仮面ライダーウェイク (脱臼 させ太郎)
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仮面ライダーウェイク
第1話「"人に成れぬなら──"」


 

 

 

 

自分の愚かさには、つくづく嫌気が差す。

 

他人と自分とを比べた時、そのあまりの差に自分が本当に同じ人間なのかを疑ってしまう程に。

 

それこそまさしく、「人でなし」だと。

 

自分のことが そう思えてくる。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.……………え?クビ?」

 

「そう、クビ。」

 

 

 

 

 

「ぅええ〜っっ、ちょ、ちょぉっと待って下さいよ本部長〜!何で僕がクビなんすかぁ?!」

「度重なる遅刻、欠勤、おまけに事件に対しての雑で適当な対応!理由は明白だろう!」

 

「いやまぁ、それはそうですけど、ちょっと聞いて下さいよ!」

「何だ。」

 

「二度寝ってめっちゃ気持ち良いんすよ。」

 

「さっさと荷物まとめてこい。」

「いや、ちょっとぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今から約5年前。日本国内で、未知のエネルギーを秘めたジッポライターのような形状をした物体が発見された。

そのライターは、使用した人間に特殊な能力を与え、禍々しい姿の怪人に変える力を持っていた。

その怪人は「デビル」と、そしてライターは「スペルライター」と名付けられた。

 

この力を悪用しようとする者を取り締まるために、国は法を改正、そして警察に準ずる新たな機関を立ち上げた。

 

機関はテクノロジーを提供する企業の違いから、

「エンゼル」と「ビートアップ・デーモン」の2つが設立され、

それぞれの機関の「仮面ライダー」と呼ばれる者達が、街の平和を守ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの男「一確(ひとがた) 除夢(のぞむ)」は、大学を卒業後都内のエンゼル本部に就職し仮面ライダーとなったが、持ち前の怠惰な性格によって失態を重ね、

たった今、クビを言い渡されたのである。

 

 

頭を抱えながら本部長室を出た除夢は、廊下でサングラスをかけたスーツの男とすれ違う。

 

 

「あ、田園さん。」

「一確か。……解雇通知か?」

「あぁ、はい。…知ってたんすか?」

「本部長から少し前に聞いていたんだ。エンゼルの人材を一人失うのは残念だな。」

「…すみません。」

「これからどうするつもりだ?」

「あー…えーと、とりあえずバイトでも探そうかなぁと。」

「そうか。染み付いた習慣を直すのは簡単では無いと思うが、次の職場では気を付けろ。」

「…はい。ありがとうございます。」

 

「では、私は失礼する。それじゃあ。」

「ええ、そんじゃ。」

 

サングラスの男は、その場を後にした。

 

 

「…さてと。いざ荷造りっと……。」

 

除夢は自身が使っていたロッカーに手をつけた。

 

 

 

 

 

手持ちの紙袋に荷物を詰めた除夢は「さぁ、どうしたもんか。」と思考しながら、自宅であるボロアパートへ向かって街を歩いていた。

 

考えごとをしながら歩いていたせいで、前から来るアタッシュケースを持った男に気付かず、肩がぶつかる。

 

「あぁっとぉ、すいません。」

「あ…、どうもすんません…。」

 

「あれ?アンタどっかで…」

「あ?あぁ…そういえばどっかで…」

 

 

「あっ、分かったぁ!アンタ、ビートアップ・デーモンのライダーだろ!」

 

「あぁ…エンゼルのライダーか…。何だっけ、名前…」

 

「俺、一確除夢です。」

「…穿(うがち) 覇動(はどう)。何してんだ、こんなとこで。」

 

 

2人は近くの喫茶店に入る。そこで除夢は解雇の件を話した。

 

 

「あー…そう…。そんでクビになったと…。確かにお前相当適当だったもんな。現場に来んのも毎回遅かったし。」

 

「そうなんすよねぇ。……こういう自分がずっと嫌いで。まぁ、ずっと直らないのも変わる努力を怠ってる自分のせいなんすけど。」

「それと…ここまで拗らせると、なんていうかこう、自分を信じられなくなるっていうか。……自分が人間じゃないような気がしてくるんすよ。」

 

「……ほう?」

 

 

「…『まともな人間』のラインから転げ落ちて、どうしようも無く落ちぶれて。まさしく『人でなし』って言うんすかね。…今更変われないんじゃないかって思っちゃうんすよね。」

 

 

「………へぇ。」

 

 

覇動は生返事を返しながら、カップに口をつける。

 

 

 

 

 

「……つーかお前、そのカップの中身全然減ってねぇじゃねぇか。水位変わってねぇぞ。」

 

「あぁ、俺ブラック飲めねぇんすよ。」

 

「じゃ何で注文したんだよ。馬鹿か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は喫茶店を出て、街から少し離れた人気の少ない道を歩いていた。

 

 

「穿さん、二軒目行きましょうよ。いざハシゴ。」

 

「喫茶店にハシゴするとかいう概念ねぇだろ。JKか。」

 

 

「…てゆうか、何でこんなとこ来たんすか?」

「ちょっと、な…。この辺りで待ってりゃあ…。」

 

 

 

「……来たな。」

 

「え…」

 

 

覇動の目線の先を除夢が見る。

 

 

そこには、ボストンバックを抱え辺りを警戒するようにして通過する、覆面の男がいた。

 

 

「あれは…」

 

「さっきネットニュースで見たんだよ。スペルライター使った銀行強盗が現金3000万持って逃走したってなぁ。あの銀行から逃げて人目につかないルートはここしか無いだろうから、待ち伏せてりゃ必ず現れるって訳だ。」

 

「へぇー、凄い推理力……って、早く追わないんすか?」

 

 

「……俺は今日外回りついでにもう一つ仕事を頼まれててな。」

 

 

覇動は手に持っていたアタッシュケースを開く。

 

 

「…おらよ。」

 

 

そして、中から取り出した物を除夢の方に突き出した。

 

 

「!!」

 

 

それは、ビートアップ・デーモンのドライバーとスペルライターだった。

 

 

「…良い感じのヤツがいたらスカウトして来いって上から頼まれてな。」

 

 

「…ハハっ、スカウトだからってわざわざドライバー用意しないでしょ、普通。」

 

「まあな。上の考えることはよく分からん。」

 

 

「……なぁ一確。お前さっき『今更変われない』とか言ってたよな。けど『変わりたい』って望みが確かなら、もう一度やり直せる筈だ。」

「お前がもう一度仮面ライダーになりたいんなら、文字通り『変身』したいんなら、…このドライバーを取れ。」

 

 

 

 

除夢は真っ直ぐにドライバーを見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………フハハッ」

 

 

 

 

 

そして、手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

「……ライターを起動してドライバーにセット、そんで上部のボタンを押せば変身だ。」

 

 

「…りょーかい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

覆面の男の前に、除夢が立ちはだかる。

 

 

「なっ、何だ貴様!!…仮面ライダーか?!」

 

 

「あぁ…そうだよ。俺は仮面ライダーさ。」

 

 

「チぃ…面倒臭いっ…!退けぇ!!」

 

 

覆面の男は懐からスペルライターを取り出し、ホイール部分を回す。

 

 

『ウァレフォル!』

 

 

すると男はライオンの立髪と馬の様な顔を持つ怪人『ウァレフォル・デビル』に変態した。

 

 

 

「フフ…フハハァッ!初陣なんだ……よろしく頼むぜぇ…。」

 

 

『デーモンドライバー!』

 

『欲望!』

 

 

除夢はそう言ってドライバーを腰に巻き、ライターを起動した。

 

起動したライターをドライバーにセットする。

 

 

『Let's go,to the mad.』

 

 

そして、ドライバーのボタンを押した。

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

 

 

『降臨!』

 

 

 

『The greedy breaker!フォースオブデザイア!』

 

 

 

『"デビルイズ ミー"』

 

 

 

 

 

 

 

除夢は、変身した。

 

 

2本の紫の角を持つ仮面ライダーに。

 

 

 

 

 

 

「オラぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

「ぐうぅっ…!!」

 

 

除夢は助走をつけてデビルに飛びかかり、胸部に右ストレートを撃ち込む。

デビルは体制を崩すが、立て直し反撃のフックを放つ。

 

これを躱した除夢は腹部に右ストレート。

怯んだところを、また同じ場所に右ストレート。

何度も同じ箇所に、ストレートを連発した。

 

デビルは腹部の前を両手でガードする。

 

自然と顔が下がったところに、膝蹴りを容赦無く叩き込んだ。

 

 

「ハッハァ!!」

 

 

「くっ…!うぉぉぉっっ!!」

 

 

デビルは両手の指の爪を鋭く立て、それを除夢に向かって降りかざす。

 

 

襲い来る左手を除夢は右手で防ぎ、続く2撃目の右手をキックで弾く。

ガラ空きの腹部を蹴り、デビルを後方へ吹き飛ばす。

 

立ち上がるのを待たずに助走をつけ、デビルの肩を踏み台に蹴り、空中に跳ぶ。

 

そしてバク転し、その勢いのままデビルの顔面に強烈なキックを放った。

 

 

「ぐはぁっ!!」

 

 

着地した除夢はドライバーに手を添える。

 

 

 

 

「…いざ欲望。」

 

 

 

そして再度ボタンを押す。

 

 

 

『デザイア フルビートアップ!』

 

 

 

除夢の背中から、禍々しいオーラに包まれた大きな翼が生える。

 

浮遊するようにしてデビルとの距離を取り、また助走をつける。

そして、両脚を揃えてジャンプ。

脚部にオーラを纏い、ドロップキックを放った。

 

 

 

デビルに命中し、爆散。

元の人間の姿に戻り、気絶した状態でその場に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

除夢はドライバーからライターを引き抜き、変身を解除する。

 

 

「…初陣にしては、まあまあ良かったんじゃ無いか?」

 

 

「アハハッ。まぁ、伊達にエンゼルのライダーやってませんでしたからね。……穿さん、名前って…自分で決めて良いんすか?」

 

「あぁ、構わないぞ。」

 

「そっすか。じゃあ、さっき良いの思いついたんでそれを。」

 

 

 

 

 

 

 

「タロットの悪魔のカード、その逆位置の意味。『覚醒』を表す『awakening』から取って」

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ウェイク"。……俺は、

 "仮面ライダーウェイク"だ。」

 

 

 



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第2話「病院送りのミュージック」

「ここが事務室。」

「はい。」

「ここがトイレ。」

「ほう。」

「向こうが会議室、隣がトイレ。」

「へぇ。」

「アレが本部長室。向かいにトイレだ。」

「トイレ多くないすか?」

 

 

正式にビートアップ・デーモンのライダーとなった除夢は、覇動に施設内を案内されていた。

 

 

「あれぇ?穿くんじゃないかぁ〜っ☆こんなとこで何してるんだぁい?」

 

丸眼鏡の男が話しかけてくる。

 

 

「美花か。コイツを案内してるとこだ。」

 

「あっ!キミがウワサの新人く〜ん?!エンゼルから越してきたっていう。」

 

「あぁ、はい。一確除夢です。よろ「ボクは美花(みはな) 愛志(いとし)!よろしくねっ☆」

 

「え、あ、はい。」

「ねぇねぇ!突然だけど、ボクの顔の肌見て!どう?!」

 

「え?あー……なんかめっちゃキレイっすね。男性なのに。」

「そうでしょ〜うっ!!毎日のスキンケアを欠かさないようにしてるんだよねぇ!ボクってばホント、ビューティフォー☆」

 

そう言って突然手鏡を取り出し、キメ顔をしだす愛志に、除夢は困惑する。

 

「…何すか、コイツ?」

 

「…美花愛志。俺達と担当する区画は違うが、コイツも立派な仮面ライダーだ。」

 

「えー……。」

 

 

「あぁもうホント美しすぎて無理!

 自撮りしとこ自撮り!」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

「……いざ腹パン。」

「やめとけ。」

 

拳を構えた除夢を覇動が制止する。

 

 

「おっと、そろそろ昼食の時間だね!ボクは近くにある焼きそば専門店に行ってくるよ!それじゃ!」

 

愛志はスキップで行ってしまった。

 

 

「…俺達もメシ食いましょうか。」

「そうだな…。あぁ、そういや早速仕事がある。昼食とったら俺に付き添え。」

「はい。どこ行くんすか?」

 

 

「病院だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ストリートバンド『SHARK』のボーカル、小田陽二郎さん。」

「…はい、そうです。」

 

除夢と覇動が入った病室には、左手と右足を包帯で巻かれた男性がいた。

 

「骨折ですか?」

「はい。夜道を歩いてたら突然怪人に、デビルに襲われて…。」

「それが3日前、で…別の病室にいるギターの橋本さんも先日襲われたと。」

「…犯人は『SHARK』自体に恨みがあるんすかね?」

「確かに、僕達の活動を良く思っていない人もいたかもしれないです…。」

「なるほど…分かりました。引き続き調査にあたります。」

「よ、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

まだ襲われていないメンバーの内、2人はドラムを担当する佐藤に張り付き、ベースの大田には他のライダーが張り付いた。

2人は佐藤を尾行しながら、民家の壁に隠れていた。

 

 

「いやーそれにしても、俺もドラム叩いてみたいなぁ。ダダダーンっつって。ダダダーンっつって。」

 

「…お前さっきからそればっかだな。いい加減引っ叩くぞ。ダダダーンっつって。」

 

「何すかダダダーンって。」

 

「テメェが言ったんだろが。」

 

 

 

 

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁっ?!!」

 

 

「「!!」」

 

 

 

 

2人が悲鳴の方に振り向くとそこには、ジリジリと佐藤に迫る、王冠を被り剣を携えたデビルがいた。

 

 

「一確。」

 

「あいよ。」

 

 

除夢はデビルの方へ走り出し、懐からドライバーを取り出す。

 

 

『デーモンドライバー!』

 

『欲望!』

 

『Let's go,to the mad.』

 

 

 

 

「変身!」

 

 

 

 

『降臨!』

 

 

『The greedy breaker!フォースオブデザイア!』

 

『"デビルイズ ミー"』

 

 

 

 

「オゥラっ!!」

 

「ッ!!」

 

 

不意を突かれ殴り飛ばされたデビルは、直ぐに立ち直る。

 

距離を詰めたウェイクが放つ回し蹴りを両手でガードした。

 

そして腰に携えた剣を抜刀し、振り下ろす。

後ろに下がり避けるウェイク。反撃のため再度距離を詰めようとするが、デビルは間髪入れずに薙ぎ払いを繰り出した。

 

「おっと!クソっ、やっぱ武器持ちとはやりづれぇな。」

 

 

「…あの姿は、ベレト・デビルか?」

 

「穿さぁん、突っ立ってないで加勢してくださいよ!」

 

 

「……あぁ。」

 

 

覇動も懐から、ドライバーを取り出した。

 

 

 

『デーモンドライバー!』

 

 

憤怒(ふんど)!』

 

 

ライターをドライバーに挿入する。

 

 

『Let's go,to the mad.』

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

そして、ボタンを押した。

 

 

 

『降臨!』

 

 

 

『Like a fire and thunder!フォースオブアンガー!』

 

 

『"ドントフォーギブ ユー"』

 

 

 

 

変身した覇動が、デビルの方に向く。

 

 

「おい、お前。」

 

「…?」

 

 

「その立派な王冠、気に入らねぇぜ…。」

 

 

 

「ぶっ潰す。」

 

 

 

 

『アンガー レイジチョッパー!』

 

 

覇動の右手に、短剣が現れる。

 

 

そして覇動はデビル目掛け一直線に突進する。

真正面から突っ込む覇動に、デビルは剣を振り下ろす。

 

それを短剣でガード。刀身同士がぶつかり金属音が鳴り響く。

相手の剣を弾き覇動は突きを繰り出し、今度はこれをデビルが剣で受ける。

すかさず再度斬りかかる。これもガード。

覇動の素早い剣撃に押され、デビルは攻撃に出れない。

 

練撃の最中、覇動は短剣の側面にあるボタンを押す。

 

 

『レイジ!』

 

 

すると、短剣から炎と電気が発生し刀身を纏う。

 

 

「オラぁ!」

 

 

「…ッ!」

 

 

威力を増した剣撃が、デビルの剣を弾き飛ばした。

 

その一瞬の隙に覇動は、デビルの胸部へ一撃を喰らわせた。

ダメージを受けたデビルはよろめく。

 

 

覇動は短剣のグリップエンドにあるスロットに、ドライバーから引き抜いたスペルライターをセットする。

 

 

『アンロック』

 

 

さらに側面のボタンを3回押す。

 

 

『スリーレイジ!』

 

 

そしてグリップのトリガーを引いた。

 

 

『スリーレイジスペル!』

 

『ヒートスラッシュ!』

『"Shit!"』

 

 

覇動が短剣で薙ぎ払いをすると、炎の斬撃がデビル目掛け飛ぶ。

 

 

「ぐはぁっ!!」

 

 

斬撃を喰らったデビルは大きく吹き飛ばされた。

 

 

 

「おー、すっげ……。これが仮面ライダー…えっと、」

 

 

 

「ヘイト。…仮面ライダーヘイトだ。」

 

 

 

よろめきながら立ち上がるデビルに、とどめの一撃を入れるためヘイトは剣を構える。

 

 

 

その時、どこからかギターを弾く音が聞こえたかと思うと、旋律の様な波状のエネルギー弾が2人目掛け飛んで来る。

 

 

「うおぉ!?」

 

「っ…」

 

 

2人が旋律を躱すと、先程戦っていたデビルの前に、ユニコーンの様な頭部とギターを持った別のデビルが現れた。

そしてよろめくデビルを抱え、その場から逃げ出した。

 

 

 

「あ!おい!……って、逃したか…。」

 

「……。」

 

 

 

空間に、静寂が流れる。



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第3話「怒りの剣」

もう誰にも使われていないような、古びた倉庫。

そこに逃げ込んだ二体のデビルは、ライターの力を解除し、元の人間の姿に戻った。

 

 

「追手は…来てないか。…スマン、助かった。明日人。」

 

「……なぁ兄ちゃん。やっぱもう止めようよ、こんなこと。」

 

「…今更止められないだろう。それに、アイツらに舐められたままでいいのか?」

 

「それは…嫌だけど…」

 

「いいか、明日人。正しいのは俺達なんだ。アイツらを、懲らしめてやるだけだ。」

 

「う、うん。分かったよ、兄ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、犯人のデビルは、2人組?」

「はい。佐藤さんを襲ったデビルとの交戦中、別のデビルが加勢してきて、そのまま2体に逃走されました。」

 

先程まで戦っていたデビルについて、覇動と除夢は小田に報告していた。

 

「俺達に恨みがあって、2人組…ま、まさか」

 

「犯人に心当たりが?」

 

「はい。…『ゼブラーズ』っていう、兄弟で弾き語りやってるユニットがいるんですけど」

 

「ゼブラーズ?どっかで……あぁ、そうだ。」

「駅前でアコギ弾いてたあの兄弟か。」

 

「えっ、穿さん、知ってるんすか?そのユニット。」

 

「…一度だけ演奏してたのを聴いたことがあるんだよ。」

 

「そうなんです。アイツらも俺達と同じストリートの人間で…それで、俺達はたびたびちょっかいをかけてたんです。」

 

「『今更兄弟ユニットなんて流行らねぇよ』とか言って、馬鹿にしてて。当然向こうは俺達を嫌ってましたし、その仕返しで襲って来たんじゃ無いかって…」

 

「なるほどね……」

 

そう言って覇動は踵を返す。

 

「情報ありがとうございます小田さん。一確、一旦本部に戻るぞ。」

 

「あぁ、はぁい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部内の自販機で、覇動は缶のコーヒーを買う。

 

「…兄の有川進介と、弟の有川明日人。情報通りなら、今日も2時間後に駅前でゼブラーズのパフォーマンスがある筈だ。そこに割り込むぞ。」

 

「りょーかい。…それにしても、意外ですね。穿さんがストリートのミュージシャンの演奏を聴いてるなんて。好きなんすか?」

 

「……いかんせん、自分の『好きなもの』ってやつを見つけるのが下手くそでな。流行りの音楽を聴くぐらいしか、趣味といえる趣味が無いんだよ。」

 

「…へぇ。」

 

「お前はどうなんだ。趣味とかあんのか。」

 

「休みは家でゲームとかしてますけど、まぁ俺の場合はデビルとドンぱち戦うこと自体が趣味みたいなもんなんで。」

 

「そうか。」

 

 

 

「…お前はどうだ。さっきからそこで盗み聞きしてるやつ。」

 

「えっ」

 

「あれぇっ、なぁんだ気付いてたのか〜☆そうならそうと早く言ってよ〜!」

 

「美花ァ…」

 

除夢は、なんとも形容し難い顔をする。

 

「う〜ん、ボクは結構多趣味な方だと思うんだけどぉ、強いて言うんなら〜…」

 

 

 

 

「自分磨き?」

 

 

 

「あぁもう、ボクってばホント今日もビューティフォー☆」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

「…ちなみにビートアップ・デーモン内で毎月1番最初に携帯の容量が無くなるのは美花だ。」

 

「いや、絶対コレのせいですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日の昼下がり。

楽しげな声と足音。

盛んに人が行き交う駅前で、ギターを手に歌う青年が2人。

 

足を止める者は多くは無いが、その確かな腕に、聴き入る客もいた。

 

演奏が終わる。観客が拍手を送る。

「「ありがとうございました!」」

2人が締めの挨拶をして、次第に拍手の音は弱まる。

 

 

 

 

 

ただ、ひとつだけ止まない拍手があった。

 

不自然に長ったらしいその音の方を、全員が向く。

 

手を叩くことを止めない男は、胡散臭い笑みを浮かべながら2人の方へ近づいていく。

 

「…綺麗な歌声をしてるじゃないかぁ。思わず聴き入っちまったぜぇ…」

 

そう言った除夢の後ろには、覇動もいた。

 

「あ、あんたらは…」

 

2人は焦りを見せた。

 

「…ビートアップ・デーモンだ。『ゼブラーズ』、有川進介と有川明日人だな。『SHARK』のメンバーを病院送りにした疑いがある。ご同行願おうか?」

 

 

「…兄ちゃん。」

 

「あぁ……やるしかないっ!」

 

有川兄弟はスペルライターを取り出し、起動する。

 

 

『ベレト!』

『アムドゥスキアス!』

 

 

デビルとなったゼブラーズの2人を見て、先程まで演奏を聴いていた観客含め、人々は避難した。

 

除夢と覇動はドライバーを取り出す。

 

 

「一確、弟の方を頼む。」

「了解。」

 

 

『欲望!』

『憤怒!』

 

『『Let's go,to the mad.』』

 

 

「「変身」」

 

 

『『降臨!』』

 

 

『The greedy breaker!フォースオブデザイア!』

『Like a fire and thunder!フォースオブアンガー!』

 

『"デビルイズ ミー"』

『"ドントフォーギブ ユー"』

 

 

「オラァ!テメェの相手はコッチだぜぇ!」

「くっ!」

 

ウェイクが弟の方のデビルと格闘を始める。

 

「お前の相手は俺だ…!」

「うおぉっ!」

 

ヘイトは2体の連携を割くため、兄の方のデビルに斬りかかり、追い込む形で別の場所へ誘導する。

 

 

 

「いざ欲望っ!」

 

ウェイクが飛びかかるようにパンチを繰り出す。

デビルはそれを手に持ったエレキギターのような形状の武器で防ぎ、ウェイクと距離を取る。

そして、ギターの弦を弾く。

するとそこから旋律状のエネルギー波が、ウェイク目掛けて繰り出せれた。

 

「そこはアコギじゃねぇのかよぉっ!」

 

文句を吐きながら攻撃を躱し、デビルからは死角になる壁の裏に隠れる。

 

しかし旋律は障害物を躱すように回り込み、執拗にウェイクを追う。

間一髪でこれを躱した。

 

「チィッ!隠れさせてもくれねぇってかぁ。」

「…これが『アムドゥスキアス・デビル』の能力か。穿さんからの情報通り、相当に厄介だぜぇ…」

 

 

 

 

剣同士が激しくぶつかる。

ヘイトとデビル、お互いに譲らない攻防を繰り広げる。

ヘイトは手に持つレイジチョッパーにライターをセットし、側面のボタンを4回押した。

 

『アンロック』

『フォーレイジ!』

 

『フォーレイジスペル!』

 

『エレキスラッシュ!』

『"Shit!"』

 

 

「オラァッ!」

 

電気を纏った斬撃をデビル目掛け飛ばす。

デビルは剣の側面でこれを防ぐ。

 

今度はボタンを1回押す。

 

『ワンレイジ!』

 

『ワンレイジスペル!』

 

『ヒートエッジ!』

『"Shit!"』

 

ヘイトの剣の刀身が高熱を帯びる。

再度デビルとの距離を詰め斬りかかるが、デビルも素早い剣撃で牽制する。

 

デビルが剣を大きく振るう。

デビルの剣はヘイトのものより長く、ヘイトは自分の間合いを取ることに苦戦していた。

 

「…どうやら、リーチは俺の方が上らしいな。」

 

「…やたらと長い剣だな。気に入らねぇぜ…。」

 

 

 

 

 

 

 

夥しい数の旋律がウェイクを襲う。

先程から、ウェイクはこの弾幕を危なっかしくも避け続けていた。

 

デビルが口を開く。

 

 

「…あんたの変身する前の顔、知ってるぞ。」

 

 

「あぁん?」

 

 

「あんた確か、エンゼルのライダーだったろ。散々ネットでネタにされてたぞ。都内のライダーは全員あんな適当な対応なのかって。」

 

 

「…あー……」

 

 

「危うく確保した犯人を逃しそうにもなったらしいじゃないか。…なんでデーモンのベルトを巻いてるのかは知らないが、俺もラッキーだ。あんたが相手なら、逃げられるかもなっ!」

 

 

「…『変身』すんだよ、俺は。変わってやるさ。お前も今からぶっ飛ばす。逃がさないぜ。」

 

 

「ふん、どうやってぶっ飛ばすんだ。現にあんたは俺に手も足も出ない。飛び道具の一つも持っていないんだからなぁ!」

 

 

「…飛び道具ねぇ、そんなら…」

 

 

ウェイクは、近くにあったベンチをコンクリートの地面から引き抜く。

 

 

「コイツでどうだぁぁッ?!!」

 

 

そしてそのままデビルに向かって全力で投げつけた。

 

 

「な、何っ?!!」

 

 

咄嗟にギターでそれを防御したデビルは、今さっきまでベンチがあった場所を見る。

 

そこには既にウェイクの姿は無かった。

 

 

ベンチを投げると同士にデビルに突っ込んでいたウェイクは、その顔面に体重を乗せた右ストレートをぶつけた。

 

「ぐはぁっ!!」

 

「オラオラオラオラオラぁっ!!」

 

畳み掛ける様に膝蹴りや頭突きを繰り出す。

 

なんとかウェイクと距離を取ったデビルは、再度ギターを掻き鳴らす。

先程同様に無数の旋律が一斉にウェイクを襲う。

 

 

しかしウェイクは怯むことなく、デビルに一直線に走り出した。

 

 

そして、さながらダブルダッチの様に、旋律と旋律の間をくぐり抜けながらデビルとの距離を詰め始める。

 

あっという間に、ウェイクはデビルの目前まで迫る。

 

「く、くそっ!…でも、この距離なら」

 

デビルの放った最後の旋律が、ウェイクに直撃した。

 

「よし!当たった!」

 

 

 

 

 

しかし、ウェイクは止まっていなかった。

 

旋律に直撃してもなお怯まずに、突進の勢いそのままにアッパーをデビルにお見舞いする。

 

 

大きく後方に吹き飛ぶデビル。ウェイクはドライバーのボタンを押す。

 

 

『デザイア フルビートアップ!』

 

 

「オラァァァァァッッ!!」

 

 

空中にジャンプしたウェイクは、上空からデビル目掛け垂直にドロップキックを放った。

 

 

爆発が起こり、デビルの変身が解ける。

その場に倒れ込む有川弟を確認し、ウェイクは「ふぅー」と溜め息をついた。

 

 

「さてと…向こうはどうかなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

デビルの繰り出す薙ぎ払いをヘイトはしゃがんで躱す。

その後反撃で繰り出す突きをデビルは後ろに下がり躱す。

 

すかさず放たれたデビルの切り上げを、ヘイトは咄嗟に刀身の側面で防ぐ。が、衝撃までは殺せずに後方へ吹き飛ばされてしまう。

 

 

「…有川。犯行の動機は、馬鹿にされたことに対するSHARKへの復讐か?」

 

「…そうだ。単純なことだ。アイツらは俺の怒りを買った。だからその怒りを晴らす。それだけだ。」

 

「……そのやり方で、本当にいいのか?」

 

「…何?」

 

 

「その怒りの晴らし方で、本当にお前の気に入らないものを全て排除出来るのか?お前は本当に、それで胸張れんのか。」

 

 

「……そ、それは」

 

 

ヘイトは、剣の側面のボタンを8回押す。

 

 

『エイトレイジ!』

 

『エイトレイジスペル!』

 

『エレキウィップ!』

『"Shit!"』

 

 

ヘイトの剣の剣先から、電気の鞭が伸びる。

それをデビル目掛け薙ぎ払う。

 

「ぐっ?!」

 

デビルに当たった鞭は、そのまま体にグルグルと巻きつき、動きを縛る。

ヘイトは鞭をグイッと強く引き、身動き取れないままのデビルを引き寄せ、斬りつけた。

 

その衝撃に吹き飛んだデビルは、よろめきながらも立ち上がる。

 

ヘイトはボタンを13回押す。

 

 

『サーティーンレイジ!』

 

『サーティーンレイジスペル!』

 

『バーニングスラッシュ!』

『"Shit!"』

 

 

激しい炎を纏う斬撃を飛ばす。

 

「二度も喰らうかっ!」

 

デビルは先程と同じ様に、これを剣の側面で受ける。

しかし、さっきのものよりも遥かに威力を増した斬撃を完璧に受け切ることは出来ず、剣を弾き飛ばされてしまう。

 

その隙を狙ったヘイトは、ボタンを15回押した。

 

 

『フィフィティーンレイジ!』

 

『フィフィティーンレイジスペル!』

 

 

「ぶっ潰す。」

 

 

『アンガーエッジ!』

『"Holy shit!"』

 

 

 

黒の禍々しいオーラを纏った刀身で、デビルを一閃する。

 

 

 

しばらくの沈黙の後、デビルは大爆発を起こし、変身が解除された。

 

 

 

「ぐはっ…ぐ、うぅ、…実力で、結果で見返せばよかったものを、…俺は……俺は、明日人を巻き込んでまで…こんな、しょうもない様なことを…うぅっ」

 

 

 

「………怒りは、悪い感情じゃ無い。何かを嫌うことで前に進めることもある。……今度はその晴らし方を間違えるなよ。そのやり方は、自分自身を嫌いになるだけだからな。」

 

 

「…また一からやり直せば良い。お前達の演奏は、嫌いじゃあ無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覇動はデスクに座り、今回の件についての報告書をノートパソコンで作成していた。

 

休憩がてら缶のコーヒーを口にしていると、喧しい声が近づいてきた。

 

 

「あぁッ!!ったく、マジ無いわぁッ!!クソがぁ!!」

 

「……どうした、一確。」

 

「聞いてくださいよ穿さん!俺さっきバス使ったんすよ!」

 

「おう」

 

「そんで降りる時、カード使ったんすよ!そしたら10円足りなかったんで、財布の中漁ったんすよ!」

 

「ふん」

 

「そしたら周りの乗客とか運転手が、俺を急かす様な目で見やがるんすよ!!あぁ思い出すだけで腹立つ!!クソがぁッ!!!」

 

 

「…あっそ。」

 

 

しょうもない怒りの理由に、覇動は呆れた顔をした。

 

 



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第4話「トップの男」

 

「いや〜すいませ〜ん。遅れましたぁ!」

「……クソ遅ぇよ一確。決めた時間の10分前には来いっつっただろ。」

「いやぁ申し訳ない!ガチで!うん!」

「…おら、もう『あの人』来るぞ。」

 

2人の元に男が乗った一台のバイクが近づき、止まる。

ヘルメットを外した男はバイクから降り、懐から取り出したサングラスを掛ける。

 

 

 

「ご苦労、待たせたな。」

 

 

 

その男は「田園 一潜(たぞの ひせん)」。

除夢の所属していたエンゼル本部のライダーであり、「エンゼルのトップ」と謳われる実力者だ。

 

 

 

一潜の降りたバイクは変形、縮小し、スペルライターとなって一潜の手に収まる。

 

「お久しぶりです、田園さん。」

「ああ、久しぶりだな一確。本当にデーモンのライダーになっていたんだな。」

「えぇ、おかげさまで。」

 

「ご無沙汰してます、田園さん。」

「お前とも久しいな、穿。」

「はい。今回の合同作戦、よろしくお願いします。」

「あぁ、2人ともよろしく頼むぞ。」

 

 

 

 

 

現在、世界ではスペルライターの取り扱いについて厳重な取り決めがされてある。

政府が定めた機関に属さない一般人のスペルライターの使用、所持は基本禁止されており、それはこの国でも例外では無かった。

その中で違法にライターを売り捌く「売人」絡みの事件は、数年前から頻繁に起きていた。

 

そして今回、都内のある集団が売人から大量にライターを買い取ったという情報があり、それを取り締まる為、「エンゼル」と「ビートアップ・デーモン」の合同作戦が決定した。

 

 

 

「…で、その作戦に抜粋されたのが俺達。とは聞きましたけど…。確かその集団って、全員高校生なんでしたっけ?」

「取り押さえられた売人からの話だとな。だがまぁ、ただの高校生にあの量のスペルライターを買う金は無いだろう。実際は、そうする様に仕向けた親玉がいると、私は睨んでいる。」

「成程ねぇ〜流石田園さん。」

 

「連中の屯する場所と時間帯は会議の情報の通りだ。先に張り込んで取り押さえるぞ。」

「了解。」

「りょーかい。」

 

 

 

 

 

人気の少ない道路の裏通り、もともと人の所有物だったその倉庫の壁には、スプレー缶によるものであろう落書きがあちこちに描かれていた。

 

そこに集まった10数人の高校生達。髪を染めた者や、制服をだらしなく着る者。ピアスをした者もいた。

 

 

「よっしゃ!早速アレやろうぜ!」

「お!じゃあ俺も!」

 

 

数人がポケットからスペルライターを取り出す。

 

『"ソルジャー!"』

 

ライターを起動すると、少年達は全身が紅に染まった「ソルジャー・デビル」へと姿を変える。

 

 

「ヒャッホウ!体軽っ!」

 

 

怪人となった者達がはしゃぐ中、ライターの使用を渋る者もいた。

 

 

「どうしたんだよ?お前もやれって!折角城島さんが金まで出してくれたんだからさ!」

「いやなんか、実際に怪人になるって、気味悪ぃなぁって……」

 

「さてはお前…ビビってんなぁ!」

「お、なんだお前!ビビってるから使えねぇのかよ!ダセェな!」

「はぁ?!ビビってなんかねぇよ!!見てろや!」

 

 

『"ソルジャー!"』

 

「おらぁ!」

「おぉ!やるじゃん!」

 

 

そして全員がデビルに変態し、騒ぐ声が大きくなりだした時。

 

 

 

「やぁやぁ元気な糞ガキのみんなぁ!!お兄さん達による『お尻ペンペンタイム』だぜぇぇ!!」

 

 

待ち伏せていた3人が姿を表した。

 

 

 

「な、何だ?!テメェら!!」

 

「…『仮面ライダー』だ。大人しく署まで連行されとけ。」

 

 

「お、おい!あのサングラスのヤツ!エンゼルのめちゃくちゃ強いって噂のヤツだぞ!」

「ど、どうすんだよ!ヤベェって!!」

 

「ヘッ!仮面ライダーだろうが何だろうが、今のオレ達が全員でかかれば負けるわけねぇぜ!」

「そ、そうだよな!向こうはたかが3人だ!」

 

 

 

「大人しく捕まる気は無いらしいすよ。」

「そうだな。」

 

 

除夢と覇動はドライバーを腰に巻く。

 

 

「「変身」」

 

 

 

『『降臨!』』

 

 

『フォースオブデザイア!』

『フォースオブアンガー!』

 

『"デビルイズ ミー"』

『"ドントフォーギブ ユー"』

 

 

そして、ウェイクとヘイトに変身する。

 

 

 

「お、おらぁぁぁっ!!」

 

 

 

2人に向かい走り出すデビル達。

迎え撃つため、2人も体を前に傾けたその時。

 

 

 

何処からか足元に銃弾が撃ち込まれ、火花を上げる。

 

怯んだ2人は、銃声の鳴った方へ目を向けた。

 

 

 

 

「おいコラぁぁ!!!…オレのかわいい後輩達に…何しようとしてんの?」

 

 

そこには、機関銃の様な武器と犬の様な顔を持った「グラシャ=ラボラス・デビル」がいた。

 

 

「オラお前らぁ!さっさと逃げろ!」

 

「あ、ありがとうございます!城島さん!」

 

 

「あ、おい!待てやガキ共!」

「アイツが親玉って訳か。」

 

 

 

「…奴の相手は私がしよう。お前達は彼らを追え。」

 

「お願いします、田園さん。」

 

2人は逃げた少年達を追った。

 

 

 

一潜は無言でデビルに向き直り、手に持ったエンゼルのドライバーを腰に巻く。

 

 

 

『エンゼルドライバー!』

 

 

スペルライターを起動し、

 

 

『秩序!』

 

 

ドライバーに挿入。

 

 

『武装準備完了。Ready to arm.』

 

 

そしてドライバー前面の翼の様な形状のパーツをスライドした。

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

『誠心!』

 

 

『One city closer!フォースオブオーダー!』

 

 

『"マネジメント ゼム"』

 

 

 

一潜は、金の角と緑の装甲を持つライダーに変身する。

 

 

 

「お、アンタ見たことあるぜぇ。エンゼルのトップとか言われてるライダーだろ。」

 

 

「如何にも、私が『仮面ライダーテリジェンス』。今からお前を取り押さえる。」

 

 

「ハッ!やってみろよ!」

 

 

 

デビルは倉庫の外へと走る。

 

テリジェンスは1つのライターを起動した。

 

 

 

『エンゼル X-1(クロス ワン)!』

 

 

 

起動したライターはバイクに変形。

テリジェンスはそれに跨り、デビルの後を追った。

 

 

道を高速で走るデビル。

振り返ると、テリジェンスがバイクでの追跡を続けている。

 

 

デビルがテリジェンス目掛け機関銃を乱射。

全て躱したテリジェンスは、お返しに右腕に取り付けられた装置から、鎖状のエネルギー弾を射出する。

 

 

「うおぉっと!」

 

 

連射される鎖を躱し続けるデビルだが、段々と追い詰められていく。

 

テリジェンスもバイクのスピードを上げ、確保を狙う。

 

 

 

しかしデビルは余裕そうに笑みを浮かべ、背中から翼を生やした。

 

そして飛翔し、空中に逃れる。

デビルはこのまま逃げ切ろうと、テリジェンスに背を向けた。

 

 

 

テリジェンスはグラシャ=ラボラス・デビルの飛行能力を知っていた。

即座にバイクのメーターパネルで操作を行い、前後の車輪を真横に傾ける。

 

バイクはホバリングモードに変形し、空中に浮遊。空を飛ぶデビルを追従する。

 

 

 

「ゲェ?!そっちも飛べんのかよ!!」

 

 

 

焦るデビルはまたも鎖に追い詰められる。

 

今度こそエネルギー弾が命中する、かに思われた。

 

 

 

「まだ捕まってたまるかよ!」

 

 

 

デビルは突如姿を消した。

 

 

 

「!!」

 

 

 

放たれた鎖は空を切る。

テリジェンスは辺りを見回すが、デビルは何処にも居なかった。

 

 

 

 

「……既に透明化の能力まで使いこなしていたか。」

 

 

 

デビルを逃したテリジェンスは、地上へと降りた。

 

 



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