「それが最後の一匹か。根性見せつけてやれよタチフサグマ!シャドークロー!」

 

「金網に逃げろ!」

 

 

 コンクリートの地面を砕く爪の一撃がオニシズクモのいた場所を抉り取る。オニシズクモはすぐ真横の金網に引っ付き、身構えていた。ブロッキング、シャドークロー、じごくづき。あと一つ技が判明してないけどこれしかない。

 

 

「とびかかる!」

 

「待ってたぜ、この瞬間(とき)を!カウンター!」

 

「っ!?」

 

 

 オニシズクモのとびかかりはスウェーの様な動きで避けられ、その顎に強烈なアッパーが叩き込まれる。とびかかりの勢いも利用したその一撃は、オニシズクモを一撃で落とすには十分すぎる威力だった。虎の子を用意してたのか…!

 

 

「さあ、ここから先は敗北への一方通行だ!」

 

「なら勝利への道を無理やり作る!デンチュラ!」

 

 

 デンチュラ、タチフサグマ。双方共に満身創痍。デンチュラの方がまだ体力が少し有り余ってる感じか。効果抜群を狙おうにもあのカウンターが怖い。ここは…

 

 

「跳び回りながらほうでんだ!」

 

「ブロッキングで耐えろタチフサグマ!」

 

 

 空中のステルスロックを跳び回って翻弄しながらほうでんで攻める。やけどとほのおのうずの追加ダメージはまだ続いている。避け続ければ、俺の勝ちだ。

 

 

「そのままタチフサグマを感電させてやれ!」

 

「シャドークローを大きくして振り回せ!」

 

 

 ブロッキングの体勢から両腕を振るってほうでんを打ち消したかと思えば、纏った影を大きくして、広範囲をステルスロックごと薙ぎ払うタチフサグマ。デンチュラは電灯に糸を飛ばして空中で横に飛び退いて逃れ、タチフサグマは影の爪を振り回してデンチュラを追従、破壊された瓦礫が周りに散乱する。

 

 

「ジムリーダーが街を破壊していいのかよ!」

 

「これぐらいしないとお前に勝てないんだよ!俺のおごりだ受け止めてみせろチャレンジャー!」

 

「丁重にお断りする!逃げろデンチュラ!」

 

 

 今あれを喰らえば高火力+急所で一撃で落とされてしまう。現に、瓦礫は鉄筋が剥き出しだ。…うん?これ、使えるか?

 

 

「エレキネット!そのまま、ほうでんだ!」

 

「なにを…!?」

 

 

 しかしそんな愚直な攻撃、狙ってくださいと言っているようなものだ。エレキネットで足を拘束、その場に留めると俺の指示に従いほうでんをタチフサグマにぶつけるデンチュラ。そして次の瞬間、不思議なことが起こった。

 

 

「くっ、ブロッキング!」

 

「こいつでとどめだ!」

 

 

 ほうでんをブロッキングで受け続けたタチフサグマの体が帯電し、一瞬の電磁石みたいな状態になったのだ。結果、周りの鉄筋剥き出しのコンクリートの瓦礫が浮かび上がり、タチフサグマに殺到。意図してない方向からの連続の打撃に怯むタチフサグマの両腕を、ブロッキングの体勢のまま糸で拘束するデンチュラ。

 

 

「いとをはく、からのきゅうけつだ!」

 

「カウンター!…を、封じられた!?」

 

 

 フラフラで両腕も縛られたタチフサグマの頭上を取り、スイングから急降下して首筋に牙を突きたてるデンチュラ。タチフサグマは体力を奪われ、瓦礫に包まれた姿でバタリと倒れる。

 

 

「なんてタフなポケモンだ…俺の勝ちだ、ネズさん」

 

「参りました。俺もポケモンも出し切りましたよ…」

 

 

 大惨事になった周囲を見渡しながら溜め息を吐くネズさん。興奮していたとはいえ、やってしまったって顔だ。あとでマリィにでも知られたら叱られることが目に見える。

 

 

「まあ、この惨状はともかく君と戦えてよかったね。俺のポケモン達はそう感じているみたいですよ。俺を越える奇策の数々、感服しました。あくのジムバッジ、あくバッジですよ」

 

 

 そう言ってバッジを手渡してくれるネズさん。これであとは最後の一つ、キバナだけだ。待ってろよモコウ、ユウリ。俺はお前たちにすぐに追いついて見せる。そう決意を新たに、俺はスパイクタウンを後にするのだった。




 決まり手はポケスペ二章のVSりかけいのおとこを参考にしました。ほうでん書いてたらなんか思い出した。

・ラウラ
奇策に次ぐ奇策でなんとかネズを打倒したむしつかい。曰く過去最大に苦戦した。手持ちはむしわざを覚えてないのが半分だが、バランスよく育てているため別に困ってはないが時々攻め手に欠けることがある。ちなみにむしわざを覚えているのはデンチュラ(きゅうけつ、いとをはく)、オニシズクモ(とびかかる)、ドラピオン(ミサイルばり)。

・ネズ
イワパレスのあなをほる、スカタンクの大爆発、タチフサグマのシャドークローと今回の戦いでスパイクタウンを大いに傷つけたスパイクタウンジムリーダー。直すついでに町を綺麗にしようかなと思ってる。こんじょうカウンター、シャドークローがえげつない。

・マルヤクデ♀
とくせい:しろいけむり
わざ:ほのおのうず
   えんまく→ほのおのムチ
   まきつく
   おにび
もちもの:もくたん
備考:うっかりやな性格。暴れることが好き。スカタンクを大爆発させたあと、タチフサグマにやけどを負わせるという危うく戦犯になりそうだった。むしわざを覚えてないが火力は申し分ない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSジュラルドン

どうも、放仮ごです。この小説を推薦されました、同時にUAも40000を突破。共にありがとうございます!

今回はVSキバナ戦。相性やらなにやらで難産でした。楽しんでいただけると幸いです。


 スパイクタウンからルートナイントンネルを抜けて戻ってきたナックルシティ。三回目のこの街を、だいぶ賑わっていてチャレンジャーを応援する声がよく聞こえてくる。もう終盤だって思わせるな。

 

 宝物庫で行われたダブルバトルでのはれ・あめ・あられといった天候を操るトレーナー三人抜きを行い、ほうでんとイワパレスのあなをほるの組み合わせで難なく突破した俺達は、キバナへの挑戦権を得てスタジアムにやってきた。

 

 

『本日のナックルスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!其の変幻自在のバトルで観客を魅了するむしつかい、ラウラ選手!対するはジムリーダー、キバナ!4VS4のダブルバトルです!』

 

 

 スタジアムの中央に立ちはだかるは、褐色肌で高身長の緑がかった青い瞳のタレ目に闘志を燃やす青年。側頭部と後頭部を刈り上げた髪型でオレンジ色のバンダナを巻いており、耳にはシンプルなシルバーのピアスが照明に照らされ輝く。背番号241。ドラゴンストーム・キバナ。チャンピオンに唯一匹敵すると言われている、間違いなく現最強のジムリーダーだ。

 

 

「ようやくここまできたな、むしつかいラウラ。蟲ポケモンでダンデに勝つ、その意気込みは認めよう。ここまで来た時点で本物だ。だがな、ダンデに勝つ…それがどれだけ厳しいか、アイツのライバルであるキバナが叩き込むとするか!」

 

「ここまで来たんだ。俺はチャンピオンに勝って、蟲ポケモンが最強だと証明する!」

 

「いいぞ、その調子だ。ジムリーダーキバナは天候を操るだけでなく2VS2の戦いを望む!そう!あらゆる状況に対応できるか見定める!行くぜチャレンジャー、お前の戦術を見せてみろ!」

 

 

▽ジムリーダーの キバナが 勝負を しかけてきた!

 

 

 獰猛に笑い、大きく振りかぶってからのサイドスローで繰り出されたのは、フライゴンとギガイアス。ギガイアスのすなおこしでスタジアム内の天候が砂嵐になる。対して俺が繰り出したのは、ドラピオンとオニシズクモ。出してくるポケモンは分かっていたからな、一気に落とす!

 

 

「吹けよ風!呼べよすなあらし!」

 

「ドラピオン、フライゴンにこおりのきば!オニシズクモ、ギガイアスにバブルこうせん!」

 

「そう簡単にさせるか!フライゴン、ワイドブレイカー!ギガイアスはステルスロックだ!」

 

 

 フライゴンの横に振るった尻尾とドラピオンの冷気を纏った牙がぶつかり、冷気でフライゴンを氷漬けにして同時攻撃だったオニシズクモへの攻撃を封じ、オニシズクモは尖った岩をばら撒いたギガイアスにバブルこうせんを放射。ダンゴロ、ガントルの頃は存在しなかったが進化したことで手に入れた目に直接攻撃、急所に当てた。フライゴンは戦闘不能にはできなかったがこおり状態に、ギガイアスは戦闘不能にできた。

 

 

「この二体は俺のチームの主砲だ!いくらトップジムリーダーでも耐えるのは難しいぞ!」

 

「ギガイアス、フライゴン!…ほう、やるじゃねえか。だが俺のギガイアスは仕事はきちんとさせてもらったぜ!」

 

 

 そうだ、ギガイアスがやられる際に放ったステルスロックは、こちらが交代するだけでダメージを受けてしまう。今回の切札は特にダメージを受けやすい。だがしかし、フライゴンは氷漬けで身動きが取れない…なんだと?

 

 

「はがねのつばさだ。いけるか、フライゴン」

 

 

 その言葉に弱々しく返事を返すフライゴン。はがねのつばさで氷を破壊して出てきやがった。そんなのありか。

 

 

「相性は悪いが遠慮なく暴れてこい、サダイジャ!」

 

「…あれがモコウの苦戦したコンビか」

 

 

 次に出てきたのは地面単タイプのサダイジャ。さっきのギガイアスも岩単タイプ。キバナさん、ドラゴンジムじゃなくてはがね・じめん・いわジムに改名した方がいいんじゃないかな?これ本当ならマクワさんが得意とするはずの戦法だぞ。

 

 

「やることは変わらねえ。ドラピオン、こおりのきばをフライゴンに。オニシズクモはアクアブレイクをサダイジャに叩き込め!」

 

「もう好きにはさせねえよ。サダイジャ、ドラピオンにへびにらみだ!」

 

「なっ!?」

 

 

 その瞬間、ガクンとドラピオンの動きが目に見えて鈍くなった。麻痺状態だ。そしてフライゴンはバチバチ輝く拳を構えて突進してきていて。

 

 

「フライゴン、オニシズクモにかみなりパンチだ!」

 

「狙いを切り替えてフライゴンに叩き込めオニシズクモ!」

 

 

 かみなりパンチとアクアブレイクがフィールドの真ん中で激突。フライゴンを戦闘不能にはできたが、オニシズクモが相打ちとなってしまう。やられた…!キバナのいわ・じめんタイプに唯一対抗できるオニシズクモが…こおりのきばをもつドラピオンも麻痺されてしまった。きついぞこれは。

 

 

「くっ…テッカニン!」

 

 

 デンチュラとイワパレスは相性が最悪。マルヤクデは温存したい。消去法でテッカニンを繰り出す。尖った岩が食い込みダメージを与える。だが、サダイジャに打点はないはず…そして、キバナが繰り出したのははがね・ドラゴンのジュラルドン。キバナの相棒だ。ということはつまり…

 

 

「荒れ狂えよ!俺のパートナー!スタジアムごと奴を吹き飛ばす!」

 

 

 そしてスマホロトムで自撮りしながら巨大なボールを放り投げ、キョダイマックスしたジュラルドンが姿を現す。それは、まるで摩天楼。ビルの様な巨体が俺を見下ろす。なんて威圧感だ。分かっていても恐ろしい。…俺の方はダイマックスは、切らない。

 

 

「テッカニン、つばめがえしをサダイジャに!ドラピオンは頑張れ!こおりのきばを大地に突き立てろ!」

 

「中々いい指示だが、甘いぜ!サダイジャ、ほのおのきば!ジュラルドン、テッカニンにダイロック!」

 

 

 こおりのきばの氷結でジュラルドンとサダイジャを拘束し、つばめがえしをサダイジャに当てたテッカニンだったが、距離を詰めたことで炎を纏った牙が炸裂して吹き飛ばされ、たところに巨岩が落とされ叩き潰される。さすがにこれは…戦闘不能だ。

 

 

「テッカニンのバトンタッチの噂は聞いてるぜ。優先順位はそいつがピカイチだ」

 

「くっ…頼むぞ、マルヤクデ」

 

 

 こおりのきばの氷結でステルスロックがない場所を把握してボールを投擲、マルヤクデが姿を現す。サダイジャが不穏だが…やるしかない。

 

 

「キョダイマックスだ!蟲の底力を見せろ、マルヤクデ!」

 

「ジュラルドン、マルヤクデにダイロック!サダイジャはドラピオンにだいちのちからだ!」

 

「蜷局を巻いてダイウォール!ドラピオンも守れ!」

 

 

 おにびが変化したダイウォールで一旦耐える。どうすれば…いや、さっきのこおりのきばでサダイジャの体力はだいぶ削りきったはずだ。それなら手ならあるか。

 

 

「マルヤクデ、ジュラルドンにキョダイヒャッカ!ドラピオンはミサイルばりでサダイジャを牽制だ!」

 

「サダイジャ、まもる!ドラピオンを狙って、いくぜ…竜よ吠えろ!必殺!キョダイゲンスイ!」

 

 

 マルヤクデのキョダイヒャッカと、ジュラルドンのキョダイゲンスイが交差する。ほのおのうずが相手のフィールドを支配し、こちらは技のパワーを削られた。…撃てる数も限度があるな。ジュラルドンは大ダメージを負ったものの健在で、ドラピオンは…

 

 

「まさか、俺達の技に耐えるとはな」

 

「こいつは三日三晩俺と戦い続けた特別な奴なんだよ。信じてたぞ、ドラピオン!」

 

 

 タイプ一致で効果抜群のだいちのちからは駄目だったが、キョダイゲンスイはギリギリ耐えられたようだ。ならばあとはやることをやるだけだ。

 

 

「くっ…ストーンエッジとだいちのちからをそれぞれぶつけろ!」

 

「こっちはまだダイマックスが残ってるんだよ!蜷局を巻いてダイウォールでドラピオンも守れ!ドラピオンはサダイジャにこおりのきば!」

 

 

 マルヤクデが蜷局を巻いているフィールドを、ドラピオンが駆け抜ける。マルヤクデの巨体を乗り越え、わざを撃った直後で硬直してたサダイジャに思いっきり噛み付いた。同時に元のサイズに戻るマルヤクデ。

 

 

「サダイジャ!?」

 

「余所見している暇はあるのか?!ほのおのムチだ!」

 

 

 ほのおのうずが舞い、サダイジャが崩れ落ちたところに気を取られたキバナの隙を突き、ジュラルドンにほのおのムチを叩き込む。しかし効果抜群ではない技では強固な防御力を持つジュラルドンは落とせず…

 

 

「マルヤクデにストーンエッジだ!」

 

「マルヤクデ、まきつく攻撃!ドラピオン!」

 

 

 死にもの狂いでジュラルドンに巻き付いて縛り上げるマルヤクデ。そして、こおりのきばも駄目、ミサイルばりも駄目、クロスポイズンは論外、なら使う技は一つだけ!

 

 

「つじぎりだあ!」

 

 

 マルヤクデが巻き付いてないところを的確に狙ったドラピオンのつじぎりが炸裂。急所に当たったのか、ジュラルドンが崩れ落ちた。

 

 

「やっ、た…」

 

「…参ったぜ。なんて根性だお前のポケモン。…記念に自撮りしておくか」

 

 

 そう言ってキバナが歩み寄ってきたので、俺もポケモンを戻して歩み寄る。苦しい戦いだった。ダブルバトル用のポケモンなんて用意してなかったし。…モコウのことを悪く言えないな、こりゃ。

 

 

「激しい戦いを終えて…何度でも思うぜ。ダンデのライバル?チャンピオンで無いのに俺とポケモンはうぬぼれていたようだ。まさか蟲ポケモンに竜が負けるとは思わなかったぜ」

 

「…二体ほど竜じゃなかったような」

 

「細かいことは気にするな。くれてやろう、勝利の証!ドラゴンバッジをな!」

 

 

 キバナと握手を交わし、バッジのメダルがついに完成した。こうして俺は最後のバッジも手に入れたのだった。

 

 

「ガラル地方全てのジムバッジを揃えたな!チャンピオン・ダンデに挑むためトーナメントに勝ち上がるんだ!いや、勝たねばならない。そう、俺達のリベンジのためにもな!お前なら、できるかもな。蟲ポケモンでダンデを倒す、なんて奇跡にも近い勝利をよ!」

 

 

 そんなエールを受けて、ジムを後にする。目指すはシュートシティ。モコウ、ユウリ、ホップ、マリィ、そしてムツキ。ライバルがみんな、そこで待っているはずだ。早く追い付かないとな。




キバナ戦、まさかの一話完結。ダイウォールは本来味方を守れないけど現実なので細かいことは許してくださいお願いします。

・ラウラ
短かったがネズ戦ぐらい疲弊したチャレンジャー。ライバルたちに追いつくことを誓う。有名になりすぎててテッカニンが全力で倒されることになってる。ドラピオンのタフさは誰よりも信頼している。マルヤクデを切札にしてたけど鋼タイプに有利になるだけで効果抜群は取れないため結構危なかった。ダブルバトルはもうしたくない。

・キバナ
ドラゴンタイプのジムリーダー。蟲ポケモンだと侮った結果、耐え凌がれて敗北することに。ドラピオンを最初から狙っていれば勝負は分からなかった。ちなみに突破されたのはモコウ、ユウリ、ホップ、マリィ、ラウラ。この後???、???、ムツキという順番。この八名がセミファイナルトーナメントに参戦する。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板

どうも、放仮ごです。今回は初の試みとなる掲示板回を書いてみました。ラウラ達主要人物たちの外側からどう見られているのか語ります。

時系列は前回よりちょっと後。ライダーネタが豊富なので苦手な方はご注意ください。楽しんでいただけると幸いです。


今季ジムチャレンジャーについて語るスレ

 

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

ところでむしポケモンだけでジムチャレンジを勝ち抜いてるトレーナーがいるってマ?

 

65:名無しのトレーナー

マジぞ。ダイマックスもしてないバチュルでヤローのダイマックスワタシラガを倒した光景は圧巻だったぞ

 

66:名無しのトレーナー

想像もできないんですがそれは…

 

67:名無しのトレーナー

さすがにうせやろwww釣り乙

 

68:名無しのトレーナー

釣りでもなんでもなく本当なんだよなあ…動画もあるぞ、ほれ(URL

 

69:名無しのトレーナー

はえー、テッカニンでつるぎのまいして?

 

70:名無しのトレーナー

ダイマックスの攻撃を避けつつエレキネットで動きを阻害して…

 

71:名無しのトレーナー

はえー、小さいうえに速すぎて見えねえけど弾丸みたいな何かがダイマックスワタシラガを撃ち抜いた…

 

72:名無しのトレーナー

このちんまりした子がトレーナーかな?名前は公開されてるん?

 

73:名無しのトレーナー

ラウラって言うらしいぞ。自分でむしつかいを名乗ってるジムチャレンジ初参加のトレーナーだ

 

74:名無しのトレーナー

他地方の虫取り少年かな?いや少女か

 

75:名無しのトレーナー

ちっさくて強いのね!嫌いじゃないわ!

 

76:名無しのトレーナー

黙ってろよクズ

 

77:名無しのトレーナー

黒実さんは落ち着いてもろて

 

78:名無しのトレーナー

でもこの戦術、相当知識が頭にないとできない戦術だろ?本当に初参加か?

 

79:名無しのトレーナー

トレーナーになれるのがこのぐらいの年齢だからそうなんじゃない?

 

80:名無しのトレーナー

やはり天才か…

 

81:名無しのトレーナー

よほど腕がいい師匠でもいたんじゃね知らんけど

 

82:名無しのトレーナー

しかしむしか…え、どこまで勝ち抜いてるんこの子?

 

83:名無しのトレーナー

つい先日キバナまで攻略したぞ。むしつかいに負けた記念~て自撮りしてた

 

84:名無しのトレーナー

ふぁっ!?

 

85:名無しのトレーナー

え、カブさんやマクワ、キバナをむしタイプだけで攻略した!?

 

86:名無しのトレーナー

化け物ってレベルじゃないんじゃが…

 

87:名無しのトレーナー

むしタイプだけじゃなくてドラピオンもいるみたいだけどな

 

88:名無しのトレーナー

あ、むしタイプじゃなくてむしポケモン縛りなのね…

 

89:名無しのトレーナー

判明している手持ちはテッカニン、デンチュラ、オニシズクモ、マルヤクデ、ドラピオン、イワパレスだ

 

90:名無しのトレーナー

どう考えてもマクワはともかくキバナを攻略できる気がしないんじゃが…

 

91:名無しのトレーナー

俺、試合を生で見てたけどすごかったぞ。あんなこおりのきばの使い方初めて見た

 

92:名無しのトレーナー

kwsk

 

93:名無しのトレーナー

え、冷気纏って噛み付く以外に使い方あるん?

 

94:名無しのトレーナー>>91

ドラピオンが地面に突きたててフィールド全体を凍らせてたで

 

95:名無しのトレーナー

>>94

ファッ!?

 

96;名無しのトレーナー

>>94

ポケウッドの怪獣かな?

 

97:名無しのトレーナー

ポケウッドいいよな、大怪獣シリーズの続編出ないかな…(現実逃避)

 

98:名無しのトレーナー

それってあれじゃね?アローラにいるとかいうぬしポケモンなんじゃねーの?

 

99:名無しのトレーナー

ぬしポケモンってなにぞ?

 

100:名無しのトレーナー

ある一帯を牛耳る文字通りぬしのポケモンだよ。通常の個体より大きかったり強かったりする

 

101:名無しのトレーナー

なる。たしかに、ガラルのぬしポケモンと言われても納得いく強さだな

 

102:名無しのトレーナー

こおりタイプじゃないのにフィールド氷結させるって強すぎやん

 

103:名無しのトレーナー>>91

三日三晩戦って捕まえたとか叫んでたぞ

 

104:名無しのトレーナー

そのぬしポケモンと三日三晩戦うってどんな体力よ…

 

105:名無しのトレーナー

あー、もしかしてエンジンジムとラテラルジムの間の期間かな?行方不明だったとかいう

 

106:名無しのトレーナー

毎回戦闘で魅せてくれるから知ってる人の方が多いトレーナーだぞ

 

107:名無しのトレーナー

映像が残ってる公式戦だけで…えーと?

 

108:名無しのトレーナー

そんなに魅せ試合するん?むしやし余裕なさそうやのに

 

109:名無しのトレーナー

接戦だったり圧勝だったり勝ち方がとにかくすごいんや

 

110:名無しのトレーナー

マクワ戦とか完勝とか言われてるしな

 

111:名無しのトレーナー

えっ、いわジムをむしで完勝…?(理解不能)

 

112:名無しのトレーナー

いやいやそんな……

 

113:名無しのトレーナー

見て来たけどマジだったわ…こんなバトルできるんだ…

 

114:名無しのトレーナー>>107

まとめてきたで。

ヤロー戦:テッカニンのバトンタッチからのバチュルで翻弄してダイマックスワタシラガをほぼ一撃で倒す(URL

ルリナ戦:テッカニンのバトンタッチからのオニシズクモの一撃でダイマックスカジリガメを倒す(URL

カブ戦:ベストバウト候補その一。初めてダイマックスしてキョダイマックスマルヤクデを倒す(URL

サイトウ戦:苦戦。新顔のマルヤクデでまきつく+ほのおのうずとかいうえげつないわざを繰り出す(URL

ポプラ戦:悪名高いトゲキッスをバトル中に進化したデンチュラで一撃で落とす(URL

マクワ戦:ベストバウト候補その二。ステルスロックを見切って逆に利用してほとんど犠牲無く終わる(URL

キバナ戦:相性不利を物ともせずジュラルドンのキョダイマックスを耐えて逆転する(URL

こんな感じ。しかも全試合一発攻略

 

115:名無しのトレーナー

>>114

相変わらずネズさん所は映像残ってないんだな。それでも前半がやべえのはわかる

 

116:名無しのトレーナー

ネズさんには一回負けたらしいぞ。知り合いのスパイクタウンジムトレーナーの話だと熱戦だったとか。

 

117:名無しのトレーナー

キバナを一発攻略の時点で凄くない…?

 

118:名無しのトレーナー

>>114

結構後半は苦戦してるけど七試合一発クリアなのやべえ。俺なんかカブさんにも勝ててないのに

 

119:名無しのトレーナー

俺なんかヤローの所で止まってるぞ…

 

120:名無しのトレーナー

それはそれで別の意味でヤバイネ!

 

121:名無しのトレーナー

>>116

ネズさんには負けてるのな。むしはあくに強いのに

 

122:名無しのトレーナー

戦術の相性が悪かったんじゃない?最速突破のモコウ選手はキバナ以外一発でクリアしてたし

 

123:名無しのトレーナー

あのでんき使いのやべーやつだろ。二週間でジムチャレンジ突破したとかいう

 

124:名無しのトレーナー

パッチラゴンとかいうやべーポケモン使ってる奴だろ、知ってる知ってる

 

125:名無しのトレーナー

モコウ選手の使ってるパッチラゴンとパッチルドンよりもウオノラゴンとウオチルドンの方がやべーんだよなあ

 

126:名無しのトレーナー

生命の冒涜だよなあれ

 

127:名無しのトレーナー

それを可愛がってるどころかエースにしてるモコウ選手の胆力よ

 

128:名無しのトレーナー

そういや何時だったか全国放送のインタビューで言ってたモコウ選手のライバル、ラウラ選手だって噂だぞ

 

129:名無しのトレーナー

エンジンシティ攻略直後までは一位二位だったらしいな

 

130:名無しのトレーナー

ナックルシティで二人仲良くエール団とやりあってたらしいぞ

 

131:名無しのトレーナー

エール団といえばあいつらの推してるマリィ選手も話題に上がってたな

 

132:名無しのトレーナー

ネズさんの妹さんだってな。そしてすっごいいい子。サポーターがアレだけど

 

133:名無しのトレーナー

今季は凄いぞ。何せチャンピオンの弟を名乗ったチャレンジャーも勝ち残ってる

 

134:名無しのトレーナー

その幼馴染でチャンピオンに推薦されたっていうチャレンジャーもな。名前はユウリ選手だっけ?

 

135:名無しのトレーナー

全勝無敗とかいう化け物だぞ

 

136:名無しのトレーナー

今季はどれだけ化け物がいるんですかね…

 

137:名無しのトレーナー

まだいるぞ。ムツキっていうひこうつかいだ

 

138:名無しのトレーナー

むしつかい、でんきつかい、あくつかい、ひこうつかい…新しいジムリーダー候補かな?

 

139:名無しのトレーナー

あー、知ってる知ってる。戦術も糞も無いごり押しでポプラの婆さんまで一気に倒したやべーやつだろ?マクワで止まったらしいけど

 

140:名無しのトレーナー

ウォーグルで空を飛んで移動して、シークレットブーツで、ポニーテールで、試合中に吐血する、噂によるとあのグランドウォール・キリエの娘だとかいう属性過多の子だろ?

 

141:名無しのトレーナー

ラウラ選手も俺っ娘で麦わら帽子で蟲狂いだったり、モコウ選手も我っ娘で厨二病で変なツインテでゴスロリだったり…キャラが濃いな今季は!

 

142:名無しのトレーナー

あー、キリエが引退する理由になった子か…吐血しまくってるのは見てて心配になるなあ

 

143:名無しのトレーナー

ムツキ選手がキリエの娘ってどこ情報?

 

144:名無しのトレーナー

別の考察スレで語られてたことぞ。同じ黒髪で、同じ口調で、病弱で、戦術なくてもポケモンが妙に強いこととかそっくりだって。あと年もそれぐらいらしい

 

145:名無しのトレーナー

あの子の戦い方、見ていてすっきりするんだよなあ。ごり押しの極みというか

 

146:名無しのトレーナー

あー、もしかしたらその子とマックスレイドバトルで一緒したかも。キョダイアーマーガアを捕まえてウォーグルに肩を掴ませて颯爽と飛んでいったな

 

147:名無しのトレーナー

えっ、話題のトレーナーと一緒に戦ったとか羨ましい

 

148:名無しのトレーナー

裏山

 

149:名無しのトレーナー

俺はユウリに挑んでボコボコにされたぞ

 

150:名無しのトレーナー

どんなやった?

 

151:名無しのトレーナー

ねこだましで怯んだところをぼうふうで吹っ飛ばされて4タテされた

 

152:名無しのトレーナー

 

153:名無しのトレーナー

シンプルに強い戦法で草

 

154:名無しのトレーナー

想像したら結構えげつないぞ

 

155:名無しのトレーナー

分かってても怯んでしまうからなねこだまし…

 

156:名無しのトレーナー

ネズも使う立派な戦法の一つやぞ。相手に何もさせないのはシンプルに強い

 

157:名無しのトレーナー

エレキネットで雁字搦めにされて倒れるまでほうでんされるよりはマシだと思うんだ

 

158:名無しのトレーナー

想像つくけどどした

 

159:名無しのトレーナー

この流れで誰にやられたのか分からない奴はいないやろ

 

160:名無しのトレーナー>>157

つい数日前の話なんだけどな、ラウラに勝負挑まれて相手したら拘束されて倒れるまで痺れ続けるポケモンを見る羽目になったんや…

 

161:名無しのトレーナー

ええ…

 

162:名無しのトレーナー

怯んだところを一撃でやられるよりひでえ

 

163:名無しのトレーナー

けど確実に勝てるな。理には適ってる

 

164:名無しのトレーナー

やられた方はたまったもんじゃないけどな

 

165:名無しのトレーナー

君が!やられるまで!感電させるのを!やめない!

 

166:名無しのトレーナー

やめたげてよお!

 

167:名無しのトレーナー

魔王の所業かな?

 

168:名無しのトレーナー

祝え!全蟲ポケモンの哀しみを受け継ぎ、チャンピオンを越え過去と未来をしろしめす蟲の王者。

 その名もむしつかいラウラ! 新たな歴史の幕が開きし瞬間である!

 

169:名無しのトレーナー

祝え!ジムリーダーを駆逐し、新たな未来へ我等を導くイル・サルバトーレ!

 その名も蟲の女王ラウラ!蟲の救世主がこのガラルの地に降り立った瞬間である!

 

170:名無しのトレーナー

被ってて草

 

171:名無しのトレーナー

片方白ウォズで草。最終的にネットボール飲み込んで自分で蟲の王になりそう…

 

172:名無しのトレーナー

蟲の女王は言い得て妙だな

 

173:名無しのトレーナー

蟲ポケモン好きとドS的な意味でダブルネーミングだな!

 

174:名無しのトレーナー

ガラルの二代目アデクとかどうよ

 

175:名無しのトレーナー

アデクって誰?

 

176:名無しのトレーナー

イッシュの前々チャンピオンだぞ

 

177:名無しのトレーナー

プラズマ団の王様にやられたむしつかいのチャンピオンやな

 

178:名無しのトレーナー

むしろ不名誉なあだ名で草

 

179:名無しのトレーナー

シンプルにインセクト・マイスターとかどうよ

 

180:名無しのトレーナー

うーん、蟲の女王がしっくりくる

 

181:名無しのトレーナー

ラウラ選手ばっかり言ってるけどさ、他の同期組はどうよ?

 

182:名無しのトレーナー

ユウリ選手は…嵐を呼ぶ女とか?

 

183:名無しのトレーナー

どっかの幼稚園児かな?

 

184:名無しのトレーナー

モコウ選手はもこたんとかどうよ!

 

185:名無しのトレーナー

別のもこう思い出すからアウトや

 

186:名無しのトレーナー

普通に雷速少女でよくない?

 

187:名無しのトレーナー

本人はライトニング・アルバトロスを名乗ってたらしいぞ

 

188:名無しのトレーナー

ライトニングwアルバトロスwww

 

189:名無しのトレーナー

多分響きから決めたなw

 

190:名無しのトレーナー

鍛えてますから!

 

191:名無しのトレーナー

それは響鬼や

 

192:名無しのトレーナー

ムツキ選手はあれだな、最強の後継者とか?

 

193:名無しのトレーナー

見た目的にはウォーグルの翼が生えてるように見えるから天使よな

 

194:名無しのトレーナー

まずキリエの娘って確定情報じゃないんだよなあ…大天使ムツキでどうよ

 

195:名無しのトレーナー

かわいい

 

196:名無しのトレーナー

かわいい

 

197:名無しのトレーナー

あだ名決めてる暇あったら戦力分析しようぜ。誰が勝ち残るか想像するの楽しいぞ

 

198:名無しのトレーナー

ンンンンン!まさに!正論!

 

199:名無しのトレーナー

そういやここで名前は出てないけどついさっきキバナに勝ったノーマル使いの少年がいるらしい

 

200:名無しのトレーナー

ノーマル統一でキバナに勝ったとかマ?

 

 

 

・・・・・・・・・




掲示板、下手なりに書いたけど正直書くの楽しかったです。

・ラウラ
掲示板で付けられた二つ名は蟲の女王。この後エゴサしていたユウリに教えられるも満更でもない。二代目アデクとか呼ばれてるのも満更でもないしむしろ嬉しい。ちなみにデンチュラでエレキネットからのほうでんはレベル上げの一幕。本人曰く一番効率が良かった。バトルスタイルはトリッキー。

・モコウ
掲示板では一番やべー奴扱いされてるけど実は三人娘の中では一番性格がまとも。バトルスタイルは速攻超火力。

・ムツキ
罵倒癖や裏の顔を公式戦では隠しているため掲示板では大天使呼ばわりされてる娘。やっぱり多方面から心配の声が上がってる。本人は言っても無いのに母親との関係がばれたため世間が怖くなったらしい。バトルスタイルはごり押しの極み。

・ユウリ
嵐を呼ぶ女。全ジム戦全勝という本当にやべーやつ。バトルジャンキーであり、ダーテングで一般トレーナーを容赦なく4タテした。バトルスタイルはオールラウンダー。

・ホップ
チャンピオンの弟を名乗るチャレンジャー扱いされてる。他がアレすぎてあまり目立ってない。

・マリィ
順調にファンが増えているいい子。いい子過ぎて目立ってない。

・ノーマル使いの少年
存在だけチラ見せ初登場。ノーマルタイプを使いこなしてジムを制覇した実力者だが何故か名前が上がらない。

・???
存在すら上がらなかった八人目のジム制覇者。原作にもそんなキャラがいましたね…

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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セミファイナルトーナメントの章
VSライボルト


どうも、放仮ごです。今回はセミファイナルトーナメント前の一幕となります。

主要チャレンジャー全員集合。楽しんでいただけると幸いです。


 キバナ戦から数日。雪道を越え、シュートシティに辿り着いて目指すのは、アイツが待ってるはずのシュートスタジアム。辿り付いてまず感じたのは、やっぱりアイツは人目につくなあ、だった。

 

 

「待ちわびたぞ、ラウラよ!」

 

「悪かったなモコウ。ちょっと二回ほど敗北してな」

 

「テレビで見たが奇策に磨きがかかっているな!これは手強いライバルだと我はワクワクしていたのだぞ!」

 

 

 そう言って駆け寄ってきたのは雷の様な金髪ツインテールにゴスロリを着たでんきつかい、モコウ。傍らにライボルトを連れていて、その格好からか周りの人間からは遠巻きに珍しいものを見るような目で見つめられている。…デンチュラを傍らに連れている俺にも向けられているな。どうだかわいかろう自慢の相棒だぞ。

 

 

「あ、ラウラ!今来たんだ、おつかれ!ラウラとのバトルを経てここまで来れたよ、ありがとう!」

 

「お前ほどのジムチャレンジャーならここに辿り着くと信じていたぞ!お互い頑張ろうな!」

 

「お、おう。お前ら幼馴染二人は元気だな」

 

 

 シュートスタジアムから出て来たユウリとホップが俺に気付いて駆け寄ってきたので、笑顔で返す。ユウリだけでなくホップにまで先を越されていたか。やっぱり才能溢れるトレーナーなんだろうな。あ、マリィもきた。

 

 

「兄貴に苦戦してたみたいだけど、さすがだね。あっさりキバナを越えて来ちゃうなんて」

 

「マリィも無事ここまでこれてよかったよ。俺の教えは役に立ったみたいだな」

 

「うん、おかげでラテラルジムは比較的簡単に越えることができたと」

 

「お?お?ライバルに塩を送っていたのか?余裕だな!」

 

「うるさいモコウ、つい教えてしまったんだよ」

 

「私もラウラと何度か戦ったからどう戦えばいいか決めれたよ」

 

「俺もラウラの言葉で立ち直れたんだぞ!」

 

「…ラウラよ、お前何度敵に塩を送れば気がすむのだ?」

 

 

 マリィに続くユウリとホップの言葉にモコウがジト目で睨んでくる。そんなつもりじゃなかったんや。

 

 

「俺はただ、ライバルといい勝負がしたかっただけで…」

 

「それは我もわかる。わかるが限度があるぞ」

 

「全国放送で馬鹿やらかしたお前に言われたくないぞ」

 

「なんのことだ?」

 

「お前…マジか…」

 

 

 そう仲良く(?)話していると、空からバサバサと音を立ててウォーグルに肩を掴まらせたムツキがやってきた。シュートスタジアムの方から来たのを見るに受け付けは済ませたらしい。

 

 

「おや、皆さんお揃いで」

 

「元気そうで何よりだムツキ。マクワに勝てたんだな」

 

「二回目で勝ってやりましたよ。私、強いので」

 

 

 話しかけるとフフンと得意げに鼻を鳴らす。自信は取り戻したようだな。

 

 

「ラウラ、こやつは?」

 

「ひこうつかいのムツキ。俺を負かしてくれたライバルだ」

 

「「「「ラウラを倒したあ!?」」」」

 

 

 モコウに聞かれて答えると揃って驚く四人。…まあたしかにお前らには負けたことないけど、驚きすぎじゃね。

 

 

「兄貴以外にもいたんだ、ラウラに勝った人…」

 

「あのすごく強いドラピオンにも勝ったの!?すごい!」

 

「あんなに強いラウラを倒すなんてすごいぞ!」

 

「お、おお…」

 

 

 マリィ、ユウリ、ホップの詰めよりに怯んで後ずさるムツキ。対してモコウはなんか唸っていた。

 

 

「ぐぬぬ…お前を倒すのは我だ、と言いたかった…だが我はでんきつかい!ひこうつかいだというお前よりは強いぞ!ムツキとやら!」

 

「はああ?ひこうがでんきに勝てないなんて決まってないんですが?タイプ相性だけで勝った気になってるなんて馬鹿なんですか?バカなんですね?」

 

「なっ…我はここで決着付けてもいいんだぞちんちくりん」

 

「はっ!言うに事欠いて我ときましたか!自分のことを我って、恥ずかしくないんですか?」

 

「なにをー!」

 

「モコウ、あからさまな挑発に乗るな。こいつの悪癖なんだ」

 

「す、すごい人だね…」

 

「しかも周囲には聞こえない大きさの声で罵倒してるから一見モコウが悪く見えると…」

 

「なんかすごいぞ!狡猾なんだな!」

 

「一応褒め言葉として受け止めましょう。ふふん、私は苦手なタイプを克服したのです。私の自由の翼を阻むものはもう、なにもありませんとも!」

 

 

 そうドヤ顔するムツキに合わせて翼を広げて鳴き声を上げるウォーグル。なんか、様になっていた。

 

 

「当たったら一方的に蹂躙してやるからな…」

 

「いいでしょう。逆に蹂躙して大恥をかかせてやりますので私に当たるまで負けないで下さいよ?」

 

「そっちこそなあ!」

 

 

 グヌヌと睨み合うモコウとムツキ。なんとなくそんな気がしていたが、得意タイプと同じく天敵らしい。そんなこんなと騒いでいると、俺達に話しかける人影が在った。

 

 

「あの…!」

 

「うん?君は?」

 

「僕、ナグサといいます!ラウラ選手ですよね?貴方の好きなタイプを極めようとする姿勢に勇気が湧いて、ノーマルタイプだけでここまでこれました!ありがとうございます!」

 

「いや、俺は何もしてないから…」

 

 

 その少年は、とにかく白かった。白い髪を短く切り揃えた、白い肌で丸顔の優しそうな表情でノーマルタイプのユニフォームを着ていて首に白いマフラーを巻いている。頭の上にはチラチーノを乗せていた。印象は普通って感じだ。実力はあるんだろうが強者のオーラがしない。とにかく優しそうな少年だった。

 

 

「ザ・普通な少年ですね。こんなのでもジムチャレンジ突破できるんですね」

 

「ふ、ふつう…」

 

「お前一言目には失礼じゃないと気が済まんのか!」

 

「ムツキの言うことは気にするなナグサ。ノーマルタイプだけでキバナを突破したってすごいことだと思うぞ」

 

「ラウラもモコウもムツキもだけど、ジムリーダーと同じことをしている訳だし!」

 

「そうだよ、私とホップなんか何のこだわりも無くメンバーを揃えてるし!」

 

「ナグサも凄い奴なんだぞ!」

 

 

 ムツキの言葉にショックを受けるナグサを慌ててフォローする俺達。ナグサが病院を連想させる「白」だったから、ムツキの防衛行動だってのはわかってるけど、言い方ってものがあるんじゃないですかねえ?いや俺も思ったけどさ。

 

 

「(弱点を突かれにくいだけのノーマルタイプで突破したということは要注意ですね。あとで戦法を確認しなければ)…では私はこれで。これ以上ここにいると体に障りますのでホテルに戻ります」

 

「おう、気を付けろよ?」

 

「貴女に言われるまでもありませんよ。…貴女にだけは絶対勝ちます」

 

 

 俺の言葉にひらひらと手を振りながらホテルロンド・ロゼに空を飛んで向かうムツキ。野次馬から歓声が聞こえた。曰く空の大天使とかなんとか。…大天使ねえ。悪魔の間違いじゃないか?外面だけはいいんだよな、さすがジムリーダーの娘。

 

 

「さて、俺も受け付けをすましてくるか…ナグサも一緒に来るか?」

 

「はい、ご一緒させていただきます!」

 

「我はここで待ってるぞ」

 

「私達はショッピングに行こうか、マリィ、ホップ」

 

「それはよかね」

 

「おう、シュートシティを楽しむぞ!」

 

 

 ユウリ達と別れ、ナグサと共にシュートスタジアムに入る。すると歓声やら視線やらが向けられ、居心地が悪い。…無心になれ、むしだけに。気にしたら負けだ。

 

 

「セミファイナルトーナメント開催は三日後となります。ここで登録したポケモン六匹のみ大会中使用可能となります」

 

「この六匹でお願いします」

 

「僕も、お願いします」

 

 

 受付のリーグスタッフにボール六個を預ける俺達。メンバーを変えるのも考えたが、どう考えてもこの六匹がベストメンバーだ。こいつら以外を使う気はない。

 

 

「トレーナーカード、ポケモン、共に登録完了しました。開催日程まではホテルロンド・ロゼでお待ちください」

 

「わかりました」

 

 

 ボール六つを返してもらい、ホテルへの道をモコウもいれて三人で歩く。…テッカニンの技構成だけ見直す必要があるな。テッカバトンが多くのトレーナーに印象付いているはずだから不意を突ける。つばめがえししか攻撃技がないのはさすがにきついしな。

 

 

「モコウ、ナグサ。お前たちとぶつかることがあっても負けないからな」

 

「はい、望むところです!」

 

「はっ!そこは決勝で会おうというところであろう!」

 

「いや、どういう組み合わせで戦うのか分からないんだしさ…」

 

 

 そして到着した豪華なホテルで技の調整するなりコンディションを整えるなり遊ぶなりして三日後。セミファイナルトーナメント当日に、組み合わせが発表された。

 

 

第一回戦:ユウリVSマリィ

 

第二回戦:ホップVSマサル

 

第三回戦:モコウVSナグサ

 

第四回戦:ラウラVSムツキ

 

 

 マサルって誰だろう…まあともかく、まずまずといった配置だろう。俺たちは最後か。…初戦がムツキとはな。モコウかナグサと戦うにしても二戦目か。

 

 

「ムツキ。リベンジマッチさせてもらうぜ」

 

「いいでしょう。返り討ちにして差し上げましょう!」

 

 

 それぞれ不敵な笑みを浮かべ、戦う相手と睨み合う俺達。こうしてセミファイナルトーナメントは始まった。




一応チャンピオンカップが開催されてる期間は一ヶ月間とさせていただいてます。その間にジムを全部突破したトレーナーがセミファイナルトーナメントに参加できる形です。

・ラウラ
蟲の女王。自分に勇気をもらったというナグサにちょっと怯み気味。いつの間にかムツキの理解者になっていた。

・モコウ
自称雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)。ムツキとは犬猿の仲。ラウラとは決勝戦で戦いたかったと不服気味。全国放送でやらかした事実は気にしてない。

・ムツキ
空の大天使。口を開けば罵倒するが民衆の前だと聞こえない程度の声で喋る外面だけ天使の人。同期全員から黙ってれば可愛いと認識されてる他、ラウラを倒しているため一目置かれている。ユウリにロックオンされた。ラウラの一回戦の相手。

・ユウリ
嵐を呼ぶ女。ホップを連れまわしてマリィとショッピングを楽しんだ。バトルジャンキーなためラウラを倒したムツキに目を付けている。

・ホップ
チャンピオンの弟。荷物持ちとしてユウリに連れまわされたが本人はまんざらでもない。ムツキでもすごいと言えるいい子。

・マリィ
ネズの妹。普通にショッピングを楽しんだ。ムツキみたいな人は苦手。

・ナグサ
今回初登場のジムチャレンジャー。ノーマル使いで白いこと以外は普通の少年。ラウラに憧れてノーマル統一でジム戦をやり遂げた男。相棒はチラチーノ。名前の由来は勿忘草。

・マサル
ご存じ男性主人公、名前だけ。ただし役回りは…名前がついただけありがたいと思ってほしい。

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VSチラチーノ

どうも、放仮ごです。お気に入りが900を越えましたありがとうございます!

今回はセミファイナルトーナメント三回戦、モコウVSナグサ。モコウ視点となります。楽しんでいただけると幸いです。


 セミファイナルトーナメントが始まった。一回戦はユウリとマリィ。ユウリが終始圧倒して勝利というあっけない結末に終わった。二回戦はホップVSマサルなる少年。こちらはマリィほど奮戦もできずに瞬殺だった。あの二人のうちどちらかと決勝で戦うことになる…侮れんな。

 

 

『続きましては、第三試合!ルールはこれまで同様5VS5のシングルバトル!でんきタイプつかいのモコウ選手VSノーマルタイプ使いのナグサ選手、特定タイプのエキスパート同士の対決その一です!』

 

 

 そんなアナウンスを受けて入場する。私、いや我は勝たねばならぬ。最速は成し遂げた。ならばあとは最強になる、なりさえすれば…あのムカつくセレブリティうるさい兄弟にでかい顔されないで済むし、父上たちは認めてくれる、はずだから…!

 

 

「勝負だ、ナグサ!手は抜かんからな!」

 

「もちろんだよ、モコウさん!全力で戦います!」

 

 

▽ノーマルつかいの ナグサが 勝負を しかけてきた!

 

 

 我とナグサが同時にボールを投げる。繰り出されたのは、バイウールー。我はライボルト。速攻で決めるぞ!

 

 

「ワイルドボルト!」

 

「コットンガード!」

 

 

 速攻最大火力は、モコモコに包まれ防御力をぐーんと上げたバイウールーに受け止められてしまった。だったら特殊技で…

 

 

「ボディプレス!」

 

「っ、バックステップで避けてほのおのきばで迎え撃て!」

 

 

 自分の防御力が高ければ高いほど威力が上がる技で上空に跳び上がったバイウールーが急降下してきたのを、ライボルトは後方に避けて、落ちてきたところに炎を纏った牙で噛み付いた。モコモコに引火し、炎上するバイウールー。隙だらけのそこに、叩き込まない訳がない。

 

 

「10まんボルト!」

 

「バトンタッチ」

 

 

 瞬間、バイウールーがボールに戻り出て来たチラチーノに電撃を散らされてしまう。ラウラ以外にその戦法を使うだと!?

 

 

「チラチーノのスカーフは染み出す油でコーティングされていて、ありとあらゆる攻撃を弾く。電撃だって通じない!」

 

「むう、電撃は効かず、さらに防御力も上がっているか…」

 

「ラウラさんの戦法を真似させてもらったんだ。僕は本気でチャンピオンを目指している!僕をなめてかかってるモコウさんじゃ勝てないよ!」

 

「むっ」

 

 

 その通りだ。正直、ラウラ以外眼中になかった。奴さえ倒せば優勝できると思い込んでいた。だが違うのだ。ナグサたちは、このセミファイナルトーナメントに参加している面子はどれも、あのジムチャレンジを乗り越えてきた強者だ。それが眼中にないなどと、傲慢にも程がある。

 

 

「我は驕っていたようだ。目を覚ましてくれたこと、感謝する。だが容赦はしないぞ!油と言ったな?ならば炎で焼いてくれる!ほのおのきば!」

 

「させない!チラチーノ!」

 

 

 我の指示に対し、ライボルトが繰り出したのは10まんボルト。見れば、チラチーノが電撃を弾きながら笑顔で拍手していた。指示なしで技を出したのか…!?

 

 

「アンコールか…!」

 

「この隙に叩くぞ!タネマシンガン!」

 

「10まんボルトで蹴散らせ!」

 

 

 手にした複数の種を口に含み、弾丸の如き勢いで吐き出されたそれを、電撃で蹴散らすがじり貧だ。交代するしかない。

 

 

「戻れ、ライボルト!行け、パッチラゴン!」

 

 

 我が次のポケモンを出すとざわめく観客席。この反応にももう慣れたな。とりあえずお返しをしてやろうか。

 

 

「ドラゴンテール!」

 

「しまっ…チラチーノ避けて…!?」

 

「遅い!」

 

 

 張り切っているパッチラゴンの尻尾のビンタがチラチーノの顔面に炸裂、吹き飛ばして強制的にポケモンを交代させる。出てきたのは不運なことにバイウールー。こちらとしてはラッキーだが。

 

 

「きしかいせいだ!」

 

「でんげきくちばし!」

 

 

 突撃してくるバイウールーを、勢いを利用して電撃を纏ったくちばしを叩き込んで戦闘不能にする。危なかった。

 

 

「なかなかクレバーな攻撃するじゃないかナグサ」

 

「ノーマルタイプを使うなら工夫が必要なんだ。頼むぞイエッサン!」

 

 

 次に繰り出したのは、確かノーマル・エスパータイプのイエッサン。見た目からして♂か。なにをしようとスピードと火力で潰してくれる!

 

 

「まずはその足を奪う!イエッサン、トリックルームだ!」

 

「なんだと!?」

 

 

 フィールド全体を囲む四角状の空間が展開される。速ければ速いほど遅くなり、遅ければ遅いほど速くなる。我対策としてはドンピシャといっていい。…まあその対策もあるわけだが。

 

 

「交代だ」

 

「無駄だ!モコウさんのポケモンはみんなすばやいって調べはついて…はっ!?」

 

「そうとも。我のことを調べたなら知っているだろう。我のポケモンの中で最も鈍足なこやつのことをな!出番だ、パッチルドン!」

 

 

 

 私が繰り出したのは、パッチラゴンとよく似た顔と腕だが、下半身が凍り付いている魚の様という異様なポケモン。その名もパッチルドンだ。

 

 

「めいそう!」

 

「やらせるか、ゆきなだれ!」

 

「逃げろ、イエッサン!」

 

 

 めいそうを積もうとしてきたのでゆきなだれで妨害する。こいつは鈍足なポケモンだ。本来は耐えて強力な攻撃を叩き込むポケモンなのだが、トリックルームのおかげですばやく強力な攻撃を撃てるようになった。

 

 

「逃がすな、ほうでん!」

 

「イエッサン!くっ、めいそうだ!」

 

 

 なにを考えたのか立ち止まって冥想するイエッサンに、ほうでんが直撃する。とくぼうを上げると言っても限度があるぞ?

 

 

「アシストパワーだ!」

 

「っ!ゆきなだれ!」

 

 

 放たれた光線に、咄嗟にゆきなだれを指示。光線はパッチルドンに直撃し、同時にゆきなだれも炸裂。二体同時に戦闘不能になる。

 

 

「これであと四匹…いけ、ヨクバリス!」

 

「ふむ。…ロトム」

 

 

 ナグサが繰り出したのはヨクバリス。我はウォッシュロトム。タフさとスピードが自慢の一匹だ。

 

 

「のしかかり!」

 

「みがわりだ」

 

 

 ポコン、とロトムの姿が消え、人形が配置。ヨクバリスの攻撃を人形が受け止める。やはりロトムのみがわりを倒すほどの攻撃力も無いか。他に強力な技がある筈だ。

 

 

「ほうでんで様子見だ」

 

「くっ…ほおばる!」

 

「むっ?」

 

 

 放電を受けながら持っているきのみを食べるほおばる?何故このタイミングで?

 

 

「今だ!ゲップ!」

 

 

 その瞬間、ロトムの身代わり人形が消し飛んだ。なるほど、どくタイプの強力な技、ゲップ。たしか、戦闘中にきのみを消費した状態じゃないと撃てない代わりにはかいこうせんクラスの威力を誇る技。タイプ不一致とはいえこれは不味いな。

 

 

「逃げながらほうでん!」

 

「ゲップだ!」

 

 

 放電を受けながらすばやい身のこなしで紫色の気体を飛ばしてくるヨクバリス。トリックルームのおかげで速いとはいえあちらも大概タフだな。だがそろそろ…

 

 

「まひしてきたんじゃないか?」

 

「っ!?」

 

「ハイドロポンプ!」

 

 

 命中率が低い代わりに強力なみずタイプの技が炸裂し崩れ落ちるヨクバリス。ノーマルじゃなかったらたたりめを当てたかったがしょうがない。これで三体倒した訳だ。残り二体、チラチーノと…おそらくは、重量級のあいつだ。トリックルームが解除された。ここからだ。

 

 

「がんばれチラチーノ!」

 

「交代だ」

 

 

 まずは電撃を防いでしまうあのスカーフを攻略しなければ。となるとやはり…

 

 

「エース対決と行こうか!パッチラゴン!」

 

 

 物理に長けたこいつしかあるまい。

 

 

「でんげきくちばし!」

 

「ロックブラスト!」

 

 

 体毛を固めて放ってくるチラチーノの攻撃を受けながら突進、電撃を纏った嘴を叩き込むパッチラゴン。しかし電撃が拡散されて思ったよりダメージが出ない。

 

 

「つばめがえしで邪魔なスカーフを外してやれ!」

 

「させるなチラチーノ!スイープビンタ!」

 

 

 硬い尻尾での反撃をもらうが、つばめがえしで打ち上げてスカーフを胴体から引きはがす。そこが急所だ!

 

 

「でんげきくちばし!」

 

 

 そして落ちてきたところに胴体に電撃を纏った嘴が炸裂。チラチーノは崩れ落ちた。

 

 

「ここまでとは…でも、僕たちは負けない!耐え忍んで勝機を見出す!カビゴン!」

 

 

 最後に繰り出されたのはやはりというかなんというか、カビゴン。それもただのカビゴンじゃないだろう。

 

 

「好きなだけ食べろ!相手ごと喰らい尽くす!キョダイマックス!」

 

 

 ボールに戻して巨大化させ、振りかぶって投擲するナグサ。キョダイマックスしてお腹が草木の茂った土地の様になり、その姿はまるで山のようなカビゴンと対峙するパッチラゴン。さあ、少しでもダメージを稼ぐんだ。

 

 

「でんげきくちばし!」

 

「ダイアース!」

 

 

 こちらの方が速く、でんげきくちばしが炸裂するも、手足をばたつかせたカビゴンの地割れの様な攻撃が炸裂、戦闘不能になるパッチラゴン。出すしかないか、虎の子を。

 

 

「いいだろう、お前に敬意を持って…本気で相手をしてくれよう!ストリンダー!」

 

 

 そして我が繰り出したのはハイのすがたのストリンダー。すぐにボールに戻し、片手で天高く放り投げる。

 

 

「我の生き様!我のロック魂をこの世に見せつけろ!雷鳴起こして雷神と化せ!キョダイマックス!」

 

 

 爬虫類を思わせる四つん這いになり、腰の尻尾は電波塔を思わせる形状に変化。背中には背ビレのような青い電撃が2列発せられ、赤紫になった胸部の発電機官の真ん中二つが水色になっている。キョダイマックスしたストリンダーとキョダイカビゴンが対峙する。

 

 

「キョダイサイセイ!」

 

「キョダイカンデン!」

 

 

 蓄えられた膨大な電力を集束させてエレキギター型の巨大な電気の塊を作り出し、力任せに叩きつけるストリンダー。その一撃は、回復しようとしていたカビゴンのどてっ腹に炸裂し一撃で沈めた。じしゃくの力を舐めるなよ?

 

 

『決着ー!激戦を制したのはでんきつかい、モコウ選手!圧倒的な火力を見せつけました!』

 

「…参りました。カビゴンが一撃で落とされるなら僕のポケモンは誰も敵わない」

 

「ナグサ、お前は強かった。我の全力を引き出せたことを誇りに思うがいい。だが私…ゴホン、我は最速最強。相手が悪かったな」

 

「その自信が強さの秘訣か…武運をお祈りします」

 

 

 ラウラよ。我は勝ったぞ。そんなひこうつかい、さっさと倒して上がってこい。痺れる戦いを我に見せてくれ。




モコウも十分主役を張れると思う。

・モコウ
最速最強を志すでんきつかい。セレブリティな兄弟なる知人がいる。父親たちに何かしらを認めてもらうのが目的。実はポケモン知識はラウラに匹敵するほど博識。

・ナグサ
惜しくも敗れたノーマルつかい。アンコールで妨害しつつ安全に準備して高火力で沈める戦法が得意。ラウラに憧れていてバトンタッチも活用する。ブラッシータウン出身の田舎者。

・バイウールー♂
とくせい:もふもふ
わざ:きしかいせい
   コットンガード
   バトンタッチ
   ボディプレス
もちもの:オボンのみ
備考:ゆうかんな性格。ケンカをするのが好き。防御力を上げてボディプレスかバトンタッチを使い分ける戦法をとる。

・チラチーノ♀
とくせい:スキルリンク
わざ:アンコール
   ロックブラスト
   タネマシンガン
   スイープビンタ
もちもの:オボンのみ
備考:ゆうかんな性格。のんびりするのが好き。アンコールで妨害しつつれんぞくわざで一気に仕留めるナグサの相棒。スカーフでありとあらゆる攻撃を防いでしまう。かわいい(重要)

・イエッサン♂
とくせい:シンクロ
わざ:めいそう
   アンコール
   アシストパワー
   トリックルーム
もちもの:オボンのみ
備考:れいせいな性格。物音に敏感。チームの要。アンコールで妨害しつつめいそう積んでアシストパワーを叩き込む。

・ヨクバリス♂
とくせい:ほおぶくろ
わざ:のしかかり
   ゲップ
   ほおばる
   かみつく
もちもの:オボンのみ
備考:しんちょうな性格。ちょっぴりみえっぱり。トリックルームで本領発揮する動けるデブ。

・カビゴン♀
とくせい:めんえき
わざ:ギガインパクト
   アームハンマー
   ヘビーボンバー
   10まんばりき
もちもの:オボンのみ
備考:ようきな性格。辛抱強い。ナグサの切札。タフさが自慢だったがキョダイストリンダーの前では無力だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSフワライド

どうも、放仮ごです。一ヶ月連続更新達成まであと三日。やり遂げたいところ。

今回はセミファイナルトーナメント四回戦。ラウラVSムツキのリベンジマッチ!共に成長した二人はどんな戦いを繰り広げるのか。楽しんでいただけると幸いです。


「モコウは無事勝ち抜いたか」

 

 

 控室でモコウの雄姿を見届けた俺は、リーグスタッフに呼ばれてスタジアム内に足を運ぶ。反対側からゆっくりと歩いてくるのはムツキ。歩けるぐらいには回復したようで何よりだ。

 

 

『続きましては、第4試合!ルールはこれまで同様5VS5のシングルバトル!むしポケモンつかいのラウラ選手VSひこうタイプ使いのムツキ選手、特定タイプのエキスパート同士の対決その二です!』

 

「初戦が貴女とは、まるで運命ですね。前みたいな無様は見せないで下さいよ?」

 

「心配無用。あの時の俺じゃないさ。リベンジマッチだ。蟲の底力見せてやるよ」

 

 

▽ひこうつかいの ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

 そして試合開始の合図と共に、俺はイワパレスを、ムツキはオンバーンを繰り出した。

 

 

「ひこうタイプ対策してきたみたいですが練度の差の前では無駄です!りゅうのはどう!」

 

「ステルスロック!」

 

 

 前回と同じく、ムツキのポケモンは基本的に補助技無しのフルアタ構成だ。オンバーンの攻撃を受け止め、尖った岩石をばら撒く。これでひこうタイプの動きは制限されたはずだ…!?

 

 

「マクワもその戦法をやってきましたよ!なので、もう何も考えずに撃ちまくることにしました!」

 

「なに!?」

 

「りゅうのはどうです!」

 

 

 文字通り、竜の形をしたエネルギー弾を連射してくるオンバーン。ステルスロックを微塵も警戒しておらず、掠ってダメージを受けている。ムツキらしいといえばらしいが、それは悪手だぞ。

 

 

「強力な攻撃…当たらなければどうということはない!からをやぶる!ステルスロックを利用して翻弄しろ!」

 

 

 りゅうのはどうを受けたと思えば背負っていた岩盤から抜け出したイワパレスが殻を破ってステルスロック上を跳ねて高速で移動。オンバーンを翻弄してステルスロックにぶつけていく。

 

 

「もう全部吹き飛ばしてしまいましょう!ぼうふう!」

 

「ステルスロックにしがみついてがんせきほうだ!」

 

 

 翼を大きく羽ばたかせて荒れ狂う暴風を発生させるオンバーン。だがぼうふうはあくまで吹き飛ばして叩きつける技。イワパレスはステルスロックにしがみついて耐え凌ぎ、ぼうふうを終えたオンバーンに飛びついてがんせきほうを炸裂させ戦闘不能にした。

 

 

「むっ…私のオンバーンの攻撃を凌ぐとは大した防御力ですね。フワライド!」

 

「来たな。交代だ、オニシズクモ!」

 

 

 繰り出されたのは前回はムツキが唯一戦術らしい戦術を使ったフワライド。ステルスロックでダメージを受けたのを見届け、俺はがんせきほうの反動で動けなくなったイワパレスを一度戻し、オニシズクモを繰り出す。前回、俺とオニシズクモはこいつにしてやられた。それを覚えているのかやる気満々と言った様子のオニシズクモに頷く。やるぞ!

 

 

「そらをとぶ!」

 

「気を付けろオニシズクモ!」

 

 

 ステルスロックのない上空へ移動したフワライドに、俺達は警戒する。ステルスロックがあるとはいえ、ムツキとの戦いはドラピオンとイワパレス以外はひこうタイプの技の直撃をもらったら負けだ。

 

 

「例の奴です」

 

「はっ?」

 

 

 急降下してくるフワライドの攻撃を飛び退いて避けたかと思えば、そのまま粉塵を起こすと共に姿を消すフワライド。一瞬頭が真っ白になるが、ルミナスメイズの森のことを思い出す。そういうことか…!

 

 

「今度は下に警戒しろ!」

 

「ゴーストダイブ」

 

 

 自身の影から飛び出してきたのを、間一髪逃れるオニシズクモ。するとムツキはそらをとぶとゴーストダイブを不規則に繰り返し、上空と真下からの連続攻撃…否、爆撃とも言っていい攻撃が絶え間なく襲いかかる。

 

 

『これは、ゴースト・ひこうタイプであるフワライドならではの戦法!ラウラ選手のオニシズクモ、なんとか耐えていますがこれは時間の問題かあ!?』

 

「好き勝手言ってくれるな…!」

 

 

 ふと聞こえてきた実況に悪態を吐きながら考える。オニシズクモのすいほうが振動を感知して震えてくれてるから何とか避けていられるが、実況の言う通り時間の問題だ。あの、垂直落下と気球であるが故の急速上昇を利用した攻撃はそれほど厄介だ。

 

 

「どうです、以前の私とは比べ物になりませんよ!この戦法でマクワやキバナに勝利したのですから!」

 

 

 そう腕組みして踏ん反り返るムツキ。こんな奥の手を用意してたのかムツキの奴め、ドヤ顔なのが腹が立つ。だが…最近覚えた戦法なのだろう、不規則だと思っていたが一定のリズムを刻んでいて安直だ。タイミングが読めて来たぞ。ゴーストダイブで影に飛び込んで、オニシズクモのすいほうの波紋を確認して…

 

 

「そこだ、とびかかる!」

 

「なあ!?」

 

 

 そらをとぶために飛び出してきたところに、がっしりと組み付いて共に上昇するオニシズクモ。引っ付けたらこっちのもんだ。

 

 

「振り落としなさい!」

 

「バブルこうせんだ!」

 

 

 引っ付き前足の先端からバブルこうせんを放って零距離からダメージを与えながら急速上昇するオニシズクモが、急停止したフワライドから勢いを殺せずに吹っ飛んで空に投げ出される。だけど、上は取ったぞ。

 

 

「シャドーボール!」

 

「急降下の勢いを利用してアクアブレイクだ!」

 

 

 紫色のエネルギー弾で迎撃せんとするフワライドに、落下の勢いそのままにアクアブレイクを発動したオニシズクモが隕石の如く迫り、エネルギー弾を真正面から打ち破って激突。やったか?と思ったがムツキは諦めていなかった。

 

 

「そらをとぶです!」

 

「なに!?」

 

 

 アクアブレイクが直撃する寸前に、上空でさらに空へ、つまりオニシズクモに自ら突っ込んだフワライドが激突。共に落下してきた二体は、どちらも共に戦闘不能だった。

 

 

「以前戦ったポケモンでも侮れませんね。…いえ、貴女を敗北させたからこそでしょうか。でも、ただでは負けませんよ」

 

「よく咄嗟にあの判断が出来たな…次だ。ドラピオン!」

 

「ならば私は再びこの子で打倒して見せましょう。ルチャブル!」

 

 

 共に、接近戦専門の物理特化型ポケモンが繰り出される。因縁の敵を前に、雪辱を晴らさんとすべく殺気を漲らせるドラピオン。対して挑発するようにクイクイと指を動かし不敵に笑むルチャブル。技の「ちょうはつ」ではないが、頭に来たようで怒り心頭と言った様子のドラピオンに話しかける。

 

 

「落ち着け、奴は素早いからまずは足を奪うぞ。お前ならやれる、信じてるぞ」

 

 

 すると落ち着きを取り戻したドラピオンが両腕を振り上げて威嚇、眉を顰めるルチャブル。それを見てムツキが不敵に笑んだ。

 

 

「イワパレス以外は同じポケモンで戦ってるんです、あの時と同じにならないでくださいよ」

 

「お前のおかげで俺は、俺達は敗北を知った。だから強くなれたんだ。いくぞドラピオン、こおりのきばで大地を凍らせろ!」

 

「っ!」

 

 

 冷気を纏った牙をフィールドに突き刺し、氷漬けにしていくドラピオンに、ムツキが見せたのは満面の笑みだった。

 

 

「予習済みです。とびはねる!」

 

「なに!?」

 

 

 ひこうタイプでありながら地を駆けるルチャブルの足を奪うべく放った技は、天高く跳躍したルチャブルに回避されてしまう。しまった、あいつはあれで影で努力を怠らないタイプだ。今までの試合の映像をムツキが見てない訳がない。

 

 

「その高さからフライングプレス!」

 

「ミサイルばりで迎え撃て!」

 

 

 まるでさっきのオニシズクモの意趣返しと言わんばかりに隕石の如く腹ばいに急降下してくるルチャブルに、大地をも砕くミサイルばりを全弾叩き込むが、相性が悪いせいかビクともしない。なら賭けに出るしかないだろう!

 

 

「タイミングは任せる、クロスポイズン!」

 

「つばめがえし!」

 

「なに!?」

 

 

 ルチャブルの急所を狙って放たれた毒を纏った交差の斬撃は、ルチャブルが空中で身を捻ったことで空振りに終わり、呆けてしまったドラピオンを尻目に氷結した大地に降り立って踏み込んだルチャブルは加速して突撃してきていて。あの、大仰な攻撃は隙を作るための囮だと!?

 

 

「ドラピオンがタフなのは知っているんですよ!とびひざげり!」

 

「もう一度クロスポイズンだ!」

 

 

 我に返ったドラピオンの振り下ろしと、ルチャブルの飛び込みが交差。ドラピオンの攻撃は当てることが出来たものの急所は狙えず、胴体に強烈な一撃をもらったドラピオンは崩れ落ちた。…これは完敗だ。

 

 

「これでイーブンです。此処からは圧勝して見せましょう」

 

「言ってろ。お前にだけは、負けられない!テッカニン!」

 

 

 行くぞテッカニン。生まれ変わったお前の力を見せてやれ!




フワライドもルチャブルも書いていて楽しいぐらい暴れさせてみました。

・ラウラ
レベルだけが戦いじゃないと言わんばかりに、ステルスロックを活用したりすいほうを利用したりと奇策を見せつける蟲の女王。ムツキのポケモンに対する戦術は全部考えており、技術でレベルの差を補っている。オニシズクモとドラピオンがやられたことは計算外であり、ムツキの成長に正直一番驚いているがマクワ戦を見せた自分のせいである。

・ムツキ
ラウラVSマクワの戦いから、自分なりのスタイルを見出した空の大天使。言うなれば力任せな戦術。元々強力だったのが付け焼刃とはいえ戦術を手に入れてさらに強くなった。フワライドの上下爆撃は自信作。ルチャブルのフェイント攻撃は、実はドラピオンのクロスポイズンが危ういと見抜いて咄嗟に指示したもの。ド派手ながら繊細な戦闘スタイルは母親の才能を受け継いでいる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアーマーガア

どうも、放仮ごです。UAが50000を越えましたありがとうございます!

今回はラウラVSムツキ、決着。そしてオリジナルキョダイマックスが登場します。楽しんでいただけると幸いです。


「いくぞテッカニン!」

 

 

 ボールから飛び出したテッカニンは、ステルスロックを掻い潜ってジグザグに飛行し加速。周囲を回りながらルチャブルを翻弄。砂塵が舞ってステルスロックが姿を現すことで、逆にその陰に隠れて高速で移動を繰り返す。その姿はまるで忍者だ。

 

 

「まどろっこしいですね!とびはねるで上空から狙いなさい!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 ルチャブルが飛び上がろうと隙を見せた瞬間、鋭く加速して襲いかかるテッカニン。それを咄嗟に避けるルチャブル。

 

 

「つばめがえしで応戦です!」

 

「つるぎのまいで防御だ!」

 

 

 蹴りと拳の鋭い一撃が連続で放たれ、それを的確に両手で受け止めていくテッカニン。複眼で相手を観察し、どこにくるかを見た上で対処している。蟲ポケモンならではの格闘戦だ。

 

 

「かげぶんしん!」

 

 

 追い詰められたところで影分身を作って退避、ルチャブルが空ぶった背後に回る。

 

 

「ルチャブル、後ろです!フライングプレス!」

 

「決めろ!シザークロス!」

 

 

 両手の振り下ろしが、跳び上がろうとしていたルチャブルの首背面、急所に叩き込まれてルチャブルは撃沈。戦闘不能になる。ほとんど何もさせずにルチャブルを倒した、仇は取ったぞドラピオン。

 

 

「ルチャブルまでやられるとは…バトンタッチするかと思えばそのままくるとは」

 

「バトンタッチは忘れさせた。あいつはもう、自分の力だけで戦える」

 

「ふむ。ならば相棒、出番です!」

 

 

 繰り出されたのはウォーグル。ムツキはウォーグルも入れて残り二体。対して俺の手持ちはテッカニン、イワパレスとあと一体。数では勝っているが、あのウォーグルは一筋縄じゃいかない。

 

 

「ブレイククロー!」

 

「シザークロスで受け止めろ!」

 

 

 飛び蹴りの様な鋭い爪の一撃を、何とか受け止めて弾き飛ばされるテッカニン。するとウォーグルはそのまま上空に移動し、溜め動作をする。アレは…!?

 

 

「ゴッドバード!」

 

「かげぶんしんで全力で避けろ!」

 

 

翼を折りたたんで加速し、凄まじい勢いで突撃してきたウォーグルを、影分身を駆使して回避するテッカニン。地面が抉られたその威力は圧巻の一言だ。

 

 

「私のポケモンの中で最も練度が高いのが相棒であるウォーグルです。終わらせてあげます、ブレイククロー」

 

「もう一度シザークロスで受け止めろ!」

 

 

 再び飛び蹴りを繰り出すウォーグルに、咄嗟にテッカニンに指示するがそれは悪手だった。

 

 

「受け止めると思いましたよ。フリーフォール!」

 

「しまった!?」

 

 

 ブレイククローを受け止めた、その瞬間掴み上げられ上空に連れ去られるテッカニン。

 

 

「つるぎのまいで抜け出せ!」

 

「逃がしませんよ、落としなさいウォーグル!」

 

 

 指示通りにつるぎのまいをしようとするテッカニンだが、刃をガッシリと掴まれて抜け出せない。そのまま急速落下してきて地面に叩きつけられ、こうかばつぐんを紙耐久のテッカニンが耐えられるはずもなく、戦闘不能になった。フリーフォールは駄目だ、ほとんど何もできなくなる。なら重いイワパレスで…

 

 

「くっ…イワパレス!」

 

「あくまで最後の一匹は残しますか。ですが甘い!ばかぢから!」

 

 

 渾身の力を込めたウォーグルの蹴りつけが、イワパレスの背負う岩板を抉りぶち抜いた。…さすがにこれは駄目か。さすがムツキの相棒だ。俺も切札兼相棒を出すしかないか。

 

 

「デンチュラ!」

 

「あの時の戦いの再現ですねえ!あっけなく潰れないでくださいよ!ブレイククロー!」

 

「横に避けていとをはく!」

 

 

 ウォーグルの飛び蹴りを横に回避して糸を飛ばし、ウォーグルの首を縛って空に舞い上がるデンチュラ。このままほうでんを撃っても当たらないのは目に見えている。確実に当てる!既に見えているステルスロックを掻い潜りながらデンチュラを振り落とそうとするウォーグルと、空中で身を捩ってステルスロックに当たるのを右に左に避けていくデンチュラ。その光景は前世で見たグリーン●ブリンとスパイダー●ンの対決そのままだ。

 

 

「っ!?振り落としなさい!」

 

「逃がすな、エレキネット!」

 

 

 ぶらんぶらん振り回されながらもエレキネットを次々と飛ばし、掠らせてウォーグルの機動力を奪っていく。そしてふらふらと降りてきたところを狙ってエレキネットを放ち、捕縛したウォーグルを空中でステルスロックに引っ付き遠心力のままに地面に叩きつけるデンチュラ。

 

 

「ほうでんだ!」

 

 

 さらに身動きが取れないところに電撃が炸裂し、ウォーグルは戦闘不能になった。共に最後のポケモンだ。

 

 

「ウォーグル、よく頑張りました。最後の一匹まで追い込んだこと、さすがです。行きますよ、アーマーガア!」

 

 

 ムツキが繰り出したのは色違いのアーマーガア。マクワ戦の時は持ってなかった一体だ。アレがムツキの六匹目か。

 

 

「風よ吹き荒れろ、その巨翼を持って世界を嵐で包み込みなさい!キョダイマックス!」

 

 

 すぐにボールに戻し、ダイマックスバンドからダイマックスエネルギーを溢れさせて巨大化、天高く放り投げるムツキ。すると遥か上空で解放されたアーマーガアがみるみる大きくなり、キョダイマックスとしての姿を見せる。アーマーが分離した攻撃用小型ユニット、ブレードバードが八枚飛び交う姿はさながら空中要塞だ。

 

 

「俺達も切札を見せるぞ、デンチュラ!」

 

 

 俺の呼びかけに両前足を振り上げてやる気十分という意を見せるデンチュラ。気付いたのは、ポプラ戦後だった。ロトム図鑑のマルヤクデの表示に記されていた謎のマークが、デンチュラにも浮かび上がっていたのだ。他のポケモンとマルヤクデの違いと言えば一つしかない訳で。それから試そうとして、相性最悪ないわ→ダイマックスできないあく→相性最悪なドラゴンと続いてしまったことで今まで試せなかった、俺達の切札。ボールに戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化。アンダースローで地面を這うように投げつける。

 

 

「行くぞ!蟲の底力を見せてやれ!キョダイマックス!」

 

 

 その瞬間、空に浮かぶマゼンタ色の暗雲が雷雲へと変わり、雷が幾つもフィールドに落ちながらデンチュラは巨大化。さらに胴体のフォルムはそのままで足が全て巨大化してアシダカグモの様になり、複眼がシアン色に輝き、その全身も同じシアン色に光り輝く蒼雷を帯電する。そして跳躍したかと思えば口から超巨大なエレキネットを観客席と反対側の観客席の間に張り、その上に乗っかった。その姿はまるで、前世で見たゴジラシリーズに登場するクモンガ、もしくはクトゥルフ神話のアトラク=ナクアにそっくりだった。

 

 

「これが…キョダイデンチュラ…かっけえ!美しい!最高だ!」

 

 

 その雄姿に感動しながらも慌てて図鑑を確認する。きゅうけつが新たな技に変わっていた。よし…いくぞ!

 

 

「全て全て天高く吹き飛ばせ!キョダイフウゲキ!」

 

「世界にお前の巣を張る時だ!キョダイクモノス!」

 

 

 エレキフィールドやら何やらを全てを吹き飛ばす風の一撃が放たれるが、落ち着いて迎撃を指示。するとデンチュラは口から吐き出した黄色い糸を両前足で蜘蛛の巣状に展開してキョダイフウゲキを防御。蜘蛛の巣に引っ付いたブレードバードごとキョダイアーマーガアに返した。

 

 

「そ、そんなもの!吹き飛ばしなさい、キョダイフウゲキ!」

 

「効果は対象に確定まひ+でんきタイプも兼ねた攻撃、だ!」

 

 

 効果抜群のキョダイクモノスを受けて痺れるキョダイアーマーガア。技を繰り出そうとするものの麻痺して動けない。ここが狙い目だ。

 

 

「ダイサンダーだ!」

 

「くっ…ダイウォール!」

 

 

 続けて放ったダイサンダーを、咄嗟にダイウォールで防ぐムツキ。しかし、三回技を行使したことでアーマーガアのキョダイマックスは解かれてしまう。

 

 

「こうなったら…ブレイブバード!」

 

「キョダイクモノスだ!」

 

 

 最後に起死回生だと言わんばかりに突撃してくるが、麻痺してすばやさの下がったアーマーガアに攻撃を当てるのは容易で。巨大なエレキネットで地面に張り付けにされたアーマーガアはそのまま感電して戦闘不能になった。張りつめていた気が崩れたのかへなへなと崩れ落ちるムツキ。対して俺は元に戻ったデンチュラと共に勝鬨を上げる。俺達の、勝利だ。

 

 

『決着!決着ぅ!激闘の接戦を制したのは、タイプ相性を物ともせず覆して見せたむしつかい、ラウラ選手!ムツキ選手はここで惜しくも敗退となります!』

 

「…完敗です。…本当に、強くなりましたね。いや、元々貴女は強いのですか。そうですか」

 

「俺の勝ちだ。礼を言う、ムツキ。お前のおかげで俺達は強くなれたんだ」

 

「…それは、光栄ですね」

 

 

 駆け寄って手を貸してやると、立ち上がり笑みを浮かべたムツキ。ふと観客席を見やった彼女が、一瞬固まったように表情を強張らせたので振り返ってみると、そこにはリーグスタッフの格好で、こちらに娘と心なしかそっくりな笑みを向けるキリエさんがいた。その隣には夫らしき男性が座っている。ムツキの両親か。

 

 

「…はあ。母さんのいないジムチャレンジなど簡単だ、とチャンピオンを目指していたわけですが…まさか貴女に負けるとは。母さんもあの調子ですし、家出したのが馬鹿みたいです。なんのためにジムチャレンジに挑んだのやら」

 

「少なくとも、俺達は出会えただろ?」

 

「そうですね。癪に障りますが貴女に出会えたおかげで成長できたような気がします。ありがとうございました、優勝してチャンピオンに勝たないと許しませんよ?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

 

 そして俺はムツキに肩を貸しながら、共にフィールドから退場するのだった。…次はユウリVSホップの準決勝か。どっちが勝つのかね。俺も、モコウを倒すために作戦を練らなきゃな。




キョダイデンチュラのデザインは個人的渾身の傑作。

・ラウラ
キョダイデンチュラの雄姿に心底惚れた蟲の女王。目をキラキラ輝かせ過去最高にハイテンションな姿にファンが増えたとか。

・ムツキ
惜しくも一回戦敗退した空の大天使。ウォーグルが奮闘したから接戦になっただけで、トレーナーとしては完全に敗北していると思ってる。見に来ていた親に対しては複雑な気持ち。

・キリエ
どっかのチャンピオンと同じく熱戦に感化されて自分も参戦しそうになってたリーグスタッフの一人にして元ジムリーダー。ムツキには内緒で夫を連れて観戦していた。リーグスタッフであることをいいことにムツキが泣いてたら慰めようとか画策している。

・ムツキの父親
今回初登場。マクロコスモス所属の病院の医者。ムツキが吐血しないか心配しながら見てたが、ムツキの成長と友人ができたことに感動していた。ムツキには自分も治せない医者だと嫌われている。

・テッカニン♀
とくせい:かそく
わざ:つるぎのまい
   シザークロス
   つばめがえし
   かげぶんしん
もちもの:ぎんのこな
備考:せっかちな性格。暴れるのが好き。バトンタッチを忘れてシザークロスを覚えたことで自身で戦えるように。かそくしまくって回避しつつ、剣舞で防御しながら攻撃力を上げて、強力な一撃を叩き込む戦法がメインになった。

・アーマーガア♀
とくせい:プレッシャー
わざ:ブレイブバード
   てっぺき
   ボディプレス
   アイアンヘッド
もちもの:たべのこし
備考:てれやな性格。負けず嫌い。色違い。ムツキの六匹目であり、ダイマックスレイドで捕まえたキョダイマックス個体。マクワやキバナを乗り越えた際にも活躍した。

・キョダイデンチュラ♂
とくせい:ふくがん
わざ:ダイサンダー(エレキネット)
   ダイサンダー(ほうでん)
   キョダイクモノス(きゅうけつ)
   ダイウォール(いとをはく)
もちもの:じしゃく
備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。実は特殊な個体であり、力を秘めていた。巨大な蜘蛛の巣の上から動かない。モチーフはクモンガとアトラク=ナクア。

・キョダイクモノス
むしわざが変化したキョダイマックスワザ。むしタイプの攻撃でありながらでんきタイプの攻撃でもあり、みずやひこうタイプに抜群を取れるし地面タイプには効果がない。追加効果で相手を確定で麻痺させる他、形成する途中の蜘蛛の巣で物理攻撃を防ぐことも可能。イメージは巨大なエレキネット。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板2

どうも、放仮ごです。準決勝まで来たんでまとめの掲示板回を書いてみました。楽しんでいただけると幸いです。


セミファイナルトーナメントについて語るスレ

 

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

キョダイマックス相手でも引けを取らないユウリ選手のインテレオンよ

 

65:名無しのトレーナー

おお、ユウリ選手が勝った

 

66:名無しのトレーナー

半ば圧勝だったな。マリィ選手も奮闘してたが

 

67:名無しのトレーナー

話には聞いていたけどねこだましからの強攻撃がえげつないな

 

68:名無しのトレーナー

次は誰だっけ?

 

69:名無しのトレーナー

チャンピオンの弟君とよくわからないひと

 

70:名無しのトレーナー

名前すらあまり知られてないマサル選手だな

 

71:名無しのトレーナー

ここまで勝ち残っただけ優秀なんだろうけどねえ

 

72:名無しのトレーナー

他が目立っていてなあ

 

73:名無しのトレーナー

化け物連中の中に一人だけいる一般人君

 

74:名無しのトレーナー

嵐を呼ぶ女、ネズの妹、チャンピオンの弟、ライトニング・アルバトロス、ノーマル統一、蟲の女王、空の大天使…うーん、1人だけ役不足

 

75:名無しのトレーナー

あっ、瞬殺された

 

76:名無しのトレーナー

五匹全部一撃とかマ?

 

77:名無しのトレーナー

チャンピオンの弟君強すぎぃ!

 

78:名無しのトレーナー

というかバイウールーがつええ。すてみタックルで一撃っておま

 

79:名無しのトレーナー

さすがチャンピオンの弟や

 

80:名無しのトレーナー

あまりに早すぎて次に出て来たモコウ選手とナグサ選手が困惑してる件

 

81:名無しのトレーナー

モコウ選手待ってたぞー俺好きなんや

 

82:名無しのトレーナー

別のスレで極度のドジっ子だと判明してムツキ選手以上に属性過多だと知られて人気が上がったんだよな

 

83:名無しのトレーナー

そのムツキ選手とは犬猿の仲ってのも人気に拍車をかけてるな

 

84:名無しのトレーナー

ノーマル使いってことはホルードいるかねナグサ選手

 

85:名無しのトレーナー

どうやろ。六匹だけエントリーして選んでのバトルだから、そもそも入れてない説あるな

 

86:名無しのトレーナー

ナグサ選手の初手はホップ選手と同じバイウールー、モコウ選手は相棒のライボルトか

 

87:名無しのトレーナー

ライボルトは物理メインだからコットンガードされたらきついな…

 

88:名無しのトレーナー

言ってる側からやられたな

 

89:名無しのトレーナー

ほのおのきばで炎上してるよバイウールー…

 

90:名無しのトレーナー

もふもふのせいで燃え広がってて草

 

91:名無しのトレーナー

メリットでありデメリットの特性だからなあw

 

92:名無しのトレーナー

バトンタッチ!?

 

93:名無しのトレーナー

ラウラ選手お得意のアレか!

 

94:名無しのトレーナー

ナグサ選手はラウラ選手に憧れてたらしいって情報があるからおかしくないぞ

 

95:名無しのトレーナー

チラチーノつえええ!

 

96:名無しのトレーナー

電撃を寄せ付けない上にアンコール…見事にハマったな

 

97:名無しのトレーナー

チラチーノはナグサ選手の相棒らしいな。さすがの強さ

 

98:名無しのトレーナー

モコウ選手はエースのパッチラゴンだ

 

99:名無しのトレーナー

ドラゴンテールで強制交代させにきたか

 

100:名無しのトレーナー

出てきたのは黒焦げのバイウールー。あー、終わったな

 

101:名無しのトレーナー

きしかいせい使ったけどさすがにな。次はイエッサンか

 

102:名無しのトレーナー

トリックルーム!速攻タイプのモコウ選手にはきついぞ

 

103:名無しのトレーナー

いつからモコウ選手に鈍足のポケモンがいないと錯覚していた?

 

104:名無しのトレーナー

なん……だと……

 

105:名無しのトレーナー

パッチルドン…これまた可哀想なポケモンが出て来たな

 

106:名無しのトレーナー

寒そう

 

107:名無しのトレーナー

今にも凍り付きそう

 

108:名無しのトレーナー

でも相討ちに持ち込んだか、熱いな

 

109:名無しのトレーナー

お次はどんなポケモンだ?

 

110:名無しのトレーナー

ファッ!?ヨクバリス!?

 

111:名無しのトレーナー

そんなポケモンをこのガチ試合で使う奴いるんか!?

 

112:名無しのトレーナー

ここにいるんだよなあ

 

113:名無しのトレーナー

モコウ選手はウォッシュロトムか

 

114:名無しのトレーナー

打たれ強いいいポケモンだな

 

115:名無しのトレーナー

そしてヨクバリス君、渾身のゲップ

 

116:名無しのトレーナー

きたねえ

 

117:名無しのトレーナー

けど強いぞ

 

118:名無しのトレーナー

ほうでんで麻痺させてハイドロポンプか、モコウ選手ド派手なわりに堅実な戦法を取るよな

 

119:名無しのトレーナー

キャラ作ってるけど本当は大人しそうだよな…

 

120:名無しのトレーナー

チラチーノもあっさり倒してナグサ選手は最後のポケモンか

 

121:名無しのトレーナー

キョダイマックス!?

 

122:名無しのトレーナー

結構レアなのになんでそんな普通に持ってるんだ…?

 

123:名無しのトレーナー

モコウ選手もキョダイマックスしたぞ!?

 

124:名無しのトレーナー

チャンピオンやジムリーダーぐらいでしか見れないレアものの大盤振る舞いだ!

 

125:名無しのトレーナー

我の生き様か、かっこいいじゃないか

 

126:名無しのトレーナー

キョダイカビゴンを一撃で落とした…強すぎない?何か道具持たせてたんかな

 

127:名無しのトレーナー

確かじしゃくを全てのポケモンに持たせているとか聞いたことがあるな

 

128:名無しのトレーナー

時々一人称が私になるのすこ

 

129:名無しのトレーナー

わかる

 

130:名無しのトレーナー

わかりみ

 

131:名無しのトレーナー

次はラウラ選手とムツキ選手か

 

132:名無しのトレーナー

相性的にはムツキ選手の圧勝なんだろうけどラウラ選手だしなあ

 

133:名無しのトレーナー

ほのお、フェアリー、いわ、ドラゴンのジムをむしで乗り越えてるしなあ

 

134:名無しのトレーナー

初手は…イワパレスとオンバーンか

 

135:名無しのトレーナー

相性的にはまずまずだな

 

136:名無しのトレーナー

さすがにひこう対策がないわけじゃないか

 

137:名無しのトレーナー

デンチュラかと思ったけどイワパレスなんだな

 

138:名無しのトレーナー

温存してるんじゃね

 

139:名無しのトレーナー

そしてお得意のステルスロック

 

140:名無しのトレーナー

もはや岩使いじゃないかと言わんばかりにラウラ選手の定番だ

 

141:名無しのトレーナー

からをやぶったイワパレス、はええええ

 

142:名無しのトレーナー

オンバーンが手も足も出てねえ

 

143:名無しのトレーナー

おいおい、むしタイプがひこう・ドラゴンに勝っちゃったよ

 

144:名無しのトレーナー

まさかのラウラ選手先制か

 

145:名無しのトレーナー

次はオニシズクモとフワライドか

 

146:名無しのトレーナー

なんでイワパレス戻したんだ?

 

147:名無しのトレーナー

がんせきほうの反動を考慮したんやろ

 

148:名無しのトレーナー

なんだその高速で動くエレベーターみたいな攻撃!?

 

149:名無しのトレーナー

知らんのか。ムツキ選手がマクワとキバナを翻弄したお得意の戦法だぞ

 

150:名無しのトレーナー

ステルスロックがない所を掻い潜って上下移動してるのか

 

151:名無しのトレーナー

オニシズクモは何でゴーストダイブを避けれてるんだ?

 

152:名無しのトレーナー

おそらく、すいほうの波紋を見てるんじゃと思うが

 

153:名無しのトレーナー

飛び乗った!?

 

154:名無しのトレーナー

凄い空中戦だ

 

155:名無しのトレーナー

相討ちかあ

 

156:名無しのトレーナー

ムツキ選手が咄嗟にそらをとぶを指示したのが上手かったな

 

157:名無しのトレーナー

次はルチャブルとドラピオンか

 

158:名無しのトレーナー

出た、規模がとんでもないこおりのきば

 

159:名無しのトレーナー

それを軽々避けてしまうルチャブルの強者感

 

160:名無しのトレーナー

一瞬の攻防過ぎて何が起こったのか分からんかったけど何が起きた?

 

161:名無しのトレーナー

わしにもわからん

 

162:名無しのトレーナー

とびはねる→フライングプレスをつばめがえしで中断してクロスポイズンを回避、とびひざげり、かな?

 

163:名無しのトレーナー

続けては…テッカニン!?

 

164:名無しのトレーナー

デンチュラは確定として、マルヤクデだと思ったのに…

 

165:名無しのトレーナー

ルチャブルのスピードに対抗するためか?

 

166:名無しのトレーナー

まあバトンタッチで後続に繋げるんだろうなあ

 

167:名無しのトレーナー

いや、自分で戦い始めたぞ?

 

168:名無しのトレーナー

情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ!そして何よりも 速 さ が 足 り な い !!

 

169:名無しのトレーナー

マジでそう言わんばかりの速さでルチャブルを仕留めたな

 

170:名無しのトレーナー

ムツキ選手の次のポケモンは相棒のウォーグルか

 

171:名無しのトレーナー

大天使の由来のポケモン

 

172:名無しのトレーナー

さすがの強さだな

 

173:名無しのトレーナー

見入る

 

174:名無しのトレーナー

あっという間にテッカニンとイワパレスを倒してしまうのはさすがだなあ

 

175:名無しのトレーナー

最後はやっぱりデンチュラか

 

176:名無しのトレーナー

相棒対決

 

177:名無しのトレーナー

いとをはくを使った空中戦…正直、デンチュラかっこいいよな

 

178:名無しのトレーナー

わかる…

 

179:名無しのトレーナー

デンチュラ主役の映画出たら見るわ

 

180:名無しのトレーナー

身動きを取れなくしたうえでほうでん…えげつねえ

 

181:名無しのトレーナー

ムツキ選手の最後はアーマーガアか。しかも色違い

 

182:名無しのトレーナー

キョダイマックスで色違いとかどんだけレアなんですかね…

 

183:名無しのトレーナー

!?

 

184:名無しのトレーナー

デンチュラが…キョダイマックスした!?

 

185:名無しのトレーナー

えっ、デンチュラってキョダイマックス個体いたっけ?

 

186:名無しのトレーナー

いやいや、いないぞ。むしタイプはバタフリーとイオルブとマルヤクデだけだ

 

187:名無しのトレーナー

綺麗でかっけえ

 

188:名無しのトレーナー

ってことは完全な新種じゃないか!

 

189:名無しのトレーナー

ラウラ選手超ハイテンションで可愛い

 

190:名無しのトレーナー

わかる

 

191:名無しのトレーナー

わかりみ

 

192:名無しのトレーナー

目がキラキラしててかわいい

 

193:名無しのトレーナー

キョダイクモノス…えげつないなおい!

 

194:名無しのトレーナー

でんきタイプでもあるむしタイプの攻撃って…しかも確定麻痺

 

195:名無しのトレーナー

キョダイアーマーガアが相手になってねえ

 

196:名無しのトレーナー

さながら鳥ポケモンを絡め取るアリアドスみたいだな

 

197:名無しのトレーナー

アトラク=ナクア…?

 

198:名無しのトレーナー

なにそれ伝説ポケモン?

 

199:名無しのトレーナー

ラウラ選手が勝ったか、相変わらず相性無視してんな

 

200:名無しのトレーナー

むしだけに

 

 

 

・・・・・・・・・




あまりネタを挟めなかった…

・ユウリ
掲示板の扱いはマリィに完勝しているやべーやつ。六匹目は不明、というか持ってない。

・マリィ
あまり語られず敗北した。奮闘はした。

・ホップ
掲示板の扱いはチャンピオンの弟君。マサルを瞬殺した。

・マサル
掲示板の扱いはやべー奴らの中に紛れ込んだ一般人。ホップに瞬殺された。

・モコウ
掲示板の扱いはドジっ子だと判明したムツキ以上の属性過多娘。かわいい。

・ナグサ
掲示板の扱いはヨクバリスを試合で使うやべーやつ。

・ラウラ
掲示板の扱いはタイプ相性無視しているやべーやつ。むしだけに。勝ち残るんだろうなと誰もが予想していた。キョダイデンチュラに対する反応が可愛いと大絶賛。

・ムツキ
掲示板の扱いは咄嗟の指示が上手いやべーやつ。キョダイデンチュラ相手はちょっと同情された。このあとテレビにちらっと映ったキリエとの関係について議論される。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSロトム

どうも、放仮ごです。昨日ツイッターを始めたんですが機械音痴が祟ってなにもわからず悪戦苦闘してます。検索に出ないってどういうことなの…?

今回はラウラVSモコウ、前半戦。さらっとユウリとホップの対決も描かれます。楽しんでいただけると幸いです。


「ハハハハ!我と戦う前にラウラに負けてるではないか!一回勝ったのではなかったのか?!」

 

「うるせーですよ変な髪型。ラウラが私以上に強くなっていただけの話です。ていうかなんで側にいるんですか」

 

「お前こそラウラの隣を陣取りおって。というか誰が変な髪型だ!」

 

「変な髪型に変な髪型と言って何が悪いんですか。でんきが好きだなんてもしかしてドMなんですか?」

 

「むがっ!?お前、でんきタイプに謝れ超謝れ!」

 

「えっ、否定しないんですか…?(ドン引き)」

 

「うるさいぞお前ら」

 

 

 俺達は今、モコウ・俺・ムツキ・通路といった具合に仲良く座ってユウリとホップの対決を観戦していた。どちらもチャンピオンに推薦された選手なためか観客も白熱している。試合が終わりそうになったら俺とモコウは控室に移動する予定だ。ちなみにナグサは誘ったんだが女子三人と一緒は恥ずかしいといって辞退した。まあしょうがない。俺は今世に慣れきって前世が男だったことを忘れそうになっているが。

 

 

「なんでこんな偉そうな変態と仲がいいのか精神を疑います」

 

「なんでこんな厭味ったらしいのと仲がいいのか正気を疑うぞ」

 

「何か言いましたかドジっ子」

 

「エゴサしてまで悪口探してるのか病人よ。ベッドに寝ていたらどうだ?」

 

「貴女、それは禁句ですよ…!」

 

「お?やるか?試合の後でいいなら喧嘩は買うぞ?」

 

「随分仲がいいな。なんなら隣に座るか?」

 

「「絶対嫌だ(です)」」

 

「本当に仲がいいな」

 

 

 と言ってる側から、場面が動いた。猛威を振るっていたユウリのダーテングが、ホップのアーマーガアに倒されたのだ。それでもふいうちでダメージを稼いでいるのはさすがだ。今大会初めて、ユウリがダーテングとインテレオン以外のポケモンを繰り出そうとしていた。

 

 

「やるね、ホップ!私のエースを倒すなんて!なら…出番だよ、セキタンザン!」

 

 

 ユウリが繰り出したのはトロッゴンが進化したであろうセキタンザン。いわなだれで怯ませたところにヒートスタンプが叩き込まれ、ホップのアーマーガアは戦闘不能になってしまう。続けて出されたバチンウニもじしんを受けて撃沈。最後の一体、エースバーンまで追い込まれるホップ。しかし不敵に笑んで見せた。

 

 

「ピンチ?違う違う!ここから俺が勝つのが最高なんだよ!ねがいぼしに込めた想い…今解き放つぞ、エースバーン!ダイマックス!」

 

「ホップはそうでなくちゃ!やっぱり最後はダンデさんにもらったポケモン、だよね!インテレオン!ダイマックス!」

 

 

 共にダイマックス。巨大化したインテレオンとエースバーンが並び立つ。しかして決着は、あまりにもあっけなく。最後の対決まで見入っていた俺とモコウは、雨が降りしきる中で控室に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれ、ホップ」

 

「おう…ああ、ラウラか」

 

 

 控室に行くとちょうどホップが戻ってきたところだったので声をかける。びしょ濡れのホップは目頭を押さえていた手をどけると、俺の肩に置いてきた。

 

 

「ラウラ、頑張るんだぞ!ユウリは俺の知る中で兄貴にも迫るポケモントレーナーだ。強敵だぞ」

 

「おいおい。俺はまだモコウにも勝ってないんだぞ。その台詞はまだ早い」

 

「いいや。俺達の中でお前とユウリが頭一つ抜けているのはなんとなくわかっていた。俺が勝てないなら、ユウリに勝てるのはお前だけだぞ。俺はお前とユウリ、どっちも応援してる!頑張るんだぞ!」

 

「おう。まずは俺の一番のライバルに勝ってくるわ」

 

 

 そう言ってひらひらと手を振りながらフィールドに向かう。負けられない理由がまた一つ増えたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『続きましては、準決勝第二試合!ルールはこれまで同様5VS5のシングルバトル!むしポケモンつかいのラウラ選手VSでんきタイプ使いのモコウ選手、特定タイプのエキスパート同士の対決です!彼女たちはライバル同士との話です。先程のユウリ選手ホップ選手と同じように熱い戦いを繰り広げることに期待です!』

 

 

 ダイストリームによる雨が上がって陽射しが眩しいフィールドの中心で、モコウは仁王立ちで腕を組んで待っていた。俺を見るなり豪快に笑う。

 

 

「待ちくたびれたぞ、ラウラよ!今こそ、因縁の決着を付ける時!」

 

「お前が速すぎるんだよ、モコウ。あの第二鉱山で出会った以来の対決か。一つ気になってたんだ。何度も会ったのになんで俺にバトルを吹っかけてこなかったんだ?」

 

「答えは簡単だ、ラウラよ。あの時我は初めて負けた。その雪辱は、この大舞台で晴らすと決めたのだ!」

 

「なるほど、俺にとってのムツキか。納得だ。じゃあ始めようぜ、また俺が勝ってやる」

 

「言ってろ。あの時の我ではないぞ。思う存分に痺れさせてやろう!」

 

 

▽でんきつかいの モコウが 勝負を しかけてきた!

 

 

「ライボルト!」

 

「マルヤクデ!」

 

 

 俺が繰り出したのはマルヤクデ、対してモコウはライボルト。馬鹿正直にナグサの時と同じポケモンで来たな、火傷にして攻撃力を奪ってやる。

 

 

「おにび!」

 

「ボルトチェンジ!」

 

「なに!?」

 

 

 おにびが炸裂する前に、ボールに戻るライボルト。代わりに出てきたのは、みず・でんきタイプのウォッシュロトム。不味い、やられた!

 

 

「ハイドロポンプだ!」

 

「体勢を低くしてまきつく攻撃!」

 

 

 放たれる激流を、体勢を低くして簡単に避けて俊敏な動きで巻きつくマルヤクデ。みがわりを作っても逃がさないぞ。

 

 

「ほうでんで引きはがせ!」

 

「ほのおのうずだ!」

 

 

 まきついたままほのおのうず、マルヤクデの得意攻撃だ。相性が悪くともやけど+まきつく+ほのおのうずのスリップダメージでかなりの体力を削れる。

 

 

「くっ、ハイドロポンプの射線上には来ないか…!」

 

「わかりやすい攻撃なんて対処しやすいんだよ!」

 

「ならば!地面に向けてハイドロポンプだ!」

 

「っ、離れろ!」

 

 

 なんとロトムに地面に向けてハイドロポンプを撃たせることで巻き付いているマルヤクデに効果抜群のダメージを与えるモコウ。咄嗟に離れる指示をしたがダメージはもらってしまった。

 

 

「ほのおのムチだ!」

 

「ハイドロポンプ!」

 

 

 マルヤクデの放ったほのおのムチが頭上から炸裂、した瞬間にハイドロポンプの直撃を受け、崩れ落ちるマルヤクデ。すぐにやけどとほのおのうずのダメージが入ってロトムも崩れ落ちた。相討ちだ。

 

 

 

「相性不利によくやった、マルヤクデ」

 

「くっ…イワパレスに対する打点を失ったか。だが負けんぞ!パルスワン!」

 

「オニシズクモ!」

 

 

 モコウの繰り出したパルスワンに対し、俺が繰り出したのはオニシズクモ。テッカニン(避ける)オニシズクモ(耐え凌ぐ)かで迷ったが、ほうでんを避けきれないと考えこっちにした。

 

 

「かみなりのきばだ!」

 

「受けてアクアブレイクだ!」

 

 

 素早い動きで噛み付いてきた電気を纏った牙を、前足で受け止めるオニシズクモ。そのまま引き寄せて渾身の水泡を叩き込み、大きく吹き飛ばす。

 

 

「畳み掛けろ!バブルこうせん!」

 

「ワイルドボルトで蹴散らして突っ込め!」

 

 

 軽く吹き飛ばされたパルスワンだったがすぐに立ち直し、電気を纏って突撃してくるパルスワン。オニシズクモは自分で横に回避、なおもワイルドボルトを維持したまま突っ込んでくるパルスワンに、覚悟を決めた顔をした、気がした。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「ワイルドボルト!」

 

 

 そして正面衝突。同時に吹き飛ぶ両者。そのまま二体とも崩れ落ちた。

 

 

「馬鹿な!」

 

「そんな反動がでかい技を連発したらそうなるだろうよ。よく頑張った、オニシズクモ」

 

「むっ、パルスワンの頑張りを無駄にするな!ライボルト!」

 

「頼むぞ、ドラピオン!」

 

 

 モコウは再びライボルト。俺はドラピオン。…この勝負、イワパレスを最後まで温存できるかで変わってくる。頼むぞドラピオン!ムツキの時は負けてしまったが、それでもお前を信じるぞ!




実は最初の戦い以来一度も戦ってなかった二人。ライバルとは。

・ラウラ
やかましいけど両手に花だった精神は一応男性な蟲の女王。完全に体に精神が引っ張られてる。勝ち残る理由がまた一つ増えた。

・モコウ
実はドMだったことが判明したライトニング・アルバトロス。電気が快感らしい。ムツキとは地雷を踏み抜いたりラウラの隣を争ったりと相変わらず犬猿の仲。ラウラとはセミファイナルトーナメントで決着を付けないと気が済まない。

・ムツキ
モコウがドMだと見ぬいて勝手にドン引きした空の大天使。ラウラの隣に座りたいお年頃。裏でキバナにドラゴンタイプのジムトレーナーにならないかと誘われた。

・ユウリ
相変わらずダーテングで無双していたやべーやつ。ダーテングを倒しても隙がないセキタンザンが出てくるため、掲示板などでは無理ゲーだと言われた。ホップ曰くユウリに勝てるとしたらラウラだけ。

・ホップ
惜しくも敗れたチャンピオンの弟。チャンピオンをずっと見てきたためか力の差を何となく察していた。ちなみにラウラを応援するとは言ってるがちゃんとモコウも応援してる。

・ナグサ
オリキャラ三人娘から逃げ出したシャイボーイ。

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VSストリンダ―

どうも、放仮ごです。昨日、今更初詣に行きました。おみくじは中吉でした。何とも言えない…あと、ついにお気に入り1000人突破ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はラウラVSモコウ、後半戦。なんでVSライボルトを以前の話の題名に使ったかなと後悔してます。楽しんでいただけると幸いです。


「ほのおのきばだ!」

 

「クロスポイズン!」

 

 

 炎を纏った牙で胴体に噛み付いてきたライボルトの背中に、クロスポイズンを叩き込む。しかしやけどを負ったのか威力が半減され、倒すには至らない。そのまま組みつくドラピオンとライボルト。膠着状態だ。

 

 

「抱えて地面に叩きつけろ!」

 

「ボルトチェンジだ!」

 

 

 ライボルトを持ち上げて、地面に叩きつける直前電撃がドラピオンに炸裂し、ボールへと戻って行くライボルト。代わりに飛び出してきたのは、ストリンダー。最後に出してくると思っていた俺は度肝を抜かれ、指示が一拍遅れてしまう。

 

 

「ストリンダー!オーバードライブ!」

 

「耐えてつじぎり!」

 

 

 特性で威力が底上げされた電撃を纏った爆音が放たれるも、俺のドラピオンはその程度じゃ倒れない。直撃を受けながらのしのしと歩み寄り、二連撃の十字を描く斬撃を叩き込む。見た所とつげきチョッキを着ているようだが、生憎とドラピオンは物理メインだ。やけどで攻撃力が落ちているとはいえ、そう何度も耐えられるかな?

 

 

「もう一度オーバードライブだ!」

 

「地面にこおりのきばだ!」

 

 

 胸の弦を()こうとするストリンダーに対し、フィールドを凍りつかせて拘束。()けなきゃ音も鳴らせないだろ?

 

 

「連続でつじぎりだ!」

 

 

 首から下を拘束されて身動きが取れないストリンダーに、容赦なくつじぎりを何度も何度も叩き込む。するとつじぎりの衝撃でストリンダーを拘束している氷が崩れてきて、それを見逃すモコウでもなかった。

 

 

「根性見せろ!ばくおんぱ!」

 

「っ…外側にミサイルばり!」

 

 

 気合いで手の拘束を外したストリンダーの爆音の衝撃波が放たれ、氷を全て粉々に破壊。しかしドラピオンはその間合いの外から回り込むようにミサイルばりを飛ばしてストリンダーに炸裂させ、怯ませる。

 

 

「突撃だ!こおりのきば!」

 

 

 そして突進、冷気を纏った牙でストリンダーの腕に噛み付き、完全に凍りつかせて戦闘不能にした。やっと相討ちじゃない白星である。

 

 

「やはり強いな、そのドラピオン…我も切札を切るか。パッチラゴン!」

 

「やっぱりな。ストリンダーをキョダイマックスさせないと思ったらそういう訳か」

 

 

 モコウが繰り出してきたのはライボルトではなく、温存していた最後の一匹であるパッチラゴン。俺の残りの手持ちはドラピオン、デンチュラ、そして切札のイワパレス。数的有利だが、今からモコウが使うものを考えるとあまり有利とは言えない。

 

 

「このままいくぞ、ドラピオン!」

 

「我の生き様!我の魂の在り方を痺れるぐらいに見せつけろ!ダイマックスだ、パッチラゴン!」

 

 

 今大会では初、モコウは最後の一匹でもないのにダイマックスを使用した。基本的にダイマックスに対抗するべく使用されるダイマックスは、その性質上最後に使うのが暗黙の了解とされてきた。ジムリーダーとチャンピオンの全員がそうなのだから、バトルを知らない人間でも最後に使うのが普通だと思うだろう。そのセオリーを、モコウは破った。俺のポケモンを3タテするつもりなのだろう。

 

 

「少しでも足掻くぞ!こおりのきば!」

 

「パッチラゴンの方が速いぞ!ダイジェット!」

 

 

 少しでもダメージを稼ごうとしたものの、素のすばやさが速いパッチラゴンより速く行動できず、もろにダイジェットを喰らってついにドラピオンが崩れ落ちる。…そっちがその気ならこっちもやってやるぞ。

 

 

「やるぞ、デンチュラ!」

 

「あの、我さえ知らなかったキョダイマックスか?受けて立つぞ!」

 

「いいや。こいつはな、ダイマックスしないでお前の猛攻を凌ぐだけだ」

 

「…我のパッチラゴンを舐めているのか?」

 

 

 巨大なパッチラゴンに見下ろされながら決して気圧されず真正面から睨み付けるデンチュラ。…ヤローとの戦い以来だな。ダイマックスを等身大で相手するのは。

 

 

「ダイロック!」

 

「いとをはくで壁に逃れろデンチュラ!」

 

 

 放たれるは、以前喰らったげんしのちからであろうダイロック。迫る巨岩に、デンチュラは横の観客席の壁に糸を伸ばして跳躍することで回避。砕け散った巨岩の破片が舞い散り、すなあらしが発生。間髪入れずモコウの指示が響いた。

 

 

「ダイサンダーだ!」

 

「岩の破片をいとをはくで乗り継いで避けろ!」

 

 

 砕け散ったダイロックの破片を利用して糸を伸ばして乗り継ぎ、上へ上へと逃れて巨大な雷撃の直撃を避けるデンチュラ。衝撃で掴まっていた破片もろとも吹き飛ばされるも、縮んでいくパッチラゴンに糸を伸ばして離れ、そのまま糸を縮ませて突撃する。俺の指示なしで行ったその神業に、咄嗟に指示を出していた。

 

 

「きゅうけつだ!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 突撃していたデンチュラに炸裂する鋭い嘴の一撃。効果抜群とまでは行かないまでも、ダイサンダーを直撃じゃないとはいえ喰らっていた体力を削るには十分だった。だがしかし、モコウに対する切札の温存はできた。見せてやる、真打というものを。

 

 

「いくぞ、イワパレス!からをやぶるだ!」

 

「くっ…でんげきくちばしだ!」

 

 

 俺のイワパレスのとくせいを知ってるのか、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべるモコウ。からをやぶったイワパレスに電撃を纏った嘴が炸裂するものの、そこにイワパレスは健在。再び岩盤に潜り込んで、俺の指示を待つ。準備は整った。

 

 

「からをやぶったイワパレスとダイジェットですばやさを上げダイサンダーででんき技の威力を上げたパッチラゴン、どっちが速いか勝負だ!蹂躙しろ!ダイマックス!」

 

 

 イワパレスを巨大化させ、それに比べると小さなパッチラゴンと対峙。相手の出方を窺う中で、俺達はほぼ同時に指示していた。

 

 

「ダイアース!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 その結果は、パッチラゴンの攻撃が届く前に地面からの一撃を受けて撃沈。宙を舞い、落ちてきたパッチラゴンに、悟った様な表情を浮かべるモコウ。

 

 

「まだだ、まだ終わってない!ライボルト!お前なら…!」

 

 

 祈るように繰り出したのはライボルト。しかしイワパレスの猛攻は止まらない。

 

 

「もう一度、ダイアース!」

 

「ワイルドボルトだ!」

 

 

 電撃を纏って突撃してくるライボルトに、無情にも炸裂する大地の一撃。宙を舞って地面に叩きつけられるライボルト。俺が、モコウが、観客の全てが。決着がついた。…そう思った。

 

 

「…ライ、ボルト…?」

 

 

 モコウの泣きじゃくった声がすなあらし(・・・・・)の向こうから聞こえる。ライボルトは立っていた。瀕死の体に鞭打って立ち上がるその雄姿に、観客が息を呑むのを感じた。ポケモンは、時に主人への信愛を示して体力ギリギリで持ち堪える現象がある。今回のはそれだろう。だがしかしだ、モコウの指示したダイロックによるすなあらしのスリップダメージが、ライボルトにとどめを刺した。俺のイワパレスはいわタイプが故にその影響を受けない。ワイルドボルトが不発に終わった時点で、皮肉にもモコウの手で決着はついていたのだ。

 

 

『決着!決着です!一進一退の激戦を制したのは、むしつかい、ラウラ選手!これほどの名勝負がこれまであったでしょうか!ラウラ選手はユウリ選手との決勝戦への挑戦権を得ました。一回戦は雨の中で、二回戦は砂嵐の中で決着がついた準決勝!皆さま!盛大な拍手を!』

 

 

 すなあらしが止んで、倒れ伏したライボルトに泣きじゃくりながら駆け寄るモコウ。俺はそれをイワパレスと共に静かにジッと見つめていた。

 

 

「…私はな、このジムチャレンジで初めてモンスターボールを握ったのだ」

 

「え?」

 

 

 ライボルトをボールに戻し、共に控室に戻る中で、泣きじゃくっていて一人称まで変わったモコウが語るのは、衝撃の事実だった。

 

 

「誰の手も借りず、サイトウになんとかパッチラゴンを使いこなせると示して推薦状を手に入れ、パッチラゴンだけ連れて訪れたワイルドエリアで、凶暴なポケモンに追い回されていた私が出会ったこのライボルト…ラクライは、初めて会ったにも関わらず、パッチラゴンを倒された私を命懸けで守ってくれた、初めて捕獲したポケモンだ。大事な…大事なパートナーだ。こいつの頑張りを、私は誇りに思う」

 

「そうだな。…待て、ジムチャレンジで初めてモンスターボールを握った?それ以前は?」

 

「私…じゃない、我は名家の箱入り娘だ。ポケモンも親のポケモンと…従兄弟のポケモンぐらいとしか関わったことがない。化石を集めてウカッツ博士に渡して、手に入れたパッチラゴンが最初のポケモンだ」

 

「………お前、天才か?」

 

 

 俺みたいに幼少期からポケモンを使っていたわけじゃなく、初めてポケモンを握って、最速でジムチャレンジをクリアしたってことか?ええ……あまりに事実にドン引きした俺に、涙を引っ込めて眉を顰めるモコウ。

 

 

「なんだどうした。そんな化け物でも見るような顔して。お前のポケモンを回復させたら決勝戦だろう。しゃきっとしろ」

 

「いや、初遭遇の時に有名なマッギョにかかってたのも箱入り娘だったからだったんだなあって」

 

 

 内心、だからあんなタイミングでダイマックスを切れたんだな、とか色々思い当たることを思い出し、そんな初心者に危うく負けるところだったのかとモコウに戦慄していたが、それは忘れて次に備えることにした。ついにユウリとの決着だ。動揺してないで十分に備えよう。あいつもモコウに負けず劣らず本物の天才だ。




モコウの真実、気付いていた人も多いかな…?

・ラウラ
勝ったのに負けた気がする蟲の女王。イワパレスを温存できたことで勝利を確信していたこともあり、モコウのダイロックが無かったら危うく負けていたため、今回は引き分けにしてほしいと思ってる。モコウの天才っぷりに戦慄しだいぶ動揺した。

・モコウ
色んなショックで泣きじゃくり一人称が戻っていたでんきつかいのドジっ子。ついにバトルにまでドジが影響してしまった。
実はユウリと同じく、今季ジムチャレンジが始まってからモンスターボールを握ってジムチャレンジを勝ち残った天才少女。根っからの箱入り娘であり世間に疎く、両親や従兄弟の反対を押し切って一人前であると認めさせるために、パッチラゴンを手に入れて顔見知りだったサイトウから推薦状をもらいジムチャレンジに参加した。
最速最強であることを拘っていたのは、それぐらいしないと認めてもらえないと危惧していたため。キャラを作っていたのも本来のか弱い自分を隠すためであり、本来は一人称「私」のお淑やかなお嬢様キャラ。髪型や眼帯、ゴスロリは完全に趣味である。

・ライボルト♂
とくせい:せいでんき
わざ:ボルトチェンジ
   ほのおのきば
   10まんボルト
   ワイルドボルト
もちもの:じしゃく
備考:すなおな性格。逃げるのがはやい。モコウの相棒。ワイルドエリアで出会った際にモコウが野生ポケモンから襲われていたところを身を挺して守り、手持ちになったモコウにとっての騎士(ナイト)。懐いた理由は守ってやらないといけない気がしたから。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSインテレオン

どうも、放仮ごです。UAが60000を突破しましたありがとうございます!

今回はラウラVSユウリのセミファイナルトーナメント決勝戦前半戦となります。最初だけユウリ視点。楽しんでいただけると幸いです。


 ラウラは天才だ。蟲ポケモンを好んで、蟲ポケモンを理解して、蟲ポケモンの弱さを戦略で補って、蟲ポケモンの強さを最大限に活かしてくる。それだけじゃない、ジムチャレンジ初参加でトレーナーになりたてのはずなのにへんかわざを理解して活用し、地形を利用し、相手の技を利用し、とにかく使えるものは何でも使って貪欲に勝ちにくる。

 ビートやマリィ、ホップにモコウ、ジムリーダーたち、これまで戦ってきた強敵たちが、ネズとムツキを除いて誰一人勝てなかったという、その強さは本物だ。そして何より、戦った相手の心をもそのバトルで魅了する。心底楽しいのだ。いつの間にか笑っているのだ。女性でありながら男性的でもあるためか、男女問わず楽しそうにバトルをするその姿に魅入られる。

 

 かく言う私もその一人だ。だからこそ、ラウラに勝つために努力した。彼女の戦いを確認できるだけ全て確認し、なにが動揺を誘えるのかを網羅し、技の傾向を確認し、バトルの癖を把握、手持ちポケモンも全て分析した。ラウラ戦用のポケモンも捕獲し育成した。足りない経験を得るため片っ端から野良トレーナーにポケモン勝負を挑んだ。野生ポケモンにも遭遇する側から勝負をしかけた。一歩間違えればストーカー紛いの行動だが、全ては勝つためだ。そんなことをしているうちに、自然にジム戦を簡単に越えられるぐらいに強くなった。

 

 そうして訪れた二戦目。私は敗北した。あと一歩だった。何が駄目だったのか、考えて、考えて、考えて。必ず勝つ!と考えていたから駄目なんだ。私も彼女みたいにバトルを心の底から楽しめばいいんだ、とその結論に至った。いつの間にか全てのジムを無敗で制覇していた。ちなみにネズと戦う前にラウラと出くわして挑んだ三戦目も普通に負けた。マリィやホップと全力でぶつかり、心の底からバトルを楽しんだ。

 だけど私は羨ましい。ラウラと戦い、心と心をぶつけあう勝負を楽しんだムツキやモコウが羨ましい。でも、ラウラなら決勝まで来ると信じていた。速く、早く戦いたい!そんな意思を胸に、コートの中心に立つ。ああ、ラウラと戦うのが心の底から楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウリは天才だ。ホップの話によると、ポケモンを手にしたのはモコウと同じくジムチャレンジが始まってかららしい。それであそこまでポケモンを使いこなし、全ジム戦無敗という記録を叩きだした。あのダンデ以来の快挙だとか。つまり、俺とのバトルでしか負けてないという事である。野良試合で負けてなければ。それだけがアドバンテージだが、三度目の正直という言葉もある。ただでさえ才能の差を感じたラテラルタウンの時とは比べ物にならないだろう。

 相手が次に出してくるポケモンが分かるかの如き予知にも近い直感、敵の手を先読みしているか如き戦術眼、的確に最適な技を選ぶセンス、相性不利を物ともしない戦略、全てが全て一級品。あれから全てのジムを無敗で乗り越えたユウリは、間違いなくあの時よりも何倍も強い。

 勝てるのか?と不安になるが両頬を叩いて気を引き締める。勝てるのか?じゃない、勝つんだ。そしてチャンピオンにも打ち勝つ。これは決めたことだ、軽く見られがちな蟲ポケモン達の為にも、やりとげてみせる。

 

 

「待ってたよ、ラウラ」

 

「…待たせたな、ユウリ」

 

 

 そう考えながらコートにやってくると、その中心で待つのは自信に満ち溢れた一人のトレーナー。こちらをジッと見つめて笑みを浮かべるその姿からは、とても緊張など感じられない。王者の風格さえ感じる、チャンピオンのそれと同じだ。だが臆するわけにはいかない。

 

 

『お待たせしました!両選手の準備が整いましたので、ついにセミファイナルトーナメント決勝戦を開始いたします!ルールはこれまで同様5VS5のシングルバトル!変幻自在のむしつかい、ラウラ選手VSチャンピオン推薦の全ジム戦無敗のトレーナー、ユウリ選手!チャンピオンカップに進めるのはどちらの選手だ!』

 

「俺はお前に勝ってチャンピオンカップに参加する。そしてダンデを倒して、蟲ポケモンこそ最強で最高なのだと証明してみせる」

 

「それが貴女の戦う理由なんだね、ラウラ。ムツキとモコウが羨ましいよ。貴女とあんな熱いバトルを演じられるなんて。戦ってる時の二人とも、凄い楽しそうだった。お願い!私も、熱くさせてよ!ラウラ!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ユウリが 勝負を しかけてきた!

 

 

「お願い、ダーテング!」

 

「頼むぞ、テッカニン!」

 

 

 ユウリが繰り出したのは彼女のエースであるダーテング。対して俺はテッカニン。相性の上では勝っているが、決して侮れる相手ではない。

 

 

「つばめがえし!」

 

「ねこだまし!」

 

 

 これだ。乾いた音と共に、テッカニンの動きが固まる。これをされる前に攻撃したかった…!

 

 

「私達がするのはいつだって同じこと!ぼうふう!」

 

 

 ユウリの必勝パターン。ねこだましからのぼうふう。これで大抵のポケモンは倒される。だがしかし、あらかじめ分かっていたら対処は可能だ。

 

 

「予定通り、風に乗れ!」

 

「っ!」

 

 

 ダメージを受けながらも吹き荒れる風に乗って上空に逃れ、最小限のダメージに抑えるテッカニン。ここからだ!

 

 

「シザークロス!」

 

「リーフブレードで受け止めて!」

 

 

 テッカニンの両腕による斬撃を、緑色の光を纏った右手の葉団扇で受け止めるダーテング。一筋縄じゃいかないか…?

 

 

「ふいうち!」

 

「!?」

 

「ぼうふう!」

 

 

 鍔競り合っていた次の瞬間振るわれた左腕の一撃がテッカニンの顎を捉える。不意を突かれてふらついたところに暴風が叩き込まれて戦闘不能になってしまった。

 

 

「ダーテングがここまで苦戦するなんて…さすがだね!」

 

「嫌味にしか聞こえないぞ…実質ノーダメージじゃないか。頼むぞマルヤクデ!」

 

「ねこだまし!ぼうふう!」

 

 

 再びねこだましからの暴風が放たれ、ダーテングを中心に風が吹き荒れる。それに打ち上げられたマルヤクデの目は、まだ死んでいない。

 

 

「ほのおのうずだ!」

 

 

 暴風に乗ってほのおのうずが逆回転して炎の竜巻の様になって暴風を飲み込んでいき、コートのど真ん中で巨大な火柱が上がる。それが消えた時、ダーテングは倒れ伏していた。

 

 

「そんな…ダーテング!」

 

「自分を中心にぼうふうを放っていたのが(あだ)になったな!」

 

「っ…インテレオン!」

 

 

 続けて繰り出されたのはインテレオン。素早い動きでマルヤクデを翻弄し、一定の距離を取り続ける。よく鍛えられてるな。

 

 

「ねらいうち!」

 

「ほのおのムチだ!」

 

 

 宙返りしながら放たれた水流を、ほのおのムチで相殺。水蒸気が辺り一帯に広がり視界を奪う。これもユウリの計算済みか?

 

 

「炎で場所が丸見えだよ!ふいうち!」

 

 

 瞬間、水蒸気の中を素早い動きで駆け抜けてきたインテレオンの尻尾の一撃がマルヤクデを捉えてダウン。戦闘不能になったマルヤクデをボールに戻し、思考する。オニシズクモはあのポケモンの相手をするためにまだ出せない。デンチュラはキョダイマックス要員として温存したい。なら選択肢は一つしかない。

 

 

「ドラピオン!」

 

「とんぼがえり!」

 

 

 交代した瞬間を狙われた。駆けてきたインテレオンの飛び蹴りを受け、ドラピオンが怯んだところでボールに戻って行くインテレオン。そして繰り出されたのは、アーマーガア。アオガラスが進化したのか。はがねタイプでドラピオンのメインウェポンであるクロスポイズンを封じられたわけだ。いい交代だ、感動的だな。だがドラピオンの前では無意味だ。

 

 

「ミサイルばりで撃ち落とせ!」

 

「ドリルくちばしで蹴散らしちゃえ!」

 

 

 放たれるは誘導ミサイルの如き光弾六連射。しかしアーマーガアは翼を畳んで高速回転、その身をドリルの様にしてミサイルばりを全て明後日の方向に弾き飛ばし、その勢いのまま翼を広げ、羽ばたいて加速しドラピオンに突撃してきた。

 

 

「ブレイブバード!」

 

「ドラピオン!受け止めろ!」

 

「なっ!?」

 

 

 両腕で翼を胴体を挟み込み、強烈な一撃を受け止めるドラピオン。それぐらいの攻撃なんざ、ドラピオンはこれまで幾度も受けて来たんだ。そして敗北を重ねたことで積み重なった熱き闘志は瞳に燃え上がっている。負けられないと叫んでいる。そんなドラピオンが今更耐えられない訳がない!

 

 

「こおりのきばだ!」

 

「は、はがねのつばさ!」

 

 

 はがねタイプが入っているとはいえひこうタイプ。広げようとした翼をがっしり掴んだまま、噛み付いて完全に凍りつかせるドラピオン。氷像となったアーマーガアがゴロリと転がり、実況の審判が戦闘不能と判断した。勝負はここからだ。




ユウリがちょっとめんどくさいタイプのストーカーみたくなってしまった。反省はしていない。

・ラウラ
ユウリを天才と称する蟲の女王。蟲ポケモンこそ最強で最高なのだと証明するために全力で戦う。ユウリ対策は万全のつもり。特にアーマーガアと以前繰り出していたストリンダーに至ってはムツキ、モコウという使い手と戦ったためどうすればいいのか作戦は決めている。ふいうちがとことん苦手だとユウリにばれている。

・ユウリ
ラウラのライバルにして大ファン。この世界で最もラウラを理解していると言っても過言じゃないぐらいのめり込んでる。バトルの才能の開花とバトルジャンキーな性質はラウラ対策をしているうちに自然とそうなった。望めるならば、永遠にラウラと戦っていたいと思ってる。ちなみにポケモンは五匹しか持ってなかったりする。

・ダーテング♂
とくせい:はやおき
わざ:ねこだまし
   リーフブレード
   ふいうち
   ぼうふう
もちもの:こうかくレンズ
備考:おだやかな性格。食べるのが大好き。ユウリのエースポケモン。じんつうりきを忘れてふいうちを覚えた。

・アーマーガア♂
とくせい:きんちょうかん
わざ:ブレイブバード
   はがねのつばさ
   ちょうはつ
   ドリルくちばし
もちもの:するどいくちばし
備考:てれやな性格。負けん気が強い。アオガラスが進化した。ちょうはつでへんかわざをさせない要員。

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VSセキタンザン

どうも、放仮ごです。ジャッジ機能とやらに今更気付いたので使ってみたら旅パのほとんどがそんな大したことない能力だったと知って軽くショックを受けました。性格ととくせい厳選したウオノラゴンが一番いいってどういうことなの…?

今回はラウラVSユウリ決着。セミファイナルトーナメントを制するのはどっちだ!楽しんでいただけると幸いです。


「お願い、ストリンダー!」

 

 

 アーマーガアが倒れ、次に繰り出されたのはローなすがたのストリンダー。モコウの時もそうだったが、特性:パンクロックの火力でごり押しするつもりか。実際、ストリンダーにはそれができる火力がある。本気の時のネズさんがあくタイプでもないのに使うポケモンだ、決して侮れない。だが俺のドラピオンも並のポケモンじゃないぞ。

 

 

「オーバードライブ!」

 

「こおりのきばで防御だ!」

 

 

 前世の理科で習ったが、氷は電気を通しにくい。こおりのきばで氷壁を作り上げ、電撃を纏った音波を防ぐ。次にしてくる行動まで、見えていた。

 

 

「ばくおんぱで氷壁を破壊して!」

 

「悪いが、こいつは再放送だ」

 

 

 モコウとの戦いのな!少々シチュエーションは違うが、ばくおんぱで破壊しに来ることは見えていた。氷壁とその周りに漂う靄で姿を雲隠れしたドラピオンは回り込み、ストリンダーの背後を取っていたのだ。ドラピオンは指示がなくとも戦闘経験が多いからこれができる、不意を突くには最適だった。ばくおんぱをもろに受けてしまったが、そんなことは関係ない。

 

 

「っ、後ろ!ほっぺすりすり!」

 

(急所)を狙え!つじぎり!」

 

 

 ヒュンヒュン、と二回続けて振るわれた音と共にどさりと倒れる音がする。麻痺をもらってしまったが、ストリンダーも撃破した。後二体……!

 

 

「皆、ラウラ対策で育てたポケモンだったのにこうも容易く……三日三晩かけて捕まえたドラピオンは伊達じゃないってこと?」

 

 

 インテレオンを繰り出しながらそうぼやくユウリに、不敵に笑んで見せる。

 

 

「まあな。こいつのポテンシャルは三日三晩戦った俺が一番理解している。麻痺程度じゃ止まらないぞ」

 

「でも、ストリンダーは仕事はしたよ。一番厄介なのはむしタイプじゃないドラピオンだった。麻痺していたら私のインテレオンには追い付けない!」

 

「お前、まさか最初から……!?」

 

 

 アーマーガアで押し切れるならそれでいい、駄目だった場合はストリンダーでダメージを与えながら麻痺を優先させる。そういうことか!

 

 

「インテレオン、周りを走りながらねらいうち!」

 

「動けなくても関係ない!地面にこおりのきばだ!」

 

 

 麻痺してすばやく動けなくなったドラピオンに、その場でこおりのきばを指示。周囲を凍らせようとするが、体に痺れが走ったのかドラピオンは動かない。そこに連続で水流が直撃し、体力が削られていく。

 

 

「くっ……クロスポイズンを地面に当てて撹乱だ!」

 

 

 絶え間なく襲いかかる遠距離攻撃にこおりのきばが間に合わないと悟った俺は、その場でクロスポイズンを指示。毒飛沫と砂塵が舞い、コート全体を覆い隠す。擬似的な煙幕だ。

 

 

「四方八方にミサイルばりだ!」

 

 

 ドラピオンも見えない中で、狙いを定めず広範囲攻撃を指示する。しかし、それは悪手だった。ユウリはトレーナーとしての腕も化け物だった。

 

 

「何かが光った!右に回避!」

 

「は!?」

 

 

 ユウリの奴、煙幕の中からのミサイルばりを肉眼で目視しやがった。お前は複眼持ちか!?実は蟲ポケモンだと言われても全然納得できるぞ!

 

 

「多分、その先にいる!みずのはどう!」

 

「っ……こおりのきばで防御だ!」

 

 

 さらにミサイルばりの飛んできた先からドラピオンの居場所を特定してきた。咄嗟にこおりのきばの氷壁で防御を指示、砂塵を吹き飛ばしながら迫った水の塊を防いで氷が砕け散る。砕け散った先には、指先を構えたインテレオンがいた。みずのはどうはこちらに防御させて崩す為か!?

 

 

「ねらいうち!」

 

 

 インテレオンの指先から放たれた高圧水流がドラピオンの顔面に炸裂。その巨体が崩れ落ちる。

 

 

「くっ……しょうがないか、頼むぞデンチュラ!」

 

 

 最後に出す予定だったがやむを得ない。相手の最後の一匹であろうポケモンのためにオニシズクモは出せない。ダイマックスなしで倒すしかない。

 

 

「ほうでん!」

 

「みずのはどうで電気を逃がして!」

 

 

 放たれたほうでんを、みずのはどうを大きく横に広げることで通電させて分散させるインテレオン。電撃対策は完璧ってことか。

 

 

「ねらいうち!」

 

「いとをはくで横に避けろ!」

 

 

 狙いを引き絞られて放たれる高圧水流を、次々と糸を伸ばして避けていくデンチュラ。なんとか隙を見て放電をブチ当てるしかないが……いや、待て。どうせあと二匹なら……そう考え、デンチュラをボールに戻してダイマックスバンドを輝かせる。

 

 

「ここで切るぞ、キョダイマックスだデンチュラ!」

 

「なっ!?」

 

 

 モコウと同じ、最後じゃないタイミングでのダイマックス権の行使。みるみる巨大化して姿を変えていくデンチュラに対し、焦ってダイマックスを使ったりはしないユウリ。その表情は勝ちを確信している様だった。

 

 

「デンチュラ!キョダイクモノスだ!」

 

「ふいうち!」

 

 

 こちらの攻撃が決まる前に先制攻撃を受けたものの、巨大なエレキネットでコートに押し付けられたインテレオンは感電して沈黙。効果は抜群だ。

 

 

「ここでダイマックスを切るんだ……うん、モコウもしていたけど確かに有効だね!これからはタイミングに縛られないダイマックスが流行りそう!でもいいの?オニシズクモに使わなくて。私の最後の手持ち……知ってるよね?」

 

 

 そう言って繰り出されたのはセキタンザン。そうだ、蟲ポケモンの天敵。マクワ戦でも戦ったほのお・いわタイプのせきたんポケモン。こいつのためにオニシズクモを温存していた。だがデンチュラにダイマックスを切ったのも間違いではない。

 

 

「キョダイクモノスには麻痺効果がある。それを喰らったセキタンザンなどオニシズクモの敵じゃないさ」

 

「……それはどうかな?このセキタンザンはラウラ!貴女のためだけに調整したポケモンだよ!ダイマックス!」

 

 

 キョダイマックスの様に姿を変えずに巨大化し、キョダイデンチュラと相対するセキタンザン。絶望的な状況のはずなのに、その目に曇りはない。なんだ、その自信はどこからくるユウリ……?

 

 

「キョダイクモノス!」

 

「ダイバーン!」

 

 

 巨大なエレキネットと巨大な炎が交差する。天気はひでり状態になり、キョダイデンチュラは黒焦げになり沈黙。縮んでボールに戻って行く。よく頑張った。あとはオニシズクモが……!?俺の視界の先で、セキタンザンが何かを咀嚼。すると麻痺していたその動きが、何事も無かったかのように動く。……クラボのみか!

 

 

「ムツキ戦で披露してその時効果も喋っていたのに、その対策をしないとでも?」

 

「……それもそうだな。オニシズクモ!」

 

 

 大丈夫だ、こいつの特性「すいほう」と最強クラスの水タイプの物理技なら、大概とくぼうよりに育てるセキタンザンならばひでり状態であろうと四倍ダメージだ、一発で倒せる。

 

 

「アクアブレイクだ!」

 

「ダイロック!」

 

 

 渾身の一撃がセキタンザンに炸裂。その巨体がぐらりと傾く……が、ダメージに表情を歪めている物の耐えてしまうセキタンザン。何故だ!?直後、ダイロックが直撃し、効果抜群の一撃を何とか耐えるオニシズクモ。あと一発当てれば行けるか?天気はすなあらしに変わり、いわタイプは特防が1.5倍になるが関係ない。すばやさはこちらが勝っているんだ、いける…!

 

 

「アクアブレイク!」

 

「ダイロック!」

 

 

 しかしそんな思惑を裏切り、オニシズクモより先に行動したセキタンザンのダイロックが直撃。オニシズクモは耐えきれず、崩れ落ちた。真っ白になる頭で、その理由を思い出す。じょうききかん。ほのお・みずの攻撃を受けるとすばやさが6段階上昇する特性。アクアブレイクで一撃で落とせなかった時点で、俺の敗北は確定していたわけだ。

 

 

『決着!決着です!ジムチャレンジをクリアした8人のポケモントレーナーによるセミファイナルトーナメント!勝ったのはっ、ユウリ選手!ラウラ選手は惜しくもここで敗退となります!』

 

「……私のセキタンザンはね。貴女のオニシズクモの得意技であるアクアブレイクを受け止めるためだけに防御面を意識して育てたの。ひでりもあって、それで四倍ダメージを半分程度に抑えられた。私、ラウラに勝つためにいろいろ頑張ったんだ。貴女のことを研究して、得た結論がこの子だよ」

 

「メインウェポンのアクアブレイクよりもサブウェポンであるバブルこうせんを撃っていれば勝てていたかもしれないってか。……ああ、悔しいなあ」

 

 

 俺の癖、俺の使う技の傾向、全てを知りつくされた故の敗北、か。オニシズクモを出した時点で勝利を確信していたこともあり、だいぶ堪える。ユウリの思惑さえ読み切れば、勝っていたかもしれない……後悔してもし足りない。

 デンチュラ、テッカニン、オニシズクモ、マルヤクデ、ドラピオン、イワパレス。そしてムツキ、モコウ……お前たちとの約束、守れなかった。俺は悔しさを胸に抱き、ユウリと共に大歓声広がるコートを後にした。




まさかのラウラ敗北ルートとなります。チャンピオンになって終わりもなんか違うかなって。

・ラウラ
最善を尽くしたとは思っているけど実際はユウリに終始手玉に取られていた蟲の女王。オニシズクモさえ温存すればセキタンザンを突破できると考えていたのが裏目に出た。生前の得意科目は理科。

・ユウリ
全ての手持ちにラウラ対策をしていたラウラガチ勢の原作主人公。四度目の正直、ついにラウラに勝利した。動体視力など身体スペックも高い。六匹目はデンチュラにしようかなとか思ってる。

・インテレオン♀
とくせい:げきりゅう
わざ:みずのはどう
   ねらいうち
   ふいうち
   とんぼがえり
もちもの:しんぴのしずく
備考:おくびょうな性格。辛抱強い。ユウリの相棒。電気を逃すみずのはどうの猛練習した。ねらいうちの精度がすごい。

・セキタンザン♀
とくせい:じょうききかん
わざ:ヒートスタンプ
   いわなだれ
   ボディプレス
   じしん
もちもの:クラボのみ
備考:てれやな性格。ケンカをするのが好き。オニシズクモ対策のために防御全振りで育てられた、ユウリの切札。デンチュラのキョダイクモノス対策もばっちり。

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ブラックナイトの章
VSハガネールⅠ


どうも、放仮ごです。ラウラの敗北が読者に受け入れられて何より。ちょっと戦々恐々してました。

今回は原作イベント…の改変。最強始動。楽しんでいただけると幸いです。


「ラウラよ、惜しかったな。あの対面で負けるとはポケモンバトルとは奥が深い」

 

「戦略で貴女が負けるとは……本当にチャンピオンになってしまいそうですね、ユウリ」

 

「ユウリはすごいやつなんだぞ。兄貴にも勝ってしまうかもな!」

 

「ダンデさんにはさすがに勝てないと思うけど……私、頑張るねホップ!」

 

「正直、ダンデより恐ろしかったぞ……」

 

 

 ユウリ、それから合流したモコウ、ムツキ、ホップと共にロビーに出ると、大勢の野次馬の中心に一人の男がファンサービスなのかリザードンポーズを決めて立っていた。ガラル地方、無敗のチャンピオン・ダンデその人だ。

 

 

「ユウリ!それからラウラ!ホップ!ムツキ!モコウ!……感動した。正直に言えば、気付くと涙がこぼれていた。君達みんなの、お互いの全てをぶつけ合う……勝ちたい気持ち、負けたくない思いを込めた技。あらゆる要素において純粋な試合だった!」

 

「ありがとうございます?」

 

「そ、それはどうも……」

 

「ユウリ、ホップ!君達に推薦状を渡すのを迷っていたトレーナーがいたとはな……」

 

「それ、兄貴だぞ」

 

「だからこそ!俺は俺自身のチームメンバー全ての力をチャレンジャーにぶつける!俺の前に立つチャレンジャーがユウリ!君であることを心から願うぜ!」

 

「そうだなユウリ。俺に勝って終わりじゃないんだ。大事なのはここからだ」

 

「うん、私もっと熱い勝負がしたい!」

 

「とりあえずホテルで体を休ませたいです……」

 

「……お前、大丈夫か?」

 

「俺が背負おうか?」

 

「……心配には及びません」

 

 

 初めて会うダンデに臆しながら、事の成り行きを見守りユウリに告げると楽しげに笑う。その横でモコウがムツキを心配し、ホップが提案してたがムツキはそれをやんわり断っていた。ふむ、俺との戦いで気を張り詰めて立っていたから疲労が溜まっているか。

 

 

「ホテルもいいが、その前にエネルギー補給だ!みんなでなにか食いに行くとしよう」

 

「いいけど……兄貴は味にこだわらないからな。せっかくだからうまいもん頼むぜ」

 

「カレーかな!?」

 

「チャンピオンと食事……!」

 

「わ、我もいいのか?」

 

「いいのですか?」

 

「ああ、マリィ選手とマサル選手、ナグサ選手がいないのは残念だが……みんなで食べようじゃないか」

 

 

 ダンデの言葉に思わず反応する。その時にバトルのアドバイスや何とか戦えないか聞けないだろうか……なんにしても、いい戦いが出来たから誘われたのだろう。頑張ってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数時間後。一旦ホテルに戻った俺達は、約束の時間を過ぎた今もダンデを待ち続けていた。

 

 

「遅い!おかしい!」

 

「なにがおかしいんだ?」

 

「どんな約束も守る兄貴だ。チャンピオンになったのも俺との約束だったんだぞ!?」

 

「食事の時間を守るのも余裕だと言いたいわけだな」

 

「でもダンデさん、方向音痴だから……」

 

「単純に迷っていたらさすがに笑うんですが」

 

 

 そうホップが痺れを切らしていた時だった。

 

 

「ノイジーな人達ですね。それだけ騒げるなら試合でもっと全力を出せたよね?」

 

 

 そこにやってきたのは、まさかのネズさん。その言葉がグサッと刺さる。……いや、全力は出したぞ?ペースをだいぶ乱されていたのは自覚しているが、うん。

 

 

「悪そうな顔と格好でまともなこと言わないでください」

 

「貴女は相変わらず失礼な女ですねムツキ」

 

「ネズさん!こっちは真面目なの!」

 

「それよりも、チャンピオンならローズタワーに行きましたよ」

 

「どうしてそんなところに?」

 

 

 ユウリの問いかけに、肩を竦めるネズさん。

 

 

「さあ。よくわかりませんがモノレール乗り場で会いましたよ。ローズタワーに行くため約束の時間に遅れること貴方達に伝えてほしいと」

 

「ローズタワー?今更なんかあるのか?ネズさんついでだからローズタワーに案内してよ」

 

「たしかに。俺達ローズタワーの場所を知らないしな」

 

「やれやれ。一言で言うと人使いの荒い人達です」

 

「通りすがりにネズさんに頼むチャンピオン程ではないと思うが」

 

「そうですね……ファイナルトーナメントが始まらないと俺も困りますし、何より俺に勝利した君達は嫌いじゃないですしね。わかりました!エール団みんなで遊びに行くとしましょうか!」

 

「ええ……」

 

 

 仮にも悪の組織ポジションだろうのに主人公と共闘するのか……BW2でも一応共闘はしてたっけか。熱いけどエール団はさすがに町の人に迷惑じゃない?

 

 

「イエイ!ネズさんサイコー!みんなでガンガン行っちゃうぞ!」

 

「そんな大所帯で行く理由があるのか……?」

 

「さあ。案外馬鹿なんでしょ。男ですもの」

 

「男が馬鹿なのは否定しない」

 

「聞こえてますよそこの三人娘」

 

 

 はい、すみません。前世が前世だからムツキの言葉には納得しかしなかった。

 

 

「ユウリとの激しい試合でくたびれとーのに……」

 

「エール団はユウリを応援すると決めたのですよ。一緒に手伝ってください」

 

 

 外に出るとネズに呼ばれたマリィ、エール団の面々と合流。いざローズタワーに行こうとしていた時だった。

 

 

「必要ありませんッ!」

 

「オリーヴさん?」

 

 

 そこに現れたのは二人の人物。ローズ委員長の秘書のオリーヴと、長身でサングラスをかけた女性のリーグスタッフだった。……なんか見覚えあるなあのリーグスタッフ。

 

 

「ローズ委員長はチャンピオンと大事な大事な打ち合わせの最中……誰にも邪魔をさせる訳にはいきませんッ!もっとも、ローズタワーには関係者しか行けません。だってモノレールでローズタワーに行くにはキーがいりますもの。つまり、ローズ委員長がいらっしゃるローズタワーには誰も行けないのです!」

 

「……そのキーをもらうわけには?」

 

「あげるわけがないでしょう。ですが、キーは私が選んだこのリーグスタッフに渡しておきます。だってローズ委員長、ちょっとした遊びが好きですもの。彼女を倒せれば、いいですね?」

 

 

 含み笑いをして去って行くオリーヴ。残ったリーグスタッフは綺麗な一礼してにやりと笑う。

 

 

「はい、私が……えっと、いわゆる悪いリーグスタッフです。私と勝負しますか?」

 

「その声……?」

 

「はっはっは!受けて立つ!」

 

 

 ムツキが首を傾げ、モコウが意気揚々とライボルトを繰り出すと、リーグスタッフはボールを手元から落とし、ボールが地面に落ちる前にそのスイッチ部を蹴りつけてハガネールを繰り出した。今のってたしか…

 

 

「じめんタイプか……だが、はがねタイプなら勝てるぞ!ほのおのきば!」

 

「やめなさいモコウ!その人は…」

 

 

 ネズさんが何かに気付いたのか止めようとした、その瞬間。

 

 

「公共の場に迷惑をかけないように……じしん」

 

 

 リーグスタッフがコンコンと靴音を鳴らしたかと思えば、ハガネールは何もしてないように見えたのに、ライボルトは塔の様に隆起した真下の地面に打ち上げられて、戦闘不能になった。ライボルトを打ち上げた隆起はそのまま戻ってちょっと罅割れているが元通りになる。今のって…!

 

 

「やはり貴女でしたか。これは分が悪いですね……」

 

「母さん!なにやってるんですか!?」

 

 

 ネズが溜め息を吐き、ムツキが絶叫する。やはりか。ムツキの言葉を受けて、サングラスを外して帽子を外した先にあったのは見覚えのある顔。

 

 

「あら、さすがにばれちゃいましたか。ごめんねムツキちゃん。これは仕事なの。いくら貴女とそのお友達が相手でも手は抜けないわ」

 

「ムツキの……お母さん?」

 

「ああ、グランドウォール・キリエ……チャンピオンダンデがチャレンジャーだった時代の最強のジムリーダーだった人だ」

 

 

 ユウリの疑問に答える。以前、ネズさんと戦った時にアドバイスをくれた人。ダンデのリザードンを公式戦で唯一倒した女。圧倒的強者。最強のジムリーダーだったキリエさんが、そこにいた。




実は悪いリーグスタッフな立ち位置だったキリエさん。名実ともに最強の元ジムリーダーがラウラ達の前に立ちはだかります。

・ラウラ
見覚えがあるとは思っていたがまさかキリエだとは思わなかった蟲の女王。既に実力差を味わっているこそ信じたくはなかった。チャンピオンとの食事に興味津々。

・ユウリ
ラウラに勝ってご満悦の原作主人公。ニッコニコ。最強の元ジムリーダーと聞いては黙ってられないぜ!な心境だけど、じしん(?)には困惑してる。

・モコウ
キリエには多分絶対に勝てない人。じめんタイプ対策はパッチルドンとウォッシュロトムだけ。なお、キリエ相手にはふゆうだろうが相性悪かろうが関係なかったりする。

・ムツキ
母親が悪いリーグスタッフとか名乗っていて恥ずかしいキリエの愛娘。キリエの強さを一番わかっているが、それでも自分は勝てると信じてる。

・ホップ&マリィ
原作通り。キリエのことを知っている世代。

・ダンデ
ガラルのチャンピオン。セミファイナルトーナメントには真面目に感動していた。タイプを極めながらここまで来た三人娘とは話してみたいと思っている。

・ネズ
あくタイプのジムリーダー。キリエの強さをよく知っている人間の一人。今回の面々の保護者枠。

・オリーヴ
キリエに絶対の信頼を向けているローズの秘書。抜け目なくモノレール乗り場に他の悪いリーグスタッフも待機させている。

・キリエ
元ジムリーダーにして悪いリーグスタッフ。仕事人間なので娘だろうが容赦はしない主義。はがね使いが多いマクロコスモスとしてリーグスタッフとして活動時はハガネールを使う。ピンポイントでじしんを起こして隆起させ浮いている敵でもじしんでノックアウトが可能、さらにそのあと地面を元に戻せる。トレーナーとしても足音だけで目標を指示して相手に悟られないようにするなど実力は限りなく高い。公共の場では実力を発揮できないのが救いか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSハガネールⅡ

どうも、放仮ごです。前回の感想欄が阿鼻叫喚でちょっと笑いました。キリエは何時だって騒ぎを起こす。元キャラのキリエは昔読者のヘイトを一手に稼いだ極悪人なんですよ、はい。

今回はラウラたち7人VSキリエ。制限かかった上での最強の力を見よ。楽しんでいただけると幸いです。


 グランドウォール・キリエ。この人が相手だと?最悪だ、ホルードでさえ俺のオニシズクモの一撃を耐えて逆に一撃で倒してきたのだ。このハガネールも同じ類だろう。俺達が束になっても勝てるかどうか……

 

 

「ムツキの母親とは俺も知りませんでしたけどね。キリエさん、貴女娘の教育どうなってるんです?」

 

「うちの娘は素直じゃないだけだから……それよりも、そんなにローズタワーに行きたいのでしたら皆で戦えばいいじゃないですか。これはルールある試合ではないのですから」

 

「何人がかりでもいいからそのハガネールを倒せばキーをくれると?」

 

「別に文句は言いませんよ?勝てるのなら、ですが」

 

 

▽マクロコスモスの キリエが 勝負を しかけてきた!

 

 

 ネズさんの問いに対し不敵に笑むキリエさんに、俺達はボールを構える。それなら、やってやる!

 

 

「テッカニン!つばめがえし!」」

 

「ダーテング!ねこだまし!」

 

「パッチルドン!ゆきなだれ!」

 

「ウォーグル!ゴッドバード!」

 

「バイウールー!すてみタックル!」

 

「タチフサグマ!シャドークロー!」

 

「オーロンゲ!ソウルクラッシュ!」

 

 

 俺が、ユウリが、モコウが、ムツキが、ホップが、ネズさんが、マリィが、同時にポケモンを繰り出す。7人がかりだ、いくらキリエさんでも、この数ならば……!

 

 

「―――てっぺき。続けてじしんです」

 

 

 コンコンコン、と靴音が鳴る。俺達の同時攻撃を、蜷局を巻いて体を輝かせて受け止め、回転することで弾き返すハガネール。さらに弾かれたポケモン達の足元が隆起してアッパーカットの様に地面が殴りつけて来て、ひこうタイプのポケモン達も吹き飛ばされる。じしんをひこうタイプに当てることができるって聞いていたけどそういうことか……!

 

 

「大人しくしてればダンデくんも戻ってくるんです。無駄なことはしない方がいいと思いますが?特にユウリ選手はゆっくりお休みくださいませ。ムツキちゃんも体をあっためて……」

 

「まだダンデさんにご飯をもらってないから……負けられない!ダーテング!リーフブレード!」

 

「余計なお世話です!ウォーグル!ブレイククロー!」

 

 

 激高したユウリとムツキのポケモンの一撃が炸裂。しかしビクともしないハガネール。それを見て不敵に笑むキリエさんに気を配りながら俺はテッカニンをデンチュラに交代、彼女の手に握られるキーに狙いを定める。

 

 

「いとをはく!」

 

「なっ……!?」

 

「キーはもらった!ユウリ、ホップ!ネズさん、マリィ!先に行け!」

 

 

 糸を伸ばして奪取したキーをユウリに投げ渡し、ムツキとモコウに振り向くと同時に頷く。考えることは同じだ。悪いリーグスタッフとやらがキリエさんだけという確証もないから先に行かせる面子はあの四人がベストだろう。俺達の思惑に気付いて駆け出した四人を追おうとしたキリエさんの前に俺とモコウ、ムツキが立ちはだかる。

 

 

「はあ。ラウラ選手、モコウ選手、ムツキちゃん。何のつもりかしら?」

 

「俺はな、チャンピオンと食事したり話がしてみたいんだよ。その邪魔をするってんなら倒すまでだ」

 

「正直我が残っても出来ることは少ないだろうが、地面のエキスパートに勝ってこそでんき使いを名乗れるよなあ!」

 

「母さん、私は貴女が嫌いです。だから邪魔をします。シンプルな答えでしょう?」

 

「い、今のは心に来たわ……でも、三人だけはさすがになめすぎじゃない?」

 

 

コンコンココン、と靴音を立てるキリエさん。するとハガネールは空中に浮かび上がって蜷局を巻いて高速回転、急降下してくる。これは……さっきといい、靴音だけで指示を!?

 

 

「ヘビーボンバーだ!避けろ!」

 

 

 デンチュラとウォーグルは避けたものの、パッチルドンが潰され、しかし地面には触れずに静止するハガネール。あくまで公共には迷惑をかけないってか。一応ホテルの前だからな、ここ。

 

 

「戦いにくいですが、それでも私が負ける理由にはなりません。それに……公共の場にちょっと迷惑がかかりますが、逃がしませんよ」

 

 

  そう言って、コココンコンコンコン。と、リズミカルに複数回靴音を鳴らしたと思えばハガネールが頷き、橋の向こうの道をモノレール乗り場に向かって走って行くユウリ達の前に道を塞ぐ巨大な土壁が出現した。慌てて立ちどまるユウリ達。そんなのありか!?視界に入っていればどこにでも地面を操れるのか!

 

 

「まあ私はここから離れられないので、遠回りをしていただきましょう」

 

「……その必要はないみたいだが?」

 

「え?」

 

 

 瞬間、シャキンという音と共に土壁が崩れ落ちた。見れば、ユウリのダーテングがリーフブレードを振るっていた。その光景に呆けるキリエさん。さすがにあいつのとんでもなさは計算に入ってなかったんだろうな。

 

 

「ストリンダー!ばくおんぱでこちらに注意を惹きつけろ!」

 

「交代、シンボラー!エアスラッシュで怯ませなさい!」

 

「っ、デンチュラ!いとをはくで橋の上に逃げろ!」

 

「じしんで蹴散らしなさい」

 

 

 俺達の攻撃を全部受け止めた上で、コンコンコンと靴音が鳴る。瞬間、俺達のポケモンの足元から土の柱が突きだしてきて、上空に逃れたシンボラーにはその高さまで伸びた土の柱が直撃、ストリンダーも宙を舞い、共に戦闘不能になる。デンチュラは橋の上に逃れたおかげで、橋ギリギリの場所から伸びた土の柱を受けずに済んだ。やはりか。

 

 

「アンタの戦い方、地面が在る場所限定の様だな?」

 

「さすがはラウラ選手。もう気付きましたか。ですが、橋の上が安全圏とは勘違いも甚だしい」

 

 

 コンカンコン。まるで踊るように、踵と爪先を打ち鳴らすキリエさん。瞬間、宙に舞い上がるハガネールが蜷局を巻いて高速回転、またヘビーボンバーかと思ったが、すぐに違うことに気付いた。ハガネールを中心に岩石が出現したのだ。まさか、いわなだれか!?

 

 

「っ…川だ!全力で逃げろ!」

 

 

 慌てて川方面に向けて糸を伸ばしたデンチュラを追って岩の雪崩が流星群の様に落ちてきて、次々と川に落ちて水飛沫が舞う。これがいわなだれだとしたらとんでもないにも程があるぞ?!

 

 

「そこの街灯を使って方向転換だ!」

 

 

 デンチュラの進む先を狙って落ちて来ていたので、街灯を利用して遠心力を利用、橋に向かって飛びこむデンチュラ。それに対してハガネールは急降下、コンコンココン、とさっき聞こえたリズムが聞こえてきたので恐らくヘビーボンバーが迫る。だがこれは、一対一ではない。デンチュラはこちらに集中させるための囮だ。

 

 

「今だ、ロトム!ハイドロポンプ!」

 

「ウォーグル!全力でばかぢからです!」

 

「っ!?」

 

 

 ヘビーボンバーに移行していて隙だらけだったハガネールの頭部に直撃する水流と両足の蹴り込み。空中でその体勢が崩れる。

 

 

「デンチュラ、交代!マルヤクデ!ほのおのムチだ!」

 

「てっぺきです」

 

 

 そして、強烈な炎の鞭の振り下ろしが叩き込まれ、ハガネールは川の中に落ちて巨大な水飛沫を上げた。なんだなんだと騒ぎを聞きつけた見物人が出てくる。これはチャンスだな。

 

 

「リーグスタッフが騒ぎを起こすのは不味いんじゃないか?」

 

「むっ。……それもそうですね。足止めも実質失敗してしまいましたし、此処は退きましょうか。ハガネール」

 

 

 ザバア、と。無傷のハガネールが川から出てくる。あそこまでのダメージを与えてまったく堪えてない。なんて硬さだ。

 

 

「ムツキちゃん。決め技としてのばかぢからはよかったですよ。でも、シンボラーでリフレクターを張っていれば一撃で落とされることはなかったでしょう」

 

「……私の手持ちまで把握されてるのですか」

 

「モコウ選手。切札は相手の実力を見て出し時を考えた方がいいですよ。そしたらもう少しダメージをもらってました」

 

「むっ……」

 

「ラウラ選手。デンチュラは私のキーを奪うという役割は果たしたのですからさっさと交代するべきです。でんきタイプでじめんタイプに挑むのは感心しません。結局私も倒せませんでしたが。まさか不意打ちのじしんを避けられるとは。無念です」

 

「……足音で指示してるのはなんとなくわかってましたから」

 

 

 言うだけ言ってハガネールをボールに戻し、帽子とサングラスを付け直して野次馬に「特に問題はありません」と言って去って行くキリエさん。向かう先はローズタワーだろうか。

 

 

「……俺達、勝ったのか?」

 

「いや……こっちのポケモンは一方的にやられて、あちらは一体も落とせてないぞ」

 

「完膚なきまでに負けですね。私のポケモンが通用しないとは……」

 

「あれに勝ったダンデって、強いんだなあ……」

 

 

 目標がだいぶ遠いことを思い知る。そして、ダンデを連れて戻ってきたユウリ達と合流し、俺達は食事を楽しんだのだった。




 なおハガネールは本来の手持ちじゃない模様。

・ラウラ
キリエの足音による指示はなんとなく理解したが力で押されてしまった主人公。もし野次馬が集まらなければ完膚なきまでに倒されていたと確信している。勝てるビジョンは何となく見えた。

・ユウリ
ラウラのサポートで原作通りオリーヴと戦いダンデを連れ戻した原作主人公。特に苦戦はしなかったが、キリエと決着を付けれなかったことは残念に思っている。

・モコウ
キリエのアドバイスになるほどなあと素直に感心してしまった人。リベンジしたいけど勝てるビジョンが見えない。

・ムツキ
さすがにひこうタイプで高く昇れば勝てるだろう、と考えていたら普通に落されたキリエの娘。ひこうタイプにじしんを当てられたことで動揺してロクに指示ができてなかった。

・ホップ
原作通り。ユウリと共にローズタワーでダブルバトルでマクロコスモス社員を蹴散らした。

・マリィ
原作通り。特にやることなかったので一緒に残ってればよかったと思ってる。

・ネズ
原作通り。モノレール乗り場で搖動とかしていた。キリエに勝つのは早々に諦めている。

・オリーヴ
ほとんど原作通り。あっさりキーを取られたキリエにキレながらユウリとバトルして惨敗した。このあとキリエと共にローズに窘められる。

・キリエ
数的有利を取られ、本来の手持ちじゃない、公共の場で破壊が出来ない、苦手なフィールドである水場、目的が殲滅ではなく時間稼ぎ、と本領発揮できない戦いでも完封して見せた実力者。靴音で技を指示したり、座標や狙いを絞り、何をするのかを的確に指示できる。そのため相手は何が繰り出されるのかまるでわからず、一方的に技を叩き込まれるしかない。
 彼女のポケモンの使うじしんは特別で、じしんの威力を広範囲に広げるのではなくピンポイントに柱に込めているので、普通のじしんよりも威力が高く大概のポケモンをノックアウトできる。また、通常の技とは全く別物になることが多い。ハガネールの場合ヘビーボンバーは隕石で、いわなだれは流星群、てっぺきは鉄塊。

・ハガネール♀
とくせい:がんじょう
わざ:じしん
   ヘビーボンバー
   てっぺき
   いわなだれ
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。ちょっぴりみえっぱり。こんなに強いけどキリエの控えのポケモン。マクロコスモスに入社した時から育てた新参者。

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番外編:とある掲示板3

どうも、放仮ごです。わかりやすくするために章名を付けてみました。

今回はセミファイナルトーナメント準決勝~VSキリエまでの掲示板回です。いつもよりちょっと長いです。楽しんでいただけると幸いです。


セミファイナルトーナメントについて語るスレ

 

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

今ちらっと映ったけどラウラ選手とモコウ選手とムツキ選手が仲良く座ってたな

 

65:名無しのトレーナー

なにそれ尊い。あとで録画確認しよ…

 

66:名無しのトレーナー

しっかしダーテング強いな。2タテとは

 

67:名無しのトレーナー

ホップ選手のアーマーガアもぼうふうで打ち上げられたのを利用して倒したってことは正攻法じゃ難しいんだろうな

 

68:名無しのトレーナー

で、出てきたのはセキタンザン

 

69:名無しのトレーナー

ユウリ選手ごついポケモン使うよな

 

70:名無しのトレーナー

進化前は可愛い奴ばかりだから…

 

71:名無しのトレーナー

いや強すぎぃ!

 

72:名無しのトレーナー

隙がねえ!

 

73:名無しのトレーナー

一気に二体を戦闘不能にするって…

 

74:名無しのトレーナー

最後のエースバーンに対してはインテレオンか

 

75:名無しのトレーナー

言わずと知れたユウリ選手の相棒

 

76:名無しのトレーナー

雨の中での決着か…いいな

 

77:名無しのトレーナー

ダイストリームの副次効果か

 

78:名無しのトレーナー

ユウリ選手決勝へ進出か。大方の予想通りだな

 

79:名無しのトレーナー

1人だけ戦績が抜きんでているからな

 

80:名無しのトレーナー

別スレでもラウラ選手と並んで優勝候補だしな

 

81:名無しのトレーナー

次はそのラウラ選手とモコウ選手か

 

82:名無しのトレーナー

準決勝はそれぞれ一番のライバル?との対決か

 

83:名無しのトレーナー

ランダムで選択されたのだとしたら運命だな

 

84:名無しのトレーナー

初手はライボルトとマルヤクデ…やけどで攻撃力を落とすつもりかな?

 

85:名無しのトレーナー

初手おにびは犯罪…おお!?

 

86:名無しのトレーナー

ボルトチェンジ!?

 

87:名無しのトレーナー

しかもロトムだから攻撃力下がろうが関係ない!強い!

 

88:名無しのトレーナー

マルヤクデも負けてない!お得意のまきつくだ!

 

89:名無しのトレーナー

まきついてやけどとほのおのうずのスリップダメージで倒すのえぐいよな…

 

90:名無しのトレーナー

ハイドロポンプを地面に撃って逃れたか

 

91:名無しのトレーナー

!?

 

92:名無しのトレーナー

相討ち…だと…!?

 

93:名無しのトレーナー

ほのおタイプでみずタイプを相討ちにするラウラ選手すごいな

 

94:名無しのトレーナー

次は…オニシズクモとパルスワンか

 

95:名無しのトレーナー

またも相性不利

 

96:名無しのトレーナー

そもそもオニシズクモとテッカニンの不利なタイプが二体いるからな

 

97:名無しのトレーナー

凄い攻防だ

 

98:名無しのトレーナー

またも相討ちか

 

99:名無しのトレーナー

相性不利ってなんだっけ?

 

100:名無しのトレーナー

今のはワイルドボルトの反動があったからな

 

101:名無しのトレーナー

出た!ラウラ選手の化け物ドラピオン!

 

102:名無しのトレーナー

モコウ選手はライボルトか。ようやく不利対面じゃなくなったな

 

103:名無しのトレーナー

でもほのおのきばでやけどを喰らったみたいだぞ

 

104:名無しのトレーナー

またボルトチェンジか。出すのは!?

 

105:名無しのトレーナー

ストリンダー!?

 

106:名無しのトレーナー

えっ、キョダイマックスする切札じゃないのか!?

 

107:名無しのトレーナー

ストリンダーの音技を物ともしないドラピオンさすがだな

 

108:名無しのトレーナー

しかもこおりのきばで拘束と。もう見慣れた光景だ

 

109:名無しのトレーナー

ああ、ストリンダーが根性で抜け出したけど、ああ!?

 

110:名無しのトレーナー

ラウラ選手がリードしたな。瞬時に全身凍り付かせるこおりのきばやべえ…

 

111:名無しのトレーナー

!?

 

112:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

113:名無しのトレーナー

!?!?!?

 

114:名無しのトレーナー

ここでダイマックス!?

 

115:名無しのトレーナー

最後に使わない人初めて見た…

 

116:名無しのトレーナー

モコウ選手がサイトウ戦までずっとダイマックスさせていたパッチラゴンだ

 

117:名無しのトレーナー

ラウラ選手の次はデンチュラか。キョダイマックスするか!?

 

118:名無しのトレーナー

しないで耐えるのか

 

119:名無しのトレーナー

だからなんでダイマックスに等身大で挑むんだこの子はw

 

120:名無しのトレーナー

ダイロックの破片を使って避けるのはさすがだな

 

121:名無しのトレーナー

やられちゃったけどダイマックスを耐えたのか

 

122:名無しのトレーナー

こっからはラウラ選手の独壇場だ

 

123:名無しのトレーナー

最後はイワパレス!

 

124:名無しのトレーナー

モコウ選手のラストはライボルトか。ノーダメージじゃない上にダイマックス相手…終わったな

 

125:名無しのトレーナー

!?

 

126:名無しのトレーナー

!?

 

127:名無しのトレーナー

耐えた、のに…!

 

128:名無しのトレーナー

モコウ選手が指示したダイロックが裏目に出たか…

 

129:名無しのトレーナー

ライボルト、お前男だよ。♂かどうかは知らんけど

 

130:名無しのトレーナー

ライボルトに敬礼!

 

131:名無しのトレーナー

( ̄^ ̄ゞ ケイレイ!!

 

132:名無しのトレーナー

( ̄^ ̄ゞ

 

133:名無しのトレーナー

そして決勝戦はほとんどの人が予想したユウリ選手とラウラ選手だが…

 

134:名無しのトレーナー

どっちが勝つかね

 

135:名無しのトレーナー

そりゃあラウラ選手でしょ。セキタンザンがいるとはいえオニシズクモで何とかなるだろうし

 

136:名無しのトレーナー

まあな。発想がおかしいから大概のトレーナーは対応できずにやられる

 

137:名無しのトレーナー

いやいやユウリ選手でしょ。シンプルに強い

 

138:名無しのトレーナー

>>137

それな

 

139:名無しのトレーナー

>>137

ダーテングだけで完封するまであるぞ

 

140:名無しのトレーナー

始まった。改めて言われるとチャンピオン推薦の無敗のトレーナーってやばいな

 

141:名無しのトレーナー

チャンピオン推薦は伊達じゃねえ

 

142:名無しのトレーナー

ユウリ選手めっちゃ楽しそう

 

143:名無しのトレーナー

覚悟を決めたラウラ選手と反対に満面の笑みで草

 

144:名無しのトレーナー

かわいい…けどなんか怖いな、ギラギラしてるというか

 

145:名無しのトレーナー

もしかしてユウリ選手、ラウラ選手の大ファン?

 

146:名無しのトレーナー

ありえない話じゃないぞ

 

147:名無しのトレーナー

あの反応はそれっぽいな

 

148:名無しのトレーナー

初手はダーテングとテッカニン。これどうだ?

 

149:名無しのトレーナー

テッカニンがダーテングより早く行動できればあるいは

 

150:名無しのトレーナー

あー、駄目か

 

151:名無しのトレーナー

いや、ぼうふうに乗ってるぞ!?

 

152:名無しのトレーナー

カウンターで決まるか!?

 

153:名無しのトレーナー

あー、惜しい

 

154:名無しのトレーナー

リーフブレードで冷静に受け止めてふいうちからのぼうふうは強いて

 

155:名無しのトレーナー

お次はマルヤクデ。相性的にはテッカニンと同じくいいが

 

156:名無しのトレーナー

あー、でもまた吹き飛ばされて…

 

157:名無しのトレーナー

炎がなんか渦になって暴風を飲み込んでるんじゃが

 

158:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

159:名無しのトレーナー

ダーテングを倒した!すげえ!

 

160:名無しのトレーナー

なにが起きた?

 

161:名無しのトレーナー

見る限り、ほのおのうずを暴風に乗せて逆にダーテングを焼き尽くしたって感じかな?

 

162:名無しのトレーナー

エリートトレーナーぽいやついて草

 

163:名無しのトレーナー

今観客席にいるけど迫力凄いぞ

 

164:名無しのトレーナー

えっ、セミファイナルトーナメントの観客席にいるとかうらやま

 

165:名無しのトレーナー

続いてはエースのインテレオン。相性でつぶしに来たか

 

166:名無しのトレーナー

水蒸気でなにも見えねえ!

 

167:名無しのトレーナー

水蒸気消えたと思ったら終わってる件について

 

168:名無しのトレーナー

なにが起きた!?

 

169:名無しのトレーナー

続いてドラピオンか。デンチュラは温存かな?

 

170:名無しのトレーナー

とんぼがえりで逃げて出てきたのは…

 

171:名無しのトレーナー

アーマーガアだ!今大会初登場!

 

172:名無しのトレーナー

 

173:名無しのトレーナー

ダーテングとインテレオンとセキタンザンしか出してないからな…

 

174:名無しのトレーナー

ホップ選手もムツキ選手もマサル選手も使ってたし人気だなアーマーガア

 

175:名無しのトレーナー

そりゃはがねひこうとか強いし

 

176:名無しのトレーナー

クロスポイズンは無効だからラウラ選手辛いな

 

177:名無しのトレーナー

ドリルくちばしでミサイルばりを蹴散らしてて草

 

178:名無しのトレーナー

でもさすがドラピオン

 

179:名無しのトレーナー

ひこうタイプもあるとはいえはがねタイプを一撃のこおりのきば…恐ろしいな

 

180:名無しのトレーナー

ぶっちゃけ最強クラスのポケモンよな、あのドラピオン

 

181:名無しのトレーナー

続いてユウリ選手はストリンダーか

 

182:名無しのトレーナー

これまたモコウ選手も使ってたポケモンだ

 

183:名無しのトレーナー

相手が並のポケモンなら音技で蹴散らせるからな

 

184:名無しのトレーナー

並のポケモンだったらな

 

185:名無しのトレーナー

案の定ボコボコにされてて草

 

186:名無しのトレーナー

ほっぺすりすりでまひさせただけアーマーガアよりは仕事したな

 

187:名無しのトレーナー

あれ、ユウリ選手弱い…?

 

188:名無しのトレーナー

ドラピオンが強いだけやろ

 

189:名無しのトレーナー

インテレオンの猛攻だ

 

190:名無しのトレーナー

麻痺が効いててろくに動けてないぞ!

 

191:名無しのトレーナー

クロスポイズンで煙幕とかどんな頭なら思いつくん?

 

192:名無しのトレーナー

ん?

 

193:名無しのトレーナー

今ユウリ選手、あの砂塵の中でミサイルばりを視認して回避させてた?

 

194:名無しのトレーナー

まさかそんな、チャンピオンじゃあるまいし

 

195:名無しのトレーナー

ユウリ選手が勝ったな(確信)

 

196:名無しのトレーナー

わいもそう思うわ。今のはやべえ

 

197:名無しのトレーナー

みずのはどうで氷壁を崩して本命のねらいうち…かっこよすぎでは?

 

198:名無しのトレーナー

インテレオンとのコンビネーションすげえ

 

199:名無しのトレーナー

さすがにまずいと思ったのかラウラ選手もデンチュラ出したな

 

200:名無しのトレーナー

みずのはどうで放電を防ぐのやべえ

 

201:名無しのトレーナー

なんでさらっと神業を実行してるのか

 

202:名無しのトレーナー

ここでキョダイマックスを使うのか。モコウ選手から着想を得たのかな?

 

203:名無しのトレーナー

インテレオンをこのままじゃ倒せないと踏んだんだな

 

204:名無しのトレーナー

ユウリ選手の顔全然焦ってないんだが

 

205:名無しのトレーナー

まさかオニシズクモをセキタンザンで倒せるとか言わんよな?

 

206:名無しのトレーナー

それはさすがにないやろ。四倍だぞ?

 

207:名無しのトレーナー

さすがにインテレオンも敵わなかったか

 

208:名無しのトレーナー

あのキョダイクモノス強すぎない?

 

209:名無しのトレーナー

ユウリ選手はセキタンザンでダイマックスを切るか

 

210:名無しのトレーナー

大体のむしポケモンに対する天敵だしな。温存も納得

 

211:名無しのトレーナー

デンチュラ一撃で倒されたけどキョダイクモノスは当てたか

 

212:名無しのトレーナー

!?

 

213:名無しのトレーナー

クラボのみ!?

 

214:名無しのトレーナー

完全にメタだw

 

215:名無しのトレーナー

しかもダイバーンで日照りになってオニシズクモの水技も弱体化っていう

 

216:名無しのトレーナー

そういえばセキタンザンのとくせいってたしか…

 

217:名無しのトレーナー

察し

 

218:名無しのトレーナー

耐えてしまえばユウリ選手の勝ちなのか

 

219:名無しのトレーナー

これはラウラ選手詰んだんじゃないか?

 

220:名無しのトレーナー

どっちも耐えた!?

 

221:名無しのトレーナー

これは…

 

222:名無しのトレーナー

ラウラ選手視点のカメラの圧倒的絶望感よ

 

223:名無しのトレーナー

勝てると確信してたんやろなあ

 

224:名無しのトレーナー

え、なんでセキタンザン耐えたのあれ?

 

225:名無しのトレーナー

恐らくアクアブレイクを耐えるように防御全振りで育てられたセキタンザンと思われ

 

226:名無しのトレーナー

アクアブレイクが来ると分かっていてそう育てたのなら完全に対策してきていたことになるな

 

227:名無しのトレーナー

さっきのユウリ選手、ラウラ選手の大ファン説あながち間違いじゃないかもな…

 

228:名無しのトレーナー

ユウリ選手の勝ちか。これはラウラ選手完敗だな

 

229:名無しのトレーナー

嵐を呼ぶ女と呼ばれていたわけが分かった気がするぜ…

 

230:名無しのトレーナー

同期のポケモンの完全メタを張るやべーやつ。チャンピオンにも勝ちそう

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

261:名無しのトレーナー

シュートシティのホテル前の騒ぎにキリエがいたってマジ?

 

262:名無しのトレーナー

写真撮られていたけどマジらしい

 

263:名無しのトレーナー

なんでキリエとラウラ選手たちが戦ってたんだ…?

 

264:名無しのトレーナー

キリエのハガネールは初めて見たけど相変わらずの化け物っぷりで草

 

 

 

・・・・・・・・・




200に納められない上にネタもあまり挟めなかったやーつ。これで小説書いている人たちは本当にすごい。

・ラウラ
掲示板の扱いは強すぎるドラピオンを捕まえたやべーやつ。敗北は早々に察せられてしまっていた。

・ユウリ
掲示板の扱いは今期屈指のやべーやつ。ラウラの大ファン疑惑が半ば確定されている。

・モコウ
ライボルトの頑張りに敬礼された。

・ホップ
相手が悪い、の一言。

・ムツキ
ちらっと映った三人で座っているシーンにてぇてぇされた。

・キリエ
掲示板民の誰もにそのすさまじさを理解されているやべーやつ。撮られていてあっさり身バレした。化け物っぷりには草しか生えない。


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VSブリムオン

どうも、放仮ごです。UAが70000を突破しましたありがとうございます!

今回はチャンピオンカップの一幕となります。ちょっといつもより長いです。楽しんでいただけると幸いです。


 チャンピオンダンデと食事した翌日。チャンピオンカップが始まった。ジムリーダー七人と勝ち残ったチャレンジャーのトーナメント戦。勝ち残ったトレーナーがチャンピオンと戦う権利を得る。つまり、ユウリは本気のジムリーダー三人に勝ち抜かないといけないわけだ。俺は激励しておいたユウリの雄姿を観客席で見守ることにする。モコウとムツキ、それからナグサにマリィ、ホップも一緒だ。

 

 

「正直、本気のジムリーダーが相手でもユウリは勝ち残ると思うぞ。実際戦ってみてわかった、あれは天才の類だ」

 

「そもそも我らと違ってパーティのバランスもいい」

 

「ありとあらゆるタイプに対抗できるのが強みですね」

 

「その点においてはノーマルタイプも負けてないんだけど…あんないろんなタイプを使いこなせるのはすごいなあ」

 

「ユウリの凄さは私達が一番よく知ってるけんね。心配なかとよ」

 

「あいつは約束したんだ。最強の戦いで世界を熱狂させるって。だから大丈夫だぞ!」

 

 

 ホップの自信満々な言葉に頷く。…正直、キリエさんと戦ったことでチャンピオンとの実力差を思い知った。おそらく俺では、本気のジムリーダーたちにも勝てていたか怪しい所だ。だがアイツなら…そして、ポプラさんを除いた七人のジムリーダーとユウリが集まったコートの中心に、ローズ委員長ではなくチャンピオンダンデが姿を現した。様子がおかしいな。

 

 

「改めて名乗ろう!俺はチャンピオンのダンデ!わけあってリーグ委員長の代わりをさせてもらう!ガラルのポケモントレーナーをより高みに連れて行くために!何より俺のために、最強のチャレンジャーを決めてくれ!さあ!今ここに宣言する!ファイナルトーナメント開催だ!」

 

 

 そうダンデが宣言した時だった。

 

 

「待ちなよ!」

 

 

 そこに、乱入者が現れた。ウール―の様な頭に、フェアリータイプのユニフォーム。特徴的だった荒んだ眼はなんかキラキラしてる。「誰だ?」と観客がざわつくが、俺は知っている。この旅の始めの頃に戦い、ラテラルタウンで決着をつけた少年。もし残っていたら間違いなくセミファイナルトーナメントに参加していたであろう、その少年の名は。

 

 

「皆さまよろしいでしょうか。僕を覚えているでしょうか。ジムチャレンジ無念のリタイアとなったビートです!」

 

 

 そう言って俺に視線を向けるビート。その目には色んな感情が宿っていたが、無言で頷く。お前のことを忘れたことはなかったさ。その格好、ポプラの後継者になれたんだな。腐ってなくてよかったよ。

 

 

「ユウリ選手と…ラウラ選手とは浅からぬ因縁があります。本当はラウラ選手と決着をつけたかった…だけど、君にも僕は負けた。このまま君に勝ち逃げさせたりはしない。ルール違反は承知です。その上でお願いします。選手生命を賭けて勝負をさせてください!負けたら、トレーナー引退です」

 

『なんというハプニング!ジムチャレンジャーだったビート選手の乱入だあ!ビート選手について審議しております。スタジアムの皆様。テレビの前の皆様。しばらくお待ちください!』

 

「決着ならいつでもつけてやるってのに。なに選手生命賭けてるんだあいつ…」

 

「奴も我たちの仲間か」

 

「ラウラに負けっぱなしは癪に障りますからね。わかります」

 

「お前たちもか…これから時間はいくらでもあるんだ。相手ならいつでもなってやるっての」

 

 

 ビートの言葉に感銘を受けたらしいモコウとムツキにツッコむ。なんでこいつらはこう熱血なのだろう。この世界のトレーナーはみんなこうなんだろうか。

 

 

「ビート…本当にいいの?」

 

「無茶苦茶なのは僕自身がよくわかっているよ。でも言わないわけには…動かないわけにはいかないんだ!貴女達のせいで滅茶苦茶なんだ!オリーヴさんに頼まれてローズ委員長のためにねがいぼしを集めていたのに、ラウラ選手には何もかも奪われるし、委員長には見捨てられるし、訳の分からない婆さんにフェアリータイプについて朝晩叩き込まれるし!」

 

 

 ユウリの問いかけに捲し立てるビート。モコウとムツキにドン引きされたような顔を向けられる。俺がなにもかも奪ったような言い方ヤメロォ!誤解だから!

 

 

「わかりますか?ピンク色に囲まれて、フェアリータイプのポケモンでクイズと勝負の毎日!」

 

「ええ…」

 

「そのドン引きしたような顔やめてください!アアッ!こんなに暑苦しく思いを語るなんて僕のキャラじゃないのに!ラウラ選手は借りも返せないまま貴女に負けるし!いえ、貴女の実力はちゃんと見させてもらったので文句を言うつもりはありませんが!」

 

「ビートもラウラが好きなんだね。分かるよ」

 

「違いますよ!?話聞いてました!?」

 

 

 うんうん、私は分かってるよみたいないい笑顔を浮かべるユウリに、なんか怒りと色んな感情が織り交ざって大変なことになってるビートに同情する。今の発言といい、ユウリはなんかずれてるんだよな。

 

 

「…ユウリのやつ、あっちか?」

 

「ええ、多分そっちの気ですね…しかも無自覚っぽい」

 

「なんか言ったか?」

 

「「いや、なにも」」

 

『なんと!チャンピオンが乱入を認めました!ガラルのトレーナーを強くしたいチャンピオンの愛でしょうか。それともユウリ選手への試練でしょうか』

 

 

 実況から認められた旨が伝えられ、真っ直ぐにユウリを見据えるビート。その目は決意が宿っていた。他人を見下していたかつての姿は見受けられない。

 

 

「無理を通したんです!僕たちは勝つしかない!僕のハートは砕けてなんかいないんだ!」

 

「いいよ。全力で勝負してあげる!」

 

 

 そして始まる戦い。ビートの繰り出すフェアリータイプのポケモン達を、相変わらずの相性がいいポケモンを繰り出し的確に指示することで一匹も倒されることなくビートを最後の一匹まで追い込むユウリ。その実力差は圧倒的だった。最後のブリムオンを繰り出し、それでも不敵な笑みを浮かべるビート。

 

 

「フンッ!その余裕……勝ったと、思ってるんでしょうね」

 

「思ってるよ。悪いけど、ラウラに勝った私はノリに乗ってるからね!ストリンダー、ダイマックス!」

 

「いいでしょう!ならば大いなるピンクを見せましょう!ブリムオン、キョダイマックスです」

 

 

 コートに巨大化したストリンダーと、姿を変えたブリムオンが並び立つ。勝敗は誰の目から見ても明らか。でもそれでも、ビートの頑張りから目を離せない。

 

 

「キョダイテンバツ!」

 

「ダイアシッド!」

 

 

 そして、決着はついた。

 

 

 

 

 

 

 

『おっと!ユウリ選手と自慢のチームメンバーがビート選手の挑戦をはねのけた!』

 

「終わった…!ですが、手を抜かないでいただき感謝です。皆様にフェアリーのよさは伝えましたよ。負けた……僕も、まだまだですね」

 

「ビート…」

 

 

 立ち尽くすユウリとビートに、辛抱堪らなくなった俺は観客席から身を乗り出した。

 

 

「おいビート!お前、俺ともう一度戦わないで引退するなんてふざけるなよ?!」

 

「そうだそうだ、一方的ではあったが悪くない試合だったぞ!」

 

「引退したのならまたデビューすればいいじゃないですか!」

 

 

 俺に続くモコウとムツキ。彼女たちにも思うところはあったらしい。特にムツキはビートと同じくローズ委員長の推薦だからなおさらだ。ホップやマリィ、ナグサや他の観客も俺達に続くように声援を送る。それを受けたビートは額に手を当てて、それでも嬉しそうに。

 

 

「ラウラ選手、ムツキ選手、皆さん…なんてことだ……あなたにリベンジできればオーケー!負けても引退して婆さんから逃げるはずだったのに……ユウリ選手、ラウラ選手!それにムツキ選手!やっぱり貴女方は迷惑だ!僕の心を揺るがせる!皆に認められたらフェアリータイプのジムリーダーを続けないといけない!」

 

「みんな、それを望んでるよ。私も」

 

「…まあ?僕の才能でしたらポプラさんや貴女達なんか、あっ!と言う間に越えますけどね」

 

『スタジアムは若者たちを称える声でいっぱいだ!さてユウリ選手、予想外の試合のダメージを回復するため控室に…』

 

 

 そんな乱入騒ぎがあったが、ユウリが戻ってきてすぐ、チャンピオンカップは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一回戦のルリナ。二回戦、勝ち残ってきたサイトウ。決勝戦のキバナを次々と苦戦することなく撃破していくユウリはダンデへの挑戦権を得て、今チャンピオン決定戦が行われようとしていた。

 

 

「コートの張りつめた空気。それとは真逆の観客の熱狂……どちらも最高じゃないか!いいかい?彼ら観客はどちらかが負けることを願う残酷な人々でもある!そんな怖さを跳ね除けポケモントレーナーとしての全てを、チームの全てを出しきって勝利をもぎ取るのが俺は好きで好きでたまらない!」

 

「それは分かる気がします。全力で戦うのは、本当に気持ちが良いので!」

 

「俺の最高のパートナーたちもボールの中でうずうずしている。さあ、チャンピオンタイムだ!ガラル地方チャンピオン、ダンデとパートナー、リザードンたちがこれまでに得た経験、知識で君達の全てを打ち砕くぜ!」

 

「私も、ホップやラウラ達の思いを背負って…全力で行きます!」

 

 

 そんな会話の後に両者が位置に着き、いざ始まろうとしていた時だった。

 

 

「ちょっと待って!?」

 

「おい!モニターを見ろよ!」

 

「なんだ、あれ……?」

 

 

 観客たちが騒ぎだし、なんだなんだと俺達もモニターに目を移す。するとそこには、灰色の砂嵐映像の後に、ローズ委員長が顔を出した。見ないと思っていたら…まさかと思うが、今俺が関わっているであろうストーリーの悪役って…昨日の騒動も、まさかそれか。

 

 

『ハロー!ダンデ君に、ユウリ君。ガラルの未来を守るため、ブラックナイトを始めちゃうよ!』

 

「ブラックナイト?」

 

 

 たしかおとぎ話だろそれ。シンオウやイッシュの神話みたいになんかの伝説ポケモンを暗示する話だったのか?するとゴゴゴゴッ!とスタジアム全体が揺れ出して、俺は思わず手すりに摑まり、モコウとムツキも掴んで固定する。地震か?いや、違うか。

 

 

『ただブラックナイトのエネルギーが溢れだして危ないんだよね……!』

 

 

 瞬間、スタジアムの中心、コートのど真ん中から溢れだすマゼンタ色の光の柱。それは、ワイルドエリアのダイマックスポケモンの生息する巣穴から漏れる光の柱と酷似していて。そればかりか、モニターに映る他のスタジアムのコートの中心からも同じ光の柱が立ち上っていた。ダイマックスエリアに何か異変が起きたのか!?

 

 

『ダンデ君が話を聞いていたらこんなことにはならなかったのにね!』

 

 

 ローズの声が鳴り響く中、俺達はスタジアムから避難する。聞こえてくる話によると、ガラル中でポケモンがダイマックスして暴れてしまってるらしい。…よし決めた。顔を向けると、モコウとムツキは皆まで言うなとでも言うように同じ笑みを浮かべていた。考えることは同じだよな。

 

 

「行くぞ、多分ローズ委員長のエネルギープラントだ!」

 

「ムツキ、足を頼む!」

 

「言われなくても!」

 

 

 人込みを抜けた俺達は、それぞれアーマーガア、フワライド、ウォーグルの力を借りて空に飛びだした。やることはひとつ。ユウリとダンデの決戦を邪魔してくれたローズをぶん殴って、ブラックナイトとやらを止めてやる!どうせ主人公…ユウリが解決するんだろうが、見て見ぬふりができるか!




ついに始動、ブラックナイト。ラウラ達三人娘はがっつり関わります。

・ラウラ
ビートの健闘を称えた主人公。実はだいぶ前にビートから告白紛いの絶叫を受けているが気付いてない等辺木。厄介ごとが起きても主人公にだけ任せるつもりはない。ダイパとかだとギンガ団のアジトだろうが突っ込んでる。

・ユウリ
苦戦らしい苦戦をせずチャンピオンカップを制した原作主人公。ラウラに無自覚な好意を向けている。ラウラ達とは別行動でホップと共にまどろみの森に向かった。

・モコウ
ユウリから「あっち」の気配を感じたでんきつかい。なんか嫌。ビートとは面識がないがすごいやつってのはわかった。ブラックナイトにラウラと共に立ち向かう。

・ムツキ
ユウリから「そっち」の気配を感じたひこうつかい。なんか嫌。ビートには興味がなかったが、かつての同僚が頑張っている姿に思うところがあった模様。ブラックナイトにラウラと共に立ち向かうが、またキリエが出てくるんじゃないかと内心びくついてる。

・ビート
ピンクに染まったラウラの最初のライバル。ラウラとムツキからの声援にちょっと泣きそうになった。

・キバナ&ルリナ&サイトウ
ユウリに圧倒されて見どころなく敗北した。

・ホップ
原作通りユウリにエールを送っていた。避難の最中ラウラ達と逸れてユウリと合流、共にまどろみの森に向かった。

・マリィ&ナグサ
ビートに声援を送っていた。ブラックナイト始動後は観客を安全に逃がすために案内している。

・ダンデ
絶対何も悪くないチャンピオン。ユウリとの戦いを心待ちにしていたのになんかローズにディスられた可哀そうな人。ダンデがいてもこうなってたんじゃないですかねローズさん。

・ローズ
なんで明日まで待ちきれなかったのか。ポケモン剣盾の悪の組織枠のトップ。キリエでなんとかブラックナイトを抑えようとしたけど駄目だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSドリュウズ

どうも、放仮ごです。そろそろ連続更新もきつくなってまいりました。

今回はナックルシティへ向かったラウラ達の一幕となります。楽しんでいただけると幸いです。


 上空からやってきたナックルシティのナックルスタジアム。その頂上で何か巨大なポケモンとは思えない生物と、キリエさんが戦っていた。

 

 

「…直接じしん!」

 

 

 スマホロトムで誰かと連絡を取りながらも、ホルードに指示して飛び付かせ直接じしんの衝撃を叩き込む。しかし生物は頭を振って毒を纏った爪を振るってホルードを弾き飛ばし、戦闘不能にしてしまう。あのキリエさんのポケモンが一撃で!?傍らに焼き焦げたハガネールが転がっているのを見るに二体も倒されてしまったというのか。

 

 

「チャンピオンが来るまで持ち堪えろとは言われたけど…委員長、地面がないところだとさすがにきついです」

 

「「キリエさん!」」

 

「母さん!これは何事ですか!」

 

 

 そこに降り立った俺達に、キリエさんは驚愕に目を見開き狼狽する。すると、「サダイジャ、ドサイドン」と二体のポケモンを繰り出して巨大なポケモンに向かわせると、こっちに向き直るキリエさん。

 

 

「貴女達、何しに来たんですか?ここからは大人の領分です。子供の出る幕はありませんよ」

 

「なにかローズ委員長がやらかしたんだろ。戦力が多いに越したことはないはずだ」

 

「本当はローズ委員長を止めに来たがそれどころではないことは分かるぞ」

 

「母さんが苦戦している時点であのポケモンがヤバいのは分かります。ですが…!」

 

「いいえ、許しません。此処に来る権利があるのはダンデ君…チャンピオンただ一人です。子供は出て行きなさい。デスバーン」

 

 

 そう言ってガラルデスマスの進化系、デスバーンを繰り出してくるキリエさん。その後ろではサダイジャがその巨体に巻き付き、ドサイドンが強烈な一撃を叩き込んでくる光景が在って。それに一瞬気を取られた瞬間に、俺達は外に投げ出されていた。

 

 

「シャドーボール。手加減はしてます、ここまで来れたなら貴方達なら何とかなるでしょう」

 

「なあ!?…っ、ムツキ!モコウを頼む!上に向かってあの化け物をなんとかしてくれ!」

 

「ラウラはどうするんです!?」

 

「俺がキリエさんを引き受ける!デンチュラ!いとをはく!」

 

 

 ムツキが自分を掴ませたウォーグルの背にモコウを乗せて空に向かったのを見計らって、それを迎撃しようとするキリエさんの手に、空中で繰り出し俺の背中にホールドさせたデンチュラの糸を伸ばして巻き付かせて、引き留めようとしたデスバーンもろとも落下させる。デスバーンも含めて、あと二体しか手持ちはいない筈だ…!

 

 

「地面にいとをはくだ!ありったけ!」

 

 

 コンクリートの地面が迫ってきたので、デンチュラに糸をありったけ繰り出させて繭玉の様なトランポリンを形成、キリエさんと共に飛び込み弾き飛んで地面に投げ出される。受け身を取ったが痛い物は痛い。呻きながらも立ち上がると、そこには怒り心頭と言ったキリエさんがデスバーンを控えさせて立っていた。

 

 

「…なんのつもりでしょうか。ムツキちゃんやモコウ選手が死にでもしたら貴女は責任が取れるんですか」

 

「あの二人はそこまで弱くないさ。頭の固い大人に力で示したいだけだ」

 

「いいでしょう。貴女を倒してさっさと戻らせていただきます!デスバーン!じしん!」

 

「っ、デンチュラ!」

 

 

 俺の背中にホールドしたままのデンチュラに呼びかけ、空中に逃れるとコンクリートをぶち破って土柱が競り出してきて、俺達を狙い、咄嗟に足を壁面に付けて駆け上がり宙返りすることで回避。デンチュラと息を合わせて何とか避けていく。

 

 

「俺ごと倒すつもりか!?」

 

「昏倒させてでもムツキちゃんの元に向かわせていただきます!だいちのちから!」

 

「なに!?」

 

 

 瞬間、真下の地面からビームが放たれ俺達を襲い、咄嗟にデンチュラの伸ばした糸を掴んで引っ張り急制動で避ける。ビリッと来たけど関係ない、死ぬ気でやらないとあの人は俺を重症にしてでも戻るつもりだ。俺達を、特にムツキを守ろうとしての行動なのはわかる。だけど、だけどな。俺達の気持ちは無視かよ。

 

 

「そうやってムツキの気持ちを無視して守ろうとするから!あいつはアンタを嫌っているんだよ!」

 

「っ!?」

 

「デンチュラ、俺のことは気にするな!きゅうけつ!」

 

 

 糸をデスバーンに伸ばして、突貫。俺は身を丸めてデンチュラはデスバーンに激突し、その体力を奪い取る。同時に俺は離れ、次にデンチュラを戻してポケモンを繰り出す。

 

 

「ドラピオン!つじぎり!」

 

 

 二連撃で強烈な斬撃が叩き込まれ、崩れ落ちるデスバーン。それを見たキリエさんは信じられないとでも言うような表情を見せた。

 

 

「…無傷で私のポケモンを倒すとは。いいんですね?」

 

「え?」

 

「貴女は強い。だから。本気を出しても、いいんですね?」

 

 

 次に繰り出された、ポケモンは瞬時に地面に潜り、見えなかった。速い…!?コンコンコンコンコン!と力強く靴音が無人のナックルシティに鳴り響く。瞬間、地面から飛び出してきた何かがドラピオンに掠り、大きく吹き飛ばしたかと思うと空中に飛び出していた。あれは…ドリュウズ!?

 

 

「私のドリュウズはかたやぶり。シェルアーマーだろうが急所を貫きます。ドリルライナーの後に、再びあなをほる」

 

 

 指示を受けると空中で両腕を畳んで高速回転してミサイルの様にドラピオンに向かい、その胴体に掠らせると地面に潜る。速すぎるし、掠ってるだけなのにもうドラピオンが瀕死だ。戻すしかない。

 

 

「イワパレス!からをやぶるだ!あなをほる!」

 

 

 ならばとイワパレスを繰り出して能力を上昇させ、後は任せる。俺は靴音で指示とかできないから地中じゃなにも指示できない。案の定、イワパレスが地中から大きく打ち上げられた。それを追って飛び出してくるドリュウズ。がんじょうを貫かれたか。

 

 

「速さには速さで対抗だ!テッカニン!」

 

「じしん!」

 

 

 テッカニンを繰り出した瞬間に襲いくる土柱。前回の戦いでどう攻撃してくるのか分かっていたテッカニンはその複眼で認識した瞬間には回避行動を取り、自発的にかげぶんしんで回避。複数突き出た土柱の間を縫いながらドリュウズへ突撃する。

 

 

「つばめがえし!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 ゴキン!と、ドリュウズの振るった頭部とテッカニンの刃が交差する。しかし弾かれた勢いを利用して宙返りしたテッカニンの一撃がドリュウズの腹部に突き刺さった。

 

 

「ドリュウズ!じしん!」

 

「背後に避けろ!」

 

 

 ドリュウズが膝をつき手をついたかと思えば、真下から突き出る土柱から逃れるテッカニン。駄目だ、決定打が足りない。

 

 

「テッカニンを倒せば私のドリュウズに追いつけるポケモンはいませんね?もう終わらせましょう。被害額は私の自腹で払いますので遠慮なく、連続でじしん!」

 

 

 カッコッカーン!と踊るような靴音が鳴り響く。するとドーンドーンドーン!と、次々に土柱がコンクリートを突き破って現れ、身を翻して逃げに徹するテッカニンを追いかけていく。逃げ場をなくすつもりか!?

 

 

「っ…そうだ、つるぎのまいで土柱を斬り裂いていけ!」

 

「なっ!?」

 

 

 俺の指示に身を翻したテッカニンは絶え間なく突き出てくる土柱の山に突っ込み、ジャキンジャキンジャキンと次々と土柱を両断しながら舞っていく。ノンストップで絶え間なく襲いくる土柱…もはや触手の様にうねる土の柱を次々に斬り裂いて行くテッカニンの姿は美しくて。思わず見惚れるが頭を振って

 

 

「そこだ!つばめがえし!」

 

 

 さらに加速し一直線。邪魔する土柱は斬り裂きながら突き進み、超音速の斬撃がドリュウズのどてっ腹に炸裂。大きく吹き飛ばした。

 

 

「どうだ!」

 

「…まだです」

 

 

 そう言ってキリエさんが取り出したのは双四角錐の結晶の様なアイテム。およそ試合では使われない、禁断ともいっていいアイテム。げんきのかけら…!

 

 

「ホルード」

 

 

 ボールから出されて、げんきのかけらを口の中に入れて復活するホルード。キリエさんはギラギラ輝く目でこちらを睨む。余裕たっぷりだった今までとは比べ物にならない、凶悪な顔だ。

 

 

「これはもしもの時のために持っていた一つだけです。反則だと言ってくれても構いません。ですが大人として、貴女たちを関わらせるわけにはいかない…!」

 

「ならこっちはやることは一つだけだ。押しとおる!」

 

 

 そして、テッカニンのシザークロスとホルードのでんこうせっかがぶつかった。




げんきのかけらは試合外だとよく使われてるイメージ。マクロコスモスって最初鉱山から始まったらしいから鉱物については詳しそう。

・ラウラ
手持ちが欠けているとはいえ最強の元ジムリーダーとタイマン張る主人公。デンチュラに背中に掴ませてスパイダー●ンの如く空中戦を繰り広げる。ムツキの本音をキリエにぶつける。テッカニンの面目躍如と言わんばかりにキリエの切札級ポケモンであるドリュウズを降した。

・モコウ
今回あまり何もしてない人。ムツキとコンビで巨大なポケモンに挑む。

・ムツキ
貴重な飛行戦力。自分じゃキリエを止めれないと悟ってラウラに託した。モコウとコンビで巨大なポケモンに挑む。

・キリエ
ローズの指示で巨大なポケモンをダンデが来るまで抑え込もうとしていたものの地面がない屋上での戦いなので本領発揮できず苦戦していた。大人としてラウラ達に戦わせないために立ちはだかる。目的のためなら死なない程度に痛めつけることも街中を傷つけることも厭わない容赦のなさを持つが、ムツキの本音を聞かされて動揺していた隙を突かれる。手持ちはホルード(相棒)、ハガネール(本来の手持ちじゃない)、ドサイドン、サダイジャ(キョダイマックス個体)、デスバーン、ドリュウズ(切札)。げんきのかけらはローズから渡されたもので本来は好まないが大人として負けられない。

・ドサイドン♀
とくせい:ハードロック
わざ:じしん
   メガホーン
   つのドリル
   がんせきほう
もちもの:なし
備考:てれやな性格。負けん気が強い。

・サダイジャ♀
とくせい:すなはき
わざ:とぐろをまく
   じしん
   すなじごく
   へびにらみ
もちもの:なし
備考:がんばりやな性格。おっちょこちょい。キョダイマックス個体で試合では切札扱い。

・デスバーン♀
とくせい:さまようたましい
わざ:じしん
   シャドーボール
   だいちのちから
   シャドークロー
もちもの:なし
備考:おとなしい性格。逃げるのがはやい。キリエの古参ポケモン。手加減が可能な他、キリエを乗せて浮かぶことができる。

・ドリュウズ♀
とくせい:かたやぶり
わざ:じしん
   ドリルライナー
   アイアンヘッド
   あなをほる
もちもの:なし
備考:しんちょうな性格。負けん気が強い。キリエの切札。高速で動き、ドリルライナーはもはやミサイル。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSムゲンダイナⅠ

どうも、放仮ごです。ついにムゲンダイナまで来ました。最初ムカデっぽいなあと思ったけどそんなことなかったけど当初はラウラの手持ちとして検討してました。

今回はVSキリエ決着。そして…?楽しんでいただけると幸いです。



 テッカニンのシザークロスとホルードのでんこうせっかがかち合い、共に吹き飛ばされる。げんきのかけらは瀕死から復活できるものの体力は半分までしか回復しない。そこが狙い目だろう。

 

 

「じしん!」

 

「かげぶんしん!」

 

 

 地面に足を踏みしめたホルードの繰り出した土柱をかげぶんしんで避け、瞬時に背後を取るテッカニン。しかしココンッと靴音が鳴ったかと思うとホルードの背後、テッカニンの真下から土柱が伸びてきて炸裂するも、ギリギリで空中に逃れて直撃を避けていたテッカニンの急降下からの一撃が叩き込まれる。

 

 

「シザークロス!」

 

「じしん!」

 

 

 同時にではなく、両腕を交互に交差させて振るう斬撃が連続で叩き込まれ、崩れ落ちるホルード。咄嗟にじしんを繰り出そうとしたがこちらが速い。今度こそ、俺の勝ちだ。

 

 

「貴女は…強いですね。勝ち残ればダンデ君とも張り合えたでしょう」

 

「そりゃ買いかぶりすぎです。俺、ただの蟲使いなんで」

 

「完敗です。ドリュウズが負けた時点で貴女は強いトレーナーですよ。…私はこのままポケモンを回復したら戻るつもりですが、行くんですか?」

 

「大いなる力には大いなる責任が伴うっていう言葉があります。戦える力があるなら、戦う責任がある。蟲ポケモン達に情けない姿は見せられませんし」

 

「いい言葉ですね。大人として、貴女達を危険から守るぐらいはさせてもらいます」

 

 

 テッカニンを戻し、デンチュラを出して上に戻ろうとしていた、その時だった。ナックルスタジアムの屋上から巨大なマゼンタ色の光線が飛び出て、何かが落ちてきた。

 

 

「!?」

 

「っ、先に行きます!」

 

 

 キリエさんに一言叫んでから、咄嗟にデンチュラを背中にしがみ付かせて糸を伸ばして宙を舞い、落ちてきた人物を受け止める。ボロボロのゴスロリを身に纏った特徴的なツインテールは見紛うことはない、モコウだ。

 

 

「どうしたモコウ、なにがあった!?」

 

「…太刀打ちできなかった。奴の一撃で、我のパッチラゴンとムツキのオンバーンがやられ、その余波で吹き飛ばされた…ムツキが心配だ、我も連れていってくれ!」

 

「重量ちょっときついけど、任せろ!」

 

 

 そしてモコウを前に抱き着かせてスイング、上を目指すが、炎や蒼い光が屋上の端から散るたびに、瓦礫が落ちてきてそれを避けるのに精一杯だ。するとボールを取り出してロトムを繰り出すモコウ。ふよふよ側を浮いてハイドロポンプやほうでんで瓦礫を散らしてくれた。

 

 

「ロトム!迎撃を頼む!」

 

「テッカニン、お前もだ!」

 

 

 それを見て俺もテッカニンを繰り出し、瓦礫を除去してもらいながらモコウを抱いて屋上に急ぐ。そして屋上の縁に糸を付け、モコウが声にならない絶叫を耳元で上げるのに顔をしかめながら大きくスイング、屋上の上空に振り上げられると、そこには炎上する屋上とその中心に居座る30mぐらいの巨体を誇る、深い青色のドラゴンの骨格の様なポケモン。マゼンタ色の膜に包まれた六つの白い目がこちらを睨む。

 その前には、ウォーグルを侍らせ私達を見てへたり込んだムツキと、ムツキを守るように立ちはだかる、赤いマントを翻したチャンピオン・ダンデとゴリランダーがいた。キリエさんのポケモン二体はその場に転がっている。

 

 

「モコウ!無事でしたか!」

 

「ラウラ!君も来たか!モコウを助けてくれて感謝する!俺が駆け付けた時には既に姿はなくムツキは泣き崩れていて手遅れかと…あとは任せてくれ!奴はムゲンダイナというらしい!ローズ委員長の説明だとブラックナイトの正体そのものだとか!だが相手にとって不足無し!チャンピオンタイムだ!」

 

 

 俺達が屋上に降り立つと、始まるチャンピオンと巨大なポケモン…ムゲンダイナの戦い。ゴリランダーはその手にしたバチでムゲンダイナの振り下ろした毒を纏った爪を受け止め、口から放たれたりゅうのはどうはバチを振り上げ打ち上げる。あんなことができるのか!?

 

 

「10まんばりき!」

 

 

 強烈な拳がムゲンダイナの顎を捉えるも、クロスポイズンと思われる攻撃がカウンターで入る。凄い勝負だ。

 

 

「ドラムアタックですばやさを下げるんだ!」

 

 

 取り出したドラムセットを打ち鳴らして蔦を伸ばしムゲンダイナ拘束するゴリランダー。しかしムゲンダイナは口から横にした火柱の様なかえんほうしゃを放って拘束を燃やしながらゴリランダーに直撃させ、戦闘不能にしてしまった。

 

 

「よくやった、ゴリランダー。…お前はこんな怪物とも張り合えるぐらい成長したな。むっ?」

 

「ダンデさん、駄目です!母さんのポケモンを倒したあの技が…!」

 

「受けたらひとたまりもないぞ!」

 

 

 骨格の胸部に当たる部分にあるマゼンタ色のコアと思われる場所が光り輝き、ムツキとモコウが警告の声を上げると、ダンデは不敵に笑んでギルガルドを繰り出した。

 

 

「心配ないぜ!俺の相棒達に対処しきれない技はない!キングシールドだ!」

 

 

 その言葉と共に巨大なバリアが張られ、ムゲンダイナの胸部から放たれたマゼンタ色の極太光線と衝突。防ぎきると、ギルガルドはシールドフォルムからブレードフォルムにチェンジ、己が体を振りかぶる。

 

 

「せいなるつるぎ!」

 

 

 真正面から炸裂し、仰け反るムゲンダイナ。しかしすぐに口に炎を溢れさせ、蜷局を巻くように横に回転する。アレはやばいぞ…!?咄嗟にムツキとモコウの手を引いてテッカニン、ロトム、ウォーグルと共に物陰に隠れた瞬間、回転しながら放たれたかえんほうしゃの連続攻撃にギルガルドは受け切れずに戦闘不能。炎の余波を受けて若干焦げたダンデの頬に汗が流れる。笑ってはいるが、劣勢なのは目に見えて明らかで。おそらく、先ほどのマゼンタ色の光線…ダイマックスの光に似てるからダイマックスほうと呼ぶことにする…を防げるポケモンがもういないのだろう。

 

 

「こいつは強敵だ…なりふり構ってられないぜ!ドサイドン!ドラパルト!オノノクス!」

 

 

 一気に三匹のポケモンを繰り出すダンデさん。それほどの相手かと戦慄していると、胸部に輝き始めたマゼンタ色の光が先程とは明らかに違うことが分かる。骨格の隙間から漏らすように放たれるそれは、前方に扇状に拡散して放たれた。これもダイマックスほうか!?

 

 

「っ…馬鹿な」

 

 

 繰り出した三匹のポケモンが、一撃で戦闘不能になりたじろぐダンデさん。しかしこちらの視線に気付くと安心させるような不敵な笑みを浮かべ、リザードンを繰り出す。

 

 

「キョダイマックスは…使えないか。奴の影響か?だが俺は無敗のチャンピオンダンデだ!チャンピオンタイムはまだ終わらない!リザードン!」

 

 

 ムゲンダイナの口から放たれたりゅうのはどうを飛翔して避けるリザードン。続けて放たれた拡散ダイマックスほうも空を駆り掻い潜って回避し、ムゲンダイナに肉薄して口に巨大な炎を溢れさせる。

 

 

「だいもんじ!」

 

 

 大の字の巨大な炎がムゲンダイナに炸裂。大爆発が起きて、ムゲンダイナが崩れ落ちる。やったか!?

 

 

「兄貴!」

 

「ダンデさん!…あれ、ラウラ?」

 

「モコウにムツキも!お前たちも来ていたのか!?」

 

「ユウリたちこそ…どこ行ってたんだ?」

 

 

 そこに駆けつけてきたのは、朽ちた剣と朽ちた盾をそれぞれ手にしたユウリとホップ。俺達に気付くと合流し、共にダンデさんに駆け寄った。

 

 

「危険を顧みずに助けに来てくれたのか。心の底からサンキューだホップ、ユウリ!お前らたくましくなったな!だが安心しろ!ムゲンダイナの能力なのかダイマックスできずに手こずったがチャンピオンタイムもいよいよクライマックスだぜ!」

 

 

 そう言ってハイパーボールを取り出すダンデさん。捕獲するつもりなのか。

 

 

「リザードンをはじめチャンピオンチームの力でムゲンダイナを追い詰めた!あとは暴走を止めるためボールで捕獲する……ただそれだけだ!見てろよ、チャンピオンタイム!!」

 

 

 そして咆哮を上げるムゲンダイナに、見事なフォームでボールを投球するダンデさん。ムゲンダイナはボールに吸い込まれて俺以外が歓声を上げる。…だが俺は思った。確かに倒れてはいたが、本当に体力を削りきったのかと。

 

 

「…む?下がれ、みんな!」

 

 

 ボールが揺れ、俺達を下がらせるダンデさん。瞬間、ボールがマゼンタ色の輝きを放って大爆発。リザードンが庇ってくれたことで俺達は無事だが、ダンデさんは直撃を受けて膝をつく。割れたボールの上半分が転がり、姿を現したムゲンダイナは俺達を見据えて咆哮を上げた。ユウリがダーテングを、ホップがバイウールーを繰り出し、俺はテッカニンを、モコウはロトムを、ムツキはウォーグルを連れてダンデさんの前に立つ。

 

 

「ホップ。ラウラ。モコウ。ムツキ。…行くよ!」

 

 

▽ムゲンダイナが 勝負を しかけてきた!




チャンピオンVSムゲンダイナは凄く書きたかった対決なので書けて満足です。

・ラウラ
キリエに完勝し、ダンデの強さとそれでも敵わないムゲンダイナの脅威に戦慄する主人公。モコウの命をギリギリ助けることができた。大いなる力には~など言ってることややってることは完全にスパイダー●ンである。

・モコウ
ムゲンダイナの攻撃で落ちた所を間一髪でラウラに助けられたヒロイン(仮)。ロトムで援護するなどやることはちゃんとやる。

・ムツキ
ムゲンダイナの攻撃でモコウが落ちたことで戦意喪失し泣き崩れていたところにダンデがやってきたヒロイン(仮)。デレると依存するところがある。

・ユウリ&ホップ
原作通りまどろみの森から朽ちた剣と盾を持ち出してダンデの救援に駆け付けた。覚悟完了。

・キリエ
敗北してラウラ達を認めざるを得ない大人の代表。その後ポケモンセンターで回復していたところにユウリに敗北したローズから子供たちを守るように指示され急いで向かってる。

・ダンデ
チャンピオンかくあるべしと実力を見せつけたガラルチャンピオン。三匹一気にやられたのは尺の都合で申し訳ない。さすがにハイパーボール。

・ムゲンダイナ
とくせい:プレッシャー
わざ:ダイマックスほう
   りゅうのはどう
   かえんほうしゃ
   クロスポイズン
もちもの:なし
備考:まじめな性格。暴れることが好き。本来のムゲンダイナより1.5倍大きい個体。拡散ダイマックスほう、回転かえんほうしゃなど特殊な技の使い方をしたり、やられたふりもできる程知能が高い。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSムゲンダイナⅡ

どうも、放仮ごです。お気に入り数が1100件を越えましたありがとうございます!ポケスペ剣盾編二巻も購入して執筆意欲が湧きあがっております。キョダイカジリガメの首って伸びるのね…

今回はVSムゲンダイナの続きです。楽しんでいただけると幸いです。


 対峙するのはおそらく、この地方の伝説ポケモンであろうムゲンダイナ。名前をそのまま訳すなら無限の力か…もしかしたら無限のエネルギーを使えるポケモンなのか?咆哮と共に放たれたりゅうのはどうを、横に広がって回避する俺達。意識しなくても自然に円形に取り囲む形になった。

 

 

「テッカニン、つばめがえし!」

 

「ダーテング!ねこだまし!」

 

「ロトム、ハイドロポンプ!」

 

「ウォーグル!ブレイククロー!」

 

「バイウール―!すてみタックルだぞ!」

 

 

 一斉に襲いかかる俺達。しかしねこだましで一瞬怯んだムゲンダイナはその場で横に回転してかえんほうしゃを放ち、ハイドロポンプさえ蒸発させながらポケモン達を弾き飛ばす。テッカニンは大ダメージだ、戻すしかない。

 

 

「マルヤクデ!抑え込むんだ!」

 

 

 交代するなりするりとムゲンダイナの猛攻を避けてムゲンダイナの背骨に当たる部分に巻き付き、ほのおのうずを放つマルヤクデ。そのまま背骨を焼いて折ってしまえ!

 

 

「駄目!でかいのが来る、みんな離れて!」

 

 

 なにかを察知したユウリがそう叫んだ瞬間、マゼンタ色に輝くムゲンダイナの全身。骨格の隙間を利用して全方位に向けられたマゼンタ色の光線はマルヤクデを引き剥がして吹き飛ばし、ユウリ達のポケモンも同時に撃ち落とされる。トレーナーはポケモンが受けてくれたことで何とか無事だった。

 

 

「ダンデさんのポケモンが一撃でやられたダイマックスほうだ!あれをどうにかしないと…」

 

「なら麻痺させる!ほっぺすりすりだストリンダー!」

 

「私も、お願いストリンダー!ほっぺすりすり!」

 

 

 モコウとユウリのWストリンダーが同時にムゲンダイナに肉薄する。しかしその口元には蒼い光が漏れていて。放たれたりゅうのはどうで纏めて薙ぎ払われる。

 

 

「こうなったら…!」

 

「切札で…!」

 

「一気に倒すぞ!」

 

「先程突き落とされた借りは返させてもらうぞ!」

 

「母さんのポケモンを倒してくれたお礼をしてやります!」

 

 

 同時に切札ポケモンを繰り出す俺達。ドラピオン、セキタンザン、カビゴン、パッチラゴン、ルチャブルが並ぶ。この面子ならどうだ!

 

 

「こおりのきばで動きを止めろドラピオン!」

 

「セキタンザン、ボディプレスからじしんを叩き込んで!」

 

「カビゴン、真正面から10まんばりき!」

 

「最大火力をぶちこめ!でんげきくちばし!」

 

「ルチャブル!渾身の一撃を!とびひざげり!」

 

 

 俺のドラピオンのこおりのきばによる氷結でその巨体を床に拘束したところに、四方八方から同時攻撃が叩き込まれる。特にユウリのセキタンザンのじしんはかなり効いたようで咆哮を上げるムゲンダイナ。しかし口からの火炎放射で凍結の拘束を破ったかと思うとそのまま一回転。かえんほうしゃはムゲンダイナを中心に炎の竜巻となってその熱風で俺達を押し戻す。セキタンザンやカビゴンの重量級でさえ吹き飛ばされる風圧にたじろいでいると、竜巻が収まったかと思えば間合いに誰もいないのに毒を纏った爪を振りかぶるムゲンダイナ。今度は何だ…!?

 

 

「これは…クロスポイズンか…!?」

 

 

 ドラピオンも憶えている技だが、信じられないのはⅩ状に振るった瞬間、飛ぶ斬撃となって繰り出されたこと。刃を伴った毒の斬撃は床を溶かしながら迫り、避けきれなかったセキタンザンに炸裂するとその表面を融解させ戦闘不能にしてしまった。慌ててボールに戻し、代わりにアーマーガアを繰り出すユウリ。

 

 

「セキタンザン!?戻って!」

 

「どく・ドラゴンで間違いなさそうだがなんだあのでたらめな攻撃は…物理に特化したセキタンザンをあっさり倒すクロスポイズンとは…」

 

「名前の通り、エネルギーが無限だとでも言うのか…!?」

 

 

 俺の呟きに続いたモコウの言葉に、嫌な予感しかしない。そして、ムゲンダイナの攻撃を避けるためとはいえバラバラになっていたのは悪手だった。ムゲンダイナは標的を一人に絞り、その口に炎を溢れさせたのだ。病弱であるが故にあまり動けずエレベーター前に陣取っていたムツキへと。

 

 

「っ!?」

 

「ムツキ!」

 

「カビゴン!」

 

 

 近くにいた俺の背にしがみ付いたままのデンチュラが糸を伸ばすが、間に合わない。反対側にいたホップもカビゴンを向かわせるも、遅すぎる。誰もがムツキに襲いかかる惨劇を想像し、目を見開いたその時。

 

 

「デスバーン!」

 

 

 ムツキの前に飛び出し、炎が炸裂する瞬間に石版の様なポケモンを繰り出して防いだものの衝撃でデスバーンもろとも吹き飛ばされた人物がいた。キリエさんだ。慌てて崩れ落ちるように駆け寄るムツキ。俺とホップもそれに続き、第二波から守るようにカビゴンとドラピオンが立ちはだかる。

 

 

「母さん!なんで…」

 

「例え嫌われていても、守るぐらいは……母親として、大人として…できること…を…ムツキちゃんが無事でよかった…」

 

「母さん!母さん!?」

 

「気絶しただけだ、ムツキ」

 

「落ち着くんだぞ!とにかく安全な場所に…」

 

「…母さんのことは任せます、ホップ」

 

 

 ホップにキリエさんを託し、ゆらりと、力なく立ち上がるムツキ。ずるずると足を引きずりながら、ルチャブルと共にムゲンダイナに向かっていく。それを追いかけるドラピオンと俺だったが、ムツキから溢れる怒りのオーラを幻視した気がした。

 

 

「…よくも、よくもやってくれましたね……私の母さんを!ひんしじゃすませませんよ…!ルチャブル!つばめがえし!」

 

 

 瞬間、素早い動きでムゲンダイナに肉薄するルチャブルの鋭い一撃がムゲンダイナの右腕に炸裂。弾き飛ばすと「とびひざげり!」膝を顎に叩き込み、浮き上がるムゲンダイナの下に潜り込むとグググッと踏ん張り、凄まじい勢いで跳躍した。

 

 

「とびはねる!」

 

 

 ムゲンダイナを突き飛ばしてひっくり返し、上空に舞い上がるルチャブルの、急降下による一撃がムゲンダイナのコアと思われる胸部に叩き込まれた。

 

 

「フライングプレス!」

 

 

 まるで隕石の様な一撃が建物を揺らす。…やっぱり、キリエさんの娘なんだなと再認識した。あれはフライングプレスじゃないなにかだろ……怒りに燃えるムツキに慄く俺達。ユウリとモコウは何か言いたげで口をつぐみ、ホップはダンデとキリエさんをエレベーター前に引き寄せていた。多分みんなが言いたいことは一緒だ。

 

 

「あいつ1人でいいんじゃないかな?」

 

 

 キリエさんのポケモン達、ダンデさんのポケモン達、俺達のポケモン達、そしてムツキの猛攻を受けて、やっと崩れ落ちたムゲンダイナ。しかしその全身にガラル粒子と思われるマゼンタ色の光が集束させていき、ロケットか花火の様に空へと舞い上がって行くムゲンダイナ。そして空でマゼンタ色の光を発し、その影響か瓦礫や物が浮かび上がり渦を巻く。…嘘だと言ってくれ、ここからが本気だと言うのか?

 

 

「…なんだ、あれ…」

 

 

 マゼンタ色の暗雲から姿を現したのは、異様な姿に変貌したムゲンダイナ。先刻よりも長大な身体がマゼンタ色のコアを中心に渦を巻いた状態で固定され、その先端に5つの枝分かれした頭部と思わしき一つの巨大な手を伸ばした様なそれは、もはやポケモンには見えない。キョダイマックス?いや、大きさも150mは越えているし姿を変えるにしても変わりすぎだ!?名付けるとしたら奴の名にあやかってムゲンダイマックスだろうか。これが、おとぎ話のブラックナイトの真の姿か…。もはやポケモンじゃないだろ、これ。

 

 

「なんだよ…でかすぎるぞ…」

 

 

 ダンデさんとキリエさんを置いて復帰したホップが声を上げる。あまりにでかすぎて、勝てるビジョンが見えない。咄嗟に守るようにデンチュラをボールに戻し、ドラピオンと共に構える。勝てるのか?じゃない、勝つしかない。

 

 

「一緒にやるぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

 

 満身創痍だろうが関係ない。やってやる!




次回、むしポケモンが大活躍!

・ラウラ
自分がやられたセキタンザンをあっさり倒したムゲンダイナに恐れすら感じている主人公。ブチギレムツキには思わずRXな台詞を吐いた。

・ユウリ
さらっとムゲンダイナのダイマックスほうを察知して最悪の事態を免れてる原作主人公。キリエを参考にボディプレスからじしんに繋げてみたりと新たな戦法を試している。セキタンザンがやられるのはさすがに想定外で珍しく焦っていたり。

・モコウ
ムゲンダイナのエネルギーが無限なんじゃないかと指摘。ラウラと同じくムゲンダイナの脅威を察知して恐れている。

・ムツキ
キリエをやられてブチギレ。母親を思わせる猛攻で通常形態のムゲンダイナを倒すことに成功。レベルの強さは伊達ではない。

・ホップ
救護班もやったり忙しい縁の下の力持ち。ダンデとキリエを避難させる大健闘。

・キリエ
追い付いて来たら愛娘が死にそうな場面に出くわして咄嗟に前に出た。母親として大人として意地を貫いた。イメージは完全に某時の王者の最終回の友である。

・ダンデ
気絶中。見事にお荷物と化した。

・ムゲンダイナ
まじめな性格なりに動けないムツキを狙うなど無駄に知能がいい。かえんほうしゃを炎の竜巻にしたり、クロスポイズンを飛ぶ斬撃にしたり、全方位にダイマックスほうを撃ったりやりたい放題だがムツキを怒らせたことで敗北。ムゲンダイマックスして最終決戦に挑む。
今作では千年後のガラルのエネルギー問題を解決するほどの無限大なエネルギーを持つ永久機関。具体的に言うと最大出力をポンポン撃ったり、PPが尽きない。

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VSムゲンダイナⅢ

どうも、放仮ごです。今回は第一章最終回となります。というより、当初予定していた最終回になります。人気が出たのでこのままエンディング後も書いていく予定ですが、ひとまずの終わりです。

VSムゲンダイナ最終戦。かっこよくてかわいくて美しくて最高で最強な蟲ポケモンの活躍を見よ!楽しんでいただけると幸いです。


 ダイマックスレイドバトルをやる時の様に構える。…まず空に向けて攻撃を当てないとか。ドラピオンというか俺の手持ちの技はほとんど物理だから辛いな。

 

 

「ドラピオン!ミサイルばり!」

 

「アーマーガア!ブレイブバード!」

 

「パッチラゴン!でんげきくちばし!」

 

「ルチャブル!とびはねる!」

 

「カビゴン!10まんばりきだぞ!」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

 

 力を溜めこみ始めたムゲンダイナに、それぞれ指示をするも異変に気付くのはすぐだった。ポケモンたちがいくら力んでも、技が出ないのだ。ムゲンダイナの謎の力が働いて技を出せない!?

 

 

「どうした、ドラピオン?!」

 

「ポケモンの技を封じられた!?」

 

「技が出せないだと!?」

 

「そんな、どうすれば……!?」

 

「忘れてた!まどろみの森で剣と盾を見つけたんだった!ユウリ!」

 

 

 狼狽えていると、何かを思い出したのかユウリの方を向いて叫び、バッグを漁るホップ。それで同じく何かを思い出したのかバッグを漁り、朽ちた剣のようなものを取り出すユウリ。ホップが取り出したのは朽ちた盾のようなもの。そんなものを取りに行っていたのか?

 

 

「そんなものでどうしようって…」

 

「こいつは英雄の武器のはずなんだ!ユウリも剣を頼む!」

 

「まかせて!ボロボロでも何かが起きるかも!」

 

 

 そう言って剣と盾を掲げる二人。俺達が固唾を飲んで見守る中で、キィン!と甲高い音が鳴り響く。それに呼応するようにこちらに迫らんとしたムゲンダイナの背後の空で青と赤に輝き、二つの何かがこちらに迫ると、ユウリとホップの前に降り立ちムゲンダイナを弾き飛ばした。それは共に、狼の様なポケモン。

 

 

「ウルォーード!!」

 

 

 そんな咆哮と共にユウリの前に立つのは、古傷だらけのすらりとした身体を持つシアン色の毛並みに、三つ編みのような首毛を生やしたポケモン。

 

 

「ウルゥーード!!」

 

 

 そんな咆哮を上げてホップの前に立つのは、古傷だらけの逞しい身体を持つマゼンタ色の毛並みに、鬣を持った獅子にも見える雄々しいポケモン。

 

 

「伝説ポケモンか…!?」

 

「ザシアン!」

 

「ザマゼンタだぞ!」

 

 

 さらにユウリとホップの手に握られた剣と盾が浮かび上がったかと思うと空中で合体。虹色の輝きを放ったかと思うとザシアンとザマゼンタに降り注ぎ、二体はそれぞれ剣と盾と融合、武装して姿を変えていた。ザシアンの方は三つ編みがほどけてツインテールの様になり、ザマゼンタの方はマントの様な体毛が覆う、神々しい姿だ。

 …なんで蟲ポケモンにもウルガモスぐらいしかこの神々しさがないんですかねゲームフリークよ、ゲノセクトは神々しいというよりかっこいいだし。サンムーンだとウルトラビーストってのがいたらしいが詳しくは知らん。ちょっと前世のゲーム会社に文句が浮かぶが頭を振って向き直る。

 

 

「ドラピオン!ミサイルばりだ!」

 

 

 試しに指示してみれば、六つの光弾がムゲンダイナに炸裂。どうやら技が使えるようになったらしい。ミサイルばりに怯んだムゲンダイナに、赤と金のエネルギーを纏ってザマゼンタが突撃、大きく弾き飛ばすとそれに連なるようにザシアンが剣を口に構えて突撃。巨大な斬撃が叩き込まれ大爆発が起きる。やったか?

 

 

「っ、こおりのきば!」

 

 

 爆発が消えた瞬間、猛毒の津波…ダイアシッドが襲いかかって来て、咄嗟に全員を守るようにこおりのきばで氷壁を展開。受け止める。さらにザマゼンタがひかりのかべを張り氷壁を補強した。ザマゼンタが防御特化で、ザシアンが攻撃特化か。わかりやすい二体だな。

 

 

「交代、インテレオン!ねらいうち!」

 

「交代だパッチルドン!ゆきなだれ!」

 

「交代ですシンボラー!サイコキネシス!」

 

 

 ユウリ、モコウ、ムツキの交代したポケモンの遠距離攻撃がムゲンダイナを襲い、ダメージを与えていくがダイマックスポケモンと同様、大ダメージは期待できない。さらにダイバーンが放たれ、氷壁が粉砕されてしまい、続けてダイアシッドが襲いかかりまとめて薙ぎ払われる。クロスポイズンが変わったダイアシッドだからひかりのかべは通じなかったものの一撃で落とされはしなかったが、それでもとんでもない威力だ。

 

 

「ドラピオン!?」

 

 

 さらに俺のドラピオン目掛けてダイドラグーンが襲いかかり撃沈。ボールに戻し、オニシズクモを繰り出す。キリエさんと戦闘したまま来てしまったから、もう残りは満身創痍のテッカニンと無傷のデンチュラとこいつだけだ。偶然だが最初の三匹だな。ザシアンザマゼンタの助力があってもこいつを倒すのは厳しい。何か手を考えないと。そうだ、あの巨体なら…

 

 

「テッカニン、デンチュラ。此処は俺とオニシズクモが何とか惹き付ける。頼むぞ」

 

 

 俺の最初の相棒達に作戦を伝えると、テッカニンはデンチュラを抱えて空に舞い上がった。それをさせないと言わんばかりに襲いくるダイバーンの前にオニシズクモが飛び出す。やれるか?いや、やるんだよ!

 

 

「最大出力でアクアブレイクだ!」

 

 

 俺の指示に合わせてすいほうが膨れ上がり、水が爆発したかの様なアクアブレイクがダイバーンと相殺。さすがやればできる子だオニシズクモ!動き続けながら攻撃を加えていく伝説ポケモン二体に続き、俺達も指示を出す。

 

 

「たたみかけろ、バブルこうせん!」

 

「攻撃あるのみだよ、みずのはどう!」

 

「そうだなユウリ!交代だバチンウニ!10まんボルト!」

 

「パッチルドン!フリーズドライだ!」

 

「シンボラー!至近距離からエアカッターです!」

 

 

 立て続けに攻撃を受けたムゲンダイナが身を捩り、巨大な手を横にして技を全て薙ぎ払ってその風圧でこちらを吹き飛ばしたかと思えば、巨大な手を振り下ろしてきて風で怯んでいたザマゼンタとザシアン二体を掴み、ぐしゃりと握りつぶしてしまった。

 

 

「ザシアン!?」

 

「ザマゼンタ!?」

 

 

 そしてポイッと凄まじい速度で二体をこちらに投げつけてきて、瀕死の二体が転がりユウリとホップが駆け寄る。そんな二人目掛けてダイバーンを放つムゲンダイナ。よろよろと立ち上がりひかりのかべを張って二人を守るザマゼンタと、同じくよろよろで立ち上がり剣を口に構えて斬りかかるザシアン。ザシアンを跳ね除け、俺達の攻撃を物ともしないムゲンダイナに防戦一方だ。…そろそろか?

 

 

「オニシズクモ!例の奴だ!」

 

 

 放たれるダイドラグーンに、グググッと構えるオニシズクモ。試合では披露できなかったが、こいつは新技を覚えているんだ。見せてやれ!

 

 

「ミラーコート!」

 

 

 ガキィン!と、水泡から鏡の様な膜が張られてダイドラグーンを光に変え、光線として返すオニシズクモ。かみつくを忘れて覚えたこの技は、特殊攻撃を二倍にして返す。己の技を倍返しで喰らったムゲンダイナがよろめく。今のダメージだけじゃない、着々と、確実に体力を減らしていたんだ。表情も何も見えないが、戸惑ってる様子は分かるムゲンダイナに不敵な笑みを見せてやる。上を見れば、ムゲンダイナの渦を巻く体にへばりつく黄色い蜘蛛がいた。

 

 

「もう体力がなくなってきただろ。気付かなかったか?きゅうけつだ。能ある蟲は、牙を隠すんだぜ?」

 

「なんだと!?」

 

「なんかしているとは思っていましたが…」

 

「さすがラウラ!」

 

「お前やることがいちいちすごいぞ!?」

 

 

 驚愕するモコウたち。そもそも、ダイマックスできないからってダンデは苦戦していたけどな、前提が違うんだ。

 

 

「ダイマックスができないだ?そもそもダイマックスしない方が俺のポケモンは強いんだよ。お前を倒す剣も盾も無くなったかと思ったか?―――甘えよ」

 

 

 ピョンッと飛び降りてスタッと着地したデンチュラと、ふわりと降りてきたテッカニン、そして威嚇するオニシズクモを引き連れて、グラリと体勢が崩れるムゲンダイナに、指差して言い放つ。

 

 

「お前にとっては蚊に刺されたようなもんだろうが、蟲の恐ろしさをなめんなよ?俺だって死んだくらいだからな」

 

「「「「え?」」」」

 

 

 あ、やべ。ゴホンと咳払いし「冗談だ」とすませると、ユウリに向き直る。

 

 

「さて。バトンタッチだ、後は任せたぞユウリ」

 

「え、私?」

 

「俺、蟲以外に興味ないしお前、五匹しか手持ちいないだろ?そのままダンデに挑むつもりだったのか?」

 

「そうだぞユウリ。お前がムゲンダイナを捕まえるべきだぞ!あいつを扱えるのは兄貴でも俺達の誰でもない、お前だけだ!」

 

「…まあ、でんきタイプじゃないしな」

 

「翼ありませんし興味ないです」

 

 

 素で驚いていたユウリだったが、俺に続くホップ、モコウ、ムツキの言葉に、プレミアボールを取り出しながら頷き、巨大化したボールを構えたかと思うと俺の方に振り向いた。

 

 

「私、もっと強くなるけどいいの?」

 

「言ってろ。次はちゃんと負かしてやる。6VS6のフルバトルだ」

 

「えへへ…嬉しいな。じゃあ、もらうね!」

 

 

 そして、投擲されたボールはムゲンダイナを吸い込んでいき、床に激突。グラグラと動いていたが、諦めたのか何度か揺れたのちスンッ…と動かなくなり、カチンっという音と共に縮んで元の大きさに戻ったそれをユウリが手にして満足げな笑みを浮かべる。

 

 

「空が…」

 

 

 同時にマゼンタ色の暗雲は消え失せ、元の姿に戻ったザシアンとザマゼンタが太陽輝く青空に飛び立っていく。…あの二体がいなかったらデンチュラだけじゃ体力を削りきれなかったな。感慨深げにみんなで見送る。…そういや、あの二体は捕まえないんだな。おそらくタイトル級のポケモンだと思うんだが。

 

 

「…旅の目的は、達成かなあ」

 

 

 ―――――諸君。私は蟲が好きだ。虫ポケモンが好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。虫ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと。

 

 思うところはあるが、ダンデが敗北したムゲンダイナを、みんなの力を借りたとはいえ蟲ポケモンで倒したのだ。この事実が広まれば、蟲ポケモンのよさが世間に伝わるだろう。ああ、今から楽しみだ。




最初の三匹で決めるのはポケスペ一章最終回のイメージ。ポケスペ3巻は名勝負しかないんよ。

・ラウラ
ムゲンダイナ討伐の立役者。うっかり転生者であることを暴露してしまったがギリギリバレてない。能ある蟲は牙を隠す、は座右の銘にしたいぐらい気に入ってる。ムゲンダイナにはまるで興味がない。オニシズクモのミラーコートは隠し札だったがユウリ戦ではセキタンザン相手なため使えなかった。

・ユウリ
ザシアンに次いでダメージリソースを最も稼いだ原作主人公。六匹目としてムゲンダイナをゲットした。誰もからムゲンダイナを扱える唯一のトレーナーだと思われている。ラウラとまた戦う約束を交わしてご満悦。

・モコウ
こおりタイプの技でしっかりダメージを稼いでいた縁の下の力持ち。ムゲンダイナはかっこいいなとは思ったが興味はない。

・ムツキ
殺意マシマシでエスパータイプの技などでダメージを稼いでいた。あとでユウリが使うムゲンダイナをボコボコにしてキリエの仇討ちしようと思っているが捕まえるのはなんか違うしそもそも翼がないから興味はない。

・ホップ
喜んでムゲンダイナをユウリに譲った。今回一番の苦労人。地味にひんしになったザシアンとザマゼンタを手持ちの道具で回復させていた。

・ムゲンダイナ
なんか痒いなと思っていたら体力をすっからかんにされたうっかりさんな伝説ポケモン。煽ってきたラウラは絶対潰してやると誓いユウリの手持ちとなる。

・ザシアン&ザマゼンタ
ピンチに駆けつけた伝説ポケモン姉弟。握り潰されて瀕死にされたが奮闘した。いいところを持っていったラウラにちょっと思うところがある様子。ホップには感謝している。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSリザードン

どうも、放仮ごです。暖かくなってきて、風呂に入ろうとしたら洗面所に黒いヤツがいて絶叫しました。蟲ポケ好きだしフェローチェも好きだけどリアルな蟲は苦手なのです。

今回は次章への幕間。ユウリVSダンデです。次章のキーパーソンとなる新キャラが二人登場します。楽しんでいただけると幸いです。


 あれから三日後。実はユウリに倒されていたらしいローズ委員長は逮捕され、無事ユウリとダンデの決戦が行われた。ムゲンダイナを手にしたユウリと、チャンピオンダンデの対決は白熱した。

 

 

「ムゲンダイナ!かえんほうしゃ!」

 

「キングシールドだギルガルド!」

 

「そのままギルガルドを掴んで地面に叩きつけてかえんほうしゃ!」

 

「なに!?」

 

 

 キングシールドを維持したギルガルドをガシリと掴み、地面に叩きつけたうえで防御が崩れるまでかえんほうしゃを放つムゲンダイナ。ムゲンダイナの元々の強さにユウリの指示が加わったことでもはや無敵だった。戦闘不能になったギルガルドをボールに戻し、ニッと笑みを浮かべるダンデさん。

 

 

「最高のチャレンジャーの最強のポケモンの組み合わせは伊達じゃないな。ワクワクさせるじゃないか…!」

 

「私は貴方に勝って頂点に立つ!それぐらいしないとあの子にふさわしくないから!」

 

 

 続けて繰り出されたドサイドンと組み合うムゲンダイナ。チャンピオンダンデは驕ることなく、ムゲンダイナと直接戦った俺達に技構成を聞きに来ていたからこその選択だろう。ダイマックスほうは何タイプの技かは知らんが、それでもかえんほうしゃとクロスポイズンは防げる。

 

 

「じしん!」

 

「引っくり返してりゅうのはどう!」

 

 

 組み合った状態から効果抜群であるじしんを起こし、キリエさんを思わせる地面の隆起で攻撃するチャンピオンだったが、ムゲンダイナは浮かび上がってキリエさんほど伸びない隆起を回避、掴んだままだったドサイドンの腕を引っ張り上げて体勢を変えて放り投げ、空中でりゅうのはどうを浴びせて大爆発を起こした。…三日でどんな鍛え方したらあの動きが出来るんだ…

 

 

「くっ…圧倒的な勝利こそできなくなってしまったが、それでもチャンピオンタイムは終わらない!ドラパルト!」

 

「交代、インテレオン」

 

 

 ムゲンダイナだけ使うことなく、インテレオンを繰り出すユウリ。この三日間で知ったが、あいつは戦う相手の情報を仕入れるだけ仕入れて戦略を練るガチタイプの人間だ。ホテルの自室で過去のダンデの試合を見て、技構成を頭に叩き込んでいた。だからこその選択、ムゲンダイナさえ負けてしまうかもしれないポケモンなのだろう。

 

 

「効果抜群を狙い勝利を手繰り寄せる!10まんボルト!」

 

「みずのはどうで受け流して、ねらいうち!」

 

 

 俺のデンチュラの時と同じく、電撃を純水の盾で受け流したかと思えば指先を純水の盾に突っ込んで先端を出して水流を叩きつけるインテレオン。チャンピオンほどのポケモンが相手でも冷静に対処して見せるその姿は歴戦の勇士そのものだ。

 

 

「くっ…シャドーボール!」

 

「ふいうち!」

 

 

 そして一瞬で駆け寄りシャドーボールを放とうとしていたドラパルトを尻尾のアッパーカットで打ち上げ、戦闘不能にした。

 

 

「インテレオンか。メッソンだった頃とは見違えた!ならば俺はこのポケモンで応えよう…ゴリランダー!」

 

 

 不敵に笑んだダンデが繰り出したのはゴリランダー。それに対し、ユウリは交代することなく構える。

 

 

「インテレオン…ダンデさんが連れて行ったサルノリがここまで強くなったんだよ。私達も成長を見せつけないとね!」

 

「ゴリランダー!ドラムアタックだ!」

 

「よく見て避けて!ねらいうち!」

 

 

 太鼓を叩き、地面から太い蔦を繰り出すゴリランダー。それをするすると避けながらゴリランダーの顔目掛けて水を飛ばし、目くらまししてその隙に飛び込むインテレオン。

 

 

「とんぼがえり!」

 

 

 そして二段蹴りが炸裂、反動でユウリのボールに戻っていくインテレオン。よろめくゴリランダーの前に降り立ったのは、セキタンザンだ。

 

 

「ヒートスタンプ!」

 

「10まんばりき!」

 

 

 跳躍したセキタンザンの火球を纏った踏み潰しと、全身の力を込めて振るったゴリランダーの拳が交差する。結果は相討ち。ゴリランダーの拳はセキタンザンの急所を捉えたが、勢いのまま潰されてしまった。ダンデの初白星が相討ちだということにどよめく観客席。続けて繰り出されたオノノクスと、ムゲンダイナの視線が交差する。

 

 

「じしんだ!」

 

「跳躍してダイマックスほう!」

 

 

 バンッと尻尾が大地を打ち鳴らし、上空に舞い上がるムゲンダイナ。その体勢で放たれたマゼンタ色の光線はオノノクスを飲み込み、戦闘不能にした。そして観客のボルテージが頂点に達する。ダンデは、最後の一体だけでも簡単に6タテしてしまう化け物だからだ。

 

 

「まだまだチャンピオンタイムは終わらない!終わらせないッ!!」

 

「正念場だね!交代、インテレオン!相棒と一緒にチャンピオンを越える!」

 

 

 共に繰り出されるのはパートナーのリザードンとインテレオン。同時にボールに戻し、ダイマックスバンドを輝かせ巨大化したボールを同時に投擲する二人の強者。

 

 

「リザードンの本気を見せよう!キョダイマックスタイム!!」

 

「その激流で全てを洗い流せ!ダイマックスだよインテレオン!」

 

 

 そして、巨大化し姿を変えたリザードンと、巨大化したインテレオンが並び立つ。相性はユウリが上。だが、リザードンにはソーラービームがあったはずだ。

 

 

「ダイソウゲンだ!」

 

 

 先にダンデが指示をして、巨大な植物とグラスフィールドが生い茂る。効果抜群の大ダメージを受け、よろめくインテレオン。だがしかし、倒れない。なにかを咀嚼しているようにも見える。ダンデはその答えに行きついたらしく驚愕の表情を浮かべた。

 

 

「リンドのみか…!?」

 

「私、勉強しました。ラウラの期待に応えるため、全力で貴方に勝つために!インテレオン!げきりゅうの、ダイストリーム!」

 

 

 げきりゅう。みずタイプの御三家ポケモンが持つ、ピンチになったらみずタイプの技の威力が上がるとくせいの入った大いなる水の一撃がリザードンに炸裂。レベルもすばやさもリザードンの方が上だったが、戦略でそれを覆したユウリの勝利…結果だけ見れば圧勝だった。ダンデはリザードンをボールに戻すと帽子で目元を隠し、何かを押し殺すようにしてからニッと笑い、帽子を空に投げて煌びやかな笑みを観客の俺達に見せた。

 

 

「チャンピオン・タイム・イズ・オーバー!!最高の試合にありがとうだ!」

 

 

 観客の歓声が爆音で鳴り響く。無敗のチャンピオンが敗北し、新たなチャンピオンが生まれた。ガラルの歴史に残る試合に歓声を上げない者はいないだろう。俺は周りの皆を見渡し、ぽつりと呟く。

 

 

「…俺達のライバルは、強いな」

 

「ああ、ユウリは凄い奴だぞ」

 

「うん、自慢のライバルたい」

 

「ええ。癪ですがね」

 

「我らも負けられないな」

 

「もっと強くなりましょう」

 

「今度は僕らの誰かが、あそこに立つんだ」

 

 

 ホップ、マリィ、ビート、モコウ、ムツキ、ナグサ。ユウリのライバルだった、もしかしたらあそこに立っていたかもしれない俺達は打倒ユウリを誓った。

 

 

「ユウリくん、おめでとう!無敵のチャンピオンを倒した君が新しいチャンピオンだ!君という素晴らしすぎるポケモントレーナーを心の底から称賛する!君が強くなった今、俺も未来のことを考えよう!未来に繋がる今現在を、俺達大人もよりよくする!さあユウリ!これからも自分自身と!パートナーのポケモンを信じて突き進め!自分たちが望む明るい未来をつくるために!」

 

 

 俺達が信じる明るい未来か。むしポケモンの評価が改まれば感無量なんだがなあ。

 

 

「今ここに!新しい伝説が生まれた。ユウリ!凄い力を持つものならどんな未来も描けるだろう!ユウリが見せてくれる未来をみんなで楽しみにしようぜ!少女よ、君の望む未来がここにある!」

 

「私の望む未来……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、歓声を上げて湧き立つ会場の裏で。

 

 

「あーあ、負けちゃったチャンピオンもいい笑顔をしてさー。もっと文句言ってもいいじゃない、伝説ポケモンなんかでチャンピオンに挑むなんてさ。勝って当たり前じゃん。みんな笑顔でつまらないつまらないつまらないー。ねー、そう思わない?ルミちゃん」

 

「あの最強のドラゴンポケモン欲しい欲しい欲しい…なんでムツキ選手があそこに立たないであの女が立っているのかも物申したいけどあのムゲンダイナすっごくほしい…!」

 

「うわぁ…ムツキ選手狂いとドラゴンタイプ狂いが一緒に出てすっごい顔をしている…いいね!最高の顔だよ、ルミちゃん!あの二人を唆して嗤って愉しめるガラル全土を巻き込んだ騒動を起こそうと思うんだけどさ、君も手伝わない?」

 

「ハアハア。…なにすればいいんだ?アルルカン」

 

「うーん、そうだなあ。ソニア博士の助手とか?」

 

「え゛」

 

 

 マタドガスを連れている黒いタキシードでシルクハットを被った黒づくめの少年「アルルカン」と、ウオノラゴンを連れている白い髪に紅い瞳の白づくめの少女「ルミ」による不穏な会話が行われていたのを、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラ!私勝ったよ!見ていてくれた?!」

 

「ああ、見ていたよ!見ていたから騒ぐのはやめろ!?」

 

 

 ユウリが俺に向かってダンデと一緒にブンブン手を振ったことで視線がこちらに集中して俺達の顔が真っ赤になったのは言うまでもない。




アルルカンもルミも過去作のオリキャラが元ネタだったり。

・ラウラ
今回は完全に観戦者である主人公。

・ユウリ
新チャンピオン。鬼に金棒、ユウリにムゲンダイナ。

・ホップビート&マリィ&モコウ&ムツキ&ナグサ
ライバルズ。仲良くラウラを中心に並んで観戦していた。マサル君?知らない子ですね…

・ダンデ
チャンピオンだった男。ムゲンダイナを操るユウリにワクワクした。何と言われようと自分がユウリに実力で敗北したと感じた。

・アルルカン
他者の笑顔をつまらないと嘲るサイコパス。見た目は紳士だが中身は悪辣な子供そのもの。名前(本名じゃない通称)の由来は道化師で自称。ガラルマタドガスを連れている。

・ルミ
ドラゴン狂いでムツキ狂いというキャラが濃い狂人。アルビノ少女。白衣の様な上着を着ているが研究者じゃない。名前の由来はカルミア。ウオノラゴンを連れている。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板4

だいぶ遅れました!どうも、放仮ごです!単純に掲示板を書くのが難産でしたが、あるキャラをぶっこむことで解決しました。これがありなのかは知らんけど、どうか次回に続くための掲示板回に付き合ってくだせえ。楽しんでいただけると幸いです。


チャンピオンユウリについて語るスレ

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

ムゲンダイナも圧巻だったな!

 

65:名無しのトレーナー

ちょっと卑怯と思ったけどあんなポケモンを扱えるだけですごいんだよなあ

 

66:名無しのトレーナー

ところでさ、チャンピオンでさえ一体を同士討ちにしかできなかったのに、ユウリ選手を追い詰めていたラウラ選手って実はすごくね?

 

67:名無しのトレーナー

凄いに決まってるだろ。むしポケモンだけでセミファイナルトーナメント準優勝だぞ

 

68:名無しのトレーナー

あのぬしドラピオンも捕まえてるしな

 

69:名無しのトレーナー

噂によるとムゲンダイナを倒したのもラウラ選手らしいな

 

70:名無しのトレーナー

はえ?

 

71:名無しのトレーナー

どこ情報?

 

72:名無しのトレーナー

むしポケモンで伝説ポケモンを倒すなんてそんな…

 

73:名無しのトレーナー>>69

ユウリ選手のPocketerだぞ

 

74:名無しのトレーナー

 

75:名無しのトレーナー

 

76:名無しのトレーナー

ユウリ選手ラウラ選手のこと大好きすぎて草

 

77:名無しのトレーナー

チャンピオン戦でもラウラ選手のことを仄めかす発言してたからな…

 

78:名無しのトレーナー

見て来た。『ラウラやダンデさん、伝説ポケモンのザシアンとザマゼンタ、みんなと一緒に戦いました!』『どんだけ攻撃しても効かなかったのに、ラウラがデンチュラでムゲンダイナを倒したんだよ!』『ラウラの提案でムゲンダイナは私が捕まえることにしたの!』大体一言目にはラウラ選手が出てきて草

 

79:名無しのトレーナー

連投してて草

 

80:名無しのトレーナー

ムゲンダイナ捕まえてチャンピオンになった自分も凄いのに、それよりもラウラ選手の方が大事だってよくわかるなあ

 

81:名無しのトレーナー

ユウリ×ラウラは流行るぞ…

 

82:名無しのトレーナー

カプ厨おつ

 

83:名無しのトレーナー

正直ありだと思います!

 

84:名無しのトレーナー

幼馴染のユウリ×ホップより人気な組み合わせなのは笑う

 

85:名無しのトレーナー

しかしまさかあのローズ委員長がこんな大事件起こすとはなあ

 

86:名無しのトレーナー

なんでも、ローズ委員長一人でやったことで社員は関係ないって言ってたな

 

87:名無しのトレーナー

ナックルシティで暴れる元ジムリーダーと戦うラウラ選手が目撃されてるんだよなあ

 

88:名無しのトレーナー

グランドウォール・キリエやろ?今日も自分でナックルシティを修繕してたで

 

89:名無しのトレーナー

この前のホテルロンド・ロゼ前の騒ぎもやっぱりキリエだったらしいな

 

90:名無しのトレーナー

あの人真面目だからローズ委員長の指示を聞いていたとしか思えないんだよなあ

 

91:名無しのトレーナー

俺、ナックルシティにある自宅の窓からその戦い見てたんだけどさ、見間違いじゃなければラウラ選手があのキリエを倒してたんだよな…

 

92:名無しのトレーナー

それマ?

 

93:名無しのトレーナー

あの人ダンデのリザードンを唯一…あ、いやユウリ選手が勝ったからもう唯一じゃないけど…負かした人やぞ?

 

94:名無しのトレーナー

それマジならそのラウラ選手に勝ったユウリ選手がダンデに勝ったのも必然だったんだなって

 

95:名無しのトレーナー

なんというか…セミファイナルトーナメントの時からチャンピオンになるならユウリ選手だって言われてたから意外性はないんだよな

 

96:名無しのトレーナー

ダンデが一匹しか倒せずに勝利したってのもすごいぞ

 

97:名無しのトレーナー

しかも相討ちでようやくだったからな

 

98:名無しのトレーナー

ムゲンダイナが強すぎたのもあるんじゃね

 

99:名無しのトレーナー

いやいや、あの化け物を操れるってだけですごいぞ

 

100:名無しのトレーナー

トレーナーとしての腕は少なくともホウエンのフロンティアブレーン級ってことだもんな

 

101:名無しのトレーナー

そのユウリ選手、ジムチャレンジがポケモンを握るの初だって話だが

 

102:名無しのトレーナー

いやいや

 

103:名無しのトレーナー

そんなわけ

 

104:名無しのトレーナー

ウソ乙

 

105:名無しのトレーナー

ソースはユウリ選手のPocketerなんだよなあ

 

106:名無しのトレーナー

それであの強さ?

 

107:名無しのトレーナー

一ヶ月足らずしかポケモン握ってなくて無敗ってマ?

 

108:名無しのトレーナー

化け物かよ

 

109:名無しのトレーナー>>105

負けたのは旅の途中のラウラ選手との野良試合三回だけだと

 

110:名無しのトレーナー

ラウラ選手の方が化け物だった

 

111:名無しのトレーナー

そりゃガチで対策するわな

 

112:名無しのトレーナー

ジムを巡る途中だったとはいえあの強さを三回も倒してるのやべえな…

 

113:名無しのトレーナー

Pocketerによるとラウラ選手に勝つために頑張ってたらジムリーダーを突破してたとか

 

114:名無しのトレーナー

センスがすごい…!

 

115:名無しのトレーナー

ラウラ選手のついでに倒されるジムリーダーたちぇ

 

116:名無しのトレーナー

そもそも手持ちのバランスもよくて苦手なタイプがないからなあ

 

117:名無しのトレーナー

ドラゴンに弱いってぐらいか?

 

118:名無しのトレーナー

キバナ、砂パじゃなくて普通にドラゴンだけで挑んでたら勝ってたんじゃね

 

119:名無しのトレーナー

再戦した時は天気変えまくって翻弄したけど圧倒されてたからなあ

 

120:名無しのトレーナー

ジムリーダーとユウリ選手の再戦もすごかったな…

 

121:名無しのトレーナー

一匹も倒されずに三人も突破ってどれだけすごいことか

 

122:名無しのトレーナー

しかもあの時点では登録していた手持ちは五体だけっていう

 

123:名無しのトレーナー

そのメンバーにムゲンダイナも入ったチャンピオンユウリに勝てる人いるんですかね…

 

124:名無しのトレーナー

それこそダンデかラウラ選手か…

 

125:名無しのトレーナー

少なくとも俺らじゃ無理だな

 

126:名無しのトレーナー

また次のジムチャレンジで化け物が生まれるんじゃね、知らんけど

 

127:名無しのトレーナー

まあ他の地方にも伝説のレッドとか、ダイゴとかシロナとかアイリスとかいるし…

 

128:名無しのトレーナー

その四人は強すぎる。いやダンデもそれに並んでいるけども

 

129:名無しのトレーナー

ユウリ選手の名も後世に語られるんだろうなあ

 

130:名無しのトレーナー

ガラルの歴史を変えた者として語り継がれるのは間違いないぞ

 

131:名無しのトレーナー

しっかしダンデが倒されて、ローズ委員長は逮捕されて、ガラルは変わって行くんだろうけどどうなるかねえ

 

132:名無しのトレーナー

ネズとポプラが引退してマリィ選手とビート選手が後継になるぐらいだからな

 

133:名無しのトレーナー

キバナのところに入り浸るムツキ選手の姿もあるらしいぞ

 

134:名無しのトレーナー

キバナ、さすがに一匹しかドラゴンポケモンいない子をスカウトするのはどうかと思うの…

 

135:名無しのトレーナー

だからドラゴン使い(笑)って言われるんやぞ

 

136:名無しのトレーナー

ラウラ選手やモコウ選手、ナグサ選手もジムリーダーになるかもな

 

137:名無しのトレーナー

ユウリ選手にラウラ選手とかダンデとキバナな関係性だろうしなあ

 

138:名無しのトレーナー

ひえっ…

 

139:名無しのトレーナー

勝てる気がしないんだが

 

140:名無しのトレーナー

元最強のジムリーダーに勝ってるからジムリーダーになったらえらいことに…

 

141:名無しのトレーナー

ジムリーダーってジムチャレンジ中はある程度手加減して調整した手持ちを使うから大丈夫でしょ…

 

142:名無しのトレーナー

チャンピオンカップで本気出すんだぞ

 

143:名無しのトレーナー

またダンデとキバナが戦うアレが繰り返されるだけだぞ

 

144:名無しのトレーナー

これからはキバナかラウラのどちらかがチャンピオンと戦うことになるんだろうな(予言)

 

145:名無しのトレーナー

もし新たなチャレンジャーが勝ち残ってもムゲンダイナを越えないといけないっていう地獄

 

146:名無しのトレーナー

嵐を呼ぶ女じゃなくて嵐を巻き起こす女になるのか…

 

147:名無しのトレーナー

ムゲンダイナ倒しても電撃が効かないインテレオンがいるでよ

 

148:名無しのトレーナー

なんでも怯ませて暴風で吹っ飛ばすダーテングもな

 

149:名無しのトレーナー

攻防隙がないセキタンザンもいるぞ

 

150:名無しのトレーナー

アーマーガアとストリンダーも普通に強いぞ

 

151:名無しのトレーナー

どうやったら勝てるんですかね…

 

152:名無しのトレーナー

ダンデもそんなもんだっただろ

 

153:名無しのトレーナー

オールラウンダーでもタイプエキスパートでもチャンピオンってだけで強いんだよなあ

 

154:名無しのトレーナー

ダイマックスアドベンチャーで伝説ポケモン捕まえるしかないな!

 

155:名無しのトレーナー

カンムリ雪原のアレか

 

156:名無しのトレーナー

そう簡単に捕まえられないから伝説なんだよなあ…

 

157:名無しのトレーナー

それよりダンデが修行したって言うマスター道場で修行した方が現実味ありそう

 

158:名無しのトレーナー

ヨロイ島の道場か

 

159:名無しのトレーナー

体験コースのチラシうちにも来たなあ

 

160:名無しのチャンピオン

なにそれ二つとも詳しく教えて!

 

161:名無しのトレーナー

ふぁっ!?

 

162:名無しのトレーナー

名無しのチャンピオンは草。…本人?

 

163:名無しのトレーナー

こんなところまでよーくる

 

164:名無しのチャンピオン

ラウラのことをエゴサしてたら興味深い話があったからつい…

 

165:名無しのトレーナー

自分のエゴサじゃなくてラウラ選手のエゴサってのが草

 

166:名無しのトレーナー

ヨロイ島もカンムリ雪原もパスがあればいけるで

 

167:名無しのトレーナー

ガラル本島にはいないポケモンがいる地域やで

 

168:名無しのトレーナー

みんなやさしいw

 

169:名無しのトレーナー

やさしいせかい

 

170:名無しのトレーナー

やさいせいかつ

 

171:名無しのトレーナー

ここまで天ぷら

 

172:名無しのトレーナー

ここまでがテンプレ

 

173:名無しのトレーナー

ラウラ選手が好きそうな蟲ポケもたくさんいるぞ

 

174:名無しのトレーナー

というかユウリ選手のライバルが好きそうなポケモンしかいないかもな

 

175:名無しのトレーナー

まだ強くなりたいならマスター道場いいと思うぞ

 

176:名無しのトレーナー

おいやめろ

 

177:名無しのチャンピオン

ありがとう!今度ラウラを誘って行ってみるね!

 

178:名無しのトレーナー

ヒエッ

 

179:名無しのトレーナー

さらに強くなるのか…(呆れ)

 

180:名無しのトレーナー

バトルジャンキーって噂は本当ぽいな

 

181:名無しのチャンピオン

あ、今度ラウラについて語るスレ立てるからよかったら来てね!

 

182:名無しのトレーナー

ラウラ選手が好きなの伝わってくる…

 

183:名無しのトレーナー

もう付き合っちゃえ

 

184:名無しのトレーナー

カプ厨は帰って、どうぞ

 

185:名無しのチャンピオン

ラウラは今私の家にいるよ?

 

186:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

187:名無しのトレーナー

マ?

 

188:名無しのトレーナー

既に同棲中…だと……?

 

189:名無しのトレーナー

公式が最大手

 

190:名無しのトレーナー

チョーイイネ!サイコー!

 

191:名無しのトレーナー

ユウリ!ラウラ!スーパー!ベストマッチ!

 

192:名無しのチャンピオン

ラウラだけじゃなくてモコウやムツキもいるけど

 

193:名無しのトレーナー

あ、なんだお泊まり会か

 

194:名無しのトレーナー

それはそれで

 

195:名無しのトレーナー

というかユウリ選手、今から生放送じゃないの?

 

196:名無しのトレーナー

そんな感じで大丈夫?

 

197:名無しのトレーナー

大丈夫じゃない、大問題だ

 

198:名無しのチャンピオン

忘れてた、ありがとう!行ってくるね!

 

199:名無しのトレーナー

嫌味もなにもないいい子だったな

 

200:名無しのトレーナー

本番一分前だったの草なんだが

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 




こういうスレに本人降臨はありなのかな?

・ラウラ
ユウリよりやべーやつ扱いされてる人。次期ジムリーダー候補と言われている。他のスレだと蟲ポケ談義が行われていたためご満悦。現在なぜかユウリの家にいる。

・ユウリ
名無しのチャンピオンその人。生放送本番前にエゴサしていたらこの掲示板を見つけて思わず乱入した新チャンピオン。今度ラウラについて語るスレを立てるつもり。

・モコウ&ムツキ
何故かラウラと共にユウリの家にいるコンビ。次期ジムリーダー候補とされている。

・Pocketer
この世界のT●itterのようなもの。ラウラはやってないけどユウリとモコウ、ムツキなどはやっている。

次回から第二章が始まります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第二章:剣と盾の章
VSユキハミ


どうもまた遅れました、放仮ごです。いつの間にか評価数が50人を超えてましたありがとうございます。今まで30人ぐらいが限度だったので嬉しいです。

今回から第二章!名づけるならば「剣と盾」編が始まります。例の二人もようやく登場。そしてラウラも新しい手持ちが。楽しんでいただけると幸いです。


 あれから数日。頭の上にユキハミを乗せ、傍らにデンチュラを連れた俺はハロンタウンのユウリの家の屋根の上に寝そべって日向ぼっこしていた。…なんというか、都会暮らしだったせいか田舎の空気は癒されるな。すぐ近くにどんよりしているまどろみの森がなければもっといいんだが。

 

 

 チャンピオンカップも終わり、チャンピオンを倒すという結果を残せなかった俺はなんとなく実家に戻る気がしなかった。どうせ蟲ポケモンのよさを理解しようともしない人達だ。何言われるかわかったもんじゃない。モコウとムツキも同じらしい。モコウはなんでも、チャンピオンになれなかったことで絶対嫌味を言ってくる従兄弟がいるらしく、実家に帰りたくないとか。ムツキは単に、病院送りにされるのは嫌だから会いに行けないらしい。

 そんなわけで今度は三人で旅に出るか、と画策しているとユウリが自分の家に誘ってくれたのだ。曰く、人の少ない田舎だから落ち着ける、みんながいると楽しい、という理由なのがユウリらしい。お言葉に甘えて三人揃ってユウリの家に押しかけた訳だが…

 

 

「まあ、やることはいくらでもあるからなあ」

 

 

 現在、ユウリは生放送のためにテレビ局に、ムツキとモコウはナックルジムにジムトレーナー研修に行っている。ユウリはチャンピオンとしての仕事やムゲンダイナの研究が忙しく、家に戻ることも少ない。セミファイナルトーナメント時にキバナに誘われたムツキだけでなく、モコウも誘われていた。曰く、あまごいにかみなりを合わせれば無敵だぜ!パッチラゴンって言うでんき・ドラゴンもいるわけだしどうだ?らしい。キバナ…実は節操なしなんじゃないかな。

 俺もガラル中に蟲ポケモンを集めに、ユウリの家を拠点にそらとぶタクシーで赴いていた。そして見つけたのがこのユキハミだ。キルクスタウンに向かう道中では見かけなかったのだが、出会った瞬間ビビッと来たね。進化条件は分からんが絶対美しいポケモンになる。ちなみにイワパレスと交代した。

 

 

「次はどこに探しに行こうかね…」

 

 

 そうぼけっとしつつユキハミを触って癒されながらスマホロトムのポケモン図鑑のぶんぷを眺めていると、空に三つの影が。見てみると、生放送帰りのユウリと、ジム帰りのモコウとムツキがそらとぶタクシーで帰ってきたところだった。

 

 

「おかえり、三人とも」

 

「ただいま!そんなところにいたら危ないよラウラ!」

 

「フハハ!屋根の上から見下ろす様はかっこいいな!」

 

「馬鹿と煙は高いところが好きって言いますよ」

 

「誰が馬鹿だ。空飛びたい願望持つお前も馬鹿ってことじゃないか」

 

「言われてみれば!?」

 

 

 言い返すとショックを受けて固まったムツキを置いといて、俺はデンチュラをボールに戻して屋根の上から飛び降りて三人と合流。どうせいつもみたいにバトルをせがまれるんだろうなと身構えていると、ユウリが何か気になる様子でまどろみの森に視線を向けていた。

 

 

「ユウリ、どうした?」

 

「…うーん、ラウラと戦いたいところだけど……なにかに呼ばれた気がして」

 

「なにかってなんだ?」

 

「まどろみの森というと…たしかあの二体のいた場所だったか?」

 

「ザシアンとザマゼンタですね」

 

「そうだ、忘れてた!」

 

 

 そう言って家の中に入って行ったかと思えば一分も経つことなく戻ってくるユウリ。その手には朽ちた剣が握られていた。

 

 

「これ、返して無かった…!」

 

「それで呼ばれたってわけか。なるほどな?」

 

「テレパシーか何かか?かっこいいな!」

 

「モコウ、貴女かっこよければそれでいいんですか…?」

 

「私は今から返しに行くけど…一緒に来る?」

 

「「「そりゃもちろん」」」

 

 

 そんなこんなで四人揃って、朽ちた剣を返すためにまどろみの森に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

まどろみの森。霧が立ち込め、日の光も入らない薄暗い鬱蒼とした不気味な森だ。ちなみに蟲ポケモンは結構いない(重要)。一応いるらしいが何故か顔を出してくれないちくせう。襲ってくる低レベルだったり高レベルだったりバラバラな野生ポケモンを蹴散らしながら奥地に進むと、古いアーチ状の建造物がある神聖な雰囲気の泉に出た。そこにいたのは、予想だにしない人物だった。

 

 

「あれ?ユウリにラウラ、それにモコウにムツキも?お前たちまでこんな森の奥にいったいどうしたんだ?」

 

「ホップこそどうしたの?」

 

「朽ちた剣を返しに来たユウリと、暇だから着いてきたおまけだ」

 

「誰がおまけだ!」

 

「いやまあ否定はしませんが」

 

 

 ユウリと同じく朽ちた盾を手にしたホップが佇んでいて。ユウリの問いに答えるように周りを見渡した。

 

 

「ザシアンとザマゼンタが眠っていた森だからな。誰も入ってこなくて静かで考えるのにぴったりなんだ!」

 

「何か考え事でもあるのか?」

 

「ちょっと思うところがあってな…ユウリは剣を返しに来たって?」

 

「うん、なにかに呼ばれた気がして」

 

「なんだか不思議だな。そうだユウリ、改めて。優勝おめでとうだぞ!あれからバタバタしてて会えなかったからな!まさかユウリがガラル最強無敵の兄貴に勝っちまうなんてさ!」

 

「半ば圧勝でしたけどね」

 

「黙っておけムツキ」

 

「アレはユウリが強すぎた」

 

「ちょっとそこうるさいよ。ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよホップ!」

 

「…なんだかまだ信じられない。ユウリは本当にすごいぞ…………すごすぎて、よくわからないぞ!」

 

「「「それはわかる」」」

 

「そこはわからないで!」

 

 

 ユウリが凄すぎてよく分からないのは多分、誰もが思ったことだ。すると後ろを向いていたホップが、決心した顔で振り向いてボールを構えた。

 

 

「ユウリ……もう一度俺と勝負してくれよ?」

 

「いいけど…どうして?」

 

「最強のチャンピオンだった兄貴に勝った、ムゲンダイナを手に入れたユウリの強さ……俺も確かめるぞ!」

 

「いいよ。ラウラ、審判をお願い。6VS6でいいかな?」

 

「それでいくぞ!」

 

 

 そしてユウリとホップのバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 ユウリの操るムゲンダイナと、それに立ち向かうホップのポケモン達。バイウールーとアーマーガアはかえんほうしゃで焼き払われ、バチンウニは技も何もなく押し潰され、ウッウは何も吐き出すことなくりゅうのはどうで一撃で落とされ、カビゴンはクロスポイズンの直撃をもらい、最後のエースバーンとなる。

 

 

「まだだ!まだ終わらないぞ!」

 

「容赦しないよホップ!ダイマックスほう!」

 

「上に避けてかえんボールだぞ!」

 

 

 放たれるマゼンタ色の光線を、跳躍して火球を蹴りつけるエースバーン。ムゲンダイナは顔面に火球を受けて怯み、その隙を見逃すホップではなかった。

 

 

「こうそくいどうからのずつきだ!」

 

 

 すばやい動きでムゲンダイナを翻弄し、真正面からずつきを繰り出すエースバーン。だがしかし、それは悪手だった。

 

 

「捕まえてムゲンダイナ!」

 

「なっ!?」

 

 

 ガシィ!と、ずつきを繰り出して硬直していたエースバーンを両手で掴むムゲンダイナ。エースバーンは拘束から抜け出そうともがくも、がっしり握った両手は放されることはない。

 

 

「ダイマックスほう!」

 

 

 そして、掴まれた状態から零距離でダイマックスほうが放たれ、エースバーンは宙を舞って地面に激突。目を回すのだった。悔しそうに表情を歪め、すぐに穏やかな笑みを見せるホップに、どこか申し訳なさそうな顔を浮かべるユウリ。俺達も何とも言えない顔になる。…これはユウリが強いのか、ムゲンダイナが強いのか。両方か。

 

 

「エースバーン、戦闘不能!ユウリの勝ちだ」

 

「…お前と俺とではこれほど実力の差があるのかよ…!無敵の兄貴に勝ったユウリには敵わないか…」

 

「えっと…」

 

「あんたたちちょっと騒がしいんだけど?なんてね」

 

「あ、ソニアさん。お久しぶりです」

 

 

 するとそこに、以前ラテラルタウンで会った白衣姿のソニア博士がやってきた。そう、博士だ。この数日の間にソニアさんは博士として、本を出していたのだ。いつ博士になったのかは知らんが。

 

 

「ラウラも久しぶり、元気してた?それよりも……ユウリ、チャンピオンおめでとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「勝者の余裕って感じですね」

 

「羨ましいことだな」

 

「ソニア、こんなとこでなにしてんだ?助手の仕事は?」

 

「ホップ、実はね。私もう助手じゃないの…はれて、博士になったのよ!」

 

「本買いましたよ。おめでとうございます」

 

「ラウラが見せてくれたあの本の作者か」

 

「ガラル地方の伝説についての新発見ですね。私も買いました」

 

「ありがとうねラウラ達!ユウリ、ホップ。私、あんたたちにはほんっと感謝してる。一緒に冒険したいからガラルの歴史をもっと知りたいって思えたし、ポケモンのことももーっと好きになれたしね!あ、これ私の書いた本ね。サインつきのレアものよ。ラウラ達のもあとでサインしてあげる!」

 

 

 そう言ってウィンクするソニアさん。元男としてはちょっと来るものがあった。よく見なくても美人だしな。そんな俺を睨むユウリ。…なんかすまん。

 

 

「おばあさまにも認められたし!本も出版できたし!ソニア博士の活躍にこれからも期待しててね!」

 

「…うん、ソニアもユウリもすげーよな!ラウラにモコウ、ムツキもしたいことを貫いて…」

 

「俺達は微妙だがな」

 

「最速にはなれたが最強にはなれなかったしな」

 

「自由に空を飛ぶのが目的なのもどうかと」

 

「そんなことない、みんな立派だよ。尊敬するぞ」

 

 

 なんか様子のおかしいホップに首を傾げるが、いつも通りの笑みを浮かべたので気にしないことにした。すると頭の上のユキハミが震えだして警戒しているのが伝わってきた。なんだ?

 

 

「んで?あんたたちは一体ここで何してんの?」

 

「朽ちた剣を返しに来たんです。ラウラ達はその付添い」

 

「そ、そうだぞ!俺も返さなきゃ!助けてくれたお礼を言って剣と盾を返そうぜ!」

 

「そしたらまたザシアンとザマゼンタに会えるかもだしね!」

 

 

 そう言って朽ちた剣と盾が置いてあったのであろう場所に歩み寄る二人。対して、頭上のユキハミは警戒を強めていく。こいつは大人しい性格で、争い事が好きなポケモンじゃない。それが警戒するほどのなにかがあるってことか?

 

 

「どうしたラウラよ」

 

「険しい顔をして」

 

「いや、ユキハミの様子がおかしくて…」

 

 

 モコウとムツキに伝えていると、ちょうど剣と盾を返すところだった。

 

 

「ザシアン!ザマゼンタ!助けてくれてサンキュー!遅くなったけど、お前たちの大切なもの返すぞ!」

 

「…よし!帰ろう、みんな」

 

「私はもうちょっと森を調べたいからこのままで…うん?パワースポット探しマシーンが反応してる……?」

 

「パワースポット?」

 

「「おーや!おやおーや?」」

 

 

 そしてそこに現れたのは、なんというか珍妙な二人の男だった。

 

 

「なにやら騒がっしーと思えば!」

 

「もしやそこにいるのは落ちこぼれのモコウさんではないですか?」

 

 

 そっくりな顔をした、青い高そうな服を着た剣の様な髪型の銀髪の男と、赤い高そうな服を着た盾の様な髪型の銀髪の男。それを見たモコウの顔が歪む。

 

 

「ソッド!シルディ!貴様ら…なんでここに!?」




いつもは3000字なのに地味に4000字超えてきりがいいので今回はここまで。

・ラウラ
実家には帰りづらいからユウリの家にお邪魔して蟲ポケモンを集めている主人公。見事に暇を持て余している。ユキハミにデレデレ。屋根の上がお気に入り。

・ユウリ
大忙しでラウラに絡めないことを残念がってるチャンピオン。ホップ戦でムゲンダイナだけ使ったことにはさすがに申し訳なさを感じた。服装はチャンピオンコーデ。

・モコウ
従兄弟二人になに言われるかわかったもんじゃないのでユウリの家にお邪魔している。キバナに誘われドラゴンジムのジムトレーナーになろうか検討中。

・ムツキ
病院に連れ戻されたくないからユウリの家にお邪魔している。キバナに誘われドラゴンジムのジムトレーナーになろうか検討中。自分で自分が馬鹿だと言ってしまった。

・ホップ
なにか悩んでいるユウリのライバル。実力差を改めて思い知った。

・ソニア
久々登場。博士になっていた。ソニアの本はラウラもおすすめの一品。

・ソッド&シルディ
散々存在が仄めかされていたモコウの従兄弟。セレブリティ(笑)な髪型。

・ユキハミ♂
とくせい:りんぷん
わざ:こなゆき
   むしのていこう
もちもの:やすらぎのすず
備考:おとなしい性格。イタズラが好き。嫌なものに対して敏感に感じ取る。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSネギガナイト

どうも、放仮ごです。ムツキの罵倒が光る回となります。むしろここを書きたかったから罵倒キャラにしたまである。

今回はVSシーソー兄弟。楽しんでいただけると幸いです。


 モコウ曰くソッドとシルディというらしい二人は、俺達には目もくれず、モコウに歩み寄る。思わず庇うように立ちはだかるが、簡単に払い除けられてしまった。

 

 

「モコウさん。あなた、実家に帰らず何故ここに?まさか、貴女も英雄になろうと馬鹿なことを考えたんじゃあーりませんよね?」

 

「我々と同じ高貴な血筋の分家だというのに街の貧乏人共と遊び呆けた挙句に学び舎でもトップにはなれず、偽りの王であるチャンピオンになって我々を見返してやると言っておきながら蟲なんぞに負けて果たせず、どこぞに逃げた物と思っていまーしたが?」

 

「う、うるさい!お前たちは何度私を否定すれば…!」

 

「まーだそこの下々の者と共にいるとは品を疑いますよ、モコウさん」

 

「おや!おやおーや?もしやあなた『ガラルの歴史』を書いた…ソニア博士では!?」

 

 

 泣きそうになってるモコウの言葉を一蹴して、ついでに俺達も馬鹿にしてきたソッドとシルディはソニアさんの方に向き直った。…てか蟲ポケモンを馬鹿にしやがったなこいつら。

 

 

「え、あ、どうもー……本を買って下さった方です?」

 

「えぇ、えぇ!隅から隅までくまなく読みましたとも!」

 

「えぇ、えぇ!インターネットでレビューも書きましたとも!」

 

「嘘だらけの不愉快な本……」

 

「故に、ホシ1つッ!!」

 

「ちょっとなによ!?嘘なんか書いてないし!」

 

「おい、ソニアにもモコウにも失礼だぞ!」

 

 

 ホップの怒声に、不敵な笑みを浮かべるソッドとシルディ。

 

 

「改めて!我はソッド!」

 

「改めて!我はシルディ!」

 

「「我々こそ、ガラルの純粋なる血族!うぅーん、セレブリティ!」」

 

「ああ、そこのモコウさんも含めてですね」

 

「大変、不愉快ですがッ!」

 

「…ッ、私こそ…お前たちと血縁なのがどんなに嫌か…!」

 

 

 もう完全にキャラが崩れてしまっているモコウ。何がセレブリティだ。変な髪型しやがって。するとソッドとシルディは先程ユウリとホップが返したばかりの朽ちた剣と盾に目を向けた。

 

 

「おやっおーや!こちらにあるのは件の剣と盾では!?」

 

「おーや!なんと小汚い!」

 

「まさに偽りの剣と盾!素手で触るのが憚られます」

 

「触らなきゃいいだろ」

 

 

 思わずツッコんだが、気にせずに朽ちた剣を取るソッドと朽ちた盾を取るシルディ。…こいつらの目的が全然わからん。

 

 

「おい取るなよ!今返したばっかだぞ!」

 

「黙らっしゃい!我々は落ちてるものを拾っただけ!」

 

「文句を垂れられるのであればこれらが誰の物か証明できるのですか!?」

 

「ぐぬぬ…それはできないけど!」

 

「ザシアンとザマゼンタの大事なものなの!返しなさい!」

 

 

 ホップとユウリの怒鳴り声に肩を竦めてやれやれとでも言いたげに溜め息を吐くソッドとシルディ。すると俺達を見渡して、今更気付いたとでも言いたげにポンと手を打った。

 

 

「おや!おやおやおーや?よく見れば、あんな偽の王を決める祭典で遊戯をしていた皆々様じゃあーりませんか」

 

「見ていましたよ。美しさの欠片も無い野蛮な戦い!」

 

「あんなもので決まる強いだけ……いえいえ、お山のご大将の様な王などたかが知れてますねえ」

 

「我々、抱腹絶倒」

 

 

 その物言いにいい加減にカチンときた俺は、さっきからなにか言おうとして口をすぼめていたムツキの肩に手を乗せた。

 

 

「ムツキ、言ってやれ」

 

「え、私ですか?貴方が嫌だと言ってたはずですが」

 

「気にするな。こいつらにはお前のアレがよく効くはずだ」

 

「おやおーや。有利なタイプな癖して負けていた病人じゃないですか。なんです?」

 

「はあ~?なんですか変な髪型!勝手に持ってくのは泥棒なんですよそんなことも習わなかったんですか~?セレブリティ(笑)!」

 

 

 病人だと言われてキレたのか、まくしたてるムツキ。その剣幕に、怖気づくソッドとシルディの姿は滑稽そのものだ。

 

 

「その髪型!その服装!その物言い!無駄に整った殴りたい顔!貴方達はセレブリティなんかじゃありません、ただの成金野郎です!」

 

「なっ、なああああああ!?」

 

「貴方、言うに事欠いて我々を成金野郎、ですと!?」

 

「我々は真なるセレブリティ!平民の癖に意外と押しがお強いのですね。弟よ」

 

「ええ、兄者。そこまで言うなら勝負いたしましょう」

 

「我々、売られた喧嘩は2倍の値段で買うセレブ!」

 

 

 そう言ってボールを取り出すソッドとシルディに、俺とユウリが前に出る。ホップの手持ちは瀕死。モコウは静かに泣いていて、ソニアさんとムツキがそれを慰めているから戦えるのは俺達だけだ。

 

 

「ユウリ、やるか?俺はモコウを馬鹿にされて頭に来てるんだが」

 

「うん、私も頭に来たよ」

 

「偽の王よ。あなたはこのソッドがお相手しましょうぞ!」

 

「蟲の女王よ。あなたはこのシルディがお相手しましょう!」

 

 

▽ポケモントレーナーの シルディが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いきなさい、ネギガナイト」

 

「潰すぞ、テッカニン」

 

 

 シルディが繰り出したのはネギガナイト。見ればソッドもネギガナイトを繰り出している。対して俺はテッカニン。ユウリはムゲンダイナ。あっちは心配いらなそうだな。

 

 

「そんなちんけな蟲ポケモン、一撃で倒してくれましょう!スターアサルト!」

 

「かげぶんしんだ」

 

 

 ネギガナイト渾身の突撃を、分身で回避する。いきなり大技を撃ってくるとは、対して強くないな?

 

 

「つばめがえしだ」

 

 

 鋭い一撃がネギガナイトの背中から炸裂。一撃で落とす。あれから色んなところに赴いて蟲ポケモン探すついでに鍛えてたからな。セミファイナルトーナメントの俺と同じじゃないぞ!

 

 

「馬鹿な…タイレーツ!はいすいのじん…」

 

「させるな、つばめがえし!」

 

 

 交代できなくなる代わりに全能力がアップするはいすいのじんを阻止して司令塔を狙う。やはり一撃で終わった。戦い慣れてないと見て取れる。

 

 

「ならばこいつはどうです?ドータクン!さいみんじゅつ」

 

「…お前、そいつのタイプ知らないのか?つるぎのまい、シザークロス」

 

「な、なああああ!?」

 

 

 エスパータイプがむしに勝てるかよ。ドータクンには等倍だけど。そもそもさいみんじゅつなんて使いどころ考えないと滅多に当たらないぞ。見れば、ユウリのムゲンダイナで三タテしていたところだった。

 

 

「クッ、準備運動は終わりです。そろそろ本気を出しましょうか」

 

「フン!肩慣らしはお終いです。そろそろ本気でいきましょうか」

 

 

 そして繰り出されたのは、グソクムシャとギギギアル。俺もマルヤクデに交代しとく。お、蟲ポケ。だがしかし、グソクムシャはアクアブレイク撃っときながらビクともせず一撃でダイマックスほうでのされた。……おいソッドてめえ。

 

 

「…グソクムシャ使うんだったらもっとマシな威力出しやがれええええええ!!ほのおのムチ!!」

 

「我関係ないぃいいいいい!?」

 

 

 炎の鞭で吹き飛ばしたギギギアルをシルディにぶつけて戦闘不能にする。蟲を使うならもう少し考えて技打てや!?ポケモンバトルというより、蹂躙だった。

 

 

「おお…なんたること…ぐふっ、我の……我の、ポケモンが…」

 

「言っとくけどお前らな。モコウより断然弱いぞ、雑魚が」

 

「うん、全然楽しくなかった」

 

「クッ…中々どうして強いではないですか…!」

 

「我らのちょっとお散歩用のかわいいポケモンを倒すとは…!」

 

「嘘ですよ、見ればわかります。練度だけ高くてトレーナーが弱い私みたいな例です」

 

 

 ムツキに言われて図星なのか白目をむくソッドとシルディ。そんな彼等から朽ちた剣と盾を取り戻す俺とユウリ。

 

 

「ムゲンダイナを鎮めた偽の王…これほどとは」

 

「蟲ポケモンを操る女王とは聞いていましたがこれほどとは…」

 

「我らの手柄を横取りした例の子供達に負けるとは…」

 

「調査によればご先祖様が描かれた偉大なる壁画が壊された現場にも居合わせた犯人と思わしき者に負けるとは…」

 

「いなかった癖に私達に手柄取られたとか馬鹿なんですか?あと偉大な絵ってあれ、どう見ても子供の落書きですよ?」

 

「お、お前え!さっきからグサッと刺さる言葉ばかり言いおって!」

 

 

 ムツキの罵倒に一々ショックを受けたように固まるソッドとシルディは面白かった。すると、俺の手からふわりと朽ちた盾が浮いてふよふよと飛んで行ってしまう。なんだ!?

 

 

「はいゲット。ご苦労さんバリコオル」

 

 

 朽ちた盾の飛んで行った先には、木の上に座って黒手袋をはめた手で朽ちた盾を撫でるシルクハットにタキシードと行った黒づくめの少年がいた。その傍らにはガラルバリヤードが進化したバリコオルが。

 

 

「今は身を引こう、二人とも。次はより強いポケモンでコテンパンにしてやればいいじゃない。君達にはやることがあるでしょ?」

 

「アルルカンか…礼を言いましょう」

 

「アルルカン…?」

 

 

 確か、道化師って意味だ。本名じゃないとしても何者だ?すると俺とユウリを押しのけて逃げていくソッドとシルディ。アルルカンに全員の意識が向いた隙を突かれた!

 

 

「「それでは…グッドバイ!」」

 

「僕もさよならさせてもらうよ。バリコオル、こごえるかぜ」

 

「あ、待てよ!朽ちた盾返せー!」

 

 

 アルルカンも凍える風をばら撒いて姿を消し、ホップがそれを追いかけて行った。…なんだったんだあいつら。




アルルカンの乱入が無ければ完全勝利でした。

・ラウラ
蟲使いとしてソッドのグソクムシャの使い方にブチギレした主人公。ドラゴンに水技撃つな!(怒)モコウのことも罵られ、蟲を貶され、怒りに震えながらも経験則から反論はムツキに任せた。

・ユウリ
友達を貶されて容赦なくムゲンダイナで4タテしたチャンピオン。シーソー兄弟曰く偽の王。だけど蟲の女王のラウラと一緒だからちょっと嬉しい。

・モコウ
自分の存在を否定されて戦う事も出来なくなるぐらいメンタルブレイクした。ちなみに貧乏人は単に友達のこと。学び舎でトップになれなかったのはサイトウとかオニオンとか優秀な生徒がいたため。

・ムツキ
かつてないほど生き生きしていた無意識罵倒癖。ラウラに言われてからは抑えていたが、解禁されて容赦なくシーソー兄弟を罵倒した。ムツキ曰く罵倒するところしかない。

・ホップ&ソニア
ほぼ原作通り。ホップは瀕死のポケモン達で戦わずにすんだ。

・ソッド&シルディ
ムツキに言い負かされたシーソー兄弟。セレブリティ(笑)な王家の血筋。アルルカンとは協力関係、というか血縁。

・アルルカン
ラウラ達の前に姿を見せた道化師。ガラルマタドガスと、バリコオルを手持ちにしているエセ紳士。不甲斐無い兄弟の代わりに朽ちた盾を奪う。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアマージョ

どうも、放仮ごです。UA90000越え、お気に入りが1200越えしましたありがとうございます!

今回はターフスタジアムでの一戦。楽しんでいただけると幸いです。


「ソッドとシルディは王族と呼ばれる血筋の本家で…私とアルルカンはその分家だ」

 

 

 落ち着いたモコウが苦々しげ語る。その顔から奴らの名前を口に出すことすら嫌なのがよく分かった。

 

 

「奴らは自分たちの祖先こそがガラルを救った英雄なのだと豪語している。真実は知らんが、少なくともソニア博士の本でガラルを救った英雄とはザシアンとザマゼンタのことであり、私達の祖先はそれを隠そうとしていたのが分かった」

 

「それで奴等は自分たちが王族だと証明しようとしているのか」

 

「ザシアンとザマゼンタを貶めようとしているってことかな?」

 

「つまり嘘つきの一族の末裔だと思われたくないと。金持ちの考えは分かりませんね」

 

「正直私にも奴らがなんであそこまで固執しているのかはわからんからな」

 

 

 ソッドとシルディとアルルカンが逃亡し、それをホップが追いかけた後。モコウからあらかたの事情を聞いたのち、ソニアさんが奴らの行き先が分かるかもという事なので彼女の研究所に四人してお邪魔することになった。研究所に入ると、知らない人物が慌ただしく資料を纏めている場面と遭遇する。

 

 

「あわわわわ!…あっ、ムツキ選手!?わー、わー、感激です!」

 

 

 白いシャツの上から白衣を着ていて、下は白いミニスカートと白いニーソックスに白いブーツと白づくめの格好で、赤いリボンをした白髪赤眼のアルビノと思われる色白の少女はムツキを見て感激したかのような声を上げる。ユウリにも目もくれないとはよほどのムツキファンか。

 

 

「えっと…あなたは?」

 

「私、ルミといいます!元はジムチャレンジャーだったんですけど、ムツキ選手に敗北してからはポケモンのことをもっと知ろうと研究職になりました!」

 

「ああ、あの頃のムツキの被害者か…」

 

 

 あの頃というのは、マクワに敗北するまでの調子に乗りまくっていたムツキのことだ。俺以外にも沢山のトレーナーがその手にかかったらしい。主に罵倒で心が折れたのも何人かいたのだとか、ムツキ本人から聞いたことがある。本人としては自分と違って自由に歩けるのだからこれぐらいで心が折れないでほしいとぼやいていたが。するとルミは書類の山を抱えたままブンブン頭を振ってそれを否定した。

 

 

「被害者だなんてとんでもない!ポケモンはあそこまで強くなれるのだと感激しました!あ、ソニア博士!お客様です!」

 

「…私のファンなんていたんですね」

 

「掲示板ではよく見るけど実際に会うのは初めて?」

 

「残念ながら記憶にはないですがね」

 

 

 ユウリとムツキが駄弁っていると、奥からソニアさんが顔を出した。

 

 

「いらっしゃいみんな!」

 

「こちらは助手さんですか?」

 

「大正解!研究が忙しくなって最近から手伝ってもらってるの。ローズ委員長が集めていた大量のねがいぼし。今この研究所で預かってるんだけど…彼女がテキパキ整理してくれてね。すっごくデキる人で本当に助かってるのよ」

 

「いやいやそんな…私なんか、研究者になりたての子供ですよ…えへへ。チャンピオンのユウリさんと……蟲使いのラウラさん、ですよね?先程は失礼しました。お会いできて嬉しいです。これからよろしくお願いします!」

 

 

 なんか俺の名前を言う時だけ怨念染みた視線を感じたが気のせいだろうか。

 

 

「ちょっと来てよ!見てもらいたいものがあるんだ」

 

 

 そう言って奥に案内するソニアさん。ルミの視線の理由が気になったが、今は気にしないことにした。

 

 

「パワースポット探しマシーンって覚えてる?ってユウリしか知らないか。これはね、ダイマックスできる場所…ガラル粒子が多い所に反応する装置なんだけど……ビンゴだわ。あいつらの近くにいた時何故か反応してたの!」

 

「つまり、パワースポット探しマシーンの反応を追えば奴らの居場所が分かると?」

 

「そう、シーソーコンビの居場所がね」

 

「シーソー?」

 

 

 意味に気付いたのかぶふっと噴き出すムツキと、よくわかってない俺とユウリとモコウにソニアさんは説明してくれた。

 

 

「シルディとソッドの頭の文字を取ってシーソー……呼びやすくない?」

 

「ぶはっ!いいぞ、それ!我もそう呼ぶことにしよう!苦手意識がなくなりそうだ!」

 

「シーソー兄弟か。言いやすいな」

 

「だね。いちいちソッドとシルディって呼ばなくていいし」

 

「間抜けに聞こえるからなおよしです!」

 

 

 好評なことに笑顔を浮かべたソニアさんはモニターに向き直り、スマホロトムを手に取る。

 

 

「そんなわけで!ガラルのいたるところに仕掛けたパワースポット探しマシーンに……アクセース!」

 

 

 ダダダダダダダッ!とスマホロトムを怒涛の勢いで操作し始めるソニアさん。なんというか、シュールだ。

 

 

「わっ、予想以上の反応!場所は……ターフスタジアム!?」

 

「スタジアムはダイマックスできるから反応してもおかしくないじゃないです?」

 

「でもこれほどの数値は異常ではないか?」

 

「ムゲンダイナは…違いますね、ユウリの手元にいますし」

 

「シーソーコンビとなにか関係ありますかね」

 

「ユウリ!この騒ぎ…チャンピオンとして見過ごせないよね!ユウリ達のタウンマップでも粒子の反応を見れる様にしておいたから迷ったら見てね。いってらっしゃい」

 

「そらとぶタクシーより私の手持ちの方が速いです。行きましょう」

 

 

 そして俺達はソニアさんの研究所から飛び去って行ったが、見送りに来てたルミの俺を睨む視線が何とも気になった。…俺、なんかしたかなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ターフスタジアムにつくと、そこにはヤローさんとネズさんの姿が在った。

 

 

「お?君達は…おぉーチャンピオン!それにラウラさん、モコウさん、ムツキさん、来てくれたんですねえ」

 

「お久しぶりです」

 

「ネズさんまで…」

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「なにかあったんです?」

 

「呑気な挨拶ですね。新しいチャンピオンはダイマックスより大物ですよ」

 

「実はネズさんとのエキシビジョンマッチの途中、トレーナー不明のダイマックスポケモンが乱入してきましてねえ」

 

「観客やスタッフたちを避難させていたんですよ」

 

 

 するとポケモンの咆哮と共に、ホップが奥からやってきた。ホップがいるってことはつまり奴等もこの近くにいるってことか。

 

 

「北側の観客、全員避難終わったぞ!聞こえたと思うけどダイマックスはまだ暴れてる!」

 

「ホップさん助かりましたよ。さすがはジムチャレンジャー。頼りになりますねえ」

 

「セミファイナルトーナメントで敗退したけど…あ、みんな!お前たちも来たのか。青いのと赤いのを追っかけていたらターフスタジアムに入って行くのが見えてさ」

 

「シーソーコンビが?」

 

「シーソー?あー、シルディとソッドでシーソーか。ソニアが考えたのか?まあいいや、あとをつけたら突然こんな騒ぎになってほっとくわけにもいかないし手伝ってたんだ。だから…ごめん!アイツら見失っちまったぞ」

 

「暴れてるのは?」

 

「アマージョですが。手強い相手ですよ」

 

「じゃあ俺に任せろ。ヤローさん達は避難活動と原因の探求を頼む。どうせシーソーコンビの仕業だろ。草タイプなら俺一人で十分だ」

 

 

 制止するヤローさんを振り切り、俺は1人でバトルコートに向かった。さて、暴れるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 念のためデンチュラを出してからバトルコートに入ると、問答無用と言わんばかりに巨大な脚が迫って来て、咄嗟にデンチュラを背中にしがみ付かせて前に糸を伸ばして逃れる。見上げると、巨大な草の女王様の様なポケモン、アマージョが。すると無人のはずなのに声が聞こえてきた。

 

 

「あれれえ?四人を足止めするつもりで選んだポケモンだったのに、なんで一人なの?」

 

 

 見上げると、無人の観客席に1人黒づくめの紳士が拍手しながら座っていた。糸を伸ばして観客席に上がると男…アルルカンは立ち上がり、ステッキを手に余裕たっぷりに佇んだ。下から見上げてるため金色の瞳がにやにやしながらこちらを見ているのが見えた。

 

 

「やあやあ。改めまして、僕はアルルカン。ソッドとシルディのお目付け役をしているよ。うちの二人がごめんね、僕は止めたんだけどね?」

 

「嘘を吐け薄気味悪い笑みを浮かべやがって。朽ちた盾を返せ」

 

「い・や・だ・ね。僕が見たい景色の為には必要なんだ。君は邪魔だけど潰すのは彼女がしたいって言ってたしなあ…ここはアマージョに任せて僕はおさらばしようかな」

 

「っ、待て!デンチュラ、いとをはく!」

 

「ヨノワール。ほのおのパンチ」

 

 

 俺の背から降りたデンチュラに糸を伸ばして拘束しようと試みるが、ボールから繰り出されたヨノワールの炎を纏った手で掴まれ逆にこっちのデンチュラが炎上。

 

 

「バイバイ。せいぜい頑張って僕を楽しませてよね」

 

 

 慌てて上着を脱いではためかせて火を消している間にアルルカンは捨て台詞を残してスキップで去って行った。この借りは何時か返すからなアルルカン!と決意していたら、頭上からアマージョが足を振り下ろしてきていて。咄嗟に黒焦げのデンチュラを背中に装着、糸を伸ばしてその場から逃れる。

 

 

「ユキハミ、こなゆき!マルヤクデ、キョダイマックスだ!」

 

 

 スタジアム内を飛び回りながらこなゆきで牽制しつつ、空中を舞いながら手にしたボールを巨大化させて宙返りと共に投擲。キョダイマルヤクデを繰り出す。それでも俺という餌に襲いかかってくるアマージョから宙を舞って逃げつつ指示を出す。

 

 

「マルヤクデ!キョダイヒャッカ!」

 

 

 火球が直撃し、ほのおのうずとなってアマージョを拘束。焼き尽くしていく。そして俺はデンチュラに空中で放してもらい、結構な高さだったのでユキハミを庇うように受け身を取りつつアマージョを見やる。

 

 

「決めろ!きゅうけつだ!」

 

 

 そしてアマージョの顔面に糸を付けていたデンチュラの突撃が直撃、アマージョは目を回して崩れ落ちた。観客がいないから気にせずポケモン三匹に指示してバトルしたが、なんとかなったな。複数のポケモンに指示して戦うのは慣れて行きさえすれば損はない技術だ。上手く活用したいところだな。

 

 

「しかしあいつ…何が目的だ?ポケモン解放とか新世界創造とか海や陸を広げたりとかは目論んでなさそうだが」

 

 

 気絶したアマージョを抱き上げながら思案する。…あのアルルカンというやつは、シーソーコンビと違って一筋縄じゃいかなそうだ。




巨大怪獣の激突の間で飛び回るスパイ●ーマンの図。

・ラウラ
なんだかルミに嫌われるような気がしてならない主人公。久々に大暴れできて満足だけどアルルカンに逃げられてもやもや。

・ユウリ
今回はモブ。ラウラと共にターフスタジアムに赴いたのち、ラウラが戦ってる間シーソーコンビと遭遇する。

・モコウ
シーソーコンビの血筋の分家。二人ほど自身の血に固執していない。ソニアの本の内容は素直に受け入れている。

・ムツキ
なんかルミに好かれて苦悩してる罵倒娘。マクワに負けるまでは野良トレーナー戦でやりたい放題だったため、その被害者であろうルミに何言っていいか分からない。その鬱憤を出てきたシーソーコンビで晴らした。

・ホップ
原作通り。ホップが避難させた後アルルカンは侵入した。

・ヤロー&ネズ
エキシビジョンマッチしていたジムリーダーたち。ラウラの強さをよく知っているコンビだったりする。

・ルミ
ソニアの助手をしている元ジムチャレンジャーで研究職志望(自称)。ムツキに敗北してジムチャレンジから挫折した1人であるがムツキの大ファン。何故かラウラを目の敵にしている。

・アルルカン
根っからの傍観者な道化師でソッドとシルディのお目付け役。ガラルマタドガス、バリコオル、ヨノワール、あと一体が手持ち。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSコータス

どうも、放仮ごです。低評価もらうのはいいけど理由ぐらい書いてほしいです。どこを直せばいいのやら。

今回はエンジンスタジアムでの一幕。楽しんでいただけると幸いです。


「お疲れ様です、ラウラさん」

 

 

 出迎えてくれたヤローさんにアマージョを渡していると、ユウリたちが申し訳なさそうな表情を浮かべていることに気付く。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「こっちはシーソーコンビが出て来たけど逃げられちゃった…」

 

「こっちはアルルカンだ。俺達を足止めするのが目的だとか言ってたからまだなにかやらかすかも…」

 

「ダイマックス……やはり好きになれませんね」

 

「ネズさんのダイマックス嫌いは相変わらずですねえ。しかしさっきのダイマックスは妙でした」

 

 

 そういうヤローさんに、さっきの戦いを思い出す。そう言えば、ふみつけばかりでろくに技を使ってなかったな。

 

 

「トレーナーはいなかった。アルルカンの手持ちって訳じゃなさそうだったしな。それに、ろくに技も使わずただ暴れてくるのみだったぞ。戸惑ってる、が正しいか」

 

「シーソーコンビとやらの仕業で間違いないでしょうね」

 

「言い負かしてやりましたが相変わらずムカつく奴等でした」

 

「すまん…我の従兄弟が本当にすまん…」

 

「アマージョのトレーナーも見当たりませんし、とりあえずターフジムが責任を持って保護します。では僕はこれで。チャンピオン、何かあった時はいつでも呼んでくださいね」

 

 

 そう言ってユウリに何かを渡してアマージョを連れて去って行くヤローさん。…俺達も外に出るか。何故かネズさんも着いてきた。アイツらに思うところでもあるのかな。

 

 

「シーソーコンビは実験が成功した、次はもっと強いポケモンをダイマックスさせようと言ってました。他にもやらかすと見て間違いないでしょう」

 

「最終的にはザシアンとザマゼンタの本性を暴くとも言ってた」

 

「これからもどんどんポケモンをダイマックスさせるとも言ってたぞ」

 

「アレが奴らの言う計画とやらなのだろう」

 

「ろくでもないですね。そんなことして何の意味があるのやら」

 

「となると…次はまさか」

 

 

 ネズさん、ユウリ、ホップ、モコウ、ムツキの言葉から、次の事件が起こる場所が何となくわかった時、ちょうどいいタイミングでソニアさんがやってきた。

 

 

「あっ、いたいた!みんな、それにネズさん!大変だよ!ターフスタジアムのガラル粒子反応が治まったかと思ったら…今度は各地のジムスタジアムで膨大なガラル粒子が観測されたの!」

 

「他のスタジアムでダイマックスポケモンが暴れているですと?マリィが心配です…!」

 

「あ、スパイクタウンは大丈夫っぽいです。バウスタジアムにエンジンスタジアム、ラテラルスタジアムにアラベスクスタジアム、キルクススタジアムにナックルスタジアムで反応が」

 

 

 つまり、こことスパイクタウン以外のジムが全部か。シーソーコンビだけの仕業じゃないな、もっとたくさん仲間がいるのか。しかし六ヶ所か。…俺、ユウリ、ホップ、モコウ、ムツキ、ネズさん…むう。

 

 

「そもそもスパイクタウンはダイマックスエリアじゃないし大丈夫じゃないか?」

 

「そうだね。それに何かあってもマリィは強いし」

 

「ユウリに言われるなら間違いないな」

 

「しかし六個のジムでですか…ちょうど六人いると、なるほど」

 

 

 ムツキも俺と同じことを考えたのか、俺の顔を見て頷く。

 

 

「なら六人で分かれて一人ずつ各地のジムに救援に向かうのはどうだ?それなら早く済む。この面子なら実力も申し分ないだろ。俺はカブさんの救援に行く」

 

「そうですね。ジムリーダーが自分のジムで手いっぱいの中動けるのは俺達だけですか…いい考えじゃないですか、ラウラ。俺はバウスタジアムですかね…特に理由はありませんが」

 

「じゃあ私はビートが気になるからアラベスクに行くね」

 

「なら我はキバナの所に行くぞ。あそこはもはや顔なじみだ、放っておけん」

 

「では私はキルクスに。マクワに借りを返せますしね」

 

「じゃあ俺はラテラルに向かうぞ!」

 

「シーソーコンビとアルルカンのことは私に任せておいて!ネットの目撃情報で居場所特定してやるわ!」

 

 

 そして俺達は己の手持ちもしくはそらとぶタクシーで各地に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭のユキハミが落ちないように急ぎながらエンジンスタジアムに辿り着くと、ちょうどカブさんが観客やスタッフを避難させていたところだった。

 

 

「カブさん!」

 

「ラウラか!ここは危ないぞ。どうしてここに?」

 

「手伝いに来たんだ。ダイマックスポケモンが暴れてるんだろ?」

 

「ああそうさ。ジムスタジアムが大変なんだ。敵は強くてね、1人で相手するには難儀していたんだ。君ほどの実力者が力を貸してくれるなら頼もしさが燃え上がるよ」

 

「俺は単なる蟲使いですから…チャンピオンになれませんでしたし」

 

「なあに。次があるさ。諦めなければ人間、何度でもどこまでも上に上がれるものさ、炎みたいにね。この僕が保証しよう。では、行こうか」

 

 

 2人でバトルコート内に入ると、とんでもない熱気が押し寄せてきた。これは日照り…と、炎上している…!?

 

 

「敵はコータスだ。僕のポケモン達でも奴の炎の強さに押されてしまう」

 

「なるほど。なら、お前の出番だな。オニシズクモ、ダイマックスだ!」

 

 

 前回の戦いで学んだ。このタイプには、初手からダイマックスが効果的だと。

 

 

「ダイストリームで天気を雨に変えるんだ!」

 

 

 放たれた激流が雨雲となって雨を降らし、コータスの放つ炎で炎上していたフィールドを鎮火させた。これなら自由に戦える!すると手足を引っ込めてこうそくスピンするコータス。さらにこうそくスピンしながらかえんほうしゃとふんえんを放ち、雨の下だというのに爆炎が辺り一帯に広がって火の海を作り、避けに徹する俺達。オニシズクモはダイレクトに炎を喰らっているが問題はなさそうだ。

 

 

「厄介な…」

 

「僕が動きを止める!エンニュート!りゅうのはどうだ!」

 

「オニシズクモ、コータスを抑え込んで零距離からダイストリームだ!」

 

 

 カブさんのエンニュートのりゅうのはどうが回転を遅めて、オニシズクモが組み付いて動きを止めた所に零距離から水流を叩き込み、コータスは爆発して戦闘不能となって俺とカブさんは自然にハイタッチした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうにか事態の火消しができたようだ。暴れていたコータスはエンジンスタジアムでしばらく休ませてあげるよ」

 

「トレーナーが見つからなかったらカブさんの手持ちにしてやってください。アイツ、根性あったんで」

 

「うん、僕もそう思った。いい眼を持っているね、ラウラ。僕としてはぜひとも君をうちのジムトレーナーに迎えたいんだが…どうだろう?」

 

 

 その言葉に、胸が高鳴った。憧れのカブさんの元で、戦える…?

 

 

「…俺、マルヤクデしかほのおポケモン持ってませんけど」

 

「ジムトレーナーにはジム戦用のポケモンがレンタルされるからそこは気にしなくていいさ。経験を積めば君はジムリーダーにもなれる素質があるんだ。もちろん、今でも君はチャンピオンの座が似合うと思っているけどね」

 

「…いいんですか?そのうち、むしタイプのジムリーダーとして独立して貴方をマイナーリーグに蹴落とすことになるかもですよ?」

 

「その時はその時さ。それに見くびってもらっちゃ困る。これでもマイナーリーグに一度落ちてから這い上がって来たんだ。そう簡単に負けないさ。…どうかな?」

 

 

 そんな笑顔で、そんな風に言われたら、断れるわけないじゃないか。

 

 

「…………俺でよければ、喜んで」

 

「僕も嬉しいよ。…そうだ、君はまだやるべきことが残っているんだろう?ならばそれを成し遂げて、ここに来るんだ。僕は何時でも待っている」

 

「はい!」

 

「若者よ行け!健闘を祈る!」

 

 

 カブさんのエールを背に受け、俺はエンジンスタジアムを飛び出した。目指すはソニアさんの研究所だ。みんなも戻ってるはずだ、急ごう。




コータスと言ったらポケスペのホムラの回転するコータスが思い出深い。

・ラウラ
憧れのカブの窮地に駆けつける主人公。エンジンジムのジムトレーナーになった。

・ネズ
ジムリーダーをやめたため手伝うことに。シーソーコンビに髪型と白黒コーデを馬鹿にされた。特に理由はないけどバウスタジアムの救援に。

・ユウリ
アラベスクスタジアムに救援に向かったところ、既に解決していたビートと対決。ムゲンダイナでフェアリータイプをボコボコにした。

・モコウ
顔なじみになってるナックルスタジアムに救援に向かい、パッチラゴンとパッチルドンで無双した。

・ムツキ
苦汁を飲まされたキルクススタジアムに救援に。もはやいわタイプなど敵ではないと言わんばかりにルチャブルとアーマーガアで無双した。

・ホップ
ラテラルジムに救援に。バイウール―でかくとうタイプを倒す快挙を果たす。

・ソニア&ヤロー
原作通り。

・カブ
本気メンバーで挑んだが妙に強化されたコータスに手古摺っていたところにやってきたラウラにジムトレーナーにならないか持ちかける。チャンピオンになるだろうと確信していたぐらいにラウラの実力を信頼している。過去があるからこその言葉。

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VSウオノラゴン

どうも、放仮ごです。狂信者は書いていて楽しいです。

今回はソニアの研究所での一幕。ラウラVSシーソーコンビ、そして?楽しんでいただけると幸いです。


 エンジンスタジアムから出て、そらとぶタクシーでブラッシータウンを目指していると、スマホロトムにユウリから連絡があった。

 

 

「どうしたユウリ。そっちでなにかあったのか?」

 

『ラウラ!ソニアさんから連絡があった!研究所にシーソーコンビが押し掛けたって!ねがいぼしを渡せってネチネチ言われているだけみたいだけど…私達も向かってるけど、多分ラウラが一番早いから!』

 

「わかった、ソニアさんのことは任せろ」

 

 

 ちょうど着く目前。逃げも隠れもせずに出てきたのは評価してやる。アルルカンがいないのならちょうどいい。二人そろってボコボコにしてやらあ!

 

 

「ソニアさん!無事か!?」

 

「ら、ラウラ~!」

 

 

 辿り着き、急いで中に入ると、本当に2人がかりでねちねち言われているところで、ソニアさんが泣きついてきた。見ればルミと…ソニアさんの祖母でダイマックス研究の第一人者のマグノリア博士もいる。

 

 

「ローズ委員長が集めていたねがいぼしが今ここにあることセレブリティにはお見通し!」

 

「セレブリティではない貴方方には不釣り合いな代物です。我々に差し出しなさい」

 

「なんでそのことを知ってるのかは知らんが、ねがいぼしとセレブには何も関係ないだろアホなのか!?」

 

「あんたたちなんかに渡せるわけないでしょ!?」

 

「セレブリティを愚弄する貴方、蟲の女王ですか!」

 

「我々を差し置いて愚民から王と呼ばれるいけ好かない女の片割れ…!」

 

 

 ユウリのことも偽の王とか呼んでたなこいつら。そんなに王にこだわるか。俺のはただの二つ名だが。すると黙って成り行きを見守っていたマグノリア博士が口を開いた。

 

 

「そうですね。ねがいぼしの価値が分からないあなたたちには必要ありません」

 

「やれやれ…どうしましょう弟よ」

 

「ふむ…困りましたね兄者」

 

「「ハーッハッハッハ!」」

 

 

 こいつら本当に頭おかしいんじゃないか?病院紹介しようか本気で迷うぞ。

 

 

「困ってるのはこっちだ。ポケモンを強引にダイマックスさせやがって。しかもアレ、育成した後で捨てたポケモンだろ。強さが段違いだったぞ」

 

「それはアルルカンの選んだポケモン…我々は関係ありませんね」

 

「どうせなら邪魔者を潰せるようなポケモンを選ぶように言いましたし、さすがは我らの忠実な部下です」

 

「部下ねえ」

 

 

 そんな感じはしなかったけどな、アルルカンの奴。

 

 

「てっきりチャンピオンが来るかと思っていましたが…」

 

「貴女なら我々でもまだ勝てますよ」

 

「お前らみたいなバカに2人がかりでも負けてたまるか」

 

「ば、バババッババッバカ、ですと~!?一度ならず二度までも!」

 

「兄者!我、悔しい!愚民如きにバカ呼ばわりされるなんて!」

 

「ええ!高貴な者として無礼な態度は許せません」

 

「「前より戦闘向きのポケモンで叩き潰して差し上げましょう!」

 

「ソニア、マグノリア博士、ルミ。下がっといてくれ、危ないから」

 

「う、うん」

 

 

▽ポケモントレーナーの ソッドとシルディが 勝負を しかけてきた!

 

 

 ソニアたちを奥に下がらせ、デンチュラとユキハミを繰り出す。ユキハミは暇だったからそらとぶタクシーの中でわざマシンを使っておいた。ダブルバトルなら中々やれるポケモンになったぞ。シーソーコンビが繰り出したのはグソクムシャとドータクン。やることはひとつだ。

 

 

「フハハハハ!そんな蟲如きで我々の戦闘向けのポケモンを倒せますか!」

 

「フハハハハ!そんなちんけな進化もしてない蟲如きで戦おうとは笑止!」

 

「デンチュラ、ほうでん!ユキハミ、まもる!」

 

 

 瞬間、勝負が決まった。こうかばつぐんのグソクムシャだけでなくドータクンも一撃で倒れ、ユキハミは無傷。キバナさんの時は相手がじめんタイプ多めだったからできなかったが、こんなバトルもできる。

 

 

「くっ…キリキザン!」

 

「行きなさいタイレーツ!」

 

「交代だテッカニン、マルヤクデ」

 

 

 たいねつかふゆうかもわかってないドータクンを落とせたのはでかい。遠慮なく相性抜群の二体に交代する。覚悟しろ?

 

 

「テッカニン、タイレーツにつばめがえし!マルヤクデ、キリキザンにほのおのムチだ!」

 

「つるぎのまい…馬鹿な!?」

 

「はいすいのじん…なにぃ!?」

 

「自分のポケモンの相性ぐらい覚えておけよ、ド素人」

 

 

 悠長にも変化技を使用しようとして一撃で落とされた二体に同情する。ポケモン自身は弱くない、トレーナーが弱すぎる典型的な例だ。初戦闘時のムツキにも劣るぞ。

 

 

「おのれ…ニダンギル!ならばせいなるつるぎです!」

 

「ぐぬぬ…ギギギアル!今度こそ、ギアチェンジです!」

 

「交代だデンチュラ、ユキハミ。再放送だ」

 

 

 ソッドは攻撃を選び、シルディはへんかわざを選ぶが関係ない。ほうでんとまもるで事足りる。俺のデンチュラのほうでんの威力はかみなり級だからな。

 

 

「クッ……兄者!我、悔しい!」

 

「弟よ……これは何かの間違いでは?」

 

「我々のトレーニング用のポケモンが負けるとは!?」

 

「ふん!我々二人を一人で倒すとは…褒めて差し上げましょう!」

 

「前と手持ち変わってなかったように見えるが。そして神妙にしやがれ。御用改めだ。とっ捕まえろデンチュラ。いとをはく」

 

 

 デンチュラに糸を吐かせてシーソーコンビをグルグル巻きに拘束、しようとしたその瞬間だった。

 

 

「ウオノラゴン、エラがみ!」

 

「なっ!?」

 

 

 横から突進してきた断面が見える竜の胴体の尻尾に魚の頭部がくっ付いている異様な容姿のカセキメラ…ウオノラゴンがデンチュラの胴体に噛み付き、そのまま地面に叩きつけてシーソーコンビの拘束が解かれてしまう。一撃では落とされなかったが今の攻撃は…!?

 

 

「ルミさん…なんで!?」

 

「それ以上は駄目ですよ、ラウラさん」

 

 

 ソニアさんの驚く声と共にウオノラゴンを側に侍らせたのは、その手にねがいぼしが入っているであろう箱を手にしたルミだった。ただその顔は、キバナを…いや、ドラゴンポケモンを思わせる獰猛な笑みを浮かべている。

 

 

「助かりましたよ、ルミさん。潜入任務ご苦労でした」

 

「アルルカンが拾ってきた貴方を信用してよかったですよ」

 

「光悦至極でございます、ソッド様。シルディ様。お二人が時間を稼いでくれたおかげで、こちらに」

 

 

 獰猛な笑みを浮かべながら箱を手渡しぺこりとお辞儀するシュールな図を作り上げたルミはそのまま俺へ向き直り、スンッと無表情となったかと思えばにこやかな、先刻出会った時の「ソニア博士の助手ルミ」の顔になる。こいつの表情筋どうなってるんだ。複数の顔が在るのかってぐらいの変わりようだ。

 

 

「…お前、スパイか。言ってたことは全部嘘かよ」

 

「ジムチャレンジャーだったこともムツキ選手に憧れたのも本当のことです。だけどな?お前への殺意を抑えるのは随分と苦労した…!」

 

 

 再び獰猛な笑みを浮かべるルミに、ソッドとシルディは出口に向かいながら声をかける。

 

 

「では我々は例の場所に向かいます」

 

「貴女も足止めが終わったら合流しなさい」

 

「そんなの知ったこっちゃないね!ラウラをボコボコにできるからアルルカンに手を貸したんだ!あとは勝手にさせてもらうぞ、ジャラランガ!」

 

「っ!?」

 

 

 ウオノラゴンをボールに戻し、繰り出したジャラランガの背に乗って俺とデンチュラを掴ませて研究所のかべをぶち壊して2番道路に飛び出すルミ。その目にはこの世界では珍しい殺意が混ざっていた。

 

 

「改めて名乗ろう!私は、ドラゴン使いのルミ!ムツキ選手がチャンピオンになる邪魔をしてくれたお前を今ここで潰してやる!」

 

 

 2番道路の水辺で俺達を解放し、咆哮を上げるジャラランガから飛び降り体勢を低くして構え、こちらの出方を窺うルミ。なるほどね、憧れたムツキの優勝を奪った俺へのやつあたりか。狂信者って奴だな。

 

 

「お前さえ、お前のデンチュラさえいなけりゃなあ!あの人は今頃チャンピオンになっていた器だったんだ!お前さえいなけりゃあ!」

 

「俺達は全力でぶつかって、そして決着をつけたんだ。部外者に文句を言われる謂れはねえ!」

 

 

 行くぞデンチュラ。この馬鹿は、ムツキのことを何も見ていない馬鹿は……ムツキの友人として、ライバルとして、ここで倒す!




ルミの元キャラはムツキの元キャラが好きすぎて孤立させて自分だけのものにするために融合しようとした最強厨です。まだマシだね!

・ラウラ
シーソーコンビの二人を相手取って完勝した主人公。ルミの狂信者っぷりに止めなければいけないと確信する。

・ソニア
ルミが本当に研究職を楽しんでいた様に見えたのでショックを隠し切れない。

・マグノリア
今回初登場。壊された研究所に頭を抱える。

・シーソーコンビ
2人がかりでラウラに惨敗した。ルミはアルルカンからの紹介なので信用はしてなかった。

・ルミ
正体を現したムツキの狂信者にしてドラゴン狂。ラウラのキョダイデンチュラとかいう反則でムツキが負けたと考えて怒り狂っており、鬱憤晴らしにラウラをボコボコにすべくその機会を得るためにアルルカンと手を組む。シーソーコンビへの忠誠心は欠片も持ち合わせてない。

・ウオノラゴン
とくせい:がんじょうあご
わざ:エラがみ
   かみくだく
   りゅうのいぶき
   こおりのキバ
もちもの:こだわりスカーフ
備考:いじっぱりな性格。打たれ強い。ルミの切札。ムツキにやられてから加入した。

・ジャラランガ♂
とくせい:ぼうだん
わざ:スケイルノイズ
   ソウルビート
   げきりん
   インファイト
もちもの:なし
備考:いじっぱりな性格。体が丈夫。ルミの相棒。ムツキのウォーグルに一撃でやられた経験あり。どちらかというとリベンジしたい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSジャラランガ

どうも、放仮ごです。遅くなって申し訳ない。ちょっと長くなったからどこで切るかどこを付け足すかいろいろしてたら遅くなりました。

今回はラウラVSルミ。楽しんでいただけると幸いです。


 ソニア博士の研究所の壁をぶち壊し、2番道路に投げ出された俺とデンチュラ。対するはにんまりと自信に満ちた笑みを浮かべるドラゴン使いのルミとジャラランガ。キリエさんにも似た気迫を感じる。研究者のふりをしていた時は気付かなかったが、間違いなくトップクラスのポケモントレーナーだ。決して侮れない。

 

 

「ソウルビートだジャラランガ!」

 

「デンチュラ、ほうでん!」

 

 

 全身の鱗を自身の爪で掻き鳴らして咆哮を上げるジャラランガ。専用技なんだろうがどんな技だ?だがドラゴン・かくとうなのは知っている。テッカニンに交代するか一瞬迷うが、攻撃を指示する。すると一瞬でデンチュラに接近するジャラランガ。速い…!?

 

 

「インファイト!」

 

「エレキネットで受け止めろ!」

 

 

 なんとかギリギリで張ったエレキネットを盾に防ぎきる。蜘蛛の縦糸は頑丈だ。等身大ともなるとワイヤー並みの強固さになる。拳と蹴りの殴打を受け止め続けていると、低い体勢でゆらりゆらりと体を揺らしていたルミが人差し指を突きつけてきた。

 

 

「そんな付け焼刃で私のジャラランガが止められるかあ!スケイルノイズだ!」

 

「っ…範囲外に逃げろ!」

 

 

 その瞬間、ジャラランガの鱗が振動し擦られて激しく音を出して衝撃波を放つジャラランガ。音技は防げない上に範囲もでかい。衝撃波で大地が砕け、デンチュラは逃げきれずに吹き飛ばされるが何とか着地。しかし追撃と言わんばかりに突撃してくるジャラランガ。

 

 

「いとをはくで腕を縛れ!」

 

「無駄だ!もう全部破壊しろ!げきりん!」

 

 

 いとをはくで拘束を試みるが、簡単に破られてデンチュラの脚を掴んだジャラランガは狂乱し、何度も何度に地面に叩きつけていく。

 

 

「デンチュラ!?ほうでんで抜け出せ!」

 

「ドラゴンに電撃が効くかよ!」

 

 

 ほうでんで逃れようと試みるも、地面に叩きつけられた上で何度も何度も殴りつけられてデンチュラは戦闘不能になった。なんて強さだ、あのデンチュラが手も足も出ないとは。

 

 

「ハハハハハッ!なんだ!私なんかで倒せるなんてやっぱり弱いじゃないかデンチュラ!ムツキ選手が負けたのは何かの間違いだ!」

 

「言ってろ。マルヤクデ!まきつく攻撃!」

 

 

 正直、ムツキより強いまであるんだが。とにかくジャラランガを倒すためにマルヤクデを繰り出し、げきりんで暴れるジャラランガに巻き付かせて動きを止める。

 

 

「おにびでやけどを負わせろ!」

 

「ちっ、混乱か…戻れジャラランガ!」

 

 

 げきりんの影響で混乱したところにさらにやけどを負わせて有利に戦えると思った瞬間、ジャラランガをボールに戻すルミ。変なところで冷静だな。

 

 

「蹂躙しろウオノラゴン!」

 

「ッ、おにび!」

 

「エラがみ!」

 

 

 繰り出されたウオノラゴンに、ノータイムでおにびを叩き込む。その首?尻尾?に巻かれたものから見て、持ち物はこだわりスカーフで間違いない。エラがみは前にパッチラゴンのことを調べた時に知った。ウオノラゴンの専用技で、先制することで威力が倍増するシンプルな技。

 問題は、特性ががんじょうあごで、みずタイプの一致技で、スカーフを巻くことでほぼ必ず先手を取ると恐ろしいことにほぼ一撃必殺となる技ということだ。さっきはデンチュラがいとをはくを使用していたことで先制じゃなかったことで耐えられたが、今度は違う。相性の問題もあって、一撃で落とされるマルヤクデ。おにびはギリギリ入ったか。ゲームと違って後出しでも当てれるのに救われたな。

 

 

「テッカニン!」

 

「そんな蟲でどうしようっていうんだ?エラがみ!」

 

「テッカニン、かげぶんしん!」

 

 

 すばやさはあちらが上。だがしかし、エラがみは当たることはなかった。火傷の痛みで狙いが逸れたのだ。現実のやけどはまひと同様の効果が狙える…!そして一回積んでしまえばこっちのもんだ。

 

 

「…ちい!エラがみ!」

 

「どんなに強い攻撃でもなあ、当たらなければいいんだよ!つるぎのまい!」

 

 

 複数に分身したテッカニンに噛み付き空ぶって混乱するウオノラゴンを取り囲み、つるぎのまいを積んでいく。此処からは俺の独壇場だ!ちなみにテッカニンの分身を見破る方法はただ一つ、影を見る事なんだが奴は気付いてないらしい。

 

 

「シザークロス!」

 

 

 四方八方からの一斉攻撃。ウオノラゴンは耐久が高いポケモンでもないしこだわりスカーフで別の技は出せない、戦闘不能にする。

 

 

「積むことの大切さを知っているトレーナーだったなお前は…ならばドラパルト。ドラゴンアローだ」

 

 

 また専用技か!こいつ、自分のポケモンの長所をどこまでも利用できるタイプの人間だ。どんなポケモンでも強く育てるキリエさんとは真逆の強さ…!

 

 

「避けろテッカニン!」

 

「その技はドラメシヤをミサイルのようにマッハのスピードで飛ばす、自立ミサイルだ。避けきれるかな?それに飛んでくるのはそれだけじゃない。りゅうせいぐん!」

 

 

 よく見れば本当だった。ドラパルトを小さくしたようなポケモンが二体、凄まじいスピードでテッカニンを追い縋る。さらに空からの流星群を避けながらドラメシヤにも気を配らないといけない。ポケモンだけだと至難の業だが、何のためにトレーナーがいると思っている。

 

 

「右に避けた後、停止して直上に上がれ!」

 

「なにを…!?」

 

 

 俺の指示により誘導されたドラメシヤ二体が正面から激突して戦闘不能になり、流星群が降る中を複眼とかそくを上手く使って避けてドラパルトに突き進むテッカニン。

 

 

「10まんボルト…!」

 

「遅い!つばめがえし!」

 

 

 電撃を放とうとするも、でんきポケモンでもないポケモンが電気技を使うにはチャージが必要。その隙を突いて必殺の一撃を繰り出し、ドラパルトは戦闘不能となった。

 

 

「オノノクス!ドラゴンテールだ!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 ドラゴンテールは必ず後攻になる技。先に仕留めればいいと考えたが、一撃では落とせず強制的に交代される。引き摺り出されたのは、ユキハミだった。

 

 

「ハハハハハッ!育成中だろうが、蟲如きだろうが容赦はしないぞ!アイアンテール!」

 

「まもる!」

 

 

 相性はいいが、スペックが弱すぎる。レベルも結構あげてるのだが覚える技が二つだけ。わざマシンでもそんなにいい技は覚えない。進化方法がわからないためダブルバトル用にしたが、シングルバトルには向いてないのだ。蟲如きと馬鹿にされるのは癪だが、今回ばかりは言い返せない。

 

 

「もう一度アイアンテールだ!」

 

「こごえるかぜ!」

 

 

 オノノクスの鋼と化した尻尾を受けながらもこごえるかぜを当てて戦闘不能になるユキハミ。よくやった。これでデンチュラ、マルヤクデ、ユキハミがやられた。…ならもう、容赦しないぞ。

 

 

「暴れろ、ドラピオン!」

 

「馬鹿め!そいつ対策がないわけがないだろう!じしん!」

 

 

 ドラピオンが出るなり、尻尾を打ち鳴らして大地を揺らしてくるオノノクス。だが、キリエさんのに比べたらたいしたことないな!

 

 

「跳べ、ドラピオン!」

 

「はあ!?」

 

 

 尻尾を地面に叩きつけ、その巨体を跳躍させるドラピオン。キリエさんのじしんだったら避けきれない高さだが、普通のじしんならば関係ない!それに気を取られたオノノクスに、冷気を纏った牙を剥いて急降下する。

 

 

「こおりのきば!」

 

「オノノクス!?」

 

 

 じしんで倒せると見込んでいたのだろう、オノノクスの敗北に目を見開くルミ。初めてその顔から余裕が消えた。

 

 

「もういい、様子見なんて無駄だ!やってしまえサザンドラ!」

 

 

 前世の俺にとってのトラウマが、姿を現した。いのちのたまやつあたりは本当にやめろ。フリじゃないからな。




み ん な の ト ラ ウ マ

・ラウラ
前世でブラホワ12をやり込んでいるのでサザンドラの恐ろしさは身に染みて知っている主人公。ウオノラゴンのヤバさもゲーム脳で理解している。キリエとの戦いから色んな戦法を編み出した。

・ルミ
ムツキ至上主義でドラゴン狂いのやべーやつ。強さ自体はポプラ以外のジムリーダーに圧勝できるぐらい強いがフェアリー対策がアイアンテールしかないためポプラで挫折した経歴持ち。ドラゴンポケモンのことは知り尽くしており、専用技を上手く扱うのが得意。

・ドラパルト♀
とくせい:クリアボディ
わざ:ドラゴンアロー
   りゅうせいぐん
   10まんボルト
   シャドーボール
もちもの:じゃくてんほけん
備考:ひかえめな性格。抜け目がない。ルミの初期メンバー。ドラメシヤの頃から大事に育ててくれたルミに懐いており命令を厳守する。

・オノノクス♀
とくせい:とうそうしん
わざ:ドラゴンテール
   アイアンテール
   じしん
   りゅうのまい
もちもの:なし
備考:きまぐれな性格。のんびりするのが好き。ルミの初期メンバー。キバゴの頃から大事に育ててくれたルミに懐いており命令を厳守する。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSサザンドラ

どうも放仮ごです。ゲーチスのサザンドラを味わおうとホワイト2をやろうと思ったら失くしてました(泣)どこ行ったんや…ちなみにやったことあるのはサファイア・ダイヤ・プラチナ・ソウルシルバー・ホワイト・ホワイト2・X・Y・アルファサファイア・サン・ウルトラムーン・ソードです。

今回はVSルミ後半戦。楽しんでいただけると幸いです。


 ポケモンBWのストーリーのラスボスとも言っていい存在、プラズマ団のゲーチス。その切り札でもあるサザンドラは、とある理由からポケモンファンでは有名だ。

 

 曰く、こいつ一体だけでパーティーが壊滅した。曰く、本来存在しないレベル54のサザンドラだったためプラズマ団に改造された個体なんじゃないか。曰く、大抵のパーティーなら弱点タイプを持っていても「りゅうのはどう」「きあいだま」「なみのり」「だいもんじ」を覚えているため返り討ちにされた。曰く、直前で手に入るゼクロムレシラムの禁止級伝説ポケモンでも返り討ちにされる凄まじい強さ。曰く、続編のBW2ではいのちのたまを持った上で最大火力のやつあたりをしてくる悪夢。チャンピオンのアイリスまで先鋒として使ってくるもんだからサザンドラの名はとにかく上がった。その世代ドンピシャな俺にとってサザンドラはトラウマに等しい。当時はフェアリーなんて言うサザンドラの天敵はいなかったためとにかく苦戦したのだ。

 

 まあ、今もフェアリータイプは持ってないが。ドラピオンで十分だと思っていたがアブリー辺りでも捕まえておくべきだろうか。

 

 

「きあいだま!」

 

「交代、テッカニン!つるぎのまいで防御だ」

 

 

 ルミのサザンドラに対しテッカニンを繰り出し、放たれるエネルギー弾をつるぎのまいで弾き飛ばす。先述の通り、オールマイティに戦えるのがサザンドラの強みだ。その代わり大技が多い、受けるドラピオンより避けて弾けるテッカニンの方が有利のはずだ。

 

 

「だいもんじ!」

 

「かげぶんしんで避けてシザークロス!」

 

 

 放たれる大の字の炎をくるりと回転して避けて斬撃を叩き込むテッカニン。効果は抜群だ。しかし両手?の口で刃を噛みつかれてしまい、逃げれなくなってしまう。サザンドラは三つ首のドラゴンだ。独立して動くのだという。

 

 

「そいつはなんでも噛み付く癖があってなあ!ドラゴンダイブ!」

 

「テッカニン!?」

 

 

 そのまま地面に叩きつけられた上で体当たりを押し付けられ、テッカニンは戦闘不能になってしまった。もう一度ドラピオンを繰り出し、考える。つるぎのまいシザークロスのダメージが入ってるし、とにかくこおりのきばを当てれば勝ちか。

 

 

「近づかせるなきあいだま!」

 

「こおりのきばで防御だ!」

 

「無駄だだいもんじ!」

 

「つじぎりで相殺しろ!」

 

 

 技の応酬が繰り広げられる。後手に回っている上に距離を取られているこちらが不利か。なら近づけるまでだ。

 

 

「追い込むようにミサイルばり!」

 

「逃げきれサザンドラ!」

 

 

 六つの光弾がサザンドラを狙って放たれ、高速で空を舞い逃れるサザンドラ。迎撃しないってことはあくのはどうは持ってなさそうだ。わざ構成はBW1と2のゲーチスのサザンドラをミックスさせた感じだ。おそらく物理よりの、だいもんじときあいだまをサブウェポンにした両刀の型か。ということは残りの技はおそらくかみくだく…こおりのきばを警戒して使えない感じだな。だがな、こっちにも奥の手はあるんだよ。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「なんのつもりだ…!?」

 

 

 ムゲンダイナ戦で嫌というほど味わった、飛ぶ斬撃のクロスポイズン。ドラピオンは悔しかったのか、それを短距離とはいえマスターしていた。ミサイルばりで射線上に誘導されたサザンドラはまともに喰らい、体勢が崩れる。今だ!

 

 

「こおりのきば!」

 

 

 一撃。捕らえさえすれば効果抜群ならば一撃で仕留めるドラピオンのこおりのきばが炸裂。凍り付いたサザンドラが崩れ落ちる。強敵だったな。最後の一匹なのか、震える手でボールを構えるルミ。

 

 

「…なあ、納得したか?俺とムツキは、全力で戦ってあの結果になったんだ」

 

「うるさい!ムツキ選手は最強なんだ。あんな、セミファイナルトーナメントの初戦で負けるなんて何かの間違いなんだよ!」

 

 

 ジャラランガを繰り出し絶叫するルミ。肩で息をしながら、ルミは語る。

 

 

「私はな…ドラゴン以外を使いながらドラゴン使いを騙るキバナが許せなくて、大好きなドラゴンポケモンでぶちのめすためにジムチャレンジに参加したんだ。チャンピオンとかはどうでもよかった。ドラゴンポケモンの強さで三つのジムを乗り越えた先で、ムツキ選手と出会った。勝負を挑んで、負けるはずないと豪語していたのに…負けた。ワシボンの圧倒的な強さで!」

 

 

 聞けばウォーグルの進化前であるワシボンで自分のポケモンを4タテされたのだという。最強だと自負していたドラゴンポケモンをあっさりと一匹で倒されて、ムツキの強さを痛感したのだと。

 

 

「お前みたいな小手先を使うような強さじゃないんだ。理由がいらない、圧倒的な強さ!しかもあれで練度上げの途中なのだと言う!わかるか?フェアリーでもないのに、ワシボン一匹で自慢のドラゴンポケモン達を倒された時の絶望を!」

 

「…わかるさ。俺も負けた口だ」

 

 

 交代して来なきゃ一匹に倒されていただろうし、アイツの凄さはよく知っている。言うなれば努力の天才だ。地道なレベル上げが得意な奴を俺はムツキ以外に知らん。だが俺の言葉が聞こえなかったのか、ヒートアップするルミ。

 

 

「私は己が強いのだと自負していたが、ドラゴンの在るべき姿を彼女に見た!彼女に倣って練度を上げる修行をしてみたが中々上がらない!倣えば倣うほど力量の差を思い知る!これであそこまで強いムツキ選手はすごい、あの人は最強なのだと確信した。チャンピオンになれるのはああいう人間なのだと。それをお前が卑怯で反則なデンチュラやそのドラピオンで崩した。私はそれを絶対に許さない。蟲なんかにあの人が負けた事実を、お前ごと消し去ってやる」

 

 

 こいつ…支離滅裂すぎる。自分の物差しの強さしか測れていない。都合の悪いことは見て見ないふりをするタイプの人間だ。おそらく、ユウリやダンデのことも見ないでムツキより弱いと吐き捨てているのだろう。正直哀れだが、聞き捨てならないことを言ったな?許さんぞ。

 

 

「キョダイデンチュラがいなかったら確かに負けていた。だがな、訂正しろよ。俺の蟲たちは卑怯でも反則でもねえ!生まれ持った力だ!蟲なんかだと?その蟲に負けたのはお前の憧れたムツキなんだよ!」

 

「黙れ黙れ黙れ!まずは目障りな蟲を叩き潰して、それからお前だ!ソウルビート!」

 

「地面にこおりのきば!」

 

「スケイルノイズ!」

 

 

 大地に突き立てられ、ジャラランガを拘束せんと迫る氷結が、音の衝撃波で破壊されドラピオンも吹き飛ばされ戦闘不能になってしまう。あのソウルビートという技、恐らくは自分の体力を削って能力を上げる技か。なんて威力だ。だが、それならその技を利用する。

 

 

「頼むぞ、オニシズクモ」

 

「知っているぞ!オニシズクモにジャラランガを倒せる技はないとなあ!」

 

「…それはどうかな?」

 

「スケイルノイズだ!」

 

 

 再び放たれる衝撃波に、ルミは勝ち誇った笑みを浮かべる。ジャラランガを倒せなかったとき、俺はオニシズクモを温存すると心に決めていた。何故ならあの技はムゲンダイナ戦でしか披露してないのだから。逆転の一手を、解き放つ。

 

 

「ミラーコート!」

 

「なに!?」

 

 

 衝撃波を受けた鏡の盾が、光線としてジャラランガに跳ね返す。絶大な威力が仇になったな。

 

 

「俺の勝ちだ」

 

「…そんな…ラウラが、本当に強いはずが……ムツキ選手が、ラウラに本当に負けたなんて、そんな…」

 

「私は、ラウラに敗北しましたよ」

 

 

 戦意喪失し狼狽えるルミ。そこに空からやってきたのは、ムツキだった。血塗れの俺とボロボロの周囲を見て何があったのか察したのか溜め息を吐くムツキはルミに向き直る。

 

 

「あ、シーソーコンビならユウリ達が追いかけて行きましたのでご安心を。それで、なんで貴方達が戦っていたのかは知りませんが、私のためにしたのだと言うのなら大きなお世話です」

 

「ムツキ、選手……こんな蟲使いにやられたなんて、認めていいのか?貴方は最強だろう?」

 

「そもそも私、最強は目指していませんし。それにラウラには何時か自分の力でリベンジします。私自身の力でです。そのために、力を貸してくれませんか?」

 

 

 そう言って項垂れるルミに手を差し伸べるムツキ。…ネットでは空の大天使と呼ばれていたが、確かにその名にふさわしいな。

 

 

「私…は…貴女の覇道を見ていられればそれで…」

 

「ならなおさらです。ラウラを追い詰める程の実力者なんて、修行相手に持ってこいじゃないですか。キバナのところでジムトレーナーやるより経験たまりそうです」

 

「…天使って、貴女のことを言うんだな」

 

「はえ!?」

 

 

 褒められて動揺するムツキ。憧れのトレーナーに求めてもらって気分が高揚しているルミ。それを呑気に見守る俺。だからこそか、何かに気付いたオニシズクモの警戒の声に気付くのが、遅れてしまった。

 

 

「サイケこうせん」

 

「……ごふっ」

 

 

 ルミが、腹部に強烈な光線に撃ち抜かれて背中から吹き飛ばされた。慌てて俺とムツキで周囲を見渡すと、木の上に奴がいた。側にはオーベムを侍らせている。

 

 

「あーあ、ルミちゃんならラウラをボッコボコにしてくれると思っていたのにさ。負けた上に満足げな顔ってどういうことだよ。でもその苦しみ悶える顔で溜飲は下がったからこれぐらいで許してあげる」

 

「アルル、カン…貴様…!」

 

「そういう契約だったじゃん?君は僕に面白い光景を見せる。僕は君にラウラをぶちのめす機会を与える。なのに契約を破ってもらっちゃ困るよ。まあいいや、極上のものを見れる時がもうすぐ来るからね」

 

「バブルこうせん!」

 

「おっと危ない。じゃあ間に合えばまた会おうね。テレポート」

 

 

 俺の指示したオニシズクモのバブルこうせんを飛び降りて避けながらテレポートで姿を消したアルルカンに拳を握りしめる。…あいつ、仲間さえ自分の駒か。ってことはシーソーコンビも…?

 

 

「ムツキ、ルミを病院に連れて行け。それで、シーソーコンビの向かった場所ってのは…」

 

「ムゲンダイナが暴れたあそこです。私のアーマーガアを貸しますので急いで行ってください。送り届けたら私の元に戻ってくるよう躾けているので心配しないでOKです」

 

「わかった。ルミを頼んだぞ」

 

 

 ムツキにルミを任して、ムツキの色違いアーマーガアの背に乗って飛び立つ。間に合ってくれよ…!




ルミはめんどくさい系大ファン。アルルカンはマジ外道。

・ラウラ
サザンドラの脅威に悩まされながらも、蟲なら有利やと思い出した主人公。当時はだいもんじやいわなだれでボコボコにされたトラウマがある。

・ルミ
練度上げればドラゴンでもフェアリーに勝てると根性論を地で行くドラゴン使い。つまり馬鹿。ムツキの前だと大人しくなる。手持ちを揃えると「九頭竜」になる。

・ムツキ
ソニアの研究所に駆けつけてみればなんかバトルを繰り広げていた光景が見えた上にルミの姿が見えたのでユウリ達に先に行かせて様子を見に来た。自分の力でラウラに勝つのが目標。

・アルルカン
見たいものの為ならどこまでも残酷になれるエセ紳士。人の心がない外道。オーベムを使って移動する。

・サザンドラ♂
とくせい:ふゆう
わざ:ドラゴンダイブ
   かみくだく
   だいもんじ
   きあいだま
もちもの:なし
備考:おとなしい性格。打たれ強い。ルミの初期メンバー。モノズの頃から大事に育ててくれたルミに懐いており命令を厳守する。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマタドガス

どうも、放仮ごです。今回、アルルカンの思惑が明らかになります。剣と盾編クライマックスです。

今回はVSアルルカン。楽しんでいただけると幸いです。


2/12※アルルカンの手持ちの技を修正しました


以前、ムゲンダイナが暴れていたナックルスタジアム屋上。そこでは、アルルカンを側に控えさせたシルディがザマゼンタと対峙しているところだった。ソッドはユウリ達の足止めか?俺が降り立つと同時に、苦しみ悶えるような咆哮が上がる。

 

 

「フハハハ!やった!やりましたよ、兄者!朽ちた盾に釣られてやってきたこやつめに!ガラル粒子を注入してやりましたよ…!」

 

「お前、やってしまったのか!」

 

「おや、遅かったねラウラ。それに皆々様方。もう既にやることは終わったよ」

 

「ラウラ!これは一体…?」

 

「そんな…!ザマゼンタ苦しそう!」

 

 

 するとユウリ達がソッドを引き連れてやって来て、役者は揃った。何が起きても止めれるはずだ。アルルカンのにやついた笑みが気になるが。

 

 

「さあ!己の凶暴性を曝け出し…偽りの王であると自ら証明しなさい!」

 

 

 その瞬間、ザマゼンタがシルディに牙を剥いて襲いかかった。咄嗟に前に出る。

 

 

「ユキハミ、まもる!」

 

「ひょえっ!?」

 

「お、弟よ!こ、これは一体?アルルカン、話が違うぞ!我らは安全だったのではなかったのか?!」

 

「誰がそんなこと言ったかなあ。僕は僕のマタドガスのガスを改造したものなら安全にガラル粒子を扱えるって言っただけで暴走したポケモンまで操れるとは言ってないんだけどなあ。あ、オーベムで操ればいいんだっけ。失敬失敬」

 

 

 アルルカンがそばに侍らせるオーベムは強力なサイコパワーを持ち、相手の脳を操って記憶を書き換えてしまうという恐ろしい能力を持つという。それを使用したらしいアルルカンだが、ザマゼンタは止まらず、むしろ俺の守りを掻い潜ってシルディに襲いかかり、咄嗟にデンチュラを繰り出す。回復なら空の上ですませた。フルメンバーで戦える!

 

 

「デンチュラ、エレキネット!」

 

 

 なんとか電気が迸る蜘蛛の巣で拘束したが、すぐに振りほどいて俺とデンチュラを突き飛ばしてシルディに迫らんとしたところを、ユウリがムゲンダイナを繰り出して防いだ。ムゲンダイナさえ押されているだと…!?

 

 

「わ、我ではない!街へ繰り出し破壊の限りを尽くすのです!」

 

「アルルカン!貴様、なんのつもりだ!?」

 

「なんのつもりもなにも…このままどうなるのかを見物するつもりだけど?」

 

 

 庇われているというのにシルディはまだ馬鹿なことを言っており、ムゲンダイナの押さえつけが上手く機能してない。これは…シルディを襲うように強制されている?

 

 

「必死で自分を抑えようと…でも制御できないんだわ!」

 

「これまでみたいに大人しくさせたいですが、相手は暴走しかけた伝説ポケモンです。捕まえようなんて考えない方がいいですよ」

 

「悔しいけどどうにかできるのはきっと、ユウリだけだぞ!」

 

「う、うん!ムゲンダイナ!ダイマックスほう!」

 

 

 放たれるマゼンタ色の光線。それを防ぎきる盾の英雄、ザマゼンタ。さすがのタフさだ。ザマゼンタはユウリに任せて大丈夫だろう。…俺にできることは、今もにやにや見ているアルルカンを止めること…!

 

 

「デンチュラ、きゅうけつ!」

 

「おっと。テレポート」

 

 

 俺の攻撃を瞬間移動で端っこに逃げて回避するアルルカンとオーベム。この場から逃げるつもりはないらしい。

 

 

「邪魔しないでよ。これからソッドとシルディが無残に殺されて情けない悲鳴を上げるんだからさ」

 

「邪魔するに決まってるだろ。そんなことさせてたまるか」

 

「伝説ポケモンでもチャンピオンの相手はきつそうだ。チャンピオンは強すぎる、僕が加勢したところで焼け石に水だろう。だからさ、君には死んでもらうよ。サイケこうせん」

 

「ほうでんで迎撃だ!」

 

 

 ある程度指向性を持たせた電撃で念のビームを相殺する。オーベムだったら虫タイプのこっちが有利だ。ユウリもシルディを狙うザマゼンタの攻撃を庇いながら倒すのは至難の技だろう。早くオーベムを仕留めなくては。

 

 

「いとをはく!」

 

「させないよ。ヨノワール」

 

 

 まず拘束しようと伸ばした糸は、繰り出されたヨノワールの炎を纏った拳で受け止められてしまう。そっちが複数出すならこっちもだ。

 

 

「ほのおのパンチで叩き潰しちゃえ」

 

「ドラピオン!クロスポイズンで受け止めろ!」

 

 

 ガシッ!と組みあうヨノワールとドラピオン。するとボールを二つ取り出してお手玉したかと思うとキャッチせずに落とすという方法でガラルマタドガスとバリコオルを繰り出してきたかと思えば、毒の塊…ヘドロばくだんと氷の刃…こおりのつぶてが俺を狙って襲いかかり、慌てて回避。オニシズクモとマルヤクデを迎撃、対峙させる。

 

 

「バリコオル、オニシズクモにフリーズドライ。マタドガスはマルヤクデにワンダースチームだ」

 

 

 的確な指示を出すアルルカンと、それを最善の形で実行するそのポケモン達。こいつ、トレーナーとしては強くもなんともないが、ポケモン達が自分の意思でアルルカンの意思をくみ取り攻撃してくるタイプだ。こいつは厄介だぞ。

 

 

「テッカニン、デンチュラを手伝え!」

 

「いわなだれ」

 

 

 ザマゼンタを操ることに集中しているオーベムには直接指示をしないといけない様で、念動力で生み出された複数の岩がテッカニンとデンチュラを押し潰し、テッカニンを戦闘不能にしてしまう。こいつ、俺対策までしっかりしてやがる…!

 

 

「そんな驚くことないじゃん。君とチャンピオンが一番厄介な邪魔者なんだからさ。対策ぐらいしているよ。そして、みんな出してくれたね?」

 

「なに?」

 

 

 ヨノワールとバリコオルをボールに戻すアルルカンに怪訝な目を向ける。ガラルマタドガスとオーベムだけ残して何を…待て、マタドガス?まさか…

 

 

「オーベム、テレポート。そしてマタドガス…だいばくはつ」

 

「ユキハミ!」

 

 

 アルルカンとオーベムが反対側の端に逃げるのを見ながら咄嗟に頭の上のユキハミを握って庇うように胸に抱え、その瞬間屋上の一角が大爆発に包まれた。

 

 

「ラウラ!?」

 

「ちっ…タチフサグマ逃がすんじゃありませんよ!シャドークロー!」

 

「おっと、危ない危ない」

 

 

 絶叫を上げるユウリ。逃げた先に走って来ていたネズさんのタチフサグマの攻撃もひらりと避けて逃げ続けるアルルカン。

 

 

「お、俺は大丈夫だ…」

 

 

 爆発が晴れた空間では、デンチュラ達が瀕死の状態で横たわっていて。俺も背中が焼けただれ、服は黒焦げで麦わら帽子はどこかに吹っ飛んでしまったが、なんとか立ち上がって無事を知らせる。あいつ、本当にこっちを殺す気だ。

 

 

「絶対に許さないからなアルルカン…」

 

 

 ふらふらと立ち上がり、ぼさぼさの頭にユキハミを乗せる。…もう戦えるのはユキハミだけか。げんきのかけらをデンチュラ達に与えないと…

 

 

「ジムリーダーとホップ少年の相手は任せたよ。さて、と」

 

 

 バリコオルとヨノワールにネズとホップの相手を任せたらしいアルルカンがオーベムを引き連れてやってくる。ついでと言わんばかりに瀕死になったマタドガスをボールに戻す姿からは愛情など感じられない。こいつにとってポケモンは道具なのだと、そう確信できた。

 

 

「僕の目的はね。極上の顔を見る事なんだ。苦しむ顔、悶える顔、悲しみにくれる顔、その憎悪に満ちた顔。どれもこれも最高な僕のおもちゃだ。いやー、貴族ってのは本当につまらなくてね。特に僕は人間としても異質でさ、他人が苦しむ姿にしか愉悦を見いだせないんだ」

 

「…サイコパスって奴か」

 

「本当はね、希望に満ちた顔から絶望したソッドとシルディの顔を味わおうと思ったんだ。あいつらいつもウザくて、お目付け役だなんてほんと嫌だよね!君達と出会ってからは悔しがる顔とかが見ていて愉しかったけど、どうせなら極上のものが見たいじゃん?だから協力していたんだ、このお馬鹿な遊びにさ」

 

 

 サイコキネシス、が俺の体を拘束する。指示もなく、オーベムの繰り出した技で完全に身動きが取れなくなった。ステッキを振り回しながら笑みを浮かべるアルルカン。持ち上げられて、背後には眼下に広がるナックルシティ。…こいつまさか。

 

 

「でも、気が変わった。あんなに強いチャンピオンの悲痛に歪む顔が見たくなった。憎悪に満ちるのかな?憤怒かな?それとも悲しみに暮れるのかな?ああああ、愉しみだよ。君の死で僕の快楽は頂点に達する!君の死に際が見れないのが残念だよ」

 

 

 そして屋上の外、空中に俺を持ち上げたアルルカンはステッキでバシンと叩き、それを合図に浮遊感が俺を襲った。

 

 

「うわぁあああああああああああああああああ!?」




殺人をしようとした悪の組織のボスはいたけど実際に手にかけた悪役はこいつぐらいじゃなかろうか。

・ラウラ
背中が大惨事で、さらに絶体絶命の主人公。前回落ちた時はデンチュラがいたけど今回はみんな瀕死。ポケモンを愛しているからこそ、まさかだいばくはつするとは思わない。

・ユウリ
このあとラウラが落下するシーンを見たせいで茫然自失してしまう原作主人公。アルルカン曰く極上の顔。

・ホップ&ネズ
だいばくはつさせたアルルカンを捕まえようとするもヨノワールとバリコオルに足止めされた。

・ソニア
棒立ち。

・モコウ
ソニアの研究所でマグノリア博士を守るためにお留守番。

・ソッド&シルディ
アルルカンの愉悦の為だけに唆され掌の上で踊らされた道化。ユウリが茫然自失したためザマゼンタに襲われ絶体絶命。

・ザマゼンタ
オーベムの暗示で執拗にシルディを襲うように脳を支配された盾の英雄。ダイマックスほうも難なく耐えてしまった。

・アルルカン
クズの中のクズ。金持ちであるが故に自分以外の人間の苦しみでしか愉しめなくなった人格破綻者。ポケモンのことは道具としか思っておらず、だいばくはつさせることも厭わないしむしろ嬉々として指示している。

・オーベム♀
とくせい:シンクロ
わざ:サイコキネシス
   テレポート
   サイケこうせん
   いわなだれ
もちもの:なし
備考:がんばりやな性格。体が丈夫。他者の脳を支配することができる。

・ヨノワール♂
とくせい:プレッシャー
わざ:シャドーパンチ
   ほのおのパンチ
   シャドーボール
   かげうち
もちもの:なし
備考:きまぐれな性格。おっちょこちょい。アルルカンの主力。シャドーボールが特別。

・マタドガス♂
とくせい:ふゆう
わざ:ヘドロばくだん
   だいばくはつ
   ワンダースチーム
   どくガス
もちもの:なし
備考:わんぱくな性格。暴れることが好き。アルルカンのパートナー。ガラル粒子を含んだ特殊などくガスでポケモンをダイマックスさせた張本人。

・バリコオル♂
とくせい:バリアフリー
わざ:フリーズドライ
   こおりのつぶて
   こごえるかぜ
   サイコキネシス
もちもの:なし
備考:てれやな性格。昼寝をよくする。アルルカンのサブウェポン。氷技が凶悪。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヨノワール

どうも、放仮ごです。ついに10万UA行きました。ありがとうございます!アルルカンのクズっぷりもそろそろラストとなります。

今回はユウリVSアルルカン。そして…?楽しんでいただけると幸いです。


「ハーハッハッハ!いいよいいよ、最高だ!」

 

 

 アルルカンの嘲笑が辺りに響く。ラウラの落下する瞬間を見てしまったせいか目の光を失い激昂してムゲンダイナをアルルカンに向かわせるユウリ。

 ユウリを置いてシルディに襲いかからんとするザマゼンタと、それから庇うように前に立つソッドの絶望に染まった顔。

 ラウラが落下したことで分かりやすく狼狽し指示ができておらずバリコオルとヨノワールに押され、遂には手持ちを全て氷漬けにされたホップとネズ、立ち尽くすソニア。

 その全ての顔が、アルルカンを満足させる。これから自分は殺人で捕まるだろうが関係ない。最高の光景を見られたのだから満足だ。

 

 

「よくもラウラをッッ!!!」

 

「そんな怒りに任せた突撃なんて当たる筈ないけどね。戻っておいで。バリコオル、サイコキネシス。ヨノワールはユウリにシャドーパンチ」

 

 

 ムゲンダイナの突撃を、ヒョイヒョイと避けながらヨノワールとバリコオルを一度ボールに戻してから繰り出し、サイコキネシスでムゲンダイナをその場に縫い止め、影の拳がユウリを殴りつけて吹き飛ばす。殴り飛ばされたユウリは何とか立ち上がりながら、ボールを五個取り出して全ての手持ちを繰り出した。

 

 

「っ…お願い、みんなも力を貸して!」

 

「げんきのかけらだよ、もう一度働いておいで。オーベム、いわなだれ」

 

 

 ボールから再び出したマタドガスにげんきのかけらを与え、さらにオーベムにいわなだれで壁を作るアルルカンになにをしようとするのか気付いたユウリが慌てて手持ちを戻そうとしたその瞬間、大爆発が再び屋上の一角を襲った。

 

 

「マタドガス、だいばくはつ」

 

「っ………みんな!?」

 

 

 アーマーガアとセキタンザンが盾になってくれたことで何とか無事に済んだが、繰り出していたインテレオン、アーマーガア、ダーテング、セキタンザン、ストリンダー、ムゲンダイナは全て瀕死。怒りに駆られた己の行動が引き起こした惨劇に顔を青くするユウリ。それを見てさらに上機嫌になったアルルカンはリフレクターでほぼ無事に済んだヨノワールとバリコオルを侍らせ、にやにやと笑みを浮かべた。

 

 

「君は僕のオーベムを倒すことに集中するだけでよかった。なのに、僕を狙うもんだから付け入る隙が生まれた。ラウラの方がまだ冷静だったかな?」

 

「お前がラウラを語るなあぁあああ!」

 

 

 殴りかかるユウリを、拳の一撃で跪かせるヨノワール。蹲ったユウリを蹴り飛ばしながら、ソッドとシルディに近づくアルルカン。オーベムに言って紙一重でザマゼンタを止めながら、悪辣な笑みを浮かべた顔を二人に近づけた。

 

 

「さて、これで君達を守るものは僕のオーベムしかいなくなったわけだけど」

 

「あ、アルルカン!後生だ!やめてくれ!」

 

「わ、我は死にたくない!」

 

「うーん、いい顔だ。でも物足りないよね!死にゆく瞬間のいい顔を僕に見せておくれよ!」

 

 

 その時だった。ザマゼンタが凍り付き、同時にアルルカンの笑みも凍り付いたのは。

 

 

「…………は?」

 

 

 理解できない、とでも言いたげな表情で振り返る。力なくユウリもそちらに視線を向け、満面の笑みを浮かべる。お通夜の空気だったホップ達も同様だ。

 

 

「地獄から戻って来てやったぞアルルカン」

 

 

 そこには。街の光に照らされる夜空に浮かぶのは、白い翅を背中から生やし、麦わら帽子を失った赤い長髪をなびかせるラウラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中のナックルシティを眼下に見ながら思考する。デンチュラは瀕死。テッカニンも瀕死。げんきのかけらを与えようにもどちらも屋上だ。高速で迫る街並みに、死を覚悟する。…二度目の人生、楽しかったなあ。……………って、まだ、死ねない!だいばくはつなんかでやられてしまった皆を幻視する。デンチュラ、テッカニン、オニシズクモ、マルヤクデ、ドラピオン。それにボックスに預けているイワパレス。

 

 

「……あいつらを置いて死ねるかァアアアアアアアアッ!」

 

 

 そんな俺の叫びに応えるように、頭上が光り輝き、急激な浮遊感に襲われる。何故か空気も凍えてきた。背中を見やると、そこには美しい白の蟲ポケモンがいた。

 

 

「お前は…モスノウ!」

 

 

 ロトム図鑑で名前と技を確認し、ユキハミが進化したポケモンだと確信する。これなら、行ける!

 

 

「頼むモスノウ!俺を上に!」

 

 

 屋上まで戻ってみると、ザマゼンタがシーソーコンビを今にも襲おうとしていたところだったので「れいとうビーム」と指示して氷漬けにして阻止。見ればユウリやその手持ちもボロボロだ。そのお礼も兼ねて、俺の存在に気付いて振り向いたアルルカンに言ってやる。

 

 

 

「地獄から戻って来てやったぞアルルカン」

 

「そ、そんな馬鹿な!?確かに殺したはずだ!この高さから落ちて無事なはずが…まさか、ユキハミか!?」

 

「そのまさかだ!進化条件は知らないが、この土壇場で進化したのさ!覚悟しやがれ!」

 

 

 モスノウの冷気に当てられてか、あられが降ってきた。このチャンス、活かすしかないよなあ!

 

 

「ヨノワール、ほのおのパンチだ!」

 

「ちょうのまい、からのふぶきだ!」

 

 

 モスノウから離れて屋上に受け身して着地しながら指示。超火力でしかも必中のふぶきが炸裂。ヨノワールとオーベムを氷漬けにする。進化した時に技も一新されていた。残りはこおりタイプ故に氷漬けにならなかったバリコオルだけだ。このままいくぞ!

 

 

「っ、バリコオル!こおりのつぶて!」

 

「むしのさざめき!」

 

 

 翅の羽ばたきによる衝撃波が氷の礫を破壊しながらバリコオルを撃ち抜き、戦闘不能にする。ザマゼンタの洗脳もこれで解けただろうし、こおりなおしで氷漬けを治しておく。

 

 

「お前の手持ちは全部倒した。観念しろアルルカン」

 

「…やだね!僕は負けてないさ!ヨノワール!」

 

 

 瞬間、氷を破って出てきてアルルカンの前に立ち塞がるヨノワール。ほのおのパンチで氷漬けを回避していたのか。

 

 

「こうなったら、君達の顔が見れなくなるのは残念だけど切札を使おうか。ヨノワール、シャドーボール」

 

 

 指示を受けるなり、胴体の口(?)を開いて闇の球体を作り上げるヨノワール。すると徐々に周りの空気が吸い込まれ始め、咄嗟に蹲っていたユウリが吸い込まれそうになるのを掴んで止める。これは、シャドーボールじゃない…!?

 

 

「ヨノワールは人や行き場の無い魂を霊界に連れて行く、この世とあの世を行ったり来たり出来るポケモンさ!このシャドーボールに吸い込まれたら最後…、ヒャハハハハハ!どこに行くんだろうね?!」

 

「くっそ…何とか塞げ!ふぶきだ!」

 

 

 羽ばたいて吸い込まれないようにしているモスノウに指示してみるも、吹雪も吸い込まれて行き意味がない。俺の小さな体で踏ん張るのもさすがに限界だし、このままだと横たわったままの瀕死のポケモン達も吸い込まれてしまう。なんとかしないと不味い…!

 

 

「も、戻れ!」

 

「みんなも…!」

 

 

 なんとかユウリと一緒にモスノウ以外のみんなをボールに戻すが、俺達はどうしようもない。ザマゼンタも疲労していて吸い込まれないようにするので限界みたいだし、他の人間も同上だ。アルルカンだけヨノワールの背後でニヤニヤ笑っている。これ以上は本当にやばい…!?

 

 

「ウルォーード!!」

 

 

 今にも吸い込まれそうな、その時だった。空からザシアンが飛来、ヨノワールに体当たりしてその向きを変えたのは。

 

 

「あ」

 

 

 何か言おうとしたものの、何が起きたか理解できていない呆けた顔を最期に何の抵抗も無くアルルカンは自分のポケモンによって暗い穴へと吸い込まれていった。慌てて腹部の口を閉じるヨノワールだったが、もう遅い。その場には戦闘不能で倒れているバリコオルとマタドガス、氷漬けのオーベム、狼狽えているヨノワールだけが残された。




因果応報。自業自得。変に退場する時間とか与えたら自分の末路さえ楽しむ変態にはこれが一番の末路でした。

・ラウラ
モスノウの助けを借りて再臨。イメージは完全にキャタピーがバタフリーに進化したポケスペのイエロー。ユウリからは妖精に見えたとかなんとか。背中の火傷をモスノウに冷やしてもらった。

・ユウリ
激昂してアルルカンに直接攻撃したものの手玉に取られたチャンピオン。ラウラが戻ってきた途端元気を取り戻した。ヨノワールに殴られているため割と重症な上に手持ちも全滅とピンチ。

・ホップ&ネズ
ラウラの落下に動揺してバリコオルに手持ちを氷漬けにされた。

・ソッド&シルディ
ギリギリラウラに助けられる。完全に蚊帳の外。

・ザマゼンタ
氷漬けにされて止められ、こおりなおしで復帰した盾の英雄。地味にソッドとシルディが吸い込まれないように盾になっていたイケメン。

・ザシアン
ピンチに到着。アルルカンに救い無しと断じて実行した。

・アルルカン
暴れるだけ暴れてあの世に吸い込まれていった外道。わざわざげんきのかけらで復活させた相棒をもう一度大爆発させたり、トレーナーにダイレクトアタックしたりやりたい放題だった。

・モスノウ♂
とくせい:りんぷん
わざ:れいとうビーム
   ふぶき
   ちょうのまい
   むしのさざめき
もちもの:やすらぎのすず
備考:おとなしい性格。イタズラが好き。夜だったこと、命懸けで守られたことが起因し条件を達成して進化した。こおりわざの威力が伝説ポケモンすら凍らせる程に強力。ラウラくらいの子供だったら一人持ち上げて飛ぶことも可能。

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VSザシアン

どうも放仮ごです。剣と盾の章最終回、というよりエピローグとなります。

今回はVSザシアン。楽しんでいただけると幸いです。


 その後。途方に暮れているヨノワールを始めとしたアルルカンの手持ちを再捕獲して、ネズさんに預けた。主人であるアルルカンがいない以上、もう危険はないだろうが、一応な。

 そしてまだ注入されたガラル粒子の影響があるのかザマゼンタが逃げ出し、それをホップが追いかけていった。その際、シルディが所持していた朽ちた盾も返却してもらって持っていったのを見送る。一方、手持ちを蘇生していたユウリに、ザシアンが勝負を挑んでいた。

 

伝説ポケモンの考えることは分からん、が…さすがに、これ以上は限界だ…そこで俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三日後。俺はナックルシティの病院の病室でユウリとモコウから顛末について聞いていた。ムツキはこの病院だけは嫌だと来なかったらしい。だいばくはつをもろに受けた上に冷えた体でヨノワールの吸い込みを耐えたのはだいぶ体に祟ったらしく、三日間眠り続けていたようだ。

 

 

「で、ユウリがザシアンを捕獲して、ザマゼンタを捕獲したホップと決着をつけたと」

 

「うん。私、また強くなったよラウラ!」

 

「ラウラはあの後病院に行ってたから知らんのだったな。我も見届けたぞ。ホップの雄姿をな」

 

「ソッドとシルディもちょっと変な感じになったけど改心したよ。あとでラウラにも会いたいって」

 

「そうか。ところでユウリも蹲ってた気がするが大丈夫だったのか?」

 

「ヨノワールに殴られたけど私、頑丈だからね!」

 

「ええ…」

 

 

 お前の頑丈さは人間じゃねえ!と全力でツッコみたい。

 

 

「そう言えばアルルカンの手持ちはどうなったんだ?」

 

「マタドガスはビートが。ヨノワールとバリコオルはマイナークラスのジムリーダーのオニオンくんとメロンさんが引き取ったよ。オーベムはソニアさんが研究ついでにホップと一緒に面倒を見るってさ」

 

「ホップと?」

 

「うん。ホップ、ポケモン博士になることにしたんだって。ルミと一緒にソニアさんの助手をやってるよ」

 

「ルミもか。よくソニアさんも許したな」

 

「なんでも研究職を手伝う時の顔に嘘はなかったとかなんとか。奴も反省しているようだったな」

 

「ソニアさんの手伝いをしながらムツキの練習相手にもなるんだって。アルルカンなんかに手を貸してたのが本当に恥ずかしいとも言ってたかな」

 

「…そうか」

 

 

 アルルカンは自滅という形でこの世から去ったが、なんともすっきりしない。他地方の図鑑説明によるとヨノワールはシンオウ地方の伝説ポケモンであるギラティナの指示で人をあの世…つまりギラティナの支配する「やぶれたせかい」に送るのだという。アルルカンもそこに送られた可能性が高い。まあ、生きることも難しいだろうな。手持ちもいないからギラティナに命を奪われているかもしれない。ちゃんと決着を付けれなかったことは心残りだが、さすがにどうしようもない。

 

 

「それでなんだけどラウラ。私と勝負しない?ザシアンのことをもっと知りたいんだ。リハビリがてら、どうかな?」

 

「おういいぞ。体を動かしたいと思っていたところだ」

 

「起きたばかりなのに元気だなお前は…なら我は審判をするとしよう」

 

 

 起き上がり、近くのテーブルに置いてあった手持ちの皆が入ったボールホルダーを手にする。…みんな回復しているみたいだな。よかった、気を失って回復どころじゃなかったからな。

 

 

「おや、おでかけですか?と私は患者を呼び止めます」

 

「ええ、はい。………え?」

 

 

 出ようとしたところ声をかけられ、生返事しながら振り向くとそこには見知った顔が。…成長してナース服を着たムツキ…だと…?髪を下ろしていて傍らにナックラーを連れているところも違うが、失礼ながら胸の大きさは同じだ。年は16歳ぐらいだろうか。

 

 

「ムツキ…?」

 

「ああ、それは私の妹ですね。私はリヅキといいます。貴女の担当看護師です。と私は自己紹介します」

 

「ムツキのお姉さん……話は聞いてなかったから驚きました」

 

「私のことは存在すら忘れていると思いますよ。仕事が忙しくてまともに会ったことすらないので。と私は複雑な家庭事情を暴露します」

 

 

 癖が強い。何とも特徴的な喋り方の人だな。見た感じ、キリエさんやムツキと違ってポケモンを育てるのは苦手そうだ。しかしナックラー可愛い。フライゴンも含めて蟲ポケモンに認定しているがやっぱり捕獲しようかな。キリエさん辺りに聞いたら生息地わかるだろうか。

 

 

「外に出るのはいいですが、勝手に退院しないでくださいね?と私は釘を刺します」

 

「あ、はい。ちょっとバトルしてくるだけなんで…」

 

 

 リヅキさんに断りを入れ、病院に備え付けられているバトルフィールドに足を運ぶ。チャンピオンがいるためかギャラリーも多い。無様な戦いは見せられないな。

 

 

「ラウラの体調も考えて一対一のシングルバトルだ。双方準備はいいか?」

 

「いいぞ」

 

「問題ないよ」

 

「では、始め!」

 

 

▽チャンピオンの ユウリが 勝負を しかけてきた!

 

 

「頼むぞ、モスノウ!」

 

「暴れておいで、ザシアン!」

 

 

 モコウの声を合図に同時に繰り出す俺達。俺はモスノウ。ユウリはザシアン。しかも剣を装備した本気モードだ。さすがユウリ、病み上がり相手でもガチだな。

 

 

「先手必勝!きょじゅうざん!」

 

「れいとうビームで壁を作れ!」

 

 

 振るわれる巨剣を、氷の壁で受け止める。相手のタイプはフェアリーとはがねか。まともに戦ったら不利でしかない。というかむしタイプの攻撃がほとんど通らない上にこおりタイプの技も全然効かないと来た。きっついな。

 

 

「つるぎのまいで攻撃力を上げて!」

 

「ならこっちもちょうのまいだ!」

 

 

 それぞれ能力を高めていく。これであっちは攻撃を当てれば勝ち。こっちは攻撃を受けずになんとか戦闘不能にできれば勝ち。不利なのは蟲タイプにとっては常にある事だから関係ない!

 

 

「ふぶき!」

 

「つるぎのまいで振り払って!」

 

 

 威力が上がったふぶきで視界を遮る。防がれているが問題ない、目的はザシアンの全身を水浸しにすることだ。

 

 

「突っ込んでせいなるつるぎ!」

 

 

 ふぶきが吹き荒れる中で、突撃してくるザシアン。だが既にそこにはモスノウはいない。雲隠れならぬ雪隠れ。特性じゃなくても真っ白い体だから簡単だ。

 

 

「ザシアン、後ろ!」

 

「れいとうビームだ!」

 

 

 ふぶきが止んだその時、背後に回っていたモスノウのれいとうビームが炸裂。吹雪で濡れていたザシアンの体は瞬く間に凍り付き、完全に氷像となった。モコウが近づいて確認し、俺の方に手を向けた。

 

 

「ザシアン、戦闘不能。モスノウの勝ちだ」

 

「…やっぱりすごいねそのモスノウ」

 

「どうやったら進化するか分からないからとにかく練度を上げまくっていたからな」

 

 

 ふわふわ近づいてきたモスノウのひんやりする頭をなでなでしながら応える。こいつは想像以上に強く進化してくれた。自慢の蟲ポケモンだ。

 

 

「またラウラが強くなったわけか。これは超え甲斐があるというものよ」

 

「いや、まだまだだ。一対一ならともかく、フルバトルとなるとユウリに勝てるビジョンが見えない」

 

「あ、そうだラウラ。ダンデさんからヨロイ島のパスをもらったんだけど一緒にいかない?」

 

「ヨロイ島?」

 

「うん、スレで教えてもらったんだけど、ラウラやモコウたちが喜びそうなガラル本土にはいないポケモンが生息している島なんだって。蟲ポケモンもいっぱいいるとかなんとか」

 

「それは…ぜひ行きたいな」

 

 

 ヨロイ島。話は聞いたことがある。ガラル本土の北東に存在する島。ガラル本土にいない蟲ポケモンか…楽しみだ。

 

 

「まずは安静にして怪我を治すことからだな!」

 

「そうだよラウラ。安静にしてね」

 

「お前がこのバトルに誘ったんだろうが」

 

 

 するとパチパチパチと手を叩く音が聞こえてきて、振り向くとそこには憑き物が落ちた様な笑みを浮かべたシーソーコンビがいた。何故かネズさんとダンデさんも一緒だ。

 

 

「オーイオイオイ!三日前のユウリ様とホップの戦いと同じく素晴らしい戦い!」

 

「オーイオイオイ!さすがはユウリ様と対を為す我らが女王!」

 

「病み上がりでなにやっているんですかまったく…」

 

「だが確かにいい勝負だった!俺もリザードンと一緒に乱入するところだったぞ!」

 

「ダンデさんとネズさんは付き添いなのはわかるけど…何の用だ、ソッド。シルディ」

 

 

 睨み付けてやるとソッドとシルディは笑みを浮かべながら綺麗な一礼をする。ギャラリーもいるからやめてほしいんだが。

 

 

「我らは貴方とユウリ様に命を救われた!」

 

「アルルカンめの魔の手に操られたザマゼンタを止めてくださったのは貴女だ」

 

「ユウリ様と同じくダイマックス級の器の大きさ!」

 

「我らが王ユウリ様と対を為す女王にふさわしい!」

 

「お、おう」

 

 

 そこは二人の王でいいんじゃないか?とか、変な奴らに懐かれたな、とか思うところは色々あれど。まあこういうのも悪くないかと溜め息を吐く。何にしても、平和に終わってよかった。心配かけただろうし、カブさんにも会いに行かないとな。




王ユウリと女王ラウラ。なお中身の性別は逆の模様。

・ラウラ
さすがに三日間気絶していた重症者。シーソーコンビからは「我らが女王」と呼ばれることに。ギャラリーにばっちり見られているためネットは大騒ぎ。

・ユウリ
ザシアンに選ばれた原作主人公。念願のフェアリータイプを手に入れてご満悦。ヨノワールに腹パンされているが少し休んだだけでピンピンしてる。ソッドとシルディについてはラウラと一緒に王と女王呼びされているせいかまんざらでもない。

・モコウ
決戦中は研究所でお留守番していたがユウリとホップの対決には立ち会った。シーソーコンビについてはまあ大人しくなったからいいかと思ってる。

・リヅキ
今回初登場のムツキの姉。16歳。キリエの才能は受け継いでおらず父親と一緒の病院で看護師をしている。ムツキからは存在すら忘れられているがムツキの担当看護師もしていた。逃げられて一番号泣した人間でもある。忘れっぽい性格で妹達口調で喋って一々自分に確認を取る。元キャラはムツキの元キャラの裏人格。ネーミングも裏だから。相棒はキリエからもらったナックラー。

・ソッド&シルディ
ユウリとラウラに命を救われたと認識して「王」と「女王」と崇めている面倒な兄弟。モコウについてはラウラの友人として態度を改めた。

・ダンデ&ネズ
シーソーコンビのお目付け役。

・ホップ
ザマゼンタを捕獲し、ユウリと決着をつけた。ポケモン博士になるためにソニアの助手をやることに。ルミとは結構仲がいい。アルルカンのオーベムをなんとかしようと頑張っている。

・ルミ
名前だけ登場。あのあと割と軽傷ですんで、研究職のやりがいからソニアの助手を続けることに。ムツキの手伝いは優先して行っている。アルルカンのオーベムが暴走しないように監視も兼ねている。

・ビート
名前だけ登場。アルルカンのマタドガスを引き取った。

・オニオン&メロン
名前だけ登場。マイナークラスのジムリーダー。アルルカンのヨノワールとバリコオルを引き取った。

・ザシアン
とくせい:ふとうのけん
わざ:せいなるつるぎ
   つるぎのまい
   アイアンヘッド/きょじゅうざん
   じゃれつく
もちもの:くちたけん
備考:ずぶとい性格。ちょっぴりみえっぱり。ユウリを認めて手持ちになった剣の英雄。ストリンダ―と交代した。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板5

どうも、放仮ごです。ぶっちゃけヨロイ島編は大まかな大筋以外ノープランなんで実は割と困ってます。実際にやれないからネタがねえ!(機械音痴+金欠なためDLC買えない)あと、活動報告でヨロイ島の蟲ポケモン募集してますのでぜひご参加ください。

今回は剣と盾編のまとめ的な掲示板です。楽しんでいただけると幸いです。


ダイマックス事件について語るスレ

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

だから見たんよ。ターフジムから飛び出していくチャンピオンユウリ、ラウラ、モコウ、ムツキ、ホップ、ネズの六人を

 

65:名無しのトレーナー

そんな豪華なメンバーが何でそんなところにいたんだ

 

66:名無しのトレーナー

ジムリーダーじゃない面子ってぐらいだな共通点

 

67:名無しのトレーナー

その直前ヤローとネズさんのエキシビジョンマッチがやってたってのは聞いたが他の五人は何故?

 

68:名無しのトレーナー>>64

その前に赤と青の小奇麗な服を着た変な髪型の双子が出てったぞ

 

69:名無しのトレーナー

双子美女かな?wktk

 

70:名無しのトレーナー>>68

残念ながらくっそむかつく整った顔の男二人だぞ

 

71:名無しのトレーナー

がっでむ!

 

72:名無しのトレーナー

なんだそのがっかり感

 

73:名無しのトレーナー

つまり金持ちでイケメンの双子ってことやろ?有罪!

 

74:名無しのトレーナー

変な髪型らしいからそれでプラマイゼロなんじゃね

 

75:名無しのトレーナー

どんな髪型かにもよるぞ

 

76:名無しのトレーナー>>70

後姿だけど

『画像』

 

77:名無しのトレーナー

ブッファwww

 

78:名無しのトレーナー

wwwwwwwww

 

79:名無しのトレーナー

なんだwそのw髪型wwww

 

80:名無しのトレーナー

剣と盾か?www

 

81:名無しのトレーナー

腹がwよじれるwww

 

82:名無しのトレーナー

これでイケメンなんやろ?笑うわそんなんwww

 

83:名無しのトレーナー

女の子なら許せた

 

84:名無しのトレーナー

いや、女の子でもこの髪型は…

 

85:名無しのトレーナー

一周回ってありだな!

 

86:名無しのトレーナー

上級者がおる…

 

87:名無しのトレーナー

改めて言うけどターフスタジアム今立ち入り禁止らしいぞ

 

88:名無しのトレーナー

俺ターフスタジアムにいたから知ってるぞ。いきなりダイマックスしたアマージョが出て来て暴れ出したんや

 

89:名無しのトレーナー

ヤローの手持ちじゃなくて?

 

90:名無しのトレーナー

トレーナーなしのダイマックスってこと?

 

91:名無しのトレーナー

大事じゃないか

 

92:名無しのトレーナー

それを察知してラウラ達は来た…?

 

93:名無しのトレーナー

さすがチャンピオン

 

94:名無しのトレーナー

いや、目に浮かぶぞラウラがデンチュラでダイマックスアマージョを倒している光景が…

 

95:名無しのトレーナー

あー、わかる…

 

96:名無しのトレーナー

伝説が生まれた場所

 

97:名無しのトレーナー

他のスレ見て来たけど、各地のジムスタジアムでも同様の事件があってラウラたちがバラバラに向かったらしい

 

98:名無しのトレーナー

kwsk

 

99:名無しのトレーナー

ターフスタジアムのはただの始まりだってことか…

 

100:名無しのトレーナー

これ、赤青の変な髪型の奴等の仕業なんじゃ…

 

101:名無しのトレーナー

ついにガラルにもエール団以外の悪の組織が出たか!?

 

102:名無しのトレーナー

こんな悪の組織嫌だ

 

103:名無しのトレーナー

いやほら、シンオウのギンガ団とかステキファッションだしさ…

 

104:名無しのトレーナー

カロスのフレア団とかあれだぞ、全身真っ赤だぞ

 

105:名無しのトレーナー

一番ましなのプラズマ団よな…

 

106:名無しのトレーナー

スカル団とかはファッションとしては普通にいいからな

 

107:名無しのトレーナー

ええ…

 

108:名無しのトレーナー

剣と盾って言うとユウリとホップがそれぞれザシアンとザマゼンタに認められたから剣の英雄盾の英雄って呼ばれてたな

 

109:名無しのトレーナー

その熱心なファンかね

 

110:名無しのトレーナー

にしてもファッションセンスひどすぎでしょ…

 

111:名無しのトレーナー

ガラルのブティックってセンスがいいの揃ってるのに…

 

112:名無しのトレーナー

ブティックで見ない服ってことはオーダーメイド品か。金持ちなんかね

 

113:名無しのトレーナー

成金なのは間違いなさそう

 

114:名無しのトレーナー

話題変えるけどちょっといい?

 

115:名無しのトレーナー

どうした

 

116:名無しのトレーナー

なんぞや

 

117:名無しのトレーナー

ダイマックス事件に関係ありそうな話題ならどうぞ

 

118:名無しのトレーナー>>114

わい、二番道路を根城にしているトレーナー。ラウラとドラゴン使いの激闘を隠れて見てる

 

119:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

120:名無しのトレーナー

ラウラが戦ってる!?誰と!?

 

121:名無しのトレーナー>>118

ドラゴン使いのルミって名乗ってた

 

122:名無しのトレーナー

ドラゴン使いのルミ!?

 

123:名無しのトレーナー

誰?

 

124:名無しのトレーナー

知ってるのか122番!

 

125:名無しのトレーナー

たしかジムチャレンジの前半でドラゴンタイプ統一使ってキバナ以上のドラゴン使いとか言われていたチャレンジャーがそんな名前だったような

 

126:名無しのトレーナー

ドラゴン統一…ポプラ…あっ(察し)

 

127:名無しのトレーナー

いやいや、ドラゴン使い名乗ってて対策してないのは草でしょ

 

128:名無しのトレーナー

セミファイナルトーナメントに出てなかったってことはそこまでのトレーナーだったってことでしょ

 

129:名無しのトレーナー

そんなルミが何でラウラと戦ってるんだ?私怨?

 

130:名無しのトレーナー

ラウラと戦ってるってことはダイマックス事件を起こしている謎の存在の手先か?

 

131:名無しのトレーナー

ブラックナイトの時のキリエみたいな?

 

132:名無しのトレーナー

あー、納得

 

133:名無しのトレーナー

雇われ用心棒なのかもな

 

134:名無しのトレーナー>>121

ソニア博士の研究所の壁をぶち破って二人出て来たんだけど…

 

135:名無しのトレーナー

器物損害罪で草

 

136:名無しのトレーナー

ダイナミックバトルの申し込みで草

 

137:名無しのトレーナー

>>134

実況してクレメンス

 

138:名無しのトレーナー

>>137

たしかに、今把握できるのは134だけだしな

 

139:名無しの目撃者>>134

しゃーない、実況したろうやないかい

 

140:名無しのトレーナー

名前変えてて草

 

141:名無しのトレーナー

ノリノリで草

 

142:名無しのトレーナー

いいぞもっとやれ

 

143:名無しの目撃者

ドラゴンを蟲で圧倒しているラウラ、以上

 

144:名無しのトレーナー

もっとkwsk

 

145:名無しのトレーナー

想像はつくけどあっさりすぎるんじゃい

 

146:名無しのトレーナー

もっとこってり、ラーメンみたいに

 

147:名無しの目撃者

話を聞くに、ルミはムツキの信奉者で、ムツキを負かしたラウラが許せないんだと。で、今ジャラランガがドラピオンを圧倒して倒した。ルミの相棒っぽい

 

148:名無しのトレーナー

ええ…

 

149:名無しのトレーナー

事件関係ないんかーい

 

150:名無しのトレーナー

>>147

あのドラピオンを圧倒するジャラランガってこわぁ…

 

151:名無しのトレーナー

さすがドラゴン

 

152:名無しのトレーナー

キバナより強くて草

 

153:名無しのトレーナー

き、キバナはフェアリー対策万全だから…(震え

 

154:名無しの目撃者

 

155:名無しのトレーナー

どした

 

156:名無しのトレーナー

見つかったか?

 

157:名無しのトレーナー

まさかラウラが負けたとか?

 

158:名無しの目撃者

いや、逆。オニシズクモがミラーコートと思われる技でジャラランガのスケイルノイズを跳ね返して勝利した。驚いたのは、空からムツキが現れたから。なんか睨まれた、こわぁ

 

159:名無しのトレーナー

 

160:名無しのトレーナー

ラウラ相変わらず当たり前のように勝ってて草

 

161:名無しのトレーナー

負けるところなんてユウリ相手以外に想像できるか?

 

162:名無しのトレーナー

ダンデにも勝てそうだもんな

 

163:名無しのトレーナー

さすがにそれは無理でしょ

 

164:名無しのトレーナー

いやいやわからんぞ。誰もが見たいカードだ

 

165:名無しのトレーナー

ミラーコート覚えてたんやあのオニシズクモ…

 

166:名無しのトレーナー

遠距離技に対しては無敵の技だからな

 

167:名無しの目撃者

!?

 

168:名無しのトレーナー

ダメージ倍返しはずるいよな

 

169:名無しのトレーナー

今度はどうした

 

170:名無しのトレーナー

今度こそ見つかったか

 

171:名無しのトレーナー

ムツキにはバレてそうだけど

 

172:名無しの目撃者

えっと…ルミが撃たれた

 

173:名無しのトレーナー

!?

 

174:名無しのトレーナー

なんやて工藤!

 

175:名無しのトレーナー

誰に何故にどうして?

 

176:名無しの目撃者

黒づくめの男のオーベムがサイケこうせんらしき技でルミを撃ち抜いてテレポートで逃走、ラウラが飛び去ってムツキがルミを病院に連れてった…

 

あ、これギリギリ撮れた

『画像』

 

177:名無しのトレーナー

どういうことなの…

 

178:名無しのトレーナー

さっきの剣盾頭の成金野郎二人と格好が似ているな

 

179:名無しのトレーナー

シルクハットで顔が分からないな…

 

180:名無しのトレーナー

普通に傷害事件やんけ

 

181:名無しのトレーナー

実はラウラとルミの戦いはダイマックス事件と関係していた?

 

182:名無しの目撃者

わからんけどもう誰もいなくなったから初心者トレーナー狩りに戻るわ

 

183:名無しのトレーナー

おつ

 

184:名無しのトレーナー

おい待てw名無しの目撃者お前、初心者で小遣い稼ぐ輩かよw

 

185:名無しのトレーナー

衝撃の事実で草

 

186:名無しのトレーナー

関係ないけどこの黒づくめの似非紳士、ガラルのマタドガスとバリコオル似合いそうだな

 

187:名無しのトレーナー

わかる

 

188:名無しのトレーナー

むしろ手持ちにしてそう

 

189:名無しのトレーナー

でも間違いなく悪人だぞ

 

190:名無しのトレーナー

名探偵の俺氏わかった。ソニア博士の研究所にはマクロコスモスから没収されたねがいぼしが保管されたってニュースを前に見たから、黒づくめの男かもしくは赤青成金コンビがそれを奪いに来たダイマックス事件の犯人で、ルミはムツキを倒したラウラをボコボコにする機会を与えるとかそんな条件で味方したけど、ラウラに負けたから用済みとして黒づくめに処理された、これどうよ

 

191:名無しのトレーナー

いきなりどうした

 

192:名無しのトレーナー

辻褄はあってるな

 

193:名無しのトレーナー

ルミその通りだとしたらいい様に使い潰されてるだけやん…

 

194:名無しのトレーナー

黒づくめ絶対許さねえ!倒すしかねえ!

 

195:名無しのトレーナー

ラウラはそれを追いかけて行ったんでしょ、知らんけど

 

196:名無しのトレーナー

テレポートで逃げたんやろ?どうやって行先を特定したんだ?

 

197:名無しのトレーナー

目的地を喋ってたとか?

 

198:名無しのトレーナー

成金コンビすぐ調子乗りそうだからその可能性高いな

 

199:名無しのトレーナー

ナックルシティ在住のわい、タワートップから謎の咆哮やら爆音が聞こえたと思ったら上からラウラが落ちて来たかと思えばモスノウで空に舞い上がっていたのを目撃したの巻

 

200:名無しのトレーナー

いきなりどうしたw

 

 

 

・・・・・・・・・

 




一応プロット練ってから書くので明日からの連続更新は途切れるかもなのであしからず。

・ラウラ
最後のでまた伝説が増えた主人公。ダイマックスアマージョをあっさり倒すと確信されている。

・ソッド&シルディ
服装と髪型でさんざん笑われた上にうっかり写真も撮られてしまってる。

・アルルカン
実は写真を撮られていた痛恨のミス。もしやぶれたせかいに吸い込まれなくても御用となっていた。

・名無しの目撃者
2番道路で初心者狩りをして小遣いを稼いでいるトレーナー。うっかりラウラとルミの戦いに巻き込まれそうになる羽目に。ちなみに女性。

次回からはヨロイ島編です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第三章:鎧の孤島の章
VSヤドン


どうも、放仮ごです。今回からヨロイ島編です。割とすぐ書けました。クララとセイボリー同時に出そうかなとも思いましたがめんどくさそうなのでやめました。

今回はVSクララ。楽しんでいただけると幸いです。


 休暇を手に入れたユウリがチャンピオンの立場を利用して三人分手に入れてくれたヨロイパスでヨロイ島に行くことになった俺とユウリとモコウ。ムツキはキリエさんに頭を下げてカンムリパスなるものを手に入れて「カンムリ雪原」なる場所に向かったので今日からはお別れだ。あの罵倒が聞けなくなるのは寂しくなるな。

 

 

 ヨロイパスを用いて専用の電車に乗って、駅を降りたら専用のそらとぶタクシーに乗って、辿り着いたのはガラルの北東部に存在する孤島、ヨロイ島。此処に存在するマスター道場なる、かつてダンデが修行したという施設で強くなるのがこの旅の目的だ。俺とモコウの主な目的はついでに未知の蟲・電気ポケモンを探すことだが。ユウリはムゲンダイナとザシアンがいるから新しい手持ちはいらないらしい。そりゃあな。

 

 駅にいた研究員にロトム図鑑をヨロイ島用にアップデートしてもらいつつ、いざ駅の外に出ようとしたところで、立ち塞がる人物がいた。

 

 

「アハッ、いたいたァ!待ち合わせの時間にピッタリ!三人とも若いのにしっかりしてるゥ!私はクララ!君達の先輩だよォ」

 

「マスター道場の方ですか?予約していたユウリとラウラ、それにモコウです」

 

 

 桃色の髪にでかいリボン、厚めの化粧と口元の黒子が印象的な、どくタイプのユニフォームの上にもこもこの上着を羽織った、あとなにがとは言わないが物がでかい少女に、物怖じせず返答するユウリ。お前、色々大物だな。

 

 

「素直で感心~んんっと……まずは勝負で実力を知ってもらおっかなあ」

 

「「え」」

 

「バトルですか?!」

 

「じゃ、外で待ってるから準備ができたら来てねェ。…………目に物見せたらァ…!

 

 

 俺とモコウの驚いた声が重なり、ユウリが狂喜乱舞する。……もしかして孤島にいるせいでチャンピオン交代を知らないとかないよな?ありそうで困る…チャンピオンに勝負を挑むなんて正気か?クララさんとやらは外に向かったので、俺とモコウ2人がかりで意気揚々と飛びだそうとしたユウリを両側から押さえ込んだ。

 

 

「な、何で止めるの!」

 

「何でも何もあるか。あの人、お前がチャンピオンだと知らないみたいだぞ」

 

「それにどうせ伝説ポケモンのどちらか出して一瞬で終わらせるんだろう!」

 

「いや、さすがにそんなことはしないけど……インテレオンでちょっとやるだけだよ?」

 

「お前のちょっとはちょっとじゃないんだよ」

 

「あとあの女、我が見るに性格はよほどのものだぞ。波風立てるものじゃない」

 

「モコウが言うなら間違いないな」

 

 

 ソッドとシルディ、ついでにアルルカンという性格が捻じ曲がった奴等と付き合ってきたモコウの言う事だ。クララさんはまあ面倒な性格をしているのだろう。

 

 

「…わかった。じゃあ私は見物しておくからラウラお願い」

 

「俺、今回はデンチュラしか持ってきてないけど」

 

「いやお前とデンチュラのコンビなら大丈夫だろ」

 

「そうだよ」

 

「そうかあ?」

 

 

 そう言いながら出ると、空からも見えた広大な島が広がっていた。本島ではまず見ることがない白い砂浜に広い海。前世の故郷を思い出す光景だ。橋の向こうに大きな屋敷が見えるので、多分あそこがマスター道場だろうか。そしてクララさんは駅からすぐの海が見渡せる場所に立っていた。地図によると一礼野原というらしい。

 

 

「アハッ!君達ィ、ヨロイ島は初めてッポイね。色々見て回りたくてウズウズしてるだろうけど、まずは力試し、だよォ」

 

「代表して俺がやります。いいですか?」

 

「ラウラは我らの中で(一対一ならば)一番強いぞ」

 

「そうです。私もこの間(ザシアンで挑んで)負けましたし」

 

「そうなんだ、じゃあ君達の実力を知れるねェ。私がマスター道場の先輩としてェ……君の強さ確かめちゃうッ!お手柔らかによろしくゥ!」

 

 

 ▽ポケモントレーナーの クララが 勝負を しかけてきた!

 

 

 クルリと回って笑顔でボールのボタンに指を押し付けてから投げてフシデを繰り出すクララさん。俺もアンダースローでデンチュラを繰り出す。フシデ!ガラル本土にはいなかった蟲ポケモン!前世のBW時代、俺の旅パとして愛用したポケモン!いきなり蟲使いに出会えるとか最高かよ!

 

 

「おねがーい、フシデ!」

 

「いけ、デンチュラ!」

 

「力試しだからかるーくねェ。かるーく……のしちゃうねェ!」

 

「蟲ポケモン相手だったら容赦はしませんよ!エレキネット!」

 

「避けてポイズンテール!」

 

 

 挨拶代わりにエレキネットを繰り出すが、素早い動きで避けて尻尾を叩きつけてくるフシデ。だが近づいたな?

 

 

「ほうでんだ!」

 

「っ!?」

 

 

 零距離から放たれる、避けようがない放電にフシデはあっさりダウン。戦闘不能となる。するとあからさまに動揺するクララさん。

 

 

「うちが追い詰められてる?どゆこと?ありえなくね…?」

 

 

 そう言いながら繰り出されたのはヤドン。ガラルのすがただ。確か以前ブラッシータウンの駅にも出て騒ぎになってたな。ヨロイ島から紛れ込んだ一匹だったのか。たしかタイプはエスパー単体。俺の蟲ポケモンが天敵だ。

 

 

「デンチュラ、きゅうけつ!」

 

「そう簡単にやらせるかっての!ねんりき!」

 

「っ!」

 

「さらにようかいえき!」

 

 

 飛びかかったところを、ねんりきで持ち上げられて地面に叩きつけられ、そこにようかいえきを吹きつけられる。やるな。だがその程度!

 

 

「いとをはく!」

 

「はい!?」

 

 

 驚くクララさん。そうだろうな、大抵のトレーナーは初期わざであるが故にこの技を忘れさせる。だがデンチュラを活躍させるのにこれ以上の技はない!

 

 

「そのまま振り回して地面に叩きつけてほうでんだ!」

 

 

 ヤドンをグルグル巻きにして空中に振り回し、頭から地面に叩きつけて駄目押しのほうでん。ヤドンは戦闘不能となった。

 

 

「次のポケモンでギッタギタに……ってあれ?いなくね?」

 

「俺の勝ちみたいですね」

 

「さすがラウラ」

 

「勝負にはまあなっていたか。油断したなラウラ」

 

「えっ!?ムリムリムリムリ!あ、ありえなくなァい!?」

 

 

 自分の敗北が理解できて無いようで絶叫するクララさんは俺達に背を向ける。なんか最初のビートを思い出す。

 

 

「オィオィ……やっべェぞこいつはよォ……!こんな強いの道場に来ちまったらうちの強さが霞んじまう!?あと二人も驚いてない辺り強そうだしよォ…追い返してぇけど、迎え頼まれちまってるしィ…!………………コホン」

 

 

 咳払いして振り向くクララさん。虫の息すら聞き逃さない俺の耳には聞こえているからな?他の二人は聞こえていたか知らんけど。

 

 

「わたし、ちィっとも本気じゃなかったけどォ。君ィ、中々やるねェ?でもォ、私達の道場はァ、あのチャンピオンダンデも学んだ由緒ある道場でェ」

 

「知ってます」

 

「だから来たんですけど…」

 

「あともうチャンピオンじゃ…」

 

「コホン。君達くらいの強さだとやっていけないんじゃないかなァ?」

 

(((追い返そうとしてる…)))

 

 

 三人の心の声が重なった気がする。

 

 

「だからァ、向こうにあるマスター道場には立ち寄らず観光だけして帰ったらァ?ってなわけでェ、それじゃさよなら永遠にィー!キャハッ!」

 

 

 そう言い残して去って行くクララさん。思わず三人で顔を見合した。……まあ、やることはひとつだよなあ?

 

 

「じゃ、行こうか」

 

「挨拶すまして早く蟲ポケモン捕まえに行きたい」

 

「わかる。我はでんきポケモンだが」

 

「私も一匹ぐらいピン!と来たのがいたら捕まえようかな。伝説ポケモン使ったら文句言う人もいるみたいだし」

 

「チャンピオンは大変だな」

 

「ムゲンダイナもザシアンもユウリの力で捕まえたポケモンだろうに…」

 

「ムゲンダイナはみんなで捕まえたから文句言われても言い返せないんだよね」

 

「なるほどな」

 

 

 談笑しながらマスター道場と思われる建物に向かう俺達。それを、マスター道場の屋根の上から見守るポケモンがいたことを俺達は知らない。




クララ蟲ポケモン使うのか…(今更知った)

・ラウラ
一対一ならジムチャレンジャー組で最強だと言われてる主人公。ザシアンに勝利したのはそれだけのことである。クララに対しては蟲ポケモン使ってるので好印象を抱いている。ヨロイ島にはデンチュラ一匹でやってきた。

・ユウリ
休暇を取って以前掲示板で知ったヨロイパスをダンデから三人分もらって修行旅行に来たチャンピオン。何故かヨロイ島ではチャンピオンだと知られてないからちょっと嬉しい。ヨロイ島にはムゲンダイナとザシアンも含めたフルメンバーで来ている。

・モコウ
ユウリに誘われて強くなるためにヨロイ島についてきたでんきつかい。メンバーは全員連れてきている。マイペースな二人のツッコミ役。クララのことはちょっと苦手。

・ムツキ
キリエに頭を下げてカンムリパスを手に入れて強くなるためにカンムリ雪原に1人で向かったひこうつかい。目的はカンムリ雪原に伝わる伝説の鳥ポケモンが集うという巨樹。

・クララ
今回初登場。三人にとってはマスター道場の姉弟子。どくタイプ使い。何がとは言わないけどラウラが目を見張るほど大きい。モコウが苦手な凄い性格。ユウリがチャンピオンだとは知らない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSコジョフー

どうも、放仮ごです。なんとか今日中に間に合ったぞ…

今回はVSマスタード。楽しんでいただけると幸いです。


「あらーそれじゃあ新人ちゃん達、帰っちゃったの?」

 

「そうッポイですゥ。お迎えはちゃんとしたんですけどォ。私との勝負の後、突然いなくなっちゃってェ…」

 

「せっかく家族が増えると思っていたのに残念ねぇ」

 

 

 マスター道場と思われる建物に着くと、クララさんと黄緑色の服を着た女性が話し合っているところに出くわした。あることないこと言ってんな。すると女性の方が視線をこちらに向けて気付いたようなので会釈する。

 

 

「あら?」

 

「どうも」

 

「こんにちは」

 

「悪いなクララ殿」

 

「ん…?えげェ!?」

 

 

 凄い顔で驚くクララさん。本当にあれで帰ると思っていたのだろうか。

 

 

「もしかしてあんた達が今日から道場に来てくれる新人ちゃんたちね?」

 

「そそそそうなんですゥ!やったァ!?この子達ったら!気が変わったのォ?んでもでも!また会えてクララとォーってもうれしィー!」

 

 

 慌てて駆け寄ってきたクララさんに一瞬睨まれながらも肩を竦める。怖いが命の危機を二度ほど感じている身としてはそこまで怖くない。

 

 

「あたしも会えて嬉しいよ。ええっと、あんたたちの名前は確か…」

 

「今日からお世話になるユウリです」

 

「ラウラです」

 

「我はモコウだ」

 

「うんうん、ユウリちゃんにラウラちゃんにモコウちゃんだね。あたしはここ、マスター道場でおかみさんやってるミツバだよ。気軽におかみさんって呼んどくれ。もう知ってると思うけどこのちょっと変なのはクララ。ジムリーダー目指してうちで修行してるのさ」

 

「ジムリーダーか。俺と同じだな」

 

「同じ?」

 

「今はほのおタイプのジムトレーナーをやっているがむしタイプのジムリーダーを目指しているところだ。よろしくな、先輩」

 

「今度バトルしようね、先輩!」

 

「よろしく頼むぞ、先輩」

 

「お、おう…よろしく…?」

 

「ほらっ!クララ、仲よくするんだよ」

 

「キャハッ!よろしくねェ!」

 

 

 俺の差し出した握手に戸惑いながらも握り返し、ユウリとモコウの挨拶にもたどたどしく応える様から押しに弱いことが分かる。最後はヤケクソな笑みでの叫びだった。癖が強い先輩だ。…胸も大きくて太腿も眩しい。男のままだったらちょっと危なかったかもしれない、いろんな意味で。蟲好きでもそこらへんは思春期真っ盛りで死んだからな…。

 

 

「あっ、やだよあたしったら。遠くからいらしたお客様をいつまでも外にいさせちゃって!ちょっと汗臭いかもだけど、どうぞ中に入って入って!」

 

 

 そう言って建物内に入って行くおかみさん。するとそれに続こうとした俺達にクララさんが歩み寄って来て。

 

 

「ねえねえ三人とも。駅でのこと……おかみさんにチクったら……ジュワッ!だからね!」

 

「駅でのことってなんのことです?」

 

「ええと、はい、わかりました?」

 

「まあめんどくさそうだし言う気もないが」

 

 

 …まあ、できるならやってみるといいんだろうけど、多分ユウリが返り討ちにしそうだなと俺はモコウと顔を見合わせて思った。

 

 

 

 

 

 マスター道場は和風の建築で、イギリスに近い印象のガラル地方とは思えない造りでちょっと新鮮で懐かしさを感じる。中に入ると掛け軸やら板の床やらまた和風で、思わず感嘆の声が漏れた。ユウリとモコウも珍しさからキョロキョロしてる。印象としてはジョウト地方に近いな、ジョウト出身の人が作ったのだろうか。中心のちょっとしたバトルフィールドになっている場所には黄色い道着に身を包んだ10人近くのトレーナーがいて、その奥には老人がいた。彼が師範かな?

 

 

「みんな聞いてー!新人ちゃんたちの紹介だよ!これからみんなと一緒に修行に励む、ユウリちゃん、ラウラちゃん、モコウちゃんだよ!よろしくね!」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

「「「「「オッス!よろしくお願いしまッス!」」」」」

 

 

 おお、武道家の挨拶っぽい。ちょっと感動した。

 

 

「みんな真面目で努力家の門下生ばかりだよ。そして奥の男前があたしのダーリンでここマスター道場の師匠」

 

「ワシちゃんマスタード!ポケモンめっちゃ強いよん!これからよろぴくねー!」

 

「「「だ、ダーリン!?」」」

 

 

 ファイティングポーズをとる老人、マスタード師。ものすごい年の差婚なのな。そして思ってたより軽い。なんか厳粛とかそんな感じだと思ってた。これには俺達三人は絶句である。……いや、こんな口調の人がマジで強いのか世の常だからなあ。底が知れないぞ。

 

 

「「「よ、よろぴく…?」」」

 

「うふふ。優しくていい子たちだねー」

 

「普段ボケーっとしてるけど本気出したら凄い人だから」

 

「なんとなく、わかります」

 

「うん、戦いたい!」

 

「ユウリ落ち着け。ムゲンダイナの入ったプレミアボール握るなここを壊す気か」

 

「元気でいいねー」

 

 

 戦う気満々のユウリを押さえつける俺達を笑顔で見るマスタード師の瞳がきらりと輝いた気がした。…あー、ユウリの手持ちの強さに気付いたっぽい?どんな観察眼だ。

 

 

「それじゃダーリン。後は頼んだよ」

 

「いえーい!とりあえずチミたちの力を見てみたいしー…手始めに真ん中のチミ」

 

「はい、私ですか?!」

 

「手始めにワシちゃんとポケモン勝負しちゃおーか!2VS2だよ。準備できたら声かけてねん」

 

 

 テンション高めのユウリが選ばれ意気揚々とフィールドに向かったので一応モコウと一緒に釘を刺しておく。

 

 

「おいユウリ、ちょっと待て」

 

「ムゲンダイナとザシアンだけは出すなよ?」

 

「なんで?」

 

「「ここが壊れる」」

 

 

 ダイマックスほうやきょじゅうざんの前に、技の出力が高すぎてこの大きさじゃ普通にぶっ壊れる。それに気付いたのか顔を青くして頷くユウリ。修行場所をいきなり壊すのはさすがにな。俺に四つのボールを預け、ボールを二つ握りしめてマスタード師とは反対側に立つユウリ。その顔はチャンピオンのそれだ。

 

 

「準備できました!」

 

「いえーい!勝負の準備はオーケイ?じゃ、始めちゃおー!チミのこと、いっぱい教えてねー!」

 

 

 ▽どうじょうぬしの マスタードが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いえーい!チミのサイコーの戦い方を見せてちょーだいね!」

 

「そのつもりです!」

 

 

 ユウリが繰り出したのは相棒のインテレオン。マスタード師が繰り出したのはBWが初出、ぶじゅつポケモンのコジョフーだ。ガラル本土にはいないポケモンにワクワクしている様子のユウリ。

 

 

「「とんぼがえり!」」

 

 

 全く同時に同じ指示を出す両者。蹴りが交差し、それぞれ戻っていく。

 

 

「ありゃりゃー、渋い技を選ぶねえ」

 

「そちらこそ!」

 

 

 ユウリが交代したのはダーテング。マスタード師はダイヤモンド&パール初出のせんこうポケモンのコリンクだ。ユウリはぼうふうを使えるダーテングに替えたかった、マスタード師は相性で有利を取れるコリンクに替えたかったってところか。

 

 

「スパークだよん」

 

「ねこだまし!」

 

 

 お得意のねこだましが炸裂。怯ませて技を不発させるダーテング。驚きに目を見開くマスタード師にお構いなく、ユウリは自分の得意を相手にぶつけた。

 

 

「リーフブレード!」

 

 

 強烈な一撃が炸裂。崩れ落ちるコリンクをボールに戻して再びコジョフーを繰り出すマスタード師。どうも本気じゃない空気がするんだよなあ。

 

 

「ねこだましだよん」

 

「なっ!?」

 

 

 完全に虚を突かれてねこだましで怯むダーテング。まさか自分以外にねこだましを使ってくるトレーナーがいるとは思わなかったのか完全に呆気にとられるユウリ。

 

 

「そのまま、はっけい!」

 

「ダーテング!?」

 

 

 なんて威力のはっけいだ。あのダーテングを効果抜群とはいえ一撃で落としてしまった上に壁まで殴り飛ばしてしまった。マスタード師、もしやかくとうタイプの使い手だな?

 

 

「期待以上だけどこんなもんじゃないよねー?はっけい」

 

「インテレオン、床にみずのはどう!」

 

 

 ユウリのインテレオンお得意のみずのはどうの応用でなみのりの様な津波がコジョフーを怯ませる。その隙にコジョフーの視界から外れたインテレオンが背後から迫り、マスタード師の叫びが木霊した。

 

 

「後ろだよ!はっけい!」

 

「ふいうち!」

 

 

 完全に誘い込んだインテレオンのふいうちが炸裂。コジョフーは戦闘不能となった。驚いた様子で髭を撫でながらコジョフーをボールに戻すマスタード師は笑顔を浮かべ、どよめくギャラリー。俺とモコウは当然だと言わんばかりに胸を張る。俺達の認めたチャンピオンが負けてたまるかよ。

 

 

「やった、やったよラウラ!」

 

「わかった、わかったからくっつくな!」

 

「相変わらず仲いいなお前ら」

 

 

 喜びのままに抱き着いてくるユウリに何時ものことなので溜め息を吐く。…死んでいたかもしれないと泣かれてから、どうもあの時の顔が浮かんで引き剥がせない。どうしたものかね。




VSマスタード。ラウラが戦うとは言ってない。

・ラウラ
マスタードが格闘使いだと見抜いた主人公。デンチュラ一匹じゃさすがにきつそうだと思ったので選ばれたのがユウリで一安心した。ガラル本島以外のポケモン知識は勉強したで通している。

・ユウリ
言われなかったら伝説ポケモンを繰り出して文字通り本気で挑もうとしていたチャンピオン。いつも屋外だったりコートだったりなので屋内のバトルは慣れてない。まさかねこだましは使わないだろうという、知らない故の油断からダーテングを倒されてしまった。

・モコウ
ツッコミ役。マスタードのコリンクをでんきタイプだと見抜き興味津々。

・クララ
追い返したと思ったらジムリーダーを目指す後輩が出来てちょっと理解が追い付かない。ユウリの実力に絶句した。

・マスタード
マスター道場の師匠。ひょうきんだがラウラ曰くこういう輩の方が本当に強い(アルルカンを除く)。ねこだましを隠してとんぼがえりを使うなど中々のやり手。

・ミツバ
おかみさん。マスタードの奥さん。ハイドという息子がいる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSラランテス

どうも、放仮ごです。風のせいか四回ぐらい停電して書いてたのが消えたりしてふて寝してました。また、お気に入りが1300突破、UAが110000を越えましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はラウラが狂喜する回となります。楽しんでいただけると幸いです。


 笑顔のマスタード師とどよめくギャラリー。モコウが俺からユウリを引き剥がして、注目の的となる。

 

 

「ワッハハ!負けちった!チミ強いねー!」

 

「本気の師匠でないとはいえあの新人勝った…!?」

 

「一体何者ッス…?」

 

 

 チャンピオンです。って言えればいいんだが、説明するのめんどくさいからやめとこう。

 

 

「チミの戦い方からはポケモンに対する思いやりを感じちゃうね!他の二人もさぞ強いことがわかるよ~。改めてみんなと強くなろー!…よろぴくね!」

 

「「「はい!」」」

 

「ってなわけで三人分のどうぎセットあげちゃう」

 

 

 更衣室を借りて、いただいた道着を三人揃って身に着ける。ついでにユウリと一緒に髪もお団子に纏めた。モコウは雷ツインテールをやめる気はないらしい。むしタイプのユニフォームもいいが、これも動きやすくていいな。

 

 

「この服を着ればチミ達もマスター道場の一員ね!……さて!ユウリちん、ラウラちん、モコウちん、三人が来てくれて道場の定員も揃ったし、これから皆には3つの修行をしてもらうよん!」

 

「3つの修行…?」

 

「この道場定員あったのか危ないところだったな」

 

「まあ定員はあるだろう」

 

「3つの修行を全てクリアできた人には手にすれば勝利を纏える道場ひでんのヨロイを授けちゃう!」

 

 

 その言葉に歓声が上がる門下生たち。ひでんのヨロイ…色違いグソクムシャかな?なら欲しいな!

 

 

「うふふ!いいねいいねー!まず一つ目の修行について説明するよん…」

 

「あーん師匠~!私まだ道着セットもらってなァい。その子たちにだけズルーいィ!クララ悲しいィー!」

 

「ありゃそうだったっけかね?めんごめんご!じゃもう一着あるからクララちんにもあげちゃお」

 

「アハッ!ごねドクッ!」

 

「ん?デンチュラ!」

 

 

 見事にごねたクララさんが道着セットを手にした瞬間、何かが高速で動いてきたので咄嗟にデンチュラを繰り出し拘束させる。しかし拘束したもののまだ二体居たようで、クララさんの道着セットが奪われてしまった。その正体は、ヤドンだった。

 

 

「えっ!なに今の……ってなァい!私の道着セットがなくなってる!…ん?」

 

「なんとか一匹は捕まえたけど…何だ今の動き?」

 

「今の動きまさかあのヤドンが…?」

 

「あんなすばやいポケモンなのか?ヤドンとやら」

 

「いいや、あんなすばやいヤドンは見たことないッス…!」

 

「ちょっとォ!私の道着返しなさいよォ!」

 

 

 デンチュラの糸でグルグル巻きにしたヤドンとは別に、二体のヤドンがドヤ顔をクララさんに向けたかと思うと何やら話し合い、そのまま外に逃げて行ってしまい、クララさんがそれを追いかけていく。捕まったヤドンはなんか落ち込んでいた。

 

 

「うふふ、やるねラウラちん!ちょっとボールから出すの早すぎたかと思ったけどそんなことなかったねー。これこそが一つ目の修行…ワシちゃんが育てたはや~いヤドン三匹を追いかけるべし!…だったんだけど、ラウラちんが捕まえちゃったからあと二匹追いかけるべし!アーンド…倒すべし!だね」

 

 

 そう言って俺とデンチュラに掴まったヤドンをボールに戻すマスタード師。修行だったのか、反応するのも駄目だな。アルルカンのせいでなんか危機が及ぶとすぐボールから出す癖がついてなあ…

 

 

「ラウラちんは合格でいいよ。誰も反応できなかったヤドンに反応して捕まえるなんて凄すぎるしねー。さあさみんな、ついでにクララちんの道着セット取り返しちゃって!」

 

「「「「「えぇー!?」」」」」

 

「じゃ、そんな感じでよろぴくねー。ラウラちんはみんなが修行している間、足りない手持ちを手に入れるといいよ」

 

 

 そう言って奥の部屋へ去って行くマスタード師。…修行なのだろうかそれは。

 

 

「出遅れた!私たち、行ってくるねラウラ!」

 

「お前デンチュラしか持ってきてないんだからちゃんと手持ちを揃えるんだぞ!」

 

 

 そう言うなりユウリとモコウ含めた皆が慌てて飛び出して行った。何だか知らんがラッキーだったな。お言葉に甘えて蟲ポケモン探しに行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩き、集中の森と呼ばれる場所に来た。蟲ポケモンと言ったら森だよな。あまりに広い島なのでユウリの自転車みたいな移動手段が欲しい所だ。日が照る森の中で、さっそくフシデを見つけて捕まえて頭に乗せる。可愛い。ブラホワ時代の推しポケモンの一匹だ。特に傷つけずに捕獲できてよかった。

 

 

「おっ、なんだあのポケモン!」

 

 

 フシデを頭に乗せて歩いていると、なんかハナカマキリみたいなポケモンを見つけた。慌てて図鑑で確認する。ラランテス。はなかまポケモン、くさ単一タイプなのか。でも欲しい!周りにヘラクロスやカイロスといった懐かしいポケモンも見えるが、知らない蟲ポケモン最優先だ!

 

 

「エレキネット!」

 

 

 デンチュラを繰り出し、エレキネットで捕縛。すると鎌の様な両手で斬り裂いてこちらに敵意を向けてきた。一筋縄じゃいかないな。

 

 

「周りを走っていとをはく!」

 

 

 デンチュラにラランテスの周りを走らせ、糸でグルグル巻きにしていく。鎌を封じられればどうしようもないだろう!

 

 

「引き寄せて、きゅうけつだ!」

 

 

 引っ張って強烈な一撃を叩き込み、手持ちのネットボールを投げつける。むしタイプじゃないがまあ、拘りだからいいだろう。ドラピオンの時みたく別のボールを使う必要も無くあっさり捕まってくれた。ラランテスゲットだぜ。

 

 

「ガラル地方のゲーム初出のポケモンなんかな?それとも手つかずだったXYかサンムーン初出のポケモン?どっちにしろゲームフリークさんセンスいいな!」

 

 

 およそこの世界の人間では理解できないであろう言葉を羅列しながら狂喜乱舞する。フシデも見つかったし、これはいいな。あとでヘラクロスとカイロスも捕まえるとして、あと一匹ぐらい育てたいと思える蟲ポケモンが欲しいな…強い蟲ポケモンは後だ後。俺は癒しが欲しい。

 

 

「!?」

 

 

 そこで見つけた。白いモフモフの毛並み。青い瞳。ちんまりとしたフォルムなれど見かけによらず重い黒いボディ。固定シンボルまで存在する伝説ポケモンの様で実はそうじゃないたいようポケモンへと、かなりの高レベルで進化する幼体の蟲ポケモン…

 

 

「メラルバだと…!」

 

 

 俺の知る限り、卵からしか手に入らない超絶レアなポケモンがわんさかいるんだが。え、なにここ天国?それとも俺の知らないうちにメラルバはただの野生ポケモンへと格下げされたのか…!?なんにしても、突っ込むしかあるまい。

 

 

「ヒャッホーウ!……あッッッつッ!?!?!?」

 

 

 メラルバの群れに飛び込んで、ほのおのからだで燃やされて悶絶してグルグルと地面を転げまわる。死ぬ、死ぬ、死ぬ!慌てて近くの水源に文字通り転がり込む。死ぬかと思った。いやメラルバに囲まれて焼死とか理想の死に方トップ10に入るけどさ。

 

 

「…でもどうするか」

 

 

 ヨロイ島の野生ポケモンは基本的に練度が高い。どれぐらい高いかというと、ジムリーダーの本気のポケモンよりちょっと弱い程度の練度だ。並のトレーナーじゃまず太刀打ちできないだろう。つまりちょっと戦うだけでメラルバがあのポケモンに進化することはできるのだが、練度が高い=捕まりにくいのだ。フシデは隙だらけだったところを、ラランテスはバトルで弱らせたが、生憎と今の手持ちは全員ほのおに弱い。しかもさっき飛び込んだせいで警戒されてる。さてどうしよう。…うん?

 

 

「…お前、どうしたんだ?」

 

 

 群れから外れた木陰に、何故か黒焦げの他の個体よりさらにこぢんまりとしたフォルムのメラルバがいた。群れから虐められてるのか?だいぶ怯えているし、小さな体で少し心配だ。

 

 

「…俺と、来るか?」

 

 

 そう言葉を投げかけると、小さなメラルバは視線を群れに一度背を向けてから、俺の差し出した手に乗った。やっぱり、簡単に持てる程軽いな。異常個体と言う奴だろうか。

 

 

「よろしくな、お前たち」

 

 

 メラルバもネットボールに入れて、外に出した三匹のポケモンを見やる。新天地。新しい手持ち。先行きいいなと自然と笑みが浮かんだ。




ラランテスはいいぞ…

・ラウラ
咄嗟に高速で動くヤドンを捕まえてしまった主人公。蟲の楽園に狂喜乱舞。ラランテスに一目惚れ。テンションフォルテッシモ。ウェイクアップ・ハイテンションフィーバー。メラルバの群れに体からダイブするぐらいに蟲ポケモンが絡むとアホになる。フシデ、ラランテス、メラルバを手持ちに。

・ユウリ
完全に油断していて出遅れた原作主人公。外に出た瞬間ムゲンダイナを繰り出して門下生たちの度肝を抜いた。

・モコウ
最速で捕まえられなかったことに悔しさを感じているツッコミ役。ライボルトに乗って追いかける。

・クララ
道着をヤドンに奪われた姉弟子。同じジムリーダーを目指している後輩がすごくてちょっと焦ってる。

・マスタード
ヤドンをすばやく育てたやべー人。まさかいきなり捕まえるとは思わなかった。

ポケモンのスペックは纏まってないので次に。持ってるわけじゃないから考えるのが大変である。
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VSモジャンボ

どうも、放仮ごです。今日も今日とて書いてるのが消えてふて寝しながらも更新できました。

今回はダイキノコ獲得の一幕。楽しんでいただけると幸いです。


 マスター道場に戻ると、ちょうどみんな帰ってきたところだった。どうやらユウリとモコウが一匹ずつ捕まえたらしい。二つに分けられていた道着セットをクララさんに渡し、悔しげに礼を言われていた。他の面子も追いつけはしたのだが倒せなかったらしく、特別に一度でも追い付けた人もクリアとなった。まあ修行にならないもんな。

 そしてなんか気に入られたらしく、ミツバさんからユウリがフシギダネを、モコウがゼニガメをもらっていた。…モコウは初めてのでんきタイプ以外の手持ちに戸惑っていて見ていて面白い。それぞれダーテングとロトムと交代していた。

 

 

「よろしくね、フシギダネ!」

 

「う、うむ…おそらくあまごい要員となるがよろしく頼むぞゼニガメよ」

 

「二匹とも、選んでもらえて嬉しいみたいだよ!この子達二回進化したらキョダイマックスできるからさ。しっかり育てとくれよ」

 

「「はい!」」

 

「よかったな、二人とも。俺も新しいポケモン三匹捕まえたぞ」

 

「さすがラウラ。そのフシデの他にもいるんだ。あとで見せてね!」

 

「うむ!お前のセンスだ、蟲とはいえ楽しみだぞ!」

 

「なんでや。蟲可愛いやろ。お前にも蟲の素晴らしさを夜まで教えてやろうか」

 

「そ、それは勘弁してくれ…」

 

「私なら喜んで!」

 

「ユウリは蟲より俺の方にしか興味ないから駄目だ」

 

「ええー」

 

 

 相変わらず蟲がちょっと苦手らしいモコウにツッコんでおく。クララさんだって蟲使ってるんだぞ。女の子が蟲使って何が悪い。するとマスタード師が話しだして、会話するのをやめる。

 

 

「ダイマックス…それはガラルのポケモンの神秘…見た目が変わり繰り出す技も変化する…ダイマックスの中でも一際特別なキョダイマックス……キョダイマックスと言えばマスター道場秘伝のアレ!飲めばキョダイに!ダイスープ!」

 

「ダイスープ…」

 

 

 聞く限り、キョダイマックスする種なら本来しない個体でもキョダイマックスできるようにするスープってことかな?なにそれすごい。俺のデンチュラは偶然だったし、マルヤクデはカブさんからのもらい物だったっていうのに。

 

 

「ワシちゃん久しぶりにダイキノコたっぷり入ったダイスープ飲みたいねー。……ってなわけで!2つ目の修行はキノコ狩り!キョダイマックスのカギ!ダイキノコを3つ取ってくるべし!ダイキノコは赤くて渦巻模様!暗くてジメジメした場所に生えていると思うよん!じゃ、そんな感じで修行開始!よろぴくねー!」

 

 

 その言葉に驚き、急いで飛び出していく門下生。…それ、修行なのか?しかし赤くて渦巻模様ね…さっきの森で見かけたかな。毒キノコだと思って手は出さなかったけどそんな貴重な物だったのか。

 

 

「まあいいか。それならさっき見かけたしな」

 

「えっ、いいなあラウラ」

 

「お前さっきからずるくないか?」

 

「人聞き悪いな。何時も周囲に目を配っていると言え」

 

「ちょっといい?」

 

 

 俺達も出ようとすると、クララさんが立ち塞がった。なんだろう。何か文句でもあるのだろうか。

 

 

「私ィ、ごめんだけどォ、まだ君達のことを認めてないのォ。今回の修行ではぜっっったいに負けねぇから」

 

 

 そう言って去って行くクララさん。宣戦布告…なのかな?

 

 

「なんか、新鮮だな」

 

「みんな仲良くジムチャレンジを越えていたしね」

 

「シーソー兄弟みたく改心?できたらすっごくいい先輩になりそうだな」

 

「「わかる」」

 

 

 モコウの言葉に頷きながら俺達も続き、3人バラバラに分かれることになった。今度はちゃんと競争だ。負けないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、これだな?ラランテス」

 

 

 再びやってきた集中の森で見つけたダイキノコを、ラランテスに刈り取ってもらいリュックに入れて持ち帰ろうとした直後、襲いかかってきた触手を飛び退いて避ける。そこにいたのは、怒りに身を震わせたモジャンボだった。

 

 

「これ、お前のなのか?悪いな、必要だから刈らせてもらった…!?」

 

 

 四方八方から襲いかかる触手を、ラランテスが斬り払い頭の上のフシデがどくばりを飛ばして迎撃する。怒りで暴走しているな。こりゃ返しても怒りは収まらなそうだ、倒すしかないか。さっきからしてくる技はパワーウィップか。

 

 

「ラランテス!はなふぶき!」

 

 

 文字通り、花吹雪でモジャンボのパワーウィップを吹き飛ばすも、こっちにまでダメージが及んだ。くさタイプのなみのりみたいな技か、使いどころが大変だな。俺はどうでもいいがフシデがむし・どくタイプでよかった。

 

 

「シザークロスだ!」

 

 

 花吹雪で弾かれ隙だらけになったところを、交差する斬撃が襲う。それでもビクともしないモジャンボ。さすがの耐久力だな。ラランテスが触手で拘束されてエネルギーが吸われていく。ギガドレインか。ならば…!

 

 

「ラランテス、にほんばれだ!そして戻れ!行くぞ、メラルバ!」

 

 

 ラランテスに最後ににほんばれしてもらい、陽射しが強くなった中でメラルバを繰り出す。すると目に見えてモジャンボの動きが素早くなった。まさか特性、ようりょくそか!?

 

 

「ニトロチャージだ!」

 

 

 こちらもすばやさを上げるべくニトロチャージを指示、炎を纏って突撃させるも、モジャンボは地面に触手を突き刺して岩石を浮かばせて放ってきた。げんしのちからか…!?

 

 

「ドわすれだ!」

 

 

 ニトロチャージを中断してとくぼうを上げるドわすれすることでげんしのちからの直撃をもらっても何とか耐えるメラルバ。

 

 

「むしのさざめきで牽制だ!」

 

 

 再びげんしのちからが放たれるが、むしのさざめきで破壊。それを五回繰り返す。これであっちのPPは枯れたはずだ。たまらずパワーウィップを繰り出してくるモジャンボ。メラルバはすばやい動きでそれを避け、懐まで飛び込んだ。

 

 

「ニトロチャージだ!」

 

 

 炎を纏った体当たりが直撃。揺らぐモジャンボの巨体。しかし、タイプ一致の効果抜群技を受けたというのに倒れない。なんでだ、と思っていると足元に答えが在った。「ねをはる」だ。大地に根を張り、体力を回復し続けていたのだ。これでは勝てない。ならば…

 

 

「メラルバ、わざと捕まれ!」

 

 

 俺の指示にギョッとなるメラルバ。だが信じてくれたのか、今度はピョイッと無防備にモジャンボの懐に飛び込み、しめたと言わんばかりにグルグル巻きに拘束される。その瞬間、ボウッと拘束したモジャンボの触手が燃え出し、それを火種に炎上して慌てるモジャンボ。特性、ほのおのからだ。触れた相手をやけど状態にする特性だ。炎上しすぎな気もするが。あのメラルバ、小さい分体温が通常より高いのか?

 

 

「チャンスだ、ひのこで足元を狙え!」

 

 

 モジャンボの足元に陽射しが強いことで威力が上がったひのこを放ち、根を焼き切る。それでも諦めずに触手を伸ばしてくるモジャンボ。

 

 

「むしのさざめき、そして!」

 

 

 音の衝撃波で弾き飛ばし、がら空きとなった胴体に突っ込むメラルバ。終わりだ…!

 

 

「ニトロチャージ!」

 

 

 炎を纏った突進がモジャンボの巨体を浮かすほどの威力を持って天高くまでロケットの様に炎を噴出し、耐え切れなかったモジャンボの巨体を遥か彼方まで吹き飛ばした。…陽射しで威力が上がっているとはいえ、なんて威力だ。このメラルバ、小さな個体なれど、化けるな。

 

 

「よくやったぞメラルバ!あっつい!?」

 

 

 飛び付いてきたメラルバを受け止め、まだ炎を纏っていたので熱さに悶える。しっかし強力なポケモンもいるものだ。あまりの強さに手加減もできなかった。でもいい練習相手になったかな。

 

 

「ラランテスもよくやったぞ。さて、一つ見つければ十分だろうし帰るか」

 

 

 ピョンピョンと頭の上で跳ねるフシデと、肩の上で俺の頭の上を奪おうとするメラルバ、そんな二匹を母親の様に眺めるラランテス。…あ、デンチュラ。お前のことも忘れてないからな?今は後輩たちに任せてゆっくり休んでいてくれ。またアルルカンの様な輩が出ないとも限らないんだからな。少しすねるデンチュラに謝りながら、帰路に着く俺達なのであった。




ヨロイ島はぬしポケモン相当がうじゃうじゃいる魔境なり。

・ラウラ
かつてのドラピオン級の相手を前に三日三晩戦わずに済むなど成長している主人公。メラルバに関しては学習せずよく燃える。さすがにユウリの好意は自覚した。

・ユウリ
フシギダネを手に入れた原作主人公。ラウラの蟲談義を聞きたいけど聞かせてくれないので文句を垂れている。目標はフシギダネ(の進化系)でラウラの蟲ポケモンに勝つこと。

・モコウ
ゼニガメを手に入れたツッコミ役。まあキバナも天候枠で別タイプ持ってるしな…と割り切った。あまごいなどできることが色々増えてご満悦。

・マスタード&クララ&ミツバ&門下生
原作通り。

・ラランテス♀
とくせい:リーフガード
わざ:はなふぶき
   シザークロス
   にほんばれ
   ソーラーブレード
もちもの:なし
備考:さみしがりな性格。とてもきちょうめん。ヨロイ島におけるオニシズクモ枠。別にぬしポケモン並の強さではない。

・メラルバ♀
とくせい:ほのおのからだ
わざ:ニトロチャージ
   むしのさざめき
   ドわすれ
   ひのこ
もちもの:なし
備考:おとなしい性格。打たれ強い。通常より小柄な個体で頭に乗せれる程軽い。体温が通常より高く、群れから孤立していた。

・モジャンボ♂
とくせい:ようりょくそ
わざ:パワーウィップ
   ギガドレイン
   ねをはる
   げんしのちから
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。イタズラが好き。ダイキノコが在ったエリアを根城にしている野生ポケモン。通常より巨大な個体でぬし相当の強さ。

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VSフシギソウ

どうも、放仮ごです。出かけていて書けずにこんな時間に投稿になってしまいました申し訳ねえ。ポケスペ新刊買いたかったけどクオカード使えないって何やねん…

今回はダイキノコ収穫後の一幕。楽しんでいただけると幸いです。


 あれからさらに二つダイキノコを集めてマスター道場に戻っていると、途中でユウリとモコウと合流。なんでも、ユウリがクララさんと戦って圧勝したらしい。フシギソウで。…もう進化させてるのはいいとして、どくタイプ使い相手にフシギソウって、ええ…。ちなみにモコウも戦って危なげなく勝ったそうだ。これで三人とも勝ち越しってことになるな。

 

 

「ユウリ」

 

「うん、なに?」

 

「お前、何度俺を驚かせれば気が済むんだ?」

 

「ええ!?」

 

「だよな、我おかしくないよな…」

 

 

 側にコリンクを連れたモコウが遠い目でカメールを抱えていた。お前は何も間違ってない、うん。二人ともそれぞれダイキノコを三つ見つけたようだ。これでお題はクリアか。

 

 

「ちょっとミツバさんに聞いてみるね」

 

 

 そう言ってスマホロトムを取り出すユウリ。…お前、コミュ力強いな、とモコウと二人して戦慄した。元引き籠もりにコミュ力を求めるな。そういえばモコウは箱入り娘だったな。仲間よ…!え、厳密には仲間違う?そんなー。

 

 

「えっと…他の人にも聞いたらしいけど私たち三人が一番乗りだって。あとラウラとモコウ、二人ともミツバさんに連絡先言わないで来たでしょ。困ってたよ」

 

「「申し訳ない…」」

 

 

 いやほんと、まことに申し訳ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 マスター道場に戻ると、クララさん以外の門下生が集まり落ち込んでる中でマスタード師が何やら話していたところで、俺達に気付くと笑顔で出迎えてくれた。

 

 

「ユウリちん!ラウラちん!モコウちん!いぇーい!おっかえりー!ダイキノコゲットおめでとん!2つ目の修行、クリアだよん!」

 

「修行だったんですかねこれ…」

 

「細かいことは気にしない!他の門下生はみんな森で迷っちゃってダイキノコ見つけるどころじゃなかったみたいだねー。三人以外の皆は残念だけど不合格かも……」

 

 

 俺達よりもこの島にいるのに変な話である。ワイルドエリアに比べたら迷う要素ないと思うんだがなあ。そういえばクララさんがまだなのか。

 

 

「さてとりあえず腹ごしらえ!ダイキノコでダイスープ!作ってもらおうよん!」

 

 

 そう言って台所に向かうマスタード師を追うと、ちょうどミツバさんがナベを作っていたところだった。うん、いい匂いだ。ユウリの家だとカレー三昧だったから久しい別の料理にちょっと涙が出そうだ。おいユウリ、レトルトカレーを取り出すな。やめろ。お前のカレー狂は相変わらずだな。

 

 

「…うん!味付けはカンペキ!あとは三人が持ち帰ったダイキノコを水で洗って入れるだけね!」

 

「ハァハァ……おかみさん!待ってェ…!」

 

「クララちゃん!どうしたんだいそんなに息切らして!」

 

 

 そこに現れたのはクララさん。その手にはダイキノコが三つ握られていた。

 

 

「う、うち……私もダイキノコ手に入れたよ!」

 

「おぉー!さっすがクララちん!よく頑張ったねー。2つ目の修行四人目のクリアだよん!」

 

 

 その言葉を聞いて号泣するクララさん。根は努力家なんだろうな。

 

 

「師匠…おかみさん。初めてワガママ言わせて。そのダイスープには私のダイキノコを使って!私の頑張りを皆に味わってほしいの!」

 

「クララちゃん…ふっ、そんなのお安い御用さ!いいよね、三人とも。こんなに真剣なの珍しくてさ」

 

「もちろんです!」

 

「まあ、はい」

 

「いいぞ。先輩の頑張りとやらを味わおうじゃないか」

 

 

 モジャンボを相手したり結構苦労したが、まあいいだろう。断る理由もないしな。

 

 

「…でもあんたがワガママ言うのは全然初めてじゃないよ?」

 

「おかみさん…!」

 

「三人とも、余ったダイキノコは自由に使っていいからね」

 

 

 キョダイマックスさせるダイキノコ、か。そういえばユウリのインテレオンもキョダイマックスする種族だったな。おあつらえ向きじゃないか?俺は普通に食材として使うがな。

 

 

「はい、おまちどうさま!マスター道場名物、ダイスープだよ!」

 

「ワシちゃん腹ペコ!いただきまーす!」

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 

 そしてできたのは、マゼンタ色の小さな雲が蓋の上に漂う大きな鍋。ちょっとムゲンダイナの事件を思い出した。マスタード師の言葉に合わせて門下生全員で両手を合わせて声を合わせる。…俺の死んだ当時のご時世じゃだいぶ珍しい光景だな。他人がこんなにも多く同じ鍋を囲うとは。マスタード師の説明によると、人間が飲んでも特段何も起きないが、特定のポケモンが飲むことでキョダイマックスできるようになるらしい。なるほどなあ。美味い。

 

 

「それでは改めて!みんな2つ目の修行おつかれちゃん!アーンド…ごちそうさまでしたー!」

 

「「「「「ごちそうさまでしたー!」」」」」

 

「あ、2つ目の修行をクリアした四人は話があるからあとでワシちゃんの部屋にカモンね!」

 

 

 まあ、なんだ。皆での食事は楽しかった。いい体験ができたな。マスタード師に呼ばれたので四人してマスタード師の部屋に向かう。心なしかクララさんも憑き物が落ちたっぽい顔になっていた。

 

 

「ユウリちん、ラウラちん、モコウちん、クララちん、集まってくれてありがちょー」

 

「師匠!話って一体なんですかァ?」

 

「うん、それねー。チミたち四人には…マスター道場3つの修行の3つ目…ファイナルラストアルティメットザ・サードを受けてもらうよん!」

 

「ファイナル?」

 

「ラスト?アルティメット?」

 

「ザ・サード?」

 

 

 よくわからんがなんかすごいのだけは伝わった。

 

 

「ファイナルラストアルティメットザ・サードですってェ!?」

 

「知ってるんですかクララさん?」

 

「…えーと、つまり最後の修行ってことォ?」

 

「あ、うんそうね…」

 

 

 クララさんもわからなかったらしい。マスタード師もちょっと残念そうだ。

 

 

「第2の修行をクリアできたのはチミたちだけ!今まで互いに切磋琢磨してきたチミたち四人は…勝ち抜き!ダイマックスポケモン勝負で雌雄を決するべし!」

 

「私達が戦う!?それが最後の修行!?」

 

「うむん!ルールはシンプル!ワシちゃんがくじ引きで組み合わせを決めておいたから、4VS4のシングルバトルで二回勝ち抜いた子が合格ね!合格者にはマスター道場ひでんのヨロイを授けるよん!」

 

「「「なるほど」」」

 

 

 つまり、セミファイナルトーナメントみたいなもんか。わかりやすくていいな。色違いのグソクムシャは必ずゲットしてやる…!そして壁に貼られた表には、俺とクララさん、ユウリとモコウの対戦カードが。…これは、早くもユウリにリベンジの機会が得られるか…?

 

 

「なぬ!?いきなりユウリか!?マジかぁ…」

 

「手加減はしないよモコウ!」

 

「ついにここまで……やっと……でも…」

 

「よろしくお願いしますね、クララさん」

 

 

 笑いかけてみたが、なんかクララさんの様子がおかしい。これはなんかやらかす人間の目だ。チャンピオンカップの日の画面に映っていたローズさんと同じ目をしている気がする。ちょっと警戒すべきだな。

 

 

「まずはラウラちんとクララちんね!勝負の場所はマスター道場裏のバトルコート!あそこはパワースポットだから思う存分ダイマックスで……」

 

「こ、こうしちゃいられない!早めに現場入りして心の準備しなくっちゃ!じゃあ私先に行ってるから。君はヤドンの様にゆーっくり準備してくるといいよォー!」

 

「…じゃあ、お言葉に甘えて。マスタード師、バトル前に調整してもいいです?」

 

「もちろんいいよー。……クララちんはねーなまじセンスがあるもんだから今まで本気で物事に向き合うことが無くってねー。道場の訓練もテキトーにこなしてたのよん。でも三人が来てからあの子、変わったね!努力できる才能がやっと花開いたのかな?でも…あのやる気が悪い方向に向かわなければいいね」

 

「大丈夫です、何があっても全力で挑みますから!」

 

 

 そう言うと、マスタード師は嬉しそうに笑った。…さてと。クララさんはどくタイプ使いだからな、切札は用意しておかないと。「ラウラと戦える!」と嬉しそうに回っているユウリと、頭を抱えているモコウに向き直る。

 

 

「フシデを進化させたい。手伝ってくれるか、二人とも」

 

「もちろん!」

 

「我はちょっとユウリに本気で勝ちたいから作戦考えるためすまん、力になれん」

 

「そうか…頑張れ、モコウ。お前は最速でジムチャレンジをクリアした女だろ」

 

「うむ、うむ!チャンピオンだろうが負けはせぬ!我は最強になるのだからな!」

 

 

 モコウを元気づけて、表に出るとユウリのフシギソウとフシデを戦わせる。せめて進化手前までは経験値を稼ぎたいところだ。

 

 

「フシギソウ!しびれごな!」

 

「ユウリお前!これレべリングだってわかってるか!?」

 

「れべりんぐ?」

 

「あー、お前に頼った俺が馬鹿だった!」

 

 

 調整だろうが全力で勝負しにくるユウリとは、二度と調整に誘わないと心に決めた。




リアルな世界でレべリングという言葉が存在するのかどうか。

・ラウラ
クララに不穏な何かを察知してフシデの調整に入る主人公。ユウリの家がカレー三昧だったこともあり、ダイスープの味は気に行った。例のウイルスが蔓延している時期に転生した。

・ユウリ
バトルジャンキーでラウラスキーでカレー狂い。モコウと戦う事よりもラウラと戦えることにしか目が行ってない。調整だろうが全力で戦うバトル馬鹿。

・モコウ
ユウリと戦うと知らされて青い顔のツッコミ役。コリンクも捕まえた。なんとか勝つためにガチで戦法を考えるけど諦め気味。最速最強になるんだよ!

・クララ
ローズ委員長の様な不穏さがある道場の先輩。死ぬ気でダイキノコを集めてきた。ラウラの強さは理解しているのでなんか企んでる模様。

・マスタード
クララを心配している師匠。三人が来てくれてよかったと思ってる。そろそろ三人の本気が見たい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヤドラン

どうも、放仮ごです!なんと、うちわ0096 さんより素敵な支援絵をいただきました!

【挿絵表示】

ラウラがすっごい可愛い上に蟲ポケモンのクオリティが凄いんじゃあ…本当にありがとうございます!やる気がすっごい湧きました!

今回はVSクララとなります。楽しんでいただけると幸いです。


 結論から言うと、ユウリが妨害技しか使ってこなかったためろくに経験値を稼げなかった。状態異常させることに目覚めたユウリは実に厄介だ。その代わり、ヨロイ鉱石を使って強力な技を覚えさせた。これでなんとかなるといいが…

 不服ながらもさすがに10分以上はクララさんに申し訳なかったので裏にあるスタジアム程はある広さのバトルコートにつくと、クララさんが待ち構えていた。ユウリとモコウも見届けに着いてきたのを見てウッ、と苦々しげな顔を浮かべるクララさん。なんか仕掛けたな?

 

 

「…来たね。君に勝って、あの子たちの勝ち抜いた方にも勝って、ひでんのヨロイを手に入れる…そしてどくタイプのジムリーダーになってやんのよ!例えどんな手を使っても負けられない…」

 

「どんな手も、ね。なら文句は言いません。それが勝つための努力ならね」

 

 

 蟲だって色んな卑怯な手を使って自然界を生き抜いてきたからな、文句はない。

 

 

「言ったね?うちの本気ぶつけるよ。…覚悟はいい?」

 

「そっちこそ、蟲の恐ろしさを見せてやりますよ」

 

「二人とも、準備はいいかねー」

 

「はい!」

 

「もちろん!」

 

「それではチミたち、位置についちゃってー!」

 

 

 すると道場の方からマスタード師、ミツバさん、門下生の方々がやってきて声援を受け、バトルコートの中心に立ったマスタード師の言葉に頷き向かって左側に立つ。

 

 

「マスター道場最後の修行第一回戦…ようい。……スタートだよん!!」

 

 

▽ポケモントレーナーの クララが 勝負を しかけてきた!

 

 

「おねがい、スコルピ!」

 

「頼むぞ、ラランテス!」

 

 

 クララさんが繰り出してきたのはドラピオンの進化前であるスコルピ。可愛い。そして俺もラランテスを出したのだが、彼女の桃色の体に異変が襲う。

 

 

「私の本気出しきる!正々堂々勝負だよォ!」

 

「これは…!?」

 

「ところでバトルコートにどくびしが落ちてるから気を付けてねェ~!」

 

 

 どくびしか。ばら撒くことでどくタイプ、はがねタイプ以外をどく状態、またはもうどく状態にするまきびしやステルスロックと同系統の技。これを仕掛けていたのか…!べノムショックなんかを覚えていたら厄介だぞ…!

 

 

「なっ、ずるい!」

 

「師匠!あれはありなのか?!」

 

「これがクララちんの本気で、ラウラちんも認めてるからねえ」

 

「ああ、文句は言わないさ。勝ちきるまでだ!にほんばれ!」

 

 

 そっちがフィールドを支配するなら、こっちだって天候を支配する。どく状態でラランテスに無理させたくはないが、くさタイプという圧倒的不利なんだ、少しでもダメージを与えたい。

 

 

「ソーラーブレード!」

 

 

 陽光を手に溜めて、光の刃を形作ったラランテスの強力な一撃がスコルピに炸裂。しかしどく・むしには効果が薄く、軽く耐えられてしまう。

 

 

「アハッ!くさタイプでどくタイプに挑むのは無謀だよォ!どくどくのキバ!」

 

 

 そのまま手に噛み付かれ、さらなる毒を流し込まれて戦闘不能になるラランテス。よくやった、後は任せろ。

 

 

「暴れろ、メラルバ!」

 

 

 陽射しが強い状態にすることで本領発揮できるメラルバ。ラランテスはこのための布石だ。どくを受けてしまったが、速攻で決める!

 

 

「ニトロチャージでどくびしを蹴散らしながら突っ込め!」

 

「どくどくのキバで迎撃よォ!」

 

 

 どくびしを燃やして蹴散らしながら炎を纏い突進、迎え打たんとしたスコルピと正面衝突するメラルバ。スコルピは吹き飛び、そのまま戦闘不能となった。効果抜群でしかも陽射しが強い状態だからな。

 

 

「ごめんッ!うちの采配ミス…でも粘って!踏ん張って!マタドガス!」

 

 

 続けて繰り出されたのはガラルマタドガス。…アルルカンのだいばくはつマタドガスが頭に過るが、今の台詞でそれは違うと確信する。この人はポケモンを道具にするような人間じゃない。

 

 

「クリアスモッグ!」

 

「ドわすれだメラルバ!ひのこ!」

 

 

 ドわすれすることで受け止め、陽射しで強くなったひのこを放つ。やけどを引き当てたようで、動きが鈍るマタドガス。

 

 

「どくでダメージを受けたわねェ?ダメおし!」

 

「っ!?」

 

 

 既にダメージを受けている状態で威力が増す技がメラルバに炸裂、しかしあくタイプの技なので何とか耐え、炎を纏うメラルバ。

 

 

「ニトロチャージだ!」

 

「クリアスモッグ!」

 

 

 そして体当たりが炸裂、したが同時に反撃も受けてしまい、メラルバが戦闘不能となってしまった。…ならもう、出番だ。

 

 

「頼むぞ、フシデ!」

 

「くさタイプや進化してないポケモンばかり…私をなめているのか!」

 

「いいや、これが今の俺の本気だ!フシデ、ポイズンテール!」

 

 

 跳躍してクルリと一回転。尻尾を振るい、等倍のダメージを叩き込むフシデ。マタドガスはそのまま崩れ落ち、クララさんはホイーガを繰り出してきたのでこちらも交代、デンチュラを繰り出す。

 

 

「前はいい様にやられたけどねェ、もうそう簡単には負けないよ!」

 

「俺の相棒はそう簡単に倒せないぞ。ほうでん!」

 

「まきびし!」

 

 

 放電するデンチュラに対し、ジャラララ!とばら撒かれるのは鋼の棘。棘が避雷針の役割を果たして電撃を地面に吸収してしまう。そんな使い方が!?

 

 

「いとをはくで拘束しろ!」

 

「ポイズンテール!」

 

 

 糸を吐きながら周りを走ろうとしたもののまきびしを避けるのに気を取られて自由に動けなくなったデンチュラにポイズンテールが叩き込まれる。電撃を封じられた上にデンチュラのすばやさまで奪われてしまった。さらにどくびしで毒が回る。これは早めに決めないと不味い。

 

 

「ならもう使うか。キョダイマックスだデンチュラ!」

 

「キョダイマックスですって!?」

 

 

 動けないなら動かなければいい。電撃が届かないなら被せればいい。ユウリとの戦い以来、久々にキョダイマックスしたキョダイデンチュラがフィールドに巨大なエレキネットを張ってその上に陣取り、マゼンタ色の雲の下でホイーガとクララさんを見下ろす。その姿はまるで神の如し。

 

 

「ポイズンテール!」

 

「キョダイクモノス!」

 

 

 ホイーガは跳躍してポイズンテールを叩き込んでくるも、空中でキョダイクモノスにからめとり地面に拘束して電撃が襲い、戦闘不能にする。

 

 

「そんなのありかよ…でも、ぜってぇ負けねえ!最後の最後まで喰らい付く!」

 

 

 そして最後に繰り出されたのは、なんかロックバ●ターみたいになってる小型のシェルダーを左腕に食い付かせているガラルのすがたのヤドラン。たしかどく・エスパータイプだ。どんな能力かはわからないがダイマックスはするはず。それなら素早いこちらの方が上手(うわて)のはずだ。

 

 

「ギャラリーのみんなァ!クララ中毒、服毒注意!ダイマックスよォ、ヤドラン!」

 

 

 ジムリーダーになった時の為なのか、めいっぱいアピールしたのちにヤドランを巨大化させるクララさん。容赦はしないぞ!

 

 

「キョダイクモノス!」

 

「毒を喰らわばおかわりまで!ポイズンフルコースおあがりィ!ダイアシッド!」

 

「なに!?」

 

「特性クイックドロウ!こっちの方が速い!」

 

 

 すばやさはこちらが上だった筈。なのに、先にあちらが行動してデンチュラは撃ち抜かれて戦闘不能となってしまう。馬鹿な…!?せんせいのつめみたいな特性だとでもいうのか!?

 

 

「あと一匹…!うちは勝つんだ!」

 

「っ…フシデ!」

 

 

 一撃、一撃でも耐えればあの特性が発動する!だけど、耐えれるか…!?

 

 

「これで終わり!ダイサイコ!」

 

 

 強力な念動波が炸裂。効果は抜群だ。さすがに諦めかけたその時、健在だったフシデが嘶き、光り輝いてそこにいた。進化、その前に耐えただと!?

 

 

「そんなのありィ!?」

 

「フシデ…いや、ホイーガ!はいよるいちげきだあ!」

 

 

 特性むしのしらせが発動した、むしタイプの強力な技「はいよるいちげき」が炸裂。ヤドランの巨体がぐらりと揺れて崩れ落ちる。フィールドも武器にする、強敵だった。

 

 

「か、勝てた…!」

 

「出し惜しみしてないのに!全部ぶつけたのに…」

 

「…勝負あり!三つ目の修行第一戦、勝ち抜いたのはラウラちん!」

 

 

 マスタード師の言葉に歓声が上がる。肩を落とすクララさんに歩み寄ると、暗い顔で口を開いた。

 

 

「あーあ、負けちゃったァ…アハッ、最悪だよねェ。汚い手まで使ったのに。若くて才能もある君みたいなのには分かんないだろうけどさァ。うちだって自分なりに必死だったんだ…でもそろそろ、ジムリーダーになるって夢も諦め時なのかも…ズルがばれたらどうせ道場から追い出されちゃうしィ」

 

「そんなことないです。試合前に仕掛けるのはあれですけど、試合中にアレされたら勝てるものも勝てなくなる。ジムリーダーと戦った時みたいな、強敵だった」

 

 

 偽らざる本心だ。まるでジムリーダーと戦ってるような感覚だった。この人は既に、ジムリーダー並の実力を得ている。そんな強さだった。するとマスタード師が歩み寄ってきた。

 

 

「ワシちゃんはね、なーんもお見通し!」

 

「し、師匠!?」

 

「クララちんのことワシちゃんからも謝らせてね。やり方は間違えちゃったけど、ライバルに負けたくない気持ちがいっぱいの頑張れる弟子なんだよん」

 

「うぅ…師匠…ありがとう……ラウラ…、ごめんなさい…」

 

「俺は気にしてませんので。むしろ、普段体験できないバトルをさせてもらってありがたかったです」

 

「そうは言ってもちゃんと罰がないとね。クララちんには罰として道場のポケモンのお世話を一人で6ヶ月やってもらうよん!」

 

「え!?確かにキッツいけど、で、でもそれだけでいいのォ!?」

 

「もちのロンよ!これからは心も強くなっていこーね!」

 

「は…はいィ…!」

 

 

 なんか知らんけど丸く収まったらしい。俺は本当に気にしてないんだけどな。トレーナーに大爆発してくるよりはマシだぞ、ほんと。アルルカンのおかげで大抵のことなら許せるようになった気がする。さて、次はユウリとモコウだが…モコウ、大丈夫だろうか。




書いてるうちにクララが好きになりました。ダイマックスの時の表情の変化好き。

・ラウラ
どくびしやまきびし、ヤドランの特性に翻弄されたものの何とか勝利を得た主人公。ひでんのヨロイを色違いのグソクムシャだと思ってるのでやる気満々。

・クララ
どくびしを仕掛けたり、ホイーガにまきびしを覚えさせたりなど様々な対策でラウラを翻弄したもののフシデの根性を前に敗北。キョダイデンチュラに度肝を抜いた。

・マスタード
よき師匠。キョダイデンチュラやラウラの蟲ポケの懐き度など色んなところで目を見開いた。

・フシデ→ホイーガ♂
とくせい:むしのしらせ
わざ:ポイズンテール
   ころがる
   ベノムショック→てっぺき
   はいよるいちげき
もちもの:ぎんのこな
備考:ゆうかんな性格。体が丈夫。ラウラに懐いており、その愛で根性を見せた。はいよるいちげきを覚えた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカメックス

どうも、放仮ごです。ムツキ関連で低評価をいただきました。一応蟲じゃ敵わない圧倒的な力の差を演出したつもりの描写だったのですが…こうもムツキ関連で低評価をもらうと響くなあ。今からでも書き直した方がいいでしょうか。

今回はユウリVSモコウ。ナグサ戦以来のモコウ視点で4000字越えといつもより長いです。楽しんでいただけると幸いです。


 深呼吸。作戦は考えた。ユウリとはそれぞれ、カメールとフシギソウを手持ちに入れることを了承させた。伝説ポケモンも一体だけと説得した。それぐらいはあっていいハンデだろう。一体だけ、ムゲンダイナだけでも五人がかりでようやく勝てたのだ。2体は無理だ。これで戦力ダウンは間違いない。問題はどうやってムゲンダイナかザシアンを倒すのかってところだ。…上手く行くだろうか。私なんかで、チャンピオンに勝てるのだろうか。

 

 

「いや、我は最速最強。伝説が何ぼのもんだ!」

 

 

 ラウラもあの不利な状況で勝ったのだ。ライバルの我が勝たなくてどうする!まきびしやどくびしが門下生たちによって掃除されたバトルコートにユウリと共に立つ。あちらはボールを二つ手にどちらから出すか迷ってるらしい。余裕だな、我は目にも入ってないということか。ユウリがラウラに首ったけなのは同期の間ではもはや周知の事実だ。だがな。両親やソッドとシルディを思い出すその、こちらを見ていない目は気に食わぬ。

 

 

「我を蔑ろにするのは許さんぞ…!」

 

「そんなつもりはないんだけどなあ…でも、モコウなら私を楽しませてくれるよね!」

 

「もちろん、痺れさせてくれよう!」

 

 

▽チャンピオンの ユウリが 勝負を しかけてきた!

 

 

「よろしく、フシギソウ!」

 

「蹴散らせ!ライボルト!」

 

 

 ユウリはフシギソウ。こちらはほのおのキバが使えるライボルト。有利対面だ。

 

 

「ほのおのキバだ!」

 

「やどりぎのタネ!」

 

「なに!?」

 

 

 炎を纏った牙で噛み付こうとしたところ、種を打ち込まれて蔓が伸びて拘束され、無様に地面に転がるライボルト。そのまま体力をジワジワ奪われてしまう。しびれごな以外にも妨害技があったのか!?ユウリの性格上一個しかないと過信してしまった。

 

 

「くっ…ほのおのキバで噛みちぎれ!」

 

「さらにどくのこな!」

 

 

 このまま戻すわけにもいかないから拘束を解こうとするも、そこに振りかかる毒の粉。なんとか拘束は解いたものの、ライボルトはフラフラだ。こいつ、まさか!?

 

 

「そのフシギソウ、妨害特化か!?」

 

「うん、こういう戦い方もありかなって。さらにつるのムチ!」

 

「ライボルト、受け止めろ!」

 

 

 ビシバシと叩いてくる蔓を、噛み付いて止めるライボルト。そのまま振り上げてフシギソウを大地に叩きつける。その時、紫色の物体が葉っぱの間に見えた。持ち物はしんかのきせきか。だが、今なら決めれる!

 

 

「ほのおのキバだ!」

 

「交代、インテレオン」

 

 

 フシギソウが倒せる、と思ったその時には交代され、ライボルトがインテレオンにほのおのキバを見舞うも効果は薄く、その長い足で蹴りつけられ距離を離される。こいつには遠距離の電撃は通じない。ならば、直接ぶつけるしかあるまい。

 

 

「ボルトチェンジだ!」

 

「インテレオン、みずのはどう!」

 

「ぶちぬけ!でんげきくちばしだ、パッチラゴン!」

 

 

 ボルトチェンジはみずのはどうで防がれたが、交代したパッチラゴンの電撃を纏った嘴がみずのはどうをぶち抜いてインテレオンに炸裂。大きく吹き飛ばす。奴のエースに大ダメージを与えた、ここで止まる理由はない!

 

 

「畳み掛けろ、でんげきくちばし!」

 

「ふいうち!」

 

 

 でんげきくちばしが炸裂する寸前、尻尾による一撃がパッチラゴンの頬に炸裂。しかし怯まず、でんげきくちばしを決めるパッチラゴン。地面に叩きつけ、戦闘不能にした。まずは一勝。ライボルトは苦しめられたものの戦闘不能にはなってない。いけるか?

 

 

「やっぱりパッチラゴンを出すよね。とりあえず、フシギソウ」

 

 

 またもやフシギソウだ。やどりぎと毒の粉でまたこちらの行動を阻害するつもりか。だがユウリ、貴様は間違えたぞ。

 

 

「やどりぎのタネ」

 

「そんなもの、蹴散らせつばめがえし!」

 

「どくのこな!」

 

 

 パッチラゴンはひこうタイプの技を持っている。例えしんかのきせきを持っていようが効果抜群ならば関係ない。鋭い一撃が炸裂、フシギソウは崩れ落ちたが、パッチラゴンも毒をもらってしまった。主力の二匹がどく状態にされたのは痛い。

 

 

「やるねモコウ!思えばモコウと戦うの初めてだ!楽しい、楽しいよモコウ!そんな貴女に敬意を表して…出番だよ、ザシアン!」

 

 

 そのポケモンの登場にギャラリーがざわめく。ユウリの持つ二匹の伝説のポケモンの片割れ、ザシアン。病院でのラウラとの対決ではモスノウ相手に惨敗していたのが記憶に新しいが、忘れちゃならない。あれはラウラとモスノウが凄かっただけで、こいつは紛れもない伝説のポケモンなのだ。

 

 

「ザシアン、じゃれつく!」

 

「させるか、地面にでんげきくちばし!」

 

 

 地面に嘴を叩きつけ、砂埃で煙幕を作ると交代。ライボルトを繰り出す。確かタイプははがね・フェアリーだ。はがねもどくも効かないフェアリーなど厄介にも程がある。こうかばつぐんを狙えるライボルトで頑張るしかない。

 

 

「せいなるつるぎ!」

 

「ワイルドボルトで弾きながら距離を詰めろ!ほのおのキバだ!」

 

 

 振るわれる剣を、弾き飛ばしながら強力な攻撃を叩き込む。だがしかし、触れたな?私のライボルトに。距離を詰めるライボルトと、不自然に動きが遅くなり避けきれないザシアンに眉を顰めるユウリ。

 

 

「むっ、麻痺した?」

 

「特性、せいでんきだ。これで素早い動きはできまい!」

 

「関係ないね。きょじゅうざん、フィールドごと叩き割っちゃえ!」

 

 

 その場で巨大になった剣を振るうザシアン。それだけで大地に巨大な切れ目が入り、風圧だけでライボルトは吹き飛ばされる。なんて威力だ、これが伝説の力か。

 

 

「だが、当たらなければどうということはない!ほのおのキバ!」

 

「横一文字にきょじゅうざん!」

 

「放すな、ライボルト!食らい付け!」

 

 

 突撃するライボルトに振るわれる巨剣。ライボルトは炎を纏った牙で剣身に噛み付き受け止めるが、そのまま振り回されて地面に叩きつけられ、虫の息となるライボルト。最後に目いっぱい振り回されて投げ出されてしまう。

 

 

「ボルトチェンジだ!」

 

 

 電撃をザシアンに当てて交代、ストリンダーを繰り出す。我のポケモンでザシアンを落としきれるとしたらもうこやつしかいない。此処で使うべきだ。

 

 

「我の生き様!我のロック魂をこの世に見せつけろ!雷鳴起こして雷神と化せ!キョダイマックス!」

 

「いいね、御誂え向きだよ!ザシアン!」

 

「なに!?」

 

 

 なんだあの余裕は。何か余裕でいるに足る理由が…?…待て、きょじゅう(・・・・・)ざん?

 

 

「しまっ…キョダイカンデン!」

 

「今更気付いてももう遅いよ!きょじゅうざん!」

 

 

 巨大な刃と、スタンドの様な電撃の塊が交差し衝撃波が巻き起こる。我の直感が正しければ、あのきょじゅうざんという技…ダイマックスに対して、威力が上がるとかそういう類じゃないのか?

 

 

「ストリンダー!?」

 

 

 まさかの、一撃。キョダイカンデンが炸裂したものの倒せず、一撃のもとに斬り伏せられた。これが、伝説たる力か…正直、羨ましい。あの様な強力な力を持ち、使いこなせるユウリが羨ましい。だがしかしだ。我は、勝つと決めたのだ。

 

 

「ライボルト!」

 

 

 カメールを出すわけにはいかない。パッチラゴンもドラゴン故にフェアリーに弱い。もうお前にしか頼れない。頼む!

 

 

「ほのおのキバだ!」

 

「つるぎのまいで弾いちゃえ!」

 

 

 飛びかかるライボルトだが、振るわれる剣に弾かれてしまう。しかし空中で体を捻り、ザシアンの背中に飛び付くライボルト。それが唯一の勝機だった。

 

 

「っ、よくやったライボルト!すまん!…かみなり!」

 

 

 10まんボルトを忘れさせ、ダブルバトル用に覚えさせたかみなり。最大火力を誇るが、問題は覚えたてで命中精度が悪く、あまごいで雨にしないとまるで当たらない事なのだが、自分を起点にすることで当てることは可能だ。

 

 

「なっ!?」

 

「…お前に勝つためなら、手段を選んでられん!」

 

 

 自分ごと雷の槍で相手を穿つ。それが最終手段にして切札。さしものザシアンも鋼の剣が祟ったのか黒焦げで崩れ落ち、歓声が上がる。とりあえずパッチラゴンを繰り出す。ユウリは残り一体。カメールは出さずに終わりそうだ。

 

 

「…むう。ここまでやられるなんて、さすがモコウだね。侮ってるつもりはなかったんだけど…まさか自分のポケモンごとかみなりを当てるなんて。なら私は今回の切札を使うよ」

 

「なに?」

 

「でんきタイプ使いだから本当はこの子だけでよかったんだけど、カメールがいるから温存してたんだ。行くよ、セキタンザン!」

 

 

 出た。セミファイナルトーナメントでラウラを敗北させた、とにかく防御が堅く育てられたセキタンザン。ムゲンダイナ戦でも空中からじしんを当てる活躍をしていたのが記憶に新しい。そうだ、じしん。でんきタイプ一辺倒の我がポケモン達にとっては天敵。だが、パッチラゴンならば!

 

 

「でんげきくちばし!」

 

「効かないよ。じしん」

 

 

 瞬間。地面が突き出た。思わず目を見開き、アッパーカットの様に空中に殴り飛ばされたパッチラゴンに唖然となる。今のは、キリエの…!?

 

 

「うん、できた。ようやくだ。あの人の技術難しくて…でも、やっと物になったよ」

 

「ぐっ…がんばれ、カメール!」

 

 

 なんてことないって顔でぐっと握り拳を作るユウリに戦慄する。ああ、分厚い壁だ。相性的にはこちらが有利。追い詰めているはずなのに、追い詰められている感覚がする。だがしかし、しかしだ。

 

 

「我は最速最強!ここで負けては、女が廃る!カメール、みずのはどう!」

 

 

 あまごいなど撃ってる暇はない。苦手であろう特殊技で一気に決める!

 

 

「ヒートスタンプ!」

 

「なにぃ!?か、からにこもる!」

 

 

 火球を纏い跳躍して水の塊を避けるセキタンザン。咄嗟に防御の指示をしたが、迎撃をするべきだった。必然、甲羅に籠ったカメールは相手より重ければ重いほど威力が上がるヒートスタンプをもろに喰らい、セキタンザンに押し潰される。

 

 

「このまま、いっけー!」

 

「カメール…!」

 

 

 その瞬間、光り輝くセキタンザンの真下。グググッと持ち上げられるセキタンザンの巨体。そしてついには投げ飛ばされ、そこにはカメックスが立っていた。進化しただと!?ラウラのフシデといい、強敵との戦いはいい経験になるってことか!

 

 

「ここで進化か、熱いね!ボディプレス!」

 

「カメックス!」

 

 

 投げ飛ばされた勢いのままに急降下するセキタンザンに、咄嗟にスマホロトムの図鑑を見て技を確認。みずでっぽうを忘れてラスターカノンを覚えたが、最大打点は変わってない。そう思考するのに0.5秒。すかさず指示をする。

 

 

「みずのはどう!」

 

 

 甲羅の砲台から放たれた、先程よりも巨大な水の塊が炸裂。セキタンザンとせめぎあいして、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…勝負あり!三つ目の修行第二戦、勝ち抜いたのはユウリちん!」

 

 

 負けた。チャンピオン相手に、ハンデがあったとはいえ、奮戦した方だろう。追い詰めた方だろう。だがしかし、カメックスが進化してくれたというのに、単純に力負けした。じょうききかんでスピードが上がっていて、みずのはどうが形成されきる前に直撃を受けたのだ。

 

 

「…ははは。最強は、これほどまでに遠いか」

 

 

 父上。ソッド。シルディ。あの男共に認めさせたいのに、力がない。ラウラはそんなことないと言うが、我には才能が足りない。強くなるには、シンプルな力が必要だ。伝説に、憧れた。

 

 

「…あの時、変な意地を張らずにムゲンダイナを手に入れておけばよかったかなあ」

 

 

 そんな我の言葉に呼応するように、遠き雪の地にて震える点字が刻まれた石版が在ったことを、我はまだ知らない。




一歩及ばず。チャンピオンの壁は厚い。

・モコウ
最速最強を志すラウラのライバル。チャンピオンとの実力差を知り、伝説の強さに心を奪われる。自己犠牲かみなりは苦肉の策。

・ユウリ
状態異常に目覚めたチャンピオン。油断もあったとはいえ、インテレオンにザシアンまで落とされたモコウの強さを心から楽しんでいたバトルジャンキー。キリエの技術までものにした。カメックスの進化に、メッソンの進化を思い出して油断はしないと決め直した。でもやっぱりラウラと戦える方が嬉しい。

・フシギソウ♂
とくせい:しんりょく
わざ:つるのムチ
   やどりぎのタネ
   しびれごな
   どくのこな
もちもの:しんかのきせき
備考:きまぐれな性格。昼寝をよくする。状態異常ややどりぎで相手の動きを封じた後ペしぺし叩く攻撃を得意とする。クララを泣かせた。

・カメール→カメックス♂
とくせい:げきりゅう
わざ:みずのはどう
   あまごい
   みずでっぽう→ラスターカノン
   からにこもる
もちもの:しんぴのしずく
備考:おだやかな性格。ものをよく散らかす。あまごい要員。モコウに懐いており、ここぞの進化を見せた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSウルガモス

どうも、放仮ごです。前回の弱音に色々言ってくれた皆さまありがとうございます。ムツキはこのままで行こうと思います。書き直すとだいぶ時間も取られますし、ムツキがいてこその今のラウラですし。

そんなわけで今回はラウラVSユウリ再び!ひでんのヨロイを手にするのはどちらなのか!楽しんでいただけると幸いです。


 ユウリとのモコウの対決はユウリが勝利した。モコウには悪いが想像通りだ。ユウリのことだ、間違いなく伝説ポケモンを二体とも使ってくる。ドラピオンやモスノウ含めた本来の手持ちなら行けるだろうが、俺の手持ちは変えようがない。ムゲンダイナに対する打点がないため敗北濃厚だ。だが色違いのグソクムシャはぜひとも欲しい。勝機があるとしたら、状態異常か。

 

 

「この勝負に勝った方がひでんのヨロイを手にする第三試合、開始だよん!」

 

「ユウリ、ちゃんと本気で来いよ」

 

「うん、ラウラ相手に本気出さないで勝てる気はしてないよ!」

 

 

 勝つんなら本気のユウリに勝たなきゃ意味がない。セミファイナルトーナメントの雪辱をここで晴らす!ザシアンにモスノウで勝ってもあんまり意味はないしな。

 

 

▽チャンピオンの ユウリが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くよ、インテレオン!」

 

「頼むぞ、ホイーガ!」

 

 

 ユウリはエースのインテレオン。俺は様子見のためのホイーガ。ザシアン、ムゲンダイナ共に打点がないためここぐらいしか使い時がないのが残念だ。

 

 

「ポイズンテール!」

 

「とんぼがえり!」

 

 

 こちらのポイズンテールが炸裂する前にとんぼがえりが炸裂、インテレオンは戻って行き出てきたのはザシアン。はがねタイプにどくタイプの技は効果がなく、受け止められてしまう。

 

 

「せいなるつるぎ!」

 

「ころがるで避けろ!」

 

 

 ならばと転がらせて回避する。いわタイプの技だからはがねタイプには効きやしないが、転がり続けることで威力が増していく。これでワンチャン狙えるか?

 

 

「むっ、それは当たらないなあ…なら、一回転してきょじゅうざん!」

 

「っ、反対に回れ!」

 

 

 ザシアンの口に咥えられた巨大な剣が、フィールドを一薙ぎするべく円状に振るわれる。転がり続けていたホイーガは振るわれる方向に方向転換して逃げ回り、加速し続けていく。

 

 

「こっちも逆回転!」

 

「叩き返せ!」

 

 

 何周もして当たらないと悟ったのか逆に回してくるユウリだが、もう遅い。加速しきったホイーガの回転する甲殻は巨剣を弾き返し、どてっ腹に一撃叩き込む。

 

 

「ザシアン!?」

 

「ここまで回れば、もう関係ないぞ!突き進めホイーガ!」

 

「交代!フシギソウ!」

 

 

 もう一発叩き込もうとしたところで交代してきたのはフシギソウ。いわタイプの攻撃のダメージを少しでも下げるためか?いや、違う!

 

 

「今回はフシギソウでラウラに勝つのは諦める!しびれごな!」

 

 

 突っ込んでいたホイーガに散布されたしびれごなにより、その動きが鈍る。それでも勢いは殺せず、まともに受けて吹き飛ぶフシギソウは戦闘不能となる。だがしかし、そこでホイーガの動きがまひで止まってしまう。転がるはもう使えないか…

 

 

「ザシアン、今度こそ叩き切って!」

 

「はいよるいちげきだ!」

 

「せいなるつるぎ!」

 

 

 ホイーガの一撃と、ザシアンの剣がぶつかり、拮抗することなく吹き飛ばされ戦闘不能となる。よく頑張ったホイーガ。

 

 

「仇を取れ、ラランテス!にほんばれ!」

 

 

 出すと同時ににほんばれを展開する。ゲームだったら一ターンかかるが、これができるから現実のバトルはやめられない。

 

 

「きょじゅうざん!」

 

「両手でソーラーブレードだ!」

 

 

 巨剣と光剣が真正面からぶつかる。にほんばれ状態によりノーチャージのソーラーブレード。これがラランテスの強みだ。特性リーフガードも発動する、晴れ状態で本領を発揮するポケモンだ。さらにラランテスはもう片方の手にも展開した光剣を無防備なザシアンの胴体に炸裂させ、ザシアンは後退。そのまま畳み掛けるラランテス。

 

 

「つるぎのまいで防御!」

 

「はなふぶきだ!」

 

 

 つるぎのまいしてきたので、はなふぶきでザシアンとユウリからラランテスの姿を隠す。桃色の体だからこそできる隠れ蓑。姿を隠し、ザシアンの横に着くラランテス。このヨロイ島で育ったからこそできる、ラランテスの生存本能故の能力。

 

 

「ソーラーブレード、からのシザークロス!」

 

「ザシアン!?」

 

 

 両手でソーラーブレードを展開しながらのシザークロスが炸裂。さすがのザシアンも崩れ落ちる。まずは厄介なうちの一匹を倒した。問題はムゲンダイナだが…続けて繰り出してきたのはインテレオンだった。

 

 

「インテレオン。とんぼがえり!」

 

 

 ユウリの得意戦法。ダメージを与えながらムゲンダイナに交代してきた。効果抜群のダメージを受け、ふらつくラランテスに容赦なく口を開いて炎を溢れさせるムゲンダイナ。

 

 

「かえんほうしゃ!」

 

「シザークロス!」

 

 

 せめて炎を斬れないかと試みるも、にほんばれの効果で威力が上がった火炎放射は強大で。ラランテスはあっけなく飲み込まれて戦闘不能となった。まあこうなるのは予想済みだ。

 

 

「行くぞデンチュラ!キョダイマックス!」

 

「え?」

 

 

 なんかユウリが戸惑っていたけどこれしかない。巨大なエレキネットを形作りその上に乗り姿を変えるデンチュラを見上げながら思考する。キョダイクモノスで麻痺させる…!

 

 

「キョダイクモノス!」

 

「えーと…うん、手加減はしないよ!ダイマックスほう!」

 

「!?」

 

 

 すばやさはこちらが上らしく、キョダイクモノスが炸裂したものの、ムゲンダイナのマゼンタ色に輝く光線が炸裂。一撃でデンチュラが戦闘不能となる。……まさかダイマックスほうって…

 

 

「知らなかったのならしょうがないけど、ムゲンダイナのダイマックスほうはザシアンのきょじゅうざんと同じでダイマックスに対して威力が二倍になる技だよ、ラウラ」

 

「なん……だと……?」

 

「でもラウラなら残り一匹でも逆転してくれるよね!」

 

 

 いや無茶を言うな。キラキラした目で見て来てもそんなことできるのはチャンピオンぐらいだ。切札のダイマックスを切ったのだ。もう勝つ手段は……あるっちゃ、あるが正直現実的じゃない。でもやるしかない、か。

 

 

「頑張れ、メラルバ!ニトロチャージで加速して翻弄しろ!」

 

「地面に向けてりゅうのはどう!」

 

 

 炎を纏ったメラルバに周囲を走らせるが、地面に向けて放たれたことでムゲンダイナを中心に円形に放出されたりゅうのはどうが襲う。

 

 

「上に避けてひのこ!」

 

「追いかけてクロスポイズン!」

 

 

 なんとか跳躍して回避し、ひのこをばら撒くメラルバ。だがムゲンダイナは火の粉をまるで寄せ付けずに接近、毒を纏った爪を振り下ろしてきて、空中に逃れるメラルバ。

 

 

「っ!ひっついてむしのさざめき!」

 

「引き剥がして!」

 

 

 ムゲンダイナの背中にくっ付き、衝撃波を放ち続けるメラルバ。ムゲンダイナは高速で移動しながら暴れて引き剥がそうとするが、時々麻痺して止まる動きでは、根性を見せたメラルバは離れない。そのうち、ボウッとメラルバが触れているところが炎上して苦しむムゲンダイナ。

 

 

「しまった…!?」

 

「まひとやけどの重複だ!これなら伝説ポケモンも十全に力を発揮できないだろ!」

 

 

 ここは現実だ。ゲームみたいに状態異常は一つだけしか、なんて都合がいいことはない。現実では状態異常は重複する。行動阻害とスリップダメージだ。これでそう簡単にムゲンダイナは行動できない。

 

 

「空中に舞い上がって!」

 

 

 もがき苦しみながらも空中に高速で浮かび上がり、メラルバを引き剥がすムゲンダイナ。その時、ユウリは太陽の光で見えなかったようだが、俺には太陽の光の下で光り輝くメラルバを見た。後ろ手で図鑑を確認する。ニトロチャージとドわすれが新たな技に変化していた。

 

 

「メラルバ!…いや、ウルガモス!ちょうのまい!」

 

「え!?」

 

 

 俺の命令にウルガモスに進化したことに気付いたのか驚愕するユウリ。太陽の光の下で舞っているせいか視認できないらしい。たいようポケモンの名の通りだ。

 

 

「空に向けてダイマックスほう!」

 

「ウルガモス!フレアドライブだ!」

 

 

 

 頭部を太陽に向けてマゼンタ色の光を溢れさせるムゲンダイナだが、まひとやけどでその動きが止まり、急降下してきたウルガモスの一撃が炸裂。火柱が立ち上り、崩れ落ちるムゲンダイナ。得意げにこちらに視線を送るウルガモスに笑顔でうなずく。お前なら、進化すると信じていたぞ!ぶっちゃけ唯一の勝算がこれだった。大博打に勝ったわけだ。

 

 

「まさか…ムゲンダイナとザシアンがやられるなんて。さすがはラウラだよ」

 

「天気の影響は強いぞ。お前のインテレオンもここまでだ。ひでんのヨロイは俺がもらう」

 

 

 そう言ってインテレオンを繰り出し、ボールに戻して巨大化させるユウリ。ダイマックスか、それでも勝って見せる!

 

 

「なら私達は、新しい力でラウラに打ち勝つ!キョダイマックス、インテレオン!」

 

「なに!?」

 

 

 その言葉で思い出す。ダイスープ。キョダイマックスできる種族であるインテレオン。ユウリがそれを使わないわけがなかった。巨大化するインテレオン。だがその姿は大きく変わり、本体は比較的小さいが尻尾が長大になってテーブル上に丸めたその上に佇むという、まるで高台を取ったスナイパーの様な姿となる。水のスナイパーライフルをその手に形作るインテレオンに、逃げられないと悟った俺は迎撃の指示を出す。

 

 

「突っ込め!フレアドライブ!」

 

「行くよインテレオン!キョダイソゲキ!」

 

 

 そして一発の銃弾が放たれ、太陽は空から堕ちた。




進化による勝利フラグを叩き折ることに定評があるチャンピオンユウリ。

・ラウラ
メラルバを進化させるために経験値を溜めるべく最後まで残していた主人公。ひでんのヨロイと言われて色違いグソクムシャしか想像できてない上に確信している。伝説ポケモンを倒せる数少ないトレーナー。

・ユウリ
まさか伝説二匹がやられるとは思ってもいなかったけどラウラだからと納得しているチャンピオン。なんで自分と戦うライバルはみんなバトル中に進化するのだろうと思っているが自分もそうである。インテレオンの新たな力に大興奮。

・メラルバ→ウルガモス♀
とくせい:ほのおのからだ
わざ:ニトロチャージ→フレアドライブ
   むしのさざめき
   ドわすれ→ちょうのまい
   ひのこ
もちもの:もくたん
備考:おとなしい性格。打たれ強い。通常より小柄な個体で体温が異常に高く、その代わりすばしっこく火力が高い。

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VSカイロス

どうも、放仮ごです。ちょっと調べてみたけど調べれば調べる程ラウラと相性が悪い蟲ポケ二体。どうしたものかと迷った末、今回出すことにしました。

今回はひでんのヨロイ獲得とその後の話。楽しんでいただけると幸いです。


 キョダイインテレオンに撃ち抜かれ、落ちてきたウルガモスを火傷するのも構わずに両手で受け止める。よく頑張ったな。ムゲンダイナをにほんばれの助けが在ったとはいえ単騎で倒したお前は俺の誇りだ。

 

 

「第三の修行、クリアしたのはユウリちん!ラウラちん、惜しかったねー。でも伝説のポケモンを二体も倒したのは凄かったよー」

 

「ええ、はい…ユウリの持つのが伝説ポケモンだって気付いていたんですね、マスタード師」

 

「そりゃあね。まさかヤドン探しの為だけに件のムゲンダイナを出すとは思わなかったけど。…今のチャンピオンは豪胆だねえ。これならヒデンのヨロイを授けても上手く使ってくれそうでワシちゃん嬉しいよ。みんなー!もういいよん!」

 

 

 マスタード師がそう言うと離れていた門下生たちとミツバさんクララさん、モコウが近づいてきて歓声を上げた。

 

 

「あんたたちほんとによく頑張ったね!あたしゃもう途中からハラハラしてよく見れなかったよ」

 

「すごいね二人とも。うちも頑張るよ」

 

「うむ、やはり二人を越えるのが当分の目標だな」

 

「ユウリちん!3つの修行を全てクリアしたユウリちんには…マスター道場ひでんのヨロイをあげちゃうよん!道場で準備してるから先に戻って待ってるねー。んじゃそんなカンジでよろぴく!みんな解散だよーん!」

 

 

 みんな散り、ユウリとモコウと三人で道場に歩きながら考える。ひでんのヨロイ…色違いのグソクムシャいいなあ。いや、それよりも懸念事項が一つあるのか。

 

 

「つまり、また強くなるのかユウリは」

 

「何時になったら追い付かせてくれるのだ」

 

「そうみたいだね。うーん、次のジムチャレンジで私を乗り越えて、としか言えないなあ」

 

「「無理だろ」」

 

 

 モコウと被るのもしょうがないだろう。伝説ポケモンを二体揃えたチャンピオンなんて……アローラ地方のチャンピオン・ミヅキがそうだって聞いたな。就任から一年経った今でもチャンピオン防衛線に勝ち続けているやべーやつ。アローラが田舎だからかあまり有名ではないが、年が近いと聞いたからユウリと同じ主人公格なのかもしれん。アローラに行ってそのチャンピオンと戦えばユウリに対する突破口が見えるかもなあ。

 

 

「無理じゃないよ。ラウラが二体とも勝ったじゃん。フルバトルだったら分からなかったかもだよ?」

 

「それはラウラがおかしいんだ」

 

「おい」

 

「「だってムゲンダイナを倒したのラウラだけだし?」」

 

「ぐっ…」

 

 

 それ言われちゃぐうの音も出ねえ。そんなこんなで道場まで戻ると、マスタード師がモンスターボールを手にして待っていた。その中に色違いグソクムシャが…!

 

 

「ユウリちん!待ってたよ!さあ……でてこーい」

 

 

 そんな気の抜けた声と共に繰り出されたのは、グソクムシャではなかった。灰色の身体で鉢巻の様な白い毛が特徴の、小さな熊の様なポケモンだった。………もしかしなくても俺、ずっと勘違いしていたわけだな。なら勝たなくてよかったかもしれん。俺は蟲ポケモン以外に愛を向ける自信がない。繰り出された熊ポケモンは拳を、足を振るい、マスタード師とシャドーボクシングしたりちょこまか暴れると、それを眺めていたユウリに気付いて怖気付き、マスタード師の後ろに隠れてしまう。ちょくちょく覗き込んでくるのが可愛い。…これがひでんのヨロイ、ねえ。

 

 

「そのポケモンが…?」

 

「そう!このポケモンこそがマスター道場ひでんのヨロイ!其の名も……ダクマ!体は小さくともりんと育てれば如何なる敵の進撃も阻む頑強なヨロイになるよーん!」

 

「なるほど、だからひでんのヨロイ…」

 

「中でもこの子はものすご~い才能を秘めてるんだけど、引っ込み思案なところがあってね…今一つ自分に自信が持てないみたいなの。ユウリちんと一緒に冒険すれば自分の殻を破れるかもしんないと思うのね!ってなわけで!これからダクマをよろぴくね!」

 

「えっと…よろしく、ダクマ!」

 

 

 そのユウリの言葉に、おずおずと近づくダクマ。マスタード師から渡されたボールを胸に、ダクマはユウリのポケモンとなった。あの口ぶりからまだダクマはいるんだろうな。

 

 

「とりあえずー!チミたちは仲良しちゃんになってお互い信頼し合わないとねー!その子はまだ道場の外にあんま出たことないから、ヨロイ島の景色のいいところを一緒に眺めればすぐに打ち解けられるかも!いっぱい仲良くなったらダクマの修行を始めるからワシちゃんに教えてよん!」

 

「つまり…旅に出るってことか」

 

「我らもついていくぞ。いくらでもバトルの相手になろう」

 

「うん、行こうか!新しい旅に!」

 

 

 マスター道場を飛び出す俺達。……ついでに蟲ポケモンを集めたいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、景色のいいところを探してヨロイ島を巡る俺達。そんな中で俺は新たに二匹の仲間を手にしていた。

 

 

「ハッサム!バレットパンチ!」

 

「ダクマ!右に避けてつばめがえし!フシギソウはしびれごな!」

 

「カイロス!あてみなげ!」

 

 

 ダブルバトルでユウリを追い詰めるのは、新たに仲間になったハッサムとカイロス。むしポケモンの中でも強力無比と呼ばれる部類の二体だ。ダクマを挟んで投げつけるカイロスに驚くユウリ。後攻になることで必ず当たる技だ。避けることが得意なダクマでもそれは変わらない。

 

 

「ハッサム、こうそくいどうからのれんぞくぎり!」

 

 

 さらに、こうそくいどうしつつフシギソウを連続で斬りつけて大ダメージを与えて戦闘不能に。まひしていようがスピードを上げれば問題ない。

 

 

「そこ!ほのおのパンチ!」

 

「なに!?」

 

 

 移動先を見切られて、ダクマから四倍ダメージのほのおのパンチを真面に受けて吹き飛ぶハッサム。だから平然と人間離れした指示をするな!

 

 

「お前、本当に人間か?エスパーだとか言われた方がまだ納得いくぞ」

 

「失礼な。ただの女の子です!」

 

「チャンピオンの時点でただのではないぞ」

 

 

 俺とモコウのツッコミに不服そうなユウリ。これでヨノワールの拳に耐えるタフネスがあるんだろ?本当に人間か?

 

 

「なんか失礼なこと考えている気がする…」

 

「隙ありだ!ハサミギロチン!」

 

「上に逃げてつばめがえし!」

 

 

 グシャッ、と。カイロスの挟み込みは簡単に避けられて返しの蹴りが炸裂。カイロスは頭頂部にもらって頭から崩れ落ちた。…このダクマ、マスタード師が才能の塊だと言っていただけあって普通に強いな。ハッサムとカイロス、強いっちゃ強いが俺のバトルスタイルとあってないというか、使いこなせてない感が凄い。なにかよさそうな蟲ポケモンがいたら交代かなあ。

 

 

「ラウラ。一撃必殺はずるくないか?」

 

「隙を見せたんだから使うべきだろ」

 

「うん、私でも使うけど、隙はあえて見せるものだよ」

 

「だからお前、本当に一般家庭出身か…?」

 

 

 腕試しのダブルバトルが終わったので、見晴らしのいい場所で三つのキャンプを建てて三人で鍋を囲んでカレーを作る。囲んでいるポケモン達のうち、ムゲンダイナとザシアン、セキタンザンにカメックスの圧が凄い。ラランテスは可愛いなあ(現実逃避)。

 しかし面子が凄い。俺のデンチュラ、ウルガモス、ラランテス、ホイーガ、ハッサム、カイロス。ユウリのインテレオン、フシギソウ、セキタンザン、ザシアン、ムゲンダイナ、ダクマ。モコウのライボルト、パッチラゴン、ストリンダー、ルクシオ、ジバコイル、カメックス。全体的にごつい。あ、ちなみにルクシオはコリンクが進化したもので、ジバコイルは俺のハッサム達と同じで新たに捕まえていたポケモンだ。

 

 

「しかしラウラよ…毒は怖くないのか?」

 

「は?毒が怖くてホイーガの世話ができるか。安心しろ、分厚い手袋は付けているしなんでもなおしは常備している。なんならモモンのみもあるぞ」

 

「お、おう。お前がいいならいいんだ」

 

 

 カレーを食べ終えて思い思いに過ごす中、分厚い手袋を装着してホイーガの甲殻を湿った布で拭いていると、モコウが危ない物を見るような目で見て来たので反論する。こうしないと乾いて罅割れちゃうかもしれないからな。蟲ポケモンは繊細なんだ、アフターケアは万全にしないと。毎晩の日課だ。

 

 その他にも、ウルガモスのモフモフした体毛から燃え移りそうな埃や塵を見つけて取り払い、ブラッシングする。ラランテスの痛んでいる鎌やカイロスの鋏を優しく手入れする。ハッサムの火傷を受けたボディにやけどなおしを施し、紙鑢で磨く。最後にデンチュラの爪を磨き、優しく毛づくろいしてやった。

 

 さらにリュックのポケモンボックスに預けているドラピオン達も出して順番にケアしていく。これはソニアさんからもらったものだが便利になったものだ。今のポケモンはパソコンを介さなくても預けたり引き出したりできるらしい。え、なんで試合の時に使わなかったのかって?そりゃお前、ウルガモス達新人を活躍させたかったからに決まっているだろ。ドラピオンに挨拶しているハッサムとカイロスを眺めながらモスノウの毛づくろいをしていると、ユウリが話しかけてきた。

 

 

「ラウラはほんと、蟲ポケモン達が好きだよね」

 

「そりゃあな。俺の生きる意味と言ってもいい」

 

「私も出来る事なら蟲ポケモンとしてラウラに愛されたかったなあ…」

 

「……お前、ポケモンだったら俺とポケモンバトルすることも出来ないけどいいのか?」

 

「それは嫌だな!」

 

「ラウラの蟲好きもそうだがユウリ、お前もぶれないな…」

 

 

 そして、夜は更けていく。月明かりを受ける蟲ポケモン達は幻想的で、それはもう美しかった。




今回「64」話目であるということもあり、リクエストがあったのでラウラの蟲ポケモンの愛で方を書いてみました。次はカイロスとハッサムを上手く活躍させたいところ。

・ラウラ
蟲ポケモンの手入れのために分厚い手袋やらブラシやらピンセットやらをファイトマネーで買い込んでいる主人公。独自で蟲ポケモンの扱い方を研究して的確な手入れをしている。ひでんのヨロイがダクマだと知りあからさまに気落ちした。ハッサムとカイロスは強いから、愛でたいからと言う理由で捕まえたけどファイトスタイルは自分に合ってないと自己分析している。

・ユウリ
ダクマを手に入れてさらに戦力アップしたチャンピオン。さらっと移動先を見切る、あえて隙を見せるなど戦術面でもパワーアップしている成長し続けるバトルジャンキー。生まれ変わるなら蟲ポケモンになりたいけどポケモンバトルは楽しみたい。

・モコウ
ツッコミ役が板についてきたお嬢様。さらっとコリンクをルクシオに進化させたり、ジバコイルを手に入れたりと戦力アップしている。手持ちを手入れしたいけど下手くそなためすぐ感電するドジっ子体質は相変わらず。ジバコイルに至っては素手で触れたらすっごい嫌がられて涙目になっている。

・カイロス♂
とくせい:かたやぶり
わざ:あてみなげ
   ハサミギロチン
   むしくい
   やまあらし
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。暴れることが好き。

・ハッサム♀
とくせい:テクニシャン
わざ:こうそくいどう
   れんぞくぎり
   バレットパンチ
   エアスラッシュ
もちもの:なし
備考:おくびょうな性格。物音に敏感。

・ダクマ♂
とくせい:せいしんりょく
わざ:つばめがえし
   ほのおのパンチ
   ビルドアップ
   かわらわり
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。ちょっぴりみえっぱり。鍛えられてレベルは50くらいに。

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VSクリムガン

どうも、放仮ごです。ラウラがユウリ、ムツキがルミと大ファンがいる中でモコウだけいなかったので大ファンを作ることにしました。

そんなわけで今回はモコウ主役回。楽しんでいただけると幸いです。


 ぬしポケモン、とネット上で呼ばれる強力なポケモンがガラルには点在しているらしい。ラウラのドラピオンがその一匹だとか。己の縄張りを持ち、入ってきた輩を絶対に許さない凶暴なポケモンなのだという。なんでこんな話をしているのか、というとだ。

 

 

「こいつもそのぬしポケモンということかぁあああああ!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 

 

 少女を抱いて逃げる我を追いかけてくるのがそのぬしポケモンであろうクリムガンだと言う事だ。ラウラとユウリがいない時にこんな化け物と出くわすとか厄日か!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこうなったのかを考える。雨が降りしきり景色のいいところを見るのもどうかとなったので、個人的にダクマを集中的に鍛えることにしたユウリ、まだ見ぬ蟲ポケモンに会うべく探索に出たラウラと別に、ラウラと同じくでんきポケモンがいないか探索に出た所、洞穴を見つけたと思ったらそこから少女が必死の形相で飛び出してきて、それを追いかけるようにガラル本土では見ないドラゴンポケモン…クリムガンが出て来たのに出くわした。

 

 

「助けて!お姉ちゃん!」

 

「お、おう?!」

 

 

 少女は我を見るなり助けを求めて来て、私のパッチラゴンを繰り出してドラゴンテールで追い返そうとしたものの、まさかの一撃ノックアウト。慌ててパッチラゴンをボールに戻して少女を抱いて走って逃げだした。こんなところだ。ぬしポケモンに喧嘩を売るもんじゃないな!

 

 

「お前、名前は!?」

 

「わ、私サタリア。旅行中にお父さんと逸れちゃって、雨が降って来たから洞穴で雨宿りしようとしたら…」

 

「奴の縄張りで、怒らせてしまったと。そういう訳だな!」

 

 

 ピカチュウの着ぐるみを着た、黒髪の子供。ポケモンごっこのお子様は基本的にピカチュウが男子でイーブイが女子だから男子だろうか。にしては軽いが。いや、名前からして女子か。今はそれよりもだ。

 

 

「とにかく逃げきって隠れるぞ!あれは手に負えん!」

 

「え!?お姉ちゃん、ポケモントレーナーなんだよね!?倒せないの!?」

 

「お子様には分からんだろうが、我の切札が一撃で落とされた時点でどうしようも…!?」

 

 

 いつの間にか崖上まで追い詰められ、立ち止まる。奴め、知能が高いのかそれとも我のドジが発動したのか。振り向けば、我らが止まったことに気付いたのかゆっくりと歩み寄ってくるクリムガン。あー、もうこうなれば!

 

 

「ライボルト!雨なら当てれるよな!?かみなり!」

 

 

 ライボルトを繰り出し、最大火力であるかみなりをぶつける。今日に限ってパッチルドンを連れてないからな。火力で押し切るしかない。しかしてクリムガンは黒焦げなれど健在で。

 

 

「馬鹿な、まるで効いてないだと!?じしゃくを持たせた我の最大火力だぞ!?」

 

 

 イラついているようで、大きく口を開いてかみくだいてくるクリムガン。ライボルトが避けるだけで地面が抉られ、その威力の凄さがうかがえる。あんなの喰らったらライボルトは一撃だ。

 

 

「くっ…ワイルドボルト!」

 

 

 雨が降りしきる中、雷光が輝く。クリムガンの一振りでこちらまで吹き飛ばされてくるライボルト。今のはドラゴンクローか?なんて威力だ。こうなれば最後の手段だ。

 

 

「頼む、ルクシオ!ほえる!」

 

 

 ほえるで追い立てようと試みる。ポケモンの戦意を失くさせて逃走させる技だ、これならば。しかしビクともしないクリムガン。ほえるが効かないだと!?そう、茫然としてしまったのがまずかった。

 

 

グシャリ

 

 

 鋼鉄と化した頭が振り下ろされ、電撃を放って迎撃しようと帯電していたルクシオが沈む。私の指示が速ければ、あるいは。

 

 

「カメックス!ラスターカノン!」

 

 

 繰り出したカメックスの放った光線を、俊敏な動きで避けるクリムガン。カメックスの砲撃の速度でさえ避けられるだと!?

 

 

「みずのはどう!」

 

 

続けて水の砲弾を放つが、アイアンヘッドで突き破られて突進、ドラゴンクローがカメックスの腹部を抉る。カメックスの防御がまるで紙の様に…!

 

 

「からにこもって回転だ!」

 

 

 追撃を、何とか防ぐ。カメックスで防いでいるうちに何とか倒さなくては。

 

 

「ストリンダー、オーバードライブ!」

 

 

 繰り出すと同時に放たれる電撃の伴った音撃。それを受けて怯むクリムガン。畳み掛ける!

 

 

「カメックス、ラスターカノン!ストリンダー、オーバードライブ!」

 

 

 二匹の最大火力を相手にぶつける。ちらっと図鑑で見た限りドラゴンタイプ、水技や電気技が効かないのがきつい。あの時と、キバナ相手にどん詰まった時と同じだ。我はドラゴンがどうも苦手らしい。だが、それでもだ。

 

 

「同じ轍を二度踏むほど、我は弱くはないぞ…!」

 

 

 その瞬間、爆煙で見えなくなったクリムガンの咆哮が轟き、カメックスが一撃で殴り飛ばされていた。

 

 

「え?」

 

「お姉ちゃん、来るよ!」

 

 

 さらにストリンダーも殴り飛ばされ、無防備となる。こちらに向かってくるクリムガンの瞳に正気はない。この技は、げきりん…?我は文字通り逆鱗に触れてしまったのか?

 

 

「くっ!」

 

 

 咄嗟にサタリアを守るべく庇う姿勢となり、背中に強烈な一撃を受けて、私達は崖の上から投げ出される。迫る木々に、死を幻視する。

 

 待て待て待て待て待て。

 

 こんなところで終わるなど、冗談でもない。まだユウリどころか、ラウラにも勝っていない!我は、私は最速最強になるんだ。こんなところで終われない、死ねない!……そうだ、まだ手はある!

 

 

「ジバコイル!」

 

 

 新たな私のポケモン。嫌われてしまって、全然言うことを聞いてくれないけれど、今だけは、力を貸してくれ!頼む!

 

 

「でんじふゆう!」

 

 

 ジバコイルの頭の突起を握りしめ、もう片方の手にサタリアを抱えて絶叫する。瞬間、その場で制止するジバコイル。投げ出されそうになったが、ジバコイルが体をずらしてくれて落ちずに済んだ。

 

 

「これ、ポケモンさん?」

 

「そうだ、こやつはジバコイル。我の…新たな仲間だ!…捕まえるだけ捕まえて、お前に信頼を見せていなかったな。すまん。今は、力を貸してくれ」

 

 

 ジバコイルが懐かなかったのもよく考えれば当たり前だ。我から信頼を何も見せていなかった。信頼してくれない相手に懐かないのは道理だ。素手で触れて気を悪くするのも道理だ。だが、我の声に答えて急上昇してくれるジバコイルから嫌がっている感じは見えない。

 

 

「待たせたな、クリムガン!ジバコイル、ロックオン!」

 

 

 そのまま瀕死のカメックスに手を出そうとしていたところに崖下から飛び出してきた私達に驚き、突っ込んでくるクリムガン。私達が降りて、指示に従ってくれるジバコイルの、大技が雨が降りしきる中、放たれた。

 

 

「でんじほうだあ!」

 

 

 膨大な電気の塊が放たれ、クリムガンを飲み込んでいく。大地を焼き、焦がしていくその一撃の威力は絶大で。電気の塊が霧散した時には、クリムガンが戦闘不能となり倒れていたのだった。

 

 

「やった、やったよお姉ちゃん!」

 

「そう、だな…」

 

 

 安心したと同時に、ドッと疲れが出てきて倒れ込む。…ははは、私はユウリ程人間をやめてはいないからな。ドラゴンタイプの一撃は、さすがに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、起きたか」

 

 

 目覚めたら、見慣れた布の屋根の下だった。横に顔を向けたら、そこにはすごいきずぐすりと包帯を手にしたラウラがいた。背中に違和感があるので、包帯を巻いてもらったらしい。

 

 

「ラウラか、ここは…?」

 

「キャンプだ。お前のジバコイルが慌てて俺に知らせに来てな、引かれてついて行ったらお前が重傷で倒れていたから慌ててここでキャンプを張ったんだ。ユウリにも知らせておいたから安心しろ」

 

「サタリアと…私の、ポケモン達は…」

 

「それならみんな元気に外で遊んでるぞ。サタリアとやらは逸れた親にマスター道場経緯で連絡して、迎え待ちだ。ポケモン達はお前のことは俺に任せろと言ったら安心してくれた。お前、愛されてるな」

 

「…お前ほど愛を与えてあげれないがな」

 

 

 起き上がる。激痛で叫びそうだが、ポケモン達の安否を確かめるべく外に出ると、サタリアと遊んでいたところで私を確認するなり抱き着いてくるライボルト、パッチラゴン、ストリンダー、カメックス、ルクシオ、ジバコイルを受け止め背中から倒れて激痛が襲う。

 

 

「ぎゃあああああ!?痛い、痛いが嬉しいぞお前たち!」

 

「お姉ちゃん!大丈夫?」

 

 

 慌てて駆け寄ってくるサタリア。笑顔だったのがまた涙目になってる。優しい子だ。

 

 

「大丈夫、大丈夫だから心配するなサタリア。親に連絡ついてよかったな」

 

「うん、お姉ちゃんのおかげだよ!お姉ちゃん、助けてくれてありがとう!大好きだよ!」

 

「お、おおう」

 

 

 ポケモン達がどいたところをサタリアが抱き着いてきたので慌てて受け止める。好意を向けられるのは、こそばゆいな。こんな子供でも、認めてもらえたと思えばなんか、いい気分だ。

 

 

「大きくなったらお姉ちゃんのお嫁さんになってあげるね!」

 

「わ、私は女だぞ!?」

 

「でもかっこいいもん!」

 

「か、かっこいい…」

 

 

 ふむ。我のセンスがかっこいいか。ふむ、ふむ!悪い気はしないな!……だがその感情は多分、吊り橋効果と言うやつでだな…と説明しようとしていたら、キャンプの中からニヤニヤ見てくるラウラが見えて。

 

 

「なんだ!見せもんじゃないぞ!」

 

「いいや?ファンができて良かったなって」

 

「うん、お姉ちゃんの大ファンだよ!大好き!」

 

「…えーと、なにしてるの?」

 

 

 そこにやってきたユウリの呆れた声。そんなもの、我が知りたいわ!




おねロリ、いいよね!

・モコウ
ジバコイルが懐いていなかった理由に納得しかしなかった今回の主人公。ユウリと違って常人なため普通に重傷。雨とクリムガンの攻撃で髪型が崩れていたことには気付いていない金髪ロングヘアーのイケメン美女。そりゃ子供も惚れる。

・ラウラ
ジバコイルに呼ばれてついて来てみればモコウが重傷で倒れていたのでギョッとなって手持ちのきずぐすりと包帯で治療した主人公。モコウとサタリアを温かい目で見守る。

・ユウリ
連絡を受けて来てみればなんか妙なことになってたので自分のことを棚に上げて奇人を見るような目を向けていた原作主人公。ちなみにクリムガンに襲われた崖の上がちょうど絶景ポイントの一つだった。

・サタリア
ポケモンごっこしている8歳の女の子。女子なのにピカチュウなのは好きなため。手持ちにピカチュウがいるがクリムガンに瞬殺された。でんきタイプ、特にジバコイルを可愛いと言って大好きなでんき狂いだったりする。助けてくれたモコウも大好きで戦ってる姿に大ファンになった。名前の由来は過去作のオリキャラとサンビタリアから。

・ジバコイル♂
とくせい:がんじょう
わざ:でんじほう
   でんじふゆう
   ロックオン
   ミラーショット
もちもの:じしゃく
備考:しんちょうな性格。とてもきちょうめん。

・クリムガン♂
とくせい:ちからずく
わざ:かみくだく
   ドラゴンクロー
   アイアンヘッド
   げきりん
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。暴れることが好き。ヨロイ島のぬしポケモンの一体。洞穴を縄張りにしていて、雨宿りに入り込んだサタリアに襲いかかった。一撃一撃が重い。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSダクマ

どうも、放仮ごです。出かけていて書けずにこんな時間に投稿になってしまいました申し訳ねえ。

今回はVSダクマ。型を決めるための戦い。楽しんでいただけると幸いです。


 サタリアを親御さんに送って翌日のこと。絶景巡りとダクマの修行を続けていた俺達は、腹ごしらえにキャンプしていた。たまにはカレー以外も食べたいと思うがユウリがなんでもかんでもカレーにぶちこむのでそれは叶わない。

 

 

「うん、カレーは最高だね!」

 

「さすがに連日カレーは飽きるぞ…」

 

「ダイスープが今や恋しい…」

 

 

カレー狂、否。カレー教信者のユウリはともかく、この一週間ほどの旅ずっとカレー三昧はさすがに飽きる。しかしあの戦いから一週間か。ハッサムとカイロスも増えて、モコウもジバコイルが増えて、ユウリのダクマも強くなって、まあ成長したんだろうか。そう、モコウの背中の包帯を替えながら考える。

 

 

「痛くないか?」

 

「できれば泣きたいほど痛い」

 

「すごいきずぐすりでも完治しないって酷い傷だね。痕が残るかも?」

 

「サタリアを守った名誉の傷だ、甘んじて受け入れよう。でんきタイプのユニフォームは厚手だから目立つこともあるまい」

 

 

 そうなのだ。昨日、クリムガンからサタリアを守るために背中で受けた爪による切り傷が、三本の筋の様な痕としてモコウの背中に残ってしまった。すごいきずぐすりを総動員したのだが、手当てするのが遅かったらしい。

 

 

「そう気にするなラウラ。お前たちと違って我が弱かったから受けた傷だ。お前が気にすることでないわ。そうだ、あのクリムガンはどうしたんだ?」

 

「一応麻痺させといてサタリアに聞いた洞穴に置いて来たよ。ルミならともかく、お前の趣味でもないだろう?」

 

「そんな強いクリムガン、ちょっと欲しかったなあ」

 

「「ヤメロ」」

 

 

 これ以上ユウリが強くなってたまるか。…いや、強くなるためにダクマを修行中だったか。そういや、そろそろ完全に懐いて来たんじゃないか?

 

 

「ユウリ、そろそろマスタード師の言っていた条件を達成できたんじゃないか?」

 

「うーん、そうかな?ダクマ、どうかな?」

 

 

 ユウリの問いかけに、べあーま!とぐっと親指を立てるダクマ。仲良しだなお前ら。モコウも背中越しにその様子を見て笑っている。

 

 

「じゃあ私とダクマ、マスター道場に戻って師匠に話してくるから、ラウラ達はここで待ってて」

 

 

 ザシアンを繰り出してその背の上にダクマと一緒に跨りながらそう笑うユウリ。………古今東西、伝説ポケモンをタクシー代わりにするトレーナーはお前だけだろうよ。モコウと共に呆れた顔でユウリを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからな。デンチュラをフルに活用するのにエレキネットは必須の技で…」

 

「うむ、それはわかるが最近持て余していないか?きゅうけつ、いとをはく、ほうでん、エレキネットの構成で変えるべきだとしたらきゅうけつかエレキネットだろう?」

 

「今がベストな技構成だと思うがなあ」

 

「お前はどんな状況でも対応しようとして器用貧乏になりがちだぞ」

 

「ただいま!」

 

 

 でんきのエキスパートであるモコウとデンチュラの技構成について話していると、今度はムゲンダイナに乗ってユウリが戻ってきた。だからお前な…まあいいや、気にしないでおこう。

 

 

「どうだった?」

 

「もっと強くなりたいなら、双拳の塔に挑めってさ」

 

「双拳の塔?ってあれか?時々見えていたあの二つの塔か」

 

「青い塔と赤い塔か。アレに挑むのか?二つとも?」

 

「水の塔と悪の塔だって。登れるのはどちらか一つの塔だけで、選んだ塔でダクマの格闘の型というかタイプが決まるんだって。どっちがいいと思う?」

 

 

 二種類のタイプに進化するポケモンってことか?それともまったく別のポケモンになるのかな?ケムッソみたいだな。アゲハントもドクケイルもいいんだよなあ…

 

 

「水の拳とかなんでも受け流しそうで強そうだな」

 

「悪の拳はなんか、一撃が重そうだ」

 

「迷うよね…」

 

 

 うんうんと三人して悩む。生前、ポケスペで読んだことがある。つまり水とは「柔の奥義」で悪とは「剛の奥義」ということだろう。俺としては水だな。印象として、どんな相手にも対応できるんだろう。みずのはどうを扱うユウリとも相性がよさそうだ。逆にモコウは一撃の強さに重きを置いている。悪の拳の方を推しそうだ。肝心のユウリはどうだろう。

 

 

「ユウリのバトルスタイル的にはどうなんだ?」

 

「どっちもいいよね!」

 

「だよなあ」

 

「お前、なんでもできるからな…」

 

 

 ユウリは言っちゃあなんだがオールマイティだ。俺みたいなテクニックで力の差を補うタイプとも、モコウの様に速攻で仕留めるタイプとも、ムツキの様なレベルでごり押しするタイプとも、ナグサの様な防御に重きを置いたタイプとも、ルミの様なポケモンの長所を引き出すタイプとも、どれとも違い、どれでもある。それがユウリだ。器用万能と言うのか、とにかく苦手がない。あえて言うならルミが一番近いか…そのポケモンの一番得意なスタイルを引き出して使いこなすのだ。水の拳と悪の拳。どっちでも、ユウリは使いこなすだろう。

 

 

「となると…」

 

「このダクマがどっちのスタイルか、になるな」

 

「そうだね。ダクマ、いける?」

 

 

 べあーま!と力強く頷くダクマ。俺はハッサムを繰り出す。模擬戦だ。モコウは休ませるとして、まずは悪の拳…剛の拳で行くか。俺のハッサムとカイロスがこのタイプだ。自分の強みを相手に押し付ける。それが剛の奥義…だったはずだ。

 

 

「エアスラッシュ!」

 

「ダクマ、避けてつばめがえし!」

 

 

 放たれた風の刃を、構えたまま横に避けて返しの蹴りを繰り出すダクマ。その動きに、柔の動きを見る。ふむ。相手の技を利用して強烈な一撃を返すのが柔の奥義、だったはずだ。

 

 

「こうそくいどうからのバレットパンチだ」

 

「そのまま真正面にほのおのパンチ!」

 

 

 高速移動で接近し、音速の拳を繰り出すハッサム。対してダクマは臆さずその場で拳を振るい、クロスカウンターが決まり、ハッサムは殴り飛ばされる。今度は剛の動きか。才能の塊と言うのも考え物だな!

 

 

「交代、カイロス!やまあらし!」

 

「避けてビルドアップ、からのかわらわり!」

 

 

 カイロスの豪快な突進を、飛び箱の様に避けて着地。気合いを溜めて能力を上げ、手刀を大地に叩き込み地割れを生むダクマ。カイロスは跳躍してそれを避け、横からダクマを掴もうとする。

 

 

「あてみなげ!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 上手い。カイロスの勢いを利用した蹴りが鋏の間に炸裂、蹴り飛ばされるカイロス。なんというか、タイミングを読むのが上手い。ユウリの指示がなくとも相手の呼吸を読んでいるのか的確に利用してくる。これは…

 

 

「決まりだな」

 

「だね。決めるよ、ほのおのパンチ!」

 

 

 ユウリと共に頷く。このダクマが本領を発揮できる型は決まりだ。あとは模擬戦とはいえ、決着をつけるのみ。炎を纏った拳を繰り出すべく、倒れているカイロスに接近するダクマ。だが、甘い!

 

 

「ハサミギロチン!」

 

 

 ガバッと起き上がり、渾身の挟み込みがダクマに炸裂。カイロスがあれぐらいで弱ってたまるか。ダクマは何とか逃れようと鋏を掴んで足掻くが、そのまま力を込めて一撃必殺が決まった。

 

 

「俺の勝ちだ。リベンジ戦は塔の修行を終えた後でな」

 

「悔しいよね、ダクマ。もっと強くなってリベンジしよう」

 

 

 弱々しく拳を合わせるダクマとユウリ。そのパートナーともいえる関係は、いいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてやってきた青い塔、水の塔。俺とモコウは外で待機し、ユウリはダクマ一匹だけで塔を制覇すべく登って行った。ユウリの手持ちはみんな俺が預かっているが、ムゲンダイナが気に入らないようでぶるぶるプレミアボールが震えていた。…こいつ、俺に負けたことをまだ認めてないらしい。やるか?と睨んでやると睨み返された。こいつとは仲良くできる気がしねえ。

 

 

「…お前ら、喧嘩はするなよ?」

 

「ムゲンダイナを出して決着付けてやってもいいんだがな?」

 

「やめろ、またブラックナイト起こす気か」

 

「お待たせ!本気の師匠強かった、楽しかった!」

 

 

 ムゲンダイナと視線を交わしていると戻ってきたユウリに振り向く。そこには、見上げる程に大きくなったダクマの進化系と思われるポケモンがいた。

 

 

「ウーラオス、れんげきのかた だって!多撃必倒!水の流れの様に途切れることなく打撃を相手に叩き込むんだって」

 

「なるほど、だから水か」

 

「今更だがインテレオンと被るが、本当によかったのか?」

 

「そのポケモンの良さを引き出すのが一番だからね!」

 

 

 そう笑うユウリは輝いていて。チャンピオンかくあるべしと実感した。




ポケスペ四章は良いぞ…

・ラウラ
生前読んだポケスペを参考にしてみたけど思ってたのと違って肩透かしな主人公。水の型と聞かれてまず思い浮かんだのは蜘蛛鬼一家が好みなため読んでいた鬼滅の刃の水の呼吸だったり。テクニックで力の差を埋めるスタイル。

・ユウリ
オールマイティにポケモンを使いこなす原作主人公。数多のポケモントレーナーと戦い、そのスタイルを物にしてポケモン達の良さを引き出す。師匠との対決はほのおのパンチを連打してやけどを負わせた上でフルボッコにした。

・モコウ
背中に傷跡が残ったでんき使い。自分が選ぶなら悪の型を選ぶと確信しているぐらいに「一撃」「速攻」に重きを置いている。デンチュラもとっこうフルアタにすればいいんじゃないかと思っている。

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VSサメハダー

どうも、放仮ごです。今作のラスボスの構想を纏めてたりしていたらまたこんな時間に投稿になってしまいました申し訳ねえ。

今回はウーラオスをさらに強くするための旅の一幕。楽しんでいただけると幸いです。


 ユウリとウーラオスと合流後、ユウリがマスタード師に戻るように言われたとのことなのでマスター道場に帰還する俺達。そこで待っていたのは、ホップだった。

 

 

「おっ、三人とも!お帰り!道場での修業頑張っているみたいだな!」

 

「なんでホップが!?」

 

「お前、ソニアさんところから逃げてきたのか?」

 

「博士になる勉強はどうした」

 

「信用ないのか俺は!?いいリアクションなのはユウリだけだぞ…俺、ダイマックスの調査でさ。しばらくヨロイ島にいるんだ!」

 

「うふふ。四人はお友達なんだってねー。ホップちん、ヨロイ島でキャンプする許可を取りに来てくれたんだけど、大変だし道場に泊まればー?って話してたのよん」

 

 

 なるほど。たしかにこの島でまともな建物ここだけだからな。

 

 

「すっごく助かるけど皆の迷惑にならないかな?」

 

「いや、私達は外でキャンプして一週間過ごしたし?」

 

「悪いことは言わない、泊まれホップ」

 

「キャンプだとカレー地獄になるぞ…」

 

「お、おう…」

 

 

 モコウと二人してホップに言い聞かす。たじろぐホップと不満げなユウリ。そんな俺達を見てマスタード師は笑った。

 

 

「マスター道場は何時でも誰でもウェルカムだよん!三人も、キャンプしないで一旦ここに戻ればよかったのに」

 

「「…たしかに!」」

 

 

 ユウリが意気揚々とキャンプするから全然違和感なくキャンプしてたが帰ればよかった。大体ユウリのせいである。

 

 

「それに、ダンデちんの弟ならワシちゃんたちにも家族だからねー」

 

「そっか…小さい頃、兄貴もこの道場に……マスタードさん!やっぱり俺…しばらくやっかいになるぞ!」

 

「いえーい!もちろんオーケー!賑やかで楽しくなりそうだねー!ところでユウリちん。ダクマが進化したウーラオスについて教えるねー」

 

「はい!」

 

 

 俺達にとっての本題だ。おそらくだがキョダイマックスさせるためにダイスープを飲むようにとかそんなんだろう。この道場はキョダイマックスの扱いを鍛える道場、そんな感じがする。ダンデのリザードンとかそうだしな。

 

 

「ウーラオスはキョダイマックスの可能性を秘めてるんだけど、ダイキノコの風味が苦手でダイスープが飲めないんだよん」

 

「そうなんですか?じゃあどうすれば…」

 

「ヨロイ島で採れるある物をスープに入れれば飲んでくれるようになるんだけども…」

 

「そのあるものとは…?」

 

「あるものとは…忘れちゃったよーん」

 

「「「「ええー!?」」」」

 

 

 俺達三人とホップの声が重なった。…耄碌爺さんであったか。いや失礼か。ノリがいいと喜ぶマスタード師にそりゃないぜと肩を落とす俺達。そこで、熊の様な風貌のウーラオスを思い出して思いつく。熊と言えばアレじゃないのか?

 

 

「いや待て。当ててやる。ハチミツなんじゃないのか?」

 

「「「ハチミツ?」」」

 

「そうそう、ダイミツって言うんだけどね。よくわかったねラウラちん」

 

 

 蟲に関する事なら任せておけと胸を張る。…まあ、前世で見た某世界的アニメーションの熊から思いついたものだったんだが。

 

 

「おそらく、はちのすポケモン、ビークインのハチミツがそうなんじゃないか?」

 

「それなら、この辺りだと青い塔の近くにある六角形の島…ハニカーム島に生息していたはずだぞ!」

 

「ありがとうホップ!いくよ、二人とも!」

 

「おう、ビークインに早く会いに行くぞ!」

 

「お前もぶれないな…」

 

 

 そう言って駆け出してくユウリを追いかける俺とモコウ。出る間際、ホップの「俺もついてきたかったんだぞ」という呟きが聞こえた。…なんというか、すまん!今は早く、いかにも特殊そうな匂いがするそのビークインに会いたい!ガラル本土にいたとはいえ群れの頂点に位置する珍しいポケモンだからな。え、ガラルでは違う?メスのミツハニーの希少さを知らんのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数刻後、自転車で海を渡るユウリと、それに追従するムゲンダイナに乗った俺とモコウ。二人を乗せても軽々浮かべるこいつがいてよかった。ユウリの自転車は正直よくわからないが。なみのりってわざ、知ってる?

 

 

「あれかな?」

 

 

 ユウリの呟き。前方に見えてきたのは、一本の木が生えた小さな島。見ればミツハニーが群がっている。このヨロイ島は楽園しかないのかな?そう顔をほころばせた、その時だった。

 

 

「っ!?二人とも、掴まって!」

 

 

 何かに気付いたユウリが方向転換、大波に乗って自転車をしまい、俺とモコウの間に降り立つ。そして大波に乗って現れたのは、巨大な口。

 

 

「ムゲンダイナ、右にずれて!」

 

 

 ムゲンダイナの下半身に掴まったユウリの指示でずれたムゲンダイナの体を削る鋭い歯。巨大な背びれも見え、距離を取るとそこにいたのは、3m近い巨体のサメハダーだった。

 

 

「まさか、ぬしか!?」

 

「ありゃ大量のポケモンや人間を喰らってきた類の危険種だぞ!?」

 

 

 たまに、他地方の砂漠やら森やら海やらに存在しているらしい、人喰いの巨大ポケモン。モコウが出くわしたクリムガンもそうなのだろうが、こいつは明らかに別格。でかすぎる。とりあえず、だ。

 

 

「デンチュラ!」

 

「レントラー!」

 

「待って、二人とも!それは他のポケモンにも被害が及ぶよ!」

 

 

 俺がデンチュラを、モコウがクリムガンとの戦いで経験を得てルクシオが進化したらしいレントラーをムゲンダイナの背中に繰り出すも、ユウリに止められる。確かにそうだ、生態系を破壊していると思わしきぬし相手でもさすがにまずいか。

 

 

「だがどうする?」

 

「このままだとあのなみのりと思わしき技で海に飲み込まれてお陀仏だぞ?」

 

「こうなったら…!」

 

 

 すると何を思ったのか、二つのボールを手に海の飛びこまんとするユウリ。慌ててモコウと2人がかりで止めた。死ぬ気かお前ェ!?

 

 

「待て、おい待て。なにをするつもりだ」

 

「死ぬ気か馬鹿!?」

 

「ウーラオスとインテレオンと一緒に倒してくる」

 

「水中で指示ができるかド阿呆!?」

 

 

 モコウの渾身のツッコミが木霊した。キリエさんみたいな言葉で指示するんじゃなくて音だけで指示するならともかく、なあ。

 

 

「なら…お願い、インテレオン!ウーラオス!」

 

 

 二体を海に繰り出すユウリ。すると餌の匂いを感じたのか、高速で波を立てて襲いくる巨大サメハダー。

 

 

「インテレオン、みずのはどう!ウーラオス、かわらわり!」

 

 

 上手い。インテレオンがみずのはどうでサメハダーの突撃を受け止め、ウーラオスが手刀を頭頂部に叩き込む。特性のさめはだで傷付いたのか血が流れる。その血が鼻にかかると朦朧としていたサメハダーは目を見開かせ、インテレオンをその背びれで斬り裂き、戦闘不能にしてしまった。

 

 

「あのインテレオンが一撃だと!?」

 

「練度も相当だぞ!?」

 

「ウーラオス、集中して」

 

 

 波の衝撃に揺られながら狼狽える俺達とは逆に、静かに息を整えるユウリ。それは、前世で見た武術の型の準備行動とよく似ていて。

 

 

「すいりゅうれんだ!」

 

 

 水流が変わる。まるで、ウーラオスに集約する様に渦を巻き、流れはサメハダーへと向かい、その勢いで水を蹴り突撃するウーラオス。サメハダーは大きく口を開いて噛み砕かんと迫る。

 

 

「おお…!」

 

 

 そして、流れるような三連撃が的確にサメハダーの全身に存在する急所へと叩き込まれ、その一撃の威力を物語るように喰らった部位がひしゃげ、苦しみ悶えるサメハダーはそのまま深海へとゆっくりと落ちて行った。

 

 

「ふぅ…よし!いい力試しになったね、ウーラオス!」

 

「…あのクラスのポケモンを一蹴、か」

 

「末恐ろしきはユウリか、それともウーラオスの実力か」

 

「どっちもだろ」

 

「違いない」

 

 

 俺達を乗せて、ハニカーム島に向かうムゲンダイナ。何はともあれビークインか、実に楽しみだ。




モチーフはジョーズな今回のサメハダー。サメパニックもの、大好きです。特にシャークネードは良いぞ。

・ラウラ
蟲は好きだけど鮫は無理な主人公。本来長々と回らないといけない謎を前世知識で一瞬でクリアする。ハニカーム島のビークインに興味津々。

・ユウリ
ウーラオスを息を合わせることができるようになった原作主人公。サメハダーがいようが海に飛び込んでインテレオン達と一緒に戦おうとするやべーやつ。ムゲンダイナをもはや乗り物にしているずぶとい性格。

・モコウ
ルクシオがレントラーに進化したツッコミ役。ユウリのとんでも行動にツッコミが追い付かない。

・ホップ
久々登場。ラウラにいいところを全部持ってかれた可哀想な子。犠牲となったのだ…

・サメハダー♀
とくせい:さめはだ
わざ:かみくだく
   きりさく
   なみのり
   とっしん
もちもの:なし
備考:いじっぱりな性格。暴れることが好き。ヨロイ島のぬしポケモンの一体。ハニカーム島の近海を縄張りにしていて、数多のポケモンと人間を喰らってきた危険種。常になみのりしながら移動するため大波を立てる。

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VSビークイン

どうも、放仮ごです。ダイパリメイク来ましたね!しかも二作も来るとは。コロトック待っていたぞおおおおおおお!!

今回はVSビークイン。今回でヨロイ島編はラストとなります。もう見せ場がないのです、残念。楽しんでいただけると幸いです。


 ぬしサメハダーに襲いかかられるなどのハプニングがあったものの、無事ハニカーム島に辿り着いた俺達。だが探せど探せど見当たるのはミツハニーだらけだった。こんな楽園があるならマスタード師も教えてくれればいいのに。お、わざレコード「かふんだんご」だ。アブリボンもいいよな。

 

 

「辺りにはミツハニーしかいないね。ビークインはどこだろう」

 

「真ん中の木から蟲の気配がする…!」

 

「お前の蟲センサーは何なんだ」

 

 

 近づいてみると、木の上から濃厚な甘い匂いがする。揺らしてみると、凄まじい羽音と共に、マゼンタ色の光が溢れだす。これは……ダイマックスエリアだと!?

 

 

「うおおおおおお!?」

 

「「ラウラ!?」」

 

 

 そして俺は、木の中から伸びてきたなにかに掴まれて引きずり込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、ワイルドエリアのポケモンの巣と似た様な空間。そして目の前には、ダイマックスしたビークインが。心なしか下半身のフォルムが通常より大きい気がする。凄まじいプレッシャーだ、技はあまり出せないなこれは。

 

 

「いいぞ、相手にとって不足無しだ。ウルガモス!」

 

 

 タイプ相性で有利を取れるウルガモスを繰り出す。すると風が吹き荒れ、刃となって襲いかかってきた。エアスラッシュか!?

 

 

「ウルガモス、ちょうのまいで避けろ!」

 

 

 なんて猛攻。攻撃に転じられない!風が収まり、隙と見た俺は攻撃に転ずるべく指をさす。

 

 

「フレアドライブ!」

 

 

 すると、ビークインの下腹部の複数の巣穴からいくつもの光球「しもべ」が現れて壁を形作り、フレアドライブを受け止めてしまった。ビークインだけが使える特殊な技、ぼうぎょしれいか!?なんて硬さだ、フレアドライブを受けてビクともしてない。さらにしもべの群れは形を変えてまるでドリルの様に編成を変えて突撃、ギャリギャリギャリとウルガモスを削って吹き飛ばす。今度はこうげきしれいか。厄介だな、あのしもべ。

 

 

「今度はパワージェムか…!?ちょうのまい!」

 

 

 さらに六角形の光を並べる様に複数形成するとそれを発射してくるビークイン。ウルガモスは再びヒラヒラ舞って避けるも、つるぎのまいと違って弾くことはできない。すると当たらないことにいら立ったのかしもべを向かわせてウルガモスに張り付かせて拘束、特大の風の刃、エアスラッシュを放って来た。

 

 

「ひのこで迎撃!フレアドライブで抜け出して突撃だ」

 

 

 ウルガモスが使うことで特大の火の玉となるひのこを放って風の刃と相殺させ、さらにフレアドライブでまとわりつくしもべを吹き飛ばしながら突撃させると、ウルガモスの直線状にパワージェムを形成して自ら突っ込ませる頭脳プレイを行うビークイン。いわタイプのパワージェムは四倍ダメージ、崩れ落ちるウルガモス。

 

 

「くそっ…ラランテス、ハッサム、カイロス!」

 

 

 三体のポケモンを一気に出す。これなら防御指令で防ぐ暇も与えず攻撃できるはずだ。

 

 

「ラランテス、シザークロス!ハッサム、エアスラッシュ!カイロスはハサミギロチン!」

 

 

 ラランテスでしもべたちを引き寄せ、ハッサムが蹴散らし、その隙を突いて鋏を掲げて飛びだすカイロス。しかしパワージェムに阻まれてしまい、さらに風の刃が竜巻となって三匹に襲いかかり、吹き飛ばしながら切り刻み、三匹とも戦闘不能にしてしまった。

 

 

「今度は俺か…!?」

 

 

 そして今度は俺に向けて放たれる風の刃に、咄嗟にそのボールを手にして繰り出していた。

 

 

「頼む、ホイーガ!てっぺき!」

 

 

 身をかがめてホイーガの後ろに隠れ、防御力を上げた甲殻で風の刃を弾く。しかし次々と風の刃と六角形の光弾が放たれ、甲殻に弾かれ続けていく。埒が明かないと思ったのかこうげきしれいでしもべを繰り出してくるビークイン。しもべたちはホイーガを持ち上げて地面に叩きつけ、今度はハンマーの様な陣形となってホイーガを叩き潰してしまう。

 

 

「ホイーガ!?」

 

 

 咄嗟に手を伸ばすが、容赦なくグシャグシャとハンマー(しもべ)で何度も何度もホイーガを叩き潰していくビークインに容赦は一切見えない。しかして叩き潰されながらも光り輝くホイーガ。ヨロイ島で何度見たか分からないその輝きに、心が躍る。此処で進化か!

 

 

「ホイーガ…いや、ペンドラー!」

 

 

 しもべたちをポイズンテールで吹き飛ばし、咆哮を上げるペンドラー。ビークインが再び繰り出したしもべたちが陣形を変えた三日月の様な刃を、てっぺきで受け止め霧散させる。続けて放たれた風の刃も物ともせず、そればかりか俺に襲いかかってきた風の刃も高速で移動して受け止め、防ぎきって見せた。

 

 

「お前って奴は…いくぞペンドラー!てっぺきとポイズンテールしながら、ころがるだ!」

 

 

 その無茶苦茶とも言える指示は、技の連結と言う物だ。二つ以上の技を連結させ、隙なく連続で繰り出す技術。暇な時にみんなで練習していたそれは、鋼色の輝きを纏って体を折りたたみ、紫色の毒を撒き散らしながら高速回転、風の刃に六角形の光弾、しもべたちもまるで寄せ付けない。

 

 

「叩き込め!」

 

 

 キシャー!と奇声を上げてぼうぎょしれいを発動したのか、しもべたちで壁を形作るビークインだが、ペンドラーはそれに真正面からぶつかり、回転しながらしもべたちをポイズンテールで削り飛ばして掘り進んでいき、ぶちぬいてビークインの顔面へと激突、仰け反らせて吹き飛ばした。

 

 

「よし、捕獲だ!」

 

 

 吹き飛んでいくビークインに、咄嗟にネットボールを取り出してガラル粒子を集束させて巨大化させ投擲。力なくよろめくビークインを吸い込んでいき、ドサッと落ちて揺れたかと思うとカチッと音を鳴らして元の大きさに戻ったそれを手に取る。

 

 

「ビークイン、ゲットだ!」

 

 

 かっこよくてかわいくて美しくて最高で最強!俺の布教したい蟲ポケモンのよさが全て揃っているビークイン、最高か!

 

 

 外に出ると同時、勝負の衝撃で木の上から不思議なミツが落ちてきた。慌てて駆け寄ってくるユウリとモコウに笑顔でネットボールを見せる。

 

 

「ビークイン、捕まえたぞ!」

 

「よかった、ラウラ無事だった…もう、私達の心配返して!」

 

「お前が平常運転で何よりだ。それでこれがダイミツか…?」

 

「みたいだな。早く持って帰ろう。……そういえば、ダイマックスエリアだしこっちもダイマックスすればよかったか」

 

「ダイマックスせずにダイマックスしたビークインを倒したの!?」

 

「お前って奴は本当に…」

 

「勝てたんだからいいだろ?」

 

 

 まあ最悪キョダイマックスデンチュラで倒せていたと思うし、何も問題あるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてマスター道場に戻ると、マスタード師たちが待っていた。

 

 

「三人ともお帰りんさーい。およよ?クンクン…なんだかあま~い匂い?」

 

「ダイミツ、手に入れて来ましたよ」

 

「いいビークインも手に入れて満足です!」

 

「ぬしポケモンと戦ったり大変だったがな」

 

「ありゃまー!この短い間に!?」

 

「さすがユウリとラウラとモコウ!お前たちが揃えば百人力だな!」

 

「これでウーラオスもダイスープを飲んでくれるよん。それに、ヨロイ島各地に存在しているぬしポケモンも倒したって言うなら、マスター道場で教えられること三人にはほぼほぼまるっと教えちゃったねー」

 

 

 そうなのか。それは残念だ。技術云々じゃなくてレベル的に強くなる修行だったのかな?いや、キョダイマックスを扱う技術も身に着いたか。

 

 

「特にユウリちん。今の君となら全力で勝負できそ!ワシちゃんもちとトレーニングする必要ができちゃったし…本気の本気のワシちゃんと試合う覚悟ができたら、道場裏のバトルコートまでおいでー!」

 

 

 そう言って道場裏に去って行くマスタード師。するとユウリは俺にウーラオスの入ったボールを預け、更衣室に向かっていく。

 

 

「…私ね、ここに来る前に調べたんだ。マスタード師匠が、18年間王座を守り抜いた、歴代最強のガラルチャンピオンだって。だから、私も全力で挑む。お願いなんだけど、二人でウーラオスにダイスープを与えてくれないかな?」

 

 

 お団子ヘアーを崩しながらそう笑うユウリに、頷く。…あの人がダンデをも超える無敗記録を持つチャンピオンか。それは、ユウリもわくわくするはずだ。これから始まる戦いに、胸を躍らせる。間違いなく、今世紀でも指折りに入る名勝負が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、ダイスープを飲ませたウーラオスを、更衣室から出てきたユウリに渡す。クララさんが驚き、ホップが、モコウが、コートで待つマスタード師が笑う。

 

 

「勝ってこい、ユウリ!お前に負けは似合わない」

 

「私を唯一負かした人が言う台詞じゃないね。行ってくる!」

 

 

 そして並び立つは、チャンピオンコーデに身を包んだユウリと、上着と帽子を脱いで薄着姿となったマスタード師。共にボールを構え、睨み合う。

 

 

「君が来てくれてよかった。ワシちゃんをバトルで楽しませる君ならば、遠慮なく本気が出せる。本気でお手合わせ願おう!世界一楽しい時間の始まりだよん!チャンピオン!」

 

 

 そして決着がつき、俺達のヨロイ島の旅最後のバトルの勝者が笑った。




ビークインこそキョダイマックスした姿を見たかった…絶対かっこいいやん。

・ラウラ
ビークインを捕まえてほくほくな主人公。ホイーガもペンドラーに進化、己の鎧ともいえるポケモンを手に入れてご満悦。蟲の気配を察知できる。今のところ、チャンピオンユウリを唯一負かしたトレーナーでもある。

・ユウリ
あまりにラウラが出てこないので木ごとダイマックスほうをしようとして止められていた原作主人公。ちょっと色々危うくなってる。本気を出すときはチャンピオンコーデを身に纏う。

・モコウ
半暴走状態のユウリを(ツッコミで)止められる唯一の人間。ツッコミどころ多すぎな二人に心労が凄い。

・ビークイン♀
とくせい:プレッシャー
わざ:エアスラッシュ
   パワージェム
   こうげきしれい
   ぼうぎょしれい
もちもの:なし
備考:きまぐれな性格。抜け目がない。ヨロイ島のぬしポケモンの一体。ハニカーム島を縄張りにしているが人を嫌い滅多に顔を出さない。しもべたちで防御しながら広範囲攻撃で叩き潰す戦法をとる。

これにて鎧の孤島編はラストです。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板6

どうも、放仮ごです。ウルトラビーストはよ書きたい。

今回は鎧の孤島編まとめ的な掲示板です。アルルカン事件についての補足もあります。楽しんでいただけると幸いです。


ガラルのトレーナーについて語るスレpart64

 

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

だから、ラウラの最強の手持ちはドラピオンやろ

 

65:名無しのトレーナー

お前、病院での試合で伝説ポケモンザシアンを倒したモスノウを知らんのか

 

66:名無しのトレーナー

相棒のデンチュラだってやばいぞ

 

67:名無しのトレーナー

つまりラウラが強いってことでいいな

 

68:名無しのトレーナー

異議なし

 

69:名無しのトレーナー

なんでこの話になったんやっけ

 

70:名無しのトレーナー

伝説ポケモンが目立つチャンピオンユウリに対して、ラウラの手持ちで一番強いのはどれかって話になったんだよな

 

71:名無しのトレーナー

伝説ポケモン使わなくてもユウリ強いけどな

 

72:名無しのトレーナー

それな

 

73:名無しのトレーナー

伝説ポケモンなしでダンデと戦ってほしいよな

 

74:名無しのトレーナー

しかしチャンピオンが休暇届を出した発表からもう一週間か…

 

75:名無しのトレーナー

今頃ヨロイ島か…

 

76:名無しのトレーナー

旅行から帰ってきたら強くなってるんだろうなあ

 

77:名無しのトレーナー

Pocketerによるとラウラとモコウと一緒にマスター道場に弟子入りするとか

 

78:名無しのトレーナー

チャンピオンが弟子入り…?

 

79:名無しのトレーナー

道場破りの間違いでは?

 

80:名無しのトレーナー

いや、元チャンピオンが経営していて元チャンピオンが弟子入りした場所だしチャンピオンが弟子入りしてもおかしくない

 

81:名無しのトレーナー

つまりどういうことだってばよ?

 

82:名無しのトレーナー

チャンピオンがゲシュタルト崩壊しそう

 

83:名無しのトレーナー

18年間無敗のチャンピオン、マスタードが経営してるんだよマスター道場

 

84:名無しのトレーナー

ダンデもそこで修行して強くなったって話だろ?

 

85:名無しのトレーナー

そこにチャンピオンユウリが向かったと

 

86:名無しのトレーナー

ラウラとモコウは分かるけどまだ強くなる気なのか…

 

87:名無しのトレーナー

向上心が凄い

 

88:名無しのトレーナー

伝説ポケモン使ってることで文句を言っている人間も少なくないから、伝説ポケモンを使わない強さを身に付けたいのかねえ

 

89:名無しのトレーナー

いや、もう十分でしょ…

 

90:名無しのトレーナー

ラウラとモコウは多分ユウリに勝つために向かったのにそのユウリも強くなっちゃ意味ないな

 

91:名無しのトレーナー

ラウラのモスノウも結構規格外だし修行しなくてもいいのでは…

 

92:名無しのトレーナー

モスノウと言えば病院の一幕、知ってるか?

 

93:名無しのトレーナー

いつぞやのスレで話題になった剣盾頭の赤青コンビがユウリとラウラをそれぞれ「我が王」「我が女王」と呼んだアレやろ?

 

94:名無しのトレーナー

あれネットニュースにもなってるし知らない奴の方がいないやろ

 

95:名無しのトレーナー

ユウリが王でラウラが女王ってのは言い得て妙だよな

 

96:名無しのトレーナー

あまりに男前すぎて女扱いされないユウリに笑う

 

97:名無しのトレーナー

逆じゃないかなあ…

 

98:名無しのトレーナー

一人称的には逆だよな

 

99:名無しのトレーナー

そのうち我が魔王ってユウリのことを呼びそう

 

100:名無しのトレーナー

わかる

 

101:名無しのトレーナー

そうなるとラウラは我が救世主か?

 

102:名無しのトレーナー

まあムゲンダイナの一件からして確かに救世主だけども

 

103:名無しのトレーナー

当時入院していてその場にいたけどアルルカンの魔の手から救ってくださったとも言ってたんだよな

 

104:名無しのトレーナー

アルルカンってシルクハットのやつか?そういやあいつどうなったんだろ

 

105:名無しのトレーナー

ルミはソニア博士の助手にホップと一緒に収まってたが

 

106:名無しのトレーナー

例のダイマックス事件の犯人は警察に捕まったって発表されてたけど

 

107:名無しのトレーナー

それだけで名前も姿も公開されてなかったよな

 

108:名無しのトレーナー

ちょっと妙だな

 

109:名無しのトレーナー

犯人は金持ちかなんかで規制されてんじゃないの?

 

110:名無しのトレーナー

あー、ありそう

 

111:名無しのトレーナー

赤青コンビの言ってるアルルカンで間違いなさそうだけどな。本名かは知らんけど

 

112:名無しのトレーナー

アルルカン、つまり道化師だろ?これで本名なら親のネーミングセンス疑うわw

 

113:名無しのトレーナー

過去のスレ漁って来たんだけどさ、例のラウラVSルミ実況スレの199のってその時のなんじゃないか?

 

114:名無しのトレーナー

いきなり何の話や

 

115:名無しのトレーナー

ラウラが落ちてきたかと思ったらモスノウで舞い上がって行ったってやつか、なるほど

 

116:名無しのトレーナー

落下中に進化したんだったら奇跡だな

 

117:名無しのトレーナー

ラウラが落ちて来たってどんな激闘だったの…

 

118:名無しのトレーナー

てか普通にトレーナーに危害加えているとかクズの極みだな

 

119:名無しのトレーナー

トレーナーへのダイレクトアタックはご法度。なお犯罪者を除く

 

120:名無しのトレーナー

数年前のマルマイン自爆テロとかやばかったもんな…

 

121:名無しのトレーナー

当時タワートップで大爆発が起きたってニュースもあったから、なんか爆発させてたのは間違いない

 

122:名無しのトレーナー

そんなやべーやつをユウリとラウラで倒したってことなんかね

 

123:名無しのトレーナー

そうだとしたらさすがやわ

 

124:名無しのトレーナー

しかし新鮮な情報入ってこないの痛いな

 

125:名無しのトレーナー

そりゃあヨロイ島はネットも普及されてないからな

 

126:名無しのトレーナー

もしかしたらチャンピオン交代も知らない人ばかりなんじゃないか?

 

127:名無しのトレーナー

それは草

 

128:名無しのトレーナー

もしチャンピオンだと知らずに無謀に挑んでいるトレーナーがいると思ったら草

 

129:名無しのトレーナー

そして容赦なくムゲンダイナを繰り出すユウリの姿が見えるぞ…わしは詳しいんじゃ

 

130:名無しのチャンピオン

よくわかったね。ムゲンダイナじゃなくてザシアンだけど

 

131:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

132:名無しのトレーナー

また出たよこの人w

 

133:名無しのトレーナー

もう慣れたわ。何度乱入してるんだろこの人

 

134:名無しのトレーナー

ご本人様で?

 

135:名無しのチャンピオン

今、帰りの電車で眠っているラウラとモコウの横でこれを打ってるよ

 

136:名無しのトレーナー

今日帰る日だったのか

 

137:名無しのトレーナー

眠っているラウラに手を出して無い、お前偽物だな!

 

138:名無しのトレーナー

 

139:名無しのトレーナー

草だけど納得でさらに草

 

140:名無しのチャンピオン

失礼な。信頼されてるんだしそんなことしないよ!

 

141:名無しのトレーナー

信頼されてなかったらやるのね

 

142:名無しのトレーナー

それでこそ我らが王

 

143:名無しのトレーナー

祝え!我らが王、ユウリが帰還せし時である!

 

144:名無しのチャンピオン

それやめてほしいなあ…あの二人だけでお腹いっぱいだよ

 

145:名無しのトレーナー

まだ付きまとわれていて草

 

146:名無しのトレーナー

ヨロイ島までくっ付いて行ってたら草

 

147:名無しのチャンピオン

そんなことないよ、三人だけ

 

148:名無しのトレーナー

ところで強くなったん?

 

149:名無しのトレーナー

それ気になる

 

150:名無しのトレーナー

俺らの仲だろ、教えてクレメンス

 

151:名無しのトレーナー

馴れ馴れしくて草

 

152:名無しのトレーナー

正直、ダンデよりもファンサ多くて親しみ込めれるチャンピオンだからな…

 

153:名無しのトレーナー

キバナにはさすがに劣るけどな

 

154:名無しのチャンピオン

インテレオンがキョダイマックスできるようになって、新しい仲間を手に入れて、ラウラがウルガモスとかたくさん捕まえて、モコウが怪我して、巨大サメハダーを倒して、マスタード師匠と戦って勝利して、今帰ってるところ、かな

 

155:名無しのトレーナー

色々ありすぎて草

 

156:名無しのトレーナー

モコウ怪我したって何が起きたんや…

 

157:名無しのトレーナー

ラウラは順調にパワーアップしたらしくて何より

 

158:名無しのトレーナー

狂喜している姿が目に浮かぶ

 

159:名無しのトレーナー

さらっとマスタードに勝利していて草

 

160:名無しのトレーナー

巨大サメハダーって何ぞや

 

161:名無しのトレーナー

パニック映画みたいなことになってて草

 

162:名無しのトレーナー

ただでさえ強いインテレオンが超絶強化されたのか…

 

163:名無しのチャンピオン

>>156

クリムガンに襲われた女の子を庇って重傷を負ったんだ。痕は残ったけどもう元気だよ。

>>157 >>158

凄く上機嫌だったよ。かわいかった。

>>159

本気の師匠は本当に強かった…

>>160

3mぐらいのサメハダーに襲われたけど新しい仲間で叩きのめしたから大丈夫!

 

164:名無しのトレーナー

多分ぬしであろうサメハダーを叩きのめしたって、ええ…

 

165:名無しのトレーナー

本気の18年無敗のチャンピオンと戦って勝ったんか…

 

166:名無しのトレーナー

さらに強くなってて笑いしか出てこねえ

 

167:名無しのトレーナー

新しい仲間は何時公開されるんだろう

 

168:名無しのトレーナー

てかあのモコウを追い詰めたクリムガンもぬしなんじゃ…

 

169:名無しのトレーナー

ぬしの巣窟、ヨロイ島

 

170:名無しのトレーナー

ヒエッ

 

171:名無しのトレーナー

こわっ

 

172:名無しのトレーナー

おいでよ!鎧の孤島!

 

173:名無しのトレーナー

旅行に行こうと思ってたけどやめようかな…

 

174:名無しのチャンピオン

駅に着くまでもう少しかかるみたいだけど、まだ質問あるなら答えるよ

 

175:名無しのトレーナー

ラウラの新しい手持ち、わかる?

 

176:名無しのトレーナー

ラウラの新しい仲間

 

177:名無しのトレーナー

ラウラもPocketer初めて捕まえた蟲ポケモンの写真を載せればいいのに…

 

178:名無しのトレーナー

ラウラ、機械音痴みたいだから…

 

179:名無しのチャンピオン

そこも可愛いよね!ちょっと待ってね、ちょうど起きたからラウラに確認取るから

 

180:名無しのトレーナー

絶対興奮した声で起きたと予想

 

181:名無しのトレーナー

我慢できるはずないもんな…

 

182:名無しのトレーナー

自他ともに認めるラウラ狂だからな…

 

183:名無しのトレーナー

無防備に寝ているラウラが側にいて落ち着けるわけがないんだよなあ

 

184:名無しのチャンピオン

失礼な。ちゃんと素数を数えて耐えたよ。それで、ラウラが新しく捕まえたポケモンは、ペンドラー、ウルガモス、ラランテス、カイロス、ハッサム、すっごく強いビークイン、だって

 

185:名無しのトレーナー

草タイプのラランテスも蟲ポケモン扱いなんだ

 

186:名無しのトレーナー

おい待て、すっごく強いってぬしじゃないのか

 

187:名無しのトレーナー

ドラピオンに続いてまたぬし捕まえてるよラウラ…

 

188:名無しのトレーナー

カイロスはいいセンスだロス

 

189:名無しのトレーナー

通信交換でしか進化しないハッサムが野生でいる魔境ヨロイ島…ボッチに優しいなあ

 

190:名無しのトレーナー

ワイルドエリアもヨノワールとか大概だけどな

 

191:名無しのトレーナー

ウルガモスとはアデクリスペクトかな?

 

192:名無しのトレーナー

明らかに強いポケモンばかり増えていてガチ度が窺えるな

 

193:名無しのチャンピオン

一回勝負したけど、ラウラのラランテスとウルガモスがすごく強くて、ムゲンダイナとザシアン負けちゃったんだよね

 

194:名無しのトレーナー

ふぁっ!?

 

195:名無しのトレーナー

!?

 

196:名無しのトレーナー

また蟲で伝説ポケモンを倒してる…

 

197:名無しのトレーナー

ラウラの手持ち最強の候補がまた増えたな(震え)

 

198:名無しのチャンピオン

まあ勝ったけどね!

 

199:名無しのトレーナー

だろうな!

 

200:名無しのトレーナー

伝説二体倒されて勝つユウリの安心感すげえ

 

 

 

・・・・・・・・・

 




掲示板でもフリーダムな名無しのチャンピオン

・ラウラ
帰りの電車に揺られながら眠っている側で掲示板書かれたり興奮されていたせいか、変な悪夢を見て飛び起きた人。

・ユウリ
帰りの電車に乗りながら掲示板覗いていたチャンピオン。マスタードとの戦いは結構苦戦した。誰もツッコんでなかったけど素数数えている時点で色々アウトである。

・モコウ
特に何事も無く電車に揺られながら寝ていた人。

・ソッド&シルディ
掲示板では名前は知られてないがちょっとした有名人になっている二人。実はヨロイ島にもついていこうとしたがユウリとラウラに拒否されて断念した。

・アルルカン
公では警察に捕まったことにされている小悪党。裏では行方不明扱いになっている。

次回からはカンムリ雪原編です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第四章:冠の雪原の章
VSダイオウドウ


どうも、放仮ごです。今更ながら鬼滅の刃無限列車編を見て来ました。催眠昏倒、いいね……(悪い笑み)

今回からカンムリ雪原編。今回のメインキャラとなるオリキャラ兄妹が登場です。楽しんでいただけると幸いです。


 ヨロイ島から本島に戻り一週間も経つことなく、ユウリが溜まったチャンピオンの仕事を終わらせてカンムリパスなるものを三人分用意して休暇を手に入れた。せっかくだし次はムツキを追いかけてカンムリ雪原へ行こうということらしい。

 まあ音信不通だしな、本島に戻って電話をかけたら繋がらなかった上にキリエさんも何の連絡もないらしく、気にならないと言えば嘘になる。正直心配だ。ムツキは今頃、同行を申し出たルミと、体調管理の(てい)でキリエさんに言われて同行したリヅキさんと共にカンムリ雪原で伝説の鳥ポケモンを探しているはずだ。山で囲われた地域だからか電波が届かないだけだとは思うが…今頃なにをしているのやら。

 

 ブラッシータウンの駅から専用の電車に揺られてガラル地方の南側、一面雪景色のエリアへとやってきた俺達。俺はキルクスタウンで購入していたボルドーの7ぶたけシャツの上からグリーンのもこもこボアコートを上に着ている。モコウもゴスロリの上からロングコートを羽織って黄色と紫色の稲妻の様なカラーリングのマフラーでグルグル巻きだ。ユウリは俺と同じボルドーの7ぶたけシャツの上からブラックのライダースジャケットとレザーパンツを着ていた。雪原だと分かっていたはずなのに寒そうな格好である。聞いてみたら「私シンオウ地方出身だから平気平気」だとか。お前、シンオウ出身だったのか…あそこの主人公は雪道でも半袖マフラーで行くぐらいだからなあ。

 

 そんなわけで辿り着いたわけだが、出るなり親子喧嘩(?)に巻き込まれた。マックスダイ巣穴と言う場所でダイマックスアドベンチャーとやらをしたいらしいシャクヤというプラチナブロンドが綺麗な少女と、娘と一緒に冒険に出たいらしいローズ委員長似の父親ピオニー。すると早速ユウリが巻き込まれ、シャクヤは逃げてユウリはピオニーと戦うことに。俺達はユウリを置いて行くわけにもいかないので観戦だ。

 

 

「いいモン持ってやがんな!今度はこっちの番だぜ!」

 

 

 しかしこのピオニー、かなり強い。すいりゅうれんださえ弾き返すはがねタイプの頑強さを活かしたガンガン攻めるぜスタイルにユウリとウーラオスも攻めあぐねている。…ピオニー、なんか聞いたことある名前なんだよなあ。

 

 

「ダハハ!元ジムリーダーに喧嘩売るたぁ大した奴だな!」

 

 

 その台詞で思い出す。かつて「はがねの大将」と呼ばれたはがねタイプのジムリーダーにして、元チャンピオンの名前だ。過去の試合で見たことある。たしかローズ委員長が就任したことで引退したとか聞いたが…こんなところでなにしてるんだ?一瞬の隙を突いたウーラオスのインファイトが叩き込まれ、ピオニーのダイオウドウが崩れ落ちる。続けて繰り出されたのはボスゴドラ。おっ、ガラル本土では見ないポケモンだ。

 

 

「やっと一匹…この人、強い!」

 

「はがねはガチンコ!叩かれる程、ド・根性!」

 

「ユウリ!ボスゴドラの特性はがんじょうだ!」

 

「なるほど、ありがとうラウラ!すいりゅうれんだ!」

 

 

 がんじょうすらぶちぬく流れるような三連撃がボスゴドラを襲い、瞬殺。やっぱり強いなウーラオス。そしてピオニーの手持ちは今ので最後らしい。

 

 

「あんまし自分で強いとか言うもんじゃねえなあ……ダーッハッハ!まさか若造にコテンパンにされるとはな!…ん?愛しの我が娘シャクちゃんがいねえ!!」

 

「本当に親子なのか?失礼だがそうは見えなかったぞ」

 

 

 親に認めさせたいモコウが言うと説得力があるなあ。いやまあ、喧嘩できるほど仲がいいのは親子以外にないと思うが。……俺も今世の親とちゃんと向き合うべきなのかねえ。

 

 

「おうよ!それ以外にどう見えるってんだ!?久々の親子水入らずの家族旅行に来てんだが…見知らぬトレーナーたちを囮に逃げるたぁさすがシャクちゃん!パパへの愛情の裏返しだな!ダッハッハ!」

 

「「「ええ……」」」

 

「そういう娘なんだよ!ド・愛らしいだろ?……でもあいつがいねえとせっかく考えた伝説の探検ツアーが始められねえ!」

 

「伝説の…?」

 

「探検…?」

 

「ツアー?」

 

 

 それに参加すれば伝説の鳥ポケモンを探しているムツキと合流できるんじゃなかろうか。

 

 

「そういやシャクちゃん、マックスダイ巣穴っつーとこに行きたいとか言ってたよな?パパに追っかけてほしいんだろな!おうおう!きっとそうだぜ!そうと決まれば善は急げだ!っちゅーわけで俺は行く!いい勝負だったぜ。じゃあな!ポケモン強い嬢ちゃんにそのお友達!」

 

 

 そう言って去って行くピオニーに、俺達は顔を見合わせる。

 

 

「どうする?」

 

「俺達の目的はムツキとの合流だ」

 

「あの人の言っていた探検ツアーとやらならムツキの居場所もわかるかもだな」

 

「じゃあ私、ちょっと行ってくる!二人は今日の宿を探して!さすがにキャンプは不味いと思う!」

 

「おう」

 

「任せろ」

 

 

 ピオニーを追いかけていくユウリを見送り、俺達は分かれて宿を探すことに。知らない場所だし、分かれた方がいいだろう。そして雪原を歩く化石ポケモンに驚愕しながら歩いていると、凄い光景が目に入った。

 

 

「グソクムシャ!てっぺき!」

 

「デンヂムシ、でんじは!」

 

 

 個人的蟲ポケモン認定しているカブトプスを相手に、銀髪の男女が2人がかりで戦っていた。男のグソクムシャがてっぺきで鎌を受け止めている間に、女のデンヂムシがでんじはを叩き込みカブトプスを麻痺させる。いいコンビネーションだ。恋人か兄妹か。どっちも蟲ポケモン使ってるのいいな!好印象だ。

 

 

「いいぞダフネ!決めるぞ!アクアブレイク!」

 

「はい、兄さん!スパーク!」

 

 

 兄妹だった。そして渾身の一撃が叩き込まれ、カブトプスは戦闘不能となり、グソクムシャを労う兄と、飛び付こうとするデンヂムシから何故か逃げるダフネと呼ばれた少女。するとデンヂムシに引っ付かれ泣きべそをかいていたダフネがこちらに気付いた。

 

 

「あ、貴女は……いました、兄さん!」

 

「うん?おお、見つけたぞ、蟲使いラウラ!」

 

「お、おう?」

 

 

 どうやら目的は俺だったらしい兄妹に狼狽えていると、まるで鬣みたいな銀髪で何故か道着を着た兄が背筋を伸ばして笑顔を見せた。翠色の綺麗な目だった。

 

 

「俺はローレル!ラウラと同じ蟲使いだ!蟲ポケモンだけでセミファイナルトーナメント準決勝まで行ったラウラの実力、恐れ入る!だが、最強の蟲使いはこの俺達だ!なあ、そうだろうダフネ!」

 

「えっと…私はダフネといいます。蟲は苦手なんですが、何故か好かれてしまって…うう」

 

 

 兄のローレルとは対照的に厚着で緑のマフラーを巻いている、前髪で目元を隠した銀髪をふんわりロングヘアーにした妹のダフネ。デンジムシに背中に引っ付かれて前髪からちらちら見える綺麗な翠の目は半べそだ。

 

 

「ダフネは蟲ポケモンが苦手だが蟲ポケモンを扱うのに長けている!俺は蟲ポケモンが大好きで使いこなすために己も修行してきた!ダブルバトルでなら、俺達はラウラ!お前にも勝てると自負している!」

 

「兄さん、私そんな自信ないです…」

 

「ほう?なら、やるか?」

 

 

 ダブルバトルはぶっちゃけ苦手だが、蟲使いとしてユウリをも超える最強を目指す俺としては、どんな挑戦でも負けられない。例え同士であろうとな。

 

 

「では2VS2だ。いくぞ、ダフネ!我ら蟲使い兄妹の力を見せてやろう!」

 

「うう、もうどうにでもなれ!」

 

 

▽むしつかいの ローレルとダフネが 勝負を しかけてきた!

 

 

 ローレルは拳をボールのスイッチ部に押し付けて、ダフネはしゃがんで地面に押し付ける様にしてそれぞれグソクムシャとデンヂムシを繰り出す。対して俺はビークインとモスノウを繰り出す。相性は正直、どっこいどっこいだな。だがアルルカン騒動とヨロイ島、その二つで最後に手に入れた蟲ポケモン達は強いぞ…!




メカクレ妹、いいよね。

・ラウラ
ムツキが心配だけどそれよりもカンムリ雪原の蟲ポケモンに心を躍らせる主人公。カブトプスも蟲扱い。ピオニーがチャンピオンだったことも知っている知識の者。服はそんなに持ってない。

・ユウリ
チャンピオンの仕事をさくっと終わらせてカンムリパスを手に入れてきた原作主人公。シンオウ地方出身。今回はライダースコーデだが地味にラウラとお揃い。ピオニーに割と苦戦した。

・モコウ
ロングコートとマフラーを身に着けているがゴスロリは譲らないツッコミ役。蟲ポケモン探しに雪原をうろつくラウラと違って村で真面目に宿泊先を探している。

・ムツキ
現在音信不通なひこうつかい。ルミとリヅキを伴って伝説のひこうポケモンを探している。

・ローレル
蟲使い兄妹の兄。グソクムシャが相棒な武人肌で努力の男。少々人の話を聞かない。無骨に攻める戦い方が得意。名前の由来はラウラと同じ月桂樹から。モチーフは「ほうかご百物語」の多々羅木豊。

・ダフネ
蟲使い兄妹の妹。デンヂムシが相棒だけど蟲嫌いなのに蟲に好かれてしまい使いこなせてしまう天才な女。ほじょわざを利用したトリッキーな戦い方が得意。少々引っ込み思案。名前の由来はラウラと同じ月桂樹、に姿を変えたニンフから。モチーフは「ほうかご百物語」の多々羅木美生。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSグソクムシャ

どうも、放仮ごです。お気に入りが1500突破!UAが140000を突破!共にありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はVS蟲使い兄妹。楽しんでいただけると幸いです。


 初めて出会った、俺以外の蟲使いを名乗る兄妹とのダブルバトル。口ぶりからして俺がこの雪原に来るのを待っていたらしい二人。兄の方はやる気十分、妹のダフネは嫌々だが侮れないものを感じる。

 

 

「であいがしらだ!」

 

「でんじは!」

 

「ビークイン、ぼうぎょしれい!モスノウ、ふぶきだ!」

 

 

 このビークインはぬしを務めていたこともあり、特別だ。一週間の間に色々試して見た所、ダブルバトルでは全ての技を二体同時に行使できることに気付いた。簡単に言うとエアスラッシュをエアカッターの上位互換にできる訳だ。それだけでなく二体分のダメージを片方に集中することもできる。グソクムシャの強烈な一撃とでんじはを同時に防ぎ、一方的にふぶきを叩き込む。天気があられだから必中のふぶきだ、痛かろう。

 

 

「ビークイン、グソクムシャにエアスラッシュ!モスノウはデンヂムシにれいとうビーム!」

 

「グソクムシャ、避けろ!」

 

「デンヂムシ、ねばねばネット!」

 

 

 ふぶきに続けて繰り出した、必殺とも言える一撃はしかし。なんとグソクムシャはふぶきで認識できてなかったはずのエアスラッシュを察知したように横に回避、デンヂムシも糸の網を展開してれいとうビームを防いでしまった。なんだ今のは!?

 

 

「とくせい、ききかいひ。俺のグソクムシャは俺と共に鍛え、デメリットともいえる特性をきけんよちと同等のものに仕上げている!自分の体力が半分以上削られる一撃ならば察知できる!」

 

「貴女のモスノウは伝説ポケモンを倒すほどのれいとうビームが凶悪ですが、盾を用意すれば恐るるに足りません」

 

 

 そう腕組みしてしてやったりと笑みを浮かべるローレルと、おどおどとしながらもこちらを見つめるダフネ。なるほどな、この攻防でわかった。努力でデメリットを己の武器にした兄と、才能で対策を立てる妹。この二人、強い…!

 

 

「しかし、そのビークインは掲示板で語られていたすごく強いビークインか、なるほど強いな!」

 

「兄さん。まずはビークインから落とさないと」

 

「わかっているさ、ダフネ!何か策はあるか!」

 

「では例の奴です、兄さん!デンヂムシ、いとをはく!」

 

「そうか!ではいくぞ、振り回せグソクムシャ!」

 

「ほうでん!」

 

「なっ!?」

 

 

 デンヂムシが糸をグソクムシャの腕に巻き付けたかと思えば、デンヂムシが宙に浮いた。否、振り回されてまるでチェーンアレイの様だ。さらに電気を放出し、電撃が何度も何度もビークインとモスノウに襲いかかる。振り回されながら放電することでグソクムシャに当たらないようにしているのか。

 

 

「なるほど、な!モスノウ、グソクムシャにれいとうビーム!ビークインはそのままぼうぎょしれいで防ぐんだ!」

 

「防げますか?!ねばねばネット!」

 

「アクアブレイクだ!」

 

 

 何とか対処しようと試みるも、れいとうビームはアクアブレイクの水飛沫を盾にして防がれ、さらにしもべたちも、振り回されながらばら撒かれたねばねばネットで地面に張り付けられてしまいビークインはもろに攻撃を受けてしまう。

 

 

「俺達のコンビネーション、どうだ!これならばラウラ!お前であろうと勝てるぞ!」

 

「兄さん、油断しないでください。ラウラさんと言えば奇策の名手。なにをしてくるかわかりません」

 

「そうだな、ダフネ!油断せずにいくぞ!ミサイルばりだ!」

 

 

 振り回されるデンヂムシ、の合間から放たれる複数の光弾がビークインとモスノウに降り注ぐ。しかしこちらには防御に長けたビークインがいるのだ。

 

 

「ビークイン、パワージェム!そしてエアスラッシュだ!」

 

 

 発射前のパワージェムを壁にして防ぎ、続けてねばねばネットで拘束されているしもべたちを風の刃で解放する。未だに飛ばしてくるねばねばネットだが、所詮は糸だ。風に弱い。

 

 

「モスノウ、ふぶきでねばねばネットを吹き飛ばせ!ビークイン、こうげきしれい!グソクムシャを取り囲め!」

 

「ならば、兄さん!スパーク!」

 

「渾身の力で振り下ろせグソクムシャ!」

 

 

 さらに糸を長くして、天高く舞い上がるデンヂムシの体が電気に包まれ、まるで落雷の如く急速落下。同時に、こうげきしれいによる円陣が一斉にグソクムシャに襲いかかり四方八方から貫いたが、同時にビークインは渾身の一撃を受けてダウンしてしまった。グソクムシャは未だに健在で、デンヂムシをグルグル振り回してこちらの隙を窺っている。厄介だな本当に…!

 

 

「…雪原、か。ならこうだ。モスノウ、ちょうのまい。…そしてふぶきだ

 

 

 瞬間、モスノウの姿が掻き消えた。ラランテスのはなふぶきやウルガモスの太陽もそうだが、自分の色や特性を利用した擬態は蟲としては基本中の基本もいいところだ。上手く活用していかないとな!

 

 

「なに!?」

 

「消えた、いや周りの景色を利用した擬態…!?兄さん、周囲に警戒して!」

 

 

 やっぱり警戒すべきは妹の方だな。こちらの策をすぐ看破してきた。だが甘いな。もう既に攻撃は放たれている。あられの勢いが強くなる中、チェーンアレイ攻撃をやめて背中合わせに辺りを警戒するグソクムシャとデンヂムシ。その体が、徐々に凍り付いて行き異変に気付く兄妹。

 

 

「これは…!?」

 

「まさか、ふぶき?」

 

「ご明察。あられに乗せて気付かれないようにふぶきを打たせてもらった。全力でふぶきだモスノウ!」

 

 

 吹雪が吹き荒れ、何も見えなくなる。しかしモスノウは別だ。その複眼は、吹雪の中だろうと正確に敵の居場所を捉える。

 

 

「グソクムシャにれいとうビーム!」

 

「グソクムシャ、避けろ!」

 

「そいつは無理な相談だ」

 

 

 凍った足でどう避ける?直撃をもらったグソクムシャが凍り付き、氷像となって倒れる音と共に吹雪が止み、姿を現すモスノウ。デンヂムシの足元は凍り付き、動けそうにないが、ダフネはまだ諦めていない。

 

 

「ほうでん!」

 

「ちょうのまいで避けてかられいとうビームだ!」

 

 

 ひらりひらりと、蝶の如く優雅に舞うモスノウ。ムシブギョーって漫画で知ったが、蝶って言うのは外敵の多い日中を生き抜くため、決して真っ直ぐに飛ばず不規則に飛ぶことで身を守る生態があるらしい。モスノウは本来真っ直ぐにしか飛べない蛾だが、ポケモンとは不思議な生き物。技で蝶を再現することは可能。そして、ちょうのまいとは、狙って当てれるものじゃない。

 

 

(バタフリー)の様に舞い、(スピアー)の様に刺す、だ」

 

 

 ほうでんの合間を刺すようなれいとうビームが炸裂、デンヂムシは崩れ落ちた。信じられないとでも言うような顔でグソクムシャをボールに戻すローレルと、分かっていましたと言わんばかりに溜め息を吐きながらデンヂムシをボールに戻すダフネ。何から何まで対照的な兄妹だ。

 

 

「馬鹿な…俺達が、ダブルバトルで負けた…だと」

 

「兄さん…やっぱり、ラウラさんは強いです。同じ分野の蟲ポケモンで勝つのは無謀すぎる」

 

「だが、俺は蟲以外を使うことはない!わかっているだろう、ダフネ」

 

「…そうですね、兄さん。………蟲以外を使えば簡単に勝てるのにな

 

「いい勝負だった。負けるかと思ったぞ。いいグソクムシャとデンヂムシだった」

 

 

 そう言って近づくと、ローレルが手を差し出してきたのでガッシリと握手する。気持ちのいい相手だ。

 

 

「ああ、いい勝負だった!俺達はまだカンムリ雪原で武者修行するから、また会ったらバトルしてくれ!今度は他のメンバーも紹介しよう!」

 

「ああ、楽しみだ!蟲ポケモンを好きな人間に悪い奴はいないな!そうだ、俺の他の蟲ポケモンも見せてやるよ、みんな出てこい」

 

 

 デンチュラ、モスノウ、ドラピオン、ハッサム、ウルガモス、そしてビークイン。これが今回連れてきたメンバーだ。すると分かりやすく目を輝かせるローレルと、ビクッと肩を震わせて遠ざかるダフネ。しかしデンチュラ達はわかりやすくダフネに興味を持ち、近づいて行く。

 

 

「こ、こ、こっちに来ないで~!」

 

 

 絶叫しながら逃げるダフネと、それを追いかけるデンチュラ達に、ローレルと二人して止めるべきかどうか悩む。デンチュラ達なら危害も加えないし、なによりダフネも好きになるかもだしな!

 

 

「…いや、止めろよ…」

 

 

 いつの間にかやってきていたモコウに呆れられた。解せぬ。




ムシブギョーはいいぞ。蟲好きは読むべき。

・ラウラ
擬態、ちょうのまいなど蟲ならではの戦法で同じ蟲ポケモン使いを倒して見せた主人公。知識こそ力を地で行ってる。ビークインのゲームだったらチートにも程がある性能には思わず唖然とした。

・モコウ
宿が決まったのでラウラを探しに来たら女の子を追い回す蟲ポケモンを見てええ…となった。

・ローレル
蟲ポケモン至上主義な兄貴。己も鍛え、ポケモンも鍛える努力の男。作戦は大体妹に任せているぐらい信頼している。

・ダフネ
蟲嫌いだけど何故か蟲に好かれる妹。蟲ポケモンは苦手だが、戦略においては割とぶっ飛び気味というか天才を発揮する。蟲ポケモンじゃなくて他のポケモンを使いたいけど兄が許してくれない。

・グソクムシャ♂
とくせい:ききかいひ
わざ:であいがしら
   アクアブレイク
   てっぺき
   ミサイルばり
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。よく物を散らかす。ききかいひで危険予知できる。

・デンヂムシ♀
とくせい:バッテリー
わざ:スパーク
   ほうでん
   ねばねばネット
   でんじは
もちもの:なし
備考:むじゃきな性格。とてもきちょうめん。

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VSバドレックス

どうも、放仮ごです。NPCをNPCぽくしないようにするの難しい…

今回は豊穣の王登場。楽しんでいただけると幸いです。


 逃げるダフネ。追いかけるデンチュラたち。モコウに言われて止めようか悩んでいると、突如ダフネが立ちどまり懐から取り出したボールを掲げた。

 

 

「もう勘弁してください!げんしのちから!」

 

 

 そんな悲鳴にも近い声と共に繰り出されたのは化石ポケモンの一体であるアノプス。繰り出されたと同時にげんしのちからを発動し、デンチュラ達を一蹴してしまった。あまりにも強すぎるその実力に戦慄する。このアノプス、故意に進化していないが相当な練度だ。フーッ!と威嚇するダフネに、モコウが口を開く。

 

 

「…あの娘、ムツキの仲間か?」

 

「天才なのは間違いないと思うぞ」

 

「俺の妹はバトルも育てるのも天才だが、アゴジムシがデンヂムシに進化してから手持ちを進化させるのを嫌がってな」

 

「なるほどな」

 

 

 ローレルの説明に納得する。アゴジムシはいいがデンヂムシは駄目だったって感じか。進化にトラウマを持つトレーナーも少なくないと聞く。なんか色々もったいないな。すると我に返ったようでオロオロしだすダフネ。

 

 

「あっ…ごめんなさい、ラウラさん。思わず手が…」

 

「こっちこそ悪かった。すぐ止めるべきだった。気にしなくていいぞ。お前らも何がそんなに気になるのか知らんがやりすぎだ」

 

 

 コツッと軽くデンチュラを小突きながらそう言うと分かりやすく落ち込む俺のポケモン達。あの気難しいドラピオンでさえ懐くんだからすごい才能だと思うがな。

 

 

「俺は羨ましいがな。そこまで好かれて使いこなせるのに、なんでそんなに蟲を嫌うんだ?」

 

「普通、女の子なら蟲なんて嫌いで当り前です!」

 

 

 ん?なんだろう、今の返答になにか違和感が。恐る恐るアノプスをボールに戻すダフネの様子から本気で蟲を嫌っているのは明白だ。だけどなにか、裏があるように感じた。

 

 

「ではいくぞダフネ!また修行し直しだ。ラウラ、まだここにはいるのか?」

 

「探し人がいるんだ。当分はここにいるかな。ムツキって言うんだが見つけたら教えてくれ。これ、俺のスマホロトムの番号だ」

 

「承知した。近いうちにまた再戦を申し込む!では達者でな!」

 

「おう、お前も風邪ひくなよ」

 

 

 ダフネを引き連れて走って去って行くローレルを見送る。あの道着姿じゃすぐ風邪ひきそうだが。本当に大丈夫だろうか。…まあなんにしても、あの兄妹とは今度本気で戦いたいものだな。できれば俺の得意なシングルで。

 

 

「我らもさっさと行くぞ。フリーズ村の民宿でユウリとピオニーが待っている」

 

「は?なんでそこでさっきのおっさんの名前が出てくる?」

 

「宿を探していたらユウリと合流してな。ピオニーが自分の借りている民宿に泊めてくれることになった。ユウリを隊長として我たち二人も一緒に探検隊を結成して、伝説を調査するとのことだ」

 

「なんか知らないうちに入られていた件について。いや入る予定だったけどさ」

 

「伝説の飛ぶポケモンが集まる赤くてでっかい木も調査するって言ってたから多分ムツキも見つかるぞ」

 

「なるほどな」

 

「あとな。フリーズ村には「豊穣の王」という伝説があると村長殿から聞いた。まずはそれから調べるとのことだ」

 

「豊穣の王ねえ。…むしタイプじゃなさそうだな」

 

「お前はやはりそこなのだな」

 

 

 会話しながらフリーズ村とやらを目指して歩く。よし、げんきのかけらでデンチュラ達も元気になった。これで野生ポケモンに襲われても大丈夫だな。

 

 

「ところであの兄妹はなんだったんだ?」

 

「詳しいことは知らんが俺と戦うのが目的だったらしい。強かったぞ、特に妹のダフネ」

 

「あのアノプスを見ればわかる。兄の方は?」

 

「強いっちゃ強いが戦い方が妹任せで愚直的でな。ありゃジムリーダーと戦ったら手玉に取られて負けるだろうな」

 

「厳しい評価だな」

 

「グソクムシャを強化してたのは評価するぞ。そして蟲使いに悪い奴はいない!気持ちのいい奴だったし、また戦いたいな」

 

「そりゃよかった。同タイプエキスパートと会えるとは羨ましい限りだ。ところでラウラよ」

 

「なんだ?」

 

「この間交換したRAINでサタリアがたくさんメッセージを送ってくるのだがどうしよう」

 

 

 そう言ってくるモコウの顔は若干青ざめていて。寒さからでないことはすぐわかった。…いやでも、相手は幼い子供だしなあ。

 

 

「…多分悪意はないから諦めるんだな」

 

「…だよなあ。どう返せばいいんだろう」

 

「俺もお前もコミュ症だからな。わからん」

 

 

そんなこんなで辿り着いたフリーズ村。中心にはでっかい頭の獣が乗った馬?の様な像があり、あまり外に人が出ていない閑静な雰囲気の村だ。あれが豊穣の王かね。二匹で一匹のポケモンかなんかか?

 

 

「あの旗がある民宿が目的地だ」

 

「寒かったから早く温まりたいぞ…!?」

 

 

瞬間、中心から離れた一角で粉塵がちょうど舞い上がるのを確認した俺達は嫌な予感がして駆けつけると、そこでは戦闘が行われていた。

 

 

「カム カムゥル!」

 

「ウーラオス、すいいりゅうれんだ!」

 

 

 オレンジ色のツナギを身に着けたユウリのウーラオスの流れるような連打を、紙一重で避けていくさっき見た像の馬の上に乗っていた獣とそっくりなポケモン。緑色のアフロみたいな頭部はまるで冠の様にも見える、ウサギの様な顔のポケモンだ。こういっちゃなんだが凄い小柄だ。浮いてるし緑だしタイプはくさ・エスパーか?むしが四倍弱点だな!そんなポケモン相手に本気で相手しているユウリもユウリだが、それに簡単に対抗している奴も凄い。

 

 

「つばめがえし!」

 

「カ ムカンムル!」

 

 

 鋭い蹴りも避けながらじわじわと体力を奪って行ってるらしい謎のポケモン。ギガドレインだ。ダメージをそんなに浴びせられてないのに、じわじわ体力を削られてウーラオスもフラフラになってきている。くさ・エスパーならみず・かくとうのウーラオスじゃ天敵もいいところだ。

 

 

「つばめがえしも避けられるか…っ…相性が悪いみたいだね、なら!インテレオン!」

 

「カ カムゥ!」

 

「ふいうち!」

 

 

 ギガドレイン、が炸裂する寸前、尻尾の一撃が謎のポケモンの顔面に炸裂、怯ませる。おそらく効果は抜群だ。

 

 

「タイプはくさ・エスパーかな!?とんぼがえり!」

 

「カムゥ!?」

 

 

 そして強烈な二段蹴りが炸裂。インテレオンはボールに戻って行き、謎のポケモンはそのまま崩れ落ちた。

 

 

「ふう…あ、ラウラ、モコウ!」

 

「なにしてるんだお前は。それ、あの像のポケモンじゃないのか?」

 

「ピオニーさんに調査を頼まれたから、とりあえず戦ってみたんだけど」

 

「お前、バトルで会話できると思ってる人種だな?」

 

「逃げられたらどうするつもりだったんだ…」

 

 

 首を傾げるユウリに呆れる俺とモコウ。すると謎のポケモンはモコウをジーッと見つめると、目を瞑って何かを念じ始めた。

 

 

「ンム ムイ カムカムゥ」

 

「な、なんだ…て、てょわわわぁ~ん」

 

 

▽モコウ は 輝きながら 浮いている!

 

 

「「モコウ!?」

 

 

 なんか背筋をピーンと伸ばしたかと思えば目を瞑り、青い光を纏って宙に浮かび上がるモコウ。なにがどうした何が起きたとユウリと二人して慌ててると、民宿からピオニーまで出てきて場は混沌となる。

 

 

「おうおうどした隊長!?何か騒がしいな…ってどうしたモコウ!?それに頭でけえなおい!?」

 

「話がド・ややこしくなるんでちょっと黙っててもらっていいですかピオニーさん」

 

「お、おう。俺はアジトで待ってるから詳しいことを後で聞かせてくれよな!」

 

 

 ピオニーはユウリが追い返し、謎のポケモンにモコウに何をしたのか問い詰めようとすると、モコウ?が喋り出した。

 

 

「ふむ、やはりしなやかで清廉、美しい体である。陰の努力が目に浮かぶようである」

 

「モコウ!大丈夫なの!?」

 

「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ。まさか裏人格とかじゃあるまいし」

 

「モコウというのか、いい名前だ。すまぬが少々借りさせていただこう。無理もない反応だが答えは否である。余はバドレックス。豊穣の王と呼ばれし者だ」

 

 

 謎のポケモン、バドレックス。モコウを乗っ取ったらしいそのポケモンの力は、伝説の名にふさわしかった。




てょわわわぁ~んはぜひともオリキャラにさせたかった。てょわわわぁ~んピオニーファンにはごめんなさい。

・ラウラ
さくっとダフネに手持ちを全滅にされた主人公。その才能がちょっと羨ましい。あやうくてょわわわぁ~んされそうだったがモコウの方がお眼鏡に適った。

・ユウリ
バドレックスとバトルで語ろうとしたバトルジャンキー。ピオニーに探検隊の隊長にされた。

・モコウ
てょわわわぁ~ん

・ピオニー
てょわわわぁ~んされずに済んだ人。物わかりはいいけどユウリの威圧には逆らえない。

・ローレル
妹の才能を誇りに思っている兄。修行馬鹿。ラウラの番号を手に入れてご満悦なラウラのファン。

・ダフネ
普通に蟲が嫌いで当り前とのたまう妹。デンヂムシ、アノプス、あと一匹が手持ち。アゴジムシがデンヂムシに進化したことで進化させることがトラウマになっている。不意打ちとはいえアノプス一匹でラウラの手持ちを全滅させるほどの実力の持ち主。

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VS???

どうも、放仮ごです。今回は題名で難儀しました。題名で存在を教えるのはどうかと思ったのでこういう形式になりました。

今回はVS謎の襲撃者。楽しんでいただけると幸いです。


 バドレックスと名乗ったポケモンに乗っ取られ宙に浮かぶモコウと、対峙する俺とユウリ。ユウリにやられた仕返しでもしてくるかと思ったが、バドレックスは頭を下げた。

 

 

「ユウリといったか。お主に一言礼を言わせてほしい。余の像を元に戻したこと、至極感謝である」

 

「なんだ、そんなことしたのかユウリ」

 

「う、うん。あの頭部が壊れていて、それを見つけてくっつけたんだ」

 

 

 俺と蟲使い兄妹が戦っている間に色々あったらしい。さすが主人公(多分)、イベント多いな。

 

 

「遥か昔、余はこの地の王として君臨していた。草花を生やし畑に実りを与え、人間から崇められていたのだ。しかし長い時を経て人々は余の存在を忘れ去ってしまったようだ。毎年の余への捧げものも今や無くなって久しい。余にとって信仰は力の源…かつての勢いを失い我が愛馬にも逃げられてしまった」

 

「あの像の馬か」

 

「バンバドロにも見えるが違うんだろうな」

 

「我が愛馬を有象無象の馬と一緒にするでない!…しかし、お主が余の像を直してくれたおかげで、こうして人の肉体を介して思いを伝えられる程度には力が戻ったのだ。慈悲深き人の子よ…お主たちに頼みたいことがある…」

 

 

 その時だった。バドレックスが、いきなり宙に舞ったのだ。同時に浮遊が解かれて倒れるモコウを慌てて受け止める。

 

 

「モコウ!…無事か」

 

「ラウラ!なにかがいる、気を付けて!」

 

 

 同じく落ちてきたバドレックスを受け止め警告の声を上げるユウリに、高速で襲いかかる何かが見えて。咄嗟にボールを繰り出していた。

 

 

「ハッサム!バレットパンチだ!」

 

 

 相手より先に行動できるバレットパンチが襲撃者を捉え、殴り飛ばす。しかし襲撃者はスピードを衰えることなく、村の外に逃げて行った。今の感じは…?

 

 

「ユウリ、モコウとバドレックスを頼む!俺は奴を追いかける!頼みとやらも俺抜きで引き受けてやってくれ!」

 

「う、うん!でも私の方がよくない?」

 

「バドレックスが求めているのは像を直したお前だ。それに襲撃者は多分蟲だ。捕まえてやる」

 

「お、おう。さすがだね?」

 

「行くぞハッサム!」

 

 

 ユウリ達をその場に置いて、ハッサムを連れて村を飛び出す。雪の上に細長く軽い足跡がついていたのでそれを追いかける。どうやら山の上を目指しているらしい。

 

 

「俺の知らない蟲ポケモンだった。オニシズクモみたいなブラホワ時点で実装されてなかった蟲ポケモンは図鑑で調べた、けどあんなに素早い上に見えない蟲ポケモンなんて俺は知らない」

 

 

 おそらくだが、テッカニンのトップスピードより速かった。まだ視認できたキリエさんのドリュウズよりもだ。視認さえできない圧倒的なスピード、あれほどの力は伝説ポケモンに並ぶだろう。例えるならデオキシスのスピードフォルムみたいな。わくわくしてきた。

 

 

「…ここか?」

 

 

 山の中腹辺りまでやってくると、大きく踏み込んだ足跡を最後に途切れてしまった。足跡があったことから恐らく飛べないポケモンなのは間違いないが、跳躍して逃げたのか?いや、殺気を向けられているのを感じる。むしろ、追い詰めたと思って誘導されていたのはこちらだったらしい。

 

 

「そこだ、エアスラッシュ!」

 

 

 何の変哲もない草むらにエアスラッシュを放つ。すると空中に何かが出てきて、体勢を整えると急降下。鋭い一撃がハッサムに叩き込まれ、吹き飛ばされる。すぐさま高速で離脱する何か。あまりに徹底した行動に、笑いがこみ上げてくる。

 

 

「臆病な性格か?頑なに姿を見せないとはな。俺のハッサムもグリーンのハッサムみたく見えない物を斬る力があればいいんだがそういう訳にもいかないんだこれが」

 

 

 俺の知る最強のハッサム…ポケスペのグリーンの最古参ポケモンであるハッサムが羨ましく感じる。しかし今の一撃はハッサム相手に高威力を叩きだすとは…炎は見えなかったから、等倍の格闘の可能性が高いな。むし・かくとうか?高速で動き回りながらこちらを警戒する奴に意識を向ける。まるで俺の力を計っているかの様な、そんな感覚がする。

 

 

「ドラピオン!」

 

 

 繰り出した瞬間、鋭い一撃がドラピオンを襲う。歴戦の猛者であるドラピオンでさえ捉えきれないスピード。こおりのきばの氷結で捕らえようと思ったが無理そうだ。明確な隙を作った瞬間、強力な一撃をお見舞いされて終わりだ。

 

 

「周囲にミサイルばり、連続だ!」

 

 

 ならばとミサイルばりをばらまく。すると草むらから飛び出してきたので、集中砲火するドラピオン。しかしミサイルばり全てを振り切ってしまう襲撃者。速すぎるにも程があろう。そのまま襲いくるのを察知し、咄嗟に指示を出す。

 

 

「一か八かだ、こおりのきば!」

 

 

 言われるなり、地面に突き立てるドラピオン。このコンビネーションは俺達ゆえの阿吽の呼吸だ。しかしなんと、襲撃者は氷結を砕いてそのまま突撃し、ドラピオンの顎に強烈な一撃を叩き込んで宙に舞わせると、四方八方から襲いかかり戦闘不能にしてしまった。

 

 

「なんにしてもまずは動きを止めないとか。ウルガモス!」

 

 

 ならばとドラピオンを戻し、上空にウルガモスを繰り出す。空中ならあの強力な一撃は叩き込めまい。そしてウルガモスは、それだけじゃないぞ。

 

 

「ひのこをばらまけ!」

 

 

 バサッと翅を広げ、俺を中心にひのこを広範囲にばら撒くウルガモス。すると触れた場所が炎上し、炎が噴き上がる。ちょっと環境問題になるだろうが、周囲一帯に炎を撒いた。これで、出てこざるを得ない筈だ。たまらず炎から逃れる様に出てくる襲撃者。

 

 

「かぶりん」

 

「出たな…!?」

 

 

 その姿を見た瞬間、冗談無しに見惚れてしまった。おそらく見えなかった原因であろう、雪の様に白い体躯。ぱっちりとした青く光る目。透き通った美しい後ろ翅。脱皮直後の白く透き通った黒いあいつを連想させる細いフォルムの半人半虫、しかしてモデル体型と言ってもいいその美しい姿に、魅了される。ちょっといい匂いもした。

 

 

「これ、は、ポケモン、なのか…?」

 

 

 恨めしそうに炎を見つめたかと思うとこちらを睨みつけてきたその一連の所作も絵になる美しさを感じた。ヤバい、一目惚れってこのことか。既に記録されていたポケモンだったのか、ロトム図鑑が認識し、後ろ手に確認する。えんびポケモン、フェローチェ。捕獲例が極めて少なく、これまでに二匹のみ。捕獲したのはいずれもアローラのチャンピオン…ってことは、アローラ地方のポケモンなのか?なんでここに?蟲が生息しにくいであろう雪国だぞここは。

 

 

「かぶりん」

 

 

 俺を一瞥したフェローチェはその細く鋭い脚を振りかぶり、一閃。ただの一撃でソニックブームが発生し、炎を掃ってしまった。なんて脚力だ。そのまま跳躍して姿を消したフェローチェに、俺は心あらずと言った感覚でそれを見送ってしまった。

 

 

「………フェローチェ。あんな蟲ポケモンも生息しているのか、ここは」

 

 

 舞い降りて来て俺を心配する様にすり寄ってくるウルガモスを撫でながら、不敵に笑う。

 

 

「上等だ。フェローチェは絶対捕まえてやる!」

 

 

 …そのためには、スピードがいる。テッカニンならもしかしたらトップスピードで匹敵するかもだが、加速し続けてじゃ遅い。瞬発力であの速さに匹敵する、テッカニン以上のスピードが必要だ。

 

 

「ロトム。蟲ポケモン図鑑を頼む」

 

 

 慣れない機械を使って、蟲ポケモンのみが閲覧できるようにしたモードのスマホロトムを手に目的のポケモンを二体、探す。カンムリ雪原にも生息しているらしい。

 

 

「…ユウリに協力を頼むか。バドレックスも押し付けたし、今度何かおごってやらないとなあ」

 

 

 そんなことをぼやきながらフリーズ村への帰路に着く俺を、崖の上から見守るフェローチェがいたことに俺は気付いていなかった。そして、このフェローチェがきっかけに近い未来、とんでもない大事件が起こるなんてことを、俺はまだ知らない。




題名はVSフェローチェ、でした。ポケモン図鑑はネットで繋がっていて、未確認のポケモンでも全国の誰かが記録していたら閲覧できる機能、ということにしています。

・ラウラ
フェローチェに一目惚れした主人公。ネタバレとかは見ない主義だったのでウルトラビーストのことなど露も知らない。カンムリ雪原での目的がムツキ捜索から優先度がフェローチェゲットに変わった。とある二匹の蟲ポケモンをまずゲットすることにした。

・ユウリ
ラウラを見送った後、バドレックスのお願いをいくつか叶えることにした原作主人公。でもなんか嫌な予感がするからラウラと早く合流したい。

・モコウ
前回、たくさんのメールに頭を悩まされたりバドレックスに乗っ取られたりさんざんだった人。今回はフェローチェの攻撃の余波で服が裂かれて寒い目にあっている。

・フェローチェ
とくせい:ビーストブースト
わざ:とびかかる
   とびひざげり
   トリプルキック
   とびはねる
もちもの:なし
備考:おくびょうな性格。よく物を散らかす。特性を利用して数多のポケモンを倒してスピードが最大値まで上がった状態でバドレックスに襲いかかったあと己に対抗して見せたラウラに標的を変えた。理由は不明。敵対者を魅了するフェロモンを出す。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカブルモ

どうも、放仮ごです。みんな筋肉さん大好きですね。早く出せるように頑張ります。

今回はラウラが手に入れたい蟲ポケモンとの戦い。楽しんでいただければ幸いです。


 フェローチェに逃げられ、フリーズ村に戻ってくると、ちょうどユウリとモコウがバドレックスと会話(?)しているところだった。モコウの服がユウリと同じものに変わっているところを見ると一度着替えて来たらしい。

 

 

「またか!?てょわわわぁ~ん……うむ、では人の子よ。愛馬についてなにかわかったであるか?」

 

「うん、えっと…あ、ラウラ!こっちこっち!今、王様に頼まれて愛馬を探してたんだ」

 

「王様?」

 

「バドレックスって呼ぶのなんか違うかなって。それで、襲撃者はどうだった?」

 

 

 呼ばれて歩み寄ると、バドレックス(モコウ)も襲撃者の正体が知りたいのか押し黙る。俺は図鑑を開いてフェローチェの画面を映しながら答えた。

 

 

「フェローチェっていう美しいポケモンだった。アローラ地方のポケモンらしいから、恐らくだがトレーナーに逃がされるかして混乱し、周りを警戒していた風に見えた。なんで襲ってきたのかは謎のままだがな。あんな綺麗なポケモンが悪気があってやったわけがないからな、保護したいのが本音だ。てか捕まえる、絶対」

 

「…ふーん、フェローチェねえ」

 

「どうしたユウリ」

 

「なんでもない!」

 

 

 なんかユウリの様子がおかしい。怒っているようだが何かしたか俺?

 

 

「それで王様。愛馬の好物がわかったよ」

 

「分かったであるか!共にいたのが遥か昔で余は忘れてしまっていた…愛馬の好物があればあやつをおびき寄せられるやも!」

 

「その好物ってなんなんだ?」

 

「文献によればにんじんだってさ」

 

 

 調べなくてもわかったんじゃないかそれ?しかし王様口調のモコウ、全然違和感ないな。ベストマッチって奴だ。

 

 

「ほう!にんじんであるか!たしかにあやつは何らかの作物を前にすると飛び付いて、抑えるのに骨を折ったである。今思えばそれがにんじんだったであるな!人の子よ!さすがであるぞ!」

 

「村長さんやピオニーさんのおかげだよ。私一人じゃ調べものできなかった」

 

「謙遜するでない。あとはにんじんさえあれば行方知れずの愛馬をおびき寄せること叶いし。村の人間はにんじんを育てているであろうか?種の一つでもあれば余が育むことも可能であるが…」

 

「にんじんの種ね。探してみるか」

 

「うん、王様。モコウを戻してください」

 

「あいわかった。人手は必要である故な。………ハッ!ううむ、未だに慣れぬな。妙な安心感に包まれているから嫌ではないが」

 

 

 そう言って肩を回して伸びをするモコウ。あのポーズの中で固まるとそりゃ体も強張るわな。

 

 

「…んん?どうしたユウリ、眉間に皺が寄ってるぞ」

 

「なんでもないよ?」

 

「そうかあ?…ラウラ、お前なにかしたんじゃないか?」

 

「それがさっぱりわからん。フェローチェってポケモンを絶対捕まえるって宣言しただけだぞ」

 

「……あー」

 

 

 図鑑のフェローチェの画像を見せながらそう言うと、何かを察したのか微妙な顔になるモコウ。なんなんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、三人で手分けしてにんじんの種を探すことになったのだが、その前に一つ提案しておかないといけない。

 

 

「ユウリ、頼みたいことがある」

 

「なに?ラウラ」

 

「なんでそんなに怒ってるのかは知らないが、捕まえてほしい蟲ポケモンがいる。チョボマキっていうんだが」

 

「私が捕まえるの?ラウラがじゃなくて?」

 

「ああ。俺がこれから捕まえてくるカブルモと交換してほしいんだ」

 

「交換…!?いいよ、やるやる!むしろ私以外に頼むのは許さないから!」

 

「お、おう。乗り気で助かるよ」

 

 

 図鑑でチョボマキの生息地を見るなり全速力で駆け出していくユウリを見送ると、モコウがジト目で見て来ていた。

 

 

「なんだ?」

 

「…お前、交換する理由は一体なんだ?」

 

「そりゃあ、フェローチェを捕まえるためだ」

 

「………それ、ユウリには言うなよ?」

 

「なんでだ?」

 

「チャンピオンの逆鱗など誰も触れたくないからだ」

 

「???」

 

 

 よくわからないが、モコウの言うことだ。従っておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた。カブルモ…!」

 

 

 やってきたのはいにしえの墓地。そこで目的のカブルモを見つけた。カブトムシの様な角が特徴の小さな体のポケモンだ。カブルモは俺が狙っていることに気付いたのか、角を突き出して突進を繰り出してきた。

 

 

「うおっと。デンチュラ!いとをはく!」

 

 

 横っ飛びで回避するのと同時にデンチュラを繰り出し、糸を飛ばして角に巻き付かせる。するとカブルモは全身の力を振り絞って身を捻り、デンチュラを逆に宙に持ち上げて地面に叩きつけてしまった。強い、捕まえ甲斐があるな。

 

 

「エレキネット!」

 

 

 今度は電撃迸る蜘蛛の巣を飛ばすも、角で斬り裂かれてしまいカブルモに届かない。つるぎのまいか、いい技を覚えている。さらに口から毒の塊を飛ばしてくるカブルモ。デンチュラは横っ飛びで回避してほうでんを叩き込むも、それより先に角による斬撃を叩き込むカブルモ。さらに連続で斬りつけ、そのたびに威力が上がって行く。れんぞくぎりか、これ以上は不味い。

 

 

「交代、モスノウ!」

 

 

 雪景色に溶け込み五度目のれんぞくぎりを回避するモスノウ。カブルモは周囲を見渡してモスノウの姿を探すも、見つかるはずがない。

 

 

「ふぶき!」

 

 

 吹雪を発生させ、カブルモを凍りつかせていく。アシッドボムを周囲に飛ばして応戦するも命中することはなく、カブルモは氷像と化して戦闘不能になった。ネットボールを取り出し、氷漬けのカブルモに当てて捕獲。何とかゲットに成功する。…交代するのは、迷うがハッサムにするか。あのポケモンが入るなら役割被りそうだしな。

 

 

「…ふう。とんでもない暴れっ子だったな。ユウリの手に渡ったらもっと強くなりそうだ」

 

 

 カブルモが進化したあのポケモンを使役するユウリを幻視する。案外、似合うかもしれないなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリーズ村に戻ると、呆れ顔のモコウとわくわくが抑えきれないとでも言うような顔のユウリが待っていた。その手には甲冑に隠れた小さなおちょぼ口のポケモン、チョボマキが抱えられていた。

 

 

「今戻ったぞ。どうだった?」

 

「お前たち二人が探さないだろうと思って我は村中でにんじんの種をゲットしておいたぞ」

 

 

 さすがモコウ。俺達の中で一番真面目な性格をしているだけあるな。正直、すっかり忘れていたぞ。

 

 

「ラウララウラ!チョボマキ捕まえてきたよ!」

 

「おう。俺もカブルモを捕まえて来たぞ。さっそく交換してみるか」

 

 

 通信交換。ガラル地方ではスマホロトムを介して行う特殊な交換方法だ。この方法でしか進化しない、いわゆる「換わる」ポケモンがいる。俺の持つハッサムとかがそうだが、どうやって進化したのか本当に謎だ。そして、カブルモとチョボマキはブラックホワイト時代からいたポケモンで、このペアで通信交換することで進化する。チョボマキは己の身を守る甲冑を脱ぎ去りすばやさを得て、カブルモがその甲冑を着込んで強靭な堅さを手に入れ強くなるのだ。

 

 

「…よろしくな、アギルダー」

 

 

 交換したチョボマキが進化した、まるで覆面ヒーローや忍者の様な出で立ちのポケモン、アギルダーがぐっと握り拳を作りこちらに向けた。

 

 

「よろしく!シュバルゴ!」

 

 

 交換したカブルモが進化した、重騎兵の様な姿のポケモン、シュバルゴが両手の槍を掲げてやる気十分とでも言うように咆哮を上げた。

 

 

「通信進化か、初めて見たな」

 

「この二匹の種族は特別なんだ。通信交換による電磁波を受けてこんな特殊な進化をするらしい」

 

「そうなんだ。…ローズ委員長もシュバルゴを持ってたし、使いこなしてラウラをボコボコにしてみせる!」

 

「単純な強さよりも必要なのは工夫の強さだ。アギルダーを使いこなして俺はお前に勝つぞ」

 

「…とりあえず、にんじんの種を手に入れたことを伝えに行くぞ。バドレックスのこと忘れるなよお前たち」

 

「「め、面目ない」」

 

 

 ユウリと二人して平謝りしながら、俺達はバドレックスの元へと向かうのだった。




通信交換は我がトラウマ。剣盾は交換で進化するポケモンも野生でゲットできるから優しい。

・ラウラ
フェローチェを捕まえるためにアギルダーを欲していた主人公。あんなに強いカブルモを手放すのはちょっと惜しいなと思ってる。通信交換できなかった勢なので普通に嬉しかったりする。

・ユウリ
フェローチェに夢中なラウラに不満たらたらな原作主人公。バドレックスの頼みよりラウラとの交換を優先した。機嫌を直した通信交換がフェローチェを捕まえるためだと知ったらモコウ曰く「逆鱗に触れることになる」。

・モコウ
なんだかんだでバドレックスのことを一番考えてる人。真面目な性分が見え隠れ。そこらへんもバドレックスに気に入られている一因らしい。

・チョボマキ→アギルダー♂
とくせい:かるわざ
わざ:アシッドボム
   みずしゅりけん
   かげぶんしん
   むしのさざめき
もちもの:なし
備考:おくびょうな性格。ちょっぴり強情。

・カブルモ→シュバルゴ♀
とくせい:だっぴ→シェルアーマー
わざ:つつく→アイアンヘッド
   れんぞくぎり
   つるぎのまい
   アシッドボム
もちもの:なし
備考:てれやな性格。ちょっぴりみえっぱり。

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VSレイスポス

どうも、放仮ごです。冠の雪原の章バドレックス編、佳境に入ってまいりました。

今回はVSレイスポス。楽しんでいただければ幸いです。


その後、バドレックスににんじんの種を見せに行くとモコウがてょわわわぁ~んされ、種を埋める土壌にふさわしいところは二つあると説明され、ユウリと二人で話し合って「死者を弔いし墓標の傍らにある畑」…つまりはいにしえの墓地でにんじんを育てることになった。豊穣の王だけあってすぐ成長できるらしい。

 

 

「ここか、カブルモを捕まえた場所だな」

 

人気(ひとけ)の少ない場所ってことでここにしたけどよかったのかな?」

 

「墓場のにんじんか、なんかかっこいいな!てょわわわぁ~ん。ごほん。畑の一つに辿り着いたのであるな。この畑にはくろいにんじんが実る。曖昧な記憶ではあるがゴーストタイプの愛馬がよく食していた野菜である。では種まきを頼むである」

 

「アギルダー、頼む」

 

 

 アギルダーを繰り出し、高速で種を植える。さすが、仕事が速い。進化した力を試したいのか積極的にしてくれた。

 

 

「カラカラカラ…うむ!小気味よい土さばきであった。余を忘れて捕まえていたと聞いた時は不敬なと思ったが、速き仕事をする良きポケモンである。よい、許す」

 

「そう言ってくれると助かる。俺にもやらなきゃいけないことがあるからな」

 

「やらなきゃいけないこと…?」

 

「次は余の番であるな。今こそ力を見せようぞ…!」

 

 

 そう言うと奇妙な掛け声で奇妙なダンスを踊り出すバドレックス。同時にモコウも動いているのがなんか笑える。すると青いオーラを纏い始めた畑から、シュポンとくろいにんじんが一本生えてきた。

 

 

「数多の種子をまき、実らせたのはただ一つ…落ちぶれし我が力、ああなげかわしい、なげかわしい…しかしこの嘆きともまもなく別れの時!さあ人の子よ。そのくろいにんじんを力の限り引っこ抜くのである」

 

「了解!」

 

 

 そう言って片手で引っこ抜くユウリに思わずドン引きする。お前フィジカルもあんのな…ポケモンの一撃に耐えれるぐらいタフでフィジカルもあるって、お前本当にトレーナーか?

 

 

「人の子よ。よくぞやったである。そのにんじんを用いれば我が愛馬を誘き寄せること叶いし!あとは余の力を増幅させるキズナのタヅナさえあれば容易く愛馬を乗りこなせるが…もはや人間からあれを捧げられることはないであろう」

 

 

 その時だった。墓場の横を遮るように走る黒い馬の様なポケモンがいた。走り去って行くその姿を見て驚くバドレックス。あれが愛馬か?

 

 

「あやつは我が愛馬…レイスポス!?あの黒く輝く毛並み!粗暴狼藉に走る姿!出逢いし頃と微塵も変わらぬ。ああ懐かし、懐かしや…おそらくあ奴はにんじんの匂いを感じ取ったが詳しい場所まではわからぬと見た」

 

「おい、あの方角って確かフリーズ村じゃないか?」

 

「村ににんじんを奪いに行ったってこと?」

 

「だとすると人の子よ。フリーズ村が危うい!」

 

「お、おい待て!」

 

「ラウラ、乗って!」

 

 

 そう言ってふわふわ浮かぶモコウを引き連れて急いで村に向かうバドレックスを、ユウリが繰り出して搭乗したザシアンの後ろに乗り込み追いかけ、フリーズ村に辿り着くと村は大騒ぎになっていた。畑にレイスポスが乱入していたのである。

 

 

「待て!頼むぞ、アギルダー!」

 

「それ以上暴れるのはさせないよ、シュバルゴ!」

 

 

 にんじんがないと見るや村人達に襲いかかろうとしていたレイスポスの前に立ちはだかり、アギルダーとシュバルゴを繰り出す俺とユウリ。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「アシッドボム!」

 

「バクロォース!!」

 

 

 牽制に放った攻撃を、軽々と避けてしまうレイスポス。するとユウリの持つくろいにんじんに気付いたのかあからさまにユウリを狙って突進してくるレイスポスと、それを真正面から受け止めて見せるシュバルゴ。

 

 

「シュバルゴ!至近距離からアシッドボム!」

 

「アギルダー、お前もアシッドボムだ!」

 

 

 レイスポスを受け止めながら毒液の弾を吐き出すシュバルゴに合わせて毒液弾を背中から浴びせるアギルダー。レイスポスの体勢が崩れ、後退してシャドーボールを連射してきたところを追撃すべく狙う。

 

 

「むしのさざめきだ!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 シャドーボールの連射を避けながら音の衝撃波を放つアギルダーと、シャドーボールを受けながら突撃し鋼の頭部を叩きつけるシュバルゴ。対照的な二体の連携が、レイスポスを追い詰めていく。

 

 

「フス ブフルス…」

 

 

 するとくろいきりを放ち、姿を隠したかと思うとシャドーボールを連射するレイスポス。不意を突かれたシャドーボールを受けたアギルダーは吹き飛ばされ、俺達に向けられたシャドーボールはシュバルゴが防いでくれた。

 

 

「レロォース!!」

 

「させるか、アギルダー!」

 

 

 シュバルゴに守られている俺達を襲うのは難しいと考えたのか、村人の老婆を狙って襲いかかるレイスポスから老婆を抱えて回避、守ることに成功するアギルダー。さらにバドレックスがなにやら叫び、レイスポスはその場で停止すると村の外に逃げ出してしまった。

 

 

「大丈夫か婆さん?ユウリ、ここは頼んだ!行くぞアギルダー!」

 

 

 老婆の無事を確認するとアギルダーの肩に手をかけ、横抱きでアギルダーに持ち上げられてレイスポスを追いかける。

 

 

「とにかく大人しくさせないとバドレックスの元に連れて行くことも出来ないな。フェローチェを捕まえる予行練習だ、奴を倒すぞアギルダー!」

 

 

 レイスポスの放つシャドーボールを避けながら、とあるきのみを取り出してアギルダーに持たせる。カムラのみ。ゲームなら体力が4分の1になった時に使用することですばやさが一段階上がるきのみだ。だがこれはゲームじゃない、現実だ。どのタイミングでも食すことができる。

 

 

「特性かるわざ!持っている道具がなくなることですばやさが二倍になる特性だ!逃げられると思うなよ!」

 

 

 俺を下ろして、目にも留まらぬスピードで駆け抜けてレイスポスの前に立ちはだかるアギルダー。するとレイスポスを止めた先に、見覚えのある二人がバトルしていた。傍らにはキャンプがあることからここを拠点にしているらしい。

 

 

「な、なにごとですか!?」

 

「おっ、ラウラ!こんなところでなにしているんだ?」

 

「えっ、ダフネにローレル、お前たちこそこんなところでなにやってるんだ?」

 

 

 ここ、山の中腹なんだが。……というか、アノプスにグソクムシャとアイアントとタイレーツが負けてるって何があったんだろう…ちょっとそのバトル見たいんだが。

 

 

「そりゃあ修行だとも!山籠もりは基本中の基本!ダフネとポケモンバトルして地力を上げてるんだ!」

 

「負けてるみたいだが?」

 

「……タイプ相性の絶対的な差が通じないってどうすれば勝てるんだろうな…」

 

「お前も苦労してることは分かった、うん」

 

 

 というか強蟲ポケモンの一角であるアイアントを、進化もしてないアノプスで仕留めるってダフネの才能ヤバすぎないか?すると件のダフネがおずおずと目の前に出てきて。

 

 

「…あの」

 

「どうした、ダフネ」

 

「そういやアギルダーとレイスポスは何処だ?」

 

「そのレイスポスってポケモン…二人が話している間に逃げちゃいましたけど」

 

「「なに!?」」

 

 

 ダフネの指差す先を見れば、駆けて行くレイスポスと、その背中に引っ付いて引っ張ろうとしている物のパワーが足りなくて引き摺られているアギルダーの姿が。

 

 

「ちょっ、おま…待ちやがれ!アギルダー、戻れ…って遠すぎるか。ビークイン、空から奴を追いかけて居場所を教えてくれ!」

 

「待て、俺達も行くぞ!いいな、ダフネ!」

 

「はい、兄さん!」

 

 

 ビークインを繰り出して後を追わせ、俺も行こうとするとローレルとダフネが協力すると言いだして頷く。その時、ダフネが不気味な笑みを浮かべていたがもう一度見た時には真面目な顔をしていて。気のせいだったかな?と思いつつ、キャンプをしまったリュックを背負ったローレルと、ナベやらを入れたボストンバッグを担いだダフネと共に先を急ぐ俺であった。……アギルダー、無事かなあ。




避けるアギルダーと受けるシュバルゴの連携を書きたかったので満足。

・ラウラ
現実とゲームの世界の違いを活用している主人公。ポケスペのジュピターのモジャンボの戦い方は理に適ってたんだなと実感した。周りが超人多くてちょっと自信を失いかけているけど、アギルダーのスピードに耐えている時点で十分超人である。

・ユウリ
ポケモンの拳に耐え、片手でにんじんを引っこ抜くフィジカルも持つ原作主人公。ガラル空手を学んだらポケモンとも戦えそう。初めて使う受けるスタイルのシュバルゴをあっさり使いこなしている。

・モコウ
もはやてょわれることに慣れてきたツッコミ役。このあとユウリと協力してキズナのタヅナをピオニーの協力なしで作り上げた器用な娘。

・ローレル
実は妹に勝ったことがない蟲使いの兄。手持ちはグソクムシャ、アイアント、タイレーツと速攻型で割とガチ。持ち物はリュックに入れて運ぶ。

・ダフネ
実は兄に一度も負けたことがない蟲使いの妹。手持ちはデンヂムシ、アノプス、あと一匹。持ち物はボストンバッグに入れて運ぶ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSクワガノン

どうも、放仮ごです。最近ゼノブレイドDEつながる未来をプレイしてます。スパイドとか好みだけどそれより臥竜スタイルが好みにドンピシャでした。

今回はバドレックスとの決戦、なんですが様子がおかしくて…?楽しんでいただければ幸いです。


 しばらくしてやってきたビークインのしもべの案内に従いやってきたのは、立派な神殿の跡地。今いるのはフリーズ村から北の山の頂点だろうか。入り口にはボロボロのアギルダーが捨てられており、ビークインに介抱されていた。

 

 

「お前たち、無事か!?」

 

 

 慌てて駆け寄ると、グッと握り拳を作りこちらに向けるアギルダー。そうか、逃がさなかったんだな。よくやった。そう撫でてやっていると、俺達の来た道からバドレックスがふわふわ浮かぶモコウを連れてやってきたので思わず呆れる。

 

 

「バドレックス…俺の友達の扱い、ひどくないか?」

 

「ラウラ、やはりレイスポスを追いここにいたか。許せ、急いでいた故」

 

「な、なんだ?もしかしてこのポケモンがモコウを通じて話してるのか?」

 

「すごい…」

 

 

 驚く兄妹を置いて神殿の中のレイスポスの元へと向かうバドレックスに、ボールに戻したアギルダーにすごいきずぐすりを施しながらビークインを連れて慌ててついていく。その時ついてこようとした兄妹に一応釘をさすことにした。

 

 

「あ、そうだ。此処から先はちょっとプライベートだからお前たちは入り口で待っていてくれ。多分ユウリも来るからその時は案内してくれたら助かる」

 

「ここまでか。ふむ、しかたないな」

 

「兄さん、いいんですか?」

 

「気にならない、と言えば嘘になるがプライベートなら致し方ないだろう。チャンピオンユウリが来たら案内すればいいんだな?任せろ」

 

 

 サムズアップするローレルと、どこか不満げなダフネを置いてバドレックスの元に向かうと、レイスポスの姿はなく。どうやら主人が現れたことで隠れてしまったらしい。

 

 

「余と会う気はないと言う事か。ユウリ待ちであるな」

 

「あいつ、死んでもここに来るって気迫で暴れていたぞ。あんたとの思い出に浸りたかったんじゃないか?」

 

「そうであるか。…そうで、あるか…」

 

 

 俯くバドレックス。まあ、思うところはあるだろう。長年離れていた相棒だ。

 

 

「お待たせ、王様!ラウラ!」

 

「人の子よ。待ちわびたぞ」

 

 

 そこに、ザシアンに乗って駆けつけてきたユウリ。その手には、黒い手綱と思われる物が握られていて、バドレックスは頷き受け取った。

 

 

「このカンムリ神殿は余が住んでいた場所。レイスポスは力を失いし今の余を侮り、ここを根城にしているのだ。キズナのタヅナ、持ってきてくれたであるな。この手触り、この色艶…ああ懐かしや、懐かしや…。レイスポスはとても気位が高いポケモン、あやつ以上の力を見せねば主として認めてくれぬが…キズナのタヅナを用いて直接余の力を送り込む」

 

「そんなことができるのか?」

 

「さすればあやつは再び余に寄り添ってくれる、である。さあ人の子よ。愛馬を誘き寄せるため、あれの寝床にある籠へくろいにんじんを置くのである」

 

「了解。ちゃんと持って来たよ」

 

 

 そう言ってくろいにんじんを取り出して言われた籠に入れるユウリ。…もしかして、俺追いかける意味なかったか?まあいいや、考えない様にしよう。

 

 

「人の子等よ、いよいよであるな。しかしおぬしたちは一度愛馬を打ち負かしておる。ラウラに至っては追いかけられて恐怖まで抱いているであろう。あやつは脅威となるものには好んで近寄らぬゆえ、身を隠してここに戻るのを待ち構えるである」

 

「了解だ。なんかすまん」

 

「あのスピードで追いかけられたらトラウマになるよね…」

 

「お前たち、我が眠っている間になにやったんだ…」

 

 

 そうして、バドレックス、ユウリ、そして目を覚まして呆れ顔のモコウと共に物陰に隠れて様子を窺う。すると、空から急降下して着地。辺りを見渡すレイスポス。それを確認するなり飛び立ち、レイスポスの背に飛び乗るバドレックス。

 

 

「やったか!」

 

「いや、まだ!」

 

 

 大暴れするレイスポスと、その上で手綱を引っ掛けロデオするバドレックスの姿はちょっとした神話の再現の様で。光り輝き、バドレックスはレイスポスの上でマントを身に着けた姿へと変化した。これが真の姿か。

 

 

「クラウ!ムカイ ムカイ!ランバ ウンバ!」

 

 

 何言ってるかはわからないが、礼を言ってることは分かる。

 

 

「バドレックス、今までの様に我を使っていいぞ。礼も伝えられないだろう、っててょわわわぁ~ん。うむ、礼を言うぞモコウよ。人の子等よ。お主たちのおかげで余の元に愛馬が戻った。おかげで全盛期の力も取り戻せた。信仰を失くしたと思い込み、愛馬をも無くし、孤独のふちにいた余を…ユウリ、ラウラ、モコウ。お主たちは救ってくれたのである。感謝してもしきれぬとはまさにこのこと」

 

「俺はあんまり力になってないからな、気にするな」

 

「困っていたら力を貸すのは当たり前だよ」

 

「……して、どうであろう?今の余を捕らえる事が出来たなら…お主たちの誰かを認めその道に力を貸そうぞ。………我はいいかな。手に余りそうだ」

 

 

 目覚めるなり自分はいい、と首を横に振るモコウ。俺も同上だ。

 

 

「…まーた強くなるのか、ユウリ」

 

「え?モコウもラウラもいいの?」

 

「バドレックスをフルに扱えるのはお前ぐらいだろう」

 

「俺はそもそも蟲以外に興味はない」

 

「まったく、ブレないな。お前は…てょわわわぁ~ん。ではユウリよ。心に決めたならば余に挑むがよいである」

 

 

 そして、ユウリが頷こうとした、その時だった。

 

 

「ぐあああああっ!?」

 

「ローレル!?」

 

 

 入り口の方からローレルが吹き飛んできて、慌てて受け止め、フェローチェか!?と入り口を見やると、そこには傍らにアノプスとデンヂムシを連れたダフネが、怖い顔をして立っていた。いきなりのできごとにどよめく俺達を無視して、ダフネは口を開く。

 

 

「この時を待っていました。カンムリ雪原に眠る伝説ポケモン達…その一匹、私がいただきます」

 

 

 そう言ってアノプスからかわらずのいしを取り上げ、デンヂムシにかみなりのいしを触れさせるダフネ。するとアノプスはアーマルドへ、デンヂムシはクワガノンに進化し、臨戦態勢を取る。ダフネの目的は、バドレックスだ。

 

 

「クワガノン、ほうでん!」

 

 

 全ての電撃を前方へ放電させるという、驚異のほうでんを繰り出すクワガノン。俺達は邪魔者だと言わんばかりに吹き飛ばされるも、マントでほうでんを振り払うバドレックスには通じない。バドレックスは俺達を守るようにレイスポスを駆けらせて突撃し、こうそくいどうでアーマルドと激突する。

 

 

「アーマルド、シザークロス!」

 

「カムゥル!?」

 

「しおみず!」

 

 

 かち合っていたバドレックスを斬り飛ばしたかと思えば、傷口にしおみずを叩き込むアーマルド。情け容赦のない攻撃に、俺達は慌てて止めようとボールを構えるも、電撃が奔ってボールを落としてしまう。クワガノンが俺達に邪魔させないように睨みを利かせていた。クソッ!

 

 

「どうです、認めてくれましたか?私のものになってくれますか?まだだと言うのなら、容赦はしません!」

 

「ムン!カムール!」

 

 

 その瞬間、バドレックスの周囲に小さな霊体の弾が複数現れ、四方八方からアーマルドを攻撃。霊体なためか防御体勢が意味をなさず、弱って行くアーマルド。その光景に綺麗な髪を掻き毟るダフネ。

 

 

「クワガノン!むしのさざめき!」

 

「クラウ!ムカイ!」

 

 

 背後からクワガノンが音の衝撃波を放ちながら突撃するも、バドレックスはこうそくいどうで回避。背後を取るとサイコキネシスでクワガノンを持ち上げ、地面に叩きつける。なんて強さだ、これが伝説ポケモンバドレックスの力か。戦闘不能とまではいかないが瀕死のアーマルドとクワガノンに、ダフネは悔しげに顔を歪める。

 

 

「ぐっ…こうなれば、使いたくありませんでしたが…!」

 

 

 最後のボールを取り出し、スイッチを押すダフネ。繰り出されたのは、テントウムシの様なむし・エスパータイプのイオルブ。その視線の先にはユウリがいて。

 

 

「え?」

 

「さいみんじゅつ」

 

「ユウリ、どうした?ガッ!?」

 

 

 イオルブと目を合わせてしまったユウリがガクッと崩れ落ちて、それを心配したモコウを突き飛ばしながら立ち上がった。その目に光は無く、その手にはプレミアボールとマスターボールが握られていて。止める間もなく、ムゲンダイナとザシアンが繰り出される。

 

 

「ムゲンダイナ、クロスポイズン。ザシアン、じゃれつく」

 

「ダフネ!お前まさか…」

 

「私で勝てないのなら、勝てる人間に痛めつけてもらうまでです」

 

「カムゥ!?」

 

 

 ユウリに襲われたことで目を白黒させるバドレックス。髪を掻き上げて翡翠色の目を露出させギラギラ輝かせて笑うダフネ。死んだ目で機械的に指示するユウリ。倒れたモコウとローレルに、どう止めるか迷って手が出せない俺。その場は、混沌と化していた。




ダフネのキャラクターモチーフの一つは鎧武の呉島光実だったりします。

・ラウラ
ダフネの突然の凶行に混乱のるつぼに落ちている主人公。冷静に状況を把握してるからこそなんで?と混乱している。

・ユウリ
さいみんじゅつで洗脳されてしまったチャンピオン。バトルの腕前はそのまま、意識のみ操られているため情け容赦ない戦闘マシーンと化している。

・モコウ
バドレックスの通訳。乗っ取られている間の会話も何となく覚えている。洗脳されたユウリに突き飛ばされて目を回すことに。

・ローレル
妹の本性に気付けなかった愚かな兄。ラウラがいるらしいからカンムリ雪原に行こうと妹に言われ、修行にいいという理由でカンムリ雪原にホイホイやってきた。ダフネがボールを手に乱入しようとしたのを律儀に止めようとしたところ、デンヂムシのスパークで吹き飛ばされ昏倒することに。

・ダフネ
今回の悪役だった本性を現した妹。兄を唆して伝説ポケモンを手に入れるためにカンムリ雪原にやってきた。目的のためなら苦手な進化をすることも厭わない。その目的は、普通に蟲が嫌いで普通に誰もが欲しがる伝説ポケモンが欲しかったから。「普通に」こそが彼女の本質である。

・デンヂムシ→クワガノン♀
とくせい:バッテリー→ふゆう
わざ:スパーク→むしのさざめき
   ほうでん
   ねばねばネット
   でんじは
もちもの:なし
備考:むじゃきな性格。とてもきちょうめん。前方に集中してほうでんできる。

・アノプス→アーマルド♂
とくせい:カブトアーマー
わざ:げんしのちから
   しおみず
   シザークロス
   まもる
もちもの:かわらずのいし→なし
備考:れいせいな性格。体が丈夫。ラウラの手持ちを全滅させ、バドレックスを追い詰めた実力者。

・イオルブ♀
とくせい:むしのしらせ
わざ:さいみんじゅつ
   むしのていこう
   ミラーコート
   サイドチェンジ
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。食べるのが大好き。ダフネの指示通りにさいみんじゅつをかけれる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSイオルブ

どうも、放仮ごです。UAが150000行きましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はVSダフネと操られたユウリ。楽しんでいただければ幸いです。


 バドレックスがユウリの力を試す、はずが乱入してきたダフネに操られたユウリの操るムゲンダイナとザシアンを対峙して追い詰められていくバドレックス。こうそくいどうで直撃こそ逃れているが、あのままじゃ不味い。ムゲンダイナは真面目にこの状況を楽しむつもりのようで、ザシアンは洗脳されているユウリを人質に取られているようなものだからか一瞬躊躇いながらも向かっていく。

 

 

「ユウリさん。遊んでないで全力でバドレックスを倒してください」

 

「ムゲンダイナ、ダイマックスほう。ザシアン、きょじゅうざん」

 

「っ…させるか!アギルダー!イオルブを倒せ!むしのさざめき!ビークインは俺達を守れ!ぼうぎょしれい!」

 

 

 このままじゃバドレックスどころか昏倒しているモコウとローレルまで巻き込まれると悟った俺はアギルダーとビークインを繰り出し、ビークインに守りを固めさせてアギルダーを向かわせる。イオルブはエスパータイプの蟲ポケモンだ、むしわざに弱いはず…!

 

 

「イオルブ。サイドチェンジ」

 

「カムゥ!?」

 

「なに!?」

 

 

 サイドチェンジ。ダブルバトルで、相方と場所を入れ替える技。交代したのはなんとバドレックス。イオルブはムゲンダイナ達がチャージ中のおかげで攻撃は受けずにすんでいた。むしのさざめきの直撃を受けて分かりやすく弱ったバドレックスを襲うマゼンタ色の光線と巨剣。レイスポスが自発的に動くことで直撃こそ免れたものの、大ダメージ必至だ。

 

 

「ダフネ、お前…!」

 

「私は手段を択ばない。恵まれているのに蟲を選ぶ貴女とは違うんですよラウラさん!」

 

「何の話だ!デンチュラ、ほうでん!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 避けられるならと全体に攻撃が当たるほうでんを放つも、ミラーコートで返されてしまう。このイオルブ、練度が桁違いだ。こいつがダフネの切札か。

 

 

「ムゲンダイナ、ザシアン、ザマゼンタ…貴女が巻き込まれた事件のことは知っています。何度も、何度も伝説ポケモンを手にするチャンスがあったのに貴方はそんな、普通じゃないこだわりでその権利を捨てた!それが私には理解できない!」

 

「好みじゃないんだからいいだろそんなこと!?」

 

「誰もが普通に欲しがるんですよ、伝説ポケモン。私も同じです。普通に、欲しい。私は普通に強くなりたい。普通に強いポケモンを使って、蟲を使わなくても強くありたいんです。そして、もうユウリさんは私のもの。つまり、彼女の伝説ポケモンも私のものと道理です。トレーナーごと操れば私の蟲を使う忌々しい才能なんて関係ありません。後は正真正銘、私のものとなる伝説ポケモンを捕まえるのみ!」

 

「お前、支離滅裂なこと言ってることに気付いているか?」

 

「そうだぞ。普通に普通にって言ってるが、普通の人間が伝説ポケモンを使ったり、人を操ったりするわけないだろう」

 

 

 目を覚ましたモコウと共に反論する。ムツキのキリエさん嫌いと同じく滅茶苦茶な論理だ。目的も手段も紙っぺらの様で本意がまるでわからない。

 

 

「私は普通なんですよ、ラウラさん、モコウさん!兄さんも、貴女達も。私の在り方を否定する……目障りです、消えてください。ユウリさん、まずはこっちからです!」

 

「「え」」

 

「…ムゲンダイナ。かえんほうしゃ」

 

 

 ダフネに命令され、虚ろな目のユウリがムゲンダイナに指示すると同時、俺は慌ててローレルを抱えてその場からモコウの手を掴んで退避。炎が今の今までいた場所を襲う。ダフネは一瞬罪悪感で顔を青くするが、すぐ吹っ切れたようで続けて指示。ムゲンダイナの攻撃が俺達を襲う。バドレックスはザシアンがそのまま相手していた。ダフネあいつ、もうおかしくなってる。真面目な性格なんだろうが真面目すぎてもうなにがなんだかわからなくなってないか!?

 

 

「おい、ローレル!起きろローレル!お前、ダフネがあんなことになっている理由知らないのか!?」

 

「いい加減起きろ!起きやがれください!?」

 

「ごはっ!?ハッ!ここは…ダフネ、何事だ!?」

 

 

 モコウと二人でローレルを文字通りべしべし殴って叩き起こす。ローレルは状況を理解して無いようで、俺に担がれながらダフネに状況を聞こうとしていた。…こいつのこの性格がアレを作ったんじゃないのか?

 

 

「お前ダフネに攻撃されて伸びてたんだよ!なんか知ってるなら喋れ今すぐ!」

 

「さもないとあの火の中に叩き込むぞ!」

 

「え、いや、俺もなんでダフネがああなってるのか分からないというか。…少なくとも子供の頃は普通に蟲が好きだったぞ。俺のプレゼントしたアゴジムシを抱いて喜んでたぐらいだからな」

 

「「なに?」」

 

 

 いや、ダフネの蟲嫌いは筋金入りだろ。じゃないと普通は嫌いだなんて言わないはず…………待てよ?蟲ポケモンが嫌だからって伝説ポケモンを狙うなんて極端、ミーハーもいいところだ。あいつもしかして、伝説ポケモンを飾りとしてしか欲してない…?

 

 

「なあローレルお前、ダフネに蟲を使うことを強要してないか?」

 

「蟲ポケモン以外を使うのは許してないがそれがどうした?」

 

「ちなみにお前は空手家だろうが、ダフネの役職は!」

 

「ミニスカートだが?」

 

「やっぱりな。そういうことか」

 

 

 この世界にもポケモンスクール(前世で言う小学から高校)はある。ミニスカート、つまり女子中学生から高校生までのトレーナーの事を言う。ダフネがそれで今も在学しているなら、気持ちもわかってくる。蟲使いのミニスカート。…イメージが違うなんて生易しいものじゃない。普通ではない。引き籠もりだった俺には分かる。その辛さが。

 

 

「普通にってそういうことね…」

 

「どうしたラウラ。我なんもわからんのだが」

 

「とりあえずこうなった元凶はこの馬鹿ローレルってことだ」

 

「はあ!?なんでだ!?」

 

「とりあえずお前は自分で走れ!いい加減、重い!」

 

 

 高校生ぐらいの男をせいぜい中学生ぐらいの私が持ってたってだけでアレだからな!?三人で走って逃げ続け、ついに炎で横の退路を断たれて壁際まで追い詰められる俺達。一か八か、俺はダフネの諭すことにした。逆鱗に触れるか鎮火するかは神のみぞ知るだ。

 

 

「違和感は感じてたんだ。お前、本当は蟲が好きだろ。本当に嫌いなら使わなきゃいいんだ。なのに、兄に言われたからとか理由をつけて、それでも使っているのはちゃんと好きだからに相違ない!そうだろ!なあ、ご同類?」

 

「な、なにを…!」

 

「だってそうだろ。進化が苦手なのは事実だとして、あんなに強くなるまで蟲を根気よく育てるなんて苦手な人間にできるはずがない!その証拠に、お前は自分の手持ちたちに嫌いと直接言ったか!?」

 

「っ!」

 

 

 押し黙るダフネ。そうなのだ。「普通、女の子なら蟲なんて嫌いで当り前です!」この言葉が引っかかっていた。「普通」「女の子なら」「蟲なんて」「嫌いで当り前」他人事ばかりで一度も、自分の意見を言ってない。蟲が嫌いなら直接言うはずだ。なのにそうしなかった。真面目すぎて、嘘を吐けない性格なんだろう。

 

 

「馬鹿ローレルが気付いてない様だから言ってやる。お前が蟲が苦手なのは世間体としてだ。俺は別段気にしないが、「蟲ポケモンを使う女の子」それだけで悪く言う輩がいるんだろ。言い訳として「兄に言われたから」っていう大義名分だ。伝説ポケモンを求めるのは普通だと思いたいからだ。自分が伝説ポケモンが欲しい普通の人間だって思い込んで安心したいからだ。なあそうだろう、ご同類!」

 

「………うるさい。うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!ユウリさん!やれ!」

 

「ムゲンダイナ。ダイマックスほう」

 

 

 無機質な命令と共にチャージされるマゼンタ色の光。…逆鱗に触れてしまったか。前方には割と巨大なムゲンダイナ、周りは火の海で逃げられない。万事休すか。

 

 

「こんなところで死んでたまるか!カメックス!からにこもる!」

 

「このダフネを残したまま死んだら死にきれん!グソクムシャ!てっぺき!」

 

「…ビークイン、ぼうぎょしれい」

 

 

 モコウとローレルが防御しようとするが、俺は知っている。ダイマックスほうはその程度じゃ防げない。少しでもと繰り出したビークインにも指示するが、焼け石に蟲だろう。と、その時。外は雪だというのに雷鳴が轟いた。いや、外からじゃない。下から…?と思ったその瞬間。

 

 

「ゴアアアアアッ!?」

 

 

 地面から巨大なかみなりが飛び出してムゲンダイナを強襲、まるで天を衝く柱の様な雷電はムゲンダイナごとユウリとダフネを吹き飛ばすと、一つの形を形成してその場に降り立った。助かった、のか?

 

 

「じじ じじじ」

 

「まさか、伝説の一体!?どうして…どうして貴女達ばかりに!」

 

 

 その異様な存在はモコウを守るように立ちはだかり、ダフネを睨んでぴょんぴょん飛び跳ねるのであった。




違和感に気付けた人はいたかな?

・ラウラ
同じ蟲好きとしてダフネに説教した主人公。大の大人を担いでムゲンダイナから逃げ回れる超人。一度死んでいるためか、逃れられない死を感じると諦めるところがある。

・ユウリ
操られてラウラ達を追い詰める。ムゲンダイナは真面目にこの状況を利用してラウラをボコろうとしており、ザシアンは人質を取られているようなものなのでしぶしぶ従っている。

・モコウ
今回一番のファインプレー。まさかの存在を呼び出した。

・ローレル
普通に過ごしたいダフネの意を汲みとれずにこんなことになってしまった空手家の兄貴。ラウラの言葉を聞いて止めねばなるまいと決意する。

・ダフネ
実はラウラや兄と同レベルで蟲ポケモンが大好きな、世間体として蟲嫌いのミニスカートの妹。蟲ポケモンを連れていたら否定されてしまい、それ以降蟲嫌いだと自分の心をも偽るようになり、自分の感情に脅迫されるように普通を目指し、ミーハーな普通として伝説ポケモンを欲しがるという滅茶苦茶なことに。蟲好きな自分と蟲嫌いな自分と言う自己矛盾に苛まれて壊れてしまった。
 だけど蟲ポケモンを手放せず、兄に言われているからと自分自身にも言い聞かせて鍛え続けた。世間体を気にしないラウラとは対照的な存在で、ラウラの事が妬ましくてしょうがない。

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VSレジエレキ

どうも、放仮ごです。ダフネ程複雑なキャラは過去にも書いたことがありますが、ポケモンって題材も合わせてなので結構難航してます。めんどくさいなこの子!(禁句)

今回はラウラ・モコウ・ローレルVS操られたユウリ。楽しんでいただければ幸いです。


 同時刻。カンムリ雪原のとある遺跡の入り口で、少女と女性が腰を抜かしていた。

 

 

「い、今出て行ったのはなんだったんだ…?」

 

「か、雷に見えましたが…と一瞬過ぎて確証もないことを言ってみます」

 

 

 条件を整え、遺跡の扉を開けたその瞬間。雷の如きスピードで飛び出したナニカは、彼方の山の方へと突き進んでいき、だいぶ離れたここまで轟く雷鳴が鳴った。そこに、地を駆ける鳥ポケモンに乗ってもう一人少女が現れる。

 

 

「ルミ、リヅキ姉さん。なにかあったんです?」

 

「こっちが知りたいです、と最愛の妹に説明できないことを残念に思います」

 

「まあでも、目的の奴はいるみたいだ。好きでもないポケモンを三匹も捕まえた甲斐はあった」

 

 

 その眼前の遺跡の中には、呆然としている竜の頭部の様なポケモンがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如現れ、モコウを守るように立ちはだかるそいつ。電球のようなシルエットのそれは電気エネルギーで構成されており、唯一電気エネルギーじゃない青い金具でまるでツインテールの様に縛られて手足の様になっていて、顔には点字の様な物が刻まれている。レジアイス、レジスチル、レジロック、そのどれとも似てるがどれとも違う。名づけるならレジエレキか…?図鑑が反応し、見てみると本当にレジエレキだった。新たなレジ一族…!?

 

 

「…モコウお前、何でそいつに好かれてるんだ?」

 

「どちらかというと我が知りたいが、敵ではないらしい」

 

 

ご主人様!ご主人様!大丈夫?とでも言うようにピョンピョン跳ねながらモコウの様子を確かめるレジエレキ。モコウは疑問符を浮かべていたが、スマホロトムで確認したモコウは恐る恐るクイックボールを取り出した。

 

 

「レジエレキ。共に戦ってくれるか?」

 

「っ、させません!クワガノン、ねばねばネット!」

 

 

 それを邪魔しようとするダフネがひんしのクワガノンに指示してねばねばする蜘蛛の巣を飛ばしてきたが、レジエレキがその間に割り込み電撃の体で焼き焦がしてしまった。

 

 

「なんでお前が我を選んだのかは知らん。だが大事な友達を取り戻すために、力を貸してくれ」

 

 

 モコウの言葉に頷いたレジエレキは自らボールのスイッチに触れて入り込み、続けて自ら飛び出してくる。あまりな早業に、妨害しようとしていたダフネも呆気にとられた。

 

 

「こうなればあなたもさいみんじゅつで…!」

 

「そうなんどもさせるか!でんじは!」

 

 

 モコウにも催眠をかけようとイオルブに指示しようとするダフネだがしかし、まるで早撃ちの様に放たれた電撃を喰らって麻痺するイオルブ。いくらなんでも速すぎないか?

 

 

「くっ…ユウリさん!」

 

「ウーラオス。すいりゅうれんだ」

 

「こっちはこっちで危ないんだったな!」

 

 

 ムゲンダイナが倒されたのを見て、すぐさまウーラオスに切り替えてきたユウリの攻撃が俺のビークインを襲う。だがそれは、目の前に立ちはだかったグソクムシャに防がれた。

 

 

「てっぺき。これ以上の悪事はさせんぞダフネ!」

 

「兄さんまで…邪魔です!クワガノン、グソクムシャとビークインにほうでん!」

 

「ぼうぎょしれい。そのままエアスラッシュだ!」

 

 

 クワガノンから放たれたほうでんをしもべたちで防ぎ切り、返しに風の刃を放つ。瀕死だったクワガノンは戦闘不能、イオルブは「サイドチェンジ」でザシアンと交代して回避、ウーラオスとザシアンはまともに浴びて後退する。

 

 

「イオルブ、バドレックスにむしのていこう!ユウリさんは全部出してラウラさん、兄さん、モコウさんの相手をしてください!」

 

「チャンピオンでもやれることには限度があるぞ…なんて、ユウリには関係ない話か」

 

「レジエレキにみずのはどう。グソクムシャにつるのムチ。ビークインにアシッドボムとすいりゅうれんだ。バドレックスにじゃれつく」

 

「…なんであの数のポケモンに指示ができるんだ?」

 

「ローレル、もっともな疑問だが相手はチャンピオンだ。常識が通じるか」

 

 

 繰り出されたインテレオン、フシギバナ、シュバルゴは己が主人の異変に一瞬狼狽えるもウーラオスとザシアン共に指示通りに攻撃を仕掛け、俺達も対抗する。ユウリの実力じゃダフネに手を出すのは無理そうだ。まずはこいつらを沈める!

 

 

「ラウラ、我はインテレオンとザシアンを封じるから他を頼む!サンダープリズン!」

 

 

 まるで雷の檻の様な技を繰り出しインテレオンの水流を受け付けず、そのままバドレックスを守るように突進するレジエレキ。ユウリの手持ちで一番の実力者のインテレオンとムゲンダイナ、ザシアンを封じたのはさすが伝説と言える。正直助かる。ローレルはフシギバナの相手をし、俺が相手するのは何故か二体がかりのウーラオスとシュバルゴだが、俺のビークインには関係ない。攻撃をぼうぎょしれいで受け止め、強烈な一撃をお返ししてやる。

 

 

「ぼうぎょしれい。もう一度、エアスラッシュ!」

 

 

 二体同時に風の刃がウーラオスとシュバルゴに襲いかかり、吹き飛ばす。するとユウリは恐るべき手に出た。

 

 

「ほのおのパンチ、すいりゅうれんだ」

 

「なに!?」

 

 

 ビークインのぼうぎょしれいによるしもべたちを、炎を纏ったすいりゅうれんだで貫き効果抜群の一撃、否、連撃を叩き込んできたのだ。たまらず戦闘不能になるビークイン。そこに、俺目掛けて襲いかかるシュバルゴに、俺は咄嗟にドラピオンを繰り出して応戦する。

 

 

「操られてもバトルセンスは健在か…厄介だな。ドラピオン、こおりのきばで拘束しろ!」

 

「ウーラオス、地面にほのおのパンチ。シュバルゴはアイアンヘッド」

 

 

 いつものこおりのきばの拘束を試みるも、同じように地面に広げられた炎で相殺されてしまい、その隙を突いたアイアンヘッドがドラピオンの頭部に炸裂、脳震盪になったのかぐらつくドラピオン。

 

 

「戻れ、ドラピオン!くそっ…ウルガモス!モスノウ!」

 

「ウルガモスにすいりゅうれんだ。モスノウにアイアンヘッド」

 

 

 不利だと分かっていながらも繰り出した二体が一蹴される。蟲ポケモンは耐久力はないからな…ドラピオンの回復は遅いだろうし、使えるのはアギルダーとデンチュラ。デンチュラのメインウェポンであるほうでんはこんな狭い場所じゃ周りにも被害が及ぶ。ならば!

 

 

「アギルダー!かげぶんしん!」

 

 

 繰り出すと同時に影分身で二体を取り囲むアギルダー。ウーラオスとシュバルゴは指示もなく背中合わせで構え、警戒する。問題は二体に効果抜群の技がないことだが、手数で補うか。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「ウーラオス、地面にかわらわり。シュバルゴ、空に目掛けてアシッドボム」

 

 

 四方八方の影分身全てから放たれる水の手裏剣。しかしユウリの指示でウーラオスが地面を叩き割って壁を作って防ぎ、さらに空中で破裂した毒のシャワーがアギルダーたちを襲って分身が掻き消えてしまう。そんな手が!?

 

 

「アギルダー、逃げろ!」

 

「つばめがえし」

 

 

 アギルダーに逃げるように指示するも、必中の鋭い蹴りが炸裂して崩れ落ちてしまう。ボールに戻しつつ、距離を詰めよってくるウーラオスとシュバルゴから逃げるようにジリジリと後退する。デンチュラで周りに被害を出さずに倒すことは不可能に近い。万事休すか。

 

 

「ここまでか…」

 

「ウーラオス、シュバルゴ。ラウラを襲え」

 

 

 申し訳なさそうに俺を追い詰めるウーラオスとシュバルゴ。ポケモンはトレーナーの指示に逆らえないからしょうがないとはいえ、デンチュラのほうでんで俺ごとやるしかないか?いや、俺が大好き(多分)のユウリなら…!

 

 

「ユウリ!いい加減にしろ!お前、そんなさいみんじゅつに操られるほど簡単な性格してないだろ!」

 

「!」

 

「目を覚ませ!お前のポケモン達に、やりたくないことをやらせるな!」

 

「…!」

 

 

 俺の言葉に反応するユウリ。一瞬だが目に光が戻った。もう少し声をかければ…そこで、ダフネが焦燥しきった顔でイオルブをこちらに向けた。

 

 

「させません!邪魔者は眠ってしまえ!さいみんじゅつ!」

 

「なっ…」

 

「「ラウラ!?」」

 

 

 放たれた催眠念波に抗うことができず、崩れ落ちる俺を呼ぶモコウとローレルの声。最後にユウリの無感情でこちらを見つめる顔が見えて、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは?」

 

 

 目を覚ますと同時に違和感を感じる己の声。なんとなしにスマホを見ると、そこにはぼさぼさの黒髪にメガネの俺が映っていた。




催眠術に落ちたラウラが目覚めたのは…?

・ラウラ
操られたユウリに苦戦を強いられる主人公。催眠術に落ちて目覚めると別人に…?

・ユウリ
操られてなお、才能の片鱗を見せる原作主人公。五体同時に指示するというとんでも技を披露している。ラウラの呼びかけで戻りかける。

・モコウ
何故かレジエレキに懐かれているツッコミ役。ユウリの主力を抑える大健闘。

・2人の少女と1人の女性
同時刻にカンムリ雪原のどこかで遺跡を巡っていたらしい方々。彼女たちが遺跡を開いたことでレジエレキが飛び出した。一人は地を駆ける鳥ポケモンに乗ってる。

・ローレル
兄として妹を止めるべく奮闘するもフシギバナでグソクムシャを完封されている兄。妹にも勝てないのにチャンピオンに勝てるわけがなかった。

・ダフネ
あの手この手でバドレックスを捕まえるべく頑張る妹。モコウがレジエレキを手に入れたせいで焦燥しきってまともな判断ができなくなっておりユウリ任せになっていたが、そのユウリが戻りそうになったためさいみんじゅつを再度使用。ラウラを眠らせた。

・レジエレキ
とくせい:トランジスタ
わざ:かみなり
   サンダープリズン
   しんそく
   でんじは
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。よく物を散らかす。封印が解かれた瞬間神殿から飛び出して、モコウを何故かご主人と認めて助けに現れ手持ちになる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSデンチュラ

どうも、放仮ごです。明日はちょっと面接に行くのでもしかしたら投稿出来ないかもしれませんがあしからず。

今回はラウラの夢のできごと。楽しんでいただければ幸いです。


 目を覚ますと、そこはいつもの俺、桂樹月(かつら いつき)の部屋。蜘蛛、蠍、百足といった蟲が入れられたケースが置いてあり、床にはクッションとDS、ポテチが置いてある。何故か懐かしい光景だ。どうやらゲームをしている間に寝落ちしてしまったらしい。ポケットに入れていたスマホに映る俺の顔を感慨深げに見つめてから、ポケットモンスターホワイトが入ったDSを持ち上げてフリーズしてないか確認する。

 

 

「落とした時にゲームカードが抜けてるとかはないな。よかった」

 

 

 2020年現在。ポケモンXY、サンムーン、オメガルビーアルファサファイア、ウルトラサンムーン、ピカチュウイーブイ、ソードシールドと新作が続々出る中で、今時BWをプレイしているのは日本中でも俺ぐらいだろう。家が微妙に貧乏でDSしか持ってないのである。ダイパプラチナ、ハートゴールドソウルシルバー、ブラックホワイト、ブラックホワイト2、GBAのルビーサファイアエメラルドにリーフグリーンと結構ポケモンはできるが、その中でもやはりBWが一番だ。

 ダークなストーリー、四季を楽しめるゲームシステム、トリプルバトルにローテーションバトル、バトルサブウェイみたいなやり込み要素、シリーズでも数多い伝説ポケモン、特別な扱いを受けている蟲ポケモンであるウルガモスと、好きなところが多すぎる。ダイパも好きだけどな、とか関係ないことを考えながらバトルサブウェイを周回する。

 

 

「おっ」

 

 

 ペンドラーのハードローラーが決まったことに何故か感慨深くなる。やっぱりペンドラーと言えばハードローラーだよな。ポケモンセンターのおっさんに聞いた時にハードローラーを覚えないって聞いた時の衝撃よ。……何の話だ?技を思い出すにはハートのうろこを使ってフキヨセシティで…だよな?ポケモンセンターでできるわけないよな?ましてや無料でできるわけがない。なんの記憶だ?

 

 

「ま、いいか」

 

 

 ここなら痛い思いをすることもないし、いつものように引き籠もろう。飼っている蟲達に餌をやって、ポケモンやって、飯食って。ポケスペや蟲が出てくる漫画を読んで。妹の勉強を見てやって。何か言いたげな両親を無視して。風呂入って。寝て。日曜日だけ特撮やら見て。その繰り返し。何も変わらない毎日のルーティンだ。

 

 なのになんで、十数年ぶりという感覚になるのだろう。なんで、風呂場で見る俺の体に違和感を感じるんだろう。なんで、ゲームの中のデンチュラ達が必要以上に動かないことに不満を覚えるのだろう。なんで、ターンごとに技を撃ちあうだけのポケモンバトルが酷くつまらないと感じるのだろう。なんで、妹がいることに違和感を感じるんだろう。なんで、人がいなくて寂しい部屋に違和感を感じるのだろう。まるで、誰かがいつも側にいたような…そんなはず、引き籠もりで友人関係も断った俺にはないのに。

 

 

 

なんで、なんで、なんで、、、、?

 

 

 

 つまらなくなってしまったDSを投げ出して本棚から漫画を引っ張り出す。最近アニメになったらしいがこっちでは放送されてない鬼を狩る剣士たちが描かれた漫画だ。そろそろ次の巻を買ってもいいかもな。お気に入りの蜘蛛一家が倒されて、蜘蛛って色んな能力を持っていてすごいなあと感服しながら、次の舞台である列車の話を読み進める。夢を操る鬼との戦いだ。…なんで、その内容が引っかかるのか。催眠……夢………夢?

 

 

「………夢か」

 

 

 そうだ、俺は長い夢を見ていた。ポケモンの世界に転生して、女子になって、相棒のデンチュラと共にジムリーダーやライバルと競い合い、主人公の前に立ちはだかったけど惜しくも敗れてしまった、そんな夢。夢なのだから主人公に勝ってもいいじゃないか。まるで現実の様にシビアで……………。

 

 

「どっちが夢だ?」

 

 

 思わずぼやくが、すぐに気を取り直す。いや、意識が覚醒している今が現実だろう。ポケモンなんて実在しないし、こんな引き籠もりでコミュ症の俺に仲のいいライバルが沢山できるなんてのもありえない。…ありえない、はずだ。

 

 

「お兄ちゃん、いるー?」

 

 

 そこに扉をノックして入ってきたのは、我が妹の樹里(じゅり)。俺と違って優等生でよくできた妹は散らかってる俺の部屋を見て顔をしかめた後、来年受験の高校の答案用紙を見せてきた。

 

 

「間違ってないか確認してくれない?」

 

「ああ、いいけど……なあ樹里。俺って桂樹月だよな?」

 

「なに言ってるの…?」

 

 

 ドン引きした表情の妹から目を逸らす。だよな、どう考えても変な質問だった。妹は呆れたように溜め息を吐いて、こう言った。

 

 

「お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ。ポケモンが得意で、蟲が大好きな、変人のお兄ちゃんなんて他にいないよ?」

 

「そう、だよな…俺は俺だよな」

 

 

 その時、掌がバチッと痺れて我に返る。ああ、これは夢だ。思い出した。俺は妹と仲よくなんてない。俺が引き籠もって蟲を集めだしてから、妹には嫌われたんだった。これは俺にとって都合がいい夢だ。前世の、こうだったらいいという願望だ。妙に現実っぽいから騙されるところだった。これが夢ならどうすればいい。答えはさっきまで読んでいた漫画が教えてくれた。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「樹里。現実のお前は俺の死なんか乗り越えて幸せに過ごしていると信じてるぞ」

 

 

 樹里にそう言って部屋の隅に置かれた虫籠の蓋を開き、掌に乗せたのはシドニージョウゴグモ。俺が死んだ原因。そう、目を覚ますには夢の中で死ねばいい。もしも現実だったらとは思うが、先程から右手が痺れてしょうがない。アイツが呼んでいる。俺の相棒が。

 

 

「…リアルに味わったあの苦しみをもう一度感じるかもしれないが」

 

 

 それがどうした。最高のライバルがあんな目に合わされて、呑気に眠っている場合か。そして俺はシドニージョウゴグモの毒にかかろうとして…

 

 

「駄目!」

 

 

 だがしかし、俺が死のうとするのをこの世界は許さないらしい。樹里に取り上げられてしまった。涙目の妹の姿に、ウッとなる。

 

 

「ねえ、幸せでしょお兄ちゃん。苦しんでまで戻ることないよ。ここにいようよ。ムゲンダイナに襲われて、アルルカンに殺されそうになって、お兄ちゃんを苦しめるあんな世界に戻る事なんてない!」

 

「……そうかもしれない、ここにいた方が幸せかもしれない。だけどな、俺は知ったんだ」

 

 

 ジムリーダーからは期待を。

 

 ライバルからは温もりを。

 

 手持ちの皆からは信頼を。

 

 あの世界の住人から向けられるものが、心地いいんだ。

 

 生きている、蟲ポケモンたちが好きなんだ。愛してる。もう、モニターの向こうのデンチュラ達を見るだけじゃ満足できないんだ。

 

 

「…どうしても、俺を死なせてくれないか?」

 

 

 俺の問いかけに、涙を浮かべながら首を横に振る樹里。……俺が死んだあと、現実のあいつはどうしたんだろう。こんなに泣いてくれたのだろうか。

 

 

「…デンチュラ、ほうでんだ」

 

「!?」

 

 

 掌のバチバチが広がる。現実がどうなってるかは知らないが、指示は届いたらしい。電気に包まれ、痺れる中で俺は、ラウラに戻りつつある姿の笑顔で告げる。

 

 

「悪い。俺、行くわ」

 

 

 その瞬間、体に電撃が駆け巡り、俺は覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばか、なっ…!?」

 

 

 黒焦げで目を覚ました俺を、信じられないという表情で見つめるダフネ。掌には、眠る前に手にしていたデンチュラのボールが握られ、中にはふんすっと一仕事終えた様な顔のデンチュラがいた。またお前には助けられてしまったな、相棒。

 

 

「私のイオルブのさいみんじゅつは決して目を覚ましたくないほど幸せな夢を見せて延々と眠り続けさせる代物ですよ!?兄さんで試したのに、なのになんで起きれるんですか!?」

 

「今のユウリもそんな感じか。なるほどね、確かに起きたくはなかったさ。でもな、虚構の夢より、現実の方がいいんだよ」

 

 

 俺はこの世界が好きだ。蟲ポケモンが生き生きと生息しているこの世界こそが俺のいるべき場所だ。そう、改めて認識した。




BWは神作。トリプルバトル復活して、どうぞ。

・ラウラ
前世の名は桂樹月。死にかけることになってもラウラとして生きることを選んでデンチュラのほうでんのショックで起床。一人の兄としても、ダフネとの決着に挑む。

・桂樹月
ラウラの前世。蟲が好きなこと以外はごく普通の引き籠もり。愛読書はポケスペとムシブギョーと鬼滅の刃。ある時、うっかりシドニージョウゴグモの毒にかかって死亡。享年17歳。

・桂樹里
樹月の妹。兄と違ってよくできた優等生で、中学二年生でありながら高校の問題にも挑んで樹月に答え合わせしてもらっていた。自分よりも蟲を好く様になった兄を忌避していた。樹月が死した後は神のみぞ知る。

・ダフネ
兄で人体実験していたことをさらっと暴露した妹。彼女のイオルブのさいみんじゅつは決して目を覚ましたくないほど幸せな夢を見せて延々と眠り続けさせる代物で、起こすにはイオルブの任意が必要。ラウラが寝ている間に色々していた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアーマルド

どうも、放仮ごです。面接が始まる前に投稿出来そうだったので投稿します。あと感想で触れられましたがシドニージョウゴグモは本来飼育できることはできない蜘蛛です。今作の現実では飼うことができる、ということでよろしくお願いします。

今回はダフネとの長い戦いの決着。楽しんでいただければ幸いです。


 目を覚ました俺に、信じられない物を見るような目を向けていたダフネだったが、すぐ正気を取り戻すと両手を広げて勝ち誇る。

 

 

「くっ…ですが、もう関係ありません!ラウラさんが眠っている間にユウリさんのさいみんじゅつはかけ直しました!貴女の説得でも目を覚ますことはありません!」

 

「ユウリを止める方法なら思いついたぞ。デンチュラ」

 

 

 ウーラオスとシュバルゴを側に置いて警戒する様に睨み付けてくるユウリに対し、デンチュラを繰り出す。最初から、倒さなくてよかったんだ。

 

 

「連続でエレキネット!」

 

「!?」

 

「なあっ!?」

 

 

 ウーラオスとシュバルゴだけでなく、イオルブとアーマルド、ダフネとユウリにまでエレキネットを引っ掛け感電させる。ダイレクトアタックは犯罪だが今回ばかりは許してほしい。モコウと戦ってるインテレオンとザシアン、ローレルと戦ってるフシギバナが反応してこちらに攻撃を仕掛けようとするが、モコウのレジエレキとローレルのアイアントが阻む。

 

 

「伝説だろうが、お前も閉じ込めてやる!サンダープリズン!」

 

「アイアントなら毒は効かん!まひだけならば!シザークロス!」

 

 

 モコウのレジエレキがインテレオンとザシアンを雷の檻に閉じ込め、ローレルのアイアントが力ずくでフシギバナを撃破。これで邪魔者はいなくなった。

 

 

「バドレックス!ユウリをてょわらせろ!」

 

「カムッ!」

 

 

 了解した!とでも言うように頷くバドレックス。さいみんじゅつの上位互換でもある乗っ取りだ。これならば!

 

 

「ぐうううう…させない、バドレックスは私のものだ!イオルブ、サイドチェンジ!アーマルド、シザークロス!」

 

 

 しかし電撃で舌が痺れているはずなのに根性を見せたダフネが己のポケモンに指示、サイドチェンジでバドレックスと交代するイオルブとエレキネットを破壊して出てくるアーマルド。俺が眠っている間に回復していたのか。バドレックスのエレキネットを解きたいが、その前にこの二体をデンチュラだけでどうにかしないといけない。…無理では?

 

 

「ほうでん!」

 

「イオルブ、ミラーコート!アーマルド、まもる!」

 

「くそっ!?」

 

 

 唯一とも言っていい打点であるほうでんがあっさり防がれたことに思わず舌打ちする。そのまま前衛と後衛に分かれて攻撃を仕掛けてくる二体。手持ちをげんきのかけらで回復させたいが、隙がない。げんしのちからを避け、しおみずを受けながらきゅうけつを叩き込むデンチュラだが効果は半減、ダメージが薄い。これは詰んだか?いや、イオルブさえ倒せばいいのか。問題は方法だが。……そうだ、ドラピオンは脳震盪を起こしただけで無事だった。

 

 

「いとをはくで壁に逃れろ!」

 

「イオルブ、むしのていこうで邪魔しなさい!」

 

「ドラピオン!イオルブにミサイルばり!」

 

「なっ!?み、ミラーコート!アーマルド、シザークロス!」

 

「クロスポイズンで迎え撃て!」

 

 

 完全回復したドラピオンにかかりきりになるダフネ。俺の切札級のポケモンであると知った上での反応だ。ドラピオンに集中してくれるのはありがたい。

 

 

「デンチュラ、イオルブにいとをはく!引っ張り上げろ!」

 

「さ、さいみんじゅつ!」

 

 

 神殿の壁に引っ付いたデンチュラがイオルブを拘束、己の側まで引っ張り上げる。ダフネはさいみんじゅつで抵抗するも、イオルブの最大の弱点は攻撃技がむしのていこうしかないことだ!

 

 

「きゅうけつ!」

 

 

 眠りに落ちる前に、デンチュラのきゅうけつが炸裂。崩れ落ちるイオルブ。これでユウリは……戻ってない!?

 

 

「無駄です、さいみんじゅつを解けるのはイオルブのみ!それを倒した今、ユウリさんを元に戻すことは「てょわわわぁ~ん」…てょわわわ?」

 

 

 ユウリの口から聞こえた奇妙な言葉に目が点になるダフネ。ようやく、取り戻したぞ。

 

 

「俺の勝利条件はバドレックスをユウリの側まで置いてエレキネットを解くことだ。お前のサイドチェンジのおかげで近づけた。なあ、バドレックス」

 

「うむ。ユウリの体は余が頂いた。もはや、余を襲わせることは叶わん。………何が起こったの?」

 

 

 正気に戻ったユウリに、信じられないと目を見開くダフネ。お前のイオルブも大概凶悪だったが、伝説はもっと理不尽なんだ。きょろきょろ辺りを見渡して状況を把握しようとするユウリが参戦する前に方をつけようとしたのか声を張り上げるダフネ。

 

 

「アーマルドォ!バドレックスにしおみず!もう体力はないはず!」

 

「隙を見せたな?こおりのきば」

 

 

 アーマルドがドラピオンに背を向けてバドレックスに技を放とうとしていたので、遠慮なく背中から氷漬けにしてやる。するとダフネは絶望したように崩れ落ちる。

 

 

「あ、ああ、ああああああ」

 

「これで終わりだ」

 

「ラウラ、モコウ。一体なにがあったの?」

 

「お前が操られて大変だったってだけだ。お前のポケモン戻してやれ。受けたくもない命令を遂行して疲労している」

 

「う、うん…」

 

 

 モコウに言われるまま、手持ちをボールに戻すユウリ。首を傾げているが、説明は後だ。

 

 

「ダフネ」

 

「…兄さん。私は、普通ではないんですね……アハハ…」

 

 

 自分の行動を省みたのか、死んだ目で涙を流し笑うダフネ。まあ、犯罪のオンパレードだったからな…

 

 

「普通じゃないのがそんなに嫌か?」

 

「嫌に決まっています。友達もできないんですから」

 

「でも、それでも蟲は使いたかったんだろ?伝説なんて、欲しくはなかった。そうだろ?」

 

「…………ラウラさんは何なんですか。女の子なのに、年頃なのに、蟲ポケモンを自信満々に使って、セミファイナルトーナメント準優勝までするなんて。人の奇異の目が怖くないんですか」

 

「怖くないぞ。気にするだけ無駄だ。俺は、蟲が大好きだ。それを誇りに思っている。そんな俺を、当初は奇異の目で見る輩はたくさんいたさ。だけどな?何が好きだろうが、熱意と実力さえあれば周りの目なんて変えれるんだ!」

 

 

 そう、胸を張る。好きなものを忌避することこそが間違いだ。ダフネの手持ちのことを思うと、やるせなくなる。自分を大事に育てていた主人が人前では嫌いなのだという。可哀想じゃないか。

 

 

「……その心の強さが羨ましい。蟲ポケモンだけで伝説ポケモンを捕まえられれば、なにか変わったでしょうか」

 

「ユウリを操ったりせず、実力で挑んでいればあるいはな。今のお前はただの犯罪者だ」

 

「ダフネ。共に自首しよう」

 

 

 俺に続いて、そう言うローレルに、目を丸くして首を横に振るダフネ。

 

 

「兄さんは関係ありません!私一人でやったこと…」

 

「お前の悩みに気付かず、止めれなかった俺も同罪だ。いや、お前がこうなったのは俺のせいだ。お前が悪くないとは言わん、だからせめて、共に」

 

「兄さん……私、周りにどう言われようが蟲を使うように言ってくれた兄さんにちょっと救われていたんですよ?それだけは、勘違いしないでください」

 

「ダフネ………ラウラ、ユウリ、モコウ。すまなかった、我ら兄妹が迷惑をかけた」

 

「特にユウリさん…それに、バドレックス。ごめんなさい」

 

「気にするな。レジエレキも手に入ったから我は気にして…てょわわわぁ~ん」

 

 

 俺達に頭を下げるローレルとダフネ。するとモコウを乗っ取ってバドレックスが口を開く。

 

 

「余は余を助けてくれたユウリを認めて力を試そうとしたが、余のことが欲しいというお主の手段を選ばぬ気迫は本物だった。ユウリを操ったのは許せぬが、それ自体は悪い気分ではなかったぞ。余は許す」

 

「私は操られてた?間はすごくいい夢を見れたし…そんなに怒ることはないかな?」

 

「ユウリとバドレックスがいいなら怒る理由はないな」

 

 

 ユウリは俺を襲わせたなんて聞いたら怒るだろうけど黙っておこう。なんか妙に上機嫌だしな。

 

 

「では、私達はこれで…警察に自首します」

 

「証拠不十分ですぐ出されそうだが一応な。ラウラ、また会った時は」

 

「ああ。二人の本気で挑んで来い。返り討ちにしてやんよ」

 

 

 そう言うと兄妹は嬉しそうに笑って、山を降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ、バドレックス!」

 

「カムゥル!」

 

「いいぞ、どっちも頑張れ!」

 

 

 …さて、と。ユウリとバドレックスが再び戦い始めて、モコウもそれを観戦して…ちょうど俺一人になったわけだが。デンチュラ達の回復も終えた。こっちも大勝負と行くか。

 

 

「出てこいよ、フェローチェ」

 

 

 そう告げると、俺の前に、白く美しい蟲ポケモンが降り立った。ずっと俺を観察してしていたのは知っていた。何を考えてか知らないが、出てきたならば挑むまでだ!




ずっと見ていたフェローチェ。その美しい碧眼はラウラに何を見る?

・ラウラ
ドラピオンが回復したことで逆転した主人公。最初からエレキネットで拘束すればよかったと後悔した。目を覚ました時に視界の端で咄嗟に隠れたフェローチェを確認していた。ダフネとはよく似ていて正反対の関係だった。

・ユウリ
永遠にラウラと戦い続ける夢を見ていた原作主人公。てょわれて目を覚ます。いい夢見れたので気にはしてないが、ラウラを殺しかけたと知ったらブチキレるのは目に見えているので誰も伝えてない。バドレックスを捕まえるために勝負を挑んでいる間にラウラがフェローチェと戦って…?

・モコウ
終身名誉通訳。レジエレキを手に入れたのでご満悦。特に迷惑かかってないので気にはしてない。

・ローレル
自責の念に飲まれる侍の様な兄。グソクムシャがフシギバナにやられたためアイアントで逆転した。チャンピオンのポケモンを一体倒すという実力を見せつけた。ダフネと共に警察へ自首するため下山。

・ダフネ
バドレックスに執着したために敗北した蟲使いの妹。ラウラとはよく似ていて正反対の存在。ラウラの心の強さに感銘を受ける。冷静になったら自分の犯した犯罪に耐えきれず自首するために下山。兄のせいではあるが、救われてもいた。その後、証拠はない上にラウラたちも証言する気はないため証拠不十分で釈放される。

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VSフェローチェ

どうも、放仮ごです。なんと、再びうちわ0096 さんより素敵な支援絵をいただきました!今度はモコウです!

【挿絵表示】

イメージとちょっと違いましたが美しい…当初のイメージより断然こちらが好きです。そして相変わらずクオリティが凄いんじゃあ…本当にありがとうございます!やる気がすっごい湧きました!

今回はVSフェローチェです!そして物語も終盤へ。楽しんでいただけると幸いです。


「行くぞ、アギルダー!」

 

 

 高速で動き出したフェローチェに合わせる様に、カムラのみを新たに持たせたアギルダーを繰り出しすばやさを一段階上昇+二倍にする。高速でぶつかり合う二体の蟲。押し負けたのは、アギルダーだった。予想通り、攻撃力も高いのか。ならば!

 

 

「かげぶんしん!」

 

「!」

 

 

 高速を保ったまま分身するアギルダー。フェローチェは立ちどまり、キョロキョロと周囲のアギルダーを見渡してシュッ!と脚を素早く振るうと三体のアギルダーが掻き消えた。今のは確か、トリプルキックか。何て速さだ、三発じゃなくて一発にしか見えなかったぞ。そのままアギルダーの分身をトリプルキックで掻き消していくフェローチェに、さすがに看過できないので次の指示をする。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

 

 かげぶんしんはどんな仕組みなのかは知らないが、実体のない分身を作りだす技だ。そして、影分身はそれぞれから実体のある技を繰り出せるという謎仕様だ。結果、みずしゅりけんで囲まれ一斉攻撃を受けるフェローチェ。しかしとびあがることで回避、降りてくる勢いのままアギルダーの一体を踏みつけて地面に踏み込みとびかかり、空中で脚を振るい三匹を消し去る。

 

 

「なんてやつだ、お前は!」

 

 

 とびはねる、とびかかる、とびひざげり、トリプルキックを一切の間もなく繋げて使ってくるその力に、酔い痴れ震える。ああ、お前は最高だ!

 

 

「フェローチェ、お前は蟲ポケモンの希望だ!デンチュラ!」

 

 

 アギルダーを出したままデンチュラも繰り出す。一対一で勝てるようなポケモンじゃない。ポケモンを越えたナニカだ。ならば出し惜しみはしないさ!

 

 

「辺り一帯にエレキネットをばらまけ!」

 

 

 アギルダーの間を縫うようにエレキネットをばらまく。これだけでフェローチェが動ける範囲は狭めた。すると今度は山肌を蹴ってとびかかるを連打するフェローチェ。地面のエレキネットに触れることなくアギルダーとデンチュラを狙っていくのはさすがとしか言いようがない。

 

 

「ウルガモス、ひのこ!モスノウ、ふぶき!」

 

 

 続けて繰り出した二体で上空の吹雪から降り注ぐ火の雨という極限状態を作り出してフェローチェを追い詰める。これで空中には飛べまい。ならばとエレキネットの間を掻い潜るフェローチェ。ここまでしてまだ暴れられるのか。すごいな!

 

 

「ビークイン、全体にエアスラッシュ!ドラピオンはミサイルばり!」

 

 

 俺の切札でもある二体を導入。全体攻撃でフェローチェを狙う。おそらく防御力は低く、素早さと攻撃力に全振りしているのだということは容易に想像がつく。そしてついに、エアスラッシュとミサイルばりとひのこの雨を掻い潜っていたフェローチェの動きが止まる。エレキネットだ。

 

 

「アギルダー、みずしゅりけん!デンチュラ、エレキネット!ウルガモス、フレアドライブ!モスノウ、れいとうビーム!ビークイン、エアスラッシュ!ドラピオン、クロスポイズン!」

 

 

 俺の手持ち全員の、全力攻撃がフェローチェに炸裂。エレキネットで痺れながらも数々の攻撃を素早い身のこなしで避けていたフェローチェだったが、最後のクロスポイズンを受けてついに倒れる。

 

 

「そこだ!」

 

 

 倒れ伏したフェローチェに、取り出したネットボールを叩きつけて捕獲。ボールはぷるぷると震えていたピタッと静止。俺はボールを拾い上げ、空に掲げた。

 

 

「フェローチェ、ゲットだ!」

 

 

 うおおおおおおおおお!と絶叫を上げていると、どうやらバドレックスを無事捕獲したらしく側に連れたユウリとレジエレキを連れたモコウがやってきた。

 

 

「なにを叫んでいるんだお前は…まさか、例の奴か?」

 

「例の奴って?」

 

 

 首を傾げているユウリの手を掴み、ぶんぶん振り回す。その時俺は、モコウに釘を刺された内容をすっかり忘れていた。

 

 

「ユウリ。お前が交換してくれたアギルダーのおかげでフェローチェを捕獲できたよ、ありがとう」

 

「おまっ!?」

 

「え…?」

 

 

 すると目の光を失い俯くユウリ。またダフネか!?と辺りを見渡すも、いるはずがない。どうしたんだろうと首を傾げていると、モコウのラリアットが俺の首を刈り取った。

 

 

「ぐえっ!?」

 

「おまっ、お前なあ!それだけはユウリに言うなと!我が!言わんかったかあああああああ!?」

 

「言ったような気もするが…ギブギブギブギブ!?」

 

 

 首を締め上げてぶんぶん振り回してくるモコウの肩をタップする。全員出している俺のポケモン達もどうにか止めようとするがオロオロするのみだ。そろそろ意識が飛びそうなんじゃが!なんかさっきからユウリが目の光を失って微動だにしないし!

 

 

「おーまーえーはー!少しは自分に振りかかっている好意をだなあ!?」

 

「あの……ほんとに…死ぬ…」

 

「いいや足りん!こうなったら意識が飛ぶまで反省して…てょわわわぁ~ん」

 

 

 すると例のポーズで固まりモコウが浮かび上がったことで解放される俺。ゲホゲホと酸素を取り込んでいると、モコウを乗っ取ったバドレックスが言葉を紡ぐ。

 

 

「うむ、余も聞きたいことが在ったから止めさせてもらったぞ。それで質問だが、ラウラよ。おぬしの捕まえたポケモンとは余を襲ったあのポケモンか?少し見せてくれぬか」

 

「いいけど…ほれ」

 

 

 手持ちの皆をボールに戻しながらフェローチェの入ったボールを差し出す。上部分が透けて中身が見える様になっているそれを覗き込んだバドレックスは少し考え込んでから口を開いた。

 

 

「やはりな。百年近くこの地にいるが、このようなポケモンを余は知らん」

 

「は?ここに住んでいるポケモンじゃないのか?」

 

「鳥や巨人どもとはわけが違う。この者は異質だ。この世の者とも思えん。ラウラよ、この世の者でない存在は災厄を招くぞ。ゆめゆめ忘れぬようにな」

 

 

 そう言ってモコウを解放するバドレックス。…異質。この世の者とは思えない。じゃあフェローチェは一体、なんなんだ?ギラティナに近いポケモンだったりするのだろうか。…異世界から来たとか?

 

 

「…はあ、やってしまったものはしょうがないか。ユウリはお前が何とかするんだぞ」

 

「お、おう。とりあえず、役割被ってるしアギルダーと交代かなあ」

 

 

 すると黙っていたユウリがゆらりとこちらに近づいてきた。俯いたままなのでその表情は見えないのが不気味だ。

 

 

「…ラウラ。私とのポケモン交換は、フェローチェを捕まえるだけのためだったの?」

 

「え、いやそうだけど…モコウはでんきタイプにこだわりがあるから頼めるのはユウリしかいないと思って。それよりも見てくれよ、フェローチェのこの姿!それにすごく強いんだぞ、フェローチェ!これならお前とのバトルでもいい勝負が…」

 

「フェローチェのことばかり……私はラウラにとってなんなの!?ただの都合のいい女だったの?ひどいよ!」

 

「ゆ、ユウリ!」

 

 

 顔を上げると涙を溢れさせて俺を押しのけ、モコウの制止の声も聞かずに山の麓へと走り去って行くユウリ。慌ててバドレックスが追いかけていく中、俺は呆然と立ち尽くす。なんで、ユウリは泣いていた?

 

 

「…なあモコウ、俺…なんで?」

 

「お前なあ!ユウリはお前とのポケモン交換を、誰よりも信頼してくれている証だと喜んでいたんだぞ!シュバルゴを強く育てて、ラウラとのバトルでアギルダーと戦わせるんだって……ラウラ、嬉しいのは分かるが少しは周りの事も見ろ!お前の蟲好きはいいところでもあるが今回ばかりは悪癖が過ぎるぞ!」

 

「俺は……ユウリの気持ちを踏みにじったのか?」

 

 

 フェローチェの入ったボールを握りしめたままその場に立ちつくし、モコウの非難の声を聴き続ける事しか出来なかった。なにか取り返しのつかないことをしてしまったんじゃという不安が俺の脳裏を埋め尽くしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も更け、下山。ユウリも戻っているだろうと考えてピオニーの民宿に戻るも、そこには何が起きたのか興味津々のピオニーしかいなくて。結局、明け方になってもユウリは戻ってくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつもいつも蟲ポケモンのことばかり……私をフェローチェを捕まえるためだけに利用するなんて、ひどいよ……でも好き、好きなのラウラ……!」

 

 

 カンムリ雪原のどこかに張られたキャンプで、蹲り夜通し泣き腫らしていたユウリ。その声に引き寄せられるように、近づいてくる異質なナニカがいた。

 

 

「じぇるるっぷ……」




フェローチェがきっかけのラウラとユウリの決裂。物語が大きく動きます。

・ラウラ
フェローチェを捕まえて舞い上がってユウリの気持ちなど何も考えられなくなっていた主人公。親友であるユウリを傷つけたという事実に茫然自失となってしまう。本人はただ、強い蟲ポケモンと共にユウリと楽しく全力で戦いたかっただけだった。

・ユウリ
シュバルゴとアギルダーをラウラが形にしてくれた絆だと思っていたのにアギルダーをあっけなくフェローチェと交代すると聞いて裏切られた気持ちになって逃げだした今作のメインヒロイン。バドレックスを捕獲した。己よりもラウラが執着したフェローチェに嫉妬やら憎悪やら複雑な感情を抱く。一人でテントを張り傷心を癒す彼女に歩み寄ったのは…?

・モコウ
ユウリの恋心とラウラの鈍感に挟まれていた苦労人。多分一番ユウリのことを理解している。バドレックスに乗っ取られるのはもう慣れ過ぎて特に何も思わない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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最終章:グローリアビーストの章
VSレジギガス


どうも、放仮ごです。皆さんPARASITEがお好きですね。そしてUAが160000行きましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はムツキたちとの合流、最終章開幕です。楽しんでいただけると幸いです。


 一夜明けてもユウリが戻ってこないことに不安を覚えた俺は、大人に頼るのも悪くないと考え、ピオニーに相談していた。

 

 

「よーし、全面的に悪いのはラウラ!お前だ!お前は副隊長として伝説を追いつつ隊長を捜すことを命じるぜ!」

 

 

 事情を聞いたピオニーの言葉がこれだった。伝説を追う必要はあるのか…?

 

 

「お、おう…」

 

「元気がないぞ!しゃきっとしろ!ラウラ副隊長!」

 

「ラウラ。我らの当初の目的であるムツキ捜しにユウリを捜すことが追加されただけだ。行くぞ」

 

「ああ、悪いなモコウ…」

 

 

 ユウリの気持ちを裏切った。そう自覚してから、やる気が起きない。ユウリに会って謝りたいのに、姿さえ見せてくれない。このまま謝れなかったら、そう思うと嫌な予感がするんだ。

 

 

「…やっと辿り着いたが」

 

「なにもいないな」

 

 

 ムツキを捜してやってきたのは、伝説の鳥ポケモンが集うという赤い葉と巨大な木の実が目立つ巨樹が聳え立つ、ダイ木の丘。しかし見渡せども件の鳥ポケモンは見つからない。タイミングが悪いのか、それとも…

 

 

「既にムツキが捕まえた?」

 

「そう考えるのが妥当だろうな。奴め、一体どこにいるのやら…」

 

 

 ムツキと連絡がつかないってのがまず謎なんだよな。根は真面目だから俺達はともかくキリエさんに定期連絡しないとは考え辛い。リヅキさんやルミもついてるんだ。だとすると…

 

 

「なあ、これ…」

 

「うん?」

 

 

 モコウが何かを見つけて、木の根元を見やる。そこには破壊されたスマホロトムと思われる残骸が落ちていた。

 

 

「…つまり、通信機器が破壊されたと」

 

「恐らく件の鳥ポケモンにだな。連絡がつかない理由は分かった。あとは行方だ」

 

「フリーズ村にはいなかったからカンムリ雪原のどこかだとは思うが…ユウリといい、ムツキといい、本当にどこにいるんだ…」

 

「とりあえず、次の巨人伝説の場所に向かうか」

 

「そうするか…」

 

 

 カンムリ雪原は広い。…未だに、ユウリも、ムツキも、どちらの居場所とも、手がかりすら見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここらしいが…既に、開け放たれている?」

 

 

 とりあえず巨人が眠るという場所の一つに来てみたが、既に扉は開け放たれていて。他の三つを回ってみるも、同じだった。

 

 

「むっ?レジエレキ、どうした?」

 

 

 最後の場所に来ると、ボールが震えたのかモコウが繰り出したレジエレキがピョンピョン跳ねて指先(?)で遺跡を指し示す。まるで、自分はここから来たとでも言うように。

 

 

「…つまり、解放した奴がいる?」

 

 

 ピオニーのメモによると遺跡に眠っているのは氷の巨人…レジアイス、岩の巨人…レジロック、鋼の巨人…レジスチル。そして最後の遺跡に眠るのは二体で雷の巨人…レジエレキとまだ見ぬ竜の巨人だという。名づけるとしたらレジドラゴだろうか。多分あってる気がする。

 

 

「竜の巨人…まさか?」

 

「おい、竜と言えば奴か?」

 

「鳥ポケモンがムツキだとするなら、ルミの趣味にも付き合ったと思うんだよな…」

 

 

 あれで真面目なムツキのことだ、三鳥を捕まえることに協力したお礼としてルミの趣味にも付き合ったに違いない。レジドラゴと思われるそれどころか、この最後の遺跡を開く鍵でもある他の三体を捕まえたのも恐らくは…

 

 

「モコウ、地図に巨人に関係する場所ないか?」

 

「なぜだ?」

 

「そこぐらいしかいる可能性がない」

 

「なるほど。…巨人の寝床と言う場所があるぞ」

 

「そこだ、行くぞ!」

 

 

 今はもうとにかくムツキに会いたい。今の不甲斐無い俺を罵倒してほしい。さんざんモコウにも怒鳴られたが、誰かに糾弾して欲しい。逃げかもしれないが、それでも…!

 

 

「ムツキ!」

 

 

 地図を参照して巨人の寝床にやってくると、そこには並べられた岩を調べているムツキ、ルミ、リヅキさんの姿が。俺の声に反応して振り返るムツキ。その傍らには、サンダーによく似たなんかダチョウみたいな鳥ポケモンがいた。

 

 

「あれ?ラウラにモコウじゃないですか。お久しぶりです。なんでこんなところに?ユウリと共にヨロイ島に行ったはずでは?」

 

「お前な!スマホロトム壊れたんだったらフリーズ村に行くなりでちゃんと連絡しろ!キリエさんがガチで心配して泣きついてきたんだからな!」

 

「…姉さんが連絡していたものと」

 

「あー、そういえば私のスマホロトムが充電切れだということをすっかり伝え忘れてました、と忘れやすい性格の自分を叱咤します」

 

 

 ポコポコ自分で頭を殴るリヅキに、ムツキと共に冷めた視線を向けていると、笑っているルミが目に入る。…こいつのスマホロトムはどうしたんだ?

 

 

「そう言う感じか…ルミは?」

 

「私は素で研究所に忘れてきた」

 

「ええ…」

 

「ルミ、お前ドジっ子なのな…」

 

「モコウ、お前には言われたくないぞ」

 

 

 ルミとモコウが睨み合っていると、ルミの腰のホルダーに付けられていたボール四つと、ラウラの腰のレジエレキが入れられたボールが浮かび上がった。何事だと全員で注目していると、中心の巣穴が光り輝く。

 

 

「…レジ系が全部揃って出てくるってことはもう間違いなくアイツか…?」

 

「ラウラ、知っているのか?」

 

「いや…知ってるっちゃ知ってるがナグサに教えた方がいいと思う」

 

 

 俺は巨人達を創ったポケモン、レジギガスについて掻い摘んで話す。他地方の伝説を調べた時に知ったと。レジ系が揃った時しか出ない珍しいポケモンだと。恐らくだがこの巣穴にはレジギガスがいることを。確証はないが、多分間違いない。

 

 

「ふむ。いいでしょう。いつか母さんやユウリを越える身です、伝説が何ぼのもんじゃいです!」

 

「いややめとけ。ノーマルタイプの巨人だぞ?しかも巣穴ってことはダイマックスしてるってことだぞ?」

 

「このサンダー、ひこう・かくとうタイプでして!ノーマルタイプはもはや敵じゃないのです!それに伝説の三鳥を全部捕まえた私ですよ?行ってきます!」

 

「私も続くぞ!ノーマルにドラゴンが負けるかよ!」

 

 

 そう言って一人で飛び込んでいくムツキと、続くルミ。リヅキさんはオロオロと立ちつくし、俺とモコウはその場で立ち尽くす。めんどうごとはもうごめんだ。…ムツキ、見ない間にアグレッシブになったな…

 

 

「そうだ、リヅキさん」

 

「はい、なんでしょう?と私は問いかけに応えるべくやる気を上げます」

 

「ここに来るまでにユウリ、見てません?」

 

「見ていませんが…なにかあったんですか?」

 

「ちょっと、大喧嘩しちゃって喧嘩別れに…捜してるんです、何か知りませんか?」

 

「そう言えば昨晩、空を浮かんでワイルドエリアに向かう何かを見ましたが…と寝ぼけ眼で見た光景を思い出します」

 

 

 昨晩…わざわざこんな寒空の中を飛んでいたということはそれがユウリの可能性が高い。ワイルドエリアに逃げたのか…?

 

 

「モコウ!戻るぞガラル本土に!」

 

「ああ、ムツキたちは見つけたしな。我のスマホロトムを貸すのでキリエさんに連絡を入れるといい」

 

「ご丁寧にどうも、と私は礼を述べます」

 

 

 リヅキさんがキリエさんに連絡を入れていた時だった。赤い何かが、巣穴の上に拳を叩きつけて降り立ったのだ。

 

 

「「「!?」」」

 

 

 いわゆるスーパーヒーロー着地、をしたその存在は、マッスルだった。極限まで引き締まり盛り上がった筋肉が目立つ上半身。血の様に赤く美しい肉体美。その顔はまるで蚊の様で、感情を感じられない複眼が俺達を睨む。咄嗟にリヅキさんを庇うように立つ俺とモコウ。蟲ポケモン、なのだろう。だがユウリを失った今の俺にはあまり響かない。好みのはずなんだが、それどころの心境じゃないのだ。茫然とする俺からスマホロトムを手に取ったモコウが奴の正体を確認する。

 

 

「マッシブーン…やはり、フェローチェと同じアローラのチャンピオンが捕まえた個体の名だ!」

 

「じゃあこいつもフェローチェと同じ異質なポケモンってことか!?」

 

 

 目的はわからないが、フェローチェと同じで無差別に人やポケモンを襲っているのだとしたら、この筋肉は間違いなくヤバい。するとモコウのスマホロトムでキリエさんと連絡していたリヅキさんが切迫した表情でこちらに告げた。

 

 

「二人とも、大変です!どこからか現れた正体不明のポケモンがガラル各地で襲撃していて、ジムリーダーや実力のあるトレーナーが対処に追われていると!」

 

「「なんだと!?」」

 

 

 このマッシブーンもその一体ってことか。…フェローチェが原因のユウリの失踪。フェローチェと同じような謎のポケモン達の襲撃。これは偶然なのか?何か、嫌な予感がする…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふん、ふふん♪」

 

 

 ガラルの中心、ナックルシティ。そのタワートップに鼻歌を歌う、謎の存在。本来銀髪だった髪を黒髪に染めた少女は、宇宙の様な暗闇の中で浮かび、三日月の様な満面の笑みを浮かべていた。その名を、グローリアビーストという。




VSレジギガスと言ったな。実際戦うとは言ってない。

・ラウラ
いつもなら狂喜するマッシブーンにもそんなに反応を示さなくなった主人公。ユウリと喧嘩別れしたことでだいぶ気落ちしている。ムツキに罵倒されたい心境。

・モコウ
なし崩し的にラウラの相棒ポジに収まったツッコミ役。ラウラが動けないと見るやスマホロトムを手に取って敵を調べるなど大事な時に動ける人。

・ムツキ
三鳥にスマホロトムを壊されて音信不通になっていたひこうつかい。なんと、出くわした際に三匹とも捕まえるという無茶苦茶なことをやり遂げている。ガラルサンダーを足として使う。キリエを越えるためにレジギガスに挑むも…?

・ルミ
スマホロトムを研究所に忘れてしまって音信不通になってたドラゴンつかい。ムツキの舎弟的な感じになってる。レジロックレジスチルレジアイスをゲットし、レジエレキを解き放った張本人。レジドラゴをゲットした。ムツキと共にレジギガスに挑むも…?

・リヅキ
忘れっぽい性格で電池切れだとムツキに伝え忘れていたポンコツ看護師。ムツキの姉として健康管理していた。キリエに連絡していたところ、ガラル全体の危機を知る。

・グローリアビースト
謎の少女(棒読み)が、ブラックナイトの際にムゲンダイナが発した高エネルギーで発生したウルトラホールからフェローチェと共に迷い込んだUB01 PARASITEが融合したことで生まれた、かつてアローラに出現したマザービーストに酷似する存在。
UBと融合したことで少女自体が「Fall」としての特性を持ち、存在するだけでウルトラホールから数多のUBを呼び寄せてガラルを混乱に陥れる。ラウラ最後の敵は寄生「虫」である。

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VSマッシブーン

どうも、放仮ごです。ちょっと口座から給料の残り引き出してポケモン盾+エキスパンションパスをネット購入しました。届くのが待ち遠しい。

今回はVSマッシブーン。ラウラは立ち直れるのか。楽しんでいただけると幸いです。


 ガラル各地に現れたという、正体不明のポケモンたち。そして俺達の前に降り立った謎の蟲ポケモン、マッシブーン。何かが起ころうとしているのは間違いない。

 

 

「まずはこいつからか…!ドラピオン!」

 

「行くぞ!カメックス!」

 

 

 見るからにパワータイプのマッシブーンに対し、モコウと共にパワータイプのポケモンを繰り出す。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「みずのはどう!」

 

 

 するとマッシブーンは一跳躍で攻撃を回避、背中の翅を羽ばたかせて突進、拳を振るってカメックスを殴り飛ばす。カメックスを殴り飛ばして隣に降り立ったマッシブーンに驚き固まるドラピオンをも屠らんと振るわれた拳に、咄嗟に指示を出す。

 

 

「つじぎり!」

 

 

 二連撃で何とか弾き返すドラピオン。攻撃力が明らかに上がっている。グロウパンチか?

 

 

「ババァルクウッ!!」

 

 

 拳のラッシュに見舞われ、防御の体勢を取りながら押されていくドラピオン。俺達と三日三晩戦ったパワーファイターが押されているだと!?

 

 

「こうなったらフェローチェで…」

 

 

 そう、フェローチェの入ったネットボールを取り出すも、ユウリの泣いている顔が頭をよぎる。こいつを使えば、あいつを裏切ったって言っているようなものか。迷っているうちにばかぢからと思われる技で投げ飛ばされ、戦闘不能になるドラピオン。

 

 

「くっ…モスノウ!れいとうビーム!」

 

「ライボルト!ワイルドボルト!」

 

 

 モスノウがれいとうビームを繰り出した横からライボルトが電撃を纏って突っ込む。するとマッシブーンはれいとうビームを拳で受け止め、凍り付いた拳でライボルトを殴りつけて迎撃した。氷を電撃から身を守るのに利用された!?さらに跳躍して凍り付いた拳でモスノウを氷が砕ける程の勢いで殴りつけて撃墜、着地してポージングするマッシブーン。

 

 

「モスノウ!?」

 

「ライボルト!ほのおのきば!」

 

 

 そこにライボルトが炎を牙に纏って突撃するも、両側面からガッシリと胴体を掴まれて持ち上げられ、背中に口吻を突き刺され体力を奪われるとポイッと投げ捨てられる。きゅうけつか。

 

 

「こいつ…強いぞ!」

 

「ならば、切札で行くしかあるまい!レジエレキ!」

 

 

 モコウはレジエレキを繰り出す中、俺はフェローチェを出すか出さないか迷う。あのパワーに対抗するには同じく攻撃力に特化しているフェローチェを出すのが最適解だろう。だけど……結局、出せなかった。

 

 

「くそっ、ビークイン!エアスラッシュ!」

 

 

 恐らくタイプはフェローチェと同じむし・かくとう。ならばと相性有利なビークインで挑むも、地面を殴りつけたことで生まれた岩盤でエアスラッシュを防がれ、さらにそれを殴りつけてストーンエッジしてきたマッシブーンを前にあっけなく倒され、咄嗟にデンチュラを繰り出す。グロウパンチ、ばかぢから、きゅうけつ、ストーエッジ。わざ構成は分かった。だがシンプルに強すぎる。というかストーンエッジ持ってるなら俺の蟲ポケモンはほぼ全員アウトだ。

 

 

「サンダープリズン!…無理やり破るだと!?」

 

 

 レジエレキの雷の檻も力ずくで破るマッシブーンに打つ手がない。レジエレキが高速で翻弄しているが、それだけだ。渾身のばかぢからでデンチュラが大地ごと吹き飛ばされ、こうなったらとフェローチェを出そうと心に決めたその時…!

 

 

「きゃああああああああ!?」

 

「どわああああああああ!?」

 

 

 そんな悲鳴を上げて、巣穴からムツキとルミが飛び出してきた。慌てて俺がムツキを、モコウがルミを横抱きで受け止める。こっぴどくやられたようで二人とも悔しげだ。

 

 

「なんですかあの巨人…練度が桁違いです…私の鳥ポケモンみんな握り潰されちゃったんですけど…って何事ですか!?」

 

「スロースタートだったか?のろまっちゃのろまだが強すぎて話にならないぞ…ってどうした、なにこの惨状」

 

 

 砕けた地面やらひっくり返った岩盤やら見て、最後にマッシブーンを確認し目が点になる二人。まあ、そうなるよな…

 

 

「ガラル全土でこいつみたいな正体不明のポケモンが暴れてるらしい。苦戦中だ」

 

「…貴女が蟲相手にやる気出さないなんてどうしたんです?今更ですがラウラいるところに必ずいるユウリがいないことになにか関係が?」

 

 

 地面に降ろすとそう尋ねてくるムツキに、なんて返すか迷ったが簡潔に伝えることにした。

 

 

「…蟲ばっか考えて、あいつを傷つけた」

 

「それで喧嘩別れしたと。…ふむ。ルミ、ちょっとこの馬鹿と話があるので貴女のレジドラゴ達であれの相手をしていてください。恐らく通常のポケモンでは歯が立ちません」

 

「任された!」

 

 

 レジエレキと小競り合いするマッシブーンを見ながら、顎に手をやりルミに指示するムツキ。ルミは言われるなりレジドラゴ、レジロック、レジスチル、レジアイスを繰り出してマッシブーンを取り囲んだ。それでもレジロックの巨体を殴り飛ばすマッシブーンがヤバいが、ムツキはそれどころじゃないらしい。

 

 

「つまり?蟲ポケモンばっかにかまけて、心無い言葉を言ってしまったと。今の貴女は二つのことにウジウジしてるんですか。なんとも情けないですね。どこぞの恋愛漫画の主人公のつもりですか?貴女はヒロインってガラでもないでしょう」

 

「グッ…そんなつもりは」

 

「そんなの似合わないから、とっとと自分のやるべきことをやって堂々とユウリに謝ってきなさい。今の貴女こそユウリが許すはずないでしょう。え、ウジウジしてれば許されるとでも思ったんですか?謝りもしないで烏滸がましいですよ!馬鹿なんですか!ああ、蟲馬鹿でしたね貴女は!」

 

「…そうだな、俺は大馬鹿だ」

 

 

 その言葉で、踏ん切りがついた。まさかムツキの罵倒に救われるなんてな。初めて出会った時からは考えられない事だ。俺は、手にしたままだったボールの中を見やる。悪かった。お前は何も悪くない、出せなかったのは…これ以上、ユウリに何か言われることを俺が恐れていたからだ。

 

 

「フェローチェ。力を貸してくれるか?」

 

 

 俺の言葉に頷くフェローチェを、即座に繰り出す。見たことないポケモンであるフェローチェに驚くモコウ以外の面々。だが俺は気にせず、レジ達に囲まれて中央に追いやられているマッシブーンを見やり指示をする。

 

 

「フェローチェ、とびはねる!」

 

「レジエレキ、でんじは!」

 

「レジロック、がんせきふうじ!」

 

「行きなさいフリーザー、サイコキネシス!」

 

 

 天高く跳躍したフェローチェに反応し、ポージングして拳を構えるマッシブーンだったが、レジエレキのでんじはとレジロックの投げた岩石、ムツキの繰り出した俺の知るのとは全く違うフリーザーの念動力がその行動を妨げ、渾身の急降下蹴りがマッシブーンの胴体に炸裂、崩れ落ちた所にネットボールを投擲。

 

 

「モコウ、ムツキ!俺はユウリのところに行く!お前たちはガラル中で戦ってるみんなの救援を!」

 

 

 マッシブーンの入ったボールを手に取るなりフェローチェに掴まって、その場から高速で離脱した。

 

 

 

「ユウリのことは頼んだぞー!」

 

「世話が焼けますね、まったく」

 

「ムツキにだけは言われたくないでしょうね、と私は呆れます」

 

「ソニアやホップが心配だ、私達も急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 俺を横抱きにするフェローチェの健脚で山をほとんど一瞬で越え、ハロンタウンを抜け、線路沿いに進んで見えてきたのはワイルドエリア。ここのどこかにいるはずだ、と空を見上げるとナックルシティのタワートップの真上に輝く、空に開いた巨大な穴が見えた。それに反応するフェローチェ。

 

 

「お前、あれから来たのか?」

 

 

 頷くフェローチェ。もしかしてあそこにユウリが…?そう考え、ナックルシティに向かうと、そこでは破壊された町並みと、その奥で何か巨大な口の様なポケモンと戦うキバナ、そして人々を避難誘導していたスーツを着こなした女性がいた。その顔に見覚えがあった俺が首を傾げていると、女性はフェローチェに抱えられた俺に気付くと驚愕して駆け寄ってきた。

 

 

「それはまさか、BEAUTY!?貴女が捕まえたんですか?!」

 

「え、ええ…」

 

「たしか、ブラックナイト事件を収めたラウラさん、でしたね。私はリラ。国際警察のものです」

 

「リラ!?」

 

 

 その名前で思い出した。なんか印象が全然違うけどポケモンエメラルドで苦汁を味わされたタワータイクーン・リラだ。ホウエンにいるはずの彼女がなぜここに!?国際警察ってハンサムとかのあれか!?大混乱に陥る俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いなあ。早く私を捕まえないと、ガラルが滅びちゃうよ?ラウラぁ」

 

 

 タワートップに浮かぶ小さな夜空の中で少女は待ちきれないとばかりに恍惚とした笑みを浮かべていた。




いきなりリラが国際警察として登場して驚いたあの頃の気持ちを代弁してみました。

・ラウラ
ムツキに叱咤激励され、さらっとマッシブーンを捕獲してユウリの元に向かう主人公。国際警察にも存在を知られている。フェローチェのスピードに耐えている化け物スペックの蟲馬鹿。

・モコウ
ユウリのことはラウラに任せることにしたツッコミ役。

・ムツキ
レジギガスに惨敗したけどやるべきことはやったひこうつかい。ラウラを失意に落としたり失意から引き摺り出したり、良くも悪くもラウラに一番影響を与える人。

・ルミ
レジ四体を使いこなすやべーやつ。

・リヅキ
ムツキに世話を焼かされている人。

・リラ
サンムーン系統に登場した国際警察。避難誘導していたところ、フェローチェをウルトラボールなしで捕まえているラウラに驚愕した。ちなみにハンサムも別の場所で避難誘導している。

・キバナ
アクジキングと激闘を繰り広げているジムリーダー。結構苦戦中。

・グローリアビースト
ラウラを待ち侘びて物騒なこと言ってる人。暇。自分の居場所を伝えなくとも来てくれると信じてる乙女。

・マッシブーン
とくせい:ビーストブースト
わざ:グロウパンチ
   きゅうけつ
   ばかぢから
   ストーンエッジ
もちもの:なし
備考:いじっぱりな性格。暴れることが好き。ウルトラホールから出てきたものの、自分のいた場所とは違いすぎて混乱、大暴れした。筋肉で何でも解決するタイプ。

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VSウツロイドⅠ

どうも、放仮ごです。最終決戦の始まり、の前にあの蟲ポケモンを手に入れようかなと思います。

今回は最終決戦。楽しんでいただければ幸いです。


「私の名前が何か?もしや、以前の私を知っているのですか!?」

 

「い、いやなんでも…」

 

 

 なんかめんどくさそうな気配がするから知ってることは黙って置こう。リラは落ち着くと深呼吸して告げる。…記憶がないのか。触れないでおこう。

 

 

「そうですか。国際警察とは地方をまたいだ犯罪の捜査、犯人の確保、犯罪に利用されたポケモンの保護を目的とした組織です」

 

「その国際警察が何の用で?まさかユウリのムゲンダイナを…?」

 

「いえ、ムゲンダイナについてはユウリさんに預けておくと言う結論に至りました。問題は、ブラックナイトによる影響です」

 

「ブラックナイトの影響…?」

 

「ウルトラホール、という異世界に繋がる穴があります。貴女も見ましたね?このナックルシティの上空に広がるアレを。ムゲンダイナの発するエネルギーの影響で発生した物だと思われます。そしてウルトラホールから現れる異世界のポケモン…ウルトラビーストによる災害が、かつてアローラ地方で発生しました」

 

 

 それでアローラのチャンピオンに捕獲されたってことか。

 

 

「UBはこちらの世界にくると驚き、戸惑い、恐怖に駆られ、身の危険を感じて暴れ出してしまう。我々はかの地のチャンピオンに協力を求め、これを捕獲、保護。解決しましたが…それと同じことが、この地方でも起きてしまった」

 

「それはなんで…!」

 

「原因は不明です。何か呼び寄せているものがあるとしか……時に、我々はウルトラビーストを捕獲できるボールを有しています。ウルトラボールです。出会えたジムリーダーの方々には既に渡しています。これが無くても貴女が捕獲できたのは、恐らくUBたちに信用されたからでしょう。貴女にもこれを。鎮圧を手伝ってくれたら助かります」

 

 

 そう言って手渡されたのは青くかっこいいモンスターボール。まあ、ユウリを見つけたら鎮圧は手伝うつもりだけど…

 

 

「それと、この上には行かないでください。ムゲンダイナが暴れた場所だからかもっとも大きいウルトラホールが発生してます、どんなウルトラビーストが出て来てもおかしくない」

 

「………」

 

「…行く気、なのですね。ならば餞別です、貴女にこれを託します」

 

 

 無言の俺から何かを感じ取ったのか、溜め息を吐いたリラは懐から取り出したプレシャスボールを差し出してきた。ボールの中に入ってるのは……!?

 

 

「このポケモンは、部下がイッシュ地方のプラズマ団を逮捕した際に研究施設から押収された改造ポケモンです。対UB用の戦力として連れてきましたが……ラウラさんは蟲ポケモン使いだと聞いています。貴女ならば、国際警察の誰もが扱いきれなかったこの暴れん坊を使いこなせるかもしれません」

 

「…助かります」

 

「では私はこれで!決して無茶はしない様に!ご武運を!」

 

 

 そう言ってキバナさんの加勢に向かうリラを見送って、ウルトラホールとやらが開いたタワートップを見上げる。……あいつは、あそこにいる。チャンピオンとして上で戦っているのか、それともただ俺を待っているのか。どちらかはわからないが、あそこにいる。そんな気がするんだ。

 

 

「とりあえずポケモンセンターだ」

 

 

 人っ子一人いないポケモンセンターに入り、マッシブーンとの戦いで傷ついた手持ちを勝手に機械を使って回復させる。ウルトラビーストと戦うことも考えて、手持ちはデンチュラ、ドラピオン、フェローチェ、マッシブーン、ビークイン。そしてリラから受け取ったポケモン。こいつらで行く。アギルダーは…正直、力不足が否めない。すまない。

 

 

「デンチュラ、行くぞ!」

 

 

 デンチュラを繰り出し、背中に装着。いつぞやと同じく糸を伸ばして空を駆る。瓦礫は落ちてこないが、タワートップから別個体のフェローチェやマッシブーン、他にもいろいろ飛び出していくのが見えた。止めないと、本当にやばい。

 

 

「ユウリ!……!?」

 

 

 彼女の名を呼びながらタワートップに到着すると、そこには異様な存在がいた。半透明で電灯の様な頭部から垂れ下がったたくさんの黒い手の様な触手といったクラゲの様な姿だが、異様なのは小さな宇宙の様になっている中に、見覚えのある普段着姿の少女の後姿があった。その髪は黒く染まって宇宙と溶け込んでいるけど、間違いない。振り向いたその顔は、ユウリだった。

 

 

「やっときてくれたぁ、ラウラ!」

 

 

 ユウリの腕と一体化しているらしい触手が一本こちらに伸びてきたので、慌てて糸を飛ばして避ける。ユウリの顔は酷く憔悴しきっているが恍惚と悦に浸っていて、まるで麻薬常習者のそれだ。ユウリは触手を振り回して俺を追い詰めながら嬉々として語った。

 

 

「ねえ、すごいでしょ!これがこの子、ウツロイドの力!人間やポケモン、特に強い不安や緊張を持つ者に寄生するの!貴方に裏切られた私みたいに!寄生された者は不安や緊張を幸福と快楽に変える強い毒に侵される!だから私は貴方に裏切られたことなんでもうどうでもいい!私達は共生関係になったんだ!」

 

 

 狂喜のあまり、触手を天に掲げて恍惚とした笑みを浮かべるユウリに背筋が凍る。何を言っているのか、理解したくなかった。俺のせいで、ユウリはこうなった?

 

 

「ウツロイド…ウルトラビーストか!」

 

「でもね、私とこの子が一つになったら、あの穴からフェローチェとかウツロイドとか沢山のポケモンが出て来てね。最初は応戦して止めたんだけど、もう止めれなくなってガラル中に散っちゃったの。ナックルシティもこうなってしまったのに、私には止められない!でも、この子から離れるのは嫌だ!もうあんなに苦しみたくない!ラウラを嫌いになりたくない!」

 

 

 そこまで泣き叫ぶように言ったかと思えば三日月の様な笑みを向けてくるユウリ。俺のせいで、ガラルはこうなった?

 

 

「それでね、私、思いついたんだ。私よりもラウラに執着されたフェローチェが羨ましかったなら、ラウラに私も捕獲してもらえばいいやって」

 

「は?」

 

「私を捕獲すれば、もうあのポケモン達…ウルトラビースト?は出てこないからガラルは安泰!私はラウラのポケモンになって愛してもらえる!winwinの名案だよね!」

 

 

 触手を伸ばして俺を捕まえようとしながらクルクル回って喜びを露わにするユウリ。毒のせいでおかしくなってやがる。いや、毒だけのせいじゃない。ユウリの好意に気付いていながら、なにもしなかった俺のせいでもある。なんとかタワートップに降り立ち、俺を抱きしめようとしているのか伸ばしてくる触手を避けながらデンチュラをボールに戻して代わりにビークインを繰り出す。…責任を持って、俺がユウリからウツロイドを引き剥がしてやる!

 

 

「ビークイン!エアスラッシュ!」

 

「そうだよね。ラウラはポケモンがいるなら抵抗するよね。私なんか、捕まえたくもないよね。だったら…!」

 

 

 触手の手に握られたボールがスイッチを押され、ザシアンが繰り出されエアスラッシュが防がれる。だがしかしその様子はおかしい。目は怪しく光り輝き全身に赤いオーラを纏っていて、よく見れば、細い触手がウツロイドからザシアンに繋がっていて、まるでエネルギーを供給しているようだ。ビークインの二面エアスラッシュを防いで見せたことから明らかにスペックが向上している。

 

 

「ラウラの手持ちを全滅させて、捕獲するしか解決手段がないようにしてやる…!」

 

「ザシアン!お前、なんで…!」

 

「私がこうなったらみんなでこの子を引き剥がそうとしてきたから、あの穴から供給されるエネルギーを分けてあげたの。そしたらみんな言うことを聞いてくれた。私の願いを邪魔するなら、例え手持ちの皆でも許さない」

 

 

 その暗く淀んだ瞳からは、自分のポケモン達への思いやりは残っていなかった。そこまで堕ちたか…ユウリ!

 

 

「お前は…俺達が止める!お前からウツロイドを引き剥がせばいいんだろ!」

 

「私からこの子を奪うなんて、ラウラでも許さないよ!きょじゅうざん!」

 

「ぼうぎょしれい!」

 

 

 振るわれた巨剣を、しもべたちで受け止めるも、あっさり吹き飛ばされてビークインは身を捻って避ける。しかし即座に距離を詰められ、ザシアンに斬り伏せられてしまうビークイン。

 

 

「くそっ……」

 

「ラウラの蟲ポケモンの事は知り尽くしている私に勝つのは無理だよ!諦めて私を捕獲してよ!」

 

 

 ビークインを戻す隙を狙って伸びてくる触手を必死に避けながら言い返す。

 

 

「それは悪いが断る!」

 

「なんで!私のことが嫌いなの!?」

 

「お前は俺の大事な友達だからに決まってるだろ!」

 

「……………………ラウラの馬鹿あああああ!!」

 

 

 激高と共に伸びてくる触手の量がどっと増えて捕まってしまった。触手に避けることに集中して言葉を選ぶのを忘れていた…持ち上げられ、ユウリの眼前まで引き寄せられる。

 

 

「ラウラ、引き剥がすのを諦めて捕獲してくれるなら放してあげるよ?」

 

「そいつは断る…」

 

「だったらウツロイド(わたし)の毒で言うことを聞かせるしかないね!」

 

 

 …万事休すか。このポケモンがいなかったらな…!俺の手から零れ落ちて、タワートップの床に落ちて繰り出されるのはリラさんからもらったポケモン。超古代から復活され、プラズマ団によって改造された蟲ポケモン…その名を、ゲノセクト。

 

 

「ゲノセクト!テクノバスター!」

 

「きゃあああ!?」

 

 

 咄嗟に防御体勢を取ったことで俺を取りこぼすユウリ。尻餅をついて、ゲノセクトと並び立つ。勝負はここからだ。




まさかまさかの好きな人に捕獲されたい系女子。

・ラウラ
ユウリがとんでもないことになって、さらにガラルの惨状も自分のせいだと知って動揺したけど責任を持って止めようと奮闘する主人公。ゲノセクトの入ったプレシャスボールを手に入れてちょっとご満悦だけどそれどころじゃない。今回のパーティーはデンチュラ以外ぬしか伝説というガチメンバーである。

・グローリアビースト/ユウリ
ウツロイドに寄生されたユウリその人。グローリアとはユウリの英名。ラウラから逃げて不安や恐怖に苛まれていたところそれに惹かれたウツロイドが寄生してユウリの感情を爆発させた状態。捕獲するのではなく、共生する道を選んだ。というかウツロイドを「私に寄生したんだから手伝ってくれるよね…?」と半ば脅迫して制御している。
手持ちのポケモンを伝説だろうが強制的に支配して能力を上昇させ思いのままに操る他、隙あらばラウラを捕らえて愛でようと触手を伸ばしてくる。UBに街を破壊させるのではなくむしろ止めようとしていて、目的はポケモンとしてラウラに捕獲してもらうこと、という前代未聞のラスボス。

・リラ
自分では扱いきれなかったゲノセクトをラウラに託した後に、特殊なカセットを渡して無いことに気付いたポンコツ国際警察。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSウツロイドⅡ

どうも、放仮ごです。昨日、投稿した直後にポケモン盾+エキスパンションパスが届きました!ウーラオスとラランテスとドラピオンを引き連れてジムを巡ってます。いちげきのかたが思ったよりかっこよかった。

今回はVSグローリアビーストの伝説ポケモン達。楽しんでいただければ幸いです。


 不意打ちのテクノバスターが炸裂、大ダメージに奇声を上げるウツロイドと悲鳴を上げるユウリ。だがしかしそれはすぐに収まり、ユウリは悶絶していたのが嘘の様に三日月の様な笑みを浮かべた。

 

 

「ううっ、痛い…ひどいなあ、ラウラ。私と繋がってるんだから攻撃したら私も痛いんだよ?」

 

 

 テクノバスターにより焼け爛れた触手を再生させながらそうぼやくユウリに、不敵な笑みを浮かべてみせる。じこさいせい?いや違う、単に生命力が強いのか。カセットなしのテクノバスターじゃ貫通はできなそうだ。

 

 

「毒を流し込もうとしてどの口が言ってやがる。痛い目に遭いたくなければさっさと分離しろ。生憎だが今の俺は、過去最強に強いぞ」

 

「へえ。今の私も、過去最強に最強だよ!」

 

 

 その言葉と共にユウリを守るように立つザシアン。対して俺はゲノセクト。えっと、技はテクノバスターにシザークロスにニトロチャージ、それにてっていこうせんか。さすがは国際警察御用達のポケモンだ、強力な技構成だ。

 

 

「ニトロチャージ!」

 

「きょじゅうざん!」

 

 

 ゲノセクトの体が変形し、円盤の様になると炎を纏って突撃、きょじゅうざんをひらりと避けてザシアンの胴体に激突する。吹き飛ぶザシアン、この隙を逃すはずがない。

 

 

「てっていこうせんだ!」

 

 

 ゲノセクトの背中の砲台から紫色の鋼エネルギーを集束させた凄まじい光線が放たれ、ザシアンは体勢を立て直せずに飲み込まれた。その際にオボンのみを手渡して回復させるのも忘れない。てっていこうせんは使うと凄まじい威力と引き換えに体力の大半が失われる技だからな。

 

 

「…凄い蟲ポケモンだね、ラウラ。まさか今の強化されたザシアンを倒すなんて」

 

 

 光線が消え、崩れ落ちたザシアンが残された光景に、笑みを崩さずにそう機械的に言うユウリ。まるでポケモンへの情を感じさせない。ユウリの自我はあるようだが、アレはユウリじゃない。ユウリは自分のポケモンをまるで道具のように扱う人間じゃないということは俺が一番よく知っている。

 

 

「バドレックス」

 

「あんたが操られちゃ世話ないぞ、王様…」

 

 

 次に出してきたのは、オーラを纏ってレイスポスに乗ったバドレックス…こくばじょうのすがた。試しにユウリの呼び方で呼びかけてみるも、反応はない。

 

 

「アストラルビット」

 

 

 バドレックスの周囲に小さな霊体の弾が複数現れ、四方八方からゲノセクトに襲いかかる。ダフネのアーマルドを追い詰めた技だ。

 

 

「飛行形態だ!」

 

 

 瞬時に折り畳んで変形し、攻撃を受け流すゲノセクト。こいつの変形能力は俺の臨機応変な戦い方と相性が非常にいい。それでも追従してくる霊体弾を高速で避けていくゲノセクト。板野サーカスと呼ばれる空中戦だ。

 

 

「シザークロス!」

 

 

 アストラルビットを避けながらバドレックスに突撃、即座に変形して両腕を交差させるゲノセクト。高速の一撃だ、これならば…!

 

 

「サイコキネシス!」

 

 

 しかしそれは、紙一重で止められ、逆に振り回されてアストラルビットに叩きつけられる。それでも頑丈な身体で耐えるゲノセクト。

 

 

「サイコキネシスで締め上げてギガドレイン!」

 

 

 しかし空中に持ち上げられ、体力を根こそぎ奪われて戦闘不能になってしまった。あのサイコキネシスは厄介だ。ならもう、力ずくしかないよな。

 

 

「マッシブーン!」

 

「っ…サイコキネシス!」

 

 

 あまりにも異様な筋肉に臆したユウリだったがさすがというか、即座にかくとうタイプの弱点であるエスパー技で攻撃。しかしその程度じゃこのマッスルは止まらない。

 

 

「グロウパンチ!」

 

「なあ!?」

 

 

 サイコキネシスの拘束を無理やり振りほどきながら拳を振り抜くマッシブーンに驚愕の表情を浮かべるユウリ。レイスポスの上からバドレックスを殴り飛ばし、ポージングするマッシブーンに苦笑いが出る。一々ポーズを決めないと気が済まないのか。

 

 

「なんてパワー…強くなったねラウラ」

 

「伝説の理不尽な強さにはもう負けないさ。いつもみたいに簡単に俺に勝てると思うなよ」

 

「いつも簡単に勝ててなかったと思うけどなあ!すいりゅうれんだ!」

 

 

 そう言って繰り出されたのはオーラを纏ったウーラオス。揺蕩う水の様な構えから繰り出される、一発一発が岩をも砕く激流の様なラッシュを、一発一発掌で受け止めていくマッシブーン。複眼と筋肉だからできる芸当だ。

 

 

「ストーンエッジ!」

 

「すいりゅうれんだ!」

 

 

 地面を砕いて岩を散弾の様に飛ばすと、拳のジャブでそれを砕くウーラオス。力と技のぶつかり合いだ。

 

 

「インファイト!」

 

「ばかぢから!」

 

 

 腕だけじゃなく、足まで使った猛ラッシュと、全身の力を引き絞ったフルパワーの両拳の振り下ろしが激突。マッシブーンのマッスルがウーラオスの技を撃ち砕く。

 

 

「つばめがえし!」

 

 

 しかし、その隙を見逃すユウリではない。鋭い蹴りがマッシブーンの脇腹に炸裂、蹴り飛ばされるマッシブーン。だがしかし翅を開いて体勢を立て直し、俺の方を向いて頷いた。頼むぞ、マッシブーン。

 

 

「ほのおのパンチ、からのすいりゅうれんだ!」

 

 

 炎を纏った拳のラッシュがマッシブーンを襲う。これは避けられない。だから、避けない!

 

 

「ばかぢから!」

 

「なっ!?」

 

 

 拳のラッシュを受けながらの、渾身のタックルが炸裂、体勢が崩れたウーラオスに、口吻を突き刺すマッシブーン。ああ、どうすればいいかはお前が教えてくれる!

 

 

「きゅうけつだ!」

 

 

 失った体力を根こそぎ奪い取る。崩れ落ちたウーラオスに、信じられない、という表情を浮かべるユウリ。ウツロイドの力で能力がブーストされている己の手持ちが、己の指示もあるのに負けたことが信じられない様子だ。傲慢なんだよ、お前は。

 

 

「俺はもう、勝つことを諦めない!どんな隙でもついて貪欲に勝利を狙う!」

 

「ああ、それでこそラウラだ!インテレオン。みずのはどう」

 

「マッシブーン、グロウパンチ!」

 

 

 次に繰り出されたオーラを纏ったインテレオンの繰り出した水の球体を、拳で打ち破るマッシブーン。しかしそこにインテレオンの姿はなく。慌てて上を見ると、背中の被膜を広げて滑空しているインテレオンの姿が在り、警告の声を出そうとするも遅く。

 

 

「ふいうち」

 

 

 着地してからの鋭い尻尾の一撃がマッシブーンの頭部を捉える。脳震盪とまでは行かないが揺れ動く頭部に眩暈がしたのかふらつくマッシブーンに、肘鉄からの膝蹴りと容赦ないインテレオンの猛攻が繰り出される。それでも、剛腕を振り回してインテレオンを掴もうとするマッシブーンだが、インテレオンは距離を取り自発的にねらいうちで攻撃。明らかな練度の差が俺達を追い詰める。

 

 

「くそっ…マッシブーン!直線状に突撃しながらグロウパンチ!」

 

「とんぼがえり」

 

 

 今度は突進の勢いを利用され、蹴り上げられると同時にインテレオンが交代。オーラを纏ったムゲンダイナが顔を出す。不味い…!?

 

 

「かえんほうしゃ」

 

 

 もはや横竜巻とも言っていい火炎の奔流がマッシブーンを飲み込み、戦闘不能にする。ビークイン、ゲノセクト、マッシブーン。次々と倒れていく俺の仲間たち。すまない、だがありがとう。徐々に、確実にユウリを追い詰めている。ザシアン、バドレックス、ウーラオスは倒したんだ。ここからだ。

 

 

「行くぞ、フェローチェ!」

 

「っ!」

 

 

 フェローチェを出した途端、露骨に反応するユウリ。アイツはウツロイドに寄生されたことで俺に裏切られたことは許した、もう気にしてないと言っていたが……

 

 

「まだ許してないよな…お前、しつこいもん」

 

「許せるわけがないじゃん。私との絆を横から掻っ攫って行った女なんて…!」

 

 

 憤怒に顔を歪ませるユウリと、それに呼応する様にオーラが膨れ上がるムゲンダイナ。スンッと静かに佇むフェローチェ。妙な空気の中、両者の切札がぶつかった。




やはり筋肉こそが全てを解決する(一敗)

・ラウラ
カセット無しゲノセクトを初見で使いこなす主人公。ゲノセクトと相性がいいけど、マッシブーンの力任せスタイルも嫌いじゃない。自分を好いている女の前に別の女を連れてくるっていう地雷を盛大に踏み抜いた。

・グローリアビースト/ユウリ
本来存在しない自己再生能力も手に入れた原作主人公。伝説ポケモンを軒並み思い通りに操ってるが、もとより自分に忠実なインテレオンとあと一匹だけは能力上げてるだけで洗脳はしてない。伝説ポケモン四体に止められたが逆に洗脳したやべーやつ。

・ゲノセクト
とくせい:ダウンロード
わざ:テクノバスター
   ニトロチャージ
   シザークロス
   てっていこうせん
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。暴れることが好き。国際警察に押収されたプラズマ団に改造された古代ポケモン。カセットを装備することで本領を発揮する。飛行形態になることで人を乗せて飛ぶことも可能。

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VSウツロイドⅢ

どうも、放仮ごです。お気に入りが1600、UAが170000行きましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はVSグローリアビーストその2。フェローチェ大暴れです。楽しんでいただければ幸いです。


「フェローチェを完膚なきまでに倒しちゃえ!ムゲンダイナ、かえんほうしゃ!」

 

「フェローチェ、とびはねる!」

 

 

 横竜巻の様な炎の奔流を跳躍して回避、ムゲンダイナの背中に踵落としを叩き込み床に叩きつけるフェローチェ。そのままトトトンッ、と背中を連続で蹴りつけると跳躍、急降下して飛び蹴りを叩き込んだ。そのあまりの猛攻だが、笑みを見せるユウリに嫌な予感を感じ取る。

 

 

「っ、距離を取れフェローチェ!」

 

「ムゲンダイナ!回転してかえんほうしゃ!」

 

 

 巨大な火柱が上がり、フェローチェは大きく後退。その足を振り被ったので意図を把握。最適な技を選ぶ。

 

 

「地面にトリプルキック!」

 

 

 一撃目で大地を抉り取り、二撃目で岩を蹴り砕き、三撃目でそれを蹴り飛ばしたフェローチェの攻撃が火柱を貫いてムゲンダイナに炸裂、絶叫が上がると同時に火柱から飛び出し突進してくるムゲンダイナ。

 

 

「クロスポイズン!」

 

「上からとびかかる!」

 

 

 クロスポイズンを避けながら、背中に強烈な蹴りをお見舞いし背後に着地してその尻尾を蹴りつけるフェローチェ。完全に弄ばれているムゲンダイナに、イライラを募らせるユウリ。喜色に溢れていた顔が憤怒の表情で固まっていて、触手がぞわぞわしている。隙あらばフェローチェを捕らえようとでも考えているんだろうがフェローチェのスピードがそうさせない。

 

 

「連続でりゅうのはどう!」

 

「トリプルキックで跳ね返せ!」

 

 

 避けた所に当てるべく考えたのか蒼いエネルギーの砲弾が連続で放たれるも、音速の脚で蹴り返してダメージを増やしていく。この程度ならフェローチェの脚力で跳ね返すことは可能だ。

 

 

「ああもう、全部吹き飛ばせ!ダイマックスほう!」

 

「とびはねて避けろ!」

 

 

 放たれたマゼンタ色の光線を、天高く跳躍して回避するフェローチェ。するとユウリはムゲンダイナと繋がっている触手を介して指示をしたのかダイマックスほうを維持しながら上を向かせてフェローチェを追従した。

 

 

「交代だ!」

 

 

 さすがに空中では避けきれないのでボールに戻し、代わりに繰り出したのはドラピオン。ダイマックスほうを上空に向けて隙だらけなその胴体に攻撃を叩き込む。

 

 

「こおりのきばだ!」

 

「しまっ…」

 

 

 冷気を纏った牙で噛み付かれて全身が凍り付き倒れるムゲンダイナ。これでユウリの持つ伝説四体を全部倒せたはずだ。あとインテレオンともう一体さえ倒せば…

 

 

「インテレオン!ねらいうち!」

 

「ドラピオン!クロスポイズンで迎え撃て!」

 

 

 水の弾丸と飛ぶ毒の斬撃がぶつかり合う。その隙を突いて突撃してくるインテレオンに、俺はドラピオンをボールに戻した。勢いついたインテレオンはそう簡単には止まれず、俺の繰り出したデンチュラに突撃する。

 

 

「交代、デンチュラ!」

 

「させない、みずのはどう!」

 

「エレキネット!」

 

 

 デンチュラのほうでんはみずのはどうで防がれる。ならば、虚を突いたエレキネットならば。狙いは上手く行き、エレキネットで痺れて拘束されるインテレオン。拘束を解こうともがいているも無駄だ。蜘蛛の縦糸は頑丈、横糸は纏わりついて離れないのさ。

 

 

「ほうでんだ!」

 

 

 そこに電撃が炸裂、崩れ落ちるインテレオン。これであと一匹。バタバタと触手を振り回し、認めたくないと言わんばかりに暴れるユウリ。まるで子供みたいだ。

 

 

「なんで…なんで、今日に限ってこんなに強いの、ラウラ…!」

 

「お前を捕まえたくないからに決まってるだろ!人間、腹を決めれば普段出せない力だって出せらあ!」

 

 

 なんか知らんが今日に限って「引き際」が何となくわかるんだ。出張り続けるのは駄目だと直感が告げるのだ。この感覚、ポケモンの主人公が相手の次のポケモンがわかるアレと似ているんじゃないか?

 

 

「認めない、認めない…私はラウラに勝てるトレーナーなんだ!シュバルゴ!」

 

 

 最後に繰り出してきたのは、俺が捕まえ、ユウリと交換した結果進化したシュバルゴ。俺を非難するような目で睨みつけてくるシュバルゴはまるで騎士の様にユウリを守るべくオーラを纏って立ちはだかった。

 

 

「つるぎのまい!」

 

「させるか、交代ドラピオン!つじぎり!」

 

 

 つるぎのまいを中断すべく交代したドラピオンに指示して二連撃の交差斬撃を叩き込むが、弾かれる。テッカニンのつるぎのまいと同じだ。

 

 

「れんぞくぎり!」

 

 

 するとシュバルゴは突進してすれ違いざまにドラピオンを何度も何度も斬り裂いて行き、どんどん威力が増していく。さすがにこれは不味い…!

 

 

「地面にクロスポイズン!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 効果は無い物の目潰しするためにクロスポイズンで毒を撒き散らすが、目元を隠す様に深く兜を被ったシュバルゴの頭突きがドラピオンのどてっぱらに炸裂。ドラピオンは崩れ落ちた。

 

 

「くっ…フェローチェ!」

 

「あの女だ、シュバルゴ!アイツが貴方の片割れの役割を奪ったんだ!貴方とアギルダーを戦わせたかったのに!ひどいよ、ラウラ!」

 

 

 それに関しては反省している。フェローチェを捕まえるためにアギルダーを手に入れるべくユウリと交換し、役割が被ったから控えにしたのは事実だ。何とでも言われよう。だがな。一言は言わせてほしい。

 

 

「俺にフェローチェを捕まえるなって言いたいのか!無理に決まってるだろ、こんなに美しい蟲だぞ!俺が無視できるはずないだろう!」

 

「そのフェローチェを捕まえるために私を利用したのが許せないの!」

 

「ちゃんと言わなかったのは俺が悪い!ごめん!」

 

「ごめんですんだら私はウツロイドに寄生されてなんかないよ!?」

 

「ごもっともだ!でも言ってたら交換してくれなかっただろ!」

 

「多分ラウラと交換できるならどんな理由だろうがやったよ!でもその交代したポケモンを控えにするのはひどいって話だよ!」

 

「上位互換が手に入ったら誰だって交代するだろ!?お前の伝説ポケモンと同じだ!」

 

「情はないの、ラウラには!」

 

 

 ヒートアップするがそこで詰まる。駄目だ。口喧嘩じゃあっちが正当性ありすぎて勝てねえ。そもそも上位互換が出たから交代するのは、俺に沁みついたゲーム脳故だからユウリどころかこの世界の住人にはわからなくて当然だ。

 

 

「アシッドボム!」

 

「避けてトリプルキック!」

 

 

 まるでマシンガンの様に次々と放たれる毒の弾を、すばやい身のこなしで避けつつ接近し、その強固な外殻に三連蹴りを叩き込むフェローチェ。しかしビクともしない。なんて防御力だ。ブーストされているせいか?

 

 

「れんぞくぎり!」

 

「とびかかる!」

 

 

 れんぞくぎりを避けつつ、とびかかり続けるフェローチェ。共に突撃して、タイミングが合わずに回避するを繰り返す。堂々巡りだ。それがわかったのか、俺とユウリは示し合わせたように同時に指示をした。

 

 

「とびひざげり!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 頭突きと膝蹴りの激突。せめぎ合うが、体勢的にフェローチェの方が有利で。もう片方の足を地に付け、改めて足を振り抜くだけでシュバルゴを蹴り飛ばす。シュバルゴはユウリ…ウツロイドのボディに激突するとポヨンと跳ねてタワートップの端に叩きつけられ、動かなくなった。

 

 

「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!私が、私が、ラウラに負けるなんて…!」

 

「…お前の強さは、自分のポケモンを信じている故だ。自分のポケモンを道具の様に思っている今のお前じゃあ、俺には勝てないよ」

 

 

 信じられない様に触手をのた打ち回らせビタンビタンと叩きつけるユウリに、俺はユウリが負けた理由を伝える。いつものお前になら今回も負けていただろう。…それに、そろそろ伝えなくちゃいけないか。俺の本心を。

 

 

「…なあユウリ。俺はな、怖かったんだ。お前の好意を受け取るのが」

 

「え?」

 

「お前の好意は知っていた。だけどいざ好意を受け止めて、そういうのじゃない、って拒絶されるのが怖かった。俺は恋愛初心者なもんでな?無償の愛というものが信じられなかったんだ。確証もなかったしな」

 

「え、え、え…」

 

 

 完全に固まるユウリ。触手はピタリとも動かない。

 

 

「なあ、俺を好きだってお前が直接伝えてくれたら、俺はOKしていたんだぞ?」

 

「ら、ラウラ…私!」

 

 

 その時だった。答えようとしたユウリのダイマックスバンドが光り輝き、ユウリを取り込んでいるウツロイドが黒く変色しながら巨大になっていく光景が、俺の視界を埋めていく。何が起きている…?

 

 

「な、なんでダイマックス…?ラウラ!逃げて!?」

 

 

 頭頂部に岩が突起の様に形成されたその姿はクラゲと言うよりは烏賊の様で、まるでムゲンダイマックスしたムゲンダイナの如く暗雲の様にタワートップの上空に広がったその姿はダイマックスではなく、キョダイマックスそのものだった。しかもユウリは制御できてないらしく、触手がナックルシティを破壊していく。

 

 

「おお!我が王よ!なんたる姿!」

 

「おお!我が王よ!これが貴方の導く終末の姿か!」

 

 

 そこに、エレベーターからやってきたのはシーソーコンビ。何しに来たお前ら!?

 

 

「お前ら、なんでここに!?」

 

「フハハハ!我が女王よ!愚問である!」

 

「我が王の活躍をこの目にしかと刻まねばと馳せ参じたのだ!」

 

「だがこれは!まさに!我が!魔王!フハハハハハ!」

 

「さあ、我が女王…いや救世主!今こそそのお力をお見せする時!」

 

 

 お前らどこの預言者だ!?邪魔しに来ただけなら帰れ!?

 

 

「うるせえ引っ込んでろややこしくなる!お前らも戦え!」

 

「いえ、そんな無粋な真似は。あと勝ち目がありませんので」

 

「じゃあ何で来た!」

 

「「我が王の、いや魔王の変身!祝わねばなるまい!」」

 

「祝うな!?めでたくない状況だ!」

 

 

 それでもポケモンを出して戦ってはくれるらしいシーソーコンビ。だが俺の手持ちはデンチュラとフェローチェだけ。さすがにこれは……ユウリを、救えるのか?




まさかの増援、シーソーコンビ。我が王の危機(?)に来ないわけがなかった。

・ラウラ
ユウリからちゃんと告白されていたら普通に頷いていた主人公。ゲーム脳がどうしても抜けきらないからこその悲劇。フェローチェを見せられて捕まえちゃ駄目、は拷問だと思ってる。ここぞで「引き際」がわかる才能が開花した。

・グローリアビースト/ユウリ
ちゃんと告白しなかったからめんどくさいことになった原作主人公。己の手持ちが全滅したことで戦意喪失、ラウラから本心を聞かされて改めて告白しようとしたところ突如ダイマックスしたウツロイドの中核に取り込まれてしまう。こんなんでもヒロイン。

・グローリアビースト/キョダイマックスウツロイド
ユウリと融合していたもう一つの人格(?)が戦意喪失したユウリに代わってダイマックスを自らの意思で発動したものの、あまりの力に耐えきれずところ構わず暴れる今作のラスボス。ナックルシティをまるっと陰に落とすぐらい巨大な、全身宇宙の様に黒い暗雲の様な烏賊の様な怪物。モチーフはクラーケン及びダゴン及びブラックナイト。ユウリの七匹目とかいう反則紛いの代物。シーソーコンビ曰く「我が魔王」。

・シーソーコンビ
ガラルの危機だ!我が王の活躍を見に行こう!的なノリでやってきた崇拝者コンビ。この預言者もどき、ノリノリである。立派な囮。

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VSウツロイドⅣ

どうも、放仮ごです。タグを一新しました。そしたら昨日、ランキングで17位にまで浮上してました。なにがあった…?

今回はVSキョダイウツロイド!楽しんでいただければ幸いです。


 奇声を上げながら無数の触手を振り回し、街々を破壊していくウツロイド。そのちょうど真下に存在するウルトラホールから現れた紙の様な剣の様な小さなウルトラビーストと、まるで竹の様な巨大なウルトラビーストが襲いかかってきた。

 

 

「来るぞ、ソッド!シルディ!」

 

「我々だって王達の役に立つべく強くなりましたぞ!ネギガナイト、つるぎのまい!」

 

「そうですぞ!我ら、喜んで女王の盾になろうとも!ネギガナイト、てっぺき!」

 

 

 二人が前に立ち、二体のネギガナイトが剣と盾を振るってウルトラビーストを弾き飛ばす。するとこちらに気付いたのか、タワートップに振り下ろされる触手群をも迎え撃つシーソーコンビは、以前の姿が思い出せないほど頼もしかった。

 

 

「俺はユウリを救うすべを探す!お前たちは…」

 

「奴めに飲み込まれてしまった我が王を頼みます、我が女王!」

 

「我ら、我が王の意識を感じさせぬ猛獣を引き寄せる囮になりましょう!」

 

「頼んだ!」

 

 

 デンチュラを繰り出し、糸を触手の一本に飛ばして空を舞う。大きくスイングして触手の群れを避けながら、たまに触手に乗ってまた飛び出す、を繰り替えす。あの雲みたいになってる上まで行ければ…!

 

 

「しまっ」

 

 

 キョダイキョウセイとでもいうべきか。伸びてきた数多の触手がさらに枝分かれして俺を包み込もうとしてきた。アレに捕まったらヤバい、と本能が告げる。包み込まれ、枝分かれした触手の一つが俺に触れようとしたその時。

 

 

「ファイヤー、もえあがるいかり!」

 

 

 何か赤黒い炎の様な物がぶつかって俺は解放され、落ちたところを受け止められる。顔を上げると、そこには呆れた顔のムツキがいた。

 

 

「まったく。ユウリのことを任せたとはいいましたが、ガラルの命運を握る羽目になってるなんてなにしてるんです?」

 

「ムツキ…」

 

「我もいるぞ!ルミやナグサ、ダフネやローレルも下で手伝っている!」

 

 

 その声に振り向くと、ガラルフリーザーに乗ったモコウもいた。俺とムツキを乗せているのはガラルファイヤーらしい。二鳥はキョダイキョウセイの枝分かれした触手をアクロバットな動きで回避して絡ませながら上空に向かっていく。

 

 

「お前たち、なんで…」

 

「そりゃ同じ釜の飯を食べた友人ですし」

 

「この事態でユウリが動かないのは何か理由があると思ってな。それでどうなっている、アレはなんだ?ユウリは?」

 

「それは…」

 

 

 キョダイキョウセイの攻撃を避けるべく振り回されながら、ことのあらましを説明する。ウルトラビーストのこと、ウツロイドがユウリに寄生したこと、ユウリが俺に捕まりたいと言って襲いかかってきたこと、手持ちを全滅させ、ユウリの愛を受け入れた直後にこうなったこと、全部伝えた。

 

 

「今更受け入れて、その結果がこれですか…貴方達の痴話喧嘩でガラルを滅ぼす気です?」

 

「おそらくだがユウリが戦意を失くしたことでウツロイドの方がそのまま暴走したんだろうな。トレーナーの意思もないダイマックスなど狂乱するに決まってる。だとすると…」

 

「普通に戦闘不能にすればいいと思います。そのためにまずユウリを助け出さないとですが」

 

 

 冷静な二人の言い分に納得する。だとするならば。

 

 

「ここはダイマックスエリアだ。俺のデンチュラで奴の動きを止める!」

 

「ならば触手は我々で迎撃しましょう。私のウォーグルを貸します、それでユウリの元へ」

 

「腕が鳴るな!行くぞレジエレキ、暴れるぞ!」

 

 

 俺はムツキからモンスターボールを受け取り、飛び降りる。眼下にはシーソーコンビが戦うタワートップの頂上。未だにウルトラビーストが湧き続ける、地獄の釜。俺はダイマックスバンドを輝かせ、デンチュラを戻して手にしたボールを掲げた。

 

 

「キョダイマックスだ、デンチュラ!」

 

 

 同時にウォーグルを繰り出してその背に乗り、周りを飛びながら見るのは、タワートップに降り立ちどんどん巨大化してタワートップに跨るように脚を折り畳んだキョダイデンチュラの雄姿。上空のキョダイウツロイドと組み付き、下に引き摺り下ろした。前世で見た怪獣大決戦みたいだ。

 

 

「キョダイクモノス!」

 

 

 キョダイキョウセイの攻撃を巨大エレキネットで防ぎつつ、ムツキとモコウの援護を受けつつ、グシャリグシャリとその柔らかい頭部に両前脚を突き刺して開けた穴を広げるキョダイデンチュラに、行けと言われている気がした。

 

 

「頼む、ウォーグル!」

 

 

 ウォーグルが穴まで連れて行ってくれて、俺はウツロイドの中に侵入。内部の壁から襲いかかってくる触手を、フェローチェを出して迎撃しながら奥に進む。

 

 

「是が非でも行かせないつもりか…!」

 

 

 キョダイキョウセイで取り込んでいたのか、ウツロイド、フェローチェ、マッシブーン、巨大な口の様な奴…アクジキング、紙の様な奴…カミツルギ、竹の様な奴…テッカグヤ、電気コードの様な奴…デンジュモク、紫色の蜂の様な奴…アーゴヨン、レンガ造りの様な奴…ツンデツンデ、ピエロの様な奴…ズガドーンといったウルトラビーストたちが立ちはだかる。これを全部捕まえたらしいアローラのチャンピオンヤバいな。こちらはフェローチェ一匹。さすがに万事休すか?

 

 

「くそっ、負けてたまるか!フェローチェ、トリプルキック!」

 

 

 突進してきたテッカグヤを、三連撃で蹴り飛ばす。続けて飛来したカミツルギの一撃を避け、壁に脚を付け高速で蹴りつけるフェローチェ。その隙を突いて頭部を分離させて飛ばし、爆発させてくるズガドーン。フェローチェはツンデツンデを盾にして無事だが俺はもろに爆発を浴びて吹き飛ばされてしまった。

 

 

「ぐっ…そんなのありか、くそっ…」

 

 

 全身を打ちつけられて力が入らない。フェローチェが奮闘しているが、囲まれてはどうしようもない。悪い、ユウリ……意識が閉じかけたその時、輝く雷霆を見た。

 

 

「しんそく!」

 

「らいめいげり!」

 

 

 二つの雷が通路を駆け抜け、ウルトラビースト達を文字通り一蹴する。俺を守るようにそこにいたのはレジエレキと、ガラルサンダー。つまり…入り口の方から歩み寄ってくる二つの人影。

 

 

「なあにこんなところで蹲ってるんですか。貴女のお姫様が待ってますよ」

 

「有象無象は我らが引き受ける。お前はさっさとユウリの馬鹿を助け出してこい」

 

「ムツキ、モコウ…!」

 

 

 ムツキはファイヤーとフリーザーも出し、モコウはカメックスを繰り出してウルトラビーストをびしょ濡れにしてレジエレキの電撃で痺れさせていた。俺は痛む体に鞭打ち、立ち上がる。

 

 

「フェローチェ、頼む!」

 

 

 フェローチェに担いでもらい、先を急ぐ。中核と思われる場所に出ると、四肢が壁と一体化しているユウリがいた。気を失っているようだ。

 

 

「フェローチェ、とびひざげり」

 

 

 硬いようで柔らかい、不思議な材質のウツロイドの肉体を走ってきた勢いのまま蹴りつける。内部からの強烈な一撃にウツロイドはさすがに効いたのか悶絶し、ユウリの拘束が緩んだ。

 

 

「今だ!」

 

 

 ユウリの両肩を掴み、フェローチェにも手伝ってもらって引っぺがすと巨大な奇声を上げるウツロイド。壁が隆起し、全て触手となって襲いかかってきた。

 

 

「フェローチェ、逃げるぞ!」

 

 

 俺とユウリを担ぎ、高速で走り抜けるフェローチェ。道中でムツキとモコウもその細く長い手で回収し、二人はボールを手にポケモン達を戻しながら、俺達は外に飛び出した。

 

 

「デンチュラ!ダイウォール!」

 

 

 タワートップに落下しながら、キョダイデンチュラに指示。俺達を追いかけてきた触手を、巨大な光の防壁が防ぎ、俺達を抱えたフェローチェはシーソーコンビの待つタワートップに着地。ユウリを床に寝かせ、ムツキとモコウは再度繰り出し、俺達に標的を変えて攻撃してくるウツロイドに応戦する。

 

 

「フリーザー、いてつくしせん!」

 

「レジエレキ、かみなり!」

 

「「ネギガナイト、スターアサルト!」」

 

「フェローチェ、とびひざげり!デンチュラ、ダイサンダー!」

 

 

 ガラルフリーザーとレジエレキの遠距離攻撃がウツロイドの頭部に放たれ、ネギガナイト二体とフェローチェが突撃、強烈な三撃を叩き込むと同時に、デンチュラが最後の一発である特大雷電を叩き込む。デンチュラが縮み、ウツロイドの巨体がぐらりと傾く中で。傍らに寝かされていたユウリが目覚めた。

 

 

「…ラウラ、みんな…」

 

「おお、我が王!お目覚めか!」

 

「元気そうで何より…ぶべっ」

 

「お前たちは黙ってなさい」

 

「空気読め馬鹿兄弟」

 

 

 即座に反応したシーソーコンビをムツキとモコウが拳骨で黙らせると、俺に視線を向けるユウリ。

 

 

「今、私の気持ちを言いたい。だけど、その前に…私がしでかしたことのケジメはつけたい」

 

「…なら、こいつを使え」

 

 

 そう言って差し出したのはウルトラボール。フェローチェやマッシブーンみたいに懐いているわけじゃないから、この特性のボールなら問題ないだろう。

 

 

「うん…!」

 

「肩貸すぞ」

 

 

 立ち上がろうとするユウリだが、先ほどまでウツロイドと融合していたせいでダメージももろに受けていただろう。そのため体力が消耗しているのかふらつき、俺が肩を貸して立ち上がらせる。こんなに軽かったっけ、ユウリ…

 

 

「行くよ、ラウラ!」

 

 

 ダイマックスバンドから溢れる光でウルトラボールを巨大化させ、渾身の力で振りかぶり投擲するユウリ。ボールはキョダイウツロイドを飲み込んでいき、そして。音を立てて、タワートップに転がった。同時に光が差し込んでくる空に、ウツロイドのせいで見えなかったが快晴の昼だったのかと改めて実感。太陽の光を目いっぱい浴びる。

 

 

 

 暗雲が晴れたそこにはウルトラホールもなく。俺達の喧嘩から始まった前代未聞の大事件はこうして幕を閉じた。




ダイマックスって幻影らしいけど物理も伴うと考えているので直接内部に入ってユウリを引き剥がすって言うガメラVSイリスみたいなことになりました。ウツロイドとイリス、似てるよね。

・ラウラ
仲間の助けを借りてユウリを救い出せた主人公。ビックリヘッドの爆発をもろに受けているのでダメージ甚大だがそれでもユウリに肩を貸した。

・ユウリ
囚われのお姫様。無理やり引き剥がされたものの精神に異常は来たしてないがダメージをフィードバックしていたため体力を大きく消耗した。ウツロイドを捕獲したことでFallとしての特性は綺麗さっぱり消えた。

・モコウ
ジムリーダーたちに加勢していたもののキョダイウツロイドの出現でラウラになにかあったことを悟りムツキと共に救援に駆け付けたツッコミ役。カメックスとレジエレキのコンビでウルトラビーストを蹴散らした。

・ムツキ
ジムリーダーたちに加勢していたもののキョダイウツロイドの出現でラウラになにかあったことを悟りモコウと共に救援に駆け付けたひこうつかい。伝説の三鳥を使いこなしウルトラビーストを蹂躙した。

・ソッド&シルディ
割と頑張った囮役。あれから鍛え、自身のポケモンを使いこなせるまでになった。我が王の無事を見れて満足。

・キョダイウツロイド
とくせい:ビーストブースト
わざ:キョダイキョウセイ(アシッドボム
   ダイロック(パワージェム)
   ダイウォール(ステルスロック)
   ダイアタック(ずつき)
もちもの:なし
備考:おくびょうな性格。好奇心が強い。ユウリに目を付けて寄生したことで酷い目にあったウルトラビースト。ユウリを取り込むことでグローリアビーストと化し、Fallとしての特性を得てウルトラビーストを招き入れ大災害を引き起こした。最終的に自我が希薄な状態で暴れながら「敵」を蹂躙する。

・キョダイキョウセイ
漢字にすると巨大共生。枝分かれした触手で取り込んだ相手をメロメロ+どく状態にして味方にするどくタイプの技。自身の神経毒を流し込んでウルトラビーストだろうが伝説だろうが人間だろうが操り味方にする驚異の技。

次回はエピローグ、というか「本編」最終回です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシュバルゴ

どうも放仮ごです。今回で本編完結。最終回となります。アンケートによると皆さんガラルスタートーナメントが見たいらしいので多分まだまだ続きますが‥本編は一応終わりです。

今回はUB事件のその後。最後まで楽しんでいただければ幸いです。


 あれから二週間が過ぎた。あのウルトラビースト騒動の後、俺達から事情を聞いたダンデさんにその秘書であるキリエさんやジムリーダーの人たち──いわゆる大人組の行動は早かった。

 

 まず、ダンデさんがリラたち国際警察から取り寄せたウルトラビーストの資料を元に、マスコミに事の顛末を説明。結果的にユウリが引き起こした騒動ではあるが、それはあくまで偶々の事故であり、ウルトラビーストが現れた以上誰であっても起こり得た事だと主張してくれていた。

 

 ウルトラビーストが現れたのも前委員長であるローズがしでかしたムゲンダイナの一件が原因だとも懇切丁寧に説明された。これにはキリエさんだけでなく現在は炭鉱で働くオリーブさんも協力してくれたようで、ユウリに対する非難はお陰で最小限に押さえられたようだ。

 

 ジムリーダーのうち、カブさんやルリナさん、それに(元ジムリーダーの)ポプラさんのような顔が利く人もマスコミを抑圧してくれたし、キバナさんは自分のSNSにユウリとのツーショットあげて「チャンピオンキャンペーン」なるものを開催。意外と人気を博し、ユウリを励ます声が多いのは、自分を責めているユウリの助けになるだろう。

 

 また、ヨロイ島やカンムリ雪原で知り合ったマスタードさんやピオニーさんたち"元チャンピオン"も現チャンピオンのユウリを擁護してくれているらしい。

 

 あと、ウルトラビーストによる被害(主にナックルシティ)は少なからず出ているが、そこはシーソーコンビが「我が王のためならばお任せを!」と惜しみ無くそのセレブリティな財力を発揮してもうほとんど復興されている。いつもはウザいが今回はなんだかんだ助けられた。次会った時くらいはセレブリティ(棒読み)って称賛してやろう。泣いて喜ぶに違いない。

 

 

 そして、ようやく落ち着いてきた世間に対し、ユウリと俺の関係だが。

 

 

「ラウラ、私の愛の一撃受け止めて!シュバルゴ、アイアンヘッド!」

 

「受けたらやられるだろうが!アギルダー!かげぶんしん!」

 

 

 今日も元気にバトルしていた。場所はマスコミもいないヨロイ島のマスター道場裏のバトルフィールド。今回は伝説とUB禁止の一対一のバトルだ。アギルダーが元気にそのスピードを振るっていた。呆れ顔でそれを眺めるモコウとムツキはもはや無視だ、蟲だけに。

 

 

「…で、お前たち。告白はしたのか?」

 

「うん、私がしたよ!ラウラは私の愛を受け止めてくれたんだ、えへへ…」

 

「あのユウリが気持ち悪い笑みを浮かべている…で、ラウラは?」

 

「了承はしたけど同性だからな。その問題をどうするかって話になってる」

 

「了承したのか。お前は面倒事は避けるタイプと見たが」

 

 

 モコウの言葉に、数日前のことを思い出す。ようやく立ち直ったユウリからの「ラウラのことが好きです!付き合ってください!」などという直球に、受ける以外の選択肢はなかった。面と向かって言われる好意は嬉しかったしな。

 

 

「あそこまでこじれる程に愛されて悪い気はしないさ。真剣に想われるとNOとは言えない主義だ」

 

「難儀な主義ですね。馬鹿なんですか?そうでした、馬鹿でしたね」

 

「こればかりはムツキの言い分が正しいな、うん」

 

「ところで同性問題、私がチャンピオン権限でガラルなら同性とでも結婚できるようにすればいいんじゃないかな!」

 

 

 するとバトルしながら唐突にそう叫んでくるユウリ。お前ウツロイドの毒が残ってるのかすごくハイテンションだな。

 

 

「そんなこと決める権限チャンピオンにはないだろいい加減にしろ」

 

「もう同棲はしてるし世間を納得させるだけだよね!」

 

「ただお前の家に泊まってるだけなんだが?」

 

「同じベッドで寝てるんだし照れることないのに」

 

「ぐっ」

 

「「ほう」」

 

 

 そうそう、ムツキはキリエさんに対抗できる戦力であるガラル三鳥を手に入れ、モコウはチャンピオンになるのと同じぐらいの偉業である伝説ポケモンレジエレキを手に入れたことで、二人はそれぞれの生活に戻った。両親との仲が未だに悪い俺だけユウリの家に居候…もはや同棲している。ニヤニヤ顔の二人を無視してアギルダーにみずしゅりけんを指示、シュバルゴを倒した。

 

 

「俺の勝ちだ」

 

「なんで一対一の時だけラウラに勝てないの!?」

 

「俺に聞かれても知らん」

 

 

 今のところ、ウツロイドが関係してないバトルだと一対一だと俺が全勝。それ以外だとユウリが全勝っていうへんてこな戦績だ。いつかフルバトルでも勝ちたいものだ。今度トリプルバトルやローテーションバトルでも教えて一緒にやってみるかな。ユウリならすぐ物にしそうだ。

 

 

ピピピピ…

 

「「「「うん?」」」」

 

 

 すると鳴り響く着信音。自分たちのを確認すると、ユウリのスマホロトムに着信だ。今回の一件もあって買い換えたユウリのスマホロトムの番号を知っている人間は限られている。相手の名前を確かめたユウリはスピーカーモードにして電話に出る。

 

 

「ダンデさんからだ。もしもし?」

 

『やあ、ユウリ!…のスマホロトムであっているよな?ラウラ達もいるかい?』

 

「はい、ユウリです。ラウラとモコウ、ムツキもいますけど」

 

『それはちょうどよかった!その三人の連絡先だけ知らなくて困っていたんだ!』

 

 

 そりゃダンデと連絡先交換できるほどコミュ力ないですし…?モコウだけでなくムツキもそうなのか視線をあらぬ方向にずらしていた。わかるぞ、その気持ち。

 

 

『今回君に電話したのは他でもない!元チャンピオンの俺から現チャンピオンのユウリに大事なお願いがあるんだ!今回の事件のことで気に病んでるかもしれないが、詳しい話はシュートスタジアムでしよう!もちろんラウラたちと一緒に、最強メンバーを揃えて迷わない様に真っ直ぐ来るんだぜ!』

 

 

 そう言ってダンデの通話は終わった。…俺達も関係している大事なお願いね。あの人は現ポケモンリーグの委員長だ。なにか盛り上げる企画でも作ったのだろうか。このタイミングでユウリをってことはイメージアップも兼ねたものなのだろう。最強メンバーを揃えてって言ってることからバトルなんだろうな、多分。

 

 

「…まだちょっと気が引けるんだけど」

 

「気にするな。悪いのはウツロイドの毒だ」

 

「そうだぞ。発表によると依存性が高い猛毒らしいじゃないか」

 

「それに抗ってる時点で貴方は偉いですよ、ユウリ」

 

「ちょっと残ってるんだけどね…」

 

 

 不安や恐怖が幸福に変化する神経毒。依存性が高く後遺症もあり、以前アローラでユウリの様な状態になったらしい人間は現在カントー地方で療養中なのだという。それをちょっと残ってる程度で済ましているユウリだが、ウツロイドの主もユウリだ。また手を出さないように俺がつきっきりで監視する、が条件でウツロイドはユウリが使うことになった。国際警察としては貴重なサンプルだから欲しがっていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 ユウリを何とか説得し、やってきたシュートシティのシュートスタジアム。バトルフィールドに入ると、そこにはマリィ、ビート、カブさん他と言ったジムリーダーの面々の他、ネズにポプラ、ホップにナグサ、さらにはクララさんにマスタード師、ピオニーにキリエさんまでいた。クララさんに話を聞いてみるとマイナークラスのジムリーダーになれたらしいのでおめでとうと言っておいた。しかしこれは何事だ?

 

 

「みんな!お待たせしてすまない!」

 

 

 中心に立つダンデが観客や俺達に向けて叫ぶ。まとめ役が板について来たな。

 

 

「まずは俺の呼びかけに応え集まってくれて感謝だ!みんなに俺の思いを直接届けたくてな!」

 

「ヒュー!いつになくマジメだな!何が始まるってんだ?」

 

「茶化さないでくれよ、キバナ。今まで俺は自分と向き合い鍛えることで強さを追い求めてきた!だがユウリと弟ホップが競い合い、ラウラたち強力なライバルと共に互いに高め合うのを見てライバルや仲間がいて初めて到達できる強さを知った!そしてローズ委員長の後を継いだ俺は…あんなことがあったが、それが忘れられるくらい俺達の素晴らしいガラルをもっと盛り上げたいと思っている。この二つの理由から俺は今ここに…」

 

 

 そう言ってスタジアムに集まった面々を笑顔で見渡すダンデ。

 

 

「ユウリ、ラウラ、ホップ、キバナ、マリィ、ネズ、マクワ、ビート、ポプラさん、サイトウ、カブさん、ルリナ、ヤロー、クララ、モコウ、ムツキ、ナグサ、キリエさん、ピオニーさん、マスタード師匠、そしてこの俺。総勢21人によるガラルスタートーナメントの開催を宣言する!」

 

「ガラルスタートーナメント…!?」

 

 

 目をキラキラ輝かせるユウリに、ふと笑みがこぼれる。こいつは笑っていた方が暗い顔よりよっぽど似合う。

 

 

「ガラルスタートーナメントはタッグバトルで勝ち抜く戦いだ!君達には今考えうる最強のメンバーの中から抽選で選ばれた16人で2人組を作ってもらい…パートナー同士力を合わせトーナメントを勝ち抜いてくれ!」

 

「じゃあそもそも選ばれない可能性があるのか」

 

「21人は多いもんね。ダンデさんも欲張りだなあ」

 

「強い人を集めたいって気持ちは伝わってくるがな」

 

「もちろん伝説ポケモンやウルトラビーストは禁止だ!持ってない人間に不公平だからな!己の決めた三匹で臨んでくれ!」

 

 

 ボルテージマックスになる観客席。ユウリがいるからブーイングが怖かったが、そんな心配はなさそうだ。そして無事抽選に選ばれ、パートナーを選んでスタジアムに共に降り立つ俺。何にしてもユウリやダンデと戦えるのは僥倖だ。蟲ポケモンの力を見せつけてやる!

 

 

「諸君!俺は蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ、愛してる!だからこの愛を持って証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと!」

 

 

 そう宣言し、俺はパートナーと共にボールを投擲した。楽しいバトルの始まりだ!




最後はこう締めると決めていた。

・ラウラ
ユウリの告白を受け入れて付き合い始めた主人公。ウツロイドに手を出さないかの監視も兼ねて同棲している。こじれるほど愛されて悪い気はしないし、同じベッドで眠る事にも抵抗がなくなってる。一対一ならユウリにも勝てる。ガラルスタートーナメントでは、ジムチャレンジで叶わなかったダンデとの対決に挑む。

・ユウリ
改めてラウラに告白した原作主人公。受け入れてもらってご満悦。UB事件を己のせいだと責めており、二週間チャンピオンとしての仕事は裏方しか行ってない。後遺症はないがウツロイドの毒が若干残っており、不安や恐怖が多幸感に変換される。ガラルスタートーナメントではラウラと戦いたいため別チーム。

・モコウ
レジエレキを手に入れたことで両親とシーソーコンビをぎゃふんと言わせて元の生活に戻った。時々ラウラとユウリのところに遊びに行ってる。

・ムツキ
三鳥を手に入れたことでキリエに対抗できる力を手にしたとして、病院に戻すか戻さないかを賭けてのバトルして打ち勝ち、やっと自分の家に戻れた。時々ラウラとユウリのところに遊びに行ってる。

・ダンデ
ユウリのために色々頑張った大人組代表。現ポケモンリーグ委員長でキリエが秘書をやってる。ユウリのイメージアップと己の趣味でガラルスタートーナメントを開催した。

今回で本編完結ですが、まだまだ続きます。実は主人公を変えての「二年後」も予定していたり。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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後日談:ガラルスタートーナメント
VSシンボラー


どうも、放仮ごです。最終回である前回を投稿してからなんでかランキングに残り続けてお気に入りが増え続けている珍事に!?となってます。なんでなの…?あ、前回取ったアンケートは大差でモコウが勝利となりました。すごい人気だあ…

そんなわけで今回から後日談であるガラルスタートーナメント編です。楽しんでいただけると幸いです。


 俺が蟲の強さを証明する、という宣言から少し時は遡る。

 

 

「ラウラ、私のタッグと戦う前に負けたりしないでよね!約束だよ!」

 

 

 そう言って別れたユウリが別の奴と組むのにちょっと嫉妬したのはまあ置いといて。

 

 

「抽選に選ばれたのは、この俺ダンデと、ユウリ、ラウラ、ホップ、キバナ、モコウ、ムツキ、キリエさん、ピオニーさん、カブさん、マリィ、ネズ、ビート、クララ、ルリナ、ヤロー!選ばれなかった人はまたの機会を楽しみにしていてくれ!この俺が保証しよう!」

 

 

 この16人の中からパートナーを決めないといけない。ユウリは…ホップとか。ちょっと妬けるな。俺が組みたい候補は心情的にカブさんに戦い方の相性がいいマリィやネズさん辺りか。そう思っていると、モコウが不安げに歩み寄ってきた。

 

 

「ラウラ!我と組まないか?」

 

「その心は?」

 

「お前やユウリ、ムツキ以外に話しかけられる勇気があるとでも…?」

 

「あー。いいぞ。突っ込むお前を俺がサポートすれば中々いい勝負ができそうだ」

 

 

 そんなわけでモコウと組み、受付に言いに行くと他の組み合わせも決まった様ですぐに対戦表が表示される。

 

 

 

第一回戦:ユウリ&ホップVSルリナ&ヤロー

 

第二回戦:ビート&クララVSマリィ&ネズ

 

第三回戦:ダンデ&キバナVSピオニー&カブ

 

第四回戦:ラウラ&モコウVSムツキ&キリエ

 

 

「「げっ」」

 

 

 いきなりひこうタイプとじめんタイプのエキスパートというそれぞれの天敵との対決に二人して表情が固まる。…あ、相手にとって不足無し(震え)

 

 

「…これ、ガチで三匹考えないとだぞ」

 

「お、おう。とりあえず我はカメックスとロトムは確定だ」

 

「ただあの二人は仲が悪いからそこを突けば…」

 

 

 二人で作戦会議していると、ムツキとキリエさんがやってきた。ムツキはだいぶ不満そうだがキリエさんは幸せそうだ。この親子、仲良くなることなんてあるのだろうか…

 

 

「一回戦からラウラとは、セミファイナルトーナメントを思い出しますね。不本意ながら今回は強力な相方もいます、リベンジ果たさせてもらいますよ!」

 

「ごめんねラウラさん、モコウさん。ムツキちゃんにいいところ見せたいからお姉さん、本気出しちゃいますね?」

 

「もうお姉さんって年でもないでしょうに。胸と同じように頭も足りない…あいたァ!?」

 

「ムツキちゃん。言っていいことと悪いことがありますよ?」

 

「病人を殴ることがありますか!」

 

「仲よさそうで何よりだ」

 

 

 そしてそれぞれ控室に向かう。まずはユウリとホップのコンビVSヤロー・ルリナだ。ジムリーダーの中でももっとも相性がいいだろうコンビだがユウリは勝ち残れるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 結論から言って心配なかった。ホップのバイウールーをタンクにしてユウリのインテレオンが集中砲火してボコボコにしていた。これはひどい。

 

 マリィとネズはビートのフェアリーに対してなにもできず、クララさんの毒で苦しめられて敗北。あの二人結構いいコンビだな。

 

ダンデさんとキバナVSピオニーとカブさんの対決はほぼ互角の対決で白熱。ダブルバトルの達人であるキバナのサポートで存分に力を発揮したダンデさんのポケモンが大暴れしてピオニーとカブさんは叩き潰されてしまった。あの二人組ませちゃ駄目だろ。あれが俺達が戦うかもしれない相手かあ。ダンデと戦えるのは嬉しいが、おまけのキバナがこのルールだと凶悪すぎる…

 

 

「行くぞ。我らは最速と最強のコンビだ!負ける道理はない!」

 

「最強はユウリだと思うが、最強になったつもりでやってやるか!」

 

 

 それぞれむしとでんきのユニフォームを着込んでバトルコートにモコウと共に向かうと、反対側からはひこうとじめんのユニフォームに身を包んだムツキとキリエがやって来て、並び立つ。キリエさんが久々にバトルコートに立ったからか観客のボルテージはマックスだ。

 

 

「ラウラ。悪いですが、ユウリとの約束は守らせませんよ!」

 

「グランドウォールの名の通り…我ら親子が貴女方の壁となります!」

 

「壁なんて超えるためにある!ムツキよ、いつぞやの決着…ここでつけようぞ!」

 

「諸君!俺は蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ、愛してる!だからこの愛を持って証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと!」

 

 

▽ひこうつかいの ムツキとじめんつかいの キリエが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くぞ、モスノウ!」

 

「暴れろ、ロトム!」

 

「蹂躙しなさい、シンボラー!」

 

「出番です、ハガネール!」

 

 

 俺とモコウは作戦通りモスノウとフロストロトム。ムツキとキリエはシンボラーとハガネール。相性はこちらが上だ!

 

 

「ひかりのかべです!」

 

「モスノウ、あられからのオーロラベール!」

 

「ハガネール、じしん!」

 

「ロトム、ふぶき!」

 

 

 モスノウがあられを降らせると同時にオーロラベールを展開、同時にムツキのシンボラーもひかりのかべを張り、ロトムのふぶきが放たれると同時に、ハガネールのじしんがモスノウとロトムの足元から隆起させた土柱をぶつけてきた。

 

 しかし、オーロラベールでこちらのダメージは減少。あちらはあられで必中のふぶきをひかりのかべで凌いだもののところどころ凍り付いて動きが鈍っている。じしんで味方にだけ当たらないって反則にも程があるが、こちらが上手(うわて)だ。

 

 

「ハガネールに集中攻撃だ、れいとうビーム!」

 

「もう一度ふぶきだ!」

 

「くっ、仕事は果たしなさい!リフレクター!おいかぜ!」

 

「モスノウから落とさないと不味そうですね、いわなだれ!」

 

 

 流星群の様ないわなだれが襲いかかるも、効果抜群でしかもモスノウは四倍だがオーロラベールでダメージを減少しているため問題ない。モスノウは怯んで動きが止まってしまったが、ロトムの二面攻撃は炸裂。シンボラーが崩れ落ち、ハガネールは完全に凍り付く。おいかぜを使われたか。キリエさんの鈍いポケモン達が動きやすくなったわけだ、厄介な。

 

 

「モスノウ、こっちもおいかぜだ!」

 

「やりますね。だけどここからです、ウォーグル!いわなだれ!」

 

 

 こちらもすばやさを上げていると、ムツキの繰り出したウォーグルがいわなだれをしてきた。あっちも新技か!さすがに二体がかりのいわなだれはまずい。モスノウが倒れてしまった。

 

 

「くっ…交代だ、オニシズクモ!モコウ、作戦変更だ!」

 

「プランBだな!」

 

「あまごい!からのハガネールにバブルこうせん!」

 

「ロトム、ウォーグルにかみなり!」

 

 

 プランB。あまごいプラン。プランAがあられによる防御力と制圧力の底上げなら、プランBはミラーコートを忘れさせて覚えさせたあまごいを利用した高威力で攻めるというプランだ。雨で威力が上がった水技と、雨で必中になるかみなりを叩き込む。戦闘不能になったウォーグルとハガネールにびしょ濡れになりながら苦々しげな顔を浮かべるムツキと、笑顔のキリエさん。

 

 

「くっ…キバナみたいなことを…!」

 

「アハハハッ、やりますね!さすがはムツキちゃんのお友達です!」

 

「なに親の面してやがんですか!?ですがもうこれ以上好き勝手させませんよ!」

 

「ええ、ムツキちゃんの切札を全力で援護しましょう!」

 

 

 そして繰り出されたのは、色違いアーマーガアとサダイジャ。どちらも確か、キョダイマックス個体だったはずだ。なんのつもりだ…?

 

 

「アーマーガア、サダイジャにアイアンヘッド!」

 

「なに!?オニシズクモ、バブルこうせん!」

 

「サダイジャ、オニシズクモにへびにらみ!」

 

「このまま一気に決める!ふぶき!」

 

 

 あろうことか、自分の仲間であるサダイジャに攻撃するムツキ。すると特性のすなはきが発動し、雨が掻き消されすなあらし状態になりふぶきが掻き消されてしまう。応戦はするものの、やられた。いわタイプじゃないから特防こそ上がらない物の、いわ・じめん・はがねに有利な対面だ。もう一度あまごいしようにもオニシズクモを麻痺された。これは…厄介なことになったぞ。




ダブルバトルそんなに詳しくないから天気合戦になりました。キバナ戦はもっと頑張ります。

・ラウラ
正直トリプルバトルやローテーションバトルは得意だけどダブルバトルは苦手な主人公。付け焼刃のあられやあまごいで奮闘する。メンバーはモスノウとオニシズクモとあと一体。

・モコウ
コミュ症故にラウラと組むことにしたもはや相棒。ロトムをフロストロトムに変えたり、キバナから教わったダブルバトルのノウハウ(天候パ)で戦う。何気に今回一体も落とされてない。メンバーはフロストロトムとカメックスとあと一体。

・ユウリ
ラウラと戦うため二番目にその実力を信頼しているホップと組んだ。ルリナとヤロー相手に一体もやられることなく完勝するチャンピオンの実力で観客を魅せた。メンバーはインテレオンとあと二体。

・ホップ
幼馴染からのお願いに即頷いたいい奴。メンバーはバイウールー、カビゴン、エースバーン。

・ムツキ
不本意ながらも母親と組むことにした自称母嫌い。ダブルバトル用に育てたシンボラーでサポートしまくるなど、母親の実力を信頼している。メンバーはシンボラー、ウォーグル、アーマーガア。

・キリエ
娘にいいところを見せて和解したいムツキの母親。彼女の参戦に観客のボルテージがマックスになるほど人気がある。メンバーはハガネールとサダイジャとあと一体。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSサダイジャ

どうも、放仮ごです。いつの間にかお気に入りが1700、UAが180000行きましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回は後日談のガラルスタートーナメント編その二です。楽しんでいただけると幸いです。


「てっぺきです、アーマーガア!」

 

 

 すなあらしで視界が塞がれた中でムツキの指示が聞こえてきた。こちらを消耗させて耐久戦に持ち込むつもりか?とにかくすなあらしをどうにかしなければ。

 

 

「もう一度、あまごい!」

 

「へびにらみがそう簡単にさせませんよ!」

 

 

 念入りにとさらにかけてくるキリエさん。すなあらしは継続し、オニシズクモの動きは完全に封じられた。だけど現実のへびにらみはゲームと異なり、見ている間しか麻痺は起こらない技だ。サダイジャもこれで動けまい。その間にモコウが動けばいい。

 

 

「アーマーガアにおにびだ!」

 

「させません!ボディプレス!」

 

 

 おにびを放つロトムだが、アーマーガアの影は天高く飛翔して急降下。すなあらしの中からロトムに襲いかかり、押し潰す。すなあらしのダメージもあり戦闘不能だ。てっぺきは自分の防御力で威力が変わるボディプレスの威力を上げるためだったか。

 

 

「やられたならやられたなりにできることはあるぞ!カメックス、あまごいだ!」

 

 

 次に出したカメックスがあまごいを行い、すなあらしから豪雨に天気が変わる。するとキリエはそれを見るなりボールにサダイジャを戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化させ振りかぶった。

 

 

「あの相手にはこっちの方がよさそうなので使わせてもらいますね、ムツキちゃん」

 

「最強のジムリーダーだった母さんを信じます!存分に暴れてください!」

 

「砂塵よ吹き荒れろ、その巨躯を持って世界を竜巻に飲み込みなさい!キョダイマックス!」

 

 

 ムツキのキョダイマックス口上を思わせる口上(キリエさんの方が本家か?)で巨大化したボールを落としたかと思うと後方に蹴り飛ばすと、鼻の穴がより膨らんで大砲の様になり体も更に長くなって逆方向にとぐろを巻いた巨大な竜巻の様な姿に変わったサダイジャが咆哮を上げる。元最強のジムリーダーのキョダイマックス、つまり切札か。ドリュウズが等身大の切札ならこいつは試合でのダイマックスありきの切札なんだろうな。

 

 

「ちっ…だがあまごい状態なら勝ち目はある!モコウ!」

 

「おうとも。ヨロイ島で身に着けた我が新たなキョダイなる力を見せてくれよう!」

 

 

 そう言ってカメックスをボールに戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化させ振りかぶるモコウ。

 

 

「我の生き様をこの世に見せつけろ!激流の如く蹂躙する戦艦と化せ!キョダイマックス!」

 

 

 肥大化した胴体の甲羅に31門にも及ぶ大小様々な大砲が生えた、まるで生きた戦艦や移動要塞とも言うべき姿となったカメックスが敵に背中を向けて咆哮を上げる。ところどころカラーリングも変わっていてとても強そうだ。キョダイマックスした亀と蛇が甲羅越しに睨み合う。

 

 

「キョダイサジン!」

 

「キョダイホウゲキ!」

 

「ボディプレス!」

 

「アクアブレイクで迎え撃て!」

 

 

 上空で鋭利な砂塵と数多の砲撃がせめぎ合い、地上では飛来したアーマーガアとまひから解放されたオニシズクモのアクアブレイクが激突する。観客の歓声が凄い。いわゆる激熱な戦いだからだろうか。

 

 

「オニシズクモ、そこからさらにバブルこうせん!」

 

「っアイアンヘッド!」

 

 

 鬩ぎ合いながらなんとか持ち上げた右前脚からの泡の光線が炸裂して怯んだもののアイアンヘッドで巻き返してくるアーマーガア。そして上空では三度目のキョダイホウゲキとキョダイサジンがぶつかり合う。なんであまごいありの水技に地面技で対抗してるんだあの人…?さすがムツキの母親と言うか練度が桁違いだ。

 

 

「距離を取りなさい、アーマーガア!」

 

「逃がすな、バブルこうせん!」

 

「ハイドロポンプでアーマーガアを追い詰めろ!」

 

「させません、カメックスにへびにらみ!」

 

 

 キョダイホウゲキとキョダイサジンの影響でこちらはすなじごく、あちらはうずしお状態になっているフィールドで、距離を取った両者の睨み合いと牽制が続く。距離を取ったアーマーガアに攻撃は届かないので、うずしおに囚われているサダイジャに攻撃を集中することにする。

 

 

「オニシズクモ、サダイジャにバブルこうせん!」

 

「カメックス、クイックターンでサダイジャを狙え!」

 

 

 バブルこうせんが炸裂したそこに小規模の波に乗ったカメックスの体当たりがサダイジャに炸裂、戦闘不能にするとモコウの元に戻って行く。交代したのはパッチラゴンだ。同時に雨が晴れる。ここまでか。

 

 

「私達を最後の一匹まで追い込むとは…では、本気で行ってよろしいのですね?」

 

「最初から本気で行ってくださいよ…」

 

 

 三日月の様な笑みを作ったキリエさんが繰り出したのは、ドリュウズ。キリエさんの切札だ。あ、やばい。ガチだこの人。

 

 

「パッチラゴン、ドリュウズは気にせずアーマーガアにでんげきくちばしだ!」

 

「させませんよ。じしん」

 

「「っ、避けろ!」」

 

 

 ビシッ!と地面に手を打ちつけるドリュウズ。それだけで、オニシズクモとパッチラゴンの足元から土柱が隆起する。さらに土柱が次々と隆起して、まるで土柱のジャングルの様になるフィールド。ドリュウズの姿が見えない、何をしているのかわからない。アーマーガアは…いない?

 

 

「あなをほる、です」

 

「ブレイブバード!」

 

「モコウ、下だ!」

 

 

 パッチラゴンの下からドリュウズが、オニシズクモの下からアーマーガアが同時に飛び出してきて大ダメージを受ける。そのまま空に舞い上がってムツキの側に戻るアーマーガアと、そのまま地中に潜って逃げるドリュウズ。あのドリュウズ、アーマーガアが飛べるほどの穴を地下に作りやがった!?

 

 

「空を駆るひこうタイプで地に潜るなど言語道断ですが…これぐらいしないとラウラ、貴女には勝てません!」

 

「バトルと言うのは必勝法を組み込めば後はその繰り返しで勝つのです。さあ、どこから来るか分からない攻撃、勝てますか!」

 

 

 土柱で見えないがキリエさんの勝ち誇った顔が想像つく。だがなめるなよ?そのドリュウズに勝ったことがある俺だぞ?

 

 

「モコウ、オニシズクモに乗れ!」

 

「む?…なるほど、そういうことか!パッチラゴン!」

 

 

 再び盛り上がる地面に対し、オニシズクモの頭部を足場にして跳躍するパッチラゴン。ドリュウズとアーマーガアの攻撃がオニシズクモに炸裂し、戦闘不能になる。…だがしかし。アーマーガアが飛びあがった先には、土柱に乗ったパッチラゴンがいた。

 

 

「土柱はこっちの視界も阻害するけど、そっちからも見えないよなあ!」

 

「でんげきくちばしだ!」

 

 

 そして渾身の一撃が炸裂。倒れるアーマーガアと着地するパッチラゴン。これで残るはドリュウズ一体のみ!俺が最後に繰り出すのはデンチュラだ。じめんタイプだろうが俺の相棒は関係ない!

 

 

「ぐっ…母さんの派手なじしんのせいで見えなかったじゃないですか!」

 

「心配しないでムツキちゃん。母さん、すごく強いから」

 

 

 そんな言葉と共に土柱がうねり、地中に戻って行く。何事だとモコウと共に身構えていると、土柱を地面に納めて完全にこちらを見据えたキリエさんがにやりと笑った。

 

 

「ダイマックスは一度のみ。だけど私のドリュウズには関係ないわ!じしん!」

 

「「はあ!?」」

 

 

 変形し、地中に潜るドリュウズ。すると地響きとともに、フィールドが盛り上がって巨大なドリュウズを形作り、咆哮を上げる。…んなのありか。巨大ドリュウズ像は拳(?)を大地に叩きつけ、自身の腕を巨大な岩石として飛ばして攻撃してきた。まるでいわなだれだ。

 

 

「空だ!いとをはく!」

 

「ドラゴンテールで迎え撃て!」

 

 

 巨大ドリュウズ像に糸を付け、舞い上がり回避するデンチュラと、尻尾を振るい岩を破壊するパッチラゴン。すると巨大ドリュウズ像は震わせた全身から土柱を伸ばして触手の様に襲いかかって来た。じしんか?デンチュラは糸を上手く撓ませてその猛攻を回避、しかしパッチラゴンは対処しきれずにクリーンヒット。倒れてしまう。

 

 

「頼むぞ、カメックス!だがどうすれば…」

 

「待てモコウ!カメックスにあまごいをさせろ!」

 

「なに?威力を上げるのか?」

 

「いいや、あれは土くれだ。水で溶けるはずだ」

 

 

 前世で見たスパイダー●ン3という映画がある。それに登場した悪役の一人である砂男も、建築現場の砂を取り込むことで巨大化していた。その弱点とは水だ。泥になってしまえばじしんの鳴動で動かしているあの巨像は形成できない筈だ。

 

 

「なるほどな、あまごい!」

 

「しまっ…だがしかし、ドリュウズの速さの前には…!」

 

 

 豪雨により崩れた巨体から飛び出してくるドリュウズ。しかし振りかぶられたその頭部が、何かに引っ掛かってつんのめった。デンチュラが咄嗟に張った糸だ。

 

 

「いとをはく。蜘蛛の横糸は見えにくく捕らえた物を離さない。知ってたか?」

 

「ナイスだラウラ。動けない的ならば外すことはないぞ!ハイドロポンプ!」

 

 

 そしてカメックスの渾身の一撃が炸裂。ドリュウズは崩れ落ち、俺達の勝利が決まった。




相変わらず滅茶苦茶なキリエさん。この人とラウラが組むルートもあったんやで…?

・ラウラ
滅茶苦茶なキリエの策を前世知識でなんとかした主人公。できれば二度と戦いたくない。

・モコウ
キョダイカメックスを披露したラウラの相棒枠。クイックターンを覚えさせているなど、ヨロイ島で得たものは多い。

・ムツキ
母親におんぶにだっこだったひこうつかい。バトルの腕前はやはり他三人に劣る。

・キリエ
土柱のジャングルを形成したり、巨像を作って動かしたりやりたい放題な元ジムリーダー。追い詰められる最後まで本気を出さない悪癖がある。

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VSヌメルゴン

どうも、放仮ごです。どうもキバナやダンデは一話だけで終わってしまいます。何故だろう。

今回は後日談のガラルスタートーナメント編その三です。楽しんでいただけると幸いです。


「…母さんを信じた私が馬鹿でした。ですがやはり強いですね、さすがは私のライバルたちです」

 

「とっておきも出したのに負けるとは…無念です。二回戦も頑張ってください。彼らは私が一番よく知る強者達です」

 

 

そう言って別れたムツキとキリエさん。わかっているさ、次の相手は今トーナメントきっての優勝候補だ。

 

 

「安心しろラウラ。最速最強の私がついてるぞ!」

 

「メンバーは変えた方がいいかもだな。こっちの作戦はばれてる」

 

「だけど天候を利用した方がキバナのやり方を阻害できるのでないか?」

 

「それはたしかに」

 

 

 控室での話し合いの結果、少し戦法とメンバーを変えて挑むことになった。その合間に行われるユウリ&ホップVSビート&クララさんの勝負をモニターで眺める。どうやらホップのエースバーンはとくせいが変わっているらしく、「リベロ」という聞き慣れない特性を駆使してビートとクララさんを翻弄していた。完全にペースを持っていってる。アレは決まったな。

 

 

『ラウラ!決勝で待ってるよ!』

 

 

 危なげなく決勝に進出したユウリの笑顔を目に焼き付け、アナウンスと共にバトルコートに向かうと、反対側からやってくるダンデとキバナ。キリエさんの時以上に観客のボルテージが凄い。

 

 

「ラウラ!モコウ!ムゲンダイナを打倒し、UB事件も解決したお前たちなら勝ち抜いてくると信じてたぜ!」

 

「俺達だってカブさんには悪いけどトーナメント表見た時からこうなるとわかってましたよ」

 

「ダンデを倒して優勝できないのはもどかしいけどよ。俺に手痛い敗北を味わせてくれたこいつらとやれるならダンデと組んだのも悪くないよな!」

 

「あの時の連敗した我はもういないぞ。最高のパートナーと組んだ最強の我の力、思い知るがいい!」

 

 

▽バトルタワーオーナーの ダンデとジムリーダーの キバナが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行け、ギルガルド!モスノウにせいなるつるぎ!」

 

「頼むぜ、フライゴン!すなあらし!」

 

「凍てつかせろ、モスノウ!あられ!」

 

「痺れさせろ、ロトム!ギルガルドにおにび!」

 

 

 ダンデはギルガルド。キバナはフライゴン。俺はモスノウでモコウはロトムと、前の戦いと同じ面子だ。フライゴンが先鋒で出てくるとわかっていたからこの組み合わせは外せない。問題はギルガルドだが。そこは相方に任せる。おにびでやけどにしギルガルドの攻撃力を半減させるモコウ。ナイスだ。

 

 

「キバナ!君の天候でスタジアムを盛り上げてくれよ!」

 

「言われなくてもな!本当は今すぐお前と戦いたいけどよ!だけど、好きにはさせてくれないみたいだぜ?フライゴン、もう一度すなあらし!」

 

「何度でも上書きしろ、あられ!それからオーロラベール!」

 

 

 フライゴンの方がすばやさは上。モスノウは下。あとだしできるこっちの方が天候を操作できる。オーロラベールも張れたし、これはいけるぞ。

 

 

「攻撃力を下げたくらいで勝ったと思ってもらっては困るぜ!モスノウにてっていこうせん!」

 

「なっ!?おいかぜだ!」

 

「フライゴン、モスノウにドラゴンクロー!」

 

「ロトム、ふぶき!」

 

 

 ギルガルドの思わぬ反撃に、オーロラベール越しでも大ダメージを受けたモスノウに咄嗟に指示を出しおいかぜを発動。キバナのフライゴンの追撃を受けてモスノウが戦闘不能になる代わりにロトムのふぶきが炸裂。ギルガルドはてっていこうせんの反動もあって体力の大半を失い、フライゴンは戦闘不能になった。

 

 

「カブさん達との試合を見て知ってるぞ!キバナさんの手持ちは、フライゴンしか天候操作できないってな!本領発揮できなくなったアンタは怖くないぞ!頼んだ、ビークイン!」

 

「言ってくれるな。だが俺はただの天候使いじゃない、ドラゴンストームのキバナ様だ!ヌメルゴン!」

 

 

 そして俺が繰り出したのはビークイン。俺の手持ちではダブルバトルでもっとも本領を発揮する蟲ポケモンだ。対してキバナはヌメルゴン。

 

 

「いのちのしずくだ、ギルガルドを回復してやるぜダンデ!」

 

「助かるキバナ!ここからだぜお二人さん!ロトムにてっていこうせんだ!」

 

「させるか、ぼうぎょしれい!」

 

「ロトム、ギルガルドにボルトチェンジして逃げろ!」

 

 

 ヌメルゴンがギルガルドを回復させ、すかさず体力の半分を犠牲に放たれるてっていこうせんをビークインのぼうぎょしれいで防いで拡散させて、ロトムがボルトチェンジで戻って行く。そして繰り出されたのは、カメックスだ。

 

 

「カメックス、あまごい!からのギルガルドにクイックターン!」

 

「ビークイン、エアスラッシュ!」

 

 

 敵全体に風の刃を放って怯ませつつ、あまごいしたカメックスが小さな波に乗って突撃、ギルガルドを戦闘不能にさせながらモコウの元に戻って行く。繰り出されたのは当然、ロトム。ダンデはドラパルトを繰り出した。

 

 

「パワージェム!」

 

「ふぶきだ!」

 

「敵の作った天候を利用してこそドラゴンストーム、キバナ様だ!ビークインにかみなり!」

 

「ドラパルト、ロトムにシャドーボールだ!」

 

「ぼうぎょしれい!」

 

 

 パワージェムを放った直後にぼうぎょしれいで敵の攻撃を防ぎ、雨の中で効果抜群のふぶきを受けるヌメルゴンとドラパルト。二体とも完全に凍り付き、戦闘不能。俺は二体、モコウは手持ち全残しで最後まで持って行けた。これはいけるぞ!

 

 

「君達の強さに脱帽だ!だがまだだ!まだ終わらせないッ!」

 

「キバナよ!ここから勝ってこそホンモノのガラルスターだろ!」

 

 

 そして繰り出されたのはジュラルドンとリザードン。俺とモコウも、同時にポケモンを交代する。ダンデは俺が、キバナがモコウがと決めていた。

 

 

「待ってたぞ…ダンデのリザードンを倒せるこの時を!デンチュラ!」

 

「キバナよ!いつぞやの敗北のリベンジをさせてもらうぞ!ライボルト!」

 

「いいぜラウラ、俺も君の相棒と戦う時を待っていた。行くぞ、キョダイマックスタイム!」

 

「来いよモコウ。プライドなんて捨ててかかってこい!」

 

 

 雨が降りしきる中で、ダンデと俺が同時にボールに己の相棒を戻し、巨大化。全く同じタイミングで放り投げて、キョダイデンチュラとキョダイリザードンが並び立つ。

 

 

「ワイルドボルト!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 同時に地上でもライボルトとジュラルドンが激突。雷光が迸る。もうダブルバトル関係ないなこれ。

 

 

「デンチュラ、リザードンにキョダイクモノス!」

 

「デンチュラにキョダイゴクエンだリザードン!」

 

 

 雨で威力が下がったキョダイゴクエンなど恐れるに足らず!キョダイクモノスで受け止め、燃えた巨大エレキネットごと返す。巨大エレキネットが放電し、さらに自身の炎のダメージも受けてよろめくキョダイリザードン。すると尻尾を振るってキョダイデンチュラを蜘蛛の巣から叩き落とした。もうゴジラVSクモンガだなこれ。

 

 

「ダイサンダーだ!」

 

「ダイロック!」

 

 

 リザードンが形成した巨大岩盤を、巨大な雷で打ち砕く。天気がすなあらしになってしまったが関係ない。エレキフィールドは展開できた。

 

 

「こっちが速い!キョダイゴクエン!」

 

 

 今度は雨の減少がないキョダイゴクエンが放たれる。だが忘れているぞ、元チャンピオン。

 

 

「おいかぜはまだ展開中だ!キョダイクモノス!」

 

「なに!?」

 

 

 モスノウが展開してくれたおいかぜにより、こちらの行動の方が速い。キョダイクモノスが先に炸裂してリザードンはみるみる縮み、戦闘不能になる。同時にデンチュラも元のサイズに戻り、モコウの戦いを見守る。

 

 

「なんと…」

 

「モコウ!こっちの仕事は果たしたぞ!」

 

「了解だ!見るがいい、我が生き様!ほのおのきば!」

 

「ドラゴンクローで迎え撃て!」

 

 

 ジュラルドンの腕に炎を纏った牙で噛み付き離れないライボルト。ジュラルドンはドラゴンクローを発動しながら振り回すが、ライボルトは全身でしがみ付きじわじわと炎で攻めていく。

 

 

「この距離なら外さないぞ!かみなり!」

 

 

 そして渾身の一撃が炸裂。鋼の体に通電したジュラルドンは目を回して崩れ落ち、俺とモコウはたまらずハイタッチした。

 

 

「パートナーを心から信頼した素晴らしいチームワークだぜ!大興奮の試合に感謝だ!」

 

「最後まで諦めなかったが負け。次も諦めなけりゃそれでいい。完敗だぜ、お二人さん」

 

 

 ダンデとキバナと握手を交わし、俺達は控室にいるであろうユウリとホップを見据える。ここまで来たぞ、リベンジの時だユウリ。




やっぱりチートなぬしビークイン。

・ラウラ
ダンデと雌雄を決して大満足な主人公。ようやく当初の目的だったダンデを越える、をようやく達成した。

・モコウ
連勝を止められ連敗したキバナにだいぶトラウマがあったけど払拭できたラウラの相棒。最近レジエレキばかりだったけどライボルトはやはり相棒。

・ムツキ&キリエ
それぞれ、ラウラとモコウ、ダンデとキバナの強さをよく知る者達。

・ユウリ
ダンデとキバナが相手だろうとラウラが負けるとは考えないバトルジャンキー。ラウラに何か言うつもりだったらしいビートを容赦なくボコボコにした。

・ホップ
エースバーンをリベロにした。

・ダンデ
実はラウラと戦ってみたかったけどバトルタワーには挑んでこないしで燻っていたバトルタワーオーナー。全力で戦えて満足。

・キバナ
天気を引っ掻き回されて本領発揮がなかなかできなかったドラゴンストーム。そもそもガラルスタートーナメントの手持ちはフライゴンしか天候変化できないのもある。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSバイウールー

どうも、放仮ごです。評価人数が低評価高評価含めて100人行きました。ありがとうございます!

今回は後日談のガラルスタートーナメントその四、最終戦。ユウリ視点です。楽しんでいただけると幸いです。


「ユウリ!次はいよいよ最後の戦いだぞ!」

 

 

 そう言うのはパートナーのホップ。ルリナさんとヤローさん、ビートとクララ先輩を倒してここまで来た。ビートはラウラに告白しそうな気配を感じたから全力でぶちのめしたけど、強敵だった。組むことで強くなる強さを知った。でもそれは私も同じだ。ホップと力を合わせることで何倍にも強くなる。

 

 

「決勝の相手はキバナさんと兄貴を倒したラウラとモコウ…でもユウリと俺なら怖いものなんてないよな!」

 

「うん、そうだねホップ。でもラウラの強みは予想できないアドリブだから侮っちゃ駄目。モコウの火力も侮れない。油断しないで行こう」

 

「おう!」

 

 

 力強く頷いてくれるホップに、何も言わないけれど感謝を送る。私があんな化け物(グローリアビースト)になったっていうのに、世間と違ってホップはそんなこと気にせず私と組みたいと言ってくれた。それがどれだけ救われたか。最高の幼馴染だと思う。

 

 

「…ありがとね」

 

「なんだ?いきなり」

 

「ううん、なんでもない。行こうか、ホップ」

 

 

 ラウラと戦いたいだけじゃない。ホップの優しさに応えるためにも勝とう、そう思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ついに最強決定戦!最後に残る王者を決めろ!まさかまさかのルーキーコンビ同士の対決!ジムリーダーや元チャンピオンを降した二組の最強コンビ!ユウリ&ホップ VS ラウラ&モコウ!』

 

 

 私はチャンピオンだからここまで残らないとダンデさんに顔向けできないんだけどね。一応まだルーキー扱いか、ポケモントレーナー初めて三ヶ月ぐらいしか経ってないしなあ。ホップと共にやってきたバトルコートの中央。反対側からやってきたラウラとモコウと向かい合う。

 

 

「ラウラとモコウの二人ならきっと勝ち残るって信じてたよ!」

 

「二人してお前たちの戦いを見て勉強したんだ!そう簡単に勝てると思わない方がいいぞ!」

 

「生憎だがモコウの為にも負けてやるつもりはないぞユウリ!」

 

「努力は認めるが我々は常に進化している!過去の我等が参考になればいいな!」

 

 

▽むしつかいの ラウラとでんきつかいの モコウが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くよ、インテレオン!」

 

「頼むぞ、バイウールー!」

 

「出番だ、ウルガモス!にほんばれ!」

 

「暴れろ、ロトム!」

 

 

 私はインテレオン、ホップはバイウールー。だけどラウラ達はこれまでと異なり、ラウラがウルガモスでモコウはヒートロトム。今までのあられパと異なる晴れパだ。こっちにエースバーンがいることが分かっていて変えてきた!?

 

 

「インテレオンにソーラービーム!」

 

「バイウールーにオーバーヒートだ!」

 

「ロトムにすてみタックル!」

 

「ロトムにふいうち!」

 

 

 ホップと目配せ、インテレオンに不利なロトムから落とすべく集中攻撃するがロトムはタフだ、そう簡単に倒れない。しかもバイウールーのとくせいもあってモフモフに炎が燃え移って大ダメージ、インテレオンもソーラービームの直撃をもらって膝をつく。強い…!

 

 

「ひのこをばらまけ!」

 

 

 さらに動けなくなったこちらを見やって天空に舞い上がったウルガモスがひのこをばら撒いてきて火の海になる。にほんばれの影響で炎の勢いが凄い。フレアフィールドとも言うべき状態だ。やっぱりラウラは凄い!

 

 

「インテレオンにボルトチェンジ!」

 

「しまっ」

 

 

 ロトムのボルトチェンジでインテレオンがほとんど何もできずに落とされてしまった。フレアフィールドでとんぼがえりすることも躊躇してしまった。出てきたのはライボルト。だけどここからだよ!

 

 

「セキタンザン!」

 

「「!」」

 

 

 フレアフィールドに降り立った途端、じょうききかんが発動して白煙を放出するセキタンザン。セキタンザンは炎を取り込んで張り切っている。これなら行ける。

 

 

「セキタンザン、いわなだれ!」

 

「フレアドライブでぶち壊せ!」

 

「ライボルト、ワイルドボルト!」

 

「バイウールー、横からすてみタックルだぞ!」

 

 

 最速で放たれたいわなだれに対処するべく突撃技を選択したラウラとモコウだが、そこを突く様にバイウールーが横槍を入れる。バイウールーのモフモフがいわなだれを弾いているのもいい感じだ。横槍をもらったライボルトに岩が直撃し、怯んだところを見過ごさない。

 

 

「キリエさん参考、じしん!」

 

 

 地面から土柱が二本、ウルガモスとライボルトを吹き飛ばす様に突き立つ。モコウと戦った時にも披露した、キリエさんのを見様見真似でやってみた、完成度は低いけどダブルバトルで味方を巻き込まないで済む技術だ。ライボルトはノックアウト。ウルガモスも瀕死寸前にまで追い詰めた。

 

 

「くっ…カメックス!」

 

「死なばもろともだ!ウルガモス、バイウールーにフレアドライブ!」

 

 

 モコウがカメックスを繰り出したのを見るなり、反動による自爆覚悟のフレアドライブがバイウールーに炸裂。ダブルノックダウンとなる。そしてラウラが繰り出したのはデンチュラ、ホップはにほんばれ状態を利用するつもりなのかエースバーンだ。

 

 

「かえんボールだぞ!」

 

「ここからは雨で行こうか!カメックス、あまごい!」

 

「デンチュラ、ほうでんだ!」

 

 

 にほんばれが終わり、豪雨が降り注いでかえんボールの威力を減衰させる中で、エースバーンとセキタンザンに襲いかかるほうでん。ラウラのデンチュラのほうでんは特別だ。指向性を持たせて味方には電撃が届かないという酷い仕様だ。雨の中で受けたほうでんは強烈で、感電するエースバーンとセキタンザン。

 

 

「くっ…ダストシュートだぞ!」

 

「セキタンザン、じしん!」

 

「同じ手を喰らうかよ!いとをはく!」

 

「カメックス、エースバーンにクイックターンだ!」

 

 

 特性のリベロでどくタイプになったエースバーンの蹴り付けた毒の塊と、セキタンザンの土柱を糸を伸ばして避けるデンチュラ。小さな波に乗ってエースバーンに突撃し、モコウの元へ戻って行くカメックス。出てきたのはロトムだ。不味い…!?

 

 

「ほうでん!」

 

「セキタンザンにかみなりだ!」

 

 

 いくらすばやくなっても、雨の中での電撃を避ける事など不可能。エースバーンとセキタンザンはそのまま戦闘不能になってしまう。ホップと二人してもう最後の一体まで追い込まれてしまった。さすがラウラだ、私の彼女は凄い。だけど、今日の私は一味違うよ!

 

 

「出番だよ、フシギバナ!」

 

「負けるな、カビゴン!」

 

 

 ホップはカビゴンで私はフシギバナ。即座にボールに戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化させる。本邦初公開!私の新たなキョダイマックス!

 

 

「大いなる緑で全てを飲み込め!フシギバナ、キョダイマックス!」

 

 

 背中の花が成長して花弁が垂れ下がり、身体全体を覆い尽くして眼光を緑に輝かせた姿に変化したフシギバナが咆哮を上げる。するとデンチュラをボールに戻していくラウラ。キョダイデンチュラか?と身構えるが、そうじゃなかった。

 

 

「こいつはな。ムゲンダイナ事件が終わってからすぐ、ユキハミと出会う前にワイルドエリアで出逢った奴だが今までダイマックスエリアで戦うことが少なくて使いどころが難しくてな。本邦初公開って奴だ。大いなる翅で全てを蹂躙しろ!キョダイマックス!」

 

 

 そう言えば私の家に滞在していた時にたくさん蟲ポケモンを捕まえたって言ってたな。その一匹か。ボールを巨大化させ、振りかぶるラウラ。出てきたのは、青緑色の眩い光を放つ極限まで巨大化した羽を持った姿に変貌したバタフリーだった。キョダイバタフリー…!どんな能力なんだ…!?

 

 

「キョダイコワク!」

 

「キョダイベンタツ!」

 

 

 セキタンザンやリザードンやカメックスのキョダイマックスの様に、相手に持続ダメージを与える耐久戦向きなキョダイワザだ。これなら…そう考えていたら、異変が起きた。キョダイフシギバナが眠ってしまったのだ。

 

 

「ええ!?」

 

「キョダイコワクはどく、まひ、ねむりのいずれかの状態異常を引き起こす技だ。運が悪かったな、どく状態だったらフシギバナはピンピンしていたのにな」

 

 

 そんなキョダイワザあり!?キョダイベンタツを展開できたのはよかったけど、いくら耐久力があると言っても眠っていたらどうしようもない。これは……

 

 

「カビゴン!バタフリーから倒すんだぞ!アームハンマー!」

 

「カビゴンにかみなりだ!」

 

 

 カビゴンのわざはねむる、ヘビーボンバー、じしん、アームハンマー。この中でバタフリーに有効な技がない。しかも必中のかみなりで大ダメージを受けてしまった。

 

 

「起きて!フシギバナ!」

 

「悪いなユウリ。ダイジェット!」

 

「もう一度カビゴンにかみなりだ!」

 

 

 それが決め手だった。私達はなすすべもなく敗北した。歓声が爆音の如く轟く。不甲斐無い結果だったけど、観客を満足できたようで何よりだ。…チャンピオンとして不甲斐無し。穴があったら埋もれたい。

 

 

「…ごめん、ホップ。完敗だ」

 

「ユウリ…俺こそ、力が足りずに悪かったぞ」

 

『ここで決着ゥ!勝ち抜いたのはラウラ&モコウのルーキーコンビ!元最強のジムリーダー、元チャンピオン、最強のジムリーダー、チャンピオンを降しての優勝だあああ!』

 

 

 改めて言われると凄いなラウラ達。するとダンデさんがやってきた。

 

 

「聞こえるか?みんなの声、みんなの想いが……この場にはユウリ、お前を悪く言う奴は1人もいないぜ!彼らは君達の戦いにいてもたってもいられず、体ごと叫んでいるんだぜ!」

 

 

 …そうだと、嬉しいな。私のしでかしたことはなかったことにはできない。だけど、償いならば…これからはチャンピオンの仕事、頑張らないとなあ。

 

 

「ガラル全土をここまで熱く震わせるトーナメントも………タイム イズ オーバー!終わろうとしていることをとても残念に思う!したがって俺は今ここに……続いてのガラルスタートーナメントの開催を宣言する!」

 

 

 その言葉に湧き立つ観客席。すごい熱狂だ。

 

 

「2VS2のタッグバトルで何度でもトーナメントだ!次は違うチームでもまた同じ組み合わせでもいい!ガラルの強いトレーナー全員で入り乱れて…次回もその次も!自由に暴れまくれ!トレーナーとポケモンが最強を目指す限り!観客の皆が手に汗握る戦いを見たいと望む限り!俺達の営みは1000年先もずっと、ずっと続いて行くんだぜ!それではみんな!また会う日まで!」

 

 

 ローズ元委員長に向けた言葉なのかな。そうだといいな、と心から思う。ダンデさん、ホップ、ラウラ、モコウと共に観客の皆に手を振る。笑顔、作れているかな。

 

 

「ユウリ」

 

「なに、ラウラ?」

 

「今度は俺と組もう。お前と俺の最強コンビで誰が相手だろうと圧勝してやろう、な?」

 

「それはずるいぞ!ユウリ、今度もまた俺と組もう!」

 

「我だってユウリと組みたいぞ!」

 

「元チャンピオンと現チャンピオンの最強コンビも観客は見たいと思うぞ?」

 

「みんな……うん!」

 

 

 四人の言葉に、強く頷く。例えガラル中の人達に責められても、優しい仲間がいる。その事実だけで、心の底から笑えた気がした。




剣と盾編で示唆はしていたユキハミ以外の蟲ポケモンようやく出せました。

・ユウリ
今回の主人公。未だにUB事件を引きずっており、みんなの優しさに涙する。キョダイフシギバナをお披露目したと思っていたら負けていたので解せない気持ち。

・ホップ
リベロをあまり活用できなかったユウリの相棒。天気に完全に翻弄された。

・ラウラ
キョダイバタフリーを捕獲していた主人公。ようやく出番を作れて満足だし、むしタイプの強さを証明できてご満悦。このバタフリーは美しかろう?(ドヤァ)

・モコウ
キバナから天候の重要さを教えてもらい完全に理解したラウラの相棒。ロトムとかいうすなあらし以外の天候を活用できるポケモンと、クイックターンやボルトチェンジで敵を翻弄するのが得意になっている。

・ダンデ
次はユウリと組んでみたいバトルタワーオーナー。

・バタフリー♀
とくせい:いろめがね
わざ:エアスラッシュ
   むしのさざめき
   サイケこうせん
   ねむりごな
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。打たれ強い。ユキハミより前に捕まえていたけどキョダイマックスを活用できないため今まで使ってこなかったラウラのポケモン。地味にレア特性個体である。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板7

どうも、放仮ごです。

今回はUB事件とガラルスタートーナメントのまとめ的な掲示板です。楽しんでいただけると幸いです。


ガラルスタートーナメントについて語るスレ

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

定期:ガラルを滅亡寸前まで追い込んだチャンピオンを許すな

 

65:名無しのトレーナー

また出たよ

 

66:名無しのトレーナー

無視無視。蟲だけに

 

67:名無しのトレーナー

ありゃウルトラビーストの影響だってダンデから説明あったろいい加減にしろ

 

68:名無しのトレーナー

実際ウツロイドの被害を受けた人間は複数いたみたいだしな

 

69:名無しのトレーナー

俺アローラの人間だけど、ウルトラビーストは本当にやばいぞ

 

70:名無しのトレーナー

ラウラがいなかったらガラル滅亡してたってのは事実なのがまだあんなのが湧く原因だろうな

 

71:名無しのトレーナー

原因半分くらいラウラだけどな

 

72:名無しのトレーナー

ウルトラビースト関わんなかったらただの痴話喧嘩ですんだんだってな

 

73:名無しのトレーナー

公式百合ップルだぞ大事にしろ

 

74:名無しのトレーナー

百合豚は黙ってろい

 

75:名無しのトレーナー

そんなことよりそのラウラとモコウ、ムツキとキリエの試合よ

 

76:名無しのトレーナー

ヤバかったな

 

77:名無しのトレーナー

(キリエが)ヤバかったな

 

78:名無しのトレーナー

あんなのが全盛期だった時代にチャンピオンになったダンデのヤバさが際立つな

 

79:名無しのトレーナー

ムツキが足を引っ張ってなければ優勝候補だったろうに…

 

80:名無しのトレーナー

ムツキの悪口はやめい。アレに合わせるのは無理ぞ

 

81:名無しのトレーナー

キリエがムツキの援護をし過ぎだったからなあ

 

82:名無しのトレーナー

暴れてたらラウラ達勝ち目無かったな

 

83:名無しのトレーナー

おっ、ユウリ&ホップとビート&クララの対決が始まるぞ

 

84:名無しのトレーナー

最近マイナークラスのジムリーダーになったクララちゃんあまり知られてないけどかわいい

 

85:名無しのトレーナー

ピンクとピンクだからポプラの婆さん満足してそう

 

86:名無しのトレーナー

なんかユウリ、ビートに当たり強くないか?

 

87:名無しのトレーナー

クララ無視してボッコボコしておる…

 

88:名無しのトレーナー

あれ、なんでエースバーンに毒が効かないんだ?

 

89:名無しのトレーナー

多分リベロだな。最近発表されたエースバーンの新たな特性

 

90:名無しのトレーナー

使う技でタイプが変わるっていう反則なアレか

 

91:名無しのトレーナー

ダストシュート使ってたからどくタイプになってるのか、なるほど

 

92:名無しのトレーナー

なんか一方的に終わったな

 

93:名無しのトレーナー

告白させるかァアアアアッ!って叫んでたけどなんだったの…?

 

94:名無しのトレーナー

ビートがラウラのこと好きだとか?

 

95:名無しのトレーナー

それは草

 

96:名無しのトレーナー

そういや前にビートがラウラは特別だとか言ってたな

 

97:名無しのトレーナー

そりゃ彼女としては許せんだろうなあ

 

98:名無しのトレーナー

ラウラモテモテで草

 

99:名無しのトレーナー

あんな男らしい乙女いないからしょうがない

 

100:名無しのトレーナー

ファンも多いしな

 

101:名無しのトレーナー

ウルトラビーストを二体も手懐けたって話だぞ

 

102:名無しのトレーナー

ちなみにどっちも蟲だとか

 

103:名無しのトレーナー

蟲の女王過ぎないか?w

 

104:名無しのトレーナー

次はそのラウラモコウVSキバナダンデか

 

105:名無しのトレーナー

名実ともに最強コンビじゃねえか

 

106:名無しのトレーナー

カブとピオニーっていう決して弱くないコンビを一方的にボコボコにしたやべーコンビだぞ

 

107:名無しのトレーナー

ピオニーも元チャンピオンなのに…

 

108:名無しのトレーナー

そりゃあここ10年の最強ですしおすし

 

109:名無しのトレーナー

いきなりの天気塗り替え合戦で草

 

110:名無しのトレーナー

明らかにキバナから影響を受けてるな

 

111:名無しのトレーナー

ダブルバトルの天気の重要性に気付いたんだろうな

 

112:名無しのトレーナー

オーロラベールまで張ってさらにやけど、万全だな

 

113:名無しのトレーナー

それでも勝てる気しないのがダンデキバナよ

 

114:名無しのトレーナー

てっていこうせんつええ

 

115:名無しのトレーナー

え、なにあのビークイン。自分と相方に同時に技を行使してるんじゃが…

 

116:名無しのトレーナー

件のぬしビークインか?

 

117:名無しのトレーナー

エアスラッシュもパワージェムも二匹同時に当たってるし、強すぎない?

 

118:名無しのトレーナー

でんきつかいのポリシーを無視した手持ちのカメックスも活躍してるな

 

119:名無しのトレーナー

あまごい要員らしいけど普通に強いよなあのカメックス

 

120:名無しのトレーナー

雨状態でふぶきして凍り付かせるってえぐいな

 

121:名無しのトレーナー

いつぞやの病院でのザシアンの倒し方だな

 

122:名無しのトレーナー

わざわざデンチュラに交代して…?

 

123:名無しのトレーナー

キョダイデンチュラVSキョダイリザードン!

 

124:名無しのトレーナー

誰もが夢見た対決だあ!

 

125:名無しのトレーナー

ラウラがユウリに勝利したルートだ…

 

126:名無しのトレーナー

地上での相棒二体のぶつかり合いもやばいぞ

 

127:名無しのトレーナー

近年まれに見る熱いバトルだ!

 

128:名無しのトレーナー

もうポケウッドの怪獣大決戦みたいだな

 

129:名無しのトレーナー

バンギラスファイナルウォーズのアレか

 

130:名無しのトレーナー

最強候補だったベトベトンが数秒しか出番のないアレか

 

131:名無しのトレーナー

おっ、決着ついた

 

132:名無しのトレーナー

おいかぜで行動を早くした上でのキョダイクモノスか

 

133:名無しのトレーナー

ダンデのリザードンに勝つ蟲って、ええ…

 

134:名無しのトレーナー

ライボルトもジュラルドンを倒したし、余裕を持っての勝利ってすごくね?

 

135:名無しのトレーナー

明らかにジムチャレンジの時より強くなってるな…

 

136:名無しのトレーナー

2人とも今それぞれナックルジムとエンジンジムでジムトレーナーやってるのよな?

 

137:名無しのトレーナー

せやで。ムツキもナックルジムでジムトレーナーやってるって話だけど

 

138:名無しのトレーナー

二年もしないうちにジムリーダーになってもおかしくないぞこれ…

 

139:名無しのトレーナー

そうなったらジムチャレンジクリアできる奴おんの?

 

140:名無しのトレーナー

や、ヤローとかルリナは初心者用に調整されてるから…

 

141:名無しのトレーナー

定期:ガラルを滅亡寸前まで追い込んだチャンピオンを許すな

 

142:名無しのトレーナー

また出た

 

143:名無しのトレーナー

UB騒動の話したいならチャンピオンアンチスレがあるからそっちでどうぞ

 

144:名無しのトレーナー

無視が一番よ、蟲だけに

 

145:名無しのトレーナー

そんなことより決勝戦が始まるぞ

 

146:名無しのトレーナー

元最強のジムリーダーと現最強のジムリーダーと10年無敗の元チャンピオンを制したラウラ達のヤバさよ

 

147:名無しのトレーナー

もし優勝したら現チャンピオンにも勝利か

 

148:名無しのトレーナー

いや無理だろ。だってユウリだぞ?

 

149:名無しのトレーナー

チャンピオンになってからラウラは一対一でしか勝ったことないらしいな

 

150:名無しのトレーナー

一対一でも勝ててるのすごくね?

 

151:名無しのトレーナー

ちなみにソースはユウリ本人のPocketerだぞ

 

152:名無しのトレーナー

炎上しかけたアレか

 

153:名無しのトレーナー

一対一だけラウラに勝てないって嘆いてたやつな。チャンピオンの呟くことじゃないわな

 

154:名無しのトレーナー

あられパ、雨パの次は晴れパか。なんでもできるなラウラの手持ち

 

155:名無しのトレーナー

ウルガモス初めて見た…綺麗だな

 

156:名無しのトレーナー

ひのこであんなことできるんか…

 

157:名無しのトレーナー

言うなればフレアフィールドか、迫力凄いな

 

158:名無しのトレーナー

ユウリのインテレオンがほとんど何もできずに倒されたのヤバいな

 

159:名無しのトレーナー

でも次に出したのはラウラの天敵のセキタンザンだ

 

160:名無しのトレーナー

炎を取り込んでじょうききかん発動してるなアレ

 

161:名無しのトレーナー

いわなだれをフレアドライブとワイルドボルトで破壊してるの草

 

162:名無しのトレーナー

キリエのじしんを再現してるのもっと草なんだが

 

163:名無しのトレーナー

なんでじめんタイプでもないのに再現できるの…?

 

164:名無しのトレーナー

じしんで味方を巻き込まないの卑怯すぎる…

 

165:名無しのトレーナー

ユウリ天才過ぎる…

 

166:名無しのトレーナー

自爆覚悟のフレアドライブ!?

 

167:名無しのトレーナー

相討ちに持ち込む判断できるの強いな

 

168:名無しのトレーナー

そして相棒のデンチュラのほうでんよ

 

169:名無しのトレーナー

なんで味方に当たらないんだ…?

 

170:名無しのトレーナー

クイックターンといいボルトチェンジといいモコウも独自の戦法を確立したみたいだな、強い

 

171:名無しのトレーナー

雨の中のかみなりは強すぎるんだよなあ

 

172:名無しのトレーナー

カビゴンとフシギバナが最後のポケモンか、どっちがダイマックス切るかね

 

173:名無しのトレーナー

当たり前の様にキョダイマックスフシギバナは草なんだ

 

174:名無しのトレーナー

ユウリもキョダイマックス手に入れたのか…

 

175:名無しのトレーナー

対してラウラは…!?

 

176:名無しのトレーナー

新顔のバタフリー!?

 

177:名無しのトレーナー

この盤面でバタフリーってことはまさか…

 

178:名無しのトレーナー

当たり前の様にキョダイマックスは草だって何度言えば分かるのか

 

179:名無しのトレーナー

バタフリーのキョダイマックスって確か…

 

180:名無しのトレーナー

ユウリ、終わったな

 

181:名無しのトレーナー

どく、まひ、ねむりのいずれかを引き起こすって強すぎぃ!

 

182:名無しのトレーナー

ランダムすぎて好むトレーナーも少ないけど強力よなあ

 

183:名無しのトレーナー

決着かあ

 

184:名無しのトレーナー

いい勝負だった

 

185:名無しのトレーナー

改めて言うと新旧最強のジムリーダーと新旧チャンピオンを倒して優勝ってすごいな

 

186:名無しのトレーナー

これはチャンピオンカップだったならチャンピオン交代だったしな

 

187:名無しのトレーナー

このガラルスタートーナメントも終了か…

 

188:名無しのトレーナー

いい企画だったんだけどなあ

 

189:名無しのトレーナー

!?

 

190:名無しのトレーナー

またやるのか!?

 

191:名無しのトレーナー

ジムリーダー入れ替え戦以外の楽しみが増えたな

 

192:名無しのトレーナー

今回抽選にあぶれた面々も戦うのか、いいな

 

193:名無しのトレーナー

マスタードとポプラとか気になる組み合わせが見れるのか、いいな

 

194:名無しのトレーナー

1000年先もってのはローズ元委員長思い出すなあ

 

195:名無しのトレーナー

ダンデなりにローズ元委員長へ向けた言葉なんだろうなあ

 

196:名無しのトレーナー

ユウリモテモテで草

 

197:名無しのトレーナー

どうせラウラを選ぶ(確信)

 

198:名無しのトレーナー

いや、リベンジするためにダンデ辺りと組むんじゃね

 

199:名無しのトレーナー

もうビートとユウリでいいのでは?告白阻止できるしビートは念願のラウラと戦えるし

 

200:名無しのトレーナー

ビート君の胃を死なせたいのかお前?

 

 

 

・・・・・・・・・




やはりユウリのアンチはいる。

次回からは「二年後」編。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第二部:2年後
VSアップリュー


どうも、放仮ごです。今回から「二年後」編。ポケモンBW2を意識した剣盾2みたいな内容となります。ガラル地方を舞台にしてますが完全オリジナルストーリーです。主人公はもう一人の蟲好き娘であるあの人物。苦手な方はプラウザバック。

今回だけはラウラ視点と新たな主人公視点でお送りします。楽しんでいただけると幸いです。


 ガラル全土を震撼させたUB事件、あれから二年。14歳になった俺はジムリーダーになっていた。ジムリーダー試験を受けた一年前から戦い詰めで、ようやくマイナークラスのトップジムリーダーにまでなった。モコウとムツキはとっくの昔にメジャークラスにまで行ってるってのに情けない話だ。だがそれも、今日までだ。

 

 

「ヤローさん。悪いけど、アンタのホームはいただかせてもらいます」

 

「たった二年でここまで来れたのは素直に称賛しとるのですが…そんなに甘くないのがメジャーいうもんですよ、ラウラさん。たまげさせられるもんならしてみるんだな!」

 

 

 ジムチャレンジの二ヶ月前に行われる、ジムリーダー交代戦。一年に何度か行われる交流戦に置いて勝率のいいジムリーダーと勝率の悪いジムリーダーが入れ替わる、大事な一戦。ヤローはこれに勝てば防衛成功、俺が勝てば陥落だ。ターフジムを賭けた戦いが今、始まる。

 

 

「頼むぞ、テッカニン!」

 

「行くんじゃい、ダーテング!」

 

 

 5VS5のシングルバトル。先鋒はお馴染み、テッカニンだ。ヤローはダーテング。本気のメンバーだ。

 

 

「ねこだましじゃい!」

 

「退いてつるぎのまい!」

 

 

 ユウリのダーテングで見慣れてるんだよ!ねこだましの範囲から離れることで怯まない、独自の戦法だ。

 

 

「つばめがえし!」

 

「むう…やりおる」

 

 

 かそくした一撃が炸裂し、ダーテングは崩れ落ちる。シンプルなれどやはり剣舞からのこうかばつぐんは耐えようがないな。

 

 

「ねばりにねばるんじゃ!ワタシラガ!コットンガード!」

 

「つるぎのまい、つばめがえし!」

 

 

 防御を厚くしてきたのでこちらも攻撃力を上げて攻撃、戦闘不能にする。俺は知っている。ヤローにこの状態のテッカニンを倒す方法はない。何か余計なことをする前に終わらせる。

 

 

「ならばこうじゃ。チェリム、ウェザーボール…」

 

「遅い!つばめがえし!」

 

 

 チェリムを出すと同時ににほんばれを展開してきたが、技を撃つ動作が終わる前にこちらの攻撃は届いた。故に問題ない。タイプ相性とすばやさの絶対的な差だ。

 

 

「キレイハナ!ヘドロばくだんじゃ!」

 

「つばめがえし…!」

 

 

 つばめがえしを当てる瞬間、毒の塊を当ててくるキレイハナ。根性あるな、さすがヤローのポケモンだ。毒をもらったか。あと一体、早めに決着を付けないとな。

 

 

「最後まで追い詰められても粘り腰!価値を目指して伸びるまでじゃ!アップリュー!」

 

 

 出たな、くさ・ドラゴン。キョダイマックスされると分が悪いがこのまま出張って一撃を与える。

 

 

「さあキョダイマックスだ!根こそぎ刈り取ってやる!」

 

「つばめがえしだ!」

 

「ダイジェット!」

 

 

 キョダイマックスしたアップリューの、ダイジェットを受ける前に一撃叩き込んで戦闘不能になるテッカニン。よくやった、後は任せろ。

 

 

「ヤローさん、生憎だけど容赦無しで行きますよ。モスノウ!」

 

「むっ」

 

 

 アップリューの技は全部調べてきたんだ。モスノウに勝つ方法は存在しない!

 

 

「ダイマックスだ、モスノウ!全てを凍りつかせろ!ダイアイス!」

 

「ダイウォール!粘るんじゃアップリュー!」

 

 

 巨大化したモスノウのダイアイスを辛うじて防ぐキョダイアップリューだが時間の問題だ。

 

 

「俺はジムリーダーになって、ユウリへの挑戦権を得るんだ!ダイアイス!」

 

「ダイウォール……僕の負けなんだな」

 

 

 二度目のダイウォールは失敗し、直撃。四倍ダメージをもらったアップリューは戦闘不能になり、俺は晴れてメジャージムリーダーへと昇格した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後。手続きを終えてハロンタウンのユウリ宅に帰宅する俺。一週間もしないうちにターフタウンに自宅を持つことになるからこことももう見納めだな。まどろみの森、やっぱり蟲ポケモン結構いたから夢の場所だったんだがなあ。

 

 

「帰ったぞ」

 

「おかえり~じゃないよ!なにあのひどい試合!」

 

 

 帰るなり、おふくろさんと料理していたらしいエプロン姿のユウリにお叱りを受けた。解せぬ。二年前と違って伸ばしている髪がポニーテールに纏められていて綺麗だ。

 

 

「効率はいいけどあんなつばめがえしだらけの一方的な試合、観客からしたらつまらないよ!ガチだったのは分かるけど、もう少し魅せる戦いを…」

 

「チャンピオンが言うと説得力あるな」

 

「黙って説教を聞く!」

 

「はい」

 

 

 親とは離縁し、もう完全にユウリ宅に居ついて最近までヒモだった俺は、ユウリに頭が上がらない。でもどんな方法でも勝たないと胸を張ってお前の隣に立てないから、ガッチがちに固めたんだけどなあ。今回の手持ち?テッカニンとモスノウとウルガモスとドラピオンとデンチュラだがなにか?

 

 

「ラウラは普通に戦っても強いんだから、そんなガチにならなくても…」

 

「でもこれでやっと、チャンピオンカップでお前と戦えるぞ、ユウリ」

 

「それは嬉しいけど……」

 

 

 俺がキバナに勝って自分の前に来ると信じているユウリに、顔がにやける。その信頼がこそばゆい。

 

 

「ああ、そうだ。あいつらにも連絡しないとな」

 

「あいつらって?」

 

「メジャージムリーダーになった俺から推薦状をもらう気満々な兄妹だ」

 

「あー…私、妹の方は苦手だな」

 

「もう洗脳とかはしないって誓ってたから大丈夫だぞ」

 

 

 さいみんじゅつについては覚えてないとはいえ、ウツロイドの寄生のせいでそういうのがトラウマになってるらしいユウリ。たまにウツロイドを出して愛でてるのは大丈夫なのか…?

 

 

「そうじゃなくて、同じ蟲好きだし、ラウラを取られそうで…」

 

「俺はお前に一途だから心配しなくても大丈夫だぞ」

 

「なんで恥ずかしげもなくそう言うこと言えるかなー?」

 

「言わないと分かってもらえなそうだからな」

 

「むぅ…それはそうだけどさ」

 

 

 ユウリを宥めて、とりあえずスマホロトムを取り出して連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄さんとのポケモンバトルを終えて休憩していたら、ラウラさんから連絡が来たので電話に出る。

 

 

『あ、ダフネか?テレビで見てたかは知らないがメジャークラスに上がったからお前の要望通り推薦状を書くから後日取りに来てくれ』

 

「見てましたよ。手段を選ばなかった以前の私に人の事を言えない戦い方でしたね…」

 

『………それはまあ、うん。ユウリにも怒られたから勘弁してくれ』

 

「それで、推薦状をいただけるんですね?」

 

『ああ、お前の実力なら問題ないだろう。何時なら来れる?』

 

「ハロンタウンですよね?私はバウタウンに住んでいるので、電車ですぐです。明日お伺いします」

 

『わかった。それじゃあな』

 

 

 電話が終わり、スマホロトムを遠ざける。……やっとだ。ラウラさんにもユウリさんにもモコウさんにも迷惑をかけた。私には蟲ポケモンへの愛が足りなかった。私の、蟲ポケモンへの愛を示すための旅が始められる。

 

 

「本当にいいのか、ダフネ?俺もついていっても…」

 

「兄さん。私は兄さんに甘えすぎて二年前の様になったんです。いい加減独り立ちしないと、示しがつきません」

 

「そうか。俺も仕事を頑張るから、ダフネも頑張れ」

 

 

 そうなのだ。兄さんはこの二年で就職した。あの事件以降、何時までも親の財産で過ごして気ままにポケモンを鍛えるのに抵抗が出来たらしい。ようやく軌道に乗ってきた仕事を辞めてまでついてこようとしたのでさすがにキレた。過保護にも程があります。

 

 

「そうだ、最近プラズマ団と名乗るポケモン強盗が出没するから気を付けるんだぞ」

 

「二ヶ月後だというのに気が早いです、兄さん。気を付けますけど」

 

 

 あと二ヶ月もすれば今期のジムチャレンジだ。それに参加して、ラウラさんやユウリさんをも超えて私がチャンピオンになる。そうすることで、私の蟲ポケモンへの愛を示すのだ。

 

 

 諸君。私は蟲ポケモンが好きだ。愛している。だからこの愛を持って証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと。

 

 同感だ。未だに苦手意識が根付いてしまっているが、私は蟲が好きなのだ。いつぞやのラウラさんの台詞を反芻する。ミニスカートのダフネ。蟲使いとしての私の旅は、ここからだ。




というわけで「二年後」編は更正したダフネが主人公でお送りします。

・ダフネ
14歳→16歳の主人公。二年の間自主的に奉仕活動を行い、ようやく自分を許せたのでトレーナーとして復帰。未だに苦手な蟲ポケモンへの愛を示すためにチャンピオンを目指す。

・ラウラ
12歳(UB事件までの間に一年経った)→14歳の元主人公。マイナークラスのジムリーダーだったが晴れてメジャークラスのジムリーダーへと昇格、ターフジムを任されることに。自分の目的がかかったガチ試合となると遊び心などの余裕が無くなるようになった。ユウリ曰く「目が死んでる」状態。ユウリと同棲していたが独り暮らしに。ターフタウンに駅があればと嘆いている。ユウリに頭が上がらない。

・ユウリ
12歳→14歳の原作主人公。就任してからほぼ三年間、負け知らず(ガラルスタートーナメントを除く)のチャンピオン。ラウラと実家で同棲していた。ダンデには及ばないものの結構な支持を受けている。最近アローラ地方のチャンピオンと伝説ありのエキシビジョンマッチして勝利した。

・ヤロー
ラウラに敗北しマイナークラス落ちしたジムリーダー。モコウとムツキがメジャークラスに上がったことで負けが増えていた。

・ローレル
16歳→18歳のダフネの兄。二年の間に就職した。バウタウン在住で、グソクムシャは第二鉱山で出逢った相棒。今までは亡くなった両親の財産で生きて来ていたがあの事件以降情けなく思い就職した。

・プラズマ団
イッシュで活動していたポケモンを解放しようとする宗教団体。一年前イッシュ地方で首謀者の「ゲーチス」が廃人となり壊滅したはずだが、最近になって何故かガラルで活動を始めた。神出鬼没に現れ「救済」と称してポケモンを強奪しているようだが…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゴルバット

どうも、放仮ごです。UAが200000行きましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!今回は新キャラが登場。ダフネが主役の物語をかき乱します。

今回はダフネVS新キャラ。推薦状を手に入れる前の一幕です。楽しんでいただけると幸いです。


 バウタウンから駅に乗り、推薦状をもらうべくハロンタウンに繋がるブラッシータウンへと向かう。なんてことのない田舎道だ。程なくしてハロンタウンに着くだろう。

 

 

「なにか騒がしいですが…なにかあったのでしょうか?」

 

 

 ブラッシータウンの方が騒がしい。何か事件があったようだ。二年前も研究所の壁が破壊される事件があったが…多分関係はなさそうだ。こんな田舎でなにがあったのか、少し気になったが先を急ぐことにした。

 

 

「…?」

 

 

 草むらで何かが動いた気がする。念のためにアーマルドを出して警戒する。ここらへんのポケモンは弱い個体が多いが、それでもポケモンだ。警戒しておいて損はない。草むらから飛び出してきたのは、ゴルバットだった。

 

 

「なっ!?まもる!」

 

 

 ここには生息してないポケモンの登場に驚いたが、即座に指示。エアカッターを防ぎきる。明確な敵意を感じる。これは、野生じゃない?

 

 

「トレーナーがいますね。出て来なさい!」

 

 

 そう叫ぶと、闇夜に溶ける黒づくめの戦闘服を着た男が出てきた。マスクで口元が隠れていて黒い軍帽を深く被っていて表情が良く分からない。

 

 

「威勢のいいお嬢さんだ。今から大事な大事なポケモンを奪われるなんて夢にも思ってないふぬけた面だ。こんな人気(ひとけ)のない場所を1人で出歩くとは襲ってくださいと言っているようなものだ」

 

「…その格好。噂のプラズマ団ですか」

 

「わかっているなら話が早い。ポケモンを解放しろ。これは救済だ。拒否権はない」

 

「お断りさせてもらいます!アーマルド、しおみず!」

 

「ゴルバット、ファストガード!」

 

 

 反撃にと繰り出したしおみずが防がれる。この人、強い…!

 

 

「我が与えられし真名はシュバルツ。グレイ様率いる新生プラズマ団の幹部だ。舐めてもらっては困る」

 

「ペラペラ情報を明かすんですね。そんなに捕まりたいんでしょうか?」

 

 

 アーマルドに警戒してもらいながらジリジリと後退する。

 

 

「否。むしろ広めてもらいたいのだ、我等プラズマ団の活動を!先刻もそこの研究所から伝説のポケモンを救済したばかりだが、広める人間は多い方がいい」

 

「伝説ポケモンを…強奪した?」

 

「勘違いするな、これも救済だ。その帰り道でこんなお嬢さんに囚われている哀れなポケモン達を救済しようと言う訳だ。わかったならば、()く逃がすがいい」

 

 

 逃げようと思ったが、それだけはちょっと個人的に見逃せない。過去の自分自身を思い出すからだ。ボールを二つ取り出し、同時に繰り出す。私の頼れるポケモン達を。

 

 

「クワガノン、イオルブ」

 

「…解放する気はなさそうだな」

 

「この子達は、私が心から愛せていなかったポケモン達です。これから存分に愛を与えようというのに、その邪魔はさせません!強奪した伝説ポケモンとやらも返してもらいます!」

 

「それはできぬ相談だ。ゴルバット、エアカッター」

 

「アーマルド、まもる」

 

 

 複数の風の刃が空を切って襲いかかり、アーマルドが前に出て私達を守る。すると前に出たのはクワガノン。後ろからイオルブも続く。

 

 

「クワガノン、ほうでん!イオルブ、サイコキネシス!」

 

「ファストガード」

 

 

 うちのパーティーの最大火力を簡単に防いでみせるプラズマ団のシュバルツ。明らかに格上だ。戦いを挑んだのは、間違いだった。

 

 

「あやしいひかりだ」

 

「!?」

 

 

 咄嗟に三匹をボールに戻したけど、私自身が光の直撃を受けて混乱する。足取りがおぼつかない。不味い、強奪犯の前で無防備を晒してしまった。そして腹部にもらった強烈な衝撃に蹲ってしまう。

 

 

「つばさでうつ。まさかポケモンを庇うとは。心優しいものなのかもしれないが…我らの救済にプラズマ団以外のポケモントレーナーは必要ない」

 

「ぐっ…」

 

 

 そう言って私の腰のホルダーからボールを奪い取って行くシュバルツの手を、何とか握りしめる。残った力を振り絞るも、簡単に振りほどかされてしまった。

 

 

「ふむ、トレーナーは未熟なれど強きいいポケモンだ。グレイ様への手土産が出来た。我等プラズマ団の戦力にふさわしい」

 

「かえ、して……」

 

「安心しろ。我らの目的を達成したらこやつらも救済の対象だ。悪くはしない。むしろ我等の偉業の助けとなるのだ、誇るがいい」

 

 

 そう言ってシュバルツは去って行き、私の意識も途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行かせるか!ほうでん!」

 

「むっ!?」

 

 

 ゴルバットの脚を掴み空を飛んで東の海の方へと逃げようとしていたところを、指向性を持たせたほうでんで撃ち落とす。そのことに驚きを隠せないらしいプラズマ団の男の前に、俺は立ちはだかった。

 

 

「ソニア博士の連絡でブラッシータウンに急いで向かっていたら俺の知り合いも襲いやがって…」

 

「貴様は……今の技術、ジムリーダーか?!」

 

「俺はターフジムの新ジムリーダー、ラウラだ。逃がさないぞ、プラズマ団のしたっぱが」

 

「私をしたっぱなどと一緒にするな!グレイ様より賜りし我が真名、シュバルツ!プラズマ団の幹部だ!」

 

 

 したっぱなんかにルミが倒されるなんておかしいとは思ったが、まさか幹部か。しかも俺の知らない名前の。七賢人でもダークトリニティでもない、なんなんだこいつ。プラズマ団がガラルに出始めたってだけでも驚きなのに、幹部までいるってことはガラルでなんかやらかす気か?

 

 

「私のゴルバットを撃ち落としたその技術は称賛しよう。だが、そう簡単には負けぬぞ、小娘が!エアカッターだ!」

 

「デンチュラ、避けてエレキネット!」

 

 

 エアカッターを回避させエレキネットで攻撃。しかしつばさでうつで叩き落される。こいつのゴルバット、かなりの練度だ。というか普通に強い。

 

 

「つばさでうつ!」

 

「飛びかかれ!きゅうけつ!」

 

 

 高速で飛来した一撃を、こちらから飛び付くことで受け止める。組み付かれたことで落下するゴルバット。地上に激突するする寸前でデンチュラは飛び退きダメージを免れる。

 

 

「ほうでんだ!」

 

「ファストガード!」

 

 

 ほうでんが防がれてしまう。先制攻撃を完全に防ぐ技か。厄介だな。

 

 

「エアカッター!」

 

「ほうでん!」

 

 

 風の刃と電撃がぶつかり、弾け飛んだため思わず怯む。ひこうタイプの技ででんきタイプの技に対抗するってどんな鍛え方してるんだ。俺も人のこと言えないけど。すると俺が怯んだ隙を突いてゴルバットの脚を掴むシュバルツ。逃げるつもりか!?

 

 

「むう、今の私では貴様には勝てないようだ。そろそろお暇させてもらおう。あやしいひかりだ!」

 

「ちい!デンチュラ、いとをはく!」

 

 

 咄嗟に目を瞑りながら指示、飛び立つ音が聞こえ、目を開けると既に空の彼方に飛んでいくシュバルツの姿。足元で混乱しているデンチュラをあやして混乱を解くと、一つのモンスターボールを差し出してきた。これは…ダフネのポケモンか。一匹だけでも取り返せてよしとするべきか、いや…

 

 

「…悪い、ダフネ。ルミ」

 

 

 とりあえずダフネを病院に連れて行って、リーグ委員長のダンデさんに連絡だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、知らない天井で。腹部から鈍痛がして思わず押さえながら周りを見渡すと病室の様だった。枕元の机に一つのモンスターボールが置かれていて、気を失う前のできごとを思い出した私は慌てて中を見やる。そこには、沈んだ表情のイオルブがいた。あと二匹は?まさか…

 

 

「目を覚ましたか」

 

 

 そこにやってきたのは、ラウラさん。ばつが悪そうな表情を浮かべたラウラさんに、何か知っていると悟った私はベッドから降りて掴みかかる。

 

 

「ラウラさん!私のアーマルドは、クワガノンは…!」

 

「…悪い。イオルブしか取り返せなかった。恐らくプラズマ団のシュバルツと名乗ったあいつに…」

 

「そんな、なんで……」

 

 

 無力に打ちひしがれる私に、ラウラさんは何も声をかけられないのか立ち尽くしていた。




ダフネを挫折させていくスタイル。

・ダフネ
過去のこともあり、伝説ポケモンを強奪なんて見逃せなかった主人公。蟲ポケモンを大事にするあまりあやしいひかりから庇ってしまった結果、イオルブ以外を強奪されてしまう。ちなみにムツキが入院していた病院で担当ナースはリヅキである。

・ラウラ
ユウリ宅でダフネを待っていたところ、研究所を襲撃されたとソニアから連絡をもらって急いでいたら途中でダフネがやられるところに遭遇しシュバルツと対決するも逃げられてしまった元主人公。ちなみにユウリはチャンピオンの仕事中で不在の出来事だった。

・シュバルツ
新生プラズマ団の幹部の一人。名前の由来はドイツ語で「黒色」。グレイと言う名の現トップに忠誠を誓っている軍人気質な男。心の底から「救済」を成し遂げようとしている。ルミからレジ系ポケモン四体を強奪し、通りすがりのダフネからもクワガノンとアーマルドを強奪した。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヘラクロス

どうも、放仮ごです。だいぶ遅れました申し訳ない。地味にお気に入りが減ってモチベが下がってた他、帰郷した妹にポケモン教えてと言われて色々教えてたら書く時間がなくなってました。

今回はダフネの修行回。前回の最後の続きからとなります。楽しんでいただけると幸いです。



「ダフネ!無事か!」

 

 

 ラウラさんに何があったか話していると、どたどたと音を立てながら兄さんが扉を勢いよく開けて入ってきた。その足元には止めようとしたのかナースの人が倒れている。

 

 

「廊下は走らないでください…と私は目を回しながら注意します」

 

「大丈夫か、リヅキさん?」

 

「だ、ダフネがプラズマ団に襲われたと聞いて駆け付けたのだが!」

 

「兄さん。私は大丈夫ですよ、ポケモンに直接攻撃されただけです」

 

 

 腹部を押さえながらそう言うと、兄さんは緊張が解けたのかその場に崩れ落ちた。

 

 

「無事でよかった…」

 

「正確にはあやしいひかりによる意識の混乱と、翼を腹部に叩きつけられた外傷だけです。安静に、と私は安静にしなくて悪化した患者を見ながら注意します」

 

「あの時は悪かったよ…」

 

 

 苦笑いするラウラさん。リヅキさんには頭が上がらないようだ。

 

 

「一週間は安静にしてくださいね。お大事に、と私は邪魔にならないように出て行きます」

 

「…それでだダフネ。どうする?」

 

「どうする、とは?」

 

 

 リヅキさんが出て行き、兄さんとラウラさんと三人きりになった途端、話を切り出すラウラさん。年下とは思えない迫力に臆してしまう。

 

 

「推薦状のことだ。手持ちが奪われて、それでも挑むのかと聞いているんだ」

 

「…やります。私は、強くなりたい。有名になればまたプラズマ団に狙われるかもしれません。その時に私はクワガノン達を取り返したい!」

 

「そんなの反対だ!確かにクワガノン達が奪われたのは問題だが…それでも、お前がわざわざ危険な真似をする必要はない」

 

「俺も反対だ。運営は今回の事件を重く見て、今後推薦状を渡す場合は細心の注意を払うようにと言われている。俺はお前の実力は認めているが、それはクワガノンやアーマルドありきだ。今のお前に推薦状を渡せない」

 

「…では、強くなればいいんですね」

 

 

 反対する二人に、面と向かって言い放つ。私の心は折れていない。二年前のあの時、ウジウジしていた自分は死んだんだ。

 

 

「ジムチャレンジが始まるまであと二ヶ月。それまでにラウラさんが認める程強くなればよいのですよね?」

 

「ま、まあそうだが…」

 

「それまでに新たな仲間を揃えて鍛えます!なにか、いい場所を知りませんか?!」

 

「…ダフネ。そこまで言うなら俺はもう何も言わん。ラウラ、何かないか?」

 

「…まあ、あるにはある。知り合いに電話してくるからちょっと待ってろ」

 

 

 そう言って部屋の外に出て行くラウラさん。残った兄さんと向かい合う。

 

 

「…なあ、ダフネ。やはり…」

 

「俺も旅に同行する、なんて言うとはったおしますよ。せっかく就職できたのに棒に振るのは賛成できません」

 

「むむむむ……ならば、俺の相棒を貸そう。それぐらいは、役に立たせてくれ」

 

 

 そう言って手渡してくる兄さんからモンスターボールを受け取る。中にいたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日。失意に落ちた私はヨロイ島のマスター道場にいた。少しでもトレーナーとして強くなるためだ。イオルブと兄さんから渡されたポケモン以外にも仲間も増え、今はマスタード師匠と模擬戦中だ。

 

 

「ダフネちん。あまり無理はしない方がいいよ」

 

「いいえ、いいえ!この程度の実力じゃあ、プラズマ団から私のポケモンを取り返せません!師匠!もう一度お願いします!」

 

 

 イオルブと、新たに仲間になったアブリーで戦いを師匠に挑むが、コリンクもコジョフーも倒せない。師匠と私には絶対的な格差がある。

 

 

「うーん、やっぱり手持ちを整えた方がいいんじゃないかな?せめてあと一匹ね」

 

「あと一匹……ちょっと、外に出てきます」

 

 

 道着姿で外に出る。ポニーテールに纏めた髪が海風で揺れる。思えば遠いところに来た。ラウラさんに紹介されてきたが、いいところだと思う。傷心が癒される。

 

 

「…強く、なれるのかな」

 

 

 私のメイン火力だったアーマルドとクワガノンが奪われた。以前ラウラさん達と戦ったときだって、二体を前衛にイオルブを後衛にしていたからなんとか相手できていたのだ。なのに、アーマルドとクワガノンを取り返せるぐらいに強くなれるのだろうか。

 

 

 そんなこんなでやってきたのは集中の森。ラウラさんから多くの蟲ポケモンがいると聞いた場所だ。強くなるには蟲ポケモン以外を使わないといけない、なんてのは昔の私だ。私は私の好きを貫く。そう誓ったんだ。

 

 

「うーん、フシデ…メラルバ…」

 

 

 しっくりこない。アブリーはついてきたので仲間にしたけど、自分から捕まえるにはちょっと抵抗がある。また、守れないかもしれない。そう思うと、無理やり仲間にするのは何か違うのだ。即戦力が欲しい。あのシュバルツにも負けない様な、そんな強力な蟲ポケモンが。

 

 

「っ!」

 

 

 ふらふらとアブリーを連れて森を歩いていたその時だった。突如襲いかかってきた一本角の一撃を咄嗟に飛び退いて避ける。そこにいたのはヘラクロス。好戦的なのか、慌てて避けるアブリー目掛けて角を振り回して暴れ回るヘラクロスに、響くものを感じた。

 

 

「そんなに戦いたいなら私と一緒に戦いませんか?…なんて、言葉が通じるなら苦労はしませんね。御して見せましょうとも。アブリー!ようせいのかぜ!」

 

 

 煌めく風を放って牽制。顔を守る体勢で受け止めるヘラクロス。瞬時に急所を守る構えを取ることから見て戦い慣れている。即戦力だ、ぜひとも欲しい。

 

 

「インファイト!?ならば、しびれごな!」

 

 

 防御を捨てて突撃してきたので、しびれごなで麻痺させることで動きを阻害する。反撃と行こう。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 眩い光が防御体勢のヘラクロスに降り注ぐ。しかしそれでも耐え抜くタフネス。強い…!自身にまとわりついた光を振り払うと、黄緑色に輝く角…メガホーンで突撃してくるヘラクロス。直撃を受けてアブリーが吹き飛ばされてしまう。

 

 

「こ、交代!イオルブ!サイコキネシ…」

 

 

 続けて繰り出したイオルブもメガホーンを受けて吹き飛ばされる。…しょうがない、師匠との戦いでは全然言うことを聞いてくれなかったけど……

 

 

「おねがい、グソクムシャ!」

 

 

 繰り出したのは兄さんの相棒、グソクムシャ。ラウラさんをも感服させたききかいひを持つポケモンだ。ただし、私がジムバッジを一つも持ってないからか言うことを聞いてくれない。

 

 

「であいがしら!…やっぱり、駄目か」

 

 

 そう叫んでも構えたまま動かないグソクムシャ。すると動かないグソクムシャに業を煮やしたのかインファイトしてくるヘラクロス。するとその瞬間、グソクムシャはバックステップで空ぶらせると水を纏った強烈な一撃を叩き込んだ。アクアブレイクだ。

 

 

「ちゃ、チャンス!」

 

 

 アクアブレイクを受けてひっくり返ったヘラクロスに、咄嗟にラウラさんからもらったネットボールを構えて投げる。ヘラクロスは吸い込まれて行き、カタカタと暴れていたが諦めたのか大人しくなった。

 

 

「やった…!ありがとうございます、グソクムシャ!」

 

 

 ヘラクロスの収まったネットボールを手にそう言うとぷいっとそっぽを向くグソクムシャ。…この子は、私の悪行を真正面からぶつかり体験したポケモンだ。私への不信感を募らせているのだろう。それでも、兄さんの命令で私を守ってくれた。ありがとう、兄さん。

 

 

「…今はそれでいいけど、これからよろしくね、グソクムシャ」

 

 

 そう信頼を見せるために笑顔を向けるとぷいっと反対を向く。ちょっとかわいいな、と思ってしまったのは許してほしい。ちょっと怖いけど、やっぱりまだ苦手だけど、それでも愛おしいと思うのだ。

 

 

「…前途多難だけど、頑張ります」




あんな強力なグソクムシャの出番をあそこで終わらせるわけがなかった。

・ダフネ
ジムチャレンジが始まるまでの二ヶ月間にマスター道場で修行することにした主人公。マスタードにボロ負けしているが、アブリーに好かれるなど手持ちは結構順調。やっぱり蟲はちょっと苦手だけど愛おしい。

・ラウラ
ダフネのことを思って推薦状を渡すのを渋ったジムリーダー。ダフネにマスタードを紹介しヨロイパスを与えた。

・ローレル
ダフネの決意を見てグソクムシャを預けた兄貴。小さい頃から一緒だしよくしてくれるだろうと思っていたが、ダフネの本性を見た相棒が不信感を抱いていたことには気付かなかった相変わらずな人。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSザマゼンタ

どうも、放仮ごです。ゼロから強くなるダフネの成長物語、始まります。昨日の21時にも投稿してるのでまだの方は前回からどうぞ。

今回はVS二年後のホップ。楽しんでいただけると幸いです。


 ヘラクロスを捕まえて戦力が整ってきたと思った私は、マスタード師匠とは別に、ラウラさんが「マスタード師に勝てる様に特訓してもらう」と連絡していた人物がいるというチャレンジロードまでやってくると、そこには白衣を身に着け眼鏡をかけた、現リーグ委員長によく似た少年がいた。

 

 

「おっ、お前がラウラの言っていたトレーナーか!俺はホップ!ヨロイ島には分布調査に来ているポケモン博士見習いだぞ!」

 

「ダフネといいます。よ、よろしくお願いします…」

 

 

 うわあ。ホップ選手だあ。チャンピオンユウリの幼馴染で、盾の英雄…ザマゼンタを従えている異例のポケモン博士志望。年下だけどすごく威厳がある……修羅場をくぐってきたようなそんな感じの。

 

 

「ラウラから聞いたけど、マスタードさんに勝てるように強くしてほしいんだよな?俺はジムチャレンジ時代にたくさんのポケモンを鍛えたことがあるから適任だってユウリに言われたらしいぞ」

 

「そうなんですか。ユウリさんにも力を貸してもらっていたんですね…皆さん、お世話になります」

 

「気にすることはないぞ。俺も迷走していたからなあ。あの頃は自分のポケモンを信じるっていう当たり前のこともできてなかったんだぞ」

 

 

 そうしみじみ語るホップさんからは苦労が見て取れた。詳しくは知らないがなにかあったのだろう。少なくとも私よりは間違いなく経験豊富だ。セミファイナルトーナメントの準決勝まで行った人だ。前チャンピオンの弟でもあるこの人は、間違いなく強い。

 

 

「でも俺は人に教えたことはない。だから、手加減はできないぞ」

 

「よろしくお願いします!私は、強くならなきゃいけないんです!」

 

「おう!なら、こいつに勝てれば間違いないぞ!ザマゼンタ!」

 

 

 そう言って繰り出したのは盾の英雄、ザマゼンタ。いきなりの伝説ポケモンに臆してしまうが、そんな場合ではない。よく見れば盾は手にしていない。確かに、これに勝てれば…!

 

 

「ザマゼンタはかくとうタイプだぞ!よく考えて挑むんだな!」

 

「はい!よろしくお願いします!アブリー!マジカルシャイン!」

 

「ザマゼンタ、ひかりのかべ!」

 

 

 眩い輝きは、ひかりのかべを張られて防がれる。ならば状態異常にさせようと近づけたが、迂闊だった。

 

 

「しびれごな!」

 

「アイアンヘッドだぞ!」

 

 

 小さくて狙いをつけにくいアブリーをわざわざ近づかせての一撃が炸裂。効果抜群の一撃にアブリーは倒れ、しかもしびれごなを使う前に戦闘不能になってしまった。強い…!

 

 

「かくとうタイプは近接戦こそ本領を発揮するんだぞ!」

 

「ならば、ヘラクロス!」

 

 

 捕まえたばかりだが、暴れたいためか言うことは聞いてくれるらしいヘラクロス。するとヘラクロスを見たホップさんは驚き、満面の笑みを浮かべた。

 

 

「ダフネがそのポケモンを連れているなんて凄い偶然だな!実は、別の地方で調査していた時にヘラクロスを強くする物を手に入れたばかりだったんだぞ。ラウラに上げるつもりだったけど、二つあるしもし俺に勝てたら渡してもいいんだぞ」

 

「ヘラクロスを強くする…?それは一体……」

 

「別の地方の人間はダイマックスできないから、ポケモンとの絆の力で「メガシンカ」することで強くなるんだぞ!」

 

 

 メガシンカ。見たことも聞いたこともないが、何か惹かれる物を感じる。勝つしか、ない。

 

 

「つばめがえし!」

 

「バックステップで避けてインファイトだぞ!」

 

「こちらもインファイト!」

 

 

 つばめがえしは距離を取られて避けられ、同時にインファイトによるノーガードの殴り合いに発展。前足と頭部を器用に使って殴りつけるザマゼンタと、両腕と角を振るって殴りつけるヘラクロス。押されているのは、ヘラクロスだった。

 

 

「この距離ならば!つばめがえし!」

 

「ムーンフォースだぞ!」

 

 

 つばめがえし…角による一閃が炸裂せんとしたその瞬間、月の様な桃色の巨大な光球に押し潰されるヘラクロス。ムーンフォースが消えた時、目を回して倒れていた。戦闘不能だ。でもこれで技構成が分かった。ひかりのかべ、アイアンヘッド、インファイト、ムーンフォース。サブウェポンにフェアリー技を持っていたのは迂闊だった。ホップさんもザマゼンタも本気を出してないのにこのザマだ。

 

 

「グソクムシャ……の力ばかり借りていられない。私達でやるよ、イオルブ!」

 

「ムーンフォースだぞ!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 繰り出したイオルブの鏡の盾と月の幻影がぶつかり、跳ね返す。大ダメージを受けてよろめくザマゼンタ。行ける!

 

 

「ひかりのかべがなかったら危なかったぞ……ザマゼンタ、本気で行くぞ!」

 

 

 そう言ってホップさんがリュックから取り出したのは古びた盾。それを放り投げるとザマゼンタと融合し、王としての風格を醸し出す姿となる。これが本気のザマゼンタ…!

 

 

「この姿になったザマゼンタははがね・かくとう!ムーンフォースを跳ね返そうがもう効かないぞ!」

 

「なら真っ向勝負です!サイコキネシス!」

 

「ぶちぬけ!きょじゅうだん!」

 

 

 イオルブの念動力と、盾を変形させて防御を固めたザマゼンタの砲弾の様な勢いの突進がぶつかる。私のイオルブは真っ向勝負が苦手なポケモンだ。サイドチェンジを忘れさせて覚えさせたサイコキネシスだけど、威力も伝説ポケモンと張り合える程じゃない。だから。

 

 

「これが私たちなりの、真っ向勝負です!さいみんじゅつ!」

 

「なに!?」

 

 

 ザマゼンタの突進がイオルブに触れるか触れないかの瞬間の、さいみんじゅつ。ほぼ零距離のそれを避けられるはずもなく、直撃を受けて微睡に落ちるザマゼンタ。こうなれば、伝説だろうが関係ない!

 

 

「サイコキネシスで持ち上げて、叩きつけて!」

 

 

 ザマゼンタの巨体をサイコキネシスで持ち上げて、勢いよく地面に叩きつけるイオルブ。ザマゼンタは目を回し、戦闘不能となった。

 

 

「…驚いたぞ。ラウラを思い出す奇策だ。あの局面でさいみんじゅつは読めなかったぞ」

 

「私達は、蟲ポケモンは基本的に弱い。だから、工夫が必要なんです。…これはラウラさんから学んだことです」

 

「うん、うん!その強さならマスタードさんにもきっと勝てるぞ!そうそう約束だ、こいつを渡すぞ」

 

 

 そう言って手渡してきたのは、虹色に輝く珠が嵌められたペンダントと、橙と青に輝くビー玉の様な物だった。

 

 

「キーストーンが埋め込まれたメガペンダントと、メガストーンのヘラクロスナイトだぞ。キーストーンはトレーナーにとってのもう一つの心臓だ。意識を集中させメガストーンと介してポケモンと呼応しメガシンカするんだ。キーストーンは貴重なものだけどもう一個あるから気にすることはないぞ、お前が大事なものを取り返すために使ってくれ」

 

「はい…!ありがとうございます!」

 

「…実は俺もプラズマ団に同僚をやられて憤っているんだ。プラズマ団は許せない。だから、いくらでも力を貸すぞ!困ったことがあればいつでも言ってくれ、力になるぞ!」

 

「ホップさん……助かります」

 

 

 そうだ、ブラッシータウンの研究所がシュバルツに襲われたとラウラさんに聞いた。襲われたのはホップさんの同僚だったんだ。恐らくは、奪われたという伝説ポケモンの持ち主。それは…許せないだろう。拳を握りしめるその姿を見れば悔しさが伝わってくる。

 

 

「…改めて、ありがとうございました」

 

「お前は強いぞ、俺が保証する!」

 

 

 ホップさんに礼を言って、私はその場を後にする。メガペンダントとヘラクロスナイトを握りしめる。これで、私はもっと強くなれる…!

 

 

「メガシンカ……私の、力」

 

 

 プラズマ団、絶対に許さない。何を企んでるかは知らないが、必ず倒して、ぶっ潰してやる。




ここで導入、メガシンカ。原作でも復活してメガシンカ……

・ダフネ
メガシンカの力を手に入れちょっと強くなった主人公。隙を突けば伝説ポケモンを打倒できるさいみんじゅつの強みはやはりでかい。プラズマ団壊滅を誓う。

・ホップ
ポケモン博士見習いになった、ザマゼンタの主。自分がヨロイ島に調査に行っている間にソニアの研究所を襲われ、ルミを傷つけられたことに憤慨している。他地方で調査している際にメガストーンをいくつか手に入れた。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSウーラオス

どうも、放仮ごです。ダフネの修業編も佳境となってきました。

今回はVS本気のマスタード。楽しんでいただけると幸いです。


 チャレンジロードを下り、鍛錬平原から集中の森、清涼湿原と抜けてマスター道場に帰還する。途中で何度かメガシンカを試してみたが、気合いが足りないのかウンともスンとも言わなかった。心を通わせると言っていましたが、どうしたものかと考えながらマスター道場に入ると、そこには笑顔の師匠が立って待っていた。

 

 

「いぇーい!おかえりダフネちん。いい顔になったねー。ホップちんから色々学んだのかな?」

 

「はい。おかげさまで。今なら多分、師匠にも勝てます」

 

「うふふ。いいねいいね~今のダフネちんなら本気で相手しないと失礼だから、ちょっと奥に行こうか」

 

 

 そう言って道場の奥の扉を開けて裏のバトルコートに向かう師匠に着いて行く。私を左側に立たせると、師匠は帽子を投げつけると、上着を掴み一気に脱ぎ捨てて空中で回転、着地すると構えた。これが本気の師匠…!まるで別人だ。

 

 

「言っておくが、本気のワシに勝たねばプラズマ団とやらに挑むのは許さん!力なきものはなにもできんからな!」

 

「!」

 

 

 ああ、この人も私を心配してくれている。プラズマ団と対決することを許さないと言うならば勝って、示すしかない。

 

 

「お主らの修業の成果、ダイマックスは無しでワシの本気の一体を倒すことで出しきるのだ!ゆけい!ウーラオス!」

 

 

 そして繰り出されたのは、伝説とも呼ばれるひでんのヨロイ、ウーラオス。以前の私が執着した、伝説そのものの力に震えが走る。全力で挑まねば、勝てない。かくとうタイプなら…!

 

 

「イオルブ!サイコキネシス!」

 

「無駄だ!わしのウーラオスは一撃を極めし悪の拳!念力なぞ効かん!」

 

「なっ!?」

 

 

 あく・かくとうタイプ!?サイコキネシスを物ともせず、突進して一瞬で距離を詰めるウーラオス。赤黒い光を纏った拳が振るわれる。

 

 

「む、むしのていこう!」

 

「あんこくきょうだ!」

 

 

 黄緑色の光を貫通して、グシャリという擬音と共にイオルブの胴体がひしゃげて殴り飛ばされる。なんて一撃の重さ。恐らくあくタイプの技だ、正確に急所をぶち抜いてきた。あれは不味い、でもあくタイプなら…

 

 

「アブリー!」

 

 

 アブリーはむし・フェアリー。あくタイプの技は通じない。これであんこくきょうだは怖くない。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

「弱点を突いてきたか!だが弱点を制さずいるのは弱者のみよ!どくづき!」

 

「しびれごな!」

 

 

 毒を纏った拳が振るわれ、眩い光が掻き消される。そのまま蛇の様に動いて回避しようとしたアブリーを捉え、毒手が叩き込まれ、崩れ落ちるアブリー。だけど、ホップさんの教えが役に立った。かくとうタイプは距離を詰める必要がある、なら近づいてきたところを麻痺させればいい。

 

 

「むう、まひか。わしのポケモン達にろくに当てることもできなかったおぬしが…成長したな!だがまひ程度でウーラオスは止まらぬ!その拳は一撃で全てを打ち砕く!」

 

「状態異常にできれば格上でも戦えます!グソクムシャ!」

 

 

 切札であるヘラクロスは最後まで残しておきたい、そう考えてのグソクムシャ。だがしかしやる気を見せてくれない。

 

 

「ほう!その気難しい猛者をついに手懐けられたか!」

 

「そうじゃありませんけど…てっぺき!」

 

 

 とりあえず防御力を上げようと指示するが、構えてすらしてくれない。やっぱり、駄目なの…?いや、いつかはこの子を御さないといけないんだ。臆してるばかりじゃ、応えてなんかくれない!

 

 

「グソクムシャ!お願い、力を貸してください!私のことを許せないのは分かります、だけど……私は、私の大事なクワガノンやアーマルド達を…貴方の友達を取り戻したい!そのために、貴方の強さが必要なんです!」

 

「まだまだ御せぬか!だが容赦はせぬぞ!インファイト!」

 

 

 心からの叫び。するとビクッと反応するグソクムシャに、ウーラオスが突撃。拳と脚の猛ラッシュを叩き込み、その衝撃で砂煙が蔓延する。次の瞬間、砂煙から吹き飛ばされて飛び出すウーラオスが受け身を取った。何事かと師匠と共に目を見開くと、砂煙が晴れて腕を振り抜いた体勢のグソクムシャが姿を現す。今のはアクアブレイク?戦って、くれるの…?

 

 

「むう、やりおる。やはり手練れか!どくづき!」

 

「シザークロス!」

 

 

 毒を両手に纏い突撃するウーラオスと、私の指示通りに両腕を振りかぶるグソクムシャ。振り抜かれた右拳と、両腕の振り下ろしがぶつかるも、左拳が腹部に振るわれ、危険を感じたのかグソクムシャは飛び退き、私に振り向いてきた。もしかして、指示を待っている?

 

 

「アイアンヘッド!」

 

「てっぺき!」

 

 

 鋼と化した頭部による頭突きと、鋼の如く堅くなった甲殻がぶつかりガキンと鋼鉄がかち合った重い音が響き渡る。これでもグソクムシャとは同じ屋根の下で暮らした幼馴染なのだ。信頼に応えないと、顔向けできない!

 

 

「アクアブレイク!」

 

「あんこくきょうだ!」

 

 

 赤黒い光を纏った拳と、水流を纏った腕が激突。しかし水流は掃われ、腕を押しのけてグソクムシャの顔面に炸裂する一撃必殺の拳。しかしてっぺきをしていたおかげか、瀕死寸前で持ち堪えて強制的にボールに戻って行くグソクムシャ。ありがとう、後は任せてください。

 

 

「行きますよ、ヘラクロス!メガホーン!」

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 出すなりやる気満々なヘラクロスに応えて指示、頭突きと角がかち合い弾き返される。やはり一筋縄ではいかないか。メガペンダントを握りしめ、集中する。絆…捕まえたばかりのこの子とは、絆はあってないようなものだ。だけど、共通していることはある。それは、強くなりたい、ということだ。

 

 

「ヘラクロス!共に、強くなりましょう!メガシンカ!」

 

 

 瞬間、キーストーンとヘラクロスに持たせたヘラクロスナイトが輝きを放ち、ヘラクロスは虹色の光球に包まれてそのシルエットが変化、光球が弾けてその姿を現した。全体的にマッシブになり、角が新たに巨大な物が増え、背中は黄色く、腹部には排気口の様な器官が現れ、触覚も長く伸びて、細かった腕は丸太の様に太く、強靭に。これが、メガヘラクロス…!

 

 

「ほう、メガシンカか。久々に見たぞ。だがおぬしに使いこなせるかな?!インファイト!」

 

「使いこなして見せます!私達は、貴方を越えて行く!ミサイルばり!」

 

 

 スマホロトムのポケモン図鑑をちらりと見ると、特性がスキルリンクに変わっていた。連射系の技を最大限に活かせる特性だ。するとメガヘラクロスの腕の爪が引っ込んで砲身の様に変わりそこから凄まじい速度で大量に射出。突撃してきたウーラオスを怯ませ、吹き飛ばす。両腕から射出され続けるミサイルばりは物量を持ってウーラオスを攻め続け、追い込んでいく。

 

 

「むうう…なんという力か!」

 

「これが蟲の底力です!ミサイルばりを維持しながら、メガホーン!」

 

 

 ミサイルばりを射出し続けながらのしのしと歩き、射程圏内に入るとミサイルばりをやめて突進。二本の角でその胴体を挟み込み、その巨体を上空に投げ飛ばした。なんてパワー…!

 

 

「落ちてきたところにインファイト!」

 

「迎撃しろ!どくづき!」

 

 

 腹部と腕から蒸気を排出させながら背中の翅を開いて上昇し、排気口から排出する蒸気で勢いを付けた両拳を振りかぶるメガヘラクロスと、毒を纏った両拳を振りかぶるウーラオス。そして猛ラッシュと、毒手の二撃がぶつかり、双方組み合ったまま着地した。

 

 

「…むう」

 

「…ヘラクロス!」

 

 

 膝をつくウーラオスに対し、毒が回ったのか倒れたメガヘラクロスの姿が虹色の光球に包まれて弾け、元の姿に戻る。同時に、とんでもない疲労感が襲ってきて倒れそうになる。これがメガシンカの…もう一つの心臓を使った代償。これでも、倒せない…なら!

 

 

「構えろ、ウーラオス!あんこくきょうだ!」

 

「グソクムシャ!であいがしら!」

 

 

 瀕死寸前のグソクムシャが飛び出し、麻痺で動きが止まったウーラオスに渾身の一撃が炸裂。殴り飛ばされたウーラオスは崩れ落ち、戦闘不能となった。

 

 

「うむ、うむ!強さとは生々流転。手にしてもすぐ零れ落ちる。だがワシのウーラオスを打ち倒したその強さは今、揺るぎない!……心からおめでとう!ダフネ!お前の旅を認めよう!」

 

 

 そう笑いながら言ってくれる師匠に、心から頭を下げた。ありがとうございました…!




さすがにマスタードのフルメンバーには勝てない。

・ダフネ
初メガシンカでようやくマスタードに勝利できた主人公。グソクムシャとは寝食を共にした家族だからこその絆がある。ヘラクロスも本来は言うことを聞かないが、共に「強くなりたい」という願いが在るから共に戦える。これがダフネなりの蟲ポケモンとの信頼関係である。

・マスタード
あく・かくとうで相性不利な蟲ポケモンをボコボコにしたやべー人。ウーラオスに勝てればプラズマ団相手でも問題なしと判断した。

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VSハッサム

どうも、放仮ごです。今回は評価コメントで「今回のヤロー戦、ちょっと悪い意味でゲームっぽい」と言われたので、その補足回とさせていただきます。描写が足りないとは思っていたのでちょうどよかったです。

今回はラウラ視点。二年でなにが起きたのか。楽しんでいただけると幸いです。



 ダフネにヨロイ島を紹介し、見送って数日経ってのことだった。

 

 

「ねえ、なんか焦ってない?」

 

 

 それは、チャンピオンの仕事から帰ってきたユウリとのバトル中のことだった。思わず、フシギバナに猛攻を浴びせていたハッサムへの指示が止まり、膠着状態になる。

 

 

「どく技を受けないようにハッサムを選んだのはいいよ。でも、粉がかからないように遠くからエアスラッシュ連打なんてラウラらしくないよ。この間のヤローさんとのバトルもそう、まるで何かに焦っているみたいな…」

 

「………俺らしいって、なんだろうな」

 

「え?」

 

 

 そのまま立ち尽くしてしまう俺に、訝しげに首を傾げるユウリに、俺は内心をぶちまけることにした。

 

 

「カブさんのジムトレーナー時代を終えてジムリーダーになってすぐ、本気のマイナークラスのジムリーダーと戦うことになって……所詮はマイナークラスだと油断していたら、ボコボコにされて洗礼を受けたんだ。そこで俺は思い出したよ、俺が勝って来たのはあくまでジムチャレンジ用に調整されたポケモン達を使うジムリーダーたちだったんだって」

 

「……そう、だね。チャンピオンカップで私も本気のジムリーダーと戦った時に比べ物にならない、って思ったよ」

 

 

 そう言うユウリに「違うんだ」と首を振る。UBやゲノセクト禁止の公式試合に、俺は前世の知識(転生者の特典)に甘えて、実際は蟲ポケモン達の強さに助けられていたんだと思い知ったんだ。俺自身は弱い。前世の知識と言う所詮は有象無象のトレーナーたちの知識しかない俺は、例え相手の意表を突く攻撃をできたとしてもワンパターンしかできなくて読まれやすい。ステルスロックを使ったスパイダー●ン戦法が特にそうだ。

 

 

「俺らしく戦っていたら、勝てないんだ。メジャークラスの本気のジムリーダーには手も足も出なかった。ダイマックスなしでダイマックスポケモンを倒すなんて以ての他だ。だから、あまりに負け続けて最弱のジムリーダーって言われるようになってから……ユウリに、見限られると思って……方法を変えたんだ」

 

「私がラウラを見限るなんて…そんなこと、ないよ?」

 

「それでも、怖かったんだ。お前は俺の強さに惹かれたって言ってたから…こんな弱い俺を、見捨てるんじゃないかって。だから……俺は手段を選ばなくなった」

 

 

 試合が決まる度に相手のポケモンを調べに調べて、相手の苦手なタイプを揃え、攻撃が届かない安全圏を見つけてそこから機械的に攻撃を浴びせ続ける。楽しむなんて余裕のない、何も面白みがないバトルだ。それからは連勝だ。負け続けていたのが嘘の様に、連戦連勝。蟲ポケモンを使い続けるっていうポリシーだけは崩さなかったが、戦闘スタイルがジムチャレンジ時代とは全然違うことを指摘されることが多くなった。いつしか、自分らしく戦うことを忘れていた。

 

 

「………ユウリにはばれちゃうよな。今の、情けない俺に」

 

「焦ることないよ。ラウラは一対一なら私に勝てるぐらい強いんだから」

 

「そりゃ焦るさ!モコウもムツキも、俺より後にジムリーダーになってたのに自分のスタイルを崩すことなく連戦連勝であっという間にメジャークラスに行ったんだぞ!?」

 

 

 そうなのだ。同期のムツキとモコウは俺より後に、キバナのジムトレーナーからマイナークラスのジムリーダーに昇格した。俺と違って才能の塊な二人だ、すぐに追い越されてメジャークラスなんていう見えないところに行ってしまった。それでより焦った。アイツらと並べない俺に何の価値があるんだろう、と。

 

 

「…ヤローには悪いことしたよ。楽しむ暇もなく、機械的に倒してしまったんだから」

 

 

 あの試合は見直したくないぐらいに酷かった。今季のジムリーダー交流戦で一番最低な試合だろう。

 

 

「ラウラはしてないから知らないだろうけど、Pocketerも大荒れだったからね…」

 

「…そう、だよな。メジャークラスのジムリーダーにふさわしくないよな…」

 

 

 肩を落として落ち込んでしまう俺に、近づいてくるユウリ。顔を上げると、頬に衝撃。思わず尻餅をついて見上げると、ユウリが涙目で怒っていた。

 

 

「ラウラの馬鹿!どんな方法でも、私と戦うために、ムツキやモコウと並び立つために、勝ったんでしょ!ヤローさんに勝った、その事実だけは変わらない!なら、ヤローさんの代わりに頑張るしかないじゃない!」

 

「ヤローの、代わりに…」

 

「そうだよ!貴女は次のジムチャレンジの一番手、一番多くのジムチャレンジャーと戦うことになる門番なんだよ!こんなウジウジしているジムリーダーと戦ったら、楽しくもなんともない!ポケモンバトルの厳しさと楽しさを同時に教えるのが役目のラウラが、一番楽しまないでどうする!」

 

 

 その言葉に、目が覚める。そうだ、経緯はどうあれ、俺はターフジムのジムリーダーになったんだ。こんなつまらない勝負なんかしたらダメだ。ジムリーダーは、トレーナーの憧れでいるべきなのだから。

 

 

「目が覚めた。俺は、見ている観客が楽しめるような戦いをしたい。ポケモンバトルがつまらないなんて、言わせたくない」

 

「そうだよ」

 

「…明日、ビートとのジムリーダー交流戦があるんだ。その時は…昔を思い出して、頑張ってみるよ」

 

「二年前ってそんな昔でもないけどね」

 

「生態系が変わるぐらいには昔の話さ」

 

「???」

 

「悪い、こっちの話だ」

 

 

 …俺が言っているのはBW2の話だ。二年の間に生態系ががらりと変わったイッシュ地方と、救済派と野望派に分かれて再びイッシュを襲い始めたプラズマ団。…それも、この世界では一年前にイッシュ地方のチャンピオンのアイリスを倒した一人のトレーナーの手で壊滅したはずだった。それがどういうわけかガラル地方に現れた。

 

 

「なあ、プラズマ団について何か知ってるか?」

 

「なに、藪から棒に。…ソニアさんの研究所を襲ったり、ダフネのポケモンが強奪されたりって話は聞いたけど、私、一度も遭遇したことないんだよね。私が仕事中に限ってプラズマ団が活動していて」

 

「そうなのか?」

 

「うん、出くわしたら退治してとっ捕まえるんだけどね」

 

 

 妙だな。チャンピオンが仕事中に限って活動するなんて、まるで知られているような……でも、一般にはチャンピオンのスケジュールは公開されてない筈だ。まさか、委員会にスパイでもいるのか?

 

 

「あー、あと。服装についてはPのエンブレムが目立つ灰色が基調の服装で、フードを被ってるのが特徴って聞いたなあ」

 

「フード?それは本当か?」

 

 

 シュバルツが戦闘服みたいなのを着てたからてっきり2の黒ズマ団の残党かと思えばフードだと?それはまるで、1の白ズマ団の様な…だが、確か銀色が基調の服だったはずなのに灰色ってことは……第三のプラズマ団?

 

 

「それがどうかしたの?」

 

「いや、なんでもない。ただ……ろくでもない何かが起きるのは間違いないな。うん?」

 

 

 そこでスマホロトムが着信を伝えてきて、ユウリに一言いれて出ると、マスタード師からだった。

 

 

「もしもし?」

 

『あ、ラウラちん?ダフネちんの修業、終わったよー』

 

「ありがとうございます、マスタード師。それで、ダフネは?」

 

『来た時とは比べ物にならないくらい強くなったよー。本土に戻ってラウラちんに会いに行くって言ってたから準備しておいた方がいいと思ってね』

 

「なにからなにまでありがとうございます、では」

 

 

 電話を切り終えると、ユウリがニヤニヤした顔で見て来ていた。

 

 

「なんだよ?」

 

「いいや?面倒見いいなーと思って。ちょっと妬けるなーって」

 

「俺の一番は何時だってユウリだよ。お前がいないと俺は何もできない」

 

 

 そう言うと顔を赤らめるユウリ。いい加減慣れてくれないかね、告白してきたのはそっちだぞ。

 

 

「えへへ。うーん、やっぱりさ。私もラウラから離れたくないから…ターフタウンにできるっていうラウラの家に、私も住んでいいかな?」

 

「え」

 

「別居して浮気されても困るしね!」

 

「お、おう」

 

 

 どうやらまだ続くらしい同棲生活。やきもちを妬くユウリが可愛いけど早く籍を入れとこう、と決心する俺であった。…なんか、焦っていたのが本当に馬鹿みたいだ。




というわけで、ジムリーダーの現実を思い知らされてやり方を変えていたってのが真相でした。

・ラウラ
ムツキとモコウに置いて行かれた焦りから自分らしく戦うことを忘れていた元主人公。ユウリに見限られることが一番怖い。ユウリの喝で目を覚まし、「最初のジムリーダー」として自覚した。

・ユウリ
ラウラの家に同棲することにした原作主人公。プラズマ団とは一度も出くわしてないが、なんとかしなきゃと考えている。例えラウラが迷走しても支えるつもりの良妻(まだ籍は置いてない)。

・新生プラズマ団
灰色を基調とした戦闘服の上からフードを被った、1と2を合わせた様な服を身に纏っている。フードとマスクの二乗で顔がよくわからない。「どちらでもない」ことに意味がある。

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VSメタグロス

どうも、放仮ごです。拙作「ポケモン蟲」おかげさまでついに100話に到達しました。ありがとうございます!

今回はジムチャレンジ開会式と、プラズマ団の現状。楽しんでいただけると幸いです。


あれから二ヶ月。ついにこの日がやってきた。ジムチャレンジの幕開けだ。

 

 

「レディース アンド ジェントルマン!俺はポケモンリーグ委員長のダンデだ!この場に集まったみんなも、テレビで見ているみんなも、本当に待たせたな!いよいよガラル地方の祭典、ジムチャレンジの始まりだぜ!」

 

 

 ビシッとコートのど真ん中でリザードンポーズを決めながらそう宣言するダンデさん。サービスなのかチャンピオン時代のユニフォーム姿だ。相変わらずの大人気だ。

 

 

「まずは巷で噂の事件が起きながらジムチャレンジを開催したことへの説明をさせて欲しい!ここ最近、プラズマ団と名乗る集団が救済と称してトレーナーからポケモンを奪う行為が横行している」

 

 

 プラズマ団…!思わず顔が険しくなる。周りのジムチャレンジャーはジムチャレンジが中止になるんじゃないかとざわめいていた。

 

 

「ともすれば、それはジムチャレンジ開催の障害となる案件だろう。だが安心してほしい。我々はそんな集団に屈しない!ジムチャレンジ開催期間中、各所にマイナーリーグのジムリーダーを警備に配置する事とする。メジャーリーグのジムリーダーが動けない分、充分な実力を持つも惜しく今回のジムチャレンジの壁となりえなかった彼らが君たちの身の安全を保証しよう!」

 

 

 その言葉に歓声が上がる。たしかに、それなら心配はないだろう。…私としては、襲撃してほしい、が本音だから少し複雑ではあるが。

 

 

「それでは本題だ!ジムチャレンジ!8人のジムリーダーに打ち勝ち、8個のジムバッジを集めた凄いポケモントレーナーだけが、最強のチャンピオンが待つチャンピオンカップに進めるんだぜ!それではジムリーダーのみんな!姿を見せてくれ!」

 

 

 そう言ってダンデさんが入り口に手を向けると、続々と出てくる今期のメジャージムリーダーたちに歓声が上がる。キバナさんを中心に、並び立つ彼らは年若い者達が多い。女性五人男性三人とだいぶ偏っているが、間違いなく今期で最も強いジムリーダーたちだ。

 

 

「インセクト・クイーン!蟲ポケモンの使い手、ラウラ!」

 

 

 何か吹っ切れた様な表情で歩くラウラさん。ジムリーダーたちの中で一番小さいけれどその堂々たる足取りはまさに女王だ。

 

 

「レイジング ウェイブ!みずタイプ使いのルリナ! いつまでも燃える男!ほのおのベテランファイター、カブ!」

 

 

 モデルらしくロングヘアーを靡かせるルリナさんと、最年長らしくしっかりとした足取りで歩くカブさん。

 

 

「スパイクタウンのアイドル!あくタイプのマリィ!」

 

 

 若干引きつりながらも綺麗な笑顔を見せるマリィさん。ジムチャレンジャー時代の仏頂面が嘘の様である。

 

 

「大空に羽ばたく大天使!ひこうタイプの申し子、ムツキ!」

 

 

 ひこうタイプのユニフォームの上から羽織ったロングコートをはためかせながら優雅に立ち振る舞うムツキさん。病弱とは思えない軽やかな足取りだ。

 

 

「猪突猛進イナズマガール!でんきが痺れるモコウ!」

 

 

 かっこつけようとしていたが途中で慣れない動きだったのか転倒し、逆に声援が上がって不服そうに立ち上がるモコウさん。ドジっ子は健在だ。

 

 

「ピンクの伝道者!フェアリータイプのビート! ドラゴンストーム!トップジムリーダー キバナ!」」

 

 

 エリート然とすました顔で歩くビートさんと、不敵に笑みながら堂々と中央を歩くキバナさん。私が乗り越えるべき、ジムリーダーたちだ。

 

 

「ガラル地方が誇るジムリーダーたちだ!選手入場!ジムチャレンジャーたちよ、心して挑むんだぜ!」

 

 

 その声と共にスタジアム内に足を踏み入れる私達ジムチャレンジャー。ふと、前を向くとラウラさんと目が合った。何を思うことなく、頷く。推薦状を渡してくれた恩は、バトルで返します。すると、ジムリーダーたちの背後から長髪の少女がマントを靡かせて現れる。キバナさんよりその風格はまるで王者の様だ。

 

 

「ジムリーダー8人を倒し、彼女…チャンピオン・ユウリに辿り着く者を俺は期待しているぜ!」

 

 

 ダンデさんの台詞に歓声が上がり、不敵に笑うチャンピオン・ユウリを睨みつける。さいみんじゅつなんかに頼ることなく、彼女を倒して見せる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。ガラル近海。ヨロイ島とは反対方向の海に浮かぶ黒い船…否、巨大旗艦。ステルスで外からは見えない様になっているその船の最深部。妙に凍てつく部屋で、モニターでテレビ放送のジムチャレンジ開催を見ていた玉座に座っていた人物が口を開いた。

 

 

「シュバルツ。ヴァイス。いるか?」

 

「ハッ、ここに」

 

「いますよォ、ボス」

 

 

 その声と共に現れるのは、ガッシリとした体格に黒づくめの戦闘服…黒いプラズマ団の服装と軍帽を身に纏った黒髪で鋭い目つきの男と、対照的に華奢な体格に白づくめの修道服の様な物…フードを取っ払った白いプラズマ団の服装で白髪を腰までかかるロングヘアーにしているたれ目の美少女。ダフネから蟲ポケモンを奪った張本人であるシュバルツと、もう一人の幹部ヴァイスである。

 

 

「お前たち、今の放送を見ていたか?」

 

「はっ。リーグ委員会も面倒なことをしてくれましたが、我等なら問題ありません。救済は滞りなく行います。メジャークラスならいざ知らず、マイナークラスなら相手にもなりません」

 

「いい子ちゃんだねシュバルツは。救済なんてどうでもいい!アタシさえ楽しめればそれでね!まあ仕事はしますよォ、アタシを暴れさせてくれるならね」

 

「貴様!グレイ様への態度がなってないぞ!小娘め!」

 

 

 怒りと共にシュバルツが繰り出したゴルバットの鋭い翼の先端が付きつけられるも、ヴァイスは気にすることなくグイッと押しのけ笑った。

 

 

「アタシとグレイ様はそう言う契約なんだ。あんたこそ、ゲーチスやアクロマに不満があった人間だろうが」

 

「そうだ。だからこそ、真のポケモン救済を望むグレイ様へと忠誠を誓っている!N様のことは尊敬しているが、我らを見捨てて逃げてしまわれた!ゲーチスやアクロマは救済など考えてもおらん!だからこそ真の救済を望むグレイ様を主としているのだ!お前はそうではないのか!」

 

「アタシは暴れ足りないんだよォ。ゲーチスもアクロマも必要以上に暴れさせてはくれなかったから、ストレスでこんな白髪になってしまった。そんなアタシを拾って暴れることができるこの新生プラズマ団の幹部にしてくれたグレイ様には忠誠を誓ってるけど、救済なんかはどうでもいいね」

 

「なにを!」

 

「なにさ!」

 

「そこまでだ。メタグロス」

 

 

 バチバチと火花を散らす幹部二人に、グレイと呼ばれた人物が側に控えさせた色違いのメタグロスから放たれるサイコキネシスで押さえつけた。溜まらず喧嘩を止めて片膝をつく両者。

 

 

「申し訳ありません、グレイ様」

 

「すみませんでしたー」

 

「お前たちはどちらも私の大事な部下だ。そう争うな」

 

「「御意」」

 

 

 サイコキネシスなしで片膝を下ろして控える二人に満足したのか、グレイは本題に入った。

 

 

「ヴァイス。君は適当な場所で暴れてくれるだけでいい。ジムリーダーが居ようが君なら問題あるまい?」

 

「暴れていいんですね!?やった!」

 

「シュバルツはヴァイスが暴れている間にモコウ、ムツキ、ラウラから例のポケモン達を救済してこい。あれらは我ら新生プラズマ団にこそ必要なポケモン達だ。特にモコウからは確実に救済しろ。いいな?」

 

「御意」

 

「我等の悲願が達成される時まであと少しだ……心してかかれ」

 

「「ハッ!」」

 

 

 敬礼してその場を去る二人を見送り、グレイは天を仰いだ。天窓から降り注ぐ光を見ながら笑い出す。

 

 

「フフフッ、ハハハハ…もう少しだ、もう少しで私が王となる…!」

 

 

 その背後には、凍てついた灰色の体を持つ竜が静かに鎮座していた。




VSメタグロス(戦うとは言ってない)

・ダフネ
ユウリと真っ向から戦うことを決意する主人公。もうさいみんじゅつなんかに頼らない。

・ダンデ
ポケモンリーグ委員長として頑張っているバトルタワーオーナー。相変わらずのファンサービスで今でも人気が高い。

・ラウラ
プラズマ団に狙われているらしいインセクト・クイーン。ジムリーダーの中では一番小さい。

・ルリナ
髪が伸びてさらに美人になったレイジング ウェイブ。キバナとの関係が噂されている。

・カブ
ちょっと白髪が増えたいつまでも燃える男。ラウラと共に歩けて感無量だったり。

・マリィ
ちょっと不服そうなスパイクタウンのアイドル。少しぎこちないが笑えるようになった。

・ムツキ
外面だけ優雅な大空に羽ばたく大天使。体を冷やさないためロングコートを着用している。

・モコウ
ライトニング・アルバトロスは却下された猪突猛進イナズマガール。相変わらずのドジっ子。ジムリーダーではキバナの次に人気。

・ビート
ピンクの伝道者。若干不服だけどそれを見せない。ジムリーダーの中で2番目の実力者。

・キバナ
相変わらずトップジムリーダーで居続けているドラゴンストーム。

・ユウリ
長髪をなびかせマント姿のチャンピオンとしての出で立ち。まさに王者。

・グレイ
新生プラズマ団のリーダー。相棒はメタグロス。王になるのが目的…?

・シュバルツ
白ズマ団出身のグレイの腹心。Nを尊敬していたが自分たちを見捨てたと見限った。ゲーチスやアクロマのやり方じゃポケモン救済は無理だと感じてグレイに着いた。ヴァイスとは対照的な犬猿の仲。

・ヴァイス
今回初登場の黒ズマ団出身のグレイの腹心。救済はどうでもよく、ただ暴れたいだけ。ゲーチスやアクロマでは必要以上に暴れさせてくれないためストレスで髪が白くなり、グレイに着いた。シュバルツとは対照的な犬猿の仲。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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異世界来たら転生してた兄が姉になってた件

今回はエイプリルフールなので特別編。時系列は前々回のラウラ視点回の数日後。楽しんでいただけると幸いです。


「え。ここ、どこ!?」

 

 

 目を覚ますと、そこはだだっ広い草原で。辺りを見渡すが夜の様で真っ暗でしかも霧がかかっておりなにもわからない。なんでこんなところにいるのか、最後の記憶を辿ってみる。

 

 

「昨日、お兄ちゃんが死んじゃって………ぐすっ」

 

 

 そこまで言って涙が出てきた。仲がいいとまでは言わないけど、兄なのだ。引き籠もりでポケモン廃人で蟲狂いでいいところがまるでなかったけど、それでも家族だ。死んだら悲しいに決まってる。

 

 

「それで…葬式でお兄ちゃんの亡骸を見ていたら悲しくなってきて、外に飛び出したらトラックがやって来て…轢かれた?」

 

 

 後追いはするつもりはなかったのだけれど、図らずもそうなってしまった。だとするとこれは夢、なのかな?にしてはリアルに寒いんだけど。制服姿で上着を羽織ってないから夜風が冷たい。現実だとしたらどういうことなのか。もしかして流行(はやり)の異世界転生でもしてしまったのだろうか。そっちの方がしっくり来るな、うん。だとするとどんな世界かによるのだが。流行の鬼殺しの世界とかだと私なにもできずに死んじゃう。

 

 

「うん?」

 

 

 すると近くの草むらがガサガサと鳴り始めた。動物かな?と見ていると、出てきたのはぬいぐるみの様な何か。ボロボロのピカチュウのぬいぐるみの様で、お腹に点々が付いている、去年までプレイしていたウルトラムーンに出てきたミミッキュみたいな………なんでそのぬいぐるみが草むらから出てきたんだ?

 

 

「もしかして…ミミッキュ?」

 

 

 そう尋ねたら、下から手の様な布の様な物が飛び出して襲いかかってきた。ミミッキュだ、間違いない!?

 

 

「なんでホンモノ~!?」

 

 

 全速力で走って逃げる。すると追いかけてきたミミッキュの伸ばした触手(?)が足に掠って転倒してしまう。痛い。見てみると、掠った場所から血が流れていた。間違いない、これは夢じゃない、現実だ。ジリジリと迫ってくるミミッキュに、私は恐怖に駆られて手元にあったものを手当たり次第に投げつけた。

 

 

「こっちに来ないで!」

 

 

 するとコツン、と投げた何かがミミッキュのおでこに当たり、ミミッキュの姿が消えてしまった。恐る恐ると見てみると、転がるのは見覚えがありすぎる黒と緑のカラーリングのモンスターボール…ダークボールがあった。

 

 

「え?」

 

 

 ぷるぷる震えていたそれがカチンと音を立てて静まったのを見て、思わず呆ける。えっと…ここはポケモンの世界で?ミミッキュがいて、今投げたのはダークボールで…?もしかして、捕まえちゃった…?

 

 

「ど、どうしよう…」

 

 

 拾い上げてオロオロするが、とりあえず出してみる。出てきたミミッキュは襲ってきたのが嘘の様に大人しかった。思わず抱き上げると嬉しそうに揺れた。かわいい。

 

 

「…ポケモンの世界なら危険がいっぱいだし、手持ちが出来たのはよかった…のかな?」

 

 

 ゲームと違って覚えている技とかなにもわからないんだけどどうすればいいんだろう?とりあえずここがどこなのか知りたい。草むらからミミッキュが出るってことは剣盾っぽいからガラルなのかな?そんなことを考えながらとりあえず落ちていたものを拾いつつ、キテルグマなどに気を付けながら歩く。ポケモン世界なら拾ったものは私のものだよね?

 

 

「霧が晴れてきた…うん?」

 

 

 霧が晴れると、目の前に聳え立つ赤い壁があった。これを辿ればもしかして……そう思って壁を辿り、見つけた入り口の階段を上がると、そこには赤レンガと歯車と蒸気が特徴の、エンジンシティと思われる街が広がっていた。…当たり前だけど、ゲームより広い。圧倒された。

 

 

「とりあえずポケモンセンターかな」

 

 

 入り口から比較的近い場所にあるこれまた見覚えがある建物に入る。ジョーイさんにミミッキュの入ったボールを渡して一休みしていると、モニターでポケモンバトルが放送されていた。そこには、私のよく知る姿より背が伸びて髪が少し伸びた少年が映っていた。

 

 

『おおっと!ジムリーダー、ビート!ステルスロックに翻弄されるー!これは二年前の再来か!?』

 

「ビートがジムリーダーってことは本編から少し経った時系列なのかな…」

 

 

 じゃあ私の知識はまるで役に立たないな、と肩を落とす。これからどうしよう。戸籍もないから寝る場所もどうにかしなきゃいけないし、食料もなんとか確保しないと死んじゃう。…死んだかもしれないのに死んじゃうとはこれ如何に。

 

 

『先日メジャージムリーダーになったラウラ!これまでのダーティプレイが嘘の様な活躍だあ!我らが蟲の女王が戻ってきたか!?』

 

「ラウラ?蟲?」

 

 

 全く知らないワードと聞き覚えのありすぎるワードが出てきて思わずモニターを食い入るように見ると、そこには私によく似た(・・・・・・)顔立ちで麦わら帽子を被った赤髪の少女が、デンチュラをまるでスパイダー●ンの様に操ってビートを翻弄している光景があった。え、誰?女の子なのに蟲?なんで私に似てるの?XYのビオラじゃないし…?大混乱に陥っていると、ミミッキュが回復したとのアナウンスが聞こえたので慌てて取りに行く。

 

 

「はい、貴方のミミッキュは元気になりましたよ」

 

「ど、どうも…」

 

「それにしてもお客さん、ジムリーダーのラウラさんにそっくりですね。姉妹だったりします?」

 

「い、いえ、赤の他人です…多分」

 

 

 首を傾げながら、とりあえずワイルドエリアで拾っておいた換金アイテムを売り払って外に出て、喫茶店に入り一息つく。………私によく似た女の子が、蟲ポケモンを使っている…それがどうも脳裏に引っ掛かる。喫茶店内のテレビにもさっきの放送が映っていて、人気の番組なのだとわかった。

 

 

『よくやったデンチュラ!』

 

 

 全力でデンチュラを撫でて褒めまくるラウラの姿が、何故か知っている誰かと重なる。その誰かとは…私に似ていて、蟲が大好きで、ポケモンが上手い……そんな人、私は1人しか知らない。

 

 

「お兄、ちゃん?」

 

 

 明らかに年が違うし、そもそも性別からして違うんだけど、何故かそう思った。私がこの世界に来たのは偶然じゃない、そう考えれば納得できる。信じられないけど、ラウラはお兄ちゃんだ。きっとそうだ。そう考えたら、すぐさま喫茶店のマスターにテレビを指差しながら捲し立てる。

 

 

「これ、生放送ですか!?」

 

「そうだよ。そこのエンジンスタジアムの試合さ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 今いけば、会えるかもしれない。この世界での戸籍もなにもない私には、頼れるのはラウラがお兄ちゃんだという可能性しかない!

 

 

 

 

 

 

 

 ミミッキュを抱きながら街中を走り抜けて昇降機に乗り、エンジンスタジアムに入ると関係者入り口を見つけ、スタッフに止められながらも乱暴に突破して第一控室と書かれた扉に飛び込むと、そこには驚いた顔のジムリーダー、ラウラがいた。

 

 

「お兄ちゃん!……だよね?」

 

樹里(じゅり)…なのか?」

 

 

 年下の女の子を兄と呼んだ、明らかに不審者な私の名前を呼んでくれた少女の胸に、私は飛び込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラさん。ここに不審者が来ませんでしたか?」

 

「いいえ、知らないが?」

 

「そうですか、お騒がせしました」

 

「………もう出てきていいぞ」

 

 

 私をロッカーの中に隠してスタッフに受け答えした14歳の少女が私を呼ぶ声が聞こえて、外に出ると明らかに困惑した表情のラウラ…じゃない、兄が立っていて。私はここまでの経緯を話して、助けてと懇願する。

 

 

「俺みたいに転生じゃなくて…なんて言うんだ?そうだ、転移だ。転移したのか樹里は」

 

「そうみたい……ねえ、戸籍とかどうにかならない?」

 

「ダンデに記憶喪失の子だって頼めばなんとかなるかもしれないが……住むところはどうするんだ?」

 

「ゲームみたいにキャンプするとか…かなあ。キャンプセットもないけど」

 

「あ、やっぱりポケモンのゲームの舞台なのかこのガラル地方は」

 

 

 そう尋ねてくる兄に、そう言えばこの人はBW2までしかやってなかったことを思い出す。フェアリーも知らないのによくジムリーダーになれたな…しかし可愛いな。妹みたいだ。兄じゃなかったらひたすら愛でたい。

 

 

「そうだよ。ポケモン剣盾の舞台。お兄ちゃんがジムリーダーになってたり違うところもあるけど」

 

「これでも頑張ったんだぞ。………しょうがない、とりあえず今日はうちに泊まれ。何とか説得する」

 

「え、いいの?実家?」

 

「いいや、実家とは離縁した。今は親友…じゃない、彼女の家に居候している」

 

「なんて?」

 

 

 彼氏じゃなくて、彼女って言いましたこの兄は?引き籠もりでボッチで蟲狂いだった兄が恋をした?精神が男だからか女の子同士なのはちょっとツッコみたいんだけど。

 

 

「俺の彼女だ。お前も多分知ってるんじゃないか?多分、そのポケモン剣盾の主人公…だと思ってる、ユウリだ。今はチャンピオンだが」

 

「ええええええええええええ!?」

 

 

 拝啓。お母さん、お父さん。異世界来たら兄が姉になっててチャンピオンの姉ができました(?)

 

 

 思わず力いっぱい抱きしめてしまったミミッキュがぷぎゅっと声を鳴らして我に返る。けれど大混乱だ。なにがどうしてこうなった!?

 

 

 

 その後、私は「小さい頃に間違えてラウラを兄と呼んでいた、ちょっと身長が大きいラウラの従姉妹のジュリ」としてこの世界に生きることになった。お姉ちゃんになったお兄ちゃんとどう接すればいいかはわからないけど、元の世界での冷めた関係からやり直せると思えば、いいことだと思う。




ジュリはそのうち本編にも出るかもです。

・桂樹里/ジュリ
今回の主人公。兄の樹月の葬儀の最中飛び出してトラックに轢かれ、転生ではなく転移してきた。実年齢はラウラが二歳年下になっていて複雑。兄(姉)に彼女ができて姉が増えて、しかもチャンピオンで主人公だったためさらに複雑。
パートナーは偶然拾ったダークボールで偶然クリティカルが出て捕獲できたミミッキュ。蟲を好み始めた兄とは敬遠し冷めた関係だったが決して嫌いではなかった。ポケモンはダイパから全シリーズ網羅しているがストーリー勢で廃人って程ではない。

・ラウラ/桂樹月
吹っ切れて初の試合を終えたら前世の妹が乱入してきて本気でビビった元主人公。この後ジュリを連れて帰ったらユウリに「浮気か!」ってキレられて宥めるのに苦労した。

・ビート
3VS3とはいえ吹っ切れたラウラと接戦を興じた挙句に敗北したが、元のラウラが戻ってきたので内心嬉しいエリート。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヤドキング

どうも、放仮ごです。ようやくポケスペ54巻と55巻を購入しました。ブラホワもラクファイもいいぞ…!

今回はダフネVSシールドから参戦のあの男!楽しんでいただけると幸いです。


 3番道路を歩き、トレーナーを蹴散らしながら進む。私がアブリーを常に連れているからか、蟲如きだと油断したトレーナーをグソクムシャやヘラクロスで蹴散らすのはちょっと楽しい。ラウラさんもこんな感じだったのだろうか。自分の好きを押し付ける戦いは、さいみんじゅつやら小手先を行使していた昔と違って辛くない。楽しい。まあ今でもさいみんじゅつは最後の切札として残していますが。

 

 

「そろそろマクロコスモスの工場が見えてくる頃ですかね」

 

 

 ほとんどのジムチャレンジャーは空飛ぶタクシーでさっさとターフタウンに向かうらしいが、私は少しでも経験を得るために歩いて旅をしている。観光にもなるので苦ではないし、キャンプで蟲ポケモンを愛でるのがこれまた楽しいのである。日が落ちてきたので、そろそろキャンプを張ろうかと考えていたら、見覚えのある人物が見えた。

 

 

「あれは…」

 

 

 改造されたエスパータイプのユニフォームを身に纏い、丸メガネと周りにモンスターボールをいくつか浮かばせたシルクハットが特徴的な金髪の人物が反対側から歩いてきた。その人物は私に気付くと手を振って笑顔を浮かべた。

 

 

「おや!貴方は二ヶ月前にマスター道場でワタクシと共に修業をした…たしか、ダフネさんじゃありませんか!」

 

「あ、セイボリー先輩。ジムリーダーになれたんですね」

 

「もちろんですとも!このたび、この道路を守るジムリーダーに選ばれました!貴方達ジムチャレンジャーを守るナイトとなったのですよ!悪人はワタクシのエスパーパワーですぐ察知して退治しますのでご安心・アーレ!あ、それとここでは先輩呼びしなくてもよいですよダフネさん」

 

「ではお言葉に甘えて、セイボリーさんが守ってくれるんですか。それは頼もしいですね」

 

 

 二ヶ月前、共にマスター道場で修業をしたセイボリーさん。マスター道場で修業してジムリーダーになることを目指して頑張っていた人だ。確かにこの人は強い。私にイオルブの扱い方を教えてくれたり、エスパーのエキスパートだ。だけどエスパーばかりだから私の蟲ポケモンには相性が悪く練習試合では結構勝ったんですが。それでも結構苦戦したことを覚えている。師匠の次に印象に残っていた先輩だ。

 

 

「ジムリーダーとなった今ならダフネさん!あなたにも勝てますよ!」

 

「…でも、セイボリーさんは仕事をしないといけないんじゃないんですか?」

 

「ジムリーダーが守っている場所でわざわざ悪事を行おうとしている者などいようはずがありません!何かあったらワタクシのエスパーパワーでめきょっと悪人をへこませます!」

 

「ちょっと油断しすぎな気もしますが…それならば、喜んで!」

 

 

 強くなれる手段を断る理由はない。それから話し合って、さすがにフルバトルでポケモンが全部戦闘不能になるのは護衛として如何な物かとして一対一で戦うことになった。

 

 

「人知を越えしエスパーパワー!その全身で感じなさいな!ヤドキング!」

 

「お願いします、グソクムシャ!」

 

 

 セイボリーさんが繰り出したのは、ガラル地方のリージョンフォームのヤドキング。私は二ヶ月前の修業で言うことを聞く様になってくれたグソクムシャだ。どんなに危険な技でも察知することができるグソクムシャならば。

 

 

「であいがしら!」

 

「サイコキネシスで受け止めなさい」

 

 

 最速の一撃は、鈍そうに見えたヤドキングにあっさり受け止められてしまう。以前だったら簡単に貫けていたのに、強くなっている。ジムリーダーは伊達ではないということか。

 

 

「地面にアクアブレイク!」

 

「ぶきみなじゅもんです!」

 

 

 地面に水を纏った腕を叩きつけて水飛沫で視界を隠すと、逆に水飛沫を利用されて向こう側から不気味なエネルギー弾が放たれ吹き飛ばされるグソクムシャ。たしかPPも削る技だ、大技を迂闊に使えない。

 

 

「シザークロス!」

 

「近づけさせませんよ、なみのりです!」

 

 

 接近してシザークロスを叩き込もうとするも、ヤドキングの足元から発生した津波で押し流されるグソクムシャ。みずタイプでもないのになんて威力…!?

 

 

「さらに、サイコキネシスです」

 

 

 セイボリーさんがすかさず指示してサイコキネシスで津波を操り、四メートルの巨大なヤドキングを形作り、巨大ヤドキングの後ろでドヤ顔を浮かべるヤドキング。二年前のガラルスタートーナメントのキリエのした巨大ドリュウズみたいなことをできるんですか…!?

 

 

「ご覧あれ、超・能・力!超すごい能力の略!!」

 

「シザークロス!」

 

「この妙技で、ワタクシが上という事実をハッキリさせてあげましょう…!殴りつけなさい!」

 

 

 シザークロスと、水の拳が激突。押し流されるグソクムシャ。さらに連続で水の拳が振り下ろされ、直撃を避ける様に全力で後退するグソクムシャ。アレは喰らったら不味い威力なのが伝わってくる。どうすれば……

 

 

「この状態だとサイコキネシスしか行使できないのですが…物理で十分でしょう!押し潰しなさい!」

 

「ヤ~ド~キ~ン~グ~!」

 

 

 のそのそとゆっくりと、倒れ込んでくる巨大ヤドキング。その瞬間、巨体が弾けて凄まじい勢いの大津波が発生。道路を飲み込んだかと思えばまたサイコキネシスで水が集められて巨大ヤドキングを形成。押し流されたグソクムシャがブルブルと体を震わせて水を掃った。こんな完璧な攻防一体の技、どうすれば…!

 

 

「もう一度です!サイキックパワー!」

 

「…そうだ!もう一度地面にアクアブレイク!そのあと…」

 

「無駄ですよ!ワタクシに貴女方はミラクルアイ…おや?」

 

 

 水飛沫の弾ける音で私の指示が聞こえなかったらしく、巨大ヤドキングに押し潰されたかと思えば姿を消したグソクムシャに疑問符を浮かべるセイボリーさん。わざマシンで覚えさせた新技だ。以前の私とは、違う!

 

 

「ダイビング、です!」

 

「なんと!?」

 

 

 ヤドキングの足元に水たまりが現れ、そこから飛び出しヤドキングを突き飛ばしたグソクムシャに驚愕するセイボリーさん。巨大ヤドキングがのっそりと振り返るが、その前に決める!

 

 

「あくびです!」

 

「遅い!アクアブレイク!」

 

 

 水を纏った一撃が落ちてきたヤドキングに炸裂。ヤドキングは地面に叩きつけられ、巨大ヤドキングも崩れて大量の水に戻って地面を濡らす。このままたたみかける!

 

 

「シザークロス!」

 

「サイコキネシス…ああ、間に合わない!?」

 

 

 ヤドキングが体勢を立て直す前に効果抜群の攻撃が炸裂。ヤドキングは崩れ落ち、セイボリーさんはショックのあまり浮かしていたボールを全部落としてわなわなと手を震わせた。

 

 

「ジムリーダーになっても勝てないとは!ありえぬ…いやアリ・エーヌ!いったいどんなトリックを…!」

 

「一対一なのに負けるかと思いました。あんなことまでできるなんて、相変わらずすごいですよ、セイボリーさん」

 

「あ、貴女こそ、以前より強くなったんじゃないですか?ムフフ…」

 

 

 そう言うとあからさまに照れるセイボリーさん。悪い人じゃないんですよね。しかし本当に強敵だった。でも、他のジムリーダーたちと戦ういいデモンストレーションになったと思う。

 

 

「礼を言います。私はもっと、強くなれる」

 

「あなたの心の強さにサイコショック…!ワタクシのプライドがサイコブレイクです…!ワタクシがメジャーに上がれない理由が分かりました…その心の余裕が足りないのですね。ワタクシ、もっと頑張ります!ではさようなら我が妹弟子よ!セイボリーテレポート!!」

 

 

 そう言って悔しさからか涙を流しながら走って去って行くセイボリーさん。私はそれを手を振って見送り、キャンプを張って一休みするのであった。




正直クララより書くのが楽しいセイボリー。

・ダフネ
セイボリーとは兄妹弟子関係の主人公。蟲と侮って挑んでくるトレーナーを蹴散らすことに悦を感じ始めている潜在的ドS。セイボリーの事は尊敬している。グソクムシャにてっぺきとミサイルばりを忘れさせてダイビングとシザークロスを覚えさせて自分好みに変えている。

・セイボリー
シールドから遅れて参戦。ラウラ達が去った後にマスター道場に弟子入りしていたマイナークラスのジムリーダー。過去の試合を研究し、ヤドキングでキリエの大技を真似ることができるようになった。イオルブを使っているダフネを気に入って可愛がっている。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSエレキッド

どうも、放仮ごです。ポケスペ54巻でカブルモチョボマキを交換しているシーンがあって嬉しくなりました。公式も蟲ポケ推してていいぞ(なおシュバルゴの扱い)
昨日の20時にも投稿しているのでまだの方はそちらからどうぞ。

今回はかつてのビートの様に立ちはだかる謎のトレーナーVSダフネです。楽しんでいただけると幸いです。


 ガラル鉱山。蟲タイプの天敵しかいないある意味魔窟。しかしヨロイ島で鍛えた私の蟲ポケモン達に野生ポケモンなど敵ではなく、立ちはだかるトレーナーも蹴散らしながら進む。いわタイプやかくとうタイプの使い手ばかりなのでアブリーやグソクムシャで一撃で倒せるのがでかい。

 

 

「そろそろ出口ですかね…うん?」

 

 

 出口と思われる光源の前に立ちはだかる、謎の人物。私と同じミニスカートの格好で小柄だから女だとわかるが、黄色いピカチュウを模したパーカーのフードを被っており表情が見えない。腹部のポッケに両手を突っ込んで佇んでいたその人物は私に気付くと唯一露出している口を三日月状に弧を描いた。

 

 

「ここをそんなに疲弊せずに抜けてくるってことは貴女、強いよね?」

 

「は、はあ」

 

 

 声からして私よりも年下の少女だと分かる。少女はポケットからモンスターボールを握った右手を抜くと私に突きつける。

 

 

「ここから出たければ3VS3で私と戦いなさい!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ???が 勝負を しかけてきた!

 

 

「やっちゃえ、エモンガ!」

 

「よろしくお願いします、イオルブ!」

 

 

 何だか知らないけどポケモンバトルなら望むところだ。少女が繰り出してきたのはエモンガ。私はイオルブだ。

 

 

「サイコキネシス!」

 

「エモンガ、壁にでんこうせっか!」

 

 

 イオルブの放ったサイコキネシスを、素早い動きで壁まで走って回避、壁に飛びつくエモンガ。すると壁を蹴って宙を舞い、イオルブに襲いかかってきた。

 

 

「アクロバット!」

 

「さいみんじゅつ!」

 

 

 素早い動きで攻撃してきたので、零距離になるタイミングを狙ってさいみんじゅつを使うも、避けられてしまった。壁を利用した空中殺法。何て速さ。この人、強い…!

 

 

「エレキボール!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 空中を舞いながら電撃の弾を放って来たので、鏡の盾で跳ね返す。しかし跳ね返した電撃も空中をヒラリと舞って避けられてしまう。あれをイオルブで捉えるのは至難の業だ。

 

 

「サイコキネシス!」

 

「ボルトチェンジ!」

 

 

 駄目元でサイコキネシスを放つが、天井に引っ付いて避けられた上で電撃を受け、エモンガはボールに戻って行く。次に繰り出されたのはエレキッドだ。

 

 

「エレキッド、ほのおのパンチ!」

 

「むしのていこう!」

 

 

 大地を駆け抜けて炎を纏った拳を叩き込んできたので、緑色の光を放ちエレキッドに纏わりつかせてその動きを強制的に止める。今だ!

 

 

「サイコキネシス!」

 

 

 動きが止まったところを持ち上げ、地面に叩きつける。それだけで目を回し、戦闘不能となるエレキッド。やっと一体…中々きつい。

 

 

「今の私のポケモンを一匹倒すなんて…なかなかやるね、お姉さん!でも勝てないと私はあの人には会えない!だから頑張るよ!ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

 

 次のボールから繰り出されたのは、ピカチュウ。この世界で最も人気なポケモンと言っていいだろう、ポピュラーなポケモン。あのパーカーから見て、恐らく少女の相棒だ。やる気満々なピカチュウに対し、ボロボロのイオルブ。行けるか…?

 

 

「10まんボルト!」

 

「ミラーコート!」

 

「どくどく!」

 

 

 放たれた高威力の電撃を鏡の盾で跳ね返すが、軽く避けられて接近され、毒を纏った尻尾の一撃を受けてしまう。ピカチュウでどくどく!?

 

 

「なっ…」

 

「たたみかけるよ!スパーク!たたきつける攻撃!」

 

「サイコキネシス!」

 

 

 駄目だ、怒涛の連続攻撃でサイコキネシスを撃つ暇がない。追い詰められ、地面に尻尾で叩きつけられて戦闘不能になるイオルブ。よくやりました。

 

 

「グソクムシャ!」

 

「タイプ相性って知ってる?お姉さん!スパーク!」

 

「であいがしら!」

 

 

 電気を纏った体当たりと、振るわれた腕がぶつかる。力ずくでピカチュウの小さな体を殴り飛ばすが、ノーダメージとはいかない。決して小さくないダメージを受けたグソクムシャの体が揺らぐ。

 

 

「もう一度、スパーク!」

 

「ダイビング!」

 

 

 ピカチュウの突撃を、水たまりを出現させた地面に潜ることで回避。空ぶったピカチュウの足元から奇襲し打ち上げるグソクムシャ。

 

 

「10まんボルト!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 電撃を受けながらも水を纏った拳が振るわれ、水飛沫と共に双方弾け飛ぶ。立ち上がったのは、グソクムシャだった。

 

 

「私の相棒が……うん、決めた!お姉さん、名前は?!」

 

「ダフネですが…」

 

「じゃあダフネお姉さん!今からこの私、サタリアのライバルだよ!エモンガ!」

 

 

 フードを外して長い黒髪を晒し、サタリアと名乗った少女が繰り出すはエモンガ。私とグソクムシャは警戒する。

 

 

「飛びながら連続でボルトチェンジ!」

 

 

 壁を蹴り、空中を舞いながら放たれる電撃の雨。交代できなくともそもそも高威力の技だ、みずタイプのグソクムシャには効果抜群。ミサイルばりを忘れさせて物理特化にしてるから、グソクムシャじゃ届かない…!

 

 

「ダイビング!」

 

「逃がさないよ!ボルトチェンジ!」

 

 

 たまらずダイビングで水たまりに逃げるも、水たまりが消える前に電撃が撃ち込まれ放電。強制的にダイビングから排出されたグソクムシャが打ち上げられてしまう。

 

 

「そこだよ!エレキボール!」

 

 

 尻尾が振るわれて撃ち出された電撃の弾が炸裂し、弾けて広がった電撃の球体に包まれたグソクムシャは空中で戦闘不能になり、地面に崩れ落ちて倒れた。

 

 

「これほどとは…」

 

「ピカチュウは相棒、エモンガは切札だよ!」

 

「ならこちらも切札を出しましょう。ヘラクロス!」

 

 

 私の繰り出したヘラクロスに茫然とするサタリア。でんき・ひこうにむし・かくとうを出したからそりゃあ不思議でしょうね!

 

 

「ダフネお姉さん、何度も聞くけどタイプ相性って知ってる?」

 

「知ってますが、私のヘラクロスはただのヘラクロスじゃありません!メガシンカ!」

 

 

 メガペンダントを握りしめ、集中。ヘラクロスが虹色の光球に包まれて弾け飛び、姿を変えたことに目を見開くサタリア。

 

 

「なにそれ…なにそれ、私、勉強したのに知らないよそんなの!アクロバット!」

 

「これはガラルにはない力、メガシンカです!ロックブラスト!」

 

 

 素早い動きで肉薄するエモンガだが、メガヘラクロスが両腕を構えて射出した岩の弾丸を避けることに精一杯になる。凄まじい勢いで射出されていくロックブラストは徐々にエモンガを追い詰め、壁に止まったところに炸裂。叩き落とす。

 

 

「エレキボール!ボルトチェンジ!」

 

「無駄です!再びロックブラスト!」

 

 

 地上に落ちて飛行技が使えなくなったのか、遠距離攻撃で対抗してくるがロックブラストは電撃の弾も電撃も貫き、連続でエモンガを攻撃するがちょこまか避けられる。むうう、面倒な。

 

 

「壁にでんこうせっかして、アクロバット!」

 

「突撃してくださいヘラクロス!メガホーン!」

 

 

 壁に素早い動きで跳び付き、再び滑空攻撃を仕掛けてくるエモンガにメガヘラクロスを突撃させ、その角でエモンガの腹部を捉えて壁に押し付ける。これで終わりです!

 

 

「捕まえました!ロックブラスト!」

 

 

 零距離から射出されたロックブラストが炸裂し、エモンガは戦闘不能となって崩れ落ちるのだった。

 

 

「…ねえ、一人だけ強くなるなんてずるくない!?」

 

 

 エモンガをボールに戻しての第一声がこれである。そうは言いますけどね…

 

 

「第一に、私はメガペンダントを常に身に着けていて、メガシンカできますとアピールしてます」

 

「でも私、メガシンカ知らなかったもん!」

 

「第二に、メガシンカしないと勝てませんでした。貴女は強敵です、サタリア」

 

「む……反則しないと勝てないんだ、そうなんだ。…それならまあ、許そうかな」

 

 

 照れてフードを被り顔を赤くするサタリアにほっこりする。生意気だけど根はいい子なんだな、きっと。

 

 

「次戦う時はメガシンカされても私が勝つからね!容赦しないからね!モコウお姉ちゃんに会うまでに私は強くなるんだから!」

 

「私も、会いたい人がいるので応援してます」

 

「またね、ダフネお姉さん!」

 

 

 そう言ってガラル鉱山の出口から走って出て行くサタリアを見送り、私も彼女に続くのだった。




まさかまさかの再登場サタリアです。

・ダフネ
メガシンカってずるなのか?と考えさせられる主人公。ライバルが出来て結構嬉しい。

・サタリア
ヨロイ島以来の再登場。モコウと再会するためジムチャレンジに参加した、ピカチュウパーカーがトレードマークのでんきつかい。元ポケモンごっこのミニスカート。二年間で生意気になっているが本質は恋する乙女のまま。強くなるためにガラル鉱山で強い人と戦うため立ちはだかっていた。手持ちはエモンガ、エレキッド、ピカチュウ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSバタフリー

どうも、放仮ごです。妹が例のウイルスにかかったかもしれない疑惑でバタバタしてましたが無事陰性だと分かって安心し、これを書き上げました。

今回はついにVSジムリーダーラウラ!楽しんでいただけると幸いです。


 ついに辿り着いた、段々畑のあいまに家が並ぶすりばち状の町ターフタウン。ジムスタジアムはジムチャレンジャーでいっぱいだったので、予約してから街を観光する。すると地上絵が一望できる公園で、思わぬ人物と遭遇した。

 

 

「あの…もしかして、ユウリさんですか?」

 

「変装してたのにばれちゃうか。私もまだまだだなあ」

 

 

 サングラスと帽子で顔を隠し男装していたが、その所作でなんとなくわかった。ユウリさんは私が誰か気付くと体を庇うように抱えた。

 

 

「だ、ダフネ……また私に催眠する気…?」

 

「い、いえもうしませんよ!?」

 

「そっか。今はジムチャレンジャーだったね。ラウラに挑戦しに来たの?数日前から満杯御礼だよ」

 

「そうみたいですね…」

 

「でも、まだ片手で数えられるぐらいしか突破してないからラウラは凄いよね」

 

 

 そう満足げに笑うユウリさん。自分の彼女の活躍が嬉しいのが見て取れる。しかしまだそれだけしか突破してないのか…ラウラさん、容赦ないなあ。勝てるのか不安になって来ました……すると、私を見ていたユウリさんが笑顔を見せてきた。

 

 

「不安そうだね?」

 

「そりゃそうですよ…私、二年前に惨敗してますから」

 

 

 こだわりにこだわって自信があったさいみんじゅつを精神論で破られ、ポリシーを破って進化させたポケモン達も一蹴され、完膚なきまでに敗北して若干トラウマになってる自信がある。

 

 

「私もね、ラウラには何度も負けたんだ」

 

「え…?」

 

「でもね、絶対勝つんだ!って頑張っているうちに…ジムも全部越えて、チャンピオンになってたんだよ。ラウラはね、戦った敵を強くしちゃう人間なの。だから大丈夫!ダフネも、強くなってるよ!それに負けたとしても何度でも挑めばいい。トレーナーって、ポケモンと一緒に成長し続けるものだから」

 

 

 その言葉に、頷く。チャンピオンが言うと妙に説得力のある言葉だ、心に沁みる。

 

 

「そうだ、特別にヒントをあげるね。ヤローさんの時はそうでもなかったんだけど、ラウラは初心者のために「状態異常の重要性」「どうぐの大事さ」をジム戦を通して教えているらしいんだ。だから、どく・まひ・ねむりのどれかに山張ってきのみで対処するといいんじゃないかな」

 

「それ、教えていいんですか…?」

 

「ラウラがジム戦で使うキョダイバタフリーはそれぐらいずるいからね!はいこれ、あげるね」

 

 

 そう言って手渡されたのは、モモン・クラボ・カゴのみそれぞれ一個ずつ。ユウリさんに頭を下げて礼を言い、私はそろそろ予約の時間のジムに向かって走って行った。

 

 

「私、ダフネには期待してるんだ。蟲ポケモンで勝ち抜こうって人間が弱いはずないからね!」

 

 

 そんなエールを受けて、私は決意も新たにジムに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前のヤローさんのジムミッションとよく似た、一本道を遮る巨大な蜘蛛の巣をウールーの群れを利用して突き破りながら進むジムミッションを難なく攻略。レドームシとかバチュルとか使ってくるジムトレーナーを片っ端からグソクムシャのであいがしらで潰し、バトルコートまで辿り着く。

 

 

『続きましてのターフスタジアム挑戦者は、背番号はジムリーダーラウラと同じ064!ここまで一匹のみ、一撃でジムトレーナーを打ち倒してきたダフネ選手!二年前のラウラを思い出すチャレンジャーだ!対するはジムリーダー、ラウラ!2VS2のシングルバトルです!』

 

「ようこそチャレンジャー。このポケモンジムは初めのジムだから次々にチャレンジャーが来るんだ。だからジムミッションも割と厳しめに、ジムトレーナーも補助技を多用する様に言っているんだが…それをあっさりクリアしたどころか、誰かさんと同じことをやるとはな。……ダフネ、俺はお前に推薦状を渡してよかったと思ってるよ」

 

 

むしタイプのユニフォームに身を包んで赤髪に麦わら帽子を被った、私より年下のジムリーダーを見やる。ついにここまできた。

 

 

「ラウラさん…今日は、越えさせてもらいます!そのためにきた!」

 

「そう簡単に倒されていいほどジムリーダーは甘くないってなあ!」

 

 

▽ジムリーダーの ラウラが 勝負を しかけてきた!

 

 

「お願いします、グソクムシャ!」

 

「出番だ、バチュル!」

 

 

 私はグソクムシャ、ラウラさんはバチュル。いきなり初手で相性最悪だが、このまま決めさせてもらいます!

 

 

「であいがしら!」

 

「でんじはだ!」

 

 

 グソクムシャのであいがしらが炸裂する瞬間、電磁波を叩き込まれてその動きが鈍り、ちょこまかと回避されてしまう。いきなり状態異常か、聞いていた話は本当みたいですね!…あれ?

 

 

「悪いな。まひだ、痺れて動けないぜ。これでグソクムシャは……不思議そうな顔だな?」

 

「貴女がデンチュラ使いなのは知っていたのに…クラボのみ、なんで?」

 

 

 恐らく、デンチュラの卵から生まれたバチュルを先鋒に出すことは分かっていた。それほど思い入れが高く、また状態異常にもできるポケモンだからだ。だけど、持たせていたクラボのみが発動しない。読みは当たっていたのに!

 

 

「残念だったな。特性、きんちょうかん。バチュルがいる限りきのみは食べれないぞ。…エレキネット!」

 

「そんな……シザークロス!」

 

「いとをはく!」

 

 

 放って来た電気が迸る蜘蛛の巣を叩き斬り、全身を痺れさせ糸に巻かれながらも肉薄するグソクムシャ。こうなったらごり押すしかない!ダイビングは潜っている途中で痺れたら意味ないから使えない、ならば!

 

 

「アクアブレイク!」

 

「きゅうけつ!」

 

 

 バチュルが懐に潜り込む前に、強烈な一撃がバチュルを叩き潰す。同時にきんちょうかんが解けたのか、クラボのみを食べて麻痺を治すグソクムシャ。このまま頑張れば、行ける!

 

 

「根性あるな。ローレルのグソクムシャか?」

 

「はい、兄さんから借り受けました。アーマルド達が帰ってくるまでは、共に戦う仲間です!」

 

「そういうことならこっちも本気で挑まなきゃ失礼だな」

 

 

 そう言って繰り出したのはバタフリー。来る…!バタフリーを一度ボールに戻し、ダイマックスバンドからエネルギーで巨大化。アンダースローで背後に投擲するラウラさん。

 

 

「俺の手持ちも虫の息か。だがお前にとってのむしのしらせだ。キョダイマックスだ、バタフリー!」

 

 

 現れたのは、美しい巨大な翅を持つ姿となったバタフリー。私もグソクムシャをボールに戻し、巨大化させて背後に放り投げ、グソクムシャをダイマックスさせる。いざ勝負!

 

 

「ダイストリーム!」

 

「キョダイコワクだ!」

 

 

 グソクムシャの放った激流が炸裂し、バタフリーの巨体が揺らぐものの黄緑色の蝶の幻影を放ってきた。しかし眠ることはなく、戦闘続行できるようだ。…あと一発ぐらいなら耐えれるはず、次で倒せる!

 

 

「もう一度、ダイストリーム!」

 

「ダイジェット!」

 

 

 しかしバタフリーの方が速く、グソクムシャは崩れ落ちて戦闘不能になってしまった。そんな…!?

 

 

「麻痺を引いたようだな。運が悪いことだ」

 

「キョダイコワク…どく・まひ・ねむりのいずれかを引き起こす……」

 

 

 失念していた。眠らなければ勝ち確定だと思い込んでいた。ならもう、こちらも切札を切るしかない。

 

 

「ヘラクロス!…行きますよ、メガシンカ!」

 

「…ほう?」

 

 

 繰り出すと同時にメガペンダントを握りしめ、メガシンカするヘラクロス。その光景に会場の観客はざわめくが、ラウラさんは全然驚いておらずむしろ興味深そうに眺めていた。

 

 

「ヘラクロスもメガシンカできるのか。それがダフネの切札だな」

 

「知っているんですね…メガシンカ。なら話は早いです、行きます!」

 

「キョダイコワクだ!」

 

「ロックブラストで撃ち落としなさい!」

 

 

 放たれる蝶の幻影を、岩の弾丸で飛来する前に撃ち落としていくメガヘラクロス。その光景に驚くラウラさん。できるとは思わなかったが、やってみるものだ。

 

 

「そのままバタフリーにロックブラスト!」

 

「ダイジェット!」

 

 

 キョダイコワクは諦めて効果抜群のダイジェットで攻めてきたがもう遅い。バタフリーの翅を撃ち抜き、撃墜。戦闘不能となった。その光景に茫然としていたラウラさんは我に返り、笑みを浮かべた。

 

 

「…ははは、まさかそんな方法でキョダイコワクを攻略されるとは!お前最高だなダフネ!ジムチャレンジにおいてジムリーダーに勝った証、むしバッジだ!受け取れ!」

 

 

 そう言って握手し、手渡されたむしバッジを受け取り胸を撫で下ろす。…私、ラウラさんを越えられたんだな。その事実が無性に嬉しかった。




メガシンカVSキョダイマックス、メガシンカの勝利!

・ダフネ
作戦が上手く行かなかったけど、咄嗟の判断で何とか勝利に持ち込めた主人公。目標を一つ達成できた。

・ラウラ
むしタイプのジムリーダー。「状態異常の重要さ」と「どうぐの大事さ」を初心者に教えるジムを営業している。対策させておいてきんちょうかんで無駄にさせるなど性格が悪い。メガシンカについては既知の様だが…?ジムリーダーとしての手持ちはバタフリーと、デンチュラの卵から生まれたバチュル。

・ユウリ
お忍び男装チャンピオン。一見男にしか見えないコーデでラウラの家から外に出て観光を満喫してる。プラズマ団が出たら即急行できるように伝説ポケモンを持ち歩いている抜け目のなさは健在。自分の正体に気付いたチャレンジャーにはラウラの攻略法をこっそり教えている親切な人。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアブソル

どうも、放仮ごです。UAが220000を越えましたありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はプラズマ団再来。強くなったダフネは対抗できるのか。楽しんでいただけると幸いです。


「むしバッジを手に入れたなら次に目指すのはバウタウンのルリナだ。心してかかれよ。……ところで、ここのところ初見で状態異常の対策してくる人間多いんだが何か知ってるか?」

 

「あ~……彼女さんに聞けばいいんじゃないかと思います」

 

 

 そう言うと困った顔になるラウラさん。あんなに自由な彼女を持つと大変なのだろう。

 

 

「ユウリか…なにやってるんだあのチャンピオン。まあいいや、気を付けろよ。…こいつは極秘だが、この先の5番道路を守っていたジムリーダーのサイトウがプラズマ団と思われる女に襲われて負傷したらしい。今は警察が出張って警備を固めているが、気を付けるんだぞ」

 

「っ…はい」

 

 

 そんな情報を聞きつつラウラさんに見送られ外に出る。……いる、プラズマ団が、すぐそこに。

 

 

「…あ、ちょっといいか?頼みたいことがある」

 

 

 どこかに電話を掛けるラウラさんは気にせず、私は5番道路を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

5番道路は基本的に一本道だが、大きな脇道がある。キャンプにも最適な場所で、ちょっとした憩いの場にもなってる場所だ。そして……人気(ひとけ)が少ない場所でもある。

 

 

「ポケモンを解放するか痛い目を見るか。どっちがいいんだ?ええ?」

 

「か、解放、します…!だから放して…」

 

 

 少年トレーナーが、側にアブソルを控えさせたプラズマ団と思われる女性に首根っこを掴まれて持ち上げられている光景に出くわし、慌てて草陰に隠れる。やっぱりだ、近くに警察の人が数人とガーディが倒れているところから見て、ジムリーダーがいなくなって警備が薄くなったところを狙ったのだろう。卑劣なプラズマ団らしい。なんにしても、止めねば!

 

 

「アブリー、マジカルシャイン!」

 

「アブソル、みきり!…気付いてないとでも思ったかい?」

 

 

 不意打ちで繰り出したアブリーの背後からのマジカルシャインを、見もせずに防いでみせるアブソル。少年トレーナーを投げ捨て、こちらに振り返ったのは白髪を腰まで届く長さに伸ばしてシュバルツとは正反対の白装束に身を包んだ少女だった。こんな、私と同じくらいの少女がプラズマ団…!?

 

 

「なに驚いてるのさ。こんな年端もいかない餓鬼が悪党やってるのが信じられないって?失礼しちゃうねえ!」

 

 

 私がアブソルに警戒する中、少女は白装束をはためかせて自分を指差し凶悪な笑みを浮かべた。

 

 

「アタシは新生プラズマ団幹部、ヴァイス!お前のポケモンも置いて逝きなあ!」

 

「幹部だというのなら話は早い。私のポケモンを返しなさい、プラズマ団!ヘラクロス!」

 

 

 アブリーをボールに戻し、代わりにヘラクロスを繰り出す。アブソル、カンムリ雪原に生息するあくタイプのポケモンだ。むし・フェアリーのアブリーでもいいけど、本気で行かなきゃ勝てない、そう思った。

 

 

「はっ!アンタなんかのポケモンなんざ知らないね!エアスラッシュ!」

 

「メガホーン!」

 

 

 メガホーンでなんとか風の刃を弾くが、四倍ダメージのそれだ。不味い。一気に決める…!

 

 

「メガシンカ…!」

 

「…はは、ハハハハハハッ!」

 

 

 メガシンカしてメガヘラクロスにすると、ニタニタと笑い始めるヴァイス。萌え袖になっている左袖をめくると屈んで左足に手をかざした。そこには見覚えのある虹色の石がはめ込まれたアンクレットがあった。まさか、キーストーン!?

 

 

「グレイ様、グレイ様グレイ様あ!ジムリーダーもジムチャレンジャーも雑魚ばかりでつまらない、と思ってたらこれですよ!ガラルでメガシンカの使い手に出会うとは!」

 

「な、なんですか…?」

 

 

 大笑いするヴァイスに、妙な恐怖を怯えてしまい後ずさる。堅実なシュバルツとは違う、妙な恐ろしさがこいつにはある。

 

 

「アブソル、メガシンカァ!」

 

 

 キーストーンがはめられたアンクレット…メガアンクレットが光り輝いてアブソルの胸元の輝きと繋がり、アブソルは光に包まれると全身の毛が片目が隠れる程に伸びて逆立ち翼が生えた様な見た目となって尻尾や角も伸びたメガアブソルに変貌して咆哮を上げた。

 

 

「アタシはね!カロスじゃちょっとは名の売れたトレーナーだったんだ。でもね、相手のポケモンを死なせてしまって追放されてプラズマ団入りさ!弱い奴がポケモンを使うから悪いんだ。だったら解放させてやるのが優しさってね!」

 

「そんな身勝手な理由でポケモン解放を謳うのですか!許しません!ミサイルばり!」

 

「みきってエアスラッシュだよ!」

 

 

 両腕にミサイルばりをセット。高速で連続射出するメガヘラクロス。しかしヴァイスを背に乗せたメガアブソルは地を蹴ってミサイルばりを見切って回避、風の刃を飛ばしてくる。

 

 

「メガホーン!」

 

「隙あり!ふいうち、エアスラッシュ!」

 

 

 メガホーンで風の刃を弾くも、ヴァイスを下ろしたメガアブソルのふいうちによるしっぽがメガヘラクロスの背中を打ち、体勢が崩れたところにエアスラッシュが叩き込まれる。不味い、あと一発でももらえば終わる…!

 

 

「ならば…インファイト!」

 

 

 あと一発喰らえば終わりならば防御は捨てる。渾身の猛打がメガアブソルに炸裂、殴り飛ばす。すると天気ががらりと変わり、吹雪いてくる。こんな時に…!ただでさえ素早いのに、メガアブソルの姿が見えにくくなる。不味い、完全に吹雪になる前にとどめを刺さなければ。

 

 

「ミサイルばり!」

 

「みきり!」

 

 

 追い打ちのミサイルばりは見切られて防がれる。駄目だ、あの技がある限り決定打を与えられない。…待て、なんで吹雪いてくる?今は春だ、陽気も暖かいのになんで…まさか!?

 

 

「前にばかり集中していていいのかい?ツンベアー、きりさくだよ!」

 

「っ!グソクムシャ!」

 

 

 吹雪に隠れて私の背後にいつの間にか佇んでいた、ツンベアーが氷柱を爪に付けた腕を振り下ろしてきたので、咄嗟にグソクムシャを出して応戦。ギリギリ気付けた。一対一なんて正々堂々戦う相手じゃなかった、油断した。恐らくこの吹雪はツンベアーのあられだ。

 

 

「であいがしら!」

 

 

 渾身の一撃がツンベアーのどてっぱらに炸裂、殴り飛ばす。その間にメガアブソルのエアスラッシュを自主的にメガホーンで弾くメガヘラクロス。駄目だ、指示が追い付かない。元実力者のトレーナーと言うのは嘘ではないらしい。二体を同時に操ってくる、それだけで私は追い詰められる。不味い…!

 

 

「これで終わりさあ!アブソル、エアスラッシュ!ツンベアー、ゆきなだれ!」

 

 

 ツンベアーのゆきなだれで動きが止まったところに、メガヘラクロスに襲いかかるエアスラッシュ。グソクムシャが間に立ちはだかって受け止めたことでメガヘラクロスは無事だが、ききかいひでグソクムシャがボールに戻ってしまう。次のポケモンを出している暇はない。メガヘラクロスは動けない、まずい…!?

 

 

「ヒートスタンプ!」

 

 

 次の瞬間、少女の声と共に膨大な熱量を持った何かが落ちてきて、雪雪崩による大量の雪が蒸発すると同時に、メガアブソルとツンベアーが吹き飛ばされる。落ちてきたのは、セキタンザン。上の道を見上げると、そこには黒いジャケット姿でサングラスに帽子で顔を隠した人物がいた。

 

 

「貴女は…!」

 

「なんだあ?邪魔するなよ、こんな楽しいことをさあ!なみのり!」

 

「なっ!?」

 

 

 メガヘラクロスと共に流される勢いの巨大な波が5番道路の下道に広がる。しかしその前にボールにセキタンザンを戻した上の人…ユウリさんは、飛び降りると同時に次のポケモン…フシギバナを真下に繰り出し、その左手の薬指につけたキーストーンがはめ込まれた指輪、メガリングを輝かせた。

 

 

「メガシンカ…!」

 

 

 頭部と尻尾に新たな花が咲いて背中の花は巨大化してヤシの木の様に、足腰がさらに頑強になった姿に変貌したメガフシギバナの頭部に飛び乗るユウリさん。続けて蔦を伸ばして警察とそのポケモン達を持ち上げて波から退避させた。すると波風で帽子が取れて、同時にサングラスも外したその顔に笑みを引きつらせるヴァイス。

 

 

「その子、私の大事な人の目にかけてるトレーナーなんだよね。こんなところで潰されちゃたまらないなあ」

 

「その顔、まさかチャンピオン…?こんなところになんでいるのさ!」

 

「休暇中ですが何か?ハードプラント!」

 

「マジか!?」

 

 

 さらにきゅうきょくわざを行使するユウリさん。メガアブソルとツンベアーはあっという間に巨大な蔦に捕縛されるも、ヴァイスは繰り出したトゲキッスで空に舞い上がって逃げ出していた。あいつ…!

 

 

「ちい!ここまでだ!そこの女ァ!今度会ったらねじ伏せてポケモン解放してやるからな!覚えてやがれ!」

 

「逃がすか、ムゲンダイナ!」

 

 

 そう吐き捨てて手にしたボールにアブソルとツンベアーを戻して回収し、飛び去って行くヴァイスと、それをムゲンダイナに乗って追いかけて行くユウリさん。私はそのまま、立ち尽くすしかなかった。




他の地方からも結構プラズマ団になった人多そうってイメージから生まれたキャラ、ヴァイス。

・ダフネ
メガシンカを得て強くなったと思ったらプラズマ団もメガシンカを有していて勝てるのか分からなくなった主人公。ユウリの助けが無かったら結構危なかった。

・ラウラ
ダフネに情報を与えた物の絶対やらかすと確信してユウリに救援を頼んでおいた元主人公。情報の出し方が下手。

・ユウリ
ラウラに連絡もらって急ごうとしたけど、ファンに見つかってファンサしていたら遅れて到着したチャンピオン。メガシンカを手に入れてさらに圧倒的に。ちなみに指輪型なのは本人のリクエストで…?

・ヴァイス
新生プラズマ団の幹部の一人。名前の由来はドイツ語で「白色」。元カロスのエリートトレーナーでメガアンクレットを持つメガシンカの使い手だが、やりすぎて相手のポケモンを死なせてしまい追放されたところをプラズマ団に入った。弱い人間がポケモンを使うのは間違っているという考えでポケモン解放を謳うゲーチスタイプの人間。チャンピオンに挑むほど無謀じゃない。手持ちはアブソル、ツンベアー、トゲキッスと白一色。

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VSトサキント

どうも、放仮ごです。今回はジムリーダーのルリナ戦です。二年前とは一味違うバトルを楽しんでもらえたらなと思います。楽しんでいただけると幸いです。


 ヴァイスを追いかけて行ったユウリさんを見送り、5番道路を歩いて進む。

 

 

「…まだ、私じゃプラズマ団に勝てない…」

 

 

 シュバルツにヴァイスと、幹部が続いたのもあるが、メガシンカしても通用しなかった。まさかプラズマ団までメガシンカを有しているとは……もっと強くなる必要がある。そのためにはやはり、ジムを踏破しなければ。

 

 

「…タネマシンガンの技マシン、ありましたよね…?」

 

 

 ワイルドエリアを一望できる巨大な橋をバッグの中を漁りながらとぼとぼ歩く。トレーナーに勝負を挑まれることもなく、普通に橋を渡りきって、バウタウンに入る。我が故郷、バウタウン。ガラルの中東部に位置する市場やレストランに多くの 人が集まる港町。町の岬には、かつてガラルが災厄に見舞われた際に2匹のストリンダーによって守られたと言い伝えられている灯台があることでも有名だ。

 

 

「兄さんには…会わないでいいか」

 

 

 またプラズマ団と出会ったと言えば小言を言われそうだ。やめとこう。そう思ってバウスタジアムに足を進める。二年前からずっとメジャージムリーダーの座を死守している、このバウタウン出身のジムリーダー、ルリナ。私は彼女の使うグソクムシャと兄のグソクムシャを幼心に見て育った。ある意味、ラウラさんにとってのカブさんの様な存在だ。だから、負けられない。

 

 

 夜にキャンプしてそのまま街へ入ったので、今回は一番乗りらしい。二年前と変わってないらしい水仕掛けを解き、新たにタネマシンガンを覚えさせたヘラクロスでジムトレーナーを蹴散らしながらジムミッションを突破。青いメッシュの入った黒髪をロングヘアーにしたルリナさんと向かい合った。インタビューによるとイッシュのカミツレというジムリーダーに影響されたらしい。

 

 

『本日のバウスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!かつてのラウラを思わせるむしつかい、ダフネ選手!対するはジムリーダー、ルリナ!3VS3のシングルバトルです!』

 

「朝早くからよくぞいらっしゃいました!貴女、このバウタウン出身ね?何度か見た覚えがあるわ。同じ町の出身で、あの控えめに言っても難しいジムミッションを突破する冴えた頭脳の持ち主…相手にとって不足はないわ。冴えた頭脳でどんな作戦を繰りだそうとも、私と自慢のパートナーが全て流し去ってあげるから!」

 

 

▽ジムリーダーの ルリナが 勝負を しかけてきた!

 

 

 左足を頭上まで上げて大きく腕を振り抜いて豪快に投げられたダイブボールから飛び出したのは、トサキント。私はヘラクロスだ。一気に決める…!

 

 

「メガシンカ…!」

 

「まさか、まだジムリーダーでも数人しか使ってないメガシンカを使うジムチャレンジャーがいるなんて!でも関係ないわ、押し流します!みずのはどう!」

 

「ヘラクロス、タネマシンガンです!」

 

 

 放たれた水の塊を、タネマシンガンで撃ち抜いてトサキントに攻撃を炸裂させた。…そう、確信していたのに。トサキントは無傷だった。

 

 

「うずしお。その程度の勢いじゃ私のポケモンの勢いは押し流せない!」

 

「っ…ならばさらに重たい一撃ならどうでしょう!ロックブラスト!」

 

「つのでつく!」

 

 

 相性は悪いが、水の勢いにも負けない重い連射を叩き込むも角で的確に破壊される。そんな…!?

 

 

「貴女と私、相性は最悪だったようね!みずのはどう!」

 

「メガホーンで叩き斬って近づきなさい!」

 

「なっ!?」

 

 

 斬。水の塊を文字通り真っ二つにして、突撃するメガヘラクロス。近づいたらこっちものだ!

 

 

「メガホーン!」

 

「こうそくいどうからのつのでつく!」

 

 

 双方自慢の角と角が激突。どっしり構えた一撃と、高速で加速しての一撃で衝撃波が発生し、周囲に散乱した水が跳ねる。勝者はヘラクロスだった。

 

 

「さすがはメガシンカ…しかし、その力を持て余している様ね」

 

「ッ」

 

「図星かしら。それでは私達には敵わないわよ!チョンチー!」

 

 

 続けて繰り出されたのはチョンチー。みず・でんきタイプだ。でんきタイプ対策なのだろう、だがこちらの唯一有利を取れる技であるタネマシンガンは草技。関係ない。

 

 

「タネマシンガン!」

 

「うずしお」

 

 

 タネマシンガンをうずしおを盾にされ受け止められる。駄目だ、完全に対策されている。例えはっぱカッターでもあのうずしおの前では意味がないだろう。でんき・むしのクワガノンがいれば…いいや、今はいないんだ。取り返すためにも、今のメンバーで突破しなければ。

 

 

「来ないならこっちから行くわよ!スパーク!」

 

「上に向けてロックブラスト!」

 

 

 電撃を纏った体当たり。恐らく麻痺狙い。ならばと避けることはやめて上空にロックブラストを放つ。

 

 

「一体何を…?エレキボール!」

 

「メガホーン!」

 

 

 放たれたエレキボールをメガホーンで打ち消す中、訝しむルリナさんだったが、それに気付くとハッと目を見開いた。

 

 

「バブルこうせんで上に迎撃!」

 

「大きく後退してタネマシンガン!」

 

 

 上に向けて放たれ、落下速度で威力が上がったロックブラストは侮れない。迎撃のために上方に向けてバブルこうせんを放つ隙だらけのそこに、渾身の高速度タネマシンガンが炸裂。ダダダダダッ!と全身打ちのめされたチョンチーはダウンし、さらに迎撃し損ねたロックブラストまで喰らって完全に戦闘不能となった。よし!

 

 

「メガシンカとはいえ私をここまで追い込むなんて…でもね。最後の一匹じゃないの、隠し玉のポケモンなのよ!カジリガメ!」

 

 

 そして繰り出されたのはルリナさんの相棒、カジリガメ。ダイマックスか…ラウラさんの時もそうだったが、ダイマックスしたらメガヘラクロスの利点である特性のスキルリンクが本領発揮できないためダイマックスはできない。このままで行く。

 

 

「スタジアムを海に変えましょう!カジリガメ、キョダイマックスなさい!」

 

「ヘラクロス、ここが踏ん張りどころです!」

 

 

 相対するメガヘラクロスとキョダイカジリガメ。昔に兄さんと見た、ポケウッド制作の巨大OLの話を思い出す構図だ。勝負!

 

 

「跳躍して、タネマシンガン!」

 

「首を伸ばして捕まえなさい!」

 

「なっ!?」

 

 

 空中に飛び出し、翅を羽ばたかせて滞空してタネマシンガンを繰り出すメガヘラクロスだったが、カジリガメは巨大な前足でタネマシンガンを受け止めると首を伸ばして攻撃してきて。技でもなんでもないそれに驚いているうちにメガヘラクロスはその巨大な口で噛み付かれてしまう。キョダイマックスによる体の変化を利用した攻撃、確か二年前ラウラさんもサイトウ戦でそんなことをしていたような…あの人の影響!?そんな攻撃してくるなんて…!

 

 

「ヘラクロス!?」

 

「噛み砕けないか…そのまま叩きつけなさい!」

 

 

 四肢に力を入れて踏ん張るメガヘラクロスがお気に召さなかったのか、叩きつけるように指示するルリナさんに応えてメガヘラクロスをフィールドに叩きつけるキョダイカジリガメ。メガヘラクロスは満身創痍で倒れ伏す。まだだ、まだ終わってない!

 

 

「私達からの贈り物、全身で受け止めてよ!キョダイガンジン!」

 

「っ…ヘラクロス、立って!インファイト!」

 

 

 放たれる尖った岩を伴った水流の一撃が降り注ぐ中、フィールドを駆けるメガヘラクロス。翅を広げ後ろに向けた両腕から蒸気を放出して加速したメガヘラクロスはキョダイカジリガメの懐に飛び込み、甲羅の腹部に蒸気を噴出して加速した己が拳と角を大きく振り上げた。

 

 

 ドゴンッ!

 

 

 その勢いと衝撃に、爆音と共にキョダイカジリガメの巨体が浮かぶ。今だ!

 

 

「タネマシンガン!」

 

 

 ドドドドドッ!と凄まじい勢いで無防備な腹部に放たれるタネマシンガン。キョダイカジリガメはその猛攻に引っくり返り、崩れ落ちて縮んで行った。

 

 

「なっ…!なんたることっ!!自慢の最強メンバーなのにまとめて凄まじい勢いで押し流されちゃった!」

 

 

 髪を掻き毟って本気で悔しがるルリナさんに、勝てたんだと実感し。元の姿に戻ったヘラクロスと拳を合わせてグータッチした。




ポケスペオマージュ首が伸びるカジリガメ。

・ダフネ
メガシンカを使ったとはいえ三タテを成し遂げた主人公。結構大苦戦だったが自信を取り戻すことはできた。わざマシンで技を調整するタイプ。

・ルリナ
二年間で手持ちを少し変えたジムリーダー。でんきタイプ対策にチョンチーを入れた他、キョダイマックスできるカジリガメをジム戦用に育て直した。カミツレリスペクトで髪を伸ばしている。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSプルリル

どうも、放仮ごです。今回はあのキャラが再登場。楽しんでいただけると幸いです。


 空飛ぶタクシーでエンジンシティに直行してもいいのだが、修行するべく第二鉱山に通ることにする。なにせ次はむしタイプの天敵タイプの一つ、ほのおタイプのジムだ。そのあとにはひこう、フェアリー、ドラゴンと蟲が苦手なタイプが続くのだ。有利なはずのみずタイプ相手にあんな苦戦するなど、今後が不安でしかない。

 

 

「であいがしら!」

 

 

 次にメインウェポンとなるであろうグソクムシャを鍛える。野生ポケモンと出くわすたびに一蹴していく。まだだ、これではグソクムシャの経験が増えるだけで私自身なにも強くなれない。トレーナーと戦いたい。ポケモンの強さで足りないなら私自身が強くなるしかないんだ。

 

 

「……ここで待ってみますか」

 

 

 わざわざここを通る人だ、腕自慢か強くなりたい人間が多いだろう。そう思って広場の様になっているここでキャンプを張る。それで丸一日、野生ポケモンの相手をしながら待っていると、人の気配。ぶつくさ文句を垂れながらその人物は現れた。

 

 

「お兄ちゃんもお兄ちゃんだよなー。せっかくだからジムチャレンジを楽しめばどうだ?って。プラズマ団が暴れている時期にしなくてもいいじゃん、私の強さは保証するって言われたけどさ。確かにお兄ちゃんにもルリナさんにも勝ったけど本気じゃないジムリーダーに勝ってもなあ」

 

「あの…」

 

「あ、はいなんですか?ってビート君がいないと思ったらまさかのライバル枠!?」

 

「ライバル?私なんかがです?」

 

 

 サタリアと違って戦うことなくいきなりライバル言ってきた少女に首を傾げる。…何故か、ミミッキュを抱えていてラウラさんとそっくりな顔の人だった。血縁なんですかね?

 

 

「あ、えっと、違くて…私のライバルになってくれないかなあって」

 

「いいんですか?私こそ、強くなるために強いトレーナーと戦いたかったんです。ラウラさんやルリナさんに勝った貴方なら、相手にとって不足はない」

 

 

 そう言うとにやりと笑う少女。ラウラさんにそっくりな笑みだ。血縁者で間違いなさそうだ。

 

 

「私はジュリ。貴女は?」

 

「私はダフネ、蟲使いを名乗ってます」

 

「お兄ちゃんと同じか。わざわざ蟲を使ってジム戦を越えたってことは強いね」

 

「お兄ちゃん?……ラウラさんのことですか?」

 

 

 年齢は間違いなくこのジュリと名乗った少女の方がラウラさんより上だ。兄と呼ぶ理由はわからないが、男勝りなあの人ならそう呼ばれていても不思議じゃない。

 

 

「よくわかったね。お兄ちゃん…ジムリーダーラウラは私の従姉妹なんだ。小さい頃間違えてお兄ちゃんと呼んでからこの呼び方が定着しちゃって…他の地方から戻ってきたらジムリーダーになってて驚いたんだよね。ジムチャレンジ勧められて、やることにしたんだ。でもやるなら、ライバルがいた方がいいよね」

 

「はい。そう思います…!そのボールの数…3VS3でよろしいですか?」

 

「うん、そうしてくれると嬉しいな。……6VS3とかゲームだとザラにあるから助かるなあ」

 

「何か言いました?」

 

「ううん、なにも?それよりも、やろうか」

 

 

 ミミッキュを手にしたダークボールに戻し、別のボールを手に構えるジュリさん。私もボールを手にして、同時に投げた。

 

 

「お願いします、アブリー!」

 

「いってらっしゃい、プルリル!」

 

 

 私が繰り出したのはアブリー、ジュリさんは青い♂のプルリル。ミミッキュにプルリル…ゴースト使いか?

 

 

「可愛いよね、ゴースト。私ホラー映画大好きでさ。お兄ちゃんとはちょっと趣味が合わないんだよね。蟲も少し怖いし」

 

「それはちょっと同意しかねます。ようせいのかぜ!」

 

「あら残念。シャドーボール!」

 

 

 ようせいのかぜを突き破って襲いかかるシャドーボールを宙返りで避けるアブリー。この子もようやく戦闘慣れしてきた。

 

 

「みずのはどう!」

 

「しびれごな!」

 

 

 地面に叩きつけられて小さな波となって襲いかかる攻撃をプルリルの頭上を飛びながらしびれごなを振りまくアブリー。ちょこまかとした攻防はアブリーの得意分野だ。ジュリさんは思うように戦えないせいか焦った顔だ。

 

 

「やっぱりリアルなポケモンバトルは違うなあ…どうしようこれ」

 

「周りを飛びながらマジカルシャイン!」

 

「じこさいせい!」

 

 

 周囲を舞うアブリーの攻撃を受けながら再生し続けるプルリル。でも時間の問題だ。痺れが入ってじこさいせいが止まり、致命的な一撃が入る。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

「…なんてね?みちづれ」

 

「なっ!?」

 

 

 プルリルが倒れる瞬間、目を見開いてそれに釘付けになったアブリーは一緒に崩れ落ちてしまった。やられた…!

 

 

「アブリーを倒せるポケモンがうちにはいなかったからこうするしかなかったんだ。次だよ、ゴビット」

 

「くっ…グソクムシャ!」

 

 

 次に繰り出してきたのはゴビット。私はグソクムシャだ。相性はいいはずなのに、不気味さが抜け出さない。

 

 

「であいがしら!」

 

のろい……シャドーパンチ」

 

「ダイビング!」

 

 

 こちらの攻撃を受けながら拳の幻影を飛ばしてきたので水たまりを形成し潜って回避。しかしジュリさんは不気味な笑みを崩さない。

 

 

「失敗したね?じだんだ」

 

「しまっ…!?」

 

 

 攻撃が失敗した時威力が上がる技。ゴビットに地面を揺らされ、ダイビングが解除され現れた水たまりから飛び出すグソクムシャに、拳を振りかぶるゴビット。

 

 

「メガトンパンチ」

 

 

 強烈な一撃が顔面に炸裂。吹き飛ばされ、崩れ落ちるグソクムシャ。ききかいひが発動するかしないかの体力圏内にいつの間にか減らされてのとどめの一撃に愕然となる。

 

 

「さっき出した時にのろいを使わせてもらったんだ。逃げられたら厄介だからね」

 

「…そう、でしたか。貴女は強い、まるでラウラさんと戦っているような末恐ろしさです。でも負けない、負けていたら私は…大事なポケモン達を取り戻せない!ヘラクロス!メガシンカ!」

 

 

 出すと同時にメガペンダントを握りしめ、メガシンカしたヘラクロスに驚愕するジュリさん。でもその驚きは、なんでここに?という顔だった。

 

 

「メガシンカ……ガラルにも普及してるなんて…でもやることは変わらない、のろい!」

 

 

 そうジュリさんが言うとバタリと倒れるゴビット。同時にうぐっと苦しむメガヘラクロス。そして最後のポケモンであるミミッキュが繰り出される。またのろい…!

 

 

「さあて、メガヘラクロスが倒れるのが先か、ミミッキュを倒しきるのが先か。チキンレースしようか」

 

「貴女…性格悪いですね?」

 

「確実に勝てるならその方法を使うよね。ミミッキュ、かげぶんしん!」

 

 

 分身してメガヘラクロスを取り囲むミミッキュ。それを従えるジュリさんの姿は悪魔の様だ。心底恐ろしい。だけど、ミミッキュとメガヘラクロスの相性は抜群だ。

 

 

「シャドークロー!」

 

「上に避けて分身全てにタネマシンガン!」

 

 

 全ての分身が下から影の爪を伸ばしてきたのを、翅を広げて天井付近に浮かびタネマシンガンを高速乱射。かげぶんしんが次々と掻き消え、本体を炙り出す。

 

 

「そこお!」

 

「特性ばけのかわ、一撃なら…」

 

「ロックブラスト!」

 

「っ、かげうち!」

 

 

 一撃目でばけのかわを剥がし、二撃目から五撃目でミミッキュを打ちのめす。一撃入れられたが大ダメージは与えた。あと少し…!

 

 

「じゃれつく!」

 

「上に避けてメガホーン!」

 

 

 ミミッキュの突進を、翅を広げて上に回避。メガホーンを上から叩き込んでミミッキュを叩き潰した。その光景に呆けた顔を浮かべるジュリさん。信じられない、という表情だった。

 

 

「…ああ、負けた。のろいで倒れるまで時間稼ぎすればよかったなあ」

 

「実際かげぶんしんし続けられたら私が負けてました。…なんで、直接攻撃を?」

 

「なんだろうな、真っ向勝負したくなったのかな。…やっぱりそっちの方がポケモンバトルは楽しいもんね?」

 

 

 そう笑顔で語り手を差し出すジュリさんと、私は自然に握手していた。ああ、この人となら。私は強くなれる。そう思ったのだ。




ゴースト使いジュリ。ラウラがポケモン廃人代表ならジュリは陰キャ戦法代表。

・ダフネ
初めて戦う陰キャ戦法に翻弄された主人公。目的のためなら坑道内でキャンプも辞さない。グソクムシャを育てるつもりがあっさり倒されてしまって頭を悩ませている。ジュリと言う強力なライバルを得た。

・ジュリ
ラウラに言われてジムチャレンジに参加することにしたポケモンプレイヤー。年齢的にはラウラより年上だが変わらずお兄ちゃんと呼ぶ。ホラー映画が大好きでゴーストポケモンを好み、蟲ポケモンは怖いから苦手。ラウラの家に居候中はポケウッドのホラー映画ばかり観賞していた。

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VSキュウコン

どうも、放仮ごです。ゼノブレイド2を久々にやったら再燃して書く時間を失ってました、申し訳ない。ゼノブレイド、蟲エネミーがリアルなのもあって好き。ルクスリアのカナブンみたいな奴だけ苦手ですが。でかすぎるんよ…

今回はVSカブ戦。楽しんでいただけると幸いです。


「ところでダフネ。旅に同行していい?」

 

 

 共にキャンプし、カレーを作ってポケモン達を回復させていたところ、ジュリさんがそう提案してきて首を傾げる。

 

 

「え?私の旅ですか?」

 

「さっきの叫び、プラズマ団にポケモンを奪われたんでしょ?無茶しそうだからついていこうかなって。仲間は多いにこしたことはないんじゃない?」

 

「ジュリさん……危険、ですよ?」

 

「友達を見捨てられる人間じゃないんだよね、私」

 

 

 そう笑うジュリさんとラウラさんの顔が重なる。ううむ、底なしにいい人だ。…私が過去にしでかしたことを知ったらどう思うんだろう。貴女が兄と慕う人にさいみんじゅつをかけたり殺しかけました、なんて言えるはずもない。

 

 

「どうしたの?」

 

「い、いえ…助かります。いつも道端のトレーナーと戦って鍛える訳にも行きませんから」

 

「私もまだこっちのバトルに慣れてないから練習に付き合ってくれると嬉しいな」

 

「? 他の地方だとバトルも違うんですか?」

 

「う、うん。ソウダヨ?」

 

 

 明らかに目が泳いでいるがあまり踏み込まないでおこう。誰しも人に言えない秘密を抱えているものだ。

 

 

「とりあえずエンジンシティに行こうか。多分今のダフネなら勝てるよ」

 

「勝てますかね…?不安なんですが」

 

「カブさんはおにびとか搦め手も使うから、私に勝てたなら行けるよ、きっと」

 

「メインのグソクムシャがあっという間にやられたのであまり自信がないです」

 

「それについてはごめんなさい」

 

 

 ほとんど何もできずに倒されたグソクムシャ。相性はそうでもない相手にああなのだ、不安でしかない。蟲はどんなに工夫しても蟲だ、打たれ弱いのは変わらない。それをどうにかしなければ。兄さんはてっぺきを覚えさせることで耐久力を向上していたけど、私はやられる前に状態異常にするか一気に倒すスタイルだ。逆に一撃で倒されたら元も子もない。

 

 

「いやさ、グソクムシャでどうにかする気満々だけどさ」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「カブさんって切札にマルヤクデ使うから、ロックブラスト覚えているヘラクロスで押し切れるんじゃないかな?それにやけどだってヘラクロスの特性で…」

 

「……そうだ、ヘラクロスの特性って…」

 

 

 ポケモン図鑑を見る。……あ、これなら行けるかも。

 

 

「この作戦でやってみます!」

 

「うん、その意気だ。頑張ろう。…私はどうしようかなあ」

 

「プルリルとゴビットで押し切れるのでは」

 

「プルリルは打たれ弱いしゴビットは物理メインだからやけどが痛いんだよね。のろいも交換されたら意味がないし」

 

「…なんで自爆覚悟のパーティーなんです?」

 

「ミミッキュが強いから問題ないかなって」

 

「それミミッキュが倒されたら終わる奴じゃないですか…」

 

 

 そうやってキャンプの中で議論を交わしながら、夜は更けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エンジンスタジアムのロビーでジュリさんと別れ、ジムミッションに挑む。ほのおタイプのポケモンを状態異常を駆使して捕らえ、あっさりジムミッションをクリア。共にチャレンジャーの出入り口から歩いてきたカブさんと向かい合う。

 

 

『続きましてのエンジンスタジアム挑戦者は、背番号064!メガシンカ使いにして蟲使いダフネ選手!対するはジムリーダー、カブ!3VS3のシングルバトルです!』

 

「君は蟲使いだそうだね。勝つために君達はいつもトレーニングしているだろう!だが戦う相手も同じように努力している!勝負の分かれ目は本番でどれだけ実力を出せるかどうかだってことを教えてあげよう!」

 

「私はもう、努力のやり方を間違えない!」

 

 

▽ジムリーダーの カブが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行って来い、コータス!」

 

「お願い、イオルブ!」

 

 

 カブさんが繰り出したのはコータス。私はイオルブ。ひでりによる日光がフィールドを照らし蒸し暑くなる。ちょっとガチすぎませんかね!?

 

 

「おにび!」

 

「そうして、来ますよね!交代、ヘラクロス!」

 

 

 やけどにするおにびを放って来たのでイオルブに指示することなく交代。やけどを負うヘラクロス。本来なら持続ダメージと共に攻撃力が下がるが、ヘラクロスはそうではない。

 

 

「こんじょうか…むしつかいはやけどを無力化するのが得意だね」

 

「お褒めに預かり光栄です。ロックブラスト!」

 

 

 こんじょうで攻撃力が上がり、ロックブラストを放つ。しかしそこはジムリーダー。一筋縄ではいかなかった。

 

 

「こうそくスピン!」

 

「なっ!?」

 

 

 手足と頭部を引っ込め、甲羅を回転させてロックブラストを弾き飛ばしてきたことに驚愕する。そんな…!?

 

 

「ならば、メガシンカ!」

 

「メガシンカか…ガラルでは使い手も少ない、強力な力だ。でもどうやらその体は熱がこもりやすいようだね」

 

「ヘラクロス…?」

 

 

 カブさんの言うとおりだった。こんじょう消えることを考慮した上でのメガシンカだったが、熱が籠ったのかしきりに全身から蒸気を噴出させるメガヘラクロス。ここのところ酷使していたせいか、限界が近い…?

 

 

「そ、その前に!ロックブラスト!」

 

「かえんほうしゃとふんえんだ!」

 

 

 その瞬間、コータスの頭部の穴から炎が吐かれ、さらには甲羅の頂点から噴火の如く炎を放出しながら回転するコータス。その姿はまるで火の独楽。ロックブラストすら寄せ付けず、そのまま突進してきた。まずい!?

 

 

「交代、イオルブ!サイコキネシス!」

 

 

 交代すると同時にコータスを念動力で持ち上げるイオルブ。回転すら止まり身動きが取れないコータスは顔を甲羅から出してきた。今だ!

 

 

「そのまま地面に叩きつけなさい!」

 

 

 グシャリ、と。自身の甲羅と地面に頭部が挟まれたコータスはそのまま崩れ落ちた。なんとかなった……ヘラクロスはメガシンカしたまま、ボールの中で休んでいる。心なしかボールまで熱くなってきた。相当な熱が籠っていることが分かる。ひでりで不利だけど…グソクムシャに頑張ってもらうしかない。まずはイオルブでできるだけ削る。

 

 

「コータスをあんな方法で倒すとは。かつて僕も苦戦した戦法だったのに、恐れ入るよ。でも負けてやるつもりはないよ、キュウコン!」

 

「イオルブ、さいみんじゅつです!」

 

「でんこうせっか!」

 

 

 イオルブの十八番にして私が唯一誇れる技は、あっさりと避けられる。さすがに無理ですよね…

 

 

「キュウコン、ひのこだ!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 跳躍し、口にめいっぱい溜めこんだ、ひでりで威力が上がったひのこを空中からばら撒くキュウコン。ミラーコートを張るも、いくつものひのこを跳ね返したが簡単に身を捻られて避けられる。だけど…時間稼ぎは終わった。

 

 

「ほのおのうず!」

 

「…おつかれさま、イオルブ」

 

 

 ひでりが終わった。ここからはこの子の独壇場だ。

 

 

「グソクムシャ!」

 

「むっ…持っていたか」

 

「この子なしで挑むほど無謀じゃありません!ダイビング!」

 

 

 水たまりに潜り、すぐさまキュウコンの足元に水たまりを出現させて体当たりを喰らわせるグソクムシャ。効果は抜群だ。

 

 

「せめてもの、おにび!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 おにびを受けながらも、零距離からの水を纏った腕が叩き込まれ、キュウコンは戦闘不能となった。

 

 

「交代、頑張ってください!ヘラクロス!」

 

「カブよ頭を燃やせ!動かせ!勝てる道筋を探すんだ!マルヤクデ、キョダイマックスで姿を変えて燃え盛れ!」

 

 

 繰り出されたのはキョダイマルヤクデ。だがしかし、私のやることは変わらない。

 

 

「上空に飛んで、ロックブラスト!」

 

「キョダイヒャッカ!」

 

 

 放たれた炎の猛撃を、両腕と腹部から蒸気を噴出させて上空に打ち上がり回避するメガヘラクロスの振りかざした両腕から放たれた岩の連射が変形していたマルヤクデの全身の腹を穿つ。両腕から一度に五連射、合わせて10連撃が炸裂。キョダイマルヤクデは大爆発を起こし、縮んで崩れ落ちた。急所を狙った一撃だ、これは効いただろう。そう、胸を撫で下ろしていた時だ。

 

 

「ヘラクロス!?」

 

 

 メガシンカが解けると同時にヘラクロスが倒れ伏し、私は勝利のアナウンスを聞くことなく慌てて駆け寄るのだった。




ついに限界が来て倒れてしまったヘラクロス。蒸気を噴出するボディなのに熱気の中にいたらそりゃ倒れます。

・ダフネ
ジュリと共に旅することになった主人公。こんじょうを利用したがそろそろきつくなってきた。なんでヘラクロスが倒れたのかが分からないため涙目で慌てて駆け寄った。

・ジュリ
ダフネと共に旅することにしたラウラの妹分。あやうくこの世界の人間じゃないと明かすところだったが、別の地方にいたで通している。メガシンカに関してはダフネより詳しい。ミミッキュを切札として信頼している。

・カブ
現在、二年前の事件で手に入れたコータスを新たな手持ちとして使っている。ラウラが状態異常、ルリナが天気(雨)を教えるため、カブは天気と状態異常を同時に扱うことにした。

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VSゴビット

どうも、放仮ごです。今回はジュリVSカブとなります。楽しんでいただけると幸いです。


「ヘラクロス…」

 

「落ち着いてダフネ、大丈夫だから」

 

 

 カブさんからバッジを受け取り、慌ててポケモンセンターに駆けこんだ私と、ついてきたジュリさん。ジョーイさんに預けてしばらくすると、結果の書かれた紙を持って戻ってきた。

 

 

「短期間に慣れない過剰なエネルギーを何度も受けたことと筋肉の酷使による疲労が溜まった様ですね。当分は安静にした方が良いかと。バトルすることはおすすめしません」

 

「そんな…」

 

 

 メガシンカのことをろくにわかってないのに馬鹿みたいに毎回使うからこうなってしまったのかと落ち込んだ。とりあえずヘラクロスをポケモンセンターに預けてジュリさんの提案で共に公園に移動する。

 

 

「他の地方のポケモン図鑑に載ってたけど、ヘラクロスはメガシンカが終わると酷い筋肉痛に悩まされるんだって。今、思い出したよ」

 

「そんなの、ヘラクロスは一度も…」

 

「ダフネに心配かけたくなくて、見せなかったんじゃないかな。信頼されてるんだね」

 

「…そんなにきついのなら教えてほしかった。ヘラクロスは思う存分戦いたくて私の手持ちになった、はずなんです。メガシンカで強くなって、ここまで最前線で戦い抜いて…彼に頼りすぎていました、限界なのにも気付かなかった…トレーナー失格です」

 

「私達はポケモンの言うことがわからないからね。しょうがないよ」

 

 

 そう笑うジュリさんに対してますます落ち込む私。やるべきポケモンのケアを怠った。トレーナーである私のミスだ。このままヘラクロスを、蟲ポケモン達を使い続けていいのか、そうとさえ思えてきた。

 

 

「…このまま使ってていいのか、とか思ったらダメだよ」

 

「なんで…」

 

「それは貴女を信じて戦ったポケモン達への裏切りも同然だってことだよ。ポケモン達は私たちトレーナーを信じて危険な作戦でも実行してくれるんだから、その信頼に応えなきゃ嘘だよ」

 

 

 そう言って立ち上がり、私の手を取り立ち上がらせるジュリさん。引かれるままにジュリさんについていく。

 

 

「ど、どこに?」

 

「見せてあげるよ。ポケモンとトレーナーの信頼関係を。トレーナー歴二ヶ月ちょいの私がね」

 

「に、二ヶ月ですか!?」

 

 

 それは聞いてないのだが。え、私が修業のためにヨロイ島に行っていた時期じゃないか。そんなトレーナーがいるんですか…?すると自信満々だった顔が失言に気付いたのか口を押えるジュリさん。

 

 

「…あ、今の無し。今のは冗談、ね?こっちに来たのが二ヶ月前ってだけだから、うん」

 

「あ、はい」

 

 

 冗談とは思えない。二ヶ月で培ったというポケモンたちとの絆、ぜひとも見せてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

『続きましてのエンジンスタジアム挑戦者は、背番号000!不気味な戦法でラウラとルリナを破ったゴースト使いジュリ選手!対するはジムリーダー、カブ!3VS3のシングルバトルです!』

 

 

 観客席からジュリさんとカブさんが睨み合うのを見守る。そこまで言うなら見せてもらいます、トレーナーとポケモンの信頼の形を。

 

 

「ダフネ君とは友人らしいね。彼女は…大丈夫だったかな?」

 

「問題ないですよ。そこで私の試合を見守っているはずです。…あれは、貴方のせいじゃない」

 

「そうかい。ならば心置きなく、君を倒させてもらおう。努力がそう簡単に実るとは思わない事だ」

 

「ならば、こちらも容赦なく呪い殺させてもらいます」

 

 

 そう言って離れて、ジュリさんはまるでゾンビの様な動きをするとピタッと固まり、手にしていたボールのスイッチを押してゴビットを繰り出した。カブさんはコータスだ。ひでりがフィールドを照らす。

 

 

「やけどをさせている暇はなさそうだ。こうそくスピン!からのかえんほうしゃ、ふんえん!」

 

「メガトンパンチ」

 

 

 甲羅に籠って高速回転、頭部の穴からの炎と頭頂部からの炎を吐きながら突撃するコータス。それに対して拳を振るうゴビットだが、回転しながら避けられてしまい、回転する炎の直撃を受ける。回転し続けるコータスと、炎の凄まじい勢いに耐え凌ぐゴビット。そしてジュリさんがにやりと笑う。

 

 

「じだんだ!」

 

「むう!?」

 

「メガトンパンチ!」

 

 

 コータスを押さえつけながら地面を何度も踏みつけて振動を起こすゴビット。メガトンパンチが失敗した故の高威力だ。コータスは逃げられずに直撃を受けて回転が止まり首を出し、そこに鉄拳が叩き込まれ、戦闘不能となる。

 

 

「なかなかやるね。ならばこれはどうだ、キュウコン!おにび!」

 

「今更遅いよ。その場でメガトンパンチ、からのじだんだ!」

 

 

 キュウコンの繰り出したおにびに直接拳を振るい、空ぶるゴビット。次の瞬間凄まじい振動がキュウコンを襲う。ジュリさんの指示を信頼してその通りに行動している。そこには確かな信頼関係が見て取れた。

 

 

「ごめんね。のろい!」

 

「なんだって!?」

 

 

 そしてゴビットは倒れ伏し、同時にのろいを受けて残りの体力を削られたキュウコンが倒れた。…なんの疑いもなく、勝つために自滅を選んだ…。これが、ポケモンの信頼?

 

 

「…まさか、のろいのダメージ一回で落とせる圏内に体力を削るなんてね。どうしてわかったんだい?」

 

「ちょっとアバウトだけど計算して…あ、いえなんでもないです」

 

 

 また失言したのか口を押さえるジュリさん。あの人は何度失言したら気が済むんだろう。

 

 

「よろしく、プルリル!」

 

「ひでりもあと少し、だな。ならば勝負と行こう、マルヤクデ!キョダイマックスだ!」

 

 

 キョダイマックスするマルヤクデに対してダイマックスもしないジュリさん。龍の様な姿でプルリルを見下ろすキョダイマルヤクデの雄姿は、試合中にはそんな余裕はなかったが心底美しいと思う。

 

 

「ダイマックスしないというのなら容赦はしない!キョダイヒャッカ!」

 

「交代、ミミッキュ」

 

 

 プルリルでなにをすることもなく、放たれたひでりで威力が上がったキョダイヒャッカを、ミミッキュのばけのかわで受け止めるジュリさん。

 

 

「ならば、ダイアーク!」

 

「ミミッキュ、ダイマックス。ダイウォール」

 

 

 恐らく隠し玉であろうダイアーク…おそらくかみつくかかみくだく…が襲うも、ダイマックスさせてダイウォールで受け止めるミミッキュ。ダイマックスを枯らせるのが目的か?だけど連続のダイウォールは失敗しやすいはずだが…

 

 

「ダイアーク!」

 

「交代、プルリル。じこさいせい!」

 

 

 ほのおのうずに巻かれていたものの、ゴーストタイプならば抜け出せることを利用した、再びのプルリルとの交代。出すと同時にじこさいせいさせて受け止める。それだけでボロボロだ。しかし心配するそぶりも見せずジュリさんを見て頷くプルリル。そこには確かな信頼関係があった。

 

 

「…タイプ一致ではないとはいえ効果抜群を耐えた上で回復するとは。だがここまでだ。ダイマックスが終わろうと、僕のマルヤクデは強い!」

 

 

 今のは、ごく自然にプルリルを出して体力を上手く一撃圏内に調整してダイマックスを終わらせたんだ。一度戦った私には彼女たちがなにをしたいのか、わかってしまった。既にカブさんは彼女の術中だ。

 

 

「かみくだく!」

 

 

 その指示をしたその瞬間、カブさんの敗北は確定した。恐ろしいその指示を、ジュリさんは顔色一つ変えずに死神の宣告の如く告げた。

 

 

「みちづれ」

 

 

 かみくだくが直撃する寸前、プルリルの目が見開かれ……かみくだかれたプルリルと共にマルヤクデは崩れ落ちた。沈黙がフィールドを、観客席を支配する。

 

 

「…馬鹿な、この僕が……乗せられた…?」

 

『と、共に両者戦闘不能……ミミッキュを残しているチャレンジャーの勝利です!』

 

 

 カブさんが信じられないとばかりに膝をつき、客席がざわつく。一方ジュリさんはボールに納めることなく歩み寄ってプルリルを抱きかかえ、放心しているカブさんからバッジを受け取ると一礼してその場を去って行き、私も席を立ってロビーへ急ぐ。

 

 

「ジュリさん」

 

「あ、ダフネ」

 

 

 普段着のパーカーに着替えて出てきたジュリさんを出迎える。ひそひそとロビー内はジュリさんを見て囁く人が多かったので、ジュリさんの背を押して外に出て公園に向かった。

 

 

「あれが、ポケモンとトレーナーの信頼関係、ですか?」

 

「そうだよ。勝つために、私の指示に従ってくれる。どんな指示でも応えてくれる。信頼がないとできないよ」

 

 

 そう断言するジュリさんに、思わず押し黙る。確かにあれは、それぞれが信頼しないとできないことだった。なんでそんなに信頼できているのかわからないが、少し羨ましいと思った。だけど…

 

 

「…貴方の戦術、多分反感を買うのでこれからは控えた方がいいかと…」

 

「え、なんで?」

 

「事前に言われてないとポケモンを平気で犠牲にして勝利を掴む人にしか見えませんよ…」

 

「ええ…」

 

 

 翌日、ネットニュースで「冷酷なゴースト使いジュリ」と紹介されてジュリさんが遠い目になったのは言うまでもない。




ラウラとそっくりな顔で黒髪だから「ラウラのダークサイド」とか掲示板で言われているジュリ。

・ダフネ
ヘラクロスが倒れたことを自分のせいだと責め立てる主人公。ジュリの戦い方でちょっとだけ「ツッコミ」という元気を取り戻した。

・ジュリ
すぐ口を滑らすラウラの妹分。ゲーム感覚が抜けておらず、罪悪感はあれどのろいみちづれ戦術をすることに忌避感はまるでなく、認識が世間一般とずれてることに気付いてない。駆け引きが上手い。手持ちとの確かな信頼関係がある。

・カブ
メガシンカの次は番外戦術にも程があるみちづれで倒されてついに膝をついてしまったジムリーダー。勝利を確信していた故に心労が酷い。

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VSキテルグマ

どうも、放仮ごです。ついにお気に入りが1800を安定して越えました。消えて増えたりを繰り返していたので嬉しいです、これからも頑張らせていただきます!

今回はワイルドエリアでの激闘。楽しんでいただけると幸いです。


「はい。お預かりしたヘラクロスは元気になりましたよ」

 

「ヘラクロス…ありがとうございます、ありがとうございます!」

 

 

 ジョーイさんに礼を言い、ヘラクロスが入れられたボールを受け取る。ボールの中を恐る恐る見てみると、ヘラクロスは気にするなとでも言いたげにふんすと鼻息荒くVサインを作っていた。ああ、私の信頼に応えてくれると、そう考えていいんですね…

 

 

「ね、大丈夫だったでしょ?」

 

「はい…!」

 

 

 当分はメガシンカを控えねば。そのためにも……ワイルドエリアで、鍛えよう。

 

 

「ダフネ、ジュリ!」

 

 

 ジュリさんと二人でエンジンシティを出てワイルドエリアに向かおうとしていると、エンジンシティの出口で呼び止められる。振り返ると、そこには息を荒くしたカブさんがいた。

 

 

「まずは失礼したね、ジュリ。まさかあんな作戦で来るとは。呆けたままジムバッジを渡して悪かった。アレも立派な戦術だ、いいものを見せてもらったよ。君にはジムバッジを受け取る資格があるんだ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「よかったですね、ジュリさん」

 

「そうだな、あれも立派な戦術だ。どうやら間に合ったみたいだな」

 

「これで今季は二回目かしら。ダフネ、ジュリ、おめでとう!貴方達はカブさん相手でも勝ち残ると思ってたのよね」

 

 

 さらにラウラさんとルリナさんまでやってくる。これは…?

 

 

「カブさんからジムバッジをもらえるジムチャレンジャーは本当に少ないの。だから応援の意味でみんなで見送りをするのよ」

 

「ダフネ、ジュリ。お前たちに推薦状を渡してよかったよ。ジュリはまあ、エンターテイメントとしてはアレだが新しいバトルの形を見せているわけだし気にすることはないと思うぞ」

 

「むしろダイマックスが新しくて私の戦法の方が古いような…なんでもないです、はい」

 

 

 ジュリさんがなにやら反論してたが、ラウラさんに睨まれて口を押さえた。ははは…

 

 

「ダフネもだ。メガシンカは強力だが、もっと蟲ポケモンのことを理解しないとな。好きなだけで理解がないのは駄目だ」

 

「は、はい…!」

 

 

 ヘラクロスが倒れたことを知っているのか厳しめのラウラさんに頭が上がらない。するとカブさんが手を叩き、注目を集めた。

 

 

「お小言はそこまでだ、ラウラ。彼女たちは精一杯戦った。エールを送らせてくれ!いけいけ!ジュリ!やれやれ!ダフネ!…君達を待ち構えるジムリーダーはツワモノぞろいだ。だが君達なら勝ちぬける!ポケモンを信じて突き進め!」

 

「ありがとうございます…!」

 

「生で聞けたあ…ちょっと感動」

 

「ジュリ…お前、本当いい加減にしろよ?気持ちは分かるけど」

 

 

 カブさんのエールに何故か必要以上に感動しているジュリさんに呆れ顔のラウラさん。

 

 

「わかってるよーだ、お兄ちゃん」

 

「「お兄ちゃん!?」」

 

「え、あ、あはははは。こいつは従姉妹でして…小さい頃兄と間違えられて…」

 

 

 ジュリさんのの呼び方に目を丸くするジムリーダー二人に空笑いしながら説明するラウラさん。そんな彼らを尻目に、私達は旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーれーでー?」

 

「はい、ジュリさん」

 

 

 全速力で走る私と、それに追従するジュリさん。後ろからは木を薙ぎ倒す轟音が聞こえてくる。

 

 

「鍛えたいから遠回りしていこうってこもれび林の方に向かったはいいんだけど、どうしてこうなってるんだっけ?」

 

「はい。多分大丈夫と前を通ったらこんなことに」

 

「なんでキテルグマに追いかけられてるのかなー、ほんとにー!?」

 

 

 全速力で走りながら振り返る。そこには全速力でダッシュしてくるキテルグマがいた。本来なら人に慣れてないポケモン達は近づくことすら稀なのに、なんで追いかけられてるんでしょうね!

 

 

「とりあえず、なんとかしよう!ミミッキュ!」

 

 

 走りながらボールを構えて繰り出すジュリさん。器用ですね本当に。私も習って相性はいいはずのアブリーを繰り出す。

 

 

「じゃれつく!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 

 ミミッキュを前衛に、アブリーが後衛で攻撃を繰り出す。咄嗟にして抜群のコンビネーション。しかし、キテルグマはとんでもない行動に出た。

 

 

▽キテルグマの ぶんまわす !

 

「「なあ!?」」

 

 

 キテルグマはじゃれつくを繰り出したミミッキュをぶん回した腕で相殺するともう一回転、ミミッキュの顔面を鷲掴みにするとそのままぶん回してマジカルシャインを掻き消し、アブリーに投げつけてきたのだ。結果、ミミッキュアブリー共にノックアウト。

 

 

「この反撃の仕方…まるでトレーナーと戦っているみたいです」

 

「もしかして、プラズマ団のせいで解放されたポケモン…?」

 

「それです。きっとそうです。人に慣れているのもそのせいですよ」

 

 

 プラズマ団の影響で解放されたポケモンは少なくないと聞く。一度鍛えられ、人間に懐いたポケモンが逃がされて野生として暮らしているとは聞てはいましたが……

 

 

「とにかく、襲われちゃたまらないので倒しますよ、ジュリさん!」

 

「倒すだけなら簡単なんだけどなあ…どうしよう」

 

 

 ヘラクロスの入ったボールを取り出し繰り出した私と違い、手にしたボールを出すことをためらうジュリさん。

 

 

「プルリルですか?」

 

「うん、でもまたみちづれを使ってこの場を切り抜けるなんてトレーナーとして失格なんじゃないかって…」

 

「とりあえず、私は戦います!メガシンカはできないけれど…私のヘラクロスは最強なんだ!インファイト!」

 

▽キテルグマの インファイト !

 

 

 ヘラクロスの猛打と、キテルグマの猛打がぶつかる。しかしもふもふの体で衝撃が吸収され、ヘラクロスに一方的に拳の猛打が襲いかかる。これでは、駄目だ。押し負ける。

 

 

「強い…!」

 

「キテルグマはインファイトを自然に覚えない筈…わざレコードか!」

 

「めんどくさいことをして逃がしてくれやがりましたね前の持ち主!?」

 

「わ、私も加勢する!ゴーストには格闘技は効かないよ、ゴビット!メガトンパンチ!」

 

 

 ゴビットが繰り出されたと同時に拳が繰り出され、殴り飛ばされるキテルグマ。ゴビットの特性はてつのこぶし。「拳で殴る」技の威力を1.2倍にする特性だ。さすがに衝撃を吸収しきれなかったらしい。するとキラリとキテルグマのぬいぐるみのような無感情な目が光ったような気がして。

 

 

▽キテルグマの しっぺがえし !

 

 

 次の瞬間、目にも留まらぬ速度の拳の連撃がヘラクロスとゴビットを襲い、殴り飛ばした。今のはしっぺがえし…後攻になると威力が二倍になる技。ヘラクロスには効果はいまひとつだがゴビットには効果は抜群だ。まさか、ぶんまわすとしっぺがえしの悪技二つも持っているなんて…!多分、エスパーにボコボコにされたかくとう使いとかだったんでしょうね、元の持ち主。

 

 

「…悪技二つもあるのは無理だ、私のポケモンじゃ太刀打ちできない。もうみちづれを使うしか…」

 

「諦めないでください!本当に自分のポケモンが好きなのなら!一緒に勝利を味わう達成感を知るべきです!」

 

 

 弱音を吐き始めたジュリさんを一喝する。だって、まだ、ゴビットは立っている。なのにトレーナーが諦めたら駄目だろう。

 

 

「…ゴビット、信じてくれる?」

 

 

 そうジュリさんが恐る恐る言うと、振り返らずに手を突き出しサムズアップを作るゴビット。ジュリさんは今にも泣きだしそうだ。

 

 

「私さ、ポケモンはお兄ちゃんみたいにガチ勢でもないエンジョイ勢だから、勝たせるために、あんな戦法を取っていたんだ。でもやめる、私はゴビット達と一緒に勝利を喜びたい。あんな悲しい勝利はもう嫌だ!シャドーパンチ!」

 

「その意気です、ジュリさん!」

 

 

 ノーマル・かくとうには効果がないシャドーパンチを繰り出すジュリさんとそれを疑うことなく実行するゴビットに、こちらも心が熱くなる。見れば、キテルグマは最大級の一撃を繰り出そうとしていた。

 

 

▽キテルグマの ギガインパクト !

 

「ヘラクロス、メガシンカが無くても貴方は強い。私はそれを、知っています!メガホーン!」

 

 

 全身を引き絞ったキテルグマの突進と、私の言葉に奮い立たせたヘラクロスの光り輝く角が激突する。そして、ヘラクロスは全身の力を振り絞ってキテルグマの巨体を持ち上げ、背後に引っくり返した。

 

 

「!!??!」

 

「ダフネ、ヘラクロスを宙に!」

 

「はい、ヘラクロス!」

 

 

 ジュリさんの言葉のままにヘラクロスの翅を広げさせて飛ばせると、引っくり返ったまま反動で動けないキテルグマに最大級の一撃が見舞われた。

 

 

「じだんだ!」

 

 

 強烈な地面の揺れに、私達も立ってられなくなり、同時にキテルグマは沈黙。私とジュリさんは目を合わせ、それぞれの立役者に駆け寄り、掲げられたポケモン達の手とハイタッチする。

 

 

「やりました、ヘラクロス!さすがです!」

 

「やった、やったよ!一緒に、勝てたんだ!」

 

 

 ジュリさんのその顔は、どこか憑き物が落ちたかのような笑顔だった。




それぞれ気にしていたことを払拭した回でした。

・ダフネ
ヘラクロスの強さを信頼している主人公。なお今回、イオルブを出せば完勝していたであろうことは完全に頭から抜け落ちていた。蟲ポケモンの生態までは詳しくないが、今後はケアをしっかりやろうと思っている。

・ジュリ
自分はトレーナーとして弱いから、ポケモン達を勝たせるためにどんな方法でもやっていたラウラの妹分。ミミッキュが真っ先にやられて戦意喪失していたものの、ダフネの叱咤とゴビットの頑張りで、一緒に勝利することの喜びを知った。

・ラウラ
モスノウで空飛んできたジムリーダー。ダフネとジュリの保護者だと思っている。ジュリの戦い方には理解はするけど納得はしていなかった。ダフネと違って蟲ポケモンの生態にも詳しい。

・ルリナ
ジュリにはのろいみちづれでやられたジムリーダー。今までにない戦い方なので気に入っている。

・カブ
ジュリの戦い方にかつての自分を思い出しショックを受けていたジムリーダー。自分と同じく乗り越えてくれると信じて送り出す。

・キテルグマ♀
とくせい:もふもふ
わざ:ギガインパクト
   インファイト
   しっぺがえし
   ぶんまわす
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。物音に敏感。プラズマ団に襲われたかくとうおうに解放されたポケモン。前期のジムチャレンジを7つ勝ち上がっている実力者のポケモンだった。前の持ち主は身体が丈夫でいつも抱きしめていて、今回もただ単にダフネとジュリに抱きしめようとしていただけで襲おうとしたわけではない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSダストダス

どうも、放仮ごです。ネタ集めのために動画漁っていたら遅くなりました申し訳ない。今回は恐らく今作最後のオリキャラが登場します。

今回はナックルシティ路地裏での激闘。楽しんでいただけると幸いです。


 ポケモンを鍛えつつ、ワイルドエリアを抜けてナックルシティに辿り着いた私達。結構無茶して服がボロボロなので、ブティックに寄って服装を一新する。ジュリさんはジップアップパーカーとフリルミニスカンツとお洒落に、私は元の服装の色違いを着揃えた。やはりブレザーが落ち着くのだ。

 

 

「ジュリさんはまたパーカーなんですね」

 

「うん、太陽の下だとこれがないと眩しくて…私、夜型だからさ」

 

「ゴーストタイプと仲がいいのはそれで…」

 

 

 そんな雑談をしながら駅の上の広場で昼食にする。ポケモンセンターで買って来たサンドイッチだ。いつもカレーばかりなのも飽きが来るので他のものが食べれるときは優先したい。手持ちたちも全員出して、きのみを与える。ちょっとした憩いの時間だ。

 

 

「ヘラクロスの筋肉のケアってどうすればいいんでしょう…」

 

「そりゃマッサージとか?」

 

「なるほど。ラウラさんに蟲ポケモンの手入れの仕方を聞いた方がいいかもですね」

 

「お兄ちゃん、蟲にだけは詳しいからねー」

 

 

 そんな事を話しながら食べていると、広場の片隅で一人の女の子がこちらを見ていることに気付く。古びた服装で、何か言いたげにこちらを見つめている。

 

 

「孤児でしょうか?」

 

「…ううん。ちょっと待ってて」

 

 

 ジュリさんが席を立ち、1人で少女の元に歩いて行き、何やら二言三言話すと、何かを受け取って戻ってこようとして立ちどまり、こんな台詞が聞こえてきた。

 

 

「ああ、最後に。この手紙を渡すだけでいいの?」

 

「……元気でねって伝えて。お願い…」

 

「任された。貴女こそ、元気でね」

 

 

 ジュリさんがそう言うと不思議なことが起こった。少女が満足げな笑みを見せたかと思うとその姿を煙の様に消したのだ。あまりのできごとに震える私に歩み寄って両肩を押さえるジュリさんを見上げる。

 

 

「え、ええ!?」

 

「もちつけ、じゃない落ち着いて。あれはただの幽霊、OK?」

 

「OKじゃないです、幽霊を見ちゃったんですよ!?なにもらったんですか!?」

 

「ただの手紙だよ。本当なら二年前に渡せたはずの手紙を渡せなくて泣いてたからね。私が持っていくことにしたんだ、アラベスクタウンまで」

 

「…平気なんです?」

 

「いや、ゴーストタイプがいるのに今更。人間の死後ポケモンになったとか、ゲンガーがピクシーの死後の姿って話もあるぐらいだよ?」

 

「ただの都市伝説じゃないですか!?」

 

「あんな可愛い本物なら大歓迎だよ。怖いよりはいいでしょ?」

 

「それはそうですが…」

 

 

 呪われたりしないですよね…?とジト目で睨むと、ジュリさんは古びた手紙をつまみながらタハハと笑う。その瞬間、風が吹いて古びた手紙がジュリさんの手から放れてしまった。

 

 

「しまっ…」

 

「追いかけましょう!」

 

 

 風に吹かれる手紙を追って階段を駆け下り、路地裏に入る。そこには、のそのそ動く巨大な影があった。

 

 

「ダストダス…!?」

 

「こんなところに…!?」

 

 

 見れば、ダストダスの頭部のゴミ袋に手紙が引っかかっていて。ダストダスはその巨体で私達を見下ろすと、のしのしと奥へと消えて行き慌てて追いかける。

 

 

「またプラズマ団の、ですかね?人に慣れていましたが!」

 

「多分、プラズマ団に感化されて、容姿とかも理由で逃がされたポケモンだね。不気味とか汚いとか、そんな身勝手な理由でポケモンを捨てる人も多いって聞いたよ!私達に興味も持たないのがその証拠だよ、あのダストダスは人間に絶望してるんだ。でも取り返さないと、あの子に示しがつかない!ゴビット、その場でメガトンパンチ!」

 

 

 追いかけながらゴビットを繰り出し、メガトンパンチを空ぶらせるジュリさん。もはや様式美だ。

 

 

「そこ!じだんだ!」

 

 

 そして地響きを起こしてダストダスの脚を強制的に止める。するとダストダスは明らかに怒った様子で振り向き、口から毒に塗れたごみの塊を飛ばしてきた。

 

 

▽ダストダスの ヘドロばくだん !

 

「ミミッキュ!」

 

 

 爆裂するヘドロの塊をミミッキュのばけのかわで受け止めるジュリさん。しかし勢いは殺せず、その小さな体は吹き飛ばされてしまってジュリさんに受け止められくたっとなるミミッキュ。続けてゴビットが飛びかかるも、鋼の爪を出した腕で叩き落されてしまう。メタルクローか。

 

 

「イオルブ!サイコキネシス!」

 

▽ダストダスの たくわえる !

▽ダストダスの のみこむ !

 

 

 私もイオルブを出して応戦するも、体を膨らませてあっさり回復してしまい、返しで伸びてきた腕の先端に生えた鋼の爪でイオルブが叩き落されてしまう。

 

 

「ならば、グソクムシャ!であいがしら!」

 

「ゴビット、メガトンパンチ!」

 

 

 回復されないように一撃で落とすべくグソクムシャを繰り出し、目を合わせて頷いたジュリさんのゴビットと共に同時に強烈な物理攻撃を叩き込むも腕と拳はダストダスの体に沈み込んでしまい、鋼の爪で殴り飛ばされる。あの変幻自在の体、強すぎる。かといってイオルブのサイコキネシスじゃたくわえるとのみこむで耐えられてしまう。

 

 

「こんなの、畳み掛けるしかないじゃん!じだんだ!シャドークロー!」

 

「ですね!アクアブレイク!サイコキネシス!」

 

 

 じだんだで揺らしたところにその体を大きく抉るシャドークローとアクアブレイク、そしてとどめのサイコキネシスが襲いかかるもダストダスは三回たくわえてそれら全てを受け止め、のみこむで回復。返しにヘドロばくだんを四連射で飛ばして反撃。ミミッキュ、ゴビット、イオルブ、グソクムシャはヘドロに包まれて毒に侵され、倒れてしまう。アブリーはどくが苦手だし、ヘラクロスの物理は沈み込んで効かない。ダストダスは完全に怒り狂ってる、万事休すか…?

 

 

「くっ…こうなれば、メガシンカで…!」

 

「プルリルのみちづれで…!」

 

 

 ロックブラストであの体全部吹き飛ばす!と私達が最終手段を取ろうとした、その時だった。路地裏の上からまよなかのすがたのルガルガンが落ちてきたのは。

 

 

「ちょうはつ」

 

 

 上から響く誰かの声。ルガルガンが指を立てて動かすとさらに怒り狂い、両腕の先端に鋼の爪を出して腕を伸ばしてくるダストダス。

 

 

「がんせきふうじ」

 

 

 それを、腕ごと空中に出現させた岩石で押し潰して防ぎ、岩石を飛び越えて飛びかかるルガルガン。ダストダスは腕を引きちぎって先端に鋼の爪を出して振りかぶり、ルガルガンの腹部を大きく抉るが、ルガルガンの赤い目は輝いていて。

 

 

「カウンター」

 

 

 文字通りカウンターで振るわれた拳がダストダスの顔面を一撃で吹き飛ばし、戦闘不能にするとひらりと宙に舞った古びた手紙を手に取った人物がいた。

 

 

「お姉さんたち、これが欲しかったんでしょ?」

 

 

 そこにいたのは13歳ぐらいの黒いパーカーでフードを被った子供で、赤い目がきらりと光る。その手にはダイマックスバンドがはめられていることからジムチャレンジャーだと分かる。少女は屋根から飛び降りるとルガルガンに受け止められ、地面に下ろされた。

 

 

「ありがとうルガルガン。はい、これ。もう失くさないようにして。あの子が悲しむよ」

 

 

 そう言ってフードを外して真剣な目で見上げてくるその顔は、あどけない金髪を短く切り揃えた少女のものだったが、その目に宿る覇気は本物で。私達はその迫力に押されて無意識に後ずさる。

 

 

「な、どうしてそれを…」

 

「ヨハルが話しかけようとする前にお姉さんが話しかけちゃったから私が出てきたんだよ。まさかすぐ失くしかけるとは思わなかったけど」

 

 

 ヨハル?と首を傾げる私達。この少女とは別人のことらしいが、出てきたとはどういうことだろう。

 

 

「それについてはめんぼくない…」

 

「じゃあね。お姉さんたち」

 

「ま、待ってください…貴方は一体…?」

 

 

 ルガルガンをボールに戻して立ち去ろうとする少女を思わず引きとめると、ビクッと反応した少女は先程までの不敵な様子を全く感じさせないおどおどした態度で振り返って。青い目と目が合った。

 

 

「え…?」

 

「わ、私はヨハルで…さっきまで私の代わりに喋っていたのはヤユイと言って…えっと、えっと、ごめんなさい!」

 

 

 呆然とする私達を置いてピューと走って大通りに出て行くヨハルと名乗った少女を見送って、私達は顔を見合わせる。

 

 

「二重人格…?」

 

「です、よね…?」

 

 

 とりあえずとダストダスをモンスターボールに入れて捕獲した私は、マスター道場の先輩であるマイナークラスのジムリーダーに連絡しながらも少女のことで頭がいっぱいだった。…また、会う気がする。




実はユウリが回収してなかった手紙イベント。

・ダフネ
普通にホラーは苦手な主人公。プラズマ団に解放されたポケモン達の現状を目のあたりにして怒りが募る。謎のトレーナー、ヨハルに興味津々。

・ジュリ
原作イベント回収されてないな…と瞬時に理解したダフネの同行者。幽霊がなんぼのもんじゃいこちとら呪ってるんだぞと言わんばかりに平気。自分の知ってるポケモンにもいない二重人格のトレーナー、ヨハルに興味津々。

・ヨハル
ルガルガン使い(?)のジムチャレンジャー。ヤユイというもう一つの人格を持つ、青い目の気弱な少女。名前の由来は某ホラーゲームの主人公+「()」容姿のモデルでもある。

・ヤユイ
ルガルガン使いの凄腕トレーナーにしてヨハルを守る、赤い目の別人格。特定の条件下で表に出る。名前の由来は某ホラーゲームの主人公+「()

・ダストダス♂
とくせい:あくしゅう
わざ:ヘドロばくだん
   メタルクロー
   たくわえる
   のみこむ
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。とてもきちょうめん。プラズマ団に感化されたトレーナーがせめてもの食うものに困らない様にとナックルシティの路地裏で解放されたポケモン。塵で形成された変幻自在の体で敵対者を圧倒する。人間に対して絶望していたが、ダフネの知り合いのジムリーダーに引き取られることに。

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VSズルズキン

どうも、放仮ごです。リリウッド・バトラーさんが今作の三次創作「レンジャーズ・デイバイデイ」を投稿したのですがいつの間にか消されてました。せめて連絡はください。悲しい。

今回はVSジムリーダー・マリィ。楽しんでいただけると幸いです。


 次のジムはスパイクタウンにあるのでナックルシティを東に出てルートナイントンネルを抜け、賑わうストリート街スパイクタウンに訪れた私達。街全体がジムチャレンジの舞台となっている珍しい街で、他の誰かがジムチャレンジ中はチャレンジャーも観戦できるようになっている。ちょうど先に誰かが戦っている様なのでとりあえず私だけ予約し、観戦することにした。

 

 

「あれ、もしかしてアレって…」

 

「ヨハル!いえ、ヤユイでしょうか?」

 

 

 金網に囲まれたフィールドにやってくると、私達の前に戦っていたのは赤い目の金髪の少女ヤユイで、マニューラを使いジムリーダーのズルズキンを翻弄している光景が広がっていた。ジムリーダーのポケモンを、一方的に!?

 

 

「そこだよ!かわらわり!」

 

 

ドグシャ、と頭頂部にチョップを受けて頭からフィールドに叩きつけられるズルズキン。ジムリーダーの少女は明らかに異常なチャレンジャーの実力に冷や汗を流す。

 

 

「しぇからしか!ダイマックスが無くても、みんなのエールがあるったい!絶対の絶対に勝つもんね!オーロンゲ!」

 

「交代、ルガルガン。がんせきふうじ!」

 

「ソウルクラッシュ!」

 

 

 繰り出された岩石の束を、伸ばした腕の体毛で破壊するオーロンゲ。しかし粉塵が消えたそこにルガルガンの姿はなく、オーロンゲを覆い尽くした影を見て上を見やる。

 

 

「オーロンゲ、上ったい!DDラリアット!」

 

「いわなだれ!」

 

 

 空中に跳躍し、岩石を山盛りにその手に形成したルガルガンが振り下ろした岩石が沢山雪崩の様に叩き込まれ、オーロンゲは戦闘不能となった。戦況を伝えるモニターを見ればヤユイの手持ち四体は一匹も戦闘不能にはならず、完全勝利した様だ。ダストダスに圧勝した時から思っていたけど、圧倒的過ぎるその実力に戦慄する。

 

 

「あーもう、降参たい!でもね、あたしたちの戦いはみんなを熱狂させたんだ。なんか、よかよね!ジムバッジ、受け取ってほしか!」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

 ジムバッジを受け取る時にはヨハルに戻っているらしく、周りの視線を避ける様におどおどと去って行った。不思議なトレーナーだ。

 

 

「次、ダフネじゃない?」

 

「あ、そうですね。行ってきます」

 

 

 ちょっとずるいけど手持ちは確認できた。誰が先鋒かも想像はつく。悪いがあくタイプ相手に蟲ポケモンで負ける気はしないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしゅん!…あ、悪い悪いジム戦中に。なんか身震いが。誰か噂でもしてるのか?」

 

 

 同時刻、ターフタウンでくしゃみをしたジムリーダーが居たとかいないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 ジムミッションはいたって簡単。人ごみでいっぱいのスパイクタウンに紛れたエール団に変装したジムトレーナーを四人見つけて倒すだけだ。物陰に隠れていたり堂々と歩いていたりと千差万別で、結構難しかった。さすがは町おこしと称して町全体でジムを運営している町だ。二年前まで閑散としていたとはまるで思えない。

 

 

「でも、これで最後です!であいがしら!」

 

 

 時間をかけてようやく見つけたジムトレーナーを一蹴し、ジムリーダーへの挑戦権を得て広場へと向かう。そこにはこのスパイクタウンのジムリーダー、前ジムリーダー・ネズの妹でもあるマリィさんが待っていた。先程のバトルの時と異なりニコニコ笑顔だ。明らかに作っている笑顔である。本来は確か表情が乏しい人だったはずだ。

 

 

「マリィたちスパイクタウン一同のジムミッション、楽しんでくれたと?でもあたし、みんなのエールを背負っているたい。あんたをコロッとやっちゃうね!」

 

 

▽ジムリーダーの マリィが 勝負を しかけてきた!

 

 

 自然体で投げられたダークボールから繰り出されたのはレパルダス。やはりか、と私はグソクムシャを繰り出す。速さなら負けない!

 

 

「であいがしら!」

 

「ねこだまし!こっちの方が速かとよ」

 

「なっ…!?」

 

 

 あとから知ったが、技には優先度というものがあり、ねこだましはほぼ最速の技。であいがしらよりも速かったらしい。完全に怯んだグソクムシャの隙を突き、場を整えるマリィさん。

 

 

「蟲はやっぱり苦手やけんね!じっくりたっぷり積んでやると!わるだくみ!」

 

「グソクムシャ、しっかりしてください!ダイビング!」

 

「バークアウト!」

 

 

 間一髪。威力が向上した衝撃波を、潜ることで回避。レパルダスの背後を取るグソクムシャ。

 

 

「シザークロス!」

 

「いちゃもん!」

 

 

 一撃で叩きのめすも、いちゃもんをつけられてしまった。これではシザークロスを連打できない。

 

 

「みずタイプならこの子でいくたい!あたしの相棒、モルペコ!」

 

 

 そして繰り出されたのはあく・でんきのモルペコ。不味い…!?

 

 

「オーラぐるま!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 電気を車輪を纏った突進と水を纏った腕が激突、吹き飛ばされるグソクムシャ。あんな小さいのに、強い…!?

 

 

「タネばくだんたい!」

 

 

 さらに姿を変えたモルペコが口を膨らませて巨大なタネを吐き出し、グソクムシャに炸裂して大爆発。たまらずききかいひで戻ってくるグソクムシャ。なんて強さ…さすがジムリーダーの相棒です。

 

 

「出番です、アブリー!」

 

「オーラぐるま!」

 

 

 今の姿は黄色を基調とした姿、でんきタイプのオーラぐるまがアブリーに襲いかかる。

 

 

「避けてむしのていこう!」

 

 

 ひらりと宙を舞って回避し、まとわりつく蟲の幻影を飛ばすアブリー。黒が基調の強面の姿になったモルペコは嫌がるように小さな手を振り回し、その素早い動きが止まった。

 

 

「しまっ…モルペコ!いちゃもん!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 眩い輝きがモルペコを襲い、目を回して戦闘不能に。いちゃもんをつけられたがアブリーのメインウェポンのマジカルシャインが連打できないだけでしびれごなもようせいのかぜもある。行ける…!

 

 

「ダイマックスがなくとも、かけひきでタイプ相性はどうとでもなるったい!オーロンゲ!」

 

 

 切札であるはずのオーロンゲを三匹目で出してきた。ズルズキンじゃ四倍ダメージをもらうという考えか。だけど甘いです。

 

 

「しびれごな!」

 

「そんなもの、届かいないったい!ソウルクラッシュ!」

 

「…ようせいのかぜ!」

 

 

 しびれごなをようせいのかぜで飛ばす。腕の体毛を伸ばしてきたオーロンゲだがその動きが痺れてアブリーを捉え切れず、ひらりひらりと避けていく。タイプ相性はそう簡単には覆せない!

 

 

「むしのていこう、からのマジカルシャイン!」

 

 

 蟲の幻影を纏わりつかせてダメージを与えながら動きを止めつつの、零距離マジカルシャイン。さすがにひとたまりもなく、オーロンゲは崩れ落ちる。今回はヘラクロスに頼らずに勝てそうです。

 

 

「ジムリーダーになって鍛えた自慢の技で!絶対の絶対に勝つもんね!ズルズキン!」

 

 

 そして繰り出された最後のポケモン、ズルズキン。フェアリーが四倍。これはさすがに勝った。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

「ラウラ!アンタの戦法、借りるったい!地面にれいとうパンチ!」

 

「なっ!?」

 

 

 思い出すのはラウラさんの切札級ポケモン、ドラピオンのこおりのキバ。それと同じように地面を冷気を纏った拳で殴りつけて氷の壁を形成しマジカルシャインを防ぐマリィさん。

 

 

「かみなりパンチたい!」

 

 

 さらに砕けた氷を隠れ蓑に飛び出したズルズキンの電撃を纏った拳がアブリーに炸裂し、耐久がそんなでもないアブリーは撃沈。思わず顔が引きつった。

 

 

「グソクムシャ!であいがしら!」

 

「地面にかみなりパンチ!」

 

 

 今度は地面を走る電撃に、グソクムシャの動きが止まり、そこに拳の一撃。グソクムシャも倒れる。これが、鍛えた自慢の技…!あくタイプじゃないのか、とツッコむ前に負けそうだ。イオルブは論外、だとすると今回も頼らざるを得ない。

 

 

「お願いします、ヘラクロス!」

 

「話は聞いとると!蟲を使うメガシンカ使い!しぇからしか!一気に叩き潰すよ、ズルズキン!」

 

「今回は、メガシンカは使いません!そう、決めたんです!インファイト!」

 

「かみなりパンチとドレインパンチ!」

 

 

 電撃を纏った右拳と、なにも纏ってない左拳が交互に振るわれ、インファイトと交差する。これで終わりです!

 

 

「振り下ろしなさい、メガホーン!」

 

 

 痺れに耐えながら振り下ろされたメガホーンがズルズキンの頭頂部に叩きつけられ、バタンキューと倒れる。私の勝利だ。あ、危なかった…

 

 

「すごい根性見せてもらったと。これがあたしに勝った証、あくバッジったい!」

 

 

 そう言って手渡されたバッジをギュッと握りしめ、ジュリさんの方を向いて拳を掲げる。…恐らく、ジュリさんにとっては最難関だ。どうか頑張ってもらいたい。




別々のパンチを同時に使うのはポケスペのシバのエビワラーのリスペクト。

・ダフネ
楽勝だと思ってたらラウラと同じく意外な大苦戦になった主人公。油断大敵。

・ジュリ
手持ちが三匹なため一度ジム戦を見送ったダフネの相棒。ちょっと勝てる気がしない。

・ヨハル/ヤユイ
圧倒的な実力を持つ二重人格のジムチャレンジャー。手持ちはルガルガン、マニューラ、???、???。共通点は「夜」に進化するポケモン。戦闘が終わるとヨハルに戻る。

・マリィ
色々吹っ切れて常にスパイクタウン訛りで話すジムリーダー。普段はダイマックスなしだが、スタジアムでの試合となるとダイマックスを使用するところがネズとは違う。ヨハル、ダフネと続けて負けて不機嫌。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSダダリン

どうも、放仮ごです。ゼノブレイド2が楽しすぎて日中に執筆できない毎日が続いております。その中でも主人公レックスの技、アンカーショットの爽快感が凄い。

今回はそんなアンカーショットが活躍する話。楽しんでいただけると幸いです。


「とりあえず、あてはあるんだよね」

 

 

 四つ目のジム以降に挑むには手持ちが四体居ないと駄目らしい。すると「あてがある」と一度スパイクタウンの外に出たジュリさんについていく。辿り着いたのはスパイクタウンの前に広がる9番道路。一部氷海と繋がっているため海風が凍える程に寒い道路だ。夜になりかけなのも相まって、さらに寒く感じる。薄着だとだいぶきつい。

 

 

「それで、なにを探してるんです?あてがあると言ってましたが」

 

「くさ・ゴーストのダダリンってのがいてね。ここらへんにいるはずなんだ。ワイルドエリアに戻るよりいいでしょ?」

 

「まあそうですが…しかし寒いですね。春とは思えない寒さです」

 

「同感。ゲームじゃ寒さまでは分からないからなー…あ、今の無し。聞かなかったことにして、OK?」

 

「よくわかりませんが、はい」

 

 

 時折出てくる謎の言葉は相変わらずだけど、ゴーストポケモンに関しての知識は凄いのだこの人。私は好きな蟲ポケモンの知識さえ危ういので素直に尊敬する。そんなことを考えながら草むらに入る私達。

 

 

「多分この草むらに…いたいた」

 

 

 草陰から覗いたジュリさんの視線の先には、名前の通り舵輪と錨に海藻が巻き付いた様な不気味な姿をしたポケモンがいた。あれがダダリン…戦えるのか?と思っていたら捕食しようとしたのか襲いかかろうとしていたヒドイデを、舵輪の中心から藻と一体化した鎖を伸ばす事で先端の錨を振り回したことによる凄まじいサイズとリーチの攻撃で叩き潰したことで、思わず退いてしまう。こ、怖すぎる…!

 

 

「あの技はアンカーショット。はがねタイプのわざだけど特性のはがねつかいでとんでもない威力になっているダダリンの専用技だよ。今回は一撃で叩き潰したけど、本来はゴーストタイプ以外を拘束して逃げられないようにする技だから気を付けてね」

 

「恐ろしい技ですね…」

 

「ダダリンはあの巻きついている海藻が本体なんだ。舵輪と錨はあくまで海に沈んだ藻屑。でもあれはさすがに近づきたくないな…どうしよう」

 

 

 考えてみれば、ジュリさんの手持ちはミミッキュ(アンカーショットが効果抜群)、プルリルとゴビット(くさタイプが効果抜群)とダダリンが天敵だったらしく分かりやすく攻めあぐねている。…しょうがないからここは手伝おう。

 

 

「手伝います。グソクムシャ、であいがしら!」

 

 

 出すと同時に先制攻撃。しかし攻撃を喰らったダダリンは影の中に沈んで消えてしまう。これは…!?

 

 

「ゴーストダイブだ、気を付けて!」

 

「気を付けろと言われましても…だ、ダイビング!」

 

 

 ならばとこちらも出現させた水たまりに潜って隠れる。すると移動した影から飛び出し錨を振るうダダリンだが標的がいないことで空ぶったところにグソクムシャが背後に浮上。効果抜群じゃないとはいえそこそこいい威力の一撃が叩き込まれて怯むダダリン。

 

 

「グソクムシャ、シザークロス!」

 

 

 両腕を振り上げ、交差上に叩き込むグソクムシャ。しかし、それは舵輪で受け止められ、巻き付いていた海藻がひとりでに動き出してグソクムシャの両腕に絡み付いてきた。こ、これは…!?

 

 

「もしかして、ギガドレイン…!?」

 

 

 両腕を拘束し、じわじわと体力を奪って回復して行くダダリンに、グソクムシャは両腕ごと振り上げて振り回すがその海藻は頑丈な様で引きちぎれない。さらに一本海藻を伸ばして、強烈な勢いで叩きつけてくるダダリン。みずタイプも入っているグソクムシャにはきつい。

 

 

「パワーウィップまで…技構成はほぼ完ぺきだね。…ん?気を付けて、アンカーショットが来る!」

 

「そんな…!?」

 

 

 そして解放されたかと思えば鎖が伸びて錨が振り回され、遠心力を利用しグソクムシャの両腕を胴体ごと拘束、影の中に沈み込んでいくダダリンに引き摺られていくグソクムシャに、思わず手を伸ばす。

 

 

「グソクムシャ!」

 

「ミミッキュ、グソクムシャを助けて!シャドークロー!」

 

 

 ジュリさんがミミッキュを出して下の触手を伸ばして助けようとしてくれたが、グソクムシャは影の中に完全に姿を消してしまい、次の瞬間ミミッキュの足元に移動した影から凄まじい勢いで空中に飛び出しミミッキュを突き飛ばしたダダリンが、空中で回転して拘束されたグソクムシャを振り回し、勢いのままに鎖をさらに伸ばして地面に叩きつけ、グソクムシャは戦闘不能。錨から解放されたグソクムシャをボールに戻し、勝ち誇るように目の様な羅針盤をクルクル回転させて笑うダダリンに怒りが募る。

 

 

「よくも…!ヘラクロス!」

 

「なりふり構ってられないか…!かげうち!」

 

 

 月光で伸びた影から先制攻撃するミミッキュを、攻撃を受けて仰け反ると同時に海藻を伸ばしてパワーウィップが叩き込まれ、それを避けて隙だらけなミミッキュにアンカーショットが襲来。ミミッキュは直撃を受けて倒れてしまう。

 

 

「ゴビット!シャドーパンチ!」

 

「ヘラクロス、メガホーン!」

 

 

 ゴビットの撃ち出した実体を伴った拳の幻影も、ヘラクロスの突撃も影の中に潜って避け、ゴビットの背後から飛び出して一撃を叩き込むとアンカーショットを飛ばし、ヘラクロスの振るった角に引っ掛けて巻き取って引き摺り、ヘラクロスの両腕と角に海藻を巻き付かせるダダリン。回復しようとでもしたんでしょうが、見つけた。最大の勝機…!

 

 

「ヘラクロス、気を引き締めなさい!メガシンカ…!」

 

 

 これしかなかったとはいえ、倒れてから最初のメガシンカを発動。パンプアップした両腕と二本に増えた角に巻き付いた海藻がちぎれ、大きく後退しながら目の羅針盤をぐるぐる回転させて混乱を露わにするダダリンの実体部分…舵輪に、拳を構えるヘラクロス。何が言いたいのかを理解する。

 

 

「そうか、ゴーストタイプでもそこなら…!ロックブラスト!」

 

 

 連続で高速発射される岩の弾丸。それを、パワーウィップを振り回して迎撃するダダリン。やはり実体がある上に木製らしいあの舵輪は急所らしい。狙いどころとしてはいいわけだ。

 

 

「タネマシンガンで牽制しつつ、メガホーンで突撃!」

 

 

 両腕からタネマシンガンを乱射し、角を輝かせて突進するヘラクロスに、パワーウィップを器用にクルクル渦の様に回転させてタネマシンガンを弾いていたダダリンはたまらず鎖を伸ばし、振り回して遠心力の伴った錨の一撃…アンカーショットを飛ばしてきて、メガホーンとかち合い大きく弾かれる。しかし、射程距離までついた。本来なら効果はないのだけど、実体のあるゴーストポケモンなら例外なはず…!

 

 

「インファイト!」

 

 

 バキャア、と。舵輪が殴り壊された音がした。崩壊していく舵輪を本体である海藻で必死に縫い止めるダダリンに、輝く角が振り下ろされる。

 

 

「メガホーン、です!」

 

 

 ドグシャッ。先程のヒドイデの二の舞の如く、角に叩き潰されたダダリンは崩壊した舵輪のせいで見るに堪えない姿になっていた。ギガドレインで体力を回復していたおかげかまだ瀕死ではないけど瀕死寸前である。何というか……ごめんなさい?

 

 

「やりすぎました…?」

 

「…アハハッ、ゴーストタイプを力ずくで倒すなんて、ダフネらしいというかなんというか…笑うしかないじゃん、これ」

 

 

 笑いながらもダークボールを構えて歩み寄るジュリさん。

 

 

「ねえ。私の手持ちになったらその舵輪、直してあげようか?」

 

 

 ジュリさんがそう言うと、海藻をソッと伸ばしてボールのスイッチに触れ、自ら捕獲されるダダリン。どうやら渡りに船だったらしい。

 

 

「…とりあえず、スパイクタウンの宿屋にでも泊まってダダリンの舵輪を修理しようか」

 

「私も手伝います。さすがにやりすぎたと思うので…」

 

「あ、この子ダフネがトラウマになったみたい。震えてる」

 

「あんな怖いポケモンに怖がられるのはちょっとショックです…」

 

 

 若干ショックを受けてげんなりしつつ、夜道を戻って行く私達。そして宿に着いた私達を、1人の少女がフードの下から覗く赤い目で睨んでいたことを、疲れていた私達は知る由もなかった。




舵輪と錨はあくまで海の藻屑らしいのにポケモンとして一緒に納めるモンスターボールが一番の謎。

・ダフネ
ゴーストポケモン相手に物理で叩きのめした主人公。知識はラウラ程じゃない。ダダリンの容姿は苦手。

・ジュリ
昔見たホラー映画を思い出すのでダダリンがゲームの時からお気に入りなゴースト使い。予想外に自分の手持ちがダダリンに弱すぎて笑った。

・ダダリン
とくせい:はがねつかい
わざ:アンカーショット
   ゴーストダイブ
   ギガドレイン
   パワーウィップ
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。暴れるのが好き。ヒドイデを叩きのめしていたりなど、9番道路を牛耳り実質支配していたぬしポケモン。海藻が本体。自身の要ともいえる舵輪を破壊してきたダフネがトラウマ。

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VSレパルダス

どうも、放仮ごです。前々回の題名をオーロンゲからズルズキンに変更しました。今回と次回の流れ的にこっちの方がよさそうなので。

今回はシリアス回となります。感想でさんざん言われてるけどダフネは許されたとはいえ犯罪者ですからね。本人も悩んでいたのです。楽しんでいただけると幸いです。


「ところでなんですが」

 

 

 宿屋の同じ部屋で、ダダリンの舵輪を修繕していたジュリさんを手伝いながらふと、思ったことがあったので尋ねる。

 

 

「んー?なに?」

 

「ダダリンを捕まえたところで相手はあくタイプのジムリーダーなんですが勝算あるんです?」

 

「……………そういやそうだね」

 

 

 まさかの無策らしい。思わず呆れると、接着剤でパズルの様に舵輪をくっつけながら天井を仰ぐジュリさん。

 

 

「とりあえず今回はさすがにみちづれは使う予定。てか使わないと多分勝てない」

 

「ですね」

 

「モルペコはゴビットで何とかする」

 

「はい」

 

「切札のオーロンゲもダダリンのアンカーショットでどうにかする」

 

「フェアリーでよかったですね」

 

「レパルダスとズルズキンはミミッキュで何とかなる。ほら完璧」

 

「それミミッキュ落とされたら不味くありません?」

 

「そうなんだよねー」

 

 

 複合タイプの強みであり弱み。ミミッキュにはあくタイプの技が等倍で入る。私が喰らいそうになったわるだくみバークアウトを連打されたらひとたまりもないだろう。

 

 

「例えばですね…ゴビットのメガトンパンチをかくとうわざにするとか」

 

「メインウェポンがじだんだだからメガトンパンチが有効だったんだけど…ばくれつパンチに変えようかな。当たれば確定で混乱できて強いし」

 

「のろいを外せばいいのでは?」

 

「シャドー、メガトン、ばくれつ。三種のパンチとじだんだはありかもしれない。だがしかし、のろいは正直外したくない」

 

「その心は」

 

「呪いで倒すの楽しい」

 

「ええ……」

 

 

 まあ確かに、のろいとみちづれはこの人の代名詞だ。特にのろいのダメージ計算は私の知る限りこの人にしかできない特殊な技能だ。その強みを失うのは駄目なのはわかる。理由は駄目なやつだけど。

 

 

「ゴースト以外にまんべんなくダメージを与えられるノーマル技の利点と、こうかばつぐんが入るが苦手なタイプもあるかくとう技の利点、どちらを選ぶかですね」

 

「決めた。メガトンパンチをやめてばくれつパンチにする。やっぱり確定混乱は強いよ。朝一でポケモンセンター行かないとなあ」

 

「舵輪、直りそうです?」

 

「徹夜で何とか。そのあと仮眠してジム戦、かな?」

 

「私のイオルブのサイコキネシスの練度が高ければもっと早く済んだかもしれませんね…申し訳ない」

 

「大丈夫大丈夫、パズルは好きだし、ジム戦もなるようになるでしょ」

 

 

 まあ狙いのダダリン、それもぬし級の個体をいきなり見つけるのはラッキーすぎますが。幸運なだけで勝てる程ジムリーダーは甘くないと思うのですが。そういえば、ラウラさんに言われてジムチャレンジに参加したと言ってましたが…ジュリさんにも私の様な目的があるんでしょうか。

 

 

「そう言えばジュリさんは何か目標でもあるんです?」

 

「え?あ、言ってなかったっけ。勝手にいなくなって心配させたお兄ちゃんを、本気の状態でぶっ倒すことだよ」

 

「ラウラさんを…?」

 

「うん、まだ許して無いもんね。ジム戦のお兄ちゃんを倒したところで意味がない。セミファイナルトーナメントを越えて、チャンピオンカップで勝ち残ってくるであろうお兄ちゃんを完膚なきまでに叩きのめす。それが私の目的」

 

 

 フフフフフフッと怪しい笑みを浮かべながらカチャカチャと舵輪を組み立てるジュリさんにちょっと引く。事情は分かりませんがラウラさんのことが好き故の行動だということが伝わってきます。

 

 

「そういうダフネはなんで?」

 

 

 金槌で舵輪を打ちつけながらそう尋ねてくるジュリさんに、私は意を決して言うことにした。

 

 

「………私、二年前にラウラさんとチャンピオンのユウリさんたちを襲ったことがあるんです」

 

「ほえ?」

 

「私、普通になりたくて…蟲ポケモンが好きな私はそのことを否定して、普通になりたいと…どういうわけか驚きの三方論法で普通になりたい、普通は蟲ポケモンより伝説ポケモンの方が好ましい、伝説ポケモンを手に入れようと、こうなりまして」

 

「はえー、なんというか……馬鹿なのかな?」

 

「返す言葉もございません…」

 

 

 いやほんとどうしてそうなった。我ながら謎である。冷静に考えれば普通にピカチュウとかを捕まえればよかったのだ。

 

 

「…それで、ムゲンダイナとザシアンと言う伝説ポケモンを連れているユウリさんに会うべく兄さんを唆してラウラさんがいると思われるカンムリ雪原まで…そこで、誰にも捕まってない伝説ポケモンを見つけまして」

 

「バドレックスか。……あ、今のは忘れて?」

 

「ラウラさんが教えたんですか?まあいいですけど、その時、魔がさして……さいみんじゅつを、ユウリさんにかけてしまったんです。邪魔してきたラウラさんにも……」

 

「拝啓父さん母さん、私が親友だと思っていた子が犯罪者だった件について」

 

「うぐっ」

 

 

 親友だと言ってもらえて嬉しいけど拒絶されそうで泣けてくる。でも、ラウラさんの従姉妹だというこの人には言っておかないといけない。

 

 

「結局、さいみんじゅつをラウラさんに自力で破られて完膚なきまでに敗北して。でも、ラウラさんもユウリさんも一緒にいたモコウさんも……私が反省しているとして警察に何も言わないでくれたんです。おかげで出頭したのですが証拠不十分で解放されて…この二年間、罪を清算すべく自主的に奉仕活動をしてました」

 

「お兄ちゃんは化け物かなんかなのかな?心も広すぎない?」

 

「それは正直同感です。それで私、蟲ポケモンが好きな自分を肯定して、前向きに生きて行くためにジムリーダーになったラウラさんに頼んで推薦状をもらって…チャンピオンユウリさんの元へ、あの時はすみませんでしたと謝り、今の自分の力を証明すべくジムチャレンジに参加しました」

 

 

 そこまで言いきると、黙々と舵輪を組み立てるジュリさんの反応を無言で待つ。静寂が恐ろしかった。

 

 

「…なるほどね。さっきはちゃかしたけど、お兄ちゃんたちが許したならいいんじゃないかな。反省しているならもうしないだろうし」

 

 

 そう笑うジュリさんに、泣きそうになる。なんでこの同じ顔の人達はこうまで優しいのか…

 

 

「でもさ、こう言っちゃなんだけど証明したいだけなのに、焦りすぎてない?まるで、どうしても強くならないと、って突き動かされてるような…もしかして、前に言っていたプラズマ団に奪われたポケモンと関係ある?」

 

「推薦状をもらいに行った日。ポケモン研究所を襲ったプラズマ団の幹部と遭遇しました。かつてのこともあったので見過ごすこともできず、交戦し……私は敗北しました」

 

「それってまさか…」

 

「はい。クワガノンとアーマルド。イオルブと共に私の手持ちだった二体を奪われてしまったんです。イオルブだけはラウラさんが取り返してくれました。私はそれを取り返したい、でも今のままではあのシュバルツと名乗ったプラズマ団の幹部には勝てない……だから、私は…!」

 

「それで、ヘラクロスがぶっ倒れるぐらいに焦ってバトルし続けてたんだ。……決めた。私、ダフネが強くなれるように手伝うよ。元々プラズマ団との戦いで無茶しない様についてきたんだし、無茶しない程度に手伝うよ。ポケモンを強くする方法ならいくらでも知ってるしね」

 

「ジュリさん……」

 

「だからさ、私を頼ってよ。私もダフネを頼るからさ。っと、できた。さっさと寝て明日に備えよっか」

 

 

 涙を堪えきれなくなったのを隠すためか、舵輪を修繕し終えると部屋の明かりを消してベッドに入るジュリさん。睡魔に負けそうになるまで私は声を押し殺しつつ泣いた。

 

 

 

 

 

 

 翌日。あっさりジムミッションをクリアしつつマリィさんと対峙するジュリさん。金網越しにその光景をはらはらと見守る。

 

 

「ゴーストポケモンだけでよくうちのジムトレーナーたちに勝ったとね!でも、その快進撃もここまでたい!レパルダス!」

 

「生憎と、親友に頼ってもらうために負けられないんです。ガチで勝ちに行きます、ゴビット!」

 

 

 そして、不敵に笑ったゴースト好きの少女とあくタイプつかいの先鋒がぶつかった。




2人の「妹」が真の意味で親友となる話。

・ダフネ
ラウラへの愛?を爆発させるジュリに隠し通すことこそ罪だと暴露した主人公。受け入れてもらえた喜びと過去の自分が情けないという感情とプラズマ団への怒りでどうにかなってしまいそう。

・ジュリ
片手間にダダリンの舵輪を修繕したダフネの親友。のろいとみちづれはアイデンティティ。頼られるために、苦手なあくタイプ相手に立ち向かう。過去に何があっても今がいいならそれでいい、過去は過去と割り切るタイプ。兄に実害(怪我とか)が出ていたら許して無かった。

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VSオーロンゲ

どうも、放仮ごです。UBやプラズマ団が平和なガラルに合わないという評価コメントをいただきました。…逆に聞くけど、波乱が起こるガラル地方を見たくありません…?

今回はジュリVSマリィ。楽しんでいただけると幸いです。



「ねこだましは通じないのはわかっとると!バークアウト!」

 

「そんなの関係ないね!一気にいくよ!ばくれつパンチ!」

 

 

 ゴーストタイプの数多い利点はノーマル技が通用しないこと。もちろんねこだましもだ。それを利用しての防御力を活かした突撃と共に振るわれた拳が叩き込まれるも、さすがの命中率と言うかレパルダスは華麗に宙を舞いながら衝撃波を放ち、ゴビットは怯んでしまう。

 

 

「今たい!わるだくみ!」

 

「外れた方がいいこともある!じだんだ!」

 

 

 わるだくみのためにフィールドに降り立ったレパルダスに襲いかかる地響き。それで体勢が崩れた所に突撃したゴビットの振りかぶった拳がその顔面に振るわれる。

 

 

「ばくれつパンチ!」

 

「バークアウト!」

 

 

 衝撃波を受けてボロボロになりながらも拳を振り抜くゴビット。直撃を受けたレパルダスは殴り飛ばされ、倒れた。しかし体がボロボロに欠片が落ちる程に罅まで入ったゴビットは満身創痍だ。いつものジュリさんならここでのろいで自爆するところだが…相手の手持ちにはモルペコがいるからどうするのかわからない。

 

 

「なかなかやるたいね…だけどそのゴビットはもうなにもできずに終わるとよ!ズルズキン!かみくだくったい!」

 

 

 繰り出されると同時にガバッと大きく口を開けるズルズキン。しかしその時には、ゴビットはボールに戻されていて。ここで切札を切る判断が出来たのは凄い。

 

 

「そのまま残すわけがないでしょう、ミミッキュ!」

 

「しまっ…」

 

「じゃれつく!」

 

 

 かみくだくをばけのかわで受け止めた上の、四倍ダメージのじゃれつくが炸裂。大きく吹き飛ばされ金網に激突し倒れるズルズキン。あくに対してフェアリーは強い。当然の理だ。

 

 

「そいつがいるからゴーストタイプだけで挑めたんね…でもばけのかわははがれとーよ!モルペコ、オーラぐるま!」

 

「交代、ゴビット」

 

「なっ…」

 

 

 上手い。満身創痍なれどでんき技をすかすことできる。それに次に倒されるとはいえ、ゴビットにはあれがある。

 

 

「失念していたと…でもそんな満身創痍であたしのモルペコに勝てると思うとると!タネばくだん!」

 

「思ってませんよ。のろい」

 

 

 口を膨らませてペッと巨大なタネを吐き出すモルペコと、自身の胸に拳を打ちつけるゴビット。次の瞬間、直撃を受けたゴビットは崩れ落ちるが、モルペコは顔面蒼白で胸を押さえた。

 

 

「後出しでも技の効果は発動できるのは現実のいいところですよね。ゴビット、ありがとう」

 

「でもあたしはそんな無知じゃなか!交代すれば意味なかたい!」

 

「それはいいですけど…悪い意味で有名な私の戦術、無知じゃない貴方なら知らないわけじゃないですよね?」

 

 

 そう言ったジュリさんが繰り出したのはプルリル。次に出されるであろうオーロンゲをみちづれするつもり満々な様だ。それを見てボールを構えた手が止まるマリィさん。

 

 

「みちづれのことは聞いてるけん。でも関係なか。タイミングさえ見極めてあたしたちが息の合ったコンビネーションを見せれば問題なかとよ!オーラぐるま!」

 

 

 そして選んだのは、のろいで落ちる前にプルリルを落とすこと、にしたらしい。しかし、身を引いて一撃で落とされないように威力を減衰させるプリリル。その時点でマリィさんはジュリさんの手の内だった。

 

 

「じこさいせい!」

 

 

 体力の大半を回復させるプルリル。そこからはタイミングの読み合い、になるはずだ。一撃で落とせず、一撃で落とさせず、どのタイミングで拮抗が崩れるかのせめぎ合い。つまり、ジュリさんはみちづれを使わずに、モルペコを時間をかけてじっくり呪い倒すつもりらしい。だけど、ジュリさんはマリィさんの十八番を忘れていた。

 

 

「いちゃもん!」

 

「じこさいせい!……なっ!?」

 

「タネばくだん!」

 

 

 続けて指示したじこさいせいが連続で使用することを封じられる。これで耐久はできなくなった。それでも、じこさいせい→みちづれを繰り返せばいつかは倒せるかもしれない。だけど、ジュリさんは明らかに混乱している様だった。

 

 

「モルペコの攻撃数値はあれで、レベルを仮定すると一発は耐えれて、だけど今のじこさいせいできなかったから……ええと、何時みちづれをすれば…!?」

 

 

 いちゃもんで封じられたせいでダメージ計算ができなくなったのか、目を回して大混乱するジュリさんと、その指示を待って何度も振り返り明らかに心配しているプルリル。ジムリーダーの前で明らかな隙を晒してしまった。

 

 

「なにをごちゃごちゃ言ってるたい!オーラぐるま!」

 

「えっと、えっと、じこさいせい…はできなくて、みちづれ…は多分落ちないから、えーと、えーと……みずのはどう!」

 

「もう一度オーラぐるま!」

 

 

 そして一番の悪手を選んでしまい、連続でオーラぐるまを喰らってプルリルは倒れる。プルリルが倒されたことで我に返ったのかハッと口元を押さえるジュリさん。

 

 

「…ごめん、ありがとう。…でも、みずのはどうのダメージと合わせて4ターン…時間稼ぎはできたよ」

 

「なにを言ってると……!?」

 

 

 パタンキューと、倒れるモルペコ。のろいで削りきったことに驚く私。さっきのみずのはどうは悪手でもなんでもなく、みちづれで倒せないことを見越した上での計算だったのか。あまりのことに固まるマリィさん。最後の一体になったマリィさんに対し、ジュリさんの手持ちはあとばけのかわが剥がれただけで無傷のミミッキュと無傷のダダリン。

 

 

「……失念してたと。あんた、心理誘導がうまかね。でももうみちづれを恐れる必要はなか。真正面から叩きのしてやるばい…!」

 

 

 そう言って繰り出されたのはオーロンゲ。対してジュリさんはミミッキュ。ダダリンは最後まで残すつもりらしい。

 

 

「ビルドアップたい!」

 

「じゃれつく!」

 

 

 ムキッとポージングして筋肉を増強させるオーロンゲに突撃、ポカポカと殴りつけるミミッキュ。しかし防御力が上がったオーロンゲにはまるで通じず、両腕が振りかぶられる。

 

 

「DDラリアット!」

 

 

 ドゴバキッと、両腕を伸ばして凄まじい勢いで回転したオーロンゲの連撃が炸裂、宙を舞うミミッキュ。

 

 

「まだ、終わってない!少しでも…かげうち!」

 

「ソウルクラッシュ!」

 

 

 空中から自身の影を利用し先制攻撃したミミッキュだったが、次の瞬間伸びてきた体毛による一撃を受けて叩き落され、戦闘不能。ジュリさんは虎の子、ダダリンを繰り出した。その舵輪は急ごしらえなためつぎはぎだらけでさらに不気味になってる。

 

 

「初陣だ。行くよ、ダダリン!」

 

「近くで捕まえたと?そのポケモンはよーく知ってるたい。受け止めて一撃で決めーとよ、ビルドアップ!」

 

 

 再びポージングし防御力と攻撃力を上昇させるオーロンゲ。それに対し、指差すジュリさんと、鎖を伸ばして錨を振り回すダダリン。

 

 

「隙あり!アンカーショット!」

 

「DDラリアット!」

 

 

 振るわれた錨は、振り回された両腕で弾き飛ばされ、ダダリンは慌てて鎖を巻き戻すも、そこにそのまま回転しながら突撃してきたオーロンゲが襲いかかった。

 

 

「ゴーストダイブ!」

 

 

 咄嗟に影に隠れて避けるダダリン。オーロンゲは急静止して周りを油断なく見渡し、影が移動するのを見つけるとその右腕を振りかぶった。

 

 

「そこたい!ソウルクラッシュ!」

 

「パワーウィップで弾いて!」

 

 

 伸びた体毛の束と伸びた藻がぶつかり、相殺する。そして影から飛び出したダダリンがもう一度鎖を伸ばして錨を振り回した。

 

 

「アンカーショット!」

 

「同じ手は通じないとよ!DDラリアット!」

 

「そこ、当たる直前でたわませて!」

 

「!?」

 

 

 その瞬間、ダダリンがジュリさんの事を信じて指示通りにすると、不思議なことが起こった。空ぶったオーロンゲの胴体に鎖が巻き付き錨が引っ掛けたのだ。

 

 

「ゴーストダイブ!地面に叩きつけてやって!」

 

 

 そしてもがくオーロンゲを影の中に引きずり込み、空中の飛びだしてその勢いのままコンクリートの地面に叩きつけるダダリン。急降下の勢いも効いたのか、オーロンゲはそのまま崩れ落ち、ジュリさんの勝利が決まった。




 たわませるのはゼノブレイド2のアンカーショットが元ネタ。

・ダフネ
ジュリの頭脳に驚きを隠せない主人公。完全に悪手だと思ったら最善手で驚くしかない。

・ジュリ
大混乱に陥ったけどすぐに最善手に思い至り混乱したふりをしていたダフネの親友。ダメージ計算が得意。敵を騙すならまず味方から。

・マリィ
完全にジュリに騙され、持ってかれたジムリーダー。有望なトレーナーに連続で負けて何を思うのか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガマゲロゲ

どうも、放仮ごです。今回はついに再会。8番道路での激闘です。楽しんでいただけると幸いです。


「よか、よか!今期は未来有望なトレーナーばかりたい!もしかしたらユウリも負けるかもしれんと!それが今から楽しみたい」

 

 

 そう笑ってジュリさんにあくバッジを手渡すマリィさん。どこか満足げだ。ヨハル(ヤユイ)、私、ジュリさんと結構負けてるはずなのにガラルの未来が有望な方が嬉しいとは、心が広い人間である。すると観客席(金網の向こう側)の私の方に目を向けてジュリさんに向き直るマリィさん。

 

 

「昨日のダフネとは親友でライバルだと聞いたと。ライバルは大事たい。あたしもユウリやラウラっていうライバルがいたからセミファイナルトーナメントまで辿り着けたんよ。今年のセミファイナルトーナメント、誰が勝ち上がるか楽しみにしてるとよ」

 

 

 そう笑って、マリィさんは私達を送り出してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでスパイクタウンから出て9番道路にやってきた私達。次の目的地はキルクスタウン、本当なら北上に海上を進めばすぐなのだが…

 

 

「私達は自転車やなみのりを覚えているポケモンがいないから9番道路を北上することをできないんだっけ」

 

「はいそうです。なので一度ルートナイントンネルを通って8番道路から北上する必要があります」

 

「あの上り下りするところかあ…きつそうだなあ」

 

「最近ガラルに来たのに詳しいんですね?」

 

「観光パンフレットぐらい見てるよ?」

 

 

 そう笑うジュリさんだが目は笑ってない事から突っ込んでほしくないらしい。いつものガバか。

 

 

「あそこは入り組んでいるので担当のジムリーダーの目が及ばない場所があるかも。警戒して損はないね」

 

「…ジムリーダーの目が及ばない。つまりは…」

 

「まあ、プラズマ団が活動しやすい場所だよね」

 

 

 そう聞いて、拳を握りしめる。シュバルツは私からポケモンを奪う時、戦力になると言っていた。もしかしたら、クワガノンとアーマルドを持っているプラズマ団がいるかもしれない。ヴァイスの時の様な無様はしない…!

 

 

「決意を決めてるところ悪いけど、本当に危なくなったらどんな手を使ってでも私はダフネを連れて逃げるからね」

 

「…その時は私を置いて…」

 

「話聞いてた?絶対嫌だからね」

 

「はい…」

 

 

 ああ、この人は私を絶対見捨てないのだな、と実感する。これは、無茶なことはできませんね。

 

 

「サマヨールかあ…可愛いけど、戦力としてはどうかなあ。ゴースト単タイプだとちょっときついしれいかいのぬのを手に入れる保証もないしなあ」

 

「よくわかりませんが、手持ちはビビッと来た子たちだけでいいと思います」

 

 

 そんな会話をしつつ野生ポケモンを避けて隠れながら移動する。そしてはしごを降りて、周りから陰になっている場所に来たときだった。

 

 

「ガマゲロゲ!マッドショット!」

 

「「っ!」」

 

 

 梯子を降りた瞬間を狙われた何者かの攻撃に、咄嗟に横っ飛びで避ける。遺跡の陰になっているそこには、側に目つきの悪いガマゲロゲを控えさせた二人の男女がいた。くろいマスクとフードで顔を隠した、灰色の上着の下に黒い戦闘服を着込んだ、Pのエンブレムが特徴的なお揃いの姿。間違いない、プラズマ団だ。

 

 

「プラーズマー!お前たち、ジムチャレンジャーだな!」

 

「貴方の大事なポケモン達、置いて行ってもらうわよ!」

 

「プラズマ団…!」

 

「ほんとに出る奴があるか、この馬鹿!」

 

「「誰が馬鹿だ!」」

 

 

 さっきのは冗談だったのかブチギレたジュリさんの言葉に怒るプラズマ団二人。ガマゲロゲは男のポケモンだったのか、女の方がネットボールを取り出す。…まさか、それは…!?

 

 

「生意気な奴は思い知らせてやるわ!シュバルツ様からいただいたこの強力なポケモンでね!行きなさい!」

 

 

 投げられたボールから出てきたのは、クワガノン。見間違えるはずがない、私の手持ちだったクワガノンだ。クワガノンも私を見て目を見開く。まさか、本当にこんな形で再会するとは…!

 

 

「やってしまいなさい、クワガノン!」

 

「やるしかないか、ゴビット!ダフネも早く…ダフネ?」

 

「クワガノンを返しなさい……返せ!グソクムシャ!であいがしら!」

 

 

 強いポケモンを出しただけで優位に立ったと思っているプラズマ団の馬鹿達の横で突っ立っていたガマゲロゲを殴り飛ばす。それに二人して驚いているうちに、渾身の力で跳躍し飛びかかった。

 

 

「ボールを、渡しなさい!」

 

「なっ、なっ!?ひ、人のポケモンを奪うのは犯罪なのよ!?」

 

「お前たちが言うなあああああああ!」

 

「お、お前!相棒から離れろ!」

 

「アンタの相手は私だ!ゴビット、シャドーパンチ!」

 

 

 ジュリさんが男とガマゲロゲの相手をしているのを横目に、女に掴みかかってボールを奪い返さんと暴れまくる。その言葉だけはお前たちに言われたくない!しかしあっさり蹴り飛ばされ、何とか立ち上がって肩で息をしていた女はオロオロしているクワガノンに怒鳴り始めた。

 

 

「なにしてんのよ!こんなガキ、さっさと痛い目に遭わせなさい!ほうでん!」

 

 

 そう指示をするが、クワガノンは動かない。それどころか、ふらふらと立ち上がった私を庇うように前方に浮かび、視線を向けてきた。……今でも、私を信じてくれるんですか。

 

 

「なんで、先日もちゃんと言う事を聞いてトレーナーをボコボコにしたのに、なんで言うことを聞かないのよお!このグズ!役立たず!」

 

 

 そう喚き散らしてネットボールを地面に叩きつけ、懐を漁り出すプラズマ団の女の隙を突いてネットボールを回収、あっと女が声を漏らす前にクワガノンを一度ボールに戻しながら近くの柱の影に移動すると女はムーランドを繰り出してきた。ガマゲロゲと同じでなんか目つきがきつい。

 

 

「ちょっ、シュバルツ様のポケモンを返しなさい!ムーランド、はかいこうせん!」

 

「このクワガノンは、私の手持ちです!ジュリさん、ゴビットの裏に隠れて!クワガノン、ほうでん!」

 

 

 そして繰り出し、渾身のほうでんが構えていたムーランドと、プラズマ団二人に炸裂。ガマゲロゲには効果はないが、指示はできなくなった上に、ムーランドをまひさせてはかいこうせんを停止させた。ジュリさんもどうやら無事なようだが、相変わらずの威力だ。私のクワガノンが帰ってきた…!

 

 

「きっさまあ…!ガマゲロゲ!クワガノンごとやってしまえ!ドレインパンチ!」

 

「私達からポケモンを奪うのなんて、許されないのよ!ムーランド、きしかいせい!」

 

 

 二人してクワガノンに同時攻撃してくるが、忘れてはならない。これはマルチバトルだ。

 

 

「ジュリさん!」

 

「うん、ゴビット、クワガノンとスイッチ!あはは、現実だとこんなこともできるんだ!」

 

 

 クワガノンとゴビットの位置を交代、ドレインパンチときしかいせいを何ともないと言った顔で受け止めるゴビット。ガマゲロゲとは相性はクワガノンゴビット共に悪いが、私のクワガノンの火力は相性が悪かろうが関係ない。

 

 

「ガマゲロゲにむしのさざめき!」

 

「ムーランドにばくれつパンチ!」

 

 

 ガマゲロゲに翅を羽ばたかせた衝撃波が、ゴビットの目の前にいたムーランドに渾身の拳が炸裂。二体は吹き飛ばされ、目を回して戦闘不能となった。

 

 

「や、やばい!逃げるぞ相棒!こいつらは捨て置け!」

 

「え、ええそうね!こんな弱いポケモンなんかいらないわ、捨ててやる!」

 

 

 そんなことを言いながらガマゲロゲとムーランドを回収することもせずにボールを投げ捨て、逃走を図るプラズマ団の二人。だがそんなことは許さない。

 

 

「逃がしませんよ、でんじは!」

 

「がああ!?」

 

「こ、こんなガキにぃ!?」

 

 

 ほうでんだと瀕死のムーランドやジュリさんたちを巻き込んでしまうかもしれないのででんじはを飛ばし、二人は身体が痺れて倒れ伏す。そこにやってきたのは、ぽっちゃりした体型のサングラスが似合う男性だった。

 

 

「何か騒がわしいと思って様子を見に来てみれば…お前たちは、プラズマ団!まさかこの8番道路に潜伏していたとは…貴女方は、ジムチャレンジャーですか?まさか、この者達を…?」

 

 

 元キルクスジムリーダー、マクワさん。どうやらこの8番道路の担当だったらしく、痺れたままその存在に震えあがるプラズマ団を見て目を丸くしている。…あ、不味い。忘れてました。

 

 

「あ、人にポケモンの技を使うのは犯罪でした…」

 

「ダフネ、前科があるとはいえまたやったのか…いや止めなかった私も悪いけどさ」

 

「いいや、プラズマ団に襲われて撃退したというのならこれは正当防衛だ。むしろ僕が間に合わなくて申し訳ない。このプラズマ団のことは僕に任せて君達は先を急ぎなさい。次のジムリーダーは…タイプ相性すらものともしない、そんな人だ。武運を祈っているよ」

 

 

 そうマクワさんに見送られ、私達はお言葉に甘えて先を急ぐのだった。……正当防衛とはいえ、トレーナーに攻撃を与えることに躊躇すらなくなっていた。怒りのせいとはいえ、少しは戒めないといけないですね。でも、そんなことよりも…

 

 

「おかえり、クワガノン」

 

 

 この再会を、喜ぶことにしよう。




言うことを聞くふりをして少しでも前線に出てダフネと再会したかったクワガノンが帰ってまいりました。

・ダフネ
ようやくクワガノンを取り返して感無量な主人公。怒りに身を任せてトレーナーに直接攻撃するほど、我を忘れると凶暴になるけど、我に戻ると反省する癖がついた。

・ジュリ
プラズマ団と戦うとは決めたけど、危険なことにはできるだけ首を突っ込まないことにしているゲーム脳。ダフネは絶対暴走するだろうなあ、止めないとなあと思ってる。ゲームの8番道路で迷子になったことがあり苦手。

・マリィ
将来有望なトレーナーが次々と現れて自分たちを思い出して嬉しいジムリーダー。負けず嫌いなので何時か本気でリベンジするつもり。

・マクワ
8番道路担当マイナージムリーダー。複雑な8番道路を巡回していたが、それを見越して身を隠しながら通りすがりのトレーナーを襲っていたプラズマ団には気付かなかった。ガマゲロゲとムーランドを保護した。

・プラズマ団したっぱ
手持ちは全部奪ったポケモン。その中でも特別強いポケモンを無理やり従わせており、負けるとボールごと手放して逃げに徹する外道の中の外道。現在はジムリーダーでも巡回しにくい道路やワイルドエリアを起点に強奪を続けている。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマニューラ

どうも、放仮ごです。掲示板回の方が面白いのに本編ありきなのはわかるけど少ないので低評価(意訳)という評価コメントをいただきました。いや、掲示板が見たいのは分かるけどなんでモチベを下げるん…?言われれば書きますよ…?

ラウラで言えば時系列的にムツキ戦に当たる今回。強敵トレーナーとの対決です。楽しんでいただけると幸いです。


「クワガノン。これが新しい仲間のグソクムシャ、アブリー、ヘラクロスです。グソクムシャとは旧知の仲ですね?今は兄さんから借り受けています」

 

 

 8番道路の遺跡群を抜けた広場で、クワガノンと今の手持ちたちの顔合わせをする。あとはアーマルドだけだ。アーマルドが揃えば六体、私の手持ちは完成する。なんとか取り戻したいが、クワガノンと意思疎通することはできないのでアーマルドがどうしているのかはわからない。

 

 

「パーティー完成してきたね、羨ましい限り。次のジム戦が鬼門かなと思ったけどクワガノンがいれば行けそうだ」

 

「そうですね」

 

 

 そうなのだ。マリィさんがジュリさんにとっての鬼門なら、次のジムリーダー…ひこうタイプつかいのムツキさんはむしタイプを使う私の天敵だ。二年前のセミファイナルトーナメントではラウラさんが結構圧勝していたが、あれはあの人が可笑しいだけである。

 

 

「まあ今回の切札はクワガノンじゃないんですけどね」

 

「え?」

 

「空飛ぶ相手にはうってつけの子がいるんです。まだ見せてませんでしたね」

 

 

 そうなのだ。私には対ひこうタイプに対する切札がある。クワガノンではなく、空を飛んで移動するタイプには例外なく刺さる切札が。

 

 

「だから心配してないんですよ。むしろそちらが心配です」

 

「ゴーストタイプじゃひこうタイプは確かに難しそうだね…まあ、呪い倒すだけなんだけど」

 

「こわいこわい。うん?」

 

 

 手持ちをみんなボールに戻し、南部である遺跡地帯を抜け、8番道路の北部、豪雪地帯に入ると一本橋の上をこちらに向けて渡ろうとしているトレーナーがいた。フードを深く被って目元が見えないが、アレは間違いない。

 

 

「ヨハル、でしたっけ?もうキルクスジムを越えたんですか?」

 

「それともヤユイの方かな?あの強いルガルガンがいるなら納得だけど」

 

「お姉さんたち…たしかジムチャレンジャーの……誰だっけ?」

 

 

 どこか警戒した目で訪ねてくる青い目の少女、ヨハルに、そう言えば名乗ってなかったことを思い出す。

 

 

「私はダフネ。蟲使いです。この間はどうもありがとうございました」

 

「私はジュリだよ。ゴーストポケモンが好きなんだ。よろしくね」

 

「わ、私は……その、ええと…お願いします、私の…ええと、ヤユイの事は誰にも言わないでください」

 

 

 おどおどしながらそう言ってくるヨハルに首を傾げる私達。すると気弱な少女は勇気を振り絞って続けた。

 

 

「私、チャンピオンに推薦されたんですがヤユイの事は隠して参加していて…ヤユイが戦う時もヨハルで通しているんです。でも、あの時は私がキョドってしまってヤユイのことを教えてしまって…」

 

 

 チャンピオンの推薦だったんだ、そりゃ強いはずだ。でも、ヤユイの事を知られたくないとは目から鱗だ。でも確かに、マリィ戦でもヨハルだと紹介されていた。私達が顔を見合わせ、言うつもりはないと言おうとしたところ、ヨハルはヤユイになっていて。

 

 

「無駄だよヨハル。他人は信用できない。信用できるのは私だけなんだから。痛い目見せて思い知らさないといけないんだ」

 

「いや、あの、ええと…?」

 

「そんなつもりはないよ…?」

 

「嘘だ!他人は信用できない。私たちはこんなところで失格になるわけにはいかないんだ。あいつに会うまで、アイツに仕返しするまで、私達は勝ち続けないといけないんだ!邪魔はさせない!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ヤユイが 勝負を しかけてきた!

 

 

 何だかよくわからないけど、バトルが所望らしい。過去に何かあったのか、他人を信用できないらしい。ジュリさんを手で制して私が前に出る。他人を信用できない気持ちは正直わかる。私もスクールで他人の悪意に晒された経験がある身だ。戦って話を聞いてもらうしかない。

 

 

「やっちゃえ、マニューラ!」

 

「様子見です、アブリー!」

 

 

 先鋒がマニューラだと知っている上でのアブリー。だがしかし、こんなに強いトレーナーが何も対策してないわけがなかった。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

「上を取ってメタルクロー!」

 

 

 マジカルシャインを宙返りで回避し、鋼と化した爪を叩き込んで着地するマニューラ。効果は抜群でしかもアブリーは耐久力がない、戦闘不能となって倒れてしまう。かくとうが四倍で入るからヘラクロスでもよかったが、どうも温存してしまう。

 

 

「頼みます、グソクムシャ!であいがしら!」

 

「体勢を低くしてれいとうパンチ!」

 

 

 グソクムシャ自慢のであいがしらをまさかの回避、れいとうパンチで顎をかち上げるマニューラ。いや、さすがに強すぎませんか!?

 

 

「だ、ダフネ大丈夫…?」

 

「正直大丈夫じゃありませんけど…シザークロス!」

 

「メタルクロー!」

 

 

 渾身のシザークロスも、メタルクローで相殺される。なんて強さだ。グソクムシャまで押されている。しかも絶妙に強力な技じゃないせいでききかいひが発動しない。

 

 

「これでとどめ!かわらわり!」

 

「ダイビング!」

 

 

 渾身のチョップを、水たまりに潜って回避するグソクムシャ。マニューラは周囲を警戒するが、グソクムシャは自身の判断で潜ったところから移動してない。行けるか…!

 

 

「マニューラ、足元にれいとうパンチ!」

 

「なっ!?」

 

 

 まさか、ばれた!?トレーナー自身も抜け目がない強さだ。グソクムシャは水たまりを氷漬けにされて破壊され、空中に飛び出しボールに戻ってくる。此処まで追い詰められるなんて…!

 

 

「どうしたの、お姉さん。まさか私のマニューラにも勝てないなんて言わないよね?蟲使いさん」

 

「むっ……そんなにお望みなら出しましょうとも!ヘラクロス!」

 

 

 これは出し惜しみしていい相手ではない。ジムリーダーと戦う時と同じ気概で挑まねば。メガペンダントを握りしめると目を見開くヤユイ。どうやら知ってるらしい。

 

 

「この寒空なら負担も少ないはずです、メガシンカ…!」

 

「何でお姉さんが、カロスのメガシンカを使えるの…!?」

 

「私が勝ちとった私の力です…!ロックブラスト!」

 

「か、かわらわり!」

 

 

 岩の弾丸を撃ちまくる。マニューラはすばやい身のこなしで避けたり、避けきれないものはチョップで破壊したりと耐えるが、凄まじい勢いと連射力で制圧射撃するヘラクロスには敵わず、叩きのめされ戦闘不能となった。

 

 

「むう…お姉さん、ずるいなあ。そのポケモンじゃ勝ち目がないよ。タチフサグマ!」

 

 

 次に繰り出されたのはタチフサグマ。あくタイプ、こっちが圧倒的に有利だ。効果抜群で攻めよう。

 

 

「メガホーン!」

 

「なんてね。ブロッキング!」

 

 

 蒸気を噴出して突撃したメガヘラクロスを、交差した両腕で受け止めて弾き返すタチフサグマ。その手に炎が纏われ、私は誘われたことを確信した。

 

 

「ほのおのパンチ!」

 

「ろ、ロックブラスト!」

 

 

 何とか相殺するが、炎を纏ったまま両腕を振り回してくるタチフサグマ。メガヘラクロスは後退しながらロックブラストで反撃しつつ橋の端に追い込まれていく。

 

 

「ほのおのパンチを維持したまま、クロスチョップ!」

 

「メガホーン!」

 

 

 炎を纏ったまま振り下ろされた両腕を、メガホーンで受け止め両腕を胴体に突きつけるメガヘラクロス。なるほど、何時も貴方の判断には助けられますね!

 

 

「ロックブラスト!」

 

 

 ドドドドドン!と、岩の弾丸が連続で胴体に炸裂して吹き飛ぶタチフサグマ。体勢が完全に崩れたそこに、メガヘラクロスが維持したままだったメガホーンを叩きつけ戦闘不能にした。

 

 

「まだだ、私は負けてない!私は最強でなくちゃいけないんだ!」

 

 

 そして繰り出されたのはブラッキー。相性は最高のはずなのに、嫌な予感しかしない。私は、勝って話ができるのか…?




世にも珍しい夜パ統一。

・ダフネ
五匹揃って初のフルバトルに挑む主人公。二重人格は珍しいと思うけど本人が嫌がるなら誰かに言う気はない。

・ジュリ
自分が戦おうと思ったけど、ジュリに止められてやめた親友。元々二重人格キャラが好きなので全然忌避感はない。むしろ仲良くなりたい。

・ヨハル
チャンピオン、つまりユウリに推薦されたトレーナー。実はブラッキーはヨハル本人の相棒。他人を信用したいけど、過去のとあるできごとから信用できないでいる。

・ヤユイ
ヨハルの別人格。自称最強。過去のとある出来事から他人を信用できないヨハルの一面が色濃く出ている人格で、ヨハルは自分だけ信じていればいいと考えている。負けることをよしとしておらず、最強を志す。メガシンカについて知っているようだが…?

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VSアマルルガ

どうも、放仮ごです。感想であっさりばれてしまったため予定変更してさっさと暴露することにしました。

今回はヤユイとの決着。楽しんでいただけると幸いです。


「ブラッキー、あくび!」

 

 

 夕方から夜になる。暗くなると目立つ赤い瞳を煌々と輝かせ、負けられない、と叫んだ二重人格の少女の一手はあくび。次に技を出したあとに眠り状態になってしまう凶悪な技だ。だが交代すれば、とボールを構えると、ブラッキーの目が全て黒に染まる。

 

 

「くろいまなざし!」

 

「なっ!?」

 

 

 ボールに戻せない、逃げれなくなったメガヘラクロス。ならば、ブラッキーだけでもここで落とす!

 

 

「メガホーン!」

 

「つきのひかり!」

 

 

 やられた。ブラッキーは確か、防御の堅いポケモンとして有名だ。耐えられた上で、つきのひかりで完全回復されてしまった。そんな馬鹿な…そして眠りに落ちるメガヘラクロス。かといって戻すこともできない。できるのは、早く目を覚ますことを願うだけだ。

 

 

「うわあ、凶悪コンボ…あの子、ブラッキーのことよくわかってるなあ」

 

「くっ…起きて、ヘラクロス!」

 

 

 ジュリさんが感心する中で、私の悲痛な叫び声が木霊する。しかしヤユイは笑っていた。

 

 

「こうなったらもう、なにもできない!じっくり蜘蛛の巣に絡め取るように…イカサマ!」

 

 

 鋭い一撃がメガヘラクロスに炸裂する。効果は四分の一のいま一つ、だがしかし攻撃力が高いほど威力が上がる技だ。メガシンカしたことで攻撃力が向上しているメガヘラクロスではそう何度も耐えられない。完全に相手の策にはまってしまった。

 

 

「…これ、メガシンカ対策だ。メガシンカすることで必ず攻撃力が上がるから…」

 

「そうだよ!あの時も、こうすれば!こう、できれば!私は、大事な友達を失うことはなかったんだ!イカサマ!」

 

 

 ジュリさんの合点が行ったような言葉に返す様に悲痛な声を上げ、イカサマを連打してくるヤユイ。話が、見えてきた。そしてつい最近、私は似た様な話を下手人の口から聞いた。まさかとは思うが、恐らく間違いない。

 

 

「……ヴァイス、と言う名に聞き覚えはありませんか」

 

「!?」

 

 

 私の口から語られた言葉に、指示する口が止まるヤユイ。ジュリさんは首を傾げているが、ビンゴだ。少しでも、ヘラクロスが目覚めるまでの時間を稼ぎたい。

 

 

「なんで、その名前を……やっぱり、アイツの仲間か!」

 

「違います!正真正銘、ヴァイスの敵です!私は先日、プラズマ団の幹部ヴァイスを名乗った女と出会いました。その際嬉々として語っていたんです、昔カロスで相手のポケモンを死なせて追放されてしまったと。その相手とは、貴女ですね?」

 

「っ…!」

 

 

 この世の全てに憤怒を抱いているような少女にあるまじき表情を浮かべるヤユイ。相当怨みが深いらしい。茫然としつつ、バトルしていることを忘れたのか天を仰いでぶつぶつと呟き始める。

 

 

「待って。アイツが……ガラルにいる?アローラ、ガラルと何度も引っ越して、もうアイツと出会う機会すらないと思っていたのに……プラズマ団として、いる…?」

 

 

 今の間にメガヘラクロスを起こそうと呼び掛けていると、突如笑い始めたヤユイがその手に新たなボールを取り出したことに気付く。ルガルガンか?と思ったが違うらしい。

 

 

「はは、ははははは!やったよ、ヨハル!私達、ヴァイスとまた会える!しかもプラズマ団だってさ!完膚なきまでに叩き潰して、思う存分痛めつけても犯罪にはならない!私達なら許されるよね!あの子の仇が取れるんだよ、ヨハル!」

 

 

 その狂ったように笑う姿に、不味い情報を与えてしまったと確信する。まだ私より幼いと言うのに、自分のポケモンを殺されたなんて、どれだけ深い闇を抱えてるんだろうか…私なんかの過去なんて比べ物にならない。

 

 

「…教えてくれてありがとう、ダフネお姉さん。この世で一番大嫌いな女の事を教えてくれたお礼に………全力で、叩き潰すね」

 

 

 背中に感じるひやりとした殺気と共に、莫大な冷気を放ちながら繰り出されたのはアマルルガ。特性はゆきふらしなのか、晴れていた夜空にあられが降り始め、あまりの寒さに目を覚ますメガヘラクロスだが、その巨体にたじろぐ。ブラッキーが戻されたことでメガヘラクロスを戻せるようになったが、これはやばい…!

 

 

「戻って、ヘラクロス!お願い、グソクムシャ…!」

 

 

ヒレが赤く輝くのを、私は前にカンムリ雪原で見たことがある、攻撃の予兆だ。そして図鑑によれば、アマルルガはマイナス150度の冷気を操るという。そのふぶきの威力は、ブリザードと呼称される程に他のこおりポケモンとは桁違いの強さを誇る。しかもあられで必中だ。ここでヘラクロスを失う訳にはいかない。

 

 

「であいがしら!」

 

「うん、戻すよねお姉さんだったら!フリーズドライ!」

 

 

 やられた。ふぶきが来ると思って少しでもダメージを与えようと試みたら、放たれた冷気でこおりつけになってしまった。フリーズドライは例外的にみずタイプにも効果抜群になる、戦闘不能だ。

 

 

「くっ…ヘラクロス!インファイトです!」

 

「無駄だよ。ふぶき!」

 

 

 メガヘラクロスを再度繰り出し、四倍弱点であるかくとうわざで一気に決めるべく突貫するも、全身から放たれた凄まじい威力の吹雪により巨大な氷塊に閉じ込められ、動かなくなる。強すぎませんかね…!だけど、メガヘラクロスならば!

 

 

「さっさと最後のポケモン出してよ。お姉さんは勝てないから」

 

「…それは、なんでですか?」

 

「私は、軽い気持ちで応じたバトルでポケモンを死なせてしまったヨハルの後悔が生み出した、誰にも負けることはない最強の自分だからだよ」

 

 

 そう語るヤユイの目には、自信があった。今の自分は誰にも負けないという自信が。勝ち誇っている様であるが、まだだ。まだ、メガヘラクロスは負けていない。

 

 

「メガヘラクロスが倒れてしまって…あれから調べました。ヘラクロスはメガシンカすることで急激に体温が上昇すると。冷やしてくれてありがとうございます。ロックブラスト」

 

「…!?」

 

 

 ドドドドドン!と連続した破壊音とともに砕け散る氷塊。内部から現れたのは、両腕から岩を連続射出するメガヘラクロス。そのまま砲口をアマルルガに向け、連続した打撃音とともにその巨体が崩れ落ちる。

 

 

「そんな……!?それなら…ブラッキー!あくび!」

 

「カラクリが分かれば!タネマシンガン!」

 

 

 今度は小回りが利くタネマシンガンで、ちょこまか動きながら発動しようとしていたあくびを封じる。あくびさえなければブラッキーは脅威ではない。

 

 

「タネマシンガンで体力を削りつつ、メガホーンです!」

 

「つきのひかり!」

 

 

 体力を一撃で落とせる圏内まで持っていきたかったが、回復される。ならば、倒れるまで殴り続ける!

 

 

「インファイト!」

 

「つきのひかり…!」

 

 

 回復し続けるブラッキーを殴り続けるメガヘラクロス。耐久には耐久だ。こっちもどんどんぼうぎょととくぼうが下がって行くが、知ったこっちゃない。そしてついにブラッキーは倒れ伏し、メガヘラクロスが勝鬨を上げた。

 

 

「私は…負けるわけには、いかないんだあ!ルガルガン!」

 

「タネマシンガン!」

 

「いわなだれ!」

 

 

 まよなかのすがたのルガルガンが繰り出されると同時に両手に抱えられた岩石の山が振り下ろされ、ぼうぎょが下がりに下がりまくったメガヘラクロスは耐えきれず、叩き潰され慌ててボールに戻す。やはり残ったか、ルガルガン。アマルルガもそうだが、むしタイプで挑むにはいわタイプはあまりに天敵過ぎる。クワガノンで勝てるだろうか。いや、勝つしかない。

 

 

「クワガノン!ほうでんです!」

 

「がんせきふうじで受け止めて!」

 

「それを、待ってました!ねばねばネット!」

 

 

 ほうでんを防御した岩石の山に、クワガノンの口から放たれた粘々した糸が網の様になって岩石を中に閉じ込め、飛翔するクワガノン。ほうでんが防がれるのは分かっていた、ならば勝機はこれしかない!技を利用した技じゃない攻撃!

 

 

「そのまま空中から叩きつけて!」

 

「か、カウンター!」

 

 

 岩石の山を持ち上げて天高く飛翔し、急降下したクワガノンの即席鈍器が、咄嗟に振るわれたルガルガンの拳と激突。しかし勢いを殺しきれず、ルガルガンは叩き潰され戦闘不能となった。私の勝利だ。

 

 

「わ、私が、負けた……?」

 

「ヤユイ!?」

 

「いや、ヨハル!?ああもう、どっちですか!」

 

 

 負けたことがショックだったのか、ルガルガンをボールに戻すと目の色が青く戻り気を失って倒れてしまうヨハル(多分)に慌てて駆け寄る私達だった。




アマルルガの図鑑設定が明らかに最強な件。

ダフネ
以前出会ったヴァイスの言葉とヤユイの言葉が紐づいて真実に行きついた主人公。自分の抱えていたことなんてそんなでもなかったことを思い知る。

・ジュリ
ヤユイのブラッキーの扱いにゲームを思い出したダフネの親友。正直戦わなくてよかったと思ってる。

・ヨハル
元々カロス地方に住んでいた少女。過去にヴァイスにポケモンを事故で殺された張本人。親の配慮でアローラ(ジム制度がない)、ガラル(他の地方よりもスポーツとしての側面が強い)と引っ越しを繰り返した。詳しくは次回にて。ブラッキーとアマルルガとマニューラはカロス時代からのポケモン。

・ヤユイ
ポケモンを死なせてしまったことに後悔しヴァイスに怨みを抱いたヨハルが生み出した「誰にも負けない、自分のポケモンも死なせない、最強のトレーナー」としての人格。その本質はヨハルのトレーナーとしての才能が凝縮された存在で、夜中の自主練を偶然目撃したユウリが推薦状を渡すぐらいに強い。ルガルガン(ヨロイ島ではなくアローラで)とタチフサグマ(ガラルで)はヤユイとして捕まえたポケモン。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSブラッキー

どうも、放仮ごです。今回はバトル無しのシリアス回、ヨハルの過去となります。楽しんでいただけると幸いです。


 とりあえず気絶したヨハルの小柄な体を担いでキルクスタウンの病院に連れて行く。医者に寄れば過度なストレスから気絶しただけだったとのことで、目を覚ましたヨハルを連れて話を聞くためにホテルに泊まることにした。三人部屋のベッドに座ったヨハルが話し出すのを、二人して立って待つ。

 

 

「そういえば、私達と話すのは大丈夫なの?ヨハルの方は苦手っぽかったけど」

 

「………ダフネさんに負けたせいか、ヤユイが引き籠もってしまいました。あの子、負ける自分に価値がないと思ってるので…」

 

「うっ、なんかすみません…」

 

 

 開口一番、ジュリさんの問いかけにそんなことを伝えてきたヨハルに居た堪れなくなる。確かに勝つことに、最強であることに異様にこだわっていた……存在意義だったのなら悪いことをしてしまった。

 

 

「ダフネさんは気にすることないよ。結局、私が弱かっただけのことだから…」

 

 

 涙を目じりに溜めて目に見えて落ち込むヨハルに、なんて声をかければいいか迷っていると、怖いもの知らずのジュリさんが膝を曲げて顔を近づけると問いかけた。

 

 

「ねえ。やっぱりどう考えても二重人格が生まれるなんて普通じゃない。貴女に何が起きたのか、教えてくれないかな?」

 

「…3年ぐらい前、私はカロス地方に住んでいた。トレーナーになって、ジムリーダーを倒して四天王とチャンピオンに挑もう、そう考えて旅に出た子供だった」

 

 

 トレーナーになりたての子はみんなそうじゃないかな、と思う。私はそうでもなかったけど。

 

 

「2つのジムをあっさり越えて、調子に乗っていた私は引っ込み思案な自分を変えるために勇気を出して当時ミアレシティで行われた大きな大会に出場したの。それが全ての間違いだった…」

 

 

 さらっと言ってるけどあっさり2つのジムを越えているのは才能がある証だ。調子に乗って然るべきだ。この小柄な女の子は本当に才能があるんだな。

 

 

「準決勝まで勝ち上がって、ヴァイスと名乗った女のトレーナーと戦って。私よりも圧倒的に強いエリートトレーナー相手に、私は負けたくないと思って、なんとか耐え続けて……それに業を煮やしたヴァイスは、メガシンカを行使した。ただでさえ強かったオニゴーリがメガオニゴーリになって…」

 

「メガ、オニゴーリ…」

 

 

 まさか、あの強さでまだ本気を出していなかったというのかあの女。しかもアブソル以外にメガシンカできるポケモンがいるとは。

 

 

「今でも忘れられない、氷漬けにされて身動きが取れないところに容赦なく降り注いだ氷柱で串刺しにされたブラッキーの姿……」

 

「ブラッキーって、あれ?今も貴方の手持ちに…」

 

 

 ジュリさんが至極当たり前の疑問を言うと、回復したブラッキーが出されて心配そうにヨハルを見上げ、その頭を恐る恐る撫でようとして、止めてしまうヨハル。トラウマか何かだと見て取れる。

 

 

「この子は…前のブラッキーの子供。育成途中で、自分の母親の死を見せてしまったのに、ついてきてくれる優しい子で……潔く負けを認めていれば、死なずにすんだ。そう主張したヴァイスの心無い言葉に、私の心は壊れてしまった」

 

「ひどい…」

 

「ヴァイスって奴、私は知らないけど人の心がないのはよくわかった」

 

 

 ジュリさんでさえ怒りに拳を握っている。悔しかっただろう、悲しかっただろう。なのに追い打ちした上にヨハルのせいだと言うなんて、ひどすぎる。

 

 

「ポケモンをまた死なせてしまうんじゃないかって、触れ合う事すらできなくなって……無気力に引き籠もって生きていた、そんな時、私の中にヤユイが生まれたの」

 

「そんなことが…」

 

「誰にも負けない、ポケモンも死なせない、最強の自分・・・でしたか」

 

 

 確かに強かったし、自信に満ち溢れていた。ヨハルを大事にしていることが伝わってきた。それが落ち込んで、表に出てこないとヨハルは言う。

 

 

「ヤユイはヴァイスにも負けないと豪語していて……自分が負けるとは一切考えてなかった。勝ち続けることが存在意義だってあの子は言っていて…」

 

「ジムリーダーどころかただのトレーナーで、しかも格下だと思っていた私に負けたのがショックだと」

 

「そう言うこと…だと思う。でもどうしよう、ヤユイが出てこないと、私なにもできない…」

 

「それはまたどうして」

 

 

 するとヨハルは私達を上目づかいでジッと見つめてから、深呼吸して続けた。

 

 

「…貴方たちは信用できるんだけど。私、引き籠もっていたから人と話すことが苦手で…受付と話すこともできないので、ジム戦もままならないと思います」

 

「でもマリィさんと話してませんでしたか?」

 

「ヤユイ、私の事を思ってなのかやることをやったらすぐ引っ込んでしまってしょうがなく私が…」

 

「ふむ」

 

 

 なるほど。お節介で過保護な双子の姉みたいなものか。それは確かに、妹…つまりヨハルを幻滅させたと落ち込んでもしょうがない気もする。こう言っちゃなんだけどめんどくさい二重人格である。

 

 

「…ヨハルはもう、戦えないんです?」

 

「うん。死なせてしまうかもって恐怖で私はなにもできなくなる。ヤユイがいないと、ポケモンと触れ合う事すらできない」

 

 

 そう落ち込むヨハルに、私はジュリさんと顔を見合わせ、心配そうにヨハルを見つめるブラッキーをジュリさんが抱え上げた。

 

 

「ほいっと」

 

「え。ひゃああ!?」

 

 

 ベッドに座るヨハルにひょいっとブラッキーを乗せるジュリさん。その瞬間一瞬の間の後悲鳴を上げてブラッキーは投げ出され、くるくると宙を舞った後私の腕にスポンと収まった。うむ、蟲じゃないけど普通にかわいい。

 

 

「な、なにを!?」

 

「いやまあ、ほら。苦手意識で触れないだけなら触れれば解決するかなって」

 

「そんな無理やり…」

 

「でも、大丈夫だったでしょう?」

 

 

 そう私が言うと、押し黙るヨハル。図星らしい。私がブラッキーを差し出すと、恐る恐ると手を伸ばし、ブラッキーの伸ばした前足と手が触れる。その瞬間、私の腕の中から飛び出しヨハルに飛び付くブラッキーを、涙ながらに受け止め抱きしめるヨハル。

 

 

「ごめんね、ごめんね…」

 

 

 号泣するヨハルを、私達は顔を見合わせ静かに見守り、深夜も更けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 泣き疲れてブラッキーを抱きしめながら眠ってしまったヨハルと、既に睡魔に負けて爆睡中のジュリさん。私は身支度を整えつつ、ぐっすり眠るヨハルに問いかけた。

 

 

「ヤユイ。起きてるなら出てきてください」

 

「………なに?」

 

 

 ヨハルが目を開けると、赤色に染まっていて。明らかに拗ねてます、と言った顔で睨んできた。

 

 

「私に負けたのがそんなに悔しいですか?」

 

「違う。私は、負けちゃ駄目なんだ。勝ち続けないと駄目なんだ。ヨハルを守れるのは私だけだから…」

 

「そんなんじゃヴァイスに負けますよ」

 

「なに?」

 

 

 禁句だったのか憤怒の表情で睨んでくるヤユイに物怖じせず、私は答える。

 

 

「私は先日ヴァイスと戦いました。今の彼女はトレーナーはトレーナーでも犯罪者のプラズマ団です。ジムリーダーみたいにルールありきの戦いじゃありません。容赦なくポケモン一体に対して二体を使ってくるような輩です。私の時はチャンピオンが乱入してきたから助かりましたが、貴女が負けた私が敗北するところだった相手です」

 

「ッ…!」

 

「私に負けるような今のままじゃ、勝てませんよ?」

 

 

 そう言うと、立ち上がって掴みかかってくるヤユイ。私は何も言わずに黙って受け入れる。

 

 

「じゃあ、どうすればいいの!?勉強もした、自主練もした!あの子を守れる、ヴァイスに勝てる強さを手に入れるために頑張ったのに!なのに負けるなんて…じゃあ私は、なんのためにいるの!?」

 

 

 ヤユイの悲痛の叫び。ムニャ、とジュリさんの寝言が合間に入り、私は一呼吸して続けた。

 

 

「では聞きますが、誰かを頼りましたか?」

 

「っ……他人はヨハルを傷つける。頼るなんて、するわけがない」

 

「少し事情は違いますが、私も手痛い敗北をして、ポケモンを失った人間です。弱い自分が嫌だから、私は人を頼りました。一人で強くなるのは限界があるんです。他人を信用できないのは分かります。でもならばせめて、私達を頼りませんか?ヨハルを、貴方を。既に友人だと思っている私達を、信用できませんか…?」

 

 

 そう言って手を差し出すと、分かりやすく戸惑い迷うヤユイ。

 

 

「…最初に出会った時、幽霊から手紙を受け取って、それを取り返すために奔走する貴方達を見て、ヨハルは初めて自分から関わろうとしたんだ。手伝いたいって。それに、私でもできなかった、ヨハルとブラッキーをまた触れさせてくれた……信用、できると思う。お姉さんたちなら」

 

 

 そう言ってヤユイは手を握ってくれた。力強く握り返す。その後ろでは、何時の間にか起きていたのかジュリさんが満面の笑みで見守っていた。………見ていたなら私だけに言わせないでください、恥ずかしい。




元ネタからして重い子たち。

・ダフネ
過去の経験(蟲ポケモンを忌避していた)から荒療治が一番だと考えてる主人公。蟲ポケモン以外もやっぱりかわいい。ヴァイスの末恐ろしさにプラズマ団の脅威を思い知る。

・ジュリ
睡魔に勝てなかったけどヤユイの怒鳴り声で目を覚ましたダフネの親友。ヴァイスの事は知らないけどとりあえず許さない。

・ヨハル
元々カロス地方に住んでいた少女。トレーナーになりたての頃に勇気を出してちょっとした大会に出た際にヴァイスと当たり、完膚なきまでに叩き潰された上に子供の頃からずっと一緒だったポケモンを事故と称されて殺されてしまい精神が崩壊。ポケモンと触れ合う事すらできないほどにトラウマになってしまった。
死なせてしまった母親ブラッキーと同じ姿に進化した子供であるブラッキーに恨まれてているものと考えていた。忘れちゃならないが、ブラッキーは懐いている状態で夜にレベルアップすることで進化するポケモンである。つまりそういうこと。

・ヤユイ
勝てない自分に存在意義はないと考えていたヨハルの別人格。ダフネ曰くお節介で過保護な双子の姉のような存在。ついでに言うと負けず嫌いで責任感が重い。ヨハル以外の誰にも心を開いてなかったが誰かを頼ることを知る。

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VSルチャブル

どうも、放仮ごです。今回はラウラの天敵と言ってもいい問題児、ムツキとダフネの対決となります。楽しんでいただけると幸いです。


「私もダフネさん達に同行する」

 

 

 一夜明け、いざキルクスジムに行こうと準備していると、最後に起きたヨハルがそう言った。思わず顔を見合わせる私とジュリさん。

 

 

「えっと…いいの?私達、これからキルクスジムに挑むんだけど…ヨハル、じゃなくてヤユイはもうバッジ手に入れたんだよね?」

 

「二人で連続で挑むので結構時間かかりますよ…?」

 

「ヤユイから話は聞いた。強くなるために手伝ってくれるんでしょ?それに………友達、だから」

 

 

 最後だけ恥ずかしそうに俯いて言う姿に、ちょっとグッと来た。ジュリさんも同じようで私と同じく胸を押さえてる。その気持ち、すごいわかる。

 

 

「それに急ぐ旅じゃないし…どうしたの?」

 

「い、いえ不覚にもときめきまして…」

 

「反則だよそれは…」

 

「?」

 

 

 首を傾げるヨハル。私、末っ子だけど妹がいたらこんな感じなのだろうか。するとぴくっと誰かに呼ばれたように反応すると青い目を閉じて再び開けると赤い目に、ヤユイに変わっていたヨハルに睨まれる。

 

 

「ヨハルに手を出したら許さないからね…」

 

 

 ジュリさんと二人してブンブンブンブンと首を横に振る。ヤユイはジトーッと睨んできていたけど納得したのか目を瞑ってヨハルに戻った。

 

 

「や、ヤユイがごめんなさい…」

 

「大丈夫ですよ。気にすることないです」

 

「さすがに慣れてきたしね。じゃあ、そろそろ行こうか」

 

 

 ジュリさんの言葉に頷き、私達三人はホテルを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで私が一番手でジムに挑むことになったのだが。

 

 

「殺す気ですかああああああ!?」

 

 

 全方向から不規則に襲いくる暴風が吹き荒れる中で露出している落とし穴を避けながら進むという苦行に落ちまくっていた。以前の岩やら氷やらのジムリーダーのギミックをそのまま使っているとはヨハルに聞いてましたけど、これは進ませる気ないのでは?落ちたら下に待機しているひこうポケモンが回収してくれるので安全ではあるみたいですけど。

 

 

「しかも、ジムトレーナーも風を利用してきて妙に強いですし…」

 

 

 不規則な風を感知できるのか、風の流れを利用して空中攻撃を仕掛けてくるジムトレーナーにだいぶ苦戦した。きずぐすり足りるだろうか。ジムリーダーのムツキさん、昔は母親のキリエさん共々育成の鬼とか呼ばれてましたがトレーナーも強くできるんでしょうか…。

 

 

「でも、ようやくたどり着きましたよ!」

 

『本日のキルクススタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ご存じ、メガシンカ使いにして蟲の女王の後継者、ダフネ選手!対するはジムリーダー、ムツキ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 なんとかジムミッションをクリアしてバトルコートに辿り着くと、ユニフォームの上から羽織ったロングコートと長いポニーテールをはためかせるムツキさんが待っていた。

 

 

「ラウラの後継者とは実況もいいセンスですね。私を打ち負かしたライバルの後継者とは。しかしジムトレーナーとの戦いを見せてもらいましたが蟲ポケモンだけで私のジムに来るとはいい度胸です。地を這う蟲では大空を舞うひこうタイプには敵わないと思い知らせてあげます!」

 

 

▽ジムリーダーの ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

「大空を舞え、フワライド!」

 

「お願いします、グソクムシャ!」

 

 

 ムツキさんはフワライド、私はグソクムシャ、ききかいひでひこう技を回避できるグソクムシャなら相手できるはずだ。

 

 

「であいがしら!」

 

「おいかぜ!」

 

「っ!?」

 

 

 渾身の一撃が、おいかぜで威力が減衰してフワライドに当たり、軽く掃われる。この風の勢いでは、突撃する技が悉く威力が下がる上に、あちらのすばやさが上がる。いきなりきついのですが!

 

 

「手も足も出させずに終わらせましょう!そらをとぶ!」

 

「いきなりですか…!?」

 

 

 以前、兄さんに連れられて見に行ったセミファイナルトーナメントで生で見たことがある。通称エレベーター戦法。ゴーストダイブと繰り返して、相手に何もさせずに蹂躙するムツキさんお得意の戦術…!空からの襲撃をバックステップで避けるグソクムシャだが、そのまま影の中に沈み込むフワライド。どうやって止める…!?

 

 

「避けても無駄ですよ!ゴーストダイブ、そらをとぶ!」

 

「グソクムシャ、アクアブレイク!」

 

 

 落ちてきたところを見計らって攻撃を繰り出すも、落下速度の伴った一撃の余波で吹き飛ばされ、攻撃することもままならない。だけど、水は撒いた。あとはあの、繰り返したことによる粉塵を利用すれば…

 

 

「ダイビング!」

 

 

 空に舞い上がったところで、こちらは水たまりに潜り込む。落ちてきたところで標的がいないことに気付いたムツキさんはゴーストダイブすることをやめて、アクアブレイクの影響で水たまりだらけのフィールドを注視した。

 

 

「むっ、やりますね。このまま続けていたら私はさらに標的を見失っていたことでしょう」

 

「すぐ止めてくるとはさすがはジムリーダー。だが甘いです!」

 

 

 その瞬間、フワライドの真下に移動した水たまりから凄い勢いで飛び出してしがみ付くグソクムシャ。その戦法の攻略法はラウラさんが教えてくれました!

 

 

「っ…振り放しなさい!シャドーボール!」

 

「その前に決めなさい!アクアブレイク!」

 

 

 シャドーボールを受けながら、渾身の一撃が気球の様なその顔面に炸裂、大きくへこませて地面に叩きつける。同時にダメージを受けて戻ってくるグソクムシャ。よくやりました、さすが兄さんの相棒です。

 

 

「やられました…どこまでも、あのラウラを思い出させてくれるチャレンジャーですね……ですが、そう簡単に勝たせませんよ!ルチャブル!」

 

 

 繰り出されたのはひこう・かくとうのルチャブル。あのラウラさんのドラピオンを圧倒したことは今でも覚えてる。ならば、こちらも出し惜しみはしない。

 

 

「いきますよ、ヘラクロス!メガシンカ!」

 

「来ましたか、メガシンカ。ですが私のルチャブルの相手になるとは思えませんね!つばめがえし!」

 

「メガホーン!」

 

 

 寒空の下に繰り出すと同時にメガシンカ。右腕の先端を光らせて地を駆け突撃してきたルチャブルの一撃を、メガホーンで受け止める。そのまま、両手両足を鋭く振るってくるルチャブルと、角で受け止めて行くメガヘラクロスの攻防が続く。ひこう技だけは受けてはならない。

 

 

「ロックブラスト!」

 

「フライングプレス!」

 

 

 一瞬の隙を突いて放った岩の弾丸は天高く跳躍されて回避、急降下してくるルチャブルにロックブラストを撃ち続けるも、急降下の勢いで砕かれて意味をなさない。

 

 

「ヘラクロス、全速力で退避!」

 

「遅い!」

 

 

 そして隕石の様な一撃が落ち、爆風がここまで届いてきた。何という威力。だがしかし、メガヘラクロスの蒸気の噴出を利用したスピードを侮られては困る。

 

 

「何と…!?」

 

「ヘラクロス!両手でロックブラスト!」

 

 

 腹ばいに着地して隙だらけだったルチャブルに岩の弾丸が連続で放たれ、腹ばいに跳ねて回避するルチャブルだったが圧倒的な数の弾幕がそれを許さない。全身を岩の弾丸で撃ちのめしていく。

 

 

「とびはねる!」

 

「なっ!?」

 

 

 しかし、あと一撃で決まると思われたその時、こちらのロックブラストを足場にしてヘラクロスに向けて跳躍してくるルチャブル。天高くではなく、前方に真っ直ぐ!?

 

 

「ヘラクロス、メガホーン!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 やられた。メガホーンと接触する瞬間、つばめがえしの勢いを利用して下に曲がり腹部に鋭い一撃が炸裂。元の姿に戻り、崩れ落ちるヘラクロス。なんて技の使い方だ。破天荒すぎる。だがしかし、ヘラクロスはルチャブルを追い詰めるいい仕事をしてくれました。

 

 

「グソクムシャ!であいがしら!」

 

 

 最速の一撃が瀕死寸前のルチャブルの顔面に炸裂、殴り飛ばす。これで3-2。まだまだここからです!




相変わらず滅茶苦茶強いルチャブル。ムゲンダイナを圧倒した実績は伊達じゃない。

・ダフネ
ヨハルの可愛さに打ちのめされた主人公。ムツキの戦いは過去に見たことがあり、対策は全部ラウラ譲り。今回の切札はヘラクロスでもクワガノンでもない。

・ジュリ
ヨハルの可愛さに打ちのめされたダフネの親友。新しい同行者が出来てちょっと嬉しい。初めて出会うラウラ以外のゲームには存在しないジムリーダーに興味津々。

・ヨハル/ヤユイ
ダフネたちに同行することにした二重人格。二つの人格揃ってダフネとジュリを友達だと認識している。ムツキはルガルガン、マニューラ、アマルルガと相性的に負けるはずがなかった。

・ムツキ
久々登場、ひこうタイプのジムリーダー。ジムミッションは前任のものを流用している。落とし穴を避けさせるのではなく、最初から落とし穴を全部見せて風に落とされないようにするジムミッション。ジムトレーナーも自ら鍛えており、全体的に難易度が高いジムとなっている。
ジムリーダーとしての戦法はおいかぜを利用した圧倒的攻撃の嵐。普段は猫を被っているがバトルとなると容赦がなくなる。特に蟲使いには個人的に負けたくないから大人げなく制限ありきの本気である。

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VSファイアロー

どうも、放仮ごです。今回はデンチュラじゃできなかった大空中戦となります。題して巨大空中要塞VS巨大UFO。楽しんでいただけると幸いです。


「蹂躙しますよ、ファイアロー!」

 

「ファイアロー…!?」

 

 

 グソクムシャにルチャブルを落とされ、ムツキさんが繰り出したのはほのお・ひこうタイプのポケモン、ファイアロー。二年前の試合では使っていなかったポケモンだ。てっきり、キョダイマックスのアーマーガアと相棒のウォーグルが残りの手持ちだと考えていたのに。

 

 

「ですが相性はこちらが上です!アクアブレイク!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 跳躍して水を纏った一撃を叩き込むグソクムシャ。しかしファイアローは炸裂する寸前で身を捻り右足で強烈な蹴りを見舞ってグソクムシャを蹴り飛ばした。

 

 

「くっ、ダイビングです!」

 

「上空に舞い上がってひのこです!」

 

 

 上空に舞い上がってひのこをばら撒き、炎上させるファイアロー。その戦法は、見たことがある。ガラルスタートーナメントのラウラさんの試合。ウルガモスで披露していた、通称フレアフィールド。炎上していることで上昇気流が発生し、さらに高く舞い上がるファイアロー。おいかぜとフレアフィールドの上昇気流で気流はもう滅茶苦茶だ。ダイビングで飛び出したグソクムシャが届かない遥か上まで行かれてしまった。

 

 

「ブレイブバード!」

 

 

 急降下の一撃が空中で無防備なグソクムシャに炸裂。効果抜群の一撃を受けた上でフィールドに叩きつけられ、それでもフラフラと立ち上がるグソクムシャ。空中で駄目でも地上なら…!

 

 

「なかなかにしぶといですね…つばめがえし!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 急降下し、地面に激突する寸前で直角に曲がって高速で襲いかかるファイアロー。その姿はまるで炎の矢。それに対して居合切りする武者の如く水を纏った拳を構えて身構えるグソクムシャ。そして両者が激突する瞬間、斜め上に曲がってグソクムシャの振りかぶった腕を回避し、空ぶってもつれたグソクムシャの頭上から鋭い蹴りが炸裂。蹴りつけられた勢いのまま崩れ落ちるグソクムシャ。

 

 

「とりポケモンは打たれ弱いのです、回避訓練は特に力を入れてます」

 

「…厄介ですね。ご苦労様です、グソクムシャ」

 

 

 戦闘不能になってしまったグソクムシャをボールに戻し、状況を確認する。おいかぜに、フレアフィールドによる上昇気流。明らかにひこうタイプに有利な場だ。でもこの上昇気流は利用できるかもしれない。

 

 

「出番です、気流に乗りなさい、クワガノン!」

 

 

 クワガノンは特性ふゆう。でんき・むしではあるが宙に浮くことができる。上昇気流を利用してファイアローと同じ高さまで舞い上がる。モニターが上空の様子を映し出し、観客も熱狂している。勝負はここからだ。

 

 

「蟲が宙を舞いますか。叩き落としてあげましょう、ひのこ!」

 

「それはこちらの台詞です!むしのさざめきで掻き消しなさい!」

 

 

 高速で宙を舞いながらのひのこの雨が襲いかかるも、クワガノンも翅を羽ばたかせた衝撃波でひのこを掻き消しつつ突進、ファイアローに肉薄する。

 

 

「ほうでん!」

 

「当たりますかそんなもの!つばめがえし!」

 

 

 放たれた電撃を、空を自由自在に舞って軽く回避し電撃が収まったところに鋭い蹴りを叩き込んでくるファイアロー。効果抜群ではないとはいえ、結構なダメージで空中でふらついてしまい、大きくターンして加速するファイアロー。

 

 

「とどめです、ブレイブバード!」

 

「でんじは!」

 

「っ!?」

 

 

 直線に突っ込んできたので、遠慮なくでんじはを炸裂させて麻痺を起こし、すばやさの鈍ったファイアローの一撃をひらりと避けるクワガノン。これでもう、あの音速飛行はできない筈だ。

 

 

「つばめがえし!」

 

「ねばねばネット!」

 

 

 再度、鋭い蹴りが襲いかかるも、それが炸裂する前に粘つく糸の網がファイアローの全身に絡みつく。あれでは満足に羽ばたくこともできない。こうなればこちらのものだ。

 

 

「はがねのつばさで斬り裂きなさい!」

 

「さらにねばねばネット!」

 

 

 はがねのつばさで斬り裂かんとするも、さらに上からねばねばネットを吹きかけ、拘束を固める。これで翼を満足に振るうこともできず斬り裂くこともできまい。

 

 

「振り回して上にぶん投げなさい!」

 

「ひのこ!」

 

 

 翼からばら撒くひのこで燃やして逃げ出そうとするファイアローだが、縦横無尽に振り回されてひのこも十分に燃やすことなく周囲にばら撒かれる。そしてついに、糸が切り離され、拘束されたファイアローが空中に投げ出された。これでは避けれまい。

 

 

「ほうでん!」

 

 

 まひして、糸で拘束され、満足に羽ばたくこともできず空中に投げ出されたファイアローに放たれる電撃。空でフラッシュが起こり、黒焦げとなったファイアローが落ちてきてフィールドに叩きつけられた。空から舞い降りて来て勝鬨の如く顎を開いて威嚇するクワガノン。何とか最後の一体まで追い込めた。恐らく最後は、あのポケモンだ。

 

 

「あいつのデンチュラを思い出すポケモンですね…いいでしょう、ならば本気でお相手しましょう!風よ吹き荒れろ、その巨翼を持って世界を嵐で包み込みなさい!キョダイマックス!」

 

 

 手にしたボールを巨大化、天高く放り投げるムツキさん。遥か上空で解放され、アーマーが分離した攻撃用小型ユニット、ブレードバードが八枚飛び交う姿になった色違いのアーマーガアが咆哮を上げる。こちらはまだ、ダイマックスは使わない。

 

 

「クワガノン、でんじはです!」

 

「全て全て天高く吹き飛ばせ!キョダイフウゲキ!」

 

 

 とにかく麻痺にしようとでんじはを放つも、そんなものものともしないエレキフィールドやら何やらを全てを吹き飛ばす風の一撃に打ちつけられるクワガノン。

 

 

「さすがにでんき・むしを一撃とまでは行きませんか…」

 

「頑張ってください、クワガノン!」

 

 

 それでもなんとか持ち堪え、キョダイアーマーガアの目前まで舞い上がるクワガノン。少しでもダメージを…!

 

 

「ほうでん!」

 

「キョダイフウゲキ!」

 

 

 しかし圧倒的な風の一撃で地面に叩きつけられてしまい、戦闘不能になってしまう。しょうがない、クワガノンで勝てればと思っていたが甘くはなかった。切札を切る時だ。

 

 

「この子が、今回の切札です!イオルブ!」

 

「むっ?」

 

 

 私の繰り出したイオルブに、これが切札…?と分かりやすく顔を曇らせるムツキさん。正真正銘切札です。イオルブをボールに戻し、ダイマックスバンドからエネルギーを溢れさせて巨大化、振りかぶる。

 

 

「あまねく全てよ、地に伏しなさい!キョダイマックス!」

 

 

 通常のダイマックスと異なり、マゼンタ色の雲の上で巨大化、姿を変えるイオルブ。その姿はまるで巨大なUFO。キョダイアーマーガアより上に浮遊するその姿はまるでポケウッドのSF映画に出てくる空中母艦だ。

 

 

「終わらせます、キョダイテンドウ!」

 

「それはこちらの台詞です!キョダイフウゲキ!」

 

 

 翼を大きく広げて羽ばたこうとするキョダイアーマーガアに下方から音波の様な攻撃が炸裂。その瞬間、ぐらぐらとその巨体を揺らがせ技を発動するどころじゃないキョダイアーマーガア。何が起きた!?と驚愕するムツキさんも片膝を突き、私も増大した重力に何とか耐える。これは中々きついですね…!

 

 

「な、なにが…!?」

 

「ご存じありませんか?イオルブのキョダイマックスワザはキョダイテンドウ。エスパータイプの技が変化した技で、命中率を上げると同時に、一定時間じゅうりょくを発生させる。羽ばたけない鳥など、敵ではありません!」

 

「くっ…ならばこれはどうです!ダイスチル!」

 

「もはや無駄です、キョダイテンドウ!」

 

 

 さらに重力波がキョダイアーマーガアに炸裂。動こうとしたその巨体を、地面に沈めて行くキョダイイオルブ。最終的にキョダイイオルブを見上げて睨み付けていたキョダイアーマーガアは(こうべ)を垂れて、戦闘不能となった。

 

 

「こ、こんなことが…」

 

「蟲を舐めない方がいいですよ?」

 

 

 両膝を突いて愕然と言った表情のムツキさんに、ドヤ顔を浮かべて見せた。




むしタイプのキョダイマックスの中だと異質だけど結構好きなキョダイイオルブ。

・ダフネ
最悪キョダイイオルブで飛ばせなければ勝てるだろと多寡を括っていたらルチャブルが出てきて結構焦った主人公。でも負ける気はしなかった。ちょっと女王様気質。

・ムツキ
一番屈辱的な地に堕とされるという最悪の負け方をして茫然自失なジムリーダー。新しい手持ちであるファイアローのフレアフィールドはガラルスタートーナメントの際に空飛ぶのに使えそうだな、と自力で習得したもの。自分の知らない蟲ポケモンの強さに負けて本気で悔しい。

・フレアフィールド
ラウラが考案、ガラルスタートーナメントでウルガモスを用いて披露した技術。ひのこをばら撒いてフィールドを火の海にしてほのおタイプの技の威力を上げる他、触れた相手をやけどにすることができる。ムツキはそれに加えて上昇気流でひこうタイプのアドバンテージを上げることに成功した。にほんばれすると威力が上がる。

・ファイアロー♂
とくせい:はやてのつばさ
わざ:ブレイブバード
   つばめがえし
   ひのこ
   はがねのつばさ
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。駆けっこが好き。ムツキの新メンバー。冷静に敵の攻撃を回避し強烈な一撃を叩き込む戦法を取る。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSケンホロウ

どうも、そろそろタイトルに困ってきた放仮ごです。メインキャラのポケモンって大体が既にタイトルで使ってるからどうにかこうにか絞り出すのが大変。

今回はジュリVSムツキ。ジュリ視点です。楽しんでいただけると幸いです。


 無事勝利したダフネに続き、ジムミッションに挑む。元になったのはマクワのジムミッションかな?だいぶアレンジ加えられてるけど、落とし穴が見えるってのはありがたい。ゲームで何度落ちたか覚えてないぐらいだもの。足元を気にしながらのバトルは結構きつい。

 

 

「ケンホロウ!ゴッドバード!」

 

「…プルリル、みちづれ」

 

「なっ!?」

 

 

 ゴッドバードとかいう一度使ったら止められない溜め技を使ってきたジムトレーナー相手にみちづれを使うのは駄目だろうか。いやまあ、勝ち目がないならこうするしかないよね。ゴーストポケモンは基本的に鈍いのだ。呪いだけに。あんな高速で飛び回られたらどうしようもない、だから飛ばせない様に頑張ろう。

 

 

「伊達にげんきのかけらを買い揃えているわけじゃないんだよなあ」

 

 

 ダフネのおかげで、生き残って共に味わう勝利を体感したとはいえ、私はこの子たちに勝たせたいのだ。だからみちづれを使うことを躊躇しない。特に今回の相手は、お兄ちゃんの昔話でユウリさんの次に心に残っている、本当に心が折れたと言わしめた、私も知らない、原作に存在しないジムリーダーのムツキさんだ。

 お兄ちゃんを負かした相手がどんな人間なのか調べてみたら、キバナさんより前の時代の最強のジムリーダー、キリエの娘であり、同期で仲良しのラウラ・モコウ・ムツキの三人娘の中では一番最初にジムトレーナーからジムリーダーになり上がった実力者という話だ。油断ならないにも程がある。

 

 

『続きましてのキルクススタジアム挑戦者は、背番号000!犠牲を物ともせず冷徹に突き進むゴースト使いジュリ選手!対するはジムリーダー、ムツキ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 そんなことを考えながらジムミッションをクリアし、ムツキさんの目前に立つ。二年前は吐血するのが代名詞の病弱だと聞いていたが、ユニフォームの上にコートだけで大丈夫なのだろうか?

 

 

「面白い戦法をしますね。私も今まで戦ったことがないタイプです、お手柔らかに。と言いたいところでしたが…気に食わない顔ですね。ラウラの血縁か何かです?」

 

「従姉妹で妹分やらせてもらってます、ジュリです。お兄ちゃんがこっぴどくやられたと聞いているので呪い倒させていただきますね」

 

「おにっ…ふふっ、はははははっ!男らしいとは思ってましたが従姉妹に男扱いされてるんですかあの蟲狂いは!」

 

 

 爆笑するムツキさん。変なツボに入ったらしく、笑いが収まる気配がない。このお兄ちゃん呼びは人前ではやめた方がいいかもしれないけど、お兄ちゃんをお兄ちゃん以外で呼ぶのは考えられないんだよなあ。

 

 

「くくっ、ふふふっ……二連続であの女を思い出すチャレンジャーだなんて正直いい気はしませんでしたが、それは面白い!お礼に大空に舞う翼で吹き飛ばしてあげましょう!」

 

 

▽ジムリーダーの ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

「ゴースト同士です、油断はしないでくださいフワライド!」

 

「引き摺り下ろしちゃえ、ダダリン!」

 

 

 ダダリンはくさ・ゴーストと私の手持ちではひこうと相性が悪いため出しどころはここしかない。でも、負ける気もないのだ。同じゴーストタイプだということを呪え。

 

 

「そらをとぶ!」

 

「アンカーショット!」

 

 

 逃がさない。上空に急上昇するフワライドに錨を巻き付かせる。それに形が変わるぐらいに拘束されてギョッとするフワライドとムツキさん。まさか、ゴーストタイプ相手に好きなことができると思っていたのかな?

 

 

「引き摺り下ろしてゴーストダイブ!」

 

「引き剥がしなさい!シャドーボール!」

 

 

 今更シャドーボールを撃ってくるが、その前に影に沈み込みフワライドも引き摺りこむダダリンには関係ない。完全に引きずり込むと数秒の後、空中に飛び出し大回転するダダリン。その勢いに振り回されたフワライドは地面に叩きつけられ、沈黙した。

 

 

「また、地に堕とされるとは…」

 

「アンカーショットから逃げられるポケモンは存在しない!悪いけど飛ばせませんよ!」

 

「私に飛ばせないと言うのはいい度胸です。ファイアロー!」

 

 

 なんかお怒り気味のジムリーダー。完全に相性で負けてるファイアローを出してきた。…フレアフィールドだっけ。あれをされるときついな。

 

 

「ひのこ!」

 

「ゴーストダイブ!」

 

 

 降り注ぐひのこの雨を影の中に沈んで回避する。私のダダリンは特別だ。捕まえたあとでダフネに聞いた話だが、お兄ちゃんのドラピオンやビークインと同じく特殊な能力を有するぬしポケモンの一体らしいのだ。アローラにいるアレのガラル版だ。お兄ちゃんのドラピオンの場合「異様な威力の技」ビークインの場合「技の広範囲行使」だ。それで、旅の中で試してみたダダリンはと言うと…

 

 

「出てきたところで焼き尽くしてやりますよ!」

 

「出る必要はないです。ダダリン、影の中からアンカーショット!」

 

「なっ!?」

 

 

 ファイアローの影の中から飛び出した鎖に繋がれた錨が伸びてきて拘束、地面に叩きつける。ダダリンの場合はゴーストダイブで沈んだままの技の行使だ。ギガドレイン以外の技が物理だから逆に引き摺り出される可能性はあるけど、空中で踏ん張れないひこうポケモンには効果覿面だろう。

 

 

「はがねのつばさで叩き斬りなさい!」

 

「ゴーストダイブ!」

 

 

 鎖を叩き切ろうとしてきたので、影から飛び出させて攻撃を加え、さらに空中に飛び出し回転したダダリンに振り回されたファイアローは叩き切れずに振り回される。こうなればこちらのものだ。なんか楽しくなってきた!

 

 

「面舵~いっぱーい!」

 

 

 荒波に乗り出した舵輪の如き高速回転による勢いを加えて地面に頭から叩き付け、ファイアローは戦闘不能。しかしフレアフィールドに包まれてやけどを負いスリップダメージを受けるダダリン。物理技メインだからダダリンはもう無理そうだ。

 

 

「とりあえずフレアフィールドを消そうか。プルリル、みずのはどう!」

 

「くっ…貴方のリングです!魅せてやりなさい、ルチャブル!」

 

 

 次に繰り出されたのはルチャブル。ひこう・かくとうタイプ。強力なフライングプレスやとびひざげりはゴーストタイプには通じない。有利対面だ。ダイマックスにはみちづれは効かないからここが使いどころだけど、使うまでもなさそうだ。

 

 

「とびはねる!」

 

「上空にシャドーボールを連打!」

 

 

 天高く飛び立ったので、脳死でシャドーボールを連打。空中じゃ避けれまい、と思っていたのだが身を捻って回避しながら落ちてくるルチャブル。小玉じゃ駄目なら…!

 

 

「みずのはどうで迎え撃て!」

 

 

 私の指示でプルリルは特大の水の塊を形作って落ちてきたところを受け止め、そのまま中にルチャブルを入れながら水の塊を地面に飛ばす。びしょぬれで倒れるルチャブルだったが、満身創痍ながらも立ち上がる。だけど混乱しているようで千鳥足だ。

 

 

「敵は真っ直ぐ前です、つばめがえし!」

 

「シャドーボール!」

 

 

 混乱しながらもムツキさんの指示を聞いて地を駆け光り輝く右手を振るうルチャブル。対して私は真正面から暗黒の球体を飛ばして直撃させ、ルチャブルは倒れた。なんか知らんけど油断しないでガチでやったら三匹倒せた。あとはダイマックスするであろう相手の切札だけど……うちおとすとか誰か覚えてたらゴビットでいいんだけど、どうしよう。アーマーガアを削りきれるポケモンこっちにいないしなあ。………カブさんの時と同じみちづれにするか、それともゴビットののろいで削りきるか。…いや、割と余裕あるし冒険してもいいか……

 

 

「この感覚…ラウラを思い出してくれますね貴女は!風よ吹き荒れろ、その巨翼を持って我らが敵を吹き飛ばしなさい!キョダイマックス!」

 

「…とりあえず、ゴビットで」

 

 

 キョダイマックスするアーマーガアを眺めながら、とりあえずはがねタイプに有利なゴビットに交代させる。のろいもいいけど、たまには正々堂々戦おうかな。

 

 

「ダイマックス、いくよゴビット!」

 

 

 なんかゴビットがギョッとしたのを感じた。だよね、ダイマックスするの初めてだし君ものろいで倒そうと思ってたんだよね。

 

 

「ダイナックル!」

 

「キョダイフウゲキ!」

 

 

 巨大なゴビットの鉄拳が空に浮かぶキョダイアーマーガアの胴体に炸裂。続けて突風が叩きつけられ、ぐらつくゴビット。ああ。いいなこれ。ちまちま削ったり耐えたりするより、殴り合うのは楽しいなあ!

 

 

「ダイナックル、ダイナックル!」

 

「っ…ダイウォール、キョダイフウゲキ!」

 

 

 こちらは攻撃あるのみ。対してムツキさんは攻撃力がどんどん上がるゴビットを危惧したのかダイウォールを挟みつつ反撃してきた。この時点で決着は決まっていて。

 

 

「ブレイブバード!」

 

「シャドーパンチ!」

 

 

 ダイマックスが終わった瞬間、攻撃力が二段階上がったシャドーパンチが突進してきたアーマーガアに炸裂。避けようもないそれにアーマーガアは殴り飛ばされ、戦闘不能となり。私はがっつり落ち込むムツキさんを横目に観客席にいるダフネとヨハルに満面の笑みでブイサインを向けた。楽しいね、ポケモンバトル。




ぬしポケモン本領発揮。

・ジュリ
ラウラより豊富な原作知識で頑張るダフネの相棒。原作にいないジムリーダーであるムツキを警戒しまくった結果、完勝。真っ向勝負のバトルがどんどん楽しくなってきた。 面舵~いっぱーい!とダダリン使う時はハイテンション。

・ムツキ
お兄ちゃんと呼ばれるラウラが変なツボに入ったジムリーダー。二連続でラウラを彷彿させるチャレンジャーに負けたばかりか、ジュリに至っては完勝されてマクワに負けた時以来の落ち込みモードに。このあとジムを一日だけ閉めたとかなんとか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSニャイキング

どうも、放仮ごです。いつの間にかUAが246000行ってましたありがとうございます。これからも頑張らせていただきます!

今回はジュリの隠し事が大事に…?楽しんでいただけると幸いです。


 キルクスタウンを後にした私とジュリさん、ヨハルの三人。三人旅なので空飛ぶタクシーを使う気にもなれず、8番道路をまた戻りナックルシティを目指す。今度はプラズマ団はいないみたいで安心…うん、安心だ。決して、アーマルドを持ったプラズマ団がいないかとか期待している訳ではない。

 

 

「残念だけど、さすがにジムリーダーに仲間が捕まったところにまたのこのこ来るほどプラズマ団も馬鹿じゃないと思うよ?」

 

「プラズマ団がいたの…?」

 

「あ、ヴァイスじゃないのでそんなに怖い顔しないでくださいヨハル。ここにいたのはしたっぱですよ」

 

 

 したっぱであの強さなのだから幹部のシュバルツやヴァイス、その裏にいるであろうボスの強さを考えると気が遠くなるが。アーマルドを取り返せるか不安になってくる。途中ですれ違ったマクワさんと挨拶を交わしつつ、7番道路に出る。橋を抜ければもう少しでナックルシティだが、既に夕方だ。ちょうど広場があったのでキャンプを張って朝を待つことにした。

 

 

「うーん、いい広場だけど…」

 

「なんか強そうなニャイキングがいますね…」

 

「……邪魔。ヨハルがお腹を空かせてるでしょ」

 

 

 キャンプを張ろうとしたら、広場のど真ん中に通常より大きくて強そうなニャイキングが陣取っていて。お腹を空かせた音を鳴らしたヨハルがヤユイに変わり、襲いかかってきたニャイキングに対してルガルガンを繰り出す。

 

 

「ちょうはつ、カウンター」

 

 

 そして鋼の爪を伸ばして挑発に乗って突っ込んできたニャイキングを殴り飛ばし、KOした。…なんかぬしポケモンの気配がしたんですけど。え、一撃ですか?

 

 

「相変わらず、強いなあヤユイ」

 

「…私、一度勝ちましたけどセミファイナルトーナメントでもう一度勝てるか正直不安です…」

 

 

 ジュリさんと二人してその強さを痛感しながらキャンプの準備を始める。ニャイキングが可哀そうなのでとりあえず一緒の食事に誘って餌付けしてみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、早くアラベスクタウンに行かないとね。あの子が待ってるよ」

 

 

 キャンプを張り、夕食のカレーを食べた後に焚火を囲んで雑談していると、ヨハルがそう言ってきて、ジュリさんが鞄の中から古い手紙を取り出す。ナックルシティの幽霊の女の子からの預かり物だ。私とジュリさんがヨハルとヤユイに出会うきっかけにもなったものである。

 

 

「そうだった。急がないと成仏しちゃうかもなあ…そういえば、ヨハルは幽霊が見えるの?」

 

「…ブラッキーが死んでから見える様になったけど、二人にも見えたならあの幽霊の女の子は特別なんじゃないかな?」

 

 

 霊感が無い私にも見えたってことはそういうことなのだろう。幽霊には詳しくないが、相当な未練があったのかな。あれ、でもジュリさんあの時は確か…

 

 

「そういえばジュリさんも驚いてませんでしたし、霊感あるんです?」

 

「え?あー、えっと…ないはず、だよ?うん。………まさかゲームで知ってたからとは言えないよなあ。あの事故で見える様になったとかないよね?フィクションだったらありえそうなんだけど………」

 

 

 ブツブツトリップし始めたジュリさんに、ヨハルと顔を見合わせる私。なんか隠しているんですよねジュリさん。私達に言えないことなのは間違いないですが。……まさかと思いますが、隠す理由なんて一つしか思いつかないのですが。

 

 

「…ジュリさん、実はラウラさんの従姉妹を騙ってジムチャレンジに潜入しているプラズマ団じゃありませんよね…?」

 

「はえ!?な、なんでそうなるの?」

 

「プラズマ団…?」

 

 

 赤い目になってギロリと睨んでくるヤユイに慌てて手と首を振って否定するジュリさん。まあ信じたくはないんですが、隠し事なんてそれぐらいしか…

 

 

「い、いやいや違うから!ほら、私したっぱとも戦ったじゃん!?」

 

「スパイだからしたっぱには知られてないとか…?」

 

「なんのスパイなのかなそれ!?」

 

「そういえばみちづれとかのろいとかポケモンを気にしない戦い方してた…」

 

「気にしてるからねこれでも!?私、お兄ちゃんの蟲好き程じゃないとはいえゴーストポケモンを愛している自信があるからね!?」

 

「じゃあ何を隠してるんですか?親友だという私にも話せない事なんですか?」

 

「えっと…その……」

 

 

 問いかけると、目をグルグルさせるジュリさん。この人が善人だとは知っているけれど、この私自身がラウラさん達を騙して悪事を働いた人間だ。信用しすぎると痛い目を見るというのは、一番よくわかっている。

 

 

「…えっと、うーん、その、ね…?」

 

 

 グルグルグルグルと目を回し続けたジュリさんは顔を真っ赤にし、ボフンとオーバーヒートしたようにばたりと倒れてしまった。………ちょっと虐めすぎましたかね?

 

 

「…少なくとも、プラズマ団ではないんですよね」

 

「そうなの?」

 

 

 首を傾げながら青い目に戻りジュリさんを睨み付けるヨハルに、ジュリさんを寝かしながら答える。どうやら疲れていた様でそのままぐっすり眠ってしまったようだ。

 

 

「この人、妙にポケモンに詳しいと思ったら妙に常識が欠如していたり、変なところだらけなんですけど。ヘラクロスが倒れて落ち込んでいた私を元気づけてくれた、いい人なんです。これでプラズマ団だったら人間不信になる自信あります」

 

「でも何かを隠してるんだよね?信用できるの、そんな人」

 

「本当に言えない事なんだと思います。ラウラさんに口止めされているとか、そう言う感じの」

 

「ラウラさんってジムリーダーの?お兄ちゃんって言ってたけどあの人、女の人だよね…?」

 

「はい、従姉妹らしいですよ?昔、呼び間違えてそのまま定着したとか前に話してました。そのラウラさんに口止めされていると考えれば、話せないのも納得できるんです」

 

 

 そう言うとジュリさんを見つめ、寂しげに俯くヨハル。落ち着かないのかボールから出していたブラッキーを手招きして撫でつつ、続けた。

 

 

「……でも、隠し事されるのはやだな。なんか、寂しいよ」

 

「それは私もそう思います。でも、ヨハルもヤユイのことを隠していたいように、私が過去に犯した罪の様に、誰にだって知られたくないことはあるかと」

 

「…過去に犯した罪って?」

 

 

 赤い目になって睨んでくるヤユイに、しまったと口を押さえるがもう遅い。結局無言の圧力に耐えられなかった私は自白(ゲロ)した。トレーナーを傷つけようとしていたことを知ったヤユイからは白い目で見られて、ヨハルからは慌てて「い、今はいい人だから!」ってフォローされた。その気遣いが心に刺さります…昔の私、余裕がなかったとはいえやりすぎです……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、目を覚ましたジュリさん。同じく目を覚ました私とヨハルの居た堪れない空気に耐えられなくなったのか、たっぷり沈思黙考しているのか目をグルグル回していたジュリさんはスマホロトムを取り出した。

 

 

「…とりあえず、私はちゃんとお兄ちゃん…ラウラの従姉妹だよ。ちょっと待ってね」

 

 

 そう言ってどこかに電話を掛けるジュリさん。するとすぐ繋がったのか、スピーカーモードにして私達に突き出してきた。

 

 

『こんな朝っぱらからどうしたんだ樹里…ユウリが横で寝てるから静かに手短にな』

 

 

 聞こえてきた声は忘れようはずがない、ラウラさんだ。でもなんだろう、ジュリさんの呼び方に違和感ある気がする。ヨハルも聞き覚えがあるのか頷きながらも、ラウラさんとユウリさんがどんな状態なのか想像したのか顔を赤くしていた。ジュリさんはちょっと呆れた顔で続ける。

 

 

「えーと、昨晩はお楽しみでしたね?」

 

『ぶふっ!?……それだけなら切るぞ』

 

「待って待って待って!?…相変わらず二人で寝てるんだ…そうじゃなくて、私とお兄ちゃんはちゃんと従姉妹だよね?それに、私はプラズマ団なんかじゃないよね?」

 

『なんで今更そんな当たり前なこと聞くんだ…?』

 

「ほら、私隠し事があるからダフネと…えっと、一緒に旅することになったヨハルって子に疑われちゃって…本当のこと言う訳にも行かないしさ?」

 

 

 その言葉で、その泣きそうな顔で、言いたくても言えない事なのだと確信する。疑って悪いことをした。

 

 

『あー…聞いてるかは知らんが、ダフネにヨハル。ちゃんとジュリは俺の従姉妹で妹の様な奴だし、プラズマ団でもないことは保証する。それに、こんな馬鹿が人を騙せると思うか?』

 

「お兄ちゃん!一言余計!」

 

『むにゃ…んー?ヨハル?ヨハルがそこにいるのー?』

 

 

 ジュリさんが怒っていると、通話の向こうからユウリさんの寝ぼけた声が聞こえてきた。

 

 

『ヨハルー、頑張ってるー?せっかく推薦したんだから、早く勝ち抜いて、私のところまで来てねグー』

 

『あー、ヨハルって聞き覚えがあると思ったら大興奮で推薦したって言ってたトレーナーか。俺が推薦した二人のトレーナーとユウリが推薦したトレーナーの一人が一緒に旅しているのはなんか、感慨深いな。仲良くな、お前たち。じゃ、俺も仕事があるから』

 

 

 そう言って電話を切るラウラさん。ジュリさんがプラズマ団じゃなくてよかった。胸を撫で下ろす私とジュリさん、顔を真っ赤にして固まるヨハル。そんな私達の後ろで、昨日の残りのカレーに火を付けてかき混ぜているぬしニャイキングの姿があったとか。




道路やエリアに一匹はいるぬしポケモン。

・ダフネ
過去が過去なのでジュリを疑ってしまった主人公。被害妄想が激しい。ヨハルにも自分の悪事がばれた。もう一度戦ってヤユイに勝てる自信はない。

・ジュリ
転移前の事を隠しているのに失言ばかりするから大事になってしまったダフネの親友。まさかプラズマ団だと疑われるとは思わなんだ。考えるタイプじゃないので考え過ぎると頭がオーバーヒートして気絶する。ラウラ宅に住んでた頃から一緒に寝るラウラとユウリを見慣れてる。

・ヨハル
ブラッキーが死んでから霊感を得た二重人格。お腹が減ると苛立つ他、一度疑念を持つととことん疑う疑り深い性格。色々妄想しちゃうところは年相応な女の子。

・ヤユイ
ヨハルのセコム。お腹が減れば邪魔者は排除するし、疑った相手には攻撃的になるし、無言の圧力で自白させる、ヨハルの望みはなんでも叶える強い子。

・ラウラ
ジュリからの言葉に「やらかしたな」と察して従姉妹設定をペラペラ話した元主人公。プラズマ団って疑われてるのは正直笑った。描写はしてないけど事後である。

・ユウリ
ヘヴン状態でラウラの側で眠っていたチャンピオン。推薦状を渡した一人であるヨハルを可愛がって大いに期待している。

・ニャイキング♀
とくせい:はがねのせいしん
わざ:メタルクロー
   アイアンヘッド
   じごくづき
   つめとぎ
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。よくものを散らかす。7番道路のぬしポケモン。キャンプに使った広場はお気に入りの寝床だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板8

どうも、放仮ごです。お待たせしました、なんと30話ぶり、つまり約一ヶ月ぶりの掲示板回です。以前の前書きでも言ってた通り、なんかこれを楽しみにしている人もいるみたいでお待たせしましたね本当に。楽しんでいただけると幸いです。


今期ジムチャレンジャーについて語るスレ

 

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

今期一押しはやっぱりあれだな、ヨハル!

 

65:名無しのトレーナー

わかる

 

66:名無しのトレーナー

わかりみ

 

67:名無しのトレーナー

目立っているタイプ統一使いと違ってパーティーはバラバラだけどジムリーダーを一蹴する圧倒的な実力はユウリやダンデを彷彿とさせるもんな

 

68:名無しのトレーナー

いや、バラバラに見えるけどあれも統一だぞ

 

69:名無しのトレーナー

というと?

 

70:名無しのトレーナー

いわ、あく、あくこおり、あく、こおりいわ、妙に偏ってる感はあるけど

 

71:名無しのトレーナー

偶然か狙ってかは知らんけどあれ、全部夜に進化するポケモンだぞ

 

72:名無しのトレーナー

なん……だと…!?

 

73:名無しのトレーナー

夜パとかあるのか…

 

74:名無しのトレーナー

よく気付いたな、ポケモン博士か?

 

75:名無しのトレーナー

かくとう一貫して弱点だからサイトウがメジャージムリーダーじゃなくてよかったな

 

76:名無しのトレーナー

しかしヨハルか……なんか、聞いたことある名前なんだよなあ

 

77:名無しのトレーナー

聞いたことあるって有名な子なんけ?

 

78:名無しのトレーナー

あ、俺も新聞かなんかで見たことある気がする

 

79:名無しのトレーナー

ガラルじゃなくて他地方だった気もするぞ

 

80:名無しのトレーナー

そんなことより他のトレーナーも語ろうぜ

 

81:名無しのトレーナー

せやな。お次は何と言ってもダークサイドラウラだと噂されていたけどそんなことなかったジュリだな!

 

82:名無しのトレーナー

ラウラのダークサイドって見た目だけなんじゃが

 

83:名無しのトレーナー

いや、戦い方もダーティーだろ。カブ戦見たのか?

 

84:名無しのトレーナー

のろいとみちづれをガチで使うトレーナーは初めて見た

 

85:名無しのトレーナー

あのオニオンでさえ使わない戦法だったのになあ

 

86:名無しのトレーナー

メガトンパンチをわざとスカしてじだんだの威力を上げたりラウラ並みの変な発想だよな

 

87:名無しのトレーナー

ラウラが自分のポケモンの犠牲も厭わなくなった姿、って感じだな

 

88:名無しのトレーナー

でもなんであんなにラウラと顔が瓜二つなんだろうな

 

89:名無しのトレーナー

従姉妹だっていう話だぞ

 

90:名無しのトレーナー

エンジンシティでラウラのことをお兄ちゃんと呼ぶ姿があったとか

 

91:名無しのトレーナー

お兄ちゃん……だと…!?

 

92:名無しのトレーナー

ラウラは男だった…?

 

93:名無しのトレーナー

いやまあ、男らしいからそう呼ぶのもわかるけど…

 

94:名無しのトレーナー

全力でお兄ちゃんを遂行する!!

 

95:名無しのトレーナー

どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!

 

96:名無しのトレーナー

とりあえず一回呼んでみてくれないか?お兄ちゃんと

 

97:名無しのトレーナー

 

98:名無しのトレーナー

どんどこ兄を名乗る不審者が増えて草

 

99:名無しのトレーナー

示し合わせたかの様に全員別の台詞なのダイソウゲン

 

100:名無しのトレーナー

そりゃ不気味だけどあんな可愛い子にお兄ちゃんと呼ばれたいに決まってる

 

101:名無しのトレーナー

かわいい妹が嫌いな人間なんていねえ!

 

102:名無しのトレーナー

ジュリのファンネームは「お兄ちゃん」で決定だな

 

103:名無しのトレーナー

コアなファンが増えそう

 

104:名無しのトレーナー

ラウラがジュリにとっての唯一のお兄ちゃんじゃないんか…?

 

105:名無しのトレーナー

俺は好きだぞ、あの戦い方

 

106:名無しのトレーナー

ダイマックスが普及してガラルではみちづれなんて見ないと思っていたら使いこなす勇者

 

107:名無しのトレーナー

みちづれなんかよりムツキ戦で大活躍したダダリンがやべーんだよなあ

 

108:名無しのトレーナー

アローラの草御三家がどうした

 

109:名無しのトレーナー

アローラの草御三家は草

 

110:名無しのトレーナー

実質3タイプだからジュナイパーより強いんだよなあ

 

111:名無しのトレーナー

ジュナイパーかっこいいやん?弱いけど…

 

112:名無しのトレーナー

苦手なひこうタイプ相手に大暴れだったな…

 

113:名無しのトレーナー

ラウラのドラピオンやビークインと同じでぬしなんじゃね?知らんけど

 

114:名無しのトレーナー

ぬしポケモンだとしたらゲットできてる時点で実力は明らか

 

115:名無しのトレーナー

ヨハルとジュリ、この二人の二強かな?

 

116:名無しのトレーナー

待て待て、二代目ラウラと二代目モコウがまだいるぞ

 

117:名無しのトレーナー

あー、新たな蟲使いとでんきつかいか

 

118:名無しのトレーナー

名前なんだっけ?

 

119:名無しのトレーナー

ダフネとサタリアやな

 

120:名無しのトレーナー

メガシンカを駆使して着々と勝ち抜いている蟲使いダフネと、モコウを思い出す速攻でどんどこジムを突破しているでんきのサタリアだな

 

121:名無しのトレーナー

メガシンカ自体はジムリーダーたちも対抗試合で使ってたけどチャレンジャーでは初めてなんだっけか

 

122:名無しのトレーナー

使いこなせてないのかカブ戦ではヘラクロスがぶっ倒れていたな

 

123:名無しのトレーナー

いいなあメガシンカ、わいもほしい

 

124:名無しのトレーナー

メガシンカって通常ありえない進化だからポケモンに相当な負荷がかかるって聞いたぞ

 

125:名無しのトレーナー

キーストーンは心臓が二つに増えるみたいなもんみたいだしトレーナーの負担もでかいらしいぞ

 

126:名無しのトレーナー

だからバトル中にしか姿が変わらないとはいえあんまり使いたくないって人間の方が多い

 

127:名無しのトレーナー

サタリアはキョダイピカチュウが凶悪だな

 

128:名無しのトレーナー

わい、ジムチャレンジャーだけど野良試合で戦ってボコボコにされたぞ

 

129:名無しのトレーナー

女の子にボコボコにされたならいいじゃないか

 

130:名無しのトレーナー

蟲使いにでんきつかい、二年前を思い出すなあ

 

131:名無しのトレーナー

もうあれから二年か…ふっ、俺もおじさんになるわけだ

 

132:名無しのトレーナー

おじさんは二年前もおじさんだぞ

 

133:名無しのトレーナー

よくておっさんだぞ

 

134:名無しのトレーナー

俺達にも刺さるからヤメロー

 

135:名無しのトレーナー

ヤメロー!シニタクナーイ!

 

136:名無しのトレーナー

それ以上 言うな!

 

137:名無しのトレーナー

ヤメロー

 

138:名無しのトレーナー

その答えは ただ一つ。

 

139:名無しのトレーナー

お前らの連帯感好き

 

140:名無しのトレーナー

思い出した!ヨハルって数年前のカロスのアレだ!

 

141:名無しのトレーナー

いきなりどうした

 

142:名無しのトレーナー

数年前のカロスってたしか…

 

143:名無しのトレーナー

大きな大会の準決勝でポケモンが事故で死んだっていうあれか?

 

144:名無しのトレーナー

それでヨハルがどうしたって?

 

145:名無しのトレーナー

その死んだポケモンのおやがヨハルなんよ。調べて来たら写真の女の子が成長した姿や間違いない

 

146:名無しのトレーナー

マジ?

 

147:名無しのトレーナー

デジマ?

 

148:名無しのトレーナー

それマジだったら…え、笑えない

 

149:名無しのトレーナー

気になったから別窓で見てきたけどほんまや

 

150:名無しのトレーナー

(URL

この泣きじゃくっている女の子か。スクープだとはいえ普通にマスゴミだなあ

 

151:名無しのトレーナー

つまり数年たって立ち直って今度はガラルでジム巡りしてるってことか?

 

152:名無しのトレーナー

相当なトラウマだろうによく立ち上がれたな

 

153:名無しのトレーナー

強い子だ

 

154:名無しのトレーナー

…でもこれ、本当に同一人物か?

 

155:名無しのトレーナー

というと?

 

156:名無しのトレーナー

名前も顔も髪色も一緒じゃろがい。いやまあラウラとジュリって例はあるけど

 

157:名無しのトレーナー

いやだってさ。俺が見たヨハルってこんな大人しそうな子じゃなくてもっと目をギラギラさせていたと思うんだけど

 

158:名無しのトレーナー

確かに、殺気だった目をしていた気がする

 

159:名無しのトレーナー

不敵に笑うイケメンだったぞ

 

160:名無しのトレーナー

目も赤色じゃなかった?

 

161:名無しのトレーナー

え、俺が見た時は写真と同じ青色だったぞ?

 

162:名無しのトレーナー

俺が見た時はおどおどしてカブさんに挨拶していた姿だったけどなあ

 

163:名無しのトレーナー

トラウマ克服した結果性格が変わったとか

 

164:名無しのトレーナー

ありそう

 

165:名無しのトレーナー

ちなみにこのブラッキーを死なせたヴァイスって今何やってるんやろ

 

166:名無しのトレーナー

この前、プラズマ団幹部のヴァイスを名乗る女にサイトウが襲われたって記事があったんじゃが

 

167:名無しのトレーナー

ええ…

 

168:名無しのトレーナー

よりにもよってプラズマ団かい

 

169:名無しのトレーナー

しかも幹部

 

170:名無しのトレーナー

珍しい名前だし同一人物なんだろうなあ

 

171:名無しのトレーナー

おい待て。そのヴァイスが所属している新生プラズマ団が暴れているガラルのジムチャレンジにヨハルが参加してるってことは……

 

172:名無しのトレーナー

復讐が目的とか?

 

173:名無しのトレーナー

こわっ

 

174:名無しのトレーナー

いやいやさすがに偶然……じゃないよなあ、これ

 

175:名無しのトレーナー

新生プラズマ団、単なる愉快犯かと思ってたけどポケモン殺したヴァイスが幹部やってたりもしかしてヤバい…?

 

176:名無しのトレーナー

ヤバいぞ

 

177:名無しのトレーナー

ワイルドエリアのキテルグマに襲われて全治二か月の俺が通るぞ。あれ、プラズマ団に解放されたポケモンだったらしい

 

178:名無しのトレーナー

解放されたポケモンは人懐っこい上にわざマシンやわざレコードの技まで覚えていて環境を破壊してるって前ポケモンレンジャーの知り合いが愚痴をこぼしてたぞ

 

179:名無しのトレーナー

ポケモンレンジャーおつかれやで

 

180:名無しのトレーナー

ジムチャレンジャーも何人かプラズマ団に襲われてリタイアしてるらしい

 

181:名無しのトレーナー

ジムリーダーが警備しているのに怖いもの知らずだな

 

182:名無しのトレーナー

プラズマ団もしたっぱが何人か捕まってるらしいけどな

 

183:名無しのトレーナー

それでも解放されたポケモンによる被害の方が大きいのがヤバい

 

184:名無しのトレーナー

ソニアの研究所も襲われて伝説ポケモンを強奪されたらしいぞ

 

185:名無しのトレーナー

え、それやばいやん

 

186:名無しのトレーナー

幹部が出張ったらサイトウ程の実力者でもやられるからなあ

 

187:名無しのトレーナー

そもそも道路もワイルドエリアも広すぎてジムリーダーが警備しきれてないってのが現状なんだろうな

 

188:名無しのトレーナー

それでも被害を最小限に抑えられてるのはダンデの名采配なんだろうけども

 

189:名無しのトレーナー

アレだけの数が潜伏する本拠地すら見つかってないからなあ

 

190:名無しのトレーナー

イッシュを襲った時は巨大空中戦艦とか保有していたらしいから空に潜んでられたらお手上げだな

 

191:名無しのトレーナー

まあでも、フレア団みたく世界を滅ぼそうとしている訳じゃないし…

 

192:名無しのトレーナー

ギンガ団みたく爆弾使ってるわけでもないし…

 

193:名無しのトレーナー

なにが目的なのかはっきりしないのが逆に恐ろしいんだよ

 

194:名無しのトレーナー

迷惑集団だったエール団と違って本物の悪党だぞ。それだけでやべーわ

 

195:名無しのトレーナー

チャンピオンの前にだけ姿を現さない徹底ぶりだしな

 

196:名無しのトレーナー

これ、チャンピオンのスケジュール把握している協会にスパイでもいるんじゃね

 

197:名無しのトレーナー

ありそう

 

198:名無しのトレーナー

どこにでもいそう

 

199:名無しのトレーナー

友人もプラズマ団だったらとか考えるだけで怖いな

 

200:名無しのトレーナー

ところでこれ、今期ジムチャレンジャーを語るスレであってる?

 

 

 

・・・・・・・・・





・ダフネ
主人公なのにあまり話題に上がらない。二代目ラウラと呼ばれる。

・ジュリ
不気味な戦法やらお兄ちゃんやらで謎の人気を獲得。たくさんの「お兄ちゃん」ができたとか。

・ヨハル
数年前の事件で世間に知られている。雰囲気が全然違って困惑されているけど二重人格だとはばれてない。

・サタリア
キョダイピカチュウ使い。二代目モコウと呼ばれる。

・ヴァイス
その悪行がよーく知られている上に名乗っちゃったから身バレしている馬鹿。

今度、掲示板小説書いてみようかなとちょっと思ってます。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゾロア

どうも、放仮ごです。今回はようやくあの蟲ポケモンが登場。リアルにいたらこういう扱いになるんだろうな、と考えながら書きました。スペシャルな人物も登場。楽しんでいただけると幸いです。

※2021/4/29 題名をVSヌケニンからVSゾロアに変更しました


 何故か朝食を用意してくれていたぬしニャイキングと別れて7番道路を抜け、ナックルシティで昼食を食べて一休みした後、6番道路を進む私達。高低差激しい道を抜け、ディグダ像前に差し掛かった時だった。

 

 

「……やっぱり、ついてきてます?」

 

「……そうみたい?」

 

「……どこまでついてくるのかなあ」

 

 

 私とヨハル、そしてスマホロトムを操作するジュリさんがそうぼやきながら背後を覗き見ると、そこにはボロボロの抜け殻の様なポケモンが浮いていた。ヌケニン、ゴースト・むしタイプのポケモンだ。文字通り、ツチニンがテッカニンに進化する際の抜け殻がポケモンになった存在。それが、何故かずっとふわふわついてくる。ナックルシティを出たすぐ後だっただろうか。6番道路を進む中でいつの間にかついてきていたのだ。

 

 

「止まったらジュリさんの影に隠れてしまうから手出しできませんし…」

 

「ラテラルタウンに入る前になんとかしたいね」

 

「………待って」

 

 

 すると、スマホロトムを操作していたジュリさんが突き出してくる。見れば、ヌケニンのぶんぷだった。そういえば、ヌケニンと同じゴーストタイプのデスマスとかが生息しているため気にしてなかったけど、見ればワイルドエリアの、ダイマックスエリアにしか出没しないことが分かった。ここに住んでるポケモンじゃ、ない?

 

 

「え、じゃあもしかして…」

 

「この間のダストダスみたいな、捨てられたポケモン…?」

 

「かといって私達を怖がる様子もないし、襲ってくる様子もないんだよね…どうしよう」

 

 

 プラズマ団に直接襲われたわけじゃないのに、プラズマ団に感化されてポケモンを捨てる心無い輩も存在する。例えば、形だけで捕まえていたりとか、捕まえたはいいけど好みに合わなかったとか、ポケモンバトルに疲れたとか、プラズマ団に襲われたくないとか、ましてや進化したはいいが気に入らないとか、そんな理由でだ。……このヌケニンのボロボロ具合から察するに、恐らくは…

 

 

「だとしたら、このヌケニンはどうしたいんでしょうか」

 

「何考えているかわからないもんね…」

 

「でもこの子を連れたままラテラルタウンに入るわけにもなあ」

 

「その子は君達とトモダチになりたいようだよ」

 

 

 私達が三人揃ってどうすればいいか困ってると、後ろから優しげな声が聞こえ。振り向くと、肩にゾロアを乗せて白黒の帽子を被った長い緑髪の青年がいた。それを見て目を見開き驚愕の表情を浮かべるジュリさん。

 

 

「え、ぬ……?」

 

「どうしたんですかジュリさん?」

 

「い、いやなんでも…?」

 

「お兄さん、誰ですか?」

 

 

 口をパクパクさせるジュリさんと、私の後ろに隠れて問いかけるヨハル。すると青年は問いに答えることなく、私達の間を抜けてヌケニンに歩み寄った。

 

 

「人間とポケモン。初めて外に出た頃は決して理解できなかった数式。君たちはまだその答えが出ていない、けれどその解に向かうトレーナーのようだね……かつて僕が出会ったトレーナーのように」

 

 

 有無を言わせぬ迫力を醸し出しつつ、ヌケニンを撫でる青年。私達を近づけさせなかったヌケニンもなぜか心を許しているようだ。な、何なんですかこの人は…?トモダチになりたいようだ、と言ってましたが…

 

 

「…もしかして、ポケモンの言葉が分かるんですか?」

 

「このヌケニンは君たちに救済を求めている。プラズマ団の掲げる偽物とは違う、本当の救済を」

 

「「プラズマ団…!」」

 

 

 聞き捨てならない言葉に思わず反応する私とヨハル。この人は、プラズマ団についてナニカ知っている…!私たち二人が青年に聞こうとすると、空のモンスターボールを手にしたジュリさんがヌケニンと青年に歩み寄った。青年は温和な笑みを浮かべて離れ、今度は逃げも隠れもせず、むしろ期待を込めた動きでジュリさんを見上げるヌケニン。

 

 

「この子は、私達に捕まえてほしい。そう思って、いいの?」

 

「ああ。僕にも聞こえて来たよ、寂しい、悲しい、そんな声が。君達に期待したんだ。君達の持つ同類の気配を察知したんだろう」

 

 

 その台詞で納得する。蟲で、ゴースト。私とジュリさんが特に好むポケモンだ。ボールも持たないで近づいたから、追い払われると思ってさっきは姿を隠したと考えれば合点が行く。

 

 

「君達から感じるよ、自分のポケモンへの想いを。こんなにも心地いい声はそうは聞かない。よく愛しているんだね、わかるとも」

 

「…私と、来る?」

 

 

 青年の言葉に背中を押されたるかの如く、そう言ってボールを掲げるジュリさん。するとヌケニンは自分からボールのスイッチに触れて吸い込まれていった。大事そうに両手で胸前に掲げて優しげな笑みを浮かべるジュリさん。それを複雑そうな、満足げな顔で眺めて笑う青年。

 

 

「君たちなら本当のトモダチになれるだろう。そして見せてほしい。君たちとポケモンとのラブを」

 

「N様~!」

 

 

 すると、ピンク色の特徴的な髪型をした女性が青年に駆け寄ってきた。どうやら青年はエヌと言うらしい?続けて黄色の髪の女性と、複数の私服を着た男女が続く。女性は白いワンピースを着ていて、まるで女神の様だな、と少し印象に残った。

 

 

「やあ。そんなに息を荒らげてどうしたんだい?」

 

「どうしたんだい?じゃありません!早くポケモンリーグに行かないといけないのに、観光したいと言うからここまで来たんですよ。これ以上待たせるのは印象が悪くなります!」

 

「そういうことならしょうがない。ではまたね。君達が仲良くなるのを心から願っているよ」

 

 

 そう言ってぞろぞろとエヌ?を先頭に去って行く集団。不思議な人だったな。それよりも、また驚愕した顔でジュリさんが見送っていたのが気になった。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、そりゃあ、いるよなあって」

 

「知り合いなの?」

 

 

 ヨハルの問いかけに、少しだけ考えてから自分に折り合いを付けたのか頷き、答えるジュリさん。

 

 

「二人は知らないの?あの人、以前イッシュ地方で暴れたプラズマ団の王様だよ」

 

「「えええええ!?」」

 

 

 聞かされたその内容に、驚愕するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラテラルタウンに到着し、ポケモンセンターで休みながらスマホロトムで「プラズマ団 王様」と調べてみるとNという名前と共に彼の顔写真が出てきた。なんでも、ジュリさんも他地方…つまりイッシュ地方にいた時にプラズマ団の起こした白と黒の英雄騒動に巻き込まれたことがあったらしい。そう語った時のジュリさんの目が泳いでいるのが気になったが、Nの顔を知っていたということは事実なのだろう。ネットには、当時のチャンピオンであるアデクを倒して英雄になることでポケモンの解放を謳ったが、プラズマ団に乗り込んだ英雄と呼ばれる一人の少年トレーナーに敗れたとあった。

 

 

「…でも、たしかヴァイスはグレイ様と言ってたんですよね。あのNはガラルで暴れるプラズマ団とは関係ないのでしょうか」

 

「むしろ、敵対しているまであったね。プラズマ団への怒りを感じ取れたよ」

 

「多分、ガラルのプラズマ団を止めに来たんじゃないかなあ。リーグとか言ってたし、ダンデさんと協力をする気なのかも」

 

 

 そう言うジュリさんに納得する。昔のプラズマ団の王様、N。怪しいけれど、悪い人ではない気がするんですよね。ヌケニンも警戒してませんでしたし。

 

 

「そういえば、ヌケニンはどうでした?」

 

「やっぱり、衰弱した状態だったよ。暴行の後が見られたってジョーイさんが言ってたよ」

 

「プラズマ団に無理やり解放された…とかじゃないってことだね」

 

 

 誰かは知らないが、ヌケニンを捨てたばかりか暴行を加えたであろうトレーナーへの怒りが募る。プラズマ団はきっかけにすぎない、心無いトレーナーもたくさんいる。

 

 

「…捨てるぐらいなら、最初から捕まえなきゃいいのにね。現実は、シビアだなあ」

 

 

 そう言うジュリさんのどこか達観した様子が妙に印象に残った。




以前のダストダスもプラズマ団に襲われたわけでもなく感化されたトレーナーに捨てられたポケモンだったり。

・ダフネ
ヌケニンを捨てるような心無いトレーナーとプラズマ団に怒りを募らせる主人公。Nへの印象は変な人だけどいい人。

・ジュリ
Nの言葉を信用してヌケニンを手に入れたダフネの親友。ゲームでは知ることもできなかったこの世界の現実にやるせない思いを感じた。いるはずないであろうNの登場に、思わず名前を口走ってしまったが、他地方にいたという設定を利用して何とか誤魔化した。

・ヨハル
ヴァイスの様などうしようもない人間を知っている故に、そこまで怒りを募らせてないけど不機嫌になってる子。Nへの印象は変な人。

・N
ポケットモンスターブラック・ホワイトから登場。三年前(BW1時代)のプラズマ団の王様。ゾロアを連れている。ポケモンの声を聴くことができる。ヌケニンを保護しようと思っていたが、ダフネたち三人にかつて出会ったトレーナーと同じ可能性を感じてヌケニンを託すことにした。複数人引き連れてポケモンリーグを目指しているが観光も楽しんでいる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSエレキブル

どうも、放仮ごです。今回はモコウVSサタリアとなります。楽しんでいただけると幸いです。


 ラテラルジムは予約がいっぱいで、今日は無理そうだったので観戦することにした私達。いくつか試合を終え、ジムリーダーが圧勝している光景を眺めながら、どうやって勝とうか考えていると、とんでもない試合を観戦することとなった。

 

 

「…凄い試合ですね」

 

「ある意味、だね」

 

「これ試合になってるのかなあ」

 

 

 ラテラルタウンのジムリーダーはモコウさん。以前、私が凶行を犯した場にもいた、ラウラさんの相棒と言ってもいい人だ。でんきタイプ使い同士の激突。それだけでもすごいことなのだが、なんというか…チャレンジャーの告白の場になっていた。

 

 

「私の想いを受け取って!ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「当たってたまるか!?パルスワン、ほえる!」」

 

 

 チャレンジャーはサタリア。以前、鉱山で戦ったあの手強かったでんきつかいだ。確か、「モコウお姉ちゃんに会うまでに私は強くなるんだから!」と言ってたので、その念願が適った形だろうか。強制的に交代されても、猛攻を浴びせるサタリアに押され気味のモコウさん。でもどこか様子がおかしい。怖がっているというかなんというか。

 

 

「この感じ……我は知っている。そうだ、あれはまさにラウラに対するユウリ……!?いや、二年前に好きだと言われたがアレは単なる吊り橋効果で…」

 

「そんなことないよ!私はモコウお姉ちゃんに恋したんだから!」

 

「お前には悪いが、イヤだ!我はでんき使いだがノーマルだ!いや、ラウラとユウリは祝福するし我もいつかはと思うが……だが!年下の愛を受け入れるなど何を言われるか分かったものでは……!」

 

 

 私達は何を見せられているのだろうか。というかこの公然の場で大胆な告白とは。サタリアの愛が凄い。公然の場でいちゃつくラウラさんとユウリさんを思い出す光景だ。モコウさんも愛されてるんだなあ(白目)サタリアは小柄だから受け入れたらロリコン扱いされると思いますけど。

 

 

「だったら、私が勝ったら言うこと聞いてもらうよ、モコウお姉ちゃん?」

 

「喰われる!?」

 

 

 舌なめずりしながら笑うサタリアに震えあがるモコウさん。愛は強しと言うがやりすぎではなかろうか。ほえるで戻されてもボルトチェンジで戻ってくる堂々巡りになっているのはもう笑うしかない。

 

 

「ほえる!」

 

「あなをほる!」

 

 

 何度目かもわからないほえるを、穴を掘って避けるピカチュウ。するとモコウさんはパルスワンをボールに戻して代わりにエレキブルを繰り出した。なにを…?

 

 

「はっ!ほとんどのポケモンが覚えられる、このジムの対策にぴったりな技を、なにも考えてないと思うたか!我には知識が豊富な友人がいてなあ!エレキブル!しっぽを地面に突き刺してかみなりだ!」

 

「なっ!?」

 

 

 その瞬間、尻尾を突き刺し放電した地面が、爆ぜた。衝撃で地面が崩壊し、吹き飛ばされるピカチュウ。宙を舞ったピカチュウに、瓦礫を蹴って肉薄するエレキブル。

 

 

「ど、どくどく…!」

 

「かわらわりだあ!」

 

 

 モコウさんの指示で毒を纏った尻尾を掻い潜り、エレキブルは強烈なチョップを叩き込んでピカチュウを地面に叩き付け戦闘不能にした。なんて戦術……なんてパワー。チャレンジャー時代に速攻一撃でジムを七つ踏破した実力は衰えてない。その一連の流れを見ていたジュリさんがぼそっと呟く。

 

 

「これって、シンジの……!?お兄ちゃんの入れ知恵か」

 

「知ってるんですか?ジュリさん」

 

「えっと…昔見たトレーナーが使ってた戦術だよ。多分、同じエレキブルを持ってるからそれでお兄ちゃんが教えたんじゃないかな。でも相当鍛えてないとできないと思う」

 

「なるほど…」

 

「…参考になるなあ。地面に直接送るのか」

 

 

 私とヨハルは普通にすごいその戦術に興味津々だ。モニターを見ればサタリアの手持ちは残りエモンガのみ。対してモコウさんは三匹残している。エモンガが切札とは言ってましたが、これはさすがにきつそうだ。

 

 

「エモンガ、エレキボール!」

 

「我に憧れてでんきポケモンを使っているようだがまだまだだな。エレキブルの特性はでんきエンジン!でんき攻撃は効かん!」

 

「ッ・・・あ、アクロバット!」

 

 

 エレキブルの特性を知らなかったのか、でんき攻撃でエレキブルをパワーアップさせてしまうサタリア。焦りに焦って唯一の打点なのであろうアクロバットで対抗するが、エレキブルに顔面を鷲掴みにされ地面に叩きつけられてしまう。

 

 

「かみなり!」

 

 

 そしてしっぽを突きつけられ、強力な雷撃が叩き込まれてエモンガは撃沈。目を回し、戦闘不能となった。残りの二匹を引き出せずに敗北したサタリアはその場で立ち尽くす。

 

 

「残念だったな。その程度の実力で我に勝とうなど100年早いわ!」

 

「…………まだ、愛が足りないんだね…」

 

「い、いやそういう訳ではないが。むしろ多すぎるというか…」

 

「私、頑張るから。次まで待っててね?」

 

「お、おう…」

 

 

 何故だろうか。勝ったはずなのに絶望したかの様に顔を引きつらせて立ち尽くすモコウさんと、ニコニコ笑顔でフィールドを離れていくサタリアを見ていると、勝敗が逆に見えてしまう。なんというか、ご愁傷様です。いや、おめでとうございます、かな?

 

 

「…しかしどうしましょうか。モコウさん、強すぎます」

 

「私はゴビットがいるからなんとかなりそうだけど。…地面すら砕く雷はちょっと不味いか」

 

「電撃の威力が強すぎて岩や氷の盾じゃ簡単に砕かれそう…どうしよう、ヤユイ」

 

 

 三人してうんうんと思考の海に溺れる。でんきタイプはじめんタイプしか弱点がない、最強と名高いタイプだ。試合中にも言っていた通り、あなをほるなどをじめんタイプの技は大概のポケモンが覚えられるが、それをああも対策されるとどうしようもない。ついでに言うと私のポケモンは誰も覚えてない。単なる実力勝負になりそうだ。

 

 

「あの高威力の電撃をどうにか防がないと勝ち目がなさそうですね」

 

「……私は、思いついたかな」

 

「…私も、なんとかなりそう」

 

 

 見れば、楽しそうに笑うジュリさんと不敵に笑う赤い目のヨハル…ヤユイの二人。何か思いつける手段と頭脳があるのが羨ましい。私、天才だって兄にさんざん言われてるけど、割と凡人なのである。知識もそんなにないし、単に蟲ポケモンに好かれる才能しかないただのトレーナーだ。知識が豊富なジュリさんとも、とにかく強いヤユイとも明らかに差がある。

 

 

「唯一の勝機だったあなをほるを攻略された時点でお先真っ暗です…」

 

「それはドンマイ」

 

 

 クワガノンはあなをほるを覚えることができて、わざマシンも持っている。だから楽勝かなとか思っていたらこれだ。本当にどうしようか。そんな風に考えて、ふと観客席を見上げた時だった。一番上の立見席に、そいつはいた。

 

 

「!?」

 

 

 怪し過ぎる全身黒づくめの格好に、軍帽を被ったあの姿。あの時と違ってマスクはしてないが、あの眼光、あの帽子。間違いない。何が可笑しいのか笑っているのさえ、許せない!

 

 

「シュバルツ!」

 

「「!?」」

 

 

 慌てて席を立って、人込みをかき分けて上へ向かう。客がざわざわ騒いで五月蠅い。すると私に気付いたのか、真顔になって後退し出口へ向かうシュバルツを追いかける。私の顔を覚えていたのか、それとも名前を呼ばれて驚いただけなのか、どちらでもいい。なんとしてでも、捕まえる!

 

 

「逃がしません!」

 

「ゴルバット、あやしいひかり!」

 

「っ、また!?」

 

 

 スタジアムを出てすぐ追いついたけど、またあやしいひかりを放たれて、混乱が解けた時には逃げられてしまっていた。すると息を切らして追い付いてきたジュリさんとヨハルに問いかけられる。

 

 

「はあ、はあ、一体全体どうしたの…?」

 

「シュバルツって言ってたけどもしかして…」

 

「…私のポケモンを奪ったプラズマ団の幹部がいたんです。でも、どうしてここに…?」

 

 

 まさか休暇でジム戦を見ていたとかではないだろうし。なにか、嫌な予感がする。




アニポケのサトシVSシンジの最終戦はいいぞ。

・ダフネ
三人娘の中で唯一勝機が見いだせてない主人公。シュバルツを見つけて追いかけるが同じ手で逃げられる。本人は凡人だと思っているが、ローレルやラウラからしたら普通に天才の部類。

・ジュリ
ゴビットいる上に名案まで思い付いたダフネの親友。モコウの戦術がラウラから教えられたアニポケの奴だな、とすぐわかった。

・ヨハル
作戦もヤユイに任せっぱなしな非力な子。サタリアの告白紛いの言葉に顔を赤くしていた純情娘。

・サタリア
モコウの元まで辿り着きその愛を爆発させたでんき娘。愛は溢れる程あるが実力が足りなかった。

・モコウ
自分はノーマルだと言い張るジムリーダー。ムツキからサタリアの存在を事前に教えられていたが、子供の憧れ程度だと考えていたらこれである。でも相手は欲しいし憧れはする。ジム用の手持ちとしてエレキブルを手に入れた。

・シュバルツ
何故かモコウのジム戦を観戦していたプラズマ団の幹部。なんで彼がここにいるのかはVSメタグロスを参照。ちなみにダフネの事は覚えてない。

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VSパルスワン

どうも、放仮ごです。そろそろプラズマ団の目的も見えてくる頃合い。グレイの正体に行きつく人もいるんじゃないかな。

今回はダフネVSモコウ前半戦。楽しんでいただけると幸いです。


 翌日、宿屋で朝ごはんを三人で食べながらテレビを見ていた時だった。

 

 

『次のニュースです。先日、キルクスタウンのジムリーダー・ムツキがプラズマ団に襲撃されたという事件が発生していたことが判明しました』

 

「「「!?」」」

 

 

 思わず飲んでた水を噴き出しそうになってしまい押さえて見てみれば、私達が去った次の日に何者かに襲撃されたが、難なく撃退したらしい。襲撃犯は複数で、したっぱはほとんど捕まったが逃げられた一人はプラズマ団の幹部を名乗る黒ずくめの男…とあった。間違いない、シュバルツだ。

 

 

「シュバルツ、ムツキさんも襲って…?」

 

「その足でラテラルタウンまで来たってことかな…?」

 

「でもなんでわざわざジムリーダーを襲うの?それにここに来る理由なんか…いや、私はモコウさんやムツキさんに詳しくないから何とも言えないんだけど」

 

「モコウさんとムツキさんの共通点…」

 

 

 ジュリさんの言い分について考える。シュバルツがムツキさんを襲おうとして失敗、モコウさんを狙ってここにきたとする。その共通点と言えば、ラウラさんと特別仲がいいこと、二年前のチャレンジャー…いや、どれもしっくりこない。シュバルツはラウラさんに私のポケモンを強奪する時邪魔されたと聞いたが、それならなんでラウラさんを襲わないのかがわからないからだ。他には……そうだ、確か二年前の、私が起こした事件とUB事件の時。

 

 

「レジエレキと、フリーザー、ファイヤー、サンダー…」

 

「え?」

 

「私の知る限り、モコウさんとムツキさんが所有している伝説ポケモンです。二年前、レジエレキは私のやったことを止めたポケモンの一匹で、三鳥はUB事件の時にウルトラビーストの鎮圧を手伝った時にムツキさんが操っているのを見ました」

 

 

 あの光景は今でも覚えている。ナックルシティの上空に出現したキョダイウツロイドの触手を、空を飛び交い薙ぎ払う伝説の鳥ポケモン達の姿と、高速で触手をぶち抜いて行く雷を。あの巨大触手で被害がそんなにでなかったのはあの二人の功績が大きいと思う。私の言葉に「いやチャンピオンが手に入れてるんじゃないのかい」と呆れた顔をしていたジュリさんがそれに気づいたのかぽつりと呟く。

 

 

「つまり…目的は伝説ポケモン?」

 

「そういえば、少し前にソニア博士の研究所から伝説ポケモンが強奪されたって話もあったね」

 

 

 ヨハルにそう言われ、シュバルツと初めて遭遇した日を思い出す。そうだ、確かルミさんって人が所有していたレジドラゴ、レジアイス、レジスチル、レジロックの四体が強奪されていたんだった。と言うことはほぼ確定か。なんのために伝説ポケモンを集めているかは知らないが。

 

 

「昨日のは下見だったってことですかね…なんにしても、モコウさんに伝えた方がよさそうです」

 

「まあ今日はどうせ三人とも戦うんだし、その時に伝えればいいでしょ。伝説ポケモンを持ってるなら早々やられないだろうし」

 

「ムツキさんも撃退してるからそもそも心配する必要なさそう…」

 

「それもそうですね」

 

 

 さて、昨日は三人で予約を申し込みに行ったので一番手は私だ。勝てる気はしないが、足掻いてみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして再び、今度はチャレンジャーとしてやってきたラテラルスタジアム。ジムミッションは電磁石で弾かれる円形の乗り物をグルグル回して移動する人間ピンボールだった。しかもSかNかを見極めてその向きに回転しないと弾かれないので凄く頭を使う上にスピードが速く、だいぶ失敗しながらもなんとか時間をかけてクリア。ジムトレーナーはクワガノンに覚えさせたあなをほるでごり押した。

 

 

『本日のラテラルスタジアム第一の挑戦者は、背番号064!天敵であるひこうタイプジムリーダームツキを降したむしつかい、ダフネ選手!対するはジムリーダー、モコウ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 バトルフィールドで向かい合う、でんきタイプのユニフォームをかっこよく改造した物を着込んでいるモコウさんの目は死んでいた。昨日のサタリアが原因だろうか。

 

 

「ついにきたかダフネ。ようやくだな」

 

「はい、ようやくですモコウさん。お待たせしました。あの時の私とは違うことを証明してみせます」

 

 

 何度でも語るが、モコウさんとはこれが初対面ではない。二年前に私が犯したアレの当事者だ。彼女とレジエレキのコンビにだいぶ苦戦した記憶がまだ残ってるぐらい、印象に残ってる。あの時、私が犯した罪を許してくれた一人でもある、つまり恩人だ。無様な戦いは見せられない。私はもともと、あの時の当事者たちに、今の私を見せることが目的だったのだから。

 

 

「ふははははっ!二年前、貴様に苦戦させられた我ではない。メガシンカを使うようだが、それがお前だけだと思わない事だ」

 

 

 そう言って振り上げられた右足に付けられたアンクレットを見て驚愕する。アレは、キーストーン!?

 

 

「お前は知らんようだがメガシンカ自体はリーグ委員長ダンデの采配でジムリーダー全員が使えるぞ。ジムチャレンジでは、後半の三人しか、それも使うに値する相手にしか使ってはいけないという規則があるがな。ぬしポケモンやメガシンカ、あと滅多にいないが幻や伝説のポケモンを頼りにここまで来たチャレンジャーを叩き潰すのが、我の役目だ」

 

 

 そう笑うモコウさん。私が知らなかっただけでジムリーダーがメガシンカを普通に使っていたとは……いや、よく考えたらガラルを発展させたいダンデさんが普及させないわけがないか。ラウラさんの時に観客に驚かれたのはチャレンジャーである私が使っていたからか、と今更ながらに納得する。死んだ目のまま獰猛に笑うモコウさんはまるで稲妻の様なポーズを取り、構えた。

 

 

「それにもはや将来が決まってしまった我に死角はない……いざ勝負だ!パルスワン!」

 

「それについてはご愁傷様ですが、行きます、クワガノン!」

 

 

 今回の私の手持ちはでんきが苦手なグソクムシャを除いたクワガノン、アブリー、イオルブ、ヘラクロスだ。唯一地面技が使えるクワガノンでエレキブル以外を削り切りたいところだ。だがしかし、じめんわざがあることを悟られてはならない。切札は最後まで取っておくべきだろう。

 

 

「クワガノン、むしのさざめき!」

 

「パルスワン、でんこうせっかで回避してほのおのキバだ!」

 

 

 真正面に放たれる衝撃波を、凄まじい速度で右に左と避けて炎を纏わせた牙を剥いて襲いかかるパルスワン。だがしかし、私の相棒であるクワガノンは、ただのクワガノンじゃない。私の得意とする、補助技を全力で扱えるクワガノンだ。

 

 

「ねばねばネット!」

 

「なに!?」

 

 

 牙が届かない胴体を粘々する糸の束を口から飛ばして拘束、パルスワンを拘束したまま空まで舞い上がり、鋏の様な顎で切り離す。空中に投げ出され、まさに手も足も出ないまま落ちて行くパルスワン。

 

 

「ほえるだ!」

 

「大きく避けて挟み込んでからむしのさざめき!」

 

 

 ほえるでこちらのポケモンを強制交代しようとしたのだろうが、音が届かない距離まで離れて回避、急降下したクワガノンが顎で挟み込み、地面に高速で落下しながら衝撃波を放ち、大ダメージを与えた。

 

 

「ほのおのキバ!」

 

「そこで解放です!」

 

 

 衝撃波により糸から解放され、ほのおのキバで対抗しようとするパルスワンを、地面すれすれで顎を開いて放し、落下の勢いも合わせて叩きつける。

 

 

「むしのさざめきでとどめです!」

 

「ただでは死なん!でんこうせっか!」

 

 

 立ち上がるのもやっとなパルスワンにとどめを刺そうとするが、でんこうせっかで抵抗され先に攻撃されたものの、そのままパルスワンは衝撃波をまともに受けて戦闘不能。まずは一体。

 

 

「ねばねばネットをあんなふうに使うとは…いや、二年前も使っていたなお前は」

 

「ラウラさんのいとをはくとは使い方は違いますが、空を舞えるクワガノンが使えば強力な武器になります」

 

「そうみたいだな。だが、パルスワンの様な軽量級ならともかく重量級ならばどうだ。エレキブル…!」

 

 

 出た、モコウさんがこの二年間で手に入れたであろう強力無比なでんきポケモン。このエレキブルをどうにかしないとモコウさんに勝つのは難しい。作戦はないけど、行き当たりばったりで頑張ろう。




ジムリーダーが全員メガシンカできるのは掲示板でも触れられていたように、グレイの正体を示唆するものも前の掲示板にあったりします。

・ダフネ
珍しく行き当たりばったりで行く主人公。恩人の一人であるモコウに今の自分を示すべく戦う。ラウラがいとをはく使いならダフネはねばねばネット使い。

・ジュリ
UB事件とか言われても二年前のことはそんなに詳しく知らないので内心焦っていた人。薄々プラズマ団のリーダーが何者なのか感づいてきた。

・ヨハル
ガラルに引っ越してきたのは最近なので二年前のことについては詳しくない。難しいことを考えることは苦手。

・ムツキ
ダフネたちが去った翌日にプラズマ団に襲撃されたジムリーダー。容赦なく三鳥を繰り出して撃退した。舎弟と言ってもいいルミが襲われているのもあり逃がす気はなかったがシュバルツが一枚上手だった。

・モコウ
別にまだ負けた訳じゃないけどサタリアからは逃げられないと悟ったジムリーダー。ダフネの事は覚えているしレジエレキを手に入れることができた恩人だとも思ってる。ほとんどのジムリーダーはメガグローブなのだが、かっこいいからという理由でヒガナと同じメガアンクレットにしている。

・シュバルツ
前日に部下を率いてムツキを襲ったものの返り討ちにされていたプラズマ団の幹部。目的は伝説ポケモンと思われるが…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガライボルト

どうも、ついに題名のネタが無くなって最後の手段を使った放仮ごです。前回のあの件については掲示板2です、とだけ。

今回はダフネVSモコウ決着。楽しんでいただけると幸いです。


「エレキブル、かみなり!」

 

 

 腕をグルグル振り回して帯電し、二本の尻尾から上空に電撃を飛ばし落としてくるエレキブル。同じでんきタイプと言えど、大地をも砕く高威力のそれを、宙を舞い回避するクワガノン。避けるだけで精一杯だが、あの攻撃にはチャージの時間がいるらしく、何回か撃つと目に見えて疲弊して止まった。

 

 

「今です、むしのさざめき!」

 

「地面にかわらわり!」

 

 

 クワガノンの放った衝撃波を、地面を砕いて岩盤を作り防いでしまうエレキブル。一瞬、どうするか逡巡する。視界が塞がったのを利用して潜るか。それとも上から急襲するか。選んだのは、後者。

 

 

「上からねばねばネット!」

 

 

 岩盤が崩れ落ちる前に、上から急襲。ねばねばネットを飛ばし顔と両腕を覆い拘束、持ち上げることはできないので切り離し、私の意図を察したのか地面に突撃、掘り進んでいくクワガノン。

 

 

「あなをほる!」

 

「むっ、小癪な!ほのおのパンチで糸を焼き切れ!」

 

 

 しかしすぐに拘束を破ってきたエレキブルが、地面に尻尾を突き刺す。こうなったら一か八かだ。目には目を、歯には歯を。電気には電気を!

 

 

「ほうでんです!」

 

「なにを……!?」

 

 

 その瞬間、地面が眩く光り輝き、大爆発。あまりの衝撃に、吹き飛ばされ引っくり返るエレキブル。そして、瓦礫で埋もれたクレーターの様になったフィールドからクワガノンが強襲。あなをほるを喰らわせ地面にめり込ませ、空に離脱して反撃のほのおのパンチを避けた。

 

 

「吹き飛ばす前に吹き飛ばしてくるとはな…!」

 

「できるかどうかもわからない一か八かの賭けでしたがね…!」

 

 

 私のクワガノンのほうでんは強力だ。本来、エレキブル相手にはでんきわざが効かないどころかパワーアップさせるから使わないつもりだったのだけど…かみなりで地面を吹き飛ばせるなら、逆にこっちから吹き飛ばせばいい。電気技を直接喰らうのと、電気技の余波による物理攻撃を受けるのは別だろう。咄嗟に思いついた手段だったが上手く行った。しかしまだ、エレキブルは立っている。

 

 

「自分にかみなりだ!」

 

「なっ!?」

 

 

 するとモコウさんはとんでもないことをしてきた。エレキブルの尻尾から上空に放たれた雷をエレキブル本人に浴びせたのだ。自分から放出された電気を吸収し、ブンブン腕を振り回してでんきエンジンを発動させるエレキブル。そんな手が…!?

 

 

「なにも敵から電撃を受ける必要はないわけだ!」

 

「む、むしのさざめき!」

 

「ほのおのパンチだ!」

 

 

 まるで雷の様な速度で衝撃波を避け、クワガノンの真横に出現。炎を纏った拳を叩き込んでくるエレキブル。

 

 

「あなをほる!」

 

 

 殴り飛ばされたクワガノンはその勢いで瓦礫の海となった地面を掘り進んでいくが、エレキブルは拳に冷気を纏っていて。

 

 

「地面にれいとうパンチ!」

 

「なっ!?」

 

「そのまま地面にかみなりだあ!」

 

 

 瓦礫の海が凍り付き、まるで凍土の様になったそこにしっぽを突き刺して放電、氷の下でフラッシュが起きて、凍り付いた土塊ごと宙に巻き上げられ、そのまま凍結した地面に叩きつけられて戦闘不能となるクワガノン。な、なんて無茶苦茶な…

 

 

「じめんタイプ対策を授けてないわけがなかろう。名付けて、永久凍土クラッシュだ!」

 

「どこが永久なのかはわかりませんけど…よく頑張りました、クワガノン。あと少しです、仇を討ちなさいヘラクロス!メガシンカ!」

 

 

 ヘラクロスを出すと同時にメガシンカ、メガヘラクロスとエレキブルが対峙する。

 

 

「でんきエンジンで昂ぶったエレキブルのスピードについて来れるか!ほのおのパンチ!」

 

「ついて来れるか、じゃありません。そちらの方こそ、ついてこれますか!ヘラクロス、フルスピードでメガホーンです!」

 

 

 両腕の噴出孔から蒸気を噴出しジグザグに猛加速したヘラクロスと、雷の如き速さでフィールドを駆けるエレキブルが激突する。メガホーンで上手く弾いて効果抜群の攻撃をクリーンヒットさせないメガヘラクロスと、両腕に炎を纏ってスピードを乗せて叩きつけてくるエレキブルの高速バトルは、メガヘラクロスが加速した勢いのまま飛び上がって制空権を取ったことで終結した。

 

 

「タネマシンガン!」

 

「かみなり!」

 

 

 かみなりを避けながら空中から放たれる種の連射がエレキブルの全身を撃ち抜き、戦闘不能。降り立つメガヘラクロス。対してモコウさんは目を回したエレキブルを戻し、ライボルトを繰り出すとメガアンクレットを付けた右足を振り上げ、落雷の如き勢いで振り下ろした。

 

 

「エレキブルを降したか…いいだろう、敬意を表して本気を見せよう。行くぞ我が相棒ライボルト、メガシンカ!」

 

 

 瞬間、メガアンクレットから迸った虹色の光がライボルトのメガストーンから放たれた光と繋がり、紫色の光の膜につつまれて咆哮と共に膜が砕け散る。そこにいたのは、巨大な稲妻状に変化した体毛を着ぐるみのように身に纏った勇ましい姿。これが、メガライボルト…!

 

 

「ロックブラスト!」

 

「10まんボルト!」

 

 

 間髪入れず岩の弾丸を放つが、三発は放たれた電撃で砕かれ二発しか当たらず。しかし、まるで怯まないその姿に違和感を感じる。あちらの防御力が上がったのか、それともこちらの攻撃力が下がったのか…?

 

 

「まさか、特性がいかくに変わった…!?」

 

「その通りだ!それだけじゃないぞ、落雷の如きスピードとなったライボルトから逃げられると思うなよ?ほのおのキバ!」

 

 

 牙に炎を纏い、ダンッ!と地面を踏みしめた瞬間、その姿が掻き消える。さっきのエレキブルのそれより速い…!

 

 

「上です、ヘラクロス!」

 

「ちい!ワイルドボルトで追撃だ!」

 

「メガホーン!」

 

 

 間一髪。炎を纏った噛みつきを空に舞い上がることで回避し、電気を纏って突撃してきたのを輝く角を振り下ろすことで迎撃。地面に叩きつける。火力が下がっても、倒れるまで撃ち続ければいいだけのことぉ!

 

 

「空から撃ちまくりなさい!ロックブラスト!」

 

「避けながら10まんボルト!」

 

 

 電撃で対空迎撃するが、それがどうした。こちとら連射が効くのだ。いくら圧倒的なスピードで逃げようが、圧倒的な質量の弾幕が追い詰めて行く。そして、岩の破片はフィールドに残り自由に移動できる足場を失くしていく。

 

 

「そこです、インファイト!」

 

「押し返せ、ワイルドボルト!」

 

 

 瓦礫に足を取られ止まった隙を見逃さず、渾身の猛打が炸裂。メガライボルトを壁まで殴り飛ばして戦闘不能にするが、こちらも吹き飛びフィールドに叩きつけられて戦闘不能になる。最後の最後に油断してしまった、相討ちだ。ごり押しの極みと言ってもいいごり押しすぎた。

 

 

「まさかここまでとはな…だがまだ終わらんぞ。行くぞストリンダー、我の生き様!我のロック魂をこの世に見せつけろ!雷鳴起こして雷神と化せ!キョダイマックス!」

 

「ならばこちらも交代、イオルブ!あまねく全てよ、地にひれ伏しなさい!キョダイマックス!」

 

 

 モコウさんが切札であろうキョダイストリンダ―を繰り出したので、こちらもイオルブを繰り出してキョダイマックス。キョダイストリンダーは地を這い、空に浮かぶキョダイイオルブを見上げて咆哮を上げる。悪いが、ここまで来たら負ける気はしない!

 

 

「押し潰しなさい!キョダイテンドウ!」

 

「負けるなストリンダー!キョダイカンデン!」

 

 

 立ち上がってエレキギター型の巨大な電気の塊を作り出し、振り上げて力任せに叩きつけんとしたキョダイストリンダーの巨体が、振り上げた体制のまま地面に叩きつけられ、増していく重力で押し潰されて、電気の塊が霧散した。大歓声の中、縮んでいくストリンダーを見て、じっと黙っていたかと思うと突如笑い出すモコウさんにビクッと反応する。

 

 

「はは、ははははは!ラウラとの戦いを思い出すいい勝負だった!我の完敗だ!故に授けよう、これがでんきバッジだ!ぐはっ」

 

 

 そう言ってかっこつけて歩いて来ようとして、ボロボロの地面に引っ掛かって凍土に頭から叩きつけられるモコウさん。慌てて助けに駆け寄り、締まらない空気の中でバッジを受け取ると歓声が上がる。なんというか、まだ二年の新参ジムリーダーなのにキバナさんに次ぐ人気の理由を垣間見た気がした。




永久凍土クラッシュはゼノブレイド2で一番好きなブレイドコンボから。あとFateネタとコナンネタが少し。

・ダフネ
作戦名:ごり押しの極みを実行した主人公。アドリブでどうにかするしかなかったがなんとかしてしまうのが才能の片鱗である。キョダイイオルブを使うとテンションがハイになる。

・モコウ
相棒でメガシンカを披露したジムリーダー。かっこつけて勢いよく足を振り下ろしたが痛いのを我慢していた。ドジなのは相変わらず。永久凍土クラッシュは我ながら渾身の技名だと思ってる。手持ちのうち三匹がガチ編成というジムリーダーにあるまじき負けず嫌い。

・エレキブル♂
とくせい:でんきエンジン
わざ:かみなり
   かわらわり
   ほのおのパンチ
   れいとうパンチ
もちもの:なし
備考:うっかりやな性格。打たれ強い。二年間のうちにカンムリ雪原で捕まえたモコウの新参ポケモン。かみなりを自分に浴びせてパワーアップしたり、全ての技が通常より高威力を誇るがぬしポケモンではない。ラウラ直伝シンジ戦法であなをほるを完全に攻略している。モコウに敗北したチャレンジャーは大概がこのエレキブルに負けている。

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VSヌケニン

どうも、放仮ごです。題名が思いつかなかったのでヌケニン初登場回にゾロアを出してVSゾロアに変更してきました、申し訳ない。

今回はヌケニン無双。ジュリVSモコウです。楽しんでいただけると幸いです。


「大丈夫ですか、モコウさん」

 

「いたた…なに、慣れてる。しょっちゅうスッ転んだりマッギョを踏んだりするので生傷が耐えんのだ」

 

「それはそれでどうなんでしょう…」

 

 

 私にバッジを渡し、赤くなった鼻頭をさすりながら涙目でそう語るモコウさん。ドジにも程があるんじゃなかろうか。…観客の前だけど、内緒話ぐらいならできるだろうか。そう考え、モコウさんの耳元に近づく。

 

 

「それより、伝えたいことが」

 

「うん、なんだ?」

 

「…昨日、観客席にプラズマ団の幹部が居ました。私を襲った男です」

 

「なに?」

 

 

 私の話を聞くと鋭い目つきになるモコウさん。此処の前任者であり既知の仲らしいサイトウさんがヴァイスにやられたこともあってピリピリしているのがわかる。

 

 

「恐らく狙いは…」

 

「レジエレキ、か?」

 

「…多分、そうです」

 

「ルミとムツキが襲われたと聞いたからな。共通点と言えばそれしかない。なに、賊なんぞに負けんさ。我は最速最強のジムリーダーだからな」

 

 

 そう不敵に笑うモコウさんに、大丈夫だと感じて。私は一礼してその場を去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は過ぎて。観客席でヨハルと共に、ジュリさんとモコウさんの対決を見守る。私が大苦戦したあのクルクル回る仕掛けを、全力で楽しんでいたジュリさんには感服した。

 

 

「行くぞ、パルスワン!」

 

「よろしくどうぞ、ダダリン!」

 

 

 地を駆けるパルスワンと、ゆらゆら漂うダダリン。対照的な二体が激突する。

 

 

「ほのおのキバ!」

 

「パワーウィップ!」

 

 

 炎を纏った牙で舵輪部分に噛み付くパルスワンを、太い蔓が叩きのめして吹き飛ばす。効果抜群を受けたというのにダダリンはピンピンしていた。

 

 

「ご存じありません?噛み付きやすいところを狙ったようだけど…ダダリンの本体はそこじゃないので痛くも痒くもない!」

 

 

 そう豪語してるジュリさんだが、嘘である。むしろ舵輪が破壊されたら無力化されることを私は身をもって知っている。

 

 

「続けてアンカーショット!」

 

「ならば選手交代だ。ボルトチェンジ」

 

「っ…」

 

「いでよエレキブル!鎖を掴んで振り回せ!」

 

 

 出た。モコウさんお得意のボルトチェンジ。出た来たのはエレキブル。アンカーショットが巻き付いた腕を気にも留めず、鎖をガッシリと両手で掴むと力の限り振り回し、地面に叩きつけようとする。

 

 

「ゴーストダイブ!」

 

 

 するとジュリさんはゴーストダイブを使い、勢いは殺されずに自身の振り下ろした威力で影の中に引きずり込まれんとするエレキブル。上手い、アレならエレキブルと言えど…

 

 

「エレキブル、当てなくてもいい。適当にかみなりを撃て!」

 

 

 その瞬間、エレキブルの尻尾から何を狙う事もなく放たれるかみなり。その瞬間、眩い光で影が掻き消えてしまい、強制的に出て来てしまうダダリン。影が無くてはさすがに潜れないらしい。

 

 

「引き寄せてれいとうパンチだ!」

 

 

 さらに掴んだままの鎖を自らの体に巻きつけてダダリンを引き寄せ、冷気を纏った拳をクリーンヒットさせるエレキブル。ダダリンは吹き飛ばされることもできずにその場で崩れ落ち、ジュリさんの手にしたボールに戻って行った。これで、電気の威力をある程度打ち消せるくさタイプのダダリンが倒れたわけだが。残るジュリさんの手持ちはミミッキュ、ゴビット、プルリル、ヌケニンの四匹のうち三匹。この中から抜くとしたらプルリルだろうか。

 

 

「フハハハ!小癪、小癪だぞチャレンジャー!ラウラと同じ顔の癖して勢いがないな貴様!」

 

「お兄ちゃんと比べて欲しくはないです、行くよ!ヌケニン!」

 

 

 繰り出されたのはジュリさんの新メンバーであるヌケニン。…私は蟲好きだから知っているが、かなり特殊なポケモンだ。使いこなせることができるのだろうか。

 

 

「比べて欲しくないと言いながら同じ蟲を使うか!だがそんな覇気も感じぬポケモン、一撃で葬ってくれよう!かみなり!」

 

 

 お得意のかみなりが尻尾から天に向けて放たれ、ヌケニンに降り注ぐぎその姿が砂塵に包まれる。砂塵が晴れると同時に驚愕に目を見開くモコウさん。並大抵のポケモンなら一撃で落とされたであろうそれを受けたはずなのに、無傷でふわふわ浮かんでいた。

 

 

「なに?まさか、外れたか?いや、それほど速いポケモンということか…ならば地面にれいとうパンチだ!氷漬けにしろ!」

 

 

 ラウラさんのドラピオンと同じ、大規模な氷結がヌケニンを襲う。だがしかし、氷が触れてすらいない。モコウさんは知らなかったらしいが、これぞ体力が1しかない前代未聞のポケモン、ヌケニンしか持たない唯一無二の特性。効果抜群の攻撃…即ち、ほのお・ひこう・いわ・ゴースト・あく以外の攻撃は一切効かないというチート級の特性、ふしぎなまもりだ。エレキブルがほのおのパンチを使えば瞬殺されてしまうが、知らなければ無敵のポケモンに見えるだろう。

 

 

「なんだ?なにをした?」

 

「さあ、なにをしたのでしょう?私は何も指示していませんよ?」

 

「ならば、エレキブル!自身にかみなり!そしてほのおのパンチだ!」

 

 

 出た。自家発電エレキブル。理に適っているでんきエンジンの使い方で素早くなったエレキブルが肉薄し、炎を纏った拳を振るわんとする。しかしそれは、ドーム状の透明な壁で防がれた。

 

 

「まもる」

 

「むっ?これは防ぐのか。ならば連打だ!」

 

「あなをほる」

 

 

 もう片方の拳に炎を纏って振るわれるが、地面に逃れるヌケニン。ああ、なるほど。昨日のジュリさんの思いついた策がこれか。他のポケモンならエレキブルのかみなりで大ダメージを受けるが、ヌケニンには一切効かないんだ。

 

 

「我の秘策を知らないでか!地面にかみなりだ!」

 

 

 地面に突き刺さった尻尾から電撃が流され、吹き飛ぶ地面。しかしヌケニンは潜ったまま、爆風にまぎれてエレキブルに攻撃して地表に出てきた。姿を現したのにダメージを受けた様子がなく、逆に大ダメージを受けているエレキブルにわけがわからない、と言った表情を浮かべるモコウさん。

 

 

「なんだ?何が起きた?だが出て来たな?もう一度、ほのおのパンチ!」

 

「まもって、シザークロス」

 

 

 ほのおのパンチを的確に防ぎ、返しに斬撃を繰り出すヌケニン。その不気味な姿に焦燥感を隠せないモコウさん。観客もヌケニンの存在を知っている方が少ないのか、一方的な展開にざわついている。

 

 

「距離を取れ!かみなりだ!」

 

「かげうち」

 

 

 距離を取るエレキブルに、ジュリさんが不気味に笑った瞬間、その巨体が崩れ落ちる。ジュリさん得意のダメージ計算か。もし倒しきれなくてもかみなりはふしぎなまもりで防げるからチャンスを狙った攻撃だった。

 

 

「馬鹿な…そのポケモンは、なんだ!?こちらも全力で挑まねばということか……ライボルト!メガシンカだ!」

 

 

 まだ解答が分からないらしいが、ライボルトを繰り出しメガシンカさせるモコウさん。いかくで攻撃力を下げて、ほのおのキバという打点もあるから最適解と言ってもいい。対してジュリさんはヌケニンを戻し、プルリルを繰り出した。あっ、という顔をヨハルと揃って浮かべる。ジュリさん、ゴビットというでんきタイプの天敵いるのにメガシンカ相手に真っ向から勝負する気ないな?まあいかくで攻撃力下がってしまうから泥仕合になることを避けたのか。

 

 

「では私はこれで、頑張れプルリル!」

 

「ユウリのインテレオンみたく無効化するかもしれん。油断するな、最大火力だ!ワイルドボルト!」

 

「では遠慮なく。みちづれ」

 

「なにぃ!?」

 

 

 効果抜群の一撃を、むしろ受け入れる様に喰らって目を見開くプルリル。その瞬間、戦闘不能になるプルリルに抱かれるようにして崩れ落ち、メガシンカが解けるライボルト。完全に度肝を抜かれたのかモコウさんはブルブル震えていた。少し考えこんでから次のポケモンを繰り出すジュリさんは満面の笑みだ。

 

 

「じゃあ、ヌケニンで」

 

「パルスワン!」

 

 

 ほのおのキバを持つパルスワンが出てくるとわかってるのになぜヌケニン?と一瞬思ったが、すぐその理由に気付く。モコウさんにとってヌケニンは得体のしれないポケモンだ。ライボルトとエレキブルが倒れた以上、最後のストリンダーで相手したいはずだ。だからこそ、ヌケニンを先に出したのか。強制的に交代されたくないから。

 

 

「ほえる!」

 

「ありがとうございます。ゴビット、その場でばくれつパンチ!」

 

 

 ほえるでヌケニンが戻され、出てきたのはもちろん、最後のポケモンであるゴビット。それを見た瞬間、乗せられたと気付いたらしいモコウさんの顔が青ざめる。しかもばくれつパンチは当たる筈がなく空振り。次の攻撃を防ぐ手はない。

 

 

「じだんだ!」

 

 

 効果抜群の一撃を受け、崩れ落ちるパルスワン。そしてモコウさんの最後の手持ちはストリンダー。端的に言って、詰んでいた。諦めることなくストリンダーを繰り出すモコウさんに対し、ジュリさんはヌケニンを再度繰り出すとニッコニコで語った。

 

 

「ネタばらしです。特性、ふしぎなまもり。効果抜群の攻撃以外の全てを遮断する特性です。ここで明かした意味、貴女ならわかりますよね?」

 

「………我の負けだ」

 

 

 戦うことなく敗北が決まり、膝から力なく崩れ落ちるモコウさん。最速最強だと謳ったジムリーダーの敗北は、あまりにも圧倒的で。盛り上がりに欠けたのか観客はシンと静まり返っていた。…ジュリさん、こんなんばっかだなあ。




ジュリ「はめるのすっごく楽しかった」と供述しており…

・ジュリ
今回のバトルを心の底から楽しんだナチュラル外道。非難されるだろうけどやめられない、止まらない。ヌケニンとゴビットいるから負ける気がしなかった。無論、ネットは大荒れである。

・ダフネ
前回の戦いの後、一応モコウに報告した。ヌケニンを使いこなせる自信はないので素直にすごいと称賛しているけど、絶対アンチが出る親友に不安を隠せない。

・ヨハル
ヤユイが強くなるために勉強していたのでヌケニンの特性は知っていた子。

・モコウ
相変わらず微妙に勉強不足なジムリーダー。テッカニンについてはよく知っているがラウラが使わないためヌケニンについては毛ほども知らなかった。ついでに言うと初見で挑むことが礼儀だと考えているのでジュリの戦法もまるで知らず簡単に乗せられてしまった。ジュリが悪魔に見えたという。

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VSタチフサグマ

どうも、放仮ごです。長かった三人娘のモコウ戦もようやく終わり。ちょっとやり方変えないとマンネリ化しそうなんで色々考えてます。

今回は今季最強のチャレンジャー・ヤユイVSモコウ。楽しんでいただけると幸いです。


 ガッツリ落ち込んでいるモコウさんからバッジを受け取り、出入り口に戻って行ったのでヨハルと二人して受付へ迎えに行く。

 

 

「あ、二人とも。どしたの怖い顔で」

 

「ジュリさん。やりすぎです」

 

「そうだよ。あれはひどい」

 

「酷いもなにも、あれがヌケニンの戦い方なんだよなあ」

 

 

 全く悪びれず悪戯が成功した子供の様に笑うジュリさんに呆れる私とヨハル。それは理解してますが、あそこまではめなくても…上機嫌になっているのはいいことですが。

 

 

「次はヨハルだね。頑張れ」

 

「う、うん。――――すぐ終わらせてくるよ」

 

 

 一瞬でヤユイに変わり、不敵に笑んで受付に向かうヨハル。相変わらずかっこいいなあ。思わず見惚れてしまう。そういえば、マリィさんと戦っているところを見る以来、ちゃんと最初からヤユイが戦うのを見るのは初めてだなと気付く。心配はしてないが、いつかセミファイナルトーナメントで戦う相手だ。どう戦うのかはちゃんと見ないとな。…でも、たしかじめんタイプを持ってなかったはずだけどどうやって戦うんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジュリさんのせいか、それとも二連続で負けたせいか、本気で落ち込んでいたモコウさんが回復する間もなくヤユイがジムミッションを突破してから30分ほど待って。ようやく自信を取り戻したモコウさんが出てきて、ヤユイも並ぶ。ジムトレーナーが元気づけたのだろうか、お疲れ様だ。

 

 

『え、えー…ジムリーダーのメンタルが回復しましたので続きましてのチャレンジャーを紹介します。続きましての挑戦者は、背番号408!これまでの全てのジムで猛威を振るってきた、間違いなく今季最強のチャレンジャー、ヨハル選手!対するはジムリーダー、モコウ!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 爆音の様な歓声が上がる。予想はしていたけどヨハル、じゃなくてヤユイ、今季最強のチャレンジャーと呼ばれているんだ。さすがの人気だ。私やジュリさんの時とは熱量が違う。

 

 

「ふん、最強か。チャレンジャー時代、最速最強を目指したどこぞの馬鹿を思い出す……お前には悪いが、ちょっとした鬱憤晴らしに付き合ってもらうぞ」

 

「友達二人のおかげで手持ちの構成と技構成は覚えた。私が強くなるための糧になってもらうよ、ジムリーダー!」

 

 

 好戦的に笑い合う二人の対決が始まった。初手はパルスワンと、マニューラ。ほのおのキバを持つパルスワンが有利か?

 

 

「地を駆けろ、ほのおのキバ!」

 

「地面にれいとうパンチ!」

 

 

 冷気を纏った拳を地面に叩き付け、まるで鏡の様な氷のスケートリンクの様なフィールドを作りだすマニューラ。パルスワンは足を取られて転倒し、そこにアイススケートの様に滑走するマニューラ。クルクル回転して速度を強め、その勢いのまま独楽の様に三連続でぶつかっていく。

 

 

「トリプルアクセル!」

 

 

 アレは確か、ヨロイ島で覚えられる特殊な技の一つだ。以前見たマニューラの技はれいとうパンチ、かわらわり、メタルクローの三つ。アレは四つ目の技か。あくタイプの技を覚えさせてないのか。高速でスケートリンクを回転しながら滑走し何度もトリプルアクセルを放つマニューラにパルスワンはまともに立つこともできず防ぐこともできず手も足も出ない。強すぎません?

 

 

「パルスワン、落ち着け!踏ん張ってほのおのキバで迎え撃つんだ!」

 

「マニューラ、かわらわり!」

 

 

 パルスワンがようやく安定して立った途端、トリプルアクセルを止めてピタッと止まり、凍り付いた足元にチョップを叩きつけるマニューラ。その瞬間、砕け散った氷の破片がパルスワンに襲いかかって怯ませ、滑走して接近するマニューラ。

 

 

「れいとうパンチ!」

 

 

 すれ違いざまに強烈な一撃が胴体を捉え、殴り飛ばし戦闘不能にするマニューラ。無傷で初手を切り抜けてしまった。

 

 

「次だ、エレキブル!かみなりをばら撒いて氷を砕け!」

 

「交代、タチフサグマ!ほのおのパンチで溶かしながら近づいて!」

 

 

 かみなりを放ってスケートリンクを破壊することで隙だらけなエレキブルに、炎を纏った拳をだらんと垂れ下げて氷を溶かしながら地を駆けるタチフサグマが肉薄、殴りつける。やけどを負ったようで苦しむエレキブル。私もジュリさんもエレキブルとは距離を取って戦っていたからわからなかったけど、あのエレキブル実は超接近戦が苦手なのか?

 

 

「かわらわりだ!」

 

「ブロッキング。ほのおのパンチ!」

 

 

 チョップを腕を交差させて防いで弾き飛ばし、無防備な胴体に炎を纏った拳が炸裂。その巨体が後退する。

 

 

「ほのおのパンチとれいとうパンチ!」

 

「ブロッキング。クロスチョップ」

 

 

 二属性の二連撃をもブロッキングで弾いて、カウンターに交差した手刀が叩き込まれる。完全にヤユイのペースだ。接近戦では敵わないと見たのか、エレキブルを後退させるモコウさん。

 

 

「距離を取ってかみなりだ!」

 

「逃がすな。つじぎり!」

 

 

 しかし、かみなりを撃ちながら後退したエレキブルの猛攻を身を低くして避けてすれ違いざまに斬撃を叩き込み、エレキブルを戦闘不能にするタチフサグマが咆哮を上げる。前も思ったんですが、さすがに強すぎませんか。

 

 

「ぬしポケモンもメガシンカも使わない相手だが、使わざるを得ない実力か…ライボルト、メガシンカ!」

 

「交代、アマルルガ」

 

 

 アマルルガが出された途端、あられが降り始め一気に冷え込み寒くなる。メガライボルトのいかくが発動するが、ヤユイのアマルルガはふぶきを使う遠距離メインだ。

 

 

「ライボルト、ワイルドボルトだ!」

 

「アマルルガ、じしん!」

 

 

 前足を振り上げ、地面に叩きつけると大きな揺れが私達を襲う。覚えていた。打点となるじめん技。もはやネットでは語り口となっているキリエのじしんの様な無茶苦茶さはない、普通のじしん。それに足を止めて大ダメージを受けるメガライボルト。しかしタイプ不一致でいかくも入っているためか一撃で落とすには至らない。

 

 

「もう一度、じしん!」

 

「宙に逃げろ!」

 

 

 宙に跳びじしんを避けるメガライボルト。隣でジュリさんが「それありなんだ…」と苦笑いしていた。割とポピュラーな避け方だと思うのだが。

 

 

「空中じゃ逃げ道はないよ!ふぶき!」

 

 

 そこに、あられなため必中になっているふぶきが炸裂。氷漬けにして地面に叩きつけられると氷が砕け散り、ふらふらと立ち上がるメガライボルト。しかしアマルルガは容赦なく前足を振り上げていて。

 

 

「じしん」

 

「この我が…手も足も出ないだと…!?」

 

 

 揺れが再び襲いかかり、満身創痍のメガライボルトは戦闘不能となり倒れてボールに戻って行きモコウさんが戦慄し、ストリンダーを繰り出す。いまだにヤユイの手持ちは全て無傷だ。これであとはヤユイはブラッキーであくびしてじっくり体力を削るだけで完勝だ。ジュリさんと似た様な戦法なので批判が来そうだが。

 

 

「キョダイマックスだ、ストリンダー!」

 

「交代、ブラッキー。あくび」

 

「むっ…!?」

 

「交代、アマルルガ。ダイマックス」

 

 

 モコウさんがストリンダーをキョダイマックスさせたのを確認してから、ブラッキーを出してあくびさせるとすぐ戻してアマルルガを繰り出しダイマックスさせるヤユイ。一度交代したから下がった攻撃力も戻っている。キョダイ化したまま眠りにつくストリンダーと、怪獣の如き迫力と化したアマルルガが対峙する。ジュリさんが悪魔なら、ヤユイは鬼である。

 

 

「起きろ、ストリンダー!」

 

「キョダイマックスだからダイサンダーも撃てないよね?エレキフィールド展開されたらこれはできなかった。ダイアースでとどめ!」

 

 

 そして四倍ダメージのダイアースが炸裂、眠りについたまま大爆発して縮んでいくストリンダー。完勝したヤユイはヨハルに戻ると、また随分と落ち込んだ様子のモコウさんとおずおずと握手を交わし、バッジを受け取って一礼して出入り口に去って行った。……これで六つ連続のジムを完勝したことになるのか。ヤユイ、強いなあ。




犯罪者と悪魔と二重人格な鬼とかいうやべー三人娘。

・ダフネ
ヤユイの底知れない強さに戦慄した主人公。なんで前に勝てたんだ?と真面目に考えている。モコウが哀れ。

・ジュリ
じしんって跳んで避けれるんだ…と別の意味で戦慄してた転移者。ずっと上機嫌。

・ヨハル/ヤユイ
今のところ全てのジムで完勝しているかつてのユウリを思い出す今季最強のチャレンジャー。チャンピオン推薦は伊達じゃなく、普通に強い。強くなるためにヨロイ島にも赴いていた。

・モコウ
三連続で敗北してちょっと自信を失ってるジムリーダー。このあとにサタリアも再戦して来て、大衆の面前で泣いた。メンタルが崩れるとジムトレーナー総がかりでヨイショして回復させるぐらいに愛されている。

・マニューラ♀
とくせい:プレッシャー
わざ:トリプルアクセル
   かわらわり
   メタルクロー
   れいとうパンチ
もちもの:するどいつめ
備考:きまぐれやな性格。よく物を散らかす。ヤユイの先鋒。凍らせて高速で滑走し敵を翻弄する他、格闘戦が得意。

・タチフサグマ♂
とくせい:こんじょう
わざ:ブロッキング
   つじぎり
   クロスチョップ
   ほのおのパンチ
もちもの:かえんだま
備考:わんぱくな性格。暴れることが好き。的確にブロッキングで敵の攻撃を弾いて高火力の物理技を叩き込むタンク兼アタッカー。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSランプラー

ギリギリ間に合った!どうも、放仮ごです。頭痛で寝てたら遅くなりました、申し訳ない。

今回はついに襲来プラズマ団。楽しんでいただけると幸いです。


「大丈夫でしょうか、モコウさん」

 

 

 ジュリさんと共にヨハルと受付で合流し、労っている中、ふとモコウさんが心配になってきた。私達に三連続で負けてメンタルブレイクしているところを襲われたら一溜りもないんじゃなかろうか。

 

 

「そういや襲われるかもしれないんだったっけあの人…気にせずボコボコにしちゃった」

 

「ヤユイもすっかり忘れてたみたい…」

 

「ええ……」

 

 

 全くこの二人は……しかしどう考えても今が狙い時だ。シュバルツがモコウさんを襲撃するとして、そのチャンスを私達で作ってしまったことになる。モコウさんは大丈夫だと言っていたが、心配だ。なにせドジっ子で有名なジムリーダーなのだから。

 

 

「今日だけ、モコウさんの試合を見守りませんか?」

 

「それがいいね」

 

「もしかしたらヴァイスも来るかもだから、賛成」

 

「もし本当に来ても無茶はしないでくださいね?」

 

 

 とりあえず、恨みが未知数でなにしでかすかわからないヨハルとヤユイに釘を刺しておく。とりあえず観客席に戻るとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 客席に三人で戻ってくると、オロオロするサタリアと対峙したモコウさんがダバーッと涙を流して泣きながらバトルしていた。三連続で負けて、サタリアにも負けると絶望したのだろうか。しかし泣きながらバトルするとは前代未聞だ。その割に初手からエレキブルを出してボッコボコにしてるが。サタリア、でんきタイプ統一だからエレキブルと相性悪すぎるんですよね。

 

 

「大丈夫そうですね?」

 

「泣きながら圧倒するのはもはやギャグだね」

 

「ヤユイのせい…なのかな?」

 

「私は接戦だったのでジュリさんとヤユイが悪いと思われ」

 

「ヌケニンを知らない方が悪い」

 

 

 まったく悪びれないジュリさんに苦笑いを浮かべる。そしてエレキブルを倒されることなくサタリアに完勝したモコウさんが目に見えて元気を取り戻し、とぼとぼとサタリアが去りゆこうとした、その時だった。

 

 

「むっ?どうした?」

 

 

 同じく戻ろうとしていたモコウさんが電話を取ってその内容に顔をしかめた途端、サタリアが出て行こうとしていた出入り口から発生した黒い霧の様な物がバトルフィールドを覆い隠したかと思えば、晴れたそこには複数人の男女がサタリアを取り囲むように現れていた。ざわつく観客席、鬼の形相で賊の一団を睨みつけるモコウさん。

 

 

「ダフネ、あれって…」

 

「ヴァイスじゃない、けど…」

 

「このタイミングで来ますか、シュバルツ…!」

 

 

 ほとんどが特徴的な揃いの服だが、サタリアの腕を捻り上げて拘束している1人だけ黒ずくめの戦闘服の様な物を身に着けマスクで顔を隠した頭に軍帽を被っている男だった。間違いない、私が出会った時のと同じ格好のシュバルツと、プラズマ団したっぱだ。10人は超えていて、各々がボールを構えている。

 

 

「…ポケモンを虐げ、見世物にして楽しんでいる愚民の諸君!ごきげんよう。私はプラズマ団幹部、シュバルツ。ジムリーダーモコウが我が物顔で使役している伝説ポケモン、レジエレキを解放すべく推参した」

 

 

 観客席に向けて綺麗な一礼をするシュバルツ。どよめく観客席だが、マスコミを通じてこの情報は外にも伝わっているはずだ。何が目的なんだ…?

 

 

「貴様ら…白昼堂々よく姿を現せたな。狙いは我だろう。その子を解放しろ」

 

「断る。ようやく人質にできそうな、全てのポケモンが戦闘不能になったチャレンジャーが現れたのだ。この隙を逃すはずがないだろう」

 

 

 繰り出したままだったエレキブルと共にシュバルツを睨みつけるモコウさんだが、シュバルツはサタリアの腕を捻り上げたまま放す気配がない。したっぱは出入り口と観客席を見張るように散開する。これじゃ迂闊に飛びこむこともできない。

 

 

「我々が求めるのはただ一つ、レジエレキの解放だ。この娘と交換条件と行こう。実力で叩きのめしてもいいのだが、伝説の強さをなめてかかった結果が先日の部下の損失だ。確実に手に入る方法を取るのは当然だろう?」

 

「っ…モコウさんがお前たちの言う事なんか聞く物か!」

 

「おっと。黙っておいた方が身の程だぞ、未来あるチャレンジャー。お前の未来は我が相棒の気分次第だ」

 

 

 暴れるサタリアさんを押さえる様に、繰り出されたゴルバットが鋭い翼を首元に突きつける。なにか、なにかできることはないか?

 

 

「レジエレキを渡して、その子が解放される根拠は!」

 

「ないな。だが、渡さないままだとこの娘の未来はないと知れ。お前を随分と慕っている様だったが、見殺しにしても我々は一向に構わん。我々が単なる小悪党の残党だと思われるのも癪なのでな。もちろん、エレキブルが少しでも動いてもアウトだ」

 

「くっ……」

 

 

 苦虫を噛み潰した様な顔で、クイックボールを取り出しスイッチを入れることなくシュバルツに投げるモコウさん。シュバルツはボールを受け取り、バチバチ放電するそれを手袋をはめた手で握り中を確認すると不愉快そうに頷いた。

 

 

「レジエレキに放電させて私が感電したところで取り押さえるつもりだったのだろうが残念だったな。この手袋は絶縁体だ。我がボスの情報網に抜かりはない。帰るぞお前たち」

 

「…そう簡単に逃がすか。アンカーショット!」

 

 

 踵を返して去ろうとするシュバルツたちに、隣でジュリさんが叫ぶ。何事かとプラズマ団のしたっぱたちがこちらに意識を向ける前に、ゴルバットの影から鎖に繋がった錨が飛び出てシュバルツに炸裂、サタリアを解放させて大きく吹き飛ばした。解放されたサタリアを、咄嗟に飛び出したエレキブルが回収。モコウさんの元に戻る中横を見ると、不敵な笑みを浮かべたジュリさんがいた。

 

 

「ジュリさん?」

 

「念のため、くろいきりが出た時にダダリンを出しておいたの。まさか、フィールドを移動する影までは警戒を怠ったみたいだね」

 

「さすがです!」

 

「シュバルツ様!?貴様たちの仕業か、よくも!」

 

 

 こちらに気付いたしたっぱたちがレパルダスやヤブクロン、ホイーガなどを出す中、私とジュリさん、ヤユイに変わったヨハルが手すりを乗り越え観客席からフィールドに飛び降り応戦する。

 

 

「グソクムシャ!であいがしら!」

 

「ダダリン!パワーウィップ!」

 

「ルガルガン!カウンター!」

 

 

 そしてしたっぱを一蹴し、他のしたっぱを二人に任せながら、私はダメージから建て直したシュバルツへ肉薄する。反対側からはモコウさんがライボルトを繰り出しメガシンカさせながら迫っていた。

 

 

「シュバルツぅうううう!」

 

「レジエレキも返してもらうぞ!」

 

「モコウに勝ったチャレンジャー共か。グレイ様から賜った作戦の邪魔はさせん、ランプラー!」

 

 

 憤怒の目を浮かべたシュバルツが繰り出したのはランプラー。その周囲に炎が渦を巻く。これは…!?

 

 

「れんごく!」

 

 

 次の瞬間、シュバルツを覆うように発生した炎の輪が、爆ぜた。咄嗟に私を庇ったグソクムシャと、突撃していたメガライボルトが大きく吹き飛ばされる。ただの一撃で、グソクムシャとライボルトは戦闘不能になってしまった。だらんと崩れ落ちるグソクムシャの下から這い出しながら、その威力に愕然となる。いくらなんでも強すぎる。

 

 

「怒りで冷静さを失った結果が、いらぬポケモンの重傷(けが)だ。言っただろう、ジムリーダー。叩き潰してもよいのだと」

 

 

 つまり、あの強さのモコウさんを優に倒せる実力があるぞと、そう言いたいわけか。だけどまだだ、私はまだ、あの時の様に負けてはいない…!

 

 

「ヘラクロス、メガシンカ!」

 

「ゴルバット、エアカッター」

 

 

 ヘラクロスを出してメガシンカした途端、襲いかかる幾千もの風の刃。メガシンカ中を狙って放たれたそれは瞬く間にヘラクロスを戦闘不能にしたどころか、私の髪を斬り裂き観客席の壁にまで切り傷を刻んだ。見れば、モコウさんの繰り出したパルスワンとストリンダー、エレキブルもモコウさんとサタリアを庇ったのか大きな切り傷を負って倒れていた。今の一撃で、ジムリーダーのポケモンが全滅…相性不利なのに、なんでこんなにも……

 

 

「うん?見覚えがあると思えば以前救済した女か。懲りずに挑むか、身の程を知ることだな。さて、我らが決して遊び半分の組織ではないとこれで愚民どもに証明できたかな?我々は本気でポケモン救済を目指している。痛い目を見たくなければ、ポケモンを解放することだ。ではそろそろお暇させてもらうとしよう。あやしいひかり」

 

 

 そしてゴルバットからスタジアム全体を包み込む光が放たれ、目を開けるとそこにプラズマ団の姿はなかった。私はまた、敵わなかった……




ポケスペの悪党の幹部モチーフなシュバルツ。そりゃあ強いよね。

・ダフネ
念願のシュバルツと再戦できたが手も足も出なかった主人公。残りのポケモンを繰り出すことすら臆してしまった。

・ジュリ
抜け目がない転移者。不意打ちはできたけど、想定外な実力のシュバルツに驚く。

・ヨハル
ヴァイスではなかったためしたっぱを担当。ボコボコにしたが逃げられてしまった。

・モコウ
サタリアを人質に取られレジエレキを渡してしまったジムリーダー。サタリアとのバトルでメンタルは回復したものの、シュバルツに手も足も出ず敗北したところを大衆に見られてしまう。

・サタリア
再戦しに来たらモコウが泣いて、オロオロしつつも戦って普通に負けたチャレンジャー。手持ちが全滅したところを付け込まれて人質にされてしまい自分を責めた。

・シュバルツ
前日に確認して作戦を決めて、ダフネたち三人娘は普通に勝ち抜いたためサタリアを人質に襲撃したプラズマ団の幹部。自身の実力に絶対的な自信を持ち、伝説相手でも立ち回れると確信していたがムツキ相手はしたっぱたちまで守りきれず失ってしまい、それを反省して人質作戦に移行した。

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VSアブリー

またまたギリギリィ!どうも、放仮ごです。どうやら五月病にかかってしまった様子で昼間まったくやる気が起きませんでした。締切(?)ギリギリでやる気出す漫画家みたいなことやってます。

今回はバトル無し。また落ち込んでしまったダフネ回。楽しんでいただけると幸いです。


 あれから一日経って。ポケモン研究所襲撃事件以来の大事件となったプラズマ団の起こした襲撃事件のニュースは瞬く間にガラル中に広がった。特に、メジャークラスのジムリーダーがプラズマ団の幹部に手も足も出ず敗北したことが世論を呼んだ。恐らく、シュバルツの狙いはレジエレキの他にも、自分たちはジムリーダー相手でも負けないことのアピールだったのだろう。それは見事に成功し、ダンデさんの責任問題が追及されるなどといった放送がスマホロトムのテレビで流れるのを聞きながら、私は無気力にラテラルタウンの路地裏でテントに引き籠もっていた。

 

 

「ダフネ。落ち着いた?」

 

「…駄目みたいだね」

 

 

 外からジュリさんとヨハルの声が聞こえてくるが、出る気にはなれない。前回敗北してからヨロイ島で鍛えて、メガシンカを得て、ラウラさん達ジムリーダーに勝利して、ジュリさんやヤユイといった競い合える友人と出会えて、強くなったはずなのに。何一つ通用しなかった。テレビによると既にモコウさんは立ち直ってジム営業を再開させたらしい。批判殺到しているだろうに強い人だ。そんなことを寝袋に包まりながらボケーっと考える。

 

 

「…兄さん、大丈夫かなあ」

 

 

 思いっきり身バレしている状態でプラズマ団の幹部を倒すべく乱入して惨めに敗北した挙句、ポケモンが奪われていたという事実まで大衆の面前で露見されたのだ。私も傷心状態で遠慮なくマスコミに群がれて、ジュリさんとヨハルに助けられてここまで逃げてきたのだ。実家にマスコミが来ていることは想像に難くない。

 

 

「ヘラクロス…ごめんなさい…」

 

 

 ポケモンセンターで回復したとはいえ、自身の強さに自信を持っていたプライドをズタズタに引き裂き、心身ともに追い詰められボールの中で背中を向けて落ち込んでいるヘラクロスに誠心誠意謝る事しか出来ない。ロックブラストで対抗しようとしていたとはいえ、シュバルツのゴルバットの強さは分かっているのに怒りでメガシンカを優先した私の落ち度なのだ。グソクムシャも気にしているのか何か言いたげにこちらを睨んでいた。己のポケモン達に顔向けもできない。本当に駄目なトレーナーだ…

 

 

「ハア……うん?」

 

 

そう落ち込んでいると、外から騒がしい声が聞こえてきた。

 

 

「ちょっと落ち着いて…」

 

「あーもう、じゃあかしい!」

 

 

 次の瞬間、扉を蹴り破って来たかと思えば両手を突っ込んで私を寝袋から引き摺り出す様にして外に引っこ抜いてきた。目を丸くして見上げれば、ぜーはーぜーはーと荒い息を吐いているジュリさんがいた。焚火の明かりで顔が陰になっていて怖い。いつものぽやんとしている様子からは考えられない姿だ。

 

 

「な、なんですか…?」

 

「なんですかじゃありません!人一人引っこ抜くのにどれだけ疲れるかわかってるのかな!?落ち込んでいる暇があるなら立ちなさい!私はね、一回挫折したからって逃避するお兄ちゃんみたいな人間が大嫌いなの!」

 

 

 怒髪天と言った勢いでがなるジュリさんのらしくない姿に臆してしまう。ラウラさんって逃避したことあるんですか…?でもそんなことよりも、放っておいてほしい。

 

 

「お願いですから落ち込ませてくださいよ…この数週間の努力がまるで通じなかったんですよ…?そりゃあ無気力にもなります…身の程も知らずに挑んで返り討ちにされて、ポケモン達にいらぬ重傷を負わせた愚か者なんです、私は…」

 

「ヨハルみたいに失ったわけじゃないでしょ!まだ、生きてる!あの攻撃は間違いなく殺しに来ていた。なのにジムリーダーのモコウさんはともかく、ダフネのポケモンは生き抜いたんだよ?たしかに強くなってるんだよ、間違いなく!ただ単に実力が足りなくて負けただけ!一回や二回自分の信じた強さが通用しなかったぐらいで諦めるな!」

 

 

 実際に二回ほど負けてこのザマなのだが。そう言ったらジュリさんは怒るだろうか。怒るだろうなあ。

 

 

「駄目なんです、あの絶対的な力に、私は勝てないと、勝てるわけがないと臆してしまって、戦うことを諦めてしまった。まだ、アブリーたちはやる気だったのに。私はまだ、戦えたのに。レジエレキを取り返せたかも知れなかったのに…私の心が、シュバルツに負けてしまったんです。そんな自分があまりにも無様で、悔しくてたまらない……」

 

 

 あの場でイオルブを出していれば、既に禁じているけどトレーナーへのさいみんじゅつでシュバルツを取り押さえられていただろうし、アブリーならしびれごなで、クワガノンならほうでんで、何とでもできたはず。なのに私は、臆してしまった。

 

 

「悔しい、だけどそれ以上に怖い。身近にヨハルという当事者がいるから、その話を聞いてしまったから。あのまま戦っていたら、死なせてしまうんじゃないかって」

 

 

 ああ、最低だ。せっかくできた友人を理由にしてしまった。体育座りして落ち込むと、頭に軽い衝撃。涙目で頭を擦り見上げれば、ジュリさんではなくヨハルだった。

 

 

「ねえ。アーマルドを…貴方の子供の頃から一緒に過ごしたポケモンが、奪われたんだよね?クワガノンも。あのシュバルツに」

 

「え、ええ…」

 

「アーマルドを諦めるの?」

 

「っ」

 

 

 真剣な声色で告げられた言葉が心に刺さる。それは…忘れていたわけじゃない。ただ、考えないようにしていた。

 

 

「今もアーマルドはダフネと再会するために頑張っているかもしれないのに、そのダフネが諦めるの?」

 

「そ、そんなこと…でも怖いんです、怖いんですよ…!」

 

「怖いのは分かるよ。私も、ヴァイスにまたルガルガン達を殺されるかもしれないって恐怖を持っているからわかる。だけど、だけどね。それ以上に許せないの。ポケモンの命を、私の大事な友達の命を奪っておいて、悪びれもせずに笑っていたあの女が許せないの。ダフネは違うの?」

 

「…私は」

 

 

 許せるはずがない。家族も同然と言えるクワガノンとアーマルドを奪われて、許せるわけがない。でも、弱い私じゃ今度は失ってしまうかもしれない…そう頭を抱えていると、ヨハルの雰囲気が変わった。ヤユイになったらしい。

 

 

「怖いよね。許せないよね。だから強くなるの、最強を目指すんだ。もう誰も奪われない強さが欲しいから。ねえ、お姉さん。一緒に強くなろうよ。友達なんでしょ、ヨハルも私も。ジュリも。一人じゃないならいくらでも強くなれるはずだよ。あの時、1人でシュバルツに立ち向かったけど…私達にも頼ればよかったんだよ」

 

 

 それは…そうだ。したっぱを蹴散らして、三人がかりで挑めば、勝てていたかもしれない。だけど、あの時考えていたのは…怒りの他に、恐怖があった。私の時みたいに二人のポケモンが奪われたらっていう恐怖が。だからしたっぱを二人に押し付けて、1人で挑んで…返り討ちにされたんだ。

 

 

「でも、でも…私の問題に貴方達を巻き込むわけには…」

 

「私とヨハルはヴァイスと決着を付けないとだから、もう巻き込まれてるよ」

 

「なーに今更言ってるの。前に言ったでしょ、プラズマ団相手だろうが手伝うって」

 

 

 そう言う呆れ顔のヤユイとジュリさん。…ああ、この友人たちは私と一緒に戦うつもりだったんだ。それを無視して一人で突っ走っていたのは、私か。

 

 

「相手の強さは分かった。ならそれをあっさり越えるぐらいに強くなればいい。知らないの?お兄ちゃんが言っていたけど、蟲って成長が早いんだよ?あんなやつの強さなんて頑張ればすぐに超えるよ」

 

 

 そうジュリさんが笑いながら言うと、私の腰に付けられたボールから次々と出てきて私を取り囲む私のポケモン達。ふんすっと鼻息(?)荒く羽ばたくアブリー、腕を掲げて頷くグソクムシャ、ふわふわ浮かんで体全体で頷くイオルブ、顎を激しく開閉させてやる気を見せるクワガノン、そして……ガッツポーズをして不敵な笑みを浮かべるヘラクロス。……ああ、落ち込んでいてポケモン達のことも見ていなかったんだな、私。

 

 

「…はい、やってやりますよ!私はシュバルツを絶対に許しません!奴を倒すために…みんな、力を貸してください!」

 

「そう来なくっちゃね」

 

「私が強くなるためにも手伝ってもらうんだからね。……ヤユイは素直じゃないなあ」

 

 

 ラテラルタウンの路地裏で、目標新たに三人で拳を掲げ、五匹のポケモンが唸りを上げる。この恐怖にも打ち勝って、次こそは必ず勝利して見せる!




こういう心理描写回は毎度のこと難しい。

・ダフネ
圧倒的な実力差の敗北で鬱になってた主人公。友人二人とポケモン達の心意気を見て奮起する。だがしかし恐怖はそう簡単にぬぐえない。

・ジュリ
うじうじするダフネに生前の兄を思い出してブチ切れたダフネの親友。キレたら別人の様になる。シュバルツの攻撃は明らかに殺す気満々だと察した。

・ヨハル/ヤユイ
ポケモンを失うかもしれない恐怖を誰よりも分かっている二重人格。落ち込むダフネを放っておけないぐらいに友情を感じている。

多分次は掲示板回。もういらない言ってる人もいるけど望んでいる人多数みたいなので書きまっせ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板9

どうも、放仮ごです。今回は割とすらすら書けましたがやる気が出ないのは相変わらず。何か着火剤が欲しい所。

今回はモコウ戦~シュバルツ襲撃までを纏めた掲示板です。相変わらず脱線しまくり掲示板民。楽しんでいただけると幸いです。


プラズマ団について語るスレ

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

シュバルツ普通にやばくね?

 

65:名無しのトレーナー

モコウって一応ジムリーダーの中でも三番目に強いはずだもんな

 

66:名無しのトレーナー

人質を取られて勝てなかったのならともかく実力でねじ伏せられたんだもんなあ

 

67:名無しのトレーナー

しかも普通に強いはずのダフネ選手のポケモンまで一緒に蹴散らしていたからな

 

68:名無しのトレーナー

一番ヤバいのは相性悪いはずのエアカッターででんきポケモン三体を一撃で戦闘不能にしたことなんだよなあ

 

69:名無しのトレーナー

シュバルツって同じ幹部のヴァイスと同じで有名なやつなん?

 

70:名無しのトレーナー

シュバルツって名前の凄腕トレーナーは知らないなあ

 

71:名無しのトレーナー

ありゃジムリーダー以上の、四天王と言われても納得できる強さだったぞ

 

72:名無しのトレーナー

あれより強いと思われるプラズマ団のボス、グレイ様とか言ってたけど何者だ…?

 

73:名無しのトレーナー

まあ、言うて前のプラズマ団の王様のNもチャンピオンのアデク倒すぐらい強かったしな

 

74:名無しのトレーナー

あの場のプラズマ団に挑んでいた三人のチャレンジャーも普通に強いんだけどな

 

75:名無しのトレーナー

ダフネとジュリとヨハルだろ?

 

76:名無しのトレーナー

その日の直前までの試合で三連続でモコウを倒したやべーやつらだぞ

 

77:名無しのトレーナー

観客席に一緒に座ってたところから友人らしいな

 

78:名無しのトレーナー

三人一緒に旅している姿も確認されてるぞ

 

79:名無しのトレーナー

キョダイイオルブとメガヘラクロスを使いこなすダフネ、ピーキーでマイナーなヌケニンを使いこなしてジムリーダーを詰ませる前代未聞の勝利方法だったジュリ、圧倒的過ぎてジムリーダーが相手にならないヨハル

 

80:名無しのトレーナー

改めて並べられるとやべーな

 

81:名無しのトレーナー

俺、ヌケニンとか初めて見たぞ…

 

82:名無しのトレーナー

一応ガラル本土のポケモンなんだよなあ

 

83:名無しのトレーナー

ホウエンにもいるけどやっぱりマイナーだからな

 

84:名無しのトレーナー

ヌケニンってどんなポケモンなん?

 

85:名無しのトレーナー

体力の数値が1とかいう唯一無二のポケモンぞ

 

86:名無しのトレーナー

は?

 

87:名無しのトレーナー

体力がめっちゃあるとかじゃなくて!?

 

88:名無しのトレーナー

ジュリが最後に言ってたけどふしぎなまもりとかいうチート特性があるからな

 

89:名無しのトレーナー

ツチニンから進化するポケモンなんだけど、進化する時に手持ちに空きがあったらいつの間にか現れるっていうホラーなポケモンぞ

 

90:名無しのトレーナー

ヒエッ

 

91:名無しのトレーナー

ラウラ辺りからもらったんかね

 

92:名無しのトレーナー

いやでもあんなクソつよポケモン、ラウラが使わないわけないと思うんだけどなあ

 

93:名無しのトレーナー

バトルスタイルが合わなかったんじゃね

 

94:名無しのトレーナー

ふしぎなまもり、不利な技はまもればいいと考えると実質無敵なポケモンじゃねーか

 

95:名無しのトレーナー

理解して使いこなせないと単なるお荷物でしかないぞ

 

96:名無しのトレーナー

だからそれを扱えてるジュリがやべーんだわ

 

97:名無しのトレーナー

ヨハルは…なんというか、うん

 

98:名無しのトレーナー

普通に強い

 

99:名無しのトレーナー

普通に強い

 

100:名無しのトレーナー

そうとしか形容できないぐらい普通に強い

 

101:名無しのトレーナー

ダフネみたいにメガシンカやキョダイマックスを使う訳でも、ジュリみたいに番外戦術使ってるわけでもないのに普通に強い

 

102:名無しのトレーナー

ぶっちゃけヨハルが戦ってればシュバルツに勝ってたんじゃね疑惑もある

 

103:名無しのトレーナー

映像によるとダフネにシュバルツを任せてジュリと一緒にしたっぱを蹴散らしてたみたいだけど…

 

104:名無しのトレーナー

なんで任せたんだ?ってのは愚問か

 

105:名無しのトレーナー

ダフネ選手、シュバルツにポケモンを奪われてたらしいな

 

106:名無しのトレーナー

そりゃダフネも許せないし、友人なら知ってただろうから任せるわな

 

107:名無しのトレーナー

メガシンカした瞬間に倒されるとは思わなんだ

 

108:名無しのトレーナー

しかもついでにモコウの手持ちを全滅させてるからな…

 

109:名無しのトレーナー

あれから今更ポケモン研究所襲撃事件の詳細も明かされたけど、あれもシュバルツが襲撃していたんだってな

 

110:名無しのトレーナー

二ヶ月ちょい前のあの事件か

 

111:名無しのトレーナー

シュバルツが表に出たのがその時ならダフネもその時に…?

 

112:名無しのトレーナー

マスゴミがインタビューしてたみたいだけどそこはまだ明かされてないな

 

113:名無しのトレーナー

傷心のトレーナーを質問攻めで追い詰めるマスゴミのひどさよ

 

114:名無しのトレーナー

そりゃ大スクープだし俺らも知りたいけどさあ…

 

115:名無しのトレーナー

トレーナーへの配慮がまるでない

 

116:名無しのトレーナー

ヨハルの例の事件の時も同じことしていた疑惑あるからな

 

117:名無しのトレーナー

ヨハルがマスゴミを仇を見るような目で押しのけていたから、アレは相当怨み籠ってるな

 

118:名無しのトレーナー

ちなみに警察は普通に事情聴取したらしいぞ

 

119:名無しのトレーナー

マスゴミより血も涙も無くて草

 

120:名無しのトレーナー

さすがに警察も本腰入れないといけなくなったんだろうなあ

 

121:名無しのトレーナー

5番道路のヴァイスにやられたサイトウの代わりに配備された警官もやられてたらしいからな

 

122:名無しのトレーナー

警官ぇ…

 

123:名無しのトレーナー

警察仕事しろ

 

124:名無しのトレーナー

しっかし世間はダンデへの批判が集まってるけどさ、よくやってる方だと思うんだ

 

125:名無しのトレーナー

せやな

 

126:名無しのトレーナー

ムツキに撃退されて、各地でしたっぱを取り押さえられてるから今回は人質を取らざるを得なくなったわけだしな

 

127:名無しのトレーナー

優秀すぎたが故に起きた事件だと言えるな

 

128:名無しのトレーナー

まあモコウの持っていたレジエレキは最初から狙われていたっぽいけどな

 

129:名無しのトレーナー

ソニアの研究所の助手のルミが持ってたカンムリ雪原で捕まえたっていう四体も強奪されていたしな

 

130:名無しのトレーナー

目的はやっぱり伝説ポケモンか?ムツキが持ってるガラル三鳥も有名だし

 

131:名無しのトレーナー

伝説ポケモン集めたいなら伝説多いシンオウでも襲えばいいのになんでガラルなんだ?

 

132:名無しのトレーナー

イッシュで活動していたプラズマ団がガラルにわざわざ来たからにはなんか特別な理由があるんだろうけどなあ

 

133:名無しのトレーナー

一般人の俺らが知らない伝説ポケモンでもガラルにはいるのかね

 

134:名無しのトレーナー

ザシアンとザマゼンタやムゲンダイナも俺ら知らなかったんだからまだいてもおかしくないな

 

135:名無しのトレーナー

チャンピオンが時々使ってるバドレックスとかがそうか?

 

136:名無しのトレーナー

あれも伝説ポケモンらしいけど、ならチャンピオンを襲うやろ

 

137:名無しのトレーナー

ビビってるのかチャンピオンの前だけは絶対に姿を現さないプラズマ団やぞ

 

138:名無しのトレーナー

まさかと思うがプラズマ団のボスがチャンピオンにビビっていたりしてな

 

139:名無しのトレーナー

そんなまさか、前の王様はチャンピオンにも勝ってるんだぞ?

 

140:名無しのトレーナー

その王様がまたプラズマ団を再編したかもしれないじゃないか

 

141:名無しのトレーナー

それはたしかに

 

142:名無しのトレーナー

まああんなに伝説ポケモン連れているガラル史上最強のチャンピオンに喧嘩売らないのはわかる

 

143:名無しのトレーナー

馬鹿ではないってことだな

 

144:名無しのトレーナー

人質とっても普通に人質取り返した上で撃退しそうだもんなチャンピオンユウリ

 

145:名無しのトレーナー

映画のヒーローかな?

 

146:名無しのトレーナー

どちらかというとラスボスだぞ

 

147:名無しのトレーナー

 

148:名無しのトレーナー

二年前の黒歴史を引き摺り出してあげるなやw

 

149:名無しのトレーナー

バラエティとかでアレを掘り起こすと若気の至りですって赤面するチャンピオン、プライスレス

 

150:名無しのトレーナー

今でも十分すぎる程若いんだよな

 

151:名無しのトレーナー

まああれぐらいの歳のチャンピオンなんて珍しくもないんだが

 

152:名無しのトレーナー

シロナとかもチャンピオンになった頃は子供だったしな。なお今

 

153:名無しのトレーナー

おっと、ダメナさんの悪口はそこまでだ

 

154:名無しのトレーナー

ダメナさんは草

 

155:名無しのトレーナー

あの人プライベートがアレなだけだから…

 

156:名無しのトレーナー

むしろダメなところがないチャンピオンの方が珍しいぞ

 

157:名無しのトレーナー

ユウリもラウラ狂だしなあ

 

158:名無しのトレーナー

ユウリがラウラガチ勢なのはあまりにも有名な話

 

159:名無しのトレーナー

子供でも知ってる。教育に悪いにも程があろう

 

160:名無しのトレーナー

同性愛もありなんだぞって子供に教えてるだけだから…

 

161:名無しのトレーナー

ええー?ほんとでござるかー?

 

162:名無しのトレーナー

とんでもねえユウリだ

 

163:名無しのトレーナー

ネタが し つ こ い

 

164:名無しのトレーナー

ラウラで思い出したけどさ、ラウラも伝説ポケモン…じゃないけどそれに近いUB持ってなかったか?

 

165:名無しのトレーナー

ユウリとの公式試合でだけ出すフェローチェ、マッシブーン、ゲノセクトな

 

166:名無しのトレーナー

ゲノセクトは違くないか?

 

167:名無しのトレーナー

ダンデが公表したUB一覧にはいなかったから多分違うな

 

168:名無しのトレーナー

マッシブーンのパワー特化な戦い方好きだわ

 

169:名無しのトレーナー

フェローチェのスピード重視の戦い方もいいぞ。何より美しい

 

170:名無しのトレーナー

なんでや。マッシブーンも美しいだろ

 

171:名無しのトレーナー

見たまえあの筋肉美!

 

172:名無しのトレーナー

お願いマッスル!めっちゃモテたーい

 

173:名無しのトレーナー

フェローチェの人気は分かるけど妙な人気があるよなマッシブーン

 

174:名無しのトレーナー

技繰り出すたびにポーズをとる姿に愛らしさを覚える人間もいるぐらいだからな

 

175:名無しのトレーナー

何気に人気なのはユウリのウツロイドちゃんもだぞ

 

176:名無しのトレーナー

擬人化ウツロイド…いいよな

 

177:名無しのトレーナー

マッシブーンに一方的に殴り飛ばされるウツロイドちゃん不憫可愛い

 

178:名無しのトレーナー

フェローチェにリフティングされるウツロイドちゃん不憫可愛い

 

179:名無しのトレーナー

メガハッサムに触手を斬られまくってるウツロイド本当に不憫可愛い

 

180:名無しのトレーナー

危険度はUBでもトップクラスなんだよなあ

 

181:名無しのトレーナー

チャンピオンに寄生して操ったやべーやつ

 

182:名無しのトレーナー

一時期ウツロイドの毒を再現した麻薬が横行してたぐらいだからな

 

183:名無しのトレーナー

あれが大群で現れなかっただけ幸運だったんだよな…

 

184:名無しのトレーナー

お前らは二年前のナックルシティにいなかったからそう言えるんや…

 

185:名無しのトレーナー

なんだったっけ、アクジキング?

 

186:名無しのトレーナー

街の大半を喰らい尽くさんとしたやべーやつ

 

187:名無しのトレーナー

キバナが居なかったらナックルシティ滅んでいたまである

 

188:名無しのトレーナー

アクジキングとか悪用されたらマジでやばそうだな

 

189:名無しのトレーナー

まあ国際警察に保護されたらしいからプラズマ団に強奪される心配はないがな

 

190:名無しのトレーナー

仮にウツロイドを奪われたらやばくね?

 

191:名無しのトレーナー

チャンピオンが常にボールを身に着けているから大丈夫でしょ

 

192:名無しのトレーナー

プラズマ団の狙いが伝説やUBだとしたら次狙われるのはラウラかそれともまたムツキか…

 

193:名無しのトレーナー

ラウラはもう狙われていて人知れずに撃退してそう

 

194:名無しのトレーナー

幹部相手でも勝てそうなの本当に草なんだよなあ

 

195:名無しのトレーナー

いやさすがにあのゴルバットとランプラーには勝てんじゃろ…

 

196:名無しのトレーナー

ネットでもポケモンを手放したって言ってる奴が大量にいるぐらいのインパクトだからな…

 

197:名無しのトレーナー

ここに書き込んでいる奴にそんな薄情者いないよな!

 

198:名無しのトレーナー

 

199:名無しのトレーナー

 

200:名無しのトレーナー

無言で上げてるんじゃねえぞお前ら

 

 

 

・・・・・・・・・




明かして無かった世間の話も明かしていくスタイル。アクジキングVSキバナは正直見たいカードである。実はずっと何かしら本編のフラグを織り交ぜている掲示板。最初期に仕込んだ最大のフラグ(違和感)に気付けた人はいるのかどうか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSニドキング

どうも、放仮ごです。感想欄で色々気付かれて嬉しい今日この頃。ちょっとやる気でた。そのせいか今回はいつもよりちょっと長くなりました。

今回はルミナスメイズの森での戦い。楽しんでいただけると幸いです。


 なんとか立ち直った私はジュリさんとヨハルと共に、しつこいマスコミを避けて夜を狙ってルミナスメイズの森に入ることにした。ただでさえ暗いと噂されている森だが、光るキノコがあるのであまり問題にならないとはジュリさんの談。ガラルに引っ越してきたと言ってたのになんで詳しいのか、と問うたらいつもの冷や汗ダラダラ顔で「観光ガイドで…」と言ってたのでとりあえず信じることにする。

 

 

「しかし、こうも暗いとポケモンに襲われてもわからないかもですね」

 

 

 狭い木々に影響されないアブリーを連れている私が真ん中を歩く。こんな暗い森の中では一纏めに固まらないと危険だ。

 

 

「一応プルリル出して警戒させてるから大丈夫だと思うけどね」

 

「私のブラッキーも夜目が効くから警戒させとくね」

 

 

 側に青く淡く輝くプルリルを侍らせるジュリさんが前を行き、目を赤く光らせるブラッキーを連れたヨハルが最後尾を歩く。悪戯好きで温厚なフェアリーポケモンの巣窟だと有名な森だが、危険がないわけではない。また、プラズマ団の影響で解放された強力なポケモンがいるかもしれない。この暗さならプラズマ団が紛れていても気付かない可能性もある。暗闇の中で襲われてはひとたまりもない。

 

 

「まあできれば強くなるために戦いたいんですけどね」

 

「それはそうだね。経験は大事」

 

「野生ポケモン相手にして強くなれるかは微妙だけどね」

 

「ん?」

 

 

 雑談しながら先に進んでると、地響きが聞こえてきて自然に三人揃って警戒する。この森に地響きを起こせるような大型ポケモンはいなかったはず……そこから導き出せる答えは二つ。トレーナーに捨てられたポケモンか、もしくは……

 

 

「ガラガラ!シャドーボーン!」

 

「どくづきだオラア!」

 

 

 イエッサンやベロバーたちが草むらから飛び出して逃げてきたかと思えば、青白い炎が木々の中で輝き少年の声が響き渡る。飛び出してきたのは、私の知るものとは何かが違うガラガラを連れた、仮面を被った少年だった。その顔を見て驚くジュリさん。

 

 

「オニオンくん!?」

 

「オニオンって、マイナージムリーダーの!?」

 

 

 オニオンさんがこのルミナスメイズの森担当のジムリーダーだったのか。でも何と戦って…?そう、オニオンさんが飛びしてきた方を見やると、キノコの光に照らされる紫色の巨体と闇夜でも輝くPのシンボルが見えた。オニオンさんは私達に気付くと庇うように前に出る。

 

 

「一般のトレーナー、ですか?ここは危ないのですぐに逃げて……」

 

「オラア!どうした!その程度かジムリーダー!やっぱり子供かあ?」

 

 

 姿を現したのは、ニドキングとその背に乗った大柄なプラズマ団のしたっぱ。やっぱり、プラズマ団が潜んでいた!?言動からして子供のオニオンさんなら勝てると踏んで襲いかかったのか?

 

 

「お?そこにいるのはシュバルツ様に瞬殺されていた雑魚トレーナーじゃねえか!いい機会だ、お前らもポケモン置いてけゴラァ!」

 

「断ります!アブリー、しびれごな!」

 

「置いてくのはそっちだ!プルリル、みずのはどう!」

 

「覚悟しろ。ブラッキー、イカサマ!」

 

 

 劣勢気味のオニオンさんに加勢すべく、私とジュリさん、ヤユイに変わったヨハルのポケモン達が一斉に襲いかかる。しかしそのすべてを受け止め、麻痺すらものともせずに蹴散らすニドキング。

 

 

「こいつは前期のセミファイナルトーナメント二位から奪ったポケモンだ!その程度効くかよォ!だいちのちから!」

 

 

 足踏みして大地から熱線を放ち私達を吹き飛ばすニドキング。前期のセミファイナルトーナメント二位といえば、たしかエリートトレーナーだ。この強さも頷ける。というかよく見たらまひをラムのみで回復させている…?厄介極まりない。ニドキングの背にいるプラズマ団は勝ち誇った顔で見下してくる。

 

 

「ほらほら!主人の元に戻りたかったらこいつらを潰せニドキング!」

 

「アブリー!?」

 

「ブラッキー!」

 

 

 ニドキングの両手で叩き潰されるアブリーとブラッキーにヤユイと共に悲鳴に近い声を上げてしまう。バシバシ叩いて扇動するプラズマ団のしたっぱを睨み付けることしかできず、怒りが募る。こいつ、ニドキングの主人への想いを利用して使い潰すつもりか、外道め……!

 

 

「アブリー、戻って!グソクムシャ!であいがしら!」

 

「プルリル、じこさいせいからのみずのはどう!」

 

「交代、マニューラ!れいとうパンチ!」

 

「ガラガラ、ボーンラッシュ!」

 

「んなもん、蹴散らしてしまえ!メガホーンだ!」

 

 

 とにかく大人しくさせようと、交代しつつ四人がかりで総攻撃を仕掛けるも、角を光らせた頭部を一振りするだけで技は薙ぎ払われ、掻き消されてしまう。駄目だ、強すぎる。それに私達を倒そうと必死だ。したっぱの言うことを信じるしかないのだろう。言うことを聞くしかないのだろう。あまりにもあんまりじゃないか。

 

 

「グソクムシャとプルリルがうざってえなあ!かみなりパンチだ!」

 

「ダイビングで逃げ…!?」

 

「みちづ…速い!?」

 

 

 ダイビングもみちづれする間もない速度でグソクムシャとプルリルが拳の一振りで戦闘不能にされ、ガラガラとマニューラも顔面を鷲掴みにされ持ち上げられ、地面に叩きつけられて戦闘不能にされてしまう。初めてだ、実際に戦ってもいないのにメガヘラクロスでも敵わないと思わされてしまう相手は…。

 

 

「さすがはジムリーダー8人を乗り越えたトレーナーのポケモンと言うべきでしょうか…!」

 

「強いし速いし隙がない。あんなしたっぱにはもったいないポケモンだね」

 

「ハッハッハ!そりゃあそうさ!こいつはヴァイス様自ら強奪した挙句に調教までして俺らに従うようにしたポケモンだ!ジムを6つも超えてきた餓鬼共を叩き潰せるようにってなあ!」

 

「ヴァイスの…!」

 

 

 その名を聞いて明らかに冷静さを失い怒りのままにルガルガンを繰り出すヤユイ。私とジュリさんは止めようとするが、それを手で制したのはオニオンさんだった。

 

 

「あなたたちは下がっていてください。…いくよ、ゲンガー。メガシンカ…!」

 

 

 そう言ってゲンガーを繰り出しその袖に隠れていたキーストーンのはめられた黒い腕輪…メガリングのキーストーンを輝かせてゲンガーに持たせているのであろうメガストーンを輝かせてメガシンカ。第三の目が現れ、頭の角や両腕と尻尾が大型化、非常に鋭角的でワイルドな姿のメガゲンガーに変貌させた。

 

 

「特性はふゆうからかげふみへ…逃げられない……逃がさない……!」

 

「逃げるつもりはねえよ!だいちのちからだ!」

 

 

 したっぱに言われるまま、その場で足踏みしてメガゲンガーの足元の地面から熱線を放つニドキング。するとメガゲンガーは跳躍して回避、木を足場に踏み込むとニドキングをアッパーカットで殴りつけ、上空に舞い上がった。

 

 

「シャドーボール!」

 

「どくづきで蹴散らせ!」

 

 

 複数放たれた高威力のシャドーボールを毒を纏った両手の貫手で穿ち、霧散させるニドキング。メガシンカポケモンとも張り合えるなんて…!?

 

 

「隙ありだぜジムリーダー。メガホーン!」

 

「しまっ…」

 

 

 地に足を付いた一瞬の隙を突き、角を光らせ突進を繰り出すニドキング。それを受け止めたのは、ジュリさんが咄嗟に繰り出したポケモンだった。

 

 

「なん…だあ……!?」

 

「私のヌケニンに、そっちの技は何一つ通じない!」

 

「はっ!しゃらくせえ!かみなりパンチだ!」

 

「隙あり!ルガルガン、カウンター!」

 

 

 さらに帯電した拳をヌケニンが受け止めた所に、冷静になったヤユイの指示でルガルガンがカウンターの拳で顎を砕かれ、白目をむいて倒れ伏すニドキング。

 

 

「ニドキング!?に、逃げ……逃げれねえ!?」

 

「かげふみだって言ったよね…?闇夜へ(いざな)え……ゲンガー」

 

 

 倒れたニドキングを見捨ててその場から逃げ出そうとするも足が離れなかったしたっぱの腹部に、ドゴッとメガゲンガーの拳が炸裂。気絶させ、拘束するオニオンさんは私達に向き直ると急におどおどし始める。

 

 

「あ、あの…助かりました。あの、ジュリさん、ですよね?ゴースト使いの…」

 

「あ、はいそうです。ゴーストタイプのジムリーダーのオニオンくんに知られているとは…」

 

「あの、それでですね。ジュリさん、もしよろしければこの子と、これをもらっていただけませんか…?」

 

 

 そう言って元の姿に戻ったゲンガーを戻したボールと、取り外したメガリングを渡してくるオニオンさんに目を丸くさせるジュリさん。気持ちは分かる。

 

 

「え、えっと、なんで…?このゲンガーって貴方の切札じゃ…」

 

「えっと、僕の切札のゲンガーとは別の子で……すっごく強い子なんだけど僕じゃ持て余していて…さっきの戦いを見て思ったんです。貴女なら、この子を存分に使いこなしてくれると」

 

 

 見れば、なんか偉そうにうんうん頷くボールの中のゲンガー。愛嬌ありますね。

 

 

「で、でもメガストーンまでもらうわけには…」

 

「いいんです、その子を最大限に使うならこれがないと。気にしないでください」

 

「じゃ、じゃあ…ありがたく、いただきます…」

 

「では僕はこいつを警察に引き渡してニドキングを持ち主に返してあげないとなのでこれで…うん?」

 

 

 その場を去ろうとしたオニオンさんが何かに気付き、ボールを覗く。何かを聞く様にジッと静かに耳を澄ませていたかと思うと、ズズイッとヤユイから戻ったヨハルに突き出してきた。中にはさっきのガラガラ(?)がいた。

 

 

「え?え…?」

 

「どうやら貴方の強さを見て惚れ込んだらしいです。知り合いのキャプテンからもらったポケモンだったのだけど、僕より貴方に使われたいようなので……もらってやってください」

 

「え、えっと……よ、よろしくね…?」

 

 

 どうやらジュリさんとヨハルは新たな仲間を手に入れたらしい。羨ましい限りだが私の六体目は決まっている。…アーマルド、今回のしたっぱは持ってなかったけど…絶対、取り返して見せる。




すっごい無理やりの加入ですが許してください!ジュリにメガゲンガー使わせたくて、ヤユイの最後の手持ちのアローラガラガラ手に入れたくて、そのどっちも条件を達成できるのはオニオンぐらいだったのです…!

・ダフネ
ニドキングにまるで歯が立たなくて歯がゆい主人公。強くなりたいけど手持ちを増やすつもりはない。

・ジュリ
メガゲンガーをメガリングごと手に入れた転移者。割と好きなジムリーダーのオニオンと出会えてテンションが高い。

・ヨハル/ヤユイ
アローラガラガラを手に入れた二重人格。パーティーが完成した。

・オニオン
ルミナスメイズの森担当のゴーストタイプジムリーダー。ジュリがお気に入り。新たに育てたゲンガーと知り合いから譲られたガラガラを託した。

・ニドキング♂
とくせい:とうそうしん
わざ:だいちのちから
   どくづき
   かみなりパンチ
   メガホーン
もちもの:ラムのみ
備考:のうてんきな性格。とてもきちょうめん。前年二位のポケモン。持ち主の元に返りたくて従わざるを得なかった。滅茶苦茶強い。

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VSサーナイト

どうも、放仮ごです。幽霊イベントで一話使うかそうしないかで半日ぐらい悩みましてこうなりました。

今回はVSビート戦。楽しんでいただけると幸いです。


 地味にオニオンさんと別れた後ルミナスメイズの森で迷って一日かけてようやくたどり着いたアラベスクタウンの明かりに安堵する私達。時間的には朝の12時か。昼食時だ、どこかで何か食べたいところだ。一個でもキノコを見逃すと本当に道が分からなくなったので困った困った。

 

 

「ようやくつきましたねアラベスクタウン…ヨハル、大丈夫ですか?」

 

「なんとか…ベロバーにスカート引っ張られまくった時はどうしようかと…」

 

「なんでヨハルばっかり狙われたんだろうね…ヤユイが怒り狂ってベロバーを蹴り飛ばした時はどうしたものかと」

 

 

 そうなのだ。何故か闇夜に紛れてヨハルばっかり狙われてイタズラされまくるという珍事が起きて一悶着が起きた。それはもうヤユイが怒り狂ってベロバーを蹴り飛ばした挙句に「試運転だ!」とガラガラで周りのポケモンを一匹残らず戦闘不能にしようとしたのを、森が燃えそうだったのでジュリさんと二人で必死に止めたのだ。ドッと疲れた(迫真)

 

 

「じゃあ私は用事があるからここで。14時ぐらいにジム前で集合でいい?」

 

「え、ジュリさん一緒に昼食いただかないんですか?」

 

「私はほら、これ渡さないといけないから」

 

 

 そう言ってジュリさんが鞄から取り出したのは古びた手紙。そうだ、ヨハルと出会ったきっかけの幽霊の手紙。アラベスクタウンに運ぶというのをすっかり忘れてた。

 

 

「えっと…付き合いますよ?」

 

「いや、三人でぞろぞろ尋ねるのも迷惑かなって。私はフレンドリーショップで何か軽食買って食べるから、二人は遠慮なくどこかで食べてきなよ」

 

「どこかわかってるの?」

 

「名前はわかってるから、まあ交番にでも聞いて捜すよ(ある程度場所は分かってるし、とは言えないよね)」

 

「一応気を付けてくださいね!」

 

 

 後ろ手を振って去って行くジュリさんに一声呼びかけ、私はヨハルと共にどこか食事をできる場所を探して歩くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間後。どこかしんみりした顔のジュリさんと合流した私達はジュリさんに何を尋ねることもなく、ジムを目指す。二年前に前ジムリーダーのポプラさんからジムリーダーを継いで以降、万年二位の座を保守しているエリートを名乗る少年、ビートさんがジムリーダーをしているジムだ。正直フェアリータイプは苦手にも程があるが、何とか勝って、強くならねば…!

 

 

「さて、今回は誰から行く?」

 

「今回は初見だから最初の人は何も情報なくてだいぶ不利になりますからね…」

 

「私は最後がいいかな。ヤユイが作戦立てれるようにしないとだから…」

 

「で、では私が…」

 

「いや。今回は私が一番手で行くよ」

 

 

 受付の前で三人で話し合い埒が明かなそうだったので私が進み出ようとすると、それを制して満面の笑みを浮かべたジュリさんが前に出た。

 

 

「フェアリー使いでしょ?どくタイプがあるゲンガーが入ったうちのメンバーなら勝負になるはずだよ」

 

「え、でも…いいんですか?」

 

「初見だったムツキとモコウと違ってビートが戦ってる姿は見たことあるし、あとちょっとしんみりした空気から吹っ切れたいからね」

 

 

 そう笑うジュリさんを尊重し、今回はジュリさん→私→ヤユイということになった。正直助かりますが、大丈夫だろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回のジムはどうやらジムミッションは未公開らしく、そんなに時間をかけずにジュリさんが出てきた。若干疲れているように見えるのは気のせいじゃなさそうだ。どんなジムミッションだったんだろう?

 

 

「ようこそいらっしゃいました。あれを全問正解とは、さすがは同じ顔だと言うべきでしょうか」

 

「いやまあ、少し前まで一緒に住んでたもんで……」

 

「さて、お遊びはここまでです。エリートである僕が魅せるピンクのショータイム、見せてやりましょうとも!」

 

 

 ジュリさんが初手に繰り出したのはゴビット。ビートさんが繰り出したのはクチート。相性的にはジュリさんが有利だ。

 

 

「僕はエリートですので!有力なチャレンジャーの情報は入手済み!貴方がゴーストタイプ使いだというのも把握済み!故に洗礼を浴びせましょう、かみくだく!」

 

「その場でばくれつパンチ!」

 

 

 ゴビットの振りかぶった拳を、紙一重で立ち止まり回避。空ぶってグラついたゴビットのボディにその巨大な顎を開いて噛み付くクチート。しかし不敵に笑むジュリさん。ここまではいつも通りのペースだ。

 

 

「じだんだ!」

 

「クチート!顎を軸に自らを持ち上げなさい!」

 

「なっ!?」

 

 

 ゴビット必殺のじだんだを、その小柄な体を顎の力のみで持ち上げて地響きを回避するクチートに目を丸くするジュリさん。そんな躱し方が…!?

 

 

「貴方の得意戦法はしかと勉強させてもらいました。定石で勝てると思わない事です」

 

「振りほどいて!」

 

「無駄ですよ!かみくだいていますからね!」

 

 

 身を震わせて引き剥がそうとするゴビットだが、噛み砕いたことで歯が突き刺さったクチートは全く離れず、振り回されながらキシシと可愛く笑う。体勢を変えて地面に押し付けようとしても、器用に体を上方に移動させて地に触れることさえ叶わない。

 

 

「なら、零距離なのを呪え!ばくれつパンチ!」

 

「あなたたちの実力……今のでほぼほぼ理解しましたよ。うそなき!からのじゃれつくです!」

 

 

 くっ付いているから必中である拳を炸裂させようとするゴビットだが、涙を見せるクチートに一瞬止まってしまい、そこにボコスカ短い両手で殴られてしまった。それでもばくれつパンチを振るうゴビットだが、やはり器用に体をずらされて避けられる。得意な接近戦のはずなのに追い詰められてるなんて…!?

 

 

「それと、ご存知でしょうか?クチートはこう見えて怪力なのだと!」

 

「っ…ゴビット!右後方からシャドーパンチ!」

 

 

 クチートの死角から幻影の拳を飛ばして殴りつけるが、クチートは物ともせず着地したかと思うとそのままゴビットを咥えたまま顎を持ち上げ、手足をジタバタさせて為すがままのゴビットを空中に投げ飛ばした。あの重量のゴビットを空中に投げるなんてなんて怪力なのだろうか。

 

 

「くっそ、いかくで攻撃力が下がってシャドーパンチが効かなかったのか…!しかもクチートより鈍い(・・・)から手も足も出ないし!」

 

「反省は後からした方がよろしいですよ?とどめです、アイアンヘッド」

 

 

 そして落ちてきたところに硬質化した顎を振り抜いて一撃。落下の勢いも伴い大ダメージを受けたゴビットはそのまま崩れ落ちた。あのゴビットが一方的に……あれ、なんか違和感。ジュリさんがなにもせずに倒されるなんて、おかしくないか?

 

 

「おつかれゴビット。こんなに早く出す予定じゃなかったけどしょうがないか…行くよ、ゲンガー!」

 

 

 恐らく本当ならダダリンを出したいのだろうがクチートがはがねタイプだから出せないのだろう。あと一匹は分からないが、ヌケニンなんかはビートさんの言い分からばれていそうだから、新メンバーのゲンガーでかき乱そうってことだろうか。そして隠すことなく右手首に装着しているメガリングに手をかざすジュリさん。

 

 

「情報にないポケモン…そしてそのリングは…?なるほど、そう来ましたか」

 

夢幻闇夜(むげんあんや)(いざな)え!メガシンカ!」

 

 

 そしてX字に交差する様に大きく腕を動かして笑顔で両手を広げる謎のポーズを決めると、ゲンガーをメガゲンガーに変身させて構えた。いつもよりご機嫌ですねジュリさん。

 

 

「…今の、アローラ地方のZワザのポーズじゃないです?」

 

「あ、さすが博識だね。でもこれが試運転なんだ。ひとっ走り付き合えよってね!距離を取りながらシャドーボール!」

 

「クチート、アイアンヘッドで蹴散らしながら近づいてかみくだくです!」

 

 

 指示に従って素早い動きで距離を取り、シャドーボールを乱射するメガゲンガーと、硬質化した顎で弾きながら接近するクチート。見る見るその距離を縮め、その顎でかみくだかんと迫るが、その瞬間胸を押さえて動きが止まってしまう。

 

 

「なっ…!?」

 

「のろいがようやく効いてきた!零距離からシャドーボール!」

 

 

 そしてシャドーボールを纏った拳を顔面から受けて崩れ落ちるクチート。…さっきの「鈍い」か!あれで指示していたのか、なんて悪知恵か。

 

 

「フフッ、フフフッ、クチートで全員叩き潰そうという僕の目論見を潰すとはやりますね…ではこちらも、相応の力でお相手しましょう。サーナイト」

 

 

 不敵に笑いながらビートさんが次に繰り出したのはサーナイト。だがしかし、それだけでなくその右手にはキーストーンが埋め込まれたバングル…メガバングルが装着されていて。右手を前方に掲げるとキーストーンの輝きがサーナイトの右拳の中から溢れる光と繋がり、紫色の光の膜に包まれて砕け散ると、そこには美しく変貌したメガサーナイトが立っていた。

 

 

「メガシンカ。偉大なるピンクをお見せしましょう」

 

 

 いや、未だにピンクは出てなくね?とツッコんだのは私だけではない筈だ。




VSサーナイト(顔出し)

・ダフネ
今回は一番手じゃない主人公。今回はさすがに勝てる気がしない。

・ジュリ
幽霊の手紙を届け終えて肩の荷が下りた転移者。仮面ライダーネタが好きで根っからのゴーストタイプマニア。ゴーストのZワザが好き。さらっとのろいを指示する悪知恵は一丁前。

・ヨハル/ヤユイ
いつも作戦立てるために誰かの試合を見ることに徹している二重人格。何故か知らないけど真夜中のフェアリーポケモンからのセクハラ悪戯に遭ってヤユイが激怒して森を燃やすところだった。何故かと言うと元ネタのせい。

・ビート
なぜかジムミッションでジュリにげんなりされたジムリーダー。エリートなので有力チャレジャーの情報は欠かさず手に入れて対策している。クチートだけでジュリを突破する予定だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガサーナイト

どうも、放仮ごです。ゴールディンウィークは結局家から一歩も出ないで過ごしました。まあこのご時世ですしね。それはそうと前回言いそびれてましたがUAが261000を越えました、ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます!

今回はメガゲンガーVSメガサーナイトのメガシンカポケモン対決。勝つのはどっちだ。楽しんでいただけると幸いです。


手には純白のロンググローブのようなものが装着され、胸の赤いプレートの様な器官はより大きくなって胸リボンかハートのような形となり、スカート部分がドレスのような膨らみを持つ美しい姿に変貌したメガサーナイトが、メガゲンガーと殴り合う。

 

 

「シャドーボール!」

 

「ほのおのパンチ!」

 

 

 恐らく蟲対策なのだろうほのおのパンチと、シャドーボールを纏った拳が激突、観客席から歓声が上がる。たしか特殊技よりだったはずのサーナイトだが、メガシンカしたことで物理攻撃も強くなったらしく拮抗している。両手に炎を纏い連続で殴りつけて行くサーナイトだが、殴り合いはメガゲンガーに分があるらしく、手から射出されたシャドーボールを避けた隙に腹部に手を付けられて零距離シャドーボールを受けて吹き飛ばされた。

 

 

「みらいよち。距離を取ってハイパーボイスです!」

 

「メガサーナイトの特性はフェアリースキン。フェアリー技になっているハイパーボイスは恐れるに足らず!ヘドロばくだん!」

 

 

 吹き飛ばされるまま距離を取りながら爆音の衝撃波を放つメガサーナイトだがしかし、メガゲンガーはまともに受けてもビクともせずに口から猛毒の塊を射出。ハイパーボイスで迎え撃つサーナイトだが完全に打ち消すことはできず、胸のプレート部分に直撃を受けてしまう。純白の体の一部が紫色に染まったことから毒状態になったらしく、膝をつくメガサーナイト。

 

 

「殴り合いに発展してからおかしいと思ったんだよね。なんでゲンガーを一撃で倒せるであろうサイコキネシスをしないのか!それは、貴方が本能的に苦手にしている蟲ポケモン対策のほのおのパンチに、さらにメガシンカをメリットにするためのハイパーボイス、戦略的に強いみらいよち、そして最後の技は恐らくフェアリージムご自慢のマジカルシャイン。色々考え過ぎて、4つの技に納めることができなかったから!違う?」

 

「ぐっ…正解ですよ、だけど僕のサーナイトのみらいよちはただの攻撃じゃありません。タイミングを調整できるんです。この意味が分かりますか?」

 

「っ!?ゲンガー、影に退避!」

 

「サイコキネシスなどいらないということですよ!」

 

 

 メガシンカしたことでデフォルトで影に入れるようになったらしいメガゲンガーが自らの影に咄嗟に潜り込むがしかし、攻撃は来ない。安心だと判断したのかヒョコッと顔を出した瞬間に、虚空から現れた念動力の弾丸が、メガゲンガーを撃ち抜いた。

 

 

「ゲンガー!」

 

「とどめです、みらいよちからのほのおのパンチ!」

 

 

 フラフラとふらつくメガゲンガーに、拳に炎を纏って接近するメガサーナイト。みらいよちまで発動し盤石だ。しかし、ジュリさんはオロオロこそしているがどこか余裕を感じた。…また敵を騙すなら味方から作戦ですか、さすがに分かってきましたよ。

 

 

「…なんてね?さいみんじゅつ!」

 

「なっ!?」

 

 

 フラフラした足取りからガッシリと地を踏みしめてピンピンしているメガゲンガーに騙された、接近してしまったメガサーナイトに催眠念波が放たれ、崩れ落ちる。

 

 

「まだ一日の付き合いだけど、この子は人を騙すのが楽しい困ったちゃんだからね。乗せられちゃった?ゆめくい!」

 

 

 さらに眠っているメガサーナイトから体力を吸い上げ、ダメージを与えながら回復するメガゲンガー。その死角からみらいよちの念動力の弾丸が放たれるも、「左後方!」と叫んだジュリさんの掛け声に合わせて優雅に空中に舞い上がって回避した。

 

 

「くっ、戻ってくださいサーナイト!…なに?」

 

「特性かげふみ!決して逃れられない、夢幻闇夜(むげんあんや)へようこそ!シャドーボール!」

 

 

 みらいよちさえも避けられて勝機はないと見たのかメガサーナイトをボールに戻そうとするビートさんだったが戻すことは叶わず、眠っていて無防備なメガサーナイトに闇の球体が何度も放たれ連続で炸裂。宙を舞ってようやく目を覚ましたメガサーナイトの眼前には、にんまり笑って口を開くメガゲンガーが。

 

 

「サーナイト!次に繋げなさい!みらいよち!」」

 

「ヘドロばくだん!」

 

 

 んべっ!と毒の塊が射出され、まともに喰らったメガサーナイトはメガシンカが解けてドサッと地面に叩きつけられ、戦闘不能。メガシンカポケモン同士の対決は、ゲンガーに軍配が上がった。

 

 

「なるほど、やりますね…僕としたことが貴方の実力を見誤った様だ。その顔の人間は想定した実力以上の実力を魅せることが当たり前なのか…理解に苦しみますね」

 

「未練があるのかは知らないけど、人の顔であーだこーだ言うのは失礼だと思います」

 

「おっと失礼。だがしかし、手の内は見せていただきました。そう簡単に勝たせませんよ?お待たせしました、ピンクの出番です!ギャロップ!」

 

 

 ビートさんが次に繰り出したのはギャロップ(ガラルのすがた)。気高い白馬はモコモコな鬣を翻して嘶きを上げた。

 

 

「特性、パステルベール。毒は通じませんよ!」

 

「だからヘドロばくだんは撃たないでくださいって?毒状態にならなくても効果抜群狙えるんだから撃つに決まってるよね!ヘドロばくだん!シャドーボール!」

 

「近づかせませんよ!距離を取りながらサイコカッター!」

 

「ゲンガー!とにもかくにも近づいて!」

 

 

 口から毒の塊を射出しつつ闇の球体を両手で飛ばすメガゲンガーから逃げる様に凄まじい速さでフィールドを駆け抜けながら鬣を円を描く様に振り回し念動力の刃を飛ばすギャロップ。ゲンガーは攻撃をいったん止めると影の中に潜り刃を避けながら天高く飛び出し、影に入りを繰り返してじわじわ接近。影に入った時に移動速度が速すぎて徐々に追い付いて来て、射程距離に入った瞬間、虚空から現れた念動力の弾丸が横から撃ち抜かれ、動きが止まってしまうメガゲンガー。

 

 

「今のは…!?」

 

「お忘れですか?みらいよちを!サイコカッター!」

 

 

 止まったところに念動力の刃が放たれ、直撃をもらい吹き飛ばされ空中で元の姿に戻って目を回すゲンガー。みらいよちの使い方が上手すぎる。本当はエスパータイプのエキスパートだと言われても信じてしまいそうだ。

 

 

「お疲れゲンガー。じゃあここから真打登場だ。ダダリン。アンカーショット!」

 

「やることは同じです!距離を取ってサイコカッター!」

 

 

 繰り出されると同時にアンカーショットを飛ばすダダリン。ギャロップは距離を取りながらサイコカッターで鎖を斬ろうとするが、ダダリンは己の体を震わせることで鎖を撓ませてサイコカッターを避けさせると撓んだことで勢いを増して射出。ギャロップの顔面に炸裂させて怯ませるとそのまま撓ませて首を絞める様に拘束。

 

 

「ゴーストダイブ!」

 

「マジカルシャインで引き剥がしなさい!」

 

 

 影の中に沈み込み、その勢いでギャロップを地面に叩きつけると影の中に引きずり込んで空中に飛び出してギャロップを空中に引き上げるダダリン。

 

 

「面舵いっぱーい!」

 

 

 グルングルンと高速回転してギャロップを空中で時計回りに一回転させるとその勢いのまま地面に激突させ、戦闘不能にした。ギャロップを戻し、最後のポケモンであるブリムオンを繰り出すビートさん。

 

 

「フンッ!その余裕……勝ったと思ってるんでしょうね。いいでしょう!僕の相棒で大いなるピンクを見せましょう!キョダイマックスです、ブリムオン!」

 

「行くよ、ダイマックスだダダリン!」

 

 

 巨大化したダダリンと、姿を変え巨大化したブリムオンが並び立つ。巨大化したダダリンが異様に怖かった。

 

 

「ダイバーン!」

 

「ダイホロウ!」

 

 

 業火と巨大な家具類の幻影が激突、業火を突き破って家具類の幻影がキョダイブリムオンに炸裂。キョダイブリムオンの体勢が崩れる。

 

 

「ダイスチル!」

 

 

 そして地面から生え出た鋼の棘がブリムオンを貫き、大爆発。元のサイズに戻ったダダリンとジュリさんが勝鬨を上げた。

 

 

「ピンクの輝きを魅せるつもりが貴方達の輝きに圧倒されました!ですがフェアリーのよさは伝えましたよ…」

 

「私の知る貴方よりずっと強かった!やっぱりエリートなんですね!」

 

「それはもちのろんですとも!」

 

 

 そう握手を交わし、フェアリーバッジを手に入れたジュリさん。さて、私も続かなければ。




正直サーナイトの技構成が一番迷った。

・ダフネ
さすがにジュリに騙されなくなった主人公。

・ジュリ
まだ一日の付き合いだけどゲンガーと抜群のコンビネーションを見せる転移者。論理的に相手の技構成を見抜くゲーム脳。「面舵一杯!」が相変わらず楽しい。ゲンガーが入ったことで眠らせて逃がさない戦法「決して逃れられない、夢幻闇夜(むげんあんや)へようこそ!」が決め台詞に。

・ヨハル
ギャロップがサイコカッターしか技分からなかったらダフネに期待しているヤユイに呆れている。

・ビート
蟲ポケモンがトラウマになっているのか、むしとはがね対策にほのおのパンチとマジカルフレイムをサーナイトとブリムオンに覚えさせているジムリーダー。応用が効くサイコキネシスよりも戦略性を優先してみらいよちを採用している。

・ゲンガー♂
とくせい:ふゆう→かげふみ
わざ:ゆめくい
   さいみんじゅつ
   ヘドロばくだん
   シャドーボール
もちもの:ゲンガナイト
備考:なまいきな性格。抜け目がない。オニオンが新たに一から育てたものの人を騙すことが好きな性格と通常より高いスペックが災いして持て余す様になり、ジュリを気に入り託されたポケモン。メガシンカすることで影を移動することができる。ジュリ曰く隙あらば主にさいみんじゅつをかけようとする困ったちゃんだが、そんな自分を使いこなそうとするジュリを信頼している。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガクチートⅠ

どうも、放仮ごです。気が早すぎる次回作のためにポケスペを読み直していたら、数字が付く回は続いているものだけだと思っていたら結構間が開く回もあることに気付きました。タイトル問題あっさり解決しました。

今回はダフネVSビート。楽しんでいただけると幸いです。


 ジムミッションに挑みしばらくして。ジュリさんがげんなりした理由が分かった。ジムミッションはクイズを応えながら進むというもの。ジムトレーナーと戦いながら五問中三問以上正解すればいいのだが…

 

 

「第一問!ジムリーダーラウラが最初に手に入れたポケモンは?」

 

「たしか…バチュルですね」

 

「正解!」

 

 

「第二問!ジムリーダーラウラの代名詞ともいえるわざは?」

 

「…いとをはくですかね?」

 

「正解!」

 

 

「第三問!ジムリーダーラウラの切札、ドラピオンのタイプは?」

 

「どく・むし…じゃなくて、どく・あくですね」

 

「正解!」

 

 

「第四問!ジムリーダーラウラが歴代で最も苦手とするジムリーダーは!」

 

「えっ、……キバナさん?」

 

「ブー!答えはネズ!」

 

「あくタイプつかいなのに!?」

 

 

「第五問!ジムリーダーラウラが初めて負けた相手は?」

 

「あ、それは知ってます。ユウリさんですね」

 

「ブー!答えはムツキ!」

 

「ええ!?」

 

 

 全てが全てジムリーダーラウラの問題。従姉妹だというジュリさんからしたらたまったものじゃないだろう。というかあまり有名じゃないことまで問題になっていて、私だってうんざりしそうだ。ビートさんがラウラさんに恋してたって噂が広がっていたが間違いなさそうだ。もうユウリさんと一緒になったってのに未練たらたらである。

 

 

『続きましての挑戦者は、背番号064!あの事件を乗り越えて現れたむしつかい、ダフネ選手!対するはジムリーダー、ビート!4VS4のシングルバトルです!』

 

 

 そんなわけでげんなりしながらビートさんと並び立つ。もはや精神攻撃じゃなかろうか。

 

 

「なるほどなるほど…先程のジュリさんと違い全問正解とまではいきませんでしたがさすがは同じ蟲使い、難なく突破ですか。ですが蟲使いにだけは負けるつもりはありませんので、心してかかってきてください。ピンクに染め上げて見せましょう!サーナイト!」

 

「謹んで遠慮させていただきます!グソクムシャ!」

 

 

 いきなりメガシンカするつもりなのかビートさんが繰り出したのはサーナイト。私は安定のグソクムシャだ。

 

 

「であいがしら!」

 

「上に避けながらハイパーボイスです!」

 

 

 超加速して一撃を叩き込まんとするグソクムシャだったが、その頭上に舞うように跳躍しすれ違いざまに音の衝撃波を放つサーナイト。メガシンカしたところを仕留めるつもりでしたが、まさかそのままで来るとは…

 

 

「メガシンカなしなんて、舐めてるんですか?フェアリーは苦手ですがエスパーは蟲の格好の餌ですよ?」

 

「よくわかっていますとも。フェアリーの沼に落ちる前の僕はエスパータイプを専門としていましたからね。ですが今回は、これでいいのです」

 

「シザークロス!」

 

「横に避けながらマジカルシャイン!」

 

 

 交差する斬撃もひらりと避けて、眩い光を放つサーナイト。ダメージを受けつつ目が眩み瞑ってしまうグソクムシャ。私は腕で発光から庇いながら指示を出す。

 

 

「地面にアクアブレイク!からのダイビングです!」

 

 

 アクアブレイクの水飛沫で怯ませ、その間に水浸しになったフィールドに擬態してダイビングで沈み込むグソクムシャ。今のうちに視力を回復させて、そこからどうしましょうか。図鑑に何かヒントは…

 

 サーナイト。ほうようポケモン。タイプはエスパーとフェアリー。特性はシンクロもしくはトレースまたはテレパシー。みらいをよちするちからをもつ。トレーナーをまもるときにさいだいパワーをはっきする。後ろ手にチラッと確認して頭の中で纏める。…予知能力、それでタイミングまで完璧に読まれているのか。

 

 

「おや、その顔。どうやら気付いたようですね。僕のサーナイトに攻撃を届かせるのは至難の(ワザ)ですよ」

 

「それはどうですかね?ダイビングでどこから来るかわかるとでも?」

 

「客もそろそろ膠着状態に飽きてきたでしょうし、そろそろ炙り出しましょうかね。サーナイト、みらいよち。みらいよち。みらいよち!」

 

「っ!飛び出しなさい!シザークロス!」

 

「ほのおのパンチ!」

 

 

 こちらがその場にいないことをいいことに設置攻撃を準備し始めたので、咄嗟に飛び出させるとグソクムシャはサーナイトの背後を取っていて。強烈な一撃を叩き込むも、次の瞬間三方向から同時に念動力の弾丸に撃ち抜かれていて、怯んだところに炎を纏った拳が叩き込まれて吹き飛ばされる。未来予知で出てくる場所を予知されていた…!?立て続けにダメージを受け、体力が半分を切ったのか戻ってくるグソクムシャ。

 

 

「くっ…クワガノン!挟み込みなさい!」

 

「みらいよち!ほのおのパンチで迎え撃ちなさい!」

 

 

 突撃するクワガノンに、油断せず設置攻撃を仕掛けながら炎を纏った拳を振りかぶるサーナイト。拳を受けながらもサーナイトの両腕を胴体ごと挟み込み、空に舞い上がるクワガノン。

 

 

「なっ!?」

 

「うちのクワガノンの根性は大したものですよ、共犯者ですからね!空に放り投げてむしのさざめき!」

 

 

 サーナイトを放り投げた直後にみらいよちの攻撃が決まるがクワガノンの甲殻はそれを受けてもビクともせず、効果抜群の衝撃波が炸裂。サーナイトは空中で戦闘不能となり崩れ落ちた。

 

 

「…今まで人間とポケモンの関係をいくつか見て来ましたが、初めてですよ…共犯者と称したのは。プラズマ団への復讐の、ですか?それはやめておいた方がいい。ラテラルジムでの一件、ニュースで見ましたよ。貴女ではあのプラズマ団幹部には敵わない」

 

 

 そう真剣に言ってくるビートさんに、押し黙る。共犯者と言ったのは過去の出来事もそうだが、私からプラズマ団へと向けた意思表示、犯行声明でもあるのだ。そう言われて止まる筈がない。

 

 

「そんなことは誰よりも分かってますよ。だから貴方に勝って、強くなるためにここまで来たんです!」

 

「そうですか。では、ジムリーダーとして貴方を止める壁となりましょう!行きますよ、クチート」

 

 

 そう言って次に繰り出されたのはクチート。ジュリさんとの試合中では見えなかったが、正面から見据えたことであることに気付いた。ペンダントの様に首にかけられたそれを。メガストーンが埋め込まれたそれの輝きと、ビートさんの腕輪に付けられたメガバングルに埋め込まれたキーストーンの輝きが重なり、紫色の膜に包まれるクチート。

 

 

「別にサーナイトだけとは一言も言っていませんよ。メガシンカ…!」

 

 

 光の膜が砕け散り、現れたのは頭の大顎が二つに増えてツインテールの様になりもみあげも伸びて、袴を穿いた様な配色のまるでジョウト地方の巫女さんの様な姿になったメガクチート。かわいらしい姿とは裏腹に大顎は待ちきれないとばかりに開閉し大口を開けて長い舌を晒している。方向性は違うが同じ大顎を持つクワガノンでも相手するのは難しそうだ。

 

 

「交代、グソクムシャ…!」

 

 

 クワガノンは今回の切札と言っても差し支えないポケモンだ。少しでも体力を温存するために交代する。メガシンカしたことで特性がいかくから変わったのか、攻撃力が下げられた様子はない。問題は、特性が何に変わったのか。

 

 

「であいがしら!」

 

 

 最速の一撃が放たれる。しかし閉じた右の大顎で受け止め、左の大顎を振りかぶるクチート。誘い込まれてしまったのだと、痛感したがもう遅い。

 

 

「アイアンヘッド!」

 

 

 ドゴォン!と、凄まじい轟音と共に空中を真っ直ぐ飛んで遠く離れた観客席の壁まで吹き飛ばされ叩きつけられるグソクムシャ。その威力の変わりようはジュリさんの試合と比べて一目瞭然。まさか、ちからずくとかちからもちとかそこら辺の特性だろうか?シンプルに、強すぎる。間髪入れず崩れ落ちたグソクムシャの安否を確かめる間もなく、メガクチートが動いた。

 

 

「グソクムシャ、行けますか?」

 

「小細工なんて、やらせはしませんよ!かみくだいてじゃれつく!」

 

 

 てってってっと比較的遅いが大顎の重さを感じさせない走り方で、なんとか立ち上がったグソクムシャに接近して右の大顎でグソクムシャの左腕を噛み砕いて持ち上げ、その小さな両手によるラッシュを叩き込んでいくメガクチート。グソクムシャも危機を察知したのか避けようとしていたがダメージがでかかったのか体が追い付いていなかった。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「うそなきからのじゃれつく!」

 

 

 反撃に出るも、涙でギョッとしたグソクムシャは噛み付かれているにも関わらず躊躇してしまい、そこにタコ殴りにされてしまう。ああもう、武人肌な性格が仇に!

 

 

「ダイビングでなんとか…!」

 

「判断が遅いですよ!空中に投げつけてアイアンヘッドです!」

 

 

 ぐったりしたグソクムシャを右の大顎で噛み付いたまま振り上げてペッと空中に向けて吐き出し、二つの大顎を鋼色に輝かせて振りかぶるメガクチートの、二連撃が炸裂。グソクムシャはキリモミ回転して崩れ落ち、戦闘不能となった。

 

 

「つ、強すぎませんか…?」

 

「有力なチャレンジャーのデータを読み解き、ぴったりなメガシンカで対応する。これがエリートの戦い方です」

 

 

 自慢げなビートさんに、ぐぬぬと睨み付ける事しか出来ない。…メガクチート、予想外の強敵だが本当にどうしたものか。




個人的メガシンカポケモン最強メガクチート。すごく強いと感じていただけたら幸い。

・ダフネ
かつてない大苦戦に強いられる主人公。メガサーナイト対策ばかり考えてたのでメガクチートは本当に想定外すぎた。手持ちとの関係は「共犯者」を名乗る。

・ビート
失恋したラウラについての問題をジムミッションにしているジムリーダー。ちなみにソースは某チャンピオンから。メガサーナイトとメガクチート、二つのメガシンカを相手によって使い分けるエリート故の強さを持つ。過去に犯した「焦りからの罪」からダフネの行く末を彼なりに心配している。

・サーナイト♀
とくせい:シンクロ→フェアリースキン
わざ:みらいよち
   ハイパーボイス
   マジカルシャイン
   ほのおのパンチ
もちもの:サーナイトナイト
備考:さみしがりな性格。のんびりするのが好き。接近戦もこなせるオールラウンダー。みらいよちを自在に設置・調整することができ、みらいよち連打がえげつなく強い。ブリムオンとギャロップについでの新入りだが末っ子のクチートのお姉さん的存在でクチートより先に出ると普段よりやる気を出す。一応原作基準の手持ちだが、技構成を一新している。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガクチートⅡ

どうも、放仮ごです。前回の感想でメガクチートが意外と速いことについて驚かれてましたが、普通にとてとて走ってるだけですよ?とこっちが疑問を持つ羽目に。

今回はメガクチートVSメガヘラクロス。楽しんでいただけると幸いです。


 一勝一敗。残りの手持ちは三体ずつ。数字では互角だが、こちらはグソクムシャが落とされ、あちらはメガシンカしたクチートがいる。兄さんの相棒で実力者でもあるグソクムシャが一方的に落とされてしまった事実から、出し惜しみしている場合ではない。こちらもメガシンカで一気に落とす!

 

 

「メガシンカ相手なら、不利ですがやはり貴方の出番です!ヘラクロス!メガシンカ!」

 

 

 兄貴分だと慕っているグソクムシャが倒されたことでやる気十分のヘラクロスをメガシンカ、こちらに向けて生意気な笑みを見せるメガクチートと睨み合わせる。さっきのを見た限り、攻撃力と防御面が上がっただけで素早さは素のままらしい。ならば、メガヘラクロス得意のスピードで攻める!

 

 

「ヘラクロス!あの大顎に捕まらない様に高速で翻弄して!ロックブラスト!」

 

「大顎で受け止めなさい!」

 

 

 両腕と背中から蒸気を噴出して高速で周囲を円を描くように飛び回りながら、ロックブラストを連射するメガヘラクロス。メガクチートは大顎二つをガバッと限界まで開いて咥えて受け止めて行き、5×5回技を連射したのに全弾受け止められてしまった。

 

 

「かみくだいて吐き出しなさい!」

 

「っ!ヘラクロス、避けることに集中してください!」

 

 

 そればかりか両の大顎同時に岩を一噛みで全て噛み砕いてしまい、その欠片をププププッ!と吐き出して擬似ロックブラストとでも言うようにメガヘラクロスを追い詰めて行くメガクチート。大顎二つで的確に狙って交互に吐き出してくるため、隙がない。

 

 

「メガホーンで突撃!」

 

「迎え撃ちなさい、アイアンヘッド!」

 

 

 メガホーンで岩の欠片を破壊しながら接近させるが、大顎を硬質化させて振りかぶるメガクチート。でも知っている、グソクムシャにとどめを刺す瞬間に私は見たのだ。

 

 

「当たる直前でブレーキ!」

 

「!」

 

 

 両腕を突き出して蒸気を噴出することで間合いギリギリで急ブレーキするメガヘラクロス。その瞬間、迎え打つ気満々で大顎を振りかぶっていたメガクチートが空ぶったことで大顎に振り回されて目を回し、千鳥足でふらついた。私は見たのだ、グソクムシャにとどめを刺した後、あまりの重さに尻餅をついていたメガクチートを。メガシンカとは一時的な物。通常の倍と言ってもいい重さに振り回されてしまうのだろう。

 

 

「インファイト!」

 

 

 防御体勢もままならないそこに、猛連撃が炸裂。はがね・フェアリーなのでかくとうは等倍だ。自身の防御力を犠牲に放たれる猛撃に、なすがままに殴り飛ばされるメガクチート。しかし攻撃力だけでなく防御力も上がっていたのか、その小さな体は倒れない。キシシと不敵に笑んで突撃してきた。

 

 

「まず角を捉えなさい!かみくだく!」

 

「両腕で受け止めて!」

 

 

 角に噛み付くために大きくガバッと開いた大口による噛み付きを、両腕で両端を掴んで力の限り押し込むメガヘラクロス。さすがにそれは想定外なのか、普通に痛いのか涙目でメガヘラクロスに噛み付いている大顎を振り回すメガクチート。振り回された勢いを利用して地に足を付けどっしりと構え、大口を押し込んだまま持ち上げ、バタバタと手足を振り回しもう片方の大顎で狙うもメガヘラクロスは簡単に避けて、振り上げた。

 

 

「叩きつけてメガホーン!」

 

 

 メガクチートの小柄な体を勢いよくフィールドに叩き付け、そのままメガホーンで地面とサンドイッチにする。ピギャッと悲鳴が上がった。

 

 

「じゃれつく!」

 

「距離を取ってタネマシンガン!」

 

 

 怒りのままにじゃれつこうとしてきたので、両腕から蒸気を噴出して後退させ、両腕を突きつけ種を連射するメガヘラクロス。大顎を盾に防ぐメガクチートだが、耐え凌ぐことしかできていない。元々すばやくないのか、敵の攻撃を受け止めた上で吹き飛ばすことで自身のペースに持っていくことが基本戦法なのだろう。自分が追い込まれることに弱いらしい。

 

 

「うそなきで怯ませて接近しなさい!じゃれつく!」

 

「ヘラクロス、上空にロックブラスト!」

 

 

 うそなきは、自分への攻撃を躊躇させる技だ。ならば狙わず撃てばいい。上空に放たれた岩の弾丸はテッテッテッと近づいてきたメガクチートに降り注ぎ、咄嗟に両の大顎を頭上に置いて防御体勢を取るが、それは明らかな隙で。

 

 

「インファイト!」

 

 

 ロックブラストを防ぐのに精一杯だったメガクチートが驚愕の表情を浮かべると共に、メガヘラクロスは蒸気を噴出させた勢いを利用して猛攻を浴びせ、最後に腹部に拳を叩き込むと共に蒸気を噴出させ、メガクチートは先程のグソクムシャと同じように宙を吹っ飛んで重い頭から地面に叩きつけられ、元の姿に戻って戦闘不能となった。

 

 

「頭の重さが敗因です。メガシンカしたことが仇となりましたね…!」

 

「これほどとは……やはり、蟲は侮れませんね。ですが今の攻防であなたたちの実力はほぼほぼ理解しましたよ。ギャロップ!」

 

 

 悔しげなビートさんがクチートを戻してギャロップを繰り出してきたので、とりあえず防御力を失って紙耐久となったメガヘラクロスを戻して代わりにアブリーを繰り出す。ギャロップのサイコカッターは強力だが大ぶりな分、小さい方が避けやすいはずだ。

 

 

「その場でふみつけです!」

 

 

 地面を踏みつけ、粉塵を巻き起こすギャロップ。こちらからギャロップの姿が見えなくなったが、あちらも同じはずだ。なにを…?

 

 

「スマートホーン!」

 

 

 次の瞬間、俊足で粉塵から抜け出してきたギャロップの鋼色に輝く角が炸裂、フェアリータイプであるアブリーは効果抜群をもらってその小さな体が吹き飛ばされる。粉塵に紛れて必中の技を使ってくるとは…!?

 

 

「サイコカッターで追撃です!」

 

「しびれごな!」

 

 

 もうアブリーに勝ち目はないと判断し、攻撃よりも妨害を優先する。しびれごなを真面に受けながらも念動力の刃を飛ばしてくるギャロップ。アブリーは小さな体で避けていくが、集中しすぎてギャロップに近づいてしまっていた。

 

 

「とどめです、スマートホーン!」

 

「少しでも!むしのていこう!」

 

 

 何とか最後にダメージを与えた物の、鋼の角で穿たれ戦闘不能となり倒れるアブリー。よく頑張りました。あとはメガヘラクロスとクワガノンでなんとかします!

 

 

「またお願いします、ヘラクロス!」

 

「もう一度その場でふみつけ!」

 

 

 インファイトによる防御低下が回復し、やる気を見せるメガヘラクロスだがしかし、また粉塵を展開するギャロップ。何時攻撃してくるかビートさんの指示でしか分からない、厄介な。

 

 

「サイコカッター、スマートホーン!」

 

「ヘラクロス、身構えてください!メガホーン!」

 

 

 サイコカッターを飛ばしながら突撃してくるギャロップ。サイコカッターをメガホーンで打ち消すも、スマートホーンが喉元に炸裂。

 

 

「ふみつけ、マジカルシャイン!」

 

「ロックブラスト!メガホーン!」

 

 

 えづいたところに胴体を踏みつけられ、鬣を振り回して輝きを放とうとしていたので零距離からロックブラストを放ち、連続で打撃を受けたギャロップは空中に打ち上げられてそのまま連射を喰らって力なく落ちてきたところに効果抜群のメガホーンが炸裂。戦闘不能となるギャロップ。

 

 

「ここまで追い込まれるとは不覚…!なれば、大いなるピンクで押し潰しましょう!キョダイマックスです、ブリムオン!」

 

「交代、クワガノン!ダイマックスです!」

 

 

 温存しておいたクワガノンを繰り出しダイマックス、キョダイマックスしたブリムオンと対峙させる。ダイバーンを覚えているから、速攻で倒さないと普通にやばい。

 

 

「ダイワーム!」

 

「キョダイテンバツ!」

 

 

 すると、予想と異なり繰り出されたのはキョダイテンバツ。ダイワームが炸裂する中不思議に思っていると、すぐ効果が表れた。巨大化したクワガノンが目を回し、ふらついていたのだ。

 

 

「これは…こんらん!?」

 

「どうですか僕の女神の得意技は!美しいでしょう!ピンクでしょう!混乱に陥るのも無理もない、これは我が女神による天罰なのだから!」

 

 

 混乱させたところでじっくりダイバーンで煮込むつもりなのか。こちらからしたらたまったもんじゃない。

 

 

「しっかりしなさいクワガノン!勝利は目前なんです!混乱している場合じゃありません!」

 

「無駄ですよ!貴方の声はもう、届かない!ダイバーン!」

 

「ダイワーム!私の共犯者なんでしょ、クワガノン!私達はもう二度と…負けられないんですよ!」

 

 

 その時、不思議なことが起こった。クワガノンの目から混乱が消えたのだ。目を見開き驚愕するビートさん。思わず拳を突き出して叫んでいた。

 

 

「馬鹿な!?」

 

「これが私達の…犯行声明です!」

 

 

 ぶつかる業火と蟲の幻影。打ち破ったのは、蟲の幻影。纏わりつかれたキョダイブリムオンは嫌がり身を震わせるも大爆発、縮んで元の姿に戻り戦闘不能となり、私とクワガノンは柄でもない雄叫びを上げた。見ていろプラズマ団、逃がすつもりも負けるつもりも断じてありません。




トレーナーに懐いているからこその自力でこんらんを解くアレ。

・ダフネ
共犯者であるクワガノンと共にプラズマ団への犯行声明を見せた主人公。メガシンカ後の差異という、これまでにない隙を見極める戦術眼を得た。

・ビート
相棒であるブリムオンを僕の女神と呼ぶジムリーダー。相手次第でふみつけによる粉塵を利用した攻撃も取る。メガクチートのメガシンカ後の負担に関しては気付いていたものの改善策を思いつかないでいた。

・クチート♀
とくせい:いかく→ちからもち
わざ:かみくだく
   じゃれつく
   アイアンヘッド
   うそなき
もちもの:クチートナイト
備考:なまいきな性格。よく物を散らかす。自分が強いと自負しており「キシシ」と笑って相手を小馬鹿にする性格の悪さが目立つ。大顎を軸に自身の体を持ち上げるなどかなり鍛えられており、その怪力から繰り出される攻撃は凶悪。メガシンカすることで圧倒的な力を見せるが、大顎が増えることに対応しきれておらず重さに振り回されてしまう。また、圧倒的なパワーで押し切るのが得意だが押しに弱い。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSギャロップ

どうも、放仮ごです。今回はヤユイVSビート。ガラガラのお披露目試合です。楽しんでいただけると幸いです。


 受付に戻ると、笑顔のジュリさんとヨハルが待っていて。掲げられた手に、ハイタッチで応える。

 

 

「おつかれさま。ダフネ」

 

「次は私達の番だね。ありがとう、おかげで何とかなりそうだってヤユイが」

 

「それはよかった。奮闘した甲斐がありました」

 

 

 グッと握り拳を作って頷くヨハルに笑顔で返す。するとニヤニヤ笑みを浮かべているジュリさんに首を傾げる。どうしたのだろうか。

 

 

「聞いてたよ、共犯者だとか犯行声明だとか。かっこいいね」

 

「い、勢いで言ったので忘れていただけると…」

 

「いい表現だと思うよ。だからさ、私にも片棒を担がせてよ」

 

「うん、私もそう思う。私達も、共犯者だよ」

 

 

 からかっていると思いきや真剣に言ってきたジュリさんと、覚悟を決めた顔で頷くヨハルに、何とも言えない気持ちになる。するとヨハルはヤユイに変わり、不敵に笑んで背を見せると受付に向かっていく。

 

 

「共犯だからね。二人に負けてられないな。私なりの犯行声明、見せてやる」

 

 

 ヤユイは本当に男勝りでかっこいいなあ。…あのクイズでげんなりしないといいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巷で噂の三人娘最後の一人のご登場ですか。先の二人には後れを取りましたが、貴方の手持ちで我がクチートに勝つことは不可能。今までのジム全てで完勝している様ですが、無敗伝説もそこまでです」

 

「ダフネに一度負けたからもう無敗じゃないけど。ちょっとイラついてるから一匹だけでスカッと倒させてもらうよ!」

 

 

 ピクピクとこめかみをひくつかせるヤユイの繰り出したのは、新たな手持ちのガラガラ(アローラのすがた)。オニオンさんが知り合いからもらったものをもらった、ややこしい出自のポケモンである。ちなみにタイプは往来のじめんと異なり、ほのおとゴーストだとか。……あ。

 

 

「あのパーティーでどう挑むのかと思ってたらそういうことですか…」

 

「うん。私もゲンガーとメガリングもらったけど、一番助かったのはヤユイなんじゃないかな」

 

 

 察してしまった私達は同情的な視線をビートさんに送る。一日かけて色々教え込んでいたのを横目で見ていたのだ。ジムリーダーが使うポテンシャルのポケモンを、努力する天才が使うとどうなるか。一目瞭然だ。

 

 

「情報にないポケモン…それもただのガラガラじゃありませんね…?」

 

「タイプもわざもメガシンカも全て閲覧した…私の共犯者はいい仕事をしたよ」

 

「ギャロップ!先手必勝です!ふみつけからの…」

 

「ほねブーメラン!」

 

 

 繰り出されたギャロップが粉塵を展開するのに対し、手にした骨を高速回転。投擲して攻撃するガラガラ。ギャロップのあの戦法の弱点はふみつける動作をしているがために、姿が隠れてすぐは移動できない事だ。結果、高速回転しながら飛来した骨がギャロップの顔面に炸裂、大きく怯ませたところに骨をキャッチしながら突撃するガラガラ。

 

 

「シャドーボーン!」

 

 

 手にした骨をまるでバトンの様に高速回転させ、骨を額に当てて勢いよく擦ることで先端に青緑色の炎を灯して霊気と思われる紫色のオーラを纏わせて突撃、強烈な一撃を叩き込む。効果抜群のそれに体勢が崩れたギャロップに、炎を消した骨による打撃が連続で叩き込まれていく。

 

 

「ボーンラッシュからの……シャドーボーン!」

 

 

 五度目の打撃で大きく揺らいだところに振りかぶった骨に霊気を纏わせてフルスイングで叩き付け、ギャロップを打ち飛ばして戦闘不能にするガラガラ。圧倒的な実力に静まり返る観客席。ガラルでは見慣れないポケモンということもあるのだろうが、武さえも感じさせるその動きに見惚れているらしい。気持ちは分かる。

 

 

「なんという…なんでじめんタイプのわざを二つも覚えておいてラテラルで使わなかったのは謎ですが…」

 

「単純に、その時は持ってなかったから。早く次のポケモンを出して、ジムリーダー」

 

「言われずとも!サーナイト!」

 

 

 次はサーナイト。みらいよちでごり押すつもりだろうか。しかしあの火力は異常だ。何か秘密でもあるのだろうか。

 

 

「五回連続でみらいよち!からの、翻弄しつつマジカルシャインです!」

 

「あの言い方からして攻撃はすぐ来る。ボーンラッシュで迎撃して、シャドーボーン!」

 

 

 虚空から現れたみらいよちによる攻撃を、まるで舞踏の如く華麗に骨を振り回して舞い踊り、防いでいくガラガラ。タイミングをずらして放たれていた最後の攻撃すら優雅に防ぎ、そのまま額に擦りつけて炎を灯し、マジカルシャインを一刀両断するかの如く拡散させて唐竹割り。脳天に一撃もらったサーナイトは目を回し、倒れ伏す。あんなに苦戦したサーナイトをこうも簡単に…!すると腕組みしながら観ていたジュリさんが口を開いた。

 

 

「アローラガラガラはゴーストタイプの中でもダダリンに並ぶ物理の火力を持つポケモンなんだよね。特に専用の持ち物がその火力を助長させている」

 

「もしかして…ふといホネ、ですか?」

 

「大当たり。ヤユイ曰くヨロイ島に行ったときに、なんでも落ちてるものをコレクションする癖があるヨハルが拾ってたんだって。私も使いたかったなあ」

 

「あんな正統派に強いポケモン、ジュリさんとは合わないと思いますが」

 

「それは確かに」

 

 

 そんなことを言ってるとクチートをメガシンカさせ突撃させるビートさん。両の大顎二つを開いて確実に噛み砕かんと迫るメガクチートに対し、骨を回転させて踊りながら待ち構えるガラガラの姿からは余裕すら感じられた。

 

 

「二つ同時に、かみくだく!」

 

「骨でつっかえ棒にして、フレアドライブ!」

 

 

 ガバッと開いた右の大顎に骨を差し込み、つっかえ棒代わりにメガクチートの大顎を開かせたまま後退してもう片方の大顎を空ぶらせると、グルンと頭部を振り回し紅蓮の業火に包まれると突撃、メガクチートを吹き飛ばすガラガラ。

 

 

「フレアドライブ!確かに弱点タイプではありますがそう連射はできない大技…!?」

 

「もう一度、フレアドライブ!さらにもう一度!さらにさらにぶっ放せ!」

 

 

 かなりの反動が発生することなど知ったことかと言わんばかりに、突き飛ばした側からまた業火を纏い突撃。何度も何度もメガクチートに体当たりして何度も打ち上げる一方的な光景が繰り広げられる。メガクチートも大顎を盾に防いではいるものの確実にダメージが溜まって行く。これは…!?

 

 

「なぜ、なぜそんなにフレアドライブを使えるのですか…!?」

 

「共犯者の一人がポケモンに妙に詳しくてさ。この子の強みを教えてもらったんだ。特性、いしあたま。反動無しでフレアドライブを撃てる。さらにふといホネで攻撃力二倍。さすがのクチートでも耐えられない、よね?骨を手にして後退、ほねブーメラン!」

 

「アイアンヘッドで弾きなさい!」

 

 

 フレアドライブをしながら骨を回収して遠く離れた所から骨を投擲し、硬質化した大顎で弾こうとしていたメガクチートの顎に炸裂して転倒させ、戦闘不能にするガラガラ。さらに間髪入れずボールに戻してダイマックスを発動するヤユイに対し、戦意を削がれながらも同じくキョダイマックスするビートさん。

 

 

「ガラガラに効果抜群の技がないことは分かってるもんね!ガラガラ、ダイホロウ!」

 

「負けるなブリムオン、ピンクの底力を見せなさい!キョダイテンバツ!」

 

 

 ガラガラは骨を高速回転させて家具の幻影を展開、キョダイテンバツを避ける様にして横を飛び、キョダイブリムオンに叩きつけられる家具の幻影。効果は抜群だ。大爆発して縮んでいくブリムオン。圧倒的な試合に、大歓声がスタジアムを木霊した。




ダンスは最強。特にサンバはいいぞ。

・ダフネ
ガラガラの強さに驚くしかなかった主人公。ほのおタイプと言う天敵であるが故に嫌な予感しかしない。二人から共犯者だと言ってもらえて嬉しい。

・ジュリ
共犯者その一。ヤユイからの頼みでアローラガラガラについて知っていることを全部教えた。

・ヨハル/ヤユイ
共犯者その二。ジュリの知識を最大限に活用し、一日でガラガラのことを理解し4タテに成功。トップジムチャレンジャーの実力を観客に見せつけた。ヨハルはなんでも落ちてるものをコレクションする癖がある。

・ガラガラ(アローラのすがた)♂
とくせい:いしあたま
わざ:シャドーボーン
   ボーンラッシュ
   ほねブーメラン
   フレアドライブ
もちもの:ふといホネ
備考:れいせいな性格。暴れることが好き。自身の踊りに絶対的な自信を持つ自信家。アセロラからオニオンに渡り、オニオンからヨハルに渡った。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSギルガルド

どうも、放仮ごです。自分、バイオハザード×FGO小説も書いているのですが新作バイオハザードヴィレッジのキャラが良すぎて書きたくなる衝動に駆られている今現在。

今回は新生プラズマ団に大きく踏み込みます。主人公達不在で三人称視点ですが楽しんでいただけると幸いです。


 ダフネたちがアラベスクジムを攻略していた頃、シュートシティのバトルタワーと名を改めた元ローズタワーの最上階に設置された巨大な机を囲むようにして数人の男女が話し合っていた。

 

 

「僕たちから与えられる情報はこれだけだよ」

 

 

 そう述べて情報が記された書類に手を付けるのは、6番道路でダフネたちと遭遇した元プラズマ団の王である青年、N。その横には愛の女神と平和の女神と呼ばれるNの世話役である二人の女性が控えている。彼らはガラルにのさばる新生プラズマ団をどうにかするべく、ガラルポケモンリーグに協力を申し出た一団だった。

 

 

「いや、助かるよ。イッシュ地方の17番水道にあるP2ラボ付近に停泊していたはずのプラズマフリゲートと言う名の空中戦艦が行方不明……さらに元構成員のほとんどが行方知れず、か。新生プラズマ団の構成員は彼等で間違いなさそうだな」

 

 

 書類に載る情報を纏めようとしているのは、ガラルポケモンリーグ委員長でありバトルタワーオーナーも務めるダンデ。側に護衛する様にギルガルドが浮かび、珍しくスーツでビシッと決めた姿の彼は正体不明の新生プラズマ団の情報が得られてご満悦だった。

 

 

「この、プラズマフリゲート及び元プラズマ団の首魁であるゲーチスから解放された伝説ポケモン、キュレムが行方不明だというのは?」

 

 

 情報の一つが目に留まったのか質問したのは現在ダンデの秘書兼ボディーガードをしている元ジムリーダーであるキリエ。ダンデの知恵袋としての参戦だ。

 

 

「嫌な予感がしてジャイアントホールに眠っているはずのキュレムの所在を確認しに行ったところ、既にいなかった。その時は僕の知り合いのトレーナーに捕獲・保護されていると思っていたんだけど、プラズマフリゲートまで無くなっているところから見て、新生プラズマ団に再度捕獲・再利用されていると思うんだ」

 

「つまり、ガラルも一年前のイッシュ地方の様に氷漬けにされる可能性があるってことなのかな?」

 

 

 Nの説明にそう問いかけるのはガラルのチャンピオンであるユウリ。ダンデに呼ばれてこの会議に参加した彼女も、真剣に情報を頭に叩き込んでいた。

 

 

「そうなる可能性は高いね。ただでさえ強大なキュレムの力を、さらに極限まで引き出すプラズマフリゲートの力は絶大だ。保有しているなら利用しない手はないと断言できる」

 

「そうなった場合の避難所の建設も考えなければならないな…」

 

「資金については心配ご無用!」

 

「セレブリティな我らにお任せあれ!」

 

 

 顎に手をやり思考に耽るダンデに応えるのは、再興活動に助力しているセレブリティな王族であるソッドとシルディ。ダンデも資金のやりくりなどはキリエやオリーヴに任せているものの、決定権がある自分で考えなければならないのは就任して二年経っても慣れないらしい。

 

 

「…この構成員の欄の、グレイと呼ばれる首魁に関して記載が「???」なのはどういうことなのでしょう?」

 

 

 そう尋ねるのはキリエと反対側のダンデの隣に座る、現在はダンデの補佐兼相談役をしているオリーヴだ。ダンデ達も見て見れば、シュバルツやヴァイスについての記載は細かく載っているのに対しグレイの部分だけ何も書かれておらず、疑問も最もだとNは頷く。

 

 

「そこについては僕よりもプラズマ団の構成員について詳しいこのロットから話してもらうよ」

 

「了解しました、N様」

 

 

 Nに促されて立ち上がったのは、黄色いローブに身を包んだ立派な髭を蓄えた老人、元プラズマ団最高幹部七賢人の一人であるロット。ポケモン保護を目的とした穏健派であるプラズマ団の残党、通称白いプラズマ団の代表でもある彼は書類を手に語りだした。

 

 

「ポケモン研究所襲撃事件にてそれまで噂程度だった新生プラズマ団が大きく動き出し、シュバルツと言う幹部の一人の名が出たことを聞いた我々、通称白いプラズマ団は驚きました。シュバルツは我等と同じ、N様を敬愛しポケモン保護を最優先とする穏健派である白いプラズマ団の一員だったからです」

 

「ここに載っている限り、そこのNを敬愛しポケモン保護に尽力する男だった、とありますね」

 

「力なくては説得力もない、と言う持論を持つ男でもあり、最後には解放すると約束したポケモン達をボールに入れて、ジムリーダーをも超える実力に何年もかけて己を鍛え上げていた男でした。そんな男がまさか新生プラズマ団の幹部になるとは……」

 

「ロットたち、ホドモエシティを拠点に慈善活動をしていたはずの白いプラズマ団だけど、一年前のある時期を境にシュバルツを始めとして明らかに数が減っていたらしい。恐らく、グレイと呼ばれる今の首魁に集められたんだろうね」

 

「彼らを纏める者でありながら面目次第もございません…」

 

 

 Nの言葉にしおしおと落ち込むロット。しかしすぐに立ち直り、続ける。

 

 

「ヴァイスについては一年前の過激派、通称黒いプラズマ団の一員として暴れまわっていた者として覚えております。調べれば調べる程悪い噂しか出てこない女です。しかしここからが本題です。我等はグレイと呼ばれる首魁について、まるで情報を持ち合わせていないのです。少なくともプラズマ団の名の知れた者にはそんな輩はいないのです。突如現れ、白黒厭わずプラズマ団の大半を丸め込んで手下にし、シュバルツやヴァイスという癖の強い者達までもを従える謎の存在、としかわからない」

 

「我々の情報網も使いましたが、ガラルにもそんな輩はいないと断言できます」

 

「セレブリティな我らの情報網に死角なし!」

 

 

 ロットの言葉に、ソッドとシルディも続く。すると真面目に書類に目を向けていたユウリがぼそっと呟いた。

 

 

「顔も正体も分からない敵、か。でも、目的の一つは多分、わかったかも」

 

「というと?ユウリ」

 

「うん、ダンデさん。強奪されたポケモン達を考えれば、わかることがあるんです。ソニアさんの研究所のルミからはレジアイス、レジロック、レジスチル、レジドラゴが奪われ、先日のモコウからはレジエレキが奪われた。この五体のポケモンが集まると、現れるポケモンがカンムリ雪原にいるとラウラが言ってました」

 

「ムツキが言っていたあのポケモンですか?」

 

「はい、キリエさん。私がウツロイドに寄生されて離れていた時に、ムツキとルミが遭遇し手も足も出なかったらしい最強に近い伝説のポケモン、レジギガス。恐らくそれが、プラズマ団の狙いだと思います」

 

「レジギガス…!?」

 

 

 知られていない伝説ポケモンの名に、会議の場がざわつく。ユウリとキリエはラウラやムツキから話を聞いていたので、その危険性が如何程かわかってしまう。巨人であること、ノーマルタイプであることなど知っている情報をユウリとキリエで上げていると、それに物申した人物がいた。物事を冷静に見れるオリーヴだ。

 

 

「待ってください。そんな名も知られていない、それもレジアイスたち五体を揃えないと現れもしない伝説ポケモンの存在を、何故プラズマ団が知っているのですか?」

 

「それは……うーん、あれ?たしかにおかしいな」

 

「そのことを知っているのはこの場の人間を除くと、その場に居合わせたラウラさんにモコウさんにルミさんに、我が娘であるムツキとリヅキ。また、レジアイスたちの研究をしていたソニア博士ぐらいだと思いますが…彼女たちがその情報を誰かにリークするとは思えませんね」

 

「それに、たしかガラル三鳥を所有するムツキも狙われたって聞いたぞ。そう考えると、単に強力な戦力を集めていると考えることができるんじゃないだろうか?」

 

「ダンデ氏の言う通りだとすれば、我が王や我が女王も狙われる可能性が高いと、そういうわけですね」

 

「まあ我が王と我が女王ならばムツキ殿と同じく返り討ちにするでしょうが。我が従姉妹であるモコウとはわけが違う」

 

「一応従姉妹なんだからモコウのことをフォローして上げなよシーソーコンビ…それに、プラズマ団は私の前にだけは絶対に出てこないよ。幹部のヴァイスでさえ私に見つかったら逃げ出したぐらいだから徹底してる。ラウラの考えだと、私のスケジュールを把握していることから委員会にプラズマ団がいるんじゃないかって」

 

「こちらでも調査しているがまだわからないな。ふーむ、謎は深まるばかりか…」

 

「ジムリーダーが捕まえたプラズマ団から聞き出した話ではアクロママシーンというポケモンを操る機械の存在が開かされました。幹部が調教したポケモンと、量産されたというアクロママシーンで操るポケモンに分けられているそうです。この対策もするべきかと」

 

「その開発者であるアクロマはアローラ地方に行っているから連絡は困難で……」

 

 

 まったく結論がまとまらない会議の場。彼ら彼女らが議論する間でも、謎めいた首魁が従える新生プラズマ団の暗躍は続くのだ。




会議すればするほど深まる新生プラズマ団の謎。

・N
元プラズマ団の王様。愛の女神と平和の女神とロットを引き連れている。ゼクロムを保有していたがとあるトレーナーに託して手放している。

・ダンデ
ガラルポケモンリーグ委員長にしてバトルタワーオーナー。部下にキリエとオリーヴがいる。Nに協力を持ちかけられて邪険にせず快く承諾した。

・ユウリ
ガラルのチャンピオン。委員会に敵がいるのではと疑っている。ラウラから聞いた情報から、レジギガスが敵の狙いだと推理するが…?

・キリエ
ガラルポケモンリーグ委員長秘書にしてボディーガード。ムツキとリヅキの母親。ムツキが怪物と称したレジギガスを危険視している。

・オリーヴ
ガラルポケモンリーグ委員長の相談役。キリエと共にダンデの補佐をしている。物事を客観的に冷静に見れる。

・ロット
元プラズマ団最高幹部七賢人の一人。現在は白いプラズマ団を率いてポケモン保護や慈善活動を行っている。シュバルツの元上司。

・シーソーコンビ
ダンデのスポンサーにして資金源。相変わらずユウリとラウラを我が王と我が女王として慕っている。ガラルの被害を受けた箇所の修繕に取り組んでいる。

・シュバルツ
元白いプラズマ団。ロットをしてジムリーダーをも超える実力の持ち主と称される。Nを敬愛していたらしいが現在はグレイに忠誠を誓っていて…?

・ヴァイス
元黒いプラズマ団。したっぱから幹部になり上がったと思われる。調べれば調べる程悪い噂が出るらしい。

・グレイ
全てが謎に包まれた新生プラズマ団の首魁。顔も性別も目的もわからない。本名かどうかすらも怪しい。白黒厭わずプラズマ団の構成員の大半を籠絡し、プラズマフリゲートとキュレムをNやロットの目を盗んで奪い去った模様。

・プラズマフリゲート
黒いプラズマ団が保有していた巨大空中戦艦。今から一年前(BW2時代)に伝説ポケモンであるキュレムの力を引き出してイッシュ地方の一部を氷漬けにした。事件が終わった後はイッシュ地方の17番水道にあるP2ラボ付近に停泊していたが、いつの間にか消えていた。

・アクロママシーン
元黒いプラズマ団の王にして狂気の天才科学者アクロマが、ポケモンの力を引き出す実験の一つとして開発した、伝説ポケモンであろうと意のままに操ることのできる機械。量産されて新生プラズマ団のしたっぱが所有している模様。

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VSビリジオン

どうも、放仮ごです。少年漫画あるある、主人公不在でストーリーが進む奴。前回と今回、次回がそれとなります。

今回はラウラ視点でお送りします。楽しんでいただけると幸いです。


 今季ジムチャレンジが始まって以降、ひっきりなしに途切れることなく訪れるジムチャレンジャーの相手をする忙しい毎日が続く日々。週一の定休日しか休みがないが、まあ充実していたそんな午後。夕暮れ時。また一人のチャレンジャーを撃退すると、朝からずっと続いていたチャレンジャーが来るのが止まった。

 

 

「今日の挑戦者はこれで終わりか?」

 

「はい、少なくとも予約されていたチャレンジャーは今ので最後です。お疲れ様でした、ラウラさん」

 

「みんなの方が年上だからそんなに畏まることはないぞ、ソウタ」

 

「年下とは言えジムリーダーですし…」

 

「とりあえず今日はここまでにしよう。みんなにお疲れ様と言っといてくれ」

 

「わかりました。お疲れ様です」

 

 

 ヤローさん時代からここに努めるポケモンリーグから派遣されたジムトレーナーの一人、ソウタからの報告を聞いて一息つく。今日はもう休んでいいとして…ユウリは確かダンデさんに呼ばれて遅くなるって言ってたな。暇だしターフタウンをぶらつくか。

 

 

「ダフネとジュリは今頃ヨハルと一緒にアラベスク辺りだろうか…」

 

 

 黄昏時のターフタウンの公園への道を歩きながら、先日ニュースにもなった、俺自身が推薦状を渡した二人を思い出す。ダフネはまたシュバルツと戦って惨敗したらしいが、大丈夫だろうか。電話でモコウに聞いた限り結構落ち込んでいたそうだが…モコウも自信がない令嬢モードになってたし、心配だ。後ろからついてくる輩に気を配りながら歩みを進める。この時間、この辺りは人通りも少ない。誘い込むとしたら今か。

 

 

「…さてさて、お三方。隠れてないで出てこい。せっかく人気(ひとけ)がない場所まで来てやったんだ。感謝してほしいね。………ダークトリニティ」

 

「…なぜわかった」

 

 

 その名を呼ぶと現れたのは、長い白髪で忍者の様な黒装束に身を包んだ覆面の男三人。以前のプラズマ団の首魁ゲーチスの側近、ダークトリニティ。姿も見せず俺を尾行する三人の気配からしてこいつらだとは思っていたが、マジか。こいつらがいるってことは、忠誠を誓っているゲーチスがグレイとやらの正体なのか?

 

 

「昔、姿を隠して俺を観察していたポケモンを探す機会があってな。気配に敏感なんだ。それにプラズマ団の情報は仕入れている。三人も尾行してくるならお前たちだと思っていたぞ」

 

「ふん、わざわざ人気のない場所まで来るとはありがたい」

 

「それとも我ら三人を相手にできるとでも?」

 

「笑止!今の我等はグレイ様より賜りし伝説のポケモンを持っている。ジムリーダーとて相手にはならん」

 

 

 そう言って、まさかのマスターボールをそれぞれ一つずつ取り出すダークトリニティに驚愕する。一人一匹伝説を持つ、だって…!?しかも貴重なはずのマスターボールが三つもあるなんて、どこから仕入れた?

 

 

「一つ聞きたい。グレイ様ってのはつまり…お前たちの仕えるゲーチスのことか?」

 

「なんのことだ?ゲーチスなどという名前は知らん」

 

「我等はグレイ様に忠実な僕、ダークトリニティ」

 

「それ以上でもそれ以下でもない」

 

「は?」

 

 

 ……えーっと、つまりどういうことだ?ダークトリニティがゲーチスの事を知らない、だって?この世界のプラズマ団はゲーチス以外に作られたとでも言うのか?いや、それはあり得ない。なら考えられることは…一つしかないか。

 

 

「…洗脳、か。グレイとやらもゲーチスと同じでロクな奴じゃないらしい」

 

「なにをごちゃごちゃと……コバルオン」

 

「訳の分からんことをほざくな…ビリジオン」

 

「………やれ、テラキオン」

 

 

 そして繰り出されたのは、まさかのイッシュ三剣士。悪には与さないはずの正義のポケモン達だ。なんでプラズマ団なんかの手中に、イッシュ地方で捕まえたのか…!?

 

 

「カンムリ雪原にてグレイ様の采配により発見、捕獲したこのコバルオン。アイアンヘッド」

 

「グレイ様よりいただいたマスターボールにて捕獲したこのビリジオン。リーフブレード」

 

「他の強奪したポケモンとは一味も二味も違うぞ、テラキオン。いわなだれ」

 

「「「我等プラズマ団の最高戦力、貴様一人に宛がわれたことを光栄に思え」」」

 

 

 こちらはまだポケモンも出してないのに、ダイレクトアタックを仕掛けてくるダークトリニティ。それにしても最高戦力、ね。カンムリ雪原にコバルオン達がいることは初耳だが、つまりこいつらを押さえればプラズマ団の戦力の大半が失われるわけだ。

 

 

「…フェローチェ」

 

 

 それぞれの三剣士の背に乗ったダークトリニティの放った三種の攻撃が同時に、俺が今の今までいた場所に炸裂。大爆発が襲うが、そこから少し離れた場所に俺はお姫様抱っこされる形で退避していた。常に持ち歩いている虎の子、フェローチェである。

 

 

「なに…?」

 

「おいおい。俺を襲撃するんなら、戦力ぐらいちゃんと下調べしておけよ。さもないと…」

 

 

 さらにネットボールとプレシャスボールを取り出して両手で投擲。腕組む筋肉が目立つ巨体と、小柄ながらも鋼鉄に身を包んだ蟲が並び立つ。フェローチェにお姫様抱っこで抱えられる俺は、奴等から見たら屈強なボディーガードに囲まれるどっかの令嬢にも見える事だろう。わっるい笑みを浮かべてみせる、いわゆる悪役令嬢だ。

 

 

「火傷じゃすまないぜ?ゲノセクト、テクノバスター」

 

「……コバルオン、ファストガードだ」

 

 

 放たれた光線を光の防壁で防いでみせるダークトリニティ。噴煙に包まれるが、それは悪手だぞ。

 

 

「マッシブーン、グロウパンチ!」

 

「っ、……テラキオン、インファイト」

 

「ビリジオン、せいなるつるぎ」

 

 

 防壁が解かれた瞬間を突いて噴煙の中に飛び込み、拳を振るうマッシブーンに咄嗟にテラキオンが猛撃を繰り出して相殺、そこに斬りかかるビリジオンの刃を、テラキオンの相手をしている右拳とは反対側の左手の人差し指と中指で挟んで受け止めるマッシブーン。片手真剣白刃取り。伊達にユウリのザシアンと何度も戦ってるわけじゃないぞ。

 

 

「コバルオン、せいなるつるぎだ」

 

「ゲノセクト、ニトロチャージ!」

 

 

 刃を抜こうと引っ張るビリジオンと、顔面を鷲掴みにされて暴れるテラキオンを巻き込む様にしてコバルオンがせいなるつるぎを放って来たが、炎を纏ったゲノセクトが割り込んで妨害。

 

 

「フェローチェ、コバルオンにとびひざげりだ!」

 

 

 さらに俺を抱いたまま、跳躍したフェローチェのライダーキックがコバルオンに炸裂。大きく蹴り飛ばして石柱にブチ当て、崩れ落ちた石柱の下敷きになるコバルオンとダークトリニティの一人。…あれって文化遺産だっけ?まあいいや。

 

 

「テラキオン、いわなだれ…」

 

「ゲノセクト、テクノバスターで薙ぎ払え!マッシブーン、ばかぢから!」

 

 

 仲間がやられたことにも意を介さず、マッシブーンに頭部を掴まれながらもテラキオンが虚空から岩雪崩を放ってくるが、テクノバスターでそれを分解。マッシブーンがテラキオンを掴んだまま地面に叩き付け、背中に乗ってたダークトリニティを地面にサンドイッチにして戦闘不能にする。

 

 

「くっ…ビリジオン、インファイトでひきはがせ…」

 

「フェローチェ、とびはねるだ」

 

 

 マッシブーンに刃を掴まれながらも前足で猛攻をしようと試みるビリジオンだが、俺を抱いたまま跳躍したフェローチェの踵落としが首に炸裂。マッシブーンから解放されたビリジオンは戦闘不能になって引っくり返り、乗っていたダークトリニティが頭から地面に叩きつけられる。

 

 

「ぐっ……おのれ、伝説ポケモンがこうも簡単に…?化け物め…」

 

「おいおい。化け物は失礼だろ。こんなにかっこ可愛い蟲達に失礼な」

 

「お前のことだ、ぐふっ。無念……」

 

 

 そのまま気絶するダークトリニティ最後の一人。さて、こいつらをとっ捕まえて警察に連れてって情報を吐かせるとしますかね。すると、無人なはずのここに向かってくる足音が聞こえた。ターフタウンの住人か?と公園の入り口に目を向ける。

 

 

「さすがだ。伝説三匹を相手にして完勝とは。いやいや、恐れ入った」

 

「お前は…?」

 

 

 そこにいたのは、右半分が白で左半分が黒の、中央にプラズマ団のエンブレムが描かれたローブを身に纏った20代前半と思われる若い男。顔立ちがムカつくぐらいに妙に整っている、いわゆるイケメンであるその男は頭まで服と同じ配色の髪をNを彷彿とさせる短さに切り揃えていて、ハイライトの消えた金色の目を妖しく光らせて不敵な笑みを見せながら、妙に落ち着いてしまう声色、いわゆるイケボで名乗りを上げた。

 

 

「私の名はグレイ。君とは仲良くできることを願うよ。ご同輩?」




ついに本格登場、謎に包まれたプラズマ団の首魁グレイ!なんと100話以来の登場となります。前回で疑惑を広げて一気に出すスタイル。

・ラウラ
もはや伝説ポケモン三体がかりでも止められないジムリーダー。メジャージムリーダーになったばかりだが吹っ切れた後の本気の試合で現在二位のビートに勝利していることから強さは相変わらず。フェローチェたち、本気の三体を使ったラウラを倒せるのはユウリだけ。

・ソウタ
ターフジムのジムトレーナーで元々ヤローのジムトレーナーだった少年。自分より年下だが自分たちと戦いジムリーダーにまで成り上がったラウラを尊敬している。ラウラのマネージャーも務めている働き者。

・ダークトリニティ
プラズマ団におけるN及びゲーチスの側近、だったはずの三人組。気配を消すことができるがフェローチェを相手にしたラウラには看破されてしまった。忠誠を誓っていたゲーチスの名を忘れ、グレイに忠誠を誓っているなどラウラの知っている彼等とは食い違った部分がある。グレイの指示でコバルオン、ビリジオン、テラキオンを捕獲し使役している。

・イッシュ三剣士
コバルオン、ビリジオン、テラキオンのこと。いずれもカンムリ雪原に生息している個体。ソニアに足跡が発見されルミとホップの手により捜索され研究されていた。ケルディオという弟子ポケモンがいる。正義の剣で悪を斬る伝説のポケモンだったはずだが、マスターボールで捕獲したダークトリニティにより悪の手先に。ユウリどころかラウラでさえ、カンムリ雪原での存在すら知らないポケモン達のはずだが…?

・グレイ
新生プラズマ団、通称灰色のプラズマ団の首魁。20代前半と思われる男性。爪先から天辺まで白と黒で半分ずつカラーリングされた、まさに名は体を表す特徴的な姿を持つ。目の色はポケモン世界でも割と珍しい金色。ラウラが「ムカつくほどのイケメン」と称する妙に整った顔で、妙に落ち着いてしまうイケボの持ち主。マスターボールを複数持っている疑惑や、ラウラさえ知らないポケモンの所在を知っている、ダークトリニティを洗脳した疑いもあるなど得体の知れない不気味な男。ラウラをご同輩と称するが…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゾロアーク

どうも、放仮ごです。本日は新作「BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】」も投稿しております。もしよろしければそちらもごらんください。

今回はラウラVSグレイ。まさかのいきなり頂上決戦となります。楽しんでいただけると幸いです。


「ご同輩、だと?」

 

 

 ダークトリニティを倒したところに現れた、プラズマ団の首魁グレイを名乗る謎の男の言葉を反芻する。エンジンシティの友人にこんなやつはいないし、ジムリーダーでもないし、俺の時代のジムチャレンジャーでもこんな目立つ奴がいたら覚えているし…なんのことだ?

 

 

「お前のことなんて知らんぞ。何者だ」

 

「こういえば察しが付くと思ったが…存外、頭が悪いようだな」

 

「なんだと。確かに俺は馬鹿だが知らない奴から馬鹿呼ばわりされる謂れはないぞ」

 

「ふむ…」

 

 

 グレイは考え込むような仕草を取ると、何かを思いついたように顔を輝かせて口を開いた。

 

 

「赤緑青ピカチュウ」

 

「なんのことだ?」

 

 

 意味不明の言葉を羅列してきたグレイに首を傾げるが、グレイは構わず続けた。

 

 

「金に銀にクリスタル。

ルビーサファイア、エメラルド。

ダイヤモンド、パール、プラチナ。

ブラックホワイトにブラック2、ホワイト2。

XY。

サンムーンにウルトラサン、ウルトラムーン。

そして、ソードシールド」

 

「っ…!?」

 

 

 そこまで羅列したら馬鹿でもわかる。それは、ポケモンシリーズのタイトル名。なんで、この世界の人間がそれを……そこまで考えた時、こいつの正体が分かった。そうか、こいつは俺の同類か。

 

 

「……良いリアクションありがとう。これで君が私と同じ転生者だと確信できた」

 

「転生者…お前もか!」

 

「いかにも。君と同じ、神に選ばれ特典を手にこの地に転生した人間だ」

 

「…俺は死んで気付いたらこの地にいただけで神なんかの手で転生したわけじゃないぞ」

 

「なに?」

 

 

 事実を述べると押し黙るグレイ。…なんだ、転生特典やらについて話し合いたかったのか?残念ながら俺は前世知識だけで頑張ってるから正直お前が憎いぞ。と、冗談はこれまでにしておいて。

 

 

馬鹿な、転生特典なしであの成績を収めただと…?

 

「その転生者がなんでプラズマ団の首魁なんかやってるんだ。転生特典とやらを使ってチャンピオンなり目指せばいいじゃないか。簡単だろう?」

 

「ふっ、なろうとしてもなれなかった者もいるんだよ……確認だ。我々はこの世界の全てを知っている。全ての地方の、全てのポケモンの事を。それが転生した我々の特権だ」

 

「全ての地方については外伝作品を見てないから知らんが、それで?」

 

 

 BW以降のことについては知らないことは黙っとこう……

 

 

「なれば知識と権力、そして強さがあれば我々はこの世界全てを支配できる。そうだろう?チャンピオンなんて目ではない。だから仲間にならないか?我々が手を組めば最強だ!」

 

「悪いがチャンピオンは俺の彼女だ馬鹿野郎」

 

 

 一蹴してフェローチェ、マッシブーン、ゲノセクトと共に構える。頭の悪い提案しやがって。伝説ポケモンを持つダークトリニティを嗾けて俺の強さを再確認した上での勧誘か。こっちをなめてやがるな。するとやれやれとこちらを子供扱いする笑みを見せるとローブからマスターボールを手にした右手を出すグレイ。やる気か?受けて立つぞ。

 

 

「交渉決裂か。しょうがない、ならば力づくで従えさせるとしよう。ダークトリニティの様に!」

 

「っ…フェローチェ!気にするな、奴目掛けてとびひざげり!」

 

 

 俺の指示を受け、フェローチェがとびひざげりを叩き込む。ポケモンでトレーナーに直接攻撃は犯罪だが、なにかされたら厄介だ。どうやって洗脳したかもわかってないからな!すると、目にも留まらぬスピードのフェローチェの一撃を、宙返りで避けてしまうグレイ。なんて身体能力だ…!?

 

 

「私の特典をお教えしよう。我が特典は三つ。スーパーマサラ人に匹敵する身体能力。アクロマに匹敵する頭脳。そしてマスターボール6つだ。ちなみに容姿は私のイメージ通りにサービスしてもらったから実質四つだな」

 

「そりゃ羨ましい限りだな。こちとら前世知識とこの身一つで頑張ってんだよ。さっさとポケモン出しやがれ!とびかかる!」

 

 

 公園の顔出し看板の上にバランスよく飛び乗ったグレイにとびかかるフェローチェだが、やはり宙返りで避けられてマスターボールが投げられる。現れたのは、まさかのレシラムだった。

 

 

「なに…!?」

 

「クロスフレイム!」

 

 

 慌てて変形したゲノセクトに飛び乗り、フェローチェとマッシブーンをボールに戻して放たれる青い業火から空に逃げる俺達。なんて爆炎だ。グレイもレシラムの姿も見えなくなって…!?

 

 

「クロスサンダー」

 

「ゼクロムだと!?」

 

 

 特殊な素材なのか、レシラムの炎に晒されてるのに平然な顔で佇むグレイの指示で、レシラムの代わりにその場に現れたゼクロムの雷撃を高速で飛び回って避ける。あまりにも苛烈な攻撃で、攻撃に転じられない…!

 

 

「ガリョウテンセイ」

 

「なんだと!?」

 

 

 すると目を離していた隙に交代していたのか、メガレックウザの一撃が飛来。慌てて避けるがグルグルと吹き飛ばされる。なんだ、一体何体の伝説ポケモンを持っているんだ奴は!?

 

 

「アルセウス。さばきのつぶて」

 

 

 吹き飛ばされながら目にしたのは、グレイの側に控えるアルセウスが空に向けて解き放つ光弾の雨。公園中に降り注ぎ、爆炎の余波を受ける。その時、おかしなことに気付いた。…熱く、ない?あの規模の攻撃で、何も感じないなんてこと、あるか?とあることに気付いて公園近辺を空から眺める。どこも傷一つ、焦げてすらいなかった。そういうことか。

 

 

「次だ。ネクロズマ。プリズムレーザー」

 

 

 次に繰り出されていたのは、ネクロズマと言うらしい俺も知らない全身が光り輝くドラゴンの様なポケモン。繰り出されるのは大規模・極大のレーザーの雨。あんなものに晒されたら命はないとは思うが、とある仮説を思いついた俺はゲノセクトに指示して、真正面から突っ込んだ。

 

 

「むっ?フォトンゲイザー!」

 

「もうカラクリは見えてるんだよ!ゾロアーク!」

 

 

 また光線を繰り出してくるが、ダメージはないので意を介さない。ゾロアーク。幻影の覇者と呼ばれるポケモンで、どんなポケモンにも化けることができるポケモン。だがその能力は幻影でしかない。マスターボールを六つも持っていると俺に明示して、伝説ポケモンを本当に持っていると見せかけてた。卑怯な奴だ。だが分かってしまえば恐れるに足らず!

 

 

「ゲノセクト、ニトロチャージ!」

 

「ばれてしまったのならしょうがない。ゾロアーク、あくのはどう!」

 

 

 飛び降りながらゲノセクトに指示すると、グレイの指示で本性を曝け出したゾロアークのあくのはどうが炎を纏ったゲノセクトとぶつかり、大爆発。俺はフェローチェとマッシブーンを繰り出して駆けつける。爆炎が晴れると、そこにはゲノセクトを踏み潰している、ゾロアークが化けたと思われるキュレムと、平然としているグレイがにやにや笑って立っていた。

 

 

「ここで終わらせる!よくもガラルを混乱に陥れてくれたなあ!」

 

「キュレム。こごえるせかい」

 

「そんな幻影、通じるかよ…!?」

 

 

 その瞬間。俺は、フェローチェとマッシブーンは、共に氷像となってその場に縫い付けられた。ご丁寧に俺だけ頭部以外を氷漬けにされるという、あまりにも繊細な技術で屈辱的なことまでしてくれやがった。悔しがる俺に近づきながら見下すような笑みを見せるグレイに、ギリギリと睨み付ける事しか出来ない。

 

 

「くっそ……キュレムだけは、本物か……」

 

「あえて偽物を見せることで精神的に油断させる。真っ向から挑んでも勝てますが、セミファイナルトーナメント二位まで上り詰めた貴方に対しては念には念を入れないとな。二年前は純粋に貴方のファンだった。蟲ポケモンだけであそこにまで上り詰めた貴方を、テレビや掲示板で見守っていたものだ。ああ、懐かしき…我が暗黒時代」

 

「そうか……変だと思ったんだ。ユウリに見せられた、あの掲示板…この世界の人間なら絶対に知らない筈の、キョダイデンチュラによく似たアトラク=ナクアの名前を書いたのは……お前だな」

 

「いかにも。アレには驚いた。あれこそが貴方の特典だと思ってましたがどうやら違うらしい。では、私の配下として活躍してもらうぞ。このアクロママシーン改でね」

 

 

 そう言って取り出したのはなにかの機械。コードを引っ張り、先端を俺に近づけてくる。それでダークトリニティを洗脳したのか…くそっ、無念だ。ユウリ………すまん。




転生者としての素性を明かしたグレイの手によりラウラ陥落。最強の敵として立ちはだかる…?

・ラウラ
グレイの勧誘を蹴り一人戦いを挑んだジムリーダー。普通に輪廻転生した転生者。ゾロアークの幻影を見破ったまではよかったが、騙されて敗北してしまう。

・グレイ
プラズマ団の首魁。その正体は「神様転生」による転生者。三つの特典と共に転生した。整った容姿も声もそのため。チャンピオンになろうとしてもなれなかったと語り、ラウラに手を組むよう持ちかける。二年前までは掲示板でラウラを応援していたファンであり、「掲示板2」にてうっかりアトラク=ナクアについて言及した張本人。アクロママシーン改という機械でダークトリニティを洗脳した。現在判明している手持ちは色違いメタグロス、ゾロアーク、キュレム(BW2と同じ個体)。スーパーマサラ人の身体能力とアクロマ並みの頭脳とマスターボール六つを有する最凶ともいえる存在。その目的は…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSバンギラス

ギリギリ間に合った!バイオハザードの方に集中していてこんな時間になってしまいました。申し訳ねえ。

今回はラウラが陥落したことによる影響がダフネたちを襲う…?楽しんでいただけると幸いです。


 アラベスクタウンで三人とも無事フェアリーバッジを手に入れ、ナックルシティに戻る三人旅。ルミナスメイズの森、ラテラルタウン、6番道路と抜けて行く。夜になり、もうすぐナックルシティに着くかといったところで突然のすなあらしに襲われる私達。

 

 

「あと少しだってのにいきなりなんですか!?」

 

「この道路ってすなあらし発生したっけ!?」

 

「でもたしか、ガラルですなあらしってワイルドエリアにしか発生しない筈じゃ…!?」

 

 

 凄まじい勢いで吹きつけて来て目も開けれないすなあらしに、三人揃って吹き飛ばされない様にひと固めになって踏ん張る私達。お互いに触れて居場所を把握しているが、夜なことも相まって1m先を見ることも叶わない。音も凄くて叫ばないとお互いの声も聞こえない状況だ。

 

 

「つまりポケモンがすなあらしを発生させていると、そういうわけですね!」

 

「多分だけどね!うぇっぷ!砂が口に入ったー!?」

 

「ああもう怒った!ヨハルを困らせるな!アマルルガ!」

 

 

 するとキレてヤユイになったヨハルが取り出したボールを地面に叩きつけてアマルルガを繰り出し、特性のゆきふらしが発動。すなあらしからあられへと天気が変わり、一息つく。寒いけどすなあらしよりはマシだ。

 

 

「助かりましたヤユイ…寒いですが」

 

「砂が積もった後にあられが降り積もってすごいことになってるけど…」

 

「贅沢言わないでよ。すなあらしよりはマシでしょ?」

 

 

 すると、崖の上からなにかが飛び降りて来て、とんでもない重量による地響きを起こして私達は転倒する。クレーターを作ったそこにいたのは、よろいポケモン、バンギラス。蟲ポケモンでもないのに進化前が蛹なサナギラスに進化することから兄さんが手持ちにするか悩んでいたのを覚えている、超強力と称される部類のポケモンだ。だが、こんなところにいていいポケモンじゃない。

 

 

「バンギラス…!すなあらしの正体は、こいつ…!」

 

「ワイルドエリアに生息しているはずのポケモンだよね!?なんでここに!?」

 

「捨てるなら捨てるでちゃんとした場所に捨ててよね!アマルルガ、じしん!」

 

 

 恐らくはヤユイさんの言ってる通り、多分プラズマ団の影響で解放されたポケモンだろうか。バンギラスは真下から襲いかかってきた揺れ、その姿からは想像もつかない身軽さで跳躍して回避、着地する。

 

 

「あの速さ…まさか、ロックカット?でもたしかUSUMまで…じゃない、ガラル地方のバンギラスは覚えない筈なんだけど…」

 

「つまり、他地方から連れて来てガラルで手放したポケモンってことですか?そんな傍迷惑な!」

 

「そりゃ怒り狂うわな。なんで襲ってくるのか知らないけど…ふぶき!」

 

 

 出た。ヤユイのアマルルガの切札級の大規模ふぶき、通称ブリザード。しかしそれを物ともせずにノッシノッシと歩み寄り、アマルルガの首を掴んで引っ張り下ろすと技でもなんでもない頭突きを頭部に叩き込んでふらつかせるバンギラス。

 

 

「喧嘩殺法…!?」

 

「今の、技でもなんでもないですよね!?」

 

「やってくれたな…?組み付いて逃がすな、じしん!」

 

 

 首を巻き付け、じしんを放つアマルルガ。切り立った崖で構成されている6番道路が罅割れ、凄まじい揺れが私達にも襲いかかるが何とか耐える。ポケウッドにメカバンギラス?があったことも含めて、まるで映画の怪獣大決戦さながらな光景だ。効果抜群、しかも至近距離。結構効いたはずだがバンギラスは倒れず。むしろアマルルガの首を持ち上げて胴体を振り回し、崖の岩壁に勢いよく叩きつけてアマルルガをダウンさせてしまった。

 

 

「アマルルガ!?」

 

「こいつ、前に戦ったキテルグマみたいな強敵だ…ダフネ、加勢するよ!ゴビット!」

 

「はい、ジュリさん!グソクムシャ!」

 

 

 バンギラスのタイプはいわ・あく。いわタイプは私のむしタイプに、あくタイプはジュリさんのゴーストタイプに強い。つまり、私達二人の天敵。だからヤユイに任せていたのだが、そうも言っていられない。このバンギラスは、明らかに私達の命を狙っている。少しでも有利なタイプで挑むしかない。

 

 

「グソクムシャ、であいがしら!」

 

「ゴビット、ばくれつパンチ!」

 

 

 グソクムシャとゴビットのダブルパンチが挟み撃ちでバンギラスを狙うも、バンギラスは全身を輝かせて再び天高く跳躍して回避。少し離れた場所に着地すると口元に黒いエネルギーを溜めて放射。漆黒の光線…あくのはどうが放たれて、咄嗟にグソクムシャがが私達の前に出て庇う。むしタイプにはあくタイプの技は通じない…!

 

 

「ゴビット、じだんだ!」

 

 

 そこに生じた隙を突いて大地を何度も踏みつけるゴビットの放った揺れが直撃、バンギラスの巨体がぐらつく。しかし倒れず、尻尾を地面に叩きつけて巨岩を目の前に形成。殴りつけて瓦礫を刃にして飛ばしてきた。ストーンエッジ…!?

 

 

「ゴビット、盾になって!」

 

「グソクムシャ!アクアブレイク!」

 

 

 今度はゴビットが前に出て受け止める。じめんタイプにいわタイプの技は効果が薄いのだ。そのまま突進し、水を纏った腕を叩きつけるグソクムシャ。水柱が立つも、そこにバンギラスの姿はなく。見上げると、やはり跳んでいて。その掲げられた両手には、大量の雪が抱えられていた。

 

 

「上です!グソクムシャ!」

 

「ヤバい、ゴビット!ばくれつパンチ!」

 

「ガラガラ!フレアドライブ!」

 

 

 

 放たれたのは、ゆきなだれ。標的がグソクムシャではなく、こちら。トレーナーへの憎悪が込められた雪雪崩に対して咄嗟にジュリさんの指示でゴビットが拳を振るい、ヤユイがガラガラを出して炎で熔かそうとするも圧倒的な質量に私達は押し潰されてしまい、咄嗟に目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

 

 何時までたっても来ない衝撃と、凍えるような寒さに目を開ける。そこには驚愕の表情を浮かべたジュリさんとヤユイがいて。どうやらかまくらみたいに雪が私達だけを避けてくれたらしいが、なんで…と二人の視線を追って見上げる。そこには、土の巨人が私達を庇うようにして存在していた。

 

 

「ゴビット…いや、ゴルーグ!」

 

 

 我に返ったジュリさんの呼びかけで両腕を振り上げながら立ち上がり、雪を吹き飛ばすゴルーグ。どうやらジュリさんのゴビットが進化したらしい巨人は、グソクムシャを踏みつけながらこちらを見てあんぐりと口を開けて固まっているバンギラスに対して拳を握り、身構える。

 

 

「ゴルーグ、気を付けて行くよ!」

 

 

 ジュリさんの呼びかけにゴルーグはガッツポーズを作って応えると、グソクムシャを軽々と持ち上げ、こちらに投げつけながらあくのはどうを放つバンギラス。するとゴルーグはグソクムシャをしっかり右手で受け止めた上で左手を突き出し、あくのはどうを掌で受けると握り潰して霧散させてしまう。こちらに向けてグソクムシャを下ろす余裕さえ感じられた。

 

 

「シャドーパンチ!」

 

 

 バンギラスに対しては効果が薄い物の、圧倒的質量となった拳の幻影を飛ばし、慌てて跳躍して逃れるバンギラス。しかしゴルーグは跳躍したバンギラスにも追従していて。どうやってかというと、飛んでいた。なんか足を引っ込めてロボットアニメよろしく炎を噴き出して空を飛んでいた。もうわけがわからない。

 

 

「ばくれつパンチ!」

 

 

 空中で身動きが取れず、ゆきなだれで対抗してきたバンギラスの攻撃を凄まじい空中制動で簡単に回避し、自ら近づいて鉄拳を叩き込むゴルーグ。顔面を殴り飛ばされたバンギラスは地面に叩きつけられ、また新たなクレーターを刻んだ。

 

 

「のろいを忘れて新たに覚えた新技、受けてみろ!ヘビーボンバー!」

 

 

 さらに、ジュリさんの指示で腕を組み鉄塊と化したゴルーグが空から隕石の如く飛来。クレーターの真ん中で動けないでいたバンギラスを押し潰し、戦闘不能にした。

 

 

「よっと」

 

 

 バンギラスをハイパーボールに入れ、一息つくジュリさんにつられて力が抜け、へたれこむ。し、死ぬかと思った……でもなんで、こんなに強いバンギラスが捨てられるようなことに……なにか、起きたんでしょうか。その答えを知るのは、ナックルシティに入ってすぐのことだった。




ゴルーグVSバンギラス。実質スーパーロボット大戦。

・ダフネ
バンギラスの殺意に殺されるかもしれないと臆していた主人公。

・ジュリ
土壇場でゴビットがゴルーグに進化、某第三の英雄の如く大暴れするゴルーグにご満悦な転移者。

・ヨハル/ヤユイ
野生のバンギラスにアマルルガが倒され、ガラガラの炎まで通じなかったことから地味に落ち込んでる二重人格。

・バンギラス♂
とくせい:すなおこし
わざ:あくのはどう
   ストーンエッジ
   ゆきなだれ
   ロックカット
もちもの:バンギラスナイト
備考:ゆうかんな性格。暴れることが好き。他地方から連れてこられ、ガラルで捨てられたと思われるポケモン。トレーナーに捨てられた愛憎が憎悪に染まり、見つけたトレーナーを片っ端から襲撃していた。ジュリに捕獲されたがもちろん使うつもりはなく、そのままポケモン協会に預けられることに。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSギガイアス

どうも、放仮ごです。こんな時間になって申し訳ない。一昨日からポケモンとバイオの一日二つ投稿を毎日やってるわけですが…今日は病院行っていたのもあって、ネタ集めに動画漁りにお気に入りの小説を読んだりと、圧 倒 的 に 時 間 が 足 り な い !

そろそろ毎日投稿はきついかもですが頑張ります。今回はラウラ敗北後のダフネたち。キバナ戦に入ります。楽しんでいただけたら幸いです。


 ナックルシティに入りポケモンセンターで一息つきシャワーを借りようとしていると、とんでもないニュースが放送されていた。

 

 

『三日前よりジムを臨時休業としていたターフタウンジムリーダー、ラウラさんが行方不明になっていたことが判明し、それにプラズマ団が関与していたという事件により、ポケモンを違法に手放すトレーナーが急増したというニュースが入ってきました。臨時休業にしていたのは騒ぎを大きくしないための処置でしたが、交際しているチャンピオンユウリが情報を得るべく情報を開示したとのことです』

 

「ラウラさんが…!?」

 

「お兄ちゃんが行方不明!?」

 

 

 私達がアラベスクタウンからナックルシティに戻っている間に、そんなことが起きていたのか。ニュースによると代理でヤローがターフタウンのジムを再び担ってジムチャレンジは続行するらしい。続けて、各地でトレーナーに捨てられたポケモンが凶暴化して各地にポケモンレンジャーが派遣されて対処しているというニュースも流れた。そうか。あのバンギラスは、ジムリーダーさえプラズマ団に襲撃されて姿を消したというニュースを見たトレーナーが、自分も襲われたくがないために捨てたポケモンだったのか……

 

 

「あのラウラさんが負けるなんて…シュバルツ相手でも勝てそうなのに、なんで…」

 

「…私、お兄ちゃんの強さはあんまり知らないんだけどそんなに強いの?」

 

「昔の試合見たことあるけど、凄い人だよ。ムゲンダイナを倒して事件を解決したのもあの人だって話だし」

 

「チャンピオンじゃなくてお兄ちゃんが!?…蟲だけでアレに勝ったんならそりゃすごいわ、うん」

 

 

 三人でナックルジムを目指しながら会話する。ヨハルの説明で感心するジュリさん。あの大事件も知らないなんてどこの地方にいたんだろう?よっぽどな僻地なんだろうか?

 

 

「UB事件を解決したのもラウラさんですよ。キョダイデンチュラとキョダイウツロイドの対決は今でも語り草ですよ」

 

「UB事件???キョダイデンチュラ???キョダイウツロイド???なんじゃそりゃ?」

 

「あ、それも知らないんだ。変なの」

 

 

 ついでに説明すると疑問符を浮かべるジュリさん。ガラルの人間なら誰でも知ってるぐらい有名な単語がわからないのか。ヨハルの言う通りやっぱり変ですね。

 

 

「…よし、理解はしてないけど理解した。つまりだいたいわかった」

 

「それ、わかってない人の台詞です」

 

「とりあえず…じゃあつまり、お兄ちゃんが戦ったのはあのシュバルツ以上に強い人ってことだよね?」

 

「戦ったかどうかは分かりませんけど、まあ」

 

「それって…プラズマ団のリーダー?」

 

「そうなるよね。ムゲンダイナに勝ったお兄ちゃんも負けたってどれだけ強いのか想像もつかないけど。もしゲーチス相手だったら納得だけどさ」

 

「ゲーチスとは?」

 

「以前のプラズマ団のボスのことだよ。新生プラズマ団のボスなのかは知らないけど」

 

「はあ、なるほど…物知りなのか無知なのかどっちなんですがジュリさんは」

 

「ま、まあいいじゃない」

 

 

 あははーと誤魔化すジュリさん。知ってることと知らないことの差が顕著すぎやしないだろうか。

 

 

「…まあ正直、ゲーチス相手ならお兄ちゃんだったら手の内分かってるだろうから負けるとは思えないんだけどね。とりあえずお兄ちゃんのことは警察とチャンピオンに任せればいいと思うよ」

 

「心配じゃないんですか?」

 

「心配だけどさ。私、シュバルツ相手にも勝てる気しない凡人だもん」

 

「「凡人?」」

 

 

 ジュリさんの戯言に、ヨハルと被った。常人にはできない戦法を簡単にやってのける人が自分を凡人と称すのか……凡人とは一体……?

 

 

「なにその目?」

 

「信じられない物を見る目です」

 

「馬鹿を見る目」

 

「ひどい。でもしょうがないじゃん。私は巨悪に立ち向かえるような主人公みたいな人間じゃないんだもの。主人公……チャンピオンに任せるよ。お兄ちゃんがヒロインポジションなのは帰ってきたら大爆笑してやるつもりだけど」

 

「生きてると確信してるんですね」

 

「一度死に別れたようなもんだもん、私達。二度と会えないと思ってのにまた会えたんだ。死んでも死なないよあの人は」

 

 

 そう悲しげに笑うジュリさんに、何とも言えなくなる。その信頼関係は、いいものだなあ。少し羨ましい。そうしていると、ナックルジムの前まで来ていた。ついに来た、最後のジム。

 

 

「はあ。よくわかりませんが……とりあえず、私達は当初の目的を果たしますか」

 

「そうだね。例にもよって私…ヤユイは三番手でお願い」

 

「ダフネはどうする?」

 

「勝てる気しないんで二番目にお願いします」

 

「了解。ゴルーグに進化したし、さくっと倒してくるよ」

 

 

 サムズアップして意気揚々と飛び込んでいくジュリさん。何だか空元気の様に見えて心配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっさりと鬼神の如き勢いでジムミッションを突破し、早々にジムリーダーキバナさんとダブルバトルで激突するジュリさん。ジュリさんはゴルーグとダダリン、キバナさんはギガイアスとガブリアスだ。

 

 

「二体ともギガイアスに!ゴルーグ、ヘビーボンバー!ダダリン、アンカーショット!」

 

「させるかよ!ギガイアス、ステルスロック!ガブリアス、ワイドブレイカー!」

 

 

 飛び上がって空から狙うゴルーグと、地を這うようにアンカーを飛ばすダダリン。しかしそれらの攻撃は二つが重なる絶妙なタイミングでガブリアスが叩き落とし、ギガイアスには届かなかった。

 

 

「行くぜガブリアス!メガシンカだ!あなをほる!」

 

 

 右手に装着したメガリングを輝かせ、ガブリアスをメガシンカさせるキバナさん。より繊細で凶暴なフォルムへと変貌したメガガブリアスはフィールドに潜り、進化前のフカマルの異名のリクザメの名の如く高速でゴルーグとダダリンに迫る。

 

 

「ゴルーグ、じだんだ!ダダリンはパワーウィップでギガイアスを攻撃!」

 

「おせえよ!ガブリアス!ドラゴンクロー!」

 

 

 地面から飛び出しながらダダリンの伸ばしたパワーウィップを爪で斬り裂き、その勢いでゴルーグの胴体に深い斬撃を叩き込むメガガブリアス。ゴルーグの巨体が後退し、大ダメージを負ったのか膝をつく。あのバンギラスをいとも簡単に倒したゴルーグが!?

 

 

「生憎と今の俺は気が立っていてなあ!相当荒れるぜ、ギガイアス!ダダリンにストーンエッジ!舵輪を狙え!ガブリアスは畳み掛けろ、ワイドブレイカー!」」

 

「ダダリン、ガブリアスにゴーストダイブ!ゴルーグは戻って、ミミッキュ!」

 

 

 上手い。ダダリンは影に潜って回避し、ミミッキュはフェアリータイプであることを利用してワイドブレイカーを無効化する。やっぱり、あなたは凡人じゃないですよジュリさん。

 

 

「じゃれつく!」」

 

「あなをほれガブリアス!当たらなきゃフェアリーも怖くないぜ!そしてギガイアス、ストーンエッジだミミッキュを狙え!」

 

「ミミッキュ、かげぶんしん!ダダリンはギガイアスにアンカーショット!」

 

 

 ストーンエッジとあなをほるをやすやすと回避するミミッキュと、あなをほっていたメガガブリアスに攻撃を当てれなかったもののギガイアスの背後を取りアンカーショットを飛ばすダダリン。ギガイアスを拘束し、その岩の体を鎖で締め上げた。しかしじわじわとすなあらしでダメージを蓄積するダダリンとミミッキュ。長期戦に持ちかけられてる、こうなるとキバナさんのペースだ。

 

 

「逃げられないのはそっちも同じだ!ギガイアス、ダダリンの舵輪にストーンエッジ!」

 

「っ、ゴーストダイブ!」

 

 

 明らかに舵輪が急所だと分かっていて舵輪に攻撃しようとするのを、ギガイアスごと影に引きずり込むことで防いだ。凄い攻防だ、どっちが勝つか分からない。…だけど。

 

 

「ミミッキュ、ガブリアスにじゃれつく!」

 

 

 ジュリさん、やっぱり焦っていませんか?




メガガブリアスなんであんなに評価低いん…?

・ダフネ
ラウラを心配する以上に、親友のジュリが心配な主人公。ラウラの強さはよく知っているので負けたことに驚くしかない。

・ジュリ
兄が行方不明だと聞いて明らかに動揺している転移者。強さはよく知らなかったけど、あの兄がそう簡単に負けるわけないと考えているので倒した相手に疑念を抱く。チャンピオンに任せるとは言っているが明らかに焦っていて…?

・ヨハル
二年前には引っ越してたのでラウラの強さはよく知っている二重人格。純粋に負けたかもしれないということが信じられない。

・キバナ
すなパを使うジムリーダー。ガブリアスを入れないわけがなかった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガブリアス

どうも、放仮ごです。またまたこんな時間になってしまいました。申し訳ねえ。三千字縛りで書いてるんですが、結構きつくなってきました。

今回は焦るジュリVS荒れるキバナ決着。楽しんでいただけたら幸いです。


「ガブリアス、連続であなをほる!ミミッキュを打ち上げろ!」

 

 

 ジュリさんが焦って指示したミミッキュのじゃれつくを、逆手にとってまるで逆もぐらたたきの如くからぶったミミッキュを何度も何度も打ち上げて行くメガガブリアス。地面に触れる事さえできないミミッキュが甚振られていく。空中で体勢を変えられないからかげぶんしんをしても意味をなさない。

 

 

「ダダリン、今だ!影から飛び出してギガイアスを地面に叩きつけて!」

 

「なに!?」

 

 

 するとずっと影の中にいたダダリンが飛び出し、アンカーで繋いだギガイアスを宙を舞わせて勢いよくフィールドに叩きつける。その衝撃で地中から飛び出すメガガブリアス。ギガイアスは頭から地中に埋まって戦闘不能になったようだ。

 

 

「ミミッキュ、手を伸ばしてじゃれつく!」

 

 

 空中でメガガブリアスと目が合ったミミッキュは下から黒い触手を伸ばしてメガガブリアスの首に巻き付かせると自らの体を引き寄せて突撃。空中でボコスカと殴りつける。これでようやくメガガブリアスにダメージが入ったわけだが、当のメガガブリアス本人はピンピンしてる。さすがに一筋縄ではいかないらしい。

 

 

「ハッハー!ギガイアスがやられてからが本番だぜ、俺達は!さすがに起点のギガイアスがいないと機能しないけどなあ、俺のドラゴンたちは生まれ変わったんだよ!フライゴン!」

 

 

 繰り出されたのはフライゴン。メガガブリアスと並び立ち、咆哮を上げるが何が本領発揮なのだろう?そう思った次の瞬間、凄まじい揺れがフィールドのみならず観客席も襲った。

 

 

「ガブリアス!じしんだあ!」

 

 

 そうか、フライゴンは特性:ふゆう。ギガイアスだと巻き込まれるから使えなかったガブリアスのメインウェポンが解き放たれたんだ。大ダメージを受けるだけでなく、凄まじい揺れで身動きが取れなくなるミミッキュとダダリン。そんな二体に接近するドラゴン二体。

 

 

「ガブリアス!ダダリンにドラゴンクロー!フライゴンはミミッキュにはがねのつばさだ!」

 

「ダダリン、パワーウィップ!ミミッキュはじゃれつく!」

 

 

 ダダリンはパワーウィップを避けられた上で舵輪が鋭い爪の一撃で破壊され、さらにミミッキュは鋼と化した翼を首(?)に受けて反撃することもできずに吹き飛ばされる。不味い、明らかにキバナさんのペースだ。恐らくラウラさんが行方不明になったことによる怒りで勢いが凄いキバナさんと、焦って的確な指示が出来ていないジュリさんの差が出ている。

 

 

「ごめん、ミミッキュ、ダダリン……お願い、ゲンガー!ゴルーグ!」

 

 

 ジュリさんはさっきミミッキュと交代して引っ込めていたゴルーグと、最後の手持ちとしてゲンガーだ。4VS4のダブルバトル、ギガイアスを倒したとはいえ二体もやられてしまったジュリさんじゃもう厳しい。

 

 

「ゲンガー、ガブリアスにさいみんじゅつ!ゴルーグはフライゴンにシャドーパンチ!」

 

「ガブリアス、避けてゲンガーにドラゴンクロー!フライゴンはゴルーグにかみくだく!」

 

「っ…!」

 

 

 するとゲンガーをメガシンカすることなく技を繰り出すジュリさん。案の定、さいみんじゅつは簡単に避けられてしまった。なんでだ?ヨハルに聞いてみると、ヤユイに変わって教えてくれた。

 

 

「多分、メガシンカしたらゲンガーの特性がふゆうからかげふみに変わっちゃうからかな」

 

「メガシンカすると特性が変わるのも特徴ですが、メガシンカした方が強いのでは?」

 

「さっきのじしんを警戒してるんだと思う。どくタイプもあるゲンガーには効果抜群だし、ふゆうがいるだけで相手がじめん技を使うのを躊躇させることができるからね。あんなの、私も喰らいたくないよ。私はアマルルガで一気に決めるつもりだけど」

 

「なるほど…」

 

 

 私はでんきタイプのクワガノンがいるが浮遊を持ってるから警戒しなくていいのはありがたいな。そんなことを考えながらフィールドに意識を向けると、ゴルーグの指に噛み付いて振り回されながらも離さないフライゴンと、さいみんじゅつを撃ちながら必死に逃げるゲンガーを追いかけてドラゴンクローを炸裂させるメガガブリアスの光景があった。完全にジュリさんが不利だ。

 

 

「こうなったら…やられる前にやる!夢幻闇夜(むげんあんや)(いざな)え!メガシンカ!」

 

 

 すると覚悟を決めたのか、メガリングを輝かせるとX字に交差する様に大きく腕を動かして笑顔で両手を広げる謎のポーズ、ジュリさん曰くアローラ地方特有のZワザのゴーストタイプのものを決めるジュリさん。ゲンガーをメガゲンガーに変貌させ、突撃させた。

 

 

「シャドーボール!」

 

「地に足を付いたな?なら遠慮なくくれてやるぜ!じしん!」

 

 

 じしんが直撃。ゴルーグは大したことなさそうだが、メガゲンガーは大ダメージを受けつつ体勢も崩されシャドーボールもあらぬ方向へすっぽ抜け、爆発。好機だと言わんばかりにゴルーグから口を放したフライゴンが地上から、あなを掘ったガブリアスが地下から挟み撃ちにする。ゴルーグは足が遅くて追い付けそうになかった。

 

 

「ゲンガー、下にさいみんじゅつ!ゴルーグはフライゴンにシャドーパンチ!」

 

 

 それでもジュリさんは諦めず、メガガブリアスが頭を出したところにさいみんじゅつを照射して眠らせ、フライゴンはゴルーグの突き出した拳から放たれた、ロケットパンチの様な拳の幻影で撃ち落とした。これなら!

 

 

「ガブリアスが寝ている間に一気に決めるよ!ゲンガーはガブリアスにゆめくいで回復、ゴルーグはばくれつパンチ!飛んで!」

 

「ワイドブレイカーで弾き返せ!」

 

 

 メガゲンガーを回復させつつ、ゴルーグに空を飛ばせて空中に逃れていたフライゴンと空中バトルを繰り広げるジュリさん。

 

 

「ゴルーグはシャドーパンチ!ゲンガーはシャドーボール!」

 

「はがねのつばさで斬り裂いて、ゴルーグの顔面にかみくだく!」

 

 

 しかし起死回生の一手はフライゴンだけで切り抜かれてしまう。シャドーパンチとシャドーボールをはがねのつばさで斬り飛ばし、ゴルーグに高速て近づいて顔面にかじりつくフライゴン。頭部にひびが入ったゴルーグは効果抜群だったこともあり落下、とんでもない轟音と地響きを起こして生じたクレーターの中心に力なく横たわった。これでジュリさんの手持ちはメガゲンガーだけ。対してキバナさんはメガガブリアスが眠っているとはいえ残り三体もいる。これは…さすがに、敗色濃厚だ。あのバンギラスに圧勝したゴルーグがこうも簡単に……これが、トップジムリーダーの力。

 

 

「強くなくちゃここから先に行く資格もないぜ!それにその顔、いなくなったあいつを思い出してどうしても手加減できなくなる!悪いなチャレンジャー!」

 

 

 ジュリさんの顔がラウラさんにそっくりなせいでただでさえ荒れていたキバナさんのやる気が上がってしまったらしい。それにジュリさんの焦りも相まってこんな大惨事になったのだろう。なんというか、ジュリさんが不憫だ。

 

 

「負けない、まだ私は、負けてない!ゲンガー、ヘドロばくだん!撃ちまくれえ!」

 

「ガブリアス!…はまだ起きねえか。ならフライゴン、かみなりパンチだ!」

 

 

 毒状態にする目的なのか、ヘドロばくだんを連射するメガゲンガー。しかしフライゴンは涼しい顔でヘドロばくだんの弾幕をスラリスラリと避け、バチバチ帯電させた拳でアッパーカット。顎を打ち砕かれたメガゲンガーは目を回し、メガシンカが解けて倒れ伏した。

 

 

「……初めて、負けた…」

 

 

 私以外で初めて負けたのか、青い顔のジュリさん。大歓声に包まれる中、ジュリさんは寂しげに立ち尽くしていた。




ガブリアスとフライゴン、ダブルバトルでは結構相性がいいと思うんだ。

・ダフネ
荒れるキバナの実力に戦慄する主人公。ジュリにかける言葉が見つからない。

・ジュリ
ラウラの失踪を思い出させるラウラとそっくりな顔だったせいで荒れるキバナに本気を出させてしまった転移者。兄がいなくなって平静でいられるはずがなかった。

・ヨハル
解説役ヤユイを引っさげた二重人格。本気のキバナとはちょっと戦いたくない。

・キバナ
荒れて本気モードになってたジムリーダー。悪いとは思っている。ガブリアスとフライゴンになってからが本番。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアブリボン

どうも、放仮ごです。バイオとポケモン、二つの小説を毎日更新する生活にも慣れてきました。

今回はダフネVSキバナ。題名通りあのポケモンがついに進化。大活躍します。楽しんでいただけたら幸いです。


「…こんなんじゃ駄目だ…強くならなくちゃ…」

 

「ジュリさん…」

 

 

 ロビーの隅っこで体育座りして落ち込み、ぶつぶつ呟くジュリさんに、ヨハルと二人で何も言葉をかけられないでいる。急がないと、もうすぐ私の予約した時間だ。

 

 

「ジュリさん。今回は相手が強かっただけです。ジュリさんは十分に強いですよ」

 

「ちょっと技構成を見直せば勝てると思うよ。ジュリは強いから」

 

「うん…」

 

「私がジュリを観客席に連れて行くからダフネは行って。頑張ってね」

 

「は、はい…!」

 

 

 ヨハルにジュリさんを任せ、係の人の案内で宝物庫に向かう。ダブルバトル三連抜きというシンプルなジムミッション。正直兄さんと一緒のマルチバトルなら得意だが、ダブルバトルは苦手だが、弱音は吐けない。頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、ダブルバトルなんですかねこのジム…!」

 

 

 一回戦うごとに回復を厭わず行わないときつい。ジムトレーナー相手なのに毎回満身創痍になってしまい、今まで溜めてきたげんきのかけらを著しく消費している。わかってはいたことだが、アブリーが未だに進化してない我がパーティーではドラゴンタイプは天敵とも言っていい。むしろドラゴンタイプに有利なタイプがミミッキュしかいないのに突破したジュリさんはやっぱりすごかったんだなって。

 

 

「ふぅ…ここまで来ることができました」

 

 

 なんにしても、何とか突破はできた。ゴールは目の前だ。スタジアムのバトルコートに入る前に、今回出すつもりの四つのボールを手に持ち中のポケモン達と顔を見合わせる。

 

 

「クワガノン、グソクムシャ、ヘラクロス、アブリー…行きますよ!」

 

 

 そして私は、胸を張ってバトルコートに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

『続きましての挑戦者は、背番号064!むしポケモンだけでここまで来た驚異の蟲使い、ダフネ選手!対するはジムリーダー、キバナ!4VS4のダブルバトルです!』

 

「蟲ポケモン使いか…あいつを思い出す。なあ、本気を出していいか?ここまできたアンタの実力は疑いようもない本物だ。ドラゴンは宝物庫を守る門番…ジムチャレンジ最後の難関として、俺は立ちはだかるぜ!」

 

「できればお手柔らかにお願いしたいですが…本気の貴方に勝てないと、私の勝ちたい男には絶対に勝てない!受けて立ちます!」

 

 

 そして試合開始の合図とともに、キバナさんが繰り出したのはガブリアスとギガイアス。すなあらしが吹き荒れる。私はヘラクロスとアブリーだ。私はメガペンダントを握りしめ、キバナさんはメガリングに指をかざす。同時に溢れる七色のエネルギーが、メガストーンを持つポケモンの輝きと繋がった。

 

 

「今から荒れるぜ!止めてみな!ガブリアス!」

 

「共に、どこまでも強くなりましょう!ヘラクロス!」

 

「「メガシンカ!」」

 

 

 ヘラクロスとガブリアスは光球に包まれながら突撃し、角と爪を正面から激突。ぶつかり合いながらシルエットが変わり、同時にメガシンカを果たすと、力の限り押し返して共に後退、この場でのパートナーであるアブリーとギガイアスと、それぞれ並び立ち咆哮を上げた。メガシンカポケモンの激突で観客のボルテージが上がる。まだバトルは本格的に始まってすらいないのに、この熱狂だ。さすがはトップジムリーダー。

 

 

「行くぜガブリアス、あなをほる!ギガイアス、ステルスロックだ!」

 

「アブリー、ギガイアスに接近してしびれごな!ヘラクロスはロックブラストでステルスロックの展開を防いで!」

 

 

 キバナさんお決まりの戦法。アタッカーが攻撃し、ギガイアスがステルスロックをばらまく。それを妨害すればキバナさんのペースに持っていくことを阻止することが可能だ。ステルスロックをロックブラストでひとつ残らず相殺し、さらにしびれごなで麻痺させて連続でステルスロックをさせないようにする。今更ガブリアスが地面から飛び出してくるも、メガヘラクロスは宙に浮いたアブリーと共に跳躍して簡単に避けた。

 

 

「時間にしておよそ7秒。明確に指示しないでガブリアスがあなをほって飛び出してくるまでの時間です。タイミングさえわかれば、避けることも可能!ガブリアスに集中攻撃です!ヘラクロス、タネマシンガン!アブリーはマジカルシャイン!」

 

「ギガイアス、ストーンエッジ!ガブリアスはワイドブレイカーだ!」

 

 

 ギガイアスは痺れてそう簡単に動けないので無視。とにかくガブリアスを一方的に倒す。ヘラクロスとグソクムシャがいる以上、ギガイアスは何時でも倒せる。だから残して置いて問題ない。問題は、キバナさんのドラゴンポケモンに好き勝手暴れられることだ。ワイドブレイカーによるヒレの攻撃でタネマシンガンは打ち消されるものの、マジカルシャインは直撃。さらに空中でメガヘラクロスに組み付つかれたメガガブリアスは体勢を崩してそのまま地面に落下。殴り合いに発展する。

 

 

「インファイト!メガホーン!」

 

「ドラゴンクロー!ワイドブレイカー!」

 

 

 拳を。角を。爪を。鰭を。ノーガードで打ち付けあうメガヘラクロスとメガガブリアス。拮抗状態だ。

 

 

「ギガイアス!根性見せろ!ガブリアスに当てても構わねえ、ぶっぱなせ!ストーンエッジ!」

 

「ヘラクロス、距離を取ってタネマシンガン!」

 

 

 すると拮抗を破るべく岩の散弾を飛ばしてきたギガイアス。たまらず大きく後退して、タネマシンガンでの攻撃に切り替えるメガヘラクロス。しかしすました顔で爪と鰭を振るい距離を詰めてくるメガガブリアスには効果が薄かった。

 

 

「アブリー、突っ込んで!しびれごな!」

 

「あなをほる!」

 

 

 ならばと麻痺にしようと試みるが、地面に潜って避けられてしまった。だがアブリーにはドラゴンタイプの攻撃は無効。一切効かない。上手くアブリーを盾にしつつもう一度格闘戦に持ち込めば…

 

 

「ギガイアス、成功するまでステルスロック!」

 

「ヘラクロス、空を飛んで地上にロックブラスト!」

 

 

 メガガブリアスが地面に潜ってる間に、メガヘラクロスにロックブラストで岩石を撃ちまくってもらってどんどんフィールドを狭めて行く。地面から勢いよく飛び出して来たら岩に頭をぶつけてダメージを負うという作戦だ。さらに、岩がない空間をわざと作ることによって……

 

 

「ダメだガブリアス!そいつは罠だ!」

 

「ヘラクロス、タネマシンガン!アブリー、マジカルシャイン!」

 

 

 どこから飛びしてくるかを誘導もできる。飛び出してきたメガガブリアスは空振りし、着地したところに同時攻撃が挟撃。大ダメージを受け、さすがに膝をつく。

 

 

「ヘラクロスから潰せ!ドラゴンクロー!」

 

「アブリー、お願いします!」

 

 

 反撃のドラゴンクローを無効化するためにアブリーを向かわせるが、すばやさが足りない。ここでメガヘラクロスにダメージを負わせるわけには…!その瞬間、小さな翅を羽ばたかせて急ぐアブリーの体が光り輝く。これは…!

 

 

「進化だと!?」

 

「アブリー……アブリボン!」

 

 

 翅が大きくなり、体も大きくなったアブリーが進化したアブリボンが段違いのスピードでメガヘラクロスとメガガブリアスの間に割り込んでドラゴンクローを受け止め、なにやらわちゃわちゃ手を動かすアブリボン。何事だ?とポケモン図鑑を見てみると、むしのていこうを忘れて新たな技を覚えていた。

 

 

「かふんだんご!」

 

「ガブリアス!?」

 

 

 メガガブリアスにダメージを負わせ、怯ませる。その隙さえできればあとはヘラクロスの独壇場だ。

 

 

「ヘラクロス、タネマシンガン!」

 

「死なば諸共だ…じしん!」

 

「アブリボン、ヘラクロスにかふんだんご!」

 

 

 メガヘラクロスのタネマシンガンが炸裂する瞬間、まひしているギガイアスごと巻き込んでじしんを放つガブリアスに、アブリボンとギガイアスは戦闘不能。同時にガブリアスも元の姿に戻り倒れる。しかし、メガヘラクロスは健在だ。

 

 

「なんだと!?」

 

「かふんだんご…味方に使えば体力の半分を回復する技です!」

 

 

 アブリボンの置き土産で、メガヘラクロスの体力を全快近く残せた。これは、行けるかも…!




蟲ポケモンを活躍させる小説でかふんだんごを活躍させないわけがなかった。

・ダフネ
マルチバトルはともかくダブルバトルは苦手なのでドラゴンジムは正直旅の最初から勝てる気がしていなかった主人公。ここぞで進化したアブリボンの活躍でメガガブリアスを倒せたことで希望を得る。

・ジュリ
落ち込んでどこぞの風の剣士みたくなってる転移者。いつもの元気は何処に行ったのかと二人に心配される。

・ヨハル
弱い自分に絶望する気持ちは分かるのでジュリの元気づけを請け負った二重人格。わざ構成を見直せば、と地味にアドバイスする。

・キバナ
獣電戦隊みたいな台詞を吐いてるジムリーダー。普通はギガイアスから先に倒しに来るので、ギガイアスを麻痺させられて放置されガブリアスから集中攻撃されてペースが崩れた。

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VSフライゴン

どうも、放仮ごです。もう終盤も終盤です。正直熱意をバイオの方に大部分使ってるのですが、ノンストップで最後まで駆け抜ける所存。

今回はダフネVSキバナ決着。楽しんでいただけたら幸いです。


 メガガブリアスを撃破。ついでにギガイアスも撃破。残るはフライゴンとキョダイマックス要員のジュラルドンだ。こちらはアブリボンがやられたものの、アブリボンのおかげで体力が全快近いメガヘラクロスと、控えのクワガノンとグソクムシャが残っている。さらに天気もすなあらしが終わって、静けさを取り戻している。全ての運が私に向いて来ている。この勝機を失わないようにしないと。

 

 

「ちい!ジュラルドン、フライゴン!」

 

「ヘラクロス、戻って!クワガノン、グソクムシャ!」

 

 

 メガヘラクロスは切札だ。厄介なメガガブリアスを倒したという仕事は果たしたのだから、温存するに限る。フライゴンはグソクムシャで、ジュラルドンはクワガノンでどうにかしよう。

 

 

「荒れ狂えよ!俺のパートナー!スタジアムごと奴を吹き飛ばす!キョダイマックスだ、ジュラルドン!」

 

 

 ジュラルドンをボールに戻し、ダイマックスバンドから溢れるエネルギーで巨大化させたボールをスマホロトムで自撮りしながら荒々しく投擲。まるでビルかタワーのようなキョダイジュラルドンがフィールドに出現する。それに対して私は、何もせず構えた。

 

 

「ほう。この俺のパートナーの全力を、ダイマックスもなしに受けようってのか?」

 

「…ダイマックスは、しません!」

 

「面白え!耐えれるもんなら耐えてみやがれ!蟲ポケモン使いなら、この程度の巨城なんてあっさりと越えて、俺に底力ってもんを見せてみろ!クワガノンにダイロック!グソクムシャにかみなりパンチだ!」

 

 

 キョダイジュラルドンが手をかざした前方に聳え立ち、クワガノンに向けて倒れてくる巨大な岩盤。その下を高速で羽ばたきながら雷を帯びた拳を構えて迫るフライゴン。まずは凌ぐ。迎撃する。それからだ。

 

 

「クワガノン、あなをほる!グソクムシャ、であいがしら!」

 

 

 あなをほるでダイロックを回避し、グソクムシャの音速の一撃がフライゴンの顔面をとらえて殴り飛ばす。であいがしらはねこだましには負けるが、ほとんどの技に対してあとだしでも先制できる(・・・・・・・・・・・)。フライゴンがどんなに速く攻撃を繰り出してこようが関係ない。基本的に一つの試合に一発しか撃てないのが難点だが、かふんだんごといい、であいがしらといい、蟲ポケモンの専用技は強力無比なものばかりなのだ。

 

 

「なに!?」

 

「そのままアクアブレイクです!」

 

「もう一発かみなりパンチ!ジュラルドンはダイロックだ!」

 

 

 であいがしらで殴り飛ばされたフライゴンに追いつき、水を纏った一撃を叩き込む。効果抜群とまではいかないが、等倍で強力な一撃は効いたようで怯ませてかみなりパンチを打たせない。さらに、地面に潜っていたクワガノンがキョダイジュラルドンの前方から飛び出てあなをほるを炸裂させる。こうかはばつぐんだ。だが大ダメージは与えても怯ませることはできず、返しのダイロックの直撃を受けてしまう。炸裂したことですなあらしも発生、見通しが悪くなり音も聞き取りづらくなる。

 

 

「すなあらしだぜ!荒れ狂えよ、吹き荒れろ!」

 

 

 これもこうかはばつぐんだがタイプ一致は入ってないので何とか持ちこたえる。あと一発はあなをほるかダイビングで避ければジュラルドンのキョダイマックスが終わるが、問題はその後でしょうか。このすなあらしで自由に活動できるいわ・じめん・はがねポケモンがいないため、相手の独壇場になってしまう。ごり押しでどうにかできればいいんですが。とりあえず相手の出方を窺うか。

 

 

「クワガノン、ジュラルドンにあなをほる!グソクムシャはダイビング!」

 

「フライゴンはワイドブレイカー、ジュラルドンはグソクムシャにダイロックだ!…なにぃ!?」

 

 

 キバナさんと全く同時に指示をする。クワガノン、グソクムシャ同時に穴を掘り、みずたまりに潜水することでダイロックを確実に回避する。馬鹿正直にクワガノンに撃ってくることはないだろうとは思ってたので、安全策でどっちも回避させた。やはり緊急回避できる技は強い。三回目の技を撃ち、キョダイマックスが解かれて元の姿に戻るジュラルドンと、技が空振りで滞空するしかないフライゴンに、地中と水中からの攻撃が炸裂。その体勢を崩させる。ジュラルドンにはこうかばつぐんだ。

 

 

「クワガノンはジュラルドンにねばねばネット!グソクムシャ、フライゴンにアクアブレイク!」

 

「フライゴン、グソクムシャにかみなりパンチ!ジュラルドンはクワガノンにストーンエッジ!」

 

 

 ジュラルドンの放って来た岩石の散弾を宙返りで避けながらねばねばネットを放ち、その足を地面に引っ付けて拘束し身動きを取れなくするクワガノン。アクアブレイクとかみなりパンチを真正面からぶつけてフライゴンに殴り飛ばされるグソクムシャ。体力が半分を切ってグソクムシャは戻ってきて、強制的にメガヘラクロスが繰り出された。むしろ好都合だ。

 

 

「フライゴン、はがねのつばさでねばねばネットを断ち切れ!ジュラルドンはストーンエッジ!」

 

「ヘラクロス、ストーンエッジをメガホーンで弾いて!クワガノンはフライゴンにねばねばネット!」

 

 

 ジュラルドンは動けないと使えない技ばかりなのか、早急に拘束を解こうとするキバナさん。メガヘラクロスでストーンエッジを防ぎつつ、ジュラルドンの拘束を外そうとするフライゴンの顔にねばねばネットを吹きかけて拘束、小さな手で何とかねばねばネットを外そうともがくフライゴンを糸につないだまま上空に引っ張り上げるクワガノン。二体を地上と上空に分断することに成功する。

 

 

「クワガノン、むしのさざめき!フライゴンを地上に寄せ付けないで!」

 

「フライゴン!そんな蟲、とっとと倒して戻ってこい!はがねのつばさ!」

 

 

 ある程度上空まで舞い上がってから糸を顎鋏で切断して対空するクワガノンと、頭をブルブル震わせてネットを取り払い怒りのままに突撃するフライゴン。クワガノンは衝撃波を放ちながら空を舞い、フライゴンは鋼と化した翼でクワガノンの顎鋏と激突。フライゴンは確か目元をガードする赤い膜があるから視界は良好、すなあらしで視界が悪い分、クワガノンが不利か。

 

 

「空ばかりかまけててもよろしいのですか?身動きが取れなくても容赦はしませんよ!ヘラクロス、インファイト!」

 

「近づいてくれるなら助かるぜ!ジュラルドン、アイアンヘッドで迎撃だ!」

 

「直前で止まってから攻撃です!」

 

 

 空中大決戦とは別に、地上でも激突せんとする互いのパートナー。インファイトを容易に当てずに、アイアンヘッドが届かない絶妙な距離で突き出した両手から蒸気を噴出して急ブレーキ。身動きが取れないため踏み込めず、盛大に空ぶったジュラルドンに一拍おいてから拳の連撃を叩き込むメガヘラクロス。身動きが取れないところにラッシュを叩き込むのはこう、なんか…悪いことをやってる気分になる。そして、アイアンヘッドを悉く避けられたジュラルドンはついに沈黙、戦闘不能となった。

 

 

「クワガノン、フライゴンの首を挟んでむしのさざめきしながら急降下です!」

 

「意地でも離れろ!ワイドブレイカー!」

 

 

 空を見ると拮抗していたので、指示してフライゴンの首を顎鋏で挟み込み急降下させて反撃の余地も残さず決着をつけんとするが、さすがはジムリーダーのポケモン。必死に尻尾を振るってクワガノンの胴体を叩き、無理やり拘束を外してクワガノンを地上に叩き飛ばし、空に逃れた。落下スピードそのままに地面に激突したクワガノンは戦闘不能となる。だけど、射程圏内です。

 

 

「ヘラクロス、タネマシンガン!」

 

 

 すなあらし越しでも地上から狙える高度に降りてきたフライゴンに、両腕とも空に向けたメガヘラクロスの放った無数の弾丸がフライゴンの全身を撃ち抜き、戦闘不能。終わったと認識した途端、一気に疲れがやってきてその場にへたり込む。ダイマックスを使わずに勝利したからか、大歓声が上がった。少しは、強くなれたでしょうか…。




最後の対決はゴジラFWのゴジラVSモンスターXの地上戦とモスラVSガイガンの空中戦がモデルだったり。すてみの一撃と対空射撃は強い。

・ダフネ
ダイマックスを使わずに最強のジムリーダーを倒す快挙を成し遂げた主人公。決して真正面から戦わず、搦め手で実力の差を埋める戦法を完全に物にした。

・キバナ
まさかあなをほるとダイビングを覚えているとは思わずダイマックスを半ば無駄にしたジムリーダー。ジュラルドンが接近戦用の技ばかりだったせいでろくに反撃が出来なかったことが敗因。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガガブリアス

どうも、放仮ごです。今回はヤユイVSキバナとなります。楽しんでいただけたら幸いです。


「ダフネはすごいね…それに比べて私は…」

 

「落ち込まないでくださいよ…」

 

 

 ロビーに戻ったらなんかジュリさんが目に見えて黒いオーラを漂わせて落ち込んでいた。隣のヨハルは横目にジュリさんを見て呆れている。

 

 

「ダフネがダイマックスもなしに蟲ポケモンでキバナを倒しちゃったから落ち込んじゃったんだけどどうする?」

 

「いや、ええと……蟲ポケモンだって頑張れば勝てたんです!ジュリさんのゴーストタイプでも頑張ればいけますよ!」

 

 

 もうなんか慰められる気がしなかったので適当に言うしかない。するとさらに目に見えて落ち込むジュリさん。こんなめんどくさい人だったのか。

 

 

「いや、傍目から見ても完璧な指示だったよ…そっかあ…やったことないけどレート戦でもダイマックスにはあなをほる系統の技だってなんかで見たなあ…」

 

「れーとせん?ってなんです?」

 

「レトルトカレーの仲間?」

 

「あ、いいよいいよ気にしなくて…弱者の戯言だから……ふふふ、ストーリー勢の私が強いわけがなかったんだ……バトルサブウェイを制覇したお兄ちゃんはやっぱりすごいよ、うん…」

 

 

 意味の分からない言葉が羅列して体育座りまでしだすジュリさん。もう完全に闇の住人である。

 

 

「えっと、私がジュリさんをなんとかしておくんでヨハルは試合にどうぞ」

 

「あ、うん。じゃあ行ってくるね」

 

 

 私が苦戦した天気に関してはアマルルガがいるので私達の時より楽になる筈だ。そう思いながら私はイオルブのサイコキネシスでジュリさんを運びながら観客席に向かった。周りの客がギョッとした顔で見てくるが、当の本人に歩く元気すらないのだからしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、ヤユイがジムミッションを突破したというアナウンスが流れ、程なくしてヤユイとキバナさんがバトルコートで向かい合う。

 

 

「お前さん、ヨハルと言ったか。最強のジムチャレンジャーと呼ばれているらしいな」

 

「私はもう誰にも負けない、最強を目指しているので」

 

「そいつはいい信念だ。なら最強のジムリーダー、キバナ様にその強さ、見せてくれよ!行くぜ、ギガイアス、ガブリアス!」

 

「よろしく。タチフサグマ、マニューラ!」

 

 

 すると私の予想と異なり、タチフサグマとマニューラを繰り出すヤユイ。天気は当たり前の様にすなおこしですなあらしとなる。なんで?と思ったが、すぐに答えは分かった。

 

 

「タチフサグマ交代、アマルルガ!」

 

「天気をあられに変えてきたか!凍える寒さだが俺達の熱さは止められないぜ!」

 

 

 タチフサグマをアマルルガに交代し、天気をあられに上書きするヤユイ。すると黙って試合を見ていたジュリさんが口を開いた。

 

 

「多分、ギガイアスとアマルルガ、どっちのすばやさが遅いかわからなかったから交代って手段に出たんだと思う…」

 

「すばやさが関係あるんですか?」

 

「うん、場に出るだけで天気を操作する特性のひでり、あめふらし、すなおこし、ゆきふらし、おわりのだいち、はじまりのうみ、デルタストリームは基本的に、後から発動した天気に上書きされるの。だから天候操作特性を持つポケモンは遅い方が有利になる。でもギガイアスもアマルルガも鈍重だから…」

 

「確実に天気をあられにできる様に交代って手段を使ったわけですね。さすがヤユイ、知識が豊富だなあ」

 

「ヤユイの強さは天性のセンスもだけど、やっぱりもう負けたくないって勉強した知識の豊富さだよね…私、何も努力して来なかったなあ…」

 

「他人を理由に落ち込まないでくださいよ…」

 

 

 また落ち込んでしまったジュリさんからバトルコートに目を移すと、ガブリアスがメガシンカし、マニューラがれいとうパンチで氷のフィールドを展開していたところだった。ああなったマニューラは強い。

 

 

「マニューラ、滑走してギガイアスにかわらわり!アマルルガはふぶき!最高火力!」

 

「ガブリアス、そんな薄氷叩き割れ!あなをほる!ギガイアスはマニューラにステルスロックだ!」

 

 

 スケートの様にフィールドを高速で駆け抜け、アマルルガが放ったブリザード攻撃の風圧に乗ってさらに速度を上げたマニューラの、水平に構えられたかわらわりがすれ違いざまに炸裂。岩のボディに亀裂が入り、そこから凍り付いて動きが鈍るが尖った岩がばら撒かれ見えなくなる。しかし、空中に浮いたのはともかく凍り付いたフィールドに突き刺さった岩は亀裂で場所が分かるのが救いか。

 

 

「マニューラを狙え、ストーンエッジ!」

 

「アマルルガ、フリーズドライで受け止めて!マニューラはそれを使ってれいとうパンチ!」

 

 

 放たれた岩の散弾を、氷漬けにして氷柱と化させて受け止める。さらにその氷柱を蹴って地中から飛び出してきたメガガブリアスの攻撃を三角跳びで回避。冷気を纏った拳をメガガブリアスの背中に飛びつきながら叩き込んだ。

 

 

「ガブリアス、振り落とせ!ギガイアスはもう一度ストーンエッジ!」

 

 

 氷結してメガガブリアスの動きが鈍るも、背中から倒れ込んで押し潰そうとするもマニューラは退避。避けた所にストーンエッジが襲いくるも、四本脚を上手く使って滑走し普段以上のスピードを見せたアマルルガの巨体に防がれ、その長い首に飛び乗るマニューラ。

 

 

「ガブリアス、ワイドブレイカー!ギガイアス、ストーンエッジ!

 

「アマルルガ、首でマニューラを上空に吹っ飛ばしてふぶき!マニューラは上空からかわらわり!」

 

 

 ワイドブレイカーで攻撃力を下げようと試みるキバナさん。ストーンエッジと一緒に襲いかかるも、マニューラはアマルルガの振り上げられた首に乗って跳躍して回避、攻撃はアマルルガが一身に受け止めて、反撃に放たれたブリザードの直撃を受けるメガガブリアスとギガイアス。メガガブリアスは戦闘不能となり、ギガイアスも弱りきったところに空から飛来したマニューラの一撃が叩き込まれ、こちらも戦闘不能。キバナさんがジュラルドンとフライゴンに交代すると同時にアマルルガを戻してガラガラを繰り出すヤユイ。

 

 

「アローラのガラガラか…相手にとって不足はねえ!スタジアムごとぶっ飛ばす!キョダイマックスだジュラルドン!」

 

「ダイマックス、行くよガラガラ!」

 

 

 ビルの様に聳え立つキョダイジュラルドンと、額に擦った先端に炎を纏った骨を振り回して舞いを踊るガラガラが並び立つ。

 

 

「ジュラルドンにダイバーン!マニューラはフライゴンにれいとうパンチ!」

 

「ガラガラにダイロック!フライゴンはマニューラにはがねのつばさで迎え撃て!」

 

 

 骨を高速回転させたガラガラの放った炎の渦が氷を溶かしながら、ジュラルドンが聳え立たせた岩盤が激突。ジュラルドンが遅かったようで天気はすなあらしと化す。その下で高速で滑空するフライゴンと、跳躍したマニューラが交差する。目が追い付かない、あの二人は二つの戦いを完璧に把握して指示している。すごいことだ。

 

 

「ジュラルドンにダイアース!マニューラは滑走してフライゴンから逃げて!」

 

「逃がすなフライゴン、はがねのつばさで氷を砕いて逃げ道をなくせ!ジュラルドンはダイスチルで相殺しろ!」

 

 

 両手で握った骨を勢いよく大地に叩きつけて衝撃波を放つガラガラの一撃を、鋼の一撃で相殺するジュラルドン。激突した粉塵が舞う下で、氷のフィールドを翼で裂きながら追いかけるフライゴンと逃げるマニューラ。なんで逃げて…?と思っていたら、ステルスロックの突き刺さっているであろう亀裂まで接近するマニューラ。

 

 

「ステルスロックを蹴ってトリプルアクセル!ガラガラはダイバーン!」

 

「なに!?ジュラルドン、ダイロック!」

 

 

 マニューラはステルスロックを蹴って反転、高速回転して三連撃をフライゴンに叩き込んで蹴り飛ばすマニューラ。その上で再び放たれた炎の渦がダイロックを形成しきる前にジュラルドンに炸裂。大爆発を起こし、崩れ落ちたフライゴンと共に縮んで倒れ伏すジュラルドン。ヤユイの勝利だ。……さすがは最強のジムチャレンジャー、ジムリーダー8人に一度も負けないでジムチャレンジを突破するとは……今戦ったら勝てる気がしないなあ。




最強のジムチャレンジャーの名は伊達じゃない。

・ダフネ
天気のことについて新たに学んだ主人公。そろそろジュリがめんどくさい。

・ジュリ
ストーリー勢の転移者。レート戦については動画で見たぐらいの情報しか知らないので、バトルサブウェイを攻略したラウラを素直に尊敬している。

・ヨハル/ヤユイ
ラウラの様にステルスロックを利用することを土壇場で思いつき実行した二重人格。

・キバナ
二連続で負けたがあまり気にしてないジムリーダー。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガゲンガー

どうも、放仮ごです。ジュリが落ち込みすぎだと感想で多く言われたのですが、一度死んだと思ったら再会できた兄と、またも永遠に会えなくなるかもという恐怖にさらされるとこうなると思うのです。

というわけで今回はジュリVSキバナ再戦。楽しんでいただけたら幸いです。


 私とヨハルが勝利し、ジュリさんが敗北して燻ってたその翌日。ナックルシティのポケモンセンターの宿泊施設で泊まっていた私達だったが、ロビーで待つも何時まで経ってもジュリさんが出てこない。心配になって見に行こうとすると、ダダリンにアンカーで縛られて引きずられたジュリさんが出てきた。舵輪に修繕した跡が見えるので、徹夜で修理していたのだろうか。

 

 

「あ、ダダリンお疲れ様です」

 

 

 挨拶してみるとダダリンは私にビビってボールに戻ってしまう。相変わらず怖がられてしまってるようだ。ダダリンから解放されて俯せに床に倒れるジュリさん。その痛みで目覚めたのか、むくりと起き上がるジュリさん。目に隈が出来て、見て分かるぐらいに荒んでいた。

 

 

「えっと、どうしたんです?」

 

「ふふ、ふふふふふふ!徹夜でダダリンの舵輪修繕しながら色々考えてたの……もう手段は問わない。呪い殺す…!」

 

「お、おう…」

 

 

 殺意が凄い。メモを手にしてポケモンセンターのカウンターにいる、通称わざおしえおじさんのところへ向かうジュリさん。凄い迫力でわざおしえおじさんを怯えさせ、私とヨハルは自然に寄り添って恐怖した。

 

 

「どうしてあんなに必死なんでしょう…いえ、ラウラさんが行方不明だから当たり前なんですが。それにしたって焦りすぎな気もします」

 

「私はブラッキーが殺されたからあんな荒れたことあったけど、従姉妹だっていうラウラさんに対してあそこまで荒れるかなあ…従姉妹以上の感情があるとか?」

 

 

 ラウラさんが失うことを恐怖しているのは間違いない。ただそこに従姉妹へ向けるものより近い人間に向ける感情が見えた。…もしかして?必要な技を覚えさせたのか戻ってきてメモを片手にブツブツ呟くジュリさんに問いかけてみることにした。

 

 

「ジュリさん、ラウラさんをお兄ちゃんと呼んでましたが……」

 

「うん、それがなに?」

 

「もしかして、ラウラさんに恋焦がれてたりします…?それなら貴方の必死さにも納得がいくのですが」

 

「はえ!?な、なんでそうなるの?」

 

「いえ、性別を勘違いしてお兄ちゃんと呼んでそのまま呼び続けてると聞いたので。その時に恋をしてそのまま兄だと慕い続けているのかと…」

 

 

 拙い推理を披露してみると、ポカーンとなってるジュリさんとその発想はなかったとポンと手を打つヨハル。あれ、なんか違います?

 

 

「まあ、お兄ちゃんがユウリさんとゴールインしたしそうなるのもわかるけど…違うよ?うん。違うんだけど…なんか気持ちが軽くなっちゃった。ありがとう、ダフネ。なんか吹っ切れたよ」

 

 

 そう言って憑き物が落ちた顔で笑うジュリさん。吹っ切れたなら何よりですが……

 

 

「……顔から火が出そうです。恥ずかしい…」

 

「ははは。年頃の私達ならそう考えてもしょうがないよ。…でもね、お兄ちゃん…ラウラのことは、もう二度と失いたくないんだ。あの蟲に殺されないと死にもしないお兄ちゃんがそう簡単にのたれ死ぬとは思えない。プラズマ団が攫ったっていうのなら…ぶっ潰してでも取り戻す。そのためにも…こんなところでキバナに負けてる場合じゃないんだ」

 

 

 そう力強く拳を握りしめながらジュリさんはギラギラした目で出口に歩いて行く。私を追い詰めた時のラウラさんを彷彿とさせるその姿は、生き写しに見える。

 

 

「私は弱い。だけど…弱者なりの勝ち方を見せてやんよ」

 

 

 その言葉に臆しながらも、私とヨハルは慌ててついて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前回と同じく、あっさりとジムミッションを突破したジュリさん。キバナさんは相変わらず手加減なしで行くと宣言すると両者構えた。

 

 

「呪い殺すよ!ゲンガー、プルリル!」

 

「物騒だな。呪いなんて叩き潰してやれ、ギガイアス、ガブリアス!」

 

 

 前回入れてなかったプルリルを入れているのか。みちづれでガブリアスを落とす作戦だろうか?天気はすなあらしとなり、両者ともにメガリングを構え、七色の光が溢れる。

 

 

「大いに暴れろ!」

 

夢幻闇夜(むげんあんや)(いざな)え!」

 

「「メガシンカ!」」

 

 

 ゲンガーはメガゲンガーに、ガブリアスはメガガブリアスに。ふゆうのアドバンテージを捨てるのか。なにをするつもりなのか。

 

 

「ガブリアス、ゲンガーにあなをほる!ギガイアスもゲンガーにストーンエッジだ!」

 

「ガブリアスは、そうするよね!ゲンガー、プルリル!ギガイアスにシャドーボールとみずのはどう!」

 

 

 メガゲンガーはシャドーボールでストーンエッジを弾き飛ばしながら攻撃。プルリルもそれに続いてすなあらしで砂が混じって泥水となったみずのはどうを放ち、ギガイアスを戦闘不能にする。

 

 

「今!宙返りで避けて!」

 

 

 さらにメガガブリアスの地中からの攻撃もタイミングを読んでメガゲンガーに宙返りで回避させるジュリさん。私達の試合を見てちゃんとタイミングを計っていたのか。

 

 

「ちい!フライゴン!」

 

 

 ギガイアスを戻してフライゴンを繰り出すキバナさんに対し、ジュリさんがにやりと笑う。次の一手が徹夜で考えた作戦なのだと、すぐにわかった。

 

 

「ギガイアスを倒してくれてありがとうな!これで憂いなく撃てるぜ!じしん!」

 

「プルリル、みずのはどう!ゲンガーはその上に乗ってほろびのうた!」

 

「なに!?その技は…!」

 

 

 じしんに襲われるのを、プルリルが身を挺してみずのはどうを形成してその上に乗ることで回避しながら、美しくも悍ましい歌を奏でるメガゲンガー。それは、聞いたものを死に誘う呪いの歌。ゴーストタイプらしい技だ。

 

 

「聴いたもの全てに等しく滅びを与えるほろびのうた…逃れる術は交代することのみ!だけど…」

 

「かげふみで俺のポケモンは逃げられない、か。だがその前にゲンガーを倒しちまえばいい話だ!じしん!」

 

「プルリル、交代。ゴルーグ!ゲンガーを投げ飛ばして!」

 

 

 再びじしんが襲うも、交代したゴルーグがその巨大な手でメガゲンガーをむんずと掴んで上空に勢いよく投げ飛ばし、じしんの衝撃を引き受ける。ならばとフライゴンを空に舞い上がらせるキバナさん。何が何でもメガゲンガーを倒すつもりらしい。

 

 

「かみくだく!」

 

「あやしいひかり!」

 

 

 追いかけてきたフライゴンを、全身から眩く紫色の光を放って混乱させて回避するメガゲンガー。なるほど、オニオンさんから渡された当初から覚えさせていたさいみんじゅつとゆめくいを忘れさせて、新たにほろびのうたとあやしいひかりを覚えさせたのか。さいみんじゅつをあやしいひかりに変えたのは命中率からだろうか?

 

 

「ガブリアス、あなをほる!落ちてきたところを狙え!」

 

「ゴルーグ、じだんだ!」

 

 

 混乱するフライゴンの背中に回り込んで乗りこなしたメガゲンガーが落下してきたのを確認するなり、メガガブリアスを地中に潜らせるキバナさんだが、それは地面を大きく揺らされたことで阻止され、飛び出してきたメガガブリアスの頭をむんずと掴むゴルーグ。同時にフライゴンは地面に勢いよく叩きつけられ、混乱したままフラフラと浮かび上がる。そして…

 

 

「グッドナイト。お疲れ様、ゲンガー」

 

「ちい……やられたか」

 

 

 メガゲンガーとフライゴン、ゴルーグに頭部を鷲掴みにされたメガガブリアスが力尽き、三体揃って戦闘不能となる。交代したプルリルだけ無事だ。ほろびのうた、存在は知ってはいたが実際に見ると凶悪な技ですね……メガゲンガーのかげふみと合わさると恐ろしいものだ。

 

 

「ジュラルドンだけで三体潰せばいい話だろう?!キョダイマックスだ!スタジアムごとぶっ飛ばせ!」

 

「交代、ミミッキュ。行くよゴルーグ、ダイマックス!」

 

 

 高層ビルと巨大ロボットが向かい合う。迫力が段違いだ。

 

 

「キョダイゲンスイ!」

 

「ダイアース!」

 

 

 そして激突し、あっさりと決着がつくのだった。…吹っ切れたジュリさん、恐ろしいなあ。




メガゲンガー使うならほろびのうたよな。

・ダフネ
ジュリがラウラに禁断の恋をしているんじゃないかと勘繰って大恥かいた主人公。普通になりたいからあんな事件犯したぐらいに結構お花畑な頭している。

・ジュリ
落ち込みながらも二人の試合をじっくり観察し、ほろびのうたを使おうという結論に至った転移者。ほろびのうたはなんか言われそうだからと封印していたが、勝利の為ならなりふり構わなくなった。

・ヨハル
呑気にダフネの言い分に納得してた二重人格。こちらも結構頭がお花畑。

・キバナ
まさかほろびのうたを使ってくるとは予想もしてなかったジムリーダー。じしんをあんな方法で避けるとは、と逆に感心してしまった。

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VSローブシン

どうも、放仮ごです。ついに150話行きました。今回はダフネ視点から離れて、同時刻のプラズマ団side。ラウラがどうなったかを描きます。楽しんでいただけたら幸いです。


 ダフネたちがナックルジムを攻略している頃。ラウラと言う即戦力を手に入れた新生プラズマ団が、プラズマフリゲートでカンムリ雪原の巨人の寝床へと赴いていた。

 

 

「ようやくだ。ようやく、我が計画も最終段階に移行する」

 

 

 そう宣言するグレイはもちろん、シュバルツ、ヴァイス、ダークトリニティ他各地に分散されていたプラズマ団したっぱも勢揃いであり、新生プラズマ団が勢ぞろいしたこの場では、彼らの計画も大詰めとなっていた。

 

 

「親愛なる同士諸君。各地のトレーナーから強奪(救済)、または解放され嘆いていたものを捕獲(保護)した強力なポケモン達は揃えているな?これより、我らが救済計画に必須な伝説ポケモン、レジギガスの捕獲作戦を決行する」

 

 

 そう宣言するグレイに呼応するしたっぱたち。グレイ自らの手で、類い稀なる頭脳による巧みな話術を用いて勧誘、懐柔した者でほとんどが構成されているしたっぱたちの信頼は厚く、士気はとてつもなく高い。

 

 

「作戦内容は簡単だ。ここに、強欲にも伝説の力を個人で保有していたジムリーダーや研究者から救済したレジアイス、レジロック、レジスチル、レジドラゴ、レジエレキがいる。これによりこの、レジギガスの生息する巣穴へ入れるようになる。諸君らは幹部をリーダーとした四人体制で順番に赴き、限界まで戦闘し、レジギガスを弱らせていくのだ。たとえどんなに強大かつ強力無比な最強の伝説のポケモンであろうと、数には敵わぬ。我らが最大の強みである数の利で、我らが大願を成就するための戦力を確実に獲得するのだ!」

 

『『ウオオオオオオオオオ!!』』

 

 

 したっぱたちの士気を高める雄叫びに満足げに頷くと、幹部に向き直るグレイ。その目には確かな信頼があった。

 

 

「ヴァイス、シュバルツ。ダークトリニティ。お前たちも頼むぞ。したっぱたちをまとめ上げ、レジギガスを我が手に…!」

 

「了解ですよォ、ボス」

 

「我らが大願成就のために…!」

 

「「「御意」」」

 

「そうだ、こいつも幹部として扱え。あれから三日…ようやく、言うことを聞く様になったのでな」

 

 

 そう言ってグレイが手招きすると、空に待機していたプラズマフリゲートの甲板から飛び降り、手にしたプレシャスボールから出したゲノセクトに乗って降下してきた少女が飛び降りるとグレイの前に傅く。その姿を見て驚くシュバルツとヴァイス。

 

 

「グレイ様、この者は…!大丈夫なのですか…!?」

 

「ハッハッハ!確かに味方だったらこれほど心強いものはいないですね!さすがグレイ様!」

 

「心配するなシュバルツ。彼女はダークトリニティと同じく、私の必死な説得(・・)によって心を動かし、こちらについた。今では忠実な我が(しもべ)だ。説得する際にやりすぎて低体温症を患わせてしまったが、我がプラズマ団驚異の科学力による温熱サポーターを装着してもらっているから問題はない。伝説ポケモンキラーとしての強さを遺憾なく発揮してくれるだろう」

 

 

 グレイに傅くのは、小柄な体に灰色の戦闘服の様な物を着込みシュバルツのものと同じ軍帽を被った長い赤髪の少女。タイツ状になっている二の腕や太腿、踝などに黒い帯状の温熱サポーターを付けていて首元にプラズマ団のシンボルが描かれた白のマフラーを巻いて口元を隠しており物静かな雰囲気を漂わせる。

 

 

「私の忠実なる(しもべ)ラウラ。期待しているぞ」

 

「ああ、任せてくれグレイ。お前を王にする為なら俺は巨人だろうがなんだろうがぶっ潰してやる」

 

 

 紛れもなく彼女は、アクロママシーン改により、「ゲーチス=グレイ」と洗脳されたダークトリニティの様に「グレイの理解者」として洗脳されたジムリーダー・ラウラその人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 既に数多のプラズマ団が倒れ。6番目の部隊としてしたっぱ三人を連れて、二回目となる巣穴の空間に降り立った俺は、目の前に聳え立つ異様な圧力を感じさせる巨体で咆哮を上げるダイマックスレジギガスを見上げて溜め息を吐く。これでしたっぱを入れ替えて幹部たちが挑んで12回目。まだまだしたっぱはいるが、それを統率する幹部に余裕がなくなってきた。グレイから聞いていた通り、レベル100なのは間違いないらしい。しかも、俺達第六部隊が来る前に既にスロースタートは終わってるらしく、全力全開モードだ。

 

 

「グレイ曰くこの世界最強のポケモン、か」

 

 

 最初にグレイから聞いた時にはレベル100なんて野生に存在するのか、とツッコんだものだ。俺の知らない間にこんなヤバい奴まで実装されているとはな。システムは知らんがゲームでもこいつを捕まえるのは至難の技だろう。あのムツキとルミがスロースタート状態でもあっさり倒されたのも頷ける。……そんな情報何時に聞いたんだっけか。思い出そうとすると凍傷がずきりと痛む。まあ、どうでもいい。やるべきことはひとつだ。

 

 

「グレイを王にするために、やるぞお前らあ!」

 

「「「おう!」」」

 

 

 俺はマッシブーンを、したっぱAことエーダはローブシンを、したっぱBことボルドーはバタフリーを、したっぱCことカーターはクレッフィを繰り出した。いいな、特にボルドー!お前のセンスはいい!

 

 

「ボルドー、お前のバタフリーはキョダイマックスできるんだったな!?とにかく状態異常を重ねがけにしろ!先行部隊がもうどくとこんらんとやけどを重複させているようだがこれにまひかねむりが入ると楽になる!」

 

「了解!」

 

「エーダは俺のマッシブーンと共に奴の攻撃を受け止めつつ反撃だ!バタフリーに攻撃を向かせるな!」

 

「わかりました!」

 

「カーターはとにかくサポートに徹しろ!決してサポートを絶やすなよ!」

 

「承知したッス!」

 

「来るぞ、構えろ!」

 

 

 指示を速やかに伝えると、レジギガスの巨体が動き出す。拳を構え、ただ振り下ろすだけの一撃。狙いはバタフリーだ。ボルドーの擬似ダイマックスバンドにダイマックス粒子が溜まるまで、攻撃させるわけにはいかない。なにせ蟲は耐久に難ありだからな!

 

 

「マッシブーン、受け止めろ!」

 

「リフレクター!」

 

 

 それを、バタフリーの前に飛び出したマッシブーンが両腕を突き出して受け止める。カーターのクレッフィで物理に対する防御力が上がったおかげで持ち堪える。

 

 

「ばかぢから!」

 

「アームハンマー!」

 

「まきびし!」

 

 

 マッシブーンが力の限りレジギガスの拳を持ち上げて、そこに飛び込んだエーダのローブシンが手にしたコンクリート柱を振り上げ打ち上げる。右腕が打ち上げられて、体勢を崩して後退したレジギガスはカーターのクレッフィが巻いたまきびしに足を乗せて分かりやすく悶絶する。隙だらけだ。

 

 

「キョダイマックスだ、バタフリー!キョダイコワク!」

 

 

 そこに襲いかかるボルドーのバタフリーのキョダイコワクが襲いかかり、レジギガスはまひしたのか分かりやすくその動きが鈍る。これでこんらん・もうどく・やけど・まひ状態の重複だ。そうなったらスロースタートとなんら変わらないなあ!

 

 

「たたみかけろ、グロウパンチ!」

 

「きあいパンチ!」

 

「キョダイコワク!」

 

「ミラーショット!」

 

 

 そこに襲いかかる俺達第六部隊の一斉攻撃。押されつつあるレジギガスは、それでも胸の点字の様な部位を光らせて右手でマッシブーンを簡単に握り包んでしまった。固有技のにぎりつぶすか!だがな!

 

 

「そのマッシブーンは見かけ倒しの筋肉じゃないぞ…!」

 

 

 グググググッ、と力任せに無理やり開閉された右拳からマッシブーンがにぎりつぶされる勢いを利用して上空に飛び出した。天高くで拳を構えて急降下する姿は、前世で見たヒーローの様で。

 

 

「決めろ!グロウパンチ!」

 

 

 急降下からの拳が頭頂部に炸裂。レジギガスの巨体がズズズズズッと轟音を立てて崩れ落ち、俺は通信機を取り出して作戦成功をグレイに伝えるのだった。




グレイの理解者、つまり親友として洗脳されたラウラ。言動はあまり変わらないけど記憶とかねつ造されてる模様。

・ラウラ
悪堕ちした元主人公。ジムリーダーからプラズマ団幹部に。転生者同士苦難を共にしてきたグレイの理解者、という洗脳。キュレムのこごえるせかい直撃により全身低体温症に苛まれており麦わら帽子の代わりに軍帽とマフラーを身に着けるようになった。温熱サポーターはポケスペのサキとジュピターのが元ネタ。服装はシュバルツのと一緒。

・グレイ
新生プラズマ団の王。懐柔できそうな人間は天才な頭脳を駆使した口八丁で相手の一番求めていることを提示することで丸め込み、敵対する者は完全敗北させることで精神に隙ができたところをアクロママシーン改で洗脳することで前プラズマ団に負けない一大組織を築き上げた男。部下からはカリスマ的存在として見られており、その実態は知られていない。その目的はレジギガスで…?

・シュバルツ
強力な幹部を求めたグレイにその強さを見込まれ、ゲーチスでもNでもアクロマでも成し遂げられたなかったポケモン救済を成し遂げると説得されて白ズマ団を裏切り幹部になった男。ゲーチスに心酔していたことをよく知っていたダークトリニティさえグレイに仕えたことで王として尊敬している。

・ヴァイス
元々その実力で黒ズマ団にスカウトされたしたっぱだったが、ろくに暴れさせてくれないゲーチスやアクロマに不満を抱いていたところ、壊滅した際に現れ強力な幹部を求めたグレイの提示した「好きに暴れられる」と言う条件に二つ返事で頷き幹部となった女。

・ダークトリニティ
プラズマ団をゲーチスに断りなく私的に使役していたグレイに襲撃するも返り討ちにされ、「ゲーチス=グレイ」だとアクロママシーン改で洗脳された三人組。

・エーダ
新生プラズマ団のしたっぱA。元黒ズマ団。サイトウに憧れたチャレンジャーからローブシンを強奪し使っている。名前の由来は「Aだ」。

・ボルドー
新生プラズマ団のしたっぱB。元黒ズマ団。ラウラに憧れたチャレンジャーからバタフリー(キョダイマックス個体)を強奪して使っている。名前の由来は頭文字Bで適当。

・カーター
新生プラズマ団のしたっぱC。元白ズマ団。トレーナーに捨てられていたクレッフィを保護して使っている。名前の由来は頭文字Cで適当。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板10

どうも、放仮ごです。今回はラウラ失踪後の掲示板。ビート戦やキバナ戦の掲示板書こうかどうしようかなと思ったけどやめました。さすがに入れるタイミングを逃した。

相変わらず脱線しまくり掲示板民。楽しんでいただけると幸いです。


行方不明になったジムリーダーラウラについて語るスレ

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

まだ信じられねーよなあ、あのラウラがプラズマ団に負けたかもしれないって

 

65:名無しのトレーナー

少なくとも以前のニュースじゃ幹部のシュバルツを追い返したって話だぞ

 

66:名無しのトレーナー

人質を取ったとはいえモコウや強豪ジムチャレンジャーを倒したシュバルツを追い返している時点でなあ

 

67:名無しのトレーナー

幹部相手でも負けない筈のラウラが負けたってことはつまり?

 

68:名無しのトレーナー

新生プラズマ団のボスとやらが直接出向いたんだろうなあ

 

69:名無しのトレーナー

グレイって名前以外正体不明のボスなあ

 

70:名無しのトレーナー

ターフジムから帰宅中に行方不明になったんだっけ?

 

71:名無しのトレーナー

同棲しているチャンピオンの話とジムトレーナーの話を合わせるとそうなるらしいな

 

72:名無しのトレーナー

帰宅中に襲撃されたか不意打ち喰らって拉致られたか…

 

73:名無しのトレーナー

付近の住民が轟音を聞いて見に行ったらしいけど、あのイッシュ地方の伝説のドラゴンポケモンのゼクロムとラウラが戦ってたって話だぞ

 

74:名無しのトレーナー

えっ、ゼクロムって確か前のプラズマ団の王のNに従ったドラゴンじゃ…

 

75:名無しのトレーナー

俺の聞いた話だと光り輝くドラゴンと戦ってたって聞いたが

 

76:名無しのトレーナー

シンオウ創造伝説のアルセウスも現れていたって話だぞ

 

77:名無しのトレーナー

待て待て待て

 

78:名無しのトレーナー

>>77

なんだどうした

 

79:名無しのトレーナー

>>77

話したいことあるならはよ言え

 

80:名無しのトレーナー>>77

警察情報にあっただろ、伝説ポケモンを見たって証言した人間は多いけれど大規模攻撃が行われた物証はどこにも見当たらなかったって

 

81:名無しのトレーナー

あー、ニュースで見たなあ

 

82:名無しのトレーナー

でもそんな沢山の人間が一斉に虚言を言うかね

 

83:名無しのトレーナー

あと遺跡が見える公園全体が水浸しだったとも聞いたな

 

84:名無しのトレーナー

カイオーガでも暴れたんかね

 

85:名無しのトレーナー

>>84

そうなったらガラルみたいな標高が低い地方なんて海に沈んでるんだよなあ

 

86:名無しのトレーナー

ゲンシカイキカイオーガを知らんのか

 

87:名無しのトレーナー

アレはガチでホウエンが海に沈むところだったんやぞ

 

88:名無しのトレーナー

ダイゴを倒した現チャンピオンのユウキが捕獲してなかったら地図からホウエンが消えていたって聞いたぞ

 

89:名無しのトレーナー

なんならそのユウキがメガレックウザで隕石を破壊してなかったら世界滅んでたんだよなあ

 

90:名無しのトレーナー

当時11歳の子供がやる偉業じゃねえ…

 

91:名無しのトレーナー

なんなら数年前、時間が滅茶苦茶になったことあったろ。あれも元チャンピオンのヒカリがディアルガ捕まえなかったらとんでもないことになってたぞ

 

92:名無しのトレーナー

一度チャンピオンになったけど辞退してシロナに譲ったっていう少女か

 

93:名無しのトレーナー

カロスのフレア団騒動なんか世界滅亡してもおかしくなかったんだけどな

 

94:名無しのトレーナー

そういやあの事件解決した少女もチャンピオンカルネを倒してたけど辞退してたな…なんて言ったっけ

 

95:名無しのトレーナー

たしかセレナだろ?イベルタルを従えているっていう

 

96:名無しのトレーナー

レッドとかいうロケット団の野望を打ち砕いた英雄を忘れるな

 

97:名無しのトレーナー

あの人は伝説過ぎるから…

 

98:名無しのトレーナー

ソルガレオとジガルデを従えているミヅキも結構なやべーやつだけどな

 

99:名無しのトレーナー

チャンピオンじゃないけど真実の英雄トウヤも忘れるな

 

100:名無しのトレーナー

レシラムを従えたあの英雄が理想の英雄Nに勝てなかったら俺達、ポケモンを手放さなきゃいけないところだったもんな

 

101:名無しのトレーナー

まさか二度もプラズマ団が復活するとは思わなんだ

 

102:名無しのトレーナー

思想が思想だからな。宗教団体と一緒で思想が正しいと思う人間がいる限り存在し続けるぞ

 

103:名無しのトレーナー

…まあ、言っちゃあなんだけど悪の組織の中では最も穏便な思想だからな

 

104:名無しのトレーナー

いや他の組織が物騒すぎるor意味不明すぎるんよ

 

105:名無しのトレーナー

ロケット団は分かりやすいテロリスト集団

 

106:名無しのトレーナー

アクア団は海を増やそうとかいう自然保護団体の様なナニカ

 

107:名無しのトレーナー

やってることは海賊なんだよなあ

 

108:名無しのトレーナー

俺マグマ団だけどアクアの連中本当に頭おかしいぞ

 

109:名無しのトレーナー

>>108

マグマ団のアイドル・カガリの部下だとぉ…ゆ゛る゛さ゛ん゛!

 

110:名無しのトレーナー

ギンガ団は新宇宙創造だっけ?

 

111:名無しのトレーナー

ギンガ団本当にトチ狂ってんな…

 

112:名無しのトレーナー

やってること湖爆破したり発電所を占拠したりテロリストのそれ

 

113:名無しのトレーナー

フレア団は美しい世界を創るために自分たち以外の世界を滅ぼそうとしたやべーやつら

 

114:名無しのトレーナー

俺、死にたくなかったから大枚はたいてフレア団のスーツ買って入団したけど思想は理解できないし計画は止められるしで無駄金だったんだよなあ

 

115:名無しのトレーナー

>>114

フレア団の残党がいるぞ、吊るしあげろー!

 

116:名無しのトレーナー

>>114

しかもあのスーツたしか500万するやつだぞ、金持ち死すべし慈悲はない!

 

117:名無しのトレーナー

>>114

正直もっとも危険な組織の一員だったやつが掲示板にいると思うと草なんだ

 

118:名無しのトレーナー

>>114

しかもフレア団の幹部はみんな美人な女科学者だって話だぞ、ゆるせねーよなあ?

 

119:名無しのトレーナー>>114

>>115

>>116

>>117

>>118

>>119

ユルシテ…ユルシテ…あ、上司は確かに美人でした(^O^)変なゴーグル付けてたけど

 

120:名無しのトレーナー

>>114

ぜつゆる

 

121:名無しのトレーナー

なんで悪の組織の女幹部はみんな美人ばっかりなんだよぉおおおおおお

 

122:名無しのトレーナー

羨ましさで発狂しているやついるの草

 

123:名無しのトレーナー

それはそう

 

124:名無しのトレーナー

悪女に限って美人なんだよなあ

 

125:名無しのトレーナー

プラズマ団のヴァイスとかも普通に美少女だしな

 

126:名無しのトレーナー

あと言ってないのはスカル団とエール団ぐらいか?

 

127:名無しのトレーナー

どっちもチンピラ紛いの組織だし悪の組織認定しなくてもよくね?

 

128:名無しのトレーナー

たしかに。特にスカル団とか今じゃすっかりいい奴等だしな

 

129:名無しのトレーナー

……ずーっと考えてたんだけどさ

 

130:名無しのトレーナー

>>129

どしたん

 

131:名無しのトレーナー

>>129

なんかに気付いたなら聞いてやるで

 

132:名無しのトレーナー

>>129

そもそもラウラが行方不明になった話してるのに脱線しすぎなんだが軌道修正できる?

 

133:名無しのトレーナー>>129

>>132

軌道修正できるというか、ラウラが襲われたであろう現場の話なんだけど

 

134:名無しのトレーナー

とりあえずわかりにくいからコテハンつけてもろて

 

135:名無しのトレーナー

何に気付いたんやろ(ワクワク

 

136:今気付いたことがある>>133

>>134

じゃあこれで。悪の組織の悪行の話聞いていたらさ、一つ思い出したんだけど

 

137:名無しのトレーナー

ほうほう

 

138:名無しのトレーナー

名前が草なんだ

 

139:名無しのトレーナー

今w気付いたことがあるw

 

140:名無しのトレーナー

どこぞの二神かな?

 

141:今気付いたことがある

お前ら、一年前のイッシュの氷漬け事件覚えてるか?

 

142:名無しのトレーナー

>>141

そりゃもう

 

143:名無しのトレーナー

>>141

あんな衝撃的な事件、一年前だし覚えてるわ

 

144:名無しのトレーナー

>>141

それがどうかしたん?

 

145:今気付いたことがある

それを実行したプラズマ団が一人のトレーナーに潰されて、氷が解けた時のことって覚えてる?結構ニュースになってたんだけど

 

146:名無しのトレーナー

>>145

そりゃたしか…氷が一気に溶けて洪水になりかけたってやつ?

 

147:名無しのトレーナー

>>145

家の中まで水浸しの水害になったんだっけ

 

148:名無しのトレーナー

>>147

水浸し?最近どこかで聞いた様な

 

149:今気付いたことがある

もう答え言うけどさ。ターフタウンの公園が水浸しだったってのさ、ラウラがそこで戦って氷漬けにされて敗北したからなんじゃないかって

 

150:名無しのトレーナー

>>149

なん……だと……?

 

151:名無しのトレーナー

>>149

その発想はなかった

 

152:名無しのトレーナー

今気付いたことがあるニキは頭いいな

 

153:名無しのトレーナー

そりゃどんなにポケモンバトルが強くても氷漬けにされたらどうしようもないよなあ

 

154:名無しのトレーナー

でもおかしくないか?

 

155:名無しのトレーナー

なにが?

 

156:今気付いたことがある

結構自信ある仮説なんだけど…

 

157:名無しのトレーナー

たしかあの氷漬けってプラズマ団の空中戦艦からの攻撃だろ?それならターフタウンごと氷漬けにされないとおかしくないか?

 

158:今気付いたことがある

あー……たしかに

 

159:名無しのトレーナー

論破されんのかい

 

160:名無しのトレーナー

なんだ、戯言かあ。解散解散

 

161:名無しのトレーナー

氷タイプの第三のイッシュのドラゴンポケモンがいるってどこかで聞いたけどそれじゃね?

 

162:名無しのトレーナー

第三のドラゴンって何ぞや?

 

163:名無しのトレーナー

そんなのいるん?

 

164:名無しのトレーナー

イッシュのアレはプラズマ団が捕まえたそのポケモンの仕業だってことか?

 

165:名無しのトレーナー

まあ確かに街一つ凍らせるなんて伝説ポケモンでもなきゃ無理だわな

 

166:名無しのトレーナー

白でも黒でもない灰色の竜、か

 

167:名無しのトレーナー

灰色…なんか最近聞いた様な

 

168:名無しのトレーナー

グレイって灰色って意味だっけ

 

169:名無しのトレーナー

ますますラウラがプラズマ団の王グレイに倒されたって仮説が浮かび上がるんじゃが

 

170:名無しのトレーナー

むしろ氷漬けってラウラのモスノウの専売特許じゃないかなあって

 

171:名無しのトレーナー

てか確かウルガモスも持ってたから不意打ちでもない限り負けそうにもないけど

 

172:名無しのトレーナー

伝説ポケモンが沢山目撃されたけどその痕跡がないってのが気になるなあ

 

173:名無しのトレーナー

まあ警察とチャンピオンユウリが死にもの狂いで捜してるって報道されてたしそのうち見つかるでしょ

 

174:名無しのトレーナー

>>173

氷漬けにされてるなら最悪死んでるんだよなあ

 

175:名無しのトレーナー

わいドクターだけど氷漬けは普通に命に関わるぞ?凍傷に低体温症に割と洒落にならん症状ばかりや

 

176:名無しのトレーナー

氷漬けにされてないことを祈ろう

 

177:名無しのトレーナー

最悪水責めにあったぐらいでしょ、うん

 

178:名無しのトレーナー

>>177

それもっと危険が危ない

 

179:名無しのトレーナー

…そもそもプラズマ団に負けて失踪したって話になるけどさ、お前ら

 

180:名無しのトレーナー

>>179

なんだよ藪からスティックに

 

181:名無しのトレーナー

>>179

おん?喧嘩売ってるんなら買うぞオラァン

 

182:名無しのトレーナー>>179

いや、もしかしたらグレイ様に賛同して失踪したかもしれんやろ

 

183:名無しのトレーナー

>>182

は?ジムリーダーだぞおめえ

 

184:名無しのトレーナー

>>182

婚約者に何も言わないで失踪する様な性格じゃないのは俺らがよく知ってるだろ

 

185:名無しのトレーナー

>>182

グレイ様言ってて草。プラズマ団か?

 

186:名無しのトレーナー

>>182

蟲ポケモンの楽園を作るとか言われたらホイホイついて行くとしか思えないほどの蟲好きだけども…

 

187:名無しのトレーナー

>>182

今のプラズマ団、思想とか滅茶苦茶な組織なんですがそのどこに賛同する要素があるんですかねえ…

 

188:名無しのトレーナー

>>187

ぶっちゃけ解放させたいのか強奪したいのかわからんもんな

 

189:プラーズマー>>182

>>185

ばれたならしょうがない

 

190:名無しのトレーナー

>>189

マジでプラズマ団なん?

 

191:名無しのトレーナー

>>189

え、冗談ではなく?

 

192:プラーズマー

そうとも俺はプラズマ団広報部。ネットでプラズマ団のよさを広め団員を増やしているのさ!

 

193:名無しのトレーナー

>>192

こんなところで遊んでないで仕事しなさい

 

194:名無しのトレーナー

>>192

ぶっちゃけこの場にお前たちに賛同する馬鹿はいないぞ

 

195:プラーズマー

そうかな?ラウラ様は我々に賛同して幹部となられたがなあ!

 

196:名無しのトレーナー

>>195

ナ、ナンダッテー

 

197:名無しのトレーナー

>>195

さすがに嘘やろ、釣り乙

 

198:名無しのトレーナー

>>195

嘘だ、僕を騙そうとしてる

 

199:名無しのチャンピオン

>>195

ラウラはどこだ教えろゴラァアアアアアアアアアア!!

 

200:名無しのトレーナー

ブチギレチャンピオンがいて草。いや、笑えないけど

 

 

 

・・・・・・・・・




プラズマ団広報部とかいう地味に仲間を増やして貢献している部署。なにやら他地方の主人公の話題が上がってますねえ?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガリザードン

どうも、放仮ごです。最後も最後なので考えを変えまくりながら書いたせいで遅れました、申し訳ねえ。ラストは決めてるけどそこまでの道程が安定しないのです。

今回はセミファイナルトーナメント開催、そして始動。楽しんでいただけると幸いです。


 あれから一週間近く。今年のジムチャレンジを勝ち抜いた6人が出揃い、セミファイナルトーナメントが開催される運びとなった。プラズマ団の影響で何人ものチャレンジャーがジムチャレンジ期間中にトレーナーをやめていったと聞くが、それでも6人も残るとは。あ、サタリアもいる。無事モコウさんに勝てたみたいですね、よかった。どうやってキバナさんに勝ったのだろう…?私とジュリさんとヨハルとサタリア、あと2人は見覚えがないが、なんか隣でジュリさんがあわあわしてる。

 

 

「あわ、あわわわわわ…」

 

「どうしたんです?ジュリさん。そんなに慌てふためいて」

 

「……いやー、うん。気のせいだよね、気のせい。こんなところにいるはずないもんね……」

 

「?」

 

 

 いつにもまして変なジュリさんに首を傾げる。まあ、ラウラさん失踪の精神的ダメージが減っている様なので何よりだ。すると、私達6人のジムチャレンジャーが集まったバトルコートに現れるダンデさんと、マントを着込んだユウリさん。怒りを抑えているのか堅い表情だ。

 

 

「ではこれより、セミファイナルトーナメント開催する!……む?」

 

 

 ダンデさんが開催を宣言したその時、巨大モニターが灰色の砂嵐状態となり、注目がそこに集まった。二年前にもこんなことあったような……いや、あの時は確かセミファイナルトーナメント後のユウリさんとダンデさんの対決の直前のことだったか。

 

 

「ちょっと、ちょっと待って!?」

 

「おいおい!モニターを見ろよ!」

 

「なんなんだ、あれ……?」

 

 

 ざわめく観客たち、何事かと見上げるジムチャレンジャーたちと、ユウリさんとダンデさん。砂嵐が消え、映し出されていたのはPのエンブレム。嫌と言うほど知っている、あのマークは…!ユウリさんとジュリさんの表情に怒りが宿った。プラズマ団…!

 

 

『初めまして、かな』

 

 

 そしてPのエンブレムが雷が落ちた様な無駄にカッコイイ演出と共に消えて、映し出されたのは見たこともない人物。引きのカメラで全身が映し出されたその姿は、右半分が白で左半分が黒の、中央にプラズマ団のエンブレムが描かれたローブを身に纏った20代前半と思われる若く整った顔の男。この場にいる誰もが疑問符を浮かべる。シュバルツやヴァイスじゃない、何者だ?

 

 

『愚民の諸君、ごきげんよう。私の名はグレイ。新生プラズマ団の王だ』

 

 

 一見虫も殺さぬ好青年の様な雰囲気を一気に崩した見下した様な笑顔と共に名乗られたのは、シュバルツやヴァイスが心酔してその名を呼んでいた、プラズマ団の王の名。こんなに若い人間だなんて……悪の組織のリーダーって壮年の人物が多いと言う話だから勝手に40代ぐらいを想像していた。

 

 

『さっそくで悪いがシュートシティにいる諸君。君達には私が世界の王となるための生贄となってもらうことにした。チャンピオンと元チャンピオン、ジムリーダーが勢ぞろいしている場所だ。我らが力を示すにはちょうどいい』

 

「勝手なことを言うなー!」

 

「チャンピオンユウリとダンデを倒せるわけがないだろいい加減にしろ!」

 

「そんなこと不可能だ馬鹿野郎ー!」

 

 

 会場のいたるところから野次が飛ばされる。正直言って同感だ。なにをしようと、チャンピオンや元チャンピオンにジムリーダー全員だけでなく、力及ばずもジムリーダー8人に勝利したジムチャレンジャーが6人もいるのだ。これだけの戦力を相手にして、どれだけプラズマ団の数が多かろうがシュバルツの様な実力者が数人いてもどうしようもないはずだ。

 

 

『上空を見給え。我々はそこにいるぞ。そして、その意味を知る者は恐れ戦け!泣き喚くがいい!プラズマ団のもたらす絶望がすぐそこにあるぞ!』

 

 

 上空を見やる。そこには青空だけ…ではなかった。透明になっていた巨大な何かがその擬態を解いて、姿を現した。それは、鋼鉄でできた灰色の帆船。それが、空に浮いていた。あんなに巨大なものが誰にも気付かれることなく、ここまで来たっていうんですか!?

 

 

『我らが拠点にして旗艦プラズマフリゲートだ。一年前にイッシュに災厄をもたらした船…といえば意味がわかるかな?』

 

 

 その「意味」に気付いたのか、観客に逃げ出すものが現れた。パニックが起これば、その騒ぎは連鎖する。パニック状態となった観客が暴動の様にスタジアムから逃げようと試みる。それは、ジュリさんも同様だった。

 

 

「ヤバい、早く逃げようダフネ、ヨハル!」

 

「う、うん…!」

 

「えっと、どういうことですか?」

 

「あの船、プラズマフリゲートは……二年後のイッシュ、じゃなくて一年前のイッシュの一部を氷漬けにした兵器なの!」

 

「ええ!?」

 

 

 いや、この二年、奉仕活動ばっかりやっていて世間の噂には疎くて……ということはシュートスタジアムを氷漬けにしようということですか!?

 

 

「そ、それは止めないと!」

 

「無理!街一つ凍らせる兵器だよ!止めるすべなんかない!」

 

「でもこのパニックじゃ、そう簡単に逃げられないよ…!」

 

 

 ヨハルの言う通りだ。観客がパニックになったことで出るにも時間がかかる。くっ、プラズマ団があんなすぐそこにいるのに……ここで凍らされるのを待つしかないとは!

 

 

『飛んで逃げようとしても無駄だ。空に逃げれば最後、我が戦艦に備えられた砲台が撃ち落とすだろう。座して死を待つがいい!』

 

「くっそ、ゴルーグでワンチャン乗り込む作戦も無理かあ」

 

「なにか、何か手は…!」

 

 

 言うだけ言って映像が消える。考える。空に逃げても駄目。出口はつっかえている。応戦するのも兵器相手じゃ難しい。詰みじゃないだろうか。プラズマフリゲートの主砲と思われる穴に水色のエネルギーが集まって行くのが見える。万事休すか、と思ったその時。中央からよく響く声が上がった。

 

 

「みんな、落ち着くんだぜ!」

 

 

 その声の主は、ダンデさんだった。ユニフォーム姿で、マントを外して投げ捨てて人を殺せそうな目のユウリさんと共にプラズマフリゲートを睨みつけてボールを構えている。まさか、迎え打つつもりですか!?

 

 

「ユウリくん、行くぞ!リザードン!」

 

「はい、ダンデさん!ムゲンダイナ!」

 

 

 繰り出されたのは、二人の切札ともいえるポケモン。リザードンとムゲンダイナ。それだけでなく、ダンデさんは右手首に装着したメガリングに左手を添えていて。

 

 

「バトルタワーオーナーの力を見せてやる!リザードン!メガシンカ!」

 

 

 するとリザードンは七色の輝きを受けて紫色の光の繭に包まれ、ところどころが鋭利な姿となったメガリザードンに姿を変えた。同時に、日光が照ってくる。特性はひでりか。

 

 

「メガリザードンY…!ダンデさん、持ってたんだ…!」

 

「Y?」

 

 

 なんかジュリさんが言っていたが意味がよく分からなかった。そして、水色の輝きが最大限に溜まり、プラズマフリゲートの主砲から凄まじい光線が放たれる。それは、シュートシティ全体を飲み込むにはあまりある規模で。次々にスタジアムの端々が凍り付いて行く。もう駄目だ、と諦めかけたが、新旧チャンピオンは諦めていなかった。メガリザードンYとムゲンダイナに飛び乗った二人はスタジアムの上空に浮かび上がり、同時に天を指差した。

 

 

「新旧チャンピオンタイムだ!行くぞリザードン、ブラストバーン!」

 

「私の怒りを思い知れ!ムゲンダイナ、かえんほうしゃ!」

 

 

 放たれる、二つの炎の柱が光線とせめぎ合う。しかし、互角。相殺するには至らない。こちらはポケモンである以上、体力が消費すれば押し負けてしまう。やはりこれまでか、と思っていたら観客の中からバトルコートに飛び降り、リザードンを繰り出した赤い帽子の少年がいた。同時に黒く青い炎を燃やした姿になるリザードン。アレもメガシンカ…?

 

 

「リザードン、メガシンカ。かえんほうしゃ」

 

「あ、あ、あれは…れれれれれれ!?」

 

「だ、大丈夫です?」

 

 

 なんかすごい顔になってるジュリさん。赤い帽子の少年のメガリザードンの炎も合わさり、炎と光線がぶつかり合い、そして。光線の照射が終わった時、シュートスタジアムは無事だった。




ついに参戦伝説の男。

・ダフネ
ほのおタイプもいないし周りに任せるしかなかった主人公。シュバルツがいるであろうプラズマフリゲートへ怒りを募らせる。

・ジュリ
とある理由から限界オタクと化していた転移者。プラズマ団への殺意が高い。赤い帽子の少年の登場で情緒がヤバい。

・ヨハル
ガラガラじゃアレは無理だなあ、と冷静に考えていた二重人格。諦めは早い方。

・ユウリ
ブチギレチャンピオン。前回の掲示板でラウラがプラズマ団に寝返った(?)という情報を得て警察に乗り込んだが、通信からじゃプラズマ団の本拠地に辿り着けず怒りを溜めこんでいた。グレイへの怒りを糧に冷静に新旧チャンピオンで相殺を試みる。

・ダンデ
旧チャンピオンとして会場のパニックを収めて見せたリーグ委員長。メガシンカも使いこなす。実はユウリともどもプラズマフリゲートの事は知ってるのでパニックにはならなかった。

・グレイ
ついに作戦を開始したプラズマ団の王。世界の王になるためにシュートシティをチャンピオンごと凍らせてプラズマ団の力を示す、と豪語するがその真意は…?

・赤い帽子の少年
リザードンを連れた少年。観客としてシュートスタジアムにいた。年は17くらい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSファイヤー

どうも、放仮ごです。またギリギリになってしまいました申し訳ない。油断してたら時間がすぐ進む。

今回は感想で何人かが気付いていた奇跡の大集合。蟲ポケモンを活躍させるための御膳立てですが二次創作だもの、やりたいことをやりますよ。楽しんでいただけると幸いです。


 一週間前。ダンデは、カントー地方とジョウト地方の間のシロガネ山に赴いていた。並大抵のトレーナーでは強力な野生ポケモンと過酷な環境に阻まれて登山することも難しい、この世界でもトップクラスに過酷な環境下でなお、元チャンピオンの実力と持ち前のフィジカルを駆使して頂上を目指すダンデ。

 

 

「もうすぐのはずだ。頑張れ、リザードン」

 

 

 数日前。ジムリーダーの一人で、対プラズマ団の戦力として期待していたラウラがプラズマ団に陥落したいう真偽もわからぬ情報が入った。ラウラは己も認める、現チャンピオンであるユウリに匹敵する実力者だ。それが敗れたとなると、敵の実力は最悪チャンピオンより上になる。ならばと思いついたのは、伝説と称されるトレーナーの助力だった。

 

 

「しかし噂には聞いていたがまさかこんな秘境にいるとは…」

 

 

 友人であるカントー・ジョウトのチャンピオンである少年ヒビキが過去に戦ったという情報を聞いて訪れたシロガネ山だが、強烈な吹雪が吹き荒ぶ環境下に、リザードンの尻尾の火があっても参って来ていた。そこに劈く鳥ポケモンの鳴き声。

 

 

「むっ?」

 

 

 見上げると、そこには燃え盛る体を持つ伝説の鳥ポケモン、ファイヤーが羽ばたいて来ていた。ダンデ目掛けて急降下し襲いかからんとするファイヤーに、指差して指示するダンデ。

 

 

「シロガネ山の(ぬし)か!リザードン、げんしのちから!」

 

 

 ファイヤーは一声嘶くと華麗にターンしてげんしのちからを回避、その鋭い足の爪でリザードンの両腕と組み合って力比べを始める。羽ばたきでリザードンを力押しするファイヤーにどうしたものかと考えていたところ、空の暗雲が稲光を発していることに気付いた。

 

 

「ピカチュウ、かみなり」

 

 

 その瞬間、凄まじい轟音と共に空から飛来した雷の槍がファイヤーを貫き、感電させる。瀕死とまではいかなかったものの、大ダメージを受けたファイヤーは上を見上げて縮こまる。そこにいたのは、赤い帽子の少年。ファイヤーは少年を恐れる様にして飛び去って行き、ダンデは少年を見上げる。気付けば頂上付近まで来ていたらしい。

 

 

「君が、レッド君かい?」

 

「……」

 

「否定しないのなら決めつけて言うぞ。助かった、礼を言う。俺の名はダンデ。ガラル地方のポケモンリーグ委員会の委員長をしている者だ。君に依頼しにきた。報酬は……我がガラル地方で最も強いトレーナーとのバトル、はどうだ?」

 

「…!」

 

 

 そうしてダンデは赤い帽子の少年、レッドをガラル地方に連れて行くことに成功したのである。

 

 

「…よし、後は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在。プラズマフリゲートに新設した玉座の間にて、モニターで確認していたグレイは驚愕していた。シュートシティを凍結させることはできた。だが、自らが改良したプラズマフリゲートが吸収したキュレムの冷気を使った主砲を持ってしても、新旧チャンピオンとあと一人に抵抗されたシュートスタジアムだけは凍らせることが叶わなかった。

 

 

「馬鹿な…計算は完璧だったはずだ」

 

 

 ユウリのムゲンダイナの火力も、ダンデのリザードンがメガシンカできることもラウラから聞いて特典によるアクロマ並みの頭脳で計算し尽くした上での出力だったのだ。それが、シュートスタジアムだけとはいえ防がれてしまった。モニターに映った「もう一人」を見て、何度も確認して認識、いわゆるエネル顔になるグレイ。

 

 

「れ、れれれれ、レッドだと!?バカな、ここはイッシュでもアローラでもないぞ!?ガラルにいるはずがない男がなぜここにいる!?」

 

「ど、どうされましたグレイ様?確かにシュートスタジアムを凍結できなかったのは想定外ですが、それならば直接制圧すればよいだけのこと…」

 

「シュバルツ、プラズマフリゲートを上昇させろ。奴らを決して近づけるな!制圧部隊も準備しろ、シュートスタジアムを制圧する。プラズマ団の力を見せるのだ!指示はダークトリニティに任せてシュバルツ、ヴァイス、ラウラはここに残れ。いいな?」

 

「「「御意」」」

 

「承知いたしました」

 

「ラジャーです」

 

「了解だ」

 

 

 ダークトリニティと三人の幹部に指示を伝え、モニターで無言で佇むレッドの様子を見て笑い、その手にリモコンの様な物を取り出すグレイ。

 

 

「…如何にレッドといえど、数には勝てないだろう…そうだ、そのはずだ……そろそろ出番だ、レジギガス。準備運動を終わらせさえすれば負けはない」

 

 

 そう自分の考えに埋もれるあまり、ラウラがモニターを見て首を傾げていたことに気付くことはなかった。モニターに映る映像の端に映るジムチャレンジャーの中に、白い帽子を被りピンクのマフラーを身に着けた少女と、青いジャケットを着て帽子を被った少年がいたとは、夢にも思わなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事なのはここだけか…」

 

「ちっ、逃げたか…」

 

 

 ユウリさんとダンデさん、赤い帽子の少年の尽力でシュートスタジアムは無事なようだが、シュートシティは凍り付いてしまったらしい。しかも、防がれてしまったためかプラズマフリゲートも上昇してスタジアム上空から離れてしまう。悔しげにダンデさんとユウリさんがそれを見上げていると、バトルコートにリーグスタッフが書類を手に急いでやって来て、何事かと注目が集まる。

 

 

「委員長!大変です!」

 

「どうした、なにがあった?」

 

「シュートシティに攻撃が始まったと同時に、ワイルドエリアに超巨大ポケモンが出現したとの報告が!」

 

「なんだって!?まさか、レジギガスか!?」

 

「聞いていた特徴と一致しているので間違いないかと!」

 

「控室で待機しているジムリーダーに言って、打ち合わせ通り迎え打つように伝えてくれ!」

 

「はい!」

 

 

 超巨大ポケモン、レジギガス?それを聞いた途端、なにかに気付いた様にハッとするジュリさん。

 

 

「レジギガスって、たしかガラルのは…でも、なんでそれをプラズマ団が?お兄ちゃんは知らない筈だし、条件だって厳しくて偶然集まりでもしない限り見つかりもしないのに………まさか?」

 

「何かに気付いたんですか、ジュリさん?」

 

「うん、グレイって奴の正体が分かったかも。だとすると、お兄ちゃんが駄目だったなら私が止めないと!」

 

「どうしてそうなるんですか!?」

 

「待って。なにか、来るよ!」

 

 

 プラズマフリゲートを見上げていたヨハルが切羽詰まった様な声を発して何事かと見上げると、様々な空を飛ぶポケモンに乗った凄い数のプラズマ団したっぱが次々とプラズマフリゲートから飛来。私達を囲む様に降りたり、観客席の逃げ道を塞ぐように降りたりするしたっぱたち。最後に降りてきたしたっぱじゃない三人は手にした紫色のボール、マスターボールを投擲して出てきた見たことない三匹のポケモンにそれぞれ搭乗、ユウリさんとダンデさんを囲む様に降りたった。

 

 

「プラズマ団…!」

 

「コバルオン、ビリジオン、テラキオンまで…これは間違いなさそうだな」

 

 

 三匹のポケモンを知っているのか敵意向き出しのジュリさん。ポケモン達に乗った三人の忍者の様なプラズマ団はしたっぱを従える様に両手を広げて声を上げる。動こうにも観客を人質に取られたようなものなので動けない。それはユウリさんたちも同様だった。

 

 

「我等、ダークトリニティ!」

 

「グレイ様の(めい)でこの場を制圧する!」

 

「この数、そして伝説ポケモン。さすがのチャンピオンといえどどうしようもあるまい!」

 

 

 そう豪語するダークトリニティに、万事休すかと思われたその時。

 

 

「それはよくないんじゃないか?」

 

「観光に来たけど、この子を連れていてよかったよ」

 

 

 ぐあああっ、と。観客席の方からプラズマ団の悲鳴が聞こえる。見てみれば、緑色の何かが纏わりついていたり、高速で動く赤い何かが目にも留まらぬ速度で攻撃したりと、何やらカオスになっていた。白い帽子を被った赤い服の少年と、ガラルでは珍しい軽装の少女がボールを手に立っていたが、一体…?横でやっぱりジュリさんが凄いことになってた。

 

 

「ジガルデセルにスピードフォルム…まさか!?」

 

「いい加減にして、ダークトリニティ!」

 

「フレア団と大差ない連中ね!」

 

「伝説ポケモン有してるぐらいでイキってるんじゃないぞ、おら!」

 

 

 さらに、ジャローダに乗ったツインテールの少女、ゲッコウガにお姫様抱っこされている金髪の少女、デンリュウを連れた少年が観客席から降り立つと同時にダークトリニティを攻撃。さっきの観客席にいた二人もバトルコートに降り立った。どよめくプラズマ団。口を押さえて凄い顔のジュリさん。何が何だかわからない私達と異なり、安堵の表情を浮かべているユウリさんとダンデさん。

 

 

「レッドにヒビキにユウキにメイにセレナにミヅキ…!それに、チャレンジャーにはヒカリにトウヤまで…なにこれすごい…!?」

 

 

 あ、ジュリさんがショートして放心している。…なにか、凄いことが起きているのは間違いないらしい。




大大大大大大集合。スロースタートをどうにかするためにわざと遠くから始動するレジギガス。

・ダフネ
もう何が起きているかよくわかってない主人公。そろそろ活躍させたい。

・ジュリ
限界オタクと化した転移者。とある事実に行きついた。

・ヨハル
どうにかしてヴァイスと戦えないかとプラズマフリゲートを見ていたら降りてくるプラズマ団に気付いた人。セレナとは顔見知り。

・ユウリ
チャンピオン仲間を観光に呼んだりして集めていたチャンピオン。チャレンジャーにレジェンドがいたとは聞いてない。

・ダンデ
レッド他、いろんな人間を捜して救援を求めていた委員長。ファイヤーと一戦交えた。

・グレイ
レッドに気を取られてもっとやばいことに気付いていないポンコツボス。レッドが怖いので空に退避してプラズマ団とレジギガスを嗾けるが…?

・レッド
伝説の男。赤い帽子の少年。シロガネ山の頂上に引き籠もっていたところ、ダンデに気付いてファイヤーから助けて報酬のバトル目当てにガラルまで来た。

・ヒビキ
カントー・ジョウト地方のチャンピオン。レッドに唯一勝利した男でダンデにレッドの居場所を伝えた。本人も観光客としてガラルまで来た。手持ちにデンリュウがいる。

・ユウキ
ホウエン地方のチャンピオン。隕石から世界を救った少年。カイオーガとレックウザとデオキシスを有している。観光客としてガラルまで来た。

・ヒカリ
シンオウ地方の元チャンピオン。観光ついでに推薦状を手に入れてジムチャレンジに参加していた。当然の様にセミファイナルトーナメントまで生き残ってる。

・トウヤ
イッシュ地方の元チャンピオン。真実の英雄。レシラムを連れている。プラズマ団の噂を聞いてガラルまで来て、推薦状を手に入れてジムチャレンジに参加して様子を窺っていた。グレイと因縁がある…?

・メイ
イッシュ地方のチャンピオン。ジャローダが相棒。ユウリに誘われ、観光客としてガラルに来た。プラズマ団と因縁がある。Nからとあるポケモンを譲り受けた。

・セレナ
カロス地方の元チャンピオン。ゲッコウガが相棒。観光客としてガラルに来ていた(完全な偶然)。掲示板によるとイベルタルを保有しているらしい。

・ミヅキ
アローラ地方のチャンピオン。ユウリの親友でユウリに呼ばれて観光客としてガラルに来ていた。ジガルデセルでプラズマ団したっぱを翻弄した。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSピカチュウ

どうも、放仮ごです。仮面ライダーだとMOVIE大戦シリーズが好きです。過去作でも似た様な展開ばかり書いてました。つまり、こんな主人公が集まる最終決戦を下手に書ける訳がないのです。

今回は主人公ズVSプラズマ団したっぱ軍団。括目せよ!楽しんでいただけると幸いです。


「ば、馬鹿な……そんなことがありえるのか!?」

 

「ど、どうしましたグレイ様?」

 

 

 モニターに映ったその壮絶なる光景を見て、目に見えて狼狽えだすボスに、首を傾げるシュバルツを始めとしたその場にいる部下たち。その中でグレイの困惑が理解できたのは、同じ転生者のラウラだけだった。

 

 

「…なあグレイ。お前の願いは理解しているが…さすがに相手が悪いぞ」

 

「原作に置いて奴らが地方を越えるなど、なかったはずだ……百歩譲ってレッドが現れるのはいい!だ、だがしかし……ここはポケモンマスターズの世界だと言うのか!?」

 

「もう俺にも何言ってるかわからんぞ」

 

 

 支離滅裂なことを言い出すグレイに呆れるしかないラウラ。洗脳されて忠誠は誓っていても、あくまで友人みたいな状態だ。駄目なことには駄目だとツッコむ程度の感性はあった。

 

 

「おい!レジギガスはどうしている!?」

 

「現在、こもれびの林付近の湖畔にてジムリーダーと交戦を開始しました!」

 

「そうか。ジムリーダー程度では止まらぬことはわかっている。このまま進軍させよう」

 

 

 アクロママシーン改とはまた違う小型の機械を手にほくそ笑むグレイ。しかし根っからの凡人である彼は心を強く保てず、不安はやはりぬぐえず。

 

 

「どんな戦力が居ようと叩き潰せる。そのために用意したのがレジギガスで、シュバルツ、ヴァイス、お前たちも私自らがスカウトして集めた強豪だ。負ける理由はない。そうだろう?」

 

「ジムリーダーやチャンピオンが相手でもグレイ様に勝利を献上しましょう」

 

「グレイ様に言われてなけりゃあ撤退せずにチャンピオンをボコしてましたよ、アタシは」

 

「ああ。例え主人公が相手だとしても…俺が倒してやるから安心しろ。ただし一対一での話だからな」

 

「そうだろうとも。……しかし、あのトウヤがいるとは…どこまで俺を苦しめる…?」

 

 

 そうモニターに映る青いジャケットの少年を見るグレイの瞳には、コンプレックスと憎悪に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今気付きましたがあの人は、ポケウッドの女優もしているチャンピオンのメイさん!?」

 

「セレナさんまで…なんで?」

 

 

 今更になって集まってきた人たちの一人の正体に行きつく私。リオルガールでデビューして、今ではポケウッドの看板作品のどれにも出演している超売れっ子女優にしてイッシュ地方のチャンピオンだ。ヨハルが反応した人物は、カロスの元チャンピオンで超売れっ子モデルのセレナさんだった。有名人がいっぱい…

 

 

「あ、私のファンなんですか?いつも応援ありがとございます!メイです!」

 

「私はセレナよ。でもまあ、挨拶は後からにした方がいいかしら」

 

 

 そう言ってジャローダとゲッコウガで襲ってきたプラズマ団のポケモンを一蹴する二人。かっこいいし美しかった。観客の無事が保証されてるなら戦わない理由はない。私達三人とサタリアも動き出す。

 

 

「アブリボン、かふんだんご!」

 

「ダダリン、パワーウィップ!」

 

「ガラガラ、ほねブーメラン!」

 

「エモンガ、アクロバット!」

 

 

 トウヤさんとヒカリさん以外のジムチャレンジャー組で自然に一纏めになって応戦する私達。その後ろで、ユウリさんたち新旧チャンピオンの人たちが、観客として来ていたのかホップさんも加えて大立ち回りを演じていた。

 

 

「インテレオン、ねらいうち!」

 

 

 ムゲンダイナだと周りを巻き込むと思ったのか怒りを押さえ、交代したインテレオンで観客スレスレを狙撃するユウリさん。

 

 

「エースバーン、かえんシュートだぞ!」

 

 

 エースバーンがプラズマ団を蹴りつけつつ火球を形成、リフティングして牽制しつつ、遠くの敵へ火球を蹴りつけて吹き飛ばすホップさん。

 

 

「リザードン、ソーラービームだ!」

 

 

 にほんばれ状態故にノーチャージで撃てる的確な空からのメガリザードンYのソーラービームでプラズマ団を薙ぎ払うダンデさん。

 

 

「リザードン、きあいだま」

 

 

 次々にエネルギー弾を形成してお手玉の様に飛ばしてクールにプラズマ団を撃退するレッドさん。

 

 

「デンリュウ、10まんボルト!」

 

 

 デンリュウの電撃で観客に当てることなく狙いを定めてプラズマ団を痺れさせるヒビキさん。

 

 

「メガシンカ!ジュカイン、リーフブレード!」

 

 

 メガバングルから溢れる光でメガシンカさせたメガジュカインで目にも留まらぬ斬撃で次々にバッサバッサと斬り裂いていくユウキさん。

 

 

「エンペルト、うずしお!」

 

 

 エンペルトの形成した巨大な水の渦に複数のポケモンとプラズマ団を巻き込み、纏めて壁に叩きつけるヒカリさん。

 

 

「エンブオー、ヒートスタンプ!」

 

 

 クリムガンをエンブオーのアッパーカットで打ち上げ、自身も跳躍して炎を纏い隕石の様に叩き潰すトウヤさん。

 

 

「ジャローダ、グラスミキサー!」

 

 

 ヒカリさんと同じように草の竜巻にポケモンとプラズマ団を巻き込んで振り回し、地面に叩きつけるメイさん。

 

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「ジュナイパー、かげぬい!」

 

 

 セレナさんとミヅキさんはタッグを組んで、ジュナイパーのかげぬいで動けなくなったポケモンに次々とみずしゅりけんを叩き込んで無力化していく。

 

 

「すごい…!これが、本当に強い人達の力…!」

 

 

 私達も含めたこの場にいる実力者たちの、円を組んでの迎撃。ダークトリニティとコバルオンたち伝説ポケモン以外を瞬く間に撃破していく。私達はバトルコートのしたっぱを倒したが、レジェンドの皆さんは観客に当てずにプラズマ団だけ鎮圧していくのはさすがとしか言いようがない。

 

 

「コバルオン、アイアンヘッド!」

 

「交代、ピカチュウ。ボルテッカー」

 

 

 すごいものを見た。伝説ポケモンであろうコバルオンの一撃を、レッドさんがリザードンと交代して繰り出したピカチュウが相殺したどころか一方的に吹き飛ばしたのだ。あの小柄な体で重量級の大型ポケモンに見えるコバルオンを吹き飛ばすとは…!あれが、ネットで語られる伝説の男の実力…!

 

 

「どこを見ている?隙ありだ餓鬼め!アーマルド!シザークロス!」

 

「アーマルド!?」

 

 

 レッドさんに釘付けになっていた私を狙って襲いかかるプラズマ団の男。聞き覚えの名に振り向くと、申し訳なさそうに両腕を振り上げたアーマルドがいた。私の、アーマルド…!

 

 

「交代、クワガノン!」

 

 

 アブリボンに右手を伸ばして掴まり地面を蹴って、ちょっと宙に浮いた私は体勢を変えてアーマルドのシザークロスを回避。交代してクワガノンを繰り出す。安心してくださいアーマルド。私達は、強くなりました!

 

 

「ねばねばネット!」

 

「なにい!?」

 

 

 繰り出した粘つく糸の束でアーマルドごとプラズマ団を拘束。その手からネットボールをひったくり、アーマルドを一度ボールに戻してから繰り出し、歓喜のままに抱き着いた。ああ、ああ!何か月ぶりか!

 

 

「アーマルド!ああ、アーマルド!」

 

 

 涙ながらに優しい抱擁を返してくれるアーマルド。家族を全員取り戻した。あとは、落とし前を付ける事だけだ。プラズマフリゲートを見上げる。シュバルツは、グレイは、なによりラウラさんは、あそこにいるはずだ。意を決し、ジュリさんとヤユイの手を掴んで未だにプラズマ団相手に怒りのままの無双をしているユウリさんに話しかける。

 

 

「ユウリさん!」

 

「なに!?」

 

「多分、ラウラさんはあのプラズマフリゲートにいます!私達が倒したいそれぞれの敵も、そこに!」

 

「…乗り込みたいってこと?」

 

「「「はい!」」」

 

 

 私の意を理解したのか、一緒に頷くジュリさんとヤユイ。するとユウリさんは一瞬考え込み、隣で戦ってるダンデさんに話しかけた。

 

 

「そういうわけなのでダンデさん、私達ちょっと上に乗りこんできます」

 

「なに!?…いや、わかった。此処は我々に任せろ!覚悟を決めたトレーナーを止めれるわけがないからな!だが気を付けるんだ、奴らは容赦なく撃ち落としにくるぞ!」

 

「「「「上等!」」」」

 

 

 大事な人を取り返すために、因縁の決着を付けるために。私達はプラズマフリゲートをキッと睨み付けるのだった。




ジュナイパーだって強いんだよ!(渾身の心の声)

・ダフネ
ついにアーマルドを取り返した主人公。シュバルツとの決着を望む。メイの大ファン。

・ジュリ
ちょっと動揺しっぱなしだが頑張って応戦した転移者。ラウラを取り戻すことを望む。

・ヨハル
ヤユイとして奮闘する二重人格。ヴァイスとの決着を望む。

・ユウリ
怒りを抑えて冷静に責務を果たすチャンピオン。ラウラを取り戻すことを望む。

・ダンデ
レッドのリザードンと共にWリザードンで大暴れしていたリーグ委員長。多分史上最強の委員長。最高責任者としてユウリ達に託した。

・ラウラ
転生者としての記憶は残ってるので勝ち目無しだと直感的に理解した洗脳中の元主人公。それでもグレイのために戦うことを望む。

・グレイ
因縁の敵らしいトウヤに敵意を向けるプラズマ団のボス。元々、自分じゃ勝てない敵を弾圧するためにレジギガスを手中にした。

・レッド
伝説の男。ピカチュウでコバルオンをブッ飛ばすとかいう頭おかしいことをやってる。

・ヒビキ
カントー・ジョウト地方のチャンピオン。デンリュウは例のPVから。

・ユウキ
ホウエン地方のチャンピオン。相棒はジュカイン。

・ヒカリ
シンオウ地方の元チャンピオン。相棒はエンペルト。

・トウヤ
イッシュ地方の元チャンピオン。グレイと因縁がある。相棒はエンブオー。

・メイ
イッシュ地方のチャンピオン。ジャローダが相棒。今ではポケウッドの看板女優に。

・セレナ
カロス地方の元チャンピオン。ゲッコウガが相棒。超売れっ子モデル。

・ミヅキ
アローラ地方のチャンピオン。ジュナイパーが相棒。ユウリと同じタイプの主人公でポケモンの長所を使いこなす。

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VSゴルーグ

どうも、放仮ごです。今回から最終決戦となります。それぞれの因縁の敵とのバトル。そして今回はジュリ視点です。楽しんでいただけると幸いです。


 主人公オールスターズ+ホップ+私達による大乱戦。いやほんと、チャレンジャーの中にヒカリとトウヤ見つけた時は目を疑ったよね。現実のポケモンの世界すごぉ…あとでサインもらいたいけど、今はお兄ちゃんを取り返すことが先決だ。ダフネの意に乗ってくれたユウリさんと共にプラズマフリゲートに乗り込みたいところだけど…とりあえず、乗り込むか!

 

 

「ジュリさん、高速で空を移動できるポケモンが必要になります。つまり…」

 

「ダフネのクワガノンと私のゴルーグだね。でも二人が限界だと思う」

 

「あ、それなら俺が力を貸すよ。プラズマ団相手だ、放っとけないからな!」

 

 

 すると名乗り出てきたのはトウヤさん。たしかにプラズマ団と因縁がある人だけども。主人公に力を貸してもらうのはちょっと気が引けるなあ。

 

 

「行くぞ、レシラム!みんな、乗れ!」

 

 

 クワガノンの脚に掴まれたダフネが、ゴルーグの背に私とヨハルが、レシラムの背にトウヤさんとユウリさんが乗り込み、飛び立つ。するとプラズマフリゲートの側面に付けられたいくつもの砲門が下に向き、氷柱の弾丸を飛ばしてきた。アレが迎撃装置か。だけど!

 

 

「クワガノン、むしのさざめき!」

 

「ゴルーグ、シャドーパンチ!」

 

「レシラム、クロスフレイム!」

 

 

 この場にいるのはそれぞれのエースポケモンだ。技の一つで簡単に迎撃し、一直線にプラズマフリゲート目掛けて突き進み、上を取った。見下ろせば、甲板からこちらに向けてポケモンで攻撃しようとしているしたっぱたちがいた。

 

 

「ここまで来れば…と思いましたが凄い数ですね!」

 

「第三の英雄と呼ばれたゴルーグをなめるなよ!」

 

「どこで呼ばれたの…?」

 

「甲板にはプラズマ団がいっぱいいるね…」

 

「雑魚は俺が引き受ける、四人は奥に進んで目的を果たすんだ!」

 

 

 そう言ってレシラムを甲板に下ろすと同時にハハコモリという蟲ポケモンを繰り出し、斬撃でしたっぱをバッサバッサと斬り倒していくトウヤさん。そちらにしたっぱたちが集中した隙を突いて、私達は内部に忍び込んだ。中にもしたっぱがいっぱいいたのでこちらもポケモンを出して応戦する。

 

 

「アブリボン、かふんだんご!」

 

「プルリル、シャドーボール!」

 

「タチフサグマ、クロスチョップ!」

 

「ウーラオス、すいりゅうれんだ!」

 

 

 屋内でも十分に戦えるポケモン達で迎撃、吹き飛ばしつつ先に進むと、広い空間に出て。したっぱも巻き込む大津波…なみのりが襲いかかって来て私達は押し流されて戻されてしまう。その空間の中心には、ツンベアーを従えた白髪の美少女がいた。アレがヴァイスか。ヨハルの因縁の敵…!

 

 

「ハッハッハァ!ここまで来るとは大したもんだ。アタシと遊ぶ強者はどこのどいつだあ!」

 

「…本当にいた、ヴァイス。アイツの相手は私達が引き受けます。…ユウリさん」

 

「うん、ヨハル。なに?」

 

「私を推薦してくれてありがとうございます。おかげで、私はアイツにリベンジができる…!」

 

「そういうつもりはなかったんだけど…いいよ。頑張って、ヨハル!」

 

 

 ヨハルが相手するので、私達は先に進もうとすると、それを許さないとばかりにヴァイスが立ちはだからんとする。

 

 

「いかせるかよ!ツンベアー、ふぶ―――」

 

「交代、ルガルガン!いわなだれ!行かせないのは、こっちだ!」

 

 

 するといわなだれで私達とヴァイスの間に壁を作り、ヴァイスと向かい合うヤユイ。大丈夫かな…いや、信じるしかないか。

 

 

 

 

 

 

 

 奥に進むとロックされた鉄の扉があって。立ち往生となる。

 

 

「この扉、カードキーがいるみたい!」

 

「ここは任せてください、アーマルド!シザークロス!」

 

「お、おおう」

 

 

 するとダフネがアーマルドを繰り出して両断。次の部屋に入ると、そこはバトルコートの様な場所で。軍帽を被り戦闘服を身に纏った男が待っていた。シュバルツ…!ダフネの、決着を付けたい相手。シュバルツは私達を値踏みする様に目を向けると、ダフネに視線を寄せて口を開いた。

 

 

「その目。私に敵意がある目だな。だが忘れた。名乗れ、小娘」

 

「忘れたなら思い出させてやります。ジムチャレンジが始まる二ヶ月前…貴方に私の家族を奪われたトレーナーです!」

 

 

 そう叫ぶダフネの前に出るのは、アーマルド。敵意を向けられても平然としている男はモンスターボールからクロバットを繰り出すと獰猛に笑った。

 

 

「そうか、あの強いアーマルドとクワガノンの持ち主か。思い出したぞ、自身の弱さに嘆き、泣いていたあの女だな」

 

「ラテラルジムでも会ってるんですがねえ…!」

 

「悪いな。私は救済したポケモンはともかく、トレーナーは覚えるつもりはない。言われないと思い出せん。決着を付けたいというのなら付けてやろう。…そこのチャンピオン」

 

「…なに。お前もここを通さないつもり?」

 

「いいや?チャンピオンが来たなら通せと言われている。ヴァイスの馬鹿は忘れていたみたいだがな。そこのワープポイントに乗れ、我らが新たな幹部がお前を待っているぞ」

 

「ここは私に任せて、二人は行ってください!」

 

「…ユウリさん。行きましょう。ダフネは強い。この旅で確かに強くなってるはずだから…!」

 

 

 ダフネの言葉を信じて先に進む。ワープポイントというらしいゲームのポケモンでよく見るアレに乗ると、体が回転して別の場所に飛ばされる。真っ暗で広大な空間だ。何も見えない。続けてユウリさんも出てくる。すると、明かりがついて全貌が見えた。王様のいるような玉座の間の様な空間で、小さな山のようになっている台座の上にある玉座に、グレイが座っていた。

 

 

「よく来たな。てっきりトウヤが来ると思っていたが、お前は…ラウラの家族か?なんにしても予想だにしない人物がきたもんだな。そしてチャンピオンユウリ、よく来た。歓迎させてくれ」

 

「御託はいい。ラウラは何処だ…!」

 

「何を言っている?お前の後ろにいるじゃないか」

 

「っ!」

 

 

 瞬間、私を担いで飛び退くユウリさん。今の今までいたそこに、マッスルによる拳が叩き込まれる。マッシブーン、ということは…!振り向くと、小柄な体に灰色の戦闘服の様な物を着込んだ長い赤髪の少女がいて。首元にプラズマ団のシンボルが描かれた白のマフラーを巻いて口元を隠し軍帽を深く被って顔を隠しているが、その声。間違いない…!

 

 

「おいおいグレイ。なにバラしてるんだ?この女は俺でもそう簡単に倒せないって言ったよな?」

 

「ラウラ!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

 変わり果てた姿になった兄がそこにいた。男っぽい服ばかり来てたのに悪の女幹部みたいな出で立ちになって…!タイツとか履いたこともなかったんじゃないのか!

 

 

「…可愛い、けど!どうしたのその格好?ねえ、ラウラ。本当に、プラズマ団になってしまったの?」

 

「ああ、ユウリ。俺とグレイは同類でな?その目的に賛同して俺は味方になったんだ。至極簡単な答えだろ?そうだジュリ、お前も仲間にならないか?俺の知らない知識もあるお前なら…」

 

「黙って、お兄ちゃん。…ユウリさん、お兄ちゃんをお願いできますか」

 

 

 饒舌に馬鹿なことを抜かすお兄ちゃんに我慢ならなくなって、黙らせるとユウリさんに任せて私はグレイの元に走る。よくも、よくも、よくも…!

 

 

「そうか、お前がラウラの言っていたジュリか。転移者と言う、私ともラウラとも違うがよく似た存在。お前も私に降るがいい。共に世界を…」

 

「黙れ三下。…やっぱり、お前。転生者か。しかも俺TUEEEE系の害悪オリ主ってやつ?」

 

「……なに?」

 

 

 あろうことか私まで勧誘してきた馬鹿に、煽るように言ってやると眉を潜ませるグレイ。レジギガスを知っている時点でその答えは既にあった。問題はこいつが恐らく「神様転生」で、変な能力を持って転生しているかもということだ。お兄ちゃんは、あんなことを言う人じゃない。十中八九操られている。

 

 

「この世界で好き勝手して混乱をもたらしたばかりか、人の肉親を操って好き勝手して…!」

 

 

 私の怒りに呼応してか、側に浮いていたプルリルが光り輝く。ああ、ここで、私の力になってくれるのか。

 

 

「私はお前を、許さない!」

 

「そうか。ならお前も力づくで仲間にしてやろう!」

 

 

 玉座に座ったまま、マスターボールを握って色違いのメタグロスを繰り出すグレイ。私は進化したブルンゲルと共に構えた。絶対絶対、許さない!




雑魚を引き受けて現主人公を向かわせる前作主人公の鑑なトウヤさん。

・ジュリ
まさかまさかのグレイの相手を務める転移者。ポケモンの世界をめちゃくちゃに混乱させて、兄を操るグレイに対して絶対に許せない。その殺意からプルリルも応えてブルンゲルに進化した。第三の英雄ゴルーグが大好き。

・ダフネ
因縁の敵シュバルツとついに揃ったフルメンバーで激突する主人公。幹部相手だけどちゃんと主人公。

・ヨハル
因縁の敵ヴァイスと激突する二重人格。自分をここまで連れて来てくれたユウリに感謝の意を述べた。

・ユウリ
保護者枠なチャンピオン。操られたラウラと激突する。正直プラズマ団コスのラウラがかわいいからその点に置いてはグレイにナイス、らしい。

・トウヤ
レシラムで運搬役を引き受けた真実の英雄。プラズマ団相手だから全面的に協力する。甲板にいた大量のしたっぱを一人で引き受けた。手持ちにハハコモリがいる。

・グレイ
モニターにトウヤが見えて全力で迎え撃つ気満々で待機してたらユウリとジュリが来て肩すかしを喰らったプラズマ団のボス。ラウラからジュリの事は聞かされていて仲間にしようと思っていたが、ジュリに神様転生者だと見抜かれ殺意を向けられ、迎え打つ。

・シュバルツ
プラズマ団の幹部。救済したポケモンの事は覚えていてもトレーナーの事まで覚える気はない根っからの救済主義者。ダフネが取り返したことに気付き、激突する。

・ヴァイス
プラズマ団の幹部。全員纏めて侵入者と相手する気だった。ヨハルについてピンと来てないようだが激突する。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSツンベアー

どうも、放仮ごです。そういえば二年後編はなにも章で分けてないからとてつもなく長く感じることに気付きました。分けるべきなんだろうけどどこで分けるべきなのか…

今回は因縁の対決その一。ヤユイVSヴァイス。楽しんでいただけると幸いです。


「ハハハハハハ!誰だか知らないが強いな、お前!勝ち残ったジムチャレンジャーかなにかか!?」

 

 

 楽しいのかはしゃいでいるヴァイスと、仏頂面のヤユイ。以前の黒髪じゃなくて白髪になっていたが、その顔は見間違えようがない。華奢な体格に白づくめの修道服の様な物を着ていて白髪を腰までかかるロングヘアーにしているたれ目の美少女、ヴァイスだ。私のブラッキーを殺し、心無い言葉で私の心を踏みにじってズタズタに破壊した外道。それでも私はヤユイの中で見ていることしかできない。だけど、ツンベアーのつららおとしをルガルガンがでがんせきふうじで破壊してせめぎ合っている光景は、押されている様にも見えた。

 

 

「…お前、私の事を覚えていないのか?」

 

「あ?強い奴なら覚えているが…お前は覚えがないな。知り合いか?」

 

「お前…お前え!この子を見ても、同じことを言える!?」

 

 

 激高したヤユイはルガルガンを戻し、代わりに繰り出したのはブラッキー。ヴァイスの姿を見咎めると敵意をむき出しにしている。…殺されたあの子の、娘。それを見たヴァイスは攻撃の手を緩めて首を傾げた。

 

 

「ブラッキー?なんだ?もしかしてアタシが追放されたことを知ってる元ファンかなにかか?」

 

「お前なんかのファンであってたまるか!このブラッキーに、覚えはないのか!」

 

「生憎と、覚えてないねえ。ブラッキーなら昔一匹殺したなあ、ぐらいか」

 

「このブラッキーは……お前が殺したそのブラッキーの娘だ!腐れ外道!」

 

 

 いつもと異なり口調を荒くして、指を指して全力で非難するヤユイ。するとヴァイスは合点が行ったのか頷き、ニヤリと三日月の様な笑みを浮かべた。

 

 

「なんだよ、あの時の雑魚トレーナーか。雰囲気も口調も全然違うから見違えたぞ!アタシに復讐するために強くなって、こんなところまで来たのか。ご苦労様なこった。それで?アタシに勝てるつもりでいるのかい?またお前の可愛い可愛いブラッキーが死ぬだけかもよ?」

 

「そんなことはさせない、もう、負けない!そうあの子に誓ったんだ!」

 

「誓った程度で実力差は埋まらねえよお!つららおとし!」

 

「つきのひかり!あくび!」

 

 

 天窓から降り注ぐのは月光ではなく太陽光だから全快とまでは行かないが、ブラッキーは耐久が強い子だ。何とか耐え抜き、あくびを放つ。見た限り、ヴァイスの持つボールは四つ。こちらは六体居る。数に差があってもこれは試合じゃない。四体倒せばヤユイの勝ちだ。

 

 

「そんなの、交代すりゃあ…」

 

「くろいまなざし!」

 

「っ!なるほどね、搦め手で来たか。真っ向勝負じゃ勝てないと分かっているみたいだなあ!ならこうしてやるよ…なみのり!」

 

 

 くろいまなざしで逃げられなくなると、ヴァイスの指示でフィールド全体を覆う大波を発生させるツンベアー。ブラッキーは大波に飲まれ、水はヴァイスとヤユイの足元まで来て靴がびしょ濡れになる。でも、なにをしようがもう眠るはず…

 

 

「おねんねの時間だ。一緒に付き合え!ただし、永久氷河でな!ふぶき!」

 

「しまっ…」

 

 

 波が消えてない状態で吹雪が放たれ、フィールド全体の水が凍り付いて行く。ヤユイの足元まで固められてしまって身動きが取れなくなってしまった。慌てて見やると、ブラッキーは氷像となって凍り付いてしまった。ツンベアーは眠ってしまったが、こちらも動けないからイカサマで攻撃が出来ない。やっぱり、判断が早すぎる上に上手い。認めたくないけど、ヤユイよりもトレーナーとしての実力はヴァイスの方が上手(うわて)だった。

 

 

「くっ…交代、いってマニューラ!」

 

 

 事実上に戦闘不能にされてしまったブラッキーを悔しげな顔で戻して、マニューラを繰り出すヤユイ。マニューラは凍り付いた波の上を滑走し、まるでローラースケートでもやるように波の斜面を利用して加速しつつ眠りこけているツンベアーに突撃する。

 

 

「マニューラ、メタルクロー!」

 

「そろそろ起きやがれ、ツンベアー!きりさく!」

 

 

 するとブーツを脱いで白いニーソックスを履いた足で氷の上に立ち、ツンベアーの口に何かを含ませるヴァイス。するとツンベアーは目を覚まし、目の前に迫っていたマニューラの振るった鋼の爪と、手に吐息を吹きかけて氷柱を装備した爪をぶつけて斬り飛ばすツンベアー。マニューラの腕から血が流れて氷の床に落ち、ツンベアーは力づくで氷から抜け出し、咆哮を上げる。このままじゃ、マニューラまで…!

 

 

「体勢を低くして壁に向かえ!かわらわり!」

 

「つららおとしだ!」

 

 

 大きく息を吸い込み、上空に向けて吐息を吹きかけて氷柱を生成、流星の様に落としてくるツンベアー。マニューラは傷付いた腕を庇いながらも氷の床を滑走、壁にジャンプして壁を蹴り、ツンベアーの頭上に迫り、チョップを振り下ろすも、ちょうど降ってきた氷柱が直撃。ツンベアーは崩れ落ち、脇腹を裂かれたマニューラも同時に倒れた。早く、治さないと…!

 

 

「ごめん、マニューラ。少し待ってて!お願い、タチフサグマ!」

 

「加減はするなよ、アブソル!」

 

 

 次に繰り出されたのは、タチフサグマとアブソル。たしかダフネさんから聞いた話だと、今のヴァイスがアブソルでメガシンカしていたと聞いたような。

 

 

「アブソル、メガ…いや、お前にはアイツで使った方が面白そうか。このままいくぞ、エアスラッシュ!」

 

「ブロッキング。ほのおのパンチで足場を溶かして!」

 

 

 エアスラッシュをブロッキングで防ぎ、ほのおのパンチで氷を溶かして蒸発させるタチフサグマ。鉄のフィールドで、共に飛び出した。

 

 

「クロスチョップ!」

 

「みきってふいうち!」

 

 

 タチフサグマのクロスチョップを見切って防ぎ、死角からの一撃が叩き込まれる。しかしタチフサグマはタフなポケモン、その程度ではビクともしない。

 

 

「「つじぎり!」」

 

 

 同時に振りかぶられて放たれたアブソルとタチフサグマの鋭い爪による斬撃がかち合い、距離を取り睨み合う両者。

 

 

「クロスチョップ!」

 

「みきってつじぎり!」

 

「ブロッキング!」

 

 

 ブロッキングとみきりという防御技を持っているこの二体、戦い方が似ていて勝負がつかない。ヤユイが焦って次の指示を出したのもしょうがないことだった。

 

 

「ほのおのパンチからのクロスチョップ!」

 

「焦ったな、餓鬼が。みきって、エアスラッシュだ!」

 

 

 タチフサグマ最大の一撃は容易に防がれて。返しの手痛い一撃が叩き込まれ怯んでしまう。

 

 

「隙を逃すな、つじぎり!」

 

 

 そこに十字を描く斬撃が放たれ、血を流したタチフサグマはついに倒れ伏した。戦闘不能だ。どうして…?

 

 

「特性きょううん。アタシのアブソルの攻撃は手痛いぞ。死ななくてよかったなあ?」

 

「やっぱり、強い……ルガルガン!いわなだれ!」

 

「アブソル。みきり」

 

 

 タチフサグマを戻し、ルガルガンを繰り出す。ヴァイスは警戒してみきりを使って攻撃を防ぐが、生憎とルガルガンの真骨頂はそうではないのだ。

 

 

「がんせきふうじ!」

 

「そんなものあたるかよ!」

 

「がんせきふうじ!」

 

 

 岩石が放たれるも、いわなだれほど質量の無いそれは簡単にアブソルに避けられてしまう。それでも連打するヤユイ。

 

 

「どうした?やけにでもなったか!つじぎり!」

 

「それを、待っていた!カウンター!」

 

 

 アブソルの斬撃を受けながらの、手痛い拳の一撃が胴体を捉え、殴り飛ばす。アブソルは目を見開いて殴り飛ばされ、壁に激突して沈黙した。

 

 

「……誘い込まれたか。強くなったじゃないか、泣き虫でポケモントレーナーの出来損ないだったちびっ子が!お前、名は何て言う?」

 

 

 その言葉に、ルガルガンと共に不敵に笑み、自らに指を向けるヤユイ。

 

 

「ヨハル。クノエシティのヨハル!それがお前を倒す、トレーナーの名だ!」

 

 

 その言葉に、ショックを受ける。…そんな。ヤユイこそ、名乗るべきなのに。私は、ポケモントレーナーを名乗れもしないのに。ヤユイ、貴方は名乗っていい。隠さなくていいんだよ、もう。そんな私の言葉は、私のために戦う親友には届かない。




ヴァイス、というか新生プラズマ団の幹部陣。弱そうに思われてますが普通に強いんですよ?

・ヨハル
今回の主人公で二重人格。因縁の相手前でも戦えない、ヤユイに任せきりな自分はポケモントレーナーだと名乗れないと思っている。クノエシティ出身。

・ヤユイ
ヨハルのもう一つの人格。ヨハル第一主義で自分の存在は明かそうとせず、あくまでヨハルとしてヴァイスに勝負を挑む。怒りから口調が荒々しい。

・ヴァイス
カロス出身の元エリートトレーナーにして新生プラズマ団幹部。状況を見極め、特性を駆使し、最適解を繰り出す頭脳の持ち主。外道だがトレーナーとしての腕はかなりのもの。少なくともカロスのジムバッジを全て集めているぐらいの猛者である。幹部としての手持ちは四体。アブソル、ツンベアー、トゲキッス、そしてオニゴーリと全て白いポケモンなのが特徴。切札はオニゴーリ。その特性は…?

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VSオニゴーリ

どうも、放仮ごです。今回はヴァイスVSヨハル!そう、戦えない少女がついに戦います。楽しんでいただけると幸いです。

※剣盾には出ない過去作要素が出るので注意です


 あれは、三年ぐらい前のことだ。アローラ地方に引っ越してすぐ、ヤユイが手持ちを手に入れるために夜に親に内緒で外に飛び出して、遭遇したカプ・テテフという守り神。その時に拾った不思議な石を持っていたのを、巡回していたしまクイーンのライチさんというアーカラ島で一番偉い人(?)に見つかり、石を加工してあげると言って家に帰されてしまったことがあった。曰く、私はカプに選ばれたのだと。

 

 

「ヨハルー?貴方が見つけたっていう石を加工したものがしまクイーンが持ってきてくれたわよー。………あのね。お母さん、ヨハルがここアローラに引っ越してきてから、夜とはいえ外に遊びに行って、それだけで嬉しかったの。しまクイーンには私から言っておくから、その気になったら顔を出してね?」

 

 

 ヤユイから戻った私は引き籠もりで。会いに来たライチさんに会う勇気もなく。お母さんの優しい言葉に甘えてしまった。食事と一緒に部屋の前に置かれていたそれを、試しに腕に装着する。引きこまれそうな夜の様な漆黒のブレスレットだった。石の感触が冷たくて気持ちいい。その日から、そのブレスレットが私たち二人を繋ぐ宝物になったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハッ!お前は強いよ、認めてやる!だがアタシに勝とうなんざ100年早いね!トゲキッス!」

 

「ルガルガン戻って!アマルルガ!」

 

 

 繰り出してきたのは悪名名高いトゲキッス。私みたいな素人でも知っている、数多の大会でミミッキュやドラパルトに並ぶ使用率を誇る、凶悪なまひるみを使う白い悪魔。対してルガルガンを戻したヤユイが繰り出したのはいわ・こおりとひこうタイプに絶対的なアドバンテージを持つアマルルガ。よほどのことがない限り負けることはないはずだ。

 

 

「でんじは!」

 

「フリーズドライ!」

 

 

 でんじはを受けながら、効果抜群の凍てつく吐息を放つアマルルガ。しかしトゲキッスは広い屋内を自在に飛んで回避。麻痺したアマルルガではあのスピードを捉えきれない。

 

 

「ストーンエッジ!」

 

「一発でも当たればアウトなら、避けて怯ませてなにもさせなきゃいいんだよ!エアスラッシュ!」

 

「“まひるみ”か…!」

 

 

 攻撃を繰り出そうとしたところを怯ませられ麻痺し止められたことで苛立たしげに歯を噛み締めるヤユイ。ヤユイはなにかされる前に自分のペースに持ち込んで相手に好きなことをさせずに追い込むタイプだ。こうなると、ダフネの時と同じだ。負ける、負けてしまう。

 

 

「こんなところで使ったらヨハルの体まで危ないから使いたくなかったけど……ふぶき!」

 

「エアスラッシュで切り開け!」

 

 

 私の体を気遣っていたのか使用を渋っていたアマルルガの必殺技ともいえるふぶきを、あろうことか風の刃で切り開いて防ぎつつ怯ませるトゲキッス。反則にも程がないだろうか。いや、普通の個体よりも明らかに強い。エアスラッシュでヤユイの切札と言ってもいいブリザード級の威力を誇るふぶきを防ぐなんて。

 

 

「どうした、それで終わりか?ならこいつでとどめだよ!はどうだん!」

 

「それなら、じしん!」

 

 

 エアスラッシュを止めた今がチャンス。とどめを刺しに放たれたはどうだんを、じしんでプラズマフリゲート丸ごと揺らすことでずらして回避する。はどうだんはその速度から必中とされる技だが、必ず当たる技なんてシャドーパンチみたいな特殊な技ぐらいしか存在しない。

 

 

「今だ!根性で拘束して!」

 

「逃げろ、トゲキッス!」

 

 

 プラズマフリゲートが大きく傾いたことで床に近づいたトゲキッスに向けて歩き、首を伸ばして翼に噛み付くアマルルガ。これでもう逃げられない

 

 

「ヨハル、ごめん!最大パワーでふぶき!」

 

「はどうだん!…ぐぅううう!?」

 

 

 アマルルガを中心に部屋全体に吹き荒れる凄まじい勢いのふぶき。トゲキッスは凍り付いて倒れ、同時にアマルルガも倒れる。ヴァイスは踏ん張って耐えるが、私の小さな体は吹き荒ぶ風に耐えきれずに吹き飛ばされ、壁に勢いよく叩きつけられてしまう。その時、私は違和感を感じた。痛い。見てるだけじゃ感じない、現実の痛みを感じる。これは…まさか?

 

 

「アタシを楽しませてくれるねえ、クノエシティのヨハル!なら切札でお相手しよう!オニゴーリ!」

 

「ヤユイ?どうしたの、ヤユイ!」

 

「なんだ?どうした?誰に呼びかけてる?」

 

 

 心の内にいるはずのヤユイに呼びかけるが応答がない。気絶している…?さっきのショックで?ダメだ、それは不味い。それだけは駄目だ。とりあえず出したガラガラがこちらに指示を仰いでくるが臆してしまう。後ずさってしまう。駄目だ、ポケモンバトルは駄目なのだ。しかも相手はあのオニゴーリ。以前の、あの光景がフラッシュバックする。こわい、こわい、こわい、こわい!

 

 

「が、ガラガラ…えっと、その…ふ、フレアドライブ!」

 

「オニゴーリ、かげぶんしんだ!」

 

 

 必死に声を振り絞って出した技は、簡単に避けられてしまう。その時、ブルリとオニゴーリの姿が震えた。あれだ、あれを許してはならない。

 

 

「ウワァアアアア!シャドーボーン!」

 

「そんな闇雲で当たるか。なめてんのか?まもる!」

 

 

 ガラガラは私の指示に従ってくれるが、的確に防がれてしまう。そうだ、ブラッキーもこうやって時間を稼がれて、特性のムラっけで異様に強くなってメガシンカしたメガオニゴーリに…あの光景が何度も、何度も脳裏にフラッシュバックする。だめだ、だめだ。それだけは駄目だ。ヤユイがいないなら私が頑張るしかない、だけど、でも、どうすれば…? 

 

 

「フレアドライブ!シャドーボーン!」

 

「かげぶんしん!まもる!どうしたどうした!さっきとはまるで別人じゃないか!アタシを楽しませてくれるんじゃなかったのか?前に戻っちまったじゃねえか!ああん?!つまらねえぞ、おい!」

 

 

 凶悪に目を見開き、本当に心の底からつまらなそうな声色でそう述べるヴァイス。怖い。怖い。また何かを言われるのか。いやだ、いやだ。戦いたくない。

 

 

「もういい。起点としては十分だ。だからさ……もう終わっていいよ、お前。ぜったいれいど」

 

「!?」

 

 

 放たれたのは、つららおとしではなく。一撃必殺のぜったいれいど。ろくに避ける指示もできなかったためガラガラは直撃し、凍り付いて氷像となってしまう。だけど死んではいない、戦闘不能だ。でも、なんで…!

 

 

「なんで、その技でブラッキーを倒さなかったの!?」

 

「あ?」

 

「その技があるなら、ブラッキーを殺さずに戦闘不能にすることはできたはずだよ。なのに、なんで…」

 

「あー、その話か。簡単だよ、つまらなかったからさ」

 

「…え?」

 

 

 ヴァイスが語ったその理由は、理解の範疇の外にある言葉だった。

 

 

「アタシはね。自分が楽しめないのが嫌なのさ!弱いくせに無駄に耐えやがって、楽しくない、面白くない、燃えない、つまらない。だから殺してやったのさ。スカッとしたね。雑魚が雑魚らしくあっけなく死んでしまう様はさあ!」

 

「そ、ん、な……そんな理由で、私の友達を、家族も同然だったブラッキーを…?」

 

「そんな理由?ふざけんな。こっちは死活問題だ。それで追放されてプラズマ団なんかに入っちまったが楽しませてもらってるよ。ありがとうな、お前が弱かったおかげだ。ほら、最後のポケモン出せよ。ルガルガン、だったか?」

 

 

 震える手で最後のボールを構える。私が弱いから、ブラッキーが殺された。つまらないから、ブラッキーが死んだ。頭の中で二つの言葉がグルグルする。だめだ、だめだ、だめだ。私じゃ駄目だ。このままじゃあの時と同じように、ルガルガンが死んでしまう。いやだ、そんなの嫌だ。

 

 

『諦めないで、ヨハル』

 

「ヤユイ…?」

 

 

 目が覚めたのか、ヤユイの声が聞こえてくる。お願い、代わって…交代して、ヤユイ!

 

 

『駄目だよ。こうなってよくわかった。私が勝っても駄目なんだ。ヨハルが打ち勝たないと駄目なんだ。貴方が最強だと信じた、この私が育てたルガルガンだよ?生半可な育て方してない。ルガルガンを信じて、戦って!』

 

「で、でも…私なんかじゃ…」

 

『切札はあるでしょ。それでもダメだっていうなら…ヨハルの信じるヤユイ(わたし)を信じて!』

 

 

 そう、心の中で笑顔で私の背中を送り出してくれるヤユイを幻視して。

 

 

「っ……う、ううう…ルガルガン!」

 

「おっ、やっとやる気になったか。冷めさせてんじゃねえぞ!メガシンカ!」

 

 

 私がルガルガンを繰り出したと同時に、萌え袖を振り回してメガアンクレットを輝かせてオニゴーリをメガオニゴーリに変貌させるヴァイス。今まで渋ってた間にどれだけパワーアップしたか分からない。私が信じる、ヤユイを信じる!

 

 

「つららおとし!死にやがれ!」

 

「うううううっ、うおおおおおおおおお!」

 

 

 ヤユイの言う通り、切札は、ある。アローラに引っ越した時にカプ・テテフからもらい、ライチさんが加工してくれた石を受け取った時にヤユイの実力を認めて一緒に渡してくれた、この力…!

 

 

「ルガルガンZ!」

 

「なに!?」

 

 

 氷柱が降り注ぐ中で、防御体勢を取るルガルガン。その間に私は左手に装着していた黒い石の腕輪に、ポケットの中から取り出した茶色の菱形が三つ集まった様な形状の宝石をセット。おぼつきながらも踊るように力こぶを見せるようなポーズをとる。同時に、窓から見える空が月夜となり、私は叫ぶ。

 

 

「ルガルガンのZワザ!」

 

 

 月に向けての遠吠えするルガルガンにZパワーが集まり、無数の尖った岩塊を掘りだして浮遊させてその全ての先端を相手に向けて、自らは跳躍。それを撃ち落とす様に氷柱を飛ばすメガオニゴーリだが、岩塊に当たって砕けて行く。

 

 

「弱くてつまらない奴がZワザだと!?意地でも殺せ!つららおとし!」

 

「ラジアルエッジストーム!」

 

 

 そしてルガルガンがメガオニゴーリ目掛けて急降下すると、それに合わせて岩塊も殺到。メガオニゴーリに無数の岩塊が突き刺さり、とどめのルガルガンが振りかぶった爪の一撃が炸裂。メガオニゴーリはクレーターを作って叩きつけられ、元の姿に戻って戦闘不能となった。ルガルガンと共にヴァイスを睨みつける。彼女は信じられない様に後ずさって髪を掻き乱していた。

 

 

「な、な、な……」

 

「ひとつ、ヴァイスに言っておきたいことがあったの。ありがとう。おかげで、誰よりも大事なもう一人の私と出会えた。それはそうと許しはしないけど」

 

「み、認められるか!アブソル!あのヨハルとかいう餓鬼にエアスラッシュだ!」

 

 

 ボールを手に取り、ふくよかな胸から取り出したげんきのかけらを使うヴァイス。まだ負けを認めないのか、と身構えると、繰り出されたのはアブソルで。あろうことか、その矛先をルガルガンではなく私に向けるヴァイスに、もはや憐れみと言う感情すら出てくる。

 

 

「勘違いすんなよ?殺して無かったことにするんじゃねえ、面白くないから殺すんだ。あの世でブラッキーによろしくなあ!…………あ?」

 

「え…」

 

 

 あまりのできごとに、言葉を失った。そっぽを向いたアブソルの放った風の刃が、ヴァイスの腹部を大きく斬り裂いたのだ。鮮血が舞い、倒れるヴァイス。血だまりができていき、アブソルは静かにそれを見守る。その目からは憎悪は感じなかった。

 

 

「な、んで……アブソル、お前が……」

 

『…ヴァイスのポケモンだからこそ、止めたかったのかな』

 

「言ってる場合じゃないよ、早く手当てしないと!」

 

 

 慌てて駆け寄り、バッグの中から包帯とすごいきずぐすりを取り出して治療を始める。なんで、と問いかけてくるヤユイとヴァイスに、怒鳴り返す。

 

 

「絶対に死なせない!ブラッキーを殺したことを、これまでの悪行も全部、償え!」

 

 

 死なせない。今度こそ、死なせてたまるか!




ヴァイスの最期はこうと決めてました。自分のポケモンにやられ、つまらないと吐き捨てた人間に助けられる…屈辱の極みでしょう?

・ヨハル
三年前、アローラのアーカラ島に引っ越した際にカプ・テテフとしまクイーンのライチに出会い黒いZリングとルガルガンZをもらった二重人格の少女。バトルがトラウマになっていてろくに戦えなかったが、ヤユイの励ましで勇気を振り絞りZワザで勝利を収めた。ヤユイと出会えた点についてはヴァイスに感謝しており、どんな言葉を向けられようと、ヴァイスを償わせるために生かそうと頑張る。

・ヤユイ
ヨハルの親友にしてもう一つの人格。じしんでプラズマフリゲートを揺らしてはどうだんを避けたりとアグレッシブな戦法を取る中アマルルガのフルパワーふぶきを屋内で受けて気絶、ヨハルに戻ってしまった。目覚めた時交代してもよかったのだが、ヨハルが自分の力で勝たないといけないことに気付いて声援を送る。

・ヴァイス
プラズマ団の幹部で快楽主義者。全ての台詞が本音であり、その行動原理は自分が「面白いか」「つまらないか」。つまらなければ簡単に命を奪い自分が面白いことにする根っからの狂人。ブラッキーを殺したことで追放されプラズマ団に入ったことをよしとし感謝を送るほどの極悪人。その最期はパートナーだと信じていたアブソルに斬られて生死の境を彷徨いヨハルに助けられるという因果応報の末路だった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSネンドール

どうも、放仮ごです。今更スパイダーマン:スパイダーバースを借りて視聴しました。蟲ってやっぱりすごい。

今回はダフネVSシュバルツ。実は似た者同士だった二人の対決。楽しんでいただけると幸いです。


「エアカッター」

 

「アーマルド、げんしのちから!」

 

 

 部屋全体にまとめて襲いかかる、ゲームのマップ兵器の様な攻撃を私も避けながら指示する。アーマルドは頑丈さが売りだ。あの威力のエアカッターでも耐えながら攻撃を叩き込むも、ひらりと避けられてしまう。あのクロバット、恐らくゴルバットが進化したポケモンなんだろうが、やはり強い。

 

 

「どうした、そんなものか!クロスポイズン!」

 

「シザークロス!」

 

「さらにクロスポイズンだ!」

 

 

 毒を纏った二枚の翼とアーマルドの両腕が鍔競り合っていると、残り二枚の翼でさらにクロスポイズンを腹部に叩き込むクロバット。そんな予想外の攻撃にアーマルドは悲鳴を上げ、膝をつく。不味い、戻さないと。

 

 

「交代、イオルブ!」

 

「飛んで火に入る夏の虫だ!エアカッター!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 とんでもない威力と規模のエアカッターだが、それを利用する。鏡の膜で受け止めた攻撃を倍返しの光線として放ち、クロバットに直撃。あの時のリベンジ、果たさせてもらう!

 

 

「突進してさいみんじゅつ!」

 

「くろいきりで隠れろ!エアカッター!」

 

「上に避けてサイコキネシス!」

 

 

 近づいて至近距離のさいみんじゅつはくろいきりに紛れて避けられてしまうが、空に浮かんでエアカッターを回避しながら、ついでに私もエアカッターを横になって避けながら、サイコキネシスで地面に叩きつけて戦闘不能にするイオルブ。まずは一体。

 

 

「私のクロバットに勝つとは。なるほど、強いな。かつて完膚なきまでに倒した時とは大違いだ。何故そこまで強くなった?」

 

「8つのジムを親友二人と共に駆け抜けて旅をしてきました!以前の私じゃありませんよ!」

 

「だが私も、グレイ様の野望を、真のポケモン救済を果たすために負けられぬ!いでよ、ネンドール!」

 

「交代、グソクムシャ!であいがしらです!」

 

「すなあらし!」

 

 

 交代と同時に突撃するグソクムシャの一撃が、ネンドールを中心にドーム状に放たれた砂の壁で防がれる。部屋全体に吹き荒れるすなあらしだが、何かがおかしい。広がったすなあらしが、明らかな流れを持ってネンドールに集っていく。

 

 

「じんつうりき!」

 

 

 吹き荒れた砂が竜巻の様になって集中し、ネンドールを中心に部屋の天井近くまで巨大な砂の像ができあがる。それは、巨大なネンドールだった。過去に見た、ラウラさんとモコウさんVSムツキさんとキリエさんのガラルスタートーナメントで見たドリュウズ、そしてジムチャレンジ中に出会ったセイボリーさんのヤドキングを思い出すその巨体に、無意識に後ずさる。キリエさんはかつての最強のジムリーダー、セイボリーさんはエスパータイプのエキスパート。そんな二人が奥の手として使えるあれを使えるなんて、シュバルツの実力はそれに匹敵すると言うのか。

 

 

「でも、砂の塊ならば!アクアブレイクです!」

 

「腕を伸ばして叩き潰せ!」

 

 

 本来は短い砂像ネンドールの右腕が、伸びて攻撃。技ですらないそれとアクアブレイクが激突し、圧倒的な質量差に殴り飛ばされるグソクムシャ。さらに濡れて泥になり固まった部位は取り外して砂を集めて再生する砂像ネンドール。一部を濡らした程度じゃアレは崩せないのか。

 

 

「ならば、連続でアクアブレイク!」

 

「テレポート!叩き潰せ!」

 

 

 一気に崩そうと両腕に水を纏って突撃するグソクムシャだが、その巨体が掻き消えて盛大に空ぶる。その背後に姿を現す砂像ネンドール。その巨大な身体を横転させ、弾け飛んだ砂が津波となって私とグソクムシャを飲み込んだ。見れば、シュバルツの方には砂が一切来てない。じんつうりきで操ったのだろうか。

 

 

「もう一度じんつうりきだ」

 

 

 再びネンドールに集って形成されていく巨大な砂像に、口の中に入った砂を吐き出しながらどうしたものかと考える。グソクムシャのアクアブレイクでごり押す?いや、すぐ切り離されて砂を集めて回復されてじり貧だ。イオルブで似た様なことをする?いや、付け焼刃で勝てる程シュバルツは弱くない。メガヘラクロスで……どう考えても無理だ。体格が違いすぎる。砂の巨像なんてどうすれば……そうだ。

 

 

「ゲホッ、ゴホッ……水が駄目なら、掘り進むしかないでしょう!交代、クワガノン!」

 

「なにをしようと無駄だ!腕を伸ばして攻撃!」

 

「あなをほるです!」

 

 

 船の中だと使えないと思っていた技。それを、砂像ネンドールが伸ばした腕に突撃し、掘り進んでいくクワガノン。高速で全身を駆け巡り、結合を脆くしてその巨体を崩していく。いくら砂をかき集めようとも集めた側から崩していく。これなら、行ける!

 

 

「ふゆうだろうが当ててやる!だいちのちから!」

 

「むしのさざめきです!」

 

 

 砂像の巨体を地盤にしてマグマの様な光線を放つネンドール。その周りを回転しつつネンドールの本体目掛けて掘り進み、翅を羽ばたかせることにより発生する衝撃波を叩き込むクワガノン。砂の体を破壊しながら突撃し、ネンドールの体を大顎で挟み込んで砂像の背中から飛び出した。

 

 

「ネンドール!砂像で追いかけろ!」

 

「クワガノン、砂像を利用して!」

 

 

 ネンドールはじんつうりきで砂像の腕を動かして迎撃を計るが、クワガノンは方向転換。砂像の伸ばしてきた腕と、ネンドールを激突させた。ネンドールが戦闘不能になったのか、崩れ落ちてまた砂の津波と化す砂像は私とシュバルツを飲み込んだ。

 

 

「ぶはっ!やりましたね、クワガノン!」

 

「馬鹿な、全てのポケモンを救済するため鍛え上げた我らが力を越えるだと…!?」

 

「ポケモンを救済するため?どの口が言うんですか!ポケモントレーナーから無理やりにポケモンを奪って!好き勝手解放しては生態系を破壊して!モコウさんからレジエレキを奪って!レジギガスとかいう伝説ポケモンを操って!シュートシティを凍らせて!私達や観客を直接襲おうとして!ラウラさんを洗脳して!挙句の果てに、グレイは「世界の王になる」だという!これのどこが、救済なんですか!」

 

 

 そうなのだ。初遭遇の際、後から冷静になって思い返してみれば、このシュバルツと言う男のポケモン救済に対する熱意は本物だった。だけど、それならおかしいほどにプラズマ団としての活動が矛盾しているのだ。解放したポケモンを保護するでもなく野放しに野生に返し、生態系を破壊してむしろポケモンの迷惑になっている。こんなの、シュバルツのいう救済とは絶対違うはずなのだ。

 

 

「ぐっ……それは、グレイ様は……世界の王となり、全てのポケモンを解放させて救済すると…」

 

「そんなの、救済じゃありません!たくさんのポケモンが路頭に迷うだけです!あの男が世界の王になりたい、それだけじゃないですか!」

 

 

 私の言い分に強く言い返せないのか、口ごもるシュバルツに捲し立てる。あの時は私が悪いことをしていた自覚もあったから強く言い返せませんでしたが…正当性がない相手に、負けるつもりはない!

 

 

「…うるさい!私の信じた理想は、正しいもののはずだ!黙らせろ、ヨノワール!シャドーボール!」

 

「クワガノン、ほうでん!」

 

 

 シャドーボールと電撃が激突、大爆発を起こす。その爆煙の中から飛び出してクワガノンの大顎を掴み、上空に舞い上がるヨノワール。

 

 

「ぶん投げろヨノワール!じゅうりょく!」

 

「ねばねばネット!」

 

 

 顎を掴んで真下に放り投げると同時にじゅうりょくを使用、私が膝をつくぐらいの重力が発生し、高速で叩きつけられようとしていたクワガノンだったがねばねばネットを飛ばしてヨノワールの腹部を引っ張り、一緒に地面に叩きつけられる。ダブルノックアウトだ。

 

 

「負けませんよ……自分に嘘をついている、かつての私の様な人間にだけは!」




主人公強過ぎ問題。二話で分けるつもりが一話で三匹倒しちゃったよ…

・ダフネ
最初に出会った時のシュバルツの言葉と、プラズマ団の活動の違いに違和感を感じていた主人公。結論として、かつての自分と同じ「自分を騙して頑張りすぎている」と判断。クワガノンもアーマルドも戻ってきたこともあって、怒りではなく責任として戦う。

・シュバルツ
根っからのポケモン救済主義者な新生プラズマ団の幹部で、キリエと似た様な事ができる実力者。根っからの白ズマ団ともいえる。ヴァイスとは正反対の人格者で、盲目的にグレイの理想を信じて付き従ってきた。奪ったポケモンを保護するのではなく即解放するやり方には疑問を持っており、グレイへの不信感とグレイへの忠義がせめぎ合っている。手持ちはクロバット、ネンドール、ヨノワール、シャンデラと「黒」のポケモンばかり。トレーナーとポケモンと言う関係ではなく、共にポケモン救済を目指す共犯者と言う間柄。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシャンデラ

どうも、放仮ごです。シャンデラといえばポッ拳を思い出す、蟲ポケモン程じゃないけど好きなポケモンです。なら必然的にこうなるよね。

今回はダフネVSシュバルツ決着。強くなったダフネは最強のシャンデラに勝てるのか。楽しんでいただけると幸いです。


 ヨノワールが発動した重力が発動したままであり、増加した重力に片膝をつく。シュバルツは私みたいに片膝つくことなく両の脚で立っていたが、苦しげな表情だ。それはきっと、重力だけのせいじゃないだろうことは想像も容易い。

 

 

「グレイ様への忠義のため、大義を果たすため!焼き尽くせ、シャンデラ!」

 

「っ…イオルブ!」

 

 

 不味い。最後の手持ちは以前使ってたランプラーが進化したであろうシャンデラ。その火力は頭がおかしいの一言に尽きる。あの場にいたグソクムシャとメガライボルトを一撃で戦闘不能にしたあの火力は侮れない。ランプラーの時点でアレなのだ。進化した今、どれほどか未知数だ。

 

 

「シャドーボール!」

 

「サイコキネシス!」

 

 

 頭上に巨大な暗黒の球体を形成し、飛ばしてくるシャンデラ。イオルブは念動力で受け止めようとするが耐え切れず、押し潰される。効果抜群とはいえ一撃で潰されてしまった。目を回すイオルブに、シュバルツの意地を垣間見る。倒すしか、ない。ここで、負けるわけには!残る手持ちはグソクムシャ、アーマルド、アブリボン、ヘラクロス。そのうちグソクムシャは少なくないダメージを受け、アーマルドに至ってはほぼ瀕死だ。有利なタイプの二体が全快でないのは不味い。

 

 

「ポケモンを出さぬなら覚悟しろ、マジカルフレイムだ!」

 

「くっ…少しは待ってくれてもいいんじゃないでしょうか!」

 

 

 だけど、私にも向けて炎を放ってくるので回復させる隙がない。とりあえずアーマルドを繰り出して耐えてもらう。少しでも削りたい。隙があれば…!

 

 

「まもる!」

 

「防ぎきれると思ったか?ほのおのうず!」

 

「くっ…アーマルド!まもる!」

 

 

 文字通りのほのおのうず、炎の大竜巻がアーマルドを飲み込んだ。灼熱の業火がアーマルドを燃やし尽くす。奇跡的に連続で発動できたまもるで防げているが、ほのおのうずは時間が経つごとに勢いを増して威力も倍増。まもるの光のドームさえひびが入り、砕け散ってしまう。

 

 

「しおみず!」

 

「今更遅いわ!」

 

「前方右斜めにげんしのちから!」

 

 

 しおみずで消火しようにももう止められないほど勢いを増し、ならばと最後の一撃を指示。炎の大竜巻の中からいわが飛び出してきてシャンデラを襲うも、シャンデラは右手(?)を動かしてチョップで破壊したかと思えば一回転。残りの岩も纏めて粉砕してしまう。そんなのありですか!?

 

 

「っ、交代…アブリボン!シャンデラってそんな動けたんですか…」

 

「我がシャンデラはただのシャンデラに非ず!ポケモン救済がため、強くなるためにフェルム地方に赴きポッ拳をランプラーの頃から行って鍛え上げた自慢のシャンデラだ!」

 

「ポッ拳…だからあんなに火力が!?」

 

「短期間でどれだけ強くなろうと、鍛え方が違うぞ!れんごく!」

 

「アブリボン、空に逃げなさい!しびれごな!」

 

 

 放たれた炎の津波を、空中に飛ばせて回避。私は炎の余波を受けて吹き飛ばされそうになるがなんとか耐え凌ぎ、指示を出す。しかし素早い動きでしびれごなを回避するシャンデラ。普通のポケモンの動きじゃない。ポッ拳、ただのポケモンバトルとは違うとは聞いてましたがここまで動きが違うんですか!

 

 

「捕らえろ!ほのおのうず!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 再び放たれる炎の大竜巻。アブリボンは吸い込まれそうになりながらもその横を抜けて至近距離からきらめく光を叩き込むが、左腕(?)に殴り飛ばされて炎の大竜巻の中に突っ込まれ、戦闘不能となってしまう。強すぎる。他のシュバルツの手持ちとは文字通り格が違う。シュバルツがどれだけポケモン救済のために頑張って来たのか分かるポケモンだ。それでも、負けられない。残り二体だが、負けられるはずがない!

 

 

「行きます!ヘラクロス!メガシンカ!」

 

 

 メガペンダントを握りしめ、繰り出したヘラクロスをメガシンカ。メガヘラクロスに変貌させて、構える。心を一つに!

 

 

「ロックブラスト!」

 

「無駄だ!弾き返してマジカルフレイム!」

 

 

 放ったロックブラストは簡単に弾かれてあらぬ方向に吹き飛び、放たれた円形に陣を組む火炎弾を横に避けるメガヘラクロス。そのまま突撃するが、それを許さないシュバルツではない。

 

 

「近づけるな!ほのおのうず!れんごく!シャドーボール!マジカルフレイム!」

 

 

 腕から蒸気を噴出し、高速で突撃するメガヘラクロスに向けて放たれる、炎の大竜巻、炎の大津波、隕石の様な巨大な暗黒の球体、円形に陣を組んで放たれる火炎弾。

 

 

「右です!上!ブレーキ!左、そこです!」

 

 

 炎の大竜巻は大きく右に蒸気の噴出で回避、炎の津波は両腕の噴出孔を床に向けて蒸気を勢いよく噴射して急上昇して回避、そこでブレーキして暗黒の球体を外させて、円形に陣を組んだ火炎弾は左に蒸気を噴出させて大きく左回りに回避したメガヘラクロスは、そのまま左側からシャンデラに襲いかかる。

 

 

「メガホーン!」

 

「弾き返せ!」

 

 

 シャンデラの振るった左腕と、メガヘラクロスの角と交差。大きく弾かれて、シャンデラの目前に投げ出されるメガヘラクロス。明らかに大きな隙だった。

 

 

「ほのおのうず!」

 

「インファイトで突き破って!」

 

「なんだと!?」

 

 

 インファイト。ゴーストタイプであるシャンデラには効果なしで擦り抜けてしまう技。だからそれを利用する。インファイトの勢いでシャンデラ目掛けて突撃したメガヘラクロスは炎の大竜巻から抜け出し、そのままシャンデラを擦り抜けて後ろに飛び出し、蒸気を噴出して急ブレーキしてぴったり後ろを取った。

 

 

「この距離なら腕で弾くこともできない(バリアは張れない)でしょう!ヘラクロス、ロックブラスト!」

 

「シャンデラ、れんごく!」

 

 

 岩石弾を連続で受けながら、炎の大津波を放つシャンデラ。メガヘラクロスは押し流されて、それでもロックブラストを撃ち続ける。

 

 

「ヘラクロス!負けないでください!勝って、お願い!」

 

「シャンデラ!負けるな!勝って示せ!我々の正義を!」

 

 

 シュバルツと同時に絶叫し、そして。メガヘラクロスはロックブラストを撃ち続けたまま炎の津波に押し流されて壁に激突して戦闘不能。メガシンカが解けて、それでも立ったまま戦闘不能となった。立ち往生…私の意に応えてくれたのか。

 

 

「残り一体…どんな蟲ポケモンだろうが我がシャンデラの炎が、やられる前に焼き尽くす!」

 

「…いえ。体力をギリギリまで削ってくれた時点で私の勝ちです」

 

「なんだと?」

 

 

 ヘラクロスをボールに戻し、最後のネットボールを取り出す。兄さん、力を貸してください!

 

 

「グソクムシャ!であいがしらしながらアクアブレイク!」

 

「…なん………だと……?」

 

 

 最速の一撃が。水を纏って放たれる。あまりの速さに反応できなかったシャンデラを殴り飛ばし、天井に叩きつけてシャンデリアの様にして、シャンデラは天井に突き刺さってそのまま戦闘不能になったようだった。見れば、シュバルツは呆然とその光景を見上げつつ、憑き物の落ちた様な顔でこちらに向き直った。

 

 

「……負けたか。大義があれば負けぬ戦いに負けた以上、これが真実なのだろうな」

 

「最後の猛攻は凄かったです。貴方の思いは分かりました。だけど、そのやり方は明らかに…」

 

「薄々分かっていた。グレイ様はポケモンの救済のために動いていないと。分かっていながら、私は私の忠誠が崩れるのを恐れたのだ。私の夢が、悲願が、達成できるかもと言う希望に縋りたかった。ただそれだけなんだ。……だが、そうだな。グレイ様が王になれば全てのポケモンが路頭に迷うことになる。それは駄目だ」

 

「では…!」

 

 

 頷くシュバルツは軍帽を外して、熱意の籠った目を私に向けた。

 

 

「真意を直接聞きたい、私も行こう。…このすぐ隣の部屋が回復部屋だ。お前も回復を……名は、なんていう?」

 

「ダフネです。バウタウンのダフネ」

 

「そうか、ダフネ。この私、シュバルツも共に戦わせてくれ」

 

「はい、喜んで!」

 

 

 頼もしい戦力を味方にして。私達はとりあえず回復部屋へ向かうのだった。




※知らない人のための補足・フェルム地方:ポッ拳の舞台。今作の世界線だとどんなポケモンでも試合ができる。

・ダフネ
かつて強さを求め「普通」を求めた主人公。そうして手に入れたのは仲間との絆と言う、限りなく普通ともいえる強さだった。シュバルツと和解する。

・シュバルツ
わざわざポッ拳で鍛えるほどポケモン救済に全てを捧げていたプラズマ団の幹部。敗北し、ただ一人の男のシュバルツとしてグレイに直談判すべくダフネと共に戦うことを選ぶ。その結末は…?

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VSメガハッサム

どうも、放仮ごです。2ルートあったんですが、えぐい方を選ぶことにしました。マイルドな方は前にやったしね。

今回はユウリVSラウラ戦。頂上決戦。楽しんでいただけると幸いです。


「こんな形でまた真剣勝負するとは思わなかったよ、ラウラ!」

 

「グレイのために、負けるつもりは毛頭ないぞチャンピオン!」

 

 

 私の繰り出したウーラオスと、ラウラのマッシブーンの拳が激突する。なんかもう、グレイのためにってだけでイライラする!

 

 

「グロウパンチ!」

 

「すいりゅうれんだ!」

 

 

 私のポケモンの中でも特に格闘戦に優れたウーラオスの水の流れの如き連撃を、単純な拳の連撃で対抗するマッシブーン。必殺の技として完成されている連撃に、ただの技の連打で対抗するのは理不尽にも程がないか、ラウラ。体格がそもそも不利か。ならば!

 

 

「交代、ムゲンダイナ!捕まえて!」

 

「っ!ばかぢから!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 

 ダイマックスほうはプラズマフリゲートに穴を開けかけないから使えない。ならばとマッシブーンの肩を掴ませ、かえんほうしゃを零距離から叩き込む。しかしアッパーカットで炎はほとんど当たらずに上を向き、天井を焦がした。

 

 

「ストーンエッジ!」

 

「りゅうのはどう!」

 

 

 巨岩を出して殴りつけ、尖った瓦礫を散弾として打ち出すマッシブーンと、口からの青い光線で岩の散弾を薙ぎ払うムゲンダイナ。あのムゲンダイナと互角以上に渡り合うなんて、さすがはラウラとウルトラビーストだ。でも、負けられない!

 

 

「ムゲンダイナ、突撃!クロスポイズン!」

 

「グロウパンチととびかかるで迎え撃て!」

 

 

 高速で突撃して放ったムゲンダイナの交差する斬撃は、上からとびかかったマッシブーンに避けられ、背中に拳が叩き込まれて床に叩きつけられる。そのまま両手でムゲンダイナの尻尾をむんずと掴んで翅を羽ばたかせ、マッシブーンは天高く飛翔。ちきゅうなげのように振り回し始める。

 

 

「ばかぢからで壁に叩きつけてやれ!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 

 グルングルンと振り回され、何度も何度も壁に叩きつけられるムゲンダイナ。そのたびに断続的に放射された火炎が焼くが、ビクともせずに壁に叩き込み続けるマッシブーン。ついにムゲンダイナは戦闘不能になり、崩れ落ちた。

 

 

「ムゲンダイナ、お疲れ…インテレオン!ねらいうち!」

 

「マッシブーン、グロウパンチ!」

 

 

 天井付近から飛来するマッスルの中心部目掛けて、人差し指を突きつけ水流を放つインテレオン。スナイパーの如く見事急所を撃ち抜き、拳が届く前に崩れ落ちさせた。さすが私のパートナー!

 

 

「そっちがパートナーならこっちもパートナーだ。頼むぞ、デンチュラ!」

 

「っ…インテレオンに電撃が通じないのを忘れたの?ラウラっぽくないなあ」

 

「あれから二年…俺が攻略してないとでも思っているのか?なあ、愛しのユウリ?」

 

 

 睨み合うデンチュラとインテレオン。動いたのは、インテレオン。両手の人差し指を向けてこちらに目配せしてきた。

 

 

「インテレオン、ねらいうち!」

 

「デンチュラ、いとをはく!」

 

 

 連射連射連射連射。ねらいうちが何度も何度も放たれ、デンチュラは高速で糸を吐いてスイングし飛び回る。相変わらず速い。天井と壁に囲まれたここじゃデンチュラの独壇場か。この二年で二丁水鉄砲を会得したインテレオンでも、追い切れないなんて…!

 

 

「エレキネット!」

 

 

 空中をスイングしながらエレキネットを吹きつけるデンチュラ。インテレオンは私の指示なしでバックステップで回避して反撃のねらいうち。やはり当たらない。やはり制空権を取られると辛いな。

 

 

「さらにエレキネット!いくら水の盾が作れると言っても、空からの無数のエレキネットは防げまい!」

 

「っ!インテレオン、迎撃のねらいうち!」

 

 

 空から雨の様に降り注ぐエレキネットを、次々と二丁水鉄砲で撃ちぬいて迎撃していく。しかしその隙を突いて長い糸を使って大きくスイング、凄い勢いでインテレオンに突撃してくるデンチュラ。あのエレキネットの雨も囮か!

 

 

「きゅうけつ!」

 

「みずのはどう!」

 

 

 咄嗟に形成したみずのはどうを突き破ったデンチュラが、インテレオンの腹部に激突する。なんとか両腕で受け止め牙が炸裂するのを防ぐインテレオンだが、デンチュラの身体が眩く輝いて。

 

 

「この距離なら防げないだろ!ほうでん!」

 

「上に投げて!」

 

 

 不味い、と指示を出した直後に零距離でほうでんが叩き込まれ、インテレオンは戦闘不能。倒れ伏してデンチュラが勝鬨の咆哮を上げる。

 

 

「くっ…インテレオン、おつかれさま」

 

「悪いが俺は本気だ。かつて愛し合ったとはいえ、容赦はしない」

 

「洗脳されているとはわかっているけど、その言葉はグサッと来るなあ。…あ、そうだ。洗脳。倒さなくてもいいじゃん。お願い、王様!バドレックス!」

 

 

 レイスポスに乗ったバドレックス…王様を繰り出す。そうだよ、思い出した。私がダフネのイオルブのさいみんじゅつにかかった時も、ラウラが王様の力を借りて洗脳し返して私の催眠を解いたんだった。それと同じ要領で……でも、確か王様が操る本人に近づかないといけなかったはず。

 

 

「やっぱり持っていやがったか。だが、ゴースト・エスパーで俺の蟲ポケモンと戦うつもりか?」

 

「私の王様をなめない方がいいことはラウラもよく知ってるよね。カンムリ雪原の王様は伊達じゃない!」

 

「試してみるか?デンチュラ、いとをはくで翻弄してきゅうけつ!」

 

「サイコキネシス!」

 

「カム、カムール!」

 

 

 糸を伸ばして宙に舞い、襲いかかるデンチュラを、空中に縫い止める。さすがは王様だ。デンチュラの動きを見切ってサイコキネシスを当てるとは。

 

 

「アストラルビット!」

 

 

 そして霊体弾が次々と空中に縫い止められたデンチュラに炸裂。戦闘不能にした。それを見て尚、好戦的な笑みを浮かべるラウラ。私の知るラウラじゃない。まるで記憶をそのまま残して別人にされたような、そんな別人の様なラウラに怖気づいてしまう。するとこちらに向いて元気づける様に鳴き声を上げる王様。

 

 

「カムゥル!」

 

「…うん、ありがとう王様。私が臆しちゃ駄目だよね。ラウラを絶対取り戻すんだ!突進して、レイスポス!王様をラウラの元に!」

 

「ちい!フェローチェのスピードでさえバドレックス相手には見切られそうだな。ならこいつだ…行け、ハッサム!」

 

 

 ハッサム。ラウラがヨロイ島で手に入れ、とある理由でここ一年使い続けている蟲ポケモン。そのハサミに挟まれた宝石と、ラウラが懐から取り出して右腕に装着したメガリングのキーストーンから溢れる光が繋がった。

 

 

「俺の敵を全てを斬り裂けハッサム!メガシンカだ!」

 

 

そのハサミは鋭いトゲが付いたホッチキスのような形へと変化、各部に黒鉄の装甲が追加され、まるでヒーローのような容姿に変貌したメガハッサムはこちらを睨みつける。プラズマ団衣装のラウラがメガハッサムを使う姿は、まるで悪役に洗脳されたヒーローの様で、今のラウラを彷彿とさせた。

 

 

「バレットパンチ!」

 

「にどげり!」

 

 

 高速で接近してそのホッチキスの様な両腕から繰り出された一撃を、レイスポスの前足の一撃、否、二撃で弾き飛ばす。まず動きを止める!

 

 

「サイコキネシス!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 

 念動力の波を、無理やり力づくで斬り裂き、突撃するメガハッサム。その周囲に霊体弾が円陣を組んで一斉に襲いかかる。

 

 

「アストラルビット!」

 

「むしくい!」

 

 

 避けられないその攻撃を、メガハッサムは一回転して斬り裂き消し去ると大きく右腕を振りかぶる。アレは不味い!

 

 

「分離!」

 

「はたきおとす!」

 

 

 咄嗟に分離して王様…バドレックスが離脱、レイスポスに効果抜群の一撃が叩き込まれ戦闘不能となる。空中に逃れた王様だが、それを追いかけるメガハッサム。その時私は敗北を悟り、次のポケモンの用意を始めていた。

 

 

「逃がさないぜ!むしくいだ!」

 

「カムゥ!?」

 

 

 ざっくりと斬り裂かれ、落ちてくる王様を、レイスポスと共にボールに戻すと同時に後ろ手にボールから次のポケモンを繰り出し、「お願い」と頼み込む。やりたくなかったけど、王様が負けたんじゃしょうがない。

 

 

「次のポケモンを出さないなら、お前を攻撃してもいいってことだよなあ!バレットパンチ!」

 

「ウーラオス!ほのおのパンチ!」

 

 

 間髪入れず、襲いかかってきたのでウーラオスを繰り出してカウンターの炎を纏った拳でメガハッサムを撃退する。…王様、負けるってわかってたから交代しとけば、ラウラを苦しめることも無かったなあ。

 

 

「そいつが出たなら話は早い、フェローチェで…あぎっ!?」

 

 

 ハッサムをボールに戻し、次のポケモンを繰り出そうとしたラウラが悲鳴を上げる。見れば、上からふわりふわりと忍び寄っていたウツロイドが、触手を耳から突っ込んでいた。私もされたことあるけど、傍から見たらえぐいな。

 

 

「…本当にごめんね、怒りで冷静じゃなかった。ウツロイド、人格を掘り起こして」

 

「じぇるるっぷ」

 

「あぎっ…てめえ、ユウリ……かひゅっ」

 

 

 私に憎しみを込めた目を向けて手を伸ばし、そのまま白目をむくラウラ。私はたまらず黙祷した。後はグレイを…ジュリだけに任せてられないとそう、振り返った時。衝撃的な光景が広がっていた。




バドレックスとウツロイドがいるから洗脳相手にはめっぽう強いユウリ。

・ラウラ
記憶は残されたまま、別人の様にされていた元主人公。グレイのために、と戦うがその発言が災いし、脳を弄られるという考えうる限り最もえぐい方法で解放される。現在はメガハッサムを使用している。ついにユウリのインテレオンを攻略した。

・ユウリ
バドレックスを連れてきた理由を、出すまで忘れていたチャンピオン。洗脳を解くためにバドレックスで洗脳しようと試みるがバドレックスを倒されたため、ウツロイドに全てを託したがさすがに申し訳なかった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSケルディオ

どうも、放仮ごです。今回、ついにグレイの動機が判明します。凡人なら誰だってこうなりそうなものだと思ってます。

今回はグレイVSジュリ。一人ラスボスに挑むジュリの奮闘や如何に。楽しんでいただけると幸いです。


 怒りのままに、ブルンゲルと共にグレイとメタグロスに立ち向かう。曲りなりにプラズマ団のボスだ。それも転生者と来たら、前世のポケモン知識でお兄ちゃん並に強い可能性がある!ストーリー勢の私じゃ勝ち目がない!だから、いつも通り小手先で何とかする!

 

 

「叩き潰せメタグロス。メガシンカだ」

 

 

 右拳を掲げると、その指にはめられた指輪型のメガリングが光り輝き、メタグロスの持つメタグロスナイトと繋がって光の繭に包まれて罅割れ、現れたのはメガメタグロス。ホウエン地方の元チャンピオン・ダイゴも使っていた強力なメガシンカポケモンだ。でもやることは変わらない。

 

 

「みずのはどう!」

 

「アームハンマー」

 

 

 混乱させるべくみずのはどうを形成するが、文字通り叩き潰されて水の弾が破裂。辺り一帯びしょ濡れになる。完全に物理らしい。分かりやすい。

 

 

「動くな。サイコキネシス」

 

「ブルンゲル!シャドーボール!」

 

「コメットパンチだ」

 

 

 ブルンゲルが空中で縫い止められ、それでもとシャドーボールを放つも拳の一撃で粉砕、そのまま手痛い一撃をもらう。よく鍛えられている、強い。なんでプラズマ団のボスなんかやってるんだろ。

 

 

「じこさいせい!」

 

「たたみかけろ。バレットパンチ。コメットパンチ」

 

 

 じこさいせいで回復を試みるも、四本の腕でタコ殴りにされる。相性はいいのに、相性の良さを活かしきれない!ブルンゲルの切札はここで使うべきじゃない。

 

 

「交代、ゴルーグ!」

 

「ほう?」

 

「そのメタグロスに、ゴルーグと相性のいい技はないでしょ!シャドーパンチ!」

 

「それもそうだな。交代だ。私の最初のポケモン、ゼブライカ」

 

「え?」

 

 

 相性が悪いと見たのか、グレイがマスターボールから繰り出したのはゼブライカ。シャドーパンチが炸裂したがあまり効いてないから強いポケモンなのだろう。確かに白黒で名前のグレイと合っているけど、ゴルーグのタイプを知らないの?

 

 

「じだんだ!」

 

「ナイトバーストだ」

 

 

 じめんタイプの一撃で倒そうと試みると、ゼブライカから暗黒の波動が放たれ、ゴルーグが崩れ落ちる。そのゼブライカ、まさか…ゼブライカじゃ、ない?シャドーパンチが効かなかったのは、相性が悪かったからか。

 

 

「ゾロアーク…!」

 

「そうとも。ゼブライカが私の最初のポケモンなのは事実だがな。交代、ゼブライカ」

 

 

 そう言ってマスターボールにゼブライカを戻し、今度はモンスターボールでゼブライカを出してきた。ボールを見れば偽物かどうか判別できそうだな。

 

 

「ラウラもゾロアークに負けたよ。ジュリ…だったか?お前は前世でラウラと兄妹だったらしいな。ゾロアークに騙されるところはよく似ている。顔と同様な」

 

「そうだよね。騙しでもしないと、アンタみたいなのがお兄ちゃんに勝てるわけないもんね。お願い、ゲンガー」

 

「…なんだと?」

 

 

 煽りながらゲンガーを出してメガリングを構えると、癪に障ったのか睨んでくるグレイ。沸点低いな。

 

 

「消し飛ばせ、ワイルドボルト!」

 

「メガシンカ!シャドーボール!」

 

 

 電撃を纏って突撃してくるゼブライカと、メガシンカして右手にシャドーボールを握って直接ぶつけるメガゲンガー。共に弾け飛び、距離を取るがゼブライカが駆け回ってメガゲンガーを翻弄する。

 

 

「ニトロチャージ」

 

「ヘドロばくだん!」

 

 

 炎を纏い突撃してくるゼブライカに、当たる直前に口から毒の塊を飛ばして迎撃。吹き飛ぶゼブライカと、それにとどめを刺さんと追従するメガゲンガー。

 

 

「シャドーボール!」

 

「ボルトチェンジだ」

 

 

 シャドーボールが直撃する寸前、メガゲンガーに電撃を当ててボールに戻って行くゼブライカ。代わりにマスターボールから出たのは、馬の様な剣士のポケモン。確かにガラルに出ることは知っているし、条件である三匹もダークトリニティが持っていたけど!主人公が手に入れるはずのポケモンを横取りにするのは本当にずるいな!

 

 

「ケルディオ。めいそう」

 

 

 シャドーボールを受け止めたのは、かくごのすがたのケルディオ。専用技のしんぴのつるぎはかくとうタイプの技だから通用こそしないが、コバルオン・テラキオン・ビリジオンの三剣士の弟子にして幻のポケモンであるそのスペックは相当なものだ。

 

 

「ハイドロポンプ」

 

 

 背後を向いて後ろ脚を向け、足の裏から凄まじい水流を放つケルディオ。めいそうも積まれたその威力は容易くメガゲンガーを押し流す。一度混乱させて…!

 

 

「ちょうはつ」

 

「あやしいひかり…っ!?」

 

「メガゲンガーと言えば恐ろしいのはほろびのうただ。それを封じるためのケルディオだ」

 

「技はしんぴのつるぎ、ハイドロポンプ、めいそう、ちょうはつ…中々常人じゃ考えない構成だね」

 

「俺は天才だからな。前世の知識とこの頭脳を合わせればポケモンバトルでは負けなしだ」

 

 

 コンコン、と拳で自分の頭を軽く小突きながら笑うグレイと、そのグレイに従うケルディオ。マスターボールとはいえこんな悪人に正義のポケモンが付き従うとは…

 

 

「本当に羨ましいことで!このまま倒す!シャドーボール!」

 

「ところで。ポケットモンスタースペシャルという漫画を知っているか。めいそう」

 

 

 めいそうでシャドーボールを受け止めつつ、そう尋ねてくるグレイ。思わず首を傾げる。いや、知ってるしなんならBW2編までしか知らないお兄ちゃんが読んだことないXY編~剣盾編の途中までも買ってたけど。

 

 

「2章のグリーンのストライク。鍛えればゴーストポケモンだろうが斬ることができると言う」

 

「それがなに…まさか?」

 

「このケルディオも、その域に達しているポケモンと言う事だ。しんぴのつるぎ」

 

 

 ズバン、と。メガゲンガーが真っ二つにされ、戦闘不能となるのを見て慌ててボールに戻す。いくらゴーストタイプでも今のはやばい。げんきのかけらを……

 

 

「次のポケモンを出さないのか?ハイドロポンプ」

 

「がああっ!?」

 

 

 ハイドロポンプを受け、壁まで吹き飛ばされる。どっかの骨が折れた。頭のてっぺんからつま先までびしょ濡れだ。この激痛はやばい。相手は悪人だということを忘れてた。次のポケモンを出すまで律儀に待つわけがなかった。

 

 

「お願い、ダダリン…!」

 

 

 痛みを堪えて、ダダリンを繰り出す。こちらは二体もやられてるのに、まだグレイのポケモンは一体も倒せていない。地味に立ち回りが上手い。メガメタグロスも、ゾロアークも、ゼブライカも、ケルディオも、明らかにこちらが有利な戦いのはずなのにあの手この手で逃れられ、ゴルーグとメガゲンガーというこちらの主力を倒されてしまった。なんとか一匹だけでも倒したい。

 

 

「パワーウィップ!」

 

「しんぴのつるぎ」

 

「アンカーショット!」

 

「ハイドロポンプ」

 

 

 長く伸びた藻の一撃を、角から長く伸びた光の剣で斬り払うケルディオ。ならばと射出した錨に繋がった鎖を伸ばしてケルディオの両前足を拘束するも、後ろ足からの水流で空に逃げられ、ダダリンが逆に引っ張られる。そこで疑問が浮かんだ。バトル中に聞く事じゃないとは思うけど、どうしても聞きたくなったのだ。

 

 

「…ねえ、グレイ」

 

「なんだ?私の部下になる気になったか?」

 

「そんなわけがない。ただ一つ聞きたい。せっかくポケモンの世界に転生して、それもこんなに強いのに、なんでプラズマ団のボスなんかやってるの?」

 

「………俺だって」

 

 

 聞きたいことを尋ねるとブルブルと震え出し、一人称が変わるグレイ。その目には怒りが宿っていた。ヤバい、怒らせた。

 

 

「俺だってなあ!サンヨウシティに生まれて、ポケモンの世界を冒険して、悪の組織を倒して!チャンピオンになりたかったさ!だけどな!俺達には絶対に越えられない存在がいたんだ!」

 

「…サンヨウシティ…イッシュ…もしかして、トウヤさんに負けた、とか?」

 

「ただ負けただけじゃない。考えうる限りの最強のメンバーで、全力で挑んで、それで一方的に敗北して、「弱い」の一言だ!あれほどの屈辱があるか!主人公には勝てないと思い知らされた。だから決めたんだ。俺が王になって見返してやると。チャンピオンよりも上、この世界の頂点にどんな手を使おうが成り上がってやるとな。だから、原作知識を使って先回りして…こいつを手に入れた」

 

 

 そう言って取りだしたマスターボールから繰り出されたのは、凍てつく冷気を放つドラゴンポケモン、キュレム。本来ならBW2の主人公…メイさんがストーリークリア後に手に入れるはずの…ってまさか、BW2のストーリーが終わった時を見計らって横取りしたのか。

 

 

「決めたぞ。私の革命をそこで見届けろ。俺の隣には同じく主人公に敗れたラウラがふさわしいと思っていたが、お前は俺を怒らせた。キュレム。加減してやれ、こごえるせかい」

 

「っ…!?」

 

 

 キュレムから放たれる冷気の渦に、私は、なすすべもなかった。




原作主人公に対する挫折が原因。ユウリに負けても挫折せずに別の形で目的を遂げたラウラとは対照的な、「挫折し悪堕ちした主人公」がグレイです。

・ジュリ
奮闘はしたけどグレイの伝説や幻でもないポケモン相手でも大苦戦に強いられた転移者。ストーリー勢には荷が重い。ポケスペはBW2編が休止していた間のXY編、ORAS編、SM編、剣盾編もコミックを買って読んでる。ちなみにラウラはネタバレ嫌いなのでBW2編までしか読んでない。ケルディオの攻撃を受けて骨が折れた挙句、グレイを怒らせてしまいこごえるせかいを受けて…?

・グレイ
プラズマ団のボスにして、挫折した主人公ともいえる人物。サンヨウシティ出身で最初のポケモンは普通にモンスターボールでゲットしたシママ。真っ当にチャンピオンを目指している頃はマスターボールは使わずに普通のボールでゲットしていた。
しかしトウヤと戦い、完全敗北した挙句に侮辱されて何かが切れてしまい、手段を選ばずチャンピオン以上の存在である「世界の王」を目指す外道となった。自らの活動を「革命」と呼ぶ。ポケモントレーナーや組織のボスとしての能力的には最高峰の人物。ただ根っからの凡人である故に粗が目立つ。
手持ちはメタグロス、ゾロアーク、ゼブライカ、ケルディオ、キュレムとあと一匹。マスターボール六つを使ったのは、キュレム(イッシュ)、ゾロアーク(イッシュ)、ケルディオ(ガラル)、コバルオン(ガラル)、ビリジオン(ガラル)、テラキオン(ガラル)。

・トウヤ
イッシュの元チャンピオンにしてポケモンBWの主人公。真っ当にチャンピオンを目指していたグレイをボコボコにして悪堕ちさせた張本人。「弱い」と言ったその真意は…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSレジアイス

どうも、放仮ごです。前回の感想でグレイが勘違いされまくりで笑いました。グレイ、そこまでアホじゃないんやで?小物なだけでポケモンバトルも強い方。

今回は地上の話。ジムリーダーVSレジギガス軍団となります。楽しんでいただけると幸いです。


 一方其の頃、地上のワイルドエリアでは、レジギガスとメジャージムリーダー8人による大激戦が行われた。かといって敵はレジギガスだけでなく。

 

 

「くそーっ、我のレジエレキがこうも容易く操られるとは…!」

 

「ルミ博士見習いの四体もなかなかに厄介だな!」

 

 

 レジアイス、レジロック、レジスチル、レジドラゴ、レジエレキ。レジギガスによって生み出され、モコウとルミが手に入れ、プラズマ団に強奪された伝説のポケモン達もまたプラズマ団のしたっぱの持つアクロママシーンにより操られて、レジギガスと共に進軍していた。氷と岩が散乱し、クレーターも生まれ、あちこち帯電し、炎が上がる。もはや地獄と化したワイルドエリアを、子供たちを引き連れた巨人が進軍する。

 

 

「とりあえずお前ら!死ぬ気で止めろ!街に入られたら洒落にならねえぞ!ジュラルドン、ワイドブレイカー!」

 

「言われずとも!エリートの務めです!ブリムオン、マジカルシャイン!」

 

「レジエレキを取り戻す!メガライボルト、かみなり!」

 

「よりにもよってひこうタイプの天敵が四体とか私帰りたいんですけどね!サンダー、らいめいげり!」

 

「伝説を三匹持っといて弱音吐いとる場合じゃなかとよ!モルペコ、オーラぐるま!」

 

「このまま進めばエンジンシティ直撃だ。行かせないぞ、プラズマ団!マルヤクデ、ほのおのムチ!」

 

「私の水で押し流す!カジリガメ、アクアブレイク!」

 

「ラウラさんのためにも頑張るんだな!アップリュー、Gのちから!」

 

 

 メジャークラスジムリーダーズ8人の総攻撃。今季のジムリーダーで最も強い8人の総攻撃は、レジギガスが地面を掴んで引き上げた地盤でレジアイスたちとりまきにも当たらず完全に防がれてしまう。大陸さえ引っ張ったと言われるポケモンの所業に戦慄するジムリーダーズ。

 

 

「ダイマックスしてない分、あの時よりは弱いと思ってましたが相変わらずとんでもないですね…!」

 

「ムツキ、アイツを知ってるのか?」

 

「はい。二年前、UB事件が起こる直前にルミと一緒に戦いましたよ。見事にボッコボコにされて完敗しましたが。その時はダイマックスしてましたが、大方あの巣穴からプラズマ団が引っ張り出したんでしょう」

 

「…レベルにするとどれぐらいだと思う?」

 

「ポケモン育成が得意な私から言わせてもらうと…レベルにして100ですね。カンストです」

 

「マジかよっ」

 

 

 ムツキの言葉にキバナだけでなく他の面々も冷や汗を流す。自分たちのポケモンは数値にして65ぐらいだ。間違いなくトップクラスのポケモン達なのであるが、まさしく桁が違う。ムツキの眼はジムリーダーたちにも知れ渡っている、その彼女が100というのなら100なのだろう。

 

 

「だからって諦める理由にはならないぜ!シュートスタジアムで戦ってる奴等の分まで、俺達が止めてやる!行くぞお前ら!」

 

「「「「「「「おう!」」」」」」」

 

 

 そう言って全ての手持ちを繰り出し全面戦争の構えのジムリーダーズ。その時、レジギガスが動いた。地盤を力づくで持ち上げ、投げつけてきたのだ。さらにレジアイスのれいとうビーム、レジロックのいわなだれ、レジスチルのラスターカノン、レジエレキのサンダープリズン、レジドラゴのドラゴンエナジーのおまけつきだ。慌てて散開するジムリーダー達とそのポケモン達だが逃げれるはずもなく、各々大打撃を受けて吹き飛ばされるも同時に虹色の光が輝いた。

 

 

「「「「「「「「メガシンカ!」」」」」」」」

 

 

それぞれの主を守るように現れたのは、メガガブリアス、メガクチート、メガライボルト、メガプテラ、メガバンギラス、メガバシャーモ、メガラグラージ、メガジュカイン。それでも、技を耐えたことで満身創痍だ。

 

 

「技でもねえのになんて力だ……」

 

「さすがは伝説と呼ばれしポケモン達…」

 

「くそお、レジエレキめ…我相手でも容赦無しか」

 

「サンダーたちもやられてしまってもう後がありませんね!」

 

「でも駄目ったい。ここで負けたら兄貴たちにも顔向けできなか!」

 

「少なくともレジギガスを倒せば…気張って行こう!」

 

「その気張る元気もないのが現状だけどね…」

 

「粘り強く行きたいが、さすがに無理じゃな」

 

 

 ただの一撃でほとんどの手持ちを倒されて心が折れかけているジムリーダー達。キバナやマリィ、最年長のカブが元気づけるも圧倒的な力の前にひれ伏しそうになっている。今までのお遊びのプラズマ団などお話にならないレベルで今回のプラズマ団はガチすぎたのだ。

 

 

「アハハハハハハ!さすがはグレイ様の采配!あのジムリーダーが手も足も出ないとは!」

 

「ここまで上手く行くなんてな!」

 

「ああ、俺達三人だけでジムリーダーを圧倒できるとは思わなかったぞ」

 

 

 レジギガスの遥か背後で、木々に隠れてレジギガスたちを操るアクロママシーンを両手に一個ずつ手にするのはラウラの部下としてレジギガス捕獲に当たっていたエーダ、ボルドー、カーターの三人組だ。それぞれエーダがレジギガスとレジアイスを、ボルドーがレジロックとレジスチルを、カーターがレジエレキとレジドラゴをまさしく両手で操っていた。

 

 

「ここまで上手く行くと怖くなるわね」

 

「いや、ここまでばれてないのが奇跡だぞ」

 

「最悪逃げられるからいいけどな」

 

「「それな」」

 

 

 仲良く談笑しながらジムリーダー8人を追い詰める三人組。ラウラの部下に選ばれただけはあり、的確な技を選んで的確な指示で蹴散らしている。ジムチャレンジャーになれば大成していたのではないかという手腕であった。

 

 

「ギガインパクトとれいとうビームよ!」

 

「ストーンエッジとラスターカノンだ!」

 

「サンダープリズンとドラゴンエナジー、行け!」

 

 

 レジギガスがジムリーダーのメガシンカポケモン全てを宙に打ち上げ、集中砲火。さしものジムリーダーとはいえ、これを喰らえばひとたまりない。さらにギガインパクトの余波でジムリーダー達も吹き飛ばし、そのほとんどの意識を奪ったことで調子に乗った三人は表に出てくる。

 

 

「ざまあないわね、ジムリーダー!」

 

「俺達みたいなしたっぱにやられる気分はどうだ、ああん?」

 

「降参すれば命だけは助けてやるぜ?」

 

「…なるほどな。指示もなくなんで街を目指して進撃してんのかと思ったらお前らの仕業か」

 

 

 進撃を一旦止めたレジギガスたちを背後に控えさせ、アクロママシーンを見せつけながら勝ち誇る三人組に、吐き捨てるキバナ。キバナとモコウだけがこの場で意識を残していた。

 

 

「我のレジエレキを返せ…そいつはな、我の希望となってくれたポケモンなんだ…」

 

「はいはい。感動話は聞き飽きたわ」

 

「誰が返すかバーカ!」

 

「勝手に返したらグレイ様に怒られるだろ!」

 

「…ポケモンがもういないからって調子に乗ってやがるな?」

 

「「「!」」」

 

 

 そう言って立ち上がるキバナに、怖気づく三人組と、驚くモコウ。正直、全身を打ちつけられて意識を保つのもやっとの状態なのだ。それなのに、ポケモンがいないのに立ち上がるキバナに目を向ける。

 

 

「俺はトップジムリーダーだ。ポケモンが居なくても、街の人々を守る義務がある。なめんなあ!」

 

「っ、レジギガス!にぎりなさい!」

 

 

 アクロママシーンを奪おうと飛びかかってくるキバナに、エーダは咄嗟に指示をしてキバナを握らせ、持ち上げることに成功。冷や汗をかきながらも勝ち誇る。

 

 

「今は手加減してるからいいけど、本気を出したらグシャッだ。謝れば許してやるわよ?」

 

「くっ…そうかいお嬢ちゃん。誰が伝説ポケモン使ってイキっている雑魚なんかに屈してたまるか」

 

「っ…死ね!にぎりつぶす!」

 

 

 そしてキバナは潰れたトマトの様にぐしゃりと…そうは、ならなかった。空から飛来した緑の龍がレジギガスに激突し、大きく吹き飛ばしてキバナを解放させたからだ。

 

 

「な、何事よ!?」

 

「なんだなんだ!?」

 

「まだポケモン隠してやがったのか!?」

 

「いいや、違うよ」

 

 

 慌てふためくエーダ、ボルドー、カーターにかけられる声。その声は緑の龍…レックウザから響いていて、ひょっこりと顔を出したのは1人の少年。

 

 

「もう安心してくれ、ジムリーダーの方々。僕が、いや…僕たちが、来た」

 

 

 そう笑う少年、ユウキの上からは、巨大な鳥ポケモンホウオウが飛来しようとしていた。




レジギガス軍団と言う分かりやすい絶望VS主人公軍団と言う分かりやすい希望

・キバナ
ポケモンを失ってもジムリーダーの役目を果たそうと奮闘したトップジムリーダー。ダンデに挑み続けているだけに、諦めるという文字は存在しない。

・モコウ
レジエレキに襲われて結構気落ちしているジムリーダー。根性で何とか意識を保った。

・ムツキ
レジギガスと戦ったことがあるジムリーダー。レベル100だと見抜いたが、敵がひこうタイプに強すぎて拗ねた。

・ビート
エリートとしての責務を果たそうとしたジムリーダー。力及ばず、がらにもなく絶望する。

・マリィ
ジムリーダーのムードメーカー。アイドルらしく元気づける。メガバンギラスを使う。

・カブ
最年長として諦めないジムリーダー。メガバシャーモを使う。

・ルリナ
水の力で押し流そうとするも失敗。メガラグラージを使う。

・ヤロー
ラウラの代わりとして奮闘していた。メガジュカインを使う。

・ユウキ
ホウエンのチャンピオン。レックウザと共に隕石を破壊して世界を救った英雄。

・エーダ&ボルドー&カーター
ラウラの部下三人組。したっぱの中でも地位の高い面子で、大事な役を任された。逃げる算段はついてるらしい。

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VSジガルデ

どうも、放仮ごです。ラスボス戦まで蟲があまり関係ないポケモン蟲始めていきまっしょい。

今回はレジギガスVS主人公ズの伝説ポケモン。楽しんでいただけると幸いです。


 レックウザに乗ったユウキの登場に狼狽えるエーダたちプラズマ団したっぱ三人組。空から飛来するホウオウから飛び降りてきたのは、いずれも若い少年少女たち。

 

 

 ジョウトのチャンピオンにしてホウオウの主、ヒビキ。ホウエンのチャンピオンにしてレックウザの主、ユウキ。シンオウの元チャンピオン、ヒカリ。イッシュのチャンピオン、メイ。カロスの元チャンピオン、セレナ。アローラのチャンピオン、ミヅキ。ユウリとトウヤ、そしてレッドこそいないが、いわゆる主人公と呼ばれる面子である。

 

 

「まずは僕から行くよ!レックウザ、ガリョウテンセイ!」

 

 

 邪魔者を排除せんとレジギガスの振るった拳と、レックウザの体当たりが激突。大きくレジギガスを後退させる。それを見て、遠距離攻撃でレックウザを狙うとりまきのレジアイス、レジロック、レジスチル、レジエレキ、レジドラゴ。レックウザはそれを易々と回避。そこにホウオウが割り込んで大きな体で攻撃を受け止めた。

 

 

「ホウオウ、せいなるほのおだ!」

 

 

 ヒビキの指示で、放たれる光り輝く青い炎。レジアイスたちはそれに薙ぎ払われやけどを負うが、いわタイプのレジロックはやけどを負っただけで全く問題にしてない。レジギガスは両手で地盤を引っ掴んで持ち上げて盾にし無事だった。その間にそそくさとその場を離れるプラズマ団三人組。

 

 

「ヘビーボンバーだ!」

 

 

 エーダがアクロママシーンを握りながらそう指示すると、その巨体からは考えられないほどに天高く跳躍するレジギガス。急降下してくるその姿は、隕石の如し。もし地表に激突すれば被害甚大だろう。ユウキがレックウザで対抗しようとするが、その前に出たのはヒカリだった。

 

 

「行くよ!ディアルガ!」

 

 

 繰り出されたのはシンオウに時の神と伝えられるドラゴン、ディアルガ。落ちてくるレジギガスに向けて、口を開く。

 

 

「ときのほうこう!」

 

 

 とてつもない咆哮が放たれる。するとレジギガスは時を巻き戻す様にして地表へと戻った。時間を押し戻す咆哮だ。

 

 

「なら…アームハンマーで叩き潰せ!」

 

「いわなだれ!」

 

 

 エーダとボルドーが指示、ズンズン歩くレジギガスが右腕を振り上げ、やけどを負ってるレジロックが岩の雨を降らす。前に出たのは、ミヅキだ。

 

 

「ジガルデ、サウザンアロー!ソルガレオ、メテオドライブ!」

 

 

 繰り出したのは秩序の監視者ジガルデと、太陽を喰らいし獣ソルガレオ。地面から繰り出された土の矢で岩雪崩を粉砕し、ソルガレオがレジロックを一撃で吹き飛ばした勢いのままレジギガスの拳と激突。大きく弾き飛ばした。

 

 

「たたみかけるわよ、イベルタル!」

 

「私も続きます、ゼクロム!」

 

 

 セレナとメイもそれぞれボールを握り、セレナは天災と死の化身イベルタルを、メイは黒き英雄ゼクロムを繰り出し、満身創痍のレジアイス五体に突撃させた。

 

 

「デスウイング!」

 

「クロスサンダー!」

 

 

 命を吸い取る赤い光線と、青い雷が炸裂。レジアイスたち五体は沈黙し、ボルドーとカーターの手で慌ててボールに戻される。さらにレジギガスをレックウザ、ホウオウ、ディアルガ、ジガルデ、ソルガレオ、イベルタル、ゼクロムの七体がかりで押さえ込む。ジムリーダーさえ倒したポケモン達があっという間に倒され、したっぱトリオは大混乱だった。

 

 

「クソーッ!なんなんだ、あいつらは!」

 

「知らないのかボルドー。奴等は他地方のチャンピオンやチャンピオンに一度なったことがある奴等だ!ほら、前に俺達を倒したメイもいるじゃねえか!」

 

「なに、本当だ!」

 

「あんたたち、ガタガタ五月蠅い!私の護衛をしなさい!レジギガスまで敗れたら洒落にならないわよ!」

 

「へー、その機械で操ってたんだ」

 

「「「!?」」」

 

 

 背後から聞こえてきた聞き覚えの声に、恐る恐る振り返る三人組。そこには、笑顔のユウキと不敵に笑うヒビキ、怒ってますと言いたげなふくれっ面のヒカリがいた。その背後にはそれぞれバクフーン、ジュカイン、エンペルトがいた。

 

 

「ま、待って…お願い……」

 

「ゆ、許してください…」

 

「お、俺達上の指示に従っただけで…」

 

「バクフーン、ふんえん!」

 

「ジュカイン、リーフストーム!」

 

「エンペルト、ハイドロポンプ!」

 

「「「ギャアァアアアアアアア!?」」」

 

 

 命乞いする三人組だったが、それぞれ黒焦げ、服を刻まれ葉っぱ塗れ、水浸しで目を回して倒れ伏した。同時に、小爆発を起こしてアクロママシーンも全て破壊され、ヒビキ、ユウキ、ヒカリの三人は物色し、レジアイスたち五体が入ったボールと、強奪されたであろうポケモン達のボールを回収、鞄に入れる。

 

 

「よし、これであのレジギガスと言うポケモンは止まる筈…なに?」

 

 

 レジギガスの様子を見ると、未だに暴れていて伝説ポケモン達が必死に抑え込んでいて。ヒビキは黒焦げのエーダの首根っこを掴んで持ち上げる。

 

 

「おい!どうなってんだ!?この機械で操ってるんじゃないのか!?」

 

「ふふ、ふふふふ…グレイ様が私達なんかに最重要な役目を渡すはずがないでしょ…私がしていたのは、現地でのレジギガスへの指示…暴れる命令はプラズマフリゲート本体から送られているわ」

 

「プラズマフリゲートにはグレイ様を始めとし、幹部陣が勢ぞろいだ!俺達の勝ちは決まっていたんだよ!」

 

「それに、予定だとそろそろレジギガスのスロースタートも終わる頃だぜ…ざまあみろ!」

 

「なんだって?」

 

 

 勝ち誇る三人組をエンペルトのれいとうビームで頭部以外を凍らせて拘束し、レジギガスを見やるヒビキたち。するとレジギガスは身体の器官を輝かせていて。腕を振り回し、足踏みして準備運動の様な挙動を取った。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「気を付けろ、みんな!本気を出すぞ!」

 

 

レレレレジジジギギギギギギガガガガギギギギギ!!

 

 

 咆哮と共にレジギガスのスロースタートが終わる。その瞬間、レジギガスはとんでもない速度で飛び出し、イベルタルを掴んだかと思えば一瞬にして握り潰した。

 

 

「イベルタル!?」

 

「この…ソルガレオ、メテオドライブ!ジガルデ、サウザンウェーブ!」

 

 

 ソルガレオのエネルギーを纏った体当たりをアームハンマーの一撃で地面に沈め、地面の津波も、地盤を掴み引っくり返してそのままジガルデにブチ当てることで攻略するレジギガス。あまりの強さに、主人公達の間に不安が募る。

 

 

「ホウオウ!せいなるほのお!」

 

 

 ヒビキの声でホウオウが空から襲いかかるも、炎を出そうとした嘴をレジギガスは跳躍してむんずと掴んで着地、そのまま振り回されてゼクロムに叩きつけられ、ダブルノックダウンしてしまった。

 

 

「ディアルガ!ときのほうこう!」

 

 

 今度はディアルガに目標を定めて歩いて近づいてきたため、ヒカリの指示でときのほうこうを放つがしかし。レジギガスは力づくでときのほうこうを突破して右腕を振り上げ、背中にアームハンマーを直撃させてディアルガを撃沈させた。

 

 

「100%!いっけえジガルデ!」

 

「メガシンカだ、レックウザ!デオキシス、君も行ってくれ!」

 

 

 叩き潰された地盤を突き破り、現れたのは体力が半分を切り特性のスワームチェンジでパーフェクトフォルムに変身したジガルデと、メガシンカしたメガレックウザとユウキが追加で出したデオキシス・アタックフォルムがミヅキとユウキの指示で襲いかかるが、レジギガスは三体の突撃を簡単に受け止めた上で投げ飛ばしてしまう。

 

 

「レックウザ、ガリョウテンセイ!デオキシス、サイコブースト!」

 

「ジガルデ!グランドフォース!」

 

 

 ジガルデの地面が大爆発する技を受けて怯んだところに、最高火力の念動力の塊と隕石すら突き破った突撃が放たれるがしかし、レジギガスはその両腕で受け止めてしまい、サイコブーストに至っては握り潰されてしまう。顔面を掴んだメガレックウザを振り回し、咄嗟にデフェンスフォルムになったデオキシスを地面に埋め、メガレックウザを地面に叩きつけてその踏みつける。残る伝説ポケモンは、最高峰のスペックを誇るミヅキのジガルデ・パーフェクトフォルムのみ。

 

 

「コアパニッシャー!」

 

 

 天高く飛び上がって緑色の光線を放ち、Zを描く様に地面に刻んで大爆発させるジガルデだがしかし、レジギガスは爆発を利用して跳躍。ジガルデの頭部を鷲掴みにして握り潰し、二体揃って落下。ワイルドエリアの湖に落ちて大きな水飛沫を上げた。

 

 

「…プラズマ団の切札、ここまでとは」

 

 

 湖から這い上がり、咆哮を上げるレジギガスに戦慄するユウキたちだがそれでも諦めず、残りの手持ちを繰り出し、大陸を動かしたと伝えられる巨人へと挑みかかった。




レジギガス無双。本気を出してない状態でジムリーダーを壊滅させたっていうね。

・ユウキ
レックウザとデオキシスと、あと一匹伝説ポケモンを持つアルファサファイアの主人公。メガレックウザとデオキシスの自慢の技を防がれた挙句瞬殺され半ば茫然。一人称は「僕」で冷静。主人公ズのリーダー格。

・ヒビキ
ホウオウを持つハートゴールドの主人公。エンテイやらは手に入れてない。バクフーンが相棒。ケンカっぱやい。

・ヒカリ
ディアルガと、後三匹幻ポケモンを持ってるダイヤモンドの主人公。性格はゼノブレイド2のヒカリを参考にしてる。

・メイ
ゼクロムを持つブラック2の主人公。ボルトロスとかコバルオンとかは持っていない。大女優もしている。

・セレナ
イベルタルを持つYの主人公。売れっ子モデルもしている。

・ミヅキ
ソルガレオとジガルデ、あとウルトラビースト各種を持つムーンの主人公。ウルトラはしてない。主人公の中ではとある一人を除いて最強格。

・したっぱ三人組
実はレジアイスたちは操っていたが、レジギガスに戦闘の指示をしていただけ。レジギガスはプラズマフリゲートからの電波で操られている。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゲンシカイオーガ

どうも、放仮ごです。VSレジギガス最終戦になります。前回は登場しなかったあのポケモンもあのポケモンの登場。最強のポケモン、レジギガスに主人公達はどう挑む?楽しんでいただけると幸いです。



 一方その頃。シュートスタジアム。ポケモンレンジャーたちが数多くのプラズマ団したっぱを殲滅していく中で、ダークトリニティと伝説の三剣士と対峙するのは伝説の男、レッド。サタリアが助力しようとするが、無言の圧で参戦することは叶わなかった。

 

 

「「「せいなるつるぎ!」」」

 

「ピカチュウ。10まんボルト。リザードン。かえんほうしゃ。カメックス。ロケットずつき」

 

 

 三剣士の斬撃を、ピカチュウとメガリザードンXは避けて、カメックスはレッドを守るように甲羅に籠り防御。そのままロケットの様な勢いの頭突きを繰り出し、電撃と炎と共に襲い、撃沈させた。

 

 

「ここまでとは…」

 

「さすがは伝説の男…」

 

「無念…」

 

 

 崩れ落ちたダークトリニティを一瞥し、無言でピカチュウとカメックスを戻してメガリザードンXに乗ってどこかに飛び去って行き、プリメラたちは慌ててダークトリニティを拘束するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、対レジギガス防衛戦線では。

 

 

「しょうがない、カイオーガ!」

 

「アグノム、ユクシー、エムリット!」

 

「ミュウツー!」

 

「フェローチェ、テッカグヤ、アクジキング!」

 

「デンリュウ!」

 

「ルカリオ!」

 

 

 まだ伝説・幻のポケモンを持っているユウキ、ヒカリ、セレナ、ミヅキが繰り出してレジギガスに戦いを挑み、残るヒビキとメイは比較的強力なポケモンでサポートする。カイオーガが出現したことで暗雲が立ち込めて雨が降り、カイオーガ・テッカグヤ・アクジキングと組み合うレジギガス。三人がかりで湖まで押しこめられたが、テッカグヤの頭を掴んで引き摺り下ろしてアクジキングの頭頂部にテッカグヤの重量級ボディを叩きつけてフォーメーションを崩すと拳を握ってカイオーガにパンチ。殴り飛ばしてしまう。

 

 

「アグノム、ユクシー、エムリット!三体揃ってサイコキネシス!」

 

「ミュウツー、サイコキネシス!」

 

「デンリュウ、かみなりだ!」

 

 

 ならばとエスパータイプ四体が念動力でレジギガスの動きを止めようと試みるも、四体がかりのサイコキネシスさえ力づくで破られ、かみなりは意にも介さず、ユクシーが握り潰されてしまう。そのままアグノムとエムリットにも手を伸ばすレジギガス。

 

 

「ルカリオ、はっけい!」

 

「メガシンカ!サイコブレイク!」

 

 

 伸ばされた手を、メイの指示を受けたルカリオがはっけいで弾き飛ばし、セレナのメガリングと同調しメガシンカを果たしたメガミュウツーYが無数に周囲に展開した念波の弾丸でレジギガスの全身を撃ち抜く。だがしかし、レジギガスは止まらず逃げようとしたアグノムとエムリットの尻尾をむんずと掴むと振り回し、デンリュウとルカリオに叩きつけて共に戦闘不能にしてしまう。メガミュウツーYにも手は伸びて、慌てて逃れるとそこに横から突撃してくる青く輝く大きな影があった。

 

 

「ゲンシカイキだ!カイオーガ!」

 

 

 太古の姿へ戻るゲンシカイキを果たしたゲンシカイオーガがレジギガスと真正面から組み合って、特性のはじまりのうみによるつよいあめが大きくレジギガスを打ち付けてその体力を奪っていく。だがそれは他のポケモンやトレーナー、ゲンシカイオーガを操るユウキも同様で、もはやゲンシカイオーガとレジギガスの一騎打ちだった。

 

 

「このまま長引くとガラルが沈んでしまう…一気に決めるぞ!こんげんのはどう!」

 

 

 組み合ったまま、滝の様に降り注ぐ雨水を集束させて巨大な水の塊を形成、強大な水流を解き放つゲンシカイオーガ。レジギガスはその威力に押し流され、湖の真ん中にある小さな島、キバ湖の瞳に上陸させられた。すると気に入らなかったのか、天高く跳躍するレジギガス。ヘビーボンバーだ。

 

 

「もう一発!こんげんのはどう!」

 

 

 上空に向けて強大な水流を解き放つゲンシカイオーガ。するとレジギガスは左手を突き出すと水流をにぎりつぶし、右腕を振り上げるとアームハンマーを空中で発動し、ヘビーボンバー+アームハンマーというとんでも技をゲンシカイオーガの脳天に炸裂。凄まじい衝撃波が発生してユウキ達は軽く吹き飛ばされ、ゲンシカイオーガは撃沈した。ユウキにボールに戻されると暗雲が晴れて行き太陽が顔を出す。虹の下でレジギガスは勝利の咆哮を上げた。

 

 

「ミュウツー、スプーンで攻撃!サイコカッター!」

 

「フェローチェ、とびひざげり!テッカグヤ、そらをとぶ!アクジキング、ドラゴンダイブ!」

 

 

 セレナの指示でメガミュウツーYの手にした念動力が実体化した武器「スプーン」から放たれる斬撃をアームハンマーで薙ぎ払い、フェローチェの蹴りを受け止めた上でその華奢な体をにぎりつぶし、空に飛び上がったテッカグヤはヘビーボンバーで地上まで押し付けて叩き潰し、アクジキングの全身を使った体当たりもギガインパクトで吹き飛ばす。無事なのはもはやメガミュウツーYだけだ。

 

 

「ミュウツー、サイコブレイクからのサイコカッター!」

 

 

 再び周囲に念波の弾を形成されるのを見るなり、突進してメガミュウツーYの華奢な身体を掴んでにぎりつぶすレジギガス。主人公達の誇る伝説・幻ポケモン全滅である。ミヅキに至ってはジュナイパーしか残っていない。

 

 

「くっそ…バクフーン!トゲキッス!マリルリ!ヘラクロス!」

 

「ジュカイン!アゲハント!ボスゴドラ!」

 

「エンペルト!ムクホーク!」

 

「ジャローダ!ドリュウズ!ヒヒダルマ!バルジーナ!」

 

「ゲッコウガ!リザードン!ガチゴラス!ニャオニクス!」

 

「ジュナイパー!」

 

 

 ならばとそれ以外の手持ちで対抗するヒビキ、ユウキ、ヒカリ、メイ、セレナ、ミヅキ。しかし簡単に薙ぎ払われ、レジギガスは敵とさえみなしてないのか、ズンズンとエンジンシティへと進んでいく。それを見て満身創痍の身体で吠えるキバナ。

 

 

「待て!くそっ、どうやったら止まるんだ!?」

 

「とにかく、街に被害を与えなければいいんだよね!?」

 

 

 そう言ったのはミヅキ。もうジュナイパーしか残ってない彼女だがしかし、どうぐの一つであるねらいのまとを取り出し、セレナに渡した。

 

 

「え、なに?」

 

「ニャオニクス、トリックを覚えてない?」

 

「ああ、なるほどね!ニャオニクス、トリック!」

 

 

 自分と相手のもちものを入れ替える技であるトリックが発動し、レジギガスにねらいのまとが持たされる。ニャオニクスの手にはたべのこし。異様なタフさの原因が分かった。だがそれはミヅキの目的ではない。

 

 

「ジュナイパー!かげぬい!」

 

 

 ミヅキの指示で弓矢を放つ様にして狙い、黒いエネルギーの矢でレジギガスの影を射抜くジュナイパー。すると、レジギガスがその場に縫い止められた。前に進もうとして、足が自分の影から動かないことに首を傾げる様に体全体を傾けるレジギガス。それを行ったジュナイパーを狙うレジギガス。岩盤を引っ掴み、それを投げつけることで叩き潰そうとする。

 

 

「全員でジュナイパーを守れ!」

 

 

 ユウキの指示で、ジュナイパーを守らんと飛んでくる岩盤の迎撃に当たるヒビキたち。ジュナイパーがやられればもう止められない。そうわかっているからこその徹底抗戦。しかし岩盤から岩に切り替え、擬似的ないわなだれを放つレジギガス。その質量の前に押し潰されるジュナイパー他ポケモンたち。ヒビキたちも巻き込まれてしまい、ついに全滅してしまう。邪魔者を片付けたレジギガスは満足げに唸りエンジンシティに直行していく。

 

 

「ここまでか…」

 

 

 力の出ない死に体で一部始終を見守り、レジギガスの圧倒的な力に絶望していたモコウは、その手がエンジンシティの壁を破壊しようとするのを見る事しか出来ない。諦めかけた、その時だった。

 

 

「カビゴン。かいりき」

 

 

 シュートシティ方面の空から飛来するメガリザードンXに乗ったレッドが繰り出したカビゴンに行く手を阻まれたばかりか拳の一撃を受けて後退するレジギガス。降りてきたメガリザードンXに手を伸ばすが、その腕に繰り出されちょこまか走り回るポケモンがいた。

 

 

「ピカチュウ。這い回りながらボルテッカー」

 

 

 電撃を纏ったピカチュウがレジギガスの全身を駆け回る。レジギガスは己の身体を走り回るねずみを潰そうと暴れるが、なかなか届かず。全身を電撃に覆われて行き、帯電。

 

 

「ピカチュウ。かみなり」

 

 

 そして頭部に乗ったピカチュウが自信を避雷針にしてかみなりを放ち、直撃したレジギガスは全身に帯電した電気が爆発を起こしたようにスパーク。明るい空なのに夜になったかのように錯覚するとんでもない放電が起こり、黒焦げになったレジギガスは倒れ伏す。

 

 

「…さすがレッド先輩」

 

「とんでもないね…」

 

「「「「うんうん」」」」

 

 

 メガリザードンXの上からその様子を無言で一瞥するレッドに呆けるヒビキとユウキの言葉に頷くヒカリ、メイ、セレナ、ミヅキ。こうして、プラズマ団、そしてグレイの切札であるレジギガスは止められたのだった。




伝説に謳われる最強の男レッド、ここにあり。

・レッド
生きる伝説。手持ちはリザードン、カメックス、フシギバナ、ピカチュウ、カビゴン、エーフィ。主人公ズが向かった後ダークトリニティを一人で相手取って圧倒した。

・ヒビキ
ジョウトのチャンピオン。手持ちはバクフーン、ホウオウ、デンリュウ、トゲキッス、マリルリ、ヘラクロス。メガシンカはしない。レッドに唯一勝った男。

・ユウキ
ホウエンのチャンピオン。手持ちはジュカイン、アゲハント、ボスゴドラ、レックウザ、カイオーガ、デオキシス。ゲンシカイオーガはガラルがヤバいので使うのを渋っていた。

・ヒカリ
シンオウの元チャンピオン。手持ちはエンペルト、ムクホーク、ディアルガ、アグノム、ユクシー、エムリット。

・メイ
イッシュのチャンピオンにして大女優。手持ちはジャローダ、ルカリオ、ドリュウズ、ヒヒダルマ、バルジーナ、ゼクロム。

・セレナ
カロスの元チャンピオンにしてファッションモデル。手持ちはゲッコウガ、リザードン(Y)、ガチゴラス、ニャオニクス♀、イベルタル、ミュウツー(Y)。トリックを覚えさせているなど器用派。

・ミヅキ
アローラのチャンピオン。手持ちはジュナイパー、ソルガレオ、ジガルデ、フェローチェ、テッカグヤ、アクジキング。ムーンのはずなのになぜソルガレオなのかというと、設定が固まってない頃に掲示板で話題を出してしまったせいである。許して。

・キバナ&モコウ
見ていることしかできなかったジムリーダー。他地方のトップクラスの実力を見て奮起する。

・レジギガスLv.100
とくせい:スロースタート
わざ:にぎりつぶす
   ヘビーボンバー
   ギガインパクト
   アームハンマー
もちもの:たべのこし→ねらいのまと
備考:ずぶとい性格。抜け目がない。掌で全ての技を受け止め、握り潰し、叩き潰して跳躍して岩盤を持ち上げたりとやりたい放題の今作最強のポケモン。この世界ではレベル100とはそう簡単には至れない異次元の強さを表す数字であり、最強のトレーナーであるレッドでさえ80前後。正攻法ではまず勝てない。実はアクロママシーンに操られてこそいたものの、捕獲していたのはグレイではなくエーダであり、エーダからボールを奪い取って戻せばそれで勝てていたりする。

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VSキュレム

どうも、放仮ごです。前回でポケモン熱が冷めてしまってちょっとやる気を失う事態になってるので、ちょっとシールドを別アカでやり直すことにしました。

今回はグレイVSユウリ。時系列はレジギガス無双の頃です。楽しんでいただけると幸いです。


「…クッソ……」

 

「ジュリ!?生きてる!?」

 

 

 右半身を見る。完全に凍り付いてしまっている。動かしたら割れてしまいそうだ。左半身を見る。動く、どういうわけか左腕と、左側の顔だけ無事で済んだらしい。この状態で見届けろってか。身動きが取れないのは変わらないが。駆け寄ってくるユウリさんに、右唇を凍らせられてるから迂闊に喋れないけどサムズアップして無事を伝えた左手で、器用に腰に回してボールを確認する。無事なのは一個だけか。グレイにばれないように手に取り、中身を確認する。…あー、君さえ出せてればなあ。

 

 

「とりあえずジュリはジッとしていて!」

 

 

 ユウリさんがグレイへと向かっていく。その手にはげんきのかたまりが三つあるから手持ちを全快にして挑むのだろう。グレイのポケモンをもう少し削れればなあ。結局、一体も倒せなかった。悪の組織の首領は伊達じゃない。

 

 

「――その女の惨状を見てなお、私に勝てるとでも思っているのか?チャンピオン」

 

「勝つよ。私からラウラを奪った貴方に勝って、本当の意味で取り戻す!ジュリを元に戻させる!」

 

「やってみろ。メガシンカ、メタグロス」

 

「ウーラオス!」

 

 

 メガメタグロスと、ウーラオスが激突する。相性はメタグロスが上だけど、サイコキネシスを使う前に足を振り上げ蹴りつけて黙らせている。強い。技を使わせない。ただそれだけなのに、シンプルに強い。

 

 

「アームハンマー!コメットパンチ!バレットパンチ!」

 

「すいりゅうれんだ!」

 

 

 四本の腕をフルに使い、コンピューターに匹敵する頭脳で組み立てたタイミングを絶妙にずらして放たれた強力な打撃を、水の流れの如く拳打で受け止めたばかりか殴って弾いてしまい、その勢いでがら空きの胴体下に連撃を叩き込むウーラオス。強すぎる。

 

 

「ほのおのパンチ!」

 

「バレットパンチ!」

 

 

 とどめの炎を纏った正拳突きを、最速の拳で防ごうとするグレイだが、防御の拳をあらぬ方向に弾き飛ばしたウーラオスはそのまま顔面に叩き込み、メガメタグロスはグレイの頭上を吹き飛んで壁に叩きつけられ、メガシンカが解けて崩れ落ちた。

 

 

「くっ…ゼブライカ!ワイルドボルト!10まんボルト!」

 

「交代、バドレックス!こうそくいどう!アストラルビット!」

 

 

 二匹の馬が、玉座の間を駆け巡る。ワイルドボルトとこうそくいどうでぶつかり合い、霊体弾と電撃が飛び交い、相殺する。私にはそれぐらいしかわからない。凄い高速バトルだ。アレを目で終えている二人は化け物じゃなかろうか。すると、場が動いた。ゼブライカがボルトチェンジを使ったのだ。

 

 

「交代、ゼクロム!らいげき!」

 

「!?」

 

「バドレックス、避けに徹して!」

 

 

 声が出ないまでも驚愕する。まさか、メイさんからあのポケモンも強奪したというのか?その巨体にバドレックスもレイスポスを操る手綱を引っ張って急停止。放たれる雷撃を避け始める。しかし妙だ。雷撃が直撃した床は爆煙こそ上がっているが何の変哲もない。まさか、幻影か?

 

 

「交代、ウツロイド。どくどく!べノムショック!」

 

「ナイトバースト!」

 

 

 どくどくべノムショックと言うこの世界ならではの即コンボを使ってきたウツロイドに、元の姿に戻ったゾロアークが闇の奔流を両手の間に溜めて跳躍、頭上からウツロイドに叩き込んだ。吹き飛ぶウツロイド。よくわからないが、戦闘不能らしい。

 

 

「偽物なんて、卑怯な手を使うね?」

 

「卑怯は敗者の戯言よ。要は勝てばいい。勝てば正義だ」

 

「ごめん、ウツロイド。ゆっくり休んでて。ウーラオス!」

 

「交代だゾロアーク。ゼブライカ!」

 

 

 今度は相性が悪い組み合わせ。ユウリさんは交代することなくウーラオスを向かわせる。

 

 

「飛んで火に入る水タイプだ!ワイルドボルト!」

 

「ほのおのパンチですいりゅうれんだ!」

 

 

 瞬間、炎を纏った拳でワイルドボルトを止めたかと思うと、そのまま両手に炎を纏い水の流れの様な連撃を繰り出しゼブライカを殴り飛ばすウーラオス。全身にやけどを負ったゼブライカは鉄の床に叩きつけられて戦闘不能となった。技と技を組み合わせる事なんてのもできるのか…。現実のポケモンバトル、奥が深いなあ。

 

 

「やはり準伝説は強いな。刃を殴れるか?ケルディオ!しんぴのつるぎ!」

 

「交代、フシギバナ!メガシンカ、いくよ!」

 

 

 繰り出したフシギバナでしんぴのつるぎを受け止めながら、メガシンカさせるユウリさん。メガシンカしたことで鋭くなった葉っぱを飛ばし、エネルギーの刃を弾いて打ち上げて行く。

 

 

「はっぱカッター!」

 

「ハイドロポンプで逃げろ!」

 

 

 足の裏から水流を出して逃れるケルディオ。それを追いかけはっぱカッターが放たれ、着地したところで目を輝かせるユウリさん。

 

 

「ハードプラント!」

 

 

 くさタイプの究極技、太い蔓の束がケルディオに殺到。技を出させることなく、飲み込んで戦闘不能にした。使ったら反動で動けなくなる究極技の使いどころが上手すぎないだろうか。ちゃんとインテレオンに交代しているし。

 

 

「そろそろ本気を出してよ。その程度の実力でラウラが負けるわけがないじゃん」

 

「そう言っていられるのも今の内だぞ。加減はしなくていいぞ、キュレム」

 

 

 手にしたマスターボールから繰り出されたのは、私をこんな状態にした張本人…張本ポケモンであるキュレムだ。私をこんな中途半端で拘束できるほどの技量を持つ、最強とも謳われるドラゴンポケモンにユウリさん、勝てるのか?

 

 

「ねらいうち!」

 

「れいとうビームだ」

 

 

 インテレオンの突き出した指から放たれた水流を、れいとうビームで水流ごと撃ちぬいてインテレオンが指を構えた状態で凍りつかせるキュレム。氷像と化したインテレオンは動かない。もはや一撃必殺じゃないか。あんなの喰らったら私は死んでいたかもしれない。

 

 

「っ…ムゲンダイナ!かえんほうしゃ!」

 

「れいとうビーム!」

 

 

 インテレオンを戻し、ムゲンダイナを繰り出して突っ込ませるユウリさん。その口から放たれた炎を凍らせて突撃して破壊しながらムゲンダイナと組み合うキュレム。炎をも凍らせるってそんな無茶苦茶な…

 

 

「ドラゴンクローだ」

 

「クロスポイズン!」

 

 

 零距離での殴り合いを制したのは、キュレム。効果抜群の一撃がムゲンダイナのコアに突き刺さり、大ダメージでよろめき後退する。

 

 

「終わりだ。こごえるせかい」

 

「かえんほうしゃ!」

 

 

 キュレムの周囲に漂う冷気が渦となって竜巻となり、それは広がっていき、炎を吐く抵抗虚しくムゲンダイナと、ユウリさんを飲み込んで。冷気の竜巻から、全身が薄く凍てついたユウリさんが吹き飛ばされて私の側に転がった。

 

 

「ムゲンダイナ!」

 

 

 どうやらムゲンダイナがその身を挺して主人であるユウリさんを守ったらしい。冷気の竜巻が消え去ると、そこにはムゲンダイナの氷像が倒れ伏していた。

 

 

「ガラルの災厄、ブラックナイトも形無しだな!チャンピオンユウリよ、お前は知らないだろうから教えてやる。こいつはキュレム。史上最強のドラゴンポケモン、キュレムだ!フフフ、ハハハハハ!」

 

「くっ…フシギバナ!」

 

「だがこいつを使うと私も冷気で体が凍てついてしまうからな。交代してやろう。行け」

 

 

 キュレムを戻して、その名を出さずにグレイが繰り出したポケモンが超高速で動き回ってメガフシギバナに四方八方から襲いかかる。メガフシギバナの巨体が宙に浮くほどの速さ。あれが、グレイの六匹目。なんだ、あのポケモンは?

 

 

「フハハハハハハ!最速のポケモンの力はどうだ!チャンピオンが手も足も出ないではないか!ニトロチャージ!」

 

 

 その何かが炎を纏い、フシギバナに正面から激突。炎上させて戦闘不能にするも、なおも止まらない。

 

 

「バドレックス!アストラルビット!」

 

「無駄だ無駄だ!」

 

 

 ユウリさんがバドレックスを繰り出して霊体弾を放って追従させるも、追い付かず消えて行く。速すぎて誘導する攻撃さえ届かないなんて…

 

 

「こうそくいどう!」

 

「付け焼刃なぞ無駄だ!シザークロス!」

 

 

 そしてバドレックスも倒れ。ユウリさんは最後のポケモンであるウーラオスを繰り出すも、やはり超高速で攻撃されて苦い顔だ。アレに勝つ算段が思いつかないのだろう。私もそうだ。

 

 

「あと一体。俺が集めた最強のポケモン達なら、チャンピオン相手でも勝てるらしい」

 

「ぐっ…」

 

 

 満面の笑みを浮かべるグレイ。ユウリさんでも勝てないなんて、一体誰が勝てるって…

 

 

「待ちなさい!」

 

「グレイ様!」

 

 

 そこにやってきたのは、ダフネとシュバルツ。思わぬコンビに、思わず目を丸くした。




ユウリのポケモンさえ圧倒するグレイの手持ち。今の手持ちならチャンピオン相手でも勝てる戦力になってます。

・ジュリ
手加減されたこごえるせかいで顔の左側と左腕以外を凍りつかされた転移者。身動き取れないまでも、あと一匹だけ使えるポケモンでチャンスを待つ。

・ユウリ
ラウラの敵討ちだと燃えるチャンピオン。洗脳されたラウラを何とかするための手持ちであるウツロイドは本気の手持ちではないため、大苦戦に強いられる。今回連れてきた手持ちはウーラオス、インテレオン、ムゲンダイナ、バドレックス、フシギバナ、ウツロイド。

・グレイ
ついにチャンピオンを追い詰める実力を見せたプラズマ団のボス。手持ちはキュレム、ゾロアーク、ケルディオ、メタグロス、ゼブライカ、そして●●●。キュレムはとある理由でガチモンの「最強のドラゴンポケモン」となっている。

・ダフネ&シュバルツ
ユウリがやられるギリギリで到着。手持ちを完全回復させてきた。

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VS BWキュレムⅠ

どうも、放仮ごです。今回は題名で分かる通り、過去作で出したことあるオリジナルポケモンが登場します。その時は瞬殺されたんですが、今作ではラスボスポケモンの一体です。

今回はダフネ&シュバルツVSグレイ。楽しんでいただけると幸いです。


 シュバルツの案内した部屋にあったポケモンセンターにもあるような機械で手持ちのポケモンを回復し、ワープポイントに乗って決戦の舞台に赴くと、まさにユウリさんが圧倒されているところだった。近くには泡を吹いて倒れ伏したラウラさんと、完全ではないが氷像にされたジュリさんがいた。その奥には、白と黒の男が…アレがグレイだろうか。

 

 

「グレイ様!」

 

「…シュバルツか。どうした、加勢に来たのか?いらぬ心配だ。…いや、何故その女を連れている?」

 

「聞きたいことがあってまいりました!」

 

 

 シュバルツは泣きそうな顔で、妖しい笑みを浮かべるグレイに物申す。ユウリさんはその隙を突こうとしていたが、速すぎる何かの攻撃でウーラオスは防戦一方だった。

 

 

「なんだシュバルツ。今は忙しいから話なら後に…」

 

「グレイ様は、本当にポケモン救済を志しているのですか!?」

 

「…ほう?」

 

 

 シュバルツの問いかけに、眉を顰めるグレイは大きなため息をついて、闇の様な暗い瞳でシュバルツを見下ろした。そこからは感情をまるで感じない。恐ろしく感じて、思わず後ずさる。

 

 

「ああ、私はポケモン救済を目指しているぞ?世界の王になるのはそのためだ。本当にポケモンを救済するならば、地方一つに囚われずに全ての人間に影響を及ばさなければならない。そのための力の提示だ。このことについては何度も言っただろう?」

 

「だが!だがしかし!解放されたあとのポケモンたちについてはお考えなのですか!?もし、貴方が王になり、いっせいにポケモンが解放されれば全てのポケモンが路頭に迷うことになるのでは…なにか、お考えなのですよね!?」

 

「ああ、それか。それはだな……考えていない」

 

「…やはり、そうなのですか…?」

 

 

 グレイの心無い言葉に、怖気づくシュバルツ。やはりか。あの男、王になるのが目的なだけでポケモン解放とか、プラズマ団が謳っていることについては何も考えていないんだ。

 

 

「だがいいではないか。ポケモン解放は成し遂げられる。お前の悲願は達成できる。そう、約束しただろう?この私が、Nでもゲーチスでも成し遂げられなかったポケモン解放を成し遂げてやろうとな」

 

「確かに私はそう言われて貴方に忠誠を誓った。だが、だが!私が目指したのはポケモン解放ではない!ポケモン救済だ!貴方がそんな無責任な王であろうというのならば!」

 

「だとするなら、どうするというのだ?」

 

「私は貴方を止める!止めて見せる!」

 

「助太刀しますよ、シュバルツ!」

 

 

 ボールを構えてクロバットを出すシュバルツに、私もイオルブを繰り出して構える。するとグレイは両手でマスターボールを構えた。高速で動くポケモンはそのままユウリさんとウーラオスの相手をさせるようだ。

 

 

「そうか。ならばお前も我が敵だ。さすがに3VS1は分が悪い。加減はしないぞ、伝説の力を見せてやれ。――キュレム」

 

 

 そして繰り出されたのは、見たこともないポケモン。凍てついた灰色の身体を持つ巨大なドラゴンポケモンは咆哮を上げる。こいつのせいで、ジュリさんがあんなことに…!?

 

 

「こごえるせかい」

 

「ファストガードだ!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 放たれた冷気の渦が巨大化した竜巻を、エネルギーの壁で防御するシュバルツとクロバットと、ミラーコートで跳ね返そうと試みる私とイオルブ。しかし跳ね返した光線は維持される竜巻に飲み込まれて打ち消され、さらにはファストガードも砕かれて凄まじい冷気の渦が私達を吹き飛ばす。咄嗟にクロバットとイオルブが庇ってくれたが、二体とも氷像になって床に倒れ伏していた。なんという力ですか…!

 

 

「シュバルツ、本気で行きますよ!ヘラクロス、メガシンカです!」

 

「ああ、行くぞダフネ!シャンデラ!」

 

 

 私はヘラクロスを繰り出し即メガシンカ、シュバルツはシャンデラを繰り出す。あの火力なら対抗できるはずです!

 

 

「ほのおのうず!」

 

「ハハハハハ!さすがは俺自らスカウトした幹部だ!キュレムにも対抗できるのかお前は、凄まじいな!お前が敵になって本当に悲しいぞ、シュバルツ!」

 

 

 炎の大竜巻が冷気の大竜巻と激突。室内だと言うのに凄まじい風が吹き荒れる。すごい、伝説ポケモンとも対抗できるなんて…!

 

 

「ダフネ!グレイ様…いや、グレイにあの力を使わせてはならぬ!」

 

「あの力とは!?」

 

「使われたら、正真正銘の最強のドラゴンが君臨すると言うことだ!」

 

「とにかくぶっ飛ばせばいいんですね!ヘラクロス、メガホーンで突っ込んでインファイトです!」

 

 

 冷気と炎の大竜巻がせめぎ合う中に、メガヘラクロスを突撃させる。メガホーンで冷気と炎の壁を突き破り、キュレムに肉薄。姿こそ見えないが、猛打撃が炸裂した音が聞こえた。

 

 

「見るからにこおりタイプですよね!ならば!ロックブラスト!」

 

「ドラゴンクローだ!」

 

 

 直後、冷気と炎の壁を突き破って出てくるメガヘラクロス。戦闘不能とまでは行かないがボロボロだ。なんて力…こごえるせかいとかいう技を維持しながら他の技を出せるとは。恐るべし、伝説ポケモン。

 

 

「むっ…駄目だ、離れろダフネ!」

 

「え?」

 

「思っていたよりも耐えはしたが…無駄な抵抗だ」

 

 

 炎の大竜巻が冷気の大竜巻に飲み込まれ、掻き消えて冷気の渦が私達を襲う。メガヘラクロスは全身から蒸気を噴出して冷気を防御、シュバルツもシャンデラのれんごくで防いでいるようだが、それでも吹き飛ばされてしまう。これ、ラウラさんにも当たってそうですが大丈夫なのか?と思わず見て見ると、何故か無事だった。…まさか?

 

 

「ヘラクロス!床ギリギリを飛んで突っ込んで!」

 

「何をする気だ、ダフネ?」

 

「なにをしようが無駄だ!こごえるせかい!」

 

 

 蒸気を噴出して床ギリギリを飛行するメガヘラクロスに放たれるこごえるせかい。遠く離れた私達にも余波が来るが、直撃したはずのメガヘラクロスは、特に影響を受けることなく突撃していた。その光景に驚くグレイ。してやったりだ。

 

 

「なに!?」

 

「その技、どうやら大技であるが故に…床ギリギリには当たらないみたいですよ?ぶちかましなさい!インファイト!」

 

「れいとうビームで防御だ!」

 

 

 れいとうビームで氷の壁を作って防御しようとするが無駄だ。蒸気を噴出して加速した一撃で氷の壁を破壊して肉薄。猛打撃を叩き込み、後退するキュレム。しかしドラゴンクローで薙ぎ払われる。でも、結構ダメージを与えたはずだ。このまま…!そう、構えたその時。グレイは懐から何かを取りだしていた。

 

 

「レジギガスもやられたと今、連絡が入った。レッドが来ると予想もできなかった俺の落ち度だ。それは認めよう。だが、だがな。主人公でもない奴に負けるのはこの俺のプライドが許さん!」

 

「まさか…アレを使う気か!止めろ、シャンデラ!」

 

「もう遅いぞシュバルツ。キュレムよ、真の力を解き放て…「真・いでんしのくさび」だ!」

 

 

 それ…白と黒と灰色の楔の様な物がキュレムに突き刺さる。瞬間、右が赤い火炎に。左が青い電気に包まれるキュレムの姿が、氷が溶けて、変貌していく。

 

 

「…キュレムにはいでんしのくさびというアイテムでレシラムかゼクロムと融合することで至る真の姿がある。ブラックキュレム、ホワイトキュレムという」

 

 

 その変貌を見ながら、淡々と説明を始めるシュバルツ。その中に聞き覚えのある名前があった。

 

 

「レシラムってトウヤさんの手持ちの?でもその二体は今ここには…」

 

「そうだ。レシラムはトウヤというトレーナーに、ゼクロムがN様…現在はメイというチャンピオンがそれぞれ有していたため、ゲーチスの野望以降その姿を実現することは叶わなかった。だがグレイは、ゲーチスの野望でブラックキュレムとレシラムが戦ったジャイアントホールにて…二体の血液を見つけたのだ」

 

「それってまさか…」

 

「プラズマ団驚異の科学力が成し遂げた偉業。かつて、キュレムがレシラム・ゼクロムと一体化していた時の姿を取り戻すことに成功した。それが…BWキュレム。4つのタイプを持つ最強のポケモンだ」

 

 

 赤い炎と青い雷が弾ける。その竜が咆哮する。絶望が、そこに現れた。




キュレムの真の姿、という設定のBWキュレム。登場です。

・ダフネ
久々活躍主人公。こごえるせかいの弱点を見切ってキュレムに大打撃を与えた。ジュリを凍らせ、ラウラを洗脳し、シュバルツを騙したグレイへの怒りに燃える。

・ユウリ
ひとり謎のポケモンと戦うチャンピオン。ウーラオスで相手している間に回復を試みるがこごえるせかいの余波に邪魔され半ば凍り付かされる羽目に。

・ジュリ
現在身動きが取れない転移者。BWキュレムの登場に驚きを隠せない。あと助けて。

・シュバルツ
グレイの真意を聞いて、反旗を翻すことにしたプラズマ団幹部。キュレムの事情については幹部だけあってよく知っており、あのポケモンにだけは勝てないと考えている。何気にシャンデラでキュレムに対抗しているやべーやつ。

・グレイ
切札である「真・いでんしのくさび」を使いBWキュレムを爆誕させたプラズマ団のボス。プラズマ団の科学力と、自身の頭脳で作りだした。レジギガスまでやられたと無線で聞いて最終手段に出た。主人公でない人間にやられるのだけは我慢ならないらしい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VS BWキュレムⅡ

どうも、放仮ごです。三千字縛りなためあまり進みませんでしたが、BWキュレムの実力お披露目回となります。

今回は途中からジュリ視点です。楽しんでいただけると幸いです。


「ふぅ…こんなものかな。うん?」

 

 

 プラズマフリゲートの甲板で、死屍累々のしたっぱの山を作り上げた少年、トウヤは手首に付けたライブキャスターに着信が入って通信に出ると、久しく見なかった顔が出た。

 

 

≪「やあトウヤ。久しぶりだね」≫

 

「ああ。一年前のジャイアントホールぶりだな、N。こっちは取り込み中だがどうしたんだ?」

 

≪「君がプラズマフリゲートに乗り込んだことは知ってるよ。僕もシュートスタジアムにいたんだ。出来れば僕もそこに行きたかったんだけどね。それよりも、地上で捕まえたダークトリニティから不穏な情報を得たんだ」≫

 

「グレイって奴の情報か?」

 

≪「いや、それよりも問題かもしれない。グレイの切札は、いつの間にか行方不明になっていたあの時のキュレムらしいんだが…ただのキュレムじゃないらしいんだ」≫

 

「あの時のキュレムか…俺は力及ばなかったがメイの活躍で野生に帰ったと思ったんだがな」

 

≪「急いでくれトウヤ。恐らく、並のポケモンじゃ敵わない。君と君の友達の力がいる」≫

 

「わかった、行くぞレシラム」

 

 

 レシラムをボールに戻し、先を急ぐトウヤ。その脳裏には、かつてグレイなどという大悪人と戦ったことなど覚えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最強のドラゴンと謳われたキュレムの圧倒的な力を前に敗北した私。凍り付き、口もろくに開けない状態で見せられる、グレイの凶行に驚くしかない。真・いでんしのくさびと呼ばれたいでんしのくさびと瓜二つのアイテムを突き刺した途端、炎と雷に包まれ変貌を遂げたきょうかいポケモン、キュレム。右はホワイトキュレムで左がブラックキュレムと言う歪な姿は境界ポケモンの名にふさわしく。BWキュレムと言う名にも納得がいくものだった。

 

 

「フリーズボルト」

 

 

 その背に飛び乗ったグレイの指示で、一声吠えたキュレムは冷気と電気の渦を周囲に展開し、電撃を纏った巨大な氷柱をいくつも形成、射出するBWキュレム。

 

 

「ロックブラスト!」

 

「れんごく!」

 

 

 岩の弾丸と炎の津波で対抗しようとするダフネとシュバルツだったが、あっさりと貫いてメガヘラクロスとシャンデラに炸裂、放電して大ダメージを与える。あれ、フリーズボルトってこおりタイプの溜め技だった筈…でんきとこおりの複合技に、というか技自体が変わっている?

 

 

「ヘラクロス、休んで!お願い、グソクムシャ!であいがしら!」

 

「交代、ネンドール!すなあらしとじんつうりきだ!」

 

 

 するとダフネはグソクムシャを繰り出して突撃させ、シュバルツはネンドールを繰り出し発生させたすなあらしを巨大なネンドールの形に作り上げ、拳を振り下ろさせる。あれなら…!

 

 

「コールドフレア」

 

 

 するとBWキュレムは冷気の塊を飛ばしたかと思えば、続けて火の玉を放って冷気の塊にぶつけると、大爆発が起きてグソクムシャは吹き飛ばされ、ネンドールの砂像がボロボロと崩れ落ちる。なんて威力だ、これが真のコールドフレアだとでもいうのか。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「だいちのちから!」

 

「飛んで避けろ、ドラゴンクロー」

 

 

 大ダメージを受けながらも突撃するグソクムシャの水を纏った一撃と、ネンドールの熱線を、左肩と右腕についた白黒の翼を羽ばたかせて飛翔して回避、急降下して両腕の炎と雷・そして冷気を纏った爪の斬撃を叩き込み、大爆発を起こしてグソクムシャとネンドールに連続で直撃させるBWキュレム。瞬く間に戦闘不能になった二体を踏みつけ、咆哮を上げる。ドラゴンクローにまで属性を付与するだなんて、しかも冷気と炎か雷の熱気を合わせて爆発まで起こして威力を引き上げるなんて、強すぎる…!

 

 

「頼みます、アブリボン!」

 

「くっ…負けられない、負けられないんだ!ヨノワール!」

 

「こうも力の差を見せても足掻くか。ならばその身で受けてみるか?コールドフレアだ」

 

 

 グレイの指示を受けて、BWキュレムは冷気の塊と火球を同時に飛ばした。その先はアブリボンとヨノワールではなく、そのトレーナーたち。グレイの性格が分かってきた。主人公に対しては正々堂々、ポケモンでポケモンを倒して自分の力を示そうとする。だけど、私やダフネたちみたいな主人公以外のトレーナーに対しては氷の様に心が冷たすぎるんだ。まるでゴミを片付ける様に、平気で危害を加えてくる。トウヤさんに負けたことが、「弱い」と言われたことがどれだけショックだったのか窺えるというものだ。

 

 

「危ない、ダフネ!」

 

「シュバルツ…!?」

 

 

 ダフネを突き飛ばして庇い、爆発を一人真面に受けるシュバルツ。余波だけでアブリボンとヨノワールも吹き飛ばされるその威力は、人が喰らえばひとたまりもないことを示していて。爆発が収まった時、シュバルツは全身ズタボロのボロ雑巾の様な状態でその場に倒れ伏していた。

 

 

「…かはっ」

 

「シュバルツ!なんで私を庇って……グレイを止めるんでしょう!?貴方が倒れてどうするんですか!?」

 

「しぶといやつめ。フリーズボルト…!?」

 

 

 倒れ伏したシュバルツの手を握り、語りかけるダフネ。そんなダフネを容赦なく狙うグレイだったが、アブリボンのしびれごなとヨノワールの拳がBWキュレムの邪魔をすることで難を逃れ、シュバルツは淡々と語りだした。

 

 

「…お前のポケモンを、クワガノンとアーマルドを奪った後…よく愛されているポケモンだと思った。ポケモンを心から愛してくれるトレーナーもいるのだと、少し嬉しく思った…」

 

「シュバルツ…」

 

「道を間違えた私よりも、お前が生き残るべきだと思った…、それだけだ。頼む、ダフネ。グレイを…お前が、止めてくれ…」

 

「シュバルツ!シュバルツ!?」

 

 

 その言葉を最後に気絶したシュバルツに必死に呼びかけて。返事が聞こえないことを確認したダフネはシュバルツを部屋の隅に引き摺って下ろし、BWキュレムとその背に乗るグレイに向き直る。ヨノワールとアブリボンが軽くフリーズボルトで戦闘不能にされていた。

 

 

「シュバルツの粛清は終えた。次はお前だ、羽虫」

 

「クワガノン!行きますよ…ねばねばネット!」

 

「むっ…俺が狙いか!ドラゴンクロー!」

 

 

 お得意のねばねばネットを射出する。狙いはグレイ。あちらが狙うならこちらも、ということだろうか。しかしドラゴンクローに阻まれ、簡単に斬り裂かれてしまう。ねばつく糸も炎/電気・冷気を纏う爪には関係ないらしい。

 

 

「押し潰せ!」

 

「くっ…!?」

 

 

 そのままグレイの指示で突進したBWキュレムが、ダフネを踏み潰さんとしたその時。

 

 

「レシラム!りゅうのはどう!」

 

 

 ワープポイントから現れた一人の少年が繰り出した白き竜がダフネの前に飛び出して、口から青い光線を放ってBWキュレムを吹き飛ばした。

 

 

「…悪い、間に合わなかった」

 

 

 少年…トウヤさんはシュバルツや私、お兄ちゃんの惨状を見てそう言うとキッとグレイを睨みつける。対してのグレイは…笑っていた。三日月の様に、笑っていた。

 

 

「トウヤ…お前か!フハハハハ!お前まで来ているとはな!これは僥倖!」

 

「お前…その髪の色、もしかして、三年前にネジ山で戦ったあのグレイか?」

 

 

 するとトウヤさんはグレイの事を思い出したのか、そう問いかけるとグレイは真顔になる。

 

 

「そうだ。お前が弱いと言った、あのグレイだよ。あの時の悔しさをバネにここまで来た…どうだ、お前でも勝てないポケモンを俺の頭脳で生み出してやったぞ!」

 

「弱い?いや、それは…」

 

「言い訳など聞かん!お前のレシラムを倒して、俺こそが最強だと、王の器だと証明する!BWキュレム!こごえるせかい!」

 

「っ、…あおいほのお!」

 

 

 凄まじい冷気・炎・雷の渦と、レシラムの口から放たれた青い火炎放射が激突。大爆発がエリアに広がった。




シュバルツ、撃沈。そして伝説のドラゴン対決。

・ダフネ
シュバルツと共に立ち向かったものの、手も足も出ず圧倒された主人公。自らを庇ったシュバルツに託され、怒りに燃える。

・ジュリ
今回の視点主。驚愕でお腹いっぱい。ちなみに身動きが取れないため傍から見ると死んでいるように見える。

・ユウリ
描写はされて無い物の、爆発やら冷気やらの余波を受けながら謎のポケモンと戦っている人。正体に気付き始めた。

・シュバルツ
ダフネを庇い重傷を負ったポケモン救済を願った者。ダフネのポケモンを奪ったことで、トレーナーにも希望を抱いていたことを告白した。

・トウヤ
Nの連絡を受けて急行したBWの主人公。レシラムで挑む。「弱い」について驚いているようだが…?一年前、Nとメイのピンチに駆けつけてブラックキュレムと一戦交えている。

・N
出番がなかったけど単に今回はともだちをゾロアしか連れて来てなかったため戦闘できてなかった人。プラズマフリゲートに行きたかった。

・グレイ
トウヤの登場に狂喜乱舞するプラズマ団のボス。ジュリ曰く「主人公以外のトレーナーに対してはゴミ掃除する様に心が冷たい男」トウヤを真正面から叩き潰さんとする。

・BWキュレム(こおり・ドラゴン・ほのお・でんき)
とくせい:ターボルテージ(プレッシャー、ターボブレイズ、テラボルテージを同時発動する。もちろん実際は二種類の効果しかない)
わざ:こごえるせかい(冷気・雷・炎の渦を広げる大竜巻。氷・電・炎)
   フリーズボルト(雷を纏った氷柱ミサイル。氷・電)
   コールドフレア(冷気の塊に火球を飛ばし大爆発を起こす。氷・炎)
   ドラゴンクロー(それぞれ炎か雷と冷気を纏い爆発を起こす。氷・竜・炎/電)
もちもの:とけないこおり
備考:おくびょうな性格。負けん気が強い。右はホワイトキュレムで左がブラックキュレムと言う歪な姿をしている。
グレイの頭脳とプラズマ団驚異の科学力により生まれたゼクロムとレシラムの遺伝子が内包された真・いでんしのくさびを打ち込まれて完全な姿を取り戻したキュレム。全ての技が複合タイプの技で本来の威力を取り戻している。正真正銘最強のドラゴンポケモン。ちなみに玉座の間はBWキュレムの戦闘に耐えられるよう頑丈に広く設計されている。

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VS BWキュレムⅢ

どうも、放仮ごです。今回、ついにあの人物が復活。楽しんでいただけると幸いです。


 激突する、BWキュレムとレシラム。鬩ぎ合っていたこごえるせかいは青い炎を飲み込んで、何にも守られていないダフネを襲わんとした。咄嗟に、動く左手で握ったボールを渾身の力で投擲する。お願い、ヌケニン!

 

 

「これは…ジュリさん!?」

 

 

 まもるを発動したヌケニンに守られたことで助かったダフネがこちらに振り返り驚愕の視線を向けてきたので、ボールを手渡し、動く左目だけ瞑ってウィンク。生きてるよ、と伝えることに成功した。とはいっても動けないのは変わりないのだが。

 

 

「お借りします…ヌケニン!力を貸してくれますか?」

 

 

 頷くヌケニン。蟲使いのダフネとヌケニンが力を合わせる。その前で組み合い、殴り合う二体のドラゴン。

 

 

「「ドラゴンクロー!」」

 

 

 クロスカウンターで同時に顔面に叩き込まれ、レシラムだけが爆発を受けて吹き飛ぶ。劣勢。トウヤさんとレシラムは劣勢だ。体格でさえレシラムの1.5倍あるのだ、殴り合いじゃ分が悪い。かといって距離を取っても…

 

 

「距離を取ろうと無駄だ!コールドフレア!」

 

「クロスフレイム!」

 

 

 冷気と熱気が合わさり大爆発が起きて、レシラムの放った火炎も飲み込まれてしまう。どうすればいいんだあれ。ゲームにいないポケモンだから全然わからない!

 

 

「二匹とも、あなをほる!」

 

 

 するとダフネが動いた。クワガノンとヌケニンにあなをほるを指示したのだ。爆発が立て続けに起こる中、鉄の床の下に潜り込む二体に、BWキュレムとグレイは気付いてない。目の前のレシラムとトウヤさんにかかりきりだ。

 

 

「フリーズボルト!ドラゴンクロー!」

 

「あおいほのおで溶かせ!ドラゴンクローで受け止めろ!」

 

 

 BWキュレムの放った電撃を纏った氷柱を青い炎で蒸発させ、ドラゴンクローの爆発をドラゴンクローで受け止めるレシラム。技量でBWキュレムに対抗している、さすがトウヤさんとレシラム。ほぼ互角のゼクロムとNに勝利しただけ真実の英雄と呼ばれるだけのことはある。

 

 

「そこです!」

 

 

 床からBWキュレムに弾丸の様に飛び出したクワガノンとヌケニンが直撃。でんき・ほのおタイプがある故に効果抜群の攻撃を受けたBWキュレムは仰け反り、その隙を突いて組み伏せるレシラム。

 

 

「ナイスだ、ダフネ!さすが勝ち残ったジムチャレンジャーだな!零距離ならひとたまりもないだろう!あおいほのお!」

 

「なんの!氷壁展開…そしてドラゴンクローだ!」

 

 

 クワガノンとヌケニンがそそくさに離れると、グレイを巻き込むことも厭わず、あおいほのおを叩き込むレシラム。対してレシラムの腹部に爪を突き刺し、大爆発がBWキュレムとレシラム、その上に乗るグレイとトウヤさんを飲み込んだ。

 

 

「トウヤさん!」

 

 

 やったか?と一瞬思ってしまう。さすがのBWキュレムも、効果抜群を立て続けに受けたら…しかし現実は非情で。爆発が晴れた時、立っていたのは全身に薄い氷の膜を張っていたBWキュレムと、その背に展開された氷壁に隠れていたグレイで。レシラムとトウヤさんは力なく倒れ伏していた。

 

 

「フハハハ!俺が乗ることを想定して生み出したこのBWキュレムが防御手段を持ってないわけがないだろう!」

 

「…グレイが乗ることを想定した…?」

 

 

 何が引っかかったのか、首を傾げるダフネ。グレイが制御することを想定したってことじゃないのか?…いや、あんなに爆発を起こすのに乗るのはおかしくないだろうか。

 

 

「残るはお前だ、小娘。ユウリももうすぐ果てる」

 

「くっそぉ…!回復させる暇さえないなんて…!」

 

 

 見てみれば、この広い空間で爆発が立て続けに起こる横でずっと正体不明の何かとユウリさんが戦っていた。ウーラオス共々、完全になぶり殺しにされてる。あのポケモンも私が知らない何かなのだろうか。それにしてはデジャヴを感じるんだよなあ。

 

 

「私は小娘じゃありません。バウタウンのダフネです!」

 

「そうか。私はサンヨウシティのグレイ。ダフネよ、王の前に立つことは褒めてやろう。だが蟲しか使わないお前がどうやってこのBWキュレムに勝つというのだ!コールドフレア!」

 

「蟲をなめないでください!ヌケニン、まもる!クワガノン、あなをほる!」

 

 

 コールドフレアによるだいばくはつを、ヌケニンのまもるで自分の身を守りつつ攻撃に転ずるダフネさん。

 

 

「こごえるせかい!」

 

「かげうち!アーマルド!まもる!」

 

 

 BWキュレムを中心に吹き荒れる冷気、炎、雷。普通のこごえるせかいなら何もしなくとも耐えられたはずの一定範囲の全方位攻撃が、ヌケニンとダフネを巻き込む直前、ヌケニンのかげうちが炸裂。ヌケニンは崩れ落ちた物の地道にダメージを増やしていくのと同時に、繰り出されたアーマルドがダフネの身を守った。

 

 

「アーマルド、げんしのちから!」

 

 

 上からはアーマルドの浮かぶ岩の波状攻撃、下からはクワガノンの突撃。共に効果抜群の攻撃を受けたBWキュレムは怯む。上手い、技の合間に攻撃を立て続けることで追い詰めている。

 

 

「ぐぬぬ…ならば!フリーズボルト、全力展開!」

 

「なっ…!?」

 

 

 クワガノンとアーマルドを侍らせるダフネ。その眼前に、BWキュレムの背後に次々と展開されていく雷を纏った氷柱の山。まるで、元の世界で見たことあるFateシリーズのギルガメッシュの宝具「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」みたいな…!

 

 

「ゲート・オブ・キュレム!」

 

(まんまだったー!?)

 

 

 そう言えばグレイも転生者だった。忘れていた。その力は前世のポケモン知識や転生特典だけじゃない、前世で見たありとあらゆる戦術も加算されているんだ。え、勝てるの?

 

 

「きゃあああああ!?」

 

 

 容赦なくダフネもろとも狙って放たれる雷を纏った氷柱の束が次々と降り注ぐ。アーマルドとクワガノンが何とか破壊しているけど、床に突き刺さった瞬間放電してダフネと二匹にダメージを与えてボロボロにしていて、何時まで持つか……アレは洒落にならない。直撃したら串刺しと同時に放電だ。人間だろうがポケモンだろうが死んでしまう。誰か、誰かダフネを…私の親友を、助けて…!

 

 

「テクノバスター」

 

「むっ、氷壁展開!」

 

 

 すると、部屋の隅から放たれた光線を氷壁で防ぐBWキュレム。同時にフリーズボルトの射出が止まり、グレイとBWキュレムは下手人に振り返る。そこに立っていたのは、さっきまで情けなくウツロイドの手で泡を吹き白目をむいて倒れていた、私の兄。ニートで蟲狂いでポケモン廃人でろくでもなかったけど、この世界では間違いなく英雄の一人。ゲノセクトを傍らに連れたその人物を見て、ダフネとユウリさんが歓喜の声を上げる。

 

 

「ラウラさん…!」

 

「ラウラ…!」

 

「悪い。迷惑かけたな二人とも」

 

 

 むしつかいのラウラ。むしタイプのメジャージムリーダーにして、チャンピオンユウリに唯一勝てる女。私のお兄ちゃん。グレイはお兄ちゃんが目を覚ましたことに狼狽えた。

 

 

「馬鹿な…本当にあんなので洗脳が解けただと…!?」

 

「あんなの言うな。全部覚えてるんだぞ、あの脳を弄られる嫌な感触に……お前の親友として、プラズマ団幹部として何もおかしいと思うことなく振る舞っていた愚かな俺自身を。お洒落な格好にしてくれてありがとうなご同類さんよぉ!」

 

 

 あ、その格好気に入ってたんだ。そういや男の子だもんね、今は女の子だけど。

 

 

「だがお前は俺に負けた。その事実は変わらん。また負かして俺の(しもべ)にしてくれる!やれ!」

 

 

 グレイの指示を聞いて、襲いかかったのはBWキュレムではなく正体不明のあのポケモン。しかしお兄ちゃんはまるで分っているかのように半歩引いてそのポケモンの攻撃を避けた。

 

 

「グレイ。お前があのレジエレキを差し置いて最速と謳うポケモンだなんて、プラズマ団の関係者って時点で一択だ!そいつはお前に似合わねえ!」

 

 

 その言葉で分かった。あのポケモンの正体。

 

 

「赤いゲノセクト!お前には過ぎた宝だぜ、グレイ!」

 

 

 ポケモン映画に登場した、お兄ちゃんも持つゲノセクトの色違い。それがあのポケモンの正体だ。




ラウラとダフネ、W主人公ここにあり!というわけで赤いゲノセクトでした。気付いてた人は多いと思います。

・ダフネ
ヌケニンを借り受け蟲ポケモンで最強のポケモンに挑む主人公。結構善戦したがグレイを怒らせピンチに陥った。

・ラウラ
ジュリの呼びかけに応えたのか、伴侶のピンチに応えたのか、とにかく復活を果たしたもう一人の主人公。赤いゲノセクトを看破する。ぶっちゃけ欲しいし、蟲ポケモンの良さを知らないグレイに使ってほしくない相変わらずの蟲狂い。

・ジュリ
氷漬けながら、余裕のない他の面々の代わりに視点主になった転移者。親友のピンチの際の兄の復活に感極まる。ヌケニンでダフネをサポートした。

・ユウリ
爆発の余波を受けながら赤いゲノセクトに弄ばれていたチャンピオン。ラウラの復活に思わず涙。あとウツロイド使った罪悪感。

・トウヤ
レシラムと共に技術で善戦したBWの主人公。氷の防御壁があるとは露とも思わず、爆発をもろに受けて気を失ってしまう。

・グレイ
何故かずっとBWキュレムの背から離れないプラズマ団のボス。氷の防御壁を使って己とBWキュレムを危険から身を守る。前世の知識でポケモンの技を更なる強化させることが可能。ついに念願のトウヤに勝利し脳汁がヤバい。

・赤いゲノセクト
BWキュレムと共にグレイの切札なポケモン。プラズマ団驚異の科学力により、通常のゲノセクトと共に現代に復活した古代の蟲ポケモン。ラウラのゲノセクトとは兄弟の関係。性格が悪く、なぶり殺しにしてすぐには倒さないで楽しめるだけ愉しんでから倒すという悪癖を持つ。元ネタはポケスペのアクロマの赤いゲノセクト。

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VS BWキュレムⅣ

どうも、放仮ごです。最近日中も眠くてやる気が消えそうな事態になってます。完走するまで持たせたいところ。

今回は復活したラウラ率いる蟲ポケモンVSグレイ率いるBWキュレムと赤いゲノセクトの激突です。ポケモン蟲のW主人公ここにあり。楽しんでいただけると幸いです。


「赤いゲノセクト!お前には過ぎた宝だぜ、グレイ!」

 

 

 なんで知ってるんだろう、ラウラさん。プラズマ団にいたからだろうか。それにしてはあまりにも分かりすぎていたが。半歩引いて攻撃を避けるなんて、まるで「直線状にしか高速移動できない」と分かっているかのように。私とユウリさんを置いてけぼりにして睨み合い、対峙するラウラさんと、BWキュレムの背に乗ったグレイ。満身創痍の私達じゃ口出しできない圧に怖気づいていると、先に口火を切ったのはグレイだった。

 

 

「同じ蟲でも、高スペックに改造された我がゲノセクトと比べ物になると思うな!テクノバスター!」

 

「ゲノセクト!」

 

 

 赤いゲノセクトの背中の砲台から放たれる火柱の様な一撃を、変形した紫色のゲノセクトに乗って回避するラウラさん。そのまま空中でラウラさんが飛び降りて来て、二体のゲノセクトは空中で何度もぶつかり合うが、明らかに紫色のゲノセクトが押されていた。

 

 

「ブレイズカセットか。くそっ、よりにもよって蟲ポケモンに効果抜群なカセットを選びやがって…」

 

「よそ見している暇はあるのか!?コールドフレア!」

 

「ハッサム、メガシンカ!エアスラッシュ!」

 

 

 放たれた冷気の塊と火炎弾の合わせ技に対し、ラウラさんはハッサムを繰り出しメガシンカ。冷気の塊をメガハッサムのエアスラッシュで破壊することでコールドフレアを無効化し、さらに目にも留まらぬ拳で炎を掻き消した。

 

 

「バレットパンチ」

 

「馬鹿な、初見でコールドフレアを攻略しただと…!?」

 

「冷気と炎がヤバいことぐらい、漫画を読んでれば分かるさ。お前も同じだろ」

 

「ぐぬぬ…」

 

 

 自慢げなラウラさんと、悔しげなグレイ。通じ合っているようだが、どういう理屈なのだろうか?

 

 

「ゲノセクト、上にニトロチャージ!ハッサムははたきおとすだ!」

 

「近づけさせるな、キュレム!ドラゴンクロー!ゲノセクトはテクノバスター!」

 

 

 赤いゲノセクトの火柱の様な砲撃を、直上に天井近くまで突き進むことで回避、天井付近まで行くと角度を変えて急降下して体当たりを浴びせる紫色のゲノセクトと、BWキュレムのドラゴンクローの爆発を高速移動と急停止を駆使して上手く避け、強烈な振り下ろしを叩き込むメガハッサム。落ちたのは、一見何の変哲もない氷だ。

 

 

「それは…!」

 

「とけないこおり。持たせるとこおりタイプの技の威力を上昇させるアイテムだ。大方、あの姿になったことでキュレムの技が全部こおりタイプがつくから持たせてたんだろうな。これでとんでもない威力は出せなくなったはずだ」

 

「ぬう…ゲノセクトもやられるとは」

 

「その赤いゲノセクト、実戦経験はないだろ。うちのゲノセクトは百戦錬磨でな、指示一つでどうしてほしいか理解し実行できる。…わかるか?小細工と高スペックに頼らないといけないお前の強さなんかよりも、ポケモンとの信頼関係に勝る強さの方が凄いんだよ!」

 

「黙れ!俺は主人公に勝ったんだ!ユウリに負けたお前と違って、俺は勝ったんだ!俺の力で!俺の強さを否定させるものか!あの女を狙え!ドラゴンクロー!シザークロス!」

 

 

 意味の分からない言葉を羅列して激高し、BWキュレムと赤いゲノセクトにラウラさんを襲わせるグレイ。私とユウリさんが咄嗟に飛び出そうとするも、ラウラさんは冷静にグレイを睨み付けてボールを二つ手にしていて。思わず、ユウリさんと揃って立ち止まる。

 

 

「…マッシブーン!フェローチェ!」

 

 

 ドラゴンクローの一撃は規模の小さくなった爆発ごとマッスルが受け止め、超高速で襲いかかった赤いゲノセクトは目にも留まらぬ蹴り上げで天井まで蹴り飛ばされる。マッシブーンとフェローチェ、ラウラさんの持つウルトラビーストだ。戦闘不能とまではいかないが力なく落ちてきた赤いゲノセクトをボールに戻したグレイはわなわなと震えて怒りの雄叫びを上げた。

 

 

「準伝説ごときでェ!蟲ごときでェ!俺の最高傑作がやられてたまるかあああ!こごえるせかい!」

 

「本当に強くなるのに必要なのは、スペックでも伝説なんていう肩書なんかでもない!ポケモンへの愛だ!強い信頼関係だ!それがないお前に、蟲狂いと呼ばれた人間として負けるわけにはいかねえ!マッシブーン、グロウパンチ!フェローチェ、とびひざげり!ハッサムはバレットパンチ!ゲノセクトはニトロチャージだ!」

 

 

 冷気が吹き荒れ、炎が燃え上がり、雷が落ちて弾ける中を、突撃するマッシブーン、フェローチェ、メガハッサム、ゲノセクト。それは、主人を信頼している故の特攻だと目が語っていて。しかし届かず。四体は弾き飛ばされてしまい、慌てたラウラさんがボールに戻した。あれほどの猛攻でも、抑えられるなんて…!

 

 

「蟲が竜に勝ててたまるか!もういい、お前はいらん!死ね!フリーズボルト!」

 

「させるか!すいりゅうれんだ!」

 

 

 無防備なラウラさんを突き刺さんと放たれる電撃を纏った氷柱の連射を、自らが背に乗ったウーラオスの拳で打ち砕いたのは、ユウリさん。振り向いてラウラさんを視線を合わせると輝く笑みを浮かべた。

 

 

「うん、ラウラはやっぱり私の大好きな人だ!だからもう、手は出させない!」

 

「言ってろ!ゲート・オブ・キュレム!」

 

「インファイト!」

 

 

 続け様に放たれる、ミサイルの連射の様な氷柱の爆撃を、殴り、蹴り、破壊していくユウリさんとウーラオス。だがしかし目の前の床に突き刺さった氷柱が放電し、痺れたウーラオスは膝を突き、体の自由がきかないのかその背から落下してしまうユウリさん。

 

 

「こうなったら…こっちだ、僭王!」

 

「…誰が僭王だ貴様!フリーズボルト!」

 

 

 とどめを刺さんと迫るグレイとBWキュレムだったが、せんおう、と呼ばれたことで激高し、デンチュラを背中にくっ付け糸を天井に伸ばし空中に舞い上がったラウラさん目掛けて電撃を纏った氷柱を次々と生成しては連射する。ユウリさんを庇っての動きだ。その時、ラウラさんがこちらを向いて頷いていて。私がやれ、と言う事なのだと気付く。そうか、今なら…!でも、どうすれば?

 

 

「気になるのはずっと背に乗っているグレイ。でもコードとかは見えないから機械で制御している可能性は限りなく薄い…プラズマ団が持っているアクロママシーンで操るメリットはマスターボールがあるからない…ならなんで、あんな近くに?自分も凍り付いたり被害を受ける可能性もあるのに…」

 

 

 頭の中じゃ纏まらないため、小声で素早く口に出して考える。私を守っているクワガノンとアーマルドは心配げにこちらを見ていた。

 

 

「制御…制御?そうだ、冷気と熱である炎と雷を同時に扱うなんて、危険そのものだ。もしかしてあの爆発は、自身の体内の相反するエネルギーを外に放出しているから…?だとしたら、グレイが背にいるのは…限界を見極めるため?なら狙いどころは……」

 

 

 わかった。推察でしかないけど、グレイが背中にいる理由がそれしか思いつかない。だとすると、BWキュレムは不安定なエネルギーの塊だ。それを暴発させれば……だとするならば、狙いどころは一つ。

 

 

「戻って、クワガノン、アーマルド!」

 

 

 私を庇っていてくれた二体を戻し、取りだしたるは傷付いたもののやる気は十分な私の相棒。一番の新入りだが最高の相棒にまでなったこのポケモンで、決着をつける。

 

 

「この一撃で決着を!狙いは楔です、ヘラクロス!」

 

「なに!?」

 

 

 メガヘラクロスが、蒸気を噴出して高速で突撃する。グレイが気付くももう遅い。上空からはデンチュラの糸でスイングしたラウラさんが。下からはメガヘラクロスが迫り、どちらを迎撃するかを選ぶ羽目になる。その一瞬の迷いさえあれば、メガヘラクロスが到達するには十分だった。

 

 

「しまっ…」

 

「メガホーンです!」

 

 

 超高速の角の一撃が、BWキュレムの胸元に突き刺さった楔を破壊する。瞬間、全身から炎と電気エネルギーを漏れさせるBWキュレム。やはり、あのエネルギーを制御するには楔が必要だったんだ。

 

 

「きさっ…貴様、脇役の分際でよくも…!」

 

「グレイ!…俺の可愛い妹…分をよくも凍らせてくれたなあ!」

 

「ぐあああああああああ!?」

 

 

 そして、BWキュレムから飛び降りて逃げようとしたグレイの背中に、スイングキックが突き刺さり、グレイが吹き飛んでいくのと同時にラウラさんとメガヘラクロスが離脱して。爆音とともに眩い光が、私の視界を埋め尽くした。




W主人公の活躍でついにグレイを撃破です。

・ダフネ
ラウラの凄さに置いてけぼりになってた主人公。ラウラから託され、見事BWキュレムの弱点を見抜き撃破した。決めるところはビシッと決める。

・ラウラ
相変わらずのトレーナー力を見せつけるもう一人の主人公。ポケモンへの愛と信頼関係が強さの秘密。グレイを僭王呼ばわりした。ダフネを信頼している。ジュリを凍らされた恨みからスパイダーマンの様なキックでグレイを蹴り飛ばす。

・ユウリ
ちょっと置いてけぼりになってた主人公。無防備なラウラを守る王子様…のつもりが結局守られた。

・ジュリ
ヌケニンをダフネに渡した後ずっと観戦していた人。そろそろヤバいと思っていたら爆音と光に飲み込まれる。

・トウヤ&シュバルツ
隅っこでくたばってる。

・グレイ
ラウラ相手に意趣返しの如くとことん翻弄され、見下して目にも留めてなかったダフネの一撃で敗北したプラズマ団のボス。ついでに背中を蹴り飛ばされる。BWキュレムのエネルギーを観測するために背中に乗っていた。何気に頭脳だけでエネルギーをいつ放出すればいいか分かるなど無駄にハイスペック。

・赤いゲノセクト
とくせい:ダウンロード
わざ:シザークロス
   テクノバスター
   ニトロチャージ
   てっていこうせん
もちもの:ブレイズカセット他
備考:むじゃきな性格。暴れることが好き。プラズマ団驚異の科学力により、通常のゲノセクトと共に現代に復活した古代の蟲ポケモン。ラウラのゲノセクトとは兄弟の関係で技構成も同じ。性格が悪く、なぶり殺しにしてすぐには倒さないで楽しめるだけ愉しんでから倒すという悪癖を持つが、実戦経験は浅くそこを突かれてラウラのゲノセクトとフェローチェに敗北したが戦闘不能にはなっておらず…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSゲノセクト

どうも、放仮ごです。今回は前半はダフネ、後半はラウラ視点でお送りします。

今回はBWキュレム撃破後の一幕。楽しんでいただけると幸いです。


 大爆発。真・いでんしのくさびを失ったことで体内のエネルギーを制御することができなくなったキュレムが暴発を起こし、大爆発が玉座の間を襲い、私達は吹き飛ばされる。

 

 

「し、死ぬかと思った…」

 

「あ、ジュリさん!無事でしたか!」

 

 

 今の爆発の膨大な熱量で氷が溶けたのか、無事な姿のジュリさんに受け止められて難を逃れる。周りを見れば、トウヤさんも目を覚ましてシュバルツを受け止め、ラウラさんも痺れているユウリさんを守っていた。見れば、部屋全体が吹き飛び、天井と壁が一部しか残っていない悲惨なことになり、暴風が吹き荒れる中で元の姿に戻ったキュレムが倒れ伏す。しかし、ラウラさんに蹴り飛ばされていたグレイの姿は見えず……ガクンッと、斜めに傾き始めた。これは…!?

 

 

「まさか、落ちている!?」

 

「なんで!?あの爆発でどこかイカレたの!?」

 

「おいおい、この船には大量の団員も乗ってるんだぞ!?それにこのままじゃシュートシティに…!」

 

「ユウリ、起きれるか?ヤバいことになってるぞ」

 

「ぐう…なんのこれしきぃ…」

 

 

 シュバルツを抱えながらそう言うトウヤさんの言う通りだ。この船にはプラズマ団員も多く乗っている。この場にはいないが、ヨハルやヴァイスだってどこかの部屋にいるはずだ。このままじゃみんな死んでしまう…でもなんで、いきなり落ち始めてるんだ?

 

 

「フハハハハハ!お前たちはもう、終わりだあ!」

 

 

 そんな声が空から聞こえてきて、全員で顔を上げるとそこには、空を飛ぶグレイの姿が。あれは…赤いゲノセクトに乗っているんですか!?グレイはキュレムをボールに戻しながら狂気的に笑う。

 

 

「ゲノセクトのテクノバスターで機関部を破壊した!このままではしたっぱ共とシュートシティがお陀仏だ!せいぜい頑張って止めて見ろ!俺はその間に高飛びだ!死ななければ、捕まらなければ何度でもやり直せる!今度はギンガ団でも手駒にするかな!」

 

「お前、グレイ!いい加減にしろよお前!逃がすか!…俺の手持ちも使ってくれ、あとこれも!頼んだ!」

 

 

 そう言ってボール4個とメガリングを私に手渡して、自らも繰り出したゲノセクトにしがみ付いて空を飛ぶラウラさん。しがみ付くラウラさんと違って、高速で飛行する赤いゲノセクトに直立するグレイ。何という身体能力だ。無駄にすごい。ってそれどころじゃない、なんとかしてこの落下するプラズマフリゲートを止めなければ!

 

 

「なにか、何か手は!?…これは」

 

 

 ラウラさんの手持ちを確認し、思わず胸のメガペンダントと、ラウラさんのメガリングを確認。いや、足りない。私が無理をしても、足りない。あと一つあれば……。

 

 

「や、やっと来れた…なにがあったの!?」

 

 

 そこに、ボロボロのヴァイスを担いでワープポイントからやってきたのはヨハル。いや、そちらこそなにがあったのかとツッコむ前に、その、ヴァイスの脚に付けられたものを見て、思わず駆け寄った。

 

 

「ヴァイス、すみません!お借りします!」

 

 

 気絶しているらしいヴァイスの脚からメガアンクレットを取り外し、自分の左足に装着。メガリングも右手の中指に装着。左手でメガペンダントを握りしめる。それを見て驚くジュリさんとヨハル。ユウリさんとトウヤさん。こんなの、常人じゃ思いつきませんが…これしかない。

 

 

「な、なにを?」

 

「力ずくで落ちるのを止めます。止めて見せます」

 

 

 キーストーンはもう一つの心臓の様な物。それを三つに増やすなんて自殺行為だが…やってやる!繰り出すのは、ヘラクロスとハッサム…そして、ラウラさんの六匹目。カイロス。その手にしているのはそれぞれのメガストーン、ヘラクロスナイト、ハッサムナイト、カイロスナイトだ。

 

 

「トリプル……メガシンカ!」

 

 

 メガペンダント、メガリング、メガアンクレットのキーストーンから溢れる虹色の光とメガストーンの輝きが一つになり、光の膜に包まれるヘラクロス、ハッサム、カイロス。ヘラクロスは角を振りおろし、ハッサムはハサミを振るい、カイロスはハサミを振り上げて、光の膜を突き破る。同時に凄まじい負担が私に襲いかかる。

 

 

「ぐぅうううううう!」

 

「すごい…ポケスペのXY編のエックスみたいな…すごいよ、ダフネ!」

 

 

 ジュリさんが興奮で声を上げる中で、それぞれメガシンカして変貌を遂げた蟲ポケモンたち。メガヘラクロス、メガハッサム、そして背中から翅が生えて自慢のハサミもさらに鋭く、鋭かった眼光がさらに鋭く血走ったような眼光を光らせるメガカイロスが爆誕。私はあまりの負担に膝をつきながらも、三匹にお願いする。

 

 

「お願いします…プラズマフリゲートを、その力で受け止めて…!」

 

 

 頷く三匹は翅を羽ばたかせて空へと飛び出していった。

 

 

「俺達も!レシラム!」

 

「うん、ムゲンダイナ!」

 

「私も…ゴルーグ!」

 

「えっと私は……飛べるポケモンいないからそこの人を任せて!」

 

 

 トウヤさんはレシラムに、ユウリさんはムゲンダイナに、ジュリさんはゴルーグに乗って飛び出していき、残ったヨハルはヴァイスとシュバルツの手当てをする。その中で私は倒れ伏しながら、考える。なにか、他にも手はないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がすか!ニトロチャージ!」

 

「右だゲノセクト!邪魔をするな、ラウラ!テクノバスター!」

 

 

 自身が燃えるのも構わず、ゲノセクトに炎を纏わせて突撃させるも軽く避けられ、赤いゲノセクトを通常形態に戻してバランスよくその上に立って、反撃の火柱を放たせるグレイ。俺は黒焦げになりながらも、ゲノセクトの身体を無理やり引いて急制動を行い回避、赤いゲノセクトを飛行形態に変形させて逃げるグレイに追い縋る。

 

 

「ならこいつはどうだ…!シザークロス!」

 

「なに!?」

 

 

 ボールを手にゲノセクトから飛び降りる。それに驚くグレイと赤いゲノセクトにゲノセクトの斬撃が叩き込まれ、俺はデンチュラを繰り出し背中に装着。糸を伸ばして赤いゲノセクトに伸ばしてくっつけ、二体のゲノセクトに次々と糸を飛ばしてスイング、追いかける。

 

 

「エレキネット!」

 

「貴様!スパ●ダーマンかなにかか!?」

 

「うるせえ!デンチュラと一心同体のなせる技だ!お前にできるか!?」

 

「空飛ぶ変態め、これでも喰らえ!テクノバスター!」

 

 

 振り返り、通常形態に変形させた赤いゲノセクトから火柱を放ってくるグレイの攻撃を、ゲノセクトに糸を伸ばして大きくスイング、ゲノセクトたちの上まで移動して上空からグレイに飛びかかる。

 

 

「うおおおおお!」

 

「うおおおおおお!?」

 

 

 空から襲いかかる俺と、迎撃すべく拳を構えるグレイ。奴の強烈な拳が俺の頬に炸裂し、殴り飛ばされる。いてえ。死ぬほどいてえ。だけど、諦めてたまるか!

 

 

「いとをはく!」

 

「ぬっ…ぬぅううううう!?」

 

 

 奴の突き出した拳に糸を伸ばし、俺とデンチュラの重量に引っ張られ落ちそうになるグレイ。しかし常人離れした怪力で振り上げ、引っ張り上げられて上空に投げ捨てられる俺達。

 

 

「スーパーマサラ人の怪力をなめるな…!?」

 

「ああ…蟲のこともなめない方がいいぞ!特に蜘蛛はな!回れ回れ回れ~!」

 

 

 追い付いてきたゲノセクトに乗り、未だ通常形態で空中に留まっている赤いゲノセクトとその上に乗るグレイの周りを、デンチュラから糸を吐きながら高速で回転し、グルグル巻きにしていく。赤いゲノセクトごと簀巻きにされたグレイをグルングルンとデンチュラとゲノセクトと力を合わせて振り回し、落ちて行くプラズマフリゲートのある方向を見やる。

 

 

「そこだ!飛んでけ!」

 

「ぐっ、おっ、おのれぇえええええええええ!?」

 

 

 そして遠心力を伴わせて投げ飛ばし、グレイをプラズマフリゲートへ帰還させる。…あとは落ちるのを止めるだけだな。

 

 

「急ぐぞ、ゲノセクト!」




トリプル蟲ポケモンメガシンカ、これがやりたかった。

・ダフネ
主人公らしく無茶をした主人公。自らのペンダント、ラウラの指輪、ヴァイスのアンクレットを用いて負担が大きすぎるトリプルメガシンカを果たした。

・ラウラ
主人公らしくこっちも無茶した主人公。もう完全にスパイダーマン戦法を使いこなしている。グレイに殴られて痛いがそれよりも許せないが勝った。

・グレイ
プラズマフリゲートを落として高飛びしようとしていた小悪党。ちゃっかりキュレムを回収するなど小賢しい。格闘戦もできる。だが逃げられず、逆戻りすることに。

・ジュリ
爆発で氷が溶けて復活した転移者。ゴルーグに乗ってプラズマフリゲートを止めるべく奮闘する。

・ヨハル
異変を察知して気絶したヴァイスを連れて追い付いてきた二重人格。飛べるポケモンがいないのでヴァイスとシュバルツの治療を担当する。

・ユウリ
痺れから復活したチャンピオン。げんきのかけらで復活したムゲンダイナと共にプラズマフリゲートを止めるべく奮闘する。

・トウヤ
爆発で目が覚めたBW主人公。げんきのかけらで復活したレシラムと共にプラズマフリゲートを止めるべく奮闘する。そして…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSメガカイロス

どうも、放仮ごです。最近バイオ共々午前中に投稿できて午後は趣味に費やせるので結構充実した日々を送ってます。

今回は落ちるプラズマフリゲートをどうにか止めようと奮闘するダフネたち。楽しんでいただけると幸いです。


 グレイとの戦いに決着がついたその頃、地上では。爆発と共に落下してくるプラズマフリゲートに大パニックに陥ったシュートスタジアムの観客を、凍り付いたシュートシティへ逃がすわけにもいかないので何とか宥めるサタリアとダンデ。ジムリーダーが引き払い、チャンピオンもプラズマフリゲートに向かった今、動けるのは彼等彼女たちだけだった。

 

 

「くっ…一体上では何が起こったというんだ?」

 

 

 徐々に落下してくるプラズマフリゲートを見上げるダンデ。その視線の先では、奮闘するトレーナーとポケモン達がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか、止めないと…ゴルーグ!」

 

「頑張れ、ムゲンダイナ!」

 

「頼む、レシラム!」

 

 

 メガシンカした蟲ポケモン三匹と共にそれぞれ空を飛べる大型ポケモンで落下を止めようと試みる三人のトレーナー。ゴルーグに乗ったジュリ、ムゲンダイナに乗ったユウリ、レシラムに乗ったトウヤだ。

 

 

「止まって、止まって!」

 

「こんなの落ちたら、ちょっとした隕石ぐらいはあるよ!」

 

「隕石を壊した英雄様が下にいるはずだが期待できそうにないな!」

 

 

 超巨大隕石を破壊した英雄、ユウキは現在レジギガスとの戦いで消耗しており、そもそもワイルドエリアなのでシュートシティまで戻っている間にプラズマフリゲートは落下するだろう。自らも船頭に手を突き出し、持ち上げようとするジュリたち三人。しかしそれでもビクともせず、落下は止まらない。

 

 

「皆さん!」

 

 

 するとそこに、クワガノンを背中に引っ付けたダフネがやってくる。明らかに疲労困憊状態だが、それでもメガシンカした蟲ポケモン達に指示をするべく来たらしい。

 

 

「今ヨハルが操縦室に行って船首を持ち上げようとしています!私達も、押し上げねば!ヘラクロス、インファイト!ハッサム、バレットパンチ!カイロス、ばかぢから!」

 

 

 わざを指示して押し上げるだけではなく、メガヘラクロスは拳の猛乱打、メガハッサムは素早い拳を打ち付け、メガカイロスはそのまま渾身の力で踏ん張り、少しでも船首を上げようと試みるダフネに、他の面々も続く。

 

 

「そうか、技で押し上げればいいんだ!ゴルーグ、ばくれつパンチ!」

 

「ムゲンダイナ!下に向けてダイマックスほう!」

 

「レシラムもだ!下に向けてあおいほのお!」

 

 

 ジュリはゴルーグに強烈な拳を打ち付けさせて、ユウリとトウヤはムゲンダイナとレシラムに下に向けて攻撃を放った反動で持ち上げようとする。さらにどこからか飛んできたマッシブーンも加わる。少しだけ、船首が上にずれた。彼女たちだけでなく、ヨハルとシュバルツに説得された操縦室のプラズマ団したっぱも頑張っている成果である。しかし落下は止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 ちょうどその頃、玉座の間にデンチュラの糸で簀巻きにしたグレイを張り付け、ゲノセクトに乗ってシュートシティに向かうラウラ。単体で空を飛べるマッシブーンをダフネたちの援助に向かわせながら、本人がプラズマフリゲートの落下するであろうシュートシティに向かったのは、一つ策を思いついたからだ。

 

 

「デンチュラ、お前の力にかかってる!俺の相棒ならできるよな!いとをはくだ!」

 

 

 

 ゲノセクトの下面に引っ付いたデンチュラが頷くと、ゲノセクトに指示してシュートスタジアムに向かったラウラは、その外壁にデンチュラの伸ばした糸を張り付けた。幾重にも、頑丈にだ。

 

 

「次だ、バトルタワー!」

 

 

 その次に向かったのはバトルタワー。同じように幾重に頑丈に糸を繋げ、さらに次々とシュートシティの各地に移動していくラウラ。そして出来上がったのは、シュートシティ全体に広がる巨大な蜘蛛の巣。この巨大なネットで受け止める算段だったがしかし、見上げて気付く。

 

 

「落ちてくるスピード的に耐え切れないか……?クソッ!何か手は…そうだ、あの人なら!」

 

 

 スマホロトムを取り出し、連絡を入れるラウラ。その先は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ラウラ!無事だったか!」

 

≪「今はそんなことよりも上空の船だ、ダンデさん!巨大な蜘蛛の巣を張ってはみたがあの速度じゃ耐え切れない!このままじゃとんでもない被害になるぞ!」≫

 

 

 ラウラが電話をかけたのは、シュートスタジアムにいるダンデだった。無事だったことを喜ぶダンデに、現状の危険を伝えるラウラ。

 

 

「なに!?…いや、どうすればいい?君が俺に電話をかけてきたということは策があるんだろう?」

 

≪「さすがダンデさんだ、話が分かる!ダイジェットだ!二体分のダイジェットの風圧で船を押し上げれば!」≫

 

「なるほどな!よしわかった、こちらは任せてくれ!サタリア!君も手伝ってくれ!」

 

「はえ!?わ、私ですか!?」

 

 

 ダンデが話しかけたのは、近くで避難誘導していたジムチャレンジャーの一人であるサタリア。サタリアは遠い存在だと思っていたポケモンリーグ委員長に話しかけられたことであたふたすることになった。

 

 

「たしか、エモンガがいただろう!俺のリザードンと一緒にダイジェットをさせるんだ!」

 

「な、なんでリーグ委員長が私なんかの手持ちを…?」

 

「ガラルを盛り上げてくれるチャレンジャーたちだ!君達の情報は逐一チェックしているとも!」

 

「わ、私で頑張れるなら…やります!この場にいないモコウさんの分まで、みんなを守る!」

 

「いいガッツだ!行くぜ!タワーオーナータイムだ!」

 

 

 スタジアムコートの選手の立ち位置にそれぞれ移動して、リザードンとエモンガを繰り出す。何が始まるのかと、パニックが収まって見守る観客たち。

 

 

「リザードン!キョダイマックスタイムだ!」

 

「エモンガ、初めてのダイマックス!行くよ!」

 

 

 ダイマックスバンドからエネルギーを溢れださせ、キョダイマックスを果たしたリザードンと、ダイマックスしたエモンガが向かい合い、頷いて。共に、落ちてくるプラズマフリゲートに向き直る。

 

 

「「ダイジェット!」」

 

 

 そして地上からの暴風で、プラズマフリゲートの落下速度を落とさんとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、プラズマフリゲートを持ち上げんとするジュリたちは、規格外な風に煽られて余裕ができたことで、地上の有り様を見ることとなった。

 

 

「これは…!?」

 

「ダンデさん!ダイジェットで押し上げてるんだ!」

 

「それに、あの蜘蛛の巣はラウラかな!?あそこに落とせば…!」

 

「これなら行けるぞ…!」

 

 

 4人がかり、8ポケモンがかりで力の限り押し上げる。蟲だろうがゴーストだろうが伝説だろうがウルトラビーストだろうが人間だろうが関係ない。災害を止めるべく、全員が奮闘を見せた。

 

 

「悪い、遅れた!」

 

 

 そこに、遅れてやってきたラウラとゲノセクトも加わった。主人の登場でマッシブーンもパワーアップ。風のあおりも受けて、緩やかに落ちて行き、そして。無事、蜘蛛の巣に引っ掛かることで落下を止めることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…馬鹿な、止まっただと…?これが、ポケモンとの信頼の力だと言うのか…ありえん」

 

 

 それから、誰もいなくなった玉座の間に1人簀巻き状態で放置されたグレイの元に、1人の少年がやってくる。トウヤだった。

 

 

「ありえなくないさ。これが、人間とポケモンの信頼や絆が生む力だ」

 

「…俺を笑いに来たのか?トウヤ。だが俺は貴様に勝利したぞ!もう、弱いなどという寝言は言わせん!そうだ、俺は、お前より強くなった!あの時の様な無様な戦いはもう二度と…!」

 

「…無様じゃなかったよ。あの時の俺は、楽しかった」

 

「…なに?」

 

 

 衝撃の告白に、思わず固まるグレイ。トウヤは続ける。

 

 

「あの時、俺はお前とのバトルが楽しかった。ジムリーダーやチェレンやN以外にも、こんな戦い方をする奴がいるだなんて、なんて感心した記憶がある。だけどな、ギリギリ一匹も落とされずに勝って、辛勝して。一つ引っかかった。だからこう言ったんだ」

 

「弱い、だろ?覚えているぞ」

 

「いいや、それは勘違いだ。覚えているよ。こう言った。【最後の、ゼブライカを信じてワイルドボルトを撃つべきだったと思う。手持ちへの信頼が弱いな(・・・)…もう少し、ポケモンを信じるべきじゃないか?】」

 

「…なん、だって?」

 

 信じられない様に、縋るように見つめるグレイに、トウヤは首を振って。

 

 

「お前の戦い方は論理的で、ポケモンへの信頼を感じなかった。だけど、俺はお前を弱いだなんて、一度も思わなかったよ」

 

「そんな……俺は、なんのために……はは、ははは…憧れた男にとっくに認められていただなんて…なんて、皮肉だ……」

 

 

 自分が強いと信じて疑わなかったからこそ、憧れた男から弱いなんて言葉をかけられるなんて思わなくて歪むくらいひねくれていた男の凶行は、こうして幕を閉じるのだった。




憧れとは理解よりもっとも遠い感情である。

・ダフネ
辛い体に鞭打って指示するために駆けつけた主人公。ラウラを真似して背中にクワガノンを装着するスタイルを得た。

・ラウラ
直接は止められないと判断して巨大蜘蛛の巣を凍り付いたシュートシティに形成した元主人公。ダンデにも指示するなど、今回一番の立役者。

・ユウリ
ムゲンダイナと共に奮闘したチャンピオン。やっぱりラウラは頼りになるなあ。

・ジュリ
ゴルーグと共に奮闘した転移者。氷漬けの後に天高い空で風に煽られたから寒くて死にそう。

・ヨハル
影の立役者な二重人格。治療して目覚めたシュバルツと共に、ヴァイスを背負いながら操縦席に向かってプラズマ団したっぱを説得した。

・トウヤ
BWの主人公。ある意味全ての元凶。グレイを認めていた上でアドバイスのつもりで言った言葉が、グレイと言う悪を生み出す結果となった。

・グレイ
憧れた男に心無い言葉を言われたと思い込んで壊れてしまった、まさに悪堕ちした主人公。元々はラウラと似た戦闘スタイルを取っていた。
モデルは仮面ライダージオウのスウォルツ(全てを利用して王になろうとした男)、ティード(見切り発車・小物)、フィーニス(最強厨)、常盤SOUGO(王になることで世界をひっくり返そうとした)、加古川飛流(勘違いで主人公を恨み堕ちるところまで堕ちた男)と、ジオウと敵対したラスボス格達です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある掲示板11

どうも、放仮ごです。何故かポケモン蟲が日刊の17位になってました。本当になんで…?

今回は久々の掲示板です。楽しんでいただけると幸いです。


プラズマ団ガラルテロ事件について語るスレ

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

ジムチャレンジャーってなんで大事件を解決する人間が多いんだろうね…

 

65:名無しのトレーナー

幹部二人を倒したのがジムチャレンジャーのダフネとヨハルって発表された時はたまげたぞ

 

66:名無しのトレーナー

ヨハル、ちゃんとリベンジできたんやなって…

 

67:名無しのトレーナー

それは本当によかった

 

68:名無しのトレーナー

なんかヴァイスは重症で病院に運び込まれたらしいけど自分のポケモンに反逆されただけらしいからよし!

 

69:名無しのトレーナー

ヨハルを襲わせようとしたら自分が襲われたって自業自得すぎて草

 

70:名無しのトレーナー

シュバルツと違ってガチの極悪人だったらしいからな…

 

71:名無しのトレーナー

シュバルツの方は自首したらしいな

 

72:名無しのトレーナー

白いプラズマ団の思想をそのまま体現した男って聞いたぞ

 

73:名無しのトレーナー

心の底からポケモンのことを考えて救済しようとしていたとか

 

74:名無しのトレーナー

俺達にとっては迷惑だけど悪い奴じゃなかったと

 

75:名無しのトレーナー

グレイの年齢聞いたか?21だとよ

 

76:名無しのトレーナー

その若さであんな大事件起こしたのか…

 

77:名無しのトレーナー

シュートシティを凍らせて、レジギガスで破壊しようとして、相当やばいことしてるぞ

 

78:名無しのトレーナー

その目的が王になる事ってのがプラズマ団のボスらしいな

 

79:名無しのトレーナー

王になるとしてももう少しやり方あるでしょ…

 

80:名無しのトレーナー

力を示して誰も逆らえないようにするつもりだったらしいな

 

81:名無しのトレーナー

正直、氷漬けにされたり破壊神に襲われたくないから俺だったら逆らわない

 

82:名無しのトレーナー

わかる

 

83:名無しのトレーナー

なんなら世界中の人間がそうだぞ

 

84:名無しのトレーナー

割と世界の危機だったのか…

 

85:名無しのトレーナー

ガラルの誰も知らない場所に眠っていたレジギガスを起こしたり凄いんだよなあ

 

86:名無しのトレーナー

民間伝承にも残ってなくて、二年前にムツキとルミが見つけたのをひそかに研究していたらしいけど

 

87:名無しのトレーナー

ソニア博士の発表だとレジアイス・レジスチル・レジロック・レジドラゴ・レジエレキが揃って近づけば特定の巣穴に現れる、とかいう超高難易度な条件なんだよなあ

 

88:名無しのトレーナー

え、マジでグレイどうやって知ったの?

 

89:名無しのトレーナー

知らん

 

90:名無しのトレーナー

自力で調べて…かなあ?

 

91:名無しのトレーナー

プラズマ団の脅威の科学力でも知らないもんはどうしようもないだろ

 

92:名無しのトレーナー

国際警察にとっ捕まったらしいからこれ以上情報は出なそうだな

 

93:名無しのトレーナー

おい、公開されてるグレイの情報見てきたけどヤバいぞ

 

94:名無しのトレーナー

国際警察は必要以上の情報は出さないからなあ

 

95:名無しのトレーナー

なにがやばいん?

 

96:名無しのトレーナー

手持ちの半分以上が伝説・幻や

 

97:名無しのトレーナー

ファッ!?

 

98:名無しのトレーナー

え、なにそれぇ

 

99:名無しのトレーナー

ユウリかミヅキかな?

 

100:名無しのトレーナー

キュレム、ゾロアーク、ゲノセクト、ケルディオ、あとメタグロスとゼブライカ

 

101:名無しのトレーナー

ゼブライカの場違い感

 

102:名無しのトレーナー

メタグロスはダイゴが使ってたからわかるけど

 

103:名無しのトレーナー

まあ名前的にグレイで白黒だからぴったりだけどな

 

104:名無しのトレーナー

相棒だったのかもな

 

105:名無しのトレーナー

キュレムって今回の事件で初めて知ったんだけど一年前のイッシュ氷結事件でも使われたらしいな

 

106:名無しのトレーナー

今回の船もあの事件の時と同じ船らしいな

 

107:名無しのトレーナー

プラズマ団やべえ

 

108:名無しのトレーナー

グレイやべえ

 

109:名無しのトレーナー

少なくともあのジュリを完膚なきまでに倒し、トウヤのレシラムに勝って、ユウリをあと一歩まで追い詰めて、ダフネとシュバルツさえ退けて、ラウラが参戦してようやく勝ったんだろ?

 

110:名無しのトレーナー

映像だけ全国生放送されてたから間違いない。シュートスタジアムだけ映ってなかったらしいけど

 

111:名無しのトレーナー

多分自分の力を全国に知らしめるためだったんだろうけど、なんで音声ないんやろな

 

112:名無しのトレーナー

キュレムが姿を変えた時の絶望よ

 

113:名無しのトレーナー

それな

 

114:名無しのトレーナー

氷に炎に雷の力を同時に操る竜とか、よく勝てたな

 

115:名無しのトレーナー

ラウラが渡り合っている間にダフネが不意打ちしたから勝てたんやっけ

 

116:名無しのトレーナー

あれだけのトレーナーが力を合わせてようやく勝てたってすげえな

 

117:名無しのトレーナー

ジュリなんか氷漬けにされてたもんな

 

118:名無しのトレーナー

今入院中らしいぞ。生きててよかった

 

119:名無しのトレーナー

その立役者のラウラも途中まで洗脳されてたのか知らんけど敵だったってのがねえ

 

120:名無しのトレーナー

ユウリがえぐかった

 

121:名無しのトレーナー

あれがお茶の間に流れたってマジ?

 

122:名無しのトレーナー

まじまじ。吐いた人もいたらしい

 

123:名無しのトレーナー

その…下品ですが…拙僧、不覚にも興奮してしまいましてね…

 

124:名無しのトレーナー

ビクンビクン

 

125:名無しのトレーナー

それはわかる

 

126:名無しのトレーナー

お前ら…wいや、俺もだけど

 

127:名無しのトレーナー

あの気丈なラウラが触手で脳をクチュクチュ…興奮しない奴は男じゃねえ

 

128:名無しのトレーナー

興奮した女もいるんですよ!

 

129:名無しのトレーナー

マジで消されるからそろそろやめような

 

130:名無しのトレーナー

じゃあこんな話はどうや?シュートスタジアムのテレビカメラが捉えていた映像よ

 

131:名無しのトレーナー

各地方のチャンピオン、元チャンピオン、そして伝説の男がそろい踏みだな!

 

132:名無しのトレーナー

ジムチャレンジャーにあのトウヤとヒカリがいたなんて気付いた奴おりゅ?

 

133:名無しのトレーナー

何でも偽名使って変装してたらしいぞ

 

134:名無しのトレーナー

お忍び旅行のつもりだったんかな

 

135:名無しのトレーナー

ヒカリは男装していてコウキ、トウヤはダビ、だっけ

 

136:名無しのトレーナー

いやほんと見た目も別人だからね?わかるわけねえ

 

137:名無しのトレーナー

しかも堅実に勝利してるもんだからあまり目立ってなかったって言う

 

138:名無しのトレーナー

まさか元チャンピオン2人とか誰が思うのか

 

139:名無しのトレーナー

その二人はともかく、他のチャンピオンとかが観客としていたの草なんだが

 

140:名無しのトレーナー

それはそう

 

141:名無しのトレーナー

普通に観光しに来てたのと、ダンデに依頼されてきたのと二つに分かれてるらしい

 

142:名無しのトレーナー

インタビューによると蟲使いと戦いに来たとか

 

143:名無しのトレーナー

ラウラ目当ては草

 

144:名無しのトレーナー

まあ全国でもあまり見ない、蟲タイプだけでチャンピオンに匹敵する実力者だからなあ

 

145:名無しのトレーナー

プラズマ団でも洗脳されてるのに幹部扱いされてたらしいぞ

 

146:プラズマ団広報部

幹部扱いではない!幹部だ!

 

147:名無しのトレーナー

お、また出た

 

148:名無しのトレーナー

お前逃げ延びてたんかい

 

149:名無しのトレーナー

何故ここにいるし

 

150:名無しのトレーナー

自首してどうぞ

 

151:名無しのトレーナー

ねえどんな気持ち?信じてた組織のボスが捕まってどんな気持ち?

 

152:名無しのトレーナー

NDK?NDK?

 

153:名無しのトレーナー

したっぱほとんど捕まってるのにまだいるのはさては作戦に参加してなかったな?w

 

154:プラズマ団広報部

う、うるさい!プラズマ団は不滅だ!例えグレイ様が捕まろうとも、プラズマ団の思想はどこかでまだ息づいている!

 

155:名無しのトレーナー

自分に息づいているの草

 

156:名無しのトレーナー

諦めてるじゃないですかーw

 

157:名無しのトレーナー

そりゃあれだけ強いボスがやられたら誰だって心折れる

 

158:名無しのトレーナー

ココロオレル

 

159:名無しのトレーナー

あれ?プラズマ団の本拠地がつぶれたってことは普通にスマホで書きこんでるのか?

 

160:名無しのトレーナー

反応なくなったな

 

161:名無しのトレーナー

おーい

 

162:名無しのトレーナー

プラズマ団ー、見てるー?

 

163:名無しのトレーナー

あっ(察し)

 

164:名無しのトレーナー

通報した(ガチで)

 

165:名無しのトレーナー

警察仕事はええ

 

166:名無しのトレーナー

そりゃ相手は国際警察だもんな、逃げれるわけがねえ

 

167:名無しのトレーナー

ご愁傷様

 

168:名無しのトレーナー

南無三!

 

169:名無しのトレーナー

なんで書き込んだんだろ…警察が見てないとでも思ったのか?

 

170:国際警察のR

情報把握も国際警察の務めです

 

171:名無しのトレーナー

あ、マジでいたらしい

 

172:名無しのトレーナー

 

173:名無しのトレーナー

ガチガチの公務員がこんなスレ見てると思うと草

 

174:名無しのチャンピオン

私もいるよ

 

175:名無しのトレーナー

さすがに釣りやろwww

 

176:名無しのトレーナー

チャンピオンまでいて草

 

177:名無しのトレーナー

いつもの

 

178:名無しのトレーナー

もう慣れた

 

179:名無しのトレーナー

ラウラがらみの掲示板で必ずいるのほんと草

 

180:名無しのチャンピオン

ねえねえ、みんな。ラウラの恥ずかしい写真手に入れたんだけど見たい?

 

181:名無しのトレーナー

なにそれ見たい

 

182:名無しのトレーナー

貴方が奥さんアヘらせてる画像出回ってるんですがそれはいいんですか

 

183:名無しのトレーナー

wktk

 

184:名無しのトレーナー

あの独占欲強いチャンピオンが見せたいってどういうことだ?

 

185:名無しのチャンピオン

出回ってる写真については……あの時は必死で見ていられる余裕なかったから助かるというか…

 

186:名無しのトレーナー

ええ…

 

187:名無しのトレーナー

それでいいんか(ドン引き)

 

188:名無しのトレーナー

ユウリがラウラ狂愛しているのは周知の事実やろ

 

189:名無しのトレーナー

そんなことよりラウラの恥ずかしい写真はよ

 

190:名無しのチャンピオン

失礼な!純愛です!それと、はい。事件後に自分で着てポーズを取ってる図

【画像ファイル】

 

191:名無しのトレーナー

三枚あるの草

 

192:名無しのトレーナー

自信満々に正面から鏡を見てる図、背中ごしに鏡を眺める図、撮っているのに気付いて赤面して止めようとしている図

 

193:名無しのトレーナー

可愛い

 

194:名無しのトレーナー

可愛い

 

195:名無しのトレーナー

可愛い

 

196:名無しのチャンピオン

みんなラウラの強さとかかっこよさとか褒めてるけど、私のラウラは可愛いと布教したいのです!

 

197:名無しのトレーナー

結局嫁自慢は草

 

198:名無しのトレーナー

はいはいお幸せに

 

199:名無しのトレーナー

布教は草

 

200:名無しのトレーナー

この服のセンスだけはいいなグレイ

 

 

 

・・・・・・・・・




実は生放送されていたグレイ戦。

・コウキ、ダビ
ヒカリは単なる男装、トウヤは変装。コウキはそのまま、ダビはとある作品の影響でトウヤから連想。

・プラズマ団広報部
実はビビって作戦に参加してなかったしたっぱ。国際警察にIDから現在地を特定されて御用に。

・国際警察のR
ラウラにゲノセクトを渡したあの人。息抜きだったらしい。

・名無しのチャンピオン
ユウリ本人。お洒落に目覚めたラウラの可愛さを布教しているほか、ネットにばらまかれた例の絵面の編集映像とか画像とかで助かってるらしい。

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VSキャタピー

どうも、放仮ごです。突然となりますが、ポケ蟲の毎日更新は今回で終わりにしたいと思います。グレイを倒して熱意が消えたのと、グレイを倒した後のことは何も考えてなかったのが原因です。ご容赦ください。173日、おつきあいいただきありがとうございました。これからもポケモン蟲をどうぞよろしくお願いします。

今回はガラルテロ事件その後の話。


「シュバルツとヴァイスは警察病院へ移送、グレイとダークトリニティは拘束後に逮捕、したっぱも同上です。空中に巨大蜘蛛の巣で縫い止められたプラズマフリゲートから全員回収するのは骨が折れました」

 

「お疲れ様だ、キリエさん。国際警察のリラさんとハンサムさんが来たら引き渡してくれ」

 

 

 あれから三日。そう会話するのは、ガラルポケモンリーグ委員長ダンデとその秘書であるキリエ。場所はバトルタワーの会議室。キリエはこの三日、空中のプラズマフリゲートへの足場作りという作業を行っていたため少々泥にまみれており、ダンデはハンカチを手渡す。そこにはNとその部下、女神たちの姿もあった。

 

 

「お疲れ様、ダンデ。君が居なければ今頃大惨事になっていただろう」

 

「いいや。俺はちょっと援護をしただけだ。頑張ったのはラウラやユウリ、ダフネたち勇気あるチャレンジャーたちだ。まさかチャレンジャーに君の旧知の仲がいるとは思わなかったがね」

 

「ダビと名乗っていたトウヤのことだね。僕もシュートスタジアムのモニターを見るまで気付かなかったよ。僕でも気付かない完璧な変装だった。大方、正体を隠して一からトレーナーとして戦いたかったんだろうね。チャンピオンになることを選ばず、挑戦者で居続ける…彼はそう言う男だ。だから手持ちのともだちの声も、美しい」

 

 

 そう語るNの顔は実に楽しそうな笑みで、ダンデも笑みが溢れる。

 

 

「君のところのプラズマ団…白いプラズマ団の援助は実に助かるよ。何分、氷漬けなんていう災害は初めてでね」

 

「ある意味僕らの身内の仕業なんだ。これぐらい、なんてことないさ。一年前もイッシュのソウリュウでやった救助を別の地方でやることになるとは思わなかったけどね」

 

 

 現在、氷漬けにされたシュートシティは未だに氷が全て溶けてない物の、N派の白いプラズマ団と言う、以前もイッシュのソウリュウシティの氷結災害が起きた際に救助活動した者達の協力のおかげで住民のほとんどが救助されていた。

 

 

「ところで、トウヤから連絡があったのだけど、いつごろセミファイナルトーナメントは再開されるんだい?」

 

「うーん、メジャージムリーダー7人とラウラの代理だったヤローがレジギガスとの戦いで重傷を負い、ラウラも脳と体の検査で、チャレンジャーの一人であるジュリも凍傷やらで入院中。凍り付いたシュートシティの復興、プラズマフリゲートの撤去も合わせると……軽く見積もっても一ヶ月後だろうか」

 

「それに加えてレジギガスに破壊されたワイルドエリアの修繕作業もありますね。こちらはトーナメントにはあまり影響しませんが放っておくわけにもいかず。ゲンシカイオーガの出現で一部が水没していたりするので」

 

「そんなもろもろの復興作業で忙しいから、トーナメントの開催は当分できないだろう」

 

「わかった。そう伝えておくよ。…さて、僕も彼らを手伝おうかな」

 

「…ああ、動けない俺の分まで手伝ってくれている彼らに感謝を伝えてくれないか」

 

「了解したよ、ダンデ。彼等はお人好しだから気にしないと思うけどね」

 

 

 Nの言う通り、復興作業をしているのは白いプラズマ団やリーグスタッフ、ポケモンレンジャーだけではない。レッド、ヒビキ、ユウキ、ヒカリ、トウヤ、メイ、セレナ、ミヅキ、そしてユウリと言った、あの事件で奮闘した各地のチャンピオン・元チャンピオンも率先して復興作業を手伝っているのだ。リーグ委員長という立場上それに参加できないダンデは歯噛みしている訳である。

 

 

「…なあキリエさん、やはり俺も…」

 

「ダメです。オリーヴさんも今頑張っているのに、委員長が仕事しないでどうするんですか」

 

「だよなあ…」

 

 

 Nが去ったその場で、キリエに釘を刺されたダンデは肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ナックルシティのかつてムツキが入院していた例の病院の一室で。入院しているジュリのお見舞いにきたダフネとラウラの姿があった。どちらも普段着であり、ラウラの頭の麦わら帽子の上にはキャタピーがいる。

 

 

「ジュリさん、本当に大丈夫なんです?」

 

「大丈夫大丈夫、右半身が痺れて右目が開けれないぐらいだけだよ」

 

「それ大丈夫って言わないぞ」

 

 

 氷結から解放されたばかりの身体で、高空で暴風に吹かれながらゴルーグと共に無茶したため症状が悪化しているというのに空元気で応えるジュリに呆れるダフネとラウラ。

 

 

「なんで一人でグレイに挑むなんて無茶をしたんですか!死んでいたかもしれないんですよ!私、ジュリさんが本当に死んだかと思って……」

 

「洗脳から解かれて目を覚ました時にお前の氷像を見た時の俺の気持ち、わかるか?」

 

「それはごめんなさい…だけど、グレイとは同類として、どうしても止めたかったの…」

 

「同類…?」

 

 

 ジュリの言葉に首をかしげるダフネだが、ラウラは合点が言ったようで溜め息を吐く。

 

 

「俺も似たようなことを思ってターフタウンで一人で挑んで氷漬けにされたから人の事は言えないけどな、実力差ぐらいわかれ。あいつ、普通にチャンピオンのそれと同等の強さだからな?」

 

「ごめんなさい……あれ、なんでお兄ちゃん氷漬けにされたのに元気なの?」

 

「このグレイが発明したとかいう温熱サポーターのおかげだ」

 

「もしかして、ポケスペのジュピターとサキのアレかな?」

 

「多分な。これとあの服だけは感謝してる」

 

「お兄ちゃんが女装に目覚めるなんて~…」

 

「失礼な、今は女装じゃねえ」

 

「あのー…」

 

 

 兄妹水入らずで会話していると、おずおずと合間に入るダフネ。その顔は疑問符だらけだった。

 

 

「同類とか、ポケスペ?とか、今はとか、どういう意味なんです…?お二人とグレイは関係者なのでしょうか…?」

 

「…あー。気にするな、と言っても気になるよなあ」

 

「だけど説明すると長いんだ。聞かなかったことにしてくれないかな?」

 

「はあ…まあ、いいですけど…」

 

 

 ラウラとジュリの困った笑みに、諦めるしかないダフネ。こればかりは言えないな、と転生者・転移者の兄妹はアイコンタクトで通じ合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ俺は他の病室に見舞いに行くから」

 

 

 そう言ってジュリの病室を後にしたラウラが訪れたのは、二人部屋の病室。ラウラは深呼吸してからノックして返事が返ってくると中に入る。

 

 

「…よう。二週間ぶり…ぐらいか?」

 

「「ラウラ!」」

 

 

 その部屋にいたのは、ラウラの親友。ムツキとモコウだった。二人はベッドの上から訪問者の顔を見て嬉しそうに声を上げる。

 

 

「悪い、グレイに負けてプラズマ団幹部なんてやってた」

 

「いや、いや!お前が無事でよかったぞ!」

 

「完全に無事って訳じゃないがな」

 

「あなたがいないとつまらないですよ。二度と私達の前からいなくならないでください」

 

「ムツキが素直に俺を歓迎するとはな…」

 

「私をなんだと思ってるんですか?」

 

「「罵倒癖の悪魔」」

 

「なんだとー!」

 

 

 ラウラとモコウ二人揃って言われて憤慨するムツキ。ああ、かつての空気が戻ってきた、とラウラは破顔する。そして何かを思い出したのか鞄からクイックボールを取りだしてモコウに突き出す。

 

 

「そうだ、モコウ。ダンデさんに頼まれてこいつを持って来た」

 

「それは、もしかして…」

 

「ああ。プラズマ団の洗脳からようやく解放されたお前の守護神だ」

 

「レジエレキ…!お前、よく帰ってきた!」

 

 

 受け取るなりボールから出して、小柄ながらも部屋中を縦横無尽に駆け巡り飛びついてくるレジエレキに感涙するモコウと、微笑ましそうに見つめるラウラとムツキ。しかしその騒がしい音を聞きつけたのかリヅキがやって来て。

 

 

「病室では静かにしなさい!」

 

「「「はい…」」」




トーナメント編は戦闘シーンを思いつくまでお待ちください……さすがにネタが尽きた。

・ダフネ
一応まだ主人公。ラウラとジュリの違和感に気付くも、知らないふりをすることにした。

・ラウラ
温熱サポーターを愛用している前主人公。心配をかけたため会わないといけない人間がいっぱい。

・ダンデ
後処理に追い回されているリーグ委員長。Nとは友人の関係に。レッドのお礼をどうするか考え中。

・キリエ
プラズマフリゲートからプラズマ団を捕まえる際にお得意のじしんで通路を作り活躍。ダンデのサポートに徹している。

・N
白いプラズマ団を率いて復興に協力している。

・原作主人公ズ
レッド、ヒビキ、ユウキ、ヒカリ、トウヤ、メイ、セレナ、ミヅキ、ユウリ。復興を手伝っている。

・ジュリ
キュレムの氷結をもろに受けたほか無茶したため入院中。ヨハルはダフネたちが来る前にお見舞いに来た後どこかに行ったらしい。

・モコウ
親友のラウラ、レジエレキと再会して涙腺がヤバい。

・ムツキ
ラウラを心配しすぎて罵倒もでてこなかった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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第二部:2年後セミファイナルトーナメント
VSコロトック


お久しぶりです、放仮ごです。2ヶ月ぶりとなります。ようやっとネタが纏まったので帰ってまいりました。レジェンズやブリシャイの話題にやる気が増したのは言うまでもない。

今回はセミファイナルトーナメント開始。楽しんでいただけると幸いです。



※2022/09/25:三次創作関連で執筆が止まってましたが修正が完了したので近いうちに再開したいと思います。


「あんなこともありましたが始まりました!ガラルリーグセミファイナルトーナメント一回戦!」

 

 

 観客席で見守るダフネとヨハルに手を振り、私は眼前の相手に向き直る。あの事件から二週間と間を開けたが、無事開催されることになったセミファイナルトーナメント。お相手は、レジェンドの一人。正直勝てるか分からない。対戦表はこうだ。

 

 

第一回戦:ジュリVSコウキ(ヒカリ)

 

第二回戦:ダフネVSサタリア

 

第三回戦:ヨハルVSダビ(トウヤ)(勝った方はそのまま決勝)

 

 

 上手く勝ち進めば次にダフネ、決勝戦でヨハルと当たる。それまでは負けられないな。しかし相手は元シンオウチャンピオンのヒカリさんだ。強敵なのは間違いない。

 

 

「第一回戦!ルールは伝説・幻禁止の5VS5のシングルバトル!先日の事件でも活躍したプラズマ団も震えるゴースト使いジュリ選手VSシンオウ地方の元チャンピオンという異例の経歴を持つチャレンジャー!コウキ改めヒカリ選手の対決です!」

 

「お願い、ブルンゲル!」

 

「いくよ、コロトック」

 

 

 私は様子見のブルンゲル。相手はガラルにはいない蟲ポケモン、コロトックだ。やっぱりシンオウのポケモンで来たか。

 

 

「おおっと!ガラルでは見られないコロトックだあ!どんなバトルを見せてくれるのか!?」

 

「ブルンゲル、シャドーボール!」

 

「コロトック、シザークロスで防いでうたう」

 

「っ!?」

 

 

 やられた。こちらは様子見だったのにいきなり容赦なく必殺で来た。蟲ポケモンでもコロトックだけの特徴とも言えるバイオリンの弓のような両腕を交差して振るってシャドーボールを切り裂いたかと思えば両腕をバイオリンに見立てて優雅な音楽を弾き鳴らして音色の様な鳴き声で歌い、ブルンゲルを眠らせるコロトック。お兄ちゃんが蟲ポケモン好きな理由、分かる気がするなあ!えげつない!

 

 

「ブルンゲル、起きて!」

 

「優雅に行こうか、コロトック。つじぎり!」

 

 

 呼びかけてみるもぐっすり眠るブルンゲルに、優雅にステップを踏んで高速で移動してすれ違い様に二回、十字状に斬り裂くコロトック。こうかはばつぐんだ。私の計算が正しければあと一回喰らえば戦闘不能になるだろう。うたう、シザークロス、つじぎり…あと一個の技をどうにかして引き出したい。起きさえすれば、あの厄介なコロトックを道連れできるのに…!

 

 

「お願いだから起きて、ブルンゲル!」

 

「一回だけつじぎり!」

 

「みちづれ!」

 

 

 目を覚ますブルンゲルだったがしかし、妙な指示を受けたコロトックが、本来二回斬り裂くはずの一撃を一回だけにとどめたことで戦闘不能にならず失敗に終わる。何を……体力を残す利点があるとでも…まさか、最後の技の正体は…!

 

 

「させるなブルンゲル、みずのはどう!」

 

「貫け、とどめばり」

 

 

 なんとかギリギリ形成した水の塊を貫く槍の様な一撃が、ブルンゲルの眉間に突き刺さり戦闘不能にした。とどめばり、その一撃で相手を倒すと自分のこうげきのランクが3段階上げるむしタイプの技だ。してやられた。もう、コロトックは止まらない。…切札を切って速攻で倒すしかない。

 

 

「行くよゲンガー!夢幻闇夜(むげんあんや)(いざな)え!メガシンカ!」

 

 

 ゲンガーを出すと同時にメガシンカ。やる気満々のメガゲンガーと、不敵に構えるコロトックが睨み合う。もう好きにはさせない!

 

 

「うたう」

 

「あやしいひかり!」

 

 

 歌わせない。コロトックが歌う動作に入る前に紫色の光で混乱させるメガゲンガー。決まった。細かい動作が必要なうたうはもう、行使できない。

 

 

「シャドーボール!」

 

「シザークロス!」

 

 

 シャドーボールを纏ったパンチを、交差した腕で防御するコロトック。しかし所詮は蟲、力不足で押し切られて押し倒し、口を開くメガゲンガー。

 

 

「ヘドロばくだん」

 

 

 そして口から吐き出した毒の塊でコロトックを戦闘不能に追い込んだ。これで1-1。なんとか難敵を倒した。メガゲンガーをボールに戻して代わりにミミッキュを繰り出す。何が来てもこれでなんとかなるはずだ。

 

 

「暴れていいよ、ラムパルド!」

 

 

 繰り出されたのは化石ポケモン、ズガイドスの進化系であるラムパルド。これまたガラルでは見ないポケモンだ。特性は、かたやぶり。ミミッキュのばけのかわが通じない。

 

 

「っ、交代!ダダリン!」

 

 

 咄嗟に交換する。ラムパルドはいわタイプだ。ブルンゲルがやられたのが痛い。だけどダダリンはくさタイプの技とアンカーショットがある。…かたやぶりってはがねつかいも無効化するんだっけ?どうだっけ?まあいいや、効果抜群なのは変わらないし!

 

 

「アンカーショット!」

 

「しねんのずつきで弾いて!」

 

 

 放たれた錨の一撃を、硬い頭を振るって弾き飛ばすラムパルド。弾かれた錨が逆にダダリンに激突し、ふらついたところにそのまま突進してきた。

 

 

「ダメおし!」

 

「ギガドレイン!」

 

 

 こうかばつぐんのあくタイプの技。しかも、直前にダメージを受けていると威力が倍になるという恐ろしい技だ。弾かれたアンカーショットを自分で受けてしまったダダリンには効果的だ。しょうがない、ここは交換して…いや、待てよ?ラムパルドといえば、昔ゲームで自分で育てた時によく使ってた技が…ボールを出すそぶりをするだけにとどめると、やはり仕掛けてきた。

 

 

「おいうち!」

 

「ギガドレイン!」

 

「っ!?」

 

 

 交代すると思ったのかおいうちを放って来たが、体力を奪い取ることで耐える。だよね、対人戦に置いて便利だもんねおいうち。チャンピオンになった人が覚えさせてないわけがない。そして多分、最後の技はもろはのずつき。ならばこのまま押し込む!

 

 

「パワーウィップ!」

 

「しねんのずつき!」

 

「拘束して!」

 

 

 振るった蔦の一撃が弾かれたのを利用してしならせ、グルグル巻きに拘束。しかしやはりというか力づくで振り回されてしまうが、ダダリンの真骨頂はここからだ。

 

 

「アンカーショット、ゴーストダイブ!」

 

 

 振り回され、地面に叩きつけられる勢いを利用して、錨を射出してさらにラムパルドを拘束しながら影に飛び込むダダリン。そのまま叩きつけられた勢いを利用してラムパルドを引き摺りこみ、影から飛び出して舵輪を回転させて大きく振り回す。

 

 

「面舵いっぱーい!」

 

「っ、ラムパルド!もろはのずつき!」

 

 

 グルングルン振り回されて何度も何度も地面に叩きつけられるラムパルドだったが、何度目かの激突の際に足を地面に踏みしめて渾身の力でダダリンを引き摺りおろし、とんでもない勢いで振り下ろされた頭突きが激突。ダダリンの舵輪が破壊されて戦闘不能、ラムパルドはそのまま残骸に倒れ伏す。

 

 

「だ、ダブルノックダウンだぁ~!」

 

 

 実況の声と共に歓声が上がるが、こちらとしては最悪だ。唯一知っているヒカリさんの手持ちであるエンペルトに対する貴重な打点がやられた。なんて判断力だ。これは厳しいぞ…。

 

 

「ムクホーク!」

 

「ゴルーグ!」

 

 

 待って。ノーマルタイプは普通にきついんじゃが。ゴーストタイプだからムクホークの主力であるインファイトが効果ないのはいいが、こちらの主力のゴースト技も通用しない。一応飛べるゴルーグを出したがメインウェポンのじだんだはひこうタイプ故に当たらないし、シャドーパンチも効果がない。あれ?詰んだ?

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 鋼と化した拳を振り下ろすゴルーグだがしかし、軽々と避けられて一撃を受ける。防御力があるからあっちもじり貧らしい。よし、このまま…!そう思った矢先だった。

 

 

「とんぼがえり」

 

「え?」

 

 

 鋭い蹴りを入れたかと思うと翻ってヒカリさんのボールに戻って行くムクホーク。代わりに繰り出されたのはエンペルト。あ、終わった………。




致命的に相性が悪い相手との戦い。

・ジュリ
いきなりレジェンドと戦うことになった転移者。怪我はほぼほぼ完治した。相手のポケモンのことが分かっているからこそ勝てるか勝てないかすぐわかってしまう。

・ヒカリ
コウキと名乗ってジムチャレンジに参加していたシンオウ地方の元チャンピオン。手持ちはエンペルト、コロトック、ムクホーク、ラムパルド、???。ポケモンの好みに合わせた戦い方をする。

・コロトック♀
とくせい:テクニシャン
わざ:うたう
   シザークロス
   つじぎり
   とどめばり
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。のんびりするのが好き。優雅に舞うように戦う。

・ラムパルド♂
とくせい:かたやぶり
わざ:もろはのずつき
   しねんのずつき
   おいうち
   ダメおし
もちもの:なし
備考:ゆうかんな性格。力自慢。パワーでごり押す戦法を取る。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマスキッパ

どうも、こちらではお久しぶりです。およそ二年ぶりらしいです。三次創作関連で出してたキャラが、あちらがいきなりいなくなったことで使えなくなったため修正に集中して、ポケモン蟲スカーレットなる続編を別に出してました。こちらもちゃんと終わらせる予定なのでもう少しおつきあいいただければ。

今回はジュリVSヒカリの続き。楽しんでいただけると幸いです。


 伝説・幻禁止の5VS5のシングルバトルでの、レジェンド(主人公)の一人ヒカリさんとの対決。コロトック、ラムパルドに続く三体目のムクホークとかいうゴルーグからしたら詰んでいるポケモンがとんぼがえりで引っ込んだかと思えば出てきたのはヒカリさんの相棒であろう四体目、エンペルト。相性は最悪だがノーマルタイプのムクホークよりはマシと考えるしかない。本当に詰んでたからね。

 

 

「エンペルト、ハイドロポンプ!」

 

「ばくれつパンチで迎え撃て!」

 

 

 エンペルトの口から放たれた極太の水流を、ばくれつパンチをぶつけることで相殺する。やばい、なにがやばいってばくれつパンチでギリギリ相殺できる威力を普通に当ててきた(・・・・・)のがやばい。ハイドロポンプは命中率八割の高威力わざだ。なんなら体感五割だ。それを的確に当ててくるなんてどんな練度だ。さすが主人公。

 

 

「上空に向けてラスターカノン」

 

「じだんだ!」

 

 

 何故か天高くラスターカノン……鋼色の光弾を乱射するエンペルトにじだんだを叩き込む。一応ばくれつパンチはハイドロポンプに当たったとはいえ当たらなかった判定。威力は倍増だ。エンペルトはみず・はがねという唯一とも言っていいタイプ。弱点はじめん・でんき・かくとう、いずれも二倍。効果は抜群だ。

 

 

「私のエンペルトはその程度じゃビクともしない。ハイドロポンプ」

 

「ばくれつパンチで……上!?」

 

 

 再び放たれたハイドロポンプをばくれつパンチで相殺しようとすると、上空から時間差で降り注いでくる鋼色の光弾。ラスターカノンだ。じめんタイプのゴルーグにはあまり効果はないが視界を塞がれる。これじゃハイドロポンプをゴルーグが見てから防げない。私が見て指示しないと。

 

 

「ラスターカノンは無視して!左前方にばくれつパンチ!」

 

「エンペルト、曲がれ!」

 

「!?」

 

 

 すると信じられないことが起こった。まっすぐ飛んで来たハイドロポンプが、ヒカリさんの掛け声と共にカーブを描く様にして、ばくれつパンチに当たる直前で左に曲がった。相殺できなかったハイドロポンプはゴルーグの右側から炸裂、大ダメージを与える。

 

 

「なにそれ!?」

 

「ハイドロポンプがあまりにも当たらないから当てる様に練習しただけよ」

 

「普通そこはなみのりとかみずのはどうとか選ぶところだと思う!」

 

 

 それを当たらないから当てれるようにしたって主人公が過ぎる。勝てるかあ!

 

 

「アクアジェット」

 

「シャドーパンチ!」

 

 

 水を纏って複雑な軌道を描く体当たりを、必中の拳で迎撃する。勝てる気がしないけどやるしかない。こちとらお兄ちゃんに文句を言うためにここまで来たんだから!

 

 

「ハイドロポンプ」

 

「ばくれつパンチ!」

 

 

 さっきは遠かったから決定打にはならなかったと判断したのか、アクアジェットで縮めた距離からハイドロポンプを放とうとするエンペルトに、ばくれつパンチを叩き込む。結果はゴルーグ戦闘不能、エンペルトは健在だ。

 

 

「…残り二体、あっちは三体か。きついなあ」

 

 

 しかも既に見せてるんだよね。メガゲンガーとミミッキュ。エンペルト相手にフェアリータイプのミミッキュは論外だ、メガゲンガ-で行くしかない。

 

 

夢幻暗夜(むげんあんや)に誘えゲンガー」

 

「交代、エンペルト。…エンペルト?」

 

「メガゲンガーのとくせいはかげふみ、エンペルトはもう逃げられない!」

 

 

 モンスターボールに戻そうとしたヒカリさんにそう勝ち誇る。勝ち誇るところ何もないんだけどね、メイン火力のヘドロばくだん効かないし。最初はさいみんじゅつ型、キバナの時はこのほろびのうた型にしたこのメガゲンガーだが、今回の戦いのために技編成を変えてきた。

 

 

「れいとうビーム…!」

 

「シャドーボール!」

 

 

 メガゲンガーになにもさせないためかれいとうビームを放ってくるエンペルトの攻撃を、シャドーボールで相殺する。曲げれるのはハイドロポンプだけらしい。ハイドロポンプ、アクアジェット、ラスターカノン、れいとうビームか。手堅いなあ。

 

 

「曲げろ!ハイドロポンプ…!」

 

「ふいうち!」

 

 

 一気に吹き飛ばそうとしたのだろう、ハイドロポンプを撃とうとした瞬間に一瞬で近づき顔面に叩き込まれるメガゲンガーの拳。そうだ、このメガゲンガーはシャドーボール、ヘドロばくだん、あやしいひかり、ふいうちという編成だ。ぶっちゃけヤユイ対策だったんだけどまあいいや。

 

 

「シャドーボール!」

 

 

 そのまま零距離で右手に出現させた闇の弾をメガゲンガーは叩き込み、戦闘不能になるエンペルト。難敵を倒したぞ…あと二体!

 

 

「…よく頑張ったねエンペルト。…噂通り恐ろしい戦い方だねジュリさん。なら私も…捕食者の力を見せてあげる。マスキッパ」

 

「来たなガブリア……マスキッパ!?」

 

 

 またムクホークで攻めてくるのかなと思えばノーマルタイプは切札として残すつもりなのか、隠していた五匹目を繰り出してくるヒカリさん。ガブリアスかと思えば出てきたのはまさかのむしとりポケモン、マスキッパ。……なんかお兄ちゃんの天敵みたいなポケモンばかりいるね?

 

 

「いや、あの……正気?」

 

「可愛いでしょ?「つよいポケモン。よわいポケモン。そんなのひとのかって。ほんとうにつよいトレーナーなら、すきなポケモンでかてるようにがんばるべき」私の好きな言葉よ」

 

「…それは、同感かな!行こうゲンガー!」

 

 

 ジョウト地方の四天王、カリンの名セリフを言われたら納得するしかないじゃない。でも、ゲンガー相手に出してきたのは舐めプのつもりかな!

 

 

「ヘドロばくだん!」

 

「避けてマスキッパ」

 

 

 メガゲンガーが毒の塊を投げつけると、なんとふわりと浮いて宙返りして回避するマスキッパ。飛んでる…!?

 

 

「あまり知られてないけどこの子のとくせいはふゆう。飛べるんだよね。タネマシンガン」

 

「シャドーボール乱射!!」

 

 

 口を閉じて目いっぱい膨らませ、プププププッ!と種の弾丸を掃射してくるマスキッパの攻撃を、シャドーボールを両手から乱射して迎撃すると爆煙に紛れていつの間にかいなくなっていて。

 

 

「どこに…!?」

 

「パワーウィップ」

 

 

 いつの間にか横から浮いて迫っていたマスキッパの足である蔓の触手が伸びて連撃。蔓に絡み付かれて拘束されるメガゲンガー。まずい、逃げられない!?

 

 

「かみくだく」

 

 

 そしてがぶりと、頭から丸かじりにされてしまうメガゲンガーのメガシンカが解除され、ダランとマスキッパの口から垂れるゲンガーの身体。戦闘不能だった。……こんな変幻自在な動きができるだなんて…!?

 

 

「くっ……ミミッキュ!」

 

 

 最後の一匹であるミミッキュを繰り出す。なんとかしてマスキッパとムクホークを倒さないと…!

 

 

「やどりぎのタネ。悪いけどチェックメイトよ」

 

 

 しかし次の瞬間、マスキッパから射出された種がミミッキュに埋め込まれて、脳裏が真っ白になる。あ、これ駄目だ。

 

 

「じゃれつく…!」

 

「交代、ムクホーク。そらをとぶ」

 

 

 なんとか一矢報いようとするが、交代されて空に逃げられる。……完全に詰んだ。ミミッキュに空中を攻撃する術はない。そしてやどりぎのタネでじわじわと体力を奪われていく。実況も察したのかお通夜みたいなテンションだ。

 

 

「………ああ、悔しいなあ。グレイの気持ち…ちょっとだけわかったかも」

 

 

 もう笑うしかなかった。そうしてこてんとミミッキュは崩れ落ち、私は初戦敗退が確定したのだった。完敗だ。主人公とかそういうの関係なく、マスキッパだからと侮った私の完敗だ。




愛が強すぎたレジェンド。

・ジュリ
ラウラの妹である転移者でゴーストタイプ使い。あまりにも相性が悪すぎたのもあるが判断を間違えたのが敗因。

・ヒカリ
BDSPではなく無印DPの彼女。エンペルト、ムクホーク、コロトック、ラムパルド、マスキッパ、ガブリアスが旅パという一癖ある少女。当たり前にハイドロポンプを曲げてくる変人。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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オリキャラ及び手持ち設定その1(三人娘)

どうも、放仮ごです。二年以上前の事とか誰も覚えてないだろうので小分けに。纏めてみるとラウラの蟲ポケモン結構多かった。楽しんでいただけると幸いです。


・ラウラ

 エンジンシティ出身のジムチャレンジャー(第一部)→ターフタウンのむしタイプ使いのジムリーダー(第二部)。元は桂樹月(かつらいつき)という名の蟲好き男子高校生で転生者。樹里と言う妹がいる。DSでプレイできるBWまでしかプレイ経験がなく、XY以降を知らずに育った珍しい人間。。フェアリータイプの存在も知らなかった。

 めんどくさいからという理由で伸ばした肩までかかる赤い髪をむしとりしょうねんリスペクトの麦わら帽子に隠してボーイッシュな服装を取る少女。クラスで四番目くらいの美人だが自身に興味がなく、蟲ポケモン、特に最初の相棒であるバチュルに愛情を捧げている。一番好きなポケモンは相棒でもあるデンチュラであり、背中に装着して糸を用いて某蜘蛛男の如く空を駆る。

 当初の実力はジムリーダー級だったが敗北と実戦形式を重ねるうちにチャンピオン以下四天王以上の実力を身に付けた。テッカバトンの様なゲームでおなじみの手段だけでなく、現実では効果以上の力を発揮する変化技を使いこなし変幻自在で予測不可能なバトルを繰り広げる奇策使い。ジムリーダーとしては最初のジムとして「状態異常の重要さ」と「どうぐの大事さ」を初心者に教えるジムを営業している。

 推薦してくれたカブは恩人であこがれの人。一人称は「俺」。かしこまる時は「私」。名前は月桂樹とそのラテン語から。

 

・バチュル→デンチュラ♂

とくせい:ふくがん

わざ:エレキネット

   こうそくいどう→ほうでん

   きゅうけつ

   いとをはく

もちもの:ぎんのこな

備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。むし好きなオーラを察知して懐いた。翻弄して相手を拘束してから確実に仕留める生粋のハンター。進化条件をとっくに満たしていたが、ラウラの頭がお気に入りなため進化しなかったと言う可愛い奴で、アラベスクジム戦でムツキとの戦いで焦っていたラウラを勝たせるために進化を決意。進化しても頭に乗る気満々。今作オリジナルのキョダイマックスが可能な個体。また、彼の子供であるきんちょうかんを持つ別個体がジムリーダーとしての手持ちとして登場している。

 

 ・キョダイデンチュラ♂

とくせい:ふくがん

わざ:ダイサンダー(エレキネット)

   ダイサンダー(ほうでん)

   キョダイクモノス(きゅうけつ)

   ダイウォール(いとをはく)

もちもの:じしゃく

備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。実は特殊な個体であり、力を秘めていた。巨大な蜘蛛の巣の上から動かない。モチーフはクモンガとアトラク=ナクア。

 

 ・キョダイクモノス

むしわざが変化したキョダイマックスワザ。むしタイプの攻撃でありながらでんきタイプの攻撃でもあり、みずやひこうタイプに抜群を取れるし地面タイプには効果がない。追加効果で相手を確定で麻痺させる他、形成する途中の蜘蛛の巣で物理攻撃を防ぐことも可能。イメージは巨大なエレキネット。

 

 

・テッカニン♀

とくせい:かそく

わざ:つるぎのまい

   バトンタッチ→シザークロス

   れんぞくぎり→つばめがえし

   かげぶんしん

もちもの:ひかりのこな

備考:せっかちな性格。暴れるのが好き。テッカニンの状態で捕まえたためヌケニンはいない。ラウラのパーティーの先方にしてサポーター。かそくしまくって回避しつつ、剣舞で防御しながら攻撃力を上げて、強力な一撃を叩き込む戦法を得意とする。

 

・オニシズクモ♀

とくせい:すいほう

わざ:とびかかる

   アクアブレイク

   バブルこうせん

   かみつく→ミラーコート

もちもの:おうじゃのしるし

備考:おだやかな性格。打たれ強い。アグレッシブな戦法が得意で、自分にこうげきりょくとすばやさを与えてくれるラウラを慕っている。うららか草原の巣穴に生息していた。モデルは放仮ごが捕獲した☆5オニシズクモ。

 

・ヤクデ→マルヤクデ♀

とくせい:しろいけむり

わざ:ひのこ→ほのおのうず

   えんまく→ほのおのムチ

   まきつく

   むしくい→おにび

もちもの:なし

備考:うっかりやな性格。暴れることが好き。スリップダメージで強敵の体力を削る担当。カブから託されたキョダイマックス個体。

 

・ドラピオン♀

とくせい:カブトアーマー

わざ:クロスポイズン

   ミサイルばり

   つじぎり

   こおりのきば

もちもの:くろいヘドロ

備考:れいせいな性格。我慢強い。くろいヘドロで異様にしぶとかったエンジンリバーサイドの主の様なポケモン。元々人間嫌いだが三日三晩己の相手をしたラウラに心を許し、ポプラ戦以降は切札級として活躍する。全ての技を通常より広範囲に放つこと(ゲームで言うならダブルバトルで二体同時に攻撃)ができるヌシ個体。

 

・イワパレス♀

とくせい:がんじょう(体力八割以上の際に致命傷になる一撃を耐えられる)

わざ:からをやぶる

   がんせきほう

   ステルスロック

   いわなだれ→あなをほる

もちもの:かたいいわ

備考:まじめな性格。好奇心が強い。ステルスロックで近づかせず、からをやぶるからのがんせきほうで仕留める要塞型。ドラピオンを優に超える防御力を持つ他、ステルスロックで次のデンチュラに繋げるサポート役。

 

・ユキハミ→モスノウ♂

とくせい:りんぷん

わざ:こなゆき→れいとうビーム

   むしのていこう→ふぶき

   まもる→ちょうのまい

   なし→むしのさざめき

もちもの:やすらぎのすず

備考:おとなしい性格。イタズラが好き。嫌なものに対して敏感に感じ取る。アルルカンとの戦いで、夜だったこと、命懸けで守られたことが起因し条件を達成して進化した。こおりわざの威力が伝説ポケモンすら凍らせる程に強力。ラウラくらいの子供だったら一人持ち上げて飛ぶことも可能。

 

・フシデ→ホイーガ→ペンドラー♂

とくせい:むしのしらせ

わざ:ポイズンテール

   ころがる

   ベノムショック→てっぺき

   はいよるいちげき

もちもの:ぎんのこな

備考:ゆうかんな性格。体が丈夫。ラウラに懐いており、その愛で根性を見せた。

 

・ラランテス♀

とくせい:リーフガード

わざ:はなふぶき

   シザークロス

   にほんばれ

   ソーラーブレード

もちもの:なし

備考:さみしがりな性格。とてもきちょうめん。ヨロイ島編におけるオニシズクモ枠。別にぬしポケモン並の強さではない。

 

・メラルバ→ウルガモス♀

とくせい:ほのおのからだ

わざ:ニトロチャージ→フレアドライブ

   むしのさざめき

   ドわすれ→ちょうのまい

   ひのこ

もちもの:もくたん

備考:おとなしい性格。打たれ強い。通常より小柄な個体で体温が異常に高く、その代わりすばしっこく火力が高い。

 

・カイロス→メガカイロス♂

とくせい:かたやぶり

わざ:あてみなげ

   ハサミギロチン

   むしくい

   やまあらし

もちもの:なし

備考:ゆうかんな性格。暴れることが好き。ヨロイ島で捕まえた。第二部ではメガシンカした。

 

・ハッサム→メガハッサム♀

とくせい:テクニシャン

わざ:こうそくいどう

   れんぞくぎり

   バレットパンチ

   エアスラッシュ

もちもの:なし

備考:おくびょうな性格。物音に敏感。ヨロイ島で捕まえた。第二部ではメガシンカした。

 

・ビークイン♀

とくせい:プレッシャー

わざ:エアスラッシュ

   パワージェム

   こうげきしれい

   ぼうぎょしれい

もちもの:なし

備考:きまぐれな性格。抜け目がない。ヨロイ島のぬしポケモンの一体。しもべたちで防御しながら広範囲攻撃で叩き潰す戦法をとる。

 

・チョボマキ→アギルダー♂

とくせい:かるわざ

わざ:アシッドボム

   みずしゅりけん

   かげぶんしん

   むしのさざめき

もちもの:なし

備考:おくびょうな性格。ちょっぴり強情。親はユウリであり、フェローチェに対抗するためカブルモと交換して手に入れた。それがグローリアビースト誕生の発端になってたりする。

 

・カブルモ→シュバルゴ♀

とくせい:だっぴ→シェルアーマー

わざ:つつく→アイアンヘッド

   れんぞくぎり

   つるぎのまい

   アシッドボム

もちもの:なし

備考:てれやな性格。ちょっぴりみえっぱり。ユウリと交換されたがラウラが親なため記す。交換後はユウリの通常ポケモンの切札級として活躍している。

 

・フェローチェ

とくせい:ビーストブースト

わざ:とびかかる

   とびひざげり

   トリプルキック

   とびはねる

もちもの:なし

備考:おくびょうな性格。よく物を散らかす。ユウリの恋敵(?)敵対者を魅了するフェロモンを出す。仲間になって以降は事実上のラウラの切札として活躍する。

 

・マッシブーン

とくせい:ビーストブースト

わざ:グロウパンチ

   きゅうけつ

   ばかぢから

   ストーンエッジ

もちもの:なし

備考:いじっぱりな性格。暴れることが好き。ラウラでは珍しい小手先を使わない純粋なパワー型。筋肉で何でも解決するタイプ。

 

・ゲノセクト

とくせい:ダウンロード

わざ:テクノバスター

   ニトロチャージ

   シザークロス

   てっていこうせん

もちもの:なし

備考:れいせいな性格。暴れることが好き。国際警察に押収されたプラズマ団に改造された古代ポケモン。カセットを装備することで本領を発揮する。飛行形態になることで人を乗せて飛ぶことも可能。グレイの持つ赤いゲノセクトとは兄弟であり、激闘を繰り広げた。

 

・バタフリー♀

とくせい:いろめがね

わざ:エアスラッシュ

   むしのさざめき

   サイケこうせん

   ねむりごな

もちもの:なし

備考:れいせいな性格。打たれ強い。第一部最後に登場。ユキハミより前に捕まえていたけどキョダイマックスを活用できないため使ってこなかった。地味にレア特性でキョダイマックス個体である。第二部ではジムリーダーとしての切札として使っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

・モコウ

 ラウラのライバルで親友の一人で相棒も務める。でんきタイプ使いのトレーナーにしてジムチャレンジャーで最速攻略者、現在はラテラルタウンのでんきタイプ使いのジムリーダー。ラウラの事をライバル視している。ラテラルタウンの名家出身でシーソーコンビの王家由縁の一族。一人称は「我」素は「私」で自称雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)を名乗る厨二病。超がつく程のドジっ子で足元が見えてないタイプ。手持ち全員にじしゃくを持たせている。名前の由来はワレモコウから。

 

・ラクライ→ライボルト→メガライボルト♂

とくせい:せいでんき

わざ:でんこうせっか→ボルトチェンジ

   ほのおのきば

   かみなりのキバ→10まんボルト

   でんげきは→ワイルドボルト

もちもの:じしゃく

備考:すなおな性格。逃げるのがはやい。モコウの相棒。ワイルドエリアで出会った際にモコウが野生ポケモンから襲われていたところを身を挺して守り、手持ちになったモコウにとっての騎士(ナイト)。懐いた理由は守ってやらないといけない気がしたから。

 

・パルスワン♀

とくせい:がんじょうあご

わざ:でんこうせっか

   ほえる

   スパーク

   じゅうでん

もちもの:じしゃく

備考:てれやな性格。とてもきちょうめん。ほえるは対ラウラ用という訳ではなく、単純にジム戦で相手のテンポを崩すためのもの。

 

・パッチラゴン

とくせい:はりきり

わざ:でんげきくちばし

   げんしのちから

   つばめがえし

   ドラゴンテール

もちもの:じしゃく

備考:れいせいな性格。暴れることが好き。論文を見るなり化石を集めてウカッツ博士の元に訪れて手に入れたポケモンでモコウの切札。ダイマックス時に必ず使い、ラウラ以外に負けなし。モコウの最初のポケモン。

 

・ストリンダ―(ハイなすがた)♀

とくせい:パンクロック

わざ:オーバードライブ

   ばくおんぱ

   どくづき

   ほっぺすりすり

もちもの:じしゃく

備考:ようきな性格。イタズラが好き。モコウがアラベスクジム攻略のためにワイルドエリアでゲットしたエレズンが進化したポケモン。パッチラゴンと双璧を為す主砲の一人。

 

・パッチルドン

とくせい:ちくでん

わざ:フリーズドライ

   ゆきなだれ

   じゅうでん

   でんきショック

もちもの:じしゃく

備考:れいせいな性格。暴れることが好き。今回は出てこなかったが、モコウがドラゴン対策にと化石を集めて再びウカッツ博士に復元してもらったポケモン。

 

・ウォッシュロトム

とくせい:ふゆう

わざ:たたりめ

   ほうでん

   みがわり

   ハイドロポンプ

もちもの:じしゃく

備考:むじゃきな性格。すこしお調子者。モコウが地面対策に入れたポケモン。ワイルドエリアを渡ってる際に自分からでんき好きの性質を見抜いて寄ってきた。

 

・ゼニガメ→カメール→カメックス♂

とくせい:げきりゅう

わざ:みずのはどう

   あまごい

   みずでっぽう→ラスターカノン

   からにこもる→クイックターン

もちもの:しんぴのしずく

備考:おだやかな性格。ものをよく散らかす。あまごい要員。モコウに懐いており、ここぞの進化を見せた。

 

・コリンク→ルクシオ→レントラー♂

備考:一応いたのだが疾く設定を考えていなかった不遇ポケモン。サメハダーとかと戦ってたりする。

 

・ジバコイル♂

とくせい:がんじょう

わざ:でんじほう

   でんじふゆう

   ロックオン

   ミラーショット

もちもの:じしゃく

備考:しんちょうな性格。とてもきちょうめん。

 

・レジエレキ

とくせい:トランジスタ

わざ:かみなり

   サンダープリズン

   しんそく

   でんじは

もちもの:なし

備考:やんちゃな性格。よく物を散らかす。封印が解かれた瞬間神殿から飛び出して、モコウを何故かご主人と認めて助けに現れ手持ちになる。

 

・エレキブル♂

とくせい:でんきエンジン

わざ:かみなり

   かわらわり

   ほのおのパンチ

   れいとうパンチ

もちもの:なし

備考:うっかりやな性格。打たれ強い。二年間のうちにカンムリ雪原で捕まえたジムリーダーとしてのモコウの新参ポケモン。かみなりを自分に浴びせてパワーアップしたり、全ての技が通常より高威力を誇るがぬしポケモンではない。ラウラ直伝シンジ戦法であなをほるを完全に攻略している。モコウに敗北したチャレンジャーは大概がこのエレキブルに負けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

・ムツキ

 ラウラのライバルで親友の一人。元ガラル最強のジムリーダー、キリエの娘。父親は医者、姉にナースのリヅキがいる。第二部ではキルクスタウンのひこうタイプのジムリーダーをしている。

 ですます口調の、本人は自覚してないナチュラルクズ。傍若無人な性格ながらも病弱で歩く事すら困難でウォーグルに掴まって移動する。そのため辛抱強い代わりに、自分と違って歩いたり色んなことが出来るのにポケモンバトルが弱い輩を見下しており、特にひこうタイプとは正反対なむしタイプが大嫌い。

 空を自由に駆るひこうポケモンに憧れて親にも内緒でワシボンと共に病院から抜け出した後、ローズ委員長に見込まれてジムチャレンジに参加することにした。ビートと違ってローズに心酔もしていなければ感謝もしてない。ちなみにフライトスーツを着ているがコスプレである。

 野生ポケモンとの戦闘でレベルを上げに上げまくってから遅れてジムチャレンジに参戦した。レベルを上げて物理で殴れを地で行くタイプ。レベルのことを「練度」と呼び、それこそ全てだと断じているため、技の応用とかは苦手。一回負けただけで挫折する紙メンタル。名前の由来はムラサキツユクサと某最強のライダー、自作小説の主人公の名から。見た目と口調は似てるけど性格は真逆。

 

 

・ウォーグル♂

とくせい:するどいめ

わざ:ゴッドバード

   ブレイククロー

   フリーウォール

   ばかぢから

もちもの:なし

備考:ずぶとい性格。打たれ強い。ムツキの相棒。親から与えられたポケモンでワシボンの頃から一緒にいる。もっぱら移動手段として使われる。初登場時レベル65。

 

・オンバーン♂

とくせい:すりぬけ

わざ:エアスラッシュ

   ばくおんぱ

   ぼうふう

   りゅうのはどう

もちもの:なし

備考:ずぶとい性格。体が丈夫。オンバットの頃から育てられた初期メンバー。先鋒として数多のポケモンを屠ってきた。初登場時レベル62。

 

・フワライド♀

とくせい:かるわざ

わざ:ゴーストダイブ

   そらをとぶ

   シャドーボール

   ちからをすいとる

もちもの:なし

備考:やんちゃな性格。駆けっこが好き。フワンテの頃から育てられた初期メンバー。ゴーストダイブで敵を翻弄するのが得意。後にそらをとぶ→ゴーストダイブを繰り返すエレベーター戦法を確立させる。初登場時レベル60。

 

・ルチャブル♂

とくせい:じゅうなん

わざ:フライングプレス

   つばめがえし

   とびひざげり

   とびはねる

もちもの:なし

備考:れいせいな性格。ものをよく散らかす。地上を空を舞うように駆け抜け、スピードで翻弄して強力な一撃で落とすムツキの手持ち随一の実力者で、ムゲンダイナを一方的にぶちのめした。初登場時レベル64。

 

・シンボラー♀

とくせい:マジックガード

わざ:サイコキネシス

   エアカッター

   リフレクター

   ひかりのかべ

もちもの:なし

備考:さみしがりな性格。気が強い。ダブルバトル用に捕まえたポケモン。初登場時レベル60。

 

・アーマーガア♀

とくせい:プレッシャー

わざ:ブレイブバード

   てっぺき

   ボディプレス

   アイアンヘッド

もちもの:たべのこし

備考:てれやな性格。負けず嫌い。色違い。ムツキの六匹目であり、ダイマックスレイドで捕まえたキョダイマックス個体。マクワやキバナを乗り越えた際にも活躍した。

 

・ガラルサンダー、ガラルファイヤー、ガラルフリーザー

備考:ムツキが捕まえた伝説ポケモンたち。グローリアビースト戦で使ったほか、プラズマ団に狙われた。

 

・ファイアロー♂

とくせい:はやてのつばさ

わざ:ブレイブバード

   つばめがえし

   ひのこ

   はがねのつばさ

もちもの:なし

備考:れいせいな性格。駆けっこが好き。ジムリーダーとしてのムツキの新メンバー。冷静に敵の攻撃を回避し強烈な一撃を叩き込む戦法を取る。

 

・プテラ→メガプテラ

備考:レジギガス戦で登場したムツキのメガシンカ専用ポケモン。

 

 

 

・フレアフィールド

ラウラが考案、ガラルスタートーナメントでウルガモスを用いて披露した技術。ひのこをばら撒いてフィールドを火の海にしてほのおタイプの技の威力を上げる他、触れた相手をやけどにすることができる。ムツキはそれに加えて上昇気流でひこうタイプのアドバンテージを上げることに成功した。にほんばれすると威力が上がる。

 

 




三人娘だけで七千字以上あるらしい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSトゲデマル

どうも、放仮ごです。ポケ蟲スカーレットでも出番はありましたがこちらではだいぶ久々なダフネのターンです。

今回はダフネVSサタリアその1。楽しんでいただけると幸いです。


 ジュリさんが敗北するとはさすがは元チャンピオンですね、ヒカリさん……サタリアに勝ったら彼女と戦うことになるわけだが……元チャンピオンってずるくないですか?

 

 

「一回戦目とは思えない激戦を制したのはヒカリ選手!続きましてガラルリーグセミファイナルトーナメント第二回戦が始まります!」

 

 

 アナウンスに応えてバトルフィールドに出て行く。反対側からはユニフォームの上からピカチュウパーカーを身に付けたサタリア、ガラル鉱山以来の戦いだ。思えばあれはジュリさんと出会うよりも前だったな…私にとっての最初のライバル、それがサタリアだ。

 

 

「第二回戦!ルールは伝説・幻禁止の5VS5のシングルバトル!先日の事件におけるプラズマ団攻略の立役者の蟲使いダフネ選手VS恋する稲妻チャレンジャー!サタリア選手の対決です!」

 

「まさか再戦がここまで遅くなるとは思いませんでしたよ、サタリア」

 

「こっちの台詞だよ。でもやっぱり残ったね、そう来ないと!」

 

 

 私はネットボールを、サタリアはクイックボールを構える。いざ、勝負…!

 

 

「トゲデマル!」

 

「クワガノン!」

 

 

 繰り出されたのはまるまりポケモン、トゲデマル。たしかでんき・はがねタイプだ。私は相手がでんき使いだと分かっているためじめん技が使えるクワガノンだ。

 

 

「一気に決めますよ!クワガノン、あなをほる!」

 

「そんなのまるっとお見通しだ!トゲデマル!ジャイロボール!」

 

 

 クワガノンがいきなり地面に突き刺さり穴を掘って地中に潜ると、トゲデマルは片足で立つと横に高速回転。独楽のようにフィールドを縦横無尽に走り出し、地中にいるクワガノンに居場所を捉えさせない。

 

 

「そのままあぶり出せ!ミサイルばり!」

 

 

 さらに回転したままミサイルばりを発射、雨霰の如く降り注いだミサイルばりはフィールドを次々と破壊していく。このままじゃクワガノンの居場所が割り出される…!?

 

 

「自分を中心にむしのさざめき!」

 

 

 ならばと円形にむしのさざめきを放ち、ミサイルばりを叩き落としていく。居場所がばれそうならこっちからばらしてやる!

 

 

「そのまま突撃!」

 

「びりびりちくちく!」

 

 

 そして地面から飛び出して高速で突撃し顎鋏を叩き込むクワガノンに、さらにとげとげになったトゲデマルが激突。ジャイロボールの回転+ミサイルばり乱射+びりびりちくちくによるとげとげと放電でとんでもないことになっているトゲデマルにパワー負けしたクワガノンは大きく空に弾き飛ばされてしまった。

 

 

「なんの!ねばねばネット!」

 

「かみなり!」

 

 

 しかし弾き飛ばされる勢いのままねばねばネットを飛ばしてトゲデマルを拘束、吹き飛ばされる勢いのまま一緒に引っ張って一本背負いの要領でフィールドに叩きつけようとすると、拘束されたまま天に向けて雷撃を飛ばすトゲデマル。残念ながら見当違いだ。

 

 

「一か八か当たることを狙った様ですが残念でしたね!このままフィニッシュです!」

 

「残念なのはそっちだよ。貴女がラウラさんと同じようにむしタイプを極めてるなら、私もまた…モコウお姉ちゃんと同じように、でんきタイプを極めてるんだ」

 

「いったいなにを…!?」

 

 

 すると不思議なことが起こった。見当違いな上空に飛んで行ったかみなりがクイクイクイッ!と不自然に曲がってクワガノンに炸裂したのだ。

 

 

「なんでクワガノンに当たるんですか…!?」

 

「クワガノンに当たったわけじゃない、トゲデマルに向かってきただけだよ。びりびりちくちく!」

 

 

 びりびりちくちくでねばねばネットの拘束を破って脱出、着地してちっちゃな腕を組んで踏ん反り返るトゲデマルと一緒に腕を組んで踏ん反り返るサタリア。

 

 

「とくせい、ひらいしん。でんき技はトゲデマルに誘導される!今だ!ジャイロボール!」

 

「負けるな、あなをほる!」

 

 

 地面に向かう勢いを利用したクワガノンの体当たりと、再び一本足で立って横に高速回転したトゲデマルが激突。こうかばつぐんを受けたトゲデマルが落ちてきて、倒れる。クワガノンは何とか健在だった。体力は多分ミリだ。ボールに戻して少しでも回復させる。

 

 

「よく頑張りました、戻ってくださいクワガノン」

 

「やっぱり相性はどうにもならないなあ…あなをほるを完全攻略しているモコウお姉ちゃんはやっぱりすごい!私達も、いつかあんな風に……行こう、エレキブル!」

 

「っ…!」

 

 

 次に出てきたのは、モコウさんのエースと戦った記憶が新しいエレキブル。モコウさんリスペクトのサタリアのことだ、あの時のエレキッドを進化させてくるとは思っていたがここまでとは…!

 

 

「ならば…こちらは、アーマルド!」

 

 

 クワガノン、イオルブと同じく私の家族の一人、アーマルド。重量級には重量級だ。

 

 

「かみなりパンチ!」

 

「シザークロス!」

 

 

 高火力の斬撃と電撃を纏った拳が激突。そのまま殴り合いに発展し、ラッシュがぶつかり合って両者後退していく。

 

 

「感電させなさい、しおみず!」

 

「DDラリアット!」

 

 

 かみなりパンチを維持したままのエレキブルを感電させようと水をぶちかますも、丸太の様な腕を伸ばして横回転したエレキブルに薙ぎ払われる。そんなのありですか!?

 

 

「なんて技を覚えさせてるんですか…!」

 

「効率やタイプ相性ばかり考えているとはげるよ!バトルは楽しくいかないと!定石を守ってちゃ、勝てるものも勝てなくなる!」

 

「…それが貴方の戦い方ですか」

 

 

 モコウさんに負けてたサタリアがどうやってここまで上がって来たのか気になっていた。彼女は、ほとんどのトレーナーが守るであろう定石を捨て去り、型破りになることでここまできたのか。

 

 

「距離を取ってかみなりパンチ!でんきエンジン発動!」

 

 

 するといきなり距離を取ったかと思えば電撃を纏った両拳で自身の尻尾を握りしめて放電、とくせいのでんきエンジンを無理やり発動させるサタリア。モコウさんの自傷かみなりと同じ芸当だ。

 

 

「げんしのちから!」

 

「今だ!エレキフィールド、全開!」

 

 

 げんしのちからで攻撃しつつこっちも全能力を上げようと試みるが、突如発生した電気のフィールドの余波でげんしのちからが打ち消されてしまう。このエレキブル、わざわざ四つの技の一つを削ってエレキフィールドを入れてるなんてもしかしてサポート型か?いやでも、でんきエンジンを発動した理由が分からない。一体何をしようというんだ。

 

 

「ヨロイ島で習得した最強奥義、受けて見ろ!」

 

 

 天高く右手の一指し指を突き上げ、そう宣言するサタリア。それと同時に、エレキブルを中心に広がったエレキフィールドが、逆再生するかの様にエレキブルに集束していく。

 

 

「嫌な予感が……アーマルド!まもる!」

 

「…ライジングボルトォオオオオオオオ!」

 

 

 咄嗟に防御を指示した瞬間、集束していた電気が大爆発。大放電が襲いかかり、まもるすら貫いてアーマルドに雷の槍が直撃。黒焦げになって倒れ伏すアーマルド。高耐久があっさりと…!?

 

 

「これが私の戦い方。私は愛を貫くために勝つ!」

 

「ならば私も、蟲への愛を示すために負けられません」

 

 

 サタリアと睨み合う。まだ4-4。勝負はここからだ。




ライジングボルトとかいう刺さるとヤバいぶっ壊れ技。

・ダフネ
地味に翅の音で地中のクワガノンの位置を把握している変態。最初のライバルであるサタリアとの対決に燃えている。

・サタリア
稲妻らぶうぉりあー。モコウリスペクトだが戦い方が全く違うエレキブルを使う他、ひらいしんを利用した戦法などでんきタイプの事をかなり勉強している。すべて愛がなせるわざ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSランターン

どうも、放仮ごです。あんまり出番が無くて組み立てにくかったけどサタリアが強敵として固まりました。

今回はダフネVSサタリアその2。楽しんでいただけると幸いです。


 早々に出てきたサタリアの切札と思われるエレキブル。エレキフィールドからのライジングボルトでうちの耐久役であるアーマルドが撃沈した。じめん技を持っているクワガノンも蟲の息だし、本格的に不味い。あの威力だとメガヘラクロスの制圧力も発揮することなく一撃で終わるだろう。

 

 

「対抗できるのは貴方しかいません、グソクムシャ!」

 

 

 繰り出したるは兄さんから借り受けたままここまで来た兄さんの相棒であり実力者であるポケモン、グソクムシャ。この子のききかいひは体力を半分切ったらボールに戻るだけでなく、高火力の攻撃の回避にも特化している。タイプ相性は悪いがどうにかなるはずだ。

 

 

「であいがしら!」

 

「DDラリアット!」

 

 

 まずは挨拶とばかりの一撃と、両腕を横に伸ばしてグルングルンと回転するエレキブルが激突。弾かれる。技のタイプ相性はこちらが有利なのに厄介な!

 

 

「シザークロス!」

 

「かみなりパンチ!」

 

 

 勢いよく振り上げ、交差して叩きつけた斬撃も、雷を纏った右拳で受け止められ、返しの左拳の一撃をもらう。ギリギリききかいひで避けたがなんてパワーだ。シザークロスを片手で受け止めるなんて。

 

 

「…ダイビングはエレキフィールドで実質使用禁止ですね」

 

 

 エレキフィールドは展開中だ。持続時間こそ短いが、今封じられているのは痛い。だとしたら取る方法は一つだけだ。

 

 

「両手でアクアブレイク!」

 

 

 私の指示に頷き、両手に水を纏って構えるグソクムシャ。みずタイプはでんきが弱点だが、水と電気は実はそうでもない。

 

 

「なにをしようとしているのか知らないけど、エレキフィールドが切れる前に決める!ライジングボルト…!」

 

「グソクムシャ、その場でシザークロスです!」

 

 

 水を纏った両腕を振りかぶり、交差して放たれたのは水の刃。エレキブルの放ったライジングボルトとぶつかり、弾け飛んで水飛沫がエレキブルにかかり、通電する(・・・・)

 

 

「なっ!?」

 

「でんきエンジンがあるから効果は薄いでしょうが、動きを止めることができれば上々!戻りなさいグソクムシャ!」

 

 

 エレキブルが痺れている間に、グソクムシャをイオルブと交代。さらに間髪入れずイオルブを戻し、再度グソクムシャを繰り出す。

 

 

「であいがしら!」

 

「かみなりパンチ…!?」

 

 

 ボールから繰り出された瞬間、私の意図を感じ取って地面を蹴り加速したグソクムシャのであいがしらがエレキブルの腹部に突き刺さり、勢いよく吹き飛ばす。観客席の壁に背中から叩きつけられたエレキブルが崩れ落ちると同時にエレキフィールドも時間切れが来たのか消え去る。戦闘不能だ。

 

 

《「決まったああああああ!ダフネ選手の奇策が炸裂!エレキブル、沈んだあああああ!」》

 

「まさか痺れている間に交代して再度であいがしらを使ってくるなんて……」

 

「有効打がそれしかありませんでした。強敵でした。今のエレキブルが切札でしょう?続けますか?」

 

「もちろん。行くよランターン!」

 

 

 繰り出されたのはみず・でんきタイプのライトポケモン、ランターン。HPの高さで知られているポケモンだ。

 

 

「交代、グソクムシャ。ヘラクロス!」

 

 

 みず・でんきに効果抜群のくさタイプのタネマシンガンを覚えているヘラクロスを繰り出し首からかけたメガペンダントを握る。溢れ出た光と、ヘラクロスのヘラクロスナイトから溢れ出た光が繋がる。切札を最後まで残しておくのは最善手じゃない。切るべき時に切らなければ意味がない。

 

 

「メガシンカ…!」

 

「出たねメガヘラクロス…!だけど、私のランターンは一筋縄じゃないかないよ!」

 

 

 メガシンカしたメガヘラクロスとランターンが睨み合う。先手必勝!

 

 

「タネマシンガン!」

 

「右になみのり!」

 

 

 両手を構えて種の弾丸を装填、乱射したメガヘラクロスの前を横切るようにして生み出した津波に乗り、流れて泳ぎ避けるランターン。なんだその動き。

 

 

「魚ポケモンだからって身動きがとれないと思ったら大違いだ!れいとうビーム!」

 

 

 すると今度は津波に乗りながられいとうビームで目の前の波を凍らせ、弧を描いた氷の足場を腹ばいで滑走して空中に打ち上がるランターン。タネマシンガンで追いかけるメガヘラクロスだが、その変幻自在の動きについていけてない。

 

 

「氷を壊しなさい!ロックブラスト!」

 

「その前に溶かして波にしろ!ねっとう!」

 

 

 氷の足場を破壊して逆にトラップにしようと試みるが、ねっとうで溶けた氷が崩れて波となったそれに乗って移動し翻弄するランターン。押し寄せた水でメガヘラクロスは逆に身動きが取れないでいる。これは不利か…?

 

 

「やけどにしちゃえ!ねっとう!」

 

「メガホーンを地面に突き立てて打ちあがって!」

 

 

 放たれるねっとうから、角を地面に突き刺した反動で宙返りする様に飛び上がり回避するメガヘラクロス。空中からなら自由に狙える!

 

 

「タネマシンガン!」

 

「ボルトチェンジ!」

 

 

 するとタネマシンガンに当てる様に電撃を放ったランターンがサタリアの元に引っ込んでいき、代わりに繰り出されたのはでんき・ひこうタイプのモモンガポケモン、エモンガ。こうかいまひとつのタネマシンガンを真面に受けてへっちゃらな顔をしている。

 

 

「ならば、ロックブラスト!」

 

「アクロバット!」

 

 

 岩の弾丸をアクロバットな動きで回避しながら効果抜群の体当たりを浴びせてくるエモンガ。四倍ダメージのそれを耐える様にメガヘラクロスは太い腕で受け止めるが、連撃に耐えるしかない。

 

 

「ゼロ距離ならば!ロックブラスト!」

 

「ボルトチェンジ!」

 

 

 ゼロ距離から腕を突きつけて岩の弾丸を当てんとするメガへクロスだったが、エモンガから電撃が放たれたかと思えば引っ込んで代わりにランターンが出てきてロックブラストを受け止める。戦いにくい…!

 

 

「私はボルトチェンジ使い!でんきタイプの弱点の少なさと複合タイプの耐性を使いこなせばどんな攻撃にも対抗できる!こうやってジムリーダーたちに勝って来たんだ!例えダフネだろうが他地方の元チャンピオンだろうが私は勝って、頂点に立つ!モコウお姉ちゃんの隣にふさわしくなる!」

 

「くっ…合理的な戦い方ですね…!」

 

 

 まるで余裕が無かった頃のラウラさんみたいだ。モコウさんに勝って思いを伝えるために勝てる戦い方を模索したのだろう。それが悪いとは言わない。だがしかし、見ていて苦しいものがある。

 

 

「バトルはもっと自由なはずです!」

 

「御託を並べたところで勝てないなら意味がないよ!なみのり、れいとうビーム!ねっとう!」

 

「ロックブラスト!」

 

 

 周りに津波を発生させ、凍らせて腹ばいで滑走し四方八方からねっとうを叩き込んでくるランターン。ロックブラストの岩で相殺して防いでいるがこのままじゃじり貧だ。かといってタネマシンガンに切り替えたらエモンガに交代して来て今度こそ終わりだ。……いや、方法はある。

 

 

「ヘラクロス、タネマシンガン!」

 

「懲りずにまたやってきても無駄!ボルトチェンジ!エモンガ!」

 

 

 タネマシンガンを両手から乱射するメガヘラクロスに、ランターンが電撃を放ってっ引っ込んでいきエモンガが出てきて受け止める。ああ、そう来るだろう。でも、メガヘラクラスには腕が二本あるんですよ。

 

 

「左手でタネマシンガンを維持しながら右手でロックブラスト!」

 

「ええ!?ぼ、ボルトチェ…いや、えっと」

 

 

 タネマシンガンを撃ちながら右手だけロックブラストに切り替えるメガヘラクロス。私の無茶にも応えてくれる頼れる相棒。サタリアはくさタイプのいわタイプ、どちらも使われてどっちに交代するか迷った挙句に繰り出したランターンにタネマシンガンが炸裂。体力自慢のランターンと言えどスキルリンクのタネマシンガンは耐えきれずに崩れ落ちる。

 

 

「ここからです!」

 

「…さすが私のライバル」

 

 

 改めてエモンガを繰り出して睨み付けてくるサタリア。圧倒的にこちらが有利。このまま押し込む!




BWで猛威を振るったボルトチェンジ戦法。

・ダフネ
ほとんど倒されることなくここまで持って来た蟲使い。ラウラと違ってアドリブ力は低いが持っている手札の使い方が上手い。

・サタリア
猛攻を仕掛ける稲妻らぶうぉりあー。モコウの隣に立つために妥協せず、ボルトチェンジ戦法をメインに使う。手持ちはトゲデマル、エレキブル、ランターン、エモンガ、後一体。

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VSエモンガ

どうも、約半年ぶりになります放仮ごです。スカーレットの方はDLC待ちですがさすがに年を越すのはまずいと思ってこっちは再開することにしました。

今回はダフネVSサタリアその3。楽しんでいただけると幸いです。


《「決まったああああああ!ダフネ選手の奇策が再び炸裂!ランターン、沈むっっ!まるで二年前猛威を振るった蟲使いラウラと電気使いモコウの戦いの再来を見ているようだああああっ!」》

 

 

 サタリアが繰り出してきたエモンガに対してヘラクロスを戻し、実況を聞きながら深呼吸して考える。おそらく必要最低限のダメージでここまで持ってこれた。しかしラウラさんなら一体も失うことなくここまで来れていただろう。大袈裟すぎる実況だ。

 

 

《「ここでルールのおさらいをしましょう!ルールは伝説・幻禁止の5VS5のシングルバトル!ここまでダフネ選手はアーマルドが戦闘不能、クワガノンとグソクムシャとヘラクロスが無視できないダメージを受け、イオルブのみ無傷!対してサタリア選手はトゲデマル、エレキブル、ランターンが戦闘不能!エモンガがダメージを受け、残り一匹は無傷といった状況!これはダフネ選手が少しばかり有利だが、まだ手札を一枚見せてないサタリア選手も負けてないぞ!どうなる白熱する第二試合!」》

 

「よし。決めました、行きましょう!クワガノン!」

 

 

 私が選んだのは空中戦。エモンガの強みはでんき・ひこうという珍しい複合タイプによる空中戦が可能なところだ。ふゆうの特性を持つクワガノンで対抗する。体力は残り少ないから速攻で決める。

 

 

「クワガノン、ねばねばネット!」

 

「エモンガ、アクロバット!」

 

 

 クワガノンの放った粘着く糸を、アクロバットな動きで回避して突撃。素早く何度も体当たりを仕掛けてくるエモンガ。素早さでは完全に負けてる。だけど至近距離に持ち込めば…!

 

 

「そこです、むしのさざめ……」

 

「アンコール!」

 

「なっ!?」

 

 

 至近距離からのむしのさざめきで方向感覚を狂わせて地面に落とし、あなをほるでフィニッシュ。そこまで考えていた計画が一瞬で水の泡にされた。アンコール、直前に使った技を強制的に繰り返させる技。もうクワガノンは、ねばねばネットしか撃てなくなった。

 

 

「ボルトチェンジ!」

 

 

 狼狽えるクワガノンの頭上を取り、電撃を飛ばして攻撃を与えながらボールに引っ込んでいくエモンガ。最後のポケモンが、来る!

 

 

「行くよ、ピカチュウ!」

 

「ピカチュウですって…!?」

 

 

 繰り出されたのはまさかのピカチュウ。モコウさんとのジム戦で見たパルスワンかピカチュウの進化系のライチュウだと思っていたが、まさかの進化せずにここまできたのはびっくりした。確かに普段はピカチュウのパーカーを着ているけど、そんなに好きなんですか!?いや落ち着け。サタリアのピカチュウの特徴は何といってもどくどくを覚えていることだ。警戒しないと。

 

 

「ねばねばネットで足場を固めてください!」

 

「アイアンテール!」

 

「ピッカア!」

 

 

 あなをほるをしたいところだがアンコールでできないので、ねばねばネットを本来の使い方である足元に展開して動きを阻害するのを狙うが、エモンガのいた頭上から急降下してきた鋼と化した尻尾で糸を叩き斬り、フィールドが砕けた勢いに乗って跳躍する。

 

 

「かげぶんしん!」

 

「ピカピカピ!」

 

 

 そのまま空中で五体に分身、狼狽えるクワガノンに一斉に襲い掛かる。まずい…!?

 

 

「アイアンテール!」

 

「「「「「ピッカチュウ!!」」」」」

 

 

 強烈な一撃が叩き込まれ、フィールドに叩きつけられるクワガノン。戦闘不能だ。お疲れ様です、クワガノン。兄さん、力を貸してください!

 

 

「交代、グソクムシャ!であいがしら!」

 

「どくどく!」

 

 

 繰り出された瞬間、脅威的な速さで突撃し目の前のピカチュウに繰り出したグソクムシャの拳に、紫色の光を帯びたピカチュウの尻尾が突き刺さり、同時に掻き消えるピカチュウ。分身を攻撃してしまったらしい。しかも、猛毒まで受けてしまった。ききかいひが発動しない体力まで削られて一気に決められたらどうしようもない。

 

 

「ボルトチェンジにアンコール、かげぶんしんにどくどく……ガチすぎませんかねえ!?」

 

「イッシュ地方を凍らせた伝説ポケモンを味方と一緒にとはいえ倒した相手にガチにならないほうがおかしいよ!」

 

「それもそうですね!」

 

 

 くそぅ。プラズマ団との戦闘が全部放送されていたから手札を全部晒してしまっているに等しい。グレイの差し金だったらしいがおのれグレイ。

 

 

「猛毒でやられる前に終わらせます!アクアブレイク!」

 

「かげぶんしん!」

 

 

 ピカチュウに直撃しようとしていたアクアブレイクを受けたピカチュウが掻き消えて、周囲に次々と10体も出現するピカチュウの分身。まずい、ピカチュウの代名詞が来る…!?

 

 

「10まんボルト!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 水を纏うことでダメージを分散させようとするが、全方位から放たれた10まんボルトを耐えきれるわけもなく、崩れ落ちるグソクムシャ。イオルブとヘラクロスにダメージを与えないためとはいえ、ごめんなさいグソクムシャ。

 

 

「いきますよ……イオルブ!」

 

「なら交代、エモンガ!」

 

 

 おそらく切札なのだろうピカチュウを温存させるべくエモンガに交代するサタリア。むしタイプの弱点であるひこうタイプであるエモンガを攻略しないと、ヘラクロスではほとんど勝ち目がない。やるしかない。

 

 

「エモンガ!アクロバット!」

 

「サイドチェンジ!」

 

「ええ!?」

 

 

 サイドチェンジ。本来は味方と場所を入れ替える技、だけど私たちが使った場合、相手と場所を入れ替える技になる。アクロバットで突撃してきたエモンガと場所を入れ替え、空ぶらせる。そしてアンコールを撃たれたとしても、延々と場所を入れ替えるだけだ。これで封じた!

 

 

「エレキボール!」

 

「ミラーコート!」

 

 

 今度は入れ替わってもいいように弧を描いてエレキボールを撃ちながら移動するエモンガだったが、ミラーコートを展開して跳ね返す。当たりはしないが、効かないということを意識に根付かせることが目的だ。

 

 

「連続でエレキボール!」

 

「サイドチェンジ、ミラーコート!」

 

 

 エレキボールを乱れ打ちさせるサタリア。それに対して場所を入れ替えながらミラーコートを展開、跳ね返し、自らに飛んでくるエレキボールを避ける羽目になるエモンガ。焦れ、焦れ…!

 

 

「卑怯、なあ…!」

 

「どくどくかげぶんしんを使う人に言われたくないです。さいみんじゅつ!」

 

「っ、アクロバット!」

 

「サイドチェンジ」

 

 

 絶対に当たりたくない技であろうさいみんじゅつを、アクロバットで無理矢理回避したエモンガと場所を入れ替える。

 

 

「ミラーコート!」

 

「なにを……!」

 

「もう一度サイドチェンジです!」

 

 

 そしてミラーコートを張ってから、また位置を入れ替える。これで終わりだ。

 

 

「もういい、入れ替わられてもアクロバットで追いすがれ!」

 

「エモ!…エモォ!?」

 

「え?」

 

 

 明かに苛立ってごり押しをしようとするサタリアの言葉に頷いたエモンガが高速で動いてイオルブに追いすがろうとするが、見えない壁にぶつかって逆にダメージを受ける。

 

 

「……ご存じの通り、私にとってエモンガは天敵です。だからこそどんな手を使ってでも動きを封じる必要があった」

 

「…まさか!」

 

「そのまさかです」

 

 

 気付いたらしいサタリア。サイドチェンジからのミラーコート。その繰り返しで、私は技を反射する檻を形成、エモンガを閉じ込めたのだ。

 

 

「害悪には害悪を。正々堂々とは言えませんが、卑怯者、悪役の汚名を被るのは今更です」

 

「エモンガ、もど……」

 

「判断が遅い!サイコキネシス!」

 

 

 エモンガをボールに戻して外に出そうとしたらしいサタリアだったが、その前にサイコキネシスでエモンガを捕らえ、ミラーコートの壁に次から次へとピンボールのごとく叩きつける。さすがに耐えきれず、崩れ落ちるエモンガ。

 

 

「そんな、ばかな……でも負けない、負けられない!ピカチュウ!いくよ!」

 

「イオルブ、ここからは真っ向勝負です!」

 

 

 ピカチュウの入ったボールを構えるサタリアと、ボールにイオルブを戻して構える私。ダイマックスバンドから溢れるエネルギーでボールを巨大化させて、共に投げつける。

 

 

「「キョダイマックス!!」」




サイドチェンジとかいう不義遊戯。

・ダフネ
卑怯上等蟲使い。真面目にヘラクロスの天敵のエモンガはどうしようもなかったから手段は選ばないことにした。イオルブの技構成はサイコキネシス、ミラーコート、さいみんじゅつ、サイドチェンジとかいうゲームだとなにがしたいのかよくわからない構成。

・サタリア
卑怯上等稲妻らぶうぉりあー。モコウの隣に立つために妥協しなかった結果、ダフネのスイッチを入れることに。こっちはゲームでも通用しそうなガチ構成。手持ちはトゲデマル、エレキブル、ランターン、エモンガ、ピカチュウ(キョダイマックス)。あと今回は5VS5のため出番がなかったパルスワン。


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