柔と剛、そしてごり押し (名無しの権左衛門)
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柔と剛、そしてごり押し

気が向いたら続きかきます。
後種まきの段階です。


世界は正常に動いていた。しかし、あるものの発言で全てがくるっていく。

「慈しみの心を持って相対[あいたい]すれば、必ず心を開いてくれます」

「はい」

「もしも心を開いてなくても大丈夫です。全ては、柔と剛、ゴリ押しにあるのです」

「はい」

「わかりましたね、インデックス」

「わかりました、お母様」

 

全ては此処から始まる。

 

 

1:インデックス

 

「当麻さん」

「はい、なんでせうか?」

「貴方の食事事情を解消しましょう」

「はい?」

「イギリス正教より、保護者への保護を指示しておきます」

「大事になってません?」

「これは当然の処置でございます」

 

 ここはとある魔術の禁書目録の主な舞台、学園都市。

そしてこの場所で行われる痛快バトルアクションを、全身全霊で体験する青年の家に

彼女はいる。

 

「大げさすぎだろ……」

 

 いや、大げさではない。

 

 色々話はあるけれど、この学園都市は230万の人口と8割を学生が占めている名実ともに学園都市だ。

この都市に住んでいる学生は、親元を離れ寮に住むことになっている。

 これで判明すると思うが、お金の問題が発生する。

そんなわけで資金問題を解決するのは、奨学金という給料制度だ。

現在日本の実質借金の奨学金ではなく、完全無料の奨学金だ。

 

 理由は簡単で、能力開発のために脳をいじったり電極刺したりという実験を行い、

それによる人生を歪曲云々の契約賃みたいなものだ。

 

「そうなのですか?」

「俺はそう思ってる。でも、パソコンで調べた限りじゃ違ったぜ」

 

 表向きはこうだが、パソコンなどでちゃんと調べるとこの資金は開発された人間に

備わる異能の投資金なのだ。

つまり、価値がない人間ほど最低限の生命活動を維持できる資金を渡され、

逆に高位能力者だと能力上昇やいざという時のための先鋒突撃の任を渡される【責任】の対価だとか。

 

「当麻さんは無能力者なんですよね?」

「そうだぞー異能は壊せても、範囲は右手だけ。

作れないから価値もないんだとよ、とほほ」

「素晴らしいお方がいるのに、なんてもったいない。

私専門の護衛になりませんか?」

「私目にはもったいないでございますです」

「そんなに魅力ありませんか? これでも毎日頑張ってるんですよ?」

「腕を取らないで、胸を当てないで、上目遣いはやめてくれー」

 

 この世界線のインデックスは、なんと中学生くらいなのだ。

つまり成長途中かつ徐々に性徴してきている為、青年である上条当麻にとって非常に毒なのだ。

 

「そもそも当麻さんは私(の首輪)を犯したのです。

つまり私は当麻さんのモノ、いつでもどうぞ♪」

 

 このインデックス、成長している分無駄に知識が豊富で、想像力も豊富なのだ。

いま彼女の頭の中では、英国の首輪が壊され上条に鎖付きの首輪をつけられてペットの様に扱われているという妄想劇が―――。

 

「いや俺こんなことしねぇから!?」

「昨今TVでみる草食系男子ですね、えいっ」

 

 あ、押し倒した。

 

「な、なな、インデックスさん?」

「そんなに意気地なしだと、私も我慢できませんよ?」

「や、やめてくれ(なんか今日もぐいぐい来るぞ!?)」

 

 なんとも煽情的なんだろうか。小学生のようで幼児のような我儘なお子様が、

年月が経ち中学生特有の大人と子供の狭間にある色気が、青年のいろんなものを刺激する。

実際青年は、いろいろはちきれそうだ。

あ、胸に指を這わせて、口元まできた。

 もともとかわいかったのが、妖艶で美しくなったものだからその魔性の笑みは、

青年の理性をがりがりと削ったものだろう。

 

「今日こそ、私と―――」

 

ピンポーン、ガチャ

 

「不純異性交遊として、国会に提出するぞ?」

 

 このお色気要素に、邪魔が入ってしまった。

玄関鳴らして入り込んでくるお邪魔ムシ。

その人間は、本当はイケメンハンサムなのだが、上条にまたがっている女子は彼の内面が好きらしい。

 

「それだけは勘弁してくれよ、先生」

「むーなんでいっつも邪魔するかなぁ」

「当然。子供が子供を作ってどうするんだい? 必然ながら、今日も勉強をしようじゃないか」

「「はーい、先生」」

 

 先生こと、アウレオルス=イザード。

彼は輪廻転生者だ。閻魔大王に100000年回帰の記念で、特別に転生させてもらったのだ。

その転生先は、アウレオルス=イザード。

彼になった彼は、インデックスを拾い上げ勉学と共に、母の愛と慈愛を学ぶため孤児院へ預けた。

 アウレオルスは、最初こそインデックスと周囲を敵に回したが、精神の安定と頭脳の安定的な使用と今後における将来性に先手を打って投資したため、その辣腕ぶりを買われた。あまりの栄転と評価に、驚愕しながらも周囲と紲を結び、色々あって学園都市に来た。

 

 学園都市に来たのは、首輪を壊すため上条当麻に会うのが目的なためだ。

 色々年月は経過してしまったが、結局4000冊は覚えてしまった彼女を、

色々するために青年の元で過ごさせてもらうことにしたのだ。

彼自身は三沢塾を何故か上場させて、取締役社長を他者へ譲り自身は会長としての身分を確立している。

 

「いやー、先生が俺に土下座してきたときは驚いたなぁ」

「あの時はすまなかった」

「やめてくれよ、むしろおれのほうが感謝すべきなのにさ」

 

 先生が土下座した後やったのは、経済支援だ。

上条当麻が原石かつキーパーソンなのはわかっていたので、来る日のためにいろいろ融通したのだ。

それでも清貧癖がついた青年の食事事情は、改善されるわけがなかったんだが。

 

「では、今日もヨハネのペンの制御方法を学ぼうか」

 

 この世界線は、彼が思ういい世界になれたのだろうか。

 

2:お前の愛を数えろ

 

「子供作りたい」

「だ、ダメに決まってるでしょう!?」

「既成事実作っちゃえば、当麻さんはもう逃げられません!」

「英国式であれど、あなたは日本人に嫁ぐのですよ!?

日本の女性への法律防御は米国のフェミニズムを超えるのです!」

「それでも私は、当麻さんと一緒に生きたい。私の【女】がうずくの」

「ダメです。せめて、16歳になってからにしてください」

 

 ある日、彼女はミリ薄のゴムが入った箱や錠剤の入った箱を握りしめて、

神崎火織と対峙していた。

場所は近くにある公園。真昼間のくせに、住人がほとんど学生なのもあって人気がしないが、口に出していけない言葉を全体の内6割強を占めながら激論をぶちかます。

 

「ねえ、ステイルもそう思うでしょう?」

「何故僕に振るんだ。一個人として言うならば、インデックスが思うようにすればいいと思う」

「じゃあ―――」

「でも、ちゃんと手順を踏むんだ。この国の婚姻年齢は、男は18、女性は16。

上条は16歳だ。後二年まつんだ」

「う……ぐ……」

 

 お腹が痛いわけでもないのに、お腹をさすって我慢する。

 

「愛がほしい……」

「火織、インデックスのメンタルヘルス、頼んだ」

「わかりました」

 

 ヤンデレになりそうなインデックスを、なんとかマジカルパワードカナミンにくぎ付けにすることで色々な問題を片付けることに成功した。

しかし問題はこれで終わることはない。

 

「ねえ、そこの金髪さん、愛って何?」

「うぇ!? あ、ああ、あ、愛!? 相手を慮ることかな!?」

「それだけ?それじゃ、相手は振り向いてくれないと思うんだけど」

「じゃあ、実力行使力を発揮すればいいんだゾ☆」

「どうするの?」

「えーそりゃぁ、逃げられない様に社会的にも物理的にも封じ込めて、既成事実かな」

「だよね!! やっぱりそうするしかないよね! ついでに自分も首輪か何かで、

縛られている表現すれば、叙情的にもにげられないよね!」

「うんうん、理解力高くていいゾ~これ☆」

 

 金髪のちゃんねーこと、食蜂操祈。

レベル5の超能力者だ。心理掌握というもので、読み方はメンタルアウトとのこと。

人間の血液や血漿、神経伝達物質等液体と呼べるものを操作する能力だ。

系統は水。電気とは相性は最悪で、御坂美琴という電撃びりびり中学生に能力は効かないんだ。

 

「うーん(心理掌握が効かない? どういうことなのかしら?)」

「そういえば金髪さんの名前なに? 私はインデックス」

「私は食蜂操祈よ」

「電話番号交換しましょう。ぜひお友達になりたいな」

「ええ、いいわよ(不思議な子ねぇ)」

 

 なおインデックスに、能力による介入はわかってたようだ。

操作される前に、ヨハネのペンがそれらの波長をうまく受け流したようだ。

 

「操祈さんの好きな人って誰?」

「私? 私は……あの人ね」

 

 指をさした先に見える人物。

それはつんつん頭の特徴的な髪型の彼、上条当麻だ。

 

「おーい、インデックス! って、食蜂!?」

「あ、えと、久しぶり」

「おー、あの時以来だな! 元気そうで何よりだ。しっかし、インデックスと知り合いだったとは。見ていてくれて、ありがとな」

「う、うん、さっきしりあったのよ」

「そっか。インデックス、先生が呼んでいるんだ。帰るぞ」

「わかりました」

 

 食蜂操祈は視線を合わせづらそうにしながら、髪の毛を指で遊ぶ。

中々の恥じらいに、インデックスは光の無い闇の瞳で見やる。

当然上条はそんなこと知らない。むしろ知っていた方がおかしいまである。

 

「当麻さんは、先に帰っていてください」

「ん? おう、先に行ってるから、早くくるんだぞ?」

 

 そう言って去っていったのを見届けると、くるりと食蜂に向き合う。

 空気が重いなぁ。

 

「上条当麻さんは、私のモノにしますので」

「なぁに言ってるのかしらぁ? ヒロイン力は、私の方が軍配が上がるってもんよ?」

「先に当麻さんを射止めた方が勝ちで、一生色目を使わないように」

「それは、インデックスちゃんにも言えることよねぇ?

この豊満な魅力的な身体を使えば、当麻君はイチコロだゾ☆」

「身体でつなぎ留める恋程、脆いものはありません。

それに、あなたのは恋に恋してるだけでは?」

「あらあら、この小童は人生力が足りないようね?」

「ほざいていてください。では、また。失礼します」

「ええ、また会いましょう」

 

 お互いに譲れぬ戦がある! これが漢をめぐる女の陰湿な戦いの始まりだった!

 

 なお、遠くから見ていたアウレオルスは、胃のあたりを痛めていた。

 

「この先大丈夫なのか?」

 

 ため息しか出ない状況だが、結びつきが強くなるならそれもありなのか?

と思いながら、上条宅へ足を運ぶことになった。

今から勉強させておかないと、彼の単位が足りなくなるかもしれないからだ。

まだまだその時ではない。それでも、できることはやっておいた方がよかったりする。

 

 

3:注意、これはただの添い寝です

 

(ま、まずい。非常にまずい。上条さん的に、人生最大のピンチでございます。

父さん、母さん。不肖な息子を許してください)

「んん、当麻ぁ」

 

 はい。やってきました。インデックスさんのターンです。

いや、いつもそうなんだけどさ。

 以前の愛とか恋敵のせいで、エンジンがついてしまったインデックスさんは

上条君に猛烈アタックをしかけている。

寝る前に先生やイギリス清教から、念入りに、念入りに、念 入 り に、

口酸っぱく耳に胼胝ができるくらい注意されている。

 

”てをだすな。(法律と体裁的に)”

 

 アッハイ。

 

 現在、インデックスさんは上条と密着して寝ております。

初夏であるから、薄着でもいけることが災いを呼んでしまった。

洗濯と乾燥が楽だからと選ばれた短パンとシャツを着たインデックスは、

今まさに成長期。

 それでも女性的な柔らかさと甘い匂い(美人臭)、最近出てきた胸が薄い布を

介して腕に伝えられるのだ。

しかも、全幅の信頼を寄せられるが故の無防備。

更に前日の求婚といういくらか過程をぶっ飛ばした行動により、色々な【雄】の部分が刺激されている。

 

(手を出しちゃだめだ、手を出しちゃだめだ、手を出しちゃだめだ、手を出しちゃだめだ)

「当麻ぁ、ほしいよぉ」

 

 だからと言って、腕を太ももで挟み込むのはよくないと思います。

 

 上条は決して子供が嫌いというわけではない。

しかし女性の面でいうならば、むしろお姉さんという年上というか性徴しきった人がストライクゾーンなのだ。

普段からいろんな事件に首を突っ込み、事件の中心にいる彼。

上条は率先して動くから、いろんな人に頼られる存在になってしまっていた。

だからこそこの頼られるということに疲れた時、癒してくれる【頼ってもいい】女性がいいんだ。

 

(柔らかい、いいにおい……今更なんだけど、インデックスってすっげぇ美人なんだよな。ほんと、今更なんだけど)

 

 腰に届くほどの銀髪と翠碧の瞳とか、すでに外見で優遇されている。

更に特殊な人生と特殊な教育で、身体は程よく肉が付き性徴もしていっている。

甘えたがりだが、そこがいいのかもしれない。

 

(鼻筋も通っていて、唇もきれいだ。まつげ長いなぁ、月下の銀髪もきれいだし……

あれ、これ、普通に美少女では?)

 

 出会ってかれこれ一か月は経過している筈だ。

最近の好き好きアピールで、言葉だけで見てきただろうが細部まで見れば断る理由なんざないのだ。

 

(やっべぇ、これ、土御門のこと言えねぇな)

「当麻……来て?」

 

 はーい、いかがわしい行為は検閲しまーす。なお、強靭な精神力と共に、ぼーっとしてたら

爆睡かつ寝落ちしていたようだ。

 

「二人ともおはよう。ごはんを作りに来たんだが……大丈夫か?」

「先生」

「なんだい?」

「これを後二年耐えろと?」

「私が何とかするから、あと半年は持ってくれ。そしたら、好きにしていいから」

 

 起きているのは上条だけだが、その目はとても黒く寝不足な感じしかしなかった。

爆睡できても気絶みたいなものだし、精神的疲労は蓄積しているのだろうな。

一応先生も上条の立場を確立するための行動をしているが、なかなか実を結ばない。

手ごたえはあるのだが、反対勢力は一定以上いるというね。

 

「当麻君。消音とロックしておくから、トイレで解消しておいで」

「すみません」

「大丈夫だ。私も年頃の子にそうされたらそうなる自信がある」

 

 先生は懐も器も広く、困っている若者を放っておくことはしないんだ。

流石にこれ以上はまずいので、迅速な対応をするしかないだろうなと結論付けたようだ。

ただ彼らを別居にするわけにはいかない。

普通にコストもそうなんだが、インデックスを学園都市に留学させる条件は

上条のところに預けるという条件があった。

 ここは色んな策略があるらしいが、そんなことはつゆ知らずアウレオルスは二つ返事で引き受けたのだ。

そしてここで過ごさせてから色々あった。

その色々は濃すぎて、語るには少し時間がかかる。

 

「ほれ、できたぞ。ベーコンエッグと食パン、サラダに牛乳だ。

インデックスには、新商品のムサシノ豆乳だったな」

「「いただきまーす」」

「はい、いただきます」

 

 三人でごはんを食べたら、インデックスと当麻は自室でアウレオルスは真下の階に降りて身支度をする。

そして三人は1階で合流して、そのまま一緒にとある高校へ通学するんだ。

上条やアウレオルスはともかく、インデックスも通学する理由。

それは英国まみれのインデックスを、日本の常識に浸して日本人に帰化できるようにするためだ。

 幸い彼女は成長して、心身ともに落ち着いている為その明晰な頭脳をもって

数か月で習得できるだろう。しかし、体得して会得に至るには数年かかる見込みだ。

 

「今日は能力検査か?」

「そうなんですよ。無能力者しかいない高校でやったってなぁ」

「パーソナルリアリティは、常に変動していると聞く。勉強すれば、能力がつくかもしれないぞ?」

「すでに幻想殺しっていう能力があるんですが」

「そこは可能性を描くんだ。私の能力も、可能性を描くものだからな」

 

 アウレオルスの黄金錬成(アルス=マグナ)は、可能性よりも現実をゆがめる魔術。

なおこの転生者、人生が結構濃かったので不可能なことはむしろ面白いと思ってしまうようになっている。おかげで、本来の彼がもつ”現実にならないという不安”は消えている。

だがせっかくの鍼という要素があったのだから、と鍼治療の免許まで習得する勤勉さをもっている。

 不安や不可能は未来を楽しくする味付けにすぎない。

そんなアウレオルスは、今も可能性を追っている。

 

「なんでもできるって思わないと、何もできないぞ?

まだ君は若い。貪欲に結果を手繰り寄せないと」

「そうなんですかねぇ」

「当麻さん、掴める可能性を逃してしまうと今後絶対に、不可能を挽回することは

できませんよ」

「なるほどなぁ」

 

 白いランドセルを背負うインデックスを横目に見つつ、とある高校へ到着する。

ここで紡がれるは、平穏と人情である。

そして未来のための布石の為でもあるのだ。

 



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4:押してまいる

深夜テンション終了。
これ以降は、面白くないかも。


「アウレオルス先生、インデックスと上条を連れてここに行くといいじゃん」

「ありがとうございます、黄泉川先生」

 

「そういうわけで、一緒にクレープ食べに行かないか?」

 

「まじ!?」

「いいなぁ、上条」

 

「当然一人一種まで、私のおごりってのはどうだい?」

 

「太っ腹やないか!」

「いいねぇ、俺っちも行きたいにゃー」

「ちょ、あんたたち!?」

 

「委員長もどうだい? ここのは天然由来のものだから、

栄養吸収も優れモノって聞いたよ?」

「むむむ……行きます」

 

 能力検査が終わった昼頃、給食を食べて掃除して下校時刻になった。

そんなときアウレオルス先生が、上条のいるクラス全員に

新しくできたクレープ屋に行かないかと誘った。

流石に全員がついてくるわけではなかったが、10人ほど来ることになった。

 この中に上条とインデックスは含まれていない。

当然入ることになっているからだ。

 

「インデックスちゃんは何頼むのかな~?」

「私は当麻さんと同じものにします」

「殊勝な心掛けだにゃー、でも―――かみやんと違うクレープにしたら、

一口味見しあえるぜぃ」

「はっ! それには至りませんでした」

「おい土御門!?」

 

 そんなわけで、クレープやに直行して思い思いに頬張っていく。

 柔らかな生地と生の触感が合わさり、食べた全員の舌を甘美の世界に誘う。

 

「「「うまー」」」

「これうめぇぜ、なあインデックス」

「はい、一口どうぞ」

「ありがとな、俺のもいいぜ」

 

 ホワイトベリーとチョコバナナをお互いに分け合って食べた。

 

「イザードせんせー私の一口どうぞ!」

「せんせー、私もいいよー」

「ははは、ありがとう」

 

 外見はイケメンな先生は、女学生と委員長に詰められて各種クレープを味わう。

ただ先生は原作を知っているので、ここに集まっている人たちを見て

展開を見守っていた。

 そう、ここには超電磁砲1話に出てくる主人公たちが、ここでクレープを食べているのだ。

更に能力で、銀行強盗の様子も透過される。

 

「あー! あんた!」

「げっ、ビリビリ!?」

「ちょ、なんで逃げようとしてんの!?」

「待て待て! 此処で電撃を放つんじゃありませんことよ!」

「はあ? そもそもあんたが逃げ出すのが悪いんでしょうが!」

 

 びりびりこと御坂美琴。

レベル5の超能力者で、電撃使い。

通称は超電磁砲(レールガン)と呼ばれている。

汎用性が高く、浮いたり壊したり作ったりができる。

 

「ええなぁかみやん、中学生に追いかけられるなんてアニメの世界やで」

 

 アニメなんだよなぁ。

 

「あの子もかみやん属性にヒットしちまったかぁ。ご愁傷様だにゃー」

 

 他人事じゃないんだよなぁ。

 

「インデックスちゃん? どうしたの? うっ」

 

 委員長がインデックスの顔を覗き込んだ時、そこには深淵しかなかった。

 

「当麻さん、当麻さんをあの暴力女から遠ざけなきゃ。

当麻さんは私のすべて。だから近づくもの奪う者全部壊さないと―――」

 

 要約すると、邪魔ムシは消えちゃえってことさ。

 いや、怖いな。

うつろな瞳で、当麻と御坂美琴との間に入る。

 

「なっ!?」

「インデックス!?」

「貴方、当麻さんの何なんですか?」

「ちょ、あんた! 女の子に守ってもらうなんてサイテーね!」

「なんで俺がこんなとばっちりを!?」

「私はびりびりさんに聞いているんですよ?」

「びりびりですって!? 私には、御坂美琴って名前があるのよ!」

「私はインデックスといいます」

「む……(なんか調子狂うわね)よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 目に光がないのに、社交性はあるインデックス。

内に秘めた殺意を表に出さないように、ポーカーフェイスを貫く彼女は

役者か何かか?

 

「それで美琴さんは、当麻さんに何かされたんですか?」

「ナニカされたんじゃないのよ。こいつ、私と戦わないのよ?」

「……美琴さんは、人を殺すために能力者になったんですか?」

「は!? んなわけないでしょ。そもそもこいつは、私の電撃が効かないのよ」

「それで?」

「それでって、いけしゃあしゃあとして私との戦いを避けてるのよ」

「そりゃそうでしょう?」

「なんでよ、電撃効かなかったら私の電撃がどこまで通用するか知りたいじゃない」

 

 いつの間にか美琴の立場が弱くなっている気がする。

それにインデックスの怒りは徐々に収まりつつあり、目の前の未知に対する好奇心が

他者を殺しそうになっている事を可能性として考慮していない彼女に呆れ始めた。

可哀想な人だなぁ。

 

「当麻さんは、右手しか能力を無効化できません」

「それがなんだってんの」

「もしも、当麻さんがゴム底じゃない靴を履いていたら、静電気を纏っていたら、

絶縁性のない金属の近くに居たら、オゾンが発生したら、ストリーマーが発生したら、

火災が発生して一酸化炭素が出たら。

能力じゃない自然現象は、当麻さんを殺します。

美琴さんは、馬鹿なんですか」

「いや、そもそも風通しが……あ、もぅいいわ」

 

 美琴も分かったと思うが、此処には無能力者が大勢いる。

しかも上条のクラスメイトが多数いる中で、常盤台のお嬢様という時点でも

嫉妬の対象なのにレベル5と白井黒子が演説したから、批判の目が突き刺さっているんだ。

これは痛い。

 

場はすでにアウェーだなこりゃ。

 

「えっと……私のわがままで迷惑をかけてすみませんでした」

「え、あ、いや。俺こそ悪かったよ。なんでびり……御坂が、

俺を追いかけてきたのかわからなかったんだ。

訳を知れてよかったよ」

「次からちゃんと目的を言うわね」

「ああ、よろしく頼むよ」

 

 ちゃんと仲直り出来たようだ。

ただインデックス的には、御坂が頬を赤らめたことに気づいて憎悪と嫉妬が

渦巻くことになるのだが。

 大丈夫かこれ。

 

(((全然大丈夫じゃないなぁ)))

 

 クラスメイトは、上条を中心に蠢くタールのような汚泥の沼に慄くのだった。

 

 そんな時、ついにやってきました銀行強盗。

シャッターを破壊して出てきた悪役三人組。

彼らは一気に走り去ろうとしていた。

 

「初春、すぐにアンチスキルに連絡を」

「白井さんは!?」

「制圧してきますわ!」

 

 行動を開始するも。

 

「ジャッジメントか。すぐにずらかるぞ」

 

(あれ、原作と違う。アニメじゃないし、それもそうか)

 

 アウレオルスは、場違いなことを思っていた。

 そもそもアンチスキルやジャッジメントといった統治組織がある中で、

白昼堂々と盗むわけがないもんなぁ。

 

「そんなことは、この黒子が許しませんの」

 

 おっと白井による護身術が炸裂した!

しかし何故か白井が、地面に飛ばされていた。

どういうことだ?

 

「てこずらせやがって。車に乗るぞ」

「「おう」」

 

「行かせません」

 

 怪我した白井の横を三人組が通った後、白井を攻撃した男が彼女を追撃しようとした。

しかしどこからか現れたインデックスが、真横から殴り飛ばした。

 

「うべら」

 

 そのまま壁にめり込む形になってしまう。

 

「女性に暴力を振るってはいけないと、習っていないんですか?」

「なっ!?(この方の力、すさまじいですわ!)」

「大丈夫ですか?」

「えぇ、有難うございます」

 

 インデックスが白井を助けている間、二人組の男の一人が少年を一人拐[かどわ]かした! なんてことだ。

しかし連れ去られようとしたとき、上条は走った!

 

「! 御坂、あいつらが逃げる。行くぞ!」

「え、うん!」

 

 本来ならば佐天が行くところを、上条が率先して救助しにいったから彼女は

怪我することがなかった。

しかしその代わり上条が能力によって、飛ばされた少年を助けようと下敷きになってしまった。

 

すごく痛そうだ。

 

「おらよ!」

「くそ! 御坂!」

「勿論、逃がすわけないでしょ!」

 

 少年を助けて身動きが取れない上条の代わりに、御坂が電撃と共に飛んで行ってタックル!

背中をぼっきりいったが、大丈夫か?

 

(あっちゃー)

「かみやん!」

「青髪っち、助けるぜよ!」

「あいよ!」

「ちょ!? 三馬鹿はなんでこーも」

 

 アウレオルスは、白目をむく悪役を見て目をそらしてしまう。

いやだって、痛いでしょ。

 

 少年を受け止めた上条を見て、クラスメイト達は走り出す。

なお逃走した残り一人は、自動車に乗って走り去ろうとしている。

拙いと思っても、自動車に追いつけるものはいない。

 

「まずいですわ!」

「あの車、停止させればいいんですよね?」

「ええ、そうですの!」

「でしたら、これでいきます!」

 

 インデックスは焦りだす白井に確認を取って、敵を追撃する手段を取り出す。

 

「限定版、ヨハネのペン。 ソドムとゴモラの火(弱)車両前方に炸裂!」

「なんですとお!?」

「あー飛んだわねー」

「たーまやー」

「佐天さんそんなのんきな!?」

 

 発火能力3くらいの威力の火球が、車両前方で炸裂!

車は回転しながら、インデックス達が立っている道路まで落ちてきた。

 強盗三人はすぐに取っつかまり、アンチスキルの世話になる。

なんとも間抜けな顔だこと。

捕まえたとある高校の生徒や女子4人組は、事情聴取を受けたらすぐに解放された。

 

「怪我がなくてよかったよ」

 

 若干目をそらしながら言う。

何故なら後ろで、インデックスと御坂が上条の取り合いをしているのだ。

ちょっとかかわりあいたくないですね。

 

「美琴さんどいてください」

「は? あたしがここをどく理由なんてないんだけど?」

「私にはあります」

「あたしだって、こいつの怪我の治療をやってんのよ」

「代わって下さい、わたしがやります」

「なんでよ。そもそもこいつ、無能力者なくせに能力者に率先して、

立ち向かうのよ。レベル5として、あたし個人としても、償いはやらないと」

「美琴さんってそんな殊勝な方だったんですね。

ですがそれはいつでもできるじゃないですか。

早く当麻さんから離れてください」

「何、嫉妬してんの? 意外とインデックスも、おこちゃまね~」

「ゲコ太シリーズを網羅しようと、何度でも屋台に並ぶ姿は、

さながら幼稚園児でしょうか?」

「あらあら、このお子様はわかってないようね~?」

「ふふふ、美琴さんのような方をアリスシンドロームと呼ぶのですよ?」

 

(コワイ)

 

 上条さんの内心ガクブルなのが伝わってくる!

応急箱をもった美琴と医療魔術を使おうとするインデックス。

両者は上条の隣を占領しようと、乙女の戦を開始した!

あんまりバチバチいわせないで、人が逃げてるじゃん。

 

「くぅ~上やん、美少女に囲まれてうらやましいわ~」

「上やんにはもったいない美少女だぜぃ。しかもお相手は銀髪美少女インデックスと、

常盤台の超電磁砲!」

「上条! 中学生に手を出すんじゃないわよ!」

「上条くんって、中学生が好きなんだー」

「上条! もてない男同盟はどうなるんだ!?」

「もどってこーい上条ー! 俺達の友情は、こんなにも儚いモノなのかー!」

 

「てめぇら、好き勝手言ってんじゃねーよ!?」

 

 あまりにもひどいクラスメートに、上条は思わず突っ込んだ!

目の前の修羅場をどーにかしてから、云ってくれませんかねえ!?

ほらほら、お嬢さん方のジト目が上条に向けられてるぞ。

 

 最後に先生から

 

「当麻君。君も立派になったなぁ。まさか女の子二人をとっかえひっかえするなんて……!昨日は童貞臭さを醸し出していたというのに……。

やはり、男子三日合わざれば刮目してみよとは、素晴らしい格言だったのだなッ!」

「先生正気に戻って!?」

「童貞くささ?」

「ほほう、先生、昨日の上やんについて教えてくれへんかな?」

 

 周囲のクラスメートにまじって、先生も悪乗りを始めてしまった。

上条の味方は誰もいないみたいだ。可哀想に。

代わりに先生の言葉に、青髪や土御門が反応しやがった!

嗅覚だけはいっちょまえにいいな、こいつら。

 

「流石に言えないが、やはり、故意に押し当てられる身体を意識しない

男はいないだろう?」

「やはりテメェは敵だ、上条!」

「上やん、俺っちたちを裏切りやがったのかにゃー!?」

「上やんだけ、大人の階段を上ったんや。おとなしく見守ろう」

 

「まじでおまえら黙ってくんね!?」

 

 鉄血(笑)の友情(笑)は、儚くとも崩れ去ってしまった。

先生は言葉を濁していたけれど、色々飢えている狼たちにとって

意味がなかったようで。

 

「上条サイテー」

「ほほう、キサマには一度お灸をすえてやらんとな?」

「童貞が許されるのは、小学三年生までだよねー!

勿論ネタだよ!」

 

「ちょ、おまっ」

 

 先生のオブラートに包んだ表現が、青年たちの言葉でラミネート加工されていく!

最終的にラップに包まれているんだが、これ大丈夫か!?

実際大丈夫じゃないんだけど、この場収拾つかないんだけど。

 

「お姉さま! あんな交際経験をひけらかす野蛮人等相手にしてはなりません!」

「白井さん抑えて抑えて!」

「いやー、公衆の面前でどうどうと、すごいわー」

 

 なお超電磁砲組も、主に白井が暴れていた。

テレポートをすることを忘れるぐらい、憤怒を隠しきれていない。

そんな彼女を初春が取り押さえているが、いつまでもつかな?

佐天さんもそんな感心しなくてもいいのに。

 

「はいはい、おまえら事情聴取はすんだぞ。解散しな」

 

 警備員、読みをアンチスキルという。

そんな当地組織に所属している黄泉川先生が、解散を促した。

ありがたい!

 イギリス清教の隠しダネと学園都市最強ともいえる超電磁砲は、

誰も相手にしたくないわな。

 

―――

 

 夕方。

 ようやくいろんな人から言葉やらなにやらでいじられた上条は、

インデックスと一緒に帰路についていた。

 

「なあインデックス、御坂とも仲良くしてやってくれねぇか?」

「……当麻さんがそういうなら」

「……大丈夫、見捨てたりしないって」

 

 少しいじけてしまったインデックスを、上条はすかさずフォローする。

彼の言葉は、非常に大事なんだ。

何故ならこのステイホーム、イギリス清教から直々の申し入れだ。

 

 主にアウレオルスの嘆願ではあるが。

 

 そういうわけで、インデックスの立場は非常に弱い。

上条が少しでも苦言を呈するだけで、学園都市側はインデックスを帰国させるだろう。

勿論アウレオルスも同じだ。

 そもそも魔術関係の人物が、科学関係の総本山に長居などできないのだ。

魔術サイドと科学サイド。

 

 語るには時間がかかりすぎるから、あえて省略しよう。

端的に言えば光と闇で、お互いが信じる正義を振りかざして社会を振り回している派閥である。

魔術サイドは、十字教という名のキリスト教や仏教・イスラム等様々な宗教や神話といった、色んなおまじないといったものを操る人たちの集団だ。

そして科学サイドは、過去のおまじないを捨てて未来の未知を探求する人たちの事。

 

 いやまあ、魔術サイドでも冷蔵庫もクーラーも使うが。

 

 色々線引きが、ね。

ぶっちゃけて言えば、科学サイドの能力者開発は魔術の限定版みたいなものだから、

あまり気にしなくてもいいと思う。

 

 そこらへんは、とある魔術の禁書目録を見ていただければ幸いだ。

 

「当麻さん、今日は一緒に寝ましょう!」

「いつも一緒にねてますよね!?」

 

 御坂美琴の甲斐性を知った上条は、その彼女に若干気持ちを揺らした。

それに感づいたインデックスは、上条を自身に意識を引き戻すため

行動を口に出す。

 母性の暴力や中学生たちのギャップというもので、簡単になびかない様

彼女は自身の魅力を使って縛り付けようとするのだった。

 

「……よかった。当麻君もインデックスも、剣呑な関係じゃない。

帰宅したら、謝ろう」

 

 なおアウレオルスは、黄泉川先生に反省文というか始末書を書かされていた。

理由は生徒たちを焚きつけたこと。

場の雰囲気にのまれてしまい、つい心が緩んでしまった。

 重責から逃れた結果、心の余裕が生んだたるみ。

これはアウレオルスを、たびたび襲ってしまうのだろうか。

 

「明日こそ、いい日にして見せよう」

 

 そして彼はただではくじけない。

上条とインデックスを法的にも、結び付けられるようあがいていくのだった。

 



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5:舞台の裏側で

「今月のインデックスの滞在は延長するのかしら?」

「ああ。もちろん。インデックスらは、この学園に必要だからな」

 

 そう問答する彼ら。

 

 一人は最大主教、アークビショップと呼ばれるローラ=スチュアート。

長すぎる頭髪を結っている淑女かと思いきや、日本語の古語と現代口語訳を

交互に使っているらしい魔神。

 

 もう一人は、この学園都市の総括理事長、アレイスター=クロウリー。

ビーカーの中でさかさまに浮いている過去の偉人。

 

 内情はこんなことになっている。

 

「しかし、ローラ=スチュアート。まさか貴女の日本語がここまでまともになるとは。

この李白の目をもってしても、見抜けなかったよ」

「……(リハクって何?)、わたくしも日々成長しているのですよ。

最近は英国も、日本との貿易関係を強めていっているようですし?」

「ほほう? 世情を知っているようで何よりだ。

で、その成長は一体、誰の為なのかね?」

「さ、さあ、そんなこと露知らずですわ」

「フム……あの男か。やはり女性は、男性により変わるものなのだな」

「その言いようは、経験かしら。それとも見てきたのかしら?」

「私は今もなお、あなたからそう感じ取っているのだが?」

 

 話が経済やら腹の探りあいから、恋愛談義になってきていた。

少なくとも二人は、人の世界にいるのだ。

基本的なところに興味津々になるのは、当然のことなんじゃないだろうか。

 

「やはりアウレオルスか」

「違うわよっ、あ」

「ほほう?」

 

 おっとぉ?

にやりとするアレイスター。黒い微笑みに、ローラはまずったと顔をしかめた。

 

「そうかそうか、あなたのような鉄面皮が、ロリコ――いや、児童性愛者に

心奪われるとは!」

「なっ!? あ、あの人はそんな人じゃないわ!」

 

 ローラの謎の焦りが、ますますアレイスターの心を愉快にさせていく。

そんなことを全く思わず、自身の行動を省みずに暴走する彼女。

これを愉快と表現せずして、何が愉悦か。

 

「こりゃあいい! インデックスに和装させてアウレオルスと婚約させようそうしよう!」

「やめなさい! 宗教戦争になるわよ!」

「それもまた重畳! 外交的屈辱? 戴冠式? そんなのはどうでもいい、

学園式で色々と危ない結婚式を執り行おうではないか!」

 

 くはははと笑いながら、おちゃらけるアレイスター。

彼はローラの焦る姿を見て、大いに楽しんでいた。

必要悪の教会、読みをネセサリウスというが、これの長が取り乱す。

愉快、非常に愉快であーる!

 

「はあっはあっ、何が御望みなの?」

「はて、のぞみとは?」

「ここまでわたくしの弱みを握っておいて、まだ白を切るつもり!?」

「何を仰るんだ。私の望みはすでに達成せしめられている」

「何?」

「そう、ハーレムイチャイチャ学園生活計画!

上里および上条が、どれだけの女児や男子をひっかけまわすか、盛大な人生ゲームを

執り行うのだ!」

「ふざけないで! それにアウレオルスがどうかかわっているというの!?」

 

 激昂する恋する乙女。大言壮語なのか馬鹿なのかよくわからないくらいに盛り上がっている

アレイスターに、ローラは突っかかる。

そりゃ思い人が関係すれば、焦ってしまうだろう。

 

「インデックスと結婚してもらう」

「はあ!?」

「何をいうか! 学園都市は一部を除き非常に治安がいいし、無駄に行水をして

寒暖差アレルギーを引き起こすこともない。

更に美容品や医療・食料・電化製品等、全てにおいて整っているのだぞ!

殺人やすりが横行している貴国とはくらべものにはならないだろう!」

「こっちにだって優美な観光施設や豪華絢爛な建物が、所狭しと並んでいるものよ!

生活水準も国民総中流で、犯罪なんてめったに発生しないし」

「だが別宗派が入り乱れ、それらによりテロを起こされているじゃないか」

「あら奇遇ね、わたくしもそう思っていたのだわ、アレイスター」

 

 そうして、罵詈雑言のお子様のようなののしりあい合戦が開幕されてしまった。

あーあ、もう滅茶苦茶だよ。

 こんなことになってしまっても、結局インデックスをアウレオルスとくっつけるのは

決定されてしまった。

 

「何でこんなことに!?」

「おい、ローラ=スチュアート。なぜ頭を抱えている」

「なによ、ステイル。乙女の思考に邪魔しないで」

「乙女(笑)」

「インデックスがアウレオルスと結婚するんだけど」

「是非協力させてくれ」

「やったぜ」

 

 ちなみにステイルは、アウレオルスがローラに恋心を抱いている事は知っている。

というか、昔孤児院のインデックスの授業参観の時、アウレオルスが

延々と当時12歳のステイルに理想の女性像を話しまくっていたのだ。

 

(あの人のローラ推しは、まさしく本物だ。

絶対にインデックスとくっつかせてはならない。

むしろあの子は、上条にこそふさわしい。

ちなみに俺は、神崎が好きだから包容力関係には大賛成……!)

 

 それとステイルは、年代の差から神崎の事をひそかに想っていたりする。

だから理想の女性像がわずかに合致していたのだ。

おかげでアウレオルスの覚えがよくなったのかは不明だが、

学園都市へのホームステイとその護衛に、ステイルと神崎火織が選抜されたのだ。

 

「それで、次の件ですが――」

「最大主教。なぜ英語を使わないんだ?」

「……わざわざアレ取って、を”I want you to catch that.”って云う?

主語を省いても通じる日本語のすばらしさを知る事ね」

「日本語は知るよりもわかる方が大事と聞くが、意を酌むのがどんなに難しいか

全く分かってないな?」

 

 ニュージーランド語、ドイツ語、楔文字、ヒエログリフ。

最難関文字はここらへんだろうなと思う昨今。

 ステイルとローラは、作戦を切り詰めていく。

ここで大事なのは、上条とインデックス、そしてアウレオルスの関係だ。

現状でアウレオルスとインデックスの関係は、友人のようなもので恋人のそれではないことは明白。

愛情があったとしても、それは父親のようなものとして、判断しても大丈夫だろう。

 

「で、あの子は?」

「上条がマスターベーションを欠かさないくらいには、非常に親密です」

「素晴らしいわ。神崎とは取り持ってあげるから、びしっと行ってらっしゃい」

「畏まりました」

 

 皮肉の言い合いとかもあるが、基本的に仲がいいのだ。

まあ利用しあうという言葉が、正しいのかもしれないがその方が信頼できるだろう。

 

「私はアウレオルスのために」

「俺は神崎のために」

「じゃあ、よろしくお願いね」

「ええ、また」

 

 お互いの好きな人を確認しあって、お互いにうなずく。

そしてステイルは戦場に向かう。

己の行先に、想い人がいると信じて。

 



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6:付き合いたい=結婚したいは違うらしい

こんなはずではなかった


「当麻君、インデックス。明日は博覧百科に遊びに行こうか」

「「博覧百科?」」

「そう。博物館・美術館・動物園・植物園・水族館がある複合施設で、

13区にあるんだそうだ」

「へー知らなかったな」

「面白そー」

 

 やってきました上条の部屋。

あの騒動から数日が経過した週末。

明日は13学区にある、色んな体験施設が凝縮された一大エンターテインメント施設、

博覧百科に向かうとのこと。

 ああ、読みはラーニングコアだぞ。

ルビ振りと当て字が違うのは、よくあるこった気にすんな!

 

「何時に行くんだ?」

「10時にでもするかい? ごはんは驕ろう」

「いいのか!?」

「勿論だとも。当麻君も女性を誘う時は、昼食等を驕って甲斐性を見せるんだぞ」

「今の上条さん的に難しいです、ハイ」

 

 目線をそらす上条。

今の無能力ぶりでは、資金がほぼないに等しい。

というか彼らが大人になったらどうするのだろうか。

無能力だからこそ、外に放り出しても問題はないだろうし。

 やはり学園都市にとって、無能はほとんど必要ないのだろうか。

それでも大人になっても、スキルアウトという無頼漢や

いろんなところで肉体労働をしている人たちもいるし、何とかやっていけそうだな。

 

 なお、英国の支援。

 

 自分のお金でなかったら、インデックスとアウレオルス達との異文化交流ということもあって、支援金がたんまりある。

だがそれを自分のモノとして扱うのは、上条本人が許していないようだ。

 

「じゃ。その日ということで、いいかな」

「「いいともー!」」

 

 というわけで、支度をすることになる。

支度といっても、腕時計程度でそこまで必要ない。

そもそも日帰りなので、重厚な装備は必要ないのだろう。

 

 次の日になって、予定時刻に出発したのだが……。

 

「先生って私服持ってないのか?」

「一応仕事としてこっちに来たようなものだからね。

持ってないんだ。買うべきだったのだが、なんてこった」

「次からは私服で頼むぜ。なんか気が休まらないからさ」

「善処するよ」

「むー当麻さん!」

「おっと」

 

 アウレオルスと上条が会話していると、のけ者だと感じたインデックスが

彼らの間に入る。

間に入るといっても、抱き着くのは上条だけなんだけど。

 

「ここに博覧百科の案内地図があるが、二人で見てごらん」

「サンキュー」

「わー凄い。当麻さんこの動物園、行ってみたいです!」

「面白そうなイベントもやってるし、いいかもな!」

 

 二人は博覧百科の案内地図を見て、予定を立てている。

モノレールに乗って二十分。

ようやく到着し、その場所に来た。

 ほとんどが屋内施設だというのに、その規模は非常に大きい。

ほぼすべてが効率的に作られており、最新のぎじゅつにより外化

中かまったく判別ができないくらい澄んだ空気になっている。

 

「「「おー」」」

 

 入場チケットを購入して中に入ると、確かに学園都市で一番大きく人気がある施設だ。あまりの大きさと設備の雄大さに見とれてしまい、なかなか行動に移せない。

しかしそうしていると、多くの人の流れができてしまいうかつに動くことができなくなってしまった。

 

「なんてことだ。インデックス、当麻君!」

 

 これはとあるイベントのための大移動で、フロアの移動で常にこの数が発生しているのだ。

元旦の雷門前なんて目じゃないくらいだ。

家族連れもそうだが、彼氏彼女のカップルや研究者たちがたくさんいる。

こんな流れでは、到底人を見つけるなんて不可能に近いだろう。

 

「私がついていながらっ」

 

 己の不明を恥じるアウレオルス。

しかし彼は信じた。彼ら二人が一緒にいることに。

云えば現実がそうなるということを知っているアウレオルスは、

言葉に出さず心に秘めた。

 だが結果で言えば、インデックスだけしか見つからなかった。

 

「アウレオルスー寂しかったんだよー」

「そうかそうか。すまなかったな、一人にしてしまって」

「ううん、大丈夫。いつか、アウレオルスがわたしを救ってくれるって、

信じてるもん」

「そっか、ありがとうな、インデックス」

 

 この世界に転生して来てから、アウレオルスはどんな人間なのか分らなかった。

しかしインデックスという存在をローラ=スチュアートから教えられた時、

胸がはちきれんほどまで高鳴った。

 

”そうか、ここがとある魔術の禁書目録なのか!”

 

 そう思ったアウレオルスは、自分の名前を再確認して行動を移すことにしたんだ。

まずはインデックスの境遇の改善と教育、一般常識や現代世界の科学水準を満たすように、徐々に教えていく。

流石に一文無しではだめだったので、今までの実績である三沢塾講師としての能力を発揮した。

そして彼は常に信じた。

 信じた結果が三沢塾の上場と、アウレオルス=イザードの会長就任だった。

それから行動は早い。

日本と英国の学習環境を整え、お互いに科学的な同盟を結び勉学の習熟を行った。

これによりたった数年で、三沢塾に関連する人物が世界中でその才能を使って飛躍した。

 

 これらは良くも悪くもアウレオルスを引き立て、ついには英国で栄誉賞を賜った。

この時ローラ=スチュアートも関係しており、凛とした姿でたたずんでいた。

一際異彩放つ姿は、アウレオルスの目を引くことになる。

 そして必要悪の教会という組織に、インデックスが所属することになったときにも、

彼はローラ=スチュアートに会うことになる。

 

”まさに、私の理想!”

 

 そう信じてしまい、彼女に気に入られるように行動を移していくが、

あくまでもインデックスの幸福のために抗い続けた。

 

”なぜそこまでしてインデックスに肩入れするのかしら?”

”独りぼっちは寂しいもんだからだ。

必然。それは、貴女も無関係ではない。

貴女がいかに周囲から悪魔だろうが、魔神コロンゾンだろうといわれようが、

私は貴女を女性として扱う”

”わたしは憐れむに足る人物かしら”

”憐れんでなどいない、私は貴女を信じているに過ぎない”

”あらあら、利用しちゃうわよ?”

”どうぞ、ご随意に”

”そう……”

 

 彼は信じた。

インデックスは上条当麻の元で、幸せになるべきだと。

 

 彼は信じた。

ローラはアクマでも魔神ではなく、女性であると。

 

 

 彼は信じ、想い込んでしまった。

 

「ねえ、アウレオルス」

「なにかな?」

「……わたし、今、すっごく幸せだよ?」

「そうか、幸せはいいもんだぞ?」

「むーごまかさないでほしいな」

「ごまかしてはいないさ。ほら、インデックス」

「っ うん」

「?」

 

 唯一の味方。唯一の真実を見つけ出してくれた人。

悪意も善意も悉く利用する、悪魔も天使も恐れない科学にも侵されていない

潔白の人。

 

 アウレオルスは、インデックスの手を取って檀上へ導く。

そこから見える、イルカやシャチ・アシカ・セイウチ・ペンギンのショーにくぎ付けになる。

ジャンプしたり、かわいらしい仕草をするたびに拍手が湧く。

 

「ねぇアウレオルス」

「なんだい?」

「わたしって今、魅力ある?」

「勿論、かわいいよ」

「それ、他の女性の前で言ってないよね?」

「言ってないよ。いうのは、インデックスだけさ」

 

 うそつき。すているとかおりから聞いたんだよ、ローラ=スチュアートに

歯に衣着せぬ言葉を言いまくってたって。

音声も聞いてたけど、あんなのはずかしくなるよ。

なんで、わたしには言ってくれないの?

何で気づいてくれないの?

 わたしはただ、アウレオルスがとう―麻さんに嫉妬して、もっと私に構ってもらうためにやってるだけなのに。

 

 わたしの4000冊は教えてくれた。

黄金錬成(アルス=マグナ)は、言葉の通りに現実をゆがめるモノじゃないんだって。

 アウレオルスは、わたしの心を無視してまでとう―麻さんとくっついてほしいの?

あの言葉はなんだったの?

一人にしないって、いつまでも一緒だって。

言ってくれたじゃない。

 なんで、あんな人じゃない人形に、心奪われてるの?

返してよ、返して―――

 

「お、当麻君だ。おーい」

「えっ、まって」

 

 やだ。やだ。わたしは、アウレオルスと一緒に居たいのに。

 

「おーい、インデックス! 先生!」

 

 わ、わたし、私は――アウレオ、先生が……と……当麻さんが、【好き】。

 

 そうして走ってきた上条は、何者かも一緒に連れてきてしまった。

 

「あらぁ? いつぞやのインデックスちゃんじゃなあい?

まだウブ力発揮してたのかしらぁ☆」

「ちょ、食蜂!?」

「操祈さんじゃないですか。以前言ってた母性力は、当麻さんには効かないようですね?」

「言葉は選んだ方がいいわよお?☆」

「かってに発情する猿には、言葉は必要ありませんよ。

さあ、当麻さん。一緒にショーを見ましょう?」

「ちょちょ、二人とも、当たってる……!」

 

 わざと当ててんだよ。いい加減わからされろ、主人公。

なお、その場の空気はリア充よりも、かかわりあいたくない人でいっぱいだ。

 

(((修羅場だこれ!?)))

 

「先生っって、どこいった!?」

「先生は野暮用ですって。当麻さん、お邪魔ムシはいません。

一緒に楽しみましょう」

「それはいいわねえ。でも、体も未発達なお子様は、最前列で子供たちと一緒にはしゃいで来たらぁ? もしかしなくても、濡れ透けすれば当麻君は振り向いてはくれるかもぉ、知れないわぁ☆」

「操祈さん、それやっちゃってもいいんです?

きっと操祈さん程度の覚悟じゃ、当麻さんのエッフェル塔を扱えませんよ」

「あらあら、ほざくわね。私くらいの包容力なら、東京タワーでもスカイツリーでも

扱って見せますわ」

「外を知らないお嬢様風情が、でしゃばらないでくださいませ」

「大人力を知らない小僧が、娑婆にでてくるんじゃありません☆」

 

(何でインデックスと食蜂は、こんなにもいがみあっているんだ!?)

 

 いつもの言い争いで、結局インデックスはシャチのお帰り海水でびしょぬれになってしまった。

そして彼女の白地の修道服と金色の刺繍が縫われた、【歩く教会】はインデックス

の性徴途中の四肢を遍く全てを当麻の目に焼き付けた。

 腰やお尻、胸といった男の弱い所を、はだかよりも恥ずかしい状態で見せつけ、

最後には腕を取り胸に手を置かせるというものだ。

 

「ふふっ、当麻さんのために恥ずかしい思いをしているのです。

私の覚悟、わかりますよね?」

「っ」

「インデックスちゃんには負けないっ、私だって胸はあるんだゾっ☆」

 

 今度は上条の左手を取って、胸に手を置かせる。

なおインデックスは下着の類を付けていないので、公開処刑レベル。

そして食蜂操祈は、ブラジャーをしているので本来の柔らかさを味わえない。

パッドの圧倒的防御が光る……!

 

 色々発展しそうになった時、それらは動いた。

 

「アンチスキルです! 容疑者はどこに!?」

「こっちです!」

「やばっ!」

 

 食蜂はすぐに気づいた。

人払いなんてしてないし、状況を作り出すためにわざと人の意識は放置していた。

それが仇になってしまった。

己の不明を嘆くが、今捕まればレベル5といえど上条を豚箱から解放することなんてできない。

 そういうわけで、食蜂は上条とインデックスを連れて逃げることにした。

 

「こっちよ!」

「待ってくれ、インデックスが」

「足遅いわねえ……!」

「俺が背負う。食蜂、頼んだ!」

「全く、しょうがないんだからあ!」

 

 なぜか能力が効かないことに焦る食蜂は、道先案内をする。

そして突然の事に動けないインデックスを、上条はすぐに背負って食蜂の後についていった。

しばらく逃走劇を繰り広げて、休憩室の一つを借りることに成功した。

 

「はあっはあっ、やっと休憩できたわねぇ」

「ありがとな、食蜂。その能力、便利だよな」

「さっきまで無能力全開で腐ってたんだけどね☆」

「ははっ、とにかくフロントでタオルがないか見てくる」

「大丈夫よ、私の能力で買ってきてもらってるから」

 

 そう言うと、休憩室に女性が一人入ってきた。

その人は服一式を持ってきており、それとタオルを置いたらすぐに退室していった。

 

「今から私がインデックスちゃんを洗ってくるから、この服を洗ってきてね☆」

「お、おう。でも」

「今の人からお布施があったわぁ☆ どうせだから、使っちゃいましょ☆」

「まじか」

 

 まさか休憩室の目の前に乾燥機付きのドラム式洗濯機があるとは思いもよらなかった。最新の技術で、従来の者よりも高性能と化しているがそれでも15分はかかってしまうようだ。いや、それでも十分早いんだけれども。

あっけにとられる上条。

 そして上条は、扉越しに現れる修道服を見ながら思案した。

 

(今日のインデックス、様子がおかしかったな)

 

 一番最初に気づいたのは、インデックスが先生と一緒に居る時俺に気づき声をかけた時だ。

その時一緒に振りむいたインデックスは、いつも俺に向けてくる笑顔じゃなかった。

むしろ、悲しい表情。

 先生、インデックスの事、本当にちゃんと見ているのか?

昔からの付き合いで、先生と生徒との関係だって言っていたけど、本当にそうなのか?

 

 

 いや、最初からおかしかったんだ。

なんでいきなり同棲生活をすることになったんだ?

首輪という存在を、俺が偶然壊したんだ?

 

 偶然じゃねえ、これは仕込んでたに違いない。

 

 だが、仕込むにしてはおかしい所しかない。

ステイルや神崎が言うには、魔術師は自分の掛けた魔術は得意分野かつ

自分が操れる力量のものでしか使えないという。

あの有名塾講師である先生が、わざと生徒にそんなことをさせるのか?

 じゃあ、あの首輪をさせたのは?

そして先生はその首輪を、どんな意図があるか効果があるか知っているから壊させたのか?

 

 まずいな、俺、先生を信じられなくなってきているぞ。

 

 違う信じるということばは、きっと違う。

今までお世話になったんだ。

英国と日本のカルチャーショックというか、ホームステイとかの面で

訪れ、学園都市の総括理事長が俺のところに来させたんだ。

そして高校に入学させて、異文化交流をし始めた。

 俺達は無能力者なのに、先生の授業を受けてからレベル1になった奴が多く出ている。

俺も手首の先しか効果がなかったのに、今では右肩から先の右腕全体になっているし。

 

「なんで先生は、俺とインデックスを……」

「面白そうね、出歯亀力を発揮するわぁ」

「食蜂、おもしろいだなんていうんじゃねえ」

「あら、ふふっ。インデックスちゃんは、寝ちゃったわ」

「そうか」

「……やっぱり、あの子何か隠してるわよね」

「そうおもうか」

「さっきあの子、お風呂場で泣いたわ」

「……くそっ」

 

 ガンッと壁を殴る。

無力感にさいなまれる上条。

そして先ほどまで、おちゃらかけていたが彼の雰囲気で察した。

そう、食蜂もインデックスの身体を洗っていた時、精神崩壊を起こしてしまったのだ。

 

”わたし、私、わたし、私……やだ、消えたくないっ”

”インデックスちゃんっ、ああもう、私の洗脳力なんて効かないし、

 お、おちついてっ!”

”とう麻さんに、好きとか、やだやだやだ!!”

”!?”

 

 突然の告白に、食蜂は驚愕した。

 

”操祈さん助けてっ、わたし消えたくないよお!”

”どういうことなのか、教えて頂戴!”

”とうま、とうまさ、とう麻さんなんて、好きじゃないのにっ

、違う、私は当麻さんの事、愛してます、じゃないのに!”

”インデックスちゃん、貴方にかかってる何かを解除しなさい!”

”ダメなんだよ、自動書記は先生との絆で一緒に居てくれなくなるっ!”

”あの人が好きなのね!?”

”うん、大好き!”

 

 その時食蜂はやっとみつけた一瞬のほころびに、能力を全力で行使した。

外装代脳、呼び名をエクステリア。

この装置も借りて、やっとヨハネのペンとインデックスの自我を切り離すことに成功した。

今では呼吸も整って、おとなしく寝ている。

 

「ねえ、当麻君。インデックスちゃんのいう、先生・ヨハネのペン。

そしてどこから来たのか、教えてくれない?」

「食蜂。それは……」

 

 二人は休憩室の椅子に座って、話す。

本来なら言わないほうがいいことだが、食蜂は洗脳系能力者。

隠していても、いつか必ず判明してしまう。

ならば今言った方がいい。

 そう判断した上条は、事の一端を食蜂につたえることにした。

 

「作為力万端ねぇ」

「そうか。やっぱそうだよな」

「あなたらしくないわねぇ。当麻君なら、ぶっとばす!

ってなくらい、云うと思ったんだけどぉ?」

「色々あるんだよ」

「(重症ね)とにかく、先生を見つけて今日は帰りなさい」

「食蜂はどうすんだ?」

「私ぃ? 私はこのまま帰るわぁ。そんな気もおきないし」

「そっか。ありがとな、食蜂」

「っ、えぇ、また埋め合わせよろしくねぇ☆」

「ああ!」

 

 この後服を取り出して上条は、インデックスを背負って歩き出した。

食蜂は色々な片付けを済ませて、帰路につく。

 

「当麻君、この人形劇を収束させてちょうだいね」

 

 一人の女の子のために奮戦する彼の後ろ姿を見て、微笑むと同時にくるりを背を向ける。

 

 そして歩き出せるはずが、歩き出せなかった。

 

 ドンッ

 

「あらっ、え――」

 

 食蜂はその人物を見ると、表情をみるみると青くさせていく。

見られてはいけない場面を見られたと思い、すぐにリモコンを取り出そうとしたが――。

 

「【忘れろ】」

 

「あれ、私、何してたんだっけ?

……まあいいわぁ、せっかくだし見て回ろうかしらぁ」

 

 その人物は去る。

更に渦中にある彼、アウレオルス=イザードはさらに狂信的に書き綴っていく。

”この物語、この世界は、こうであるべきなのだ”と。 



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