運命と牙の奏でる協奏曲 (クレナイハルハ)
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if。主人公の特典が仮面ライダーリュウガだった世界

生存報告と、今後もこのようなifを書くことが多いかもしれないと言う告知です

今回はリュウガですが他にはゼロノス、グリスのifも考えております。

それと今作品のifに着いての説明ですが、ほとんどソノヒの乗りと勢いで書き上げているため、時間軸がおかしいです。そして本編には全く関係のないifの世界軸なのをお忘れなく

それでは、お楽しみください





渡side

 

休日、僕は学校から近い場所の公園にある木製のテーブルとイスのある場所に座って休んでいた

 

この世界、Fate/Kaleid linerプリズマイリヤの世界に転生してからイレギュラーな事が起こったのだ

 

やはり、僕と言うイレギュラーな存在のせいなのか、士郎がイリヤがクラスカードの回収を知っており何故か自身が手伝ったりしている他に

 

更にはこの世界にはミラーモンスターが居たのだ

 

僕が夜な夜なミラーモンスターと戦ってる事は誰にも言ってない

 

たまに、イリヤ達のクラスカード戦闘も手伝ったりした

 

でも僕の特典、仮面ライダーリュウガの見た目のせいで遠坂さんや士郎、美遊やイリヤに敵視されたりした

 

ミラーモンスターと戦い

 

遅くに家に帰りセラに怒られ、黙って聞くが本当なら直ぐにでも自室にて横に成りたいのを耐えることか、大変だった

 

始まったのは高校1年の時だ、00としての活動で新都に出掛けるとき

 

ミラーモンスターの現れる金属音を聞き、モンスターを見て戦うことを決意した

 

今まで、僕は戦いで誰かに感謝されたこと何て一度も無い

 

どころか罵られたり、恐れられる事がほとんどだった

 

でも、それでいいんだ

 

ある人が見返りを期待したら、それは正義とは言わない、とそう言っていたから

 

例え恐れられても、僕はこの力でミラーモンスターから町を守る

 

綺麗事かもしれないけど

 

それが、この世界のイレギュラーとなり仮面ライダーとなった僕が背負うと決めた事だ

 

頭でそんな事を思い、改めて覚悟を決める

 

「はぁ、いい天気だな」

 

そう呟き空を見上げる

 

一応、出掛けるときに持つ荷物の一式はリュックに入れてきた

 

せっかくなのでテーブルを軽く払ってからリュックのノートパソコンを開き、作曲を行う

 

昨日の夜に作っていたのが、途中だったからだ

 

歌詞の続きを入力しながら、自販機で買ったお茶を飲む

 

耳に聞こえるのは、ノートパソコンのキーボードを叩く音と鳥の鳴き声

 

『Revolution』『Alive A Life』『果てなき希望』の三曲を連続で歌詞をソフトに打ち込む

 

ソフトに読み取らせ、楽譜をそれぞれに設定しイヤホンを接続して試し聞きしつつズレや速さを調整する

 

こんなことをしていられる時間が、僕は好きだ

 

全て忘れて自由にいられるから

 

マウスを設定し三曲の最終調整を終え、三曲をそれぞれ聞く

 

目だったズレと速さの問題は解決した

 

続いてMVを製作する、こっちは歌詞を入れたり背景をフリー画像か使うだけだ

 

今回はこんなんでいいかな

 

イヤホンを外し、ノートパソコンの近くに置いてあったお茶のペットボトルを取ろうとして僕を囲むようにしてパソコンを見つめる

 

士郎、遠坂さん、ルヴィアさん、美遊ちゃん

 

そしてイリヤが立っていた事に気付いた

 

「うぇ!士郎!?それにイリヤや遠坂さん達も!?」

 

そう言いながら急いでパソコンに表示していた画面を消す

 

「ワタル………珍しく外に出てるとセラから聞いてたが、公園でもパソコンか?」

 

「あ、アハハ………」

 

そういって少し呆れた様子を見せる士郎

 

「シェロの弟さんはパソコンが得意なのですね。あんなに速くタイピングできるなんて」

 

「渡君って、こんなにパソコン使えてたんだ」

 

そう驚愕の表情を見せるルヴィアさんと遠坂さん

 

「ワタルお兄ちゃん!さっきの画面見せて!」

 

そして僕のパソコンに興味津々と言ったイリヤ

 

「え!?いや、ちょっとそれは………」

 

「私しってるよ!さっきの曲を作るアプリだよね、 前に学校の授業で見た!」

 

「………確かに、あれと同じ画面だった」

 

っ!?イリヤにバレてる!?いや、でもまだ僕が00だとバレたわけじゃないから

 

「そうなのか?そう言えばワタルの音楽の評価はAだったな。なんか作ってみてるのか?」

 

「い、いやそんなことない」

 

そう言ってどうにか誤魔化そうと──

 

『♪~♪♪~~』

 

したところでパソコンから先程作曲した曲である『Alive A Life』が流れる

 

驚いてパソコンの方を見ると、イリヤがマウスを持ってMVではなく曲のみのファイルを開いていた

 

画面には音符と共に歌詞が写し度されていた

 

結局、そのあとこの曲が終わるまでみんなが聞き続けた

 

「なんか、思ったよりちゃんとした曲だったな」

 

「うん。お兄ちゃん本当にこれ自分で作ったの?」

 

結論は凄く恥ずかしかった、以上。

 

取りあえず、さっとノートパソコンを回収し先程の三曲を高速でネットに上げてパソコンの電源を落とす

 

でも、いつかはバレるんだし

 

この程度で凹んでられない

 

そう思い、パソコンをリュックに仕舞った

 

その時だ、突如として大量の金属音のような物が頭の中に流れる

 

ミラーモンスター!?

 

「何だ!?この音」

 

「イリヤ、構えなさい!」

 

「ミユ、警戒を」

 

「えっ!?でもワタルお兄ちゃんが………」

 

聞こえてきた音に思わず警戒し戦闘の用意をする遠坂さんとルヴィアさんと美遊ちゃん

 

それに対し突然の事に戸惑う士郎にイリヤ

 

その時だ、冬木の方に大量のミラーモンスターが現れ空中を飛んで町の人々を襲撃し始めた

 

まるで、仮面ライダー龍騎の最終話のように

 

今までなら、ミラーモンスターはごく稀に出現したのをどうにか倒していた

 

これが、もしかしたら僕と言うイレギュラーがこの世界に現れてしまった事で発生した事

 

僕が、やらないと。倒さないと

 

でも、ここじゃ皆が………

 

「お兄ちゃんどうする!?」

 

「ワタルは後でルビーに記憶を消去して貰え!このままじゃ冬木が危ない」

 

その時だ、士郎とイリヤの後ろに冬木ではなく近くの池からミラーモンスターが現れ爪を振りかぶる

 

「士郎!?」

 

「シェロ!」

 

「イリヤ後ろ!!」

 

三人がそう言った時には、もう遅かった

 

二人にミラーモンスターの鋭い爪が迫る

 

僕は走って士郎とイリヤを横に突き飛ばす

 

次の瞬間、僕の腹をミラーモンスターの爪が貫いた

 

「グッ………あ…………」

 

思わず血を吐き出す

 

今、仮面ライダーに変身できない僕には、これしか出来なかった

 

身体中に激痛が走り、体の温度が下がっていくのを感じる

 

体から爪が引き抜かれると共に、ミラーモンスターが爆発し、鏡が割れたような音を立てて崩れる

 

恐らくだけど、遠坂さん辺りが宝石魔術を使ったんだと思う

 

僕は貫かれた部分を押さえるがドクドクと血が流れている

 

この傷、今までの切傷ならまだ大丈夫だったけど、今回のはもうダメかもしれないな

 

そう思いながら足元に流れる血を眺めながら失笑する

 

「ワタル、なんで!」

 

「あ、ぁぁ」

 

俺に駆け寄る士郎と茫然とするイリヤ

 

「家族、を守るのは……当然、でしょ?僕には、もう……無理だからさ、リズとセラ……父さんと母さんを頼んだよ、士郎」

 

僕ははそう言って士郎へと微笑み、イリヤへと歩みより片ヒザをついて視線を会わせ、血のついてない方の手で頭を撫でながらそっと言った

 

「あ、、、」

 

「イリヤ、心配してくれてありがとう。友達を大事にするんだぞ?」

 

そう言うと、イリヤは同様しながらも頷いたのを確認して立ち上がり、先程のミラーモンスターが現れた鏡へと歩み寄る

 

本当なら最後くらいは抱き締めて上げたいけど、そしたら血がついちゃうからね

 

「遠坂さん、ルヴィアさん……士郎とイリヤを頼みます。そして美遊ちゃん」

 

そう言って僕の方を、いや傷のを方を見る美遊ちゃん

 

そりゃそうだ、こんな重症をおって本来なら話すどころか立てるはずは無いからだろう

 

でも、生憎と怪我で痛みには成れてるから問題ない

 

「イリヤを、妹を頼むよ。」

 

「何言ってんだよ、ワタル!諦めんなよ!」

 

「そうよ!何死ぬような雰囲気だしてるのよ!」

 

「シェロの言う通りですわ!サファイア、彼に薬を!!」

 

「っ!ルビー!私たちもワタルお兄ちゃんに!」

 

そう言って僕を引き留めようとした彼、彼女らを他所に僕はポケットに入れていたリュウガのカードデッキを水面に翳す

 

すると、Vバックル。銀色のベルトが僕の腰に装着される

 

その事にその場にいた全員が動けなくなった

 

「その、ベルト…………」

 

士郎がそう呟く

 

最後くらいはかっこ良く決めたい、かな

 

僕はデッキは正面につきだすように構える

 

「………変身」

 

デッキをVバックルに装填する、体を黒いアーマーが包み目の部分が吊り上がり、禍々しい姿に

 

僕をエミヤワタルと言う人間を、仮面ライダーリュウガへと変えた

 

「ワタル、お兄ちゃんが」

 

「うそ、だろ?」

 

そう言う士郎とイリヤ、だが、他の三人は驚きで声が出せないようだ

 

そりゃそうだ、今まで僕に対して敵対し罵倒することもあったから罪悪感に囚われたのだろう

 

そしてアドベントカードを引こうとデッキからカードを抜き取る

 

何故か引き抜かれたカードは

 

『SURVIVE-黒炎-』

 

僕がカードを翳すと僕の周囲を通常よりも熱い、蒼い炎を越えた黒い炎が僕と皆を隔てるように現れる

 

「ワタル、すまない!俺はお前が、そいつだと知らなくて!あんな事を!!」

 

「謝るから、怖がったり……近付かないてって叫んだことは謝るから!ワタルお兄ちゃん!!帰ってきてよ!……おねがい…だから!」

 

僕はきこえてくる声を無視して左手の暗黒龍召機甲ブラックドラグバイザーが黒い炎を纏い、暗黒龍召機甲ブラックドラグバイザーツバイへと変わったのを掴みとる

 

「僕は、助けたいから助けただけだよ。皆が気にする事はない」

 

ブラックドラグバイザーツバイにカードを『SURVIVE-黒炎-』を差し込み装填する

 

─SURVIVE─

 

潜った音声が流れ、僕の体に周囲の黒炎が吸い込まれ、アーマーが変化する

 

黒く刺々しい

 

そして体に黒き龍の顔を表すように

 

士郎達からは突如炎が消えたと思ったら姿が変わった僕に驚いているなか

 

僕はデッキから新たにカードを取り出しドラグバイザーツバイに装填する

 

─アドベント─

 

水面から暗黒龍ブラックドラグランザーが現れて一度僕を見つめる

 

それは、まるで僕を心配しているかのように

 

「最後まで、付き合ってくれ相棒」

 

そう言うと、一鳴きし直ぐに大地に降りながらバイク形態に変わる

 

僕はブラックドラグランザーに跨がり、アクセルを捻る

 

「じゃあね士郎、イリヤ。出会えて、家族になれて僕は、幸せだった」

 

そう言って僕は冬木市へと走らせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛むからだを、無視し冬木市に溢れかえったミラーモンスター、レイドラグーンを倒す

 

右手にドラグセイバー、左手にドラグバイザーツバイのソードベントで敵を斬りまくる

 

肩や膝に時折攻撃が当たるが無視して斬りつける

 

肩で息をしながら再びミラーモンスターに攻撃をする

 

すると、飲食店らしき場所に数体のレイドラグーンが群がっていた

 

「も、もしかして田中さんピンチー!?」

 

「こ、こっちくんなー!?」

 

「うぇーん、お父さんと助けてよー」

 

小学生の少女三人が固まっていた

 

良くみればイリヤの友達達だ

 

僕はすぐに駆け出しその場にいるレイドラグーンの内一体にドラグセイバーを投げつけ、此方へと注意を引きドラグバイザーツバイで斬りつける

 

「伏せろ!!」

 

すると爆発するので、三人に爆炎や瓦礫が飛ばないよう覆い被さるように抱き締めた瞬間、背中でレイドラグーン達が爆発した

 

背中に何度か瓦礫の破片が飛んできたが、問題ない

 

「た、助かった!?」

 

「ヒッ!?」

 

「化け物!?」

 

やっぱり、そうだよね

 

僕はリュウガだから、仕方ない

 

そう思い立ち上がり彼女達を背に向けて

 

「早く、逃げ───」

 

そう言って移動しようとして一歩を踏み出し、そのまま倒れた

 

体に力が入らない、思考が揺れる

 

「お、おい!?」

 

「た、倒れた!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

背中が、さっきレイドラグーンに刺された腹部から激痛が走る

 

今も血が流れているのを感じる

 

仮面の中、口許にも先程少し吹き出してしまった血が口許に着いている

 

力が抜ける腕にどうにか力を込めて立ち上がる

 

「大、丈夫だ。少し、張り切りすぎただけだから」

 

そう言うが、目の前の視界は揺れ足に力が入らず震えている

 

「その声、イリヤのもう一人のお兄さん!?」

 

「うそ…………」

 

すると、近くに再びレイドラグーンが集まってくる

 

驚く三人を後ろに下げ僕は腰に着けていたカードデッキから一枚のカードを引き抜きバイザーにセットする

 

─SHOOT VENT─

 

近くのビルから暗黒龍ブラックドラグランザーが現れて俺の左手後ろに佇む

 

「おぉ!カッコいい!!」

 

「三人とも逃げろ!!」

 

そう言うって僕はドラグバイザーツバイのトリガを引く

 

するとドラグバイザーツバイから光線が飛び、同時にブラックドラグランザーが黒炎弾が放たれ

 

レイドラグーン達がどんどんと焼き払われる

 

ふと後ろを見ると三人は向こうへと走っていっていた

 

するとシュートベントを残った10数体が空へと飛んでいく

 

あれで、最後だ

 

僕はデッキから最後のカードを引き抜き、バイザーに装填する

 

─FINAL VENT─

 

「……………しゃあ」

 

一瞬ふらりとしたが、口元に握りしめた拳を近付け、気合いを入れる

 

バイクを形態に変化したブラックドラグランザーにジャンプして乗りウィリーを行いながらアクセルを捻る

 

するとブラックドラグランザーが咆哮を上げながら口から黒炎弾を放ちながら冬木の道路を駆ける

 

黒炎弾は全てレイドラグーンに当たり、レイドラグーン達は爆散した

 

それを確認してバイク形態のブラックドラグランザーから降りる

 

周囲を見回すと、回りから人気が消えたものの、どうにか最小限の被害で終わらせることが出来た

 

重たいからだを引きずりながら所々あれた冬木の路地裏に入る

 

建物を背に預けズリズリと地面に座り込み、Vバックルならデッキを引き抜く

 

体に纏っていたリュウガのアーマーが消え元の人間に戻る

 

「どう、にか……守りき、れた………」

 

そう呟き、腹部の傷を見るともう血が止まっていた

 

いや、出なくなっていた

 

ふと自分の手を掴む、ひどく体が冷たく

 

脈が弱々しく動いていた

 

最初は、自分がこの世界で

 

衛宮家で暮らすのは間違っていると、そう思っていた

 

でも、イリヤと話したり

 

セラに怒られたり

 

士郎に心配されたり

 

母さんに曲を褒めて貰ったり

 

リズと一緒に歌ったり

 

父さんと出掛けたり

 

そんな日々を送っていく内に、こんな日常がが酷く愛おしく思えたんだ

 

………そっか、そうだったんだ

 

この時、僕は自分がこの思いに気付いた

 

僕は、みんなと暮らしが好きだったんだ

 

だから、ミラーモンスターを倒して

 

傷付いても戦ってたんだ

 

でも、気付くのが遅すぎたみたいだ……

 

ふと自分の座り込んだ近くにガラスの破片がありその中には今まで共に戦ってきた相棒

 

暗黒龍ドラグブラッカーが此方を見ていた

 

「相棒、最後まで僕の、戦いに付き合ってくれて……ありがとう」

 

そう言うと、ドラグブラッカーが此方へと鳴き

 

破片の中から消えた

 

これで、良い

 

それに、そんな大好きなみんなだからこそ僕がいないちゃんとした道を進んでほしい

 

原作と言う名の道を

 

頭の中にこの世界に孤児として生まれ、今まで生きてきた日々が頭の中に浮かんでは消えていく

 

士郎、また僕を外に連れ出そうとしてるの?

 

イリヤ、またゲームしに部屋に来たの?

 

ごめんって、だから説教は勘弁してくれないかなセラ

 

一緒に歌うのは、初めてだけどなんか楽しいねリズ

 

母さん、この歳で頭を撫でられるのはちょっと恥ずかしいって

 

父さん、またみんなで出掛けようね

 

あぁ、なんだかすご、く…………ねむ、いな

 

みんな、ありが……とう

 

どうか、みんなの今後に

 

幸、あれ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士郎達はリュウガの正体を知り暫くは茫然としていた

 

イリヤはさっていくワタルに涙を流し、急いで追いかけたがそこではもう化け物達が倒された後だった

 

そして探し続けていた時、ルビーがワタルの反応を掴んだのだ

 

「ルビー!こっちにワタルお兄ちゃんの反応が会ったって本当!?」

 

『はい!先程までは反応があったのでここら辺に居ると思いますよ!』

 

「急いで探そう!遠坂にルヴィアも手伝ってくれ!」

 

「えぇ、急ぐわ!」

 

「ミユも手伝って!」

 

「わかった、サファイア!」

 

『お任せを』

 

そうして消えたワタルを捜索しているイリヤ達

 

様々な壊れた店や近くの公園

 

瓦礫のした等を探していた

 

そして、イリヤはへとへとになりながらも探しつづけ夕方になっていた

 

一方、衛宮家のリズとセラは三人の帰りが遅いことに心配し、イリヤ達の事を探しに来ていた

 

 

町の様子に驚きながらもイリヤ達を探していると、セラは路地裏に見慣れた男の姿が見え足を止めた

 

路地裏で建物を背に預けて眠っているワタルだった

 

路地裏の建物の壁を背に座り込んで動かないワタルに、セラはこんな所で寝て私達を心配させて!と怒りながら路地裏に入りワタルへと近付く

 

「ワタルさん!貴方って人は!!一体どこで寝てるんですか!!家に帰ったらお説教です!何時まで寝てるんですかとっとと起き、て………!?」

 

そこにいた彼はいつもの申し訳なさそうな顔でセラに謝罪するのではなく

 

穏やかな笑顔を浮かべ、幸せそうに眠っていた

 

口元は血に汚れ、腹部には大きな刺し傷があり穴ができており

 

見えている腕や首、頬は斬られたような傷が大量に出来ていた

 

「う、そ………ですよね?」

 

「セラ?どうし、たの……………」

 

路地裏に入り出てこないセラを心配して入ってきたリズも座り込んだワタルを見て目を見開く

 

「ワタ、ル?」

 

そう言って、リズは恐る恐ると行った形で近付き、顔を見る

 

穏やかな笑顔を浮かべ、幸せそうに眠っているワタル

 

恐る恐るリズが自信の指をワタルの腕に添える

 

「!?………あ」

 

リズは知ってしまった

 

ワタルの脈が、もう止まってしまっている事を

 

普段から表情を表にしないリズの瞳から、涙が頬を伝いこぼれ落ちた

 

「ワタルお兄ちゃん!どこにいるの!!」

 

「ワタル!何処だ!出てきてくれ!!」

 

「ワタル君!何処なの!出てきなさい!!」

 

「ワタル!どこにいるんですの!!」

 

「ワタルさんどこですか!」

 

それと同時にワタルを捜索していたイリヤ達もその場にたどり着いた

 

「セラ!リズも!?二人とも!ワタルお兄ちゃんが、たいへ………」

 

そしてイリヤはワタルの捜索を手伝いを頼もうとしたとき、気付いた

 

セラとリズの近くに一人の男が座り込んでいた

 

「お兄ちゃん!ワタルお兄ちゃんがいたよ!」

 

「あぁ!ワタルやっと見付けたぞ!!」

 

「見つかったの!?」

 

「良かった!今すぐに治療を行わないと!!」

 

そう言って他の全員が路地裏に走ってくるなか士郎とイリヤがワタルの元に近付き、そして足を止めた

 

士郎も、イリヤも分かってしまったのだ

 

なんでセラとリズが先に見付けていたのに、一言もしゃべらないのか

 

これだけ騒がしく探していたのに、ワタルが起きないのか

 

「ワタル、お兄ちゃんが………うわぁあん!!」

 

「ワタル………くそ。なんで俺は、こんなに弱いんだ………」

 

ワタルの状態を知ってしまったイリヤはその琥珀色の瞳から涙を流し泣くなか、士郎は自らの弱さを痛感し拳を握り締める

 

自分を、そして妹を守ろうとして

 

傷をおったワタル。でもそれだけじゃない

 

更には俺たちを影ながら助けてくれていた、ワタルと言う存在にどれだけ自分が助けられていたのかを痛感する士郎

 

そこに遠坂やルヴィア、美遊も合流するが

 

そこにいる4人の状態を見て気付いていしまった

 

先ほどまで、楽しくパソコンを叩いていた

 

今目の前に座り込んでいる男は、死んだのだと

 

「なんで、なんでこんな幸せそうな顔してるんだよ。俺たちはお前を傷付けてしかいなかったのに」

 

士郎の脳裏に過るのは、以前のクラスカード回収をしていた時

 

ワタル、リュウガに助けて貰ったのにも関わらず俺は、俺達はこいつを罵倒した

 

ふと先程の言葉が頭に過る

 

『僕は、助けたいから助けただけだよ。皆が気にする事はない』

 

士郎は、その瞳から涙を流した

 

「そんな、顔されたら……何も言えねぇだろ」

 

穏やかそうに眠る、ワタルを見て俺はそう呟いた

 

この数日後、ワタルの死を聞き急いで帰ってきたアイリスフィールと切嗣はワタルの死体を見て涙をながし、ワタルの葬式を行った

 

その場に来る人物には、見知らぬ人いた

 

士郎やイリヤ、その場にいたほとんどの全員ががワタルは『00』だと言う事を初めて知った

 

更には、何故かイリヤのクラスの友達も葬儀に参加しいた

 

後々に明かされたのは、イリヤのもう一人の兄ことワタルの変身した仮面ライダーリュウガに救われた人がイリヤのクラスに何人もいたのだ

 

そう、その事は先日のモンスターの記憶を消されていなかった三人から伝えられたらしく、そんなリュウガの死を皆が静かに悲しんでいた

 

葬儀後

 

士郎とイリヤ、遠坂凛とルヴィア、美遊は士郎の携帯にて様々な『00』の曲を聞いた

 

あの時にワタルの作曲していた最後の曲

 

明らかに家族のそれぞれへと向けて歌われた曲達

 

その聞いた曲の数々は、まるで今まで生きてきたワタルの想いや願い、遺言にも思え、イリヤ達は涙した

 

そして士郎や切嗣の頭に現れる彼を表す言葉、それは1つしかなかった

 

例え、何人に恐れられても人々の平和の為に戦い続けた衛宮 渡

 

 

またの名を“仮面ライダー リュウガ”

 

 

 

 

 

 

〔if、仮面ライダーリュウガend〕完

 

 

 

 

 

 






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If もし主人公の変身するライダーがゼロノスなら



遅くなりましたが、仮面ライダーゼロノスのベルトCSM記念と言う事で少し前から書いていたゼロノスのIfを仕上げて参りました

読む前に注意、作者がIfを書く場合はかなりの設定無視
脳内を真っ白にして書いてます




 

 

とある工事現場後の採石場にて二つの偉業な存在が戦っていた

 

赤銅色のアーマーを纏い大きな剣を構えた戦士と紫色のコウモリのような異形

 

赤銅色のアーマーを纏った戦士はベルトのバックルに挿入したカードを取り出し大きな剣に装填する

 

すると、その手に持った剣の刃が発光し始める

 

「ッ!」

 

その剣が振るわれると大きなA字の斬撃が飛び、異形を切り裂くと

 

異形は叫び声を上げながら爆散する

 

戦士は剣を腰にしまいながらその場を後にする

 

「カードの後の残りは…………『6枚』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

僕はいつも通り録音するために借りた防音のアパートの部屋にて音楽を歌って編集を続けていた

 

今回は二人でなければ歌えない曲にチャレンジしている

 

「~~~~♪」

 

「~~♪」

 

歌っている曲はDouble-Actionのガンフォームとウラタロスだ

 

今日はたまたまボクの趣味である00を知るもう一人

 

………性格には僕の事を覚えてくれている家族に頼んだ

 

レコーディングが終わり、そのまま録音したデータをパソコンにいれ保存してから

 

部屋にある唯一の家具である冷蔵庫から持って来た炭酸ジュースをもう一人の妹である少女に渡す

 

「よし一旦休憩にしよう、クロエちゃん」

 

「分かったわ。ジュースありがとう、お兄ちゃん」

 

そう言ってジュースを受けとるのは、褐色の肌に銀髪のイリヤと瓜二つの少女

 

クロエ・フォン・アインツベルン

 

そもそも僕が00だと知っているのは彼女がイリヤの兄である士郎を狙って現れたときに、間違えて俺の部屋から侵入した事が始まりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日、僕は部屋にてパソコンに向かい編集をしていた

 

イリヤ達がクラスカードの回収が終わり

 

少し平和な時間が流れているが僕はと言うといつも通りリズに怒られたり曲を作ったりすることを繰り返している

 

僕は一度ヘッドフォンを外し、机の引き出しを引く

 

そこにはバックルにカードケースの着いた黒と銀を主とした色付けのベルトがあった

 

僕にはゲームのマスターカセットとは別に、もう1つある転生特典

 

仮面ライダーゼロノスの全てだった

 

それは仮面ライダー電王に出てくる2号ライダー、仮面ライダーゼロノスの力だった

 

ゼロライナーやデネブ、そしてゼロノスベルトとゼロノスカード

 

仮面ライダーゼロノスに変身するためには、あるカードを使用しなければならない

 

()()()()()()()と言うカードなのだが

 

そのカード変身する度に消滅する

 

そしてそのカードが消滅すると多くの人達から変身者の記憶だけ欠落して、忘れられる

 

と言うものだった

 

僕はこの力を使わないでいた

 

使いたくなかった、怖かった

 

でも僕は覚悟を決めてこのカードを使うと決めた

 

「(デネブ、今のところイマジンはいた?)」

 

『渡?まだ見付かってないが、どうかしたのか?』

 

「(なら良かった、今日の所は平和に過ごせそうだね)」

 

『うん、そうだな。平和が一番だ』

 

この世界には元々存在しなかった存在、イマジンがいた

 

恐らくは僕がこの力をもって生まれてきた事によるイレギュラーな事が起こっただろう

 

だから初めてイマジンを目にしたとき思ったんだ

 

これは僕が神様からこの力を与えられたときから決まっていた運命なんだろうと

 

原作を少しでも歪めた僕がカードを使っていけば、皆から僕の記憶が消え、この世界は元の軌道に戻るだろう

 

そうするば、きっと大丈夫なはずだ

 

この町の、家の皆を守れるはずだ

 

「アハハ、何だろうな。胸が痛い」

 

そう呟き、パソコンの作業に入ろうとして部屋の窓が空いた

 

直ぐに引き出しを最後まで閉めてベルトを隠す

 

「よいしょっと」

 

すると、底から褐色の肌になったイリヤが入ってきた

 

あ、そう言えば原作だとそろそろクロエが来るんだっけ?

 

「あ」

 

「ん?」

 

少女がそう呟いて困惑する様子に思わず頭を傾げる、もしかしたらこの子

 

士郎の所もしくは部屋に行きたかったのだろうか?

 

「え、えーと………士郎なら一階の居間にいるよ。」

 

そう言って僕は再びパソコンに向かうことにした

 

そう言えば、クロエは僕に関わってくることはないだろうから

 

そうしてパソコンの作曲を終えていたファイルを開き先程に作った曲を試し聞きする

 

聞くのは、永遠のクレイドル

 

ヘッドフォンの中で大きな音と共に静かに燃え上がる炎のような歌が響き渡る

 

これを聞くたび、僕は少しだけ悲しく感じてしまう

 

まるで、この先でゼロノスカードを使い続けた最後のようで

 

そう考え、頭を振ってその考えを消す

 

ふと後ろを見ると、何故な僕のベットに座って此方を見たままのクロエがいた

 

士郎の所に行くんじゃ?

 

そう思いヘッドフォンを外し、口を開く

 

「あれ、士郎に用事じゃなかったの?」

 

「そ、そうだけど…………」

 

「?」

 

何だろう、原作だとイリヤの立場を狙ったクロエが士郎とイチャイチャしているはずなんだけど

 

もしかして、僕のパソコン………正確にさ作っている曲に興味がある、とか?

 

「えっと、もしかしてこれに興味があるの?」

 

そう言いながらパソコンを指差す

 

するとクロエが黙って頷く

 

もしかしたら、また僕は原作を変えてしまったのかな?

 

「良かったら聞いてみる?」

 

そう言ってヘッドフォンを差し出すと、クロエは少し戸惑いながらそれを受け取ると頭に被ったのでマウスを操作して音楽を流す

 

すると、クロエはめを閉じて静かに聞き始めた

 

もしかしたらクロエは、僕の曲を好きになってくれるかもしれない

 

そう考えると僕は少し嬉しくなった

 

そうだ、もう使ってないし

 

()()をあげよ

 

そう思い、パソコンを操作し今彼女に聞いてもらっている曲の他に彼女の好きそうな曲をピックアップしてパソコンに指しているもう使わないメモリー保存カードにコピーし、僕が中学まで使っていた音楽を聞くための器機、赤と黒の配色のMP4擬きに挿入する

 

このカラーを選んだのは、ゼロノスのゼロフォームのカラーリングからだ

 

そして、充電用にモバイルバッテリーとイヤホンを用意していたタイミングで下からイリヤが帰って来た声が聞こえた

 

恐らくはクロエの事を警戒したイリヤが何時もより早く帰ってきたのだろう

 

だが、士郎の元にクロエはいない

 

今、僕の隣で僕の作った曲を聞いてるから

 

そして次に探すとしたら僕の部屋

 

僕はそのMP4をクロエの肩を叩いてヘッドフォンを外させる

 

「何よ、せっかく良い所だったのに……ッ!?」

 

クロエはヘッドフォンを取ると直ぐに状況を把握したのか、顔を少しだけ歪める

 

僕は簡単にMP4の使い方の説明し、MP4を渡す

 

「こ、これ」

 

「あげるよ。さっきの曲も入ってるから」

 

そう言うと困惑した様子のクロエは入ってきた窓から外へと出ていく

 

僕はそのまま窓の縁に手を乗せて空を眺める

 

こうすればいつも窓が空いていないのに、空いている理由になる

 

すると階段を駆け上がる音と共にドアが開く

 

振り替えると、少し焦った様子のイリヤが入ってきていた

 

「ワタルお兄ちゃん!ここに私が……いない?」

 

「ん?どうかした?」

 

そう言って何もなかったように訪ねる

 

「ワタルお兄ちゃん、さっきここに私が居なかった?」

 

「イリヤどうしたの?さっき帰ってきたばかりなのに、ここにイリヤが居るわけないよ」

 

「そ、そっか………なら良いんだけど」

 

そう言ってイリヤが部屋を出ていくのを見届けて、僕は息を付く

 

「ふぅ、これで大丈夫そうかな」

 

『ワタル!イマジンだ!!』

 

「今すぐに行く!!」

 

そう言いながら机の引き出しからゼロノスベルトを取り出して腰に巻き、巻いたベルトを上着で隠し、靴を履いて家を出る

 

カードの残りなんて気にしちゃ駄目だ!

 

僕は通路を走りながら、ゼロノスベルトの脇に着いたチケットホルダーから赤いゼロノスカードを取り出してチェンジレバーを押してスライドする

 

すると、ベルトから笛のような待機音が流れ出す

 

「変身!」

 

そう言ってたカードスロットに赤いゼロノスカードをカードスロットに差し込むとベルトが自動的に反対側へと移動し、ベルトの中央部が変形しアプセットを完了する

 

音声と共に僕のフリーエネルギーが変換され、赤いゼロノスへ

 

仮面ライダーゼロノス ゼロフォームに変身した

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、クロエ・フォン・アインツベルンとなるはずの少女は目の前にはとても異形な光景が広がっていた

 

赤く、何処か錆ついた鉄のような色の鎧を来た何かが化け物のような姿の敵へと大きな剣を振るい戦っている

 

時には剣を逆手に持って切付け、殴り

 

蹴りつける

 

そんな荒々しく見える戦いを少女は息を殺して観察していた

 

あのような物を見たことが無いために、生まれた好奇心がそうさせた

 

あの赤錆色の何か、時折聞こえる声から男だと思える

 

すると、赤錆色の何かが腰に身に付けたベルトを操作する

 

赤錆色のベルトから音声がなり、何かは持つ剣にカードを差し込むと

 

刃が淡く光りだす

 

そして何かがその剣を振るうとAのように見える斬撃が飛び、怪物を貫き怪物は叫び声を上げながら爆発した

 

魔術とはまた違ったもう1つの世界を見た

 

少女にはそう感じられた

 

すると、赤錆色の男性と思われる何かがベルトからカードを抜き取ると赤錆色の鎧や仮面が崩れていき

 

現れたのは、今日知ったばかりの男

 

自信の兄の1人である、衛宮 渡だった

 

「!?」

 

少女は驚愕した

 

先程会った時は少し幸薄で優しそうな笑顔を浮かべていたはずの彼が

 

とてもだが先程までのような荒々しい戦闘をしていたとは思えなかった

 

そして彼が持っていたカードがまるで役目を終えたかの用に砕け散って消えた

 

彼はそれをとても悲しそうに、苦しそうに見ていた

 

『ワタル………』

 

すると先程の怪物と似た黒い化け物が現れ彼へと近付いていく

 

「デネブ、もう終わったし帰ろう」

 

そう言って歩き去ろうとする彼

 

まるで何かを我慢しているようにも見える

 

『ワタル…もう、これ以上カードは使わない方が良い』

 

まるで、怪物が優しく諭すように話しかけている

 

見た限りは仲間なのだろうか

 

それにしてもあのデネブと呼ばれる化け物が言っていた事からあのカードに何か特別な力があるのだろうかと少女は考察する

 

「駄目だよ、これが僕にとってのやらなきゃいけない事だから。もし皆から僕と言う存在が忘れ去られて、消滅するとしても。それに消滅した方がきっとこの世界には良いんだ、正しい原作の通りに物語が進んでいくんだから」

 

『ワタル………』

 

どう言うことだろうか?

 

少女の思考が追い付かない

 

なんで彼が消滅する?そもそも原作ってなに?

 

「ねぇデネブ、今日は誰から忘れられたんだろうね」

 

『………分からない』

 

彼らの会話から、あのカードを使うことで誰かの記憶から衛宮渡の記憶が消える

 

そして全ての人から忘れ去られたら消滅する

 

と言う考えが少女の中で組まれていく

 

「残りのカードは5枚。変身出来るのは後五回しかないのか……」

 

その後、彼らは空中から現れた黒い列車に乗り込み、その場から去っていくのを

 

少女はただ見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

クロエが僕の部屋に侵入した日から数日

 

イマジンとの闘いも終わりに近付きつつある

 

あれから更にカードは消費差され、残りは三枚

 

もう、家族の皆しか僕の事を覚えている人はいない

 

孤児院の院長も学校のクラスのみんなも

 

先生達も町の人も、悠里ちゃんも薫ちゃんも

 

僕の事を覚えていない

 

でも、きっとそれで良いんだ

 

僕と言うイレギュラーな存在が消えれば世界は元通りでイマジンもいない元の世界へと変わっていく

 

そうなるまでに、出来るだけ僕がいたことを残したいと思い

 

最近は曲を作っては投稿する活動を

 

完成したら直ぐに投稿し一日に何個も投稿している

 

一日に何曲も投稿するため、ネットでは00に関する考察や様々な噂が立っているけど

 

そこは目を瞑れば良いか

 

そう思いながらパソコンを操作していた

 

その時だ、ドアをノックする音が聞こえパソコンの画面の端の時計を見る

 

いつの間にか晩御飯の時間に成っていた

 

「今いくよ!」

 

そう言いながらパソコンを閉じて下に降りて行くといつの間にか帰ってきていたのか母さんがいた

 

そして隣には見たことのある褐色の肌にイリヤとそっくりな少女が席に座っていた

 

「ワタル!紹介するわ、今日から一緒に住むことになった従姉妹のクロエちゃんよ、仲良くして上げてね!」

 

母さんの紹介に少し驚いたけど、確かに原作だとこうなってたな

 

「初めまして、かな?衛宮渡。よろしくね」

 

取り敢えず、あの時に会っていた事は恐らくは知られたくないだろうし

 

目線を会わせるようにしゃがみ、そう挨拶する

 

「よろしくね?ワタルお兄ちゃん?」

 

そう言いながらクロエちゃんが僕に抱き付いてくる

 

「「なっ!?」」

 

その様子にイリヤとセラが目を見開き、そしてセラの目が鋭くなる

 

この後に起こるであろう事が安易に想像できた

 

あぁ、これはきっと怒られるんだろうなぁ

 

これは二時間正座コース……母さんがいるからワンチャン何も無い事を祈りたい

 

そう思いながら取り敢えずクロエの頭を撫でておく

 

どうせ直ぐに引き離されるんだし、これぐらいは許されるよね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐らくは皆が眠り、静まった頃

 

僕はパソコンを行う手を止めて、部屋にある望遠鏡で星を見ていた

 

星を見ることは、前世から好きだったわけではないけど、仮面ライダーゼロノスの変身者である桜井さんの事を思い浮かべてこれを買ってから

 

たまにこうして窓を開けて、そこから望遠鏡を覗いて星を眺めていくうちに、星を見ることが好きになった

 

静かな夜に夏は虫達の鳴き声を聴きながてらゆったりと星を眺めたり、作った曲を聞い黄昏れてみたり

 

そんな時間は僕にとってとても大切なものに成っていた

 

「今日は星が綺麗だな………」

 

「そうね、お兄ちゃん」

 

「っ!?」

 

近くから聞こえてきた僕以外の声に、僕は望遠鏡から目を離すと僕のベットの上にクロエが座っていた

 

「いつの間に………」

 

「お兄ちゃんが望遠鏡を除き始めた辺りかしら」

 

自信の気配察知能力の低さに思わず空を仰ぐ

 

「ワタルお兄ちゃん、もう少し鍵閉めたりした方が良いわよ?じゃないと私みたいに簡単に侵入されちゃうわ」

 

「そ、そっか。イリヤ達と寝たんじゃ無かったの?」

 

「お兄ちゃんと離したくて、こっそり抜け出してきたの」

 

「僕と?」

 

そう言うとクロエちゃんは黙って頷く

 

「お兄ちゃん、まずはこれなんだけど」

 

そう言ってクロエが取り出したのは僕のあげたMP4とイヤホン、そしてモバイルバッテリーだった

 

「ありがとう。あの時にくれたこれに入ってた曲、全部聞いたわ」

 

「どうだった?」

 

「とても良い曲だったわ、さすが()()()()()()()()が作った曲ね」

 

……………え?

 

「な、なんの事?あれは」

 

「00、でしょ?ママが教えてくれたわ。他の人には秘密だって」

 

母さん本当に秘密だって理解してるのかな?

 

せっかく今まで士郎やイリヤ、セラさんに父さんに隠してきたのに

 

「それに、前にお兄ちゃんがアニメ会社のビルに入ってくの見たし」

 

え?それって確か少し前に新作のアニメのオープニングを仕上げて打ち合わせに行ったときのこと?

 

いつの間に見られたんだろ?

 

たぶん、イリヤが学校にいる間は原作だとイタズラしまくってたし

 

だとしたらこのミュージックプレイヤーをあげた後?

 

「た、頼むから他の皆には言わないでよね?一応、秘密だから」

 

「えぇ、分かってるわ」

 

その返事を聞き、一息付く

 

これで僕が00だとばれることはない

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

そう言ってクロエは僕の座る椅子に近付き、僕の目を見据え口を開いた

 

()()って、何?」

 

「……………」

 

目の前が、頭の中が真っ白になる

 

今、彼女はなんと言った?

 

原作、確かにそう言ったように聞こえた

 

何時だ?何時聞かれた?

 

「何の事かな?」

 

うるさい鼓動を無視し、どうにかいつと通りに答える

 

「嘘、前に変な化け物と闘ってるの見たわ。貴方は何者なの?」

 

そう言ってクロエがその手に真っ白な剣と真っ黒な剣

 

干将莫邪を投影し、僕へと向けた

 

思わず嫌な汗が流れる

 

彼女のようすから拒否権は無いのだと感じられる

 

「何者って、衛宮 渡。そうとしか言えないよ」

 

もし、彼女に原作について話したら全てが壊れる

 

それだけは阻止しないと

 

最悪の場合はゼロノスについて話す

 

それだけなら大丈夫だ

 

「あの鎧は?」

 

クロエちゃんは剣を構えたまま身動きせずに僕を見据えている

 

「あれは………ゼロノス。時を守護する為の鎧見たいな物」

 

「あの化け物は?」

 

「あいつらはイマジンって言う怪人だよ」

 

でも、彼らが未来からやって来た人間の精神対なんて言えない

 

「なるほど、で?ワタルお兄ちゃんはなんで、そのイマジン?って奴と闘ってたの?」

 

「あいつらは()()()()を消そうとしてるんだ、信じられないとは思うけど奴ら人間と契約してその人間の願いを叶えて、過去にタイムスリップして過去を改竄しようとしてる。だから止めるために、殺したんだ」

 

「ふーん………契約に過去の改竄、ね。ずいぶんと夢のような話なのね」

 

そう言っても直此方へと剣を向けるクロエちゃん

 

「ねぇ、そのゼロノス?を今使ってみて」

 

「…………なんで?」

 

「一応、ちゃんとこの目で確かめたいし。信じるにはまず、見せて貰わないと」

 

無理だ、残されたカードは三枚

 

こんな事に使うわけにはいかない

 

もう家族以外で僕を覚えている人はいない

 

次カードを使ったら、家族の誰から忘れられるのかわからない

 

リズかもしれないし、士郎かもしれない

 

カードを使う覚悟も、闘う加護もある

 

でも、こんなことで使うわけには………いかない

 

「出来ない」

 

「何故?」

 

見た限り、クロエの剣を握る力が強くなった気がした

 

「使う、わけにはいかないんだ。もう、あと3回しか変身出来ないから」

 

「何で、あと3回なの?」

 

「使うための、残りのカードが三枚しかないから」

 

もう、これ以上聞かないでくれ

 

そう思いながらも説明を行う

 

「ふーん、そのカードで増やせないの?」

 

「……出来ない」

 

「ねぇ、そのゼロノスには何か代償があるんじゃないかしら」

 

その発言に思わず目を見開いてしまう

 

「ズボシ、ね?早く、その代償について話してくれるかしら?話さないなら、この事を士郎やイリヤに話すわ」

 

もう、隠すことは出来ない

 

せめて、クロエが秘密にさえしてくれれば士郎やイリヤ、リズ達にバレない

 

「あのカードを使って変身する度に、僕と関わりの深い人の誰かかから僕の記憶だけ消えるんだ」

 

「………………え」

 

その言葉が理解出来たのか、クロエちゃんはその手から干将莫邪を床に落とした

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエside

 

クロエにとって渡への質問はただの好奇心だった

 

少し脅せば、教えてくれるとそう思いながら

 

でも、彼から出てきた言葉はそんな行動を起こした私を後悔の海へと突き落とした

 

ゼロノス、彼の言うその力を行使する事に誰かから忘れ去られる

 

それはどれ程の悲しさを、苦しさを味わうのか想像する事すら恐ろしい

 

自分の好きな人が、友達が、家族が

 

自分の事を忘れ、自分しか家族であること

 

友だちである事を覚えていない

 

相手にとって自分は他人となる

 

だが、そこから先はどうなるのだろうか

 

「ね、ねぇ……もし、もしよ?カードを全て使ったらどうなるの?」

 

そんな考えからそう口を紡ぎ、帰ってきたのは

 

「カードを使いきると、僕の時間が消滅して………僕も消滅する」

 

そんな、少女の考えた消滅と言う

 

出来るなら間違っていて欲しいと言う考えは

 

直ぐにでも消えてしまいそうな声で肯定された

 

「いや…………」

 

クロエにとって、恋と言う物はイリヤと同じ衛宮士郎への物だった

 

「イヤ……」

 

だが、それは変わった

 

後から考えてわかったのだ、ほとんどの人は自分をイリヤと間違えるのに対し彼だけはクロエを1人の少女として認識していた

 

彼から聞かせて貰ったパソコンの曲の数々

 

そして、曲を気に入った私に対してミュージックプレイヤーを渡してくれた

 

それから、少女の思いは士郎から渡へと変わっていた

 

それからは驚きの連続だった

 

渡が家での怒られる数の多い事、渡が有名な曲の作者である00であること、渡が魔術の存在を家での唯一知らないこと

 

でも、渡は魔術とは違うもう1つの何かと闘っていた事

 

そんな彼が、誰よりも普通で

 

優しいくて、理不尽に怒られる彼が消滅する

 

「消えないで、お願い………お願い」

 

気付けば、少女の瞳からは涙が流れていた

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

僕の目の前では、クロエちゃんがきれいな顔を歪め涙を流していた

 

分かってはいた

 

ゼロノスカードの説明をすれば、このような反応をするのだと分かっていた

 

だから僕はクロエちゃんを抱き締めて落ち着かせることも、涙を拭うことも許されない

 

泣かせたのは僕で、消えないでと言う願いも聞き届けることは出来ないのだから

 

これは、ゼロノスの力を得た本来ならあり得ない存在のせいで

 

原作を少しでも歪めた

 

罪人である僕の償い

 

「泣かないで。消えない………なんて言えない。でも僕は今ここにいて、クロエちゃんは僕を覚えている」

 

そう言って僕は彼女の頭を撫でる

 

「ごめんね」

 

クロエちゃんは涙を流したまま、僕に抱きついてきた

 

「ごめんね、ごめんね」

 

そう言って僕はひたすら彼女に謝罪した

 

これがクロエちゃんが僕が00であること、ゼロノスである事を知るきっかけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残りのカードは三枚のまま数日、こうして僕とクロエは一緒に曲をレコーディングしていた

 

「ワタルお兄ちゃんは」

 

「ん?」

 

「なんでこんなふうに曲を作るのが好きになったの?」

 

「僕ってさ、音楽が好きなんだ。夜中に星を見るのと同じくらい。こんな僕でも世の中に残すことが出来るものって何だろうって思ってさ、それで曲ならずっとその会社が続く限りはネットに残る。沢山の人に僕の音楽を知って、覚えていて欲しいから」

 

「そっか」

 

「そうだ、クロエちゃんに渡そうと思ってた物があるんだ」

 

そう言って僕は部屋に買って置いておいた箱を開けて二つのネックレスのようなデザインの小さな懐中時計を取り出し、クロエちゃんの首に掛ける

 

「何これ?」

 

「懐中時計、特注でつくって貰ったんだ」

 

そう言って僕は懐中時計の裏を見せる

 

そこには夜空を思わせる暗い青の背景に『こと座(ベガ)』が描かれていた

 

クロエの首に着けた懐中時計の裏には、同じく夜空を思わせる暗い青の配色の中に鷲座(アルタイル)が描かれている

 

ゼロノスと言えば未来の桜井さんの残した懐中時計

 

そしてゼロノスのフォームは星座の名前だからこの二つの星座を選んだ

 

本当なら僕がアルタイルなのだろうけど

 

僕はどちらかと言うと音楽関連が強いから琴座のベガ

 

原作でのクロエちゃんの闘い方やFGOの宝具、アーチャーエミヤのスキルである『鷹の目』から鷲座のアルタイルを選んだ

 

「何で鷲座と琴座?」

 

「ゼロノスの鎧は変形して別の鎧になるんだけど。その時の鎧の形態の名前をそれぞれアルタイル、ベガ、ゼロと言うんだ。ゼロ以外は星座がモチーフだから」

 

そう言って自分の懐中時計を首から下げる

 

「そう、なんだ。大切にするわ」

 

「ありがとう、イリヤや士郎達には秘密だよ?」

 

そう言って首から下げた状態の時計を服の中に入れ、回りから隠す

 

何故かクロエちゃんも同じようにする

 

なんだかんだ、結構クロエちゃんとは良く一緒にいるな

 

新都に買い物に行くときも着い来てたっけ?

 

その時だ

 

『ワタル!イマジンだ!!』

 

デネブの声が頭の中に響き渡り、僕は直ぐに気持ちを切り替える

 

「ワタルお兄ちゃん?」

 

「ごめん、少し行ってくる」

 

「何処にいくの?」

 

「大丈夫、直ぐに戻るから」

 

そう言って笑い掛け、借りてた部屋を出ると同時にベルトを腰に巻く

 

カードケースから一枚のカードを取り出す

 

『ワタル…………』

 

デネブ、これは仕方ないんだ

 

これが原作を歪めた僕に出来る唯一の贖罪だから

 

そう思いながらも、僕は赤いカードをベルとへと差し込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………カ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外で、一人の男性がふと空を見上げた

 

「キリツグ?どうしたの?」

 

「いや、何でもないよ」

 

男性はそう言って男性を心配そうに見つめる銀髪の女性に笑い掛ける

 

「少し、家のみんなの事を考えていてたんだ」

 

「大丈夫よ、セラとリズもいるし。イリヤもクロエもシローやワタルがいるから大丈夫よ」

 

「そうだね………所でアイリ」

 

「何?キリツグ」

 

「さっき言ってた“ワタル”って、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処にでもある普通の日常

 

「はぁ、リズ。少しは働いたらどうですか?」

 

「セラが全部やるからやることない」

 

「だからってだらだらテレビばかり見るのはどうなんですか!」

 

「ただいま~!あれ?まだクロは帰ってないんだ?」

 

「お帰りなさいませ、イリヤさん」

 

「お帰りー」

 

「セラ!今日の晩御飯って何?」

 

「今日はカレーライスですよ」

 

「カレーライス、ワタルお兄ちゃんが喜ぶね。リズ」

 

「ん、ワタルが好きな物にしたんだねセラ」

 

「はい?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「リズ、イリヤさんつかぬことを聞きますが……………“ワタル”とは誰の事ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、デネブから僕のいるこの世界に存在する残りのイマジンが2体だと言うことが分かった

 

他の世界、こんな言い方は編だけど正しい世界の方に大量に出現したイマジンは本物の電王達が片付けているため、僕は残りのイマジンを倒せば良いらしい

 

僕はゼロライナーから降りて借りている部屋のクロエちゃんを迎えに行き、そのまま二人で家に帰っていた

 

クロエちゃんの記憶から僕は消えていない

 

なら、一体誰の記憶が消えた?

 

士郎か?イリヤか?それともリズか?

 

そんなことを考えながら家の玄関へと入った

 

「ただいま~」

 

「ただいま」

 

「お帰りワタル、クロエも」

 

そう言って靴を脱いでいると、リズが迎えてくれた

 

「そう言えば、さっきセラが可笑しかった。まるでワタルの事を知らないみたいで、今もワタルの事を覚えてないって言うの」

 

その言葉を聞き、僕はセラから僕の記憶が欠落したのだと知った

 

「そっか、まぁ僕は気にしないし大丈夫だよ」

 

隣に立っていたクロエがハッとした様子で僕を見る

 

きっと、僕が以前に説明したカードの内容を思い出したのだろう

 

すると手に持っていた僕の携帯が震え、画面には母さんの名前があった

 

携帯を操作して耳に当てる

 

「もしもし、どうしたの母さん?」

 

『ワタル?聞いてよ、キリツグったらワタルの事をまるで知らないみたいな事を言うのよ!』

 

その言葉で、また理解した

 

あのカードで記憶が欠落したのは、セラさんと父さんだと言うことを

 

『全く、息子の事を忘れるなんて。ちょっと説教してくるわ!』

 

それと同時に、前まで家族であった人が他人になる

 

と言う怖さを、僕は改めて知った

 

「う、うん。じゃあね、母さん。いつも、本当にありがとね」

 

そう言って僕は通話を切った

 

「ワタルお兄ちゃん………もしかしてカードを」

 

「うん、セラと父さんの記憶が欠落したみたい」

 

そう言って僕は自分の部屋へと向かう

 

部屋に入って鍵を掛けて、机に座り頭を回す

 

確かゼロノスカードは僕と関わりの浅い人から深い人へと消えていく

 

今回は僕があまり話さない父さんと、セラさんの記憶が欠落した

 

だとしたら次は誰だ

 

次に僕と関わりの深い家族は?

 

もし士郎やアイリさん、リズから消えたら僕のことを知るのはクロエちゃんとイリヤだけ

 

その場合、他人だと感じるあの人たちは僕を家に入れることはないと考えられる

 

なら、今のうちに部屋の荷物は誰かにあげるか

 

ゼロライナーか借りてる部屋のどちらかに移す方が良いな

 

そんなことを考えながら、部屋の中を見回す

 

次のイマジンがいつ来るのかは分からない

 

いつカードを使って、皆から記憶が消えても大丈夫なように、荷物は用意しておこう

 

まず、机にセットされたパソコンは使っていたデータをコピーしてノートパソコンに移し

 

リュックの中に入れた後、デスクパソコンのデータを消去する

 

これからはノートパソコンを使うことがメインになりそうだ

 

CDは部屋に残しておこう

 

そう思いながらリュックの中に大事な物を移していく

 

望遠鏡は、大きすぎで運べないかな

 

学校の教科書も残しておこう

 

考えてみれば母さんやリズが忘れたら、学校にも行けなくなる

 

今の内に書類だけでも用意しておこう

 

他には必要な物は、そう考えて机の上に飾られた写真を見る

 

少し前に海に行ったときに撮った士郎、僕、イリヤ、クロエちゃん、美遊ちゃんが映った写真が写真立に飾られている

 

僕はその写真立を大事にリュックの中に入れる

 

ほとんどの荷物をリュックに纏め終え、僕は残しておいたノートパソコンを取り出して二つの曲を作曲する

 

片方はゼロノスを表す曲、もう1つはこの原作へ、そしてクロエちゃん達へと残した忘れ去られるであろう曲

 

その二曲を作りあげていく

 

この二曲は投稿するつもりはない、どちらもクロエちゃんに上げたミュージックプレイヤーにのみ残す

 

もし、僕が消えてもクロエちゃんのミュージックプレイヤーに残る

 

00ではなく、衛宮渡としての歌を

 

「ワタルお兄ちゃん、ご飯だってー!」

 

「わかったよ」

 

ノックと共にイリヤの声が聞こえ、僕は返事をしてパソコンを閉じて、部屋を出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晩御飯を終えて、僕はクロエちゃんのミュージックプレイヤーを貸して貰いさっきの二曲を入れていた

 

さっきのご飯ではずっとセラさんが僕の事を警戒していた

 

当たり前か、まるで知らない人が急に元々いた家族だと言って信じられる方が可笑しいだろう

 

そう考えているとダウンロードが終わり、パソコンからプレイヤーを外す

 

その時だ

 

『ワタル、イマジンだ!!』

 

「ッ!?まさか1日で二体も現れるなんて!」

 

デネブの声を聞き、僕は机からゼロノスベルトを取り出して腰に巻き

 

先程準備していたリュックを持って急いで部屋を出て外に出る

 

すると家の外にゼロライナーが停車していた

 

「ワタル!こっちだ!」

 

ゼロライナーの入り口からデネブがそう言って手を振っている方へと走り、ゼロライナーに乗る

 

「デネブ、リュックは部屋にお願い。直ぐにイマジンの所に!」

 

「分かった!」

 

そう言った瞬間にゼロライナーは鼓笛を上げて発車した

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエside

 

クロエとイリヤは突如として大急ぎで荷物を抱えて部屋を出ていくワタルの事を見ていた

 

「ねぇ、クロ。さっきワタルお兄ちゃんが急いで出ていったけど、どうしたのかな」

 

「さあ?いつも通り、買い物かコンビニじゃないかしら?」

 

クロエはどうにか普通を装い、イリヤの問いにそう返した

 

クロエは彼が駆け出していった理由を知っている

 

そしてその後に彼の受ける代償も

 

先程帰ってきて、その代償は想像以上に恐ろしいものだと実感した

 

彼の事をつい昨日までは少し怒りながらも家族として接していたはずのセラが

 

まるで他人のように接しているようだった

 

彼の言っていたカードの残りは三枚だった

 

だが昼に出ていったときに1枚、そして今から出て戦い2枚使ったことになる

 

だとしたら、残りは

 

「一枚、だけ」

 

それは少女達の何れかから、彼を忘れる物がでてくると言う事

 

もし、自分が彼の事を忘れたら

 

そう考えると、少女の心には不安と焦りが生まれた

 

故に、イリヤと共に渡を追いかけ外へと出た

 

家の前には大きな黒と金の列車が停車しており、入り口と思われる場所に渡が乗り込んだのが見える

 

「なにこれぇえええええーーーー!?」

 

イリヤが驚きのあまり、大声を上げた瞬間に鼓笛がなり、ゆっくりと列車が動き出す

 

「追うよ!」

 

「え、えぇ」

 

転身して列車を飛んで追いかけるイリヤ、私もアーチャーのクラスカードをインクルードすると列車を追い、駆け出した

 

列車は少し走ると、新都の広場へと向かう

 

先回りした少女達が見たのは

 

そしてそこには銀色の鎧を纏ったライオンのような化け物が立っている姿

 

「何あれ……ここ鏡面世界じゃないよね?」

 

化け物の存在に思わず恐怖の声を漏らすイリヤ

 

「えぇ、そのはずよ」

 

一方クロエは頭の中で以前に渡が言っていたイマジンだと予測を立てていた

 

すると先程の黒と金の列車がライオンのような化け物の前を通りすぎると、そこには黒いベルトのような物を腰に巻いている渡の姿があった

 

「え、ワタルお兄ちゃん?」

 

あくまでも遠くから見ているため、ワタルは私たちに気付いていない

 

『………私の邪魔をするな』

 

「悪いけど、それは出来ない。お前はここで倒す、みんなの未来を壊させない」

 

そう言ってワタルは腰に着けたベルトを操作する

 

すると渡からまるでさっきの黒と金の電車のような音楽が聞こえ始め、腰のホルダーからあの赤いカードを取り出し、ベルトへと装填した

 

次の瞬間、ベルトから音声が流れ渡の体を赤い錆のような色のアーマーを纏う

 

そして頭の仮面に二匹の牛が電車のレールのような場所を伝って両目付近まで来ると、変形しあの時にみた同じ顔となった

 

「なに、あれ………」

 

隣のイリヤから驚愕の声が聞こえ、それと同時に渡は腰に着いた二つの何かを合わせ、1つの剣にする

 

ライオンのような化け物が口から炎を吐き出すが、渡はその炎を切り払いながら接近し

 

その鎧へと切付ける

 

だが、その鎧は頑丈でその剣を切付けられているライオンのような化け物はまるでその程度かと言うように身動きを取らない

 

「ッ!?」

 

『この程度か、フンッ!』

 

「ガッ!?」

 

そう言って化け物が渡お兄ちゃんを遠くへと突き飛ばす

 

渡お兄ちゃんはどうにか剣を持ったまま吹き飛ばされるが直ぐに起きあがると、ライオンのような化け物へと向かっていく

 

ワタルお兄ちゃんはずっとあのライオンの化け物に少しずつ押されていく

 

私は何度も吹き飛ばされ、殴られるお兄ちゃんを見てられなかった

 

何時もの弓を投影し、カラドボルグをつがえる

 

「クロ、何を」

 

「ワタルお兄ちゃん助ける………このままじゃ劣勢のままよ!」

 

そう言って弓の弦を引き絞る

 

そして倒れて苦しむワタルお兄ちゃんへとゆっくりと歩いていくライオンの化け物へとカラドボルグを放った

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

正直、相手が強いことは分かっていた

 

アルビノレオイマジン、仮面ライダー電王にて現れた強敵

 

野上良太郎こと仮面ライダー電王

 

ユウトの変身する仮面ライダーゼロノス

 

謎の男、桜井さんこと仮面ライダーゼロノス

 

この三人によって倒されたが、桜井さんが来るまで二人で挑んでも勝てなかった相手に

 

僕は1人で挑んでいる

 

そんな勝敗、簡単に想像できる

 

先程殴られ、まるで骨が折れたかのような錯覚をする痛みに苦しんでいた

 

どうにかゼロガッシャーを手に持っているものの、余りの痛みで起き上がれないでいた

 

そんな中で、アルビノレオイマジンはゆっくりと僕へと向かってくる

 

その時だ、まるで空気を裂くような音が聞こえた

 

『グッ!?』

 

それと同時にアルビノレオイマジンの鎧に火花が散る

 

一体、何が起こった

 

そう思いながらも、どうにか立ち上がる

 

そしてアルビノレオイマジンの見つめる先を見る

 

電仮面、最大で5km先の人の顔を見分けることが出来るレッドブルズスキャンアイにより見えたのは転身したイリヤと弓を此方

 

性格にはアルビノレオイマジンへと向けたクロエちゃんの姿だった

 

なんで、なんでここにイリヤとクロエちゃんが!?

 

思わず驚愕し思考が停止する

 

『フン……随分と弱そうな助っ人だな』

 

そう言ってアルビノレオイマジンが彼女の方を向く

 

そこから先は簡単に想像出来る

 

奴はクロエちゃん達へと炎を吐くつもりだと

 

そんなことは絶対にさせない

 

足に力を入れて、立ち上がりレオアルビノイマジンへと剣を振り下ろす

 

そして鎧に当たった瞬間に剣を引きながらバックステップすると後ろからデネブが走ってくるのが見えた

 

「ワタル!」

 

「デネブ!来い!!」

 

そう言いながらゼロガッシャーを二つに分けて腰に付けなおす

 

デネブが此方まで駆けてくると途中で変形し、大きなガトリング銃のような武器

 

デネビックバスターとなる

 

デネビックバスターを受け取り、即座にデネビックバスターの銃口をレオアルビノイマジンへと向けて引き金を引く

 

「ハッ!」

 

光弾が連続で発射され、アルビノレオイマジンを怯ませる

 

「二人とも離れてて!」

 

そう言いながら再び光弾を連続で放ちながらアルビノレオイマジンへと近付き、そのままデネビックバスターで殴り付ける

 

『グゥ!』

 

「このまま一気に決める!」

 

そう言いながら、ベルトのフルチャージスイッチを押しベルトから抜き取りデネビックバスターのガッシャースロットに差し込む

 

そして銃口をレオアルビノイマジンへと向けて引き金を引いた

 

それと共にデネビックバスターの銃口からビーム、バスターノヴァが放たれアルビノレオイマジンは爆散した

 

やっと戦い終わったと、そう思っているとイリヤとクロエちゃんが此方へと向かってくるのが見えた

 

デネビックバスターからカードを引き抜く

 

するとデネビックバスターが浮かび上がり、空中で元の姿に戻る

 

僕はベルトを外すと纏っていたアーマーが消え、手に持っていたゼロノスカードは砕け散るようにして消えた

 

まだあの二人が此方へと飛んでくるのを見るに、二枚目のカードで記憶が消えたのはクロエとイリヤじゃないことが分かった

 

だとしたら、もう分かっている

 

きっと、他の家族の皆はもう、僕の事を忘れているのだろう

 

もう帰れない、帰る場所が無くなった

 

「デネブ、ゼロライナーをお願い」

 

『分かった』

 

そう言ってデネブがゼロライナーが停車している場所へと向かう

 

そんな中、僕は背中から聞こえてきた足音の主へと振り返る

 

そこには辛そうな表情をしたクロエちゃんと、驚いたのか興奮しているイリヤがいた

 

「お兄ちゃん!さっきの何!?まるで休みの日にやってる特撮みたいだったよ!」

 

「ワタルお兄ちゃん…………」

 

「クロエちゃんだよね?さっきの、助けてくれてありがとう。でも、どうしてここに?」

 

「い、いっつも何処かに出掛けていって何も教えてくれないから気になって……」

 

「そっか………」

 

なるほどな、イリヤが僕を付けて来ちゃったのをクロエが一緒に来た訳か

 

さて…………言わないとな、せめて覚えてくれている二人には

 

「二人とも、今まで本当にありがとう」

 

「え?」

 

「イリヤ、今まで君の兄として過ごせて幸せだった。士郎によろしく頼むね」

 

そう言って笑いながらイリヤの頭を撫でる

 

イリヤは不思議そうに首を傾げ、クロエちゃんは意味が分かったのか、その瞳から涙を流し始めた

 

「クロエちゃん、今まで君の兄として過ごせて楽しかった。僕の音楽を好きになってくれて、ありがとう」

 

「…………止めて、お願い」

 

「二人とも、僕の部屋の物は好きに使って良いよ。でも望遠鏡だけはクロエちゃんに貰って欲しい」

 

「ワタルお兄ちゃん?どうしてさっきからそんなことを言うの?帰るんだよね?一緒に、私たちの家に」

 

さすがにここまで言うと、イリヤも可笑しいのを感じたのか不安そうな顔を此方へと向ける

 

「ごめん、二人とも。僕はもうその家族の中にはいない」

 

「え?」

 

「元気でねクロエちゃん、そしてイリヤ」

 

そう言って僕は彼女らに背を向けて、少し先に停車しているゼロライナーへと向かい乗り込む

 

「まって、まってよ!!お兄ちゃん!!」

 

そんな声が扉を閉める音と共に遮られた

 

入り口の近くには心配そうに僕を見てくるデネブがいた

 

「これで、良いんだ。デネブ、ゼロライナーを出してくれ」

 

『あぁ』

 

鼓笛が鳴り響き、ゼロライナーがゆっくりと進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………カ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外のお土産売り場、1人の女性が様々なお土産商品を眺めていた

 

「あら?」

 

ふと女性は手に持ったメモを確認する

 

シロウ、イリヤ、クロエ、   、リズ、セラ

 

「シロウには木刀を買ったし、イリヤちゃんとクロエちゃんには髪飾りを買ったわね。リズ、セラは……お菓子で良いかしら?」

 

そんなこと呟き、女性は再びメモを確認する

 

「クロエちゃんとリズの間、なんでこんなに間を開けて書いたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………カ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の女性がリビングのソファーに横になりイヤホンで音楽を聞いている

 

彼女の端末には00と書かれたアーティストの歌が流れていた

 

すると、何を思ったのか女性はイヤホンを耳から外して端末を操作し音楽を止めた

 

「…………飽きた。なんか良い曲ないかな?」

 

そう呟きながら、女性は端末を操作する

 

「なぁ、さっきから気になってたんだが何の曲を聞いてるのか見せてくれよ」

 

「ん」

 

「おぉ、サンキュー。どれどれ………プレーヤーに入ってる曲、全部同じ作者じゃないか」

 

「え?」

 

女性は端末をさらに操作して、曲のリストを出し

 

「……本当だ、これも、これも

みんな同じ人の」

 

「その人がお気に入りなのか?」

 

「ん、自分でも気付いてなかった。多分、お気に入りの人……新しい曲、あるかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………カ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある家、赤い髪に琥珀色の瞳を持つ少年が階段を上がって二階の自室へと向かっていた

 

「さて、課題を終わらせるか………ん?」

 

そんな事を呟きながら二階の廊下を歩いているなか、ふと立ち止まり自分と妹の間に挟まれている部屋を見る

 

「この部屋、何の部屋だっけ?まぁ、後で聞くか」

 

そう言って赤い髪の少年は自室へと歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………

 

残っている秒針は、二つ

 

それぞれ、何時を示すのかもわからない時計はただ秒針を刻んでいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤside

 

 

ワタルお兄ちゃんの乗った電車が私たちを置いて行く

 

空を走り、そして不思議な空間を開いて消えた

 

隣には瞳から涙を流す自分と瓜二つの少女、クロ

 

私はワタルお兄ちゃんが何を言っているのか分からなかった

 

何より家族が好きだったワタルお兄ちゃんが、私たちの届かない所へと行ってしまったこと

 

あのあと、泣き止んだクロを連れて大急ぎで家に帰った

 

他の家族の皆は寝ており、起きているのは私とクロだけ

 

私たちは皆を起こさないようにワタルお兄ちゃんの部屋のドアを開く

 

ドアを開いた先では何時も通りパソコンをしているワタルお兄ちゃんの姿が、なかった

 

あるのは望遠鏡や机、そして机に置かれたデスクパソコンにベット

 

棚にはいくつも00のCDが置かれている

 

クロはワタルお兄ちゃんに頼んでいたプレーヤーを手に取り、また泣いてしまった

 

それだけ、ワタルお兄ちゃんが出ていった事が悲しかったんだね

 

その後、私達は明日も学校があるから寝ることにした

 

でも、最後にはワタルお兄ちゃんが言っていた

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

これだけが頭の中に引っ掛かったまま離れなかった

 

そして、次の日

 

私は嫌でも理解することになる

 

何故ワタルお兄ちゃんが出ていったのか、あのような言葉を言っていたのかを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イリヤさん、イリヤさん。朝ですよ?起きてください」

 

「んぅ」

 

体を揺すられ、私は目を覚ました

 

目を擦りながら体を起こす

 

「おはよ、セラ」

 

「はい、おはようございます。クロエさんはもう起きてますよ」

 

起こしに来てくれたセラの言葉を聞きながらベットから降りて何時も通り階段を下りて何時ものテーブルの席に座る

 

「おはようイリヤ、良く眠れたか?」

 

「うん」

 

「クロもおはよ~」

 

「おはよ………」

 

クロの声は何処か沈んでおり、朝の爽やかな空気と真逆だ

 

「あれ?」

 

何時もより一席分、少なかった

 

「ねぇ、ワタルお兄ちゃんはまだ寝てるの?」

 

そう、ワタルお兄ちゃんの席が

 

「ワタルお兄ちゃん?誰の事を行ってるだ、イリヤ?」

 

「え?」

 

寝ぼけていた意識が、一瞬で目覚める

 

「ワタルお兄ちゃんだよ?私達はいつも八人で家族で」

 

「何を寝ぼけてるんですかイリヤさん、家は()()しかいませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあと、学校へ行くまでは何も考えられなかった

 

家族に元々ワタルお兄ちゃんが居なかったような、そんな風に変わっていた

 

学校で良く遊ぶ美遊や田中さん

 

リンさんやルヴィアさんも、学校の先生も誰もワタルお兄ちゃんの事を知らなかった

 

放課後、私はクロに連れられとあるアパートに来ていた

 

なんでも、ここの一部屋はワタルお兄ちゃんが借りていたらしい

 

でも、私達が来た頃にはもう何も残っていなかった

 

管理人さんの話だと今朝に契約解除をして出ていったらしい

 

「なんで、みんなワタルお兄ちゃんの事を知らないの………」

 

「一体、何処に言ったのよ」

 

アパートに寄った帰り道、橋を渡りながら私はそう呟いた

 

『もしかして、ワタルさんをお探しですか?イリヤさ~ん!』

 

やっぱり、ルビーも覚えてないんだ

 

………あれ

 

「ルビー!今ワタルお兄ちゃんって言ってたよね!?」

 

『それがどうかしましたか~?』

 

そう言いながら体を曲げて?にするルビーを掴んで引き寄せる

 

「ルビー!ルビーはなんで皆がワタルお兄ちゃんの事を知らない風に言うのか分かる?」

 

()()()()()じゃなくて、()()()()んですよ』

 

「……え?」

 

『そもそもですねイリヤさん?以前にもお教えしましたが、この世の中ただなんて物はないんです。等価交換によって成り立っているんですよ?』

 

「う、うん……」

 

『では、魔術を使えない一般人であるワタルさんのあの姿と戦闘力!一体、何を代償としているのか』

 

そこで私は今までワタルお兄ちゃんについでに聞いてきた色々な人の言葉が脳をよぎり、最後にワタルお兄ちゃんが言っていた言葉が思い浮かぶ

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

「もしかして、記憶?」

 

『正確には()()()()()()()()()()()です』

 

じゃ、じゃあワタルお兄ちゃんはいつもあの姿になる度に………

 

それがどれだけ悲しいことなのか、想像も出来ない

 

「じゃ、じゃあなんでルビーは覚えてるの?」

 

『私、人じゃなくて杖ですし~。なんなら動画も残ってますし~代償は人間が限定なんじゃないですか?』

 

「な、なるほど……」

 

その時だ

 

橋からみた少し先の新都のビルが砂のように崩れていく

 

「な、何が!?」

 

頭に浮かぶのは、あのワタルお兄ちゃんと闘っていた化け物

 

もしかして、あいつがあんなことを!?

 

その時だ、私たちの真上の空気が歪み何かが出てくる

 

それは、あの時ワタルさんお兄ちゃんが乗って消えた黒い列車だった

 

黒い列車は空中を走り、新都の方へと向かっていく

 

「きっと、ワタルお兄ちゃんだ!」

 

「今すぐ追いかけるわよ!」

 

そう言いながら私達は駆け出しだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

ゼロノスベルトを腰に巻き付け、ゼロライナーから下りる

 

僕の視線の先には灰色で頭に角が付き、両端に鎌の着いた武器を持ったイマジン

 

仮面ライダー電王のラスボスであるデスイマジンがたっていた

 

カードケースから最後のゼロノスカードを取り出す

 

恐らくはこのカードを使えば、クロエとイリヤから記憶が消え、この世界で僕を知る人も消え

 

僕は消滅する

 

戦う事から、進むことを止めることは許されない

 

でも、それで良い

 

例え消滅しても原作と言う物語通りに戻るだけ

 

さようならみんな

 

最後まで、本当にありがとう

 

僕はベルトの上に着いたチェンジレバーを押す

 

すると、ベルトからまるで笛のような音楽が流れる

 

「変身!」

 

手に持った最後のゼロノスカードをベルトへとアップセットする

 

『CHARGE AND UP!』

 

その音声と共に僕のフリーオーラが変換され鎧となり体を覆う

 

そして赤錆び色の体となり、頭にあるに2ヵ所の線路のような場所を牛が左右に進み

 

停車すると変形し、電仮面となる

 

忘却の戦士

 

仮面ライダーゼロノス ゼロフォーム

 

ゼロガッシャーを組み合わせサーベルモードにして、構える

 

「みんなの未来は、僕が守る!」

 

そう言いながら僕はデスイマジンへとゼロガッシャーを振り下ろすが、デスイマジンは手に持った鎌でゼロガッシャーを受け止め、そのまま僕を蹴りとばす

 

ゼロガッシャーと共に軽く吹き飛ぶがすぐに立ち上がりゼロガッシャーをサーベルモードからボウガンモードに組み直し、デスイマジンへと駆け寄りながらボウガンを連射するが

 

デスイマジンには余り効いていないように見える

 

その後もサーベルで切り付けようとする度にデスイマジンから攻撃を喰らってしまう

 

ゼロガッシャーを地面に突き刺してどうにか立ち上がる

 

とっくの前に息は切れて、肩で呼吸を繰り返す

 

そんな僕の様子など関係なく、その鎌で僕を殺そうとデスイマジンは此方へと歩いてくる

 

こんな所で、負けられないのに

 

負けちゃいけないのに、なんで力が入らないんだ!

 

その時だ

 

「フォイア!!」

 

「カラドボルグII!!」

 

魔力の弾丸、そして螺旋のような剣がデスイマジンへと命中し、わずかにデスイマジンが僅かに怯む

 

僕の目の前に、空から落ちてきた二人の少女

 

妹であり、原作と同じインクルードした姿のクロエと魔法少女へと転身したイリヤの姿があった

 

「なんで……」

 

おもわず、そう呟いた

 

「なんで、って。そんなの決まってるよ」

 

「「家族を助けるのに、理由はいらない」」

 

そう言って再びデスイマジンへと攻撃を続ける

 

そういう少女達に思わず仮面の中では目から涙が流れた

 

そうだ、こういう子達だった

 

だからこそ、僕は彼女らの未来を守りたいと思った

 

例え、消滅するとしても

 

孤独になるとしても、それを強さにする

 

彼女達の本当の道である〔原作(真実)〕を守るために

 

「デネブ、来い!!」

 

そう言うと僕の隣をゼロライナーが通過し、通りに過ぎるとデネブが僕の横に立っていた

 

「うぇ!?こっちにも敵!?」

 

「いや、違うと思うわ」

 

そう言って驚くイリヤに突っ込むクロエちゃん

 

『待たせたな、ワタル』

 

「うん、力を貸してくれ。終わらせるよ、この戦いを」

 

そう言うとデネブは黙って頷き、その姿をガトリング銃『デネビックバスター』へと変える

 

「銃に、なった!?」

 

「どうなってるのよ、その鎧も。銃も」

 

ずっと驚きの声をあげるイリヤに対し、僕のゼロノスの鎧について改めて首を傾げるクロエちゃん

 

「基本的に二人は後ろから掩護射撃をお願いしても良いかな?」

 

その問いに黙って頷く彼女らを背後に

 

僕はデネビックバスターを握りしめ、引き金を引いて光弾を反射しながらデスイマジンへと突き進む

 

そして相手の振り下ろしてくる鎌をデネビックバスターで流し、そのまま回し蹴りを喰らわせ横に前転した瞬間にデスイマジンをイリヤのフォイアとクロエのカラドボルグが襲う

 

少し下がり、デネビックバスターのトリガーを引き光弾を発車しさらにデスイマジンにダメージを与えてつつデネビックバスターで、殴り飛ばす

 

「おらぁ!」

 

『っ!?』

 

そしてまたイリヤとクロエちゃんの掩護射撃が来るので横に飛ぶ

 

「シュナイデン!」

 

イリヤが魔力による斬撃を放ち、それを鎌で弾くデスイマジン

 

「喰らいなさい!」

 

でも、背後に転移したクロエちゃんの白と黒の双剣、干将莫邪の攻撃が通る

 

腰に付いているゼロガッシャーをサーベルモードで組み換え、左手に逆手で持ち、右手だけでデネビックバスターを持つ

 

少し重いけど、大丈夫

 

援護射撃が終わった瞬間にデスイマジンへと近付き左手のゼロガッシャーを振るう

 

だが、ゼロガッシャーはデスイマジンの鎌によって防がれる

 

だから、僕は右手のデネビックバスターの銃口

 

ゴルドフィンガーを押し付け、そのままゼロ距離で引き金を引く

 

すると、さすがに聞いたのか後ろへと吹き飛ぶデスイマジン

 

この闘いを

終わらせるんだ、僕の手で

 

クロエやイリヤ、父さんや母さん

 

リズ、セラさん達の未来を守るために

 

僕はベルトの上にあるボタン、フルチャージスイッチのボタンを押す

 

『FULL CHARGE』

 

ベルトからゼロノスカードを引き抜き、手に持っているデネビックバスターのスロットへとカードを装填する

 

『はぁァァァァァ、ベン!』

 

デネブのその声と同時にトリガーを引く

 

すると極光のビーム、バスターノヴァが放たれる

 

その反動で少し後ろへと下がる

 

しっかりとデネビックバスターを握りしめて反動を耐える

 

そしてバスターノヴァを掃射し続け、デスイマジンは爆散した

 

これで、もう戦いが終わった思わずだらりと構えていた両腕がだらりと下がるがデネビックバスターは手放さない

 

ひたすら、走り続けていた

 

自信に与えられたゼロノスと言う、力の代償

 

今を、未来を守るためにイマジンと戦うこと

 

でも、今は終わったんだ

 

最初こそ、恐怖しかなかった

 

でも、これは原作にイマジンと言う異物を紛れ込ませてしまった僕の責任

 

そう思い我慢して闘ってきた

 

「「お兄ちゃん!」」

 

でも、途中からは違った

 

イリヤやクロエちゃん

 

そして士郎や皆の未来を守りたい

 

心から僕はそう思い、カードを手に取っていた

 

だから、この結末に満足している

 

彼女らの未来を、そして道筋(駄作)を元に戻し、彼女らが僕のことを忘れ

 

全てがそう、ZERO(元通りの物語)へと戻る

 

駆け寄ってくる大切な妹達を抱き締める

 

「今まで、本当にありがとう。僕にとって最高で一番………大好きな家族達、絶対に僕は、貴方達の事を忘れない!」

 

頭に浮かぶのは、士郎や父さんや母さん

 

リズやセラ、薫や悠里

 

そしてお世話なった高校の先生

 

きっと、このカードを抜けば全てが崩れて壊れてしまう

 

そう思いながらデネビックバスターに装填されたままの赤いカードを見る

 

でも、ずっと変身したままでいることも出来ない

 

僕は彼女らを離して、最後のカードを引き抜こうとデネビックバスターへと手を伸ばそうと

 

「やめて」

 

して、その手をクロエちゃんが泣きながら止めた

 

見れば、イリヤも涙を流している

 

「お兄ちゃん消えちゃだめ!」

 

もしかしたら、クロエちゃんがイリヤにこの力の代償を話したのかもしれない

 

でも、関係ない

 

このカードを引き抜けば彼女らは全てが消え去れる

 

「なぁ、イリヤにクロエちゃん。分かっているけど僕はこの変身を解いたら消える、そして君達も僕のことを忘れる」

 

「いや!忘れない!私は絶対に忘れない!」

 

「そうよ!今からでも何かメモを残せば!」

 

ごめんね、例え二人が覚えようと何かを残しても

 

それは、無理なんだ

 

「ありがとう。でも、きっと無理だからさ…」

 

そう言って二人の頭を撫でる

 

「ワタルお兄ちゃん、私は………」

 

クロエちゃんかそう言って僕へ何かを伝えようと顔を近付ける

 

「駄目だよ」

 

僕はそれを右手で止めた

 

悪いけど僕は士郎やアニメの主人公ほど、鈍感じゃない

 

自惚れなのは分かってるけど、クロエちゃんの気持ちは分かっていた

 

それと同時に勘違いであってくれと、そう思っていた

 

でも、それが確信に変わったからこそ

 

関係を結ぶ前に、僕は消えよう

 

「クロエちゃんの気持ちは分かってる。僕はこれでも鈍感じゃないし、嬉しかった」

 

もしかしたら、クロエちゃんが僕の曲を気に入ってくれた日に

 

僕はクロエちゃんの事が好きになっていたのかもしれない

 

だからこそ、一緒に歌ったり

 

懐中時計をあげたのだろう

 

「だからさ、約束。もし、クロエちゃんが僕のことを覚えていて見つけたら、今度こそ思いを教えて」

 

そんなあり得ない、いまこの場で消えようとする僕へとクロエちゃんは静かに頷いてくれた

 

「イリヤ、クロエ………さよなら」

 

そう言って僕はデネビックバスターからカードを抜き取る、それと同時にカードに亀裂が入っていき

 

やがて、砕け散った

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ………カ

 

時計の残された秒針は止まった

 

その止まった時計は動く日が、来るのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は新都からイリヤと共に帰ると、家の空いている部屋、私の部屋へと入る

 

なんでも、いつの間にかこの部屋に布団やら色々と揃っていたらしい

 

何故か望遠鏡が

 

いつも使っている赤錆び色のミュージックプレーヤーを起動し入っている曲のリストを眺める

 

ふと、最後の欄に知らない作者の曲があった

 

「なんの曲かしら?」

 

そう呟きながら曲名を確認する

 

そこには『Action Zero』と言う曲ともう1つ

 

作者の欄には『衛宮渡』と書かれている

 

「衛宮………すごい偶然ね。それにしても誰がこの曲を……」

 

どうせ消すのなら、その前に聞いてみようかな

 

せっかくだし

 

そう思いながらプレーヤーを操作し、瞳を閉じてベットへと横になり二曲を聞く

 

その曲は幻想的で、でも何処か悲しさを感じる

 

まるで、童話のような悲しい曲だった

 

そしてその曲は、ただ

 

ただひたすらに、切なかった

 

この曲はさっきとは違い熱く、そして激しい曲調だけど、それ以上に歌詞が切なかった

 

そして気が付けば私は目から涙を流していた

 

「なんで?」

 

こんな、音楽を聴いたぐらいで泣くなんて

 

拭っても拭っても涙が溢れる

 

なんで、なんでこんなに私は

 

悲しいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秒針は全て止まった

 

彼のおしまいの後を知るものは

 

誰ひとり、いない

 

 

 

 

 

 

 

 

 






高評価でしたら、ゼロノスの二話を書きます

ご愛読ありがとうございます

感想、お気に入り、高評価

よろしくお願いします



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If ゼロノスⅡ~カルデア編~

この作品は前回に書いたゼロノスのIfの続きとなります

設定ガン無視、頭を空っぽにして書いている部分が存在する可能性がございます

それで良い方は、ごゆっくり


 

 

 

 

古びた時計、七つの秒針が止まり

 

 

 

動かず、その場にあるだけの時計

 

 

 

 

 

「贖罪は、戦いは終わったはずなんだけどな………デネブ」

 

「あぁ、分かった」

 

そう呟き、世界の意思より受け取ったカードの束を眺める一人の青年は青年の近くにいた異形の存在に指示を出し、その青年の乗る黒い列車は列車は走りだす

 

 

 

 

 

 

 

これは既に止まったはず

 

 

 

 

終わったはずの物語

 

 

 

 

 

 

彼は時を守護する者として、その力を取り戻す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七つの針が止まり動かぬ時計は

 

 

 

 

 

 

………カチ、カチ、カチ、カチ

 

 

 

 

 

 

 

動き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人理継続保障機関カルデア

 

人理の焼却に覆われ、人理を取り戻そうと抗う者達の居る場所

 

そこでは、人類最後のマスターの少女、藤丸 立香

 

盾のサーヴァント、マシュ・キリエライト

 

カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィア

 

医療部の責任者ロマニ・アーキマン

 

その3人は今日もまた、特異点で起こったあることを話し合っていた

 

最初の特異点F、続いて第1の特異点オルレアンにて起こった

 

いや出会ったあることに対してだった

 

「全員揃ったようね、それじゃあ()についての話し合いを始めましょう」

 

そう言って映像に映ったのは一人の青年がベルトにカードのような何かを装填すると姿を変えて、緑色の戦士へと変わったシーンが流れ出す

 

「今の所、彼について分かっている事は“レイシフト先に謎の列車と思われる何かで現れる”こと、自らを“『時の守護者』と名乗っている”こと、我々にはない“テクノロジーで作られたと思われる礼装らしき物を使用している”ことだ。そして毎回悪口を言いながらも我々の手助けをしてくれることだね」

 

「ロマニ、ゼロノスと言う言葉に何か分かったことはあるかしら?」

 

「一応、調べてみたんだけどそんな単語は存在しなかったよ。ここからは僕の考察だけどゼロノスは時の守護者を名乗っているからギリシャ神話に出てくる時間の神、クロノスに何か関係していると考えているよ」

 

「一応、彼の名前は分かっているの?ゼロノスはあの礼装の名称だとして、彼自身の名前は知らないわよね?」

 

「いえ、それが……」

 

「毎回戦闘した後にはもう消えていて」

 

「そう、彼が人理修復を手助けしてくれる存在である事は間違いないのね?」

 

「英霊では無いことは確かだね。さて、話を変えるが今回みんなに集まって貰ったのは彼に付いてだけじゃないんだ。特異点が発見されたんだけど、問題はその時代なんだ」

 

「時代?」

 

「うん、その時代は僕たちの生きいる時代に凄く近い、特に変な反応は無いんだけど……何故か特異点としてのランクがCなんだ」

 

「取り敢えず、次はそこにレイシフトするってこと?」

 

「えぇ」

 

「今回のメンバーは此方で考えておいたよ」

 

そう言ってダ・ヴィンチちゃんが一枚の紙を藤丸 立香に手渡す

 

「えっと、マシュにエミヤにイリヤ、クロエ……何このエミヤ保護者感が凄いんだけど」

 

「取り敢えず、その時代に適応できそうな子達を選んでおいたよ。それじゃあ、早速レイシフトしてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイシフトを終えた藤丸立香一行は目の前に広がる風景に懐かしさを覚えていた

 

「ここって、冬木?」

 

「それって確か、先輩の故郷ですよね?」

 

そう、彼らがレイシフトしたポイントは晴れた冬木の公園だった

 

「うん。それにイリヤ達ってここの学校の子なんだよね?」

 

「はい!ねぇクロ、この世界にママやパパっているのかな?」

 

「さぁ?取り敢えず行ってみないと分からないわ」

 

その時だアラームと共に空中に映像が投影される

 

『繋がったようね、立香とマシュはレイシフトは完了したわね?体調に変化はない?』

 

「はい!大丈夫です、所長!」

 

「でも、変ですね。周りに全く人の影がありません、この時間帯は人はいないのでしょうか?」

 

「うーん、平日ならあり得なくもない?のかな」

 

『取り敢えず、今からの行動としてはまず拠点の捜索、周囲の調査よ』

 

「はい!」

 

「了解です!所長!」

 

その二人の返事と共に映像が途切れる

 

「マスター、まずここから行動する?」

 

「取り敢えず、エミヤとクロエは軽く見回りをお願い。もし、拠点に良さそうな場所があったら教えて?私たちは近くを見てこの時代の違和感を探してみる、一応特異点だし何かしら変化があると思うから」

 

「了解した、行くぞ」

 

「えぇ。」

 

そう言って二人が歩いていくのを見届け、藤丸立達も動き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……■■■、いやユウト。ここにはイマジンが沢山いる」

 

「特異点を解決する力の適正は俺の方があるって事か………分かった、いくぞデネブ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエとエミヤは気配を遮断し、町を索敵していた

 

「(今の所、変な所はなさそうね)」

 

──────ジジッ──

 

屋根と屋根を伝って走る中、クロエはとあるアパートの前でふと立ち止まった

 

─家ではない何処かの一部屋、冷蔵庫以外何もない可笑しな部屋─

 

私は誰かが冷蔵庫から持って来た炭酸ジュースを受け取って飲んでいる

 

『よし一旦休憩にしよう、クロエちゃん』

 

『分かったわ。ジュースありがとう、お兄ちゃん』

 

思わず、そのまま地上に下りるクロエ

 

「む?どうした?」

 

「……………」

 

そんなエミヤの声に答えることなく、クロエは何処か虚ろな瞳で歩きだし先ほど通りすぎようとしていたアパートに入る

 

「おい?どうした?クロエ!!」

 

アパートへと入って行くクロエを追い掛ける

 

エミヤは突如として起こったクロエの可笑しな行動

 

追い掛けた先には1つの部屋の前にたどり着くと小さな鍵を取り出すとそのまま部屋の中に入っていく

 

「(どういう事だ、何故彼女がこのアパートの鍵を?)」

 

追いかけ、部屋の表札を見るがそこには

 

「衛宮、渡?」

 

その名前のっており、エミヤはその事に違和感を覚える

 

エミヤには冬木で自分の住んでいた先が武家屋敷、イリヤとクロエは普通の住宅である事を聞いていた為にクロエがこの部屋

 

しかもアパートの鍵を持っている事に違和感を感じた

 

取り敢えずクロエを追い掛け、その住居に入る

 

部屋の入り口にクロエは立っており、エミヤがクロエの後ろから部屋を眺める

 

部屋にあるのは冷蔵庫、スタンドマイクしか無い部屋だった

 

「ふむ、拠点としては使えそうだな………」

 

そう考えながらクロエの肩を叩こうとしてエミヤは眼を見開いた

 

クロエは、泣いていた

 

虚ろな瞳で部屋を眺めたまま、静かに涙を流していた

 

─あの日、確かに少女にとってこの場所は大切な思い出であったはずの場所。大切な存在がいた証拠だが、それを忘れた少女は─

 

「クロエ、しっかりしろ!」

 

「………え」

 

エミヤがクロエの肩を軽く叩くと、クロエの瞳は生気の宿った瞳へと戻った

 

「え、なんで私」

 

「気が付いたか?」

 

「私、なんで泣いて……それにここは何処?」

 

そう言いながら困惑した様子で周囲を見渡すクロエにエミヤは違和感を覚えた

 

「君が急にこのアパートに入り鍵を使ってこの部屋に入ったのだが、覚えていないのか?」

 

エミヤの問いにコクりと頷くクロエ

 

「何はともあれ、拠点としては使えそうな場所だな」

 

「なんで私、こんな部屋の鍵を持ってるの……」

 

そんな恐怖心と驚愕、困惑し戸惑いを隠せないクロエ

 

「一度、君はカルデアに戻った方が」

 

「ダメ………ダメ……ここは、私と………」

 

エミヤはそんな返事に再びクロエの瞳を見ると、その瞳は先ほどと同じように虚ろ

 

クロエは身につけたネックレスに繋がっている懐中時計に触れ虚ろな瞳で部屋を見て言葉を溢していた

 

「まさか、精神汚染?いや、魔術か……だがそんな反応など……」

 

「あれ?私、何を」

 

先程から様子が可笑しいクロエに、エミヤは思わず頭を抱えた

 

「一体、何が起こっている……魔術の反応は無い。それどころか操られてすらいないのなら何故……」

 

「私、一体どうしたの………」

 

「取り敢えず、マスター達と合流しよう。イリヤと一緒にいた方が今は今は良いだろう」

 

その後、エミヤの連絡により早急にこの場へと合流した藤丸立香やマシュ、イリヤはいつものクロエとは思えない程に弱々しくなっている彼女を見て思わず顔をしかめる

 

「取り敢えず、エミヤの言うことを纏めるとクロエがまるで操られているようになる、でもサーヴァントのスキルでも何でもない………確かに妙だね、ドクター!この部屋に何か仕掛けとかは?」

 

『この部屋をスキャンしてみたけど、特に魔術のような反応は見つからなかったよ。』

 

「だよね、それにあったらエミヤが気付いてるはずだし」

 

「あの、イリヤさんはこの部屋に見覚えは無いのでしょうか?」

 

「無いよ、でも……なんだろ」

 

「どうかしたのイリヤ?」

 

「なんか、変なんです。でも何が変なのか分からなくて」

 

「確か、この部屋を借りている人の名前って、“衛宮 渡”って名前だったよね?」

 

「はい、ですがこの時間になっても帰ってこないのは可笑しいですね。でも、この特異点にはまだ人を見つけていませんし、訳が分かりません」

 

その時だった

 

「え、みや……わた、る?」

 

その言葉をクロエが呟く

 

──────ジジッ──

 

はじめてのレコーディング、楽しかった

 

何より笑いあっている相手の青年の穏やかに微笑む姿が心から嬉しかった

 

クロエは笑い会うなか、突如として顔をしかめた彼に思わず首を傾げた

 

『ごめん、少し行ってくる』

 

『何処にいくの?』

 

『大丈夫、直ぐに戻るから』

 

そう言いながら笑う彼は、まるで触れれば壊れてしまいそうで、消えてしまいそうで

 

「いか、ないで………まって、いかないで」

 

クロエは虚ろな瞳で歩きだす、ふらふらとおぼつかない足で玄関へと歩きだす

 

まるで、何かを追いかけるように手を伸ばしながら

 

「「「!?」」」

 

「またか………」

 

「クロ?」

 

──────ジジッ──

 

『僕の時間が消滅して………僕も消滅する』

 

「きえちゃ、いや………」

 

そう言いながらふらふらと玄関へと歩く姿はまるで幽霊のようだった

 

「クロ!」

 

そう言ってイリヤがクロエの両肩を揺する

 

「イリヤ?私、また何か………」

 

「これが先程エミヤさんが言っていた」

 

「あぁ。この建物に入ってからずっとこの調子だ、ふとした表紙にはあの状態になる」

 

「取り敢えず、勝手だがこの部屋を借りて休ませて頂こう。万が一にでも、帰ってきたら記憶を消せば良いだろう」

 

「そうだねエミヤ。そろそろ夜だし、休もう。冷蔵庫なんか無いかな」

 

そう言いながら冷蔵庫を開けに向かう立香にエミヤは思わず額を押さえる

 

「マスター、一応他人の家なんだが勝手に冷蔵庫を空けるのはいけない」

 

「えー、歩いて探し回ってたから喉乾いちゃったんだもん。うーん、ジュースしか無いや、私はこれで、マシュ!マシュはどれにする?」

 

そう言いながらそれぞれに冷蔵庫から勝手に取り出したジュースを渡す立香

 

「でも、ご飯や食材はないね。どうする?」

 

「はぁ……マスター、君はもっと遠慮と言うものを知ったらどうだ?」

 

「え?」

 

『アハハ、取り敢えずこっちから物資を少し送るからそれで我慢してくれ』

 

「やったー!ありがとうドクター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、カルデアから送られた物資で朝食を住ませた立香達はアパートから離れ、新都と呼ばれる場所まで足を伸ばしていた

 

クロエの様子は落ち着いたのか、昨日のようになることは今のところは無い

 

「全く人がいない………」

 

「誰もいない新都、夢みたい……」

 

そのときだった

 

「下がれ!マスター!!」

 

エミヤの一声に立香達は一斉にそれぞれの武器を構え、そして奥から現れたのは

 

「……………」

 

左腕が斧のように変形しており、鉄仮面のように見える物をかぶり全線を鋭的な装備で包んでいる何か

 

“モールイマジン”が現れた

 

「何、あれ……」

 

「分かりません、少なくともサーヴァントには見えません!」

 

『なんだこれ!?今まで見たことの無い反応だ!』

 

「まるで、特撮の怪人みたい………」

 

「エミヤ、あいつは」

 

「分からない、だが奴は俺たちを逃がすつもりは無さそうだ」

 

そう言いながら黒と白の双剣、干渉莫邪を投影し構えるエミヤ

 

同じくクロエも干渉莫邪を構える中

 

突如として目の前の怪人と思われる何かが三人へと分裂した

 

左手が斧のように変形している者、ドリルのような物をしている者、鉤爪を持っている者

 

「なんだと!?………マスター!指示を!」

 

「エミヤは鉤爪の奴!イリヤは悪いけど腕がドリルのやつ!クロエは斧の奴を私とマシュでやるよ!」

 

その声にそれぞれがモールイマジンへと先制を仕掛けようとした

 

その時だった

 

それぞれが大地を踏みしめ、ジャンプすると高速で回転し、そのまま地面を掘って隠れる

 

「………逃げた?」

 

「いや、下だ!全員避けろ!」

 

その声と共にエミヤ立香を抱き抱えるとその場から駆け出し、イリヤは即座に空を飛ぶ

 

クロエもエミヤと同じように駆け出し、マシュも盾を持ちながら走り何時でも防御出来るよう駆け出す

 

「……ここだ!」

 

その声と同時に、一人が空に滞空するイリヤヘとモールイマジンが一体突撃していく

 

「ルビー!障壁張って!!」

 

「はいは~い!」

 

その掛け声と共にモールイマジンの突撃を防ぐイリヤだが、モールイマジンは回転を続け突撃して来るために、だんだんと障壁に皹が入り始める

 

「ちょっ!?」

 

不味いと感じたイリヤは即座に真上へと飛翔した瞬間に、モールイマジンが通りすれすれで避けたイリヤはもし当たっていたらと考えて、即座にその想像を払うように首を降る

 

「ここだよ!」

 

そう言いながら飛び出たモールイマジンにマシュは即座に盾を構える

 

「ぐっ!……やぁ!!」

 

次の瞬間にモールイマジンの突撃を止めたマシュは余りの重さと衝撃の強さに苦悶の肥をあげながらも受け流す

 

「ここ、だよねェ!!」

 

そう言いながらもう一体のモールイマジンがクロエへと向かう

 

即座にクロエはモールイマジンの突撃をさしてくる場所の反対へと転移することでモールイマジンの突撃を避ける

 

「みんな!大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「問題ありません!戦闘を続行します!!」

 

「エミヤ、私を下ろして。なんとか避けるからエミヤはみんなの支援に回って!」

 

「了解した」

 

そう言いながら立香を下ろして再び剣を構えるエミヤ達

 

「こいつら、中々やる」

 

「電王よりは弱いよ」

 

「こっからは本気でいくよ!」

 

思わず立香達は気を引き締めるその時だった

 

その場にはあり得ない、列車の警笛の音が鳴り響いた

 

そして聞こえてきた方向を向くとそこには黒く牛のような列車が空中に現れたレールを走り此方へと向かってきていた

 

「あれって、列車!?なんで空中を走ってるの!?銀河鉄道か何か!?」

 

「列車、確か先輩が使っていた移動するための道具でしたよね?空中も走るのでしょうか……」

 

「そんな、バカな………」

 

驚きの声をあげる立香とエミヤ、はじめての列車を見るマシュ

 

そしてイリヤとクロエは何故か酷く悲しい思いが胸に広がっていた

 

「胸が苦しい、なんで………」

 

「……懐かしい、なんでそんな事を思ったんだろ私」

 

そのまま列車は三体のモールイマジンを吹き飛ばしながら立香達を通りすぎ、止まった

 

そして列車の扉が開き、現れたのは白い髪の片方には緑色のメッシュの入った目付きが悪く此方を睨むようになっている立香と同じくらいの歳の少年が列車から降り立った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

ゼロライナーから降りると、目の前にはすっかり変わり果てた姿となり英霊となった兄

 

そして自信の妹であったはずの二人

 

そして明るいオレンジ色の髪の少女に白髪で片目を隠した大きな盾を持った見覚えのある少女達が俺の方を見ていた

 

俺は先程吹き飛ばしたモールイマジンを見る

 

「三体か、はぁ……面倒だ。」

 

そう呟きながら彼女らより前へと向かいつつゼロノスベルトを腰に巻く

 

残りのカードは?

 

(まだ、余裕がある)

 

そっか

 

「ゼロノス!!」

 

人類最後のマスターとなった少女が俺の名を呼んだ

 

「はぁ、英霊なら一体ぐらいは倒せよな。」

 

そう言いながら、彼女らを守るように前に出る

 

もとから話を聞くつもりはないんだ

 

「ったく……こんな所でカードを使わされるなんて、本当に迷惑」

 

「また、助けてくれるの!?」

 

「ゼロノスさん!」

 

マシュさんと藤丸さんの問いに俺は

 

「戦う気が無いなら、後ろでじっと見てろ。あいつらは俺が専門だ」

 

そう突き放すように言いながらゼロノスベルトの脇に付いているチケットホルダーから緑色のゼロノスカードを取り出して構え、チェンジレバーを

 

「何よ、いきなり現れて!貴方は一体何者なの!」

 

押そうとして、聞こえてきた責めるような声に体が少し強ばったのを感じたが即座に元の調子に無理やり戻し、視線を後ろに下げると

 

褐色の肌に銀色の髪を持った少女が立っていた

 

「何よ、なんな言いなさいよ!」

 

黙って少女を睨んでいると少女がそう言いながら叫ぶのに俺は前へと向き直り呟くように言った

 

「………知るか」

 

決意したのだ

 

例え、嫌われても、独りでも戦う

 

痛い、心が酷く痛む

 

即座に彼女へ謝罪しろと言う考えを無視し

 

チェンジレバーを押してスライドさせ、ベルトから笛の演奏のような待機音が流れ出す

 

俺は、ただ戦う

 

彼女達の時間を守るために

 

「………変身」

 

そう言いながらベルトへとカードをアップセットする

 

【ALTAIR FORM】

 

その音声と共にフリーエネルギーが変換され、鎧となり体に装着されていく

 

体は緑色の体となり、頭部にある2ヵ所の線路を牛が左右に進み

 

止まると変形し、電仮面となり

 

仮面ライダーゼロノス、アルタイルフォームへと変身した

 

ゼロノスに変身した瞬間、イマジン達は明らかに動揺している

 

俺はゼロガッシャーをサーベルモードにして三体のモールイマジンへと向ける

 

「最初に言っておく、俺はかなり強い!」

 

そう言いながらゼロガッシャーを構えイマジンへと駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからモールイマジンを相手に一方的に攻撃していた

 

立香や英霊達が割って入ってこない

 

過去の特異点では、例えボロボロでも立ち上がった彼ら

 

おそらく、俺の事を観察しているのだろう

 

そう思いながら目の前のイマジンを仕留めるべく、ゼロノスベルトにあるフルチャージスイッチを押す

 

【FULL CHARGE】

 

発行するゼロノスカードをゼロガッシャーへと装填し、大きく振るいながら三人で固まっているモールイマジン達へと凪払うようにスプレンデッドエンドを放った

 

大きなA字の斬撃は三体のモールイマジンを貫き、イマジン達は爆発した

 

「ふぅ」

 

そう息を吐きながらゼロガッシャーを腰に戻し、カードを抜き取る

 

すると元の姿に戻り、カードはゆっくりと消滅していく

 

そのカードを眺めていると、腰に何かが服の袖を掴んだ

 

振り替えると、そこにはクロエがいた

 

「なんだよ………」

 

そう言って振り払おうとして、次の瞬間

 

「消えちゃ、やだ………」

 

その言葉が聞こえ、思わず眼を見開く

 

だが、次の瞬間クロエはまるで糸が着れたように体が傾く

 

後ろから立香達の叫び声が聞こえ、取り敢えずクロエを受け止め抱き抱え、藤丸さん達へと向かう

 

「こいつ、急に倒れたぞ。気をつけるよう言っとけ」

 

そう言ってエミヤへとクロエを抱えた腕を向ける

 

「ごめんね、なんか彼女この特異点には来てから変なんだよ」

 

この特異点に来てから、か

 

「仲間が失礼したな」

 

「本当にな」

 

そう言ってエミヤにクロエを乗せ、離れようとしたが、クロエの腕が服の袖を掴んだままだった

 

「……………」

 

思わず黙り込む

 

「……………ずいぶんと、懐かれたようだな」

 

エミヤがいつもより少しだけ低い声で話してきたのを無視して

 

クロエの腕をゆっくりと腕を離し、エミヤに任せる

 

「私、藤丸立香。こっちはマシュ、いつも助けてくれてありがとう、ゼロノス……で良いのかな」

 

「いや、ゼロノスはあの姿の事だ」

 

「じゃあ名前は?」

 

俺は、少しだけ考えすぐに口を開いた

 

「俺は、櫻井………櫻井、ユウトだ」

 

 

 

 

 






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if もし主人公が家に帰るのが原作が始まった後なら

ifは基本的に頭を空っぽにしてかいているで原作も前回までの流れもうまく重なっていない事が多いです

それが嫌な場合は別の話へ飛ぶことを推奨します


 

ワタルside

 

 

あぁ、あれからどれぐらいたったのだろうか

 

恐らくは学校は退学になってることは間違いない

 

切嗣さんとアイリさんには申し訳ない事をしたな……………学費

 

そう思いながら今月分のお金を多く振り込もうと考えながら寝袋以外に何もない部屋で体を起こす

 

身体中が痛い、毎日戦い傷付いてもなお戦い、時には牙の記憶に身を任せて暴れた

 

何度も何度も敵を殴った

 

切り裂いた、体が赤く染まった

 

この手はもう、あの人たちに触れられるような手じゃない

 

もうボクは穢れた、あんな優しい人たちに触れちゃいけない程に穢れてるんだ

 

そう思いながらフード付きのパーカーを羽織ってフードを被り外に出て野生の勘を頼りにアイツを探す

 

そういえば、昨日は煩かったな

 

何かと何かがぶつかるのと、女の人らしき人が言い争う声が聞こえた

 

もうボクの体は人外へと変わってる

 

ファングメモリとの相性が良かったのか、耳は狼のように良く勘は細かく敵の居場所を察知できるほど強くなった

 

そして牙の記憶を発動して少しの間だけど耐えられるようになった

 

耳にイヤホンを付け、携帯端末から音楽を流す

 

あの人達の電話はもう答えない、出ないよう着信拒否に設定した

 

携帯はもうほとんど音楽を聞くための道具でしかない

 

銀行に行き、機械を操作する

 

ボクのような早く死んだほうが良い化け物は栄養スティックだけ食べて生きていけば良いんだから

 

家の家賃と一月分の栄養スティックを買う分以外のお金を全て衛宮家に入れてから銀行を出る

 

早朝だからか、道には学校への登校途中だと思われる小学生や学生達がいた

 

ボクは手に持った栄養スティックを齧りながら野生の勘で奴らの位置を探る

 

耳から流れるボクの曲で回りの音は殆ど聞こえない

 

最近はあまり眠れていなからか少しだけふらつく

 

近くの壁に手をついて、どうにか転ばずに済み身体を支えることが出来た

 

あの日からだ

 

ボクが始めて化け物になってから

 

あの女の子を助けてから毎日のように夢に出てくる

 

血塗れの彼女や、被害にあった人達がボクへと迫ってくる

 

化け物と罵り、偽善者だと罵倒し何故わたし達を助けなかったと糾弾してくる

 

更にはこの街に現れるアイツを感知しては直ぐに殺しに向かうせいか

 

睡眠は少ない

 

朝から夜まで町を歩き、アイツらを探して帰ったら編集して音楽を出すことを繰り返す日々

 

髪はストレスのせいか白くなり、目元には大きな隈が出来ていた

 

少なくともボクが衛宮家にいた頃よりは少し痩せたような気がする

 

そうなれば殆どの人はボクに話しかけない

 

きっと士郎やイリヤ、アイリさんや切嗣さん達はもうボクをボクだと気付かないだろう

 

だが、その方が都合が良いんだ

 

残りの栄養スティックを口に入れて立ち上がる

 

ふと登校する小学生や高校生の中で懐かしい姿が見えた気がした

 

横目で見ると赤髪に琥珀色の瞳の少年、銀髪に琥珀色の瞳の少女

 

イリヤと士郎だった

 

少し元気が無いのを見るに“ボクが家出をしたから心配してくれているのだろうか?”と言う甘い考えを即座に捨てる

 

そんなわけない、ボクはあの人達の家族じゃない

 

どうせ、朝に寝坊でもしてセラにでも怒られたのだろう

 

そう考えて両手を服のポケットに入れて町を歩く

 

今のところはまだらアイツらのいるような感覚はない

 

でも油断できない

 

いつアイツらが急に現れても対応出来るようポケットにはメモリモードのファングメモリが入っている

 

ふと道を歩いていると一台の車が近くを通った

 

そこには今から仕事に行くと思われるアイリさんと切嗣さんが見えた

 

何だろう、今日は何でこんなにあの人達と会う機会が多いんだ?

 

そう考えながら歩いていると獣の勘がアイツの居場所を感知した

 

そいつを殺すため、ボクは即座に駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤside

 

ワタルお兄ちゃんが家を出ていって、もう一月も立つ

 

私は何とか今の生活に慣れることは出来た

 

ワタルお兄ちゃんが出ていった次の日、ママとパパが帰ってきて

 

ママとリズから、パパとお兄ちゃんとセラにワタルお兄ちゃんの隠していた秘密を話した

 

ワタルお兄ちゃんはネットで有名な『00』と言う沢山の曲をネットに投稿した有名な動画投稿者で、依頼による作詞作曲

 

アイドルやアニメ会社からの仕事でアニメの主題歌を歌ったりして沢山働いていた事

 

沢山のお金を私たちに入れていて、出ていった今もなお、お金が入ってくる事

 

それを聞いて私達は凄く驚いた

 

考えてみれば凄く近くに有名な動画投稿者が居て、それがお兄ちゃんで

 

セラが怒っていたけど、本当は怒られない側で

 

それをママとリズにしか話していなかったから

 

それを聞いてから毎日のように必死にお兄ちゃんを探していた

 

でも全く見つからなかった

 

一月もすればワタルお兄ちゃんがどのような見た目なのかわからない

 

取りあえず、今日もお兄ちゃんとワタルお兄ちゃんが行きそうな所を探す予定だ

 

クラスの皆にも見かけたら教えてと相談した

 

その時だ、私の視界にフードを被りイヤホンを付けて栄養スティックを食べながらフラフラと歩く人がいた

 

そんなに忙しいのかな?

 

そう考えて、あのイヤホンを付けて一緒に学校へと登校していたワタルお兄ちゃんの姿が頭に浮かぶ

 

あの人はもしかしてと思ったけどフードから出た髪は白かった

 

たぶん、違う人だと思いながら私は学校への道を歩いた

 

そして学校の帰り道、私の下駄箱に1つの手紙が入っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

夜、ボクはアイツの気配を感じて外に出ていた

 

勘で感じた奴らの場所は寄りによって穂群原学園の近くだった

 

走りアイツを目にしたとき、ボクの背中に冷や汗が流れた気がした

 

目の前の化け物は今まで見てきた奴らとはどこかの違う

 

今までの奴らとは一線を越えるような風格

 

パッと見は真っ白な身体、禍々しく変化した顔

 

思わずン・ダグバ・ゼバを思い浮かべるような奴だった

 

ボクは即座にファングメモリを押し腰に巻かれているロストドライバーに装填する

 

【FANG!】

 

「………………変身」

 

ロストドライバーを横に倒しファングメモリを展開する

 

【FANG!】

 

恐竜の鳴き声と共に身体を嵐が包み、ボクを白い化け物へと変える

 

「ガァァァアアアアアアアアアア!!!」

 

最初からボクは牙の記憶を解放して叫び声を上げながら敵の顔にパンチを叩き込んだ

 

だが、相手はそれを避けることも受け止めずにいてパンチを浮けて後ずさりも何もしていなかった

 

「!?」

 

思わずもう片方の手で奴を殴ろうとすると奴はボクの殴った方の手を掴みそのまま近くの木に放り投げる

 

片腕を使って投げられたせいかその腕が痛いがどうにか体制を変えてぶつかる筈だった木に足を付けそのままアイツへと近付いていく

 

ボクはファングメモリの角を一度倒す

 

【ARM FANG!】

 

ボクの右手にアームファングが展開され、ボクはその刃を相手に突き刺すつもりで近くの木を蹴って加速する

 

そして彼奴の肩へと突き刺す

 

木々を蹴って加速したことによりアームファングはパンチじゃびくともしなかったアイツの肩に深々と突き刺さった

 

「■■■ッ!?」

 

さすがにこれは相手にも聞いたらしく、アイツが少しだけ苦しそうな声を洩らす

 

だが、アームファングを深々と突き刺さしたせいかアイツとの距離はゼロ

 

するとアイツがもう片方の手を振りかぶる

 

ボクはどうにか左腕で身体を守ろうと構えるがちから及ばず吹き飛ばされる

 

「グゥ………ヴゥ」

 

痛む胸部を無視して直ぐに立ち上がりアイツを見据える

 

その時だ、体が動かなくなり段々と思考が落ちていく

 

頭に浮かぶ言葉は、牙の記憶

 

即ち

 

「うぁ……が、ァァァアアアアアアアアアア!!!」

 

暴走

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤスフィールと遠坂凛、美遊、そしてルヴィアはライダーのクラスカードを回収し現実世界に帰還した

 

イリヤスフィールは思わず安堵の息を吐く

 

さっきまでの世界じゃないからもう戦わなくて済む

 

そう考えたから、その時だ学園外から何かが校庭に吹き飛ばされてきた

 

大きな土煙が舞う

 

「な、何!?」

 

土煙が晴れる

 

さこにいるのは、真っ白で赤い目の何かが地面に倒れ付している姿だった

 

「な、何が起こってるのよ!」

 

「さ、さぁ?さっぱり分かりませんわ!?」

 

イリヤは戸惑い、美遊はインクルードしたゲイ・ボルグを構える

 

その時だ、学園外から何かがゆっくりと何かが歩いてくる

 

それは白と黒の人のようや姿をした化け物だった

 

顔や体が禍々しく変化し、此方を睨み付ける目らしき黒い複眼

 

その時だ、先程まで倒れていた白く鋭的な見た目の何かがゆっくりと立ち上がる

 

「ヴヴゥ………ウァァァァァアァァァアアアアアアアアアア!!!」

 

そのまま、白いく鋭的な見た目の人物が叫び声を上げる

 

その声にその場にいたイリヤ達まるでそれが肉食獣の叫び声にも聞こえ思わず身体を震わせる

 

鋭的な見た目の化け物はゆっくりと歩いてくる化け物へと走っていき殴り付ける

 

たが、そうした瞬間に書いての化け物がその手で殴り付ける

 

鋭的な見た目の化け物が吹き飛ぶが校庭に手と足を付けどうにか止まる

 

すると白い鋭的な見た目の化け物が腰に付けているベルトらしき何かを操作する

 

【ARM FANG!】

 

先程とは別に恐竜らしき生物の鳴き声と共に白く鋭的な見た目の化け物の手に変化が訪れる

 

その化け物の手に大きな牙のような刃が現れた

 

先程までの格闘ではなくその化け物は敵の方の化け物へとその刃で切付け手に付いた爪で切付ける

 

だが、イリヤの想像するような朝の特撮のように火花が散るのではなく

 

切付けて辺りに散るのは、赤く黒い血だった

 

そのまま、白く鋭的な見た目の化け物が白と黒の化け物を傷付けていく

 

そして白い鋭的な見た目の化け物が化け物を殴り飛ばし倒れた化け物のマウントを取ると白と黒の化け物を押さえつけひたすらに顔らしき場所を殴り付ける

 

酷いと、その場で静観していた彼女達は感じた

 

余りにも無慈悲で余りにも残虐で、ただ相手を殺そうと殴り付けている白い鋭的な化け物が恐いと

 

そして白い鋭的な化け物は白と黒の化け物の胸部へとその刃を突き刺した

 

するとその白と黒の化け物は粒子のような粒になって消えるそれと共に

 

「ウァァァァァアァァァアアアアアアアアアア!!!!」

 

白く鋭的な見た目の化け物がまたもや叫び声を上げた

 

まるで勝利した事を宣言するようにそして少女達に牙を向けた

 

直ぐに凛やルヴィアは魔術が使えるように構え美遊はゲイ・ボルグを構えるなか

 

イリヤは何が何だか分からず呆然と立っていた

 

その化け物は突如としてイリヤへとその手の牙を振るおうと走り出す

 

「イリヤ!!」

 

宝石魔術の爆発をもろともせず、美遊のゲイ・ボルグを蹴り飛ばし

 

イリヤへとその刃が迫る、そして寸前の場所で止まった

 

「イリ、ヤ?」

 

「え?」

 

イリヤは思わず化け物から自分の名前、そして聞いたことのある声が聞こえ思わず目を見開く

 

「ワタル、お兄ちゃんなの?」

 

「それって確か、前にイリヤさんが言ってたもう一人のイリヤのお兄さんよね!?」

 

イリヤの呟きに凛は思わず声を上げて驚く

 

化け物は突如としてイリヤから離れ、手のひらを見ながら、震えだした

 

「ねぇ、何してるのワタルお兄ちゃん、なんで何でそんな姿なの!?ねぇ、謝るから帰ってきてよ!!」

 

凛やルヴィア、美遊は突然の化け物の変化に呆然とし、イリヤの呼び掛けに更に驚いた

 

なぜなら目の前の化け物をイリヤは兄と読んだのだから

 

白い化け物はまるで逃げるように学園の外へと駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルsid

 

 

ボクはまるで逃げるように学園を出た

 

後先考えず森に入ったそして変身を解除して膝を付いて地面に拳を叩きつける

 

また、牙の記憶に飲まれ欠けていた

 

さっき、ボクは何しようとした!?

 

ボクは、イリヤをこの手で殺そうと

 

ボクは!

 

何度も、何度も何度も手を地面に叩きつける

 

次第に手が真っ赤になっていた

 

恐らくは地面に何度も叩きつけたからから何処かが切れて血が流れたのだろう

 

だが、そんなの関係ないボクは!

 

最後に頭を地面に叩きつける

 

痛いが、今はそんな事を関係なしに頭を地面に叩き付け続ける

 

またボクは罪を犯した

 

どう償えば良いんだ、これ以上ボクは何をすれば良い

 

死ねば良いのか、そうだ

 

元々ボクは死のうと思ってたんだ

 

死ねば、アイツらはボクと言うイレギュラーが消えると同時に消えるんだ

 

そうだ、ボクは頭のなかで何かが切れた

 

体が倒れる

 

どうして?倒れるまで疲れてない

 

死なないと、死なないといけないのに何で体が動かないんだよ!!!!

 

動けよ、動け!ウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケウゴケ

 

ウゴ、ケ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が戻る、ゆっくりと目を開ける

 

視界に写るのは何もない部屋だった、手首に繋がれた点滴

 

頭にきつく巻かれている包帯、両手に細かく巻かれている包帯

 

あれ、ボクは?

 

それに、ここって何処病室?

 

そうだ、アイツを倒さないと

 

アイツを一人残さず殺さないと、ボクは償わないと

 

帰らないで倒さないと、あれ

 

ファング、何処だ?

 

病室の床に足を付ける、冷たい

 

あれ?ボクの靴は何処?

 

そう思いながら点滴を外し、そのままはだしでどうにか立ち上がる

 

部屋の外に出ないと

 

早くアイツを殺さないと、外の人が死ぬ

 

そう思いながら扉に手を掛けたその時だ、扉が開き入ってきたのは凄く懐かしい人達だった

 

「アイリさんに切嗣さん…………」

 

「やぁ、久しぶりだね渡」

 

「渡が病院にいるって聞いて直ぐに戻ってきたの、大丈夫?」

 

「すいません、退いて貰えますか。色々やることがあるんで」

 

「その怪我で何処に行く気なのかな?」

 

「その怪我で外にでるなんてダメよワタル、しっかり休まないと」

 

なんで、ボクはもう

 

「なんで、ボクなんかに会いに来たんですか。もう、貴方達の子供じゃないボクなんかに」

 

「違うわ、貴方は私達の子よ。ねぇ、切嗣」

 

「あぁ。その通りだよ、何があったのか話してくれないか、渡。君がそんな姿になった理由を」

 

「いいですよ、話せば貴方達もボクの事を幻滅するんです、それで正式に家から追い出されるですから」

 

そういってボクは今までの事を全てを話した

 

女の子を守ろうと持っていたファングメモリで変身して戦い

 

ずっと、化け物と戦い続けてきたこと

 

そして昨日、イリヤの魔法少女の事を伏せて暴走したボクはイリヤを殺そうとしたことも話した

 

その事を話し終えて、二人は黙ったままだった

 

たぶん、それで二人はボクを家から追い出すだろう

 

下手したら殺すだろう

 

やれ、むしろ殺してくれ

 

ボクはこれ以上は罪を重ねたくない、殺してくれ

 

そう思った、その時だ

 

ボクの身体をアイリさんと切嗣さんが抱き締めた

 

「なに、を………」

 

「辛かったわね、もう良いのよ。ワタル」

 

「あぁ、渡は頑張った。イリヤだって許してくれるさ」

 

なんで、なんで貴方達はボクを受け入れてくれるんだ

 

娘を殺そうとしたと言うのに

 

「今はゆっくり休みない、アイリもボクも君を見捨てないし家から追い出したりなんてしない。だから退院したら帰ってきてくれ」

 

「イリヤちゃん達にも話しておくわ。早く帰って来てワタル」

 

ボクは思わず瞳から涙を流した

 

話したからなのか凄く心が軽くて、許して貰えたと感じると凄く二人の優しさが心を温かく

 

色々と変わってしまったボクを受け入れてくれてボクは二人に感謝した

 

「父さん、母さん。ボク、帰っていいのかな?」

 

その問いに二人は優しく笑って頷いてくれた

 

 

 

if 完






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if《カルデア編 》帰らぬ渡は贖罪を求め続ける

ワタルside

 

 

 

 

 あの日、僕はあの化け物。()()()()()()()()()()()によると吸血鬼と呼ばれる存在に襲われ、たまたま居合わせた姉妹2人を逃がそうと、守ろうとして僕はファングとなった。

 

あの時の僕はとにかく必死だった、目の前の存在が自分と言うイレギュラーな存在が生まれた事で発生した世界が変化しあのような化け物が生まれてしまったのだと。

 

僕が責任を取らないと、倒さないといけない。それがイレギュラーとしてこの世界に生まれた僕と言う存在の使命であり、化け物に殺された人たちへの贖罪だと。

 

現実、あいつらはイレギュラーから生まれた敵でも何でもない。元からその世界と繋がりがあった月姫に出てくる敵だった。自分は全く関係がなかった。

 

でもその時の僕はそんなこと知るよしもなくて、自分が倒さないと、償わないといけない。そう必死で戦った。本物の戦いは、特撮世界のように敵を殴ったり斬り付けて火花が散るような物じゃなかった。

 

殴って感じるのは硬く、柔らかい殴った相手の身体の感触。斬って散るのは火花ではなく傷口から溢れる赤黒い血飛沫。

 

そんな現実を見てから、僕は倒すと言う言葉を使わなくなった代わりに、殺したと言う言葉を使うようになった。

 

人を殺したと言う罪悪感に押し潰されながらも戦った初戦、確かに姉妹を守る事は出来た。でも、守った彼女達の瞳に映る僕は人としての僕じゃない。吸血鬼と言う()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そこにいた姉妹は恐れ、泣きながら逃げ出し僕は改めて自信がこの世界に存在してはいけないのだと知った。

 

そんな始めての戦いを終え、疲れはてた僕は思い身体を引きずるように家への帰り道を歩いた。結果、帰宅時間の門限を破りその日僕は帰るべき家も、頼れる人も、家族も失った。

 

その時からだろうか?僕の中の何かが消え始め、狂い始めたのは。

 

音楽で稼いだお金はアパートの家賃と栄養バーのみに使って、それ以外のお金は全て家族だった人たちの口座に振り込んだ。今まで育ててくれた人達へのせめてもの恩返しとして。

 

食事は栄養バーのみで、借りたアパートに帰り音楽を投稿し眠る。それ以外の時間は全て吸血鬼を探し、殺す事に費やした。

 

どれだけ戦い続けて傷付き、倒れそうになっても故意に『牙の記憶』を発動することで無理にでも暴れ吸血鬼を殺して来た。

 

そんは風に過ごしていた僕は、いつのまにか髪はセミロングぐらいまで伸び、黒かった髪は真っ白に変わって、身体は痩せこけ、目には酷い隈ができていた。

 

振り替えれば、何れだけの物を捨てて来たのかもう分からない。僕に残っているのは身体とファング、そして音楽を聞くためだけのスマホとスマホに繋がれているイヤホンのみ。

 

どれだけ戦い続けてきたのか、怪我してきたのか分からない。そんな僕の最期は、山奥の吸血鬼との戦いで相討ちになって、誰にも知られず、看取られる事もなく死んでいった。

 

だから、こんな場所に呼び出されたのは僕に与えられた()()なのだろう。贖罪(人理を守る)のために、また戦えるんだから。

 

僕の瞳に映っているのは、見覚えのある銀色の壁。目の前に佇んでいる僕のマスターである、見覚えのあるオレンジ色と言う明るい髪色の少女と銀髪で、メガネをかけ片眼が前髪で隠れている少女。

 

「結構、最近の服装だよね?結構私と近い年代の英霊なのかな。」

 

「そうですね、先輩の話していた携帯端末も持っていらっしゃるようですし」

 

そんな2人が話す中、自分の服装を見る。灰色のフード付きのパーカーを羽織りフードを被っている。パーカーの中は黒いTシャツで、ズボンも動きやすそうな物を履いている。

 

確かに英霊はその人が一番強かった時期、つまりは全盛期の肉体で召喚される。恐らくは全てを無くして、ひたすらに吸血鬼を殺していた時の状態で召喚された訳か。

 

そう言えば、僕の名前はどうしようか。もう僕は衛宮渡でも、エミヤでもない。名乗る名前なんて捨てた、そんな物は戦いに不用だったから。

 

「こんな弱小なサーヴァントだけど、頑張らせてもらうね?マスター。」

 

「うん!人理を守るために、頑張ろう!私は藤丸 立香!」

 

「私はマシュ・キリエライト。よろしくお願いします………ええっと、貴方の真名は?」

 

「悪いんだけど、名乗れるような名前は無いんだ。そうだな…………」

 

そうだな、衛宮 渡でも00でも無い、何もない状態で、数字で表すなら0。

 

「ゼロ、とでも呼んでくれ。クラスはバーサーカーだよ」

 

そう言って微笑んで、いたら良いな。正直者な所、僕は笑えてるのかは自分の顔を見ないと分からない。でも彼女達の様子を見るに僕は微笑んでいたらしい。

 

「え”!?ば、バーサーカー!?狂ったり叫んだりしてるようには見えないんどけど……」

 

「アハハ、一応理性はあるしそれなりに狂喜もないからある程度は頭を使った戦いとかも出来るよ。」

 

「珍しいですね、えっちゃんさんと同じようなものでしょうか」

 

「よし、じゃあ早速カルデアを案内するよ!」

 

立香の提案に頷き、英霊召喚の部屋を出る。すると目の前にはよくFGOで見た廊下の背景絵と同じ廊下の光景が飛び込んできた。

 

立香の後を歩きながらカルデアの英霊や人理修復の状況を説明される、そんな中でカルデア職員が通路を行き来するのを見れば、本当にFGOの世界でカルデアに、しかもサーヴァントで呼ばれるとは、改めて考えると凄いことなのかな。

 

そんな事を思い、自室として使って良いと言われた部屋やレイシフトする場所を教えて貰い最後に食堂を案内して貰うことになった。

 

「ゼロ、ここが食堂だよ。奥にいるエミヤやブーディカに頼めば色々と作って貰えるよ。エミヤ達が作ってくれる料理は美味しいんだ!」

 

「そっか」

 

僕には関係ない話だ、食事は栄養バーしか食べずに生活していたからか他の食べ物を食べなくなり、自然と普通の食べ物を受け付けなくなった。だから、僕が食堂を使うことは無いだろうな。

 

と言うか、入り口に立つだけてここまで注目される立香はやはり主人公なのだと感じる。

 

「マスター、悪いんだけどさ」

 

「ん?どうかした?」

 

「栄養バーってある?」

 

「栄養バー?たぶん、あると思うけど」

 

「やはり栄養バーを知ってると言う事は最近の英霊、ゼロさんは先輩と年齢近い英霊なのでしょうか?」

 

「まぁ、この肉体は16か7の時の物だし間違っては無いよ。」

 

「やっぱりそうなんだ」

 

「その年齢で英霊に……一体、どんな偉業を?」

 

本当に、なんで僕のような化け物が英霊の座なんて場所に招かれたのか。

 

「アハハ、そんな偉業なんて無いよ。僕はただ………」

 

贖罪のために化け物の殺しをしていただけ。

 

「ゼロさん?どうかしました?」

 

「え?いや、何でもないよ。あと、折角食堂に案内して貰って悪いんだけど、僕の体って栄養バーしか受け付けなくてね。英霊だし、無くても良いんだけど、出来るなら少し貰えるかな?」

 

「そっか、ドクターやダヴィンチちゃんに相談してみるよ」

 

「ありがとうマスター、所で僕はこの後どうすれば?」

 

「一応、新しいサーヴァントだし皆に紹介かなって。一応、明日はゼロの力を見せて貰うのも込みで種火を取りにレイシフトする予定だよ」

 

「分かったよ。あと、出来れば紹介はしなくて良いよ。目立つのはあまり好きじゃ無いし、貰った自室に居させて貰うよ」

 

そう話しながら食堂を見回す。何処をみても、凄い英霊ばかりだ。騎士王達やぐだぐだ組、ジャックやナーサリー、ボイジャーと言った子供達。

 

そして、一つのテーブルを囲んでいる銀髪の少女とその少女とそっくりな褐色の少女に黒髪で大人しそうな少女。そんな少女達を見て微笑んでいる銀髪で白い服に帽子を被っている綺麗な女性と、そんな女性の隣に座る黒い外套を着ておりハンバーガーを食べる男性と、まるで本当の家族のように見える人たち。

 

「それに、僕にはとってこの場所は………少し眩しすぎるからさ。」

 

そう呟き、僕は食堂の入り口から自室へと向かう。それにしても、本当にどうして誰一人として救っていないはずの僕がサーヴァンなんかに成ったのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアの自室、家具としてあるのはベットと植木鉢くらい。現代っ子としてはパソコンが無いのは少し辛いかな?

 

そう思いながら元々持っていたスマホの電源を入れる。そこには、購入時から変わらないシンプルなの壁紙と少しのアプリが広がっている。

 

そんな携帯の音楽アプリで自信が造り続けてきた音楽を設定しベットに寝転ぶ。

 

思い出すのは、食堂にいた沢山のサーヴァント達。そんな中でも、みんなはいた。

 

「僕の事を、覚えてる人はいるのかな」

 

士郎、イリヤ、父さん、母さん、リズ、セラ。僕は、もう貴女方と会えるような人達と触れ合う事が出来るような人じゃ無くなったんだ。

 

そう改めて認識をする、なにも変わらない。生きていた時と同じだ、何も思うことはない。

 

その時だ、自室の入り口の扉がノックされ僕はスマホの音楽を止めイヤホンを着けたまま扉を開ける。

 

一体誰だ?マスターとは明日に話すこととなっているはず

 

「急にすまない、君が新しく召喚されたサーヴァントで、会っているか?」

 

かつての姿から考えられないほどに鍛え上げられた肉体、そして褐色となった肌に色の抜けた髪。恐らくは僕の事など記憶に無いであろう彼はそう僕に問いかけてきた。

 

「そうだけど、貴方は?」

 

「俺はエミヤと言う、一応食堂の管理を任されている。」

 

「どうして、そんな貴方が僕に?」

 

「サーヴァントの好みや苦手な物を調理をしている者として知っておかなければならなくてね。君の食については知っておかなければならない。それと、今後は共に戦うのだから、挨拶は大事だと思ってね。」

 

全く、何処まで行ってどんな姿になっても人を気遣うそのお人好しは変わらないな、兄さん(士郎)は。

 

「態々来て貰ってありがとうございます。でもごめん、僕の体は栄養バーしか受け付けなくて。あまり食堂の方には行かないと思うけど、よろしくお願いします、エミヤさん」

 

「栄養バーしか?だがそれだと必要は栄養は接種できるが………。」

 

そう言って顎に手を当てて考え出すエミヤ。頼む、出来るなら速く、目の前から消えてくれ。

これ以上、僕に関わらないでくれ。僕は貴方と言葉を這わして良いような人じゃない、一つの世界の全てを狂わせたかもしれない化け物なんだ。これ以上一緒にいたら、望んでしまう

 

あの人達の元へと帰りたいと言う封じていた思いを。近付いてはいけない、気付かれては行けないと言う自身で定めたってルールを。

 

「所で、飲み物のような物なら大丈夫か?」

 

「え?そう、ですね。大丈夫、だと思います。」

 

「そうか、なら明日の朝に食堂に来てくれ。スムージーでも作って置こう、栄養バー以外の物も、少しは体に入れた方が良い。それでは失礼する」

 

そう言って去っていくエミヤ、取り敢えず明日の朝には食堂に向かわなければ成らなくなった事に、少し憂鬱に感じた。せめて、あの人達には会わないようにしよう。

 

そう心に誓いながら、僕は再びベットへと潜り瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枕元に置いておいた携帯のアラームがなり、僕は目を覚ました。あの頃から急に敵の気配を感じる事が多く、寝ずに戦いに行くことが多かったことから、寝起きは悪くない。

 

布団から出て、持ち物を全て確認する。いつも通り持っている事を確認して、僕はフードを被る。一応、今の時間は朝のかなり速い時間だ。この時間ならあの人達に会わずに食堂に入る事が出来る。

 

そう思いながら自室を出る、こんな朝速くだと言うのにカルデア職員は忙しそうに通路を行き来している。

 

取り敢えず、お疲れ様ですと軽く頭を下げながら歩く。なぜかぎょっとした顔をされたけど英霊からこんな事を言わへること無かったりするのかな?

 

そう思いながら昨日覚えた食堂へと入る。やはり朝早くだから食堂にいるサーヴァントは少ないな。取り敢えず奥の厨房と思われる場所にいるエミヤの元へと向かうと、足音からか僕の方を向いたエミヤは直ぐに話しかけてきた。

 

「君か、直ぐに準備しよう。近くで待っていてくれ」

 

取り敢えず、近くで待てと呼ばれたので厨房近くのカウンターから少し離れた場所で片耳にイヤホンを着けスマホから音楽を流す。昨日はスムージーと言っていたし直ぐに終わるだろう。

 

イヤホンが流れる音楽に耳を傾け目を瞑る。

少しするとエミヤが僕を呼ぶ声が聞こえ、向かうとエミヤは通常の飲食店で出すようなコップより大きなコップに明るい色のスムージー、恐らくは柑橘系の果物を使ったのだろう、それの入ったコップにストローが刺さっているものを差し出してきた。

 

「待たせた、もしダメなら持ってきてくれ。此方で処理しよう」

 

「はい、ありがとうございます……」

 

そう言って近くの誰も座っていないテーブルへと座る。コップか、紙コップとかなら持ち帰れるんだけど、ガラスなら飲んで返さないとね。

 

そう思いながらストローを吸いスムージーを飲む。果物特有の酸味と甘味が感じられ、得に戻しそうにはなっていない。久しぶりだ、水と栄養バー以外の物を食べたのは。

 

取り敢えず食べられる事は分かったので、スマホの電子書籍を読みながらスムージーを飲む。色々なライトノベルをダウンロードしていたから、大量に作品が入っていて助かったな。

 

漫画を読みながら大きなコップに入ったスムージーを飲み進めていると、スマホの時計を見て、来てからかなりの時間が過ぎている事に気付いた。

 

取り敢えず、そろそろ部屋に戻ろうか。そう思っていた、その時だった。

 

「あ、あの………」

 

僕へと向けられたらしき声が聞こえた。聞こえてきた声に、何故?まさか、そんな事を思いながらスマホから目を離し、僕に声を掛けてきた少女を見て表情が変わりそうになる自分の顔をどうにか押さえる。目の前にいた少女はかつて、妹であった少女……イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだったから。

 

「どうか、したのかな?」

 

そう言って僕は出来るだけ他人を装い、そう微笑む。フードを被っているから微笑んでいるかは見えないと思うけど。

 

「あ………」

 

すると、イリヤはその琥珀色の瞳から涙を流し僕の体へと近付きそのまま抱き付いてきた。

 

「!?えっと、どうかしたの?悲しい事でもあったのかな?」

 

驚きながら、イリヤを体から離そうとした。でも手が触れそうになったとき僕の手にあの化け物、吸血鬼を殺して付着した血で濡れている様に見えた。

 

思わず目を瞑り、再び瞼を開くとそこには普通の手がある。僕は、その手を彼女に触れさせずに下ろす。

 

見れば食堂の入り口近くで昨日みたイリヤと共にいた人達が固まっている。

 

「やっと、見つけたよ。ワタルお兄ちゃん」

 

そう泣きながら、嬉しそうに笑うイリヤに、僕は今から残酷な事をする。その行動で何れほどの後悔と罪悪感を感じるかは計り知れない。でも、拒絶しなければならない。僕は彼女達の家族じゃない、僕は触れあっては行けない。既にこの手は多くの血で汚れている。

 

「ごめんね、僕は君の言うワタル?さんじゃないよ」

 

出来るだけ優しい声色で、そう話しかけた。そんな否定の言葉にイリヤの笑顔は崩れた。

 

「で、でもワタルお兄ちゃんと同じ携帯を使ってるし!顔だって!」

 

それでも尚食い下がり話すイリヤに、僕はフードを脱ぎ彼女と目線を合わせる。

 

「世界には自分に似ている人が1人以上はいるらしいから、たまたま僕と君のお兄さんが似ているのんじゃないかな?それに君のお兄さんはこんな髪色だったかい?」

 

そう言って片手で髪を見せるように弄る。

 

「ワタルお兄ちゃんは、黒髪……だけど」

 

すると、イリヤの声が段々と小さくなっていく。その声も僕が違うと分かったのか弱々しくなっていった。

 

「携帯はたまたま同じ機種だったんじゃないかな?ごめんね、僕は君のお兄さんじゃない」

 

そう言った瞬間、イリヤは床に膝を付いた。すると、扉の奥で固まっていた人達がイリヤの元へと駆けてくる。

 

「イリヤちゃん!どうしたの!?」

 

そしてそのまま涙を流し続けている彼女を白い服を纏った綺麗な女性が抱き締め、此方を睨み付けてくる、だが即座に先程のイリヤと同じように顔を驚愕に染めた。

 

「うそ、よね………ワタル?」

 

「人違いです、すいませんが失礼します」

 

僕にはどうすることも出来ない。貴方達に合わせる顔も無ければ、触れ合う資格すらない僕には。

 

僕はフードを被り直し、空になったコップをカウンターに持っていく。するとそこには静かに僕を睨むエミヤがいた。

 

「……………」

 

僕は静かにコップを置いて、食堂の入り口へと向かう。両耳にイヤホンを付け回りの音を切る。チラリと先程のイリヤ達のいた場所を見れば、イリヤの友達と思われる人達が女性とイリヤを心配し、此方を静かに睨んでいた。

 

僕はそんな彼女達から目を反らし、自室へと向かった。そう言えば、種火のレイシフトはあとどのくらいしたらやるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤside

 

 

久しぶりに、夢を見た。まだクロがいない時の話。お兄ちゃんがいてセラとリズがいてパパとママとワタルお兄ちゃんがまだ楽しく過ごしていた頃の夢。

 

でも、今私がいるのはカルデア。いるのはパパとママとクロとミユだけ。お兄ちゃんの似た村正さんはいるけど、あまり話さない。

 

今頃、ワタルお兄ちゃんは何をしてるのかな?

 

そう思いながら、思い出すのはワタルお兄ちゃんを最後に見た日のこと。

 

門限を過ぎてから帰ってきたあの日。ワタルお兄ちゃんがセラに怒られ、閉められていくドアの隙間から見えた全てに絶望し、此方へと手を伸ばすワタルお兄ちゃんの顔。泣きそうな、苦しそうな、そんな心を締め付けさせるよう顔をしていた。

 

そしてその日からワタルお兄ちゃんは居なくなった。何処を探しても見付からず警察の人達にお願いしても見付からない。

 

そんな状況にパパとママはお仕事から帰ってきた。ワタルお兄ちゃんの失踪に話し合うなか、ママとリズは、皆にワタルお兄ちゃんが秘密にしてきた事を告げられた。

 

それはお兄ちゃんが有名な音楽投稿者00その人である、音楽で稼いだお金をお家に居れていた事。それを聞いて、みんなが驚きセラは凄く後悔していた。毎日のようにもう少し優しく接してあげられていたらと呟いていた。

 

ママの話によると、ワタルお兄ちゃんが出ていってからもお金は振り込まれ続けられているらしい。だからきっとワタルお兄ちゃんは生きている。

 

だから私もいつかワタルお兄ちゃんと会えるって信じてる。生きているならいつかは会える機会があるのだから。

 

ミユやクロ、ママと一緒に食堂へと向かう。パパは食堂にいるらしい。みんなで談笑しながら歩いていて、ふと思い出した。

 

そう言えば、昨日マスターさんが英霊召喚をしたんだよね?今度はどんな人が来たのかな?

 

そんな事を考えながら食堂へと入る。沢山の英霊達が食事している。アルトリアさん達は今日も沢山食べているし、元気そうで厨房のエミヤさんは忙しそうにしている。

 

そんな厨房の近くに見たことの無い人がいた。此方に背を向けてフードを被って誰も居ないテーブルに座り1人携帯を弄りながらスムージーを飲んでいる人。

あの人が昨日召喚された新しい英霊さん、なのかな?

 

そう思いながら近付き、その人の使っている携帯がワタルお兄ちゃんと同じだった。次の瞬間その背中がワタルお兄ちゃんが部屋でゲームしている時の背中に重なって見える。

 

『ワタルお兄ちゃん!ご飯だよ!』

 

『え、もうご飯の時間?ありがとうイリヤ』

 

「あ、あの………」

 

気が付けば、話しかけていた。い、今更だけど話しかけちゃったよ!?どうしよう、挨拶しに来るぐらい自然だよね?

 

「どうか、したのかな?」

 

そう言って携帯から目線を私に向け、微笑むその人の顔はフードを被り少し見えずらかったが、確かに見えた。

 

少し変わってしまったけど、その優しそうな顔は確かにあの日、居なくなってしまったもう1人のお兄ちゃん。ワタルお兄ちゃんだった。

 

「あ………」

 

私の心がぐちゃぐちゃになって、訳が分からなくなった。思わずワタルお兄ちゃんに抱き付いてギュッと抱き締める。もう離さないように。

 

「!?えっと、どうかしたの?悲しい事でもあったのかな?」

 

そう語りかけてくる声に、ワタルお兄ちゃんなら私を安心させるように頭を撫でてくれるはず。そう期待した、でも頭を撫でるどころか体に触れてくれることすらなかった。

 

「やっと、見つけたよ。ワタルお兄ちゃん」

 

でも、やっと会えたことが嬉しくて私はそう笑った。やっとみんなで暮らせる。ワタルお兄ちゃんが居ない間にどんな事があったのか教えなきゃ、それにクロやミユの事も紹介しないと。

 

「ごめんね、僕は君の言うワタル?さんじゃないよ」

 

その考えは優しい声色で諭すようにそう言ったワタルお兄ちゃんの言葉に、私は一瞬何を言われたのか理解出来なかった。嫌だ、この人は絶対にワタルお兄ちゃんだ。きっと私たちに会うのが気まずくて嘘を付いてるんだ。

 

「で、でもワタルお兄ちゃんと同じ携帯を使ってるし!顔だって!」

 

だからお願い、認めて帰ってきて。

 

「世界には自分に似ている人が1人以上はいるらしいから、たまたま僕と君のお兄さんが似ているのんじゃないかな?それに君のお兄さんはこんな髪色だったかい?」

 

そう言ってフードを被り、私と顔を会わせるようにして髪を見せるワタルお兄ちゃんの髪は、黒ではなくて白だった。

 

「ワタルお兄ちゃんは、黒髪……だけど!」

 

髪なら染めたりすれば変わる、だからお願い。そんなこと言わないで、否定しないでよ

 

「携帯はたまたま同じ機種だったんじゃないかな?」

 

その言葉に私の心に、会えたと言う嬉しい気持ちに段々と皹が入っていく。

 

「ごめんね、僕は君のお兄さんじゃない」

 

そしてそんな一言の言葉で私の思いは砕け散った。目の前が真っ暗になって、体に力が入らない。膝を付いてそのまま何も出来ない。

 

悲しい、悲しい、悲しくて苦しくて、何より寂しい。

 

「イリヤちゃん!どうしたの!?」

 

見るとママが私を抱き締めていた。心配そうな目で私を私を見た後に、ワタルお兄ちゃんを睨む、でも直ぐに睨むのを止めた。

 

「うそ、よね………ワタル?」

 

「人違いです、すいませんが失礼します」

 

そう言ってワタルお兄ちゃんは去っていく。私やママとワタルお兄ちゃんの間に、まるで深い溝が広がっているように見えた。

 

それはまるで、もう家族に成ることは無いと告げるような程に深く広い溝が。

 

「イリヤにママ、大丈夫!?」

 

「大丈夫ですか?」

 

ミユが、クロが私たちを心配そうに見ていた。

 

「ワタルお兄ちゃんがいた」

 

「それって確かイリヤのもう1人のお兄さん、だよね?」

 

「うん………」

 

「確か昔に説教で出ていけって言われて本当に出ていっちゃったんだっけ?」

 

「えぇ、私が士郎を引き取るときに一緒に引き取った子よ。大人しくて、優しい子だった。」

 

そう言ってママは思いだすように目を細める。

 

「音楽が大好きで、色々な歌を作っていたわ。それこそ、沢山の人に注目されるような」

 

その言葉に過去に見に行ったアニメや映画を思い出した。いつもエンドロールには見覚えのある名前が乗っていた。

 

歌の歌詞は凄く綺麗で、でも歌によってはワタルお兄ちゃんの感情が表されるような物が多くて、会いたくて。だからそこ、やっと再開できたと思ったのに………。

 

本当に、あの人は似てるだけ?それともワタルお兄ちゃんが嘘を付いてるの?お願い、教えてよ。

 

本当の事を教えてよ。謝るから、寂しいよ、悲しいよ、苦しいよ。

 

お願いだから帰ってきてよ、もうあんな悲しい思いをするなんて嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは決断、人との触れ合い、姉妹との出会い

 

そんな些細な事に見える事が変わった…いや、()()()()()()()()からこそ起こってしまったあり得たかもしれない物語。

 

かつて家族だった少年は、

     家族達と触れ合う自分を許さない。

 

自身はこの世界のイレギュラーであり、

      多くの血に濡れてしまったから。

 

帰らぬ少年は贖罪を求め、

 

   人理を守護する為その牙を振るう。

 

 

 

これは名もなき1人の少年の運命(Fate)

 

 

 

 

 

 






この後、00であることを刑部姫や黒髭に知られたり。他のサーヴァントの為に種火を周回し続けたり、村正やエミヤからイリヤを泣かせたことに付いて追求され戦うことになったり、ジャンヌとかマルタに相談したり、最終的に真名をマスターがばらしたり、最終的に自分から真名を名乗ったりするかも。

書いてて力尽きたのでここまでです。

ご愛読ありがとうございます

感想、お気に入り登録、高評価

よろしくお願いいたします。


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If...もし、主人公の特典がシン・仮面ライダーなら

シン・仮面ライダー見てない人はネタバレ注意です。

あとこの作品をまだ読んでくれてる人がいてびっくりです。リハビリに頭を空っぽにして久しぶりに書いてみました。
楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


様々な薬品や、手術で使うような明かりや施設のある部屋のベッドに僕は黒い服を着て顔を隠した人達に捕まえられている。

 

『目標の捕獲は完了した、B班。例の物は?』

 

『既に、天界で()()()()でも通用するようアップグレードしてあった物を持ってきています』

 

逃げようと身体中の力を使って抵抗するが、完全に押さえ込まれているせいか、僕は全く身動きが取れなかった。

黒い服を来てガスマスクのような物で顔を覆っている人達の何人かが、向こうの台で注射器に何やら液体を入れているのが見えた。話す人達の中で1人が大きな3つのアタッシュケースを指差しているのがみえる。

 

『よし、C班!例の物に対応したアレは?』

 

『ターゲットへのギフトを与えた後にすぐ託せるよう既にガレージに』

 

『分かった、では最後に目標の魂にギフトを定着させる段階へ向かう!C班にB班、D班を集合させギフトの定着作業をおこなう!』

 

魂?ギフトの定着?何をいってるんだ?頭が可笑しいのか?

恐怖が体を支配し、体が動かなくなる。さっきまで抵抗していたからか、洗い息と早く鼓動する心臓の音が耳に響く。

普段から運動をしてなかったのが悪かったか、こんな事になるだなんて知ってたらもっと運動をしたりしてたのに!やっぱり兄さん……士郎のいう通り運動部に所属すれば良かったのか?

こんな事になるくらいなら、一人立ちするのって格好いいよなと音楽で稼いだお金を使って家から出てアパートに引っ越すんじゃなかった。

自分の腕を掴み動かないよう捕まれた僕の元に先程指揮をしていたと思われる人物が近付いてくる。

 

「離してっ!僕は……孤児だ!捕まえたって身代金は少ないんだ!それにさっきから魂とか定着化とか、何を……」

 

『それは、全て貴様が望んだ事だ■■■■■。いや、今は衛宮 渡だったか?』

 

「な、何を言って………それに何で僕の名前……」

 

『?あぁ、君の場合はそう言う風になるよう設定されたんだったな』

 

そう言う風に設定された?困惑と驚愕に思考が追い付かず固まる。束の間、隣に立っていた男が持つ注射器の針が僕の捕まれた腕へと刺さる感覚と共に身体中の力が抜けていく。

 

『対象の無力化を完了、意識の喪失まで30秒です』

 

心の中にあるのは、恐怖。そして薄れていく意識の中で思い浮かんだのは僕を引き取ってくれた父さんや母さん、僕と一緒に引き取られた同い年の兄さんと小学生の妹。そして、家政婦らしき二人の銀髪の女性が笑顔で笑いあっている浮かぶ。

 

これは、走馬灯って奴なのかな。

 

最後に目蓋が落ちる瞬間、僕の頭に何かが被せられる感覚と共に一つの言葉が聞こえた。

 

『おやすみ。そして喜べ少年、君の望みは……今叶うのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20XZ年、冬木市の1人の少年が行方不明となり新聞の端に小さく記載された。

少年は元は孤児であり、冬木市の衛宮夫妻の元へと引き取られた。衛宮夫妻や同じ孤児院から引き取られた少年との関係も良好であり施設側も安心して送り出した。

そんな彼が行方不明となったのは穂群原学園一年の夏であった。

冬木の学園生活は担任の教師からは、いじめ等といった事はなく、自殺ではなく誘拐の可能性を考慮し調査を開始した。

捜索、調査は長期に渡って続いたが少年が見付かることはなかった。

だが、調査と捜索は僅か半年で打ち切られることとなった。

衛宮夫妻や家族は捜査の続行を願い出たが、新都にて多発している連続殺人事件の調査、警備強化のため人員がかなり必要となったからである。

そんな事件から一年、衛宮夫妻は未だに彼……衛宮 渡の行方を探し続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明けの日差しが降り注ぐ新都の道路を一台のバイクが駆け抜ける。白いバイクには黒いコートを羽織り黒いヘルメットと着けた、いかにも不審者のような容姿の人物が乗っている。

バイクが進む先にあるのは、この新都の端にある一件の家が近くにある廃工場後。

暗いが、見えにくい事はないため奥まで走り周りに人がいないか確認した僕はバイクから降りて、着けていたヘルメットを外してバイクのハンドルにかける。

ある程度の汚れと小物のない地面へと座りバイクに背中を預けて目を瞑る。

 

「はぁ……」

 

目が覚めて、最初に見たのは鏡を通じて見たのは変わり果てた自分の姿と近くに置かれた赤いマフラーだった。

思い出した前世とこの世界に関する記憶に驚き困惑し僕は、もう衛宮 渡として生きられなくなった事を悟った。

僕の望んだ転生特典、前世の最後に僕が願ったのは力だった。

誰も傷付けず、周りを守る事が出来る力。

そんな力の一つとして、憧れであった彼らの原点であり新たな姿と重なってさた。彼の力をこの体へと宿して欲しいと神に願った。

片手を腰へと向け、指先でベルトに着いている大きな装置『プラーナ強制排出補助機構付初期型』通称『タイフーン』を指先で撫でる。

衛宮 切嗣さんにアイリスフィールさん、士郎やイリヤ、リズやセラ達には申し訳ないと感じるが、これでいいんだ。

既にこの体はもう人間ではなく、両手は既に血に染まっている。僕の体はバッタの能力を持った改造人間である人外合成型オーグメント・バッタオーグ、怪物だ。

可能なら、せめてもう一度だけ彼らに会いたい。

せめて、別れの言葉だけでも送りたいけど踏み出す勇気がなかった。

それに怖かった、僕が彼らと過ごすなかで原作改編に繋がるような行動をとってしまうような事がなかったのか、そしてこの行動が……僕の存在そのものが正に原作崩壊の引き金になってしまうのではないかと考え込んでしまう。

 

「まだこんなところに住んでたのか、1号」

 

廃工場後の入り口の方から聞こえてきた聞き覚えのある声が聞こえて、聞こえてきた方向へと顔を向けると黒いコートを羽織った1人の少年が立っていた。その表情は呆れと心配を意味していることがなんとなく感じられた。

 

「いや、1()()じゃ被っちまうか。訂正するよ、仮面ライダー()1()()

 

「第2号……」

 

「おいおい……そこは()()、もしくは名前を呼び捨てにして欲しいんだがな、衛宮」

 

彼の名は、遠坂 白十(とうさか はくと)

仮面ライダー第2号であり、僕と同じくこの世界についての知識がある転生者であり、僕らの特典の元であるシン・仮面ライダーを知らない男だ。

僕らを転生させ特典を与えた神によって定められた僕らを含めた7人の転生者同士の殺し合い生き残った物が望みを叶えることが出来るというゲームで出会った。

彼はこの世界の改編を行うのは嫌で、僕が衛宮であることを知った彼と対峙しぶつかりながらも話し合い、互いに原作改編を願っていないことが共通し、共に戦うこととなった。

その殺しあいは一年間続き、僕と彼を残して他の転生者を殺し終わりを迎えた。

 

「こっちは何とか日常に戻ったぜ、あのうっかり娘に家を出ることを引き留められて大変だったぜ。お前の方は……まだ、みたいだな」

 

「僕は…」

 

「まぁ、改めて互いに原作キャラの兄に生まれ変わるなんてついてないよな。可能なら原作通りに進んで欲しいのが望みなんだが」

 

そう話しながらやれやれと言った様子のジェスチャーを行う白十に頷いて返す。

 

「お前の気持ちは分からない訳じゃあねぇ、原作キャラ……それも主人公の家だからな。慎重になるのも分かる、でも、家族になったからには……世話になったからには別れの一言くらいは言っても原作は変わらねぇんじゃねぇか?」

 

「そうだと、いいな」

 

「はぁ、このままならそろそろ原作が始まるぞ。せめてその前に終わらせろ、俺も着いていってやるから」

 

そう言いながら座り込む僕に向かって彼はてを差し出してきた。

家族なら、か。確かに白乃の言う通りかもしれない。せめてあの人たちに一言だけ言って、あの家を出よう。あの人たちのこれからの世界を、変えないためにも。

 

「……ごめん、白十。」

 

「そこは謝罪より感謝だぜ、渡」

 

「ありがとう、白十」

 

彼の手を僕は取って立ち上がり、バイクにかけていたヘルメットを被ってサイクロン号へと股がる。

バイクのハンドルを絞り、廃工場後の出口へと向かうと僕と同じようにサイクロンへと股がって待っている白十がいた。

 

「いくぞ、渡」

 

「うん、行こう白十」

 

お互いにバイクのハンドルを絞り冬木市へとバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルお兄ちゃんが行方不明になってから、1年が過ぎた。パパやママは相変わらず海外を飛び回って働きつつ、ワタルお兄ちゃんが見付かることを祈っている。警察の人達がワタルお兄ちゃんを探し続けてくれているけど、全く手懸かりがないみたい。

今となっては、私やお兄ちゃんとリズとセラで過ごす日常が当たり前になっちゃった。

すごく寂しいくて、心配になる日もあるけど今日も私は学校へ行ったり、アニメを見たりと普通の女の子としての日常を過ごしている。

 

「今日はイリヤ、何処か楽しそうだな?」

 

「えへへ、そう見える?実は今日、パパとママがお仕事から帰ってくるの!」

 

「そっか、イリヤちゃんのお父さんとお母さんって海外で働いてるんだっけ」

 

そんな私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは学校からの帰り道を友達と一緒に歩いていた。

今日は久しぶりにパパやママがお仕事から帰って来る日だ、リズとセラの話を聞くにお昼には冬木に着いているらしいから早く帰らないと。

そう思いながら肩から少しだけずれたリュックサックを背負い直す。

そう言えば、お兄ちゃん張り切ってたな。パパやママに美味しいご飯を沢山作るって、でも確か今日はセラの当番だった気がするけど大丈夫なのかな?

そう思っていた時だった、気が付けば私の足は地面から離れていた。まるで、時が止まったような感覚と共に腹部と背中に何かが振れている毎に気付いた。

見れば、車道側に停められていた車から伸びた手が私のお腹と背中を持って私を車の中へと引き寄せていた。

 

「っ!?助け────」

 

周りにいたクラスメイト達の顔が驚愕した物に変わっていくのを見て私は車の中へと引きずり込まれた。扉が閉まる音と共に私の口に布を当てられる、テレビで見たような日とを眠らせる薬が染み込まされていると考えて、息を止めようとするけど長い間止めることは叶わず、私は目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白十と共にバイクを走らせていると、一台の黒い車とすれ違った。中には黒い服にマスクを着けた人がいて何気ない瞬間であったけど、何故か後部座席に銀髪の少女が横になっている姿が見えた気がして、バイクを止めた。

大きな道路ではないため、頻繁に車が通ることはなあため後ろからの車が来ないのを確認して先程すれ違った車を見つめる。

 

「イリヤ?……いや、そんな筈は」

 

「急に止まってどうした、渡。まさかここまで来て怖くなったとかじゃないだろうな?」

 

「さっきすれ違った車に、イリヤが乗っていたような気がして」

 

「なんだそりゃ、そんなの原作に無いし見間違いじゃ───」

 

僕が止まった事を不信に思ったのか、此方へと引き返してきた白十にさっき見た事を伝えていた時だった。僕の……いや僕らの強化された聴覚にある会話が聞こえてきた。

 

『イリヤちゃんが、誘拐されちゃったーー!?』

 

『ヤバイ!早く、えっと警察!警察に行かないと!』

 

『で、でもここから警察署より学校!学校の方が近いから早く戻って先生達に!』

 

イリヤが誘拐?だとしたらさっき僕がみた車で横になっていた銀髪の少女はきっと……。

状況を理解したのか、白十もさっきまでのふざけた表情から真剣な表情へと変わった。

 

「白十!」

 

「あぁ!」

 

白十に呼び掛けながらサイクロンを反転させ、ハンドルを絞る。サイクロンが加速して急発進するのに、白十は合わせてサイクロンを加速させて僕の横を走る。

 

「恐らく、さっきお前が見たのは誘拐犯の車で無そうだな」

 

「うん、急いで追いかけて取り返さないと。この世界の事から考えるなら」

 

「あいつらはアインツベルンを狙った魔術使い又は魔術師の可能性がある、だなワタル。イリヤは体に聖杯があるみたいなもんだしな、急がないと不味いことになりそうだ」

 

「だから──」

 

「あぁ、行くぞ渡ッ!」

 

「うん、白十!」

 

僕らはバイクを走らせながら、暫くは前から車が来ない事を確認してコートを閉めていた一つのボタンを外しサイクロンのハンドル部分に存在するレバーを親指で奥へと操作しハンドルを上から下へと押し付ける。サイクロンからマフラーやカウルが展開されていき、サイクロン号が真の姿へと変形した。

マフラーから火が吹き、先程までより比較にもならないほど加速するサイクロン号は前からの向かい風を受ける。そしてバイクの手前が稼働して、僕の腰に着いているベルトの中央にある赤い風車へとに風を浴びせる。

体が、人から変わっていく感覚を感じる。

風を受けたタイフーンの中央の風車が回転し、被っていたヘルメットは即座に変形して僕の顔を覆い隠す。

バイクのハンドルから手を離し、タイフーンと連動した防護服の胸のコンバーターラングにも風を受けさせる。コンバーターラングとベルトのタイフーン、そして顔を覆い隠す仮面が連動し、大気中の圧縮プラーナを吸収し増幅する。

僕は、シン・仮面ライダーである仮面ライダー第1号へと変身した。同じように隣では白十もヘルメットが変形していき仮面ライダー第2号へと変身する。

 

「あいつらの車をいきなり止めたら、イリヤが危ない。奴らの拠点まで向かって救いだした方がいい」

 

「それがいい、じゃあ追うぞ!」

 

「あぁ!」

 

バイクのハンドルをさらに絞りマフラーが更に火を放ち加速するサイクロン号をかり、僕らは奴らの車が向かった方向を追いかける。少しするとさっき見かけた車が見えた。

車はだんだんと冬木市でも人気が少ない方へと向かう、道路の標準スピードを大きく違反する形で走行する車。

追いかけてきたのがバレた?それとも警察の車が追いかけてきているのか?取り敢えずサイクロンで車の後を追い、大きな廃墟らしき場所へと入っていったのを確認して、手前でサイクロンを停める。

 

「ここか……」

 

「早めに取り返さねぇと、警察が来るぜ?それに救いだしたとしてもどうやって親元に返すつもりだ、1号」

 

「確かに、でももし相手が魔術師だとするなら警察は意味がないし早く助けよう。イリヤの事は、後から考えれば良い」

 

「おいおい……ノープランかよ。でも、これで原作に影響が出たら面倒だ、早く済ませるぞ」

 

白十に頷いて返し、僕らは廃墟の中へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、衛宮家を目指した車を走らせていたアイリスフィールと切嗣は学校からの連絡を聞いたセラとリズからの緊急の電話に出ていた。

 

『奥様!大変です、イリヤさんが何者かに誘拐されました!』

 

「ッ……切嗣、イリヤが」

 

「魔術使いの可能性がある、か………普通の誘拐犯なら警察でも良いんだが。アイリ、イリヤの後を追おう」

 

「分かったわ、セラ。貴方はリズや士郎と家で待機していなさい。イリヤは私と切嗣が何とかするわ」

 

『申し訳ありません、奥様。』

 

二人は探知の魔術をよういて、イリヤの元へと車を向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか、上手く行ったな」 

 

「そうですね……」

 

「だが、身代金を要求する前に眠らせちまったのは俺のミスだ。すまない」

 

地面に眠ったままの銀髪の少女を寝かせ、男達は今後について話し合う。少女は両手と両足を結束バンドによって固定されていた。彼らは魔術と全く関係の無い誘拐犯であった。彼らは身代金目当てに、こうして誘拐事件を起こしたわけだが、彼らは運がなかったのだろう。

コツ、コツと言う足音が近付いてくるのを感じた男達は一斉にポケットから拳銃を取り出す。やがて、彼らの元に現れたのはなんとも不思議で、不気味な存在だった。

現れたのは、黒いコートを羽織り顔を覆い隠し複眼のついた深い緑の仮面を着けており腹にはプロテクターのような物が着いていている、パッと見はコスプレをした変人だった。

 

「な、なんだお前は……変なコスプレしやがって!見たからには…」

 

そう言って男の1人が拳銃を構えた時だった、瞬時に間を摘めた仮面ライダー第1号は誘拐犯の腹部を殴り付け、気絶させる。地面に倒れた男を横目に、近くにいたもう1人へと一歩踏み込みながら拳銃を蹴りあげ、そのままもう片方の足でジャップし横に蹴られた男は軽く吹き飛び地面へと仰向けだ倒れる。

瞬時に仲間であった二人を気絶させられ、明らかに人とは思えない動きに固まる最後に残った男。彼は、ゆっくりと自分へと向かってくる謎の存在への恐怖から、震える手で引き金を引いた。

一発の銃声が廃墟へと響き渡ると同時に甲高い音が響き渡る。

近距離であるから当たる、外すわけがないとそう考えていた男の顔が驚愕と絶望に染まる。何故なら、その存在の胸部についたプロテクターが銃弾を弾いたからだ。

 

「あ、あぁ……」

 

やがて、最後に残った男も仲間と同様に近付いてきた謎の存在に腹を強く殴られ意識を落とした。全員を気絶させたことを確認した僕は、ゆっくりと深呼吸をする。

この仮面を着けると暴力の加減が出来なくなるのは知っていた。だからこそ、手加減を急いで覚えたのがここで行かされることになるのは思わなかったな。

イリヤを見た限りだと、両手と両足を結束バンドで動けないよう固定されている。縄なら簡単にほどく事も引きちぎる事も出来た 、でも結束バンドはハサミ等を使って切る方が安全だ。取り敢えず、ここから移動しないと。

そう思っていた時だった、イリヤが身動ぎしゆっくりと瞳を開いた。そして僕を見て恐ろしいと感じたのか、やがて目から涙を流し始める。

安心させるような言葉をかけたいけど、話してしまったら恐らく僕だとバレてしまうだろう。それにこの姿が僕だとバレるのは不味いことになる。

 

「わ、私……え?」

 

だが、周りに彼女達を誘拐した本人達が地面に倒れ伏しているのを見て涙を止め不思議そうな首を傾げた。

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

僕は取り敢えず彼女の膝と背中に手を回して抱き抱える、所謂お姫様抱っこ担ってしまうけど、イリヤが好きなのは士郎だから、別に大丈夫だろう。

少し動いたイリヤを落とさないように抱えて、廃墟の出口へと向かっているとイリヤがゆっくりと、口を開いた。

 

「助けて、くれたんですか?」

 

それに黙って頷くと、イリヤは何処か安堵した様だった。廃墟の入り口へと向かっていると、入り口に他の仲間が来ないか見張っていた白十が立っていた。あらかじめ、イリヤを助け出した際に話したらバレるかもしれないと言う事で、僕が極力話さないように白十が配慮してくれた。

 

「終わったみたいだな、1号。それにしても、お前が王子様だなんて似合わねぇな。お嬢さんもそう思うだろ?」

 

「え、えっと……」

 

「コイツは無口でな、悪いな!安心させるような事すら言わなかったんだろ?コイツの変わりに謝る」

 

「あの、貴方達は一体?」

 

白十、恐らくは今の僕と色違いにも見える彼に困惑した様子で僕と白十を交互に見るイリヤと会話を続ける。白十のお陰か、入谷も少しだけ緊張や恐怖が消えたように思えた。

 

「あぁ……まぁ正義の味方?って奴さ。俺らはとある秘密結社に改造手術を施された改造人間なんだ」

 

「ひ、秘密結社!?それに改造人間!?あ、アニメじゃなくて本当に!?」

 

「おう!」

 

イリヤが目を輝かせる、まぁこの世界に恐らくはショッカーは存在しないだろうし話しても構わないか。

 

「俺たちは秘密結社から離反して、秘密結社を止めるために戦ってるんだ。俺達は元々、バッタオーグって言う名前だったんだが、気に入らなくてな。コイツが離反した時に名乗った仮面ライダーを俺も名乗らせて貰うことにしたのさ。俺が仮面ライダー第2号、そしてお嬢さんを助け出したのが仮面ライダー第1号だ。」

 

「カメンライダー……かっこいい!」

 

「この事は秘密だぜ?お嬢さんも、俺らのような裏から狙われたくはないだろう?」

 

まさか、イリヤの安堵と笑顔を引き出した方法が白十に説明したシン・仮面ライダーの設定や物語になるとは思わなかったな。うきうきした様子のイリヤと楽しそうに話す白十を見守る。

 

「それにしても悪いなお嬢さん、俺らはその結束バンドを安全に取るハサミは持ってないんだ。俺らの事情ですまないが、警察には頼れなくてな。家まで送っていこう、良ければ案内してくれ」

 

そうか、確かにそれなら安全に彼女を届けられる。ナイスアイディアだ、白十。

そう思っていた時だった、外に車が向かってくる音が聞こえた。白十も聞こえたのか黙って耳を澄ませる。イリヤそんな僕らを不思議そうに見つめる。

聞く限り一台か、だとしたら警察ではなさそうだ。もし警察なら一台だけじゃなく沢山のパトカーを連れて来るだろう。

考えられるなら、さっきの誘拐犯達の仲間。

 

「車が一台か……」

 

「えっと?」

 

「お嬢さん、お喋りはここまでだ。どうやら、出口に車が近付いてきているようだ」

 

「え!?も、もしかしてさっきの人達の……」

 

「そうかもな、取り敢えず俺が確認してくる、合図するまで出てくるなよ1号」

 

白十の言葉に頷いて返すと白十が廃墟の入り口から確認すると、此方へ向かっている車に乗っている人物を確認することが出来た。

乗っていたのは日本人と思われるコートを着た男性と銀髪の外国人と思われる女性。衛宮切嗣とアイリスフィールであった。

 

「1号、どうやら彼女のお迎えらしい」

 

その言葉を聞き、僕はイリヤを抱えたまま出ていき切嗣さんやアイリスフィールさんに返そうと出口に向かう途中。白十は、少し迷った後に口を開いた。

 

「1号、一つだけ言わせろ。心残りの無いよう、全てを見せるのもアリだと、今の俺なら思うぜ。このままじゃあ、心がスッキリしねぇだろ?それに今は始まる前だ、それぐらいで簡単に世界は変わらないだろ」

 

それは僕にあの人達にこの姿で話せ、という事なのか?原作に影響を与えないために家を出る、その挨拶に向かうのは良いだろう。

でもあの人達なら、きっと僕を引き留めるだろう。なら確かにこの姿を見せて、諦めて貰ってから別れた方、が良いのかもしれない。

どうせ、会うのが最後になるのだったら。

これくらいで原作は変わらないだろう、そう希望的観測をしながら僕は白十に頷いて返した。

廃墟から出ると、車から出てきた切嗣さんとアイリスフィールさんが此方をじっと睨み付けてきていた。視線はずっと、僕が抱えているイリヤに注がれている。

 

「パパ!ママ!!」

 

イリヤが落ち着いており、安堵した様子でそう話しかけてきた様子に切嗣さんもアイリスフィールさんも、どちらも不思議に感じているのかもしれない。

僕は、黙って歩き二人の元へと向かう。警戒した様子を見るにイリヤが見ていて、僕が抱えているからこそ魔術での攻撃が出来ないのだろう。

取り敢えず切嗣さんに受け渡そう、そう考えて切嗣さんへと近付き恐らく殴ろうと思えば殴れる程に近い距離まで近付くことが出来た僕は、抱えていたイリヤを切嗣に向けて差し出した。

その様子にアイリスフィールさんは首をかしげると同時に安堵した様子で口を開いた。

 

「もしかして、貴方は誘拐犯じゃあない?」

 

「そう、なのか?」

 

「パパにママ、この人達が助けてくれたの!」

 

切嗣さんやアイリスフィールさんの疑問に答えたのは、イリヤだった。切嗣は警戒したまま、イリヤを受けとめ抱き抱えると困惑した様子で口を開いた。

 

「君は、一体………」

 

切嗣さんが口にしたその問いに、一歩後ろへと下がった僕は覚悟を決めてタイフーンの右側面についてるスイッチを押した。タイフーンの風車部分がせり上がり体内とエナジー・コンバーターに残留したプラーナを強制排出され、体が人間へと戻っていくのを感じる。

突如として僕の起こした行動にアイリスフィールさんは身構え、切嗣さんはイリヤを守るように抱き締める。口を保護するクラッシャーがガシャンという音と共に外れ口許が露になる。

僕は被っていたマスクを両手でゆっくり外した、切嗣さんとイリヤは驚いた様子で目を開き、アイリスフィールさんは目に涙を溜めていた。

 

「その、久しぶり」

 

「わた、る?」

 

マスクを取った僕は申し訳なさそうな表情を浮かべているのだろう。

 

「渡……ワタルなのね!」

 

そう言いながらアイリスフィールさん、いや母さんは僕に抱き付いてきた。でも、僕には抱き返す権利はない。何故なら僕は、この人達の元から離れなければならないから。

 

「母さん、ごめん」

 

そう言いながら、母さんから一歩引いて離れる。母さんは不思議そうな顔を浮かべる。僕は三人に向けて、頭を下げた。

 

「父さんに母さん、家族には沢山の恩を受けました。貴方達の元で過ごした時間は、僕にとって掛け替えのない時間でした。皆さんから受けた恩を仇で返してしまうことになってしまった僕を……恨んで構いません」

 

「……どういうことだい?」

 

「僕は、もう貴方達家族の元にはいられないんです」

 

原作を壊したくない、だから。でもそれ以外のこの人達を説得する方法が僕にはこれしかない。恐らく、さっき白十から話を聞いていたイリヤは分かってくれるだろう。

 

「僕は、もう人間じゃ無いんです。この体になって、もし僕が貴方達家族の元で過ごしたらきっと……みんなが巻き込まれ殺されてしまうかもしれない」

 

「どういう……」

 

アイリスフィールさんの感じた疑問に答えるため、僕は口を開いた。

 

「僕は、一年前にある組織に誘拐され体を改造されて……人間じゃ無くなったんです。その組織にもしみんなが目を付けられたら、殺されてしまうかもしれない。皆さんに危険な事があったら、僕は嫌なんです」

 

そう話して僕はみんなの元から一歩、更に下がってから持っていたマスクを頭にかぶせると、クラッシャーが自動で装着された。

 

「父さんに母さん、出来るならもっと家に帰ってあげて下さい。みんな、二人がいなくて寂しがっていますから」

 

僕は、泣いていた。

 

マスクをしないと、泣いているのがバレてしまいそうだから仮面を着けた。

 

「イリヤ、これからも友達と仲良くね。君のクラスメイト達のお陰で、僕はイリヤを助けにこれた」

 

この人達から離れるのは寂しくて、悲しいと分かってるだけではない。この人達と過ごした日々が、本当に幸せだったと感じていたから。

 

「どうか、セラさんやリズ、士郎にもお世話になりました、そしてごめんなさいと伝えてください。あと、みんなどうか元気でいてね」

 

そう言いながらみんなに背を向けて歩きだしながら左側のスイッチを押す。すると離れた位置に停めていたサイクロン号が僕の前へと走ってきて止まる。

バイクに股がり、走り出そうとした瞬間だった。

 

「渡!」

 

声が聞こえて振り替えれば、切嗣とアイリスフィールさんは頷きあって口を開いた。

 

「いつでも帰ってきていいんだからね、渡」

 

「せめて、一年に何回かは帰ってきてね。じゃないとママは渡のこと忘れちゃうわ!いつまでも、待ってるわ」

 

「絶対!絶対に帰ってきてね、渡お兄ちゃん!」

 

────父さん、母さん、イリヤ。

 

あぁ、温かいな。こんな自分勝手な僕を、こうして待っていてくれる人達がいる。

 

「ありがとう、ございます。さようなら!」

 

サイクロン号のハンドルを握り閉めて絞る、サイクロン号のマフラーが火を吹き僕はその場から即座に離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が落ちて暗い道路を暫く走っていると空気を読んでくれたのか、白十は遅れて僕の横に並んだ。

 

「渡、俺は前に原作を壊したくない、極力原作キャラとの接触はやめた方が良いと話していたよな」

 

「うん」

 

「ああいった原作改編は嫌いだ、避けた方が良いと考えていたが、好きになることにした。」

 

「え?」

 

「少しぐらいの変化は、大丈夫だろ?あぁ……これで心スッキリだ」

 

「そっか………ッ!」

 

「ッ!」

 

次の瞬間、僕と白十はサイクロン号のブレーキをかけて急いで止まる。

目の前には明らかに怪しそうな男が道路のど真ん中に立っていた。

 

「お前らが神が言っていた転生者だな?お前らを倒せば、神が俺の願いを何でも叶えてくれるンだってよ」

 

サイクロンから降りて、目の前の男からゆっくりと距離を取る。

 

「転生者だと?既に俺達以外が存在しない筈じゃ」

 

「決着を着けないお前らに嫌気が差したらしいぜ?じゃあ、てめぇら雑魚をさっさと殺して俺はこの世界のキャラ達でハーレムでも作らせて貰うぜ」

 

なるほど、コイツの狙いはそれか。

 

「悪いが、その考えは好きになれねぇな。渡、プラーナは十分吸収できたか?」

 

そう言いながら白十は僕のを方を見る、僕は彼に頷いて返した。

 

「やるぞ渡!」

 

「やろう、白十!」

 

白十は両腕を水平に左に伸ばして構え僕は左腕を右上に斜めに伸びばし、片手を胸の前において構え目の前の転生者と対峙した。

こうして僕らは原作を守るため、そして襲ってくるこの世界に現れた転生者との戦いに巻き込まれていくのであった。

 

 






と言うわけで主人公の特典がシン・仮面ライダーへになること、そして主人公の相棒とも言える友人がいたらというIf.でした。

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If...もし渡がダークカブトなら〔前編〕

If...もし渡がダークカブトなら〔前編〕

 

ワタルside

 

 

考えてみれば孤児院から引き取られ、衛宮さんの家に迎えられてから何年が過ぎたのだろうか。

 

学校な教室、先生が黒板へと書いた授業内容をノートへと写しながらそう思った。

 

この世界、月型世界と呼ばれる世界の1つ。Fate Kaleid linerプリズマ☆イリヤの世界に僕は転生した。孤児として転生した僕は、士郎と共に引き取られることとなり原作の家族に入ってしまった。

 

二次創作なら、主人公は原作をより幸せな方向へとハッピーエンドへと向けて動くのであろうが僕にはそんなことは出来なかった。

 

まず、この世界に生まれた上に姓が衛宮となってしまった僕は、この世界のイレギュラー。

本来ならあり得ぬもう一人の家族。その立場から、僕はまず恐れた。

 

この世界に僕が何かしらの影響を与えるのでないか、本来なら生存するはずのキャラクターが死亡し、救われる筈のキャラクターが死亡するのではないか。そんな事を感じてしまい、僕は出来るだけ彼らに何らかの影響を与えないように接した。

 

二次創作ならあり得るであろう、ひょんなことからヒロインが本来の相手ではなく転生者に恋してしまう事を恐れ、出来るだけ僕はイリヤに対しては家族としてそれ以上でも以下でもない対応を心掛けた。

 

もちろん学校のキャラクター達に対しても、その対応のした。いやするはずだった、一人を覗いて。

 

本来ならクラスにいないはずのキャラクター、もしかしたらFateの初期設定等にいたのかも知れないが、今のところ彼のような名前は知らない。

 

彼の名は飛電 隼人(ヒデン ハヤト)

 

かってな予測だと、彼は恐らく転生者なのだろう。まず飛電、これは仮面ライダーゼロワンの主人公である飛電或人の名字。そして隼人、これは仮面ライダー二号、一文字隼人の名前。

 

決めつけだが、彼は士郎と仲が良いし良くイリヤと美遊、遠坂凛やルヴィアさん達と良く行動していたので、恐らくは黒であろう。

 

時系列を考えるのなら、夜遅くにイリヤが出歩く事も無くなったので、恐らくは無印が終わったのであろう。次に起こる、または今起こっているかもしれないツヴァイのクロエ事件。

 

今は正にそこなのだろう。

 

それにしても、先程考えた彼が原作介入をしているのなら何故そんな事を出来るのか、何故戦えるのか分からない。

確かに原作よりハッピーエンド、なんて良く考えることだが、その行動から起こるであろうタイムパラドックスを何故恐れないのだろうか?

何故命を掛けて戦えるのだろうか?

 

そう思っていると授業終了の鐘が鳴り響く、今日もまた僕は学校の授業を終えた。

 

ガタン!そんな音と共に隣のクラスの扉が開いた音の後に誰かが廊下を走っていく音が聞こえた。

 

『こらー!飛電!廊下を走るなー!!』

 

『それどころじゃないんですってー!!』

 

そんな聞こえてきた会話に思わずクラスが静まり帰る。

 

「あー、こほん。今日の授業はここまで、分からない所があった人は放課後に来なさい。挨拶」

 

そのあと、挨拶をして教師は教室を出ていった。全員が起立して机を下げる。掃除当番の僕と数人以外は鞄を持ち帰っていく。

 

箒で教室の床をはきながら今日投稿する予定の曲を考える。それにしても、飛電くんは何故駆け出していったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除を終え、鞄を背負って学校を出る。取り敢えず今日もどうにか学校を乗り切った。そう思いながら帰り道を歩く。いつもならイヤホンをして音楽を聞くがたまには、このまま帰るのも良いかもしれない。

 

そう思いながらイヤホンをしまい、道を歩く。

 

「それにしても」

 

やけに静かだな。鳥の鳴き声や虫の羽音、車の走る音が聞こえても良いはずなんだけど。気のせいかな?

 

少し怖くなり、音楽を聞いて気分を上げようとスマホを付けると圏外になっていた。あり得ない、いつもなら電波が繋がるはずなのに。

 

何か可笑しい、そう思ったその時だった。

 

ガサリ、僕の真上。恐らくは木の上からそんな音と共に女の子が降ってきた。

 

「うわ!?」

 

思わず後退り、気付いた。褐色の肌に琥珀色の瞳、見覚えのある綺麗な銀髪にイリヤそっくりな容姿。

 

彼女の名はクロエ。後にクロエ・フォン・アインツベルンとなるはずの少女。だが彼女は酷く焦っておりその左肩は何者かに斬られたのか切り傷から血が滲み出ていた。

 

おかしい、原作でもこんな描写。それも肩を斬られるなんて描写は何処にも無かったはず。

 

取り敢えず止血した方が良いよね?普通の人、関係の無い人でも流石にこの状況なら声をかけるだろうし。

 

そう思い話しかけようとした時だった。彼女が僕の方を向くと、一瞬目を見開くが直ぐに口を開いた。

 

「助けて!!」

 

彼女の僕への第一声は、助けを求める声だった。必死な様子で、そう訴える彼女は体が震え瞳には僅かだが恐怖が見えた気がした。

 

「落ち着いて、大丈夫。取り敢えず肩、止血しないと」

 

出来るだけ怖がらせないよう、優しく言いながらポケットからハンカチを取り出す。以前に音楽投稿で視聴者から貰った物だけど、今はそんな事を気にしてはいられない。

痛いとは思うが彼女の肩の傷口辺りに当てて強く強く掴んで置くように彼女の右手を左肩へと向ける。

 

「このハンカチの上から強く掴んで血を止血する、だから出来るだけ強く掴むんだよ?」

 

そう言いと、彼女は頷きハンカチの上から肩を押さえる。取り敢えずこれで止血は大丈夫そうだ。

 

取り敢えずどうするか、原作では無かったはずの描写がある。ここから考えられるのは何らかのイレギュラーな事態が発生していると言う事。

 

考えられるのは僕、または僕以外の誰かが行った行動によりこの世界が狂った。または変わってしまった。

 

僕以外の誰かが原作に介入した事でタイムパラドックスが起こってしまった。

 

原作のこの世界そのものが変化し、別の物語へと進んでいっている。

 

とにかく、目の前の彼女の怪我を直すには移動しないと。家はイリヤ達がいるからダメだ。なら、前に歌を収録する為に借りた防音のアパート、それしかない。

 

助けて、そう言われたのにこれぐらいしか出来ない自分が凄く悔しい。

 

もし、もし僕に力があれば……イリヤや士郎みたいな、主人公みたいな力があったら、この子を守って上げられるのに。

 

この子の震える体を抱き締めて、大丈夫だと。僕が守ると、責任を持って言えるのに。僕が転生特典に頼んだのは、ただのゲーム。

 

自分の事しか考えてない、戦うのが怖い。

 

だからこそネット小説を読んだ転生者狩りと言う存在にも会わないような些細な特典を望んだ。

 

「僕に、力があれば…」

 

その時だった、何かの羽音と共にまるで鳴き声のような電子音が聞こえ、思わず聞こえてきた方向へ、空へ顔を向ける。

 

だが、そこには何もない普通の空が広がっていた。

 

「どうか、したの?」

 

「いや、羽音が……」

 

気のせい、なのか?

 

そう思った、その時だった。先程と同じ電子音が聞こえたと思った次の瞬間、空が波打ち波紋を作る。そしてその穴から銀色の何かを持った黒い何かが飛来して来た。

 

飛来してきたのは、昔から日本にいる虫。機械のようなメカメカしい姿をした真っ黒なカブトムシが銀色のベルトを角に引っかけて持ち、僕の目の前に滞空していた。

 

そのベルトも、カブトムシも僕は知っていた。

 

光に反射して光輝く銀色のベルト。

 

これは、この世界とは異なる世界で『太陽神』と呼ばれた者が、『戦いの神』と呼ばれた者が、『黒き太陽』を司る者が装着していた物。

 

渋谷隕石から生まれた地球外生命体『ワーム』に対抗する秘密組織『ZECT』が開発した、対ワーム用の切り札。

 

マスクドライダーシステム、ゼクターと呼ばれる虫型デバイスを用いる事で変身する変身システム。ゼクターに選ばれた者、有資格者のみがこのベルトの力を引き出すことが出来る。

 

仮面ライダーカブトに出てきたベルト。ライダーベルト。

 

そして目の前を飛び、ベルトを此方へ向けて見つめてくる黒い体に赤い脚部を持つカブトムシ。

 

ダークカブトゼクター。

 

かつて擬態天道総司が使用していたマスクドライダーシステム。

 

なんで、この世界にゼクターが?それに何故、僕の目の前に……まさかクロエがダークカブトの資格者に選ばれたのか?だとしたら、流石アニメでの主人公キャラと言える。

 

「あ、アイツと同じ……」

 

「え?」

 

クロエがそう呟いた言葉に思わず口から声が漏れる。可笑しい、この世界には隕石なんて落ちてきていなければワームやショッカーだっていない。なのに、このゼクターに似た者を彼女は見たのか?

 

それにクロエの脅えようから、恐らく彼女の肩を切ったのは……仮面ライダー、なのか?だとしたら、何故この物語の主要人物である彼女を狙った?

 

もし、変身者が仮面ライダーなら自分のハーレムを作るためか?それともこの世界を壊すのが狙いか?

 

そう考えている中、痺れを切らしたのか少し低い電子音を鳴らしながらダークカブトゼクターはクロエちゃんではなく、僕の腰を飛び回りライダーベルトを着けさせた。

 

「な、なんで……」

 

なんで僕なの?体を鍛えてるわけじゃない、天道総司みたいに強くない、料理も普通で色々な事を出来ない。

 

特質することは音楽のみの落ちこぼれ。それも前世のものを模様しているだけで。士郎やイリヤ達のような主人公でもない、ただのモブに近い存在であるはずなのに、何故?

 

するとベルトを巻いた僕を見てダークカブトゼクターは満足気に鳴き、腰のベルトへと飛んでくる。

 

そして自らベルトのバックル部へと装填された。

 

【HENSHIN】

 

その音声と共にベルトからスーツとアーマーが腰から体へ腕へ、腰から足へと展開されて行く。

 

大きな鎧を持つその姿はかつて太陽神呼ばれた男の変身した仮面ライダーカブトに酷似しているが、頭部アーマーの目『コンパウンドアイ』が黄色になっている。

 

黒き太陽、仮面ライダーダークカブト。マスクドフォーム

 

「貴方も、アイツと同じ……」

 

そう言いって先程までの落ち着いた様子から驚愕し、恐怖に体が震える様子のクロエ。思わず手を伸ばしかけ、変化したアーマーを纏っている自身の手を見る。

 

「ウォォォォオオオオオオオオ!!!」

 

その時だった、少し先から僕の目の前へ目掛け、いやクロエへと両手に剣を持った青い何かが走ってくる。

 

全体的に青いボディ、まるでクワガタムシを表すよう頭部に付いたガタックホーンに赤いコンパウンドアイ。両手に持っているのはガタックダブルカリバー、プラスカリバーとマイナスカリバー。

 

戦いの神、仮面ライダーガタック。ライダーフォームが此方へと駆けてきていた。

 

な、なんでガタックがこの世界に!?

 

僕以外の転生者か?それともハイパーゼクターで世界を越えてきたのか!?

 

もし転生者だと思われる人物の中で有り得るのは、それに声の感じなら。隣のクラスの飛電隼人で間違い無さそうだ。

 

だが、だとしたら何故こっちに?ここは鏡面世界でもないし、死徒もいない。

 

その時だった、目の前まで来ていたガタックは跳躍しクロエへとその二つの刃を振り下ろそうとした。僕は咄嗟にクロエの前に出て腕を重ね二つの刃をアーマーで受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「え…」

 

受け止めた後から、アーマー部で受け止められた事に安堵した。だが、もしアーマーではなくスーツ部へと刃が届いていたら?そう考えるだけで体が恐怖で震えた。

 

攻撃が防がれた事に驚愕したのか、ガタックは一度後ろへと地を蹴って下がり両肩にダブルカリバーを納める。

 

「お前、なんで俺と同じベルトを……何故アイツと一緒にいた?お前はアイツの仲間、なのか?」

 

「なぜ、何故彼女を狙う」

 

僕は、恐怖をどうにか押さえ何故クロエを攻撃するのか聞こうと口を開き、出た声は思ったよりも低い声だった。

 

「そいつは、イリヤを何度も殺そうとした。イリヤは俺に取っての友達で、友達に任された妹だ。彼女がこれ以上傷付かないよう、俺が変わりにソイツを倒す!」

 

こいつはバカなのだろうか。

 

彼女は、クロエはイリヤの中で封印された小聖杯の人格が生きたいと言う意思から生まれた。

 

家族や友達、なんの変哲もない普通の暮らしを望む彼女を何故?

 

こいつは、原作を知っているんじゃ無いのか?

 

知っていても、その考えを貫き通すつもりなのか?知っているはずなのに、何故救おうと思わない?

 

これは彼女とイリヤの解決する問題なのに、何故?そもそもあんなにクロエが脅えていたのは、こいつのせいか?

 

クロエの肩を切ったのは、こいつなのか?

 

なぜ、こんな原作を壊すような事をする?これ以上この世界を歪めるのだとしたら。

 

だとしたら僕は、お前を……許せない。

 

今ガタックを止められるのは、同じくマスクドライダーシステムを手にして変身してしまった僕だけ。

 

ガタックへと向き合ったままクロエに逃げるよう掌を向ける。思いが伝わったのか、クロエは即座に走り去っていく。

 

「あ!おい待て!」

 

そう言って追いかけようとするガタックの行く道を妨げるように立つ。

 

「ある人が言った、男がやってはいけない事は二つ。女の子を泣かせる事と、食べ物を粗末にする事だ」

 

「は?」

 

お前は、俺が止める。だから逃げろ。

 

彼女が、クロエがどうかイリヤと和解し家へと迎えられる事を願い、僕はガタックへと対峙する。

 

僕の戦闘経験はゼロ、出きるのは授業で習った柔道を少しと見様見真似のボクシングのみ。

 

先程のガタックは見る限り原作の加賀美新が変身したガタックに近い、近接戦闘に特化したガンガンと突撃してくる戦闘スタイルのはず。

 

なら僕は原作のカブトと同様に、相手の攻撃をひたすらに防ぎ、いなしカウンターを叩き込むしかない。

 

ガタックが無印から戦闘に参加しているとするなら、戦闘経験は間違いなくアイツの方が強い。

 

構ガタックが両手を握り胸の前に置いて構えるのに対して此方はただ立っているだけだ。

 

「はぁ!」

 

「ッ!」

 

此方へと描けながら突き出された拳に合わせて横から掌底をぶつけて避け、もう片方の手で即座に拳を相手の胸装甲へと突き出す。

 

マスクドフォームは防御に特化している。その分装甲は重く、マスクドアーマーが装着されている拳は重いはずだ。マスクドフォームと言う鎧を外したライダーフォームであるガタックへとダメージを与えられるはず。

 

すると殴られた胸部装甲を押さえながら少し後退するガタックは此方へと即座に近付き回し蹴りをしてくる。腕の甲の装甲部で受け止め、即座に前へと踏み込み軽いジャブを二度放つ。

 

すると上下左右に130度もの広範囲視野を持ち、2kmも離れた目標物も瞬時に識別するコンパウンドアイ、そして常人の4倍の聴覚をもたらすカブトレシーバーが近くへと向かってくる4つの存在が知らせる。

 

恐らく、考えられるのはクロエを追いかけて来たガタックを追い掛けてきたイリヤや美遊、遠坂凛やルヴィアであろう。

 

早めに、終わらせた方がいい。イリヤにダークカブトが僕であることは知られたらいけない。

 

ならば、そう思い僕はベルトに装填されているダークカブトゼクターの角。

 

左向きとなっているゼクターホーンを弾く。カチッと言う音と共に、ベルトから警報音のような音声が鳴り響き、段々と音程が早くなっていく。

 

それに合わせるように、身体中のアーマーが身体から浮き出て行く。それはまるで虫がサナギの状態から脱皮し成虫へと至ろうとする様。

 

「……キャストオフ」

 

そう呟き、ゼクターホーンを掴み先程とは逆の方向へと倒す。するとダークカブトゼクターのカバーが開いた。

 

【CAST OFF】

 

その音声と共に、身体中に着いていたマスクドアーマーが弾け飛び、勢い良くパージされたアーマーがガタックを吹き飛ばす。そして下がっていた顎部にあるカブトホーンが起立し、カブトムシのような1本の角に成る。

 

カブトとは違い肩や胸部の黒い装甲には赤い基盤のような物が浮かび上がっており、コンパクトアイは黄色。

 

【CHANGE BEATLE】

 

本当の姿、仮面ライダーダークカブト。ライダーフォーム。

 

「……クロックアップ」

 

【CLOCK UP】

 

僕は即座にベルト側面に着いているスラップスイッチを叩くように押す。すると、ダークカブトゼクターが生成したタキオン粒子が解放され、全身へ行き渡っていく。

 

すると僕を除いた周囲がまるで止まったかのように遅く、まるでスローモーションの様に動いていた。

 

クロックアップシステム、全身を駆け巡るタキオン粒子により、クロックアップすることで、時間流を自在に活動できるシステムだ。

 

ガタックもクロックアップすることが出きるが、今のガタックはキャストオフした時のマスクドアーマーに吹き飛ばされている状態。

 

言えば無防備、恐らくこの状態からスラップスイッチを押すことは難しいだろう。

 

僕はガタックの元へと歩きながら、ダークカブトゼクターの赤い脚部に付いているボタン、フルスロットルを順番に押していく。

 

【ONE TWO THREE】

 

ガタックの目の前まで移動した僕は、ベルトのゼクターホーンを一度元の方向へと倒しながら、ダークカブトゼクターのカバーを閉じる。

 

「……ライダーキック」

 

そう呟き、再び逆方向へとゼクターホーンを逆方向へと倒す。ベルトからタキオン粒子がカブトホーンへと向かい、チャージアップする事で波動を受け赤く輝き、右足へと向かう。

 

【RIDER KICK】

 

「はぁッ!」

 

ベルトからの音声が聞こえた瞬間、僕はタキオン粒子を纏った右足をハイキックの要領でガタックの体を蹴り抜く。

 

戦闘でダメージを与えられないし、鍛えていない僕のライダーキックは恐らく弱い。仮面ライダーカブトに出てくるライダーのスペックは基本的に変身者の力によって変化する。

 

だから

 

【ONE TWO THREE】

 

「ライダーキック」

 

【RIDER KICK】

 

少し先程の位置より移動したガタックへと再びタキオン粒子を纏った右足でガタックを蹴り付ける。

 

連続して蹴れば、少しは天道総司と同じ威力と同じになるはずだ。

 

正直な話、蹴った方の足が酷く鈍い痛みが走っている。でも、これで最後だ。これで、クロエは、逃れられる。こいつの動きを止められる。

 

【ONE TWO THREE】

 

例え悪だと見られても、世界と言う決まりを……少女の生存が確定されるなら僕は悪と見られても構わない。

 

「ライダーキック!」

 

【RIDER KICK】

 

そうして僕が三度目のライダーキックをガタックへと放ち、蹴った勢いでそのままガタックへと背を向ける。

 

【CLOCK OVER】

 

次の瞬間、先程までの静けさが嘘のような喧騒。

 

「ウワァァァァ!?」

 

そう叫びながら吹き飛んでいく仮面ライダーガタックは吹き飛んで行く。ガタックのベルトを中心に火花が散り、地面を転がりながら変身が解除される。変身者は、飛電隼人だった。飛電隼人は僕のを事を睨みながら、気絶した。やるべき事はした。

 

だが、どうする?この場から逃げるには流石にダークカブトのクロックアップをもう一度使うしか、だけどさっきライダーキックをした右足が歩く度に鈍く痛み、熱い。腫れているかもれない。

 

とてもだが、この場から走って逃げ出すのは不可能に近い。戦闘経験もなにもない人物が慣れない格闘をしたんだ。こうなるのは当たり前か。

 

どう逃げる?無理にでもクロックアップを行うしか……。

 

その時だった、後ろから何かが走ってくる音が聞こえ振り返るとそこには黒く、カブトムシのような造形のバイク。

 

ダークカブトエクステンダー、通称ダークエクステンダーが此方へと走ってきていた。何で、ダークカブトのバイクが?確か原作では存在しない、空想の存在であるバイクが何故ここに?

 

ダークカブトゼクターと同じように次元を越えてきたのか?

 

そう考えている内に、僕の目の前にダークエクステンダーが止まる。まるで乗れと言っているかのように。

 

確かカブトエクステンダーは無人自動走行が出きるはず。なら乗れば免許が無くても指示道理に走ってくれるから大丈夫そうだな。

 

そう思いながら、左足でダークエクステンダーが倒れないよう支えながら又借りハンドルを握る。

 

その時だった。

 

「隼人さん!?大丈夫、ルビー!治療魔術を」

 

『ルビーちゃんにお任せあれ!』

 

「サファイアも手伝って!」

 

『了解しました、美遊様。』

 

家族、である妹の声が聞こえた。見れば、倒れている飛電隼人の元へと駆け寄り魔術を使おうとして此方を見るイリヤの姿が見えた。更にイリヤを追いかけて二人の少女達が此方へと走ってくるのが見えた。

 

『おっと、これはこれは特撮の定番である追加戦士!では無さそうですねぇ』

 

「どちらかと言えば、敵?」

 

『そのように見えます。』

 

まぁ、仮面ライダーカブトだとそんな感じだったし仕方ないか。

 

「なんで、あんなことをしたんですか!?」

 

「イリヤ!危険だよ、あの姿の隼人さんを倒したって事は少なくとも私たちじゃ……」

 

そう言ってイリヤを止める美遊。彼女の物言いから恐らくは無印での戦闘でクロックアップしたガタックを見たことがあるのだろう。

 

ならあのように警戒するのは当たり前か。ごめん、せめて変声機でも付いてたらクロエに関することを助言してあげられるんだけど。

 

今の僕に出来ることは、何もない。

 

そう思いながらダークエクステンダーに指示を出し、その場から逃走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イリヤ達の前から逃走し、家の近くの路地裏に入る。誰もいないことを確認してダークカブトゼクターをベルトから外した。

 

するとダークカブトゼクターは機械のような鳴き声を発しながら飛んでいった。僕の腰に巻かれたままのライダーベルトを残して。

 

これは本当に現実なのか?僕が、ダークカブトに選ばれた?

 

そう思いながらベルトに触れる、手には金属特有の冷たさが感じられた。

 

取り敢えずダークエクステンダーには、借りているアパートの駐車場にて待機するよう指示を出しておいた。家には置くところが無いし、あったらあったでダークカブトの正体が僕だとしバレてしまう。

 

路地裏を出て家へと向かう。正直な話、先程から右足を引きずる形で歩いている。思った以上に僕の体は貧弱らしい。先ほどから足の痛みが消えない、ダークカブトに選ばれたからには少しでも鍛えないと。

 

そう思いながら歩いていると、よいやく家の前まで辿り付いた。あと少し、今日はギリギリ門限を破らなくて良さそうだ。

 

そう思いながら家の扉を開けて家の中に入る。

 

「ただいま」

 

「お帰りなさい、あなたが門限を破らずに帰ってくるとは、明日は槍が降りますね」

 

「あ、アハハ……僕だって気を付けてはいるんだよ?」

 

「気を付けているでは意味がありません」

 

「はい……」

 

そう言って玄関まで来ていたセラに怒られながら家の中に入る。早く湿布か何か探そう。

 

「そう言えば今日はまだイリヤさんが帰られていませんね。何か知りませんか?」

 

「ごめん、イリヤに関して何も。所でセラ、家に湿布とか無いかな?」

 

「一応、救急箱に入っていますが……どうかしましたか?」

 

どうしよう、流石に喧嘩したなんて言えないし。ぶつけたとしか言いようがない。

 

「ちょっと右足を怪我しちゃって。冷やすのに貰いたいと──」

 

「見せて下さい!!」

 

「ちょっ!?」

 

突如として先程までの呆れた様子だったセラが僕の右足のズボンの裾を掴んで上げる。すると赤く腫れている足が外に顕になった。

 

「こんなに腫れて……一体何があったのですか!?」

 

「いや、その…転んで足をぶつけちゃって」

 

「そこに座って下さい!直ぐに冷やすもの持ってきますから!」

 

その後、まず保冷剤をタオルで包んで冷やすよう言われた。取り敢えずベルトは服の中に隠しておいてよかったな。

 

その後、士郎が帰ってくるまで冷やし続けどうにか足の腫れは引いた。士郎にもリズにも心配かけちゃったな。

 

そう思いながら、部屋に戻りクローゼットの中にライダーベルトをしまう。もしイリヤ達が帰ってきてからだと、カレイドステッキにこのベルトの存在がばれてしまう。

 

クローゼットを閉めてパソコンで効率のよい鍛え方と格闘の動作を解説する動画を見る。取り敢えず鍛えるのも、格闘の練習をするのも離れたアパートの方が良さそうだな。

 

簡単なトレーニング機々を注文しておく。常にネットの音楽活動で利益は得られているから大丈夫だろう。送り先もアパートにしておいてと。

 

音楽活動用に広めで、防音の部屋を借りて置いて良かったな。明日は休日だし、荷物の受け取りついでにアパートの方で過ごそう。

 

そう思いながら、他の必要な物を注文したその時だった。

 

窓からイリヤがアイリスフィールさんと共に帰ってくるのが見えた。先程出会ったイリヤに似た褐色の少女を連れている。

 

良かった、二人は和解できたんだ。それに肩ももう大丈夫そうだな。原作通りに進んでいるみたいで良かった。問題はここからイリヤや他の人達に僕がダークカブトだと知られない様にしないとな。

 

取り敢えず、適当に出来た曲を投稿しておく。忘れない内に投稿しておいた方が後から慌てなくて済む。

 

あとは、足の事もあるしゆっくり休もう。

 

そう思いながら、僕はご飯と呼ばれる前に部屋を出る。すると丁度課題を終えたのか士郎も部屋を出てきた。

 

「おう渡、飯前に外に出てるなんて珍しいな。確かにそろそろ飯だけど」

 

「まぁね。窓からイリヤとアイリスフィールさんが帰って来たのが見えてね。もう一人女の子を連れてたから、どうしたんだろって思って」

 

「え、女の子?どういう事だ?まぁ、直接聞けば済むか。それより足、もう大丈夫なのか?」

 

「腫れは引けたし、様子見って感じかな。たぶん大丈夫だよ」

 

そう言って安心させるように笑い、二人で階段を降りる。

 

「二人とも、丁度良い所に。奥様がリビングに集まるよう言っておりました。リズは既に向かいました。私たちもいきましょう」

 

セラの報告に頷き、三人でリビングへと入っていくと予想通りにアイリスフィールさんがイリヤとクロエと共に立って待っていた。

 

「待ってたわ三人とも。早速紹介するわ」

 

そう言ってアイリスフィールさんはクロエへと手を向けて笑顔で言った。

 

「従妹のクロエちゃんよ」

 

すると、士郎が此方へと小声で話しかけてきた。

 

「なぁ渡、従妹がいるって聞いてたか?」

 

「僕も今聞いたばかりだよ………」

 

まぁ、原作で知っているけど。この世界では教えられてないからな。

 

すると士郎はクロエに視線を合わせる。

 

「取り敢えず、よろしくな。俺は士郎、こいつは渡だ」

 

「えっと、渡です。その、よろしくね?」

 

そう言って少しぎこちなさそうに笑う。こうすれば、ダークカブトの事は秘密にしていること位は察してくれるかな?

 

「よろしくね?お兄ちゃん達」

 

「さて、今日はクロエちゃんの歓迎会で沢山料理お願いね?セラ」

 

「はい、奥様」

 

「じゃあ俺も手伝うよ」

 

そう言ってセラと士郎の二人が台所に入っていくのを見送る。

 

「取り敢えず、僕は部屋に戻るよ。」

 

そう言って部屋を出ようとした時に、リズが肩に触れて止めてきた。

 

「渡、もう保冷剤はいい?」

 

そう言って保冷剤を包んでいるタオルを差し出してくるリズ。

 

「まだ少し足に違和感があるから、部屋に戻って冷やすよ。ありがとう」

 

そう言って保冷剤を包んでいるタオルを受け取る。正直、少しクロエとは今のところ一緒にいたら気まずいし、部屋に戻らせて貰おう。

 

「渡、どうかしたの?」

 

「転んで少し足をぶつけちゃっただけだから、大丈夫だよ」

 

そう言って部屋へと戻った。その日はクロエからの接触はなかった。明日はイリヤと共に出かけるらしいので、僕は隠れてアポートの方に向かおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1ヶ月、放課後には必ずアパートへ向かい筋肉トレーニングや格闘の練習。吊るしてあるサンドバックに対してひたすら蹴りやパンチを叩き込む日々を過ごしている。

 

ダークカブトに選ばれた以上、この世界に何かあるはずだ。

 

そう思いながら皆にばれないよう鍛え、プロテインバー等を食べる様にした。お陰か前よりは体に筋肉がついたような気がする。

 

ダークカブトでのライダーキックに耐えられるよう、サンドバックをひたすら蹴り込む。

 

格闘はカウンターのスタイルを練習しているが、インファイトでの手刀や蹴り、回し蹴りやハイキック等を繋げる方も練習している、あれから一度も変身していないため、効果が出ているのかは分からない。

 

考えてみれば、初めて変身したあの日からベルトを付けてダークカブトゼクターを呼んだことは一度もなかった。

 

一度試してみよう、そう思いながら久しぶりにライダーベルトを腰に巻いた。

 

1度深呼吸し、右手を天井へと掲げる。

 

すると、空中に波紋が広がり、波紋の中央からダークカブトゼクターが飛来して来た所を掴み取る。

 

「変身」

 

【HENSHIN】

 

その音声と共に、体をライダースーツとマスクドアーマーがおおって行き僕はダークカブトへと変身した。

 

軽くシャドーボクシングをしてみる、初めて変身した時よりは早く動けているような気がする。問題は、ゼクトクナイガンを使った戦闘だ。今までは格闘をメインに鍛えてきたけど、次は斧、短剣、銃の練習が必要かな。

 

そう思っていた、その時だった。

 

常人の4倍の聴覚をもたらすカブトレシーバーから可笑しな声が聞こえた。

 

その声は前世の自分が何度も見て、何度もみたことのある組織の戦闘員。

 

ショッカー戦闘員……だがあり得ない。

 

奴らがこの世界に存在する筈が……だけどこうしてこの世界に仮面ライダーが存在している以上否定は出来ない。

 

近くの窓を開けて外に出る、借りている部屋は地面に近い方の階層だった為に着地時にうまく衝撃を逃す事が出来たようだ。

 

近くに来るよう指示を出していたダークエクステンダーに飛び乗り声の聞こえてくる方向へとダークエクステンダーを走らせる。

 

すると段々と戦闘音が聞こえてきた。見れば沢山のショッカー戦闘員がイリヤ、美遊、クロエ。そしてガタック、飛電隼人と共に戦っているのが見えた。

 

「さっきからイーイーイーイーって、何なのよコイツ!?」

 

「分かんないけど、取り敢えず敵だよね?襲いかかってきたし!」

 

『なんか古い特撮みたいですねぇ』

 

「ルビーこんな時に煽るの止めて!?」

 

「サファイア、敵の残りは!?」

 

『残り10体以上の敵を確認しました。美遊様、どうか油断なさらないように』

 

「こいつら、人間にしては固すぎだろ。一体何なんだよコイツら!」

 

そんな会話をする奴らの近くまでバイクで向かう。そう言えば、こんな状況ならあれが使えそうだ。

 

そう思いながら僕は野球のグローブのような形状をしたアイテムを取り出す。

 

秘密組織『ZECT』が開発した携帯武器、その名も『ゼクトマイザー』。四つの射出口が扇状に展開し高速移動後に標的を追い詰めて爆発する破片手榴弾、マイザーボマーを射出する武器。

 

クロックアップにも対応でき、マイザーボマーは変身したライダーのゼクターの形状を取る。だから僕の場合は黒いカブト虫になるのだろう。

 

僕はゼクターマイザーを握り、タッププレートを押すとゼクトマイザーの射出口が扇状に展開し黒いカブトムシ型のマイザーボマーが射出されていく。

 

すると指示通りにイリヤ達を襲っているショッカー戦闘員達に突撃し、イリヤ達から離す。

 

「な、なにコレ!?カブトムシ!?」

 

「これがカブトムシ、強いんだね。」

 

『いやいや!どう見たって虫じゃありませんよ!?』

 

『美遊様、カブトムシは通常このように強くはありません。それに、一般的なサイズから見ても小さいようです』

 

取り敢えず、イリヤ達の近くでバイクを下りる。流石にバイクで近付いたからか、イリヤ達が僕の方を見る。

 

「アイツはあの時の!?」

 

ガタックの声が聞こえてきたが無視してベルト側面に付けていたゼクトクナイガンをホルスターから抜いてショッカー戦闘員に狙いを定め、歩きながらに引き金を引く。

 

FPSのゲームをよくしていたお陰か、次々とゼクトクナイガンから放たれるイオン光弾がショッカー戦闘員を撃ち抜いていく。

 

そしてある程度近付き、ナイフを構え此方へと向かってくるショッカー戦闘員にゼクトクナイガンの持ち手を変えてアックスモードにし広刃の刃先を超高熱化させて触れた敵を切り裂くアバランチブレイクでナイフの刃を裂き、そのままショッカーを斬りつけ吹き飛ばす。

 

そして背後からショッカー戦闘員がナイフを振り下ろしてくるが、腕のマスクドアーマーで受け止めそのままもう片方の手に持ったゼクトクナイガンアックスモードをしたから上へと振り上げるようにしてショッカー戦闘員を吹き飛ばした。

 

「強い……」

 

イリヤか、またはガタックなのか、誰かが呟いた言葉をカブトレシーバーが拾った。

 

違う、僕は強いんじゃない。

 

ダークカブトに相応しいよう努力して、強くなろうとして、何かあるんじゃと必死備えて戦って頭に浮かぶ戦法をそのまま行ってるだけなんだ。

 

そして近くのショッカー戦闘員へと近づき持っている銃を掴み、身動きを封じゼクトクナイガンの銃口を腹へと当ててゼロ距離で引き金を引く。するとショッカー戦闘員は吹き飛び、やはりか吹き飛んでいったショッカー戦闘員達は爆発していった。

 

取り敢えずカブトレシーバーにもコンパウンドアイにもショッカーの反応が無い事を確認する。

 

それにしても、どうしてショッカーがこの世界に?いや、今はいい。後で考えないとな、今はイリヤ達の前から逃げないと。そう思い踵を返してダークエクステンダーの元へと向かいバイクへと跨がる。

 

取り敢えず振り返り、此方に攻撃してこないか確認してからエクステンダーに乗りイリヤ達の前から逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰った僕は、ノートに今の状況を整理する事にした。

 

現段階で分かっている事は、この世界の時間軸はまだイリヤ達が美遊のいた世界へと転移していない事から海での誕生日会のイベント前だと言うこと。

 

次にガタックに変身する飛電隼人と言うイレギュラーな存在がいること。

 

ちなみに彼は恐らく転生者では無くこの世界の人物が何らかの形でガタックゼクターに選ばれたと思われる。

 

そして最後に、この世界にショッカーが存在していた事だ。

 

どう考えても最後の内容はあり得ない物だ。

 

一体この世界にこの世界に何が起こっているのだろうか?

 

並行世界から来たのか、はたまたこの世界は仮面ライダーとFateのクロスオーバーした世界線なのか。

 

……もっと戦闘訓練を行った方が良いかもしれない。今回は戦闘員だけでよかったが、もしかしたら怪人が出てくる可能性だってある。

 

斧や短剣、銃の扱いに少しでも慣れないとな。

 

取り敢えずショッカーは、何かしらの力でこの世界を侵略しに来ているのか。その目的は何なのか?

 

元からこの世界に存在していたのか、このどちらなのかを調べていかなければ。

 

そう思いながら、ノートをしまい何時も通りに振る舞えるようゲームを起動した。これで万が一にもイリヤ達が入ってきたとしても、ノートへ目が向く事は無いだろう。

 

そう思いながら僕は部屋の窓から見えた夕陽を眺めた。

 

 

 

 





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最後にこの話の妄想のオープニングを考えてみました。良ければ聴きながら呼んでみて下さい。


主題歌『Burst The Gravity』

『果てしない空を往く、見えない翼が導く』

青空の中、ダークカブトにゼクターが太陽へと飛び見えなくなり、空の下で沢山の私立穂群原学園へと向かう生徒が投稿するシーンが流れる。

『遥か彼方、僕らを待つ。まだ見ぬ未来へと』

自転車を押しイリヤと美遊、飛電隼人と歩む士郎達より後ろ。イヤホンを身に付け渡は音楽を聴きながら一人で歩き、ふと眩しそうに空を見上げる。

『Want some faster life? (Oh yeah yeah!)』

夜中の空を背景に遠坂凛やルヴィアやイリヤ等の魔術師サイドの人達がそれぞれ構えた姿で浮かび上がる。

『Giga faster speed? (Oh yeah yeah!)』
衛宮家で料理する士郎やサラ、椅子に座って談笑するリズやアイリ、切嗣。

『Tera faster stage? (Oh yeah yeah!)』

飛んできたガタックゼクターを掴み取る飛電隼人が浮かび上がる。

青空が映り、その中央にタイトルが浮かび上がる。

Fate/Kaleid linerプリズマ☆イリヤ
~影を継げる者~

『Now you tell me where you wanna go (Accel world!)』

画面が変わり、日常の風景が流れる。教室で静かにノートを描いている渡。教室の外の廊下では、士郎は飛電隼人と共に話ながら歩いていく。

『Always醒めきってた、速すぎるDay and night.』

渡が放課後に教室の掃除しながら窓の外を眺めるシーンへと変わる。何処か苦しそうな、気まずそうな様子で沈んでいく夕日を眺める。

『透明な闇に囲まれ、誰も似た網の中でIt was the day I found Found you.』

そんな帰り道、校門で待っていたクロエと出会い、渡は驚き戸惑いながらもクロエの差し出した手を取る。

『あの日の風 揺れ動いたPassion And all of my past.全てキミに会うためのProcessだったね 』

手に握り笑ったクロエに、思わず笑顔を浮かべる渡。

『Around you go slow.Slowly open up my eyes within the blackness. 』

そんな中で渡の前に表れるショッカーの怪人達。

『The battle field, Check the squeal of wheel 』

クロエを守ろうと渡は天へと手を伸ばす。

『彼方から聞こえる予感に鼓動奮わせて居たいから The beats overwrite my whole life.』

飛来してきたダークカブトゼクターを持つ渡はベルトへと装填しダークカブトへと変身する。

キャストオフし、ライダーフォームとなった渡はゼクトクナイガンを手にし怪人へと向かっていく。

『It's unlimited. It's unlimited. If I can believe myself again.』

クロックアップし敵へとゼクトクナイガンで斬りつけていくダークカブト。

『光の中、目覚めていく。信じてくれたキミとなら』

様々な敵の怪人と戦い、傷付きながらも戦う渡。

『Never let it go, Never lose my way.』

最後の敵にライダーキックしクロックアップが終わり、敵が爆散していく。

『ここで生まれ変わる景色 』

戦い終え、変身解除した渡は後ろを振り返る。渡へと駆けてくるクロエ。

『傷さえいま誇りになる 』

心配するクロエに安心させるように笑う渡。クロエは安堵したのか笑い合い、二人で夕陽を眺める。

『だからキミと Burst The Gravity 』



と、こんな感じですね。まだ、この作品のIfは募集していますので希望がある方は活動報告にどうぞ。



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~プロローグ~

 

 

???side

 

朝、体を揺すられ僕は目を覚ました

 

「あ、起きた」

 

僕を起こしたのは、銀髪で少しボーっとした感じの家の家政婦の一人、リズだった

 

大きなあくびをしながら体を起こす

 

「おはよう、リズ」

 

体が重い、昨日日を跨いで 趣味に没頭していたからか

 

大丈夫だろうと調子に乗って連続で続けたのが駄目だったか

 

「おはよワタル、早く降りないとまたセラに怒られるよ」

 

「はいよ…………」

 

そう言ってリズが部屋の外に出たので僕もそそくさと穂群原学園の制服を着て階段を降りる

 

「おはようございます、ワタルさん?」

 

すると凄い笑みを浮かべたセラが両手を組んで待っていた

 

「お、おはようございます?あ、あの……僕何かしちゃいましたか?」

 

セラの凄い笑顔に思わず声が上ずりながらも、どうにかそう答える

 

「その目のクマ、また夜遅くまで起きていましたね」

 

「は、はい」

 

「何度も言ってますが、夜更かしは止めてください!イリヤ様に悪影響がでます!」

 

「いや、でも騒がしくしてないし………」

 

「そもそも!電気も付けず真っ暗な部屋で一体何をしてるんですか?」

 

「う、それは……その………」

 

そう言って困っていると台所から一応戸籍上は兄となっている琥珀色の瞳に赤髪の少年が顔をだす

 

「何やってんだよ二人とも、飯が冷めるじゃないか」

 

「シロウさん……ですが!」

 

「それに、もう食べないと学校に遅れるぞワタル」

 

「今回は仕方ないですけど、許してはいませんからね」

 

「う、、、はい」

 

そう言ってご飯の並べなれたテーブルに向かう

 

「あ、ワタルお兄ちゃん!おはよ~!」

 

「おはよ」

 

朝の挨拶をしてきた妹、銀髪に琥珀色の瞳の少女イリヤちゃんにそう返しイリヤの向い側に座ると、士郎がイリヤの隣に座る

 

「「「いただきます」」」

 

二人に続いて食べ始める

 

お、今日は士郎の作った奴か

 

士郎のも美味しいんだけど、俺はセラさんの味付け方が好きなんだよね

 

そんな感じで、ささっと食べ終わり

 

僕はご馳走さまと言って鞄を取りに自分の部屋に戻る

 

机の上で元気に跳ねている小さな恐竜を模したガジェット、ファングメモリに手を差し出す

 

「今日もよろしくな」

 

するとファングメモリが手に乗って静かになるので少し形状を変えてUSBメモリーにして鞄に入れ、士郎やイリヤより先に家を出る

 

ポケットに入れておいたスマホにイヤホンを繋いで自身が製作したことになっている曲を聞きながら登校する

 

これが僕、衛宮 渡(エミヤ ワタル)の日常だ。

 

僕は皆が言うところの転生者って奴で、神様のミスで死んだ為に転生した

 

別に、前世に未練は無いしあんまり思うことはなかった

 

皆も気付いていると思うけど、僕の転生した世界はあの有名な月型世界の一つ

 

【Fate/Kaleid linerプリズマ☆イリヤ】の世界だ

 

そして、僕が何故衛宮家にいるのかと言うと数年前に僕の暮らしていた孤児院に士郎が入ってきたことが始まりだ

 

その頃、僕は孤児院で与えられていた部屋でずっと前世に聞いた曲の歌詞をノートにずっと書いていた

 

この世界にあの曲が無いなら作れば良いと思って孤児院の院長に貰った分厚いノートに思い出す限り書き続けていた

 

幼いのに漢字や英語などを使った文を良く書いていた為に周りからは変な奴だと思われていた

 

でも院長だけは、普通に受けとめてくれたけど。

 

そんな生活が暫く続いたある日、院長が僕と同じくらいの赤髪で琥珀色の目の少年、士郎を連れてきた

 

僕と同じ年だから仲良くするよう言われ、僕と士郎は一緒に過ごすようになった

 

何時ものように一人でノートに歌詞を書いていると、士郎に心配され強引にも外に連れ出されたりしていく内に仲良くなった

 

そしてある日、僕と士郎が部屋で過ごしていると院長と銀髪の優しそうな女性とずっと無表情の男の人が入ってきた

 

なんと士郎が引き取られる事になったのだ

 

そしてその時だ、僕がこの世界がFateのプリヤの世界だと知ったのは

 

だって引き取りに来た夫婦がどう見てもアイリスフィールさんと切嗣さん

 

そして士郎を改めてみると、衛宮士郎の面影のある顔だった

 

取り敢えず、切嗣と士郎の会話が終わったらしいので僕は士郎に祝いの言葉をかけた

 

「おめでとう」

 

そう言うと士郎は少し考え込むと、アイリスフィールさんと切嗣さんに言った

 

「なら、こいつも……ワタルも引き取ってくれよ」

 

その言葉に僕と切嗣さん、アイリスフィールさんは驚いたように目を開いた

 

「気にしなくて良いよ、士郎は幸せになるべきだ。直ぐに僕もきっと里親が見つかるよ」

 

そう言ったら、アイリスフィールさんが近付いて頭を撫でながら聞いてきた

 

「貴方、名前は?」

 

「さっき、士郎が言ってたと思いますけど………」

 

「貴方から聞きたいの」

 

「僕はワタル、ただのワタルです」

 

そう言うとアイリスフィールさんは優しそうに微笑むと、切嗣さんの方を見て言った

 

「キリツグ、この子も引き取りましょう!それに、家族は賑やかな方が良いわ!」

 

と言った感じで、僕の里親も決まってしまい衛宮家に拾われることとなった

 

その時の士郎はと言うと凄く嬉しそうな顔をしてたっけ?

 

そんなんで僕は引き取られて暮らしてたのだけど、あの家政婦のセラさんは少し苦手だ

 

夜遅くまで起きていたり、趣味でパソコンを使っていたりしていると、良く怒られる

 

電気代がかかるやらイリヤに悪影響が……とか

 

前に僕の転生特典の一つであるゲームのマスターカセットのNEWガンダムブレイカーのマリカルートの告白シーンを見ている所を見られ、まるでゴミを見るかのような目で見られたのは記憶に新しいな………

 

もっと思い出すなら、今も首に付けている千年パズル擬きのネックレス

 

海外で仕事をしている切嗣さんとアイリスフィールさん

 

まぁ父さんと母さんの仕事のお土産として貰ったのだけど、どう見ても遊戯王の千年パズルにそっくりで

 

それを貰った僕は『我がデッキの切り札にして!』とか『いくよ、もう一人のボク!』『滅びのバーストストリーム』と言っていたのを見られたりした

 

うん、結構引かれたっけ?

 

暫くはゴミを見るような目で見られ続けたよ

 

そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にか俺の隣にランドセルを背負ったイリヤと自転車を押す士郎がいた

 

「追い付くの早くね?」

 

僕は思わずイヤホンを耳から外してそう言った

 

「いやワタルが歩くの少し遅いんじゃないか」

 

「ワタルお兄ちゃん凄くゆっくり歩いてたもんね~」

 

「そ、そんなに!?」

 

「あぁ、そう言えば今日は数学の小テストだったよな?ワタルは大丈夫なのか?」

 

あほ、高校で習う問題なんぞ前世でとっくに習い終わったわ

 

「そういえばあったなぁ………寝よ」

 

「いや起きてようよ!?」

 

「イリヤもこう言ってるし、頑張れよワタル」

 

「へーい」

 

そう返事をして、俺はまた耳にイヤホンを付ける

 

まだ学校に遠坂凛とルヴィア・エーデフェルトが来てないので、まだ平和だな

 

そんな事を考えながら、俺は穂群原学園へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方6時に僕は家へと歩いていた

 

僕は別に部活動には入っていない

 

ちょっと趣味の延長みたいな物で新都に行っていたので遅くなってしまったのだ

 

「た、ただいま」

 

そう言って戸を開けて中に入ると、そこには手を組んで笑顔を浮かべたセラさんが立っていた

 

「ワタルさん?こんな時間まで何処に行ってたんですか?」

 

「え、えぇーと少し寄り道を……」

 

「寄り道?こんな時間までですか?」

 

「は、はい」

 

「そんなわけ無いでしょう!そもそも帰宅部の貴方が!どんな寄り道をすれば、部活動で帰ってきた士郎さんより遅くに帰ってくるんですか!」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「謝れば良いと言う問題ではありません!」

 

「う、ごめんなさい」

 

その後、暫くはお説教が続いた

 

解放され、皆とご飯を食べた僕は自室に戻りファングを解放してから机のノートパソコンを開いた

 

僕の趣味、それはPCのアプリを使い前世の特撮曲やアニソンを再現しネットに投稿すること

 

ほとんどはアプリのボイスロイドに歌わせているが、たまに自分で歌ったのをレコーディングして作るときもある

 

そんな事を続けていたら、いつの間にか有名になり

 

ネット上の僕、『00(ダブルゼロ)』の名前を知らない人はいない位までになった

 

投稿する時間は特に決めてはいないけど、毎回沢山の人が直ぐに聞いてくれてコメントしてくれる

 

家でこの事を知っているのは母さんとリズだけだ。00の曲をCDにして販売したり

 

歌ったり、アイドルグループの曲を作曲したりする案件をこなしたりしている内に結構稼げるようになった

 

全部貯めていて、たまに自分のパソコンを買うか新しい機材を買ったりしている

 

家にいれてないの?

 

その事は母さん、アイリさんに相談したら

 

『さすがに子供から受けとるのは流石に…え!?こんなに?一月で?………年収の4割は貰う形でも大丈夫かしら?』

 

と、こんな感じで年末に渡している

 

別に4割じゃなくて6割や7割でもいいのに。

 

そして僕は昨日の夜に仕上げた『千本桜』『コネクト』の二曲を投稿し、パソコンの音楽ファイルを開き新たな曲の歌詞をパソコンへと入力していく

 

次の曲は僕一人で分けて歌うか、もう一人に頼んで作るか考えながら、僕は窓から星空を眺める

 

本来『Fate/Kaleid linerプリズマ☆イリヤ』と言うアニメの世界は普通の家に住む少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンがマジカルステッキ、カレイドルビーに契約させられ、魔術師の世界へと巻き込まながらも同じ魔法少女として頑張って行く物語

 

そう、本来ならこの世界に衛宮 渡と言う人間は存在しない

 

本来なら僕がこの家で生活していることは可笑しい

 

でも、家出や一人暮らしをすると相談するのもここまで育ててくれたアイリさんや切嗣さんに申し訳ない

 

それに、なんだかんだ僕はこの生活が好きになってきてしまっている

 

だから、僕はこの生活を続けてしまっている

 

恐らくだが、僕がここにいることでストーリーに変化が出ることは無いだろう

 

でも考えてしまう

 

僕がいるせいでストーリーに大きな変化を与えてしまうのではないか?

 

本来なら救われるキャラが死に、生存するはずの存在が死んでしまうのではないか

 

「ッ!?」

 

ふと腕がつつかれ、見るとファングが僕の手を優しく噛んでいた

 

「ファング、励ましてくれてるの?」

 

そう言うとまるで同意するかのように頷いて此方を見つめるファングメモリ

 

「…………ありがとう」

 

そう言っファングの頭を撫でて作曲に没頭した

 

明日の朝にまたセラに怒られることを頭に浮かべながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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~FのBEGINS DAY/それはだれのために?~

 

渡side

 

 

今日もまた、僕は1人部屋でパソコンを叩く

 

今日は祝日その分、沢山の時間を作曲に当てることが出来る曲を作れる

 

作る曲は何となく前世に流行っていたとある曲を思い出した

 

そうだ、思い出した

 

今日は新都で新しいヘッドフォンが出るんだっけ?

 

そろそろ新しいヘッドフォンに変える時期かな?

 

それにボクの名前で出るCDも取り置きして貰ってたっけ?

 

今日は土曜、明日もあるが今日の内に受け取りに言った方が良いよね?

 

そう思い、ボクは今までの編集したデータをパソコンに保存して机から立ち上がる

 

ずっとパソコンをしていたからか、体が固まっていたので伸びをしてバックに財布や印鑑、生徒手帳、携帯、ファングメモリを入れ、服を着替える

 

でもその前に部屋の鍵を閉める

 

以前に僕の着替え中に入ってきたイリヤが叫んじゃって、後から駆けつけたセラに怒られたんだよなぁ

 

『イリヤさんに裸を見せるなんて、何を考えてるんですか!?』って

 

でも、それはノックしなかったイリヤが悪いんじゃ?と思いながら説教を聞いていたのを覚えている

 

アハハ、はぁ………

 

本当にこの世界の神様は僕の事を凄く嫌ってる

 

じゃなきゃこんなに理不尽に怒られることが多くない筈だ

 

着替え終えたので鍵を開けてバックを背負って部屋を出る

 

「あれ?ワタル、どこ行くんだ?」

 

部屋を出るとたまたま士郎も出てきたのか、話しかけてくる

 

「少し新都の方で用事」

 

「そうか、気付けて行ってこいよ!」

 

「ありがとう、行ってくるよ」

 

士郎にお礼を言って階段を下がり、リビングに入るセラさんは洗い物をしており、リズはテレビをみていた

 

「セラさん、リズ、少し出掛けてくるよ。夕飯までには戻るから」

 

「また新都ですか?最近は多いですね?」

 

セラさんからの視線が苦しい

 

「アハハ、買わないといけない物があって………」

 

「ん、言ってら~」

 

そう言われたので靴を履き外に出る

 

早速イヤホンをスマホに着けて音楽を聴きながら駅へと歩く

 

聞くのは前世では日本のアニメと曲では一番有名な曲で、その歌とダンスは秋葉原で沢山の人に踊られていた曲

 

自然足取りが軽くなり、いつもの道のりが楽しく感じる

 

まだあの2人が来ていないので原作は始まっていない事は確かだ

 

まぁ、いたら絶対に気付く筈だ

 

あの2人の喧嘩は原作では凄く煩そうだったし

 

そう考えながら駅で切符を買い、電車に乗る

 

空いていた席に座りスマホを開く

 

スマホはパソコンと動画サイトを共有しているため、こちらで来ていたコメントを1つ1つに目を通す

 

『前まで生きるのが辛かったんですけど00さんの曲のお陰で、少しだけ生きる気力な沸きました』

 

『00さんの曲に元気を貰いました』

 

『今度MMDのバージョンも見てみたいです!!』

 

『今度はいつ00さん本人が歌うんですか?』

 

『この曲のテーマのテーマってなんですか?』

 

そんなコメントを流し見ていくと、DMに一件の通知があった

 

なんだろう、まさか動画を投稿するアカウントが危険とかじゃないよな?

 

少しだけ怖いが、メールの送り主の名前を表示する

 

すると、何処か見たことのあるアニメ会社からだった

 

このアニメ会計って確か、イリヤが好きな『マジカル☆ブシドームサシ』を制作してる所だ

 

えっと

 

◤───────────────────◥

 

 初めまして、突然のメールお許しください。

今回、00様に楽曲制作の依頼をお願いしたく

 このメールを送らさせて頂きました。

 

◣───────────────────◢

 

楽曲制作?

 

なんかのアニメのオープニングか?

 

いや、でも何で僕を?

 

僕以外にも沢山の有名なアーティストさんがいるんじゃないのかな?

 

◤───────────────────◥

 

 本社のアニメーション作品の1つである

《マジカル☆ブシドームサシ》の劇場版を

制作することが決まり、この作品の主題歌を

有名なネットアーティストである00様に歌って

頂きたく、今回の依頼を送らせて頂きました

もし、よろしいのであれば下の電話番号にご連絡頂けると助かります。

 

アニメーション制作会社

マジカル☆ブシドームサシ制作部

武藤 十代

TEL:XXX-XXX-XXX

 

               Ω月ф日

◣───────────────────◢

 

魔法少女か、元気系なら『おじゃ魔女カーニバル』『ハレ晴レユカイ』、感動系で行くなら『コネクト』『ワンダーステラ』『ETERNAL BLAZE(エターナルブレイズ)』とか

 

運命を自らの手で打壊して行く話なら『Silent Trigger(サイレントトリガー)』や『禁断のレジスタンス』が頭の中に浮かびあがる

 

取り敢えず、これはまた後で考えよう

 

そのときだった、画面の上にニュース記事が広告で表示された

 

『新都にて女性と思われる人物の遺体が発見された』

 

……………え?

 

そのニュース記事を検索して更に調べる

 

『女性には腕や首に何かに噛まれたような後があったらしく、それ以外の事件に関する情報は出ていない』

 

な、なんか物騒だな……急に恐くなっちゃったな

 

早くヘッドフォンとCD買って帰ろう

 

そう思いながら僕は電車の揺れに身を任せた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあと無事にCDとヘッドフォンを購入した

 

いやぁ、不審者とかいなくてよかった

 

あんなニュース見ちゃったら、やっぱり怖くなっちゃうんだよね

 

そう思いながら家族へのお土産としてクッキーやらのお菓子類を沢山購入する

 

リズとイリヤはお菓子とか好きだし、たぶんセラさんも好きだと思うから

 

士郎は、まぁ食べてくれるよね

 

その時だ、ふと少し遠くに廃工場のような物が見えた

 

なんだろう、凄く特撮とかの撮影で使われそうな廃工場だな

 

買ったお土産をバックに入れて、僕その工場吸い寄せられるかのように近付いていく

 

なんだ?

 

頭の中の何かが叫んでる

 

早く行かないと後悔する、早く行けと

 

少しだけ薄暗くなる裏路地を通り抜け、廃工場に入った

 

すごい、本当に特撮のセットとかで使われそうな場所だ

 

所々に残るダンボールやドラム缶、何かの機械に割れた窓

 

その時だ

 

「ねぇ、そこの君」

 

「っ!?」

 

思わず体がビクリとなり、急いで振り向くと

 

そこには髪をポニーテールに纏め、制服をきた僕と同じくらいの歳の女の子とイリヤより小さなセミロングぐらいまで髪を伸ばした女の子がいた

 

「えっ、えっと僕はたまたまここに来ただけで………」

 

「あなたも?実は私もたまたま来たの。なんか、ここが気になっちゃって」

 

「ここ、もしかしてパワースポットか何かなんですかね?」

 

なんか気になって来た女の子達と、頭の中の何かが言っていたこの場所へ行かないと後悔すると言う思い

 

何か関係があるのかな?

 

「いやぁ~流石に無いと思うよ?もしそうだったらこの工場潰れてないと思うし」

 

「た、確かに………」

 

というか、この小さいこさっきから僕のこと見て一向に話す気配が無いんだけど

 

「アハハ、ごめんね。この子人見知りが激しくてさ、滅多に喋らないんだ」

 

そ、そうなんだ。でも少し見られ続けるのは少し気まずい

 

「そう言えばさ、君はこの辺じゃ見ないけど。もしかして都外の学校なの?」

 

「は、はい。一応、冬木から来たんですけど」

 

その時だった、頭の中の何かが警戒を鳴らす

 

僕はとっさに叫んだ

 

「伏せて!!」

 

「キャッ!?」

 

「っ!?」

 

そう言って2人の頭を押さえてしゃがませ自分もしゃがむ

 

すると、僕らの頭上を何かが通り過ぎる

 

「■■■■■……………」

 

通り過ぎていった方をみると、腕の爪が禍々しい程に延び、口からは牙のような物が見える何かがいた

 

『新都にて女性と思われる人物の遺体が発見された』

 

その何かが口から涎を垂らしてこちらを振り返る

 

『女性には腕や首に何かに噛まれたような後があったらしく、それ以外の事件に関する情報は──』

 

犯人は………………こいつだ

 

本能が叫ぶ

 

あれは駄目だ

 

僕らはあっという間に殺される

 

逃げなきゃ駄目だ

 

逃げなきゃ駄目だ

 

「───げろ」

 

口からうまく声がでない

 

声が、体が震える

 

でも、駄目だ

 

今、ここから動いて逃げないと

 

僕も………2人も

 

─────────死ぬ──────────

 

「逃げろぉおおおおおお!!!」

 

すると2人が顔を恐怖に染めて逃げ出す、僕もそれに続いて逃げ出す

 

ふと後ろを見る

 

「■■■■■ッ!!!」

 

「ッ!?」

 

先程の何かが凄い勢いで此方へと走り、近付いてきていた

 

僕はとっさに近くにあったダンボール箱を投げつける

 

これで少しでも時間稼ぎになることを信じて

 

でも……そんな思いは簡単に打ち砕かれた

 

何かが振るった腕の爪が意図も容易くダンボール箱を切り裂いた

 

「………え」

 

直ぐに走り出すと、女の子達が近くの小さな部屋だったらしき場所から此方に手を振っていた

 

急いでそちらに走り、中に入る

 

女の子が扉を閉め、人差し指を口許で立てる

 

僕は両手で口を覆ってどうにか静かに呼吸する

 

どうすればいい!?

 

このまま隠れても、ボクもこの子達もきっと殺される

 

そもそも何なんだアイツは、原作じゃあんなの見たことがない!?

 

シャドーサーヴァントじゃない、あんな存在

 

原作に存在しな───

 

その時だ、僕の頭に1つの考えが過った

 

『僕と言うイレギュラーが存在することでこの世界に()()()()()を与えてしまったのではないか?』

 

それじゃあ、僕のせいでこの2人は巻き込まれて

 

ニュースの女の人が殺された…………

 

せめて、せめて2人だけは逃がす

 

それで僕が死ねば、この世界は元通りになる

 

ふと頭の中に今までの記憶が浮かんでは消えていく

 

やだ、まだ………まだ僕は士郎やイリヤ、父さんや母さん、セラさんにリズと

 

………………みんなと、生きたいッ!

 

その時だ、僕のリュックが動く

 

それに2人はビクリと驚くので、僕はリュックを下ろし動いた場所を開ける

 

そこには何故か起動しているファングメモリの姿があった

 

ファングメモリが一人でリュックから飛び出し延びをするかのような動作を行う

 

「っ!?!?」

 

「!」

 

突然な事に姉の方の子が驚き、小さな女の子は目を輝かせる

 

ファングが僕の方を見つめ、僕の手に乗りライブモードからメモリ状態に自分から変化する

 

どう言うこと?

 

そう思った、その時だ

 

突如として僕の腰に見覚えのある赤と銀のデザインのベルトが巻かれる

 

ロストドライバー…………

 

仮面ライダーWが一人で変身するときに使う変身するベルト

 

なんで、転生特典にそんなの含まれてるはず無いのに

 

でも、これがあるってことはまさか、変身しろって事なのか?

 

仮面ライダーに、ファングで……………

 

突然の事に混乱する一方で小さい子は目を輝かせて僕の方を見つめ、高校生の子は僕を見て少し困惑した表情をしている

 

この2人を、守るには

 

アイツを止めるにはそれしかない

 

でも、もし牙の記憶に呑まれたら

 

そんな事を考えてしまう、でも…………

 

僕はみんなの元に帰らないと、2人を守らないと

 

「2人とも、僕のリュックをお願い」

 

そう言って僕は部屋の扉を開いてそとに出る

 

すると先程のアイツが部屋を荒らし回っており沢山の機械が転がりダンボールが潰れていた

 

「■■■■■■■……………」

 

絶対に2人を死なせない

 

僕も死なない、アイツを倒して

 

みんなの家に帰るんだ!!

 

「力を貸して…………ファング」

 

そう言って僕は震える手でファングメモリのボタンを押す

 

【FANG!】

 

ロストドライバーのスロットにファングメモリを装填する

 

スロットにセットされた事により待機音がベルトから流れ始める

 

「……変身」

 

そう言ってスロットを倒してファングメモリを展開する

 

するとベルトに恐竜が齧りついたような見た目となり

 

ファングメモリから咆哮に似た変身音声が鳴り響く

 

僕の回りを風が包み込み、全身が白く鋭利なデザインに赤い複眼の姿へ

 

仮面ライダーへと姿を変える

 

真っ白な戦士は両手を外側に向け、まるでケモノが遠吠えをするように少し背をそらした

 

「ウァ……ァァァァァアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、ここに『仮面ライダーW』

 

『Fate/Kaleid linerプリズマ☆イリヤ』

 

そのどちらの原作にも存在しない

 

白亜の戦士が誕生の咆哮をあげた

 

どちらにも存在しない事をあらわす

 

真っ白な体、鋭い牙

 

イレギュラーな存在(一人の戦士)の名は

 

仮面ライダー ファング

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

突然新たな咆哮が空気をビリビリと揺らす

 

さっきから、一体何が起こってるのよ……

 

制服を来た少女は今起こっていることに混乱し頭を抱えて座り込んでいた

 

妹と共に出掛けて、そして都外の男の子と出会った

 

そして意味の分からない化け物に襲われ、男の子と三人で逃げて

 

そして先程、男の子が外に出ていった

 

自分のリュックを頼むと、渡されて

 

妹の□□□は………あれ?

 

先程まで隣にいた妹の姿が無い

 

慌てて周囲を見回すと□□□がドアの入り口を開けて、外を覗いていた

 

先程から妹の様子が可笑しかった

 

あの男の子のリュックから変な物を飛び出してきてから、ずっと妹は普段からは段違いなほど興奮していた

 

「何してるの□□□、危ないから早くこっちに来て」

 

そう言うが□□□は外を眺めたまま首を振り、外を眺め続ける

 

□□□が眺め続けている何かが気になり、そっと□□□の後ろから部屋の外を見る

 

そこには、さっき私を襲ってきていたアイツと何処から表れたのか真っ白でトゲトゲとした奴がアイツと戦っていた

 

その風景を見てふと□□□が毎週日曜に見ている特撮物を思い出した

 

あれは確か、町に現れる怪人を倒す感じの話だったはず

 

確か、名前は………『M・HERO(マスクドヒーロー)ファング』

 

その戦士と目の前にいたアイツはそっくりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡side

 

 

「やぁ!!」

 

そう言ってアイツが振り下ろす爪を右腕の『アームドセイバー』通称アームファングを横凪にしてぶつけて壊す

 

はじめての戦闘だが、このライダーのスーツのお掛けが少しは戦えている気がする

 

アイツが何なのか分からないが指の爪で切付けるたびに鮮血が舞う

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

普段から鍛えてる士郎と違って、僕は運動をあまりしない

 

そのせいか行きが切れてきているが、それは目の前のこいつも同じはずだ

 

「■■■■………」

 

決めるなら、今

 

僕はベルトにセットされているファングメモリの角を三回倒す

 

【FANG MAXIMUM DRIVE!】

 

その音声と共に右足にアームファング、マキシマムセイバーが表れる

 

僕は少しだけ助走をつけて飛び上がり右足のマキシマムセイバーをアイツに回し蹴りのような感じで蹴りつける

 

するとアイツにファングのFのマークが浮かび上がり、サーヴァントが消えるように粒子になって消えていった

 

僕は膝ま着いて天井を仰ぐ

 

頭にある考え、それは

 

先程の人であった何かとは何なのか?

 

また、例え人から外れた化け物であっても

 

自分がこの手で人を殺したのだと言う事

 

ふと、自分の右手を見る

 

真っ白な腕が血で赤く染まっていた

 

ふと後ろから視線を感じ振り返ると、さっきの女の子達が僕を見ていた

 

2人を守れたが、結果として僕は人殺しをしたのだと

 

その事実が僕の肩に重くのし掛かってきたのだ

 

妹の子の方が僕の方へとてを伸ばした

 

その時だ、姉の方の女の子がその少女を押さえて抱え、出口へと走っていった

 

思わず伸ばした手がダランと下ろされる

 

さっき姉の方の女の子が走り去るときの瞳に写る感情

 

それは、恐怖だった

 

そうだ、今の彼女に映っていたのは衛宮 渡(ボク)じゃない

 

先程まで僕たちを襲っていたアイツを殺した

 

アイツ以上に強い、血塗れの怪物(ボク)

 

僕の心の中に先程までにあった守りきれたと言う安堵は

 

いつしか、虚無感へと変わっていた

 

やっぱり僕はこの世界にいちゃ行けないんだと言う者に

 

僕がその廃工場から動き出したのは、空が暗くなり始めた頃だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車に乗り、冬木に戻る頃には辺りはすっかり暗くなり星が光る夜だった

 

たぶん、士郎達はもうご飯を食べ終えた頃だろうか

 

本来なら走って帰らないと行けないが、あの時の戦闘での疲労

 

そして虚無感からそんなことが出来る気力なんて無かった

 

重くなった足取りで家への道を歩く

 

『怪物』『人殺し』その二文字が頭の中で繰り返される

 

家に着き扉を開けようとドアに手を伸ばした、その時だ

 

扉が開き、セラさんが出てきた

 

空いた扉からは部屋から此方を覗き見る士郎とイリヤ、リズがいた

 

「こんな時間まで、何してたんですか」

 

いつもより低い声でセラさんがそう言った

 

「そ、その………」

 

思わず口籠る

 

だって、アイツのような存在を話したとしても信じて貰えるわけない

 

それにもし話したら、僕の特典のファングも知られる可能性がある

 

「そ、その………ちょ、ちょっと……色々とあって…………」

 

「ちょっと?こんな時間に帰ってきて、連絡もしないで?いい加減にしてください!!いつもいつも貴方は…………もう良いです。出ていってください」

 

そう言ってセラさんが扉を閉じる

 

「あ………」

 

思わず手を伸ばして、そのまま膝を着く

 

いつもなら、ごめんと言いながら扉を叩いたりするだろう

 

でも、今の僕は無理だった

 

「───アハ」

 

心の何かが、大きな音を立てて壊れた

 

「アハハハハハハハハ!!」

 

思わず笑う、頬を何かが伝うが

 

狂ったように笑い続ける

 

そうだ、元から化け物の僕が彼らの暮らすことなんて間違ってる

 

違う、本当の家族である彼らの中に僕と言う偽物でイレギュラーな存在がいることが

 

この世界に僕が存在していること事態が、駄目だったんだ

 

やっぱり僕は神からも、家族からも

 

助けた人からも嫌われる、否定される

 

「そうだ、最初から僕は一人で生きれば良かったんだ」

 

ボクが生まれたせいでアイツらが生まれた、ボクがこの世界のあの人を事件で死んでしまった人を、殺したんだ

 

「やっぱり僕はあんな暖かい場所(衛宮家)にいちゃ駄目なんだ…………」

 

取り敢えずリュックに入れていた買ったお土産を全部入り口の近くに紙袋の中に入れて置いておく

 

そして持ち歩いているメモを切り取り『今までお世話になりました。さようなら』とだけ書いて紙袋に入れて家の入り口から外に出た

 

ふと振り返り今までお世話になった衛宮家を眺め、もう一度歩き出した

 

他の人が死なないよう、僕は戦わないと

 

戦い続けないと行けないんだ

 

それが

 

この力を、得てしまった

 

この世界にイレギュラーを呼び寄せてしまった

 

僕に出来る、唯一の贖罪だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は知らない、彼の言うアイツとは

 

型月世界に存在する死徒と言われる存在であることを

 

そして先程のセラの『出ていけ』はほんの数分間外に出し続けているつもりであったことを

 

彼は知らぬまま、ふらふらと歩き出した

 

まるで彼の心を表すような暗く静かな夜道を

 

たった一人で……………………………………。

 

 

 







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~Fの闘争/EとIの心配~

 

イリヤside

 

 

「もう良いです。出ていってください!!」

 

そう言ってセラがワタルお兄ちゃんを外に出したまま扉を閉め鍵を閉めた

 

そ、そこまでする必要あるのかな?

 

確かに私達は沢山心配したけど

 

「おいおい、そこまでしなくても良いだろセラ?」

 

お兄ちゃんがそう言うけど、セラは聞く耳持ってないみたい

 

「士郎さんは黙っていて下さい、ワタルさんはいつもいつも私達に黙って迷惑ばかりかけるんです。これぐらいの罰は必要です!」

 

そう言ってセラが台所に戻っていく

 

「おい、待てって」

 

そう言ってお兄ちゃんがセラを追いかけて台所に向かう

 

「り、リズ………ワタルお兄ちゃん、大丈夫かな?」

 

「分かんないけど、ワタルならいつも道理に扉を叩いて謝る」

 

「そ、そっか。確かにそうだよね」

 

そう言って私達は少しの間待っていたけど全く扉をノック叩く音も謝る声も聞こえなかった

 

「リ、リズ?」

 

「…………おかしい、いつもなら謝るはず」

 

そう言ってリズが扉を開くとそこには、誰もいなかった

 

「ワタル?」

 

リズがサンダルを履いて外に出る、私も靴を履いて後ろを追う

 

「なにこれ?」

 

扉の近くに紙袋が置かれていた

 

中には新都のお菓子の箱が2、3個ぐらい入ってる

 

「リズ、これって」

 

そう言うと道まで出ていたリズが来て紙袋を持ち上げる

 

「これ、新都のお菓子?」

 

そう言ってリズが紙袋を持つと、袋の中に手を入れる

 

そして入っていた畳まれた紙を見つけた

 

リズがそれ広げ、私が横から見る

 

◤───────────────────◥

 

今までお世話になりました

 

さようなら

 

◣───────────────────◢

 

「…………え」

 

「ワタル?」

 

その後、私達は直ぐにセラとお兄ちゃんの元へと走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

目の前ではあの女の子と妹の子が血に染まったはい工場の地面に倒れている

 

そして僕の手は真っ赤に染まっていた

 

う、嘘だ

 

僕は確かに2人を助けられた筈なのに

 

何で!

 

後ろから足跡が聞こえ、振り替えるとアイツがいた

 

アイツがゆっくりと近付き、僕を見て笑っていた

 

嘲笑うアイツはゆっくりと僕へとその禍々しく鋭い爪を振り下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

目が覚めると知らない、いや昨日知った天井が広がっていた

 

確か、セラに家を追い出されて取り敢えず近くで空いてる部屋のあるホテルに泊まったんだ

 

そうベットから立ち上がり、顔を洗うため洗面台に向かう

 

ここはまぁ、ビジネスホテルみたいな感じだけど近くから温泉を引いてて大浴場に行くか個室のシャワーを使うかを選べるらしい

 

アハハ、まぁ00で稼いでいたからアパートは借りれるんだけど直ぐに住むって訳じゃない

 

そのため、ここのホテルの部屋を数日借りる事にしたのだ

 

バックに元々パソコンやら何やらは入れているのでそのまま編集した曲を投稿する

 

投稿するのは『失敗作少女』だ

 

何となくパソコンでいつの間にか入力していた曲がこれだったのだ

 

取り敢えず今日はこの一曲を投稿し、僕は荷物を持ちこの部屋を出る

 

元々数日間は泊まろうと考えていたので部屋の鍵を持ってホテルを出る

 

時間的に朝、ボクは電車に乗って早速作曲した曲を聞きながら流れていく景色を見る

 

今日もボクは新都へと向かっている

 

朝から、頭の中で何かが言うんだ

 

新都にはまだアイツがいる、倒せって。

 

もしかしたら僕がファングメモリと相性が良く変身できたのは、僕が昔から

 

持っていた獣の勘のような物が働いているのかもしれない

 

何でこんな勘が良いのか分からないけど、これ以上アイツの犠牲者を出さないよう立ち回れるから良い

 

新都の駅で降りて、勘を頼りに道を歩く

 

すると誰もいない建設途中の場所があった

 

「いる、、、ここで殺らないと、他の人が死ぬ」

 

ファングをメモリモードに変形させ、メモリのスイッチを押す

 

【FANG!】

 

すると、腰にロストドライバーが巻かれる

 

「………変身」

 

直ぐにメモリを装填、ドライバーを倒しファングメモリを展開する

 

【FANG!】

 

その音声と供に僕の体が嵐のような風に包まれ、怪物へ

 

ファングへと変わる

 

その状態で中に入ってすぐ、上から殺気を感じて体を捻る

 

すると何かが脇腹を掠めて近くに刺さった

 

それは針だった

 

それも、大人の男性の腕ぐらいの長さを持つ針だった

 

直ぐに真上を見るとそこには、アイツとは違い両手に先ほどの針が付いていた

 

直ぐにソイツが別の針をこちらへと射出してくるのを避けたりスーツの指の爪で弾きつつ少し動き回りながらファングメモリの角を二度倒し肩に現れたショルダーファングを指で掴み

 

そいつへと投げる

 

ショルダーファングは左右に揺れつつもソイツ体を二つに切り裂いた

 

今回はこれで終わりだ、でも駄目だ

 

これはあくまでもこのメモリの力で勝ってる、僕事態がもっと戦えるようにしないと

 

この勘がなければ僕は最初の針で死んでいたかもしれないのだから

 

僕は即座に変身を解除して、何かの建設予定地から離れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、海外にて切嗣と供に仕事をしていたアイリスフィールは携帯を見て動画サイトにてワタルの上げた新曲を確認していた

 

だが、今日の曲は何時もとは違った

 

ワタルの、00の上げた曲の名は『失敗作少女』

 

アイリスフィールはワタルの作るボカロ曲などは良く聞くが今回のような

 

悲しいものは知らなかった

 

当然、今までのワタルの作る曲に悲しい系がなかったわけではない

 

早速聞いたアイリスフィールは思わず眉を潜める

 

速いテンポ、少し高いボイスロイドの声

 

最初の『あぁ、ほらまた間違えた』

 

『あぁ、ほらまた誤魔化した』

 

『強がって痛い痛い』

 

まるで、その歌詞は明らかワタルの心境を表しているように聞こえたのだ

 

そう、これは00を隠し生活するワタル

 

ワタルが00をアイリスフィールとリズ以外にはバレないようしていればするほど

 

彼はセラに怒られるのだ

 

ほかにも『劣等感にクラクラ』『行き詰まってカラカラなの』

 

そこから考えられるのは、士郎やイリヤが余り怒られないが自分は怒られ続けているストレス

 

機械の修理が得意で、友達の多い士郎に対して余り友達のいない、音楽しか出来ない自分への劣等感

 

本来なら電気代やらもワタルが稼いで入れてくれたお金が少し使われているため、けして夜遅くまでパソコンして駄目な訳じゃない

 

でも、ワタルがセラに隠すからこうなってしまった

 

そして最初の歌詞はワタルのセラや士郎、イリヤに対する接し方への思い浮い次の歌詞でアイリスフィールは目を見開いた

 

『私は失敗作だってなって、要らない子なんだって』

 

違う、ワタルは要らない子なんかじゃない

 

アイリスフィールは胸の内でそう呟くが歌は止まらない

 

『何やったって、がんばったって…ダメらしいや』

 

駄目よ、ワタル

 

ワタルは、ワタルでいいの

 

何時も通りに過ごせばいいのよ

 

きっとセラに怒られたのね、少しすればセラも許してくれるわ

 

その時だ、数秒だけだが曲のMVでてを伸ばしたが目の前の扉が閉められる

 

『愛、愛、愛されたくて 偽って、もっともっと笑顔でいれば良いかな……』

 

一番が終わり二番の歌詞も終わった次のラストスパート前だった

 

─もう帰れなくなった。居場所が無くなった─

 

そう動画の中央に表示された次の瞬間、MVの動画で扉がしまり、外で雨が降る動画が少しだけ映像として流れる

 

『神様、もしも生まれ変わることが出来たなら、愛される子になれますように』

 

その歌詞でアイリスフィールは即座に日本の冬木へと電話をかけた

 

明らかにもあの歌詞の部分はとても危ういものだ

 

考えられるのは1つしかない、自殺

 

「もしもし、衛宮ですが」

 

「セラね、アイリよ」

 

「アイリ様!?どうかなされたのですか?急に電話なんて」

 

「実はワタルの事なんだけど、そっちでなんか無かったかしら?」

 

「な!なんで分かったのですか!?」

 

その反応にセラはやっぱりそうだったのねの思った

 

「母親の勘かしらね。それにより何があったのか聞かせてくれるかしら?」

 

「は、はい。実は……」

 

その後聞かされのは、門限を破って遅くに帰ってきたワタルを反省させようと

 

5、10分程度外に放置しようと考え、良く子供をしかるときに定番と言える出ていけと言ったところ

 

本当に出ていってしまい、電話も全て着信拒否されてしまっているらしい

 

そのため、今全員で探しに行こうとしていたらしい

 

「なるほどね……まさかそんなことになってるなんて」

 

「すいません、少し反省させようと考えたらこんな事態に……」

 

「セラ、もうちょっとだけワタルに優しく出来ないかしら?」

 

「そ、そう言われましても……努力します」

 

「取り敢えずワタルが見付かったら連絡をちょうだいね」

 

そう言ってアイリスフィールは通話を切り、溜め息を付いた

 

まさか、こんなことになるなんて

 

直ぐに日本に帰った方が良いかしらね

 

 

 







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~Fの戦い/少女の思い~

 

士郎side

 

 

ワタルが出ていってからもう三日も立つ

 

学校に来ているのではないかと思い僅な希望で教室へと入った

 

だが、結果としては教室に1つだけ誰もいない空席があった

 

何時もなら頬杖をして外を眺めているか何らかの本を読んでいるはずのワタルはいなかった

 

朝礼のあと、先生に呼ばれワタルの事を聞かれた

 

俺はワタルの事を話した

 

家出をしたまま帰ってきて居ないことを

 

その事を聞き、担任の先生は俺を教室に帰した

 

取り敢えずワタルは欠席として扱うとの説明と見付かったら報告しろとしか言われなかった

 

「ワタル、お前は何処に行っちまったんだよ」

 

俺は、ふと窓から見える景色を見てそう呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡side

 

 

グチャア………

 

そんな音と供に拳に何度経験しても慣れなくて、嫌な感覚がした

 

目の前の化け物は僕が殴ったことで少しだけ交代するが殴った箇所からは少し血が流れていた

 

仮面ライダーの、空想の戦いじゃない

 

あんな綺麗な戦いじゃなくて、ずっと手には嫌な感覚と血が着いている

 

目の前のやつは、前のヤツラとは違い何処か僕を煽るような行動をしていた

 

僕が追い出され、新都で戦い続けて何日たったのか分からない

 

新都にヤツラがいる勘にしたがって冬木のホテルを解約し、新都にて勘で見つけたヤツラと戦い続けることをずっとしてきた

 

それが、この世界にヤツラを出現させてしまった僕に出来る唯一の贖罪行為

 

目の前の的に襲いかかってマウントを取り、ひたすらに殴る

 

この戦いはとてもじゃない、僕にはあんな綺麗な戦いはできない

 

だからこんな仮面ライダーらしからぬ戦い方になって

 

手にはずっとあの感覚とソイツから出た血で赤く染まっていく

 

いつの間にか目の前には消えていく化け物

 

そして真っ白だったはずの僕の手が赤く染まっていた

 

俺はその場から離れて変身を解く

 

家を追い出された次の日から寝ずに戦い続けていた

 

ヤツラを勘に従って探し、被害者になりかけた奴を逃がしてファングになってアイツを倒す

 

それしかせず、僕はずっと過ごしてきた

 

先程携帯を確認したところ、今日で二日間戦い続けていることに気付いた

 

ずっと、ただアイツラを倒さないとと考えていたからなのか、時間を気にしていなかった

 

そう思案しながらリュックを背負い、服の内ポケットにファングをメモリモードにして入れて歩き出す

 

外は昼なのか沢山の人が行き来しており、何故か僕を見てヒソヒソと話す人もいた

 

ふと近くの鏡に写っている僕を見ると、目の下に隈が出来ていた

 

「流石に少し、休まないと……」

 

そう思いながら歩き出し、近くの公園のベンチに座り込む

 

このまま眠ってしまおうと考えるが、このままでは補導されることは見えている

 

ホテル等はお金さえ払えば良い

 

何処かで休めるところを探さないと

 

そう考え、僕はスマホで近くネットのネットカフェを探す

 

結構近くにある、それに飲み物が飲めてシャワーもある

 

ここにしよう

 

そう思い、僕は重たい体をどうにか立ち上がらせる

 

「みんな、元気かなぁ」

 

ふとそんなことを呟き、僕はその場を離れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネカフェの個室へと入り、こっそりとノートパソコンのコードを刺して充電しつつ二日ぶりとなる曲の投稿を行う

 

『HATENA』『大切な人たちへ』

 

これは僕への問いかけの曲と、士郎やイリヤ達への曲だ

 

『何のために泣いたんだ、何のために捨てたんだ』

 

僕は家族に迷惑をかけている、本来ならその場におらず、いもしない僕のためにしかってくれているセラさんや母さんがいる

 

そんなみんなの近くに僕がいれば、きっとみんなの居るところにも奴が来る

 

それに巻き込まないため、この世界でヤツラを出現させてしまったから

 

僕は、みんなから離れて、戦い続けている

 

でも、僕も何処かで帰りたいと思っているのかもしれない

 

だからこの曲を投稿する、どうかみんなに届きますように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

家に帰った、アイツもあの白い奴ももういない

 

私はその事に安堵して妹の悠里(ゆうり)を下ろし、玄関に座り込んだ

 

「大丈夫、ユウリ……………」

 

パチンッ

 

そのとき、私は何が何だか分からなくなった

 

私の右頬が暑くじんじんと痛みが走っている

 

ぶたれた、誰に?

 

悠里に…目の前の妹が普段なら全く表情を出さない悠里が涙を流しながら私を睨んでいた

 

「なに、何よ…………」

 

なんで、私は貴方を思ってアイツから化け物から守って逃げたのに

 

なんで、なんでなんで

 

なんでそんな目で見るのよ悠里!

 

「………お姉ちゃんは、ダメなこと…した」

 

「何よ、ダメな事って!私はあの化け物から貴方を護ろうと」

 

パチンッ、また悠里にぶたれた

 

「気付かない、ダメ。自分で、気付け……」

 

そう言って悠里がトテトテと階段を上がっていく

 

「なんなのよ、私のあの行動の何が悪かったの」…………

 

涙が流れる顔を隠しもせず、少し赤くなった頬を片手で触れて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里side

 

 

お姉ちゃんの………………バカ

 

悠里は自室にて布団に寝っ転がっていた

 

この少女、悠里は周りよりは聞き分けが良く大人しいが人見知りなところがある少女

 

そんな彼女は毎週日曜日に見る特撮を愛していた

 

そして、親に頼んで昔の特撮の話を借りるほどに

 

そんな少女にとって、今日の出来事は忘れられない日となった

 

何時もならテレビでしか見れない本物の化け物が居ることを知った

 

怖かった、お姉ちゃんとあのお兄さんと逃げて特撮の最初に死んじゃう人みたいに死んじゃうと思った

 

悠里は知っていた、この世界に本当のヒーローは居ない

 

特撮は作り物で、想像物出しかないと

 

だから、あの人のリュックから出てきた小さな恐竜のロボット

 

突如としてお兄さんの腰に巻かれたベルト

 

私は何故か急にドキドキした、先程までのドキドキじゃない

 

ワクワクした、ドキドキ

 

お兄さんがヒーローになる所を見た、悠里は本当にヒーローがいることを知った

 

でも、お兄さんはさっきまで凄く怖がっていた

 

いまもそうだ、私たちを助けようと変身して戦うお兄さんの足が少し震えている

 

その後、お兄さんがM・HEROファングみたいにあの敵を蹴り、倒した

 

私は直ぐにお礼を言わなきゃと思った

 

助けてくれてありがとうって

 

でも、お姉ちゃんは私を抱いてあのお兄さんから逃げた

 

悠里は知っていた、今までの特撮でどのHEROも孤独に戦い続けていること、誰もが本当は暴力を振るいたくないと思っていることを

 

誰から感謝されるわけでもなく、誰から頼まれたわけでもない

 

ただ、人を護るために戦い続けている

 

そんなHERO、そんなあの人にお姉ちゃんはお礼も言わず、あの人を化け物と思い逃げ出した

 

許さない、私はお姉ちゃんを許さない

 

明日、私はあのお兄さんを探しに行く

 

見つけるまで探して、絶対に言う

 

「助けてくれて、ありがとう」って

 

 

 

 

 






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~少女達の言葉/新たなFの歩く道~

渡side

 

 

目が覚めると、何故かくらく凄く狭い場所にいた

 

「ふぁ………」

 

昨日はあの時の夢を見ず、ゆっくりと眠ることが出来た

 

自分が寝ているのは昨日はネットカフェで借りた部屋

 

そして部屋にあるソファで毛布をかけて寝たのだ

 

そう言えば学校、連絡してないんだよな

 

そう呟き、火曜日と表示されている自身のスマホを見る

 

こんな時間に出歩いてて良く昨日は補導されなかったな

 

取り敢えずこの街で残るアイツはあと一体、自身の獣の勘とも言える何かがそう告げている

 

そいつさえ倒せば…………倒して、どうなる?

 

ボクは戦い、倒してどうしろと言うのだ

 

もう、帰る家なんてない

 

帰る場所すらないボクに、どうしろというのだ

 

確かにアイツらを殺すことがボクがこの世界に現れてしまったことにより現れてしまったアイツらの被害者

 

そしてあの姉妹への贖罪だと、そう思ってこの数日間を過ごした

 

「どうすればいいんだろ、ファング」

 

その問いかけにファングはなにも答えなかった

 

取り敢えず荷物を纏めて携帯をとった時だ、着信履歴に沢山の電話が来ていた

 

一体、何のようだろうか

 

そう思うが今はそれより、アイツを探そう

 

そう思い頭を振り先ほどの考えを消す

 

携帯をポケットへ仕舞い、バックを背負いファングを胸ポケットに入れてネットカフェを出て近くのコンビニで朝食を買う

 

そして、近くの公園で食べる

 

外だからかたまに風が吹き付け、少しだけ寒い春の風が体に吹き付けられる

 

寒いなぁ、家に………帰れれば良いんだけど

 

士郎やセラさんが作ってくれる温かいご飯が懐かしい

 

食べ終え、ゴミをゴミ箱に入れて獣の勘に従って町を出来るだけ目立たないよう歩く

 

そうして探し続け、昼になった

 

取り敢えず軽い昼食を取ろうと考えて近くのたこ焼き屋が目に入る

 

近くに何個かテーブル席が置いてあり、そのテーブルで食べるようだ

 

食べたら直ぐに探すのを再開しないとな

 

そう思い、屋台に並ぶ目の前に二、三人が並んでいるのでその後ろに並ぶ

 

取り敢えずスマホで最近のニュースを見つつ、並んでいると自分の番が来た

 

取り敢えず普通のタコ焼きと飲み物だけ買ってテーブルに座りたこ焼きを頬張る

 

何人か並んでいたからか、凄く美味しかった

 

そうしていると、ふと何処からか視線を感じて近くを見回すすると少し先に

 

以前、助けた妹の方の子が此方を見ていた

 

心臓が跳ねる、思わず目を見開く

 

何故かその少女は少し離れるとあの子を引っ張って此方へと歩いてきていた

 

「悠里?一体な、にが………」

 

姉の子がボクの事を見つけ、目を見開く

 

「あ………悠里、あんたもしかして」

 

そう言っているうちにボクは残っていたたこ焼きを食べ終え残っていた二箱目を持ってその場を離れようと席を立つ

 

たぶん、あの子はボクの事を怖がってる

 

だったら、ボクは直ぐにでも彼女の前から消えないと

 

たこ焼きはここから離れて食べれば良い

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

そつ思い立ち上がったとき、ポニーテールの子がボクの目の前に来てきていた

 

「お話、いいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(かおる)side

 

 

あの変な化物に襲われてから数日立ち

 

私はあの時の行動を冷静に考える事が出来た

 

今考えると、あの時に悠里が私をぶったのは少しだけ納得出来てしまった

 

私はアイツから助けてくれたあの人

 

恩人とも言える人に対して直接では無いが化物と呼び、助けてくれた事に感謝すらしていなかったからだ

 

あの人に出来るならちゃんとお礼を言いたい

 

買い物をしていると突如として悠里に腕を引かれ、たこ焼き屋まで来た

 

何だろうか、たこ焼きでも食べたいのだろうか?

 

その時だ、悠里がある方向を指差す

 

「悠里?一体な、にが………」

 

その方向を見ると私が前に逃げたしてしまった、あの化物を殺した男の子がたこ焼きを食べていた

 

「あ………悠里、あんたもしかして私に会わせようと?」

 

そう言うと悠里は頷いたので私はあの子へと近付く

 

何故か、その顔は少しだけ疲労が残っているように見える

 

そう言えば今日は祝日でも何でもない平日だ

 

私は学校が休みになったのでここいるが、彼はどうなのだろうか

 

確か冬木に住んでいると言っていたしここにいるのは可笑しい

 

「お話、いいかな?」

 

私を見た彼は直ぐにその場から去ろうとしたので急いで彼のもとに行き私はそう声をかけた

 

「大丈夫、です」

 

「ありがとう。悠里」

 

「ん!」

 

そう言って私は彼の向かいの席に座る、悠里は私の膝に座る

 

すると、彼は凄く気まずそうな顔をしながら持っていたたこ焼きの箱を開ける

 

「よ、良かったらどうぞ。妹の子も食べたそうにしてるし」

 

そう言って持っていたたこ焼きを差し出す彼

 

悠里はたこ焼きが食べたかったのか、何回も頷く

 

悠里、本当は彼に会わせるんじゃなくてたこ焼きが食べたかったら呼んだんじゃないわよね?

 

「悠里…………いいの?貴方のじゃ」

 

「ボクはもう一箱は食べたし、それにまた買いに行けば良いから。あ、どうせなら温かい方がいいよね、買ってくるよ」

 

「ジュース!!」

 

「ゆ、悠里!」

 

余りの遠慮の無さに、悠里を少し怒ろうとしたときだ

 

彼は少しだけきょとんとしていたが、直ぐに笑った

 

「分かったよ、君もジュースでいいよね」

 

「え?ほ、本当に良いの?」

 

「うん。怖い思いさせちゃったし、お金は貯めるより使った方が良いしね」

 

そう言って彼は屋台へと歩いていった

 

先ほど笑っときの笑顔はとてもだけど、アイツを殺したとは思えないほど優しそうで

 

そして申し訳なさそうだった

 

悠里はと言うと、彼から貰ったたこ焼きを遠慮無く食べている

 

少しすると、彼がたこ焼きと炭酸ジュースと思われるカップを持って来た

 

「はい、炭酸ジュース。苦手だったら無理しなくても良いから」

 

そう言ってジュースを渡されるのを受け取る

 

すると彼は席に座り直したこ焼きを開けて、悠里が少し食べている冷めたたこ焼きを自分の方へと寄せて私たちの前に湯気の立つ温かいたこ焼きを置く

 

悠里は直ぐに目を輝かせてジュースを飲みながらたこ焼きを食べ始める

 

「あのさ、あの時はごめんね」

 

「え?」

 

「私、あの変なのに追いかけられたりして混乱しちゃって助けてくれた貴方にお礼も言わず、逃げちゃったでしょ」

 

「そう、ですね…………」

 

「ごめんなさい」

 

そう言って頭を下げる

 

「頭を上げてください、ボクは気にしてませんから。それに、あの状況じゃ仕方ないと思います」

 

頭を上げると、彼は少しだけ悲しそうな顔をしながら言った

 

「あなたが怖がるのは仕方ないんです、あんな化物を殺したボクは、同じ化物みたいな物なんですから」

 

そういう彼の顔は何処か寂しそうに見えた

 

「あと、さ………ありがとう」

 

「……………え」

 

彼がまるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になる

 

「私さ、悠里に言われるまで貴方の事怖かったの」

 

「ッ!」

 

「貴方から逃げて、家に帰ったときさ悠里に言われたんだ。『お姉ちゃんは駄目なことした』って」

 

彼は思わず悠里の方を見て驚いたような表情をみせる

 

「それでさ、少ししておもったんだ。私は守って貰ったのに『ありがとう』って言わなかったの。だから、今言わせて。悠里を、妹と私を助けてくれてありがとう」

 

「お兄さん、私とお姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」

 

私がそう言うと悠里が頬にソースを付けながらも笑って言う

 

そう言われて彼は、その瞳から涙を流した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡side

 

 

「それでさ、少ししておもったんだ。私は守って貰ったのに『ありがとう』って言わなかったの。だから、今言わせて。悠里を、妹と私を助けてくれてありがとう」

 

「お兄さん、私とお姉ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」

 

『ありがとう』その言葉が胸の中にゆっくりと、ボクの心を温かくしていく

 

こんなボクでも、化物でもそんな事を言ってくれるんだ

 

気づくと頬を何かが伝っていた

 

「えっ!?ちょ、ちょっと?」

 

姉の方の子が心配そうにボクを見つめてくる

 

「ご、ごめん!」

 

そう言ってボクでは目からこぼれた涙を袖で拭う

 

「えーと、どういたしまして」

 

取り敢えずそう返す

 

頭の中の考えが変わっていく

 

ボクは贖罪の為に戦おうとした

 

この子達を怖がらせ、一人の犠牲者をだしたアイツらを殺すため

 

でも今は違う

 

この町を、新都を冬木を守りたい

 

化物のボクにありがとうっていってくれるこの人たちを守りたい

 

これからは、そのためにアイツらと戦う

 

「そう言えば、私たちって自己紹介してなかったわね。」

 

取り敢えずたこ焼きを1つ口に運んだ時に姉の方の子がはそう言った

 

そ、そう言えば自己紹介すらしてなかった

 

でも、妹の子は悠里って名前なのは話で何度か聞こえてきたので覚えてる

 

「私は桜井 薫(さくらい かおる)、妹は悠里(ゆうり)

 

「ボクは衛宮 渡(えみや わたる)で、良いのかな」

 

「どうして疑問系なの?」

 

「んー?」

 

「実は───────」

 

そう言ってボクは薫達に話すことにした

 

家族に怒られ、家を出ていけと言われて行き場がなくて新都に来て

 

ずっとアイツらと戦っていた事を話した

 

「そんなことが………でもきっとその家族の人たち渡の事を心配してると思うよ」

 

「え?」

 

士郎やリズ、イリヤやセラさんが?

 

「私さ、昔に良く約束やぶったりして親に叱られて出てけって言われたことあるんだ」

 

「薫さんが?」

 

何だろう、少し想像できないな

 

「私さ、その言葉を本気にして出ていって。寂しくて公園で泣いてたんだ、そしたらお母さんが泣きながら迎えに来てくれてさ」

 

「そう、なんだ………」

 

「だからさ、渡の家族もきっも今頃心配してると思うよ」

 

「…………そっか」

 

最後の奴を倒したら、直ぐに冬木に帰ろう

 

冬木の家に帰って謝ろう、沢山謝ろう

 

そうすれば許して、家に入れてくれるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、薫さんとラインの番号を交換して直ぐに勘で奴の所に来ていた

 

何故かアイツが居た場所はボクが初めて変身した廃工場だった

 

ボクはこの力でファングで冬木と新都を守る仮面ライダーになる

 

 

左翔太郎さん、フィリップことライトさん

 

貴方方の誇り名乗っていた仮面ライダーの名前を使わせて貰います

 

「■■■■■■■………」

 

ボクは腰にロストドライバーを展開し片手にファングメモリを盛った状態でそいつの前に立つ

 

「いくよ、ファング!」

 

そう言って左手でメモリモードのファングのボタンを押す

 

【FANG!】

 

「変身!!」

 

左手から右手へとファングメモリを投げ渡し、ロストドライバーに装填する

 

ベルトから待機音が流れ、ボクは左手でロストドライバーを倒し、右手でファングメモリを展開する

 

【FANG!】

 

その音声と共に、ボクの体を中心として嵐が発生しボクを白く変えていく

 

ボクは変身を完了し、構える

 

「僕は新都と、冬木を守る仮面ライダー、ファングだ!!」

 

誓う気持ちでそう叫び、右手でファングメモリの角を一度倒す

 

【ARM FANG!】

 

ベルトから獣の雄叫びのような音声と共に右手に真っ白な刃、アームドセイバー通称アームファングが現れる

 

僕はそのまま敵へと近付き、アームファングを振るう

 

「やぁ!ハッ!」

 

「■■■ッ!?」

 

その攻撃は目の前のアイツをどんどんと相手を切り裂き

 

続いて何度か爪で引っ掻くように両手を振るい

 

回し蹴りでアイツを蹴り飛ばす

 

相手を疲弊させていくが何故かボクは疲れず、力が沸いていた

 

アイツが爪で引っ掻くようにしてくるのを横に転がって避けてそのままジャンプして蹴り付けて引っ掻いてくるのを止める

 

「決める!」

 

ファングメモリの角を三回倒す

 

【FANG MAXIMUMDRIVE!】

 

ベルトから獣の叫び声が響き渡り、右足にマキシマムセイバーが現れる

 

「うぁぁぁぁあ!」

 

アイツに走り、飛び上がる

 

「ファングストライザー!」

 

そしてボクはアイツへとマキシマムセイバーで蹴り付けるように回し蹴りをする

 

するとアイツにファングメモリと同じ様なデザインのFの文字が浮かび上がり、消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに冬木の町を歩いている

 

きっと、凄く怒られるよね

 

でも仕方ない

 

謝ろう、必要ならば土下座もしよう

 

きっとセラさんも薫さんのお父さんやお母さんと同じ様に本気で出ていくと思っていなかったのかも知れないし心配してくれたかもしれない

 

沢山の電話を無視した

 

士郎やリズの個人の携帯も、家の電話も

 

謝ろう

 

セラさんに、リズに、士郎に、イリヤに

 

もしかしたら外国にいる母さん達にも迷惑をかけたかもしれない

 

謝ろう、そして家に入れて貰おう

 

その気持ちでボクは冬木の衛宮家に戻ってきていた

 

時間的にも士郎やイリヤは帰ってきている頃だろう

 

何だろうか、いざ家の扉の前に来て扉を開けずにいる

 

改めて考えると家に入れて貰えるかもしれないけど、セラさんからの説教は長い時間されそう

 

そう思うと少し怖くなるな

 

えぇい!いつまでもウジウジしてちゃ駄目だ!

 

よし、開ける!

 

そう思ってドアノブに手を掛けようとしたその時だ

 

ドアが空いて扉が此方へと押されボク顔にぶつかった

 

「痛ったい!?」

 

思わずドアの角が直撃したおでこを押さえつつ、後ろに下がる

 

取り敢えず空いた玄関には扉を開けた本人とも思われるリズがいた

 

「………ワタル?」

 

「いたた………リズ!そ、その………ただいま」

 

痛むおでこから手を離して、ボクは少し吃りつつもそう言った

 

すると、リズが動いたのが見えて思わず目を瞑る

 

恐らくは叫んで怒られるか、頬をぶたれるのだろう

 

だがいつまでたっても頬に痛みも何もなく、何かに包まれるように抱き締められる

 

思わず目を開くと、リズが泣きながら抱きついてきていた

 

いつもなら無表情で余り感情を表にしない

 

そんな彼女が泣いていた

 

「り、リズ?」

 

「心配、したんだよ………」

 

「ごめん」

 

そう言っていると、奥の方からセラさんが歩いてきた

 

心なしかボクを見て怒っているようなそんな気がする

 

「ワタルさん」

 

「は、はい………」

 

「心配、しましたよ。すいませんでしたあんな言葉を言ってしまい」

 

セラさんが、謝った?

 

「いや、その………ボクの方こそあの言葉を本気にして出ていって……迷惑かけてごめんなさい」

 

そう言ってボクは怒られず家に入れられた

 

士郎は「心配したんだぞ」と少しだけ怒り

 

イリヤには泣きつかれてしまった

 

その後、みんなで晩御飯を食べた

 

久しぶりに皆と食べたご飯は凄く温かくて

 

美味しかった

 

久しぶりに自室へと戻ってきたボクは、直ぐにとある曲を投稿した

 

その曲は、前に投稿した曲から価値観が変わり

 

この町を、冬木と新都を守れるような仮面ライダーになると言う決意を込めた曲

 

『ピースサイン』

 

を投稿した

 

明日から、またいつもの日常が始まる

 

学校、頑張らないとな

 

そう思い、ボクは部屋から外を眺める

 

今日の夜空は綺麗な星が輝いていた

 

 

 

 

 

 





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~ボクの笑顔~

ワタルside

 

 

あのボクが少しの間の家出が終わった次の日、放課後にボクは今日も新都に来ていた

 

凄く綺麗な客室らしき部屋で少し心を落ち着けようと部屋に置かれたペットボトルのお茶を少し飲む

 

今ボクがいるのは家出中に来たアニメの『マジカル☆ブシドームサシ』を製作している会社だ

 

最初こそは受付で怪訝な顔で見られた

 

そりゃあ会社に何処の息子とも分からない高校生が入ってきたんだしね

 

まぁ、ボクが00って言うと凄く驚かれてたけどね

 

ネットだとボクに関する噂やデマ、仮説が沢山あって

 

そのなかじゃあ定番とも言える歌っている00は男なのか女なのか?

 

投稿する曲から過去に何かあったのか?

 

他にもどのくらいの年齢なのか?

 

幼女orショタなのか?

 

ていう考察や仮説を動画サイトに上げている人もいる

 

最後のはどうでも良いかな?

 

この前に母さんから送られてきた動画の投稿主は白髪でオッドアイでセミロングで可愛らしい幼女のイラストを描いて『これが00のリアルだと思うな』~

 

って言ってて驚いたと同時に母さんに何故この動画を送ってきたの?と聞くと、『その格好で最近有名なVTuberでもやってみたら?』と言われた

 

た、確かに色々なネットの歌い手さんはVTuberみたいにして雑談配信とかしてるけど

 

さ、さすがに僕はやらなくても良いかな

 

歌だけで良いし

 

と言うと『その描いてる人に連絡したらアバター作ってくれたりしてね。そっちの配信も母さんは見たいわぁ、お願いよワタル』

 

と、言われ仕方なくその人にDMを送らせて貰った

 

母さん曰く、僕の声は少し女性に近い男の声で両声類らしいので人気が出るわよと言われたけど、そんなことしてたら余計にセラさんに睨まれるよ

 

そう考えながらボクはふと窓から空を眺めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、アニメ会社で話し合いをして主題歌は『歌えばそこに君がいるから』と言う事になった

 

なんでも、今回の『マジカル☆ブシドームサシ』はテーマが現実とアニメの世界

 

現実の世界でマジカル☆ブシドームサシが大好きな少女が、ひょんな事からアニメの世界へと飛ばされてしまう

 

少女らムサシに出会い共に行動するなか、少女が敵に捕まりムサシは少女を助けるため傷付きながらも少女を助けるため敵へと立ち向かう内容だ

 

ついでに『例え何度倒れても、何度絶望しても諦めない。絶対に助けるわ』と言うムサシの言葉から、ボクはこの曲を選曲した

 

あと数日で劇場版が完成するため、完成したら映画のチケットを5枚か送ってくれるらしい

 

ボクは『マジカル☆ブシドームサシ』は余り見ないし、リズとイリヤ達にあげようかな

 

確か原作だとリズとイリヤはマジカル☆ブシドームサシの事は好きだったはずだし

 

どうせなら母さん達にも送ろうかな

 

家族で見に行って貰えば母さんは喜んでくれそう

 

せっかくだしリズ、セラ、母さん、父さん、イリヤ、ついでに士郎で

 

映画館に行ってきて貰えば家族旅行にもなるし、少しだけど家族孝行になるのかな

 

電話で聞いた父さんと母さんの休日は、ちょうど映画のロードショーの日と重なるので帰ってきたときにチケットを渡そう

 

そう考えながら部屋でのパソコンに指したマスターカセットで前世のゲームである『ガンダムブレイカー2』をプレイしていた

 

久しぶりに最初から最後でストーリーに乗っ取ってやるつもりだ

 

ダブルオー、ウイング、Gガンは使うキャラがいるので、機体はオリジナルでは無く、何故な初期機体にセットされていた

 

スクランブルガンダムに設定した

 

もしかしたら今までのガンダムブレイカーの機体データが2でも使えるようになっていたのかも知れない

 

ついでにボクはゲームをするときはヘッドフォン派だ

 

学校へ行くときや曲の編集ははイヤホン使うけどね

 

やっぱりNEWより3より2の方がストーリーが良いんだよな

 

ジムやザクが戦闘するシーンが流れるなか、今作のヒロインであるレーアの姉の台詞が流れる

 

確かに世界には戦いに溢れている、積み上がる瓦礫の山、繰り返す戦いの歴史

 

ボクは思うにこのゲームは主人公がこのゲームをプレイしているのではなく

 

このゲームの世界に転移してしまい最後にゲームの会場に戻ってきたのだと思う

 

肩を揺すられ、気付くと隣にイリヤが立っていた

 

ヘッドフォンをしてたからか、部屋に入ってた事に気付かなかった

 

ボクはゲームを止めてヘッドフォンを外す

 

「どうしたの?」

 

「ご飯だよ、いくら呼んでもこないからセラが呼んできてって」

 

「あぁ、ごめん!今すぐに行くよ」

 

そう言って二人でしたに下りてセラの作った晩御飯を食べる

 

みんなで談笑しながらご飯を食べる

 

士郎の部活での話題やイリヤの学校での話

 

基本的にボクは聞き手に回ることが多い

 

彼らの話い聞いて、笑うなかで

 

最近、ボクは頭のなかでこんなことを考えてしまうんだ

 

僕らがこうして笑っている彼女達を見る目線は一体どのようになっているのか

 

家族が笑っているから嬉しくて笑っているように見えるのか

 

それとも、アニメのキャラクターである彼女らが笑うから、アニメを見ている感覚で笑っているのか

 

人として話している家族をみて笑っているのか

 

それが分からない

 

少しだけ自分が笑えているのかが、分からなくなった

 

笑えてたとしても機械的な笑顔だったら嫌だな

 

食事後にボクは歯を磨きながら鏡を見る

 

そこにはまるでデフォルトのように微笑む、まるで作られた様なボクの笑顔

 

この世界には生まれ変わってからずっとボクはこんな笑顔しか浮かべられていない気がする

 

家族で話していて、笑っている顔ってこんななの?

 

まるでゲームに登場するモブキャラのように決められた様な笑顔にボクは

 

「もっと自然に笑えないかな………ボク」

 

そう呟いた

 

心から笑うって、どうすればいいんだろ?

 

そう呟きながらボクは今日も音楽を投稿する

 

投稿する曲は『嘘の笑顔』なんとなく気分で選んだ

 

なんとなく父さんに会う曲なのかな?

 

登校し終わりボクは先ほどのゲームの続きをプレイする

 

まるで、先ほどの笑顔を忘れるかのように

 

 





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どうも、新しくVTuberとなりました00です

 

 

ワタルside

 

 

朝、パソコンのメールに2件の通知が来ていた

 

片方は以前に母さんが教えてくれた僕の空想の姿を書いてくれた人からで

 

送られてきたのはVTuberとしての立ち絵が完成したので送ります

 

と言う内容だった

 

送られてきたのは立ち絵を見ると、その日とが以前に書いていた通り

 

幸薄そうな白髪でオッドアイでセミロングで可愛らしい幼女がセーラー服を着ているのだか、どちらかと言えば着せられている感じだ

 

取り敢えず画面を閉じて、もう1つのメールを見る

 

その送り主の欄には

 

〔₤₯₨₢₦₧@¢₤₢₤₮₡₮₭〕

 

正直に言うと、なんて書いてあるのか読めない

 

文字が化けており送り主は全く分からない

 

頭にはチェーンメールやスパムメール等の迷惑メールが頭には浮かぶ

 

だが、それならもっと分かりやすい

 

会社とかの名前になっているはず

 

そう思いながらメールを開く

 

─────────────────────

 

     Which one do you want?

 

 

 『C』『J』『X』『A』『L』『T』

 

   『I』『H』『M』『S』『E』

 

 

 

 

     by:₤₯₨₢₦₧@¢₤₢₤₮₡₮₭

─────────────────────

 

何だろう、これ

 

上の分は英語だから辛うじて読める

 

『貴方はどれを望みますか』

 

そしてその後下に書かれているアルファベットが更に謎

 

もしかしてパズルなのだろうか?

 

それともアルファベットをクリックすると発生する新手の詐欺?

 

「ワタルお兄ちゃん!早く下に下りてー!朝御飯だよ」

 

そんな事を考えているとイリヤの声が扉から聞こえ、僕はパソコンの画面を一度閉じる

 

「わかった、今行くよ」

 

取り敢えず、今は朝食だな

 

そう考えて、僕は部屋を出た瞬間にはっとしてすぐに部屋に戻る

 

そうだ、何故気付かなかった

 

あのアルファベット、そして『貴方はどれを望みますか』と言う英文

 

文字化けした差出人の場所

 

そう考えながらパソコンの画面をもう一度開く

 

すると、画面端に30と書かれた数字が一秒毎に減りカウントダウンをしていた

 

もし、これが僕を転生させてくれた神様の物だとするなら

 

これは恐らくはアルファベットはガイアメモリの種類

 

そしてこれを選んだら、そのメモリが僕の家に送られてくる

 

恐らくは神様が僕の戦いを見て、何を思ったのかは分からないが支援物資のようや感じで送ってくれるのではないか

 

そこまで考えたとき、残りのカウントは五秒だった

 

「ッ!?」

 

僕とっさに僕は画面にあるカーソルの近くに『I』と『H』をクリックした

 

次の瞬間にパソコンの画面が最初のホーム画面に戻りメールのアプリが閉じられていた

 

メールのアイコンをクリックして確認したが先ほどのメールはなかった

 

「一体、なんだったんだ………」

 

そう思いながら急いで朝食を食べに下に降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終えて、僕は自信の部屋への扉を開ける

 

すると机の上には少なくとも朝には存在しなかった真っ黒なアタッシュケースが置かれていた

 

「っ!?」

 

即座に僕は部屋の中に入り鍵を閉めた

 

もし、さっきの予想が当たっているなら

 

そう考えながらアタッシュケースのロックを外し、ケースを開くとそこには赤と水色の大きなUSBメモリが入っています

 

水色のメモリにはまるで氷柱が生えているようなデザインのIが描かれており

 

赤いUSBメモリにはまるで炎のようなデザインのHと付いたデザインのメモリ

 

アイスエイジとヒートのガイアメモリがそこに大切そうに保管されていた

 

僕は二つのメモリを手に取る

 

まさか、本当に神様が僕への支援物資を送ってくれるなんて

 

取り敢えずヒートメモリのボタンを押してみる

 

【HEAT】

 

ちゃんと音がなったが、問題はなぜ支援物資を別のメモリにしたのかだ

 

取り敢えず実験してみるしかない、か

 

早速僕は二つのメモリとファングを持って家を出ると、電車に乗り初めて闘った場所である新都の廃工場へと来ていた

 

僕は辺りを見渡すと誰もいない、気配もしないのを確認してファングをライブモードからメモリモードにする

 

すると、僕の腰にロストドライバーが装着される

 

「やっぱりダブルドライバーじゃないか。でも、他にメモリを装填する場所なんてベルトの横に付いたマキシマムスロットしかない……」

 

そう思いながらファングのボタンを押す

 

【FANG】

 

「取り敢えず、実験を始めよう」

 

そう言ってベルトへとFANGメモリを装填し、ロストドライバーを倒しFANGメモリを展開する

 

「変身」

 

【FANG!】

 

その音声と共に僕を中心に嵐が発生し、僕の体を何時も通りの真っ白なダブル

 

仮面ライダーファングへと変えた

 

「最初はこれだな」

 

そう言って僕は先程手に入れたヒートメモリのボタンを押す

 

【HEAT!】

 

「取り敢えず、マキシマムスロットに」

 

そう言いながらベルトの右側に付いているマキシマムスロットにヒートメモリを装填する

 

でも、特に体に変化はない

 

あ、あれ?もしかして

 

「僕の適正がファングだけ、とか?いや、取り敢えず思い付くことを全てやってみよう」

 

まず、ベルトに装填されているファングメモリの角を一度倒す

 

【ARM FANG HEAT!】

 

すると、ベルトから流れる音声が何時ものアームファングだけではなく“ヒート”と付いていた

 

その事に驚きながらも右手に現れたアームファングを見るとアームファングの刃の部分

 

相手を切り裂く部分が黄色く発光していた

 

それは熱により発光しており、炎の力を付与した感じになっていた

 

試しに近くに置かれている工具へとアームファングヒートを振るうと、簡単に切れ

 

工具には赤く、熱を加えられたかのような後が残っている

 

「もしかして、アームファングとかに炎を纏わせたように成る。なら!」

 

早速もう片方のメモリ、アイスエイジのメモリのボタンを押す

 

【ICE AGE!】

 

そしてマキシマムスロットに装填し、即座に先程と同じようにファングメモリの角を一度倒す

 

【ARM FANG ICE AGE!】

 

すると、先程とは違いアームファングは通常より鋭的で刺々しい刃の付いたデザインに変わっていた

 

アームファングからは冷気のような物が放たれていた

 

近くに置かれているドラム缶へとその刃を振るうと、アームファングの刃が当たったドラム缶は少しづつ凍っていき、やがてドラム缶を覆い尽くした

 

「凄い、これがガイアメモリ………よし、次はショルダーファングの方も調べないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあと、新しいメモリの実験を終えた僕は新都にてVTuberの配信に必要な機材を購入しそのままセッティングもして貰い、家に帰ってきていた

 

さてさて、母さんに言われ配信にすることになったが

 

問題はこのまま00と名乗るのが正しいのか、VTuberとしての名前を考えた方が良いか

 

そして、よくネットに上がるミュートにしたままになったり

 

途中でセラやリズ部屋に入られる場合の対策もしないといけない

 

そこだな………問題は

 

そう考えながら僕は新たな挑戦をするためにパソコンへと向き合った

 

既に晩御飯もお風呂も済ませた、トイレにも言った

 

士郎とイリヤは課題をやるために必死

 

取り敢えず、チャンネルの昨日で配信をすることは昼には宣伝しておいたし

 

さっきは別に1つ曲を投稿したし、準備万端だ

 

取り敢えずサブタイトルとして少し格好付けて『私のBeginning day』にした

 

さて、時間も迫っている

 

待機人数は………け、結構な人数いる

 

僕、話せるのかな?

 

そんな事を考えていたら、その時間は来た

 

画面にはセミロング程の白髪にオッドアイの私が写っている

 

僕は机の上に置いたマイクへと話しかける

 

「こ、こんばんわ皆さん。音楽の投稿をメインとして活動している00と言うです」

 

『こんばんわ』『こんばんわ』『こんばんわ』

 

『アバターが前にどっかのイラストレーターが00のリアルがこんなだと書いてた奴ににてる』

 

『我らが00は幼女だった?』

 

『ショタじゃないのかー?』

 

「は、はい。コメントにある通り僕の事を書いてくれた人に頼んで今回はこのような形で配信をしてみることになりました」

 

『マジだったw』『今北、ファンです』

 

『その絵師は優秀、ハッキリワカンダネ』

 

『今日の曲も良きだった』

 

「あ、ありがとうございます。えっと、まず皆さんと決めたい事があります」

 

『なんでも聞け?』『安全は保証しない』

 

『本当に00さんがVTuberしてる…』

 

「僕がこのようにVTuberとして活動するので、この体の時の呼び名、まぁ渾名みたいな物を決めたいと思います。皆さん、何か良い案はありますか?」

 

『おっしゃまかせろ!』

 

『お姉さんにお任せ!』

 

『零二』『レイレイ』『二ゼロ』

 

『ゼロII』『レイツー』『綾○レイ』

 

「零二………そうだね0が二つでダブルゼロだし、この時の僕は零二だ」

 

うん、結構良い名前だと思うな

 

「次にこれから配信するかどうかだけど、たぶんたまにしかやらないと思う」

 

『なんでや!?』『もっと配信ふやそう!』

 

『もっと零二ちゃんに会いたいんじゃ~』

 

『歌枠は?』『ゲーム配信希望!』

 

「あ、あはは。思ったよりもこの姿って好評だね?でも、僕は普段は音楽を作ったりで忙しいから、本当にたまにしか配信しないと思う。歌枠は、やれたらかな」

 

『なら仕方ない』『全部一人でやってるの?』

 

『零二ちゃん、マジカル☆ブシドームサシの映画の歌を歌ったってほんと!?』

 

「そっか、そう言えば今日が予告の動画が投稿される日だったね。今回のマジカル☆ブシドームサシの劇場版の主題歌は僕が歌わせて貰ったよ、よかったら皆も見に行ってね」

 

『マ?』『ちょっと確認してくる』

 

『曲聞くためだけに映画館行ってくるわ』

 

『↑ちゃんと映画見ろよ!?』

 

『それより配信増やすことを希望』

 

『曲作りながら配信は?』『←無理だろ!?』

 

思ったよりもうまく話せてる

 

「それと、こんど上げる曲は明るい感じの物にしようと思っています。あと、僕の都合で急遽配信を切ったり、辞めたりすることがあるから、そこの所は注意してほしいです。さて、残りの数十分は雑談にしようかな」

 

そんな感じで00改めVTuber零二は、ネットの世界にデビューを果たした

 

 

 

 






久しぶりです、少し回復しましたので投稿しました

ご愛読ありがとうございます

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よろしくお願いします



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~家族孝行?/新たなメモリ~

 

ワタルside

 

 

久しぶりに父さんと母さんが家に帰ってきた。士郎やイリヤ達は今、下の皆で楽しそうに話している。どうやら明々後日にはまた仕事で出掛けるらしいけどね、それを聞き僕は例のチケットと日にちを確認する。

 

確認しているのは現在公開しているマジカルブシドー☆ムサシの映画のチケット。僕が主題歌を歌わせて貰った際に、会社で最終的は打ち合わせをしたときに頂いた映画のチケット6枚、なら僕を抜いた家のみんな分になる。

 

せっかくの父さん達の休みだ、家族で団欒して来て欲しい。イリヤや士郎達の()()()()()で映画でも見に行って楽しんできて欲しい。

僕は行けない、配信をしようかと思っているのが理由の1つだが、一番の理由はあの化け物が現れたときの対処だ。獣の勘で気付けても家族と一緒なら行動できないかもしれない。

 

映画のチケットを見たところ、公開中ならばいつでも良いらしいら、なら明日一番後ろの席を6つ予約しておこうかな。もしダメだったらキャンセルするし、そう思いながらパソコンで新都のショッピングモールの中の映画館のサイトで予約する。

 

「これでよし」

 

そう呟きながらポケットにチケットを忍ばせる、この後みんなでご飯を食べる事になっているしこの事を伝えたらイリヤ達はきっと喜ぶかな?

 

そう思いながら、パソコンの画面をスリープさせ立ち上がる。背後の部屋の扉に人の気配を感じたから恐らくはご飯だと伝えに来たのだろう

 

「ワタル、ご飯だよ。」

 

リズの声が聞こえ、直ぐに扉を開けると僅かに驚いていた。

 

「珍しい、ワタルが直ぐに出てくるなんて」

 

「アハハ、今日くらいわね。母さん達も来てるし………あれ?」

 

改めて見るとリズの手にはハガキくらいの小さな箱があった。

 

「あ、これワタル宛。さっき届いたみたい」

 

「え?あぁ、ありがと……」

 

最近は通販で何も買っていないはずなんだけど、何か頼んでたのかな?チャンネル登録者の奴なら前に来たんだけどな…………。そう思いながら荷物を受け取り、取り敢えず机のパソコンの横に置いて部屋を出てリズと一緒に下の階に降りていくと、テーブルにみんなが座っていて僕待ちだったみたい

 

「お、来たなワタル」

 

「う、うん。ごめん、待たせちゃった?」

 

「大丈夫よ、ちょうど料理が並んだところだから」

 

母さんに言われ、少し安堵しながらテーブルに付く。そのあと、母さんや父さんに最近の学校の様子を楽しそうに話す士郎やイリヤを横で見ながらご飯を食べた。

正直、僕はあまり話せるようなことは無い。学校では友達がいない、一応新都の薫ちゃんは友達だけど同じ学校の友達じゃないし、士郎の様に部活で何かの大会に参加した訳でもない。

 

でも、楽しそうに話すみんなを見ているだけで僕は満足だった。ご飯を食べ終え、みんなが一息付いた。そろそろ、良いかな

 

「あの、さ。父さんと母さんは明後日まで家にいるんだよね?」

 

「あぁ、そうだね。」

 

「えぇ、まだ仕事が残ってるの。」

 

「よかったら何だけどさ、その……みんなに渡したい物があって」

 

僕の言葉にみんな不思議そうに首をかしげるなか、ポケットから映画のチケットを取り出して机の上に皆に見えるように出すと、イリヤが「あ」と声を漏らしリズは僅かに目を見開いていた。

 

やっぱり二人は知ってるよね

 

「父さんにイリヤや母さん、士郎にセラやリズで映画に行ってきなよ。久しぶりに父さん達も帰ってきたんだし家族で出掛けて楽しんで来て」

 

そう言いながらチケットを六枚広げる。簡単には言えば僕のこの映画のチケットは特別だ。

 

「まぁ、映画ね!」

 

「これ、明日から映画館で公開のマジカルブシドー☆ムサシの映画のチケット!?しかも初回限定の舞台挨拶が付いてる特別なチケットだよ!?中々予約が取れなくてリズと一緒に諦めてたのになんでワタルお兄ちゃんがこれを!?」

 

「えっと、その……」

 

さすがに自分が主題歌を歌っているからそのコネ、なんて、言えない………僕が00である事はリズと母さん以外には秘密なのだから。でも映画の主題歌の件はまだ二人には言ってないからちょっとしたドッキリだ。

 

「ちょっとしたコネ、みたいな物かな。イリヤやリズが話してたから少し頼んでみたんだ」

 

「あれ?ねぇワタルお兄ちゃん、チケット六枚しかないよ?」

 

「あー、流石に急な話だったからそれしか頼めなくてさ。僕は良いから、皆で楽しんで来てよ」

 

そう言いながら頭を片手でかく。

 

「じゃあワタルお兄ちゃんは一緒に来ないの?」

 

「アハハ、ごめんね。セラやリズも楽しんできてね」

 

「良いのかい、ワタル?」

 

「せめて、一緒に来るぐらい良いしましょうよワタル」

 

「父さんに母さん………アハハ、折角だし。じゃあ一緒に行くぐらいなら大丈夫かな」

 

配信は告知しておいて無くて良かったな。そう思いながら、僕はそう返事し自室へと戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、製作を終えた曲を投稿した僕は休憩がてらリズの持ってきてくれた荷物の紙箱を開けていた。

 

ましかして、忘れてるだけで何か頼んでたのかな?

 

そう思いながら箱を開けて中を見ると、そこにあったのは僕の持つガイアメモリより僅かに大きく所々が変形したUSBメモリらしき物だった。

 

「原作にない、ガイアメモリ………」

 

取り出してみるとそれは黒と銀を合わせたカラーリング、そしてまるでバイクや自転車のような車輪にデザインされたBのアルファベット、縁に描かれている文字を見る

 

「えっと、B、I、K、E……バイク………」

 

バイクメモリ、原作に存在しなかった僕の知らない未知のメモリ。このメモリの送り主を調べようと先程の箱を見ると送り主の文字が滲んで読めなくなっていた。

 

そう言えば、元々仮面ライダーとはライダー……つまりはバイク乗り。だとしたらこのメモリ、名前から予想すると……いや、そんな仮面ライダービルドのアイテムのような事は有り得るのか?確かに仮面ライダービルドは仮面ライダーWは近いものがあるけど。だが、もしそうだとしたら室内はまずい。

 

そう思いながらメモリだけを持ってきてこっそりと静かな家の廊下を歩き、皆を起こさないように玄関を出た。通路に出て、近くに誰もいないことを確認し、僕はメモリのボタンを押した

 

【BIKE!】

 

ボタンを押したとき、バイクと音声が鳴り微かにだがBの文字が光ったように見えた。もう一度、ボタンを押す

 

【BIKE!MAXIMUM DRIVE!】

 

その音声と共にメモリが変形し出した。だんだんと変形していく姿は何故か某車変形ロボットを思い浮かべる。やがてバイクの形となったメモリは巨大化し、僕が乗れるくらいの大きさに変化していた。

 

夜空に浮かぶ月に反射して輝く銀色のホディ、ハンドルの部分はまるでファングメモリのメモリモードの恐竜のようなデザインは、白亜の恐竜を思い浮かべる。

 

バイクのハンドル付近には小さなボタンがある以外は普通のバイクと同じだ。ボタンにはRのアルファベットが描かれている

 

Rか思い付くのは………Ride、Lite、LIVE、流石にLauncher(ランチャー)はない、よね?

 

そう思いながら恐る恐るそのボタンを押す

 

【Re:Formation】

 

聞こえてきた音声はまさかの予想斜め上だった、ファイズのアクセルフォームが解除される音声と共に元のUSBメモリへと戻ったバイクを見て、僕はそう思った。

 

取り敢えず、前世でバイクは少しだけど乗ったことがあるからその時の事を思い出せば乗れるっちゃ乗れるかな?

 

そう思いながら家へと戻り明日に備え眠ることにした。

 

どうか、明日は皆で平和に過ごせます様に。

 

 

 







ご愛読ありがとうございます

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また、書いて欲しいifの物語。もしオリ主が別のライダーだったらを募集しています。

もし希望がありましたら、活動報告へのコメントお願いします



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~Iの驚愕/ゲームはほどほどに~

最近は主人公のifで遊戯王や仮面ライダーウィザード、ウルトラマンゼロを考えています。
また、アンケートしているワタルの仮面ライダーバレは早くした方が良いんでしょうか?



ワタルside

 

 

今日、僕は皆と共に新都のショッピングモールへと家族皆で遊びに来ていた。まぁ、僕は皆の付き添いみたいなものだけどね?

 

映画の上映している間は近くのカフェかネカフェにでも入って時間を潰そうかと考えている。そう言えば、ショッピングモールにはゲームセンターもあったっけ?なら先にそっちで遊んでから行こうかな。

 

そう言えば士郎は最初こそ行くのを渋っていたっけ?まぁ、高校生が小学生向け。前世でいったらプリキュアの映画に行くのは確かに抵抗があるかもだけど、母さんとイリヤのお願いには勝てなかったみたいで今はイリヤ達と映画館の売店でポップコーンを買っている。

 

今は僕と母さんがこうして皆が来るのを待っている感じになっていた。

 

「ワタル、本当に良かったの?」

 

「うん、みんなに楽しんで貰おうと思ってチケットを貰ったから。僕は近くで時間を潰すから、母さんも楽しんできてね」

 

そう言いながら笑い掛けると、母さんは優しく微笑み頷いた。ふと見るとシアターのおる部屋に向かう場所でイリヤが此方へと手を振っていた。どうやら売店でポップコーンやジュースを買い終えたみたいだ。

 

「それじゃあ、行ってくるわね」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

母さんとリズ、驚いてくれるかな。そう思いながら僕はゲームセンターへと歩みを進める。やはり、マジカル☆ブシドームサシのアニメが人気なのか沢山のムサシや今映画のヒロインの少女のぬいぐるみが景品になっている。

 

イリヤ達に取ってこようかな?

 

自慢じゃないけど、前世でUFOキャッチャーは得意だったから。取り敢えずイリヤとりズの分としてムサシと映画のヒロインの大きめのぬいぐるみをそれぞれ一つずつ1000円以内で取り、近くに置かれたビニール袋に入れる。

 

よし、次いでだしお菓子でも今のうちに稼ぐか。そう思いながらお菓子が景品のUFOキャッチャーを眺めながら歩き目についた物をどんどん手に入れていく。グミ、うまい棒、普通より大きなカツ。通常より大きなサイズのカップ麺にポテトチップス景品のはいるビニール袋がどんどんと増えていき、僕は買い物のカートを持ってきてその中にお菓子の入った袋を入れ、カートを圧しながらまた別のUFOキャッチャーへと向かう。やっぱりゲームは楽しいな………

 

そう思いながら僕は更に景品を求めてUFOキャッチャーの並ぶゲームセンターの奥へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリスフィールside

 

 

久しぶりにイリヤやシロウ、ワタルが達がいる家へと帰りった私は次の日、家族のみんなと共に新都のショッピングモールへと来ていた。それもワタルがイリヤの好きなマジカル……ええっと、なんだったかしら?そのアニメの映画の特別なチケットを貰ったから皆で行ってきてという発言から始まった。

 

でもチケットは六枚分しか無くて、ワタルは自分は良いからと私達が見に行く事になった。ワタルは昔から、あまり欲を出さない子だった。最初の誕生日にパソコンが欲しいと言われてから、何が欲しいかと聞けば『僕よりイリヤに買って上げて』や『僕はいいよ、そう言えば士郎が欲しいものがあるって話してたから、士郎のを買って上げて』と言われたり。自分よりみんなを、ワタルはずっとその考えを変えなかった。

 

たから、せめて私達だけが行くのではなくワタルも。そう言えば、ワタルは少し困ったような顔をした後に一緒に行くと言ってくれた。

 

そうして今日、映画館のあるショッピングモールへと来ていた。私達が映画を見ている間、ワタルはゲームセンター等で時間を潰すらしい。

 

ゲームセンターに行くワタルと別れて、イリヤ達のいる第3シアタールームへと入る。シアターの前には恐らく本日みる映画と思われるポスターが張られている。シアターに入り一番後ろの席にイリヤ達が座って此方へと手招きしていたので、私も一番後ろの席に座る。

 

席の順番としてキリツグ、シロウ、イリヤ、私、リズ、セラなのね。なんでもアニメの内容が分からないシロウや私達に教えるためアニメに詳しいイリヤとリズが分からないことがあったら解説するためらしい。

 

そう言えば、私って考えてみれば映画を見に映画館へと来たのって初めてね。もう大人、それよ三人の子供がいるけどちょっとワクワクするわね。そんな事を考えていると、ブザーが鳴り目の前のスクリーンに文字が浮かび上がる。

 

『劇場版マジカルブシドー☆ムサシ!

  Crosse World war~少女達の絆~』

『えぇ、これより劇場版マジカルブシドー☆ムサシCrosse World war~少女達の絆~の特別舞台挨拶を進めさせて頂きます。それではゲストの皆さま、どうぞ此方に』

 

司会の女性の声の後ににステージに数人の人達が現れる。

 

『皆様、こんにちわ!マジカルブシドー☆ムサシのムサシを演じている■■■■でーす!』

 

『今回のヒロイン、黒薙ユウナを演じさせていただきました■■■■と申します』

 

主人公とこの映画のヒロインを演じる声優のようね

 

『あれ?確かもう一人ゲストとして呼ばれてるって聞いたんどけど……』

 

『えぇ、本作の主題歌を作詞作曲をして頂いた方をお呼びする予定でしたが、ご本人は顔出しをしておらず今回はこの後ろにあるスクリーンにゲストさんからの動画が届いていますので、まず放送させて頂きます』

 

そう言うと司会や声優さんの後ろのスクリーンに幸薄そうな白髪でオッドアイでセミロングで可愛らしい女の子がセーラー服を着ているというか、どちらかと言えば着せられている感じで映っていた。え、うそ………

 

そのキャラクターには見覚えがあった、いや自分が見つけワタルへと冗談も込めて見せたキャラクター。

 

『え、えっともう始まってるかな?』

 

そしてその姿、00としての声に私は、いや私とリズは口を大きく開いて驚いていた。

 

『こんにちわ、〔劇場版マジカルブシドー☆ムサシ!Crosse World war~少女達の絆~〕の主題歌を作詞作曲をさせて頂きました。零二と言います、えぇと……その、00って名前で活動させて頂いています』

 

そう、この映画の主題歌を歌ったのはワタルだったのだ。

 

『えっと、今回はこの映画の主題歌を精一杯歌わせて貰いました!今回の映画のヒロインであるユウナちゃんの気持ちの変化や、物語とマッチした曲となるよう考えたので最後まで聞いてもらえれたら嬉しいです!』

 

『はい!と言う事で今回の映画の主題歌、最近はVTuberとしてもネット上で活動している有名音楽投稿者00さんからのメッセージでした。どうですか?■■■さんに■■さん』

 

『いやぁ、本当に驚いたよ。まさか、零二が主題歌を担当するなんて!本当に初期から応援している側としてはとても感動するわね』

 

『私は最近、00さんの曲を知ったんですけど本当に凄いですよね。毎日新しい曲が投稿されるんですし、どれだけ歌詞が頭に浮かんでるんでしょう』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんなワタルの声が脳内で再生された。まさかコネで貰ったと言うより報酬の方が正しいんじゃ?そう思いながら隣を見るとリズも珍しく瞳を見開いて驚いていた。

 

「リズ、この事は」

 

「知りません、びっくりした……」

 

これは家に帰ってから沢山褒めてあげないとね?

 

そう思いながら舞台挨拶が終わり、始まる映画へと意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

僕は今、凄く後悔していた。

 

UFOキャッチャーが楽しくなりあれよこれよとおやつや欲しいフィギュアを入手。実際として1万円近く使った結果。カート2台分の量となってしまっていたからだ。

 

不味い、とるのに夢中で持ち帰る方法の方を考えるの忘れてたなぁ

 

「やらかした………取り敢えずそろそろ映画も終わるだろうし荷物を先に車に置いて来るしかないか」

 

原作とは違い、衛宮家は人が多く父さんの車も大きく大人数が乗れる車へと変わっていた。携帯を見ると映画が終わる時間を差しており、時間としてはちょうどお昼時だ。

 

「取り敢えず持っていくしか無いかな……はぁ」

 

ただでさえ景品を取りすぎて他のお客さんから視線が来てるのに、2台のカートを押して家族に行くとしたら移動するのキにもっと視線が……

 

「あれ、もしかして渡?」

 

ふと、聞き覚えのある声が聞こえ振り返るとそこにはポニーテールに纏め、制服をきた僕と同じくらいの歳の女の子。以前に新都に来たときに友達になった桜井 薫さんが立っていた。

 

「さ、桜井さん!?」

 

「やっぱり渡だ、久しぶり。ところでさそれって」

 

「あ、アハハ……その、ゲームに夢中に成っちゃって気が付いたら景品が増えすぎちゃって」

 

「え!じゃ、じゃあこれ全部UFOキャッチャーで取ったの!?」

 

そう言って二つのカートをギョッと見る薫さん

 

「凄いね、渡ってゲーム上手いの?」

 

「そ、そうだね。ゲームセンターのゲームならUFOキャッチャーが得意かな。そう言えば、悠里ちゃんは?」

 

「あぁ、そろそろ終わる頃だと思うんどけどさ映画見てるのよ。悠里、特撮以外にもアニメが大好きでさ、たまたま応募したマジカルブシドー☆ムサシのチケットがあたって今ごろ楽しんでるよ」

 

「それってもしかして舞台挨拶がついてる奴?」

 

「よく知ってるね。もしかして渡くんも好きなの?」

 

まさか、イリヤ達と同じ映画館で見てるとは。しかも結構幼いのに一人で見に行けるなんて凄いな悠里ちゃん

 

「じ、実は僕の妹が好きで。家族みんなで映画を見に来てたんだ。」

 

「そうだったんだ。よかったらそのカート片方押していって上げよっか?そろそろ映画も終わるだろうし、悠里を迎えに行くついでに」

 

「本当に!?助かるよ、一人でどうしようと思ってたからさ」

 

「まさか、今まで一人でこのカート押してたの?」

 

「アハハ、少し位ならいけると思って。よかったら何個かお菓子とかぬいぐるみをあげるよ、好きなの取って良いから。」

 

「え?いいの、ならお言葉に甘えちゃおうかな!」

 

そう言ってカートからいくつかのお菓子を見繕う桜井薫さんと一緒にカートを押しながら映画館の入り口近くまで向かう。久しぶりに会ったのもあり、薫さんとの会話が進んだ。なんの勉強が得意だとか、最近は悠里の身長が少し伸びてきたとか。こんな歌がオススメとか、ふと映画館の入り口見ると、映画館の方から人がチラホラと出ていくのが見える。

 

「タイミング良く終わったみたいだね」

 

「そうだね」

 

すると入り口から此方へとイリヤより幼いセミロングの女の子が走ってきていた。

 

「あ、お兄さん」

 

「久しぶりだね、元気だった?」

 

「ん!」

 

膝を付いて悠里ちゃんの視線に合わせそう聞くとコクりと頷く悠里ちゃん。

 

「悠里、渡がこの中から好きなお菓子をくれるって!」

 

「!ありがとうお兄さん」

 

そう言ってカートの景品が入った袋を物色し始める悠里ちゃん。するとお得意様用のチョコボーを選んでいた。

 

「これ!」

 

「うん、いいよ。大事に食べてね」

 

そう言って頭を撫でる。すると悠里ちゃんは気持ち良さそうに目を細める。イリヤは頭を撫でた事はないし、そもそもイリヤは士郎が担当だから初めて妹みたいな感じの子を撫でたけど、こんな感じなんだ。

そんな事を考えていると母さん達が映画館から出てくるのが見えた。

 

「じゃあ、母さん達も出てきたから。カート、ありがとう」

 

「うん。じゃあね」

 

「バイバイ!」

 

そう言って手を振り、帰っていく二人に手を振り替えし振り返ると母さん達がポカーンとした感じで僕の方を見つめていた。や、やっぱりUFOキャッチャーの景品取りすぎたかな?そう思いながら二つのカートを押して母さん達の元へと向かう。

 

「えっと、映画どうだった?」

 

「……………」

 

「えっと、母さん?みんな?」

 

固まっている母さん達に取り敢えず話しかけようとしたその時だった。母さんの両手が僕の肩をガシリと掴む。

 

「か、母さん!その………い、痛いんだけど」

 

や、やっぱり景品を取りすぎたの怒ってるのかな?

 

「……………たの?」

 

「えっと、母さん?」

 

母さんの顔は鬼気迫る今までにみたことがないほどに怖い顔をしていた。

 

「いつの間にあの彼女と子供を作ってたの!?答えなさい渡!!」

 

「え、えぇ!?彼女に子供って、なんのこと!?」

 

「さっきの子よ!ポニーテールの子と小さなセミロングの子!!あんなに可愛くて綺麗な子といつの間に子供作ってたの!?」

 

「渡、お前………」

 

「いや!違うからね!士郎!違うよ!普通に用事で買い物してただけ!」

 

てか最近の方の理由はアニメの主題歌の打ち合わせだよ!?なんでこんな事に!?

 

「まさか、以前から新都に毎日のように出掛けていたのは………」

 

新都に出掛けるの控えたいけど他のアニソンとかも頼まれてるし、行かなきゃいけないんだよ!企業案件なんだから!

 

「だから違うって!そんなに僕の信用ないの!?あの子は前に会って友達になったんだよ!彼女とかじゃないから!!それに小さい子はあの子の妹!」

 

そう言うと離された肩擦る、すこしジンジンして痛い。

 

「なーんだ、ママビックリしちゃったわ!あんまり人と話さない渡があんなに仲良さそうに話してて色々と考えちゃったわ。」

 

「そ、そんな事よりワタルお兄ちゃん!後ろの二つのカートの袋ってもしかして買い物してきた物?」

 

イリヤがそう言ってカートを指差す。うん、ナイス会話変換だよ。

 

「あぁ、違うよ。UFOキャッチャーで取った景品だよ?お菓子とかフィギュアとか色々と取りすぎちゃってさ。イリヤ達がみてた映画のキャラのフィギュアとかあるから良かったらあげるよ」

 

「え”!?」

 

「ん?」

 

「ほ、本当にUFOキャッチャーだけ?スーパーとか」

 

「UFOキャッチャーだけだけど、父さん。この荷物を車に持っていきたいんだけど、車の鍵を開けてもらって良い?」

 

「あ、あぁ。良いんだけど、1つ聞いて良いかい渡」

 

「えっと、何?」

 

「UFOキャッチャーって、こんなに取れるものなのかい?」

 

「絶対に取れないよ!?ワタルお兄ちゃんがUFOキャッチャー得意だからこんなに取れるんだよ!」

 

その後、イリヤがUFOキャッチャーでゲットしたマジカルブシドー☆ムサシのぬいぐるみやフィギュアにテンションが上がるなかで、車にカート2台分のお菓子の入った袋を置いてから、僕たちはお昼ご飯を食べるため、フードコートへと向かうのだった。

 

 

 






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〔次回予告〕

家族で映画を見にショッピングモールへと来ていた渡。

母親とショッピングモールを歩き平和な日常を過ごすなか、突如として前世で見覚えのある奴らがショッピングモールを強襲する。

突如として崩れた平穏、沢山の人の悲鳴が聞こえるなか、家族を、そして人間を守るため

渡は変身することを決意する───。

次回、運命と牙の奏でる協奏曲

~守るための戦い/仮面ライダーファング~



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~Fの戦い/守るために~

ワタルside

 

ご飯をフードコートで食べ終え、それぞれが自由にショッピングモールを見回る事になりリズとイリヤ、士郎とセラ、父さんは一人で見に行くと、一人でショッピングモールの人混みへと消えていき、結果僕と母さんが残った。

 

「取り敢えず、適当に見て歩く?」

 

「そうねワタル」

 

二人で歩いていると、カフェがあった。僕も母さんも特に見に行きたい店がなかったから、取り敢えず店内に入り、飲み物を注文する。

 

僕はカフェラテで母さんはコーヒーだ。家であまりコーヒーを飲むようなイメージなかったんどけど飲めるのかな?そんな考えを頭の隅に捨て、以前から謝らねばと思っていた事を話すため僕は口を開いた。

 

「あの、母さん。前に家出して迷惑かけちゃったよね。本当にごめんなさい」

 

そう言って頭をさげる。前に家出したとき母さんが心配してくれていたのはリズやセラさんから聞いていた。だからこそ、謝りたかった。

 

「いいの、子供を心配するのも親である私の仕事だから。ワタルこそ、大丈夫?やっぱりアレの事を、皆にも話した方が良いんじゃない?そしたらセラももう少しは渡に優しくなると思うし」

 

「いや、大丈夫。それに、士郎やイリヤに知られたら少し恥ずかしいから」

 

「そう」

 

そう言って少し悲しそうに微笑んだ母さんは話を仕切り直すように口を開いた。

 

「そう言えば凄いじゃない渡、映画の主題歌なんて」

 

「アハハ、たまたまメールが来てね。僕も映画の主題歌を歌わせて貰えるだなんて思わなかった。」

 

「またアニメとかの主題歌を頼まれたりするかもよ?期待してるわね、ワタル」

 

「ありがとう、頑張ってみるよ」

 

そう答え、ちょうどお互いに頼んでいた飲み物を飲み終わったからカフェを出る。

 

それにしても、アイツら全く出なくなったな。気配も感じないし、もしかしたらもう居ないのだろうか?

だとしたら、もう僕は戦わなくて良いのかな。

 

そんな時だった、頭の中にまるで稲妻が走るような感覚と共に後ろを振り返る。

 

「ッ!?」

 

今まで感じたことのない、アイツらに似てるけど違う気配。そして嫌な予感、獣のような感が僕に危険を知らせる。

 

「ワタル?どうしたの、怖い顔してるわよ?」

 

何だ、今の感覚は?まるで何かが起こるような気がする。今の光景は平和そのものだ、何かの間違いか?

 

「どうしたの?そろそろキリツグ達と」

 

「母さんは先に合流してて!僕は少し行ってくる!」

 

そう言って嫌な気配が最上階の隅へと走って向かう。だが気配を感じた場所には、何もいなかった。

 

「やっぱり、気のせいか?」

 

そう思っていた時だった。突如としてポケットの中に入れていたファングメモリが動き、ライブモードへと変形し家族で合流するはずであった方向を見つめる。

 

「ファング?どうかしたの?」

 

しゃがんでファングを手のひらに載せる。ファングが服の袖を噛んで先程と同じ方向へと引っ張る。

 

取り敢えずその方向へと向かう。可笑しい、なんで店に誰も居ないんだ?普通なら店員さんやお客さんがいるはずだ。そう考えていると、ビルの真ん中が空いていて飛降り防止フェンスがあり、フェンスから体を出して見ると、一階のホールに沢山の人が集まっているのが見えた。

 

そしてそこには、見覚えのある全身が黒いタイツを着てナイフや銃を持っている人達。そして人のような姿の亀が背中の甲羅にバズーカを着けている偉業の怪物。

 

本来ならこの世界に居るわけがない、そもそも存在があり得る筈がない、化け物。

 

ショッカー戦闘員とカメバズーカが広場に人を集めて何やら話をしているようだった。見ればイリヤ達も集められている場におり、イリヤは士郎の腕に捕まって怯え、士郎は少し引き攣っているものの、イリヤを守るようにしていた。父さんと母さん、そしてリズとセラはは静かにショッカー戦闘員達を睨んでいた。

 

確かにみんな魔術関係で戦えるだろうけど、シロウや沢山の人の前で戦うことは神秘と関係で出来ない。なら僕がアイツらを倒して皆を助けないと!

 

今、僕が上の階にいることは先程まで最上階の隅まで行っていたからからだろう。なら、変身してそのままフェンスから飛びとりて奇襲するしかない。怖いけど、変身すればきっと大丈夫だろう。

 

絶対にアイツらから皆を守り抜いて見せる。母さん達を傷付けさせない!

 

「行くよ、ファング」

 

ファングメモリがメモリモードへと変形すると僕の腰にはロストドライバーが巻かれる。たまたまメモリも全部持ってきてる、大丈夫。きっと出来る。倒せる、僕は仮面ライダーだろ。

 

僕はファングメモリを一度押す。

 

【FANG!】

 

メモリからその音声が鳴り響く。僕はFANGメモリをロストドライバーに装填して展開する。

 

「変身……」

 

下の人たちに聞こえない声量で呟き、フェンスを蹴り、ホールのショッカー戦闘員へと向けて飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリスフィールside

 

 

ワタルが用事を足しにドコカヘト向かった後、私はキリツグ達と合流していた。

 

「それにしても、ワタルは何処へ行ったんだろうね?」

 

「分からないわ、トイレかしら?直接お手洗いに行くと言えば良いのに」

 

「ハハハ、ワタルは恥ずかしがりなんだろうね。取り敢えず、みんなは揃ったし後はワタルが来るのを待つだけか」

 

イリヤとシロウが、リズとセラが話す中で突如としてその場で発砲音がなった。

 

「ッ!?」

 

「今の何!?」

 

回りの人たちが突如として聞こえてきた銃声にガヤガヤと騒ぎだす人たち。

 

思わず私とキリツグが身構え、銃声の聞こえてきた方を見ると黒いタイツに骨のようなデザインのイラストが描かれていた人たちが手にナイフや銃を持ってたっていた。そしてその後ろにはまるで亀が人になったのような化け物がたっている。

 

「イッー!静かにしろ、そしてその中央に集まれ、少しでも抵抗するなら命は無いぞ!!」

 

回りの人たちはあの男に従い、中央のホールへと進んでいく。ヒソヒソと話し声が聞こえる。

 

『これって何かのイベントか?』『でも、あの銃とか本物っぽいよ?』

 

と、さまざまな声が聞こえるなか私はワタルの安否が気になった。私たちは固まっているから良いがワタルこの人混みの中に集められているのだろうか?

 

「ズゥーカー!この世界には仮面ライダーがいないのは調査済み。この世界なら邪魔されない!さぁ、大ショッカーの侵略の第一歩として貴様らを我らのアジトへとつれて行き、改造しショッカーとなって貰う!」

 

その発言にその場の人たちが騒ぎだすなか、一人の男性が亀のような化け物へと近付き口を開く。

 

「おいおい、何みんなびびってるんだよ?これは何かのイベントだろ?俺は帰らせて貰うぜ!」

 

そう言って帰ろうとした男性を近くにいた黒いタイツの男が男性の首を掴んで止める。

 

「うぐ!?」

 

「貴様らは生きて帰さん!我々ショッカーの改造手術を受けて貰う。貴様らも偉大なるショッカーの一員となるのだ!」

 

そう言ってそのまま人混みの中に投げ飛ばされる。その行動に回りの人たちが事態の深刻さを飲み込み始める。

 

「…お兄ちゃん」

 

「大丈夫、イリヤは俺が守る。だから大丈夫だ」

 

怯えたイリヤをシロウが励ますが僅かに声が震えている。やはり怖いと言う感情はあるがイリヤを守るために押し殺している、リズとセラは私とキリツグの方へと小声で話しかけてくる。

 

「アイリスフィール様、キリツグ様。どうしますか?」

 

「イリヤとシロウがいるから下手に魔術は使えない」

 

あの男達が異様なほどに力が強いのはさっきの男性のお陰か理解できた。

 

それにあの化け物が行っていた言葉を整理するなら私たちはショッカーと呼ばれる何かのアジトへと連れていかれて改造手術を施される。それは任意ではなく、強制。

 

そもそもショッカーとは一体何?魔術師では無さそうだけど。もし抵抗しても、私やキリツグ達では分が悪い。

 

「ワタル、大丈夫かな……」

 

「きっと、ワタルなら大丈夫よ。」

 

リズの呟きにそう答えたその時だった。

 

【FANG!】

 

その電子音声が聞こえた、次の瞬間私たちが動かないように見張っていた黒い男の内1体が真上から降ってきた何かに蹴りつけられ、亀のような化け物の方へと跳んでいく。

 

現れたのは、異形の何かだった。鋭的な体に赤い複眼、真っ白な体の何かがたっていた。

 

その異形な存在を前に亀の化け物達はまるで怯えるような声色で呟いた。

 

「まさか、そんなバカな!?この世界には仮面ライダーは存在しないはず!?」

 

そんな彼らに対し、まるで私たちを守るように白い異形な存在は片手を水平に伸ばす。

 

仮面ライダー?さっき、あの化け物が言っていた言葉。恐らくはあの異形な存在の名前なのだろうか?

 

そう思いながら私は白い異形な存在を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタルside

 

 

飛び降り、近くよショッカー戦闘員を蹴飛ばし僕はどうにか着地することができた。

それにしても仮面ライダーの姿で沢山の人の前に現れたのは初めてだよな。

 

「まさか、そんなバカな!この世界には仮面ライダーは存在しないはず!」

 

カメバズーカ、仮面ライダーV3に登場した怪人。

恐らく今の発言から考えるならば、この世界のように仮面ライダーにまだ滅ぼされていない世界のショッカー。それも時空を越えられる装置を開発した奴らがこの世界を侵略しようとして仮面ライダーの存在しないはずの世界へと来た。

 

そう、Fate Kaleid linerプリズマ☆イリヤの世界に。だけど、この世界には僕がいる。本来ならいない仮面ライダーと言う力をもったイレギュラー。

 

後ろの人たちを守るように手を広げ、ショッカー戦闘員達を睨む。取り敢えず今は戦うことより先にこの場の人たちを逃がす事が優先か?

 

なら、取り敢えず近くのショッカー戦闘員をやるしかない。

 

僕はベルトのファングメモリの角を2度倒す。

 

【SHOULDER FANG!】

 

獣の叫び声と共に僕の方に牙のような形をした刃が現れる。

 

僕はそれを掴み、ショッカー戦闘員達へと向けて投げる。ショルダーファングは回転しながら跳んで行きショッカー戦闘員達を何体か切り裂く。

 

ショルダーファングに切り裂きショッカー戦闘員達は倒れ爆散する。

 

取り敢えずこれで逃げやすくはなったはず

 

「今のうちに逃げろ!!」

 

大声でそう言うと後ろにはいた人たちが出口へと走り始める。それをショッカー戦闘員達が許すはずもなく、逃げる人たちへと向かおうとする戦闘員に即場近付いて蹴り跳ばす。

 

足には人を蹴った感触が残り、夢に見たような戦いではないことが実感させられる。今はその感触を無視ししひたすらショッカー戦闘員を逃げる人達へと向かわせないよう、接近して戦闘員の振るうナイフを避けて蹴りを叩き込む。

 

ショッカー戦闘員は強い、実際に戦ってみればわかる。

 

ショッカー戦闘員は仮面ライダー1号に簡単にやられるのを見て雑魚だと感しるかもしれないが、ショッカーも改造手術を受けた怪人。

 

あれは本郷猛や十文字勇人が強かったから、同じ改造手術を受けたから簡単には倒せた、でも僕は改造手術を受けてない、普通の人間が変身して、戦闘経験が浅い僕からすれば、十分に強い敵だ。

 

「イッー!」

 

だけど、流石に数が多い。早速だけど追加されたメモリを使う時が来たみたいだな。

 

僕は赤く、アルファベットのHが燃えるようなデザインのメモリ。ヒートメモリを取り出してボタンを押しベルト側面にあるマキシマムスロットへと装填する。

 

【HEAT!】

 

僕はベルトのファングの角を2度倒す。肩に現れたショルダーファングを掴み、ショッカー戦闘員2、3人へと狙いを定める。

 

この技の練習は何度もした、外さない。

 

【SHOULDER FANG HEAT!】

 

投げたショルダーファングは回転しながら燃え上がり炎の軌跡を残しながらショッカー戦闘員3人を斬り付ける。

 

燃え上がる牙(バーニングファング)!」

 

技名を叫ぶと共にショッカー戦闘員が爆散し、残ったのはカメバズカーカのみ。

 

「ズゥーカー!」

 

その声と共にカメバズーカが此方へと甲羅の背中に付いているバズーカを放つ。チラリと背後を見ると人は居なくなっていた。恐らくはショッカー戦闘員との戦闘中に逃しきる事ができたみたいだ。

 

僕は即座に横へと転んで避け、ファングメモリの角を倒す。

 

【ARM FANG!】

 

右手に牙のような刃、アームファング装着され僕はそのままカメバズーカに接近して斬り付けようと腕を振るう。だが刃が届く前にカメバズーカの甲羅で防御されてしまう。

 

「硬い!」

 

「死ね、仮面ライダーァァア!!」

 

「まず!?」

 

その声と共にカメバズーカの頭突きを食らってしまった。頭が揺れ、体から力が抜け膝を付き添うなるがどうにかたったままカメバズーカからバク転し距離を取る。

 

考えてみれば、カメバズーカは体内に爆弾が仕掛けられている。このまま倒したら、町もみんなも死んでしまう。

 

なら、どうすれば………そうだ。爆発させなせないで倒す。爆弾を起動させないよう温度を下げ()()()()()()で斬れば、行ける。

 

僕はマキシマムスロットからHEATメモリを抜き取り水色のUSBメモリを取り出す。メモリにはIのアルファベットが溶けるようなデザインで描かれている。アイスエイジメモリをマキシマムスロットへと装填しファングメモリを倒す。

 

【ARM FANG ICEAGE!】

 

その音声と共に通常のアームファングが右手に生成され、アームファングの刃を覆うように氷が現れ、通常より大きな刃となる。

 

凍てつく牙(フリージングファング)

 

冷気を放出するアームファングを前へと構え、再びカメバズーカへと接近する。そしてカメバズーカが此方へと甲羅を向けてくるのでそのまま飛び上がりカメバズーカの正面へと着地してそのまま横凪にアームファングを振るう。

 

確かな感触が腕に残り、僕は即座に離れる。

 

「これ以上俺にダメージを与えると身体の中の爆弾が……ナニ!?」

 

カメバズーカは突如として話すのを止め、先程攻撃された腹部を見ると腹部から上半身、下半身へと少しづつ凍り始めていた。

 

フリージングファングは相手を斬り付ける事で対象を凍らせ動きを鈍らせる技。

 

「これなら、爆弾が爆発する前にお前を倒せる。爆弾だけを凍結させれば後はお前を倒すだけだ」

 

僕はファングメモリの角を三度倒す。

 

【FANG MAXIMUM DRIVE!】

 

「はぁぁぁぁぁぁ……ッ!」

 

その音声が鳴り響き、右足にマキシマムセイバーが現れて淡く発行する。僕は足に力を込めて飛び上がりカメバズーカへと回転しながら近付き足のマキシマムセイバーで回し蹴りの要領で切り裂く。

 

するとカメバズーカのカラダガ足や手から体へと凍りついて行く。

 

「覚えていろ、仮面ライダーァァァァア!例え私が倒れても、我々大ショッカーは侵略を続けるぞ!ショッカー、ばんざァァァァァァァァイ!」

 

カメバズーカがそう叫び声を上げた瞬間にカメバズーカは凍りつき、次の瞬間には跡形もなく砕け散った。

 

取り敢えず、カメバズーカの爆弾を爆発させずに倒せたことに安堵し息を吐いた。世界を越える力をもったショッカーか、もし僕と同じような転生者。それもディケイドやジオウのような存在がいれば、止めることが出来るかも知れない。

 

取り敢えず、奴らがこの世界に手を出すようなら僕は戦う。また、戦わないと行かない。この力を手にした代償として。

 

そんな事を考えていると、外からサイレンの音が聞こえてくる。まずい、このままここにいたら確実に怪しいのは僕だ。

 

取り敢えず逃げるしかないか。そう思いながら近くの監視カメラの無い物陰へと移動し、ベルトからメモリを抜き取る。

 

そして裏口と思わしき場所から外に出てからスマホを確認するとを見ると沢山の着信が来ていた。

 

取り敢えず、電話をかけ返す。

 

「もしもし!渡!無事!?」

 

聞いたことのないリズの大声に思わず耳がキーンとなりスマホと耳を離す。

 

「だ、大丈夫だよリズ。母さん達は?」

 

「大丈夫、みんな一緒にデパートの近くの公園にいるよ」

 

「ならよかった。取り敢えず、合流したいんだけど、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ……え?はい、どうぞ」

 

ん?誰かに変わるのか?

 

「もしもし、渡?」

 

聞こえてきたのは母さんの声だった。でもいつも優しげなはずの母さんの声は何処か固く感じた。

 

「母さん?」

 

「ワタル、後で少し話があるわ。」

 

その声はいつになく真剣な声色で思わず体が震える。

 

「え?」

 

「分かったわね?」

 

「う、うん。」

 

「ありがとう、じゃあ速く戻ってくるのよ。ワタル」

 

母さんのその声を最後に通話が切れた。

 

まさか、僕だとバレたのか?あの姿の僕がワタルだとバレたのか?だとしたら僕は、今度こそあの家から消えた方が、出ていった方が良い。

 

そんな事を考えながら僕はみんなと合流するためにみんながいると値う公園へと向かうのだった。

 

 

 

 






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~Fの変身/息子だから~

ワタルside

 

 

公園で母さんやイリヤ達と合流した僕は、母さんに話があると言われイリヤ達から少し離れたベンチのある場所へと連れ出された。

 

取り敢えず、ベンチに座ると母さんが僕の隣に座り真剣な目で僕を見つめてくる。やっぱり僕がファングだとバレてしまったのだろうか?

 

「ワタル、どうして電話に出なかったの?」

 

カメバズーカと呼ばれる怪人と戦っていた、なんて本当の事は言える訳がない。気配を感じて調べるために、とっさに口から出た言葉が()()()()()だった。誤魔化すための言葉なんて用意していなかった。すぐに戻ってくるつもりだったから、でも奴らが現れた。

 

戦闘中に通話なんて出られる訳がない、それに僕がファングだとバレてしまう。

 

「ごめん母さん、その……本屋にいたから携帯をマナーモードにしたままで、電話に気づかなかったんだ。」

 

そう言うと母さんは安堵した様子で僕を優しく抱き締めてきた。

 

「かあ、さん?」

 

「良かった。巻き込まれなかったのね。心配、したのよ。ワタルと別れてあんな事があって、もしワタルも巻き込まれていたらって考えて心配で心配で。ありがとうワタル、帰ってきてくれて。」

 

抱き締められ、始めていた気付いた。母さんの体が小さく震えていた、それほどに僕を心配してくれていたなんて、思わなかった。

 

僕はまだ家族として、みんなとの暮らしていて良いんだ。

 

「こっちこそ、ありがとう。心配してくれて」

 

そう言うと母さんはそっと僕を離した。みた感じ元の調子に戻ったように見える。

 

「取り敢えず、そろそろ父さん達の所に戻ろう。イリヤ達も心配してるだろうし」

 

「えぇ、そうね。戻りましょう」

 

そう言ってベンチから立ち上がり、一歩を踏み出し次の瞬間。まるで背中を水滴が伝うかのような感覚と共に頭の中で危険、今すぐ避けろと言う警報が鳴り響く。

 

「母さん!」

 

「キャッ!?」

 

母さんを横へと突き飛ばして母さんを突き飛ばした逆の方へと飛び退くと、先程までボクと母さんがいた場所を何かが地面を削りながら通りすぎた。

 

「母さん!大丈夫!?」

 

「えぇ、ワタルが押してくれたお掛けで避けられたみたい」

 

取り敢えず母さんに怪我がなく安堵し、攻撃の飛んできた方向を見るとそこには両腕にまるでカマキリのような大きな刃を着けているロボットのような怪人がたっていた。

 

「まさか、ヒューマギアまで………」

 

目の前にいる敵はベローサマギア。仮面ライダーゼロワンに現れた敵で、第一話にて仮面ライダーゼロワンに倒されているはずの敵。まさか、ショッカーは怪人だけをこの世界に送り込んでるのか?だとしたらアイツらは大ショッカーじゃなくて財団Xか?

 

とりあえず、母さんを逃がさないと………変身も何も出来ない。でも、母さんを逃げないと言い張るかもしれない。

 

このままじゃ近くにいる士郎やイリヤ達にも危機が及んでしまう。どうすれば………思わず歯食い縛りをギリッと音がなる。

 

「母さん、僕がこいつを引き付ける。だからその間にみんなを連れて逃げて!」

 

「ダメよ!そんな事をしたら……ワタルが逃げなさい!子を守るのは、大人の役目よ。だから、逃げないワタル」

 

逃げるよう促すが、即座に断られてしまう。そしてそう言って僕の肩に手を置く母さんの顔は、まるで僕を安心させるかのように笑っていた。でも、この笑顔はダメだ。僕を逃がしてこの人は死ぬつもりだ。

 

そんな事になったら、更にこの世界が崩れていく。なら、せめて僕が守らないと。

 

僕は母さんの前に出て、ファングメモリをメモリモードで取り出す。

 

【FANG】

 

その音声と共に僕の腰にロストドライバーが現れる腰に巻かれる。

 

「母さん、貴方の息子に慣れて僕は幸せだった。」

 

「ワタル?」

 

もし、この力が原因でこんな事になったのなら僕が戦わないと、責任を取らないと。それに、母さんを守れるなら僕は家を追い出されるような事になったとしても構わない。

 

僕は守るべき家族の為に戦う、仮面ライダーとしての覚悟を決めろ、衛宮 渡。

 

「変身!」

 

ベルトへファングメモリを装填し、展開する。

 

【FANG!】

 

その音声と共に僕の体を嵐が包み、その姿を人から鋭的な見た目の白き獣へと姿を変えていく。

 

「母さんは逃げて………アイツは僕が倒すから」

 

そう言って走り出そうとして、母さんが僕の手を掴んだ。

 

「待って、渡……なのよね?さっき、あの場所で助けてくれたのも、貴方なのよね?」

 

その問いに僕は黙ってうつ向く。

 

「帰ってきて、それからで良いからその姿のこと。説明してね」

 

「………こんな、化け物の力をもつ姿を見ても貴方は僕を息子だと思ってくれるんですか…こんな血に汚れた僕でも」

 

気付けば、僕の声は震えていた。怖いのだ、今まで倒すではなく、殺し続けてきた。化け物の血で汚れている、この手を離される。罵倒される未来が。

 

「アイツを倒したら、後で全部教えて。ワタルが抱えてるもの、私に相談してくれない?」

 

「……はい、母さん」

 

そう言って僕はマギアへと向き直る。早く敵を倒す、敵が機械ならば。そう考えながらマキシマムスロットにアイスエイジのガイアメモリをセットしファングメモリの角を倒す。

 

【ARM FANG ICE AGE】

 

アームドファングの牙を上から氷が覆い、通常のアームファングより大きく、冷気を放つ牙が出来上がる。

 

敵のベローサマギアが放ってくる斬撃にショルダーファングぶつけ、ベローサマギアへと駆ける。獣のように姿勢を低く、駆け跳躍しベローサマギアへとアームファングを装備した腕を振り下ろす。だが両手を交差してその一撃を防ぐベローサマギア、俺は即座に腹部を蹴り込み離れ、さらに接近し腹部を切り裂こうと走る。

 

見れば、先ほどと同じように両腕を交差して攻撃を受け止めようとするベローサマギアが見える。俺は駆け勢いを付けて跳躍しベルトの角を三度倒した。

 

【FANG MAXIMUM DRIVE】

 

体を横へと倒し、回転しながら足に装着されたアームドファングで切り裂こうとベローサマギアへと降下する。通常の必殺技は横に回転する、上も横も受け止められるなら回転して、本体へと斬り付ければ良い。

 

見事、ベローサマギアを切り裂く。するとベローサマギアは爆散し、跡形もなく消えた。戦い終えた僕は、変身を解除し振り替えって母さんへと向かう。

 

「母さん、僕はさ………」

 

そうして僕は話した、今まで自分がしてきた事を。ファングメモリは拾ったと言う事にしてあるから、転生者と言う事はばれない。

 

「そう、そんな事があったのね」

 

「うん、だから父さんや母さん達には黙ってた。僕は、母さん達に怖がられたくない。でも、こんな風になった僕はみんなと一緒に暮らすなんて、きっと出来ないって思って」

 

「渡、あなたが例えどんなになっても、私たちの子供なのよ。だから、私は貴方を怖がったりしない、家から出ていけなんて言わないわ。ありがとう渡、教えてくれて」

 

そう言って抱き締めてくる母さんに、俺は黙った頷いた。

 

この後、ベローサマギアの事を誤魔化し父さん達と合流した。僕の秘密、ファングの姿を母さんに知られた。でも、これでよかった。

 

母さんは僕の事を息子だと、こんなになっても家にいて良いと言ってくれた。少し、気が楽になった。

 

 

 





そろそろ原作に突入しようと思います

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~配信/ドライブ~

ワタルside

 

母さんにボクがファングだとバレてから数日、たまにはと思い、零ニのアバターで背信をしていた。たまには使わないと、せっかく作って貰ったんだし。

 

そう言えば、母さんに『もう音楽活動の事もキリツグ達にバラして良いんじゃない?』って言われたけど。それはもう少しだけ待って貰った。

 

まだ、少しだけ躊躇ってる。いや、正確には話す覚悟が、1歩を踏み出せずにいる。どうするかを考えながら今日の新しい曲を作曲しながらコメント欄を眺める。そして、コメントの中で一つのコメントを見つけた。『ドライブに良い曲』か、ならアレにしようかな。

 

「あの、この中で走り屋とか。レーサーの方とかいますか?」

 

見ると、結構な数を確認できた。け、けっこう沢山の人がいた。

 

「じゃ、じゃあ今度あげる歌はそんなレース等の運転中に聞いたら良いかもしれない。そんな歌を投稿するので、楽しみにしていて下さいね」

 

そう言って配信を切り、最近新しく購入したペンタブで歌の動画に使うイラストを書く。イラストは零二がハンドルをきっている所だ。零二を書いてくれた人に歌のイラストまで書いて貰う訳にはいかないから、こうして自分でも書くようにしている。

 

それにしても、改めて零二のアバターを見るとセミロングの白髪にオッドアイのロリが運転している。かなり不思議なイラストになるんじゃ?

 

それに、ドライブ中に聞ける歌ならワンチャン父さんも、キリツグさんも聞いてくれるかもしれない。

 

歌としてはメインをこの姿である零二、サブのラップを僕が歌えば良い。そうすれば、いやあえてメインを僕が、サブを零二が歌うのもありかな?

 

それぞれ別の動画として取るのもありかな。

 

そう思いながらイラストを書き上げていると、携帯が振動した。今は配信をしているので、マナーモードにしている。さっそく見てみると、今度は別のアニメ会社から曲の依頼が来ていた。

 

内容を見ると、有名なアニメらしく前回のマジカル☆ブシドーむさしのような国民的アニメではない感じらしい。見る限り、戦場で敵同士だった男女の物語らしい。なら、あの曲が良いかな。そう思いながら曲を仕上げていく中で、配信のコメント欄の言葉を軽く読んだりしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切嗣side

 

「ドライブなんて、久しぶりだわ。」

 

「そうだね」

 

深夜。外国の道を車で走り抜ける。

 

思ったよりも速く仕事が終わりたまにはアイリとゆっくりドライブをするのも良いかなと思いラジオを付けて山道を走っていた。

 

日本にいるイリヤ達の事が少し心配だけど、セラ達がいるからきっと大丈夫だろう。そう思いながら静かな夜、外の景色を眺めながらラジオから流れる言葉に耳を聞かせる。

 

Well, let's move on to the next song!(さて、次の曲にいきましょう!)

 

Well, what's the next song?(そうね、次の曲はなにかしら?)

 

『|The next song is "Gamble Rumble" by a singer called 00!《次の曲は00と言う歌手の『Gamble Rumble』だ!》』

 

どうやら、最近日本で良く聞く00と言う歌手?の歌を流すらしいな。雰囲気的にはしっとりした物よりはテンションをあげる歌が良いのだけど。

 

『|00 song! And it's not the song just posted today! I'm looking forward to him? I'm a fan of《00の曲ね!しかも今日投稿されたばかりの歌じゃない!楽しみね、私は彼?のファンなの。》』

 

Why is it questionable?(何故疑問系なんだい?)

 

「ネットを確認するより速く聞けるなんて、ラッキーね♪」

 

ラジオの音量が上がった。見ると、アイリがラジオの音量を上げていた。もしかして、彼女の好きな歌?が流れるのだろうか?

 

それにしても、Gamble Rumbleか。歌の意味はGambleなら賭け、Rumbleなら鳴くと言った意味だったけど。

 

『|00 is a man, but the distribution uses a girl's avatar. Isn't she a loss if you don't see her so cute?《00は男だけど、配信では女の子のアバターを使ってるのよ。彼女はとても可愛いからみないと損よ?》』

 

『|Is that so? Then I'll go see it next time. By the way, please have 00 is "Gamble Rumble" again!《そうかい?なら今度見に行ってみるよ。さて、じゃ改めて00の『Gamble Rumble』をどうぞ!》』

 

その声と共にながれ出したのは、静かなピアノとギター。そして少女と思われる声のラップからリズムが加速していった。男性の歌に少女がラップを入れる、その繰り返しだ。

 

なんとなく、走りながらこうして聞くのが楽しいと感じた。

 

『Gamble, you gatta dive in to a scramble! ーミリも迷わず、一瞬の選択ですべてを失くしても、後悔は見せないで 明るく負けて泣きましょう』

 

気が付けば、曲は終わっていた。

 

なんとなく、もう一度聞きたいと感じた不思議な歌だった。それにしても00か、後で調べてみようかな。

 

アイリも好きな歌みたいだしね。

 

 



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