宿毛湾泊地の珍道中 (一生涯ソロプレイヤー)
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プロローグ  徴兵願

初めて書きます。
2次創作とかもっと初めてです。

一応先に言っとく!!

語彙力?いえ、知らない子ですね…


艦娘と深海棲艦との戦争が始まり、

気づけばもう5年が経とうとしていた。

 

季節は夏、ミンミンゼミの鳴き声が青空に響く。

ここは、とある小さな港町。

開戦して5年、未だに深海棲艦からの襲撃に

遭っていない為、皆戦時中だと思ってもいない。

それくらい、のほほんとしている集落だ。

 

その港町で、今日も平和に暮らす一家が居た。

桂田(かつらだ)家である。

そこに、1人の青年がリビングのソファーに

寝そべりながらテレビを見ていた。

 

桂田 寮(かつらだ りょう)、19歳。

趣味はシミュレーションゲーム。

特に『ガンダムブレイカー3』を

よくプレイしている。

 

そんな彼が見ているテレビ番組は、

毎日流れる戦局報道だ。

今はどのチャンネルも戦局報道しか流れない。

しかもどれも鎮守府が襲撃された…という

暗いニュースしかない。しかし、ここの住民は、

皆他人事としか見ておらず、大した影響もない。

せいぜい、「あぁ、またか」と

流されて終わりである。

 

寮「…ったく、いつになったら

こんな戦争が終わるのやら……」ハァ…

 

寮父「まぁまぁ、軍も頑張ってるんだし、

そのうち終わるだろうさ。」ハハッ

 

「父さん……そうだといいけどな。」

 

気楽そうに笑っているのは俺の父。

今は現役引退したが、彼が20代の頃は

自衛隊に勤めていた、結構偉い人らしい。

 

…こんな気楽そうに笑っている人が?

 

 

そんな父と世間話をしていると、

浮かない顔をした俺の母が

リビングにやってきた。

 

寮母「……………」トボトボ

 

「母さん?どうしたんだよ、風邪⁇」

 

「…大事な話があるの、お父さんも来て。」

 

「えっ…あぁ、うん。」

 

…よく見ると、母の眼が赤く腫れていた。

大泣きでもしない限りこんなに腫れるなんて、

せいぜいボコボコに殴られなきゃできない。

 

それだけ泣かせることがあったというのか?

 

「…寮、よく聞いて。ニュースで

徴兵の話をしていたのは知ってるわね?」

 

「…うん。アレだろ?

『提督』が少なくなってる、みたいな話。

それがどうしたんだよ?」

 

「……………」

 

母は俯きながら1枚のA4くらいの紙を

取り出して見せた。

 

「…何これ、[徴兵願]!?」

 

徴兵願。分かりやすく言うと、

遠回しの赤紙だ。

 

2年前、開戦して3年が経った時、深海棲艦による

鎮守府への襲撃が始まった。

 

鎮守府は、深海棲艦に唯一対抗できる『艦娘』の

言わば拠点、生命線である。

鎮守府が壊滅し、修理が不可能となれば、

継戦は困難だし、資源が使い物にならなければ、

補給も叶わなくなる。

深海棲艦は、そこに気がついたのだろうか。

…そうジャーナリストが言ってた気がする。

 

話を戻すと、その襲撃により、

提督の殉職…戦死者が一気に増えてしまい、

有能な提督までもが

戦死する事態になってしまった。

 

これに対し政府…というより軍は、

『徴兵令を復活させる』ということを言い出した。

これだから政府(軍も)は無能!

はっきりわかんだね。

 

もちろん議会は大反対。

国会議事堂前は反対する国民と

強行採決しようとする軍とで大騒ぎ。

100人近くが亡くなる大惨事となった。

 

結果的に強行派の勝ちとなり、徴兵令…ではなく、

『あくまでお願い』というスタンスのもと、

『徴兵願』が成立した。

 

徴兵願は{満25歳以上の男女}と

最初はそう定義されていたが、

戦局が激化していくにつれ、

現在は{満19歳以上の男女}

と定義が大きく変更されている。

なぜ19歳かというと、政府いわく、

20歳も19歳も大して差はない…とのこと。

…そうネットニュースで書いてあった。

 

ともかく、実質赤紙である徴兵願を見せられた

俺は、とにかく驚くことしかできなかった。

 

しかし、驚いているのは俺だけじゃなかった。

 

「…そんなバカな…それはいつ届いたんだ!?」

 

さっきまで気楽そうに笑ってた父が、

やけに焦っている。

 

「…今朝よ。封筒に折り畳まれてたわ。

『重要書類』ってご丁寧にね。」

 

それを聞いた途端、父は突然

携帯を取り出し電話をかけ出した。

おそらく自衛隊時代の知り合いにだろうか?

 

「もしもし佐藤さん!どういうことですか!?

自衛隊の関係者なら徴兵は

免れるんじゃないんですか!?」

 

………佐藤さん?

父が敬語で話してるって事は

上司か恩師かその辺りか?

 

『…すまない、状況が変わったんだ。』

 

「変わった…!?どういう意味ですか?」

 

変わった…?何が?

 

『私は、今まで軍の関係者なら家族も

徴兵対象外になると考えてた。

だが上層部は違った。

軍関係者とその奥さん以外の家族は

対象外にはならないんだそうだ。』

 

「そんな…………」

 

父はポロっと携帯を落とし、愕然としていた。

そのとき、よくわからなかったが、

何をすれば良いか…………

なんとなくわかった気がした。

まぁ、絶対両親は納得しないだろうけど。

 

「…なぁ、父さん。俺、やるよ。」

 

案の定、両親は驚いた。

あぁ、どうせ猛反対されるだろうなぁ…と思った。

だが、2人の返答は意外なものだった。

 

「…身体には気をつけるのよ?

無理は厳禁だからね?」

 

「…よく言った!それでこそ元自衛隊の息子だ!」

 

ま さ か の 反 対 じ ゃ な い

 

「…えぇ!?2人共反対しないの!?

俺最悪死ぬかもだぞ、

息子を戦地に送っていいの!?」

 

「えぇ?そんなの、たしかに嫌だけど…」

「まぁお前のことだ、嫌でも生き残るだろ。多分」

 

多分って何!?まさかの生き残る前提!?

 

「…まぁとりあえず、

お前は国や政府の命令なんか気にするな。

お前はただ立派に立って、

自分の護りたいものだけ護っとけ。

それが俺の…父さんの知る軍人だ。」

 

「…父さん。」

 

「これでも自衛隊時代のパイプがある。

いざって時は遠慮なく頼れよ?

息子を…家族を護るのは、父さんの仕事だからな!」

 

父さん、いきなり泣かせるんじゃねぇよ…………

ありがとな。

 

「そういえば母さん、召集場所と日にちは?」

 

父さんが母さんに徴兵願の詳細を確認させた。

 

「…どうやら、迎えのバスが来るみたい。

場所は…『森棚(もりだな)駅』に1週間後、

朝9時ですって。」

 

森棚駅とは、この集落の中央沿いにある

少しフォームは古いが、

現役の汽車が走る立派な駅だ。

 

「さて、そうと決まれば、早速準備するか!」

 

…準備⁇父さん、何をするんだね?

 

「何をするって…お前『提督』になるんだぞ?

そもそも艦娘について何も知らないだろ?」

 

「…………確かに!!」

 

「そこで、元自衛隊の父さんが艦娘について

1から教えてやる!まず…………」

 

 

 

1週間後…

 

俺は、白い軍服に着替え、大量の荷物を入れた

リュックを背負い、森棚駅へと両親と来た。

 

「いい?無理はしないで、くれぐれも身体に

気をつけるのよ?いいわね?」

 

「母さん…過保護すぎません?」

 

「まぁとにかく、こっちは心配するな。

………気をつけるんだぞ?」

 

「わかってる、元自衛隊の息子を甘く

見ないでもらおうか!」

 

「ハハッ、その調子なら大丈夫だな。

ほら、行ってこい。」

 

「…………あぁ、行ってくる。」

 

『国や政府の命令なんか気にするな。

お前はただ立派に立って、

自分の護りたいものだけ護っとけ。』かぁ…

やるだけやってみるよ、うん。

 

するとどこからか、聞き覚えのある声がした。

 

⁇「……寮!?」

 

「………ん?」

 

女子の声?しかも俺の名前を⁇

 

振り返ってみると、視線の先には

1人の女性が駆け寄ってきた。

(ちなみに俺の身長は大体170くらいだったから)

160くらいだろうか?大体それくらいの小柄で

黒髪でロングヘアな女性が

俺と同じ白い軍服を着ていて、

両手にはパンパンに詰まったカバンを持っており、

しかも士官用の制帽を被っていた。

 

…あれ?もしかして偉い人!?

 

偉い人ではないか、とかいろいろ考えているうちに

ついに彼女は目の前で立ち止まった。

 

⁇「まさか、あなたも徴兵されたの!?」

 

…なんでそれを知っているんだこの人は

てか、すっげー馴れ馴れしいなぁ………

 

「えーと…誰かと間違えてませんか?

あっもしかして、軍の関係者の方ですか⁇」

 

俺は、この女性は軍関係者の人だと思った。

すると、その女性は頬を膨らませ、

 

「ちょっと、冗談はよしてよ!

ワタシよ、ワ・タ・シ!!

あんたの幼馴染の姫流(きりゅう) なつ芽(なつめ)

…まさか、あんたに軍人と間違えられるとはね。」

 

………そういえば言い忘れていた。

俺には小学校の頃からの幼馴染がいる。

それが彼女、『姫流 なつ芽』その人である。

彼女とは家族ぐるみでの仲で、

年末年始は互いの家に遊びに行ってた程だ。

 

彼女の性格は、真面目で賢く、高嶺の花みたいな

オーラをまとっているような感じだ。

高校の時は会話もなかったな、オンの時は。

 

だがオフの時は俺に対して、やけに絡んでくる。

俺がゲームをしていると、一緒にやりたそうに

こちらを見てくるのだ。

 

………猫かっ!!

 

まぁ根は良いやつなのは確かである。

でも、そんなやつがなんで徴兵願を…?

 

「あー、すまん。徴兵願が届いてバタバタしててな。

………すっかり忘れてた。」

 

「いいわよ、別に。それより、なんで徴兵願を?

あんたのお父さん、軍関係者なんでしょ?

軍関係者の家族は徴兵対象外なんじゃないの?」

 

「…………実はそうでもないんだってさ。

状況が変わって、俺、徴兵対象者になった。」

 

その瞬間、なつ芽がピクンと反応した。

 

「でもまぁ、徴兵願から逃げるつもりはないよ。

なにせ俺の父親は元自衛隊だったんだ、

そうそう死ぬつもりはn」

 

「その話はやめて!!」

 

なつ芽が急に叫ぶから、驚いて尻餅をつきかけた。

顔を見ると……あれ、泣いてる?

なんか泣かせるような事言った!?

 

「…ワタシ達、戦場に行くんだよ?

人が沢山死ぬ場所に赴くんだよ?

だから…その話だけはやめてほしい。」

 

「…………ごめんな。」

 

それもそうだ。

これから人が死ぬ戦地へと赴くんだ。

この話はもうよそう。

 

すると、森棚駅前にバスが1台停まった。

徴兵願の対象者を輸送するバスだ。

確か行き先は最寄りの鎮守府だと書いてあった。

ここから最寄りの鎮守府は…

 

「…何ボーッとしてるの?

早く乗らなきゃ、置いていかれるわよ。」

 

そう言い残すと、なつ芽はそそくさとバスに乗り込んだ。

俺は置いていかれまいと、バスに乗り込んだ。

 

…バスには、『舞鶴(まいづる)鎮守府行き』

とだけ、書いてあった。

 




正直思った。

書きすぎたぁぁ〜…………ハァ

まぁ、こんな感じで進みます。


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0日目  はじまり

今回は気持ち前回より短いです、はい。

今回悲しいくらいガンダムネタないです。
(タイトル的に早く着任させなきゃ精神が)

あっ個人的にはUCとオルフェンズが好きです。


俺達を乗せたバスが、

森棚(もりだな)駅を出発してから

目的地の舞鶴(まいづる)鎮守府に着くまでの間、

俺と幼馴染の姫流(きりゅう)なつ芽(なつめ)との

会話は一切無かった。

 

……そりゃそうだ。

だって乗る前になつ芽を怒らせちまったし、

しかも先に乗っちまったから、

席が隣同士にならなかったし。

…しかもなつ芽のやつ、

隣の席の男子の口説きを完全無視。

あいつテキトーに流すとはいえ、

口説きにいちいち反応するやつだからなぁ……

それすら無視ってことは、

かなりのご立腹ですわ…トホホ

 

ちなみにバスは両側に2席ずつで、

横1列に4席ずつ、15列ある。

そこそこ大きいバスなのだ。

 

俺は1番後ろの列、右側の通路側だ。

なつ芽は前から6列目、左側の通路側。

 

…正直図説したいが面倒なのでパス。

え、メタい?気にしちゃあいけない(ニコッ

 

⁇「なぁ、あんた」

 

すると突然隣から声をかけられた。

 

隣を見ると、俺と同じ白軍服だったが、

少しラフな感じで着るように、

上から2番目のボタンまで開いていた。

見たところ、俺と同じくらいかな?

 

⁇「あんたはどこに着任したいんだ?」

 

…あまりにも突拍子すぎて唖然とした。

え、それが初対面への第一声!?

 

寮「…え、あ、あぁ俺はまだ決めてない、うん。」

 

⁇「………そうか。まぁ、同じ鎮守府ならば、

仲良くしようぜ。…あっ名乗るの忘れてた」

 

そう言うと彼はバスのシート上にもかかわらず、

靴も脱がないであぐらをかきながら自己紹介した。

 

明「俺の名は梅雨谷(つゆだに) (あきら)、情報収集能力を

国に買われて今日徴兵された。年齢は20。

何回かは徴兵を回避できたんだが、

流石に4回目となるとなぁ………」トホホ

 

…………なにこの人。

3回も徴兵を無視って、やっば(語彙力

 

…あっ、俺も名乗っとこ。

 

寮「俺は桂田 寮、19歳。親が軍関係者だったが、

訳アリで徴兵された。よろしく…えっと」

 

アキラ「アキラでいい。よろしくな、寮。」握手

 

寮「……あぁ、よろしく、アキラ。」握手

 

 

 

こうして俺達を乗せたバスは無事、

舞鶴鎮守府に到着した。

そこで3ヵ月間訓練した後、成績優秀者から

順に着任を希望する鎮守府や泊地へと配属され、

戦時中ということもあってか、全員階級が

少佐からのスタートとなった。なんだこれ。

 

 

そして、徴兵されてから3ヵ月半後…

 

 

寮「えっと…ここが『宿毛(すくも)湾泊地』…?」

 

ここは俺が着任した、宿毛湾泊地。

…のはず、うん。

俺としては東京駅みたいに

レンガ製のとびきり頑丈な建物を想像していた。

 

…しかし、俺の目の前には

レンガ製のところどころ大きな穴が空いた

建造物があり、そこの門に、

『宿毛湾泊地 第壱泊地』

と書いてあった……えっ第一?

 

たしか着任前に教官が言ってたなぁ、

『深海棲艦からの襲撃に遭っても

指揮系統の混乱を最小限に留める為に

複数設置された鎮守府や泊地が存在する』って…

 

⁇「あっお待ちしていました、司令官!」

 

すると、門の奥からセーラー服(?)を着た

少女が駆け寄ってきた。

彼女は、たしか…………

 

寮「…えっと、君が『吹雪』かい?」

 

吹雪「はい!改めまして、

特型駆逐艦1番艦『吹雪』です、

よろしくお願いします、司令官!」

 

そう自己紹介すると吹雪はニコッと微笑んだ。

 

…あっ俺も自己紹介しなきゃ。

 

寮「俺は桂田 寮。今日からここ宿毛湾泊地へと

配属された、正真正銘の新人提督だ。

よろしくな、吹雪!」

 

吹雪「はい!こちらこそ、

どうぞよろしくお願いします!」

 

寮「…あっそうだ、着任1日目って事で、

記念にこの門の前で写真撮らないか?」

 

そう言ってリュックから新品のカメラを取り出した。

 

吹雪「いいですね、早速撮りましょう!」

 

寮「撮るぞー、ハイチーズ!」パシャ

 

ドウデスカ?

ケッコウイイシャシントレタ

シレイカンモウツッテマスヨネ?

アァ、フブキモバッチリウツッテルゾ

ホントデスカ?

 

撮った写真を見ながら1人の新人提督と

1人の艦娘は、互いに笑いながら

泊地内のレンガ製の建造物へと

入っていった。

 

 

 




※番外編にて訓練のシーンを書きます。

ちなみに初期艦は、『なつ芽→漣』
『アキラ→五月雨』となってます。)

あと設定としては、
なつ芽→訓練兵首席
宿毛湾泊地第弍泊地着任

アキラ→宿毛湾泊地第参泊地着任
見た目20歳中身中年サラリーマン

現状こんな感じです(・ω・`)


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1日目  泊地着任1日目


前回の珍道中〜

宿毛湾泊地の第1泊地に着任した寮。
そこで初期艦・吹雪と出会い、
着任記念として門の前で写真を撮った。


吹雪「……あの〜司令官?」

 

寮「…なんでしょうか吹雪さん?」

 

吹雪「コレを自分達で直せ、と本当に

大将閣下が言ってたんですよね?」

 

寮「……そういう事だよな、コレって…」

 

寮&吹雪「「このボロボロの泊地の建物一帯を

倉庫にあるレンガを積んで直せ、って…」」

 

 

〜2時間前〜

 

寮「…にしてもさ、前に襲撃を受けた

泊地だって聞いてたけどさぁ…」

 

俺、桂田 寮は今日、宿毛湾泊地の第壱泊地に

着任した。着いた時には、あらかじめ移動前に

指名した『初期艦』と呼ばれる5人の艦娘の

1人、『吹雪』と合流した。

で、その後2人で記念撮影して、

とりあえず司令室を探すついでに建物内を

見て周り、『司令室』と書いてある

部屋のドアを開けた。

 

そしてあらすじみたいに頭の中で振り返りながら

俺は3階にあった司令室(?)を見渡した。

そして感想をひとつ。

 

寮「…屋根も壁も無いとはな…」ハァ

 

なんということでしょう〜

屋根は存在しないため、青空が空一面に

広がっているではありませんか〜

……かなりまぶしいです、はい。

 

本来ならレンガが主張する事でレトロな雰囲気

が出てくるはずの壁も…………

 

なんということでしょう〜(2回目)

辺り一面に広がる海がまるで壁紙のように

広がっているではないでしょうか〜

 

しかも床は木製で壁に接しているはずの部分は

焼け焦げており、家具に関しては入口に

黒電話1つだけ!

 

………家具が黒電話だけぇぇ!?

 

いやさ、ドアの上に『司令室』と書いてあってさ、

いかにも立派そうなドアだったからさぁ…

正直無事じゃないとは思ったけど!

 

吹雪「……とりあえず、どうします?」

 

隣に立つ少女…特型駆逐艦『吹雪』は

じっと見上げながら聞いてきた。

 

寮「…どうしよっか、てか荷物いつ下ろそうか」

 

吹雪「だから言ったじゃないですか、

重そうだから玄関で下ろしたらどうですかって」

 

寮「えー、だって居ない間に盗られるかも

しれないだろ、だって玄関だぞ?」

 

吹雪「え、たしか玄関前の門に

憲兵さんがいたはずですよ?」

 

寮「…………そんな人いたっけ⁇」

 

吹雪「……たしかにいませんね、はい。」

 

ジリリリリリリリ!!!!

 

寮「フォウ!?」

吹雪「ひゃあ!?」

 

テキトーに吹雪と雑談してたら、突然

黒電話が鳴りだした。うるせぇ。

 

おそるおそる受話器を取ってみる。

 

<ガチャ

 

寮「…もしもし、どちら様でしょうか?」

 

⁇『おぉ、繋がったか。どうやら電話線は

まだ生きていたようだ、よかった。』

 

……………………???

 

⁇『おっと失礼、君が宿毛湾泊地の

第壱泊地に着任した新人提督かね?』

 

…なんか上官の匂いがしたから、

敬語で言っとくか、めんどくさいが。

 

寮「…はい、本日宿毛湾泊地に着任しました、

桂田 寮と申します。階級は少佐であります。」

 

⁇『…例の徴兵制度出身の者か、全く元帥閣下は

一体何を考えているのやら………』ボソボソ

 

俺が徴兵願で徴兵された事を知っているだと!?

情報まわるの早いなぁオイ(゚ω゚)

 

⁇『…あぁいや、すまない。

ちょっとした独り言だ、あまり気にしないでくれ。

…あぁそうだ、自己紹介しなきゃ(使命感)』

 

……なんだろう、この人なんかアキラに似てる。

ひょっとしたらアキラのお父さん?

 

今川大将『私は今川(いまがわ) 時昌(ときまさ)、大将だ。

現在は〈(くれ)第弍鎮守府〉で提督をしている。

これからもよろしく頼むよ、桂田少佐。』

 

まさかの大将!?てか今、第二って言ってたよな?

 

寮「はい、よろしくお願いします!!」

 

今川大将『ははっいい返事だ…あぁそうそう。

君が着任した泊地とは、第壱泊地かね?』

 

第一泊地…あぁたしか門に書いてあったなぁ。

 

寮「はい、その第一泊地です。

それがどうかされましたか?」

 

今川大将『…そこって、かなりボロボロだろ?』

 

…なぜそれを!?

どこかから見てたのか!?

 

寮「…司令室は屋根も壁もありませんでした。

ただ、工廠(こうしょう)入渠(にゅうきょ)ドックは

被害がほとんどありませんでした。」

 

…と吹雪がこっそり教えてくれました。

ナイス吹雪。

 

今川大将『…だろうな。桂田少佐、よく聞け。

今いるであろう建物を出て右に進むと

建物1階くらいの大きな倉庫があるはずだ。

そこにある資源や資材、修復材などは全て

君たちの資源とする。私が保証しよう。

で、君たちはその倉庫内の建築用資材を使って

宿毛湾泊地を修復してもらいたい。

…頼めるかね?』

 

…えっ直せと!?

 

寮「…分かりました。

ちなみに締め切りとかって…」

 

今川大将『締め切り?何それ美味しいの⁇』

 

…………締め切りは無しか、うん。

 

今川大将『…とにかく、頼んだよ!』

 

寮「……あっはい」

 

ガチャ、ツー、ツー、ツー…

 

俺はそっと受話器を置いた。

 

そして吹雪と一緒に倉庫へと向かった。

 

 

 

寮「ここがその倉庫なのか…?」

 

吹雪「…なんでしょうこの倉庫、なんか

100人乗っても大丈夫そうに見えてきました。」

 

寮「吹雪それ倉庫ちゃう、物置や…」

 

…まぁ、吹雪の言い分も分からなくもない。

現に俺も倉庫というより物置にしか見えない。

俺的に倉庫と聞くと鉄製で頑丈なイメージがあり、

逆に物置はプラスチック製で脆いイメージがある。

 

…で、ここの倉庫はと言うと………

四角い。トタン屋根で蓋をしただけの

いわゆる『豆腐建築』なのだ。

 

おいおい、こんな倉庫で大丈夫か…?

 

⁇「大丈夫です、問題ありません!!」

 

おいこら吹雪、人の心を読むんじゃn…え、誰?

 

そこには薄ピンク色の髪色をし、

すす汚れた作業服を着た少女が

右親指を上に立てていた。

その後ろには黒髪でメガネをかけており、

いかにも堅そうな少女が書類を抱えていた。

 

………どちら様⁇

 

寮「…あの、2人とも、どちら様でしょうか?」

 

明石「あっ申し遅れました…本日付けで

宿毛湾泊地に着任しました、工作艦『明石』です!

よろしくお願いします!!」ビシッ

 

大淀「同じく本日付けで舞鶴鎮守府より

派遣されました、軽巡洋艦『大淀』です。

よろしくお願いします。」ビシッ

 

なるほど薄ピンクヘアーが明石で、

黒髪メガネが大淀か…よし覚えた。

 

寮「私も本日付けで着任しましたわ、

新人提督の桂田 寮でございますわ。

何とぞよろしくお願いいたしますわ」ペコリ

 

とりあえずお嬢様っぽくなったが

一応あいさつを。

 

吹雪「………えっ?」

 

明石&大淀「「よろしくお願いします!」」ペコリ

 

寮「…………」

 

明石&大淀「「…………」」

 

吹雪「…………」

 

寮「…だめだコレ精神的に吐き気を催しそう」

 

吹雪「………司令官、正直言って今のアレ、

かなり無理がありましたよ…てか何であんな風に

お嬢様っぽくして気持ち悪くしたんです?」

 

寮「いやさ吹雪、よく考えてみろ。

2人は舞鶴から来た派遣社員だぞ?

ココで失礼な事してみろ、それが舞鶴へと

知れ渡って最終的にこの職をクビになるかも

しれないんだぞ!?…コレはきっと、

上からの刺客なんだぁー……」ハァ

 

明石&大淀「「…………えっ」」

 

吹雪「心配しなくても今の発言、

全部2人に聞かれてますよ司令官。

もう腹をくくりましょうよ。」

 

明石&大淀「「あ、あのー…………」」

 

寮「え、マジで?俺1日目でいきなり無職?

提督として行ったのレンガ積んだだけ?

それ提督じゃなくてただの作業員じゃねぇかよ…」

 

明石&大淀「「あのーー!!」」

 

寮「?」

吹雪「はい?」

 

明石「私たち実は舞鶴でやらかしまして」アハハ…

 

大淀「その際に舞鶴鎮守府への連絡が

取れなくなってしまいましたから……」

 

寮「……どーゆーこと?」

 

大淀「ですから舞鶴へと泊地の噂が知れ渡る

ということはおそらくないかと思うのですが…?」

 

寮&吹雪「「えっ」」

 

明石「…と、とにかく!

これからお世話になりますね!!」

 

吹雪「えーと、つまり2人は…」

 

寮「何も聞くな、いいね?」

 

吹雪「アッハイ」

 

〜ちょっと経過〜

 

寮「…で、この倉庫で何が大丈夫なんだ?」

 

明石「提督は『妖精さん』をご存知ですか?」

 

妖精…あーなんか親父が言ってたな。

確か…ん?吹雪の頭上で寝てるやつが…

こんなの今までいたっけ?

 

寮「…もしや今吹雪の頭上で寝てるやつか?」

 

吹雪「…!?」

明石「はいその通りd…え!?」

大淀「提督、今なんと!?」

 

なんか驚かれた。

…………え、もしや俺天才なのか!?

そんなに見つけられないのか妖精って!?

 

寮「…だから、今吹雪の頭上で寝t…あっ起きた」

 

ほらぁ、そんなに騒ぐからさぁ…

その妖精ってやつが起きちまったじゃねぇか…

 

吹雪の頭上にいた妖精(?)は

大きなあくびをした後、

俺の足元まで飛び降りてきた。

そして深々とお辞儀をした。

なんだよ、結構可愛いじゃねぇか…フヘッ

 

明石「………何という境遇でしょう、

あっちょっと私工廠見てきますねー」スタコラサー

 

いかにも混乱気味な表情をした

明石は何処かに行ってしまった。

…倉庫の説明は?

 

大淀「提督、あなたって人は…」

吹雪「司令官…」

 

寮「…ハイ、ナンデショウカ」ピキピキ

 

大淀「…これは出世確定だわ」キラーン

吹雪「今晩は赤飯ですね(迫真)」

 

なんだろう、この違和感は。

 

…………てか赤飯って!?

そんなにめでたいことか?

 

大淀はぶつぶつ言いながら

どこかへ行ってしまった。

 

寮「…俺、なんか凄い事したか?」

 

吹雪「少なくとも普通の人よりも

はるかに凄いですよ、司令官。

妖精さんは基本、私達艦娘にしか

見えないんですから。」

 

寮「通りで明石と大淀が驚くわけだ…」ハァ

 

なんか基本見えない者が見えたり、

上官に自力で泊地を直せと言われたり、

俺今日着任してまだ数時間しか経ってないぞ…

 

寮「とりあえずは倉庫に入って建築資材を

ひと通り確認するかぁ…あー、しんどっ」

 

吹雪「私も手伝いますから、最初から

やる気ゼロなの何とかして貰えません?」

 

寮「…じゃあ後の作業任せていい?」

 

吹雪「ダメです」

 

寮「ショボン(´・ω・`)」

 

俺は吹雪に連れられ、渋々倉庫の扉を開けた。

 

そこにはドラム缶と弾、鉄インゴットと

銅っぽいインゴットが大量に保管されていた。

 

だがしかし、肝心の建築資材が見当たらない…

 

寮「…なぁ吹雪。」

 

吹雪「なんでしょう司令官?」

 

寮「建築資材ってコレ?」

 

俺は銅っぽいインゴットを指差した。

 

吹雪「…それはボーキサイトであって、

銅インゴットではありませんよ?」

 

寮「…じゃあ建築資材は何処へ?」

 

そう聞くと吹雪は鉄インゴットの山を

指差しながらやや呆れた様子で、

 

吹雪「…そこに大量にレンガが

積んであるじゃないですか。

司令官、まさか老眼なんですか?」

 

寮「…俺19なんだが?」

 

吹雪「…とにかく、あのレンガの山を

まず倉庫から出しましょう!」

 

寮「…見るからに多くないか?」

 

吹雪「手伝ってください(威圧)」

 

寮「…ちょっと前まで『手伝う』

って言ってたのにぃ…オニ」

 

吹雪「何か言いました?」ピキピキ

 

寮「…イエ、ナニモ」

 

明石(ちょっと提督に聞きたいことが

あったんですけど…アレじゃ無理ですね)

 

明石(それにしても、『あの艤装』って

誰のなんだろう…?吹雪ちゃんのかな?)

 

寮と吹雪が倉庫内で騒いでるところを

外から覗いていた明石が考え事をしていた。

 

そして考え事をしたまま

明石は倉庫から離れていった。

 

 

一方、大淀も1階の作戦司令室で、

不審な資料を発見した。

 

大淀「…何でしょうか、この古びた資料は?

えーと…『宿毛湾艦娘開発計画』?」

 

大淀は『宿毛湾艦娘開発計画』と呼ばれる

資料をまじまじと読んだ。

そこには、艤装に関する情報が

事細かに書かれていた。

すると、突如大淀の顔色が変化した。

 

大淀(ここでこんな危険な計画が!?

…しかし、提督に知らせるのは不味いですね。

当面の間は黙っておきましょう…)

 

そして大淀は計画の資料をこっそり畳んで

作戦司令室をあとにした…

 

 

30分後〜

 

寮「やっと半分くらい出せたな…」フゥ

 

吹雪「やっとですよー本当に…」フゥ

 

倉庫の外にはレンガが山積みになっていた。

だがしかし、まだ半分以上は

倉庫内に保管されたままである。

 

寮「にしてもこれだけあればまぁ、

量的に直せるんじゃねぇの?」

 

吹雪「確かに、これだけあれば

十分な気がしますね!」

 

寮&吹雪「「AHAHAHAHA!!!!」」

 

高らかな笑い声をあげながら2人は

レンガの山から第1泊地の半壊した建物を

視認した。その後、急激に笑いが途絶えた。

 

そして、冒頭へ…

 

吹雪「これではいつまで経っても

半壊したままで終わりません!

司令官、『建造』しましょう!!」

 

…え、新しい建物建てる気!?

 

吹雪「…言っておきますけど、増やすのは

あくまで艦娘であって、建物は

1件も増やしませんよ?あ、宿舎は別ですが」

 

…あー、あれか。

確か『燃料』『弾』『鉄』『ボーキサイト』

を工廠に持っていけば新しい艦娘が現れる…

ってやつだよな、うん。

 

寮「うん理解した。けどな、

明石といい吹雪といい、勝手に人の心読むの

やめてもらっていいっすか?」

 

吹雪「仕方ないじゃないですか、

だって司令官分かりやすいんですもの。」

 

寮「マジか…」チーン

 

吹雪「…たしか建造は工廠でできたはずです、

早速作業中断して工廠へ行きましょう!」

 

寮「…本当は新艦娘に丸投げしたいだけだろ」

 

吹雪「さぁ司令官、倉庫内から燃料などを

工廠へ持って行ってください。」

 

寮「…俺ってここの司令官だよな?」

 

5分後〜

 

寮「なぁ吹雪…本当に100も要るのか?」

 

俺は吹雪によって(提督なのに)

燃料に弾、鉄とボーキを100ずつ、計400程

工廠に運ばされた。マジで疲れた。

(ちなみに量に関しては

妖精さんが教えてくれたから

余分に運ばなくて済んだ。ナイス。)

 

吹雪「だって司令官が着任して初めての

建造ですよ?ホントは30ずつの計120で

十分ですがまぁ将来への投資、てことで」

 

寮「…ちなみに残りの資材ってどれくらい?」

 

吹雪「ざっと300ずつの計1200

ってところですかね?」

 

寮「300って多い方なのか?」

 

吹雪「大抵の場合、新たに着任された

提督に対し、上が着任祝いとして支給する

資材が200くらいですので、ここだと

その倍あったってことになりますね。」

 

初期で倍って…これもしや今川大将の力か?

 

明石「まぁ戦艦や空母を狙うならば

圧倒的に足りませんがね…」アハハ…

 

工廠奥からまるで生えてきたかのように

明石が現れた。脅かすなよ…

 

明石「戦艦ならば鉄が600と燃料が400、

弾薬が100とボーキサイトが30ずつ、

空母ならば燃料と弾薬が300ずつ、

鉄とボーキサイトが600ずつ要ります。」

 

うーん、莫大だなぁ…(遠い目)

てか空母ってそんなにかかるのか、

よっぽど強いんだろうなぁ…

 

明石「でもまぁ、オール100でも巡洋艦娘

とか出るかもしれませんし…」

 

吹雪(出るとは言ってませんが)

 

寮「…とりあえず資材入れるか。」

 

明石「あっはい」

吹雪「あっそうですね」

 

工廠に入ると、人1人入りそうな程の

大きさのドックが2つ設置されていた。

幸いドックがどういうものかは、

親父によってみっちり叩き込まれていた。

たしかそこで建造されるはず…だよな?

 

明石「ではこちらに資材を入れてください。

順番はテキトーで大丈夫ですよ。」

 

寮「え、大丈夫なのか?」

 

明石「大丈夫ですよ、だって建造は主に

妖精さんが行うんですから。」

 

…妖精さんここにもいた!?

 

すると建造ドックから3人程妖精さんが

現れた。そして何やら1人が

看板を持って何やら訴えている。

 

看板妖精『早く建造させろ』

 

寮「oh…」

吹雪「え」

明石「あちゃー…」

 

大淀「何やら騒がしいのですが…て、

どうしたんですかこの大量の資材」

 

突然工廠の外玄関から大淀が現れた。

お前ら雑草かの如く生えてくるなぁ…

 

明石「あ、大淀、これからちょうど

建造するところだったんだー!」

 

大淀「…の割には資材多くない?」

 

明石「投資だって吹雪ちゃんが…」

 

大淀「100も30も大して変わらないのに」

 

大して変わらないのに………

大して変わらないのに……

大して変わらないのに…

 

大淀の何気ない一言が

看板妖精たち3人を怒らせた。

 

妖精A「ヤッテヤロージャネ−カァァァ!!!!!」

妖精B「イッテクレタナ?オイコライッテクレタナ?」

看板妖精『いいだろう…受けて立つ!』

 

寮「…妖精さんの声は聞き取りにくいが

看板妖精さんはすっごい分かりやすい。

なんかそんな気がする。」

 

吹雪「奇遇ですね、私もです。」

 

寮「なぁ明石、これって期待していいやつ?」

 

妖精B「マカセトケ」

 

明石「期待していいやつです。

まぁ序盤ですし、軽巡洋艦辺りが妥当かと」

 

吹雪「確かに戦艦や空母が来られても

資材の量的に難しいですしね…

できれば低燃費な艦娘がいいなぁ」

 

寮「艦娘にも低燃費とかあるんだ…」

 

大淀「ありますよ。天龍型軽巡洋艦や

睦月型駆逐艦とかが代表例ですね。」

 

明石「まぁ序盤ですし(2回目)、

燃費辺りはあまり気にしなくて大丈夫ですよ。」

 

寮「いずれ気にするときが来る…

私にはそれが分かる(確固たる意志)」

 

吹雪「何サトリ開いたみたいなこと

言ってるんですか。そんなことより、

妖精さんたちが建造始めちゃいましたよ」

 

…いつの間に!?

 

我に返り、建造ドックを見ると

そこには作業中の妖精3人衆と

『59分14秒』と書かれた掲示板が

規則的に動いていた。あ、つまずいた。

 

明石「おっとこれは…?」ニヤニヤ

吹雪「もしかして…?」ニヤニヤ

大淀「え」

 

…なんか楽しそうだな、うん。

 

寮「大淀…」

 

大淀「……………」

 

寮「残念だったな」肩ポン

 

大淀「うわぁぁぁ……」

 

そして、大淀はひざから崩れ落ちた。

 

1時間後〜

 

妖精A「オワッタゾ」

 

明石「お疲れ様でしたー」

 

建造が終わった途端、妖精3人衆は

そっと姿を消しました。

さてと、提督達を呼びますか…

 

明石「てーとくー!皆さーん!

新しい艦娘が進水しましたよー!!」

 

しばらくすると提督と吹雪ちゃんが

やや眠たげに戻ってきました。

 

寮「ふぁあ…あ、完成したんだ?」

吹雪「ふぁあ…眠いです〜」

 

2人とも……さっきまで寝てましたね?

私ずっと起きてたんですよ?

 

⁇「おいおい、お前がここの提督か?」

 

おっと、どうやら新しい艦娘が

建造ドックから出てきたみたいですね…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1時間かかるみたいなので、

吹雪と倉庫内でぐっすり寝ていました。

そうしたら明石から『もうできた』

みたいなこと言ってたから、吹雪を

起こし、あくびをしながら工廠に入ると

 

そこに誰かいた。

 

黒っぽい短めの髪、

頭部に動物の耳のようなもの、

左眼に眼帯、全体的に黒っぽい制服(?)、

背中には砲台が左右に1つずつついた

大きな艤装(てか箱だよな?)を背負っており、

右手には太刀のようなものを持っている。

 

そして何より雰囲気が怖いです…

 

⁇「なぁ、お前が提督なのか?」

 

声もなんか不機嫌そうな声!

やべぇ寝起きだから脳みそまわらねぇ…

あぁもうこうなったら腹括ってやる!

 

寮「…どうもどうも、宿毛湾泊地第1泊地

新人提督の桂田 寮と申しますわ」ペコリ

 

吹雪「……またですか。」

 

お嬢様ボイスは警戒心を解く。

まさか親父の迷言が役に立つとは

思いもしませんでしたわ…あっ間違えた、

思いもしなかったぜ…

 

吹雪(どうせ回想でもお嬢様なんだろうなぁ)

⁇(なんだこいつ?一応提督…みたいだな)

 

寮「…吐き気を催すのは相変わらずってか?」オエッ

 

吹雪「ほーら言わんこっちゃないんですから…

これで2回目ですよー?はいポリ袋」スッ

 

寮「あーサンキュ…orrrrrrrrrrrr」

 

吹雪「…そういえば名乗るのを忘れてました。

私は特型駆逐艦1番艦の吹雪です!

で、この吐いてる人がここの司令官です」サスサス

 

吐いてる人って………

そう言いつつ背中さすってくれるんだな…

お、orrrrrrrrrrrr

 

明石「私は工作艦、明石です!訳あって

本日着任しました、よろしくお願いします!」

 

⁇「スゲー吐くんだな…あ、そうだ。

俺も自己紹介しなきゃな」

 

そう言うと、その新艦娘はやる気に

満ちた表情で名乗りだした。

 

天龍「俺の名は天龍…天龍型軽巡洋艦の

1番艦で、その性能は世界水準を軽く

超えている事で知られているんだぜ…?

要は1番強い軽巡だ!フフフ…怖いか?」

 

なんだろう、一気に吐き気が引いた気がする。

それに最後なんて言った?

『怖いか』って言わなかったか?

最初は怖かったな…最初はな。

まぁ今となると…

 

寮「…天龍って実はバカなのか?」

 

吹雪「司令官よりはマシだと思います」

 

明石「私は吹雪ちゃんも同類だと思うなー…」

 

大淀「明石も同類だと思いますが?」ニョキッ

 

寮「大淀…お前はモグラか?」

 

大淀「今回ばかりは私もそう思いました。」

 

明石「大淀も抜けてるところがあるんですよ」

 

天龍「…なぁ提督。」

 

寮「…なんだ天龍?」

 

天龍「ここっていつもこんな雰囲気なのか?」

 

寮「今日着任したところだから分かんないが

まぁ、ピリピリしてるよりかはマシだろ?」

 

天龍「逆に不安だ…だが、これもアリ

かもしれないな。ま、よろしく頼むぜ」スッ

 

ドックから出てきた時とは全く違う雰囲気。

本当に同一人物なのか?

だがまぁ握手求めるくらいだ、これは将来

かけがえのない戦友になる予感…がする!

だが今は…

 

寮「あぁ、よろしくな天龍。」ニギリ

 

握手、これ大事。

あぁそうだ…アレもやっておかなきゃ

 

寮「…てな訳で『天龍着任記念』

って事で写真撮らないか?」

 

と、カメラを取り出した。

 

天龍「…アイツらはどうするんだ?」

 

あー明石と大淀の分も撮らなきゃだよなぁ…

 

寮「…あとで⭐︎」キラーン

 

天龍「おいおい大丈夫か…?」

 

寮「大丈夫だ、問題ない」トルゾー

 

『パシャ』

 

ドウダ?

ウン、バッチリトレテルゾー

 

明石「…あ、写真撮ってる〜!」

大淀「何ですって!?ずるいですよ!」

 

ゲッバレタ

ニゲルゾテートク!

アカシニモトッテクダサイヨー!

ヌケガケハヒキョウデスヨー!!

ドウシテコウナッタンダァァァ‼︎

 





一方その頃〜

⁇「ここが『宿毛湾第2泊地』…」

大きなスーツケースを引きずりながら
また1人、新人提督が着任した。

⁇(…まさか、寮が着任してる訳ないよね。
だってあの子が、そんな…)

その新人提督…彼女はなぜか
悲しそうな表情をしていた。


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2日目  初出撃in宿毛湾


〜あらすじ〜
宿毛湾泊地第1泊地に着任した寮は、
ミスにより飛ばされた明石と大淀を、
その後の建造にて軽巡洋艦『天龍』を
新たに迎えた。

一方、第3泊地にも動きが…


明石「提督…こっそり建造しました?」

 

寮「そうなのか、吹雪さん」

 

吹雪「いきなり濡れ衣着せるのやめてもろて」

 

天龍「…じゃあ、この艤装誰の?」

 

一同「「「さぁ?」」」

 

俺と吹雪、そして昨日着任した天龍は

明石に呼ばれ、工廠に集められた。

大淀に関しては第2泊地に新任提督が

着任したらしく、今日は不在である。

 

その4人が囲んでいるのは、

大きな古ーい艤装だった。重そう。

 

その艤装はコの字型になっており、

左右に連装砲が2基ずつ、そして(多分)

背部に1基搭載されており、その連装砲が2基搭載

されている船体(の様な鉄の塊)側面外側には

何かを発射させる小さな筒状の兵装が左右対称に

搭載されていた。ミサイルポットか何かか?

あとは…色々積んでた。詳しくは分からん。

 

明石「吹雪ちゃんや天龍さんの艤装より

はるかに大きく、出力も凄いんですよ?

やっぱり提督が建造したのでは?」

 

寮「…あのなぁ、明石。俺昨日資材やら

レンガやら運んだせいか今日筋肉痛なのよ。

そんな中また100ずつの計400運べと?

明日には死んでるわ、てか殺す気か!?」

 

明石「…そういえば提督って

普通の人間でしたね。」

 

寮「なんか傷ついた」

 

吹雪「…コレって連装砲ですよね?

私の主砲より大きいですよねコレ。」

 

吹雪は大きな艤装に搭載された5基の

連装砲の1基を指差した。

 

寮「そういえば、吹雪の主砲って?」

 

吹雪「私のは『12.7㎝連装砲A型』という、

手に持つタイプの小口径主砲です。」

 

天龍「俺のは『14㎝単装砲』っていう

艤装に搭載されてるタイプの中口径主砲だ。」

 

寮「じゃあ、この艤装の口径は?」

 

明石「…それが、どうも大きすぎるんです。

主砲が『41㎝連装砲』なんて、

本来なら長門型戦艦の持つ大口径主砲なのに。

しかも変なことに長門型戦艦は4基8門。

対してこの艤装は5基10門。

…提督、おかしくないですか?」

 

寮「すいません、よく分かりません。」

 

天龍「吹雪、翻訳。」

 

吹雪「…要は『長門型戦艦じゃない

この艤装の持ち主は何者なのか』と

明石さんは聞いているのです。

さぁ司令官、誰を建造されたので?」

 

寮「あの俺がやったみたいに言うの

やめてもらってもいいですか?」

 

吹雪「あなた昨日『戦艦欲しい』って

言ってたじゃないですか!

コレもう確信犯ですよね!?」

 

寮「だから俺を犯人に仕立て上げるな!

確かに戦艦欲しいけれどもぉ!!」

 

吹雪「やりました明石捜査官!

容疑者が遂に吐きました!」

 

明石「よくやりました吹雪刑事!」

 

 

 

天龍「…急にどうしたお前ら」

 

寮「…なんか始まったな」

 

天龍「…で?提督はどうなんだ。

やったのか、やってないのか?」

 

寮「…全身筋肉痛の人が

自ら好んで重労働をするとでも?」

 

天龍「…提督も知らないみたいだな、

あの艤装については。」

 

寮「逆に天龍は知ってるのか?」

 

天龍「昨日着任したばかりだぞ、

忘れたのか!?」

 

寮「あー、俺も昨日着任したばかりだったわ」

 

天龍「結局のところ、誰一人知らないか…」

 

 

大淀「大淀、ただ今帰投しましたー…

…って提督、これは一体?」ガチャ

 

誰も知らない艤装を相手に困惑していた時に

大淀が帰ってきた。

 

…………え?

 

寮「…アレ?大淀って確か今日h」

 

大淀「あぁアレですか?聞いてくださいよ!

第2泊地の新任提督さん、驚くほど

もの凄く塩対応だったんですよ!

しかも視線も冷たいし雰囲気も怖いしで…

てな訳で帰ってやりました!!」プンプン

 

天龍「あー…うん、お疲れ。」

 

寮「あーそうだ、大淀ってさ、

この艤装が何なのか知ってるか?」

 

大淀「どうせ提督が建造したんでしょう?」

 

寮「」チーン

 

天龍「瞬殺されてやがる…」

 

大淀「はぁ…私今日はもう疲れました、

てな訳で横になってきます。

起こさないでくださいねー…」ハラリバタン

 

そう言い残し、大淀は眠りに行った。

 

寮「建造してないもんッッ!!(大泣き)」

 

天龍「あー分かった分かった、提督が建造

してないの信じるから…だから泣き止め。

今のお前上官の面影一切無いから」

 

寮「おいマジか…」ケロッ

 

天龍(泣き止むの早っ!?)

 

明石(ん?このプリント大淀が落とした…?)

 

明石は大淀が落としたプリントを拾い、

読んでみたが……

 

明石「待って全然分からん」

 

吹雪「⁇」

 

明石「あーもうヤメですヤメ!こんな古臭い

オンボロ艤装の持ち主を探してたら、

私たち老けちゃいます!はいこの話終了!!」

 

明石「提督!あなた一体いつになったら

出撃指示出すんですか!

出撃して戦果稼いでくれなきゃ新技術ちゃんを

拝めないじゃないですかぁ!!」

 

明石が半べそかきながら俺の肩を揺らす。

まるで俺から半径30センチ間のみ震度7

の地震が起きてるようなものだ。

 

 

寮「おい待て吐くから吐くからぁ!?

指示出すから揺らすなぁぁ!!!」

 

 

 

〜数十分後〜

妖精さんから色々助言を貰いながら、

俺はようやく作戦らしい作戦を作った。

そして、未だに修復していない司令室へ

(大淀以外)全員を集めた。

 

寮「えー、あー、うん。これより、

『宿毛湾泊地正面海域哨戒(しょうかい)任務』

を説明する。…えーっと地図地図…」ア、アッタコレダ

 

俺は倉庫に残っていた

宿毛湾沖合までの地図を

床に広げ、説明を開始した。

 

寮「俺達がいる宿毛湾泊地はココ。

今回はそこから先の沖合に出撃し、

付近の深海棲艦を撃破、そして

沖合の制海権を握る。

…まぁ、こんなものだろ。」

 

吹雪「今回出撃するのって、

私と天龍さんの2名だけですよね?

大丈夫かなぁ…」

 

天龍「心配すんなって!

なんてったって1番強い俺が

出撃するんだ、深海棲艦なんか

ビビって逃げちまうに決まってらぁ!!」

 

明石(今フラグ立った気がする)

 

寮(あっふーん)

 

寮「…とにかくブリーフィングは終了、

吹雪と天龍の2人はー………」

 

天龍「おい提督どうした」

 

寮「…そういえば明石、

艦娘ってどこから出撃するわけ?」

 

明石「工廠からですが何か?」

 

寮「…もしやカタパルトからとか!?

ランプが赤から青に変わったらとか!?」

 

明石「…大体合ってるのが少々悔しいです」

 

吹雪「でも私達は一度も見てないですよ?

どうして司令官はご存知なんですか?」

 

寮「出撃と聞いて条件反射で聞いたら

まさか合ってたという奇跡…!?

とても言えるわけがない!!」

 

天龍「思いっきり声に出てるから心配すんな」

 

 

大淀「…ブリーフィング終わったんですよね?

だったらさっさと出撃してもらっていいですか?」

 

吹雪&天龍「アッハイ」

寮「…お、大淀?起きたのか」

明石「お、おはよー?」

 

大淀「そりゃあ、あれだけ騒がしかったら

寝るに寝れませんから。…あと明石、

私が持ってた資料知らない?」

 

明石「…?資料って何の?」

 

明石(資料って大淀が帰ってきた時に

落とした資料の事だよね!?その紙は現在

行方不明だなんて言えるわけない!!

言ったらコロされる…黙っとこ)

 

大淀「……いいわ、なんでもない。

提督も、大人しく静かに執務に勤しんd」

 

寮「明石!工廠のカタパルト見に行くぞ!!」

明石「アイアイサー!!」スタコラサッサー

天龍「おいこら待てぇ!!」ピュー

吹雪「お、置いていかないでくださいぃ〜」ピュー

 

大淀「……大丈夫かなぁ、ここ。」ハァ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

工廠奥の扉を開けるとそこには

なかなかの広さを持ち、数多くの妖精さん達が

忙しそうに右へ左へと足場を走り回っていた。

そしてその足場がコの字状に囲んでいるふもとには

ゆらゆらと揺れ動く水面が浮かんでいた。

そう、艦娘はここから出撃するのである。

 

寮「…スゲーなぁ。」

 

明石「クレーン等が雨に濡れて錆びない様に、

工廠の室内に設けられているみたいですね。

他の鎮守府だと、屋外や地下に設けている所も

少なくありませんし。まぁ空爆に対しては…ね?」

 

無理もない。

工廠の屋根は瓦でできているとはいえ、

空爆に遭うとガレキで埋もれかねない。

どのみち使用不可となってしまいかねないのだ。

 

吹雪「そういえば、私達の艤装は?」

 

明石「あぁ出撃する艦娘の艤装ならば、

基本ガレージにて最終チェックが完了次第、

いつでも装着できますよ!

あ、装着する時はあのコの字状に囲まれた

足場の中央に立って下さいね。

ちなみに水面の所は、立つ際に水が引いて

立てる様になりますので心配しないでくださいね」

 

吹雪「は、はーい…」

天龍「………」

 

寮「…武者震い?」コソッ

天龍「うわぁ!?」ビクッ

 

天龍「脅かすんじゃねぇ!…ったく、

せっかく人が集中してたのによぉ」

 

寮「いつになく静かだったから」

 

天龍「お前らがうるさすぎるだけだ」

 

寮「ひどい」

吹雪「そんな」

明石「ありえない」

 

天龍「待ってもしや自覚無し?」

 

寮「逆に自覚してるとでも?」

 

天龍「確かに。」

 

吹雪&明石(即答しやがったあの軽巡!?)

 

整備妖精「…アノー、マダデナインデスカ?」

 

寮&吹雪&天龍&明石「「「「アッハイ」」」」

 

 

明石「艤装のメンテナンスは?」

妖精A「スデニオワッテオリマス」

明石「分かりました、ではー」

 

 

吹雪「ここに立っていれば良いんですか?」

整備妖精「オウ。ヨーシ、艤装ヲオロセー‼︎」

 

整備妖精の一声がかかった途端、

チェーンで吊るされた艤装が天井から降ろされ、

吹雪の背面で静止した。

 

整備妖精「ヨーシ、接続スルゾー。」

 

そう言った後、吹雪の背中と艤装が接面した。

その瞬間艤装がリュックサックの如く変化し、

まるで艤装をそのまま背負っているように見えた。

 

寮「すげーな、艤装って」

 

明石「あ、提督!まだ居らしたんですか?」

 

寮「あらあら明石さん、お忙しい中

わざわざどのような御用で?」

 

明石「…ご近所さんのマネは

また今度にしてもらっても?」

 

寮「(´・ω・`)」

 

明石「で、どうしてまだ居るんです?」

 

寮「どうせなら見届けようかと」

 

明石「吹雪ちゃん達を?」

 

寮「…いずれ生まれるであろう精鋭艦隊も

ここから出撃すると思うと…なんか、な?」

 

明石「もしやエモさ見出しました?」

 

寮「うん(*´∀`*)」

 

明石「…一応戦時ですよ?」

 

寮「私、戦時であれ出撃シーンに

激しく興奮する人ですので。」

 

明石「ア、ソウデスカ」

 

寮「悲しいなぁ(´ω`)」

 

明石「…そろそろ出撃しますよ。」

 

寮「お、いよいよか。」

 

 

吹雪「うわぁ、緊張します…」

 

『タービン出力125%!4連装魚雷並びに

12.7cm連装砲A型、セーフティー解除!

全搭乗妖精は第1種戦闘配置!

駆逐艦吹雪、発進どうぞ!』

 

吹雪「はっはい!吹雪、行きます‼︎」

 

 

その瞬間、吹雪の脚部を固定していた床(?)

が凄まじい速度で海へとスライドしていった。

その姿はまさに…

 

寮「…かの有名な出撃シーンをこの眼で

拝めるとはな、ガ○ダム!」

 

明石「…ちゃんとピー入れてますよね?」

 

寮「入れたが?」

 

明石(入ってる気がまるでしない!)

 

明石「…吹雪ちゃん、どうにか無事に

出撃できたみたいですね。」

 

寮「次は天龍か…『狙い撃つ!』とか

言わないといいが…」ハァ

 

明石「…一体誰の話を?」

 

寮「…そーゆー人がいるってことで」

 

明石「アッハイ」

 

 

天龍(ドキドキ)

 

『タービン出力105%!

14cm単装砲2門セーフティー解除!

専用太刀の使用を許可、

軽巡洋艦天龍は、速やかに装備されたし!

なお発進タイミングを天龍に譲渡する!』

 

天龍「よし来たぁ!天龍、出撃するぜ‼︎」

 

 

寮「…全員出たな、まだ2人だけど。」

 

明石「まぁそのうち増えてますよ、多分」

 

寮「…だといいなぁ。」

 

 

明石「…知ってます?深海棲艦って

元は私達と同じ艦娘だっていう事。」

 

寮「魔改造説?それとも地縛霊説⁇」

 

明石「もうちょいマシな表現無かったんすか」

 

寮「聞くな、コレは生まれつきに等しいから」

 

明石「はぁ………話戻しますけど、

もしかしたら深海棲艦…いや、

かつての艦娘たちと出会えるかもしれない、

でも皆が皆、心を開くかは分かりません。

それでも私達は、深海棲艦化した

戦友を助けなければならない。

…大規模な鎮守府ほど、

この悲惨な現実を受け止めて来た

実績があるんですよ。」

 

寮「なるほど。

つまり何が言いたいんだ?」

 

明石「話聞いてましたぁ⁉︎」

 

寮「聞いてた!でも分からん!」

 

明石「…つまり、この先深海棲艦と

戦っていくと深海化が解けた艦娘が

保護されてやって来るんです。

その艦娘たちの面倒を見きれますか?

………という話です。」

 

寮「ペット飼うんですか?」

明石「ちがいます」

 

寮「面倒見きるとかもう親が子に

『アンタ最後まで面倒見れるのか?』

って言ってるタイプじゃねぇか…」

 

明石「そんなつもりで言ってません。」

 

明石「つまりはメンタルケアだったり、

治療だったり、そういう事ですよ」

 

寮「…ちなみにだが、その保護した艦娘って

ウチに置けたりするのか?

言いぶり的に他所に送られるみたいに

聞こえたから……」

 

明石「編入なら自動で行われるのでご安心を。

あ、艦娘用の部屋なら私にお任せを!」

 

寮「…ここに置けるならよかった。

そういえば今ある艦娘の部屋の数は?」

 

明石「住めそうな部屋はざっと10部屋、

まぁ艦娘20人分くらいですかね。

あとは屋根やら壁やらに穴が空いてますし、

そこそこ時間が経ってるのか、

クモの巣だったりホコリが酷かったり

しますし…ある程度落ち着いたら

大掃除も検討しておいてください。」

 

寮「ハーイ…あれ?なぁ明石、

あれって吹雪と天龍だよな?

もう怖気付いて帰って来たのか?」

 

明石と軽ーい雑談をしていると、

向こうから吹雪と天龍が帰ってきた。

しかし、吹雪は誰かを抱きかかえていた。

 

明石「…提督、今すぐ入渠の準備に

取り掛かってきます!」

 

寮「へ、入渠⁉︎」

 

慌てて再度吹雪達を見ると、

吹雪が抱きかかえているのは艦娘のようで、

全身がボロボロになっていた。

薄橙色(?)のロングヘアも

かなり痛んでボサボサだった。

 

それを遠くから確認した途端

吹雪は母港に帰投してすぐ、

 

吹雪「今すぐこの娘を助けてくだざい!

だいぶ弱ってきてるんでず!!」

 

と涙ぐみながらに訴えてきた。

 

寮「とりあえず事情は後で聞く!

ちょうど明石が入渠の準備をしてる、

急いで向かうぞ‼︎」

 

吹雪「ヒグッはい!」

 

そして全速力で入渠施設へと走った。

 

……後にその艦娘は吹雪、天龍に並び

宿毛湾泊地にて最古参組となる。

 

だがそれはまだ先の話…。

 





〜一方その頃第3泊地〜

⁇「いや〜ようこそ来てくれました
ご主人様!!」

…ご主人様?
私はメイド喫茶にでも
来てしまったのだろうか?

それにしてもこの艦娘は一体…

漣「あ、申し遅れました!
私、『漣(さざなみ)』って
言います!
綾波型駆逐艦です、ご主人様!」

「はじめまして、今日から
この第3泊地の提督を務める…」


なつ芽「…姫流 なつ芽よ。」


〜一方その頃第2泊地〜

「…緊張してるか?」

⁇「いえ!むしろ楽しみです‼︎」

俺は『初期艦』と呼ばれる艦娘
ー青いロングヘアで小学生くらいの背ー
と一緒に今日、新たに配属された
泊地へと歩いていた。
俺は必要な物を詰めたスーツケース
を持って向かっていたが

「…なぁ五月雨?重くないか⁉︎」

俺が連れてる初期艦
駆逐艦『五月雨』はとても真面目で
いい子なんだ、なんだが。

五月雨「いえ、大丈夫です!」

「いや足ブルブル震えてるぞ⁉︎
あとスーツケースは引きずる物だから
箱みたいに持ち上げて運ばなくても
いいやつだからね⁉︎」

真面目すぎて変に天然なのだ。
他の鎮守府ではドジを連発するとか
聞いたんだがそんなドジっ子ではない。

「ほら疲れただろ?背負ってやるから。」

五月雨「で、でも…」

「大丈夫、スーツケースは引きずれば
重くないし、第一五月雨軽いから笑」

五月雨「もーひどいです!」

「あー悪かった悪かった、
ほら、乗った乗った。」

五月雨「…お言葉に甘えて…」

そしてスーツケースを引きずり
すっかり眠った五月雨をおんぶした俺は
着任先の第2泊地へと歩いて行った。

五月雨「…梅雨谷…司令官…さん……むにゃ」


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