鏡に写りし黒き竜騎士 (プロトタイプ・ゼロ)
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第一話「黒き鏡の騎士リュウガ」
西暦2015年のどっかの季節頃。
「これからもずっと一緒にいようね!」
いつだったか、そんなことを言われた気がする。いつもニコニコして笑顔の眩しい赤髪の少女。いつも俺を引っ張っていくあの笑顔。
俺はあの笑顔を浮かべる少女が好きだった。あの子とずっと一緒に居たいと心から思っていた。頂点を意味する名を与えられたバーデックスが天から降ってくる前までは。
俺達は必死に逃げた。途中人間の醜さを思い知らされながらも、それでも一緒に生きるために逃げた。
少女は諦めなかった。生きる事を。醜い大人達を純粋な子供達を、より安全に逃げられるようにいつも努力していた。バーデックスからみんなで逃げ切れるようにしていた。
相手がどんなに醜くても死んでしまったら誰よりも悲しんで、心の中で自分に怒って……。
そして彼女は――■■■■は■の■■となった。
俺は悲しそうな笑みを浮かべながらみんなを守る■■を、ただ見ていることしか出来なかった。
それから数日が経ち、俺達は様々な神様が融合して壁を作ったという四国を目指していた。いや、違うな。正確には神樹様と呼ばれる神様のいる香川に向かっている。
途中途中で何人の人達が守りきれずにバーデックスに喰われてしまった。当然■■は血相を変えて怒ってバーデックスを殴り飛ばしたけど。
俺は何もできなかった。彼女の力になることも、彼女の心を支えることも。何も出来なかった。
だから―――
「諦めちゃダメだよ!絶対に助けるから!絶対にみんなで四国で暮らそうよ!」
涙を流しながら
どうして俺は■■を安心させられないんだろうな。■■とは違って特別な力を持つわけじゃないけど、せめて■■の支えになるぐらいにはなりたかったよ。
本当に――悔いしか残らない人生になったな。
爺ちゃんも言っていたじゃないか!
「お前は悔いのないように生きろ」
ってさ。バーデックスに喰いちぎられたかって、簡単に死んでたまるかよ!人間ってのはァ、諦めが凄く悪いんだよ!お前らのような自分勝手な神様に人間様が簡単に屈すると思うなよ!
そう心の中で叫びながら俺の意識は途絶えた。
―――目覚めよ。その気高き荒ぶる魂!
「リュウくーん!早くしないと遅刻するよー」
朝食として白ご飯、味噌汁、目玉焼きを食べ終わって支度していた俺を呼ぶ声。その声を聞いて俺はもう来たのかと思った。
俺の名前は
黒騎家は乃木家・上里家・高嶋家・土居家・伊予島家・鷲尾家・赤嶺家・弥勒家・三ノ輪家ほど権力のある名家という訳ではないが、西暦時代に存在したという勇者高嶋友奈と黒騎家初代当主が仲良かったため、神世紀の今を生きる俺の家は権力が上がった。ただそれだけの事だ。
かつての勇者と仲がよかったと言うだけで権力が上がるなんて意味が不明すぎる。
「くだらない……本当にくだらない」
勇者がなんだと言うのだ。かつて戦っていた勇者なんぞ俺には関係ないだろうに。なのに、なのに……。
「どうして、こんなにも心が悲しいんだろうな」
讃州中学の制服に着替え終わった俺は鏡で髪の毛を整えると、カバンを背負って家を出る。鏡の中で黒い龍が飛んでいくのに気づくこともなく。
〜〜〜〜
「遅いよ〜。もうちょっと早く出てきてくれてもいいじゃん」
「いつもは友奈ちゃんの方が遅いでしょ?」
「うぅ、そうだけど……」
結城友奈、東郷美森、そして俺。いつも一緒にいるメンバーであるこの三人が揃って、仲良く学校に向かっている途中、頬を膨らませた友奈に愚痴を言われる。
さっき東郷が言った通りいつもは友奈の方が出てくるのが遅くて俺が友奈を待ってから東郷を向かいに行くという構図なのだが、どうしてか今日は俺の方が遅かった。
東郷に注意されてしょんぼりしている友奈を見て苦笑いを浮かべながら頭を撫でる。友奈の髪はサラサラで撫で心地がいい。
ポニーテールにした赤い髪を見ているとどうしてか、俺の記憶にないはずの女の子が浮かび出てくる。それがいつも不思議だった。
友奈は天真爛漫で笑顔の明るい女の子だ。誰に対しても優しく接する彼女に好意を抱く男子は多い。何度かラブレターを送られたり直接告られたりしているらしい。
そして東郷美森。友奈の大親友であり大和撫子を体現させたように見える。東郷は(友奈に関することを除けば)いつも落ち着いていてお淑やかな女の子だ。
家事スキルの高い東郷は根っこからの日本大好きでよくぼた餅を作っては彼女達が属する勇者部に持ってきている。
友奈も勇者部のみんなも東郷の作るぼた餅が大好き。そんな俺もぼた餅が好きだが、正直あまり食べない方だ。
友奈以上に学校で視線を集める彼女はラブレターを貰う頻度も告白される数も多い。
まぁ、友奈も東郷も理由は知らないが全て断っているみたいだがな。風から聞いたところによると「私には好きな人がいるので」らしい。
なるほど。二人とも好きな人がいたのか。知らなかった。
「はい。友奈ちゃん、ぼた餅よ」
「っ!!わーい!私、ぼた餅大好き!」
こんなにも仲良さげな雰囲気を見ていれば、告白を断るのも分かるけどな。
「どうしたのかしら?」
俺の視線に気づいた東郷が、一体
言っておくが食べないからな?朝からぼた餅を食べるのは腹に重いから食べないからな?フリじゃねーぞ?
それを察した東郷が残念そうにぼた餅を片付ける。いやだからお前はどこから出してどこにしまってるだよ?
相変わらず謎だわ。
彼女達といっしよに居る時は俺はだいたい喋らない。別に無口とか無愛想とかではないんだ。後ろから突き刺さる恋愛煩悩でまみれた頭を持つ男子達の嫉妬の視線を避けるためだ。
ただえさえ幼馴染みと言うだけでイジメを受けているのに仲良く喋っているところを見られたらそれこそ何されるかわかったもんじゃない。
今の時代嫉妬によるイジメは別に珍しくもない。むしろ当たり前という学校が多い。あいにく讃州中学はそういった事はないが、それでもただ幼馴染みと言うだけで虐められるのはなんか違う気がする。
ちなみに虐められている事に関しては誰にも相談もしていない。相談する事で虐められるの頻度も上がるし、友奈達に心配をかけてしまう。
あとはそうだなぁ、俺の見た目が陰キャだからだろうか?確かにゲームは好きだし暇な時間はゲームしてるし、休みの日は家にいることは多い。
陰キャだから虐めてもいいという考えを持つバカも多いがな。
「ねぇねぇ、龍くん!!今日は一緒に帰れる?」
突然友奈がそんな事を言ってくる。本当にやめてほしい。俺の後ろ見てみ?嫉妬の視線が殺意に変わったぜ?
「ダメよ友奈ちゃん。友奈ちゃんは今日依頼来てたでしょ?」
そう。友奈達が属する勇者部は世のため人のために活動する部活だ。言ってみればボランティア活動のようだけど、それでも依頼とあらば駆けつけるのが彼女ら勇者部だ。
讃州中学でも何度か依頼が来ることもあるらしいな。たまに生徒がするような事じゃない依頼も来るけど。
「そうでした!今日テニス部の依頼が来てたんだった!!」
いやぁ、確かに運動神経いいと思うけど、なぜに素人に手伝ってもらおうと思ったテニス部よ。
まぁ、それ程までに人手が足りないんだろうな。うん。そうなんだろうな。
はぁ……。今日も最悪な一日になりそうだな。
〜〜〜〜
「……やっぱりな」
教室に着いた俺の一言目がこれなのは、まぁ、そうだな。いつも通り机の上に置かれている花瓶が関係しているんだろうね。
花瓶には紙が貼ってあり、大きく赤い字で「死ね」と書かれている。教室の中でクスクスと笑い声が聞こえるあたり俺が来る時間を想定して置いたんだろう。本当に勤勉な奴らだよ。
机の上に置かれた花瓶を手に取り貼ってあった紙は捨てる。花瓶を元の場所に戻すと椅子に座ってカバンを机にかける。
ドガッ!
突然蹴られた。それも見るからに悪そうな風貌の不良に。
「おいおい。みんなからの愛の篭もったプレゼントを捨てるなよ〜?」
一度目をつけた奴を徹底的に虐め尽くすという意味わからん思考の持ち主だ。まぁ、俺にとってはそこまでの存在なのだが。
「あれれ〜?無視でしゅか〜?」
ただなんだろうな。物凄く腹の立つ奴なんだよ。
一回殴って沈めたことあったけど、忘れてるんだろうねきっと。
「ちっ!面白くねぇ奴……」
俺が全無視したためどっかいってくれたよ。これで安心安心……出来るかぁ!
「よーし、ホームルーム始めるぞー」
最悪の一日、乗り越えるとするか。
所で、話は変わるんだが。
勇者という存在があるだろう?西暦の時代にいたという
でも、世間で知られている勇者の人数は
それが俺が考えている一番の謎なんだよ。
そうそう。謎と言えば……
「時が、止まっている?」
突然全ての時が止まった今のこの時間さ……謎だと思わないか?人も時計も空も全ての時が止まっている。今この教室で動いているのは俺だけだ。
そう言えば、以前大赦に行った時に勇者がどうのこうのって言ってたな。もしかしてそれが関係しているのかな?
「……鏡?」
俺の他にも動ける人が居ないかなって思ったけど誰もいなかった。だけど不思議なことにさ、トイレ行った時に鏡を覗いたら
「友奈?風先輩まで……?」
俺の知った顔がよくわからん服装しながら白い化け物と戦っているんだよ。いやはやこれは驚く。
『ギャアアンオオォォォォォォォォォンッ!!』
鏡の中を黒い龍が飛んでいく。えっ?ちょっと待って?何あれ?ええぇ!?マジでなにあれ!?
なんなんだよ。あの黒い龍は!?
「俺を…………呼んでいるのか?」
『ギャアアンオオォォォォォォォォォンッ!!』
俺の呼びかけに答えるように鏡の中にいる黒い龍が吠える。俺は鏡に近づく。
すると、ポケットに何やら重みを感じた。手を突っ込んで取り出してみると黒いカードのようなデッキがあった。取り敢えずこれを鏡に掲げてみる。すると鏡からベルトが現れて、俺の腰に装着された。
「なんだこれ?これを……入れればいいのか?」
Vバックルと言うらしいベルトにカードデッキを入れる。その瞬間、俺の周りに黒い影が出現し俺と一つになる。
『これは……仮面ライダー?リュウガ?仮面ライダーリュウガ……それが、この姿の名か』
黒い龍のような姿。なぜだかわからないけど名前も戦い方も瞬時に頭に入ってくる。
俺のやるべき事が頭に伝わる。なるほどな。
俺はリュウガの特性を使って鏡の中に飛び込んだ。
守るべき人たちを守るために…………。
〜〜〜〜
讃州中学2年の結城友奈は、昨日犬吠埼風から課題として出された文化祭の出し物を考えていた。その途中、授業中に突然東郷と共にスマホが鳴り響き樹海の中に来てしまった。
東郷と共に樹海の中に来てしまった友奈は樹と風の二人と合流し、襲ってきた乙女座の白い怪物――ヴァルゴ・バーデックスと戦っていた。
風は後輩を巻きこんだ事に対する罪悪感と責任感から。
樹は尊敬する姉と共に歩むために。
友奈は死に大して恐怖する親友と世界をを守るために。
みんながみんな、理由は違えど勇気を持って花をイメージされた勇者となる。
「勇者……パアアァァァァァァァァァァァンチッ!」
友奈の振り下げたパンチが桜の光を纏ってヴァルゴ・バーデックスの身体を抉る。だが直ぐに再生される。
内心舌打ちしながら風達の元に戻る。
「くっ……殴っても殴ってもすぐに再生してしまいます!!」
「面倒ねぇ……どうしよっか?」
大剣を担いだ風がヴァルゴ・バーデックスを睨みつける。
ヴァルゴ・バーデックスは勇者三人を相手にするのが面倒になったのか、急に向きを変える。その方向には……
「と、東郷さん!!」
友奈の親友東郷美森が車椅子に座っていた。地面が全て樹木で囲まれているため車椅子で動くには限界がある。
だからこそ上手いように動けない東郷がヴァルゴ・バーデックスに狙われた。ヴァルゴ・バーデックスの吐き出した卵のような爆弾が、東郷の周りに被弾する。
「きゃあああ!!」
「東郷さんっ!!こ、この〜!!」
東郷の悲鳴を聞いて表情に怒りを浮かべた友奈がすぐさまヴァルゴ・バーデックスに向かって跳ぶ。
「怒りの〜勇者パアアァァァァァァァァァァァンチッ!!」
思いっきり力の込めた勇者パンチがヴァルゴ・バーデックスの体を大きく抉りとる。
その直後友奈は突然吹き飛んだ。
「友奈!?」
「友奈さん!!」
吹き飛んだ友奈は樹木の下に落ちる。それを見て慌てた風が友奈を追う。
ヴァルゴ・バーデックスは抉った箇所を直即で再生させると、一発二発と爆弾を炊き出していく。
「ひっ!いやっ……!!」
恐怖で思わず手に握っていたスマホを前に掲げる。すると、
『ギャアアンオオオオォォォォォォォォォォォッ!!』
『はああああああああああっ!』
スマホの中から黒い龍と共に黒い鎧騎士がヴァルゴ・バーデックスに向かって飛び蹴りする。急の展開に対処できなかったヴァルゴ・バーデックスはそのまま地面に倒れる。
『大丈夫か?』
黒い龍を従えるように歩いてきた騎士は東郷に怪我ないかを確認する。
「え、えぇ。ええっと貴方は?」
『……リュウガだ。仮面ライダーリュウガ。それが、俺の名だ』
リュウガとなった騎士はヴァルゴ・バーデックスが起き上がったのを見て、東郷に背を向ける。
『安心しろ。お前に怪我なんざ負わせねぇ!俺が守る!』
黒き影の如し騎士リュウガは暗黒龍ドラグブラッカーと共に、友のために立ち上がる。
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花結いのきらめき風に黒騎龍牙の自己紹介
「あー、黒騎龍牙だ。自己紹介とか慣れないな」
「讃州中学2年B組で特に委員会とか部活には入ってない」
「え?理由?そんなの面倒に決まっているだろう」
「続けるぞ?身長は156センチ。体重は覚えてない」
「一般男子の中では背は低い方だな。趣味は……特にないからパスで」
「暇な時はゲームしてる。まぁ、楽しいから。最近千景と力比べしてるな。まぁ、俺が勝つけど」
「あんまり騒がしいのは苦手だ。なんかこう……あぁ!気にするな!友奈、お前のせいじゃない!」
「うん。そうだ気にするなよ?よし、続けるか……疲れた」
「うーん、他に言うことが特にないな。え?うどんが好きかって?あんまり……というか、そこまで食えない」
「わわっ!若葉、危ないだろ!刀を振るな!」
「はぁ……なんか興が冷めた。もう特に言うこともないし、自己紹介終わりな」
こんな感じ
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第二話「懐かしき夢」
突如東郷を守るように現れた黒い騎士リュウガ。その周りをグルグルと飛ぶ暗黒龍ドラグブラッカー。
リュウガは起き上がったヴァルゴ・バーデックスを睨みつけながら黒いドラグセイバーを召喚する。
(どうして今黒騎君に似ていると思ったのかしら)
ドラグセイバーを右手で構えるリュウガを見て、東郷はその背中を知っている人物と重ねる。
『東郷達を傷つけたのはお前だな?ならば生かしておけないな』
樹木を蹴りつけて大きく跳んだリュウガはすれ違い様にヴァルゴ・バーデックスを斬りつける。その後追ってきたドラグブラッカーに乗り、もう一度ヴァルゴ・バーデックスを斬る。返す刀で何度も斬りつけていく。
地面に降り立ったリュウガは、カードを取り出すと左腕につけられた暗黒龍召機甲ブラックドラグバイザーに装填する。
《ファイナルベント》
ドラグブラッカーがリュウガの周りに来ると、共に空へ飛びそのままヴァルゴ・バーデックスに向かって蹴りを放つ。その際にドラグブラッカーがリュウガに向かって黒い炎を吐き、リュウガはその黒炎を足を纏う。
――ドラゴンライダーキック
リュウガの黒炎を纏った蹴りが炸裂し、ヴァルゴ・バーデックスは悲鳴をあげる暇もなく爆発した。
その直後に無事着地したリュウガは樹木の下で友奈が気絶しているのを見て、慌てたように駆け寄った。
一連の流れをただ見ているだけだった勇者メンバーは眼をぱちくりさせた。
『無事でよかった』
友奈をお姫様抱っこしているリュウガ東郷の近くで降ろすと、その場を立ち去ろうとする。だが、それよりも早く風が大剣を突きつけた。
「ちょ〜っと待ってもらうわよ。アンタが何者かわからないからね」
『…………』
面倒なことになった――それがリュウガの考えだった。風の様子から逃げ切れるとは思わないが、頭に流れてきた情報である樹海が解けるのを待っていられるほど時間もない。
樹海の中はある意味現実世界であるためリュウガが鏡の世界から出てこれる時間も限られている。急いで鏡の世界に帰らないといけないリュウガによって目の前で仁王立ちする風は物凄く邪魔な存在だった。
「黙ってるところ悪いけど、アンタの事を大赦に報告しないといけないのよ。だから潔く教えてくれるかしら?」
『……お前らと仲良しこよしする気はない』
ドラグブラッカーの背に乗り空へかける。樹が両手のワイヤーを伸ばすが、それよりも早く樹海の中に存在する不自然な鏡を見つけその中に潜る。
〜〜〜〜
とっさの事だったから思わず何も考えずに飛び込んだけど、どうやら無事に現実世界に帰ってこれたようだ
「ぐはぁっ!?」
飛び込んだ先がどっかのゴミ溜まり場でなければ、な。
なんでゴミ溜まり場なんだよ!?あとでシャワー浴びなくちゃいけないだろうが!!まだ学校の授業残ってんだぞこんちくしょうめが!
「はぁ……再っ悪な気分だよ」
立ち上がって服についたゴミを払い落とすと、取り敢えず家に向かう。ここからなら真っ直ぐ学校に向かうよりも家に帰ってシャワー浴びた方が早い。
先程の戦いでリュウガの使い方も分かったし、多分だけどこれからも戦いは続くだろう。なら、俺は戦うだけだ。
家に着いた俺はゴミの匂いを流すためにシャワーを浴びる。溜まり場に捨てられていたゴミは何日経った奴だよ……シャワー何回も浴びちゃったよ。
はぁ……なんかもう今更学校行くのもあれだし、今日はもうサボるか。
何故か物凄くムシャクシャして、ベッドに寝転がった俺はそのまま眠りについた。
『やって来ました大阪!!ほらほら龍くーん』
赤い髪をポニーテールにした明るい少女が俺の手を引く。少女の顔はどこか懐かしくて愛おしい。なのに何故か物凄く泣きたくなってくる。
『ねぇねぇ!見て見て!噴水だよ!』
この時はまだ
『もう、龍くんどうしたの?アイス食べる?』
少女が食べていたソフトクリームを俺に向ける。いややめなさいよ。それ関節キスっていうんだよ?
『大丈夫!だって龍くんは将来の旦那様だもん!』
どこか大丈夫なんだろうか?
まぁ、くれるって言うなら食べないわけにもいかないよね。そう思って差し出されたソフトクリームを一口食べる。
ふむ。これがキスの味か。
『なななななななな、何言ってるの!?もう!恥ずかしいよぉ……』
顔を真っ赤に染めた少女が顔を隠すように背ける。その表情が可愛くて愛しくてもう仕方ない。
『ずっと一緒にいような』
『……っ!!うん!約束だよ!』
嬉しそうに椅子から立ち上がった少女がニコッと笑う。俺も苦笑いしながら椅子から立ち上がると……
突然バーデックスに姿を変えた少女よって、身体の半分を喰いちぎられた。
「うわあああああああああああああああああっ!?」
あまりの光景に俺はベッドから跳ね起きるように目が覚めた。心臓が何かに掴まれたかのように息苦しい。
本当になんなんだよ。俺はあんなの知らない。大阪なんか行ったことがない。
「だいいち、夢に出てきたアイツ……友奈にそっくり過ぎるんだよ」
俺は友奈に恋をしている。どうしてからわからない。でも気づいた頃には恋していたと思う。
でも俺は……この気持ちを伝える気はない。
俺には友奈のそばにいる資格はない。本当にどうしてかわかんないけど資格がないんだ。でも、東郷にはその資格がある。
友奈が一番笑顔でいられるのは東郷の隣だけだからな。
また時が止まっている。でも今回は倒しには行かない。その代わり暗黒龍ドラグブラッカーに行ってもらう。
彼女達も二連続で戦う羽目になるとは不便だな。
それにしても、時の止まった世界って何気に暇だな。俺と周りの時間軸が微妙にズレてしまう筈なのに、何故かそれがない。という事はこれがみんなが馬鹿みたいに崇拝している
アイツは清き純粋な少女だけに力を託している。だから神樹によって男であるはずの俺を動けるようにするとは思えない。という事は、俺の……リュウガの力というわけか。
まぁ、どうだっていい。友奈が幸せなら、友奈が死なないなら……世界が壊れようが滅ぼうがどうでもいい。
さて、明日からどうしようかな。
「アイツもようやく仮面ライダーとなったか」
到底人類が存在できるような場所ではない全てが炎で燃やされている大地の上で、全身黒ずくめのフードを深く被った男が呟く。
腰には長い刀が刺されており、その風格はまるで侍のような佇まいだった。
「……ならばオレも動かねばならんな。高嶋のためにも……そして乃木家としても」
男は背後に迫ってきた星屑をたった一瞬で刀を抜き一太刀で沈めると、神樹によって守られている結界を見る。
フードから覗く紅く鋭い眼が結界の中にいるであろう誰かを睨む。
「待っていろ神樹……このオレが貴様を必ず滅ぼしてやる」
そう言ってゆっくりとした足取りで結界に向かっていく。男が通った場所には数々の星屑が斬り殺されていた。
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今回は文字数少なめ
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第三話「ビルドの名を持つ者」
また、樹海の中か……。アレから1ヶ月が経ってやってきたのは
人型バーデックスは全身緑色で野生を感じさせる赤い瞳を持っている。
「わわっ!なにあれー?」
遠くにいる友奈が驚いた声を上げる。その隣では朝顔をモチーフにした青い勇者服に身を包んでいる東郷も同じように驚いていた。というか……東郷よ、お前そのバストはマズいと思うんだ。前々から思ってたけど友奈服って過激な服装してるなおい。人によっては性癖パーフェクトになるぞ。
まぁ、暗黒龍ドラグブラッカーの報告では東郷は無事勇者に慣れたらしいんだが、なんか釈然としない。なんかこう心にモヤモヤっとした凝りがあるんだよなぁ。
『ん?アレは……』
仮面ライダーリュウガとなった事で動体視力が極限にまで上がった俺は、ものすごい速さでカプリコーン・バーデックスに迫りよる赤い影を捉える。
視界に取られられたのはたったの一瞬だったが、赤い勇者服を見に包んだ少女であるのが分かった。
少女は両手に持った二振りの刀をカプリコーン・バーデックスに向かって投げつける。少女の存在に気づいた人型バーデックスがとっさの判断で刀を避けるが、カプリコーン・バーデックスは投げつけられた刀を避けられず刺さってしまう。
「そのまま爆ぜろ!」
少女の叫びと共にカプリコーン・バーデックスに突き刺さっていた刀が爆発する。
「な、なに!?」
「今の東郷が!?」
「私はまだなにも」
俺は見ていたから何も感じなかったが、勇者部面々はやってきて早々にカプリコーン・バーデックスの一部が爆発して吹き飛んだから驚いてた。
まぁ、そうだろうな。
「チョロいのよ!!」
ようやく少女の存在を認めたカプリコーン・バーデックスが毒ガスを吐き出す。その毒ガスに少女が巻き込まれたけど多分大丈夫だろう。
「そんなの、気配でバレてんのよ!!」
毒ガスの中に居るのにも関わらず少女は巧みに二刀の刀を振り回してカプリコーン・バーデックスに攻撃を当てていく。
そしてたった一人で封印の儀を果たした少女は単独での討伐を成功させた。だが、恐らくだがもう一体の人型バーデックスの存在を忘れているな。
「楽勝なのよこんなの!」
少女は刀を振って未だにポカンとしている勇者部メンバーの方に向かっていく。あの表情は自分の力に慢心している。だから後ろに迫ってきている人型バーデックスに気づいていない。
《ファイナルベント》
『ギャアアンオオォォォォォォォォォンッ!!』
俺の周りをぐるぐると回る暗黒龍ドラグブラッカーと共に空へ跳びそこから一回転してから真っ直ぐ人型バーデックスに向かって蹴りを放つ。
ドラゴンライダーキック
『はああああああああああっ!!』
暗黒龍ドラグブラッカーの黒い炎を足に纏わせて一直線に人型バーデックスを蹴り飛ばす。俺はキックの体勢のまま着地する。
「な、何よ一体!!」
少女が突然の爆風に驚く。勇者部に至っては瞬時に武器を構える。東郷だけは以前助けられた事もあり複雑な表情をしているが。
キックの体勢から立ち上がるとゆっくりと起き上がった人型バーデックスを睨みつける。
《ソードベント》
ドラグセイバーを召喚し人型バーデックスと向き合う。
第一人称は兎と戦車だった。まるでどっかのアーマードライダーみたいな姿をしているソイツは、赤と青の鎧に身を包んでいる。いや、その鎧自体が本体と言ってもいい。
赤が兎で青が戦車。赤と青が交互になるようになったその鎧を持つ人型バーデックス。俺の持つ情報通りならバーデックスは喋らない。
「ふぅん。まさか私と同じライダーがいるなんてね」
だが、ソイツは言葉を発した。それだけで俺の中の警戒心がMAXに達した。
『……ライダー、だと?』
「そ!私はビルド!仮面ライダービルド!作る!生成するって意味の……ビルド!!以後、お見知り置きを」
決めポーズまでしてまで名乗った人型バーデックス……いや、ビルドは声からして女だとわかった。
「貴方のことも教えて欲しいなぁ」
『…………名乗る必要はない』
「えぇー!酷いなぁ。私名乗ったのにー!」
知るか!
俺はすぐさま斬りかかるが、軽く身体を捻って避けられてしまった。その様子は俺相手に余裕だと言われているかのように思える。それが苛立ってくる。
冷静に対処しなければな。
後ろに大きく跳んでビルドの蹴りを躱す。だがビルドは着地と同時に左足で力強く踏み出す。するとビルドの左足ラビットフットシューズにエネルギーが溢れ出し、ビルドが駆け出すと同時に瞬時に俺の目の前に現れる。
「おぉ、らぁああ!!」
『グゥっ!?』
咄嗟の事で避ける事も防ぐ事も脇腹を力強く蹴られて俺の体が横に吹き飛ぶ。ビルドの体の生成元になっているラビットの力により吹き飛ばされたのだと理解する。
勢いが止まらない俺を暗黒龍ドラグブラッカーが受けることによって止める。そのまま背に跨りビルドに向かって火球を放つ。
《ファイナルベント》
暗黒龍ドラグブラッカーの背から飛び降りてドラゴンライダーキックを繰り出す。だがそれを片手で足を捕まれそのまま投げ飛ばされた。
『くぅ……なんというバカ力。いや、ビルドの力ということか』
あまりにも強い力に舌打ちしたい気分だ。ドラグブラッカーが止めてくれなかったらどこまで吹き飛んでいたわかったもんじゃない。
『……はあぁ!』
ビルドの近くまで跳びドラグセイバーを振り上げて返す刀で振り下げる。その後瞬時に横に振り身体を回して回転斬りをする。そして突きの構えを取ると一直線にビルドの元まで走りドラグセイバーで突き刺す。
黒騎家に伝わる剣技。あまり使いたくなったけど、生身でやるよりはやりやすいな。
「あの剣術、どっかで……」
回転斬りまでは当てることは出来たが、最後の突きに関してだけは避けられてしまった。ビルドは俺の方を一瞥するとベルトについているレバーを勢いよく回した。
《LadyGo!!ボルテックフィニッシュ!!》
何処からかレールのようなものが現れ俺はそれに挟まれてしまう。それによって身動き出来なくなった俺に、レールを滑りながらビルドがライダーキックを放つ。
ビルドのライダーキックにより俺は爆発を起こしてしまった。変身まで解けてしまい、このまま入れば俺の正体がバレてしまう。
『ギャアアンオオォォォォォォォォォン』
ライダーキックのせいで動けなくなった俺を煙の中に入ってきた暗黒龍ドラグブラッカーが背負い、この場から離脱する。何とか鏡がある場所までやってこれた俺は、痛む身体を我慢しながらもう一度リュウガに変身し、鏡を通して家に帰った。
この敗北は俺の魂に刻み込んだ。絶対に痛い目に遭わせてやる!!今度あった時に絶対にっ!!
リュウガに変身した状態のままどこかの鏡から抜け出す。流石にビルドが鏡を通して移動できるとは思えないが、万が一というものがあるからな。決して油断はできない。
それにしてもここはどこだ?見た感じ病院に見えるんだが、それでもこれは異常だ。まるで何かを祀っているかのように思えてしまう。本当に病院の中だよな?
「あれ〜?君、どこから来たの?」
『……なっ!?お前は……』
突然聞こえた声に振り向けば全身包帯巻きにした少女がベットに横たわっていた。辛うじて左目と口だけは巻かれてはいないが、余程の事故でも起こさない限りはこんな風にはならない筈だ。
一体何があってこんなふうになってしまったのか!?
「あれあれ〜?もしかしてこの身体に驚いてる?」
『あ、あぁ。お前の、その……身体は一体どうしたんだ?』
「これはね、とあるお役目についていた時になったやつなんだ〜。勇者って知ってる?」
勇者……友奈達が変身していたあの姿か。
『…………知っているが、それが…………まさか!?』
「そう。そのまさか。私が勇者としてお役目についていた時にね」
友奈からも東郷からもは何も聞いていないぞ!?何故だ!?何故消していた!?
「もしかして、君の知り合いに勇者になった子がいるの?」
『少なくとも俺の知っている中では四人だな。もう一人新しく今日やってきた奴がいたが……』
「そうなんだ〜。ねぇ、君って約束事とか守れる?」
『場合による』
「そっかぁ。ならね。知っていて欲しいことがあるんだ〜」
知っていて欲しいこと……それだけでもう聞きたくない。だが俺の第六感が聞かなければいけないと囁いている。
「勇者にはね、満開システムというのがあるんだ。神樹様から一時的に膨大な力を貰って、その後散華というシステムで身体の一部を代償として捧げるんだ」
……………………なんだと?な、何を言ってるんだ?身体の一部を捧げる?
じゃあ……!?
『お前のその身体も、満開したからか?何回だ?何回万満開した!?』
「ん〜覚えてないかな。多分だけど二十回ぐらいはしてると思うよ?私、心臓とか動いてないからね〜」
は?心臓が動いてない?何を言ってるんだよ。現にお前は生きてるじゃないか。
「あ、その顔はなんで生きていられるんだって顔でしょ?勇者にはね、致命傷なダメージを与えないようにする精霊がついているの。必ず一人一体ね。でもね、満開した分だけ精霊の数は増えるの。そして精霊は――」
そこからの記憶は俺には一切ない。どうやって帰ったのかも、何も。気づいたら俺は家のベットの上にいて、涙を流していた。
誰かの名前を呼んでいた気もするけど、それも覚えてない。何もわからなくなった。どうしてだよ。でも目指した時間は夜中だった。
取り敢えず風呂に入って汗を流し、お金とかを入れた財布とスマホ、その他色々をカバンに詰め込んだ俺は、
黒騎家を出てそれ以降行方不明となった。
Continue to next time!
オリ主の黒騎龍牙は、本来の勇者二人よりも先に真実を知ってしまいます。そしてこれが原因で―――
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