月の少年と陽だまりの少女がいない1日 (ゆるポメラ)
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第0話 1本の電話

ゆるポメラです。
明けましておめでとうございます。
また書いてみました。

それではどうぞ。


ここは羽丘女子学園(はねおかじょしがくえん)。歴史ある女子校である。

その放課後の校門前にて。

 

「みんなー、おっまたせー!」

「あっ、リサ姉、来た来た!」

 

走って来た少女、今井(いまい)リサの姿を見つけた宇田川(うだがわ)あこ。

 

「遅かったわね、リサ」

「はぁ、はぁ……いや~、ごめんごめん。途中で先生につかまっちゃってさ~」

「……なんでつかまったかについては、触れないでおくよ」

 

遅れた理由を幼馴染みの湊友希那(みなとゆきな)に話すリサ。

そして遠目から見たら、少女にも見えなくもない中性的な少年、水無月悠里(みなづきゆうり)がリサに言う。

彼は成り行きで友希那達が組んでるバンド『Roselia』の手伝いをしている。限られた時間だけだが。

 

ちなみに悠里は当初は断ったが、幼馴染みである友希那の熱意……他の4人にも負け、6人目のメンバー扱いとなっている……

 

「今井さん……すごく息切らしてるけど……大丈夫ですか?」

「これで全員揃いましたね。行きましょうか」

 

同じバンドメンバーで、キーボード担当の白金燐子(しろかねりんこ)とギター担当の氷川紗夜(ひかわさよ)が言った。

ちなみに2人は花咲川女子学園(はなさきがわじょしがくえん)という学校に通っている。

 

「ちょっとごめん、電話でるね。……はい、今井です!」

 

スタジオに行こうとした矢先、リサのスマホに電話の着信音が鳴った。

 

『もしもし、今井さん? お休みの日にごめんね』

「あれ、店長。どうしたんですか?」

 

電話の相手はリサがバイトをしているコンビニの店長だった。

 

『急で申し訳ないんだけど、今日シフト入れないかな』

「えっ、今日ですか?」

『本当はモカちゃんがシフト入ってたんだけど、風邪で来れなくなっちゃって……3時間だけでいいから、今からお願いできないかな』

「今からですか? うーん……」

 

シフト入ってあげたいが、これからバンドの練習あるし、どうしたものかと考えるリサ。

とりあえず確認するので、折り返し連絡しますと伝え、電話を切った。

 

「今度は何……ってモカじゃん。なになに……『リサさーん、モカちゃんのお願い聞いてください~。今日風邪でバイト行けなくなっちゃったんです……あたしの代わりに入ってもらえませんか? 後でお礼するので~』」

 

電話を切った直後、バイト仲間で後輩の青葉(あおば)モカからメールが入ってきたので、読み上げるリサ。

それを読み終わった後、あちゃー……と呟く。

 

「リサ、どうしたの?」

「これから3時間だけシフトに入ってほしいってお願いされちゃった。モカが来れなくなっちゃったみたいで……」

「そう。リサはどうしたいの?」

「いつもお世話になってる店長のお願いだし、モカの代わりなら行ってあげたいけど……」

 

今日は練習があるからダメだよね……と友希那に言うリサ。

 

「リサが行きたいなら、行ってくればいいわ」

「えっ、いいの!?」

 

友希那の予想外な言葉を聞いて驚くリサ。

 

「湊さん、いいんですか? もともと今井さんが入っていたシフトではないですし、断ってもいいのでは」

「練習には集中してもらいたいの。落ち着かないまま、練習されても困る。今日練習できなかった分は、別の日に2倍やってもらうわ」

「…別の日に2倍って……妥当なのかな? かな?」

 

紗夜の言葉に友希那は今日練習できなかった分は、別の日に2倍やってもらうと答えた。

それを聞いた悠里は妥当なのか?と疑問に思いつつも、でも一理あるかもと納得した。

 

「友希那~、ありがとう! みんなごめん、今日はバイトに行かせてもらうね。もし早めにあがれたらスタジオ行くからね!」

 

そう言ってリサはバイト先に向かうのであった。

 

「? ちょっとごめん、僕も電話みたい。電話でるね」

 

リサ走って行く姿を見届けた直後、悠里のスマホにも電話の着信音が鳴った。

 

『もしもし、ゆうり君? 急にごめんね』

花怜(カレン)ちゃん? どうかしたの?」

 

電話の相手は、別の高校に通っている悠里の幼馴染み、三日月花怜(みかづきカレン)からだった。

 

『一生のお願い! 放課後の練習、今から手伝って~!』

「……えっ、今から?」

『うん。ファーストライブが終わって、しばらくしたら新メンバーが3人入って、海未(うみ)ちゃんが新しい訓練メニューを作ったんだけど、私1人じゃさばききれなくて……』

「…ルーちゃんは? 今日は暇みたいな事、今朝メールで言ってたけど?」

瑠菜(ルナ)ちゃん、今日は暇だけど、宿題と晩ご飯の用意しなきゃいけないから無理だって』

「……ティアちゃんは?」

『パスパレの仕事が入ってるから無理って言われたよ。あと私、軽く怒られた……』

「……ドンマイ」

 

他の幼馴染み、明美瑠菜(あけみルナ)如月(きさらぎ)ティアの名前を挙げてみるが、2人共忙しいと断られたそうだ。

それで最後の頼みの綱である悠里に花怜は電話をかけ今に至るとの事……

 

「…それで? 今日の練習時間は何時間くらいなの?」

『ちょっと待ってて。えっと……今日は、2時間くらいだけど場合によっては、3時間くらいになるかな……』

「分かった。今から急いで向かうよ。練習場所はどこ?」

『神田明神だけど……ゆうり君、今日バンドの練習じゃないの?』

「…今日練習できなかった分は、別な日に5()()やる事にするよ」

『ほんとにゴメンね……ゆうり君が手伝いに来る事は、私から他のみんなにちゃんと説明しておくから』

 

それじゃまた後でねと花怜に伝え、電話を切った悠里。

 

「…そういう訳で、今から音ノ木坂学院(おとのきざかがくいん)に通ってる幼馴染みの手伝いに行ってくる。もし早めに終わったらスタジオに行くから」

「ええ、わかったわ」

 

友希那達にそう伝えた悠里は、目的地に向かって走って行くのであった……

 

「……」

「そっか~、今日リサ姉とゆうりんいないんだ……」

 

走って行く悠里を見ていた友希那、それを見てあこが呟く。

 

「今井さんとゆうりくんがいない練習って……初めてだよね……」

「2人共、早めに終わったら来ると言っていましたし、私達は普段通りに練習しましょう」

「そうね。リサと悠里がいなくても、やることは変わらないわ。私達もスタジオに向かうわよ」

 

2人がいなくてもやる事は変わらないと言った友希那達4人はスタジオに向かって歩いていたのだが……

 

「「「……」」」

「(うぅ……なんか空気が重いなぁ……よ、よし、あこがリサ姉とゆうりんの代わりに盛り上げよう!)」

 

何故か空気が重いと感じたあこは2人がいない代わりに自分が盛り上げようと思い……

 

「きょ、今日はあこがリサ姉とゆうりんの代わりやります! えーっとえーっと……そうだ、リサ姉の真似しよう! やっほ~! ゆっきな~! げんきー?」

「……」

「ご、ごめんなさい……」

「……行くわよ」

「あっ、友希那さん、待ってください~!」

 

リサの真似をしてみたあこだが、似てなかったのか友希那は溜息を吐いてしまい、先に行ってしまう。

 

「はぁ、練習前からこんな事では先が思いやられるわね」

「(練習……大丈夫かな?)」

 

練習前から、こんな調子で大丈夫なのかと不安な紗夜と燐子であった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

※主人公とオリキャラの簡単なプロフィールです。


水無月悠里(みなづきゆうり)


容姿イメージ:『らき☆すた』の岩崎みなみ

誕生日:12月12日、いて座

血液型:A型

一人称:僕


三日月花怜(みかづきカレン)

容姿イメージ:『無彩限のファントム・ワールド』の和泉玲奈

誕生日:9月9日、おとめ座

血液型:O型

一人称:私



明美瑠菜(あけみルナ)

容姿イメージ:『テイルズオブエクシリア』のエリーゼ・ルタス

誕生日:11月11日、さそり座

血液型:O型

一人称:わたし



如月(きさらぎ)ティア

容姿イメージ:『蒼の彼方のフォーリズム』の倉科明日香

誕生日:10月10日、てんびん座

血液型:A型

一人称:私


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第1話 いつもと違うスタジオ

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「予約していた湊です」

「はい、湊さんですね。お部屋はCスタジオです」

 

スタジオに着いた4人。

受付にいたスタッフに予約した事を伝え、友希那達が使う部屋は、Cスタジオだと言われる。

 

するとスタッフは、あ。そうだと……思い出したとばかりに……

 

「今、機材のレンタル半額キャンペーンをやっているんですよ。何か借りてみませんか?」

 

これ、レンタルできる機材のリストですと、付け足しながら、友希那達に見せてきた。

 

「へぇ……いろいろあるのね。マイクにギターにエフェクターに……」

「あっ、ドラムのシンバルもいっぱい種類あるー!」

「電子ピアノに……シンセサイザーもあるんですね……」

「ギターもベースも、相当な数が用意されているのね。ずっとこのスタジオに通っていたのに知らなかったわ」

 

リストを見て、友希那、あこ、燐子が言う。

紗夜もずっとこのスタジオに通ってはいたが、こんなに借りれる機材がある事を初めて知った。

 

「うちはライブハウス併設のスタジオだから、品揃えはいいんです。楽器は定番のものから変わり種まで揃っているので、お試しにはぴったりですよ」

 

流石に悠里くんが使ってる楽器は、次元が違うから取り扱ってないんですけどねーと苦笑いしながら、スタッフは付け足す。

それを聞いた友希那達は納得する。

悠里が使ってる楽器は、幼い頃から使っているショルダーキーボード。

 

一見するとただのショルダーキーボードなのだが、実はそれ1つで、色んな楽器の役割を果たす特別な機能を持つ。

キーボードはもちろん、ベース、ギター、しかもドラムまで……本人曰く、まだこれはほんの一部に過ぎないらしい……

 

紗夜と燐子も触らせてもらった事があるのだが、すごく扱いが難しかったのは覚えてる。

なんでも本人曰く、『僕はいつも弦がないギターだと思って弾いてるよ』との事……

 

でもその場合は、ピックがないと落ち着かないけどねと言ってたのは紗夜と燐子の記憶に今でも鮮明に残ってる。

 

「リストはお渡ししますね。もし借りたいものがあったら、スタジオの中にある電話から呼び出してください」

「わかりました」

 

リストを受け取って、友希那達は指定されたスタジオに向かうのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さぁ、始めましょうか」

「「「はい!」」」

「……何から始めようかしら」

「「「えっ!?」」」

 

スタジオに入り、いざ練習を始めようとした時、友希那が何から始めようかと言った。

それを聞いて驚く紗夜と燐子、あこの3人。

 

「練習内容、決まっていないんですか?」

「いえ、やりたいことは決まっているのだけど、段取りはあまり考えてなかったわ……少し待って、考えるから」

 

そう答え、考える友希那。

 

「……そうね、新曲のコード進行を決めてきたから、まずはメロディを決めたいわね」

「では、それをベースに考えてみましょう」

「「はいっ!」」

 

とりあえずメロディを決める練習に入る事にした……

 

 

そして練習開始から10分後……

 

「……」

「~♪」

「~♪」

「……(友希那さんはマイクの設定ずっといじってるし、紗夜さんは自由に音出してる……りんりんは同じフレーズだけひたすら繰り返してるし……)」

 

3人が今現在してる事を見たあこ。

一緒に演奏したいのに、なんかいつもと違う感じがするのだ……

 

「あ、あの!」

「なに?」

「せっかく集まってるんだし、一緒にメロディ考えながら演奏しませんかっ!? なんか……みんなバラバラで個人練習みたいですっ」

「……確かにあこの言う通りね。全員で練習しましょうか。紗夜、どうやってメロディを決めていくのがいいかしら」

「そうですね…………すぐに浮かびませんね」

「そう……あなたたち、何かいい案ないかしら?」

 

全員で練習する事にしたはいいが、メロディを決めるにはどうすればいいかで悩んでいた。

何かいい案はないかと友希那は他の3人に訊く。

 

「はい! じゃあ、あこ、提案があります! さっき受付の人が言ってた機材、借りてみませんかっ?」

「機材? 何を借りたいの?」

 

受付の人が言ってた機材を借りてみないかとあこが提案した。

それを聞いた紗夜が何を借りたいのと訊く。

 

「あこ、ドラムのハイハット変えてみたいです! 次の新曲は、シンバルの音を長く響かせてみたいんですよっ」

「わたしは……シンセサイザー……使って……みたいです……電子音……入れてみると……新しい音になるし……いいメロディも……思い浮かぶかも……」

「湊さん、どう思いますか?」

「悪くないわね。新曲に合わせて、新しい音を模索してもいいかもしれないわ」

「借りるのであれば、私は新しいエフェクターを試してみたいですね」

 

今よりもっと音を歪ませるとどうなるか、確かめてみたいと紗夜は付け足す。

それを聞いた友希那はなるほどねと納得した。

 

「紗夜、あこ、燐子。このリストの中から好きな機材を選んで」

 

受付の人に渡された機材のリストを渡し、3人は借りる機材を選んだ。

それぞれ借りる機材が決まったそうなので……

 

「それじゃ、燐子、受付に電話お願いできる? 電話はドアの隣に備え付けてあるわよ」

「わ、わたしですか!? は、はい……」

 

まさかの指名に燐子は驚きながらも電話の前に移動するが……

 

「(電話するの……緊張するな……ドキドキしてきちゃった……)」

 

電話をするのが緊張してしまうのだ。

どのくらい緊張するかというと、自分から悠里にお誘いの電話をする時ぐらいである。

とりあえず深呼吸をする……

 

「りんりん、何してるの?」

「あ、あこちゃん……わたし、電話するの……苦手だから……深呼吸して、落ち着こうと……思って……」

「そっか! がんばって、りんりん!」

「うん……!」

 

あこに応援してもらい、落ち着いたところで受話器を取り……

 

「あっ……も、もしもし……きききき機材の……レンタルを……は……はい、そうです……お願いします……」

「「……」」

 

燐子の様子を見て、一瞬大丈夫かと思った友希那と紗夜。

 

「りんりん、うまく話せた?」

「うん……話せたよ、あこちゃん……すぐ……持ってきてくれるって……」

「じゃあ届くのを待っていましょうか」

 

何はともあれ、4人はとりあえず機材が届くまで待つ事に……

 

 

そして5分後……

 

「お待たせしました~、ご注文の()()()()()()()()()()()()です!」

「「「「えっ!?」」」」

 

届いたのは何故か、注文していないウクレレとパーカッションだった。

それを見て驚く4人。

 

「わ、わたし……ドラムのハイハットと……シンセサイザーと……ギターエフェクターを……頼んだつもり……だったんですが……」

「あれ? 違いますか? ウクレレとパーカッションって聞こえた気がしたんですが」

 

どうやらスタッフはそう聞こえたらしい。

 

「この楽器だと……ハワイアンのメロディができるわね……」

「……やります? ハワイアン……」

 

楽器を見て紗夜が苦笑い気味に言い、あこがやりますか?と付け足す。

 

「……やらないわ」

「……」

 

ちょっとだけ考えたのか、やらないわと言う友希那。

そして燐子は恥ずかしさのあまり、黙りこくってしまった……




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第2話 長時間の練習

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「……正しい機材も届いたし、気を取り直していくわ。みんな、楽器のセッティングはできた?」

 

あの後、なんとか正しい機材が届き、気を取り直して借りた機材を使って練習に入る。

 

「バッチリですっ!」

「わたしも……大丈夫です……」

「私も問題ありません」

「では始めるわ。どう音が変わるのか楽しみね」

 

楽器のセッティングも大丈夫そうなので、早速演奏を始める4人。

 

「(音が変わるのも、悪くないわね。宇田川さんも白金さんも、いい機材のチョイスだわ)」

「(うんうん、このハイハット、思った通りかも! ジャーン……って響くのがいい感じ♪)」

「(このシンセサイザー……いいかも……! わたしは、結構好きな音だけど……みんなの反応は……どうかな?)」

 

紗夜と燐子、あこの3人も自分が選んだ機材は当たりだなと演奏中思った……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……ふぅ。借りてきた機材は正解だったみたいね」

 

機材を借りての練習開始から1時間後。

友希那は機材を借りてみて正解だったと言った。

 

それを聞いたあこと燐子は良かった……と一安心。

 

「紗夜、今の演奏は悪くないわ。もっと音に強弱をつけると良くなると思う」

「はい」

「あこ、力任せに叩いては体力を消耗するだけよ。最後までベストな演奏ができるように、配分を考えながら叩いて」

「わかりましたっ!」

「燐子は、あこと音を合わせることを意識して」

「はい……!」

 

細かい部分は課題があるけど、全体的なまとまりは悪くないと3人に言う友希那。

 

「それにしても、今の紗夜さんのギター演奏は……こう……漆黒の闇より生まれし炎の弦楽士(ギタリスト)がアレして……火と闇の封印が解かれし暗黒! って感じ!」

「うん、そうだね……」

「……湊さん、次の曲にいきませんか」

「……そうね」

 

あこが紗夜の演奏を自分なりに褒めてるつもりなのだが、反応なしだった……

幸いにも燐子は解っているようだが。

 

「ゆ、友希那さん! 今の友希那さんの歌は、現世によみがえりしネクロマンサーが闇の(しもべ)をアレして……ドーン! って感じですね!」

「うん、すごくわかるよ、あこちゃん……」

「白金さん、宇田川さんはさっきから何を言っているの?」

 

さっぱり意味が分からないんだけど、と付け足しながら燐子に訊ねる紗夜。

 

「あこちゃんは……氷川さんの演奏と友希那さんの歌を……すごくほめてて……」

「そうなの? 宇田川さんが言ってること、私には外国語みたいに聞こえるわ」

 

理由を聞いて、あこが言ってることが、やっと分かった紗夜。

 

「紗夜、あこ、燐子。練習中よ! 無駄口叩くのはやめて」

「は、はい」

「「ごめんなさい……」」

 

友希那が練習中だと3人に注意する。

あこは盛り上げようと思っただけなのに……と内心思っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「(うう……ずっと叩いてたら、腕が重くなってきたなぁ……)」

「(痛っ……長時間弾いていたら肩こりが酷くなってきたわ……)」

「(……あっ、音間違えちゃった……)」

 

更に2時間後。

長時間の演奏で身体に違和感を感じたあこ、紗夜、燐子の3人。

 

「「「はぁ……」」」

「ちょっと、3人とも集中力が切れてきているわよ。ちゃんと曲に集中して」

「は、はい……」

「は~い……」

「はい……」

 

しかし今は練習中。

集中、集中と自分に言い聞かせる3人……

 

「(なんだか……空気が……)」

 

同時に燐子は、なんだかいつもと違って空気が重く感じるのであった……




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第3話 つかの間の休息

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「(キーが高い曲を続けて歌ったせいかしら? 少し高音が出にくくなってきたわ……)」

「(こころなしか、指の動きが悪くなってきたような……)」

「……」

「(なんだか音がずれること多くなってきたし、友希那さんもいつもの声の伸びがないし……)」

 

長時間の練習を続け、疲れが出てきた4人。

みんなパフォーマンス落ちてきてると思ったあこ。

 

「あ、あの! 友希那さん!」

「何?」

「そろそろ休憩にしませんかっ!? 時計、見てください!」

 

あこに言われ、スタジオに備えてある時計を見る友希那。

 

「あっ……結構時間経ってたわね。じゃあ、休憩にしましょうか」

「そうですね」

「はい……」

「「「「……」」」」

 

休憩する事にした4人……なのだが……

 

「(なんだか……静かだな……普段は……もっと休憩……賑やかなのに……)」

 

普段と違い、静かだなと燐子は思っていた。

いつもだったら、リサと悠里が何かしら話題を出してくれたから。

 

「あ、あの……」

「どうしたの?」

「良かったら……みんなで外のカフェに……行きませんか? のど渇きましたし……甘い物でも……」

「りんりん、ナイスアイディア~! 友希那さん、紗夜さん、みんなで行きましょうよ! ねっねっ!」

 

燐子の妙案を聞いたあこがナイスアイディアと言って、友希那と紗夜を誘う。

 

「どうしてもっていうなら……」

「湊さんがそういうなら……」

「決まりですね~! レッツゴ~!」

 

何はともあれ、4人は外のカフェに向かうのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いらっしゃいませ~!」

 

外のカフェに着くと、受付に月島(つきしま)まりなが居た。

今日は彼女がカフェの当番なのだろうか?

 

「ん~、何頼もうかな~♪ あっ、今日のおすすめ、パイナップルジュースだって! おいしそう~」

「何にしようかな……」

 

今日のおすすめを見て、何を頼むか悩むあこと燐子。

 

「湊さんは何にします?」

「そうね……ここのソフトクリームはコクがあって美味しいとリサと悠里が言ってたわ」

「そうですか。では、私は……このいちごのソフトクリームをいただきましょうか」

「あっ、それも美味しそう~! うーん……悩むけど……あこはこっちのゴマソフトにしよーっと! 友希那さんとりんりんはどうする?」

「そうね……私はホットコーヒーと抹茶ソフトにするわ」

「わたしは……ホットミルクが……あればいいけど……なかったら……紫いもソフトにしようかな……」

「わかった! ちょっとまりなさんに聞いてみるねっ。まりなさーん!」

 

一通り決まったところで、あこは燐子が頼みたいホットミルクがあるかどうかを訊きに行った。

 

「みなさん、よくこのカフェには来るんですか?」

「私は偶に、くらいね。このカフェはスナック系も充実しているからいいわ。ドーナツとか、カリカリポテトが美味しいの」

「カリカリポテト……」

 

それを聞いて紗夜は今度頼んでみようかしらと思うのであった。

 

「わたしは……あこちゃんと……よく、来ます……練習の後に……一息つくのに……ぴったりだから……」

「そうなのね。私もまた来てみるわ」

 

そう話してると、あこが戻って来た。

 

「りんりん、お待たせっ! 今の時期はホットミルクはメニューにないみたいなんだけど、特別に作ってくれるって! どうする?」

「じゃあ、せっかくだから……ホットミルクと……紫いもソフト……どっちもお願いしようかな……」

「おっけー! じゃあ、あこがまとめて頼んできますね~!」

「ええ、よろしくね」

 

友希那がそう言うと、あこは注文しに行くのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせしました~! ソフトクリームは溶けやすいから、早く食べてね」

 

注文してから5分後。

まりなが頼んだ品を持ってきた。その後、ごゆっくり~と言いながら戻って行った。

 

「はーい! これが友希那さんのホットコーヒーと抹茶ソフトで、こっちが紗夜さんのいちごソフトでしょ……これはりんりんのホットミルクと紫いもソフトで、あとこれがあこのゴマソフト!」

 

それじゃあ、いただきますと言う4人。

 

「……あら、砂糖がないわ」

「あれ、友希那さんコーヒーにお砂糖いりますか?」

「ええ、あると嬉しいわ」

 

友希那がそう言うと、あこはすぐもらってきますねと言って、砂糖を取りに行った。

 

「このソフトクリーム、本当に美味しいですね! 今井さんと悠里さんが言っていた通りだわ」

「そうでしょう?」

 

紗夜もソフトクリームの美味しさにご満悦なようだ。

 

「友希那さん、お砂糖もらってきました~!」

「ありがとう」

「……(そういえば湊さん、コーヒーに砂糖をいっぱい入れるわね……)」

 

コーヒーに大量の砂糖……正確には角砂糖を入れるのを見て、首を傾げる紗夜。

 

「んん~、このゴマソフトすーーーーっごく美味しい! りんりんも食べてみて! はい、あーん!」

「あ、あーん……こ、これ……すごく、美味しい!」

「でっしょ~!? みんなで食べるともっと美味しく感じるよね! リサ姉とゆうりん来たら、感想伝えよ~っと!」

 

そう言いながら再びソフトクリームを食べるあこ。

 

「(……リサ、それに悠里も、まだ来ないわね。ここにいたらよかったのに)」

 

まだ来ない2人の事を思いながら、友希那は少しだけ寂しさを感じたのであった……




読んでいただきありがとうございます。
…ふと思ったんですけど、こういうカフェスペースって高そうなイメージがあるんですよね。
……バンドリの世界だと安いのかな? かな?
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第4話 予想外のアクシデント

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「あなたたち、リフレッシュできた?」

「ええ、気分転換になりました。疲れてる時に甘い物はいいですね」

 

休憩を終えて、再びスタジオに戻って来た4人。

 

「すっごくソフトクリーム美味しかったです~!」

「みんなでカフェに行けて……良かったです……」

「それは良かったわ。さぁ、練習に戻るわよ。残り時間も少ないから、あと2~3曲で終わりだと思って。最後までしっかり気を抜かないでいくわよ」

「「「はいっ!」」」

 

残り時間も少ないので、練習を再開する友希那達だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今日はそれぞれの音は悪くなかったと思う。ただ、全体の調和が取れているとはいえなかったから、音のバランスを調整しないといけないわ。あなたたち、次の曲に新しい音を使いたいならどうするのがベストか、それぞれ考えてきて。最後の演奏をベースにしてみて」

「「「はいっ!」」」

 

演奏終了後、友希那が今日の練習について意見を述べた。

 

「そろそろ終わりの時間ですが、片付けますか?」

「ほんとだー! もうこんな時間かぁ……リサ姉とゆうりん、まだ来ないのかなぁ」

「まだ……来てない……みたい……」

 

リサと悠里は未だに来る気配がない……

 

「……仕方ないわ、片付けましょうか」

「そうですね」

 

とりあえず時間も時間なので、片付ける事に。

 

「レンタルした機材の片付けは、宇田川さんと白金さんにお願いできるかしら。湊さんはマイクケーブルの片付けを……」

「わかったわ……きゃあっ!」

 

マイクケーブルを片付けようとした時、友希那が転んでしまう。

 

「友希那さん、大丈夫ですかっ?」

「いたた……ごめんなさい、ギターのシールドが足に絡まって……きゃあっ!」

「湊さん、気をつけてください。……って、何か床にこぼれてますよ!」

 

足に絡まったギターのシールドを取る友希那。同時に紗夜は、床に何かこぼれてるのを発見する。

 

「ああっ、すみません……!! 休憩の時に……飲み切れなかったホットミルク……持って来てたんです……!」

「……!」

 

なんと、こぼれた何かの正体は燐子が休憩の時に飲み切れなかったホットミルクだった。

床一面が真っ白である……

 

「うわわわわ! 床一面が真っ白になっちゃった!!! ……うわっ!」

「あこちゃん、大丈夫!?」

「いったー……うっかり滑っちゃった……うぇーん、スカート濡れちゃったよ~」

「本当だ……どうしよう……」

 

うっかり足を滑らせてしまったあこ。そのせいでスカートが濡れてしまう……

 

「機材にも飛び散っていますね、早くふかないと壊れてしまいます!」

「あなたたち、急いで片付けるわよ!」

 

よく見たら機材にも飛び散っていた。

紗夜の言う通り、早くふかないと機材が壊れてしまう。

 

「わたし……ハンカチとティッシュ、持ってきてるから……! 使ってください……!」

 

慌てて自分の鞄からハンカチとティッシュを取り出そうとする燐子。

 

「……って、あれ……ティッシュ……切れちゃってる!」

 

ところがティッシュが切れてしまっていた……

 

「みんな~、おっまたせ~!」

「…はろろーん、ただいまなのです……」

「「「「!!!!」」」」

 

そんな時、リサと悠里がスタジオに入ってきた。

 

「早めにバイト終わったから、急いで来たよ!」

「僕も予想してた時間よりも早く終わったから、リサちゃんと来た。ちなみに練習終わっちゃった感じ?」

「ええ、ついさっき……」

 

友希那がそう答えると、2人は本当は今から行くよと連絡入れようとしたのだが、スマホの充電切れちゃったんだよと話す。

 

「……って、何、この惨状は!? 何をこぼしたの!?」

「……あうあう。シールドもマイクケーブルもぐちゃぐちゃなのです……」

「そ……それはホットミルクで……」

 

そして床が真っ白な事に気づいたリサと悠里。燐子がそう答えると……

 

「すっごーい! 真っ白な液体のフレンズをこぼしちゃったんだね。とりあえず、みんなで片付けるよ」

 

どこかのフレンズの真似をしながら、真顔で早く片付けるよと悠里は一同に言うのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第5話 リサと悠里の帰還

ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


「よーし、まずはこぼれたホットミルクを拭かなきゃね! 友希那、これ使って」

「タオル……いつも持ち歩いてるの?」

「そうそう、ダンス部でよく汗かくからいつも持ってるんだよね~」

 

これは綺麗なヤツだから安心してと付け足しながら、友希那に新しいタオルを渡すリサ。

 

「…そっちはリサちゃんと友希那ちゃんに任せるとして。紗夜ちゃん、燐子ちゃん、これ使って」

「これは……スポンジ……ですか?」

「その割には形が……変わってるような……?」

 

紗夜と燐子にへんてこな形状をしたスポンジを渡した悠里。

 

「うん、機材の埃とかを掃除するのに自作した道具なんだ。とりあえず使い方を教えるよ」

「「は、はい……(う、うん……)」」

 

手作りの道具という事にも驚いたが、とりあえず3人で濡れてしまった機材を拭く事に。

 

「あこは……ほら、アタシのハンカチ使って。スカートの裾濡れちゃってるでしょ? とんとんって叩いて、水分を吸わせるんだよ」

「うん、わかった……」

「そしたらすぐ水洗いしておいで! 早く落とさないとにおいが残っちゃうから」

「リサ姉……ありがと……」

 

リサと悠里の指示のもと、掃除が開始されるのだった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぅ、きれいに片付いたね!」

「…ついでに見えないところの掃除もしておいて良かった」

 

10分後。掃除を終えた一同。

ちなみに悠里がモップや箒も借りてきて、机の下や普段やらない場所も掃除したので、一層に綺麗になった。

 

「今井さんと悠里さんが来てからすぐ片付いたわ……」

「指示が……的確でした……」

「リサ姉~、ありがとー! 濡れちゃったところきれいになったよ!」

「助かったわ……」

 

それぞれの意見を述べる4人。

リサと悠里が来るのが遅かったら、どうなっていた事か……想像したくなかった……

 

「やっと落ち着いたね~。あ、そうそう、みんなにお土産あるんだー。店長から『急にシフト入ってもらったお礼に』って、お菓子いっぱい貰ったんだ~!」

 

そう言いながら、ビニール袋から取り出したのは、飴やポテトチップス等、大量のお菓子だった。

色々あるからみんなで分けよとリサは言った。

 

「あうあう。僕もみんなにお土産があるのですよ」

 

危ない危ない忘れるところだったのですよ、と言いながらエコバックから何かを取り出す悠里。

 

「…ぱんぱかぱーん♪ 名物の和菓子、穂むら饅頭……略して『ほむまん』と、僕のおすすめの『季節の3色団子セット』だよー」

「「「「「……」」」」」

 

家族みんなで食べてねー美味しいからと付け足しながら、5人に渡す悠里。

ちなみに受け取った5人は『いったい全部でいくらしたんだろう……?』と思った……

 

「リサ姉とゆうりんの顔見たら安心したよぅ……」

「わたしも、です……」

「あはは、そんな大げさな……」

「…燐子ちゃんも大げさだよ……」

 

あこと燐子の言葉にリサと悠里は大げさだなと言ったが……

 

「「……」」

「ねぇ悠里、なんだか熱い視線を感じるんだけど……」

「……奇遇だね。僕もだよ」

 

どこからか2人に対して熱い視線を送ってる人がいるのだ。

……悠里からしたら、ボーカルの少女とギター担当の少女からの視線がやたらと熱い。

 

「き、気のせいですよ。お手伝いお疲れ様です。あの、疲れていませんか? よかったら、これどうぞ」

「ありがとー。あ、花咲屋のはちみつ飴だ。すぐ売れきれちゃうやつ」

「……ん~、優しい甘さがしみるね~」

 

紗夜から飴を貰った悠里とリサ。

彼女から貰った飴が売ってるお店は、悠里も暇さえあれば買いに行くのだが、はちみつ飴は人気のせいか、いつも売り切れてしまうのだ……

 

「それは良かったです……もう1個ありますよ」

「ん? なんか紗夜が妙に優しい?」

「い、いえ……そんなことは……」

「リサちゃん、紗夜ちゃんはいつも優しいよ?」

「~~~~っ!?」

「……」

 

その言葉を聞いて顔が真っ赤になる紗夜。

いや、多分それ……悠里に対してだけだと思うけどなーと内心思うリサ。

 

「ねぇ、友希那も今日の紗夜優しいと思わない?」

「そ、そうかしら……それより、今日のアルバイトはどうだったの? 忙しかった?」

「それがね、めーっちゃくちゃ忙しかったの! ちょうど部活終わりの学生がたくさん来てたから、ジュースとかアイスが飛ぶように売れてさ~」

 

片っ端から補充してたんだけど、段ボールが重くて、肩もガチガチだよ~と友希那に話すリサ。

 

「そ、そう。じゃあ、私が肩でももみましょうか?」

 

本当だわ、すごく凝ってると呟きながらリサの肩をもむ友希那。

 

「あ、そうそう、右の肩が特に凝ってて……って、友希那がアタシの肩もむとかおかしくない!? いつもの友希那だったら絶対にやらないって!」

「べ、別におかしくはないわよ。リサが疲れてるだろうと思って……」

「いーや、変だよ。ねぇ、燐子もそう思うでしょ?」

 

友希那の様子がおかしいと感じたリサは、燐子に訊いてみるが……

 

「わ、わたしは……いつもの氷川さんと友希那さんだと……思います……」

 

何故か目を逸らしながら言われてしまった。

 

「…燐子ちゃん、燐子ちゃん、僕の目を見て言ってみよっか?」

「……っ(ゆ、ゆうりくんの顔が……ち、近い……そ、そんな目で……見られたら……)」

 

悠里にそう言われるが、燐子は別の意味で目を逸らしてしまった……

 

「燐子まで!? もう、みんなどうしちゃったのさ~」

「……まさか、何か企んでいるんじゃ……」

「「「「違う!!((違います!!))」」」」

 

悠里がそう言うと、4人は違うと言った。それを聞いたリサはじゃあなんなの~?と訊くが……

 

「それは……」

「なんというか……」

「えっと……」

「その……」

 

反応は4人とも、言いにくそうな感じだった。

 

「アタシと悠里には言えないようなことなの?」

「……じゃあ、僕もう帰ろうかなぁ」

「帰っちゃダメ!!」

「「えっ?」」

 

帰ろうかなとした矢先、あこに帰っちゃダメと言われたリサと悠里。

 

「やっぱり……やっぱり、Roseliaにはリサ姉とゆうりんがいないとダメなんだよーーー!!!」

「えっ? えっ? どうしたの……?」

「……えっ? あの……あこちゃん?」

「あこ、リサ姉とゆうりんに話したいから、今すぐファミレスに行きたいっ!! 友希那さん、いいですよねっ!」

「……いいわ。行きましょう」

 

何故か今からファミレスに行く流れになった……

 

「……なんか友希那ちゃんが即答でファミレスに行くの許可するの……珍しいね?」

「詳しくはファミレスに移動してから説明するわ」

「……何言われるのか、僕、地味に怖いんだけど……」

「アタシも……」

 

一体自分達2人はファミレスに着いたら、何を言われるんだろうか……?

 

「色々あったんですよ」

「そう……ですね……」

「……」

 

紗夜と燐子の様子を見て、とりあえず自分とリサが居ない間に色々あったのは、なんとなく察した悠里だった。

 




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


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第6話 それぞれの想い

ゆるポメラです。
今回で最終回になります。

それではどうぞ。


「ん~、何頼もうかなっ」

「…あうあう。フライドポテトもいいけど……パフェも捨てがたいのですよ……」

 

ファミリーレストラン……略してファミレスに着いた6人。

メニュー表を見ながら悩むリサと悠里。

 

「いらっしゃいませ~! ご注文はいかがなさいますか?」

「アタシはオレンジジュースでいいかな」

「私はホットコーヒーにするわ」

「おっけー。燐子はどうする?」

 

リサと友希那は決まったようなので、燐子は何にするか訊く。

 

「わたしも……今井さんと同じで……」

「あこは特盛超お得ポテトにしよっ! 紗夜さん、あこと半分こにしませんかっ?」

「えっ……、なんで私と……」

「だって、あこ一人じゃお腹いっぱいになっちゃうし、美味しいものは一緒に食べたほうがいいじゃないですかっ!」

「まぁ、宇田川さんがそこまで言うなら……食べないでもないわ」

 

彼女はそう言ってるが、本当はポテト食べたかったんじゃないかなと悠里は紗夜の表情を見て思った。

 

「……じゃあ、オレンジジュース2つと、ホットコーヒー2()()と特盛超お得ポテト1つ、それから()()()()()()()()()()()1つお願いします」

「かしこまりました。パフェの大きさはいかがいたしましょうか?」

「……ビックバンで」

「っ! か、かしこまりました~!」

 

悠里が全員分の注文をした後、パフェを頼んだであろう悠里が店員にパフェの大きさを聞かれ、そう答えると店員は慌てて厨房に向かった。

 

「店長ー!! 大変です!! アップルシナモンパフェの注文が入りました!!」

「あん? 何を慌ててんだ……アップルシナモンパフェの注文ぐらいで。確かに注文はあまりされねぇが……」

「いや、確かにそうなんですが……()()()()()()()()ですよ!! ビックバンサイズ!!」

「何ィ!? それは本当か!?」

「ええ!! 確かに聞きました」

「…うちの一部の()()()()()のサイズを知ってるとは……おい、それを頼んだお客さんはどんな外見だったか覚えてるか!?」

「確か……遠くから見たら女の子にも見えなくもないんですが男の子でした。ミントグリーン色のショートヘアーが印象的の子です!」

「…ふむ。ミントグリーン色の髪か……」

「あと、ショルダーキーボードのケースを持っていました。藍色の月みたいな形?のキーホルダーを付けてましたが……」

「っ!! バカ野郎!! その注文してくれたお客さんは、『幻の歌姫(ファントムディーヴァ)』本人じゃねぇか!!」

「えっ!? 『幻の歌姫』って、あの!?」

「…あぁ。間違いねぇ。俺の知り合いにハンバーグを焼き続けて20年のヤツがいるんだが……1年前に『幻の歌姫』は友達の2人で、そいつの店に来たそうだ」

「そうなんですか! それで一体、何を注文したんですか?」

「……パイナップルハンバーグのビックサイズを頼んだそうだ。しかもその日の注文次第でメニューから消そうとしたそうだ。だが次の日以降、注文されっぱなしだと言ってたな」

「そ、そんな事が……」

「それだけじゃねぇ。しばらくした後にあいつに聞いたんだが、『幻の歌姫』と一緒に来ていた友達も凄い人だって言ってたぞ。確か最近のJKで構成された……」

「ガールズバンドですか?」

「そう。それだ! それのアイドルバンドのボーカルの……」

「もしかしてPastel*Palettes(パステルパレット)丸山彩(まるやまあや)ちゃんですか!?」

「そう! その子だって知った時は、あいつも驚いてたなぁ……だって、1年前だぞ?」

「店長にその話を聞くまで、知りませんでしたよ……」

「おう、お前ら!! 今日は特に気合いを入れて作るぞ!!! 妥協は一切許さねえからな!!」

「「「「「おおおおおおおおーーーーー!!!!!」」」」」

 

厨房の方から凄まじい会話と気合が聞こえてきた。

 

「…ところで、今日は僕とリサちゃんが居ない間に何があったの? 疲れた顔してたけど」

「いやいや!? 悠里、さっきの会話って本当なの!?」

「…1年前に彩ちゃんと出かけた時にね。あそこのハンバーグ店、高校生にも値段がリーズナブルな価格なんだよ。種類も豊富だし」

「「「「……」」」」

 

なんだったら今度みんなで行く?と言って上手く話を逸らした悠里。

それを聞いた、あこ以外の4人は羨ましいのか、頬を膨らませていた……

 

「それがね……色々あって大変だったんだよー……」

 

あこが今日あった事を悠里とリサに話し出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あっはっは~!! そんな事があったの!? その場にいたかったわ~」

「……リ、リサちゃん、そんなに笑っちゃダメだよ」

「今井さん、そんなに笑わなくても……悠里さんもですけど……」

 

あこから話されたリサと悠里は大笑い。

悠里に至っては、笑いを耐えてるのか口元が緩んでいる。それをつっこむ紗夜。

 

「そうだよっ。あこ達大変だったんだからねっ」

「もうっ、みんなアタシと悠里がいないとダメなんだからー!」

「そうだよっ、リサ姉とゆうりんがいないと誰もツッコんでくれなくて、寂しかったんだからぁ~!」

「…オツカレイアー、なのです……」

「そうかそうか、可愛いやつめ~☆」

 

そう言うあこに、今回は急に抜けちゃってごめんねと言う悠里とリサ。

 

「普段、今井さんと悠里さんに助けられている事がよく分かったわ……」

「紗夜がそんなこと言ってくれるなんて……相当大変だったんだね……」

「そうよ。宇田川さんとの意思疎通もできなかったし……」

「……あっ。僕、なんなく察したよ。そりゃ紗夜ちゃんも苦労する訳だ……」

 

ここで悠里、紗夜が一番苦労した理由を理解する。

 

「それだけじゃない。気付いているかわからないけれど、Roseliaの雰囲気をより良くしているのは今井さん、あなたよ。今後は必ず練習には参加してください」

「紗夜……うん、今後はちゃんと練習に参加するって約束するよ」

「悠里さんも……ですからね?」

「……うん? 分かった」

 

紗夜ちゃんやっぱり優しいなぁ……と思いながらも返事をする悠里。

まぁ次からは練習に参加するけども。余程の事じゃない限りだが……

 

「わたしは……今井さんとゆうりくんがいてくれると……安心して、練習できてるんだなって……思いました……」

「どうしてそう思ったの?」

 

燐子の言葉にリサはどうしてそう思うのか訊く。

 

「わたし……今井さんとゆうりくんが……いつも楽しそうに……練習してるの……見るの好きで……たぶん、みんなも同じだと……思うんです……」

 

だから、2人がいないのが変に感じて……と話す燐子。

それを聞いた悠里は、彼女から見たら楽しそうな表情をしていたのかと思った。

まぁそれはそれで悪い気はしなかった……

 

「リサと悠里がいないことで、みんなリサと悠里のありがたみが分かったのよ。Roseliaにはリサと悠里がいないと困る」

「友希那……」

「……」

 

するとリサがちょっとだけ泣いていた。

 

「あっ、リサ姉、ちょっと泣いてる~!」

「だって嬉しいんだもん! 本当はバイト中、気になってたんだよ。みんなどんな練習してるのかな、って」

「…リサちゃんは寂しがり屋なところもあるからね。よしよし……」

「も、もうー……頭を撫でないでっばっ!?」

 

慰めるかのようにリサの頭をなでなでする悠里。

 

「そんなこと思ってたの? こっちは2人がいたらこうはならなかったのに……って思うことばかりだったわ」

「そうだそうだ!」

 

友希那の言葉に便乗して抗議するあこ。

 

「今井さんと悠里さんは、自分が思っているより影響力があるんだと自覚してくださいね」

「わたし……今井さんとゆうりくんに……いてほしいです……」

「み、みんな……よーし、すっごくやる気出てきた! 次はちゃんとはじめから参加するからねー!」

「…うん、分かった……」

 

こう言われてしまっては、次からは最初から練習に参加するかと思ったリサと悠里であった。

 

「お待たせしました~! 特盛超お得ポテトとオレンジジュース2つ、ホットコーヒー2つです」

「おっ、きたきた~!」

 

そんな話をしてる内に、店員が頼んでいた品を6人の座ってるテーブル席に運んできた。

 

「思ったよりポテトの量が多いわね……前も頼んだと思うけど、こんなに多かったかしら」

「揚げたて……美味しそう……」

「…揚げたてだから、量が多く見える説って……本当だったのかな、かな?」

 

ポテトの量をみて、首を傾げる紗夜。

美味しそうと言う燐子に対して、実は揚げたてだから量が多いのでは?と呟く悠里。

 

「みんなで食べればいいじゃないですか?」

「うんうん、それがいいよ! 友希那も食べようよ☆」

「……残すのももったいないし、いただくわ」

 

結局、全員で食べれば問題ないんじゃね?という事になった6人。

 

「あ、そうだ。友希那、はい、お砂糖。コーヒーに入れるでしょ?」

「…足りなかったら、僕の砂糖も使っていいからね? 今日はブラックで飲みたいから」

「! ありがとう」

 

リサと悠里の気遣いに、お礼を言う友希那。

 

「お待たせしました~! アップルシナモンパフェのビックバンサイズです」

「…みぃ、僕の頼んだパフェがきたのですよ」

「「「「「……」」」」」

「気合を入れて作りましたので、お楽しみください!」

「…素材もなかなか凝ってますね。ありがたくいただきます」

 

ちょうど店員が悠里の頼んだ品であるパフェを持って来たのだが、その大きさに5人は絶句。

乗せてる器がガラスの器ではなく、()()()()()()()()()()()()()……

 

「? どったのみんな?」

「ねぇ悠里……まさかそれ、1人で食べるなんて言わないよね……?」

「? 食べるに決まってるじゃん……甘い物は別腹って言うでしょ?」

「いや、ゆうりん。別腹でも、あこでも食べきれないって……」

「ほら、特盛超お得ポテトとあんまり変わらないし……」

「悠里さん、明らかに比べる基準が違いますからね?」

「…その為のホットコーヒー。でもこのパフェの素材だとアイスティーでも良かったかもなぁ……」

「ゆうりくん……色々と間違ってると……わたしは思う……」

「…今日の晩ご飯、何にしようかなぁ……?」

「悠里、晩ご飯の事を考えるのは置いといて、私達の話をちゃんと聞きなさい」

 

ファミレス内で、1つのテーブル席に巨大なパフェが鎮座する中、4人の少女にお小言を言われる少年の姿がそこにあった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いてて、もしかしたら、また別の何かを書いてるかもしれません……
それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。


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