ハリーポッターの従姉妹の話 (弥白)
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1年生
生き残った男の子と不思議な手紙


オリキャラがおりますが、基本三人称視点(になってるはず)です。小説と映画を混ぜて書いてます。最新情報も混ぜ込んでは行きたいですが、原作通りのばしょもあるとおもいます。

愛称:ソフィー、フィフィ等




 

 

 

 

 

 

その日の魔法界は祭り騒ぎだった。長きに渡る闇の支配から解放され、新たな英雄が生まれたからである。

 

 

ハリー・ポッター

 

 

『例のあの人』を打ち破り、魔法界に平穏をもたらした英雄である。しかし、これは当の本人は知らぬ事である。無理もない、一体どこの誰が自分が1歳の時に闇の帝王と名を馳せたものを打ち破ったと思うのか。

 

 

ダンブルドアにより叔母の家の玄関に置かれた、何も知らずスヤスヤと寝ているこの赤ん坊を、ミルクの空き瓶を捨てに来た叔母がみつけ悲鳴を挙げるまで、

 

 

あと数時間

 

 

 

 

そんな中、国中の人があちこちでこっそり集まり、杯を上げ、こういうのだ。

 

 

 

『生き残った男の子、ハリー・ポッターに乾杯。』

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

あの夜から十年がたったが、プリベット通りは何も変わってはいなかった。変わったところといえば、ダーズリー夫妻の家の暖炉の上の写真。歳を増すごとに、はっきりとわかる成長をしている双子の写真が増えていた。ただそれだけの変化である。

 

 

 

「さあ、起きて!早く!」

 

 

ペチュニアの騒音によって目が覚めたハリーを、急かす声が響く。キッチンでは、フライパンをコンロにかける音がし、ペチュニアがせかせかと動いている。

 

 

「さあ、支度をおし。ベーコンの具合を見ておくれ。焦がしたら承知しないよ!今日は、ダドリーちゃんにフィフィちゃんの誕生日なんだから、間違いの無いようにしなくちゃ」

 

 

ハリーは呻いた。双子の誕生日、なんで忘れられようか。靴下に引っ付いた蜘蛛を剥がしながら、ハリーは身支度をした。

 

 

食卓は、双子の誕生日プレゼントに埋もれていた。新しいコンピュータや二台目のテレビ、レース用自転車までもある。ダドリーが、レース用自転車を欲しがる理由がハリーにはさっぱり理解できなかった。人を殴る運動ならともかく、太って運動嫌いなのに…お気に入りのサンドバック としてハリーを良く殴ろうとするが、見た目によらず、すばしっこいハリーにいつもよけられている。

 

 

反対に妹のソフィアは、本当に妹なのかと疑うほどに真面目でしっかりしていた。ダドリーと違い、総合格闘技を嗜んでおり、細身ではあるがしっかりと筋肉がついている。叔父とも叔母とも違う赤毛にすみれ色の目をしている。いつも気だるそうで、嫌味を言いつつも、なんだかんだ言ってハリーを助けてくれるのである。

 

 

 

「36個だ!去年より2個も少ないや!!」

 

 

 

去年より、プレゼントが少ないことへ癇癪を起こし始めたダドリーを見て、ペチュニアとバーノンは顔色を悪くさせていた。マージおばさんのものを足してもまだ少ないと喚き、癇癪を起こしテーブルがひっくり返される前にハリーは急いで朝食に食らいついた。

 

 

『おはよう、ママ、パパ。おめでとうダドリー。これは私から』

 

 

何やら大きい袋を抱えてリビングに入ってきたのは、ソフィアだった。袋の中身は、ダドリーが好きなお菓子(と言ってもダドリーは甘いお菓子ならなんでも好きだが…)の詰め合わせ。ペチュニアとバーノンは、安心しているようでほっと息を吐いた。

 

 

「お出掛けしたら、もうふたつ買ってあげましょう。それでいいでしょ、坊や」

 

 

「そしたら…えーっと、30、30……」

 

 

『39よダドリー。去年より多いじゃない』

 

 

「それならいいや!」

 

 

ダドリーは去年よりも多いことが分かり、満足したのかドカッと座り込みプレゼントの包みをあけだした。

 

 

「やんちゃ君はパパと同じで、絶対に損したくないわけだ。なんてすごい子だ!ダドリーや」

 

 

兎にも角にもこの親達は、親バカと言われるもので双子たちを天使だとか天才だとか言うのである。一方、ソフィアはと言うと、プレゼントとして送られてきた本を読みならがら、食後のティータイムを楽しんでいる。一昨年、ダドリーと同じようにコンピュータやテレビが送られてきたソフィアが物の仕舞い場所がない、こんなに要らないと贅沢な癇癪を起こした。それからというもの、本人が欲しいと言った本や参考書、雑誌などが10冊程度プレゼントとして送られてくるだけであり、プレゼントの内容を知っているものも多いから特に感情の起伏もなく適当に開けている。

 

 

「バーノン、大変だわ!フィッグさんが脚折っちゃって、この子を預かれないって!」

 

 

ダドリーがビリビリと包みを開けているところに、怒ったような困ったような顔をしながらペチュニアが入ってきた。

 

 

双子の誕生日は、映画館やアドベンチャーパークなどに出かけることになっているが、ハリーは二筋離れて住んでいる変わり者のおばあさんの家に預けられていた。家中キャベツの匂いがし、今まで飼っていた猫の写真を永遠と見せられるので、ハリーはそこが大嫌いである。

 

 

他に宛はないかと話しているペチュニアとバーノンの話を聞いて、一緒に連れていくしかないと結論出そうなところで、ダドリーがメソメソと泣き出した。

 

 

「ぼく、いやだ。…あいつが……く、来るなんて…いつもあいつが…めちゃくちゃにするんだ!」

 

 

泣き出したと言っても嘘泣きである。顔をゆがませてメソメソすれば、欲しいものはなんでも貰えるのである。今回も、ハリーを連れていかないようにする心持ちだろう。

 

 

「ソフィーは、そいつが来てもいいの?」

 

 

『別にどうでもいいわ。居てもいなくても変わらないじゃない。』

 

 

ソフィアは、自分に関わってこなければなんでもいい。というより、ハリーを空気扱いするのだ。興味なしと言ったと様子で、泣いているダドリーを恨めしそうに見ているハリーを一瞥して、手元の本へと視線を戻した。

 

 

まだ、ハリーをどうするか決まっていないが、ちょうどそのとき玄関のベルが鳴り、ペチュニアは大慌てだった。

 

 

やがて、ダドリーの一の子分、ピアーズ・ポルキスが母親に連れられて部屋に入ってきた。ネズミ顔でガリガリに痩せていて、ダドリーが誰かを殴る時に腕を後ろでねじる役をやっている。ダドリーは嘘泣きをやめ、ソフィアは本を閉じ身支度をし始めた。

 

 

 

 

「言っておくがな、小僧。変なことをしてみろ、ちょっとでもだ、そしたらクリスマスまでずっと物置に閉じ込めてやる。」

 

 

 

「僕何もしないよ…ホントだよ…」

 

 

大きな赤ら顔をハリーの目の前に突きつけながら、バーノンはそう言った。ハリーの周りでは不思議なことがよく起こり、その原因が自分ではないとハリーが主張したところで誰も信じたりはしなかった。刈り上げた髪が1日も経たずに伸びたり、ダドリーのお古のセーターをペチュニアが着せようとすると指人形サイズまで縮んだりと、ハリー自身でも理解し難いことが度々起こるのである。

 

 

 

──────────────

 

 

 

天気も良く、土曜日で、動物園は家族連れで混み合っていた。入口で、ダドリーとピアーズはチョコレート、ソフィアはバニラの大きなアイスクリームを買ってもらっていた。バーノンは、アイス・スタンドからハリーを遠ざけるのに遅れ、仕方なく安いレモンアイスをハリーに買い与えた。

 

 

『貰うわね』

 

 

横から声が聞こえた瞬間レモンアイスが半分くらい消えていた。声がするほうを見ると、ソフィアがなかなかいけると言った表情で、ハリーから貰った(奪ったとも言うが…)レモンアイスを食べていた。

 

 

『あんたにいいもの食べさすわけないじゃない。あんたは私の残りでも食べてなさいよ』

 

 

そういうと、バニラアイスをハリーに押付け、ペチュニアの横に並んだ。

 

 

「……ありがとう……」

 

 

自分の残りと言ったが、ソフィアはバニラアイスに1口2口しか手をつけておらず、ハリーのレモンアイスよりも格段に大きかった。なんだかんだ言って、ソフィアはハリーに甘いのである。

 

 

 

─────────────

 

 

ハリーにとって今日はいいことばかりが続いているが、いいことばかりが続くはずがないのである。

 

 

爬虫類館の中は、ヒヤッとして薄暗く壁に反ってガラスゲームが並び、中に照明が着いていた。ガラスの向こうでは、ベビやトカゲが材木や石の間を移動している。ダドリーとピアーズは、大きなニシキヘビや毒蛇を見たがり、館内でいちばん大きい蛇を見つけたが、寝ていて動かないので興が削がれたようだ。

 

 

蛇は目をゆっくりとあけハリーに向かってウィンクをした。ハリーは慌てて周りを確認したが、幸いなことに誰もその様子を見ていなかった。

 

 

「本当にイライラするだろうね」

 

 

ハリーがそう言うと、蛇は激しく頷いた。

 

 

【ブラジル産ボア・コンストリクター 大ニシキヘビ】

 

 

ブラジル産だが、この館で生まれたことを知った。そんなこんなで、ハリーと蛇は話していた。しかし、その平穏な会話も終わりを告げる。

 

 

「ダドリー!ダーズリーおじさん!早く来て蛇を見て!信じられないようなことやってる!」

 

 

ダドリーが、ハリーの肋骨にパンチをくらわせ、不意をくらったハリーはコンクリートの床にひっくり返った。

 

 

ダドリーとピアーズは、動いている蛇を見ようとガラスによりかかった。その瞬間に、2人は恐怖の叫びを上げて飛び退いた。

 

 

 

大ニシキヘビのケースのガラスがなくなり、ダドリーとピアーズはケースの中に落ちたのだ。蛇はとぐろを解き、ずるずるとケース外へ這い出したのだ。館内にいた客たちは叫び声を上げながら、出口へと走っていった。

 

 

 

 

ブラジルへ、俺は行く──シュシュシュ、ありがとよ。アミーゴ

 

 

館内が騒がしい中、ハリーは確かにこの声を聞いたのだ。

 

 

 

────────

 

 

そんな騒ぎが置き、爬虫類館の飼育員は混乱状態だった。あるはずのガラスが無くなったのだ。割れたわけでも、取り外された訳でもなく、きれいさっぱり消えてしまった。園長は自ら甘い紅茶を入れ、ペチュニアにペコペコと謝っていた。

 

 

帰りの車の中でダドリーとピアーズは、訳の分からないことを口走るばかりだったが、落ち着きを取り戻してきた。

 

 

「ハリーは蛇と話してた。ハリー、そうだろう?」

 

 

バーノンはピアーズを送り届けるまで怒鳴るのを我慢するようで、顔を真っ赤にしながら運転していた。

 

 

『ピアーズ、あなたまだ混乱しているの?オートバイが空を飛ばないように、人は蛇とは話せないのよ?』

 

 

常識的に一般的に考えて人が蛇と話すなど不可能である。まるでバカバカしいとでも言うように、ソフィアはピアーズの言葉を鼻で笑った。

 

 

「でも、ソフィーは、ハリーが蛇と話しているところを見てなかっただろ」

 

 

『ええ、見てないわ。でも、人と蛇は話せないのよ?あなたの見間違いじゃなくて?』

 

 

あたまりまえと言われても食い下がらないピアーズがソフィアに反論を述べるが、ソフィアは、まだピアーズが混乱状態であると結論付け、一方的に会話を終わらせた。

 

 

 

 

ピアーズを無事に家に届け、自宅へ戻ってきたバーノンは、怒りのあまり声が出ないようで、

 

 

「行け──物置──出るな──食事抜き」

 

 

と言うと、椅子に倒れ込んでしまった。ペチュニアは、バーノンに飲ませるブランデーの大瓶を取りに行った。

 

 

 

───────

 

 

 

ハリーが物置から出れるようになり、休みが始まった。ダドリーは9月から七年制の私立スメルティングズ男子校に通うことになっている。バーノンの母校でもあり、ピアーズもそこに入学することになっている。ソフィアは、セント・マーガレット女子校に通うことになっている。7月に入り、ペチュニアがダドリーとソフィアを連れて各学校の制服を買いに行った。

 

 

ダドリーは茶色のモーニングにオレンジ色のニッカーボッカーをはき、平ったい麦わらのカンカン帽をかぶり、こぶ状の握りのある杖を持って誇らしそうに居間を行進していた。ソフィアは、白のワイシャツに赤いジャケット、黒と赤のネクタイを締め、黒タイツに深緑のチェック柄のスカートをはき、憂鬱そうに立ち尽くしていた。バーノンもペチュニアも人生でいちばん誇らしい瞬間やら、こんなハンサムで可愛いふたりが、私のちっちゃな子達だなんて信じられないと嬉し泣きしていた。それを見ていたハリーは、笑いをこらえるのに必死で、あばら骨が二本折れたかと思うほどだった。

 

 

 

翌朝、朝食を食べ、ゆっくりとしている時に、郵便受けが開き、郵便がマットの上に落ちる音がした。

 

 

「ダドリーや。郵便をとっておいで」

 

「ハリー、に取らせろよ」

 

「小僧、取ってこい」

 

「ダドリーに、取らせてよ」

 

「ダドリー、スメルティングズの杖でつついてやれ」

 

 

3人で不毛な言い争いをしているが、結局ハリーがダドリーの杖をかわし、郵便を取りに行った。マットの上には、4枚の手紙が落ちてあり、それぞれ、バーノンの妹であるマージからの絵葉書、請求書らしい茶封筒、ソフィア宛の手紙……そして

 

 

ハリー宛の手紙

 

 

 

サレー州 リトル・ウィンジングル

 

プリベット通り4番地 階段下の物置内

 

ハリー・ポッター様

 

 

分厚く黄色味がかった羊皮紙の封筒で、宛名はエメラルド色のインクで書かれており、切手が貼っていない。紋章入りの紫色の蝋で封がしており、"H"と書かれた周りを、ライオン、鷲、穴熊、ヘビが取り囲んでいる。ソフィアのそれと同じだった。

 

 

 

 

 

「小僧、早くせんか!」

 

 

キッチンからバーノンが怒鳴り声をあげる。ハリーはキッチンに戻り、茶封筒と絵葉書をバーノンに、羊皮紙の封筒をソフィアにわたし、自分宛の手紙を開き始めた。

 

 

「マージが病気だよ。腐りかけた貝を食ったらしい……」

 

 

「パパ!ねぇ!ハリーが何か持ってるよ!」

 

 

ハリーが、封筒と同じ厚手の羊皮紙に書かれた手紙を広げ様どしたところで、ダドリーが突然叫んだ。バーノンがそれをひったくり取り返そうとするハリーに向かって、せせら笑いながら、お前に手紙を書くやつはいないと言った。しかし、手紙をパラリと開き、チラリと目をやった瞬間に、バーノンの顔が素早く赤から青に変わった。

 

 

「ペ、ペ、ペチュニア!」

 

 

「バーノン、どうしましょう……あなた!」

 

 

ペチュニアは、喉に手をやり窒息しそうな声を上げ、バーノンと顔を見合せた。ハリーは、自分宛の手紙を自分が読めないことに怒り、ダドリーは、自分の言い分が通らないことに怒っていた。ギャァギャアと3人が喚き散らし、ペチュニアが今にも失神しそうになっているカオスな状態になり、ソフィアは、ようやく本から顔を上げた。

 

 

『座って休んでね、ママ』

 

 

といい、本と一緒に()()()()()()と、紅茶を持ち自室に籠った。

 

 

 

────────────

 

 

 

サレー州 リトル・ウィンジング

 

プリベット通り4番地 二階角部屋

 

 

ソフィア・ダーズリー様

 

 

 

 

 

ハリーのそれと同じく、"H"の周りを、4種類の動物たちが取り囲み、紫色のロウで封がしてあった。

 

 

『切手なし…受け取り印なし…なにこれ、気味が悪い』

 

 

封をあけ、中の手紙を出してみると

 

 

 

 

親愛なるダーズリー殿

 

 

このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、こころよりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。

新学期は九月一日に始まります。七月三十日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

 

 

副校長ミネルバ・マクゴナガル

 

 

 

 

 

 

『イタズラ?にしては手が込んでるけど、ふくろう便とかいつの時代よ』

 

 

 

魔法などという非科学的なものをすんなりと受け入れる人など、数え切れるほどだろう。

 

 

 

 

その日から、いつも通りの日常が無くなったのだ。

 

 

 

 

まず、ハリーが物置から引越しをし、1番小さい寝室を使うようになった。そこは元々ダドリーのガラクタばかり置いてある部屋だった。ハリーは、寝室に住むよりも物置であの手紙を貰えた方がどんなに良かったかと考えた。反対にダドリーは、自分の部屋がハリーに使われるのが嫌で嫌で堪らなく喚き散らしてみても、部屋が取り戻せず癇癪を起こし続けていた。

 

 

しかし、手紙は一向に止まらなかった。というより、日が経つうちに枚数が増えていき、ダドリーでさえ、一体誰がこんなにハリーに話したがっているのかと不思議に思っていた。バーノンやペチュニアは、増えていく手紙をミキサーで粉々にしたり、ビリビリに破いたりと、一生懸命ハリーに見せないように捨てていた。ソフィアはというと、自分に来た手紙はイタズラと結論漬け、平穏から程遠くなった家の状況に嫌気がさし、朝食や昼食時以外は部屋から出なくなっていた。

 

 

 

土曜日になると、玄関と裏口のドアの隙間という隙間は、板で打ちつけられていて、配達された2ダースの卵一つ一つに丸めた手紙が隠してあったのだ。

 

 

 

そして日曜日の朝

 

 

日曜日は郵便が休みで、手紙が届かないことを嬉嬉として話しているバーノンは、新聞にママレードを塗りたくっていた。

 

 

「今日は忌々しい手紙なんぞ──」

 

 

バーノンがそう言い終わらないうちに、何かがキッチンの煙突を伝ってヒューと落ちてきて、バーノンの後頭部にぶつかった。次の瞬間に、何十枚もの手紙が暖炉から飛び出し部屋中に巻き散らかった。ハリーは1枚でもと手紙を捕まえようとしていたが、バーノンに捕まえられ廊下に放り出された。

 

 

「これで決まりだ!みんな、出発の準備をして五分後にここに集合だ!家を離れる!問答無用だ!」

 

 

「パパ、おかしくなっちゃった」

 

 

板が打ち付けられたドアを乱暴にあけ、一行は車に乗り込んだ。バーノンの形相が凄まじく、誰も問答することが出来なかった。ダドリーは、テレビやビデオ、コンピュータを持っていこうとして遅れ、バーノンに頭を1発殴られたので、後ろの席で泣いていた。

 

 

 

 

ダドリーは、宿を変えても変えても、届く手紙にバーノンの気が狂ったのではないかと言い出した。ペチュニアの提案も耳に入らないほど、思考回路をフル回転させているのかもしれない。

 

 

 

海の上に浮かぶ小屋で夜を開けることになったが、外は酷い嵐で、食料もポテトチップス一人ひと袋、バナナ5本だった。部屋はふたつで、火の気の無い暖炉は湿っていて、バーノンがポテトチップスの袋に火をつけようとしても、ちりちりと縮むだけだった。

 

 

「今ならあの手紙が役に立つかもしれんな。え?」

 

 

この嵐の中、海の上に浮かんでいるこの小屋に、手紙を届ける人などいまいと、バーノンは上機嫌だった。

 

 

バーノンとペチュニアは、奥の部屋の凸凹したベッドに、ダドリーはボロボロのソファーに、ソフィアは小さいソファーにおさまり、眠りについていた。ハリーはと言うと、一番薄いいちばんボロボロの毛布にくるまり床のやわらかそうな所で体を丸くした。

 

 

 

嵐はどんどん酷くなり、雷まで鳴り始めた頃、ハリーは、ダドリーの手首にある蛍光文字盤付きの腕時計で、自分の誕生日が少しづつちかずくのを眺めていた。

 

 

あと、三十秒……

 

 

 

二十……

 

 

 

十………

 

 

 

五………

 

 

 

三……二………一

 

 

 

 

ドーン!!!

 

 

 

 

小屋中が震えた。

 

 

 

誰かが外にいて、ノックしたのである。

 

 

 




評価、感想等をしていただければ、作者喜びます。
アドバイス等があれば、何卒よろしくお願いいたします。
_○/|_ 土下座


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森の番人と教授

続きになります。

皆様あけましておめでとうございます!
今年ものんびりゆっくり投稿していこうと思います。
なかなか話が進まないのですが、最後までお付き合いいただけたらと思います。





ドーン!!!

 

 

再び大きな音がして、ダドリーは飛び起きた。バーノンは、ライフル銃を持ち、ペチュニアは、恐怖の色をした目を扉の方に向けている。ソフィアは、自分の睡眠を邪魔する音に不快感を覚え、しかめっ面で扉の方を睨んでいた。

 

 

「誰だ。そこにいるのは。言っておくが、こっちには銃があるぞ!!」

 

 

 

バーノンが叫んでから、一拍置いて

 

 

 

バターン!!

 

 

 

蝶番も吹っ飛ぶほどの力でドアが開けられ、扉が轟音を立てて床に落ちた。戸口には、ボウボウと長い髪に、モジャモジャの荒々しい髭で、顔がほとんど見えない大男がたっていた。この大男にとって、この小屋は狭すぎ、外れた扉を片手で治してしまった。

 

 

「茶でも入れてくれんかね?いやはや、ここまで来るのは骨だったぞ…」

 

 

大男は大股でソファーに近づき、ハリーを見つけて喜んだ。ダドリーは、ソファーから離れペチュニアとバーノンの後ろに隠れた。

 

 

「おー!ハリーだ!最後におまえさんを見た時にゃ、まだほんの赤ん坊だったなぁ。あんた父さんにそっくりだ。でも、目は母さんだなぁ」

 

 

「今すぐお引き取り願いたい。家宅侵入罪ですぞ!」

 

 

 

「黙れ、ダーズリー。腐ったおおすももめ」

 

 

 

そういった大男は、バーノンから銃をひったくり、まるでゴム細工のように易々と丸めて部屋の隅に放り投げてしまった。大男は、ハリーの誕生日を祝い、コートからひしゃげた箱を出した。ハリーがそれを開けると、中には大きなチョコレートケーキが入っていて上には色付けされた砂糖で【ハリー お誕生日おめでとう】と書いてあった。

 

 

 

「あなたは誰?」

 

 

「あぁまだ自己紹介をしとらんかったな。俺はルビウス・ハグリット。ホグワーツの鍵と領地を守る番人だ。」

 

 

自己紹介を終えた大男は、火の気のない暖炉を見て、暖炉に向けて傘を降った。次の瞬間、暖炉にはゴウゴウと火が起っていて、湿った小屋を明かりで見たし、小屋中を暖めていた。大男は、コートのポケットからヤカンやソーセージ、ティーポットにマグカップと次々にいろいろなものを取り出していった。ソーセージがやける頃になると、ダドリーがソワソワしだした。それを見たバーノンがダドリーを一喝したが、大男はハリー用だといいあしらった。

 

 

 

「あの、僕、まだあなたが誰だかわからないんですけど…」

 

 

「ハグリッドって呼んでおくれ。みんなそう呼ぶんだ。さっき言ったように、ホグワーツの番人だ。───ホグワーツのことはもちろん知っとうな?」

 

 

 

「あの、……いいえ……ごめんなさい」

 

 

 

 

ごめんなさいだと?─ごめんなさいはこいつらのセリフだ。お前さんが手紙を受け取ってないのは知っとったが、まさかホグワーツも知らんとは、思ってもみなかったぞ。なんてこった!お前の両親が一体どこであんなに色んなことを学んだか、不思議に思わんかったのか?」

 

 

 

 

ハグリッドは、吠えるような音声をだし、バーノン達を睨みつけた。ハグリッドは、ハリーが"いろんなこと"を知らないことに、激怒した。ダーズリー親子に詰め寄っている。ハリーが、算数などは知っていると言ったら、爆発寸前の形相になり、バーノンは、真っ青な顔でムニャムニャと言葉を濁すばかりである。

 

 

 

「お前は自分が何者なのか知らんのだな?」

 

 

「やめろ客人!今すぐ止めろ!その子にこれ以上何も言ってはならん!」

 

 

ダンブルドアという人が残した手紙を隠していたという事実が明らかになり、バーノン達は何かをハリーに隠していたのである。そしてそれは、決してハリーに言ってはいけないことなんだと、バーノンは狂ったように叫んだ。

 

 

 

「ハリー───おまえは()()使()()だ。」

 

 

 

大男は、ハリーの両親も魔法使いであり、訓練さえ受ければそこら辺の魔法使いよりすごくなるという。そして、黄色味がかかった羊皮紙の封筒をハリーに渡した。

 

 

 

海の上

岩の上の小屋

ハリー・ポッター様

 

 

 

親愛なるポッター殿

 

この度ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を

許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材リストを同封致します。

新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でフクロウ便にてのお返事をお待ちしております。

 

敬具 副校長ミネルバ・マクゴナガル

 

 

 

 

 

ハリーがハグリッドに手紙の意味を問いかけるとしまったというふうにおでこを手でたたき、コートのポケットからふくろうを引っ張り出した。少しもみくちゃになってはいたが、それは生きている本物のフクロウだった。それから、長い羽根ペンに羊皮紙の巻紙を取りだし、走り書きをしだした。書いた手紙を、クルクルと丸めフクロウの嘴にくわえさせると、戸を開けて嵐の中に放った。

 

 

 

 

「ハリーは行かせんぞ!」

 

 

「お前のようなコチコチのマグルに、この子を引き止められるもんなら拝見しようじゃないか」

 

 

 

ハグリッド言わく、マグルとは魔法族では無いものを指すようで、ハリーがマグルの中でも最悪なダーズリー家で育てられたことを不運と言った。

 

 

「ハリーを引き取ったとき、くだらんごちゃごちゃはお終いにするとわしらは誓ったんだ!このこの中からそんなものは叩き出してやると誓ったんだ!魔法使いなんてまったく!」

 

 

「知ってたの?おじさん、僕があの魔法使いだってこと、知ってたの?」

 

 

知ってたかですって?ああ、知ってましたとも!あの癪な妹がそうだったんだから!お前もそうに決まってる!妹にもちょうどこれと同じような手紙が来て、さっさと行っちまった…その学校とやらにね!休みで帰ってくる時にゃ、ポケットをかえるの卵でいっぱいにして、コップをネズミに変えちまうし。私だけは、妹の本当の姿を見てたんだよ……奇人だって。

 

 

 

その後ペチュニアは、何年も我慢してきたものを吐き出すように一気にまくしたてて、妹が自業自得で吹っ飛び、ハリーを押し付けて死んでいったと言ったのだ。しかし、ハリーはこれまで自分の両親は自動車事故で死んだと聞かされていた。そのことを追求したら、ハグリッドがいきなりソファから立ち上がり、怒りの唸り声を上げた。ハリーの両親であるリリーとジェームズが自動車事故などで死ぬはずがないこと、また、魔法界の子達は一人残らずハリーポッターについて知っているのに、当の本人が自分自身のことをなんにも知らないことに腹を立てているのだ。

 

 

 

ハグリッドが言うに、ダンブルドアという人はこうなることを予想していたみたいだったが、自分のことを何も知らないままホグワーツに通うわけにはいかないらしい。しかし、ハグリッドの口から伝えるには少し荷が重く、まだ、謎に包まれた部分もあるのだ。ことの起こりから語り出したハグリッドは、魔法界では誰もが知る名を言うの躊躇 していた。ハリーが、綴りを書くように進めたが、綴りが分からないらしい。

 

 

 

「いうぞ、それっ!ヴォルデモート!!

 

 

 

勢いで言いきったハグリッドは、顔を青くさせながら続きを話し出した。この魔法使いは、20年前から仲間を集め始め、魔法界を支配するようになったという。同意見を持ち入るものも、恐怖ゆえに付き従うものも、おこぼれにあずかろうとした者もいた。当然立ち向かおうとしたものも現れたが、みんな殺されて行ったと言う。残された数少ない安全な場所としてホグワーツがあり、ダンブルドアがいる限り『例のあの人(ヴォルデモート)』もて出しが出来なかったのだ。そして、『例のあの人』は、10年前のハロウィーンにハリーたちが住んでいた村に現れ、2人を殺したという。

 

 

 

力のあった魔法使いや魔女が何人も殺された中、ハリーだけが生き残った理由は誰にも分からないという。ハリーは、あの時見た目もくらむような緑色の閃光と共に部屋に響いた冷たい残忍な高笑いを思い出した。その後もハグリッドの過去話は続き、ハリーは自分の身の回りで起きた不思議なことを一つ一つと思い出した。そんな時、部屋の隅で固まり黙り込んでいたバーノンが声を上げた。

 

 

 

イカれたマヌケじじいが小僧に魔法を教えるのに、わしは金なんか払わんぞ!

 

 

 

絶対に…俺の前で……アルバス…ダンブルドアを……侮辱するな!!

 

 

 

すぎた言葉を発したバーノンに、ハグリッドは傘を掴みグルグルと頭の上で回し、ヒューと振り下ろした傘の先端をダドリーに向けた。一瞬、紫の光が走り、爆竹のような音がしたと思うと、鋭い悲鳴をあげながらダドリーが太ったお尻を両手でおさえながら、痛みで喚きながら床の上を飛び跳ねた。後ろを向いたダドリーを見ると、クルリと丸まった豚の尻尾が生えていた。それを見たバーノンとペチュニアは、ダドリーを隣の部屋に引っ張って行った。

 

 

 

「癇癪を起こすんじゃなかった……豚にしてやろうと思ったんだが…上手くいかんかった…ところでお前さんは…」

 

 

 

髭を撫でつけながら、ボソボソとハグリッドは、そう言って、一人がけ用のソファで、膝をおりながらすやすやと眠るソフィアを横目で見た。

 

 

 

「肝が座っちょる……こいつぁ、リリーにそっくりだ。本当にあの太っちょの妹か?」

 

 

 

「ソフィーは、興味無いことに関してはスルーだから……でも、さすがにこの状況で寝れるのはすごいよ…」

 

 

 

ハグリッドは、分厚いコートをハリーに渡し、魔法を使ったことを口止めして、明日は買い物へ行くと言い横になった。

 

 

 

 

───────

 

 

ハリーが、ハグリッドに連れられて必要な教材を買ってから、数日ーーーダーズリー家は、不思議な空気が流れている。バーノンもペチュニアもハリーを物置に閉じ込めようとはしないものの、一切口をきかないのである。それは、ダドリーも同じだった。いつものように、ハリーをサンドバックにすることも無く、ハリーをいないものとして振舞っていた。

 

 

 

「なんであんたが!!」

 

 

 

つい先程呼び鈴がなり、客人かと確認しに行ったペチュニアの怒鳴る声が、リビングまで届いた。どうやら、玄関先で客人と口論をしているようだった。フラフラとリビングに戻ってくると、ハリーとダドリーに各自部屋に戻るように言った。ティーカップと本を持ち自室に戻ろうとしたソフィアには、残るように言い、2人を急かした。

 

 

 

2人が自室に戻り、水を飲み一息ついたペチュニアは、先程口論してたであろう客人をリビングに通した。リビングに現れたのは、黒髪に鉤鼻の男で、()()では無い服を着て、怪しげな雰囲気をまとっていた。ソフィアを一瞥し、一瞬、どこか慈しむような悲しいような目をした。

 

 

 

「なんで今更来たの?」

 

 

苛立ちを込めた声で、追求するペチュニアを軽くあしらうように男は答えた。いや、答えとしてソフィアに向かって1枚の手紙を差し出したのである。それは、ハリーが貰っていたものと同じで、薄ら黄色みがかった羊皮紙に紋章入りの紫色の蝋で封がされ、宛名はエメラルドで書かれていた。

 

 

 

「嘘でしょう!この子が!」

 

 

 

男が手渡した手紙を見てペチュニアは、声を荒らげ、気が動転したかのように焦っている。それも当たり前で、まさか、自分の子供があの妹のように()()など誰が考えるのだろうか…ソフィアが手紙を開けると、この家では悲報とも言えるであろうことが書いてあり、ご丁寧に教材リストと手紙が届かなかったことえの謝罪文まで入っていた。

 

 

 

「これって、行かなくてもいいんですよね?私は行きません。もうほかの学校に入学が決まっています。わざわざ御足労ありがとうございました。」

 

 

 

 

「魔法の制御が出来なければ、己だけでなく周りまで巻き込むが、それでもいいと言うのであれば断ってくれても構わないだろう。」

 

 

 

「っ………タチが悪い」

 

 

 

元々面倒くさがりで、自分以外に興味を持たないソフィアは、面倒事に巻き込まれるのも人一倍嫌うので、ほぼ強制と言っても過言ではないこの仕打ちに、苛立ちが隠せないのである。ペチュニアは、バーノンに支えられながらソファーに座っている。2人の顔色は青くなっていて、見るに堪えないものであった。

 

 

 

「それが………それが、今後良い方向に進むなら……家族を傷つけずに済むのなら…………私は……入学しましょう……」

 

 

 

「ああ、ソフィアちゃん。」

 

 

 

ソフィアの決断を聞き、ペチュニアは、勢いよくソフィアを抱きしめた。そして男は、入学まで時間が無いことを説明し、これから教材を揃えに行くことを伝えた。もちろん、断ることなど出来ないので、ソフィアはそれに頷き、出かける準備を始めた。

 

 

 

「つかまりたまえ」

 

 

 

数分後、男は、着替えを終えたソフィアへ、片腕を出しそう言った。頭にクエスチョンマークを浮かべながら、ソフィアは、その腕をとった。次の瞬間、ポンと音がし、ソフィアと男の姿はなくなっていた。

いきなり姿を消した愛娘を心配し、ペチュニアとバーノンは、慌てていた。

 

 

 

───────

 

 

 

同時刻ーー

 

 

 

ソフィアは、胃がねじれるような不快な感覚に襲われていた。男の腕をとった瞬間、拗られ縮められるような感覚に襲われ、気がついたら壁に囲まれた中庭にいた。男は、涼し気な顔をしながら、レンガの壁を木の棒のようなもので叩いていた。男が壁を叩き終わると、叩かれたレンガが震え、揺れだした。そして、レンガが動きだし、真ん中に大きなアーチ型の入口ができた。

 

 

 

「ここは、ダイアゴン横丁だ。」

 

 

淡々と告げ男は歩き出した。2人がアーチをくぐり抜け終わるとアーチはみるみる縮み、硬いレンガの壁に戻っていた。石畳の通りが曲がりくねっていて、先が見えなくなるまでつながっていた。

 

 

 

「あの、Mr、ここでは私たちの貨幣が使えるのですか?」

 

 

「いや、使えん。が、グリンゴッツで両替ができる。それから、吾輩の名はセブルス・スネイプ。ホグワーツの教授だ。 」

 

 

 

教授によると、グリンゴッツとは()()が経営している銀行で、魔法界でひとつしかない銀行らしい。通りにある店は、マントや望遠鏡、羊皮紙や羽根ペンなんかも置いていて、ソフィアの興味を引くにはもってこいのものばかりだった。

 

 

 

 

見知らぬものよ 入るが良い

欲の報いを 知るが良い

奪うばかりで 稼がぬものは

やがてはつけを 払うべし

おのれのものに あらざる宝

我が床下に 求める者よ

盗人よ 気をつけよ

宝のほかに 潜むものあり

 

 

中に入ると、ソフィアより頭一つ小さい小鬼たちが奥のカウンターの中で、帳簿の書き込みをしたり、片眼強で宝石を吟味したりしていた。床は大理石でできており、広々としたホールになっていた。

 

 

 

「マグルの通貨との両替をしたい」

 

 

 

教授は、カウンターに座っていた一人の子鬼に声をかけ、要件を手短に伝えると、後ろでキョロキョロと周りを見回していたソフィアを小鬼の前に出した。教授言わく、これからは全て自分でやるのだから、今のうちに覚えておけとの事だ。

 

 

 

「お名前と歳を」

 

 

 

「ソフィア・ダーズリー、11歳」

 

 

 

「口座はつくりますか?」

 

 

 

ソフィアは、どうするのかいまいちよく分からず、助けを求めるように教授を見た。そうすると教授は、まだ要らないといい首を振った。その後、親から預かった貨幣を小鬼に渡し、代わりに金貨と銀貨と銅貨が返ってきた。金貨がガリオン、銀貨がシックル、銅貨がクヌートらしい。

 

 

 

1ガリオン=17シックル=493クヌート

 

1シックル=29クヌート

 

 

 

 

グリンゴッツをでて、最初に制服の採寸をするのがいいと言われ、ソフィアは、教授に連れられ洋裁店には行った。店に行く途中、ソフィアは、魔法界やホグワーツについて教授から説明を受けていた。ホグワーツには、四つの寮がありそれぞれの寮にモチーフとなっている動物がいるらしい。手紙の蝋封に書いてあると言われ、ソフィアが確認すると、ヘビ、穴熊、ライオン、鷲がいた。それぞれ、ヘビはスリザリン、穴熊はハッフルパフ、鷲はレイブンクロー、ライオンはグリフィンドールという寮で、ホグワーツを創設した4人の魔法使いと魔女の名から来ているという。人間界でサッカーにあたるクディッチというものがあり、年終わりには各得点が最も多い寮に優勝杯が渡されるらしく、教授が寮監をしているスリザリンは、長年優勝杯を取っているらしい。クディッチだけでなく、日頃の授業でも加点減点されるので、気をつけるようにとの事だった。

 

 

そうこう話しているうちに店に着いた。

 

 

 

【マダムマルキンの洋装店】

──普段着から式服まで──

 

 

店内は色々な色の布が置いてあり、色だけでなく質感や材質までも様々な布ばかりだった。店員であるマダム・マルキンは、愛想のよい、ずんぐりした女性でソフィアを踏台にのせると、頭から長いローブを着せ掛け、丈に合わせてピンで留め始めた。時期外れなのか、ソフィア以外に客は見当たらず、ものの数分で終わってしまった。その店には、勝手にはかるメジャーやひとりでに服を縫う針、マネキンにかかっている服を勝手に綺麗にするブラシなど、ソフィアの興味を引くにはもってこいのものばかりだった。マダム・マルキンも、とても人が良い人で、魔法について何も知らないソフィアに、軽い生活魔法を教えてくれたのだ。

 

 

 

 

採寸が終わり、出来上がるまでに残りの教材を買った。錫製の大鍋や望遠鏡、秤に薬瓶のセット、羽根ペンや羊皮紙、教科書類途中でバッグを買ったものの、ソフィアが持つには重すぎて、教授に助けて貰っていた。

 

 

 

「杖を買うなら、この店が1番だろう。」

 

 

 

 

【オリバンダーの店】

──紀元前三八二年創業 高級杖メーカー

 

 

 

目の前の店は、剥がれかかった金の文字でこう書いてあり、埃っぽいショーウィンドウの、色あせた紫色のクッションの上に、杖が1本置かれているだけだった。教授は、他に用事があるとのことで、ソフィアは、1人で店内に入った。店内に入ると、天井近くまで整然と積み重ねられた何千という細長い箱の山があった。あたりを見回したところで店主や店員と思われる人影はなかった。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 

誰も居ないはずのカウンターの方から、いきなり声がかかり、ソフィアはビクッと肩を震わせた。声のした方を見ると、老人がいて、店の薄明かりの中で、大きな薄い黄色い目が、ふたつの月のように輝いていた。

 

 

 

「こ、こんにちは」

 

 

「おお、叔母であるあの子によく似てらっしゃる。あの子がここに来て最初の杖を買って行ったのがつい昨日ようじゃ。あの杖は、二十六センチ、柳の木で出来ていて振りやすい、妖精の呪文にはピッタリの杖じゃった。」

 

 

 

「叔母…ですか……」

 

 

 

赤毛に菫色の目をしたソフィアは、両親であるペチュニアとバーノンどちらにも似なかったので、隔世遺伝だろうと言われている。しかし、ソフィアは、叔母にも叔父にもあったことがないので、よく分からない。

 

 

 

「さて、お嬢さん、どちらが杖腕ですかな?」

 

 

「つ、杖腕?えっと…私は、一応両利きなのですが…」

 

 

「うーむ、普段どちらの手をお使いになられますかな?」

 

 

「左です」

 

 

左利きを矯正し、両利きになったソフィアは、普段使っている左手を伸ばした。すると老人は、ソフィアの肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から脇下、頭の周り、と寸法を採った。杖を決めるのに、頭の周りが必要なのかとソフィアは、首を傾げた。

 

 

「お嬢さん、オリバンダーの杖は、1本1本、強力な魔力を持ったものを芯に使っております。一角獣のたてがみ、不死鳥の尾羽、ドラゴンの心臓の琴線。一角獣も不死鳥もドラゴンも、みなそれぞれに違うのじゃから、オリバンダーの杖には一つとして同じものがない。もちろんほかの魔法使いの杖を使っても、決して自分の杖ほどの力が出せないわけじゃ」

 

 

 

ソフィアにとって、ドラゴンや一角獣、不死鳥というものは御伽噺やファンタジーの中だけのものだった。なので、杖がどうやら、素材がどうなど言われてもよく分からないのである。老人が、手を下ろすようにいい、巻尺が独りでに丸まるのを眺めていた。

 

 

 

「こちらはどうですかな?楓に一角獣のたてがみ。21センチ、気まぐれ」

 

 

 

ソフィアが渡された杖を持ち、マジマジと見つめていると、老人に振ってみなされと言われ、ヒュと軽く振り下ろすと、近くにあった置物が粉々に割れた。あまりの出来事にソフィアは、すぐに杖を老人へと返した。

 

 

 

「むむ、では、桜の木にドラゴンの心臓の琴線。19センチ、しなやか」

 

 

 

ソフィアが続けて振ってみるも、次は、窓ガラスが割れ、その杖も直ぐに返した。その後、十数の杖を試すものの、一向に決まる様子はなく、次々に壊れている置物や窓を見て、ソフィアは少し顔色を悪くした。

 

 

 

「では、これは?ヒノキにセストラルのたてがみ。30センチ、固く、忠誠心が深い」

 

 

 

ソフィアが恐る恐る杖を手にし、軽く振り下ろすと、杖先から、雪の結晶と花が飛び出し、店中に降り注いだ。老人は、ブラボーと叫びながら手を叩き、杖を箱に戻し茶色の紙で包み始めた。その後老人にお金を払い、店の外に出ると教授が立っていて、ペットの有無を聞かれたので、とりあえず見てみるとソフィアは返し、魔法動物ペットショップに行った。

 

 

 

────────

 

 

 

ペットショップには、猫やネズミ、フクロウにヒキガエルと、様々な動物がいた。教授は、フクロウか猫あたりがいいとアドバイスをし、好きに選んでこいと、ソフィアを店の中に入れた。

 

 

「おや?いらっしゃい、お嬢さん。何をお探しで?」

 

 

「学校に持っていけるペットなんですけど…」

 

 

「家族とも連絡取れるから、フクロウ当たりがオススメね」

 

 

 

とりあえずと、店内をぐるりと回ってみることにした。動物園にもいるような一般的な動物に始まり、モグラのようだが光るものが好きな二フラーや、ふわふわとした球体のパフスケインなどソフィアが今まで目にしてこなかった生物までいた。そんな店の一角から、キィキィと小さい鳴き声が聞こえてきた。気になってよってみると、真っ黒の毛玉があった。

 

 

 

「あの、これは?」

 

 

「あぁ、これは黒猫だよ。どうにも人に懐かなくてね、売れなかったんだ。」

 

 

 

店員に断りを入れて、触ろうとするとシャーと毛を逆立てて、ソフィアの手を噛んだ。甘噛みではなく、しっかりと力を入れて噛んでいるので、ソフィアの手からは血が出てきて、店員が焦りだしたが、ソフィアは気にせず、その黒猫を持ち上げた。

 

 

「私この子にします」

 

 

 

 

店員は驚いていた。無理もないだろう、今も尚自分の手をかみ続けている気性の荒い猫を、易々と持ち上げ、挙句には、自分のペットにすると言い出す客など珍しいどころの話では無いのだ。

 

 

 

「本当にその子でいいんだね?」

 

 

「ええ、この子以外考えられない」

 

 

 

売れ残りなのもあり、比較的安いと思われる値段で、黒猫を買い、ゲージと餌、飼い方の本などを持ちソフィアは、店員に一礼してから、店から出た。

 

 

 

そしてそこで店員は摩訶不思議なものを見たのだ。

 

 

抱えられた猫から、なにか不気味な執着心のような黒いものが小さな魔女に巻きついているような不思議な感覚になり、こちらを向いた猫がニヤリと笑っているような、なにか企んでいるような笑みを残したような、そんな寒気に襲われ、店員はブルりと肩を震わせた。そして店の中に戻ると、店の中にいたゲージの中の動物たちが皆揃って、今しがた少女が出ていった方を穴が空くほどに見つめていた。自分の目を疑い、瞬きを何回かし、目をこすって改めて見ると、フクロウは今まで通り餌をつつき、二フラーは金貨をお腹の袋に詰めていて、きっとなにかの見間違えだったのだろうとその出来事を忘れるように頭を振り記憶から飛ばした。

 

 

 

───────

 

店を出て買い忘れがないかを確認し終わり、ソフィアは、また、胃が契れるような吐き気を抑えながら、自宅の玄関の前にいた。

 

 

 

「猫にしたのか?」

 

 

「はい、可愛かったので」

 

 

「そうか、始業式は、九月一日で、これは、ホグワーツ行きの切符だ。キングクロス駅発、9と4分の3番線から、11時発だ。次は、学校で」

 

 

 

簡潔に切符の説明を終えると、ポンと音を立てて、ソフィアの目の前から教授が消えた。自分の家に、教授が乗り込んでくるところから始まり、やっと長い一日が終わったのだ。ソフィアは、なにか引っ掛かりを覚えながら、家を扉を開け、リビングに行く前に、自室へ荷物を運び込んだ。

 

 

 

ソフィアは、数分後に、ソフィアの身を心配したペチュニアとバーノン、ダドリーの質問攻めに会い、ハリーに不思議そうな目を向けられることをまだ知らない。




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出会いと始まり

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九月一日

 

 

よく晴れたその日は、ホグワーツの入学式の日で、ハリーは5時に目が覚めてしまった。忘れ物がないか再度確認し、ヘドウィグがちゃんと鳥籠に入っていることを確かめ、ダーズリー親子が起きるまで部屋の中を行ったり来たりしていた。二時間後、ハリーとソフィアの大きな重いトランクを車に乗せ、キングズ・クロス駅へと出発した。プラットホームの前まで来ると、バーノンは、ニターッと意地悪く笑い、9と4分の3番線がないことを嘲笑った。ペチュニアは、嫌になったら帰ってこいとか、手紙を沢山書いてなど、ソフィアの心配ばかりしていた。3人は、ソフィアに名残惜しそうな目を向けたまま車で帰っていった。

 

 

 

「あんた…行き方わかる?」

 

 

「ごめん…僕にも分からない……」

 

 

 

ホームに取り残された2人は、相手が9と4分の3番線への行き方(そもそもあるかも分からない)が分からないと知るとガックリと頭を抱え項垂れた。その後、ハリーが通り掛かった駅員を呼び止めて尋ねたが、ホグワーツを知らないし、十一時発の電車はないしで、時間の無駄遣いだとブツクサ言いながら去ってしまった。周りの人は、ただでさえ、大きなトランクを持ちっているのに、猫ならまだしもフクロウを持ち歩いてる2人をジロジロとみている。

 

 

 

「マグルで込み合っているわね……当然だけど…」

 

 

 

そんな声が聞こえると、ハリーとソフィアは、バッと急いで後ろを振り返った。()()()と言ったのが聞こえたのだ。声が聞こえた方を見ると、ふっくらとしたおばさんが、赤毛の4人の男の子に話しかけていた。みんなトランクを押しながら歩いていて、フクロウと一羽いた。ハリーとソフィアは、顔を見合せ、目配せでついて行くことを決めた。

 

 

 

小さい女の子が、9と4分の3と甲高い声を出し、1番年上らしい男の子が【9】と【10】に向かって進んで言った。ハリーは、それを見逃さないように目を凝らしていたが、ワンサカと旅行者の群れが溢れてきて、肝心の行き方はわからずじまいだった。続いて、よく似た顔のふたりが、3番線の改札口に向かって歩き出した。その辺に着いたと思ったら、一瞬にし影も形もなくなっていた。ハリーもソフィアも、他に手は無いと思いふっくらとしたご婦人に話しかけることにした。

 

 

 

「すみません」

 

 

「あら、こんにちは。坊やにお嬢ちゃん、ホグワーツは初めて?ロンもそうなのよ」

 

 

「はい、でも……僕達、分からなくって…その、どうやって」

 

 

「どうやって、プラットホームに行くかってこと?」

 

 

ロンと言われた少年は、背が高く痩せて、ひょろりとしている子で、そばかすだらけで、手足が大きかった。その後、おばさんは、9と10番線の間の柵に向かって真っ直ぐ歩くんだと優しく教えてくれた。ハリーは、怖かったら少し走るといいと言われ、カートにしがみつくように突進した。続いてソフィアは、特に何も無く歩いて柵へ向かった。2人が出たのは、紅色の蒸気機関車が、乗客でごったがえす中に停車しているプラットホームだった。ホームの上には、

 

 

 

ホグワーツ行特急 11時発

 

 

とそう書かれていて、改札口のところには、9と3/4と書いた鉄のアーチが見えた。2人は、機関車の煙が漂う、人混みを縫うように歩き、空いている席を探した。やっとの事で、空いているコンパートメントの席を見つけ、列車の戸口の階段から、重いトランクを押し上げようとしたが、2人がかりでも重く2回もハリーの足の上に落ち、その度ソフィアは、顔を歪めた。

 

 

 

「手伝おうか?」

 

 

ふと、上から声がしてそちらを向いてみると、先に改札口を通過して行った、赤毛の双子のどちらかが立っていた。二人でやってもトランクが持ち上がらないことを嫌という程思い知らされたので、お願いすることにした。

 

 

 

「おい、フレッド!こっち来て手伝えよ」

 

 

 

双子のおかげで、2人のトランクは、やっと客室の隅に納まった。お礼を言いながら、ハリーは、目にかぶさった汗びっしょりの髪をかきあげた。すると双子のひとりが、急にハリーの稲妻型の傷跡を指さし、それは何かと質問をした。

 

 

 

「驚いたな。君は………?」

 

 

「彼だ。君、違うかい?」

 

 

 

何がと不思議そうに返すハリーに向かって、双子は同時に【ハリー・ポッターさ】と言った。ハリーは二人の質問を肯定し、双子に見られ、顔を赤らめた。その時、開け放された汽車の窓から、双子を呼んでいるだろう声が聞こえ、双子は、列車から飛び降りた。ハリーとソフィアは、向かい合って窓際に座り、赤毛の一家の会話を半分隠れて、聞いていた。

 

 

 

どうやら、1番年上らしい彼が監督生とやらになったとか、末息子の面倒をよく見るようにとか、行儀良くするようにとか、他愛もない家族の会話だった。途中で、ハリーにあった話や、()()()()()の話などがでてきたが母親に一喝された後、3人の男子は汽車によじ登って乗り込んだ。

 

 

 

 

「あんた……やっぱり、有名なのね」

 

 

「やっぱりって?」

 

 

「はぁ……教科書に少しは目を通しなさいよ」

 

 

 

 

ため息の後に、ソフィアは、ハリーが色々な文献に乗っていたことや、英雄と崇められていたことを教えた。当の本人であるハリーは、本当に自分のことなのかと疑問でしか無かった。二人が、話していると、コンパートメントの戸が開いて、1番年下の赤毛の男の子が入ってきた。男の子いわく、他が空いてないので、入っても大丈夫かと言うことだった。ハリーが、ソフィアに了承を取ろうと目を向けると、ソフィアは、好きにしろただしうるさくするなと返した。赤毛の子がコンパートメントに来て少しして、さっきの双子が来た。

 

 

「自己紹介したっけ?僕達は、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。じゃ、また後でな」

 

 

 

双子が去った後、ロンが本当にハリーポッターなのかとこぼした。その質問に肯定したハリーは、前髪を掻き上げ額にある稲妻の傷跡を見せた。その後、2人はそれぞれの家庭の話に入り、とくに、ロンの家族の話をハリーは熱心に聞いていた。

 

 

 

「君はマグルと暮らしてたって聞いたよ。どんな感じなんだい?」

 

 

「酷いもんさ…皆がそうだって訳じゃないけど、おじさん、おばさん、僕のいとこはそうだった。僕にも魔法使いの兄弟がいればいいのに」

 

 

「えっと……君は?」

 

 

 

 

ロンは、隣にいるソフィアの方に話をふった。しかし、ソフィアにその声は聞こえていないみたいで、膝の上にいる黒猫を撫でながら、ぼーっと窓の外を眺めていた。聞いていないことに気がついたハリーが、ソフィアの肩を叩き、ロンの質問を教えた。

 

 

 

「マグルよ。そこにいるハリーポッターのいとこにあたる酷い奴よ。」

 

 

そう言うとソフィアは、ふんっと軽く鼻を鳴らし、また窓の外を眺め始めた。ハリーとロンは、ソフィアがさっきまでの話を聞いていたことに驚き、バツが悪そうにソワソワした。それは、ソフィアが、ハリーがそう思っても仕方が無いとさっきの話を肯定するまで続いた。 その後も、自分の兄弟や家族の話をし、ハリーは、自分がクラスでビリになるかもしれないと項垂れた。

 

 

 

 

汽車は、スピードを上げ、牛や羊のいる牧場のそばを走り抜けていった。ちょうどお腹もすく、12時頃、通路でガチャガチャと音がして、えくぼのおばさんが、ニコニコ顔でコンパートメントの戸を開けた。それは、車内販売で、ハリーは、朝食がまだだったので勢いよく立ち上がった。今までダーズリー家にいた頃、ハリーは甘いものを買ってもらう事がなく、たまにソフィアが残したお菓子を貰う程度だった。しかし、今はポケットの中で金貨や銀貨がジャラジャラとなっている。マーズ・バー・チョコレートが持ちきれないほど買える!と意気込んではいたものの、売っているのは、蛙チョコレートやかぼちゃパイ、大鍋ケーキ、杖型甘草あめ、バーティ・ボッツの百味ビーンズなど、ハリーが今まで1度も見た事がないようなものばかりだった。どれも買い損ねたくないと思い、それぞれを少しずつ買って、両腕を食べ物でいっぱいにした。

 

 

 

「お嬢さんは?」

 

 

 

「…かぼちゃジュース1つと蛙チョコレートを2つ……」

 

 

 

ハリーとソフィアは、車内販売を買い、席につき、買ったものをマジマジと見つめていた。ロンは、でこぼこの包みを取りだし、中にはサンドウィッチが4切れ入っていた。しかし、ロンはコンビーフが嫌いだったらしく、顔を顰めていた。それを見たハリーは、自分のかぼちゃパイを差し出し、2人はサンドウィッチをほったらかしたまま、ケーキやパイを夢中で食べた。ソフィアはと言うと、かぼちゃジュースに手をつけたあと、蛙チョコレートをマジマジと見つめて、本物かどうかと心配していた。

 

 

 

「これなんだい?まさか、本物のカエルじゃないよね?」

 

 

「まさか!でも、カードを見てごらん。僕、アグリッパがないんだ。」

 

 

 

ソフィアは、隣で話している声を聞いて、安心し包みを恐る恐る開けた。中には、動くカエルがいて、ソフィアが驚いている間に、空いていた上の窓から逃げてしまった。それを見たロンが、早く食べないとダメだと助言し、ソフィアは、少し嫌そうな顔をした。偽物でも、本物のように動いている蛙チョコレートを口に入れるのは少し抵抗があったのだ。

 

 

 

「この人がダンブルドアなんだ!」

 

 

 

そうハリーが声をあげると、ロンは、ハリーがダンブルドアを知らなかったことに驚いた。また、カードの中にいたダンブルドアが消えて、一日中そこにいるわけじゃないと聞いて、マグルの写真では動かないと教えると、ロンは変だと返した。横にいたソフィアは、2つ目を開け、カエルを直ぐに口に入れた、ただ足がはみ出ていたらしく、グロテスクな()()を見たハリーが、切羽詰って、早く全部食べるように促した。2枚目のカードにロンが言っていたアグリッパとやらが出たソフィアは、興味なしと無言でロンに押付けた。ロンは、まさか貰えるなんて!と大喜びしていた。

 

 

 

「気をつけた方がいいよ。百味って、ほんとになんでもありなんだよ。──そりゃ、普通のもあるよ。チョコ味、ハッカ味、マーマレード味なんか。でも、ほうれん草味とか、レバー味とか、臓物味なんてのがあるんだ。ジョージが言ってたけど、鼻くそ味に違いないってのに当たったことがあるんだって」

 

 

 

それを聞いたハリーは、少し嫌そうな顔をしたが、百味ビーンズを楽しんだ。トースト味にココナッツ、炒り豆にいちごだったりと本当になんでもありだった。ハリーに勧められ、ひとつ貰ったソフィアは、石鹸味にあたり、顔を顰めながらすぐに吐き出した。そして、2人が何を言おうと2つ目を取ろうとは決してしなかった。そんな中、車窓には荒涼とした風景が広がってきた。整然とした畑はもうなく、森や曲がりくねった川、うっそうとした暗緑色の丘が過ぎていった。ほのぼのと外を眺めたり、他愛もない会話をしていると、丸顔を男の子が泣きべそをかいて入ってきた。

 

 

「ごめんね。僕のヒキガエルを見かけなかった?」

 

 

 

3人が首を振ると、男の子はめそめそ泣き出した。男の子いわく、ペットのヒキガエルが自分から逃げてばかりいるらしく、見かけたら…と言って、コンパートメントを出ていった。その後、ロンのペットのスキャバーズの話になった。

 

 

 

 

「きのう、少し面白くしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。でも呪文が聞かなかった。やって見せようか──見てて」

 

 

 

そう言うとロンは、トランクからくたびれたような杖を取りだした。あちこちボロボロに欠けていて、端からなにか白いきらきらしたものが覗いている。それは、杖の芯で一角獣の鬣だったらしいがロンは気にせず続けた。そうして杖を振り上げた瞬間、またコンパートメントの戸が開その子は、蛙に逃げられた男の子を連れていて、なんとなく威張ったような話し方で、再度ヒキガエルのことを聞いてきた。ロンが、見なかったと答えても聞いておらず、むしろ、杖に気が取られている。

 

 

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」

 

 

そう言うと断りなしに、席に座った。ロンは少したじろいだが、咳払いをし、先程の続きをした。

 

 

 

お陽さま、雛菊、蕩けたバター。デブで間抜けなネズミを黄色に変えよ!

 

 

 

ロンが杖を振るが特に変化はなく、スキャバーズは相変わらずねずみ色でぐっすり眠っていた。その後は女の子の自慢話のような内容に変わっていき、最後にようやく、名を名乗った。

 

 

 

「私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 

 

「僕、ロン・ウィーズリー」

 

 

「ハリー・ポッター」

 

 

「…ソフィ「ほんとに!私、もちろんあなたのこと全部知ってるわ。参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと【近代魔法史】【闇の魔術の興亡】【二十世紀の魔法大事件】なんかに出てるわ」

 

 

「たしか、ソフィーもそんなこと言ってた…」

 

 

 

ハリーが名前を出したことで、ハーマイオニーは、ようやく窓側で猫と黄昏ているソフィアを見た。ソフィアは、ハーマイオニーを一瞥し目も合わさずに、また、窓の外を眺めだした。ソフィアは、ハーマイオニーのことを、人の自己紹介にわざわざ被せてまで知識披露をしなければ気が済まない子なのだろう、可哀想に友達が少なそうだと結論付けたのだ。その後、ハーマイオニーは、三人にもうすぐ着くから早く着替えた方がいいと言い、コンパートメントを後にした。ロンは、ジョージがダメ呪文を教えたと杖をトランクに投げ入れながら呟いた。その後、ハリーとロンは、寮がどうとか闇の魔法使いがどうとか、クィディッチのルールなんかについても話していた。

 

 

 

 

そして、また、コンパートメントの戸が開いた。今度は、ヒキガエルを探している男の子でもなく、ハーマイオニーでもなかった。そこに居たのは、ホワイトブロンドに灰色の目をしたいかにも育ちが良さそうな男の子と、その男の子の両脇にたっているガッチリとした体型の男の子2人の3人だった。

 

 

 

 

「ほんとうかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ちきりなんだけど。それじゃ、君なのか?」

 

 

「そうだよ」

 

 

「ああ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ。そして僕がマルフォイ。ドラコ・マルフォイだ。」

 

 

 

ドラコが自己紹介をすると、ロンがクスクス笑いをごまかすように軽く咳払いをした。ドラコは目ざとくそれを見咎め、ロンに対し名前を名乗るまでもないと言い切り、ウィーズリー家は皆赤毛で、育てきれないくらい子供がいると言い出した。

 

 

「で、奥に座っている君は?」

 

 

「ソフィア、ソフィア・ダーズリー。」

 

 

「ポッター君にダーズリー君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとが分かってくるんだよ。間違ったのとは付き合わないことだね。その辺は僕が教えてあげよう。」

 

 

そういった後、ハリーに握手を求め手を差し出したが、ハリーは自分で見分けれるといい応じなかった。ドラコは、引き下がらず、ハリーにもう少し気をつけないと両親と同じような道を辿ることになるといい、ウィーズリー家とハグリッドを下等な連中と言った。ロンは、もういっぺん言ってみろと叫びながら立ち上がった。クラッブもゴイルも、ハリーやロンよりずっと大きかったので、内心は言葉ほど勇敢ではなかった。

 

 

 

「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう?僕達、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはまだあるようだし」

 

 

 

ドラコがそう言うと、ゴイルはロンのそばにある蛙チョコに手を伸ばした。ロンが飛びかかったが、ゴイルに触るか触らないうちに、ゴイルが恐ろしい悲鳴をあげた。ゴイルの指に、スキャバーズが噛み付いていたのだ。ゴイルは、手を振り回し、やっとの思いでスキャバーズを、ふりきった。そして三人は、足早に消え去った。そんな騒ぎを聞き付けて、ハーマイオニーが間もなく顔を出した。床にちらばっているお菓子を見て、ハーマイオニーは、何をやっていたのかと質問した。しかし、2人はハーマイオニーの声が聞こえていないのか、マルフォイについて話していた。

 

 

 

ロンいわく、『例のあの人』が消えた時に、まっさきにこちら側に戻ってきた家族のひとつで、マルフォイの父親が闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらないだろうとロンの父親は言っていたらしい。その後2人は、ようやくハーマイオニーに気づき、何か用かと尋ねた。ハーマイオニーは、強めの口調で早くローブに着替えるように促した。その後、ロンの顔に泥がついてると言い、コンパートメントを出ていった。窓の外は暗くなっており、深い紫色の空のしたに山や森が見えた。汽車はたしかに徐々に速度を落としていた。三人は、上着を脱ぎ黒い長いローブを着た。ロンのローブは少し短かったらしく、下からスニーカーが覗いている。

 

 

 

『あと5分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください』

 

 

 

車内に響き渡る声が聞こえ、ハリーは緊張で胃がびっくりえ理想になり、ロンのそばかすだらけの顔は青白く見えた。ソフィアは、猫を膝からおろしゲージの中に戻りて、通路に溢れる人の群れに加わった。汽車が停車すると、押し合いへし合いしながら列車の戸から外に出た。外は、小さなくらいプラットフォームで、夜の空気が冷たかった。

 

 

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!さぁ、着いてこいよ─あとイッチ年生はいないか?足元に気をつけろ。いいか!イッチ年生、着いてこいよ!!」

 

 

 

生徒の頭上にユラユラとランプが近づいてきて、ハリーの耳に懐かしい声が聞こえた。ハグリッドは、大きな声を上げながら新入生を引率していた。険しくて狭い小道を、滑ったり、躓いたりしながら、みんなハグリッドについて行った。狭い道が開け、大きな湖のほとりに出ると、向こう岸に高い山がそびえ立っていた。そのてっぺんには壮大な城があり、大小様々な塔が立ち並んでいて、キラキラと輝く窓が推しぞらに浮かび上がっていた。ハグリッドの指示通り4人ずつボートに乗った。ハリーとロンが乗り、ネビルとハーマイオニーが続いて乗った。なんという巡り合わせなのか、ソフィアは、さっきのドラコとクラッブ、ゴイルと同じ船になった。それを見たハリーは、ご愁傷さまというような顔をしていた。

 

 

 

 

「みんな乗ったか?よーし、では、進めぇ!

 

 

 

 

ハグリッドの大きな声が合図だったのか、ボートが一斉に動き出した。鏡のような湖面を滑るように進み、みんな黙ってそびえ立つ巨大な城を見上げていた。ハリーは、こんなに幻想的なものを初めて見た。城の地下にあると思われる船着き場に到着すると、全員が岩戸小石の上に降り立った。先程ヒキガエルを探していた男の子が、ハグリッドから無くしたヒキガエルを渡されとてもよろんでいた。石段をのぼり、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 

 

 

「みんないるか?お前さん、ちゃんとヒキガエルを持っとるな?」

 

 

 

ハグリッドは大きな握りこぶしを振り上げ、城の扉を三回叩いた。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

それと同時刻……

 

 

 

どこかの暗闇で、黄色い目が浮き上がり、闇の中にひとつの鳴き声がとけて消えた。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ちまちまと書いていますが、今後は、最新頻度が下がると思います。何分、休みが終わったので……

よろしければ、評価、感想、誤字報告よろしくお願いします


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赤と緑 勇気と狡猾

遅くなってすみませんil||li_| ̄|○ il||l


 

 

 

 

ハグリッドが扉を叩くと、扉はパッと開いて、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の女性が現れた。とても厳格そうな顔つきをしていて、この人には逆らってはいけないとハリーは直感した。女性は、ハグリッドにマクゴナガル教授と呼ばれていて、扉からの道の引率は、マクゴナガル先生に変わった。玄関ホールには、ダーズリーの家が丸々入りそうなほど広く、石壁が松明の炎に照らされ、天井はどこまで続くか分からないほど高い。そして、壮大な大理石の階段が正面から上へと続いている。一年生は、小さな空き部屋で待機した。

 

 

 

 

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組み分けの儀式はとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。」

 

 

 

 

マクゴナガル教授曰く、寮は、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの4つで、それぞれに輝かしい歴史があり、偉大な魔女や魔法使いが卒業したという。良い行いは加点につながり、規則に違反したら減点になり、学年末に最高得点の寮には名誉ある寮杯が与えられる。長めの説明が終わり、儀式までにできるだけ身なりを整えておくように言い、マクゴナガル先生は、部屋を出ていった。

 

 

 

その間、ハリーとロンは、寮を決める方法について話していた。ロンは、双子の兄たちに聞いた内容を嘘だと言いながらハリーに話していた。ハーマイオニーは、今まで覚えたのであろう呪文をブツブツと早口で呟いていた。そして突然不思議なことが起こった。なんと、後ろの壁からゴーストが二十人ぐらい現れたのだ。真珠のように白く透き通り、1年の方にはほとんど見向きもせずに、互いに話しながら部屋を横切って行った。生徒の中には、体をすり抜けられた者もいたようで、ブルリと体を震わせていた。

 

 

 

 

「さあ、行きますよ。組み分けの儀式がまもなく始まります。」

 

 

 

 

戻ってきたマクゴナガル先生につづき、1年生は部屋を出て玄関ホールに行き、二重扉を通って大広間に入った。そこには、何千というロウソクが空中に浮かび、4つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラと輝く金色のお皿とゴブレットが置いてあり、広間の上座のテーブルには先生方が座っていた。天井は、ビロードのような黒い空に星が点々と光っており、天井があるなんてとても思えない。マクゴナガル先生は、四足のスツールを置き、その上に魔法使いが被るようなとんがり帽子を置いた。その帽子は、継ぎ接ぎだらけのボロボロだった。広間が水を打ったように静かになると、帽子がぴくぴくと動き、唾のヘリの破れ目がまるで口のように開いた。

 

 

 

 

 

 

私はきれいじゃないけれど

 

人は見かけによらぬもの

 

私をしのぐ賢い帽子

 

あるなら私は身を引こう

 

山高帽子は真っ黒だ

 

シルクハットはすらりと高い

 

私はホグワーツの組み分け帽子

 

私は彼らの上をいく

 

君の頭に隠れたものを

 

組み分け帽子はお見通し

 

かぶれば君に教えよう

 

君が行くべき寮の名を

 

 

 

グリフィンドールに行くならば

 

勇気ある者が住まう寮

 

勇猛果敢な騎士道で

 

他とは違うグリフィンドール

 

 

 

ハッフルパフに行くならば

 

君は正しく忠実で

 

忍耐強く真実で

 

苦労を苦労と思わない

 

 

 

古き賢きレイブンクロー

 

君に意欲があるならば

 

機知と学びの友人を

 

ここで必ず得るだろう

 

 

 

スリザリンではもしかして

 

君はまことの友を得る

 

どんな手段を使っても

 

目的を遂げる狡猾さ

 

 

 

 

かぶってごらん!恐れずに!

 

興奮せずに、お任せを!

 

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

 

だって私は考える帽子!

 

 

 

 

破れ目が口のように開き、帽子が歌った。歌が終わると広間にいた全員が拍手喝采をした。帽子は、4つのテーブルにそれぞれお辞儀をして、再び静かになった。ロンは、自分に嘘を教えたフレッドをやっつけてやるとハリーに囁いた。ABC順に名前を呼ばれ、名前を呼ばれたら帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けることとなった。

 

 

 

 

「アボット・ハンナ!」

 

 

 

「ハッフルパフ!」

 

 

 

名前を呼ばれた生徒が転がるように前に出てきて帽子をかぶると、少し間が開き、帽子が叫んだ。右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、組み分けを行われた生徒は、ハッフルパフのテーブルについた。次々に生徒が呼ばれ、帽子をかぶると帽子が寮の名前を叫んだ。寮の名前が叫ばれるたびに、四つのテーブルのどこがが立ち上がって拍手をする。ハリーは、スリザリンについてあれこれ聞かされたので、勝手な思い込みかもしれないがスリザリンの連中はどうも感じが悪いと思っていた。

 

 

 

 

 

「ダーズリー・ソフィア」

 

 

 

 

名前を呼ばれたソフィアが、前に出て椅子に座るとマクゴナガル先生は、ソフィアの頭に帽子を置いた。ハリーは、ソフィアがどの寮に組み分けされるのかとじっとソフィアの方を見ていた。

 

 

 

 

 

【ふーむ……難しい……忍耐強い…頭も悪くない…才能もある…さて、どこに入れたものか…】

 

 

 

 

帽子をかぶったソフィアは、耳の中に聞こえてきた低い声に耳を傾けていた。といったも、さっさと組み分けしてくれないかと半分飽き始めていた。ソフィアは、どこの寮がいいのかなど微塵も知らかった。そんなソフィアからすれば、この組み分けは退屈そのものであり、早く終わって欲しいことなのである。

 

 

 

 

 

「(どこでもいい、早くして欲しい、視線が痛い……)」

 

 

 

 

【あぁ、それなら、君はこの寮がぴったりだろう。】

 

 

 

 

 

『スリザリン!!』

 

 

 

 

1番右のテーブルから歓声と拍手があがり、ソフィアは、やっと終わったと憂鬱そうにテーブルに足を運んだ。ハリーはというと、あまり良い印象をもたない寮にソフィアが組み分けされ、自分もそうなるのではないかと、気分が悪くなってきた。ハーマイオニーは、グリフィンドールに分けられ、そろそろハリーの番が回ってくる。

 

 

 

 

 

 

「ポッター・ハリー!」

 

 

 

 

 

 

ハリーの名前が呼ばれ、ハリーが前に進みでると、当然広間中にシーッというささやきが波のように広がった。ハリーが帽子をかぶると、広間中の人達が首を伸ばしハリーの組み分けをよく見ようとしていた。ヒソヒソとハリー・ポッターについて話、どこの寮に分けられるのかとソワソワしていた。ハリーはと言うと、帽子をかぶった瞬間帽子の内側の闇を見ていた。フームという低い声が聞こえてきた。

 

 

 

 

【むずかしい。非常にむずかしい…ふむ、勇気に満ちている。頭も悪くない。才能もある。おう、なんと、なるほど……自分の力を試したいという欲望もある。いや、おもしろい…さて、どこに入れたものかな?】

 

 

 

 

ハリーは、椅子の縁を握りしめ、スリザリンはダメと思い続けた。ソフィアが居るので、何とかなりそうだとも思ったが、洋裁店と列車の中であったあの男の子がスリザリンに行くと言っていたのを思い出し、やはり、スリザリンにはいい印象をもてなかったのだ。

 

 

 

 

【スリザリンは嫌なのかね?確かかね?君は偉大になれる可能性があるんだよ。その全ては君の頭の中にある。スリザリンに入れば間違いなく偉大な道が開ける。嫌かね?よろしい、君がそう確信しているなら……むしろ……

 

 

 

グリフィンドール!

 

 

 

 

ハリーは帽子が最後の言葉を広間全体に向かって叫ぶのを聞いた。ハリーは、帽子を脱ぎフラフラとグリフィンドールのテーブルに向かった。グリフィンドールのテーブルでは、双子のウィーズリー兄弟がポッターを取ったと歓声を上げ、他の寮は自分の寮にハリーが来なかったことを残念がったが、拍手をしていた。

 

 

 

 

 

ロンは自分の番が来ると真っ青な顔をして帽子をかぶったが、帽子がグリフィンドールと叫ぶとほっとしたような顔で、ハリーの隣の椅子に崩れるように座った。最後の生徒の組み分けが終わり、マクゴナガル先生がクルクルと巻紙をしまい、帽子を片付けた。そこで、校長のアルバス・ダンブルドアが立ち上がり、腕を大きく広げ、みんなに会えるのがこの上もない喜びだというふうに笑った。

 

 

 

 

 

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

 

 

 

 

校長の話が終わると、出席者全員が拍手と歓声を上げた。ハリーは、ロンの兄であり監督生のパーシーに校長が少しおかしくないかと聞いたが、パーシーは、少しおかしいが世界一の魔法使いだといい、ハリーにポテトを食べるか聞いた。ハリーは、その時初めて、空っぽだった大皿が食べ物でいっぱいになっているのに気がついた。

 

 

 

ローストビーフ、ローストチキン、ポークチップ、ラムチップ、ソーセージにベーコン、ステーキに茹でたポテトにグリルのポテト、フレンチフライ、ヨークシャープティングetc.....

 

 

 

ハリーは、ダーズリー家で餓え死にこそしなかったが、1度もおなかいっぱい食べさせてもらったことも無い。しかし、今は、お腹いっぱい飽きるまで色んな料理を食べることができると、お皿いっぱいに料理をとった。

 

 

 

 

「美味しそうですね」

 

 

 

ハリーがステーキを切っていると、ひだ襟服のゴーストが悲しげに言った。かれこれ400年食べていないらしいが、食べる必要は無いらしい。ゴーストの名前は、ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿と言うらしく、ロンは兄から【ほとんど首なしニック】と聞いていたことを伝えた。ほとんど首なしの理由は、切れている首がほんの少し繋がっているかららしい。

 

 

 

 

 

「さて、グリフィンドール新入生諸君、今年こそ寮対抗優勝カップを獲得できるよう頑張ってくださるでしょうな?グリフィンドールがこんな長い間負け続けたことは無い。スリザリンが六年連続で寮杯をとってるのですぞ!【血みどろ男爵】はもう鼻持ちならない状態です……スリザリンのゴーストですがね」

 

 

 

 

 

ハリーがスリザリンのテーブルを見ると、身の毛のよだつようなゴーストが座っていた。虚ろな目、げっそりとした顔、衣服には銀色の血がベッタリと着いて汚れている。そのゴーストは、マルフォイとソフィアの間に座っていて、マルフォイはその席がお気に召さない様子で、ハリーは何だか嬉しかった。しかし、いつも以上の無表情のソフィアが真顔でフライドポテトをフォークに刺しているのを見て、ブルりと震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ソフィアはと言うと、ただでさえ知らない人達が沢山周りにいるのに、なんの嫌がらせか隣にゴーストが座っているのである。なんでこの席に座ったのかと数分前の自分を呪いながら、真顔でフライドポテトをフォークに刺し、口へ運んだ。

 

 

 

 

「君…よく平気で食べられるな」

 

 

 

マルフォイは、ゴーストを挟んでソフィアに声をかける。ソフィアは、気にしたら負けだと言って、荒々しくプティングにフォークを突き刺した。それを見た上級生たちが同情したような目でソフィアを見ながら、各自のオススメの料理を教えていた。

 

 

 

 

 

「そういえば、あなたの名前は?」

 

 

 

「…ソフィア・ダーズリー…あなたは?」

 

 

 

「パンジー・パーキンソンよ。同級生だから、気軽にパンジーって呼んでちょうだい。私もソフィアって呼ぶわ」

 

 

 

ソフィアは、口の中のプティングを咀嚼しながら、んと返事をした。ソフィアは、ロンが言っていたよりスリザリンは良い人が多く、問題はなさそうだと思った。ゴーストもさり、平穏を取り戻したソフィアは、デザートに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

デザートも消え去り、ダンブルドア先生がまた立ち上がると、広間中がシーンとなった。

 

 

 

 

 

「エヘン─全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。1年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒たちに特に注意しておきます」

 

 

 

 

ダンブルドア先生は、キラキラっとした目で双子のウィーズリー兄弟を見た。管理人からのお知らせは、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにとのこと。そして今学期は二週目にクィディッチの予選があり、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡すること。

 

 

 

 

「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい4階の右側の廊下に入ってはいけません。」

 

 

 

 

ハリーは、それを聞いて笑い、冗談かと聞いたが、パーシーはしかめっ面をしながら真面目だと答え、立ち入り禁止な理由を説明してくれても良かったのにと呟いた。

 

 

 

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

 

 

 

ダンブルドアが声を張り上げると、ほかの先生方の笑顔が急に強ばったように見えた。ダンブルドアが魔法の杖をまるで杖先に止まったはえを振り払うかのようにヒョイと動かすと、金色のリボンが長々と流れて、テーブルの上を高く登り、ヘビのようにクネクネと曲がって文字を書いた。

 

 

 

 

 

ホグワーツ ホグワーツ

 

ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

 

教えて どうぞ 僕たちに

 

老いても ハゲても 青二才でも

 

頭にゃなんとか詰め込める

 

おもしろいものを詰め込める

 

今はからっぽ 空気詰め

 

死んだハエやら がらくた詰め

 

教えて 価値のあるものを

 

教えて 忘れてしまったものを

 

ベストをつくせば あとはお任せ

 

学べよ脳みそ 腐るまで

 

 

 

 

 

 

みんなバラバラに歌え終えた。とびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟が最後まで残ったので、ダンブルドアはそれに合わせて最後の何小節かを魔法の杖で指揮をし、2人が歌い終わった時には、誰にも負けないくらいに大きな拍手をした。

 

 

 

 

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。さあ、諸君、就寝時間。かけ足!」

 

 

 

感激の涙を拭いながらダンブルドアが言い、各寮の監督生に続いてペチャクチャと騒がしい人混みの中を通り抜け大広間を出て、寮へと向かった。廊下を通るとき、壁にかけてある肖像画の人物がささやいたり、生徒を指さしたりしていた。

 

 

 

 

 

 

スリザリンの談話室は、湖の下にあり、冷たく薄暗い空間だった。窓の外は、湖の水で、夜なのもあり真っ暗だった。男子寮と女子寮とで別れており、それぞれ談話室につながっている。ソフィアは、朝や昼間になればきっと、窓の外は綺麗なのだろうと思った。

 

 

 

ソフィアと同室になったのは、ミリセント・ブルストロードにパンジー・パーキンソンで、ほかより人数が少ないため少し小さめの3人用の部屋だった。緑のビロードのカーテンがかかった、4本柱の天蓋付きベッドが置いてあり、トランクも届いていた。長時間の移動に、入学初日ということもあり、3人は特に話すことなくお休みと挨拶をしてベッドに入った。

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

 

ホグワーツに入学して少したち、新入生たちも広大なホグワーツの中を理解し始めた頃

 

 

 

ホグワーツでは、教室を探すのでも精一杯だった。ホグワーツ内には、142もの階段があり、広い階段、狭いガタガタの階段、金曜日にはいつもと違う所へ繋がる階段、毎回1段消えてしまう階段………丁寧にお願いしないと開かない扉、扉に見えるけど実は硬い壁……肖像画の人物達もしょっちゅう訪問しあっているし、ポルターガイストのピーブズは、イタズラばかりしている。授業は、薬草学に魔法史、妖精の魔法、変身術と多種多様な科目があり、2つの寮が合同で各授業を受けることとなっている。

 

 

 

 

 

 

 

魔法薬学は今日が初日で、スリザリンとグリフィンドールが合同で授業を受けることとなっている。場所は地下牢で、城の中にある教室より寒く、壁にずらりと並んだガラス瓶の中にアルコール漬けの動物がプカプカしていて、気味が悪かった。担当であるスネイプ先生は、まず出席をとったが、ハリーの名前まで来て少し止まり、われらが新しいスターだと言った。先生の言葉を聞いて、スリザリンの方から冷やかし笑いが起こった。

 

 

 

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。」

 

 

 

 

スネイプが話し出す。まるでつぶやくような話し方なのに、生徒たちは一言も聞き漏らさなかった。マクゴナガル先生と同じように、スネイプも何もしなくともクラスを静かにさせる能力を持っていた。生徒を見回した目は、ハグリッドと同じ黒い目なのに、温かみの欠片もなく、冷たく、うつろで、暗いトンネルを思わせた。

 

 

 

 

 

 

「このクラスでは、杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力………諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である──ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだマシであればの話だが」

 

 

 

 

 

大演説の後はクラス中が、いっそう静かになった。ハリーとロンは互いに目配せをし、ハーマイオニーは自分がウスノロではないと一刻も早く証明したくてウズウズし、ソフィアは学校で習った科学について考えていた。

 

 

 

 

 

ポッター!─アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

 

 

 

何の球根の粉末に、何を煎じたものを加えるって??

 

 

 

ハリーはロンをチラッと見たが、ハリーと同じように降参という顔をしていたが、ハーマイオニーが高々と手を挙げている。ハリーはどうしようもなく、分かりませんと答えた。

 

 

 

 

 

「有名なだけではどうにもならんらしい──ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」

 

 

 

 

ハリーには、ベゾアール石が何なのか見当もつかない。ハーマイオニーは、思いっきり高く、椅子に座ったままで挙げられる限界まで手を伸ばした。ハリーは、マルフォイ、クラッブ、ゴイルが身をよじって笑っているのをなるべく見ないようにした。

 

 

 

 

「分かりません」

 

 

 

「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったわけだなポッター。」

 

 

 

 

ハリーは頑張って、冷たい目を真っ直ぐ見続けた。スネイプは、ハーマイオニーの手がプルプルと震えているのを無視した。ハリーもダーズリー家で教科書に目を通したものの、全ては覚えてない。

 

 

 

 

「ポッター、モンクスフードとウルフズベーンとの違いはなんだね?」

 

 

 

「分かりません。ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう」

 

 

 

 

この質問でハーマイオニーは、とうとう椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。ハリーの答えに生徒の数人が笑い、スネイプは、ハーマイオニーに座るように言った。

 

 

 

 

「Ms.ダーズリー、アスフォデルの球根の粉末に、ニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

 

 

「…たしか、強力な眠り薬の類になります。」

 

 

 

「モンクスフードとウルフズベーンとの違いはなんだね?」

 

 

 

「…同じ植物で…トリカブト?の事だったかと…」

 

 

 

「ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」

 

 

 

「……しいて言うなら…魔法薬学の倉庫でしょうか…」

 

 

 

 

 

おぼろげの記憶の中から糸を手繰り寄せる。ソフィアは、自分が魔女だと知った時から他に遅れをとるまいと勉強をした。特に、ダイアゴン横丁の付き添いだったスネイプが教える授業である魔法薬学には力を入れていた。

 

 

 

 

「その通り、しかし、ベゾアール石は山羊の胃から取り出す石で、大抵の薬に対する解毒剤となり、倉庫の中にもある。 眠り薬だが【生ける屍の水薬】とも言われている。モンクスフードとウルブズベーンは、別名アコナイトとも言う。どうだ?諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?」

 

 

 

 

いっせいに羽根ペンと羊皮紙を取り出す音がした。ハリーは、ソフィアが全てに答えられていたことに驚きいた。

 

 

 

 

「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点。Ms.ダーズリー、完璧とは言わないがほぼ正解だ、スリザリンに五点」

 

 

 

 

その後、スネイプは生徒を二人一組にして、おできを治す簡単な薬を調合させた。長い黒マントを翻しながら、スネイプは生徒たちが干イラクサを測り、ヘビの牙を砕くのを見て回った。同期もお気に入りらしいマルフォイとソフィアの組を除いて、ほとんどの生徒が注意を受けた。マルフォイが角ナメクジを完璧に茹でたからみんな見るように、とスネイプが言った時、地下牢いっぱいに強烈な緑の煙が上がり、シューシューという大きな音が広がった。ネビルが、どういうわけかシェーマスの大鍋をとかして、ねじれた小さな塊にしてしまい、こぼれた薬が石の床を伝って広がり、生徒達の靴に焼けこげ穴を挙げていた。たちまちクラス中の生徒が椅子の上に避難したが、ネビルは大鍋が割れた時にグッショリ薬をかぶってしまい、腕や脚の、そこら中に真っ赤なおできが容赦なくふきだし、痛くてうめき声をあげていた。

 

 

 

 

 

「バカ者!おおかた、大鍋を火から下ろさないうちに山嵐の針を入れたんだな?医務室へ連れて行きなさい」

 

 

 

スネイプが怒鳴り、魔法の杖を一振してこぼれた薬を取り除いた。ネビルは、おできが鼻にまで広がっていて、シクシクと泣いていた。それから出し抜けに、隣で作業をしていたはハリーとロンに鉾先を向け、自分の方をよく見せたがったと理不尽なことを言い出し、グリフィンドールが一点減点された。あまりに理不尽なので、ハリーが言い返そうとしたが、ロンが大鍋の影でスネイプに見えないようにハリーを小突き、スネイプはものすごく意地悪だとみんなが言っていると伝えた。

 

 

 

 

 

結局、スリザリンの2.3組が完璧に薬を作り、グリフィンドールは二点の減点、スリザリンは八点の加点となった。

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

ソフィアは、チェスやゴブストーン、読書……こちら(魔法界)に娯楽が少ないことが分かり、暇な休日を過ごしていた。

 

 

 

 

「これは?」

 

 

 

ペットである黒猫のノアが、読書をしていたソフィアの膝の上に乗っかった。このノアは、ペットショップに売られていたが、首元に名前の書いたプレートをさげていた。口には何やら黒い紐をくわえており、その紐を、差し出したソフィアの手の上に置いた。それはネックレスのようなもので、長めの黒い皮の紐に銀色の三角形の飾りが付いている。

 

 

 

 

「三角に丸……縦線……?」

 

 

 

 

 

三角の中に丸があり、三角形を半分にするように頂点から1本の縦線が引いてある。なんとも言えないデザインに、ソフィアは、首を捻るが、ノアがニャーニャーと鳴くので渡したが、ソフィアに押し返し、ソフィアの胸にすがりつくように立った。

 

 

 

 

「つければいいの?」

 

 

 

 

ソフィアは、自分が身につければいいのか、ノアにつけてあげればいいのか分からなかったが、押し返されたことを考え、自分の首につけた。それを見たノアは、満足気に鳴くと布団の上で丸くなった。

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

オーストリアに位置するある城の中

 

 

 

 

一人の男が口元にあくどい笑みを浮かべ

 

 

 

 

闇へ溶けた

 

 

 

 

 




遅くなって本当に申し訳ありません

誤字報告、あればよろしくお願いします。

感想、評価は、作者のやる気につながります。気が向いたらお願いします。



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ハロウィーンとトロール

花粉でやばい作者です。

誤字報告ありがとうございます。ありすぎて申し訳ないです。



 

 

 

 

 

───飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です。───

 

 

 

 

スリザリンの談話室に【お知らせ】が出て、それを読んだ1年はみんなでガックリした。スリザリンとグリフィンドールの合同授業は、今のところ魔法薬学だけだったが、飛行訓練まで一緒なのか!と何人かの生徒が叫んでいた。

 

 

 

 

「私、箒に乗ったことない……」

 

 

 

 

「大丈夫よ、ソフィア。案外簡単よ」

 

 

 

スリザリンもグリフィンドールも関係なく、魔法使いの家の子はみんなひっきりなしにクィディッチの話をした。少し前まで、マグル出のソフィアにとって箒で空を飛ぶことや魔法を使うことなど、空想の中の話であった。教科書を読んで暗記すれば済むものでもなく、ソフィアはガックリと項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

木曜の朝、めんふくろうがネビルにおばあさんからの小さな包みを持ってきた。ネビルはウキウキとそれを開けて、白い煙のようなものが詰まっているように見える、大きなビー玉ぐらいのガラス玉をみんなに見せた。それは、思い出し玉でギュッと握り赤くなると何か忘れていと教えてくれるというものである。ネビルが取り出すと、思い出し玉は突然真っ赤に光り出したが、ネビルは自分が何を忘れているのかさっぱりわからなかった。ネビルが自分が何を忘れているのか思い出そうとしているとき、マルフォイがグリフィンドールのテーブルのそばを通り掛かり、玉をひったくった。

 

 

 

 

 

ハリーとロンは、マルフォイと喧嘩する口実ができたと弾けるように立ち上がった。しかし、マクゴナガル先生が現れ、何事かと聞いた。マルフォイは、しかめっ面で玉をテーブルに戻し、見ていただけと言ってスルりと逃げた。

 

 

 

 

─────────

 

 

 

午後三時半

 

 

 

よく晴れた少し風邪のある日で、足下の草がサワサワと波立っていた。傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生まで歩いていくと、校庭の反対側には【禁じられた森】が見え、遠くのほうに暗い森の木々が揺れていた。スリザリン寮生は、既に到着していて、箒が地面に整然と並べられていた。

 

 

 

 

「何をボヤボヤしてるんですか、みんな箒のそばに立って。さぁ、早く!」

 

 

 

 

白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしたマダム・フーチがきて、開口一番にガミガミしだした。ハリーは自分の箒をちらりと見下ろした。古ぼけて、小枝が何本かとんでもない方向に飛び出している。マダム・フーチの掛け声に合わせ、生徒たちは右手を箒の上に突き出し、【上がれ】と叫んだ。ハリーの箒はすぐさま飛び上がってハリーの手に収まったが、飛び立った箒は少なかった。ネビルの箒はピクリとも動かず、ハーマイオニーの箒は地面をコロリと転がっただけだった。次にマダム・フーチは、箒の端から滑り落ちないように箒にまたがる方法をやってみせ、生徒たちの列の間をまりながら、箒の握り方を治した。

 

 

 

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強くけってください。箒がぐらつかないように押さえ、2メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ────一、二の─────」

 

 

 

 

ところが、ネビルは緊張するやら怖気付くやら、1人だけ地上に置いてきぼりを食いたくないのやらで、先生の唇に笛が触れる前に思いきり地面をけってしまった。戻ってきなさいという先生の大声をよそに、4メートル、6メートルとどんどん地上から離れていった。そして、声にならない悲鳴をあげ、ネビルは箒から真っ逆さまに落ちた。ポキッと嫌な音を立てて、草の上にうつ伏せで墜落し、草地にコブができたように突っ伏した。

 

 

 

 

「手首が折れてるわ。さあさあ、ネビル、大丈夫、立って。」

 

 

 

 

マダム・フーチは、ネビルと同じくらい真っ青になりながらネビルの手首を見た。そして、ネビルを医務室に連れていく間に、箒に乗ったものはクィディッチの【ク】を言う前にホグワーツから出ていってもらうと言い、ネビル。医務室に連れていった。

 

 

 

 

「あいつの顔みたか?あの大まぬけの」

 

 

 

二人がもう声の届かないところまでいったとたん、マルフォイは大声で笑いだした。ほかのスリザリン寮生達もはやし立てた。そこへ、パーバティ・パチルが止めに入ったが、パンジー・パーキンソンに冷やかされ黙ってしまった。

 

 

 

 

「ごらんよ!ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」

 

 

 

 

マルフォイが、高々と差し上げると思い出し玉は陽の光でキラキラと輝いた。返せというハリーを煽るように、マルフォイはヒラリと箒に乗り、飛び上がった。マルフォイは樫の木の梢と同じくらいの高さまで舞い上がり、そこに浮いたままハリーに取りに来いと呼びかけた。ハリーは、ハーマイオニーの静止を無視して、箒に跨り、地面を強くけって急上昇した。

 

 

 

 

 

「ねぇ、パンジー。あの2人は馬鹿なの?」

 

 

 

「さぁ、男のプライドとかいか言うやつじゃない?ソフィア」

 

 

 

 

箒に乗っている2人を、見上げながらパンジーとソフィアは、他愛もない会話を続ける。マルフォイは、ハリーがクルリと箒の向きを変え、自分と向き合ったことに呆然とし、せせら笑おうとするものの、少し顔が強ばっていた。ハリーは、両手でしっかり箒をつかみ、前屈みになった。すると、箒は槍のようにマルフォイ目掛けて飛び出し、マルフォイは危うくかわした。ハリーが鋭く一回転して、箒をつかみ直すと、下で何人か拍手をした。

 

 

 

 

「クラッブもゴイルもここまでは助けに来ないぞ。ピンチだなマルフォイ。」

 

 

 

「取れるものなら取るがいい、ほら!」

 

 

 

 

マルフォイは、ガラス玉を空中高く放り投げ、稲妻のように地面に戻った。ハリーは、高く上がった玉が次に落下し始めるのが、スローモーションのを見ているかのように良く見え、箒の柄を下に向け、一直線に急降下した。下で見ている人は悲鳴をあげたり、なにか叫んだりしていた。ハリーは、地面スレスレのところで玉をつかみ、間一髪で箒を引きあげ、水平にたて直し、草の上を転がるように軟着陸した。その手にはしっかりと、思い出し玉を握っていた。

 

 

 

 

 

ハリー・ポッター!!

 

 

 

 

マクゴナガル先生が、声を上げながら走ってきた。マクゴナガル先生は、ショックで言葉が出ないのか、メガネが激しく光っている。パーバティ・パチルとロンの言葉をさえぎり、ハリーを連れて大股に城に向かって歩き出した。マルフォイ、クラッブ、ゴイルは勝ち誇ったような顔をしていた。

 

 

 

 

 

「ポッター、どうなるのかしらね?」

 

 

 

「多分悪い方向には進まないよ、パンジー」

 

 

 

「どういうことだい、ダーズリー」

 

 

 

「どうもこうもないよ、マルフォイ。マクゴナガル先生が、この場で減点しなかったんだ。怪我もしてないハリーを連れてどっか行くのに……それに心做しか喜んでるようにも見えたしね。多分、グリフィンドールにとっていい方向、スリザリンにとって悪い方向に進むんじゃない……あくまで私の予想だけど……」

 

 

 

 

それを聞いたマルフォイは舌打ちをして、顔を歪めた。その後、マダム・フーチが戻ってきて、授業が再開された。パンジーは難なく箒に乗って見せたが、ソフィアはマルフォイに教えてもらい、ようやく乗れるようになったものの、フラフラと揺れ挙句箒から落ちた。

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

夕食時

 

 

 

 

ハリーは、ロンにマクゴナガル先生に連れられてグラウンドを離れてから何があったか聞かせた。ロンは、ステーキ・キドニーパイを口に入れようとしていたが、そんなことをすっかり忘れ、ハリーが最年少の寮代表選手だと叫んだ。1年生が代表になるのは百年ぶりらしく、大興奮の午後をすごしたハリーは、お腹がすいていた。フレッドとジョージが話しかけてきた。2人もグリフィンドールの代表選手でビーターを担当しているらしい。2人が消えるやいなや、クラッブとゴイルを従えたマルフォイが現れた。

 

 

 

 

「チッ、ダーズリーが言ってたとおりか……マグルのところに帰る汽車はいつに乗るんだい?」

 

 

 

「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」

 

 

 

 

冷ややかに言ったハリーに対し、クラッブもゴイルも先生たちがスラリと座っているので睨みつけることしか出来なかった。マルフォイは、今夜魔法使いの決闘をしようと言い出した。マルフォイの介添人はクラッブ、ハリーの介添人はロンが担当すると言った。

 

 

 

「真夜中でいいね?トロフィー室にしよう。いつでも鍵が空いているんでね」

 

 

 

そう言うとマルフォイは去っていった。ハリーは、介添人が自分が死んだら変わりに戦う人だと知り顔色を変えた。そんなハリーを見てロンは、ハリーとマルフォイがやり合ってもせいぜい火花をぶつけ合う程度だとフォローした。2人が見上げると、今度はハーマイオニー・グレンジャーがいて、夜に校内をウロウロして捕まったらグリフィンドールが減点されるといい、2人を止めた。しかし2人は、余計なお世話だと言い返し、夕食を食べた。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

スリザリン寮 談話室

 

 

 

 

 

「本当に行くのドラコ?」

 

 

 

「行くわけないだろ、まあ、あの2人ならバカ正直に行くだろうが」

 

 

 

 

パンジーの問にマルフォイはそう返した。ソフィアは、マルフォイたちを横目に見て、自分の課題に取り組み、最近ハリーと話していないことを思い出した。

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

その頃、ハリーとロンは、ハーマイオニーとネビルと一緒にミセス・ノリスに追われていた。ネビルが鎧にぶつかり、城中の人を起こしてしまいそうな凄まじい音を立てたので、4人は回廊を全力で走っていた。フィルチが追いかけてくるかどうかを振り向きもせず、全速力でドアを通り、次から次へと廊下をかけていった。トロフィー室からだいぶ離れた場所の冷たい壁に寄りかかりながら、額の汗を拭いながらハリーは息を弾ませていた。早く寮に戻ろうと催促していたが、ほんの10歩と進まないうちにドアの取っ手がガチャガチャとなり、教室から何か飛び出してきた。飛び出してきたのはピーブスでハリー達を見てケラケラと笑った。

 

 

 

 

 

生徒がベッドから抜け出した!──【妖精の魔法】教室の廊下にいるぞ!!

 

 

 

 

黙っていてくれというハリーたちの願いも聞かずピーブズは、大声で叫んだ。4人は、ピーブスの下をすり抜け、命からがら逃げ出した。しかし廊下の突き当たりの鍵のかかったドアにぶち当たり、ロンがもうダメだとうめいた。ピーブスの声を聞きつけ、フェルチが全速力で走ってくる。ハーマイオニーが押し殺したような声で、どいてというとハリーの杖をひったくり、鍵を杖で軽く叩き【アロホモラ】と呟いた。そうすると、カチッと鍵が開き、ドアがぱっと開いた。4人は、折り重なってなだれ込みその勢いでドアを閉めた。

 

 

 

 

 

「え?何?」

 

 

 

ネビルにガウンの袖を引っ張られたハリーは振り返った。ハリー達が入ってしまったのは四階の【禁じられた廊下】だった。ハリーたちはこの瞬間、なぜそこは立ち入り禁止たのか理解した。そこには床から天井までの空間全部が埋まる程の大きさの、頭を3つ持った犬のような怪獣がいた。3つの口から黄色い牙をむき出し、その間からはヌメヌメとしたヨダレがだらりと垂れ下がっていた。それを見た瞬間、ハリー達はさっきと反対方向に倒れ込み、ドアを後ろ手にバタンと閉め、飛ぶようにさっき来た廊下を走った。4人はとにかくあの怪獣件から少しでも遠くに離れたい一心で走り続けた。やっとのことで8階の太った婦人(レディ)の肖像画までたどり着いた。息は絶え絶えで顔は紅潮し、汗だくなハリー達を見て、婦人は驚いた。

 

 

 

 

 

「あんな怪物を学校に閉じ込めておくなんて連中は一体何を考えているんだろう。」

 

 

 

 

やっとロンが口を開いたら、ハーマイオニーが突っかかるようにどこに目をつけているのと言った。ハーマイオニー曰く、あの怪獣犬は床ではなく、仕掛け扉の上に立っていたので何か守っているに違いないと言った。皮肉を飛ばして女子寮に戻っていったハーマイオニーを見て、ロンは悪態ついた。ハリーはというと別の意味でハーマイオニーの言葉が引っかかっていた。

 

 

 

 

 

「グリンゴッツは何かを隠すには世界で一番安全な場所だ───多分ホグワーツ以外では……………」

 

 

 

 

ハグリッドが入っていた言葉を思い出し、ハリーは713番金庫から持ってきた小さな汚い包が今どこにあるのか分かったような気がした。

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

 

次の日、ハリーとロンは疲れた様子だったが、ホグワーツにいるのを見て、マルフォイは舌打ちをした。朝食を食べながらハリーとロンはあんなに厳重な警備が必要なものとは一体何なのかを話し合っていた。いつものようにフクロウが群れをなして大広間に飛んできた。六羽の大コノハズクがくわえた細長い包みがすぐにみんなの気を引いた。コノハズクは、ハリーの真ん前に舞い降りて、その大きな包みを落とし飛び立った。ハリーが急いでそれを開けると手紙があり、中身は新品のニンバス2000だった。

 

 

 

 

 

 

1時間目が始まる前に階段で、 マルフォイはハリーが箒を持っていることについて絡んだが、フリットウィック先生からハリーが特別措置によって最年少寮代表選手に選ばれたことを聞き、怒りと当惑をむき出しにし階段を降りていった。ハリーはというと寮に置いてきた箒のことを考え一日中授業に集中できなかった。夕食は何を食べたのかは分からないまま飲み込み、ロンと一緒に寮へ駆け戻、りベッドカバーの上を転がり出た箒を見て声を上げた。夕暮れの薄明かりの中、ハリーはグリフィンドールのキャプテンであるオリバー・ウッドにクイディッチについて教えてもらった。暴れ玉であるブラジャーがホグワーツでは1度も人を殺したことはないが、顎の骨を折ったやつが二、三人いると聞き、ぶるりと震えた。

 

 

 

 

毎日たっぷりある宿題に、週3回でクィディッチの練習でハリーは忙しくなった。気がつくとホグワーツに来てからもう2か月もたち、授業の基礎もだいぶわかってきた。ハロウィンの朝はパンプキンパイを焼く美味しそうな匂いが廊下に漂ってきて、みんな目を覚ました。

 

 

 

 

【妖精の魔法】の授業で、フリットウィック先生が、そろそろものを飛ばす練習をしましょうと言った。スリザリンとグリフィンドールの合同授業であるこの教科では、魔法薬学までとはいかないが、双方の寮生たちがこぞって睨み合いを続けていたのである。しかし、実戦魔法が使えるとなると話は別で、フリットウィック先生がネビルのヒキガエルをブンブンと飛び回らせるのを見てからというもの、みんなやって見たくてたまらなかったのである。先生は、生徒を二人ずつ組ませて練習させた。ハリーは、シェーマス・フィネガンと組んだが、ロンはなんとハーマイオニーと組むことになった。スリザリン生もグリフィンドール生も1人あまりが出てしまったので、仕方なしにとソフィアはネビルと組んだ。

 

 

 

 

 

 

「さあ、今まで練習してきたしなやかな手首の動かし方を思い出して──ビューン、ヒョイですよ。いいですか、ビューン、ヒョイ。呪文は正確に、これもまた大切ですよ。」

 

 

 

 

これはとても難しく、ふるふると震えたり、ピクピクと動いたりはするものの、羽を高くあげる生徒はいなかった。。シェーマスは、全くもって動かない羽に癇癪を起こし、杖で羽を小突いて火をつけてしまったので、ハリーは帽子で消すはめになった。

 

 

 

 

ウィンガディアム レヴィオサ〜

 

 

 

「言い方が間違ってるわ。ウィン・ガー・ディアム レビィ・オー・サよ。あなたのは【レヴィオサ〜】」

 

 

 

 

長い腕を風車のように振り回し、間違った発音を叫んでいたロンに対し、ハーマイオニーは発音と杖の振り方を注意した。しかし、なんとなくだが上から目線な言い方にイラついたロンがハーマイオニーにやってみるように催促した。

 

 

 

 

 

ウィンガーディアム レビィオーサ!

 

 

 

 

ハーマイオニーが杖を振り呪文を言うと、羽は机を離れ、頭上一、二メートルぐらいのところに浮いた。それを見たフリットウィック先生は、拍手をしながらよくできましたと叫んだ。ハーマイオニーが簡単そうに成功させてしまったのを見て、ロンはつまらなさそうに不貞腐れ、その後も真面目に授業を受けようとしなかった。その後は、チラホラと成功する生徒もではじめてきて最低でも数センチ浮く程度にはなってきたが、ネビルの羽が一向に動く気配がなく、隣で教えているソフィアも手の施しようがないと諦めかけていた。

 

 

 

 

「ねぇ、ミス・グレンジャー、ネビルにコツを教えてあげてくれない?私だと、上手く教えられないの」

 

 

 

「別に構わないけど……」

 

 

 

「そう、助かるわ。」

 

 

 

 

自分が教えることを諦めたソフィアは、ハーマイオニーに助けを求めた。まさか、スリザリン生から声をかけられると思ってなかったハーマイオニーは、少し驚いた様子だったが、すぐにネビルに呪文を教えに行った。ほかのスリザリン生もグリフィンドール生も、他寮生に聞きに行ったソフィアが珍しいのか、驚いた顔をしていた。

 

 

 

 

「やあ、ソフィア。久しぶりだね」

 

 

 

「………そう」

 

 

 

 

ハーマイオニーとソフィアが席を交換したことで、ハリーとソフィアは近くなった。久しぶりに話すのでどんな話をすればいいのか考え込んでいるハリーに、全くもって会話を続ける気がないような返答をするソフィア、ロンはその会話をヒヤヒヤしながら聞いていた。パンジーは、ソフィアがハリー・ポッターと平然と話していることに驚き、マルフォイに2人の関係を聞いていたが、マルフォイも二人が一緒にいるのは汽車でのコンパートメントぐらいしか記憶になく二人の関係など知らなかった。

 

 

 

 

 

 

結局、ネビルは羽を机から数cmしか浮かすことが出来ず、授業が終わったが、初めは全く羽が動かなかったのだから、大きな成長である。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

授業が終わったあと、ロンの機嫌は最悪だった。最も、授業中もだが……廊下の人混みを押し分けながら、ロンはハーマイオニーについて悪態ついた。まったく悪夢みたいなやつだとロンが言ったとき、誰かがハリーにぶつかりながら、急いで追い越して言った。ハリーがチラッと顔を見ると、それは泣いているハーマイオニーで、ハリーはロンに聞かれていたことを伝えたが、ロンは友達がいないことなんて気がついていただろうと言った。

 

 

 

 

「あら、レディを泣かすなんて、最低ね。ウィーズリー」

 

 

 

「……あっちにも非はあるけど、これは無い……」

 

 

 

 

声の聞こえた方をむくと、パンジーとソフィアが居て、その後ろにマルフォイと腰巾着2名が居た。後ろにいて、自分たちの会話を聞いていたメンバーを見て、ロンは【げぇ】と顔を歪めた。パンジーもマルフォイらも、別にハーマイオニーがどうなろうと知ったことではないが、折角グリフィンドール生に嫌がらせができるチャンスなのだから、見逃すはずがない。パンジーは、ニヤニヤと笑いながら横を通った。マルフォイは紳士的じゃないと言い残し、言われたロンは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

ハーマイオニーは次のクラスにも出てこなく、ハリー達はその日の午後一度も見かけなかった。しかし、ハロウィーンのご馳走を食べに大広間に向かう途中、パーバティ・パチルがラベンダーに話しているのを小耳にはさみ、ハーマイオニーがトイレで泣いていることを知った。ロンは少しバツの悪そうな顔をしたが、大広間でハロウィーンの飾り付けをた瞬間、ハーマイオニーの事など頭から吹っ飛んでしまった。千匹ものコウモリが壁や天井で羽根をばたつかせ、もう千匹が低くたれこめた黒雲のようにテーブルのすぐ上まで急降下し、くり抜いたかぼちゃの中のロウソクの炎をちらつかせた。新学期の始まりの時と同じように、金の皿に突然ご馳走が現れた。

 

 

 

 

 

「トロールが…………地下室に………お知らせしなくてはと思って………」

 

 

 

 

 

みんなが思い思いの食事を楽しんでいる時に、クィレル先生が全速力で大広間に入ってきて、ダンブルドア先生の席まで辿り着き、テーブルにもたれかかりながら、あえぎあえぎ伝えるとその場でバッタリと気を失ってしまった。大広間は大混乱になり、ダンブルドア先生が杖の先から紫色の爆竹を何度が爆発させて、やっと静かになった。

 

 

 

 

 

「監督生よ、すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に帰るように」

 

 

 

 

 

重々しいダンブルドア先生の声が轟くと、各寮の監督生たちは自分の寮生たちを寮へと引率し始めた。

 

 

 

「ちょっと待て……ハーマイオニーだ!」

 

 

 

ハリーは、ハーマイオニーがこのトロールの騒ぎを知らないことをロンに教えた。二人は、監督生であるパーシーに見つからないようにハッフルパフ生に紛れ込み、女子用トイレへと急いだ。角を曲がると後ろから急ぎ足で誰かがやってくる音が聞こえ、パーシーかと思ったが、スネイプ先生だった。ほかの先生達と違い地下室へ行こうとしないスネイプ先生に首を傾げ、二人は出来るだけ音を立てないように廊下を歩いた。

 

 

 

 

「スネイプは四階の方に向かってるよ」

 

 

 

「なんか匂わないか?」

 

 

 

 

ハリーが、クンクンと鼻を使うと、汚れた靴下と、掃除したことがない公衆トイレの匂いを混ぜたような悪臭が鼻をついた。そして、低いブァーブァーという唸り声と、巨大な足を引きずるように歩く音。ロンが指さした方向を見ると、月明かりにうつされた場所に大きなものがヌーッと姿を現した。背は4メートルもあり、墓石のような鈍い灰色の肌、岩石のようにゴツゴツのずんぐりした巨体、ハゲた頭は小さく、木の幹ほど太く短い脚に、コブだらけの平たい足ついている。ものすごい悪臭を放ちながら、巨大な棍棒を引き摺っているトロールだった。トロールはドアの前で立ち止まり、中をじっとみた。

 

 

 

 

「鍵穴に鍵が着いたままだ。あいつを閉じ込められる」

 

 

 

「名案だ!」

 

 

 

ドアの中にノロノロとトロールが入ると、2人は開けっ放しのドアの方にジリジリと進み、最後の一歩を大きくジャンプして、ピシャリとドアを閉めて鍵をかけた。やった!と意気揚々に、二人はもときた廊下を走ったが、曲がり角まで来た時に、甲高い、恐怖で立ちすくんだような悲鳴とふざけんなという怒鳴り声を聞いた。

 

 

 

 

 

──たった今、鍵をかけたばかりの部屋からだった──

 

 

 

 

ロンの顔は血みどろ男爵ぐらい真っ青になり、ハリーも息をのんだ。

 

 

 

 

 

「女子用トイレだ!」

 

 

 

「「ハーマイオニーだ!!」」

 

 

 

 

これだけは絶対にやりたくなかったと思いながら、二人は回れ右をして全力疾走した。ハリーは、ひとつはハーマイオニーはわかったが、もうひとつの怒鳴り声はなんだったのかと考えた。しかし、そんな考えも吹っ飛ぶほど慌てており、気が動転して鍵が上手く回せなかった。二人は、ドアを開き突入した。ハーマイオニーは、奥の壁に張り付いて縮み上がっていた。トロールは、洗面台を次々と薙ぎ倒しながら、ハーマイオニーに近づいていく。

 

 

 

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!」

 

 

 

ソフィアが、今にも気を失わんばかりのハーマイオニーの前に立ち、トロールに杖を向けていた。さっきの怒鳴り声はソフィアだったのかとハリーは、自分の中の疑問を解決した。しかし、トロールは止まらない。ハリーは、蛇口を拾って力いっぱい壁になげつけ、トロールの気を引いた。トロールは、音の聞こえた方へと向き直った。見つけたハリーに向かって棍棒を振り下ろそうとするも、横からロンが投げた金属パイプに気が引かれ、そっちへと向き直った。ハリーは、ハーマイオニーに向かって逃げろと叫ぶが、ハーマイオニーは恐怖で口を開けたまま壁にピッタリと張り付いていて動けなかった。すかさず、ソフィアはハーマイオニーに無理やり立たせ、ドアの方へ運ぼうとするが、ハリーの叫び声を聞いたトロールが逆上し、ロンに向かっていった。

 

 

 

 

 

「ああ、もう!ペトリフィカス トタルス(石になれ)

 

 

 

 

 

ソフィアが打った魔法は、トロールの足の少しを石にするだけで、たいした効果はなかった。ハリーは、勇敢とも間抜けとも言えるような行動に出て、走って後ろからトロールに飛びつき、トロールの鼻へ杖を突き上げた。痛みに悶え、トロールは棍棒をメチャメチャに振り回した。ハーマイオニーは恐ろしさに座り込み、ハリーはトロールから振り落とされぬようとしがみき、ソフィアが立て続けに魔法を打つもトロールにたいして効いていなかった。

 

 

 

 

ウィンガーディアム レビオーサ!!

 

 

 

ロンは、最初に頭に浮かんだ呪文を唱え、トロールの棍棒を浮かした。棍棒は空中を高く高く上がって、ゆっくり一回転してからボクッと嫌な音を立てて持ち主の頭に落ちた。トロールはドサッと音を立ててその場にうつ伏せに伸び、倒れた衝撃が部屋中をゆすぶった。ハリーは、トロールの鼻から自分の杖を引っ張り出し、着いていた鼻くそをトロールのズボンで拭き取った。ものが壊れる音や、トロールの唸り声を聞き付けたであろう先生方が入ってきた。最もクィレル先生は、トロールを一人目見たとたん、弱々しい声を上げ、胸をおえてトイレに座り込んでしまったが……

 

 

 

 

「一体全体あなたがたはどういうつもりなんですか」

 

 

 

 

冷静だが怒りに満ちているマクゴナガル先生の唇は蒼白だった。スネイプ先生は、ハリーに素早く鋭い視線をなげかけた。

 

 

 

 

「マクゴナガル先生。聞いてください───二人は私たちを探しに来たんです」

 

 

 

 

「ミス・グレンジャー!」

 

 

 

 

「私がトロー「……あー…色々ありまして、グレンジャーは夕食に参加していなかったんです。で、トイレにいて…私は、彼女の忘れ物を渡しにここに来ていたんです。明日は会わないと思うので──で、大広間に戻ろうとしましたが、トロールが入ってきて……えー……ポッターとウィーズリーが、多分私達がトロールについて何も知らないだろうと探しに来てくれたんですよ。で、この状況です」

 

 

 

 

「ええ、もし二人が見つけてくれなかったら、今頃、私達どうなってたか……二人とも誰かを呼びに行く時間がなかったんです。二人が来た時にはもう、殺される寸前で……」

 

 

 

 

ハリーとロンは、その通りですという顔を装った。そういうことならとマクゴナガル先生は、4人をじっと見つめ、何故教員に説明せずに自分たちで探しに行ったのかと言った。ハリーとロンは、項垂れた。ハリーとロンで五点ずつ減点され、四人に五点ずつ加点された。怪我がないなら各寮に戻り、中断されたパーティーの続きに参加するといいと言われ、急いで部屋を出た。何はともあれ、トロールのあの匂いから開放されたのは嬉しかった。

 

 

 

 

「3人で15点は少ないよな」

 

 

 

「3人で5点よ」

 

 

 

 

自分たちが鍵をかけて閉じ込めたことや呪文な成功したことなどを話しながら、寮に戻った。ハーマイオニーが気がつくといつの間にかソフィアは居なくなっており、三人はいついなくなったのかと顔を見合せた。それ以来、ハーマイオニーは二人の友人になった。共通の経験をすることで互いをすきになる、そんな特別な経験もあるものだ。四メートルもあるトロールをノックアウトするという経験もまさしくそれだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、図書館でソフィア話しかけるハーマイオニーが目撃された。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

「もう、人のもの盗んできちゃダメだからね──ノア」

 

 

 

 

 

スリザリン寮に戻ったソフィアは、自分がトイレに行く用事をつくったノアを抱き上げながら、説教を始めた。最後の授業が終わり、スリザリン寮に戻るとノアが明らかに自分のでは無い羽根ペンを咥えていたのだ。誰のか分からないので聞き回ったところ、ハーマイオニー・グレンジャーのものだと分かり、夕食の前に届けに行ったらあのザマだ。おかげで死にかけたと呟きながら、膝の上でなんの悪びれもなく丸まっているノアを撫でる。ベッドに潜り、目を閉じれば、ソフィアはすぐに夢へと引っ張られた。

 

 

 

 

 

 

 

─黒猫が意地悪そうにニャーと鳴いたのも知らずに─

 




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