スーパーマジック大戦~最後の希望~ (くずたまご)
しおりを挟む
予告
灰色にひび割れた鎧。全身に走った幾本もの血線。頭部には凹凸のない覆面のような人相と、二双の角。
とても人とは言えぬ悍ましい化け物の名は『グール』。彼らにまともな思考能力はない。主の命令に従い破壊を撒き散らすだけだ。彼らの標的にされた人に希望はない。絶望の淵に追い落とされるまで、彼らにその心身を弄られるだけである。
その恐ろしい怪物が十数体。たった一人の標的を取り囲んでいた。
誰もが絶望する状況――ただし、それはただ“人”の場合だけだ。
「さあ、ショータイムだ」
余裕さえ感じる声音で告げたのは、宝石を象った赤い仮面の男。彼は魔法使いを連想させる黒のマントを靡かせ、悠然と左手の指輪を小さく掲げる。
彼こそが“指輪の魔法使い・仮面ライダーウィザード”。絶望に追い落とす存在がグールならば、ウィザードは絶望から救い出す最後の希望。グールとは対を成す存在であった。
「それじゃあ、さっさと『ファントム』にお出まししてもらおうか」
『ファントム』とは人間が絶望する事により生まれる化け物だ。ウィザードと仲間の魔法使いたちの尽力により、彼らファントムの首領は倒された。しかし、彼らは全てが滅ぼされた訳ではなく、このように散発的にグールを産み出し、街を襲っていた。ウィザードは人が絶望し、再びファントムが生まれない様に、戦い続けていたのだ。
グールを幾ら倒しても、絶望の根源は断てない。彼らを倒して、親玉であるファントムを炙り出さなければなかった。
ウィザードはグールが動き出す前に、一点に向かって駆け出す。グールはその手に持った槍で迎撃するが、それは決してウィザードを捉える事は出来ず空を斬る。
ウィザードはまるで舞うかのように、槍を躱し蹴りを放っていた。そこに荒々しさはない。澱みなく流れる嵐脚は流麗であり繊細であった。しかし決して弱い訳ではなく、むしろ力強く敵を刈り取っていく。
「フィナーレだ」
大方のグールが傷つき倒れ伏した所で、ウィザードは手形の文様が描かれたベルト――ウィザードライバー――を操作してから、一つの指輪を右手中指に付け、右手をベルトに重ねる。
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
と、音声が鳴ると同時に、赤色の魔方陣が地面に浮かび上がる。ウィザードはマントを鋭くはためかせ一回転。傲然と構えると、その右足には魔力が凝縮されていき、一塊の炎が生まれた。
魔力が霧散しないよう、細心の注意を払いながら、しかし大胆にウィザードは跳躍に入る。
「はぁぁぁっ――!!」
うねり声を上げなら、ロンダートで助走を一つ。着地と同時に地面を大きく踏み切ると、中空高く飛びあがり、グールに向かい回転、加速――。
そして、
「だぁぁぁっ!!」
途上のグールを薙ぎ払ないながらウィザード。向かう先は、倒れ伏したグールたちの中心地点。着地と同時に、熱波でグールを文字通り粉砕する――そのはずだった。
「なっ!?」
ウィザードが驚きの声を上げる。彼の向かう着地地点の中途、そこに見た事の魔方陣が浮かび上がっていたのだ。彼の直感が、あれに触れてはならないと訴えかける。しかし、加速度的に上がるキックストライクを止める事は、如何にウィザードでも無理だった。
高速のウィザードが魔法陣が突撃する。しかし、起こるはずの爆発が起きない。
黒い魔方陣が消失する。残ったのは、ダメージを負ったグールのみ。そこにウィザードの姿はない。
それもそのはず、ウィザードは魔法陣を突き破ったのではなく――全身を魔方陣に飲み込まれていたのだ。
こうして、仮面ライダーウィザード――
○
「ここ、どこか知ってる?」
「私の知らない場所なのは確かね」
それは幾多の世界を巻き込んだ、恐ろしき実験。
「俺は繰真晴人。君は?」
「パチュリー・ノーレッジ……って、呑気に自己紹介している暇もないみたい」
襲い掛かる数多の強敵たち。
次第に追いつめられていく彼らを助けたのは、意外な人物であった。
「私の名前は巴マミ。信じられないかもしれませんが、魔法少女です。それでこちらの方は、」
「兄さん、いい根性だ!! 気に入った!!」
戦いを通して明かされていく、悍ましい計画の正体。
「私は
「う、うん。よろしくね、魔理沙ちゃん」
今ここに、魔法を掌る者たちが集う(一名除く)。
「はぁぁ……やっぱり、ガッシュ君って可愛い~」
「ぬおぉぉぉっ!! や、やめるのだ、フェイト~~!!」
数多の世界の危機。
彼らは世界を守るために、力を合わせ戦う。
「削板さん、一緒に必殺技を考えませんか?」
「ん? 俺にはすごいパンチが――」
「駄目です。名前に根性がありません」
「!?」
降りかかる敵の謀略の数々。
「ぶりぃぃぃぃっ!!」
「ガッシュ君!? ブリは空を飛ばないよ!?」
しかし、結束した彼らを止める事は叶わない。
「マスタースパーク!」
「ディバインバスター!」
「ティロ・フィナーレ!」
「プラズマスマッシャー!」
「オーバーキルだから、もうやめなさいよ!?」
困難を乗り越え、生まれる絆。
「晴人……私……」
「パチュリー……」
「こんな灰汁の強すぎる面子の引率なんて、もう無理……」
「はい、胃薬」
迫る来るカウントダウン(パチュリーの寿命的な何か)と現れる過去の敵。
「これはファウード!? なぜ、ここにある!?」
「知っているの、ガッシュ君!?」
「……うぬ! でっかい魔物なのだ!」
「…………」
そして、明かされる過酷な真実。
「ソウルジェムが魔女を産むなら……私、死ぬしかないじゃない!」
「大丈夫。俺が最後の希、」
「マミなら根性で乗り越えられる!!」
「!?」
魔法と絆が合わさる時、新たな力が生まれる。
「パチュリー、この指輪は……」
「私からのプレゼント。これで晴人は七曜の魔法使いね」
「……サンキュ」
「なのは! ミニ八卦炉とレイジングハートの出力を合わせるぜ!」
「うん! 細かな調整はレイジングハートに任せて! それじゃあ、行くよ!」
「ガッシュ君……私の魔力を、受け取って……これで、あいつを……」
「……これが、フェイトと私の、バオウの力だ!!」
「削板さん。私たち……合体技がないわ」
「そんなもの根性で、」
「どうにもならないわ。だって、あなたの魔法じゃないもの」
「!?」
彼らの戦いの先に待ち受けているものとは――。
「俺が……俺たちが最後の希望だ!」
スーパーマジック大戦~最後の希望~
――3014年夏公開予定。
息抜きに書いたエイプリルフールネタです。
……これがエイプリルフールネタじゃなくなったらいいんですけど、時間も腕も足りないから仕方ないね。
目次 感想へのリンク しおりを挟む