人間に戻りたい狐。現在、奮闘中ッ!! (マッカーサ軍曹∠( ̄^ ̄))
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狐、現在プロローグ中ッ!!

続きを書こうかと思ったが……書きたくなった。しばらくはヤンデレはお預け( ̄▽ ̄)


 1度は思ったことがないだろうか?

 ……動物が羨ましいと。

 何故なら動物達は人間とは違って本能のまま生きる……それが動物達だ。

 実際に考えたら、今の現代社会の闇、依存、暴行、ストレス、悪口等……それぞれで抱える問題が沢山あって、その度に心が疲れてゆく。

 だから俺はそんな心の疲れを癒そうとして、毎日動物の動画を見る。

 そして明日も頑張ろうって気持ちにもなれる……そう思っていたのに。

 

「ン〜〜ッ!ン〜〜ッ!」

 

「本当に始めるのですかッ!この程度の生贄ではこの神社で神の復活がッ!」

 

「仕方ないだろッ!このままではシンフォギアの装者達に捕まり、私達の計画は破綻するッ!ならばやるしかないだろッ!」

 

 現在、俺は学校の帰りに謎のローブに誘拐されて、今はよく分からない謎の壁画がえががれた遺跡の中にいることは理解できた。

 本当なら俺は、このまま帰って動物番組を見る予定だったのにこの始末……時間は大体3時間は経過してるだろうか。

 ……俺はこの後どうなるんだろうか。

 

「例の聖遺物は準備出来たか?」

 

「あぁ、この稲荷神の生き血なら此処に……」

 

「……よし、飲ませろ」

 

「ン〜……ッ!?ゲボッ、ゲボッ!お前ら俺に何を──」

 

「さぁ、飲め」

 

「ングッ!……ンク、ンク……ガハッ!うおぇっ──」

 

 俺はいきなり謎のローブ達に何かを無理矢理飲まされて、急いで吐き出そうとする……が、その瞬間自分の体が急に熱くなり、自分の何かが変わっていく感覚を感じられた。

 

 ──熱い。

 

「……よ、よしッ!成功だッ!この青年の体が変わっていくぞッ!このままいけば私達の計画は完成するッ!」

 

「し、しかし……本当に大丈夫か?私達はあまり日本の歴史には詳しくないが、それでも日本の聖遺物も強力だと聞くが?」

 

 ──熱い熱い熱い。

 

「問題ない。例え、生まれたとしてもその神はまだ幼子……問題あるまい」

 

「た、大変ですッ!シンフォギア装者達がこちらに向かってきますッ!」

 

「何ッ!お前達ッ!絶対にここを阻止するぞッ!私達の悲願を叶えるのだッ!」

 

 ──熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い……熱い?

 

「……よし、私はこいつが神と成り代わるまで見守らなけ、れ……ば……」

 

 ──あぁ、熱いなら早く冷やさなきゃ。

 

「大変ですッ!もうシンフォギア装者がそこまで……師?」

 

「……私達の神が……消えただと?」

 

 

 ──んぅ……

 

「キュー……」(あれ?俺は一体……)

 

 俺は目が覚めて目を擦りながら周りを見る。

 そこに広がっていたのは美しい綺麗な湖だった。

 ……いや、湖が広がっていたのは別にいい。

 ただ、何かがおかしい……分かった、視点が低いのだ。

 

「キュ?キュー……」(あれ?おかしいな。うまく立てない……)

 

 俺は立ち上がろうとするが、思うように二足歩行が出来ない。

 いや、正確には立ち上がれないのだ。

 俺は仕方なく四足歩行で立ち上がってみる。

 ……やはり、どうにも違和感があるのだ。

 この時期は本来寒い筈なのにあまり寒くないのだ。

 俺の今の服装は学校にコートを着忘れていたので、完全に薄着なのだが……ッ!そ、そうだッ!あいつらはッ!

 

「キュッ!……キュー……キュ、キュウッ!?」(ッ!……よ、よし。いないな、ってさっきから何かの声が聞こえるよ……って何だこれッ!?)

 

 俺は足元を見るとなんと動物の足が見えたのだ。

 しかも足だけではなく、見渡せる限りの範囲で見渡すが……白い毛並み、ふわふわなしっぽ、危なそうな爪。

 ……どう考えても動物である。

 

「キュ、キュー?……キュウ」(う、嘘だよな?……とりあえず近くに湖があるからそれで見よう)

 

 俺はそのまま慣れない四足歩行で湖の近くまで向かう。

 湖まで近づいた俺はそのまま水面に映る自分をそーっと確認するが……狐である。

 

「キュ、キューキュー」(い、いやそんな訳ないよな?)

 

 俺はもう一度自分の目を擦って再び自分の姿を確認するが……やはり狐である。

 それも、普通の狐ではなく、真っ白な美しい毛並みの狐がその湖に映っていた。

 

「キューッ!」(なんでぇッ!)

 




次回狐、現在驚愕中ッ!


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狐、現在驚愕中ッ!

最初で装者達が出て来ない……だとッ!?


「キュー……キューッ!キューッ!」(狐だ……いや狐なんだけどさッ!こう、なんか違うんだよッ!)

 

 俺は現在、何故自分が狐になっているのか、どうして湖にいるのか色々考えたいことは確かにあった。

 だが、そんなことを考えるとどう考えてもあのローブの男達が1番の原因であることは分かっていたので、あまり深く考えなかった。

 しかし、俺にとってはそんなことよりも別のことを考えていた。

 何故なら、俺は……

 

「キューッ!キューッ!」(なんで俺が狐になってんだよッ!おかしいじゃんッ!)

 

 まだ、俺は自分が狐になってしまった現実を受け止めきれていなかったからである。

 その結果──

 

「キュ、キュー……キューッ!キューッ!」(確かに俺は動物が好きだよ。実際に犬とか猫だって大好きだし、他の動物だって好きだ。……だけど、自分が動物になるのは違うんだよッ!いや、もし自分が人間だったらめちゃくちゃ今の体……いや自分だけど、もふもふしてる自信があるぞッ!)

 

 もう自分が何を言っているのかが分からなくなっていた。

 よくよく考えてみれば、俺は巻き込まれた側の人間で……いや、今はもう人間ではなく狐なのだが、このままでは今後の未来が一生狐として過ごす人生となってしまう。

 

「キュー……キュ」(実際、もし今の俺が捕まったら絶対に殺処分確定だし……よし)

 

 俺は少しだけ考えた後、すくっと立ち上がって湖とは向かい側の方に歩き始めた。

 とにかく、今は──

 

「キュー」(道路を探す所から始めよう)

 

 情報を集めなければ……。

 

 

 ……とは言っても。

 

(ゼェ、ハァ……け、けもの道つらい。しかも慣れない四足歩行とこの体だと体がもたない)

 

 あれから俺は、湖を離れてから少し先にある森の中に入り、偶然見つけたけもの道を進みながら道路を探していた。

 だが、しばらくこの体で歩いていると分かったことが2つあったのだ。

 まず、今の体の大きさである。

 普通の狐ならば体の大きさはそこそこあるのだが、俺の予想だと大きさまではハッキリは分からないが、成人した猫よりちょっとだけ大きいぐらいだろう。

 そして、もう一つ分かっていること……それは──

 

「キュー……」(お腹空いた……)

 

 お腹が空いたのだ。

 考えてみれば、晩御飯も食べずに拉致られて、何日経過したかは知らないが何も飲ます食わずをしていればお腹が空くだろう。

 湖の近くにいた時に水を飲めばよかった……

 

「キュ、キュー……キュー……」(つ、つらい……でも後少しで……)

 

 俺はもう少しだけ頑張ってけもの道を歩く。

 すると、草や木で見えなかった光が奥の方に見えたような気がした。

 そして──

 

「キュー……キュー♪」(車の走る音……道路だッ!)

 

 奥の方からは車の走る音が聞こえ、俺は最後の力を振り絞ってけもの道を抜けた。

 そして、そこに広がっていた景色は……

 

「キューッ!……キュー?……キュー」(出口だぁッ!……ってあれ?ここって……パーキングエリアじゃん)

 

 俺がけもの道を抜けた先には、なんと無人のパーキングエリアに着いたのだった。

 しかも、俺はそのパーキングエリアを知っており、昔よく出かける際に必ずトイレで寄っていた場所だったからだ。

 そこから考えると、俺は湖からこのパーキングエリアまでかなり歩いてきたことが分かった……が、やはり限界が近づいていた。

 

「キュ、キュー……」(あ、ダメだ。最後の力を振り絞ったから……もう)

 

 俺は何とかよろけながら近くにあったベンチに座り、飢えをひたすら耐えるように眠る。

 そうでもしないとこれ以上動けないからだ。

 

「キュー」(今日はもう頑張った。明日……頑張ろぅ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわふわしてるわね?何かしらこれ……」

 

 




狐、現在散策中ッ!


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狐、現在、散策中ッ!

ちょっと前のお話(´∇`)


「これは……既に燃え尽きた後か」

 

「えぇ、少し遅かったわね」

 

 私達はS.O.N.G.の情報機関で錬金術師を発見したと知り、私と翼、クリスの3人でその調査に当たった。

 そして、その情報は錬金術師達を見つけ次第すぐに捕縛し、錬金術師達が何かをする前に鎮圧する予定だったのだが……

 

「先輩、これで錬金術師達は全員捕まえたぜ。後は撤収するだけだ」

 

「あぁ、分かった。だが、その前に──」

 

「えぇ、分かってるわ。司令、ちょっといいかしら?」

 

『どうしたんだ?……まさか錬金術師の鎮圧に失敗したのか?』

 

「いえ、錬金術師の鎮圧は成功しました。しかし、彼らの目的はどうやら私達の足止めだったようです」

 

『足止めだと?……何か手がかりはあったのか』

 

 私は床に踏みつけられていたあるものを見て、的確にその情報を伝える。

 ……随分とんでもないものを隠してたわね。

 

「手がかりは大きな獣の足跡がくっきりと残っていたので、それが目的かと」

 

『……分かった。今回の任務はこれで終了だ。翼とクリスくんと一緒に帰還してくれ』

 

「分かりました」

 

 そして、私は通信端末を切り、後のS.O.N.G.の職員に任せてその場を後にする。

 あの足跡がかなり気になるけれど、まぁいいわ。

 

「マリア、そろそろ行くぞ」

 

「えぇ、分かってるわ」

 

 

 私達はしばらくして、緒川さんが私達を本部に送る為に用意してくれた車に乗り、本部に帰還する。

 ……けれど、なんで翼は当たり前のように助手席に座って緒川さんと話してるのかしら?

 ……いいわね。

 

「緒川さん、次のスケジュールは──」

 

「えぇ、それなら──」

 

「……コーヒーが欲しいわね」

 

「ん?なんだマリア。喉でも乾いたのか?」

 

「えぇ、ちょっとね」(良く考えたらこの子も司令のこと気になっていることを忘れてたわ……はぁ)

 

「なら近くにあるパーキングエリアに寄りましょう。そこなら自動販売機もありますから」

 

 しばらくして、私達を乗せた車はそのままパーキングエリアの方に寄り、車を止めた。

 翼とクリスはそのまま2人でトイレに行き、私はさっきの翼と緒川さんのぎこちない様子を苦いコーヒーで流したい為に自動販売機の方に向かった。

 

「ッ〜……寒いわね」

 

 この時期はもう春なのだが、気温の変化なのかまだ日本では寒い日が続いていた。

 私は早くコーヒーを買って、あったかい車の中に戻るつもりだったのだが、ふと私は偶然ベンチの方に目をやると、ふわふわな何かがそこにはいた。

 

「ふわふわしてるわね?何かしらこれ……」

 

 私はその何かに不思議と目を奪われて近づいてみる。

 すると、そのベンチに座っていた……いや、正確にはくるまって寝ていた白い小狐がそこにはいた。

 どうやら、その小狐は寝ている様子だった……か、可愛い……

 

「……ちょっと触って見ても……ダメね。野生の動物は危ないウイルスを持っている可能性があるから迂闊には触れないわね。……で、でも──」

 

「スゥ……スゥ……」

 

「……写真を撮るくらいならいいわよね」

 

 私はスカートのポケットからスマホを取り出し、カメラアプリに切り替える。

 そして、私が写真を撮った瞬間、カメラの音がハッキリ聞こえて、小狐が起きた。

 どうやら、私はカメラの音の設定をONにしていたことを忘れていた。

 

「……キュー?」

 

「勝手に写真を撮ってごめんなさいね……じゃあね」

 

 そして、私はすぐにそのまま車の方へと歩いて向かう。

 きっと、翼達も既にトイレを終えて車の中に入っている頃だろう。

 

「遅いぞマリア。……もしかして何かあったのか?」

 

「えぇ、ちょっと可愛い子を見つけただけよ。早く車の中に入りましょう」

 

 私はそう言って、後部座席に座る。

 緒川さんは私達が全員車に乗ったのを確認すると、そのまま車を発進させて本部へと向かった。

 

「……なぁ、マリア」

 

「何、クリス?」

 

「コーヒーはちゃんと買えたのか?てか、買ったのかよ?」

 

「……忘れてたわ」

 

 

──車の屋根の上

 

「キュ、キュ〜ッ!キュ〜ッ!」

 

 

 

 




次回狐、現在移動中ッ!


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狐、現在移動中ッ!

狐の身体能力は凄い。


──カシャ

 

 俺はそのカメラの音で目を覚ます。

 目を開けると、そこには美しい女性が俺のことをスマホで写真を撮っていた。

 

「……キュー?」(……どうして人がいるんだ?)

 

「勝手に写真を撮ってごめんなさいね……じゃあね」

 

 その女性は、俺を撮り終えるとそのまま車の方に向かう。

 ……あの女性は何処かで見たことある気がするのだが、今はそれよりもお腹が空いているのと、このパーキングエリアから離れてあの謎のローブの人達を見つけなければならない。

 

「キュー……キュッ!」(今の女性……多分トイレか喉が渇いてこのパーキングエリアに寄ったんだよな。なら、その車に乗り込めばッ!)

 

 俺は急いでスクッと立ち上がると、その女性が黒い車に乗り込む姿が見えた。

 や、やばいッ!これ走らないともう手遅れな奴だッ!

 

「キューーーーッ!!」(うおおおおおぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!間に合えええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!)

 

 とにかく、俺はその車に乗り込む為に全力で走る。

 ただひたすらに前だけを見て、その車に向かう……が、その車は遂に動き始めたのだった。

 後一歩なんだッ!間に合ってくれッ!

 

「キュ、キュ、キュ、キューーッ!!」(はぁ、はぁ、はぁ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっぐッ!)

 

 車が走り出す瞬間、俺は全力で走った後に思いっきりジャンプする。

 そして、そのジャンプは何とか車のナンバープレートまで近づけたのだが、今の俺の手では握ることも掴むことも出来なかったので……噛んだ。

 

「ギュ……ギュー……」(こ……これで何とか街に行けるぞ……)

 

 そして、その車は高速に入ったと同時に俺も必死に食らいついていたナンバープレートから離れて必死によじ登る。

 実際、俺もまさかこの車に乗り込むことが出来たことにびっくりしていた。

 正直俺はもう体力的にもかなりキツいと思っていたのだが、流石狐の体である。

 狐は走ると時速50kmは出ると言われていて、木登りも泳ぐことも可能で言わば森のハンターと言っても過言ではないだろう……だが。

 

「ギュ〜〜〜〜……」(はえええええぇぇぇぇぇッッッッッ……)

 

 やはり、全力で走ったせいかかなり疲れていて、車のアンテナらしきものに捕まって休憩していた……のだが、高速道路は時速80〜100kmを出す車も多いし、トラックも多い。

 なので、高速道路では顔を出すとか危ないのでダメなのだか、よくよく考えたら1番危ないのは俺自身が車の屋根の上いること自体が危ないのは今更である。

 確かに街に行く為には仕方ないと言えば仕方ないのだが、こんな危機感と緊張感が続くのなら、ゆっくりパーキングエリアから歩いて街の方に行った方がよかったのかもしれない。

 

「ギュ、ギュウ……」(な、長い道のりだ……)

 

 

 あれから、約1時間半程度の時間で街には着いた。

 しかし、それと同時にいくら狐の体でも疲れと空腹に耐えるのはかなりキツいのだ。

 あぁ……やっぱりゆっくり歩いて街にくれば、よか──

 

──コロコロコロ、ベタッ

 

「ッ!?な、なんだッ!敵かッ!」

 

「キュ、キュー……キュー……」(お、お腹空いた……疲れた……)

 

「落ち着いてください翼さん。すぐに車を端に寄せますから」

 

「翼、一体何を騒いで……ってあの子さっきのッ!」

 

「……んぅ…なんだよ。さっきから騒がしいな……ってき、狐ッ!?なんで狐がフロントガラスに貼りついてんだよッ!」

 

 俺はなんだか前の車の中にいる人達を驚かせてしまったような気がしたが、意識が朦朧としている中でそんなことを考える暇がなかったので、そのまま目を閉じることにした。




次回狐、現在保護中ッ!


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狐、現在保護中ッ!

狐って……キャットフード食べれるんですよ?


「皆さん、一度車を止めたので少し待っててください。フロントガラスにいる狐を一旦この車に保護します」

 

「しかし、緒川さん野生の狐を触るのは危険かと」

 

「確かにそうですね。それでは念の為タオルで覆って保護しましょう……マリアさんそのカバンの中にタオルがあるので取っていただけませんか?」

 

「え、えぇ……分かったわ」

 

 私達は本部に戻る為に車で移動している途中で急に上からフロントガラスにベタッと貼りついてきた何かに私や翼達はとても驚いていた。

 しかも、貼りついてきた物……ではなく、その動物はさっきパーキングエリアのベンチにいた小狐だったからだ。

 

「お待たせしました。翼さん、この狐をタオルごと持ってていただけませんか?今から本部の方に行くので」

 

「分かりました。しかし、緒川さんこの子は……」

 

「本部の方で獣医を呼ぶように連絡しました。しかし、その狐の容態が不安なのでなるべく早く本部の方に向かいましょう」

 

「分かったわ。……けど、まさかパーキングエリアの場所からついてくるなんて思ってもみなかったわ」

 

「パーキングエリアだぁ?……ってことはよ、マリアはこの狐に餌付けしたとかやってねぇよな?」

 

「し、してないわよッ!」

 

「……怪しいな」

 

 実際、もし私が何か食べれる物があれば食べさせていたかもしれないが、まさかこの車の上に乗っていたこと……それ自体が、完全に予想外だったからだ。

 ……もしかして、私のせいかしら?だとしたら──

 

「……今回は多分私のせい。後でちゃんと責任を取るわ」

 

「いや、マリアのせいではないだろう。気にすることはない」

 

「でも……」

 

「その話は後だ。まずは本部に行ってからじゃないと話にならないだろ?」

 

「……そうね」

 

 そして、私達はなるべく急いで本部に向かう。

 ちょっとしたアクシデントはあったけれど……あの子は本当に大丈夫かしら?

 

 

 しばらくして私達は本部に着き、中に入ると緒川さんが事前に連絡していた獣医がいたので、そのまま小狐を渡して診察してもらっていた。

 ちなみに、今いるのは私とクリスだけで翼と緒川さんは今回の錬金術師の報告があったので、それぞれで分かれていた。

 

「ふむ……ウイルスは問題ないね。野生の報告にしては随分綺麗だし、外傷もないから大丈夫ですね」

 

「よかった……」

 

「いや、ウイルスが無いこと分かったけど、なんでこの狐は元気がないんだよ」

 

「あぁ、それなら──」

 

 すると、その獣医の男性が取り出したのはまさかのキャットフードと水を取り出し、それぞれのお皿に入れて小狐の前に置いた。

 ……え、これだけなの?

 

「あの……なんでキャットフードと水を目の前に?」

 

「ん?あぁ、この子は単にお腹が空いているのと疲れているだけだから他は至って健康だよ」

 

「……病気はねぇのか?」

 

「もちろんさ。ただ、狐を診察することもかなり珍しいから少しだけ時間が掛かってしまったよ。では、失礼するよ」

 

 獣医はそう言って、そのまま行ってしまった。

 最初は、この小狐が命に関わるのではないかと心配していたのだが、どうやら空腹と疲れで横になっていることにホッとした。

 よかったわね……けど、さっきからクリスが喋らないわね。

 どうしたのかしら?

 

「…………」

 

「……ちょっとクリス?ぼーっとしてらしくないわよ?」

 

「ッ!?な、なんでもねぇよッ!」

 

「……ふふっ」

 

「な、なんだよ……」

 

「クリスもこの子に触りたいのよね」

 

「ち、違ぇよ……」

 

「顔に出てるわよ♪」

 

「ッ〜〜〜……」

 

 私はちょっとだけクリスをからかった後、小狐が起きるまでクリスと一緒に雑談をしながら起きるのを待つことにした。

 けれど、この子が起きたらどんな反応をするのかしら?……楽しみね。




次回狐、現在満腹中ッ!


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狐、現在満腹中ッ!

狐って……実はペットとして買えるんですよ?……めちゃくちゃ高いですけど……


 美味しそうな匂いがした。

 それは、俺が今までに嗅いだことがない様々な匂いが絡み合ったような匂いが俺の近くにある気がした。

 

「……キュ、ウ?」(……いい匂いが、する?)

 

 やがて、俺はゆっくりと目を開けて匂いのする方に視線を向ける。

 まだ、寝起きのせいか周りは少しだけボヤけて見えるが、俺にとってそんなことはどうでもよくなった。

 いくら俺が目を覚ましたと言っても空腹なことには変わりなく、その匂いのする方にフラフラと向かう。

 

「……な、なぁ大丈夫なのか?あいつフラフラしてんぞ。手助けした方が──」

 

「ダメよ。今、私達が何かをしたら警戒して食べなくなるかもしれないんだから」

 

 周りで誰かが喋っている気がしたが、気にしないで美味しそうな匂いの方に向かってフラフラと歩いてその匂いの発生源が何なのかハッキリした。

 俺が見たものは、皿に溜まっている水とクッキーのような形をした何かだったが、これは多分ドックフードかキャットフードのようにも見える。

 

──グゥー……

 

 俺は一瞬人間として食べることを躊躇したが、食べなければお腹は膨れない。

 何故、目の前に動物用の餌があるのかは知らないが……俺にはもうその考える時間はなく、本能のままに腹を満たそうとクッキーのような形をした何かを食べる。

 

「キュ、キュ……」(いただ、きます……)

 

 本来なら食べたくないのだが、これも生きる為、人間に戻る為に俺は口の中にただひたすらに口の中いっぱいに入れて噛み続ける。

 

「…………」(…………)

 

「……食べたわね」

 

「食べたな。……なぁ、マリア」

 

 ……美味い。

 

「何?」

 

 美味すぎる。

 

「触らなくても写真なら……何も言われないよな?」

 

 こ、こんなに美味いなんて……

 

「えぇ、撮るなら問題な──」

 

「キューーーーッ!!」(うまあああああぁぁぁぁぁいいいいいぃぃぃぃぃッッッッッ!!!!!)

 

「「ッ!?」」

 

 俺はあまりの美味さに衝撃を与えられて思いっきり声に出して叫ぶ。

 もし、普通ならばこんなに叫ぶことはしないのだろうが、攫われた日から朝昼晩の三食を何も食べずに過ごしていたので、食べれる喜びと予想外の美味しさでつい叫んでしまった。

 多分、俺の顔はあまりの美味しさに顔の頬が緩んでいるに違いないが、俺はそんなことはお構いなしに食べ続ける。

 

「キュー、キュー♪」(美味い、美味すぎる……)

 

「ッ〜〜……ま、マリア……今の撮れたか?」

 

「えぇ、バッチリよ。……もう、なんなのッ!あの可愛いすぎる笑顔ッ!ずるいじゃないッ!」

 

「た、確かにあれは卑怯だよなッ!……ッ〜〜」

 

 今度は何故か悶えるような感じの声が聞こえる気がしたが、俺は食べることに集中する。

 にしても……まさかこんなにこの食べ物が美味しいとは思わなかった。

 俺が口にしていたのは多分ドックフードかキャットフードのどちらかと考えるのが妥当なのだろうが、こんなにも美味しいと思ってしまうのはやはり、この体のせいなのだろう。

 だが、今は──

 

「キュー♪」(最高だ)

 

 この食事を楽しもう。

 

 

「すまない、叔父様との話が長くなってしまってな。少し遅くな……ってどうしたんだ2人共?様子がおかしいぞ?」

 

「ッ〜〜い、いえなんでもない……わ」

 

「……しばらくはホーム画面にしとこ」

 

「……とにかく、その狐が食べ終えたら司令室に集合だ」

 

「え、えぇ……分かったわ」

 

「そうか」(クリスとマリア……まさか、この部屋で一体何かあったのか?……あの狐が──)

 

「キュ、キュ♪」(ウマ、ウマ♪)

 

(……可愛い)

 

 

 

 

 

 




次回狐、現在お探し中ッ!


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狐、現在お探し中ッ!

大体の動物の場合は引き取るかこうなる。


 あれから少し経ち、全てのお皿に盛られていたものは全て平らげた後、俺はピンクの女性にさっきのようにタオルで巻きながら持ち上げられて何処かに連れて行かれていた。

 

「〜♪」

 

「クソ、なんであたしはあの時チョキを出しちまったんだ……」

 

「私のかっこいいチョキがまた敗れるとは……不覚」

 

 俺は今何故かこの女性に連れて行かれているかは知らないが、後ろの2人がどうしてこんなにも悔しがっている理由は今の俺でもすぐに分かった。

 最初はあまり話を聞いていなかったが、司令室に行くって言う話にはなった……しかし、俺を誰が連れて行くかでジャンケンで決めることになって、ジャンケンをした結果がこの女性が勝ったと言う訳だ。

 ……いや、分かるよ?この見た目すげぇ可愛いからもし人間だったら写真に保存してるし。

 後、あの青髪の女性も何処かで見たことある気がしたが……かっこいいチョキがアレって……えぇ。

 

「ただいま戻りました叔父様」

 

「翼、話に聞いた狐は何処だ?」

 

「司令、この子が勝手についてきた子よ」

 

「キュー」(どうも)

 

 俺が連れてこられた場所は、まるで研究施設のような凄い場所に連れて来られた。

 そして、その場所にいた人物は名前は司令か叔父様しか聞いていないが、そのゴツゴツした筋肉質な男が偉い人物だって言うことは分かった。

 

「……確かに狐だが、白いな。見た目的にはホッキョクギツネに近いが……しっぽがこんなにふさふさした狐は見たことがないな」

 

「おっさん、それってまさか──」

 

「新しい狐……新種か突然変異と考えられるな」

 

 その司令って人がそう言った瞬間、ここにいる人達が驚く。

 ……まぁ、それもそうだろう。

 狐と言えば、日本ではキタキツネとホンドギツネが有名だが、白い狐と言うのは見たことがないのは当たり前だ。

 それに、一応調べればホッキョクギツネと言う白い狐はいるだろうが、それは海外にいる狐であって日本で飼うのはかなり難しいだろう。

 てか、なんでこの司令って人はホッキョクギツネのこと知ってるんだよ……まぁ、いっか。

 その新種って言われてるこの俺は一応元人間なんだし……いや、そっちが大問題だったわ。

 

「おっさんそれって大発見じゃねぇかッ!」

 

「あぁ。しかも、この狐は見るからにまだ子供だ……このことが知られればそれなりにニュースにはなるだろう」

 

「叔父様、ならこの狐は……」

 

「そうだな……とりあえずまずは日本動物愛護協会に引き取ってもらうことになるな」

 

「司令、もしかしてこの子をその協会に渡すの?」

 

「あぁ、そこならしっかりした保護も受けられるから問題はないはずだからな」

 

「そう……」

 

 話を聞いていると、どうやら俺を日本動物愛護協会に渡して保護すると言う話をしているようだ。

 や、やばい……やばすぎる。

 確かに、あの司令って人の判断は正しいだろう。

 仮に俺を元の場所に戻すと言う判断はあるだろうが、仮にもからだは小狐であり、親が見つからなければ餓死するって考えているから言わなかったのだろう。

 だか、逆にその保護する判断は俺にとってはただの牢獄としか思えなかった。

 一応、保護されれば寝床と食事、きちんとした運動におやつと動物にとっては最高なのだが、俺の中身は人間だ。

 人間に戻る為に街に戻ってきたというのにここで日本動物愛護協会に保護されてしまえば一生人間には戻れないどころか、謎のローブの男達を探すことも出来なくなってしまう。

 

「とにかく、この狐は俺が責任を持って届けよう」

 

「……そうね、それが一番ね。司令、このタオルごと持ってくれないかしら?」

 

「あぁ、分かった」

 

 ま、まずいッ!今この女性から離れれば絶対にすぐに連れて行かれるッ!こ、こうなったら……

 

「キュ、キューッ!」(腕にしがみつくッ!)

 

「えッ!ちょ、ちょっとッ!離れなさいッ!」

 

「キュー……」(からの相手の目を見る……)

 

「なッ!だ、ダメよ。そんな目で見ないで……そんな目で見られると……」

 

「キュー……。キュー……」(日本動物愛護協会にだけは行きたくないんです。お願いしますッ!)

 

「そ、そんな風に鳴いてもダメよ……司令、おねが──」

 

「キューッ!キューッ!」(助けてぇぇぇぇぇッ!行きたくないぃぃぃぃッ!)

 

「ッ〜〜〜…………」(や、やめてッ!そんな目で見られると渡しにくくなるじゃないッ!)

 

「……仕方ない、無理矢理だが連れて行こう」

 

「キュウッ!」(やだぁッ!行ったら人間に戻れないッ!)

 

 俺は無理矢理離さなかった女性の腕を引き離されて、司令って人に連れて行かれる。

 何とか脱出を試みるが、その司令って人は俺を絶対に離さないでそのまま通路に向かって歩き始めた。

 

「では行こうか」

 

「キュウ……」(あ、終わったわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回狐、現在感謝中ッ!


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狐、現在感謝中ッ!

動物を飼う時は基本可愛いか家族が欲しくて買う人が多い。


「待ってッ!」

 

 俺がこのまま連れて行かれそうになる時に「待って」と叫ぶ声が聞こえた。

 司令って人が俺を持ったまま振り返ると、その叫んだ人物が誰なのかがすぐに分かった。

 

「……私に提案があるのだけど……その子、私が飼ったらダメかしら」

 

「飼うだと?」

 

「えぇ、私が飼えばその子は日本動物愛護協会に行かなくても済むでしょう」(ど、どうしましょう……あの子の悲しそうな顔を見たらつい勢いで言ってしまったわ)

 

「確かにそうだが……」

 

「なぁ、おっさん。マリアがこいつを飼うんだったらいいんじゃねぇか?」

 

(ッ!?い、意外ね……まさかクリスから後押しされるなんて)

 

「クリスくん……」

 

「私も同感です。嫌がっている狐をわざわざ連れて行くのも……その、私達の心にも多少なりの苦しさも感じますから」

 

(翼ッ!?貴方もなのッ!てか、そもそも私狐を飼う予定なんて考えて無かったのだけど……私、計画性ないわね)

 

「翼、しかし……」

 

 すると、その司令って人は少し悩む仕草をして俺を見る。

 しかし、それは俺にとって千載一遇のチャンスであることには間違いなかった。

 もし、あの女性達の話が通ればもしかしたら日本動物愛護協会に引き渡されずに済むかもしれない。

 なら、やるべき事は俺は分かっている……普通のペットや動物ならば長年連れ添ってきたペットや動物なら自分の飼い主の所に向かっていくだろう。

 そう考えると、俺の場合はどうだろうか?俺は仮にも中身は人間なのだ。

 なら、知識を絞ってこの状況を打破するしかない……なら、今の俺に出来ることは──

 

「キュ、キュ、キューッ!」(ふんッ!くっ……トォッ!)

 

「なにッ!?」

 

「キュ、キューッ!」(着地、からのダッシュッ!)

 

「ッ!マリア、狐が逃げようとして──」

 

「えッ!?ちょ、ちょっとッ!だ、ダメよッ!」

 

「キュ〜、キュ〜」(ペットになりますッ!いや、させてくださいッ!)

 

「……は無かったな。……しかし、マリアに相当懐いているのか?」

 

 俺は司令って人から必死に腕の中から抜け出して、ピンク髪の女性の方に行って足元で愛らしい仕草を見せた。

 これぞ、俺が考えた最後の手段……媚びる、である。

 本当なら、俺はこんなプライドも羞恥心を捨ててやることではないのだが、今は仕方ない。

 俺のガラスのメンタルは徐々に削れていくが、これ以上の考えは思いつかなかった……だって狐だもん。

 

「ダメって言ってるのに……もう、仕方ないわね」(これ、もう手遅れなんじゃないかしら……だ、ダメよ。まだ諦めたダメ……まだ方法はあるわ)

 

「キュ?キュー……」(え?ちょ……あ、やべぇ気持ちぃ……)

 

 俺が一生懸命媚びている時にその女性が俺の頭をゆっくりと撫でる。

 その撫で方はまるで……お母さんのような優しい撫で方だった。

 

「キュ〜……」(あ……この女性しゅごい……)

 

「ふふっ、可愛いわね」(な、なにこの子ッ!凄いふわふわしてて気持ちいわッ!しかも、そんな私にだけに見せる可愛い笑顔はやめてッ!私まで口がにやけちゃうからッ!……やっぱり勝てないッ!私は可愛いのには弱いのよッ!)

 

「……はぁ、緒川」

 

「はい、司令」

 

「狐はしばらくはこちらで面倒を見ると連絡しておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 俺が頭を撫でられている間にどうやら話しは決まったようだった。

 今の話的にはもう日本動物愛護協会に引き渡しはなさそうな気がするが……これからどうしよう。

 多分、俺はこの後この女性のペットとなるのだが、人間に戻る為の行動がかなり制限されたのは辛い……しかし、まだ諦めてはダメだ。

 今は──

 

「どうかしら?気持ちいい?」(…やっぱりこの子可愛いわね。……この子を飼うのもいいのかもしれないわね)

 

「キュー♪」(最高です)

 

 この俺に千載一遇のチャンスをくれた女性に感謝しよう。




次回狐、現在名前決め中ッ!


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狐、現在名前決め中ッ!

動物を触った後は手洗いを心がけましょう。


──わしゃわしゃわしゃ

 

「これで体の汚れやウイルスは大丈夫ですね。後はドライヤーで貴方の毛を乾かしましょう」

 

「キュ」(あ、はい)

 

 あの後、俺は最終的にピンク髪の女性に飼われることになったのだが、その前に体を洗うことになった。

 まぁ、実際にこの人……確か緒川さんだったけ?その人が的確な判断で俺をシャワーで体を洗って、ピンク髪の女性に手を洗うことを言い出した時にはちゃんと動物に対しての知識があるのだと正直驚いた。

 あの時、ピンク髪の女性……もとい、これから飼い主になる人がそのまま手で触る行為については、すぐにウイルスが伝染する訳ではないのだが、健康上危ないってことは分かっていたので、なるべく触られないように俺も気をつけていたのだが……触ってしまったから仕方ないと言えば仕方ないだろう。

 

「キュ〜〜」(あーー……)

 

「どうですか?熱くないですか?」

 

「キュウ〜」(大丈夫ですー……)

 

 しかし……この緒川さんって人は何者なんだろうか?急に増えたと思えば、次は有り得ない速度で色々な準備を始めるし……現代の忍者なのか?

 

「……終わりましたよ。では、皆さんのいる場所に向かいましょうか」

 

「キュー」(分かりました)

 

 

 しばらくして、俺は体を洗い終えた後にそのまま緒川さんに抱っこされたまま連れて行かれていた。

 ……しかし、こうやって抱っこされながら移動も今の所悪くない……実際、相手が男性だからなのかまだ落ち着くのだが、これから俺の新しい飼い主は女性でスタイルも良いのだ……絶対に落ち着けない自信がある。

 

「皆さんお待たせしました」

 

 ……っと、そんなことを考えている内にどうやら着いたようだ。

 すると、緒川さんは俺を机の上に置いて仕事があると言ってフッと消えてしまった。

 やっぱりあの人忍者じゃね?……さて。

 

「流石緒川さん……仕上がりが完璧だ」

 

「てか、なんか最初見た時よりもふわふわしてねぇか?」

 

「2人共、その子が気になるのも分かるけどそれよりもやることがあるでしょ……う、ってちょっとッ!話を聞きなさいッ!」

 

 緒川さんが消えた後から俺は机上でちょこんと座っている予定だったのだが、現在2人の女性に色々な所を触られながらお話タイム中状態にあった。

 いや、まぁ触りたいのは分かるけどそんな全員で触るのはなんかくすぐったいんですが……

 

「しかしだなマリア……この狐は触り心地がとてもいいんだ」

 

「いや、知ってるわよ。……はぁ、もうその子に触わったままでいいから早く名前を決めましょう」

 

 今の話を聞いて、俺が2人の女性に撫でられ続けている間にどうやら俺の名前を決めようとしていたようだ。

 確かに俺の名前は一応あるにはあるのだが、狐の状態で伝えられるはずもなく、とりあえずは黙ってようと決意した。

 ……でも、こっちの女性は撫で方がぎこちないが一生懸命で、あっちの女性は少しだけ荒いが顔が緩んでいるからもっと触りたいのだろう。

 

「早速だけど翼、貴方はこの子の名前はなんて名前がいいと思う?」

 

「そうだな……ごんはどうだろうか」

 

「ごん?確かにこの子は緒川さんから聞いたらオスだって聞いたけど……どうしてゴンなの?」

 

「昔、あまり記憶にないが小学生の時、教科書にごん〇つねと言うのがあっ──」

 

「キューッ!」(いやアウトだよッ!)

 

「……?ごんぎつねって本は私は知らないけど、このこの子が嫌がってるからダメね」

 

「そうか」

 

 あ、危ない……このままだと本当にごん〇つねになる所だった。

 一応日本の小学校に通っていたならば、このごん〇つねを知っている人はいたと思うのだが、多分俺が思うに青髪の女性以外はマリアやクリスって名前なので多分日本人ではないからツッコまなかったのだろう。

 ……ごん〇つねの最後はアレだから絶対それで付けたら撃たれて死んじゃうパターンだよ。

 

「クリス、貴方は何かないかしら?貴方の意見も聞きたいのだけど……」

 

「あたしが飼うなら自分で名前をつけるけどよ……話し合いで名前を決めるってなると中々出てこねぇな」

 

「そう?でも何か1つだけ何かないかしら?私もまだ決めてなくて」

 

「……なら、うたず──」

 

「キュッ!」(いや、それもダメだろッ!)

 

「……さっきよりも嫌がってるわね」

 

 当たり前だ。

 今、この銀髪の女性は俺の名前にあの可愛いアニメであるうたずきんって主人公の名前にしようとしていたのだ。

 しかも、その主人公は……女性である。

 もし、うたずきんにするならばさっきのごん〇つねの方がまだマシである。

 

「名前が決まらないわね」

 

「マリア」

 

「何かしら?」

 

「やはり、名前は飼う人が名前をつけるのが正しいと思うのだが」

 

「あたしも先輩の意見に賛成だ。それに、あたし達よりもマリアに懐いてんだからマリアが名前を決めた方がいいだろ」

 

「……そうね。確かに2人の言ったことの方が正しいわよね」

 

「それでマリア、この狐の名前は何にするんだ?」

 

「この子の名前ね。そうね……なら──」

 

 すると、新しい飼い主は俺の脇を持ち上げて、そのまま抱っこをする。

 せめてまともな名前であって欲しいのだが、果たして──

 

「この子の名前はわたあめ……なんてどうかしら?」

 

「わたあめ……悪くないな」

 

「マリアがつけたんだからあたしはそれでいいと思うけどよ、なんでわたあめなんだ?」

 

「ふわふわしてるからかしら?」

 

「……意外とざっくりしてんのな」

 

「貴方はどうかしら?わたあめ」

 

 新しい飼い主が決めた名前はどうやらわたあめって名前なのだが……まぁ、悪くないだろう。

 最悪、これ以上わたあめよりも酷い名前はないと思うので、俺は新しい飼い主に向かって頷いた。

 

「……嫌がってないわね」

 

「キュー♪」(わたあめなら問題ないな)

 

「なら、これからよろしくね。わたあめ」

 

「キュー」(よろしく)

 

「マリア、一応その……わたあめだったな。わたあめに自分の自己紹介をした方がいいのではないか?」

 

「……そうね。スキンシップは大事にしないと……自己紹介をすると、私の名前はマリア・カデンツァヴナ・イヴよ。これからよろしくね」

 

 俺はその女性の名前を聞いて頷く……ん?今なんて言った?マリア・カデンツァヴナ・イヴ?……え?ちょっ、まさか……見た事あるとは思ったけどまさか……

 

「キュッ!?キュ、キューッ!」(ファッ!?ま、マリアァァァァァッッッッッ!!!!!)

 

 

 

 




次回狐、現在訪問中ッ!


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狐、現在訪問中ッ!

狐って大体コンコンって鳴くと思う人がいるけど、実はキューンって鳴くらしいです。コンコンは奈良時代から呼ばれていたとはじいちゃんから聞いたけど……果たしてどうなのか……


「ただいま〜……って言っても誰もいないわよね」

 

「キュ、キュウ……」(く、苦しい……)

 

「ごめんなさいねわたあめ。まだケージを買っていないから苦しかったわよね……もう出てきていいわよ」

 

「キュー……キュ」(あー……しんどかった)

 

 俺の名前が決まった後、俺はそのままマリアさんの家で飼われることになった。

 実は、俺は名前が決まった時はわたあめって名前は普通によかったと思っていたのだが、それよりもまず驚くことがあった……それは、彼女がトップアーティストのあのマリアだったからだ。

 俺は元々動物番組かニュース番組しか見たことがなかったのだが、それでもトップアーティストのあのマリアのことは知っていた筈だったけど、あの時は空腹だったし、自分が狐だったことをずっと意識していたので本人が名乗るまでは本当に分からなかった。

 ……よくよく考えたらあの青髪の女性は翼さんだったんだ……って待てよ?ならあの銀髪の女性って一体誰なんだ?クリスって呼ばれてたけど……

 

「えっと、まずは家で出来る簡易的な物で何とかしましょうか。確か司令が言ってた物で作れるのは……寝床ね、ってよくよく考えたら映画をみれば大体出来る司令って凄いわよね」

 

「キュー」(映画見て大体出来るって……司令って何者なんだよ)

 

「あら、お腹が空いたの?ごめんなさいねわたあめ。少しだけ待ったら貴方の寝床が出来るか」

 

 そう言って作業を続けるマリアさん。

 今、俺は話の内容にツッコミをしただけだったのだが、マリアさんはお腹が空いたと解釈したらしいので、やはり狐なのでうまく意思疎通が出来ないのは仕方ないだろう。

 ……しかし──

 

(この部屋広いなぁ……いい匂いもするし、流石トップアーティストの家だな)

 

 よくよく考えてみれば、トップアーティストの家に一般人が入ったなんて知れば確実にスキャンダルである。

 今はまだ自分が狐だから問題はないのだが、これがもし何らかの形で人間に戻った時にそれが目撃されたら完全にストーカー扱いか泥棒扱いだ。

 だから、俺も慎重に物事を考えなければならない……その為にもまずは情報が先だよな。

 

「キュー……キュ」(えっと……リモコンは、あった。えい)

 

 とりあえずまずはニュースでも見て情報収集だな。

 

「わたあめ、寝床が出来た……って、え!?わ、わたあめがテレビを見てる」

 

(そんなに驚くことだろうか?……いや、普通に考えたらニュースを見る狐なんていなかったわ。迂闊だった)

 

「……わたあめ、頭がいいのね。司令が言ってたように狐は頭がいいとは聞いたけど、もしかしてこの子昔に誰かに飼われてたのかしら?」

 

 ……どうやら違う意味で解釈したらしい。

 俺的には少しホッとしたのだが、マリアさん……せめてそのスマホを俺に向けて写真を撮らなければカリスマのあるイメージがあったのになぁ……

 

「あの時は翼とクリスがいたからあまり写真とか触ることが出来なかったけど……家だから問題ないわね♪」

 

「キュ、キュウ……」(こ、今度は写真じゃなくてしっぽをモフり始めたし……)

 

「はあああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜……………いいわね。わたあめは可愛いし、しっぽはふわふわだし……最近はノイズや仕事が多かったから癒されるわね……」

 

「キュー……キュッ!?」(確かにトップアーティストは仕事が多いから忙しいもんな……ってうおっ!?)

 

「ふふっ、もっふもふ〜もっふもふ〜♡」

 

(……うん。俺、人間に戻れたらマリアさんのCD買おう)

 

 俺は、あまりにもマリアさんのその姿を見て、今度からマリアさんの歌を聞いてみようと思った。

 だって、こんなにもカリスマを備えた人がここまで動物に対して性格がコロッと変わるのだ。

 ……いや、これは多分俺自身が可愛い姿だからと言えるからかもしれないが、こんな美人な人にもふもふされて嫌な気分にはならないだろう。

 

「……やっぱり動物は癒されるわね。ってそろそろご飯の準備をしたいのだけど……せっかくだから先にお風呂に入りましょうか」

 

「キュー……キュッ!?」(あーお風呂を一緒にですね。分かりま……へッ!?)

 

「さ、行きましょ♪」

 

「キュー、キューッ!!」(ちょ、マリアさんッ!待てくださいッ!俺中身人間ですからッ!待ってえええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!)

 

 どうやら狐になっていいことばかりではないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここでニュースです。〇〇市〇〇大学の愛原雅人さん21歳が行方不明となりました。警察は誘拐事件と判断し、現在は近隣での注意の呼びかけと捜索を行っています』

 

 




次回狐、現在入浴中ッ!


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狐、現在入浴中ッ!

入浴中……これだけでもう、分かるだろ?


「〜〜♪」

 

「キュ、キュウ……」(俺は狐、俺は狐、俺は狐……)

 

 あの後、俺はマリアさんにそのまま連れて行かれて、今は洗面所でそのまま待機させられたていた。

 俺はマリアさんから背を向けてただ地面をひたすらに見続ける。

 今、後ろではマリアさんが自分の服を脱いでいる途中なので、俺は地面しか見ざるおえなかったからだ……流石に、俺はそんな変態ではないし、女性に対してこんな覗きみたいなことは俺には出来ない。

 自分の心情としては見たいと言う気持ちはあるが、今の狐の体をダシに使ってマリアさんの体を見る行為は俺自身の動物好きのファン達を汚す行為だと分かっているので、俺は必死に打開策を考えた。

 

(や、やばい……このままだと本当に色々アウトだ。なら、いっそ暴れて逃げ……いや、無理だ。この体でドアを開けること自体が難しいし、なら先に自分で体を洗う……それだッ!)

 

 俺はこの短い間で何とか打開策を見出して、すぐにお風呂場に向かおうとしたのだが、急に何かに持ち上げられてしまった。

 

「こーら。まだ私が全部脱いでないんだから入ろうとしたらダメよ」

 

「キュッ!?キュー、キューッ!」(ちょッ!?ま、マリアさんッ!そんな脱ぎかけで俺を捕まえないでく──)

 

「ちょ、ちょっとッ!わたあめッ!暴れないでッ!ってきゃあッ!」

 

「キュ厶ッ!……キュ、キュ……」(ふぎゅッ!……むーッ!むーッ!)

 

「いったぁ〜ってわたあめッ!?ごめんなさいすぐに外すわッ!……今日のブラはフックにしておいて良かったわね」

 

 俺はマリアさんがコケたことによってある場所にスポっと体が収まる。

 場所は言わなくても分かるだろう……俺は今、マリアさんのアレに収まっている状態だった。

 しかし、思春期の俺にとっては大問題である。

 なんせ、今まで女性と触れ合う機会などほとんどなかった自分が現在トップアーティストのマリアのアレに挟まれた状態になっているのだ。

 こうなると俺は──

 

「キュ……キュゥ〜……」(マリアさんの大きな大福が2つ……2つぅ〜……)

 

「あら?大人しくなったわね。なら、早く脱いでこのまま入れちゃいましょうか」

 

 

(……んぅ、暖かい……けど俺は──)

 

 俺はマリアさんの大きな大福に挟まれて気絶してからすぐに目を覚ます。

 どうやら理性と興奮のあまり頭に血が上ったのだろう。

 俺が目をゆっくり覚ますと、知らない間にどうやら湯に浸かっていたのでもう体を洗った後なのだろうか……

 

「あら?起きた見たいね。わたあめ」

 

「キュ、キュー……キュッ!?」(え、あぁ……マリアさんこれは思春期の男子にはかな……ブフッ!?)

 

「相当疲れてたのよね。わたあめが寝ている間は洗いやすかったけど、よくよく考えたらわたあめが入れる浴槽がないのよねー……今度買わないといけないかしら?」

 

「キュー、キューッ!キュワッ!?……キュ〜……」(えッ!ちょ、マリアさんと一緒にお風呂ッ!って背中柔らかいッ!?あ、あぁ……やべぇ……気持ちぃ〜……)

 

「ん…っ♡ちょっと、わたあめ。ダメよ、そんなに私の胸に乗ろうとしな……っ♡い、の……」

 

「キュ、キュー……ブクブク……」(あー、もうなんかマリアさんと混浴みたいになって、背中の柔らかい大福が大福で大福ぅ〜……)

 

「ダメよ、わたあめ。顔を浸けたら危ないわよ……私がちゃんと溺れないように優しく抱きしめてあげるから」

 

 俺が目覚めた時には既にそこは天国だった。

 背中の大福は柔らかいし、マリアさんはいい匂いするし、なんかマリアさんの声が落ち着くし……いい。

 

「キュー……キュー」(俺、今1番運を使ってるんじゃないだろうか……なんかもう……うん、すげぇよ)

 

「ふふっ、わたあめはお風呂に入ると細いわね。可愛い♪」

 

 あの後、俺は何とか理性を取り戻してこのお風呂を乗り越えることが出来た。

 実際、あの状態で狐の体で襲おうとしなかった俺を褒めてもいいのではないのだろうか?まぁ、そうだったとしても落ち着かないのは仕方ないだろう。

 結局、今はマリアさんに俺の体を拭いてドライヤーで乾かしている途中なのだが……

 

「……やっぱり乾くとふわふわしてるわね。明日ブラッシング用のブラシを買ってきましょう」

 

「キュ、キュー……」(お、俺は……頑張った)

 

「また一緒に入りましょうね。わたあめ♪」

 

「キュッ!?」(なん…だと…!?)

 

 後に、俺は知ることとなる……これはまだ序章にすぎないのだと。

 

 




次回狐、現在睡眠中ッ!


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狐、現在睡眠中ッ!

人はもふもふには抗えない。


 お風呂をあがって、ドライヤーで自分の体を乾かしてもらった後……俺はソファで寝転がっていた。

 流石にお風呂で大きい大福に理性を耐え続けるのは男にしか分からない幸福感と罪悪感、そして圧倒的な疲れが共に出てきてしまっていた。

 

「キュウ〜……」(疲れた……)

 

「さて、お風呂にも入ったことだしご飯にしましょうか」

 

 すると、マリアさんは晩御飯の支度を始める。

 こうして見ると、マリアさんのトップアーティストとしての姿と今の姿ではかなり違って見えてとても新鮮だった。

 ……こうして見ると、改めてマリアさんがどのような人物かが大体分かってきたように思える。

 人は見た目の8割でその人の印象が残り続けると聞いたことがあるが、それは本当だと俺は思う。

 何故なら──

 

「〜〜……この味ならいいわね♪」

 

「キュー」(カリスマのカの文字すら見えてこない……これが素のマリアさんの姿か)

 

 人はその人の本当の姿を知らない限り、その人の内面までの事を知ることが出来ないと思ったからだ。

 ニュースでしか見た事がない俺でも、ライブでの姿と家での姿……これを知ったら誰でもマリアさんのことをより好きに慣れるだろうな。

 

「これで完全ね。今日は軽い食事で作ってみたけどそんなに悪くないわね」

 

「キュー……」(言ってることがお母さんだ……)

 

「あら?もしかして気になったの?ダメよわたあめ。貴方の晩御飯はこっちよ」

 

 そう言ってマリアさんが取り出したのはキャットフードだった。

 マリアさんはそのキャットフードの袋からキャットフードを多分俺用のお皿に入れた後に、隣には水が入ったのお皿を一緒に置いた。

 

「……キュウ」(……キャットフード)

 

「わたあめ、お腹が空いたでしょ?食べてもいいわよ」

 

「キュ、キュウ……キュー」(あ、はい……よくよく考えたらあの時は空腹だったから食えただけで、いざキャットフードと分かってしまうと些か食べるのに抵抗が──)

 

 俺はどうしても、キャットフードだと分かってしまうと抵抗感が邪魔をしてなかなか食べることが出来ない状態が出来てしまった。

 とりあえず、ゆっくりちょっとずつ食べよう……そう思っていたのだが──

 

「あら?わたあめ、お腹が空いてないの?もしかして、まだ調子が悪いのかしら?」

 

「……キュー」(……いただきます)

 

 食べるしかなかった。

 

 

 しばらくして、俺は晩御飯(キャットフード)を食べ終わった後、またソファの上で同じようにゴロゴロしていた。

 晩御飯の件なのだが、やはりこの体のせいかキャットフードが美味しいと感じてしまって、あれだけあったキャットフードをぺろりと食べ終わってしまったことに対して自分自身とても驚いていた。

 

「キュ、キュー……」(キャットフードは美味かった。けど、段々人としての何かが失った気分だ……)

 

「〜〜〜……ふぅ、30秒3セット終わりね、ってもうこんな時間じゃない」

 

 マリアさんは晩御飯を食べた後、少しだけゆっくりしていて、途中からストレッチを始めた。

 やっぱり、トップアーティストで体のスタイルを維持しているのはこうした努力の積み重ねをしているからマリアさんはあんなにも綺麗なのだろう。

 ……俺はソファでその様子を見ることしかしてなかったが、人間に戻ったら俺もストレッチを始めたようとそう思った。

 

「キュー、キュッ!?」(ゴロゴロしてたら眠くなってきたな、ってうぉッ!?)

 

「わたあめ、そろそろ寝ましょうか」

 

「キュ、キュー……」(りょ、了解致しました……)

 

 すると、マリアさんが急に俺を持ち上げて抱っこしたまま何処かに連れて行き始めた。

 俺は本来ならマリアさんが作った簡易的な寝床で寝る筈だったのだが、これは──

 

「今日は一応わたあめの寝床を作ったのだけど……あれじゃきっと眠れないと思うから私と寝ましょうか♪」

 

「キュッ!?」(マリアさんッ!?)

 

「この時期は寒いし、わたあめの体が暖かいし……わ、わたあめの飼い主は私だからいいわよねッ!」

 

「キュ……」(あ、これ無理っぽい)

 

 どうやらマリアさんはもふもふの魔力に囚われてしまったようだ。

 ……いや、ただマリアさんが狐の俺と寝たいだけだと思うのだが、これはまずい。

 流石にあのマリアさんと一緒に寝るなんてことをすれば、俺の理性もかなりガリガリと削れ、寝不足になってしまうのは確実だろう。

 俺は何とか打開策をすぐに考えようとしたのだが、時既に遅くマリアさんの寝室に着いてしまって、マリアさんは俺と一緒に布団にダイブして俺のことをギューっと抱きしめた。

 

「はぁ〜……わたあめ暖かいわよ。それに、このもふもふ……たまらないわっ♡」

 

「キュー、キュー……」(ちょ、ちょっとマリアさんッ!?や、やめ……たわわがやわわでもちもちでいい匂いであばばばばばばばばばば……)

 

「なんか、眠たくなってきたわね……おやすみ、わたあめ」

 

(ばばばっ、ばばばばばばばば──)

 

 

 

 

 

 




次回狐、現在防人中ッ!


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狐、現在防人中ッ!

基本はいつでもマリアと一緒。


「キュ、キュ〜……」(や、やばい……寝不足だ)

 

 俺がマリアさんに飼われ始めてから4日が過ぎた頃、俺はただひたすらにマリアさんの仕事が終わるまでキャリーケースの中で過ごしていた。

 正直、マリアさんに飼われ始めてそこまで経ってはいないが、食事と住居がある場所があるだけまだマシな方なのだろう。

 しかし、俺はいくら狐と言えどやはり人間なのでこう……男として色々と耐えなければならない状況に陥ることが主にお風呂と寝る時に発生するのでリラックスも難しい状況には変わらなかった。

 ……いいか?大福はもちもちしてるがな、マリアさんのたわわな大福は、弾力があるもちもち感なんだよ……生殺しにもほどがあるんだよな。

 

「キュー……」(とりあえずキャリーケースで寝ようと思ったけど、意外と固くて眠れない……)

 

 マリアさんが毎日一緒に寝ようとするので、ここ最近はマリアさんが仕事の時に少しだけ仮眠を取るようにしているのだが、今回はキャリーケースから出して貰えなかった為、なかなか寝つけることが出来なかった。

 

(まぁ、いくらマリアさんのペットになったとしても、相手は人気の歌手でバラエティやライブで引っ張りだこだから忙しいのは仕方ないよな)

 

 俺はゲージの中で体の体勢を変えて、再び寝ようとする……が、やはり眠れずに待合室の中をボーッとしていた。

 

(一応、マリアさんの目を盗んで謎のローブの情報を探してるけど……やっぱりテレビだけだと分かんないよなぁ……はぁ)

 

 実際、今の自分の体が狐であることで、情報を集める時間も収集量も人間であった時よりも格段に難しくなっていることは自分でも分かっていたのだが、改めて今の現状を理解すると気が遠くなるように感じた。

 パソコンも使おうとしたのだが、やはりマリアさんがそれをイタズラと勘違いするのでパソコンはマリアさんがいる限り使えないと判断した。

 

──ガチャ

 

(ん?もしかしてマリアさん仕事が終わったのか?)

 

 俺は待合室のドアが開く音がしてキャリーケースの中から覗いて見ると、誰かが待合室に入ってきた。

 

「翼さん、僕は今からマリアさんの様子を見に行きますので、ここで待機していてください」

 

「分かりました、緒川さん」

 

「キュー」(あ、翼さんだ)

 

 そこに現れた人物はマリアさんと同じトップアーティストである風鳴翼さんが待合室に現れた。

 そして、同じくあの時一緒にいた緒川さんも部屋にやって来たのだが、どうやらマリアさんの様子を見に行く為にまた何処かに行ってしまった。

 

「……さて、次のスケジュールの確認を──」

 

(あ、目が合った)

 

 俺と翼さんが一瞬だけ目が合うと、少しだけ謎の沈黙が発生した。

 ……よくよく考えてみれば、翼さんとの接点は最初の今の狐である姿の名前を決めた時にしか会っていないので、謎の緊張感があるのだが……ってなんか翼さん近づいてません?

 

「……」

 

「キュ、キュー」(こ、こんにちは〜……)

 

 すると、翼さんは急にキャリーケースを開いて俺のことを抱きかかえると、今まで見た事がないような笑顔で、俺の体を撫でていた。

 

「これがわたあめの体か……あの時はしっぽしか触ってないから新鮮味があるな」

 

「キュ〜」(え、凄い気持ちいいんですが……)

 

「わたあめ、気持ちいいのか?」

 

「キュ〜」(凄い気持ちいいです)

 

「はぁ〜……わたあめはふわふわしてていいな」

 

 俺はそうして、しばらくの間翼さんに色々な所を撫でられながら過ごす。

 すると、何故だろうか?睡眠不足なせいか段々眠たくなってきて瞼が閉じそうになってきた。

 

「……もしかしてわたあめは眠たいのか?」

 

「キュ」(凄い眠たいです)

 

「なら、ゆっくり眠るといい……」

 

「キュ〜」(ありがとうございます……スヤァ)

 

 そして、この後俺はとても安心してゆっくり眠ることが出来た。

 しかし、何故マリアさんと翼さんではこんなに眠るまでに時間が掛かってしまうのだろうか……あっ、い、いややめておこう。

 これも、翼さんの為に黙っておこう……うん。

 

 

「……緒川さん、写真はどう?」

 

「はい、バッチリと」

 

「……えぇ、翼……貴方も女の子なのね……ふふっ」

 




次回狐、現在わちゃわちゃ中ッ!


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狐、現在わちゃわちゃ中ッ!

ちょっとした失敗ってあるよね?


「……デース」

 

「…………」(……めっちゃ見てる)

 

「……怪しいデス」

 

 俺がマリアさんに飼われ始めてから1週間が経過した頃、俺はある失敗をしてしまった。

 それは、マリアさんが珍しく俺を置いて何処かに行っている時に一生懸命二足歩行の練習をしている最中にそれは起こった。

 そもそも何故、俺が二足歩行の練習をしていたのかは簡単に言えば前足が使えるようになれば物を運ぶことや、高い所の物を取れたり、何かと役に立つと考えて一生懸命練習をしていたのだが……いつこの部屋に入ってきたのかは知らないが、金髪の女の子がその練習している姿を見てしまったのだ。

 

「ただいま……って切歌じゃない。今日はどうしたの?」

 

「あッ!マリアデスッ!大変デスよッ!」

 

「大変って……わたあめなら少し前に飼い始めたことは前にも言った筈でしょ?もしかしてわたあめが何かしたの?」

 

「そんなことはマリアが毎日呟いてるSNSで分かってるデスよッ!マリアが最近あの狐と一緒に撮った写真ばかり投稿されてるデスからあたしだって触りたいデスよッ!……って話が逸れちゃったデース……」

 

 ……どうやら、あの金髪の女の子は切歌と言うらしいが、今はかなりまずい状況に陥っていた。

 本来ならば、別に狐が二足歩行をしていても立った程度にしか思っていなかったのだが、今回はゲージから抜け出して頭にプラスチックのコップでバランスをとりながら練習している姿を見られてしまったので、俺はかなり焦っていた。

 もし、これで俺が完全に狐ではなく、別の何かと勘違いされてしまえばまた動物愛護協会に連行されるか、解剖……もしかしたらそれ以上のことをされる可能性があるからだ。

 

「んん゛……し、仕方ないじゃない。わたあめが可愛いんだから……それで、切歌は何が言いたいの?」

 

「実はデスね……さっき、マリアの狐がプラスチックのコップで二足歩行してたデスッ!」

 

「キュッ!」(いや、違うだろッ!頭に乗せて練習してたんだよッ!その言い方だとプラスチックのコップが靴みたいに聞こえるだろッ!)

 

「プラスチックのコップで二足歩行……わたあめ、貴方随分面白いことやってるわね」

 

 どうやら、あの切歌って子の言葉の足りなさによってマリアさんは勘違いをしているようだが、今はこの場を切り抜けただけマシだろう。

 だが、この切歌って子はまだ俺のことを怪しんでいるようで──

 

「マリアッ!きっと、この狐は絶対に怪しいデスッ!」

 

「怪しいって言われても、わたあめは何もしないわよ?だって、ほら……こんなに可愛いじゃない♪」

 

「キュ、キュー……」(ま、マリアさん……くるじぃ……)

 

「……絶対に何かある筈デス」

 

 俺はマリアさんに再びギューッと抱きしめられた状態の中で、この状況を何とかしようと考える。

 いずれはバレてしまうのは仕方ないと思うのだが、今バレてしまってはきっと追い出されるのは確実となってしまう。

 そうすれば、謎のローブの男達の情報を見つける手段がほとんどなくなってしまうだろう。

 

──ガチャ

 

「マリア、切ちゃんいる?」

 

「あら、調?」

 

「調ッ!聞いて欲しいデースッ!」

 

 すると、マリアさんの部屋に新しい女の子が入ってきたようだった。

 その女の子はどうやら調って名前の子なのだが、俺はその女の子を見た瞬間……いや、その匂いを嗅いだ瞬間とても懐かしいような匂いを感じた。

 

「えっと……切ちゃんどうしたの?」

 

「マリアが飼ってる狐がプラスチックのコップで二足歩行してたデスよッ!怪しいと思うデスよねッ!」

 

「キュー……」(いや、プラスチックのコップで二足歩行出来る狐がいる時点で確かに怪しいけど……それを流石に信じるか?)

 

「確かに怪しい……」

 

「……キュ?」(……マジ?)

 

「ほらッ!調だって信じてるデスよマリアッ!」

 

「え、えぇ……」

 

 ……何だか無理矢理感が凄いのだが、このままでは本当にまずい。

 あの調って子が来てから話の流れが急に変わって、俺の立ち位置が危ない状況になってしまった。

 このままだと……

 

「でも、切ちゃん……怪しいのは分かったけど、それからどうするの?」

 

「デス?」

 

「そうね。切歌、貴方わたあめが怪しいって思うのは別にいいのだけど、それからどうしたいのかしら?」

 

「え、えっと……それはデスね……」

 

「切歌?」

 

「……ごめんなさいデス。何も決めてないデス」

 

 あまりの手のひら返しにびっくりなのだが……これは、大丈夫なのだろうか?

 なんだか置いてけぼり感が凄いのだが、俺はとりあえずマリアさんの抱っこから抜け出して床に降りる。

 

「切歌……ちょっとお話をしましょうか?」

 

「あ、あわわ〜……た、助けて欲しいデスッ!調ッ!」

 

「……狐さん、お水いる?」

 

「キュ」(あ、いただきます)

 

「切歌ァッ!!」

 

「デ〜スッ!!」




次回狐、現在おさんどん中ッ!


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狐、現在おさんどん中ッ!

……2001年にあった星のカ〇ビィのアニメが地味に凄い。


 1時間後……マリアさんが切歌って子を叱っている間、俺はしばらくの間調って子に撫でもらいながらその様子を見ていたのだが、あの状況で結構追い込まれてしまった時はぶっちゃけかなり危なかった。

 あの時はもし、バレてしまえば今後の俺の未来が真っ暗だと分かっていたのでヒヤヒヤしたものだが、あの子が天然……なのかは知らないがそのお陰で助かったので良かったが、今後はあの切歌って子に注意しながら情報を集めよう。

 

「いい切歌?確かにわたあめがそんな奇行をしたら誰だって勘違いをするかもしれないけど、この子は今は私の家族なのよッ!」

 

「うぅ……で、でもデスね……」

 

「そもそもわたあめは狐なのよ?そんな人間みたいなこと出来る訳ないじゃない。きっと、遊んでたに違いないわ」

 

(……すいません。俺、人間です)

 

 俺は何故かマリアさんが切歌を叱り続ける様子を見て、だんだんあの子に対して罪悪感が芽生えてきた。

 よくよく考えてみれば、悪いのは俺であってあの子ではないので、これは俺が自分で始末をつけなければならないと感じて、調って子から抜け出して切歌って子の方に向かう。

 

「いい切歌、貴方は……ってわたあめ?」

 

「デス?どうしたデ……ってわひゃあッ!く、くすぐったいデスよぉ〜ッ!」

 

「キュー、キュー」(女性の顔を舐めるのはちょっと絵面的には大丈夫だけど何故だろう、俺のプライドがなくなって……い、いやッ!この子の為だ。恥をすてるんだ)

 

「ちょ、ちょっとわたあめッ!……もう」

 

「そ、そんなにぺろぺろしないで欲しいデスよ〜ッ!」

 

(この子はアイスクリーム、アイスクリーム……)

 

「……マリア?」

 

「……今回はこれで許してあげましょうか」

 

 

 あの後、切歌って子はマリアさんに最終的にはちゃんと許してもらうことが出来た……のだが、とても面倒なことになってしまった。

 まぁ、俺がもう疑われるような素振りはなくなって万々歳だったが──

 

「わたあめはふわふわで可愛いデース♡」

 

「ちょっと切歌。そろそろわたあめのブラッシングをするんだから、わたあめを離しなさい」

 

「あたしがわたあめにブラッシングをしたいデスッ!マリア、そのブラシを貸して欲しいデスッ!」

 

「ダメよッ!わたあめにブラッシングをするのは私だけの特権なのよッ!そうやすやすとこのブラシは渡せないわッ!」

 

「ならあたしもわたあめを渡せないデスッ!」

 

 切歌さんにめちゃくちゃ懐かれました。

 まさかここまで懐かれるとは思っていなかったのだが、正直今はこの2人がとても面倒くさく思えてきた。

 マリアさんの家に来たこの2人の女の子達はどうやら暁切歌と月読調って名前の子達で、さっき今更ながら自己紹介をされたのだが、俺は狐だからとりあえず切歌さんと調さんって呼ぶようにはしていた……のだが、その内の1人の切歌が思った以上に俺に対しての甘えっぷりが凄くて現在までに至る。

 ……お腹が空いてきたな……ってなんかいい匂いが──

 

「キュ」(よっこいしょっと)

 

「あッ!わたあめ待つデスッ!」

 

「よくやったわ、わたあめッ!……ってわたあめ?」

 

「クンクン……」(いい匂いだ……)

 

 俺はいい匂いに釣られて、そのままリビングの方に向かって行く。

 最近、狐の体になってから狐の本能が反応することが多くなっていて、正直かなり困っているが、いい匂いがするから仕方ないのだ。

 

「……マリア、どうするデスか?」

 

「今は調が料理を作っている筈だからその匂いに釣られたんだわ。わたあめはお腹が空いてるのね……切歌、ブラッシングは後で2人でやりましょう」

 

「分かったデスッ!」

 

 少しだけ歩いて、俺は料理している最中の調さんを見つけると、そのまま俺はジーッと調理している様子を見ていたのだが、とてもいい匂いがする。

 これはしゃぶしゃぶだろうか?

 

「キュー……」(美味そう……)

 

「〜♪……ん?わたあめ、どうしたの?」

 

「キュ」(お腹が空きました)

 

「……食べたい?」

 

「キューッ!」(えッ!くれるのッ!)

 

「はい、どうぞ」

 

 すると、調さんがお皿に乗せて床に置いたのはお湯できちんと茹でられた豚肉だった。

 俺はお腹が空いていたので、その豚肉を味わうように食べると……美味かった、めちゃくちゃ美味しかったのである。

 思えば、マリアさんとの生活の中で俺は、キャットフードしか食べていなかったので、久しぶりの人間が食べれる物を口の中に入れて感動していた。

 

「キュ〜」(これが……豚肉の味。うめぇ……うめぇよ……)

 

「どう、美味しい?」

 

「キューッ!」(最高です調さんッ!)

 

「よしよし」

 

「キュ〜」(あ〜、調さん素敵なんですわぁ〜)

 

 その後、俺は豚肉を食べ終わった後に今度は3人と俺でご飯を食べたのだが、今回で1番思ったのは……調さんが素敵な女性になれると思ったことだった。

 きっと、調さんはアレなのだろう……対狐特攻でもありそうだ。

 

「キュ、キュ〜」(あ、そこ気持ちいいです……)

 

「もふもふ、ふわふわ……ねぇ、マリア」

 

「何、調?」

 

「私達がわたあめを飼ったらダメ?」

 

「……ダメよ」




次回狐、現在可愛がられ中ッ!


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狐、現在可愛がられ中ッ!

最高の癒しは……もふもふである。


「わたあめ、着いたわよ。もう出てきてもいいわ」

 

「キュ、キュ〜……」(せ、狭かった……やっぱりキャリーケースよりも外が1番だな)

 

 マリアさんに飼われ始めてから2週間が経過した中、俺はとある施設に連れて来られた。

 とある施設とは言っても、その施設は1度来たと言えばいいのか無断乗車して来たと言ってしまえばいいのかわからないけど、マリアさんは何故か俺を連れてこの施設にやって来たのだった。

 

「キュ〜ウ」(ん〜……やっぱり広い方がいいな)

 

「……そろそろ翼との訓練の時間ね。おいでわたあめ」

 

「キュ」(あらら、抱っこですかい)

 

 俺はそのままマリアさんに抱っこして貰って、そのまま何処かに移動を始めた。

 マリアさんの抱っこは最初はたわわな大福が密着して抱っこされる度にドキドキしていたが、最近は枕と思いながら抱っこされているので、何とか理性を保っていた。

 たまに切歌さんにも抱っこされるのだが、発育途中のパイナップルはいけないと思っている……翼さんと調さんは2人に比べたら、俺にとっては1番落ち着きます……う、うん。

 

「えっと……この辺りだったわよね」

 

──ウィーン

 

「入るわよエルフナイン」

 

「あッ!マリアさんッ!……ってその小狐、とても可愛いですッ!」

 

「フフッ……この子の名前はわたあめって言って、今は私が飼っているのよ」

 

 マリアさんが連れて来た場所は、様々な精密機械が沢山置かれた研究室のような部屋で、その部屋にいた白衣の女の子と親しげに話始めた。

 白衣で見た所中学生のような姿に見えるのだが、後ろにエナジードリンクにカロリーメイト……もしかして、この女の子働いてないよな?そしたら、労働基準法大丈──

 

「そうなんですね。でも、今日は僕の研究室に何か用事でもありましたか?」

 

「えぇ、ちょっとエルフナインに頼みたいことがあったのだけど……もしかして何かやってたかしら?」

 

「えぇっと……今は新たなシンフォギアに掛かる負担を抑えようと色々試行錯誤してるのですが、なかなかうまくいかなくて……」

 

「……エルフナイン、貴方いつ寝たのかしら?」

 

「…………」

 

「エルフナイン?」

 

「……に、二徹です」

 

 ……夫では無かった。

 当たり前のようにそのエルフナインって子がこの施設で働いていて、しかも残業を続けている姿に流石に俺もかなりびっくりした。

 そもそも、飼われ始めてから分かってきたことだが、マリアさんの友人関係は一体どうなっているのだろうか?

 

「……エルフナイン、今日はもう作業は中止よ」

 

「ッ!ま、待ってくださいマリアさんッ!僕はまだ全然平気ですッ!このまま三徹だって──」

 

「ダメに決まってるでしょ。貴方の悪い所は頑張り過ぎな所よ……今日くらいはしっかり休みなさい。司令からは私が言っておくから」

 

「うぅ……はい」

 

 ……たまに思うのだが、マリアさんは普段はテレビでしか見たことがなかったからイメージとしてはカリスマって印象が強かったのだが、今は母性溢れるお母さんの印象が強いので、ふとお母さんと思ってしまうことがあるのだ。

 よくよく考えてみれば、マリアさんは俺に対して面倒を見てくれるし、たまにちょっとアレだが可愛いがってくれるし……きっと、この人と結婚した人はいい人生を送れるだろうな。

 

「さて、そろそろ私も訓練があるから……はい」

 

「キュ?」(え?)

 

「……えっと、マリアさんこれは──」

 

「訓練中の間ちょっとわたあめを預かって欲しいの。ダメかしら?」

 

「それなら大丈夫ですッ!」

 

「ありがとう。それじゃ、よろしくねッ!」

 

 すると、マリアさんは俺をこの女の子……確かエルフナインに預けて訓練に向かった。

 きっと、訓練とはダンスとか振り付けを覚えることなのだろうが……

 

「……えっと、よろしくお願いします。わたあめさん」

 

「キュ」(あ、よろしく)

 

「……な、撫でても大丈夫でしょうか?」

 

「キュ、キュ」(全然いいよ)

 

「ふ、ふわふわですッ!こ、こんなに気持ちいい毛並みがあったなんて……ふあぁぁ……」

 

(……なんだろう、この犯罪臭漂う言い方……俺が狐だったからいいけど)

 

「ギュ〜〜……わたあめさん、可愛いくてもふもふで幸せです。んぅ……少しだけ眠くなってきました」

 

 このエルフナインって子は大丈夫なのだろうか?

 

 

「全く、なんであたし達がこんな伝達役を……早く言えってんだ」

 

「師匠も早く言えばいいのにねー。私、翼さんが来るまで師匠とずっと訓練してたけど……疲れたーッ!」

 

「確かにおっさんの訓練はハードだしな……これからお前はどうすんだよ?あたしは今からエルフナインの所にいかないといけねぇから行くけどよ」

 

「あッ!なら、ちょうど未来も待ってくれてるから3人で行こうよッ!」

 

「……そうだな。エルフナインも喜びそうだもんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──その頃

 

「このしっぽの触り心地……枕にしたいくらい気持ちいいです」

 

(……い、1時間ももふもふしている…だとッ!?)

 

「せっかくなので、僕が、一緒にぃ……スゥ……スゥ……」

 

(俺をそのまま枕にして寝た……マジかよ)




次回狐、現在掃除中ッ!


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狐、現在掃除中ッ!

ゲルニカ大尉(親友)に絵描かないのかと言われて、iPadとペンがねぇと答えたら……何故か書けと言われた。……理不尽である。


(さて、どうしよう……)

 

 俺はこのエルフナインって子に枕にされてから30分が経過したのだか、この後どうしようかとずっと悩んでいた。

 いくら狐の体だからと言っても、抱きつくならまだ負担が軽いのだが、枕にされると動けないので、体に負担が掛かって痛いのだ。

 なので、俺はなるべく早くこのエルフナインって子から抜け出したかった。

 

(あそこにちょうどいいクッションがあるからあれを身代わりにすれば大丈夫だけど……書類の山に色々な何かの機械の部品が散らかってるんだよな)

 

「……皆、さん……」

 

(熟睡してるなぁー……よいしょっと)

 

 俺はすぐにエルフナインって子から何とか抜け出して、枕の変わりのクッションを取ってきて顔をそのクッションに乗せる。

 その子は幸せそうな顔をしながら眠っていたので、ゆっくりと部屋を出て情報を集めようと思ったのだが──

 

(……めっちゃ気になる)

 

 周囲を見渡せば、その部屋は生活の一部のような散らかりっぷりを見せており、どうにも俺はそれが気になっていた。

 元々は、俺は潔癖症まではいかないが綺麗好きなのですぐに片付けようと考えたのだが、今は狐である。

 人間の状態なら15分程度で済むのだが、今この狐の体で片付けを始めると大体1時間以上は掛かってしまうのだ。

 俺は片付けを諦めて情報を探しに行こうとドアの方に向かおうとして歩き始めた……が──

 

(……やっぱ汚い。一応、二足歩行は大分出来るようにはなって片付けは出来るけど、それでもは時間が掛かるしなぁ〜……)

 

「……えへへ、わたあめさん……」

 

(…………)

 

 

──ガサゴソ……ガサゴソ

 

(えっと……書類はここにまとめて、ネジや部品とかはその種類の箱にいれて、10秒チャージのアレとカロリーメイトは燃えるゴミで、エナジードリンクはこの袋に入れて……よし)

 

 結局、俺はせっかく謎のローブの男の情報を探すチャンスを諦めて片付けをすることした。

 実際はやっぱり散らかった物が気になったって理由が1番だったのだが、それよりもこのエルフナインって子がこれからもこの部屋を使うとなるとかなり衛生面が心配だったので、そちらを優先して行った。

 

「キュウ〜」(ふぅ〜……まぁ、こんなもんか)

 

「スゥ……スゥ……」

 

「キュ」(流石に二徹はきつかっただろうからよく寝てるな)

 

 俺はやっとこの部屋の片付けが済んで、残りのゴミ袋を端に寄せる為にゴミ袋を前足で全力で押し始める。

 今回の件で、俺は二足歩行の練習をしていて正解だと改めて感じた。

 そのお陰で細かいネジや部品の仕分けやゴミ袋を結ぶことが出来たので、その点では練習をしておいて正解だったと感じる。

 やがて、ゴミ袋を端に移動させた後に少し疲れたのでゆっくりとその場に座って休憩しようとする……筈だったのだが──

 

(やっぱりこの体だと時間が掛かったな……あっ、あそこにネジがあんじゃん。えっと……これを拾って、さっきの箱に──)

 

──ウィーン

 

「エルフナイン今大丈……夫、か」

 

「キュ」(え?あ、やべ……)

 

「どうしたのクリスちゃん?って狐?……でも、狐って白かったかな未来?」

 

「うーん……私はあまり知らないかな。でも、この狐……ネジを持ってて可愛いね♪」

 

「いや、気になる所そこじゃねぇだろッ!た、確かに可愛いけどよぉ……普通わたあめがここにいること自体がおかしいだろ。普通ならマリアが──」

 

「えッ!もしかして翼さんが言ってたマリアさんが飼っている子ってこの白い狐のことなんだッ!うわぁ〜雪見たいだッ!」

 

「響、落ち着いて。さっきから立ったまま固まってるからあまり困らせないの」

 

「えぇ〜……でも〜」

 

「……と、とにかくッ!あたしがわたあめを抱っこするからなッ!」

 

「あッ!ずるいクリスちゃんッ!私も抱っこしたいッ!」

 

 俺は一瞬狐の姿で二足歩行をしていることがバレたかと思ったが、どうやらあの響って子のお陰でまだバレていないことにホッとしたのだが、なんだこの状況。

 とにかく──

 

「キュ、キュ〜……」(よ、よかった〜バレなくて……焦ったぁ〜……)

 

 俺はバレなかったことに心底安心した。

 

 

 

 




次回狐、現在たわわ中ッ!


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狐、現在たわわ中ッ!

いいかい?……狐になると、無限の可能性があるのだよ。


 俺が研究室で掃除が終わった後、いきなり3人の女性に出会ってから20分程度時間が過ぎた頃、俺は何故かそのまま何処かに連れて行かれて、とても広いくつろぎの空間のような部屋にいた。

 部屋を出たことに対しては、俺は怒られないかもしれないが……今の状況ではかなり理性的にやばい状態だった。

 何故なら──

 

(……でかい。柔らかい。誘惑の暴力……しゅごい)

 

 俺を抱っこしている女性の大福がマリアさんと同等並の大きさを持っていたからだ。

 

「ねぇ、クリス。本当にこの狐を連れて来てもよかったの?」

 

「今はマリアがおっさんと訓練中だからな。別に問題ないだろ」

 

「でも、クリスちゃん。あの部屋にいたってことはエルフナインちゃんがその狐を預かってたんじゃないの?そしたらエルフナインちゃんが困るような……」

 

「それなら問題ねぇよ。ちゃんと伝言用に書いた紙の中にわたあめを預かるって書いたからな。それに、エルフナインも最近は忙しそうだし、寝てたらわたあめも預かれないから、あたし達がわたあめを預かってゆっくり寝かせた方がいいだろ」

 

「確かに……エルフナインちゃんも忙しそうだったからこれが正しいのかな?」

 

 そう言って、茶髪の女性……確か響って名前だった気がするのだが、彼女の言っているが実際は本当に正しくないのかもしれない。

 普通に考えれば、今俺を抱っこしている女性がクリスって銀髪の女性なのだが、実はあの時、俺を最初に見たのが彼女で本来ならば狐が二足歩行している時点でツッコミどころ満載だったのだ。

 しかし、彼女はそこを指摘せずに他のことに対してツッコミをしたのだ。

 俺としてはバレなかったことにかなり助かったので安心したのだが、彼女が何故敢えてツッコミをしなかったのかがずっと気になっていた……気にはしていたんだけど、もうそんなことを考えている余裕があまりなかった。

 

「キュ、キュー……」(ちょ、ちょっと……これ以上はやばい……)

 

「……ねぇ、クリスちゃん。さっきからクリスちゃんだけがその狐をもふってるのはズルくない?私だってモフりたいのに〜」

 

「ダメだ。もう少しだけあたしが抱っこする。後、こいつの名前はわたあめだ」

 

「クリスがその子に固執するなんて珍しいね。もしかして──」

 

「ッ!べ、別にあたしはこいつがぬいぐるみみたいで可愛いとかそんなんじゃねぇぞッ!……あ」

 

「……へ〜、クリスちゃん……可愛い〜♪」

 

「確かにぬいぐるみみたいで可愛いもんね。道理で──」

 

「ッ〜〜〜……」

 

(ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!たわわの谷に押し込むなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!(・ω・≡・ω・)(・ω・≡・ω・)(・ω・≡・ω・)(・ω・≡・ω・))

 

 どうやらクリスが自分から暴露して何故俺を離さないのかが分かったのだが、まさかのぬいぐるみと同様の可愛いさで俺を離さなかったことにちょっとしたギャップを感じていたのだ。

 だが、そんなことを考えているのも束の間。

 クリスは自分から暴露したことが恥ずかしかったからか、俺を限界までギューっと抱きしめてきた。

 あ……これ沈むわ。

 

「キュ〜ウ……」(たわわサンドぉ〜……)

 

「アハハ〜、やっぱりクリスちゃんは可愛いね♪」

 

「う、うるせぇッ!あたしだってなぁッ!」

 

「ちょっと響。その辺で……ってクリスッ!わたあめちゃんがッ!」

 

「わたあめ?……あ」

 

「キュ〜ウ〜……」(……もう、狐でもいいかなって……ガクッ)

 

「「「…………」」」

 

 俺はその後、ゆっくりと静かに気絶した。

 気絶したのはやはり、頭に血が上りすぎたのがいけなかったのだが、これだけはハッキリ言える……今は人間ではなくて良かったと。

 

 

「……それで、わたあめがこんなにぐったりなのね。エルフナインから話を聞いた時はびっくりしたわよ」

 

「なんか、すまねぇマリア。あたしの不注意で」

 

「別にいいわよ。まぁ、この子が可愛いから仕方ないけどね」

 

「あの、マリアさんッ!」

 

「何かしら?」

 

「私、わたあめちゃんに触りたいんですけど……ダメ、ですか?」

 

「あ、私も……」

 

「……今、この子は眠ってるから優しく触ってね」

 

「本当ですかッ!やった〜ッ!では早速……ほぉぉぉ……ふわふわですなぁ」

 

「フフッ、響ったら……でもふわふわしてて気持ちいい」

 

「…………」

 

「……そんなに落ち込まなくていいわよクリス。私も最初は同じことしちゃったから……貴方もわたあめを今度は優しく……ね?」

 

「……あ、あぁ……あったけぇな。柔らかくてふわふわで……癒される」

 

(みんなわたあめに夢中ね。でも、なんで私やクリス、切歌の時はこの子は気がついたら眠ってるのかしら?……考えても仕方ないわよね)

 

(そういえば、わたあめがエルフナインの部屋で何かをしてたことをあまり考えてなかったが……もしかして、あの立ってた姿って結構レアだったんじゃねぇか?……まぁ、別にいいか)

 

 




次回狐、現在ネット中ッ!


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狐、現在ネット中ッ!

( ˙꒳˙ )おうどん食べたい……


 マリアさんに飼われ始めてから2週間と4日が経過した頃、俺は今日はマリアさんとソファでゆっくり過ごしていた。

 少し前の話だが、俺がエルフナインに預けられた後にクリスに連れて行かれて気絶した時、何が起こったのかは知らないが、俺が目覚めた時には何故か彼女達は幸せそうな顔をしていたのは覚えていた。

 まぁ、彼女達が喜んでくれたならよかったが、俺にとってはあまり良いことではなかった。

 

(……もう、俺がマリアさんに飼われて2週間半が過ぎた。けど、その日から謎のローブの男についての情報が全く分からない……このままだと俺は一生このままだ)

 

 俺が気にしていたのは、俺をこの狐の体にした人物の情報がなかなか見つからずに時間が過ぎていることだった。

 流石に、俺もこのままでは本当にやばいと感じてすぐに行動しようとして、まずマリアさんに抱きつかれたままの状態から抜け出すことを優先しようと考えた。

 

「……んっ…ダメよ……わたあめぇ……」

 

(ッ!?……な、なんだ寝言か)

 

 幸い、俺が色々と考えている間にどうやらマリアさんは疲れが溜まっていたのか、そのままソファで無防備に眠っていた。

 やがて、俺は隙を見てゆっくりとマリアさんの腕から抜け出して床に静かに着地する。

 

「キュ」(よし、何とか成功だ)

 

「……だ、…ダメよ……私のサンド……イッチ」

 

(……マリアさんの寝言が凄い気になるが、とりあえず後にしよう)

 

 そして、俺はとりあえず謎のローブの男の情報を探す為に近くの机の上にあったパソコンに向かい、そのままパソコンの前まで来る。

 俺は、そのパソコンの電源を入れて起動してすぐにその謎のローブの男についての情報を色々探そうと考えたのだが──

 

(……よし、起動出来た……って、よくよく考えたらパソコンってIDとパスワードが必要じゃん。……やばい、どうしよう)

 

 なんと、マリアさんの部屋にあったパソコンにはIDとパスワードがしっかり掛かっており、これ以上の画面には進めることが出来なかった。

 

 俺は、その後も色々パソコンのIDやパスワード試してみたのだが、やはり開くことが出来ずにそのままパソコンをシャットダウンし、画面を閉じた。

 

「キュウ……」(試してみたけど……やっぱり無理か)

 

「……ゼク〇ィ……怖い」

 

(いや、ゼク〇ィ怖いって何ッ!?さっきからマリアさんの寝言悪化してませんかッ!)

 

 俺はマリアさんの寝言に対してすぐにツッコミを入れてから再びこの後どうしようかと考える。

 パソコンはもうIDとパスワードが分からない限り、使えないと分かっているので、他の方法で探そうと色々辺りを見渡して何とか謎のローブの男についての情報を得る為に何とかネットが繋がる物を探す……すると──

 

「んぅ……」

 

──ゴトッ

 

(ん?今マリアさんが何か落として……ってこれスマホだよな?)

 

 すると、マリアさんが寝返りをしようとした時に、マリアさんのポケットからスマホがポトッと落ちた。

 

(スマホか……確か、スマホの機能に顔認証があったよな?……いける)

 

 俺はすぐにマリアさんが落としたスマホを拾って、画面の電源を入れる。

 そして、すぐに俺はマリアさんのスマホを持って、必死にソファをよじ登ってマリアさんの顔に近づいて顔認証を一生懸命スキャンしようと頑張る。

 

「キュ、キュウ……」(クッ……こ、この体勢はキツいけどた、耐えろ……俺ッ!)

 

「……んん……もふもふ」

 

「キュ?キュッ!」(え?ちょっ、ま)

 

 すると、マリアさんが急に俺のことを寝ながら抱きしめてかきたのだ。

 俺は急いで抜けだそうとしたが、今度はしっかりと抱きつかれているので抜け出すことが出来なくなっていた。

 ……ただ、そのお陰か──

 

(ま、またこのパターンかよッ!たわわがッ!たわわがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ってあれ?顔認証出来てる。……な、ならッ!今の内にッ!)

 

「フフッ……わたあめぇ……」

 

(え、えっと……ネット、ネットは……あった。それじゃ、早速……検索履歴にゼク〇ィって……えぇ)

 

 自由を失った変わりに顔認証が成功し、マリアさんのスマホを使うことが出来た。

 その後は、俺は急いでネットでマリアさんが起きるまで時間の限り探し続けたのだが、結果は──

 

(俺があの時、誘拐された状態に聞いたキーワードを思い出せ……何か……何か……ッ!確か狐に関する情報が何かあった気がするッ!確か、 稲荷神……)

 

 

 




次回狐、現在預かり中ッ!


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狐、現在預かり中ッ!

マリアさん視点……だとッ!?


 ──私の生活は随分変わった。

 わたあめが来てから2週間近くの間ずっと一緒過ごしてきたけれど、今ではわたあめがいない生活があまり考えられなくなってきた。

 昔の私なら、翼やクリス、響、切歌に調、未来にエルフナインと一緒に過ごすこともあったけれど、私が最年長だったからって理由もあり、あんまり彼女達に自然と相談や愚痴などが言えなかった。

 けれど、わたあめを飼い始めてからなんて言えばいいのかしら……そうね、わたあめに対してなら素直になることが出来た。

 始めは、勢いで飼い始めて色々大変だったけれど、わたあめは私の個人的な意見だけどとても大人しい生活だったから、あまり苦労はしなかった。

 何故かわたあめはお風呂や一緒に寝る時はちょっと嫌がるのだけど、最終的には私と一緒にいてくれて、私は1人じゃないって気がしたの。

 この前なんか、わたあめをお留守番させて夜遅くまで仕事して帰ってきた時があった。

 私は、あの時はドタバタしていてわたあめの餌や水を急いで用意して出ていった記憶がある。

 あの時は私が悪いって思いながら家に帰ってきたのだけれど、玄関を開けるとそこにはわたあめが私が帰って来るの待ってくれていて、その時、私はわたあめを優しく抱きしめて頭を撫でたことを覚えている。

 だから、私はこれからもわたあめと一緒に──

 

(……んぅ……私は……少し寝ちゃってたのね)

 

 私はゆっくりと目覚めて少しだけ背伸びをする。

 どうやら、私はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 辺りを見渡すと、近くにはわたあめの姿があって私のことをジーッと見ていた。

 そんなわたあめを、私はゆっくりと優しく抱きしめてこのもふもふの感触を楽しみながらゲージの中にわたあめを入れる。

 わたあめはゲージがあまり好きではないことは分かっているのだけど、掃除がしたいのでわたあめの頭を撫でて笑顔で私は答える。

 

「わたあめ、ごめんなさいね。そろそろ掃除をしないといけないからちょっとだけそのゲージで待っててね。そしたら今度は早いけれど、一緒にお風呂に入りましょうか♪」

 

「キュッ!?……キュ、キュー……」

 

 どうやらわたあめはお風呂だとわかったようで、ちょっとだけしっぽが垂れ下がったのが見えた。

 そんなわたあめも可愛いのだけれども、そろそろ掃除をしなくては夜の晩酌の時間がなくなるので、私は掃除に取り掛かる。

 

「……さて、今日は掃除機をかけてモップがけで終わりにしましょう……ってあら?私のスマホがポケットにないわね」

 

 私はポケットにスマホがないことを確認してすぐにスマホを探し始めた。

 幸い、スマホは私の寝ていたソファの下の床に落ちていたので、私はスマホを拾ってすぐに掃除に取り掛かろうとしたのだけど──

 

「あら?翼から連絡が来てるじゃない」

 

 どうやら、翼から連絡があって私はその内容を確認する。

 翼からの連絡の内容は服選びに付き合って欲しいって内容だったので、私はいいわよと返信して、そのままスマホを閉じようとしたのだけれど、私のスマホに何かのアプリが開いた形跡があったので、私はそれを開く。

 

「私、寝る前に何か調べた記憶がないのだけど……稲荷神?何よこれ」

 

 開かれていたアプリはどうやら検索バーのようだったので、私は最初履歴の内容を確認したのだけど、全て消去されていて見ることが出来なかった。

 しかし、検索履歴の方はどうやら消されていなかったので、私はその内容を確認すると稲荷神とゼクシィが検索されていることが分かった。

 

「稲荷神って確か私と翼、クリスが錬金術師を捕まえた神社に祀られた神の名前よね?……でも、私がそんなこと調べることなんて──」

 

 私はその時にハッと気がついてわたあめの方を見る。

 わたあめはゲージの中で丸まりながらあくびをしてウトウトしていたのだが、もしかしてこれはわたあめが?

 

「……でも、わたあめがそんなこと出来るのかしら?わたあめは狐よ?……だけど、私はこの稲荷神について調べていないし……」

 

 そうして、私は考える……もしかしたら、あの時の大きな獣の足跡にわたあめが深く関わっているのかもしれないと、そう思いながら私は少しだけ考えてあることを思いついた。

 

「……あの時の神社にもう一度行ってみましょう。そしたらきっと何かわかるわ。わたあめは、そうね……切歌と調に預けましょう」

 

 そうして、私は掃除に取り掛かる。

 ……きっと、わたあめが錬金術師と関わっていないことを信じて。




次回狐、現在ドキドキ中ッ!


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狐、現在ドキドキ中ッ!

切ちゃんを舐めてはいけない……そう、舐めはッ!


「それじゃあ切歌、調。わたあめのことよろしくね」

 

「分かった」

 

「ガッテンデスッ!」

 

「わたあめもいい子にしてるのよ」

 

「キュー」(行ってらっしゃ〜い)

 

 俺がマリアさんに飼われ始めてから3週間が経過した頃、俺は切歌さんと調さんに一時的に預かることになった。

 マリアさんは午後からは仕事が無いはずなのだが、今日は俺を預けて何処かに向かうつもりらしい。

 まぁ、流石に毎日一緒に何処かに連れて行くことはいくら色々な場所に行くマリアさんでもちょっと厳しいと思っていたので、それなりに納得はしていた。

 そして、マリアさんが外に出て、調さんがドアを閉めると奥の方でコツコツと足音が離れて行く音がした。

 

「マリアが私達に狐さんを預けるって始めてだね切ちゃん」

 

「そうデスね調。でも、調はわたあめのこと名前で呼ばないんデスか?」

 

「うん……なんか、狐さんの方がしっくりくるから。私は今から買い物に出かけるけど、切ちゃんはどうする?」

 

「あたしはわたあめとお留守番してるデスッ!」

 

「分かった。なら、行ってくるね」

 

 マリアさんが行った後、今度は調さんが買い物をしに行く為にすぐに出かける準備をして、そのままスーパーの方に出かけて行ってしまった。

 本当ならば、俺はそのまま部屋でゴロゴロするかテレビを見るかの2択しかやることはなかったのだが、今回は違う。

 何故なら、今日は一時的にだが俺は預けられている身であり、なかなか目立った動きが出来ない。

 しかも、今回は調さんが買い物に出かけてしまったので、切歌さんと2人っきり……それを考えただけで不安しか感じられなかった。

 

「行ってらっしゃいデースッ!……さて、やっと2人っきりになったデスね……わたあめッ!」

 

「キュ」(声が大きいと近所迷惑ですよー……)

 

「この前は軽く流さたデスけど、今回はそうはいかないデスよ〜ッ!今日は徹底的にわたあめが怪しい所を見つけてやるデスッ!」

 

「…………」(…………)

 

 ……お分かり頂けただろうか?今回の不安の対象はこの切歌さんだけであって、正直かなり警戒はしていた。

 実際はこの前の俺の不手際で怪しまれたのは仕方ないのだが、このままでは今後に影響してくるかもしれない……そう思った俺はとりあえず──

 

「キュー」(ハイハイ失礼しますよー)

 

「なッ!?まさか今から怪しい所を……ってあたしの体によじ登って何をひゃっ!や、やめて欲しいデスッ!くすぐったいデスからや、やめ──」

 

「…………」(無心……そう、これはアイスクリーム……)

 

「ぺ、ぺろぺろしないで欲しいデスッ!悪かったデスからッ!そ、そこはだっ──」

 

「キュ」(ほれ)

 

「デーーーーースッッッッッ!!!!!」

 

 切歌さんを舐め続けることにした。

 

 

「キュウ〜」(ふぅ〜)

 

──ビクッ……ビクビクッ

 

「しゅ、しごかったデェス……っ♡」

 

 俺はしばらくして切歌さんに舐め続けるのを辞めると、切歌さんは体をビクビクしがら痙攣をしていた。

 ……べ、別にいやらしいことをしていた訳ではないし、そっち系の舐め方をしていなかったのでとりあえずセーフと考えよう……うん。

 

「……キュ、キュウ」(……き、気にしないようにしよう。とりあえず探索するか)

 

 俺は切歌さんをそのまま放置して、少しの間その部屋の散策を色々とし始めた。

 部屋の中は女性が2人で共同に住んでいることもあって、とても女の子らしい部屋に見えたのだが、俺はふとある疑問を抱いた。

 

(そういえば、マリアさんと交流がある切歌さんと調さんはマリアさんと一体どういう関係なのだろうか?……まぁ、気にしても仕方ないか)

 

「……捕まえたデスッ!」

 

「ッ!?フギュッ!」(なッ!?いつの間フギュッ!)

 

 俺がそんなことを考えている間に、切歌さんが俺を捕まえてギュッと俺が抜け出せれないぐらいの力で俺を抱きしめ始めた。

 まさか、こんなにすぐに復活するとは思っていなかったので、俺は必死にじたばたと暴れる。

 

「ッ〜〜あ、暴れないで欲しいデスッ!こうなったら……あたしの体で抑えるデスッ!」

 

「ッ〜〜!」(む、胸ぇッ!)

 

 や、やめてくれッ!発育途中のたわわでも無理ィッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!意識がッ!意識がぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!

 

「だ、段々大人しくなってきたデスね〜。怪しいと思ってたデスけど、まさかあたし達の寝室に入ったのが運の尽きデスよッ!」

 

(こ、このままだと息が出来なくなって意識が……こ、こうなりゃヤケだッ!俺の必殺舐めるを喰らえッ!)

 

「ッ……ま、まだまだあたしは耐えるデスよッ!さっきみたいにはいか……って何あたしの服の中に入ってるデスかッ!や、やめひぐっ♡」

 

(うおおおおおぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!俺はッ!意識が飛ぶまでッ!舐めるのをやめないッ!)

 

「わ、わたあめッ!ひゃあっ♡あ、あたしが悪かったデスからぁッ!あぁっ♡デスッ!?わ、わたあめッ!そこはダメデスッ!それ以上はあたしのブラのな──」

 

(震えるぞハートッ!失っていくほどの意識ッ!わたあめ式ぺろぺろアタックゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!)

 

「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、帰ってきた調は語る……帰ってきて、調が見たものはグダっとしてやりきった感を出しているわたあめと、自分の大切な切ちゃんが虚ろな目をしてビクビクして、ハァハァ吐息をたてながら倒れている姿だった。

 また、それを見て調はこう思った。

 

(切ちゃんのエロ顔……これはこれで……)

 

(も、もうむりデェスっ♡アレを舐めるの卑怯デェスっ♡こ、こんなの……クセになっちゃうデスよぉ〜っ♡)

 

(……マリアさんの癒しが、ほ……し……ガクッ)




次回狐、現在のんびり中ッ!


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狐、現在のんびり中ッ!

舐めが終わった?いやいやいや、まだ百合は終わらない。


 しばらくして、俺は何とか意識を取り戻してそのままソファの上でボーッとしながら休憩をしていた。

 流石に、切歌さんもやり過ぎた気がしたのだが、俺も自分の身を守る為だと思って自重しなかったことがいけなかった。

 あれは……うん、ダメだな。

 

「……えい」

 

「ッ!?デェスッ♡!!し、調ぇ〜……今はあまり触らないで欲しいデェス……っ♡」

 

「狐さんに舐められた所、まだ敏感なんだ……切ちゃん一緒にお風呂に入ろっか♪」

 

「調は鬼デスかッ!」

 

 ……切歌さんがこんな状態になってしまったのは俺のせいなのだが、なんだかこの状態が和やかに見えるのは気のせいなのだろうか?いや、和やかと言うよりは──

 

「でも、切ちゃんは狐さんにぺろぺろされて服の中がベトベトでしょ?」

 

「ひぁっ♡……し、調ぇ〜っ♡そんなに優しく触らないで欲しいデスぅっ♡」

 

「そんなに狐さんのぺろぺろ……気持ち良かったの?」

 

「ひぐっ♡だ、ダメデスッ!まだあたしの、肌は、敏感デ──」

 

「……つんつん」

 

「ッ〜〜〜〜♡♡……はぁ……はぁ……調ぇっ♡」

 

「……キュ」(……風呂に入りに行こう)

 

 俺はこれ以上傍観することをやめて、さっき散策した時に見つけたお風呂場の方に向かった。

 調さんはきっと切歌さんの体の状態を知って面白半分でやっているのだろうが……第三者から見てみれば完全に百合である。

 こうなってしまえば、俺のやることは1つ……

 

「切ちゃん……」

 

「調……」

 

(……頭を冷やさなければ)

 

 空気になることだった。

 

 

──チャプン

 

 あの後、調さんと切歌さんが百合百合している間に、俺はちょうどお風呂にあった桶の中にいっぱいになるぐらいの水を入れてそのまま入水した。

 流石に、桶の中に水を入れるのは苦労したが、入ってしまえばこっちのものだろう。

 もし、見られたとしても狐が水遊びしているようにしか見えないので完璧なカモフラージュとなる訳だ。

 

「キュッ!キュ……」(冷たッ!ま、まぁ……頭を冷やすにはちょうどいいか)

 

 そして、俺はゆっくり水の中に入水した後、天井を見上げた。

 

(……稲荷神……か)

 

 俺は稲荷神のことを思い出しながらゆっくりと水面に映っている自分の姿を確認する。

 この前、マリアさんのスマホで稲荷神について色々調べてみたはいいのだが、その調べた内容のほとんどが稲荷神社についての内容が多く、人間から狐になると言う情報は全くなかった。

 ……しかし、俺の調べた情報は決して全てが無駄になった訳ではなく、稲荷神についての情報で確かな情報があったのだ。

 

(狐は稲荷神のお使いであり、神様をお守りする存在……あの時、俺は謎のローブに稲荷神の血を飲まされて狐になった。……ってことは、やっぱり今の俺は稲荷神の式みたいなもので稲荷神を守る役目がある、のか?)

 

 俺はそう思いながら、確かな情報があるのは稲荷神社に人間に戻れる方法があるとそう考えた。

 ……し、しかし、やはりずっと水の中に入った状態だっから段々と体が冷えてきた。お、お湯……

 

──ガララ

 

「あ、狐さん……何してるの?」

 

「キュッ!?」(うわッ!?び、びっくりしたぁ……なんだ調さんかぁ〜)

 

「私が切ちゃんと一緒に遊んでる時に狐さんはこんな所にいたんだ……ふーん」

 

「キュ、キュー」(いや、調さん随分周りのこと気にせずに切歌さんに色々百合百合してましたよね?)

 

「体が濡れてるし、もしかしてお風呂場で遊んでたのかな?切ちゃんはまだちょっと私がやり過ぎてまだ立てそうにないし……」

 

(切歌さん……あの後更なる追い討ちを……なんか、すみません)

 

「……よし。狐さん今から私と一緒にお風呂……入ろっか」

 

(……What?)

 

「体綺麗綺麗しようねー……あ、私も脱がないと。よいしょっと」

 

(あ、ちょッ!ここで脱がないでッ!いけません調さんッ!とても犯罪臭がプンプンしてるからッ!いくら狐が合法だとしても中身は狐ですからッ!や、やめ──)

 

「この前は切ちゃんばっかり狐さんと一緒に過ごしてばかりだったから、今日くらいは私と一緒に過ごそ?あ、寝る時は私と切ちゃんで一緒に寝ようね」

 

(……煩悩、退散)

 

 この後、切歌さんが途中でお風呂に入ってくるのだが、俺はその前に誓った……人間に戻ったら謝ろうと……

 

 




次回狐、現在怪しまれ中ッ!


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狐、現在怪しまれ中ッ!

ま、マリア視点その2だとッ!?


「……ここが稲荷神社。あれから3週間は経過してるけど、ここを荒らされた形跡はないわね」

 

 私はわたあめをあの2人に預けた後、緒川さんに車を借りて稲荷神の鳥居の前にいた。

 今回、私はこの稲荷神社にやって来た理由は、3週間前の錬金術師の件のこともあるのだけど、私のスマホに検索されていた稲荷神についての情報を知る為だ。

 ……そして、わたあめが3週間前の事件に関与しているかもしれない……だから私は──

 

「……これ以上考えるとわたあめを疑うことにつながるわね。ダメよ私、わたあめを信じる為にここに来たんだから」

 

 そうして、私は鳥居をくぐって本殿の稲荷神社に向かう。

 私は稲荷神社に向かう途中の道をよく見ながら進んでいると、所々錬金術師達のアルカノイズの影響によって至る所がボロボロになっていた。

 

「やっぱり、私達が錬金術師達と戦闘を行った場所は本殿の場所だったけど……これは酷いわね。……でも、1番酷いのはこの獣の足跡と焼け跡かしら」

 

 錬金術師達は一体何をしていたのかはまだ司令からは何も聞かされてはいないが、ここで何かはあったことだけは分かる。

 これだけの焼け跡や獣の足跡があるにも関わらず、何故か私達はその獣を見つけられなかった……そんなことを考えているうちに、どうやら稲荷神社に着いたようだった。

 

「……今は修繕中だけど、形だけ何とか保っていただけまだマシだったのかもしれないわね」

 

「おや、こんな時間に参拝客……ではなさそうですな」

 

「あら?ごめんなさい。実はちょっと調べたいことが……って貴方は?」

 

「私はここの神主です。調べたいことがあると言いましたが、当時は私が留守の間にこのような事態になってしまいまして……話せる程度なら協力致しますよ」

 

 私が稲荷神社のことを調べようとすると、近くに現れたのはこの稲荷神社の神主だった。

 1度、私は場所が違うが別の神主と会ったことがあったので、分からないとまではいかないが、それなりに知っていることは知っていた。

 ……正直、背後から現れてびっくりしたのだけど。

 

「なら、少しだけいいかしら?まず、この稲荷神社の稲荷神について教えて欲しいのだけど」

 

「稲荷神様……ですか。元々、稲荷神様は稲を象徴する穀霊神や農耕神で、穀物と農業の神と言える存在でした。代々私達神主も稲荷神様のお陰で年貢が絶えることはありませんでしたよ」

 

「年、貢?ね、年貢が何なのかは知らないけど、とにかくお米や野菜の神みたいなものであってるかしら?」

 

「大体はあってますよ。そして、私達は代々稲荷神様の神主としてこの本殿を守ってきたのですが、稲荷神様の生き血が奪われてしまいまして……」

 

 私は神主の話を聞きながら、その神主が気になる言葉を発していたのを見逃さなかった。

 

「稲荷神の生き血……その話を詳しくお願い」

 

「1週間前のことですが、私はボロボロにされた本殿を整理しようとしていた時のことです。その時に、この神社に祀られていた稲荷神様の生き血が空の状態で発見されたので、多分3週間前に起きた事件と関係があると思うのですが、これを誰かが飲んだとすれば……」

 

「その生き血を飲んだ場合は……どうなるのかしら?」

 

「それは分かりません。私も代々の神主からは決して口にするなと言われていたので……ただ、言い伝えによれば女が飲めば神の子と、男が飲めば──」

 

 神主が大事な所を話している途中で私のスマホから着信がかかってきた。

 どうやら、近くでアルカノイズが現れたので、近くにいた私が至急現場に向かうこととなった。

 

「ごめんなさい。少し用事が出来てしまったのでこれで失礼するわ」

 

「おや、そうですか。なら、お気を付けてください」

 

「えぇ。あ、それとこの子はどう見えるかしら?」

 

 私は急いでアルカノイズが現れた場所に向かおうとしたのだが、今回の大事なことを聞いていなかったので、急いで写真のライブラリを開いてわたあめの写真を見せる。

 

「この子を飼っているのだけど、貴方にはどう見えるかしら?」

 

「白い狐……そうですね、私は見たことはないですが、随分可愛いらしい狐ですね」

 

「……そう、ありがとう」

 

 そして、私は急いでアルカノイズが発生した場所に向かう為に車まで走る。

 稲荷神社の神主からは色々聞いたけど、わたあめに関することは話してなさそうだし、わたあめを見ても疑問に思ってなかったから大丈夫よね。

 

「ッ──こちらマリア。至急現場に向かいますッ!」

 

「……若いっていいねえ。だが、あの白い狐。この神社の石像の狐と似ていたような……いや、しかし──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………歌姫か……アイツが我らの神の子を……しばらく監視を続けろ




次回狐、現在練習中ッ!


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狐、現在練習中ッ!

冷静さはしっかり落ち着いていないとあまり効果が無い。


──ムニィ……

 

「……キュ」(……何してんの)

 

「ふわふわでもちもち。この忙しい時期の唯一の楽しみ……癒されるわぁ〜」

 

「……ま、マリア。その……私も」

 

「あら、翼も触りたかったの?ならもっと早く言えば良かったのに……わたあめは今日はここから動きたくなさそうだから、そのまま触っても大丈夫よ」

 

「あぁ、分かった。……では」

 

──ムニィ……

 

「キュ」(あの、だからそんはフニフニされても困るんですが……)

 

「わたあめ辛くはないか?」

 

「……翼?」

 

「キュ……」(出来ればもう少し優しく……)

 

「ッ!ま、マリアッ!わたあめが私の手をスリスリってッ!」

 

「……えぇ。よかったわね」(何故、わたあめと一緒にいる時は翼はこんなにも可愛いくなるのかしら……流石、わたあめね)

 

 マリアさんに飼われ始めてから4週間が過ぎた頃、俺はライブの予行練習を終えたマリアさんと翼さんに触られながら、その場で座っていた。

 翼さんはこの前の切歌さんや調さんとは違って、優しく触ってくれるので、俺はそんな優しく触ってくる翼さんのことを、俺はかなり良く思っていた。

 

「わたあめ、このサラミを食べるか?」

 

「キュッ!」(えッ!くれるのッ!)

 

「ダメよ翼。あげるならこの市販のサラミよりも、このペットショップに売ってあるサラミならいいわよ」

 

「市販のサラミはダメなのか……しかし、暁や月読はわたあめに色々食べさせていたが、あれは大丈夫なのか?」

 

「……ちょっと切歌に連絡してみるわ。……もしもし切歌?──」

 

「……わたあめ、少し耳を塞ぐぞ」

 

(あ、切歌さんバレたな……南無)

 

 マリアさんが切歌さんに電話している間に、俺は翼さんに色々撫でられながら、この前のあの2人に預けられた記憶を思い出した。

 あの時は、切歌さんがまた俺のことを怪しんで、調さんはなんだかんだで俺を甘やかしてきて、最終的には3人でご飯食べたり一緒に寝たりしたのだが……色々と大変だったよ……うん。

 

「いい切歌。調ならあまり問題はないと思うけど、貴方はちゃんとペットについてしっかり勉強してから与えなさい。わたあめにお菓子とかあげたい気持ちは分かるけど、わたあめがそれで体調を崩したら大変なの。分かった?」

 

『ご、ごめんなさいデス。気をつけるデス……』

 

──ピッ

 

「……翼、そろそろ時間じゃないかしら?」

 

「あ、あぁ……そうだな。……フッ」

 

「……な、何よ」

 

「いや、マリアも可愛いらしいと私も思ってな。わたあめもそう思うだろ?」

 

「キュ」(マリアさんはお母さんです。俺はそういう風に見えた)

 

「……い、いくわよ翼ッ!」

 

 すると、マリアさんは立ち上がってそのまま部屋を出る。

 翼さんも俺に一言「じゃあね」っと言って、マリアさんの後を追うように走って行ってしまった。

 

(バイバーイ……さて、俺も練習を始めるか)

 

 俺はマリアさんと翼さんを見送ると、そのまま部屋にある机の上によじ登ってある準備を進める……それは、動物にはなかなか出来なくて人間には当たり前に出来ることだった。

 

(まずは二本足で立って……っと、よしよし大分コツが掴めてきたからなー。それじゃあ、よいしょっと)

 

 

「まさか、私がスマホを忘れるなんて……失敗したわ」

 

 私はそう言いながらわたあめがいる部屋に走って向かう。

 今まで、物を忘れることは少なかったのだが、今回は翼があんなこと言ったせいで恥ずかしい思いをしたからから逃げ出したくて早めに向かったのだけど、失敗したわ。

 

「着いたわね……ってあら?扉から何から音が──」

 

「キュ、キュ」(あ〜、い〜……ってダメだ。全く文字になんねぇ……)

 

「わた、あ……め?」

 

 私はわたあめがいる部屋の扉から少しだけ顔を覗かせると、なんとわたあめが絵を書いている姿が見えた。

 

※彼は文字の練習をしているのをマリアは絵を書いていると勘違いしています。

 

 私にはわたあめが一体何を書いているのかが分からなかったが、私はそのわたあめの一生懸命書く姿に──

 

「わ、わたあめ……なんで私がスマホを持ってない時にそんな可愛いらしい行動をするのよッ!人間みたいで可愛いじゃないッ!」

 

 ただ、可愛いく思えて仕方なかった。

 

(あ〜……もし、この姿を見られたらバレるだろうなぁ〜。でも、文字になってるどころか読めないから分かりにくい筈だけど、これでバレなかったら相当普段の冷静さがなくなってる状態しかないとか……いや、無いな)

 

(こ、このままだとわたあめが可愛い姿が撮れないわッ!……なら、そ、そーっとスマホを取れば大丈夫よね……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、マリアさんは何とか動画を撮って満足したが、逆にわたあめが書く練習をしている姿に全く疑問を抱かなかったとか……




次回狐、現在散歩中ッ!


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狐、現在散歩中ッ!

……装者は皆美人……分かるね?


「キュ、キュー……」(お、おぉー……久しぶりに街を歩いた)

 

「あまり離れるんじゃねぇぞ。たくっ……マリアも言うなら早く言えってんだ。まぁ、その分わたあめは大人しいからあたしは助かるがな」

 

 俺がマリアさんに飼われ始めて1ヶ月が過ぎ、そろそろこの生活に慣れた頃、俺は狐として初めての散歩をクリスがマリアさんの代わりに行っていた。

 本来ならば、マリアさんが散歩に連れていく筈だったのだが、どうやらマネージャー(緒川さん)にダメと言われたので、クリスとなったのだが……なんだかんだで楽しそうなんだよね……

 

「キュ」(やはり、外はいいよな……開放感があって最高だ。まぁ、首輪がなければの話だけど)

 

「……さっきから異様にあたし達に視線が集まってるような……まさかな」

 

 クリスはこんなことを言っているが、どう考えても視線は完全に集まるだろう。

 なにせ彼女は、美少女で銀髪のたわわ持ちというステータスを備わっていて最近分かったことだが、ハーフの女子高生だ。

 そんな彼女が世にも珍しい白い狐をペットとして歩かせているのだからそりゃ注目も集まるのは仕方ないだろう。

 

「お、おい見ろよあの外国人の女の子。すげぇでけぇぞ……」

 

「しかも美少女で今は……狐と散歩中って所か。アイドルか何かか?」

 

「可能性は微レ存……俺らワンチャン行けんじゃね?」

 

「絶対ねぇ」

 

「ねぇ、あの子凄い可愛いくない?」

 

「え?あ、凄い可愛い……名前なんて言うのかな?」

 

「飼い主も可愛いけど、そのペットが狐って……なんか癒されるねッ!」

 

「……わ、わたあめ。公園に行くか」

 

(あ、やっぱり聞いてないフリをしてたんだな)

 

 そして、俺は少しの間クリスと一緒に歩き続けると、公園が見えたので俺達はそのまま公園に向かった。

 公園に着くと、その公園には様々な遊具があり、子供達が楽しそうに遊んでいた。

 

「意外と公園に人がいるんだな……」

 

「キュ、キュー」(確かに子供が結構いるけど、さっきからその袋が気になって仕方ないんだが……まさかそんな訳ないよな?)

 

「あそこ辺りが広そうだし……よしッ!あたしと遊ぶぞわたあめッ!」

 

(やっぱり遊ぶ用のおもちゃなんですね。分かります)

 

 俺達は公園の少し広い場所に移動して、クリスは俺と遊ぶ準備を始める。

 ……実は、1番楽しみにしていたのはクリスな気がするんだけど……うん、めっちゃいい笑顔。

 

「最初は……ボールだなッ!わたあめ、取れッ!」

 

「キュッ!?」(いや、投げ方雑ぅッ!?)

 

「……結構、遠くに投げ過ぎたか?……ってわたあめ早くねぇかッ!」

 

 俺はクリスがボールを遠い所まで投げたので、急いでそのボールを取ろうと全力で走る。

 クリスが驚くのも仕方ないとは思うが、実際の狐の走る速度は約50kmで木登りや泳ぐのが得意なので、驚くのは仕方ないと思っていたが……正直俺もこんなに走れるとは思っていなかった。

 

「キュ」(はい、ボール)

 

「……わたあめ、お前すげぇんだな」

 

「キュッ!」(そりゃ狐ですから)

 

「……なら、あたしも手加減無しで相手してやるよッ!ちょせぇッ!」

 

「キュッ!?」(え、ちょ、休憩無しですかぁッ!?)

 

 そして、クリスのボール投げはクリスがバテるまでずっと続いた。クリスも最初は楽しそうにしていたのだが、だんだん投げるのが疲れたのか、息を切らしながら投げるようになっていた。

 ……まぁ、人間じゃなく狐の俺は体があったまってちょうどいいぐらいの気持ちなのだが、最近は色々大変だったのでこんなボール遊びもなかなか楽しい。

 

「……ハァ、ハァ……わ、わたあめちょっと休憩……」

 

「キュ」(あ、ハイ)

 

 ……クリスって体力ないんだな。

 

「い、意外とハードだな……だが、あたしは諦めねぇッ!後輩がわたあめの面倒が見れるならあたしだってこれぐらいのことやってやんよッ!……ハァ、ハァ」

 

(……まだやるのね)

 

 まだ、俺とクリスの遊びは終わらなさそうだ。




次回狐、現在お疲れ中ッ!


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狐、現在お疲れ中ッ!

……まさかの、出たァ(^O^)


「ゼェゼェ、ゴボッゲホッ……ハァハァ……み、水……」

 

「キュ……」(まだ1時間経ってないんだが……まさかここまで体力がないとは……)

 

「ハァハァ……ンク、ンク……ぷはぁッ!ハァハァ……な、なんで遊んでるだけなのにこんなに疲れるんだよ。あたしだってしっかり訓練はやってるつもりなんだけどなぁ……」

 

 公園で、遊び始めてから更に40分が経過した頃、クリスは色々な遊びを俺で試しながら遊んでいたのだが、クリスの方がダウンしたので、今はその休憩の為にベンチで休んでいた。

 

「キュキュー」(なんだかんだで色々遊んだけど、結構いい運動になった)

 

「……わたあめ、お前なんかスッキリした顔してんな」

 

「キュー、キュー……キュ」(そりゃ、フリスビーにボールに縄……犬のおもちゃではしゃいだことに対してはちょっと色々言いたくなるけど、これだけ運動するのも久しぶりだったから楽しかったよ……ま、聞こえてないよな)

 

 クリスが休憩している間に、俺もベンチの上に乗って一息つく。

 すると、それを見ていたクリスは袋の中からお皿を出した後に、さっき飲んでいたペットボトルの水を入れて俺の前に差し出した。

 

「ほら、わたあめも喉渇いただろ?今なら冷たい水だそ」

 

「キュ、キュ〜」(お、おぉ……冷たい。確かに喉乾いてたから生き返る〜)

 

 俺は差し出された水をただひたすらに飲み始める。

 最初は、その様子をクリスはただジーッと見ていたが、気がつけばクリスは俺の頭を撫でながらスマホで写真を撮っていた。

 ……やはり、クリスもマリアさんと同じように動物好きなのだろうか?お皿もわんちゃん用だが、新品のお皿を使っていたので、多分他の犬のおもちゃも一緒に買った風に見えるのだが、……まさか……いや、これ以上の詮索はやめとこ。

 

「……やっぱりわたあめの体はふわふわしてんだな」

 

(そりゃ狐ですから)

 

「……今度、マリアにわたあめを泊めてもいいか聞いてみるか?いや、でもなぁ〜……なぁ、わたあめ。あたしの家に泊まりたいか?」

 

(……ま、また今度で……)

 

「……そ、そんなにあたしから離れるのが寂しいかッ!そうかそうか〜……今度、マリアに頼んどいてやるよッ!」

 

(哀しきかな。意思疎通……)

 

「……ちょっとわたあめ。あたしはトイレに行くから大人しく待ってろよ」

 

 すると、クリスはトイレに行く為にベンチから立って、そのままベンチの上に俺を置いて行ってしまった。

 その時に、ちゃんとリードをベンチに括り付けて行ったので、行動は制限されたので、そのままちょっと疲れたので、丸くなって目を閉じた。

 

(……クリスは行ったし、ちょっと休憩……スヤァ)

 

 

「……シンフォギア装者と神の子が離れた。準備を始めろ」

 

「分かりました。しかし、大丈夫なのでしょうか?神の子は今はまだ小狐なので、すぐに捕獲するチャンスがあるのに何故捕獲しないのですか」

 

「それは簡単だ。私達は弱いからだ」

 

「しかし──」

 

「実際、弱いのは仕方ないことだが、好都合なことに、神の子はシンフォギア装者達と一緒に過ごしている。だから、それを逆手にとって少しずつ……少しずつ神の子を強くしていくのだ。もうすぐ満月だ……その時までは、分かるだろ?」

 

「ッ!……分かりました。では、神の子に睡眠薬を投与し、残りの血も全部投与します」

 

「……念の為に歯に従属のリングを付けておけ」

 

「分かりました」

 

「キュ、キュウ……」(う……い、痛い……)

 

「即効性のある睡眠薬だ。これも俺達の悲願の為だ……」

 

(ん?なッ!謎のローッ!?……あ、熱い……熱、い?なんで?どうして?……起きれない、起きれない……お、俺は……俺?私?起きないといけないのに……眠く、な──)

 

「……後はシンフォギア装者達の行動が変われば、いずれ……いや、それは満月になった時になれば分かる、か」

 

「申し上げますッ!シンフォギア装者がこっちに戻って来ましたッ!」

 

「……行くぞ」

 

 




次回幼狐、現在落ち込み中ッ!


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幼狐、現在落ち込み中ッ!

わたあめは小狐から白髪ロリに進化した( ゚∀ ゚)


「……はぁ、あたしももう少し訓練を増やそう」

 

 あたしは、トイレからわたあめのベンチに戻っている途中に、今度の訓練について色々考えていた。

 ……あれだけ色々考えて、新しく買ったおもちゃで遊んだが、わたあめは疲れさえ見せずに、しっぽがめっちゃ振ってたことは確かに可愛いかったけどよぉ……そう考えたら本当にあたしって体力がねぇな。

 

「さて、わたあめもあのベンチで休憩してるから多分あのふわふわ感で色んな奴に触られてんだろうな……って、あ?」

 

 やがて、わたあめのいるベンチに着いてわたあめをいることを確認しようとした時、クリスはその瞬間ありえないものを見てしまったのだ。

 そのベンチにいたのは、なんとわたあめではなく、白い髪の小さな女の子が裸でベンチに横になっている姿が目に映ったのだ。

 

「……ッ!お、おいッ!大丈夫かッ!」

 

「スゥ……スゥ……」

 

「……もしかして、この裸の状態で寝てんのか?ありえねぇ……しかも、ここは公園だぞ。もしかして……こいつは──」

 

 あたしはわたあめがいなかったこともそれなり心配はしていたのだが、それよりも今はこの子供をどうするかで必死に考えていた。

 

「公園で子供を置き去りって何考えてんだよッ!ふざけんなッ!……スゥー……フゥー……落ち着けあたし。今はそれよりもこの子供を何とかしねぇとな」

 

 そして、あたしがスマホで電話したのはおっさんだった。おっさんならきっと、この子供何とかして保護してくれると分かっていたのですぐに連絡した。

 

「……あ、おっさんちょっといいか?」

 

『クリスくんからの連絡は珍しいな。それよりどうしたんだ?』

 

「実はな、公園で裸の子供がベンチで寝てたんだよ……何とか保護出来ねぇか?」

 

『なんだとッ!?……分かった。今から迎えの車をそちらに向かわせる』

 

「サンキューな、おっさん……後、今そっちにマリアはいるか?」

 

『あぁ、今はちょうど翼と一緒の仕事を終えて帰ってきたばかりだが……』

 

「……実は、わたあめがいなくなった。多分この近くにいると思うんだが……とりあえず、あたしが子供を預けた後にわたあめを探すって言っておいてくれねぇか?頼む、おっさん……わたあめがいなくなったことをあまり本人に言えねぇんだ」

 

『……分かった。なるべく俺からも優しく言っておく』

 

『あぁ……あ、ありがと……おっさん』

 

 あたしはおっさんにお礼を言った後に、そのままスマホの通話を切る。

 ……まさかこんなことになるとは思わねぇよなぁー……しかも、わたあめもいなくなっててこの広い公園の中を探さねぇといけねえし、どうしよ。

 

「……にゅぅ……お肉……」

 

「……寝言が肉って……一体この子供に何があったんだよ」

 

 

「……んぅ…ッ、頭が痛い」

 

 私はゆっくりと眠りから覚めて、体を起こす。

 まぁ、多分体が痛いのベンチで横になっていたから仕方ないと思いながらゆっくり小さなあくびをする。

 

「……あれ?ここベッド?私はあの時ベンチで寝たはずなのに……ってここ何処?クリスはいないの?」

 

 周りを見渡すと、そこは真っ白な部屋で公園ではないことがはっきりした。

 ……しかし、何かがおかしい……そう思って、私はベッドの下を見ると、私の体がある変化を起こしていた。

 いや、正確には戻ったと言えば正しいのだろうか?だが今は──

 

「……に、人間に戻ってる……や、やったあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

 私は人間に戻っていることに気がついて、ベッドから立ち上がって何度もぴょんぴょんとジャンプする。

 本来、もう戻れないと思っていた人間に私は戻れたのだ。

 喜ばない方がおかしい……のだが、私はある違和感に気がついた。

 

「あはは、は……ってあれ?なんで視点が低い……い、いやまさか──」

 

 私は急いで目で見える範囲の場所で自分の体の状態を確認する。

 よく見れば、服は医療用の服だが、どう考えてもその服は小さく、しかも手足は通常の大人の手足よりも大分小さいことが分かった。

 

「……う、うそ。せっかく狐から人間に戻れたのに、今度は子供なのッ!?ど、どうしよう。わ、私……私?今自分のことを俺じゃなくて私って自分で言った?……まさか──」

 

 私は急いで自分の象徴である私の私を手で触って確認する……無い。

 

「……な、無いッ!私の小さな私がなくなってるッ!しかも、よく見れば私の胸が膨らんでる。そ、そんな……」

 

 私は急いで自分の胸を触って確認する。

 自分の胸はマリアさんみたいにとてもたわわしてるとは言わないが、だいたいCぐらいの大きさと分かる。

 これで、私もようやく自分の体の変化に全て気がつく。

 

「わ、私……女の子になったの……な、なんでよぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!」

 

 




次回幼狐、現在撫でられ中ッ!


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幼狐、現在撫でられ中ッ!

……d(˙꒳˙* )Good


「終わった……男の子じゃなくて女の子……」

 

 私は自分の姿が女性……正確には女の子(子供)になってしまい、ベッドの上でただ唸っていた。

 すると、その声が聞こえたのか分からないが、だんだんと足音が聞こえて来るのを感じて、私はすぐに扉から死角になるようにベッドに隠れた。

 

「さっき、叫び声のような声が聞こえたんだが……そこか」

 

「ッ!?…………」

 

「大丈夫だ。俺は何もしていない……だからゆっくりこちらに顔を出してくれないか?」

 

「…………」

 

 そこに現れたのはなんと、1ヶ月前だが私を日本動物愛護協会に預けようとした司令って人が私の前に現れた。

 しかも、私はなるべく扉から死角に隠れたつもりだったのにこんなに早く見つかるとは……この人は何者なんだろうか?

 しかし、もしかしたらこれはチャンスかもしれない……何故なら、もう起きてから色々と我慢してたので助かった。

 

「……ねぇ、おじさん」

 

「怖くはないぞ。それよりどう──」

 

「……と、トイ……レ」

 

「…………翼ァッ!」

 

 

 しばらくして、私は何とかトイレに間に合って、現在は食堂の広場の方でりんごジュースを頂いていた。

 正直、トイレでのやり方は最初は私は男だったからかなり焦ったけど、何とか翼さんに色々教えてもらってギリギリセーフだった。

 ……しかし、久しぶりに飲んだりんごジュース……うめぇ……うめぇよ。

 

「1ヶ月ぶりのりんごジュース……おいしい……おいしいよ」

 

「翼、助かった。まさかいきなりトイレと言われるとは思わなくてな……」

 

「いえ、大丈夫です。ですが、この子供の詳細は分からなかったのですか叔父様」

 

「あぁ、緒川にも協力して貰って色々探してはみたものの……何一つ手掛かりは無くてな」

 

「そうですか。しかし……マリア」

 

「……なに」

 

「わたあめのことならクリスが今探している途中だ。そんなに落ち込んでても仕方ないぞ」

 

「分かってるわよ……わたあめ」

 

 どうやら、私が人間の女の子に戻っている間に色々と何か変化が起きたようだった。

 話を聞いた限り、どうやら狐の私がいなくなったとみんな錯覚しているようで、私はその状況下で様々なことを考えていた。

 

(……一応人間に戻れたけど、この先どうしよう。多分、こうなったのはあの謎のローブの奴らのせいだから──)

 

「ねぇ、貴方」

 

「ッ!?……な、何?」

 

「そういえば、貴方の名前を聞いてなかったわね。名前は何て言うのかしら?」

 

「わ、私は……」

 

 私はいきなりマリアさんに名前を聞かれたので、わたあめではなく本当の名前を出そうとしたのだが……自分の名前が思い出せなかった。

 まだ、私が狐の時はわたあめと言う狐の名前を持っていたが、人間の時の名前はまだ覚えていた。

 しかし、どういう訳か今の女の子になってから名前が思い出せないでいる。

 

「わ、私……私の名前は……」

 

「……叔父様、これは」

 

「あぁ、もしかしたらこの子供は──」

 

「…………」

 

「私の名前は──」

 

 すると、マリアさんが私の頭を撫でて優しい声で私を落ち着かせる。

 

「落ち着いて……私はちゃんと貴方が答えるまで待つから」

 

「ふぁっ♡……何これ気持ちいい……」

 

「あら?そんなに頭を撫でられるのが好きなの?……ってこの感じ前にもあったような」

 

「で、出ちゃう……それ以上撫でられると出ちゃうっ♡」

 

──ピョコッ

 

「「ッ!?」」

 

「頭に……狐の耳にしっぽ?」

 

「ま、マリアさん……もっと撫でてぇっ♡」

 

「もしかして……貴方わたあめ?」




次回幼狐、現在お話中ッ!


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幼狐、現在お話中ッ!

……この男には凄みがある。((ゴゴゴゴゴゴォ)


『わたあめが見つかっただぁ〜?』

 

「あぁ、見つかったと言えばそうなのだが──」

 

『なんだよ先輩、もったいぶらないで早く言ってくれよ。あたしはわたあめがいなくなって、必死に公園を探してもうクタクタなんだよ』

 

「それは……実際にクリスも知っておかないと、普通は分からないからな。あの保護した子供がいただろう」

 

『子供って……あぁ、あたしがベンチで見つけた子供のことか。それがどうしたんだよ』

 

「……あの子供がわたあめだったそうだ」

 

『……は、はぁッ!?ちょ、先輩ッ!それどういうことだよッ!』

 

「とにかく、クリスは1度本部に来てくれると助かる。緒川さんに迎えの車を頼んだからそれに乗ってくれ」

 

『ちょっとま──』

 

 翼さんはどうやら誰かに電話していたようだが、私は今そんなことを考えている暇は全くなかった。

 何故なら、翼さんがクリスに電話する前にマリアさんの手によって自分で無意識に耳としっぽを生やしてしまったらしい……自分ではあまり意識はしていないつもりだったんだけど、いざ頭を触ってみると耳があって、しっぽを動かす感覚があるので、どうやらよくアニメで見るような状態になっていた。

 そして、私は今──

 

「ま、マリアさん……はなしてぇ〜」

 

「ダメよわたあめ。ちゃんと話を聞かせて貰うわよ」

 

「だ、だからってそんなにしっぽを触らにゃあッ!?」

 

「マリア、私も手伝おう。私も触っ……わ、わたあめが何故人間になったのかも色々と聞きたいからな」

 

「えぇ、もちろんいいわよ。けど、わたあめ……貴方なんでこんなにも可愛いのよッ!あぁッ!もうギューってしちゃうッ!可愛い〜♪」

 

「ふにゃぁ〜っ♡だ、ダメぇ……っ♡」

 

「……翼、マリア。今は落ち着くんだ」

 

 すると、色々ともみくちゃにされていた私は何とか司令の手によってマリアさん達から離れて、何とか落ち着くことが出来た。

 ……しかし、さっきの時点ではっきり分かってしまったことがあった……それは、異常なまでの体に対しての感覚が敏感体質になっていることに気がついた。

 そもそも、私が狐になる前の時……正確には私がまだ男だった時に、私は肌が敏感体質だったことがあり、男の時はあまり気にしない程度だったが、女の子になった途端体の状態が変わってしまったので仕方ないと言えばそうだが……第三者から見れば女性からは可愛いマスコットと見られ、男性には狐ロリでエロ同人誌まっしぐらなので相当やばいのだ。

 

「はぁ……こうも事態が進むとかなり面倒だな。しかし、わたあめくん」

 

「ッ!?……な、なに……いや、なんですか?」

 

「君の話を聞かせて欲しいのだがいいだろうか?もちろん嫌なら簡単な質問しかしないつもりだ」

 

「え、えぇっと……私は……」

 

 私は今の話を聞いて、それならすぐに今までのことを話そうとしたが、少しだけ躊躇した。

 今まで、私は巻き込まれた形で狐として1ヶ月間を過ごしたのだが、よく考えればその今の私……正確には元々男だったことを話しても大丈夫なのかが不安になってきた。

 考えてみればそうだ……そもそもとして、女性の部屋で……しかもお風呂や寝る時が一緒だったのが男とバレた時がどうなるのかが分からない。

 私はその考えに一生懸命考えた結果──

 

「……謎のローブ」

 

「謎のローブ?もしかして錬金術師のことか?」

 

「分からない。私、誘拐されて狐になったから……」

 

「その時の状況を詳しく教えてくれないか?」

 

「うん。私はね、本当は……男の子なの」

 

「男の娘……男の娘なのッ!?」

 

 本当のことを話すことにした。

 

 

「私の話はこれで終わりです……マリアさん、本当にごめんなさい」

 

「いや、よく話してくれた。お陰で色々と捜査が捗りそうだ」

 

「マリア……今の話は」

 

「……信じられないけど、確かに可能性はあるわね」

 

 私は結局、今までの1ヶ月間のことを話し終えると、私は2人に対して……特にマリアさんに特に謝罪した。

 

「この話を聞いて、マリアはどうする?最悪、俺が預かるが……」

 

「……いえ、司令問題ありません。わたあめは私が面倒を見ますから」

 

「……ま、マリアさん怒ってないんですか?わ、私……その、色々と迷惑や粗相を──」

 

「気にしないでいいわよ。今の状況でわたあめが男って言われてもあまり信じきれなかっただけよ。それに、貴方が男の娘なら問題無いわよ」

 

「ま、マリアさん……あれ?今マリアさんなんて言いました?」

 

「え?何って……男の娘なんでしょ、貴方?」

 

「いや、男の子違いッ!私、男の娘じゃなくて男の子なのッ!い、今は女の子だけど……」

 

「大丈夫よ。わたあめはもう私の家族なんだから……気にしなくて大丈夫よ……フフッ……」

 

「気にするからッ!私、気にするからッ!だからマリアさん現実に帰ってきてぇッ!」

 

「……流石にマリアも耐え切れなかったか。まぁ、1ヶ月は長かったからな……マリアにもわたあめに愛着は湧くが──」

 

「わたあめが男……そんなの……そんなの……」

 

──チラッ

 

「マリアさん?」

 

「……無理ッ!私にはこの子供を避けることなんて出来ないッ!」

 

「マリアさんッ!?」

 

「……大丈夫だろうか。本当に……」

 

 

 




次回幼狐、現在新生活中ッ!


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幼狐、現在新生活中ッ!

わたあめは女の子になってから……叫び過ぎである。


 私が狐から人間に……いや、今度は女の子になってから3日が過ぎた頃、私はその3日間を保護観察として新しい部屋でしばらくの間過ごしていた。

 ……まぁ、確かにバレてしまったのは仕方ないと言えば仕方ないのだが、正直退屈で仕方がなかった。

 この3日間で、私は色々と何かを失った気がしだが、これも全てあの謎のローブ達のせいだ。

 だから私は悪くない(やけくそ)。

 

「……ひーまー」

 

──ゴロゴロ

 

「……うにゃぁ〜……って、私は一体何をッ!」

 

 私が狐から女の子(子供)になってから、何故かだんだんと思考も幼くなってきており、さっきのようなことを私は無意識にやってしまうようになっていた。

 そもそも、うにゃぁ〜って何よッ!私は男なんだよッ!そんな猫みたいな可愛い言葉を無意識になんて……ち、違うからッ!

 

「……よく考えたら、私……まだ狐のしっぽや耳があるんだよね」

 

──ブンブンブンブン

 

「しかも、意識したら動かせるし……もふもふだし……もふもふだぁ〜……ってッ!落ち着け私ッ!自分のしっぽダメゼッタイッ!……いや、自分のしっぽだからいいじゃん」

 

 そうして、私は自分のしっぽを触っていると、誰かが私のいる部屋にやって来たのだ。

 もちろんその相手は──

 

「わたあめ、元気にしてた?」

 

「あ、マリアさん。こんにちは……って言ってもその……」

 

「気にしなくてもいいわよ。あれから日にちも経ってるし、気にしなくてもいいわよ」

 

「そう、ですか……」

 

 私とマリアさんはその後少しの沈黙があったが、正直私にとってはかなり気まずい状態が続いていた。

 何せ、あれから日にちも3日を過ぎてるし、自分が男だと分かってしまい、何を言われ、何をされるかがとても怖かったのだ。

 だが、もちろん私だっていくら男だからと言っても、その罰を受けないのはダメだと感じているので、恐る恐るマリアさんに聞いてみた。

 

「……あの、マリアさん」

 

「何?貴方が男だってことは気にしなくてもいいわよ」

 

「はい、分かりま……ってえぇッ!?」

 

「ッ!?な、何よわたあめ……びっくりするじゃない」

 

「い、いやでも私……」

 

「正直、私考えたのだけど、貴方の男の姿を見た事無いからあまり怒れる気にならないのよねぇ。それに、わたあめだって被害者なんだから……もしかして、そんなに気にしてたの?」

 

「うっ……はい……」

 

「……もう、仕方ないわね」

 

 すると、マリアさんは私をギュっと抱きしめて、優しく頭を撫で始めた。

 

「ま、マリアさん……」

 

「気にしなくてもいいわ。私は、貴方が男だとしても、女の子だったとしても、狐だったとしても、私は貴方を嫌ったり軽蔑したりはしないわ。1ヶ月以上も一緒に過ごしてるのよ?自然と過ごしていればそれくらい分かるわよ」

 

「……ママぁ」

 

「……ちょっと待ちなさい。私はまだママって年齢でもないし、そもそも私は貴方のママじゃないわよッ!」

 

「……ハッ!また、やってしまった。えっと、マリアさんごめんなさい……体が女の子になってからちょっと幼さに引っ張られて……」

 

「そ、そう……」

 

 せっかくマリアさんが私にとてもいい話をしていたのに、私はついマリアさんの母性に当てられてしまい、ついママと言ってしまった。

 ……あの状態で言う私も凄いが、それを受け入れるマリアさんもなかなか──

 

「ねぇ、わたあめ。貴方、これから住む所はどうするの?」

 

「……何も分かりません。私、観察対象ですから」

 

「あぁ、それなら私が取り下げておいたから気にしなくても大丈夫よ」

 

「……え?」

 

「それに、わたあめは今後も変わらずに私とこれからしばらく住む予定だから大丈夫よ。心配はいらないわ」

 

「ちょ、ちょっとま──」

 

「わたあめ……実は、私貴方の人間の姿はとっても可愛いって思ってるのよ?しかも、これから毎日わたあめのしっぽのふわふわと可愛さを楽しめるのよッ!そんなの最高に決まってるじゃないッ!行くわよわたあめッ!これからは貴方の新生活の始まりよッ!」

 

「ま、マリアさぁぁぁぁぁんッッッッッ!!!!!」

 

 私はこの日、マリアさんのことについて新たに変なイメージが植えつけられた……それは、この人は放っておいたら一生独身だなっというイメージだった。

 

 

 

 




次回幼狐、現在デスデス中ッ!


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幼狐、現在デスデス中ッ!

( ˘ω˘)スヤァ……( ゚∀ ゚)ハッ!百合の予感ッ!


「い、嫌だぁ〜ッ!離してぇ〜ッ!」

 

「逃がさないデスよッ!響さんお願いするデスッ!」

 

「了解でありますッ!さぁ、わたあめちゃん。一緒に遊ぼうねー♪」

 

「やだやだッ!絶対に私に何かするつもりだもんッ!……って、にぎにぎしながら来ないでぇッ!やだぁッ!」

 

 私は保護観察を解除されて、再びマリアさんとの生活を始めた頃……私は今2人の女性にめちゃくちゃ追いかけられていた。

 ……いや、正確にはもう切歌さんに捕まって響さんに手でいやらしい動かし方をしながら私に近づいている方が正しかった。

 

「フッフッフッ……やっぱり怪しいと思ったんデスよ。まさかわたあめが男だって知った時はかなり驚いたデスけど、それとこれとは話が別デスッ!今日と言う今日は絶対に逃がさないデスよぉッ!」

 

「で、でもッ!私も巻き込まれた立場だしッ!私は別に悪くなにゃははははははッ!ちょっ、ひ、響さんッ!ひひっ、や、やめてぇ、にゃははははははッ!」

 

「ごめんね、わたあめちゃん。私も男だって知った時はびっくりしたけど、それはそれとしてわたあめの耳とかしっぽとか触りたし、わたあめちゃんの可愛い姿が見たいだけだから……ごめんね♪」

 

「にゃははははははッ!」

 

 この日は、マリアさんが仕事があって、私はこの前のように切歌さんと調さんに預かることになったのだが、前回とは違って私は切歌さんに疑われてたこともあって現在に至る。

 しかも、今は調さんは用事があると言って出かけて夕方までは帰って来ないことになっていて、偶然遊びに来た響さんも切歌さんの味方になってしまったので、逃げ場が無かった。

 

「いいデスよ響さん。あたしがしっかり抑えてるデスから好きな所を触って、あたしのこの前の仕返しも含めてやって欲しいデスッ!」

 

「ッ!?き、切歌さんッ!この前のことは本当に悪かったからや、やめてッ!しっぽと耳は敏感だからぁッ!」

 

「……聞いたデスか響さん」

 

「もちろん。これはもう触るしかないよね……でも、まずは──」

 

──ぷにゅん

 

「ひゃあっ!?ちょっ、ひ、響さんっ♡そ、そこ、私……しらな、んっ♡」

 

「ほうほう……これはなかなか、切歌ちゃんの胸より少し小さいけど、手に収まる大きさでお餅みたいな柔らかさ……これはこれで」

 

「こ、この感覚はな、んぁっ♡」

 

 すると、響さんが私の胸をなぞるように揉み始めて、次第にその触り方はいやらしくなってきた。

 私も、響さんが触るせいかだんだんと抵抗できなくなって、みるみる力が抜け始めた。

 

「……だんだん抵抗する力がなくなってきたデスね。今度はあたしも参加するデスよッ!」

 

「なら、切歌ちゃんはしっぽを触りながら狐耳を甘噛みしたらいいんじゃないかな?その方がお仕置きには丁度いいよッ!」

 

「ッ!?や、やらぁっ♡」

 

「デスデス……分かったデスよ響さん。でも、響さんもかなり凄いこと考えるデスね。もしかして響さんはむっつりさんデスか?」

 

「へッ!?ち、違うよ切歌ちゃんッ!私は未来に何回かされたから……その、やってみたらいいって思っただけで……」

 

「まさかの実体験でしたか……まぁ、やるんデスけどね。トォーッ!」

 

「やだやだやだッ!これ以上は耐え切れなぃぃぃっ♡だめだめっ♡こんなの無理ぃっ♡だ、誰か……たすけ、にゃあっ♡にゃ、にゃっ♡ふにゃあ〜っ♡」

 

 私は2人に何も抵抗出来ないまま、2人にしっちゃかめっちゃかに体を触られて、その度に私はただ叫ぶ。

 確かに、私は悪かったのは仕方ないが……これはやり過ぎだと私は思いたいが、私はもう既にそんな考えは一切なくなっていた。

 そんな中で、私の頭の中は意識が飛びすぎていて頭が真っ白だった。

 

「いいよッ!わたあめちゃんッ!可愛いからもっといじめたくなっちゃうっ♡もっとその声を聞かせてッ!」

 

「なんか、あたしも止まらなくなってきたデスよっ♡……こうなったらあたし達が満足するまでとことんやるデスよッ!」

 

「や、やだ……やだぁっ♡……や、やめ、にゃああああああああぁぁぁぁぁっ♡♡」

 

 

「響さんが遊びに来てるんですか?」

 

「あれ、調ちゃんは知らない?……響と入れ違いだったのかな?」

 

「そしたら多分切ちゃんがいるから大丈夫なはずです。未来さんもせっかくですから家に入りませんか?響さんもいるなら丁度いいですし」

 

「……それじゃあ、私もお邪魔しちゃおうかな?」

 

「今ドアを開けますから」

 

──……ガチャ

 

「ただいま切ちゃん。今帰っ──」

 

「響、迎えに来た……よ……」

 

「「ッ!?み、未来ッ!(し、調ッ!)」」

 

──ビクッ……ビクッ……

 

「切ちゃん……ナニ、シテルノカナ?」

 

「し、調……これには訳が……」

 

「響、何をしてたのかな?あそこで横になってるのわたあめちゃんだよね?……ナニヲシタノカナ?」

 

「み、未来……その、これは……」

 

「「……お仕置きが必要だよね?」」

 

「「ご、ごめんなさいぃぃぃッ!」」




次回幼狐、現在変身中ッ!


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幼狐、現在変身中ッ!

マリア?彼女は過保護だよ(ママだから)


「……マリア」

 

「……嫌よ」

 

「マリア、わたあめを離せ。わたあめはこの先には連れて行けない」

 

「嫌よッ!そしたらわたあめは1人で留守番をすることになるじゃないッ!そんな危ないわッ!」

 

「しかし、本人から聞いた話によると精神年齢は大人で、留守番をするくらいなら問題ないはずだぞ。それに、これから私達はテレビに出ないといけない……もし、わたあめがそこに行けば後々が大変だぞ」

 

「無理よッ!いくら精神年齢が大人でも体は幼いままなのよッ!しかも、体が女の子になってからまだ1週間ちょっとしか過ぎてないのよッ!他の人達に預けようと思ってもみんなは仕事や学校で忙しいし……」

 

「……ならば、無理を承知で叔父様に頼むか?いや、しかし──」

 

「…………」

 

 私が女の子になってから大体1週間半ほど過ぎた頃、私の前で起きていたのは私を留守番させるか、連れて行くかでマリアさんと翼さんが話をしていた。

 そもそも、最近マリアさんとこの女の子の姿になってから一緒に生活をし始めたのだが、マリアさんは私が狐になっていた頃よりも……その、何て言えばいいだろうか?……母性って言った方が正しいかな。

 そのせいか、マリアさんは私に対してとても過保護になってしまったのだ。

 

「いいッ!わたあめを留守番させるなら私が納得する理由を提示して貰おうかしらッ!でないと私は絶対にわたあめを連れて行くわよッ!」

 

「……はぁ、どうしたものか。……しかし、もし連れて行けば緒川さんやスタッフにも迷惑が──」

 

 ……最近……いや、ここ何週間と言えばいいだろうか?私は今まで生活してきた中で、ここまで刺激のある日々を過ごしていることに慣れてしまった私はきっと、おかしいのだろうか?しかし、このままでは翼さんにも迷惑をかけてしまうし、マリアさんの過保護が更に深刻になってしまうかもしれない。

 ……私にもプライドと言うのはあるのだが、今回は仕方ない。

 迷惑をかけているのは私なので、奥の手を使うとしよう。

 

「マリア、そろそろ行かないと時間が……ってわたあめ?」

 

「え、わたあめ?」

 

「……私、留守番出来るもん」

 

「あ、危ないわよわたあめ。私が帰ってくるまで留守番なんて──」

 

「留守番出来るもんッ!マリアさんは私のこと信じれない?……私に、留守番……させてよ」

 

「で、でも……私は……」

 

「留守番しちゃ……ダメ?私、いい子で待ってるよ?」

 

「ッ〜〜〜〜〜…………そ、そんな目で私を見ないで。私は、私はッ!」

 

 

 結局、あの後どうなったかと言うと……私は1人で留守番をすることになった。

 私のプライドを捨てた奥の手、『女の子の涙目で堕とす』作戦は見事成功したので、マリアさんは私を留守番させて翼さんと一緒に仕事に向かったのだ。

 マリアさんは何か言いたそうだったが、翼さんがその前にマリアさんを連れて行ったお陰で、今回は上手くいったと言ってもいいだろう。

 

「ふぅ……とりあえず何とかなったけど、また何かを失った気が……なんかこう、昔の文化祭で女装して女の子の演技をした時のような……凄い反響良かったけど」

 

 そうして、私はソファに座って一息つく。

 最近は本当に1人の時間が少なかったので、私にとってはとても喜ばしいことなのかもしれない。

 私はもちろん人間に……いや、正確には元の成人の男性の体に戻って、元の生活には戻りたい。

 しかし、残念ながらその方法は私が必死に情報を集めたとしても何も得られる情報は無かった。

 

「司令……確か弦十郎さんだったけ?あの人にも私のなった経緯を教えて、謎のローブ達の情報を調べてもらってるけど何も連絡は来ないし……はぁ」

 

 私は女の子になった時に弦十郎さんに頼んで、謎のローブについての情報を調べてもらったけど、まだ返事は来ていなくて、その度に私の不安は膨れ上がるばかりだった。

 

「……よしッ!今は気持ちを入れ替えて、他のことを考えようッ!……だから、まずは──」

 

 私はスクッと立ち上がってソファから降り、体をとにかく頭でイメージしながら体に力が入るように踏ん張る。

 何故、私がそんなことをしているのかと言うと、私はこの前響さんと切歌さんにちょっと……そ、その色々お仕置きをされてしまった時があった。

 その反省を踏まえて、私はある時「もしかしたら狐から女の子になったパターンがあるなら、女の子から狐になるのも出来るかも」……っと思ったのだ。

 私はそれに気がついて、その日からずっと狐になれるように色々試行錯誤して──

 

「ムムムムムッ……ンー、ふんッ!……出来たのは耳としっぽに手と足だけ……まだまだ難しいな」

 

 結果は耳としっぽ、そして新しい手と足を意識的に変化することが可能になった。

 もし、このまま行けば、また狐に戻ることが可能になり、出来ることはかなり増えるだろう。

 

「ふぅ……まだ変身にはかなり時間が掛かるけど、これを覚えたらかなり楽になるから頑張らないと……でも、今のこの姿だと、ちょっと同人誌に載りそうな姿で……って何考えてるの私ッ!集中集中ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……後に、私はこの変身で様々なことで色々と役立つのだが、まだこの時の私は何も知らない。

 




次回幼狐、現在お着替え中ッ!


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幼狐、現場お着替え中ッ!

……普通のコーディネート?( -ω- `)フッ……無理。


 私が女の子になってから2週間が過ぎた頃、私はとある場所に連れて行かれ、そのまま椅子に座った状態の中でとあるイベントのようなものが開催されようとしていた。

 ……本当ならば普通はイベントは楽しそうなイメージがあるのだが、今日は違う。

 何故ならば、このイベントはみんなが楽しめて私が楽しめないようなイベントだってことが分かっていたからだ……私だけ楽しめない理由?そんなのこれを見たら分かるだろう。

 

「第1回わたあめお着替え対決デースッ!」

 

──パチパチパチ

 

「……なにこれ」

 

「司会はあたしこと暁切歌と──」

 

「切ちゃんのサポートする月読調です」

 

「ちなみに、審査員はわたあめと……これ、飼い主か同居人ってどっちを言ったらいいデスかね?」

 

「マリアに聞いてみたら?」

 

「分かったデス。マリ──」

 

「わたあめは私の家族よ。いい?」

 

「で、デス……」

 

 今、目の前で起きているイベントは、私の……いや、正確には切歌さんが主催の小さいイベントだ。

 本来ならば、別にこんなことをしなくても普通に買い物して服を買ってくれるだけでいいのだが、マリアさんが私の姿のジャージがあまり良く思われてなくて、こうしたイベント……まぁ、マリアさんの知り合いしかいないのだが、その人達が集まったのだ。

 ……多分、切歌さんが上手いこと言ったのだろうが、これでいいのか。

 

「それじゃあッ!最初は響さん、未来さんペアのコーディネートをお願いするデスッ!」

 

「……私、帰っ──」

 

──ガシッ

 

「わたあめちゃん……駄目だよ逃げるなんて」

 

「それじゃ、響……連れて行こっか♪流石に私もジャージは駄目だと思うし」

 

「えッ!?ちょ、力が強い……って何その簡易式の着替える所みたいなのッ!や、やだッ!にゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

 そして、私は2人に無理矢理着替えさせられた。

 正直、私は元々男だからあまり興味はない方だが、最初にこの服は大丈夫かなと不安が出てきてしまった。

 元々、女装をした時に女性の服を着た経験もあり、すんなりと着替えたのだが、最初にこれは……いくらなんでも私は絶対に着たくなかった。

 もし、私が普通に男だったら完全にガン見するレベルで恥ずかしい格好だ。

 

「さぁッ!最初に響さんと未来さんがわたあめにコーディネートして服は〜……っておよ?あれはセーターデスかね?」

 

「違うよ切ちゃん。あれは──」

 

「ブフッ!?」

 

「朔也ッ!大丈夫かッ!」

 

「だ、大丈夫です司令……ちょっとエロくて何かに目覚めそうになっただけで、へぶっ!?な、何するんだよあおいッ!」

 

「響ちゃんと未来ちゃんがなんであのニットを持ってきたかは知らないけど、男達にとっては目の保……毒ね」

 

 響さんと未来さんが私に着させてきた服はニットとパンツと黒タイツ……それだけだった。

 この3つが揃えば誰だって、この服が何なのか分かるだろう……そう、あれだ。

 ……童貞を殺すニットである。

 

「あれは仕方ないだろッ!普通あんなエロ可愛い格好をしてたら誰だって……」

 

「ッ!?や、やぁッ!み、見ないでぇ……」

 

「「グフッ!!」」

 

「さ、朔也ッ!マリアッ!しっかりするんだッ!」

 

「……未来、これには訳が──」

 

「あれを買ってきたのは響だよ?私はパンツと黒タイツで上のコーデは響がやるって話だったのに……なんであのニットを響は買ってきたのかな?」

 

「え、えっと……だって、わたあめちゃんの恥ずかしがってる顔が見たくて♪」

 

「……切歌さん」

 

「デスッ!?な、なんデスか?」

 

「私、響と今度はも〜っとオハナシ……しないといけなくなったから、終わったら呼んでくれるかな?」

 

「りょ、了解デスッ!」

 

「えッ!?ちょ、み、未来ッ!つ、連れていか──」

 

「響……あの部屋でオハナシしよっか♪」

 

──キィィッ、バタン

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

 

「……き、気を取り直して次に行くデスよッ!次ッ!」

 

「って言っても、今度は私達だけどね」

 

 響さんが未来さんに何処かは知らないが、2人っきりになれる部屋に行った後、再び私のコーディネート対決は再開された。

 あの部屋ではガタガタと音が聞こえるが、聞かなかったことにしよう……うん。

 

「それじゃ、わたあめ行くデスよ〜」

 

「……まだやらないとダメ?」

 

「私は別にやらなくてもいいきはするけど、切ちゃんは……」

 

「わたあめに似合う服は探すのがかなり大変だったんデスよね〜♪」

 

「楽しそうだから」

 

「…………」

 

 そして、私は再び新しい服に着替えようとして、その服の袖に手を通す。

 ……しかし、今度は響さんの服よりかはまだマシだが……その、なんだろうか?ちょっと新鮮味があると言えばあるのだが……露出多くない?

 

「それでは、今度は私達のわたあめのコーディネートはこれ」

 

「巫女服デスッ!」

 

「まぁ、巫女服ならいいけど……なんでお腹や脇が出てるの?ちょっと恥ずかしい……」

 

「なんでそこで顔を赤らめてんだよ……男だろ?」

 

「……なんか、最近ちょっと女の子として恥ずかしく感じる時が多くなって」

 

「いや、それ完全に男の娘の反応へぶっ!?こ、今度はなんだよッ!ってマリアさんッ!?」

 

「……いい藤尭?わたあめは……可愛いの。いいわね?」

 

「あ、ハイ」

 

 ……何故かマリアさんの目がマジに見えたのは気のせ……い、ではなかったな。

 けど、この後もまだまだある気がするんだよなぁー……

 

「あれは……まさか、うたずきんラブラブ巫女服戦闘服じゃねぇか。後輩達はあれをどうやって買ったんだよ。やっぱり秋葉原か?でも、あたし1人で行くのも……」

 

「雪音」

 

「ッ!?な、なんだ先輩かよ。脅かすなって……そろそろあたし達の出番か?」

 

「あぁ、そろそろ準備しなければな」

 

 私のコーディネートはまだまだ終わらなそうだ……。




次回幼狐、現在真面目中ッ!


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幼狐、現在真面目中ッ!

わたあめかわいいやったー(^O^)


「さてッ!次の出番はクリス先輩と翼さんペアデースッ!」

 

「2人は一体わたあめのどんなコーディネートを見せてくれるのでしょうか?楽しみです」

 

「……帰らせて」

 

 私は、今度は翼さんとクリスペアに連れて行かれて、またさっきのように無理矢理着替えさせられていた。

 だが、今回はさっきのペアとは違い、至ってまともなペアだと私は感じる……そもそも、あの時に響さんや切歌さんがいる時点でまともではないことは分かっていたので、この2人のペアにはかなりの期待をしていたのだが……こ、これは──

 

「それではッ!次のコーディネートはこちらデースッ!……っておよ?」

 

「この服って……浴衣?でも少し違うような……」

 

「あぁ、それは寝巻きだ」

 

「「寝巻き(デスか)?」」

 

 2人が私に用意してくれた服はなんと浴衣の寝巻きであり、先程の服よりもいいセンスをしていた。

 私はこの流れだと、さっきと同じような流れだろうなと覚悟していたのだが、これは寝る時に着れるものなのでとても嬉しかった。

 

「これは驚きましたね」

 

「あぁ……まさかクリスくんはまだ何とかするだろうとは思っていたが、翼がちゃんとしたコーディネートしてくるとは……」

 

「翼、あなたもしかして──」

 

「……マリア、別に私はイカサマなどしていない。これは雪音との意見が一致したからこうなっただけだ」

 

「いやいや、何言ってんだ先輩。あたしが後からパジャマ系で提案するまでは結構散々だったからな?しかも、あたしがパジャマって言った筈なのに気がついたら寝巻きを持ってきてたしよ……」

 

「……翼?話を聞いた限りイカサマはしていないらしいけど……まぁ、その方が翼らしいわね」

 

「ま、マリアッ!」

 

 どうやら、今の私の着ている寝巻きの姿は翼さんの奇跡的にちゃんとしたのが選ばれたらしいが、その前の服って何選んでたんですか翼さん……

 

「まさかのどんでん返しでしたが、最後のペアが残ってるデスよッ!」

 

「次はエルフナインとマリアペアです。わたあめの最後のコーディネートをお願いします」

 

 そして、最後のコーディネートで私はマリアさんにそのまま連れて行かれる。

 マリアさんは何故か凄いやる気を出しているが、何故エルフナインも同じようにやる気を出しているのだろうか?

 

「マリアさん。これは僕達の勝ちですねッ!」

 

「えぇ、私の本気……見せてあげるッ!」

 

 そして、私は最後のコーディネートをする為にマリアさんとエルフナインに強制的に着替えさせられる。

 ……マリアさん、まさかその服を私に着させるの?い、いやッ!ちょっとま──

 

「さぁッ!準備が出来たようデスッ!」

 

「それでは、わたあめわたあめのコーディネート披露をお願いします」

 

「私とエルフナインが選んだ服はこれよッ!」

 

──にゃーん……

 

「…………もう、やだ。お家帰る」

 

「これは……猫のTシャツに赤のミニスカート、そして猫のぬいぐるみだとォッ!?」

 

「流石マリアさん。わたあめさんの体に合った服にまたイメージを変えるようななかなかのファッション……これが、翼さんの服を選ぶ実力ですか」

 

「……いやいやおかしいだろッ!まだ服はいいとして猫のぬいぐるみは反則だろッ!」

 

「別にぬいぐるみは私が選んだ訳じゃないわ。ぬいぐるみはエルフナインがUFOキャッチャーで手に入れたものよ。私はそれを元にコーディネートをしただけ」

 

「確かに。私でもわたあめを狐じゃなくて猫って間違えそうになるかも……」

 

「デスデス……さて、全ての服の披露が終わった所で、判定をお願いするデスわたあめッ!」

 

 どうやら、ようやく私の着替えは終わりを迎えたようだ。

 だが、私の答えはもう最初から決まっていた……なぜなら私は──

 

「……自分の着たい服じゃダメなの?」

 

「……せ、正論を言ったデスね。でも、それだけデスか?他に何か──」

 

「私、そもそも男だし」

 

「…………しょ、勝者はわたあめデスッ!」

 

「……え?」

 

 こうして、コーディネート対決は幕を下ろした……これ、私がマリアさんと服買いに行った方が早かったよね?

 

 




次回幼狐、現在会話中ッ!


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幼狐、現在会話中ッ!

やはり、わたあめは変化する。


「……また、久しぶりに外に出た」

 

「久しぶりにって……そう言えばわたあめが外に出たのは移動する時以外は出たことなかったわね」

 

「うん……でも、マリアさんはなんで私を外に出したの?私、用事なんて何もないよ」

 

「確かにそうね。でも、ずっと外に出ないのは体にも悪いし……外に出たかったでしょ?だから今日は私と一緒に散歩をしましょう。きっと、楽しいわよ」

 

 私が女の子になってから2週間半が過ぎた頃、この日私はマリアさんと一緒に散歩に出かけていた。

 私の服装は何故かこの前のマリアさんとエルフナインが選んだ服を着ていて、理由は「せっかく買ったんだからもったいないじゃない」っと言われたので再び着ている。

 ちなみにマリアさんはサングラスと帽子を被って変装をしているが……どう見ても歌姫特有のカリスマ的なオーラが周囲の人の目を集めていた。

 

「……これでも抑えた方なんだけど、なかなか目立つわね……ってわたあめ、貴方しっぽと耳が無くなってるじゃない」

 

「耳としっぽ?……あぁ、私一生懸命練習して何とか耳やしっぽを隠せるようになったの。ついでに言ったら狐にも戻れるようになったよ」

 

「へぇー……って、私の知らない間にそんな練習してたのね。道理でたまに耳やしっぽがピクピク動いてた訳なのね」

 

「えッ!?わ、私……練習してた時そんなピクピクしてた?」

 

「えぇ。あれが練習かは知らなかったけど……わたあめが可愛いかったのは確かよ」

 

 私はこの2週間半の間に変身を完璧にマスターし、人間から狐へ……狐から人間へと、変身することが可能になった。

 もちろん半獣化も可能で、手足だけや耳としっぽだけと色々な変身が可能になっていた。

 

「凄いわね、わたあめ」

 

「そう?でも、私も色々試してみたら出来ちゃって……」

 

「それでも凄いわよ。貴方が本当に一般人だったのか疑問に思ってきたわ」

 

「一般人……そう言えば私、一般人だった」

 

「自分で説明してた時に言ってたでしょ?さぁ、一緒に散歩しましょうか♪」

 

 そうして、私はマリアさんと一緒に散歩を始めた。

 

 

 しばらくして、私はマリアさんと一緒に散歩をして楽しい時間を過ごす予定だったのだが──

 

「……はぐれちゃった」

 

 私は現在マリアさんとはぐれてしまっていた。

 そもそも、本来ならば私はマリアさんと一緒に散歩を普通に楽しんでいたのだが、歩いている途中でマリアさんの帽子が強風で飛び、マリアさんの変装がサングラスだけになってしまった。

 ……これだけ言えばもう分かるだろう。

 その時にマリアさんは歩いている一般人に偶然バレてしまい、そこから連鎖的にマリアさんを囲む集団が出来てしまい、私はじき飛ばされたのだった。

 私は急いでマリアさんがいる場所に向かおうとしてその集団の中に入って必死になりながらマリアさんを探したのだが……解散した頃にはマリアさんはいなくなったていたのだ。

 

「多分マリアさんは集団を撒こうと何処かに行ったんだろうけど……私はどうしよう。時間はさっきのカフェの奥にある時計がたまたま見えて3時ってことは分かったけど……」

 

 私はこの辺りの道を全く知らないので、様々な道をフラフラと歩きながらマリアさんを探していた。

 ……ただ、私はその中で私自身にある変化が起きていたことに気がついた。

 それは──

 

「カァ」(最近のゴミはあんまり食い物がねぇな)

 

「カァカァ」(そりゃおめぇ住宅街しか狙ってねぇからだろ。普通はな?ゴミ処理場か飲食店の生ゴミが狙い目なんだよ)

 

「カァーッ!」(マジでッ!?俺、行ってくるわッ!)

 

 ……あれ?

 

「パトラッシュ。お前は最高に可愛いなぁ〜」

 

「ワンッ!」(ああ゛?てめぇ誰に可愛いつってんだ?こちとらチワワだぞゴルァッ!)

 

 ……おかしいな、聞き間違いかな?

 

「あ、猫じゃん」

 

「え、マジかわなんだけど。ちょ、写メよろ」

 

「ニャー」(何人間様がこの僕の姿を撮ろうとしているのだ?ハッ!サーモンでも持ってきて出直してきな──)

 

「あ、逃げないようにこのサラミあげちゃお。あッ!食べてんじゃんッ!」

 

「ニャッ!」(飯だッ!3日ぶりの飯だぁッ!マジ人間神ですッ!最高ですッ!)

 

「……い、いやいやまさか他の動物の声が聞こえるなんてそんな──」

 

「痛……ちょっとハム助ッ!この前も私の指とひまわりの種ごと噛んじゃダメって言ったでしょッ!」

 

(うぐっ…ごめんなのだ…ぶたないで…ぶたないで欲しいのだ…)

 

「……もう、ハム助ったら」

 

「……へけっ」(……へけっ☆)

 

「ッ!?」

 

 どうやら、私は狐の時は聞こえなかった筈の動物声が、知らない間に何故か聞こえるようになっていた。

 しかし、私はその聞こえてくる動物達の声に対して私はただ耳を傾けないようにしていた。

 何故、私だけが動物達の声を聞こえるようになったのかは分からないが、私はそれよりもマリアさんと合流する為に必死にマリアさんを探し続けた。

 

「なんで、今動物達の声が聞こえるようになったのかは知らないけど、今はマリアさんを探さなくちゃ……はぁ、はぁ……熱い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニャア」(はぁ……今日は満月だよ)

 

「ニャ?」(満月がどうかしたのかよ?)

 

「ニャアニャア」(知らないのか?満月はな……獲物を捕まえにくいんだよ)

 

「……ニャ」(……俺、ネズミ取れたぞ?)

 

「……ニャア」(……くれ)




次回幼狐、現在逃走中ッ!


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幼狐、現在逃走中ッ!

わ、わたあめぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!


「マリアさんは何処だろう……だんだん日も沈んできたし、早く見つけないと」

 

 私はマリアさんと散歩の途中ではぐれた後、しばらくの間色々な場所を歩きながらマリアさんを探していた。

 

「今の時間は……5時。早くしないと本当に暗くなっちゃうし、月も出てきちゃってる。それに……何だか体が熱い……」

 

 私はマリアさんを探している中で、時間が経過しているごとに体の内から熱のような何かがだんだんと込み上げてきてちょっとずつだが、歩くのが辛くなっていた。

 そして、何よりも気になっていたのは動物達の声が同じように鮮明に聞こえてくるようになってきたのだ。

 

「ハァ、ハァ……」

 

「ニャアニャア」(ねぇあの子……何だか辛そうな顔してるわね。アマさん、どうする?)

 

「ニャアニャア」(どうって言われても……私達はそもそも猫だから助けるのも無理よ)

 

「ニャア」(そうねぇ……人間の住む世界って大変なのねぇー……)

 

 何やら猫達が私の話題で話をしているようだが、今の私にはその様子にツッコミを入れる気力もあまりなく、今はただひたすらにマリアさんを探していた。

 すると──

 

──ウゥーーッ!!

 

「え……これって、警報?確かこの警報って……ダメだ。何の警報か忘れちゃった」

 

 私がマリアさんを探していると、外からは突然警報のような音が鳴り始めて、次第にその音は一定の間隔で鳴っていることが分かり、気がつけばさっきの猫達もいなくなっていることに気がついた。

 

「この警報って何かの災害か何かだよね。なら、早く逃げな、い……と……」

 

「︎︎────」

 

「え、あ……の、ノイズ……」

 

 私が警報聞いてそれが何かの災害だとすぐに分かり、今すぐ警報から近いこの場所から離れようとして、後ろを向いた時に人間の形をしていない何かがそこには立っていた。

 その姿はとてもカラフルで、まるで小学生が書くような見た目をしていたのだが、私はその姿にすぐに気がついた。

 あれは、災害だ……私達人間だけを殺そうとする特異災害『ノイズ』だとすぐに分かった。

 そして、その隣にいた人物は……私の探していた謎のローブの男だった。

 

「ッ!〜〜……」

 

「……私を見た瞬間に逃げたか。捕まえろノイズ共」

 

 私はノイズや謎のローブの男が反応するよりも早くその場から逃げ出す。

 このままでは、私は人間に戻るどころか灰になって死んでしまう可能性があったからだ。

 私は逃げたい一心で、無意識の内に自分の体を人間から変身して獣人化の姿で逃げだしたのだが──

 

「……『止まれ』」

 

「フギュッ!ああ゛ッ!ああ゛ッ!」

 

「従属のリングをはめ込んでいて正解だった。念の為に歯から外されないように隠蔽と耐久性にかなり力を入れて作っておいて正解だったよ。……さて、他の仲間はもう少しでシンフォギア装者の足止めが終わると言っていたが、この私自身が失敗したら元も子もないからな……捕まえろ」

 

「────」

 

「あ、あがッ!い、嫌だッ!くるなぁッ!」

 

 近づいてくるノイズから、私は一生懸命逃げようと必死に後ろに這いずりながら逃げようとしているのだが、何故か私の歯から激しい電流が流れて動くことさえままならなかった。

 幸い、私がその場から止まれば、私の歯にある何かの電流が止まるのだが、それでもノイズ達は私の都合も考えずにどんどん近づいていた。

 

(い、痛いし……動いたらまた電流が流れて体がボロボロにされるような痛みが来るし、ノイズ達が私を殺そうとして近づいてくるし……私は──)

 

「────」

 

(……嫌だ、私はまだ死にたくない。私は……こんな所で終わりたくないッ!)

 

 そして、ノイズ達は私の手の届く範囲に近づいてそのまま私を取り囲もうとしてくる。

 ……しかし、私はその瞬間その取り囲もうとしていたノイズ達を──

 

「……狐火」

 

──ゴォォォォォッッッッッ!!!!!

 

「ッ!?まさかッ!力に目覚めたのかッ!」

 

「グルルルルッ…………私、は……生きるッ!」

 

「まさかこんな時に目覚めるとは……こんな、こんな──」

 

「はあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!狐火ィッ!!」

 

「なんて好都合なんだッ!だが、所詮は目覚めたばかり。従属のリングを外さなかったのが貴様の敗因だ……『攻撃を禁ず』」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!……マリ、ア……さ……」

 

「……気を失ったか。だが、これで全てが上手くいく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、始めよう……神降ろしの儀をッ!」

 

 

 




次回幼狐、現在捕縛中ッ!


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幼狐、現在捕縛中ッ!

ママリアさん……激怒 |゚Д゚)))


「ハァッ!」

 

「──ッ!」

 

──サァー……

 

「クッ、しつこいぞッ!シンフォギア装者ッ!」

 

「しつこくもなるわよッ!さっさと貴方を捕まえて、私は早くわたあめを見つけないといけないのだからッ!」

 

 私は少し前に風で帽子が飛ばされてから、一般人に変装がバレてその場からすぐに離れたのだけど、その時にわたあめとはぐれてしまい、私ははぐれた後からずっとわたあめを探していたのだが、タイミング悪く近くに錬金術師が街にアルカノイズを放し、すぐに私がその対処をしていた。

 

「大人しく捕まりなさいッ!今の私はとてもイライラしてるの……だから、これ以上は時間をかけないわッ!」

 

「ッ!まさか……黄金錬──」

 

 私は、その錬金術師の男が最後まで言い切る前にアマルガムを起動し、自分の右腕の龍でアルカノイズを一気に一掃した後に錬金術師に近づいて、私の左アッパーがその錬金術師に上手く決まった。

 

「ガハッ!……お、おの……れ……」

 

「観念しなさい。貴方は私に負けたのよ」

 

「……だ、だがまぁいい……俺はやるべき事を終えた」

 

「やるべき事……何か隠してるわね?大人しく白状しなさいッ!」

 

 そう言って、私は右腕の龍をその錬金術師の首に構えながらその情報を吐くように促す。

 私が錬金術師と戦ってから1時間は経過しただろうか?今現在の時刻は既に6時を過ぎており、もう少ししたら7時になりそうだった。

 

「ガッ……お、俺は何も言わないぞ」

 

「白状してもらわないと私が困るの。分かりやすく手短に話しな──」

 

「お前達、殺れ」

 

「ッ!クッ──」

 

 私は捕まえた錬金術師に何をしているか情報を話させようとして構えると、ビルとビルを挟んだ道から私は攻撃されて私はすぐに緊急回避を行い、体制を整える。

 

「……ハァ、ハァ……ヴッ、す、すみませんボス」

 

「気にするな……しかし、もう少ししたら他の装者達もこちらにやってくる。貴様はテレポートジェムでアジトに戻れ。そして、囮……ご苦労だった」

 

 すると、私が捕まえていた錬金術師はそのままさっき言っていたアジトに消えてしまい、残ったのは私と錬金術師でボスと呼ばれた人物と部下達だけだった。

 しかし、今の状況は私にとってはあまりにも人数差もあり、私の不利な状況が続いていた。

 

(……後、少しでクリスと響が合流する。それまで私が時間を稼ぐしか──)

 

「……行くぞ。お前達」

 

「あら?私が逃がすと思ってるの?」

 

「逃がすさ……お前は神の子の姿を見ればな」

 

 私は、ビルの影のせいでよく見えなかったが、その錬金術師の右腕に誰かが抱えられている姿が見えた。

 しかし、この場所からは満月の光によってビルの影の闇が深く、なかなかその姿を見ることが出来なかった。

 

「……人質を取るなんて、卑怯なッ!」

 

「卑怯?おかしなことを言う……俺は神の子を神にしたて上げようとしているだけだぞ?何故分からない」

 

「分からないわよ。貴方の理想を勝手に私に押し付け──」

 

 すると、私はその話の中で錬金術師が抱えている人に人間にはない耳としっぽのシルエットが見えたような気がした。

 まさか──

 

「ふむ、ではそろそろ祭壇に向かうか」

 

「待ちなさい、貴方が抱えているその子は……わたあめ、なの?」

 

「そうだ。貴様らが最初に我らの神の子を保護した時はどうしようかと思っていたが、無事我らの元に戻ってきたからよしとしよう」

 

「……あの子に──」

 

「ん?なんだ?」

 

「あの子に何をしたあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

 私はそう叫んで、龍の右腕をその錬金術師に向かって攻撃しようとするが──

 

「攻撃したければするがいい……ほら」

 

「ッ!?クッ……わたあめを盾にッ!どこまであの子をッ!」

 

「貴様が我らを攻撃しようとすれば、神の子が傷つくぞ?……まぁ、さっきは抵抗されたのでちょっと躾を行ったがな」

 

 私は錬金術師の話を聞きながらわたあめの今の状態を確認する。

 わたあめの姿はいつものように耳としっぽが生えていたが、服などがボロボロで気を失っているようだった。

 

「おっと、それ以上来ると……分かるよな?」

 

「わたあめッ!……貴様ぁッ!」

 

「お前達……撤退だ」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 そして、錬金術師達はわたあめを連れてそのまま何処かに消えてしまった。

 

「……許さない。わたあめは絶対に助けるわッ!だから、それまで待っててわたあめ……」

 




次回幼狐、現在共感中ッ!


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幼狐、現在共感中ッ!

おや?錬金術師達の様子が──


──……ピチャ

 

「ひゃあッ!な、何ッ!私の首に何か……ってなにこれッ!?」

 

 私は、自分の首筋に液体のような何かが触れて目が覚める。

 私はすぐにその液体が何なのか確認しようとして手を動かそうとしたのだが、私の手足には紫色に発光した鎖が繋がれており、身動きがとれない状況に陥っていた。

 ……だが、私は自分の手足が鎖で繋がれていることよりも他の所があまりにも気になって仕方なかったのだ。

 何故なら──

 

「や、やだッ!何この服ッ!」

 

「ん?……はッ!早くボスを呼んで来いッ!神の子が目覚めたぞッ!」

 

「あれが狐から女の子に……悪くないな」

 

「ッ!?み、みないで……やぁ……」

 

 私はそう言って、必死に自分の体を何とか隠そうとして体を縮めようとする。

 本来ならば、私は別に恥ずかしがる必要は全くないのだが、問題はいつの間にか着替えさせられていた私の服と体にあった。

 今の私の服装は着物のようなものを着させられていて、その着物は何故か私の胸のギリギリのラインまで着崩れをしており、まるで痴女のような姿をしていた。

 だが、それだけでは終わらない。

 

「おい誰だよあの子に着物を着させた奴。涙目からのいやいやとか……最高かよ」

 

「なんだよ褒めるなって〜。これでも同人誌はかなり漁って研究したんだぜ?後、実はまだあるものがあの神の子の体にあるんだよなぁ?」

 

「あるものって……まさかッ!」

 

「そのまさかだ……なんと、あの子のへその下には淫紋があるッ!」

 

「う、嘘だろ……お前ボスにバレたらどうするんだよッ!天才かよッ!」

 

「フッ……もちろん大丈夫だ。ピンクの水性で綺麗に描いたから後始末もバッチリさ」

 

「す、すげぇよ……おれたちにできない事を平然とやってのける。そこにシビれる!あこがれるゥ!」

 

 話を聞いている限り、どうやらこの謎のローブの1人が私の体に淫紋を描いたようで、私はそれを聞いた時に余計恥ずかしくなって、できる限りで縮こまろうとしていた。

 ……しかし、さっきから聞いて見れば私で好き勝手して言ってくれたがそもそもコイツらはただの──

 

「まさかアイツが淫紋を書いたなんてな……見るか?」

 

──チラッ

 

「ッ!み、みないで変態ッ!」

 

「……あ、やべぇ。なんかあの子をすげぇ虐めたくなるくらい可愛いかったんだが」

 

「てか、狐ロリから罵倒とか最高かよッ!」

 

「ヒッ……この人達、やばい人達だ……」

 

 すると、勢い良くドアが開いて同じような服装をした謎のローブが現れる。

 その時に、さっきまで騒いでいた謎のローブの男達は一斉に引き下がって、皆膝をついた。

 よく見れば、あの人物は私を捕まえた謎のローブの男だ。

 

「お前……私をどうする気なのッ!」

 

「目が覚めていきなり何を言われるかと思ったら……そんなことか」

 

「そんな、こと?……ふ、ふざけるなッ!私は貴方達のせいで狐に変えられて、女の子になって……私を元に戻せッ!」

 

「それは無理な相談だな。そもそも私達が何の為に君をそんな体にしたと思うんだい?」

 

「……私を、獣にする……とか?」

 

 すると、その謎のローブの男……いや、もうこいつボスでいいや。

 そのボスが、私の方に近づいて私の体を触り始める……よく見れば、そのボスが触った所からは呪印のような模様が私の首筋にリングのように広がっていた。

 

「不正解だ。本当ならば俺は君に不正解でお仕置きをしたい所だが、もう少しで儀式なのでな。やめておこうと思う……それをその呪印は奴隷の呪印だから私の命令は絶対だ。いいな?」

 

「ッ!?……は、はぃぃッ……」

 

「いい答えだ……やはり、念には念をだな。さて、お前」

 

「ッ!?な、なんでしょうかッ!」

 

「貴様……私達の神の子に淫紋を描いたそうだな?……いいセンスだ」

 

「さ、流石ボスッ!分かっていただけましたかッ!」

 

 私は何故今その話を振ったのかは疑問に思ったのだが、呪印のせいでそれを口に出すことが出来ないでいた。

 

「ッ〜〜!ッ〜〜!」

 

「ん?あぁ、忘れていたよ。喋っていいぞ」

 

「はぁッ!私を元に戻せッ!」

 

「無理だと言っているだろう?……まぁ、今回は貴様のお陰で我々の夢は叶うと言っても過言ではないから1つだけ、我々の真の目的を教えてやろう」

 

「目的……私は神にでもされるの」

 

「神?お前を神などにしてどうするんだ。俺達は神などには一切興味はない」

 

「それじゃあ一体……何なの?貴方達の目的は何?私をどうする気なの?」

 

「どうする、か。……そもそも私達は神や力などと言った物には全く興味がない。私達が欲しているのは同人誌(聖書)萌え()だけなのだよ。これだけ言えば後は……元々男だったお前には分かるはずだ」

 

「…………え、今なん──」

 

「……時間だ。さぁッ!儀式を始めるぞッ!私達の欲望()を叶えるのだッ!」

 

「「「「「ハッ!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狐萌え()化計画の始動ッ!」




次回■狐、現在成長中ッ!


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■狐、現在成長中ッ!

これが……こいつらがッ!錬金術師だッ!


「ひゃあッ!つ、冷たい……」

 

「ごめんね?これも命令だから……おっと鼻から血が」

 

「なんだよ。もしかして俺達が開発した液体を塗るのが辛かったか?……ってお前の場合はご褒美だったな。お前ロリコンだし」

 

「当たり前だろッ!おま、狐ロリって尊い以外の何物でもないに決まってるッ!お前みたいにな痴漢に言われたくないわッ!」

 

「はぁ?お前何言ってんの?女子高生が電車の中で嫌がる姿が最高なんだよ……ま、俺の妄想だがな。はぁ……お前はまだこういった仕事が出来るからいいんだろうけど、俺はなぁ〜……」

 

「……そう言えばお前また合コン失敗したんだろ?何したんだよ」

 

「ん?そりゃお前女子高生に変身させるなら何がいいかを合コンで語ってたらドン引きされた。俺、悪くないだろ?」

 

「確かにお前悪くないわ。ケモナーの素晴らしさが分からない奴らが悪いな」

 

「いや、そもそも話の内容がおかしいでしょッ!」

 

 錬金術師のボスが何かの計画を、私を含めたみんなの前で宣言すると、ボス以外の錬金術師達は何やら私の周りに様々な物やお供え物をセットして儀式を始めようとしていた。

 計画を進めている錬金術師……正確にはただの変態集団なのだが、話やその様子を見ている限りこの儀式に真剣に取り組んでいることはすぐに分かったのだが、私には1つだけ疑問に思ったことがあった。

 

「……ふぅ、ご馳走様でした(ようやく塗り終えたな)

 

「……ねぇ。今、言葉に含みがなかった?」

 

「ん?あぁ、別にそんなことはありませんよ。ただ、ようやく至福(作業)の時間が終わったと感じましてね。……あぁ、終わってしまった」

 

「……今の言葉に凄い気になるけど、なんで私が選ばれたの」

 

「選ばれたって……あぁ、何故俺達が君を誘拐したかについてかい?」

 

「うん。儀式が始まる前に……聞きたくて」

 

 すると、私の体に謎の液体の塗りたくっていた錬金術師が私を誘拐した理由について説明を始める。

 ……きっと、最初の説明でシリアスは消えたようなものだから、私を誘拐したのも単純な理由だろう。

 

「そもそも、私達の集まりはボスによって結成されたものだったんだ。ボスは決して俺達を否定せずにその推し()を肯定してくれたんだ」

 

「……それと、私が何の関係があるの」

 

「まぁ、聞けって。それで、しばらくすればボスの周りには沢山の同胞が集まって現在の俺達があるんだ。勿論、ボスの命令だから他の錬金術師達とは違って人を襲ったりはしなかったけどな。小学生を灰にするとか絶対にないわー」

 

「……いい話に聞こえるけど、最後で台無し」

 

「だろうな。話は戻るが、実は俺達が君を狙った理由は俺達の悲願の達成も意味してたんだよ。ぶっちゃけ元男だから聞くけど、お前ケモナーだろ」

 

「ッ!?な、なんで知ってるのッ!」

 

「そりゃ、ある程度は誘拐する時に調べるでしょ。そもそも誘拐をしろと命令されたのは俺だし。……けど、これから儀式を行うのは俺反対なんだよなぁ……幼女バンザイだし」

 

「なら、儀式が終わった後にでも考えておこう」

 

「ッ!?ぼ、ボスッ!」

 

 気がつけばその錬金術師の後ろにボスが仁王立ちをしながら静かに佇んでいた。

 

「これ以上は何も話すな……いいな?」

 

「し、失礼しましたッ!……ほ、他の作業に戻りますッ!」

 

 そして、その錬金術師が他の作業に向かうと、残ったのは私とボスの2人っきりになってしまった。

 後、もう少ししたら誘拐された理由について聞けるはずだったのに。

 

「……もうすぐ儀式を始める。俺もお前も始めての試みだ……俺好みになっていることを祈るよ」

 

「……変態」

 

「……フッ、俺達には褒め言葉だよ」

 

 そして、ボスが私の元から離れた後、私の周りに知らない間に書かれていた謎の模様が光だし、やがてそれが私の体に集中していることが分かる。

 

「……第一段階成功。天井をあけろッ!」

 

 光が私の体をどんどん包みこんでいく中、1人の錬金術師の声によって上の天井が開いていく。

 そして、私が少しずつ開いていく天井から月の光が私の体に触れると、私の体にある変化をもたらした。

 

「……ウ、クッ……ア、アガッ……な、なにコれ……」

 

「……しかし、ボス」

 

「なんだ」

 

「今宵は満月で、儀式をするには大丈夫ですが……今の月は欠けています。そんな状態で儀式をすれば──」

 

「問題ない。俺達はあくまで俺達自身の萌え()を創り出すことだ……逆に神の力がない分、かなり好都合だ。……それに」

 

「それに……何ですか?」

 

「……いや、何でもない」

 

 私はその月の光を浴び続けて、だんだんと体が何かに変えられていくように感じられてきた。

 また、それと同時に私の意識もだんだんと変わっていくように感じられた。

 それはまるで──

 

「あ、あがッ!な、やだッ!私のな、かに、入ってこ、な……な、い、でで……」

 

「失礼しますッ!シンフォギア装者が襲ってきましたッ!」

 

「……持ちうる限りの全てで全力で装者を止めろッ!」

 

「ハッ!」

 

「や……だッ!わ、私は……お、俺は……私はあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「そうだ。成長するんだ……そして、俺の……俺達の男の夢を叶える礎となるのだッ!」

 

「やだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

──プツン

 

「あっ」




次回■狐、現在クール中ッ!


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■狐、現在クール中ッ!

クール=冷静さ……マリアにそれが出来……いや、無理やん


「フッ……よく来たなシンフォギア装者達よ。悪いが、愛の錬金術師兼神父であるこの私が──」

 

「私の邪魔をするなあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「なッ!?ま、待てッ!それは普通最後に撃つや、ぎゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「愛の神父ぅッ!貴様ぁッ!私の理解者である友をよくも──」

 

「わたあめを返せえええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!」

 

「はッ!?き、貴様ッ!2発目はおかしいぐあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「……マリアが錬金術師相手に1人で無双してるデスよ。顔がマジで余計に止められないデス」

 

「マリアがここまで怒ってるなんて……久しぶりな気がする」

 

 私は、わたあめを錬金術師に連れ去られた後、1度本部に戻って体制を整えていた。

 しかし、私は今回無断でアマルガムを使用したせいで明日から1週間の謹慎処分を受けてしまったが、使ってしまったものは仕方ない。

 でも、私はわたあめを絶対に助けると決めたのだ……だから──

 

「そこを退けえええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!」

 

「「「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」」」」

 

「マリアッ!落ち着けッ!」

 

「離して、翼ッ!私は早くわたあめを──」

 

「落ち着くデスよマリア」

 

「うん。マリア大丈夫、大丈夫だから……」

 

「ハァ、ハァ……切歌、調……」

 

 私は何とか3人の呼びかけによって落ち着き、冷静さを取り戻すことが出来た。

 だが、落ち着いたのはいいが現状が全て変わる訳ではない。

 

「決して儀式に近づけさせるなッ!俺達の夢を守るんだッ!」

 

「了解だぜッ!へへっ、あんな可愛い子達と戦うなんて……ワクワクして俺の触手達が疼くぜぇッ!」

 

「デュフフ……お、俺の睡眠薬で眠らせてやるんだな」

 

「わわッ!な、何か沢山来たデスよぉッ!」

 

「喰らえッ!俺が育てた触手マッ──」

 

「く、喰らうといいんだ──」

 

「「うおりゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!(吹っ飛べえええええぇぇぇぇぇッッッッッ!!!!!)」」

 

「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」」

 

「立花ッ!雪音ッ!」

 

「向こうは片付けたッ!早く行けッ!」

 

「ここは私達がッ!」

 

「……分かったわッ!」

 

 私達が錬金術師達に囲まれていると響とクリスが他の錬金術師達との戦いを終えて私達の援軍にやって来た。

 2人はそのまま錬金術師達を吹き飛ばして、それぞれで戦いを始める。

 そして、響やクリスがやって来た錬金術師達の足止めをしている中で、私達ががわたあめが儀式をしている方に向かおうとすると、翼が足を止めて響とクリスの方に向かい始めた。

 

「ッ!?翼ッ!」

 

「案ずるなマリア、流石にあの量の錬金術師達相手に二人ががりで戦うのは厳しいだろう……だから、私はここに残る。マリアはわたあめの救出を頼む」

 

「ッ……えぇ、行くわよ切歌ッ!調ッ!」

 

「「うん(デス)ッ!」」

 

 そして、私達はわたあめがいる場所に向かいながら錬金術師を無力化していく……そもそも、わたあめがいる場所は本部の方で高エネルギー反応があった場所。

 きっと、そこにわたあめがいると確信して、私達はその場所に向かい続ける。

 ……そして──

 

「わたあめッ!」

 

「ふむ、来てしまったか。シンフォギア装者よ」

 

「わたあめは……その炎の中ね。わたあめは返して貰うわよッ!」

 

「それは困る。まだ、私達は目的を果たしていないのでね」

 

「ッ!マリアッ!」

 

「危ないデスッ!」

 

 すると、私が目の前にいるわたあめを攫った錬金術師に短剣で一撃与えようとしたのだが、その瞬間隠れていた錬金術師2人が私に奇襲をかけてきた。

 しかし、それは切歌と調が守ってくれたお陰で私は奇襲を防ぐことが出来た。

 

「ありゃりゃ?せっかくこの哲学兵装を使えるチャンスだったのに……なぁ、ロリコン野郎」

 

「あぁ、だがストーカー野郎。お陰で俺も今いい物を見れた」

 

「大丈夫デスかマリアッ!」

 

「この2人は私達が何とかするから。マリアはわたあめを」

 

「え、えぇ……2人共ありがとう。けど、2人も注意しなさい……あの2人の錬金術師、かなり強いわよ」

 

 そして、私は今度こそあの錬金術師の方に向かい、わたあめを助けようとその錬金術師に再び攻撃を仕掛ける。

 すると、さっき奇襲してきた錬金術師の男の1人が私を止めようと襲うのだが──

 

「ほれッ!この短剣でスパッと──」

 

「させないデスッ!」

 

──ガキィンッ!

 

「ッ……とっと。なかなか斬らせてくれないねぇ」

 

「マリアの邪魔はさせないデスッ!大人しくお縄につくデスッ!」

 

「それは困るなぁ……ん?君学生かな?」

 

「そうデスけど……何デスか切り刻まれたいデスか」

 

「……なぁ、ロリコン野郎」

 

「いや、分かる。お前の言うことは100%分かるぞ……これは──」

 

「切ちゃん……この2人、嫌な予感がする」

 

「へ?調、それってどう言うこ──」

 

「「お持ち帰り(倒す)しかねぇよなぁッ!!」」

 

 

「……まさかここまで来るとはな。シンフォギア装者よ」

 

「わたあめは返して貰うわ……私の家族をッ!」

 

「なら、この私も神の子が成長するまで時間を稼がせて貰おう……私の、私達の夢の為にッ!」

 

 

 




次回■狐、現在分裂中ッ!


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■狐、現在分裂中ッ!

な、なんでだ……どうして、錬金術師達がこんなに目立っているんだッ!……こ、こんなの……ほぼ新しいキャラじゃないかッ!


「ぬんッ!」

 

「チッ、ハァッ!」

 

 私はわたあめを取り戻す為にわたあめを誘拐した錬金術師と戦っていた。

 錬金術師は私のことを知っているのか、アガートラームの攻撃と相性の悪い攻撃ばかり仕掛けてきており、私はなかなかその錬金術師に近づくことが出来なかった。

 

「どうしたシンフォギア装者よッ!お前の力はそんなものかッ!」

 

「そう言う貴方も正々堂々戦うなら近づいて戦ったらどうな……のッ!」

 

「クッ、シンフォギア装者は主に近距離から中距離が多く、遠距離との戦いには苦手意識があるのは前の職場の事前調査である程度分かっていたからな。私は幹部とまではいかなかったが、甘く見ているとどうなっても知らないぞ」

 

「ッ……貴方、他の錬金術師達とは違うわね」

 

「当たり前だ。元幹部候補だったからな」

 

 そう言って、その錬金術師は私に対して17の火柱を剣に変化させ、私に飛ばしてきて、必死に私はそれを弾くか躱すかして最小限のダメージで済ませようとしていた。

 本当ならば、切歌や調にも加勢して貰いたい所なのだけど──

 

「ほれほれほれ。早く刺さってくれねぇかなぁ?そしたらもーっと捕まえ(戦い)やすくなるんだが……」

 

「な、なんでそんなに刃物の扱いが上手いんデスかッ!捌ききれないデスよぉッ!」

 

「そりゃ、元々俺達は異端の錬金術師で通ってるから別に錬金術にこだわらなくていいのさ。それより、ちょっと放課後の学校でお弁当を渡すシチュエーションとかやらない?あ、呼び方は先輩でッ!」

 

「……や、やばいデスッ!完全に変な人デスッ!こんな奴に絶対に負けたくないデェスッ!」

 

「なぁ、ちょっとだけ。ちょっとだけでいいからこの矢に刺さってみないか?俺が新しく作った幼女限定の哲学兵装なんだが……ダメ?」

 

「……私のこと幼女だと思ってるの?……私、高校生なんだけど」

 

「なん…だと…ッ!?高校生でそれだけしか伸びてなく、しかも胸の成長がまだで発育途中……これは、ありだなッ!……い、いや待て。俺はこの矢を使って夢を叶えるのか?……否ッ!やはり、俺は俺自身の手でや──」

 

「……切り刻んであーげましょう」

 

「あ、っぶねッ!?やはり、俺には超えなければならない壁があると言うのかッ!クソッ!」

 

「……変態さんですね」

 

「グハッ!……ククッ、ありがとうございます(結構効いたぜ)ッ!」

 

 どうやら、2人は他の錬金術師達に苦戦していて加勢は難しそうに見えた。

 ……不味いわね。

 

「余所見をしている場合か?」

 

「ッ!しまっ、グハッ!……クッ、まさ、か私の一瞬の隙をつ、いてくるなんて」

 

「甘いなシンフォギア装者よ。戦場での余所見は死を意味するのだよ。私の部下なら余所見など絶対にせぬぞ」

 

(今の一撃……かなり悪い所に入っちゃったわね。呼吸が辛いわ)

 

「……苦しそうだな。もしや、錬金術師が殴ってきたのを見たのは初めてかな?……いや、貴様らシンフォギア装者なら既にその戦いを見ている筈だからな」

 

「「マリアッ!」」

 

「大丈夫よッ!今は目の前の敵に集中しなさいッ!」

 

 私はそう言って、何とか2人をあの錬金術師達との戦いに集中させようとして叫んだが、正直私の体はかなり限界を迎えていた。

 私はここに来るまでに何度も錬金術師達と戦ったせいで、体にも負担が掛かり、リンカーの残り時間もかなり少なくなっていることは既に分かっていた。

 しかし、私は何としてでもわたあめを助けたい気持ちがあったので、その残り少ない時間でこの錬金術師をどう倒すか必死に考えていると、わたあめがいるはずの炎がいきなり激しく燃え始めた。

 

「……どうやら、俺達の勝ちのようだな」

 

「わたあめッ!……あの子に何をしたァッ!」

 

「見ていればすぐに分かる」

 

 すると、わたあめがいた筈の炎から人のシルエットがだんだんと見えるようになってきた。

 私は、最初炎の中にわたあめがいるのではないかと思ったのだが、何かが違う……私知っているわたあめは子供で、私の身長の半分しかないのだか、私の見ている炎の中では、私と同じぐらいの身長に見えるのだ。

 

「遂に……遂に果たしたぞッ!」

 

「あれが……わたあめ、なの?」

 

「…………」

 

 そして、炎の中から姿を現したのは神々しい、まるでこの日本の統べる存在のようなオーラを放ち、髪は長く白髪の髪が輝いて見えるような美しさを保ち、その顔と姿は誰もが魅力されるような圧倒的な姿をしていた。

 

「あれが、神の子の成長した大人の魅力か……よかったなボス」

 

「あの幼女がこんな美女になるとはなぁ〜……ま、俺的には幼女がよかったけど」

 

「あれが……わたあめなの?」

 

「わた、あめ?ねぇ、嘘でしょ……わたあめッ!」

 

「…………」

 

 私は、何度もわたあめに対して名前を叫ぶが、わたあめは何も反応せず、ただずっと目を閉じたままそこに立っていた。

 その時に、さっきまで戦かっていたあの錬金術師が急に涙を流して祈り始める。

 

「おぉー……あれこそ、私の求めていた完全なる熟女。この、男を惑わせるような色気。更に、自らのしっぽや耳を恥じないようなその姿……これが、俺の求めていた理想郷……」

 

「わたあめ、返事をしなさいよ……わたあめ……」

 

 わたあめは、私の声には全く反応せず、わたあめはただ立ち尽くしている。

 私はさっきまで戦かっていた錬金術師の胸ぐらを掴んで、必死にわたあめを元に戻そうとして、その錬金術師にわたあめを戻すように叫ぶ。

 

「……ッ、わたあめを戻しなさいッ!あの子を、返してッ!」

 

「無理だな。我々の神の子は私の……いや、私達の萌え()となったのだよ。フハッ、フフ……フハハハハハッッッッッ!!!!!」

 

「なら、あの子はッ!何故私の声に耳を傾けないのよッ!どうしてッ!」

 

「簡単な話だよ……記憶を全て封印し、ゼロから始まったのだよ。だから……貴様の声は何1つ届かない」

 

「そん、な……」

 

 その時、私はその場から崩れ落ち、それを近くにいた調が近づいて必死に私を支える。

 調は私に対して何か言っているような気がするが……今の私にはその声を聞き取れる自信がなかった。

 

「マリアッ!しっかりしてッ!マリアッ!」

 

「私、は……私は……」

 

「シンフォギア装者……この様子では今から戦ったとしても勝てないだろうな」

 

「ッ!許さない。マリアをここまで傷つけるなんて、絶対に許さなッ──リンカーのじ、時間…ぎれ……でもまだッ!」

 

「おっと、動くな」

 

「ッ!?」

 

「悪いが、俺と戦っていたことを忘れないで欲しいんだが……だが、今日はボスが喜んでるから許してやるよ」

 

「これで、2人目を無力化か……あっちはどうなっている」

 

「あっちって……あぁ、あのストーカー野郎のことか。ストーカー野郎ならまだあの金髪少女と戦って──」

 

「行かせるかってんだ」

 

「切り刻むデェスッ!」

 

 私と調が戦いの中で無力化された中、切歌はまだ他の錬金術師とずっと戦っていた。

 ただ、切歌の姿はまだ戦える姿ではあったが、少しずつ……また少しずつとジリジリと追い詰められていた。

 

「クソッ!ギリギリで躱してやがるッ!この哲学兵装の短剣を刺せば勝ったも当然なのにッ!」

 

「デェスッ!?危ないデスよッ!早く倒れて欲しいデスッ!」

 

「……あのストーカー野郎が苦戦してるって珍しいな」

 

「だか、問題はない。あの様子だといずれ──」

 

「ッ〜……大人しく、この短剣の──」

 

「ッ!今デスッ!」

 

──ガキィンッ!

 

「しまっッ!?俺の作った哲学兵装がッ!」

 

「この時を待ってたデスッ!イガリマも鎖のやり方によってはこうすることも出来るんデスよッ!」

 

「クッ……短剣を取りに、ッ!不味いッ!そっちに短剣が飛んで──」

 

──グサッ

 

「…………」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

「なッ!?俺の哲学兵装の短剣が……神の子に、刺さっ……た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしかしてこれ、ヤバイデスか?」

 




次回俺/私、現在半妖中ッ!


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俺/私、現在半妖中ッ!

マリア、必死に頑張る。


「……う、くぅ、あ……が、ッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「なッ!?クソッ、眩し──」

 

「ッ!調ッ!目を閉じなさいッ!」

 

「もう閉じてるッ!」

 

「うおっ眩しっ!」

 

 切歌が錬金術師の短剣を弾き飛ばした後、その短剣はわたあめの方に飛んで行き、そのままわたあめの胸にグサッと刺さる。

 そして、それがわたあめに刺さった瞬間、わたあめは聞いたことがないような声をあげて、直視出来ないほどに激しく光り出した。

 すると、その激しく光った一瞬の大体1秒か2秒だろうか……そのくらいの時間が経過した瞬間、とてつもないほどの爆発が起きて、その爆風によって私達は吹き飛ばされた。

 

「ッ〜〜、あ、アガートラームッ!」

 

「マリアッ!」

 

「大丈夫よ調ッ!まだ体は持つッ!だけど──」

 

──ピシッ

 

「あまり持たないわ」

 

「……なら、私もッ!」

 

 すると、調は残った丸鋸で私のアガートラームで作ったエネルギーシールドの後ろに重ねて、その爆風を何とか耐える。

 横を見てみると、さっきまで戦っていた錬金術師達が2人ほど飛ばされていく姿が見える。

 

「ぐほぉッ!」

 

「がふぁッ!」

 

「で、デェスッ!」

 

「切ちゃんッ!?」

 

「ダメよ調ッ!今は耐えてッ!」

 

 私は何とか調を抑えながら爆風の風圧に何とか耐える。

 そして、アガートラームのエネルギーシールドとシュルシャガナの丸鋸が限界を迎えそうになった瞬間、突如として見えなかった光と爆風が一瞬にして消えて、私と調はそのまま地面に手を置いた。

 

「ハァ、ハァ……だ、大丈夫かしら調」

 

「う、うん……でも、切ちゃんが……」

 

 私は吹き飛ばされた切歌が無事かどうか確認すると、切歌は何とかイガリマの鎌を地面に思いっきり突き刺していて吹き飛ばされないようにしていたようだ。

 

「デ、デ〜ス……何とかなったデス。でも、もう腕が限界で皮膚が所々さっきの爆風で痛いデス……」

 

「切歌は無事みたいね……でも、油断は出来ないわ。まだ錬金術師達が──」

 

「マリア、2人の錬金術師はあそこ」

 

 私は調が指差した方向に顔を向けると、2人のうち片方は気絶しており、もう1人はボロボロの状態で足がさっきの爆風によってやけどして動けない状態になっていた。

 

「……あの2人はもう戦えなさそうね」

 

「うん。でも、私達もそろそろ限界……」

 

「そうね……ッ!わたあめはッ!」

 

 私はわたあめの事を思い出し、さっきわたあめがいた場所に顔を振り向いた。

 すると、わたあめがいた場所に2人の人影が倒れているのが見えた。

 もしかしたら、あの倒れている1人は私がさっきまで戦っていた錬金術師かもしれないと思い、私は調と一緒にそのわたあめがいる場所にゆっくりと歩を進める。

 

「ッ……調、まだ大丈夫かしら?」

 

「うん、大丈夫だよマリア。だからそんなに早く歩くと……」

 

「分かってるわ。でも、相手は錬金術師……何をされてもおかしくない。だから、早くわたあめを……え、な、何……これ」

 

「……わたあめじゃない。マリア、この2人って──」

 

「ちょっと待ちなさい調。私も今何がなんだかさっぱりで……」

 

 私が、わたあめのいた場所に2人の人影がいることを確認すると、そこには顔立ちが整った白髪のショートカットをした男性と女性が倒れているのが確認出来た。

 しかし、その2人は気を失っているのかそのまま目を閉じたまま眠っており、わたあめの姿が無いことに気がついた。

 

「わたあめが、いない。……そして、倒れている男女……まさか──」

 

「マリア、この2人ってわたあめ……なのかな?」

 

「えぇ。私の予想が正しければね。ただ、どうしてわたあめは2人に分かれているのか……原因は、あの短剣が怪しいわね」

 

「……マリア、これからどうする?」

 

「……とりあえず、この2人の保護と翼達との合流を、ッ!?調ッ!」

 

「え──」

 

 私が翼達との合流を言おうとした瞬間、後ろの2人の錬金術師が倒れていた場所から調に向けて赤い矢が飛んで来た。

 その時、私は咄嗟に調を守ろうとして調に抱きついて肩でその赤い矢を受ける。

 この瞬間、私はさっきの白髪の女性の顔が一瞬だけ映るが、すぐに矢を放った方向に視線を向ける。

 

「マリアッ!」

 

「ッ〜。大丈夫よ調。肩の痛みはあまり無いわ……スゥー……フンッ!ッ〜〜……あんまり刺さってなくて良かったわ。それよりも今は──」

 

「ッ……す、すみませんボス。お、俺にはこれくらいしか……せ、せめてあの子に矢が当たって欲しかっ、た……ガクッ」

 

「最後の抵抗って奴ね。でも、なんであんな……ッ!調ッ!わたあめはッ!」

 

「わたあめ……ッ!?マリアッ!錬金術師があの2人をッ!」

 

 私達はすぐにさっきの2人の姿を確認しようとして振り向くと、私がさっきまで戦っていた錬金術師があの2人のすぐ傍まで来ていることに気がついた。

 錬金術師の左手にはテレポートジェムが用意されており、このままでは2人が連れて行かれそうになっていた。

 

「よくやったッ!ガイッ!せめて、この2人だけはッ!」

 

「クッ、させるかあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!アガートラームゥゥゥゥゥッッッッッ!!!!!」

 

「なッ!?クッ、ならば男だけでもッ!後の回収は頼むぞッ!ロンッ!」

 

 私は最後の力を振り絞って、アガートラームの短剣を伸ばして女性を奪われないように引き寄せたが、男性の方は錬金術師によってそのままテレポートジェムによって消え去ってしまった。

 

「ッ……クソッ!間に合わなかったッ!」

 

「……1人、連れて行かれちゃった」

 

「えぇ……ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに……」

 

「マリアは悪くないよ。でも、私は何も出来なかった……」

 

「お前達ッ!大丈夫かッ!」

 

「司令……えぇ、私達は大丈夫です……ただ──」

 

「……そうか。とにかく、すぐに本部に戻るぞ。錬金術師達は響くん達と俺と緒川で大方片付いたからな……ただ、その半分以上には逃げられたがな」

 

「ま、マリア〜」

 

「切歌、どうかしたの?」

 

「さっきまで、そこにいた錬金術師2人がいないデス……あたし達がまだ見ていない錬金術師と一緒にそのまま消えちゃったデス……」

 

「……そう」

 

 結局、この日……私達は女性のわたあめを助けることが出来たが、男性のわたあめを助けることが出来なかった。

 あの時、何故私は2人を助けられなかったのか後悔しながら私は本部に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……しかし、私はまだ知らない。

 彼女が■■で、私が錬金術師に受けた矢によって■■■てしまうことに……私はまだ──

 

(……何かしらこのドキドキ。ストレス……かもしれないわぬ)

 

 何も知らない……




次回俺、現在覚醒中ッ!


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俺、現在覚醒中ッ!

マリアが連れてきたわたあめ……しかし、君たちは大きな間違いを起こしている……何故なら──


「……んぅ……眠い……」

 

「デスデース……まだヒリヒリするデ──」

 

「ん?……あ、お、おはようございます。切歌、さん……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……わ」

 

「わ?」

 

「わたあめが起きたデースッ!」

 

 俺は目が覚めると、どうやら病院らしき部屋の寝室におり、そのベッドの上で横になっていた。

 とりあえず、俺はベッドから起き上がって横を見ると、切歌さんが腕をさすっていて、目が合った瞬間にこの部屋から飛び出して何処かに行ってしまった。

 そして、しばらくするとドタドタと足音が聞こえてきて、いきなり誰かが俺に抱きついてきた。

 

「わたあめッ!」

 

「グホッ!?ま、マリアさん……ぐ、ぐるじぃ……」

 

「あ、ごめんなさい……」

 

「わたあめちゃんが元気になって本当に良かったぁ〜」

 

「にしても……あたしよりも大きくなったな。何センチあるんだ?」

 

「マリア、とりあえずこっちに来るんだ。わたあめの邪魔になるだろう」

 

「え、あ……分かったわ」

 

 すると、マリアさんが俺からすぐに離れてある程度距離をとる……ある程度様子を見ていたが、どうやら俺が出会った人達が勢揃いしていた。

 

「えっと……これは?」

 

「まだ状況が理解出来てないのかな?」

 

「仕方ないデスよ。あれだけのことがあったんデスから」

 

「は、はぁ……ッ!そ、そうだッ!俺はあの時クリスとベンチで休んでて、そしたら──」

 

「ベンチって……何言ってんだ?あれからもう2週間半は過ぎてんだぞ?後、ほら……鏡。自分の姿が……あー……」

 

「クリスくん俺から言おう。まずは、自分の姿を確認してみてくれ」

 

 俺はクリスに鏡を渡されて、その鏡に映っている自分の姿を確認する。

 そこに映っていた自分の姿はまるで、女顔のような女の子に負けないくらいの容姿をしていた。

 その姿を見て俺は──

 

「…………」

 

「ふ、震えてるデスね」

 

「まぁ、仕方ないだろう。最初は狐で、次が子供……そして、今は女性……誰だって落ち込むに決まって──」

 

「……い」

 

「「「「い?」」」」

 

「いよっしゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!戻ったあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「「「「「「「……えええええぇぇぇぇぇッッッッッ!?!?!?!?!?」」」」」」」

 

 

 しばらくして、俺は狐から人間に戻れたことに喜んでテンションが上がっていたのを何とか落ち着かせてベッドに座った。

 しかし、何故か俺以外の人達は何故か納得しておらず、何やら集まって話をしていた。

 

「……わたあめくん君はその……話を聞いた限り男ではなかったのか?」

 

「男?あぁ、俺戻ってるじゃな……あー…そう言えばそうか。俺って元々女性みたいな顔立ちしてるからよく間違われるんですよ。何なら下半身見たら分かりますよ?ちゃんとありますし」

 

「う、うむ……そうか」

 

「あれで……男デスか」

 

「全然分からなかった。響さん達も分かりました?」

 

「いやー……私もてっきり女の子のままだって思ってて……」

 

「私も。響と同じように女の子って思ってて。それに、子供だったこともあったから余計に……」

 

「まさかのそんなオチとかあるか普通……」

 

「あぁ。さすがに私も……マリア?」

 

 すると、マリアさんが俺に近づいてガシッと肩を掴む。

 俺はマリアさんの目を見ると何やら本気の目をしており、少しだけ俺はたじろいだ。

 

「……わたあめ」

 

「えっと……何ですかマリアさん?」

 

「……やっぱり貴方、男の娘だったのね」

 

「……マリアさん、今ものすごく不謹慎な間違え方しませんでした?場合によっては怒りますよ?」

 

「えぇ、分かってた……分かってたわよ。こんなことだろうとは思ったわよッ!なんで……なんでわたあめが女の子じゃないのよッ!」

 

「いやそこぉッ!?いやいやいやッ!おかしいでしょッ!そもそも俺は男だって言ってるじゃないですかッ!普通女の子の方がおか──」

 

「わたあめはあんなに可愛いかったのよッ!ほら見てみなさいッ!貴方が子供の時の写真よッ!」

 

「いや母性出しすぎじゃありませんかマリアさんッ!?って、ん?これ……俺ですか?」

 

 俺はそう言って、マリアさんが取り出したスマホの写真を指さして言う。

 そもそも、俺はこんな小さな女の子になった覚えなど一切無いのだが、その女の子は俺が狐の時の耳としっぽがよく似ており、俺が女の子であれば即答で頷くぐらい可愛いかった。

 

「何言ってるのよ。貴方が自分で言ってたんじゃない」

 

「いやいやいや。そもそも俺ってまだ狐だったし、人間として会うのは初めてって言うか……」

 

「……まさか。少し、いいだろうかわたあめくん」

 

「え……あぁ、いいですけど……何ですか?」

 

「君が人間から狐になって何週間が経過したと思う?」

 

「何週間って……大体1ヶ月だけど、それが何か?」

 

「ッ!?……まさかとは思うが……」

 

 俺が司令の質問に対して俺は知っている限りの記憶を頼りに答えると、皆がそれぞれでびっくりしており、1部の人達は話し合いをしながら何かを考えていた。

 ……まぁ、とりあえず──

 

「それよりも、誰かこの現状を教えてくれません?」

 

 俺は今の現状を知ることから始めた。




次回私、現在覚醒中ッ!


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私、現在覚醒中ッ!

何故だろうか……何故こうも錬金術師達の方は殺伐としているのだろうか。……やはり、わたあめの──


「早く重傷者を医療室に向かわせろッ!」

 

「おいッ!輸血パックが足りないぞッ!早く持って来いッ!」

 

「包帯はまだあるかッ!ある?なら骨折用のギプスを持って来いッ!無いなら長細い木材でもパイプでもいい。固定出来る物をを早く持って来るんだッ!」

 

「何ッ!ガイが重傷だとッ!?なら早く医務室に向かわせろッ!体がボロボロなら錬金術で何とか補強だッ!死にそうだったら小学生の(自主規制)でも聞かせたら意識だけでも復活するッ!急げッ!」

 

「シンフォギア装者だけって聞いていたのにたった2人の男にこれだけの被害を受けたなんて……有り得ないだろ」

 

「お、俺は見た、んだ……ガハッ!」

 

「これ以上は喋るなッ!傷が悪化するぞッ!」

 

「い、言わせてくれ……さ、いごに……ガチ、恋の……あの顔は、卑怯だ……ガクッ」

 

「ッ!おいッ!お前はあの現場で何を見たんだッ!おいッ!」

 

「やめるんだ……」

 

「だがッ!ハッ……何故、泣いているんだ」

 

「……いや、気にするな」

 

「……んぅ……うるさい」

 

 私は周りのあまりの五月蝿さに目が覚めて、周りを見るとそこは様々な錬金術師達がベッドの上で悲痛な叫びが絶えない状態で、まさに戦場と言っていいほどの状態だった。

 そんな姿を見て、私は少しだけその光景に恐怖してベッドの下のシーツをギュッと握った。

 

「な、何……これ……」

 

「……起きたか神の子よ」

 

「ッ!貴方はッ!私を誘拐した……そう、ボス」

 

「……そう覚えているのか。別にそれでもいいが、ボスばかりだと分かりにくいだろう。俺はロッツだ……分かったな?」

 

「…………えぇ」

 

 私を攫ったボスは自分のことをロッツと名乗ると、近くにあった紙とペンを持ちながら仕事をおこなっていた。

 ただ、ロッツの姿は何故か体の半分が包帯でグルグル巻きになっており、酷く痛々しい姿をしていた。

 

「私は……なんで、ここにいるの。儀式はどうしたの」

 

「儀式……か。見れば分かるだろう?儀式は失敗して、ほとんどの錬金術師達はシンフォギア装者達とその加勢してきた2人にやられてこの有り様だ。……鏡だ。自分の姿を確かめるといい……」

 

 私はロッツに渡された鏡で、自分の姿をよく確認する……その自分の姿はまるで男のような顔立ちをしており、私はその姿に驚きが隠せなかった。

 

「わ、私……大人になってる」

 

「正確には推定20歳……ぐらいだろう。最初は、俺達も儀式が失敗した後に何とか回収して、それが男だと思ってガッカリしたが……服を着替えさせようとしたら立派な物が膨らんで──」

 

「ッ!み、見たなッ!エッチッ!変態ッ!」

 

「はぁ……着替えさせようとしたのは俺ではない。ロンだ……だからその枕で俺を殴るんじゃない」

 

 私はしばらくロッツを枕で何度もアタックをしていたのだが、だんだんと疲れてきたので、すぐにやめて布団で自分の体を覆った。

 

「ボス。今回の被害状況なんだけどぉ〜……ってあら?もうこの子起きちゃったのねぇ」

 

「……ロンか。今回はかなり助かった。お陰で俺達の仲間はほとんど捕まらずに済んだ……ありがとう」

 

「もぅ〜本当に大変だったんだから〜。最初は3人のシンフォギア装者の足止めをしてたんだけど〜……まさかあんな化け物が来るなんて聞いてなかったから持ってたテレポートジェム全て使う羽目になったわよぉ〜。あ、私ロンって言いま〜す。よろしくね、コンちゃん♡」

 

「…………」

 

「あら?嫌われちゃった?そんなに怖いかしら私……ねぇ、ボス」

 

「……さぁな」

 

 ロッツはそう言って、ロンから目を逸らすとロンは少し困った様子でため息をついた。

 ……私が見間違えしていなければ、私の目にはロンがオカマに見えるのだが、ロッツが目を逸らす辺りそう言うことなのだろう。

 しかも、私は確かロンに着替えさせられたと聞かされたので、なんて言えばいいのか分からないが……とても複雑な気分だった。

 

「しかし、あのガイとルックが重傷なんて……あの装者達、そんなに強かったの?ガイとルックは哲学兵装も持っていたはずでしょ?」

 

「……確かにシンフォギア装者は短期決戦ならば確実にやられていただろうが……今回は不運に見舞われてしまったから仕方ないだろう。今回の儀式も失敗したのがそれが理由だ。本来ならば成功していたはず……だったんだ」

 

「ボスの性格と性癖を知ってる私から予想するけど……多分、ルックが持ってた切断短剣がコンちゃんに刺さったからでしょ〜……合ってる?」

 

「……あぁ」

 

 2人が何やら重要な話をしているので、私はその話を静かに聞いておく。

 最初は、私はすぐに今の現状を説明して欲しくて質問したかったのだが、あまり話に入り込める空気ではなかったので、とりあえず黙って聞くことに専念した。

 

「まさかルックが開発したあの切断短剣がねぇ……確か、あの剣って切ればそれが半分になって、刺せば分裂する哲学兵装だったわよね?あれ、何か逸話とか神話から作ったのかしら?」

 

「いや、ルックはその哲学兵装は逸話や神話で作ったとは言っていなかったな。ルックは元々科学者だったから科学の力と錬金術で奇跡的に作り出した副産物と言っていたが……」

 

「……何よ、焦れったいわね。早く言いなさいよ」

 

「いや、ルックが哲学兵装を作るのに実験していたプラナリアを思い出してな……何故プラナリアを調べようと思ったのか今にしてようやく分かったがな」

 

「プラナリアって……あの切っても死なない生物のことね。そう考えるとルックは凄いわね……まぁ、今回はそれで儀式が失敗しちゃったんだけど」

 

「そうだな……だが、今更それを後悔しても仕方ない。まずは今を考えなければな」

 

 私はこの2人の話を聞いていたが、話のほとんどが難しかったのであまりよく分からなかったのだが、1つ言えることはその短剣のお陰で今の私がある……それだけがよく分かった。

 

「……さて、これからどうしましょうか?」

 

「しばらくはアジトで生活だ。儀式は1回限りだったからな……また新しいことを考えなければならない」

 

「そうねぇ……あ、コンちゃんはどうするの?連れてきたのはボス……貴方よ?」

 

「……確かに連れてきたのは私だ。だが……いや、待てよ。神の子よ」

 

「……私、神の子じゃない。私はわたあめ」

 

「……いや、流石にペットにつけるような名前ではダメだろう。……ミラ。ミラでいいだろう。それでいいか、ロン」

 

「私はコンちゃんって呼ぶけど……何か嫌そうな顔してるわよ?」

 

「……絶対に嫌よ。私の名前はわたあめだから」

 

「……なら、俺は好きに呼ばして貰う……ミラ、錬金術師として働かないか?」

 

「……馬鹿じゃないの」




次回俺、現在把握中ッ!


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俺、現在把握中ッ!

……ブレなさすぎて(σ・ω・)σ


「……いや、訳が分からん」

 

「……まぁ、普通はその反応が正しいよな」

 

「いや、だってさ。まだ自分が狐になったこともあるからそれなりに不思議な力があるんだなって思ったよ?……でもさ、普通拾われた飼い主とその交流関係が深い人達はほとんどが政府の人間で、1部は魔法少女に変身するとかさ、アニメじゃないんだぞ」

 

「私達は魔法少女ではなく、シンフォギア装者なのだが……」

 

「翼さん。それ以上はややこしくなるから言わない方がいいデスよ」

 

「しかしだな……」

 

「しかも、俺はあれから1ヶ月半以上の間振り回されて、昨日……俺は知らないけど、儀式で俺ともう1人の男性に別れたって話で合ってるんだよね?……丸々2週間半の記憶が無いって違和感があるけど……」

 

「それについては大方連れ去った錬金術師が原因だろう。あの後、エルフナインくんにも力を貸して貰って居場所を突き止めているのだが……中々上手くいかなくてな」

 

 俺が目覚めてしばらくが経過した後、俺は今までの事や司令の政府機関についての話を聞いて、何とか自分の現状を把握することが出来たのだが……その政府機関に歌姫と学生を巻き込んでいるのは大丈夫なのだろうか?

 ……ダメじゃない?

 

「しかし、まさか彼女を……いや、彼をマリアくんが拾ってからここまで大きな被害になるとはな」

 

「いや、1番の被害は俺なんですが……最終的に俺はどうなるんですか?後、今女性って言いましたよね?ねぇ?」

 

「確かに……胸が膨らんでないデス」

 

「でも、わたあめちゃんって言ってもバレない気がするけど……」

 

「ちょっと、お2人さん?何人の胸を触ってんの?後、さりげなく女装にさせるような言い方しないでくれます?」

 

「……女装」

 

「……女装ねぇ」

 

「そこの未来さんとクリスは何故目を光らせてるんですかッ!?ちょっとッ!2人で話し合わないでくださいッ!マジ勘弁してくださいッ!」

 

 最初の真面目な話が何故こんなにも早く緩くなるのだろうか。……いや、俺の知らない間にきっと何かがあったと思うのだが、俺の記憶の無い間って本当に何があったんだよ。

 

「…………」

 

「……マリア、大丈夫か?」

 

「ッ!?え、えぇ……大丈夫よ」

 

「……そうか。ならいいが……行かなくていいのか?」

 

「今は、ちょっといいわ。ただ……何故かわたあめといると落ち着かないのよ」

 

「落ち着かない?それは──」

 

「んん゛ッ……さて、お前達。そろそろ話を戻すぞ」

 

 すると、司令がそう言ってその場を落ち着かせる。

 ……実際、俺としてはとても助かるのだが、1つだけとある疑問が出てきた。

 本来ならば俺にとっては1番大切なことなので、すぐに言いたかったのだが、その前に司令がその疑問をすぐに解決しようとしていた。

 

「まず、これからわたあめくんの件だが……しばらくはうちでの保護となった。理由は色々あるが、1番の理由としては錬金術師が絡んでいるのが理由だ」

 

「まぁ、そうだよな」

 

「で、だ……これからわたあめくんの住む場所なのだが、流石にマリアくんの家はダメだろう。この姿でマリアくんの家に出入りされては色々と困るからな」

 

「ッ!……そ、そうね」

 

「それでだが……しばらくはこの基地の空いた部屋で住まわせる予定なのだが、どうだろうか」

 

「……まぁ、俺はそれで全然大丈夫ですけど、いいんですか?」

 

「なーに。部屋の1つや2つ問題あるまい」

 

「は、はぁ……」

 

 何やら司令がとんでもないことを言った気がするのだが……まぁ、良しとしよう。

 てか、部屋が1つや2つ使える政府の機関って……

 

「話は以上だ。しばらくはこの部屋で皆は待機しておいてくれ……頼むぞ翼」

 

「はい。叔父様」

 

 すると、司令はその部屋から出ていき、何処かに行ってしまった。

 

「……さて、俺も少しだけ横に──」

 

「少しだけいいデスか?」

 

「ん?えっと……何?切歌さん」

 

「もう狐になったり出来ないデスか?」

 

「……いやいやいや、俺は人間に戻ったんだよ?また狐になるなんてないじゃないか〜」

 

「そ、そうデスか……ふわふわのしっぽもこれで見納めデスか……」

 

「切ちゃん……仕方ないよ。わたあめは巻き込まれただけなんだから」

 

「そうそう。もし、出来たら普通に俺人間辞めてるって〜。……まぁ、あったとしてもこんな風に生えて──」

 

──ピョコッ

 

「…………ん?」

 

「あ、しっぽが生えたデス」

 

「…………んん゛ッ!?」




次回私、現在調査中ッ!


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私、現在調査中ッ!

彼をは楽しんでる(*^ω^*)


──ピョコピョコ

 

「…………」

 

「……可愛いな」

 

「あぁ、なんかあれだよな。最初男かと思ったけど、なんだよ可愛いかよ」

 

──ブンブン

 

「クール系女子もありだなって思ったけど、普通に助かるわ。今日の仕事は中止しておニャン子観察しようそうしよう」

 

「何言ってんだよ。あれは狐だよ……よし、甘い物を貢げ」

 

「よし分かった。ゴールデンスペシャルパフェ作ってく──」

 

「やめなさい」

 

「ゴフッ!?」

 

 私がこの錬金術師達のアジトに誘拐されたまま3日が過ぎたのだが、私は現在……錬金術師達に凄いもてなされていた。

 最初は、私はあの人達のことを謎のローブと認識していたのだが、ロンさんが錬金術師だと言うことを教えてくれたので、ある程度は理解が出来た。

 ……今、あの人ロンさんの一撃で首まで地面に埋まったんだけど……ロンさんって……何者?

 

「さ、流石No.2……ただのオカマだと思ったら大間違い。その拳で数々の敵を地面に埋め──」

 

「あら?ちょっとや〜だ〜」

 

「ガハッ!?」

 

「……生首が2人出来ちゃったよ。やっぱりロンはやべぇよ……怖ぇよ」

 

「貴方達がコンちゃんに群がるからいけないんじゃな〜い。それに……変な事したら私がしっかり星の見える場所で埋めて上げるわね?ンッマ♡」

 

「「「「……ヴッ、オrrrrrr」」」」

 

「……もう、酷いわねぇ。さて、行きましょうか」

 

「……はい」

 

 そうして、私はロンさんの後をついていく。

 本来ならば、私は錬金術師達の事が嫌いで、今すぐにこのアジトから抜け出したいのが私の願いなのだが、今は絶対に無理だ。

 私のことをあれだけ痛めつけたことは私は忘れないし、出来ればもうロッツに会いたくもない……だから私は──

 

「……さて、それじゃあ戦いましょうか♡」

 

「……よろしくお願いします」

 

 このアジトで強くなることに決めた。

 

 

「……やってるな」

 

「えぇ、でもいいんですかボス?あの子に戦い方を教えて……」

 

「あぁ、それが条件だからな。本来ならばお前達もミラを研究したい、調教したい、愛でたいでかなり別れているだろ。今回の失敗で生まれた……いや、正確には分かれたのが正しいだろう。それによって生まれたのがミラだからな……またいつシンフォギア装者がアジトを襲ってきてもおかしくない」

 

「では何故ロンと戦いの練習を?それならばやはり調教や愛でるのが最適な気が──」

 

「はぁ……そう思われても仕方ないだろう。しかし、ミラは元を辿れば儀式が成功した時は神ではないが、それなりの力を持っていただろう。だが、今はそれが不安定な状態だ……だから今はその不安定を抑える為にロンに指導をして貰ってる」

 

「……しかし、なら何故あんなにも頑張ってるんですか?普通なら諦めても仕方ないのでは?」

 

「普通、ならな?」

 

──ガキィンッ!

 

「ッ……はぁ、はぁ……」

 

「……今回はここまでにしましょうか」

 

「はぁ、はぁ……あ、ありがとう、ございました……」

 

 私はしばらくの間ロンさんとの力の制御の練習をしながら、ロンさんと戦っていた。

 結果はもちろん私の負けだったが、少しだけ力に慣れてきたような気がしてきたのだ。

 私が頑張ればきっと──

 

「……ロッツの話は本当なの?あまり信じたくないけど」

 

「ボスは約束は破らないわ。もし、1日1回貴方が私に勝てたら確か……マリアだったかしら?そのシンフォギア装者の元に返してあげるわ。ただ、その間で負けたら──」

 

「分かってる……私はアジトを逃げない。これでいい?」

 

「もちろんよ。ちゃんと約束は守るわ♡……あ、今日負けたらコンちゃんはしばらくの間はこのメイドコスプレで私達の部下に御奉仕……お願いね♡そしたら部下は仕事効率は3倍くらいに跳ね上がるから♡」

 

「……ぜ、絶対に負けないッ!」

 

「……負けるな」

 

「えぇ、負けるでしょうね」




次回俺、現在モフらせ中ッ!


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俺、現在モフらせ中ッ!

明日は、お休みぃ。^ω^)月曜日にまた投稿( ˘ω˘ ) スヤァ…



 俺が狐から人間……に戻れた筈だったのだが、何故か俺は人間の状態から半分狐……つまり、獣人化が何故か出来るようになっていた。

 何故、俺が獣人化が出来るようになっていたかは知らないが、多分俺の記憶が無い間に起きた出来事で何かがあったのだろう。

 ただ、獣人化が出来るようになってから色々試してみたが、どうやら人間から耳としっぽだけの獣人化、そして狐と変身が可能になっていた。

 俺は初めてやって、何故か違和感が無かったのは不思議だったのだが、今はそれよりも──

 

「調ッ!わたあめのしっぽが大きいデスよッ!これはもう……あれしかないデスッ!」

 

「分かった切ちゃん。いくよ?」

 

「「せーのッ!ギューッ(デス)!」」

 

「……はぁ」

 

「す、凄いデスよッ!調ッ!体全体が包み込まれるくらいにもふもふデスよッ!」

 

「これ、なんか暖かくて……私、好きだな。しばらくこのまま……」

 

「デスデース……」

 

「……いや、ダメに決まってんだろ」

 

──テシッ

 

「あぁ……あたしのもふもふがぁ……」

 

「……残念」

 

「……その、ごめんなさいねわたあめ」

 

「気にしないで大丈夫ですよ。マリアさん」

 

 この2人を何とかするのに手一杯だった。

 実際、あれから1週間が経過したのだか、俺は司令が用意してくれた部屋で特にやることも無く、静かに過ごしていた。

 ……だが、今日は何故か切歌さんと調さん、そしてマリアさんが部屋に遊びに来て、部屋に入ってきた瞬間に切歌さんと調さんがいきなりしっぽを出せと言われたので出してみるとこうなった。

 

「……もっと、触らせるデスッ!わたあめが狐や子供の時は触らせてくれたのになんで触らせてくれないデスかッ!」

 

「いや、普通にいきなり来てからしっぽを触るってマナーがなってないぞ。それに、一応俺の体の一部だからなんか他人に触られると……ね?」

 

「でも、私達は触りたい」

 

「そうデスッ!もっと触りたいデスよッ!マリアもそうデスよねッ!」

 

「ッ!?え、えぇ……そうね」

 

「…………」

 

 ……俺はこの1週間で、最近マリアさんの様子がおかしく感じる時をよく目にするようになった。

 俺が狐の時はあんなにも俺のしっぽを誰よりも癒しとして触ろうとしていたマリアさんだったのだが、俺が人間?かどうかは知らないがある程度人間に近く戻ってからマリアさんとの距離が少しだけ離れたように感じることが多くなったのだ。

 もしかしすると、俺は記憶が無い間に何かしてしまったのだろうか?

 ……分からない。

 

……やっぱりここに来て正解デース

 

最近、マリアがボーッとしがちなのも多分わたあめに何かがある……なら──

 

「「2人っきりにするしかない(デス)」」

 

「2人共何話してんだ?」

 

「ッ!?な、何でもないデスッ!」

 

「そう、何もない。切ちゃんちょっとコンビニにお菓子買いに行こ。監視カメラはセット完了だよ切ちゃん

 

「了解デスッ!それじゃあッ!ちょっと行ってくるデスッ!」

 

 すると、切歌さんと調さんは俺とマリアさんを置いて、お菓子を買いにコンビニに出かけて行ってしまった。

 2人は何やら小さな声で喋っていたが、俺にはあまり聞こえなかったねで気にしなかったのだが……マリアさんと2人っきりになってしまって、気まずい状態になってしまった。

 

「……えっと」

 

「…………」

 

「……ま、マリアさん」

 

「……なに、かしら?」

 

「俺のしっぽモフります?」

 

「……大丈夫よ」

 

 俺は必死になって、とりあえず会話を繋ごうとマリアさんに自分のしっぽをモフらせてある程度のこの空気を和ませようとしたのだが、マリアさんにはあっさり断られてしまった。

 しかも、マリアさんは何故か俺から余計に離れて距離をとろうとしていた。

 

「その、わたあめ……少しだけ離れてくれないかしら。それ以上近づくと、私が──」

 

「え……あ、はい。なんかごめんなさい……」

 

「ッ!ご、ごめんなさいわたあめ。決して貴方が嫌いって訳じゃないのッ!言い方が悪かったわ……本当に、ごめんなさい」

 

「い、いえ……ちょっと、お茶入れてきますね」

 

 そして、俺はキッチンに向かってお茶を淹れる準備をするが……何故かさっきの会話でとても心にダメージを負ってしまった。

 俺が狐の頃とは違い、人間の状態だとマリアさんは何故か俺から一歩遠ざけた感じで接しており、俺のメンタルはかなり瀕死に近い状態になっていた。

 しかも、さっきの会話での離れて欲しいと言われた時はかなりクるものがあって堪えた……本当に記憶が無い時に俺は何をしたんだよ。

 

「……とりあえずお茶……運ぶかぁ」

 

 俺は淹れたお茶を持って戻ってくると、マリアさんはその場から動かずに俺から目を逸らしていた。

 ……正直、ここまでされると少しだけ泣きたくなるのだが、今は我慢だ……我慢。

 

「……お、お茶……持ってきましたよ」

 

「えぇ、ありがとう」

 

「とりあえず机に置い、ッ!?ちょっ、やばッ!」

 

「え、きゃあッ!」

 

──ガッシャーンッ!

 

「痛た……だ、大丈夫ですかマリアさん。怪我とか無いですか?」

 

「え、えぇ……大丈夫、よ……ッ!」

 

「本当ですか?やけどとかありませんか?」

 

「えッ!?あ、だ、ダメッ!それ以上近づかないでッ!それ以上は──」

 

「ッ!マリアさん指を切ってるじゃないですかッ!早く見せてくださいッ!」

 

「だ、ダメッ!手を触た──」

 

「……やっぱり破片が飛んだんですね……って、ま、マリア……さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わたあめ、貴方が好き……大好きよ♡」

 

「……へァッ!?」

 

 




次回私、現在宴会中ッ!


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私、現在宴会中ッ!

「いいか?やっぱり俺としては高校生に攻めらるシチュエーションがいいんだよ。けど、攻めている内に一瞬だけの隙を突いて一気に反撃して相手がやめて欲しいと言うまで攻め続けるんだよ。最高だろ?」

 

「確かにお前の理想も悪くないだろう……だが、貴様にはまだ足りない物がある。それはやはり、女子高生のママが最高に決まってるだろ?まだ高校生の罪悪感と優越感を同時に楽しむことが出来る上に、頼れるのは自分1人でその優しさにどんどん沈んでゆく様……フッ、興奮しちゃうね」

 

「甘い……甘すぎるぞッ!女子高生のママだとッ!?ふざけるんじゃーないッ!時代はやはり外国人の女の子だろッ!考えるんだ……普段からあまり慣れない日本語から蕩けた声で甘えてくる姿……うん、いい……」

 

「それで終わりかな?なら、君はまだまだだよ。俺ならやっぱり女子中学生を屈服させる所から始めるかな。そして、その女子中学生が少しずつ成長していくごとにゆっくりと……じっくりと……調教して、俺がいなきゃ生きられない体にしてやるんだ……彼女が少しずつ変わっていく姿をお前達も見たいだろ?」

 

「……何このカオス」

 

 私が錬金術師達のアジトで過ごし始めてから1週間半が経過した頃、私は毎月錬金術師達が息抜きが出来るようにと開催される宴会に参加していた。

 ……ただ、その宴会が私の知っている宴会とは違い、話す内容は私にとってはとても嬉しくない会話ばかりだった。

 

「あっちに行っても、こっちに行っても話す内容は変態じみた話ばっかり……もうやだ……」

 

「あ、ミラちゃん。こっちに来て話さないかい?今、水着と浴衣ではどちらが魅力なのか議論しているんだが──」

 

「いや、大丈夫です」

 

「ミラちゃんッ!お、おらと魔法少女について語りたいんだなッ!」

 

「いえ、遠慮させていただきます」

 

「ミラちゃーんッ!この前みたいに食堂でメイドの御奉仕をして──」

 

「死んでください」

 

「ありがとうございますッ!」

 

 最近、この1週間半の中で私はあることに気がついた。

 私はこの1週間半の中で、それなりにロンさんに鍛えてもらって強くなっているんだけど、この錬金術師達の人は私を襲ってきたりしない。

 だって、普通に考えればあれだけ変態じみた話ばかりする人達がこんなアジトに1人残された女の子を襲ってもおかしくはない筈なのだ。

 ……だけど、この人達は──

 

「ミラちゃん。ちゃんとご飯食べたかい?」

 

「えぇ……とっても美味しかったです。カニだったので」

 

「だろう?この料理はミラちゃんが喜んでくれると思って若い錬金術師達がカニ漁で獲ってきたカニだからなッ!しかもタラバガニだ」

 

「えッ!?た、タラバガニッ!?……私、おかわりしちゃった」

 

「なーに、大丈夫さ。今回はミラちゃんの為に獲ってきたらいくらでも食べても構わないよ」

 

「え、あ……あ、ありがとうございます……」

 

 何故か私に対してとても優しく接してくれる。

 私だって、ここに連れて来られたからそれなりに覚悟はしていた……あのロッツに連れて来られて、この前みたいに儀式みたいなことをされて、体を弄ばれてるだけだと。

 ……けど、実際はそうではなかった。

 今でもロッツは嫌いだし、この人達は私を誘拐した悪い奴だから許す気も無い。

 けれど、私は何故この人達のがいる中で少しだけ……ほんの少しだけ笑っているのか分からなかった。

 

「貴方達、ちゃんとカニを食べなさいよ〜。ほら、ちゃんと剥いてあげるから♡……フンッ!」

 

「……やっぱりロンの奴、普通に化け物なだけだろ。って、まだ落ち込んでんのかよロリコン野郎」

 

「黙れストーカー野郎。あの軌道ならちゃんとあの子に当たった筈だったんだ……けど、なんであのシンフォギア装者に当たるんだよぉッ!最後の矢だったのにぃッ!」

 

「あー……確かにそうだったな。アレって最初に見た男性の事が好きになっていく哲学兵装だろ?確か、モチーフはキューピットの──」

 

「違うわ。カーマの弓と矢だよ。ただ、この矢は30年に奇跡的に出来た矢だったからな。俺も使うのは初めてだったから効果は知らん。……はぁ、俺の幼女ライフが……」

 

「何話してるの?ガイさん、ルッツさん」

 

「ん?あぁ、ちょっとこのロリコン野郎がやらかしたのを聞いてただけだよ。ミラちゃんは気にしないでいいさ」

 

「……私、何度言ってるけどわたあめ」

 

「あぁ、知ってるさ。でもボスにそう言えって言われてるからさ」

 

「……むぅ」

 

「はぁ……またあの子に逢いたい」

 

「まだ言ってんのかコイツ」

 

 

 




次回俺、現在 I LOVE中ッ!


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俺、現在 I LOVE中ッ!

暴走マリア……しかし、それでもマリアさん。


「ちょちょちょ、ちょっとマリアさんッ!?い、いきなりどうしたんですかッ!お、俺のこと好きって……ほ、本気なんですかッ!」

 

「えぇ、当たり前じゃない。私、わたあめの姿を見た時から貴方の事が好きで好きで堪らなッ……くないわッ!わ、私はいきなり貴方が好きになるなんて有り得な、くなんてないわッ!わたあめッ!私と付き合って結婚しましょうッ!」

 

「え、え……えぇ……」

 

 俺は今……とある美女から付き合って結婚して欲しいと今この場で告白されてしまった。

 その相手は、まさかのマリアさんであって、マリアさんはそう言いながら俺に思いっきり抱きしめながら幸せそうな笑顔でこちらを見ていた。

 ……正直、まさかこうなるとは全く思っていなかったのだが……どうしてこうなった。

 

「ま、マリアさんッ!とりあえず落ち着いてくださいッ!俺、いきなりそんな事を言われても困るんですが……」

 

「大丈夫よ。返事はいくらでも待ってあげるわ♡。……けど、私もそんなに待つつもりもな……いわよッ!わ、わたあめッ!私からい、今すぐ離れてくれないかし、ら……」

 

「え、あ……え?マリアさん、その、大丈夫ですか?さっきから情緒不安定な気がす……ん?マリアさんってそんなに目が赤かったですかね?」

 

「ッ!?ダメよッ!今の状態で私の顔を覗き込まないでッ!貴方の顔が映ると……格好良く見えて好きになっちゃったのよ♡」

 

「え、うわッ!?ま、マリアさんッ!やめ──」

 

 すると、マリアさんは俺を押し倒して、今度は俺に甘えるように俺に密着してくる。

 本当ならば俺はマリアさんを突き飛ばして逃げないといけない気がするのだが、狐の俺を拾ってくれた恩人にそんなことが出来ずに最低限の力で俺は抵抗する。

 

「あぁ。やっぱり貴方は男の子なのね。顔は女の子みたいなのに体はこんなにしっかりしてて……私──」

 

「ま、マリアさんッ!何を──」

 

「それ以上はダメデースッ!」

 

「わたあめッ!こっちッ!」

 

「うぉッ!?ちょ、切歌さんに調ちゃんッ!?コンビニに買い物に行った筈じゃ……」

 

「話は後。今はマリアを大人しくさせないと。だから、わたあめと私は外に出てマリアから離れるから……切ちゃんッ!」

 

「ガッテンデスよッ!」

 

 そして、俺は調さんに手を握られたまま外に連れて行かれる。

 果たして、マリアさんは大丈夫なのだろうか?そもそも、残された切歌さんもあのマリアさんを止められるのだろうか?

 

 

「……切歌、そこをどきなさい。私はわたあめに用があるのよ」

 

「ダメに決まってるデスッ!そもそも、あたし達が監視していたから良かったデスけど、あのままだと……は、恥ずかしいからこれ以上は言わないデスッ!」

 

「聞きなさい切歌。私はわたあめのことが好きで好きで堪らないの……貴方も私の邪魔をするのなら、切歌……貴方をここッ……わ、私は……そんな感情を抱くには早すぎるのよッ!ハァ……ハァ……」

 

「ま、マリアッ!だ、大丈──」

 

「切歌ッ!」

 

「デスッ!?」

 

「……いい?今すぐに誰でもいいから、この部屋に、最低限でも2人、以上は連れて……来て。そして、私を今すぐにエルフ、ナインに体を調べ、てもらって……ッ!早、く……しなさい」

 

「マリアッ!で、でも……それじゃあマリアが……」

 

「早くしなさいッ!まだ私の意識がはっきりしているうちに早ッ……く、じゃないと……私、また……」

 

「……分かったデス。マリアを止められる人物を呼んでくるデスッ!」

 

──ピッ……プルプルプル……ガチャッ

 

『ん?どうしたんだ切歌くん。一体何が──』

 

「話は後デスッ!司令ッ!今すぐにわたあめの部屋に来て欲しいデスッ!」




次回私、現在馴染み中ッ!


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私、現在馴染み中ッ!

あぁ……パソコンがほちぃ。後時間……


「えっと……こう?」

 

「そうよ。いい感じ……でも、まだ出来るでしょ?」

 

「だ、ダメ。これ以上は……これ以上は無理なのぉッ!」

 

「無理でもやりなさい。じゃないと今晩はチャイナ服を着て晩御飯を食べて貰うわよ」

 

「ダメダメダメッ!これ以上は無理なのッ!出ちゃうッ!もう出ちゃうからッ!あ──」

 

──ピカッ、ドカーンッ!

 

「……いいわね。中々の威力よ」

 

「ハァ、ハァ……ありがとうございますロンさん」

 

 宴会が終わり、その日から4日が過ぎた頃……私はいつも通りロンさんと一緒に自分を強くする為に力を制御するように鍛えている最中だった。

 正直、私はロンさんからのお仕置きが嫌で必死にやっていたが、その甲斐あって私は最初の頃と比べてみたらかなり成長したような気は私はしている……多分。

 

「……さて、そろそろ休憩しましょうか。はい、お水」

 

「はい、ありがとうございま……って、錬金術師もペットボトルを使うんですね」

 

「当たり前じゃない。なんなら私達は自動販売機やマ〇クで買ってたりしてるわよ?ほんと……いい時代になったわよね……」

 

「い、違和感が凄い……でも、ロンさんってなんで私にここまでしてくれるんですか?普通なら、ここまでしてくれる人達なんて──」

 

「そうでもないわよ。貴方は私をかなり信頼してるようだけど、本当は私の仲間達はいい男達ばかりなのよ♪」

 

 ロンさんはそう言って、ペットボトル2Lの水を一気に飲み干して何事も無かったかのような顔で私を見てくる……まず、ロンさんは人間なのだろうか?分からない。

 

「んー……そうね。なら、今から確かめて見る?」

 

「……え?」

 

 

「Heyッ!調子はどうよッ!」

 

「んや。まだ調整が微妙……誰かあの本持ってきてくれん?」

 

「ほれ。これやろ」

 

「そうそう……ってこれ、昨日買ったお前のエロ本じゃんッ!」

 

「あ、悪ぃな」

 

「……余計怪しいんだけど」

 

「あれがここでは普通だから気にしないでいいわ。だけど、静かに見てましょうね……多分、貴方は私達がやっていることに嫌いにならないから」

 

 私はしばらくして、とある錬金術師達の仕事場にロンさんと見学しに来ていた。

 ロンさんの提案でこの仕事場に来たのはいいんだけど……なんでこんなに近くにいるのにバレないんだろ?

 

「……今、なんでバレないって思ったでしょ?」

 

「ッ!?う、うん……どうして?」

 

「これは、私の哲学兵装……確か、何かの帽子って名前だったけど忘れちゃったわ。これで、儀式の日には私の仲間を救出出来たのよ」

 

「……せめて名前覚えようよ」

 

 そんなことを話している内に、ここの錬金術師達の仕事に変化が起きた。

 私は最初、この錬金術師達は変態じみた研究でもしてるんだろうなっと思っていたが、実際に見てみると内容は随分違った。

 

「……お?これいいんじゃないか?」

 

「ん?……え、これ出来たのか?何か……凄い固形だけど」

 

「食べるか?一般人用に改良したんだが……」

 

「じゃ、頂くわ。あむ…………んー……これ、チョコか?」

 

「正解だ。約150年は食べれるチョコだ……まだ試作だけどな。これで貧困が減ればいいんだけどなぁ……」

 

「仕方ねぇよ。世の中そんなに甘くはないさ……てか、そもそも錬金術にこだわり過ぎなんだよな。あのパヴァリア秘密結社はさ……あそこは真面目な奴が多かったし、非道だった所もあったから嫌だったんだよなぁ」

 

「分かる分かる。そう考えると……俺達ってボスがいなかったら他の錬金術師にかなり言われてたからな。そりゃもうバッシングの嵐でさ」

 

「ほんと……ついて行ったのがボスで良かったな。俺達」

 

「…………」

 

「分かった?これが私達の仲間がやっている仕事場よ」

 

 私が目にしたのは、錬金術師達が必死に長持ちするチョコの研究をしている姿を見た。

 正直、何故チョコを研究しているのかは最初は分からなかったが、錬金術師達の話を聞いて、私は……余計錬金術師達のことがわからなくなってきた。

 

「私達の活動は基本は貧困や戦争で困った人達の援助を行っているの……だから、ここの男達はみんないい奴なのよ」

 

「……私には分からない。だって、私は──」

 

「……時間はまだ沢山あるから悩みなさいコンちゃん。それじゃ、戻りましょうか」

 

「…………」




次回俺、現在同居中ッ!


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俺、現在同居中ッ!

これが……自己PR……( ´-ω- )フッ、おrrrrrr


「はぁ……次から次へと問題が起きるとは。しかも、今回の被害者は──」

 

「フーッ……フーッ……だ、大丈夫よ。まだ、わたあめが狐になってるからそれなりに抑えられるわ。けど、それでも暴れそうな時はお願い……」

 

「キュー……」(まさかまたこの姿になるとはなぁ……)

 

「何とかマリアも落ち着いたデスが、狐になったわたあめがやっぱりデカいんデスよねぇー……」

 

「でも、わたあめの体……とっても暖かいよ切ちゃん」

 

「あ、それは分かるデス。マリアがわたあめから離れないのは仕方ないデスが、こんなにもふもふだと離れたくないデスよねぇー……」

 

「キュ、キュー……」(あの、凄い動きにくいんですが……)

 

 俺はマリアさんがいきなり告白をされた後から2日が経過した頃、俺は現在人間の姿から狐の姿に変化して暴走したマリアさんをこれ以上暴走させない為の対処で姿を変えていた。

 実際これには訳があり、最初マリアさんが暴走した時に俺と調さんはマリアさんから逃げている最中だった。

 しかし、逃げている途中から調さんのスマホから司令からの連絡があり、すぐに戻った。

 そして、戻った時にすぐにマリアさんが復活した瞬間、咄嗟の判断で狐に戻るとマリアさんの暴走が自我が保てる程に収まったので俺はその日から現在まで狐のままで過ごしている。

 

「皆さんッ!マリアさんのこの症状による結果が出ましたッ!」

 

「よくやったエルフナイン……それで、結果はどうなんだ?」

 

「はい。マリアさんの症状は哲学兵装……つまり、何かしらの影響によってかかった呪いみたいな症状だと僕は仮定しています」

 

「仮定……つまりまだ現時点でははっきり分かっていないのか?」

 

「いえ、その呪いによるものが対象を好きになる結びみたいな症状だと言うのが分かるのですが……この哲学兵装を作った人がどうやってこんな奇跡的な哲学兵装を作ったのか不思議で……」

 

「……マリア、君はこの前の戦いで錬金術師に何かされたことはなかったか?小さなことでもいい……簡単なことだ」

 

「……あの戦いで、調を庇った時の矢を受けた時からかしら……ッ!フーッ、フーッ……えぇ、大丈夫……大丈夫よ」

 

「キュー」(話についていけないし、マリアさんが大丈夫ではないんですが)

 

 司令達が何やら壮大な話をしているのが俺にはよく分かっていたのだが、その内容は多分、俺の知らない記憶での話の中と言うことに気が付いたので、正直話の内容は聞いても分からないので聞かなかった。

 

「それで、マリアは元に戻るの?」

 

「おそらく現段階では難しいかと……ただ、方法は2つあります」

 

「2つ……デスか?」

 

「はい。1つ目はそのマリアさんに仕掛けてきた錬金術師が死亡した場合、おそらくですがマリアさんは元に戻るかと」

 

「ッ!?……また、私達は傷つかなければいけないの……」

 

 どうやら、話がかなり物騒になってきたので俺はとりあえず震えているマリアさんをしっぽで包んで落ち着かせる……でも、暴走はしないでね?

 

「……ありがとうわたあめ。結婚しましょう」

 

「ッ!?マリアッ!しっかり自我を保つデスッ!」

 

「ッ!?ご、ごめんなさい。スゥー……ハァー……大丈夫、問題ないわ。それでエルフナイン、もう1つの方法は?私は出来れば人を殺したくない方法を選ぶわ……教えてちょうだい」

 

「えっと……そのもう1つの方法なんですが……」

 

 すると、エルフナインが顔を赤くして恥ずかしそうにしながらこちらをチラチラと俺を見てくる。

 ……エルフナインもこの体を触りたいのか?別にいいけど。

 

「……マリアさん、本当にその方法でいいんですね?」

 

「えぇ、みんなには迷惑をかけたくないわ。だからエルフナイン……教えてちょうだい」

 

「……分かりました。では、もう1つの方法を教えます……それは──」

 

 

「……は、はい。わたあめ……あ、あーん♡」

 

「……いや、何故そうなった」




次回私、現在求め中ッ!


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私、現在求め中ッ!

えっと……やべぇよ。


「……ロッツが呼んでる?」

 

「あぁ、ミラちゃんに用があるからこの部屋に来てくれって。もしかして何かやることがあったのか?」

 

「いや、やることはないけど……私、ロッツは嫌い。後、何度も言ってるけど私はわたあめ」

 

「いやまぁ……ミラちゃんの本当の名前はそうだとしてもボスが決めたことだからさ。とりあえずこの部屋にボスはいるから。はい、これでも食べて機嫌を直してよ」

 

「ッ!ま、マカロンッ!」

 

「それじゃ、僕は失礼するよ」

 

 そう言って、その錬金術師の人はそのまま何処かに行ってしまった。

 ……実際、ここに連れて来られてから様々なことがあった。

 最近に関しては、私に稽古をつけてくれるロンさんや変態だけど仕事に関することはとても真面目……しかも、錬金術師の人達はロッツ以外はみんなが私を優しく接してくれて、私は本当に錬金術師のことが分からなくなってきた。

 

「……あまり、行きたくないけど」

 

 私は正直ものすごく行きたくない気持ちがあったのだが、さっきマカロンをくれた錬金術師の人が私が行かなかったせいで怒られるのが嫌だったので、すぐにその部屋に向かった。

 

「……来たか」

 

「……何」

 

「とりあえず座れ。お前についての話だ」

 

 私はそう言われてロッツが指さしたソファに座ると、ロッツがゆっくりと立ち上がって何やらゴソゴソと何かをし始めた。

 

「……何、してるの?」

 

「ココアとコーヒー……どちらがいい」

 

「え、あ……こ、コーヒー……」

 

「……そうか」

 

 ロッツはそう言った後に自分用のコーヒーと私用のコーヒーを入れると、そのコーヒーの入ったコップを私の前に置いて、ロッツは再び自分の椅子に腰を下ろしてゆっくりとコーヒーを飲み始めた。

 

「……ありがと」

 

「あぁ」

 

「「…………」」

 

 私とロッツは1回だけコーヒーを飲んだ後に、その空間で少しだけの静寂が起きて、気まずさが出てきた時にロッツが口を開いた。

 

「……すまなかったな」

 

「……え……なんで、謝る……の」

 

「今回の件については本当に悪かったと俺もかなり考えてな。正直、ここまでの事態になるとは思わなかったんだ……本当にすまなかった」

 

 すると、何をいい出すかと思えば、まさかのロッツが私に謝ってきたのだ。

 ロッツは私に謝罪した後にゆっくりと頭を下げて謝罪の誠意を表していたが、私は……許せなかった。

 

「……許さない。絶対に許さないッ!」

 

「…………」

 

「なんで私なのッ!なんで……なんで私がこんな目に遭わないといけないのよッ!ロッツのせいだッ!お前がッ!私を誘拐なんてしなきゃッ!」

 

「……あぁ、俺は許さないの当然だろう」

 

 当たり前だ。

 私を誘拐して、こんな体にした挙句にあれだけのことをしておいて私はロッツのことが許せる筈がなかった。

 それなのに、この男は今更私に謝罪をしてきたのだ……私はこんな、こんな──

 

「許さないッ!」

 

「グァ……ッ!……ッッ」

 

「私はお前がいなかったら今頃はもう、大学4年生で動物に関した仕事に就いて幸せな人生を送る筈だった……だけど、お前のせいで全てがめちゃくちゃになって……お前が憎い、憎い憎い憎いィッ!」

 

 私はそう言いながらロッツに近づいて、ロッツの胸ぐらを掴む。

 私の体からは抑えきれない炎が周りから少しづつだが、溢れていてこのまま行けば、私はロッツを今すぐにでも殺すことが出来た。

 ……だけど、私は──

 

「お前なんてッ!お前なんてぇッ!殺すッ!殺し……て……」

 

「……貴様が俺を殺すことは出来ない。やめておけ」

 

「うるさいッ!私はッ!……お前を……うわあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

──グシュ

 

「グフッ、躊躇う、ことな、く首を狙うか……」

 

「ハァ、ハァ……わた、私は……人を……」

 

「いや、ガハッ……これで、いい……」

 

 私はあまりの怒りのあまりにロッツの首を刺すと、そこから沢山の血が溢れてくる。

 私は、勢いのあまりロッツを首を刺してしまった恐怖と血が溢れてくる様子を見てすぐに体に力が入らないでロッツから後退するが、ロッツはまるでこうしてくれてありがとうと言わんばかりの顔で私に優しい笑顔をみしていた。

 

「ハァ、ハァ……閉じよ。これで、私の首のアレは、無くなっ、た」

 

「え、あ……え、ち、血が……私が、あぁ」

 

「ボス〜次の仕事についてで……ッ!ボスッ!」

 

「グフッ……あぁ、ガイか」

 

「ボスッ!しっかりしてくださいボスッ!ミラッ!お前ッ!ボスに何をしたッ!」

 

「わ、私は……私は……」

 

 見られた……私がロッツを刺したことを見られた……私、殺しちゃったんだ。

 ……怖い、怖いよマリアさん……私、私ぃ……

 

「が、ガイ……俺は、まだ大丈夫だ。だが、俺からの最後の、命令だ」

 

「ボスッ!起き上がらないでくださいッ!大丈夫ですッ!今すぐ仇を──」

 

「み、ミラを……ミラを守り、シンフォギ、ア装者の場所……に向かえ。今すぐに、だ」

 

「え?」

 

「ボスッ!何故ですかッ!なん、ッ!……首に従属の、リング。どうしてボスがッ!」

 

「早く、行け……ミラの、従属のリン、グと奴隷の呪、印は……俺が全て解いただから……行け」

 

「しかし、ボ──」

 

「行けと言っているだろうッ!ガイッ!」

 

「ッ!……来いッ!ミラッ!」

 

「え、あ……きゃあッ!」

 

 私は一体何が起きているのか全く分からない状態で、私はガイにそのまま連れて行かれる。

 何故ロッツはこんなことをしたのか、何故ガイは泣いているのか……私には分からない……何も分かりたくなかった。

 

 

「おーい、お前ら次の仕事についてな……お、おいお前らッ!…………死んで、る。だ、誰が俺達の仲間を──」

 

──ゴキッ

 

「あ──」

 

「んー……全く、1人1人は大変ねぇ。血もドロドロするから首を折った方が楽ねぇ〜」

 

「え、あ……なん、でロ──」

 

──グチャッ!

 

「あら?ごめんなさい♡……さて、ボスがまさかアレを外せたなんて。でも、もう時は来たわ。待っててね……コンちゃん♪」

 

 

 

 




次回俺、現在恋人(仮)中ッ!


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俺、現在恋人(仮)中ッ!

……履歴書、志望動機、自己PR、長所短所……うっ頭が……


 あれからどれくらいの時間が過ぎただろうか。3日……いやカレンダーを見ると、正確にはもう1週間が過ぎていた。

 マリアさんがその……哲学兵装って物の影響によってあれから色々と大変だった。

 なんせ、狐から人間に戻った瞬間にマリアさんは俺を見て甘える仕草が増え、口を開けばただただ愛しているや大好き等のラブラブカップルが言いそうな言葉ばかり言うようになり、最終的にはもうこのまるで新婚みたいな状況に慣れてしまった俺自身が怖かった。いや、普通にマリアさんは美人だからそんなことを言われて嬉しいよ?……ただ──

 

「……あの、マリアさん?」

 

「何かしらわたあめ。もしかして味が合わなかったかしら?もし、そうならごめんなさい……」

 

「いやッ!そんなに落ち込まなくて大丈夫ですよマリアさんッ!それよりも……本当にいいんですか?そんな力に影響されて俺を──」

 

「気にしないでいいわよ。これは私が選んだことだから……それに、貴方を好きになるようになれば、この呪いも無くなるなら問題ないわ。それに、エルフナインに言われ言葉にちょっと……ね……」

 

「あれは……うん、無知は怖いですから」

 

 マリアさんが少しだけ落ち込み、俺が微妙な反応した訳は1週間前……エルフナインが言ったもう1つの方法に理由があった。

 

『……分かりました。では、もう1つの方法を教えます……それは──』

 

『それは?』

 

『マリアさんがわたあめさんを好きになる……もしくはそれに近い好意を持つことが出来ればマリアさんの今の状態を何とか出来ると私は考えています』

 

『わたあめに近しい好意……ってことはマリアがわたあめを好きにならないと』

 

『一生このままデスかッ!?』

 

『はい……残念ながら、今マリアさんに対してこのような呪いをかけた錬金術師がいれば戻すことは出来るのですが、今の現状だとその呪いを逆手に取らなければ対抗策がなくて……』

 

『……なら、私は別に構わないわ』

 

『マリアッ!?……本当にいいの』

 

『えぇ、それしか方法が無いなら私はそちらの方法を選ぶわ……大丈夫よ。そもそも私はわたあめのことなんて嫌いと思ったことはないから』

 

『なら、いいんデスけど……』

 

『すみません。僕が不甲斐ないばかりに……でも、やっぱりマリアさんは凄いですッ!こんなに早く決断するなんて僕も思ってなくて……とりあえず参考にこれしか用意できませんでした』

 

『これって……ゼ〇シィよね?なんでエルフナインがゼ〇シィを持ってるのかしら?』

 

『えっと、マリアさんが何度か読んでる姿を見たので、その参考になるかと思って買ったんですが、僕にはあまりよく分からなくて……これを毎月読んでいるマリアさんは凄いって僕、改めてマリアさんを尊敬しましたッ!』

 

『グフッッ!?……え、えぇ……あ、ありがとう』

 

 ……と、このような出来事があったので今に至る。

 今は俺はマリアさんの部屋で同居……いや、正確には同棲(仮)みたいな状況に陥っているのだが、これはマリアさんが元に戻る為に同棲しているのであって決して不純な考えを抱いている訳では無いのだ。

 そして、俺とマリアさんが同棲している間は、今も司令が錬金術師達を探していて、もう1人の俺の捜索をしているのだが、果たして──

 

「ご馳走様でした」

 

「ふふっ、お粗末♪」

 

「……さて、そろそろお風呂に──」

 

「ダメよ。わたあめ……まだやることがあるでしょ?」

 

「やること?それって何ですか?」

 

「決まってるでしょ?……その、私と一緒に……ね♡」

 

「……そう、ですね」

 

 錬金術師達が見つかる前に、俺は耐えられるだろうか……




次回私、現在逃走中ッ!


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私、現在逃走中ッ!

……( ᐛ)バナナ


「ねぇガイッ!ガイってばッ!」

 

「口を閉じとけミラッ!出口まで早く行かないと手遅れになるッ!」

 

「でも、ロッツはッ!」

 

「ボスは手遅れだッ!俺はボスの最後の命令を成し遂げなければいけない義務があるんだッ!クソッ!どうしてこんなことに……」

 

 私は今、ロッツを瀕死にまで追い込んでしまった後にガイが来て、ロッツの命令により、アジトの出口までガイが私を担いで走って向かっている途中だった。

 

「ハァ、ハァ……クソ、ここからだと少し遠──」

 

「ん?おいどうしたんだよロリコン野郎。ミラなんか担いで……もしかして、遂にロリコンを卒業してそっち系に……」

 

「ッ!?ルックかッ!お前もついてこいッ!今は逃げるぞッ!」

 

「え?ちょ、ちょっと待て。お前、もしかして家を抜けるのか?一体何が──」

 

「ボスからの命令だッ!ミラをシンフォギア装者のいる場所に連れていくッ!今は時間が無いッ!走りながら喋るッ!」

 

 そう言って、ガイは足を止めないままアジトの出口までひたすらに走り続ける。

 私を担いで走るガイに次いで、ルックも後を追いながらさっきまでの出来事を簡単ガイは説明する。

 

「つまり、ボスはもうダメなのか?」

 

「あぁ、多分ミラが無意識の内に操られてボスを襲ったと俺は考えてるがな」

 

「ッ!?……違う、私は……自分の意志で──」

 

「……ミラ、それこそ思い違いだ。それに、お前もボスも両方にあのリングが付いていたんだ。普通ならあれはお前だけしかあのリングを付いてるのは分かっていたが、ボスにも付いていた……つまり、ボスも操られていた可能性がある」

 

「そして、俺達はそのリングを持っていた……いや、作った人物を知っている。アレを作れるのただ1人──」

 

 ルックが何かを言いかけそうになった瞬間、アジトの出口が見えてそこから光が差し込でいた。

 ガイとルックはアジトの出口を見た瞬間、その出口に向かって勢い良くその出口のある方向に向かうが──

 

──ピキピキ、バキッ

 

「ッ!ガイッ!」

 

「分かっているッ!」

 

「きゃッ!……一体何が、ッ……」

 

「あら?ガイにルックじゃない。なんで貴方達がコンちゃんを連れて出口に向かってるのかしら。もしかして……ボスの命令ね」

 

「やはり、お前だったのかよ……裏切り者」

 

「……なぜ、なぜ裏切ったッ!ロンッ!」

 

「裏切る理由なんて簡単よ……初めから私は裏切り者だっただけ」

 

 私達が外に出ようとした時に、地面にヒビが入って、その地面を突き破った瞬間に現れたのはなんと、ロンさんだった。

 ロンさんが現れてから、2人はロンさんに裏切り者かをすぐに聞いて、どちらなのかを確かめようとしていたが、ロンさんはあっさりと自分が裏切り者だと言った……どうして……

 

「最初からって……お前が入る前からか」

 

「えぇ、元々はパヴァリアで日本の神について調べていたのだけど、最近になってようやく神の生き血が手に入ったからボスに対して特別なリングを用意してボスの命令で操ろうとしたのだけど……流石は幹部候補だっただけはあったわ。本来ならちゃっちゃとコンちゃんが狐になった瞬間に捕まえて終わりだったのにまさか逃げられるように仕向けられるなんて思わなかったわ」

 

「そうか。だが、お前はただ俺達と話をしに来た訳ではないんだろ?」

 

「勿論よ。その子を渡しなさい。そしたら、楽に殺してあげるわ……あの子達のようにね」

 

「ッ!まさかッ!……てめぇ、ロンッ!仲間を……どれだけ殺したッ!」

 

「さぁ?ただ、もう錬金術師は貴方達2人とまだ残っている錬金術師達が数人程度……でしょうね。もう、大変だったんだから〜……1人1人殺すのは♡」

 

「構えろガイッ!」

 

「あぁッ!だが、俺達だけでアジトを抜け出せるか?……俺達まだロンに1回も──」

 

「……最悪、死ぬ覚悟をしろ」

 

「……あぁ」

 

 そして、2人は私を守りながら弓とナイフを構えて戦闘態勢に入る。

 それを見たロンさんも同じようにファイティングポーズで2人を迎え撃つ気で戦闘態勢に入っていた……きっと、このままでは2人は必ずロンさんに殺される。

 1ヶ月とは言わないが、私もロンさんとの模擬戦闘をしたことが何回もあったけど、本気になることは1回も無かった……だから、今のロンさんの目を見て分かる。

 ……あれは、殺される。

 

「……どうして」

 

「…………」

 

「……どうしてなの。ロンさん……どうして、どうして私を狙うのッ!最初から私を狙ってたのッ!なんでッ!」

 

「なんでって、そんなの簡単よ。貴方が1番社会的にも交流関係も趣味もその体も……全部扱いやすかったからよ。じゃないと貴方みたいな弱い子を選ばないわ」

 

「扱い、やす……かった?」

 

「えぇ。そ・れ・に……貴方が私に絶望して従順になったらそんなの──」

 

「……ふ、ふざけるなあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「興奮しちゃうじゃない♡」

 

「しまっ、待てッ!ミラッ!」

 

 私はガイの言葉も聞かないで、ロンさんに対して怒りで我を忘れて半獣化し、伸びた爪でロンさんを切り刻もうとして地面を蹴りだそうとした瞬間──

 

「おすわり」

 

「フギュッ!フーッ、フーッ!」

 

「ッ……あまり力を使わせるな、ミラ。だが、今は眠れ」

 

「誰、だ…え、あ……ロッ、ツ……?」

 

──バタッ

 

「「ぼ、ボスッ!」」

 

「あら?貴方まだ生きてたの?しかもその首……何故治ってるのかしら?」

 

「簡単な話だ。寿命の全てを使ってここに立っているだけだ……あの子を逃がす時間稼ぎにはなるだろう」

 

「ボスッ!なら、俺達も──」

 

「お前達のボスはもういない……いいか?お前達は最後の命令を遂行しろ」

 

「しかし、ボスッ!」

 

「2度も言わせるなッ!行けッ!」

 

「ッ!……今までありがとうございましたボスッ!」

 

──タタタッ

 

「…………」

 

「……行かせるのか?」

 

「えぇ。じゃないと貴方が私を殺しそうだもの……ってあら?ボスだけじゃなかったのかしら?」

 

「……何故逃げなかった。お前達」

 

「へへっ、ボスだけにいい格好はさせねぇよ」

 

「俺達がいる場所にはいつもボスがいたからな。俺、ロンをボコボコにしたら……フィギュア()と結婚するんだ」

 

「それに、ミラちゃんは私達の推し()なのですから……守るのは当たり前じゃないですか」

 

「お、おらもあの子に生きてて欲しんだな。ケモ耳巫女を守るのもお、おらの役目なんだな」

 

「……死に損ないが何の為に私に抗うのかしら?」

 

「……俺達にはそれぞれの夢がある」

 

「…………」

 

「その夢の為に俺達は戦っているだけだ……逝くぞッ!お前らッ!錬金術師のミラと夢の為に命を賭けろおおおおおぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!」」」」」」」」」」」」

 

「……そう、なら私も貴方達とはさ・よ・う・な・ら……ね♡」




次回初めまして……中。


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初めまして……中。

なんだかんだで時間が経ってしまった……これも志望動機とかバイトとか願書とかエ〇ァが悪いんだッ!……やっぱりエ〇ァンゲリオンは最高なんだよなぁ?


「……あのさ」

 

「どうしたのわたあめちゃん?もしかして……あっちの服が気になるのかなッ!」

 

「どうしてそんなに楽しそうなんだよッ!しかも、更っとワンピースとかスカートとか選んでるけど俺はお・と・こだからなッ!」

 

「冗談だって。冗談冗談〜♪」

 

「はぁ……やっぱり未来さんを連れて来るべきだった」

 

 あれから1週間が経過して、俺は今響さんと一緒に自分用の服を買いに来ていた。

 ……正直、俺の服の少なさでマリアさんが一緒に俺の服を選ぶと言って聞かないので、マリアさんと行く予定だったのだが、当日になると緒川さんからの連絡があり、仕事でマリアさんは買い物に行けなくなってしまったのだ。

 ただ、マリアさんは呪いのせいで俺と買い物に行くと言って暴れそうになっていたので、切歌さんと調さんに頼んで連れて行ってもらったのだ……切歌さんはともかく、調さんがなんだかんだで1番優秀な気が──

 

「次はこれとかどうですかッ!可愛いいから着てみてよッ!」

 

「レディース……せめてメンズで選んでくれ。てか、なんで響さんは俺について来たの。別に俺に付き合わなくてもいい気がするんだが」

 

「いいじゃないですか〜。そもそも私、切歌ちゃんと調ちゃんと遊んでいた筈だったのにいきなりわたあめちゃんから電話掛かってきて行ってみたらマリアさんがわたあめちゃんに離れなくて最終的に勝手に解散させられた時の私の気持ち……分かります?」

 

「……いや、楽しみしていた所を邪魔したのは悪かったと思うよ?けどね……わざわざその買い物に付き合うってちょっと違う気が──」

 

「そもそもこうして外に出られるのは私を含めた装者が護衛する条件で出られるんですから、別にいいじゃないですか〜♪」

 

「まぁ、そうだけど……複雑だなぁ」

 

 そうして、俺は買い物……なのだが、さっきからほとんど響さんに女装ばかりさせられて正直もう諦めの境地に至ろうとしていた……そう思っていた時に事件は起きた。

 

「きゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!ノイズよぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!」

 

「逃げろぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!」

 

「ッ!?わたあめちゃんッ!私ちょっと行ってくるからこの場から離れてッ!」

 

「わ、分かったッ!」

 

 遠くからいきなり爆発音が聞こえて、その爆発音がしたあたりから大量の人々がなだれ込むように逃げてきた。

 響さんはその爆発音を聞いた瞬間にすぐにその発信源の場所に向かったが、俺は響さんに言われた通りに逃げようとしていた。

 だが──

 

「は、早く逃げないと──」

 

「邪魔だッ!どけッ!」

 

──ドンッ

 

「……うおッ!?」

 

──ドサッ

 

「いつつ……周りをちゃんと見てほし──」

 

 俺はガタイのいい男に突き飛ばされてそのまま地面に倒れる。

 幸い、肩に当たった程度だったのでそこまで少しムカついただけぐらいだったが、次の瞬間俺の目に映ったのは……沢山の人の集団の靴の裏だった。

 

「あ」

 

 あぁ……最近は本当に、ついてない。

 

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!!ストーカー野郎ッ!パスッ!」

 

「ちょ、こっちにミラを投げてくんなあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!って軽ッ!しかも……以外と巨乳だぞッ!これが隠れ巨乳って奴かッ!」

 

「馬鹿野郎ッ!何冷静にミラの胸を触って分析してやがるッ!こっちに大量にノイズが来てんだから片手で処理ぐらいし、って危なッ!?」

 

「分かってるってのッ!早く向かわなあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!緊急回避ぃッ!」

 

「……んぅ……あぇ?一体何──」

 

「矢がなくなったッ!走れぇッ!」

 

「え、えッ!?ちょ、な、何が起きてるのッ!」

 

 しばらくして、私が目を覚ますとガイとルックは何故か全力でノイズ達から逃げていて、そのノイズ達が沢山私達を追ってくる様子を私は目撃……いや、現在体験している最中だった。

 私が眠らされたことまでは覚えているが、知らない間にこの2人は何故ノイズ達に襲われているのかが逆に疑問だった。

 ……だけど、このノイズ達を出現させて追いかけている目的は多分、ロンさんがやったのだろう……きっと、ロッツも既に──

 

「ッ!?起きたかッ!ミラッ!悪いが走れるかッ!」

 

「走れるけど……まさか、ダメッ!2人共死んじゃうッ!」

 

「俺達がこんな場所でくたばるかよッ!だが、今はお前が最優先なんだッ!よく見て見ろッ!ノイズが減らないってことはロンが段々こっちに向かっている証拠なんだッ!だから行けッ!」

 

「ヤダッ!私は2人を見捨てられないッ!私は──」

 

「危ねぇッ!ミラッ!」

 

 すると、ルックが私のことを庇ってそのノイズが左腕に突き刺さる。

 私はその光景を見て必死にルックの名前を叫ぼうとしたが、ノイズによる炭素化で灰になる前にルックは再び私をガイに思いっきり投げ飛ばす。

 そして、ルックは自分の左腕を──

 

「ルックッ!」

 

「俺はいいッ!行けッ!左腕は捨てるッ!フンッ!」

 

「ルックッ!いや、嫌だッ!ルックぅッ!」

 

「まだルックは死んでねぇよッ!ミラッ!おいルックッ!死んだら女子高生の姿が見れなくなるのは辛いよなぁッ!」

 

「ッ〜〜〜……た、たり前だぁッ!まだ行けるッ!片腕だけで戦ってやるよッ!」

 

 2人は何とかその場を必死に乗り越えて逃げているが、今の状態は私でも分かる……これはもう、ダメだと。

 

「……もう、いいよ。2人共、私を置いていって……そうすれば2人は──」

 

「「だが断るッ!」」

 

「ッ!なんでッ!このままだと2人は本当に死んじゃうッ!……逃げてよぉ……」

 

「……ハッ、そりゃ無理な話だ」

 

「そもそも俺達はアレだからな」

 

「ア、レ……?」

 

「「アレって言ったら勿論……変態紳士だからなッ!」」

 

 そうして、2人はノイズに向かって立ち向かう体勢に入る……多分、普段ならば私はその言葉に対して呆れるか軽蔑するかの2択だったが、今だけ……今だけは本当にかっこいいなんて思ってしまった。

 ……だがしかし、現状は変わらない。

 

「ガイッ!ルックッ!」

 

「行けッ!お前だけでも早くッ!」

 

「ヤダッ!私はッ!」

 

「行けって言ってんだ、ろッ!」

 

「ッ!……誰か……誰か2人を助けてッ!」

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 その瞬間、歌が聞こえた。




次回シンフォギア……中。


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シンフォギア……中。

ひっさしぶりに投稿。しかも、今日はエイプリルフール……よ、よし。俺はピーッ(放送・発言禁じられた音)だッ!よ、よしッ!言ってや……え?ちっちゃいシェム・ハ?なにそれ可愛いよ( ^∀^)ニコォ...


「どりゃあああああぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!」

 

「あれは、誰?……いや、あの人に見覚えが──」

 

 私達がノイズ達に囲まれてそのままノイズ達によって2人が殺られそうになった時、突如後ろからまるで一撃必殺の槍のような勢いでバトルスーツのようなピチピチのスーツを着た女性が現れて、そのままその拳によってそのノイズ達は一気に吹き飛ばされた。

 

「大丈夫ですかッ!すぐに逃げてくださ……って、うぇッ!?錬金術師ッ!?……え、えっと……む、無駄な抵抗はやめて大人しくご同行をお願いしますッ!」

 

「ちょッ!?今は俺達よりノイズを倒せッ!後でいくらでも捕まってやるからッ!」

 

「そうだぞッ!自慢じゃないが、今の俺達にアルカノイズを操ることは出来ないし、俺の腕を見ろッ!自分で切り落とさなかったらヤバかったんだからなッ!」

 

「……えっと、確かに助かりたい気持ちがあるってことが分かったんですが……プライドは──」

 

「「無いッ!」」

 

「まさかの即答ッ!?」

 

 そんなやり取りをしている間に、ノイズ達は私達の状況など無視して突進してくる。

 だが、そんなやり取りをしているにも関わらず、彼女は正拳突きや蹴りでそのノイズ達を一体ずつ、確実に倒していた。

 ……しかし、私は……彼女のことを何処かで見たことがあったような気が──

 

「せいッ!次は……ッ!逃げてッ!」

 

「ッ!?しま──」

 

 その瞬間、私の目に映ったのは一体のノイズが私に向かって突進してくる姿だった。

 私は急いで避けようとしてそのノイズを回避しようしたが、運悪く足を捻って体勢を崩した。

 私にも今まで特訓して身についた力があるのだが、今更その力を使おうとしても間に合わず、目を閉じて死を待つだけ……の筈だった。

 

──ガブッ

 

「ッ……え?」

 

「へッ、へッ……キュ、キュー」(ハァ、ハァ……い、いやぁ〜危なかった〜)

 

「い、い……いや、狼?」

 

「キュ、キュウッ!」(おいコラ、今犬って言おうとしただろ。しかも、狼じゃなくて狐だよッ!)

 

「いやだって……ね?その、なんかデカいし、狼みたいに見えるし……」

 

「キュウ……キュ?キュウ」(いやだから狼じゃ……あれ?なんで俺が狐の状態なのに言葉わかるんだよ)

 

 いきなり私は何かに掴まれた……いや、正確には引っ張られたの方が正しいだろう。

 まぁ、お陰で私が何とか助かったのでホッとしながら後ろを向くと、私の服を咥えたまま喋る狐の姿がそこにはあった。

 咄嗟に反応して話しちゃったけど、普通に考えたらこのデカい狐の言葉が分かる私も相当ヤバいような……。

 

「おりゃッ!……フゥ〜……ッ!わたあめちゃんッ!ってなんで狐になってるのッ!」

 

「いや、私は狐にはなってないんだけど……」

 

「キュウキュウ」(……いや、今の反応は俺やろ。てか、普通にあのまま踏まれてたら流石に俺が死ぬわ)

 

「踏まれるって……何があったの?」

 

「キュウ」(響さんがノイズがいる場所に走る、逃げる、なだれ込んできた集団、コケた……OK?)

 

「え、あ……う、うん。なんか、その……どんまい」

 

 今の会話で何となくだが、少しだけ分かったことがある……今の会話だけでこの狐が響さんと言った辺りで彼女があの立花響さんだってことをようやく思い出した。

 だけど、今はそんなことを考えている場合ではない。

 早く、2人を安全な所に連れて行かないとノイズ達に襲われ──

 

「助けに来たデースッ!」

 

「キュッ!?」(そ、空から切歌さぁんッ!?)

 

「切歌ちゃんッ!調ちゃんッ!」

 

「響さん助けに来ました。後は私達があの錬金術師達の相手を──」

 

「ちょ、ちょっと待って調ちゃんッ!今はその2人は敵じゃないからッ!ねッ!」

 

「……じーーーーー」

 

「……やべぇぞロリコン野郎。なんか、シンフォギア装者に会った途端に俺達がやったみたいな雰囲気になってるんだが……っておい、聞いてるのか?」

 

「……フッ、小さな女の子に睨まれるなんて……最高だな」

 

「……なんか、平常運転で逆に安心したわ」

 

 ……てはいなかった。

 逆にあの2人は他のシンフォギア装者に助けられていて、どうやら私達は助かったようだ。

 しかし、そんなことを考えると緊張が解けたのか、私は段々と体に疲れが現れ始め、そして──

 

「あぁ……私達、生き残っ、たん、だ……」

 

「キュ?キュウ」(ん?おい、大丈夫か……って寝てる。しかも、この顔に喋り方は──)

 

「おーいッ!わたあめちゃーんッ!」

 

「……キュウ」(……せめて、ちゃんはやめて欲しいんだが……俺、男だし)




次回保護……中。


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