Fate/清っと Order (ブレイブ(オルコッ党所属))
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清姫との馴れ初めを 【前編】

清姫との絆MAX(狂+槍ともにレベル15)記念


 6度目のクリスマスを超え、あと少しで年も開けるそんな夜時。

 

 俺は今日の献立である極上ステーキにナイフを差し込む。

 固すぎず柔らかすぎない肉を切り、口に放り込むと肉の濃い旨味と酸味のあるおろしソースが口の中で跳ね上がった。

 

「お味はいかがですか?」

「美味すぎるよきよひー」

「まあ、それは良かったです」

「紅先生の教えが生きてるね」

「ええ、昨日はドラゴンと戦いましたわ………」

「もしかしてこれドラゴン肉だったりする?」

 

 紅閻魔とのヘルズキッチンを思い出したのか目から光がなくなる清姫に俺はタハハとなんとも言えない笑い声。

 

 ノウム・カルデア、またの名を彷徨海カルデアベース。

 難しいことは省くが。世界を取り戻す為に奮闘中。

 

 俺はここの唯一のマスター。

 数多のサーヴァントと契約し、世界の命運を文字通り背負ってる。まるで映画の主人公的な立場にいる人間だ。

 

「ますたぁも今日はトレーニングだったとか」

「うん、レオニダスのスパルタトレーニングにメディア先生の魔術訓練。魔術訓練で良い結果だせたよ」

 

 そして傍らにいる浅葱色の少女。

 耳の上に角を生やし、雅な色合いの着物を嗜める彼女は人間ではなくバーサーカー(時々ランサー)のサーヴァント。

 初期の頃から一緒に行動し、苦楽を共にした唯一無二の存在にして聖杯を捧げし我が相棒。

 

 そして────俺の恋人でもある。

 

「きよひーもここに来てもうすぐ6年だね」

「ええ、精神的に18になります」

 

 そう、18歳になる。

 それはすなわち、俺の住む日本の………

 

「清姫! まだまだ料理はあるでちよ! はやく戻ってくるでち!!」

「はいただいま!! ではますたぁ、ごゆっくり」

 

 さささと冷や汗をかきながら厨房に戻る清姫。急ぎながらも気品のあるその姿は育ちの良い豪族のお嬢様の証か。

 

「相席、良いかね?」

 

 顔を上げるとゴルドルフ所長。

 

「どうぞ」

「ん」

 

 向かいの席に座る所長のメニューはお気に入りの厚切りベーコンのカルボナーラ。

 何回も食べたことはあるが本当に美味い。というかエミヤとブーディカを筆頭にするカルデア料理班が作るご飯はマジで美味い。

 

「珍しいですね所長。いつも俺の側は気が休まらんって言ってるのに」

「たまには良いだろう」

「勿論。大歓迎ですとも」

 

 この丸々太った所長、一見傲慢きちなおっさんに見えるがその実態はなんとも面倒見の良いなんとも憎めない人No.1のお人なのだ。

 

「またあのドラ姫と話してたのかね?」

「それ俺に聞きます?」

 

 清姫と俺はほぼ一緒に居る。

 側に居ない時は物陰から覗いてるか別件で離れているかだ。

 清姫と俺のツーペアはカルデアの日常風景レだ。

 

「このステーキ、清姫が作ってくれたんですよ。本当に美味しいし。それに今日も可愛いよ清姫っ!」

「そのようだな」

「で、なんでそんなことを?」

「いや、君は本当にあのサーヴァントを好いているんだなと」

「あえて聞きますが何故でしょう?」

「ついこの間のブラックプレゼント事件。その時に出現した清姫そっくりの写し身に対してお前は………」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「うおっとぉ!」

「マスター、下がれ」

 

 ヴリトラの閉鎖空間。その停止した火山エリア。

 氷ついた火山エリアの上から降り注ぐ火炎弾は今年のサンタであるカルナのサンタパンチが炸裂する。

 

「むむっ!?」

「どうしたマスター?」

「この火炎弾の熱気、質、そして」

「そして?」

「燃え盛るラブ・パワー!!」

「「「ラブパワー?」」」

「ふぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 突如狂喜状態になる俺。

 普通ならマスターのバイタルや精神が危うくなったのでは? と焦るとこだが。

 そこは長年の付き合いであるカルデアメンバー。

 

『あの、先輩、もしかして』

『居るのかい彼女が。いやこの場合は模倣サーヴァントか』

「待っていたぜこの時を! 焦らしに焦らし、最後の最後で出してくるとは! やるじゃないかヴリトラの姉さんんん!!! はい! 神イベント!! 確! 定!!」

 

 この光景は日常茶飯事。

 むしろ正常の姿である。

 このマスター。生粋のキヨヒストにつき。

 

 そしてそんな俺と共にあるサーヴァントは即座にマスターである俺の意図を理解する。

 

「マスター、つまりこの火炎弾は」

「早くここに来てますたぁ! という清姫のメッセージ! じゃないかな!!」

「じゃあよマスター。そうと決まれば!」

「おうとも! 一刻も早くたどり着く!! 故に、目の前の氷壁は悪である!!」

「了解、マスターを阻む悪性は私が淘汰する」

 

 前に出たアルジュナ・オルタが宝具の限定解除を発動する。

 

「よし行くぞ! 清姫の元に向かう道を拓け!!」

「廻剣駆動、疾走せよ。帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)!」

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、ますたぁ♡お待ちしておりました!」

「俺も待ってたよきよひぃぃぃぃ!!!!」

「まぁ! ♡」

 

 清姫(オリジナルとミリで同じ)の言の葉()に全力返答すると頬を染めて嬉しがる清姫。可愛すぎる!! 

 

「うーむ。模倣したは良いが様子がおかしい、バーサーカーとはこういうものなのか」

「そりゃあきよひーですから!!」

「ああ、言葉にせずとも伝わる。これぞ以心伝心! まさに、愛! ラブ! ジュテーム!!」

 

 ジュテーム! ………じゅてーむ………ジュテーム。

 

 洞窟内と氷により反響する清姫の愛。

 ああっ! たまらんにゅ!!! 

 

「マスターがトランス状態だ」

「大丈夫ですよカルナ。これが普通です」

「むっ、そうだったのか。なにぶん俺はカルデアでは新参者だからな」

 

 ゲオルギウスの説明に即座に納得するカルナ。

 

 ランサーで呼べなくてごめんね! 

 でもジナコさんいるから! カルジナっていいよね!! 

 

「というか、こいつわえが指示するまでもなく火炎弾を放っておったぞ。もともと恨みでも買っておったのか?」

「まあ失礼な! あれは愛の道しるべ、名付けて好き好き弾です! ああすることでますたぁが迷わずこの場所にたどり着けるということです!!」

「そうだよね! マスターわかってた!!」

 

 くぅ! 敵でありながら俺の身を案じてくれるとは。

 出来た嫁だよ君は!! お陰で迷わずに直進出来たぜ。

 ていうか好き好き弾ってネーミングなに? アッッ!! 可愛い!!! 

 

 もはや限界オタクの領域。

 

「ええ、奥ゆかしくも乙女らしさに溢れた思いやり。これは間違いなく明日あたり挙式なのでは?」

「んんっ!! そ、そのあたりはちゃんと考えてあるし然るべき時に行うプロジェクトなので………………とりあえず()は押し通らせてもらうぜきよひー!!」

「愛そうというわけですね! ああ、そんな大声で愛を誓ってくれるなんて!! ………でも『今』はという言葉が気になりますね。それではまるで浮気の予定があるみたいではないですか」

 

 俺の言葉にスッとジト目になるきよひー。

 ああ、疑っちゃうきよひーも可愛い。

 

 ならば答えるしかないじゃないか。

 

「俺が愛するのは清姫だけだぁぁぁーー!!!!」

「はぁぁうっ♡!! (weak)」

 

 清姫には嘘がきかない。

 それは逆に俺が本気だということがわかることだ。

 うん、今ので1ブレイクゲージなくなったな。

 

「わからん。お主はこの娘を好いておるのだろう? なのにお互い倒すことに躊躇いがないのは何故じゃ?」

「フッ、例え敵として、エネミーとして現れるのであれば。全力でぶつかることも俺の清姫LOVEの証! このマスター、容赦はせん!!」

「それでこそマスターですわ!」

「あと清姫倒さないと仕様上このイベント終わらないしね。最高効率クエストも出ないし」

「ああ、何処までも正直なお方! 好き!!」

「了解した。ならばマスターに変わりこのサンタの拳にて相手になろう!」

「よし! 戦闘開始!!」

 

 このあとなんやかんや勝利した。

 清姫が真理の卵をドロップしてくれた。

 ほんと何処までも出来た嫁でした。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 あー思い出しただけでニヤける。可愛い。

 

 まあ、あのあと清姫が「本物ではないわたくしに愛を叫んだとは本当ですかますたぁ!!?」と詰問してきて。宥めるのに時間がかかったのは秘密。

 

「まあ今回の一連の事件を通してついに清姫との絆ポイント(魔力パス値)がMAXになりました」

「よくやるもんだ」

「当然ですよ。むしろキヨヒストとして遅すぎるぐらいです」

 

 別の次元には俺より更に上のキヨヒストが────おっとこれはメタワード。

 リセットリセット。

 

「私が言いたいのは。君が何故あのドラゴンガールとそんな仲になれるのだろうと疑問に思ってな」

「その心は?」

「怖いでないか。正直トゥールⅣと同じかそれ以上に怖い」

「あーー」

 

 トゥールⅣさんがいかなる人物なのかは分からないが。要するに所長は清姫が怖いのだろう。

 自分も清姫がどういう人物なのか分かっているが故に、所長がそういう気持ちになるのも理解は出来る。

 

 清姫。あんな可憐な少女がバーサーカーとして現界したのはその出生にあり。

 

 安珍清姫伝説という悲恋と悲劇の物語。

 

 美形の僧、安珍に一目惚れした清姫は彼に迫るも断られ。安珍は帰り道に必ず会おうと約束する。

 だがそれは清姫を恐れるあまりの嘘であり、それに気付いた清姫が安珍を追うも嘘に嘘を重ねて拒絶。

 清姫は蛇龍に姿を変え、鐘に隠れた安珍を鐘ごと焼き付くし、その後彼の後を追うように入水自殺をして12歳の少女はこの世を去った。

 

 このことから清姫は極端に嘘を嫌うようになる。

 強がりも、優しい嘘も即座に看破し。マスターが嘘をついた場合令呪を一画強制的に消費という他では例を見ない前代未聞の所業まで可能。

 聖杯に願うのも「嘘のない世界」という。剪定事象待ったなしのとんでもないもの。

 

 そして彼女の根底にあるもの。

 それはいまもなお燃え尽きることのない安珍への情愛。

 出会ったその瞬間から俺を安珍の生まれ変わりだと疑わず恋をし、それを疑うことなく信じる。一種の認識阻害。

 その深度は。俺を生まれ変わりではなく安珍そのものだと思う時も、少なくはないという程。

 

 わかりやすく纏めれば。嘘は絶対許さない安珍(生まれ変わり含めて)大好きヤンデレドラゴンガール。

 

 普通なら勘違いで重い愛を向けられ、かつ一歩間違えれば安珍と同じ結末になるという危険性。

 所長が清姫を怖く思うのはそれが原因に他ならない。

 

「言ってはなんだがね。あんなデンジャラスガールに惚れられるならまだしも相思相愛になるなんて正気の沙汰ではないと思うがね」

「ハハハ、確かにまともじゃないですね」

「他人事みたいに言ってるが君の事なんだぞ」

 

 いやー嘘はつけないたちでして。

 

「つまり所長は俺と清姫がどういう経緯で相思相愛になったか知りたいということで?」

「そうだ。私がカルデアに来る前からそういう仲になったのだろう?」

「そうですね。といっても所長が新カルデアメンバーになってもう3年以上はたってますよ? 他の人からそれとなしに聞いてないんですか?」

「彷徨海に来るまで気にするほど心に余裕はなかったし。誰に聞いても本人に聞けの一点張りだ」

「なるのほど」

 

 そういやこの前ムニエルが「最近お前と清姫のことよく聞かれる」って言ってたっけ。

 

「話してもいいですけど。食事の合間に話すには少しだけ長くなりますよ?」

「それについては後で私の部屋に来い」

 

 俺の賑やか空間(マイルーム)を選ばないあたりしっかりしてるな。流石所長。

 

「わかりました。清姫にも言っときます」

「そうしてくれ。私はまだ死にたくない」

 

 ゴルドルフ所長はそう言ってカルボナーラを豪快にかっ食らった。

 

「俺からも聞いていいです?」

「なんだね?」

「何故今聞いてきたんです?」

「仕事も一段落した、次の異聞帯まで時間がある。そして」

「そして?」

「こんなモヤモヤした状態で年を越したくない」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「紅茶とクッキーはいるかね?」

「頂きます」

 

 出されたクッキーをひとつまみ。

 ほのかなバターとシナモンの香りが心を満たし。アールグレイもとてもいい香りだ。

 

「………」

「なんです?」

「出した私が言うのもなんだがね。魔術師が出したものをそうホイホイと口にしてはならんぞ。秦の時のケーキが良い例だ」

「所長を信頼してますから」

「ふん」

 

 しかしほんと美味しいな。

 誰が作ったんだろう。

 

 一息ついた後、俺は清姫との馴れ初めを話し始めた。

 

「ファーストコンタクトは一番目の特異点オルレアンです。戦力増強の為に探索してたらエリザベートと喧嘩してる清姫が居て。そのまま戦闘になりました」

「ふむ」

「そのあとなんとか場を納めたんですけど。二人がマシュをバカにしたんでこう言ったんですよ。『爬虫類よりマシだ』って」

「君の馬鹿げた胆力は持って生まれたものなんだということがよーーく分かった」

 

 振り返ってみると俺もそう思います。

 あの時はマシュが自分の支えの一つだったから。バカにされてムッとしてしまったんだ。

 

「そのあとオルレアンのオーダーは無事終了。清姫とはお別れ、と思っていました」

「終わりではないのだな」

「ええ。所長もご存知でしょうが。ソロモンが作った特異点を修復すると。そこで縁を結んだサーヴァントのうち一人と自動的に契約、召還されるんですよ」

「………まさか」

「ええ、追ってきましたよカルデアまで」

 

 彼女が最後にオルレアンで言ったことを今でも覚えている。

 

『わたくし、些か執念深い性質なので。どこに行ってもきっちり追跡させていただきますわ。だって、それが「愛」ですもの。……ね?』

 

 特異点でキッチリ安珍判定を貰った俺をロックオンし、カルデアまでストーキングしてきた。

 ストーキングランクBとか絶対嘘だよなぁ。

 

「まあ。そんときの俺はマジで清姫が怖くてマシュの後ろに隠れているドクターの後ろに隠れました」

「………………」

「どうしました? ポカンとして」

「最初から一目惚れ同士ではなかったのだな」

「ええ。確かにあのときも可愛い子だなって思ってましたけど。正直に言うと恐ろしさが勝ってましたね」

 

 嘘ついたら燃やされる。これがリアルヤンデレ! しかもメンヘラ成分もチラホラ! 

 怖くないわけない。

 

「それから清姫はストーキングしたり、気付けばベッドや天井裏。重い愛をこれでもかと向けられた当時の俺はそれはもう清姫のこと苦手の苦手でしたよ」

「意外だ………」

「新参サーヴァントみんなに同じこと言われました」

 

 実際あの時の俺にとっての清姫の見解は『可愛いけど純粋に怖い子』だったのだから。

 ………振り返るとあの時の出来事でさえニヤけに繋がっちまうな。ニヘへ。

 

「オホン。それで?」

「そんなこんなで清姫のいるカルデア生活は続き。オケアノスのオーダーを終わったあたりですかね。いつもの夢レイシフトです」

「ああ、あれか」

「目が覚めると草原。俺と清姫とマシュの三人は原因究明の為に探索を開始しました」

 

 清姫はデート気分で凄い距離近かったな。

 あまりにも近くてマシュを盾に出来ないぐらい。あんときは心臓バックバクやったでぇ。

 

 そして最深部の洞窟で遭遇したのは、清姫の影だった。

 影の彼女は清姫の狂性を俺に訴えかけ、清姫との契約を切るように迫ったのだ。

 普通なら、といっても普通なら影の言い分は至極当然だ。清姫も戸惑ったのか震えだした。

 

 でも俺はこう答えた。

 

「お断りだ」と。

 

 交渉は決裂徒ばかりに戦闘が開始し。最後は清姫の宝具『転身火生三昧』をもって焼き付くした。

 

 そして戦闘の後。ふと清姫が俺に聞いてきたのだ。

 

「わたくしは、醜いですか?」

 

 俺はなんでそんなことを? と聞き返すと、清姫は自分が宝具を打つときに醜い龍に変わるからと言った。

 

 俺はその問いに特に迷うことなく答えた。

 

 格好良いし。凄く頼もしいと。

 

 

 

 だけど本当はそれだけじゃなかった。

 

 改めて間近見た清姫。燃え盛る龍に変化し、敵を焼き付くす彼女を見て。

 俺は間違いなく目を奪われた。

 

 なんて頼もしく、雄々しく、そして。

 悲しそうと思えるぐらい美しいのだと。

 

 そしたら清姫はコロコロと鈴の音のような声で笑ったのだ。

 おおよそ女性にするような褒め言葉ではないと。

 

「私、嘘が嫌いですが。あの偽物(わたくし)が言った言葉は、嘘に変えてみせましょう」

 

 今思えばあの夢レイシフトは清姫とのリンク故に起きたのだろう。

 清姫はそれについて自覚していたのか、彼女の中に渦巻くものが形となったのか。

 

 今でも詳細は分からないが。その時から清姫を見る目が変わった、というより。

 

「あの時から好きになってたのかなぁ」

「んー。聞く限り何処に惚れる要素があったのか分からなかったのだが」

「そうですかね。まあなんにせよきっかけはアレだったのは間違いなかったかと。そっから俺はどんどん彼女に心を奪われて行きました。彼女の行為に冷や汗をかくことは日常茶飯事でしたけど。それでも俺は彼女に恋をしていったんです」

 

 それから紆余曲折あって想いを打ち明けると彼女は特に驚くことなく受け入れた。

 清姫にとって既に俺は旦那様で、自分は俺にとっての嫁なのだからと。

 

「ぎこちなくはあっても俺は彼女と共にいて幸せでした。共に特異点を渡り歩き、様々なイベントでドタバタしながらも楽しく過ごし。ついにはソロモン、に扮していたゲーティアを打ち倒し。グランドオーダーに終止符を打ちました」

「ふむ。聞いてる限りそこまで変わった感じはないな。順当に関係を気付いたといったところか」

「そうですね」

 

 徐々に彼女への対応や話し方、適切な言葉選びも自然と出来ていった。

 

「お話はこれでおしまい。俺と清姫はお互い愛し合い今に至ります────────なーんて、そう上手く行けばよかったんですけど」

 

 トーンを落とした声色に所長は疑問符を浮かべた。

 

「ん? 違うのか?」

「ええ。改めて聞きますけど。所長から見て俺の清姫に対する想いってどう見えます?」

「彼女に対する愛は天井知らずで留まるところをしらない、彼女が絡むと精神汚染サーヴァントも真っ青なぐらいの狂気っぷりを出してくる」

「適切すぎる評価ありがとうございます。でも、今話していた時はそこまでじゃなくて、普通のカップルみたいに初々しいものだったんです」

 

 初々しいなんて、自分で言うようなことではないだろうけど(笑)。

 

「今の自分に至った経緯。その話の本題はここからです。いつも通り俺と清姫はカルデアでの日常を過ごしていきました。ですが段々、俺と清姫に変化が訪れたんです。そして事件(・・)が起きました」

 

 今でも忘れられない。あの事件。

 俺と清姫にとっての真のターニングポイント。

 

「俺は清姫に………一番言ってはならない嘘をつきました」

「な、なにを言ったのかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「清姫が嫌いだと。言ったんです」

 

 

 

 

 

 

 




 年を越せないと言ってるのに年越していくの申し訳ないぜ所長。

 皆さん、よいお年を!!


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村正アアアアアァァァァァァァ!!!!!




ゴッフ「待ちたまえ」
ぐだお「なんですか」
ゴッフ「今回は君と清姫の馴れ初め後半ではないのかね?」
ぐだお「いや、鉄は熱いうちに打ちませんと」

 後編は次回!!



 

 

 新年明けましておめでとうございます。

 

 新年開けてなんか老舗旅館的な特異点イベントがあるのかなと思いましたがそんなこともなく。サーヴァントもカルデア職員も穏やかな正月を過ごしております。

 

 そんななか、わたくしカルデアのマスターはというと………

 

「(  ∀ )チーン」

「( ´・ω・`)………」

「(;゚Д゚)………」

 

 再起不能になっておりましたとさ。

 

 めでたしめでたし………じゃねえよ。

 

「えっと………」

 

 目の前でただの屍になっているマスターを見てマシュは状況を整理しようとした。

 

 カルデアの資料を届けようとした時聞きなれた雄叫びが聞こえたので部屋を覗いてみると。

 マスターが倒れふし、清姫が気の毒そうな顔でマスターを見下ろしていたのだ。

 

(ダメだ、わからない)

 

 とりあえず清姫に聞くことにした。

 

「あの、清姫さん。何があったのでしょう」

「この場所を見てわかりませんか?」

「ええと」

 

 ここは召還部屋。数多のマスターが財産をつぎ込み阿鼻叫喚するある意味カルデアて一番恐ろしい場所。

 

「ああ、そういえば年も開けて福袋キャンペーンでしたね。お目当てのサーヴァントが来なかったとか」

「間違いではありませんが。そのようなことは些事です」

「うぐぅ………」

「あ、先輩」

 

 ここはどこ? 私はマスター。

 

「はぐぅあっ!!」

「先輩!?」

 

 突然胸を抑えたマスターが悶え苦しんだ。

 

「い、いったい何があったんです!?」

「爆死です」

「爆死!?」

「そう。マスターはあるサーヴァントを呼び込むために律していた封印。課金に手を出したのです」

「え!? マスターが課金を!? で、でもマスターは結構前からFGOの課金を控えていたのでは?」

 

 そう。FGOが遠くない未来サービス終了するんじゃないかと噂、もしくは察した俺はFGOの過度な課金をやめた。

 というのも、自慢ではないが人権キャスター四人衆。そのなかでもキャストリアを貯蓄聖晶石ですませられたのはまごうことなき幸運。

 

 その後も欲しいサーヴァントは「来てくれたら嬉しい」程度。

 蘆屋道満は当たらなかったけど特に悔しいこともなく。その後ピックアップされた伊吹童子とヴリトラがポン! と来てくれた時には「うよっしゃー! リンボの運がこっちによってるぜー!」と喜んだもの。

 

 そんな俺が課金してまで欲しかったのはタイトルの通りである。

 

「村正欲しかったよぉぉぉぉぉーー!!!」

 

 アーツ全体、贅沢なスキル、NP50! 。宝具のバフが三ターン。

 間違いなく人権サーヴァント。

 

 何よりも見た目の性能が高すぎる!! 

 

 キャストリア性能ぴったりというのもエモ過ぎるし。

 イシュタルとパールヴァティーで三竦み出来るのが本当にエモい!! 

 更にアルトリアとは同じクラス! 

 あっ!!! (尊死)

 

 だが。

 

「見事爆死だよぉーー!! おーいおいおいおーい!! 慰めてきよひーー!!」

「はいはい、よしよし。大丈夫です、ますたぁにはわたくしがいますからね」

「残念だけど清姫じゃよくて2ターンだよぉ!」

「あぁ、これはかなり追い詰められてらっしゃる………」

 

 まさかアーツ全体で来るとは思わないじゃん!! 

 

「ところで先輩はいくらほどお使いに?」

「四万」

「あー」

「おい少ないと思ったか後輩。でも今コロナだから気軽にお金使えないんだよ! もう四万使ってる? しってるよ!!」

 

 現在完全情緒不安定。

 これが爆死マスターである。

 課金時にはそれだけあったら………というワード

 

「大丈夫です先輩。四万は大金ですから。そんな風に思ってませんから、ね?」

「うん、ごめんよマシュ。言いたかっただけなの」

「まあ実際カッコいいですしね。下関国の村正さん凄かったですもんね」

 

 その一枚絵がそのまんま宝具演出に使われております。

 

「ふぅ」

「落ち着きましたか」

「うん」

「ご安心をますたぁ。たとえ村正さんがいなくても我らがカルデアの戦力は強力です。いざというときは私の黒聖杯ふぁいやーで敵が灰塵とかします」

 

 ありがとう清姫、そしてマシュ。

 うん、そうだよね。

 俺のとこには困ったときの宝具3スペースイシュタルさんいるもんね。

 

 よし、そうと決まれば。

 

「ワンモア諭吉セット!」

「先輩!? 課金は打ち止めでは!?」

「止めるなマシュ! やっぱ村正欲しい!!」

「えーー!!」

「流石旦那様。欲望に正直なところ。好きっ!!」

「恋い焦がれてないで止めてください!!」

「うおおおおおーー!! 諭吉! インストォォォル!!」

「せんぱーーーーーーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『購入エラー』

 

 

 

「ぬっ?」

「あら?」

「え?」

 

 

『利用限度額に達しました』

 

 

「なんですこれ?」

「えーと、どうやら上限が五万までみたいだな。ワンクリック購入」

「ワンクリック?」

「魔法のカード使ってないのよ。カード買えば課金は出来るだろうけど」

「ますたぁ、残り一万は何に使ったのです?」

「モンスト」

 

 えーとつまりこういうこと? 

 

 

 

 

『神は言っている。課金をやめよ………』

 

 諦めました。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「おはようマシュ」

「おはようございます」

「先輩、清姫さん。おはようございます。昨日は大変でしたね」

「あぁ………あまりにも傷が深かったのか、2時に寝始めて(リアルにマジで)5時半まで寝られなかったよ」

 

 まあ夕食前に二時間ぐらい寝てたけどさ。

 生活リズムが乱れる!! 

 

「ところで先輩。福袋ガチャはどなたが来てくださったのですか」

「ああ」

 

 超人オリオン狙いで引いたんだけどね

 アルテミスとイチャイチャさせたかったんや。

 オリアル最高。

 

 まあ来てくれたのは。

 

「ローマ!!」

「ローマ!!」

 

 ビシッとポーズを決め、圧倒的Y!! 

 ローマきよひー可愛い。

 

「ぬおっ! 神祖殿!? 前より輝きが増しておられる!?」

「うむ。浪漫(ローマ)である」

「ローマ!」

「「「ローマっ!!!」」」

 

 宝具2になりました。ローマ!! 

 これにはローマ市民ニッコリ。

 

「うおおおーーマスター!!」

「マシュガード!」

「はばぁっ!」

 

 突然茨木童子が突っ込んできた! 

 マシュの盾に激突!! 

 

 すまんなイバラギン。ナーサリーやサンタリリィはいいがお前はシャレにならん。

 角とか、角とか。

 

「ええいマスター! 何故だ! 何故綱がここにいる!!」

「呼んだからだけど」

「ナレェェェェ!!」

 

 綱の兄貴、降臨。

 呼符も含めて二人も来てくれました。

 

 金剣で来たときには、まあ期待したわけで。

 「なんか申し訳ない」と特に表情を崩さずに言ってくれて逆にこっちが申し訳なくなったよ。

 

「茨城」

「なっ、綱っ!?」

 

 と思ったらご本人登場。

 

「んっ」

「こ、これはチョコレートっ!?」

「ロビンフッドからの贈り物だ」

「緑の? なら仕方ない、貰ってやる。あっ! 違うぞ! これは緑のからだから貴様から施しを受けたわけではモグモグモグモグ」

 

 言い終わる前に食べちゃってるやん。

 

「用はすんだ。では」

「むぐっ! 待て綱! これだけじゃないだろう! まだ隠してるだろ! よこせ!!」

「隠してない」

 

 

 

「マシュ………」

「はい?」

「綱茨っていいよな」

「カップリング脳もほどほどにしてくださいね」

 

 エモーーイ!!




 村正の追い課金は検討に検討を重ねております


 キヨキヨカルデア紹介

ぐだ男 清姫大好き民。正月早々爆死した男。カップル見るとイチャツケェ!ってなる。

清姫 マスターの嫁。最近絆MAXに 。マスター肯定力スキルA

マシュ 俺的にナンバーワン後輩っ子

茨城と綱 なんかもどかしい感じが良いです


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清姫との馴れ初めを 【後編】

 疲れました。
 ドシリアスって凄い疲れるし、何よりも推しの悲しい姿を書くと胸が痛い。

 それでも書いたぜ。前々から機会があれば書きたかったので。

 たぶんこのシリーズでは最初で最後のシリアスでしょう。



 清姫と恋人らしいことはしなくても恋人という関係になってから結構たって。清姫との繋がり、魔力パスも8までいって。

 

 それなりに順当な毎日を過ごしていた。

 

 だがある日。魔力パスが9になったあたりから清姫の様子がおかしくなった。

 

「ますたぁ!! 何処!? 何処に居るのですか!?」

「え、清姫?」

 

 背後からストーキングしていた清姫が突然悲鳴を上げる回数が多くなった。

 

 清姫が時々怯えるように身体を震わせることが多くなったと他のサーヴァントから聞くことが多くなった。

 

 ダヴィンチちゃんや医療系サーヴァントに見せても、目立った以上はないと言う。

 

 そして

 

「愛しております。旦那(安珍)様」

 

 俺を安珍と呼ぶ回数が格段に増えた。

 

 

 

 

 清姫が何かに怯えるという症状は消えた。

 一時の霊核の不具合では? という形で落ち着いたが。

 

「安珍様」

 

 俺を安珍と呼ぶことが更に増えた。

 

 唐突に俺は不安になった。

 俺から清姫に好きだと言っても、彼女の目には何が写っているのだろう。

 

 彼女の目は間違いなく俺を見ていた。

 それだけは確かなのに。

 

「安珍様」

 

 彼女は俺を見ているのだろうか? 

 その思いがふつふつとたまっていった。

 

「清姫は俺のこと好き?」

「はい、大好きですよ」

「俺と安珍ならどっちが好き?」

「変なことをおっしゃいますね。ますたぁは安珍様の生まれ変わりなのですか。優劣をつけるなど出来る筈がないでしょう?」

「じゃあ………………俺が安珍の生まれ変わりじゃなかったら好きになることはなかった?」

「安珍様の生まれ変わりではない? そんな筈ありません」

「もしもの話………」

「ありえません。わたくしが安珍様を見間違える筈がありませんわ」

 

 本当に彼女の目に俺は写ってるのだろうか? 

 

「そうだよね。ごめんね、変なこと聞いて」

「大丈夫ですよますたぁ」

 

 

 

 

「わたくしは何も気にしておりませんから」

「………………」

 

 本当に? 

 と聞きそうになった。

 

 それからも俺は清姫に愛の言葉を言い続けた。

 俺が好きだと言うと彼女は喜んだ。

 

「わたくしも愛しております」

 

 いつからだろう。彼女からの愛の言葉に心が弾まなくなった。

 むしろ虚しさに似たものすら感じた。

 

「おぇ………」

 

 時折清姫に隠れて吐いたことがあった。

 ご飯も喉を通らず、それでも食べなきゃいけないと思った。

 

 清姫が炊事当番の時があった。

 目の前には愛の込められたご馳走が広がっていた。

 

 けど。

 

「あ、あれ?」

「先輩?」

「ごめん、なんか食欲わかない」

 

 これはだれをおもってつくられたりょうりなのだろう? 

 

 清姫のほうを向くと、彼女は俺に笑いかけた。

 

 そのえがおはだれにむけられたもの? 

 

 その時、俺は気づきかけた。

 だけど必死にそれを押さえつけた。

 

 見たくない! そんなもの見たくない!! 

 

 清姫の笑顔が、張りつめた仮面のように見えたのだ。

 

 気持ちが、悪い。

 

 まるで目の前で他人の相瀬を見せつけられてるような気分だった。

 

 

 

 

 

 俺は清姫が好きだ。

 間違いなく、彼女のたくましくて、そして美しいその姿に心を惹かれ、その一途差に嬉しくなった。

 

 それなのに。彼女といると心が痛い。

 

 彼女が安珍の名前を呟く度に心が痛い。

 

 降り積もって、降り積もって。

 塵は山となり、俺の心に突き刺さり始めた。

 

 

 

 極小特異点で俺は怪我をした。

 なんとか特異点は修復したけど。敵の攻撃をもろに食らった俺に救急処置がなされた。

 

 必死に俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

 誰の名前を呼んだかわからない。

 だけどその声は悲痛に満ちていた。

 

 泣かないで欲しい。

 そう思いながら眠りにつき。

 目が覚めると彼女が俺の足元で眠っていた。泣いていたのか、目元に涙の後があった。

 

「清ひ………」

「安珍様………」

 

 ビクリと、伸ばそうとした手が震えた。

 

「お願い………わたくしを、置いていかないで………」

「………………っ!!」

 

 痛い。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 胸が痛い、呼吸が苦しい。

 

 身体は完治していて痛みがないのに。

 痛い。胸が張り裂けそうだ。

 

 

 

「ますたぁ? 目が覚めたのですね! よかった」

「………」

 

 

 誰を見てる? 

 

 

「目が覚めなくて、あなたが居なくなるのではないかと不安で不安で」

 

 

 誰に話してる? 

 

 

「もう二度と離れたくありません。本当に戻ってくれて良かった」

 

 

 誰を想っている? 

 

 

「■■様──」

 

 

 

 そこに居るのは誰なんだ? 

 

 

 

「──愛して………」

「やめろ!!」

「………ますたぁ?」

 

 

 叫んだ。胸の痛みはより強くなった。

 伸ばされた腕を払った。払った手が凄く痛んだ。

 

 清姫が怯えているのが分かった。

 でももう止まらない。もうおさえがつかない。

 

 もう、自分に嘘はつけない(を誤魔化せない)

 

「なんで君は俺を見てくれない!?」

「え? わたくしはますたぁを見て………」

「なんで俺と話をしない!?」

「ますたぁと話を」

「君は誰を想っているんだ!?」

「わたくしは………」

 

 怯える彼女の目に俺が写っていた。

 

 悲しそうで、そして怒っていた。俺の顔が。

 ガラス玉のように見えた。

 反射してるだけに見えた。

 

「わたくしはあなたを愛しています」

「それは誰だよ!」

「勿論安珍様で 」

「俺は安珍じゃない!!」

 

 ピシッ

 

「だ、旦那様?」

「なんで俺を見てくれない!? 目の前にいるのになんで俺を見ない!? 君と話してるのは俺だ! 君と共に戦ったのは俺だ!! 俺を好きだと言っておきながら! なんで君は別の男を夢見ているんだ!!」

「それは………」

「なんで俺を好きだといいながら! どうして俺を好きだと言ってくれないんだ!!」

 

 ピシッ

 

「何を言っていますの?」

 

 ピシッ

 

「わたくしはあなたが好きなのですよ?」

 

 ピシッ

 

「嘘をつくな」

「?????」

 

 ピシッ、ピシッ

 

「俺は、嫌いだ」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」

 

 ピシピシピシピシピシピシ──────

 

「俺を見ようともしない清姫なんか。大嫌いだ!!!」

 

 ──────バリンっ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと清姫は俺の令呪一画を強制起動し、宝具を暴走。

 

 運がいいことに清姫の様子がおかしいことは周りも分かっていたみたいで、その日は部屋の前で待機していた玉藻が助けてくれました。

 

 俺は清姫の宝具の余波で吹き飛ばされて気を失って、気がつくと俺はカルデアのベッドの上。

 ダヴィンチちゃんにしこたま怒られました。状況が状況とはいえ、俺は欠けることが許されないマスター。

 その場の感情で、なんて言い訳は通るはずがなく。俺は黙ってお叱りを受けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと、清姫は俺の前に姿を見せなくなった。

 他のひとに聞くと。あれから自分の部屋にこもって外には出ていないという。

 

 そのまま数日。俺は清姫の部屋の前に行くことなく。そのまま距離をとった。

 

 俺は謝ることすら出来ないまま。

 いや………単純に清姫と話すのが怖くてそのまま距離をとった。

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、少しよろしいですか?」

「まーちゃん、少しいい?」

「どうぞ」

 

 マスターとしての書類を纏めていると玉藻の前と刑部姫が入ってきた。

 

「まーちゃんお願い! きよひーに会ってあげて!!」

「え?」

「私からもおねがいします。いまの清姫さんは見るに耐えられません」

 

 清姫、部屋から出たの? 

 

「いえ、そこは私がみこっと強引に部屋に入りまして。サーヴァントは食事を必要としませんが。清姫さんが一週間もマスターに会わないのはゆゆしき事態です」

「きよひー、結構やつれてた。このまま引きこもって腐っちゃう勢いで心配なの」

「引きこもりのあなたがそれ言います?」

「タマモっち黙ってて! 今シリアスな話でしょ! ていうかく、腐ってないし!」

 

 嘘だろそれは。

 

「来てくれて悪いけど。俺は清姫には会わな

 い」

「清姫さんに会うのが怖いのですか?」

「それはそうだけど。それだけじゃないよ」

「じゃあなんで」

「今さら何を言えばいいんだよ」

 

 清姫自身が怖いというのもあった。

 だけどそれ以上に彼女の存在を殺し(壊し)てしまった自分が怖かった。

 

 なんであんなことを言ってしまったのか。

 今でも夢に出るぐらい後悔の念がある。

 

「で、でもまーちゃんはきよひーの彼氏でしょ?」

「それは違うよ」

 

 思えば清姫は俺の名前を呼んでくれたことはなかった。

 

 いつだって旦那様、ますたぁ、安珍様。

 俺のことを藤丸(・・)と呼んでくれたことは一度だってなかった。

 

「結局俺は最後まで彼女の安珍になれなかった。それでもいいと思って彼女を好きになったのに。最後の最後で安珍に嫉妬してあんな酷いこと言って────俺は清姫に相応しくなかったんだ」

「そんなことない! まーちゃんは」

「俺はあのクソ坊主となんら変わらない!!」

 

 彼女を拒絶した! 

 

 彼と同じく、嘘をついて拒絶した。

 

 俺は彼女に「大好き(大嫌い)」と言ってしまった。

 

 俺は彼女に嘘をついた。

 

「清姫もこんな俺なんか愛想つかしてるよ。だって俺は安珍じゃないし。結局俺は安珍に──」

 

 ──勝てやしない。

 

「………まーちゃんの」

「ん?」

「お馬鹿ぁ!!」

 

 ベチン!! 

 

「いっったっ!?」

「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!」

「痛い痛い痛い!!」

 

 涙でグチャグチャの刑部姫にはたかれまくった。

 

「まーちゃんの馬鹿! まーちゃんなんも分かってない! きよひーのことなんも分かってない!!」

「そ、そんなの百の承知だ!!」

「違う!!」

「何が!?」

「きよひーずっと前から苦しんでたんだよ! まーちゃんと喧嘩する前から!」

「え?」

「きよひーがまーちゃんのこと見てないなんて! そんなことない! きよひーはずっとまーちゃんを好きだって! 安珍としてじゃなくまーちゃんを愛しているって想ってる!!」

 

 は? 

 

「それってどういう」

「そこは私から説明しますね。はい、刑部姫さんは少し下がりましょうね」

「グスッ、ズズッ、ズビー!」

 

 刑部姫が備え付けのティッシュで鼻を噛んでる間に玉藻が話してくれた。

 

「1ヶ月前。清姫さんの様子がおかしくなったのはマスターも承知の上のはずです」

「うん。いつも以上に安珍と呼んだり。時々凄く怯えたことがあった」

「はい。実は一部とはいえ、清姫さんの狂化が薄れていたんです」

「え?」

 

 清姫の狂化。

 それは召喚者を安珍の生まれ変わり、安珍と認識して恋愛を感情を抱く一種の認識阻害。

 

「俺を俺だと認識していたことがあったということ?」

「必ずそうだと言うわけではありませんが、その通りです。それ故に彼女は安珍様を見失ったという認識に陥っていたことがありまして」

「本当なのか?」

「ええ、そして清姫さんは段々と気付いていったんです。自分が愛した人が安珍様でも安珍の生まれ変わりではないのではと」

 

 あの時の怯えはそういうことか。

 

「恐らく彼女とのパスが深まった結果でしょう。彼女の認識ではなく、パスを通してあなたの本質。本当の身姿を認識した結果、狂化のフィルターに不具合がかかったのでしょう」

「じゃあ俺を安珍と呼び続けたのは」

「一種の自己暗示。マスターが自分の想い人だった安珍の生まれ変わりということの再確認。自分の愛する人が側にいるという安心感。自分から逃げないでほしいという願い。彼女はマスターを安珍と呼ぶことで心の平穏を保ち続けていたんです」

 

 そういえば。彼女に安珍と呼ばれた時に返事をしてあげたらホッとした顔をしていた。

 

「でも、結局俺を安珍としてしか見てないってことには変わらないんじゃ」

「確かに。それは彼女のサーヴァントとしてのあり方です。ですが、それ故に清姫さんは苦しんでいました」

「さっき言っていたのとは別の?」

「考えてみて下さい。彼女はあなたを安珍と呼んでいた。安珍として愛していた。ですがふとそのフィルターがなくなり。あなたを藤丸という安珍とは違う別人だと気付いてしまった。そうなった場合、あなたを安珍様だと言っていた清姫さんの言葉と認識はどうなりますか?」

 

 玉藻の説明に俺はハッと口許を抑えた。

 俺は安珍じゃない。そうなった場合。

 

「清姫が嘘をついたことになる」

「はい、嘘を誰よりも嫌う自分が誰よりも罪深い大嘘つき。清姫さんは現実と狂化の板挟みになっていたんです」

「………」

 

 衝撃の事実に開いた口が塞がらない。

 だけとそれで終わらなかった。

 

「そして清姫さんが危殆したことがもう一つあります。それはマスター、あなたのことです」

「俺のこと?」

「はい。マスターは清姫さんと付き合い始めたあと。彼女が自分を安珍と言っていることに対して肯定的にとらえました」

「うん………あっ」

「安珍ではないあなたが自分を安珍だと認めた。フィルターが外れた清姫さんにとって、それは嘘となったのです」

 

 つまり、嘘ではないことが嘘に裏返った。

 

「で、でも。俺は一週間前まで令呪を強制消費されていないぞ!? それに彼女から危害を加えられてなんか────その為の自己暗示」

「はい、あなたが安珍ではないと認めてしまえば。嘘を付き続けたあなたを殺めてしまうことになる。清姫さんはいつかマスターを手にかけてしまうのではと感じ、自身の狂化を薄れさせないための行動に出たのです」

「全然気付かなかった」

 

 俺を安珍だと認識し続ければ、その嘘は嘘ではなくなる。

 だからあんなに俺を安珍と呼び続けたのか。俺を殺したくなかったから。

 

 あの笑顔の裏にそんな苦悩があったなんて。

 

「皮肉ですね。嘘を誰よりも嫌悪する彼女がマスターを守るために嘘を嘘で塗り固めるとは」

「なんで………」

「?」

「なんで清姫はそこまでする。なんでそこまで出来る。俺は、安珍じゃないのに………」

「あなたの側に居たかったから、あなたに心配をかけてほしくなかったからです」

「あいつは、どこまで………」

 

 ………………………

 

「玉藻」

「なんでしょう」

「………俺は、清姫に会う資格があるのか」

「それは私が決めることではありませんわ」

「………そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉藻と刑部姫がついてくるなか。

 目線の先には清姫の部屋の前で背中を預けているエミヤの姿が。

 

「マスター?」

「エミヤ。そこをよけてくれるか」

「清姫に会うつもりか」

「うん」

 

 俺が頷くと、エミヤは今までで一番険しい顔をした。

 

「マスターといえど承服しかねる。自分が何を言ってるのか分かっているのか」

「うん。でも会わないと何も始まらない、なにも終わらせられない」

「………」

「出来れば令呪は使いたくないな」

「脅す気かね」

「まさか。俺が本気でエミヤを脅すならギルガメッシュから聞いた自分殺しの話をカルデア中に流すって脅すよ」

「あの慢心王!」

 

 更に険しい顔になった。

 

「だからこれはお願い。清姫の部屋に入れてくれ。清姫と話がしたい」

「話をするだけならここだけでも出来るだろう」

「目を見て話さなきゃ駄目だ。頼む!」

 

 頭を下げた。

 サーヴァントに頭を下げる。魔術師からしたら前代未聞。

 だが俺からすればそんなの日常茶飯事。人に物を頼むなら頭を下げる。当たり前のことだ。

 

「俺はマスターのサーヴァントだ、マスターの意見は尊重する。だがマスターのサーヴァントだからこそ、マスターの安全を最優先とする。清姫がこれ以上マスターに牙を向くならば私は躊躇うことなく清姫を射つ。その場合、清姫の霊基凍結も視野に入れなければならない」

「承知の上だよ」

「………わかった」

「ありがとうエミヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「清姫」

「!!」

「入るよ」

 

 暗い室内。

 清姫はベッドの上でシーツにくるまっていた。

 

「清姫」

「来ないで!」

「ごめん、それは出来ない」

「来ないでください!!」

 

 扇子が振るわれる。

 青い炎が室内のあちこちから立ち上った。

 

「マスター!」

「令呪三画を持って命ず! もう少し待ってくれアーチャー!!」

「くっ!?」

 

 エミヤの身体に赤い電気が走り、彼の身体を拘束する。

 

「血迷ったかマスター! 令呪を全て捨てるなど!!」

「そうだな。でも元々令呪は捨てるつもりだった。それに、カルデア式令呪じゃその場しのぎにしかならないし」

 

 というのは建前だけど。

 

 これで俺はマスターではなくただ一人の人間。

 藤丸というただの男になった。

 

「清姫。話がしたい。こっちを、向いてくれるかな」

「駄目! 来ないで! 見ないで!!」

「………ごめん」

 

 彼女の身体を隠すシーツを取り払った。

 

「いや、だめ、見ないで下さいまし。こんな、こんな醜い姿」

 

 清姫は普段の浅葱色ではなく、黒と金の着物に白い髪、黒い角の第三再臨の姿だった。

 だが彼女の手足と頬には蛇の鱗が浮かび上がり、目は白目が黒く、虹彩は赤く、瞳孔は蛇の様に変化し、口は蛇のように裂けていた。

 

 蛇の妖が女の子に化けた。まさにそんな見た目だった。

 

 一瞬身体が強ばったけど、臆することなく清姫の前に座った。

 

「話は玉藻から聞いた。清姫が苦しんでいたことも。そして俺の為に行動してくれたことも」

「安、ちんさま」

「もう無理に呼ばなくていいよ。いや、呼びたいならいくらでも呼んでいい」

「あっ………」

 

 震えるその身体を抱き締めた。

 その身体はとても冷たくて、凍えていて、それでいて確かな熱があった。

 

「俺は最低なクソ野郎だ。清姫に一番ついちゃいけない嘘をついて。俺は、安珍と変わらない大嘘つきだ。

 でも俺は、清姫が大好きだ。心の底から好きだ。初めは少し苦手だったけど。段々と心惹かれていって。いつの間にか好きになった」

「………」

「いまさらなに言ってんだって思う。だけどこれだけは絶対に伝えたかった」

「………」

「ごめんな清姫。こんな馬鹿な俺の為に嘘をついてくれて。本当にごめん。つらかっただろう。不安だっただろう。ごめん清姫、安珍じゃなくてごめんね」

 

 俺が本当に安珍の生まれ変わりなら清姫がここまで傷つくことはなかっただろう。なんて身も蓋もないことを考えた。

 

「俺はこれからも清姫と一緒にいたい。俺を見てくれなくてもいい。俺は嘘つきだから焼き払っていい。俺は安珍じゃないから焼いていい。でも清姫がこれ以上苦しむぐらいなら、俺は清姫の前から永遠に姿を消すよ」

「ますたぁ」

「だけど清姫。願うなら、願うことなら」

 

 身体を離して清姫と正面から向かい合った。

 

「俺を清姫の安珍として。側にいることを許してくれないか。俺を、藤丸と見なくてもいいから。それでも君の側にいたい」

「っ!」

 

 考えて考えて考えて行き着いた答え。

 俺個人として見なくてもいい。

 彼女が俺という存在に恋をし、愛を説くなら。

 俺は全てを受け入れる。もう一度清姫の手を握りたい。今度は絶対に手離さないように。

 

 なんて自分勝手で狂った考えだろう思う。

 10人に聞いても9人がそんなの間違ってると言うだろう。

 

 自己満足だと言われてもいい。ごっこ遊びでも、依存してるとも、イエスマンだと言われてもいい。

 

 何とでも言えばいい。

 

 俺はそれでも清姫と一緒に居たい。

 このバーサーカーと共に生きていきたい。

 

 これは俺の嘘偽りない本心だ。

 

 告白してからしばらく清姫はうつむいた。

 部屋は変わらず燃え盛ったまま、エミヤの拘束もとっくに解けている。

 

 それでも俺は待つ。

 たとえ拒絶されようとも。

 この身を紅蓮の炎に焼かれようとも。

 それが清姫の答えなら俺は受け止める。

 もう絶対に取りこぼしたくないから。

 

 

 

「ますたぁ」

「なに?」

「わたくしは………嘘をつきました」

「うん」

「あなたは安珍様ではないのに。わたくしの恋を押し付けて」

「うん」

「本当に愛しておりました」

 

 わかっている。

 それだけは絶対に嘘じゃない。

 

「段々とますたぁと過ごしてるうちに。自分でも気付かないもやが薄れる感じがしました。安珍様が目の前に居るのにも関わらずわからなくなって。もしかしたらますたぁは安珍様ではないのではないかって。あなたを遠ざけるように安珍様の名前を呼び続けて。とても怖くなりました」

「うん」

「あなたを、傷つけて。わたくしは、嫌いと言われてもしょうがない女です」

 

 清姫の目から涙が滴り落ちる。

 段々と量を増やし、着物を濡らしていった。

 

「それなのにわ、わたくしは。また同じ過ちを犯してしまった。あなたを殺そうとした。わたくしは、何処まで行っても醜い怪物なんだって………」

 

 そんなことないって言いたい。

 

「わたくしは、あなたを手にかけることが恐ろしかった………なのに、あなたはこんなところまで来て、令呪も捨てて………」

 

 大馬鹿野郎だよね。

 

「わたくしは嘘が嫌いです。でも一番の嘘つきはわたくしだった。わたくしはわたくしが大嫌いです。こんな醜いわたくしが大嫌い」

「………」

「でも………」

「でも?」

「………ますたぁが安珍様ではないかと気づいた後も、あなた様への想いは変わりませんでした」

 

 ドクリと心臓が脈打った。

 憶測でしかなかった。

 願いでしかなかった。願望でしかなかった。

 

「わたくしは愚か者です。この世でもっとも醜い嘘を吐き続けた愚かな女です。今もあなたに安珍様を感じてしまう、どうしようもない醜女です────それでも………わたくしは、あなたにゆるしてもらいたい、あなたを愛していきたいっ」

「っ! うん!うん、勿論!」

 

 

 お互い涙でぐしゃぐしゃだ。

 それでもしっかり目を合わせた。

 絶対にそらさないように。

 互いの言の葉を紡ぐために。

 

 

 

 

 

 

 

「愛しております安珍(藤丸)様」

「俺も愛してる。愛してるよ、清姫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「とまぁ、こんな感じで仲直りした訳ですよ」

「そうか………」

「所長、もしかして泣いてます?」

「ノーコメントだ!」

 

 了解です。

 

「しかし………なんていうか。君は馬鹿だな!!」

「照れますね」

「褒めてないぞ! カルデア最後のマスターの自覚がないぞ! 令呪を全消費など!!」

「まあ、究極的な話。冷凍治療してる他のマスターに任せればいいかなと」

「無責任すぎるぞ!!」

「おっしゃる通りでございます」

 

 あのあと関係各所にしこたま怒られまくった。

 

「そ、それで。その後どうなったのかね」

「俺が耐火術式と耐熱術式をマスターすることを条件に清姫の残留が認められました。清姫の精神状態も通常まで回復しました」

「彼女の通常というと。また君を安珍だと呼んだのかね」

「ええ。でも俺のことを藤丸というただ一人の人間として見てくれる頻度も結構増えました。実はあの告白の時に清姫との魔力パスが10になったんですよ。愛の力ってやつですね」

「それ言ってて恥ずかしくないのかね」

「お望みなら更に言いましょうか」

「やめたまえ」

 

 その後俺は清姫に対する愛を包み隠さず全力でぶつけた。

 彼女に安珍と言われても気にせず。むしろ喜んだ。それが彼女からの愛の証だということを受け入れ、受け止めたから。

 

 カルデアの夢火も惜しげなく彼女に手渡し。惜しむことなく愛を伝えた。

 愛を伝えすぎて度々清姫が気絶することは何度とあった。

 

 清姫と攻守が逆転した。

 清姫と同等かそれ以上のラブバーニングバーサークマスターとなった俺は日々清姫に愛を爆発させていた。

 

「後は所長の知ったとおりです。清姫と一時の別れののちにまた再会して泣き崩れました」

「水溜まりが出来ていたな」

 

 そんな俺も清姫は優しく包んでくれました。マジ天使過ぎるあのバーサーカー。

 

「あ、通信」

『ハロハロー。ますたぁ、今大丈夫かい?』

「丁度話が終わったところだよ」

『それはよかった。今から私のラボに来て欲しい』

「了解、今行きます」

『まってるよー』

「………というわけで、すいません所長」

「いい。はやく行きたまえ」

「はい。クッキーご馳走さまです」

「こっちの台詞だ馬鹿め」

 

 軽く笑いながら所長室を後にすると、所長が呼び止めた。

 

「一ついいかね」

「どうぞ?」

「もし、もしだぞ? 安珍がサーヴァントとしてカルデアに現界したらどうするのかね」

「そうですねぇ。最初は来て欲しくないと思いましたし、来ても即お帰り願ってましたけど」

「いまは違うのかね」

 

 ええ。もしあいつがカルデアに来たら。

 

「令呪こめて殴ります」

「殴る!?」

「そのあと燃やします」

「燃やす!?」

「その後はちゃんと育てて」

「育てて?」

「陳宮の弾にします( ゚∀゚)」

「弾ぁ!?」

 

 素晴らしい笑顔で言ったのに所長が引いた。

 

「陳宮システムは絆上げ枠を圧迫するからあんま使いたくないんですけど。やつもキャスターでくるだろうし。NP配布持ってるといいなぁ、ガッツは………持ってないか、根性ないし」

「ちょ、ちょっとまちたまえ!」

「あ、大丈夫ですよ、最後はフェルグスと相部屋にしますし」

「死刑宣告ではないか!!」

「え? 何を言いますか。あんな可愛くてトランジスターグラマーな清姫の夜這いを拒否するなんてホモ坊主の何者でもないでしょう? むしろ感謝して欲しい」

「間違ってるのか? 私の認識が間違ってるのか!? いやそうではなくてだな!」

 

 怒涛のツッコミ乱舞に息を切らした所長は酸素をリロード。

 

「その、なんだ。もし安珍が来て清姫の気持ちがそっちに向いてしまったらどうするのかね?」

「渡しませんよ」

「いや理屈ではなく」

「渡しませんよ」

 

 

 

「大事な嫁をパッと出のイケメンに渡すぐらいなら、どんな手を使っても守りますし、奪い返しますよ」

「ぬっ!?」

「失礼しまーす」

 

 マスターが出た後、ゴルドルフはポスッと椅子に全体重を預けた。

 

「め、眼が笑ってなかったなぁ………イタタタ、胃が痛くなってきた」

 

 自分って部下に縁がないのでは? 

 ゴルドルフはそう感じながら胃薬を探した。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「あ、ますたぁ♡」

「待ってたのきよひー?」

「はい。これからどちらへ?」

「ダヴィンチちゃんとこ。一緒に来る?」

「勿論です、安珍様。………あっ」

 

 清姫と魔力パスの限界突破をなしえても。彼女は時たまに俺を安珍と呼ぶことがある。

 

 そういうときは決まって彼女はバツの悪い顔をする。

 

「ご、ごめんなさ」

「好きだぞきよひー!」

「ひゃあぁっ!? だ、旦那様!?」

 

 そんなときは思いっきり答えてあげる。

 もう安珍と呼ばれても気にしない。それどころか喜ぶ。そして感極まってハグをする。

 

 何故ならそれは清姫の愛情表現に他ならないんだし。

 

「よーし。マスター嬉しいからお姫様抱っこしちゃうぞー!」

「え、まってマスター。流石にそれは恥ずかしい」

「恥ずかしがるきよひーも可愛いね」

「え、ちょ、ひゃーーーーーー!!」

 

 そのままダヴィンチちゃんの工房までお姫様抱っこで爆走した。

 回りの人もいつものことかと笑いながらその様を眺めた。

 

 俺と清姫の関係は普通じゃないかもしれない。

 

 それがどうした。

 

 それでも俺と清姫は愛し合っている。

 

 その事実は絶対に嘘ではないんだから。

 

 こんな強くて可愛い子に好かれて、俺は世界で一番の幸せ者だ。

 

 




 個人解釈マシマシですが、これがマイカルデア清姫ヒストリーです

 自分的に満足です。

 面白かったら幸いです。感想宜しく

 では、私は第二回村正チャレンジに行ってくる!
 生きていたらまた会おう!!サラダバー!!

 キヨキヨカルデア紹介

 ぐだ男 とりあえずネームドは藤丸にした。名字かもしれない、名前かもしれない。だが謎は明かされることはないだろう。

 清姫 まごうことなきマスターの嫁

 所長 苦労人

 玉藻と刑部姫 清姫のズッ友。おっきーはこの後叩きすぎて手が腫れた。 


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引くしかねえよってね

 

「村正貯金を崩します」

「え!?」

「まあ」

 

 ある日のこと。マイルームでたまたまお茶をしていた世界最高の我が嫁(予定)と世界最高の後輩オブ後輩にそうつげた。

 

 それはもう唐突に。

 

「何故ですか先輩。村正さんで爆死してからよほどのことがない限りガチャを回さなかった先輩が」

 

 あれは辛かったね。

 

「むしろ人って我慢しようと思えばここまでガチャ我慢できるんだなって」

「要因としては我がカルデアには人権キャスターと周回要因がこと足りてるせいもあるかと」

「村正以外な」

 

 村正欲しいです。

 石の貯蔵は充分です(多分)

 

「そんな旦那様がガチャの封印を解禁するほどのサーヴァントとは一体誰なのです? 女ですか」

「うん」

「………」

「あっ、ちょっと熱い」

 

 嫉妬するきよひー、好き。

 

「コホン。それでは私が我慢できずに引こうと思ってるサーヴァントはこちら」

 

【妖精騎士 ランスロット】!! 

 

「あ、妖精の方のランスロットさんですね」

「ですです。正確には妖精にランスロットの力を宿させたので女体化したランスロットではありません」

「当たり前です。ランスロット卿があんな可憐な女の子に転身するわけがありません」

 

 おっとパパイヤマシュちゃんが出てきたぞ? 

 

「まあマシュからしたら少し複雑な子な訳です」

 

 シェフィールドのこととか。

 ………前編は別の意味でドキドキしたよね。

 マシュのアレとかアレとか。

 

 ドレスマシュは可愛かったけど。

 

「性能的にはアーツ単体からスキルでバスター全体になるという。しかも変身したら最大NP100もたまるという。変則クエ向きの性能であります」

「サーヴァントの中で初の仕様ですね」

 

 ついにやったか運営と思ったね。

 

「まあぶっちゃけると。性能などどうでもええのですよ」

 

 俺が妖精騎士ランスロットを引こうとする本命の理由。

 

「絵師さんがあのCHOCO先生なんですよ!!」

 

 それにつきます。

 むしろそれしかないと言っても過言ではない。

 

 CHOCO先生はゼノサーガの絵師で。

 作者の魂のラノベであるインフィニット・ストラトス新装版の絵師さんなのだ。

 

 インフィニット・ストラトス新装版の絵師なのだ!! (大変大事なことなので二回)

 

「もうね。引くしかないというね。ISを愛する者として迷うことなどないんです」

「でも少し迷いましたよね」

「村正貯金という要因がなかったら課金してでも当てたよ」

 

 全てあの時こなかった村正が悪い。

 

「まあこれを引いて今後のIS二次の願掛けにもなればええなと」

「それで目標は」

「宝具2、3かなぁ。村正貯金があるし。おそらく☆4でくるだろうから気楽にまわそうかと」

 

 

 

 人人人人人

 >圧倒的星5<

 Y^Y^Y^Y^Y

 

 デデーーーン!! 

 

 

 

 

「( ´゚д゚)」

「(・・;)」

「( ゚∀゚)」

 

 

 

「清姫」

「はい」

「宝具1に変更します」

「承りました」

 

 イクゾォ!! 

 

 

 

 

 

「さて引くわけだが。今回は槍が来てもゆか喜びしないように。星5ランサーのランスロットちゃんの他になんと星4ランサーのパーシヴァルお兄さんがいるからね」

「同クラスでレア度が分かれてるのは珍しいですね」

「槍ヒー来た! と思ったらタマモシャークが来た! なんてことあったっけ。あれピックアップ分かれてた?」

「ますたぁ様がわからないならここにいる誰もわかりませんわ」

 

 メメタァ。

 

「というわけで引くぜ! カモンCHOCO先生!!」

「先輩! いくらなんでもCHOCO先生は来ません!」

「CHOCO先生は妻子持ちーー!!」

「なんの情報ですか!!」

 

 10連ーーーー死亡! 

 

「まあまだ10連ですし」

「その積み重ねが爆死と呼びます」

「おっとまだ現実を知る時ではないぞよ?」

 

 20連目じゃあ!! 

 

「因みに幾ら崩すつもりで」

「出るまで!」

「勢いだけは良いです」

「だけって言うなよぉ」

「お二人共、今少し画面止まりましたよ?」

「ほえ?」

 

 シュン! 

 

「槍だ」

 

 バチバチバチバチ! 

 

 バチバチキター(゚∀゚ 三 ゚∀゚)

 

「いやー待て待て! パーシヴァルにきの可能性も」

 

 

 

「サーヴァント、ランサー。妖精騎士ランスロット、召喚に応じ参上した」

「( 。゚Д゚。)」

「……まだ、僕との縁はそうないようだね。まあ、おいおい知っていけばいいさ」

「( ;∀;)」

 

 思わず土下座したよね。

 

 因みにシナリオ前に引きました。

 

 まさか20連目で引けるたぁ思わなかったよ。

 この後宝具2にしようと思って30連しましたが全外れしました。

 でも必ず一回は清ひー来たんだよな。

 

 可愛い奴め。

 

 

 

 テテーン。

 

「( ・v・)ムフー」

「レベマ&スキル上げ完了! 種火なら死ぬ程あんだよ!」

 

 もうレベル上げ出来るサーヴァントいないよ! 

 メロンゼリーじゃあ!! 

 

「マスター。スキルが8/8/10なのですが」

「ごめん。どうあがいても無理」

 

 だってこの子新素材72×3なんだもん。

 取りたくてもフリクエなんかないもん。

 

「しかしクール一貫だと思ったらあんな嬉しそうに種火をモグモグするキャラだったとは。可愛いな、いや可愛いな?」

「ありがとうマスター」

「ていうか第三再臨やばいな! 動きやばいな!! 思ったよりISISしてるよこの子!! え? 慣性を無効化して加速も思いのまま? ISじゃないか!!」

「? ISとはなにマスター」

 

 ISとは何かだって? 

 

「よし、君にISとはなんたるかを教えよう。本貸して上げるね。そして戦闘機のゲームやろう。戦闘機好きでしょ?」

「好き」

「よし! じゃあ部屋に行こう! 今すぐ行こう!! きっと気に入る筈だ!」

 

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「(#・∀・)」

「き、清姫さん?」

「なんでしょうマシュさん」

「久しぶりに物陰から怒り心頭のようですが。ランスロットさんですか?」

 

 ネタバレ防止の為真名は伏せてありますが。マシュは■■■■■■と呼んでいます。

 お父さんと一緒になっちゃうからね

 

「なんなんですかあの子は。いささか距離が近すぎませんか! ベッタベタじゃないですか!」

「清姫さんは遠いですね」

「やかましいですよ!」

 

 マシュも言うようになった。

 

「大体。あのランスロットさんと私被ってません!?」

「具体的には」

「まず髪が白い、少女、ランサー、全体単体どっちも出来る、龍、宝具で火傷付与。他にも色々ありますがとりあえず割愛します! そして、そして………………」

「そして?」

「あろうことかあの人! わたくしのますたぁのことを、こ、ここここ恋人だと宣ったのですよ!?」

 

 ある日のこと。

 

 マスターと距離の近い彼女に清姫は物申した。

 

「あなた。マスターとどういう関係のつもりですか!」

「マスターとの関係? えーと、一心同体……ううん。ちょっと違う気がする。所有物……それも違う」

「………」

「ごめんなさい………恋人同士であることを示すには、ちょっと難しい」

 

 

 

 

 

「なんて! なんて言ったんですよ!! 初対面から恋人認定だなんておこがまし過ぎます!!」

「清姫さんブーメラン! グランド級にブーメランです!!」

「わたくしは正妻だからいいんです!!」

 

 ムーとぶんむくれる清姫にどうしたものかとマシュ。

 

「あれどうしたの。なんか喧嘩してる?」

「あ、先輩」

「ます! ………たぁ?」

「どうしたきよひー」

「それはなんですか?」

「ランスロットちゃん」

 

 現れた愛しのマスターの胸には。

 蝉のようにしがみつく妖精ランスロットの姿が。

 

「いやね。さっきこの間の蓬莱島のレポート纏めてた時にランスロットちゃんが来て。幽霊とエンカウント」

「べべべ別に幽霊なんて。た、倒せれば問題ありません!」

「倒せないパターンもあったんだよね」

「~~~~!!!」

 

 更にギューーっとしがみつく妖精ランスロット。

 その頭を優しく撫でるマスター。

 そしてそれを見て瞳の炎をメラメラと燃やすきよひー。

 

「マスター! その子と離れてください! 私が変わりに抱きつきますから!」

「ぶれないきよひー、好き。でもねこの子」

「ムーーーー」

「離れないのよね」

「離れなさーい!!」

 

 ぐぬーっとマスターの身体から妖精ランスロットを引き剥がそうと試みる清姫とマスター。

 しかしアロンアルファでつけられたように離れないランスロット。

 どうしたものかとオロオロするマシュ。

 

 妖精騎士ランスロット。

 

 クール一辺倒な彼女の根っ子は開幕全力全開なマスター大好きっ子ドラゴンだったのであった。

 

「マスターのお嫁さんは私ですーー!!」

 

 そして今日も清姫は可愛かった。

 




 設定では自分を愛してくれれば第二第三の妻はある程度容認するらしい清姫ですが。
 うちのカルデアでは色々あって玉藻っちと同じ浮気絶許ハーレム撲滅派に。

 ということで妖精ランスロットちゃんが無事にカルデアに来ました。ありがとうございます。
 CHOCO先生!!俺はやりましたよ!!
 宝具5じゃないのは許してください。財産が死ぬ(真面目に)

 妖精騎士はみんな良いキャラよね。個人的にドストライク。ガッツ(清姫)がなければ危なかった。

 8月4日が待ち遠しいですね。
 とりあえずお城の妖精は剪定しなきゃという鋼の意思を持って行こうと思います。


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行くぞマスター!聖晶石の貯蔵は充分か!?



 なわけねえだろ馬鹿野郎!!
 エヌマするぞこのやろう!!


【今回はコヤンスカヤ、オベロン、モルガン降臨記念となっております】


 

 

 コヤンスカヤ光! ピックアップ開始!! 

 

「というわけで引くぞぉ!!」

「あぁ、ますたぁの村正貯金がまた削られていくのですね」

「だ、大丈夫です清姫さん! 課金してないからまだ大丈夫です!」

 

 というわけでね。まさかのコヤンスカヤさんピックアップですよ。

 これでFGO2期初回サーヴァントCMの鯖がみんな出たことになるのね。

 

 しかもなんですか。マーリンに変わる人権バスター鯖というじゃないですか。

 引くしかねえよこれは。

 

「というわけでおいでませタマモヴィッチ!!」

 

 シュイーン

 シュイーン

 シュイーン

 シュイーン………

 

「………来ないな!!」

「まあ今までの運が良かったのですよ」

「だよなぁ。ていうか清姫ってタマモ族に対してはなんかないの?」

「ますたぁを狙う可能性のあるメル友の親戚見たいな感じですわね。手を出すなら即燃やしますが」

 

 流石清姫。それでこそ清姫だぜ。

 

「しかしこれ以上の消費は後に響くな。このあと高確率であいつ(・・・)来るし」

「そうですね。あの人? が来ますね」

「わたくしは来てほしくありませんが。来てほしくありませんが!」

 

 まあ、そうよね。

 

「このまま無策でブッパするのも芸がない」

「どうしますかマスター………何を書いてるので?」

「………よし。マシュ。ちょっとこれ読んで」

「はい?」

 

 

 

 

 

 

「藤丸ぅぅぅ!!」

「おっと所長、お早いご到着で。おはようございます!」

「何呑気に挨拶してんだ! マシュ・キリエライトから通信で『ゴルドルフ所長! 先輩がコヤンスカヤさんを召還しようとしています!』なんて聞いた時紅茶を盛大に吹いたぞ!!」

「それについてはすいません。でも挨拶は大事っていつも言ってるのは所長ですよ」

「やかましい! 貴様なにをしてるんだ! 私に黙ってあの女狐を召還するなど遂に気が狂ったか!?」

「失礼な! 俺は清姫を愛した瞬間からもう狂ってますよ! 恋に!!」

「更にやかましいわ!!」

「ますたぁ………」

「お前もときめくな!」

 

 今日も所長の胃痛がマッハです。

 

「とにかく召還は許さん! 断固としてだ! そもそも奴はカルデアを滅ぼした元凶の一つで………」

「マシュ」

「失礼します所長!」

「ぬあっ!?」

 

 後ろからマシュに羽交い締めにされる所長。

 空中でパタパタと太い足を浮かせることしか出来ない所長は見事無力化された。

 

 すいません所長。シリアス空間は前回で打ち止めにするようにしたので。

 

「キリエライトくん!? 君は私を止める為に呼んだのでは!?」

「すいません所長。先輩の財産のためなので」

「期待を裏切るようで悪いですが。マシュは俺が渡したメモをただ読み上げただけですよ」

「お前キリエライトくんに嘘を言わせたのか!?」

「それは勘違いです所長。マシュは一度でも先輩を止めてくれと言いましたか?」

「悪魔めぇぇぇーー!!!」

 

 フフフ。清姫との対話と数多の英霊たちとの間で鍛え上げられた俺のコミュ力と言語構築力を嘗めないで頂こう。

 この程度の言葉遊びなど造作もないですとも。

 

「というわけで所長には触媒となっておりめす。所長にも縁あるでしょうし、というか縁しかないでしょうし。さあ、レッツ共犯」

「ふざけるなぁぁ! はやく離せキリエライト! おい聖晶石を振りかぶるな」

「そぉい!!」

「あぁぁーー!!」

 

 シュイーン

 

「おっ! いきなり虹!!」

 

 ビュオーーーン。

 

「よし殺きた!」

 

 シューーン

 パシーン

 

「このたびは召喚のほど、ありがとうございます。潜入、生産、商談、販売。人類の皆様のあらゆるニーズにお答えするNFFサービス代表、タマモヴィッチ・コヤンスカヤ/光! ここに参上いたしました!!」

「来たぁぁぁぁ!!!」

「いやぁぁぁぁ!!!」

 

 マスター歓喜。

 ゴッフ、絶叫。

 

「ってあら。元クライアント様じゃないですかぁ。そんなすっとんきょうな声上げてどうなさいました?」

「自分の胸に手を当てて聞いてみろ!!」

「あらやだ。初台詞が私のナイスバディに対するコメントだなんて。やはりわたくしにお胸に劣情を?」

「関係ないことを言うな!!」

「でも秘書時代にチラチラチラチラチラチラチラチラ見をしているの知ってますよ?」

「そんなに見てないわ!!」

「清姫」

「はい嘘」

「んがぁぁぁぁぁ!!」

 

 所長。イナバウアー。

 いやわかるよ。おっぱいは正義だもんね。

 劣情感じちゃうもんね。

 

「あの、コヤンスカヤ、光? さん」

「はいなんでしょう」

「何故カルデアの召還に応じたのですか。私たちは一応」

「敵同士。ええまあそうでしょう。そのことに関しては永遠に忘れませんとも。しかし今回は少しだけ予定の前倒し。未来からやってきた万能美人秘書型バニーということなのです!」

「「バニー?」」

「詳しくは第二再臨後に」

 

 オケ。

 

「ていうか未来って言いました?」

「ええ。英霊の座には時間軸関係ありませんので。そちらにもチラホラいらっしゃるでしょう」

 

 ああいるね。

 エミヤとかエミヤとかエミヤとか。

 

 少し先の話だが。アヴァロンクリア後にリンボホール反転バージョンの白い点があるんだよな。

 いったい何6、5異聞帯なんだ………。

 

「ということで宜しくお願いしますねマスター? 。毒を以て毒を制す。そういうの、お好きでしょう?」

「ええ。大好物ですとも」

 

 お互いニヤリと笑みを浮かべながらグッと固い握手をかわした。

 

「大変です先輩! 所長が泡吹いて倒れてます!」

「メディーーック!!」

「要救助者はこちらですか!?」

「症例はなんだ! 見せろ!!」

 

 

 いやー壊れですわ。またも革命したな運営

 

 コヤンスカヤシステムによるバスター3ターン。

 クイックやアーツと違って敵の数に左右されないのが凄すぎる。

 欠点と言えば対象キャラの狭さと安定には凸カレかアペンドMAXだけども。

 まあ後半は他のシステムにも言える。

 

 とまあこんな感じで我がカルデアにピンクフォックスバニー降臨。

 振り替えるとほんと魔境だなカルデア。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 落ちる。

 堕ちる。

 墜ちる。

 オチル。

 おちる。

 

 ただ落ちていく感覚しかない。

 何もない真っ暗な空間をいつまでも。

 

 あいつらに負けてからずっとこれ。

 もう時間の感覚さえなく落ちていく。

 

「あーー考えんのもめんどくさい」

 

 生まれて直ぐにこの国滅ぼせーなんて使命背負わされて。嫌々ながらやったけど。

 

 俺の本体呼び起こすにしてもケルヌンノスが文字通り蓋してたし? ほんとなんなんだよあのモフモフ。

 

 その上モルガン倒すなんて絶対無理だし。

 倒したとしてもバーヴァン・シーかノクナレアがいるからそこもなんとかしなきゃならんかったし。

 

 ろくに動ける駒なんてブランカだけ(他の妖精はアソンデーって言うだけでなにも出来ないし)。

 しかも頼みのアルトリアもご存じのとおり糞妖精どもの吐き気がする環境相手にあれこれやんなきゃ行けなかった。しかもあのクソ夢魔の真似なんかして。

 

 おまけにあのクソ女のご機嫌取りをしながら円卓軍を一から作り上げないといけないし。

 

 しかも本命の夢魔から隠れるために能力使いっぱで、あれはマジ疲れた。

 

 何よりも疲れたのは。このおぞましい世界を笑顔で取り繕わなきゃいけないこと。

 20年だぞ? ヤバイだろ。普通に、正気の沙汰じゃねえよ。

 

 俺凄い働き者じゃない? 

 

 結果的に妖精國をぶっつぶせたけど

 汎人類史までは壊せなかったし。

 

 ここまでして負けるって………ナニソレ。

 

 ふとあの二人が脳裏によぎる。

 

 なんの力もない癖にあるかわからない未来を夢見て走る馬鹿。

 力を秘めてるけど結末がどうあがいてもバッドエンドなのに答えを知りたいが為に走る馬鹿。

 

「………いうて俺も馬鹿か」

 

 区切りがついたので俺はまた眼を閉じて無限落下に勤しんだ。

 

 そういえば。俺も一応サーヴァントだからあいつに召還される可能性もあるのかね。

 縁ってのが必要だけども。

 

「プフッ。ハハハハハハハハ!! バッカらしい! 誰が召還されてやるもんか!! もし召還されたらそれはもうマスターの為に働いてやるとも!! 召還出来るもんならやってみやがれってんだ!!」

 

 ジョウズニフラグタチマシター。

 

「あっ? なにいまの。は?」

 

 ふと、落ちていくのと反対方向から青い光が

 段々と、段々と。それは凄く凄く強くなって。

 

「まぶしっ!」

 

 落ちていくオベロンを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 シューーーン!! 

 

「………………」

「………………」

 

 目を開けるとそこにはよーく知ってるアホ面と。そいつに付き従ってる盾のやつ。

 

「なんだこれ。なんだってこんなコトになっている?」

「いや俺に言われても困るよ?」

 

 またそんな間抜けそうな顔しやがって。

 

「………あっそう。人理が安定するまで嘘は嘘でまかり通る訳ってこと? てかお前もしかさしてさ」

「オベロン召還する気で回しました。イェイ」

 

 イェイじゃねえよクソが。

 

「はぁぁーー。いいよ、諦めた。そういう人間だもんな、君は。───僕の名はオベロン。喚ばれたからには力を貸すとも

 

 

 心底、気持ち悪いけどね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや。たった20連で来たのにその台詞言われてもツンデレにしかならねえぞオベロン」

「はーーー? なにそれ。僕がホイホイ召還すされるようなチョろい奴だとでも言いたいわけー? うわー流石人類最後のマスターだー。頭の中やっぱすっからかんなんだねぇ」

「だってまだPretender流してもいないし、マーリンも霊基保管室に監禁してないのに。20連で来たし。20連で来たし。やっぱチョロいんじゃねオベロン」

「よーし! 殺す!!」

 

 オベロン が 仲間 に なった!! 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、藤丸です。

 現在愛しの清姫は紅閻魔師匠のところでレッツクッキングしています。

 

 そしたらメロンを持ったオベロンが来たよ。

 

「お前ってほんと気持ち悪いな」

 

 そしてこの暴言である。

 

「といいつつ清姫いないとこを狙って来る辺り満更でもないオベロンであった」

「あまりふざけたこと言ってるとメロンぶつけるぞ」

「その場合オベロンのメロンは見事に廃棄処分だよ」

「フンッ」

 

 不機嫌さMAXでメロンを食らうオベロン。

 コラコラくちゃくちゃ音たてないの。

 

「うるさいよ」

「え、声出て。ああ妖精眼か。で、わざわざ来て気持ち悪いとは何事」

「お前ってなんでこんなとこで生き残れているの?」

 

 どういうことですかい。

 

「英霊どもだよ。あんな国も志も違う魑魅魍魎と居てよく笑顔でコミュニケーション取れて生きてられるなって意味だよ」

「あー、それについては。慣れだね」

「うわーざっくりしてるなぁ」

 

 こればかりはね。

 ここに来る前はそんなにコミュ力高くなかったんだけどな。

 

「それにさぁ。俺が黒幕でしたーってなった時全然驚かなかったよねぇ。マジで期待外れ」

「新キャラの優しそうな男は高確率で裏切るのは今まで学習済みですから。4回もそうなりゃそれこそ慣れよ慣れ」

「5回も裏切られてる顔じゃねえよ」

 

 ほんとねぇ。

 亜種特異点で実は黒幕でしたパターン多すぎね? ってぐらい裏切られたもんなぁ。

 てか全部じゃね? 

 

「あとあの蛇女なんなの。召還されて直ぐ燃やしに来るとかマジでなんなんだよ」

「だってオベロンだし」

「納得いかねえ。俺だって好きでこうなったわけじゃないし」

「あっ、今のは本音だね?」

「嬉しそうにすんなアホ」

 

 メロンを食し終わったオベロンは。そのままベッドに倒れ込んだ。

 俺のベッドなのに無遠慮で寝転がるとか。

 そんなんで俺のこと嫌い言うても説得力ないぞ。

 

「そういやさ」

「なんだよ」

「ブランカも一緒に来たんだね」

「………」

 

 うわっ、すげーイヤそうな顔。

 

「あとウェールズの妖精も部屋にいるらしいじゃん。今度遊びに行くから」

「断る」

「それを断る。芋虫妖精撫でさせろ」

「ダンゴムシの裏面見せてやろうか」

「それやったらマジで燃やすからな。俺はお前と違って嘘言わんからマジでやるからな」

「じゃあ俺は燃やされないうちに退散するわ。そろそろ戻るだろあの蛇女」

 

 そんな人の恋人捕まえて悪意込めんなよコノヤロぅ。シェイクスピアぶつけんぞ。

 

「あ、そうだオベロン」

「なに………」

「俺はオベブラ。最高だと思うぞ」

「SI・NE」

 

 オベロンは最高の笑顔と共に部屋を去っていった。

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ドドン!! 

 

【モルガン。再ピックアップ!!】

 

「ぐふぉぉっ!!」

「先輩!? 突然倒れてどうしました!?」

「大丈夫だマシュ。致命傷だ」

「英雄王の真似しないでくださいな」

 

 くそぉっ! 

 商売上手にも程があるぞ運営!! 

 

 的確にアヴァロンクリア勢の財布を殺しに来ている!! 

 

 ただでさえ今回消費ヤバイのに!! 

 これまでメリュ子とコヤとオベが無事に当たったから運命力もヤバイぞ!! 

 

「だ、だが引かねばならない。俺にはモルガンを引かなければならない理由がある。いくぞぉ!」

 

 そぉぉいっ!! 

 

 

 

 

 

 

「チーーン」

 

 こ、こねぇ。

 ためにためてた村正貯金もピンチに。

 やべぇ、これはやべぇ。

 来るべき村正の石がなくなってしまう。

 

 モルガンの能力は周回でも魅力的だから欲しいんだよなぁ。

 オベロンは霊基保管室にぶちこんだのに来ない。

 

「うーーん。やめるべきかなぁ」

「えっ………………」

 

 断念しようとしたら入り口の方からか細い声が。

 振り向くとそこには。赤毛の妖精が物陰からこちらを見ていた。

 うちに先んじて来ていたトリ子ことバーヴァン・シーである。

 

「いたのバーヴァン・シー」

「いたよ。ていうかお前お母様召還しようとしたの?」

「そうだよ」

「バッカねー! お前見たいな雑魚マスターにお母様が召還に応じるわけないじゃん!」

「うわぁお酷い言われようだ。一応トリ子の為に呼ぼうと思ってたのに」

「頼んでないし」

 

 そうだけども。

 

「うーん。じゃあ今回は諦めるかな。石も無限にあるわけじゃないしね」

「そうしろそうしろ。お前なんかさっさと帰って寝てんのがお似合い」

「なーんて言うわけないだろソォォイ!!」

 

 圧倒的続投! 

 

「ちょっ!?」

「すまねえなトリ子。ちょっと弱気になったがやっぱ引くぜ俺はぁっ!」

「いや、だけどこのままじゃ石なくなるぞ!?」

 

 困惑した顔で石の貯蓄を指摘するトリ子。

 くそぅ。やっぱこの子良い子なんだなぁ。

 そんな良い子には救いがあるべきと思わんかね諸君。

 

「なぁにまだ石は100ある、ということはあと三回回せる! 出なきゃ諭吉続投とやぶさかではない!!」

「なんでそんな必死に」

「お前は幸せであるべきだし!! ならモルガンに合わせて笑って欲しいし!!」

 

 ブリテンから離れたあとオベロンから知った妖精國の闇の部分の数々。

 そしてその中にはバーヴァン・シーの真実もあった。

 

 あの9、9部畜生妖精どもの中でも疑わしいほど善良な子。

 それがこの赤毛の子だ。

 

 メリュジーヌやバーゲストには幾らかの救いがあったが。

 この子には救いがなく。ケルヌンノスの供物に。

 冗談じゃない、そんなのクソ食らえだ。

 

「俺は根っからのハッピーエンド主義者なんだよ!! 尊い光景が大好きなんだよ! だから来いやモルガン!! 娘さんが待ってるぞぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 おっ!? 

 

 来た、金回転!! 

 そしてバーサーカー………

 

「………私を召還したのですね。バーサーカー、モルガン。妖精國ブリテンの女王にして、汎人類史を鈍い続けるも──」

「お母様ぁぁぁぁ!!!」

「のぉぉぉぉーーっ!!?」

 

 トリ子からのジャンピングフライングダイブを食らったモルガンは彼女らしからぬすっとんきょうな叫び声を上げながら床を滑っていった。

 

「え、なんです? え、バーヴァン・シー?」

「お母様ぁぁぁぁ!!」

「な、なんで泣いてるのです? 誰に泣かされました? 直ぐ処断するので言いなさいバーヴァン・シー」

「うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 盛大に泣き叫ぶトリ子とどうして良いかわからないオロオロモルガン。

 

 マスターは悟られないようにその場からクールに去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 それからというものの。モルガンとトリ子はそれはもう幸せ成分抜群でカルデアライフを楽しんでます。

 

 ああ、引いたかいがありましたとも。

 なにはともあれ。

 

 ブリテンを守りし妖精たちに。

 

 幸あらんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………まあ問題点もあるけども

 

「マスター! いえ我が夫よ! 城はいつ立てましょう!!」

「立てんよ」

「あと私以外のバーサーカーの解雇はいつなのです!」

「俺に死ねと言うのかなほんとに!」

「そうだそうだ! お母様の言うことを聞けこのお父様(仮)」

「乗るなトリ子! あとその(仮)は絶対はずすなよ!?」

 

 ほんとなんというか。妖精の恋愛観ってほんとワープドライブしてるな! 

 

「またですかあなた! 何度も言いますがマスターの嫁は私です!!」

「黙りなさい。マスターの伴侶は私です」

 

 そして例のごとくシギャー! と威嚇するキヨヒー。

 立て続けにライバルが出てきて心労がヤバイんだとか。

 

 心配しなくてもこれから先心変わりなんかする可能性欠片もないのに。心配しすぎたよキヨヒー。

 

「それでも不安なんです!!」

 

 だそうです。

 とりあえず俺は後で清姫を撫でようという密かな決意を胸に宿しながらこの状況を打開すべく動くのだった。

 

 ………あとそこの後方エミヤ顔してるエミヤは後でシトナイでシメるとしよう。

 

 

 

 

 






 ほんと、えぐいガチャラッシュでした。
 貯金しといてよかった。


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リボン付き清姫(6度目)

 

 

「緊急会議です!」

「うん、意気込みは分かるけど姫の炬燵を使わないで?」

「だってここしか座るところが」

「姫の部屋を汚部屋みたいに言うのやめて? じゃなくて姫の部屋じゃなくていいじゃん。私忙しいの」

「ネーム真っ白なのに?」

「ふぎゅ」

 

 カルデア某所、刑部姫の部屋。

 そこはあらゆる英霊が闊歩するなかでも異彩を放つオタク部屋がおっきーの部屋となっている。

 その炬燵は女性サーヴァントの溜まり場になることが多く、刑部姫は宝具で閉じてやろうかと真剣に考えている。

 

 因みに一回マジでそれをやってカルデア精鋭人に突破されて部屋が滅茶苦茶になったことがあるので飽くまで考えているだけである。

 

「もうすぐバレンタインじゃないですか」

「そうだね」

「どうしましょう」

「いや知らないよ。普通に作ればいいじゃん。なに作ってもまーちゃんなら喜ぶでしょ」

「でもなんか。最近凄い人や凄い物作る人多いじゃないですか!」

「まあねぇ」

 

 身の丈のチョコだったり。聖遺物だったり。

 他の暫定ライバルたちも隙あらば清姫からマスターを略奪せんと色々計略を回してるなか。清姫がもっとも警戒してるのはその名だたる英霊ではなかった。

 

「もうほんとなんなんでしょうかね。マシュさんは」

「マシュちゃん? あの子そんな変なの作ったっけ」

「作ってませんよ。至って普通なんです。なんですけど………なんなんですかあのクオリティは!!」

 

 一番最初のハートチョコケーキでさえ西洋菓子に疎かった清姫が思わず舌を生唾を飲むぐらい綺麗で。

 その次のホワイトハートケーキなんかもう段階すっ飛ばしてなんか凄いの作りましたし。

 そのまた次のマンゴーフルーツケーキなんか、もう輝いてましたよ! (レシピ動画凄かった)

 最後なんてもう、なんですかあれ。プロですよ、プロ過ぎてマスターガチ勢も一歩引きましたもん。

 

「今年はどんなとんでもないものが出るかと思うと………」

「マシュちゃんの上達力は異常だよね。それでもきよひーには愛があるじゃない。いざとなったらあのリボン清姫とかあるじゃん。初見時にマスターの度肝抜いたさ」

 

 刑部姫がヘラヘラ笑いを浮かべながら茶かす。

 こうなると清姫は気合いを入れてリボン巻く復習をしてきます! と言って飛び出すのだが。

 

 今回は何故か頬を赤らめて炬燵布団で口許を隠した。

 

「きよひー?」

「今年は、やりません。というより、もうやりません」

「え? なんで」

「………………実は。いつも通りマスターの後方警備をしていた時なのですが」

「ストーカーね」

 

 ホワンホワンきよきよー………

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~今日もますたぁは素敵です」

 

 乙女力全快でハートが飛び交うオーラを醸し出す清姫はカフェルームで男性サーヴァントと談笑しているところを入り口から見ている。

 廊下ですれ違う人やサーヴァントもいつもの光景と対して気にすることなく通りすぎる。

 

(いったい何を話されておるのでしょうか。もう少し近付いてみましょう)

 

 ササッとカフェルームに入るゴルドルフ所長(冷や汗)の巨大な体躯にコッソリと紛れ込みマスターの2つ隣のテーブルに身を潜めた。

 

 ストーキングスキルという唯一無二のスキルを持つ彼女は半ば気配遮断的な効果(マスター限定)も付与されており、今回も最愛のマスターには気づかれていなかった。

 

 え? マスターは愛さえあれば気づくんじゃないかって? 

 それは清姫がマスターに対して集中的に気配遮断(自己暗示)を使ってるからである(きっと)

 思い込みで龍になったのだからこれぐらいはお茶の子さいさいである。

 

 してマスターと談笑しているのはロビンフッドとオリオン(熊)だった。

 いったい何を話してるのか。

 

「もうすぐバレンタインですよ」

「それで?」

「清姫どんなので来ると思う?」

「普通の奴じゃねえのか? 一昨年も去年も特に変なもの入ってなかったろ?」

「紅先生の指導の賜物だわ。チョコ饅頭で次がホールケーキ。旨かったなぁ………」

「惚気か? 惚気だなこのやろう? 俺は去年もチョコになったんだぞコラァ!!」

「うるさいクソデカ恋愛感情持ち。お前は今すぐアルテミスとイチャコラチュッチュしやがれ! 召喚してやったんだからエモエモ空間だせコラァ!」

「あーー! 足を基点に振り回さないでぇぇー!」

 

 カルデアマスター。

 数々のカップルの仲を応援するものである。

 

「いやさ。毎年恒例ながらさ。あれあるじゃない」

「あー。? 私をた・べ・て♪ っていうリボン付き清姫ってやつだろ? かー! 羨ましいなぁ、しかし身体にリボンといったらあれだよな、裸にリボ」

「クラッチ」

「ぶぎゅぅ!? ちょ、アイアンクローやめて? なんで? なんでさぁ!?」

「お前清姫でいやらしいこと考えたろ。アルテミスにチクるね」

「やめてぇ! 今度チョコになるだけじゃなく溶かされちゃう!!」

(私のために怒ってくれてる。ますたぁ素敵! 好き!)

 

 それはそれとして先ほどオリオンはなんと言ったのか? 

 裸にリボン? 裸に!? さ、流石に際どすぎますわね………でも、でも、キャーーー。

 

 一人悶絶しながらも今は会話を聞かなければと口から炎を出すのを抑えて続きを聞いた。

 すぐ後ろにいる蛇ガールにびくびくしてるゴッフは完璧に無視しつつ。

 

「はいはい二人とも。話進まないから漫才はそのへんでな? それで? そのリボンお嬢さんがどうだって? いつも通りならなんの問題もないだろ?」

「………それがさ。なんというか………きよひー最近更に綺麗になったと思わない?」

「そうか? あんまり変わらねえと思うけどよ」

「サーヴァントは基本成長しないからな。体型が少し変わる程度はあると思うけど」

「んーとね。その、色気が増してきたのよ、彼女」

 

 そう、最近清姫は美少女な装いながら美人になってきている。

 カルデアに召喚されてもう6年たつ。12歳で他界し、そのままの姿で現界した彼女も精神的にはもう18歳。

 肉体に精神が引っ張られるのが英霊とはいえ。大なり小なり精神的な成長はあり。清姫も例外ではない。

 

「最近隣にいると別種のドキドキを感じてさ。しかも無防備だし、だからといって手なんか出すのはなんかアウトだなって思って」

「え? もしかしてまだそういうのはなしなのかマスターは?」

「あるわけないだろ」

「流石にそれはヤボってもんだぜオリオン。精々キスのぐらいはしてるだろうさ」

「………………」

「え、まさか? 嘘だろマスター」

「ねえのか?」

「いやあるよ………………5回ぐらい」

「「えーーーー?」」

 

 マスターと清姫は紆余曲折の末に心からの交際を果たした。

 それからも仲睦まじい、いやそんなもので済まされないほど甘い関係を構築した彼らはカルデアきってのベストカップルとして時には嫉妬を、時には暖かく見守られてきた。

 そんな二人が本島の意味で付き合ってからもう数年。流石にABCのAぐらいは毎日してるもんだと思っていた。

 

「流石に大事にしすぎじゃね?」

「いや、ほんと清姫って逸話の割りに本当にウブでさ。最初にやろうとしたら直ぐに赤面してそのままパタリと倒れるぐらい」

 

 普段から「子供は何人欲しいですか?」とか「子供の名前は珍姫というのはどうでしょう!」とか(その名前だけは何があろうと阻止すると心に決めた)

 などなど思わせ振りな発言が目立つ清姫だが。

 

 いざ此方から踏み込むとクラスバーサーカー宜しく途端に日和って顔を真っ赤っ赤にしてしまい、最悪前述のようにキャパオーバーで倒れてしまう。

 

「まあそれでもなんとかキスまでは………ってそんなのはどうでもいいんだよ………清姫ももう18でしょ。精神的に」

「うん」

「これまでも度々そういう、その………えっと」

「お誘いとか?」

「う、うん。まあそういうの。その度にまだ責任取れる歳じゃないから駄目って言い続けていたんだよね」

「マスターの国だと結婚出来るの18からだったよな。あ、そういうことか」

「うん、そゆこと」

 

 清姫は(精神的に)18歳になった。

 ということはだ。

 

「もう俺と清姫はそういう関係になってもいいのだって暗黙の了解がたってしまってな」

「成る程、誤魔化してきたけどもう誤魔化せない領域に来たと」

「いや勘違いしないでくれ? 俺だって男だから清姫とはそうなりたいよ?」

(そうなのですか!!?)

「清姫はあんな容姿なのにスタイル抜群でそれなのに無自覚でも誘ってくるからほんと理性がヤバい時もあった。あとなにより可愛いし! 好き!!」

 

 清姫は所長の影(厳密には所長の肩)から思わず覗き込んだ。

 いつもいつもやんわりと断るから自分に魅力がないのではと危惧していたが、まさか杞憂だとは。

 清姫は体温が更に上がるのを感じた。所長は体温が下がるのを感じた。

 

「ようするにだ。次リボン付き清姫が来たら理性がブロークン・ファンタズムしてマスターのマスターが真名解放しちまうと」

「最低な言い回しだなこのプレイボーイめ! BBにお仕置きさせるぞ!」

「だけどどうすんだ? あの嬢ちゃんなら今年もやるだろ」

「そうなんだよ! もうどうしたら良いかなぁ!」

「フェルグスの旦那に相談したら?」

「部屋は取ってあるルート待ったなしだわ畜生!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「というわけなのです」

「お疲れ様でーす! おやすみ!」

「見捨てないで下さいまし!」

「うるさい! 惚気になるんだろうなと思ったら案の定惚気だったわ! 爆発しろ!」

 

 実装当時は男を手玉に取ってお金を搾り取るイメージが先行していた刑部姫であったが。その身恋愛クソザコサーヴァントの一柱を担うほど乙女な女の子なのであった。

 

「ていうか明らかに人選ミスでしょ。もっといい人いるじゃん。玉藻っちとか」

「あの人は水着霊基の時バレンタインでマスターを食べようとしたから駄目です」

「薫子さんは?」

「あの人はもう未亡人オーラで無自覚にマスター狙うので駄目です。今年の礼装で数多くのマスターの心を射貫きましたし油断なりません」

 

 OL薫子さんいいよね。

 

「もう大人しくリボン巻いてマスターに食べられたらいいよ」

「そんな投げ槍な」

「早くしないと妖精組に取られるよきよひー。モルガンとかメリュジーヌとか明らかにヤバいの来るよ。きよひーと付き合ってるとか関係なく取りに来るよあの人ら」

 

 バーサーカー全解雇とかカルデア滅ぼすとか言う奴はスケールが違う。

 

「………………」

「なんか怖がってる感じ? きよひー」

「それは………」

「もしかしてさ。迫ったらまた断られるとか思ってたりする? 安珍の時みたいにさ」

 

 安珍清姫物語では安珍に一目惚れした清姫が夜這いをかけにいって断られ。「帰りにはよります」と言われたのに清姫を恐れた安珍は嘘をついてそのまま遠くに行ってしまい。

 嘘をつかれた清姫が追いかけて鐘の中で蒸し焼きという物語。

 

 もし例年通りに行って断られたら? 

 清姫はかつてのトラウマが甦ることを恐れていた。

 

「勿論恥ずかしいというものもあります。でもそれよりもまた怖がられるのが怖いのです」

「まーちゃんなら大丈夫だと思うよ? 清姫が求めても断らないし。嘘をつかないって決めてるならなおさらでしょ。てかそんな言うならリボンやめたら?」

「それはそれでマスターをガッカリさせてしまうのではと」

「もー、そういう恋愛経験値は同人しか知らないよ姫はー………どっちにしろさ。まーちゃんは決して無理強いはしないと思うよ?」

「それはわかってます。ますたぁは優しいですから」

「わかってるじゃん。仮にリボン巻いて行ってさ、清姫が誘ったらまーちゃんはちゃんと応えてくれるし。清姫がやっぱり駄目だって言ったらまーちゃんも受け入れてくれるよ。つまりどんなきよひーでも、まーちゃんはオールオッケーってことでしょ」

「そうでしょうか」

「最後はきよひー次第だよ。でもウカウカしてるとさっき言ったみたいに妖精組とかその他古参サーヴァントに取られるかもよ。まーちゃん最近凄い男前になったし! とにかく頑張んなよきよひー」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ついにバレンタイン当日になってしまった。

 

 不詳マスターである俺は今年もバレンタインイベントに巻き込まれ。

 そして数多のサーヴァントからバレンタインというなのプレゼントを貰いに貰って気付けば夜になってしまった。

 そんなお返しで少し狭くなったマイルームで俺はあの娘を待ち続けている

 

 ………きよひー朝から全然見ないな。

 今日は色々覚悟していたのだけれど。

 もしかしてこのままバレンタイン無しなんてこともあったり? 

 

 そんなことあったら俺は死ぬるぞ。

 

「ますたぁ、入っても宜しいですか」

「んー? いいよ、ちょい待ってて」

 

 と噂をすればきよひーが部屋に。

 あれ。鍵渡してるから開けれるはずだけど。

 

(ハッ!? 

 

 もしかしてリボン清姫だからか!? 

 ヤバい心の準備はオッケーだが魂の準備がまだ足りぬぞぉ! (意味不明)

 

 ええいままよ! 

 頼むぞ俺の心の中のシグルドとラーマと項羽様! 

 今こそ覚悟を示す時! 

 

 覚悟は道を照らす! 

 オープンザドアー!! 

 

 ウィン。

 

「あ、ますたぁ。こんばんは」

「………………………………」

 

 あれ? 普通の着物きよひーだ。

 リボンきよひーじゃないぞ? 

 

 あれ? 毎年リボンだったのに今回だけノーマル? 

 

「ますたぁ?」

「あ、いや。どうしたのきよひー。鍵なくした?」

「それがお部屋に忘れてしまったまま外に出たみたいで」

 

 それはまた。

 きよひーのお部屋=俺の部屋だから何処かにあるか? 

 

 しかし色々覚悟してたのが盛大に空振りしてしまったな、タハハ。

 

「はいますたぁ。バレンタインでございます」

「ありがとう清姫」

 

 うむ、今回はイベント的なものはなしでストレートなものか。

 これも新しいな。さて中身は。

 

「おっ! チョコがけマドレーヌと、これは抹茶チョコ?」

「抹茶の羊羮です。ホワイトチョコに抹茶を入れて、白餡と合わせました」

「美味そう! 食べても良い?」

「勿論ですわ。お茶お入れしますね」

 

 お菓子に合うお茶っ葉も貰いましたのよと台所に向かう清姫を後ろから眺めながら俺は清姫が何時もと違うことを看破していた。

 

 いつもバレンタインではテンション天元突破な清姫が異様なまでに大人しい。

 誰かからの入れ知恵か。いや、やはり。

 今年だからなのか………

 

「はいどうぞ」

「ありがとう。ではいただきます」

 

 まずチョコがけマドレーヌを、美味い!! (即落ち)

 マドレーヌはバターが効いててしっとりジューシー。少し厚めに塗られたチョココーティングは俺好みの厚さだ。贅沢過ぎる! 

 

 次は抹茶チョコ羊羮

 チョコ羊羮ってなんぞ? ってなるがおもむろにパクり。

 んっ! これはなんとも。

 上品な抹茶、ホワイトチョコ、白餡が見事にベストマッチ! まろやかで濃いけどしつこくない。

 えっ、これ高級店の味なのでは? 高級店行ったことないけど。

 

 これを1日で消化するのはもったいない。マドレーヌをあともう1個、羊羮はいま食べてるワンブロックだけにしておこう。

 

「ご馳走さま。すっっごい美味かったよ」

「それはよかった。マシュさんに負けないようにと頑張りましたので」

 

 なんでマシュがターゲットなのかはわからんが意気込みはチョコと共に伝わってきた。

 

「………………」

「………………」

 

 無言。圧倒的無言。

 

 これもおかしいぞ。俺との会話では場を持たせることなら右に出るものはいない清姫。話題レパートリーの数は安珍清姫の文字数を軽く越えるほどの引き出しを持ってるというのに。

 

 やはり様子がおかしい。

 なにかあったのか。少なくとも俺はなにもしていないと思うのだが。

 

「ますたぁ」

「どうした」

「もし、私が今あなたに迫ったら。あなたは拒否なさいますか?」

 

 勿論拒否などしない。

 緊張はすれど拒みはしない。

 そういう約束だ。そういう約束をして彼女と過ごしてきた。

 清姫もそれを守り。アプローチや素振りを見せるも一線を越えたことはしなかった。

 

「わたくしの馴れ初めは勿論ご存知でしょう。私は拒絶され、嘘をつかれ、彼を焼き殺しました。勿論ますたぁがそうとは言っていません。あなたはきっとわたくしの望みを叶えてくれる。でも、それは約束をしたからですか? 嘘を嘘にしたくないからですか? わたくしがますたぁに強いていることにはなりませんか? ますたぁが望むなら、わたくしは何年、何十年とも待って見せます。肉欲の繋がりがなくとも、わたくしはますたぁを愛しております………ますたぁは、どうなのでしょうか。こんな卑しいわたくしを、あなたは受け入れてくれますか?」

 

 清姫は滲んだ瞳でジッとこちらを見つめていた。

 ここで言葉で答えるのは簡単だ。だけど清姫はそれで納得するか。納得はしても何処かで納得しないであろう。

 

 確かなことは、清姫の紛れもない本心は俺の心に響いたということだ。

 

 俺はおもむろに立ち上がって机に向かった。

 不思議そうに見つめる清姫の視線を背に受けながら机の引き出しから紫の箱を取り出した。

 

「本当は異星の神とかその他諸々の全てに決着をつけてからと思ってたんだけど。清姫がそんなに不安を抱えてたとは。旦那失格かな俺は」

 

 いまいち状況を飲み込めない清姫の前に立った。

 清姫の瞳に写る俺は我ながら優しい目をしてるなと思ってしまった。

 

「これまで色々あった。今では考えられない出会いがあって。挫折があって。幾度も挫けそうな時があった。それでも俺がここまでこれたのは清姫のおかげだ。君が側にいるから頑張れた。だから、これからも俺の側にいて欲しい。サーヴァントとしてではなく。俺の伴侶として────俺と結婚してくれますか、清姫」

 

 紫の箱の中にあるのは指輪。関係各所に協力してもらって一緒に作ったものが入っていた。

 予想外のサプライズに清姫も言葉を失って口許を抑えている。

 

 抑えていない方の手を取り、緊張に震えながらはめた指輪はキッチリと清姫の細い指に収まった。

 自分の指にはまったリングを清姫はキラキラと目を輝かせながら。

 

「ふ、ふわぁ………」

「初めて俺の名前を呼んだあの日から、清姫が醜いと思ってる部分も好ましいと思ってるところも受け入れるって決めたから。嘘のない世界を作るってのは流石に無理だけど」

 

 そこは全部受け止めろよと言いたいところだが。清姫には万に一つの嘘もつきたくなかった。

 

「だからその。そういうのも清姫が完全に準備出来るまで待つからさ。無理しないでね………えっと、これで良いだろうか?」

「は、はい! その、不束者ですが。宜しくお願いいたします」

「ん、宜しくね」

 

 もう何もかもがいっぱいいっぱいな清姫をそっと抱き締めてやると彼女も安心したように俺の胸元に頬擦りをした。

 俺も実を言うと不安MAXだったからおあいこだ。

 

 ──名残惜しいように離れた清姫は指輪が収まった指をギュッと胸元に寄せた。

 そして何かを決心したかのように目に強い光を宿した。

 

「ますたぁ、お願いがあります。少しだけ部屋の外にいて下さいますか?」

「いいけど。どうして」

「あ、後で言いますので」

 

 清姫に押される形で部屋の外に待機することになった俺は短くも長い時間待った。

 なにをしてるのかな、まさかここから部屋の模様替え? 

 途中通りかかったおっきーが凄い意味深な笑みを浮かべながら通りすぎたのはなんだったんだろうか本当に。

 

「ま、ますたぁ。入って、いいですよ」

 

 促されて部屋に入ってみるとそこは真っ暗だった。

 否、ベッド脇のライトだけが光っており。そこに清姫が布団にくるまっていた。

 なんかあの日を思い出す。

 

 なにも言わない清姫の側にそっと座った。

 いったいどうしたのだろうか? 

 

「ますたぁには大恩があります。一度化け物に落ちかけたわたくしを救ってくださり、こんな素敵な物も頂きました。なので、わたくしも逃げずに、覚悟を示そうと思います」

 

 シュルっと布団を下ろした清姫の姿に俺は思わず言葉を失い目を見開いた。

 

 清姫の身体には毎年恒例の赤いリボンが巻かれていた。だが問題なのはそこではない。いやそれどころじゃない。

 リボンの下にある着物(・・)がないのだ。

 

 いつものプレゼント包装とは違う乱雑な巻き方をした赤いリボンの下には清姫の素肌しかなく。幼いながらも出るとこは出ているボディラインにそっていて、隠すべきところにはちゃんとリボンは巻かれているが、所々緩くなっており見えそうで気が気じゃなかった。

 所謂これは裸リボンというものだった。

 

「その、えっと。おっきーに進められて。やるなら思いっきりやった方がいいと言われて撒いてみたのですが、その………想像以上に恥ずかしいですね、これは………エヘヘ………ますたぁ、六度目の正直ですが、わたくしを召し上がって下さいますか?」

 

 今にも羞恥で逃げ出したいと真っ赤になる清姫を前に生唾を飲んだ。

 いつものリボン付き清姫でも理性を保つのが大変だったのにこんな姿を見せられて我慢できる男はいるだろうか? 。

 いやいない、断言する。これで興奮しなかったらそいつはもう安珍クソ坊主以外ありえない。

 よくもまぁ、あのクソ坊主はこんな可愛いくてエロい子を前にして断れたものだと思う。

 

 ………思わず黙りこくってしまった俺に清姫は不安を隠せずにいた。

 はしたなかったか、失望されてしまったか、またあの時と同じになってしまうのかと。

 

 そんなことはさせない。清姫が覚悟を示したなら。

 俺も全力で覚悟を示すべきだ。

 

「令呪三画を持って命ず。俺は君を生涯愛することを誓います。あと、出来るだけ痛みがないように」

 

 三画のなけなしの魔力が清姫に注がれた。

 これで俺はマスターではない。あの時と同じだ。

 

 そっと震える肩に手を置いた自分の手も震えている。俺も数多の誘惑はあれど経験なんてあるわけがない。

 

「嘘はつきたくないから先に言う。優しく出来るかわからないから。それでも全部食べるからそのつもりで」

「っ! はいっ………」

 

 潤む目をした清姫の唇に自身の唇を重ね合わせ。そっとベッドに押し倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからして清姫にプロポーズしたことは翌日広まった。

 そしてみな気づいた。清姫の魔力がこれまで以上に増大していることに。

 

 これから起こることはあえて書かないでおく。それどころじゃなかったので。

 

 だがこれだけは断言する。

 

 二人で歩む未来は明るいということを。

 

 これは、愛と希望の物語である

 

 

 

 






 たった2日で9000文字も書いてしまった自分に震えているキヨヒスト。どうも作者です
 これが愛か。

 清姫のバレンタインはボイス追加こそあれどどちらかというと非よりなことに納得がいかねえ。
 ということで書きました、ないなら書けばいいのよ精神。
 もし新規清姫が来たら頼むぞ運営。
 全国のキヨヒストに救済を。


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