チート高校生、伊瀬 海の日常 (サクシャ)
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1. 俺君は異世界でモテモテ

 俺は転生者だ。

 そう。説明しよう転生者とは、死んだ人間の魂が新たな肉体を得る、俗に言う生まれ変わりの事である。

 その中でも、昨今のトレンド。異世界転生と言うやつに、どうやら俺は巻き込まれたらしい。

 そうそう。特殊的な?超人的な?つよつよ能力者になって俺TUEEEEキモティー!のアレ。

 魔法もある。なんならSFチックなロボとかもある。基本的に俺はジャンル雑食だからさ、しかもこうTheサイバーandマジックみたいなの大好物なのわけ。

 そこには文句は無いよ?エルフもケモ耳も居るし。ついでにロボ娘とか人工知能娘とかも居る。

 まあそこは大満足ですよ。我が息子が大変お世話になっております。

 チートもね、貰えたんだよ一応。強いよ、そりゃ。チートなんだから。もうド定番もド定番のチート能力あるある一覧があったらまあ載ってるのが普通だろうな、とかそんな感じまである。

 でもね、一つ強いて言うなら……

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 どうも、伊瀬 海くんだよ。読み方はイセカイだよ。異世界って覚えて帰ってね! 名付け親の母は正気か?

 ただいま、椅子に座っておりまーす。それもただの椅子じゃない! 高級な椅子なんです!

 この椅子の最大のポイント、それはこの耐久性!

 ずっっしりとした材質が、ちょっとやそっと暴れたくらいじゃ壊れない性能を実現!

 更に!付与魔法(エンチャントマジック)で更に更に強化されております。

 あの、老舗呪符製店『伍陰月詞(ごいんげっし)社』さんの呪符で完璧な護りを!

 でも兄弟、どうせ高いんだろ?

 ノンノン兄弟。今ならなんと先着一名様に無料でプレゼント!

 oh!なんてこった兄弟! どうやったら貰えるんだい?

 嗚呼残念兄弟。もう当選しちまったんだ。俺にな。

 そいつァやべーな兄弟!座り心地はどうだい?

 

「なァ、座り心地はどーだ? あ?」

 

「フガガガァァッッーーー!!!」

 

「随分楽しんでんなぁ、そりゃ良かった──ヨッ!」

 

 目の前の禿げたムキムキの大男は椅子に座る俺に向けて脚を上げる。

 だが残念。俺には効かない。というわけで俺は身を呈して重たいキックを腹で受け止める。

 

「チッ、」

 

 おいおい、舌打ちしたなコイツ。俺は少しは鍛えてるから蹴り甲斐ある方だと思うぜ?

 人を蹴って「チッ、」とは失礼な奴だ。お行儀が悪いこって、ねぇ。その点俺はお行儀良く座っている。おれえらい。

 

「へっ、いくら強いスキルだからって、そう拘束(・・)されちゃ手も足も出ねぇよなぁ? ざまぁねぇぜ」

 

 そう。俺は今、大事な大事な転生特典を狙われてヤーさんに絶賛拉致られ中なのだ。

 まあ、当然だよね。文化レベルは地球より高い。そんな世界で特異な能力でも持ってみなよ。相手が国家じゃなくて非合法組織なのがせめてもの救い。これが国だったら俺の助かる確率はググッと下がる。

 現時点でも助かる確率はとても低いのに。全く嫌になる、やれやれだぜ。モテる男はつれぇな。どうせならヤクザじゃなくて美少女にモテたかった。

 

ふもへ(放せ)ふもへ(放せ)!」

 

「何言ってんのか分かんねぇな! 生憎俺のスキルは翻訳系じゃねぇんだ、ぎゃははははッ!」

 

 まだ言い忘れていた事があったな、"スキル"という存在だ。目の前のマッスルスキンヘッドが言っていたが、スキルってのは、この世界の特定の種族に一個体につき一個だけ宿る特殊能力みたいな物だ。ちなみに魔法や科学とはまた別口となる。

 ややこしいから理解するのに苦労したぜ。赤ん坊特有のスポンジ学習が出来ないんだからさ。

 スキルとは魂が関係するとか言われてるんだけど、文明が発展した今でも良く分かってない。まだまだブラックボックスの未知の領域だ。何個か推測や考察の論文があった気がするけど、イマイチピンと来ないし。

 

ふははへはへはほう(くたばれハゲ野郎)ッ!」

 

「はいはい、そうやってずっとフガフガ言ってろ。たく、ボスは何やってんだよ。遅せぇな、なんで子守りなんて……」

 

 ボスに不満があるのか、誘拐ハゲゴリラはブツブツと愚痴り始める。ボスが時間にルーズと見た。この不安を煽って上手く寝返させれないかな? 口が塞がってるので無理ですね本当にありがとうございました。クソッタレ。

 この状況で何故チート的な力を持つ俺のつよつよスキルを使わないのか。それはこの状況に全く持って有効では無いから、ありたいていに言えば使い物にならないからだ。

 

「なぁ、お前よォ。随分愉快なスキル持ってんだよな、それを今から奪われるっつわれたらどーする? なァ、へへへへ」

 

 大男がこっちを見つめてニヤニヤするな気持ち悪い。そういうのは眼福な娘に限るんだよ。男でもせめて顔のパーツ整えてくれれば……いや、恨めしさが爆発するな。

 

 それよりもスキルを奪うだと? しかもこの表情、どことなくマジっぽい。

 多分これから死ぬ奴だから、どうせ逃げれ無いからみたいなノリで話してるんだろうけど、それでもトップシークレットじゃない?

 ボスがボスなら部下も部下だな。揃いも揃ってルーズに活動し過ぎだろ。よく今まで警察に捕まらなかったな?

 このスキルを奪うと言う話。実現するとかなり不味い。社会は大混乱だ。コイツらがヤクザなら尚更だ。

 何が不味いかって言ったら、秩序と悪党の戦闘バランスが傾きまくる。悪い方向というのは言わずもがな。

 この世界で知能がある程度ある、我等が人間みたいに社会を作ったりする種族を "有智人種" と言う。

 有智人種の全種にはもれなく皆スキルを持ってる。つまりスキルとは社会的立場での立派なステータス・アドバンテージとなる訳だ。

 スキル差別やら、スキルいじめやら、スキル婚やら、スキルの千差万別さ故にその問題点は大いにある。それほどまでに大きな物なのだ、スキルってのは。

 魔法やら科学やらもあるけど、それは二の次。経歴に例えるなら、魔法やら科学の技術がメジャーな民間の検定でスキルは国家検定だ。いや、我ながら分かりずらいな。

 それを奪う。「消す」では無く「奪う」。

 消されただけでもヤバいのに、それを流用する奴が居るって事だ。

 手段はなんだ? 魔法や科学で魂に干渉? それともそういう効果のスキル?

 というか……そうかなるほど、俺を襲うって事はそういう事ね。腑に落ちた。

 

「どうだ、奪われる側になった気分はよォ! 【墓荒らし】ィッ!」

 

 

 

 俺のスキル、それは殺した相手のスキルを奪う(・・・・・・・・・・・・)物だ。



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