炎の呼吸は世界最強 (ギラサメ)
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オルクス大迷宮編
第一章 日常の終わり


新作です!

ありふれたは放送当時見た時面白かったのと鬼滅の刃の影響で書こうかどうか悩みましたが、書く事にしました。

オリ主はハジメ達がいた日本からではなく、別世界の日本からです。

ではどうぞ!

オリ主の容姿は閃乱カグラの焔を想像してください。


ごおぉぉぉ~!!

 

 見渡す限りの炎、周りも炎で包まれた見知らぬ場所。

 その炎の中に佇む小麦色の肌で髪をポニテールにした一人の女。

 そしてもう一人その女に対面するように黄色と赤色が混ざった髪をし、刀を持った男。

 

「お前……」

 

 

 

 

「ふぎゃー!!」

 

 突然の痛みと共に意識が戻る。

 ベッドから落ちたのか。

 

「痛てて」

 

 頭を擦りながら、辺りを見渡す。

 うん、いつもの私の部屋だ。私、東堂焔の部屋だ。

 

「はぁ~またか」

 

 私は部屋に飾ってあるポスターを見た。 

 あの炎の中にいた男だ。

 

「煉獄杏寿郎」

 

 

「ふあぁ~」

 

 欠伸しながら学校に向かっている。

 

『それにしてもここんとこ毎日同じ夢見るな。あの周りが炎に包まれて、そこに煉獄さんがいて』

 

 炎柱・煉獄杏寿郎。鬼滅の刃に出てくる鬼殺隊最強の柱の一人。正義感も強く、自分の責務を全うする熱い心を持った剣士だ。

 

 私は毎日同じ夢を見ているあの炎に包まれた場所にいて、煉獄さんと対面する。

 最初は嬉しかった。鬼滅の刃でも人気のあるキャラに会えたのだから。

 

 ところがどういう訳かそれ以降同じ夢を見るようになった。

 

「はあぁ~魘夢が私の夢を操っているのかな?」

 

 なんてちょっと冗談を言ってみた。

 魘夢。鬼の始祖鬼舞辻無惨の配下である十二鬼月・下弦の壱、彼は人を眠らせ、夢を見せる。さらに夢を操る事も出来る。あいつならそういうの出来そうだしな。

 

「考えたって仕方ねぇ」

 

私は鞄から音楽プレーヤーを出し、イヤホンを耳に挿した。

 

【紅蓮華】

 

「♬~♪~」

 

 本当いい曲だね!私はそのまま歌いながら、学校に向かった。

 

 

 しかし、この時私は知らなかった。

 

 

 こんないつもの日常が終わってしまう事を。

 

 

 

 

 

 

「あぁぁ~終わった」

 

 かったるい授業が終わって、下校している。えっ?部活?帰宅部だ。

 

『何しようかな?この後特に何もないし』

 

 そんな事を考えながら家に向かっていた。

 その時

 

「何だ!?」

 

 突然地面が輝きだした。何だこれ魔法陣?

その光は輝きを徐々に増していた。

 

「うわっ!?」

 

 眩しくなって目を閉じる。

 

 

 

「ん~ん?」

 

 私は閉じていた目を開いた。

 

「何だこれ?」

 

 辺りを見渡した。なんか壁画のようなものがあるし、まるで教会か何かだ。どうなっているんだ?

 テレビのドッキリか?だとしても手が込み過ぎている。

 まさか誘拐された?私は鞄を開けた。良かった、荷物は無事だ。

 

「あった」

 

 取り出したのはスマホだ。これで警察に。

 

「嘘」

 

 圏外になってる。これじゃ助けを呼べない。

 

「どうするんだよ」

 

 このままどうなるんだよ。

 

「おい……どうなってんだ?」

 

「な……何が起きたんだ?」

 

 ふと隣から騒がしい声が聞こえた。

 そこには同じ制服を着た男女が何人かいた。

 

『何だこいつら?私と同じ高校生か?人数的に一クラス分いるぞ』

 

 私が見た限りそんな感じだった。一体本当にどうなっているんだ?

 まさか鳴女の仕業!?

な訳ないよな。こんな状況でよくそんな事考えられるよな私。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後宜しくお願い致しますぞ」

 

 なんて考えていると教会の関係者らしき老人が喋った。

 何なんだよトータスって?どうなるんだよ私?

 




如何でしたか?

あまり自信ないですけど、頑張りたいと思います。

では次回に


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第二章 異世界トータス

出来ました!

では、どうぞ!


「どうぞ」

 

「あっ、どうも」

 

 メイドらしき女性が飲み物を置く。

 あれから私達はイシュタルという爺さんに案内されいくつもの椅子やテーブルが並べられた広間にいる。

 向かう際、周りが私を見てヒソヒソと何か話していた。まぁ、この中では目立つからな私って。

 

「さて、あなた方におかれましてはさぞ混乱されていることでしょう。一から説明させて頂きますので、まず私の話を最後までお聞きくだされ」

 

 イシュタルの爺さんの説明を簡単に言うとこうだ。

 

 まず、ここはトータスと呼ばれる世界。

 この世界には人間族、亜人族、魔人族の三つの種族がいる。

 今この世界では人間族と魔人族は戦争しており、人間族はヤバい状況にいる。

 それをなんとかすべくエヒトっていう神によって私達が呼ばれたとの事。

 

 何言ってるんだよ。私はずっと平和な日本に暮らしてきたんだぞ。授業で習った戦争だって私が生まれる何年も昔の話だ。

 そんな私が武器を持って戦うなんて出来る訳ないだろう。

 中学時代、不良だった時にした喧嘩とも異次元のレベルだって事も理解出来る。

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようって事でしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっとご家族も心配しているはずです!あなた達のしている事はただの誘拐ですよ!」

 

 女性が立ち上がって叫び出した。先生だったのか。

 

「お気持ちはお察しします。しかし、あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先程言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々があの場にいたのは、単に勇者様方を出迎える為と、エヒト様への祈りを捧げるため。人間に異世界へ干渉するような魔法は使えませんのであなた方が帰還出来るかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな」

 

「そ、そんな」

 

 そんな帰れないのかよ。

 

 もういつもの日常に戻れないのかよ。

 

 私はパニックになった。周りも帰れないと分かるとパニックになっていた。

 

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺には出来ない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。イシュタルさん?どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしすまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

 そうなのか?

 そういえばこの男が言った通り、なんかここに来てから体に違和感を感じてるし、炭治郎と善逸みたいに嗅覚と聴覚が鋭くなったような。

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいのでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 そう宣言するこの男子生徒。

 こいつ分かってるのか?自分が何をしているのか?

 偉そうに正義のヒーローっぽい事を言ったけど、どこか欠けてような感じがする。

 もし、煉獄さんだったら、もっと上手く宣言出来ると思う。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ」

 

「龍太郎」

 

「今のところ、それしかないわよね。気に食わないけど、私もやるわ」

 

「雫」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織」

 

 筋肉がついたデカ男と女生徒二人が参加表明しやがった。

 

 あぁ、もう我慢出来ない。

 

 私は立ち上がった。

 

 立ち上がったことに周りがこっちに注目し出す。

 

「なあ、さっきから気になってたけど、あんな子うちのクラスにいたか?」

 

「知らん。それに俺達と制服が違うぞ」

 

「でもなんか八重樫さんに雰囲気似てない?」

 

「まさかあの子はシズシズの生き別れの妹!?」

 

 なんか色々言ってる。

 つか誰だよ八重樫って?シズシズ?そもそも私に姉妹なんていねぇよ。

 まぁ、そんな事はどうでもいい。私はあの顔のいい男子生徒の前に行った。

 

「君は……君も戦ってくれるのか!嬉しいよ!一緒に頑張ろう!」

 

 そう言って男子生徒は手を出す。

 

「ぐあっ!」

 

 

 私はそいつの腕を強く握り締めた。炭治郎が玄弥にしたみたいに。

 

「テメェ!光輝に何をする!」

 

「あぁ?知るかこの筋肉ダルマ。お前もそこの女二人も馬鹿なのか」

 

 筋肉ダルマが文句を言うが、どうでもいい。

 

 それより

 

「君!三人にむかってなんて事を言うんだ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!戦争参加なんてふざけた事を抜かしてんじゃねぇ!!」

 

「俺はこの世界のために」

 

「お前戦争がどんなものか授業で聞かなかったのか?お前はこいつら全員を死なすのか?」

 

「死なせない!俺が守る!」

 

「根拠もねぇ事を言うな!大体戦いってのは生きるか死ぬかだぞ!全員無事で済む保証もないんだぞ!」

 

 それを聞いた周りは不安になってしまった。

 私は今度はイシュタルの爺さんのとこに向かった。

 

「おい!爺さん!」

 

「コラ!イシュタルさんに向かって!」

 

 男子生徒が何か言ってるが無視だ!

 

「私達の事をどう言おうが勝手だ!でもな私達はここの事をよく知らね。ちゃんと生活の保証などもしてくれるんだよな?」

 

「勿論です」

 

「本当だな?もし嘘だったら容赦しないからな」

 

 私はそう言うと自分の席に戻ろうとした。

 

「おっと、そういえば自己紹介がまだだったな。私は東堂焔だ」

 

 周りに自己紹介をして、再び自分の席に戻った。

 周りが色々見てくるが、無視だ。

 

 

 

 

 




如何でしたか?

オリ主が光輝と絡みました。

果たしてどうなるのか?

また次回に!


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第三章 晩餐会

出来ました!


 あのくだらん広間での出来事後、私達は聖教教会本山がある神山の麓のハイリヒ王国に行く事になった。

 そこが私達の受け入れ先になるみたいだ。

 

 王宮に着くとどこから見てもお偉いさんのような人達とのご対面だ。

 

 国王であるエリヒド・S・B・ハイリヒ。

 王妃であるルルアリア。

 王子のランデル。

 王女のリリアーナ。

 後は騎士団や宰相等、高い地位にある者が紹介された。

 そんなこんなで紹介等が終わり、晩餐会が開かれた。

 

 

 

「はぁ〜」

 

 私は溜息吐きながら、楽しんでいる周りを見ている。

 

「呑気だな」

 

 これから死ぬかもしれないってのに楽しそうにしやがって。

 危機感を感じないのか?

 

「はぁ〜」

 

 また溜息を吐き、気を紛らす為に私物である漫画を開く。

 鬼滅の刃だけど。

 

「あの」

 

 読んでいると声をかけられた。

 こいつあの先生じゃないか。

 

「何?教え子を傷つけたから文句を言いに?」

 

「いいえ!あれはよくなかったですけど、皆の為にありがとうございます!」

 

「あ?」

 

「ところで貴女一人ですか?他にも貴女と同じように来た人は?」

 

「いないよ」

 

「えっ?」

 

「学校から帰る途中に地面が光って、気がついたらこんな訳の分からない世界に」

 

「どういう事ですか?帰る途中って?」

 

「あ?何言ってるんだ?お前らも私と同じように」

 

「いいえ、地面が光ったのは同じですが、私達が来たのは昼休みの時に教室で」

 

 昼休み?教室?

 どういう事だ?

 

「それ何ですか?」

 

 考えていると先生が私が読んでいた鬼滅の刃を指した。

 

「漫画だよ。休み時間とかの暇つぶし用に」

 

「えぇと、『鬼滅の刃』?聞いた事ない漫画ですね」

 

 は?

 鬼滅の刃を知らない?そんな筈ないだろう。

 老若男女問わず人気のある作品でアニメ化や映画化され、社会現象にまでなった作品だぞ。アニメに興味なくても知っているくらいは。

 その鬼滅の刃を知らないってどうしてなんだ?

 

「なぁ、これどこかで見た事は」

 

「いえ、ないです。本屋でも見かけませんでした」

 

 どういう事なんだ?

 

 この世界に来た時間が全く違う。

 

 鬼滅の刃を知らない。

 

 

『そういえば……』

 

 小学生の時に図書室でたまたま読んだ本に

 

 

 

「パラレルワールド」

 

「えっ?」

 

「なぁ、パラレルワールドを知ってるか?」

 

「パラレルワールド……はい聞いたことは……まさか!?」

 

「そうだ。お互い別々の日本から来たって事だ」

 

「そんな事が……」

 

「まぁ、信じられないかもしれないけど」

 

「でもそれなら」

 

「愛子先生」

 

 話していると誰か来た。

 

 あっ、広間で戦争参加するって言った女二人だ。

 

「あっ」

 

 なんか大人しそうな子と目が合った。

 

 

「白崎さん、八重樫さん。実は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事って」

 

「はい、信じられないかもしれませんけど」

 

「でも本当かもね。こんな漫画見たことないよ」

 

 私と先生はこの二人に色々と話した。

 ポニーテールの子は鬼滅の刃を見ている。

 

「あっ、自己紹介していなかったね。私、白崎香織」

 

「八重樫雫よ」

 

「畑山愛子です」

 

「広間で自己紹介したけど、東堂焔だ」

 

「焔ちゃんね。よろしくね」

 

「よろしくお願いします、東堂さん」

 

「よろしく」

 

「まぁ、よろしくな。ところで怒ってねぇのかよ?彼氏傷つけて」

 

「彼氏?もしかして光輝?違うよ!彼氏じゃない!幼馴染みよ!」

 

「うん光輝君は幼馴染みよ」

 

 なんだ彼氏じゃないのか。あいつ光輝っていうのか。

 

「別に怒ってないわよ。光輝のあれは仕方ないのよ」

 

「そうなのかよ」

 

 あいつ光輝ってなんか欠けててると思ったけど。

 

「じぃー」

 

「なんだそんなジロジロ見て」

 

「香織?」

 

 白崎が私と八重樫をジロジロと見ていた。

 

「雫ちゃんと焔ちゃんってなんか似ている気がして」

 

 は?どこが?

 

「確かに二人を見ていると姉妹みたいですね。髪型とか」

 

 先生まで

 

「雫ちゃんがしっかり者のお姉ちゃんで、焔ちゃんがちょっと乱暴な妹かな」

 

「ちょっと香織!」

 

 八重樫が顔を赤くなってやがる。

 

「もう……それにしてもこの漫画面白いね」

 

「暇つぶし用に何冊か鞄にあるから読みたかったら言って」

 

「分かったわ」

 

「焔ちゃん私にも読ませて」

 

「おっ、何だ八重樫面白そうなの見ているな」

 

 突然、不良っぽい男子が八重樫が読んでいた鬼滅の刃を取った。

 

「あっ、コラ」

 

「何だこの女の子めっちゃ胸大きいな!」

 

 そういえば漫画の表紙、甘露寺だったな。

 

「南雲だな。これ持ってきたの。やっぱキモオタだな!」

 

 誰だよ南雲って?

 

「違うよ!それ南雲君のじゃ」

 

「おい南雲!」

 

 すると一人の男子生徒が来た。

 こいつが南雲か。

 

「何?」

 

「お前こんなの八重樫に見せたのか?ハハハ!お前何女の子にこんなもん見せてんだ!ハハハ!」

 

「檜山!それ南雲君のじゃ……!?」

 

 

 

 

「あぁ?」

 

 檜山って奴の手から漫画が消えた。

 

「ほら読みかけだろう?」

 

「えっ?ありがとう」

 

 私は何事もなかったかのように八重樫に返した。

 

「テメェ!何しやがる!」

 

「あぁ?本を取り返した。ただそれだけ」

 

「テメェ!」

 

「あとあれ私の」

 

「はぁ?冗談だろう、お前みたいなのがあんな本」

 

「嘘じゃないよ!あの漫画は焔ちゃんのだよ!」

 

「そうです!あれ東堂さんの物です」

 

「そうよ!」

 

 白崎、愛子、八重樫が証言してくれた。

 

「南雲君を犯人扱いしてあんな事を言うなんて最低!!」

 

『ガーン!!』

 

 白崎がそう言った瞬間、こいつから落ち込んだ匂いがした。

 

「この女!よくも恥をかかせてくれたな!」

 

 すると檜山が私めがけて拳を突き出した。

 

「焔ちゃん危ない!」

 

「東堂さん!」

 

 

 

 

 がし!

 

「えっ?」

 

 私は檜山の拳を片手で受け止めた。

 そして

 

 

「ギャー〜!!」

 

 力強く握り締めた。

 そしてそのまま放した。

 

「お、覚えてろ!!」

 

 そしてそのまま去っていた。

 

「焔ちゃん大丈夫?」

 

「怪我はない?」

 

「あぁ大丈夫大丈夫」

 

 みんなに心配された。

 あれくらい大した事ないって。

 私は南雲の方を見た。

 

「南雲だっけ?東堂焔だ」

 

「あ、南雲ハジメです」

 

 大人しそうな感じだけど、この南雲って奴、何か可能性があるような音を感じた。

 

 その後、他の生徒と共交流などもあり、晩餐会はお開きとなり、用意された部屋に行った。

 戦いへの不安や疲れもあって、すぐ寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、起きろ!」

 

 誰だよ、もう少し

 

 

「いつまで寝てるんだ!起きろ!」

 

「わひゃー!」

 

 あまりの大声に起きてしまう。

 

「あれ?」

 

 私ベッドで寝ていたはず?

 なのに何で庭みたいとこに?

 

「何間抜けな顔してる?炎柱様と恋柱様の前だぞ!」

 

「えっ?」

 

 私は前をよく見た。

 

「嘘」

 

 そこにいたのは……

 

 

「煉獄杏寿郎、甘露寺蜜璃?」




「あの檜山って男、甘露寺をあんな目で見るとは許さん!」

「伊黒さん、落ち着いて!」


「「次回、夢と修行!」」


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第四章 夢と修行

出来ました!




 私は目の前にいる二人の男女に驚いている。

 

 黄色に赤が混ざった炎のような髪、眼力のある四白眼。

 

 よく夢に出てきた男、煉獄杏寿郎だ。

 

 

 もう一人は桜色で先が緑色の髪をし、大きく胸元が開いた隊服を着た女

 

 恋柱・甘露寺蜜璃だ。

 

 

「おい!柱に対してその口の聞き方!」

 

 うるさいな、この人。

 よく見たらこの人、隠の人じゃん。

 

「そんなに騒ぐな。この子も突然の事で戸惑ってるんだ、そう乱暴にするな」

 

「す、すみません」

 

「それと三人で話しがたい。君はもう下がってよい」

 

「は、はい!」

 

 煉獄さんに言われるがまま隠しの人は去って行った。

 

「さて単刀直入に言う。ここは君の夢の中だ!」

 

「ゆ、夢の中!?」

 

「そして君には炎の呼吸を覚えてもらう!」

 

「えっ?えぇぇー!!」

 

 炎の呼吸を……私が!?

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

「早速鍛錬を始めるぞ!」

 

「えっ?ちょ!?」

 

 私はそのまま煉獄さんに手を引っ張られた。

 

 

 

 

 

 

「どうした!どうした!守ってばかりいないで攻めてこい!」

 

「ひいぃぃ〜!」

 

 私はあれから道着に着替えさせられ、煉獄さんと打ち込みの稽古している。

 

「わぁ!?」

 

 煉獄さんのあまりの勢いに私は尻餅をついた。

 夢なのに痛みを感じた。

 

「立て!まだ稽古は終わってないぞ!」

 

 

 

 

 

「……あるの?」

 

「ん?」

 

 

 

 

「こんな事をして何の意味があるんですか!!」

 

 私は煉獄さんに叫んだ。

 

「私に炎の呼吸を覚えさせるなんて、私は生まれてから刀を握った事もないですし、ましてや剣道や剣術も習った事もないんです!!そんな私に炎の呼吸なんて……」

 

「君を戦える様にするためだ!ここは君の夢の中だが、ここで鍛錬した事は現実の君にも影響を与える!」

 

「でも!戦えるって、戦争なんて……こんなただの女子高生に……うぅ」

 

 私は涙を流してしまい、泣く。

 

「東堂少女」

 

 煉獄さんが私の肩に手を置いた。

 私は顔を上げ、煉獄さんの顔を見る。

 

「これから色んな困難や理不尽な事があるかもしれん。だが、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け、君が足を止めて蹲っても時間は止まってくれない。君はどうしたい東堂少女?」

 

「私は……」

 

 

 私は……

 

 

 

 私は……

 

 

 

 思い出す。

 

 家族や友人達と過ごすいつもの日常

 

 笑い合い、楽しむ姿

 

 

 

 

「私は……」

 

 

 

「私は生きたい!!生きて元の世界に帰りたい!!家族や友達に会いたい!!普通の日常に戻りたい!!」

 

 

 私は叫んだ。自分の心の叫びを。

 

 

「うむ!しかと君の叫びを聞き届けた!では、東堂少女続けるぞ!」

 

「はい!師範!」

 

「頑張って焔ちゃん!」

 

 私は煉獄さんとの鍛錬に戻った。

 

 

「はぁ!」

 

「うむ!いい動きだ!」

 

 私はさっきまでとは違い、攻めるように鍛錬に励んだ。

 

 

 

「ギャーー!!痛い!!」

 

「ガンバ!ガンバ!」

 

 甘露寺さんからも鍛錬を受ける事に。今柔軟を受けている。

 もう殆ど甘露寺さんによる力技によるほぐしだ。夢なのになんで痛いのー!!

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

「うむ、少々粗削りだが問題ないだろう!これなら常中の取得も可能だろう!」

 

「よく頑張ったね!焔ちゃん!」

 

 私は鍛錬を終えて、息を切らす。

 

「もうすぐ目覚めだ。起きていても鍛錬を怠るんじゃないぞ!」

 

「はい!」

 

「では!」

 

 私の目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「っ!?」

 

 起き上がり、周りを見渡す。

 

 用意された部屋だ。

 

 少し体を動かしてみた。なんかいい感じだ。

 煉獄さんの言う通り、夢での鍛錬が本当に現実に影響したみたいだ。

 

「ん?」

 

 ふと床を見るとなんか置いてあった。

 

「これは」

 

 そこにあったのは刀と木刀、桜餅だった。手紙も添えてあった。

 

『東堂少女よ、鍛錬の為にこれを送る。しかと鍛錬に励め』

 

『頑張ってね焔ちゃん。頑張れるように桜餅食べてね』

 

「師範、甘露寺さん」

 

 私は思わず涙を流してしまった。

 

 

「私……頑張ります。お二人の期待に応えられるように」

 

 




「焔ちゃん頑張っていたね!」

「うむ、これからの活躍に期待だ!」

「ここでコソコソ噂話。焔ちゃんは中学時代、不良だったけど、勉強は学年上位に入るほど良かったみたい」

「「次回、ステータス!」」


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第五章 ステータス

出来ました!


 夢で煉獄さんと甘露寺さんから鍛錬を受けたけど、現実でも今日から早速訓練と座学が始まる。

 まず、私達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る私達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド団長。

 彼曰く「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀に話せるか!」とのこと。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこの、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。"ステータスオープン„と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

「アーティファクトっていうのはな、現代じゃ再現できない強力な能力を持った魔法の道具のことだ。まだ神や眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証明に便利だからな」

 

 生徒の質問にメルド団長が答えた。

 アーティファクトというのはこの世界の便利アイテムみたいなものか。

 納得した私は、指先に針を刺し、魔法陣に擦りつけた。するとステータスプレートに文字が浮かび上がった。

 

 

 

 東堂焔 17歳 女 レベル:10

 天職:剣士

 

 筋力:200

 

 体力:200

 

 耐性:200

 

 敏捷:200

 

 魔力:100

 

 魔耐:200

 

 技能:剣術・全集中の呼吸【+炎の呼吸】・縮地・炎属性適正・先読・反復動作・気配感知・言語理解

 

 

 これが私のステータス。

 まるでゲームみたいだ。

 

 ん?レベル10?普通1からのスタートのでは?

 

「全員見られたか?説明するぞ?まず、最初に"レベル„があるだろう?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれが人間の限界を示す。つまりレベルとは、その人間が到達できる領域の現在値を示しているというわけだ。レベル100ということは、自分の潜在能力を全て発揮した極致ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 レベルが上がる。ゲームと一緒だな。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 じゃあ私のレベルが1じゃないのは夢で煉獄さんと甘露寺さんの鍛錬を受けたからか。

 

「次に"天職„ってのがあるだろう?それは言うならば"才能„だ。末尾にある"技能„と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないといえば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくもないもある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 私は天職を見た。剣士か。

 煉獄さんと甘露寺さんのおかげかな。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 訓練内容ね。

 それなりにここでも鍛錬はするけど。

 なんとか常中を取得しないと。

 

 常中

 全集中の呼吸を二十四時間、睡眠中も維持し続ける身体強化の一種。煉獄さんや甘露寺さんや他の柱はみんなできる高等技術である。

 これの取得はかなりの困難で炭治郎も取得にはかなり苦労した。

 

 そんな事を考えながら順番を待つ。

 

 

「ほお〜、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」

 

「いや〜、あはは……」

 

 あいつ……光輝だっけ?

 メルド団長に褒められて照れてる。

 あいつが勇者か……なんか先が思いやられる。

 

 そう考えていると今度は南雲の出番だ。

 あいつは何か可能性を秘めてるからな。

 

「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

 鍛冶職。て事は鋼鐵塚さんと同じポジションか。

 あいつに頼めばもしかしたら日輪刀……いや無理だな。

 日輪刀にはそれを造る鋼が必要だ。それがないと造ることができない。

 

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師ってって珍しいんっすか?」

 

「……いや、鍛冶職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲〜。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 晩餐会で私に手を握り締められた男……檜山だっけ?ウザイ感じで南雲を嘲笑ってやがる。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ〜?」

 

 ハジメはプレートを檜山に渡した。

 それを取り巻きのような連中と見た。

 

「ぶっははは〜、何だこれ!完全に一般人じゃねぇか!」

 

「むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな〜」

 

「ヒァハハハ〜、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」

 

 こいつら、南雲を……鍛治職を馬鹿にしてやがる。

 もし、ここに鋼鐵塚さんがいたら……

 

 

 

 

「鍛治職を馬鹿にするとはどういう料簡だ貴様ら!万死に値する!!」

 

 

 て言いながら包丁を持って、あいつらを追いかけ回すだろうな。

 

 て考えてる場合じゃない

 

 私はあいつらのとこへ行く。

 

「おい」

 

「あ?ぶっ!?」

 

 パァン!

 

 檜山に思いっきりビンタした。

 その時にステータスプレートを落とす。私はそれを拾い、南雲に渡した。

 

「ほら」

 

「え?あ、ありがとう」

 

「この女!何しやがる!」

 

「あ?お前らが南雲を馬鹿にしたからだろう。お前らに南雲を馬鹿にする理由はない」

 

「は?こいつは鍛冶職、戦えないんだぞ!その上ショボイし!笑えるだろう!ハハハ!」

 

 こいつまた笑いやがる。それに釣られて取り巻きや他の生徒も。

 

「はぁ〜、お前ら馬鹿か?」

 

「あ?」

 

「鍛冶は重要で大事な仕事だ。私達とは別の凄い技術を持った人達だ。実際武器を造ってもらえなかったら私達何も出来ないよね?戦う者と鍛治はお互いがお互いを必要としている。戦っているのはどちらも同じだ」

 

 私は炭治郎が無一郎に言った事を言ってやった。

 

 そもそも戦いってのは前線で戦う者だけでは成り立たない。鬼殺隊だってそうだ。戦っているのは柱である煉獄さんや隊士である炭治郎だけではない。

 

 鬼殺隊をまとめている産屋敷家

 

 鋼鐵塚さんなどの刀鍛治

 

 後藤やゲスメガネなどの隠の人達

 

 きよちゃん、なほちゃん、すみちゃん、アオイちゃん、傷ついた隊士のお世話をする蝶屋敷の面々

 

 

 こういう人達もいてこそ鬼殺隊は成り立つのだ。彼らも立派な戦力なのだ。

 

 

「そんな事も考えず、よく戦うなんて言えたもんだな。非戦系の人達の気持ちも分からないで、そんな奴は戦う資格はない。その辺で雑用でもやってろ」

 

 そういうと檜山やその他は黙り込んだ。

 私は南雲の方を向く。

 

「あんな奴らの言ってることなんて気にするな。周りは周り、お前はお前だ。それに人は心が原動力だから心はどこまでも強くなれる。だから頑張れ!!」

 

 私はそう南雲に言うと、ステータスプレートをメルド団長に渡す。

 メルド団長は目を見開く。

 

「どういうことだ?レベルが10だと?それも魔力以外勇者の二倍?この全集中の呼吸とは?一体どうなって?」

 

 まぁ、驚くのも無理ないよな。

 

「二人の立派な柱に鍛えられました」

 




「「よっと」」

 ゲスメガネ、アオイちゃん登場

「くうぅぅ〜、俺らの事を立派な戦力だって。あの子には特別な隊服を作らなければ!」

「しのぶ様に燃やされますよ」

「バレなければ問題ない」

「はぁ〜、ここでコソコソ噂話。焔さんは甘いお菓子やスイーツには目がないらしいです」

「「次回、常中といじめ」」


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第六章 常中といじめ

遅くなりました!

最近仕事が忙しくかったので。


 訓練が開始してから二週間経った。

 その間の事はというと……

 

 

「はあ、はあ」

 

 く、苦しすぎる!!

 常中取得の為に全集中の呼吸を長くやろうとすると死にそうになる。

 炭治郎も最初こんなだったんだな。

 

「こんな時は基本が大事!とにかく努力!」

 

 私はとにかく走り込みをしたり、体力作りなどをこなした。

 

 

 さて問題は寝る時だけど、炭治郎はなほちゃん、きよちゃん、すみちゃんが協力してくれた。

 どうすれば……

 

「ぐぅ、ぐぅ」

 

『おい起きろ!あと全集中の呼吸止まってるぞ!!』

 

「わひゃー!?」

 

 私は急に頭に響いてきた声に驚き、起きる。

 

『マヌケな顔でマヌケな声を出すな』

 

 この頭に響くネチネチとしたボイス。

 まさか

 

「もしかして、伊黒さん?」

 

 伊黒小芭内

 煉獄さんや甘露寺さんと同じ柱の一人。蛇柱と呼ばれている。

 さっきのようにネチネチとした口調が特徴で、首には鏑丸という白い蛇を巻いている。

 因みに甘露寺さんの事が好き。

 

「何で伊黒さんが?」

 

『お前に常中を取得させる為だ。でも勘違いするな俺は甘露寺の為にやってやるんだ。そこを忘れるな。いいな」

 

「は、はい」

 

『それにお前にはあの勇者ともてはやされている男とあの檜山という男を完膚なきまでに倒すぐらいにまで強くなってもらわないと困る。特にあの檜山という男は甘露寺を卑猥な目で見ていたからな』

 

「はい、お願いします」

 

 まぁ、これで就寝中の修行も解決だ。

 

「ぐぅ、ぐぅ」

 

『また止まってるぞ!いつになったら出来るんだ!括り付けるぞ!』

 

「はいぃぃぃぃ!すいません!」

 

 とまぁこんな感じで伊黒さんとの常中の修行をするようになった。

 おかげで寝不足だけど。

 

 

 またある日

 

「これは瓢箪?」

 

 朝起きると瓢箪が大、小と二つあった。

 手紙が添えてあったので見てみた。

 

『しのぶちゃんが常中の修行にって。常中の修行頑張ってね』

 

「しのぶさんが」

 

 胡蝶しのぶ

 彼女も柱の一人で、蟲柱と呼ばれている。

 彼女は鬼の頸を斬る事はできないが、毒を使い鬼を殺してきた。

 また、剣士としてだけでなく、医者としても優れている。

 

「ありがとうございます」

 

「オイ!俺モイルゾ!」

 

「っ!?」

 

 突然の声に周りを見渡す。

 

『コッチダ!』

 

 私は顔を上げた。

 

「鴉?」

 

 一匹の鴉が部屋の中で飛んでいた。

 あれ?そういえばこの鴉喋らなかったか?

 あっ、もしかして

 

「鎹鴉?」

 

『ソウダ』

 

 まさか鎹鴉まで。

 

 因みに鎹鴉をみんなに見せたらはみんなの人気者となった。

 

 ただ、あの勇者は

 

 

「喋る鴉なんてきっと魔物かなんかだ!」

 

 と言いながら殺そうとしたが、突かれるなど返り討ちにあった。

 

 

 

 

「すうぅ……」

 

 

 

『ブオオォォー!!』

 

 

バン!!

 

「よし!」

 

 私は小さい瓢箪を割る事が出来た。

 徐々に鍛錬の成果が出ている。

 

 

「「「オオォ!」」」

 

「凄いよ焔ちゃん!」

 

「何あれ!?凄すぎるよ!」

 

「凄い!」

 

「アンタの肺どうなってんの?」

 

 白崎、谷口、中村、八重樫がこっちに来て、質問攻めに遭った。

 そういえばこの中村って奴、なんか微妙な匂いや音がするんだよね。

 

 

「みんなが頑張っているのになに遊んでるんだ!」

 

 勇者にそんな事言われたけど、とりあえず無視しました。

 

 とまぁこんな事があって

 

 

 東堂焔 17歳 女 レベル:50

 天職:剣士

 

 筋力:600

 

 体力:600

 

 耐性:600

 

 敏捷:600

 

 魔力:500

 

 魔耐:600

 

 技能:剣術・全集中の呼吸【+炎の呼吸】【+常中】・縮地・炎属性適正・先読・反復動作・気配感知・言語理解

 

 ステータスも上がった。

 常中のおかげで体力なども上がった事も感じた。

 

 

「よし!今日も鍛錬頑張るぞ!」

 

 私は気合入れて訓練施設に向かっている。

 

「大変ダ!大変ダ!」

 

 鎹鴉が飛んで来た。

 

「どうした鎹鴉?」

 

「南雲ガ集団デ痛ブラレテイル!急ゲ!」

 

「っ!?」

 

 南雲が!?

 私は急いで訓練施設に向かった。

 

 

 

 訓練施設に着くと南雲が檜山、近藤、中野、斎藤の四人に取り囲まれていた。

 

 

「ここに風撃を望む"風球„」

 

 斎藤が魔法を放った。

 

 まずい!

 

『炎の呼吸 肆の型 盛炎のうねり』

 

 私は刀を抜き、炎の渦で風球を防いだ。

 

「あぁ?」

 

 突然の事で戸惑う四人。

 私は刀を納刀した。

 

「東堂さん」

 

「南雲、大丈夫か?」

 

 私は南雲を心配し、四人の方を向く。

 

「お前ら随分と地味な事してんじゃねぇか。覚悟はできてるかな?」

 

「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」

 

「ほぉ、訓練とは感心感心」

 

 四人はそれを安心したかのように安堵する。

 

 

 

 

 

 

 

「なんて言うと思ったか……この大馬鹿!!」

 

「ぶへぇ!!」

 

 私は斎藤の顔面を思いっきり殴った。

 殴られた斎藤は鼻血を出しながら、倒れた。

 

「斎藤!!ここに「遅い!!」おぉ!?」

 

 中野が詠唱しようとするが、私はその前に其奴の大事なとこを蹴った。

 中野は顔を青くして倒れた。

 

「この!」

 

 近藤が剣の鞘で殴ろうとしてきた。

 

 

 

 

『炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天』

 

「えっ?」

 

 私は刀を抜き、下から上に向けて振って鞘に当て、飛ばした。

 

「うらぁ!」

 

「ガッ!?」

 

 奴の腹を蹴った。近藤は胃液を吐きながら倒れた。

 私は檜山の方を向いた。

 

「ヒィィ!なんなんだよ、なんなんだよお前!」

 

「答えろ」

 

「えっ?」

 

 私は勢いよく檜山の胸ぐら掴んだ。

 

「ヒィ!?」

 

「答えろ!何でそこまで南雲を嫌う!何が気に入らないんだ!キモオタだからか!南雲がお前より勉強や運動が出来るからか!どうなんだ!あぁ!」

 

 前から思ってたがコイツも、周りの連中も南雲を嘲笑ったりしていたからな。

 

「……コイツは」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「コイツはキモオタのくせにいつも白崎に構ってもらってんだよ!!何でこんなキモオタが白崎と!!キモオタのくせに!!ムカつくんだよ!!こんな底辺な奴に!!」

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 コイツ何言ってんだ?

 

「お前ら本物の大馬鹿だな」

 

「なっ!?」

 

「別に白崎が南雲を構おうと白崎の勝手だろう。他人がどうこう言う権利はねぇ」

 

 別に他人が誰と仲良くしようが構おうが、別に其奴の勝手だし、どうでもいい事だ。

 

「でもコイツは」

 

「それを言うんだったらあの勇者と筋肉ダルマはどうなんだ?あいつらだって白崎と仲良いぞ。どうなんだ?」

 

「そ、それは……」

 

 ははん、さては

 

「もしかしてあの二人には勝てないとか言うんじゃ」

 

 すると急に冷や汗を流す。

 図星かな

 

「そうか。お前はただ弱者を罵って優越感に浸るただの愚か者か。ははは、この大馬鹿者!!」

 

「ガッ!!」

 

 私は彼に思いっきり頭突きした。

 そのままこの大馬鹿は倒れ、気を失った。

 

「所詮お前らは十二鬼月になれて浮かれている下弦の鬼と同じだ」

 

 私は南雲の方に行く。

 

「南雲、立てるか?」

 

「う、うん」

 

 私は南雲を支える。

 

 

「何やってるの!?」

 

 この声

 

「白崎!」

 

 白崎だ。

 八重樫、勇者、筋肉ダルマも一緒だ。

 

「南雲君!」

 

「白崎丁度良かった」

 

「何があったの?」

 

 私はここであった事を説明した。

 

 

「そんなの嘘だ!」

 

「は?」

 

「檜山達がそんな事をするはずがない!檜山達は戦えない南雲に訓練をしていたんだ!」

 

 コイツ何言ってるんだ?

 

 

 

「何言ってんだお前……気持ち悪い奴だな」

 

 あっ、思わず天元様に

 

「ブフッ!」

 

 八重樫吹き出してやがる。

 まぁ、私もあれを見た時吹いたからな。

 

「なっ!?」

 

「どうしてそういう解釈になるんだ?脳みそ大丈夫か?いっぺん医者に診てもらえ」

 

「檜山はクラスメイトで仲間だ!そんな事はしない!」

 

「だから何だ?クラスメイト?仲間?は!とんだ脳内お花畑だな!コイツらはなずっと前から南雲をいじめていたんだ!」

 

「あれは南雲のどうしようもなさを」

 

「どこをどう見たらそう見える?目も診てもらえ」

 

 私はこれ以上話すのは時間の無駄だと思い、この場を去ろうとする。

 

「おい!どこへ行く!まだ話は!」

 

 勇者が私の肩を掴もうとするも振り払う。

 

「これ以上は時間の無駄だから鍛錬に行くんだよ。でもこれだけは言っておく」

 

 

 

 

 

 

「私はお前を認めない。何もかも」

 

 コイツは勇者と呼ばれているが、煉獄さんや甘露寺さんなどの柱、炭治郎、善逸、伊之助、カナヲ、玄弥の足元にも及ばないだろう。

 

 




胡蝶しのぶ、伊黒小芭内

「ふん、甘露寺を卑猥な目で見たんだ。その報いだ」

「それにしても以外でしたね伊黒さんが彼女に鍛錬をつけるなんて」

「俺は甘露寺のためにやってやったんだ。別にあいつのためじゃない」

「はいはい。ここでコソコソ噂話。焔さんが宇髄さんを様呼びするのは彼の奥さんの影響によるものです」

「「次回、語らい」」


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第七章 語らい

遅くなりました。

鬼滅の刃遊郭編アニメ化おめでとう!天元様の活躍楽しみです。


追記:隊服の下を変えました。


「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!まぁ、要するに気合入れろってことだ!今日はゆっくり休めよ!では、解散!」

 

 訓練終了後、メルド団長がそう告げた。

 

 

【オルクス大迷宮】

 

 それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。

 私達は、メルド団長率いる騎士団複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 私は一人部屋である。

 

 

 

 

「はぁ〜実戦か」

 

 明日からのでは実戦、正直不安である。

 

「なんか最終選別に行くって感じだな」

 

 最終選別

 藤襲山で行われる鬼殺隊の剣士になるための試験である。

 合格条件は山の中を七日間生き抜く事。しかし、その中には鬼殺隊の剣士が生捕りにした鬼がおり、そいつらと戦いながら生き抜いていく。

 

「手鬼のようなのもいるのかな?」

 

 手鬼

 最終選別の中にいた大型の異形の鬼。

 無数の手を自由自在に使い、人を襲う。

 自身を捕らえた鱗滝を大変恨んでおり、彼の弟子を何人も殺してきた。錆兎と真菰も奴の犠牲となった。

 

「はぁ〜」

 

 コンコン

 

「ん?誰?」

 

『私、雫』

 

「八重樫?」

 

 なんで八重樫が?

 とりあえず開けるか。

 

「何だ?まさか夜這いか?」

 

「違うわよ!!というかアンタなんて格好してんの!?」

 

「何おかしいか?」

 

 現在の焔の服装

 黒のタンクトップと短パン。

 

「もう」

 

「いいじゃねぇか別に。でなんか用か?」

 

「その……話をしたくて」

 

「話?別にいいけど……中入る?」

 

「うん」

 

 八重樫を部屋に通してあげた。

 私達はベッドに座った。

 

 

「で話って?」

 

「その……明日の事なんだけど……アンタはどう思ってる?」

 

 明日……オルクス大迷宮での実戦訓練の事か。

 

「正直不安だ」

 

「え?」

 

 八重樫がこっちを見て目を見開く。

 

「何だ意外か?」

 

「だってアンタあんなに頑張っていたし、自信満々って感じだったし」

 

「それでもだ。訓練とはいえ何が起こるか分からないからな」

 

「でもメルド団長やみんなが」

 

「それでもだ。予想外な事態だって起こる可能性だってある」

 

 あの最終選別だってそうだ。

 最終選別に出てくる鬼は人を二、三人喰ったのが放たれる。しかし、手鬼のような化け物も出てくる。

 合格出来たとしても数人ぐらいだ。炭治郎が受けた時は彼を含めた五人が合格した。

 

「アンタって凄いんだね」

 

「私が?そうでもないよ」

 

 私は知っている。

 誰よりも心を燃やし戦った剣士達を。

 

「だってアンタ光輝相手にも堂々としていたし」

 

 まぁあいつはなにかと欠けているし。

 

「なぁ、あの光輝の性格って昔からか?」

 

「う、うん」

 

 すると暗い表情になる。

 

「どうした?あいつとなんかあったのか?」

 

「……」

 

「無言じゃ分からないぞ。話せないならいいけど」

 

 人には言えない事はある。それを無理に言わせるのはよくないからな。

 

「……私ね」

 

 八重樫の話はこうだった。

 

 八重樫の実家は道場で光輝もそこで稽古していた。最初の頃八重樫は彼に好意を抱いていた。

 でも、それを気に食わなかった女子達によって彼女はイジメを受けてしまった。

 それを光輝に相談したが、余計に悪化してしまったとの事。

 

 

「はぁ〜」

 

 私は思わず溜息を吐いた。

 あんな男のどこがいいんだが、よいのは顔だけなのに。

 

「そういう事なのよ。以来私は光輝には」

 

「そうか」

 

 私は八重樫を抱きしめた。

 

「え?」

 

「私が辛い時とか嫌な事があるとお母さんがいつもこうしてくれたの」

 

 そう言って八重樫を撫でた。

 

「辛かったな。もうあんな奴とは関わるな。もう見切りをつけてあいつとは離れろ」

 

「でも、そんな事したら」

 

「いいんだよ。あいつに分からせてやるんだよ。自分がどれだけ愚かな事をしてるんだと」

 

 あいつにはいっぺん痛い目に遭った方がいいだろう。

 

「まぁ、それを決めるのはお前だ。お前がどうしたいか自分の心の声を聞くんだ」

 

 私は八重樫を離した。

 

「どうだ少しは楽になったか?」

 

「さぁ、どうだろう?あ、そういえば貸してくれた鬼滅の刃だけど」

 

「お、どうだった?」

 

「面白かったよ。登場人物たちもみんな凄かったし、物語も良かったよ。あと小説版の無限列車だっけ?」

 

「おう」

 

「あれすごく感動したよ。私も香織も泣いちゃったよ」

 

「そうか」

 

 私も感動したからな。

 友達と一緒に観に行って。

 

 

 

「じゃ、ゆっくり休めよ」

 

「アンタもね」

 

 少し話した後、八重樫は自分の部屋に戻る事に。

 

「お休み、八重「雫」ん?」

 

「雫って呼んで。もう仲間でしょ?」

 

「そうか、じゃあな雫」

 

「うん、お休み」

 

 雫はそう言うと自分の部屋に戻って行った。

 私はすぐに眠りについた。

 

 

翌日

 

「これって?」

 

 私は朝起きて置いてあった物に驚いていた。

 滅と書かれている上着

 

「隊服」

 

 鬼殺隊の隊服だ。

 

「下はズボンみたいな奴か」

 

 てっきりカナヲや甘露寺さんと同じスカートタイプになるかと思っていた。正直着てみたかったけど、まぁいいか。

 

 そして私はもう一つの物に目を向けた。

 炎のような鍔が付いた刀だった。

 私は手に取り、刀を抜いた。

 

 

 すると

 

 

「わぁ〜」

 

 刀身の色が赤色に変わった。

 これって

 

「日輪刀」

 

 日輪刀だ。本物の日輪刀だ。

 

「手紙だ」

 

 私は添えてあった手紙を見た。

 

『これを君に贈る。実戦訓練頑張りたまえ東堂少女』

 

 

 

「煉獄さん……師範」

 

 私は涙を流した。

 実戦訓練頑張ります。見ていてください。

 




「「「天元様おめでとうございます!」」」

 須磨、まきを、雛鶴が天元を祝った。

「うむ、俺の派手な活躍期待してくれ!」

「私も頑張ります!!見ていてください!!」

 須磨が大きく声を上げた。

「馬鹿声デカイんだよ!アンタは!!」

「いやあっ!!まきをさんがぶったあ!!」

「全く……ここでコソコソ噂話。焔は女に派手にモテていたらしい。恋文も貰っていたとか」

「「「「次回、オルクス大迷宮!」」」」


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第八章 オルクス大迷宮

遅くなりました。

今後の展開など色々と考えてました。
雫に風の呼吸の取得やオリ主の親友を登場させるかなど。

ではどうぞ!


 翌朝、私達は【オルクス大迷宮】の入り口に来ている。

 迷宮と言うからにはヤバそうな感じなのを予想していたが、なんかわんさかと人でいっぱいだった。

 

「ここは同人誌即売会の会場?」

 

「な訳ないでしょう」

 

「おっ、雫おは!」

 

 雫が来たので取り敢えず挨拶しておいた。

 

「おはよう。あんたその格好」

 

「どう似合う?鬼殺隊の隊服?」

 

「鬼殺隊って……あんた何でそんなのあるの?」

 

「ちょっとな。それでどう?」

 

 雫は私の隊服姿をじっくりと見る。

 

「似合うんじゃない」

 

「どうも」

 

「あと何でそれ持ってきたの?」

 

 雫は私が背負っている物を指差す。

 

「訓練前にちょっとね」

 

 私が背負っているものを下ろす。

 

 私が背負っていたのは大きい瓢箪だ。

 

「すうぅ……」

 

 

 

『ブオオォォー!!』

 

 息を吸い、思いっきり吹く。

 

 割れろ、割れろ!

 

 

 そして

 

 

 バン!!

 

 

 瓢箪が木っ端微塵に割れた。

 

「よし!」

 

 私は嬉しくてガッツポーズする。

 

 雫や周りの人達は皆信じられないような目で見ていた。

 

 

 

 

 

 そんな事があって、現在、私達は大迷宮の中を隊列を組んで進んでいる。

 

 まるで洞窟だな。

 

 それにしても見てるとあれを思い出す。

 

 

 

「探検隊!!探検隊!!俺たち洞窟探検隊!!」

 

 

 て、伊之助が無限列車で見ていた夢を。

 ていうか本当に出てきそうだな主が。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 なんて色々思い出していたらメルド団長が声を上げた。

 私は目の前いるものを見た。

 灰色の体毛に赤黒い目……あれがラットマンか。

 

 前に出た光輝、雫、龍太郎の三人が見事と言えるコンビネーションでラットマンを迎撃する。

 その間に白崎、中村、谷口が魔法の詠唱に入る。

 

「「「暗き炎を渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ、〝螺炎〟」」」

 

 三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やす。

 

「ああ〜、うん、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉に白崎、谷口、中村が頬を赤らめる。

 

 そこから交代しながら戦闘を繰り返す。

 

「よし、焔前に出ろ!」

 

 おっ、私の出番か。

 

 私は前に出て目の前のラットマンを見据える。

 

「迷宮に巣食う魔物よ。この煉獄の赫き炎刀がお前を骨まで焼き尽くす!!」

 

 私は日輪刀を抜刀し、刀を構える。

 

『炎の呼吸 壱ノ型』

 

 ラットマンがこっちに駆けると、私も凄まじい勢いで突っ込む。

 

 

『不知火』

 

 私の一撃でラットマンは斬られ、宙を舞った。

 

「す、スゲェ」

 

「あぁ」

 

「わぁぁ」

 

 見ていたみんなが感嘆としていた。

 

「うむ、見事だ!素晴らしい剣技だったぞ!」

 

 メルド団長が私のとこに近づく。

 

「ん?どうした?」

 

 私は手で制し、止めた。

 

「もう一匹います」

 

 すると目の前にもう一匹のラットマンが現れた。

 

 私は再び日輪刀を構える。

 

『炎の呼吸 弐ノ型』

 

 私は日輪刀を下から上に向けて降る。

 

『昇り炎天』

 

 燃え盛る炎でラットマンを斬った。

 

「ふう〜」

 

 私は息を吐き、日輪刀を納刀した。

 

「今のも見事だった。しかし、どうしてもう一匹いたのが分かったんだ?」

 

「私、召喚されてから聴覚と嗅覚が鋭くなったんです。それでいることが分かったんです」

 

 メルド団長の質問に答えた。

 あの時、私は音と匂いでもう一匹いることが分かった。

 

「そうなのか?だとしたら素晴らしい!役立ててくれ!」

 

 メルド団長からお褒めの言葉を頂いた。

 

 

 それから私達は二十階層を探索する。

 すると、先頭の光輝達、メルド団長の動きが止まった。

 私は日輪刀を抜刀する。

 壁辺りから明らかに壁とは違う音と匂いを感じた。

 

「擬態しているぞ!周りをよ〜く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。

 その直後、前方でせり出ていた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。

 擬態か、まるで血気術だ。

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

 メルド団長の声が響く。

 光輝達が相手をするが、ここは鍾乳洞みたいな地形だから戦いづらいようだ。

 するとロックマウントが後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

「グゥガガァァァァアアアアーー!!」

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられ、光輝達前衛組が硬直してしまった。

 

 その隙にロックマウントがサイドステップをし、傍らにあった岩を持ち上げ投げて来た。

 

 

 いや、あれは

 

「うらぁ!!」

 

 私はその岩を蹴り返す。

 

 ちょっとビリビリするけど、これくらい。

 

 蹴った岩を見るとなんとロックマウントだった。

 

 岩を投げた時、匂いと音が明らかにおかしいと感じた。

 

 私は日輪刀を構える。

 

『炎の呼吸 参ノ型 気炎万象』

 

 日輪刀を上から下へと降り、ロックマウントを一閃した。

 

「焔ちゃん!」

 

「ほむほむ、ありがとう!」

 

「助かった」

 

 白崎、谷口、中村に礼を言われる。

 

 私は残りのロックマウントに目を向ける。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

 すると光輝が怒りをあらわにしていた。

 

 な、何をする気なんだ?

 

 ん?あいつの剣が光ってる!?なんかヤバい音が!?

 

「万象羽ばたき、天へと至れ、〝天翔閃〟!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 メルド団長の声を無視して、光輝が大上段に振りかぶった剣を一気に振り下ろした。

 その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた剣から、その光自体が斬撃となって放たれ、ロックマウントを両断した。

 パラパラと壁から破片が落ちた。

 「ふぅ〜」息吐く振り返る光輝に近づく。

 

「このアホ勇者!!」

 

「ぶぅ!?」

 

 私の渾身のアッパーでアホ勇者は宙を舞った。

 さらに仰向けになっている彼に近づき、あいつの両足を脇の下に挟み、背中を反らせる。

 所謂逆エビ固めである。

 

「ガっ!?」

 

「このアホがこんなとこであんな技使う奴があるか!!私たちを煎餅にする気か!!」

 

「でも香織が……」

 

「言い訳無用!!」

 

「ギャーー!!ギブ、ギブ!!」

 

 私はさらに力を入れ、アホの背中を反らした。

 

「うわぁ」

 

「い、痛そう」

 

「なんかシュールな光景」

 

「ほむほむは怒らせない方がいいかも」

 

 周りが何か言っているが、構わず続けた。

 

「その辺にしておけ」

 

 メルド団長に言われ、技をかけるのをやめて、下がった。

 

「あれ、何かな?キラキラしてる」

 

 白崎の言葉に私やみんなは彼女が指差す方へ目を向けた。

 そこには青白く発光する鉱物があった。

 

「ほぉ〜、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 へぇーグランツ鉱石って言うのか。

 

「素敵」

 

 白崎がうっとりしてる。

 

 

 

 

 

 

 ん?あの鉱石なんか……

 

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。鉱石に向けて登り出す。

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 メルド団長が言うも檜山は無視した。

 

 

 

 

『っ!?』

 

 その時私はヤバい音が聞こえた。

 

「馬鹿!!それに触るな!!罠だ!!」

 

「彼女の言う通りです!団長!トラップです!」

 

「ッ!?」

 

 私、メルド団長、騎士団が警告するも一歩遅かった。

 

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がった。

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

 

「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感が襲った。

 匂いが変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 私は周囲を見回した。

 

 どうやらあれは転移のトラップのようだ。

 現に私たちは巨大な石造りの橋の上に。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 メルド団長の指示に、私たちは動き出す。

 

 その時私はまた何かヤバい音を感じた。

 

 橋の両サイドに魔法陣が出現した。

 その魔法陣からは無数のガイコツ騎士トラウムソルジャーが出現する。

 もう一つからは巨大な魔物が出現した。

 

 メルド団長が呟く。

 

 

「まさか……ベヒモス……なのか……」

 

 




「よっ」

 炭治郎、禰豆子登場

「オルクス大迷宮……なんて所なんだ。鬼のような化け物があんなに」

「うぅ」

「いやー!あんなとこに行ったら絶対死ぬ!!いやー!!」

 炭治郎にしがみつく善逸。

「行きたいぜ!そのボロクソに!」

 行きたいと叫ぶ伊之助。

「オルクスな」

「ここでコソコソ噂話。八重樫さんは俺たちを含めてしのぶさんや甘露寺さんやカナヲがお気に入りだけど、一番のお気に入りは禰豆子みたい」

「やっぱ禰豆子はみんなの人気者だね」

「うぅ」

「「「次回、ベヒモス!」」」


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第九章 ベヒモス

遅くなりました。

色々と忙しくて。


???SIDE

 

「チッ!」

 

 馬鹿が罠に引っかかったせいでとんでもねぇ事になりやがったな。

 

「仕方ねぇ」

 

 本当だったら実戦訓練終わったら鍛錬つけさせるつもりだったが、死なれたら困る。

 

「お前には素質があるぜ、八重樫雫」

 

???SIDE OUT

 

 

 

焔SIDE

 

 なんなんだあの化け物は?

 

 目の前のトラウムソルジャーはそれなりに大した事ないけど、あのベヒモスって化け物はなんだ?

 手鬼とは比べ物にならない下手すりゃ十二鬼月ぐらいかも。

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイルは全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

「待って下さい、メルドさん!俺達もやります!あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう!俺達も……」

 

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ!ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強„と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ!さっさと行け!私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

 メルド団長が光輝に命令するも彼は言う事を聞かない。

 こっちが見えないのかよ?

 本当空気読めねぇな。

  

 あの二人の言い争いを見てる間にベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。あんなの喰らったらあっという間にあの世行きだ。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、“聖絶„!!」」」  

 

 ハイリヒ王国最高戦力が多重の障壁を張り、ベヒモスの突進を防いだ。

 だが、前方のトラウムソルジャーと後方のベヒモスに周りは半ばパニック状態だ。

 

「はぁ!」

 

 私はトラウムソルジャーを斬る。

 少しでも倒して階段前を確保しないと。

 

「あ」

 

 ふと見ると一人の女子生徒がトラウムソルジャーに襲われそうになっていた。

 あいつは園部!

 間に合え!

 私は園部の方に向かった。

 

 

 しかし、その心配はなかった。

 

「南雲」

 

 南雲が錬成で地面を隆起させてトラウムソルジャーを巻き込んで奈落に落とした。

 非戦闘職も使い方次第で戦闘職にもなるってわけか。

 

「南雲!園部!」

 

「東堂さん」

 

 南雲と園部に駆け寄った。

 二人とも大丈夫みたいだ。

 

「二人とも大丈夫みたいだな」

 

「うん」

 

「えぇ」

 

「しかし、この状況……」

 

 あまり状況はよくない。

 このままじゃ。

 

「何とかしないと……必要なのは強力なリーダー……道を切り開く火力……」

 

 南雲は後方を見た。

 私はそれを見て彼の考えを察した。

 

「まさかあのアホ勇者を?」

 

「うん」

 

「ちっ!あのアホに頼りたくないが、仕方ねぇ。お前はとっとと呼んでこい。それまで私がなんとかする」

 

「うん、お願い東堂さん」

 

「それとこれ」

 

 私は南雲にある物を渡した。

 

「これは東堂さんの刀?」

 

 渡したのは私が鍛錬に使っていた刀だ。

 

「それを雫に渡してくれ」

 

「八重樫さんに?」

 

 訓練の時も思ったが、雫が今使っている剣は明らかに彼女には合っていないようだった。 

 だから、刀の方が彼女には相性がいいと思った。

 これでも十分に斬る事は可能だ。

 

「でも、それじゃ」

 

「大丈夫。私にはこれがある」

 

 私は日輪刀を見せた。

 

「分かった」

 

「よし行って来い。お前の責務を全うしろ」

 

 南雲は後方に向かった。

 

 そして私は前方のトラウムソルジャーに目を向け、日輪刀を構えた。

 

『炎の呼吸 壱ノ型 不知火』

 

 私はトラウムソルジャーを何体か斬った。

 

「たく、予想外の事態は予感していたが、こんな事になるとはねぇ……後でこんな事態を起こした馬鹿はしばくとして……」

 

 

 

「例えどんな状況でも私は私の責務を全うする!!」

 

『炎の呼吸 参ノ型 気炎万象』

 

焔SIDE OUT

 

 

 

南雲SIDE

 

 僕はその背中を見つめた。

 

 最初、東堂さんの印象はどこか乱暴で不良少女って感じだった。

 

 でも彼女は天之河君に対しても自分の意見をはっきり述べ、真っ向から立ち向かった。

 

 みんなが僕を無能とか罵っても彼女は一切そのような事をしなかった。

 

 

 

何日か前

 

「お前の事を無能だとかほざいてるけど、私はお前が一番可能性があるって思ってる」

 

「えっ?」

 

 たまたま二人で話していた時、彼女がそう言った。

 僕はそれを聞いて目を見開いた。

 

「どうして?何で僕が?それを言うなら天之河君やそれこそ東堂さんや」

 

「ステータスやもてはやされているだけの奴に可能性はない。私はステータスがあいつより上なだけのようなもんだ。それにステータスだけが全てじゃない」

 

 それを聞いてまた目を見開いた。

 

「それに弱い事が寧ろ悪くはない。一番弱い人が一番可能性を持ってる」

 

「えっ?」

 

「戦いじゃ敵は強い相手を警戒して壁が分厚い、逆に弱い相手だと薄い。もしその弱い相手が予想外の動きで壁を打ち破れたら風向きが変わって勝利への活路が開く」

 

 僕はその話を真剣に聞いた。

 弱い事や無能は悪いものだと思っていた。

 

「とある剣士はな。自分の弱さに悔しく思っていた。でも、兄や師匠、仲間のために諦めず彼は頑張った。結果十二人の鬼の中でも最強の鬼を倒す事が出来た」

 

 へぇ、すごいなその剣士。

 弱くてもそんな事をするなんて。

 

「だからよ。例えどんなに無能でも弱くても諦めなければ活路は開く。前にも言ったろ心はどこまでも強くなれる。人間は心が原動力だと、だから……」

 

 

「っ!?」

 

 彼女は指を僕の胸に当てた。

 

「泣いていい逃げてもいい、ただ諦めるな。そして心を燃やせ」

 

 

 

そして現在

 

 僕は自分の責務を全うするよ東堂さん。

 

 

 いや、姉貴。

 

 

 

 心を燃やして

 

南雲SIDE OUT

 

 

NO SIDE

 

「ええい、くそ!もう保たんぞ!光輝、早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけにはいきません!絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

 メルド団長達は未だにベヒモスと戦闘していた。

 光輝はメルド団長の指示を全く聞かずにいた。

 

「光輝!団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

 雫は状況が分かっているようで光輝を諫めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ?付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎……ありがとな」

 

 しかし、龍太郎の言葉にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ!この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん……」

 

 苛立つ雫、それを心配そうにする香織。

 その時、一人の男子が光輝の前に飛び込んできた。

 

「天之河君!」

 

 

 




「よっ!」

 炭治郎、杏寿郎登場!

「東堂さんと南雲君、堂々としているな。俺も見習わないと」

「うむ、東堂少女もそうだがあの南雲という少年も流石だ!」

「はい。ここでコソコソ噂話。東堂さんは周りからは姉貴や姐さんと呼ばれる事が多かった」

「そういえば最初に出てきたのって誰何ですか?」

「それは後々分かるだろう。分かる者はいるか?」


「「次回、悪意」」


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第十章 悪意

遅くなりました。

忙しかったのと、少し体調を崩してしまって。

では、どうぞ。


「なっ、南雲!?」

 

「南雲君!?」

 

 驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

「早く撤退を!みんなのところに!君がいないと!早く!」

 

「いきなり何だ?それより、何でこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない!ここは俺達に任せて南雲は……」

 

「そんなこと言っている場合かっ!」

 

 ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。何時も苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。

 

「あれが見えないの!?みんなパニックになってる!リーダーがいないからだ!」

 

 光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

 

 

 

「コラぁぁぁぁぁー!!何ちんたらしてるんだー!!今までの訓練は何だったんだ!!こんなザコに手こずっているようじゃ戦争で生き残るなんて夢のまた夢よ!!」

 

 その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。

 そのクラスメイトを焔は怒鳴りながらトラウムソルジャーを斬ったり、殴りまくっていた

 

「ハイハイハイそんなぎこちない動きしなくていいから、とにかく訓練を思い出して動け!!」

 

 

「今東堂さん……姉貴が君の代わりにやってるんだよ!でも一撃で切り抜ける力が必要なんだ!みんなの恐怖を吹き飛ばす力が!それが出来るのはリーダーの天之河君だけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。

 

「ああ、分かった。直ぐに行く!メルドさん!すみませーー」

 

「下がれぇーー!」

 

 光輝が“すみません、先に撤退します„そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴じみた警告と同時に、遂に障壁が砕け散った。

 暴風のはように荒れ狂う衝撃波がハジメ達を襲う。咄嗟にハジメが前に出て、錬成により石壁を作り出すがあっさり砕かれ吹き飛ばされる。多少は威力は殺せたようだが……舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。

 そこには、倒れ伏し呻き声を上げるメルド団長と騎士が三人。衝撃波の影響身動きが取れないようだ。光輝達も倒れていたがすぐに起き上がる。メルド団長達の背後にいた事と、ハジメの石壁が功を奏したようだ。

 

「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。メルド団長達が倒れている以上自分達が何とかする他ない。

 

「やるしかねぇだろ!」

 

「……何とかしてみるわ!」

 

「待って、八重樫さん!」

 

 二人がベヒモスに突貫しようとするが、南雲が雫を呼び止める。

 

「何?」

 

「これ」

 

 南雲は雫に焔が彼女に渡すよう頼んだ刀を渡す。

 

「これ焔の」

 

「姉貴が君にって」

 

「焔が……ん?姉貴?」

 

「それはいいから早く!」

 

「分かったわ。ならありがたく使わせて貰うわ焔!」

 

 雫はそう言うと刀を抜刀し、改めてベヒモスに向かう。

 

「香織はメルドさん達の治癒を!」

 

「うん!」

 

 光輝の指示で香織が走り出す。ハジメは既にメルド団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。

 

 

 

雫SIDE

 

『おい』

 

 えっ?

 今の誰?急に声が聞こえた。

 光輝でも、龍太郎でも、南雲でもない声が。

 

『説明してる暇はねェ。俺の言う通りにしろォ』

 

「だから誰なの!私に話しかけるのは!」

 

「おい雫どうしたんだ?」

 

「龍太郎何か声が聞こえない?」

 

「はぁ?別にも何も聞こえないが?」

 

 龍太郎には聞こえてない。

 どうして?

 

『俺の声が聞こえるのはお前だけだ。それよりあの化け物をどうにかしてェんだろ。だから俺の言う通りにしろォ』

 

 この声は私にしか聞こえないみたい。

 誰だが分からないけどこの状況をどうにかする事が出来るなら。

 

「力を貸して」

 

『よし。なら呼吸だ、呼吸しろ』

 

 呼吸?

 

『お前と同じ髪をした女がしていたのを思い出せ』

 

 私と同じ髪?

 もしかして焔?そういえばあの娘なんかよく呼吸をしていたっけ?

 もしかしたら……私は焔のやっていた事を思い出し、やってみた。

 

『ほう、そこそこだが、まぁいい。そしたら強く前へ踏み込んで奴を切り刻め!』

 

「はぁ!」

 

 私は言われた通り強く前へ踏み込み、ベヒモスに駆け込んで切り刻んだ。

 

 

 

雫SIDE OUT

 

 

焔SIDE

 

「今のは」

 

 私は雫のあの剣技を見て目を見開いた。

 雫の今の剣技あれは

 

 

 

「風の呼吸 壱の型 塵旋風・削ぎ」

 

 風の呼吸といえば、風柱・不死川実弥の使う呼吸。

 いつの間に雫が風の呼吸を?今まで彼女が全集中の呼吸の使ったり、修行をしているような事はなかった。

 彼女を見た時、もし全集中の呼吸を覚えたらもっと良くなると思ったけど。

 私と同じように雫も夢の中で不死川さんと鍛錬をしたのか?

 

 私はベヒモスを見たけど、あまりダメージはないみたいだ。

 見た感じ彼女の技はまだまだって感じだ。

 

「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!神の慈悲よ!この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!"神威„!」

 

 光輝の詠唱と共に技が放たれ、ベヒモスに直進した。

 龍太郎と雫は既に離脱している。二人はボロボロみたいだ。

 放たれた砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。激震する橋に大きく亀裂が入る。

 これならベヒモスも……

 

「えっ?」

 

 光が収まり、埃が吹き払われる。

 そこには無傷のベヒモスがいた。

 

「嘘だろ、おい」

 

 するとベヒモスが赤い魔力を発した。

 

「ちっ」

 

 私はベヒモスに向かった。

 

「うおぉぉぉー!!」

 

『炎の呼吸 伍の型』

 

 烈火の猛虎を生み出すが如く日輪刀を大きく振り、ベヒモスを斬りつける。

 

『炎虎』

 

「姉貴!」

 

「「東堂(さん)!」」

 

「「焔(ちゃん)!」」

 

 私はそこに降り立ち、勇者を見た。

 

 ガシっ!

 

「えっ?」

 

「とっととあっちへ行って助けに行け!!選手交代だ!!」

 

「わぁー!」

 

 私は光輝を掴み、トラウムソルジャーと戦っている皆の方に投げた。

 

「おい、お前光輝に……えっ?」

 

「お前も行って来い!!」

 

 筋肉ダルマも勇者同様に投げた。

 

「焔ちゃん凄い」

 

「男二人を軽々と投げるなんてどんだけ力持ちよ」

 

 白崎と雫がそう言う。

 

「おい、南雲、白崎を連れて逃げろ。雫もメルド団長も撤退しろ」

 

 私は指示した。

 

「姉貴!」

 

「焔ちゃん!」

 

「ちょっと何言ってるのよ!」

 

「そうだ!お前一人では!」

 

「いいから行け!少しでも足止めをしてやる!こんなとこで死んだら元も子もねェ!」

 

 みんなが文句を言うが、私は言い返した。

 

「頼むよ。やらせてくれ」

 

 私は頭を下げ、懇願した。

 

「分かった。だが、無茶をするな。後で合図を出す。それでお前も撤退しろ」

 

 メルド団長はそう言い、撤退するが、南雲、雫、白崎が残った。

 

「おい、早く行け」

 

「やだよ。姉貴を置いて行くのは」

 

「うん、焔ちゃん一人にはしたくないよ」

 

「放っておけるわけにはいかないでしょ」

 

 こいつら

 

「もう好きにしろ。だが、白崎お前は向こうで皆の回復だ。負傷者優先だ」

 

「でも!」

 

「行け!今はお前の力で皆を回復させるんだ!」

 

「焔ちゃん」

 

「香織」

 

「雫ちゃん」

 

「行って来なさい。焔の言う通り。私達は大丈夫だから」

 

「雫ちゃん」

 

 白崎が向こうに行った。それを見て私はベヒモスを見た。

 

「行くぞ、化け物!」

 

『炎の呼吸 弍の型 昇り炎天』

 

「はぁ!」

 

 私と雫の斬撃をベヒモスに喰らわせた。

 

「ちっ、固ぇ」

 

 だが、あまり効果がない。

 このベヒモス十二鬼月の上弦レベルかも。

 

「〝錬成〟!」

 

 南雲が錬成魔法でベヒモスの足を埋まらせた。

 

「姉貴!八重樫さん!」

 

「よし」

 

『炎の呼吸 伍の型 炎虎』

 

「はぁ!」

 

 南雲の合図とともに私は伍の型を、雫は風の呼吸の壱の型でベヒモスを切り刻んだ。

 

「ちっ!しぶといな!」

 

『炎の呼吸 参の型 気炎万象』

 

 私はこれでもかと思うくらいベヒモスを斬った。

 するとベヒモスが私を睨んだ。

 

「ガン飛ばすんじゃねェ」

 

 私はベヒモスの片目に日輪刀を刺した。

 ベヒモスがあまり痛さに咆哮を上げ、苦しむ。さすがに目をやられたら最悪だろう。

 

「南雲君!焔ちゃん!雫ちゃん!」

 

「お前達!準備が出来た!そこから離れろ!」

 

 白崎とメルド団長の叫びが聞こえた。

 

「よし!とっととこんなとこおさらばするぞ!」

 

 私は二人にそう言い、ここを離れるため全力で走る。

 すると上空から多くの魔法攻撃がベヒモスに向かって発射された。

 これなら……

 

『っ!?』

 

 何だこの音?この悪意のような感じ。

 すると魔法攻撃の一つが何故か南雲に向かって来た。

 

「南雲!避けろ!」

 

「っ!?」

 

 私が叫ぶも魔法は南雲に、直撃はしなかったが、吹き飛ぶ。

 

「南雲!」

 

「焔!」

 

 雫が私に覆い被さる。

 すると私のとこにも魔法攻撃が。雫のおかげで直撃を免れた。

 

「雫!大丈夫か!」

 

「うん、それより早く!」

 

「あぁ」

 

 早く離れないと

 

「っ!?」

 

 ベヒモスが咆哮を上げやがった。

 早くしねぇと

 

 

 

 

 バキバキ

 

 

 

 えっ?

 

 

 地面が崩れた。その瞬間私達三人は……

 

 

 

 

 

 深い深い奈落の底へと

 

 

 

「南雲君!雫ちゃん!焔ちゃん!」

 

 




「よっ!」

 炭治郎、禰豆子登場

「ベヒモス、なんて恐ろしい化け物なんだ」

「うぅ」

「それを東堂さん、南雲君、八重樫さんが足止めするなんて。どんだけ強いんだ」

「うぅ〜」

「ここでコソコソ噂話。白崎さんは善逸の事を少しカッコいいと思った。その理由は禰豆子を助けたからだと」

「それより八重樫さんに風の呼吸を教えたのって……まさか」

「うぅ!?」

「次回、蟲柱!」


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第十一章 蟲柱

なんとか出来ました。


「離して!南雲君達の所に行かないと!約束したのに!私がぁ、私が守るって!離してぇ!」

 

 飛び出そうとする香織を谷口と光輝が必死に羽交い締めにする。香織は、細い体のどこにそんな力があるのかと思うほど尋常ではない力で引き剥がそうする。

 このままでは香織の体の方が壊れるかもしれない。しかし、だからといって、断じて放すわけにはいかない。今の香織を放せば、そのまま崖を飛び降りるだろう。それくらい、普段の穏やかさが見る影もないほど必死の形相だった。いや、悲痛というべきかもしれない。

 

「カオリン、駄目だよ!」

 

「香織!君まで死ぬ気か!南雲と東堂はもう無理だ!落ち着くんだ!このままじゃ、体が壊れてしまう!」

 

「無理って何!?南雲君達は死んでいない!行かないと、きっと助けを求めてる!」

 

 誰がどう考えてもハジメ達は助からない。奈落の底と思しき崖に落ちていったのだから。

 しかし、その現実を受け止められる心の余裕は、今の香織にはない。言ってしまえば反発して、更に無理を重ねるだけだ。

 

 

 

 

 

「……どうして?」

 

 

 そんな中、優花が幽霊のようにゆらりと檜山に近づく。

 

「は?何だよ?」

 

「どうして南雲と焔に魔法を撃ったのよ!」

 

「は!?何言ってるんだ!そんな事はしてねぇ!」

 

「嘘よ!私見たのよ!それにあんたの適正は風のはず、なのに適正のない炎を使うなんて明らかにおかしいよ!」

 

 優花は檜山がハジメと焔に魔法攻撃をした事を証言するが、天之河をこれを否定した。

 

「園部さん、檜山がそんな事をするはずがない。ただの見間違いだ」

 

「そ、そうだ、お前の見間違いだ!デタラメを言うな!」

 

「違う!あれは見間違いじゃない!こいつが二人に魔法を放ったのよ!」

 

 光輝は檜山がそんな事をするはずがないと言った。

 しかし、優花はあれは見間違いではないと証言する。

 

「優花ちゃんそれ本当?」

 

「香織、真に受ける必要はない!園部さんの見間違いだ!」

 

 香織はゆっくりと檜山の方に歩く。その彼女を天之河は止める。

 

「邪魔だよ、天之河君」

 

「うわ!」

 

 香織は光輝を突き飛ばす。

 彼女は優花を見る。

 

「優花ちゃん、ナイフ一本貸して」

 

「えっ?うん」

 

 優花はナイフを香織に渡す。

 香織は檜山の方を見る。

 

「白崎?」

 

 檜山は香織の行動に疑問を浮かべるが、顔が段々と青くなった。

 

「白崎、冗談だろう?あんな奴の言ったのを信じるのかよ?なぁ、白崎考え直せ、なぁ?」

 

 しかし、香織は檜山をゴミを見るような目で見てナイフを高く上げる。

 

「香織やめるんだ!君はそんな事をするような人じゃない!早くそれを捨てろ!」

 

 光輝が香織に向かって叫ぶも彼女は聞く耳を持たなかった。

 やがて彼女は口を開く。

 

 

 

 

 

「とっととくたばれ糞野郎」

 

「ヒィィ!」

 

 檜山はあまりの怖さに目を閉じる。しかし、一向にナイフは来なかった。

 彼が目を開けるとそこには倒れている香織がいた。

 

 

 

「メルド団長」

 

 メルド団長もいた。彼が香織の首筋に手刀を落としたのだ。

 

「もう一人もしなせるわけにはいかない。全力で迷宮を離脱すると。……彼女を頼む」

 

「はい」

 

 優花は倒れている香織を抱える。

 

「香織」

 

 優花は香織を見た後、崩壊した橋を悲しく見渡す。

 

『南雲、雫、焔』

 

 

 

 

焔SIDE

 

 

「……し……もし……」

 

 誰?私を呼ぶのは?私は確か……

 

「もしもし聞こえますか?」

 

「っ!?」

 

 私は目を開け、辺りを見渡した。なんかまるで病院みたいだ。

 あれ?私はオルクス大迷宮にいたはず、なのに私はベッドの上に。

 

「っ!?」

 

 そうだあの時橋が崩落して私は……それに南雲と雫も……

 

「私は死んだのか?……ここはもしかして天国?」

 

「いいえ、貴女は死んでませんよ。あとここは天国ではありません」

 

 そういえばさっきから声が聞こえるけど、どこかで聞いたような?

 

「こっちですよ」

 

 私は声のした方を向いた。

 

「えっ?」

 

 そこには紫色の毛先していて、後頭部には蝶の髪飾りをした美人がいた。

 

「胡蝶……しのぶ?」

 

「はい、胡蝶しのぶです」

 

 蟲柱・胡蝶しのぶがいた。

 

「じゃあここは?」

 

「蝶屋敷です」

 

 やっぱり

 

「なぁ、死んでないって」

 

「はい、確かに貴女は橋から落ちましたけど、奇跡的に助かりました」

 

「そうか」

 

 奇跡的に助かったのか。

 

「ただ意識は失ってしまっていますが」

 

「へ?」

 

 意識を失っている?どういう事?

 

「じゃあこの状況は?」

 

「まぁ無理はないですね。簡単に言うとここは夢です。現実の貴女は今意識を失っているのです」

 

 あぁ、そういう事。

 煉獄さんの時と同じか。

 

「あっ、そうだ。雫は?南雲は「イヤァァァーー!!」っ!?」

 

 突然どこからか叫びが聞こえた。

 

「今のは?」

 

 私はベッドから降り、叫びのとこに向かった。

 

「ここだな」

 

 叫びが聞こえたとこの扉の前に着き、勢いよく扉を開けた。

 

「来ないで!」

 

「大丈夫よ、何もしないから落ち着いて」

 

 そこには髪が長く左右に蝶の髪飾りをした女性がいた。

 あれ?この女性って……

 

「胡蝶カナエ?」

 

 胡蝶しのぶの姉、花柱・胡蝶カナエがいた。

 でも胡蝶カナエは上弦ノ弐・童磨との戦いで死んだはず。

 何で彼女が?それより私は胡蝶カナエの隣にいる人を見た。

 

「雫!」

 

 雫がいた。まさか彼女まで。

 私は彼女のとこに。

 

「雫、落ち着け!」

 

「焔?」

 

 雫が私の方に顔を向けた。

 

「とにかく落ち着いて話を聞け」

 

 私は雫を落ち着かせ、話をした。

 

 

 

「そう。すいません取り乱してしまって」

 

「いいのよ。私も悪かったから」

 

 雫とカナエさんはお互い謝罪をした。

 

「もう姉さんってば」

 

 カナエさんの隣にいるしのぶさんが呆れたのか頭を抱えた。

 

「取り敢えず、さっき説明しましたがここは夢の中で現実の貴女達は意識を失っています」

 

 しのぶさんが説明した。

 因みに前の説明で南雲は橋から落ちた際に離れ離れになってしまったようだ。

 

「「はい」」

 

「そこでですが、貴女達二人には鍛錬をしてもらいます」

 

「「鍛錬?」」

 

「はい」

 

「それってしのぶさんとカナエさんと?」

 

「いいえ、東堂さんは前と同じく煉獄さんの元で、八重樫さんは「おい胡蝶」あら?」

 

 しのぶさんが説明していると誰かが入って来た。

 入って来たのは、顔や体中が傷だらけで無造作な白髪の男性だった。

 この人は

 

「丁度いい所に、八重樫さんこの方がこれから貴女を鍛錬してれる」

 

 しのぶさんが彼が雫に鍛錬をしてくれる事を告げる。

 

 

「不死川実弥さんです」

 




胡蝶姉妹登場

「まさか姉さんが登場するとは思いませんでした」

「うふふ、これも作者のおかげだね」

「そうですね。ではここでコソコソ噂話。東堂さんの運動能力は男にも負けない実力で、度々運動部からお誘いがあったとか」

「これから二人がどうなっていくか楽しみね」

「そうですね」

「「次回、風柱」」



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第十二章 風柱

お待たせしました!

実は優花に柱の稽古をつけさせようかと考えています。考えているのは伊黒さんです。
またオリキャラで焔の親友や知り合いを何人かの登場も考えています。


「不死川」

 

「実弥」

 

「よう、あの橋の時以来だな」

 

「えっ?」

 

 えっ?不死川さん雫と面識あり?橋の時って?

 

「あのどういう事ですか?」

 

「この声に聞き覚えはねぇか?」

 

「……あっ!あの時私が聞こえた声!」

 

「そうだ」

 

「どういう事だ?」

 

 私は気になって雫に聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

「そんな事が」

 

 私は雫からベヒモスとの戦いの時に聞こえた声を聞いた。その声の正体が不死川さんだった。

 まぁ、私も伊黒さんの例があるし、まぁこれで雫が風の呼吸を使えた理由が分かった。

 

「そういう訳だ。八重樫、俺がみっちり鍛えて風の呼吸を取得させる」

 

「は、はぁ」

 

「そうと分かれば行くぞ」

 

 不死川が歩き出すと共に雫も彼の後をついていった。

 

「雫ちゃん頑張ってね。お姉さん応援してるから」

 

 その雫にカナエさんはエールを送った。

 

「はい、ありがとうございます。カナエさん」

 

 雫はそう言って不死川さんと共に蝶屋敷を出た。

 雫、頑張れよ。

 

 

 あっ、そういえば不死川さんからあんこの匂いがしてたなぁ。

 やっぱり好きなんだね……おはぎ。

 

 

 

 

「君が無事でなによりだ!橋から落ちたと聞いた時はどうなるかと!」

 

「ご心配をおかけしました」

 

 私は今煉獄さんと共に道場に向かっている。

 あれから煉獄さんも蝶屋敷に来て、一緒にいる。

 

「甘露寺も君の事を心配してくれていた」

 

「甘露寺さんが」

 

「うむ、今彼女は訳あって来れないが」

 

「訳?」

 

「最近、弟子をとったのだ。今その弟子に稽古をつけている」

 

 へぇ〜甘露寺さんに弟子が……そんな人いたかな?

 

焔SIDE OUT

 

 

 

雫SIDE

 

「オラオラどうしたァ!!そんなんじゃいつまで経っても風の呼吸を覚えられないぞ!!」

 

「くっ!」

 

 あれから私は不死川さんに道場まで連れられ、手合わせをしている。私の実力などを見るために。

 

 強い、強すぎる。

 

 焔が貸してくれた漫画で不死川さんや他の柱の人達の活躍を見た時その強さは凄いと思った。

 今こうして手合わせをしてその強さを身に感じる。

 

 自分の家の道場で稽古していたけど、圧倒的な差も感じる。

 

 恐らく光輝でさえ歯が立たない。

 

 これが柱。

 

「どうしたァ!!本気でかかって来い!!」

 

「はぁ!」

 

「甘ェ!!」

 

「キャ!」

 

 不死川さんに攻撃するも防がれてしまう。

 

「おい、どうしたァ!!お前はそんなものか!!そんなじゃ風の呼吸はおろか常中も取得出来ないぞ!!」

 

「うぅ」

 

 説教される。

 

 私だってこれでも頑張ってるのに。

 

「ったく、お前もお前のお仲間さんも甘過ぎる」

 

「えっ?」

 

 甘いって?

 

 すると不死川さんが私に近づいて来た。

 

 

 

 

 

 

 

「お前、人を殺める覚悟はあるのか?」

 

 

 

 ……えっ?

 

 

 

 

「人を殺める?」

 

「ちっ!やっぱりか」

 

「あの……」

 

 

 

 

「どいつもこいつも覚悟が足りなさ過ぎる!!いいか戦いってのは常に死と隣り合わせ!!覚悟のない半端者は早死にするだけだ!!」

 

「っ!?」

 

「あの光輝という男は世界を救うとか平気で抜かしやがったが、あいつには覚悟が全くねぇ!!甘過ぎる!!そいつに賛同していった奴も同様だ!!」

 

 不死川さんの話しを聞いて、自分の中で思うところを感じた。

 

「その結果があの実戦訓練だ。周りも見れねぇ、罠に簡単に引っかかる。言葉も出ねェ。これがもし対人となるとどうなる事か」

 

 確かにもし対人となったら

 

 

「俺ら鬼殺隊も鬼を斬ってる。だが、鬼もかつては人間だったもの、やってることは人殺しと変わらん」

 

「でも、不死川さんや他のみんなは人々を守る為に」

 

「確かに守るためにな」

 

 そう言って不死川さんは自分の手を見た。

 

『っ!?』

 

 そういえば不死川さんは自分の手で鬼になった母親を。でもそれは弟や妹を守るために。

 

 私は自分の手を見た。いずれ自分も。

 

 

「不死川さん……いえ師範」

 

 私は師範の目を見た。

 

「私に風の呼吸を……私を強くしてください」

 

「……いいぜ。だが、やるからには死ぬ気でやれ!!そして甘えを捨てろ!!」

 

「はい!」

 

 待ってて香織、南雲君、焔

 

 必ず強くなるから。

 

 




「「よっ」」

 炭治郎、善逸登場

「ついに八重樫さんも鍛錬を始めたか」

「雫ちゃん大丈夫かな?風のオッサン怖いし、容赦ないし」

「大丈夫だよ。八重樫さんなら」

「そうかな?あと香織ちゃんも心配だよ」

「善逸、心配し過ぎだよ。ここでコソコソ噂話。東堂さんは黒いあの虫が大の苦手らしい」

「「次回、炎対風」」


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第十三章 炎対風

遅くなりました。

劇場版鬼滅の刃ブルーレイ買いました!

やっぱり煉獄さんかっこいいです!


「ふう〜」

 

 蝶屋敷ではしのぶがお茶を飲んで一息ついていた。

 

『今お二人はどうしているのでしょう?』

 

 しのぶはふと焔と雫の事を思い出していた。

 

『様子でも見に行ってみましょう。それにそろそろですし』

 

 しのぶは立ち上がり、部屋を出た。

 

「姉さん、少しいいですか?」

 

「いいよ」

 

 途中、姉であるカナエのとこに。

 

「どうしたのしのぶ?」

 

「これから東堂さんと八重樫さんの様子を見に行こうと、それで姉さんに蝶屋敷を」

 

「えぇ、分かったわ。二人によろしく伝えておいて」

 

「分かりました。ところで姉さん」

 

「ん?何?」

 

 

 

「あの子は今どうですか?」

 

 しのぶが質問するとカナエの表情が暗くなった。

 

「姉さん?」

 

「えっ?うん順調よ。全集中の呼吸もだいぶ覚えるようになってきたわ」

 

「そうですか」

 

「あと時々カナヲも彼女に稽古つけていたわ」

 

「そう、安心しました。では、私はそろそろ」

 

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 しのぶはそう言うと蝶屋敷を後にした。

 

 

「はぁ〜」

 

 しのぶが蝶屋敷を出た後、カナエはため息を吐いた。

 

『本当はあの子に戦いなんてさせたくなかったのに。あの子も焔ちゃんも雫ちゃんも今頃は普通の日常を送っていたはずなのに』

 

 カナエは心を痛めていた。

 焔も雫も今頃は普通の日常を送っているのに、それが戦いに巻き込まれている事に。

 

『彼女達だけじゃない他の柱の所でも今頃』

 

 

 

 

 

 

「はぁ!」

 

「ほう。迷宮の時よりだいぶ良くなってきたじゃねぇか」

 

「はい」

 

 その頃、不死川の道場では雫が稽古に励んでいた。

 道場の娘であってか、筋が良く、風の呼吸もすぐに出来るようになった。

 

「常中もそれなりに出来ているし、流石は道場の娘だな」

 

「いえ、そんな。師範に比べたら私なんて」

 

「いや、お前それなりの素質はあるぜ」

 

「師範」

 

 

 

 

「不死川はいるか!!」

 

「「っ!?」」

 

 突如道場に声が響き渡った。

 

「誰?」

 

「この声……煉獄か」

 

「えっ?」

 

「煉獄杏寿郎。俺と同じ柱だ」

 

 

 

「何の用だ?煉獄」

 

 二人が玄関の方に行くとそこに煉獄杏寿郎ががいた。

 

「うむ!正確には彼女が」

 

「どうも、不死川さん、雫」

 

「焔」

 

 煉獄の後ろにいた焔が出てきた。

 

「コイツお前んとこの継子」

 

「はい、東堂焔です」

 

 焔は不死川さんに自己紹介する。

 

「そうか。で、何しに来た」

 

「あっ、その雫がどうなっているか気になって」

 

「ふぅん」

 

 焔は雫の事が気になり、それでここに来たようだ。

 

 

「あら、皆さんお揃いで」

 

「「胡蝶」」

 

「「しのぶさん」」

 

 そこに胡蝶しのぶが来た。

 

「丁度良いです。皆さんにお話しがあって参ったので」

 

 

焔SIDE

 

「では、しばらくお待ち下さい」

 

「はい」

 

 私と雫は別の部屋に移動させられた。

 しのぶさんは師範と不死川さんとお話ししたいとのこと。

 

「待ってる間これでも食ってろ」

 

「どうも」

 

 不死川さんからおはぎと緑茶を受け取り、雫と待つ。

 

「食うか」

 

「えぇ」

 

 私達はおはぎを口に入れた。

 

「うめぇ」

 

「本当ね。元の世界を思い出す」

 

「あぁ、ところで稽古はどうだ?」

 

「うん。師範は厳しいとこあるけど、なんとか。風の呼吸もできるようになったし、常中もそれなりに」

 

「へぇ〜やるね。流石道場の娘だな」

 

「もう」

 

 やっぱ雫はやるな。

 

「ところで焔」

 

「ん?」

 

「アンタはどうなの?」

 

「何?」

 

 

 

 

 

「人を殺す覚悟を」

 

 

 

 雫のそれを聞いた私は少し動揺してしまった。

 人を殺す覚悟か。

 

「そりゃ怖ェし、いけない事だって分かってる。でもな……」

 

 私は自分の手を見た。

 

「今私らはそれをする中に入る。決して避けて通れない道だ。生き残る為に」

 

「焔」

 

 雫は私の手に自分の手を置いた。

 

「雫」

 

「私だってそうよ。怖いし、いけない事だって。でも、いつかはこの手が」

 

「雫」

 

 私だってこの手が汚れる日が来ると思っている。

 喧嘩とかで殴ったり、叩いたりするのとは異次元の違いだって事も理解している。

 

「雫、お互い辛いかもしれねぇけど、必ず乗り越えなきゃいけないと思っている。だから」

 

「うん。お互い頑張ろう」

 

 雫はそう言うと私の手から離れた。

 

「そういえば、あの人がアンタの師範」

 

「あぁ、炎柱・煉獄杏寿郎だ」

 

「そう。私、無限列車で煉獄さんの活躍を見た時、凄いと思ったの。正義感も強くて、光輝とは大違いだって」

 

「ハハハ、確かにな」

 

 あの無限列車での煉獄さんとても印象に残ってるんだよな。

 

「あ、あと香織がね、アンタの事を煉獄さんみたいだねとか言ってたよ」

 

「白崎が?私が師範みたいだなんて」

 

「でも、なんかそんな気がするんだ。あの大迷宮の時も本当に煉獄さんみたいだなって」

 

 まぁ、確かにあの時はね。

 

 でも……

 

「私なんてまだまだだよ。師範や他の柱までに一万歩あるんだぜ」

 

「そういえば煉獄さん言ってたね。私も師範までに一万歩か」

 

「遠い道のりだな」

 

「そうね」

 

 

「あの」

 

「「っ!?」」

 

 話しているとしのぶさんがいた。

 

「しのぶさん」

 

「もうよろしいでしょうか?もう話しが終わったので」

 

「「はい」」

 

「では来てください」

 

 私達は部屋を出てしのぶさんの後について行った。

 

 

 

 

 

 

 

「私と雫で」

 

「模擬試合?」

 

「はい」

 

 別の部屋に移動して、言い渡されたのは私と雫で模擬試合をやる事だった。

 

「貴女達はもうすぐ意識が回復します」

 

「そこで目覚める前にお前ら二人で模擬試合をやれ」

 

「うむ!これは東堂少女の稽古の成果、不死川の継子がどれ程のものかを見るいい機会だ!」

 

 しのぶさん、不死川さん、師範にそう言われ、私と雫はお互いの顔を見た。

 

「雫」

 

「……やりましょう」

 

「雫……あぁ」

 

 私は雫の目を見て模擬試合をする事を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っておくけど、手加減なしだ」

 

「当たり前よ」

 

 私達は広い庭に移動し、木刀を構え、雫と対峙している。

 

「お二人共準備はよろしいですね。では……」

 

 

 

 

 

 

 

「始め!」

 

 

『風の呼吸 壱ノ型』 

 

『塵旋風・削ぎ』

 

 しのぶの合図と同時に雫が技を出し、私を勢いよく通り過ぎた。

 

「っ!?」

 

 自分が持っている木刀を見た。木刀には傷が付いていた。

 彼女の技はベヒモスの時と比べて技の精度も威力も上がっていた。

 

「やるな雫……ベヒモスの時とは大違いだ。でも……」

 

 私は雫に素早く近づく。

 

「私だって!」

 

『炎の呼吸 参ノ型 気炎万象』

 

 雫に木刀を下ろすも防がれるが、彼女の木刀に食い込んだ。

 

 私と雫はお互い一度距離を取り、そして再び駆け出す。

 

 そこから互いの木刀をぶつけ合った。

 

『炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天』

 

 隙を見て技を出すが、宙を舞い避けられる。

 

『風の呼吸 弐ノ型』

 

『爪々・科戸風』

 

『炎の呼吸 肆ノ型』

 

『盛炎のうねり』

 

 雫が風の斬撃を飛ばすが、渦巻く炎で防ぐ。

 

「うおぉぉぉー!!」

 

「はぁー!!」

 

 お互い近づき木刀を振り、ぶつけ合う。

 

 

「うむ!不死川、君の継子も中々やるな!」

 

「当たり前だァ。俺の継子だ、生半可は許さねェからな。それにテメェの継子もやるじゃねぇか」

 

 煉獄と不死川は互いの継子を評価する。

 

 

「はぁ!」

 

 私の木刀を振り下ろすも、防がれる。

 私は後ろに下がり、雫から距離を取る。

 見ると私と雫の木刀がボロボロになっている。

 多分もうすぐ決着がつくだろう。

 

『炎の呼吸 壱ノ型』

 

『風の呼吸 壱ノ型』

 

 

 

『不知火』

 

『塵旋風・削ぎ』

 

 お互い技を出す。

 

 私は自分の木刀を見た。

 

 

 

 

 

 

 私の木刀は折れていた。

 

 

「私の負け」

 

 

「そこまでです。この勝負引き分けです」

 

「えっ?」

 

 しのぶさんの言葉を聞いて目を見開いた。

 私は雫の方を見た。

 見ると雫の木刀も折れていた。

 

「引き分けか」

 

「うむ!だが、中々良い試合だったぞ!」

 

 

「「っ!?」」

 

 私は頭を抑えた。

 雫も同様に抑えていた。

 

「どうやらそろそろ目覚めるみたいですね。今のうちにお二人に話します。目が覚めたらある物を用意してあります。必ず見てください」

 

 しのぶさんのそれを聞いて目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

「うぅ……っ!?」

 

 私は周りを見渡した。

 

「現実に戻ったのか」

 

 戻れたみたいだ現実に。

 

「ん?」

 

 ふと太ももに違和感を感じた。

 

 

 

「雫」

 

 雫がいた。

 

「おい雫、おい!」

 

「っ!?」

 

 雫が目を覚ました。

 

「焔?」

 

「あぁ、焔だよ。雫」




「よっ」

 炭治郎、禰豆子登場

「東堂さんと八重樫さん凄かったな」

「うぅ」

「二人とも修行頑張ったんだろうな」

「うぅ」

「ここでコソコソ噂話。八重樫さんは稽古中、禰豆子に会えるなら会いたいと思っていたらしい」

「うぅ」

「えっ、禰豆子も八重樫さんや東堂さんに会ってみたい。俺も会えるなら会ってみたいな」

「次回、奈落の底」


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第十四章 奈落の底

遅くなってすいません。

中々、思いつかない事があったので。


焔SIDE

 

「いや〜しっかし、あんなとこから落ちて助かるなんてしのぶさんの言う通り奇跡だな」

 

「本当ね」

 

 私と雫は上を見上げた。

 あんなとこから落ちたのに助かるなんて本当奇跡だ。

 

「私達が助かったのはこれのおかげね」

 

 雫が壁から出ている水を指す。

 これに流されたおかげで助かったようだ。

 

「さてと」

 

 私は壁を触ってみた。

 

「何してるの?」

 

「登れるかどうか確かめてるんだ」

 

 私は壁を触れ続けた。

 

「はぁ〜こりゃダメだ。登れそうにねぇ」

 

「そう。なら助けを待つ?」

 

「いつ来るか分からないし、待ってたら餓死しちまうかもしれねぇからダメだ。それにあんなとこから落ちたんだ、きっとお陀仏になったと思ってる。こうなったらもう自力でこの迷宮を脱出するしかねぇ」

 

「そんな」

 

「大丈夫だってそう落ち込むな。よし取り敢えず、しのぶさんが言ってた物を」

 

 私は辺りを見渡し、何かないか見た。

 

「お!あれか?」

 

 私は何か包みみたいなのを見つけた。

 取り敢えず見てみた。

 

「えぇと……これは包帯に傷薬かな。それとそれなりの食料か」

 

 包みには薬や包帯やら食料が入っていた。

 

「お?」

 

 もう一つ何かを見つけた。

 

「これは」

 

 

 

 

 

 

 

 

「香織」

 

 焔が色々と物色してる頃、雫はその辺で座り込み、友の名を呟いていた。

 

「私……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してるんだ?」

 

「焔」

 

 焔が戻って来た。

 

 

 

 

「いつまでそうしたって何も起きないぞ。何の為の不死川さんとの修行だったんだ?」

 

「それは……」

 

「それにそんな姿じゃ不死川さんや白崎に笑われるぞ。ほら」

 

 私は雫にある物を投げ渡す。

 

「これ」

 

「お前の隊服」

 

 雫に渡したのは鬼殺隊の隊服だ。

 

「私の隊服」

 

「とっとと着替えておけ」

 

「うん」

 

 

 

 

数分後

 

 

「着替えたよ」

 

「おぉ似合うじゃん」

 

 雫の隊服姿を見た。

 下は私と同じズボンタイプか。

 

「よし、じゃああとこれもな」

 

 私は雫にもう一つある物を渡した。

 八つの菱形が円形の鍔の刀だ。

 

「これ」

 

「お前の日輪刀」

 

「私の」

 

「抜いてみろ」

 

 雫は日輪刀を抜いた。

 

「あっ、色が」

 

 刀身の色が深い緑色になった。

 

「風の呼吸である証拠だ」

 

「へぇー」

 

 雫は日輪刀を軽く振った。

 

「うん悪くないわ。握り心地もいいし」

 

「よし、とっとと行くぞ」

 

 私達はこの迷宮の脱出を目指し、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「あの時に逸れた火球だけど」

 

「あぁ」

 

 雫が私達が落ちる事になってしまった火球の事を話し出した。

 

「あの火球はどうもおかしい……明らかに私と南雲を狙ったような感じだった」

 

「狙ったって……誤射じゃ「それはねぇ」」

 

 雫は誤射じゃないかと言うが、私は否定した。

 

「あの時、私は向こうから音を聞いた。悪意やら憎悪って感じの」

 

「悪意や憎悪って」

 

「私や南雲に恨みを持つのって精々アイツしかいねぇ」

 

「アイツ……まさか檜山?」

 

「だろうな」

 

 こんな事をするのはアイツぐらいしかいねぇだろう。

 

「まぁ、その原因は白崎かもな」

 

「香織が?」

 

「アイツ白崎が南雲と一緒にいるのを嫌っていたしな。私は晩餐会や南雲を助けた時の仕返しだろう」

 

「そんな……ただ香織は南雲と……」

 

「クソ、あの野郎、地上に戻ったら覚悟していろ」

 

 私は関節を鳴らしながら道を進んだ。

 

 

 

 

 

「なんか不気味ね」

 

「あぁ」

 

 私達は移動し続けたが、南雲も脱出出来るようなのも見つからず、それどころかなんかおっかねぇとこに来てしまった。

 

「匂いも音もなんか最悪だ」

 

「何なのここ?私達……」

 

「雫止まれ」

 

「どっ、どうしたの?」

 

「こっちこっち」

 

 私達は岩場に隠れた。

 

「ねぇ、どうし「しー」」

 

 私は指であるものを指す。

 

 

 

「「「グルルルルルー」」」

 

 グチャグチャグチャ

 

 

 三体の狼らしき魔物がなんか食っていた。

 

「何あれ?」

 

「見る限り魔物だろう。うぅ」

 

 私はあれを見て思わず口を手で覆う。

 気持ち悪い。

 隣にいる雫も気分が悪そうな顔をしている。

 それにあの狼、上の階の魔物と比べて明らかに音も匂いも違う。

 

「どうするの?」

 

「出来れば関わりたくねぇ。いいか、なるべく音を立てないようにそっとだ」

 

「えぇ」

 

 私達は岩場をこっそりと出る。

 音を立てないように、そっと。

 

 

 

 

 

 パラ

 

 

「「っ!?」」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

 地面にあった石ころを蹴ってしまい、奴らに気づかれてしまった。

 

「「「グルルルルル〜」」」

 

「どうするのよ?」

 

「気付かれちまったのなら仕方ねぇ」

 

 私は日輪刀を抜き、狼の魔物と対峙する。

 

 

 狼か

 

 

 

 煉獄さんが倒した下弦ノ弐・佩狼を思い出しちまった。

 

 

 なんか運命って感じだな。

 

 

 

「「「ガァァァァー!!」」」

 

 そうこうしている内に奴らが襲い掛かってきた。

 

『炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり』

 

 渦巻く炎で狼共を斬った。

 

「ふぅー」

 

「焔!」

 

「っ!?」

 

「ガァァァァー!!」

 

 雫の叫びに反応して魔物を避けた。

 

「っ!?」

 

 しかし、腕を引っ掻かれた。

 

「グルルルルル」

 

「クソ!」

 

 斬ったのは二匹だけだったのか。

 

「焔!」

 

 雫が日輪刀を構えて私の前に立った。

 

『風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風』

 

 狼の魔物を風の斬撃で斬り裂いた。

 

「雫」

 

「焔、早く傷を」

 

「こんなのかすり傷だ」

 

「ダメ!ちゃんと手当てしないと!」

 

「あぁ〜分かった、分かった」

 

 私達は安全な場所に移動した。

 

 

 

 

 

「ほら脱いで」

 

 安全な場所に移動し、雫に傷の手当てをしてもらっている。

 

「っ!?」

 

「沁みるけど我慢しなさい」

 

 しのぶさんからもらった傷薬を塗ってもらっている。

 めっちゃ沁みる。

 

 

 

「はい、これでお終い」

 

「どうも」

 

 包帯を巻き、手当てを終え、隊服の上を着た。

 

「ねぇ、さっきの魔物だけど」

 

「あぁ、明らかに上にいた魔物とは全然違う」

 

「そうね。全然違い過ぎる」

 

「油断したらあっという間にあの世行きだ」

 

「きっともう南雲は……」

 

 雫のそれを聞いて少し不安になってしまう。

 でも、アイツは可能性のある奴だ。

 生きててくれよ。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

 移動していると何かを見つけた。

 

 私達はそっと近づいた。

 

 

 

 

「っ!?」

 

「ヒィィー!!」

 

 

 

 熊のような魔物の死骸だった。

 

 

「な、何なの!?」

 

「落ちつけ、雫!ただの死骸だ」

 

 私達は死骸に近づいた。

 

「ん?」

 

 私は死骸に違和感を覚えた。

 

 じっくりそれを見た。

 

「どうしたの?そんなにじっくりと」

 

「なぁ雫、この死骸おかしくねぇか?」

 

「おかしいって?」

 

「見ろよ、このやられ跡、他の魔物の仕業には見えねぇし。まるで何かに撃たれたみたいなやられ跡だ」

 

「何かに撃たれたって……銃?でも、この世界に銃なんて……」

 

 確かにこの世界に銃のような武器はない。

 この世界にある飛び道具は精々弓矢だ。

 でも、弓矢のような跡でもないし、一体どうなってるんだ?

 

 

 

 

 

 

 私達はあの後も移動し続けた。

 なるべく魔物には遭遇しないように気をつけた。

 

 

 

「っ!?」

 

 私は何かを感じ、移動を止めた。

 

「どうしたの?急に止まって」

 

「……感じる」

 

「何を?」

 

「……こっちだ!」

 

「ちょっと!」

 

 私は感じた音を求めて走った。

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

 ここだ、この辺りからだ。

 

「ちょっと……急に走らないでよ」

 

 後から来た雫も来た。

 

「悪りぃ」

 

 私は歩いた。

 近い、近いぞ。

 

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

 歩いていたら一人の男がいた。その周りには魔物の死骸がゴロゴロ転がっていた。

 

 

「あ、あぁ」

 

「嘘……まさか」

 

 

 

 

 

 

「「南……雲……?」」

 

 

 

 

 

「姉……貴……?」

 




「「「よっ」」」

 炭治郎、善逸、伊之助登場

「オルクス大迷宮にこんなとこが、恐ろしいとこだ」

「ヒィィー!!無理!無理!絶対死ぬ!」

「うおぉぉぉー!!俺もオンボロで暴れてーー!!」

「だからオルクスな」

「ここでコソコソ噂話。八重樫さんは甘露寺さんとカナヲと同じ隊服が欲しかったらしい」

「でもよ炭治郎。この先大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。みんななら」

「「「次回、奈落の再会」」」


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第十五章 奈落の再会

遅くなってすみません。


NO SIDE

 

 モシャモシャモグモグ

 

「「……」」

 

 今、焔と雫の目の前でハジメが胡蝶しのぶからもらった食料をガツガツと食っていた。

 焔と雫は信じられないかのような目で見ていた。

 

「ねぇ、あれ本当に南雲?」

 

「あぁ、間違いねぇ。見た目は変わちまってるけど、音と匂いはアイツだ」

 

 雫は信じられないのも無理はない。

 彼女達が知っているハジメは髪は黒く、どこにもいる普通の男子高校生の姿である。

 しかし、目の前にいる男は髪も白く、体格もガッチリしており、かつての南雲ハジメの姿とはかけ離れている。

 

「でも……」

 

「信じられないならこれを見ろ」

 

 ハジメはそう言うとステータスプレートを二人に差し出す。

 

 

「「……は?」」

 

 二人はステータスプレートを見て、驚愕し、空いた口が塞がなかった。

 

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:23

 天職:錬成師

 

 筋力:450

 

 体力:550

 

 耐性:350

 

 敏捷:550

 

 魔力:500

 

 魔耐:500

 

 技能:錬成【+鉱物系鑑定】【+精密錬成】【+鉱物系探査】【鉱物分離】【鉱物融合】・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩【+空力】【+縮地】・風爪・夜目・気配感知・石化耐性・言語理解

 

 

 

 ハジメのレベルがかなり上がっており、技能も沢山あった。

 

「何よこれ?」

 

「“男子三日会わざれば、刮目して見よ„って言うけど、これは……」

 

 これには彼女達も驚かざるを得なかった。

 

「おい、一体どうやったらこんな風になるんだ?」

 

 焔も流石に気になってしまい、ハジメに問いた。隣の雫も気になっていた。

 

 

 

「魔物の肉を食べた」

 

「へぇ〜、そうか魔物の肉を……」

 

 

 

 

 

 

「「魔物の肉を食った(食べた)!?」」

 

「っ!?」

 

 衝撃的な答えに二人は叫んだ。

 あまりの大声にハジメは驚き、耳を塞いだ。

 

「ちょっとどういう事よ!魔物の肉を食べたって!」

 

「そうだ!確かそれ毒があるって!なのに何でピンピンしてるんだ!」

 

 雫と焔はまるで鬼気迫ったのような顔でハジメに迫った。

 

「近ぇよ。今から説明する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜なるほど」

 

「これが」

 

 焔と雫はハジメから説明を受け、納得していた。

 

 ハジメは確かに魔物の肉を食べたが、彼が神水という回復出来る物も飲んだおかげで死なずに済んだ。

 そして魔物の肉のおかげでステータスも上がり、現在の姿になったのだと。

 

「それにしてもこんな便利な物があったなんてね」

 

 雫が手にある物を見て関心する。

 彼女の手にある物はハジメが説明した神水なのだ。

 

「お前がそうなったのは分かった。ところでお前左手は?」

 

 焔はハジメの左手がなくなっている事に気づく。

 

「魔物に喰われた」

 

 ハジメが告げた事に焔と雫はショックを受けたかのように目を見開いた。

 

「済まねぇ」

 

「何で姉貴が謝るんだよ?」

 

「だってよ。私らがもっと早く意識を取り戻していりゃお前の左手を失わずに済んだかもしれねぇのに」

 

 焔はハジメの左手を失った事に罪悪感を感じていた。もし、もっと早く意識を取り戻していたら、彼の左手は失わずに済んだかもしれないからだ。

 

「別に姉貴は悪くねぇよ」

 

「そうよ焔、それを言うなら私だって」

 

 ハジメと雫は焔を励ます。

 

「でもよ……」

 

「あぁーもう!いい加減にしなさい!アンタらしくないわよ!」

 

 落ち込む焔が気に食わなかったのか雫は彼女のほっぺを引っ張った。

 

「いひゃい、ひっぱりゃにゃいで」

 

「ハハハ。本当お前ら姉妹みたいだな」

 

 ハジメはこの光景に笑みを浮かべる。

 

「どう?少しは良くなったでしょ」

 

「おぉ」

 

 焔は引っ張られた頬を押さえる。

 

「ところでよ」

 

「ん?」

 

「実はさっき熊の魔物の死骸を見かけたんだけど」

 

「あぁ、俺が殺した」

 

 ハジメはそう言うと何かを出した。

 

「それ」

 

「銃だと、どうしたんだよこれ?」

 

 ハジメが出したのは銃だった。

 

「作った」

 

「作った?ちょっと触らせて」

 

 ハジメは焔に銃を渡す。

 

「へぇ〜よく出来てるじゃん。おまけにカッケ、流石錬成師」

 

「分かるのか?ドンナーって言うんだ」

 

「ハハハ、こう見えて映画とか好きだったからな。こんな風に」

 

 焔は銃を構える。

 

「さっさと失せろ、ベイビーてな」

 

「おっ、なんかカッコいいな。それ気に入った」

 

「どうも」

 

 焔はハジメにドンナーを返し、少し話した後、再び移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 バン!バン!

 

「「……」」

 

 

 ハジメはドンナーを使い、魔物を撃ち殺しまくっていた。

 その様子を焔と雫は呆然と見ていた。

 

「南雲」

 

「アイツやるじゃねぇか」

 

「頼もしいわね、でも」

 

「私達だって!」

 

『炎の呼吸 弐ノ型』

 

『風の呼吸 肆ノ型』

 

『昇り炎天』

 

『昇上砂塵嵐』

 

 焔と雫もハジメに負けじと魔物を斬る。

 戦闘後、互いに頷き、移動を開始する。

 

 その後も魔物を倒しながら迷宮を進んだ。

 

 

 

 

 

「これは」

 

 やがて彼らはある扉に辿り着いた。

 

「扉だよね」

 

「あぁ」

 

「待て待て」

 

 ハジメが扉に触れようしたが、焔が止めた。

 

「どうした?」

 

「なぁ、こういう迷宮とかにある扉ってゲームや映画だと何を思い浮かぶ?」

 

「……罠とか」

 

 雫が答えた。

 

「そうだ。あとはボスの部屋とか運が良ければ宝の部屋だったりもするけどな」

 

「だが、進むにはこの扉の先に行かないと」

 

「あぁ、そうだ。だから警戒しないと」

 

「あぁ」

 

 ハジメは扉に触れた。

 

 

 

 ゴゴゴ!ゴゴゴ!

 

「っ!?」

 

「何!?」

 

「ちっ!!今度はなんだ!?」

 

 扉に触れた瞬間、何かが起こる。

 やがて、三人の目の前に一つ目の怪物が二体出現した。

 

「サ、サイクロプス?」

 

 焔が怪物の名を呟いた。

 

「済まんが、付き合ってる余裕はねぇんだ。さっさと失せろ、ベイビー」

 

 ドパッ!!

 

 ハジメはドンナーでサイクロプスの一体を撃ち抜き、倒す。

 

「容赦ねぇ」

 

「焔」

 

「あぁ」

 

 焔と雫はもう一体のサイクロプスに目を向け、日輪刀を構える。

 サイクロプスは二人に目掛けて拳を突き出す。

 

『風の呼吸 陸ノ型』

 

『黒風烟嵐』

 

 雫はサイクロプスの拳を刀を下から振り上げ、斬り裂いた。

 

『炎の呼吸 伍ノ型 炎虎』

 

 そこに焔が駆け出し、燃え盛る虎の如く日輪刀を大きく振り、サイクロプスを斬る。

 倒し終えた三人は扉の中に入る。

 

「一体なんなのここ?」

 

「警戒しとけ、何があるか分からないからな」

 

「あぁ」

 

 三人は部屋の周りを警戒しながら、奥に進む。

 

「おい、何かあるぞ」

 

 ハジメが何かを発見した。

 

「何あれ?」

 

「さぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰……?」

 

「「「っ!?」」」

 

 突然、声らしきものが聞こえた。

 三人は更に近づいた

 

 

 

 

 

「誰か……そこにいるの……?」




「よっ!」

 炭治郎、禰豆子登場。

「まさか南雲君があんなになっていたなんて、随分と見違えてしまったな」

「むぅ〜」

「あんなになってしまう程、大変だったんだな」

「むぅ〜」

「ここでコソコソ噂話。東堂さんは映画のセリフを色々覚えているそうですよ」

「それにしても最後の扉の中にあったもの、一体?」

「むぅ〜」

「次回、金髪の吸血鬼」


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第十六章 金髪の吸血鬼

遅くなってすいません。


焔SIDE

 

 南雲、雫とオルクス大迷宮を進み続けた先に見つけた扉。

 

 サイクロプスの邪魔もあったが、無事突破し、扉の中に入った。

 

 警戒しながら中に入り、そこで見たのは……

 

 

 

 

 

 

 

「誰か……そこにいるの……?」

 

 

 

 

 

 何かの物体に埋まっている金髪の少女だった。

 

 

「女の子?何でこんなとこに女の子がいるの?」

 

 雫が戸惑っている。

 私だってそうだ。

 

 

 何でこんなとこに女の子が?

 

 

「お願い……私を……」

 

 

 困っているのか?

 

 音や匂いからも別に悪意のようなものは感じないし。

 

 それになんかこの少女から人とは違う匂いと音もする。

 

 どうしたもんか?

 

 

 

「すみません間違えました」

 

「待ちなさい」

 

「待たんかい」

 

 南雲が去ろうしたので雫と二人で彼を掴んだ。

 

「何とんずらしようとしているんだ!こんな状況で!」

 

「状況も何もこんなところに閉じ込められてる奴を信用できるかよ」

 

「でも、話を聞くぐらいは」

 

「見たところ封印されているようだが……そう見せかけた罠かもしれん」

 

「それは」

 

 南雲の罠という言葉を聞いて雫が戸惑いを見せた。

 まぁ、グランツ鉱石の例があるからな。

 

「おい南雲、話聞くぐらいしてやれよ。それにあの子から別に悪い匂いや音はしないし」

 

「姉貴、こんな奈落の底に封印されてるぐらいだかなり「だぁー!!もうぐだぐだうるさい!」っ!?」

 

 私は南雲があまりにもぐだぐだと言うから怒鳴り、彼を睨んだ。

 

「いい加減にしろよな……男なら腹を括っていけ、度胸見せろやゴラ。行かねんなら私が行くよ」

 

 私は金髪の少女の方へ行く。

 

 

「待て」

 

「南雲」

 

 南雲が私の肩を掴んだ。

 

「行ってやるよ」

 

「ほう。やっとか」

 

 南雲が先頭を歩き、私と雫はその後をついて行き、少女の元へ。

 

「なぁ、お前は何者だ?何でこんなとこに閉じ込められてる?」

 

 南雲が少女に問いかける。

 

 

 

 

「裏切られた」

 

「裏切られた?」

 

 裏切られた?

 

 一体何があったんだこの少女に?

 

「何があった?」

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力を持ってる……だから国のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力があるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 この少女、吸血鬼だったのか。道理で人とは違う匂いと音がするもんだ。

 

 それに彼女が語った壮絶な過去と封印理由。

 

 私は思わず手を強く握り締めた。

 

 雫は手で口を覆っていた。

 

 南雲は尚も少女に問いかけた。

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

 

「……(コクコク)」

 

「殺せないってなんだ?」

 

「勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

 

 首を落とされても!?

 

 まるで無惨と黒死牟みたいだ。

 

「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

 

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

 私達三人は「なるほどな」と納得した。

 

 不死身の体に魔力を直接操れる。

 

 この少女、下手したら無惨や上弦の鬼すら凌駕するんじゃねぇのか?

 

「……助けて……」

 

 少女がポツリと懇願する。

 

 私と雫は南雲を見た。

 

 正直あの少女を助けられるのは彼だけだろう。

 

 南雲が少女をジッと見た後、私と雫を見て、少女を閉じ込めて入る立方体に手を置いた。

 

「あっ」

 

 少女がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。南雲はそれを無視して錬成を始めた。

 濃い紅色の魔力が放電するように迸る。

 しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるで南雲の魔力に抵抗するように錬成を弾いた。

 でも、全く効いてないわけじゃない。少しずつアイツの魔力が立方体を蝕んでいるみたいだ。

 助力したいが、私は錬成は使えない。火属性魔法は使えるが、私の戦い方は炎の呼吸による剣技、魔法はもしもの時の保険で殆ど使わない。

 

「ぐっ、抵抗が強い!……だが、今の俺なら!」

 

 南雲は更に魔力をつぎ込む。

 

 私と雫はただそれを祈るように見た。

 

 少女を封じる周りの石が徐々に震え出した。

 

「まだまだぁ!」

 

 南雲は気合を入れながら魔力をつぎ込む。

 

 だが、これだけやっても立方体は変形しない。南雲はヤケクソ気味に魔力を全放出しやがった。

 

 私と雫は目を見開く。

 

 直後、立方体に変化が出てきた。立方体がドロっと溶けていき、少しずつ少女の枷を解いていく。

 それなりに膨らんだ胸部があらわになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。そのまま、体の全てが解き放たれ、少女は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。

 南雲も座り込んだ。魔力を使い過ぎたようだ。

 

「「南雲!」」

 

 私と雫は南雲に駆け寄った。

 かなり疲れているようだ。一体どれだけ魔力を使ったんだ?

 

「……ありがとう」

 

 少女が礼を言ったので、そっちに目を向けた。

 

「……名前、なに?」

 

「焔。東堂焔だ」

 

「雫。八重樫雫よ」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

 

「……名前、付けて」

 

「は?付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

「もう、前の名前はいらない。名前つけて」

 

 名前つけてって言われても。

 

 取り敢えず、参考に鬼滅の女鬼を思い浮かぶ。

 

 

 朱砂丸

 

 母蜘蛛、姉蜘蛛

 

 下弦の肆・零余子

 

 上弦の陸・堕姫、鬼になる前の名前だった梅

 

 鳴女

 

 珠世様

 

 思い浮かんだけど、いい名前が思いつかね。

 

「“ユエ„なんてどうだ?ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

 

 南雲が言い出した。

 

 ユエか

 

「ユエ?……ユエ……ユエ……」

 

「ああ、ユエっていうのはな、俺達の故郷で“月„を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い目が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

 

 なるほどそういう意味でか。悪くないかも。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

 というわけで、少女の名前はユエに決定した。

 

「よろしくな、ユエ」

 

「よろしくね、ユエちゃん」

 

「ん。よろしく、ホムラ、シズク、ハジメ」

 

「おう、取り敢えずだ……」

 

「?」

 

 南雲はそう言うと着ていた外套を脱ぎ、ユエに渡す。

 

「これ着とけ。何時までも素っ裸じゃあなぁ」

 

 あ、そういえばユエはずっと素っ裸だった。

 

「ハジメのエッチ」

 

 それを聞いて私と雫はジト目で見た。

 

 ハジメはユエが外套を着ている間、神水を飲んで回復する。

 

 

「っ!?」

 

 私は真上からなにかヤバい匂いと音を感じた。

 

 私は咄嗟に雫を掴んだ。

 

「焔?」

 

 雫はどうしたのかという目で見てきたが、そんなの気にせず全力で走った。

 見ると南雲もユエを掴んでいた。あいつも何か感じたのか。

 

 

 ズドン!!

 

 

 

 真上から何かが降ってきて、地響きが立った。

 

 

 振り返って降って来たものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 そこには巨大な蠍がいた。

 

 

 

 




「「よっ」」

 炭治郎、善逸登場。

「オルクスにあんな女の子が封じ込められていたなんて。それも長い事こんな所に」

「いや〜ユエちゃんか。可愛いな。禰 豆子ちゃんも可愛いけど、あの子もなかなか」

「善逸」

「ここでコソコソ噂話。東堂さんはよく色々な人から因縁をつけられるが、本人は向こうから勝手につけてきたと殆ど無視している。不良になったのもそれが原因だとか」

「それにしても蠍の化け物が降ってきたけど、大丈夫かな?」

「ううん……大丈夫だよ。皆なら」

「「次回、奈落の蠍」」


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第十七章 奈落の蠍

遅くなってすいません。

疲れやストレスもあったのと、どういう展開にすればいいのかなかなか思いつきませんでした。それでもなんとか頑張りました。

鬼滅の刃 遊郭編、堕姫の担当声優が沢城みゆきさんになりましたね。放送が楽しみです。


 オルクス大迷宮で出会った少女、なんとその不死身の力を持った吸血鬼だった。

その少女を助け、ユエという名を授けたハジメ達だったが、彼らのとこに巨大な蠍が降り立った。

 

 

 

焔SIDE

 

「キシャアアアアーー!!」

 

 

 私達のとこに降り立った巨大蠍が咆哮を上げた。

 

「おいおいマジかよ」

 

 私は信じられない目で巨大蠍を見る。

 

「焔」

 

「あぁ、やるしかねぇ」

 

 私と雫は日輪刀を抜刀し、構える。南雲もユエを担いでいるが、戦闘態勢に入っている。

 

「邪魔するってんなら……殺して喰ってやる」

 

 南雲の宣戦布告を受けて、巨大蠍が尻尾の針から紫色の液体を勢いよく噴射した。私達はそれを飛び退いてかわす。液体が付いた場所を見ると床をジュワーという音を立てて溶かしていた。どうやら溶解液のようだ。

 

『風の呼吸 伍ノ型』

 

『木枯らし颪』

 

『炎の呼吸 参ノ型』

 

『気炎万象』

 

 ドパンッ!

 

 雫と私が地上にいる巨大蠍に向けて技を、それと同時に南雲もドンナーを抜き、巨大蠍の頭部に発砲する。

 私と雫は地上に降りるが、南雲は跳躍をしていた。巨大蠍に目を向けると奴は微動だにしていなかった。

 

「どんだけ頑丈なんだよ」

 

「焔あれ」

 

 雫が指差した方向を見ると巨大蠍が尻尾から針を発射し、南雲に攻撃をした。南雲はそれをドンナーで撃ち落とし、豪脚で払い、風爪で叩き切った。何とか凌ぎ、お返しとばかりにドンナーを発砲した。直後、空中にドンナーを投げ、ポーチから何かを出し、投げた。

 

「姉貴、八重樫離れろ!」

 

 南雲の叫びを聞き、雫と一緒に巨大蠍から離れる。ふと南雲が投げた物を見た。

 あれは……

 

 

 

「手榴弾!?」

 

 手榴弾だった。

 手榴弾は爆ぜ、燃える黒い泥を撒き散らし、巨大蠍に付着し、炎を撒き散らした。

 あれは所謂焼夷弾のようなもんか。その炎を引き剥がそうと大暴れしだした。その隙に、南雲が着地し、既にドンナーをキャッチしていた。

 

「キシャァァァァア!!!」

 

 巨大蠍が怒りの咆哮を上げる。タールはもう燃え尽きてしまった。

 

「この!」

 

 私は日輪刀を巨大蠍に振り下ろす。だが、やはり刃が通らない。

 

「焔!」

 

『風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ』

 

 雫が塵旋風・削ぎで攻撃するも、やはり効かない。

 

「姉貴、八重樫!」

 

 南雲がドンナーを撃つ。これも全然効いてない。

 

「クソ!どんだけ硬いんだよ!いい加減にしやがれ!」

 

 私は巨大蠍の頑丈さに苛立ち、怒りの声を上げた。

 どこか……どこかに柔い部分はないのか?

 

『炎の呼吸 伍ノ型 炎虎』

 

 私は炎虎で巨大蠍に迫る。

 

「キシャァァァァ!!」

 

 巨大蠍が尻尾から針を発射しやがった。

 

 ドス!

 

 その音を聞いて私は恐る恐る見た。

 

 

 

 私の横腹と肩に針が突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あまりの痛さに地面でのたうち回る。

 

「姉貴!」

 

「焔!」

 

「ホムラ!」

 

 三人が私のとこにやってきた。

 

「待ってろ」

 

 南雲は私に突き刺さっている針を抜いた。

 

「八重樫俺はアイツをなんとかする。お前は姉貴を」

 

 そう言うと南雲は神水を雫に渡し、巨大蠍に向かった。私は雫に支えてもらい、安全なとこに。

 

 

「ほら飲んで」

 

 雫が私に神水を飲ませてくれた。すると突き刺さって出血していたとこがみるみる治っていた。

 これが神水の力か。

 

「サンキュー雫」

 

「えぇ」

 

「よし、刺した礼を」

 

「無理しないで、いくら回復したからって。それにあの体にどう対抗するのよ?刃も通らないあの体を?」

 

 確かにあのボディをどうにかしないと勝機が見えねぇ。

 

 

 こうなったら……アレを使うしかねぇのか?

 

 

 

 アレに私の体は耐え切れるのか?

 

 

 

 

「蒼天」

 

 

 色々考えていたらユエの声が聞こえた。

 見ると巨大蠍の頭上に青白い炎の球体が出来上がっていた。ユエはそれを巨大蠍に直撃させた。

 

「グゥギィヤァァァアアア!?」

 

 巨大蠍がかつてない絶叫を上げた。

 ユエは力を使ったせいか肩で息しながら座り込んだ。見ると巨大蠍の外殻が融けていた。あれだけ苦労したあのボディを融かすなんてどんだけ凄いんだ。こりゃ本当に無惨や上弦の鬼を凌駕するんじゃねぇのか?

 でも、今なら……

 

「雫、いくぞ!」

 

「えっ、ちょっと!?」

 

 私は巨大蠍に向かって走った。

 

『炎の呼吸 壱ノ型 不知火』

 

 私は奴の外殻を斬った。思った通り溶けた分耐久性がなくなっている。その斬った外殻の下に柔いとこが出てきた。

 

「雫、南雲!奴の柔いとこが出た!そこに攻撃しろ!」

 

「全く、無理しないでって言ったのに」

 

「あぁ、だが、ナイスだ姉貴」

 

『風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風』

 

 雫の爪の斬撃と南雲のドンナーからの発砲を巨大蠍は受ける。

 

「これでも喰らっとけ」

 

 南雲はさらに手榴弾を巨大蠍にぶち込んだ。ぶち込んだ後、巨大蠍から離れる。

 そして

 

 

 

 

 ゴバッ!

 

 

 

 手榴弾が爆発し、巨大蠍が爆ぜた。巨大蠍はこっちを見据えたまま、ゆっくりと傾き、そのままズズンッと地響きを立てながら倒れた。

 

 南雲はリロードしながら倒れている巨大蠍に近づき、その口内にドンナーを突き入れると二、三発撃ち込み、確実に止めをさした。

 

 私はあの化け物を倒し、生き残れた事に安堵し、座り込んだ。

 

 




煉獄杏寿郎、不死川実弥登場!

「あんな大きい蠍を倒してみんな生き残れるとは見事だ!」

「ふん!八重樫は俺の継子だ。あんなとこで死んでもらっちゃ困る!」

「うむ、勝てたのはみんなの力を合わせたからこそ成し遂げられた!全員立派だ!」

「あァ。お前んとこの継子もあの南雲とユエもなかなかやるじゃねェか」

「うむ!ここでコソコソ噂話!八重樫少女は不死川との修行中、彼の好物であるおはぎを作ってあげ、不死川はそれを絶賛したらしい」

「さて、この迷宮にもまだ何かあるかもしれん」

「あァ。こんなとこでくたばんなよ八重樫」

「「次回、蛇柱」」


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第十八章 蛇柱

遅くなりました。




焔SIDE

 

 巨大蠍を倒した私達は、巨大蠍とサイクロプスの素材などを回収し、南雲の拠点と呼ばれるとこに行った。

 その回収の際、最上級魔法を使い、消耗したユエに南雲は彼女に血を飲ませた。あの最上級魔法を使用する前にどうやら彼の血をユエは飲んだらしい。そういう訳で血を飲ませ、ユエは回復し、身体強化で怪力を発揮し、楽に運ぶ事が出来た。

 そして現在、私達は色々と準備しながらお互いのことを話している

 

 

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

 

「……マナー違反」

 

 ユエが非難を込めたジト目で南雲を見る。そりゃそうだ。

 

「おいおい南雲。女性に年齢の話なんてデリカシーないぞ」

 

「悪りぃ」

 

 私がそう言うと南雲は謝った。

 それにしても三百年か……上弦の三倍生きてるんだな」

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

 

「……私が特別。"再生„で歳もとらない……」

 

 聞けばユエは十二歳の時に魔力の直接操作や“自動再生„の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸う事で他の種族より長く生きるらしいが、それでも二百年が限界みたい。

 

 先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。

 

 欲に目が眩んだ叔父が、彼女を化け物として周囲に浸透させ、大義名分のもと殺そうとしたが、“自動再生„で殺せず、やむを得ず地下に封印したんだと。彼女自身、当時は突然の裏切りにショックを受けて、碌に反撃もせず混乱したまま何かの封印術をかけられ、気がつけば、あの封印部屋にいたという。

 

 帰る方法があるかもしれないと思ったが、残念ながら分からないそうだ。

 

 ユエの力の事も聞いた。彼女は全属性に適しているのだと。無詠唱で魔法を発動できるらしい。“自動再生„は一種の固有魔法で、魔力が残存している間は、一瞬で塵にならない限り死なないそうだ。

 

 なんか……

 

「鬼より凄いな」

 

「オニ?」

 

 おっと口に出てしまった。

 

「オニ……何それ?」

 

「鬼というのは私達の世界にいる伝説上の存在、この世界で言うところの魔物みたいな奴だ。色々な地域に言い伝えなどがあったりもするんだ。まぁ、私の言った鬼はある物語に出てくるやつだけど」

 

「それどんなのなの?」

 

 私はユエに鬼滅の刃の事を話した。鬼舞辻無惨、十二鬼月、炭治郎、鬼殺隊、柱など。

 

「無惨……恐ろしい」

 

「おっかねぇな無惨。それに十二鬼月……上弦は百年余りも顔ぶれが変わらないなんて」

 

 ユエ、南雲はそれぞれ感想を言った。

 

 またこの機会に私と雫が使う剣技の事も話した。夢での修行の事なども。

 

「それがホムラとシズクの」

 

「俄には信じられないが、まぁ、この目で見たからな。この刀も、日輪刀か」

 

 南雲は日輪刀を興味深く見ていた。

 

「なぁ、その柱っていうのは他にもいるんだろう」

 

「あぁ」

 

「なら俺らのクラスメイトもそいつらに修行を」

 

 まぁ、確かにその可能性は……でも……私は雫と目を合わせた。

 

「「ないな」」

 

 揃って言った。

 

「何でそう言い切れる?」

 

「そりゃそうだろう。特に伊黒さんとか」

 

「師範……不死川さんもそうだったよ。みんな甘すぎるって」

 

 私と雫は理由を答えた。

 みんな色々甘いとこ多いし。伊黒さんは甘露寺さん関連で檜山を嫌っていたのもあり、問題だらけだ。光輝に関しては論外だし。

 

焔SIDE OUT

 

 

NO SIDE

 

 ハジメ、焔、雫がオルクス大迷宮を彷徨っているその頃

 

 

とある道場

 

「……」

 

 一人の女が木刀を持って辺りを見回していた。

 

 だが、彼女のいる所は異様だった。なぜなら壁や天井、床の至る所にたくさんの人達が括り付けられていた。

 

「……」

 

 

 

 

 

「遅い」

 

「っ!?」

 

 女が振り向くと、括り付けられた人の間から木刀が異様な曲がり方で彼女の胸辺りに当たる。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

「のろい……そんなんでこの俺に一太刀入れられると思ってんのか?」

 

 彼女に木刀を当てた男が少女を見下ろす。

 

 その男は左右の目の色が異なっており、口に包帯を巻いていた。首には白蛇がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでも弱いままだぞ。園部優花」

 

 男がその女の名を言う。

 なんとその女はハジメのクラスメイトの園部優花だった。

 

『何なのこの人の太刀筋?出鱈目過ぎる!おまけにネチネチうるさいし!』

 

「おい、何を思っている?」

 

「い、いいえ何も」

 

 優花は思わず震えた。

 

「だったら続けるぞ」

 

「はい……」

 

 優花は立ち上がり、その男に向けて木刀を構えた。

 

 

 

 

 

「伊黒さん」

 

 

 

 優花が相手していたのは柱の一人、蛇柱・伊黒小芭内だった。

 

 

 

 




伊黒小芭内、胡蝶しのぶ登場

「伊黒さんの継子は園部さんですか」

「まぁな」

「あんまりいじめたりしなければいいですけど」

「ふん!俺はそんな甘くない」

「そうでしたね。ではここでコソコソ噂話。鬼の事を聞いた南雲さんはふとユエさんを見て下手したら十二鬼月に入れるんじゃないかとちょっと思ったらしい」

「「次回、蛇と投術士」」


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第十九章 蛇と投術士

出来ました。

優花が伊黒さんと頑張っていきます!


 少し前に遡る。

 

「……」

 

 ハイリヒ王国王宮内、召喚者達に与えられた部屋の一室で、園部優花は、暗く沈んだ表情でベッドにくるまっていた。

 あの後、宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。とても、迷宮内で実戦訓練を続けられるような状態ではなかったし、勇者の同胞が死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった。

 因みに香織は未だ眠ったまま目を覚さないでいた。

 

 帰還を果たし生徒の死亡が伝えられた時、王国側の人間は誰も彼もが愕然とした。

 

 

「いえ、死んだのは南雲と東堂の二人です!雫は生きています!」

 

 光輝が大きく叫んだ。

 

 それを聞いた者達は安堵の息を漏らしたのだ。死んだのが“無能„のハジメと“愚か者„の焔と知ると。

 

 国王やイシュタルですら同じだった。強大な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬことなどあってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから。

 だが、国王やイシュタルはまだ分別のある方だっただろう。中には悪し様にハジメと焔を罵る者までいた。また、焔にはある噂が流れた。

 

 それは彼女が魔人族と関わりがあるんじゃないかと。

 

 焔は剣士でありながら勇者である光輝を上回っているのは絶対におかしい事や、魔人族と手を組んでいるのではないか、裏切り者などと南雲の悪口とともにヒソヒソと囁かれた。これには優花は怒り、何度も手を出そうになったが、光輝が激しく抗議した。その事で国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断したのか罵った人物達は処分を受けたようだが……

 

 逆に、光輝は無能と裏切り者にも心を砕く優しい勇者であると噂が広まり、結局、光輝の株が上がっただけになった。

 

 

 

 

 

「南雲、焔、雫」

 

 ベッドにくるまっている優花は落ちた三人の名を呟く。彼女はある事を思い出す。

 

「何で南雲と焔なの!」

 

 優花は光輝に抗議した。なぜ、死んだのが焔とハジメで雫は生きているのだと。

 

「雫は生きている!俺には分かる!雫のステータスなら生きていると!」

 

「じゃあ焔は!彼女はアンタよりあるのよ!それなら彼女も生きているはずよ!」

 

「東堂はダメだ」

 

「何で?」

 

「だって瓢箪に息を吹いて破裂させたり訳の分からない事ばっかやっていたし、実戦訓練前にも」

 

 確かに他人から見ればそう見えるが、あれは焔にとって常中を取得するためにやっていた事だ。

 

「それであの強さはおかし過ぎる。やっぱり魔人族と手を組んでいたに違いない。その柱という奴と」

 

 光輝は柱を魔人族だと思っている。もしここに焔がいたら彼に怒っていただろう。

 

『パァン!』

 

 光輝の言葉に放心していた優花は彼に思いっきりビンタした。

 

「アンタ最低よ」

 

 そう言い、優花は自分の部屋へと行ったのであった。

 

 

 

 

 

「私……どうしたら……」

 

 優花の目から涙流れる。よっぽど悔しかったのだろう。

 

「うぅぅぅぅ〜ヒック、ヒック」

 

 やがて泣き出してしまった。

 数時間後、彼女は泣き疲れたのか眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい起きろ。、起きるんだ」

 

「ん〜」

 

「いつまで寝てるんださっさと起きろ!蛇柱様の前だぞ!」

 

「っ!?」

 

 突然の怒声に優花は目を覚まし、周りを見回す。

 

『えっ?どこここ?私王宮内の部屋で寝ていたはず?』

 

 優花は周りが自分が寝ていた王宮内の部屋と違う事に戸惑う。今、彼女がいるとこはどこかの庭みたいなとこだった。

 

「おい、蛇柱様の前なのに何ウロチョロしてる?」

 

『というかさっきからこの人誰?あと何蛇柱様って?』

 

「俺とお前の目の前にいるのが分からないのか?」

 

 隠に言われ、目の前を見た。

 

 そこには左右の目の色が異なり、口には包帯、首に白蛇を巻いていた。

 

『誰?』

 

「このお方は鬼殺隊の中でも最も位の高い剣士の一人、蛇柱・伊黒小芭内様だぞ」

 

『鬼殺隊?何それ?』

 

 優花はもう何がなんだか混乱していた。

 

「えっと……伊黒小芭内?」

 

「バカかお前!!柱を呼び捨てにする奴があるか!!お前死にたいのか!!」

 

『うぇ!?そこまで怒る!?この人そんなに偉いの!?なんか口に包帯巻いてるし、首に蛇もいるし』

 

「フン、まぁいい。おい俺と来い。お前はもう帰っていい」

 

 伊黒は優花の手を掴み、立ち上がらせ連れ出す。隠しの人は言われた通りここを去る。

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

「黙れ。黙って俺と来い。あと暴れたりするな」

 

 優花は伊黒にそのまま屋敷の中に入る。

 

「ん」

 

「えっ?」

 

 中に入るや否や彼女に刀を投げ渡す。

 

「これは?」

 

「見れば分かるだろう、刀だ」

 

「いや、分かるけど……」

 

「なら始めるぞ」

 

「えっ?何を?」

 

「鍛錬だよ。お前を剣士にする」

 

「剣士?」

 

「そうだ。お前はもう投術士じゃない」

 

「えっ?投術士じゃない?」

 

「いいからとっとと始めるぞ。時間が惜しい」

 

 そこから伊黒は優花に稽古をつけた。刀の握り方や全集中の呼吸についての講義など様々な事を彼女に教えていった。

 

「そろそろかな」

 

「えっ?そろそろ?」

 

「いいか現実でも鍛錬怠るんじゃねぇぞ。投術の訓練はするな。あと、天之河や国の連中が何言っても信用するな、無視するなりしろ」

 

「えっ?どういう?」

 

 すると優花の視界がおかしくなり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 ベッドの上で目が覚める優花、彼女は辺りを見渡し、王宮の部屋である事を確認した。

 

「夢?夢だったの?」

 

 頭を抑えながら、ベッドから降り、歩き出したその時……

 

「わっ!?」

 

 何かを踏み、転んでしまった。

 

「痛た、もう何よ?」

 

 踏んでしまった物を拾った」

 

「何これ?木刀?刀?」

 

 彼女が持っているのは木刀と刀だった。

 

「誰がこんなもんを」

 

 優花は木刀と刀を持ったまま歩き出す。

 

『あれ?何か妙に体が軽いような……気のせいかな?』

 

 体が軽くなったような気がしたようだが、気のせいだと思い、気にしなかった。

 やがて彼女は広場に着き、ふと木刀と刀を見た。

 彼女は木刀持ち、構えると素振りしだした。

 

『ちょっとは気分転換になるかな。あんな夢見ちゃったんだし』

 

「あれ?優花?」

 

 そこに二人の女子が来た。

 

「奈々、妙子」

 

 クラスメイトの宮崎奈々と菅原妙子だ。

 

「ちょっともう大丈夫?けっこう落ち込んでいたけど」

 

「うん、まぁね」

 

「そう」

 

「ん?優花その木刀どうしたの?あと素振りなんかして」

 

「えっ?あぁ……ちょっとした気分転換だよ」

 

「ふぅん」

 

「ねぇ、それよりもうすぐご飯だよ。行こう」

 

 そのまま三人と食事へと向かった。

 

「何それ?変な夢だね」

 

 優花は二人に夢の事を話した。

 

「本当よ」

 

「でも、所詮は夢だよ!気のしない、気にしない!」

 

「そうそう!ただの夢だよ!」

 

 なんて二人からそう言われた。

 

 

 

 

 しかし……

 

 

 

 

 

「よし、今日もやるぞ」

 

『また!?』

 

 またしても同じ夢だった。

 

「お前に俺の蛇の呼吸を見せる。じっくり見るんだぞ」

 

 伊黒は彼女に蛇の呼吸を見せた。その太刀筋に優花は驚きを隠せなかった。

 

「お前にはこれを自分のものにしろ。いいな」

 

 そこから伊黒は優花に蛇の呼吸の訓練をさせた。

 

「おい、しっかりやれ。括りつけるぞ」

 

 時にネチネチと言われながら。

 

「ふん。まぁまぁってとこか。おい、ちゃんと現実でも鍛錬怠るんじゃねぇぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜」

 

「優花」

 

「災難だね。また同じ夢を見たって」

 

 優花は奈々、妙子の前でため息を漏らす。

 

『もうないよね』

 

 彼女はそう願ったが、それかも伊黒との鍛錬は続いた。

 

 

 

 そして

 

 

 

 

「お前にはこの障害物を避けつつ太刀を振るってもらう」

 

 優花の目の前には異様な光景が広がっていた。なぜなら壁や天井、床の至る所にたくさんの人達が括り付けられていた。

 

『何これ?』

 

「この……括られている人たちは何ですか?何かした?」

 

「……まぁ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

「弱い罪、覚えない罪、手間を取らせる罪、イラつかせる罪という所だ」

 

 

 

 

 

『……もうヤバい人だこの人!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




胡蝶しのぶ、甘露寺蜜璃登場!

「園部さん鍛錬を始めしたね」

「うん!伊黒さんならきっと優花ちゃん大丈夫だよ!」

「ふふ、大丈夫だといいですけど。ではここでコソコソ噂話。伊黒さんはあの括りつけるの際、天之河さんと檜山さんも括りつけたいと考えていたみたいです」

「優花ちゃん頑張って!私も応援してるから!」

「園部さん健闘を祈ります」

「「次回、治癒師の目覚め」」


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第二十章 治癒師の目覚め

遅くなってすみません。


「くっ!」

 

 優花は道場の中を走り続けた。至る所に多くの人が括りつけられたこの異様なとこを。

 

『どこ?どこにいるの!』

 

「おい」

 

「っ!?がぁ!?」

 

 その括りつけられている人の間から伊黒の太刀筋が優花を襲った。

 

「のろい」

 

「くっ!」

 

 悔しさからか彼女は歯を噛み締める。

 

 

 

 

 

 

「あぁ!!もう!!」

 

 夢での伊黒との鍛錬のせいか現実で優花はイライラしながら木刀を振っていた。

 

「うわぁ、優花めちゃくちゃ怒ってる」

 

「無理もないよ。その伊黒って男と毎日夢でしごかれているもんね。そりゃイライラするよ」

 

 その様子を奈々と妙子は見ていた。

 

「でも、なんか最近優花の動きとか良くなってない?」

 

「そう?」

 

「うん、だって」

 

 

『蛇の呼吸 壱ノ型』

 

『委蛇斬り』

 

 優花は木刀から刀に変え、蛇の呼吸を使い、的用に立てていた丸太を斬る。

 

「まるで蛇みたいな太刀筋で斬るし」

 

「確かに……それにあの夢見て以降、投術の訓練もしなくなったし」

 

 奈々と妙子が様子を見てる中、誰かが来た。

 

「またか」

 

「天之河」

 

 光輝だった。その光輝は優花の方へ向かう。

 

「園部さん」

 

「何?」

 

 声をかけられた優花は光輝を見た途端嫌な目で見た。

 

「もういい加減剣の訓練は止めるんだ。君の天職は投術士なんだから」

 

「何度も言ってるけど、これは私の勝手よ。アンタに指図される覚えはないわ」

 

「これは君のために言ってるんだ!」

 

「私のためって……いつから私の親になったのよ!」

 

「何で分からないんだ!君のためなんだ!」

 

 光輝は怒り、優花の肩を掴む。

 

「放っておいてよ!」

 

 優花は光輝の手を振り払い、去ろうとする。

 

「待て!話しはまだ……っ!?」

 

 あまりのしつこさに優花は光輝を睨み、彼の顔に刀の刃先を向けた。

 

「これ以上私に近寄ったら本当に斬るから」

 

 そう言って納刀し、今度こそ去る。

 

 

 

 

 その夜

 

「香織」

 

 優花は未だに目覚めない香織のとこにいた。彼女は夜に彼女の様子を見に行くのが日課となっていた。

 

「早く目覚めてよ」

 

 優花はそう言いながら彼女の手を握り、祈った。

 その時、握り締めた香織の手がピクッと動いた。

 

「!?香織!聞こえる!?香織!」

 

 必死に呼びかける優花。すると、閉じられた香織の目蓋がふるふると震え始めた。優花は更に呼びかけた。その声に反応してか香織の手がギュッと優花の手を握り返す。

 そして、香織はゆっくりと目を覚ました。

 

「香織!」

 

 優花はベッドに乗り出し、香織を抱きしめた。

 

「……優花ちゃん?」

 

「よかった……よかったよ!」

 

 あまりの嬉しさに優花は泣き出してしまった。そんな彼女を香織も抱きしめた。

 

 

 

 

 

「その……ごめんね。つい」

 

「ううん、いいよ。気にしていないから」

 

 数分後、優花は泣き止み、香織に謝罪した。

 

「それより体はどう?どこか悪いとこは?」

 

「う、うん。平気だよ。ちょっと怠いけど……寝てたからだろうし……」

 

「そうね、何日も眠っていたし」

 

「何日も?そんなに……どうして……私、確か迷宮に行って……それで……あ……………南雲君は?雫ちゃんは?焔ちゃんは?」

 

「っ……」

 

 優花はそれを聞いた途端に暗い表情となった。

 

「……嘘だよ、ね。そうでしょ?優花ちゃん。私が気絶した後、三人とも助かったんだよね?ね、ね?そうでしょ?ここ、お城の部屋だよね?皆で帰ってきたんだよね。三人とも……訓練かな?訓練所にいるよね?うん……私、ちょっと行ってくるね。お礼言わなきゃ……だから、放して?優花ちゃん」

 

 現実逃避するように次から次へと言葉を零し三人を探しに行こうとする香織。そんな香織の腕を、優花は掴んで放そうとしない。

 

「……香織」

 

「やめて」

 

「香織」

 

「やめてよ……」

 

「香織」

 

「いや、やめてよ……やめてったら!」

 

「香織」

 

「放して!放してよぉ!……っ!?」

 

 香織は叫びながら優花の顔を見て目を見開いた。彼女は涙を流し、泣いていた。

 

「優花ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな」

 

 香織はショックを受けていた。

 あの後、優花から自分が眠っている間に起こった事を全て聞いた。

 

「私もあの時、証言したんだけど、見間違いとかで結局駄目だった」

 

 実は優花はあの大迷宮で起きた事を証言した。あの火球は檜山がやったのだと。しかし、光輝は彼がそんな事するはずないや彼女の見間違いとかで彼女の証言は聞き入れられなかった。

 結果、あれはハジメと焔が自分で何かしてドジったせいだと思うようにしているようだ。

 

「優花ちゃん、私、信じないよ。雫ちゃんと南雲君と焔ちゃんは生きてる。死んだなんて信じない。焔ちゃんが裏切り者なのも信じない」

 

「香織」

 

「分かってる。あそこから落ちて生きていると思う方がおかしいって。……でもね、確認したわけじゃない。可能性は一パーセントより低いけど、確認していないならゼロじゃない。……私信じたいの」

 

「香織……あんた凄いね。あんな事があったのに」

 

「悲しいよ。でもね、ある剣士さんがね」

 

 

 

 

 

 

 

「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け、君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんでくれない。俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は摘ませない」

 

「竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして、今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる」

 

 

「って、その剣士さんは死ぬ直前に後輩に」

 

 香織は鬼滅の刃の煉獄杏寿郎の言葉を思い出す。

 

「へぇ〜」

 

「だから、私、もっと強くなるよ。それで、あんな状況でも今度は守れるくらい強くなって、自分の目で確かめる。三人の事。……優花ちゃん」

 

「何?」

 

「力を貸してください」

 

 優花はじっと自分を見つめる香織に目を合わせ見つめ返した。香織の目には狂気や現実逃避の色は見えない。ただ純粋に己が納得するまで諦めないという意思が宿っている。

 

「もちろん。付き合ってやるわ、私も頑張るから!」

 

「優花ちゃん!」

 

 香織は優花に抱きつく。何度もありがとうって言いながら。

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「優花ちゃん、私が眠ってる間に体つき良くなってない?」

 

「……あぁ、それは……」

 

 香織は優花の体つきが良くなっている事に気づく。

 優花はその訳を話す。

 

 

 

 

 

「そうなんだ。優花ちゃん頑張ってるんだね」

 

「うん。ネチネチうるさいのがムカつくけど」

 

「ふふ……『あれ?伊黒?なんかどこかで知ったような……なんだったけ?』」

 

 香織は優花の話に出てきた伊黒という人物に思い当たるような節を見せる。しかし、分からなかった。

 

「さて、私そろそろ」

 

「うん、頑張ってね。優花ちゃん」

 

 優花は香織の部屋を後にしようとする。

 その時、部屋の扉が開けられる。

 

「香織!目覚めたのか!」

 

「香織!」

 

 光輝と龍太郎だ。香織の様子を見に来たのだろう。優花は入って来た二人を見て睨む。

 

「香織、良かった」

 

 光輝は香織に近づこうとする。しかし……

 

 

 

「出て行って!!」

 

「えっ?」

 

「出て行って!何が死んだのが南雲君と焔ちゃんよ!焔ちゃんが裏切り者?何でそんな酷い事を言えるの!」

 

「香織?どうしたんだ急に?目が覚めて混乱しているのか?大丈夫か?」

 

 光輝は香織に触ろうとするが……

 

 

 

 パァン!

 

 

「触らないで」

 

 香織に手を払われてしまった。香織はベッドから出ると優花の手を掴む。

 

「えっ?」

 

 掴まれた優花は驚くが、そのまま香織に引っ張られ、部屋を出た。龍太郎は呆然と出て行くのを見たが、光輝は香織がいたとこで固まっていた。

 

 

 

 

 

「香織」

 

「優花ちゃん、一緒にいていい?」

 

 優花は香織を見た。今の彼女を一人にするのは良くないと感じた。優花は香織を自分の部屋に連れ、そのまま二人でで寝た。

 

 

 

 

 

「またダメだった」

 

 翌日、優花は落ち込んでいた。どうやらまた伊黒に攻撃出来なかったようだ。

 

「どうすれば」

 

「優花ちゃん!」

 

「香織?」

 

 香織が部屋に入って来た。手に本らしき物を持って。

 

「ねぇ優花ちゃん。優花ちゃんの言ってた伊黒さんってこの人だよね?」

 

 優花は香織が持っている本を見る。

 

「……えっ?」

 

 優花は信じられないような目で見た。その本の表紙に描かれていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

「……伊黒……さん?」

 




「「よっ」」

 炭治郎、善逸登場!

「うぅ〜香織ちゃんが目覚めた!良かったよ!」

 香織が目覚めた事に泣く善逸。

「善逸、泣き過ぎだよ。でも、本当に目覚めて良かった。それにあんな決意するなんて感心するよ」

「うぅ〜それにしてもあの光輝って男、何香織ちゃんを悲しませるんだ。……許さん!あいつちょっと殺してくるわ!」

「止めるんだ善逸!」

 善逸を止める炭治郎。

「ここでコソコソ噂話。東堂さんが持って来た俺達の漫画は何冊かって言ってたけど、全巻あるみたいですよ」

「「次回、殻を破る投術士!」」


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第二十一章 殻を破る投術士

なんとか書けました。

無限列車編はいよいよ最終回、遊郭編はすぐそこです!


「ど、どういう事?」

 

 優花は香織から受け取った本を見て、震えていた。

 

「何で……伊黒さんが?」

 

 その本の表紙に描かれていたのは夢の中で何度もしごかれ、ネチネチと色々言われまくられた伊黒小芭内が描かれているのだから。

 

「優花ちゃん落ち着いて」

 

「はっ!」

 

 香織に声をかけられて落ち着く優花。

 

「あ、えっと?これ一体?」

 

「これは"鬼滅の刃„という漫画でね。焔ちゃんがこの世界に来た時に一緒に持って来た物なの」

 

「焔が?」

 

「うん。この漫画は竈門炭治郎君という主人公が鬼になってしまった妹の禰豆子ちゃんを人間に戻すために鬼と戦う話なの」

 

「鬼?」

 

「この漫画に出てくる鬼は元々は人間だったんだけど、鬼舞辻無惨という鬼のリーダー格によって恐ろしい怪物になって人々を襲い、食べてしまうの」

 

「人が怪物になる?それで人を襲う?」

 

「うん。その鬼から人々を守るために鬼殺隊という組織があるの」

 

「鬼殺隊」

 

「その鬼殺隊には最も位の高い“柱„という鬼殺隊を支えている九名の剣士がいるの」

 

「……柱……柱!」

 

 

 

 

「二人の立派な柱に鍛えられました」

 

 

 優花は以前、焔がメルド団長に言っていた事を思い出す。あの時、焔が言っていた柱の事。

 

「柱って……まさか」

 

「うん。でね、この柱には炎柱の煉獄杏寿郎さん、水柱の冨岡義勇さん、蟲柱の胡蝶しのぶちゃん、音柱の宇髄天元さん、岩柱の悲鳴嶼行冥さん、霞柱の時透無一郎君、風柱の不死川実弥さん、恋柱の甘露寺蜜璃ちゃん」

 

 香織は優花に柱の面々を見せた。

 

「そして蛇柱の伊黒小芭内さん。優花ちゃんの師匠だよ」

 

「師匠って」

 

「でも、優花ちゃん凄いね。伊黒さんの継子に選ばれるなんて」

 

「継子?」

 

 聞き慣れない言葉に優花は首を傾げる。

 

「継子というのは柱が育てる隊士の事だよ。相当才能があって優秀じゃないと選ばれないんだよ。例えばこの子」

 

 香織は優花にある少女を見せた。

 

「この子は栗花落カナヲちゃん。しのぶちゃんの継子なんだ」

 

「へぇ〜」

 

「だからね、それだけ凄いんだよ継子に選ばれるのは」

 

「そうなんだ。でも、私にはそこまでの才能なんてないし、優秀でも。あの時だって……」

 

 優花は思い出す。オルクスで襲われそうになった事や証明しようとしてダメだった事。

 

「そういう意味じゃ焔の方がよっぽど」

 

「そんな事ないよ。だって優花ちゃん三人のために頑張ってくれていたし、今も強くなろうと伊黒さんに」

 

「香織」

 

「だから……」

 

 香織は優花の手を包む。

 

「自信を持って強くなって、私も頑張るから」

 

「香織……うん!」

 

 優花は力強く言う。

 

 

 

 

 

 

 

「あの伊黒さん」

 

「何だ?」

 

「どうして私が貴方の継子に選ばれたんですか?私の他にもいたでしょう。天之河とか」

 

 優花は夢の中で伊黒に問いた。どうして自分が彼の継子に選ばれたのか。

 

「あいつはダメだ。それだけじゃねぇ他の奴らもだ」

 

「えっ?」

 

「お前らは戦いというのを舐めている。ただ力があるというだけでいい気になって、それじゃ鬼と変わらん」

 

「鬼と」

 

「おまけにあんな訳の分からない教会や国の連中を疑いもせず、簡単に信用しやがる。人が死んだというのにそれを無能だ、裏切り者だと喜ぶ連中を。全くお間抜けな奴らだ」

 

「お間抜けって……何もそこまで」

 

「そうだろう。オルクス大迷宮の訓練だってどうだ?命令を聞かなかった罪、罠に引っかかった罪、仲間を危険に晒した罪、仲間殺しの罪。もう数え切れねぇ程な。お前も力を持ちながら死にかけた分際だけどな」

 

 伊黒にたくさん言われた優花。でも、殆ど事実であり、言い返せなかった。

 

「だが、お前はあの三人のためにあそこまでの度胸を見せた。これはと思った。それでお前を継子にした」

 

「それで」

 

「話は終わりだ。始めるぞ。今日こそ一太刀入れられるといいな」

 

 

 話を終え、鍛錬に入る。しかし、残念ながら一太刀入れられなかった。

 

 

 

 

 だが、優花は諦めなかった。

 

 

「優花ちゃん!頑張って!」

 

「ぐぬぬ〜!」

 

 優花は必死に鍛錬をしている。彼女は今、香織からの助言で常中を取得しようと頑張っていた。

 

「はぁ、はぁ」

 

「優花ちゃん」

 

「まだよ。焔だってあんなに努力したのよ。絶対に取得してあいつに一太刀入れてやるんだから」

 

「優花ちゃん……うん!」

 

 優花は再度気合入れて鍛錬を行った。そんな頑張りに香織も彼女の鍛錬に付き合う。

 

「……」

 

 その様子を見ている光輝。どこか気に食わないようだ。

 

 

 

「香織、何もここまで」

 

「ううん。大丈夫。寝ている間でも全集中の呼吸できるようにしないと」

 

 香織は優花が寝ている間に全集中の呼吸が止まらないように見張りをするようだ。

 

「すぅ、すぅ」

 

「呼吸止まってる!」

 

 パン!パン!

 

 このように寝ている間に全集中の呼吸が止まれば、叩くようにしている。因みにこれは炭治郎が常中を取得した時のを参考にしている。

 

 こうして日々鍛錬に勤しんだ。

 

 

 

 その結果

 

『ダダダダダダ!』

 

 優花は道場の中を走る。以前とは比べ物にならない位に。

 

『速さも上がっている。それに俺にもついて行けているだと。こいつまさか常中を』

 

 これには伊黒も目を見開く。だが、彼は気にせず木刀を優花に向けて振る。

 しかし……

 

 

 

 優花は見事に避けた。

 

『躱しただと!?反応も早くなってやがる』

 

『ついて行けている!努力は無駄じゃなかった!今日こそ入れてやるんだ!』

 

 優花は必死に木刀を振った。しかも括られている人に当たらず、正確な太刀筋で。

 

 そして

 

 

 スパァン!

 

 

 

 優花の木刀は伊黒を正確な太刀筋で一太刀入れた。

 

 

『……やった……やった!』

 

 やっと一太刀を入れた事で安堵したのか座り込んでしまった。

 

 ふと、床を見ると包帯が落ちていた。恐る恐る伊黒を見る優花。

 

 

『あっ』

 

 伊黒の口がまるで口裂け女のように裂けていた。彼女が斬ったのは伊黒が巻いていた包帯だった。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「何故、謝る?」

 

「だって、その口」

 

「口の事は気にするな。それよりよく一太刀入れたな」

 

 伊黒は座り込んだ優花に合わせてしゃがむ。

 

「一太刀入れたお前に朗報だ」

 

「朗報?」

 

「南雲ハジメ、八重樫雫、東堂焔。三人は生きている。今もあの大迷宮で頑張っている」

 

「えっ?生きてる?生きてるんですか!?三人は!?」

 

「あぁ」

 

 三人の生存を知った優花は涙を流す。

 

「いいかよく聞くんだ。他の奴らには伝えるなよ。伝えるのは白崎香織だけにしろ」

 

「分かったわ」

 

「それと甘露寺から伝言だ」

 

「甘露寺?」

 

「俺と同じ柱だ。伝言はお前のいる世界に甘露寺の継子がいる。もし、そいつに会ったら仲良くしてやってくれと」

 

「えっ?甘露寺さんの継子?」

 

 その瞬間、優花の目の前が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 目が覚める優花、見渡すといつもの部屋だった。目覚めると涙を流す。

 

「優花ちゃん」

 

 振り返ると香織がいた。

 

「優花ちゃん、どうし……っ!?」

 

 香織に抱きつく優花。

 

「優花ちゃん?」

 

「生きてる。南雲も、雫も、焔も、生きてるって……あの大迷宮で今も頑張ってるって」

 

「っ!?」

 

 それを聞いた瞬間、香織の目からも涙を流し、お互い泣いた。

 

 

 

 

 

「そう。伊黒さんが」

 

「うん。あの人がそう言ってた」

 

「うん。よかった、三人とも」

 

「香織分かってるよね?」

 

「うん。誰にも言わない。それより優花ちゃんあれ」

 

 香織が床を指差す。そこには鬼殺隊の隊服と刀と羽織があった。

 

「これ」

 

「優花ちゃんの隊服だよ」

 

「私の隊服?」

 

「で、これが日輪刀だね。ねぇ、優花ちゃん着てみて」

 

「えっ、うん」

 

 

 数分後

 

 

「着替えたよ」

 

「わぁー優花ちゃん似合ってる」

 

 隊服に着替え終えた優花がいた。羽織も着ており、その柄は伊黒と同じ柄だった。髪には藤の花の髪飾りもつけていた。

 

「その髪飾りは?」

 

「あっ、これ一緒にあったの」

 

「似合ってるよ」

 

「ありがとう」

 

「さぁ、次にこの日輪刀を抜いて」

 

 優花は香織から日輪刀を受け取り、刀を抜く。

 

「わぁー」

 

 刀身の色が薄い紫色となった。

 

「色が変わった」

 

「日輪刀は別名色変わりの刀って呼ばれていて、その人の呼吸に合わせて変わるの」

 

「へぇ〜」

 

 関心した優花は日輪刀を納刀する。

 

『伊黒さん、貴方から教わった事を胸に頑張るね』

 

 そう決意した優花であった。

 

『それより甘露寺さんの継子……誰なんだろう?』

 

 

 

 

 

「くしゅん!風邪でも引いたかな?」

 

 彼女に会うのはまだまだ先。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、オルクス大迷宮

 

「濃厚で深い味わい……!」

 

「うおっ」

 

「いただきます」

 

 ユエに襲われそうになるハジメ。

 

「おい!姉貴、八重樫!助けてくれ!」

 

「どうぞ、ごゆっくり。二人で楽しんで。私らはちょっと見回りしてくる」

 

「おい!待ってくれ!頼む!」

 

 かぷっ

 

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

 ハジメの叫びが大迷宮に響き渡った。

 

「ユエって結構肉食だな」

 

「う、うん。『ううぅ、香織になんて言おう』」

 

 




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「園部さん、やっと伊黒さんに一太刀入れられてよかった」

「ううう!」

「俺もあれには苦労したんだよな」

「ううう」

「ここでコソコソ噂話!園部さんの髪飾り、あれは伊黒さんが甘露寺さんと一緒に選んで買ったんだそうです」

「園部さんのこれからの活躍楽しみだね」

「ううう!」

「でも、大迷宮の方も気になるところ」

「次回、寄生花!」


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第二十二章 寄生花

なんとか書けました。

遊郭編も放送開始したので頑張りました。


焔SIDE

 

 どうも皆さん、お久しぶり。最近、出番がなかった焔ちゃんです。

 今、私達はどうしているのかというと……

 

 

「だぁー、ちくしょぉおおー!」

 

「……ハジメ、ファイト……」

 

「お前は気楽だな!」

 

「呑気に話したりしてしないの!」

 

「とにかく今は全力で走る事だけを考えろ!」

 

 

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 二百体近くの魔物に絶賛追われ中です。

 

 

 少し前

 

 私達が準備を終えて迷宮攻略に動き出した後、十階層程は順調に降りる事が出来た。南雲の装備や技量が充実し、熟練してきたのと私と雫の剣技もあるが、ユエの魔法が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因だ。

 全属性の魔法を何でもござれとノータイムで使用し私達を援護してくれる。

 私達が降り立ったのが現在の階層だ。まず見えたのが樹海だった。十メートルを超えてるんじゃないかと思える木々が鬱蒼と茂っていて、空気は湿っぽかった。

 私達が下の階への階段を探していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何だと思って身構えると目の前に現れたのは、見た目は完全なティラノサウルスのような爬虫類の魔物だ。

 ここジュ○シック・ワー○ド?

 それと何故か頭に花を生やしているけどな。

 

 私達はそれぞれ慌てず、武器を構えるが、それを制するようにユエが前に出てスッと手を掲げた。

 

「“緋槍„」

 

 ユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形となり、一直線にティラノのが口内目掛けて飛翔し、あっさり突き刺さって、そのまま貫通。周囲の肉を溶かして一瞬で絶命させた。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。

 そして頭の花も地面に落ちた。

 

「「「……」」」

 

 色んな意味で思わず押し黙る私達。

 最近、ユエ無双が激しい。そのせいで私達は出番がなくなってしまっている。

 私達は武器を仕舞い、ユエに話しかける。

 

「あー、ユエ?張り切るのはいいんだけど……最近、俺、あまり動いてない気がするんだが……」

 

 ユエが振り返って南雲を見ると、無表情ながら何処か得意げな顔になる。

 

「……私、役に立つ。……パートナーだから」

 

「はは、いや、もう十分役立ってるって。ユエは魔法が強力な分、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は俺達の役目だ」

 

「……ハジメ……ん」

 

 南雲に注意されてしまい若干シュンとするユエ。

 

「なぁ、ユエ。頑張ってくれるのは嬉しいけど、刀振られねぇと腕が鈍っちまうかもしれねぇしよ」

 

「うん、私もユエちゃんが頑張ってくれるのは嬉しいよ。でも、もし、ユエちゃんが魔力使いすぎて倒れたら元も子もないよ」

 

「ホムラ、シズク」

 

 

 

 

 

「しかしよ。なんなんだこの魔物?花なんか生やして」

 

「うん。なんなんだろうね?」

 

 あれから私達は魔物と遭遇し、戦闘して倒したが、どの魔物にも花を生やしていた。ティラノの他にラプトルのもいたけど。

 

「うーん」

 

 私は魔物の死骸に近寄り、死骸を観察した。生やした花を手に取ってみた。

 

「ん?」

 

 ふと、私は花に違和感を覚えた。そしてある事を思い出した。

 

「姉貴どうした?」

 

「焔?」

 

「ホムラ?」

 

 三人が私を見た。

 

「この花、おかしいんだ」

 

「おかしい?」

 

「あぁ、匂いを嗅いだらこの花からあの魔物とは別の匂いがした」

 

「別の匂い?」

 

「こいつは多分寄生だ。どこかにこの花を寄生させた張本人がいるはずだ。それに戦っていてこの魔物、音も変だった。まるで自分の意志とは……っ!?」

 

 私が言いかけた瞬間、何かを感じた。

 

「焔?」

 

「マズイぞ。数十匹以上の魔物が接近中だ」

 

「あぁ、まるで誰かが指示してるみたいに全方位から囲むように集まってきやがる」

 

 南雲も感じたのか。

 

「どうするの?」

 

「……逃げる?」

 

「……いや、この密度だと既に逃げ道がない。一番高い樹の天辺から殲滅するのがベターだろ」

 

「だろうな」

 

「ん……特大のいく」

 

「おう、かましてやれ!」

 

 私達は高速で移動しながら周囲で一番高い樹を見つけた。そして、その枝に飛び乗り、眼下の足がかりになりそうな太い枝を砕いて魔物が登って来にくいようにした。

 私達は武器を構えながら待つ。

 そして第一陣が登場。ラプトル、ティラノのお出ましだ。ティラノは樹に体当たりしてくる。ラプトルはカギ爪を使ってヒョイヒョイと登ってくる。

 南雲はドンナーでラプトルを撃ち抜く。

 私と雫は日輪刀でラプトルを斬る。時折、蹴ったり、踏みつけて落とす。

 

「ハジメ?」

 

「まだだ……もうちょい」

 

 ユエの呼び掛けにラプトルを撃ち落としながら答える南雲。ユエはひたすら魔力の集中に意識を集中させる。

 やがて、眼下の魔物の数が増えてきた。

 

「ユエ!」

 

「んっ!“凍獄„!」

 

 ユエの魔法で私達がいる樹を中心に眼下が一気に凍てつき始めた。ビキビキッと音を立てながら瞬く間に蒼氷に覆われていき、魔物に到達すると花が咲いたかのように氷がそそり立って氷華を作り出す。魔物は氷華の棺に閉じ込められ目から光を失った。

 

「ユエちゃん凄い」

 

「わぁお、童磨に負けないくらいの氷だ」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「お疲れさん。流石は吸血鬼だ」

 

「……くふふ……」

 

 最上級魔法を使った影響でユエは肩で息をしている。

 南雲は首筋を差し出し、吸血させ回復させる。

 

「っ!?ヤバいぞ、また来やがる。それも更に倍の数だ」

 

 私はまた魔物の音を感じた。南雲も気づいたようだ。

 

「またって……さっき倒したばっかなのに」

 

「こりゃ寄生させた張本人を見つけて倒すしか方法はねぇ」

 

「姉貴の意見に賛成だ。あの花を取り付けているヤツを殺らない限り、俺達はこの階層の魔物全てを相手にすることになってしまう」

 

 私達は花を寄生させた張本人を探す事になった。

 

「ハジメ……だっこ……」

 

「お前はいくつだよ!ってまさか吸血しながら行く気か!?」

 

 南雲はユエを抱っこしながら移動……とはならず、邪魔にならないようおんぶする事になった。

 

 そして冒頭にプレイバック、プレイバック。

 

 

 ドドドドドドドドドドドドッ!!

 と、地響きを立てながら二百体近くの魔物が迫っている。背の高い草むらに隠れながらラプトルが併走し四方八方から飛びかかってくる。それを倒しつつ、探索の結果一番怪しいと考えられる樹海を抜けた先、今通っている草むらの向こう側に見える迷宮の壁、その中央付近にある縦割れの洞窟らしき場所に向かい、ひたすら駆ける。

 

「ユエさん!?さっきからちょくちょく吸うの止めてくれませんかね!?」

 

「……不可抗力」

 

「嘘だ!ほとんど消耗してないだろ!」

 

「……ヤツの花が……私にも……くっ」

 

「なにをわざとらしく呻いてんだよ。ヤツのせいにするなバカヤロー。ていうか余裕だな、おい」

 

 この二人、こんな状況でよくイチャイチャしていられるな、おい。

 

「おい、そろそろ例の洞窟だ。飛び込むぞ」

 

 私の言った事に、全員洞窟に飛び込んだ。

 縦割れの洞窟は窮屈さを感じる狭さだ。ティラノは入ってこれねぇ。ラプトルは一体ずつしか入れねぇ。侵入してきた一体を南雲がドンナーで噴き飛ばし、すぐに錬成で割れ目を塞いだ。

 

「ふぅ〜、これで取り敢えず大丈夫だろう」

 

「……お疲れさま」

 

「そう思うなら、そろそろ降りてくれねぇ?」

 

「……むぅ……仕方ない」

 

「おい、どうやら当たりみたいだ。微かに花にあった同じ匂いがする」

 

「そうか。よし行くぞ。油断するなよ」

 

「ん」

 

「おう」

 

「分かったわ」

 

 私達は薄暗い洞窟を慎重に進む。

 しばらく道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。もしかしたら階下への階段かも。

 私達が部屋の中央までやってきた時、それは起きた。

 全方位から緑色のピンポン玉のような物が無数に飛んできた。私達は背中合わせになり、飛んでくる緑の玉に攻撃する。

 しかし、その数は百を超え、尚、激しく撃ち込まれる。

 

「キリがないよ」

 

「クソ!本体は!」

 

 私は匂いを嗅いだり、音を聞いたりして本体を探す。

 どこにいる?

 

「……にげて……」

 

 ユエが私達に手を向けていた。ユエの手に風が集束する。私達はその場を全力で飛び退いた。刹那、私達のいた場所を強力な風の刃が通り過ぎ、背後の石壁を綺麗に両断した。

 

「「「ユエ(ちゃん)!?」」」

 

 まさかの攻撃に驚くが、ユエの頭を見て理解する。ユエの頭の上に花が生えていた。それもよく似合う赤い薔薇が。

 

「くそっ、さっきの緑玉か!?」

 

「ハジメ……うぅ……」

 

 ユエが無表情を崩し悲痛な表情をする。

 

「ユエちゃん」

 

「ユエ」

 

 クソ、あの花を斬って助けたいが、あの花に操られているせいで自分の意志とは関係なく、花を庇っている。迂闊に攻撃出来ねぇ。

 

「……やってくれるじゃねぇか……」

 

 色々考えているとそれは奥の縦割れの暗がりから現れた。

 

 植物と人間が融合した魔物。こいつが寄生花の正体か。

 

 見た目は人間の女だが、音や匂いから最悪な感じがしてならない。まだ、上弦の陸・堕姫の方がマシだな。

 私達はすかさず武器を構えるが、植物女がユエを盾にしている。

 

「ごめんなさい」

 

 悔しそうな表情するユエ。どうすれば?

 考えていると植物女が緑の玉を発射する。なんとか当たらないように避ける。喰らったらユエやあのティラノやラプトルと同じになっちまう。

 

「どうするのよ?」

 

「分かんねぇよ!」

 

 雫が聞いてくるが、どうすればいいか分からねぇ。

 

「ホムラ、シズク!……私はいいから……斬って!」

 

 ユエが叫ぶ。

 出来るかよそんな事!

 もし、炭治郎でも禰豆子があんな風になってたら斬れねぇだろうな。

 

「ハジメ!……私はいいから……撃って!」

 

 今度は南雲に向かって叫んだ。

 南雲でも流石に。

 

「え、いいのか?助かるわ」

 

 ドパンッ!!

 

 

……エェェェェェェーー!!

 

 

 撃った!?普通に撃ちやがったよこの人!?

 

 ユエの頭の上の花が撃ち落とされていた。

 

「ユエ!離れろ!」

 

「っ!?」

 

 私が叫ぶと同時にユエは植物女から離れる。

 

「雫!」

 

『炎の呼吸 伍ノ型』

 

『風の呼吸 捌ノ型』

 

『炎虎』

 

『初烈風斬り』

 

 私の炎の虎と雫の巨大な斬撃で切り刻んだ。植物女は傷つき、燃えながら地面に倒れ伏した。

 

「ユエ、無事か?違和感とかないか?」

 

 ユエの安否を確認する南雲。だが、ユエは頭をさすりながらジトッとした目で南雲を睨む。

 

「……撃った」

 

「あ?そりゃ撃っていいって言うから」

 

「……躊躇わなかった……」

 

「そりゃあ、最終的に撃つ気だったし。狙い撃つ自信はあったんだけどな、流石に問答無用で撃ったらユエがヘソ曲げそうだし、今後のためにならんだろうと配慮したんだぞ?」

 

「……ちょっと頭皮、削れた……かも……」

 

「まぁ、それくらいすぐ再生するだろ?問題なし」

 

「うぅ〜……」

 

「「……」」

 

 見ていた私と雫は互いに顔を合わせ……

 

「「はぁ〜」」

 

 ため息を吐いた。もう呆れて何も言えないよ。

 

 

 

 

 

 そんな事もあって私達は大迷宮を進み、遂に百層目に到達した。

 進むと、巨大な扉を見つけた。

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

 

「……反逆者の住処?」

 

 確かに如何にもラスボスの部屋って感じだ。冷や汗がとまらねぇ。見ると雫もどこか緊張してるって感じだ。

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールに辿り着いたってことだろ?」

 

 この状況でよくそんな事言えるな南雲は。

 

「……んっ!」

 

 ユエは覚悟決めたようだ。

 ここまで来たらやるしかねぇ!覚悟決めて扉に向かう。

 しかし、扉の前に行こうと最後の柱の間を超えた瞬間、扉と私達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が出現し、そこから六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物が現れた。

 

 あれは……

 

 

 

 ヒュドラ?

 




宇髄天元、まきを、須磨、雛鶴、登場。

「ハジメの奴、普通撃つか?あそこで?俺でもあそこまで派手にしねぇよ」

「「「天元様」」」

「と、ここでコソコソ噂話。ユエは焔と雫の血を吸う事もある。ハジメの方が極上だが、二人のは普通の味らしい」

「ところでこの小説で俺の継子はまだ出ねぇのか?」

「まだ先のようです」

「早く出してくれよ。俺が派手に育てたんだからよ」

「「「「次回、ヒュドラ!」」」」


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第二十三章 ヒュドラ

なんとか出来ました。


焔SIDE

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 私達の前に現れたヒュドラ、不思議な音色の絶叫を上げながら六対の眼光が私達を射抜く。私達を裁きを与えようというのか、凄絶な殺気が叩きつけられた。

 同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。

 私達は同時にその場を飛び退く。南雲がドンナーを発射し、赤紋様の頭を狙い撃った。弾丸は狙い違わず赤紋様の頭を吹き飛ばした。

 よしと思った時、白い紋様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤紋様の頭を白い光が包み込んだ。すると、吹き飛んだ赤紋様の頭が鬼のようにみるみる再生した。

 南雲に遅れてユエの氷弾が緑の紋様がある頭を吹き飛ばしたが、またしても白紋様の頭が緑紋様の頭を再生した。

 

「雫!」

 

 私と雫は白紋様の頭に向かった。青紋様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを躱しながら白紋様に向かって走った。

 

『炎の呼吸 弐ノ型』

 

『風の呼吸 陸ノ型』

 

『昇り炎天』

 

『黒風烟嵐』

 

 お互い日輪刀を下から振り上げ、白紋様の頭を狙うが、今度は黄色の紋様の頭がその頭を肥大化させ、昇り炎天、黒風烟嵐を受け止めてしまった。

 

「嘘だろう」

 

「そんな」

 

「ちっ!盾役か。攻撃に盾に回復にと実にバランスのはいいことだな!姉貴、八重樫!後ろに下がれ!」

 

 南雲の言う通りに後ろに下がる。そしてヒュドラの頭上に焼夷手榴弾を投げ、同時にドンナーで白紋様の頭に連射した。ユエも合わせて緋槍を連発する。

 しかし、黄紋様の頭が二人の攻撃を尽く受け止める。だが、至る所に傷がついていた。

 

「クルゥアン!」

 

 すかさず白紋様の頭が黄紋様の頭を回復させる。

 しかし、その直後、白紋様の頭の頭上で焼夷手榴弾が破裂し、タールが灼熱の雨と撒き散らされる。白紋様にも降り注がれ、悲鳴を上げながら悶える。

 私と南雲はチャンスと武器を構える。

 

「「いやぁああああ!!!」」」

 

「!?ユエっ」

 

「雫!」

 

 ユエと雫から絶叫が響いた。

 

焔SIDE OUT

 

 

雫SIDE

 

「いい加減光輝君から離れなさいよ」

 

 やめて

 

「何でいつも一緒なの」

 

 お願いやめて

 

「何でアンタみたいなのが光輝君と」

 

 もう……やめて……

 

 

 何で私が

 

『……ずく!』

 

 こんな目に合わなきゃいけないの

 

『……い!』

 

 私は……

 

『おい!雫!』

 

『っ!?』

 

 突然、目の前が明るくなった。

 

「焔?」

 

雫SIDE OUT

 

焔SIDE

 

「雫」

 

 雫がおかしくなって、必死に呼びかけ、神水も飲ませた。しばらくすると正気に戻った。

 黒紋様の頭が雫に何かしたようだ。

 

「焔」

 

 雫が私の胸に顔を埋め、泣き始めた。

 

「何で……私が……」

 

「雫」

 

 黒紋様め、雫に何か見せたな。魘夢みたいな事をしやがって。

 私は雫を抱きしめ、頭を撫でた。

 

「大丈夫だ。私やみんながついている」

 

 それを聞いて少し落ち着いたのか雫は泣き止む。ふと、南雲とユエも見るとそっちも大丈夫みたいだ。

 

「ユエ、姉貴、八重樫、シュラーゲンを使う。連発できないから援護を頼む」

 

「……任せて!」

 

「了解!」

 

「分かった」

 

 気合入れ直し、再度ヒュドラに挑む。ヒュドラは咆哮を上げ、炎弾やら風刃やら氷弾やらを撃ち込んできた。私達は一気に柱の影を飛び出し、反撃に出る。

 

「“緋槍„!“砲皇„!“凍雨„!」

 

『炎の呼吸 参ノ型』

 

『風の呼吸 伍ノ型』

 

『気炎万象』

 

『木枯らし颪』

 

 ユエの魔法攻撃と私と雫の剣技が一斉にヒュドラを襲う。

 そこに黄紋様の頭が赤紋様の頭、青紋様の頭、緑紋様の頭の前に現れる。

 よし、これで南雲が白紋様を……

 

「クルゥアン!」

 

 しかし、それに気づいたのか咆哮を上げると、近くの柱が波打ち、変形して盾になった。

 ユエの魔法がその盾に当たると先陣が壁を粉砕し、後続の魔法と私と雫の剣技が頭に直撃する。

 

「「「グルゥウウウウ!!!」」」

 

 悲鳴を上げのたうつ三つの頭。黒紋様の頭がユエに魔法をかけた。

 

「……もう効かない!」

 

 だが、ユエにはもう効かないようだ。南雲のおかげか。

 ユエは援護すべく、魔法を次々と構築し弾幕の如く撃ち放つ。回復した赤紋様の頭、青紋様の頭、緑紋様の頭がそれぞれ攻撃を再開する。

 

『炎の呼吸 肆ノ型』

 

『風の呼吸 肆ノ型』

 

『盛炎のうねり』

 

『昇上砂塵嵐』

 

 それを私、雫の剣技、ユエの魔法攻撃で対抗する。南雲のために少しでも私達に注意を引きつけないと。その南雲はドンナーで黒紋様の頭を吹き飛ばす。

 白紋様の頭が回復しようとするが、その前に南雲が飛び上がり、背中に背負っていた対物ライフル“シュラーゲン„を空中で脇に挟んで構えた。

 黄紋様の頭が白紋様の頭を守るように立ち塞がるが……

 

「まとめて砕く!」

 

 シュラーゲンから発射された赤い弾丸が黄紋様の頭の防御すらも貫通し、白紋様の頭共に爆砕し、消滅した。

 よし、これで防御も回復手段もなくなった。ここで一気に畳みかける!

 

『炎の呼吸 壱ノ型』

 

『不知火』

 

『風の呼吸 漆ノ型』

 

『勁風・天狗風』

 

 私は赤紋様の頭、雫は緑紋様の頭に狙いを定めて、日輪刀を振る。

 

『炎の呼吸 伍ノ型』

 

『炎虎』

 

 続けて型を繰り出し、赤紋様の頭を倒す。

 

『風の呼吸 捌ノ型』

 

『初烈風斬り』

 

 同じように雫も型を続けて繰り出し、緑紋様の頭を倒す。

 

「“天灼„」

 

 ユエも魔法で雷球を作り出す。雷球が弾けると、絶大な威力の雷撃を撒き散らした。黒紋様の頭も消し炭となった。

 よし、これで…。4

 

 

「っ!?」

 

 この時、何かヤバい音と匂いを感じ取った。だが、時既に遅かった。

 

 気がついたら、宙を舞っていた。

 

 

 ヤバい意識が……

 

焔SIDE OUT

 

 

雫SIDE

 

「うぅ〜」

 

 私は突然出現した銀紋様の頭からの攻撃を受けてしまった。見ると体中に激痛が走り、かなり出血していた。

 

「焔?南雲?」

 

 焔と南雲を探す。見回すとユエちゃんが南雲を介抱していた。

 焔は?

 

 私は痛みを我慢し、焔を探した。

 

「あっ」

 

 私は柱に座り込んでいる彼女を見つけた。

 

「焔!っ!?」

 

 あまりの激痛にすぐに神水を飲み、彼女に近づいた。

 

 

「っ!?」

 

 私はあまりの彼女の姿に目を見開き、膝から崩れ落ちた。

 

「あ、あ、あぁ」

 

 彼女もあちこち酷い出血をしていた。目も虚ろになっていた。でも……

 

 

 

「焔…」

 

 

 

 腹の辺りが大きく穴が空いたように酷く出血していた。

 

 

 

「イヤ……イヤァァァァァァーー!!」

 

 

 

 

 

 




「よっ」

 炭治郎、禰 豆子登場。

「ヒュドラ、なんて恐ろしいんだ。まるで複数の鬼が合体したみたいだ」

「うぅ〜」

「イヤァァァー!無理無理!あんな怪物!絶対勝てっこないよ!」

 炭治郎にしがみつく善逸。

「うおぉぉぉー!!すげぇ!俺も戦いてぇー!」

 気合を入れる伊之助。

「ここでコソコソ噂話。東堂さんは南雲がドンナーを使うのを見て自分も映画のように撃ってみたいと思ってしまったらしい」

「東堂さん、一体どうなるんだろうな?」

「うぅ〜」

「「「次回、風、散る!」」」


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第二十四章 風、散る

なんとか年内に書き上がりました。

いつも読んでんくれてありがとうございます。

よいお年を。




NO SIDE

 

「焔!焔!ねぇ焔!返事をして!」

 

 雫は何度も焔に呼びかけるが、彼女は反応しなかった。咄嗟に雫は焔の胸に耳を当てた。

 

「少し動いてる」

 

 まだ彼女の心臓は動いていが、このままではいずれ止まってしまう。

 雫はすぐに神水を焔に飲ませたが、飲み込めず、出してしまった。雫は焔を仰向けにし、神水を自分の口に含み、彼女の口に当て飲ませた。

 

「焔」

 

 雫は彼女が目覚めるのを待った。

 

「シズク!」

 

「ユエちゃん」

 

 ハジメを抱えたユエがこっちに来て、抱えていたハジメを下ろし、焔同様仰向けにする。

 ハジメも酷い状態だった。指、肩、脇腹が焼き爛れ一部骨が露出していた。顔も右半分が焼けており右目から出血していた。右目は先程の攻撃で欠損してしまった。

 

「酷い」

 

「神水飲ませたけど、なかなか治らない。すぐ治るのに」

 

 ユエにそう言われた雫は焔を見た。神水を飲ませたが、まだ回復していなかった。

 

「焔、南雲」

 

 心配する雫。すると突然、ユエがハジメのドンナーを手にし、立ち上がった。

 

「ユエちゃん?」

 

「……今度は私が助ける……」

 

「ユエちゃん!」

 

 ユエは決意の言葉を残し、柱を飛びだす。

 

「ユエちゃん」

 

 雫はユエの決意を聞いてふと焔とハジメを見る。

 

「……私も」

 

 雫は焔の日輪刀を手にする。

 

「少し借りるよ。私に力を貸して」

 

 二つの日輪刀を手にし、柱を飛び出す。

 

「はぁ!」

 

 二つの日輪刀で銀紋様の頭を斬りつけた。

 

「シズク!」

 

「ユエちゃん、いくよ!」

 

「うん!」

 

 銀紋様の頭はユエと雫に向けて光弾を連射する。二人はひたすら走って躱していく。しかし、ユエは体術などの接近戦は苦手だったため、すぐに追い詰められていく。

 そして、遂に光弾の一発がユエの肩に直撃した。

 

「あぐっ!?」

 

「ユエちゃん!」

 

「シズク、私に構わず行って!」

 

 雫はユエにそう言われ、銀紋様の頭に接近する。光弾を躱し、近づくと二つの日輪刀を振り下ろす。

 しかし……

 

『浅い。そういえば二刀流の鍛錬なんて実家でもしてなかった』

 

 伊之助や音柱である宇髄天元とは違い、雫は元々二刀流剣士ではなかったため、浅く傷ついた。

 地面に着地すると、銀紋様の頭は雫に目掛けて光弾を発射する。

 

「キャー!」

 

「シズク!」

 

 直撃しなかったものの吹っ飛んでしまう。

 

「ガハッ!?」

 

 そのまま地面に叩きつけられる。

 

「シズク!」

 

 ユエは雫の元に向かうが、そうはさせないと銀紋様の頭が光弾を発射する。

 

NO SIDE OUT

 

 

 

雫SIDE

 

 何で?何でこんな事にしまったの?

 

 勝手にこんな訳の分からない別世界に連れられて、おまけに戦争にまで参加させられて……

 

 

 

 

 

「お前もお前のお仲間さんも甘過ぎる」

 

「どいつもこいつも覚悟が足りなさ過ぎる!!いいか戦いってのは常に死と隣り合わせ!!覚悟のない半端者は早死にするだけだ!!」

 

 

「あの光輝という男は世界を救うとか平気で抜かしやがったが、あいつには覚悟が全くねぇ!!甘過ぎる!!そいつに賛同していった奴も同様だ!!」

 

 

 

 あぁ、そうか

 

 

 全部、私のせいか……私が甘かった。不死川さんの言う通り、甘かったせいか。

 

 

 

 

 光輝の戦争参加を止めていたら

 

 

 

 

 ベヒモスの時も私が光輝を殴ってでも撤退させていたら、こんな事には……全部、私が招いた結果か。

 

 

 

 私がちゃんとしていれば、南雲も、焔も、香織も。

 

 

 

 責任取らなきゃ

 

 

 私は立ち上がって、ヒュドラの前に歩き出す。

 

 

「シズク!」

 

 ユエが呼ぶも、耳に入らない。

 

 やがて、ベヒモスの前に。

 

「シズク?」

 

 私はヒュドラに向けて手を差し出す。累の母蜘蛛のように。

 

「シズク何やってるの?」

 

 ユエちゃん。貴女は長く一人で苦しんできた。でも、もう大丈夫、貴女には南雲と焔が側についている。

 

 南雲。ユエちゃんの事しっかり守ってね。あと、香織を泣かすような事はしないで。

 

 香織。貴女は私の一番の親友だったよ。せめて顔を見たかったな。

 

 不死川さん。貴方には色々な事を教えてもらいました。貴方の継子でいられたことを誇りに思います。

 

 

 そして、焔。貴女に会えてとても良かった。

 

 

 銀紋様の頭が光弾を発射した。

 

「シズク、避けて!」

 

 

 私は目を閉じた。

 

 

 

 あぁ、これで責任取れるね。

 

 

 

 

 

 ドーン!!

 

「シズク!!」

 

 

 

 

 

……あれ?熱くもない。どうして?それになんか抱きしめられてる感じが。

 

 

「ゼェ、ゼェ」

 

 何かを聞いて、目を開いた。

 

 あっ

 

 

「焔?」

 

雫SIDE OUT

 

 

焔SIDE

 

「ゼェ、ゼェ。なんとか間に合った」

 

 雫をなんとか奴の光弾から守ったぜ。

 

「焔、あんた「このバカ!!」っ!?」

 

「何、やってるんだこのバカ!!命を簡単に捨てるんじゃねぇ!!」

 

 私が大声で叫ぶと、雫は涙を流す。

 

「だって、こうなったのも全部私のせいなんだもん!私が光輝を止めていれば、こんな事にはならなかった!南雲も!あんたも!こんな目に遭わずに済んだ。全部私のせい……私のせいなんだよ!……うぅ」

 

「雫」

 

 私は雫を強く抱きしめた。

 

「雫、お前のせいなんかじゃなぇ。別にお前が全て背負う必要はねぇ。こうなったのも全部成り行きだ。だから、お前が責任を取る必要はない」

 

「焔」

 

「それにお前が死んだら、白崎が悲しむ。白崎だけじゃねぇ、お前の帰りを待ってる者達もだ」

 

「焔、うぅ〜……ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

「雫」

 

 私は雫の頭を撫でてやった。

 

「もう大丈夫か?」

 

 すると南雲とユエがこちらに。私は雫を離す。

 

「雫、行けるか?」

 

 雫は涙を拭う。

 

「うん!」

 

「よし!南雲!ユエ!」

 

「あぁ!勝つぞ!」

 

「うん!」

 

 

 私達は再びヒュドラに挑む。

 

 

 今度こそ決着をつける!

 




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「良かった。東堂さんも南雲も無事で」

「うぅ!」

「しかし、八重樫さんも大変だったね」

「うぅ〜」

「ここでコソコソ噂話。東堂さんは煉獄さんと一緒に稽古したせいか美味いと連呼する時があるらしい」

「いよいよヒュドラと決着だね。頑張ってほしいな」

「うぅ!」

「次回、煉獄!」


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第二十五章 煉獄

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!


焔SIDE

 

 私達四人は銀紋様の頭を見やる。周囲に光弾を浮かべながら余裕の表情で睨み、問答無用で光弾を放ってきた。

 

『炎の呼吸 肆ノ型』

 

『盛炎のうねり』

 

「……遅ぇな」

 

 私は炎の渦で光弾を相殺する。南雲はギリギリまで動かず、光弾が直撃する寸前でふらりと倒れるような動きで回避する。

 

『風の呼吸 伍ノ型』

 

『木枯らし颪』

 

 光弾を避け、跳んでいた雫が上から攻撃する。

 

「ハジメ、ホムラ、逃げて!」

 

 ユエが必死の表情で私と南雲に言う。私はなんとか回避する。南雲はユエを抱きながらも、まるでダンスを踊ってるかのようにくるりくるりと回り、あるいはフラフラと倒れるように動いては光弾をやり過ごす。

 

「どうする?」

 

 地面に着地した雫が問う。この化け物を倒すには……アレを使うしかない。

 

「なぁ、私に奴に止めをささせてくれ」

 

「姉貴?」

 

「焔?」

 

「ホムラ」

 

「ちょっとしたとっておきがあるんだ」

 

「別に姉貴じゃなくても、ユエの魔法なら」

 

「そうよ。別にあんたが」

 

「うん。私が」

 

 確かにユエの魔法ならなんとか出来そうだ。でも……

 

「私がやらなきゃ気が済まないんだよ。こっちは死にかけたんだからよ。だから頼む」

 

 私はベヒモスの時みたいに頭を下げた。

 

「……分かった。合図をしたら頼む。それまで回避するなりしてろ。俺は下準備をする」

 

「OK」

 

「ユエ、血を吸え」

 

「ん」

 

 ユエは南雲の血を吸う。

 

「私も援護するわ」

 

「よし、行くぞ!」

 

 私達は銀紋様の頭へ駆け出す。

 迫り来る光弾をなんとか躱す。南雲は移動しながらドンナーを発砲する。しかし、銀紋様の頭は頭を振って回避する。銃弾は外れ、天井に穴を空ける。

 だが、南雲は気にする様子もなく次々と場所を変えながら銃撃するが、やはり弾丸は外れて天井に穴を空けるだけとなる。何を狙っているんだ南雲は?

 その南雲は宙へ跳躍する。私は南雲を見て、彼がやっている事を理解した。銀紋様の頭が南雲に狙いを定める。

 

「させるかよ!」

 

『炎の呼吸 参ノ型』

 

『気炎万象』

 

『風の呼吸 弐ノ型』

 

『爪々・科戸風』

 

「“緋槍„」

 

 私と雫の剣技、ユエの魔法攻撃が銀紋様の頭に炸裂する。

 

「南雲!」

 

「あぁ!」

 

 南雲はドンナーを六カ所に向かって狙い撃った。

 すると、突然天井に強烈な爆発と衝撃が発生し、一瞬の静寂の後、一気に崩落を始めた。その瓦礫はそのまま真下の銀紋様の頭に降り注ぎ、押しつぶされた。

 実は南雲はあの時、ドンナーで天井に穴を開け、そこに手榴弾を仕込み、錬成で天井の各部位を脆くしておいていた。そこを撃ち抜き爆破したのだ。

 南雲は瓦礫で動けなくなった銀紋様の頭に接近し、崩落した岩盤の上を駆け回りながら錬成を行い、拘束具に変えた。

 

「姉貴!」

 

「っ!」

 

 南雲からの合図……よし!

 

 私は日輪刀を構え、銀紋様の頭に突進する。

 

『炎の呼吸』

 

 九つの型で構成される炎の呼吸

 

『奥義』

 

 

 その奥義であり、師範の名を冠した“玖ノ型„は

 

 

 

 全身全霊、命ごと浴びせる渾身の斬撃

 

 

 

 その威力はあらゆるものを抉る

 

 

 

 燃やせ!

 

 

 

 燃やせ!

 

 

 

 

 

 心を燃やせ!!

 

 

『玖ノ型 煉獄』

 

 

「グゥルアアアア!!!」

 

 銀紋様の頭が断末魔の絶叫を上げる。

 

 見たか化け物、人間様を舐めるなよ!

 

 

 くらっ

 

 

 あれ?なんか意識が……

 

焔SIDE OUT

 

 

NO SIDE

 

「倒したの?」

 

「あぁ、やったみたいだ。ハハハ、凄ェじゃねぇか姉貴」

 

「うん」

 

 ハジメ、雫、ユエの三人はヒュドラが死んだ事に安堵する。

 

「焔は?」

 

 雫は焔の事が気になり、ヒュドラの死骸の方に向かう。ハジメ、ユエもついて行く。

 

「焔!」

 

「姉貴!」

 

「ホムラ!」

 

 倒れている焔を発見した。

 

「焔!焔!」

 

「姉貴!おい!」

 

 雫とハジメは焔に叫ぶが、反応がない。ユエが焔を見る。

 

「大丈夫、気を失っているだけ」

 

 それを聞いた二人は安堵する。

 

 雫は焔の頭を優しく撫でた。撫でられた焔の表情はどこか安堵していた。

 




炭治郎、杏寿郎登場!

「遂にヒュドラを倒した!」

「うむ、見事だ!そして東堂少女、見事な煉獄だ!」

「はい!それに他の三人の活躍も凄かったです!」

「これは皆で力を合わせてからこそ成し遂げられた!流石だ!」

「ここでコソコソ噂話。東堂さんは中学時代、男子何人かと喧嘩して勝った事があるらしいんですよ」

「この物語もいよいよ佳境ですね」

「うむ!この先一体何が待っているのやら」

「「次回、オスカー・オルクス!」」



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第二十六章 オスカー・オルクス

なんとか出来ました。

ありふれ二期が放送開始しました!

今回で第一巻は終わりです。


焔SIDE

 

「ん〜……ん?」

 

 何だ?この懐かしい感じ?なんか柔らかい、まるでベッド……

 

「て、本当にベッドだった」

 

 自分がいるとこは本物のベッドだった。てっきりまた蝶屋敷にいるのかと思った。でも、周りを見た感じ蝶屋敷じゃなさそうだ。

 

「ん?」

 

 太もも辺りに違和感を感じた。

 

「雫」

 

 雫が私の太ももを枕にして眠ってやがった。もしかしてずっと側にいたのかな。

 

「ありがとう」

 

 私は優しく頭を撫でてやった。

 

「ん〜」

 

 あ、起こしてしまった。

 

「ん?」

 

「おはよう雫」

 

「あ、あ、焔!」

 

 抱きついてきた。

 

「バカ!バカ!心配したんだから!!」

 

「はい、はい。済まなかったな」

 

「もう!」

 

 

 

 

「なぁ、ところでここどこ何だよ?」

 

「反逆者の住処みたい」

 

 反逆者の住処、この大迷宮を作った奴が住んでいたとこか。随分と作りがいいな。

 

「ふぅん。あっ、ところで南雲とユエは?」

 

「住居の中を探索しているよ」

 

「ほう」

 

 探索か。私もあとで見てみようかな。

 

「おっ、ちょうど目覚めたみたいだな」

 

 なんて考えていると南雲とユエが入って来た。

 

「ホムラ!」

 

 ユエがこっちに来た。

 

「ホムラ、良かった」

 

「ハハハ!心配かけたな」

 

 

 

 

「なぁ、住居の中どうだった?」

 

「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった」

 

「ふぅん」

 

 私達は住居の中を歩いている。南雲が何か見つけたと。

 

「それと風呂があった」

 

「「お風呂!!」」

 

 南雲のお風呂という言葉に私と雫は声を上げる。

 今まで迷宮からの脱出などでしばらくお風呂はご無沙汰だったからな。

 

「雫あとで入ろう」

 

「そうね。お風呂なんて久しぶりだもんね」

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ」

 

 住居の中を歩いていると、とある部屋に到着した。

 

「ねぇ、あれ」

 

 雫があるものを指差す。

 

 

 そこにはローブを羽織った白骨化した死体が椅子に座っていた。

 

 誰の死体だ?

 

 考えていると南雲が近づく。地上への脱出はどこの部屋が鍵なんだと。

 

 南雲が魔法陣へと踏み出すと、光が爆ぜ、部屋を真昼のように光で埋め尽くした。

 しばらくして光が弱まり、私達の目の前に黒衣の青年が立っていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 オスカー・オルクス、この大迷宮を創った人か。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎と君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に、世界の真実を知る者として我々は何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

 オスカーの話を要約するとこうだ。

 

 

 この世界の争いは神の遊戯によって引き起こされたもの。

 

 その神をなんとかすべく、オスカーを含めた解放者達が立ち向かった。

 

 しかし、彼らは敗れてしまい、さらに神によってオスカーを含めた解放者達は人々から反逆者と罵られた。

 

 そしてオスカー達はいずれ自分達に代わって神を倒してくれるよう、自分達の力を七つの迷宮に残したと。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくは悪しき心を満たすためには振るわない欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意思の下にあらんことを」

 

 私は彼の話を聞き終え、彼の死体に向い

 

「南無阿弥陀仏」

 

 

 

 

 

 

「「……」」

 

 私と雫は今風呂には浸かっている。しかし、どうしてもオスカーが言った事が頭から離れなかった。

 

「私達、神のお遊びでこんな世界に」

 

 雫の言った事に私は拳を握りしめる。そのふざけた神によって私や雫や南雲、白崎が……

 

 何が戦争だ!

 

 何がこの世界を救ってくれだ!

 

 ふざけんじゃねぇぞ!

 

 エヒト!

 

「雫、私決めた」

 

「焔?」

 

「この世界の大迷宮を攻略する。そして元の世界に帰る」

 

「焔」

 

「雫はどうする?別について来なくていいんだぞ。白崎のとこへ戻ってもいいんだぞ」

 

「焔……私も行くよ。大迷宮」

 

「いいのか白崎は?」

 

「勿論、香織の事は忘れてないよ。絶対に戻る。それともう光輝……天之河とは」

 

「……そうか。お前がそう決めたんなら何も言わん」

 

「うん。それに」

 

「ん?」

 

 雫が近くに寄ってきた。

 

「あんたが心配でならないのよ。何度も死にかけて」

 

 まぁ、結構死にかける事が多かったけど。

 

「だから、あんたが無茶しないように、しっかり見張っておくからね」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!起きるんだ東堂少女!」

 

「起きろ!八重樫!」

 

「「ん?」」

 

 あれ?私、南雲達とと部屋で色々と散策した後、雫と一緒にベッドで寝ていたはず?それにこの声。

 

「煉獄さん?」

 

「不死川さん?」

 

 煉獄さんと不死川さんが目の前にいた。隣には雫もいる。

 

「うむ、目覚めたようだな!」

 

「ったくよ」

 

「ここは?」

 

「不死川の屋敷だ!胡蝶が君たちに話があるそうだ」

 

 どうやら不死川さんの屋敷のようだ。

 

「しのぶさんが?」

 

「はい」

 

 しのぶさんが入ってきた。

 

 私と雫は煉獄さん、不死川さん、しのぶさんと向かい合っている。

 

「お話しというのは、貴女達がこれから大迷宮に行くにあたっての重要な事です」

 

「重要な事?」

 

「はい、貴女達には剣士を見つけて仲間にしてほしいのです」

 

「剣士?」

 

「貴女達のいる世界に私達柱に鍛えられた剣士がいます。その人達を仲間にすればきっと貴女達の力になってくれます」

 

「柱に鍛えられた……それってしのぶさんや冨岡さんの継子があの世界にいるんですか?」

 

「その通りです」

 

 嘘だろう。まさか柱の継子があの世界に。

 

「ね、ねぇ。その継子って……まさかクラスメイトの誰か?」

 

 雫が質問する。確かにその可能性がある。

 

「それは会ってからのお楽しみです。あぁ、ご安心ください。天之河さんや檜山さんは継子ではありませんので大丈夫です」

 

「誰もあんな馬鹿を継子にはしねェよ」

 

 しのぶさんが答え、不死川さんが愚痴る。それは安心できる。

 

「そういう事なので貴女達は剣士を見つけてきてください」

 

 しのぶさんがそう言うと、私達の目の前が暗くなる。

 

 

 

「「っ!?」」

 

 目覚めるとオスカーの住処だ。

 

「雫、聞いたか?」

 

「えぇ、この世界に柱の継子が」

 

「柱は全部で九人。残るは七人って事か」

 

「七人、一体誰なんだろう?もしかして香織?」

 

 雫の言う通り、もしかしたら香織が継子の一人である可能性も十分ある。

 

「まだ分からないよ。もしかしたらこの世界の住人かもしれないし、それにまたエヒトが誰かを召喚した可能性もある」

 

「……そうね。考えても仕方ないよね。焔、必ず見つけよう」

 

「あぁ」

 

 私達はその後、南雲とユエにもこの事を話した。最初は南雲も渋っていたが、なんとか了承してくれた。

 それから私達は今後に備えての準備をした。南雲は手に入れた神代魔法の一つ“生成魔法„でたくさんのアーティファクトを作り上げた。

 さらに

 

「私達の日輪刀を強化?」

 

「あぁ、この世界で最も硬い鉱石を使って強化しておいた」

 

 私達の日輪刀を強化してくれた。

 因みに他の剣士にも会ったら同じようにするつもりのようだ。

 

 

 

 それから結構経ち、私達の準備も完了し、いよいよ地上に戻る日がきた。あれから私達の服装などだいぶ変わった。

 

 まず、南雲だが黒い服を纏い、失った片腕に義手がつけられ、片目に眼帯もしている。最早、完全に厨二だ。

 

 ユエはこの屋敷にあった服を着ている。さらに南雲からアクセサリーももらっている。

 

 私と雫は新しい隊服を着ている。前のはボロボロだったけど、新しく届いた。

 また、私は炎の意匠は施された羽織り、雫は殺と書かれた羽織りを纏っている。新しい隊服と一緒にあった。

 

「みんな……俺達の武器や力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

「ん……」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて高い」

 

「あぁ」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

 

「えぇ」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更……」

 

「もとより覚悟の上よ」

 

「私は私の責務を全うする。それだけだ」

 

 私達は南雲にそう言い、決意を固めた。

 

「俺達は最強だ。全部薙ぎ倒して、世界を越えよう」

 

 南雲の言葉を聞き、私と雫は頷き、ユエは笑みを浮かべた。

 

 

焔SIDE OUT

 

NO SIDE

 

「……早く行かなくちゃです。あの未来へ、あの人達のもとへ」

 

「……」

 

 峡谷を見つめる残念美人なウサミミ少女、その後ろに控えている蝶の髪飾りをつけた少女。

 彼女達との出会いはもうすぐ

 

 

ED:紅蓮華、from the edge

 

 




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「これがこの世界の真実、なんて事だ」

「うぅ〜」

「それに神によってオスカーさん達が、エヒトめ」

「うぅ〜」

「ところで禰 豆子、今日の予告って」

「よっと!」

 上から宇髄天元、派手に参上!しかも手にはありふれ二巻を持っている。

「宇髄さん!」

「派手に予告するぜ!いよいよ俺の継子が派手に活躍するぜ!そんな地味な神なんかに負けんじゃねぇぞ!」

「宇髄さん、うるさいですよ」

「しのぶさん、冨岡さん」

 胡蝶しのぶ、冨岡義勇登場!

「実は私と冨岡さんの継子も活躍するみたいなんです」

「へぇー」

「あぁ……なんという悲しきことだ。神によって罪もない子供が戦いを強要させられるなんて可哀想に」

 悲鳴嶼行冥、登場!

「悲鳴嶼さん!悲鳴嶼さんがいるってことは」

「はい、悲鳴嶼さんの継子も出るみたいなんです」

「そうなんですか。楽しみです。みんな次のライセン大迷宮編も見てください!」

「うぅ〜!」





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ライセン大迷宮編
第二十七章 ライセン大峡谷


なんとか書けました。

新章開幕です。


焔SIDE

 

「なんでやねん」

 

 南雲のツッコミが聞こえる。私だってそう言いたくなる。

 

 オルクス大迷宮を攻略をし、無事地上に戻れる……

 

 

 

 

 筈だった。

 

 どこもかしこも岩壁、岩壁、岩壁……。ガッカリ感が半端ない。

 

 そんな中ユエが南雲の服の裾をクイクイと引っ張る。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「……ああ、そうか。確かにな。解放者の隠れ家への直通の道が、隠されていないわけないか」

 

「成る程、盲点だった」

 

「そうね考えもしなかった」

 

 ユエのそれを聞いて納得する私達三人だったっけ

 私達は気を取り直し、南雲は“宝物庫„というオスカーが残した亜空間に物を仕舞えるアーティファクトから緑光石を用いたマグライトを出し、辺りを照らした。

 

「ん?あれは……」

 

 淡い緑の混じる光が洞窟の奥に異変を見つける。綺麗な縦線の刻まれた壁があり、手の平大の七角形が描かれていた。各頂点には異なる紋様も描かれていて、その内の一つはここ数ヶ月よく見ていたオスカー・オルクスの紋章があった。

 南雲はその壁に歩み寄り、“宝物庫„からオルクス大迷宮の攻略である指輪をかざした。すると、直後にはゴゴゴッと雰囲気たっぷりに音を響かせて壁が左右に開き、その奥に通路を晒した。

 私達は顔を見合わせ一つ頷くと、その通路へと踏み出す。

 途中、幾つか封印された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪のおかげで悉く解除されていった。私達は、一応警戒したのだが、特に何事もなく洞窟を進み、そうして……遂に光を見つけた。

 外の光だ。陽の光だ。私と雫、南雲にとっては数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光だ。

 それを見つけた瞬間、私達はお互い顔を見合わせ、一目散に駆け出した。

 近づくにつれて徐々に大きくなる光。外から清涼で新鮮な風が吹き込んでくる。そして、同時に光に飛び込んだ。

 

「……戻って……来たんだな……」

 

「……んっ」

 

「……あぁ」

 

「……うん、うん」

 

 南雲が呟けば、ユエも私も雫も目一杯力の籠った返事をする。雫に至っては手を口に当て涙を流していた。

 

「よっしゃぁああーー!!戻ってきたぞぉおおおおおっ!!」

 

「んっーー!!」

 

「うぉおおおおおーー!!やったぜぇえええええ!!」

 

「うぅ〜、ここまで長かった〜」

 

 ユエを抱きしめ、南雲はくるくると回る。私はこの上ないくらい叫んだ。雫は膝をつき、泣きだす。

 だが、喜びもここまでであった。

 

 

 私達はすっかり多くの魔物に囲まれていた。

 

「はぁ、全く無粋なヤツらだな。もう少し余韻に浸からせてくれたっていいだろうよ」

 

 南雲はドンナーとシュラーゲンを抜き、私と雫は日輪刀を抜刀する。あっ、そういえばここって魔法が使えないライセン大峡谷って、南雲から聞いたっけ。

 

「……分解される。でも、問題ない」

 

 その証拠にユエの魔法が分解される。でも、本人には何の問題がないみたい。

 

「力ずくって……効率は?」

 

「……ん……十倍くらい」

 

 どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。

 

「あ〜、それなら、俺達がやるからユエは身を守る程度にしとけよ」

 

「うっ……でも」

 

「ここはお前にとっちゃ相性最悪だろ?私達に任せてくれ」

 

「……んぅ……分かった」

 

 ユエが渋々といった様子で引き下がる。よっぽど戦力外なのがショックみたいだ。

 そのユエの様子に少しグッときたのか、彼はドンナーを発砲した。相手の方を見もせず、自然な動作でスッと銃口を魔物の一体に向けると、これまた自然に引き金を引きやがった。

 

「さて、奈落の魔物とお前達、どちらが強いのか……試させてもらおうか?」

 

「強化された日輪刀がどれ程のものか……テメェらで試させてもらうぜ」

 

 南雲は奈落で身につけたガン=カタの構えをとる。私と雫も日輪刀を構える。一歩後退る周囲の魔物達、その中から三体の魔物が飛び出す。

 

『炎の呼吸 壱ノ型』

 

『不知火』

 

『風の呼吸 壱ノ型』 

 

『塵旋風・削ぎ』

 

 

「「「ガァアアアア!!」」」

 

 しかし、南雲の銃撃が魔物の頭を吹き飛ばし、私と雫の剣技が魔物の頸を斬り飛ばす。

 そこから先は、最早戦いではなく蹂躙となった。

 魔物達はなす術なく、逃げる事も叶わず、一方的に倒されるのであった。

 ドンナーとシュラーク、日輪刀を仕舞った私達、そんな中南雲は、首を傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 その傍に、ユエが寄って来た。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、あまりにあっけなかったんでな。……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしかして、別の場所に出てきたんじゃないかと思って」

 

 あぁ、確かにここの魔物なんか張り合いを感じなかったな。

 

 

「……ハジメが化け物なだけ。ホムラとシズクも」

 

 ユエに化け物扱いされた。女として複雑、そりゃ男子相手に勝つほどだけど。

 

「酷い言い様だな。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

 

 取り敢えず、そういう事にしとこ。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする?ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えれている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

 南雲が峡谷の絶壁を見上げながら言う。

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ?樹海側なら、どこかの町にも近そうだし」

 

 確かにそうだな。

 

「……ん。確かに」

 

 南雲の提案に、ユエは納得したように頷いた。私と雫もその提案に賛成する。

 南雲は宝物庫から魔力駆動二輪シュタイフという大型バイクのような乗り物を二台出す。南雲は私専用にもう一台作ってくれた。色は南雲のは黒だが、判別できるように私のは黒に赤色が混じってる。

 私は跨ると、雫も後ろに乗る。私は南雲について行く形でシュタイフを走らせる。

 

「どうだ乗り心地は?」

 

「悪くないね。というか運転上手いね」

 

「まぁな。向こうでも乗ってたし」

 

「……まさか無免許?」

 

「な訳あるか。高校入ってすぐ免許取ったんだよ」

 

 まぁ、この世界じゃ免許云々は関係ないけど。

 シュタイフを走らせて、大きくカーブした崖に回り込むと、その向こうに何かを発見した。見ると頭が二つあるティラノとそれに襲われているウサミミを生やした少女だった。

 

「あれは?」

 

「確か、兎人族?」

 

 何でこんなとこに兎人族が?

 

「みづけだぁ!!やっとみづけましたよぉ〜〜!だずげでぐだざ〜い!ひぃいいい、死んじゃう!死んじゃうよぉ!だずけて〜、おねがいじますぅ〜!」

 

 涙を流し、顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。ここは助けてやるか、と思った。

 

 その瞬間……

 

 ヒュン!

 

 何かが通り過ぎた。今のは?

 

 すると、双頭ティラノから血が噴き出た。だが、まだ動いていた。よく見るとウサミミ少女のとこにもう一人、私ぐらいの女がいた。

 

「おい!早く逃げろ!まだ生きてるぞ!」

 

 私は叫んだ。

 

「大丈夫だよ」

 

 女がそう言うと、双頭ティラノは突然苦しみだし、倒れてしまった。私達はシュタイフから降り、近づく。

 

「あっ」

 

 よく見るとその女は後姿だったが、蝶の羽の模様が描かれた羽織を来ていて、蝶の髪飾りをしていた。この女もしかして。

 

「おい、お前もしかして……」

 

 私がそう言うと、その女が振り向いた。

 

「「あっ」」

 

 私はその女を見て、目を見開く。その女も同様だ。

 

「ほむちゃん?」

 

「スグ?」

 

 その女……スグはこっちに近づいて来て、私の手を握る。

 

「やっと会えた!ほむちゃん!」

 

「えっ?何、焔この子知り合い?」

 

「姉貴、誰なんだこの女は?」

 

「ホムラ、誰?」

 

「あっ、あぁ。こいつは……」

 

 

 

 

 

 

 

「スグ、桐原直葉。私の幼馴染」

 




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「遂に地上に出る事ができた。良かった」

「うぅ〜」

「そして新たに登場した兎の耳の少女と東堂さんの幼馴染は?」

「うぅ〜」

「ここでコソコソ噂話。東堂さんと八重樫さんが魔物肉を食べないのはドーピングみたいで拒否したとの事」

「新たな話の開幕、どうなるんだ?」

「うぅ〜」

「次回、ウサミミ少女と蟲の剣士」


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第二十八章 ウサミミ少女と蟲の剣士

遊郭編も最終回。刀鍛冶の里編もアニメ化してほしいです!

桐原直葉:容姿・SAOの桐ヶ谷直葉

湊董香:容姿・東京喰種の霧島董香


直葉SIDE

 

〜数ヶ月前〜

 

 蝶屋敷のベッドで眠る親友をただ見てる事しか出来なかった。

 しのぶさんの話ではオルクス大迷宮っていう所で訓練中、橋から落ちてしまったとの事。しかも事故ではなく、味方によるものだと。

 私は悔しくてたまらなかった。その悔しさをバネに私は一層努力した。全集中の呼吸、蟲の呼吸、常中の取得。さらに医療や毒などの知識も学んだ。

 現実で会うために。

 

 

 

 そして今

 

 

 

 

 ずっと会いたかった親友が目の前に

 

直葉SIDE OUT

 

NO SIDE

 

「焔の」

 

「姉貴の」

 

「オサナナジミ?」

 

 焔の幼馴染発言に目を見開く雫、ハジメの二人。ユエは首を傾げる。

 

「おい、本当なのか?」

 

「あぁ」

 

「偽者とかじゃねぇよな」

 

「疑い深いな」

 

 ハジメは目の前の直葉に警戒をする。

 

「だってそうでしょ。あの召喚された日、彼女そこにはいなかったでしょ」

 

 雫の言う通り、あの日、直葉は教会にはいなかった。

 

「大丈夫だ。別にそういうもんじゃねぇし、それに、私の事“ほむちゃん„と呼ぶのはこいつぐらいだ。それに格好見てみろ」

 

 直葉の格好は鬼殺隊の隊服だった。ただ、下がカナヲ、蜜璃と同じスカートだった。

 

「鬼殺隊の隊服」

 

「て事は」

 

「スグ」

 

「うん。桐原直葉です。ほむちゃんとは小さい頃からの友達。それと蟲柱・胡蝶しのぶの継子です」

 

「やっぱりそうか」

 

「しのぶさんの継子」

 

「スグハが」

 

「じゃああの魔物も」

 

「うん。毒を使ったの」

 

 直葉の自己紹介を聞いて納得する三人。

 

「南雲ハジメだ」

 

 自己紹介するハジメに直葉はじっと彼を見る。

 

「どうした?」

 

「……中二病?」

 

「グハッー!」

 

「「「南雲(ハジメ)!」」」

 

 直葉の中二病発言にハジメは血を吐く。

 

「やっぱり痛いのか俺の格好?」

 

「大丈夫ハジメはカッコいい」

 

 ユエはそう言うと直葉を睨む。

 

「またハジメを傷つけたら許さない」

 

「ごめんね。えぇと?」

 

「ユエ」

 

「因みにユエは吸血鬼だ」

 

「吸血鬼!?」

 

「しかも“自動再生„の固有魔法持ちで、けっこう長く生きている」

 

「ふぇ〜」

 

 ユエをじっくり見る直葉。長く生きて、しかも見た目が少女である事に驚きを隠せなかった。

 

「ジロジロ見ないで」

 

「あっ、ごめんね」

 

「それでこいつが」

 

「八重樫雫でしょ」

 

「えっ?どうして私を」

 

「蝶屋敷のベッドで寝ていたのを見てたの。それにしのぶさんから聞いているよ、不死川さんの継子でしょ。よろしくね雫ちゃん!」

 

「うんよろしく。直葉」

 

 互いに自己紹介を終える。

 

 

 

 

 

「あの〜」

 

「「「「ん?あっ!」」」」

 

「忘れていたんですか!?酷いですよ!!直葉さんまで!!」

 

 この残念ウサミミ少女がいる事をすっかり忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、この子はシアさん。私がこの世界に来て困っていたところ助けてくれたの、いわば恩人だよ」

 

「兎人族ハウリアの一人、シアといいます」

 

 この兎人族シアは直葉がトータスに来て困っていた時に助けてくれたようだ。

 

「シアね。なぁ、シアお前襲われた時、見つけましたとか言ってたけど、私達になんか用か?」

 

「はい!お願いします!私の家族を助けてください!」

 

 懇願するシア。

 

「家族を助けて?それとどう関係するんだ?」

 

「では……お話しさせていただきます」

 

 シアの話はこうだ。

 

 シア達ハウリア族は亜人国【フェアベルゲン】にある樹海の奥の集落で暮らしていた。

 しかし、シアは本来魔力を持たない他の亜人族とは違い、魔力を持ち、直接操作できる。さらに固有魔法“未来視„という未来を視る力を持っている。そのせいで一族は国から追われることになった。

 一族は北の山脈へと向かったが、その途中で帝国兵に見つかり、何人か捕らわれてしまった。

 全滅を避けるため魔法が使えないここに逃げ込んだが、魔物が襲って来たとの事。

 

「お願いです!私達を、私の家族を助けてください!」

 

「断る!!」

 

 シアの願いをハジメはキッパリと断った。

 

「ちょっと何言ってるの!さっきの話聞いてなかったの!」

 

 これに直葉は怒り、ハジメに詰め寄る。

 

「聞いてたさ」

 

「じゃあ何で!」

 

「助けて一体何の得になるんだ?」

 

「はぁ?そんな理由で」

 

「スグ落ち着けって」

 

「ほむちゃん」

 

 焔は直葉を落ち着かせる。

 

「まぁ、南雲お前がそう言うのも無理はないが、メリットはあるぞ」

 

「姉貴?」

 

「私達は樹海に用がある。こいつらは樹海の事を知ってるから案内してくれる」

 

「ホムラの言う通り。樹海には案内人が必要。元住人ならちょうどいい」

 

 焔の案にユエは賛成する。

 

「頼むよ。こいつは私の大切な親友を助けてくれた恩人なんだ」

 

「私からもお願い」

 

「ほむちゃん、雫ちゃん」

 

 頭を下げる焔と雫。

 

「……あぁ〜分かった」

 

 ハジメは願いを聞き入れた。

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 これにはシアは大喜びした。

 

「じゃあ早くしよう。シアの家族もそうだし、董香ちゃんも心配だよ」

 

「ん?董香?」

 

「焔、董香って?」

 

「あぁ、小学校の頃からの腐れ縁。董香もいるのか?」

 

「うん。今、帝国兵を探して別行動しているの。それに董香ちゃんも継子だよ」

 

「あいつも?誰の継子だ?」

 

 

 

 

 

「音柱・宇髄天元」

 

 

 

 

 その頃

 

「はぁ!」

 

 峡谷で女が二刀の巨大な剣で魔物を斬っていた。

 

「急いで見つけないと。シア、直葉、まだなの?」

 

 




宇髄天元、胡蝶しのぶ登場!

「宇髄さん、お疲れ様です」

「おう!ありがとな胡蝶!」

「相変わらずの暴れっぷりでしたね。それと奥さん達とも」

「おうよ!」

「では、ここでコソコソ噂話。焔さんはバレンタインデーになるとチョコをたくさんもらうみたいです」

「いよいよ俺達の継子が派手に活躍するな」

「はい、楽しみです」

「「次回、音の剣士!」」


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第二十九章 音の剣士

なんとか出来ました。

三回目のワクチンの副作用が辛いです。


刀鍛冶の里編、アニメ化おめでとう。


焔SIDE

 

「そうなんだ。雫ちゃんのクラスメイト達が」

 

「うん」

 

 私達は現在、シュタイフで移動中。スグを乗せて三人乗りである。前を走っている南雲もユエ、シアを乗せて移動している。

 正直、少しキツい。

 

「でも、どうしてほむちゃんは雫ちゃんのクラスメイト達と一緒だったの?」

 

「さぁな?」

 

 そういえば何で雫のクラスメイトと一緒だったのか不明だ。エヒトの奴召喚ミスでもしたのか?

 

「まぁ、私はお前や董香があそこにいなくて良かったよ」

 

「ほむちゃん」

 

「いたら国の連中やあのオルクスで危険な目に遭っていたかもしれないからな。それに橋から落ちたのを見たらショックだろうし」

 

「ほむちゃん」

 

「ん?」

 

 ふと背中に感触が、スグが頭をつけたんだろう。

 

「ほむちゃんは優しいね。私達の事を考えて」

 

 すると、スグから悲しみや悔しさの匂いや音を感じた。

 

「私、帝国兵襲ってきた時、ハウリア族の人達を助けられなかった。董香ちゃんと一緒に兵と戦ったけど、ハウリアの人達を人質にされて何も出来なかった。私や董香ちゃんも連れて行かれそうになった時、庇われて、悔しかった。しのぶさんに色々教えてもらったのに……私、しのぶさんの継子失格だよ」

 

「直葉」

 

「……スグ、誰だって悔しい思いはする。でも、その悔しさはいずれ成長へと繋がる。炭治郎もそうだっただろう」

 

 炭治郎だって煉獄さんが死んだ時も己の弱さを悔やみ、そこからさらに成長していったもんな。

 

「悔しいと思うなら、その悔しさをバネに這い上がって来い!そして柱の継子である事を誇りに思えるようになれ!」

 

「ほむちゃん」

 

 スグの表情が少し良くなった。

 

「焔、前!」

 

 雫に言われ、そこには魔物の群れがいた。

 

「魔物の群れ!?」

 

「見て!襲われてる!」

 

 よく見ると誰かが襲われていた。あれは……

 

「ハウリア族の人達!」

 

 スグが声を上げる。あれがハウリア族。南雲も気づいたようでこちらを向く。私はそれを見て頷く。

 

「しっかり掴まってろ!振り落とされるなよ」

 

 私はシュタイフを猛スピードで飛ばした。南雲はすかさず魔物の頭部を撃ち狙う。

 

「みんな〜、助けを呼んできましたよぉ〜!」

 

 シアがみんなに向かって叫ぶ。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

 私は魔物の近くまで行くとシュタイフから降り、残りの魔物を捉える。

 

『炎の呼吸 弐ノ型』

 

『風の呼吸 捌ノ型』

 

『蟲の呼吸 蝶ノ舞』

 

『昇り炎天』

 

『初烈風斬り』

 

『戯れ』

 

 私、雫、スグの剣技で魔物を斬る。スグのは少しして毒が効いて倒れる。

 

「ハジメ、上!」

 

「ハジメさん上です!」

 

「っ!?」

 

 上から南雲に襲いかかろうとする魔物、南雲はすかさずドンナーを構える。

 

「はぁ!」

 

 魔物が何者かに斬られた。斬った者はそのまま地面に着地した。

 

「大丈夫?」

 

「あ、あぁ」

 

 その人を見るとワンレグスの髪型の女だった。しかも大きな日本刀を持っており、鬼殺隊の隊服を着ていた。

 あいつは……

 

 

 

「……董香、董香なのか!」

 

「董香ちゃん!」

 

「ん?スグ?それに焔?」

 

 私、スグ、雫は董香に近寄る。

 

「焔、何でアンタが?」

 

「色々聞きてぇけど、まずはコイツらを片付けてからだ」

 

 私達は周りにいる魔物に目を向ける。

 

「そうだね」

 

 

 

 数分後

 

「成る程、それでここにいると」

 

「あぁ」

 

 戦闘後、董香に色々と話した。

 

「で、董香は何でここに?スグから帝国兵を捜しているって聞いたぞ」

 

「帝国兵は見つけてある。でも、鴉からハウリア族の人達が襲われていると聞いてここまで来た」

 

「そうか」

 

 董香から事情を聞き、納得する。

 

「それで君が不死川さんの継子だね」

 

「八重樫雫よ」

 

「湊董香。焔と直葉の親友。それと音柱・宇髄天元様の継子だよ」

 

「南雲ハジメだ」

 

「ユエ」

 

「よろしくね」

 

 自己紹介を済ませ、峡谷を進む。

 

 

 

 

 

「あそこに帝国兵がいるの?」

 

「あぁ」

 

 董香の案内で帝国兵がいるとこに辿り着いた。

 

「あの……ハジメさん本当にいいんですか?」

 

「何がだ?」

 

「この先には帝国兵がいます。このままだと同じ人間族と戦うことに……」

 

「……それがどうかしたのか?」

 

「えっと……私達を守るために同族と敵対することになるのでは……と……」

 

「……何か勘違いしてるようだから言っておくがな。お前らを守るのは樹海の案内が終わるまでだ。邪魔するするヤツは魔物だろうが人間だろうが殺す。それだけだ」

 

 南雲とシアの会話を聞いて、自分の手を見た。いよいよ覚悟を決める時だと。ふと雫やスグを見ると震えていた。

 

「行くぞ」

 

 南雲を先頭に私達一行は階段を登る。

 帝国兵は数人いた。こっちに気づいて何か喋っているが、どうでもいい。ゲスな音と匂いがプンプンする。

 

「あぁ?お前誰だ?兎人族……じゃあねぇよな?」

 

「ああ、人間だ」

 

「はぁ〜?なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか?そいつぁまた商魂たくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、帝国で引き取るから置いてけ」

 

「断る」

 

「……今、なんて言った?」

 

「断ると言ったんだ。こいつらは、今は俺のものだ。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰か分からない程頭が悪いのか?」

 

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

 

 南雲の言葉に、兵の小隊長らしき男はスッと表情を消した。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気で南雲を睨んでいる。

 と、その時、南雲の後ろから出てきたユエに小隊長の男は気づいた。

 小隊長の男は一瞬呆けるものの、ユエが南雲の服の裾を握っているのを見た瞬間、下卑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ〜なるほど。よぉ〜くわかった。てめぇがただの世間知らずな糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってやつを教えてやる。ククッ、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商を売っぱらってやるよ」

 

「おい」

 

 私は思わず小隊長の男に向かって歩き出す。

 

「あぁ?何だ嬢ちゃ……ブフォっ!?」

 

 其奴の顔面を思いっきりぶん殴った。男は鼻血を流しながらうずくまる。

 

「悪りぃな南雲、思わずやっちゃった」

 

「この女、よくも!!」

 

 鼻を抑えながら私に剣を振り下ろそうとする。

 

 

 

 しかし

 

 

 

 ドパッ

 

 

 小隊長の男の顔が吹っ飛んだ。

 

「おいおい、いきなりブッ放すヤツがあるか?」

 

 私が振り向くと

 

「悪かった。どうしても我慢できなくて」

 

 ドンナーを構える南雲がいた。

 

「だとしても一言くらい」

 

「すまんすまん」

 

「え……詠唱をはじめろ!」

 

「奴らを殺せ!!」

 

 おっと、まだ他にもいたんだった。

 

『炎の呼吸 伍ノ型』

 

『炎虎』

 

 烈火のごとく、私は兵士の一人を斬った。兵士はそのままパタリと倒れた。

 

 いつかこんな日が来るって事は分かっていた。自分の手を汚す日が来ることを。これが人を殺めることなのか。

 

 

「よく見たらあの時逃した子じゃないか。これは運がいい。後でたっぷり可愛いがってやろう」

 

 声のした方向を見るとスグが兵士の一人と対峙していた。

 

「……ふざけないで……誰がアンタみたいな!」

 

『蟲の呼吸 蜂牙ノ舞』

 

『真靡き』

 

「ぐっ!?」

 

 スグの突きが兵士の腹を貫いた。

 

「こんな程度……ぐっ!?ああああああーー!!」

 

 兵士が苦しみ出した。毒だ。

 

「苦しい!どうなってやがる!」

 

「油断しない方がいいいいよ。私のように毒を使う剣士もいるんだから」

 

「毒!?あぁ、助けてくれ、助けてくれーー!!」

 

 兵士の男は絶叫をあげながら倒れた。

 私はスグの元へ。

 

「スグ」

 

「……ほむちゃん」

 

 スグは涙を流していた。

 

「私、人を殺しちゃった」

 

『風の呼吸 参ノ型』

 

『音の呼吸 伍ノ型』

 

『青嵐風樹』

 

『鳴弦奏々』

 

 雫と董香もやったみたいだ。

 

「……殺しちゃった。私、人を殺しちゃった」

 

「天元様からいずれこの日が来るかもしれないと話していたが……これが人を殺すことなのか」

 

 雫は膝をつき、泣き出す。董香は自分の手を見てそう呟く。

 その後、戦闘は終了した。

 

「南雲、攫われた兎人族は?」

 

「もう帝国に移送済だと」

 

「そうか」

 

 捕まった兎人族はもう帝国に移送されていた。

 

「ちっ!私が早く見つけていれば」

 

 董香は悔しさから拳を握りしめていた。

 

 

 その後、私達は帝国兵が使っていた馬車で樹海に向かった。

 シアが私達の話を聞いて自分も同行したいと懇願したが、却下された。

 

「同行を許しているのはそこの剣士二人だ」

 

「何故ですか!?私はダメで何でスグハさんやトウカさんはいいんですか!?」

 

「姉貴と八重樫に言われたんだ。剣士を見つけて仲間にしてって」

 

「どういう?」

 

「この世界に凄い剣士育てられた弟子がいるんだ」

 

 南雲に代わって私が説明する。

 

「凄い剣士?」

 

「“柱„という最強の称号を持つ剣士で九人いる。その剣士に私や雫、スグ、董香は育てられた」

 

「ほぇ〜だからあんなに」

 

「その剣士に育てられた弟子はあと五人、この世界のどこかにいる」

 

「スグハさん達のような剣士がまだ五人も」

 

 シアに柱の事やそれに育てられた弟子がこの世界にいる事を話す。

 

 その後、無事樹海に到着し、中を進む。

 

「ん?」

 

「焔どうしたの?」

 

「ほむちゃん?」

 

「焔?」

 

 私は何かを感じて進むのを止めた。

 

「姉貴」

 

「あぁ、お前も気づいたか」

 

 南雲も気づいたみたいだ。音や匂いが近づいている。

 

 

 

「動くな!何故ここに人間がいる!!」

 

 

 




時透無一郎、甘露寺蜜璃、登場。

「焔ちゃん、雫ちゃん、直葉ちゃん、董香ちゃん。とうとう」

「うん」

「側にいてあげられないけど、乗り越えてね!」

「僕も側にいられないけど、君たちなら乗り越えられるよ」

「ここでコソコソ噂話。董香ちゃんは剣技だけでなく、忍び関連の鍛錬もしている。宇髄さんだけでなく、須磨さん達も彼女に協力もしてくれたみたいですよ」

「時透君、あなたの継子は?」

「いい感じだよ。天之河って奴には負けないくらい」

「そう」

「「次回、フェアベルゲン!」」


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第三十章 フェアベルゲン

遅くなって申し訳ありません。

仕事もそうですし、二つの作品の並行に苦労しました。



NO SIDE

 

 ハジメ達は次の大迷宮を目指すため、ハウリア族と共に樹海に向かう。帝国兵との戦闘もあったが、無事に樹海に到着した。

 

「お前達……何故人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 樹海で彼らは虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人と遭遇した。焔、雫、直葉、董香はいつでも戦闘出来るように日輪刀の柄に手をかける。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムがなんとか誤魔化そうと額に冷や汗をを流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族……だと?……貴様等、報告にあったハウリア族か。亜人族の面汚し共めっ。長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとはっ。反逆罪だ!もはや弁明など聞く必要もない!全員、この場で処刑する!総員かかっーー」

 

 それを聞いた焔、雫、直葉、董香が日輪刀を抜こうとする。

 

 しかし

 

 ドパンッ!!

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとした瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。“威圧„という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

 

「な、なっ。詠唱がっ」

 

 詠唱もなく、見たこともない強烈な攻撃を連発出来る上、味方の場所も把握していると告げられ思わず吃る虎の亜人。それを証明するように、ハジメは自然な動作でシュラークを抜き、ピタリと、とある方向へ銃を向けた。その先は、奇しくも虎の亜人の腹心の部下がいる場所だった。霧の向こう側で動揺している気配がする。

 

「殺るというのなら容赦しない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな。……ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ」

 

 威圧感の他にハジメが殺意を放ち始める。あまりに濃厚なそれを真正面から叩きつけられている虎の亜人は冷や汗を大量に流しながら、下手をすれば恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込んだ。

 直葉もハジメの殺意に少し恐怖する。そのせいか彼女は焔の隊服の裾を掴んでいた。董香も多少の冷や汗を流す。

 

『冗談だろ!こんな、こんなものが人間だというのか!まるっきり化け物じゃないか!』

 

 恐怖心に負けないように内心で盛大に喚く虎の亜人など知ったことかというように、ハジメがドンナー&シュラークを構えたまま言葉を続ける。

 

「だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」

 

 虎の亜人は確信した。攻撃命令を下した瞬間、先程の閃光が一瞬で自分達を蹂躙することを。その場合、万に一つ生き残れる可能性はないということを。

 

「……その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメに尋ねた。ハジメは視線で話を促した。

 

「……何が目的だ?」

 

「樹海の深部、大樹ウーア・アルトのもとへ行きたい」

 

「大樹のもとへ……だと?なんのために?」

 

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

 

「本当の大迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰ることも叶わない天然の迷宮だ」

 

「いや、それはおかしい」

 

「何だと?」

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

 

「弱い?」

 

「そうだ。大迷宮の魔物ってのは。どいつもこいつも化け物揃いだ。少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

 

「何だ?」

 

「大迷宮というのは“解放者„達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ?それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

 

「……」

 

 ハジメの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。ハジメの言っていることが分からないからだ。樹海の魔物を弱いと断じることも、【オルクス大迷宮】の奈落というのも、解放者とやらも、迷宮の試練とやらも……聞き覚えのないことばかりだ。

 だが、妙に確信に満ちていて言葉には力がある。本当に亜人やフェアベルゲンには興味がなく大樹自体が目的なら、部下の命を無意味に散らすより、さっさと目的を果たさせて立ち去ってもらう方がいい。

 虎の亜人は、そこまで瞬時に判断した。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというのなら、大樹のもとへ行くくらいは構わないと、私は判断する。部下の命を無意味に散らすわけにはいかないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。

 

「だが、一警備隊隊長の私如きが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方がおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

 冷や汗を流しながら、それでも強い意志を瞳に宿して睨み付けてくる虎の亜人の言葉に、ハジメは少し考え込む。

 

「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」

 

「無論だ。ザム!聞こえていたな!長老方に余さず伝えろ!」

 

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。ハジメは、それを確認すると構えていた両銃を大腿部のホルスターに納めて“威圧„を解いた。

 空気が一気に弛緩する。

 

「「はぁ、はぁ」」

 

 直葉、董香の二人も息づかいする。

 

「大丈夫か?」

 

「はぁ、はぁ。何なのあの南雲って子?」

 

「まるで上弦の鬼……いや無惨か?思い出す」

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」

 

「貴様共のくだらぬ意志で物を言うな。私に聞かれた事にのみ答えよ」

 

「お前は私の言うことを否定するのか?」

 

「なぜお前の指図で血を与えねばならんのだ?甚だ図々しい身の程を弁えろ」

 

「黙れ何も違わない私は何も間違えない」

 

「全ての決定権は私に有り私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利する権利はない。私が“正しい„と言った事が”正しい„のだ」

 

「お前は私に指図した。死に値する」

 

 

 

「て、あのシーンを」

 

 董香が思い出したのは、無惨が下弦の鬼の解体シーン所謂“パワハラ会議„である。

 

「あぁ、あれね」

 

「うん。あれ最初見た時は衝撃的だったよ」

 

「漫画で見たけど、あれは」

 

 焔、直葉、雫も無惨の下弦の鬼の解体を思い出す。

 

「漫画?雫ちゃん何で漫画持ってたの?」

 

「焔がこの世界に来る時、持ってきていたの。しかも全巻」

 

「あぁ、ほむちゃんの暇つぶしの」

 

「成る程ね。それでコミックは今どこに?」

 

「雫と白崎に貸したまま」

 

「白崎?」

 

「私の親友。香織も読んでて気に入っちゃったの」

 

「香織ちゃんか。会いたいな」

 

「雫の親友か。会ってみたいな」

 

「うん。会わせてあげるね」

 

「おい、お前らそろそろお喋りはやめろ。来るぞ」

 

 ハジメからの指示で四人は会話をやめる。

 霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んでいきそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。なにより特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は、森林族、エルフなのだろう。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね?名はなんという?」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

 

 ハジメの言葉遣いに、周囲の亜人が「長老になんて態度を!」と憤りを見せる。それを片手で制すると、森林族の男性も名乗り返した。

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。“解放者„という言葉、どこで知った?」

 

「うん?オルクス大迷宮の奈落の底、解放者オスカー・オルクスの隠れ家だが」

 

「ふむ、奈落の底か。聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

「それなら私が証明しようか?」

 

「君は?」

 

「東堂焔だ。私、コイツと一緒にオルクス大迷宮にいた。この目で見たんだ。雫も見ていたよ」

 

「はい。私も見ました。この目で」

 

 焔、雫が証明するため、証言する。しかし、アルフレリックは考え込むような顔をする。証言だけでは足りないのだろう。

 

「……ハジメ魔石とオスカーの遺品は?」

 

「ああ、成る程。そうだな、それなら……」

 

 ユエの提案を聞いたハジメはポンと手を叩き、“宝物庫„から地上の魔物では有り得ない程の質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」

 

 虎の亜人が驚愕の面持ちで思わず声を上げ、アルフレリックも眉をピクリと動かして内心の驚愕を漏らしていた。

 

「後は、これ。一応、オスカー・オルクスが着けていた指輪なんだが……」

 

 そう言って、ハジメが見せたのはオルクスの指輪だ。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て、今度こそ内心の驚愕を隠しきれずに目を見開いた。そして気持ちを落ち着かせるように、ゆっくり息を吐く。

 

「成る程……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家に辿り着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリア族も驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声が上がる。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座についた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。

 

「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ?俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

 

「いや、お前さん。それは無理だ」

 

「なんだと?」

 

「大樹の周囲は特にキリが濃くてな、亜人族でも方角を失う。一定周期で霧が弱まるから、大樹のもとへ行くにはそのときでなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

 アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気だ?」とハジメを見たあと、案内役のカムを見た。ハジメ、焔、雫、直葉、董香もアルフレリックと同じようにカムを見た。

 

「あっ」

 

 まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメの額に青筋が浮かぶ。

 

「カム?」

 

「あっ、いや、そのなんと言いますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたと言いますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周囲のことは意識してなかった言いますか……」

 

 しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが、ハジメとユエのジト目に耐えられなくなったのか逆ギレし出した。

 

「ええい、シア、それにお前達も!何故、途中で教えてくれなかったのだ!お前達も周囲のことは知っているだろ!」

 

「なっ、父様、逆ギレですかっ!私は、父様が自身たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

 

「そうですよ、僕達も、あれ?おかしいな?とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕達の勘違いかなって……」

 

「族長、なんだかやたらと張り切ってたから……」

 

 逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。

 

「お前ら」

 

 そこに董香が兎人族のとこに行く。彼女は怒りからか拳が震えていた。

 

「トウカ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!そう!連帯責任だ!連帯責任!」

 

「あっ、汚い!父様汚いですよぉ!一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

 

 

 

 

 

「やかましいお前ら!!この残念地味ウサギが!!」

 

 

 

 

 ドゴンッ!!

 

 

 

 

「うぅ〜酷いですよぉ〜トウカさん」

 

「あぁ?文句あるか?残念地味ウサギ!」

 

 シアの頭には立派なタンコブが出来ていた。彼女だけでなくカムたち他の兎人族にも出来ていた。

 

「姉貴、お前の知り合いって」

 

「あぁ、董香は怒ると怖ぇからな」

 

「うん。董香ちゃんって怒り出すとあんな感じに」

 

「あんな感じって」

 

「あれは凄かった」

 

 董香の事を話しながら移動する面々、しばらくすると美しい街並みが見えてきた。

 直径数十メートル級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と重しき場所から溢れている。見上げれば、人が優に数十人規模で渡り歩けるだろう極太の樹が絡み合い、空中回廊を形成している。樹の蔓と重り、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫うように設置された木製の巨大な空中水路まであるようだ。樹の高さはどれも二十階建てのビルくらいありそうである。

 

「綺麗」

 

「ん、綺麗」

 

「素敵」

 

「派手で良い」

 

「あぁ、小さい時に読んでいた本に出てきたようなとこだ」

 

 雫、ユエ、直葉、董香、焔が美しい街並みを見て称賛する。それを聞いてアルフレリックの表情が緩む。

 

「ふふ、どうやら我等の故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 




「「よっ!」」

 炭治郎、善逸登場。

「ここがフェアベルゲンか。綺麗なとこだな」

「そうだな。いや〜それにしてもシアさんもお綺麗で、しかもあんな大胆な格好までして。この世界の女って最高!」

「善逸。ここでコソコソ噂話。東堂さんはプロレス技や柔道技など様々な技を使える。それでひったくりなどを捕まえた事があるらしい」

「来たのはいいけどこれからどうなるんだろう?シアさん達とか」

「何もなければいいけど」

「「次回、ハウリアの処罰!」」






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第三十一章 ハウリアの処罰

大変遅くなってすみません


焔SIDE

 

「……成る程。試練に神代魔法、それに神の盤上か……」

 

 亜人族の故郷であるフェアベルゲンへとやってきた私達はアルフレリックさんに会談の場へと案内された。私、南雲、雫、ユエ、スグ、董香はアルフレリックと向かい合って話をしている。内容は、オスカーから聞いた“解放者„のことや神代魔法のこと、自分達が異世界の人間であり七大迷宮を考慮すれば元の世界に帰るための神代魔法が手に入るかもしれないことなど。

 これを聞いたスグは目を泳がしていた。董香に至っては「チッ!」と舌打ちした。

 

 それにしてもアルフレリックさん、この世界の神の話を聞いても顔色を変えなかった。南雲が尋ねると「この世界は亜人族に優しくはない、今更だ」という答えが返ってきた。神が狂人のような存在であろうがなかろうが、亜人族の現状は変わらないということらしい。聖教会の権威もないこの場所では信仰心もないようだ。あるとすれば自然への感謝の念だという。

 

 私達の話を聞いたアルフレリックさんは、フェアベルゲンの長老の座についた者に伝えられる掟を話した。

 

 要約するとこうだ。

 

 この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたら、それがどのような者であれ敵対しないこと。

 そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くこと。

 

 これは大迷宮の創設者であるリューティリス,ハルツィナが、自分が“解放者„という存在であることと、仲間の名前と共に伝えたものだという。フェアベルゲンが出来る前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の敵対せずは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 

 そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックさんが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石板があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

「それで、俺は資格を持っているというわけか……」

 

 アルフレリックさんの説明で、人間であるはずの南雲や私達をここに招き入れた理由を理解した。でも、全ての亜人族がそんな事情を知っているわけではないはずなので、今後の話をする必要がある。

 私達とアルフレリックさんが話を詰めようとしたその時、下の方から騒がしい音がした。私達のいるのは最上階、階下にはシア達ハウリア族が待機している。どうやら、下で争い事でも起きているようだ。私達とアルフレリックさんは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。

 階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、小さく毛むくじゃらのドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまり、カムがシアを庇っていた。シアもカムも頬が腫れていた。殴られたようだ。

 私、南雲、ユエ、雫、スグ、董香が階段から下りると、彼等は一斉に鋭い視線を送る。熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言した。

 

「アルフレリック……貴様、どういうつもりだ。何故人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」

 

 握り締められた拳がわなわなと震えていた。こいつらにとって私達人間は敵みたいな存在なんだと感じた。おまけに亜人族にとって忌み子でもあるシアまでいる。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。

 しかし、アルフレリックさんはどこ吹く風といった様子だ。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

「なにが口伝だ!そんなもの眉唾物ではないか!フェアベルゲン建国以来、ただの一度とて実行されたことなどないではないか!」

 

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我等長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

 

「なら、こんな人間族の小僧が資格者だとでも言うのか!敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

 淡々と返すアルフレリックさん。熊の亜人は信じられないという表情でアルフレリックさんと南雲を睨む。

 

「……ならば、今、この場で試してやろう!」

 

 熊の亜人が南雲に向かって突進してきた。

 そして、一瞬で間合いを詰め、奴の剛腕が南雲に向かって振り落とされる。

 ……が、

 

「なに!?」

 

 その前に私が、南雲の前に出て、熊の亜人の剛腕を右手一本で止めた。

 

「姉貴」

 

「悪りぃな南雲。さっきあんなことしたんだ。今度は私にやらせろ」

 

「ぐっ、放せ!人間の小娘の分際で!」

 

「ガタガタ言うなクソ熊。こいつと遊ぶ前に私と遊べ!クソ熊!」

 

「ぐお!?」

 

 止めいた剛腕を思いっきり強く握り締める。こんな奴に日輪刀を使うまでもない。手を離し、私は素早く熊の亜人に近づく。

 

「オラオラオラオラオラオラ!」

 

 熊の亜人を何度も殴りまくった。腹、顔、腕、足を。

 

「ほぉーっ!!ワチャーッ!!」

 

 奴の腹に蹴りを入れると、熊の亜人は背後の壁を突き破り落ちて行った。私は奴が落ちた方を見て叫んだ。

 

「クソ熊。アーーーーーー!!アーーー!!勝ったぜ!ザマァ見ろ!ザマァ見やがれ!ハハハ!参ったか!これで分かったかよ、どっちが強いか!えぇ!どんなもんだ!見てやがれこの次はテメェの仲間全員フルボッコにしてやる!」

 

「相変わらず派手だね」

 

「ほむちゃん、それもしかしてイン○ペンデ○ス?」

 

「で、次は誰だ?」

 

 私はコキコキと首を動かしながら言ったが、頷く者はいなかった。

 あの後、アルフレリックさんがなんとか執り成し、私の蹂躙劇は回避された。熊の亜人は大怪我を負ったけど、命に別状はないらしい。

 現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族のグゼ、そして森人族のアルフレリックさんが、私達と向かい合って座っている。私達の傍らにはユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。

 

「で、あんた達は俺等をどうしたいんだ?俺は大樹のもとへ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族としての意思を統一してくれないと、いざってとき、どこまでやっていいか分からない。それでは、あんた達的に不味いだろう?殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮するほど、俺はお人好しじゃないぞ」

 

 南雲の言葉に、身を強ばらせる長老衆。

 

「こちらの仲間をあんな目にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になるとでも?」

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 

「おいおい、何言ってるんだ?喧嘩を売ったのはあの熊野郎だろう?私は南雲を守って、返り討ちにしただけだ。あんな目に合ったのは熊野郎の自業自得だ」

 

「き、貴様!ジンはな!ジンは、いつも国のことを想って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは!しかしっ」

 

「勘違いするなよ?俺と姉貴が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ?なら、そこのところ、長老のあんたが履き違えないくれよ」

 

「グゼ、気持ちは分かるが、そのくらいにしておけ。彼と彼女の言い分は正論だ」

 

 アルフレリックさんの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めて座り込んだ。

 

「確かに、この少年は紋章の一つを所持しているし、仲間である彼女の実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 狐人族の長老であるルアが言う。

 

「南雲ハジメ。我等フェアベルゲンの長老衆は、お前さん達を口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対しないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。しかし……」

 

 アルフレリックさんが南雲に伝える。

 

「絶対じゃない、か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に今回のジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高井。あいつは人望があったからな……」

 

「それで?」

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

「そうだ。お前さんらの実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎のレベルで手練れだというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減するつもりはない。あんたの気持ちは分かるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

 南雲はそう言うが、虎人族のゼルが口挟む。

 

「ならば、我々は、大樹のもとへの案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

 その言葉に南雲は訝しそうな表情をした。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

 ゼルの言葉にシアは泣きそうな表情で震え、カム達は諦めたような表情をしている。

 スグが文句を言おうと立ち上がろうとするが、私はそれを止め、首を横に振った。私達が何を言っても無駄だから。

 

「長老様方!どうか、どうか一族だけはご寛恕を!どうか!」

 

「シア!止めなさい!皆、覚悟は出来ている。お前にはなんの落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

 土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルが容赦なく言った。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

 ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。決定事項なのだろう。他の長老達は何も言わなかった。

 

「そういうわけだ。これで、貴様らが大樹に行く方法は途絶えたわけだが?どうする?運良く辿り可能性に賭けてみるか?」

 

 それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。

 ふん!そんなのでどうにかなると思ってるのかこいつ?

 

「お前アホだろ?」

 

「馬鹿か、お前?」

 

「な、なんだと!」

 

 私と南雲の物言いに、目を釣り上げるゼル!シア達も思わずと言った風に南雲と私を見る。

 

「俺は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが」

 

 南雲は長老衆を睥睨しながら、泣き崩れているシアの頭に手を乗せた。シアは南雲を見上げる。

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら……覚悟を決めてもらおうか」

 

「ハジメさん……」

 

「本気かね?」

 

 アルフレリックさんが南雲を鋭い眼光で射抜く。

 

「当然だ」

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「何故、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

 アルフレリックさんの言葉に南雲は面倒そうな顔になる。

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

 

「そうだ。約束を破るなんてバカな真似は出来ないからな」

 

「ホムラさん」

 

 南雲とアルフレリックさんの会話に横入り、シアの側に立つ。

 

「……約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか?峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう?なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう」

 

「問題大ありだ。案内するまで身の安全するってのが約束なんだよ」

 

「そういう契約だ。途中でホイホイと変えるなんて……」

 

「「格好悪いだろ(じゃねぇか)?」」

 

 南雲と私が揃えて言うと、雫、スグ、董香も立ち上がり、シアの側に立つ。

 

「私はシアがそんな理由で殺めるなんて許せません。もし、手を出すなら刻みます」

 

「手を出すなら、私が派手にアンタらの頸を斬ろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやる。もう派手派手だ」

 

「シアちゃんは私を助けてくれた恩人です。彼女には指一本触れさせません!」

 

「シズクさん、トウカさん、スグハさん」

 

 雫、董香、スグが発言する。これを見たアルフレリックさんは深々と溜息を吐く。他の長老衆もどうするんだと顔を見合わせる。しばらく、静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックさんが疲れた表情で提案した。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰って来なかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我等にも勝機はあるが、外では魔法を扱う者相手に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡したと見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡したものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック!それでは!」

 

 アルフレリックさんの提案にゼルが身を乗り出し、抗議する。

 

「ゼル。分かっているだろう。この少年と少女達が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて冒せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん!力に屈して、化け物の子やそれに与する者を野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが……」

 

 ゼルとアルフレリックさんが議論を交わし、他の長老衆も加わったわ。

 

「ああ〜、盛り上がっているところ悪いが、この残念ウサギを見逃すことについて吐く今更だと思うぞ?」

 

 ハジメの発言に、ピタリと議論が止まり、彼に視線が集まる。南雲が右腕の袖を捲ると魔力の直接操作を行なった。すると、右腕の皮膚の内側に薄らと赤い線が浮かび上がる。さらに、“纏雷„を使用し、右手にスパークさせた。

 これには長老衆は目を見開く。

 

「俺も、こいつと同じように魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。ついでに言えばこっちのユエもな。あんた達のいう化け物ってことだ。処刑の理由が魔物と同じ特性を持つからだというなら、俺達も処刑の対象だろう。だが、口伝では“それがどのような者であれ敵対するな„ってあるんだろ?掟に従うなら、いずれにせよあんた達は化け物を見逃さなくちゃならないんだ。こいつ一人見逃すくらい今更だと思うけどな」

 

「はぁ〜、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。なにかあるか?」

 

 アルフレリックさんが決定を告げた。これでシアやハウリア族は処刑されずに済んだ。

 

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」

 

「気にしないでくれ。全部、譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

 南雲の言葉にアルフレリックさんは苦笑いする。まぁ、なにはともあれこれでシアやハウリアの人達は助かった。

 さて、大樹に行くには十日間経たないといけない。その間どうするか?

 




中高一貫ありふれキメツ学園物語!

 ドカーン!ドカーン!

「また宇髄先生かユエ達か?相変わらずだな」

 そう言ってかまどベーカリーにパンを食べる焔。

「焔」

「おぉ、雫」

 泣きながら焔に抱きつく雫。

「うぅ、もう嫌だよ」

「よしよし。放課後美味しいスイーツ食べに行くか?」

「行く」

「焔!私もスイーツに付き合う!あと奢って、私、今金欠なの」

「はぁ〜梅」

 謝花梅もスイーツを食べようと付き合う。

「次回、鍛錬」


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第三十二章 鍛錬


遅くなってすみません。


焔SIDE

 

「えぇ、という訳で私達は鍛錬をしようと思う」

 

「何がという訳よ?」

 

 フェアベルゲンを追い出された私達は、一先ず大樹の近くに拠点を作った。

 現在、ここにいるのは私、雫、スグ、董香の四人。南雲やユエ、シア、ハウリアの人たちとは別行動している。

 

「大樹に行くまで十日はかかる。だったら、その時間を鍛錬に使おうと思ってな。南雲もハウリアを鍛えるみたいだし」

 

「成る程、確かにそうね」

 

「私も派手に賛成する」

 

「うん、私も」

 

 三人は賛成してくれた。

 

「よし、じゃ「その前に」ん?」

 

 始めようと思ったら、董香が遮った。

 

「大迷宮について詳しく知りたいから、二人が行ったオルクス大迷宮について話してほしい。今後の大迷宮攻略の参考にしたい」

 

 確かに董香の言う通り、大迷宮について知ってもらう必要がある。

 そこで私と雫は董香とスグにオルクス大迷宮がどんなとこだったのやそこでの戦闘訓練などを話した。

 

「成る程ね。派手によく分かった」

 

 董香はオルクス大迷宮について理解した。

 

「ほむちゃんも雫ちゃんもよく生き残れたね」

 

「まぁな。死にかけたけど」

 

「にしても雫、アンタのクラスメイトって地味なのばっかなの?罠に簡単に引っかかって」

 

「う、うん。まぁ」

 

「まぁ、たぶんアイツ、私らがオルクスにいる間に罰でも受けただろう」

 

 

 

「ヘックシュン!」

 

「どうした檜山?」

 

「風邪か?」

 

「い、いや」

 

 

 

「まぁ、そんな事は置いといて。鍛錬するぞ」

 

 

 

 

 

「ほら!もっと全力で走る!体力つけないと大迷宮攻略なんて夢のまた夢だよ!」

 

 董香を先頭に私達は走り込みをしている。長時間の戦闘を維持するための基礎体力と持久力アップだ。因みに董香が先頭なのは、彼女の師範である天元様がやった柱稽古に因んでのこと。

 

「おい、どれくらい走るんだ?」

 

「……」

 

「考えてなかったのか?」

 

「うるさい!とにかく走る!」

 

 とにかく私らは走りまくった。その後、休憩を取り……

 

 

「ウオオオオオオ!!」

 

「その調子!」

 

「ぐぬぬぬ!」

 

「いいよいいよ!」

 

 二人組で筋トレ。私とスグ、雫と董香の組み合わせだ。今私は、スグを背中に乗せて腕立て伏せ、雫と董香は腹筋だ。かなりの回数をこなすようにしている。

 

「ゼェゼェ」

 

「お疲れ」

 

「おう。次はお前だぞ」

 

「……は、はい」

 

 どこか怖そうな表情をするスグ、まぁキツいだろうだからな。

 

数時間後

 

「……」

 

 筋トレを終えたスグは死んだみたいに横になっている。そういえば、昔から運動そんなに得意じゃなかったな。

 

「大丈夫なの?」

 

「まぁ、大丈夫じゃない?」

 

 董香と雫も心配して見る。

 

「……水」

 

「ほら」

 

 水を渡し、ゴクゴクと飲むスグ。

 

「プハァ!」

 

「相変わらず運動はだめだな。よくしのぶさんの継子になれたな」

 

「自分でも不思議だよ」

 

「まぁ、とにかく休んだらまた鍛錬再開だ」

 

 それから休憩し、出来る限りの鍛錬をした。

 

 

二日目

 

「「「はぁ!」」」

 

「えい!」

 

 二日目、ハウリア族と混じって魔物狩り。董香とスグは南雲によって強化された日輪刀のテストも兼ねて。

 

「悪くない」

 

「本当、南雲君って実は凄腕の刀鍛治だったりして」

 

 問題ないようだ。

 

「ああ……どうか罪深い私を許してくれぇ〜」

 

 それに引き換え、ハウリア族は……こりゃ南雲も苦労するだろうな。

 

 

 

三日目

 

「ねぇ、本気でやるの?」

 

「あぁ、本気だ」

 

「ほむちゃん、本当なの」

 

「あぁ」

 

「派手に」

 

「おぉ」

 

 私は真剣な目で雫、スグ、董香を見る。

 

「やるぞ」

 

 

 

 

 

 

「岩柱・悲鳴嶼行冥の柱稽古」

 

 

 




煉獄杏寿郎、宇髄天元登場!

「おぉ、派手にやってるな」

「うむ!よく励んでいてなによりだ!」

「あぁ。しっかしあの南雲って奴、地味兎共を鍛えるって」

「うむ!南雲少年がどう鍛えるか楽しみだ!」

「ここでコソコソ噂話!董香は今でこそ派手だが、小学校の頃は暗く地味だったそうだ」

「どのようになっていくか派手に楽しみだぜ」

「うむ!期待している!」

「「次回、岩柱の柱稽古!」」


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第三十三章 岩柱の柱稽古

遅くなりました。




NO SIDE

 

「岩柱」

 

「悲鳴嶼行冥の」

 

「柱稽古」

 

 上から雫、直葉、董香の順に焔の言った事に驚く。

 

「確かそれって足腰の強化の稽古だよね?」

 

「そうだスグ、ほら悲鳴嶼さん曰く『最も重要なのは体の中心……足腰である。強靭な足腰で体を安定させることは正確な攻撃と崩れぬ防御へと繋がる』だ」

 

「一理あるわ。足腰や下半身の重要性は剣術をやっているからよく分かるわ」

 

 道場の娘である雫は足腰や下半身の重要性を知っていた。

 

「でも、やる事ってキツいんだよね。それこそ善逸が気絶しそうなくらい」

 

 直葉の言う通り、あの稽古は善逸も気絶するくらい過酷なもの。

 

「まぁな。でも、やる価値はあると思ってな、昨夜、煉獄さんに頼んでみたんだ」

 

「どうだったの?」

 

「悲鳴嶼さんが大丈夫だと、煉獄さんから聞いた」

 

「じゃあ今夜」

 

「あぁ、悲鳴嶼さんのとこで修行だ。そのために今日も頑張るぞ」

 

 そう言い、四人は鍛錬へと勤しんだ。

 

 そしてみんなが寝静まった夜

 

NO SIDE OUT

 

焔SIDE

 

「おっ」

 

 見渡すと森みたいなとこにてことは夢の中か。

 

「ほむちゃん!」

 

「スグ!」

 

「「焔!スグ(直葉)!」」

 

「董香!」

 

「雫ちゃん!」

 

 私達四人一緒だ。

 

 

数分後

 

「もうそろそろかな」

 

 私達四人は悲鳴嶼さんのいるとこを目指して、数分間進んだ。もうそろそろだろう。

 

「あっ、滝の音がする」

 

 スグが滝の音を聞いたみたい。そういえば私にも聞こえてきた。私達が歩き続けと滝が見えてきた。

 

「滝だ」

 

「じゃあ、ここが」

 

「待っていたぞ」

 

 声がして私達が振り向くと、そこには私達の身長を悠々に超えた男が立っていた。

 

 

「貴方は」

 

「岩柱」

 

「悲鳴嶼」

 

「行冥」

 

 この男こそ岩柱・悲鳴嶼行冥だ。

 

「話は煉獄から聞いている。鍛えてほしいと」

 

「はい。あっ、煉獄さんの継子をしている東堂焔です」

 

「不死川実弥さんの継子の八重樫雫です」

 

「胡蝶しのぶの継子をしています桐原直葉です」

 

「音柱・宇髄天元様の継子湊董香です」

 

 私達は自己紹介をした。

 

「うむ。では、私の修行を教える。修行は足腰、強靭な足腰で体を安定させることは正確な攻撃と崩れぬ防御へと繋がる」

 

 やはり、足腰の強化か。

 

「まず滝に打たれる修行をしてもらい……丸太三本を担ぐ修行……最後にこの岩を一町先まで押して運ぶ修行……」

 

 私達は激しく流れ落ちる滝と太い丸太と大きい岩を見た。これは確かに善逸が気絶する程だ。スグを見ると彼女は震えているし。

 

「私の修行はこの三つのみの簡単なもの……」

 

 これが簡単ね。

 

「その前にこれを」

 

 私達は悲鳴嶼さんからある物を渡された。

 

「これは?」

 

「滝修行で使う行衣じゃない」

 

 あぁ、あれか。よく滝修行で着たりする。

 

「それを着て滝に打たれなさい」

 

 そう言われ、行衣を着て、川に入る。

 

「っ!?」

 

 つ、冷てぇーー!!ここ本当に夢なのか疑いたくなる!!

 

「ふええええええーー!!冷たいよーー!!」

 

 スグが悲鳴をあげる。

 

「何で!何で夢なのにこんなに冷たさを感じるの!死んじゃう!死んじゃうよ!」

 

 うん、私もそう思う。

 

「ええい黙ってろ!一々騒ぐな!これぐらいで!」

 

 いや、そう言うが董香よ。お前も足震えているぞ。

 

「取り敢えず、滝行こうか」

 

「うん。ほら行くぞ」

 

 雫に言われ、滝の方へ。

 

 

「「「「如是我聞一時仏在舎衛国祇樹給孤独園」」」」

 

 私達は経を唱えながら、滝に打たれている。

 滝の水は冷たいし、落ちてくる水はものすごく痛い。

 

 

数分後

 

 べたー、べた

 

 現在、私達四人は岩にくっついてます。

 

「ふえええ〜暖かいよ」

 

 スグの言う通り暖かい。それに本当にお母さんに抱かれているみたいだ。

 

「あぁ〜滝修行でこんなにキツいなんて」

 

「あぁ、派手に舐めていた」

 

「うん。でも、これをクリアしないと次には」

 

「もう嫌だよ」

 

「弱気になるな。行くぞスグ」

 

「わぁ〜ん!董香ちゃんの鬼!」

 

「鬼でけっこう」

 

 董香はスグを岩から剥がし、一緒に川に戻った。私と雫も同時に川に戻り、再開し、滝修行は無事完了した。そしてこの時点で私達は現実に戻った。

 

四日目

 

「うぅ〜朝なのになんかいい感じがしない」

 

「そう言うなスグ、次の丸太担ぎも頑張らないと」

 

「うん」

 

 スグにそう言い、現実での鍛錬に励んだ。

 

 そしてその夜

 

「ぐぎぎぎぎぎ〜」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ〜」

 

「うおおおおおお〜」

 

「お、重い」

 

 私達は丸太三本を担いでいます。もう足ぶるぶる状態です。

 

「もうダメ、潰れる」

 

「弱気な事を言うな。引っ叩くぞ」

 

 スグはもう限界寸前だった。そしていつものように喝を入れる董香。まぁ、私も雫もキツいです。何はともあれ丸太担ぎクリアです。

 

五日目:現実

 

「ねぇ、そういえばだけど」

 

「ん?」

 

「悲鳴嶼さんの継子って誰なのかな?」

 

 現実での鍛錬の休憩中、スグが悲鳴嶼さんの継子について話し出す。

 

「誰って、玄弥でしょ?」

 

「違う違う。この世界にいる悲鳴嶼さんの継子」

 

 あぁ、なるほどそういう事か。そういえば誰なんだろう?

 

「雫、お前のクラスメイトにいそうか?」

 

「ん〜そうね。まずは天之川と檜山は除外するとして。女子は……いないかも、絶対あの修行には耐えられないと思うし、鈴や恵里とか絶対に即ギブアップかも」

 

 董香に言われ、雫は女子を考えたが、女子にはあの修行は酷ということでなし。

 

「なら男子は?」

 

「ん〜龍太郎……だめ、あいつが武器を使うなんて考えられないし」

 

 確かにあいつは、パワーだ拳だーとか感じだから武器を使うなんて想像つかない。

 

「ねぇ、貴女達の知り合いとかは?」

 

 あぁ、そうか。スグや董香がいるから、その可能性も。でも、知り合いや友人を何人か思い浮かべたけど、誰なのか想像がつかなかった。

 

「まぁ、そのうち会えるよ。とにかく今を頑張らないと」

 

 スグにそう言われ、私達は今出来る事に集中する事に。

 

 そしてその夜

 

 

「ぐっ、ぐぬぬぬぬぬぬ……」

 

 私は、最後の修行である岩を押す修行している。しかし、岩はびくともしない。

 

「くっ、動いて……」

 

「こんな事で」

 

「こんなの無理だよ〜」

 

 雫、董香、スグも同様だった。絶対にこの岩を押してやる!

 

 

 

「「……」」

 

 その様子を見つめている悲鳴嶼行冥とその隣にいる美少女。

 

「……行かなくていいのか?」

 

「う〜ん?今はいいかな。楽しみは向こうで会えるまで取っておくわ」

 

「……そうか」

 

「楽しみだね。焔、董香、スグ……と」

 

「八重樫雫だ。君とは違う日本から来た」

 

「あぁ、そういえば言っていたね。へぇー、あの子が玄弥の兄貴の継子ね。ふふふ、会えるの楽しみ」




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「東堂さん達、悲鳴嶼さんの元で修行か」

「ううう」

「俺もあの修行はキツかったんだよね」

「ううう」

「ここでコソコソ噂話。直葉さんはしのぶさんとの修行の合間、アオイさん達と蝶屋敷のお手伝いをしていたそうですよ」

「四人が修行を突破出来るといいね。それにしても最後に出た女性って?」

「ううう」

「次回、修行の成果!」


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第三十四章 修行の成果

 
 仕事のストレスとこの暑さのせいか体調を崩しました。コロナもそうですが、皆さんも気をつけてください。




焔SIDE

 

六日目:現実

 

「あぁ〜結局押せなかった」

 

「あんな岩押すなんて無理だよ」

 

 私とスグは昨夜の悲鳴嶼さんの修行の事を話していた。結局、私達は岩を1ミリも動かす事が出来なかった。

 因みに雫と董香は模擬戦をしている。

 

「ねぇ、炭治郎はどうやって押したんだっけ」

 

「うーん……何だったかな?」

 

 そういえば炭治郎は何で押せたんだったけ?なんか忘れているような気がする。何だったかな?このところ色々あって思い出せねぇ。

 

「まぁ、とにかくやるしかねぇ」

 

「そんな簡単に」

 

「それしかねぇだろ」

 

「もう」

 

「よし私らも……おっと」

 

 スグと鍛錬しようと立ち上がると、隊服から物が落ちた。

 

「何か落としたよ」

 

「あぁ」

 

 私はそれを拾う。

 

「それ何?」

 

「あぁ、これはステータスプレート」

 

「ステータスプレート?」

 

「自分のレベルなどのステータスが表示される物だ。あと、この世界での身分証明書でもあるぞ」

 

「へぇ……あれ?じゃあ私や董香ちゃんは?」

 

 あ、そういえばスグと董香は持っていなかったな。私は王国でもらったけど、どこかで発行できるのかな?

 

「まぁ、これから大迷宮に行くんだ。どっかの町とかで発行してくれるだろ」

 

「そうかもだけど、それ証明書にもなるんでしょ。必要になったらどうするの?」

 

「失くしたか、壊れてしまったで通すしかねぇだろ」

 

 とにかく今はそうするしか方法はねぇ。

 

「ん?」

 

 ふと、ステータスプレートを見た。これは……

 

「ほむちゃん?」

 

「……そうか、そうだった」

 

 思い出した、炭治郎が岩を押せた理由。

 

 

 

六日目:夢

 

「……」

 

 私は岩の前に立ち、それに手を添える。

 

「ふーーー」

 

 思い浮かべ、思い浮かぶんだ。

 

 

 元の世界にいる家族。

 

 この世界にいるかもしれない友や知り合い。

 

 そして煉獄さん、甘露寺さん。

 

「ぐああああああ!」

 

 思い切り岩を押す。しかし、びくともしない。それでも集中する。

 

「ぐああああああ!」

 

 集中だ……集中するんだ私!

 

 

 

 

 ググググググ

 

 

 

 

 

 ズズズズズズ

 

『っ!?』

 

 岩が……岩が動いた!

 

 私がやったのは“反復動作„というもの。集中を極限まで高めるために予め決めておいた動作をする。炭治郎が岩を押せたのは玄弥がアドバイスをくれたからだ。ステータスプレートを見た時、“反復動作„が表示されているのを見て思い出し、実践した。

 

 でも、まだだ!!一瞬でも気を抜くと脱力して押し負ける。一秒でも長く押し続けるんだ。腕だけじゃなく、足腰も使うんだ。下半身の筋肉量は上半身よりも多い。

 

 

数分後

 

「……はぁっ、はぁっ」

 

 やった、やった。一町動かせた。これで悲鳴嶼さんの訓練は終了だ。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

「ゼェー、ゼェー」

 

「ヒュー、ヒュー」

 

 周りを見ると、雫、スグ、董香も息を切らしている。三人も終わったみたいだ。

 

 

『……』

 

 あれ?なんか体が傾いた。

 しまった、脱水症状だ。水分補給していなかったからか。死ぬのか?ていうか、夢で死んだら現実の私はどうなるんだ?

 

 ドボドボドボ

 

「南無阿弥陀南無阿弥陀」

 

 ん?なんだこれ?顔に何か降りかかる。それにこの声。

 

「ゲホ!ゲホ!」

 

 これ水だ。顔を上げるとそこには悲鳴嶼さんがいた。ふと周りを見るともう一人誰かいた。あの男は。

 

「玄弥」

 

 悲鳴嶼さんの継子で不死川実弥の弟、不死川玄弥だった。彼は雫、スグ、董香にも水をかけていた。

 

「ありがとうございます」

 

「よくぞ私の訓練を達成した」

 

「はい」

 

「君たちなら大迷宮を攻略できるだろう」

 

「はい」

 

「それと彼女も君たちに会えるのを楽しみにしている」

 

「彼女?」

 

「君たちのいる世界にいる私の継子だ」

 

「っ!?」

 

 トータスにいる悲鳴嶼さんの継子。えぇ!?女なの!?

 

 

七日目:現実

 

「はぁ!」

 

 スグが雫と訓練している。

 

「うん、いいわね。足腰も安定していて、悲鳴嶼さんの訓練の成果が出ているね」

 

「ありがとう」

 

『……』

 

 その訓練を見ながら私はある事を考えていた。

 

『悲鳴嶼さんの継子……一体?』

 

「何考え事している?」

 

「お、おう悪りぃ」

 

 董香の声かけでハッとする。

 

「それが時に命取りになるぞ。地味な事はするな」

 

「すまんな」

 

 気を取り直して木刀を構え、董香を見る。

 

「はぁ!」

 

 互いに木刀がぶつかり合う。力強さを感じる。悲鳴嶼さんの訓練のおかげだな。

 

「いいな」

 

「そっちこそ」

 

 そして互いに褒め合った。

 

 

 それから私達は特訓に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてあっという間に十日目を迎えた。

 




「よっ!」

 炭治郎、禰豆子登場。

「四人とも無事訓練を終えたみたいだ」

「ううう!」

「さらに修行の成果も出ていて良かった¥

「ううう!」

「ここでコソコソ噂話。玄弥は兄の継子の八重樫さんの事をずっと心配していたみたいで、訓練を終えた後も気にかけていたようです」

「いよいよ十日目か。みんな大丈夫だといいけど」

「ううう」

「次回、旅立ち!」



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第三十五章 旅立ち


なんとか書けました。


焔SIDE

 

「いや〜やっと十日経ったか」

 

「本当」

 

 私達四人は十日間の鍛錬を終え、南雲と合流するため移動している。

 

「悲鳴嶼さんの鍛錬キツかったね」

 

「まぁ、でもいい鍛錬になった」

 

 悲鳴嶼さんには本当感謝しかない。

 

「南雲はどうなんだろうな?あの地味兎をどれくらい鍛えたのか」

 

「ユエちゃんとシアちゃんもどうなったんだろう?」

 

 董香とスグがハウリア族の人たちやユエとシアの事を考える。そういえばどうなったんだろうな。

 

「お、南雲!」

 

 とまぁ、考えている間に合流地点に着いた。

 

「姉貴、四人とも特訓終わったのか?」

 

「おう!」

 

「まぁね」

 

 取り敢えず、特訓終了の報告をしておく。シアとユエがまだ来ていないみたいだ。

 

「ハジメさーん!」

 

 シアとユエが来た。ユエがなんかブスッとした表情しているけど、どうしたんだ?

 

「どうしたんだろうユエちゃん?」

 

「さぁな?」

 

「聞いてくださいハジメさん!私……」

 

「ボス!大樹周辺の霧が弱まってきやした!!」

 

 シアが南雲に何か話そうとしたら、筋肉ムキムキなハウリア族が現れた。

 誰?

 

「あの〜どちら様?」

 

「何言ってるんですか?私です!カムですよ!」

 

 へぇーカムさん……えっ?

 

「「「エェェェェェェーー!!」」」

 

 私、雫、スグの絶叫が響き渡る。

 嘘だろ!?この人がカムさん!?いや、確かに音も匂いも本人だけど、最早別人だ。シアも親父さんの変貌ぶりに驚きまくりだし。

 

「私だけではないぞ。ハウリア族はボスのおかげで生まれ変わったのだ」

 

 見ると他のハウリア族もカム同様筋肉ムキムキになっていた。一体何をしたらこんな風になるんだ。

 

「へぇー少しは派手になったみたいだね」

 

 董香に至ってはこの変貌ぶりに感心していた。

 

 まぁ、そんなあっと驚く事もあったが、私達は大樹を目指し、進んだ。

 進みながら特訓の事などを話した。

 

「ボス!大樹が見えてきました!」

 

 大樹に着いた。

 

「よしでかした!最後まで気を抜くなよ?」

 

 南雲がそう言い、私達は身構える。

 

 

「……なんだこりゃ」

 

「枯れてる……?」

 

「大きい」

 

 大樹を見た感想がこうだ。大きいけど、枯れている。

 

「フェアベルゲン建国前から枯れているらしいのですが朽ちることはないらしいのです。……とはいえそれだけなので言ってみれば観光名所みたいなものですが、後は石板がここにあるぐらいですな」

 

 大樹の根元には石板が建っていた。

 

「ハジメ……これ……」

 

「ああ、オスカーの紋様と同じだ」

 

 石板にはオスカーの紋様がある。

 

「どうやらここが大迷宮の入り口みたいだが、こっからどうすりゃいいんだ」

 

 入り口のようだが、ここからどうすればいいか分からない。するとユエが石板を見て何かを見つけた。

 

「ハジメ……オルクスの指輪出して」

 

「何かあったのか?」

 

 南雲はユエに言われるがままオルクスの指輪を出し、石板にはめた。すると、石板に文字が出てきた。

 

 “四つの証„

 

 “再生の力„

 

 ”紡がれた絆の道標„

 

 全てを有する者に新たな試練の道は開かれだろう

 

 

 そう書かれている。何だこれ?

 

「これ迷宮攻略の条件なんじゃない?」

 

 雫が答えた。成る程そういうことか。

 

「て事は“四つの証„は他の迷宮の証」

 

「“紡がれた絆の道標„は亜人の案内人って事じゃないですか?」

 

 董香とシアが条件の答えを言う。

 

「“再生の力„は……私の再生能力とは違うみたい。ということは再生に関する神代魔法……?」

 

 ユエが石板に触れてみたが、何も起こらなかった。

 

 そんな訳で現時点で迷宮攻略は出来ないため、他の迷宮攻略をする事になった。ハウリア族の人達とは別れる事に。

 

「シアちゃん!良かった一緒にいれて!」

 

「はい!スグハさん!」

 

 でも、シアが私達の仲間になった。なんでも特訓でユエが勝負に負けた事でなってしまったらしい。

 まぁ、シア本人も南雲の側にいたいって言ってたし、戦力は一人でも多い方がいい。それにスグも喜んでいるし。

 

「ふん!精々足引っ張らないでね」

 

「トウカさん」

 

「董香ちゃんあぁ言ってるけど、本当はシアちゃんの事期待して「余計な事言わなくていい!」」

 

 ゴーーン!!

 

「いったー!!」

 

 頭に強烈な拳骨を食い、スグの頭に立派なたんこぶが出来た。

 

「ったく」

 

 私と雫は苦笑いしながら見た。

 こうしてシアが仲間に加わり、私達は改めて大迷宮攻略には旅立った。

 

焔SIDE OUT

 

 

 

 

その頃

 

「たあ!」

 

 王国では優花が日輪刀を振るい、鍛錬に勤しんでいた。

 

「優花ちゃん」

 

「香織」

 

 そこに香織が来た。

 

「どう?」

 

「まぁね。少しでも頑張らないと伊黒さんにまたねちねち言われるからね。それより甘露寺さんの継子何か分かった?」

 

「だめ、何も分からなかった」

 

「そう。名前とか聞いておけば良かった」

 

 優花と香織はこの世界にいる甘露寺蜜璃の継子について話していた。あれから探したりしたが、見つからず、手がかりも掴めなかった。

 

「おい、聞いたか。最近凄い冒険者が出たって」

 

「おおどんなだ?」

 

 近くで騎士二人が話していた。

 

「女で一人は剣を使って、もう一人は斧と鉄球だったかな?それも相当な実力者みたいなんだよ」

 

 

 

「斧と鉄球?」

 

「そういえば柱の一人の悲鳴嶼さん斧を使っていたよ」

 

「……まさかね」

 

 それを聞いていた優花と香織は岩柱・悲鳴嶼行冥が使っている武器を思い出す。

 

「斧と鉄球って」

 

「なんだそれ!きっとその女、ムキムキのゴリラ女かもな!」

 

「「「「ハハハハハハ!」」」」

 

 その近くで聞いていた檜山達四人が大声を上げながら笑っていた。

 

「ちょっと!女に対してゴリラは失礼でしょ!」

 

 聞こえた優華は檜山達に詰め寄り、怒鳴る

 

「お、おう。すまん」

 

「本当、男子ってデリカシーないんだから。行こう香織」

 

 優香は香織を連れて去る。去る際、香織は檜山を見て睨む。

 

 

 

 

その頃

 

「っ!?」

 

「どうした?」

 

「いや、なんかムカつく事言われた気が」

 

 




「「「よっ!」」」

 炭治郎、善逸、伊之助、参上!

「無事、みんな修行終えた。なんか見違えたな」

「それにシアちゃんも仲間になった。いや〜いい体してる」

「あの兎達強そうだな。勝負してぇ!」

「ここでコソコソ噂話。董香は時折素直になれない時があるそうです」

「それにしても最後に出てきた二人って?」

「誰だ?」

「それよりもう時間が」

「「「次回、ブルック!」」」


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第三十六章 ブルック


仕事が忙しく。そのせいで体調崩してしまい、中々、書く時間が取れませんでした。今もちょっと不安です。


焔SIDE

 

 どうも焔です。現在、私達はブルックという町に来てます。ここには七大迷宮の一つがあるライセン大峡谷に行くための食料やお金など先立つ物を手に入れるために来ている。

 因みに新しく仲間になったシアだけど、首輪をするようになった。別にああいうプレイとかではなく、奴隷のように見せるためのお飾りとしている。

 さて、今私達はメインストリートを歩いて行き、一本の大剣が描かれた看板を発見した。以前、ホルアドでも見た冒険者ギルドの看板だ。ホルアドに比べたら二回りほど小さいが。

 私達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくる。特に私ら女性陣に視線が向く。まぁ、どうでもいいし、無視、無視。

 カウンターに向かうと、そこには大変魅力的な笑みを浮かべた……オバチャンがいた。そのオバチャンはニコニコと人好きのする笑みで私達を迎えてくれた。

 

「周りにとびっきり綺麗な花を持っているのに、まだ足りなかったのかい?残念だったね、美人の受付じゃなくて」

 

 おいおいユエとシアはともかく私、雫、スグ、董香は違うからな。

 

「いや、そんなこと考えてないから」

 

「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ?男の単純な中身なんて簡単に分かっちまうんだからね。あんまり余所見ばっかして愛想尽かされないようにね?」

 

「……肝に銘じておこう」

 

 南雲の返答に「あらやだ、年取るとつい説教臭くなっちゃってねぇ、初対面なのにゴメンね?」と、申し訳なさそうに謝るオバチャン。チラリと食事処を見ると、冒険者達が「あ〜、あいつもオバチャンに説教されたか〜」みたいな表情で見ている。なんとも憎めない人だこのオバチャン。

 

「さて、じゃあ改めて冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件はなにかしら?」

 

「ああ。素材の買取りをお願いしたい」

 

「素材の買取りだね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「ん?買取りにステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

 南雲の疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい?確かに、買取りにステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

「そうだったのか」

 

 へぇー、冒険者になればそんな特典が付いてくるのか。

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は一割から二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする?登録しておくかい?登録には千ルタ必要だよ」

 

 すげぇ。冒険者になるとこんなに特典が付くのか。

 因みにルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、上から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタと、驚くことに貨幣価値は日本と同じ。

 

「う〜ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取り金額から差っ引くってことにしてくれないか?もちろん、最初の買取り額はそのままでいい」

 

「可愛い子何人もいるのに文無しなんてなにやってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ」

 

 オバチャンかっこいい。あっ、なら。

 

「私と雫も冒険者登録していいか?それとスグと董香のステータスプレートの発行できるか?」

 

「もちろんかまわないよ。発行もできるよ」

 

 出来るみたいだ。よし!

 

「おい、姉貴」

 

「頼むよ南雲。せめてこの二人のだけでも」

 

「……」

 

 南雲がスグと董香と私を見て考え出す。

 

「……分かった。おい登録に四人追加と二人分ステータスプレートの発行を頼む」

 

「はいよ!それにしてもあんた達姉弟なのかい?全然似てないね?」

 

「違う。俺がそう呼んでるだけだ」

 

「そうか」

 

 オバチャンが納得する。まぁ、よく周りから姉貴とか姐さんと呼ばれていたからな、慣れちまった。

 まぁ、とにかく私、南雲、雫はステータスプレートをオバチャンに差し出す。スグと董香はオバチャンからステータスプレートを受け取り、ステータスを表示させ、同様に差し出す。

 戻ってきたステータスプレートの天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに“冒険者„と表記され、更にその横に青色の点がついている。

 この青色の点は、冒険者ランクだ。上にいくにつれて赤、黄、紫、白、黒、銀、金へとなっていく。まぁ、駆け出しだし、青なのは当然だと。

 因みにスグ、董香のステータスだけど。

 

 

 桐原直葉 17歳 女 レベル:65

 天職:剣士

 

 筋力:200

 

 体力:700

 

 耐性:750

 

 敏捷:900

 

 魔力:300

 

 魔耐:600

 

 技能:剣術・全集中の呼吸【+蟲の呼吸】【+常中】・縮地・水属性適正・先読・反復動作・気配感知・言語理解

 

 

 湊董香 17歳 女 レベル:80

 天職:剣士

 

 筋力:850

 

 体力:800

 

 耐性:600

 

 敏捷:900

 

 魔力:500

 

 魔耐:600

 

 技能:剣術・全集中の呼吸【+音の呼吸】【+常中】・縮地・雷属性適正・先読・反復動作・気配感知・言語理解

 

 と、まぁこんな感じだ。

 

「男なら頑張って黒を目指しなよ?お嬢さん達にカッコ悪いところ見せないようのね」

 

「ああ、そうするよ。それで、買取りはここでいいのか?」

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持って持ってるから見せてちょうだい」

 

 お、査定資格も持ってるのか。優秀なオバチャンだ。

 南雲は素材を出す。

 

「こ、これは!」

 

 恐る恐る手に取り、隅から隅まで確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたオバチャンは、溜息を吐き南雲を見る。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

 

「ああ、そうだ」

 

 ん?なんか珍しいのか?それ?

 

「……あんたも懲りないねぇ」

 

 オバチャンが呆れた視線を南雲に向ける。

 

「なんのことか分からない」

 

「樹海の素材は良質なものが多いからね。売ってもらえるのは助かるよ」

 

「やっぱり珍しいか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこられないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入ることもあるけれど、そんな亜人達の神経を逆撫でするようなことしていたら、それこそ命がいくつあっても足りないよ。それに、仮に運よく素材が手に入っても、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」

 

 オバチャンはチラリとシアを見る。シアのおかげだと推測したのだろう。

 それからオバチャンは、全ての素材を査定し金額を提示した。四十八万七千ルタ。結構な額だ。

 

「これでいいかい?中央ならもう少し高くなるだろうけどね」

 

「いや、この額で構わない」

 

 南雲は五十一枚のルタ通貨を受け取る。

 

「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 

 ああ、そういえばそんなの聞いたな。

 

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

 その地図を見ると、中々に精巧だった。有用な情報が簡潔に記載されていた。

 

「おいおい、いいのか?こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

 このオバチャン優秀すぎねぇか?何でこんなとこで受付やってんのか不思議でしかねぇ。

 

「そうか。まぁ、助かるよ」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊まりなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その六人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

 オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。私達はオバチャンに礼を言い、ギルドを後にした。

 

「ふむ、色んな意味で面白そうな連中だね……そういえばあの四人の子達が着ていたのどこかで見たような?」

 

 

 

 

 

 ギルドを出た私達が向かったのは“マサカの宿„という宿屋。紹介文によると、料理が美味しく防犯もしっかりしており、なにより風呂に入れるという。お得満載の宿だ。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿„へ!本日はお泊まりですか?それともお食事だけですか?」

 

 カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらいの女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

「宿泊だ。このガイドブック見てきたんだが、記載されている通りでいいか?」

 

 南雲がオバチャンからもらった地図を見せると女の子は頷く。

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

 へぇー、あのオバチャン、キャサリンって言うのか。

 

「あの〜、お客様?」

 

「あ、ああ、済まない。一泊でいい。食事付きで、あと風呂も頼む」

 

 女の子の呼びかけで気づく南雲、どうしたんだ?

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

 女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたい。男女で分けるとなると二時間は確保したいということを女の子に伝える。「えっ、二時間も!?」と驚かれたけど。

 

「え、え〜と、それでお部屋はどうされますか?二人部屋、三人部屋、四人部屋と大部屋が空いていますが……」

 

 ちょっと好奇心な目でこっちを見る女の子。

 

「ああ、三人部屋で頼む。こっちの四人に四人部屋」

 

 おお、南雲の奴迷うことなく三人部屋とは。

 

「はわわわわわわ〜」

 

「っ!?///」

 

 スグと雫が顔真っ赤にあたふたしてる。

 

「ほう。南雲も天元様と同じように派手ね」

 

 董香に至っては感心している。まぁ、彼女の師範である天元様は三人の嫁さんがいるからな。

 

「……ダメ。二人部屋二つで」

 

 ここでユエが否定する。まぁ、彼女の考えなら。

 

「……私とハジメで一部屋。シアは別室」

 

 やっぱり。

 

「ちょっ、なんでですか!私だけ仲間はずれとか嫌ですよぉ!三人部屋でいいじゃないですかっ!」

 

 抗議するシアに、ユエはさらりと言ってのけた。

 

「……シアがいると気が散る」

 

「気が散るって……なにかするつもりなんですか?」

 

「……なにって……ナニ?」

 

「ぶっ!?ちょっ、こんなとこでなに言ってるんですか!お下品ですよ!」

 

 あああ、始まったよ。二人の痴話喧嘩。チラッと南雲と董香を見ると拳構えているし。

 

「だ、だったら、ユエさんこそ別室に行って下さい!ハジメさんと私で一部屋です!」

 

「……ほぅ、それで?」

 

 指先を突きつけてくるシアに、ユエは冷気を漂わせた眼光で睨みつける。シアは震え出すが、睨み返すw

 

「そ、それで、ハジメさんに私の処女を貰ってもらいますぅ!」

 

 おいおい、こんな大勢がいるとこで何言ってるんだこいつは?ほら見ろ、周りの奴が注目してるぞ。

 

「……今日がお前の命日」

 

「うっ。負けません!今日こそユエさんを倒して正ヒロインの座を奪ってみせますぅ!」

 

「……師匠より強い弟子などいないことを教えてあげる」

 

「下剋上ですぅ!」

 

 一触即発の危機

 

 

 

 

 

 その時

 

 

「おい。何こんなとこでくだらん喧嘩しようとしてるんだ?ガキかお前ら?」

 

「姉さん。よく見て一人は思いっきり子供じゃない。ほらあの金髪」

 

「……あぁ、ホントだ」

 

 二人組の女の声が聞こえて振り向くと、私、スグ、董香は目を見開く。

 一人は眼鏡をかけて、髪をポニーテールにした女。もう一人はショートボブの女。二人とも鬼殺隊の隊服を着ていた。

 

「……子供」

 

 子供と言われたユエはポニーテールの女を睨む。

 

「プププ!子供!まぁ、お子ちゃま姿のユエさんにはお似合いですね」

 

 笑うシア。

 

「まぁ、そっちの女も金髪同様中身は子供みたいだけどね」

 

 今度はショートボブの女がシアを揶揄う。

 

「子供ですって?それもユエさんと一緒」

 

 ワナワナと怒り出すシア。シアは大槌を出し、ショートボブの女を睨む。

 

「上等ですぅ!ユエさんより先に貴女からやるですぅ!」

 

「おい!シア!」

 

 南雲が止めようとするも遅く、シアは突撃する。

 シアは大槌を振り下ろし、もらったと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる。

 

 しかし、彼女はスルッと避ける。

 

 ガシっ!

 

「へっ?」

 

 ぶん!

 

 ドゴーン!!

 

 シアの腕を掴むと、彼女は投げられ床に顔から突っ込まれた。床に突っ込まれたシアは犬神家状態に。

 

「ふん。この程度?」

 

「真依、宿の床を壊す奴があるか」

 

「突っ込んできたそこの兎が悪い。それよりやっと会えたね焔、直葉、董香」

 

「焔、直葉、董香、知り合い?」

 

「姉貴?」

 

「ホムラ?」

 

「……あぁ」

 

 雫、南雲、ユエに問われ、頷く。

 

「二人は「焔、自分で紹介する」」

 

 

 

 

 

「私は西園寺真希。水柱・冨岡義勇の継子だ。で、兎を投げたのが双子の妹の」

 

「西園寺真依。岩柱・悲鳴嶼行冥の継子」

 

 




冨岡義勇、胡蝶しのぶ登場!

「彼女が冨岡さんの継子ですか。可愛い子ですね」

「……」

「彼女はどうでしたか?」

「……」

「何かおっしゃってはどうですか?」

「……ここでコソコソ噂話。真希は昔から物覚えや観察眼に優れて、そのせいで水の呼吸もすぐに取得できた」

「そうなんですか。真依さんもそうですが、二人の活躍に期待ですね」

「次回、水、岩の剣士」


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第三十七章 水、岩の剣士


遅くなってすみません!

書く時間がなかったのと、どういう展開にするかなどで手間取ってしまいました。

西園寺真希 容姿:呪術廻戦の禪院真希

西園寺真依 容姿:呪術廻戦の禪院真依


焔SIDE

 

「いやーどこかに行けば会えると思ったけど、やっと会えたよ」

 

 真希が私達を見てそう言う。あの後私達は、話をするため宿の部屋にいる。因みに南雲、ユエ、シアとは別部屋である。あっ、シアはちゃんと引っこ抜いて回収しました。

 

「で、焔、この二人とは」

 

「あぁ、真希と真依とは中学の時からの付き合いなんだ」

 

「うん、同じクラスだったし」

 

「姉妹で生徒会にも所属して有名だったし、家もそうだし」

 

 雫に真希と真依との関係を私、スグ、董香で説明した。

 

「へぇー」

 

「いや、焔も有名だったよ」

 

「そうそう“黒龍„」

 

 うっ、そのあだ名。

 

「何?その黒龍って?」

 

「ほむちゃんの二つ名」

 

「焔は中学の頃、不良でよく喧嘩していたの。その姿は荒ぶる龍、さらに肌が黒かった事からついたのが”黒龍„」

 

「へ、へぇ」

 

 スグと董香の説明を聞いた雫、笑いそうな顔していたので。

 

「痛い!痛い!」

 

 すかさず私は彼女にアイアンクローをかます。

 

「ごめん!もう笑わないからやめてー!痛い!」

 

「まぁまぁ。ほむちゃんその辺で」

 

 スグがなんとか止めて、落ち着く。

 

「……はぁ〜もういい」

 

 雫を放す。解放された彼女は顔を抑えている。

 

「さて、落ち着いたところで風呂でも行く?」

 

「いいね。玄弥の兄貴の継子とゆっくり話したかったし」

 

「わ、私と?」

 

「あぁ、君の事ちょっと気になってたから」

 

 準備をし、私達は風呂へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、それは災難だったね」

 

 私達は入浴しながらこれまでに起こった出来事を話していた。

 

「それにしても勇者に魔人族との戦争。まんま異世界ファンタジーじゃん」

 

「そしてその身勝手な神のせいで私らはここにいると」

 

「まぁ、そういう事だ」

 

「で、元の世界に帰るために七大迷宮を攻略している」

 

「あぁ。すでに一個は攻略済みだ」

 

「成る程。よし、私達も協力する」

 

「あぁ、帰れる可能性があるなら仲間になる。頼むよ」

 

「ありがとう」

 

 真希、真依が私達の仲間入りをお願いした。私達は南雲に真希、真依の事を話そうと思ったが、ユエ、シアとの楽しみを邪魔したくないと思い、翌朝にした。

 

 

翌朝

 

「というわけで、二人とも仲間になるって」

 

「そうか」

 

 翌朝、朝食を食べながら南雲に二人の事を話した。

 

「改めて西園寺真希だ」

 

「西園寺真依」

 

「南雲ハジメだ。よろしく西園寺」

 

「名前でいい。名字だと被る」

 

「分かった。真希、真依」

 

「で、ユエとシアだっけ?昨日はごめんね」

 

「別にいい。シアのあれを見れてスッとした」

 

「なっ!?ユエさんそれどういう事ですか!?」

 

「おい。また騒ぐなら今度は俺が制裁するぞ」

 

 南雲の威圧に二人はすぐにやめ、静かになった。

 

「雫、君のクラスメイトはいつもああなのか?」

 

「いや、前までは普通だったよ。でも、この世界に来てから」

 

「ふーん。面白いね」

 

 真依が笑みを浮かべる。

 

 その後、朝食を済ませ、南雲が私達に金を渡し、旅に必要な物の買い出しを頼まれた。その間、南雲はやる事があるんだと。その際、真希と真依に日輪刀を貸してほしいと頼んだ。多分、やる事は武器強化だろう。

 

 そんなわけで、私達は必要な物として食料、薬、衣服の調達をする事にした。

 

「あら〜ん、いらっしゃい?可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ〜。た〜ぷりサービスしちゃうわよぉ〜ん?」

 

 手始めに服を購入しようとそこには化け物がいた。身長二メートル強、全身女筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の四か所から長い髪が一房ずつ生えており、頭の天頂で複雑に結われている。まるで天に昇る龍の如き頭頂から真っ直ぐに逆巻きながら伸びた髪の先端には、可愛いらしくピンクのリボンが結ばれていた。

 動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み始終くねくねとと動いている。服装は……腕と足、そして腹筋が丸見えだ。

 

「あらあらぁ〜ん?どうしちゃったの皆?可愛い子がそんな顔しちゃだめだよぉ〜ん。ほら、笑って笑って?」

 

 いや、あんたのせいだから。思ってる事をなんとか口に出さずに済む。他のみんなも耐えた。

 

「……人間?」

 

 だめだった。ユエが呟いてしまった。

 

「だぁ〜れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化け物だゴラァァアア!!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 ユエがふるふると震え涙目になりながら後退る。シアは、へたり込む。私も驚き、スグと雫は私の後ろに隠れる。西園寺姉妹はびっくりして転ぶ。董香は大丈……夫じゃなかった。足震えている。

 

「いいのよ〜ん。それでぇ?今日は、どんな商品をお求めかしらぁ〜ん?」

 

 シアは未だへたり込んだままなので、とにかく覚悟を決めて衣服を探しに来た旨を伝える。化け物は「任せてぇ〜ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってました。

 しかし、案の定、化け物改め店長のクリスタルベルさんの見立ては見事の一言だった。

 私達は、クリスタルベルさんに礼を言って店を出た。

 

「いや〜、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん」

 

「ん……人は見た目によらない」

 

「ですね〜」

 

「本当本当」

 

 そう雑談しながら、次は道具屋を回ることにした。しかし、なぜか数十人の男達に囲まれた。何だこいつら?中学の時も喧嘩でこんな風に男共に囲まれたことあるけど。

 その内の一人が前に進み出た。

 

「ユエちゃんとシアちゃん」

 

「ホムラちゃんとスグハちゃんとシズクちゃん」

 

「トウカちゃんとマキちゃんとマイちゃんで名前合ってるよな?」

 

「?……ん。合ってる」

 

「なんの用だ?」

 

 

 

 

「「「「「ユエちゃん(ホムラちゃん)(スグハちゃん)(シズクちゃん)(マキちゃん)(マイちゃん)、俺と付き合ってください!!」」」」」

 

「「「「「シアちゃん!俺の奴隷になれ!!」」」」」

 

 ああ、そういう事ですか。まぁ、こんなのとりあえず……

 

「……みんな、道具屋はこっち」

 

「あ、はい。一軒で全部揃うといいですね」

 

「早いとこ用事済ますぞ」

 

 何事もなかったかのようにスルーするに限る。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!返事は!?返事を聞かせてくーー」

 

「断る」

 

「断ります」

 

「イヤ」

 

「嫌です」

 

「帰って」

 

「地味な男は嫌い」

 

「ふざけるな」

 

「二度と来るな」

 

 上からユエ、シア、私、雫、スグ、董香、真希、真依の順で言う。

 

「ぐぅ……即答……だと」

 

 男は呻き、何人かは膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちる。

 

「なら、力ずくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギシッと光を宿す。私達を逃がさないように取り囲む。最初に声をかけてきた男がユエに向かって飛びかかってきた。

 私はユエの前に出てすかさず

 

「おらぁ!」

 

 蹴飛ばしてやりました。男はそのまま気を失ってしまった。私は他の男達を見て、手の関節を鳴らす。

 

「さて、おっ始めようじゃないか」

 

 

 

 

 

「ギョエェェェ〜ー!!」

 

「アギャー!」

 

「もうやめてくれ!」

 

 私はもうとにかく男共を殴り、殴りまくった。時には技をかけたりも。

 

 

 

「うわぁ、ホムラさんやりますね」

 

「ホムラすごい」

 

「焔」

 

「ほむちゃん」

 

「相変わらずだね」

 

「流石“黒龍„。見事な暴れっぷり」

 

「中学の頃も凄かったけど、この世界でもやるね」

 

 シア、ユエ、雫、スグ、董香、真希、真依が話しているが、とっとと終わらせる。

 

 

数分後

 

「「「「「ずびばぜんでじだ」」」」」

 

「「「「「二度と近寄りません」」」」」

 

 男共は観念して土下座した。

 

「よろしい。よし終わったから行くぞ」

 

 私達は再び道具屋を目指した。無事買い物も済まし、宿に戻った。宿に戻ると南雲はシアに新しい戦鎚“ドリュッケン„を渡す。真希、真依にも強化された日輪刀も渡された。三人とも気に入ったようだ。新しい武器を手にし、大迷宮攻略を目指す。

 

焔SIDE OUT

 

 

 

 

真希SIDE

 

『水の呼吸 壱ノ型』

 

『水面斬り』

 

 私達はライセン大峡谷で魔物と戦闘している。私達はここライセン大峡谷にあると言われている大迷宮を探しているが、出てくるのは魔物ばかりだ。

 にしても……

 

「一撃必殺ですぅ!」

 

「……邪魔」

 

「うぜぇ」

 

 シア、ユエ、南雲、戦闘力凄すぎだろう。

 

 私は南雲によって強化された日輪刀を見る。良い出来だ。これだけの技術を持っているのに無能呼ばわりとは、あいつのクラスメイト共は見る目がなかったようだな。

 

『炎の呼吸 壱ノ型』

 

『蟲の呼吸 蝶ノ舞』

 

『風の呼吸 捌ノ型』

 

『音の呼吸 肆ノ型』

 

『不知火』

 

『戯れ』

 

『初烈風斬り』

 

『響斬無間』

 

 焔、直葉、八重樫、董香、四人も問題ない。そういえば四人とも悲鳴嶼さんの元でも修行したって真依から聞いたな。

 

『岩の呼吸 壱ノ型』

 

『蛇紋岩・双極』

 

 そしてその悲鳴嶼さんの継子である我が妹の真依。

 

「姉さんここに迷宮ってあるの?」

 

「ここにあるというらしいけど、それらしきものなんて」

 

「まぁ、こういうのってゲームだとどこかに隠し扉的なものがあったりするからね」

 

 確かにゲームだとそうだったりするけど。

 結局、大迷宮は見つからず、野宿する事に。交代でまず南雲が見張りをし、私らは寝る準備を。と、シアがテントの外へ。

 

「ちょっと、お花摘みに」

 

「谷底に花はないぞ?」

 

「ハ・ジ・メ・さ〜ん!」

 

 デリカシーなさすぎだろうあの男。私は内心呆れる。

 

「み、皆さ〜ん!大変ですぅ!こっちに来てくださぁ〜い!」

 

 シアの大声がした。そんな大声出したら魔物が来るかもしれないのに。とりあえず私達はシアの声がした方へ行くと、そこには、巨大な一枚岩が谷の壁面にももたれ掛かるように倒れていて、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所があった。シアは、その隙間の前で、ブンブンと腕を振っている。

 

「こっち、こっちですぅ!見つけたんですよぉ!」

 

「落ち着きなさい!あとうるさい!迷惑考えなさい!」

 

「ふぎゃー!」

 

 あまりのうるささに董香がシアの頭に拳骨を落とす。彼女の頭に立派なたんこぶが出来た。

 

「うぅぅぅ〜」

 

「で、何を見つけたんだ?」

 

 南雲に言われるまま、シアは私達を案内する。彼女に導かれて岩の隙間に入ると、壁面側が奥へと窪んでおり、意外なほど広い空間が存在していた。その空間の中程まで来ると、シアが壁の一部に向けて指をさした。

 その指先を見て私達は「は?」と思わず呆けた声を出した。

 

 

 

『おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

 




「よっ!」

 炭治郎、禰豆子登場!

「西園寺姉妹、頼もしい仲間が増えたね」

「うぅ」

「義勇さんと悲鳴嶼さんに相当鍛えられたみたいだ。力も申し分ない」

「うぅ」

「ここでコソコソ噂話。西園寺姉妹の家は様々な伝統芸能や武道の家で、二人も幼い頃から嗜んでいた」

「次の大迷宮も見つかって、いよいよ攻略開始だ」

「うぅ」

「次回、ライセン大迷宮!」


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第三十八章 ライセン大迷宮


遅くなってすいません。

アニメ刀鍛冶の里編、面白いです!


焔SIDE

 

「……なんだこりゃ」

 

「……なにこれ」

 

「……なんなんだおい」

 

 南雲、シア、私の声が重なる。まさに“信じられないものを見た„という表現がぴったり当てはまるものだ。

 

「なにって、入口ですよ、大迷宮の!おトイ……ゴホッン、お花を摘みに来たら偶然見つけちゃいまして。いや〜、ホントにあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮って」

 

 シアの声が響く中、私達は硬直が解けた。南雲はユエ、私は雫の方を向く。

 

「……ユエ。マジだと思うか?」

 

「………………ん」

 

「雫、どうだ?」

 

「間違いないよ」

 

「「根拠は?」」

 

「「……ミレディ」」

 

「やっぱそこだよな」

 

「だな」

 

「どういう事?」

 

 スグが問う。

 

「ミレディってのはライセンのファーストネームだ。オルクスで見つけたオスカーの手記に書かれていたんだ」

 

 私はスグに答える。

 

「なんでこんなにチャラいんだよ……」

 

「だな」

 

 南雲の言葉に頷く。

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね?奥も行き止まりですし……」 

 

 シアが辺りを見渡し、壁をペシペシと叩いたりしている。

 

「おい、シア。あんまり……」

 

 ガコッ!

 

「ふきゃ!?」

 

 シアが触っていた窪みの奥の壁が突如グルンっと回転し、シアはそのまま壁の向こうへ姿を消した。忍者屋敷のような仕掛けだな。

 でも、大迷宮への入口を発見した事で看板の信憑性が増した。私達もシア同様、回転扉に手をかけ、中に入る。

 と、その瞬間、ヒュヒュヒュ!と、無数の風切り音が響き、私達に目掛けてなにかが飛来した。それは矢だった。全く光を反射しない漆黒の矢が無数に飛んできた。

 南雲はドンナー、私、雫、スグ、董香、真希、真依は日輪刀をを手に、飛来する漆黒の矢の尽くを叩き落とした。

 数は二十本くらい。一本の金属から削り出したような艶のない黒い矢が黒い矢が地面に散らばる。最後の矢が地面に叩き落とされると再び静寂が戻る。

 と、同時に周囲の壁がぼんやりと光り出し辺りを照らし出す。私達のいる場所は、十メートル四方の部屋で、奥へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。そして部屋の中央には石版があり、文字が彫られていた。

 

『ビビった?ねぇ、ビビっちゃった?チビってたりして。ニヤニヤ』

 

『それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ』

 

 うぜぇ〜イライラする。絶対他のみんなもそう思ってるだろう。

 

「……シアは?」

 

 ユエの呟きで思い出す。そういえばすっかり彼女の事を忘れていた。背後の回転扉を振り返る。まさかな。南雲はすぐに回転扉を作動させた。そこには回転扉に縫い付けられたシアがいた。下には水たまりが……あぁ、やっちまったのか。

 

「うぅ、ぐすっ、ハジメざん、皆ざん……見ないで下さいぃ〜。でも、これは取って欲しいでずぅ。ひっく、見ないで降ろじて下さいぃ〜」

 

 泣きだすシア。流石に可哀そうだったのですぐに助け出し、着替えさせた。

 シアの準備も整い、いざ迷宮攻略へ!と意気込み奥へ進もうとして、シアが石版に気付く。

 

 ゴギャ!

 

 ドリュッケンを振り下ろし、石版を粉々に粉砕した。

 

『ざんねーん♪この石版は一定時間経つと自動修復するよぉ〜、プークスクス!!』

 

 砕けた石版の跡、地面の部分にそう彫ってあった。

 

「ムキィーー!!」

 

 シアがマジギレして更に激しくドリュッケンを振るい始めた。

 

 ミレディ・ライセンは“解放者„云々関係なく、人類の敵かも。

 

焔SIDE OUT

 

 

真依SIDE

 

「こりゃまた、ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だな」

 

「……ん。迷いそう」

 

 迷宮を進むと、複雑怪奇な空間に出た。

 そこは、階段や通路、奥へと続く入り口が何の規則性もなくごちゃごちゃに繋がり合って、レゴブロックを無造作に組み合わせてできたような場所だ。まるで某カードゲームアニメの心の迷宮だ。

 

「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心をあらわしているんですよぉ!」

 

「……気持ちは分かるから、そろそろ落ち着けよ」

 

 未だ怒り心頭のシア。それに呆れ半分同情半分の視線を向ける南雲。正直私も怒りたい気持ちだ。

 

「……ハジメ。考えても仕方ない」

 

「ん〜、まぁ、そうだな。取り敢えずマーキングとマッピングしながら進むしかない」

 

「ん……」

 

 ユエの言葉に頷く南雲。私達も同様に頷く。

 南雲は早速、入口に一番近い場所にある右脇の通路にマーキングして進んでみる。私達もついて行く。

 

 ガコンッ

 

 長い通路を進んでいると南雲が床のブロックの一つを踏み抜いた。私達は思わず「えっ?」と一斉にその足元を見た。なんかこれ映画とかで見たことあるような。

 

 その瞬間、

 シャァアアア!!

 

 左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリの巨大な刃が飛び出してきた。右のは首の高さ、左は腰の高さでこっちに迫ってきた。

 

「回避!」

 

「伏せろ!」

 

 南雲と焔の叫びで回避行動を取る。南雲はあの映画の有名な避け方で、ユエは背が低いのでしゃがむだけ。シアもなんとか回避する。

 

「うおっ!」

 

「キャっ!」

 

「ヒィっ!」

 

「あらよ」

 

「「おっと」」

 

 焔、雫、直葉、董香、私、姉さんはうつ伏せになって回避する。

 

「……完全な物理トラップか。魔眼石じゃあ、感知できないわけだ」

 

 どうやらあれは魔法系の罠ではなくて、完全な物理トラップだったようだ。焔からオルクスでの出来事は聞いていたが、あんな罠は予想外だった。

 

「し、死ぬかと思いました」

 

「怖かった」

 

 若干震えているシア、床に座り込んでいる直葉。応えたようだ。

 

「というかあれくらい壊してくださいよぉ!」

 

 シアはそう言うが、ここはどうも魔法が上手く使えないようだ。特にユエには痛手だ。外部に放出される魔法は分解されるが、内部には効かないようだ。

 剣技で破壊もあるが、下手に攻撃して別の罠が作動したりする危険性もある。

 この大迷宮を攻略するには……

 

 

「シア。ここの攻略はお前の活躍にかかってるぞ」

 

 




「「「よっ!」」」

 炭治郎、善逸、伊之助登場。

「ついにライセン大迷宮の攻略開始かドキドキするな」

「ヒィィ!また怖そうなとこに!イヤァァァ!」

「ほう。ここも面白そうじゃないか!ラーメン大迷宮!」

「ライセン大迷宮な」

「ここでコソコソ噂話。真依さんは鍛錬の合間に玄弥をイジってからかっていたらしいです」

「ここの攻略シアちゃんにかかってるけど、大丈夫かな?」

「あの兎がか?」

「うーん。きっと大丈夫だと思うけど、いけるかな」

「「「次回、罠だらけの大迷宮!」」」


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第三十九章 罠だらけの大迷宮

皆さん遅くなってすいません。なかなか書く時間が取れなかったのと、展開が思い浮かびませんでした。

また長くかかるかもしれないですが、なんとか書けるようのします。


董香SIDE

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

「このドジウサギ!言ったそばからヘマしやがって!!」

 

「すみません〜!!」

 

 どうも董香です。今私達はこの急坂を滑り落ちています。こうなったのもこの地味兎が罠を作動させてしまったからです。

 

「畜生!なんてこった!」

 

「うわぁー!」

 

「わぁお、スリル満点」

 

「姉さん、こんな時に何を」

 

 焔、スグ、真希、真依が滑りながら色々言ってる。状況的にまずいのに。

 

「シア!ドリュッケンを打ちつけろ!」

 

「は、はい!」

 

「私も日輪刀でなんとかしてみる!」

 

「っ!?ハジメさん道が……!」

 

「この距離は間に合わない!」

 

 シアと真依がなんとかしようとするが、すぐそこに出口が迫っていた。

 

「しっかり掴まってろよ!」

 

「絶対離すな!」

 

 ユエ、シアは南雲に掴まり、私ら鬼殺剣士同士で掴まる。そして出口が見え、外に出た。空中へ投げ出され、見ると下がサソリの群れがうじゃうじゃいた。なんか映画にあったなこういうの。

 

「うぉつ!!」

 

「一か八か!!」

 

 南雲が義手からアンカーを伸ばし、真依が日輪刀の斧の方を天井に突き刺す。なんとか落ちずに済んだが、いつまで耐えられるか分からない。南雲はシアとユエだが、こっちは六人一緒だからな。

 ふと天井を見る。

 

『彼等に致死性の毒はありません』

 

『でも麻痺はします』

 

『存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!』

 

 相変わらずムカつくなあの文字。サソリと添い寝なんて冗談じゃない。

 

「……ハジメ、あそこ」

 

「ん?」

 

 ユエが何かに気づく。見ると舌に横穴を発見した。それも見て私達はターザンの要領で横穴に移動し、サソリの群れから逃れることが出来た。

 

「ヒック、怖かったよ」

 

「おぉ、よしよし」

 

 余程怖かったのかスグが焔に寄ってよしよしされている。

 

「つーか。お前しのぶさんの継子だろう。毒耐性とかないのかよ」

 

「ある訳ないでしょ!真希ちゃんの馬鹿!」

 

「あぁ?」

 

 真希がスグに詰め寄ろうとする。

 

「やめろ。こんなとこで喧嘩してる場合じゃないだろう」

 

「ん。マキ落ち着いて」

 

「マキさん」

 

「ちっ!」

 

 南雲、ユエ、シアに止められ、真希は舌打ちしながら下がる。

 

「姉さん」

 

「後で覚えてろよ」

 

 何か小さく言ってるし、スグ大丈夫かな。まぁ、とにかく大迷宮攻略を再開する。

 

 

 それからというもの

 

 

 

「わぁぁぁぁぁぁッ!!天井が!!」

 

 天井が降ってきたり。それはみんなで持ち、南雲の錬成で助かりました。

 

 

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

 

 

「「「に、」」」

 

「「「「「「逃げろ!」」」」」」

 

 転がってくる巨大な岩に追いかけられたり。

 

「お前ら全力で走れ!捕まったら置いてくぞ!」

 

「えぇ!?」

 

「でも、ほむちゃん、このままだと私達!」

 

 そんな事している間に岩はどんどん迫ってくる。

 

「もう駄目追い付かれます!」

 

「風よりも早く走れ!!」

 

 

「「「うおぉぉぉー!!」」」」

 

「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」」」」」

 

 焔の叫びと共に私達は全力で手足を振り、走った。とにかく走った。

 

「少しは離したでしょうか!」

 

「振り返るな!今は全力で走る事だけを考えろ!」

 

「だが、こんな走りいつまでも保たないぞ!」

 

 南雲の言う通り、この走りは絶対に保たない。

 

「えい!仕方ない!」

 

 突然、南雲が止まった。

 

「南雲!?」

 

「何をする気?」

 

 突然のことに戸惑う私達。

 

「いつもいつも……やられっぱなしじゃなぁ……」

 

 そう言うと南雲は義手に力を込める。

 

 “豪腕„

 

「性に合わねぇんだよ!!」

 

 “振動破砕„

 

 南雲が岩を殴り、粉々にした。

 

「どうだ?少しはスッキリし……」

 

 しかし、安心したのも束の間、また新たな岩が現れた。鬼ごっこのリスタート。

 

 

 

「くそ……」

 

「ミレディ・ライセン……派手に覚えていろ」

 

 岩に追いかけられたものの、壁が開いていたのでそこから脱出できた。

 

 ゴゴゴゴゴゴ

 

「出口が閉まったみたい……」

 

「ほっとけ……もう二度と行きたくねぇ」

 

 南雲の言う通り、二度と行きたくない。さて次はどんな……

 

「おい、お前ら」

 

「姉貴?」

 

「どうしたの?」

 

「ん?」

 

 焔が何かに気づき、指を差す。

 

 

 

 ……ん?なんか見覚えのある石版だな。それに私達がいるこの部屋も。

 

 

『ねぇ今どんな気持ち?』

 

『お察し通りここはスタート地点でーす!』

 

『苦労して進んだ先が最初の部屋なんだけど今どんな気持ちー?」

 

『ちなみに来た道を戻ろうとしてもムダだよ!」

 

『この迷宮は一定時間ごとに変化してるから!』

 

『ねぇねぇ今どんな気持……』

 

『音の呼吸 壱ノ型』

 

『轟!!!』

 

 ドォン!!

 

 私は日輪刀を抜き、ムカつく石版に思いっきり振り下ろした。迷宮内に轟音が響く。

 

「おい、湊こんなとこでそんな「あぁ?」……いえ、何でもないです。はい」

 

 南雲が私に何か言ってきたが、睨んでやった。彼はそのまま後ろに下がって行った。

 

「姉貴」

 

「いや、仕方ねぇよ。私だってそうなるよ』

 

「うん。ハジメ、私もトウカと同じ」

 

 南雲、焔、ユエが何か話しているが、まぁ、いい。

 

〜1週間後〜

 

 あれから私達は迷宮内をマーキングしながら攻略しているが、進展なし。何かあればいいけど。

 

「何だこの部屋?』

 

 私達はとある部屋に辿り着いた。ここは初めて来るな。部屋の周りには鎧騎士の飾りが並んでいるし。

 

「ハジメあの扉見て」

 

「……あの扉は確か……オルクスの隠れ家に通じてた」

 

 ユエと南雲の会話を聞いて部屋の向こうにある扉を見る。あれか。

 

 ガシャッ

 

 すると、部屋にあった鎧騎士達が動き出した。どうやら当たりのようだ。

 

「か……数多くないですか?私こういう敵と戦うのは初めてなんですけど……」

 

 たくさんの鎧騎士を見てシアが弱気になった。この地味兎。

 

「シア一つだけ言っておく」

 

「は……はい!」

 

「お前は強い。あんなゴーレム如きに負けはしない。好きに暴れろ。ヤバイ時は必ず助けてやる」

 

「ハジメさん……」

 

「私の特訓に耐えた。弟子の強さは私とハジメが保証する」

 

「ユエさん……」

 

「安心しろ。いざって時にはフォローする」

 

「トウカさん」

 

 南雲、ユエ、私がそう言うとシアが気合いが入った顔になる。

 

「はい!分かりました!このシア・ハウリア!思う存分暴れさせてもらいますよぉ!!」

 

 気合いを入れてドリュッケンを振り回し、ゴーレム騎士を潰す。それに続けてゴーレム騎士を倒す。やるじゃん。

 

「さてこっちも派手にいきますか」

 

 私は日輪刀を抜き、焔、スグ、雫、真希、真依と共にゴーレム騎士を斬る。

 

「はぁ!」

 

『音の呼吸 肆ノ型』

 

『響斬無間』

 

 多くのゴーレム騎士を斬る。それにしてもこのゴーレム何か違和感を感じる。

 

『っ!?』

 

 考えていたらゴーレム騎士が私の背後に。

 

「油断大敵だよ。董香」

 

 しかし、そのゴーレム騎士は真依の鉄球で粉砕される。

 

「真依」

 

「董香このゴーレム核がない」

 

「核がない?」

 

「そう。まるで誰かが操っているみたいに。累の母蜘蛛みたいに」

 

 そうかこの違和感はそういう事だったのか。このゴーレム達は誰かが操っている。言わば操り人形。

 

「しかし、このままではヤバい。一々相手にしたら体力を消耗する」

 

「確かに。あの扉に行ければ」

 

「全員、耳塞いでろ!!」

 

 南雲の叫びを聞いて耳を塞ぐ。南雲を見ると派手なランチャーを構えていた。まさか……

 

ドオォォン!

 

 ランチャーから発射された弾丸が扉を破壊した。

 

「わぁお派手だね」

 

「全くこんな奴を手放すなんてあいつのクラスメイトは見る目がないね」

 

 私と真依が南雲を誉める。

 

「よし!魔法が使えないのをいいことに破壊対策が薄い!だが再生する可能性がある急げ!!」

 

 南雲の叫びを聞いて私達は扉に向かって一目散に走る。

 

「ハジメさん扉の向こうに足場が見えます!」

 

 シアの言う通り、扉の向こうに足場が見える。私達は足場に向かってジャンプし、着地する。

 

「なんとか突破できたな」

 

「ムチャクチャですよハジメさん……」

 

 シアが南雲を愚痴ってりるが、どうでもいい。

 

「にしてもなんだここは?」

 

 部屋を見ると多数の足場があちこちに浮いていた。まるでゲームのような空間だ。

 

「皆さんここから離れてください!」

 

 シアが南雲とユエを掴んで叫んだ。それを聞いて私達は跳躍し、別の足場に移動する。

 

 ゴバッ!!

 

 すると私達が前にいた足場に何か降ってきた。

 

「何で分かったんだ……?」

 

「“未来視„です。突然何かが降ってくる未来が見えました」

 

 なるほどシアがそれを見たのが原因か。もしあそこにいたら命がなかっただろう。

 

「っ!?」

 

 その時、私は何かイヤな感じがした。なんなの?

 

 

 ゴオオオオオオオ

 

 

 突如私達の目の前に巨大な騎士が現れた。

 

「マジかよ……」

 

「いかにも親玉って感じですね」

 

 南雲とシアが巨大騎士を見てそう言う。

 

「「あわわわわわわ!」」

 

「おいおい」

 

 スグと雫は焔にしがみついてるし。

 

「わぁお」

 

「冷や汗止まらねぇ」

 

 真希、真依は冷や汗流してるし。

 

 ギラッ

 

 そうこうしている内に巨大騎士の目がギラッと光り、こちらを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やほー!!はじめまして!みんな大好きミレディ・ライセンちゃんだよ〜!」

 

 

 

 

 

 ……えっ?

 

「返事がないなぁ!挨拶したんだから何か返すのが礼儀じゃないの?全く……最近の若者は常識も知らないのかい!?」

 

 いや、その姿で女の声が出たら驚くでしょ、普通。某海賊漫画に出てくるソプラノ野郎を思い出してしまったよ。

 

「……おい。ミレディ・ライセンは既に死んでいるはずだが?」

 

 なんて考えていると、南雲が巨大騎士ミレディに問う。

 

「オスカー・オルクスの迷宮を攻略した時に奴の手記を読んだ。ちゃんと人間の女として書かれていたぞ」

 

「おお!オーちゃんの迷宮の攻略者なんだね。どう?私について何か書いてた?」

 

「そんなくだらない質問に答えてるヒマはない。俺の質問に答えろスクラップになる前に吐くもん吐け」

 

「うわ〜何コイツすんごい偉そうなんですけど……まぁいいや私の正体が気になるんだね?間違いなく私はミレディ・ライセンだよ」

 

 やはりこの巨大騎士はこの迷宮をミレディ・ライセンなのか。

 

「この姿の秘密は神代魔法で解決!詳しく知りたければ私を倒してみよ!……って感じかな」

 

 なるほどその姿は、神代魔法によるものか。詳しく知るにはコイツを倒せと。

 

「おい、それじゃ質問に「質問には答えた。今度はこっちが質問する番」」

 

 ミレディが南雲の言葉を遮り、今度は彼女が私達に問う。

 

「君達の目的は何?何のために神代魔法を求める?」

 

「……俺や姉貴達は無理矢理この世界に連れてこられた。“解放者„は人を弄ぶ狂った神を倒してほしくてこの迷宮を作ったんだろうが、俺にはそんなこと関係ない。俺の目的は故郷に帰ること邪魔する奴は誰であろうと殺す」

 

「私もそうだ。こんな世界で戦争なんてやってられるかってんだ。とっととこんな訳のわからない世界とおさらばしたい。生き残って会わなくちゃいけない家族やみんなが元の世界にいるんだ」

 

 南雲と焔がミレディの質問に答える。私だってこんな世界に長くはいたくない。私にも家族がいるんだから。

 

「……そっか。なるほど別の世界から……うんそれは大変だ」

 

「さぁお前の質問には答えた。結局お前の神代魔法はなんなんだよ?」

 

「んふふ〜それはね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「教えて……あーげない!!」

 

 

 ブチっ!!

 

 この瞬間、私の中で何かがキレた。両手に持つ日輪刀を強く握りしめる。

 あの姿じゃ多分派手な血飛沫はないと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 こっからはド派手にいくよ!!




宇髄天元、我妻善逸登場!

「ヒイィィィィィィー!!あんなデカいのが出てくるqなんて!!無理無理無理!!勝てっこないよー!!」

「やかましい!!」

「ゴフッ!?」

 殴られた善逸は頭にデカいたんこぶできて気絶する」

「たく。董香!!あんな地味な鎧なんかに負けるんじゃないぞ!!ド派手にいけ!」

「「次回、ミレディ・ライセン!」」


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第四十章 ミレディ・ライセン

遅くなってすみません!


董香SIDE

 

「死ね」

 

 ドパッ

 

 南雲がドンナーでミレディを撃つ。しかし,ミレディには全く効いていない。

 

「先制攻撃とはやってくれるねぇ〜だけどこの程度の攻撃じゃ私は倒せないよ〜」

 

 余裕を見せるミレディ。

 

「だったらこれはどう!真依!」

 

「オーケー!」

 

 私と真依は日輪刀を構え、ミレディに。

 

『音の呼吸 壱ノ型』

 

『岩の呼吸 壱ノ型』

 

『轟』

 

『蛇紋岩・双極』

 

 私の斬撃と真依の鉄球と斧がミレディに襲いかかる。

 

「おぉ〜見た目の割に凄いパワーだね〜それに何その剣技見た事ないよ」

 

 またしても余裕なミレディ。まぁ、この剣技は彼女にとっては珍しいものだからな。

 

「言っとくけど私は強いよ。死なないように頑張ってね〜」

 

「悪いが俺にはさっきの雑魚たちと大差ないように見えるがな」

 

 南雲にとってはそう見えるようだ。

 

「……ほんっとに生意気な奴だなぁ〜いいよ教えてあげる」

 

 するとミレディの周りに無数の鎧騎士が現れた。

 

「これが私の神代魔法。空飛ぶゴーレムは見た事ある?これが一気にキミ達に襲いかかるわけ!どう?ビビった?今謝ったらーー」

 

 余裕あるミレディだが、それはすぐ打ち砕かれる。

 

 ザン ザン!

 

 ミレディの騎士に風の斬撃とウォーターカッターが襲う。

 

「アレ?」

 

 突然の事で戸惑うミレディ。

 

「浮いてるだけならただの的……後いちいちうるさい……」

 

 そこには水筒の筒のような武器を持ったミレディと日輪刀を構えた雫がいた。

 

「おー怖い怖い。話してる最中に容赦ないな」

 

 そう言って南雲は眼帯を外し、ミレディを見据える。

 

「どうだ?」

 

 焔が訊ねる。

 

「ビンゴだ。あいつには核がある。心臓の位置だ」

 

「な、なんなのキミ達ここって魔法使えないはずなんですけど!?」

 

 見抜かれたことに驚くミレディ。どうやらミレディの鎧の心臓部に核があるらしい。つまりそこを狙えば。

 

「でも、簡単に通さないもんね」

 

 鎧騎士達が迫る。

 

『炎の呼吸 参ノ型』

 

『気炎万象』

 

 だが、焔が斬った。

 

「騎士は私達に任せろ!南雲、シア、董香、真依、お前らでいけ!」

 

 騎士は焔、スグ、ユエ、雫、真希が相手する。私らはミレディに集中する。

 そこにシアがミレディに特攻し、ドリュッケンを振る。しかし、ミレディはそれを鉄球で防御する。

 

「私を忘れるな!」

 

『音の呼吸 壱ノ型』

 

『轟!!!』

 

 ドォン!!

 

 私はミレディの顔に向かって日輪刀を振り下ろす。

 

「おぉ〜本当にすごいね君,剣の腕もその剣も」

 

「当たり前でしょ。私の剣術は神に教わったからね」

 

「……えっ?神?」

 

 神と聞いてキョトンとするミレディ。あぁ、そういえばこの世界の神は。

 

「言っておくけど、あんたが知ってるようなイかれた地味な神じゃないから」

 

「じゃあ何なの?」

 

「私に剣を教えた神……天元様は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「派手を司る祭りの神よ」

 

「ま、祭りの神?そんなのがいるの?」

 

「いるんだよ。この目で見たからね。それよりいいの私とおしゃべりしてて」

 

「へっ?」

 

 間抜けな声を出すミレディ。

 

「時間稼ぎありがとう」

 

「いい仕事してくれるぜ」

 

 真依と南雲が武器を構え、ミレディを捉えていた。

 

『岩の呼吸 壱ノ型』

 

『蛇紋岩・双極』

 

 ドォオオオオオオン!

 

 互いの技がミレディの鎧にぶつかる。

 

「……いけた?」

 

「ん〜」

 

「手応えはあったけどな……」

 

「これで終わってくれないですかね〜……」

 

「……いやぁ〜ちょっとヒヤッとしたよ」

 

 煙が晴れてそこにあったのは。

 

「でも、まだ足りないね」

 

 無事でいるミレディの姿が。

 

「『アザンチウム鉱石』この装甲を破らない限り私は倒せないよ」

 

「ハジメあれって……」

 

 鎧騎士と戦闘していたユエや焔達がこちらに来る。

 

「……この世界で最も硬い鉱石だ。俺の装備や姉貴達の刀にもいくつか使ってる」

 

 成る程、アイツの鎧はそんな物を使っているから頑丈なのか。

 

「さすがオーくんの迷宮攻略者。知ってて当然だよね〜。それじゃあ第二ラウンド行ってみよっか」

 

ミレディがそう言うと、浮いていた足場の一つが私達の頭上目掛けて落ちてきた。

 

「避けろ!」

 

 南雲の叫びと同時に私達は落ちてきた足場を回避する。しかし……

 

「横だと!?」

 

 横からまた足場が南雲に迫る。南雲はそれをなんとか躱す。

 

「お前ら!コイツの神代魔法は恐らく『重力』だ!浮いているゴーレムも動く足場も全てそれで説明がつく」

 

 成る程、鎧騎士も足場もそういう事か。南雲の回答に納得する。

 

「おや思ったよりはやき気がついたね。その通り!重力を操れば例えば……」

 

 そう言うとミレディは鉄球を出すと……

 

「こんな事もできるんだよ♪」

 

 私達目掛けて落としてきた。

 

「ここは俺がなんとかする!お前らで奴の動きを封じてくれ!」

 

「お前一人でやらせるか!私もなんとかする!早くいけ!」

 

 南雲は義手、私は日輪刀で鉄球を真正面で受け止める。

 

「……マジ?正面からこれを受け止めるとか……」

 

「似たようなトラップがあったからな」

 

「そしてこの攻撃がお前の命取りとなる」

 

「行けユエ!シア!」

 

「焔!スグ!雫!真希!真依!派手に行け!」

 

「なぁっ!?」

 

 ミレディの両腕にはユエ、シア、焔、スグ、雫、真希、真依が登っていた。

 

「スグ!」

 

「うん!」

 

『蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞』

 

『複眼六角』

 

 スグがミレディの鎧に連続に突きを入れる。

 

「そんなの効くわけ……何これ!?」

 

 ミレディの鎧に液体がついて傷ができていた。

 

「私の剣術は突きが多いけど、毒も使っているのよ。それで鎧を傷つかせたのよ」

 

「この!」

 

「シア!」

 

「真依ちゃん!」

 

「はいです!」

 

「あいよ!」

 

『岩の呼吸 弐ノ型』

 

『天面砕き』

 

 シアのドリュッケン、真依の鉄球が鎧にぶつかる。

 

「ふぎぎぎ……ホムラさん!」

 

「雫!」

 

「おう!」

 

「えぇ!」

 

『炎の呼吸 伍ノ型』

 

『風の呼吸 漆ノ型 』

 

『炎虎』

 

『勁風・天狗風』

 

「火の虎!?なんなのそれ!?」

 

 驚くミレディ。二人の剣技を受けてしまう。

 

「いくぞユエ!」

 

「うん、マキ」

 

『水の呼吸 拾ノ型』 

 

『生生流転』

 

  真希の水の龍の斬撃とユエの持つ武器から水攻撃が炸裂する。

 

「ぐぅっ……このぉ……!」

 

「まだですよ。吹き飛ばされたお返しです!」

 

 ドリュッケンでミレディを叩きつけるシア。

 

「や……やるじゃないか。でもこんなことしたって無駄だよ」

 

 するとミレディの鎧が修復が開始された。

 

「私もゴーレムだってこと忘れてないよね。核が破壊されない限り素材があれば再生できるんだよ」

 

「……そうはさせない。……凍って“ 凍柩„」

 

 ユエがそう言うとミレディが凍った。

 

「嘘!?どうしてここで上級魔法が使えるのさ!?」

 

「水を使った攻撃をしたおかげ。これなら水を凍らせるだけで使える。……それでもほぼ全ての魔力を使うけど」

 

「よくやったぞユエ」

 

「……ん頑張った」

 

「終わりだミレディ。この状態じゃ再生も身動きもできないだろ」

 

「とっとと諦めて神代魔法をこちらに渡すかこのまま止めといくか」

 

 南雲、焔がミレディに要求する。

 

「……どうした?」

 

「何黙ってやがる?」

 

 しかし、ミレディは何も言わず黙ったままだった。どうしたんだ?

 

 ドギュゥゥン

 

 ミレディが動き出した。まさか!?

 

「皆さん!!」

 

 シアが上に向かって叫ぶ。

 

「未来が見えました。降ってきます!!」

 

 降ってくる!?私達は上を見上げる。

 

「ふふふ。とっておきのお返しだよぉ」

 

 とっておき?

 

「今からこの部屋の天井全てをキミ達の頭上へ落とす」

 

 すると天井が無数のブロックとなり、私達に迫ってきた。

 

「さぁ見事これを凌いでみせてよ」

 




中高一貫ありふれキメツ学園物語!

 私は西園寺真希。この学園の生徒で生徒会に務める者だ。今日もこの学園のために頑張っ

「ん?」

 あれは風紀委員の我妻か。そういえば今日は服装チェックか。だが、あの目。

「おい」

「ん?ギャー!!西園寺姉!!」

 私は我妻の顔面にアイアンクローをかます。

「お前またやってるのか。何度も何度も言ってるだろうが!」

「ギャー!!痛い!!痛い!!」

「後で冨岡先生に報告だ」

 私は我妻を放し、学園内に戻る。

「次回、正念場」


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第四十一章 正念場

お待たせしました!

ミレディ戦、決着です。


董香SIDE

 

「ユエ!シア!俺の所まで来い!」

 

「んっ!」

 

「はいです!」

 

 南雲はユエ、シアと一緒になる。

 

「私達は各自散開だ!」

 

 焔がそう言うと私、スグ、雫、真希、真依は頷く。

 

「しっかり掴まってろよ。ここが正念場だ」

 

「いくぞ!」

 

『炎の呼吸 肆ノ型 』

 

『風の呼吸 漆ノ型 』

 

『音の呼吸 伍ノ型』

 

『岩の呼吸 参ノ型』

 

『蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞』

 

『水の呼吸 参ノ型』

 

『盛炎のうねり』

 

『勁風・天狗風』

 

『鳴弦奏々』

 

『岩軀の膚』

 

『複眼六角』

 

『流流舞』

 

 迫り来る天井を各自の武器と剣技で破壊する。その天井をジャンプしながら移動し、着地する。

 

「っ!?」

 

 しかし、破壊した天井の破片が移動し、私、南雲の顔面に直撃した。

 

「「ハジメ(さん)!」」

 

「「「「「董香(ちゃん)!」」」」」

 

 みんなが駆け寄る。だが、そんなことお構いなしに天井がこちらに向かってきた。

 畜生、さっきの破片で私と南雲は脳を揺らされた。

 

「くっ……ハジメっ!!」

 

「クソっ!」

 

 ユエ、焔が守ろうとする。

 

 しかし……

 

「ぐぬぬ……」

 

 シアがドリュッケンで天井を抑え、破壊した。

 

「ここは私がっ!!」

 

「シア!!」

 

 シアはドリュッケンを使い、見事な立ち回りで天井を破壊し、私達を守る。

 

 だが……

 

「シア、後ろ!」

 

 私が叫ぶも遅く、シアの後ろに天井の破片が迫る。

 

「後方注意だよ」

 

 しかし、それは真依によって防がれた。彼女は日輪刀で破片を斬りまくった。

 

「マイさん!」

 

「いい立ち回りだったよ。でも、まだ隙がある」

 

「うっ!すみません」

 

「だが、よくやった」

 

「後は任せろ。勝ちに行くよ!」

 

 私達は再びミレディに向かって走り出す。

 

 早く……もっと早く。

 

 もっと……もっと……

 

 

 ズウウウン!

 

 天井が降り、私達は下敷きとなった。

 

 

「ふぅ〜終わったかな?」

 

 ギュイン

 

「ミレディちゃん……ふっかーつ!!うーん流石にちょっとやりすぎちゃったかな。でもこれくらいなんとかできないとね狂った神共に勝つ為には……」

 

 

 バゴッ!

 

「プハァ!アイツ地味に舐めた真似しやがって!」

 

 私達は瓦礫から見事脱出した。

 

「なんだ生きてたの?今度はそのオモチャで挑むつもり?」

 

 南雲の義手である右手には武器が装備されていた。あれはパイルバンカーだよな。

 

「何度来ても無駄だよぉ」

 

 ミレディの拳と南雲のパイルバンカーがぶつかる。

 

 ドッ!

 

「なァ!」

 

 パイルバンカーから発射された杭がミレディの拳を破壊した。凄い威力。

 

「死ねッ」

 

 尚もたたみかける南雲。パイルバンカーをミレディの胸に刺した。

 

「ぐぬぬぅぅぅ」

 

 ズガン!

 

 ミレディが片方の腕で南雲のパイルバンカーを破壊した。

 

「ハハハ……ざんね〜ん!!あと一歩だったのにねぇ」

 

 勝ち誇るミレディ。だがな……

 

「シア!!」

 

「はい!」

 

 私とシアがミレディに飛び出す。

 

 ズドン!

 

 まだ胸に刺さっている杭にドリュッケンを叩き押し込む。そのドリュッケンの上に私の二刀の日輪刀を叩き落とす。

 

「なっ……何イイイイイイ!」

 

「「おぉおおおおおおッ!!」」

 

 バキッ!

 

 これは胸にある核が破壊されたのか。

 

 

 ドォオオン!

 

 ミレディが倒れた。ということは

 

「俺たちの勝ちだ」

 

 勝ったんだ。私達勝ったんだ。

 

「シア、最後のは凄い威力だった。見直したぞ!董香もよくやった」

 

 シアと私を褒め称える南雲。

 

「ハジメさんが凄く優しい目をしてる気が……ゆ……夢?」

 

 おい、失礼だろう。

 

「お前な……まぁ日頃の扱いが悪かったのは認めるが……」

 

 認めるんかい。

 

 するとユエが私とシアのとこに。

 

「ハジメは撫でないだろうから代わりによく頑張りました」

 

 ユエがシアを抱きしめながら褒め称える。

 

「……ユエさん。私……私……怖かったですぅ?何度も死んじゃうって思いましたぁ〜うわあああん!」

 

 泣き出しちゃった。

 

 パチパチパチ

 

「ん?」

 

「よくやった二人とも!」

 

「董香ちゃん!シアちゃん!」

 

「凄かったよ!」

 

「ナイスだったよ!」

 

「二人ともMVPだよ!」

 

 焔、スグ、雫、真希、真依が拍手しながら褒め称える。

 

「ふん」

 

 天元様、見ていますか?私こんなに派手に頑張れましたよ。

 

 

 

 

 

「……あのぉ〜」

 

「ん?」

 

「いい雰囲気の所悪いんだけど、ちょっといいかな?」

 

 ミレディ?どういうことだ?核は破壊したはず?

 

 すると、南雲が杭を抜いてミレディに襲いかかろうとする。かくいう私もみんなも構える。

 

「ちょっとちょっと!!待ってってば!少しだけ話させてよ!」

 

「シア全力でやれよ」

 

「勿論です!」

 

「大丈夫だって!試練はクリア!あんたたちの勝ち!核の欠片に残った力で話してるだけ。もう数分も保たないよ」

 

「……何の話だ?狂った神を倒してくれなんて話は聞かないぞ」

 

「……言わないよ。話したい……というより忠告だね。必ず私達“解放者„全員の神代魔法を手に入れること。君の望みを叶えるには必要なことだよ」

 

「なら他の迷宮の場所を教えろ。殆どが記録に残ってねぇんだよ」

 

「あらら……分からなくなる程長い時が経ってたんだ……きっと一度しか言えないから……よく聞いてね」

 

 そしてミレディは迷宮の場所を話した。

 

 グリューエン大火山

 

 メルジーネ海底遺跡

 

 神山

 

 ハルツィナ樹海

 

 そして最後は……

 

「以上だよ。……頑張って……ね……」

 

「随分としおらしいな。あのウザったい口調はどうした?」

 

「あはは……ごめんね。神らと戦う時の為に少しでも慣れてほしくて……」

 

「おい狂った神のことなんて関係ないと言っただろうが」

 

「戦うよ。君が君である限り……必ず……神殺しを成す。君は君の思った通りに生きればいい。君の選択が……きっとこの世界にとって……最良の選択だ……さて……時間のようだね……大丈夫……先には進めるようにしておくから……」

 

 ミレディが南雲にそう伝える。するとユエがミレディに近づく。

 

「……?何……かな……?」

 

「お疲れ様。色々考えたけどこれ以上の言葉が見つからない」

 

「ふふっ…ありがとね。それと祭りの神のお弟子さん」

 

「ん?」

 

「君も……頑張ってね。凄い……剣技……だったよ」

 

 そういとミレディは消えて行った。天に昇っていくかのように。

 

「南無阿弥陀仏」

 

 そのミレディに向かって真依は合掌して念仏を唱える。私も合掌する。

 

「嫌な人だと思ってましたけど、違ってたのかもしれませんね」

 

「ん……」

 

「地味に嫌な奴だったけど、そうかもな」

 

「もういいだろ?さっさと先に行くぞ」

 

 南雲に言われ、私達は先を進む。

 

 

 ミレディ、どうか私達の行く末を見守って……

 

 

 

 

 

 

「やっほーさっきぶり!ミレディちゃんだよー!」

 

 

 ……はぁ?

 




宇髄天元、まきを、須磨、雛鶴、登場

「よくやった、よくやったぞ董香!ド派手だったぞ!」

「よく頑張りました」

「うぇえええん!董香ちゃん!よく頑張りました!死んだら私……私……」

「馬鹿!縁起でもないこと言うんじゃない!董香がそんな簡単に死ぬか!」

「キャー!まきをさんがぶった!」

「全く。ここでコソコソ噂話。董香は焔と今でこそ仲良いが、最初の頃はそうでもなく、仲良くなるまで時間がかかったらしい」

「いよいよこの章も大詰めですね」

「おう!この先何があるのか、派手に期待だ」

「「「「次回、小さな解放者」」」」


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第四十二章 小さな解放者


明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。

新年最初の投稿です。

今回で ライセン大迷宮編は終了です。


焔SIDE

 

「やっほーさっきぶり!ミレディちゃんだよー!」

 

 私達の目の前にいるミレディと名乗るこの小さな存在。それに聞き覚えのある声。

 

「ほらみろ。こんなこったろうと思ったよ」

 

 南雲は分かっていたかのような反応する。

 

「えっと……どういう事?」

 

 よく分かっていなかったのか雫は首を傾げる。

 

「ミレディが消えたらこの後誰が案内役をやるんだよ」

 

「あっちゃーバレてたか!さすが私の試練の攻略者だね!」

 

 成る程、案内人のミレディがいなけりゃ、この後、誰がやるって事か。

 

「……さっきのは?」

 

「おっ?さては女の子たちは消えたと思ってた?」

 

 うん。まるで成仏でもしたかのようにね。

 

「ないな〜い!そんなことあるわけないよぉ〜じゃあ女の子たちにはドッキリ大成功⭐︎ダマされてやんの〜プークスクス!」

 

 あぁ〜なんかすっげぇウザいんですけど。

 

「よかったでしょあの“演出„!!やだミレディちゃん役者の才能まであるなんて……」

 

 ゴゴゴゴゴゴ

 

「あ……あの……?もしかしてちょっとやりすぎた?」

 

「あぁ、今すぐにお前をフルボッコにしたいよ」

 

 ゴキゴキ

 

 私は指の関節を鳴らす。

 

「と言いたいところだが、私にはお前みたいな小さいのを痛ぶる趣味はないし、弱い者いじめは大嫌いだ」

 

「ほっ」

 

「だから」

 

「へっ?」

 

 私は拳を構え……

 

「愛ある拳受け取れぇええええええ!」

 

「フギャああああああっ!」

 

 奴の頭に拳骨をかましてやった。

 

「いや、お前どこの海軍中将だよ」

 

 

 

 

 

 

 

「……はい魔法陣の中に入って〜それじゃ起動するよ?」

 

「次ふざけたら破壊するから」

 

「はいっ!全力でやらせていただきます!」

 

 ユエの言葉に勢いよく敬礼するミレディ。彼女の頭には立派なたんこぶが出来てるけど。

 すると、床に描かれていた魔法陣が輝き出す。

 

「……思ってた通りだな」

 

「ん……重力操作の魔法」

 

 この魔法は重力を操る魔法のようだ。

 

「金髪ちゃんは適性バッチリ!君は……ビックリする程適性ないね……」

 

「やかましい錬成を使えればそれでいいんだよ」

 

 ユエは敵性は良いらしいが、南雲は良くなかった。

 

「ウサギちゃんもできて体重を変えるぐらいかな」

 

「……私、適正ないんですね……」

 

 シアも良くなかった。

 

「剣士ちゃん達も全然適正ないね」

 

「いいんだよ。魔法なんてついでみたいなもんだ」

 

 私、雫、スグ、董香、真希、真依も適性なし。

 

「あと君にはコレ」

 

 そう言ってミレディは南雲に何かを投げ渡す。

 

「攻略の証だよ。大切にとっておいてね」

 

 この大迷宮を攻略した証だった。

 

「……おい、これだけか?」

 

「え?」

 

「攻略報酬だよ。オルクスは他にも色々な物をくれたぞ?」

 

「ひいいいい」

 

 南雲がミレディの頭を掴み上げる。

 

「ゴーレムォ遠隔操作してただろ?あれはどういった仕掛けだ?」

 

「あれは“感応石„!!魔力を定着させると遠くから操ることができる鉱石だよぉ!」

 

「よし。とりあえずそれをよこせ」

 

「分かった!あ……あげるから放して!!」

 

「まだだ。他にも使えそうなアーティファクト持ってるだろ?」

 

「ひにゃあぁあぁぁぁ!」

 

「はいはい!そこまでそこまで!」

 

「これ以上は可哀想だよ」

 

 流石にやり過ぎなのか雫とスグは南雲を止めた。

 まぁ、なんとか欲しい物は手に入ったけど。

 

「じゃあもうやることは済んだかな?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「オッケー⭐︎それじゃとっとと出て行ってね♪」

 

 そう言うとミレディが天井に伸びている紐を引っ張った。

 

 カパッ

 

 ザバッ

 

「へっ?」

 

 床に穴が開き、更に部屋全体に水が流れてきた。

 

「おい!これってまさか……」

 

「嫌なものは水に流すに限るね!それじゃ引き続き攻略頑張るんだよぉ〜」

 

 こいつ私達をトイレのように流すのかよ。

 

「テメェ!覚えておけよ!」

 

「許さない」

 

「いつか絶対破壊してやるですぅ!」

 

「畜生!」

 

「ひゃああああああっ!」

 

「こんな脱出嫌だ!」

 

「あの地味解放者め!」

 

「私らはマ◯クの悪役かよ!」

 

「メ◯・イ◯・ブ◯ックにもなかった?こんなの?」

 

 結局、私達はそのままトイレのように流されたのでした。

 

 

 

 

 

「ブハッ!」

 

「ゲホゲホ!」

 

「あぁぁぁぁぁぁ!」

 

「みんな無事?」

 

「なんとか」

 

「酷い目に遭ったよ」

 

 あれから流された私達は無事ライセン大迷宮を脱出出来た。

 

「おいシア起きろ!地上に戻ってきたぞ!」

 

 シアを見ると南雲の呼びかけに反応しなかった。まさか?

 

「息してない」

 

「だぁーもうくそったれ!救命処置だ急げ!」

 

「シアちゃん!」

 

 私達はシアを地上に上げた。

 

「えっと?こういう時は、まず心肺蘇生!あと誰かAED!」

 

 スグが指示を出す。

 

「スグ落ち着け。取り敢えずまずは心肺蘇生だ。あと、この世界にAEDはないから」

 

「あっ、そうか」

 

「あぁ、まずは心肺蘇生だ!ユエ人工呼吸を!」

 

「じん……なに?」

 

「知らないのか!?気道を確保して……」

 

「知らない初めて聞く言葉」

 

 知らないのかよ!こんな時、白崎でもいてくれたら。でも、取り敢えず早く蘇生を!

 

「仕方ない俺がやる!」

 

 南雲がシアの口に近づけて人工呼吸を始めた。

 

 

「……う……」

 

「シアちゃん!」

 

 人工呼吸を開始して数分、シアが目を覚ました。

 

「ハジメさん……?」

 

「おう、ハジメさんだ。ったくこんなことで死にかけてんじゃ……っ!?」

 

 突然、シアが南雲の顔を掴む。

 

「んっ!?」

 

「んーー!!」

 

 そして近づけて口付けを。

 

「え!?」

 

「シアちゃん!?」

 

 突然のことで驚く雫とスグ。

 

「わぁお、大胆」

 

「やるねシアちゃん」

 

 西園寺姉妹に至っては感心している。

 

「おいコラやめっ……んむっ」

 

「ハジメさん……いいですよ私はいつでも」

 

「ただの救命処置を勘違いしてんじゃねぇ!」

 

 尚もキスをし続ける二人。しかし……

 

「くそコイツ身体強化してやがる」

 

 こりゃそろそろ助けないとまずいかも。そう思っていたら董香が出る。

 

「いい加減にしろ!!このド変態地味兎!!」

 

「フギャああああああっ!」

 

 シアをぶん殴った。そのまま白目をむいて気絶した。

 

「ったく、あの大迷宮で少しは見直したと思ったんだけど」

 

「助かった。サンキューな湊」

 

 礼を言う南雲。

 

 それからシアを回収して以前泊まったマサカの宿に行くことに。

 

 

 

 

「はぁ〜」

 

「気持ちいい」

 

「癒される」

 

「極楽極楽」

 

「ふぅー」

 

「あぁ〜ビバのん」

 

 今、私、雫、スグ、董香、真希、真依の継子組は宿の浴場に浸かっている。

 

「まぁ、しかし、なんとか迷宮攻略できたな」

 

「うん。色々大変だったけど」

 

「でも、まだあるんでしょ?そう思うと先が思いやられるよ」

 

「スグ、そう弱気な事を言うな」

 

「でも、董香それは事実だ。せめて次の迷宮攻略までには残りの継子を見つけたい」

 

 真希の言う通り、せめて次の攻略までには残りの継子を見つけておきたい。

 

「姉さんの言う通りだね。残るは三人、蛇、恋、霞」

 

「伊黒さん、甘露寺さん、無一郎君だよね」

 

 この三人の継子、一体誰なんだろう。

 

「まぁ、いない奴の事を考えても仕方ない」

 

「そうだ。今は現状のメンバーでやっていくしかない」

 

 董香、真希の言う事は最もだ。

 

「さて、話はこれぐらいにして……直葉ちゃん」

 

「な、何?真希ちゃん?」

 

 真希がスグを捉える。

 

「迷宮はよくも散々言ってくれたね」

 

「いや、あ、あれは……」

 

「問答無用!!」

 

「ひゃぁああああああッ!!」

 

 真希がスグの後ろに回り込むと、彼女の胸を揉み始めた。

 

「ほう。相変わらず良い感触、また大きくなったんじゃない?」

 

「やっ……やめ……真希ちゃん……」

 

「嫌なこった。罰として揉まれろ」

 

「た、助けてほむちゃん」

 

 私に助けを求める。しかし……

 

「おっと。姉さんの邪魔はしないよ。二人も揉まれろ!」

 

「おっと」

 

「ひゃっ!?」

 

 真依が私と雫の後ろに回り込む。私は躱せたが、雫はダメだった。

 

「躱したか。仕方ない雫で我慢するか」

 

「ちょっ……お願い……揉まないで」

 

「いいじゃない。裸の付き合い、スキンシップスキンシップ」

 

「こんな……い、いや……やめ」

 

 あぁ〜餌食になっちゃった。

 

「焔」

 

「ん?どうした董香?」

 

「私も裸の付き合いといこう」

 

 そう言うと、董香が戦闘態勢をとる。

 

「ほう、やるってのか?そう簡単には揉ませないぞ」

 

「いくぞ」

 

「来い!」

 

 それから私達は浴場でじゃれ合い繰り広げたのだった。

 

焔SIDE OUT

 

 

 

その頃

 

「ふん!」

 

 王宮の広場にて優花が日輪刀を振っていた。

 

「はぁ!」

 

 鋭い振りをする優花。

 

『まだまだ。もっと強くならないと師範に申し訳ない。訓練でなんとか魔物を倒せたけど』

 

 優花は先のオルクスでの訓練を思い出す。彼女は以前魔物を怖がっていたが、少しずつそのトラウマは解消され、魔物相手に強くなっていた。これにはメルド団長も安心していた。しかし、自分自身の中ではまだ物足りなさを感じていた。

 

『やっぱり自分も行こうかな?香織には悪いけど』

 

 

 

また別のとこでは

 

「……」

 

 とある宿にて一人の女が刀の手入れをしていた。だが、その刀の色が、霞がかかったような白い色をしており、鍔も大きな長方形に小さな長方形が重なっていた。

 

 

そしてまた別の場所では

 

「……」

 

 ある宿にて、一人の女が柔軟体操をしていた。

 

「ふぅ」

 

 一息つくと彼女は窓の外を見つめる。

 

「どこにいるのかな?焔と……えっと?……優ちゃん?」

 

 

ED:残響散歌




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子登場!

「ライセン大迷宮、無事攻略出来たね!」

「うぅ〜」

「みんな凄い活躍だったね」

「うぅ〜」

「そういえば禰 豆子、今回の予告って?」

「炭治郎、禰 豆子」

「炭治郎君!禰 豆子ちゃん!」

「よっ」

「時透君!甘露寺さん!伊黒さん!」

 時透無一郎、甘露寺蜜璃、伊黒小芭内登場!

「三人とも何故ここに?」

「次の章では僕の継子が活躍するからだよ」

「私も!遂にあの子が活躍するんだよ!」

「俺も。優花が本格的に動くからな」

「そうなんですか!それは楽しみです!」

「うぅ〜」

「みんな、次のウルの町編もお楽しみに」

「うぅ〜」

「みんな見てね」

「楽しみにしてね」

「見ろよ」



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ウルの町編
第四十三章 フューレン



出来ました。お待たせしてすいません!

今回から第三巻がスタート、それと新キャラ登場です。


焔SIDE

 

「私の名はモットー・ユンケル。この隊商のリーダーをしている」

 

 私達は次の大迷宮であるグリューエン大火山に向かう為、フューレンという商業都市に行く事になった。そこへ向かう為の護衛の依頼があるとキャサリンさんから教えてもらい、今ここにいる。

 

「護衛よろしく頼むよ」

 

「あぁ期待は裏切らないと思うぞ」

 

「お任せください」

 

 南雲と真希がユンケルさんと握手する。

 

「……早速で悪いが君に相談がある」

 

 すると、ユンケルさんがシアを見る。

 

「その兎人族……売るつもりはないかね?」

 

 

 ……は?こいつ今、何て?

 

「シアを売る気はないかだと……?」

 

「ええ。珍しい白髪に美しい容姿の兎人族、これほど珍しい商品は初めて見るものでして」 

 

 ユンケルさんに恐怖を抱いたのかシアは南雲の後ろに隠れる。

 

「見れば随分と懐かれている様子。それなりの額を出しますが……いかがかな?」

 

「何言ってるのあんた!シアちゃんを渡すわけないでしょ!」

 

「貴女には聞いていません。聞いてるのはそこの彼です」

 

 スグが怒るも、聞いてくれない。

 

「……そうだな」

 

 さぁ、どうする南雲。

 

「たとえどこぞの神が欲しがっても手放す気は無い……と言えば分かってもらえるか?」

 

 南雲は断った。ですよね。

 

「……そこまで言われたら仕方ない。ひとまず今は引き下がろう」

 

「おい」

 

「ん?」

 

「次ふざけた事を抜かしたら、護衛依頼が討伐依頼に変わるかもしれねぇぞ?頭にしっかり刻み込んでおけ」

 

「は、はい」

 

 取り敢えず私は、ユンケルさんに忠告しておいた。

 

「ではそろそろ出発しますよ。護衛の程よろしくお願いします」

 

 私達は馬車に乗り、フューレンを目指す。やがて日も暮れて野宿する。

 

「今日はどの位進んだんだ?」

 

「大体三分の一ってところですな。順調に行けばあと四日程で着くでしょう」

 

「結構かかるな」

 

 四日か。それなりにかかるのか。

 

「ちなみに食事はどうされるおつもりで?一応食料の販売もしてはいますが……」

 

「ああそういったことは心配いらない」

 

 そう言うと南雲は宝物庫から食料を出す。

 

「頼んだぞ食事係」

 

「おまかせくださーい!」

 

「了解!」

 

 元気よく返事するシアとスグ。うちらの食事係は主にシアとスグが担当している。スグは昔からそれなりに料理はできるが、彼女曰く蝶屋敷でアオイちゃんから料理を学び、さらに磨きをかけたとか。

 因みに、南雲の宝物庫を見たユンケルさんが言い値で買うって言い出したが、当然お断りしました。

 

 

翌日

 

「ハジメさん風が気持ちいいですよ!」

 

「あぁ、そうかい」

 

 眠そうな南雲、あの後質問攻めされてたからな。

 

「ん?」

 

「ほむちゃん?」

 

 私は何かイヤな予感を感じた。それにこの匂いと音。

 

「敵襲です!!数およそ百以上森の中から来ます!」

 

 シアが叫ぶ。ちっ!イヤな予感が的中したか。

 

「ひゃ……百以上だと!?そんな数聞いたことないぞ!」

 

 大慌てするユンケルさん。

 

「引き返せ!今ならまだ間に合うかもしれん!」

 

「あーーこのまま進んで大丈夫だぞ」

 

「何言ってる魔物が百匹もいるんだぞ!?」

 

「ハジメここは私に任せて」

 

 ユエが馬車の上に乗る。ここはユエに任せるか。

 

「姿が見えて来ましたよ!」

 

 魔物の大群がこっちに接近してきた。

 

「“彼の者„”常闇に紅き光をもたらさん„“古の牢獄を打ち砕き„“障碍の尽くを退けん„”最強の片割れたるこの力„“彼の者と共にありて„”天すら呑み込む光となれ„"雷龍„」

 

 詠唱と共に現れた暗雲から雷の龍が魔物の大群に降り注ぎ、大群は全滅した。

 

「わぁお」

 

「何よあれ」

 

「ユエちゃん凄い」

 

「ド派手だね」

 

「やるぅ」

 

「いつの間に」

 

「……」

 

「おいおい……」

 

 私達はユエ魔法に驚きを隠せなかった。

 

「あんな魔法、俺も初めて見たぞ」

 

「複合魔法。私のオリジナル」

 

 今のはユエのオリジナルの魔法らしい。

 

「雷属性の魔法にライセンで手に入れた重力魔法を組み合わせてみた」

 

 へぇー、ライセンの重力魔法を。

 

「因みに詠唱はハジメと私の出会いと未来を詠ってます」

 

 愛だね。

 

「「愛だねぇ」」

 

 見事にハモってる西園寺姉妹。流石、双子。

 

「……愛」

 

 こっちを見るスグ。

 

「どうした?」

 

「ううん、何でもない」

 

「?」

 

 まぁ、そんなこんなで私達は無事依頼を完了し、フューレンに到着したのであった。

 

 

「人の数がすごいな……流石、大陸一の商業都市だ」

 

 ここ、フューレンは商業都市だけであって人の数がすごい。

 

「これ食ったらひとまずギルドに依頼完了の報告と宿探しをするぞ」

 

「賛成」

 

「またお風呂がある所がいい。勿論、混浴で貸切できる所」

 

「私ら継子組が泊まれるくらいの大部屋がある所」

 

「私は三人で寝れるベッドがいいです」

 

 

「お、おいそこのガキ」

 

 宿で話し合っていると、見るからに気に食わない豚男がいた。

 

「ひゃ、百万ルタやる。その兎をわ、渡せ」

 

 あぁ?

 

「そっちの金髪の女とその女達も私の妾にしてやる。い、一緒に……おっ!?」

 

 私は豚男の股間を思いっきり蹴り上げた。

 

「おぉおおおおおおっ」

 

 豚男は股間を押さえながらうずくまる。私は其奴の胸ぐらを掴む。

 

「ヒイイイイ」

 

「今すぐ失せろ。じゃねぇとお前のその豚足切り落とすぞ」

 

 私は奴を放す。

 

「南雲、場所変えるぞ」

 

「あぁ」

 

「ホムラさん、やり過ぎでは」

 

「焔、流石に」

 

「いいんだよ。こんなデブ、これぐらいやっておかないとないと」

 

「そうだね。こんな地味」

 

 私らはこの場を離れようとする。

 

「ま、待て」

 

 この豚、まだ何か言ってやがる。

 

「レガニド!!あの女を殺せ!私を殺そうとしたのだ!」

 

「坊ちゃん。流石に殺すのはヤバイですぜ」

 

 豚の近くに一人の男が現れる。

 

「い、いいからやれぇ!!」

 

「ったく報酬は弾んでくださいよ」

 

 男が私に向かい合う。

 

「そういうことだ。何殺しはしねぇよ」

 

「ほう」

 

 私はそれを聞いて首をゴキゴキ鳴らす。

 

「あいつ……黒のレガニドだぞ」

 

「マジかよ!?金次第であんな奴の護衛もするのか……」

 

「あの嬢ちゃん、大丈夫なのか?」

 

 ランク黒。上から三番目の冒険者ランクか。面白ぇじゃねぇか。私は戦う構えをする。

 

「言っておくが、俺は女だからって手加減し……っ!?」

 

 レガニドが突然、何者かに蹴飛ばされた。誰だ?

 その人は私の目の前にいた。

 

「っ!?」

 

 私はその人を見て目を見開く。髪がボブカットの鬼殺隊の隊服を着た私と同じくらいの女子高生。

 

「あかね?」

 

「焔。やっぱり焔だ」

 

 名前を呼ぶと彼女は喜ぶかのように私に抱きついた。

 

「焔」

 

「あかね。お前もこの世界に」

 

「会いたかった。こんな変な所に来て」

 

「そうか」

 

 よっぽど辛かったのだろう。だから、私は彼女の頭を撫でた。

 

「誰だあの女は?」

 

「あの子は一条あかね」

 

「あかねちゃんは中学の時に出会ったけど、住んでる地区が違ったから別の学校だったけど、高校から一緒になったの」

 

「そうなのか」

 

「でも、私ら姉妹とは幼い頃からの付き合いだ」

 

「彼女のお父さんと私達のお父さんが友達でね。たまに会って遊んだりしていたんだ。所謂、幼馴染って奴だ」

 

「そうなんだ」

 

「まさか、お嬢までいるとはね」

 

「お嬢?もしかしてあの子いいとこのお嬢さん?」

 

「うん。彼女のお父さん、極道の組長さん」

 

「えっ!?」

 

 真依の極道発言に雫は目を丸くする。

 

「ハジメ、ゴクドウって何?」

 

「なんて言ったらいいか。まぁ、怖い奴らの集団ってとこかな」

 

 

「焔」

 

「ん?うお!?」

 

 なんて会話を聞いていると、あかねが私の顔近くに。

 

「焔……ん」

 

「ん!?」

 

 彼女は私の顔に近づくと……

 

 

 

 

 

 

 口づけ……キスをしてきた。

 

 

 

 




「よっ!」

 炭治郎、禰 豆子、登場!

「今回から新しい冒険の始まり!どんなのになるのか楽しみだね!」

「うぅ〜」

「ここでコソコソ噂話。一条さんと東堂さんの出会いは、とある出来事がきっかけで、それで一条さんは東堂さんの事を」

「それにしても今回出た剣士、あかねさんはどんな活躍をするのか楽しみだね」

「うぅ〜」

「次回、霞の剣士!」



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