〈願い〉と〈愛〉が交差して…… (タク-F)
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絶望のプロローグ

以前からやってみたかったクロスオーバーを年明けのこの時期より始めてみました!よろしければお付き合いいただければ嬉しいです!


 僕は今……自分の住んでいる街……そして過ごしている日時を知り絶望していた。

 

「2004年……1月20日……冬木市……ウソだろ……?」

 

 伝説の菌糸類が書いた大ヒットゲーム……その原典と言われた……そんな世界に僕が存在している事になるからだ。

 

「この世界は本当にあの世界なんだ……。そして僕も魔術師なのか……」

 

 僕は右手にある令呪を見て絶望していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕……木原 修治転生者だ。それも今回は2度目にあたる。前の世界はシンフォギアの世界だった。あっちもあっちでモブに厳しい世界として有名だが、何とか五期までは生き延びた。しかし悲しい事に五期の最後にひびみくと流れ星を見た後からの記憶がなかった。そして気づけば僕は本当に命がヤバい世界(Fate Stay night)に転生させられていた。

 

「まだ……20日だよね……? まだ……間に合うよね……?」

 

 僕はいち早くこの街から脱出する決意を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みぃつけたぁ……やっと見つけたよ……しゅう君……」

 

 1人の女性が修治を見つめ……恍惚とした表情をしながら胸を抑えていた。その人物の名前は立花 響(シンフォギアの世界の主人公)である。

 

「もうすぐ迎えに行くよ……未来と2人で迎えに行くよ……また3人で幸せに過ごそうね……しゅう君……」

 

 しかしその瞳は光を映していなかった。ただ……ただ闇の如きオーラを放ち、修治の様子を観察している。そして彼女の右手の甲にも修治と同じような模様……〈令呪〉が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜〜! そろそろ朝ご飯の時間だから藤ねぇを呼んでくれ〜!」

 

「分かりました先輩! 任せてください!」

 

 武家屋敷では2人の男女が厨房に立ち、食事の準備をしている。衛宮 士郎(この世界の主人公)間桐 桜(型月屈指のヤンデレ)だ。しかし今現在この2人はその事実に気づいていない。そしてそんな2人はお互いの手に刻まれた〈令呪〉が肌から見えるような管理はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふっ! やっと見つけたよ衛宮 士郎(大好きなお兄ちゃん)……絶対私が守ってあげるからね?」

 

 不敵に笑う少女は士郎を見ていた。しかし現在の少女のいる場所は深い森の中に存在する古城であり、本来は視認できるような距離ではない。本来はあり得ない筈の出来事だが、距離の有無(そんな事)は魔術師の前では意味を成さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……ようやくたどり着いたわね……日本。私はやって来たわよ王子様……だって貴方は私の初恋なんだもの……」

 

 彼女の名前はマリア・カデンツァヴナ・イヴ(歌姫マリア)……然るべき世界では知らぬ人間の方が少ない程のトップアーティストだ。そしてそんな彼女も常人ではない。

 

「少し待ってなさい……必ず貴女を呼び出すわ……。だって貴女も同じ気持ちでしょう?」

 

 マリアはまるで誰かに話しかけるように呟いた。するとマリアの言葉に呼応するように左手の〈令呪〉は点滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……なんて格好良いのよ士郎ぉ……貴方がいない時間なんて私は辛くて仕方無いわ……」

 

 呟くのは遠坂 凜(あかいあくま)……冬木のセカンドオーナーを務める優秀な父親が()()。しかしその父親は既に10年前に他界しており、現在の業務は彼女の役割となっている。

 

「士郎ぉ……貴方が欲しいわ……なんで私と恋人になってくれないのぉ……?」

 

 凜の住む邸の一室には凜の宝物(士郎の(盗撮)写真)が天井から床までビッシリと貼られていた。その所業はまさにストーカーである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冬木市には教会が存在する。魔術教会の命令を受けてその土地における魔術の隠蔽や神秘の秘匿が主な役割だ。そして現在の管理者の名前は言峰綺礼()()()。しかし現在の教会の管理者は彼ではない。

 

「奏……頼むから姓を改めて貰えるか? お前に言峰の姓を名乗って貰えないとこの教会の名前を変えないといけないのだが……」

 

「え〜ヤダよ父さん……アタシは母さんの姓が好きなの。父さんの姓はなんだか不吉なんだよぉ〜」

 

 どうやら彼には娘がいるようだ。しかし娘は母方の姓を気に入っているようで言峰(父親)の姓を名乗るつもりはないようだ。

 

「だってアタシは〈天羽 奏〉だからな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは欲望の渦巻く都市冬木……しかし1人の転生者により交わる筈の無い人間達が出会ってしまった世界……。その世界が冬木に召喚してしまったのは他者を蹴落としてでも自分の愛を貫く乙女達だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 降り立つ風には壁を。

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する。

 

 ────告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

 誓いを此処ここに。

 我は常世総すべての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷しく者。

 

 汝 三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──―!」

 

 そしてこの詠唱を元に5人の魔術師が英霊(サーヴァント)を召喚した。

 

「サーヴァント〈アーチャー〉……召喚に応じて参上したぜ? お前があたしのマスターだろ? 良い関係を築こうぜ…………あたしの目的か? …………そんなもん愛する弟を抱きしめてあたし色に染め上げる為だぜ?」

 

「サーヴァント〈キャスター〉召喚に応じて参上したわ。私はこの聖杯戦争で愛する息子を探しているわ。…………協力してくれるわよねマスター?」

 

「サーヴァント〈ランサー〉召喚に応じて参上だ。強え奴と戦えるなら俺は相手が誰だろと構わないぜ?」

 

「サーヴァント〈ライダー〉召喚に応じて参上した。なるほど……お前が私を喚んでくれたのか……ならば私達は同士だ。必ず❋❋❋を奴等の魔の手から守らねばな……」

 

「サーヴァント〈バーサーカー〉召喚に応じて参上したよ。やっぱり❁❁❁がマスターなんだね……。でもこれで私達は負けないね。絶対に皆倒せるんだから…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で聖杯内部でもナニカが起きていた。

 

「なるほどな。奴等め……オレがいないのを良い事に良くも抜け抜けと……」

 

「あの〜そろそろ出て行って貰えませんかねぇ……こんな場所に2人とか狭くて仕方ないんだけど……」

 

 聖杯の内部では〈最初からいた人物〉と〈後から入って来た人物〉がいるようだ。

 

ダマレ……今すぐお前を消し飛ばすぞ? 

 

「こっわ! 何なのお前……オレが恐怖するとか本当に何なの?」

 

 しかし後から来た人物の方は本当に我が物顔で陣取る。流石に素性を知りたい先住人はダメ元で尋ねてみた。

 

「そうだな……〈魔女〉……とだけ言っておこう。そしてオレの目的はこの都市にいるある人物に会う事だ。くれぐれも邪魔するなよ? まぁ……オレが暇つぶしに貴様を殺すかもしれないが……」

 

 横暴極まりない発言だが何故か先住人は黙って頷く。

 

「そんじゃあよろしくな魔女さん。短い同居生活になる事を祈るよ……」

 

「ほぅ? お前が出て行くのではない……と。ではそんな事態が起こらないように直ぐに死ぬか?」

 

「……遠慮するわ。寝てるから何かあったら起こしてね……」

 

 

 

 

 

 

 

「………………そういえば父さんは今回出禁な。もし干渉したら口聞いてやらないし、絶対に母さんの姓しか名乗らないから…………」

 

「奏……頼むから我儘はやめてくれ……仕事が増えて手間がかかる……」

 

 言峰綺礼の表情はゲッソリとしている。どうやら奏の後始末の方がよっぽど過酷なようだ。

 

「そこの天の声も余計な事言うなよ? じゃないと大変な事になるぜ?」

 

 外道麻婆がゲッソリな時点でアンタもヤバいんですが……

 




アカン……登場したマスターとサーヴァント全員やべぇよ……(いつもの)果たして彼等が進むのはどのルートか……(作者の性根でほぼ断定できる)

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1月31日 ①

やがて運命の夜へと至る。全てはこの日より始まった。


 そしてついにこの日に至るまで結局僕は逃げる事ができなかった。どういった訳かクラスメイトの響ちゃんに毎日突撃訪問をされて逃げる事ができなかったのだ。

 

「しゅう君どうしたの? 顔色が悪いよ? 困った事があったら何でも言ってよ? 私が絶対に何とかするから!」

 

 あぁ……なんて優しい娘なんだろう……こんな娘にこう言われて何も言えない僕は卑怯だな……。とはいえ……本当にこの娘はシンフォギアの主人公を思わせるぐらい似てるんだよなぁ……。きっとこの娘の生まれかわりがシンフォギアの響なんだろうね……。

 

「あぁ……ごめんね響。実は最近この辺で物騒な事件が続いてるだろ? それが不安でしかたないんだよなぁ…………」

 

 ガチで恐い。本当に命が幾つあっても足りないからなぁ……。

 

大丈夫だよ……しゅう君は絶対に私と未来で守ってあげるからね……でももう少しだけ待っててね………必ず皆やっつけるからね……

 

「なんか言ったか響?」

 

「うぅん! 何でもないよ! それよりも早く学校に行こう!」

 

「そうだな……藤村先生に絡まれたら面倒だし早めに行くか……」

 

 こうして僕達は通うべき穂群原学園へ今日も登校する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようさん。今日も元気だな響……そして今日も浮かない顔色だな修治……」

 

 学校まで凡そ5分くらいの場所で士郎と出会えた。

 

「まぁね……最近物騒だろ? アレが不安でしかたないんだよ……。距離もだんだんと近くなってるし……」

 

「そうなんだよね……しゅう君が暗いと私も心配しちゃうよ……」

 

「そーだよなぁ〜。確かに不安になるよなぁ……」

 

 士郎は真剣に考えてくれるが、原因に心当たりがある僕からすれば申し訳無い。

 

「ならさ……ウチに来るか? 藤ねぇも心配してホームルームで言うくらいだからさ。事が落ち着くまで過ごしてもいいぜ。まぁ……藤ねぇの了承次第だけど」

 

 ありがたい。色んな意味でありがたい。こうなったらセイバーが出て来た時に僕も藤村先生の説得に協力しよう。

 

「じゃあ先生の許可が出たら頼むよ。お礼に士郎の人助けに協力するからさ……」

 

「助かるよ。今日もストーブの修理が何台か依頼が来てるからな……」

 

「じゃあ士郎君! 私も手伝うよ! 荷物運んだりするから遠慮なく言ってね!」

 

「はは……響は女子なのに俺も顔負けの体力だからなぁ……頼もしいけど悔しいよ……」

 

 確かにこの2人(響と士郎)は似てるんだよなぁ。確か……こんな症例を〈サバイバーズ・ギルト〉……って言ってたな。

 

「本当に人が良いよな2人共……」

 

「も〜しゅう君もなんだかんだ付き合ってくれるじゃん! しゅう君も優しいよ?」

 

 響は僕の腕に抱きつきながら嬉しい事を言ってくれる。……だけど言えない……僕の腕に響の胸がしっかり当たってるなんてセクハラ紛いな事は死んでも言えない……。

 

「それじゃあ学校に急ごう! 今日も忙しいぞ!」

 

 僕達は士郎の言葉で時計を見て学校へ急いだ。

 

 

 

 

 

「あぁ……士郎……なんて格好いいのよ……あんなに優しい士郎が便利道具扱いされるのは悲しいわ……。それに響ちゃんみたいな娘も士郎の良いところを見習ってくれてるのに……私が守ってあげないと……特に慎二にはキツく灸を据えないと……」

 

遠坂 凛(あかいあくま)がこの朝の3人のやり取りを盗撮していた事も、この冬木市ではいつもの事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一成〜ストーブの修理終わったぞ〜」

 

「そういう訳で僕が運び出すから道を開けて〜!」

 

 響と〈柳洞一成〉は士郎がストーブを修理を終えるまで部屋の外で待機して、僕がストーブを運び出していた。ちなみに僕も一応は魔術師であり、士郎の〈投影〉を過去に偶然見てしまった。それで秘密を共有する代わりに頼み事の選定を僕がしている。時間は有限だし、〈士郎❌桜〉は尊いからね。

 

「済まないな2人とも。こんな朝早くに協力して貰いながらも何も礼ができんとは……」

 

「大丈夫しゅう君……無理して無い? 疲れてたら休んで良いんだよ?」

 

「ありがとうな一成……響。だけど修治のおかげで依頼の数はコントロールできてるから……」

 

「士郎かオーバーワークしないようにコントロールするのが僕の役割だよ。まぁ…………それは響も同じようなモノだけどね?」

 

 僕達は他愛もない話をしながら修理を続けた。

 

 

 

「あら? 珍しい組み合わせね。衛宮君達が集まるのはいつもの事だけど生徒会長までいるなんてね?」

 

「なんの用だ遠坂 凛。悪いが衛宮達は善行の最中だ。邪魔をしないで貰えるか?」

 

「その逆よ。私はそんな善行を積んだ人達を労いに来たのよ。あったかいモノでも飲んで貰いたいからね?」

 

 そう言って凛は僕達3人にコーヒーや紅茶(ホット)を手渡して来た。あれ? ……原作より優しいかも? 

 

「なるほどな。衛宮の働きを正当に評価しているのが……。些か癪ではあるが、まぁ……良いだろう……」

 

コーン〜……コーン〜

 

 一成は苦虫を踏み潰すかのように告げると予鈴が鳴った。

 

「もう予鈴かぁ……じゃあ士郎君! 続きはお昼だね!」

 

「そうだな響……。じゃあ昼休みな……」

 

 響はクラスが違うので先に教室へ向かった。

 

「じゃあ私も行くわね? 体調には気をつけなさい?」

 

 凛も教室に向かう。因みにあの2人はクラスメイトだ。

 

「じゃあ僕達も行こうか」

 

「そうだな……そうするとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……お前達も物好きだよね? 生徒会長の太鼓持ちとは……」

 

 やっぱり絡むよなぁ……〈間桐 慎二〉。

 

「黙れ慎二。士郎を弓道部から追い出したあの事件を僕は許さない。どう考えてもお前の安いプライドしか要因が無いんだよ」

 

「ふむ……確かに間桐の行いは許される事ではあるまい。1度制裁を受けるのも悪くはなかろう……」

 

 僕と一成が睨みつけると慎二は距離を取った。

 

「………………チッ! 止めだ。お前達に絡まれたら時間を無駄にしてしまうよ…………。あぁそうだ……衛宮は確か頼まれ事は断らないだろう? せっかくだから道場の掃除をしてくれよ。アレは面倒だからねぇ……」

 

 そう言って慎二は僕達から離れて行った。しかしその表情には一種の怯えが隠れている事も僕はわかってる。

 

「修治……やりすぎるなよ? 慎二は逆恨みが凄いから…………」

 

「しないよ。こんな奴は手を汚す事すらもったいないからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後に事態は動く。結局弓道部の道場を掃除していた僕と士郎だ。響は先に帰宅している。

 

「じゃあ士郎君! しゅう君! 私は先に帰るね! そしたら士郎君の家に泊まる準備を整えるから!」

 

 響はそう言うと飛ぶように早く帰って行ったのだ。

 

「でも良く許可が出たよなぁ……1人暮らしの僕はともかく響と桜まで……」

 

「あぁ……今朝の食事の時に、桜の手に痣があったのを確認した。これ以上慎二の理不尽な暴力に桜を突き合わせるワケにはいかないからな……」

 

 なるほど…………説得が成功した時空なのか。僕の原作知識が役に立つかいよいよ怪しいな。

 

「響は………………うん。まぁ良いか……」

 

「そうだな。じゃあ帰るか……」  

 

 僕達は道場を後にして帰ろうとした時から運命(Fate)が始まった。

 

ガキィィン! ガーン! 

 

一体なんだ!? 

 

金属音で衝撃音だと! 

 

 クソ! 間に合わなかったか! 

 

早く逃げるぞ士郎! 

 

「おい! 待てよ修治! 離せよ!」

 

 僕は士郎を引きずりながらも逃走を始めた! こんなところで死ぬワケにはいかない! 

 

逃がすわけねぇだろう! てめぇら目撃者は悪いが消させてもらうぜ! 

 

 まだ距離はあるが確実にランサーに補足されたみたいだ! 早く逃げないと! 

 

「士郎……2人で分かれるよ! 生きて家で落ち合おう!」

 

「ええぃくそ! 何なんだよ一体!」

 

 僕は士郎と別れてそれぞれで逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜ランサーside〜〜

 

「悪ぃな……勝負は預けておくぜ。アーチャーとそのマスターさんよ。最も……オレのマスターからの命令は2つだ。

 

 1つはサーヴァントとの戦闘………………こればかりは倒しても良いと言われたが、お前さんを倒せなかった。素直に賞賛を贈るぜ……」

 

「そうね。確かに貴方は強いサーヴァントねランサー。ウチのアーチャーがここまで押されていたもの。流石は三騎士よね」

 

「だがお前さんのアーチャーはまだ本気出してねぇだろう? オレの目は誤魔化せないぜ? まぁ……だから興が削がれたのはあるがな」

 

 そして俺はアーチャーのマスターから、アーチャーへと向き直る。

 

「ったりめぇだよ。あたし様の鷹の目を嘗めるなよ? 愛しい弟がここにいるから得物を使わなかっただけだからな?」

 

「でもそれは貴方のマスターも同じでしょう? 明らかにの存在を貴方が視認した時から目的が変わったわよね?」

 

 アーチャーのマスターは俺の受けたもう1つの命令を見抜いたみたいだ。

 

「ならよ? ここはお互いの目的の為にそれぞれがそれぞれのターゲットを殺らないか? どうせお互いのマスターが治療するだろうけどよ?」

 

「交渉成立ね。じゃあ貴方には修治君を任せるわ。アーチャー……貴女は衛宮君を殺るのよ? 大丈夫…………人払いを済ませたら彼の治療は私が治療するわ。最も……それは貴方のマスターも同じでしょうランサー?」

 

「そうだな。俺のマスターはあの少年にご執心みたいでな。だがそれは嬢ちゃんも同じだろう?」

 

「そうね。ならマスターに伝えておいて貰えるかしら? 

 

 〈士郎のハートを射止めるのは私よ〉

 

 ってね」

 

「承ったよ。じゃあお互いに目的を果たしたその時はもう1度殺ろうぜ?」

 

「へっ! 次はその頭をブチ抜いてやるよ!」

 

 俺達はお互いの目的の為に分断された2人の目撃者の始末に向かった。

 

 

 

〜〜ランサーsideout〜〜




何と原作とは違う組み合わせでサーヴァントに襲われる事が決定した主人公達……彼等の運命はどうなるのか……

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1月31日 ②

別れた2人は襲撃者と対峙した。そして彼等は運命に立ち会う………


 士郎が校外へと逃走したのを見届けた僕は未だ校舎内に潜伏していた。しかしそんな悪運も長くは続かなかったみたいだな。

 

「悪いな。マスターからの命令だ。恨むならこの時間までこんな場所にいたお前さんの運命を恨みな?」

 

 こっちに来たのがランサーか。ならしかたないな。なら……士郎は一体どうなるんだ? 

 

「一応教えて貰えますか? 士郎……僕の相方はどうするつもりですか? そしてアーチャーとの戦闘は良いんですか?」

 

「ほぉ……そこまで知ってたのか。安心しな……お前の知る事じゃあねぇが、宝具は使わねぇよ。お前さん程度ならコイツで充分だからな」

 

 ランサーはそう言って普通の槍を取り出した。

 

「流石は〈アイルランドの光の御子 クーフーリン〉ですね。慣れないただの槍でも呪われそうだ……」

 

「頭が回る奴を殺すには惜しいが……まぁ1度死んでくれや!」

 

 ランサーは目にも止まらない速さで僕に接近して一突きで心臓を穿った。

 

「士郎…………生きて…………くれよ……」

 

 僕はそこで意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜士郎side〜〜

 

 学校でヤバい奴等の戦闘を見た俺は修治の忠告を受けて急いで家に向かった。修治の奴は囮として残ると言ってた事にはムカついたが、俺を逃がす為に勇気を振り絞った事もまたわかった。

 

「すまない……修治……すまない…………」

 

 俺は何度も修治に謝りながら家に向かう。ウチの結界ならあるいはやり過ごせるだろうし、もし親父の知り合いの連絡先が分かればあるいは…………。

 

「早く……帰らなぃと………………」

 

 そして俺は家に辿り着く。そして土蔵へと駆け込んだ。この中には一応修行時代の名残りある品が溢れてる。ソレを使えばあるいは…………。

 

「そうはさせねぇよ。悪いがお前は死んでくれや……」

 

 少女の声が聞こえた。

 

「なに!?」

 

 家の結界が破られたのか!? いや………………そうじゃあ無さそうだ。なら一体どうして? 

 

「その疑問に答えてやる義理はねぇよ。だけどそうだな……お前の相方ならあたしのマスターが救ってくれるさ。ソレが取り引きだからな……」

 

「修治が……あいつが自分の命と引き換えにお前のマスターとやらに取り引きしたのか!」

 

「いいや違うな。これはあたし達のマスター同士の取り引きだ。お前達には1度死んで貰わないといけない。だけど自分達では覚悟が鈍る……だからあたし達はお互いのターゲットを入れ替えたのさ。そうすれば何とかなるからな……」

 

 少女の言葉に俺は納得できなかった。だから俺は少女を倒さないといけない。倒して修治を救いに行かないといけない! 

 

強化 開始(トレース オン)! 絶対にお前を倒す! そして修治を救いに行くぞ!」

 

 俺はひたすら最速で走り距離を詰めた。そして手にした木刀を少女に打ち込もうとした。

 

「ほぉ……良い気迫だよ。だけど残念だな。お前の速さは〈あのバカ〉には及ばない。その剣速は〈先輩〉には届かない。そして覚悟が〈あの娘〉に届かねぇよ………………」

 

 少女は俺の振るう木刀をあっさりと避けて俺に蹴りを入れた。

 

がぁ! 

 

ボキボキ…………

 

 蹴られた肋骨があっさりと折れた。そしてどうやら折れた骨が心臓の方にも刺さったみたいだ。

 

「なんて…………1撃だよ…………」

 

 俺はその言葉を最後に意識を失った。

 

 

〜〜士郎sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜凛side〜〜

 

 アーチャーと別れた私は倒れている修治君に駆け寄る。

 

「安心しな……宝具は使わなかったよ。その方がお互いに都合が良いだろう?」

 

「そうね。じゃあ始めましょうか?」

 

 私は修治君の体の傷の位置を確認する。と……言っても実行犯のランサーがいるので把握自体は容易いが。

 

「さて……アーチャーの頼みだからね。失敗はできないわ……」

 

 そして私は修治君の傷を魔術で修復した。

 

「後は任せるわよランサー。彼を衛宮君の家まで運べば準備が終わるわ。そうすれば最後の2人が現れて貴方の目的も果たせるでしょう? マスターからの目的じゃない……〈貴方自身の目的〉をね」

 

「おいおい……そこまで見抜いたのかよ……とんでもない洞察力だな…………」

 

「当たり前じゃない。次はお互いに全力でやりましょう?」

 

「ったりめぇだ。こんな命令じゃないならどれだけ気楽かねぇ。まぁ……お前さんの方も似たような事をするからわからないけどよ…………」

 

 そうしてランサーは修治君を抱えて衛宮君の家(目的の場所)へと向かった。

 

〜〜凛sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜イリヤside〜〜

 

 アーチャーが士郎を1度殺したからこれでサーヴァントとの接触をさせる事に成功した。

 

「首尾は上々みたいね。的確で良い1撃だったわ。じゃあ始めるけど文句無いわよね?」

 

「当たり前だよ。これでサーヴァントが召喚されるんだ……。そして聖杯に7体のサーヴァントの魂が入ったその時が……」

 

「英霊の願いを叶える聖杯が現れるわ。だから貴女達が呼ばれたのでしょう?」

 

 そして私は士郎の傷口を修復する。

 

「なるほどね。今ランサーから連絡が入ったわ。貴女の弟君……現在はランサーに抱えられて来てるそうよ。もちろん貴女のマスターと一緒にね……」

 

「そうかい。じゃああたしはランサーの到着とソイツの治療が終わるのを待つよ。事が始まる時に教えてくれるか?」

 

「わかっているわ。だから今は霊体化してなさい……」

 

 そして彼女は霊体化し、私はランサーの到着を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたなマスター。ちゃんと連れて来たぜ?」

 

 そう言ってランサーは〈木原 修治〉と〈遠坂 凛〉を抱えて連れて来た。後は2人が覚醒して英霊を呼び出すだけだ。

 

〜〜イリヤsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修治side〜〜

 

「ここは…………どこだ?」

 

 僕は周囲を見渡した。すると隣に士郎が寝かされていた。そして良く見ればここは士郎の家だった。

 

「起きたのね修治君。早速で悪いけど貴方はサーヴァントに襲われたたわ。そしてその手には令呪がある。まずはサーヴァントを召喚しなさい。私と相手のマスターも貴方達2人がサーヴァントを召喚するまでの休戦協定を結んだわ」

 

 僕の前にいたのは

遠坂 凛(あかいあくま)
か。いよいよ本格的に巻き込まれたな。

 

「その方法とやらはなんですか?」

 

「その詠唱は衛宮君が目覚めたら教えてあげるわ。それに……木原君も命を狙われるのよ?」

 

 だろうな。だからこそ僕は恐れている。ランサーのマスターが近くにいるはずだから……。

 

「まぁソレは彼が起きるまでは無いから安心しなさい」

 

 凛の言葉を信じた僕は士郎が起きるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…………俺の…………家か? …………だけど……なんでこの部屋に?」

 

 士郎は状況把握の為に部屋から出て来た。

 

「衛宮君…………そして木原君。貴方達は命を狙われているわ。状況を打開したかったら私の言う事を良く聞きなさい」

 

 そう言って凛はサーヴァントの事と僕達の令呪についての説明を終えた。そしてサーヴァントを召喚する〈あの呪文〉も。しかし士郎は当然だが凛の要求を断る。

 

「命を救われた事には感謝するさ。だけど遠坂の言う聖杯戦争に参加する必要が俺にあるとは思えない。ソレよりもやるべき事が俺にはあるからな」

 

 士郎の決意は硬かった。なら僕の答えも同じだな。

 

「なら僕の答えも同じだよ。そんな危ない事にこれ以上首を突っ込む義理は無い。だから僕は帰らせて貰うよ」

 

 そう言って僕達が部屋を出ようとした時に〈アーチャーとランサー〉が現れる。

 

「そうか。じゃあしかたないな。サクッと死んで貰うぜ?」

 

「恨むならその選択をした自分自身を恨むんだな」

 

「「ッ! 逃げるぞ!」」

 

 僕達は士郎の土蔵に逃げ込んだ。そしてあの魔法陣を見つめる。

 

「士郎……こうなったら一か八かだ。僕は自分の運命を切り開く。士郎…………後は任せるよ」

 

 そして僕は〈あの詠唱〉を唱えた。すると土蔵の魔法陣から2()()()()()()()()()()()

 

サーヴァントアサシン! 暁 切歌召喚に応じて参上デェス! 

 

「同じくアサシン月読 調。召喚に応じて参上したよ」

 

あたし(私)達は2人で1人のサーヴァントザババ(デス)! マスターの事をずっと待っていた(デス)! 

 

 僕が喚んだアサシンの影響はすぐに現れた。土蔵の魔法陣がもう1度反応したのだ。

 

「なんだ!? 何が起こるんだ!?」

 

 士郎の叫びに反応して型月のドル箱(アルトリア・ペンドラゴン)が現れた。

 

「問おう……貴方が私のマスターか……」

 

「俺が……マスター?」

 

 そしてこの3人のサーヴァントの召喚を以て冬木市には7体のサーヴァントが出揃った。

 




「さぁて……主役の登場デェス!次回が初戦デェス!」

「あの人達が出るなら当然私達だって……」

ん?ちょっと待って……君達を呼んだ覚えは

「うるさい作者は死んでしまえデェス!」

「〈雉も鳴かずば撃たれまい〉って諺があるよ?」

えぇ……ちょっと……待っ……ぎゃああああァァァんまりだァァアァ!!!!!

〈作者 は 死んで しまった !〉

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「私達の活躍に乞うご期待!」



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僕達の初陣

切調コンビとセイバーが二組の襲撃者と対峙します。そしてその戦いが示す答えは?


「俺達が……マスター? 一体何の冗談だよ……」

 

 士郎はまだ現実を受け入れていなかったが、そうも言っていられなくなった。

 

「見つけたぜお前ら……へぇ……サーヴァントが出揃ったわけか。じゃあ…………始めるぜぇ!」

 

 そう言ってランサーはセイバーへと距離を詰めた! 

 

「ッ! マスター! 指示を!」

 

「待てよ! 状況を教えてくれよ!」

 

 セイバーは士郎の言葉を聞かずにランサーとの交戦を始めた。そしてサーヴァントはもう1人いる。

 

「なるほどな。修治……お前のサーヴァントはそいつらだったのかよ…………。ちょっと待ってな……姉ちゃんがすぐに助けてやるからよ…………」

 

 アーチャーと呼ばれたサーヴァントの正体を僕は気付けなかったわけ()()()()その真名だけなら知っていた。ただ…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんでアンタがこの世界にサーヴァントとしているんだよ! ()()()()()()()

 

 僕達の前に立つアーチャーの真名は……シンフォギアの世界に存在する()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「クリス先輩……また私達からお兄ちゃんを奪うつもりですか? そんなことは……絶対に許しませんから……」

 

修治先輩はあたし達の大切なお兄ちゃんデス! 先輩には……クリス先輩みたいなあたし達の大切な人を無条件に奪う酷い酷いクリス先輩には負けないデス! 

 

 そう言ってアーチャー対アサシン(イチイバル対ザババ)の対決がこちらでも始まった。

 

「待ってくれよ! なんで2人がクリス姉さんと争うんだよ! やめてくれよ!」

 

 僕の叫びは3人には届かなかった。

 

「やっぱりこうなったわね。クリスは召喚された時に私に言っていたわ。

 

 〈あたしは愛しい弟を抱きしめてあたし色に染め上げる為にやって来た〉

 

 ……ってね。木原君……貴方はお姉ちゃんに愛されているわね」

 

 凛は姉さんの事を知っていた。つまりは僕達を引き合せる為にこの聖杯戦争に巻き込んだのかよ…………。

 

「でもね木原君……私自身は聖杯なんてどうでも良いのよ。私が聖杯戦争に参加した私自身の目的は士郎なのだから……」  

 

 そう僕に語る凛の瞳は()()()()()()()()()()。なんで凛がそんな瞳をしているんだよ…………。

 

「あぁ……士郎…………貴方が欲しいわ……私は貴方が愛おしい……その手に触れたい……その腕に抱かれたい…………その体で……❁❁❁されたい…………」

 

 凛の状態は明らかに正気じゃあなかった。しかしその視線は常に士郎へと向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜クリスside〜〜

 

 修治の召喚したサーヴァントが、まさか切歌と調(後輩2人)とは予想外だった。そして奴等の言動から恐らくは〈あの世界〉の記憶が()()みたいだ。

 

「お前達に確認だ。まさかお前達は……()()()()()()()()()()()()()()()なのか?」

 

「その聞き方……やっぱり貴女は……」

 

「間違いなくあたし達の知るクリス先輩なのデス」

 

「「なら絶対に私(あたし)達は負けられない! (デス)! 」」

 

 どうやら向こうもあたしの知る後輩2人みたいだ。

 

「ならその体に教えてやるよ! あたし様の怒りをなぁ!」

 

「上等……私達の嫉妬は……」

 

「クリス先輩如きに止められる程弱くないデス!」

 

 調の奴が後方に下がり切歌の奴が前衛を張りやがる。接近戦が好きじゃないあたしはこの対処が少し面倒だ。

 

「群雀なお前達があたしに勝てると思うなよぉ!」

 

 〈MEGA DETH PARTY

 

「こうなりゃてめぇらはボコボコにする! そして聖杯に放り込んで後は修治とイチャイチャするんだよぉ!」

 

 あたしは後輩共を纏めてぶっ飛ばすべく銃を取った。しかし奴等もソレは同じみたいだ。

 

「クリス先輩がそこまで分からず屋なら!」

 

「もう手加減なんてしてあげないデェス!」

 

 〈α式 百輪廻

 

 〈切・呪リeッTぉ

 

 あたし達はお互いを全力で潰すべく技を放った。

 

〜〜クリスsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜セイバーside〜〜

 

 私は聖杯戦争を勝ち抜くべくサーヴァントとして現界した。そしてマスターと思しき少年と、ランサーと思われるサーヴァントを確認した。

 

「なるほど……。その槍捌き……さぞ高名なサーヴァントと思われる。貴公のようなサーヴァントと手合わせできる事を私は誇りに思う」

 

「ほぉ……俺の槍技を見てその余裕……てめぇもさぞ高名なサーヴァントだとわかるぜ。しかし得物を隠すとは洒落てるねぇ……間合いが測り辛えなぁ……」

 

 私の風王結界(インビジブルエア)でエクスカリバーの間合いを隠してはいるが、ランサーは恐らく私の剣の間合いを既に図り終えた様だ。

 

「とはいえ……このまま埒が明かないのも面白くねぇ。マスター! 宝具を使わせろ! セイバーはここで倒してぇ!」

 

 マスター……か。この近くにいると言うのなら、私は自分のマスターであるあの少年の注意もしないといけない……。随分と私の旗色が悪いか。

 

「はぁ……今回のサーヴァントがイレギュラーだらけだから、私の知らないサーヴァントがいたら撤収と伝えたはずよ。それにセイバーのマスターはまだ素人だけど、彼女との接触はまた行う事を約束するわ。だから今回は退なさい。今は情報が何よりも大切よ。だって明らかに英霊と思えないサーヴァントが、そこのアサシンを含めてこの聖杯戦争には5組いるわ。明らかに私達の方が情報戦では不利よ」

 

「チッ! 確かにな。明らかに英霊らしくねぇ奴等がそれだけいれば俺達が不利か。しかしマスターよ……俺のマスターならわかっているだろうな?」

 

「えぇ。貴方の場合は宝具をそう簡単に切らせる訳には行かないわ。魔力じゃなくて知名度の問題でね……」

 

 そう言ってランサーとそのマスターは撤退の準備を始めた。私のマスターが素人となるとその選択肢はありがたい。しかし……ランサーのマスターには見覚えがあった。

 

「ランサーのマスターよ……貴女はまさかイリヤスフィール・フォン・アインツベルンか? もしそうだと言うなら何が目的だ?」

 

「あら? セイバーは私の事を()()()()()のね。なら嬉しいわ。だって……私は絶対に貴女を許していないもの……。だけど今回は特別。貴女のマスターは私にとっても大事な人物なの。貴女がいなかった10年間の間にできた縁よ。まぁ…………詳しくはいずれ話してあげるわ。だからその時を楽しみにしてなさい」

 

 そう言ってイリヤスフィールはランサーと姿を消した。そうなるとこの戦場に残るサーヴァントは3組。私達とアサシン達……そしてアーチャーだ。両者ともに明らかに英霊らしからぬサーヴァントであり、どうやら顔見知りの様だ。

 

「ならば私はその2組のサーヴァントを屠るとしよう。幸いランサーは早くに撤退した。それだけ私には余力がある!」

 

 私は2組のサーヴァントを討ち取るべくその戦いに介入を試みた。

 

〜〜セイバーsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修治side〜〜

 

 まずい。姉さんと切歌ちゃん達を早く止めないと! 

 

「もうやめてくれよ3人共! なんで3人が争うんだよ! 前はあんなに仲が良かったじゃないか!」

 

 僕の知ってる切調コンビと姉さんは仲が良かった。と……言うよりも姉さんは2人の姉貴分として、2人はそんな姉さんを慕う後輩として過ごしていた筈だった。

 

「なるほどね。貴方達とアーチャーの関係性がなんとなくわかったわ。ます貴方とアーチャーは家族のような間柄かしら?」

 

 いつの間にか凛は冷静さを取り戻して僕に質問をしてきた。

 

「はい。僕はクリス姉さん……アーチャーの義理の弟です。次にあの2人は姉さんを慕う後輩のような関係性でした」

 

 すると凛は溜息をついた。

 

「はぁ……呆れるわね。貴方……自分がどんな感情を向けられているか自覚しているかしら?」

 

「向けられている……感情…………ですか?」  

 

「ええ。貴方がアーチャーに向けられているのは家族愛じゃないわ。もっと強い恋愛の為に向けられた感情よ」

 

 僕に向けられたのが……恋愛感情? 

 

「まさかその顔…………自覚ないって言わないわよね? はぁ……呆れるわ。だったらそこのアサシンも恐らくは先輩後輩の間柄じゃないわね。見る限り恋敵ってところね…………」

 

 切調コンビが……恋敵? じゃあもしかして2人が僕にべったりくっついてたのは…………。

 

「その答えを教えるのは私の役割じゃあないわ。だから彼女達に貴方が直接聞く事ね」

 

 僕はどうすれば良いんだ?

 

「誰か………教えてくれよ………」




あ〜らら〜こ〜ら〜ら〜♪ヤンデレエンカウントはっじまっるよ〜!

彼等を導くのは果たして………

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情報を得る為に……

襲撃者は彼の知らない組み合わせだった。そして彼女の導きで教会へと向かい………


 ランサーとそのマスターが撤収した。しかしその人物は僕の知識に存在しない組み合わせだった。

 

「ランサーがクーフーリンで、マスターがイリヤスフィール。おかしい…………イリヤスフィールのサーヴァントはバーサーカーのヘラクレスの筈だった。なのに…………一体何故ランサーを?」

 

 しかし考えても答えが出る訳ではなかった。そしてセイバーの次の標的はアーチャー(クリス姉さん)アサシン(切歌ちゃんと調ちゃん)だった。

 

「やめてくれよ! なんでお前達は戦っちまうんだよ!」

 

「切歌ちゃん! 調ちゃん! 君達が本当に僕のサーヴァントだと言うならば戦闘をやめてくれよ! そして姉さん! アンタも僕の事を大切に思うなら! これ以上僕の知り合いに手をかけないでくれよ!」

 

 士郎と僕の叫び声を聞いて3組のサーヴァントは動きを止めた。しかしその表情は明らかに不満を抱えていた。

 

「しかしマスター! 今サーヴァントを討たねばいつ討てると言うのですか! 今以上の好機など!」

 

「おいおい……いくら愛しい弟の頼みでもそれだけは無理だな。泥棒猫は躾が必要だろう? まずはそれからだよ」

 

「あんなに凶暴な人が先輩を守れる訳がない!」

 

「あたし達の先輩は絶対に渡さないデェス!」

 

 ものの見事に全員が話に耳を傾けようとはしなかった。しかしそこで凛は雰囲気を変えて言葉を放った。

 

「アーチャー……私は確かにサーヴァントを呼ばせろとは言ったわよ。でもね……貴女が無駄な戦闘を重ねるつもりなら私は聖杯戦争を続ける義理もないのよ? でも貴女は違うでしょう? なんの為に自分がここにいるかを良く考えることね」

 

「……チッ! わかったよ。マスターの手前だ。ここは銃を下ろしてやる。それでお前達も刃を下ろせ」

 

 姉さんが銃を下ろしたのを確認して僕も再度口を開いた。

 

「ありがとう遠坂さん。そう言う訳だ2人共。これ以上やるつもりなら僕は君達を軽蔑するよ。話をまともに聞かずに姉さんと戦闘をするそんな2人とはね」

 

「切ちゃん……これ以上は……」

 

「しゅう先輩に嫌われるデス。とりあえずはもうやめるデス」

 

 続いて士郎もセイバーを止める為に口を開いた。

 

「セイバーと言ったな。まずは俺達がどうしてこうなっているかを教えてくれよ。そうしないと知るべき事を知れないからさ……」

 

「…………はぁ……。わかりました。ひとまずは剣を収めましょう。しかしマスター……貴方は甘すぎる。それでは勝てる戦も勝てないでしょう……」

 

 最後にセイバーも剣を収めた。これでようやく本題に入って貰える。

 

「はぁ……ようやくね。まずは木原君……そして衛宮君。貴方達が巻き込まれた聖杯戦争はさっきみたいなサーヴァント同士の殺し合いよ。最も……その3人は顔見知りみたいだけどね。本来は縁も縁もないサーヴァント同士が対決する儀式なのだけど、明らかに今回はイレギュラーね。何があると言うのかしら……」

 

 凛はそう言うと考え込んでしまった。

 

「マスター……私は今も納得していません。何故討ち取る機会を棒に振るうつもりなのですか?」

 

「まずはその〈マスター〉ってのをやめてくれよ。なんだかこそばゆいからさ……」

 

「では……私は貴方の事をなんとお呼びすればよろしいですか?」

 

「俺の名前は衛宮 士郎だ。よろしく頼むぞセイバー」

 

「なるほど……士郎……シロウ……ええ。私にはシロウと呼ぶ方があっていますね。ではマスター……今後は貴方をシロウと呼ばせていただきます。異論はありませんね?」

 

「もちろんだ。よろしく頼むよセイバー」  

 

 士郎がセイバーと名前のやり取りを済ませた。ならばいよいよ本格的に物語が始まるのか……。

 

「なら2人共。新都の教会に行くわよ。そこに今回の聖杯戦争の監督役がいるわ。いけ好かない野郎だけど立場と実績は確かよ。そこで本格的な説明を受けなさい」

 

「了解した。じゃあ新都の教会までは案内を頼むよ遠坂さん。今の説明なら遠坂さんは教会までは手を出さないでくれるんだろう?」

 

「ふん! まぁ良いわ。監督役への報告は義務だもの。知り合いがそんな事も知らないなんて目覚めが悪いもの!」

 

 未だに不満顔のセイバーと共に僕達は新都の教会へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺礼〜! 最後の参加者を連れて来たわよ〜! 監督役なんだから説明をしなさい! 

 

 そう言って凛はこの聖杯戦争の監督役を呼んだ。しかしそこに現れた人物は言峰綺礼では()()()()

 

「あ〜ごめんな〜。父さんはこの聖杯戦争中は出禁にしたんだ。だけど安心して欲しい。あたしが今回の聖杯戦争の監督役だ。そしてようこそ()()()()へ。歓迎するよ〈衛宮 士郎〉君……そして〈木原 修治〉君。君達2人がこの聖杯戦争最後の参加者達だろう?」

 

 そこに現れたのは死んだ筈のシンフォギア装者(天羽 奏)だった。

 

「へぇ……綺礼はいないのね。しかし驚いたわ奏さん。今回の監督役は貴女だったの?」

 

 凛は奏さんと既に面識があるようだった。そして奏さんは自己紹介を始めた。

 

「まずはあたしの自己紹介から始めた方が良さそうだな。あたしの名前は天羽 奏だよ。そしてこの建物の以前の名前は〈言峰教会〉だ。もちろんあたし自身の名字も本来なら〈言峰〉ってのが筋なんだろうな。だけどあたし自身は母さんの姓が気に入っているんだよ。だからあたしは母方の姓を名乗っているんだ」

 

「なるほどね。綺礼は自分の事はほとんど話さなかったから私が知らないのも無理はないわね。しかし奏さん……貴女が監督役だと言うならこの2人には事情を説明して貰えるかしら? 私が説明するよりも貴女の方が適任でしょう?」

 

「もちろんさ。じゃあまずは聖杯戦争について解説しよう」

 

 そう言って奏さんは聖杯戦争の仕組みを解説した。僕は一応原作知識で知っていたが、既にイレギュラーが起こった聖杯戦争だ。説明は聞かなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ……それ。魔術師同士の…………殺し合い? なんで…………なんでお前達は! そんな簡単に命を!」

 

 士郎は聖杯戦争の仕組み…………そして目的を聞いて声を荒げた。しかし凛は冷静に士郎をたしなめた。

 

「受け入れなさい衛宮君。貴方が巻き込まれた聖杯戦争は魔術師の悲願への手段の1つなのよ。そして魔術師は目的の達成を阻む者に容赦はしないわ」

 

「明らかにヤバい奴等にその聖杯ってのが渡ったら大変だな。遠坂さんの話通りなら今回の参加者にそういう人がいる可能性すらあるんでしょう?」

 

 僕の質問に答えたのは奏さんだった。

 

「ほぉ? 面白い発想だな木原君。まぁ確かに魔術師は根源へ至る事を目的としているし、手段を問わない者も多い。だけど何故それが今回の参加者にいると思えるのかな?」

 

 論理的だ。明らかに奏さんは僕の事を()()()()()みたいだな。だけどそっちがその気なら僕も取るべき態度で行こう。

 

「修治で良いですよ奏さん。見たところ僕よりも先輩…………具体的には華の二十歳辺りですか? その年齢で監督役を任される貴女に僕は敬意を表しますよ。

 そして参加者に危険人物がいる可能性……ですか? …………そんなもの1つしかありませんよ? 

 

 〈本当に欲しいモノがある人間は手段を妥協しない。手段を選べる人間は余裕のある人物だけ〉

 

 まぁコレが理由ですよ。魔術師としてだろうが人としてだろうが言える事だと思いますけどね?」

 

 僕が語り終えると奏さんは笑っていた。

 

は…………ははははははははは! すごい根拠と価値観じゃないか修治! あたしは修治が気に入ったよ! 嘗てのあたしのパートナーにも引けをとらないその精神力! 修治が聖杯戦争のマスターか……コイツは楽しくなるぜ! 

 

 奏さんは尚も上機嫌だ。そしてとうとう士郎が口を挟んだ。

 

「ふざけてやがる! なら…………そんなくだらない理由で聖杯なんて危険なモノを他の奴等には取らせない! 俺が手にして破壊してやる!」

 

 そうだな。〈衛宮 士郎〉とはこんな人物だった。だからこそ幾つもの可能性を越えて士郎は聖杯を手にしたんだ。なら僕の答えも変わらないな。

 

「ありがとう士郎……おかげで僕も覚悟ができたよ。この戦いは僕達で止める必要がある。協力して欲しい」

 

 すると凛は僕達を見て呆れた表情をしていた。

 

「はぁ……素人2人が碌に事を考えずに聖杯戦争へと挑むつもりかしら? よくそんな無謀な発想に至れるわね」

 

「残念だけど凛……僕達は本気だよ。この話の通りなら僕は聖杯を手にして破壊する。邪魔をするなら凛も敵だ……例え姉さんを倒してでもね」

 

「教会までの案内ありがとうな遠坂。おかげで俺もやるべき事を決められたよ。だけどもう迷うつもりは無い。邪魔をするなら遠坂も……遠坂のサーヴァントも俺達で倒すよ」

 

 僕達2人の覚悟を聞いた凛もまた帰る準備を始めていた。

 

「そう……じゃあ私の手助けはここまでね。この教会を出たら貴方達と私は敵同士よ。最後に1つ言っておくわ。ギブアップをする時はこの教会に来なさい。それで聖杯戦争の終結まで保護してくれるわ。そうでしょう奏さん?」

 

 すると監督役の奏さんも答えた。

 

「もちろんだよ。棄権したマスターの令呪を回収して終結まで保護する事……そして神秘の隠匿があたし達の役割だ。もちろん2人が神秘をひけらかした時はあたし達も相応の対応をする。それが教会から派遣された監督役の役割だよ」

 

「じゃあ遠坂……次に会う時は恐らく敵同士だけど…………」

 

「僕達は負けるつもりは無い。でも…………もし機会があれば……」

 

「そうね。私達で最後の決着をつけましょう?」

 

 そうして僕達は正式に聖杯戦争の参加者になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜そして凛は〜〜

 

 士郎達と別れた凛は先程の自分の言動に後悔していた。

 

「あぁ……士郎…………なんて格好いいのよ。あんまりにも格好いいから思わず強気に接してしまったわ…………。嫌われてしまったらどうしようかしら……」

 

「あぁー…………マスターさぁ……なんで

 

 〈あたし達と手を組んでくれ〉って

 

 素直に言えないんだ? んな事はやれば簡単じゃねぇかよ?」

 

 そう…………凛は士郎と同盟を結ぶつもりでいた。愛しい士郎と接触する機会を少しでも確保しようとしていたのだ…………が、自分の強気な態度でそのチャンスを棒に振るってしまった。

 

「うぅ……嫌われてしまったかしら……」

 

 もはや優雅とは対極の状態の凛だが、クリスはそんなマスターに意外な言葉を告げた。

 

「マスターさぁ…………さっきの士郎ってのはモテるのか?」

 

「………………わからない。だけど嫌われるような性格じゃあ無いわ。あとクリス………………2人っきりの時は凛で良いわよ。私達は同年代でしょう?」

 

「そうだな。だけどさぁ凛………………わからないなら急いだ方が良いかもしれないぜ? あたしの場合…………修治の奴は離れ離れになって再会した時は既にモテてやがった。凛の友人に〈響〉ってのがいるだろう? あんな感じの奴等が既に修治に惚れてやがった」

 

 クリスは苦虫を潰したような表情を見せたが言葉を続けた。

 

「だから押し倒せ。そうすりゃあ士郎は凛から逃げられねぇよ。責任感はありそうだからな……」

 

「そうね。機会を見て行動しましょう。……待ってなさい士郎………………絶対に貴方は逃さないから!」

 

 そしてこの夜〈遠坂 凛〉は1つの覚悟を決めた。

 

〜〜そして凛は(終)〜〜




そして彼等は出会うべき人物と遭遇する……

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襲撃者は狂戦士達……

さぁ……運命を揺るがす戦いが始まります。ここから……捻じれ……壊れ……絡み合い……


 凛と教会で別れた僕達は今後の事を話し合う事にした。

 

「士郎……提案がある。僕達は同盟を組まないか?」

 

「奇遇だな修治……俺も同じ事を考えたよ」

 

 やはり僕達マスター同士は考える事は同じだった。しかしそれはあくまでもマスター同士の話であり、サーヴァントの意思を確認してはいない。だからこそ確認する必要があった。

 

「さて切歌ちゃん、調ちゃん……僕は〈士郎・セイバー〉の陣営と同盟を結ぶ価値があると思っている。2人の意思を教えてくれないか?」

 

「そうデスねぇ……あたしは別に悪く無いと思っているデス。調はどう思っているのデスか?」

 

「……セイバーは最優と名高いサーヴァントが多い。恐らく彼女はその例に漏れる事はない。同盟して貰うメリットは大きいと思う」

 

 概ね2人には好印象だな。なら後はセイバーの答え次第か…………。

 

「シロウ……私もアサシンと同盟を組むメリットは大きいと思います。先程のアーチャーやそこのアサシン達を含めて今回の聖杯戦争には明らかに英霊らしからぬサーヴァントがいます。その手の内が明かされるまでは同盟ないしは不可侵条約は有効です」

 

 流石アルトリア・ペンドラゴンだ。明らかにこちらの真名を告げられながらも理解の及ばないサーヴァントへの警戒が見て取れる。だけど同盟が有効なら僕は彼女に伝えられる事もある。

 

「ありがとうセイバーさん。聡明な貴女なら切歌ちゃんと調ちゃんの真名を知りながらも検討のつかない宝具を警戒しているのはわかっている。だからこそ聞いて欲しい。今回の聖杯戦争は明らかにイレギュラーだ。それこそ……貴女の知る前回までの聖杯戦争とは比べられない程の…………ね」

 

「ッ!? シュウジと言いましたね? 貴方は一体何を知っているのですか?」

 

「情報は戦闘において重要な要素となる。この続きを知りたいなら同盟を確約して欲しい。どうかな? 悪い条件ではないと思うよ?」

 

 するとセイバーは少し悩んだ後に士郎に提言した。

 

「シロウ……彼等アサシン陣営と同盟を結んでください。私達はこの聖杯戦争を勝ち抜かねばなりません。その為には英断をお願いします」

 

「それは同盟に関しては俺の判断に委ねるって事なんだな? ……なら答えは1つだよ。修治…………俺達と同盟を結んで欲しい。そしてこんなクソったれな争いを終わらせよう!」

 

「ありがとう士郎。これからよろしく頼むよ」

 

 僕と士郎は握手を交わした。そしてここにアサシンとセイバーの陣営が同盟を締結した。

 

「さて……セイバーの疑問に答えるには場所が悪い。話は僕達のホームで構わないよね?」

 

「えぇ……よろしくお願いします。シュウジ、シラベ、キリカ」

 

「大好きな先輩からのお願いデスからね。是非あたし達とよろしくデス!」

 

「お互いに良い関係性を築きましょう」

 

 セイバー・切歌ちゃん・調ちゃんもお互いに握手をした。後は士郎の家に帰るだけだ………………そう僕は思っていた。

 

「あ〜あ…………やっぱりしゅう君は2人を選らんじゃつたんだね? なら…………仕方無いよね?」

 

「そうだね…………私達で修治君にオシオキをしないとね?」

 

「ッ!? そこにいるのは誰だ! 

 

 セイバーが今の声を出した謎の人物達へと剣を向けた。しかし影しか映さない人物達は僕達へ一方的に語りかけて来た。

 

「え〜酷いよ2人共……今日も一緒に過ごしたでしょう? そして言ったじゃん…………。

 

 〈今日はどうしてもやることがある〉

 

 って……もしかして忘れちゃった?」

 

 そう呟いた人物を僕達は()()()()()。しかしその人物が魔術師な訳が無いと僕は思っていた。しかし現にサーヴァントを連れている僕達に、サーヴァントを呼び出した事を見透かしたような言動を()b()()()()()/()b()》はしていた。

 

「…………なるほどな。まさかお前が魔術師だとはね…………()。そしてそんな響が呼び出したサーヴァントは当然君なんだろう………………()()

 

「おい修治! まさかあの2人の内の1人が響だって言うのが!? そして誰なんだよその〈未来〉って奴は!」

 

 だろうな。彼女は士郎が知らない人物であり、そしてある意味では僕達の中で1番の危険人物なんだから……。

 

アハ! バレてるよ響! 早く切歌ちゃん達を殺っちゃおう? そして修治君を私達のモノにしよう?」

 

良いねぇ未来! じゃあ未来は切歌ちゃんと調ちゃん(アサシンの2人)を。私はセイバーさんを倒すよ! 必ずしゅう君を手に入れようね!」

 

 勝手に話を進める2人だがここにいるのは2人だけではない。当然僕達のサーヴァントであるセイバーとアサシンの2人がいる。だから響と未来の思い通りにさせるつもりはこちらには無いんだ! 

 

「切歌ちゃん! 調ちゃん! 相手はどう考えても未来だ! 気を抜いたら2人が揃っていても……」

 

「わかっているデス。未来さんのヤバさはあたし達がよく知っているのデス!」

 

「だけど先輩の事だけは渡さない。先輩に愛されて良いのは私達だけだから……」

 

 2人は明らかに未来を挑発しているが、僕達は未来を退けないと敗退が決定してしまう。こんな序盤で負ける訳にはいかな。

 

「遺言は終わりかな? じゃあ2人共安心してね。すぐに2人共英霊の座に還してあげるから……そして私達2人で修治君を幸せにするからね?」

 

「上等デス。後で泣いても絶対に許してあげないデスから……」

 

「敗退して英霊に還るのは未来さんだから……。絶対に許さない!」

 

 3人は向かい合いそれぞれの聖詠を口にした。

 

「Rei shen shou jing rei zizzl〜♪」

 

「Various shul shagana tron〜♪」

 

「Zeios igalima raizen tron〜♪」

 

 そして3人はシンフォギアを纏った。

 

「さて2人共……オシオキの時間だよ?」

 

「2人共纏めて消えちゃえ! 私は絶対に許さないから!」

 

閃光! 

 

「それはこっちの台詞デス! 調……あたし達の力を合わせるデス!」

 

切・呪リeッTぉ! 

 

「任せて切ちゃん! 私達の力はこんなものじゃあ無い!」

 

α式 百輪廻! 

 

「ちょっと待ってくれよ3人共! こんなところでそんな技を使えば!」

 

 未来の〈閃光〉、切歌ちゃんの〈切・呪リeッTぉ〉、調ちゃんの〈α式 百輪廻〉その3つの範囲攻撃がぶつかり衝撃波が僕を襲った。

 

「がぁっ!!」

 

 切歌ちゃんの斬撃によって生じた瓦礫が未来の閃光で弾かれた。その時に僕の方へと飛んで来た為に僕は直撃を受けてしまった。

 

「修治先輩! 大丈夫デス「余所見はダメだよ切歌ちゃん?」あぅ!」

 

「この! 切ちゃんから離れ「もちろん調ちゃんも許さないよ?」あぁ!!」

 

 僕に気を取られた切歌ちゃんが未来の触手の1撃を派手に受けた。そして調ちゃんが反撃に転じようとしたが、未来はそれすらも許さなかった。

 

「切歌ちゃん! 調ちゃん!」

 

 未来の手痛い1撃を受けた2人は膝をついていた。確かに未来は〈神獣鏡〉を纏った時は圧倒的な力を誇っていた。だけど同時にそこには未来なりの〈強さ〉と〈優しさ〉があった。

 

「未来! 止めてくれよ! なんでこんな事を!」

 

 僕は未来に言葉を伝える為に倒れた2人の前に立ちはだかった。しかし未来はそんな僕に笑顔で答えを返して来た。

 

「え? そんなの簡単だよ? 私はサーヴァントで切歌ちゃん達もサーヴァント……私達が戦うのは当然でしょう?」

 

「だとしてもこんな仕打ちはないじゃないか!」

 

 僕は必死に未来の説得を試みた。しかし未来の返事はこちらの予想外の言葉だった。

 

「じゃあ修治君……私達のモノになってよ。私と響はね…………聖杯なんていらないの。ただ修治君が側に居てくれたらそれだけで良いんだよ? もちろん………………2人には消えて貰うけどね?」

 

 ダメだ。未来には僕の言葉が届かない。どうすれば………………どうすれば未来に伝える事ができるんだよ! 

 

「先輩……逃げてください……未来さんは……」

 

「明らかに正気じゃあ無いデス……このままだと先輩まで……」

 

 息も絶え絶えの2人が僕を思って逃げるように言ってくれた。だけど僕は2人を見捨てる気にはなれなかった。

 

「もう充分遺言の時間は作ったよ? だからバイバイ……2人共……」

 

 未来はアームドギアを構えると技の体勢に入った。そして僕の予想通りの技なら今の2人は避ける事はできない。だから僕は2人の前から動かなかった。

 

「これで終わらせよう……」 閃光! 

 

 僕は足元にある瓦礫を拾い精一杯の強化を施した。そしてその瓦礫を盾代わりにして未来の攻撃を受け止めようとした。

 

「先輩! 逃げるデス!」

 

「止めて先輩! 私達の事は良いから!」

 

 後輩達が逃げるように言って来たが、今の僕は逃げるつもりは無い。だから動かなかった。そしてその結果僕はあっさりと吹き飛ばされて住宅の壁へと叩きつけられた! 

 

「がアアアぁぁ!」

 

 叩きつけられた際に明らかに何本もの重要な骨が折れた。そしてとてつもない激痛に襲われたが、僕は意識を手放さ無いように踏ん張った。

 

「修治君……なんで…………」

 

 シンフォギアの攻撃を前に2人の前から1歩も退かす、更に骨が折れて尚立ち上がろうとする僕に未来は激しく動揺していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で士郎の方も戦闘は苦戦を強いられていた。

 

「なんで…………なんでこうなるんだよ響! 俺達は友人じゃないか! なのになんでこんな争いを!」

 

「うん……士郎君の事はとても大切な友達だと今でも思っているよ。だけどね……私達はどうしてもしゅう君が欲しいの。その為にはサーヴァントは倒さないといけないの……」  

 

 響の実力はサーヴァントに匹敵していた。しかしセイバーの不利はそれだけに収まらない。住宅街である事、そして宝具を抜けない枷が確実にセイバーを追い詰めていた。

 

「セイバーさん! その隙は致命的だよ!」

 

「ッ!? しまった!」

 

 懐に入られたセイバーは響の正拳突きをモロに受けてしまった。そしてその1撃で足に力が入り難くなるほどのダメージを受けてしまった。

 

セイバー! 今行くから! 

 

 士郎はセイバーの元へと我武者羅に走った。そしてセイバーを庇う為に立ちはだかった。

 

やめろ響! これ以上彼女を傷つけるなら俺が相手になる! だからもうやめろ! 

 

「逃げてくださいシロウ! 人の身ではサーヴァントには太刀打ちできません!」

 

「セイバーさんの言う通りだよ士郎君。今すぐそこをどいて……そしたら士郎君には危害を加えないから………………」

 

 響は一歩一歩距離を詰めるが、士郎は尚も動かなかった。そして拳が届く距離になってもそれは変わらない。

 

「後悔しても知らないから……」

 

ズドン! …………ボキボキ…………

 

 士郎の腹部に強烈な1撃が加えられた。当然骨は折れて膝をつく事になるが、横を通り抜けようとした響の足を士郎は掴んだ。

 

「…………? 離してよ士郎君。士郎君も重症だよ? 折れた肋骨が内蔵を傷つけてるかもしれないよ? だから早く手を離してよ。じゃないと手遅れになるよ?」

 

 しかし士郎の答えは変わらない。

 

「こと……わる…………よ。この手は…………はなさ…………ない…………から…………」

 

「士郎君…………私達の覚悟はね………………邪魔をされた程度じゃあ揺るがないよ?」

 

「だろう………………な。だけ…………ど……俺も……この手を……離す……つもりは…………ない」

 

 息も絶え絶えでありながら士郎は響から手をはなさなかった。

 

「はぁ……未来……やめよ? 今のままだと2人とも諦めないし、しゅう君はまた次の機会で良いから……」

 

 すると修治達をボコボコにした未来は響の元まで戻って来ていた。

 

「良いの響……このまま止めを刺さなくて……」

 

「うん。しゅう君に嫌われたら私達は生きていけないから…………」

 

「それもそうだね。じゃあね皆……今度はもう少し強くなってね?」

 

 そうしてバーサーカー陣営(ひびみくの2人)は撤収をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター……彼等は全員気を失っているけどマスター達は重症よ? この後はどうするつもりかしら?」

 

『わかりましたキャスターさん。では手筈通りに皆さんを〈所定の場所まで〉お願いしますね?』

 

 そしてこの場に残された5人は、キャスター陣営が回収して行った。




バーサーカーが……2人?………おかしいなぁ……?1人はマスターの筈なのですが…………


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〈間桐 桜〉と言う少女

とうとう行動を始めたキャスター陣営。そのマスターと修治がついに邂逅します。


 バーサーカー陣営の強襲によって手痛いダメージを受けた僕達は全員意識を失った。しかし次に気付いた時……僕達は()()()()()()()()()

 

「ここは…………士郎の家? でも……僕達は……全員やられて…………」

 

「あぁ…………気付いたんですね修治センパイ。皆さんが住宅街で倒れているから私はとても驚いた上に大変だったんですよ?」

 

 現れたのは〈間桐 桜〉だ。僕や士郎の後輩にしてHeaven's Feel(最悪のルート)のヒロインだ。そして作中で最も危険なヤンデレであり、派生作品においてもラスボスを務めた正真正銘の大物だ。

 

「その口ぶりなら桜が僕達を助けてくれたって事か? だったら士郎だけ助ければ良かったじゃないか。なのになんで僕達まで?」

 

 幾つものルートが分岐したこの世界に原作知識がどこまで役立つかはわからない。そして気の所為か桜の顔色が原作開始時よりも良く見える。何か…………何か理由が有る筈なんだから! 

 

「あぁ…………修治センパイは私のサーヴァントが誰かわからない事……そして何故私が助けたか……その2つが知りたいんですね? 良いですよ。じゃあまずはサーヴァントの方から説明しますね? 出てきてください〈キャスター〉さん……」

 

「桜……今なんのクラスのサーヴァントを呼んだ? ()()()()()()()()()()()()だと?」

 

 予想外だ! まさかキャスターを引き当てたなんて! これじゃあもしかして〈間桐 臓硯〉の本体は既に引き払われたのか!? 

 

「はぁ……。桜……もう少し情報は選びなさい。でも今回は仕方無いわね。私も貴方を抱きしめたくて仕方が無かったわ……」

 

 そう言って現れたサーヴァントはまたも予想外の人物だった。

 

「なんでアンタがここにいるんだよ! ()()()()()()()さん!」

 

 そう……桜が呼び出したのは中世のヨーロッパで活動した錬金術師のサンジェルマン伯爵()()()。しかしその人物像は僕達の教科書に登場した人物像ではなく、戦姫絶唱シンフォギアの(嘗て僕が転生した)世界で活躍した彼女だった。

 

「でも……1つだけわかりましたよ。サンジェルマンさんなら桜の治療…………もとい浄化なんて〈ラフィス・フィロソフィカスの輝き〉で行えますからね……」

 

 僕は声を絞り出して頭に浮かぶ仮説を、確信に変える為に情報を集めようとした。しかしその考えを纏める前に彼女に抱きしめられた。

 

「よく頑張ったわね。修治の頑張りは人の功績には収まらないわ。それは私達がとてもよく知ってるもの」

 

 その腕の暖かさは暴力的だ。包込まれる魅力に僕の心が傾き兼ねないからだ。

 

「あぁ…………温かい。貴女の温もりは……僕を包み込んでしまう……」

 

 僕は庇護されるように抱きしめられる事に弱い。だからこそこの人や〈了子さん〉として活動していた〈フィーネ〉に抱きしめられた時には抵抗ができなかった。そのせいで響達を危険に晒した事もあるので罪悪感もセットだけど。

 

「ふふふ……修治は私達の可愛い息子のような存在よ? 私が修治を抱きしめるのは当然でしょう?」

 

「まぁそう言う事ですよ修治センパイ。私達は先輩と修治センパイが欲しいのでこの戦いに臨んでいます。だからこそセンパイ達がバーサーカーとそのマスターに襲われた後私達は助けてあげたんですよ?」

 

 僕もようやく桜達の目的に検討がついできた。つまり桜は士郎を、サンジェルマンさんは僕を狙っていた訳か。そして僕は彼女達の瞳が光を映していない事にも気づいてしまった。

 

「桜とサンジェルマンさんの目的はわかったよ。だけど僕達を助けた事で何を求めるつもりかな? 素人の僕には大それた事はできないよ?」

 

「えぇ。修治の力が本職の人間に遠く及ばない事は知っているわよ。私達の要求は1つだけよ」

 

「修治センパイは私と先輩の恋を成就させてください。そしてサンジェルマンさんの恋仲になってください。もちろんセンパイ達のサーヴァントさんにはサンジェルマンさんの為にも退場してもらうつもりですけどね? だって浮気されたら私達は気が狂いそうになりますから……」

 

 予想通り過ぎる要求だ! 

 

 〈切歌ちゃん達を殺せ。そして彼女達の愛を受け止めろ〉

 

 桜は僕にそう告げて来ていた。

 

「桜……それは士郎のセイバーも含まれているんだよな?」

 

「もちろんですよ? 先輩のセイバーさんは美しいですからね……もしかして先輩の好みの女性かもしれないですから…………」

 

 やはり桜はFateルートの可能性すら本能的に理解しているみたいだな。そうなればこの結論は当然とも言えるな。

 

「なら僕の出す結論は1つだよ。士郎を交えて話し合いをする事だね。だって僕と士郎は同盟を結んでいるからさ」

 

 これは僕達アサシン陣営の問題じゃあない。士郎にも知らせる義務が僕にはあるから。

 

「そうですね。先輩も交えて改めて〈お話〉をしましょう? あぁ…………でも1つだけ妥協できる要素が私にはありますよ?」

 

 桜はそう言って()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!? 桜まさか……その力は!?」

 

 僕は動揺を隠せなかった。そしてサンジェルマンさんが僕に解説を入れて来た。

 

「えぇ……私の力で桜の体内に潜む()()()処理をしたわ。だけど桜自身の力は既に()()()()()()()()()()()()()()()

 

 嘘だろ!? あの黒い聖杯を既に制御下に置いたのか!? 

 

「桜……お前はどこまで……」

 

「私の目的は先輩です。先輩へ私の愛を届けます。その邪魔をするなら私はサーヴァントだろうが姉さんだろうが排除しましょう……」

 

「〈姉さん〉って……まさか桜は遠坂まで!」

 

「はい。姉さんは必ず殺します。知ってますか修治センパイ……遠坂凛は先輩の事を盗撮してるんですよ? それも日常的に……ですよ?」

 

 凛が士郎を盗撮だと!? なんでそんな事を桜が知っているんだよ!? 

 

「桜……何故遠坂が士郎を盗撮してると断言できる? そんなの桜の妄想の可能性だって「先輩の第2ボタンに少し違和感を感じませんか? 入学して半年と経たないのにほつれるのはおかしいですよ?」なんだと!?」

 

 嘗て士郎は日課の人助けの際に凛にも手助けをした。しかしその際に不慮の事故で士郎の第2ボタンがほつれた事があった。そしてその際に凛は士郎のボタンを縫い直した事があった。

 

「まさか……あの時の? だけどなんでそれだけで?」

 

「答えは簡単ですよ? だって私も先輩の監視をしていましたから……魔術師ではなく1人の女性〈間桐 桜〉としてですけどね?」

 

 間桐臓硯からの命令の有無にかかわらず士郎を監視していた訳か。なるほど納得できるよ。

 

「じゃあ桜の目的は士郎の何だ?」

 

「先輩と恋仲になりやがて家族となります。当然家族ですから〈営み〉は問題ありませんよね? 私は先輩の全てを感じたいんです。先輩の腕の中に抱きしめられたいです。だから修治センパイも協力してください。こんなに可愛い後輩からのお願いですよ? センパイのお子様サーヴァントよりも素敵な……ね?」

 

 桜が正気なら良かったかもしれないが、僕に彼女を諭す手段はほぼ無い。更にサンジェルマンさんという厄介極まりない相手もいる。僕と士郎は戦闘も情報も全てが後手後手だと言える訳か。

 

「だけど桜……切歌ちゃん達をあまり見くびらない方が良いよ? だってこの2人の真の強さはお互いを〈想い合える〉ことだからね。油断して痛い目を見ても知らないよ?」

 

「えぇ……肝に銘じます。〈恋の力〉は愛を凌駕する前例を私は()()()()()ので」

 

「桜……今……君はなんて……」

 

「少し話し過ぎたので今回はこれで切り上げましょう? 色よい返事をお待ちしていますからね……………………修治センパイ?」

 

 桜は僕にそう告げてサンジェルマンさんと共に去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな。桜も魔術師で聖杯戦争のマスターか。そして使役するのはキャスター……か」

 

 僕は起きて来た士郎に桜とのやり取りを全て話した。すると士郎は反応に困っていた。

 

「そして遠坂と桜は実は姉妹で、嘗て俺が遠坂を助けた際にボタンを細工して盗撮していた……と。一体俺を盗撮した目的は何だ?」

 

 こんの唐変木! 僕は士郎をドつきたかったが、未来や切調コンビの前例を考える(もとい前世のツケ(フラグ構築の結果)による自業自得)と、少し身の振り方を考える必要が出て来た。

 

「僕の仮説を立証するにはもう一組の陣営から話を聞かないといけない。士郎……明日の登校で…………と会って欲しい」

 

「? 修治が直接聞けば良くないか?」

 

「僕の仮説が正しくて事態が最悪の場合、僕達は敵同士になる可能性がある。それもお互いの意思にかかわらず……ね」

 

「良くわからないけど了解したよ。だけど最善の可能性もあるんだろう?」

 

「もちろんお互いにとって存在するよ。だから士郎……頼んだよ?」

 

「わかった。明日成果を報告しよう」

 

 僕達は話し合いの結果士郎に彼女への接触を依頼して、最悪の場合に備えることにした。

 

「だけどもし最善の場合なら……」

 

 僕達は争わずに済むだけではなく、聖杯戦争自体を無意味にすることができる筈だ……。




士郎に接触を依頼した陣営は既に登場しています。

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〈立花 響〉という少女

修治の提案でとある人物と接触をする事になった士郎……しかしそれは彼のよく知る人物だった。


 衛宮士郎は修治の提案を聞き、とある人物達に会う為に登校した。

 

「おはよう……ちょっと時間あるか? 俺はお前と話し合いたいよ()……」

 

「うん! 大丈夫だよ! じゃあ屋上に行こう!」

 

 修治が士郎に接触を依頼した人物の名は()() ()()。バーサーカーのサーヴァントである〈小日向 未来〉のマスターであり、()()()()()()()()()()()()()である。

 

「良かったよ。じゃあとりあえず一緒に行こうか……」

 

 そして士郎と響は屋上へと上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ士郎君……なんで無防備にしてるの? 仮にも私達は聖杯戦争のマスター同士だよ?」

 

 響の言葉は最もだった。しかし士郎も無策でいる程の愚行は同盟相手とセイバーが許してくれなかった。

 

「生憎とセイバーは留守番だ。お前との話し合いが拗れる可能性もあるからな? まぁ……響はそんな事するつもり無いだろう?」

 

「そうだね。しゅう君が怒る事はしたくない……かな? でも士郎君……私としゅう君を引き離すつもりなら士郎君相手でも私は容赦しないよ?」

 

 どちらも相手の事をある程度までは理解している。極度のお人好し同士(主人公達)にとって人の命の重さがどれほどのものかは充分に理解している。更にこの2人はサバイバーズ・ギルトという共通点もあり、まだ真昼の学校で戦闘を始めるつもりはお互いに無かった。

 

「じゃあ響……単刀直入に聞くぞ? お前達は同盟相手はいるか?」

 

 すると響の雰囲気が変化した。

 

「へぇ……士郎君面白い事をいうね……そして答えはYesだよ。でも同盟相手の情報はナイショだよ?」

 

 響はあっさりと同盟相手がいる事を肯定した。つまりそれは修治の仮説が正しい事を決定づけた。

 

「随分あっさりと肯定したな。俺にそんな事を言っても良いのか? 修治と2人で今度こそ逆襲するかもしれないぞ?」

 

「大丈夫だよ。私の同盟相手のターゲットは士郎君で、私達はしゅう君が狙いだもん。利害関係は一致してるよ? 私達4組が残るまでは…………ね?」

 

 そして士郎は修治の仮説を思い出していた。

 

 〈僕達を襲撃した人物と治療した人物は利害関係がある。〉

 

「なるほどな。ここまで修治の仮説通りとはな……。これはいよいよ俺達の関係性が変化するんだな……」

 

「そっか……しゅう君はわかってたんだねぇ……。じゃあ士郎君を早く〈彼女〉に引き渡さないとね……」

 

 〈関係性の変化〉…………それは士郎と修治が同盟関係を維持できなくなる可能性を指している。響と関係がある人物と士郎が手を組み、修治と響達が手を組む可能性だ。

 

「それと教えてくれないか? どうして響達は修治に惚れたんだ?」

 

「っ!? 士郎君! 今なんて言ったの!?」

 

 士郎の問いかけに響は激しく動揺した。それはそうだろう…………この唐変木が〈恋〉などと口にしたのだから。

 

「やっぱりな。響が修治を見る様子は恋した乙女のソレだぜ? まぁ……あいつは良いやつだよ。だけど何でか浮いた話が無いんだよなぁ……。まあ響が修治を幸せにしてくれるんだろう?」

 

「しっ士郎くん! そんな……そんな事ある訳ないじゃん! 私だよ? 私がしゅう君を好きな訳……」

 

「凄いな……まさか本当に修治を好きだったんだな。その反応を見れば流石の俺でもわかるぞ響……」

 

 士郎は苦笑交じりに言ったが、話題が良く無かった。

 

「知られちゃったかぁ……じゃあ士郎君……死んで貰えるかな?」

 

 響は瞳のハイライトを消して士郎に飛びかかる! 

 

「っ!? 響! どうしたんだよ!」

 

「士郎君……士郎君は乙女の秘密に土足で踏み込んだよね? 私達の計画に支障が出そうだからさぁ……死んでくれない? 今のしゅう君に私の想いを知られる訳にはいかないの……だって告白のムードが台無しでしょう?」

 

やめなさい響! これ以上士郎に手をあげるつもりなら私とアーチャーが相手になるわよ! 

 

「遠……坂……? なんで……助けて…………?」

 

「簡単な話よ? 私は衛宮君の人間性に好感を持っているわ。そしてそう簡単に衛宮君を失う訳にはいかないわ。もちろん彼のサーヴァントがセイバーな事も理由の1つよ?」

 

 現れた凛に対して士郎は困惑していた。凛が士郎を庇う理由があるのは教会への道中まで……その筈だったからだ。

 

「凛……そこを退いてよ。士郎君を殺さないと私の乙女の秘密がしゅう君に知られるかもしれないじゃん……」

 

「そうね立花さん。確かに乙女の秘密を知られた貴女はきゅうを要するでしょうね? でも私だって目的があるわ。貴女の同盟相手にも伝えなさい…………

 

 〈士郎を傷つけて良いのは私だけよ? 〉

 

 ってね。もしここで拳を降ろさないなら次は私とアーチャーが相手になるわよ? それにここには私が用意した結界もあるわ。〈地の利〉と〈数の利〉……その2つを抑えた私と貴女…………どちらが有利かわからない訳が無いでしょう?」

 

 すると響は拳を下ろした。

 

「わかったよ。ここで士郎君の口を塞げないなら今は退いてあげる。だけど覚えておいて……

 

 〈私達は聖杯なんて興味が無い。そして街がどうなろうと構わない〉

 

 ってね。それに凛は〈彼女〉の獲物だよ? いくらサーヴァントがクリスちゃんでも私と未来…………そして〈彼女〉と〈あの人〉が本気になったらどうにもならなくなるからね?」

 

「そうね。確かに貴女達みたいに規格外且つ真名がわかっても、出自のわからないサーヴァントがいるこの聖杯戦争は異常ね。でもそれがどうしたかしら?」

 

 凛も響もお互いに譲る気配は無かった。そしてとうとう衛宮 士郎(渦中の人物)が口を開いた。

 

「待てよ遠坂……それに響も。俺が一体何をしたんだよ!」

 

 やはりこの男は何も理解していなかった。

 

「はぁ……興も削がれたし、条件も不利までくれば撤収するしか無いね。じゃあ最後にいくつか教えてあげる。私の未来はバーサーカーで、彼女のサーヴァントは〈キャスター〉だよ。そして動きを見せていないのは〈ライダー〉だけだよ?」

 

「あら響……同盟相手のクラスを公開しても良いの? 自分達の有利を捨てるようなものよ?」

 

「別に構わないって。だって〈あの人〉と私が手を組んで、切歌ちゃんと調ちゃんを殺す。そして〈彼女〉の力はサーヴァントすら凌駕するからね……」

 

キ〜ン〜コ〜ン〜カ〜ン〜コ〜ン〜♪ 

 

 響がそう告げた時に授業の予鈴が鳴ってしまった。

 

「それじゃあ私はもう行くよ?」

 

 響はそう言うと校舎の中へと消えて行った。

 

「さて衛宮君……助けて貰ったお礼は無いのかしら?」

 

「そうだな。ありがとう遠坂……おかげで助かったよ」

 

「お礼なんて言葉じゃあ足りないわ。そうね……私の事を〈凛〉って呼びなさい。それで満足しても良いわよ?」

 

「ありがとう凛。これからも仲良くしような」

 

 士郎は何も考えずに手を伸ばしたが、凛は動揺していた。

 

「しっ仕方無いでしょう! 衛宮君は素人何だから! 私がサポートしてあげないとダメじゃない!」

 

 そう言いつつも手を伸ばすのが遠坂凛だ。そして2人は強く握手をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎が凛と握手をする頃……響は今後の動き方を考えていた。

 

「士郎君に感づかれたかもしれないね。どうしよう未来?」

 

 すると霊体化していた未来が現れた。

 

「ダメだよ響……彼の言葉に動揺したら。私達が手をこまねいたからしゅう君は………………」

 

「うん。次は逃さないよ。やっと見つけ出したんだから……」

 

「そうだよ響……()()()気をつけないとね? じゃないと()()しゅう君を盗られるよ?」

 

「ッ!? それだけはダメ! もう初恋が失恋で終わるのは嫌だよぉ……

 

 響は先程の表情から想像できない程酷く怯えていた。そして響に言葉を告げた未来もまたその可能性に怯えていた。

 

「私達の本来なら起こる不幸(ライブ会場の悲劇)からずっと私達を支えてくれたしゅう君は絶対に渡しちゃあいけないよ? 例え相手がクリスでもね?」

 

「クリスちゃんは……しゅう君のお隣さんだった。そして……離れ離れになった幼馴染だった」

 

 そして響は生存者達へのバッシングを受ける事もしばしばあったが、修治はその度に響に手を差し伸べ続けた。そして響が装者になる頃には既に外部協力者となり、ひびみくの仲違い(後に起こるケンカ)を未然に防いだ。そして未来を側で守り続け、響の帰る場所であり続けた。そんな修治の存在は2人にとっては不可欠な存在となっていた。

 

「だからしゅう君は渡さない。絶対に他の皆には渡さない。私と未来だけのお日様で帰る場所なんだから……」

 

「みんな私達のお日様を狙う泥棒さんだもんね……絶対にしゅう君は渡さないよ。しゅう君は私と響の側にいれば……………それで良いんだから…………」

 

 故に2人は修治を求める。その暖かさを取り戻す為に。………そして2度と他の人物の手に触れさせ無い為に。

 

「じゃないと………私達がしゅう君を殺した意味がないからね?」

 

 そう……………修治を流れ星の日に殺害したのは響と未来の(最初に救われた)2人だった。しかし修治がその事実に気づくのは先の未来だ。




修治の死因にはひびみくが関係していた。何故……彼女達はその結論に至ったのかは……彼女達自身が語る事でしょう。

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その頃の衛宮低

士郎が彼女と接触をしていた時……彼女達は胸の想いを語り合う。


 士郎が学校に行っている間……衛宮邸に残されたのは4人の男女だった。

 

「シュウジ……何故私達はシロウの元へと向かってはダメなのですか? これでは騎士としての誇りを全うできません!」

 

 やはりお怒りだろうなセイバーは。だけど僕はここで譲るつもりはないので言える事や言わないといけない事は言わせて貰おう。

 

「それならセイバーだって霊体化すれば良かっただけだよ? いくら士郎が未熟だろうとサーヴァントなら霊体化はできる筈だ。なのに何故セイバーは霊体化しないんだい?」

 

「っ!? 気づいていたのですかシュウジ! ならば何故それを知っていながら黙っていたのですか?」

 

「やっぱり霊体化できないんだね。一応ブラフのつもりではあったんだけど……」

 

 するとセイバーは自分の言動に気付いた。まぁ…………真名が流れでバレる可能性もあるからね。

 

「シュウジ……貴方は相当な策士ですね。私が在命していた時代に出会っていれば相当な地位を約束できましたよ」

 

「やはりセイバーは大軍を動かせる人物だったんだね。そしてそんな人物にそこまで評価されるとは光栄だよ」

 

 そんなやり取りをしていると後ろから突撃をくらった! 

 

先輩! あたし達を置いてセイバーさんとイチャイチャしないで欲しいデース! 

 

「先輩が優しい人だから私達は先輩に惚れた。でも先輩が新しい女性を口説くのは許せない」

 

 うん。切調コンビの嫉妬がやべぇ。ハイライトが仕事してないよぉ……。

 

「あはは……流石に大丈夫だって……セイバーが惚れてるのは士郎だからさ……」

 

「なっ!? シュウジ! どういう意味ですか!? 

 

 おっと地雷を踏んでしまった。とはいえ僕もこれ以上フラグを立てたら本当に命が惜しいので士郎にはハーレムの道を歩んで貰おう。

 

「だってセイバー……響との戦闘後から士郎への視線が変わっているよ。守るべき相手に守られる……それがどれほど強い印象を残すか僕は知っているからね」

 

「そうデスねぇ。先輩が私達のケンカを体を張って止めてくれたから今のあたし達があるデス!」

 

「そしてミカとの戦いの時にギアが破壊された私達を体を張って守ろうとしてくれた。……その後に響さん達がやって来て私達は救われたけど……」

 

 うん……我ながら命がけの行動しかしてないな。ギアの破壊された2人を守る為に僕は倒れた切歌ちゃんを抱えて、調ちゃんの前に立った。そしてそんな僕の姿を見てキャロルはこう問いかけて来たな…………。

 

 〈何故力を持たないお前がそこに立った? まさか死ぬつもりか? 〉

 

 そして僕はこう答えたっけ…………。

 

 〈大切な後輩をむざむざ殺させる訳にはいかない。どうせここで2人が殺されてしまうなら僕は少しでも時間を稼ぐよ。2人の為に最後の足掻きをさせて貰おうかな? 〉

 

 そしてキャロルは手を止めて遠くを見ていた。思えば響達が来る方角を見ていたのかもしれない。

 

「そんな事もあったね。だけど僕からすれば切歌ちゃんや調ちゃんの命の方が世界には必要だった。だから僕は皆を救う為ならいつでも命をかけられるよ?」

 

 そして願わくば……僕に皆を守れるだけの力があればもっと良かったよ。

 

「だから私達は先輩が大好き。世界で1番愛してる。世界と先輩を天秤にかけるような事態に陥れば……」

 

「あたし達は迷わすに先輩を選ぶデス。たとえ世界が滅ぶ事になってもデスよ?」

 

 重い……2人の愛が重すぎる。だけどそんな事を今ここで言えば間違いなく僕は想像を超える事態に陥るだろう。この未曾有の世界で厄ネタの塊みたいな事態を更に引き起こす訳にはいかないな。

 

「せ〜ん〜ぱ〜い〜だ〜い〜す〜き〜デース!」

 

「私達は先輩を絶対に逃さない。例えどんな事をしても絶対に誰にも渡さないから…………」

 

 僕が2人に掴まれている腕はミシミシと鳴っているが、僕自身も2人には負い目がある。だからこのぐらいの報いは受けないといけないのかもしれない。

 

「大丈夫だよ。2人は僕に救われたと言っていたけど、僕だって2人に救われたんだ。僕から2人を裏切るような酷い事をするつもりは無いからそこだけは安心してくれないかな?」

 

 すると2人は僕に縋るように耳元で囁いて来た。

 

「あたし達……辛かったデス……先輩が殺されてしまって……」

 

「生きていけないと思ったの……」

 

「「だからあたし(私)達はサーヴァントになったの(デス)! 先輩にもう1度……いいえ……何度でも会う為に!」」

 

 2人はそこまでして僕に……僕はなんて酷い人間なんだろう……。こんなにも可愛い後輩にこんな表情をさせてしまうなんて……。

 

「なるほど……キリカとシラベの2人がシュウジをどれほど想っているかが良くわかりました。2人の抱く持ちが生前にわかっていれば私は〈あの悲劇〉を起こさずに……。そして〈彼〉にあのような言葉を告げさせる必要も無かった筈なのに……」

 

 セイバーは僕達の様子を見て後悔をしてるように見えた。だけど僕から言える事は少ないと思うし、それを言うべきなのはきっと士郎なのだろう。

 

「なら……セイバーは士郎ともっと話し合いを重ねるべきだよ。マスターとサーヴァントの関係に拘る理由は無いさ。1人の人間としての……何なら年頃の男女としての話でも構わないさ。どんな関係性になるかはその当人達の関わりになるからね……」

 

「そうですね。私は前回の聖杯戦争のマスターであるキリツグとの関わり方を間違えていました。私自身の価値観と彼のやり方は正反対とさえ言える程合わない状態でしたから……」

 

 〈衛宮 切嗣〉……10年前に行われていた〈第四次聖杯戦争〉に参加したアインツベルン陣営に雇われたセイバーのマスターであり〈魔術師殺しの切嗣〉……そう言われた人物だったな。目的の為なら手段を問わず、犠牲を厭わない……そして〈大〉を救う為に〈小〉を切り捨てたマスターだったな。

 

「だけど僕達は君達を召喚してまだ2日目だよ。僕達の関係性は始まったばかりだからね。僕達なりの形を築いていけば良いんだから……」

 

 僕がそう告げると切歌ちゃんと調ちゃんは僕に抱きついて来た! 

 

先輩! あたし達は嬉しいデス! こんなにも愛しい先輩を響さん達に奪われるなんてあたしは耐えられないデス! 

 

「もう絶対に先輩を殺させたりはしない! あんな悲劇はもう起こさせないから!」

 

 そして切歌ちゃんと調ちゃんは僕にキスをしてきた。それも頬ではなく正面……そして唇を奪い舌を入れて来たのだ……。

 

「先輩……んっ……先輩……レロォ……あたしぃ……先輩がぁ……んっ……ちゅ……」

 

 唇を奪われ唾液が滴る程に切歌ちゃんに蹂躪された僕は意識を飛ばされかけた。しかしそんな僕の意識を引き戻したのもまた彼女達だった。

 

「修治先輩……私達は本気です。何なら先輩には私達の処女をあげても……いえ、受け度って貰うつもりですから……」

 

 調ちゃんは僕の耳元で囁きながら耳を咥えていた。あまりの出来事に僕は動揺と快楽に支配される事になった。

 

「なるほど……シラベもキリカもシュウジの事をどれほど想っているか良く見せていただきました。ならば私もシロウには伝えなければならない事がありますね」

 

 するとセイバーは家の中へと視線を向けた。

 

「シュウジ……この家に修練のできる場所はありますか?」

 

 雰囲気の変わったセイバーの様子を調ちゃんと切歌ちゃんは気付いた。

 

「セイバーさんもあたし達と同じ気持ちを知ったのデスね?」

 

「だったら私達は同士。お互いの愛しいマスターを守る為にも是非力を貸して貰えますか?」

 

「えぇ。私はシロウの剣となるつもりでした。しかしそれだけでは不十分ですね。シロウを支える為には剣のみでは足りません。ならば私のやるべき事は増えました。その達成の為に協力して貰えますか?」

 

「もちろんだよ。セイバーの真名を知りたい気持ちが無いとは言わないけど、それ以上に士郎を死なさせる訳にはいかないからね。セイバーが宝具を使う程に追い詰められる事があったら……その時は真名を教えて欲しい。僕にできる協力は惜しまないから……」

 

「えぇ。頼りにしてますよシュウジ、シラベ、キリカ。まずは腹ごしらえの準備でもしませんか? 私達の為に頑張ったシロウが帰って来た時には盛大にもてなしましょう!」

 

 こうして僕達は士郎の留守の間を衛宮邸で過ごした。そして士郎が帰るまでどんな料理を作るか話し合いを重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜。ん? ……この匂い……まさか料理か? ありがたいな……修治の奴……」

 

 士郎が学校から戻って来た。さて……夕食のタイミングで今日の報告を聞くとしますか!




修治はセイバーの真名を知らないふりをしていますが、セイバー自身はその様子を気付いています(直感スキルの恩恵)

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士郎からの報告と彼女の決意

点と点が結ばれる時……彼等は真実の一端を知る。


士郎が帰宅した事で僕達は報告を聞く事にした。そして桜が現在は部活中の為にまだここにはいない。これが僕達の運命を決める大きな分岐点になるだろうな。

 

 

「士郎……教えてくれないか?響は……誰と接触していた?」

 

僕が士郎に頼んだのは響との接触だ。そしてあわよくば響の協力者を割り出せれば良いと思っていた。しかし士郎は既に協力者を確認していたのだ。

 

「響の協力者は〈キャスター〉って言ってた。恐らく俺はキャスターとの接触が無いと思われていたのか、響はキャスターの真名を知っているかのような口ぶりをしていた。そして遠坂の〈アーチャー〉との面識もほのめかしていた。そいつらの真名に心当たりがあるだろう………修治?」

 

流石士郎だ。この世界に存在しない筈の人物がマスターやサーヴァントとして存在する以上、士郎やセイバーの知識はアテにならない可能性は高いが、同時に僕達の記憶は大きく役立つ事もわかっている。

 

「まずは響の協力者であるキャスターだけど、真名はヨーロッパに名をはぜた錬金術師〈サンジェルマン伯爵〉だよ。ただし僕達の教科書とは違い、嘗ての切歌ちゃん達のいた世界のサンジェルマンさんだ」

 

そう……この世界のサンジェルマン伯爵の情報とシンフォギアの世界のサンジェルマンさんは同一の出自ではあるが、あの世界の彼女の方が錬金術師としての技術が恐らく高い。

 

「そしてそのキャスターのマスターは桜だ。桜は士郎へと強い〈想い〉を秘めている。それこそ聖杯の力を扱える程に……ね」  

 

桜と話し合いをした僕だけが知る桜の想いの強さは、想定できる桜の中でも屈指の実力を誇るからな。

 

「だけど俺は未だに信じられないよ。桜が魔術師だなんてね。だってそんな気配1度も……」

 

士郎が言葉を続けることはできなかった。僕が口を開こうとしたのもあるし、何よりも……

 

「シロウ……んっ……シロウ……私は貴方を守ります。例え私がどうなろうと……シロウを守る為なら……」

 

士郎へと視線を向けるセイバーだが、響と戦闘をした時よりも士郎を見ている。まるで自分の存在意義を士郎に見出したかのような雰囲気だな。

 

「シロウ……私は……レロォ……シロウを……んっ!必ず……ん!守り……ますからぁ……」

 

セイバーは士郎を押し倒すとむさぼり食うように士郎の唇を奪った。正直……ここまで士郎への感情を高めていたとは僕も想定していなかった。

 

「セイバー……一体何を……?」

 

士郎は困惑していた。学校から帰宅すればセイバーは既に態度を丸くしており、まさか自分の唇を奪って来るとは思わなかったのだろう。僕だって想定していたよりもセイバーの感情が高ぶっていたことは素直に驚いた。

 

「セイバーさん……少し落ち着いてください。士郎の話を聞かないと後手後手の可能性があります」

 

「あたし達は負ける訳にはいかないデス。恋する乙女の強さに上限は無いのデェス!」

 

士郎を押し倒してキスをしていたセイバーを僕がなだめる事にした。しかしセイバーの表情は恍惚としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて……セイバーも協力的になったところで作戦会議だよぉ!」

 

僕は荒ぶる女性(ヤンデレ)達をなだめて今回の聖杯戦争の作戦を煮詰める事にした。

 

「士郎は僕達の利点や有利な点はどこだと思う?」

 

「まずは数だな。〈3人集まれば文殊の知恵〉とも言えるし、何よりも頭数は戦いでは大事だろう?」

 

流石主人公だ。戦力の分析は冷静にしてるな。

 

「えぇ。しかしシュウジ……私の宝具を何故戦力に加え無いのですか?」

 

「最優秀のサーヴァントと名高いセイバーだろ?ならそれなりの宝具をセイバーは持っており、真名バレのリスクが

高いから。士郎を守りたいなら他のサーヴァントよりも宝具の扱いは慎重になるべきだから……これじゃあ不満かな?」

 

「…………シロウを守る為ならば仕方無いですね。ならばシュウジに作戦を一任しましょう。シュウジならば信頼できます」

 

アカン……〈セイバーの行動原理=士郎〉になってる。コレは……桜に捕まったらウチの陣営終わるかも……

 

「あたし達ザババの力で響さんだろうと未来さんだろうと刈れば良いのデェス!」

 

「泥棒は殺さないと……私達の愛するお兄ちゃんは渡さない……」

 

切調コンビに両方の腕を掴まれた僕はどうしましょう……。

 

「とはいえ……桜の魔術ってなんだろうな?」

 

士郎……やめて。その話はやめて……。

 

「先輩……顔色が悪いデスよ?どうしたんデスか?」

 

「そんなに危険なら殺せば良い。私達の先輩を誑かすかもしれない女性は殺さないと……」

 

ザババが物騒だよぉ!セイバー助けてえぇ!

 

「しかしマスターを狙う事は理に叶っています。検討の余地はありますよ?」

 

ソレは一般的なマスターの話なんだよぉ!桜の属性はヤバいんだよぉ!

 

「なら……心して聞いて欲しい。桜の魔術属性は〈虚数〉……概念にすら干渉できる能力で、サーヴァントからすれば相性最悪とも言える属性だよ。桜に捕獲されれば令呪を残したまま敗退するようなものだよ。桜とは……対立するべきじゃあないよ。だってそこにバーサーカーもいるんだよ?」

 

響がサーヴァントとやり合えるスペックなのも予想外で、おまけに未来…………だからな。

 

「なら……修治……お前が言いたいのは……」

 

「恐らく〈最悪の可能性〉を未然に防ぐならこの選択肢しか無いね」

 

「シロウ……」

 

「先輩…………」

 

「お兄ちゃん……」

 

3人の少女が僕達を見つめていた。僕達も覚悟を決めるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして明確に使えそうな選択肢を絞り込んだ僕は提案をした。

 

「1つ目の選択肢は遠坂との同盟だね。」

 

「現実的だけどそれであの2人に対抗できるのか?」

 

「それは姉さん………アーチャー次第かな」

 

しかし当然反対意見が出た。

 

「クリス先輩はダメに決まっているのデェス!あんなに大きなお胸で先輩を誘惑するに決まっているのデェス!」 

 

「巨乳には私達の辛さがわからない……」

 

ザババのお2人が殺気立つ事で……

 

「なら次……ランサーとの同盟だね。クー・フーリンって真名もわかっているよ。間違いなく大英雄だね」

 

「なるほど……〈アイルランドの光の御子〉ですか。確かにサーヴァントとしては強力でしょう。しかし……明らかにイリヤスフィールが………」

 

今度はセイバーが反対してきた。まぁ……こちらも予想通りだけどね。

 

「じゃあ桜とヒの2人と同盟を組む……コレはどうかな?」

 

「シロウを盗られる可能性が高く……サーヴァントの天敵と背中合わせ……どこまで安全か……」

 

「響先輩と未来さんまで……確かに敵にするには相手が……」

 

「だけど私達が1番警戒しないとお兄ちゃんが……」

 

1番雰囲気が悪いな。なら……最後の選択肢かな。

 

「なら最後だ。姿を見せないライダー陣営に協力を要請する……コレはどうかな?」

 

一種の賭けだな。僕の知る人物でなければ可能性が1番あるだろう。

 

「未だ姿を見せないライダー……そしてそのマスター……ですか…………」

 

「ここまで知り合いが多いと何が起こっても……」  

 

「でも……そうするしか無いかもしれないデス……」

 

1番印象が良さそうかな……?だったらこの提案で……

 

「そうだな。皆の意見が纏まらないならまずはライダーを探そう。もしかしたら既に襲われているかもしれないしな…」

 

「「「っ!?」」」

 

士郎の言葉に3人が反応した。……一体何をするつもりだ?

 

「例え知り合いだろうとなかろうと………」

 

「恩を売れば関係無いデス!」

 

「そして馬車馬みたいに働いて貰おう……そして私達は先輩と…………」

 

あ〜納得した。なるほどね。

 

「じゃあ当面の目的はライダー陣営の捜索……そして交渉と同盟の提携かな?」

 

「「「異議なし(デス)!」」」

 

ひとまずは……僕達のこれからの動きは決まった。まだ見ぬライダー陣営……一体どんなマスターとサーヴァントがいるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜マリアside〜〜

 

「やれやれ……数が多いわね……。そっちはどうかしら〈ライダー〉!」

 

「こちらも滞りなく撃破している。しかし……なんだこの異質な敵は?倒しても倒しても手応えをまるで感じないぞ?」

 

「しかし反応はサーヴァントのソレよ。言うならコレは………シャドウ・サーヴァントと言う事かしらね?」

 

本当に不気味ね。修治は大丈夫かしら?私達がついてあげないと心配ね……。きちんと平和に過ごせてるかしら?

 

「マリア……修治ならきっと心配は要らないさ。この世界は確かに異質だが、私達が修治をこの戦いから守れば良いのだからな!」

 

「ふふふっ……そうね〈翼〉。確かにそうすれば良いだけね。」

 

「ならば修治の住所を調べるとするか。私達は魔術師ではあるが……」

 

「どちらかと言えば科学分野の人間だものね……」

 

そしてマリアは教会へと足を運んだ。

 

「こんばんは聖杯戦争の監督さん……少し今回の聖杯戦争での報告があるわよ?」

 

すると教会から今回の監督役………〈天羽 奏〉が姿を現した。

 

「おや?ライダーのマスターにして後輩か。どうしたんだよこんなタイミングで……翼のパートナーだろ?」

 

「えぇ。だけど今回の聖杯戦争に置いてイレギュラーが確認されたわ。まずはコレを見て欲しいの……」

 

私は先程まで戦っていた〈襲撃者〉の情報を奏に開示した。

 

「……なるほどな。コイツは全陣営に通達しなきゃいけないな……もちろんつい昨日参加を表明した修治にもな……」

 

今……奏さんは何と言ったかしら?修治が……参加者?

 

「奏さん……今〈修治〉って……言ったかしら?」

 

「あぁ……。〈木原 修治〉君。今回の聖杯戦争の参加者にして……あたし達の愛して止まない王子様だよ……」

 

私達は奏さんの言葉に動揺を隠せなかった。

 

〜〜マリアsideout〜〜




とうとう動き出したライダー陣営………。そして現れた〈シャドウサーヴァント〉。歪んだ運命の歯車が導く先とは………

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新たなる〈敵〉と遭遇した〈ライダー〉

ライダー陣営からもたらされる情報は重大なモノとなった。その結果彼女達との接触には成功する………


 僕達の方針が決まった翌日の午前…………〈天羽教会〉から通達が来た。

 

「なんだ……教会からの……通達?」

 

 士郎が怪訝そうな表情を見せるが、僕とセイバーは少しだけ思い当たる節があった。

 

「監督役が全マスターに通達を出す……それは神秘の秘匿が困難な事態に直面したと考えられます」

 

「少なくとも穏やかな話じゃあないね。まずは教会に急ごうよ」

 

 僕達は通達で示されたポイントへと急いだ。するとそこには今回の監督役の奏さんと……()()()()()()()()()()()()

 

「っ!? まさか……マリアさん……何です……か?」

 

 するとマリアさんは僕達の元へと歩き出し…………そして僕を抱きしめた。

 

「あぁ……修治……無事で良かったわ……」

 

 開口一番に僕の無事に安堵してくれたマリアさんは、僕の答えを聞かずに抱きしめている。…………そしてこの状況を面白く思わない人物もまた存在している。

 

「マリア! 先輩から離れるデース! いくらマリアでもそれはダメに決まっているのデス!」

 

「お兄ちゃんを誘惑しないで……じゃないといくらマリアでも…………殺したくなるヨ?」

 

 2人の目から光が消えていた。しかしマリアは動じることなく2人を抱きしめた。

 

「わかっているわよ。切歌と調と私……3人で修治を守ると決めたあの時の誓いは忘れていないわ…………。でもごめんなさい……本当は2人を召喚するつもりだったけど……」

 

「済まないな月読……暁……。私がマリアのサーヴァントとなってしまったばかりに3人の絆は……」

 

 翼さんが申し訳無さそうな顔をしていたせいか、切歌ちゃんと調ちゃんはすぐに表情を変えた。

 

「翼……そんな顔しないでよ。防人としての貴女じゃない……本当の〈風鳴 翼〉として修治と過ごしたい……そんな貴女の願いを私が無下にすることも無いわ」

 

「マリア……済まない……済まない……」

 

 すると2人の様子を見ていた切調コンビが態度を変化させた。

 

「そっか……翼さんはずっと……」

 

「自分の想いすら自覚する余裕が無かったのデス……」

 

「ねぇ切ちゃん……だったら私達……」

 

「翼さんも仲間に入れるべきデース!」

 

 2人の態度が軟化した……そう思って翼さんの方を見ると……

 

ふっ……流石後輩達……チョロいな。しかし私の言葉自体は嘘では無い。遠慮なく修治にアピールさせて貰おう……

 

 後輩達の感情の変化に自分の感情を溶け込ませただと!? 翼さん……貴女も僕に……。でも……一体何故……? 

 

「あら修治……私もいるのよ? 少しは構ってくれるかしら?」

 

「マっ……マリアさん!? ちょっとぉ!?」

 

 僕は後ろからマリアさんに抱きしめられた。いや……僕だけではなく切調コンビも抱き寄せられていた。

 

「良かった……マリアが私達の気持ちを汲んでくれて……」

 

「やっぱりマリアといると安らぐのデース……」

 

「うぅ……恥ずかしい……」

 

 するとその光景を見た翼さんが僕達に優しく微笑む。

 

「ふふっ……やはりマリア達3人は揃ってこそだな。そしてそんなマリアの姿を特等席で見る私は役得だな……」

 

「この防人先輩可愛くねぇ……。他人事だと思ってぇ……」

 

 精一杯の呪詛を込めて翼さんを睨んだが、次の瞬間僕は翼さんに唇を奪われた。

 

「ッ!?」

 

「翼さん! 何してるデスか!?」

 

「私達だってお兄ちゃんとキスがしたい!」

 

 しかし切調コンビはマリアさんに抱かれている。そしてマリアさんは言葉を続けた。

 

「大丈夫よ2人共。修治を奪うなんてそんな野暮な事を私達がするわけ無いでしょう? ただ……私達以外は必要無いわよね?」

 

 すると翼さんは僕にキスをしながら()()()()()取り出した。そして唇を離すと僕をマリアさんの元へと連れて行く。

 

「さて……今回の情報共有で私達のやるべき事はわかったわ。だから……修治達は預かったわ! 

 

 そうマリアさんが声を高らかにあげると僕達は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ……驚かせてごめんなさい3人共。でもね? 私達は修治を……そして大切な切歌と調も守らないといけないわ。だから……〈セイバー陣営〉とは手を切りなさい。変わりに私達が協力するわよ。だって……彼の周りには恋する乙女が集まっているのよ?」

 

 そう告げるマリアさんも瞳には光を映していなかった。

 

「済まないなマリア。先に修治とキスをしてしまって……」

 

「構わないわよ翼。だって私達は同士だもの……」

 

 すると翼さんは切調コンビを〈影縫〉で拘束した。

 

翼さん……離してぐだざい! 

 

あたし達を自由にするデス! 

 

 そして僕はマリアさんにもキスをされた。すると僕・切歌ちゃん・調ちゃんの体に変化が現れ始めた。

 

「あぁ……! 熱い! 体が熱い!」

 

「頭がぽかぽかする……体が……ふわふわする……」

 

「ナニカが……ナニカが溢れて来るデス!」

 

 2人にキスされた僕を通じてナニカが注ぎ込まれて体を駆け巡る。しかし不思議と嫌悪感は感じなかった。

 

「すまないな3人共……。実は私達の魔力を連結させるにはコレしかなくてな……」

 

「マリアさん……翼さん……コレは……一体……」

 

 僕は2人へ疑問の答えを求めた。すると驚きの答えが帰って来た。

 

「その力は私達が撃破した〈シャドウ・サーヴァント〉の魔力であり……記憶だ。そして私達は奇しくも識っているだろう? 記憶を力と変える方法を……」

 

「まさか…………翼さんは……手に入れたんですか……? 錬金術を…………」

 

 嘗て〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉が使用した〈想い出〉を焼却して力へと変える錬金術……翼さんの発言はその力を手にしたと言ったようなものであった。

 

「そうね。正確には私と翼が揃ってはじめて使える訳だけど……擬似的にできるわ。その力の一端は修治も既に知っているでしょう?」

 

「まさか……〈アマルガム〉が……」

 

 シンフォギア強化における成果の1つ〈アマルガム〉……嘗てイグナイトを失った装者の戦力補強の意味合いも兼ねて追加された決戦機能だ。

 

「でもまさかサーヴァントになった事で変化が現れるとは思わなかった。いや……修治と再会する為にこの力が私達を導いたのだろうな」

 

 〈僕に再会したい〉……か。そもそも何で僕は記憶が無かったんだろう? 

 

「マリアさんは知っていますか? ……僕に何が起こったのか……」

 

「そうね。確かに私達は知っているわ。そして修治と再会する為に世界の壁を超える為の努力を続けて…………」

 

 マリアさんは言葉を止めた。

 

「その為には今回の聖杯戦争を勝たなくてはならない。故に修治……私達と手を組んで欲しい。いや…………私達以外とは手を組むな」

 

「1日だけ時間をください。答えを出しますから……」

 

「構わないわ。ただ……切歌と調は人質よ?」

 

「マリア……勝手な事を言わないで!」

 

「あたし達は先輩の側にいる為に!」

 

「すまないが2人とも……眠れ……」

 

 翼さんが2人に命令をすると2人は意識を失った。

 

「ッ!? 翼さん! 2人に何をした! 

 

 しかし答えたのはマリアさんだった。

 

「言ったでしょう? 人質よ。修治が逃げないようにする為の……ね?」

 

 本気だったのか……。

 

「わかりました。でも……2人を傷つけたら許しませんからね?」

 

「無論だ。私達とて手荒い真似はしたくないからな」

 

 そう告げて僕はあてがわれた部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・マリアさんはマスターであり翼さんがサーヴァント。

 ・僕を通してマリアさん達の魔力が切調コンビにも流れている。

 ・アマルガムに変化が現れて嘗てのキャロルと同じ錬金術が使用可能。

 ・切歌ちゃん達は人質。

 ・2人の目的は僕達との同盟相手の固定。

 ・現れたシャドウサーヴァント

 ・2人はシャドウサーヴァントの魔力すらも取り込んでいる。

 

「まずいな。僕じゃなくて切歌ちゃんと調ちゃんを人質にするなんて予想外だ。その上にシャドウサーヴァントなんて……」

 

 ここまでのイレギュラーは監督役の奏さんすらも想定外だと言っていた。まずはこの下手人の撃破ないしは捕縛が最優先だけど、目的は一体なんだ? 

 

「でも……まずは答えを出さないと……」

 

 僕はマリアさんの待つ部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修治……答えは出たかしら?」

 

 僕はマリアさんと向かい合う。そして翼さんは切歌ちゃんと調ちゃんの喉元に刀を突きつけていた。

 

「脅迫…………ですよね? 

 

 〈ここで了承しないと2人を殺す〉…………

 

 そういった事ですよね?」

 

「人聞きの悪い事を言わないでくれ。私達とて本意では無い。ただ……修治が了承しないなら私達は聖杯戦争のルールに則る……それだけの事だ」

 

 確かにイレギュラー下ではあるけど今は聖杯戦争中だ。そして……2人を討つ絶好の好機だ。だったら僕の答えは1つしか無かったんだ。

 

「セイバー陣営との同盟を破棄してマリアさん達との同盟を結びます。だから2人を解放してください」

 

「えぇ……。修治ならそう言うと思っていたわ。でもね……そもそも私達は修治以外は要らないのよ?」

 

 すると翼さんは眠る2人を解放した。そして僕を…………




モチのロンですが監督役さんは前任者同様に1陣営を贔屓しております。その結果………

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記憶を取り戻した僕

この後修治君はかなしみを知るのデス……


 あの後……僕はマリアさんに唇を奪われ……意識を失った。しかしその後に見た夢で……僕が()()()()()()()()()()を見る事になった。そして目が覚めて……。

 

「ここは……どこだ? マリアさんは……」

 

 僕は周囲を見渡す。すると自分に起きた異変を知る事になった。

 

「なんで僕は……服を? それに……ベッド?」

 

 ちぐはぐな前後の記憶に困惑すると隣から声が聞こえた。

 

「ふふっ……可愛い寝顔だったわよ? それと……()()()()()……と言わせて貰うわ。とても素敵な時間だったわよ?」

 

「そうだな。流石私達が愛した男だ。これ程の幸福感はそうあるまい。ただ……次は()()()()()()()……な」

 

 翼さんのその言葉と、マリアさんの強調した言葉…………それらが僕達に何が起こったかは容易に想像ができた。

 

「僕と……マリアさん達は……」

 

「えぇ……修治の()()()()よ。言った筈よ。私達は…………。

 

 〈修治以外は要らない〉……とね?」

 

 本気だったんだ。だから……こんな……。

 

「そんな悲しげな表情をしないで欲しい。私達とて……修治のそんな表情は見たく無いんだ。たまさか……修治が聖杯戦争に参加者だったからこうしただけだ」

 

「今日日〈たまさか〉なんて言葉を使うのは貴女達だけですよ。そして……後悔しますよ? 勢いだけで()()()()をしたなんて…………」

 

「心配無いわ。だって……私達は狂おしい程に修治を愛しているわ。例え世界が滅んでも……連れ去られても……ね?」

 

 実際に異世界まで殴り込みに来ているからどうしようも無い。何故僕はそこまで……。

 

「でもね修治……貴方は見たでしょう? 響達との…………()()()()()を……」

 

 そう……僕の最後の記憶……その続きは響と未来にスタンガンで気絶させられ…………()()()()()()

 

「だから記憶が無い訳か。でも……だったら……なんで……」

 

 僕は必死に2人の動機を考えた。するとマリアさんに抱きしめられた。

 

「だから今度こそ守ってあげるわ。その為に私達は修治の死後にあらゆる知識を求めた。そして…………」

 

「ギャラルホルンを使いこの世界を観測した。しかし不幸にも私達の世界でもトラブルは付き物でな……」

 

「クリスと未来は現実に耐えられず自殺。翼は過労死。切歌と調は…………敵対組織との戦闘中に……」

 

 マリアさんは言葉を止めたが、その結果として残ったメンバーはこの世界へと転移し…………そしてサーヴァントとして召喚した……そういう事だ。

 

「なんで……僕……なんですか?」

 

「それは…………それだけは言えないわね。修治が私達を好きになる……その時までは……」

 

 僕の死後にそんな出来事があったとは知るよしも無いけど、皆は僕に好意を寄せていた。だから僕は響に……未来に……。

 

「でも…………もう修治は私達からは逃げられ無いわよ? だって……貴方の遺伝子は既に取り込んだわ。例え世界を離れようとも……次はこの遺伝子を元に見つけてあげるわよ?」

 

 もう……逃げられ無いのか。僕は……どうすれば…………

 

「私達と契れば良いだろう? いや……修治が私達を好けば良いんだ。そうすれば私達は相思相愛……人の目をはばかる理由はあるまい?」

 

 こんな状況で無けれは……きっと……。

 

「でも……わざわざこんな事をしないでも……」

 

「…………ダメよ。だって……私達は…………既に気が狂いそうなのよ………………貴方のいなかった世界は色は無かった! 生きていくのが苦痛でしか無かったのよ! 

 

 マリアさんは怒声を響かせ……翼さんは涙を浮かべていた。

 

「なんで……そこまで僕に……」

 

「なら…………教えよう。修治が私にくれた……輝かしいあの日々を…………」

 

 翼さんは僕に嘗ての想い出を語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜翼(回想)〜〜

 

 あれは……いつの事だっただろうか…………。そう……立花と出会った頃だったな…………。

 

「奏を失った私は防人として生きねばならない。だから……奏のガングニールを扱うお前を私は認めない…………」

 

 そう立花へと刃を向けた私に割って入ったのが修治だった。

 

なんで私達が戦わないといけないんですか! 

 

「貴女には覚悟が足りない。そんな貴女には聖遺物を……奏のガングニールを扱う資格は無い! 

 

 嘗ての私はそう告げて立花へと斬りがかかった。しかしそこで修治が割り込んだ。

 

やめてくださいよ翼さん! 確かに響は未熟ど! ひよっこだ! そして……貴女の逆鱗を踏み抜いた! だけど……貴女は響と話したんですか!? 本当に……覚悟が無いと言うんですか! 

 

「ならばどう示す? そこで怯えるだけの未熟者に……何がもたらされる?」

 

知らないですよ! だけど……響は響だ! お人好しで! 大食いで! 明るくて! 前を向いて生きている! あのライブハウスの事件を乗り越えてね! 

 

 しかし私は修治の言葉に腹を立ててしまった。

 

「そうか……立花もあの事件の……だが…………それがどうした? ただのサバイバーズ・ギルトなら尚更許容できないな。奏が命がけで守った命……それを棒に振るう手伝いをする義理は私には無い」

 

 私は当時……奏の死を乗り越えられずにいた。しかし修治はそこで私に思いもよらない言葉を投げた。

 

響と奏さんを重ねるな! いや…………確かに響は言ってしまいましたよ……

 

 〈奏さんの変わりに〉

 

 ってね! でも……だからどうしたんですか! 響からすればどうすれば翼さんと話せるか試行錯誤してたんだよ! 」

 

 私からすれば衝撃的だが、よく考えればその通りだ。しかし……私は…………。

 

「ならばお前を退けて立花を黙らせる。それだけだ……」

 

ズドン! 

 

 私は修治に峰打ちをした。しかし倒れそうになった修治は私の左足を掴んでいた。

 

「今の一撃で意識を残せた精神力は評価しよう。だが……その手を離せ。私の邪魔をするな」

 

ボキリ! 

 

 私は右足で修治の手を踏んだ。しかし修治は諦め無かった。

 

「ここで……僕が……手を離せば……貴女は……また……独りに……なる……。それは……それだけは……させない……。だから……僕は……」

 

 修治は峰打ちの痛みに加えて右足に踏まれた事で腕の骨を折った。しかしそれでも尚諦め無かった。

 

「ならば何故お前は諦め無い? 私を止めたところで何になる?」

 

 息も絶え絶えだが修治は必死に私の質問に答えた。

 

「僕の……前で……涙を……流した……女性(ヒト)が……いる。だから……僕は……手を……伸ばさ……ないと……後悔……する……から……」

 

 あくまでも私を救う為だと……そして救う相手を諦める事は……後に後悔すると修治は言い切った。私はそんな修治に動揺してしまった。

 

「何故お前は……そこまでして……」

 

 そして修治は意識を失って尚その手を離していなかった。

 

「しゅう……くん……?」

 

 そして立花もまた……目の前で倒れた幼馴染に動揺を隠せなかった。そんな固まる私達に叔父様が到着した。

 

翼ァ! お前……自分が何をしたのかわかっているのかぁ! 

 

 しかし当時の私は動揺のあまり……その声が聞こえ無かった。

 

 

〜〜翼(回想終了)〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事があっただろう? だから私は……あの時の修治が頭から離れなかったんだ……」

 

 翼さんの独白は確かに初対面の頃の話だった。彼女からすれば黒歴史だろうに…………。

 

「でも……その後からですよね? 翼さんが……僕達の声に少しずつ耳を傾けてくれたのは……」

 

 そして姉さんが後に襲撃して来て響を守る為に絶唱を使い入院した。そして僕はそんな翼さんの側にい続けたっけ……。

 

「そうだな……。確かにあの入院期間の間側に居続けてくれた修治に私は惹かれていた。だからこそイグナイトの時も……」

 

 そして〈自動人形〉のファラが風鳴邸を襲撃して来て翼さんは2度目の抜剣に挑んだ。そしてその時僕に言っていたな……。

 

 〈修治の為にこの翼を広げる……だから見届けて欲しい〉……と。

 

「でもそれは修治が翼のパパさんに掴みかかったからよ? 1度気絶した翼を屋敷に運んだ修治は直ぐにパパさんの元へと突撃して……そして殴り飛ばしたわね…………

 

 〈親子なら……きちんと向かいあってくれよ! 何かが怖いなら……人を……僕を頼ってくださいよ……

 

 とね」

 

 僕は翼さんの力になるべく頑張った。だけどその影響が顕著に出ていた風鳴邸の会話に違和感を覚え無かったな。

 

 

「そんな修治がいたから私達はあの日々と戦いを乗り越えられた。だから……修治のいなかった世界は……ただの孤独だ……」

 

 そう呟いた翼さんに僕は何も答えられ無かった。ただ……それだけの強い想いを持って世界を越えて来た事だけは……よくわかった。




食われてた。あれれ〜コレが……噂の逆レ「それ以上は作者でも許さないわよ?」え……嘘……ぎゃあああああああ!!! 

逃げろ……士郎(修治の拉致後に実は彼も食われていた模様。……つまり手遅れである!)

「よろしければ高評価・感想・お気に入り登録・メッセージ等お待ちしているわ。さて……じゃあ愛の営みを始めるわよ?」


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マリアさんの告白

彼は再び食われてしまう………


「なら次は……私の話を聞いて貰うわよ?」

 

 マリアさんはそう言うと嘗ての……フロンティア事変末期の頃の話を始めた。

 

〜〜マリア(回想)〜〜

 

『マリア…………立ち上がりなさい! 貴女がやらねばどうするのですか! 

 

 通信越しにマムの声が聞こえたが、ウェルが暴走し……マムはシャトルで飛ばされ…………切歌と調が戦い…………二課は分裂して……私はガングニールまで失った。

 

無理よ! 私には……フィーネの偶像すらも背負えなかった私には無理よぉ! 

 

 私の心は既にボロボロだった。そして……全ての歯車が噛み合わずに暴走して……もはやどうするのが正しいのかさえも……わからない程に混乱していた…………そんな時だった。

 

ハァ……ハァ……やっと……着いた……

 

 そう言って息をきらせながらもたどり着いたのが修治だった。

 

貴方は……二課の協力者の……

 

 すると修治も息を整えて軽く自己紹介をした。

 

「えぇ……〈木原 修治〉……。なんの力も持たない僕ですけど……今の世界を救えるのはマリアさんしか……いません。だから……僕は……できる事を……します……」

 

 そう言って修治は膝をついている私を抱きしめた。

 

「ちょっと!? 何をしてるのよ! 離れなさいよ!」

 

 私は突然の抱擁に驚くも……貴方は言葉を続けたわね…………。

 

「膝をつくなら……支えます。立てないと言うなら……手を引きます。心細いなら……傍にいます……。だから……今は…………今だけはマリアさんの……力を貸してください」

 

 そう告げて手を握り……私を立たせた。

 

「貴方は今……自分が何をしたのかわかっているの? ……世界に中継されているのよ?」

 

「それがどうしましたか? 今マリアさんに立って貰えなければ……世界は終わります。だから……今の僕には恥もプライドも無いです。後で恨んでも構いませんから……今は……今だけは……僕を信じて貰えませんか?」

 

 そう言って貴方は私の唇を奪ったわね……。そしてそんな私は、羞恥心と……ファーストキスを奪われた怒りに震えたわ。

 

「やってくれたわね……。私の……乙女の唇を奪うなんて……」

 

「立ち上がれるなら何でも良いです。希望でも……夢でも……憎悪でも……羞恥心でも……世界が救われたその時は責任でも何でも取りますから……だから……」

 

 そして私は立ち上がったわね。そして……こう言ったかしら…………

 

「そう……ならそこで見てなさい……私達が世界を救うその瞬間を! そして覚えてなさい……私のファーストキスを奪った報い……後で晴らすから! 

 

 そう言って私はアガートラームのペンダントに手をかけ……そして私は……聖詠を口にした。

 

「Seilien coffin airget lamh tron〜♪」

 

 そして私はアガートラームのシンフォギアを……そして奇跡を纏う事に成功したわ。

 

 

〜〜マリア(回想終了)〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして拘束期間が終わった後……私達は直ぐに修治に会いに行ったわね……」

 

「そうだな……その頃にはもうマリアは恋を知った乙女だったな。思えばそれ以降の歌は全て修治へ贈るラブ・ソングだったな……」

 

何故そこで愛! 

 

「まさか……僕のあの時の言葉でそこまで……」

 

「だが当初は……既に私や立花……そして雪音や小日向がいたのだ。マリアは遠慮していただろう?」

 

「だけど切歌ちゃんや調ちゃんには直ぐに抱きつかれてましたね……アレ? でもそれって……まさか?」

 

「そうね。調も切歌も拘束中継ずっと修治に焦がれていたわ。もちろん私もね。でも…………犯罪者の私達にはあってはならない幸せだとも思っていたの」

 

 なるほどね。だからマリアさんは僕の事を……。

 

「それで修治……私達はどうかしら?」

 

「それはマスターとして……ですか? それとも……1人の女性として……ですか?」

 

「もちろん後者だ。私達は既に肌を合わせた仲だろう? 何……今更気にする事でも無いだろう?」

 

 確かに意識が無い状態で……とはいえ貞操を奪われた僕は気にする事では無いのかもしれない。

 

「翼さんは頼りにしてます。でも……年上でありながらも何故か肩の力を入れずに済む関係性は心地良かったです。そして装者としても頼りになる実力者です。だから僕はいつも本部で帰りを待てたんですよ?」

 

「……面と向かって言われるのは恥ずかしいが……修治の言葉はコレ以上無い程の暖かさだ……。あぁ……修治……修治……私達の帰る場所……心の支え……」

 

 翼さんは僕の胸で泣いている。それほどまでに僕の事を……。

 

「じゃあ修治……私はどうかしら?」

 

「マリアさんは本当に優しいですよ。いつも自分の事を後回しにして……僕や切歌ちゃん・調ちゃんの為に気を回してくれていました。そんなマリアさんの支えで僕がどれほど安らいだかわからないです。そして…………言いにくいですけど……そのナイスボディに…………メロメロでした。もし恋人だったら……て思った事も1度や2度じゃあ無いですから……」

 

何よ……そんな事なら……先に言いなさいよ……そう言ってくれたら……どんなに嬉しかったか……

 

 マリアさんは顔を赤くして俯いている。正直僕も恥ずかしいから辛いけどね? 

 

「じゃあ修治……私達とキスをして欲しい。それも舌を絡ませて……な?」

 

「もちろん私もディープキスが良いわ。だって……ようやく会えたのよ?」

 

 そう2人が告げたと思ったら翼さんが後ろに回り込んで来た。

 

「最初はマリアだ。存分に味わってやれ……」

 

「えぇ。とても待ちくたびれたわ……。やっと……やっとこの時が来たのね……」

 

「マリア……さん? 凄い……綺麗ですから……僕は……僕は……」

 

 その先の言葉を告げる事はできなかった。なぜなら直ぐにマリアさんによって唇を塞がれたからだ。

 

「んんっ……あむ…………んんっ……」

 

 キスだけでもたらされる快楽に僕は意識を保て無い。徐々に頭がクラクラしてきた。

 

「マリアのキスは凄いだろう? 修治の為に練習を重ねて来たんだ……私も何度かキスをしたからな。とても気持ち良いだろう?」

 

 そして解放された時……僕は足に力が入らなかった。

 

「さぁ修治……次は私だ。激しくいくぞ?」

 

 翼さんはこちらの様子に見向きもせずにひたすらむさぼり食って来た。しかし今の僕は抵抗する力は残されていなかった。そのせいもあり意識が再び保てなくなって来た。

 

修治……もっとキスをしましょう? 私達を感じましょう? 

 

さぁ……私達の愛を受け止めてくれ……それだけで私達は……

 

 僕の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜桜side〜〜

 

 あぁ……脆いですねえぇ……シャドウサーヴァント。でも……たくさん出て来てくれるので嬉しいですよ? だって……

 

「くぅくぅお腹がなりますからねぇ?」

 

 そしてまた2体のシャドウサーヴァントを捕らえる。

 

aaaaaaaaaaa!

 

「桜……貴女そこまで……」

 

「私の事を知ってるサーヴァントなんですね……でも残念です。私は貴女を識りません。だからはやく食べられてくださいね?」

 

 そして影の中へと……飲み込んだ。

 

「ふふっ良い魔力でしたよ。今のサーヴァント……〈ランスロット〉と〈メデューサ〉だったんですね……また私は強くなっちゃいました……。先輩……もう少しだけ……待っててくださいね?」

 

「桜……士郎君もシャドウサーヴァントに襲われて戦闘をしたそうよ? 相手は……アーチャーらしいわよ?」

 

「あぁ……先輩……もっと覚醒してください……もっと強くなってください……」

 

 私は先輩が強くなる事を望んでいた。だって先輩が強くなれば…………。

 

「桜……彼が強くなればどうなるのかしら?」

 

「先輩の〈投影〉は剣と分類される宝具をも出現させられる禁忌の力です。そして私は先輩の人柄が好きです……」

 

 そして私の魔力を先輩に送り込めれば……

 

「私達は世界の壁すらも壊せるワケね。良いじゃない桜……もっと彼を覚醒させるのね……任せなさい」

 

 さぁ先輩……私の愛を……受け止めてくださいね? 

 

〜〜桜sideout〜〜




ブロッサム先生の活躍はあります。しかし……それは今では……「うるさい作者は食べてしまいますよ?」へ………?ぎゃあああアアアアアアア!!!

嘘……だろ……(作者 は 影の 中に 引き摺り 込まれ た!)


「皆様もよろしければ高評価・感想・お気に入り登録・メッセージ等お待ちしていますね?じゃないと私……くぅくぅお腹がなっちゃいますよ?」




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再会した僕達は……

2度ある事は3度ある。そして彼は2人の想いと向き合う事となる。


「じゃあ修治……2人を解放するわね……」

 

 マリアさんは眠らせれている2人を解放した。

 

「切歌ちゃん! 調ちゃん!」

 

 僕は2人の元へと駆け寄った。

 

「およよ……? あたし達どうして寝てたデス?」

 

「翼さんに声をかけられて……それで……」

 

 しかし次の瞬間切調コンビは僕の異変に気づいた。

 

「先輩……マリアと翼さんの濃いい匂いがするデス……」

 

「この移り香……お兄ちゃん……どうして……?」

 

 2人に本当の事を話したい。だけど……話す訳には…………もう2度と辛い想いをさせる訳には…………

 

「ごめんね2人共……僕は……「その先は言わせ無いデス!」「私達は先輩が大好き! だからもう離さない!」へ?」

 

 僕は言葉を失った。しかし2人は言葉を続けた。

 

「知ってるよ。サーヴァントとマスターは夢で互いの過去を見る事ができる」

 

「だから先輩の最後を見た……あたし達の姿を見たんデスよね?」

 

 わかって…………いたんだね。

 

「そしてマリア達から聞かされたんだよね?」

 

「あたし達がどんな最後を迎えたかも……」

 

 なんで……そこまで……。

 

「だから私達は決めたの!」

 

「先輩をもう死なせる訳にはいかないのデス!」

 

 そして2人も僕に近づいてきた。

 

「最初は私から……」

 

 調ちゃんはソフトなキスをしてきた。

 

「あたしは激しくいくデスよ?」

 

 切歌ちゃんは舌を絡ませて執拗に僕を求めて来た。

 

「凄いね。僕の知らない2人はこんなにエロかったの?」

 

「冗談……本当の私達は……」

 

「もっともっと凄いデスよ?」

 

 すると……マリアさんがこちらにやって来た。

 

「切歌……調……そういう事は場所を選びなさい。奥の部屋が空いてるから…………自由に使っていいわよ?」

 

「マリア……それって!?」

 

「あたし達が……修治先輩と!?」

 

「そうよ。今の2人はサーヴァントだもの。諸々の心配はしてないわ。それに……貴方達は〈マスター〉と〈サーヴァント〉の関係でしょう?」

 

 そしてマリアさんは僕に小声で耳打ちをした。

 

貴方のハジメテは私達が貰ったもの。次は2人を安心させてあげなさい……

 

「マリアさん……はい! ありがとうございます! 

 

 僕はこの日に切歌ちゃん……そして調ちゃんの2人と部屋に入り……僕達はその夜に()()()()()()()()()()()()()()の関係を超えた。そして………………最後には2人共僕の胸で安らかな寝息をたてていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜ところ変わり衛宮邸では〜〜

 

「シロウ……私はシロウが欲しくて仕方無いです」

 

「セイバー……どうしたんだよ……そんなにくっついて来て……」

 

 セイバーは俺達と響が戦闘をしたあの日以降態度が軟化した。それ自体はすごく嬉しいし、実際にセイバーは可愛い。

 

「私は……シロウが欲しいのです。〈マスター〉と〈サーヴァント〉……今はその関係で良いのです。しかし……いずれは……」

 

 そんなセイバーの表情は召喚されたあの日以降どんどん柔らかくなっており、とても親しみやすくなって来た。だけど……

 

「修治はどこに行ってしまったんだろうな……」

 

「そうですね。シュウジ……彼の人柄も好感が持てます。なので心配ですね。何かしらのトラブルに巻き込まれていないか心配です……」

 

 セイバー自身も修治の事を気にしてくれるからありがたい。だけど修治……お前は一体何を抱えているんだよ……。

 

「しかしシロウ……それは貴方も同じです。シャドウサーヴァント……その中でも〈アーチャー〉のサーヴァントと接触した時から……貴方自身も様子が異なりますよ?」

 

 そう……俺達は奏さんの話でシャドウサーヴァントとの戦闘・撃破を依頼された。そしてアーチャーのサーヴァントと接触したあの時……俺は奴の〈投影〉に既視感があった。奴の最も扱う夫婦剣……その放つ〈ナニカ〉が俺と奴に重要な繋がりを示唆している……そんな気がするんだ。

 

「なんでだろうな……俺とアイツ…………他人な気がしないんだよ。まるで……自分自身みたいな……そんな気がするんだ……」

 

「アーチャーが……シロウ……? そのような事が……?」

 

 セイバーも困惑していたが、頭ごなしの否定はされ無かった。

 

「確かにアーチャーの扱う剣と打ち合いになった時……奇しくもシロウとの鍛錬を彷彿させました。太刀筋が……妙に似ている……そんな違和感です」

 

 セイバーの方も似たような認識なのか。

 

「なら……俺達はもう1度アーチャーに会わないといけないな。だけど……この違和感は一体……」

 

「わかりません。しかし……その違和感が晴れた時……シロウに何かしらの変化が起こる……そんな気がします」

 

 セイバーの言葉を信じよう。俺自身も迷っているんだ。だけど……きちんと前に進まないとな……。

 

「それとシロウ……私はシロウと今日も……」

 

 セイバーは顔を赤らめて俺の手を握る。はぁ……何故だろうな……セイバーにそんな顔をされたら……断われる気がしないのは。

 

「わかったよ。じゃあ……行こうかセイバー」

 

はい! 今日の夜は長いですよ! 

 

〜〜ところ変わり衛宮邸では(終)〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして衛宮邸の屋根の上に1人の男がいた。

 

「やはりお前はそこまでの男だな…………〈衛宮 士郎〉」

 

 男の姿は黒いモヤのようなナニカに覆われているが、その声色から感情を読み取る事はできるだろう。

 

「しかし……セイバーの気持ちを引き出せた……か。私の知らないサーヴァントの集うこの聖杯戦争は明らかに異質だ」

 

 この男こそがシャドウサーヴァント〈アーチャー〉である。そして……その真名は……

 

「本当の名前等忘れてしまった…………が、奴を見ていると嘗ての未熟な自分自身のような気がするな……」

 

 そのサーヴァントの真名は〈無銘〉。しかし強いて言うなら相応しい名前がある。

 

 〈エミヤ シロウ〉

 

 それは〈衛宮 士郎〉の行き着く可能性の1つにして〈世界の抑止力〉。正義の味方を目指した彼の…………救いの無い未来の終着点だ。

 

「しかし妙だな。シャドウサーヴァントが召喚された事までは理解した。しかしあまりにも()()()()()()()。いや………………()()()()()()()()()と言ったほうが正しいかもしれないな」

 

 そう……この聖杯戦争においてシャドウサーヴァントを召喚した者は1()()()()()()

 

 1人は己の目的を達成する為の駒として。そしてもう1人は……()()()にシャドウサーヴァント召喚した。しかし……それは個人の願いでは無い。

 

「言うならば()()()()()と言うところ……か。やれやれ……全く難儀なモノだ……」

 

 〈エミヤ〉を召喚したのは〈世界の意思〉だが、それは1人の……いや、()()()()()に召喚された…………と言うのが正しいのかもしれない。

 

「しかし……〈木原 修治〉か。面白い男だな。縁があれば話してみたいものだよ……」

 

 エミヤは修治に関心を示していた。彼と修治が出会えた時……〈fate〉はまた1つ変化するだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあマリアさん……まずは士郎達と正式な同盟の破棄をして来ます。だけど……もし可能なら……」

 

「わかっているわよ。

 

 〈彼等とは最後に戦いたい〉

 

 そういう事でしょう?」

 

「はい。僕は士郎に恩がありますからね。それを仇で返す程ロクでなしにはなりたく無いですから……」

 

 そして僕達は衛宮邸に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう訳だ士郎。悪いけど……僕達の同盟はここまでだ」

 

「修治は律儀だな。だけど……修治が決めた事を俺は尊重するよ。だから……」

 

「最後の決着は僕達の手でつけたいな……」

 

 僕達は再会して……決別する道を選らんだ。だけど……僕は士郎を超えたい。その気持ち自体は……ずっとあったからね。




現れたシャドウサーヴァントが衛宮士郎と再び出会う時……それは1つの出来事へと変化する……

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無銘の英霊との邂逅

現れたシャドウサーヴァントはこれまでの英霊と違うプレッシャーを放っていた。そして……〈衛宮 士郎〉は未来の己と対峙する……


 僕が士郎との決別を告げた時……1人の人物の気配を感じた。

 

「そこにいるのは〈アーチャー〉だね? 僕に一体なんのようかな?」

 

 すると今まで隠れていた事が嘘であるかのようにあっさりとその人物は姿を現した。そして同時に彼女達も臨戦態勢へと動きを変えた。

 

「お兄ちゃんをやらせる訳にはいかない。私達は2度と後悔したくないから……」

 

「相手が誰であろうと退く当たるじゃあ無いのデス! お前が敵ならあたし達は刃を振るうだけなのデス!」

 

「だけど仮にもアーチャーを名乗るサーヴァントならその挙動は明らかに不自然極まりないよ。貴方は……一体何が目的なんですか……〈エミヤ シロウ〉さん」

 

 するとアーチャーは驚いた表情をしたように見えた。モヤに覆われていて詳細こそわからないが、なんとなくそれだけは理解できた。

 

「いや何……生前の記憶に存在しない人物がいて興味を惹かれただけさ。なぜなら……君は……()()()だろう? それも……私達の未来を識る……な」

 

 そこまでわかるのか。流石エミヤ(主人公の未来)だな。

 

「なるほどね。抑止の守護者に褒められるとは光栄だよ。だけど買い被り過ぎとも言えますね。僕はただの平凡だった魔術師だ。しかも自分の運命に嘆いた……ね」 

 

「ふっ……よく言うな。お前は運命に抗った者だよ。私の目は誤魔化せ無いからな?」

 

 随分高く評価してくれる……か。何が狙いなんだ? 

 

「さて…………それじゃあ僕も質問をしよう。エミヤ……お前の目的はなんだ? シャドウサーヴァントとなってまで現れた目的だよ?」

 

「フム……その質問だが答えは2つだな。1つ目の答えは〈衛宮 士郎〉の抹殺……と言いたいところだが、奴の心境が既に私の在命時代と異なるのでな。強いて言うならば…………然るべき手段を以って託しに来た……と言うところだな」

 

「なるほどね。既に士郎の価値観においてセイバーが大きな要素を形成していた訳か。そうなれば価値観も変わるよね…………」

 

「ん? ……お前がけしかけた訳では無いのか?」

 

「冗談はやめてくれよ。確かに僕は士郎のサバイバーズ・ギルトに変化を望んでいたよ。だけど……僕自身のトラブルがあって再会したら今の状態だ」

 

 するとエミヤは〈面白い〉……と言った表情で2つ目の質問に答えた。

 

「では2つ目の答えだ。だが……答えは()()()()()…………だな。気づけば導かれて召喚されていた。言うならば()()()()()だろうな」

 

 なるほど。士郎を導く為にエミヤを召喚した。しかしそれは〈世界の意思〉……か。

 

「一応他のシャドウサーヴァントとお前の雰囲気の重さが違う理由を聞いておくよ。お前は他のシャドウサーヴァントに比べて雰囲気が重すぎるからね」

 

「だろうな。私を召喚した意思と他のシャドウサーヴァントを召喚した人物は異なるだろうな……」

 

 なるほど……納得したよ。

 

「なら……お前と敵対する理由は無さそうだな。とりあえずは……お互いの目的が果たせる事を願っているよ」

 

「そうだな。そうするとしよう」

 

 その言葉を最後に僕達は別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜士郎side〜〜

 

 夢を見ていた。正義の味方として人々の為に戦い続けて……〈悪〉と呼ばれた者達を倒し続けて……心が擦り切れ……やがて……救った者達に殺される……。そんな夢を見た。

 

「この夢は……何を示しているんだろうな……」

 

 1人の男の視点で見せられたその光景は……ただ……孤独だ。

 

「I am the bone of my sword.

(体は剣で出来ている)

 

 Steel is my body, and fire is my blood.

(血潮は鉄で、心は硝子)

 

 I have created over a thousand blades.

(幾たびの戦場を越えて不敗)

 

 Unknown to Death. Nor known to Life.

(ただの一度も敗走は無く、ただの一度も理解されない)

 

 Have withstood pain to create many weapons.

(彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う)

 

 Yet, those hands will never hold anything.

(故に、生涯に意味は無く)

 

 So as I pray, unlimited blade works」

(その体は、きっと剣で出来ていた)

 

 その光景は……嘗ての俺の終着点であり……起こり得る未来だ。だけど……今の俺には守りたい女性(セイバー)がいる。だから……奴を越えて……セイバーの背中を……いや、隣を歩けるように……俺はなりたいんだ…………。

 

「今までの俺は……正義の味方になりたかった。たけど……今の俺は……セイバーを守りたい。セイバーに守られるだけの俺で……ありたくない」

 

 ならばどうするのか? ……そんな事は1つしか無い。

 

「強く……なりたいな。だけど……我武者羅なだけじゃあ…………ダメだ」  

 

 その結果がきっと……あの未来だ。ならば……どうするのか? 

 

「理想を叶えるだけの力と……信念……そして……」

 

 だけど……今の俺は……支えてくれるセイバーがいる。だから……怖く無い。

 

「なら……恐れる事も……きっと無い。だから……まずは未来を掴もう…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……。ようやく現れたな衛宮士郎。俺はお前を認め無い。例えセイバーに求められるような存在になったところで……な」

 

 やはりアーチャーの標的は俺だったのか。だけど……俺も確かめるべき言葉がある。だから……前に進んで見せるさ。

 

「そうだな……俺もお前に聞きたい事。いや……言いたい事があるよ。お前は…………未来の俺だろう?」

 

「シロウ……それではあのアーチャーはやはり…………」

 

 セイバーも薄々は気付いていたみたいだな。だけど……本人の口からじゃないと……そんな気がしてならない。しかし奴の告げた言葉に俺達は驚く事になる。

 

「その通りさセイバー。いや……こう言えば良いのかな? 

 

 〈()()()()()()()()()()()()

 

 と……ね?」

 

 するとセイバーの表情が変わった。

 

「やはり…………貴方はシロウなのですね。私の真名を呼ぶ者がいたのは驚きましたが……未来のシロウなら識っている筈ですから……」

 

 セイバーは自分の真名を明かされた事に驚いたが、それでも俺の言葉だと納得していた。

 

「なるほどな。お前が未来の俺だと言うこれ以上無い証拠だよ。だけど……それがどうした?」

 

 確かにセイバーの真名には驚いたし、そこには確かな歴史があった筈だ。だけど……それを……今の俺に当て嵌めるなよ? 

 

「そうなるなら俺もお前に言うべき事があったよ」

 

「ほう……正義の味方の結末か? そんなに知りたい出来事か?」

 

 確かに以前の俺なら聞きたいと言っただろう。だけど……今の俺はセイバーの為に生きたい。だから……聞きたいのは別の事だ。

 

「お前が過ごしたセイバーは()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

 すると奴は言葉を止めたが、やがて答えを教えてくれる雰囲気を出した。

 

「そうだな……その答えを識りたいならばお前も()()()()()があるだろう?」

 

 なるほどな。一筋縄じゃあ教えてくれないか。

 

「そうだろうな。なんせ俺だ。安易に答えを知れたところで納得はしないだろうな。だから……」

 

 その先の俺と奴の言葉は重なり合った。

 

「「実力を示して答えを掴む(め)!! 」」

 

 すると奴は二振りの剣を〈投影〉した。

 

「お前も夢でよく見た剣だろう? 私の長く愛用した剣だ。そして……お前が扱うであろう剣だ……」  

 

「そうかもしれないが違うかもしれない。だけどわかることもあるぜ? お前の軌跡がそこに宿っている…………そうだろう?」

 

 すると奴は答える変わりに()()()()()()

 

「I am the bone of my sword.…………」

(体は剣で出来ている)

 

 この詠唱を俺は()()()()()

 

「それがお前の奥の手だな? なら……俺はそれを正面から打ち破るよ」

 

 するとセイバーは俺の手を握った。

 

「シロウ…………何があろうと私はシロウを信じています。ですから……必ず……」

 

 俺はセイバーの言葉を止めさせた。

 

「その先は俺に言わせてくれ」

 

 そして俺はセイバーに告げた。

 

「必ずアイツを……未来の俺を超えるよ。だからセイバー……俺を……〈衛宮 士郎〉の戦いを見届けて欲しい」

 

 するとセイバーは俺の手を再び握り答えた。

 

「はい。必ず見届けましょう。シロウの勝利を収める瞬間を!」

 

 そしてアーチャーの方はいよいよ詠唱が終わりを迎える。

 

So as I pray, unlimited blade works!」

(その体はきっと……剣で出来ていた!)

 

 そして周囲の風景が剣の荒野へと変化した。

 

〜〜士郎sideout〜〜




次回は展開された宝具の中で行われた戦いです!

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嘗て抱いた〈ユメ〉と今の〈想い〉が交差する

士郎は覚悟を備えている。それは……どの世界の彼にもあるようで……無かった覚悟。その〈願い〉は〈愛〉より生まれた士郎自身の願いだった……


〜〜士郎side〜〜

 

「さぁ……始めようか〈衛宮 士郎〉。お前が抱いた胸の内より溢れたその〈想い〉……この〈俺〉に示してみせろ! 

 

もちろんだ! 嘗ての俺が憧れた姿……その終着点たるお前に見せてやるよ! 俺の〈想い〉をぉ!! 

 

 俺達はアーチャーが展開した剣の荒野で向かいあった。しかし……不思議と嫌悪感は感じなかった。アイツが……未来の自分だからなのだろうか? 

 

「とはいえ……俺のやるべき事は変わらないさ! セイバーを守る為に俺は強くなる! その為にもお前を超えるぞ! 〈衛宮 士郎〉! 

 

 俺は始めて自分の名前をハッキリと言った気がする。嘗て爺さん……〈衛宮 切嗣〉に救われる前の名前は……とうに忘れてしまった。

 

「そして十年前に謎の大火災が発生して……街には絶望が降り注いだな……」

 

「アーチャー……やはり貴方はあの時の真実を……」  

 

 セイバーはアーチャーの言葉に呟くものの、やがて未来の俺はあの時の真実を知る事になる事には驚かなかった。

 

「だから俺は憧れたんだ! 爺さんの……正義の味方が人々を救ったその姿に!」

 

 俺は奴の投影した二振りの夫婦剣である〈干将〉・〈莫耶〉を投影した。しかし一合撃ち合っただけで俺の剣は欠け……ひび割れ……崩れ去った。

 

「脆いな。外見や材質だけの模倣だな。……対象の構造への理解が足りていない。だが…………何よりもイメージが足りていないな!」

 

「確かに俺はお前に対して実力が……知識が……経験が足りていない。だが……それがどうしたぁ! 

 

 俺は未熟者だ。その上……半端者で……臆病だ。でも……だとしてもぉ! 

 

俺の胸の想いが……いつお前の実力に及ばないと決めつけたぁ! 

 

「ほぅ……今の一合で、俺の経験を垣間見たな?」

 

 奴と撃ち合った瞬間……俺の中に奴の経験が流れ込んだ。そして……この光景が頭をよぎる。

 

「俺は負けられない! ()()()()()()()と決めた俺は……こんなとろで膝をつく訳には……自分自身に負けを認める訳にはいかない!」

 

 再び俺は夫婦剣の投影を行いアーチャーと斬り結んだ。しかし……アーチャー自身もまた……一段と剣に力を込めた。

 

「先程よりも投影の精度が上がった……か。なるほど…………よほど俺を超えたいようだな衛宮……士郎ぅ! !」

 

 アーチャーは未だにその姿が影のような〈ナニカ〉に覆われて表情を読み取る事はできない。しかし……その声色から俺の変化に気付いている素振りは見せていた。

 

「しかし酷い話だよ! 相手が自分自身だというのに……その姿がよくわからいなんてな!」

 

「同感だ。表情を読み取る事ができないというのは面白く無いな。おかげで俺の表情を貴様は見る事ができないのだからな!」

 

 しかし姿の詳細がわからない事と、戦闘技術に因果関係は存在しない。

 

「だが獲物から射程距離や間合いを読み取る事は可能だ! だから……俺はできる事をさせて貰う!」

 

「良いだろう。ならば全力を注ぎ込め衛宮士郎よ。俺はその上でお前を正面より打ち破ろう」

 

「「投影……開始(トレース……オン)! 」」

 

 お互いに再度夫婦剣の投影をした。しかし今回の投影では奴の剣の間合いが長い。

 

「……投影の精度が落ちたか? ……その体たらくで良くも吠えたものだよ……」

 

 アーチャーは俺を挑発してきた。だけど今はコレで良い。

 

「俺の投影が無策だと思うなよ!」

 

「何を企むつもりかは知らないが……俺に通じると思うなよ?」  

 

 奴は投影した剣を弓に番えて射出してきた。

 

「チィッ! ……遠距離攻撃かよ!」

 

 完全に開けた間合いでは俺が不利だ。ならばどうするのか。答えは単純明確だ。

 

「そうだろうな……。俺でもきっと同じ行動をするだろうさ……」

 

 そう告げたアーチャーは小さな剣を4振り投影してそれぞれを異なる軌道で投げ始めた。それに加えて通常の射撃も怠らない。

 

「ここで飛び道具はやり難いぜ!」

 

 俺は奴の放った剣に前進できずにいた。ならばどうするのか? 

 

だけど忘れてないかアーチャー! お前の経験を()()()()()()()! 

 

 俺が投影された剣をいなす毎に奴の軌跡が流れ込む。近づけないなら奪えばいい。未熟なままなら成長すれば良い。俺のやれる事が1つだけで終わると思うなよ! 

 

「……なるほどな。確かにその行動こそが今のお前の最適解だろうな。ならばこちらも手段を変えるとしよう……」

 

 アーチャーは投影した剣を消した。遠距離で俺に技術を奪われる事を嫌ったみたいだな。

 

どうしたアーチャー! 怖気づいたか? 俺がそんなにも恐ろしいか? 

 

 ここで俺は挑発する事にした。奴が〈衛宮 士郎〉で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「面白いな。自分自身の事を理解し始めたと見えるぞ? そうだ…………〈衛宮 士郎〉は敵から()()()()()()()()()()!」

 

 〈正義の味方〉ならば敵に背を向けるのは致命的だ。何故ならば……背を向けてしまえば守りたい者達を守れ無いからだ。故にアーチャーは俺の挑発に乗らざるを得ない。

 

ハッ! こんな安い挑発に乗るんだな〈正義の味方〉! 冷静さを失うのは致命的だぜ! 

 

 しかし奴自身も〈衛宮 士郎〉だ。故にただ黙って聞いているだけの男では無かった。

 

「随分と言いたい放題だが……こういう諺もあるぞ? 

 

 〈弱い犬ほどよく吠える〉

 

 とな? まさか……貴様が実力差も知らない阿呆とはなぁ!」

 

 当然言い返すだろう。確かに()()()()弱い。導く事も……守る事も……倒す事さえ自分1人でなし得る事は困難だろう。

 

だが……それがどうした! 俺の理想は俺が決める! 確かに最初は借り物だった! 救われたから救いたいと思った! 

 

 始まりは偉大なる衛宮 切嗣(爺さん)からの言葉だった。だけどこの聖杯戦争に参加して……1人の少女と出会えた。

 

「シロウ……私は貴方の選択を信じています……」  

 

 彼女は今も俺の戦いを見守っている。本来ならば助太刀をしてアーチャーを倒す事が合理的だ。だけど……彼女自身も俺の選択を尊重してくれている。

 

「セイバー……名前を教えてくれないか? 俺が……守ると決めた……君の本当の名前を……」

 

 俺はセイバーの本当の名前を知らない。守りたいと思える相手の名前すら知らないのだ。

 

「貴様にはその真実を知るには荷が重いぞ? なにせ……彼女は偉大な英霊なのだからな!」

 

 アーチャーは俺との距離を詰めて斬りかかった。その膂力は射出された剣の一撃をあっさりと凌駕する。

 

「おいおい! 人の恋路に邪魔をするなんて……酷すぎないか?」

 

 せっかくのセイバーへの告白を邪魔された。それが意図的な行動だと知る事も今の俺には容易にできる。

 

「すまないが生前から手癖が悪くてね。相手の無力化は戦術において定石だろう?」

 

 あくまでも表情は()()()()()()()()()()()

 

「だろうな。だが……こんな言葉も知ってるか? 

 

 〈人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に堕ちろ! 〉

 

 ってな?」

 

「そうですね。シロウの……素敵な告白を邪魔されたのは……とても……悲しい…………です……

 

 セイバーの悲しげな表情を見た俺は怒りに震えた。

 

「アーチャー……お前は言ったよな……セイバーは偉大な英雄だと! 

 

「言ったとも。セイバー程素晴らしいサーヴァントを俺は知らない。故に……お前では釣り合う筈が無かろう?」  

 

 アーチャーはあくまでも冷静に言い切った。ならば……

 俺はより怒りが込み上げた。そして剣を投影してアーチャーへと斬りかかった! 

 

投影……開始(トレース……オン)! 行くぞアーチャー! ……俺の覚悟を……その身で受けろぉ! 

 

 俺は常に自分の投影できる最高の剣を構えて斬りかかったが、アーチャーはその度に俺をあしらう。やはり太刀筋が読まれているんだ……。だけど……だと……してもぉ

 

「ならばどうする衛宮士郎! そんな剣で彼女に並び立てるなどと思い上がるのも大概にしろぉ!」

 

「俺は諦め無い! 俺がこれから歩むのは……()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺は勝機を掴む為に()()()()()()()()()()()()()

 

ようやく観念したようだな衛宮士郎! そうだ……お前の覚悟は……抱く理想には遠く及ばない! 

 

 アーチャーはやがてくる未来を突きつけて俺の心を揺さぶる。だけど……俺は繰り返す訳にはいかなかった。

 

「俺がやらないといけない事はなんだ?」

 

 自分自身に問いかける。最善の未来を掴む為に……

 

俺が倒すべきモノはなんだ? 

 

 目の前に立ちはだかる〈敵〉か? 人々をいたずらに傷つける〈悪〉か? 

 

「いや……そうじゃ無いだろう?」

 

 そうだ……。俺がやらないといけない事はセイバーの隣に立つ事だ。その為に今のははアーチャーと……未来の俺と戦っているんだ。

 

「セイバー……もう1度だけ教えて欲しい。いや……セイバー自身の口から教えてくれないか? セイバーの……本当の名前をね?」

 

 するとセイバーは今度こそ俺に向き合い……その口を開けた。

 

「そうですね。私の真名は……

 

 〈アルトリア・ペンドラゴン〉

 

 です。シロウ達の認識では……しかしこの世界の文献ではこう呼ばれています。その名は……

 

 〈アーサー・ペンドラゴン〉

 

 …………と」

 

 セイバーは俺の質問に答えてくれた。ならば俺は……彼女に伝えるべき言葉がある。

 

「ありがとうアルトリア。君の名前を知れて良かったよ。だから……ここで見ていて欲しい。俺が……自分自身を超えるその瞬間を! 

 

 俺は愛するアルトリアの為に勝利を掴む。その覚悟を決めたんだ!




隣に並び立ちたい人物の本当の名前を知った士郎は……嘗ての夢と今の想いを見据えた。その覚悟を示すのは……他ならない彼女の為に……


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答えは得た。ならばその先の道は……

未来の〈エミヤシロウ〉と今の〈衛宮士郎〉。2人の戦いは背負う物の違いが勝敗を分ける……


「待たせたなアーチャー。俺は守るべき対象だったかもしれない。だけど……愛するアルトリアを守りたい。だから……お前を超えるぞ! アーチャー!」

 

「ほぅ……。良い面構えをしているな衛宮士郎。ならばこれ以上の問答は不要だな。既に私達は互いに語るべき事は語り終えた。そうだろう?」

 

「あぁ。俺は嘗ての自分が至る未来の結末も聞いた」

 

 そしてこの問答で答えを得たのは奴も同じだろう。

 

「そうだな。私もお前が守りたい者に出会えた瞬間に立ち会えた」

 

 ならば思い残す事は無いだろう。俺達は全力で戦う事ができる。

 

「だけど互いに譲る理由は持ち合わせていない」

 

「そして信念がぶつかりあったならば残る手段葉1つだけだな」

 

「「互いの信念をかけてお前を全力で倒すぞ! 〈衛宮 士郎〉! 」」

 

 俺達は幾度目かの夫婦剣の投影を開始した。

 

投影……開始(トレース……オン)! 

 

 互いに同じ武器の投影を行い……俺達は斬り結んだ。しかし今度の俺は力負けする事は無かった。

 

「ッ!? 衛宮士郎! お前……どこにこんな余力を残していた! ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かにさっきまでの俺も全力で攻撃を行い続けた。だけど……さっきと今の俺には明確な違いが存在している。

 

「アーチャー……俺は言った筈だ! 背中を守り……隣に立ちたい彼女の本当の名前を……俺は知る事が

 できた! 」

 

 左足に力を込めて地面を蹴った。そしてその勢いを利用して右腕の剣を振り下ろす。しかしアーチャーはいともたやすく受け止めた。

 

「ハッ! 英霊と魔術師の膂力が同じだと思ったか! 甘い……甘いぞ衛宮士郎!」

 

 とはいえ体勢を崩した状態では十全に力を込めるのは不可能だろう。

 

「だけどアーチャー! 体勢が崩れてるぜ? それはつまり……俺の力をさばき切れて……無いって……事だろう!」

 

 もう一振りの剣も叩きつける。するとアーチャーの体勢はより崩れる事となった。

 

「チィ! 中々の勢いと重みだ! さてはお前……その剣に覚悟を乗せたな!」

 

 とはいえ流石は俺だ。容易にその理由までたどり着くなんてな。  

 

「だったらどうする? 俺は諦めず……守られるだけの存在じゃあ終われない! アルトリア・ペンドラゴンを守れるぐらい強くなるのが目標なんだからな! 

 

 そしてとうとうアーチャーは完全に体勢を崩した。ここが勝機だ! 

 

「その隙を待っていたぞ!」

 

 俺は左足に魔力を集めて奴を蹴り飛ばした! 

 

「うおお!?」

 

ボキリ! 

 

 鈍い音が響き……そしてアーチャーは地面に背をつけた。

 

「ハァ……ハァ……よもやこれ程……魔術……師と……しての……質を……向上……させて……いる……とはな…………」

 

 右の肋骨に蹴りを入れて骨を砕いた手応えはあった。だけど……()()()()()()()()

 

「はぁ…………ふぅ……。まさか……これで有利を取れたと思ったか?」

 

「まさか! だけど……今の1撃は確実に響くぞ? ここから……俺の進化に……対応できると思うなよ!」

 

 奇しくもこの戦いで俺は進化した。ただアルトリアに守られるだけの魔術師だった昨日までの〈衛宮 士郎〉じゃあ無い。ここに立つのは…………

 

アルトリア・ペンドラゴンと並び立てる為に力を欲した〈衛宮 士郎〉だ! 

 

「そうだな。今のお前は……私の知る〈衛宮 士郎〉では無い。〈正義の味方〉という仮初めの……いや、借り物の夢では無い……本当の想いを手にしたのが私の目の前に立つ〈衛宮 士郎〉だな。ならば……わかるだろう?」

 

 アーチャーは最高の言葉を敢えて濁した。なら……俺の口から言わせて貰う! 

 

この1撃で全てを決める! 決着をつけるぞ! アーチャー! 

 

望み通り決着をつけるぞ衛宮士郎! ならば……この剣を越えてみよ! 

 

 するとアーチャーは残る魔力の大半を()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんだ……何をするつもり……だ?」

 

 俺が困惑していると……アルトリアが驚愕と言える表情をしていた。

 

「アーチャー……まさか貴方の投影しようとしていた剣は!」

 

「ふっ……()()()()()だよセイバー……」

 

 一体……何の剣を投影すると……言うんだ? 

 

「この剣は……遙か遠い幻想の剣……その名は……永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)だ!」

 

 コレが……アルトリアの宝具。その力を……アーチャーは再現したんだ。

 

「勘違いするなよ? アルトリアの聖剣はこの程度の輝きでは無い。私の投影は所詮贋作だ」

 

「だとしても……お前がアルトリアの背中を追いかけて……そしてその剣を手にできる程の成果を残した事実は変わらない。それがお前の極地だな?」

 

「否定はしない。この剣こそが私の投影できる最高の剣だ。しかし……お前はそれすらも超えるのだろう? ならば……この私を越えてみろ! 

 

 アーチャーは黄金の剣を振るう。それだけでこの荒野の崩壊が始まった。

 

「魔力を……結界の維持すらも……もはや不要と言うのですね。ならば私も見届けます。嘗てのシロウが行き着いた…………理想の果てを!」

 

「今の俺には確かにそこまでの投影技術は無い! だけど……()()()()()()()アーチャー! 

 

 士郎はアーチャーの()()に回り込んだ。通常の戦闘においてただの迂回は意味をなさないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その為にアーチャーは右腕で振るう剣の速度が()()()()()

 

「しかし狙いがわかれば、どう判断して行動するかは明白だ。対策ならいくらでもできるぞ衛宮士郎!」

 

 アーチャーは左腕で剣を振るう。もちろん右腕を使えないのではなく、使()()()()。士郎の攻撃に対してカウンターを行えるようにする為だ。

 

「だけどアーチャー! 両手で振るう剣を片手持ちにすれば! 

 

 士郎はこの戦いにおいて〈衛宮 士郎〉の未来を見た。そしてその技術を我が物にする事ができた。

 

今の俺は片手でその長さの剣を振るうお前の動きが()()()()! 

 

 士郎は走り出した際に手にしていた剣を衛宮へと投げた。しかしその軌道は()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!? 衛宮士郎……お前……そこまで俺の経験を!」

 

 アーチャーも右腕に投影した短剣で応戦するべく構えるが、既に士郎は間合いの内側へと潜り込んでいた。

 

コレが……俺の覚悟だあぁ!! 

 

 士郎は接近している間に更にもう二振りの夫婦剣の投影をした。そして左腕でアーチャーの短剣を、右腕で聖剣の動きを封じるように鍔迫り合いを仕掛けた。

 

「私の剣を止めた事は見事だろう。しかし衛宮士郎よ! お前の攻撃は止めきったぞ!」

 

「そうだなアーチャー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だけど……お前の経験はどうだ?」

 

「なんだと!? お前まさか!?」

 

 アーチャーは困惑したが()()()()。既に投擲した半円を描いた夫婦剣……その軌道が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そしてその技は……こう呼ばれている。

 

鶴翼三連! ……コレが……俺の。そして……未来を切り開く為の始まりの一歩だぁ!」

 

 そして士郎は剣の到達前に後退をしたが、均衡していた鍔迫り合いが急に解けたところでアーチャーは体勢を崩す。

 

「チィ! 中々良い一手だ! そして……」

 

 アーチャーは短剣を撃ち落とす為に聖剣を構え……薙ぎ払う。しかしその動きこそが士郎の狙いだった。

 

「その一振りを待っていたぞ! アーチャー!」

 

 士郎は残る魔力の大半を込めて〈干将・莫耶〉を投影した。そして完全に体勢を崩したアーチャーを十字の軌道で切り裂いた! 

 

「うおぉ……!」

 

 そしてその1撃が決定打となりアーチャーの体からおびただしい量の血が流れた。そして同時に聖剣と荒野の形成をしていた魔力が完全に尽きた。

 

「アーチャー……俺の勝利だな?」

 

「あぁ……そして私の敗北だ……」

 

 〈衛宮 士郎〉は正義の味方を極めた未来を打ち破り、1人の女性(セイバー)を幸せにするべく力を求めて……今この瞬間に事を成した。

 

 




遥か高い目標だろうと進むと決めた士郎には迷う理由は無い。困難に直面しようと……その覚悟が鈍らないならばいずれ彼はその困難を乗り越えるだろう……


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桜の思惑

激戦を制した士郎に悪夢が襲い来た……。その人物は士郎にとって……


「シロウ……よくぞ……勝利を……」

 

 士郎の勝利を願い……信じていたアルトリアの顔には既に涙が溢れていた。

 

「勝てたよ……セイバー……」

 

「はい。見届けていました。よくぞ……未来の自分を……」

 

 そしてアーチャーへ視線を向けると、手招きされたかんかがしたので確認する事にした。

 

「アーチャー……何をするつもりだ?」

 

「いや……お前に俺の全てを託す…………それだけさ。なにせ俺は……この戦いに負けるならそうするべきだと思っていたからな……」

 

 そうしてアーチャーは俺の剣に自分の剣を重ねた。奴の残る経験を俺へと注ぎ込む為に。

 

「アーチャー……お前……」

 

 俺が困惑している時……()()()()()()()()()()()()()

 

「ありがとう〈英霊エミヤ〉。いえ……こう伝える方が正しいかしら? ()()()()()()()()()()()()とね?」

 

「貴女は……誰だ!」

 

 俺が困惑していると、もう1人の女性が現れた

 

っ!? 今すぐ逃げろ2人共! 

 

 アーチャーは現れた人物に斬りかかったが現れた()()()()()()()()()。何故ならアーチャーは()()()()()()()()からだ。

 

「アーチャー! どうした!」

 

 俺は困惑していた。そしてその人物達は次にセイバーへとし視線を向ける。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!? お前は……一体なんだ!?」

 

 セイバーは距離を取ろうと重心を後ろにずらそうとした。しかしその体は()()()()()()()()()

 

「悪いわねセイバー。私達も先程の戦いを見ていたわ。そして……素晴らしい戦いだったわ」

 

 もう1人の女性が俺の戦いの戦いを賞賛したが、次の瞬間セイバーの体を黒い影が覆った! 

 

セイバー! セイバーアァァ! 

 

シロウ! シロオオォォォ!! 

 

 俺達の互いの呼びかけも虚しく……セイバーは()()()()()()()()()()()

 

「お前は……一体……」

 

 俺は襲撃者達の正体と目的を知る事にしたが、それは俺にとって最悪の答えだった。

 

「始めての大戦お疲れ様です()()。そしてあらためてご挨拶しますね?」

 

 そう言って現れた人物の顔は俺の()()()()()()()()()()()()からだ。

 

「キャスターのサーヴァントサンジェルマンよ。貴方とははじめましてだったわね……衛宮士郎君?」

 

「キャスターのマスターをしてます間桐 桜です。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 セイバーとアーチャーを飲み込んだのは俺のよく知る後輩である……〈間桐 桜〉だったからだ。

 

 

 

 〈間桐桜〉……。俺のクラスメイトである〈間桐 慎二〉の妹だ。しかし……いつだったか慎二は言っていたな……。

 

「僕と桜を同列に見るなよ? なにせ僕と桜は本当の兄妹じゃあないからなぁ!」

 

 今にして思えば……桜か慎二のどちらかは間桐家の養子だと言う事だ。だけど……慎二が養子なら桜への態度はもっと穏やかな筈だ。従って養子なのは桜だ。とはいえ……今は現状を打開しないと! 

 

「桜……なんで……2人を……」

 

 精一杯の疑問をぶつける事にしたが、桜はあっさりとその答えをくれた。

 

「先輩……サーヴァントは魔力の塊ですよ? 私……とっても魔力の消費がはげしので……補充をしているんですよ?」

 

 確かにサーヴァントの維持には魔力を要すると奏さんや遠坂も言っていた。しかし……何故セイバーまで? 

 

「だが……セイバーは俺のサーヴァントだ! なんでセイバーまで!」

 

 すると桜は暗い表情で俺の質問に答えた。

 

「セイバーさんが……先輩と結ばれたからですよ?」

 

 俺と……セイバーが……結ばれたから……? なんで……それが……理由に? 

 

「桜……順序よく説明しないと彼には伝わらないわよ?」

 

「……そうですね。話の順序はきちんと伝える義務がありますよね?」

 

 そして桜は語り始めた。

 

「私の覚醒は10年前……第四次聖杯戦争末期の頃です。当時私の義理のお父さん……〈間桐雁夜〉がバーサーカーのマスターとして聖杯戦争に挑みました。しかし父は敗退し、お祖父様は次の策に移りました」

 

 そして桜の語った間桐家の10年は想像を絶する生活だった。純潔を乱雑に奪われ……生活の保障も心もとなく、更には義兄の慎二だ。常人ならまず心が壊れるだろう。

 

「しかしそんな時です。私が先輩を見つけたのは……」

 

 桜が言うには、正義の味方を目指した頃の俺が届かない目標に我武者羅に挑み続けた中学の頃の思い出……もとい黒歴史だった。

 

「当時の私は既に刻印虫に身体を侵されていました。しかし……そんな時なんですよ。先輩のひたむきな努力する姿を見かけたのは……」

 

 そして桜は恍惚とした表情を始め……俺を抱きしめて来た。しかし……その表情は俺を抱きしめた際に変化する事になった。

 

「先輩……セイバーさんの匂いがしますよ? そして……セイバーさんの真名を知った……そんな気がします……」

 

「桜……俺は……セイバーの隣を歩くと決めたんだ。だから……頼むよ。セイバーを……アルトリアを返してくれよ!」

 

 俺は桜に偽らざる本心を語った。しかし……この言葉に対する桜の返答は予想外の言葉となった。

 

「そうですか……。アルトリアさんと言うんですね? ふふっ……安心しましたよ? だって……」

 

 桜は不自然極まりない言葉の切り方をした。それは何故か? 

 

「私の命令に従って貰う時の手間が少し省けますからね?」

 

桜! 今なんと言った! アルトリアに……命令をするだと! そんな事……俺がさせる訳無いだろうがぁ!! 

 

 俺は夢中で剣を投影して桜へと斬りかかった。しかし……桜はその攻撃を、()()()()()()()()()()()()()。そしてその結果桜の身体は袈裟懸けの傷を負う事になった。

 

「桜……なんで……避けなかった?」

 

 俺は精一杯の疑問を絞り出して尋ねたが、桜はあっさりと答えてくれた。

 

「え……? 私は先輩を愛していますよ? 精一杯尽くしますよ? セイバーさんよりも強くなりますよ? 姉さんよりも賢くなりますよ? イリヤさんよりも先輩に寄り添えますよ? 藤村先生よりも家庭的な生活を保障しますよ? 生活費も心配いりませんよ? そんな私では先輩の理想には及びませんか?」

 

 桜は光の無い瞳を俺に向けた。しかし……桜の言葉に俺の意思は存在していなかった。それは何故か? 

 

「その答えは私が語ってあげるわよ? 何故なら……私は彼女のサーヴァントだからね?」

 

 そう告げたのはキャスターのサーヴァントと言われたサンジェルマン伯爵だ。しかし……明らかに俺達の知る史実と異なるな。

 

「天才大錬金術師による講義とは光栄だよ。だけど俺には先約がありますから……そこを退いて貰いますよ?」

 

 俺はそのまま夫婦剣を振りかぶる。しかし……キャスターは動く素振りすらも見せずに俺を拘束した。

 

「中々に良い目をしているわよ? だけど……修治には及ばない……いいえ違うわね。その瞳は修治とは違った輝きをしている……と言った方が正しいわね?」

 

 キャスターの言葉は慈愛その物だった。なるほど……〈大人の女性〉とはこう言う人を示すんだろうな……。

 

「でも……セイバーは俺の恋人だ。返して貰えないなら俺は力ずくだろうが!」

 

 すると桜が妖しく笑い出した。

 

「ふふっ……ふふふふっ……アハハハハハハハハハ! あぁ……可笑しい。笑いが止まりませんよ先輩?」

 

 そして桜は近づいて俺の頬をなめた。

 

「っ!? 桜……一体何が目的だ! 

 

 こうなれば桜の目的を聞き出さないと! 

 

「私の……目的ですか? もちろん先輩ですよ? 先輩を手にいれる為に決まっていますよ?」

 

 〈桜は俺に執着している……〉俺は嘗て修治からの情報でその事実を知ったが、その事実をあの時は受け止められなかった。

 

「なら……教えてくれないか? 桜自身の……本当の想いを……」

 

 俺はこの聖杯戦争を勝ち抜き……セイバーを取り戻す。だから……桜を倒す理由ができてしまった。しかし……桜は……何をたくらんでいるんだ?




流石ブロッサム先生!ここぞとばかりに絶望を振りまくその手法……精神がやられてしまう!

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聖杯の中にいる人物

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さて……少しだけ時を遡り聖杯の様子を見ていただきましょう……。〈魔女〉と〈彼〉の会話となります。


〜〜回想(1月25日)〜〜

 

 冬木市に顕現した〈第627号〉の大聖杯の中には2()()()()()が存在している。

 

「まったく……アンタの計画ってスケールの割にアレだよなぁ……。まぁソレ自体は俺も好みだぜ?」

 

 呟いた男の名はこの世すべての悪(アンリ・マユ)……第三次聖杯戦争にてアインツベルンのマスターに召喚され……この聖杯の中に囚われた……()()()()()()()()。しかし、現在はもう1人同居人が存在している。

 

「ほう? この世全ての悪と定義されたお前からそんな言葉が出るとはな。だが……オレの計画はオレの為の物だ。お前に口出しや介入をされる筋合いは無いぞ?」

 

「だろうな。しかし魔女さんよぉ……いい加減本当の名前を教えてくれないのか? 流石に呼び方に困るんだけど……」

 

 しかし魔女と呼ばれたた人物は不快な表情をしていた。

 

「オレの名前を呼んで良いのは※※※だけだ。例えお前がどんなに偉大な英霊だろうとその信念を語るつもりは無いぞ?」

 

「へぇへぇ……怖い怖い。こんなにおっかない同居人が増えるなんて()()()()()()()()()からは考えられ無い事態なんだよなぁ……」

 

 しかしアンリ・マユは聖杯戦争のイレギュラーではあるが、あくまでもそれは第三次聖杯戦争までの過程が証明できれば予測出来るイレギュラーである。言うならば彼の存在は

 

 〈想定出来るイレギュラー

 

 とでも呼べば良いのだろう。

 

「だけど魔女さん……アンタは完全に想定外の……いや、絶対にあり得ない筈のイレギュラーだよ……」

 

「あたり前だ。コレはオレ自身が自らの信念と持てる全ての力を賭して果たすと決めた事だ。故に誰にも止められ無い。いや……

 

 〈止められる訳にはいかない

 

 と言った方が正しいだろうな…………」

 

 魔女はその言葉を恍惚とした表情で語っていた。それは初めて魔女が他者の前で感情を変化させた事を意味していた。

 

「なんだよ魔女さん。アンタ……そんなに良い表情が出来るじゃねえかよ……。オレとしてはいつもの魔女さんの方が好きだけとよぉ……。人としてなら今の魔女さんの魅力はすげぇと思うぜ?」

 

「そうか。だが……オレが最も言葉を届けたいのは※※※だけだ。故にオレは諦めないぞ?」

 

 アンリ・マユは本心で魔女に語りかけた。そして魔女も目的への信念を示した。

 

「そういえば……お前は1人の人間にソレを溶け込ませたな?」

 

「お? 分かるんだねぇ魔女さん。そうなんだよ……中々好みな娘がいてねぇ……。その娘の活動に興味深いところがあるんだよ!」

 

 アンリ・マユは興奮していたが、魔女はさして興味を示さなかった。

 

「どうでも良いな。だが……1つ確認しよう。ソイツのターゲットは※※※か?」

 

「いいや違うみたいだぜ? どうやらいくつかターゲットがいるらしいけど、※※※は眼中にないらしいな。どうしてだろうなぁ……」

 

 アンリ・マユからすれば〈その娘〉とやらは複数のターゲットがいるらしいが、魔女のターゲットは眼中にないようだ。そこには興味深い法則があるが、本人達は互いに相手の計画に関する詳細な情報は未だ手に入っていない。

 

「まぁ……自分達の計画が進む間手持ち無沙汰になるだろう? そうなった時は暇つぶしにでもさ……」

 

「〈互いの計画を知る〉……

 

 か。確かに暇つぶしにしては面白そうだな……」

 

 本当にターゲットが被っていない事をお互いが証明した訳ではないが、その口振りからは嘘では無いのだろう。

 

「しかし……この聖杯戦争で全マスターが絡繰に気づいたらめんどくさいなぁ……」

 

「ほぅ? お前の計画は杜撰な物らしいな? 自身の二つ名が霞んでるぞ?」

 

 しかし彼は言われ放題なままで黙るような男では無い。

 

「ソイツはあり得ないな。だって魔女さんのターゲットが共闘するのか? アンタの計画スケールから見れば対策してない訳じゃあ無いだろう?」

 

「奴らが共闘だと? あり得ないな! そんなことをさせるつもりはそもそも無いが!」

 

「だろう? だから全マスターが共闘するはずが無いって主っているよ。だけどもしそんな事態になれば大変だぜ?」

 

 すると魔女は1つ考える仕草を見せた。

 

「そうだな。ではお前のターゲットに接触するぞ? 少し事態をややこしくする為にな……」

 

「へぇ……()()()に……ねぇ……」

 

 しかし彼はそれもまた面白そうだと言わんばかりの表情をした。

 

「この世界にまで追って来たしつこい奴らをソイツの力で制圧出来れば御の字。出来なくともオレ自ら当初の予定通り動く……それだけで良いのさ」

 

「女性の怨念ってなんでここまで強いのかねぇ……。いや、()()()()()強いのだろうなぁ……」

 

 そう……アンリ・マユの言う通り魔女の行動原理の根底にあるのはたった1つのシンプルな感情だ。しかしその感情が様々な出来事で叶わなくなり……魔女は今も尚凶気に取り憑かれている。そしてその感情はこう呼ばれている。

 

 〈

 

 魔女の行動の全てはこの感情に起因していた。

 

「さて……当初の筋書きとは少し違うが、念を入れに行くとするか……」

 

 そして魔女は()()()()()()()()聖杯の中から出て冬木市に静粛現界を果たした。実際に()()()()()()ならば世界に与える影響は無いに等しい。何故ならば魔女は本来……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「任せたぜ〜。お互いの計画を成就させる為になぁ〜!」

 

 そして魔女はアンリ・マユのターゲットである…………

 

()() ()()

 

 へとこの日に接触を果たして、〈立花 響〉と同盟を結ぶように進言した。そして浄化された桜に手土産として聖杯の泥を渡した。

 

「キャスターのサーヴァントが些か面白い奴ではあったな。しかし……オレの計画には何の支障も無いぞ?」

 

 そしてこの後に接触された桜は魔女の手土産を受け取って魔女の進言を聞き入れた。

 

「はぁ……立花響さんにこの泥を使うんですね?」

 

「そうだ。そうすれば奴がお前のターゲットでは無い奴等同士で潰し合わせることが出来るぞ? そうすればお前も心置きなくターゲットに集中出来るだろう?」

 

「なるほど納得です。でも……この効力はどう証明しますか?」

 

「なぁに……お前のキャスターに使えばお前の為に……そして自らの欲望の為に利のある事しかしなくなるだろうな……」

 

「聡明な人物と言われたサンジェルマン伯爵をそこまで変えられたならば貴女の言葉を信用しましょう……」

 

 そして桜は自らを救った恩人に聖杯の泥を投与する事を決意した。しかし……()()()()()()()()は嘗ての泥と異なる要素が1つ存在していた。

 

「何せオレは奴を知っている。故にその誘惑を拒む事は無いだろう……」

 

 それは魔女と伯爵が顔見知りである事の証明だった。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()。しかしそれはあくまでも抑止力の1つでしか無い。

 

「まぁ……奴が出現する筈は無い。いや……出現してもオレの行動を害する理由は無い筈だ……」

 

 確かに魔女の推測通り後に顕現したシェム・ハは魔女達に直接干渉する事は無かった。しかし、アンリ・マユと魔女の計画を()()()()()()()

 

「まぁ……仮に……いや、その時はオレ自ら動く。それだけで事足り得る。しかし……並行世界……面白い可能性を孕んでいるな……」

 

 そして魔女は聖杯の中へと戻り全てのマスターが揃う時を待った。

 

 

 

 

 

 

「お帰り。首尾はどうだった?」

 

「時が来れば自ずと分かるだろうな。故に……今からは眠るのすらもったいないぞ?」

 

おおっ!? ソイツは良いな! これからが楽しみだぜ! 

 

 そして聖杯の中では2人の主人公がサーヴァントを召喚する1月31日まで〈間桐 桜〉の行動を見ていた。

 

〜〜回想(1月25日)終了〜〜




間桐桜ですら黒幕の片割れでしか無い。その意味を正しく彼等が知るのは……少し先の未来だ……。

更に本日は!6時間後の24時よりもう1話更新致します!

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嘗ての黒幕達の動向

本日怒涛の2話目デス!

さぁ……聖杯の中に潜む魔女の正体……是非その目でお確かめください!


 今回の第5次聖杯戦争において暗躍する人物達は数いれど、本来黒幕として動く筈だった人物は何をしていたのか? 

 

「呵呵……主も難儀な事よのぅ……。義理とはいえ娘に接近禁止を言い渡されるとはのぅ……」

 

「まったくだ。何故あれほど奔放な成長を遂げたのか……我が家族ながらも理解に苦しむぞ……」

 

 この男達の名は〈言峰 綺礼〉そして〈間桐 臓硯〉である。第5次聖杯戦争に置いてもルートによっては活動をしているが、この世界においては初動にて目論見を潰された者同士だ。

 

「よろしいのですが魔術師殿? 我々が活動をしなくても?」

 

 そして臓硯に付き従うこのサーヴァントこそが()()()()()()()()()()()であるアサシン。その真名はこう呼ばれている。

 

 〈山の翁……ハサン・ザッパーハ〉……と。

 

「おいおいお祖父様! 僕の獲物もちゃんと分けてくれるんだよねぇ! じゃないとこんなめんどくさい事やりたくもないんだけどー!」

 

「ふむ。サーヴァントを持たぬ慎二には些か退屈だろうな。しかし……直に事態は動く。遠坂の小娘等取るに足らない出来事がな……」

 

 〈間桐 慎二〉……聖杯戦争のライダーの代理マスターとして活動する筈だった男であり、士郎のクラスメイトだ。しかし、この世界では修治の活動によって士郎への嫌がらせは幾分か大人しくなっていた。

 

「それにさぁ……いけ好かない木原の奴もボコボコにしたい訳だよ。なのにいっちょ前にサーヴァントなんか連れやがってめんどくさいんだけど……」

 

 慎二には確かに常人に比べて才能はある。しかし……魔術師としては知識しか持たない一般人でしか無いのだ。

 

「では臓硯よ……。我々はどうするつもりなのかね? 下手な動きではこのイレギュラーに飲まれかねないぞ?」

 

「案ずるな小僧。既に策はある。時が来るのを待つのだ……」

 

「私は魔術師殿のいかなる命令にも従いましょう。なんなりとご命令を……」

 

 しかし……彼等の企みを崩したのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ほぅ……? 面白そうな話をしているな? 何……オレにも聞かせて貰おうか?」

 

ッ!? 

 

 その声に今の今まで会話をしていた全員が驚愕した。何故ならその人物は……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 

 

お逃げくだされ魔術師殿! この者は危険です! 私の命に賭けてでも倒さねばならない者です! 

 

「流石はアサシンのサーヴァントだ。良い危機管理能力を備えている。しかし……残念だがオレとお前では()()()()()()()

 

「相手が誰であろうと必要があれば背を向ける事は我々の流儀だ! しかし……今の私には魔術師殿を守る義務がある! この場より立ち去られよお客人!」

 

 ハサンは自身の武器であるナイフを投擲して現れた人物へと攻撃を開始した。しかしその人物は左腕を前に出すと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「キャスターのサーヴァントか!? しかし……参加者はサンジェルマン伯爵だった。それは間違い無いし、奏の知り合いとも言える口振りをしていた筈だ……」

 

 言峰綺礼は現れた人物の正体を懸命に考察した。しかし幾ら考えたところで彼が答えを知る事はできないだろう。

 

ヒイィィィ! なんだよお前! 僕達の前に現れて何をするつもりなんだよ! 

 

「少し黙れ慎二よ。ご婦人……お前さんは何者かね?」

 

 この場においては恐らく最年長とも言える間桐臓硯は現れた人物へと質問をした。

 

「そうだな……オレの事は〈魔女〉とでも呼べば良いだろう。何せお前達は……ここで倒れるのだからなぁ! 

 

 そう魔女が叫び、1つの魔法陣を展開した。

 

「ッ!? ……何をするつもりかは知らないが……魔術師殿達の為にここで魔女殿には退場いただこう!」  

 

 ハサンは決死の覚悟で魔女と刺し違えるつもりでいた。しかし……魔女はその様子に意も介さない。

 

「アサシンの言葉通りお前には退場して貰おう。我々の計画は崇高なものでな。それに私は仮にも神父だ。生まれ落ちる命に祝福を与える義務も存在している!」

 

 言峰綺礼も愛用の黒剣を取り出した。しかしそれを見ても尚魔女はこの場の人間に警戒する素振りを見せないのだ。

 

「何故…………構えない……?」

 

「必要が無いからだ。お前達が束になったところでオレに勝てるだと? 巫山戯るなよ? オレが何者かは大して重要な事ではあるまい?」

 

 魔女は尚も淡々と語り続けた。そしてとうとう……我慢の出来なくなったハサンは特攻する事を決めた。

 

お許しください魔術師殿! あの魔女はここで倒さねばなりません! 宝具を開帳致します! 

 

「待てアサシン! 奴に近づくで無い! 近づけばお前とて!」

 

「良いぞ……やれよお前! そんな生意気な奴はさっさと殺してしまえよ! 

 

「本当に何者かは知らぬが……ここで倒さねば我々の悲願が果たされることもまた無いだろう……。故に……ここで落とすぞ魔女よ! 

 

 主の安全の為に特攻する覚悟を決めたハサンと、目の間の脅威に対して正確に警戒をしている綺礼は魔女への攻撃体勢を整える。しかし臓硯は今も尚警戒故に手を出せないと結論を出そうとした。慎二はただ目の間の脅威より脱する為に2人の考えを結果として助長させた。

 

1撃にて葬らせていただくぞご婦人! 

 

「私の全霊を持ってお前を打ち倒そう。故に……加減は無いぞ!」

 

 言峰綺礼は魔女へと黒鍵を投げて警戒をさせてその隙に全力の発勁を打ち込む為に構えるが、それは誰が見ても警戒するだろう。故にこの場にて突撃するハサンの背後にその姿を重ねた。

 

うおおおおぉぉぉぉぉ!! 

 

妄想心音(ザバーニーヤ)! 

 

これにて雲をつかむが如くうぅぅ……!! 

 

 ハサン・ザッパーハの宝具である妄想心音(ザバーニーヤ)は、認識した対象の虚像の心臓を作り出し……その心臓を握りつぶす事で対象の心臓に同じダメージを与える宝具だ。対象は自らの心臓を握りつぶされていないにもかかわらずにその痛みを受ける為に防ぐ事はできない。その為にこの宝具への対処をするならば()()()()()()()が唯一の攻略法だろう。しかし……魔女はその攻撃を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しなかったのだ。

 

「防がなかった!? ハハハ……怖じけ付いたか魔女さんよぉ! 

 

 魔女が倒れて慎二が高笑いをしたが、その次の瞬間に魔女は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「終わりか? 前評判と違い大した力も無いな。山の翁が聞いて呆れるぞ?」

 

 魔女はそう告げるとハサンを見据えた。

 

「何故だ……私は……確かにお前の心臓を……」

 

「だろうな? だが……()()()()()()()()確かにオレはダメージをうけた。それは確かな事だ。しかし……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけの事だ……」

 

「なんだよ……それ……そんなの…………」

 

 魔女が立ち上がった絡繰を語ると、慎二は恐怖してハサンは絶望した。小心者の慎二はともかくとして、ハサンの宝具では()()()()()()()()()()()()()()。それだけの事だったのだ。しかし……この場にて諦めない者もまた存在していた。

 

ならばせめて……全力を以ってお前を打ち倒そう! 

 

 綺礼は語る魔女の背面より発勁を打ち込む。

 

「ほう? 中々良い1撃だ。嘗てオレの知る世界にお前の1撃と並ぶ男がいた。故に誇って良いぞ? お前の1撃はお前の軌跡そのものだからな!」

 

 綺礼の拳により心臓を貫かれた魔女だが、その身体を貫かれた直ぐ後より傷が治り始めて綺礼の腕が魔女の身体より埋まる事となった。

 

ぬおぉ!? 何故……ここまでえぇ! 

 

「なんじゃと!? 貴様の身体は人では無いと言うのか!?」

 

 自らの腕が抜けない綺礼と魔女の身体の再生速度を見た臓硯は動揺が隠せなかった。しかし……魔女はそんな2人の様子すらも気にしていなかった。

 

「まぁ……その腕は煩わしいから斬り落とすか……」

 

 魔女は如何にも呪いがまとわりつく剣を取り出して綺礼の腕を斬り落とした。

 

ぬうぅ……ぐうぅぅ……!! 

 

「しかしその身体……儂の新しい宿に相応しい! 

 

 臓硯は魔女の身体を自らの物とするべく動いたが、とうとう魔女が動きを変えた。

 

「さて……戯れは終わりにするか……」

 

 魔女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「オレの歌は高くつくぞ?」

 

 この場に魔女の名は……〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉。戦姫絶唱シンフォギア(嘗て修治が転生した世界)の……奇跡の殺戮者だ。

 

 キャロルは臓硯の攻撃ごと彼を魔法陣から放出した氷にて凍結した。

 

「次はお前だ……」

 

 ハサンに目を向けたキャロルは()()()()を取り出した。そしてハサンの体内へと埋め込んだ。

 

「せめて……もう一度!」

 

「その動きはとうに見たぞ?」

 

 向かいくる綺礼にキャロルは魔剣を向けて心臓を貫いた。

 

「ひぃ! うわああァァァァァ!! 

 

 そして恐怖より逃げる慎二にキャロルはコインを投擲した。

 

「ふん! 興醒めだな……」

 

 慎二が頭を撃ち抜かれた事でこの場にいた全員がキャロルの手により絶命した。()()()()()()()()()4()()()()()()()()。そして……姿が変化していった。

 

「只今戻りましたわ……マスター」

 

「お久しぶりですねぇマスタァー。ガリィちゃん帰還しましたよ?」

 

「偉大なるマスターの為にアタシも帰って来たゾ!」

 

「我ら終末の4騎士……派手に帰還いたしました!」

 

 〈終末の4騎士〉……それは嘗てキャロルに仕えた、彼女の為に存在する忠実な配下だ。しかし……その装いは大きく異なる。

 

 〈エレメンタル・ブレイド〉を纏う風の自動人形の名は〈ファラ・スユーフ〉。

 

 〈エレメンタル・ユニオン〉を纏う水の自動人形の名は〈ガリィ・トゥーマーン〉。

 

 〈エンシェント・バースト〉の装いをしている火の自動人形の名は〈ミカ・シャウジーン〉。

 

 そして黄金の礼装足る〈インヘリット・ラスター

〉を纏う自動人形の名は〈レイア・ダラーヒム〉。

 

 しかしこれはいずれも彼女達の主であるキャロル・マールス・ディーンハイムの嘗ての……そして並行世界の彼女が纏った礼装だった……。

 

「もうすぐだ……。ようやくお前を迎えに行けるぞ……修治……」

 

 キャロルはこの世界に2度目の転生を果たした青年である〈木原 修治〉の名を……恍惚とした表情で口にした。

 




絶望の魔王キャロル。そしてその配下たる
〈終末の4騎士〉は、最早絶望的なまでの強化が施されていました。果たして修治達は彼女にどう向き合うのか……

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動き出す奏

魔女……キャロルが覚醒し、桜はセイバーを捕らえた。絶望しそうな状況の士郎の元に現れたのは……彼も知る人物だった。


〜〜奏side〜〜

 

 そろそろ……()()()()()()聖杯戦争を始めないとな。

 

「修治が転生する世界を幾つもの並行世界から探し出して……先行してあたしは転生を果たした。そしてその際にその世界の未来を視る必要があった……」

 

 もしもその世界が危険な世界なら……修治はまた理不尽に殺されてしまうだろう。それは……それだけは避けないといけない。

 

「その為にも()()()()()()の召喚は必須だったな。だけど……自殺しちまったクリスや……戦闘の果てに亡くなった後輩達の救済の為には……今回の召喚しか無かっただろうな……」

 

 そもそもあたしは全員が誰を召喚するかを()()()()()。だけど……その運命を捻じ曲げる理由があたし達にはあった。

 

「だからまずは……そのイレギュラーに対するカウンタープログラムのシャドウサーヴァント……絶対に乗り越えないとな……」

 

 その為にも……まずは間桐桜を止めないとな。彼女は危険だ。だけど……その影響はあたし達が与えた変化だ。そのせいで衛宮 士郎(本来の主人公)が乗り越えるハードルが上がってしまった。

 

「場所は……なるほどな。じゃあ……近いな……」

 

 あたしは本格的に介入するべく動き出そう。もちろん……言峰 綺礼(一応の父親)間桐 臓硯(生きている筈の黒幕)も必ずこのイレギュラーを利用する筈だ。

 

「さぁ……あたし達の本当の戦いを始めるぜ!」

 

〜〜奏sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜士郎side〜〜

 

「もう1度言うぞ桜。セイバーを……返せえぇぇえぇぇえぇぇ!!! 

 

 俺は何度目かもわからない程……桜に立ち向かった。しかし……桜は俺の攻撃を避けようとせずにただ……ただ不敵に笑っている。

 

「あぁ……先輩……良いですよ……。理不尽な現実に立ち向かうその姿……嘗て私が見た先輩の姿です……」

 

 しかし桜は俺に斬られる度に再生をする。しかも……無限に等しい魔力を持っているかのような感覚だ。

 

「桜……遊びは終わりにしなさい。じゃないと……人質のセイバーが壊れてしまうわよ?」

 

 キャスターは今……何と言った? 人質の()()()()()()()()()()()……だと……? 

 

さあぁくうぅらあぁ! それ以上……セイバーを……アルトリアに……手を出すなあぁ!!! 

 

 しかし桜の答えも変わる事は無かった。

 

「お断りします♪ だって……私今忙しいんですよ? 先輩の相手をしながら……取り込んだセイバーさんに……この世すべての悪(10年前の聖杯戦争の泥)を注ぎ込んでいるんですから。でも……そうですね……セイバーさんが……私に従順になれば解放しますよ?」

 

「そうね。確かにアレをサーヴァントに注げば通常の霊基では耐えられ無いでしょうね。余程のアイテムを持つ者ならば可能かもしれないけど……」

 

 キャスターからも太鼓判の桜の洗脳。……そんな理不尽な事を……どうしてっ! 

 

「桜……絶対にやめられないのか? どうしても……アルトリアを返してくれないのか?」

 

 俺は縋るように桜に問いかける。

 

「えぇ。()()()()()()()()()ダメですね。でも……もしも私に従順になれば……解放しますよ? 

 

 それはつまり……俺との仲を引き裂く事を意味している。俺は……どうすれば…………。

 

「ちょっと悪いけど介入させて貰うぜ!」

 

LAST∞METEOR! STARDUST∞FOTON! 

 

 突然複数の槍と竜巻が現れて俺と桜を分断した。

 

「この攻撃……まさか貴女が介入するとは思いませんでしたよ…………さん?」

 

「えっ…………奏……さん?」

 

 俺は言葉が詰まってしまった。しかし……奏さんは桜達に向き合うといつもの調子で語りかけた。

 

「おいおい……聖杯戦争をぶち壊したあたしが言うのもアレだけどさ〜。流石にソレを持ち出されたらアタシだって困る訳だよ。だからさ……ここからはアタシも介入するぜ? じゃないと……翼を助けてやれないからな!」

 

「天羽奏……やはり貴女は修治の知る奏なのね。なら……安心したわ。だって…………貴女は修治への教育に悪影響だもの! 

 

 キャスターは銃を構えると躊躇う事無く奏さんに発射した。

 

奏さん! 

 

 しかし煙が晴れると……そこに無傷の奏さんが立っていた。

 

「心配いらね〜よ。だってアイツ……全然本気じゃないからな。それに……()()1()()来るみたいだぜ?」

 

「へぇ……どなたでしょうね?」

 

 桜も怪訝な表情をしたが、その人物は直ぐに現れる事となった。

 

アーチャー! 全力で吹き飛ばしなさい! 

 

「任せな凜! 派手にぶっ飛ばすからよおぉ!」

 

MEGA DETH QUARTET! 

 

 小型と大型のミサイルのミサイルが荒野に吹き荒れ……その場の全員を襲う。しかし凜の目的はこの場の制圧では無い。

 

「確かにその技は素晴らしい出力だろう。しかし雪音クリス……君は忘れていないか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 クリスはこの技を使うにあたり地面に身体を固定する必要がある。従ってキャスターの声は届かない。しかしマスターである凜はこう告げた。

 

「百も承知よ? まぁ……この技で倒せるなら儲けものだったけどね?」

 

「遠……坂……? なんで……この場所に?」

 

 しかし奏がここで口を開けた。

 

「いいや……また来るみたいだぜ?」

 

「ランサー……()()()使()()()()()()()()全力でやりなさい!」

 

「承ったぞマスター! その心臓を貰い受けるぜ! 

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)! 

 

ドガアァァン!! 

 

 そして朱い槍がこの戦場に飛来して盛大な爆発を起こした。

 

「ひゅう〜……恐ろしい威力だな。とても1個人の宝具とは言えないよ。な〜にがレプリカだよ……」

 

 悪態をつきながらも奏さんは俺を抱えていた。

 

「奏さん……今のって……」

 

「すぐにご本人が来るぜ?」

 

 そして言われた通りランサーである〈クー・フーリン〉と、そのマスターである〈イリヤスフィール・フォン・アインツベルン〉が現れた。

 

「遠坂先輩だけじゃなくてイリヤさんも現れましたか。では仕方無いですね。ここで戦闘をするのは乱戦になりそうですね」

 

「そうね。既にサーヴァントを失った衛宮士郎はとにかく、私と互角に戦えそうな天羽奏、そして万全な状態のアーチャーとランサーが出現した……と」  

 

 すると遠坂とイリヤは俺の前に立ちこう言った。

 

「間桐さん……貴女をここで倒す事ができるだけの戦力が今の私達にはあるわよ? いくら貴女が規格外の力を備えたところで……セイバーを取り込みながら勝てると思っているのかしら?」

 

「サクラ……と言ったわね。私は貴女に宣戦布告するわ。シロウは渡さないよ? だって……私に残されたたった1人の弟だもの……」  

 

 2人は目の前の桜に対して、  

 

 〈俺を守る〉と、

 

 はっきり言った。何故2人はそこまで俺の事を……

 

「だけど全員ここでは矛を収める事を進言するぜ?」

 

 すると再び奏さんが割って入った。

 

「だってシャドウサーヴァントが現れた時が()()()()()()()()()()()だったんだからさ……」

 

「どういう意味だ? 俺達の参加を以って全員揃った筈じゃあ……無いのか?」

 

 なら……あの時の奏さんの言葉は一体……

 

「あぁ……そういう事か……」

 

「なるほどね。確かに納得だわ……」

 

 遠坂のアーチャーと桜のキャスターは納得していた。一体……何がわかったんだ? 

 

「そういう事だよ。なら……アタシが説明するぜ?」

 

 そう言って奏さんが説明を始めた。

 

「まず本当の参加者は〈セイバー〉・〈ランサー〉・〈キャスター〉だけだよ。もちろん……イレギュラーだけどな?」

 

 3人だけが正規の参加者だと……? 

 

「そして〈アーチャー〉・〈ライダー〉・〈バーサーカー〉・〈アサシン〉はアタシ達の縁によって本来の参加者を押しのけて来たサーヴァントだ。そう言った意味では〈キャスター〉も言えるけど、アンタ自身は間違いなく英雄だからな。だからアンタは正規の参加者だよ」

 

「なるほどね。納得したわ……」

 

「教えてくれよ奏さん。なら……他のサーヴァントはなんで……」

 

 そして奏さんは俺達に告げた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 修治……お前は一体何なんだ…………?




実は正規の〈ライダー〉こと〈メデューサ〉さんは、桜に取り込まれました。その為に抑止力として残るのはバーサーカーのみです。次回は修治君の視点デス!

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僕とシャドウサーヴァント……

最後のサーヴァントは……彼女へと力を貸した。そして……彼女が彼等と出会う時……


 僕達の前に現れたシャドウサーヴァントは()()()()()()()()()だった。

 

「久しぶりだな息子よ。大きくなったものだ……」

 

「お久しぶりですね了子さん。いえ……()()()()()()()()()さん?」

 

「やっぱりフィーネ……なのね……」

 

「本物の雰囲気……とても怖いデス……」

 

 しかしフィーネの姿はシャドウサーヴァントだ。それは間違い無いだろう。

 

「だけど何故貴女が現れた? 僕達は既に貴女の残した遺産を無事に運用できた筈だよ?」

 

 もちろんフィーネは僕の質問に答えた。

 

「私の目的は単純だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして……正規のサーヴァントより試練を預かった。後はわかるだろう?」

 

 やっぱりこの聖杯戦争はイレギュラーだったか。明らかに僕の知らないサーヴァントが多すぎた。だからきっと……。

 

「じゃあフィーネの目的は何なの?」

 

「邪魔をするならまたアタシの刃で地獄に送り返してやるデスよ?」

 

 2人が刃を構えたが、フィーネさんは言葉を続けた。

 

「そう慌てるな。まず私のクラスはバーサーカーだ。コレは力を託したサーヴァントによるものだ」

 

 バーサーカーのサーヴァントより託された力……か。恐らく……本来の()の力を宿しているのだろう。

 

「切歌ちゃん……調ちゃん……僕には君達と違って戦う力は無い。だから君達の横に立つ事はできない……」

 

 すると2人は笑顔で僕の手をとって言ってくれた。

 

「大丈夫デスよ? 先輩があたし達の帰る場所だからあたし達は頑張れたのデス!」

 

「だからこそ私達はあんな最後を迎えてしまった。だけど……もう私達の前からお兄ちゃんを奪わせ無い……」

 

 2人の決意は硬かった。それを見届けたフィーネさんは敢えて僕の挑発をした。

 

「小娘共に守られるお前は恥ずかしく無いのか? 男が女に守って貰うとはな……」

 

 安い挑発ではあるし、フィーネさん自身も本心では言っていない。だけど敢えて僕も言い返そう。言われっぱなしも性に合わないからね? 

 

「確かに僕は男だけどみんなに守って貰わないといけない。でもそれがどうしましたか? フィーネさん……貴女みたいな素晴らしい女性が思いっきり活動する為ならば僕はみんなの帰る場所でいたいんですよ。だって……帰る場所がある人の強さを知らない貴女では無いでしょう?」

 

 するとフィーネさんは高らかに笑い出した。

 

「は……はは……ふはははははははは!! その言葉! 聞き覚えがあるぞ! 嘗ての〈小日向 未来〉の言葉ではないか!」

 

 だろうな。僕達の関係を知る者なら響を待つ未来が嘗て言った言葉を、僕がアレンジして言ったように聞こえるだろう。

 

「だけど僕達はアンタの撒いた種のせいでフロンティアを起動せざるを得なくなったよ? そしてそんな時だよ。未来が自分の無力を呪ったのは……」

 

 そう……フロンティア事変の折に未来はマリアさんに一時拉致された。そして響を救う為に装者になったが、目的がわかっていた僕は息を殺して()()()()()()侵入していた。もちろん調ちゃんの意識を一時的に乗っ取ったフィーネに見つかったが、僕が企てた後の計画を聞いて静観すると約束してくれた。

 

「あの時は焦りましたよ? なんでこんな簡単に見つかったかね?」

 

「子鼠がチョロチョロしてから言う事か? しかしまぁ……面白い話ではあったがな……」

 

 そして響を救う為に戦場に未来が現れる前に調ちゃんに憑依しているフィーネに戦場まで送り届けて貰った。その時に抱きしめられた感覚は……母親に包まれた時の感覚と同じだった。

 

「そう……アンタは僕をよく見ていたよ。だからこそ……調ちゃん達を助ける為に改良型の〈Linker〉のレシピをこっそりと僕に託してくれたんだろう? もちろん本人の意識を眠らせて……ね?」

 

「そんな事があったんデスね……」

 

「だから私はあの時頻繁に記憶が……」

 

 そして僕は響が戦場に現れた時……未来が実は正気なのも気づいていた。だからこそそのタイミングで介入した。

 

「そしてお前は〈神獣鏡〉を現存させた。その影響で小日向未来は戦士としての責務を負う事となったが……」

 

「それは本人が今後も隣で支えると言ったからですよ? 僕は一応止めましたけど……」

 

 そしてミカちゃんが最初に奇襲してきた時に未来はあらためて戦う事を決意した。響を……そして僕を守る為に……。

 

「だから僕は自分が非力だとは思っても無力とは思っていません。なのでそんな挑発には乗りませんよ?」

 

「だろうな。しかし……この局面を乗り越えられるか?」

 

 確かにフィーネさんは自分の力を構成した要素の1つである

 〈デュランダル〉を失った事で弱体化と響の強化を許してしまった。しかし……今フィーネさんはそのデュランダルを手にしている。ならば〈ソロモンの杖〉と〈ネフシュタンの鎧〉も所持しているだろう。

 

「足りないならば補うまでだよ。それに……僕とのお喋りの時間を()()()()()()()()今の2人だよ?」

 

「何?」

 

 すると調ちゃんから準備万端の合図が出た。

 

「お兄ちゃんは私達にアイコンタクトをした」

 

 〈()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っと言っていたのデス!」

 

 するとフィーネは苦い顔をした。

 

「なるほど……。やはり喰えない男だな修治。この私から時間を稼いでそのまま戦力につなげるとはな……」

 

「話自体は懐かしさもありますし本音です。貴女には伝えたい感謝もありましたからね。ありがとうございますフィーネさん……」

 

 すると表情こそ見えないが頬を赤らめている……そんな気がした。

 

「ならば見せるが良い! ()()()()()()()()()()を!」

 

 やはり製作者ならわかるみたいだな。

 

2人共! 相手は間違いなく強敵だ! 出し惜しみなく行くよ! 

 

「任せるデス! あたし達はフィーネを超えるデス!」

 

「数々の導きをくれたフィーネには感謝している。だから……私達は貴女を越えて見せる!」

 

「ほぅ……良い表情をしているな。流石は()()()()()()()()()!」

 

 やっぱりわかっているよね。貴女ならば……2人が僕に抱いた感情の変化を! 

 

「まずはあたしから行くデスよ!」

 

切・呪リeッTぉ! 

 

 切歌ちゃんお得意の技をフィーネに放った。しかしフィーネは動じなかった。

 

「ふむ。イガリマの切れ味はその程度か? ユニゾンにあれだけ時間をかけた割には弱すぎるぞ?」

 

「冗談! こんなの挨拶代わりデスよ!」

 

 その攻撃はただの目眩ましだったようだ。本命の攻撃が視界の一部を封じられたフィーネに襲いかかる。

 

非常Σ式 禁月輪 !

 

ありがとう切ちゃん! おかげで動き安い易いよ! 

 

 その隙に調ちゃんが助走をつけてフィーネに突撃を仕掛けた。先程の切歌ちゃんは調ちゃんの進路を妨害しない為に()()()()()()()()()()フィーネへと攻撃を放ったのだ。

 

「ッ!? この出力は些か重いな! だが……対応できるぞ! 

 

 フィーネのネフシュタンは調ちゃんの車輪の回転で削られていたが、デュランダルを振りかぶる事で迎撃を始めようとした。

 

「ならば今度はイガリマの本当の切れ味を食らうデース!」

 

切・呪リeッTぉ! 

 

 先程よりも刃の1つ1つを細かくしてフィーネのデュランダルを所持している右腕を的確に切り落とす。

 

「ネフシュタンの再生能力は知っている。だけどデュランダルを振るう為には必ず人の動きが存在する!」

 

Δ式 艶殺アクセル! 

 

 調ちゃんはフィーネのデュランダル所持の阻止と自分の追撃を同時に行った。その結果デュランダルは更に弾き飛ばされ、フィーネもまた調ちゃんから弾き飛ばされた。ちなみに切歌ちゃんはもう一度斬撃を放って更にデュランダルをフィーネから引き離した。

 

「中々どうして良い連携だ。流石は私の見込んだ〈レセプター・チルドレン〉だな……」

 

 フィーネは2人の成長に感心するとともに不敵に笑っているように見えた。

 

「さぁ! お前達の成長を私に見せてみろ! 

 

 僕達の戦いはどうやらここからが始まりみたいだな……。




現れたフィーネは……ザババの刃と激突した。その決着は……どう転ぶのか……

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乗り越えるべき壁

フィーネとの戦いは佳境を迎える。ザババの成長は彼女をどこまで追い詰めるのか……


「ザババの刃を扱うお前達は確かに成長した。それは見事な事だ。修治を守る為に努力し続けたのだろう?」

 

 やっぱりフィーネにはわかるよね。何せ彼女は〈恋する乙女〉を自称する人物だった。しかし……後にその恋は相思相愛でありながら報われ無かった事が発覚した。

 

「そしてそんな彼女が僕達に試練を与える為に立ちはだかる…………か。僕達も……乗り越えないとね」

 

 だからこの戦いを見守ろう。2人の成長を僕は見届けていたいからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でやあぁ! 

 

はあぁぁ! 

 

 2人は誰を相手にしても一歩たりとも退かない覚悟があった。例えそれが全盛期のフィーネさんでも変わらないようだ。

 

「見事なユニゾンだが……〈ネフシュタンの鎧〉を突破するだけのフォニックゲインは足りていないな。まぁ……そもそもこの鎧を突破する事自体が困難とも言えるがな……」

 

 フィーネさんの言葉は半分は挑発だけど、半分は事実だ。響達はあの鎧を()()()()()()()()()()()()()()。〈デュランダル〉という対になる聖遺物を使う事で、()()()()()()()()()()あの鎧を打ち破る事に成功した。しかし……今の2人はその方法を選ばないだろう。

 

「どうした切歌……調……()()()()()()()()()使()()()()()

 

 すると2人は驚くべき答えを出していた。

 

「そんなの簡単デスよ!」

 

「私達はフィーネを乗り越える! その為に今は正面から戦わないといけないの!」

 

「切歌ちゃん……調ちゃん……」

 

 僕は2人の覚悟に感動した。そして切歌ちゃんが再び前衛に出た。

 

「調……今度はあたしが前に出るデス。だから……援護は任せたデスよ?」

 

「了解だよ。切ちゃん……サポートするから思いっきりやってね?」

 

あたしにドーンと任せるデス! さぁフィーネ……行くデスよぉ! 

 

凶鎖スタaa魔任イイ! 

 

 切歌ちゃんはイガリマの刃を手裏剣の様に投げるものの、その刃には鎖がついている。故にその軌道は切歌ちゃんの思う通りに向かうだろう。

 

「しかし……距離を詰めればその程度の攻撃には驚異をさほど感じないぞ!」

 

 フィーネさんはあっさりと切歌ちゃんへの距離を詰める。再生する鎧に加えて攻略法のわかっている攻撃は対象自体が容易という事だろう。

 

「調ちゃん! 切歌ちゃんの援護は!」

 

「大丈夫! 切ちゃんを信じてるから!」

 

 調ちゃんは切歌ちゃんを信じてフィーネさんへの追撃の為に威力を高めている。だけど……肝心の切歌ちゃんはどんな策が…………

 

「そして接近戦に持ち込んで〈ナニカ〉を企んでいるのだろう? 私にその策を見せてみろ!」

 

 フィーネさんの接近に合わせて切歌ちゃんは()()()()()()()()

 

「回避か!? なるほど……シャルシュガナによる追撃か!」

 

 フィーネさんは2人の策に当たりをつけたが、2人の表情に焦りはない。そして()()()()()()()()()()()()()

 

チッ! ここで煙幕か! しかし……居場所は覚えているぞ! 

 

封伐・PィNo奇ぉ! 

 

 フィーネさんはネフシュタンに装填されているエネルギーを使って僕達を狙って来た。しかし調()()()()()()()()()()()()()攻撃を回避した。

 

「この手応え……やはり禁月輪で回避したな……? ならば暁はどこに……」

 

「あたしを……見くびるなデース!」

 

双斬・死nデRぇラ! 

 

 切歌ちゃんはイガリマの刃を重ねて1つの刃とした。そしてそのままフィーネさんに斬りかかった! 

 

「なるほどな! ここでお前が剣士の真似事をするとは思わなかったぞ? しかし……技量は風鳴翼には遠く及ばないぞ!」

 

 フィーネさんは不意こそ突かれたけどその表情には余裕が見て取れた。そして2人も、今の1撃では決められ無い事を承知している様に視える。

 

「じゃあ調……アレを使うデス!」

 

「やろう切ちゃん! 私達は負けられ無いから!」

 

「「イグナイトモジュール! 抜剣(デェス)! 」」

 

〈ダイン=スレイフ〉……

 

 そして嘗て失った筈の力を2人は取り戻して制御していた。

 

「2人とも……その力は……」

 

 だけど何故だろう……嘗てのような心配を僕はしていない。

 

「大丈夫だよお兄ちゃん。だって……私達は負けられ無いんだから。お兄ちゃんともう一度笑顔で過ごす為なら……私達は悪夢も乗り越えられる。だって……それが私達の覚悟だから! 

 

 するとフィーネさんも驚愕していた。

 

「呪いの魔剣〈ダイン=スレイフ〉をシンフォギアに組み込んだのか……。全く……何と無茶な綱渡りをしたものだ。製作者たる私ですら……そこまで危険な発想はしなかったぞ?」

 

 フィーネさんは確かに奏さんや響を使ってガングニールを暴走させて研究していた。しかし……ギア自体に支障が出るような事態は避ける傾向があったな……。

 

「そりゃあ相反する2つのモノを合わせるからね……。素人の僕ですらあの時の策にはヒヤヒヤしたよ……」

 

「だろうな。全く……こんな事をしたのは錬金術師だな? それも高位の者だろう?」

 

 よくぞお見通しで……。流石はキャロルの技術だったな……。

 

「では……そろそろ私も反撃と行こうか。デュランダルは警戒されているので取れないとして……こちらはどう対処するのだろうなぁ!」

 

NIRVANA GEDON! 

 

 姉さんの嘗て使った技か! だけど…………! 

 

「クリスの出力と同じだとは思うなよ? 私は……鎧と融合しているのだからなぁ!」

 

 その攻撃範囲は嘗てのイメージよりも広くて……その鞭さばきは嘗てと然程変わらない練度だった。

 

ならば調! ザババの刃を重ねるデス! 

 

行こう切ちゃん! 私達の力で……嘗ての恐怖を越えて行こう! 

 

 2人の覚悟は伝わった。ならば僕も出し惜しみは無しだ! 

 

「2人の覚悟……それに僕も乗せさせて貰うよ! 

 

 〈令呪を以って命ずる! 2人共……全力でフィーネさんを打ち破れ! 

 

 頼んだよ2人共ぉ!」

 

 すると腕に刻まれた令呪が輝き出して1画が消えた。しかしその直後に切歌ちゃんと調ちゃんに相当の魔力が集まった! 

 

「この度胸……私との戦いにそれだけの価値があると言うのだな? 良かろう……ならば私は正面よりお前達を打ち破ろう!」

 

VOID DIMENSION! 

 

 嘘だろうフィーネさん! そんな技すらも使いこなしていたのかよ! 

 

「流石フィーネ……その実力は間違いなく恐怖する程強い…………」

 

「だけど……それで諦めるあたし達じゃあ無いのデス! 

 

 そう2人は告げると向かい来る攻撃を冷静に分析していた。

 

「切ちゃん……今の私達なら……」

 

「絶対にやれるのデス! だから調……後ろは任せたデスよ!」

 

凶鎖スタaa魔任イイ!! 

 

 切歌ちゃんは最初同様に鎖付きの手裏剣を飛ばして刃を岩壁に刺した。そして自らの加速と調ちゃんの後押しにより回避に成功した。

 

「調ちゃん! 僕達も!」

 

「うん! 行こうお兄ちゃん!」

 

 調ちゃんは禁月輪の滑走を使って攻撃を回避した。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「同じ動きがそう何度も通じると思うなよ!」

 

 周り込んだフィーネさんを見据えて調ちゃんは僕に耳打ちをした。

 

お兄ちゃん……私達の切り札……お願いね。ここであの人を乗り越えたいから……

 

「任せてよ調ちゃん!」

 

 そして僕は禁月輪から降りて()()()()()()()()()()()()()

 

「しまった!? お前が取りに行くのか修治!」

 

 フィーネさんは僕の動きに動揺して切歌ちゃんへの意識を完全に外した。そして……そんな好機を僕達は逃さない! 

 

調! イガリマの刃を受け取るデス! 

 

切ちゃん! 私のシャルシュガナを受け取って! 

 

「なんだとお前達!? まさかお互いのアームドギアを!?」

 

 フィーネさんが驚愕している間に2人は完全にフィーネを挟み込んでいた。そして()()()()()()()()()()()()アームドギアはフィーネさんを拘束していた! 

 

「捕まえたデスフィーネ!」

 

「これで決める!」

 

「お前達が……まさかこれ程の成長をしたとはな……」

 

 2人が対象を挟み込んで互いの刃を合わせて切り裂く技を奇しくもぼ僕は()()()()()その技の名は……

 

禁殺邪輪 Zあ破刃エクLィプssSS! 

 

ぐうぅぅぅ……中々良い1撃だ……ネフシュタンが……ここまでぇ……

 

 フィーネは今の1撃で相当なダメージを受けた。しかし……僕達は勝機を逃さない! 

 

「調! 先輩の元へ戻るデス!」

 

「行けるよ切ちゃん! 掴まって!」

 

 2人はフィーネさんを切り裂いた勢いのまま僕の元へとたどり着く。

 

「この戦い……決着を付けるぞ! 

 

「なるほどな。やはり……お前達の……絆は強い! この私が保障しよう! 

 

「ありがとうフィーネ……私達は……」

 

「フィーネの想いも背負って前へ歩むのデス!」

 

 そして僕達は()()()()()()()()()()()()()! 

 

「終わりだよフィーネ! コレが……僕達の誓いだあぁぁぁぁ!! 

 

Synchrogazer! 

 

 攻撃は確かに直撃して〈ネフシュタンの鎧〉を確かに砕いた。しかし……フィーネも最後までは諦め無かった。

 

「最後まで……諦め無いぞ!」

 

「それでこそフィーネ!」

 

「だからあたし達は越えて行けるのデス!」

 

α式 百輪廻!  

 

切・呪リeッTぉ! 

 

3人共……見事……だ……

 

 そして最後の攻撃が直撃して……フィーネさんはついに倒れた。

 

「ありがとうございますフィーネさん。大切な事を想い出させてくれて……」

 

「あたし達は……もう迷わないのデス!」

 

「これもフィーネのおかげ……」

 

 するとフィーネさんは最後にあの言葉を告げた。

 

「ふふっ……少年少女達……

 

 〈命……短し……恋せよ……乙女……

 

それが……私達の……最後の……言葉よ……」

 

 そう告げてフィーネさんの霊基は消失した。

 

「偉大な女性でしたよ……フィーネさん……」

 

 僕達は……彼女になんとか勝利できた!




フィーネを打ち破った3人だが……1つの聖遺物を使われ無かった事に疑問が残る。しかし……その疑問の前に、彼女達の戦いを見ていただこう……。

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〈ライダー〉対〈バーサーカー〉……譲れない戦い

最後に動き出したライダー陣営と、バーサーカー陣営が激突する。その二組の因縁は……決して浅くは無い……


〜〜マリアside〜〜

 

「さて……私達も戦いましょう? というよりも……私達は貴女達を許さないわよ……響、未来……」

 

「も〜マリアさ〜ん! それはこっちの台詞ですよ〜。だって……しゅう君の貞操……奪いましたヨネ?」

 

「私達が1番欲しかったしゅう君との愛……それを私達から引き剥がしてまで手にしたなんて……泥棒紛いな事をよくできましタネ?」

 

 響と未来は私達に怒りを向けて来た。しかし……それは私達も同じだった。

 

「立花……小日向……私達もお前達が憎いぞ? 何故……修治を手にかけた……何故……小日向は自殺した……?」

 

「それにね? 貴女達の協力者……あの娘は危険だもの。なら……私達は修治を守らないといけないわ。だから響……私達は貴女を倒す。いえ……殺すくらいのつもりでいるわよ?」

 

 すると響と未来も瞳の光を消して私達に告げた。

 

「そうですかマリアさん。私……マリアさんが許せなかったんですよ? 私以上に大きな身体と胸でしゅう君を惑わせた……マリアさんがね!」

 

「私達のお日様はあげませんよ? 絶対に……しゅう君以外は殺しますから!」

 

 そして私達はそれぞれが聖詠を詠ったわ……。

 

Balwisyall nescell gungnir tron〜♪ 

 

Rei shen shou jing rei zizzl〜♪ 

 

Seilien coffin airget lamh tron〜♪ 

 

Imyuteus amenohabakiri tron〜♪ 

 

「さぁ……私達の譲れない想いをかけた戦いを始めるわよ! 

 

 私達はそれぞれがシンフォギアを纏い……相手を全力で殺す為の戦いを始めたわ……。

 

〜〜マリアsideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜未来side〜〜

 

「さぁ翼さん……私……翼さんが憎かったんですよ? だって……響との初対面の時にあれだけの事をしたのに……のうのうとしゅう君に支えられて……おまけにアイドルとしても完璧な翼さんが……凄く憎かったです。だってしゅう君……いつも翼さん達にドキドキしていましたよ?」

 

「だろうな小日向。しかし私達は直接修治の言葉を聞いたのでな。この胸より高鳴る想い……お前にはわからないだろうな……」

 

 すると小日向は直線上にビームを放って来た。

 

「あぁ……今の閃光……なんで避けるんですか? 当たってくれたら……すぐに楽になれましたよ?」

 

「ふむ……それは遠慮しよう。何故なら私達は……お前達こそが1番排除したいのだからなぁ!」

 

蒼ノ一閃! 

 

 とはいえ……小日向にはそう簡単に致命傷になるほどの攻撃を当てるのは難しいだろう。私達は纏うモノを変える事にした。

 

「全力で行くぞ小日向。早く死ぬと良いぞ?」

 

「翼さん……早くくたばってくださいね?」

 

 私と小日向はそれぞれがエクスドライブへと至ったが、やはりお互いに考える事は同じようだな。

 

「やはりお前も同じ考えのようだな小日向。しかし……私の動きに対応できると思うなよ!」

 

「私は対応する必要はありませんよ? ただ致命的な1撃を加えれば翼さんは倒れてしまいます。殺すのはそこからでも遅く無いですよ?」

 

 私はエクスドライブの高速軌道で小日向へと接近して〈蒼ノ一閃〉を放つが、小日向にはまるで決定打と言えるダメージは与えられない。

 

「しかし〈神獣鏡〉……その防御性能は相変わらず厄介だな。突破には骨が折れそうだな……」

 

「翼さんほどチョロチョロされると困るんですよ? 攻撃性能が乏しい私のギアだと……1撃を与えるのも大変なんですから!」

 

 やはり一筋縄ではいかないな。小日向を崩す1手……一体どうしたものか……。

 

「悩んでますね翼さん? 私……その隙を逃す程お人好しでも無いですし、何よりも貴女達が憎いですから……」

 

 小日向は正気では無い表情を浮かべているが、私からすれば冷静さを失った相手は恐るるに足らない。故に早く決着を付けるとしよう。

 

「小日向……全力で斬らせて貰う。故に……眠れ!」

 

千ノ落涙! 

 

「チッ! 翼さんの広範囲攻撃ですか……。鬱陶しいです!」

 

暁光! 

 

 ここで小日向は大技に出たか……しかし……既に勝機は掴み取った! 

 

乱れ影縫い! 

 

「嘘……何時の間に影縫いを……」

 

「なに……先程の千ノ落涙の際には既に布石を打っておいた。そして……お前の動きが止まれば撃てる技は幾らでも存在するぞ!」

 

蒼ノ一閃滅波! 天ノ逆鱗! 

 

「動け無い……でも……私は諦めない!」

 

混沌! 

 

 小日向は私の奥義2発を防ぐべく技を強引に展開したが、それでも攻撃を防ぐ事はできずに幾らかのダメージを負った筈だ。故に……ここで仕留める! 

 

「終わりだ! ……小日向ぁ!」

 

 私は小日向の霊格を砕くべく心臓を射抜こうとした。しかし……()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「我の久方振りの帰還である。頭が高いぞ……蒼の道具よ……」

 

 私はその声の主を()()()()()。しかし……何故奴が現れた! 

 

「何故……お前がここにいる。答えろ……答えろ()()()()()ァ! 

 

 私の前に現れたのは……嘗て小日向を依代に降臨したアヌンナキ神の一柱たる存在……シェム・ハだった。

 

〜〜翼sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜マリアside〜〜

 

「そろそろかな。未来に宿る()()が覚醒するのは……」

 

 私と響はお互いのアームドギアで殴り合いの状態だった。しかし……響の今の発言に私は自分の耳を疑った。

 

「響……今貴女は何と言ったのかしら? 聞き間違いでなければ()()()宿()()……そう貴女は言ったわよね?」

 

「えぇ。言いましたよマリアさん。だって……未来は皆よりも胸の想いは強いですけれど……ギアの力自体は低いじゃないですかぁ……。だから……本当に私が召喚したのは()()……ですよ?」

 

 響は私の問いに肯定した。つまり……それは()()()()()()()()()事を意味している。

 

「なんで貴女1人で召喚できるのよ……()()を召喚するのは不可能な筈よ!」

 

「えぇ。確かに普通の召喚じゃあ無理ですよ? でも……未来の召喚さえできれば彼女は確実に存在が証明されませんか?」

 

 やられた! 響がそこまで知恵を働かせていただなんて! コレじゃあまるで私が足止めされたみたいじゃない! 

 

「響……勝負を急ぐ理由ができたわ。だから……すぐに終わらせるわよ! 

 

「奇遇ですねマリアさん。私も……早くケリをつけたかったんですよ?」

 

 そして私達は同時に禁断の単語を口にした。

 

「「アマルガム……起動!」」

 

 

 私達はアマルガムギアを纏い向かいあった。

 

「あら? 響がエクスドライブに成れないのは意外ね?」

 

「マリアさんこそどうしました? 明らかに出力の劣るアマルガムなんかを持ち出して……」

 

 私はシャドウサーヴァントから吸収した魔力と想い出を焼却して出力を上げた。私達だけの切り札だけど……今切らないと彼女にはきっと勝てないだろう……。

 

「マリアさん……私達はしゅう君が世界の全てだったの! だから……私達の世界に土足で踏み込んど来た貴女を私は許せなかった! 

 

我流・金剛撃槍! 

 

「その胸の想い……私も今ならわかるわ。だって……修治と肌を重ねてわかったもの……。だから……今だぜる全ての力を以って貴女を打ち破るわよ! 

 

TORNADO†DRAGON! 

 

 響の拳と私の剣が衝突して衝撃波を発生させるが、私はなんとしてでも響を倒さないといけない。早く翼の救援に向かわないと! 

 

「ふふふ……。マリアさん……焦ってますね? 剣筋……少し鈍ってますよ?」

 

「えぇ……確かに私は勝負を急いでいるわ。だけど……それがどうしたのかしら! 

 

 響の剛腕は当たれば致命傷だ。但し……距離を詰めさせなければ! 

 

「貴女との戦い……その全てが無駄では無い事を証明するわ!」

 

 私は響を絶対に接近させるつもりは無い。射程範囲外からの攻撃で近寄らせる前に倒す! 

 

「マリアさんの考え…………わかりますよ? だけど……私を……舐めるなあぁ!! 

 

 響は被弾ダメージ覚悟で最短で・最速に・まっすぐに私へと距離を詰めて来た。やはり……それが貴女ね……。

 

「だけどね…………私も接近戦は嫌いじゃないわよ! 

 

 お願いアガートラーム……あの剛腕を打ち破る力を……私に貸して………。

 

〜〜マリアsideout〜〜




響が本当に召喚をしたのは……嘗て倒した筈のシェム・ハだった。それが意味をする事は……事態が過酷である事の……何よりの証明だった……


更に本日も24時にもう1話投稿します!お楽しみにお願いします!

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彼女が告げた真実

通算UA10000突破しました!皆様ありがとう御座います!


本編ではシェム・ハが再誕した。しかし……彼女自身には……敵対の意思が……無かった………


〜〜翼side〜〜

 

 小日向の意識を乗っ取った〈シェム・ハ〉が私の前に降臨した。皮肉なものだな。嘗ては……私がお祖父様の元へと送り届けた事もあったな…………

 

「我の再誕である…………が、些か現状は癪である」

 

「どういう意味だ? お前は……何が目的だ?」

 

 私には奴が何を考えているか検討がつかない。故に……情報を得るのが先決だろう……。

 

神殺しの撃槍は我の依り代をサーヴァントと言った。しかし……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんだと……? それは……どういう……意味だ?」

 

「言葉通りの意味だ。そもそも……奴自身が今も尚正気では無いのだからな…………」

 

 立花が……正気では……無い? それは……どういう意味だ? 

 

()()()()()……と言った方が正確だろうな。心当たり……あるだろう?」

 

 〈嘗ての私〉……だと? シェム・ハの知る私で……心当たり。ッ!? 

 

「まさか……()()()()()()()()と言うのか!?」

 

 しかし……シェム・ハは私に告げた答えは残酷だった。

 

「肯定である。それも……貴様達の知る人物の手によってな……」

 

 〈私達の知る人物〉……か。範囲は絞られるか……一体誰だ? 

 

「安心しろ。この世界の端末だ。貴様達の世界の端末にはそんな芸当はできはしないだろう?」

 

「些か腹立たしい言い回しだが……納得しよう。だが……それを私に伝えてどうするつもりだ? お前ならば……そんな手間をかける必要も……」

 

 全てが読めない。コイツが一体何を企んでいるか……検討の付けようが無い。

 

「我の目的……か。それは………………………………だ」

 

なんだと!? ならば……お前は……

 

「その先を語るべきは我では無い。故に……自ら動け……」

 

 そう言うとシェム・ハは小日向に身体の主導権を返して倒れた。何が……起こって……。

 

〜〜翼sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜修治side〜〜

 

 フィーネさんを退けた僕達だけど、その戦場には()()()()()()()()が残っていた。

 

「なんで……ソロモンの杖だけ……残ってる?」

 

 するとソロモンの杖は輝き出して立体映像を投影した。

 

「なんだ!? 何が……起こった!?」

 

「なんデスか!? このトンデモは!?」

 

「何かの……意思?」

 

 僕達はその光が収まるのを……そして()()()()()()()()()()()()心して聞く事にした。

 

『この映像が投影される頃……お前達は私に勝利しているだろう。故に聞いて行け。私がお前達に残すべき()()()()()だ』

 

()()()()()? 何を……言って……? 

 

『あぁ……それと質問はするなよ? この私自身は唯の記録だ。答える事はできないからな?』

 

「フィーネからのメッセージ……コレは……きっと……」

 

「あたし達が聞くべき言葉……なのデスね……」

 

 そしてフィーネさん(映像)は語り出した。

 

『では結論から言おう。修治……お前が死んだ事が悲劇の始まりだ。そして……この世界はそんなお前を唯一受け入れる事ができた世界だ』

 

 なるほどね。死後にサーヴァントとして活動する事ができる世界はこの世界が最も僕の記憶で強い印象があった。だからこの世界に……

 

『その世界の()()を探せ。全ての黒幕は()()()に潜んでいる。奴こそが真にお前をこの世界に召喚した者だ』

 

 黒幕は……聖杯の……中? なんで……そこに? 

 

『ちなみにシェム・ハでは無い。奴とて今回は巻き込まれた被害者に過ぎないのだからな。故にシェム・ハへと接触しろ。奴は全てを語る事ができる』

 

 シェム・ハ……つまり未来との接触は不可避か。

 

『そして立花響は……現在正気では……無い』

 

 響が……正気じゃあ……無い……だと? 

 

『また……間桐桜は黒幕の片割れだ。しかし……彼女自身もまた……自らの意思で動いている。全ては()との利害が一致している為だ』

 

 また……()……か。フィーネさんはよっぽど慎重に言葉を選らんでいる……か。

 

『全ては〈彼女〉と〈奴〉の企みだ。故に……急げ。このままでは奴の思惑通りの展開となるだろう。しかしてその根底にある想いはとても純粋な……愛だ』

 

 根底にあるのが…………? 

 

「「何故そこで愛(デス)! 」」

 

『しかし……〈奴〉を救えるのもまた……修治だけだ。故に……私は修治を信じている。お前なら出来るだろう? 何せ……私が愛した息子なのだから……な』

 

 反則だよフィーネ……。そんな言い方されたら……断われ無いじゃないか。

 

『そろそろ記録時間も限界が近い。奴に勘付かれる前にこの記録は自壊する。故に……これだけは伝えよう』

 

 その言葉を……僕は識っている気がした。

 

 『胸の……詠を……信じて……行け……

 

 そしてソロモンの杖は自壊した。

 

「フィーネさん……本当に貴女は過保護な母親だ。だけど……とても良い母親だったよ……」

 

「粋な計らい過ぎるのデス! 先輩にどれほど大きなお土産を残して行くのデスか!」

 

「素直じゃないけど……確かに私達に伝えてくれた。だから私達は……迷わず進んで行ける!」

 

 僕達がやるべき事はわかった。なら次に僕達の合うべき人物は…………

 

「響か……桜だな。2人はどちらと会うべきだと思う?」

 

 すると切歌ちゃんと調ちゃんは少し考えた後に答えてくれた。

 

「私は……響さんに会うべきだと思う。未来さん……いいえ、シェム・ハとの接触を優先するなら……間違い無い」

 

 調ちゃんは響達……か。やるべき事の最短の道筋では……ある。だけど……不安も……大きいね。

 

「あたしは……キャスターのマスターに出会うべきだと思うデス。だって……黒幕の情報を搾れるのデース!」

 

 目下の脅威であると同時に避けて通れない相手……か。確かに倒す事が出来るなら……最も有効だね。

 

「2人の意見はよくわかったよ。どちらも高い優先事項な事に変わりは無い。だから……どうするかは僕に判断させてくれるかい?」

 

「勿論デース! どっちを選らんでもあたし達は納得なのデース!」

 

「どちらを選らんでもリスクは付き物。だけど……後悔しない方を、お兄ちゃんには選らんで欲しい……」

 

「ありがとう2人共。なら一晩考えて結論を出す。そして…………「先輩! アレを見るデース……」切歌ちゃん……?」

 

 僕は切歌ちゃんが指差した方向を見つめて驚いた。

 

「これは……()()()()()()……?」

 

 〈クラスカード〉……並行世界の魔術師である〈エインズワース〉が作り出した英霊の力を宿した魔術礼装であり……一種の宝具だ。

 

「イラストは……ん? このクラスは……」

 

 僕はそこで示されたクラスに反応せざるを得なかった。

 

 はっきりと映る〈セイバー〉・〈2枚のアーチャー〉・〈ライダー〉・〈ランサー〉・〈アヴェンジャー〉・〈キャスター〉のカードと、()()()()()()〈ランサー〉・〈アサシン〉……そして文字のみしか示されいない〈アルターエゴ〉のカードが2枚……か。

 

「法則がある筈だ。何故〈バーサーカー〉が描かれていないのか。〈ランサー〉のカードが2枚あるのか。何故エクストラクラスのカードが有るのかを……」

 

「〈セイバー〉はそれ以外のカードと雰囲気が違う気がするのデス……」

 

「そうだね。そうしてみよう」

 

 切歌ちゃんの直感を信じて〈セイバー〉のカードはグループが無いとしよう。

 

「お兄ちゃん……色の霞んでるカードは纏めておこう? 多分これは1つのグループだから……」

 

「それは多分間違いないよ。となると残るのは……」

 

「〈アーチャー〉・〈ライダー〉・〈アヴェンジャー〉ともう1枚の〈ランサー〉の4クラスだけ……か」

 

 そのクラスは何の繋がりがある? だけど……考えようとするとモヤがかかる気がした。

 

「多分……モヤの主とカードの共鳴は別の人物の思惑だよ……」

 

 僕に欠けている記憶……あの記憶以外に……一体何が……示されているのだろうか……?

 

「どちらにしても……シェム・ハは識っているかもしれない……だろうね?」

 

 ただ……僕もこの答えには自信が無かった。

 

〜〜修治sideout〜〜




フィーネはキャロルを警戒している。故にソロモンの杖を戦闘では敢えて1度も使わなかった。全てはキャロルの企みである事を示唆する為に……

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激闘の果てに……

響はマリアと戦う中で何を思うのか……


〜〜響side〜〜

 

 私達がお互いの技をぶつけ合って舞った砂埃が晴れる前に…………私はマリアさんの前からテレポートジェムを使って姿を消した。

 

「面倒だなぁ……。マリアさんのアマルガム……記憶の中よりも出力が高かったなぁ……」

 

 完全に想定外の実力だったな……。まさか……錬金術まで使えるなんて……。それに……シャドウサーヴァントを取り込んでるみたいだから……想い出も事足りるみたいな感じだったなぁ……。

 

 早く未来と合流しないとね。じゃないと……シェム・ハが未来を乗っ取って……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「でも……翼さんが相手だと……少し未来は分が悪いかな……」

 

 私は令呪の示す輝きを頼りに未来との合流を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小日向に宿るシェム・ハ……か。早く修治の元へ連れて行かなくては……な……」

 

 ッ! 翼さんと未来の戦いは未来が押されたのか! 早く翼さんを撃退しないと! 未来の中にいるシェム・ハが覚醒して……()()()()を語ってしまうかもしれない! 

 

うおおおおお!!! 

 

 〈我流・大地浸透勁! 

 

 私はまだ解除されていないアマルガムで翼さんに奇襲した! 

 

「ッ!? 立花か!」

 

 動揺した翼さんの背後から私は地形を変える一撃を放った。しかし……やはり相手が翼さんだと簡単に防がれてしまうかぁ……。

 

「未来は返して貰いますよ? どうやら翼さんが未来を押していたみたいですけれど……連戦に耐えられるなら私は構いませんよ?」

 

「なるほどな。マリアから立花が姿を消したと連絡が来たが……こちらに来ていたのか。しかし……それならば私とて好都合だぞ?」

 

 翼さんはエクスドライブ……か。少し分が悪いなぁ……。ギアの形状から出力はあっちが上で、こっちは未来を気にしながら戦わないといけない。

 

「とはいえやる事は変わりません! 翼さんを倒せば良いだけなんですから!」

 

「思い上がるなよ立花? お前が……私を倒せるだと?」

 

 翼さんとの戦いは技術で押されかねない。そもそも未来を回収しないと意味は無い。だから……私は桜ちゃんを通じて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「翼さん……コレが何か分かりますよね?」

 

やめろ立花! お前……自分が何を取り出したのかわかっているのか! 

 

 やっぱり翼さんは()()()()()()()なぁ……。だって……私が取り出したのは……()()()()()()()()()()なんだから……。

 

「大変ですよねぇ……。神秘の隠匿が必要な時代に……どうしようも無い未知のバケモノが現れたら……世界は混乱しますよねぇ……?」

 

やめろ立花ぁ! お前……自分が何をしようとしているのかわかっているのかぁ! 

 

 翼さんは激怒しているけど……私だって翼さんが許せない。

 

「じゃあ翼さん……取り引きです。未来を大人しく返して貰えますよね? じゃないと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「立花……お前……」

 

 翼さんは血が出そうな程唇を噛み……拳を握っている。時間をかけ過ぎたらマリアさんが合流しかねないから早くしないと……。

 

「どうしましょうか? 早く答えて貰えますか?」

 

「嘘は……無いな? 本当に……今直ぐにばら撒く事はしないのだな?」

 

「はい。もちろんですよ!」

 

 私は()()()()()()()()()()()()()()()をして翼さんと握手をした。

 

「その言葉を……信じているぞ?」

 

 翼さんも私の言葉を信じた。そして未来を背負うと……マリアさんまで合流してしまった。

 

「翼! 響がこっちに来た筈よ! 早く捕らえないと響がとんでもない事を!」

 

 あぁ……やっぱりたどりついて警戒を促しますよね。でも……今翼さんは……

 

「済まないマリア……。何も言わずに立花を……見逃してくれ。でなければ……立花は……」

 

どういう意味なの! 説明をしないとわからないわよ! 

 

「マリアさん……()()()()()()()ですよ?」

 

 私はマリアさんにアルカ・ノイズの結晶を見せた。

 

「ッ!? 響……貴女が何でそれを!」

 

 私が所持している事に混乱しているマリアさん。少し……揺さぶれるかな? 

 

「この結晶は桜ちゃんから貰いました。桜ちゃんのサーヴァント……ご存知ですよね?」

 

「バヴァリアの……サンジェルマンか。私達と……彼女は再び……」

 

「まさか……貴女がソレを所持しているなんて考える訳ないじゃない! 私達の……倒すべき相手なのよ!」

 

「ええ。知っでいますよ? でも……()()()()()()()()()()別に私達はこの世界を救う義理も義務もありませんよ? だって……しゅう君がいたから私はこの世界に来たんですよ?」

 

 私の目的はただ1つ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今度は……私達以外の女の子と……関わらない為にね? 

 

冷静になれ立花! そんな事をしたところで修治が喜ぶと思うのか? 

 

貴女達が()()()冷静だったら……そもそも修治は死んでないのよ! 目を覚ましなさい! 

 

「はぁ…………。溜息がでます。翼さんも……マリアさんも綺麗事ばかり……。私と未来がどれほど辛い思いをしたのか……わかりませんよね? 大好きなしゅう君が……どんどん新しい女の人に好意を寄せられる姿……それを見るのはとても辛いんですよ?」

 

 私は自分でも驚く程低い声が出た。そして……改めて交渉を行う事にした。

 

「取り引きです。未来をこちらに返してください。そして今直ぐに私達の前から消えてください!!」

 

「そうすればアルカ・ノイズはばら撒かないのね?」

 

「嘗ての仲間が非道な道に堕ちる等……今の私達は許すつもりはないぞ?」

 

「大丈夫ですよ?」

 

()2()()()()()()()()()は……ですけれどね?」

 

 すると翼さんとマリアさんは私と未来の間を空けた。

 

「ありがとうございます。マリアさん……翼さん……」

 

 私は未来を背負うと……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!? やめろ立花ァ! 

 

「ッ!? やめなさい響!! 

 

 私の事を慌てて静止するように告げる2人の前で……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

立花ァ! お前は何て事をしたァ! 

 

今直ぐにアルカ・ノイズを自壊させなさい! 聞こえなかったの! 

 

 必死に叫ぶ2人に……私は笑顔で答える事にした。

 

「マリアさん……翼さん……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 私はそう告げるとテレポートジェムを起動した。

 

「次は必ず殺すつもりで来てくださいね?」

 

立花アァァァァ!!!! 

 

戻って来なさああああい!! 

 

 最後に叫ぶ2人の声は……()()()()()()()()()()()()()()()…………

 

〜〜響sideout〜〜




現在の響は相当深々とキャロル様に洗脳されております。でも響……君は本来主人公の筈なんだけどなぁ……(キャロルヤバすぎぃ!)

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〈ユメ〉の中より導かれ……①

久しぶりの士郎視点です!そのお相手はまさかの!?


〜〜士郎side〜〜

 

 あの後……セイバーを失った俺は奏さんに連れられて教会へとたどり着いた。そして俺の傍らには2人の少女がいた。

 

「士郎……凄かったわ。貴方は未来の自分に打ち勝ったのよ? そんな素晴らしい貴方を私は讃えるわよ?」

 

「ふふっ……士郎……いい子いい子。貴方は私の誇らしい義弟よ?」

 

 何故……俺は遠坂に膝枕をされてイリヤに手を握られているのだろう。俺達は……敵だった筈なのに……。

 

「2人は……なんで……俺を助けるんだ? 聖杯戦争とやらなら…………助ける理由なんて……」

 

 しかし俺の言葉は続く事は無かった。イリヤにキスをされたからだ。

 

「ダメよ士郎。貴方がセイバーから開放されたから私達は助けたのよ?」

 

「士郎……私は士郎の事が好きよ? だから助けた。それじゃあ不満かしら?」

 

 遠坂は……まだわかる。だけどイリヤは……わからない。なんで……俺を……? 

 

「そうね。士郎は私の事を知らないのよね……。しょうがないからリンにも教えてあげるわよ。10年前の……あの聖杯戦争の後に何があったのかを……ね」

 

「それは私も聞きたいわね。アインツベルンが前回の聖杯戦争の後に何が起こったのか……綺礼はちっとも私に話さないからわからない事だらけなのよねぇ……」

 

 すると奏さんは俺達に告げて来た。

 

「ふむ……。確かにアタシも気になるな。教えてくれるかい?」

 

「良いわ……なら教えてあげる。キリツグが終戦後に何をしたのかをね……」

 

 だけど俺は……唐突な睡魔に襲われた。

 

「あれ……なんで……眠く……」

 

「あちゃ〜……緊張の糸が切れたか? 済まないがイリヤスフィール……その話は後になりそうだぜ?」

 

「みたいね。仕方無いから私達はサクラの話でもしましょう……。あの娘……本当にヤバいわ……」

 

 俺はその会話に参加する事無くユメの世界へと引き摺り込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『済まないね衛宮士郎君。君を強引に呼び寄せた事は謝るよ。だけど聞いて欲しいんだ。僕の話をね……』

 

 俺に呼びかけて来たのは優しそうな表情をした眼鏡をかけた男性だった。

 

「アンタは……誰だ? そして……なんで……俺を……呼んだんだ……?」

 

『そうだね。まずはそこから話すべきだった。じゃあ自己紹介から始めるよ。僕の名前はイザーク・マールス・ディーンハイム……しがない1人の錬金術師だよ……』

 

 錬金術師か……。ならもしかしたら彼女との関係がある人物なんだろうか……。

 

「俺はついさっき錬金術師と出会った。その名前はサンジェルマン伯爵だ。この名前に聞き覚えはあるか?」

 

 するとイザークさんは驚いた表情をしていた。

 

『僕の友人が運営していた組織の大幹部だね。僕個人としての面識は無いけど、その人物像なら聞いているよ。聡明な人物さ……』

 

 史実のサンジェルマン伯爵もそうだったな。つまりそこは違わないって事なのかな……。

 

「だけど俺と出会った彼女にはそんな様子は見受けられ無かったぞ? まるで欲望に取り憑かれた乙女……そんな状態に見えたぜ?」

 

『流石は魔術師だ。良い眼をしているよ。そんな君だからこそ僕は話したい事がある。聞いて行ってくれないかな?』

 

 イザークさんは申し訳無さそうにこちらを見ていた。やれやれ……そんな表情をされたら断われ無いかな……。

 

「良いですけれど……俺よりも適任な人物とかいないんですか? こんな半人前の未熟者よりも優秀な人間はこの聖杯戦争の参加者にだって存在してますよ?」

 

 それこそ遠坂やイリヤ、奏さんにライダーのマスターでも良かった筈だ。なのに……なんでわざわざ俺に? 

 

『そうだね。だけど君じゃないとダメなんだよ。このアイテムを託せるのは……ね。他の人物だと……彼女に気づかれてしまうんだ……』

 

「そんなに桜が脅威なんですね。確かにわかりますよ。今の桜は俺の知る桜じゃない。あんな表情をする桜は……見た事が無いんだ……」

 

 しかしイザークさんは首を横に振った。

 

『違うんだよ士郎君。桜ちゃんは確かに黒幕だよ。だけど……彼女は()()()()()()()()に過ぎないんだ。もちろん彼女1人でも同じような出来事は起こったかもしれない。だけど……それは()()()()()()()()()()()()()()範囲のトラブルと言えるんだ。それこそ僕が介入する必要が無い程の……ね?』

 

「桜が起こした事態は……()()()()()()()()()()()……だと? それは……どういう……」

 

 わからない。イザークさんの言葉の真意が俺にはわからない。

 

『そうだろうね。だからこそ今回の事態は……()()()()()()()()()……途轍もない規模の大事件なんだ。しかも……その黒幕こそが僕の現れた理由なんだよ……』 

 

 イザークさんの表情がみるみる暗くなっていった。何が……どうなっているんだ? 

 

「イザークさん……?」

 

『あぁ……済まないね士郎君。じゃあ語るとするよ。僕の娘……〈()()()()()()()()()()()()()()()()()〉が起こしたこの聖杯戦争の絡繰を……』

 

 イザークさんは自身の娘の名前を出すと、その雰囲気を重くして語り始めた。

 

『まずはキャロルの……いや、修治君が転生した世界の背景から語るとするよ?』

 

「修……治……? 何故……そこで……修治の……名前が?」

 

 なんでお前の名前が出て来るんだよ修治……。奏さんは……あの後語ってくれなかった。桜から退却するために……そんな余裕が無かったからだ。

 

『修治君は一度死んで転生している。そして転生する前に存在していた世界は士郎くんたちがいる世界とは異なり、シンフォギアシステムという独自のシステムが存在する世界だよ。君たちの世界の言葉でいうのなら第二魔法で存在が確認することができる世界だと思ってくれればいい。そして…彼自身は何の力も持たないままにその世界に放り込まれたただの被害者だ』

 

 そう言えば修治はサンジェルマン伯爵を識っていた。史実の伝承と異なる……女性としての彼女の存在を。思ってみればソレは不自然な事だ。何故……()()()()()()()()()()()()()()()()史実しか知らないならば男性を想像した筈だ。しかし迷う事なく修治は彼女だと言い切った。

 

「思えばヒントは幾らでもあったな。慎二との確執がいずれ起こると知っていたかのようなあの動き方も……もしかしたら……」

 

『そうだね。確かに彼は不自然さを消しきれていなかった。しかし今は……その失敗のおかげで話が早く進む事になる。その点には……感謝しないとね』

 

 本当だな。修治の事を疑える要素も出てきたが、修治の行動に合点がいったところも同時に存在した。

 

『じゃあ本題に入るよ。まずは天をも貫く砲塔の話だね。悠久の時を生きた巫女が引き起こした月を穿ったあの事件を……』

 

「悠久の時を生きた巫女が……月を……穿った……?」

 

 俺の知らない話だな。そんな出来事があれば……でも……。

 

『僕達の世界では通称ルナ・アタックと呼ばれていたのさ。もちろん当時既に僕は亡くなっているんだ。これは聖杯からの知識によって供給された情報だよ?』

 

 そしてイザークさんが言うには、その巫女さんが恋人と悠久とも呼べる時間引き剥がされた事、そしてその障壁となる呪詛を破壊するために月を穿つつもりだった事らしい。

 

『古来より月には神秘の力が宿ると言われている。士郎君の世界でもそんな伝承は無いかな?』

 

「ありますよ。月女神の神話も聞いた覚えがありますから……」

 

女神アルテミス……ギリシャ神話に語られるオリオンの伴侶だ。弓の扱いに長けていると聞いた事が弓道部の合宿中に桜から聞いたような気がする。

 

『なるほど……良い選択だね。確かに彼女は素晴らしい神と言われているよ。ただ……真実ではヤンデレ女神……なんだよね……。っとそうだったあの事変の結末は……』

 

 そしてイザークさんは後に起こるフロンティア事変までを語り終えると雰囲気を変えた。なるほど……ここからか。

 

「イザークさん……雰囲気を変えたと言う事は……」

 

『あぁ……通称魔法少女事変。キャロルが命題の答えを探す為に行った大事件だよ……』

 

 その言葉は……とても重い雰囲気で語られる事となった。




イザークさんとシンフォギアの世界の出来事を振り返る士郎。次の話は……他ならぬキャロルの話です

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〈ユメ〉の中より導かれ……②

物語は〈GX〉……〈AXZ〉……そして〈XV〉へと至る。嘗てのキャロルが抱いた目的……そして装者と並び立ち世界を救ったあの戦いまでの軌跡を……イザークさんと振り返る。


『じゃあ語るよ? キャロルが……僕の娘が世界に始めた悲しい復讐の物語を……』

 

魔法少女事変……その内容は、俺の知らない話だけど……彼の娘が何故そんな事をしたのか……俺は聞かないといけない。恐らく……今回の聖杯戦争への介入に……多大な影響があるんだ。

 

「地球への月の落下以上の事態……一体何を……」

 

『まずはロンドンで歌姫のコンサートがあってね……キャロルは配下の1人をけしかけた。そして別の配下へ自分の元から()()()()()()()()()少女のことを襲撃させた。そして響ちゃん達に接触させたんだ』

 

 敢えて逃げ出させた……か。何の為に? 

 

『キャロルとその娘は……言うならば姉妹みたいなものだね。正確にはクローンだけど……。でも、キャロルにはその娘……エルフナインちゃんを本部に保護させるのが目的の1つだった』

 

「自分のクローンを……襲って……保護させる? なんでそんな……手間を……?」

 

 口封じなら襲う理由はわかる。追い出すだけなら保護させるのもわかる。だけど……その2つは並列しない目的の筈だ。

 

『矛盾を感じるよね? それがキャロルの狙いの1つだったんだ。キャロルは……シンフォギアを1度破壊して、()()()()()を組み込ませる事が目的だったんだ……』

 

「シンフォギアに……組み込む? なんで……わざわざ……?」

 

 明らかに非効率だ。何故……敵対組織を強化する必要が? 

 

『キャロルの最終的な目的は復讐による世界の分解だった。そして……組み込ませた聖遺物は……

 

 〈呪いの魔剣ダイン=スレイブ

 

 だよ……。いや本当に我が娘ながら恐ろしく周到な計画だよ……』

 

「呪いの魔剣ダイン=スレイブって……一度抜けば必ず人を殺すあの魔剣ですよね? なんで……そんな剣を……装者に……?」

 

 俺はキャロルの真意が読めなかった。だけど……先程まで聞いたフォニックゲインによる奇跡……それが無関係とは思えなかった。

 

『士郎くんも気づいたんだね。そう……キャロルは()()()()()()()()()使()()()ダイン=スレイブの呪いを世界に撃ち込む事。でも……それには要所を押さえなけれは意味は無いんだ』

 

「要所を……押さえる? それはどういう……?」

 

 〈呪い〉を用いるところまでは分かる。だけど……ソレを用いる方法が検討がつかない。

 

『装者の歌……つまりフォニックゲインを譜面とするんだよ。その譜面をレイラインの要所……つまり要石等がある場所から呪いのエネルギーを送ればどうなると思う?』

 

 地球の要所に破壊のエネルギーを送れば……当然崩壊等の被害が出る。だけど……そもそも出力が足りるのか? 膨大過ぎるエネルギーに弾かれ無いのか? 

 

「少し無理がありませんか? 明らかに地球を分解するのなら1人で行うのは無理がある。そもそも……そんな企みを秘密裏に行うのは不可能だ!」

 

『そうだね。キャロル1人では不可能だ。だけど……()()()()()()()()()()()()()()()どうかな?』

 

 装者に……記録させる? 

 

『正確に記録するのはキャロルの配下だけど……その配下に旋律を刻むのは装者なんだ。装者はキャロルの攻撃を阻止するために配下と戦い撃破する。そして配下の撃破と同時に呪われた譜面がキャロルに届く。ソレを数回繰り返すとどうなるかな?』

 

「まさか……イザークさんの娘は!?」

 

 1度ギアを破壊して装者の戦力向上の為に呪われた魔剣を装備させる。そして装備された魔剣の呪いを記録する。後は刻んだ呪いを膨大なエネルギーの流れに乗せる……そういう事なのか!? 

 

『その表情……恐らく理解してくれたみたいだね。キャロルの計画の危険性を……』

 

「だけど……重要な事が抜けています。キャロルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そこが問題だ。ソレだけのエネルギーは簡単には制御できない筈だ。じゃあどうするつもりなんだ? 

 

『フォニックゲインだよ。もちろん……キャロル自身にシンフォギアは存在しない。だから発生させる事はできない。だけど……キャロルは錬金術師だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさかキャロルの狙いは!?」

 

 呪いとフォニックゲインの両方を手に入れる為に……配下を……自分を……

 

『そしてね……キャロルには切り札が有るんだ。錬金術師には想い出を……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 記憶を……エネルギーに? でも……それなら!? 

 

「数百年も生きれば……ソレだけのエネルギーに……」

 

『そういう事だよ。キャロルは自分の記憶を力に変えてレイラインに呪われた旋律を流し込み、自身のフォニックゲインで調律する。それが世界を分解する為にエネルギーを放てば後は……ね?』

 

「なんて……スケールの……計画だよ。なんで……そこまでして……」

 

 自分の記憶すらも失うのに……どうしてキャロルは…………。

 

復讐……だったらしい。大好きだった僕を……奪った……世界への……ね?』

 

「復讐……か。大好きな家族を……理不尽に……悪意で殺されたならば……あり得るのか……」

 

 それだけの覚悟と時間……そして自分に残る全てを捨ててまで成そうとした復讐は……から来てるんだな……。

 

『それを響ちゃん達は止めたんだよ。家族の繋がりを再認識して……ね』

 

「そう……ですよね。響達にも……家族はいますからね……」

 

 だからこそ響は止めたのだろう。俺が知る響は穂群原学園に来てからの響だけど……アイツが前と変わっていないなら、キャロルにも……手を伸ばした……筈だ。

 

『うん。響ちゃんは確かに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……その時は……ね?』

 

 その時は……か。なら……どうやって? 

 

『それを語るにはエルフナインちゃんの話もするよ?』

 

 イザークさんはそう続けて……後の錬金術師達の結社の話をした。

 

 

 

 

 

 

 

『コレが僕の友人の組織の話だよ。その時の大幹部であり、計画の運行を実際に執り行うのは彼女……サンジェルマンだ』

 

 そこでキャスターの話へと繋がった。なるほど……修治はこうやってあの人と出会う訳か……。

 

「だけど……まだありますよね? 最後の……神の話が……」

 

『そうだね。その時までキャロルは意識を眠らせたままだったけど……宿主であるエルフナインの覚悟とたゆまぬ努力によってキャロルは再誕したんだ。もちろん制約がかなりあったけど……ね』

 

 そこでキャロルの再登場か。なるほど……確かに実力は健在だな。

 

「とはいえ……神とやりあって時間を稼いだり、その攻撃を受け止めるのは……実力の高さが……伺えますね……」  

 

『うん。キャロルは今成すべき事に全力だ。だからこそ……僕の仇討ちの為に世界を破壊しようともしたんだ。だけど……聡明なキャロルは……自分の行動が八つ当たりだという事もわかっていた。なのに……』

 

 それでも……自分を抑えられ無かった。奪われた家族への想い出が……消える事になっても……。

 

「なら……イザークさん。アイツは……修治はその世界で()()()()()ですか?」

 

 ここが……知るべきところだ。

 

『修治君の目的は……()()()()()()()()()()()()()()()()だよ……その中にはもちろんキャロルも入っていた……』

 

 予想通りの回答だったけど、イザークさんは言葉を続けた。

 

『先に渡すよ。キャロルが僕の存在に気づいた筈だから……』

 

 そう言ってイザークさんは4つの魔術刻印を俺に刻んだ。

 

「っ!? あぐぅ……!」

 

『手荒い譲渡になった事は謝るよ。だけど……その刻印は()()に託すべき刻印だ。詳細は……刻印が教えてくれるはずさ……』

 

 俺の腕に刻まれたのは〈〉・〈〉・〈〉。そして……()()()()()その4つの刻印だった。

 

「剣が俺だとしたら……遠坂とイリヤ……そして桜か?」

 

『そうだよ。君達の為の刻印だ。そして……その刻印は()()()()()()カードに惹かれ合う筈だ』

 

 修治とは……再会する理由が増えたな。

 

「最後に……修治の話を教えてください。アイツは……()()()()()()()()()

 

『それは…………』

 

 イザークさんの言葉を……俺はしっかりと聞き届けると決めた。




シンフォギアの世界を……軌跡を知った士郎は、修治がその世界で何をしたのかをイザークさんに問いかけた。そこに……装者と……そしてキャロルとの間にあった想いを知る為に……。

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イザークさんから託された物

そして転生特典を持たなかった修治が〈何をしたのか〉がとうとう語られる。


『じゃあ士郎君……修治君がその世界で何をしたのか……良く聞いて欲しい。多分最後まで語る事はできないだろうからね…………』

 

「それは…………どうして……」

 

 俺はイザークさんに尋ねようとしたが、できなかった。その表情が焦りへと変化していた為だ。

 

『まず修治君は今回同様に特別な力は何も持たない状態で転生していた。まぁ……それは大した問題じゃあ無いよね……』

 

「なら……修治はなんであんなに俺達の事を……」

 

 特別な力を持たないなら……アイツは何をしたんだ? 

 

『まず身近なところからいこう。士郎君を襲った〈雪音 クリス〉ちゃん……彼女はどうやら幼少期には日本にいたらしい。その時には家がお隣の幼馴染……そんな関係みたいだね』

 

「言ってましたね。確かに幼馴染だと……そして年は1つ違いとも言ってました……」

 

『そうだね。そしてクリスちゃんが日本を離れた後に出会ったのが〈立花 響〉そして〈小日向 未来〉だよ。士郎君のよく知る響ちゃんと性格の方はそこまで変わらないから……まずは運命の日まで割愛するね?』

 

 確か……ライブ会場にノイズってのが現れたその日……か。

 

「修治は……その場にいたんですか?」

 

『いなかった……だけど……自力で二課の職員が響ちゃんの見舞いに来る日に接触を図ったんだ。後に……生存者への迫害が始まる前に……ね』

 

 だろうな。修治ならそのくらいやるだろう。

 

『そして案の定迫害が始まると、響ちゃんの分まで感情を爆発させたんだ。響ちゃんは奏ちゃんの…………

 

生きるのを諦めるな! 

 

 その言葉を言われたものの、生き残った事を後悔していた……』

 

 俺と……同じだな。何故響が修治に惹かれたのか……分かる気がする。

 

『そして同時に未来ちゃんと3人で過ごす事で少しでも早くお互いの傷を埋められるように……覚醒の日まで過ごしたけど、既に二課の事を知っでいたからね……』

 

「修治は……俺以上に無茶しますからね……」

 

 本当に……アイツは何もかもを背負うような……そんな気が……していた。

 

『そして彼は響ちゃんが戦えるように二課に頼み込み、未来ちゃんには響ちゃんの活動に制約が有る為に……自分を悪役にしてまで……接していた。だから2人の友情の為に自分を犠牲にした事を知って……後の悲劇につながるんだ……』

 

「でも修治は……その頃にやった事は……他にもありますよね?」

 

 アイツなら……絶対に何かをしていた筈だ。

 

『分かる? 彼は……襲撃された本部で……フィーネと対峙したんだよ。未来ちゃんを……守る為にね……』

 

 マジか……。ラスボス相手に生身って……あっ、俺もだ。

 

『結果的には僅か1分と止められ無かったけど……未来ちゃん達を逃がすには……充分だったし、何なら自ら人質になって対話を試みるつもりだったらしいからね……』

 

「命知らずとかそんなレベルじゃあないだろ……」

 

 良くわかった。修治にだけは言われたく無いな。

 

『そして極めつけはフロンティア事変かな。スカイタワーで待ち構えて逃走するマリアちゃん達の飛行船に乗り込んだからね……』

 

アイツ馬鹿だろ! 死ぬ気かよ! 

 

 俺は叫ばずにはいられ無かった。

 

『そしてアサシン……切歌ちゃんと調ちゃんが後に喧嘩をするけど……彼は自力で介入して、フロンティアまで登ったねぇ……』

 

 歌姫マリアの演説……か。っておい! 

 

「修治……無謀過ぎるだろ……」 

 

『命が惜しく無いみたい……じゃあ無いよ。彼はその時に命を賭けないと世界が滅ぶ事を識っているから……限界を迎えて尚抗ったんだよ』

 

「確かにフロンティア事変の話の内容通りなら……そうせざるを得ないのかも……しれませんね……」

 

 だとしても……修治……お前は……どこまで……

 

『そしてキャロルとの接触だけど……困った事に初対面は完全に偶然なんだよ。キャロルが……カラオケに……行ってたから……』

 

「は? ……カラオケ……?」

 

 なんで……錬金術師が? 

 

『なんでも〈〉を知る一環だったらしいけど……機械の操作方法が……わからない時に……出会ったみたいでね……』

 

「いや……錬金術師がカラオケに来るとか考えませんよ。流石に……不幸としか言えねぇ……」

 

 それが初対面とか再会した時が気まずいだろ……。

 

『実際ミカちゃんがザババの2人を最初に倒した時に、身を呈して庇いに行ったからね。そして……2度目のミカちゃんの撤退の時には……人質として攫われたからね……』

 

「むしろ良く今まで捕まら無かったな……」

 

『そしてキャロルが再誕した時に必死に交渉をしたんだ。

 

 〈()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ってね。明らかに修治君からすれば不利な取引だけど……キャロルは命題の答えを知る事を優先したんだ』

 

「そもそも……よく交渉を考えたな。しかも……対価がホムンクルスって……アイツ何考えてるんだよ……」

 

 目的があるのはなんとなくこれまでの行動から分かるけど……。

 

『まぁ……ミカちゃんが最後の出撃をした時に情報のお釣りとして解放されたけどね。というか……イグナイトモジュールを使う口実として解放されたけど……』

 

まだ人質やってんのかよ! 

 

 本当に……修治は……。

 

『そして風鳴翼の実家では父親を殴ったしね。もう本当に彼女達の為に自己犠牲を貫き続けたよ』

 

「最終決戦の時も……何かやってますよね?」

 

『戦闘中は……特にはしてないけど……その後にね。持ち帰ったホムンクルスと、キャロルの記憶。その2つを決戦後にやってくれたよ……』

 

 もう想像がついてきたな。修治のやった事が……。

 

「修治の奴……キャロルに〈想い出〉を差し出してホムンクルスをエルフナインに使った……そんなところですか?」

 

『あはは……この流れなら……分かるよね……』

 

 予想通り過ぎて何も言えねぇ。

 

『だけど……キャロルはその事に混乱したんだ。初対面の時ならばともかく……激戦の相手に……だからね』

 

「むしろ修治の方が厄ネタじゃないか?」

 

 もうそうとしか思えなかった。

 

『そして結社の幹部が〈賢者の石〉を完成させてイグナイトを打ち破っだ時……彼はサンジェルマンの前に立ちはだかったんだ』

 

「もう何を言ったのか想像つきますよ?」

 

 修治の事だからきっと……

 

『〈ここで3人を殺させるくらいなら! 僕を殺せ! 僕は大切な幼馴染に守られて生きるくらいなら……身体を張って最後まで足掻く! 

 

 ってね……。本当に危険を顧みないよね……』

 

「修治が俺に説教したら絶対イジろう。もうアイツの方が心配だわ……」

 

『同感だよ。まぁ……それで松代は吹き飛ばずに済んだけどね。その結果として彼は結社に招かれたんだよ。

 

 〈何故君はそうも命を賭けられるのか? 

 

 とね。実際……サンジェルマンは自分達の行動に悩んでいたからね。そんな時に現れた修治君に興味を惹かれたんだろね?』

 

「分かる気がします。でも……無茶しますよね? 1歩間違えたら死んでるのに……」

 

『そうしてでも救いたかったんだろうね。修治君にとってはキャロルもサンジェルマンも手を伸ばす相手だったんだよ。そして……とうとう神降ろしが行われたんだ……』

 

 〈ニンゲン〉のプロトタイプである〈アダム・ヴァイスハウプト〉。彼が起こした神降ろしは……後に再び起こる事になった。修治はきっと……また介入するだろうな。

 

『そして装者達が月に飛ばされた時……地球には神の依代にされた未来ちゃんと修治君しかいなかった。エルフナインちゃんはキャロルと別の人間として過ごしたから……拉致はされなかったけど……』

 

「同時にシェム・ハを止められる人物もいなかった訳か。まさに修治のせいだな……」

 

 原作では救われたシチュエーションだけど……修治のせいで悪化したのか。

 

『まぁ最初は興味本位の質問をしたりされたり……そんなところだったよ。だけど……未来ちゃんの想いに気づいたシェム・ハは修治君にキスをしたんだ……』

 

「何の為に……ですか?」

 

『〈ヒトの持つ感情に興味が湧いた。故に我の伴侶となれ。そうすればこの依代の娘も報われるだろう? 〉

 

 とね。まぁ確かに未来ちゃんは修治君に恋をしていた。だからこそ……なのかもしれないね』

 

「神様まで興味をそそられるとか……修治の功績は確かに人の枠には収まらなないかもな……」

 

 それがサンジェルマン伯爵の言葉につながるのか。

 

『まぁ……その行為を見ていたキャロルがここで登場したんだ。キャロル自身は今まで気づいて無かったけど、キャロルが1人放浪する間に修治君は大きな存在になっていたみたいなんだ。だから修治君の世界を守る為に装者に協力をしたみたいだからね』

 

「パパ……話は終わりだよ? 修治は……オレのモノだ。例えパパでも……邪魔はさせないから!」

 

やめるんだキャロル! こんな事をしたところで! 修治君は喜ばないぞ! 

 

()()()()()さ。だけど……オレはもう限界なんだ。修治が欲しい。今のオレにあるのはその想いだけだ。だからパパ……コレ以上は……何も語らないでね?」

 

 突然現れた少女……キャロルはイザークさんを()()()()()()()()()()()()

 

「さて……お前は桜のターゲットだ。故に……ここから出るが良い!」

 

パチン! 

 

 キャロルが指を鳴らすとオレは意識が何処かへと引き摺られる感覚に囚われた。

 

「安心しろ。貴様達が何もしないならば……オレはお前達には手をくださない。ただ……()()()()()()()()()()()()()()()()()とだけ言っておこう」

 

 そうキャロルが告げると……俺は現実へと意識を戻された。

 

 




今のキャロルはイザークさんの言葉すらも……受け入れる事はできなかった。それは……今のキャロル自身が間違いを犯している事を……誰よりも知っているから……


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導かれてその先に……

出現したアルカ・ノイズと戦う時……託された力が解放される……


〜〜修治side〜〜

 

 フィーネさんのメッセージを聞き終えた僕達は、マリアさん達へと合流をする事にした。

 

「2人とも……そろそろマリアさん達と合流するべきだよ。いや……フィーネさんのメッセージが正しいなら……」

 

「翼さん達との合流は必須デスね……」

 

「マリアへの危機……助けないと……」

 

 そして僕達はマリアさんとのリンクを頼りに合流を考えた。しかし……僕達の視線の先で()()()()()()()()()()()()()()()

 

2人共! アルカ・ノイズを殲滅するよ! ここで僕達が倒さないと街が! 

 

「なんで……この世界にアルカ・ノイズが!」

 

今は考えても仕方無いのデス! とりあえずは片付けるのデス! 

 

 調ちゃんと切歌ちゃんはギアを構えた。すると……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のクラスカードが輝き出した。

 

「なんだ!? 何が起こっているんだ!?」

 

「カードが……姿を変えていくデス!」

 

「まるで……人の姿に……」

 

 そして光が収まると、そこに現れた人物は……()()()()()()()()だった。

 

「マスター……アレを倒せば良いのね?」

 

「フン! 私達の前に現れたなんて運の尽きね。そのまま地獄に送り返してやるわ!」

 

 現れたのは高飛車な態度をとる長身のアルターエゴ〈メルトリリス〉……そして全身へ黒い鎧を纏い戦うアヴェンジャーの〈ジャンヌ・ダルク・オルタ〉だった。

 

「貴女達は……誰?」

 

「先輩はあたし達のモノです! 絶対に渡さないデスよ!」

 

 ザババの2人はメルト達に威嚇したが、邪ンヌ(長いから)が直ぐに注意を促した。

 

そこの小娘達! 話は後で聞いてあげるからあの謎のモヤを倒すわよ! 間違い無く敵なんでしょ! 

 

「面白い性質をしているわね……有機物・無機物問わない分解能力なんて! さぁ……私とどっちの方が速く分解できるか勝負よ! 

 

「ちょっと! メルト!」

 

 しかしメルトはアルカ・ノイズとの交戦を開始した。しかし……その実力は僕の良く知るメルトそのものだった。

 

「遅いわね。確かに能力は魅力的だけど……量産型故の欠点かしら? 動きに無駄が多いわよ!」

 

 メルトは移動と同時にウイルスを散布してノイズを無力化……そして自身への魔力へと還元してしまった。

 

「凄い速さ……私達の最速にあたる翼さんよりも速いかも……」

 

ハッ! ドールマニアが調子振っちゃうなんて気味が悪いわ! アンタ達さっさと燃えなさい! 

 

 邪ンヌは左腕を掲げて炎を起こし、アルカ・ノイズを纏めて焼却した。

 

「あの火力……響さんの1撃をゆうに越えてるデス……」

 

「メルト……邪ンヌ……もしかして君達は……」

 

 僕は1つの仮説を立てた。もし彼女達が()()2()()なら……頼もしい味方だからだ。

 

ありがとう! 助かったよ2人共! 僕の相棒達! 

 

エッ!? ……先輩……? 

 

お兄ちゃん……浮気……? 

 

 後輩達が物凄い殺気を向けて来たけど、僕はそのまま2人へと駆け寄りその手を取った。

 

「まったく……つくづく心配させるマスターね……。おかげで傍を離れられないわ……」

 

「アンタは私の唯一無二のマスターよ。他のサーヴァントじゃあ無くてこの私の為の……ね?」  

 

「どういう事か……」

 

「教えて欲しいデース……」

 

 正面からはメルトリリスとジャンヌオルタ(嘗ての僕の相棒達)が、そして後ろには切歌ちゃんと調ちゃん(今の僕のサーヴァント)が、僕の周囲を包囲して拘束していた。

 

「ごめんね皆! 先にアルカ・ノイズをお願い!」

 

「「「「任せて(なさい/デス)! 」」」」

 

 4人は二手に別れて殲滅を開始した。

 

炎で焼くわ! 討ち漏らしを狩りなさい! 

 

「シャルシャガナに不可能はない!」

 

「動きを止めるわ! 追撃をしなさい!」

 

任せるデース! 

 

 邪ンヌが焼き払い調ちゃんが討ち漏らしを刈り取る。メルトが動きを鈍らせて切歌ちゃんが薙ぎ払う! 

 

「とても初対面とは思えない連携だな。でも……とても助かるよ……」

 

 そしてとうとうアルカ・ノイズは一掃された。しかし……なんで……この世界に? 

 

「錬金術師なんで……サンジェルマンさんと……マリアさん達だけしか……いなかった筈。なんで……サンジェルマンさんは……」

 

 現状はサンジェルマンさん達の仕業と仮定するしか無いけど、僕は直ぐに別の問題に直面した。

 

修治……私……頑張ったわよ! さぁ……褒めなさい! 

 

私を讃えなさい! そして……やっと会えたのです。もちろん私と契りますよね? 

 

 メルトと邪ンヌは僕に詰め寄る。その瞳は……僕への愛に溢れていた。そして……2人の共通点を僕は戦闘中に思い出した。

 

「もしかして……()()()()()()にいた2人だよね? なら……こう言うべきなのかな……。久しぶりだね……そしてありがとう。2人のおかげで僕は救われたよ」

 

「マスターから……感謝された! あぁ……胸のときめきがとまらない!」

 

「やっと……会えて……褒められた。コレ以上に幸せな事は無いわ……」

 

 しかし……嫉妬深い後輩に僕は詰め寄られた。

 

先輩……あたし達を放っておいて浮気……デスか? 

 

可愛いらしい2人……憎いなぁ……。私……お兄ちゃんがこんなにも大好きなんだよ? 

 

 サババの2人は僕に抱きつく邪ンヌとメルトに……そしてその2人と馴れ馴れしい僕へと殺気を放って来た。

 

「私の名前は〈メルトリリス〉。修治の最高の理解者よ? よろしくねちびっこ達?」

 

「私の名前は〈ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ〉……まぁ長いから特別に〈邪ンヌさん〉とでも呼びなさい。修治との関係はそうね……運命の恋人……とでも言って良いわね……」

 

 その自己紹介に……切歌ちゃんと調ちゃんは殺気立って負けじと自己紹介をした。

 

「私の名前は〈月読 調〉……お兄ちゃんとの関係は一線を超えた男女です。よろしくお願いしますね?」

 

「あたしの名前は〈暁 切歌〉デス! 先輩との関係は魂まで共にする運命の相手デス!」

 

 4人がそれぞれを挑発するような自己紹介をして殺気だってしまった。

 

「へぇ……〈魂まで共にする運命を相手〉……ね。流石世界を超えただけの事はあるわね?」

 

「なるほど……修治と〈一線を超えた〉のね? 素晴らしい行動力ね?」

 

「先輩の〈最高の理解者〉……やるデスね? まるで奥様みたいデスね?」

 

「お兄ちゃんの……〈運命の恋人〉……その言葉……中々良いチョイスだね?」

 

 良かった……喧嘩にならなくて…………

 

「「「「でも……修治(先輩/お兄ちゃん)は私(あたし)達のモノよ! ソレはわかっている(デス)よね? 」」」」

 

 え……4人共……? とりあえず……メルトと邪ンヌには話を聞かないと……。

 

「メルト……邪ンヌ……教えて欲しい。何故……君達が僕を助けに来たのか……。そして……()()()()()()()()()が出現したのか……」

 

 本当は知らない筈の2人だけど……何故か()()()()気がしたんだ。

 

「ええ……識ってるわよ。黒幕は……」

 

「マスターの良く知る人物よ。キャロル・マールス・ディーン・ハイム()()()()()()()()()()

 

 まさか……キャロルが……黒幕だなんて……

 

「やっぱりキャロルが……」

 

「でも……キャロルなら……」

 

「キャロル……なんで……」

 

 僕はその言葉の意味が理解できなかったが、切歌ちゃんも調ちゃんも納得していた。

 

「それに……マスターへ私達の力を託すわ。あのクラスカードが……マスターの()()()()()()

 

「でも……私達は信じているわ。()()()()()()()()()()()ってね?」

 

 2人はそう言い残して……元のカードへと姿を変えた。

 

「ありがとう邪ンヌ……メルト……。必ず……前に進むからね……」

 

 力を託してくれた2人に……僕は感謝した。

 

 




スペースイシュタルをご期待の方々には申し訳ありませんでした(土下座!)!

そしてサーヴァントのチョイスは……作者のFGOの所持サーヴァントの中で聖杯を捧げたサーヴァントです。(もちろんレベル100デス!)

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囚われのアルトリア

オルタのようで一部が正気なアルトリアが……桜と対峙して語る言葉は?


〜〜桜side〜〜

 

 魔女さんが持ち込んで私へと提供した()()()()()()()()()()()は……アルトリアさんの耐魔力をあっさりと突破して今や私の為の配下となった。

 

「桜……私が貴女に尽くせばシロウと共に居させて貰えるのですよね?」

 

「えぇ。()()()()()()()()()()()()()()()保証しますよ? でも……()()()()()()()()()()()()()()()()()貴女を直ぐに殺します。わかっていますね?」

 

「もちろんです。私の全ては()()()()()()()()()。そして我がマスターであるサクラの為に……」

 

 アルトリアさんは私の前で膝をつき、深々とその頭を垂れた。騎士の王と言われたアーサー王とて……この私に逆らうのは不可能なようですね……? 

 

「あら……そのセイバー……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴女は……キャスターのサーヴァントだな? ()()()()が貴女と対峙した記録がある。私と貴女は()()()()()()()()()だ?」

 

「流石アルトリアさんですね? サンジェルマンさんの事を良く理解されてます。しかし……貴女の立場は最低限です。先輩を誑かした貴女は当然の報いだとは思いませんか?」

 

「………………………………そうですね。サクラへの忠誠を誓うならばそうなるのでしょうね?」

 

「そういうことよ。まぁ……貴女が有能だと証明できれば桜は貴女への対応を考え直すはずよ? そうでしょう桜?」

 

 私はサンジェルマンさんの言葉に笑みが止まらなかった。

 

「ええ……。アルトリアさんの仕事は簡単です。先輩に纏わりつく姉さんとイリヤさん(害虫)のお掃除です。当然ですが彼女達のサーヴァントも討伐対象なので仕事はたくさんありますよ?」

 

「サーヴァントだけでも〈雪音 クリス〉と〈クー・フーリン〉ね。まぁ……クリスに関しては私が代わることも構わないわよ? だって……()()()()()()()だもの……」

 

「なるほど。確かにターゲットが被るのは面白くありませんね。わかりました。キャスター……貴女のターゲットであるアーチャーには手を出さないと誓いましょう」

 

 やはり物分りの良いサーヴァントですね。しかし……こうも事態が思惑通りに進むと……()()()()()()()が本当に鬱陶しい限りです。さて……困りましたねぇ……。

 

「どうしましたかサクラ? 私達に対して大きな障害でも判明しましたか?」

 

「私達は目的の遂行の為に手段を選んでる余裕は無いわ。だって……こうしている間にも愛しい相手が女性と仲を深める可能性は大いにあるわよ?」

 

「そぅ……なんですよねぇ。先輩も……修治センパイも……()()()()()()()()()人達ですからねぇ……。どうしましょうか?」

 

 私達が今後について悩んでいると()()()()()が現れた。

 

「はじめまして……と言えば良いかしら? マスターに仕えし自動人形(オートスコアラー)……名を〈ファラ・スユーフ〉。今後の為に是非お見知り置きを……」

 

 現れた人形……ファラさんは私達の前に来ると左膝を着いた。

 

「ファラさん……と言いましたね? ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」

 

「ええ……。もちろんですわ……」

 

 すると彼女はサンジェルマンさんへと向き直った。

 

「貴女……随分お久しぶりに見ましたわね? 花婿様の母親気取りを未だに続けるおつもりですか?」

 

「その礼装……〈エレメンタル・ブレイド〉だね? キャロルは……その力を貴女達に与えて尚も余裕がある。そういう認識で良いかしら?」

 

 サンジェルマンさんとファラさんは顔見知り……という事ですか。では確認しなければならない要件もありそうですね? 

 

「ファラさん……貴女の主こそが私の知る魔女さんと言いましたか?」

 

「おや? お気づきでしたか。ええ……貴女にその力を与えたのは紛れも無く私達のマスターであるキャロル・マールス・ディーン・ハイムですわ。しかし……()()()()()()はさしたる問題では無いのではありませんか?」

 

「主の名前が……大した問題では……無い……ですか。なるほど……余程高名な人物とお見受けしました。そのキャロルなる人物の事を私に教えて頂いてもよろしいですか?」 

 

 アルトリアさんの勝手な行動には思うところがありますが、魔女もといキャロルさんの目的には少々興味があります。

 

「そうですね……。サンジェルマンも嘗てのマスターのご様子しか知らないと思いますので……私が説明をして差し上げますわ。本来はマスター自身で語っていただく事なのですが……()()()()()()()お忙しいご様子らしいので……」

 

「キャロルが取り込み中……ね。それは素晴らしい事への準備なのかしら?」

 

「はい。マスターの現在の所要は私達の今後の為に必要な過程ですわ。その為に邪魔者を排除する事……そしてマスターへと協力をしてくださる人物を募る事が我々の役目ですわよ?」

 

 なるほど……キャロルさんの配下にはこの〈ファラさん〉を含めて数人が存在するご様子ですね。しかし……その人物達の力量が彼女を下回る事は無いでしょう。

 

「良くわかりましたよ。貴女の実力は相当高く、尚且他にも同等以上の人達がいますね?」

 

「えぇ。他に3体の仲間が覚醒しておりますわよ? しかも……彼女達は私以上のスペックを備えていると言えば信じて頂けますか?」

 

「貴女の実力で下の方だと言うのですか? 御冗談を。それではまるで他の人物は規格外と言える……そういう事なんですよね?」

 

「えぇ。ガリィちゃんもレイアも……そしてミカちゃんに至っては嘗ての実力と比較する事すら烏滸がましさを感じますわ……」

 

 ファラさんの表情が少しだけ悔しさを滲ませていた。恐らく……彼女自身は本当にスペックは最低値に近いと言えるのかもしれない……。それは私とキャロルさんの敵対をした時に困難が訪れる事でもある。

 

「では……私に次は何をして欲しいのか教えて貰えますか? ただの顔合わせをする為だけに来た訳では無いのでしょう?」

 

「そうですね……。ではマスターとの邂逅をしていただきたいのと、〈バーサーカー陣営〉……立花響の動向を報告して欲しいですわね」

 

〈立花 響〉…………それは修治センパイを慕う人物であり、先輩と似た雰囲気を出す少女。そして……キャロルさんが私に洗脳するように進言した人物だ。

 

「もうすぐマスターによって彼女の洗脳は強固な物になりますわ。現在マスターが対応している所要こそが彼女への洗脳なのですよ?」

 

「なるほど……立花響ならば1度洗脳した程度では安心できなかったな。彼女の精神の強固さは敵としては恐怖すら憶えているからな……」

 

「そういえばサンジェルマンさんは彼女と同じ世界の人物でしたね。なら……この際詳しく教えて貰えますか? 彼女が……センパイにどんな劣情を抱いているのかを……」

 

「嘗ての私を退けたマスターですね。その話……とても興味深いです」

 

「良いでしょう。では……マスターが立花響を使って何をするつもりなのか…………そして彼女とマスターのそれぞれの思惑を……私の推測が混じりますが語るとしますわ……」

 

 そう言ってファラさんは私達に響さんの事を語り始めた。

 

「とても……面白い話になりそうですね……」




動き出す〈自動人形〉……そして……キャロル。この世界の災いが……いよいよ加速する事態となるだろう……

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今の〈タチバナ ヒビキ〉

洗脳された響がキャロルに語る言葉とは……


〜〜キャロルside〜〜

 

「戻ったな〈立花 響〉いや……オレの友よ……」

 

うん! 帰って来たよキャロルちゃん! ちゃんと未来も回収して来たよ! 

 

 やはりコイツを完全に洗脳する()()()()()()。なにせ……洗脳が解ければコイツ自身は己の過ちに酷く動揺するだろう。そうすれば手間はそこまでかかるまい……。

 

「とはいえ……収穫はあったか? まさか……シェム・ハが余計な事を呟いて終わりでは無いだろうな?」

 

「う〜ん……マリアさんに足止めされたから……未来がどこまで粘ったのかはわからないかも……」

 

 そうだな。なにせ奴の相手は〈風鳴 翼〉だ。どれほど追い込まれたのかはわからない。故にどこまで語ったのかはオレでも記憶を覗かないとわからないな。

 

「まぁ……良いか。それよりも()()()()()()()()()()()()()()()()。オレの友であるお前には分かるだろう?」

 

うん! はやく翼さん達を殺さないとね! しゅう君を愛して良いのは私と未来とキャロルちゃんだけだもんね! 

 

 やはりコイツらの絆は切らない方が良いな。シェム・ハとの激闘の折にオレは単騎では愛しい修治を守る事はできなかった。奴の埒外物理学には当時のオレは及ばなかった為だ。

 

「しかし……その激闘で得たモノは間違い無くオレに存在している。そう……狂おしい程の愛だ! 

 

「うん! キャロルちゃんも愛をわかってくれるから私も嬉しいよ!」

 

 そう……オレは修治によってコイツ等との激闘の折に1度全ての記憶を焼却した。しかし……修治はそんな自暴自棄だったオレを見つけてくれた。そして……

 

「オレとの想い出を躊躇う事無く差し出した。それは……一重にオレを救う事を諦め無かった故なのだろう」

 

「しゅう君のそんな姿に私達は惚れたんだよ。だから……しゅう君の事を()()()()()()()()()()()きっと私達だけだよ!」

 

 ふん! 言われるまでもない事だ! しかし……言葉にすると何とも心地良い。コレが……パパより託されたオレの命題の答えだ! 

 

「なにせ……オレは既に間違えていない。復讐など虚しさしか残らないのでな。そして……()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「だけど……それと同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ?」

 

 オレ達にとっては()()()()()()()()大した問題ではないのだ。故にどうなろうと構わない…………が、それ以上に害虫が寄り付く事に耐えられる訳がないのだ。

 

「だから私達は世界に敵対するんだよ? しゅう君が私達の言うことを聞いてくれる為に……」

 

「修治に寄り付く害虫や火の粉を払う為にな。その為ならば再び世界を滅ぼす事も今のオレ達は厭わない。それだけの事だ……」

 

 例え世界へ危険な影響を与える存在であろうと……今のオレ達には大した問題にはならない。なにせ……オレからすれば()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな相手に恐れる理由がオレ達には存在しないさ。

 

「マスタァー! ご報告ですよぉ〜!」

 

「ん? ガリィか……どうした? お前達には抑止力の動きの報告を任せた筈だが?」

 

「あっ! ガリィちゃん久しぶり! 嬉しいよ! 私達! やっと仲良くなれたんだから! 

 

「そうですねぇ。響ちゃんがマスタァーと仲良くしている姿を見るのは私達としても微笑ましいですよ? なにせ……マスタァーの数少ないお友達ですからねぇ……」

 

「そうだな。パヴァリアの連中は友と呼べる関係では無かったな。そうなれば理解者ではあったが利用し・される関係ではあった」

 

 だからこそだろうな。オレが()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()のはな。それ故にお前達は本能のままに修治に手をかけたのだ。もちろん……〈想い人を奪われたくない〉……その一心だけで……な? 

 

「では改めてマスタァーに報告をしますね? 抑止力として限界した〈バーサーカー〉のフィーネは無事に花婿サマ達の活躍で退けられました。〈アーチャー〉はセイバーのマスターに力を幾分か託した後に〈サンジェルマン〉のマスターに

 よって〈ライダー〉共々取り込まれました……」

 

「抑止力〈アサシン〉はオレ自らが処理した事でお前達を召喚できている。故に抑止力の撃破は無事に終わった訳だな……」

 

「あ〜……了子さんも出て来てたんだぁ……。でも流石しゅう君だね! 切歌ちゃんと調ちゃんの2人を無事に扱ってやっつけちゃうなんて!」

 

 コレで抑止力は全員活動を停止させた。まずは計画を1つ確実に進める事ができたな。

 

「となると次は参加者の討伐ですからねぇ……。マスタァーの恋敵たる装者達を早く処理したいですねぇ……」

 

 そうだな。では他の者も目覚めさせるとしよう……。

 

「ガリィ……〈()()()()()〉の調子はどうなっている?」

 

「う〜ん……まだ4割ぐらいですからねぇ……。まぁ……決戦には間に合いでしょう……」

 

 そうか。しかし……この世界の聖杯は素晴らしいな。想い出の焼却無しに……いや、供給される想い出が消費をゆうに上回るのだからな……。

 

「レイアさんの妹かぁ……。どんな感じの人なの?」

 

「そうですねぇ……とても大きいですよ?」

 

 奴の投入は場面を選ばねばならないな。オレの愛しい修治を傷つける訳には……いかないからな。

 

「ではガリィ……ミカ達を呼んでこい。そこで次に狙うターゲットを選定するとしよう」

 

「はぁ〜い! ガリィちゃん急いで来まぁ〜す!」

 

 ガリィはそう告げてミカ達を召集しに向かった。

 

「さて響……お前にも動いて貰うぞ? キャスター……サンジェルマンにコンタクトをしろ。お前と奴のコンビならば邪魔な装者の1陣営ぐらい簡単に倒せるだろう?」

 

うん! 直ぐに桜ちゃんと連携して来るね! 待っててねキャロルちゃん! 私達の新しい命題……絶対に果たそうね! 

 

 響はそう快活に告げてシャトーを後にした。

 

「さて……そろそろガリィ達が戻る頃か……?」

 

 オレが玉座にて待つと直ぐに奴らは戻って来た。

 

「戻ったゾマスター! アタシの相手は誰だゾ!」

 

「私達に何なりと御命令を。しかし願わくば……マスターの新しき命題の達成される瞬間を……我々は見届けたいです」

 

「そうですねぇ……。確かにそれは魅力的です。マスタァー……もし私達が再び装者に遅れを取った場合……マスタァーと装者の戦いを見届けたいのですがよろしいですか?」

 

 面白い話だ。しかし……オレと修治の結ばれる瞬間に……コイツ等を是非立ち会わせたいと思うのも……また事実だ。

 

「間桐桜に接触中のファラも同じ事を告げるでしょうね。マスター……私達の我儘を……聞き届けて頂けますか?」

 

「そうだな。もしそうなれば……無理せずに退却しろ。お前達は嘗てのオレの礼装を纏っている。しかし……それを打ち破ったならば…………それはオレ自身が手をくださねばならない相手だ。故に見届けろ!」

 

 

「「「ハッ! 我ら終末の4騎士(ナイトクォーツァー)の未来はマスターと花婿様の輝かしい未来のために! 」」」

 

 3人はオレの前で跪く。しかし……悲しい事だな……。

 

「立花響……派手に哀れだな……」

 

「マスターにこんなに深々と洗脳されて……」

 

「事の終わりには体良く捨てられるゾ!」

 

 そぅ……奴の洗脳は装者が1組消滅した時点で解除する。それは何故か……? 

 

「マスターの為に嘗ての仲間を手にかけた。()()()()()()()()()()()()()……ね?」

 

「戻ったかファラ……では事の首尾を聞かせて貰うぞ?」

 

 さぁ……修治……お前を迎えに行けるまで……後少しだ……。だから……待っていてくれ…………。

 

 




キャロルの計画は最早止められ無いの……。彼女は……自らの行動を誤りと知りながらも……一重に胸の想いに正直に生きている……

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サンジェルマン……動く

嘗て手をとりあえた者達と……戦う選択肢しかなかった2人が……今再び語り合う事とは………


〜〜サンジェルマンside〜〜

 

 私は……この世界に……呼ばれたその時……人の助けを聞いた。

 

「誰か……助けて……」

 

「貴女が私のマスターね。私は……愛する息子を抱きしめたいだけよ?」

 

 召喚された際の口上を終えた時には既に事態は醜悪そのものだった。

 

「良くない虫がその体内にいるわね?」

 

 私は……目の前のマスターの心臓に潜む害虫を追い出した。

 

「貴様……キャスターのサーヴァントだな? 仕方あるまい。事魔術師としては儂にも勝るやもしれぬ。何が……目的かな?」

 

「そうね……ひとまずはこのマスターから出て行きなさい。貴方はどうやら害虫そのものみたいだけど……この子の家族でしょう? せめてもの慈悲よ?」

 

「いやはやなんとも……素晴らしきサーヴァントよな。桜も……良いサーヴァントを召喚したものよ……」

 

「なるほどね。マスターの名前は……桜と言うのね。じゃあ桜は私が守るべき対象よ? 家族なら……分かるわね? 人は……誰も支配されるべきでは無いのよ?」

 

「なるほどな。お主の真名……些か心当たりが生まれたが、確信を得られぬ内は退散するとしよう。しかし……キャスターよ……これからどうするつもりかね? お主亡き後に……桜はどうするつもりかね?」

 

「そうね。私自身の聖杯に託す願いは無いわ。あるのは私自身の信念と……私自身の手で掴みたい願いだけよ。だからこそ……聖杯には桜の未来でも託そうかしら?」

 

「呵呵……やはりお主は……()()()()()()()()()か。逸話通りの聖人よなぁ……」

 

 そう告げて桜の家族なる人物を退け……桜を浄化する事には成功した。しかし……この世界に……私の頼るべき人物は……いないわね……。

 

キャスター……さん? 

 

「目覚めたのねマスター。大丈夫かしら?」

 

 それが……私と桜の出会ったその日の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サンジェルマンさん! やっと会えました! 私とキャロルちゃんとサンジェルマンさん! ならきっとしゅう君も救えます! 力を合わせましょう! 

 

「そうね。私達3人なら……きっと誰にも負け無い最強のどうめとなるでしょうね。私にとっては君……〈立花 響〉の信念こそが嘗て最大の驚異だったわ。そしてキャロル……孤高の錬金術師である彼女との協力もまた……頼もしいかぎりよ?」

 

 そう……嘗ての私達は互いの信念をぶつけ合うも、その立場故に真に手を取り合う事はできなかった。しかし……今やその枷は存在しない。

 

「私達は既に互いしがらみから解放されているわ。ここにいるのは……

 

1人の友と力を合わせる事の出来る乙女よ! 

 

 そして……キャロル……貴女とは昔の縁があるわ。大切な友人だものね……」

 

はい! 私達は本当の意味で手を取り合えています! 愛するたった1人の…………しゅう君を救う為に力を合わせる事が出来ます! 

 

 私達は常に手を取り合えていなかった。しかし……この世界に愛する修治がいて……恋敵がいる。ならば私達の目的は1つね。

 

「泥棒猫は纏めて処分しないといけないわ。ラフィスの輝きも……今まで以上の神々しさよ。やっと……私達自身の想いが……報われるのね……」

 

そして最後には私とキャロルちゃんとサンジェルマンさんでしゅう君を堕とします! だって……私達が手を取れば不可能なんてありませんから! 

 

 本当にね。私達が……手を取れば……何でも出来ると思えてならないわ。

 

「では教えて貰えるかな? 私達の今後の活動方針を……」

 

「はい! まずはあの陣営から倒します!」

 

 そうして私達は倒すべき装者達を選定する事にした。しかし……皮肉なものね。嘗ての敵同士は手を取り合えて……嘗ての仲間同士では……争うなんてね。

 

「嘗ての仲間だからこそ……ですよ。だって……皆自分達の立場を利用してしゅう君に纏わりつく害虫さんなんですから!」

 

「声に……出ていたかしら?」

 

「いいえ! 恋する乙女の直感ですよ! 私達の命は短いので! 恋には全力を注いで行かないといけませんから! 

 

 なんだか不思議な言葉ね。私達に……とても刺さる言葉だわ。

 

「はい! 〈命短し恋せよ乙女〉……了子さんの残した大切な言葉ですから!」

 

「フィーネの言葉なのね。でも……確かに私達らしい言葉だわ。願わくば……当時の彼女とも分かり合う事ができれば……ねぇ……」

 

 すると響は複雑そうな表情をした。

 

「その……キャロルちゃんの……話では……了子さんは……」

 

「なるほどね。私達と……」

 

 響が敢えて言葉を濁した事で私も理解した。

 

 〈フィーネは世界の意思に則り私達を打倒する立場

 

 なのよね。本当に皮肉ね。

 

「嘗て世界の為に戦った貴女とキャロルがこの世界では明らかに〈世界にとって害悪な存在〉であり……」

 

「フィーネさんやシェム・ハさんみたいに私達の世界を危機に陥れた人物が〈世界を救う為に活動している〉訳ですからねぇ……」

 

 すると()()1()()()()()も目を覚ましたようだ。

 

「ごめん響……シェム・ハに意思を乗っ取られたみたい。多分少しだけど……()()()()まで話されたかもしれない……」

 

「仕方無いよ未来。私達の想像よりも翼さん達の執念が凄いって事だから……」

 

「そうね。貴女自身に非は無い筈よ。まさかシンフォギア装者が()()()()()()()()()()()を使用するなんでわからないもの……」

 

 本当に誤算ね。私達の知る頃よりも〈強化〉いえ……〈狂化〉されるなんてね。

 

「しかし無いものねだりや〈たられば〉な話をするのは意味が無いわ。だからこそ今後への建設的な話し合いをしましょう?」

 

はい! 私と未来。そしてサンジェルマンさんとキャロルちゃんがいればどんな相手にも負けませんから! 

 

「油断したらダメだよ響? だって……世界を超えてストーキングして来た憎い恋敵(害虫)だよ? 油断したら()()しゅう君を殺さないといけない……いや、今回は私達で上書きしないとダメだよ?」

 

〈上書き〉……ね。修治がどんな目にあったのか想像がついてしまうわ。

 

「それは由々しき事態ね。記念すべき()()()()()を修治と共にできなかったなんて……」

 

「キャロルちゃん……凄く悲しんでいました。血の涙を流して……とても……見ていられ無かったです……」

 

「仕方ないよ響。私でさえ……サーヴァントとしての霊基が悲鳴をあげた程の衝撃だよ? そんなの……キャロルちゃんがいくら気丈に振る舞っても絶対に辛いよ……」

 

「だからこそ私達で()()()()()()()()()()ね。今度こそ……しゅう君が安心して過ごせる為に……」

 

 そういえば……聖杯から与えられた知識では……私達の世界の戦いはアニメにあったみたいね。そしてその中で……第3期のラスボス(キャロル)第4期のボス()第5期のラスボス(シェム・ハ)との戦いが記録されていたわ。本当に皮肉よね。〈立花響〉は……それらの人物からあの世界を救った英雄でありながら……今やこの世界では英雄として(嘗て)の姿を彼女を知る人物としては連想出来る者はいないだろう。

 

「それほどまでに……人類は求めるのだな……」

 

「求めるんですよ? だけど……とても素敵だとは思えないですか?」

 

「それが私達人間ですから……」

 

 その感情は……こう語られているな。

 

 〈

 

 とね。しかし……私達は愛があるからこそ……分かり合えた。それは……間違い無いのだろうな。




原作主人公何処行ったんだよ…………


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託された者は動き出す

士郎は……事態の打開する為の準備を始める。その為には……彼女達との接触は不可欠だった。


〜〜士郎side〜〜

 

 俺はイザークさんに魔術刻印を託された。しかし……修治との再会はできていない。俺達が最後に出会う前に同盟の破棄を強制したのは……〈ライダー陣営〉だ。ならばまずは……彼女達への接触が最優先事項だろうな。

 

「奏さん……ライダー陣営にコンタクトがしたいです。しかし……俺には伝手がありません。でも……監督役を担う貴女ならば…………その手段に心当たりがありませんか?」

 

「はは! なるほどな。なら大丈夫だよ。マスターのマリアも……サーヴァントの翼もあたしを邪険にはしないし、何よりも……()()2()()()()きっと正気だろうさ……」

 

 〈今の2人〉……? どういう……事だ? 

 

「奏さん……教えて欲しい。それは……どういう事なんだよ……」

 

「難しい意味は無いんだけどさ……。なんて言うかなぁ……2人共、嫉妬と不安に囚われていたんだよ。修治へと……想いを伝える前に響に殺されたせいで……な」

 

 そういえばイザークさんの話で修治の事を……そしてその功績も俺は知る事になった。正義の味方じゃあ無くて……目の前の少女達に手を差し伸べたのは……未来を知るからでも……ましてや義務感では無い。

 

「そんな2人は……俺と修治の同盟を快くは思わなかったんですよね? 奏さんが自分で言ってましたから……」

 

「まぁな。マリアは切歌と調を人質に取らせて修治に抵抗する権利を奪った。そして……修治を…………()()()()()()()()()()()()……………………うん。ダメだな♪」

 

笑顔で言う事じゃあ無いだろぉ! 

 

 叫ぶなと言われようとコレはダメだな。いや……俺も喰われたけど……流石に……同情してしまうなぁ……。

 

「と……まぁ……とりあえずマリアと翼……どっちとコンタクトをとるかな? 好きに決めてくれよな!」

 

「そこは……奏さんの連絡出来る方で良いですよ。俺は……助けて貰う立場ですから……」

 

 すると奏さんは驚いた表情を見せた。

 

「はぁ〜……なるほどねぇ。謙虚な事だけど……ちょっと違うなぁ……」

 

「違う……ですか? 俺からすれば依頼を断られるまでが当たり前ですけれど……」

 

「まぁな。()()()()()絶対に引き受けねぇよ。なにせアタシはコレでも監督役だからな。相応の責任はある。だけど……今回は明らかにやられたよ。サンジェルマン伯爵がキャスターとして現れた時点で警戒すべきだった。だけど……まさかな」

 

 〈サンジェルマン伯爵〉か……。桜のサーヴァントであり、錬金術師としての功績は相当なモノと言う事しか俺は知らない。だけど……修治へと向けるその感情が……間違い無く愛に溢れていた。

 

「でも……あくまでも桜のサーヴァントに過ぎないんですよね?」

 

「まぁな……とはいえ、正規の聖杯戦争なんて起きていたら間違いなく優勝は桜ちゃんだろうな。いくら士郎が覚醒して、セイバーが高名なサーヴァントでも彼女達2人を打倒するのは多分無理だよ。それこそ全ての陣営が協力すれば可能性はあったかもしれないけど……」

 

 あ〜…………分かる。桜のアレはヤバすぎた。俺がいくら攻撃しても手応えを感じなかったんだ。それは……間違いなく桜のポテンシャルの高さが現れていた。

 

「そんな桜ですら片割れ……なんですよね? 俺は……桜からセイバーを取り戻さないといけません。その為には修治との再会が不可欠です。だったらその障害となるライダー陣営には接触します!」

 

「士郎の覚悟はわかっているよ。だから……ココから先はアタシに任せな! まずは交渉のテーブルを設けるし、アタシも2人に2、3個確認する事がある。もちろん士郎にも関係る話だよ…………」

 

「わかりました奏さん。よろしくお願いします……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……ここが会談の場所か。誂え向き……どころか……奏さんの教会かよ! 

 

「まぁな。ここならマリアも必ず辿り着くだろう?」

 

 俺は奏さんとライダー陣営の到着を待った。すると10分と立たずにその扉は開かれた。

 

「待たせたわね。奏さん……私達の話を……聞いて貰えるかしら?」

 

「ごめんなさい奏……私達……()()()()()()()()()()()()()……」

 

 入って来た2人は以前の顔合わせの時と違い()()()()()()()()()()()()

 

「なるほどな。()()()()()()()()()って事だろう? なら士郎にも……そして修治にも言うべき事があるだろう?」

 

 奏さんはまるで全てを見抜いているかの様に語っていた。そして俺は……その会話の流れに於いて行かれていた。

 

「ライダーのサーヴァント〈風鳴 翼〉、そしてそのマスターたる〈マリア・カデンツァヴナ・イヴ〉さん。教えて欲しい。アンタ達に……()()()()()()()()()()()()()俺はイザークさんからアンタ達の活動と実績を聞いた。だからこそわからないんだ。アンタ達が……()()()()()()()()()()()()をな!」

 

「当然の疑問だ。そして……私達には答える義務が存在している。故に聞いて欲しい……」

 

「私達の魂に刻まれた……最も素晴らしくて凶悪な呪いをね……」

 

 2人の表情から……間違いなく当時が正気で無かった事と、現在は正気だと言える事を確信した。

 

「アレは……既に私達の世界で植えられていたと考えるのが妥当ね。恐らくは私を起点にされたのでしょうね……」

 

「植えられたのは〈感情の種〉で、作用した感情は間違いなく〈修治への愛〉だな。むしろそれ以外の要素は無いだろう……」

 

「だろうな。そして植えたのは他でも無い……」

 

「〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉……イザークさんの娘であり、アンタ達が嘗て戦い、共闘した錬金術師だろ?」

 

 その人物の名前を……俺は誰よりも早く口にしていた……。

 

「イザークさんから聞いたのね……。そうよ……私達に嫉妬の炎を燻ぶらせて……修治の童貞を奪ったのは……キャロルによる暗示……いえ……洗脳とも言えるわね」

 

「しかしそれは、自らの欲望の強さを表していた。私達は……立花が活動すると思うと……とても辛い思いとなった。そして……本能のままに……修治を欲した……」

 

「わかっています。ですが……貴女達はどうして正気に戻れたんですか?」

 

 この答えが大切なパズルのピースだ……

 

「それは間違いなく……()()()()()()()()()()()からでしょうね。そして……修治の魂に触れた事が大きいわ。キャロルの魂の欠片が……満たされたから……だと思うわ……」

 

「だからこそ私達は正気に戻れた。故に……士郎の頼みは私達の命をかけて達成させる事を奏に誓おう!」

 

 風向きが変わったな。なら……俺のやるべき事をするために協力して貰うぜ? 

 

「修治と……そして残る全陣営で桜を……そして響達の陣営を叩く。その為の協力をして欲しい!」

 

「わかっているわ。キャロルの企みが以前よりも強い想いに基づいているのは身をもって知ったわ。だからこそ……私達に協力させて欲しい。まずはその為の誓いを立てるわ!」

 

「もし士郎が戦う事を戸惑う相手がいるならば私達が士郎に代わり止める。もちろん士郎が向き合うと言うならば、その戦いに無粋な横槍が入らない様に見届け……警護しよう!」

 

 なるほどな。風鳴翼は話通り正々堂々を好む人物らしいな。なら……伯爵が目下の脅威だろうな……。

 

「サンジェルマン伯爵が恐らく目下最大の脅威だ。桜を止めるならば彼女は間違い無く動くだろう。しかし……俺には彼女への対応策が少ない……もといイザークさんからの情報しか持ち合わせていない」

 

「わかっているわ。彼女は私達が倒すべき……いえ、正気に戻させる。それでももし不可能ならば……その時は……」

 

 マリアさんは正直言い難そうな気配を見せていた。〈倒す〉ってニュアンスじゃあ無いみたいだから……多分……。

 

「その時は修治の為に活路を開いてください。貴女達同様に彼女が洗脳されているならば、修治の力も必要ですから……」

 

「ええ。そして直ぐに修治と合流するわよ。もちろん……私達は全面的な支援を約束するわ。修治へと抱いた愛に誓うわ!」

 

「よろしくお願いします!」

 

 俺達は固く握手をした!修治……俺達はまだ戦う必要は無さそうだぜ! 

 

〜〜士郎sideout〜〜




実際はひびみくに種を植える最高に巻き添えだった2人。しかし……巻き添えの2人でさえこれほどの狂愛に侵されていた。


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士郎と合流して……

これにて現状動ける陣営全てが行動を明確にした。ある者は愛の為に。また……ある者は……救う為に……


 僕は……弱い。だけど……そんな僕に力を託してくれた彼女達に……報いる必要が出てきた。

 

「〈アルカ・ノイズ〉をサンジェルマンさんが……キャロルが……そして響が扱う以上は……僕も覚悟を決める必要がありそうだな……」

 

 2枚の〈クラスカード〉……〈邪ンヌ〉と〈メルト〉は僕に力を託してくれた。ならば……彼女達の想いも連れて行くのが僕の命題なのかもしれない。

 

「行くよ2人共。僕達が出会うべき相手の元へとね……」

 

「少し癪だけど……仕方無い……」

 

「フィーネからの頼みで……先輩を助ける為デスからね!」

 

 僕達は士郎の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その時は修治の為に活路を開いてください。貴女達同様に彼女が洗脳されているならば、修治の力も必要ですから……」

 

 

 

「ええ。そして直ぐに修治と合流するわよ。もちろん……私達は全面的な支援を約束するわ。修治へと抱いた愛に誓うわ!」

 

 

 僕が士郎と合流すると既にマリアさんが士郎達と接触していて……固い握手をしていた……? 何があったんだ? 

 

「マリア! 翼さん!」

 

「士郎さん! 奏さん!」

 

「「「この状況は一体どんな経緯があったんです(デス)か!? 」」」

 

 いや本当に教えて欲しい。

 

「そうだな。じゃあアタシが説明するよ。3人が何故手を取り合えたのか。そして……()()()()()()()()()()()()()()()()()をな……」

 

 〈仕込まれた……毒〉? その……表現は……まさか……

 

「奏さん……教えてください。その表現は……まさか……」

 

「アルカ・ノイズが関係するなんて……言わないデスよね?」

 

 嘗てキャロルがエルフナインを指して使った言葉だ。そして…………奏さんは寸分違わずその単語を口にしていた……。偶然じゃあ…………ない筈だ。

 

「本当に……〈〉なんですか? 比喩では……無く……」

 

「間違い無いよ。だって……それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな事を出来る奴を……知らない修治じゃあ無いだろう?」

 

「シェム・ハとの戦い……つまり……」

 

「あたし達装者か……もしくは……」

 

「シェム・ハ本人か……キャロルが……」

 

 僕達の戦いで……残る共通人物。それは……あまりにもあり得て欲しく無い可能性だ。

 

「そのいやな予感の通りよ。その毒を仕込んだのは……シンフォギア装者でも……修治でも……」

 

「シェム・ハ本人でも……ましてや本部の人間では無い。ここまで言えば……意味は分かるだろう?」

 

 翼さんとマリアさんの声のトーンが下がった。そして…………認める訳にはいかない……そう……思いたかった。

 

「先輩……言うデスよ。じゃないと……」

 

「私達が……代わりに言う事になるよ……」

 

 後輩2人に言わせる訳にはいかないな。だけど……士郎にも確認しよう。彼女の……計画に……巻き込む訳には……

 

「士郎は……識ってるのか? この事態の……黒幕の名前を……」

 

「あぁ。彼女の父親から全て聞いたよ。修治の転生した世界の……そしてお前が築き上げた実績もな……」

 

 そこまでイザークさんに語られたのか。なら……僕も覚悟をしないと……いや、()()()()()()()()()()()()! 

 

「黒幕の名前はアンリ・マユに汚染された筈の魔術師〈間桐 桜〉。そして……今回の計画の大半を作り上げて実行したのは……奇跡の殺戮者〈キャロル・マールス・ディーンハイム〉ですよね?」

 

「あぁ。修治の言葉通り……そしてあたし達の……恋敵だよ」

 

「え……? 奏……さん……?」

 

「なんで……奏さんが……先輩を……?」

 

 初対面の筈だ。少なくとも……僕の記憶では……

 

「あたしはな……あのライブで死んだ後に……この世界に来たんだよ。だけど……その過程で……修治の活躍を見たんだ。だから……修治は知らない筈さ」

 

「いや……そう……デスよね。奏さん……先輩に会っていない筈デスから……」

 

「でも許せない。私達からお兄ちゃんを奪うつもりなら……」

 

 霧調コンビにギュッと腕を強く握られた。とても痛いけど……その手は震えていた。

 

「大丈夫だよ切歌ちゃん。調ちゃん。僕は2人を見捨てないよ。だって……僕も2人に救われてるんだよ?」

 

 ミカちゃんとの3度目の戦いの時とかね? 

 

「さて……話を戻すよ。目下最大の脅威はキャロルだけど……討伐には絶望的に戦力が足りない。アーチャーであるクリスやそのマスターの遠坂凛、そしてランサーのクー・フーリンとそのマスターのイリヤスフィールがいてもな?」

 

「5人の魔術と4クラスのサーヴァント……そして監督役のアンタがいても足りないのか?」

 

「足りないでしょうね。仮に間桐桜とサンジェルマンだけならば……まだ何とかなるでしょうけど……」

 

「立花……そして小日向が敵である以上は無理だ。何せシェム・ハを……宿しているからな」

 

「オマケにアルカ・ノイズを本当に供給してるのはキャロルだぜ?」

 

 状況を言葉にすると今の僕達はこれだけ戦力を集めながら絶望的な状況な訳か。

 

「だけど……策はあるぜ? その2陣営を正気にするんだよ。〈間桐桜〉……そして〈立花響〉の2人をな?」

 

「奏……2人だけなの? 明らかにサーヴァントも……」

 

「大丈夫だよ翼。狂っているのはあくまでもマスターだ。サーヴァントへの魔力供給を行うマスターを洗脳すればサーヴァントも洗脳出来る。つまり逆の事象も起きる筈だぜ?」

 

 奏さんの推測と計画は具体的で、これからの動き方を明確に出来る。僕達は……どうすれば……

 

「そういえば修治……イザークさんから魔術刻印を託されたんだけどさ……コレの意味は分かるか? 転生者の修治なら分かるかもしれないって思ったんだけど……」

 

「ちょっと見せてくれるか? 僕も魔術師としては未熟だけど……並行世界の情報に近い物があれば……」

 

 そして僕が士郎に託された刻印を見た時……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

「〈セイバー〉と〈アーチャー〉のクラスカードが反応しているのデス!」

 

「まるで士郎さんに惹かれ合うみたいに!」

 

 そして2枚のクラスカードにはクラスの他に、()()()()()()()()()()()が加えられ、セイントグラフが現れた! 

 

「アーチャーは……〈エミヤ〉。コレは……未来の俺だな。でも……セイバーの〈千子村正〉って……なんで……なんだ?」

 

「そっか……そういう傾向だったのか……」

 

「修治? 何を知ってるの?」

 

「先輩……まさか……」

 

「良くない兆候なの?」

 

 マリアさん・切歌ちゃん・調ちゃんに心配された。だけど……それは大丈夫そうだね。

 

「フィーネさんから託された触媒ですよ。あのクラスカードは士郎に力を託すサーヴァントを表していたんです」

 

「だけど修治……セイバーはとにかくアーチャーなら直接対峙したぞ?」

 

「その後トラブルが無かった? 多分だけど……士郎の覚醒具合はまだ予定の半分くらいの筈だよ。僕達と対峙したフィーネさんが恐らく当時の半分くらいの実力だったから……」

 

 身体能力は当時のものでも、〈ソロモンの杖〉を使わないフィーネさんは恐らく半分くらいの実力の筈だ。その法則がシャドウサーヴァントに当てはまるなら……恐らく士郎にも……。

 

「アーチャーから力を託される最中に……桜が介入した」

 

桜が介入しただと!? そういえばなんでセイバーがいないんだよ! 

 

 僕は展開の流れで忘れていたが、セイバーがいない事を何故不自然に思えなかったんだ! 

 

「あぁ……そしてセイバーは……桜の影に取り込まれた。サンジェルマン伯爵も……その隣にいたよ……」

 

 うなだれる士郎の状態から、当時の様子が推測できた。

 

「カウンタープログラムのシャドウサーヴァントが僕達に託す物を……そして時間を稼ぐ為に現れた。そして士郎が覚醒したタイミングで桜がセイバーを取り込んだのか……」

 

 最悪の組み合わせだな。士郎に希望が溢れた直後に離別させるなんて……。桜は……何故そんなタイミングで……

 

「恐らく士郎がセイバーと結ばれたからね。私達が修治を()()()()()()()()()ように……ね?」

 

ハッ…………? 

 

 空気が……凍った……。

 

「マリア……翼さん……それは……どういう……事デスか?」

 

「お兄ちゃんを……美味しく……いただいた……って……」

 

そうだった! 2人は眠らされていたんだよ! 

 

「つまりはそういう事か。黒幕達は嫉妬に……いや、()()()()()()()()()()()()。だから……こんな事態になったんだな……」

 

「奏さん! 見てないで助けてくださいよ!」

 

 僕は冷静に状況を分析する奏さんに強く訴えかけた!本当に助けてください!




修治達の……次の行動は残る2陣営との……戦闘。そして……解放して……キャロルへと備える。しかし……キャロルも……気づいている。

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思わぬ再会

キャロルが差し向けたのは……因縁深い彼女だった……、そして……再び激闘が始まります!


〜〜凛side〜〜

 

()()()が……来るわね……。

 

「リン……感じてるかしら……?」

 

「えぇ。イリヤスフィール……ランサーは今何処に?」

 

「お呼びかマスター? って……なんの気配だこりゃあ?」

 

オイコラッ! この気配は一体なんだよ! 

 

 次いでクリスも現れた。とりあえず……ひとまずの戦力は揃った訳ね……。

 

「クリス……ランサー……敵よ。ソレも……どうやら気配を隠す気が無い様な……ね?」

 

「そうね。明らかに隠す気が無さそうね。コレは間違い無くワザとよ。私達の感知能力を知っていてこうしているのか……それとも単純に隠すつもりが無いのか……」

 

 そして構えているとその気配の人物が現れた。

 

「金色の…………礼装を……纏う……女性……?」

 

「でも気配は人形のソレね。魔術と違うその異端技術……差し詰め錬金術ってところかしら?」

 

「とはいえ纏う気配から察するに……お前さんはかなりの実力の持ち主だな? 何の用だ?」

 

 女性は私達を見渡すと……溜息をついた。

 

「チッ! こちらはハズレか。花婿様……一体何処に……。マスターがお待ちだと言うのに……」

 

「おぉ? アンタは人を探してるのか? だが……〈花婿様〉……ねぇ。差し支えなけりゃあ教えてくれねぇか? 俺達のマスターがピリピリしてるからよぉ……」

 

 クー・フーリンが女性へと近づいた。なるほど……私達に……へ? 

 

 〈狙撃しろ? 〉

 

 なんで……? 

 

「〈ランサー〉のサーヴァントだな? しかしお前のマスターの意中の人物では無い。衛宮士郎等と言う小僧は……な?」

 

ハ? 

 

そいつは失言だぜ! マスターの恋した男はなぁ! ただの小僧じゃあねぇんだわ! 

 

「やりなさいランサー! ()()()()()()()()()()()()!」

 

承ったぜマスター! 

 

 ランサーは朱槍を構えて振り抜いた。しかし……謎の女性は動揺する事は無かった。

 

「…………速いな。流石は最速且つ、高名なサーヴァントた。ケルト神話で語られるに相応しい実力だ…………」

 

 クー・フーリンの真名を知って尚余裕なの!? こうなったら私も! 

 

イリヤスフィール! 狙撃するわ! 手を貸して! 

 

「文句ないわ! 士郎を侮辱する女性だもの。それに……ランサーの警戒を無にする訳にはいかないわ! 後私の事は

 〈イリヤ〉と呼んでいいから!」

 

 私は宝石を取り出し、イリヤは周囲の瓦礫を兎に見立てて突撃させた!! 

 

「この程度の地味な小細工が私に通じるとでも?」

 

 女性は兎をはたき落とすが、その直後に兎は爆破された。

 

「動きが止まったな!」

 

 すかさずランサーは女性に槍を突いたが、貫かれて尚女性に動揺は無かった。やっぱり……この女性は……

 

「〈呪いの死槍〉か。確かに生身の人物ならば脅威だろうな。しかし……私は派手に人形なのでな。その程度では障害にならないぞ!」

 

 女性はコインを投擲して来た。しかし……ランサーの付近を通り過ぎる筈のコインが何故か巨大化した! 

 

うおぉっ!? 

 

 鳩尾に当たる部分を直撃した事でランサーは吹き飛ばされた。しかし……攻撃された場所は最初にランサーの立っていた場所だった。

 

「地味に残念だ。しかし流石は最速の英霊と言う訳だな。私の一撃を逸らす事ができたとは……」

 

「まぁな……サーヴァントを名乗る以上無様は晒せないからなぁ……」

 

「貴女は危険だわ! 今直ぐに消えなさい!」

 

「イリヤ! 待ちなさい!」

 

 イリヤは女性の背後よりゴーレムを生成して突撃……及び爆破をさせた。しかし……煙が晴れるても、女性には傷1つ存在しなかった。

 

「なるほど……魔術師としては良い一撃だ。嘗ての私ならば致命的なダメージを負っただろう。しかし……今の私にはその攻撃すらもダメージとはならない。その意味がわかるか?」

 

 アイツは……何者なの? 〈嘗ての……アイツ〉? 謎が……謎を呼ぶわね……。

 

やっぱりてめぇはてめぇだなぁ! ぜってぇにスクラップにしてやるよぉ! 

 

「クリス!? どうしたって言うのよ!! 

 

 後方で待機していたクリスがミサイルと共にあらわれ、女性に〈ガン=カタ〉で挑んだ。しかし……女性は明らかにクリスの間合いを見切っていた。初対面の……相手じゃあ…………無いのかもしれない……。

 

「しかし安心したぞ雪音クリス……お前がいるならばこのマチに花婿様がいるのは確定した。故に私は当初の予定を派手に果たした。ではここからは私個人の意思に基づき戦うとしよう。さぁ……その銃を抜く事だな!」

 

「望むところだよ〈レイア・ダラーヒム〉! あたしの怒りを存分に喰らって行けや!」

 

 クリスは上空に無数の矢を放つと、直ぐにレイアと呼んだ女性に銃口を向けた。そして距離を詰めて蹴りを放つも、バーニアで加速させて間合いを変化させた! 

 

「おらっ! てめぇをぶっ飛ばすのはこのあたし様なんだよぉ!」

 

「なるほどな! 銃火器の扱いが以前よりもスムーズだな! そしてさり気なく味方の射線を確保する冷静さも持ち合わせたか! しかし……派手な火力が足りていないぞ! 

 

「ソレで終わったつもりはねぇんだよぉ!」

 

 〈ひゅ〜〜〜…………ガガガがガガガがガが! 

 

 最初に飛ばした矢が降り注ぎ、その視界が塞がれて直ぐにミサイルを2機生成して1つに飛び乗り、レイアに突撃した。当然騎乗中もガトリングを放つ徹底的な火力でゴリ押しの構えをとっていた。

 

「マスターァー()()()()()()()

 

「構わないわ! 全力で行きなさい!」

 

おうよ! その心臓貰い受けるぜ! 〈刺し穿つ死棘の槍 〉(ゲイ・ボルク)! 

 

「…………無駄だ。私は自動人形故に心臓等存在しないぞ……」

 

 そう……レイアと呼ばれた人形が告げた。

 

「…………面倒ね。ランサーの宝具で倒せないなんで……」

 

「い〜や……そうでもないみてぇだぞ?」

 

「へぇ……なるほどな……」

 

「何故……だ? 私に……呪いなど……」

 

 レイアは困惑していたが、ここでクリスが説明を始めた。

 

「てめぇ等の心臓に当たる聖遺物が純粋にダメージを受けたんだよ……。どうやらランサークラスの火力ならピンポイントで攻撃すれば通じるみたいだな?」

 

「みたいだな。宝具が効かなきゃ手をこまねいたかもしれないが、その心配は杞憂みたいで良かったぜ……」

 

 するとレイアは笑っていた。

 

「なるほどな。雪音クリス……お前は派手に強くなった。サーヴァントへと至ったことは素直に賞賛しよう。そしてクー・フーリン……お前の槍捌きはその真名すらも不足と言える実力だった。今回の戦闘……中々に楽しい時間だったぞ……」

 

「レイア! 待ちやがれ!」

 

 クリスの静止も虚しくレイアと呼ばれた人形には逃げられてしまった。

 

「クリス……教えなさい。嘗ての貴女の知り合いでしょう? 私達に……そして修治君に関係があるんでしょう?」

 

「あぁ……。さっきのレイアは……嘗てあたし達が退けた敵の1人だ。そして……〈ピリリりりりり!! 〉オイ凛……端末止めろよ……」

 

 クリスに指摘されて端末を取り出すと……奏さんからのメッセージが入っていた。

 

 〈話すべきことと、渡すべき物がある。四人とも戻って欲しい〉……か。

 

「イリヤ……クリス……ランサー……戻るわよ。奏さんからの連絡だわ……」

 

「なるほどね。じゃあ今回の戦闘の報告もしましょう。必ず伝えないといけない事案よ……」

 

 私達は互いの情報を交換するために皆の待つ教会へと向かった。

 

〜〜凛sideout〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜キャロルside〜〜

 

「レイア……偵察ご苦労だったな……」

 

「はい。しかし……クリスのパワーアップもそうですが、ランサー自身も強大なサーヴァントでした。()()()で触媒を壊されかけました……」

 

 レイアは申し訳無さそうにしているが、それは元々この世界の人物との戦いだ。寧ろその程度の被害で済んだだけマシなのだがな。

 

「いや……しかたない事だ。クー・フーリンが相手である以上はな。しかし……雪音クリスが外付け装備無しでイグナイトクラスの実力か……」

 

「はい。慢心はしておりませんが……恐らくは……」

 

「相当な実力になったな。しかし……レイアに()()()()()()()ならば話は変わるがな。

 

「お前達……この通り奴らは……強い。故に……出し惜しみも油断もするな。ただ……オレに……そしてお前達自身が恥じない戦いをするんだな……」

 

「「「「ハッ! 我ら終末の4騎士の誓いの元に! 」」」」

 

 待っていろ修治……直ぐにオレ自ら迎えに行くからな……。何せ……オレの愛しい花婿だからな……

 

 

〜〜キャロルsideout〜〜

 




さぁて……兄貴のポテンシャルも証明して尚絶望的な現状……打開するのは託されたクラスカードデス!

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激闘後の合流

レイアを退けた2つの陣営は……主人公達へと合流を決める。


僕達が士郎との情報を纏めていると、奏さんが戻って来た。

 

「修治〜……こりゃあ面倒な事になったみたいだぞ〜」

 

「嫌な予感しかしないですが一応聞きます。何がありましたか?」

 

「外で()()()()()()の方のシャドウサーヴァントの討伐をしていた2人からの連絡だよ。キャロルの降臨に合わせて終末の4騎士(ナイトクォーツァー)のレイアが現れた。しかもクリス曰く……()()()()()()()()()()()()()()()だそうだ」

 

キャロルの降臨は……士郎から聞いていた。イザークさんの話の終わり際に現れて……影に飲み込んだ……と。

 

「詳しく話を聞く必要がありそうですね。凛達は今何処に?」

 

「もう少しで到着するらしい。それと……シャドウサーヴァントはもう現れないかもな。何せ……恐らく召喚してたのはキャロルだよ。もしくは……」

 

この世全ての悪(アンリ・マユ)ですね?まぁ……恐らくは前者ですよ。目的は恐らく……」

 

「俺達の足止めか?桜が行動を起こすまでの……」

 

「多分ね。というよりは……ソレ以外の理由がないかな。桜を汚染したのは……多分キャロルだよ。サンジェルマンさんならきっとこの世界の泥には負けない筈だから……」

 

キャロルが覚醒しているなら……恐らくは。それに士郎のイザークさんから聞いた話通りならキャロルは容易にサンジェルマンさんを洗脳できただろう。何せ……顔見知りだし……

 

「いや〜……修治……()()()()()()()()()()()()()()()ぞ?だってさ……修治は()()()()()()()()()()()忘れたのか?」

 

僕が……した事?奏さんは何を言ってるんだ?

 

「おいおい修治……俺はイザークさんから聞いたんだぞ?だって修治はさ……()()()()()()()んだろう?俺もアルトリアといて気づいたんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事をな。例えそれが……吊り橋効果だったとしてもな……」

 

士郎に……言われた……。だけど……思ってみればその通りかな。僕は……あの世界で生き残る為に……装者を……そしてキャロルを救った。最終的にキャロルは僕の為に命を張ったけど……。

 

「それは修治の生きる世界を……何よりも修治を守りたかったからなのよ?」

 

「同時に私達は修治に甘え……依存してたんだ。もちろん修治と結ばれ……契れるならばソレ以上の幸福はないだろうな……」

 

マリアさんと翼さんはキャロルの想いを見抜いたらしい。いや……()()2()()()()かな……。

 

むぅ〜!先輩はあたし達のモノデス!絶対にマリアにも翼さんにもあげないデース!

 

「やっぱりお兄ちゃんの1番は私達。序列は大事。例えマリアでもソレは変わらないし、奪うつもりなら許さない……」

 

「「当然キャロルにもあげない(デース)!」」

 

両側から腕を強く握られた…………とても痛い。

 

「僕は……幸せですよ。キャロルに……マリアさんに……翼さんに……切歌ちゃんに……調ちゃん……響に……未来……そして姉さんに……好意を寄せられている。だけど……僕自身はただ……目の前で苦しむ皆を見たく無かっただけなんだ……」

 

「知ってるわよ?」

 

「知っているぞ?」

 

「知っているよ?」

 

「知っているデス!」

 

「まぁ……知ってるぜ?」

 

全員が僕の呟きに同じ反応をした。やっぱり……分かるんだね……。

 

「まぁ……そうだろうな修治。お前は誰よりも全力だった。その結果が今のお前の実績だよ。ソレは誇っても良いんだ……」

 

「だけど士郎……僕は皆の心を結果として惑わせた。そして……焦らせて……大切なモノを貰う事に……なってしまった。僕には……その資格はあるんだろうか……」

 

パアァン!!

 

乾いた音が教会に響いた。

 

「修治……俺は言った筈だ。わからないなら……もう一度言うぞ?

 

救われた人間は救った人間に想いを寄せる

 

それは誰よりも俺が……そしてお前が識ってる事だろう?なら……覚悟を決めろ!

 

ドォン!…………ガシャアァン!

 

僕は士郎に殴られて……机まで飛ばされた。それどころか……机が壊れていた。

 

「切ちゃん……分かってるね?」

 

「分かってるデス。コレは……先輩の精算するべき罪デス。あたし達の気持ちが……重荷にならないように士郎先輩が身体を張ってくれてるデス。なら……あたし達は見届けるデス……」

 

「そうだな。修治は受け入れるべきなんだよなぁ……。自分が()()()()()ってのが何なのか……な?」

 

切歌ちゃんも……調ちゃんも……そして奏さんも止めなかった。つまり……僕の背負うべき過去だと言う事だ……。

 

「修治……お前が全力で人を救った。それは嘗ての俺の憧れである正義の味方そのものだよ。だけど……お前を見て気づいたよ。俺は……正義の味方には()()()()だってさ……俺はアルトリアが守りたいんだよ。俺は2つのモノを同時に守れる自信は無い。だから……俺はアルトリアと共に未来を歩く……お前は……どうしたいんだ?」

 

士郎は既に覚悟を決めていた。なら僕は……()()()()()()()()()()()()()()

 

「ありがとう士郎。おかげで僕のやりたい事がわかったよ。僕は……()()()()()()()()()。嘗て僕は……転生前に……キャロルの人生を識った。その時思ったんだよ……」

 

「言えよ修治……お前の本音をな……」

 

士郎は僕が本音を言い難そうなのを察して声をかけた。なら……いっそ言うだけ言ってしまおう。

 

キャロルに救われて欲しい。僕の最初は……この想いだった。そして……キャロルが僕をこの世界に導いてくれた。なら僕は……キャロルに会いたい!会ってこの胸の想いを伝えたい!

 

言った。僕ははっきりと言ってしまった。だけど……後悔はしていない。

 

「先輩……それは……あたし達を……選んでくれる訳じゃあ……ないんデス……よね?」

 

「私達は……お兄ちゃんが……大好き。だけど……その想いは……報われ無い。そういう……事なの?」

 

2人は不安な視線で僕を見つめていた。だけど……その視線を向けられても、僕の想いは変わらなかった。

 

「ごめんね。今の僕はキャロルに会いたい。そして……僕を救ってくれた事に感謝を伝えたい。だけど……2人の想いも気づいているよ。だからさ……少しだけ待って欲しい。僕が……キャロルに向き合うその時まで……」

 

「先輩……卑怯デスよ?」

 

「そんなの……ずるい。そう言われたら……私達は……」

 

「だけど約束するよ。僕は逃げない。例え響達が僕を阻もうと……必ずキャロルに辿り着くよ。その結果世界が終わるとしてもね……」

 

「そうだな……。それでこそ修治だな!」

 

士郎が僕の肩を叩いた。だけど……その表情は僕のよく知る士郎だった。

 

士郎!待たせたわね!直ぐに聞いて欲しい事があるわ!

 

「修治も聞いて行きなさい。私達の出会った敵の情報よ?」

 

凛とイリヤも合流したか。なら……先にクラスカードを託さないとね?

 

「いや……先に報告を聞くぜ?修治と士郎の話はその後の話だからな!」

 

必ずさんは僕達を止めたけど、この場で最も冷静且つ的確な人物は彼女だろうな。

 

「そんじゃ教えてくれ。レイアの装備……そして奴が現れた目的ってのをな?」

 

 僕はこれから迎えるキャロルが何を企んでいるのか……その話を聞く事になった。

 




次回は魔術刻印を継承します!そして……残る2陣営との戦闘が始まります!

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2つの魔術刻印

士郎との合流で判明したクラスカードの意味。それは……2人の魔術師も前線に出向くということだ……


 僕がキャロルと再び出会う覚悟を決めた時に凛とイリヤが戻って来て、レイアさんに襲撃された事が伝えられた。

 

「レイアさんが……黄金の装備……?」

 

 考えられる礼装は2つだ。だけど……何故彼女が? この世界では使う事も……ましてや手に入れる必要は無い筈だけど……。

 

「恐らくはギルディッドシューター……だろうね。彼女の礼装で……黄金といったら……アレしかないから……」

 

「なら修治……私の使い魔に記録させた戦闘映像よ。コレで敵の能力を解説してくれないかしら?」

 

 イリヤが差し出した使い魔より映された映像に……僕は絶句した。

 

うそ……だろ……なんで……彼女が……その礼装を……

 

 僕の声は小さく……そして何よりも掠れていた。

 

「その様子……坊主は識ってるみたいだが……腑に落ちないって顔をしてるな。なら……教えてくれねぇか? あの女が使っていた装備を……そしてその目的をな……」

 

 ランサーの言葉で僕は動揺から立ち直らざるを得なくなった。

 

「先輩……顔色が悪いデース……」

 

「事態が危険な事を表している。お兄ちゃんは……恐らく今の状況を受け入れようと必死なんだろうね……」

 

 実際にレイアさんの礼装をアプリで見た事は無かった。シナリオはスキップしてたし、ガチャはそもそも引いていない。だから……本当に詳細がわからない……()()()()。しかし……()()()()()()()()()()()()ならば話が変わる。

 

「コレは……インヘリットラスター……並行世界のキャロルがイザークさんの死の真相を知った時に纏っていた礼装だ。黄金錬成の力も存在しているこの礼装の出力は……彼女の保持する礼装の中でも相当高い筈だ。なのに……なんでレイアさんに……?」

 

「修治……? お前……その反応…………」

 

「本来のレイアの力では無いのね?」

 

「無いですね。寧ろコレはキャロルでも自力では纏えず、それこそ奇跡が起きた事による現象です……」

 

「なら……キャロルは最低でもその力を自動人形達に渡して尚お釣りが来る様なレベルなんだな?」

 

「4騎士全員が嘗てのキャロルの礼装を纏うならば……恐らくは……」

 

 嘘としか思えなかった。キャロルが既に並行世界の自分の力の〈インヘリットラスター〉を扱えていた事。そして何よりもその力を自動人形達に託せる程の実力を既に備えている事がわかったからだ。

 

「それとレイアはこう言っていたわよ? 

 

 〈花婿様……一体何処に……。マスターがお待ちだと言うのに……

 

 ってね?」

 

 その口ぶりなら……キャロルはまだ僕を見つけ出してはいない訳か。なら……僕から会いに行くこともできなぃ……か? 

 

「レイアさんの目的はわかりました。なら僕はキャロルに()()()()()()()()()はいないみたいです。でも……それなら出来る事があります!」

 

「修治……それって……」

 

「協力者を……叩くと言う事か?」

 

 マリアさんと翼さんも僕の思惑に気づいたみたいだ。

 

「でも良いのか? それはつまり……」

 

「ええ。最終決戦まで戦いが続くでしょうね。それと……桜も……サンジェルマンさんも僕は救いたいです。まかりなりにも……助けて貰ったんですから……」

 

 正直勝算はあまり高くない。レイアさん1人でその実力なら……ミカちゃんは間違い無く正真正銘の化け物レベルの実力だから……。

 

「それでも僕達は戦う必要と理由があります。士郎は桜を正気に戻してアルトリアと再会する事。僕はキャロルと再会して胸の想いを伝える事。その2つが僕と士郎の戦う目的です。世界なんて……関係無い。そうだろう……士郎?」

 

「は……はは……ははははははははは!! そうだな修治! 俺達が戦う理由は世界を救いたいからでも……ましてや正義の味方でも無い! そりゃあ確かに世界の危機と言われて黙って見ているつもりはないかもしれない。だけど……俺達はあくまでも()()()()()()()()()()()()()()戦うんだ!」

 

 やっぱりね。士郎の変化は僕もわかっていた。士郎が迷わないなら……安心して背中を預ける事ができる。

 

「やっぱり士郎は親友だよ。僕が背中を預ける相棒がいるなら……それは間違い無く士郎だよ!」

 

「いつも俺の無茶を止めてくれたのはお前どよ修治! お前がいたから俺は俺らしくあれたんだろうなぁ」

 

 僕と士郎は笑いながら握手をした。その光景を……周囲の皆は何も言わずに見守っていた。

 

「今のやり取りは……お互いを認め合って……相手が何を求めているかがわかっている状態だな?」

 

「本心を語る事の出来る気心の知れた友人と言う事ね? えぇ……とても素晴らしい光景だわ……」

 

「修治も……士郎も本音で会話していた。それは……積み重ねた絆があるからだろうな……」

 

「先輩は……あたし達の知らない間にまたカッコよくなったデス。とても……胸がジーンとするデス……」

 

「こんなお兄ちゃんだから私達は支えたいと思った。だから……最後までお兄ちゃんを守りたい!」

 

「士郎が信念をつらぬく事は知っている。なら私達は……それを支えられるようになりたいわね……」

 

「私は士郎のお姉ちゃんだから……士郎の気持ちを否定したくは無い。でも……恋を諦める理由にはならないよ?」

 

「修治……あたしの知らない間にデカくなったな。本当……可愛いだけじゃぁ……なくなったんだな……」

 

「男が覚悟を決めたんだ。それを阻むのは野暮ってもんだろ?」

 

 この場の全員が僕達の考えを尊重してくれた。なら……僕も託されたモノを届けよう。

 

「士郎……()()()()()()()()()()()()()()()()を出して欲しい。恐らく……()()()()()()()()()()に、凛とイリヤへ反応する筈だから……」

 

「あぁ! イザークさんもそう言ってたぜ!」

 

 士郎が魔術刻印を、僕がクラスカードを掲げると、()()()()が凛に反応した。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のクラスカードが凛の周囲を浮遊して……その身体の中へと吸い込まれた。

 

「〈イシュタル〉と……〈エレシュキガル〉のクラスカードね。〈ライダー〉のカードは機動力の触媒みたいね…………」

 

 やっぱりその女神の力だったんだ。なら……こっちも想像はつくけどね? 

 

「じゃあ……イリヤにも託すよ?」

 

「えぇ……よろしくお願いね?」

 

 先程同様に士郎が〈雪の刻印〉を掲げると、僕の持つ()()()()()()()()()()()()()()()()のクラスカードが反応した。そして凛同様にイリヤの周囲を浮遊して……その胸の中へと吸い込まれた。

 

「なるほどね……。〈アルターエゴ〉は複数の女神の力って訳ね……。その力と……〈キャスター〉のカードは魔力の流れをスムーズにする為の触媒って訳ね……」

 

 シトナイの力が強く出ているみたいだけど……イリヤなら問題なく使えるだろう。

 

「あっ……それとキャスターのクラスカードからは無限とも思える程膨大な魔力を感じるよ?」

 

「私のライダーもその類ね。恐らく……メインとなるのが私は〈イシュタル〉と〈エレシュキガル〉で、イリヤが〈シトナイ〉なのね?」

 

「でもさ……それならなんで凛は2枚あるんだ?」

 

 その疑問には僕が答えよう。

 

「奏さん……イシュタルとエレシュキガルは並行世界の凛を依代に現界した事があります。恐らくフィーネさんは……その縁を手繰り寄せたのかと……」

 

はっ! …………流石了子さんだよ! まったく…………粋な事をしてくれるぜ! 

 

「フィーネ……最初からこの為に……」

 

「あたし達……片手間で相手にされていた訳デスね……」

 

 落ち込む2人に僕は声をかける事にした。

 

「本来はそれがフィーネの目的だったんだよ。だけど……それを遅らせてまで僕達との時間を作ってくれたんだ。なら……僕達はそれに報いるべきだよ?」

 

「そう……デスね! あたし達がしっかりしないとフィーネが化けて出て来そうデス!」

 

「それでもお兄ちゃんは……渡さないけどね?」

 

「さて……それじゃあチームアップをするぜ? 今回は桜と響を同時に叩くよ。キャロルの計画を……コレ以上暴走させない為にな……」

 

「えぇ……お願いしますよ奏さん……」

 

 僕達は2手に別れてキャロルの洗脳を解く為に動き出した。これからが……正念場だから!

 




ようやく現状のヤバさを理解した修治。事態の打開には時間が少ないぞ!

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アルトリアとの戦い

衛宮士郎が……アルトリアと対峙する時……胸の思いをさらけ出す。


〜〜士郎side〜〜

 

「さて……桜……アルトリアを返して貰うぞ?」

 

「お断りします♡だって私……先輩の事を愛しているんですよ? そんな私が……先輩を逃がす訳ないじゃないですか?」

 

 桜の瞳は虚空のように何も映してはいなかった。ただ……己の欲望が俺を見つめている……そんな気がしてならなかった。

 

「桜……なら……キツイお仕置きをしてやるぞ!」

 

 俺は地を蹴り、桜へと距離を詰めた。しかし……その行動を邪魔する存在がいた。

 

「シロウ……何故私は……シロウの側にいる事ができなぃのか……考えました。やはり……私がシロウを守らねばなりません。その為には……シロウは籠の中にいて欲しいのです……」

 

「なんの真似だ()()()()()……俺は確かにお前を助けにここに来た。だけどな……それは()()()()()()()()()()()。俺の好きな……愛したアルトリアはな……人を閉じ込めるなんて言わないさ」

 

「ええ。以前の私なら言いませんでしたよ? でも……()()()()()関係ありません。シロウが側にいてくれるためならば……私は何でもします。それが例え……シロウの意に反していても。私とシロウの為に作る世界なのですから……」

 

 今のアルトリアは異常そのものだった。しかし……それは大した問題にはならなかった。

 

「そうか。悪いな桜……先約だったお前だけど……割り込みの客だ。俺はそっちにかからせてもらうぜ?」

 

「ふふふ……それを私が許すと思いますか?」

 

 桜が妖しく笑っている。何か考えているのは明白だが……俺にはそんな事を考える必要は無かった。

 

さぁて桜ぁ! 私が相手になるわよ! 

 

「士郎の道を開くのは姉の役目よ? サクラ……貴女には私達が相手になるわ。文句は無いでしょう?」

 

「………………ふふふ……」

 

 この状況で尚……桜は笑っていた。

 

「えぇ……構いませんよ? 先輩にまとわりつく害虫は……私自ら叩き潰しますから…………」

 

 桜は()()()()()を展開した。

 

「思い上がりはほどほどにする事をオススメしますよ? 私……とっても怒りっぽいですから……」

 

「でしょうね……士郎! ボヤボヤしないでさっさと始めなさい! さもないと……私達が桜をシバくわよ! 

 

「本当に大切な存在とあるべき事を教えてあげるわ……。貴女のその価値観を今日ここで矯正するためにね!」

 

「アルトリア……俺達も始めるぜ?」

 

「ふふふ……私はシロウと共に過ごせるなら何処でも構わないですよ?」

 

「なら……楽しい戦い(デート)の始まりだよ! 

 

 俺はアルトリアが目の前にいるのを確認して心の中で唱えていた最後の一節を口にした。

 

「So as I pray, unlimited blade works! 」

(その体はきっと……剣で出来ていた!)

 

「周囲の光景が……なるほど。シロウは私と2人きりのデートを求めているのですね? 良いですよ? では始めましょう?」

 

 アルトリアは……俺の固有結界を知っていた。だからこそこの世界で俺よりも先に動く事の重要性を理解していた。

 

はぁ! シロウ……幾ら貴方が剣を携えて……精度を上げたところで無意味です! 

 

 アルトリアはその()()()()()()を俺に向かって振り抜いた。

 

風よ……舞い上がれ! 

 

 すると剣圧だけで周囲にある無数の剣が砕けてこの世界に吹き荒れた。

 

()()()()()……。俺が幾ら大量の剣を再現したところでアルトリアの約束された勝利の剣(エクスカリバー)には及ばないさ。だけどな……それは俺の武器が投影した剣だけならの話だよ……」

 

 俺は()()()()()()()()()()()()()()を取り出した。

 

「随分と不思議な道具ですね……。シロウは……ソレを使ってどうするつもりですか?」

 

「そうだな。こうさせてもらうぜ! 

 

 俺はカードを掲げてこう叫んだ……。

 

「クラスカード〈セイバー〉! 夢幻召喚(インストール)」だ! 

 

 するとセイバーのクラスカードから光が発生して俺を包んだ。

 

シロウ……貴方は一体何をするつもりなんだ! 

 

 アルトリアの声が聞こえた後に光は収まり……()()()()()()()()()()()()()()()()へと俺の身体が変化した。

 

「その姿……サーヴァントの如き姿ですね。シロウがその領域に至ったこと……誇りに思います。しかし……それでも勝つのは私です! 

 

 アルトリアは聖剣を振り上げて俺へと斬りかかる。しかし俺も……魂を込めて鍛え上げられた剣で受け止めた。

 

「これがあの英霊の力なんだな。そのおかげで……いつもの投影が楽に……そしていつも以上の調子で出来そうだ!」

 

 俺は〈干将〉・〈莫耶〉の投影に入ったが……その精度は()()()()()()()()()()()な二振りの剣へと変化していた。

 

「わかる……わかるぞ村正! アンタが鍛えたこの魂が! 俺の心を激しく燃やしているぞ! 

 

「この1撃の重さ……シロウ……貴方は何処迄も……」

 

 そう振るわれた1撃でアルトリアは後ろに三歩分程下がらされたことを実感していた。

 

「ではこちらも反撃します!」

 

 アルトリアも負けじと聖剣の力を解放して斬撃を飛ばし始めていた。

 

「純粋に高威力の1撃だな! だけど……俺は退く理由は無いんだよ!」

 

 そう叫ぶ程に俺はアルトリアを救う為に来た。しかし…………

 

「私は……シロウと結ばれる為なら何でもします! 例えサクラの手先になろうが! 世界が……ブリテンが滅びようが! 

 

 その瞳には涙が浮かんでいた。よほど……俺への想いが強かったのだろう。ソレはアルトリアと過ごした日々が何よりの証明だった。

 

故に私はシュウジを……凛を……クー・フーリンを……イリヤスフィールを倒します! 邪魔立てしないでくださいシロウ! 

 

「ソレは……聞けない注文だな……」

 

 俺の手に令呪は未だに存在し続けている。例えアルトリアご俺のサーヴァントでなくなったとしても……俺は聖杯戦争を降りるつもりは毛頭も無かった。

 

「だからこそ……お前と笑顔で家に帰る為に俺は戦いに赴いたぁ! 

 

 俺はアルトリアの懐へと潜り込む。当然だが……アルトリア自身も俺の接近を安々と許すことは無かった。

 

やめて……ください……

 

 アルトリアが小声で〈何か〉を呟いた。しかし……その呟きは次からの行動で聞こえることは無かった。

 

「束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるが良い!!」『約束された勝利の剣』(エクス……カリバアァー)!! 

 

 その聖剣の波動は展開している結界を揺るがす程の極大の1撃だった。しかし俺は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 

 

「宝具を……俺との全力の為に使ってくれたんだな……。なら……俺もソレに報いるぞ!」  

 

 俺は村正からの言葉が聞こえた気がした。そして……紡ぐべき詠唱を……口にした。

 

真髄、解明。完成理念、収束。鍛造技法、臨界。冥土の土産に拝みやがれ! これが俺の『無元の剣製』(つむかりむらまさ)だぁぁ!! 

 

 その一刀に……結界の中にある全ての剣が収束される。嘗て〈エミヤシロウ〉が行き着いたこの無限の荒野も……今は俺の決意を示すかの如く()()()()()()()いる。

 

「結界が!? シロウ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 動揺しているアルトリアだが……()()()()。向かい来る光の奔流は……俺の身体を軋ませている。だけど……()()()()()()()? 

 

「アルトリアの感じた苦痛に比べれば……この程度は大した苦しみじゃあないんだよぉ! 

 

 結界の内部にある俺の力を右手に持つ一刀に全てを込めたが……()()()()()()。だから俺は……

 

「まさかシロウ!? 私の宝具のエネルギーまで!? そんな無謀なことを!!」

 

 桜に侵食されながらも抗おうとしたアルトリアの苦しみも……この一振りに込めるとしよう。

 

「やめろ……来るな……来ないでください! 

 

 アルトリアの涙が……とうとう地面に落ちた。そして……その頃には聖剣の波動も……弱くなっていった…………。

 

この勝機を掴み取る! 

 

 俺は残る距離を一気に詰めて右腕の一振りに全てを賭けた! 

 

うおおおおおおお!! 

 

 そして呆然とするアルトリアを……袈裟懸けにした。その瞬間……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

逃がすかぁ! 

 

 俺はそのまま手にした剣を悪意に向かって投擲した。嘗てエミヤは弓へとつがえたが、今の俺はサーヴァントだ。ならば……その膂力で再現する事もできるはずだ! 

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)! 

 

ドガアァァン!! 

 

 結界の維持に回した為に周囲の風景が崩れ出したが……煙が晴れる頃には俺達の周囲には()()()()()()()()

 

「帰るぞ……アルトリア……」

 

「シロウッ……ハイ! 

 

 その笑顔は今までで1番眩しい笑顔だった。

 

 

 




次は桜と2人のマスターの戦いとなります!

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間桐桜との決戦

黒幕の片割れ間桐桜……彼女と対峙するのは……因縁浅からぬ2人の魔術師だ。


〜〜イリヤside〜〜

 

「じゃあ……私達も始めましょう?」

 

 桜は虚数魔術を扱い……キャロル印の〈愛〉を纏わせて微笑んだ。しかし…………対する2人はその桜に恐怖を抱いてはいなかった。

 

「桜……直ぐに目を覚まさせてもらうわ!」

 

「キツイお仕置きを受けて貰うよ?」

 

「「クラスカードアーチャー(アルターエゴ)夢幻召喚(インストール)!」」

 

 そして遠坂凛は〈イシュタル〉の、私は〈シトナイ〉の力をその身に纏わせた。

 

「姉さん……イリヤさん……何故……?」

 

 桜は何故目の前の2人が〈自分の知らない筈の力〉を得ているのか分からなかった。

 

「修治のおかげよ。彼……並行世界の私達を依代にしたサーヴァントを識ってるのよ。もちろん桜……貴女の事も……ね?」

 

「だからこそシュウジは私達に貴女を任せたのよ? 今の貴女を止める為にシュウジは手段を選ばないわ!」

 

「………………て………………の………………り」

 

「桜……何か言ったかしら?」

 

「みんなして私の邪魔ばかり……」

 

「まぁ……言いたい事はわかるわよ?」

 

ドプン……! 

 

 泥が……落ちた。聖杯よりもたらされたキャロルの愛の塊(10年前を上回る感情)が……冬木市に落とされた。

 

「さぁ……始めましょう? 私達の戦いを!」

 

 凛はグラガンナに跨りガンドを放った。通常の彼女ならば渋る程贅沢な魔力の使い方だが、しかしそれでも今の凛には〈ライダーのクラスカード〉が存在している。

 

「姉さんらしからぬ魔力の込め方……そのカードが原因ですね! 

 

 桜は並行世界から魔力を引き摺り込んで戦うが、2人は恐れる事が無かった。

 

「私達も同じ土俵にいるわ。もちろん……サーヴァントの力は使えるのよ!」

 

 私は()()()()()()()()()()()程の冷気を放った。通常……共闘するならば遠慮しがちな物だが、今の凛は空を駆けている。故に地上が幾ら凍りついたところで影響は無い。

 

「広範囲攻撃……しかし……あくまでも……」

 

ボヤボヤしてたら撃ち抜くわよ桜! 」  

 

 上空の凛が桜を蜂の巣にしようとしていた。

 

「チッ! 面倒ですね姉さん! イシュタルの力1つで勝てるつもりですか!」

 

 桜は凛の速度に追い付いていない。それほどイシュタルの操るグラガンナは速いのだ。

 

「そもそも……相手は1人じゃないでしょ……サクラ?」

 

ああ! もう! 死んでくださいよ! 鬱陶しいですよイリヤさん! 

 

 サクラは私の接近をことごとく嫌がっている。当然と言えば当然だが、私に接近されてリンへの対応が出来ない事を想定してるみたいだ。

 

凛! さっさと決めなさいよ! 私が聖杯の泥を抑えているといっても限界もあるのよ! 

 

「え…………イリヤ…………さん? 今…………の……言葉……は?」

 

 サクラが困惑した表情で私を見ていた。恐らく私が泥を抑えているなんて考えてもいなかったのだろう。

 

「あぁ……道理でいつまでも空気が変わらない訳ですか……。なら……ターゲットが違いましたね?」

 

 サクラは私へと視線を変えた。やっぱりね……そっちの方が優先事項なのね。

 

「私……キャロルさんと約束してるんですよ……。この町を恐怖に墜として……修治センパイを燻り出すって……約束が……あるんですよ?」

 

 なるほどね。サクラはその為に町を飲み込むつもりだったのね……。

 

「凛! イシュタルじゃあ埒が開かないわ! 決められ無いなら代わりなさい!」

 

わかっているわ! クラスカード〈ランサー〉エレシュキガル夢幻召喚(インストール)! 

 

「私もやり方を変えるわ! カレイドステッキ展開!」

 

 凛はその力をエレシュキガルへと変化させた。イシュタルで決められ無い訳……()()()()。ただ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

「お2人共……私の言葉……舐めてますか?」

 

「そうね……。正気じゃない貴女なんて怖く無いわよ桜。だって……その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もの。だったら恋敵にすらならないでしょう?」

 

「そうしたら冷静でいられるものよ? だって……士郎が私を選んでくれる可能性があるんだもの!」

 

 今の私達は士郎の帰る場所を守る事ができる。士郎の為に戦える。だから……()()()()()()恐れる理由は全く無い。

 

ファイア! シュナイデン! …………シュート! 

 

「冥界の怨念と貴女の想い……どちらが勝るか試すかしら!」

 

 凛がエレシュキガルの力を使う事でサクラは徐々に動きが鈍くなっていた。確かに〈愛〉は恐ろしい感情だ。だけど……〈愛〉と〈恐怖〉を両立するかの女神の力ならば……活路は見いだせる。

 

なんで! なんで! 邪魔ばかりするんですか! 私は先輩に見てもらう為に努力を続けました! 家事もできる用に努力しました! 魔術師としても覚醒しました! なのに……なんで今更邪魔立てされないといけないんですか! 

 

 サクラはとうとう感情を爆発させて辺りにを放流し始めた。……少し面倒ね。町を守りつつを消すなら……私が防ぐしか……そう思った時だった。

 

「セイバー町の事は気にするな! 全力で宝具を放て!」

 

はい! わかりましたシロウ! 

 

 其処には最も愛しくて頼もしい声が聞こえた。

 

「So as I pray, unlimited blade works! 」

(その体はきっと……剣で出来ていた!)

 

 士郎の声が聞こえて景色が明るい荒野へと変わった。そして……展開された固有結界はキャロルの泥ごと取り込んでいた。

 

この中なら誰の被害も迷惑も無い! 今なら全力でやってくれぇ! 

 

ありがとうございますシロウ! 束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるが良い!!」『約束された勝利の剣』(エクス……カリバアァー)!! 

 

 アルトリアがを吹き飛ばした今……私達に憂う物はない! 

 

凛! そのまま宝具を使いなさい! そして換装の間は私が掩護するわ! 

 

「そんなの……させません!」

 

 サクラが凛の迎撃を試みるが、気の逸れた一瞬で私はサクラの足を凍らせた。

 

「チィ! こんな時に!」

 

 サクラの怒りが頂点に達した時にその判断力が完全に失われた。

 

天に絶海、地に監獄、我が踵こそ冥府の怒り! 出でよ、発熱神殿! 反省するのだわ! 霊峰踏抱く冥府の鞴 ( クル・キガル・イルカルラ)!! 

 

「しまった! 姉さんの宝具が!」

 

 サクラは凛の宝具を受けて致命的な隙をさらけ出した。なら……私も続くとしよう。

 

凛! 私も続くわ! 掩護をお願い! 

 

「さっきの支援助かったわ! 今度は掩護するから存分にやりなさい! 三連撃で畳み掛けるわよ!」

 

「ッ! コレ以上はさせませんから! 

 

 サクラはエレシュキガルの宝具で完全に動きを鈍らされた。今の宝具は何とか防いだものの、無理して防いだのは間違い無い。

 

おてんばかな……でも、楽しい! Los! Los!! Los!!! 吼えよ我が友、我が力 (オプタテシケ・オキムンペ)!! 

 

「ぐうううぅぅぅぅ…………!!! この宝具……生物の攻撃……!! なんて…………威力……!」

 

 シトナイの宝具で現れた〈シロウ〉の攻撃はサクラに多大な影響を与えた。()()()()()()()()()()は、サクラにとっては耐えられる物では無い。〈士郎〉に……焦がれている……サクラでは……ね? 

 

「はぁ……はぁ……でも……何とか……耐えましたよ……。ここから……私も……反撃……します……よ?」

 

「あら? いつ()()()()()が終わると言ったかしら? まだ……()()()()()()()()()()

 

()()()()……? しまった! 姉さんが! 

 

 サクラが気づいた時にはもう遅い。とうに凛はイシュタルへと姿を変えて宝具の発動を始めていた。

 

イリヤ! 其処にいると巻き込むわよ! 

 

()()()()()()やりなさい凛! 

 

 すると凛からの返事は無く詠唱が始まった。

 

飛ぶわよ、マアンナ! ゲートオープン! ……ふふっ、光栄に思いなさい? これが私の、全力全霊……! 打ち砕け! 山脈震撼す明星の薪 ( アンガルタ・キガルシュ)!! 

 

 凛が宝具を射出したが、()()()()()頼れる士郎がいるわ! 

 

掴まれイリヤ! 

 

 士郎は私を呼びかけ……私も士郎の手を掴む。そして展開した氷を活用して回避を何とか成功させた。

 

イリヤ! ズルいわよ! 

 

「なんで……私が……こんな……目に……」

 

 サクラの目には涙が溢れていた。そろそろ……決着が近いかな? 

 

「行って士郎……今が最高の勝機よ!」

 

「わかってる!」

 

 士郎はサクラへと距離を詰めた。

 

「先輩……私……強い……筈……なのに……」

 

「あぁ……。桜の愛は間違い無く強いよ。だけど……俺はアルトリアと幸せを掴む。その為の障害は……突破しないと……いけない……」

 

「うぅ……うあああああああぁぁぁぁ!!! 

 

 泣き叫ぶサクラから()()()()()()()()が溢れ出した! 

 

「お前か…………お前が桜を唆したのかアァァ!! 

 

 士郎はが溢れ出した事を確認して、桜に()()()()()()()()()

 

1撃で決めるぞぉ! 破戒すべき全ての符 ( ルールブレイカー)!! 

 

 士郎は桜の()()()()()()を殲滅した。

 

「先……輩……。わたし……わたし……っ!」

 

「わかっているさ。だから桜……今は何も言うな……」

 

 士郎はそんなサクラを抱きかかえた。

 

「先輩……うわあああぁぁぁあぁぁぁぁんんん!!! 

 

 サクラも士郎に抱きかかえられてようやく()()()()()()()()()()

 

「お帰り……桜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜……教えなさい。()()()2()()()()()()()()()()

 

「それは……」

 

 桜が言い淀んでいた。そして士郎は……そんな桜を優しく抱きしめる。

 

「まぁ……後で詳しく教えてくれよな?」

 

チュッ! 

 

 するとサクラは士郎の唇を奪った! 

 

「ふふふ……隙だらけですよセ♡ン♡パ♡イ♡」

 

「「「さぁくぅらあぁぁ!!!」」」

 

 まずはサクラを叩き潰さないといけないみたいね?




次は修治君の戦いとなります!

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僕を殺した響と……

響と対峙した修治は……ついに向き合う事を決めた。


「響……()()()()()()よ? 未来と響が……僕を殺した瞬間を……」

 

 響は…………泣いていた。

 

「そっか……しゅう君……思い出したんだ……」

 

「だからこそわかるよ。響達が……僕を殺した理由がね。だって……2人は……僕の……事が……好きだったんだろう? 

 

 声が小さくなってしまった。何故……僕が響への罪悪感に囚われているのか……今ならわかる。

 

「だから……やめるんだよ響。確かに愛が響とキャロル……そしてサンジェルマンさんを繋げている。嘗ての世界なら……とても良い事だと思うよ?」

 

「うん……こんな型じゃないなら……私達はきっと良いことずくめだよね?」

 

 響は()()()()()()。自分が今も尚過ちを冒している事を。だからこそ……今の響を止めるのが僕の役目だとも思っている。

 

「先輩……あたし達も響さんに言う事があるデス!」

 

「私達じゃないと言えない事だから……」

 

 切調コンビが僕と響の間に割って入った。そして声を高らかにしてこう告げた。

 

お兄ちゃん(先輩)は美味しかった(デス)よ!! 

 

ピシッ……

 

 空気が……凍った。

 

「はぁ……しゅう君を奪った泥棒猫は殺してやるぅ!! 

 

 響はアマルガムギアを纏って襲いかかろうとしてきた。

 

「悪いけどね響……僕も黙っているつもりは無いよ! 

 

 直ぐに僕は〈メルトリリスのクラスカード〉を夢幻召喚(インストール)した! 

 

その怨念と憎悪……そして狂しい程の愛は今日僕が受け止める! だから響……全力で行くぞ! 

 

「響さんにはもう1度教えてあげる! 今の私達は……」

 

「誰にも負ける気はしないのデース!」

 

 すると響は少し俯向いて()()を呟いた。

 

「許さない……絶対に許さない。調ちゃんも……切歌ちゃんも……翼さんも……マリアさんも……クリスちゃんも……奏さんだって許さない。私達の事をわかるのはしゅう君と私達だけなんだ。私としゅう君……未来……サンジェルマンさんと……キャロルちゃん……そしてガリィちゃん達がいれば…………それで良いんだ…………」

 

 響は小声で呪詛のように呟いている。しかし……僕がそれを認める事は……多分無いだろう。

 

「響……一応言っておくよ? ()()()()()()……僕は魅力を感じない。とてもじゃないけど……〈好き〉だなんて……言えないよ?」

 

 すると響は涙を零して……僕へと距離を詰めた! 

 

「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!! 認めない! 私は絶対に認めない! 私の想いはこんなところでは止まれない! しゅう君を失ってからの私は……止まる事なんて出来ないの! 

 

「ぐ…………うぅ……」

 

「先輩!」

 

「お兄ちゃん!」

 

 響の攻撃の〈速さ〉•〈重さ〉は相当なもので、〈メルトリリス〉では防ぎきることは難しそうだ。

 

「止めるデス響さん! あたし達だって我慢の限界なんデスよ!」

 

「お兄ちゃんを……悲しませないで! 

 

α式 百輪廻! 

 

切・呪リeッTぉ! 

 

 普段おとなしい調ちゃんが僕の為に感情を爆発させた。これは……それだけの価値がある戦いなんだ! 

 

そこぉ! どけえぇ! 私のしゅう君を……返せえぇ!! 

 

我流・金剛撃槍! 

 

 2人は恒例の牽制技で響を攻撃したが、響は当然のように大技を発動させて防ぎきった。

 

「私のしゅう君を阻む攻撃……この程度で私は倒れない!」

 

「響さん……何処迄も分からず屋!」

 

「あたし達が……苦しく無いと思ったんデスか!」

 

 調ちゃんは鋸を構えて響へと突撃し、切歌ちゃんがタイミングをずらして攻撃を行う。

 

「ッ! 2人の連携が……()()()()()()()()()()

 

当然だよ響! 今の響は()()()()()()()()だから響は2人の強さが怖く見えるんだよ! 

 

 今の響からは嘗ての皆を照らすお日様の気配を微塵も感じない。だからだろうか…………()()()()()()を……僕は全く怖いと思わない。

 

「だから……お仕置きをしてから目を覚まさせてあげるから!」

 

加虐体質! 

 

 メルトの固有スキルでありながらも諸刃の剣なこの力でも……今の僕には頼れる後輩がいる。

 

「僕は戦いなんて見守るだけの存在だった! だから2人共……僕をサポートして欲しい! 響を助ける為に!」

 

「響さんが……先輩の彼女になる事は絶対に無いデスが……先輩の頼みなら断われ無いデス!」

 

「お兄ちゃんが響さんを選ぶ筈が無い。だって私達が恋人だから! 

 

 あれ〜〜? 2人にそんな事言った覚えは無いけどな〜〜? 

 

(修治……諦めなさい? 恋する乙女はね……強欲なのよ?)

 

 メルト!? 僕との精神…………あっ! このクラスカードか! 

 

(そうよ修治……でもまずは……あの攻撃を避けなさい!)

 

うおおおおおぉぉぉ!! しゅう君から離れろおぉぉぉ!! 

 

我流・金剛撃槍!! 

 

「先輩!」

 

「お兄ちゃん!」

 

 響の攻撃が僕と2人を引き裂くように発動したけど、僕はメルトより託されたスキルを発動させた。

 

クラリウムバレエ! 

 

嘘ッ! 当たる筈の攻撃だったのに! 

 

「私達を!」

 

「忘れたらダメデスよ!」

 

ポリフィリム鋏恋夢! 

 

 2人は既にアマルガムのギアを纏って反撃に転じていた。

 

ぐうううぅぅぅぅ…………!! 調ちゃん! 切歌ちゃん! 大人しく私に殴られて気絶してよ! 私はただしゅう君を……お日様を返して欲しいだけなの! 

 

 響は涙を流して懇願していた。いや……その瞳から()()()()()()()()()

 

「ダメなんだよ響……それは……僕の欲しい愛じゃないんだ……。そんな愛を貰ったところで……僕は嬉しく思えない。マリアさんや……翼さんにと再会してわかったんだ。僕は……一方通行の愛は求めていない! 

 

()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 響……わかっているなら……なんで……。

 

「初恋……だったの。しゅう君が……私達の。だけど……翼さんが……クリスちゃんが……調ちゃんが……切歌ちゃんが……マリアさんが……後から現れて……しゅう君と仲良くなった……」

 

「そこにサンジェルマンや!」

 

「キャロルが入っていないデス!!」

 

 当然の指摘だけど……響は全く動じていなかった。

 

「私とキャロルちゃんとサンジェルマンさんはね……きちんと話をしたの。しゅう君をどうしたら救えるのか……ね?」

 

「話にならない……」

 

「何処迄も偽善デス!」

 

偽善……かぁ。ねぇ……調ちゃんは覚えているよね? 私に……偽善者って……言った……あの日の事を……」

 

あの日……フロンティアを浮上させる為に集まったマリアさん達が最初に行動したライブの日だ。

 

「そこで私は響さんを偽善者と言いました。しかし…………あの時の響さんは正直でした。でも……今の響さんは間違い無く()()()です! 今度は本当にその通りの意味です! だから……私達は()()()()()を絶対に認める事はありません! 

 

「あたしも……調と同じ気持ちデス。()()()()()は……あの時のあたしが憧れ……後を託せた響さんじゃあ……無いデス。だから……1度キッチリとお灸を据えるデス! 

 

 僕はそっと……〈メルトのカード〉を解除した。

 

しゅう君! やっとわかってくれたんだ! ごめんね! とても待たせたよね! 

 

 響は笑顔で僕へと駆け寄ろうとした。しかし……()()()()()()()()()()()()()()()()多分……僕が殺された時の響と未来は……()()()()()()()()()()()()()()

 

「ダメだね。やっぱり……こんなの響じゃあ無いや……」

 

「え…………? しゅう君? どうしたの?」

 

 響は不思議と言わんばかりの表情をしていた。だから僕は…………

 

パチィィン! 

 

 響の頬を()()()()()()()()()()

 

「しゅう……くん。なんで……なんでわかってくれないの! 

 

 響のギアが……どんどんと黒く染まっていく。だから僕は……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

行くぞ邪ンヌ! クラスカードアヴェンジャー夢幻召喚(インストール)! 

 

 僕は復讐を誓った聖女の力をその身に取り込んだ。

 

(修治……やりなさい。失敗は許しません。もししくじったら今度は死ぬまで犯します!)

 

 勘弁してよ邪ンヌ……。腹上死とかゴメンだよ……。

 

(なら……さっさと救いなさい? さもないと……()()()()()()()()()()()?)

 

「そうだね……。行くよ響!」

 

「しゅう君には……私の(ハート)のゼンブをあげるんだぁ! 邪魔をするなぁ! 

 

TESTAMENT! 

 

 嘗てアダムを退けたその攻撃の筈なのに……今の響からは尚も恐怖を感じない。

 

「響……僕は君を泣かせていた。それは事実だ。だから……素直に殴られても良いと思っているよ。でもね……そう思えるのは普段の響だけだ! 今の()()()には何も感じない! ただの虚しい感情の塊め! その憎悪……僕が燃やし尽くしてやるよ! 

 

 僕は龍の魔女から託された旗を地面に突き刺して祈った。魔女の祈りとは皮肉な話だけど……今の僕にはそれだけでも大切な事だ。滑稽だろうが場違いだろうが関係無い。だから……

 

僕に力を貸してくれよ邪ンヌ! 

 

(ええ……存分に使いなさい私の愛しいマスター! 

 

ありがとう邪ンヌ! 行くよ! 

 

「させないよしゅう君!」

 

 響が僕を殴りつけるが……()()()()()()()()()。口からは血を吐いているのに……ね。だから……僕は詠唱を始めた。

 

これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒 ( ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!!! 

 

 僕は自分を巻き込みながら響の身を炎に包んだ。

 

「熱い! 熱いよぉ! 離して! 離してよしゅう君!」

 

ダメだ響! 絶対に離さない! 君の手は()()()()()()()()()()()だ! だから僕は離さない! それが僕と君の約束なんだよおぉ! 

 

やめてよおぉ! 私をそんな眼で見ないでよおぉ! わかっているよ! 本当は間違いだらけだって! でも耐えられ無いよ! しゅう君が隣にいない事も! 私達以外の女の子と仲良くしてる事も! だから恋敵は皆排除するの! だから離して! 私達の計画を邪魔しないで! 

 

「それは聞けない相談!!」

 

「それは受け入れられない話デス!」

 

 2人も後ろから響を拘束し始めた! なら……今度こそ! 

 

やりなさい修治! 今が千載一遇の勝機よ! 

 

ありがとう邪ンヌ! ありがとう切歌ちゃん! ありがとう調ちゃん! 

 

 僕はもう1度響を引っ叩いた。

 

「痛いよぉ……しゅう君に嫌われたよぉ……うわあぁぁぁぁぁぁぁんん!!!! 

 

 響がそギャン泣きした。それはもう失恋した少女みたいな泣き方だったけど……響は少女だ。だから……正しい出来事だ! だから…………! 

 

()()()()()()()()()()!! 僕は君に会いに行くよ! だから……絶対に君を止める! 君がどれほど強大な力を持っていても……絶対に止めてみせるから!」

 

 響に纏わされていたキャロルの怨念は、僕と邪ンヌの炎で切り離した。

 

「グスン……しゅう君……」

 

 そんな響に僕は舌まで入れたディープキスをした。

 

「先輩! 響さんだけズルいデス!」

 

「私達の目の前で……。響さんが憎くてイグナイトをギア無しでも纏えそう」

 

 物凄い殺気を感じるけど……僕はキスを終えると響に語りかけた。

 

「響……君の想いは嬉しいよ。僕……あの人生までで1番最初に女の子に好かれた事になるんだよ?」

 

「クリスちゃんがいるよ?」

 

「う〜ん……姉さん……か……」

 

「でも……私と未来がしゅう君を奪うから関係無いね♪」

 

「「やっぱり響さんは殺してやる(デス)!!」」

 

 第2ラウンドが始まったけど……響の笑顔はようやく皆を照らした……あの頃のお日様の物に見えた。

 




切調コンビは自重せずにドヤ顔しています。そして……締めでは憎悪に焦がれてます。忙しいデスね。

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認められない想い

それぞれのゆずれない願いは……すれ違って……重なり合って……。だけど信じ続けるならば…………きっと……

そしてようやく最終話の構想が纏まりました!なので最後の休息回の次の話よりカウントダウンを開始します!


〜〜マリアside〜〜

 

「ねぇ……未来……今の貴女は()()()なの?」

 

小日向 未来ですよ? しゅう君と響の幼馴染で……翼さんやクリスの後輩。切歌ちゃんと調ちゃんの先輩で……マリアさんのファンの……〈小日向 未来〉ですよ?」

 

「嘘だな。()()()()()()お祖父様(嘗て)に洗脳されていた頃の私だ

 

「はぁ……翼さん……()()()()()()()()()()()()()()()()()()一緒にしないで貰えますか? 貴女と同じだと思われると吐き気がしますので……」

 

 未来は翼に対して1度も言わなかったような言葉をぶつけて来た。なるほど……確かにキャロルの洗脳は相当根深いのね。

 

「そうね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

閃光!! 

 

「あら? 随分と短気ね? そんな事だと修治に嫌われるわよ?」

 

うるさいですよマリアさん! しゅう君が……()()()()()()()()()()()私を嫌う訳無いじゃないですか!! 

 

「やめろ小日向! こんな事では修治は喜ばないぞ!」

 

 未来は……本当に私達と会話しているのかしら? 

 

「本当に……変わってしまったのか……それとも…元々こうだったのか……」

 

「翼! 神獣鏡が驚異なのはわかっているわね!」

 

「無論だマリア。全力で行くぞ!」

 

 私達はアマルガムを纏い未来に対峙する。

 

「ふ……ふ……あはははははははは!!!! 可笑しいですよマリアさん! 翼さん! 貴女達は私を舐めてますよ! ()()()()2()()で私に勝てると思っているんですか!! 

 

「そうね未来……()()()()()()()()()()()()()()()()戦力は全然足りていないわ。だけどね……私達には退けない理由があるのよ! 

 

「小日向……お前の修治への愛は……とても素晴らしい物だ。私達は……修治無しでは過ごせない程に……依存している。だがな……修治と()()()()()わかったんだ。修治はな……()()()()()()()

 

「しゅう君が……〈怯えている〉? 翼さん……冗談が下手なのは知っていますが……全く面白く無いですよ?」

 

 やはり……私達の言葉は……届いていないのね。

 

「いいえ……修治は確かに怯えているわ。〈あの世界〉では……何よりも……〈〉を恐れていたわ。それは……私達が直面した困難を識ってるなら……当然よ。命何て……幾つあっても足りないような世界よ?」

 

()()()()()()()()マリアさん……翼さん。私達は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 やっぱりね。未来は……修治の想いを全く考慮していない。ただ……独善的な愛を与えるだけのつもりなのね……。

 

「修治は一方通行の愛は求めない。私達だからこそわかる事なんだ。故に暁と月読は修治とあれ程濃密に……」

 

うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 

 

暁光! 

 

 未来は強引にエクスドライブに至って極大の光を放って来た! 

 

翼! まずは無力化! シェム・ハを引きずり出して修治へと届けるわよ! 

 

「承知! 行くぞマリア! ついて来い!」

 

 視界が狭まる程の光を放った事で私達は互いの姿が見えない。でも……信頼できる翼なら! 

 

蒼ノ一閃! 

 

外していた!? もう…………大人しく死んでくださいよ! 化けて出て来るなんてストーカーですか! 

 

 未来……貴女は《自分の事がわからない》》程狂っているのね。なら……私達は貴女を止めないといけないわ。それが……修治を悲しませない為の方法だから……。

 

SERE†NADE

 

たあぁあぁぁぁぁぁ!!! 

 

「技の軌道が違う!? ガラ空きの場所に叩きこまれる!?」

 

 私はアマルガムでありながらイグナイトの技を放つ。すると未来は動作が違う事に困惑して回避行動を間違えた。

 

ガシャアァァン!! 

 

 鈍い音が響いたと思ったら未来は受け身すら取れずに壁へと叩きつけられた。…………一体……何故? 

 

「邪魔……しないでよ……シェム・ハ……。こんな事をしたら……貴女も死ぬのよ…………?」

 

「小日向……? 何を……言ってる?」

 

『醜いぞ未来。〈嘗てのお前〉と〈今のお前は〉は天と地程も差があるぞ? 愛する者を信じ続けたお前の輝きは……我すらも驚愕する程の()()()()()。しかし……今のお前はその面影を感じない。故に静観するつもりも無い。そのような醜悪な感情を垂れ流すなら……()()()()()()()()()()()。修治の行いは素晴らしい。お前達に殺されて尚も信じているのだからな……。であれば……そろそろ修治は報われるべきだ。お前達とてそう思わないか?』

 

「お前は…………まさかシェム・ハか!? 

 

どうしてまた現れたのよ! 貴女は……何が目的なのよ! 

 

 わからない。シェム・ハが……修治を娶ると言っていた。何故……シェム・まで…………。

 

「黙ってよシェム・ハ……。私は……私はしゅう君と添い遂げるの! 響といっしょに3人で過ごすの! 3人でご飯を食べて……お風呂に入って……一緒のお布団で寝る。…………そんな当たり前の生活が何よりも欲しいの! だから出て行ってよ! 私の中から消えてよ! 私の感情を見ないでの! 私を……助けてよ……

 

 未来の瞳から……涙が溢れ落ちた。それは……まぎれも無い未来の本心だった。

 

翼! ()()()()よ! 嘗ての私達が成し得たあの連携……再現できるわよね! 

 

「無論だマリア! 寧ろ……あの頃よりも素晴らしい動きをするぞ! 

 

HORIZON†CANNON! 

 

 まずは私が砲撃を放ち牽制する。

 

『未来は我が抑えよう。しかし……20秒だ。それ以上は保証しないぞ?』

 

「充分だシェム・ハ! お前の信頼……しかと受け止めたぞ!」

 

 翼が距離を詰めて私が時間差で攻撃する。それが私達の基本にして最高のコンビネーションだ。

 

させない! 離してよシェム・ハ! 私と響の幸せを……奪わないでよ! 愛を識った貴女ならわかるでしょ! 

 

まだわからないの未来! シェム・ハがなんで貴女に呼びかけているのか! 

 

奴自身が実感した純粋な愛! それがどれほど素晴らしい事かを知っているからだ! だが小日向……それを最初に私達に見せたのはお前達の外してだ! 

 

 私は蛇腹剣を強化する。嘗て黄金の力を纏わせたこの剣に……今度は想い出も乗せるとしよう。

 

正面は私が抑える! 必ず決めなさい! 

 

「承った!」

 

 私は浮遊する未来のマーカーからの光線を剣圧で弾きとばす。何かの間違いでギアを解除させる訳にはいかない。

 

「翼! 左3個のマーカーを破壊して!」

 

「了解した!」

 

 翼は蒼ノ一閃を放ちマーカーを物理的に破壊。そしてその影で短剣を私に託した! 

 

小日向の影に刺せマリア! それで影縫いが完成する! 

 

「わかったわ!」

 

 私は翼の頼み通り未来の背面へ作り出された影に短剣を投げた! 

 

「させない! これ以上邪魔されたら!」

 

させると思ったか未来! 

 

「ぐうううぅぅぅぅ…………ッ!」

 

 未来が背後の短剣を触手で外そうと試みたが、それをシェム・ハは妨害した。良し……コレならいける! 

 

1撃で決めるわよ翼! 

 

「任せろマリア!」

 

至高善・薔薇X字! 

 

 金色の炎を纏う剣と金色の蛇腹剣……2つの黄金の剣が未来を叩きつけ神獣鏡のギアに亀裂が入った。

 

「うあぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

「小日向……お前の想いは……その程度か!? キャロルに唆されて動く程軽い想いなのか? 違うだろ! お前の想いはその程度では無い筈だ! ここにいる私達が識っている〈小日向 未来〉はそんな心の弱い人間では無いぞ! 

 

「うるさい…………うるさい! うるさい! うるさい! うるさあぁぁい! もう誰にも私達のお日様は奪わせ無い! 絶対に許さない! こんな想いをするくらいなら……皆殺してやるんだからあぁぁぁ!!! 

 

混沌! …………天光! 

 

「2連撃か!? マリア!」

 

耐えるのよ翼! 勝機は必ず訪れるわ! 

 

 未来の自爆覚悟の光は私達を包もうとしたが、そこに突然の声が聞こえた。

 

頼むよ2人共! 未来を止める為に! 

 

「任せるデース!」

 

「今の私達ならなんでもできる!」

 

β式 獄糸乱舞! 

 

凶鎖スタaa魔任イイ!! 

 

「動けない!? まさかこの拘束……切歌ちゃんと調ちゃんの!?」

 

もう一度頼むぞ邪ンヌ! クラスカード〈アヴェンジャー〉夢幻召喚(インストール)! 

 

 すると翼の炎が修治の掲げる旗へと集まる。

 

これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒 ( ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!!! 

 

「しゅう君の宝具!? 不味い! 防がないと!」

 

令呪を以て命じるよ! 未来……しゅう君の想いとちゃんと向き合って! 

 

『でかしたぞ神殺し! これで決める事ができる!』

 

 突然ではあったが現れた修治……切歌……調……そして響が未来に追撃を始めた。響に至っては貴重な令呪を使ってまで未来を拘束した。

 

「熱いよう! 焼けるよう! 助けてよ! しゅう君! 私は…………私はぁ!!!」

 

 未来は炎の中で泣き叫んでいた。だけど修治は……悲痛な表情を続けながら炎を消さなかった。

 

皆! もう一度活路を開いて欲しい! 次の接近で終わらせるから! 

 

「「「「「『任せろ/なさい/るデス!! 』」」」」」」

 

 切歌と調は鎖とヨーヨーで、シェム・ハは精神から、翼は影縫い、私は蛇腹剣で未来を拘束した。

 

「未来…………目をさませえぇぇ!! 

 

バチイィィィン!!! 

 

 修治が未来を思いっきり引っ叩いた。あら〜……中々良い音が響いたわよ? 

 

「う……うぅ……うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!!! しゅう君に嫌われたよぉ!!! もう生きていけないよおおぉぉぉ!!! 

 

 とても可哀想に見える程未来が盛大に泣いてしまった。でも……響は複雑な表情をしていた。

 

「未来……しゅう君は望んでないよ。私も……さっき……2回も引っ叩かれたから……」

 

 よく見ると響の顔にはうっすらと紅葉の跡があった。修治……相当強く引っ叩いたのね……。

 

「それについては悪かったけど……。未来……自分だけの想いを押し付けないで欲しい。確かに未来の気持ちは嬉しいけど……僕はそんな愛だと息ができなくなりそうなんだよ。だって……そんな愛はいずれ恐怖に変わるから。僕は……未来や響をそんな眼で見たくは……無いんだよ……」

 

「しゅう君……しゅう君…………うわあああぁぁぁん!!! 

 

 修治はそっと未来を抱きしめた。

 

「帰るよ未来……僕達の場所へね……」

 

「はいはい。私が未来を背負うから撤収するわよ。そもそも修治……貴方立ってられない程フラフラじゃないの?」

 

「あはは……バレ……まし……た……? 

 

 そのまま修治は前のめりに倒れて意識を失った。

 

「先輩……疲労を抜かずにここに来てるデス……」

 

夢幻召喚(インストール)も3回使ってるし、宝具も2回……。しかもエクストラクラスだから……」

 

「その負担は相当だろうな。わかった……皆集まれ。士郎の家か奏の教会に転移するぞ?」

 

「あはは……お願いします翼さん……」

 

 私達は動けない未来と修治を連れて衛宮邸へと転移した。残るはクリス達かしら?

 

 




シェム・ハの嫁感高えなぁ……。なんだかんだで1番美味しいところ持って行ったし……。それにしても……修羅場NOW!

最後の戦いは……ただの前哨戦となるのか……それとも……

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最後のサーヴァント

最後のサーヴァントであるサンジェルマン……その相手は……修治に縁ある人物達だった……


「さぁて……始めようぜサンジェルマン……」

 

「まぁ……こっちは銃の使い手が1人と槍の使い手が2人だ。降参するなら今の内だが?」

 

「断るならてめぇは蜂の巣だよ。わかってるだろう?」

 

 キャスターであるサンジェルマンの前に立つのは〈雪音 クリス〉〈クー・フーリン〉〈天羽 奏〉の3人だ。

 

「ええ…………よく知る人物よ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まぁ……それでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だって……アンタは自分を捨てたからな!」

 

 奏はガングニールを構えるとサンジェルマンへと距離を詰めた! 

 

そして俺を忘れるんじゃねぇぞ! 

 

 クー・フーリンも奏に習いサンジェルマンとの距離を反対側から詰めた。

 

流石は〈アイルランドの光の御子〉に立花響と同じ聖遺物を使う〈天羽 奏〉ね! 私自身の速度を優に超えているわ! 

 

 サンジェルマンは2人の速度を捉える事はできなかったが、全く動揺していなかった。

 

眠てぇ事言わせる暇は与えねぇそ! 

 

RED HOT BLAZE! 

 

 クリスはライフルを構えると躊躇う事なくサンジェルマンへと狙撃を始めた。

 

「正気か!? 前衛の動きを気にしないだと!?」

 

「ハッ! 前衛の2人があたしの銃弾に倒れるならなぁ……修治を迎えに行くのに苦労してねぇんだよ! 

 

 クリスの言う通り……奏もランサーもその銃弾が直撃する事は無かった。

 

そりゃあそうだ! 確かにクリスの1撃は脅威だがな! アタシ達は負ける理由が無いんだよぉ! 

 

「マスターが気持ち良く戦う為だ! 無粋な横槍は入れさせないぜ!」

 

 奏とランサーのコンビネーションは即興とは思えない程速い攻撃だった。奏が槍を振るえばランサーは()()()()()()()()()で自身の刺突体勢を整えていた。

 

「もちろんあたし様も派手に行くぞ! 土砂降りの十億連発だ!」

 

GIGA ZEPPELIN! 

 

矢の雨だと!? それこそ連携の悪手では!? 

 

 サンジェルマンは動揺するも自身の身を守る為に上空への障壁を厚く展開した。しかし……()()()()()()()()()()()()()()

 

「視界が塞がる程の障壁の展開は多対1ならば致命的だせ! アタシを見失っただろう!」

 

「俺の速度を味わうなら足を止めるべきじゃねぇぞ!」

 

「チッ! ならばしかたない!」

 

 サンジェルマンは銃を懐から取り出すとクリスとの撃ち合いを始めた。1撃1撃にはサンジェルマンが、小回りならばクリスが有利に進めることができる。

 

ならばしかたない! ラフィスの輝きを見せてやろう! 

 

 サンジェルマンの賢者の石が輝き出しファウストローブを展開した。それに伴い銃撃の威力もまた一弾と向上する事となった。

 

「私の錬金術を侮るなよ!」

 

 展開される魔法陣を踏み台にしてサンジェルマンは空中へと飛び上がり三次元の動きを可能とした。

 

「なるほどな……そいつがあのアダムに一泡吹かせた技術だな……?」

 

 奏は少し考える仕草を見せた後に1つの案を浮かばせた。

 

ランサー! アタシとの連携を意識するな! ここからは各々が自分のタイミングで動くぞ! クリス! お前は逆にアタシに合わせてくれ! 撃ち合いだ! それも激しいやつをな! 

 

 年長者はクー・フーリンだが、彼は軍師よりも戦士であろうとする気質がある。そして……クリスよりも奏の方が一応は歳上だ。クリス自身も奏の指示は頭には入っていた。

 

任せな! 俺の槍捌きをとくと見せてやるよ! 

 

撃ち合いはあたしの土俵だ! 確実な指示を寄越せよセンパイ! 

 

 するとランサーは奏との連携の為に引いていた一歩を詰め……サンジェルマンへと肉薄した! 

 

速い!? ランサー……貴方もしかしなくても速度を抑えていたの!? 

 

 サンジェルマンの動揺は確実だった。そもそもクー・フーリン程高名なサーヴァントであれば相応の補正が乗るのがこの聖杯戦争だ。そして……今回のマスターはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンだ。かのヘラクレスすらもバーサーカーとして運用できる彼女に……クー・フーリンを全力で戦わせる事等造作もない事だった。

 

「でも…………撃ち合いでは私の方が!」

 

 サンジェルマンは今回〈キャスター〉として現界している。つまりはエネルギーの扱いが最も長けた状態だ。

 

クリス! サンジェルマンの魔法陣はランサーがぶっ壊す筈だ! お前は不意打ちを常に警戒しろ! 

 

「了解だ! あたしのガンテクニックを見せてやるよ!」

 

MEGA DETH PARTY! 

 

 展開されたミサイルがサンジェルマンの()()()()()()()的確に撃ち抜いた。しかし……ここで彼女は笑みを見せた。

 

背後がガラ空きよ! 

 

 クリスの後方より魔法陣が出現してスフィアが彼女へと射出された。しかし……その攻撃は()()()()()()()()()()()

 

アンタとの戦闘で1番怖いのはその頭脳だ! だからこそ……不意打ちの警戒はアタシの仕事なんだよ! 

 

LAST∞METEOR! 

 

 しかしそのスフィアを迎撃したのは奏だった。逆に彼女が獲物を手放す事になり隙きを晒す事になるが、()()()()()()()()()()

 

どうやら苦肉の策でクリスを守る為に槍を手放したみたいね! でも……その状態で貴女はどう防ぐつもりかしら! 

 

 サンジェルマンは既に先程の撃ち合いで発生した煙幕の中で新たな時間差でのスフィアの発動を始めていた。そして……そのスフィアへと銃を向けていた。

 

「なるほどな。アタシが下手に動けばそのスフィアを起動させて連動した爆発でアタシを吹き飛ばす算段だな?」

 

「ええ……私の意思1つで貴女の命は思うがままよ? 迂闊に動かない事を勧めるわよ?」

 

奏! なんであたしを庇った! 

 

 クリスは自分の武器を手放してまで援護した奏へと怒りを()()()()()()。まるで……()()()()()()()()()()()言わんばかりの視線だったのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()?() ()()()()()()()()()()()()()

 

「こんな状態でさえも感謝より罵倒するなんて……クリス……やっぱり貴女も修治に悪影響だわ! 

 

 サンジェルマンはとうとうクリスへと狙いを確定させた。つまりそれは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

相手は嬢ちゃん達だけじゃあねえだろうがぁ! 

 

 ランサーは逸れた一瞬の間に背後に回り込んで朱槍を振るった! 

 

「まさか……クリス! 奏! 貴女達さてはワザと!? 

 

「そのまさかだよサンジェルマン伯爵。アンタは修治を溺愛していた。つまり……クリスが短気を起こせば

 

 〈修治に相応しく無い〉

 

 って……言うだろ? だけどな……普段のアンタは冷静な人物の筈だ。だけど……()()()()()()()()()()()()()()

 

「答えは……簡単だぜ! 

 

 ランサーは既に間合いの内側へと入り込んでサンジェルマンに槍を突き刺した。しかし……()()()()()()()()()()()()

 

私を…………舐めるなぁ!! 私は修治を抱しめる! 修治の功績を称えるのよ! 彼の素晴らしさを知る貴女達ならばわかるでしょ! 何故咎めるの!? 

 

「簡単だよ。欲望に身を委ねたアンタの言葉に重みを感じないからさ。それに……アンタは()()()()()()()()()

 

 奏の最後の言葉がサンジェルマンの心を揺さぶった。

 

「…………えぇ。修治は……立派になったわ。だけど……心配なのよ。また……手を引いてあげないと……私の……知らない……ところへ……」

 

ゴツン! 

 

 そんなサンジェルマンに奏は拳を落とした。

 

子供が成長するのは当たり前なんだよ! 失敗するのも当たり前なんだよ! それを見守るのが親なんだよ! アンタは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 

 

 奏は……サンジェルマンの行動の核心をついた。

 

「キャロルが修治を手に入れる為に響達を唆した。だけどな……それは……修治にも責任がある。だからこそ修治はケジメをつける。あたし達はな……ソレを見守る事が大事なんだよ……」

 

「私は……ようやく……愛を……」

 

「でしょうねぇ〜……だけど残念よサンジェルマン。マスターからの伝言よ? 

 

 〈時は来た。今までの前座は中々の見ものだったぞ

 

 だそうよ? あ〜あ……み〜んな倒されちゃってなっさっけな〜あ〜い♪ 

 

っ!? 

 

 突然現れた人物に全員が困惑と動揺をした。そして……とうとうクリスが口を開いた。

 

「お前が出て来たって事は……とうとう終わりなんだな? ……ガリィ?」

 

「ええ……そうよクリス。アタシ達が花婿様を見つけ出したわ。最後の勝負よ? アタシ達はこの街の5箇所に攻撃を始めるわ。そこで儀式を始めるわ。止めたいなら……「全員を撃破するんだろう?」そうよ?」

 

 ガリィの言葉を遮ったのは奏だ。そして……続く言葉を彼女は口にした。

 

「まぁ……明日以降だろ? その儀式は?」

 

「ええ。良い前座を見た見物料として明後日の24時に儀式を始めるわ。花婿サマに誓っても良いわよ?」

 

「その名前が出るならお前さんの言葉は本当だろうな。俺も女を見る自身はあるつもりだから……な?」

 

「流石は猛犬と言われた英霊ね? 頭のキレも恐ろしいわぁ……」

 

「抜かせよ。ドンパチするつもりもない癖によ?」

 

「じゃあ……()()()()()()()

 

 ガリィはそう告げると……いつの間にかその姿が見えなくなっていた。




掌の上で踊らされていた者達が……1度冷静に最後の話し合いを始める。

次回が最後の休息回となります!

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最後の夜の作戦会議

本当に最後の休息となります。この後の戦いは……連戦ですから……


「僕達が起こした行動を全てキャロルは見透かしていたんですね?」

 

「ああ……ガリィがそう告げていたよ。まるで……響と桜が囮と言うみたいにな……」

 

「事実囮だった。なら……キャロルはとうとう……」

 

「事を始めるつもり……と言うみたいね? はぁ……とんだ厄ネタよね。でも……冬木の管理者としても見過ごす事は出来ないわ。木原君……襲撃ポイントはわかるかしら?」

 

 会議に参加したメンバーはキャロルの企みを聞いた姉さん達の情報を共有してある。そして……僕の最後の知識を使い切るかもしれない。

 

「多分キャロルは柳洞寺にいるでしょう。聖杯の降臨する可能性が最も高いのはあの場所ですから……」

 

「だけど霊脈ポイントは他にもあるわよ? 他の可能性はないかしら?」

 

「ここからの僕の言葉は知識ではなく推測です。それでも良いですか?」

 

『構わぬ。修治の言葉に不備はあっても偽りは無い。ソレは我が未来の身体より見ていた頃から識っている事だ』

 

 しれっと会議に参加する神様もいるけど、話の進行が円滑だからみんなツッコまない。

 

「では遠慮なく。恐らくはこの衛宮邸に1人。多分ファラさんだと思うよ? 士郎と戦う為に……ね?」

 

「剣士……なんだよな?」

 

「ああ。ファラの相手は私が引き受けたい。因縁の相手でな。構わないか?」

 

「なら翼……今度はアタシと組まないか? 両翼揃って飛ぶんだぜ? あの頃と違うところを見せてやろうぜ?」

 

「ありがとう奏。心強い限りだ」

 

「なら……私も参戦します。敵が強大である以上は構いませんね? どうですか?」

 

「わかった。奏も構わないか?」

 

「あぁ。よろしく頼むよアルトリア必ずファラを倒すぜ?」

 

 まずはファラさんとの戦闘要員が決定した。となると次は誰が重要か……。

 

「次はレイアさんだね。正直……彼女もかなり強い。誰が……」

 

「あたしは譲らねえよ。レイアの奴はあたしの獲物だ。わかってるだろう修治?」

 

「わかっているけどゲイ・ボルクを受けて活動できるなら戦力は必要だよ」

 

「ならクリス……私が出るわよ? 貴女のマスターだもの。文句は無いでしょう?」

 

「ランサー……貴方も行きなさい。戦闘歴のある人材は活用するわよ?」

 

「だろうな。奴さんはどう見ても本気じゃあ無かったが、それでも飛び道具の使い手だろう? なら俺は最近その手の使い手とやりあっているからな。構わないぜ?」

 

「なら……サンジェルマンさんもお願いします……

 

 凛の家……遠坂邸もレイラインのスポットだ。だから……凛と姉さんは確定。そして戦闘歴からランサーも。取り敢えず葉これで良いかな。

 

「問題はガリィちゃんか……」

 

「当然私が行くわよ? ガリィは私にとって因縁の相手だもの……」

 

「でも……1人では……」

 

「私が行きますよ? 苦汁を飲まされたんです。絶対にスクラップにしますよ?」

 

「なら……私がやるわ。どうせそんな奴の相手は人材が限られているでしょう?」

 

「お願いしても良いですかイリヤさん?」

 

 ガリィの戦闘要員も決定した。となると残りは必然的に……

 

「これで残るはミカちゃんだけど……」

 

「もちろんアタシと調は!」

 

「ミカをボコボコにするよ?」

 

「だよね。とはいえ……桜達の話が確かなら……」

 

ならば私が行くよ? 流石に利用されただけで終わるつもりにはなれないから。ごめんね……しゅう君……

 

「2人は大丈夫かな?」

 

もちろんデース! あたし達にかかればミカをスクラップにするのは楽勝デース! 

 

「ミカを正面から倒せる人材は限られてる。そんな今わがままは言わない。その代わり必ずミカをボコボコにする……」

 

 なるほどね。2人にとっても3度戦った相手だからね。因縁の相手……なら僕は2人を信じよう。

 

「頼むよ切歌ちゃん。調ちゃん。勝てないなら逃げて良い。だって……僕が必ずキャロルを止めるから! 聖杯戦争に終止符を打とう! 

 

「修治……俺の言いたい事はわかるよな?」

 

「キャロルちゃんを止めるなら……」

 

 当然キャロルを止めないと何も始まらない。だからキャロルと戦うのは……()()3()()()

 

「正直に言うと僕と士郎と響……この3人以外にキャロルの前に立てる人物はいないと思うよ? サンジェルマンさんは少なからずキャロルとの関係に一線を引いてるし、そもそも他の装者は自動人形(オートスコアラー)との戦いで手一杯の筈だから……」

 

「うん。未来もまだダメージが抜けきれて無いから……キャロルちゃんの前に立つのは……」

 

「本当だよ。響が受けたダメージの大半はキャロルの怨念「愛だろ修治! 」愛だね。その愛に肩代わりさせたようなものだから動けるとして……。士郎は連戦だよ? アルトリアとの戦闘後から桜との戦闘への介入……それに宝具の使用を2回も……」

 

「修治……お前が俺の事を言えるのか? エクストラクラスを運用してる癖に影響が無いなんてありえないだろ?」

 

 …………見抜かれてるよね。

 

「正直キツイ。だけど……僕は逃げる訳にはいかないから。フィーネさんとの戦いは見ているだけだった。未来との戦いは無様に敗走する羽目になった。マリアさんにはあっさりと拉致されて何もできなかった。そんな僕だよ? だから……ここで無茶の1つでも覚悟出来ないのは許せないんだよ……」

 

「だろうな。だからこそキャロルは今晩を選ばなかった訳か。修治の心を完全に掴む為に時間を与えて……」

 

「でも粋な事をするよねキャロルちゃんも。奇しくも明日の夜は満月だよ?」

 

 …………()()? ……だと!? 

 

「凛……本当に明日の夜は満月なのか?」

 

「知らなかったの修治……? ちょうど満月よ? それも……儀式をするには誂え向きのね? 魔術師なら当然天の力を触媒に取り入れるなら……日を選ぶわよ?」

 

 …………最悪の可能性(ミスリードされた)か!? 

 

やられたかもしれない!! 

 

「どうしたんだよ修治……そんなに慌てて……」

 

「あぁ……そういう事ね。士郎……キャロルはね……()()()()()()()()()()()()修治がキャロルと向き合う日を……ね?」

 

「どういう意味なんだよ……イリヤ……」

 

「なら……士郎君に教えてあげる。私達乙女はね……大好きな男の子に……ロマンチックなシチュエーションでプロポーズしたいの。そしてそんなシチュエーションの1つに満月の夜に月明かりの下で告白したいの。まぁ……士郎君はわからないかもしれないけどね?」

 

「そして魔術師としても月には面倒な力があるし……シェム・ハに解説して貰う?」

 

「…………よろしくお願いします…………」

 

 つくづく皮肉……いや、キャロルの思惑通りなのか……。

 

「ごめん未来……シェム・ハに代わってくれるかい?」

 

「うん。私達も確信が持てないから……。気に食わないけど……しっかりと借りを返したいから私達も聞き届けようね?」

 

 未来はそう告げると意識をシェム・ハへと明け渡した。

 

『ようやく……か。()()()()()()()()にようやく気づいたか修治?』

 

 あの時フィーネはシェム・ハに接触するように促していた。そして……

 

シェム・ハなら全てを語れる

 

 とも言っていた。それはつまり……()()()()()()()()()()()()()()と……言う事なのだろう。

 

『まずは前提より話そう。我らのいたあの世界……キャロルは既に〈神殺し〉と〈未来〉に愛の種を植え付けていた。そして2人はその囁きのままに修治を手に掛け……この世界へと辿り着く。ここまでは良いな?』

 

「そこまではみんなの共通認識です。そこから……何が……」

 

バラルの呪詛を覚えているな? エンキが我の復活を阻止する為にデータ断章を阻んだアレだ』

 

 シンフォギアの原点のアレ……か。

 

『そして巫女は呪詛の解除を試みて月を穿つ計画を立てた。つまりキャロルにとっても月がこのレベルで重要な要素となっている。何故かわかるか?』

 

「それは錬金術師としてのキャロルか? それとも1人の乙女のキャロルか?」

 

 士郎の質問は……確認のようなものだな。士郎自身は恐らく予想してるから……。

 

『前者だ。そもそも錬金術は呪詛の解呪を目論む事にも繋がりがある。彼の者より聞いているだろう?』

 

 やっぱりね。となるとキャロルの目的は……

 

『月のエネルギーを用いて修治の魂を手に入れる事だろうな。そしてその力で不老不死の肉体でも作るのだろうな。この世界に月遺跡があるかは知らないが……似たような物はあるだろう?』

 

ムーンセル・オートマトン……近未来の作品で取り上げられた舞台だ。

 

「つまり……キャロルは僕を……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。修治の持つクラスカードを触媒にしてな』

 

メルトリリス……か。確かに彼女は月の聖杯戦争の関係者だ。だからこそ……触媒にするつもりなのだろう。

 

『まぁ……キャロルの目論見自体は瓦解させるのは簡単だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 本当に……皮肉だな。全人類を改造する事を目論んだシェム・ハがそれを止めたキャロルの野望を……なんてね。

 

『恐らくだがキャロルは全ての事象を逆算して行っていた筈だ。我のこの説明すらも……な』 

 

 未来を洗脳した時点でもしかしなくても……わかっていたのかもしれないね。

 

『故に……今は身体を休め決戦に備えよ。全ては次の戦いで決まる。何もかもか……な』

 

 その言葉は……とても重い言葉となった。

 




キャロルは……全てを見透かして行動していた!?恐ろしい……

「いや……作者はキャロルを嫁扱いしてるじゃん……」

黙らっしゃい修治!そもそも……お前がフラグ立てなきゃこんな事には!

「なんだと作者ァ!ぶっ潰す!」


「いや〜……しゅう君と作者が争っているのでここは私が……。よろしければ皆様からの高評価・感想・お気に入り登録・メッセージ等お待ちしています!」





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遠坂邸の戦い

最終話まで後5話……自動人形第1戦。

その組み合わせは……切っても切れない縁の元に……




〜〜クリスside〜〜

 

「ほう……? 随分と私に対して頭数を並べたものだな。地味に足止めのみで終わると思っていたぞ?」

 

「お生憎様。遠坂の当主としては見過ごせないのよ。貴女達の目的が修治君なのはわかっているわ。だけど……このメンツでアンタはボコる。コレは私の八つ当たりなのよ?」 

 

「それに……俺のスキルが唯一お前さんの天敵とも言えるからよぉ……当然の人選だろ??」

 

 凛はある意味この聖杯戦争で想い人の士郎に告る覚悟を決めた。だけど……それはそれとしてキャロルの企みの危険性を充分識ってる。胸の中から燻る想い……その強さをあたし達は誰よりも知ってるからなぁ……。

 

「結局……誰よりも一途なのはキャロルなのかもしれないな……」

 

「派手にわかっているようだなクリス。そうだ……マスターは花婿様の事をお前達の誰よりも愛している。それこそ嘗てのマスター自身の命題が霞む程の情熱だ」

 

「ええ。修治君の記憶……そしてイザークさんからの情報どその事実は理解してるわ。だけど……この世界を壊す事は許せないわよ? 私が士郎と結ばれる為にね?」

 

「なるほどな。派手に理解した。愛する者と結ばれたい乙女よ……私が地味に相手をしてやろう。マスターの想いを……汚さぬ為に……な?」

 

ミスティック・コイン! 

 

 レイアはノーモーションでコインを飛ばしてきた! チッ! 今の掛け合いの間に準備を終えてたのかよ! 

 

地味に油断していたな! このままつまらない戦いにはしないで貰うぞ! 

 

「冗談抜かさないで貰うぜ! そんな簡単にやられるつもりもなんんでなぁ!」

 

矢避けの加護! 

 

 ランサーがあたし達の前に立つとレイアのコインが勝手に逸れた。なるほど……コレがランサーの……

 

ランサーありがとう! 私も潰すつもりでいくわ! クラスカード〈アーチャー〉夢幻召喚(インストール)! 

 

行くぞアマルガム! あたし達の軌跡を見せてやるぞ! 

 

 あたしと凛は自身の持てる最も信頼する力を解放した。するとレイアも……その口元を緩ませた。

 

「射撃に特化した……か。良いだろう! 派手に撃ち合うとしよう!」

 

エクスプロージョン・コイン! 

 

 無数のコインを投擲してきたかと思えばそのコインは反発し合って複雑な動きをしていた。だけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「全部撃ち落としてやるからなぁ!」

 

BILLION MAIDEN! 

 

 あたしはレイアのコインを1()()()()()()()()()()()

 

「お前は地味に忘れているぞ!」

 

「って……訳でもねぇんだぜ!」

 

 レイアはトンファーを構えてあたしへと1撃をかまそうとしたが、その行動はランサーに阻まれた。

 

「ついでに蜂の巣にできるのは私も同じよ!」

 

魔力放出(宝石)! 

 

 凛は高めた魔力を自身の力へと還元して着実に機会を伺っていた。

 

「しかし……私も地味に()()()()()()()

 

「うおぉ!? なんて膂力だよ!」

 

 トンファーと打ち合っていたランサーが苦悶の声を上げた。なら……あたしも前衛に出るべき……だな! 

 

てめぇとあたしは切っても切れねぇ腐れ縁だ! なら……てめぇを倒すのはあたしなんだよ! 

 

MEGA DETH PARTY! 

 

 あたしはランサーに構わずミサイルをぶっ放した。普通なら躊躇うどころか悪手だが……()()()()()()()全力で戦っている。本人の意思に構わず……な。

 

射手との戦いを無粋にするのは好かねぇが……今はマスターの願いを叶える為に文句は言わねぇんだよ! 

 

「なるほど……クー・フーリンはタイマンを好む逸話があるが……今はその矜持すらもマスターに預けた……か。その覚悟……この私が派手に理解したぞ! 

 

ランサー! クリス! 私の魔力を持って行きなさい! 

 

美の顕現! 

 

 力が……溢れてくる。エクスドライブにも……匹敵する程の魔力だ。

 

「だけど……コレだけの力があればあたしの戦い方も変えられるぞ!」

 

RED HOT BLAZE! 

 

 あたしはライフルを構えてそのままレイアへと殴りかかった。いつかのあたしと……同じように。

 

その動きは派手に識っているぞ! 

 

「んなこと承知の上だよ!」

 

「俺を忘れるなや!」

 

 レイアはあたしの動きに先んじてトンファーを突き出そうとしたが、それをランサーは許せない。常にレイアの行動を妨害して……凛への意識を確実に削ぎに来ていた。

 

「もちろん凛の力は活用するぞ!」

 

 あたしは力任せにライフルを凪いだが……凛の支援のおかげで負担を感じる事は無かった。

 

ギアが重くねぇ! コレは……凛の力か! 

 

「なるほどな。()()()()()()()()()()()()。しかし……私自身の力が届かぬならば……マスターの力はどうだろうなぁ! 

 

 レイアはとうとう黄金の礼装の真の力を解放し始めた。今まではそれを纏うも本人の技で戦っていたが、今はそれすらも止めたみたいだな。

 

マスターの力の一端を派手に見せてやるぞ! 

 

ここで潰れろぉッ!! 

 

「チィ……なんてえげつねえ火力だよ!」

 

「グアアァァァ!」

 

 あたしとランサーはその爆発に吹き飛ばされてしまった。しかし……この程度で諦めるわけには……いかないからなぁ。

 

「この派手な力はマスターと花婿様の祝福をする為の力だ。故に……派手な火力でお前達を叩き潰す! そしてそれを祝福の花火としよう!」

 

 レイアの火力は……あたし達の知るキャロルを……優に超えていた。コレが……修治の言ってた力……か。

 

「ならその火力と競り合うのは私の役目よ! このサイ冬木の霊脈が潰れても構わないわ! 今貴女達を倒さないと世界が終わるから!」

 

 凛がグラガンナに跨り戦場を駆け始めた。どうやら……()()()()()()()()()()()

 

諸共やれよ凛! 今のレイア相手に遠慮なんていらねぇ! あたし達諸共やれ! 

 

「……イシュタルの弓……か。派手に撃ち合うとしよう!」

 

 レイアは今の火力を扱いながらさっきの技術を落とさずに凛を狙っていた。つまり……()()()()()わけか。

 

ランサー! 動けるなら全力でレイアを抑えるぞ! ()()()()()()()()()()()()

 

みたいだな! 宝具を見せてやるよ! 

 

 ランサーはそう告げると()()()()()()()

 

「派手に面白いな! ルーン魔術か!」

 

 ランサーは槍術には劣るけど凛の支援の為にルーンを展開した。それでも……あたしの眼で追いきれてねぇ程の速さだ。

 

焼き尽くせ木々の巨人! 灼き尽くす炎の檻 (ウィッカーマン)! 

 

 巨大な人形が現れたかと思うと炎を纏いながらレイアへと倒れかかった。そして……その攻撃範囲はあたしの予想を遙かに超えていた。

 

()()()()()()()()()()クリス……私の後ろに転移して全力の1撃を放ちなさい!」

 

 するとあたしは凛の跨がるグラガンナへと騎乗していた。

 

おおぉぉぉぉぉぉ!!! 

 

インヘリット・ラスター! 

 

 炎に包まれるレイアは全力を込めて1撃を放った。その黄金の輝きは炎の巨人を粉々にして尚も威力は高い程だった。

 

「おいおいまじかよ……。これでも結構強い宝具なんだかなぁ……」

 

 しかし稼いだ時間は充分だ。あたしは既に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ARTHEMIS ROAR! 

 

チッ! 今の攻撃は私の視界を……! 

 

 レイアは気づいたみたいだが……()()()()

 

コレがあたし様の全力だよぉ! 

 

 あたしはこの弓の1撃に()()()()()()。そして……その1撃はレイアを捉える事が出来た。

 

「……コレがお前の成長の……。派手に見事だクリス! お前の力……確かに受け止めたぞ! 

 

寝ぼけんなよレイア! まだ()()()()()()()は終わってないぜ! 

 

「なんだと!? …………そういう事か! 

 

 既に凛は宝具の詠唱を始めた。後は……全てを凛に託すだけだ。

 

飛ぶわよ、マアンナ! ゲートオープン! ……ふふっ、光栄に思いなさい? これが私の、全力全霊……! 打ち砕け!! 山脈震撼す明星の薪 ( アンガルタ・キガルシュ)!!! 

 

 既に上空に転移していた凛の1撃は……体勢を崩したレイアには充分な威力となった。

 

「うおおおおぉぉぉおぉぉぉ!!」

 

 そして攻撃が終わり煙が晴れると……ひび割れた黄金が辺りに散乱していた。

 

「マスターの……インヘリット…………ラスター…………が……」

 

 そしてとうとうレイアは前のめりに倒れた。

 

「ジェム……持ってるだろ? あたしは……修治の活躍……いや……、選択を見届ける。文句は……ねぇだろう?」

 

「ふっ……派手に同感だ。私も……マスターの……戦いを……見届ける……つもり……だからな……」

 

 あたしはレイアに肩を貸して凛へと向いた。

 

()()()()()()

 

「ええ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 凛にそう告げたあたし達は……修治がいると思われる戦場へと……()()()()()()()()()()()転移した。




クリスは因縁の相手を下した。そして……修治の戦う柳洞寺に向かう。

次はファラさんとの戦いを投稿します!

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衛宮邸の襲撃者

最終話まで残り4話……

自動人形第2戦!ファラさんと相対するのはやはり……


〜〜奏〜〜

 

 そろそろ……来るだろうな……。

 

「やはり……お前だな……ファラ……」

 

「ええ……。今度は双翼の歌を聞きに来ましたわよ? 翼ちゃん達が……私の為に歌うのでしょう? 楽しみよ?」

 

「違うな。あたし達が歌うのはお前の為じゃあねぇよ。修治の為だぜ?」

 

「ふふっ……もうすぐ世界が滅びてしまうのですよ? であれば……私の為に歌って貰えるかしら?」

 

 確かにその可能性は()()()()()。だけど……それでもあたし達が諦める理由にはならないな。

 

「まぁ……行こうぜ? そろそろあたし達が始めないと……他の連中に申し訳立たないからよ?」

 

蒼ノ一閃! 

 

「おやおや剣技では私には敵いませんわよ?」

 

剣殺し(ソードブレイカー)! 

 

今よ奏! 

 

任せな翼! 

 

LAST∞METEOR! 

 

 翼はアームドギアを攻撃されたが……幸い今はサーヴァントだ。つまり……まだ反撃する機会は残っている。

 

「とはいえ……翼の剣がこうも簡単に折られた訳な。コレが……〈哲学の牙〉って……やつだろ?」

 

「ええ。しかし……そう驚きがありませんわね? それは……中々予想外ですわよ?」

 

「しかし……私とてお前の相手は幾度目かも忘れてた訳ではない。先の破壊が……油断のみだと思うなよ! 

 

逆羅刹! 

 

 翼の回転が始まりファラへと肉薄したが……ファラの余裕は消えていない。なら……そこはあたしの役割だな? 

 

アルカ・ノイズはどうしたよ! まさかタネ切れって……訳じゃあ無いだろう! 

 

「ええ。確かにマスターはアルカ・ノイズを制作・供給していましたわ。しかし……今のマスターの命題をご存知ですよね?」

 

「キャロルの命題……やはり修治が目的か! 

 

「ええ。花婿様をお迎えする事が私達の1つ目の役割です。しかし……私達の事を祝福してくださらない分からず屋は……灸を据えるのもまた命令の1つですわよ?」

 

 だろうな。あたし達を倒したいなら……戦力を1箇所に集中させれば事足りるだろうな。特に……柳洞寺にでも……集めれば。

 

「だけどそれをしないのは花婿様がお心を傷つけてしまわないようにするためですわよ?」

 

「知ってるぞ? 故にファラ……お前はここで倒すぞ! 

 

 翼は再度ファラへと接近した。しかも……自らの嘗ての迷いを切り裂いて……

 

炎鳥極翔斬! 

 

流石は翼ちゃんね! 嘗て自分の犯した過ちは繰り返さないと言うのね! でも……()()()()()()()()()()()()()

 

 ファラは不敵に笑っていた。この場合……嫌な予感しかしない。翼……早まるなよ? 

 

翼! 今のあたし達は双翼だ! どちらかが欠けたらそれは……あたし達らしくねぇ! だから行くぞぉ! 

 

「承知している! 奏の想いは……わかっているさ!」

 

影縫い! 

 

「それでは反撃を…………おや? コレは中々……」

 

 ファラは自分の身体が思うように動かなかった事に気づき、周囲を見渡すと既に翼の放った短剣が影縫を決めていた。

 

影縫い……ですか。確かに私の動きを封じれば剣殺しも使いにくい状態を作れるかもしれないです。しかし……今の私達は花婿様をマスターと引き合わせる使命があります! 故に遊びは終わりですよ! 

 

 ファラは風を吹き荒れさせてあたし達の視界を塞ぎに来た。だけど……あたし達も負けねぇぞ! 

 

STARDUST∞FOTON! 

 

 しかし……あたしの竜巻はファラの姿を捉える事はできなかった。

 

「そろそろ本気で行きますわよ?」

 

ストーム・ダンス! 

 

 ファラのやつ……あたしの竜巻をこうもあっさりと……

 

「さらにもうひと押し添えますわよ?」

 

トルネード・バイレ! 

 

ッ!? しまった翼! 分断させるな! 

 

「奏……どういう事!」

 

 困惑する翼の首をあたしは引き……翼との分断を防ぐ。しかし……突然首を掴まれた翼は息が荒れていた。

 

「ゲホッ! ゴホッ! 奏……何を……」

 

「わりぃが翼……アレを見ればわかるぜ?」

 

 あたし達の視線の先は……派手に破壊された土蔵があった。士郎……悪いな。

 

「何て……規模だ。ファラ……あの出力はどこから……」

 

「お答えしますわよ? まぁ……タネはマスターの所持する聖杯ですので……」

 

「やっぱり聖杯だよな。なら……確認だ。聖杯は……()()()()()()()

 

 するとファラは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「花婿様を……お待ちしていますがどうしましたか?」

 

「やっぱり……キャロルが……既に……」

 

「奏……どういう事なの?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「御名答。流石は監督役と言う事ですね?」

 

 つまり……桜と響の敗北を聖杯が認識した。そして満身創痍なのを見計らってあたし達が動けないタイミングで聖杯を手に入れた。多分そういう事だな? 

 

「では……そろそろ口封じと無力化しますわよ?」

 

この攻撃で消えろ! 

 

 ファラの放った斬撃は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「修治達の帰りを待って笑顔で出迎える! その為ならあたし達は何だってやるんだよ!」

 

修治がいたから私達は私達らしくあれた! ならば私達は修治が修治らしく過ごせる為に戦うまでだ! 

 

「良いですよ! 私達もマスターが真に見つけた命題を見届けるのです! ならばこそ……どちらの信念がまさるか最後の斬り合いを致しましょう! 

 

 そうファラが告げた時……()()()()()()()

 

「戦士の戦いは……かくも高潔で有るべきだ。しかし……ここはシロウの家でもある。カナデ……ツバサ……私も参戦しましょう。コレ以上シロウの家を壊させてはなりませんから……」

 

ストライク・エア! 

 

 アルトリアの迷い無き風の1撃は……今までで1番綺麗だった。

 

「なるほど……風の力を纏う剣士……ですか。しかし……()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「だからどうした? その程度で臆しては英霊の名が泣く。つまり……その程度で諦める理由にはならないぞ! 

 

 アルトリアは自身の宝具である、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の封印を解いた。しかし……まだ真名解放は行わ無いみたいだな。

 

せああぁ!! 

 

ぐうぅぅ……

 

 アルトリアが振り下ろした剣を受け止めたファラは力ずくで下がらされた。

 

「なるほど……その剣は決して折れぬ剣と言う訳ですか。では……私の哲学と競り合う唯一の剣……という事ですね……」

 

ツバサ! カナデ! 初撃は私が畳かけます! お2人は追撃をお願いします! 

 

「なら……援護は任せな! 最高の1撃を放たせてやるよ!」

 

「私達の誇り……その身で刻むが良い!」

 

ええ……私もマスターの為に全力を尽くしますわ! まずは貴女方を正面から打ち破りましょう! 

 

 アルトリアは宝具の貯めに入った。ここが……あたし達の勝負のタイミングだ! 

 

束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるが良い!!」『約束された勝利の剣』(エクス……カリバアァー)!! 

 

「ッ!? コレが……星の聖剣の力ですか! 私も……全力で打ち破りますわよ!」

 

エレメンタル・ブレイド! 

 

 キャロルの四色の光とアルトリアの聖剣の光は互いに譲らない1撃へと変わった。なら……あたし達は

 

「合わせろ翼! この1撃できめるぞ!」

 

「私達はどこまでも飛んで行けるんだ!!」

 

双星の鐵槌! 

 

 あたしと翼のコンビネーション・アタックは……聖剣の攻撃を防いでいたアルトリアの攻撃への対処に追われて反応が遅れた。そして……

 

「うあぁぁぁ!!」

 

 致命的なダメージを負ったファラは吹き飛ばされた。

 

「なるほど……コレが……両翼の力。そして……聖剣の力……なのね。素晴らしいまでの愛……だったわ……」

 

「さて……ファラ……ジェム……あるだろう? 最高の戦いを……見に行かないか?」

 

「ふふっ……確かに……マスターの本心を……見届けたい……ですわね……」

 

「じゃあ翼……アルトリア……()()()()()()()()

 

「ええ。シロウの帰る場所……必ず守り抜きます!」

 

「必ず……帰ってきてね……奏?」

 

「ああ! 約束だよ! 

 

 あたしは……その言葉を胸に柳洞寺に転移した。修治達の……最期の……そして最高の……戦いの……為に……な?




ファラさんの撃破。しかし……それもまたキャロルの計画の内だった。聖杯を手にしたキャロルは何を……

次回は派手にガリィちゃんとの戦いをお送り致します!

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アインツベルン城の戦い

最終話まで残り3話!

第3戦の相手はガリィちゃん!

相対するのは当然マリアさん。そして……

本編へどうぞ!


〜〜マリアside〜〜

 

「やっぱり……貴女がいるわよね……ガリィ?」

 

「あ〜……アイドル大統領マリアか……。それと……イリヤスフィール・フォン・アインツベルン……ね。確かにアタシ相手に戦力を割けない理由はわかるわよ? でも……花婿サマはそれでも良いのかしら?」

 

「お生憎様……既に私達の命運は託したわ。後は……貴女に横槍を入れさせ無いだけよ?」

 

「それに……私達のお城の近くに現れた以上は潰すわよ?」  

 

 マリアとイリヤはガリィへと向かいあった。そして……とうとうその武器を抜いた。

 

Seilien coffin airget lamh tron〜♪ 

 

クラスカード〈アルターエゴ〉! 夢幻召喚(インストール)! 

 

 マリアはアガートラームを、イリヤはシトナイの力を解放した。

 

「せあああ!!」

 

SERE†NADE! 

 

カムイユカラ! 

 

 私はガリィへと唐突に距離を詰めて嘗てガリィを両断した〈SERE†NADE〉の動きをしてガリィを叩き斬った。しかし……やはりそれは偽物の姿だった。

 

「開幕早々に大技? 随分勝負を急いでいるかしら?」

 

「いいえ。でもそうね……ガリィに早く倒れて欲しいのは事実よ? だって……貴女を1番に倒せば私は修治に甘えられるもの!」

 

「そうね……私も士郎を甘やかしたい気分ね。だからこそ私は引かないわよ?」

 

 するとガリィは雰囲気を変えた。それは……あのガリィからは考えられない程真剣な雰囲気だった。

 

「花婿サマに浮かれているのね。流石はピンク頭……ガリィちゃんには真似出来ないわぁ……」 

 

 …………兆発ね。乗る必要は無い。私達の目的は()()()()()()()。可能なら撃破。それだけよ? 

 

「なら氷漬けになるかしら? そうすれば貴女らしい色に染まるわよ?」

 

「う〜ん……悪く無いけどぉ〜……ガリィちゃんは優雅だからガリィちゃんなの。動かないガリィちゃんはつまらないわよ?」

 

アイシクルアサルト! 

 

 ガリィが氷を射出したかと思えば一瞬で周囲の温度が低下して氷漬けになった。ここが雪原でなければ被害は甚大だったわね。

 

「恐ろしい出力ね。確かに修治が恐れただけの事はあるわ。だけどね? 私達は負けられないのよ。もちろん……貴女にも主の為に戦うのでしょうけど……愛する乙女の底力を見せてあげるわ! 

 

 イリヤは周囲の冷気を操り鎧を形成した。それは……キャロルの魔力も間接的に取り込んだ事になる。

 

「へえ~……マスターの力を間接的とはいえ……ね。良いわ! ガリィちゃんが託されたマスターの力……その身に刻みなさい!」

 

させないわよガリィ! 

 

HORIZON†CANNON! 

 

 私は不意打ちに近い形でガリィへの砲撃を放った。しかし……聞こえた声は無情だった。

 

「今までなら良い1撃だけど……今のガリィちゃんには通じないわよ? もちろん……アンタが本気でやるなら変わるけどよ! 

 

 ガリィの動きは早く……さらには氷以外の属性のエネルギーを放って来た! 

 

「この……威力……ガリィ! 貴女一体どれほど多くの想い出を! 

 

「…………違う! この人形さては! 

 

「おせーんだよぉ!」

 

「チィ!」

 

「グウゥゥ!!」

 

 私達はガリィが生成した()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ガリィ……貴女……()()()()()()()()()()()()()

 

 記憶と明らかに違うガリィの出力……それは……修治の言葉を想起させていた。

 

「〈エンシェント・バースト〉〈エレメンタル・ユニオン〉〈エレメンタル・ブレイド〉恐らくこの3個を他の自動人形達が持っている筈デス。だから……もしかしたら……」

 

 修治はそれ以上を言わなかった。だけど今ならわかる。

 

「それを超えてこそ私達は強くなれるのよ!」

 

 私は蛇腹剣を取り出してガリィを凪いだ。しかし……それは……蜃気楼のように消えてしまった。

 

『相変わらず短絡的な攻撃ね。出力は上がっても根底は変わらないのね?』

 

 そう告げて……いたガリィだが……動きがぎごちなくなった場所があった。

 

「そこよ!」

 

「っ……! 何をしたんだよ!」

 

「それは……私の力よ? シトナイの力……そしてこの敷地は私の城。つまり地の利は私達にあるわ? そろそろ本気を出したらどうかしら?」

 

 するとガリィは表情を真剣なものへと変化させた。

 

「なるほどね。アタシでも舐めたらやられる訳……か。じゃあこの1撃を凌いでみなよ!」

 

この攻撃で消えろ! 

 

 ガリィの礼装からキャロルの声が聞こえた気がしたが……私達は恐れていない。

 

スノーフェアリー! 

 

 〈ジェネレーター! 

 

 イリヤが受け止めて私がその力を分散させた。しかし……攻撃は想像以上に重い1撃となった。

 

「霊基が……悲鳴を上げてるわね。だけど……まだ私はやれるわよ!」

 

 イリヤは今の1撃で満身創痍だった。しかし……今のガリィを倒さねば……修治は……

 

感情凍結! 

 

「ッ! てめぇは倒れた筈じゃあ無かったのかよ!」

 

「ええ……中々のダメージを受けたわ。だけどね……感情を凍らせた。後しばらくは戦える。だから……これで決めるわよ!」

 

「宝具だな! 来いよシトナイ! アタシにはその力は通じないからさぁ!」

 

 イリヤは……()()()()()

 

「筋系、神経系、血管系、リンパ系——疑似魔術回路変換、完了! ……これがわたしの全て……! 多元重奏飽和砲撃 ( クウィンテットフォイア)!! 

 

「ッ!? 違う宝具かよ!?」

 

 ガリィはデータに無い宝具の展開からの1撃を防げずに直撃を許した。しかし……それでもまだ立ち上がるには、充分な体力を残していた。

 

「マリア……後は……任せたわよ……

 

「ええ……この勝機は逃さないわ!」

 

 私が覚悟を決めた時……別の声が聞こえた。

 

「クラスカードアサシン……夢幻召喚(インストール)!」

 

「へえ~……1日で動けるどころか……ソレをな……」

 

「悪いですけど時間も無いので1撃で決めます。マリアさんは援護をお願いします!」

 

「任せなさい!」

 

 私は蛇腹剣をガリィに巻きつけた。

 

「チッ! 面倒な事して……自爆覚悟かよ!」

 

 私に一瞬気を取られた。そして……それが……私の狙いだった。

 

愛もてかれるは恋無きなり( カーマ・サンモーハナ)! 愛の矢という花が、今……虚ろの天に咲き乱れる。それは、焼かれた私の痛みの果て。身無き神のあるところ。私のナカで、どうか無限に……微睡んで」

 

 その一瞬で桜はカーマの宝具の詠唱を済ませてガリィに愛の矢を打ち込んだ! 

 

チイィィィィ!! カーマの宝具……ここまで厄介とは! 

 

 ガリィの足が完全に止まった! 最後の好機! 

 

EMPRESS†REBELLION! 

 

があぁ!! 

 

 ガリィは完全に体勢を崩して直撃した。……なるほどね。……コレが……カーマの……

 

「これで勝負アリ……かしら? ……ガリィ?」

 

「チッ! 強くなったなマリア・カデンツァヴナ・イヴ。まぁ……花婿サマの戦いは始まったわよ?」

 

「充分よ。ここで貴女を倒せたならね。でも……そうね。ジェムがあるなら特等席で見に行こうかしら?」

 

 するとガリィは面白くなさそうにジェムを取り出した。

 

「アタシも同じ事を考えていたわ。マスターの未来……ソレを見届ける為に……ね?」

 

「なら……私も行くわ。修治の選択を……この眼で……ね?」

 

 そして私とガリィは……修治達が戦う柳洞寺に向かった。修治……私はどんな選択をしても受け入れるわよ?

 

 

 

 




う〜〜ん……ガリィちゃん強い!(当然)

いやぁ〜惚れ惚れする程彼女らしい戦いです。

最後の戦いは当然ミカちゃんと切調コンビとなります!明日の投稿をお待ちください。

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冬木教会の待ち人

最終話まで残り2話!

最後の自動人形ミカちゃんと戦うのはどうやら……?




冬木教会……それはこの土地で有数の霊脈だ。そして……今回の聖杯戦争の監督役が滞在する拠点だ。しかし……そこには今()()()()()()()()()()()()

 

「やっぱりミカの相手はお前達だゾ! その覚悟……とくとミカに見せるゾ!」

 

「当然あたし達は!」

 

「ミカを倒すよ!」

 

「まぁ……今回は私も参加させて貰うわよ?」

 

「憂さ晴らし……だけどね?」

 

 ミカの前に立つのは4人。修治のサーヴァントである切歌・調はミカと浅からぬ因縁を持っているが、今回洗脳された()()()()()()()……そして事の発端の方割れとも言える()()() ()()()もその横にいる。

 

「でもまぁ……ミカの相手は2()()()()()()

 

「え……?」

 

「2人……だけ?」

 

 ミカの発言にこの場の人物達は動揺を隠せなかった。

 

「そうだゾ。花婿サマの想い人はわかっているゾ。だから……マスターとの戦いに無粋な横槍を入れさせ無いのがあたし達の役割だゾ」

 

「キャロルの……戦い? まさか……キャロルは()()()()()()()()()()()()()()

 

 サンジェルマンはあの夜……受けたダメージの影響で会議の内容が一部朧げとなっていた。しかし……()()()()()()()()()()()

 

「サンジェルマンの五感の情報がマスターへ筒抜けになっていたゾ。お前達は前例を識ってる筈だゾ?」

 

「ッ!」

 

 サンジェルマン以外の人物達はその言葉を聞くのは初めてではないので、最悪の予想としていた。

 

「まぁ……前置きが長くなったから指名するゾ。暁 切歌そして月読 調……お前達が花婿サマに相応しいか……最後のテストをしてやるゾ! 

 

 ミカはカーボンロッドを展開して2人へと殴りかかった! 

 

切ちゃん! 私達の全力を! 

 

ミカにぶつけるデース! 

 

 切歌と調は修治への想いを胸に……最高の歌を胸に奏でた。

 

Zeios igalima raizen tron〜♪ 

 

Various shul shagana tron〜♪ 

 

「エクスドライブ……やはり……彼女達が修治の……」

 

「それ以上は無粋ですよ。ミカちゃんが何故2人を指名したのか……それがしゅう君の答えですから……」

 

 未来の瞳から涙が零れていたが、それを拭う者はこの場にはいなかった。

 

切・呪リeッTぉ! 

 

α式 百輪廻! 

 

焦って大技に頼らないところは評価するぞゾ! 

 

 ミカは何事も無いかのように射出された鋸と鎌の斬撃を火球で相殺した。

 

クリスタルレイン! 

 

「切ちゃん! あの技は!」

 

「相殺出来ないなら回避デース!」

 

 調の掛け声に反応した切歌は禁月輪で駆ける調の手を取り回避に成功した。しかし……状況はジリ貧とも言える程だ。

 

「冷静さは……大事だけど……」

 

「あたし達は……負けたく無いデス……」

 

「わかっているゾ。お前達は本当に花婿サマに愛されているゾ。マスターが嫉妬する程だゾ……」

 

 そう……修治はマリア達に貞操を食われた後……()()()()()()()()()()()()()2()()()()だ。

 

「花婿サマは……わかっているんだゾ。2人への想いを……口にしないでいたのは……マスターへの未練があったからだゾ。だけど……それも今日までの話だゾ?」

 

「何を……言ってるの?」

 

「キャロルは……何をするつもりなんデスか?」

 

「その答えは……アタシを倒したら教えてやるゾ! 

 

ベネレイトロッド! 

 

「調……あたしを信じて欲しいデス!」

 

「切ちゃん! アレで行くよ!」

 

 2人は迫り来るミカの攻撃の前に1つの覚悟を決めた。

 

「もし先輩がいたら……絶対に許してくれないデスね……」

 

「多分令呪を使ってでも状況を打開しようとしたはず……」

 

「「でも……(あたし)達は恐れて無い(デス)! 必ず先輩(お兄ちゃん)と再会できると信じているから!」」

 

 2人が口ずさむ歌は……その表情から容易に想像がついた。

 

「見せて見るゾ! ザババの絶唱を!」

 

Gatrandis babel ziggurat edenal〜♪ 

 

絶唱……それはシンフォギアの決戦機能の1つだ。

 

Emustolronzen fine el baral zizzl〜♪ 

 

 しかし……その使用には使用者の負担は考慮されていない。

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 故に修治は無意識下でも使用を忌避していた。

 

Emustolronzen fine el zizzl

 

 大切な人間が……離れてしまう気がしたから……。

 

「あたし達は……覚悟しているデス!」

 

「ミカを倒すなら……全力じゃないと意味が無いから! 

 

「そうだ…………そうだゾ!! もっとアタシを楽しませるゾ! 

 

これで崩す! 

 

 調はアームドギアのヨーヨーを伸ばしてミカのカーボンロッドの破壊を試みた! 

 

「良いゾ……その勢いだゾ! それでこそ花婿サマの隣を歩む者だゾ! 

 

「切ちゃん! 今!」

 

「任せるデス調!」

 

形勢逆転デースッ! 

 

 切歌の拡張されたアームドギアがミカの右腕を捉えた。

 

「チィ! 中々重たい1撃だゾ! だけど……簡単に負けるアタシじゃないゾ! 

 

 ミカは2人を倒す為に……限界を超えた1撃を放つ事を決めた。

 

「お前達の覚悟……その証明にこの1撃を凌いでアタシに勝利してみせるゾ!」

 

エンシェント・バースト! 

 

 嘗てキャロルが放った非常に効率的なエネルギーを運用したその1撃は……今のミカの出力で行えば周囲一帯を焦土とする程の1撃だ。

 

私が受け止めるから……お願い切ちゃん! この1撃で決めて! 

 

任せるデス調! アタシ達の絆は……誰にも負けないのデース! 

 

終Ω式・ディストピア! 

 

 調は自分のアームドギアを攻撃では無く防御に回した。それは……ミカを倒す想いも強いが……調の中ではもう1つの感情があったからだ。

 

(お兄ちゃんの……帰る場所は……私達の隣。だけど……想い出の場所を守る事ができるのも……私達!)

 

 その為に調は攻撃では無く防御を選択した。

 

月読 調! お前の覚悟はとくと見届けたゾ! 花婿サマの帰りを信じて自分のアームドギアを犠牲にしてでも守り抜く強さ……誇って良いゾ! 

 

 調のアームドギアはミカのエンシェント・バーストを受けて修復不可能な程破損していた。つまり……調は戦闘に於いて致命的な状況となった。しかし……それでも帰る場所を守る決心をして守り切った事をミカは称賛していた。

 

「調の稼いだ時間を無駄にはしないデス! ミカ……ここで倒すデス! 

 

終曲・バN堕ァァSuナッ血ィ! 

 

 切歌は分身が見える程高速で動き……そのギアから斬撃を放った。そして……追撃の竜巻をミカへと叩きつけた! 

 

その1撃は自分のアームドギアの耐久すらも度外視した1撃だゾ! アタシを倒す為の覚悟……ちゃんと見届けたゾ暁 切歌! 

 

 発生した竜巻の中で響いたミカの声に……切歌は不安を感じた。

 

「届かないんデスか……あたし達はまだ足りないんデスか!? 

 

 その切歌の肩を叩く者がいた。そう……調だ。

 

「切ちゃん……なら……私達の最後の1撃は……」

 

2人で一緒に……デスね!」

 

 調は禁月輪で最後の助走をつけた。そして切歌も……壊れる間際のアームドギアに最後の仕事をさせる。

 

「教会の天辺から行くよ切ちゃん!」

 

「コレがあたし達の最後の1撃デス!」

 

禁合β式・Zあ破刃惨無uうNN! 

 

「お前達の1撃……最後まで受けてやるゾ!」

 

 ミカはカーボンロッドを構えて2人の1撃を受け止めた。しかし……2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私の……シャルシュガナが……」

 

「あたしの……イガリマが……」

 

 ミカはその攻撃を凌ぎきるとカーボンロッドを投げ捨て……2人の頭に手を置いた。  

 

「お前達は強くなったゾ。花婿サマが心に決めただけの事はあるゾ」

 

「ミカ……どういうつもり?」

 

「あたし達は……負けた筈デス……」

 

「アタシは1言も()()()()()()()()()()? 

 

 その言葉に……この場所にいた全員の言葉が詰まった。

 

「…………どういう事なの?」

 

 未来の問い掛けにミカは迷い無く答えた。

 

「アタシの目的はザババの2人のテストだゾ。マスターの初恋は花婿サマだけど……花婿サマの心は揺れているゾ。なら……アタシは花婿サマが笑えるようにしてあげたいだけだゾ。もちろん2人がつまらないなら……そんな事をする必要も無いゾ?」

 

 ミカは……唯一修治の想いに寄り添った答えを告げた。

 

「何故……とは言わないわよ。嘗て修治を2人に届けたのは……貴女だったわね?」

 

 サンジェルマンは修治がミカに人質として連れ出された3度目の戦いの事を示唆していた。

 

「そうだゾ。花婿サマはその時……アタシにたくさんのお話をしてくれたゾ。だから……そんな花婿サマの事を応援したくなっただけだゾ。でも……マスターにも幸せになって欲しいからアタシは悩んだゾ……」

 

「だから私達には戦闘を……」

 

 未来も納得していた。そもそも……この2人が参戦しているならば……状況は変わっていただろう。しかし……それでも見届けたのは……

 

「マスターと花婿サマ達の戦いを見に行くゾ。もちろん連れて行くのは2人だけだゾ?」

 

 2人……切歌と調はミカの手を取った。

 

「ミカ……お願い。私達を……」

 

「先輩の勇姿を見届けたいんデス!」

 

「じゃあ掴まるぞ。直ぐに転移を始めるゾ!」

 

 そうして3人は……最後の決戦の舞台(柳洞寺)へと転移した。

 




必ずしも勝利する事が必要な訳では無いが……ミカとの戦いで2人はその想いの強さを証明した。

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柳洞寺の決戦

柳洞寺へと突入した3人の主人公達はキャロルと真の意味で向き合った。


 第1の聖杯が降臨した土地にして……今回の聖杯の降臨の地。それが柳洞寺だ。

 

「キャロル……僕を……待ってたんだね……」

 

「ああ……オレの愛する花婿よ。お前の心を射止める為に……オレはこれ程の事をして見せたぞ?」

 

「みたいだな。だけど……イザークさんから頼まれたんだよ。こんなやり方をさせたところで修治は笑わないぜ?」

 

「キャロルちゃん……私……どうしても……」

 

 この場の4名は想いがバラバラだ。キャロルの暴走を止めたい士郎。恋心を燻ぶらせ続ける響。自分の中の気持ちに整理のつかない修治。そして一途な想いの集大成を見せるキャロルだ。

 

「だけど……コレだけは言うべき……だね。ありがとうキャロル。僕は君のおかげでまだ生きていられたよ……」

 

「だが……それももうすぐ永遠に変わるぞ? 修治……オレ達が行くのは月……ムーンセル・オートマトンの準備は整った。後はオレとお前が過ごす楽園を作るだけだ。それも……独善的な嘗ての世界(ディストピア)ではない。それぞれの想いを尊重する理想の世界(ユートピア)をオレは目指している。修治の望む幸せを……オレと掴む為にな。その為に()()()()1つの命令を出しておいた」

 

 語られるキャロルの計画の全貌……それは……あまりにも大きな愛だった。正直……僕にキャロルの愛を背負う事は……()()()()()()。途中で僕の限界が訪れるから……。

 

「ごめんねキャロル。君の気持ちに応える事は……僕には……()()()()よ。だって……僕の気持ちは()()()()()()()()()……」

 

「そうか。やはり……暁 切歌と月読 調だな?」

 

「うん。2人の後輩に……僕は惚れてたみたいだから……」

 

「しゅう君……それじゃあ……私は……」

 

「ごめんね響。僕は響の気持ちにも応える事は……出来ないよ。だけど……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「イザークさんからの伝言は必要なさそうだな! なら……最後の戦いだ! クラスカードセイバー夢幻召喚(インストール)! 

 

「ありがとう士郎……隣を頼むよ! クラスカードアヴェンジャー! 夢幻召喚(インストール)! 

 

「しゅう君のお願い……そして()()1()()()()()()()()()()()()()()()に! 力を貸してガングニール! Balwisyall nescell gungnir tron〜♪ 

 

 響の聖詠が……今までで1番綺麗だと感じてしまった。

 

「では……最後の戦いの始まりだ!」

 

 キャロルは糸を張り巡らした。

 

士郎! この戦いは士郎の投影が重要だ! 僕達の動きは士郎にかかってる! 

 

決め手は修治だ! 俺はその為に動き続けるぞ! 

 

2人を支えるのは私の役目! だから……安心して背中は任せてよ! 

 

響と士郎と修治(3人の主人公達)は1つの目的の為にそれぞれの意思を1つに纏めた。奇しくも響を介して……。

 

「安心しろ修治! オレはお前を殺さない! 愛しいお前の死など見たくないのだ! 故に不死となって未来永劫オレの側にいて貰うぞ! 

 

 キャロルは修治を求め……士郎は聖杯を壊し……修治は日常への帰還を決め……響は2人の男子を支える。

 

1番槍は私だよ! 

 

我流・特大撃槍! 

 

 響は胸に燻る恋心をバネにしてキャロルへと肉薄して1撃を放とうとした。

 

流石は我が友だ! 修治に焦がれたお前は必ず1番に動くと確信していたぞ! 

 

 キャロルはダヴルダヴラを手繰り寄せて盾の様な形状をした。そして……響の右拳を受け止めるとその腕ごと絡め始めた。

 

響! 援護するぞ! 

 

 士郎は〈干将〉・〈莫耶〉の夫婦剣を投影してキャロルの糸の切断を試みた。

 

「させんぞ! お前の剣は高名にして誇り高き信念の塊だ! 故に近づけさせるつもりはないぞ! 

 

 キャロルが顕現させたのはエレメンタル・ブレイドだ。やっぱり……キャロルは並行世界の自分の力を……

 

「俺への警戒をそれだけしてくれたのは嬉しいが……父親の言葉を聞き届けられないクソガキには灸を据えてやるよ!」

 

「そうだな……。パパの静止を振り切ったオレは間違い無く親不孝だろうな……」

 

「キャロルちゃん……」

 

 拘束されている響も悲痛な表情をしていた。それはつまり……キャロルが()()()()()だということだ。

 

「憎しみの炎に焦がれて無いなら……僕は安心してるよキャロル。だけど……君の凶行は止めて見せるから! 

 

「いいぞ修治! もっとオレを求めてくれ! もっとオレを見つめてくれ! その為ならばオレは世界も滅ぼそう! オレは世界の壁すらも超えて見せよう! 何度でも修治を救うと約束しよう! 

 

 キャロルの一途なまでの愛はすごい。嘗て奇跡を否定したキャロルは……奇跡の源でもある()()()()()()()()()()。しかし……今のキャロルは僕への愛に焦がれている。それが正しいかは別の問題だけどね。

 

「私も……負けていられない!」

 

 響も拘束されて終わる程柔らかなだけの乙女じゃない。みんなを照らすお日様は……力強い輝きを放つから! 

 

うおおおぉぉぉぉぉぉ!! 

 

 響らしくキャロルの拘束を力任せに引き千切る。うん……響だ。

 

「少し糸が足らんかったか? まぁ……流石は我が友と言っておこう!」

 

油断してると足元掬われるぜ? くらっていけよ! 鶴翼三連! 

 

 士郎はキャロルが響へと意識を逸したほんの一瞬で投影を済ませてキャロルへと夫婦剣を投擲・接近という流れまで組んだ。コレが……村正の力か。

 

チッ! 流石は村正の力だな! ならばくらって行け……オレの1撃を! 

 

エレメンタル・ブレイド! 

 

 キャロルが4色の光を放ったかと思った次の瞬間……4属性の奔流が士郎を襲った! 

 

士郎! 援護するから凌いでくれ! 

 

竜の魔女(EX)! 

 

 士郎に火力の底上げをしてこの局面を凌ぎたい……が、どれほど有効か……

 

うおおおぉぉぉぉぉ!! キャロルちゃん……私は負けないからあぁぁあぁぁ! 

 

TESTAMENT! 

 

 響全力の攻撃に僕の支援まで乗ってる。いかにキャロルが強くても……これだけの攻撃は流石に……

 

ヴァイスハウプトを退けた攻撃だな! 面白い……オレにその全力をぶつけて来い! 

 

エレメンタル・ユニオン! 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

響ぃぃぃ!! クソっ! やっぱりキャロルは対応してきたか! 

 

 キャロルは直ぐにエレメンタル・ユニオンへと換装して響への対応にかかった。クソっ……換装がこれ程速いとは! 

 

自己改造(EX)! 

 

うおおぉぉぉぉぉぉぉ!! 

 

 僕は可能な限り火力を引き出す為に自己改造を施し……キャロルへと魔剣を振り下ろし……憎悪の炎を展開して攻撃をした。

 

「あぁ……修治……お前の攻撃は防御しない。何故なら……それがオレの愛だからだ! 修治からの全てをオレは無条件に受け止める! だから修治よ! オレの愛を受け止めてくれ! 

 

インヘリットラスター! 

 

 黄金錬成された1撃が僕の攻撃をたやすく飲み込んで尚も衰えない威力の輝きを放って来た! 

 

くそぉぉ!! まだだ……まだ僕は折れていないぞぉ! 

 

 こうなったら宝具だ! 宝具で確実にキャロルにダメージを! 

 

そうだ修治……オレに宝具を放って来い! 」  

 

うたかたの夢(A)! 

 

 キャロルの思惑通りだけど……僕と邪ンヌとの絆は本物だ。だから……確実に当てる! 

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒 (ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!」

 

 僕の全力だ……キャロルに届けぇぇ……!! 

 

続くぞ修治合わせてくれ! 真髄、解明。完成理念、収束。鍛造技法、臨界。冥土の土産に拝みやがれ! これが俺の『無元の剣製』(つむかりむらまさ)だぁぁ!! 

 

 士郎の……いや、村正の1撃は確実にキャロルを捉えていた。しかし……

 

「流石は3人の絆だ。ならば……オレも戦うとしよう。修治を傷つけまいとしていたが…………()()()()()()()()()()()()()

 

 こんなところでも……フィーネの言葉……か。だけど……今回だけは……否定しないとね。

 

 




う〜ん……キャロル強い!(当然!)この3人の共闘は最初で最後なのですが……それでも見せ場が……

次回最終話です!更新をお待ちください!

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聖杯戦争のオワリ

炎に包まれたキャロルと、対峙する3人の主人公達。そしてその場所には……戦いを終えた4組の人物も合流を果たす。




「では……オレも歌うとしよう」

 

 炎の中でキャロルは確かにそう告げた。

 

「そして……オレはこの瞬間を待っていた! 

 

 キャロルのダヴルダヴラが炎の中から僕を拘束した!? 

 

うわぁぁぁぁ──ぁぁ!!! 

 

修治! 

 

しゅう君! 

 

 響と士郎の声が聞こえたが……僕はキャロルの手元に引き寄せられてしまった。そして……僕を抱き寄せて拘束したキャロルは2人へと告げた。

 

「衛宮士郎……立花響……この戦いより手を引け。そうすれば……今すぐに()()()()をくれてやろう……」

 

 キャロルの掲げた聖杯は()()()()()()()()()

 

「やめ……ろ……2人……とも……ここ……で……ひい……たら……」

 

 掠れる程の声で僕は2人へと訴えるが……2人はキャロルを見据えていた。

 

「話にならないよキャロルちゃん……しゅう君を……返してよ……」

 

「お前の行動が解せないな。聖杯なんてそう簡単に渡せる代物じゃない。何が目的だ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

「ほう? ()()()()()()()()。しかし……少し遅すぎたぞ! 

 

 キャロルは()()()()()()()()()()()()()()

 

グアァァァァァァ!!!! 

 

 僕は悲鳴をあげて苦しむが……キャロルは悲痛な声を押し殺すように僕に語りかけた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 キャロルの囁きが終わる頃……複数の魔法陣が出現した。

 

修治! 無事……何があった!? 

 

修治! お前……なんで! 

 

修治! ……あぁぁぁ!! 

 

先輩! 今すぐに! 

 

待ってて! すぐ助けるから! 

 

「任務完了しましたわマスター……」

 

「アタシ達の役割は……」

 

「派手に達成しました」

 

「まっ……ガリィちゃん達ですから♪」

 

 僕達の戦いの舞台に転移してきたのはキャロルの配下である終末の4騎士(ナイトクォーツァー)。そして……〈奏さん〉•〈マリアさん〉•〈姉さん〉•〈切歌ちゃん〉•〈調ちゃん〉だ。

 

「ちょうど良いからよく見ておけ。オレの計画の最後の行程をなぁ! 

 

グアァァァァァァ!! 

 

 僕に埋め込まれた()()()が激しく反応している。一体……キャロルは……何を……

 

「修治……お前の身体は今より〈精神〉•〈〉•〈肉体〉へと分割された後にザババの2人とオレに割譲される。なぁに……既に修治の新たなホムンクルスの肉体は準備済だ。直ぐに終わるさ……」

 

やめるデスキャロル! 

 

そんな事をしたら! 

 

「安心しろ。危険性は無い。何故なら……この()()()()を使うからだ! 

 

 キャロルがレガリアを掲げた時……僕の身体は〈精神〉•〈魂〉•〈肉体〉へと分割されて…………精神と魂はホムンクルスへ……そして〈肉体〉には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がインストールされた。

 

「これは……一体……?」

 

「なんで……僕が……2人に……?」

 

()()()()()()()()()()()()()()。こうすれば修治は……オレとお前達を愛する事ができるだろう?」

 

「キャロル……貴女……」

 

「最初から……このつもりで……」

 

「あぁそれと……貴様もさっさと出てこい! 

 

 グィ〜〜〜ビタアァァァン!! 

 

うぎゃあぁあぁ!! 

 

 キャロルが聖杯へと糸を伸ばすと()()()()()()が引き摺り出されて地面へと叩きつけられた。

 

「いてぇぇよぉぉぉ……」

 

「この通り聖杯の浄化等とうの昔に終わっている。故に好きに使え。オレ達は修治さえいればそれでいいのだからな……」

 

「キャロル……やっぱり……」

 

「当然だろう? オレは修治に全てを捧げる。しかし……修治は心残りがある。ならば……分ければ良かろう? まぁ……その方法は乱暴だがな……」

 

「まぁでも……マスターにしては平和的ですよねぇ?」

 

「それだけ派手に惚れてたという事だろう?」

 

「私達も同じ気持ちではありますがね?」

 

「アタシもそう思うゾ!」

 

 4人の自動人形もキャロルの行動に納得していた。

 

「その修治を……どうするつもりなの?」

 

「当初の予定通りだ。月に連れて行き平和な世界を過ごす。それだけだ……」

 

「そしてその花婿様はザババの伴侶ですわよ? もちろん……マスターより刻印が刻まれておりますわ。花婿様がお2人のモノである証……それが何よりの印……ですわよ?」

 

「キャロル……貴女は……」

 

「そこまで…………あたし達の事を……」

 

「そういう事だ。では修治の身体は貰って行くぞ?」

 

 キャロルは僕(の今までの肉体)を連れて何処かへと転移して行った。多分行き先は……月……なんだろうけど……。

 

「なんだろう…………あっけなく終わってしまった感じが……するかな?」

 

「だな。流石に反応にこまる事が多すぎてあたし様もショートしてる……」

 

「計画が周到的過ぎて笑えねぇ。しかも……全員に利のある終わりとか……想像して無かった……」

 

「まぁそれでも……」

 

「先輩か戻って来てくれて嬉しいデース! キャロルも最後は良いことをしてくれたデース!」

 

 良いこと……か。僕にとっては……どうなんだろうな。

 

「まぁ……この身体も今まで同様の使い方で問題無いみたいだからね。これからもよろしくね……切歌ちゃん・調ちゃん……」

 

「修治先輩……」

 

「お兄ちゃん……」

 

 いや……ちょっと違うね。僕の言葉が足りて無いね。やっぱり2人には言い直そう。

 

「ごめん。少しだけ訂正するよ。…………() ()()()()()()……()() ()調()()()()……僕と生涯のパートナーとして側にいて欲しい。僕は2人の事を愛しているよ……」

 

修治……先輩! 

 

修治お兄ちゃん! 

 

「「こちらこそ! よろしくお願いします(デス)! 」」

 

 僕は2人の後輩を優しく抱きしめた。

 

「修治……それがお前の答え……なんだな?」

 

「あぁ……僕は後悔しないよ? だって……()()1()()()()()()()()()()()()!」

 

「そう……だな……。じゃあ……あたしはコイツを凛に届けるよ。この先も……付き合いが長そう……だからな……」  

 

「そう……だね。サーヴァントが全員生存だなんて……想定して無い……からね……」

 

「でも……()()()()()()()()()()()もあるわよ? 例えば……修治……貴方とね?」

 

 マリアさんの微笑みが僕にとっては何よりも怖かった。

 

「さて……それじゃあ帰ろうぜ? 俺達が求めていた……嘗ての平和な日常へな!」

 

「少し形が変わってしまったけどね!」

 

「しゅう君……私達……絶対に諦め無いから! 

 

「ふふっ……響さん……」

 

寝言は寝て言え……デスよ?」

 

絶対に! 今度こそ私と未来でしゅう君を振り向かせるんだからぁ! 

 

「それなら……あたし達も同じだな。修治を可愛いがるのは姉ちゃんの役目だろ?」

 

「肌を重ねた私達が除け者とは酷いわね? 私達も諦め無いわよ?」

 

「とうーぜん! 今度はあたしも参戦するぜ? だって……あたしも恋する乙女だからな! 

 

ちょっと!? みんな話を聞いてくださいよぉ〜! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市……それは聖杯戦争の開催の地にて……様々な〈願い〉と〈〉が交差した土地……。そこで生活する魔術師は……一癖も二癖もある人物達だ。そして……その魔術師達は強い愛を胸に秘めている。意中の男性を振り向かせる為に……常に想いを伝え合う。その想いが報われるかは……彼女達の歩む未来次第……だろう。

 

「だけど……この世界に溢れる愛は……きっと……何よりも大切なモノ……だろうね……」

 

せ〜んぱ〜い! こっちデスよ〜ー

 

わかってるよ〜! 直ぐに行くから〜! 

 

 まぁ……僕達の未来は間違い無く困難だらけだけど……彼女達が側にいれば……何でも乗り越えられる。……そんな気がするんだ……!  

 

 




まさかの修治分割!そして……連れて行かれた方の彼はキャロル一派とムーンセルの内部で月のサーヴァント達とドンパチする事になりますが……その先は皆様の想像にお任せします。

全50話お付き合いいただきありがとうございました!

よろしければ他の作品も読んでいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。


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