小説版:【仮面ライダーゼロワン】~天津課長はお食事会を開きたい~ (YURitoIKA)
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【───刃 唯阿───】
───仮面ライダーエデン/エスと或人達を巡る、楽園騒動からはや数ヶ月____
事態は順調に収まり、街の復興も進みつつある。
概念と化したアークと、アズとの決着は未だ着けられていない。───が、それでも人類はいまある今日を生きていく。一旦の平和の中で____
というのだが、ここに一人、平和の中で
「誰かとご飯を食べたい」
____ずばりこれである。
自分の中の素直な気持ち。天津垓にとっては、これ以上にない願い。
「どう思う?さうざー」
犬型ロボット計五匹、さうざー達にチラリと視線を送る。
するとさうざーは、『ワンワンワンワン!!』と可愛げな鳴き声をあげる。
「うむうむ。やはりそう思うか。私も同意見だ。事件が終息しつつある今、必要なのは打ち上げ、パーティー。息抜きだ。
____だから私は、お食事会を開こうと思う。そう、名付けて“皆の為に、
『ワンワンワンワンっ、ワンワン!!』
「よし、決まりだな。それでは早速
残念ながら、サウザー課において歯止めの“は”の字も無いのである。
┗┓┗┓┗┓
【刃 唯阿/仮面ライダーバルキリー編】
AIMS本部休憩室にて____
「なんの用だ」
「私とお食事会を開かないか?いや、開きたくないか?」
「断る」
「よし、そうか」
___________________完。
「じゃないじゃないじゃない。何故断るんだ、ゆあ」
「何故もなにも、お前とはそういう関係ではないからだ」
きっぱりと切り捨てる唯阿。半分程残っていたコーヒーを一気に飲み干して、すぐにその場から立ち去ろうとする。そこに、
「分かっているとも。私がアークを生んだ元凶であることも、私が君達を散々苛酷な扱いをしたことも。それについては反省している。しかし、反省したところで許されるわけではないし、だからこそ私なりの出来ることをやってるではないか、ゆあ。お食事しよう」
立ち去ろうとする唯阿を、早口で塞き止める垓。
しかし、一向に唯阿は顔色を変えない。ひたすらに、軽蔑した表情。
____実際のところ、天津垓の法的処置はかなり難しい。
被害を考えれば、死刑もおかしくはない。が、今は人類のデータ化も、ヒューマギアという技術革新さえ起こされた新時代。往来の法律も、極端に変更されている部分もある。
法律の改定が進みつつある、この不安定な世の中は、日本だけに広がるものではなく、世界各地で起こっている。それにより、紛争の数も増え、武力介入を起こすテロリストも増えつつある。
(レイドライザーの量産は、そのような軍事的責務、対テロリスト用の計画でもある)
新時代という言葉は、聞こえは良いが、世論、世間においては厄介事の積み重ねだ。
そうした一面と、ZAIA及び飛電インテリジェンスの内部摘発のこともあり、彼の処置は厳重監視というもの。もっとも、誰が監視してるかは、天津垓本人も知らされていない訳だが。
「知っているとも。確かに、お前のおかげで助かった一面もあった。」
天津垓の活躍は、アーク事件に大いに役立った。というのは、正論で間違いない。(元凶だが)
「けど、それはそれ。これはこれだ。仕事においての共闘関係。それ以上も、それ以下もない。食事なんてもっての他だ」
「......、わかったわかった」
両手をぶらぶらと振って、降参の意をみせる垓。しかし、まだ道は塞いだまま。
「つまりそういうことだな、ゆあ」
「っ?つまりとはなんだ」
「____いや、元から知ってはいたさ。ずばり君は......ツンデレなんだな?」
その場一帯の空気が固まる。
「............は?」
「いやはや、私も最近の“流行り”というモノには敏感でね。雑誌やネットを駆使して調べているのだよ。普段はツンツンしてるけど、たまにデレるアレ。そう、ゆあ。君はまさにそのツンデレだろう」
「言ってる意味が分からない」
「隠さなくてもいい。彼にもよく発揮してるじゃないか」
「か、彼とは誰のことだ」
唯阿にも心当たりが在るのか、少し声に動揺がじる。
「不破諌だよ」
「............何故アイツの名前が出てくる 」
「ほほぅ。なぜ、か。知っているぞぉ?不破君が施設で寝ているとき、君が隙をついて彼の頭をモフモフしていることを。さぞかし幸せそうな顔をしていたなぁ」
「......」
遂には黙り込む唯阿。図星である。
垓は言葉の猛攻を止めない。続けて、唯阿の
「あと不破君の寝顔を専用フォルダに保存しておいたりとか。あと君が毎日書いている日記には毎回不破君が登場することとか。あとは不破君が主人公の二次創作小説を五六本投稿した───」
「や、やめ、やめろぉ!!」
唯阿は絶叫をあげるが、垓は未だ尚余裕の笑み。
「いやぁ、別に───」と優しく彼女の肩に手を置き、
「そういうのが嫌いなわけじゃないさ。つまり君は私にも“ツン”を発揮しているのだろう?安心したまえ。いつでも“デレ”てくれていい。よし、お食事会を____」
「ッッッ!!
い
い
か
げ
ん
に
し
ろ ブ ラ ス ト フィ ー バ ー」
「ッッ!?───ケバブゥ─────ッゥ!!?」
唯阿の右手から繰り出される、対人間用とは思えない豪快フルスイングパンチ。
垓はなす術もなく、後ろへと吹き飛ばされた。
「____な、なに、を......ぅ」
「帰れぇ!!」
最後にこれ以上にないほどの叫び声をあげて、唯阿は立ち去るのであった。
┗┗┗【今回の結果:失敗】┓┓┓
┗┓┗┓┗┓
サウザー課本部にて____
殴られた左頬を保冷剤で冷やしながら、さうざー達と反省会を開く。
「みりー、今回は何が悪かったと思う?」
さうざー組次男、みりーは『ワォン』と吠える。
「そうか、今回はシチュエーションの問題か。確かに要求するだけでは駄目だな。私としたことが甘かった......それではどうすれば───ん?」
ふと、垓は置いていた新聞に目線を向ける。そこには、流行りの作品、『不滅の刃』の記事があった。
「......っ、............んん!そうだ、良い案を思いついたぞ。びりー、さっそくテレビをつけたまえ」
「待っていたまえ、不破諌......フフフ」
───つづく───
天津課長が捕まっていない理由をずらずらと
書きましたが、ここら辺の深掘りはまた後程ということで。
今回のストーリーの上で、
「なんでこいつ捕まらんのや!」と思われる方が
一定数いると思うので、その方々の為に設定を
付け足しました。
____あくまでほのぼのストーリーなので、
最後まで足湯に浸かっている気分でお楽しみください。
ではでは(・/-\・)
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【───不破 諌───】
「『ブレイクホーン!』......変身」
暗闇に、五つの黒光が駆ける。
「『パーフェクトライズ!───Presented byZAIA』」
サウザー専用のバイク、“マシンカイザー”に乗り込みエンジンを吹かす。
コーカサスオオカブトを模したゴールドとマットブラックのボディに、メタリックパープルのライン。その姿は、古来の獣を思い出させる。
ZAIAエンジンHQ-1000による大音声が、闇夜に轟く。
____二輪の金獣が、動き出す。
「さぁ、サウザー課の仕事を始めよう」
┗┓┗┓┗┓
【不破 諌/仮面ライダーバルカン編】
抖抖抖荘二階。不破の部屋____
ビンボーンっと、壊れかけのインターホンが鳴る。まるで貧乏と言われているようで、不破は腹を立てるが、実際彼はそこまで貧乏ではない。
A.I.M.S.時代の給料もあり余ってるし、趣味が無い為に、そもそも支出が少ない。
現在は、現A.I.M.S.部隊からの仕送りもある。彼にしてみれば、一人暮らしを始めたばかりの大学生みたいで気にくわないが。
「こんな時間に......なんのっ、用だぁ......?」
ボロアパートといえど、彼の部屋は綺麗だ。不要な家具が全く無いのもあるが。
____不破は、ベッドから起き上がり、おぼつかない足取りでドアを目指す。
現在の時刻は深夜の三時。いったい誰が____
ガチャリッとドアを開ける。すると、
「やぁ」
ドアを閉める。
見覚えのある変な金ピカ仮面がいたが、気のせいだろう。
ドアを開ける。
「やぁ」
ドアを閉める。
深夜三時だ、疲れているし、眠いのだろう。そういえば、A.I.M.S.隊員の尾野から貰ったメロンがあったな。あれで糖分補給でもしよう。
そんなことを考えながら、再度ドアを開ける。
「言っておくが、私は君がアクションを起こすまで帰らないからな」
今度は閉めない。
かわりに、ハァとため息をつく。
「ZAIAの社____いや今はサウザー課の課長か。なんの用だ?変身までして。───もしかして敵か!?」
仮面ライダーサウザーこと天津垓は、首を横に振る。
「いいや、今日ここに来た理由は敵襲ではない。もっと単純なものだ」
不破は、アァ?と首を傾げる。
垓は、そんな彼を意に介さずにアタッシュケースを開く。中には、なにやら見覚えのある鬼の覆面が。
「なんだ、それ」
「素晴らしい提案をしよう。ゴリラくん。君も鬼にならないか?」
「─────」
唖然。不破は、“開いた口が塞がらない”という言葉の意味を、この場で理解した。
「なんだ、何故そんな驚くのだ。今の流行りだろう?」
「そもそも俺は流行りをしらん、あとゴリラ言うな」
「あ」
垓は自分の失態に気づく。
そうだ、この野良ゴリラが流行りに乗るわけがない。
「まぁいい。知らなくてもいいんだ。一緒に鬼の格好をして、お食事会を開こ───開きたくないか?」
「んなわけねぇだろ!こんな時間に部屋に突撃されて“はい、いいですよ”なんて言うヤツがいてたまるか!あとお前のどこが鬼なんだよ!」
「なんだと?しっかりとその目で見たまえ。サウザーの美しきこの五本の角、まさしく鬼だろう。おかげで子ども達には大人気さ」
「嘘が下手だな、お前」
不破はもう一度、大きなため息をつく。
「上弦の鬼ならぬ、最上弦の鬼だな。角五本もあるし。ハハハハ」
「お前、多分だがちゃんと見てないだろ」
「何を?私は誰よりも流行りに乗る男だぞ。死に戻りの呼吸、千の型───領域展開!!
____ほら、これで合ってるだろう?」
「絶対に違うと思うぞ」
「えぇ......」
垓は一度肩を落とすが、それでも挫けない。
不破の肩に、ポンと手を置く。
「とにかくだ、ゴリラくん。私とお食事会を開きたくないか?」
「......あのなぁ、なんで“開きたくないか”なんだよ。そこは“開こう”じゃねぇのかよ。あとゴリラ言うな」
「なんでも何も、私はサウザー課の課長だぞ?他人にお願いをするなど論外のろろろんだ」
「そんなんじゃ一生お食事会は出来ないぞ、じゃあな」
不破は、ガチャンッ!と思いきりドアを閉めた。
____暗闇の中ぽそりと取り残される、金色の仮面ライダー。
┗┗┗【今回の結果:失敗】┓┓┓
「やはり私では駄目なのか......とりー、どう思う?」
さうざー組四男坊、とりーは『ワン!』と吠える。
「そう、か......やはり強気すぎたのか。もっと柔らかい姿勢で───柔らかい、姿勢......?」
顎に手をあてて、考え込む垓。
数分程「う~ん」と唸ったあと、頭の上に電球がピカりと光る。
「柔らかい姿勢、和み。和みと言えば、笑顔。笑顔と言えば____」
彼の脳裏によぎる、一つの単語と一人の男。
「
天津課長の閃きに、さうざー達は『ワォォン!』と称賛の鳴き声をあげる。
「待っていろよ、飛電或人。───よし、そうと決まれば特訓だ。くわっど、ネットからありとあらゆるギャグの資料をかき集めるんだ」
天津課長の命令に、くわっどは『ワォン』とまた吠える。
「はい、天津じゃ~~~ナイトぉぉ!!
____うむ、キレが足りないな」
また、波乱の予感。
───つづく───
予定だと、次で最終回です。(元々短編なので)
天津課長はみんなとお食事できるのか、
彼の勇姿を、最後まで見守ってあげてください。
____ではでは!(・/-\・)/
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【───飛電 或人───】
【仮面ライダーゼロワン/飛電 或人】
「お疲れ様です。或人社長、コーヒーです」
「あぁ、イズ。ありがとう」
飛電インテリジェンスの社長室には、暖かな日光が差し込んでいた。
煌めく朝日。
照らされるデスク。
ちらりと横を見れば、そんな朝日よりも明るい、秘書の笑顔。
二文字にして“平和”。
____となれば、この平和な朝に感謝の意を込めて一発ギャグでもかましますか───!
「そうだな、新イズにはまだ見せてないあのギャグを......」
「どうしましたか?或人社長」
「ふむふむ。イズ、俺の名刺取ってくれない?」
或人は、デスクの端っこに置いてある名刺に指を差す。
イズは、“僅か数十センチ手を伸ばせば届く距離なのに、何故私に頼むのか”____と疑問を抱きつつ、「はい、かしこまりました」と無駄のない動作で名刺を取り、或人社長に渡すのだった。
「ありがとう。では一発。─────」
大気中の酸素という酸素を体に取り込み、身体中の血という血を沸騰させ、赤血球という赤血球にまで魂を込めて____
「名刺を見つめる、名シ───」
が、
「はいドーォォォォンンッッ!!」
バリリンッ!と粉砕される社長室のウィンドウ。
飛び散る硝子と共に、或人社長の士気も熱気も吹き飛ばされる。
一方イズは、かつてないほど目を丸くしている。
「だ、誰だあん───あん?」
吹き飛んだ硝子の猛攻に、デスクを盾にして難を逃れた或人だっが、しばらくしてひょっこりとデスクから顔を出せば、そこにはバイクに股がる見慣れたライダーの姿。
金色のスーツ。五つの角。睨むような紫の複眼。
この姿にいい思い出はあまり無いが、それはそれとして、否が応でもその名を知っている。
「仮面ライダー、サウザー......天津課長っ!?」
「その通り。いつもであれば花丸な反応だ。が、今回は違う」
「いや、なんでバイクでここに......?」
「まぁ聞いておけ。私の渾身のギャグを____」
一瞬の沈黙。
マシンカイザーは
「チャリで来たならぬ............バイクで来たッ!!」
「─────」
「はい!天津じゃぁーーーーーナイトォォォ!!」
「ッ─────、......」
またも沈黙。
あたかも世界の時間が止まったようだが、“コチコチコチッ”と鳴り続けるデスク上の置時計がそれを否定する。
もはや悪夢だ。悪夢と現状の違いは、これが現実ということだけ。
「どうした?笑わないのか?それともあまりの面白さに悶絶しているのか?そうだな。腹筋が崩壊した場合は、救急車を呼ぶべきなのか......?」
検討外れにしては外れすぎな問題に、真剣に悩む垓。
ただただ状況が理解できず、思考停止する或人。
イズは____
「帰ってください」
静かに、冷淡に、死刑宣告を告げるイズ。
だが、そんなことでサウザー課の課長は食い下がらない。
「そう、か。さてはお前もツンデレなのだな?イィズゥ?」
「貴方の言っている意味が分かりません。あと帰ってください」
「ツンデレはみんな、指摘されるとそう言うのだ。つまりは図星。煮干し。ロボ要素にツンデレとは、なるほど新境地だな。実に面白い」
「意味が分かりません。あと帰ってください」
ハッハッハッと笑う垓に対し、イズはますます不快な表情に。
ちなみに、或人社長は未だに白目を剥いている。よっぽど垓のギャグがつまらなかったのか。
____いや、違う。どちらかといえば、“ブーメランが返ってきた”という表現の方が正しい。
あの勢いの強さに比例する、ギャグのつまらなさ。もしかして自分のギャグも─────?
そんな自問自答を繰り返しているうちに、白目になったというのが事の顛末である。救い用は、ない。
しばらく垓とイズの睨み合いが続いたあと、或人社長はようやく我に返った。
「で、なにしにきたんですか」
「単刀直入に言えば、食事会を開き、開、開きたくないか?と思ってだな。ギャグは私からのプレゼントだ」
「食事会って......そこは“開かない?”じゃないんですか。あと窓は弁償してくださいね」
「私から誘うなど、あり得ない。私はいつだって誘われる側だ」
「じゃあ学生時代の時とか、友達から誘われたりしたんですか?」
「..........あぁ、もち、勿論」
或人社長の質問に、垓は口ごもる。
「学校の休み時間とかなにして過ごしてました?」
「MDで音楽を聴い───じゃなくて、みんなで鬼ごっことかだな。良い思い出だハッハッハッ」
「正直に、言って、ください」
ズイと垓に踏み寄る或人。鋭い眼差しによる圧力を前に、いくら課長といえど後ずさるしかなかった。
“これは、
「───ない」
「はい?」
「───誘われたことなど、私には無い!」
膝をつく天津課長。
そうだ。唯阿と不破に追い返された時から、既に彼の心は限界だった。
「私は、私は、ずっと.......」
誘われたかった____
泣きすがるような声で、呟いた。その言葉には高貴さもない。甲高い笑い声すら混じらない。ただ普通の───人間の
はじめての、心からの叫び声だった。
「課長____」
「笑いたまえ。無様だろう。君の察する通り、私には友達もいない。生まれ持った才能を、我が人生に注ぎ込んだ。学力、次に貢献。名誉、名声。気持ちの良い、心地の良い言葉の響きが、私を包みこんだのさ。だが、次第に友人や、努力なんて言葉も消え失せた。この耳に、この頭に、この心に、そんなモノはいつしか存在しなくなっていたのさ」
サウザーの変身が解かれる。
それはさながら、彼が自分の心を晒け出すのを、具現化したようだった。
「最後の最後に生み出したのが、あの
これは自分への言葉でもある。
現実を見ろ。弔いを知れ。大勢の笑顔を奪った貴様に、笑顔になる資格も、笑顔を求める資格も───無いのだと。
だらしなく、泣き叫ぶ。
かれこれ何十年もの間、彼は泣いていなかった。
自分が正しい。自分が全て。自分が絶対。
あの一年間でさえ、変わるに変わらないように見えたこの価値観だったが、もはや崩壊寸前だったのだ。
そんなボロが、今現れただけ。
溢れる涙。許されるはずがない。
彼には、涙を流す資格さえも、無いのだから。
「これが最後じゃあ、ないでしょう」
泣き叫ぶ彼に、一つの手が差し伸べられる。
「───」
「貴方は罪を犯した。けれど、まだ生きている。こうしてベルトを持っている。まだ、戦っている。するべきことは決まってるじゃないですか。そりゃあ性格に難はあるけど、それがあんたらしさなのは、何度も戦った僕がよく知っています。ね、イズ」
「───難がありすぎるようですが、確かにそうですね。実際、天津課長の活躍のおかげで、楽園騒動も無事収束しましたし。元凶は貴方ですが」
「あぁ、そうだよイズ。でも、この世には終わり良ければ全てヨシ───ていう言葉がある。さすがに現実だとヨシとはならないかもだけど、やることに意味がある。実際そうしてるだろ、あんたは」
「私は────」
差し伸べられた手を掴み、立ち上がる。
「それに、課長。あんたは、一歩踏み出してるんじゃないか?」
「......っ、何をだ」
「話を聞けば、昔なら同級生を誘うこともしなかったのに、今回は誘った。───誘うにしては、遠回しすぎるけどな。それでも一歩は一歩だ」
「─────」
「仲間も、いるしな」
優しい笑顔をみせる或人。
そんな彼につられるように、マシンカイザーから五匹の愛犬───さうざー達がひょっこりと顔を出す。
「さう、ざー?」
名前を呼ばれて、ワォンと吠える。彼の笑顔は、
「よーし、こんな暗い話はやめたやめた!天津課長、言うこと、あるんじゃないの?」
「すまな......かった」
「そうじゃなくてさ。ほら、
「......っ、............」
ふらふらとよろめきながらも、垓は或人を見つめ直す。
覚悟の表情。
過去との決別。
自分らしさがなんたるか、アイデンティティなんて聞こえの良い自分は、捨てた。
「お食事会を開こう。みんなで、一緒に」
言って───ごくりと息を呑む。
否定されてもいい。言ったことに、意味があるのだから____
しかし、或人社長は、彼の決意を無駄にはしない。
「あぁ。いいとも。なら今やっちゃおう───ッ!」
「───なに?」
瞬間、
「ようやく出番か」
「待ちくたびれたぜ。俺は、待つのは嫌いなんだ」
「僕たちは~ヒューマギアだから~~ご飯なんて食べれないけどさ、パーティーなら、人数が多い方がいいよね!」
「迅の保護者は俺にしか務まらん」
「唯阿隊長がどうしても、と言うので」
「がやがやうるせぇなぁ。雷落とすぞ」
社長室のラボが開くと、そこにはみんなが。
「な、ぜ、?」
「俺が呼んどいたんだよ。唯阿さんから、課長がお食事会を開こうとしてるって聞いてさ」
「君は─────」
「理由なんてどうでもいいじゃない!ほら、イズ、案内頼むなっ!」
「はい、かしこまりました。或人社長。天津課長もこちらへ____」
┗┓┗┓┗┓
飛電インテリジェンス/レストランルーム____
「へい、魂の一貫!師匠に負けませんよ!」
「は、馬鹿弟子が。お前はまだまだ半人前だ」
レストランでは、まごころ寿司の師弟コンビネーションによる寿司が振る舞われていた。
「ん~~~やっぱおいひぃーー!」
「刃、お前......そんな顔するんだな」
「あ」
「雷兄ちゃん取りすぎぃー!」
「ヒューマギアにも味覚機能が追加できるなんてな、こりゃすげぇ」
「......美味しい」
「おい迅、立って食べるな。座って食べなさい」
かつての争いの面影は無かった。
今在るのは、確かな和み。
「よ~し、ここはイズと俺の一発ギャグを!」
「だ、や、やめろ社長」
「......いや、いいぞ飛電或人。不破がどう笑うか見てみたい」
「おい刃!?」
「仕返しだ」
「俺のギャグを仕返しの道具にしないでぇ!?」
____一方、天津垓は黙々と寿司を食べている。
今まで経験したことのない、大人数での食事。あまりにも騒がしい、憩いの場。
「どう?課長。楽しいだろ?」
黙々と食べる課長に気づいたのか、或人は垓に声をかける。
すると____
「あぁ、1000パーセント、最高だ───っ!」
確かな笑顔が、其処には在った____
┗┓┗┓┗┓
デイブレイクタウンの壁上____
“静”に満ちた暗き夜。
輝ける満月。
広がる星々の元に、一つの影。
否、六つの影。
狼にしては小さい。五つの小さな影は、“ワンワン!”と吠える。
それを従えるのは、黄金の獣。
「いい夜だ」
戦いの始まり。
いや、“これから”ではなく、彼の戦いは既に始まっている。
「罪の償い。一人でも多くの、1000パーセントの笑顔を守る。それが、仮面ライダーサウザーだ」
誰に対する誓いでもない。
自分への忠誠。迷い無き、彼の決意。
「さぁ、サウザー課の仕事を始めよう」
これが、サウザー課の夜明け____
───おしまい───
ここまでお読みくださった方々に、
感謝感激雨あられちゃん。
はい、なんとか今日中に投稿出来ました。
長いようで短いお話でしたが、天津ロスの方々の寿命を延ばせることが出来たのなら幸いです。
あとはVシネを待ちましょう!w
次回作ももう決まっていますので、
それに関してはTwitterにてお知らせします。
____ではでは!(・/_\・)/
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