東方インフィニット戦記 (雪風冬人 弐式)
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東方インフィニット戦記

 MOVIE合戦を見て、昭和対平成を見て、ふと思いついて書いてしまった。後悔はしていない。
 ちなみに、続きかどうかは未定です。


 時は戦国。群雄割拠の時代の中、名のある武将に仕え、天下取りに参加していた「武神」と呼ばれた一騎当千の戦士がいた。江戸幕府を開いた徳川家康は武神ウィザード、農民から関白となった豊臣秀吉は武神ダブル、第六天魔王と恐れられた織田信長は武神オーズを従えていた。

 やがて、武神達は彼等の力の悪用を危惧した幕府によって記録は抹消され、歴史の表舞台から姿を消して幻想となった。

 

 そして、時は流れ現代。突如として日本に二千発ほどのミサイルが降り注ぎ、インフィニット・ストラトス、通称ISの白騎士によって防がれた〈白騎士事件〉が起きて十年の月日が経った。

 世界は女性しか扱えないISの登場により、女尊男卑の風潮へと変わった中、あり得ない男性操縦者が現れた。その流れで、世界中で男性への適性検査が行われ、もう一人の男性操縦者が発見されたのだった。

 

 

 

―――2008年2月

 

「あー、かったりぃ」

『仕方ないでしょ、引き受けちゃったんだから』 

 

 IS学園にあるアリーナの一角。そこにはまるで明治か大正時代のような前時代的な洋装をした一人の青年と、スーツを着た一人の女性がいた。

 

「えーと、初めまして。IS学園で教師をしている山田真耶です。君が門矢大介くん、で良かったかな?」

「ええ。それと、これが俺の専用機〈武神〉です」

 

 そう言って大介は、武者の兜のような仮面を中心に十五の仮面が刻まれた南京錠のような錠前を取り出した。

 

「それでは、試験を行う場所はこちらです。それから、お聞きしたいんですが」

「何でしょう?」

「今の風潮、女尊男卑を《破壊》するために来たとは本当なんですか?」

「本当です。友達全員から、度胆を抜いてやれ、なんて言われましたよ」

 

 真耶自身が気になっていた質問に、大介は苦笑しながら答え、連られて真耶も苦笑する。

 そう。彼は二人目に発見された男性操縦者であったが、全世界で一斉検査が終わった後に自ら名乗り出たことで発見されたのだった。

 今の世界の風潮を破壊するために。

 

「ここが、試験を行うアリーナです。ISを展開して待っていてください」

「わかりました」

 

 真耶は大介が頷いたのを確認すると、アリーナから立ち去り管制室へと移動する。

 

「それじゃ、行きますか。〈武神〉だから、最初はこれかな」

 

〈ガイム!フルーツ侍!オンパレード!〉

 

 大介が錠前を開錠すると、電子音声と共に錠前が光り、中央にオレンジの形をした錠前がはまったベルトに変化した。

 

「変身!」

 

〈ソイヤッ!オレンジ・アームズ!花道・オンステージ!〉

 

 錠前の右側についているブレードを倒すと錠前が開き、空からオレンジを模した球体が大介の頭にはまり紺のスーツの上にオレンジの鎧が装着された。

 

「さて、ここからは俺のステージですよ、っと」

『負けたら承知しないよ!』

「わーってるって。今の世に嘆いた〈武神〉や賢者さん達の期待に応えてみせますよ」

『ファイト一発だね!』

「というか、何でお前がいるんだ?こいし」

 

 第三者から見れば、大介は何もない空間に話しかけているが、大介には傍らに満面の笑みを浮かべて佇む少女が見えていた。

 

『いーじゃん、誰にも視えないんだし。それより、来たよ』

「お待たせしました」

「山田教諭が試験管とは」

 

 こいしの言葉に、大介が視線を向けるとそこには量産型ISの打鉄をまとった真耶がピットから出てきたところだった。

 

「それでは始めましょうか」

「武神鎧武、推して参る!」

 

〈これより、試合開始です!〉

 

 かくして、〈武神〉は再び現世へとISという形で、姿を現したのだった。



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過去語り

 それは、十年前の話。識っているのは、その場にいた者のみ。彼等が語ろうとも、聞き手は幻想と判別してしまう話。

 

 その日、世界に激震が起きた。突如として、世界中のミサイル基地がサイバー攻撃を受け、その基地のミサイルが発射されるという大事件が起きた。

 全てのミサイルが向かうのは、日本。

 

―――長野県、諏訪湖近辺

 

「神様、お願いします」

 

 とある神社の境内の中、一人の少年が祠の前で祈りを捧げていた。

 ミサイルが降り注ぐことから、避難の警報が鳴り響いているが少年は一心に小さい頃より通っていた神社の神に家族や友人達の無事を祈り続ける。

 かつて祖父から聞いた、戦国時代の祖先が住んでいたこの土地の守護神、〈武神〉に。

 

『任せろ』

 

 少年の脳裏に言葉が響く。慌てて辺りを見渡すと、少年の隣に紅い複眼にカブトムシのような金色の角がある仮面の人影があった。

 

『皆の笑顔は、私たちが守る』

 

 茫然とする少年に、安心させるようにサムズアップをした仮面の人影が地を蹴ると、上空にどこからともなく飛んできた身の丈を超える巨大なクワガタの肢につかまった。

 

「じいちゃん、本当に武神様はいたんだね……」

 

 少年の顔は、涙でぬれていたが笑顔になっていた。

 

 

 

―――日本、某所

 

 

 日本のどこかの山の上空。そこには、二つの人影があった。

 

「貴様、邪魔をするな!このままでは日本が!!」

「それなら安心するといいですよ。私の仲間が止めました」

 

 片方はバイザーを被り、白い装甲を纏った騎士。もう片方は、前面にタンポポの模様が描かれたSF的なバイクにまたがるオレンジの鎧を着た武者。

 

「何だと!?」

「言葉の通りです。そのミサイルとやらは、私の仲間が破壊しました。だから、貴女の出る幕はありません」

 

 武者の言葉に騎士は、唇を噛み締め剣を握る腕に力を込めた。

 

「よくも、よくも友の夢を!!」

「こんな無関係な人間を、何より、私たちが愛した者が生きる日ノ本を巻き込む夢など論外です!」

「黙れええぇぇぇ!!」

「そんな夢は、幻想のまま断ち切る!」

 

 激昂しブレードが桜色に光り出した騎士は、常人では捕えられぬスピードで武者の背後に回る。

 だが、武者は腰に下げていた片刃の剣とオレンジの果肉を模した剣をジョイントとさせ、薙刀のように扱うと、騎士の行動を予測していたのか、振り下されるブレードを難なく受け止める。

 その体勢のまま、ベルトの錠前を開錠して取り出す。

 

<ロック・オフ!>

 

 そして、片刃の剣の柄の窪みにはめ込む。

 

<ロック・オン!一・十・百・千・万!オレンジ・チャージ!>

 

 流れる音声と共に、刀身にオレンジ色に光るエネルギーがチャージされる。

 危険を感じた騎士は、回避のために距離を取ろうとする。

 だが、それよりも早くブレードを弾きながら振り返った武者は、ナギナタを×字に振り上げる。

 オレンジの斬撃が騎士に直撃すると、オレンジを模した炎が騎士を拘束する。

 

「ハアッ!」

 

 武者はそのまま、返す刀で騎士を斬りつける。

 すると、騎士はスクラクターが壊れたのか煙を出しながら落下し始める。

 

「クソッ!」

 

 堕ちながらも、騎士は左手を武者に向けてかざすと、一条の光が迸り武者がいた場所で爆発が起きた。

 

「ハハッ!やったぞ!これで邪魔者は」

「邪魔者は、何ですか?」

 

<ソイヤッ!オレンジ・スカッシュ!>

 

「何ィ!?」

 

 爆炎の中から武者の声と共に、輪切りにしたオレンジを模したサークル状のエネルギーが騎士目掛けて展開される。

 

「セイハァァアアアアァァァアアア!!」

 

 武者は左足を突出し、飛び蹴りの姿勢でオレンジのサークルを潜り抜けて騎士に叩き込む。

 足裏に収束されたエネルギーが騎士の体を駆け巡り、そのまま地面に地面に叩きつけられて武者のクッション代わりとされる。

 騎士の纏っていた装甲が光の粒子となって消え、装着していた騎士自身もダメージからかピクリとも動かない。

 それを確認した武者は、懐から黒い蔦の這った紅いオレンジが描かれた錠前を取り出した。

 

〈ブラッドオレンジ!〉

 

「先代。貴方の力を借ります……」

 

〈ソイヤッ!ブラッドオレンジ・アームズ!邪ノ道・オンステージ!〉

 

 エレキギターをかき鳴らしたような電子音と共に上空にジッパーが出現し、円を描くとその部分の空間から紅いオレンジのような球体が降りてきて、武者に被さると上半身を覆う鎧となった。

 そして、ベルトについたカッティングブレードを三回倒す。

 

〈ソイヤッ!ブラッドオレンジ・スパーキング!〉

 

 電子音が響くと、武者の足元から無数の蔦が伸びて武者を絡み合った蔦が巨大な幹となり、その中に取り込んだ。

 

時を同じくして、太平洋や日本海を渡ろうとしていたミサイルが、レーダーから次々と消えていった。

迎撃のため準備をしていた自衛隊や在日米軍は、原因不明だが助かったことに歓声が沸いた。

後に、衛星の記録を調べたところ竜といった摩訶不思議な生物や機械に騎乗し、ミサイルを落とす十四の影と、日本を包み込む程の巨大な蓮華が移っていた。

その影は一様に、仮面を被り、生物或いはバイクのようなモノに乗っていたことから、〈マスクドライダー〉と呼ばれるようになった。



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