アニメ・ギフター (サソリス)
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悪夢の始まり

 朝、朝日が昇りながら地を照らし、空を真っ黒な一色から明るく真っ蒼な色に染め上げる時間帯。それぞれの人は朝日と共に起床し身支度を整えある者は職場へ、ある者は学校へと各々の目的地へと向かい始める。そんな時間帯、ある者も事前にセットしてあった目覚まし時計の音が鳴り響き目を覚ました。

 

「……寒ッムイ」

 

 ノロノロと掛布団から起き上がり何とか寝床を出て、いつも道理顔を洗うために……っとその前に。

 

「喉……乾いた」

 

 洗面台へと向かう道の途中にある冷蔵庫へと寄道、中からいつも常備している麦茶を取り出して一口。

 

「美味いな」

 

 喉を適度に潤しつつ洗面台へと向かう。そしてバシャバシャと顔を水で濡らして目を覚ましタオルで水気をふき取りそして……鏡を見た。

 

「……え?」

 

 そこに映っていたのはいつもの自分ではなく別の人物だった。青く長い髪に青い瞳の綺麗な女性、顔は整った容姿をしていてこちらを見ている……首にはいつの間にか身に着けていた見覚えのあるペンダント。そして何より……

 

「CV水〇奈々……だと……!?」

 

俺の好きな声優さんの声をしていた。

 

※※※

 

 悲報、俺氏風鳴翼二変身ス。

 

って、ふざけている場合じゃね! (っと、ふざけている場合ではない!)

 

 俺は洗面台から急いでリビングへと移動する。幸い両親は共に海外に出張中って言うエロゲ染みた状況になっているので今の姿を見られる心配はない。再び冷蔵庫から麦茶を取り出しながら椅子へと座る。とりあえず今、俺の置かれた状況を整理しよう。

 俺の名前は風下(かざしも) (つばさ)、17歳。近所の高校に通う何処にでもいるエンジョイオタクだ。

 それが何故朝起きたら、まだ3期までしか見終わってない戦姫絶唱シンフォギアのキャラの一人であり俺の大好きな声優さんが担当している風鳴翼になっているのか……意味が分からないよ。それにオレの息子だって使用する機会もなく消失してるし……残念過ぎる。

 

「|ホンっと意味わからん、どういうこっちゃこれは《一体どういう事なのだ‥‥まるで意味が分からないぞ》」

 

 

 昨日何か変わった事があるかと言えばネットの友達(フレンド)からリリカル☆なのはシリーズを進められ、その後すぐに第一期をぶっとうしで見終わった以外無いし……なんでこんな二次創作の作品でもあんまり見ない状況になっているんだ?冷たく冷えた麦茶を乾いた口に含み飲み込む。

 とりあえず冷静になろうそうしよう。まずこの状況が俺だけかそれとも複数確認されてるかの確認だ。確認されているとしたら軽いどころではない騒ぎになっているはずだし……確認する必要はあるだろう。

 俺は手前にあったテレビのリモコンでテレビを点ける。その時の番組は丁度子供向けのアニメを放送しているようで丁度黒い細菌をアンパンみたいなヒーローがワンパンでぶっ倒しているシーン……普通アレだけ飛ぶモノなのか? そんな疑問を残しながらもャンネルをこの時間、ニュースを放送しているチャンネルへと合わせるのだが……

 

【速報です。日本全土で姿が変わり変異、人によっては特殊な能力に目覚めるという超常現象が確認されました】

「」

 

マージカ。思っていた以上に大ごとになってやがる。

 

【政府はこれに対し緊急事態を発表。変異、または特殊な能力に目覚めた人は即刻政府発行の番号へとご連絡をお願いします。政府の者が伺い危険などが無いか検査などを行います。番号は……】

 

 

麻痺した頭でも何とか俺はテレビの電源を落とした。その後、リモコンを近くのクッションへとほいやり頭を抱える。

 拝啓、海外に出張中のお父さんお母さん。俺は今、どうやらヤバイ現象に巻き込まれてしまったみたいだ。そんな事を考えながら頭を抱え、洗面台から聞こえる水のぽつぽつと落ちる音を聞いていたのであった。……水道代が勿体ないのですぐに絞めたが。

 

 

 

 

 

 それから一時間ぐらい経った頃だろうか。

 

俺は・正気に・戻った(私は・正気へと・戻った)

 

 何とか今の状況を受け入れ、俺は立ち直る。ってか受け入れて立ち直るしか道がねぇ。だって現状戻る手段が不明なんだから。それにさっきトイレ行ったけどヤバかった、俺が女になった事を嫌でも通関させられたよ……ちくせう。

 その後自分のベッドに飛び込み近くに置いて来た携帯を手に取った。

 

「む」

 

 しかし何時ものように指紋によるロック解除を行おうとしたが行えずパスワードで解除。ってか指紋まで変わってるとか本当に体が変化もしくは変わってるだなぁ。

そんな非現実的な現実を感じながら画面に映る沢山のアプリの中からSNSアプリを開いた。最初はと、同じくSNSをやっている者達がトレンドとして注目している話題などを抽選して見てみる事にする。

 

「なるほど……」

 

 そしてざっとそこに書いてある投稿を見ながら考えて情報を整理しているとあることが分かって来た。

 まず、俺の様にアニメキャラに変化した人は結構いるらしい。しかし村に居そうなモブキャラや序盤で死ぬ雑魚キャラ。鬼滅のサイコロステーキ先輩やプリコネの仲間を石へと変える人、マイクラの村人などなど……そんな人によっては印象がかなり強かったキャラクターが多く、何と言うか俺の様な主人公級のキャラはあんまり見かけはしなかった。そして俺の様な性転換した人も……

 逆に能力は主人公級のモノが多く出現してるらしいのだが。その能力も色々と問題のある物だった。とある魔術に登場するイマジン・ブレイカーと同じ能力なんだけど全部が全部消せるわけじゃない言ってしまえば能力の劣化版や、マリオのアイスの能力の機能制限版みたいな何かと制約が多いらしく、SNSの投稿によるとカービーの吸い込む能力に関しては掃除機並みの吸引力しかないらしい……そしてコピーは不可能と。なんだか色々と残念な能力しかないらしい。でも、一番驚いたのが……

 

ドラゴンはあかんでしょ、ドラゴンは(ドラゴン……何と面妖な変化なんだ)

 

 姿を変える変化ってのは何でも人間、アニメキャラだけではないらしくドラゴンのようなファンタジーな生物にも変化するらしい……シンプルにヤバイな。

 そしてそんな非常な事態に政府は迅速に行動。変化、もしくは変異、超常な力を得た人を確認して回っているみたいだ。ニュースでも言っていた通りの番号で連絡で色々と確認しているみたいだけど何分数が多すぎてコールセンターはパンク寸前って情報が載ってなァ。

 

俺は……どうすっかなぁ(私は……一体どうしたら……)

 

 今連絡してもパンク寸前で繋がるかは不明だし、ラノベとかでの展開はそうやって把握した情報を使っての人材の誘拐からの人体実験とか非道な事をされるってのがお決まりだし……これはまだ様子見かなぁ……ってか学校どうしよう。

 携帯を開くと学校からのメールが一通。開くとどうやらこの緊急事態の影響で学校もお休みに……でもこれは……

 

「|消化待ちのアニメを見るチャンスなのでは……? 《溜まっていたアニメを鑑賞するいい機会なのでは?》」

 

 そうと決まれば俺の行動は早い。すぐさまネットサービスのアニメンのアプリを開く。そしてあるアニメのタイトルを入力してそれを選択……

 

「|この特徴的な作画が最高なんだよなぁ《この味のある作画が最高な作品だ……これは良いものだ》」

 

 そうして俺はヘルシングのOVAをぶっとうしで全話見ていたのであった。……ってか今気づいたけど俺の言葉変なフィルターかかってねぇ? ってか少佐最高過ぎだろ。



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移り行く世界

 あの騒ぎから数日……俺は完全に家に引きこもっていた。

 

「やっぱりガルパンは良いものだなぁ……特に直向きに努力する姿は心打たれるモノがあるわぁ~、あとボコ可愛い(確信)」

 

って言ったつもりだったんだけども。

 

「少女達が戦車に乗り戦車道と言う武道に似たスポーツに対して全力で取り組むその姿……私も見習うべきだな。本当に色々と考えさせられる点が多いアニメだ」

 

っと口からは変換されて言葉が吐き出される……かなり不便だよ、ホンっと。

 そんな風に頭の中で悪態をつきながら今の現状を考える。

引き込まっていたのは問題があるからだ。今の問題として現在政府が能力者や変異者の通称、ギフターの影響で完全にマヒしてるらしい。ギフター達が様々な問題行動や犯罪などを起こした結果警察や自衛隊まで出てきてその対処を行っている。そのせいで軽い世紀末状態だってネットで騒がれる。ギフターの影響はコレだけではなく目覚めてから数日しかたってはいないのに公共の交通機関は完全に止まっていて。東京の中心部などでは場所によってギフター同士の戦闘が勃発、その戦場痕が災害クラスの被害を出している状態に。これだけの情報でも酷いとは思うがさらにひどい場所では対応に当たっていた警察や自衛隊が悪意ある能力者に制圧されてしまい完全なる無政府状態に……日本はこれから一体どうなるんだ? 

 自国の未来に不安を感じながらいつも見ているニュースの時間なのでテレビのチャンネルを切り替える。

 

「何処に仕舞ったか……」

 

 そして同時に時間帯的にお昼ご飯の時間なので近くの戸棚に仕舞っていたカップ麺を探しながらテレビの音声に耳を傾けるけれど、能力者が起こしたとみられる犯罪の報道ばかりである意味変わり映えの無い情報ばかりを報道している。

 

【○○駅周辺で爆発が発生! 近隣住民は急いで避難を! ……】

【○市一帯で大停電が発生! 原因は能力者の犯行だと考えられますが警察は目下捜索中とのこと……】

【〇〇市を制圧したテログループ、法人外は声明を発表! 国内に独立政府の……】

 

 変わり映えの無い……悪い情報ばかり。

 

「この者達は何を考え、そして犯罪などを起こす為に行動をしているのでだろうか私には理解できない……美味しい」

 

 美味しいラーメン啜りながらテレビや現状を考えるに現在進行形で悪意ある能力者達が暴れているせいで普通の人達からしたらギフターは恐怖の象徴になってしまっている。もしくは犯罪者と同等の認識にまで下がっている。ネットの掲示板でも能力者は殺せだの変異者はただの化け物だの書き込みが多い……気持ちは分からなくはないが過激すぎるだろ。

 

「ごちそうさまでした」

 

それと能力者や変異者に対してギフターって名称を付けたのがこの書き込みのサイトが初出だったりする。能力などをギフトと例え、差別意識を込めて付けた名称とこのと……って俺達ギフターだって好きでこんな能力などをもらったわけじゃねぇのに……実害だって多いし。

 

「はぁ~……」

 

 あ、余りの理不尽さに思わずため息が‥‥って無意識的に部屋を汚してた、危ない危ない。でも仕方ない事だと思う、だって俺の場合勝手に言葉にフィルターがかかって翼語になるし部屋は無意識的に汚してしまう、それに性別だって女に性転換を……マジで不便だ。服とかもほとんどダブダブで鏡で見た時……

 

「ッむむ! これでは外で行動できないではないか」

 

 そこに映ってたのは露出狂一歩手前の美人さん……なーんて自身の姿を見て知ってしまい色々とヤバかった。俺だって元男だし……流石にいくら美人の姿になってもの自身の体で欲情は出来なかったけれど。

あとこの問題はかなり深刻な状態だと気づいた時もヤバかった。だって今の外の状態じゃ通販なんてまともに機能しているはずないし、他の服を着ようにも他の服も全部似たような状態……つまりこの結果から導き出されるのが外出不可能と言う現実だ。‥‥‥‥ある意味詰んだな、俺! 

 

「外に出歩けないとなると食料などの備蓄が心配だ‥‥どうしたものか」

 

 あと自衛! 自分で守る方法がないと色々と危険だ。今の世の中ギフターは嫌われ者、だからこそ襲われやすいらしいからちょっと外に出るにも自衛能力が問われる……ホント世紀末状態で草も生えぬ。警察組織も壊滅しててあまり機能してないから俺の場合暴漢や痴漢などに襲われて即ENDなんて可能性だって考えられるから……マジどうしよう。

 

「自衛能力……つまりはシンフォギアのアメノハバキリ……私に扱いきれるのか?」

 

 俺のギフト。多分名称を付けるならシンフォギア装者:アメノハバキリって名称だと思うこの能力。体そのモノを風鳴翼に変化させるとこからそのキャラの武装も使えるはずなんだけど……この武装ってのが使えるかどうか不明な点が怖いんだよなぁ。

それで登場作品は戦姫絶唱シンフォギアってアニメ。歌って戦うをコンセプトのアニメに出て来たキャラで剣を使っていた人で一言で表すなら防人。今の俺に劇中の能力……シンフォギアの力が扱えるってか、まずその能力があるのかさえ分からないから不安しかないんだよなぁ。

 

「一度歌ってギアを纏うのもアリだと思うがはたしてギアが反応してくれるかどうか……」

 

うんうん~と唸りながら洗面台でカップ麺で使ったお箸を洗いつつ、キッチンの小窓で外の様子を眺めていると。

 

「ん?」

 

 遠くで何か光る物が見える。何だろうと疑問に思い良く目を凝らして見てみる……って。

 

「……これは現実なのか?」

 

 その光ってたところから突如ウルトラマンが出現した。何を言ってるか分からないと思うが俺も混乱してる。そのウルトラマンは何か小さいモノと戦ってるみたいでこう、何と言うか何かを踏み潰すような行動をしている……ってか俺の家は遠いみたいだからいいけどあの場所、絶対に壊滅状態になってるだろうなぁ。

 

【臨時速報です! 現在〇市でウルトラマンが出現しました! 〇市の人達は急いで避難をして……】

 

 ……ホント日本はこれからどうなるんだろう? 

 俺はそうしみじみと考えながら急須にお湯を入れてお茶を入れたのであった……うめぇ。

 

後から知った事だけど跡地にはまるで大地震が発生したような跡しか残ってなかったとか……それで犠牲者ゼロとか流石ウルトラマンですわ。

 

※※※

 

 一通り現実逃避とアニメ鑑賞を行った後、俺は正気に戻り本格的に自衛能力を何とかしようと考えた。それは色々と考え、対策を練ったけれど結果ギフトを試すしかないという結論に至った訳だけだけども。

 

「シンフォギア……果たして私の歌に反応してくれるのか否か……」

 

 実際最後にまともに歌ったのが2年前ぐらいだからな……マジで歌えるかどうかわかんないんだよなぁ。不安を抱えながらも一応何かあってからは遅いので部屋のモノを片付けて変身を試す場を整えたわけだけど……マジで不安だ。

 

「いつまでも失敗を恐れていても仕方ない事、風鳴翼()に出来たのだから風下翼()に出来ないはずはない!」

 

 俺は覚悟を決めてペンダントを握りしめ聖唱を口にしようとする。その瞬間俺の胸の中に不思議な感覚が走った。知らない歌が周辺へと流れだしその歌詞が心から次々と湧き出し何とも言えない感覚へと誘われる。その感覚に魅了されながらも俺はその歌詞を口にしたのだった。

 

Imyuteus amenohabakiri tron(イミュテアス アメノハバキリ トロン)

 

 そして眩い光が突如として体を包み込み俺の意識は途切れてしまった。



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覚醒と突撃

「これは!?」

 

 目が覚めると劇中に出て来ていた変身バンクの世界だった。世界その者が発光する魔法陣の様な模様で辺り一面が埋め尽くされていてその世界の真ん中で俺は佇んでいる。耳には歌の伴奏の様な音楽が響き続けていていかにもって感じだ。しかし、この光景は……

 

「私の記憶にない‥‥バンクだと!?」

 

 俺は一期から三期まではちゃんと見ていて、尚且つすべての奏者の変身バンクもちゃんと覚えているはなのだが今の空間には覚えはない。他の四、五期のバンクか? とも思ったけどそれにしちゃ作りが何と言うか……雑? っと感じる。それに一応内容自体は見ていないけれどバンクだけは見てしまって違うと確信できるしまさか……ゲーム版か? 

 

「ふむ……‥分からない事ばかりだが、ひとまずはどうやって変身が始まッ!?」

 

 マジ……か……突如体に電撃が走ったような感覚が走ったっと思えば体が思うように動かなくなった。あれだ、夢とかとで体験する。視界はクリアなのに体が勝手に動いてる感覚的な何かと同じ状態になってやがる。

 体はそのまま俺の言う事を聞かずにひとりでに動き出す。その直後突如として頭の上に出現した輪っかみたいなものを潜ると宝石を全身に身に着けたギアインナーの姿へと服装が変わった……ってかその前は全身光った全裸だったような気が‥‥‥‥気にしたら負けか? 

 

 その後宝石たちは辺り一面へと散らばり、光り出して鎖のような物が俺を縛る。見た目はかなり頑丈そうに見えるけれど何と言うか綿で包まれてる感覚に似ていて気持ち良い……‥‥っは! 落ちるとこだった。

 そんな俺を知らぬと体はそれを弾く様に千切った、ってえぇ!? それを千切るなんて勿体ない! 寝具に使え……ないね。世間体から見て鎖を寝具にするとか見た目が悪すぎる。

 見た目と裏腹に高級羽毛布団の様な感触の鎖は千切れると光の塊に変化。俺の足、太もも、腰、腕に頭、全身へと張り付くと姿を変えて光が晴れた。

 ギアインナーの上にアーマーが取り付けられて太ももからアームドギアを取り出し体は振り回し始める。まるで自分が手にした獲物の感触を確かめるように腰に当てると鞘から抜く様に抜き付け。流れるように切り上げてからの振り下ろし。そんな姿をぼーっと見るしかなかった俺だが手に付いたアーマーの形に見覚えが……あ、コレ一期の頃のギアだ。そんな事を考えながら──―

 

「ッは!」

 

 ──―最後のキメポーズをキメた事による謎の達成感に包まれながら俺はまた意識が途切れた。

 

 

※※※

 

「っは! 戻って来れたか」

 

 目が覚めると変身するために用意した部屋だった。戻って来れた事に安心感を覚えながら俺は床に座り込んでしまった。正確には腰が抜けたともいえるけど。

 しかしまさか変身バンクが全自動で体が動いてやっていただなんて‥‥‥‥ある意味五期に出て来た切歌の変身バンクルの謎のエロさの謎に説明がついたわ。

 

「と、とりあえずギアの姿を確認しなければ」

 

 俺はそう思い腰を上げて何か鏡が無いかと探しに行こうとするけど……

 

「そういえばギアを纏った状態だとハイヒールだったな……失念していた」

 

 このままだと他の部屋に入れない。それに加えてこの足に付いたブレード、これが邪魔で姿見を置いている部屋に入れないってマジか、このブレード考えた通りに動くんだけど。でも可動域的に難しいだろうし……困ったな。

 

「何かないか何か……む、携帯端末が丁度いい所に」

 

 変身する前になんとなく置いておいた携帯を発見! 電源を付ける! ダメだ! 駄目だ! だめだ! 大本営は電源切れを発表、即座に充電をされたし……ってふざけるのもここまで近くに充電器は無いので仕方なく画面に光の反射で映る自分を見てみる。

 

「これは……やはり初期のギアか」

 

 そこに映るのはやっぱり一期の頃のアメノハバキリ。感覚的には全身タイツを身に着けてる感覚と一緒で何と言うかこう……全身が引き締められますねぇ。あと過去なんで全身タイツを着る羽目になった理由を思い出して憂鬱になったりする……もう二度と罰ゲームアリの対戦ゲームなんてやってやるか。

 

 そんな苦い記憶を胸に……って誰が(つるぎ)の様な胸じゃ! ッゴッホン、取り乱したが胸の奥へと仕舞ってそのまま携帯を持ってリビングへと移動した。そのままソファーへと腰掛けるんだけども……‥

 

「ッゴホ! ッゴホ! 何だこれは!?」

 

 ソファーが埃だらけで座った事によりその埃が舞い、咽たでござる。ってかどういう事だよ、そんなに掃除サボってたっけ俺? 

 ってそんなことしてる場合じゃねぇ! こんな埃だらけの空気いつまででも吸ってられるか! 急いで窓を開けて空気の入れ替えを行うぞジョジョぉ! って風鳴翼の場合ジョジョじゃなくて奏ぇ! かもしれないが。

 

「すぅ~はぁ~」

 

 おぉ~くうきおいちぃ。やっぱり人間に必要なのは新鮮な空気と綺麗な真水ってどっかのエロイ、偉い学者が言ってたからそれが合ってたと実感できるよ、マジで。肺一杯に新鮮な外の空気を吸い込み窓の外を見る。

 

「これは一体!?」

 

 そこには俺の知らない光景が広がっていた。見覚えのない街並み、見覚えのない天高く聳え立つ建物、そして空中を浮遊する飛行船……どれもこれも俺の知らない景色。マジでどういう事なの!? 

 目の前の景色に俺がショックを受けていると突如後ろから爆音が聞こえた。

 

「!?」

 

 耳がキーンと鳴り正直耳が痛い。体が自然な動きでアームドギアを手にしながら玄関の方へと振り向いた。その直後。

 

「開けろ! デトロイト市警だ!」

 

 大きな声と共にドアがけ破られ、黒い集団が俺の部屋へとなだれ込んできた。この装備ミリオタをかじった俺でも分かる、M16にMP5に防弾使用の大盾装備。おいおい、何処の特殊部隊が俺の部屋になだれ込んだってんだコレ! 

 

「何者だ!」

 

 俺はアームドギアを構える。正直刀みたいな長物は昔剣道習ってた時に使った以来だから上手く扱えて戦えるかは分からないけど、なんとなくこの体が、この変化してしまった体が戦い方を知っているみたいで分かる。

 雪崩れ込んできた部隊は俺を囲い込むように並び揃って銃口をこちらへと向けている。そしてなんでか知らないけど背にしている窓の外にもスナイパーか何かが狙っていると感覚的に察知出来る。つまりは全周囲囲まれた状態な訳だけども不思議と危機感なんてもんは無かった。なんとなく相手取る事が出来ると分かるからだ。ってか、勝敗よりもまず他人を傷つけられるか否かそこが俺にとっての一番の問題点だったりするけど

 

 一触即発、まさに言葉の通りなんだけどもどちらも動けぬ状態。俺も動こうものなら銃弾の雨霰、あっちも多分その盾事一刀両断出来ると思うからどちらも動けぬ状態。そんな中──― 

 

「こらこら! 何勝手に突撃なんてかましてくれてんのよ!」

 

 陽気な声が響いた。何だとそちらの方へと目を向けるとそこには一人の男が立っていた。ボロボロの茶色のロングコートを身に纏い、同じ色のハット坊を被っていた。

 

「責任者何処よ!」

「責任者は私だが今は目標を目の前にしてるので後にしてもらえれば……「突撃は特ギ所属の公証人待ちだって上から命令来てたでしょうが!」それでは対象に逃げられる危険が「おたくの勝手な判断のせいで更に危険な状態に陥っていること分かる? あんたホントにエリートなのか!!」

 

 ……なんか内輪揉め始めたんだけど。突然の来訪者は突撃してきた部隊の責任者と思わしき人と口論を繰り広げていて気持ち周りを囲んでいる人たちもまたか……みたいな空気を出してる。あ、コートの人パイルドライバーかけた。

 

「ハイハイっと君達の責任者と話はついたから君達撤収! 撤収!」

 

 コートの人が手を何度か叩くと俺を囲んでいた人たちはいそいそと動き出す。

 

「ばいばぁ~い」

 

 拡げていた装備を手に突入してきた玄関から出ていく人たち。けど後ろから感じていたスナイパーらしき人からの視線も無くなり本当に撤収したのが分かった……あ、パイルドライバー食らった人引きずって持って行くんだ……ありゃ頭痛そうだ。

 

「助かった……しかしあの者達は一体?」

 

構えは解くけれど一応アームドギアはそのまま手に保持しておく。もしかしたらこの人が襲ってくる危険もあるからね。

 コートの人物は帽子を脱いで頭をかきながらなんとなくやっちまった的な表情を浮かべる。

 

「それに関しては正直すまんかったと思う。どうも上の連中が事を急いだみたいで俺の到着まで待てができなかったみたいでねぇ」

 

このとうりと手を合わせながら頭を下げるコートの人。さて‥‥‥‥どうしたものかね。俺は散乱した部屋を眺めながら問う。

 

「それで聞くがなんで押し入って来たりしたんだ?」

 

その問いに何か困ったような表情へと変わるとうん~うん~と少し唸り何か考えがまとまったようで手をポンっと打つ。……昭和アニメかよ。

 

「その理由は後々説明するとしてえぇ「風下翼」そうそう風下さんは今が何年だか分かる?」

 

何年? いきなりどんな質問をするかと思いきや……俺をバカにし過ぎだろう。でもその表情は真剣みたいだからなぁ~……えっと、確か最近年が明けて2020年が終わったはずだから……

 

「西暦2021年じゃないのか?」

 

俺の答えを聞いた途端手を顔に押し当て何か思いつめたような感じになる。ありゃ? 俺なんか間違えたか? 俺が内心混乱していると。

 

 

「違うぞ」

 

ん? 今なんて? 違う? そんなはずは……

 

「落ち着いて聞いてくれよ。今は西暦2097年、君が知ってる年から76年時が経っている世界だ」

 

コートの人はそんな非現実的な事を言い放つのであった。



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