性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。 (菊池 徳野)
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神の愛と書いてアガペーと読む

アイアムマイノリティ。


価値観。というものがある。

自分の中にある物差しを使って物事にレッテルを貼る事。私はそんな風に思い、この言葉を使っている。

 

そのレッテル…ラベルをところ構わず貼る行為自体、決して間違った行いではない。

しかし、そのラベルの読み方を他人に大っぴらに言うことは…中々どうして難しい。

 

それは、そのラベルの読み方が他人と違った時、つまり価値観の相違が起きた時に問題が生じやすいからである。

 

価値観というのは自分の生きてきた中で生まれるものなので、誰かと違ったからと言ってそれを易々と手放して相手に同調するのは特に難しい。

それでも状況が1対1ではなく1対多数であったなら、迎合しない訳にはいかなくなる時がある。マイノリティが淘汰されるのは自然の摂理だと言ってしまえばそこまでだが。

 

だが生きている以上、淘汰されてしまう訳にはいかない。だから私は多くのマイノリティがするようにそれを隠してしまう事にした。それが自然の摂理の外にあると理解しながら。

 

それは性癖であり、病気であり、こだわりであり、私の中に湧き起こった三大欲求に勝るとも言える欲求であった。常識の枠組みでは特に言葉にするのははばかられるし、良く似た嗜好を持つものの中ですら異端視される。私はそんなマイノリティを背負った人間であったのだ。

 

そう。だから、仕方なかったんや。

 

次に生まれ変わるならどんな世界がいい?って神様が言ってくれたから…つい。

 

 

「メインキャラの性別反転したなのはの世界がいいです。」

 

 

って言っちゃったんだよォ!!

 

うっそりと笑みを浮かべる神様の目が凄まじく優しくなったのが分かった時、私の心は死んだ。私の性癖は神様からも同情を引くほどマイノリティなのかと。

 

しかし、神様は依然として優しい声であなたの望む世界ですからと言って、それ以上は何も聞かずにいてくれたのだ。慈愛に満ちた、アガペーってのはマジであるんだなって。

生まれ変わったら絶対この女神様信仰しようってなったよね。いつか新興宗教立ち上げてみせようと。

 

でもね神様。

きっと気を使ってくれたんだろう。神様もミスをすることもあるだろうし、無償の愛ってやつの1つなんだと思う。

 

私、確かに口調は女っぽいし趣味も結構ファンシーだったけど、女性になりたかった訳じゃないんじゃよ?

ただマイノリティかつ変わった性癖持った男だっただけのオタクなんですよ。

 

「女になって性別反転させた理想のキャラを相手に恋愛がしたかった訳では無いんだよなぁ…。」

『Please cheer up Master.(元気だしてください)』

 

あ、うん。ありがとう。平気平気、心折れてないよ。私は元気だから。安心してリリィ。

 

まぁ前は生涯独身だったし、性欲なんて有って無いようなもんだったから、性別が変わったことにはあんまり文句はない。実際長年連れ添った男のシンボルと別れた事実に気づいた時もあんまりショックを受けなかった。自分でも驚きだが。

 

そんなこんなで、この性転換も悪いことばかりではない。

 

なぜかって?

 

なのは達に必要以上に近づくという割と危ない橋を渡る必要はあるが、遠目から眺めているつもりだった事を目の前で見れる。あまつさえ自分が誘発する事すら可能だという事実に、私は気づいてしまったのだ。

 

いやまぁ、本心としては恋愛関係になるのも吝かではないよ?今の性別は女だし、何より私は愛があればそれでいい派だし。相手は理想の推し達であれば私から拒む事はまず無いし。

 

とはいえ、性別が違うといえど推しに対してクソデカ感情以上の恋愛感情を抱けるかどうか自信はないし、何より百合の間に挟まる男の様になるのは如何なものかという考えも無くはない。まぁ、今回は性癖の都合で薔薇だが。

 

「なんにせよ利用しない手はないよね。」

 

望んだ世界とはいえ、新しい人生。楽しめるように生きられればなんでもいいし、なんなら性癖の赴くままに生きて死ぬのも悪くないとも思っている。魔法があって異世界があってバトルもある常識の範囲外の世界に来たのだし、今世くらいははっちゃけてもいいだろう。というのが私の考えた末に出した結論である。

 

すべての責任は私が取ればいいし、そこに悔いもないだろう。今こうして悩んでいるのは、自分の立ち位置をどうするかだけで本能のままに生きる事は変わらないのだ。

案外、神様はその方が私が楽しめると踏んで性別にも手を加えてくれたのかもしれない。いや、あのお方のことだからきっとそうに違いない。家に帰ったら後でまた祈っとこう。

 

「たぶん今の時期だと…あれかな?」

 

散策の目的であった公園に到着して、早速目的の人物らしき人影を見つけた。

 

人の居ない公園。皆が家に帰ったどこか異質な空間。何をするでもなくベンチに座る退屈そうな少年の影が1つ。

高町なのはだ。

 

「ねぇ、今何してるの?」

 

できるだけ相手に踏み込むような言葉を選ぶ。子供特有の無邪気さを意識して、できるだけ単純に。

 

取り敢えず遠目からでも眺めてみてからあとは心のままに決めようと思っていたが推しの悲しそうな顔を目の前にしてしまって、つい行動に出てしまった。それが虚無を抱えている表情とあれば尚更である。

君の笑顔が素晴らしいことを私は知っているのだ。

 

警戒されようが知ったことではない。接触してしまった以上、友達になりたいという気持ちに従って行動を起こせばいい。

 

「…なにも。」

「じゃあ、一緒に遊ぼ。」

 

砂のお山作ろっか、なんて言いながらその手を掴む。当然なのはは困惑するものの、ぐいと手を引けば困惑しつつも立ち上がって着いてくる。

 

この頃のなのはは、家庭のごたごたを察していい子でいる事を子供ながらに自分の核にしていた筈である。それは性別が変わってもその本質までは変わらないだろうし、反抗期は年齢的にももう少し先の筈。

 

そういや、怪我をしてるのは父親だろうか母親だろうか。主要キャラの性別を逆転させた以上、そういった変化がどの程度影響しているだろうか?

もしかするとなのはの兄も性別が変わり姉となってハーレムを築いている可能性もある…。一応、近日中に確認しておこう。

 

そうやって考え事を巡らせつつも少し強引にでも遊び始めてしまえば子供というのは単純なもので、次第に言葉を交わし、ぎこちない様子もどこへやら。気づけばなのはの顔には笑みすらこぼれ始めるようになっていた。

 

それにしても、私の推しは性別が変わっても実に可愛らしい。とても…美少年だ。

初めは若干なのはの父親や兄に似た雰囲気が出ている様に感じたが、遊び始めてからはよく知るなのはと余り変わらない気がした。まだ子供だし、中性的な雰囲気を持っているのもあるだろうが、時折見せる笑顔は記憶の中にある彼女となんら違いを感じない。

 

「あ、おうちに帰らなきゃ。」

 

1時間程遊んだ所で、ぽつりとそう切り出して服に付いた砂を払って帰る準備をし始める。もとより人の少ない時間だったこともあり、夕暮れが空を覆い始めていた。

子供特有の身勝手に置いてけぼりにされているなのははどこかきょとんとしていたが、状況を理解し始めて少し悲しそうに見える。

推しの心を私が乱しているという事実に少し心が踊る。

 

仕掛けるとしたら、ここだろうか。

 

「ね、お名前教えて!」

 

再び寂しそうな雰囲気を出し始めていたなのはの様子を視認してから、できる限り飛びっきりの笑顔を向ける。気持ち的には今世の微少女フェイス(誤字に在らず)に惚れさせる位の気概を込めて。

残念ながら私は人並みの可愛い子供である。将来はそれなりの可愛さを化粧を携えて保って生きていく程度の。

 

作戦通り無事に名前を教えて貰い、自分はさっさと家に帰る。また遊ぼーねー、なんて言って若干駆け足だ。

きっとこれで印象に残った事だろう。次に会った時にもう一度遊べばそれでオールオッケー。この年頃だと1度あったら友達で、毎日あったらそれはもう親友なのだ。

 

『I'm glad you looked fun.(楽しそうでなによりです。)』

 

今は種をまく時期だ。花が咲くにはまだ時間がかかる。

 

「それを摘み取るのも、まだまだ仕込みが必要だしね。」

 

ルンルン気分で家を目指す。

明日はもっといい日になりますよね、女神様。

 

 

 

私はマイノリティ。私は愉悦の異端児。

 

私の性癖は、勘違いで好きな女を再起不能に追いやった自責の念で壊れる主人公をみること。

 

純粋な彼らなら、きっと上手く動いてくれる事だろう。本当ならユーノ辺りをけしかけるつもりだったが、操るのが男の方だけで済むならむしろOK。ばっちこい。

 

その為なら小悪魔だってなんだってやってやるよォ!!




女神様「へけっ。」


取り敢えず、次の話は年明けになってから考えます。
なお、私は主人公(格)が作中的な感じに絶望、精神崩壊するシチュエーションがぶっ刺さります。女の子の視点が充実してるかメインだと尚良し。


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神童も二十歳過ぎればただの人

投稿した記憶が無いのに投稿作品が増えてて本当に驚きました。
みんなは、酒は飲んでも呑まれるなよ!


ボシュッというちょっと間抜けな音を立てて射撃の的に穴が空いた。中心からおよそ20センチ上にズレた着弾点を見て若干眉を潜め、じっと自分の足元を見る。

 

「命中はしたけど、この距離からなら5センチくらいのズレじゃなきゃまずくない?」

『No problem.(問題ありません。)』

 

初めて射撃をしたなら当てられただけいいと思うが、リリィというデバイスの補助を貰いながらの射撃でこの程度というのは、何とも歯がゆいものがある。次はもう少し下を狙って撃ってみようか。

 

「先程と同じように、追加の修正はなしで射撃する。」

 

なるようになるかと何も考えないようにして、先程と同じように頭の中で引き金を引く。今度は音よりも先に視覚で命中したのを確認した。

 

『You are wonderful.(素晴らしい腕前です。)』

「ありがと。でも、スコープか何かでお互いに視界をリンクしないと暫くはスナイピングは無理かもね。」

 

ぽっかりとど真ん中に空いた穴を眺めながら、そうリリィに言うと、アタッチメントの一覧を表示してくれる。

リリィの性能があまり良くないのか、それとも私の才能がよろしくないのか、はたまたノウハウが不足しているだけなのか。なんにせよ誤差修正を自動で行えるようになるか、修正が要らない程にリリーを使い慣れるかするまではスコープか何かで補助をする必要があるだろう。

ひとまず、丸型スコープ付けてスナイピング練習かな。最終目標は腰うちで命中率5割、スナイピングで百発百中である。

 

 

さて、私がこうして射撃訓練を行っているのには理由がある。先日のなのはとの接触で、当分の方針は『さくせん:みんなとなかよく』に決まった訳だが、彼らと近くで関わっていく以上これから起こる事件に関わらない訳にはいかない。そして事件と関わるのなら生活に使えるような魔法を覚える程度では済ます訳にはいかない。

 

これからなのは達と行動を共にする以上、魔法と関わらない選択はない。というか魔法を使えないでいるリスクが大きすぎるのだ。

魔法少女とか、リリカルとか、可愛らしい言葉が並んでいるがその実、なのはの世界は世界滅亡や死と隣り合わせの修羅の世界である。  

 

というのも、なのは本編の危険さはもちろんの事バックボーンとなっているリリちゃ箱の世界が成人向けなこともあり、かなり容赦がない。それこそちょっとした魔法を扱える程度だと、サクッと誘拐されて殺される様な事が起こりうるので、いくら『なのは世界』とはいえ自衛の手段は必要であるし、自ら事件に首を突っ込む事になる以上強さを求める事は必須になってくる。

そのための射撃訓練である。

 

それに現状、野良のフェイトと出会うのは極めて難しいと思われるので、なのはとの交流が主な行動となる。しかしなのはが魔法に目覚めてない現在できる事は限られている。

それなら今のうちに予習しておいて事件までに魔法に慣れた方がいいだろうと考えた次第である。

 

 

ちなみに私のデバイスであるリリー曰く、私の魔力量は一般より多いめらしい。将来的にこのままならAランクまでなら行けるんじゃないかとのことだ。

 

そして、自由に動き回りながら仲間の邪魔にならないように銃をぶっぱなす格好良い立ち回りはお前の処理能力じゃ厳しい。という事を優しい言葉で言われた。

うちのデバイスはイエスマンなだけでなく、上げて落とす事も得意らしい。はい…私もそう思います。

 

しかし、適性が分かってるならやる事も自然と決まってくる。取り敢えずは射撃訓練を優先し、その後に近接戦闘に手を出せばいいだろう。

 

幸いにも飛行適正自体はあったので、そういった点での足でまといにはならなそうである。

 

「ん?あれ、なのはじゃないか?」

 

ぱすぱすとアホみたいに射撃に勤しんでいたら、覗いていたスコープの端に見知った後ろ姿らしきものを発見した。

当たっては距離をとりを繰り返していたが、少々離れすぎていたらしい。人の気配がないのは先に確認していたが、私から人影が見えているという事は誰かから見られる可能性があるということである。恐らく豆粒よりも小さくしか映らないだろうが、あまりよろしくはない。

というか、このスコープ精度いいな。ここから街までかなり距離があるのに。

 

「訓練切り上げて一旦公園に向かおうと思うけど、認識誤認の結界とか張れる?」

『Of course.(もちろんです。)』

 

さすがに街中を無策で飛び回るわけには行かないので、ちょこっと細工をして行くことにしよう。練習ついでに空の散歩と洒落こもうか。わりと距離があるので、もしなのはがこのまま公園に向かうならゆっくりしていると待たせてしまうことになるだろう。

優先すべきはなのは達、訓練は二の次三の次である。何なら先に着いて、なのはを出迎えたら喜んでくれるかもしれない。うん、それがいいだろう。

 

 

 

 

ふわり、と重力を緩和するように着地する。スカートタイプのバリアジャケットはスースーしてまだ慣れないので地面に着くと少しほっとする。どうやら予定通りなのはよりも先に着いたらしい。

 

「じゃあ、少しの間待つとしようか。」

 

バリアジャケットをささっと解除してリリィをペンダントよろしく服の中にしまい、最近の定位置となりつつあるベンチに腰掛ける。ま、普段は待たせる側なので定位置と言いつつなのはが座っている場所なわけだけど。

 

そんなどうでもいい事を考えていると、公園の入口になのはの姿が見えた。あ、驚いてる。いやぁ、驚いた顔も実に可愛い。

 

「やっほー。今日は何して遊ぼうか。」

 

足をぷらぷらとさせながら、軽く挨拶。や、別に待ってないよ、本当にさっき着いたとこ。奇遇だね。

なーんて白々しくも偶然だと言えば、素直なことになのはは疑うこと無く信じてくれた。ええ子や。私、この純粋な子の目を濁らせようとしてるのかぁ…。堪んねぇなぁ…(良心の呵責)。

 

それでも私はやると決めたのだ。あの時私は神様に誓った、私のやりたい事をやるのだと。一度決めたら止められぬ、中途半端な誓いでは無いのだよ。

 

いや、まぁ、今は忘れよう。少なくとも幼少期は仲良くして幸せな思い出を作るって決めたんだから。

いくらそうしておけば、最期の時に後悔の念が大きくなって濁りも格別になるっていう下準備の意味があると言えども、楽しんでいいんだ(本音)。疑われても困るし(建前)。

 

おや?そういえばなのはさん、その手に持ってる本はどうしたの?はい。あー、うん、なるほど。私を待つ間に読もうと思ったのか。そっかー。

ごめんな?(良心の呵責)。ごめんね(未来を見据えて)。

 

とにかく遊ぼうか。身体に引っ張られてるのかなんなのか、遊び始めると時間を忘れて夢中になれるから。

今日は街の散策でもしようか。いつもより時間もあるし、私あんまりこの辺詳しくないし。

 

とりあえず、今を楽しむとしよう。

 




復帰のご挨拶と今後の展開についてを活動報告に上げましたので、良ければご覧下さい。

取り敢えず次回からアニメ本編行ければと思います。我ながら、本当に見切り発車しかしないな。


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貧すれば鈍する。富めればどうなる?

主人公、名前どうしようか。


なのはの本格的な攻略に乗り出した私の前に、大きな壁が立ちはだかる。会えない時間が二人の心を引き離すのか!

次回!なのは、塾に行く。我が家に私立小学校に行かせる余裕はありません。

私の未来はどうなる!?

 

「いやまぁ、どうしようもなかったんですけどねー。」

 

小学生になるって悲しいことなの。とでも言うかの如く、ある日を境になのはと交流を深める機会が減った。勿論小学校に通うようになれば遊ぶ時間は減るし、他の友達が出来れば時間をそちらに割くようになるのは必定。

それは私も理解していたが、まさか入学先が普通の公立小学校だとは考えておらず悲しい事にそれを知ったのは休みが終わる間際の事であった。なお、仕方なくなのはに会える時間が減ると言ったら泣いた。私も泣きたくなった。

 

「いや、確かにおばあちゃんに私立の学費払わせるのは無理があるとはいえ、気づけよ私…。」

 

転生して浮かれぽんちになっていた私に、結果的に冷水をぶっかける事になった祖母の顔は、とても申し訳なさそうにしていて色んな意味で心苦しかった。

 

それでもできるだけ鍛錬の時間を削り、放課後は公園でなのはを待つようにして会う時間を確保していたが結局休日に遊ぶ程度に会う時間を減らすことにした。

というのも鍛錬の時間が欲しかったというのもあるが、小学校で馴染めずなのはが孤立したらなのはの為にならないのではないかと考えたからである。

 

お前、なのは達の顔を曇らせたいんじゃないのか?と思われるかもしれないが、誤解しないで欲しい。

 

私は別になのは達に不幸になって欲しい訳では無い。むしろ人並みの幸せを土台に持ち、常識と倫理観を確保した状態で絶望して欲しいのだ。

 

ほら、そうしたら自殺や発狂なんてしにくいと思うし、何より私は別に彼らに依存して欲しい訳じゃない。結果的に心の一部を占める存在になったとしても、消えないトラウマになりたいだけでそんな大それたものに成らなくていい。ここ重要。

 

想像してみて欲しい。例えば私が彼らが原因となった事故や事件で死んだ時、自責の念に押しつぶされそうになりながらも、両親や家族の顔がチラついたり理性的な部分が「不幸な事故だった」と考える度、自分への明確な罰を与えられることも無く、かと言って今まで培った倫理観によって自殺や自傷行為に走ることもできず、己への不甲斐なさや心の弱さに打ちひしがれ、男であるというただそれだけのプライドでそれでも生きることを続けなくてはならない…。

 

最高じゃない?

 

心を折ると人は死んでしまうが、心に穴が空いても人は死なない。こういうことなのだ。

 

逆に愛されたいなら心が折れるように仕向けてそこにつけ込むか、自分がその人の心を支える柱になればいい。例えばなのはと会う時間をこのまま持続して、彼の視野をできる限り狭めてやって、彼の選択全てを肯定してやればいい。そうすれば簡単になのはの心の中に潜り込めるだろう。

 

「突き放すって、大事だよなぁ。」

『What are you talking about?(何の話ですか?)』

「こっちの話だよ。」

 

しかし現実も私の考えもなのはと少し距離を置くことを肯定している。それは一種の拒絶であり、子供心には裏切りに感じる事もあるだろう。

私立と公立では授業内容も違うし、放課後に取れる時間も大きく変わる。他の友達と遊ぶ時間も必要だからって言うのはあの時点で他に友達のいなかったなのはには堪えただろう事は想像に難くない。

 

それでも結果的になのはは親友と呼べるアリサとすずかとめぐり逢い、初めての同性の友人(2人も性転換してた)を作り、小学校での自分の居場所を作り上げることが出来たのだから私としては文句はない。

その後なのはは彼らと共に塾に通うようにもなり、私と会う頻度は今では月に一、二度休日にあるかどうかとなっているが、それも文句はない。

 

それが寂しくないかと言われると肯定するしかないがその結果作れた時間で付け焼き刃とはいえ鍛錬もできたし、簡易神棚作って祈り捧げていたら時間は割と早く過ぎていった気がする。

他の友達?なのはに言ったのは方便で、私に他に友達が出来るわけないだろう!?神棚制作に精を出してる間に友達グループが既に出来上がっててどうしようもなかったわい。

 

あぁ、そういえば月村すずかが存在し、なのはの父である士郎さんも存命であったのでこの世界は女神様にお願いしたように、なのは世界にほど近い存在である事が確認できた。ヤバそうな事件の類もなかったので原作の事件を気にしていれば良さそうで少し安心した。なお、兄の恭也さんはお姉さんになってた。美人だった。

 

 

 

――――誰か助けて!

 

『Master.』

「リリィ、声の主の位置は分かる?周囲に人の存在は?」

『There are three people.(3人います。)』

 

脳内に直接届く声。記憶のそれより若干高い気がするが、それは私の望んだせいだろう事は直ぐに合点がいった。

やっと、原作が始まったのだ。

 

元々、今日は妙な魔力反応があるからとリリィに言われ、警戒ついでに外に出てきたのである。時期からして十中八九ジュエルシードだろうと考えていたが、間違いなかったらしい。

 

「なら少し様子を見ようか。ここからだと距離もありそうだし、何より一般人に魔法がバレるのは避けたい。」

 

なんて適当な理由をリリィに言いながら自分の取るべき行動に思考を巡らせる。巡らせると言うよりも再確認の意味合いが強い。何せ考える時間だけはめちゃくちゃあったからね。

原作通り彼らがユーノを保護するなら今夜からジュエルシードの捜索が始まり、それを援護する。もし保護しないなら私が保護した上で、ユーノとなのはを会わせるように動けばいい。

 

『She was protected by them.(どうやら声の主は彼らと同行するようです。)』

「了解、なら取り敢えず接触は控えようか。」

 

ベンチから下りて、リュックに借りてきた本をしまう。この公園で本を読む事も暫く無くなるだろうな。

そう。なのはが魔法に目覚めるということはつまり、念話ができるようになるということである。それ即ち携帯電話などという高度文明機器を持っていない私にとって、それはとても大きな進歩なのだ!

 

「まさか1番の障害が金銭面とはなぁ…。」

『What are you talking about?(何の話ですか?)』

「…こっちの話だよ。」

 

やっぱり連絡手段少ないと疎遠になるのよなぁ。メール教えて?って言われた時に愕然としたもの。

いや、この世界にスマホがまだ無いって事も驚いたが、骨董品と揶揄っていたものにマウントとられるとは思ってなかった。

 

「なのはも最近の子だよなぁ。」

『My master has a lot of soliloquy.(また"こっちの話"ですか?)』

「私のデバイスが今日も可愛くて辛いわぁ…。」

 

二年で本当に遠慮なくなったね、リリィ。

 

 

 

 

 

感謝の手紙とみかんの入っている編みかごに向かって、合掌しながら祈りを捧げる。

いつか絶対簡易じゃない神棚作りますからね、女神様。

 

『Please hurry up! Master!(急いでください!)』

 

願掛け…そう、これは願掛けだから。必要な事なんだよリリィ。もしかすると加護の1つでも得られるかもしれないだろう?別に時間稼ぎじゃないから…。

 

――――聞こえますか、私の声が。

 

うん、覚悟は決めた。決めたからそんなにピカピカ光らないで。今は夜だから目立つとまずい。ほら、バリアジャケットも着たよ。

 

「リリィ、お婆ちゃん起きちゃうから、あんまり五月蝿くしないでね。」

『It's an emergency now.(今は緊急事態です。)』

 

すすすっと音を立てないように戸を引き、廊下の窓から外に出てリリーに音を消してもらうようにお願いして宙に浮く。目指すは声の主、ユーノの元へ。

 

「取り敢えず声の所に着いたら周囲の索敵。状況を確認したら場合によっては戦闘行動に入るから、人払いとシールドの準備よろしくね。」

『Yes Master.』

 

あまり煩くないように少し高度を確保してから空を飛ぶ。残念ながらはなのはの家は別方向なのでなのはの姿を確認するのは難しいだろう。とはいえ飛んでる間はやることも無いのでスコープで動物病院の方を覗いてみる。

…なんか荒れてるなぁ。

 

「あそこの病院だったよね?」

『Yes.』

 

ユーノの声が聞こえる頻度が減ってきた気がするが、おそらく襲われている真っ最中なのだろう。つまりまだなのはと合流していないということである。急ぎすぎない方が良かっただろうか。

 

「リリー、周囲に人影は?」

『There are one people who is your friend Nanoha.(一人、マスターのご友人がいます。)』

 

どうやらちょうど良かったらしい。ユーノと接触するかどうか少し様子を見たいけど、どうするかなぁ。

 

「距離近いならサーチャー飛ばして様子を確認したいんだけど、スコープに映せる?」

『OK Master.』

 

あー、もうほぼ病院まで来てる…、というか私より先に着きそうでは?これは実はちょうど良かった感じだろうか。

とはいえ、今ここで飛び出すのはまずい。2人には逃げながら状況を確認してもらい、流れで魔法少女…もとい魔術師になってもらわねばならない。しかしリリィに事情を説明するのは今更難しいし、何か適当な言い訳…言い訳…。

 

『…Why are you hiding?(…なんで隠れてるんですか?)』

「いや、何か改めて考えたらバリアジャケット姿見せるの恥ずかしい気がして。大丈夫、必要になったら出ていくから。今は様子見しよ?」

『Master…』

 

いや、だって普段こんな短いスカートとか履かないし?バリアジャケットのイメージがなのはで固定されてる私のバリアジャケットが原作なのはのそれと似通うのはね?私今から本人の前でコスプレするみたいなもんよ?

あ、なんかマジで恥ずかしくなってきた。

 

「声の主はあそこのオコジョ?」

『She is a ferret.(彼女はフェレットですよ。)』

 

あれ?オコジョは別の魔法使いだったか。こっちに来てから、細かい部分の記憶が曖昧になってきている気がする。自分の記憶を過信しないように気をつけないとな。

 

二人が移動するのを確認して、追跡を再開する。黒い靄の化け物も一緒に追いかけているが、これから初めての戦闘になるかと思うと少し身震いする。

ぶっつけ本番。訓練だけで経験値ZEROの初戦闘である。

 

なのはとユーノの会話は聞き取れないが、二人の動きが止まった瞬間が飛び出すタイミングだ。イレギュラーは無いと思うが、靄の化け物の動きは気にしておいた方がいい。

 

「リリィ。いつでもシールド張れる様にしておいてね。」

『Yes. Master.』

「行こう、リリィ!」

 

靄の動きに追随する様にスピードを上げる。なのは達を庇える位置に着地して、防御姿勢!

あぁ、なのはの驚いた顔久々に見た気がする。美少年やなぁ…。

 

「ごめん!勢いよく飛び出してきたけど対処の仕方とかよく分かってない!時間稼ぎはできるから、そこのフェレットさん指示ちょうだい!」

 

戦う意思は見せつつも、頼りにはならない様に言葉を選ぶ。こうすればなのははレイジングハートと契約してくれる筈。それでダメそうなら少し怖いが目の前でやられるしかないだろうか。

しかし、初戦闘がよく分からない生物というのはかなり怖いな。展開が分かっているから動けているが、私は戦闘にはあまり向いてないのかもしれない。

 

何にせよ、これで原作に介入できた。覚悟決めて行こう!




女神「愛(信心)が重い。」


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その日君は、運命と出会う。

戦闘描写の練習中。どうにもチープになりがちなのです。


なんやかんやと戦闘を終え、携帯電話のメアドを聞くように念話が通じるかなのは達とやり取りをして昨日は家路についた。

基本はサポートに徹してなのはの成長を妨げないようにしていただけなので、怪我などはなくさらっと解決してしまった。…バリアジャケットがペアルックみたいになったのだけが少し気掛かりではあるが、そうそう他人に見られる事は無いので気にしないことにした。

 

それにしても普段から狙撃や射撃に重きを置いた訓練をしていたので近接戦闘の後は暫く腕の痺れに似た違和感に慣れるのに時間が掛かった。

しかも戦闘の興奮冷めやらぬままに寝床に入ったので、あまり眠れないまま一夜を過ごすことになり、おばあちゃんから寝不足を指摘される事になったが夜間の外出についてはバレていないらしいので胸を撫で下ろした。夢見が悪かったと言えば、誤魔化されてくれたのでとりあえずは大丈夫だろう。

あ、一緒に寝るのは大丈夫です。動きにくくなるし。

うん、今度の休みはおばあちゃんに孝行しよう。ごめんね、おばあちゃん。おうどん美味しいよ、いつもごめんね。

 

まあ、我が家の人間関係がギクシャクしてるのは置いておこう。今はジュエルシードをどうするか、それが重要なのだ。

 

基本方針はなのはとユーノに協力する形でジュエルシード集めをして、封印術式がリリィでは修得が難しいらしいので、私は捜索と有事の際の戦闘補助ということになった。

封印術式が覚えられないというのは予想外だが、原作を大きく変えずに済みそうなのは安心である。

なのは曰く、女の子を戦わせるなんてとの事だったが、魔法使いとして割り切った考えを持っている同性のユーノに援護射撃をもらい、むしろ魔法を知ったばかりのなのはの方が心配という空気を作り事なきを得た。

また、その流れを利用してなのはにユーノの面倒を…もとい

ユーノになのはの家に住んで、魔法を教えてあげるように言っておいた。

 

「そういや、ユーノの性別とか人間形態の事とかなのはに言ってないや…。」

 

このままだとなのはの方がユーノにラッキースケベを決める事になるのか…。まぁ、それはそれで面白いからいいや。何より私がそれを知っている事を説明する方が難しいだろうし、ユーノには悪いが犠牲になってもらうとしよう。

 

「…なんの話?」

「いやごめん。こっちの話。」

「それで、ジュエルシードを渡してくれるの?」

 

現実逃避もそろそろ限界かなぁ。目の前でどこか張り詰めた空気を纏う少年にからかい半分、時間稼ぎ半分で適当なこと言ったのだが、流石にそろそろ此方がはぐらかそうとするのに気づいたらしい。5分どころか1分もたなかったや。フェイトはピュアだから騙せるかと思ったんだけど、流石に無理だぁね。

 

「実はこの宝石を落としたって人と知り合いでね。もしかして、君もその人に頼まれたの?」

 

なら切り口を変えるとしよう。誤魔化すようなら色々とつっこめばあと少しくらいは時間稼ぎもできるだろう。その間になのは達がこちらの様子に気づくかもしれないし、何にせよ近接主体のフェイトと私の相性があまり良くない以上、この距離で勝てるとは思えないので時間稼ぎに賭ける他ないのである。

 

「…知らない。でも、ジュエルシードが必要なんだ!」

「うーん、気持ちいいくらい潔い返事だぁ…。」

 

賭けは負け。真っ直ぐストレートに言われてしまうと敵対する他ないんだよ、これが。

 

「set up LiLy.」

「バルディッシュ!」

 

まずはできるだけ距離を取ろう。主導権を握っている以上、先手はこちらのものである。とはいえスピードで勝てるとは思えないので空中に爆速で逃げながら牽制射撃といこう。

誘導弾を仕込むだけの余裕は無いので、ただスコープに映る標的を捉えて引き金を引くだけの偏差も何も無い射撃。だが、真っ直ぐ逃げる私を追いかける以上、フェイトも直線的な動きになる。

トップスピードを出させない様にする程度でフェイトに当たる様子は微塵も無いが、今は近づけさせない様にするだけでいい。

 

『Photon Lancer.』

「Fire!」

 

飛んでくる弾をいくつか撃ち落とす様にして、姿勢制御はリリィに任せて牽制射撃を続ける。フェイトの使う射撃魔法が誘導型で無いことを今程感謝した事は無い。

 

「リリィ、操縦完全に任せてるけど後ろ向きでも平気?ちゃんと何かあっても避けれる?」

『No problem.(お任せ下さい。)』

 

ただ、後ろ向きに凄まじいスピード(当社比)で足も着かずに飛んでいるので私の恐怖値はマッハで溜まっていく。

それもあって残念ながら他のことにあまり思考を割けないので、フェイトに射撃する事以外にはなのはに念話を一方的に送り付ける程度しかできない。へるぷみー。

 

そろそろ対応されつつあるのか明らかにフェイトとの距離が縮んできている。曲射弾なんて咄嗟に撃てないし、無理めな速度を出す他ない。気絶しそうで嫌なんだけどなぁ。

 

「行こう、バルディッシュ。」

『Scythe mode.』

 

この短時間で射撃の癖が見切られつつあるのは気づいていたが、まさか射撃ではなく近接を選ぶとは。私の牽制射撃をほぼ移動することなく躱し、直線的に突っ込んでくるフェイトの姿は正直恐怖以外の何物でもない。

救援要請をしてからまだあまり時間が稼げてないし、かなりまずい。というか私フェイトと対面してから結局5分ともってなくないか?

 

悲しいが、こと戦闘においてフェイトやなのはは天才である。射撃訓練をしてきたからと言って、そんな彼らに戦闘経験値ほぼゼロの私がどうにかできる筈がなかったのだ。だからといってどうにかできる手段が今現在ある訳では無いので止めることも出来ない。

というか、あからさまにトップスピードが負けている。

 

「リリィ!どこか着地できる場所は!?」

『That's over there.(あそこです。)』

 

それならばいっその事、飛行も射撃も気にしなくてもいい地上で近接戦闘に切り替えた方がまだ何とかなる気がする。残念ながら気がするだけだが。

 

「ジュエルシードを渡して」

「ごめんだけど、危ない物は子供に渡せない…ッな!」

 

いつの間に接近してたのか振り下ろされるバルディッシュを射撃デバイス本体で受け止めるようにしながら、払われる勢いのままに地上に向かう。

用意もなくシールドを広く張れる程戦闘慣れはしていないので、普段からデバイスの保護用にと張っているシールドを利用したが、思っていた以上に怖いし手が痺れる。これはラウンドシールドか何かを早急に覚えるのが課題かもしれない。守備は苦手なんだけど。

 

「いっったぁ!」

『Please be quiet.(うるさいですよ。)』

 

想定よりも出たスピードによる衝撃を受け流しきれず、着地の際に足から変な音がした気がする。折れてないと思うけどめちゃくちゃ痛い。5ミリ位浮いて戦いたい気分だ。

 

「君じゃあ僕に勝てないよ。だからジュエルシードを渡して。」

「1合しか切り結んでないのにエラい自信ですこと。」

「…でも事実でしょ?」

 

当たり前のことに疑問を覚えました、みたいな顔されると流石に怒るぞコノヤロウ。

一先ず近接用にと準備しておいた剣型デバイスと射撃デバイスを入れ替えて正眼に構え、迎撃の意志を見せる事で威嚇する。

足が痛いので待ちの構えである。正直剣道の基本くらいしか知らないので何とかなるとも思えないが、知っている構えがこれしか無いので先人の知恵に頼る他ない。バッター持ちもできるが、私ではあの攻めの姿勢では戦えない。

 

「こんな危ないもの集めて何に使うのさ。」

 

分かりきっているがとりあえず聞いてみる。正直喋りすぎたせいで相手して貰えないかもしれないけど、聞くのはタダ。おうおう、その美少年ボイス聞かせてくれよ()。

 

「…君は知らなくていい。」

「顔に知らないって書いてあるぞ。」

 

バッと手を顔に持っていく辺り、やっぱりこの子ピュアなんやな。正直そんな苦虫を噛み潰したような顔で絞り出すように言われたら私じゃなくても何となく分かるぞ。

 

「誰かに頼まれたのか、やらされてるだけなのか。」

「ジュエルシードを渡して。」

「…他人を傷付けてでも必要なのか?」

「煩い!」

 

このまま話をしながら仲良くなって愚痴のひとつでも聞き出してあげたいが、残念ながらフェイトの方は時間切れらしい。

癇癪を起こした訳では無いようで、怒りに任せて攻撃してきている感じはしない。初対面ならこんなもんか。

 

「問答無用かよ。」

 

有言実行。ふわりと身体を浮かせることでバルディッシュの一撃を貰うことなく衝撃を流しきる。勢いがありすぎて視界が回るがその辺はリリィに任せてある。私はただ距離を取るようにブーストを吹かせるだけでいい。

 

「逃がさない!」

 

私にできるのは遠距離と搦手ぐらいのもので、近接戦闘なんて今ですら目が追いついて行かない。ただ、鎌というのは薙ぎ払いが主体となる。つまるところ剣の腹を身体の前に掲げておけば手を斬られない限りある程度は防ぐことはできるのだ。申し訳程度にバリアジャケットもあるし、耐えるだけなら何とかなるはず。

 

「腕痺れてきた!苛烈すぎやしません!?」

『BE QUIET!(煩いですよ!)』

 

目に見えてシールドが削れているような気がする。射撃だけじゃなくて守りも鍛えるべきだったかなぁと思うが今はどうしようもない、現実は非情である。

 

「いい加減にして!」

 

フェイトさん、プチ怒である。まぁ雑魚相手に粘られると腹が立つのは仕方ない。

…けどやっぱりまだまだ子供だね。

 

「Lily,wake-up.」

『Aye aye ma'am.(了解です)』

 

瞬間、視界を眩い光が破裂音と共に遮った。

互いに距離を取るように離れるが、フェイトが咄嗟に退く先は空か真後ろ。そう。今まで私たちが移動してきた真後ろである。

 

「わっ!?何これ!バルディッシュ!」

『Sorry,Master.』

 

ねこだまし最強伝説。

空いた思考で仕掛けておいたバインドを発動させてフェイトを一時的に無力化する事に成功した。

破裂音にびびった相手を捕縛して逃げる為の時間を稼ぐための緊急用の秘策である。フェイトの攻撃を適当にいなす傍ら黙々と術式と魔力を練っていたので、若干おざなり過ぎてバリアジャケットがボロボロになっているが、結果的に間に合ったのでよし!

 

しかし捕縛されたフェイトくん、えっちでは?これは薄い本案件待ったナシ。私色(の魔力)に染めてやるぜ!と行きたい所だが、今の私に余裕などない。魔力は殆どカラッケツである。

 

「悪いけど、君と真正面からやり合うつもりないから。」

 

じゃあね。と一方的に告げて飛び立つ。えっちなフェイトの姿を網膜に焼き付けてからさっさと撤退。スタコラサッサだぜ。

 

フェイトも暴れている様だがそのバインドは今使える魔力を全力で注ぎ込んだものなので、少なくとも1分は拘束してくれることだろう。それだけあれば逃げおおせる筈だ。

これに捕らわれたら、大魔王閣下(なのは)ですら逃れることはできないと自負している。…1回本当に試してみようかな。

 

しかし、これだと明日の散策は無理だなぁ。なのはには悪いけど、明日は一人で動いてもらうか、ちょうどいいしフェイトについて作戦会議するのも

 

 

『Warning!Master!(危ない!マスター!)』

 

 

襟首を引っ張られた様にリリィに身体を無理矢理動かされた衝撃の直後、あまりにも暴力的な風圧が目の前を通り過ぎていく。

まさかリアルで前髪を風圧に持っていかれる経験をするとは思わなかった。

 

「大丈夫かい!フェイト!」

 

鮮やかな髪色。しなやかな身体。そして何より()()()()()()()()()()

フェイトの使い魔、アルフの乱入である。

 

「逃げるよ!」

『Of course.(勿論です。)』

 

フェイト一人ですら厳しかったのに、二人がかりで来られてはたまったもんじゃない。幸いアルフにフェイト程のスピードはない。全力で空に逃げれば撒けるはずだ。

 

「悪いけど、あんたはここまでだ。」

 

背骨が軋むような音と何かが抜けるような喪失感が自分の身体からきているものだと理解すること数瞬。

リリィの呼びかける声を聞き取る事ができないまま、私は意識を失った。

 




瞬発力で獣に勝てる人間は居ない。


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黒髪美人のクール系女子大生(彼氏持ち)

主人公の幸せは明確なのに、ハッピーエンドが想像できない稀有なパターン。


なのは達全員を曇らせるというのは、もしや贅沢が過ぎるのではないだろうか。

ずごご…と緑茶を啜りながら庭を眺めているとふとそんな事を思った。実に長閑でゆったりとした時間が流れている中で何考えてんだお前と思われるかもしれないが、私は気づいてしまったのだ。

私如きが複数人の心を占めるのは問題なのでは?それはある種のハーレムなのではないか?と。

 

ハーレムはいけない。多くの推しを侍らせる程の甲斐性を持つものだけが至れる1つの極地。

それが悪い訳じゃないが、実物を見たことない私には実現出来るイメージが湧かないので少し厳しいものがある。

それに転生して皆に好かれて「私達いつまでも友達だよ(はぁと)」みたいなよく分からない生き方は出来ない。十中八九胃に穴が空いて気が狂って死ぬ。

 

では、誰か1人を選んで重点的に曇らせるのが良いのだろうか?それもまた否である。

それはもう、ただのイチャイチャである。いたいけな少年を誘惑して逆光源氏するだけの育成ゲームをする為に転生してきたのではない。目的が曇らせる事とはいえ、中間にイチャイチャがしっかり入るのはそれだけで目的を見失いかねない。そうなっては女神様に申し訳が立たないし、気が狂って全身から血を吹き出して死ぬだろう。

 

それに背中の激痛と引き換えに網膜に焼き付けたフェイトの眩いばかりの白いおみ足を見て思ったのだ。

「あ、アリやな。」と。

 

元々転生などという精神的に不安定になる経験をしている私にとって、やはり性別を超えてトゥンクする事は容易に過ぎた。性別的に見ると間違ってはいないのだが、思った以上に自分がチョロかった事がショックだった。

戦闘の興奮や敵として相対した事や、色々と精神の箍が外れていたというのもあるが好きな物に性別は関係なかったよ。

 

画面の中にしか居ないはずの推しを前にして理性が蒸発するのは必定。触れて話せるアイドルよりも近くに居られるのに仏僧宜しく「足るを知る」などと言っていられるかって話である。

 

「我ながらなんて業の深い人間なのだ…。」

『My master has a lot of soliloquy.(また独り言か。)』

 

なのはと初めて会った時、つい身体が動いてしまった時点でどうしようもなかったのかもしれない。あの時はそこまで考えていなかったが、無意識下で「陰のある美少年いい…。」とか思っていた可能性だってゼロではないのだ。

 

私の中にある想いは純粋な曇らせたいという欲求であることは揺るぎない事実であるが、今ならなのは達に「長生きして(はぁと)」と言われたら曇らせも忘れて健やかに生きる自信すらある。頭でも打ったのではないかと疑うほどの思考のブレであるが、私は正常である。

 

「いや、背中思っきし殴られて吹き飛んだわ。頭ぶつけたっけな。」

『You are always a strange.(それは頭をぶつけたせいでは無いです。)』

 

あ、そう。

じゃあやっぱり私がチョロインだった事が露呈しただけらしい。

しかし深い関係(意味深)にならない程度に近くに居て、失うには大きすぎる近しい存在になるにはどうすれば良いのだろうか。

 

それにしてもおかきに手を伸ばしながら、答えの出ない問題に頭を悩ませるのも1つの贅沢だなぁ。なのはは頑張ってジュエルシード集めをしているというのになんと罪深いのだろうか。バリボリ。

 

「あ、思いついた。リリィ、恭さんが今家に居るか分かる?」

『Yes Master.At-home.(ご在宅ですよ。)』

 

そう、考えても分からないことは知っている人に聞けばいいのである。

 

高町恭弥。もとい、高町恭はハーレムを築けるゲームの主人公であるはずの存在なのだ。現実は忍さんとラブラブしている花の大学生であるが、そんなことは関係ない。

朴念仁気取りながら無自覚にハーレムを構築する、その精神性を暴きたいのである。ちょうどなのはも居ないし恭さんの口からバレることもあるまい。

あと、ついでに近接戦闘の手ほどきを受けたい。

 

 

 

「それで、道場まで押し掛けてきたのか。」

「はい!よろしくお願いします!」

「…まぁ、いい。なのはは剣の才能はからっきしで子供に教えた経験はないが、それでもいいなら好きにするといいさ。」

 

乙女は強くなくっちゃね!というガバガバな説得に目を瞑ってくれる恭さんは天使かもしれない。

戦闘の心得だけでも教えて欲しいッス。うっす!

 

「基本的に運動神経がどうしようもないレベルでない限り、近距離戦を行うアドバンテージというのは鍛錬の量に比例すると言っていい。」

 

努力こそ力。実に夢のある言葉である。

 

「しかし、努力量こそ同じでも歩むスピードは変わってくる。所謂才能と呼ばれる物が目の前に横たわっている事実は知っておいてほしい。」

 

天才剣士が言うと説得力ありますね。大丈夫です、人の身のままに残像作れる様になれるとは思ってませんから。

 

「今から適正とどの程度動けるかを見ていくから、自由に動いてくれ。」

「自由にってどうすれば、ばぁ!?」

 

今の今まで正座で目の前に居た恭さんが消えたと思ったら眼前に竹刀の先が現れた。神速とかいうレベルではない。

 

「あぁ、気にする事はない。今から私が切り掛るから好きに動いてくれ。」

 

パシン。という小気味よい音を立てておでこを打たれた後、流れるように竹刀を握らされた。これは、判断を誤った可能性が出てきたな。

子供用と思われる軽い竹刀を握ってみるが、手に馴染む感覚は特にない。自分の掌の柔らかさを再確認しただけである。

 

「安心してくれ。痛い思いはさせない。」

 

そう言って今度は自前の竹刀を振るう。耳に風を切るやばい音が届く前に脇腹に寸止めされていた。今度は初動は見れたが、過程の一切が分からなかった。

 

「ただ怪我をさせない自信はないから、全力で避けて欲しい。」

 

アッアッアッ。

 

「取り敢えず1時間、様子を見るとしよう。」

 

手が爆発したのではないかという衝撃が突然やってきた。それが打ち合ったゆえのものだと理解して、目の前にめちゃくちゃいい笑顔をしている恭さんがいる理由を理解した。どうやら無意識に竹刀を身構えていたらしい。

 

「君はスジがいい。気配を察知する能力は十分と言っていいだろう。」

 

急激に距離を取られ唖然としていると、今度は頭に軽い衝撃が来た。いつの間にか後ろを取られていたらしい。訳が分からない。

 

「見えている物に意識を向けるなとは言わない。だが、気配を無視してはならない。」

 

パシンといういい音をさせて今度は恭さんが完全に消えた。超人怖い。

無闇矢鱈に動く訳にはいかないので視界を巡らせる。なんか右から嫌な感じ!

 

「よしよし、やはり意識を向けると反応できるね。次は視線に反応できるようになろうか。」

 

今度は竹刀が吹っ飛ばされた。防ぐ度に威力が上がっている様な気がするのは気の所為ではないだろう。

次の攻撃を防げなかったら…恐怖で身体が強ばるのが分かった。

 

「さぁ、構えなさい。」

 

私の記憶があるのはそこまでである。

 

 

 

 

 

強くならねばならぬと、なのはは心に誓った。

 

訳の分からぬ化け物に喋る動物。初めて感じた命の危機にそれを救ってくれた幼馴染。なのはの中の常識は確かにあの日崩れ去った。

 

――目標の捕縛に成功。とどめはお願い。

 

持ち前の正義感や特別への憧れなど、様々な理由からなのはは非日常を受け入れる決断を下したが、それでも決断の多くを占めるのは成り行きである。

 

目の前には先程まで暴れていた化け物が、身動きひとつ取れずに佇んでいる。巨大な体躯は恐怖でしかないが、それも危険がないならデカいだけの的である。

大きな理由がある訳でもなく、めいいっぱいの全力で、天才の域であると言われた魔力の奔流を化け物に叩きつけた。

 

男心を擽るビームと女の子みたいなピンク色の自分の魔力の色に、なのはは内心複雑であった。しかしそれを言葉にする力がない事と、誰かに言うには気恥しいという事実が、堪らなくもどかしかった。

そしてそれ以上の事を考える余地がない程度には、なのはは今成り行きのままに生きていた。

 

「封印完了。お疲れ様、なのは。」

 

ユーノが労いの言葉を掛けてくれる。自分は力任せに魔力を振るっただけなので、爽快感はあれど疲れなど微塵も無かったのだが、何となく直前の思考が恥ずかしくて無難な言葉が口をついた。

 

「なのは、どうかした?」

――特に怪我も無いみたいでよかった。こっちは引き続きジュエルシードの捜索にあたるけど、一度合流しようか?

 

返答に違和感を感じたのか更に追求をするユーノの言葉を遮るように、彼女から念話が入ってきた。それに一も二もなく頷いて、ユーノの追及を無かったことにしたかった。

ピンク色の魔力はダサくないかなどということをバカ正直にユーノたちに話すほど、なのはは子供ではなかった。

 

「彼女はなんというか、仕事熱心だね。」

 

離れた場所で狙撃していた彼女が飛んでこちらに移動しているのを眺めていると、ユーノがふとそんな事を言い出した。仕事熱心かどうかはよく分からないが、巻き込まれたなのはと喋るフェレットの言葉を信じて力を奮う彼女は、親切ないい人だとなのはは思っている。 

 

「そうだね。なのはの友達はなのはと一緒でいい人だ。」

 

照れくさいことを平気で言うフェレットである。だが友人を褒められるのは悪くない気分なので、深くは突っ込まないようにした。

結局自分も彼女と昔のように話せる事が嬉しくて仕方ないのだ。若干不完全燃焼だったなのはの機嫌は、とうに治っていた。

 

そうして今日の探索を一度終了して遊びに行こうとしたところで、なのはは友人と約束をしていた事を思い出した。

なのはには、こういううっかりとした部分がある。大きな失敗に至った事は無いが、買い物が終わってから足りないものに気づく様な些細な失敗がよくあるのだ。

 

なのはには、「友達の友達は友達。」「一度会ったら友達。」という世界平和もかくやという考えがある。実際は目の前の幼馴染に影響を受けた故のものなのだが、影響を与えた本人は「これが主人公が持つピュアさか…尊い。」とか考えているのだが、今はそれは置いておくとしよう。

 

そんな考えに基づいて彼女も一緒にと誘うのだが、断られてしまった。曰く、初対面の状態で突然約束していないのに混ざるのは如何なものかというものである。

彼女のデバイスは、

『Why do you say a strange thing?(何言ってんだこいつ。)』

と言っているが、気持ちが分からないでもない。やはり一度彼女も含めて遊びたいと一言入れるのが礼儀だということはなのはにも分かる。ただ気のいい二人の事、突然混ざっても受け入れてくれるだろう事は想像に難くない。

 

結局、今回は彼女の気持ちを優先することにした。

これから暫くは一緒に行動するのだし、今日約束を取り付けてしまえば次は巻き込んでもいいだろうという割と打算的な理由であった。

そういう意味ではなのはは子供らしくなかった。

 

 

 

 

強くなろうと、なのはは心に決めた。

 

 

謎の魔術師による襲撃で、彼女から救援要請があった。不運な事に偶然ジュエルシードを見つけてしまった所を補足されたのだという。

なのはは走った。友人2人を何とか誤魔化して飛び出した時には最初の念話から10分近く経過していた。

 

戦闘しているのか念話は途中で切れてしまい、こちらからの連絡も出来なくなっていた。ユーノの助けを借りて彼女の魔力反応を頼りに移動している間、なのはは気が気でなかった。

それこそ、公園の隅ですやすや寝ている姿を見て、どっと疲れが押し寄せるまで生きた心地がしなかったのだ。

 

ジュエルシードは取られたものの無事だった事を彼女のデバイスから聞いた後は、幼馴染が起きるまで迷惑料代わりに頬を抓って玩具にしていた。抓るたびに魘される姿を見て、ついついやり過ぎてしまった気もするが、吹っ飛ばされた時に顔も打った事にして彼女の疑問は握りつぶしたので、問題はなかった。

 

本人は呑気に近接戦闘クソザコナメクジなどとよく分からない事を言って笑っていたが、隣で聞いているなのはは笑っていられる状態ではなかった。

リリィによると魔力枯渇と処理限界による精神疲弊が起きた結果意識を失うことになったらしい。早い話が無茶をしたということである。

 

なのはは男の子であった。父や姉達に無意識に影響を受ける程には正義感が強く、また人を守ることを是と言える精神性の持ち主であった。

 

無茶をしないように言い含め、少なくとも今週は魔法を使わず大人しくしておくように約束させて、彼女を家に送っていった。

 

念話を使って対策会議を行う程度に済ませ、ジュエルシードと共に謎の襲撃者にも気を配る様にしつつ次の日からの捜索はなのは単独で続ける事にしたのだが、これが案外大変で、ユーノと二人あっちへふらふらこっちへふらふら。人目を気にして念話をしつつ問題があれば魔法を使ってガチンコ勝負。威力を突き詰めて殴る思考が矯正されるのにさほど時間は必要なかった。

 

ユーノとレイジングハートのサポートがあったとはいえ、2人がかりで倒す楽さを知ってしまっていたなのはは、身勝手ながら幼馴染がさっさと戦線復帰するように願ってしまうのであった。

 




「恭さん、手がチマメで痛いです…。」
「Σ(・ω・;ノ)ノ!」


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日常の象徴

ジャブ程度の説明回となります。次話は主人公の生い立ちとかの話になる予定。


人の領域に収まらない人間というものを甘く見ていた。

当然手加減はしてくれていたのだが、あくまでそれは寸止め。ミクロのレベルでの正確な動きと直前まで止まらない勢いは、正面から受けた場合ガチの打ち合いと何ら変わらずこちらの竹刀を打ち据えてくる。

あの後永遠とも思える間、涙目になりながらも確認という名のイジメを耐え抜き、竹刀を握る握力も無くなった頃合いになってようやく解放されることとなった。

 

自分からお願いしておいて途中で音を上げるのはどうだろうかという謎の責任感と、恐怖に身が竦んで途中放棄の選択肢が頭から抜けていたので何とか乗り切れたが正直二度目は勘弁してもらいたいところである。

手がボロボロになってしまったせいで

「なのはには適当に言い訳して今週のイベントに参加しよう」

とか考えていたのに杖を持つにも手が痛すぎてどうしようも無いので強制的に一週間のお休みを享受する羽目になった。

 

ジュエルシードの事件はそのほとんどが初めの一週間に起こり、残りはフェイトとアースラ絡みになるので参加できないとなると私の影が一層薄くなってしまう。ただでさえなのはとは疎遠になりつつあったので『まほうをしってるおさななじみ』というおいしい立場を実質失うのはとてもつらい。(つらい)

フェイトがライバルをクロノが道を示す先駆者の立場を担う以上、私の出る幕というのはあまりにもないのである。添え物といっても過言ではない。

 

現在は血まみれの手で竹刀を振るわけにはいかないので、見取り稽古(見えない)をする程度で暇な時間は公園で借りてきた本を読んで過ごすという少し前のルーティンによく似た生活を送っている。3日もせずに公園の住人に逆戻りである。

 

とはいえ少し変わったこともあった。

原作と違って一人で動いている訳ではないからか、若干愚痴っぽいなのはという珍しいものを拝むことができた。力任せだとここが大変だとか、サーチャーの精度があんまりよくないから早く復帰してくれだとか、とにかく役得としか言えないなのはの様子が観察できたのである。

 

これが培ってきた信頼ってやつですよ!やっぱ幼馴染がサイキョーね!

 

などと愚痴を聞きながらウキウキしていたら、邪念が漏れていたのかほっぺたをぐりぐりされた。可愛すぎる抗議の仕方に天に召されるかと思った。

とはいえちゃんと相談にはのるようにしたし、サーチャーでの捜索は私の方でもやっておくようにしたのでふざけているとは思われていないはず。あぁ^~他愛ない日常の音ぉ~。

 

あ、私いろいろ悩んだ末みんなの日常の象徴になってやることにしました。

 

日常の象徴ってなんぞやとお思いの方もいるでしょう。例えば仲のいい幼馴染が事故死したとしますね。(物騒)

 

葬式とか出て遺影とか見て。それでも実感がわかないせいでよくわかんない状態になるわけです。でも、ふと面白そうな話を見つけて誰かに連絡を入れるわけですよ。誰に?

ふらっと出かけて行った先で自分は買わないけど好きそうな商品が目に入ってくるわけですよ。誰が?

長期休みに入って予定を立てようとするじゃないですか。去年は何してたっけな…となるわけですよ。もうわかりますよね?誰と何してた?っていう。

 

人間、嫌なことは忘れがちです。しかし人間は振り返る生き物です。幸せな思い出ほど脳裏をかすめやすく、それを思い出すことでダメージを受けることもあるわけです。それを乗り越えられるか逃げて傷が癒えるのを待つか、それは人それぞれですがどちらもとてもおいしいです(^q^)。

 

私は三人の日常を侵食します。

好きな食べ物、思い出の場所、初めての経験、共に頑張ったこと、そのすべてを共有し記憶のすべてに紐づけてみせます。なのは達の活躍を近くで見たいので無理ですが、例えるなら地球に帰ってきたら必ず連絡を入れる気になる仲程度の友好関係を結ぶつもりです。

 

その関係が突然消えてなくなるわけです。はやてくんは想像しにくいですが、なのはやフェイトは素晴らしい曇り顔を見せてくれるはずです。仕事一筋でプライベートがおろそかになるタイプなのは原作で分かっています。ペットロス以上のものは得られると確信をもっていいでしょう。

日々の日記や写真の一枚でも出てきた日にはさらにドン!てな感じです。

 

幸せが壊れる時にはいつも血の匂いがするととあるキツめのヤバい漫画でも言っていましたが、アレです。

 

なんとなく私の行動方針は理解していただけたと思います。

ハーレム?奴さん、死んだよ。あれは普通の人間が手を出していいもんじゃなかったんだ。と言いますのも、あれは天然、カリスマ、ギャップ萌えといった様々な要因を持った王者にのみ許された代物でした。

かくいう私も恭さんの天然クールな覇王のオーラに当てられて危うく陥落するところでした。可愛い美人とか反則です。

 

まぁそれは置いておきましょう。大切なのは私にできることは何か、ですから。

 

三人の(顔を曇らせる)為に、私の出来る(限りの邪悪な)精一杯を尽くしたい。うーん、我ながら嘘なんて一つもない綺麗な言葉に見える。献身的な幼馴染に見えなくもないな!

 

目下の問題となるジュエルシードは着々と集まっているし、フェイトとの再会もそう遠くは無いでしょう。なのはが私の仇討ちに燃えている様子は非常に男の子でよろしいのですが、状況を先に進めるためにもなのはにはさっさと負けを経験してもらいたい所です。

何も出来ない状態で待つのが退屈だからじゃないですよ?ホントダヨ?

 

 

「デバイスから手を離し跪きなさい。」

 

なんて軽く考えて思考停止してた罰ですかね。

 

「此方は時空管理局、クロノ・ハラオウン執務官です。貴女が現在起こっている事件の関係者であるという話が出ています。抵抗はオススメしません。」

 

フェイトとの再会よりも先になーんでアースラが来てるんですか?私が何したって言うんです!

 

「そちらのデバイスは紛失届けが出ている。悪いが無理にでも同行してもらう。」

 

リリィをそっと地面に置いて両手を挙げて、相手を刺激しないように指示に従って相手を見つめ返す。優位に立った瞬間口調が地に戻る青二才の言うことに従うのは不本意ですが、抵抗するメリットもないので大人しく従います。

怯えた振りもいいですが、ここは内心を隠さずさらけ出してやりましょう。見ろよこの動揺しきった混乱フェイスをよ!

 

「…状況の説明を求めます。」

 

「それについては艦へ移動後に詳しい事を伝える。ただ今は、君は我々魔法を使う者達の法律に触れた可能性があるという事を理解してくれればいい。」

 

拾ったデバイスに所有者が居るとか知らんもん!!

 

憐れ私はアースラ艦に引っ立てられる事となりましたとさ。BADEND。




いや、終わらんよ?


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夢にまで見たよな世界で

争い、平和の中で絶望させたい。


投稿が遅れて申し訳ありませんでした。ウマ娘に浮気してました。


どうしてイレギュラーは発生するんだろう。

 

黒髪のクール系正統派魔法少女クロノちゃんにしょっぴかれたあの後、無抵抗のままに居たらリンディさんの所に連れていかれた。バインドは解いてくれたものの内心

「尋問室とか連れてかれないんです?危険では?」

と何故か私の方がどぎまぎする展開になっていた。

 

しかもクロノはさっさとどこかに行ってしまって、完全に私1人アースラで浮いていた…。いや、この部屋もアースラから浮いているので私と部屋が浮いているのが正しいか。

 

無機質な屋内で和製お茶会セット広げてうっそりと微笑む美女が一人、オマケに何故か桜が舞う執務室(仮)。

美人はなんでも絵になるという言葉があるが、この光景に美術性を感じろというのは酷というものである。あと、鹿威しうるせぇ!

 

「…一応私がジュエルシードを集めている理由は以上ですが、正直私は協力者の協力者という立場なので何があったのかとか、細かいことは分かりかねます。」

 

経緯についてはありのままかつ知っている筈の内容を嘘はつかないように説明した。転生云々については一切喋っていないが、流石にこれは誰にも言うつもりはない。疑われている事実はとても心臓に悪いのでさっさと無罪放免になりたい故の完全降伏スタイルだが、リンディさんの顔色はあまり宜しくなさそうである。やはりリリィの件が響いているのだろうか。

 

「なるほど、貴女がロストロギアを探していた理由は分かりました。では次に貴女の所有しているデバイスについてです。」

「はい、リリィの事ですね。」

 

気分は大岡裁きである。もちろん裁かれるのは私で、越前守は目の前で甘〜い緑茶を啜るリンディ・ハラオウンその人だが。

 

「そのデバイスをどこで手に入れたの?」

 

簡単な質問のように聞こえるが、どこでと言われても困る。神様からの贈り物だと思って拾って使っていました。とか言い出すのは流石に正気ではないし、幾分昔のことなので私自身しっかりと覚えていないのだ。

 

「いつだったかは覚えていませんが、リリィは道端で拾いました。」

「拾った?」

「はい。綺麗だったし、何より私に話し掛けてくれたので。」

 

少し説明としては雑だが、嘘ではない。

ある意味一つのボーイミーツガール。あの頃魔法が本当にあるのかちょっと疑っていた私に魔法の存在を示してくれたのがリリィであり、転生したばかりの私にはどんな物よりも素晴らしい福音だと喜んだ記憶がある。

 

新規契約もリリィの方から誘ってくれたし、今思えば会ったばかりの時からかなり自我の強いデバイスだったような気がする。

前の持ち主の影響だったのかな。

 

「拾った場所は分かるかしら?」

「私のいた孤児院の近くの川でした。孤児院の場所を覚えてないので調べないと駄目ですが。」

 

身寄りの無いというのは将来的にミッドチルダに行く事になるならちょうどいいかもしれないと、あの頃は考えていたような気がする。まぁ、愉悦を考えると近づかない方がいい気もしていたのでシンプルに不運を恨んでいた気もするが。

それに結局身内は居たのでなんか事情があったのだろう。私の記憶5歳からしかないから知らんけどな!

 

「使い方はリリィが教えてくれました。魔法使いになるなら自衛の手段は必要だって。私も魔法に興味があったし、今回のジュエルシードが引き起こしているような危険なものとは知らなかったので…。」

 

魔法が危険な事は十分に理解していたが、態々魔法のある世界に転生したのだしせっかく使えるのなら使いたくなるのが人情というものだろう。流石に正直に言うと信用されないかもしれないので黙っておくが、子どもなら誰でも魔法に憧れるものである。没問題メイウェンシィ、問題ないさ。

 

「続けてください。」

 

「その後はリリィに使い方を学びながら、空飛んだりシューター飛ばして射撃練習したりしてました。他に魔法を使える人を見たのは先程話したフェレットのユーノが初めてです。」

 

言えることはそのくらいだろうか。これで駄目なら後はなのは達を呼ぶくらいしか私には手札がない。

 

「…貴女が巻き込まれただけの一般人であるということは理解しました。手荒な真似をしてしまってごめんなさいね。」

 

「あ、いえ。緊急事態みたいでしたし、そんなに気にしてませんから頭を上げてください。」

 

そう言って頭を下げるリンディさんを手で止めながら、私は頭の中で『勝訴』の二文字を掲げて踊り狂っていた。

しかし、何故こんなに早くアースラが動いていたのだろうか。冷静な部分で色々と理由を考えてみるがこれだろうという物は思いつかない。まさか私たちの与り知らぬところで次元震が起きていたわけでもないだろうし。

 

『艦長、結果の反応を確認。クロノ執務官が戦闘中の魔導士を目視で確認したとのことです。』

 

「映像を回してちょうだい。」

 

『か…ん長、魔導士を二人とリンカーコアの反応を複数確認しました。武力制圧の許可をください。』

 

あら、物騒。なんて考えている場合ではない。

私が捕まっている間に物語は着々と進んでいたらしい。場所を見るに子猫がジュエルシードに飲まれた話だろうか。若干なのはの世界は派生作品も併せて時系列が曖昧なところがあるので確実ではないが、なのはとフェイトによる初会合初戦闘には違いなさそうである。

 

「少し落ち着きなさいクロノ執務官。あなたの連れてきた彼女の話によると白いバリアジャケットの少年は魔法を知って日が浅いようですから、介入時にパニックを起こしてこちらに被害が出ても困ります。」

 

『そんな悠長な!』

 

「クロノ執務官。相手の規模がわからない以上今は時空管理局の存在が割れることの方が損害となり得ます。ロストロギアが複数散らばっているのなら、相手を捕縛する機会はまた来ます。今は耐えなさい。」

 

『…了解。』

 

これがアースラを任される艦長の風格かぁ。アニメで見ていた時の緩いイメージとは違った合理的で正確な判断。若干怖い。

しかし、意外と慎重な選択にちょっと驚きである。フェイトを捕まえるならかなりチャンスのような気もするし、弱った相手を倒すのが兵法の基本ともいう。

 

「なのは!?」

 

映される通信映像の端で、撃墜されて墜落していくなのはの姿が見えた。初の対人戦、私が戦ったと伝えていたからってフェイトが格上である事実は変わらなかったという事だろう。それは知っているつもりだった。

だがそれが分かっていながらも、友人が空から墜ちていく姿を見るのは心臓によろしくなく、全身から血が引いていくゾッとする感覚を覚えたことを私は()()()()

 

何故その恐怖心を安堵を持って受け止めてしまったのか。自分の正常な精神を私は嫌悪してしまったのか。それは私の生前の残滓を感じてしまったからである。

 

私は愉悦がしたくてこの世界に来たにも関わらず、友人の心配をして友人を無くすかもしれない事体に心から恐怖したのだ。そんな一般的な感情を持っている事実に私はほっとしたのだ。

そこは気を引き締めて然るべき部分では無いのか?

 

バカバカしい。反吐が出る。普通のままでどうして狂人の領域に立てるというのか。愉悦は遊びじゃないんだぞ!?

 

嫌な感じがする。口の中に唾液が溜まって飲み下せない。

つい右手を口元に当ててしまう。

 

「今の男の子が貴女の言っていたなのは君ね?」

 

口元に当てた手を退かさぬまま頷く。

まさかとは思うが、変に勘ぐられないように気持ちを切り替えた方がいいだろう。信用されたかどうかもまだ分からないのだ。

 

「クロノ、その子を回収して帰還して。一応医務室を空けておくけれど、自分で歩けるようならそうしてもらいなさい。」

 

フェイトが撤退したのを見届けて、なのはの回収を指示するリンディの姿をどこか遠いものに感じながら、私は自分の感情と向き合うことに必死だった。

なのはが倒れた事を心配する事は構わない。だが、その姿を見て恐怖を感じる事は想定外だった。

仮面を被るのは得意なつもりだ。唾も嫌悪も無理矢理飲み込め。

 

「安心して、貴女の友人は大丈夫よ。クロノ執務官が無事なのを確認してくれたから、心配しなくてもいいわ。」

 

青い顔をして固まっている私を見て勘違いしたのか、リンディさんが優しく話し掛けてくれる。先程までと違ってどこかアニメで見た時のような母親の顔をしているような気がする。

思わぬ形での信用のされ方だが、ここは子供の姿であることを喜ぶとしよう。

 

「はい、よかった。よかったです…。」

 

一旦思考は切り替えよう。もしかすると心の中に愉悦と恐怖が同居していても大丈夫な例があるかもしれない。成長とともに心が強くなる可能性もある。とにかく今は今の状況を利用しなくては。

 

「よかったら、なのは君に付き添ってあげてくれないかしら。今からクロノがこの部屋に来るわ。その時、一緒にこちらの事情についてもお話ししたいの。」

 

「…分かりました。」

 

完全にリンディさんはこちらを心優しい女の子か何かと勘違いしている。 なのはと会わせて不安を取りさろうとしているのがいい証拠だ。

思わずいい流れを引き込んだのだ。攻めるなら今しかない。

 

「あの、リリィについてなんですが…。」

 

「え?あぁ、安心して。そのデバイスは紛失届が出ているようだけれど、話を聞く以上問題は無いわ。事実確認にまたデバイスを借りる事になるかもしれないけれど、持ち主も他にデバイスを使っているみたいだから。」

 

お?これはもしかしてリリィ貰っちゃっていいんですか?いいんですね!?

 

「じゃあ、リリィと離れ離れにならなくてもいいんですか?」

「ええ。調べたところ所有権も既に放棄していると考えて良いでしょうし、何より貴方にデバイスも懐いてるみたいだから、何かあっても私の方で口添えしておくわ。」

 

や っ た ぜ

完全勝利"S"!!




主人公「私は愉悦…愉悦を求めて、愉悦…。(瀕死)」


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金色サンドバック。

何時に無く長く書いたので誤字のチェックとか甘いかもしれません。


鳥はどうして空を飛べるのか。それは翼があるから。

 

「ヒット。目標、バランスを崩して降下。こちらに気づいたみたい。」

 

そして翼で浮かべる軽い身体を持っているからなのだが、如何せんスコープの先でキレ散らかしてる姿を見るにあの鳥はトラックくらいの重量はありそう。改めて魔法というものの奇っ怪さを痛感する。

 

「作戦通り行こう。僕がバインドを入れるからトドメはなのはが。」

 

「4.3.2.1.…fire。」

 

翼を片方だけ撃ち抜くと左右にブレるので正確に両方を狙い撃つ。真っ直ぐ向かってくる標的など恭さんとの訓練に比べたら止まってる的と大差ない。

それにしても数日の間に考えられないほど成長したものである。恭さん曰く『才能が形になるのは早いが磨くのは時間がかかる』との事で、今の状態が地力らしい。

そしてリリィとの連携も慣れたもので、弾の同時撃ちなどお手の物。こちらは磨いた努力だろう。

 

「動きは止めたよ!」

 

僕っ子ユーノがバインドで化け物を縫い止めたのを確認して私も引き金に指を掛ける。

こうして見ていると魔法ってもっと煌びやかなイメージの筈なのだが、空を飛んでいる以外私の使い方ってほぼ銃器と同じでリリカル感が足りない気がする。

これじゃあ幼女戦記である。

 

ただ的に弾を撃ち込む爽快感は悪いものでは無い。小難しいこと何も考えなくて済むし、射撃だけに思考を割いていると戦闘の恐怖を感じることも無い。もしかすると、未だにどこか現実と認識出来ていないだけのかもしれないが。

 

「反撃は撃ち落とすから、決めてなのは。」

 

怪鳥が動きを封じられた腹いせか、火球らしき魔力の塊を首から上だけで撃ちだそうとしてくるのを散らすように魔力弾を撃ち込む。

巨体の割にこちらを真似たような勢いのある射撃だが、口から撃ち出している為予備動作がわかり易すぎてその速さが死んでいる。

もはや条件反射で撃ち落とせるレベルなので、撃ち漏らす心配は無さそうで少しだけ安堵する。

 

しかし、思えば女の子を2人はべらせて怪物退治に励む美少年が佇む現状。どこかで見たような俺TUEEEE作品の様な状態に少しだけ笑ってしまいそうになる。

まぁ、事実、

 

「スターライトブレイカー!」

 

最強主人公様なんですけどね。

 

 

 

 

 

回収作業が終わりアースラに帰還し、なのは達と共にリンディさん達アースラ組を混じえてブリーフィングをしているのだが、私は今心穏やかではなくなっていた。

 

撃墜されたなのはを回収した後、原作通りに協力体制を敷きジュエルシード集めを継続する事となった訳だが、少しまずい事になっているのだ。

 

それは、我々の回収したジュエルシードの数が原作より多くなっているという事である。

なんだいい事じゃないかと思うかもしれないがこの原作との乖離はとてもまずい。このまま数が違うとプレシアが引き起こす次元震の規模が変化するのである。それ即ち最後の時に何が起こるか予想できなくなるという事と同義なのだ。

 

下手をすればなのは達の命に関わってくる可能性も十分有り得る。数が減ったから被害の規模が小さくなると言いきれないのもロストロギアの怖いところである。

 

原因自体は分かっている。

 

これはアースラの存在をフェイト達に隠したままで協力体制を敷いたことで、表立って行動する面子が今までと変わらないことによりフェイト達が無理に探索のスピードを上げていないせいだと思われる。

しかし!このままではフェイトの危険が危ない。

 

何故それがフェイトの身の安全に繋がるのか。ぱっと思いつくだけで2つ考えられる。

 

まず、プレシア・テスタロッサの起こす癇癪が激化する可能性があること。これは想像に容易く、最終的に9個集めたフェイトにかなーりえげつない罰を与えていた事からも間違いないと思われる。まぁ、壊すまで痛めつけるような事は無いとおもうがそれでも激化する可能性は否めない。

アニメだと擦り傷程度の描写だが、蚯蚓脹れに炎症、下手すると骨折なんてことも充分有り得る。鞭打ちというのは元は拷問なのだ。フェイトにもしもの事が起きぬとも限らない。

 

曇る前に死なれたら困る(本音)、もしフェイトに一生物の傷が残ったらそれは世界の損失ですよ!?(本音)

え?欠損?いや、そういう結末になったらそれはそれで美味しくいただきますが、私にはそんな性癖は無いです。(嘘)

 

話を戻して。

次に、なのはがフェイトを下す事となる一大イベント「タイマン、ジュエルシード全賭けバトル(命名私)」が発生しないと思われることだ。

 

ジュエルシードは1つでも危ないとはいえ、数で勝ってるのに危険な勝負に乗る必要は無いよね?となるだろう事が想像出来る。だってリンディさんだぞ?あの合理的判断に躊躇の無さを子供の前で見せられる人が「1度ちゃんと向き合って話したい。」というなのはの言葉を聞き入れるだろうか?…正直私にはそうは思えない。

よしんば聞き入れられたとして、今度はフェイト側が信用してくれるかの問題も出てくる。

 

原作では、話に乗る他ない状況かつアルフを保護している状況下だったのもあって、

「女と女、意見が真っ向からぶち当たった。なら、タイマンでしょう!!」

と言った具合に戦闘が始まってくれたが、窮地に追い込まれた相手であればあるほど自分に有利な条件を提示されて信用するというのは難しいものだ。

 

君が負けても何も無いけど、私が負けたら好きな物あげる。なんて敵から言われて飛びつく奴が居たら見てみたいものである。

 

「そこはなのはに頼るしかないかなぁ。」

 

原作よろしく、お友達になりたいのパワーで説得してくれる事を期待したい。

汚れた大人の記憶がある身では、正直どうしたらいいのか検討もつかない。これが嫌だから原作に沿った行動を心掛けていたはずなのに…。おのれアースラ!!

 

「3人ともお疲れ様。ジュエルシードの封印も問題ありませんでした。」

 

「これで6つ。順調に集まってきてるね。」

 

「残り14個。あの子が持っているのもあるから正確な残りが幾つかは分からないけど、それでも着実に回収できてる。」

 

あーあ、難しいこと考えても分かんないや!(小学生4年生並感)

キャッキャと喜んでいる2人を見て浄化されよう。(隠しきれぬオッサンの残滓)

 

それにしてもユーノ君、もといユーノちゃんの人間形態可愛いわぁ。金髪美少女が好きだというのもあるが意志の固そうな使命を帯びたあの瞳が堪らない。とても曇らせ甲斐がありそう。

容姿にしたって、ちょっとローブとか邪魔だけど、あれはそれなりの物をお持ちだろう。

アタイ分かっちゃうんだから!Bはあるわね!

 

…女になって目算の付け方を知ってしまっただけなんだよなぁ。カップ数の計算方法とか知らなかったのに、女として生きるのには必要な能力だったんだ。

そんなくだらない能力要らないから目で見るだけでステータス分かる能力とか身につけばいいのに。

 

「要さん?どこか具合でも悪い?」

 

「あ、いえ。大丈夫です。少しぼーっとしてました。」

 

戦闘の後は思考回路が元に戻るせいかなんなのか、いつも以上に思考があらぬ方向に飛びやすい気がする。戦闘の昂りってやつの弊害かねぇ?

それにしたって最近悩む事が多くて人前で気が抜けている姿を晒している気がする。気を引きしてなくては。

安全の上で行っている事とはいえ、私は今のいままで戦闘を行っていたのだから、フェイトが襲撃をかけてくるとは思えないが、それでも警戒を怠ってもいい理由にはならないだろう。

 

「彩々木 要。君が何を悩んでいるかは聞かないが一応アースラの協力者となったからにはもう少し…」

 

クロノの口からお小言が漏れているが正直耳に入ってこない。

 

最悪、私が人質になってジュエルシードを渡す様に仕向ける事も選択肢に入れるとしようか。それかフェイトと接触する度にジュエルシードを譲るか…。とりあえず聞いているフリぐらいはしておくべきだろう。

 

水飲み鳥のように首をかくんかくんと振るタスクをリリィにお願いして思考をあらぬ方向に飛ばしていく。

 

それにしても次元航行を可能とする技術がどれほどのものかは私には分からないが、この近未来感のあるアースラの内装には心が踊る。

一昔前のロボット物、もといこの世界だと今流行りになるのだが、こういったメカメカしさと未来技術がひと目で分かるデザインはとてもいい。何故か空中に浮かぶ液晶画面バリの画素を誇る映像投影技術とか、是非身に付けたいものである。

 

「ジュエルシードの反応はもう無いですか?」

 

クロノのお小言の隙間を縫ってなのはからそんな言葉が飛び出す。

一仕事終えた後にも関わらず、次のジュエルシードの捜索にやる気を出すとは流石に私も目を向けざるを得ない。

だからリリィ、もうタスク解除してくれていいから。首むち打ちみたいになるから!

 

疲れている訳では無いので私も協力は惜しまないつもりでいるが、なのはのように自分からから言い出す程の気力はないので流れに任せるとしよう。

真面目な雰囲気のなのはの様子を隣に座るユーノと二人、ぼけーっと眺めながらアースラの内装評論に勤しむとする。

 

ねぇねぇユーノ、あれってなんで浮いてるの?魔力で…?エネルギー保存の法則に魔法エネルギーを使っている感じ?位置エネルギーを固定みたいな。違う?まじわけわかめだな、魔法。

 

「艦長、魔力反応を捉えました。ジュエルシードの反応と思しき反応が2つ。どうしますか。」

 

魔力で球体を浮かしている理由についてユーノに尋ねている間に話が進んだらしい。魔力反応が見つかったということは、相手も見つけている可能性がある。分散して動いているならタイマンに持ち込んでどちらかをクロノと協力して打倒すればいいが、私達が警戒されている場合、二人一緒に行動している可能性がある。とはいえアースラの存在は気づかれていない筈なので、有利なのは私達である事に変わりはない。

 

「僕達が行きます!」

 

「そうね。ごめんなさいクロノ執務官。もう暫く我慢してちょうだいね。」

 

「母さん!いや、艦長!職務中ですよ。」

 

自由に暴れられずにフラストレーションが溜まっているというのはエイミィからの情報だっただろうか。もしや先程の小言も憂さ晴らしだった可能性が微レ存…?

 

しかしあのおっそろしいクロノが手玉に取られているのを見ると溜飲が下がる。大人気ないって?ほっとけ。

今の私には手玉に取られる美少女を眺めることでしか得られない栄養素が必要なんだ。

 

そうしてまたぼーっとしていると話がまとまったらしい。

善は急げ。二手に別れて確保に向かうと。なるほど。

 

「では二手に別れましょう。なのは君とユーノさんは先程の場所から北東のA地点に要さんはもう1つのB地点へ。クロノ執務官を要さんのバックアップに付け、もしもの場合に備えます。それでいいかしら?」

 

「はい。構いません。」

 

完全に同意。さらにバックアップもつけて貰えるなら問題などある筈ない。なのはの方を視線で伺うが、あちらも頷いている。

 

「では、これよりA地点への移動ゲートを開きます。もしも敵魔導師と接敵した場合、無理はしない事。順番の都合でなのは君の側に応援が向かうのは遅れる可能性があります。無茶はせず、継戦を心掛けるように。」

 

「行ってらっしゃい。2人とも気をつけてね。」

 

「行ってきます!」

「要の方こそ気をつけてね。」

 

ゲートに入る2人に軽く激励を送り、出撃の準備を行う。といってもリリィにフリーチェックをお願いするだけで私は何をする訳でもない。

 

それにしてもなのははジュエルシード集めに積極的である。

それがユーノを助ける約束をしたからなのか、自分の存在理由と思っているからなのか、確実な理由は本人に聞かなければ分からないが、実のところ当初私はなのははジュエルシード集めを途中で止めるかもしれないと考えていた。

 

自惚れるつもりは無いが、私はなのはの心の隙間が埋まるまでの時間、一緒にいたつもりである。さらになのははある程度の社交性を身に着け同性の友人を獲得し、新しい環境にも適応した。それ即ち、魔法に依存するほど執着を見せないだろうと予想したのだ。勿論1割ない程度のあくまでも可能性の話だったが、そうなっていたら私はたぶんお手上げだった気がする。

 

原作とズレてきた事をアースラのせいみたいな言い方をしたが、割と最初からなのはが魔法にそこまで興味を見せなかったらどうしようかと危惧していた。私からなのはを協力するように誘導する事も考えたが、やはり確実性に欠けるため原作ブレイクが起こらないよう祈る他なかっただろう。

実際は原作みたいにジュエルシード集めに精を出しているので無問題なのだけれども。

 

「では、私も行ってきます。クロノさん、もしもの時はよろしくお願いします。」

 

「あぁ。気をつけて行動してくれ。」

 

ファーストコンタクトこそ最悪だったしお小言も貰う間柄ではあるが、普通に接してみればクロノはただのクール系美少女である。無愛想なところもあるが優しい人という印象が強い。

 

こうやって手を振るとちょっと格好つけながら軽く返してくれるあたりとても可愛い。ぜひその笑顔曇らせたい。でもクロノはこの後(A's)勝手に曇ってくれるし…とりあえずそれを見届けてからやな。

 

 

目的地周辺に着いたため空から捜索を行っているがあまり芳しくはない。

 

「サーチャーを飛ばしていますが…なんか不安定な感じです。」

 

元々精度はあまり良くないのでコンパス替わりに使っているのだが、それにしたって今日のサーチャーの調子は最悪である。

どっか壊れたのか?

 

『System all green.』

 

『どうやらジュエルシードの魔力がジャミングに似た現象を起こしているみたい。大変だろうけど目視で捜索をお願いします。』

 

あいあいさー。

とはいえ割と難しい要求である。足元にはちょっと面倒臭いくらいに広がる森、というか山。せめてどの山辺りか分かんないとキツいかも。

 

『Master. I catch trace of magic.(魔力反応を感知しました。)』

「ホント!?」

 

どうやらリリィもサーチャーを動かしていたらしく、ジュエルシードらしき反応をキャッチした。でかしたリリィ!

 

「こっちか。取り敢えず付近まで近づいたら降りようか。」

 

リリィの操るサーチャーを目印に移動する。足元から500m程離れた位置にあるのを見つけてウキウキで移動を開始する。

それにしてもリリィには感謝しかない。偉いぞぉ、今度ピッカピカに磨いてやるからな。

 

『もしかすると活性化しているかもしれないので、周囲への警戒を怠らないでください。』

 

あいあいさー。あいあいさー。

リリィに誘導用に出しているサーチャー以外をしまってもらうよう指示を出し、余剰の魔力を防御関係に回してもらう。しかしこのシールド、森に入るにあたって虫よけ要らずというかなりありがたい副効果もついてくる。バリアジャケットも合わせるとさらに安心。魔法万歳。

 

「森を焼き払えば効率よく探せるけど、その魔力にジュエルシードが反応すると危ないからできないのがなぁ。」

 

『My master lost humanism or didn't know kindness. (その発言は物騒に過ぎます。)』

 

結界張ってあるし大丈夫だって。ジュエルシードが活性化してなかったらきっとみんなやってるよ。タイムイズマネー。

 

「それには同意だね。もの探しをするのに効率を求めるのは間違ってない。」

 

ですよねー、なんて言っていられる状況ではない。

 

『Wide shot.』

「不意打ちを二度も食らうほど、こちらも間抜けじゃないです。」

 

牽制に背面撃ちをばら撒いて、リリィには声の主であるアルフの妨害を指示して全力で距離を取る。デバイスに一定量の魔力を付与して射撃をオートでおこなってもらう。

 

視線を周囲に向けるようにして無理矢理アルフに向きかけた注意を全力で捜索する。

――視線の先に…いた!

 

「この間ぶりだね…フェイト君?」

「なんで名前を…!?」

 

目と目が合ったらポケモンバトルと言わんばかりに死角から切りかかってくるフェイトをいなしながら、言葉を投げかけて隙を誘う。小学生のフルスイングを食らえ!射撃デバイスアタック!

 

「なんで避けるのさ!」

「…君を普通の魔導士とは思わないことにしたよ。」

「フェイト!」

 

一人が注意を引き付けてもう一人が強襲をかける。実に教本通りの奇襲戦術である。

ただ、あちらの手札を知っている身からすればこの程度は対応できる範囲である。

 

相手が回避するのも想定内。相手が動くタイミングで90度になる方向に飛び出して、私からフェイトとアルフを同時に視認できる三角形となるような位置関係を作る。対処できるとはいえ、挟み撃ちの状態でいるよりもこちらの方がいい。

 

「おっきな声で名前呼ぶ人がいるんだもの。聞こえてない方が問題じゃない?」

 

返事はなし。敵意むき出しの視線にぞくぞくしてしまう。

前までの私ならすくみ上がってしまう所だが、たぶん道場での特訓が効いている。上背のあるアルフから睨まれても挑発できる程度には余裕がある。

ありがとう恭さん、貴女の教えは私の中で生きています。

 

「リリィ、この間の使える?」

『Yes Master.』

 

私だって頭を負傷して手を負傷してボロボロになっている間、何も準備してこなかった訳では無い。再度フェイトと遭遇すれば前使った搦手は意味が無い。

というか、あれってなのはが使う予定のやつだからあそこで使ったのは時期尚早だった気がするが、今は置いておく。

 

私だって落ち着いていて魔力が普通に残っていれば、真正面からでも戦えるって所をみせてやる!

 

散弾(バラ)!」

『Chase Ballet.』

 

光って音がなれば、人というのは否応なしに反応してしまうものである。私の散弾は言わば目くらまし。魔力量こそ込めていないので威力はゴミだが、その発光と射出音は目を惹かずにはいられない。

 

「アルフ下がって!」

 

そこをリリィの予測射撃で撃墜する。こちらは物理的にも威力を出せる高密度弾。非殺傷なので本物の銃弾のような貫通力は期待できないが、フェイトやアルフ相手でもシールドの1枚2枚はぶち破って成人男性に殴られた位の威力を期待できる。

 

「目眩し!?小細工ばっかりしかけやがって!」

「避けて!!」

 

フェイトの声に反応して咄嗟に横に飛ぶことでアルフに向かっていた弾は躱されてしまった。仕方ないので牽制射撃をしてアルフの視線を誘導する。

数を嵩ましして本命を狙ったり、予測射撃を直線で行うだけが芸ではない。私の考えた秘策は名前負けする性能の物では無い。

チェイスの言葉の通り当然、曲がる!

 

「っがァ!?」

「アルフ!!」

 

不意をつく形での後頭部への重たい一撃。これでアルフは戦力としては大幅にダウンしたと見ていいだろう。

この間の借りを返せた事に握った拳に力が入る。

 

「リリィ、このままやるよ。」

『Aye aye ma'am.』

 

無駄に魔力を込めておいて一撃だけでは勿体ないからと、全ての魔力弾は、私達の手を離れた後も魔力切れまで自由軌道でフェイト達の周囲を漂う様にプログラミングしてある。前方から好き勝手撃たれ、避けながらも周囲への警戒を怠れないという相手にとってはいつ襲われるか分からない嫌な配置だ。

実際はコントロールを取り戻せないので完全なブラフなのだけれど。

 

しかしこれで脳の揺さぶられているアルフを連れての高速戦闘は不可能。純粋な2対1の状況は崩れたと言ってもいい。後はフェイトとタイマンを張って応援が来るまで粘ればいい。

 

リリィは引き続き自動射撃マシンとしてアルフの牽制を行ってもらい、私はフェイト1人に意識を割くタイマン勝負。

 

もういっそこのままクロノとなのはを待って捕獲してしまうのも悪くない!原作崩壊とか今更だぃ!

 

「僕が君を倒す。」

 

デンデン!

と空耳を聴きながら飛んでくるフェイトに散弾を打ち込む。今度は多少威力があるが、バルディッシュを盾に吶喊された。近接は苦手だと言うことは完全にバレているらしい。

 

リリィの砲身を分離して、中間のデバイスパーツだけで切り結ぶ。ブレードを出しているだけの余裕は無いのでこっちは鈍器で相手させてもらう。近接で精密な射撃も不可能なので魔力弾が出せないデバイスでもあまり戦力的には変わらない。

 

以前の戦闘よりも相手の動きは目で追えているし、なにより隙を見て押し返す程度の反撃は出来ている。

だが2対1を回避したからと言って、この状況が有利な訳では無い。リリィには射撃をお願いしていて、協力が望めない以上近距離戦が不利なのは変わりない。恐らくフェイトもそれを分かっている。分かっていてアルフの回復までの時間を稼いでいるのだろう。

 

お互い時間との勝負だと、そう考えているに違いない。

 

「でも、対策しない訳ないじゃん。」

 

私のデバイスであるリリィは少し古い(らしい)。具体的にどんな不具合があるかと言うと、私の考えとデバイスの動きがリンクしない事が最も大きな欠点である。

というのもスコープに映る標的を自動でロックオンしたりだとか、即時のサーチャーの展開だとか、リアルタイムに行動を起こすことにワンテンポを要求される。或いはできない。

ただ自立型のAIとしての出来はよく、痒いところを勝手に掻いてくれるだけの機転が利く賢さを持っている。

 

しかしそうやって色々痒いところに手を伸ばすためにリリィはデバイスにしてはパーツが多く必要となっている。以前装備一覧を見せて貰った時、知識のない私では使いこなすのは難しいと感じたものである。

 

とはいえ長く使って行くうちにリリィの方から合わせてくれるようになり、私の技術向上もあって少しづつパーツ過多問題は解決しつつあり、リリィも少しスマートになっている。

だがやはり完璧という訳には行かない為、一時的な対策を講じた。

 

拡散弾(ショット)

 

メインの部分を切り離した今、デバイスが無ければ私は魔法を使えないのか。

 

勿論魔法()使えない。では何なら使えるのか、その答えがこれである。

 

「デバイスの…パーツ!?」

 

はい御明答。グリフィンドールに10点。

衝撃を食らった腹を抱えて、息も絶え絶えにこちらを驚愕の目で見てくる美少年。最高やなって。

 

魔力を適切に処理して魔法に書き換える作業に必要なのがデバイスなのではないか。そう考えた私は自分の戦法を見直して気がついたのだ。

私の使ってる魔法、飛行だけなのでは?と。

 

シンプルな話、魔力をそのまま撃ち出すことと魔力を魔法に置き換えて撃ち出すことに威力上差はない。燃費が悪い事や範囲指定などの制御が難しいものの、原則デバイスで射撃を行う主な理由は2つ。

 

『精密射撃』と『発射速度の確保』である。

 

遠くの物を狙うのに制御が必要になる事、距離を稼ぐために効率よくエネルギーの減衰を抑える事。この2つをデバイスは主に担っていると考えたのだ。

厳密には先程の曲射のように指向性を持たせたり光らせるなどの属性を付与したりと他にも色々と活用されるのだが、撃ち出すことだけを考えればその2つが主な使用目的である。

 

「ごめんね。私、普通の魔導師じゃないらしいから。」

 

それを無理矢理補ったのが、散弾(バラ)であり拡散弾(ショット)である。

散弾(バラ)こそ光らせる為にリリィにワンクッション置いてもらったが、光らせなければそれこそ手から撃ち出すことも可能だ。現に飛びかかってきたフェイトに先程撃ち出した物は光もせず音も控えめだったりする。

 

問題は拡散弾(ショット)。名前の通り、この射撃はショットガンをイメージした近距離カウンター用の代物である。

目の前で苦しみ悶えているフェイトの姿からもわかる通り、今頃直撃を食らったお腹は広範囲に青黒く変色している事だろう。込められる魔力量の関係で内蔵を傷付ける事は無いが、それでも内蔵をかき乱された不快感は絶大だろう。嘔吐を我慢する姿も素敵だよ。

 

「悪いけど、ジュエルシードを君に渡す訳にはいかないの。」

 

空気を圧縮して撃ち出すように、魔力をデバイスの砲身に無理矢理詰め込む事でそれなりの速度と方向性を手に入れた私なりの秘策である。

本来ならもう1つデバイスを持てば済む話なのだが、今の私には用意する伝も手段もない。それにフェイトの様にこちらのデバイスがリリィ1つだと知っている相手に奇襲をするにはこちらの方が役に立つ。とはいえ私の方も打ち出した方の手が痺れて少しどころじゃなく痛いのでデメリットも大きい。やっぱりもうひとつ小型デバイス欲しいよ。

 

「負けないっ…!」

 

「お友達も限界みたいだね。君が頑張っても助けは来ないよ。」

 

一気に不利になったフェイトに対し、できるだけ高圧的に言葉を向ける。できるだけ相手の嫌な部分を突くように心掛けて。

 

折れよ心、砕けろハート!絶望しなよフェイトく〜ん?

アルフの方はいつの間にか来てたクロノが抑え込んでるし、君は今ズタボロ(はぁと)。

クロノに言われたのかリリィも手元に帰ってきたし、状況は不利になる一方。君には勝ち目どころか、逃げる事すらままならない。

 

「それでも僕は母さんに!」

 

「君が何を願ってジュエルシードを求めてるのか知らないけど、」

 

本当は私だってこんな事したくないし、仲良くなるには悪手だと分かっている。

でも…別に後で曇るなら、今曇らせてもいいよねぇ?

 

「君の願いは叶わない。」

 

フェイトの心が軋む音を聞き取り、被っていた仮面が崩れそうになるのを必死に抑える。

こういうのは頭の回る奴ほどいい音を立てるのだ!

 

あぁ^~心の折れる音ぉ^~!




残念!フェイトの冒険はここで終わってしまった!

The END...?


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苦悩の果ては

話を中抜きする癖があることに最近気づいた。


睡眠障害と呼ばれる物がある。

 

詳細な医療の知識は無いので付け焼き刃ではあるが、具体的には夢遊病とか睡眠時無呼吸症候群とかむずむず脚症候群とかそういうのである。レム睡眠ノンレム睡眠。

 

そんな睡眠障害であるが、寝ている時に自分の寝言で起きるのも夢遊病関連の睡眠障害らしい。「かっとばせー!」とか叫んで更に腕まで振ったなんて事があれば一発で睡眠障害に認定される。

だから私が腕を振り上げた痛みで目を覚ましたのも夢遊病の気があるのかもしれない。

 

「…いや待て、なんでベッドの上にいるんだ?」

 

寝起き10秒。もはや取り留めのない思考でお馴染みの私である。

自分の状況整理を斜め上方向に行っているのを自分で修正する為に声を出すが、それに若干現実味が薄いのは寝起きだからというだけでは無い。白い壁、機械っぽい天井。周辺の様子からここはアースラの医務室だろうか。つまり怪我人なのか、私は。

 

それ以外に分かったことは、人は寝起きに知らない天井を見て「知らない天井だ。」と言うだけの余裕はないらしいことくらいである。

 

「私はさっきまでフェイト君の青ざめた顔を堪能していた筈…もしや夢だったのか?」

 

思えばあんなにすんなりと相手を罠に嵌めて上手く立ち回るなど、できる方がおかしいのである。

現実だとしたら、あの後「じゃあ、死のうか。」くらいのこと言いながらリリィを首筋に突きつけるなりなんなりしていた筈だがこの感じだと私は負けたみたいだし余計に夢オチの可能性が出てきた。

 

『Y…oUr re…mArk iS w...rong.』

 

「リリィ!?どうしてそんなボロボロなの!?」

 

ベッド脇から声をかけてくれたリリィは、しかし普段は綺麗に輝いている宝石が罅だらけになってしまっていて、音声もかなり不安定になっている。

いや待ておかしい。明らかにおかしい。

リリィの姿から分かること。即ちそれは私が戦闘を行い敗北したであろう事実。夢オチ以前に記憶の欠落がある。

 

「何か忘れてるはずだ。思い出せ。フェイトと戦った後、あれだけ勝ちを確信した状況から何があったらこんな事になる?」

 

よく見れば私の身体もボロボロだし、腕には包帯も巻かれている。動かすと少し痛むが、骨折などはしていないらしい。腕振り上げて痛かったのはこれが原因かぁ。

 

いや、まず何でこんな大怪我してるんだ!?大怪我する要素なくない?

 

「記憶が飛んだって事は何か衝撃的な事が起こったか、強い衝撃に晒されたかだ。いや、それなら念話で誰かに聞けばいいじゃない。」

 

そうと決まれば善は急げ。とはいえ誰なら確実に手が空いていて詳しい話をしてくれるか…ユーノかな。なのはは混乱して具体的な事話せなさそうだし、他は皆仕事してるはずだしね。身体を起こして早速聞いてみる。

Hey ユーノ、私に何があったか教えて。

 

『要!目が覚めたんだね。よかった。皆心配してたんだ。痛むところは無いかい?』

 

腕が痛いのは間違いないが、身体の痛みよりも記憶が無い方が問題である。何があったか教えておくれよ。フェイトを追い詰めてたはずなんだけど?

 

『君は次元震に飲み込まれ掛けたんだよ。強い光が立ち上ってあの山の一部が崩れたんだけど、どうかな?思い出せそうかい?』

 

次元震か。いや、確かにジュエルシードを探しているのなら巻き込まれる可能性は十分ある。実際アニメだとそれを観測したアースラが介入してくるという流れだったし、私としてもイメージはしやすい。

ということはあの後フェイトがジュエルシードを見つけて取り合いになったのだろう。フェイトを私が追いかけて、2人分の魔力に反応したジュエルシードが次元震を引き起こした…辻褄は合う。

しかし流石に主人公。いくら追い込まれても何かを持っている。突発的に曇らせるのは難しいかもしれないな。

 

生憎とすぐには思い出せそうに無いが、時期に思い出せるようになるだろう。とはいえ思い出したところで必要な情報は無いだろうしこのまま戻らなくても支障はない。

そんな旨の事をユーノに返答して具体的な話の詳細について促す。飲み込まれかけたってかなり危険だったんじゃないの?

 

『うん。今回起こった次元震は小規模とはいえ、人1人くらいなら消滅してもおかしくない物だったって聞いてる。目の前でそれが起きた時、要は運悪く木にぶつかって吹き飛ばされなくて、次元震の渦に飲み込まれかけたって。』

 

あ、それは死にますねぇ(笑)

 

『でもリリィが頑張ってくれたみたいだね。要がデバイスへの魔力と権限の移譲とを行っている事は知らなかったから肝が冷えたよ。今回はそれのおかげでリリィが気絶した要を無理矢理遠ざけてくれたんだ。相手の魔導師は取り逃したけど、仕方ないさ。』

 

「ありがとう、リリィ。」

 

『No pR...obl...eM.』

 

つまり私は余裕ぶっこいている間にフェイトに出し抜かれ、あまつさえその副次的な現象のせいで死にかけたということか。

小物が調子に乗ると命に関わるのか…。なんて行きづらい世界なのだろう。

 

…これは記憶戻らない方がいいかもしれないな。ユーノ曰く気絶していたらしいが、意識が残っていて死を目前にして過剰なストレス負荷が掛かった事による防衛機制が働いた可能性もある。記憶が戻った途端SANチェックなんてことになっても困るので、積極的に思い出すことは控えよう。

 

『アースラの人に要が起きたって伝えておくから、安静にしてなよ?まだ気絶してからあんまり時間も経ってないし検査は受けるようにね。』

 

あ、はい。ほんとご心配お掛けしました。

 

『後でなのはと一緒にそっちに行くから、無茶しちゃダメだからね。』

 

そないな事言われても、普段は私そんなに無茶な事して無くない?寧ろサポートがメインで前に出るのはなのはとユーノだし、何故こんな扱いを受けているのか。甚だ疑問である。

 

念話を切って再び一人、じっと手を見る。包帯のせいで分かりにくいが、かなり激しく擦り切れたらしい。逆剥けの激しい版のような痛みが全体的に主張している。

若返ってからはもちもちすべすべの肌で生活していただけにこの違和感は懐かしさも伴って、凄く気になる。

 

「リリィ。私と接触してたら直りが早かったりしない?」

 

『nO』

 

さよか。まぁアニメでレイジングハートもバルディッシュもかなりのスピードで再生していたし、明日にはリリィも直っているのだろう。

魔力を流して物を直すのはまた違った技術が要りそうだし、私も大人しく寝て体力を回復する他ない。

 

起き上がっていても仕方ないと分かったのでボスンと枕に頭を埋める。

しかし、フェイトと戦ったのは夢じゃないのかぁ。

 

 

 

『君の夢は叶わない( *`・ω・)キリッ』

 

 

 

だっておwww勝てるんじゃないかってイキリ散らした結果がジュエルシードもフェイトも取り逃すとかwwwファーwww

 

いっそ殺せよォ!!秘策とか言いながらやってる事理科の実験レベルやぞ!?何ドヤ顔してんの?余裕かまさず確保しろやァ!私ィ!!

 

しかも曇らせるとか言いながらやってる事腹パンおじさんだぜ?暴力に訴えかけて良いジャンルじゃないんだよ愉悦っていうのはさぁ!

もっとこう、心?心に重たい一撃を食らわせるの!小さい積み重ねで逃げ場を無くして心を折るのが愉悦なの!腹パンじゃないの!

 

ってかそれより酷い。腹ショットガンとか何考えてるの?リョナの世界の人なの?自分で自分が怖いわ。非殺傷設定に甘えて容赦無くなり過ぎじゃない?それ以前に設定したっけ?出力的に平気でしょとか言いながら何にも触ってなくない?フェイト君顔真っ青でしたよ!?

 

何よりも推しに腹パン、もとい腹ショットガン食らわせるとか何考えてるんだ…。お前はなのはの世界をどうしたいんだよ。指詰め案件だぞこれはぁ…。

 

「愉悦、愉悦とは一体…?私は何をして何を考えて生きているのだ…?私の知能が高ければ…INT3の己が憎い…。」

 

その苦悩はアースラの職員ともに見舞いに来たなのは達が医務室のドアを開けるまで続き、その時の様子を書いたカルテには『死の恐怖からか精神錯乱の傾向が見られる。本人に自覚は無く、無意識的に自身を責めているようである。カウンセリングを検討されたし。』とメモしてあったらしい。

そしてそれを読んだリンディが、見当違いの罪悪感で胃に穴を開けるのは私の知るところではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェイト、大丈夫か?怪我は痛くないか?」

 

「平気だよ、アルフ。大した傷じゃないから、1日も経てば治るよ。」

 

そう言って笑ってこちらを見るフェイトの顔は未だ青白くとてもでは無いが平気なようには見えない。一日で治るような傷ではない事は、治療を行ったアルフにはそれこそ痛いほどに分かっていた。

広範囲の内出血というのは元々治りが遅い。それに加えてフェイト達の状況では安静を確保する事も難しいだろう。

 

「もう止めよう。管理局も出てきた以上、俺達だけじゃ無理だよ。」

 

フェイトがあの小娘に良いようにされている間、アルフだって指を食わえて見ていた訳では無い。いくら不意打ちを食らって脳震盪を起こしていたとはいえ、自立したインテリジェンスデバイス程度の牽制射撃を躱してフェイトの元に駆けつける事くらいアルフには容易に出来た。

 

それを阻んだあの管理局の余裕ぶった顔。無意識に握っていた拳に力が入る。あの生意気なガキに全てを邪魔された。

相手は明らかにアルフの妨害のみを意識した立ち回りをしていた。攻め手に掛けているように見せて、その癖アルフが動こうとしたら的確に止められる。明らかに格上の存在だった。

傷付いたフェイトの姿が視界に入る度、フェイトの悲鳴が耳に届く度、アルフの中に有ったはずの冷静さは抜け落ちていく一方であった。

 

戦闘において焦りは何より禁物である。そのセオリーを守れず、結果自分は逃げることも助ける事も叶わず地面に叩きつけられた。

今こうしてフェイトと2人、逃げ延びて来れた事自体奇跡に近いのだ。

 

「でも、ボクは母さんの願いを叶えてあげたい。」

 

だからごめんね。そう言う己の主の笑う姿の何と痛ましい事か。フェイトの笑顔を守ると言う誓いはどこへ行ったのか。

次元震を引き起こす様な危険な代物を我が子に奪わせる様な母親の、何がそんなにいいものか。アルフは喉から出かかった言葉を飲み下す他なかった。それはフェイトを守れなかった自分に言う資格が無いと感じた事もあるが、何よりフェイトにその言葉をぶつけるには、今のフェイトはあまりにも痛々しかった。

 

アルフは己の不甲斐なさに震えるしか無く、だがそれでもフェイトの願いに異を唱える事はアルフの心が許せなかった。自分が肯定しなければ、フェイトは本当にひとりぼっちになってしまうと。

その事を誰よりも理解しているが故に。

 

「ごめんね、アルフ。ごめんね。」

 

震える自分をそっと抱きしめるフェイトの手は温かく、アルフは堪えきれずに声をあげて泣いた。

俺がもっと強ければ、俺が不甲斐ないばっかりに、謝るのは自分の方だと口から出掛けた言葉は、結局その全てが意味の無い嗚咽と幼稚な謝罪の言葉へと変換された。

 

夢叶うまで、と誓いを新たにした2人にとって、苦い教訓を産んだ冷たいコンクリートに閉じ込めた忘れられない春の夜の事だった。




苦悩の温度差が凄い。


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悲しみは怒りに

怒りは混沌(やけくそ)に。

8月中はたぶん忙しくてまた投稿頻度落ちます。あしからず。


「首の皮一枚、腕の皮一枚…。次元震マジこわぁ。」

 

夜、適当におばあちゃんにはユーノに教えて貰った認識阻害で誤魔化して家に帰った後、濡らせないからと右腕を洗わずにいたので、何となく痒い気がして包帯取ったら出血もせずに脈打つ筋肉がこんにちはしてたで御座る。

 

やぁやぁ我こそは!とか言い出してきそうだったので速攻でちゃんと巻き直して念仏唱えて布団被って寝直したよね。

残念ながら朝起きた時に夢じゃなさそうな痛み方してたから覚悟決めたけどさ。

 

知ってるかい?人の皮膚って豚肉の脂身みたいな多重構造してて、筋肉との間には細かい血管や脂肪組織やコラーゲン繊維なんかが詰まってるんだよ。だから普通は筋肉が「やぁ!」みたいな感じで綺麗に見えずに血まみれになってる筈なんだよ。

まさか皮膚が透明化したとか自分の右腕限定で透視能力に目覚めた訳でもなかろう?

 

早速昼間にアースラに行って、なんでこんな異常な怪我になったのかリンディさんを初めとして大人達に聞いて回ったのだが、曖昧な言葉だけで教えてくれなかったのでユーノを問いただすことにした。

安静にしてればいいとか知らない方がいいとか、滅茶苦茶流したそうにしていたのを食い下がって聞いたところ、私の右腕の皮膚は次元震の光に接触した拍子に魔素に分解されたらしい。こう、微細振動によって削り取られるが如く。それ故に傷口は何事も無かったかのようにのっぺりしていると。

じゃあ、出血しないにしてももっと激痛が走ってもおかしくないんじゃないかと突っ込んだら、「理由不明」だそうだ。

 

…はぁ?

 

次元震を観測した事はあっても、飲み込まれた人間がどうなるかは結果だけしか分からず推測の域を出ないらしい。次元震による負傷者自体が少ないそうだ。次元災害は生存者自体が珍しいと言われていて、今回の次元震は小規模だが、大きいものだと世界を滅ぼすらしい。

そういやロストロギアってそんな危険なものでしたね。

 

私の腕も本来触れていない所にも負傷が波及しているので被害がその程度で済んで、もっと言えば腕が無くなっていない事を喜んだ方がいいとの事らしい。

 

つまりあと少ししっかりと光に包まれていたら今頃利き腕が無くなっていた可能性があったらしい。ユーノが半笑いで教えてくれたが、確かに笑うしかない情報である。

 

「これがゾンダー疑似体験。がんぎるがんごぉぐふぉぉ…。」

 

リンディさん達がどことなく視線を合わせてくれない理由が判明したと同時、どこで聞いていたのかクロノが目の前にやってきて、「だから君は暫くの間アースラで療養。」と一言言ってバインドらしき魔法を私の首やら関節やらに巻き付けて来た。

その間にユーノは出撃に出てしまい、ゲートが閉まるまで拘束される事になったのである。思い出したら腹たってきたな。

 

『Master, Wake-up harry.(寝ぼけてないで起きてください。)』

 

このまま光を浴びて新人類に目覚めてやろうかと腕に魔力を込めていたら、いつになく切れ味の良いツッコミをリリィから入れられた。

いや、実際は回復力促進とかしないかと思って試してたんだけどさ。復帰早々辛辣ね、リリィ。

 

「おはようリリィ。調子はどう?」

『System all green.』

「見た感じ傷も残ってないし、大丈夫みたい。じゃあ、今日からまた一緒に頑張ろう!」

『No problem.』

 

リンディさんやアースラクルーの監視の元なのは達の出撃の見送りを行っては治療の経過を見る生活もこれで終わりである。リリィの回復を待つという理由もあり、半軟禁の様な地獄の日々だったがようやく自由に動けそうだ。

せっかくのなのはの活躍を近くで拝むこともできず、魔法を使うこともできず…何のためにここに居るのかと駄々を捏ねてもクロノに医務室に放り込まれ、私の小さな反逆の灯火は露に消えた。

まったく小さな反逆程度許してくれてもよかろうに。

 

しかし、そんな日々も今日までだ。

リリィは完全復活、私の腕も痛みを感じない程度に治った。そして負傷中に少しだけ仲良くなったクロノにも治ったら出撃してもいいと言質をもらっている。

 

現在、私たちの手元に存在するジュエルシードは10個の大台に乗り、アースラのメンバーも捜索に力を入れてくれているとはいえ、やはりと言うべきか発見が遅れフェイト達に先を越されてしまった物も出て来ているのが現状で、ほぼほぼ原作通りにフェイトも順調に集めているらしい。

 

お前関わっておいて原作から増えたの1個かよ!という感想も聞こえて来そうではあるが、正直原作とあまり差異が出ていなくてほっとしているのでオールOKである。

 

推定15個。それが現在確認されている所在が判明しているとなっているジュエルシードの数である。つまり残るジュエルシードは6個。原作の通りであれば後は海の底に眠っているはずである。

このジュエルシード騒動も終焉が近付いてきている。これ以上動けずに見守っている訳にはいかない。

 

既に捜索に行き詰まってから数日経過している。ある意味私の療養期間はちょうど良かったのかもしれないが、『一緒に行動して好感度を稼ぐ』という目的は達成できなかったので復帰は早い方が良かったのだ。

 

地獄の日々とは言ったが、私は医務室とデッキを行き来する程度で治療という名目で軟禁されていたので「がんばえーなのキュアー」と画面越しに応援していただけだが、進展が無い状況に疲弊しているなのはの姿は私に結構な栄養を提供してくれたように思う。

そのせいで1度間違えて「お疲れ様」って言うところを「ありがとう」って言ってしまってかなり無理矢理誤魔化した事もあるが、それは置いておこう。

 

ここで、1つ問題がある。

思えばなのはとフェイトがぶつかり合ったのは私がアースラに取り押さえられた日くらいであり、このまま海上で大捕物が始まった時、何が起きるのか想像ができない。

 

これは由々しき事態である!

 

原作ファンとして、なのはとフェイトの友情が育まれる機会が減る事は望むところではないというのもある。だが何よりもここで問題なのは、フェイトを見殺しにする事をなのはが許容する可能性がある事である。

 

原作にあった、あんなにボロボロになってるのに放っておけない!とリンディやクロノの静止を振り切って海上に飛び出すシーンはなのはの善性を示すと同時に後のフェイトとの友情を強固な物にする一助となるとても重要かつ大切なシーンである。

だがそれ迄の積み重ねが無くては人というのは己の身の危険を省みずに戦場に身を投じる事はできないのである!少なくとも私は知らない人のために命は投げ打てない。

 

実は私がベッドに転がされている間にフェイトと関わる事があったとか、私の想像以上になのはが良い子だったりしないだろうかと思わない訳では無い。というかこの悩み方前もした気がする。

 

まぁ、結論としてはフェイトを助けるために最悪の場合私が飛び出すしかない、という事である。

 

荒れ狂う海に前衛のいない遠距離担当が飛び出して行って何が出来るの?と言われると何とも言えないがたぶん私が飛び出せば芋づる式になのはもユーノも出てくる筈である(希望的観測)。

 

そうなれば私が参戦するだけで原作に大きな差異は出ない。むしろ足枷になってクロノの邪魔をすればジュエルシードの数を原作に合わせる事も可能かもしれない。

 

それに特等席でなのはとフェイトのいちゃこらを眺めていられると考えるとむしろありなのかもしれない。どうせ皆から無茶する奴みたいなレッテルを貼られているのだし、アースラから飛び出すぐらいした方が期待に応えられるだろう(やけくそ)。

 

こうしてリリィも復帰し腕の痛みがひいた以上、なんだかんだフェイトとのタイマンの経験が1番多いわたしが前線に出ていかないのもおかしな話である。

もうモニター覗いてるだけの存在ではない。

 

そうやって精神的なウォーミングアップを行って、海上で問題が起こっても大丈夫だと考えていた私は、実際問題が起きてアースラ内が騒然としていた時、若干ウキウキしていたぐらいである。

 

「要ちゃんはここに居て!」

 

それだけになのはとユーノが念話している様子を見た時は笑い出しそうになってしまった。なのはが飛び出そうとしている後ろをついて行こうと待ち構えていたのに…。

なんで止めるんです?

 

「待ちなさいなのは君、勝手な行動は許可できません!」

「ごめんなさい。でも、放っておけないんです!」

 

思わぬ制止の言葉にぴしりとその場に固まって動けない私を放置して、勝手に話は進んでいく。ユーノがなのはのバックアップを行ってるのが夢かなにかのように思えてくる。

待って待って。私もう復帰してる。バリバリ戦えますよ?

なのはの事は任せてじゃないんだよユーノ?耳着いてないんかゆーのぉぉぉおお!?

 

「なんて事だ…。」

 

頭を抱えるクロノに同調するように私も頭を抱える。なのはのまさかの裏切りに本気で頭痛がし始めた。

なんでこんなことになったのか、慢心、環境の違い…。

 

「艦長、私も行きます。2人が出てしまった以上、2人の安全を優先すべきです。」

「そうね。ではクロノ執務官、なのは君とユーノさんのバックアップを優先して。ジュエルシードの確保は最悪二の次で構いません。」

 

「待ってください!!」

 

いや、今は悩んでいる時ではない。1度出遅れた以上、ここで動かなければお留守番は必至。

これ以上蚊帳の外に居続けるのはマズイ!なんとか理由を付けて無理矢理にでも着いていかねばならない。

 

「私も連れて行ってください。数は力です。ジュエルシードの鎮圧もその後の行動についても私が行った方が利があります。」

「君は病み上がりだろう。それに守る対象が増えた方が困る事もある。業腹だろうが彼らの言う通りアースラで待機だ。」

「貴方たちが勝手に決めた病み上がりでしょう!この場で1番地球での戦闘経験が多いのは私です!それに遠距離の私が守られないといけない状態って前衛が壊滅してる時くらいじゃないですか、それなら救助要因として動ける人員が必要です!」

 

パッションで乗り切れ私!理由になってない気もするが考えてはいけない。こういう時はノリと勢いで乗り切るしかないのだ。クロノの言葉を真っ向から潰してるようで論点をすり替えて対処だ。

ほら、時間ないよ?アースラが一般人見捨ててもいいの?

 

「友達が危険な所にいるのを見てるだけなのはもう嫌なんです!」

 

情に訴えかけるように言葉を絞り出すが、これもまぁ本心には違いない。

 

「…同行を許可します。ただし、クロノの指示に従う事。危険と判断したら直ぐに逃げる事。ちゃんと約束できるわね?」

「はい!」

「クロノ、指示は先程と変わりません。3人の事任せましたよ。」

「了解。」

 

私の訴えの中に思うところがあったのか、リンディさんから許可が降りた。元々出撃するつもりだったのでさっさとゲートまで行ってユーノ同様ゲートをさっさと開く。

クロノが頭を抱えている気がするが気にしない。ユーノのおかげで地点登録はしなくていいのでとても簡単だった。善は急げですよ、クロノさん。

 

そしてそのまま何も考えずゲートに飛び込むと、結構な高所から落ち始めたので肝を冷やしたが到着するまで考える時間が出来たのだと思い直し気持ちを落ち着けることにした。

 

考えるのはジュエルシードの対処法もそうだが、先程のやりとりの方が気にかかる。

どうにも情に絆されたという感じではない気がするのだ。先程のリンディさんの目を思い出すと、なんというか品定めされている様ななんとも言えない感覚があった。

 

何となくだが前々からリンディさんが私を見る目はユーノやなのはを見るそれとは毛色が違うような気がしていたのだが、今回でハッキリしたといったところか。

 

…やっぱり信用されてないのかなぁ。たぶんだけど地球の近くを航行していたのも原作みたいに偶然って感じじゃなさそうだし。

少なくともアースラの中にいる時に無茶なことはしていないつもりなのだけれど。

 

「…寒くない?リリィ。」

『I have no life.No problem master.(機械は寒さを感じないんですよ?)』

「ふふっ。調子はバッチリだね。」

 

とにかく悩んでいても仕方ない事を悩んでいる程、私は戦える人間ではない。照準、偏差、魔力量。考えることは山のようにある。

結局スコープを覗き込んだら忘れてしまう悩みなど、放っておいたらいいのだ。

 

「リリィ、滞空制御よろしく。」

『OK Master.』

「私は一発の弾丸…。」

 

風の声も草原の輝きも私は知らないけれど、この言葉のように射撃に吸い込まれるような感覚を私はとても気に入っている。

 

「…ねぇ、やっぱり曲射にしていい?なのは君とフェイト君の間通して撃ち込みたい。」

『Congratulation Master.When do you got humanism?(人らしい感情の獲得、おめでとうございます。)』

 

私は怒っています。ええ、それはもう推しとか友達とか危険度とか関係ない程度には。

申し訳ないが、冷静なスナイパーは性にあわない。やっぱり私はトリガーハッピーが向いている。

 

「一発決めたら後は普通にやるから、操縦権はその後任せる。」

『Aye aye ma'am.』

 

なんだかんだ言って、私は守られる側の人間ではないと二人の頭に実践で叩き込んでやる!残念ながら相手は不定形なので見た目は微妙だが、ある意味遠距離からの妨害がどれだけ頼もしいかあの二人に見せるには充分だ。

 

うおおおおぉ!推しに仇なす者は死ぬがよい!




後は一騎打ちと対プレシア戦で無印は終わりですね。とりあえず1部を終わらせるまでは走り抜けたいです。

感想、誤字報告感謝です。
各話の細かい描写の修正や書き足しは無印書き上げてから行います。


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裏切りはそいつの名前を知っている。

お久しぶりです。


むしゃくしゃしていた要の思いとは裏腹に海上での支援行動は驚く程スムーズに行われていた。

 

二人の顔前を通り抜けていった魔力弾のせいで場に動揺が走りはしたものの、すぐ様フェイトに迫っていた水流が弾けた事で攻撃の意思が無い事はそのまま伝わり、決定打に欠けていた一時的な共同戦線は本格的に受け入れられることになった。

 

ジュエルシードの動きを止める為に魔法の準備をするアルフとユーノの為にヘイトを集める役をフェイトとなのはの二人が請け負い、補助と遊撃に要とクロノが動く即席だが安定感のある役割分担となった。

 

――なのは、左から来てるのは撃ち落とすから前だけ見てて。

 

ジュエルシードは水の意思すら汲み上げるのか、ゲームの世界にありがちなアメーバやモーフのような意志を持つ液体がうねりながら襲いかかって来る。

それを自身を囮として引き受け、時に避け、時に撃ち落としながらフェイトは持ち前の技能を駆使して対処していた。

一人でいた時は数に押されて為す術なく撃ち落とされていたが、なのはと半数ずつ引き受けることでそれまでと違い安全に対処できていた。

 

――フェイト君、3つ数えたら急上昇して。…2…1...今!

 

とはいえ危険がない訳ではなく、身体の負傷や疲労で手が回らず、被弾しそうになる事もあるのだが、そういう時は問題が起きる前に支援射撃が飛び攻撃が集中して対処が難しくなると念話で指示が飛んでくる。

今も射線を合わせていたのか追いかけてきていた水流が大きな水飛沫を上げて弾けたのが視界に映る。追跡を遮られて怒ったかのように暴れる水流を尻目にフェイトは再び体制を立て直して役割を果たすべくなのはの援護に向かう。

 

どういった基準で暴れているのかは知らないが、ただジュエルシードが暴走してイタズラに魔力を消費しているだけでは無いのだろう。現に攻撃を加えているなのはとフェイトは執拗に狙われているし、なんならさっきからちょっかい掛けている要の方にも攻撃が飛んでいっている。

 

視線の先ではもはや見慣れた少女がどこか感情を抑えたような表情でスコープを覗いていた。その周囲では管理局と思しき人影が少女と言葉を交えつつ水流を最小限散らす様に飛び回っていた。

2人はフェイト達だけでなくアルフとユーノの直接的な防衛も行っているらしく、時折それぞれ単独行動している姿が視界に入る。

 

暴走するジュエルシードの相手をしながら、フェイトは二度対峙した少女の事を考えていた。

 

自分とあまり、歳の違わない戦闘慣れしていない少女。ジュエルシードを探すフェイト達の邪魔をする、あまりいい印象のない存在である。明らかに格下だと分かっているのにその口先に翻弄されいつの間にか相手のペースに乗せられている、子供にしては策を弄する事を得意とするあまり相手をしたくないタイプの魔導師である。現に、少女と対峙したそのどちらにおいてもフェイトは少女の搦手に追い詰められ、敗北を喫している。

 

だが今はその状況把握と戦略を立てる能力を頼もしく感じる。前に戦闘は不向きだなんだと騒いでいたが確かに前線に立つよりも指揮官としての適正の方が高いのかもしれないと今なら思える。普通の魔導師でないという言葉もそうした意味で言っていたとしてもおかしくないが、それは考えすぎだろうか。

 

こうやって共同戦線を張ること自体、フェイトには想像もできなかった訳だが、彼女の言葉にはその不信感を払拭するだけの力があった。

 

――大丈夫!?フェイト君!

 

眼前を記憶に新しい魔力弾が通り過ぎて言ったのは肝が冷えたがそれが瑣末事だと感じる程には、彼女の声色からは嘘を感じなかった。

 

アルフ以外から心配されたのは初めてだったということもあるが、一本気というのか直線的というのかフェイトには正しく表現する言葉の持ち合わせが無かったが、その言葉を信用したいと思えるだけの物が確かに存在していた。

 

共に水流の相手をしているなのはだってそうだ。別になのはの言葉を聞かずにアルフと二人で対処する様にしてもよかったのに、あの時のフェイトは思いとどまった。

母のためなら己の身の危険など厭わないと考えていたにも関わらず、なのはの言葉に、フェイトの身を案じる言葉に心動かされたのだ。

 

――二人のサポートは私がするから。だから、前だけ見てて。

 

不思議と彼らの言葉を暖かいと感じた。そしてできれば、そんな彼らと一度普通に言葉を交わしてみたいと感じてしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

「要、あまり無茶なことはするな。」

 

クロノが私を護衛して、私がなのは達をサポートする。アルフとユーノはバインドの準備、なのは達はヘイトを集める。単純だが効果的な戦法だと思う。

まぁ適性を考えたらそれしか方法がなく、私のお守りをクロノが押し付けられただけという話なのだが。

 

幸か不幸かクロノ達は一度次元震が発生したせいで、ジュエルシードの対処に慎重になっている。一時休戦の取り決めを破って急にクロノがフェイトとアルフを拘束するような事も無いだろうし、予定外の事は起きないだろう。

あと、何となく私に対して罪悪感を覚えているらしいので私の無茶を放っておいて持ち場を離れたりもしないだろうという打算もある。

 

「平気。それに無茶するなって言うなら、なのは君に言ってやってくださいよ。」

 

人の事を言えた義理ではないが、戦う術を手に入れたばかりの一般人が命の危険を冒して前線に身を投じるなど、普通で考えれば無茶な話である。恐らく本人にその自覚が無いのが問題だが、こうして必死にフェイトを助けようとする姿はとてもその、カッコイイので私から何か言うつもりは無い。

 

「私が言うより君からの方が伝わるだろう。こういうのは近しい人間からの方が効果的だ。」

「私が言っても逆に言い含められますよ。」

「自覚あるじゃないか。」

 

私が普段から無茶してるってことですかぁ?…ノーコメントです。

 

「ユーノ、あとどれくらいかかりそう?」

 

くだらない雑談(クロノの追及)を切り上げる為にクロノから離れて後ろでタイミングを図っているユーノに話しかける。バインド自体は難しい魔法では無いし、範囲が広くなったとはいえ時間はそんなに掛からないと思うのだけど。

 

「いつでもいける。ただ、確実にタイミングを計るなら少し時間が欲しい。」

「なら大丈夫。2人がうち漏らしても私とクロノが居るから。なのはと打ち合わせしてなのは達のタイミングに合わせて。」

 

となれば相手のヘイトを買う役を私とクロノの2人が代わることになるだろう。疲弊しているフェイトと戦闘慣れしていないなのはをあのまま動かしておくのは憚かられるし、バインドが入ればうち漏らしたとしても一人1つ相手にする程度で済むと思われる。

どちらにせよ広範囲に威力のある魔法を放てるのは二人しかいないのだから、出力を期待する意味も込めて早めに交代したい。

 

「クロノ、今の聞いてました?」

「私は構わないが君、近接は苦手だと言ってなかったか?」

 

そういえばクロノ達の前でリリィのブレイドモードを使っていなかった気がする。もしかして固定砲台じゃないと戦えないと思われていたのだろうか?

一応フェイトとタイマン張れるくらいには戦えるのだけど。

 

「リリィ。」

『Blade Mode.』

 

ほら全然戦えますよとアピールするが、どことなく呆れられている気がする。はて、今の行動に何か変なところがあったとは思えないのだけど…。

クロノと二人でお互いに首を傾げているとユーノ達の魔法が発動した。どうやら出番らしい。

 

目配せひとつで付き合ってくれるクロノに心の中で感謝しつつ、魔法の準備を始めたなのは達の前に飛び出す。クロノと私で二人の周囲をクルクル回る様に警戒態勢を取って、二人に安全アピールをしておく。

チラッと視線を送ると二人とも理解してくれたのか詠唱に集中してくれた。

 

被害と事態の収束を急いだだけに、予想通り拘束を逃れたジュエルシードがひとつ。とはいえ私が相手をしようと動くもその前にクロノがバインドで縛り付けていたため私の出番は無かったのだが。

 

「私達の仕事はなさそうだね。」

『No problem.(いいことじゃないですか。)』

 

バラバラっと索敵を行うが、拘束されているジュエルシードに抵抗以上の動きはないし数も問題ない。

やることがない以上、クロノについて行く形でなのは達の射線から身を躱し、邪魔にならないように移動する。

 

すると待ってましたとでも言うように荒れ狂う波を叱り飛ばすが如き魔力の塊が紫電を纏ってすぐ傍を通り過ぎていった。

 

この2人に置いていかれないように着いていくのは大変だなぁと光に目を奪われながらそんなことを考えていたらこつん、と頭の上になにか落ちてきた。

 

「おーまいがっしゅ…。」

『This is your credit.Master.(お手柄ですね、マスター。)』

 

きらりと光るその姿は紛れもなく私たちの求めているジュエルシードである。魔力の余波で飛んできたのかなんなのか、兎に角他のジュエルシードを確認するが、横にいた筈のクロノが原作宜しくアルフとジュエルシードの確保争いをしていたらしくその手には確かに光が3つ存在していた。

対峙するアルフは2つ手にしており、苦虫を噛み潰したような表情をしていることからこのまま撤退して行くだろうことは想像に容易い。

 

やるか?いいのか?やっちゃったら怒られないか?

 

頭にガリレオのテーマを流しながら私は必死に考えた。しかし悩む心とは裏腹に身体は予定通りの動きをし始める。

難しいことは先に考えた筈だ!なら後は心のままに動くべし!

 

「フェイト君!」

 

大声を上げ、不安を押し切ってジュエルシードをフェイトに向かってぶん投げる。ジュエルシードの数を調整する為!フェイトの警戒心を解くために!

 

許して!これで被害の規模が想定内になるはずなんだ。適当な言い訳も聞き逃して!

 

「これで、()()でしょ?」

 

この場にいる全員からの信じられないものを見る目を一身に受けながら笑顔を保ちながら鈍感を演じる。後でめちゃくちゃ怒られるのは分かっていても、今だけは取り繕っておきたいのだ。

 

撤退していくフェイトとアルフを笑顔のまま見送ってクロノが口を開く前に速攻でユーノの後ろに隠れる。

こちらを睨みつけている恐ろしい表情なんて見えないし、リンディからの念話も着拒である。

 

頼むユーノ!あの般若をなだめてくれ!私たち友達だろう?

…ユーノ?どうして離れようとするんだ?反省しろ?嘘だろ?せめて一緒に怒られてくれたり…。

 

「…話は艦長室でみっちり行う。」

「ヒェッ」

「要、流石に今のは庇えない。」

 

う、裏切り者ぉー!!

 

「いや、その言葉は要ちゃんが言われる側だと思う。」

 

そんななのはのつぶやきは私の耳に入ることは無かった。

私悪くないです!




転職活動が落ち着いたので執筆活動再開します。


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雲がゆくのは

主人公のスタンスがブレてないか心配です。


適当なビルの屋上に腰掛けて、ぷらぷらと足を遊ばせながら一人静かに時を過ごす。

何かを考えるわけでもなくぼーっと時間を無駄にして、雲の形に何か特徴を見つけては物思いにふける。そんなある意味いつもの時間が帰ってきたのである。

 

私にとってのジュエルシード事件は終了したのだ。

 

それは海上での一戦が終わった現在において、私が介入して大きく変化がありそうなシーンが無くなったということと、原作との差異が少ない以上座して天命を待つ他ないという能力の限界という大きなふたつの理由からである。

 

もし介入したとしてもなのはの代わりに一騎打ちしたところで勝てるかどうか分からない。何より2人の友情を深める邪魔をしたくないという、いちなのはファンとしてその辺の大筋にちょっかいを出すのは個人的なポリシーも相まって嫌ということもある。

結果として何か行動に移す気が失せているという訳だ。

 

とはいえこのままぼーっとしているだけで無印が終わる訳では無い。大きな仕事が終わっただけで戦闘する機会が無くなった訳では無いのだ。

 

これから始まる一騎打ちの後、私達はプレシア・テスタロッサの所に乗り込み色々あって無印はその幕を閉じる事になるだろう。

しかしその前に、原作通りならアースラの戦闘要員(笑)が討ち入りして返り討ちに合ってしまい、イベント戦のような最終戦が幕を開けることになる。それはつまり戦闘要員が不足した状況でやむを得ない出撃が予想されると思っておいて間違いないだろう。

 

私にはフェイトを助ける為に飛び出した二人を追いかけて飛び出していった前科があるし、リンディさんに切った啖呵の内容も鑑みると何も言わずとも出撃メンバーに編成されていておかしくないし、私としてもありがたい。

 

そしてなのは達と共に出撃し、フェイトとなのはのサポートとして無人機だかゴーレムだかを少々処理して私の役目はおしまい。なのはとフェイトは幸せなキスをしてめでたしめでたし、と言った具合である。

 

今までの事を考えたらなんとも楽な仕事である。

多少なりとも気が緩んだとて誰にも文句は言わせるつもりは無い。私の役目は終わったのだ。さながら今の私は背景である。

 

 

青い空高いビル、結界の張った空間。ここに来る前に用意してきたおにぎりを齧りながらビルの屋上からの景色を堪能する。

普通なら怖くてこんな状態で食事なんか出来ないが、飛べるということは偉大だ。

シンプルに魔法を便利だと感じる経験は割と少ないような気がする。な?アルフ?

 

「いや普通に危ないから、それ。せめてバリアジャケットくらいは出しとけよ。」

「アルフはおにぎり食べる?おかかかしぐれ煮しかないけど。」

 

否定的な意見は求めてない。そんなこと言う口はおにぎりで蓋しようねー。

お、おかかにしたのか。アルフが持つと同じサイズのおにぎりでも半分くらいに見えるね。改めて自分が子供になったということを自覚したよ。

あとアルフってかなりタッパあるよね。話してて首痛いわ。

 

「呑気なのは知ってたけど、フェイトとあの子が戦うって時までブレないなお前。」

「まぁ、究極的には無関係ですし。」

 

首の痛みを嫌って視線も遣らずに答える。これについては、まぁそのままの意味である。

 

ユーノを助けたいと言うなのはの手伝いをしている以上、ユーノが許可出してるなら最悪フェイトがジュエルシードを持っていっても私としては問題ないからね。管理局に属してる人間じゃないし、何より私は無責任な子供だからどうなっても責められない。流石に地球滅亡は阻止したいけどさ。

 

「案外冷たいのな。」

「そういう事にしておかないとアルフ達が困るでしょうに。」

「…あー。」

 

これ以上は胸の中だけで閉まっておくが、私だってなのはが危ない事しようとしてるのを黙って見ている状況は、良いとは言いづらい。それを無理矢理納得させて乱入も多対一の状況を作るのも止めて傍観者として観客として応援している。そういう()()()()()というスタンスを崩してはならないのだよ。

 

…ということにしておくと私の心象も悪くないじゃないかなって思うわけです。口にはしないけど。

 

とはいえアルフも理解はしてくれたのか、私の建前的な意図自体は汲み取ってくれたらしい。

 

「怒っても仕方ないからね。どうせなら楽しまなきゃ。」

「…強かな奴。」

「そう言いながら、海では不機嫌だったじゃない。」

「要は単純だからな。あまり賢い事を口にすると後で恥をかくぞ。」

 

ちゃっかりとアルフ相手に策謀を巡らせていたらユーノとクロノの2人から余計な茶々を入れられてしまった。

うるさいぞ外野。2人ともおにぎりでも食べてなさいよ。

 

「要って意外と家庭的だよね。」

「初めて食べる味だが美味しいな。肉味噌とは違うんだな。」

 

呑気なのはみんな一緒らしい。悩んで解決しないことは悩まないのが得策らしいよ?だからアルフもゆっくりしていきなさいな。

 

「ストレスは溜まらないだろうが、それじゃあ成長も期待できそうにないな。」

 

人が場を和ませようとしてる時にクロノはなぜつつき回そうとするのか。

 

そんな事言うならクロノはどうしたのさ。いつもならピリピリしながら横槍がないか警戒でもしてるでしょ?

いいの?呑気におにぎりなんか食べてて。

 

「彼らの勝ち負けに関わらず横槍が入らない筈がない以上、それは予定通りのことに過ぎない。彼らの勝負に決着が着くまでは敵方も此方も何も出来ないし何も起きない。それに今日の私は君たちの護衛で前線に立つわけじゃないからな。」

 

しれっとそう言って引き続き食事に戻るクロノに若干呆れるが、確かに理にかなっているし戦闘要員さん達が出張ってくることを考えればクロノがフリーでいることも納得はできる。少し不機嫌なのもその辺が理由だろう。

 

あまり会う機会が無いので詳細は不明だが、リンディさんとクロノ曰く「負傷した子供を前線に立たせ続けるのは鬼畜の所業!(意訳)」と言って大人のメンツを保ちたがる戦闘要員さん達が多いらしい。その子供の中にはクロノも含まれているらしく、リンディさんが説明してくれている間視界の端でクロノが苦虫を噛み潰したような顔をしていたのを私は目撃した。なんとも世知辛い話である。

 

それにしたって地道で危険のある長い作業は見なかった事にして最後の美味しいところだけ持っていきたいって何考えてるんだろうね?

前線で頑張ってた身としては面白くない冗談である。せめてクロノと同じくらい働いてから言って欲しい。まだ医務室で手当してくれたあんちゃんの方が心象いいぞ。

 

ま、どちらにしても私には名誉とかそういったものは不要なので休ませて貰えるならそれはそれでいいのだ。というか原作通りなら乗り込んだ先でばったばったと倒れる事になるのだし、そういうハズレくじくらいは引いてもらうとしよう。

この後負けたフェイトくんをアースラで預かる事になるなら様子が気になるとか言えば同行しない理由は適当に作れるが、戦闘員が出張るならその辺も気にしなくていいだろう。手間を省いてもらったと考えるとしよう。

 

 

クロノと二人、視線だけで会話をしていても仕方が無いので、特に戦闘要員さん達について触れないようにして、みんなに緑茶を差し出してやる。

ユーノは慣れたもので普段と変わらず美味しそうに飲み、クロノは信じられないものを見るような目でそんなユーノを見つめている。

いや、リンディさんの甘い緑茶が変なだけだから。ちょっと渋いけど普通のお茶だよ。

 

「そういや、昨日の夜フェイトくんと話してきたよ。」

「あぁ、結局行ったのか。母さん困ってたぞ。」

 

ズズーッと茶を啜りながらなんでもないようにそう言うとクロノから気にしていないかのように返事がくる。話を遠ざけようとしたこちらの意図を汲んでくれたようで、実にありがたい。

クロノとしても八つ当たりを気にしているのかもしれないな。

 

「約束通りアルフが無事だって伝えておいたよ。今日会えるとも伝えておいたからね。」

「お前…。」

 

時間は少し遡る。

 

海上での決戦が終わった後、ジュエルシードの捜索が無意味ではないかという話が上がるようになった頃傷だらけのアルフがバニングス邸で保護された。

それ自体は原作通りだったのだが性別が反転している影響かアルフの回復が原作より早く、管理局の監視下に入るよりもフェイトの元に帰ろうとして檻の中で暴れだしかねない状況だったため、やむなくなのはとユーノよりは多少口が立つからという理由で少しばかり私が交渉を行う事になったのだ。

 

私から提示したのは。

 

『管理局としても現地人としてもアルフを野放しには出来ないので解放できない。』

『フェイトには必ずアルフの無事を伝え、現在計画されている明日の一騎打ちまでは戦闘をしかけない。』

『アルフは管理局で身柄を拘束。不当な扱いはしない。』

 

以上の3点を管理局には言わずに勝手に決めて、アルフに条件を飲ませたのである。

クロノ達が居ないと納得しないかとも思ったが、意外とすんなり認めてくれたので意気揚々とアースラのリンディさんに報告したのだが、滅茶苦茶怒られる事になった。

 

しかしこちらも怒られるのはここ数日で慣れたもので、右へ左へ聞き流して適当に言いくるめていたらクロノが取り成してくれた。

というのも、現地人である私の主張には落ち度はないし提示した条件も不利なものでは無いから問題無いと。

 

その場にいたユーノもなのはも納得してくれた内容だと付け加えた結果、リンディさんの方が折れる形に収まった。ただアルフを護送した後アースラで少々お説教されたが、もはやノーダメージと言ってよかった。

 

なので私はしれっと大人しくしているフリをして、フェイトの所へ行ってきたのだ。

クロノに見つかった時にはヒヤリとしたが、

 

――子供の私は君がどこの誰と交友関係を結ぼうが口を挟むつもりは無いが、大人から見て君が悪いことをしているかどうかも子供の私には判断できない。だから母さんには黙っていてやる。

 

と言って見逃してくれたのだ。今思えばクロノも大人の身勝手に嫌気が差していたのかもしれない。

しかしぶっきらぼうながらも心優しい黒髪美少女なんてどこのエロゲのご出身で?『とらいあんぐるハート』?…あ、そう。

 

リンディさんは一騎打ちの始まる直前にアルフの無事を伝えるつもりだった様だけど、フェイトの不安を拭いたいというアルフの想いを無視するのもはばかられたので、クロノに一言伝えてから勝手にメッセンジャーになったのである。

 

回想終わり。

 

「それで、フェイトはなんて?」

「安心してたみたい。勝ったら連れていけばいいし、負けたら拘束されるから会えるって伝えたら笑ってたよ。」

 

まぁ、そんな感じで実はフェイトくんのコンディションは原作よりはマシという感じになっている。

 

その結果があの迷いない瞳をなのはに向けるフェイトくんなのだが、どうしようこれ。勝てるかなぁ…?

 

「フェイト…。」

「そろそろ始まるか。」

 

もしなのはが負けても大筋に変化はないと信じつつも、取り敢えずはなのはを全力で応援するとしよう。

想いは力になるって日曜のヒーローが言ってた気がする!

 

「頑張れー!なのはー!!」

 

声が聞こえるとは思わないけど、だからって声を上げない理由もないのだ。




次回、遂にニチャれるぞ要!(未定)


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人は見たいものしか見ない

思い込めばそれは泥沼


「頑張れ!そこだ!突っ込んじゃえ!」

「いや、流石に突撃は拙いんじゃない?色々と大味すぎるよ。」

「じゃあパワーで押し切って!」

「脳筋過ぎないか?」

 

わいわいと話す彼らを少し後ろから観察する。それが艦長から告げられた私の仕事。

 

「落ち着け要。前に乗り出すと落ちるぞ。」

 

適度に言葉を送って場に馴染むように努める。お堅いなどと言われることも多いが、別段人付き合いに困ったことは無い。それが仕事となれば尚更。

それに、この状況を維持させることが艦長の思い描く局面を現実にするために必要だと思えば思う所などない。

 

敵側の捕虜と味方側の問題児。その監視を任されるのは信頼されているからなのだが、周りから見て子守りを回されたと捉えられるのが不満と言えば不満。

現に敵陣に乗り込む奴らの表情に憐憫の表情が浮かんでおり、私の機嫌は底をついた。

 

要はその事にいち早く気づいたようだが、それでも私が何に不満を持っているかは分からない筈である。それに彼女はよく思考を放棄したり行き当たりばったりなところがあるので事実以外は興味が無いように思える。おそらく深くは考えないだろう。

目の前でスポーツ観戦かのように2人の戦いを見ている姿を見るに、やはり難しいことは考えていないと見える。案外態度に出るのだ、こいつは。

 

アルフはフェイトの安全を第一とし、ユーノは管理局に対する無意識の信用がある。なのはとフェイトはアースラの戦闘要員が今頃どうしているか知らないとなるとこの頭の回る小娘さえ抑えておけば上手くいく。というのが艦長の考えらしい。

 

考えと言っても命令自体、『あの子を傍で見張ってて。』という疲労の滲んだものだったので物理的に何とかしようということなのだろう。

民間人の協力者とはいえ、脱走、情報漏洩、命令違反と軍人ならクビが飛びかねない行動のオンパレードに加えジュエルシードの勝手な譲渡と来たものだから遂に艦長の管理できるキャパシティを超えたらしい。

 

権力の価値を理解しない者を権力で支配するのは無理だと長い歴史がそう物語っている。

 

私の推測だが、彼女にとって管理局やアースラというのは珍しい国の人くらいにしか捉えられておらず、よく分からないものというカテゴリーに入っていそうな気がする。

もし正しく理解していたとしても無茶をする気がするのであまり変わらない気もするが、落ち着いたら少しくらいは相互理解の機会を設けたいものである。

 

適当に気を配りつつ、貰ったおにぎりを口にする。警戒しつつ渡されたお茶にも口を付けるが、身体が強ばるのはもうどうしようもない。

 

美味しいはずなのになんとも言えない淀みが胸に溜まるのを感じながらぐっと飲み干す。

 

なのはとフェイトの決闘は若干あちら側に有利に傾いているようだが勝負が見えるほどでは無い。艦長の推測通り順調に進んでいるように思える。

次に動く身として、戦闘前の腹ごしらえは正直ありがたい。

 

なのはとフェイトの決闘が終われば間違いなくプレシア・テスタロッサからの干渉がくるだろう。それは同時にあちらへのアプローチが可能になる絶好の機会でもある。

 

戦闘員の強襲だけでなんとかなるかは分からない。最悪の場合何の成果もなく全滅する可能性すらありえる。

次善策、それを見越した人員配置、私が待機しているのもその一つである。

 

もしもの時はなのはと要、ユーノにも動いてもらう必要が出てくるだろう。なのでなのはに負けられると少し困る。いや、だいぶ困る。

良くも悪くも私たちの最大火力はアースラを除けば彼が1番で、火力が欠けた状態で行動するのは勝算があまり宜しくない。

 

昨日見たプレシア・テスタロッサの資料の事もあるし、考える時間が足りないにも程がある。

 

思考を遮るように、突然視界がぱあっと明るくなる。

…やはりあの火力を失うのは惜しいな。流石にこれで終わりだろうが、ある意味ここから私は気を張らねばならない。

 

「ユーノ!アルフと共に君はアースラに戻れ!」

 

まだ何も起こっていないが、初動というのは全ての成否を分ける。

誰もがみんな、仲良しこよしを邪魔しないなどと子供のような事を信じている訳では無い。

 

「クロノ、今度は見捨てろなんて言わないよね。」

 

飛び出すタイミングを計っていると要から声が掛けられるが、元よりそのつもりである。

 

「人命優先だ。お前はフェイトとなのはを掴んでアースラに向かって飛べ。私はプレシアの対処に回る。」

 

この判断力と実直さ、状況判断できるだけの頭の回転は是非管理局に欲しいのだが。実に惜しいものである。

 

天は二物を与えず。いや、この場合は適材適所の方が近いだろうか。彼女は自由だから活かされるのだろう。

この友情が説教の中で生まれたものであるのが玉に瑕だが。

 

「行くぞ。」

 

肩を並べる存在というのは、案外悪くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

絶望という物に惹かれたのはいつだったろうか。

 

好きな小説の影響?自分より不幸な人を見るのが好きだから?絶頂と絶望との落差に心躍るから?

 

そのどれでもなく。私の心が壊れた時から絶望というものを理解したのかもしれない。

 

 

人は立ち上がれない生き物だ。

 

 

寄りかかって、這いつくばって、前に進むことができたとしても立ち上がって元のままに生きていくなんて稀な話だ。

 

崩れ落ちた経験は、必ずどこかで瑕になる。

ふとした会話で話題に上がった時にストレスを感じる程度から、恐怖し気が触れかねない精神状態になるまで様々。

絶望とは、心が壊れるとはそういうことなのだ。

 

壊れた心が元に戻ることは無い。壊れた物は脆くなり、壊れる前のように無茶な扱い方はできない。

 

壊れたことの無い心に比べ、壊れた心は壊れた時の形を覚えている。それが怖くて無茶なことができなくなって、無意識に自分の首を絞めたくなる。

 

そんな絶望に人が叩き落とされる様が、なぜこれほどに心を擽るのだろう。

 

廊下に響くアラート音が部屋の中まで届く。原作通り、プレシア・テスタロッサが動いたのだ。

 

「アルフ、私はフェイトくんのお母さんを倒しに行くよ。」

 

生気を失ったその瞳に花火を見るような期待と不安が心を支配するのはなぜだろう。

 

そっとフェイトの顔に手を伸ばして、結局何もしないままアルフの方を向き直る。

 

「フェイトくんの事、看ていてあげて。」

 

心を支える柱というのは案外儚く脆い。そしてそれは、自分に依存することがない。

 

フェイトの場合であれば母の愛の記憶であり、信条、理想の未来、自己のアイデンティティである。

愛を否定され、生まれを否定され、不要な存在だと自覚した。その絶望は想像するだに悍ましい。

 

最後にチラとだけフェイトの方を見遣ってから、首に提げたリリィを手のひらで包むようにしてバリアジャケットを纏う。

 

「それじゃあ、行ってきます。」

 

それは生きるための理由と言い換えてもいいかもしれない。それが失われた彼の姿は、もはやただの抜け殻だ。

 

絶望しているだけの彼には、さほど食指が動かない。

心のどこかで輝いている彼らが好きなのだと宣言しているようで、自分の性癖の難儀さに辟易する。

 

それでも、私は再び彼が輝くと知っている。

故に期待し、興奮し、憧憬の念を禁じ得ない。勝手に期待してしまうのはもはや仕方ないことだが、私は決して彼らに失望しない。

 

それは信頼であり願望であり、私の醜さ故の自己防衛なのかもしれない。

 

結局私をつき動かしている愉悦への衝動というのは、絶望に惹かれる破滅願望などではなく、未来ある若者を自分の所まで引き込みたいというちんけでワガママな欲求なのかもしれない。

 

人が輝く為には一度泥を啜らなければならないなどという、勝手なヒロイックへの心酔を実現するための手段として愉悦を採用した。ただそれだけなのだ。

 

「フェイトくんは…大丈夫だよね。」

 

『Yes.Master.He is so strong of mental. Probably he wake-up soon.(彼なら大丈夫ですよマスター。挫けても前を向ける人物です。)』

 

「そうだよね。ふふ…。」

 

意思があるとはいえ機械であるリリィにもフェイトは強い人間だと認識されている。その事実に心が震える。

絶望に負けない、立ち上がってこれるだけの意志の強さがあるのだと。

 

これが主人公、これがひと握りの輝き。

 

先程から笑いが止まらない。アラートの音でかき消されているものの他人が見たら今の私の姿は明らかに異常に映るだろう。

 

幸いにして非常事態であり、医務室からの通路を利用しているのは私しかいない。込み上げる笑みを手で隠してはいるものの、人が通りかかれば声ばかりは誤魔化せない。

 

なのは達と合流するまでに気持ちを切り替えなくてはいけないのに、フェイトの心が折れる瞬間を思い出すだけでもはや我慢が効かなくなっている。

 

あぁ楽しいなぁ。たのしいなぁ。愉しいなぁ。

 

言葉の意味を理解してなお否定を求めるフェイトの姿は、震えて凍えそうな姿は、良心の呵責を呼ぶに相応しく。呼吸すら忘れて力なく頽れる姿は最高の一言に尽きた。

 

それにアルフを近くに置いておいたのも正解だった。

 

フェイトの真実を知って混乱した振りをする彼の表情も素敵だった。理解してしまったが故に己の抱いた感情を否定する術を求める人というのは何故あそこまで愉快なのか。

 

そんな馬鹿な話があるか。嘘をつくな。そんなことありえない。そうやって否定する度逃げ場がなくなり、自分の主の不憫さを段階的に自覚していく様は、正しく芸術と呼んで差し支えない。

 

プレシアとの会話が続かなくなった途端、彼が主人に向けていたのは憐憫でしか無かったと納得した時の表情を見た時など、足元から快感の波が脳へ突き抜けた様な気すらした。

 

 

私は幸せな人間(彼らとともに居てはならない存在)だと常々思う。彼らの傷つき崩れ落ちる姿に快感を覚え、彼らが立ち上がって生きていく様を見てより大きな期待を胸に抱けるのだから。

 

あぁ。これが私の手によって引き起こされたものだったとしたらその快楽はどれほどの物だっただろうか。

2倍?3倍?それとも数字では表せない新たな興奮と達成感が私を満たしてくれるのだろうか。もしも全てを掌の上で行えるのだとしたら、命を対価にしてもいいとすら思ってしまっている自分が居ることに私は恐怖と興奮を覚えている。

 

戦場へと足を動かしながら、取り敢えず今はこの悦びを堪能するとしよう。

もし気づかれたとしてもこの興奮は義憤に、心の邪悪さは無邪気さの露出だと大人たちは考えてくれるに違いない。子供というのは純粋で無垢で単純なのだという信仰が、彼らの中には根付いているのだから。

 

何もおかしなことは無い。私は友達の為に地球の為に危機を排除しに行くだけなのだから。

 

だからフェイトくん。早く元気になってね?

 




ニチャァできる描写よりもニチャァり方と心の動きを意識して書きました。
アースラは笑顔溢れる素敵な職場です。


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思いの丈を伝えるものは

とりあえず1期完結になります。


たたかい は おわった ▼

 

 

やはり なのフェイ は いい ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うそうそ。嘘です。まだ戦ってますし、何より私そんなにBLとか百合とか好きじゃないです。嫌いでもないけど。

 

 

私は今、激戦区真っ只中にいます。

激戦区といえ、機械兵の雑兵達に囲まれているだけなので、すごく大変という訳では無い。たまに足を踏み外しそうになるのが怖いが、一度落ちかけてからは常に少しだけ浮かぶようにすることで対処している。

 

一体一体は何とか私でも相手できる程度の動きだが、如何せん数が多く中々殲滅までには至らないというのが現状である。たまに降ってくる瓦礫にも気をつけねばならないのも殲滅速度を落としている一因であり、私の力量ではどうしようもない。

とはいえ先程なのはとフェイトの2人が私では対処の無理そうなデカブツと多少の雑魚を落としてくれたので死を覚悟する必要はなさそうなのが救いである。クロノもいるし。

 

「敵、なんか増えてない?」

「嫌なこと言うんじゃない。いつかは倒せる。」

 

動体視力の問題か、敵に翻弄されて割と息が切れている私と違いクロノは余裕を感じさせつつ数の多さに辟易としている感じ。この辺りに経験や実力差を感じる。やはり管理局の執政官というのはエリートなのだなぁ。

 

目の前でウゴウゴしてる機械兵をデバイスで殴り飛ばし、魔力球をぶつけ、時に蹴っ飛ばして対処することかれこれ…何分だろうか?

なのは達がプレシアの所に辿り着くには十分な時間が経過したように思うのだが、特段何かこちらに連絡やアクションは来ていない。連絡が来ずともこの船の崩落が始まれば勝手に分かると思うので、私たちはまだ暫く機械的に敵を倒し死なない様にする作業を繰り返していればいいだろう。

 

「クロノ。なんか、変な感じがする。」

 

そうして作業をしていると、急に嫌な予感が脳裏を掠めた。敵の動きが鈍ったような音が遠くなるようなよく分からない感覚が首の後ろをチリと灼いたのだ。

後で思えば次元震の兆候を本能で覚えており、それに敏感に反応していたのだと分かったが、この時はセブンセンシズにでも目覚めたのかとアホなことを考えていた。

 

兎に角敵からできる限り距離をとるように飛び上がりつつ、出口の方に移動する。私の中のセンサーがヤバいと言ってきかず、できるだけ遠くに逃げたいと身体が勝手に動いていた。

 

「次元震の影響…いや、魔力が抜けていってるな。」

 

勘を信じて敵に背を向けて全力で逃走を始めた私と違い、クロノは機械兵達の様子を見ていたらしい。

見目好し、才好し、頭良し。流石に元主人公のスペックは舌を巻くものがある。

 

「魔力切れ?ジュエルシードを使うのに魔力を持ってったのかな。」

 

などとしらばっくれて敵前逃亡していた事実を誤魔化すように適当な事を言ってクロノに近づいてみるが、クロノからの返事はない。まぁ、ジュエルシードがあれば魔力なんて無限のようなものだしそんな事有り得ないと思っているんでしょう。

 

しかし、暫くしてもクロノからの返事がない。周りが停止している機械兵しか居ないとはいえ物思いにふけるには無用心じゃないですかねぇ。仕方ないので私が適当に警戒するフリだけでもしておく。また動き出すこともありえるしね。まぁ、その可能性は無に等しいけれど。

 

先程崩落が始まると言ったが、その更に前触れがこの一時的な静寂だろう。可能性としてプレシアがどこかに移動して機械兵とのパスが切れたか、原作通り彼女が死んだ(行方不明になった)か。

 

そのどちらにしても私がやることは変わらないし、クロノの口から私に言えることが無いのも変わらないだろう。

前者は此方の敗北、後者はフェイトが向かっている現状を考えると言葉にはしづらい。なにより子供に話すには言葉選びが難しすぎるので、クロノが静かなのも仕方ない。

 

「クロノ!揺れが大きくなってる!逃げなきゃ!」

 

目の前に崩れてきた瓦礫の大きさにビビりながら、言葉に詰まって固まっているクロノに更に近づいて声をかける。

ジュエルシードを奪還して、プレシアを拘束してアリシアを地に帰し、全てを平和に終わらせる。それがクロノが考えた最善の未来だったのかもしれない。だが、それはもはやどうしようもない。

 

クロノなら割り切りそうなものだが、やはりフェイトやプレシアの真実を知って日が浅いと思い悩む部分もあるのだろうか。意外と感情的だしなぁ。

 

「分かってる。私は…いや、なのは達を待ってアースラに帰投しよう。」

 

「え、あ、うん。」

 

「行きは少し時間が掛かったが、帰りはただ飛ぶだけだ。おそらくそう時間を掛けずに彼らもやってくる筈だ。」

 

だから安心しろ。なんて言われながら謎にエスコートされ避難誘導を受ける。…なんだこの状況?

 

あれか?子供(私)を不安にさせないようにしようという思考が先走った感じか?実は結構クロノもパニクってる?

 

あのー、手を繋がなくても大丈夫ですよ?私一人で飛べますし。

え?さっき落ちかけてたの見てた?…恥ずかしいから離してくれぇ!

 

何とかして繋いだ手を離してもらうための説得も虚しく、なのは達が帰ってくる直前まで謎の羞恥プレイは続いたことをここに明記しておく。

 

フェイトが心乱れてる時に何イチャイチャやってんだ私ィ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ要。」

「…なぁに?」

「どうしてなのは達の所に行かないの?」

 

そう言われて目を向ければ、なのはとフェイトが海をバックに話している姿が目に入る。透き通るほどの海の青さと友情を確かめる2人、という純粋な光景に目がくらむのはもはや波に反射する太陽の眩しさだけが理由ではないだろう。

なのはファンとしては垂涎物であるし、幼馴染としてもグッとくるものがある。しかしそれでも理性を手放すほどではない。

 

あの後、ジュエルシード事件改めPT事件に幕が降りたと聞かされてからフェイトとはあまり言葉を交わしていない。

 

「アルフだって行ってないしユーノもそうじゃない。」

「そういう話じゃなくてさ。」

「気を使ってくれなくてもフェイトなら喜ぶと思うけど。」

「フェイト…私見るとビクつくんだよ。」

 

一度お別れの前に二言三言話そうかと声をかけたのだが、若干話しづらそうにするのでそうそうに諦めただけであるが少し盛ってユーノ達に言い聞かせる。名シーンを汚したくないという一面もあるが、元大人としてあの空間に割って入るには私は心が汚れすぎているので遠慮したい。

 

「怖がらせるのは本意じゃないからさ。」

「あー、その、じゃあ仕方ねぇよ。」

「潔いいねアルフ。」

 

多少適当な理由であっても流してくれる辺り、この2人との会話はとても楽でいい。2人とも気を使ってくれるタイプなのであまり深くは追及してこないから、こちらの主張を立ててくれる。バチバチにやり合っていた時はいざ知らず、平時のアルフは割と温和で優しいらしい。

 

「それにあの二人だけで話す時間は必要だと思うよ。なのははフェイトの事ずっと気にしてたし、フェイトも初めて出来た対等な友達でしょう?拳よりも言葉を交わした方がいいに決まってる。」

「要…。」

「案外いい事言うな、お前。」

 

驚いたようなアルフの言葉をスルーして食い入るように2人の姿を見る。照れ隠しなのでフリだけど。

 

とはいえ拳よりも言葉を、というのは私の本心だ。原作では盛り上がりや魔法要素を盛り込む為にこの頃のなのはとフェイトに日常シーンを設けるのは難しかった。それはストーリー上の問題であったとはいえ、現実でも話す機会が少ないというのは可哀想だ。

ねぇ?クロノ執務官?

 

「だからこうやってアースラからの監視に留めているだろう?」

「時間延長で精一杯だったんだよね。」

「何故か突然アースラの点検作業が必要になったんだから停泊時間の延長は必要だ。」

 

そう。実は今、私達はアースラ艦内にてなのはとフェイトの様子を伺っているのだ。

絶妙に向こうから見えない場所を探すのが大変だったので、なのは達が会話する時間を作ってもらう直談判のついでにクロノに頼んでアースラのブリッジのモニターを使わせてもらえるように交渉したのだ。

 

そのおかげで人目を気にすることなく適当に座りながら2人の様子を声を拾わない範囲で捉え、鑑賞会と洒落こんでいるのだ。

他の船員は謎のトラブルを対処しにブリッジから離れているので、今居るのは私達とエイミィくらいのものである。リンディさんは何も言わず席を外してくれた。

 

「次会えるのがいつになるか分からないからね。1年って聞いてるけど、それでも待ってる時間を乗り越えるのに約束や思い出は大事だよ。」

「それは要の実体験?」

「どうかなぁ。私はいつでもご機嫌だから待つこと自体は苦にならないかな。」

 

全て終わって悩み事がないからか、割とみんなズケズケと人に聞いてくる。ユーノはもう少し遠慮しいだと思ってたけど?

まぁ、本当に待つこと自体は苦ではない。ただご機嫌なのはこの世界に来れたからなので、ある意味平常運転なだけなのだがそれを説明するのはちと難しい。

 

「なのはも居るし?」

「うーん。どっちかって言うとなのは君は待たせる側の人間だからなぁ。」

 

捨てられないならそれでいいかな、という言葉は閉まっておく。別に捨てられるならそれでもいいけれど、その時は愉悦のためにも手酷く捨てられてやりたいものである。

 

それこそ捨てた物の価値を理解した時に手の届かない存在になっていたら…きっとなのは君はいい顔をしてくれるだろう。

元より誰かの特別になることや特別な何かに執着する彼のことだから、捨てられる側の気持ちも手に入らない恐怖も二重に感じてくれるに違いない。

…まぁ、そんな彼に限ってそんな事は起きないだろうという確信めいた考えもある。私の幼馴染は人の痛みを理解出来るいい子なのだ。残念なことにね。

 

その後もなのは達に気付かれないからとなのは達の様子に目を配りつつもやいのやいのとそんなことを話していた。

 

時たまなのは達の様子に色々とツッコミを入れたりして楽しんでいたのだが、2人が抱き合った時にユーノが顔を染めていたのが若干気がかりだった事をここに書き留めておく。

 

「ねぇアルフ。これ良かったら貰ってくれない?」

「紐か?」

「ミサンガ。これに願い事をして、腕に巻いて生活してる間に切れたら願いが叶うんだってさ。」

 

なのは達も落ち着いてきて、話もひと段落した所で今日の一番の目的とも言えるミサンガをアルフに押し付ける。ちなみに私の手作りである。

子供が手で作れて思い出になりそうなものを考えたらこんなものしか思いつかず、思いついた時には自分の底の浅さに苦笑いが浮かんだ。

 

というか女神様を差し置いてこんな紐に願いを込めるというのは如何なものか。改めて考えると私は着けない方がいいかもしれない。

でもなのは達とお揃いにと作ってきた以上、発案者の私がしないわけにもいかない…。まぁ、願いごとせずに身に着けておけばいいか。所詮ヒモだし。

 

とはいえ金銭面で苦しい現在の私には実にありがたい光明だったので、作り方を教えてくれたクラスメイトである隣の席の陽子ちゃんにはいつかお礼をしようと思う。

 

「もう一本はフェイトの?」

「そ。なのはにも後で渡すからみんなでお揃い。直接フェイトに渡すと怖がられた時気まずいので、アルフから渡してくれるととても助かる。」

 

実際は直接推しに物を貢ぐのはなんか夜の店っぽく感じて私が嫌だったのでアルフに一任しているだけである。

だからそんなしょぼくれた顔しないでくれ。イケメンのしょんぼり顔のパワーに負けそうだ。

 

「…ごめんな。要も管理局に協力してただけなのに、俺達が勝手に苦手意識持って。」

「要は良い子だよ、アルフ。」

「照れ臭いこと素面で言われると反応に困るんだけど。」

 

純粋なアルフに対する罪悪感と天然なユーノの発言に対する照れを半々にブレンドした感情の矛先が分からず取り敢えず誤魔化す。クロノは意地の悪そうな顔でこちらを見ているが何か助け舟を出してくれる気配はない。

こうなると一人で対処する他ないのでなのは達の様子を確認して、クロノをけしかける事にする。

さっきは言葉を交わす時間を設けた方がいいって言ってたって?知らんな!(天上天下唯我独尊)

 

「あ、ほらクロノ、出番みたいだぞ。」

「ん?あぁ、確かにちゃんと話せたみたいだな。みんなで行くか。」

 

そう言ってクロノを誘導して移動用のポータルでクロノに先導してもらう。いやぁとても見応えのあるシーンだった。

 

向かう途中にユーノにもミサンガを手渡したのだが、なんかめちゃくちゃ嬉しそうだったので悩んだ甲斐があったと思えた。そういやあんまり友達らしい友達居ないんだったねユーノ。

なお、その後地球にいる間フェレットの姿でいることを忘れていたらしく、暫く着けられないと嘆いていたのを見て失礼ながらめちゃくちゃ笑った。

 

こんな緩い日々が続くのも悪くない。

 

いや、ダメだわ。来月から闇の書事件始まるやん!?




読了お疲れ様でございでした。

これにて彩々木 要を主役とした無印なのはのお話は終了になります。最後しり切れとんぼになってしまい私の力不足を嘆く次第でございます。

描写の拙さや話の中抜きなど私の技術不足のせいで原作を知らない人にはとても不親切な、知っている人にはより不親切な作品となりましたが楽しんでいただけましたでしょうか。
ただ私の書きたかった事は書けたので勝手ながら満足しております。

この後はおまけを数回挟んで本編という事になりますが、一切書き溜めておらずおまけは構想だけ、本編は白紙という酷い有様でありますので、少々お時間をいただいて本編を開始したいと考えております。
その間は出来上がったらおまけのお話を投稿し、要の話し方がおかしくなっているところなどを訂正して回りたいと思っております。

ではまた。


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