『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録 (ミヤムラゾロ)
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録①
「楽郎。そこのリモコン取って」
「ん」
「京極さん! 京極さん宛てにご実家から荷物が届いてます!」
「ありがとう紅音ちゃん。そこに置いておいてもらえるかい?」
「わかりました! あと楽郎さん宛てにも荷物が届いているので、楽郎さんもあとで確認お願いしますね!」
「りょーかい」
「ふぅ…、今年の新年は紅音ちゃんがいるお陰で、僕が悪戦苦闘する必要がなくてとても助かるね」
「ぬかしおる。お前の場合は悪戦苦闘云々の前に戦闘すら始まってないからな? 包丁の使い方どこの幕末に置いてきたんだよ」
「仕方ないじゃないか。自慢じゃないけど僕は学生時代のある日を境に、料理を作る際にはお湯を使うことしか出来なくなってしまったんだから」
「いやほんと自慢じゃねぇわ。自虐ネタにしてもなお酷い。つーかそこまでお前を貶めた奴誰なんだよ」
「鏡持ってくればいいかい?」
「笑えない冗談やめろ」
「僕を幕末狂いにさせた責任はしっかりとってもらうからね」
「クソゲー狂いの自覚がある俺が家事出来るんだから、そんな責任を取る必要なんてないんだよなぁ」
「楽郎のは表面的なモノでしょ? 僕の場合は魂に刻み込まれているからね。深度が違うよ深度が」
「その謎の自慢は一体どこから湧いてくんだよ……。お、そういや今日はこの前収録した番組の放送日か」
「あー、アレね。アレはなんというか……まさかシリーズ化するなんて未だに悪い夢だと思っているんだけど」
「斎賀さんのお祖父さんが出てきた時は全身の血の気が引いたよね。なんつーもんを呼び寄せやがったんだっていう」
「僕も凄く驚いたし、毎年来る國綱兄様も目を見開いてたね。ああ、こういうノリ大丈夫な人なんだって」
「あとは毎年やる『全一討伐チャレンジ』というもはや天丼ネタになった無理ゲー。お前がいつも変な所でくたばるから討伐出来ないんだよなぁ」
「いやいやいや。シルヴィアさんとアメリアさんとレオノーラさんに囲まれて一分保たせただけでも大健闘だよね? 最後の最後で仕留めきれなかった魚臣さんが悪いよ」
「そうだな。全部カッツォのせいだな。あの野郎シルヴィアからの攻撃を俺が身を挺して庇ってやったくせに、何を言われたか知らんが一瞬動きがフリーズしてその辺のMobにやられやがって」
「アレは酷かったよね…。今夜は焼き鰹が見れそうだ」
「ああ、たぶんトレンド入りすると思う。あとで公式垢で凸したろ」
「……あのー、京極さんと楽郎さんって、本当にお付き合いとか交際とかされていないんですか?」
「「急にどうした紅音(ちゃん)」」
「いえっ、そのとても息がピッタリというか、私実はお邪魔虫じゃないのかなぁって思う時がたまにありまして」
「なんてことを言うんだ紅音ちゃん。紅音ちゃんがお邪魔虫な訳ないじゃないか。僕は君がいないと満足に生活出来ないんだよ?」
「だから自慢気に語ることじゃねぇってお前」
「あはは…。実際楽郎さんは誰かとお付き合いというか、交際を考えたことはないんですか? 女性ファンの方々からの黄色い歓声も多いですし」
「俺? 今はゲームが恋人っつーか、学生時代もそういう事はあんまり意識したことはなかったしなぁ。あと応援されるのは嬉しいけど、『よく知らない相手に慕われたところでなぁ』って意識が先にくるからそういうのは多分ねぇと思う」
「なるほど…」
「そういう紅音はどうなんだ? そういう相手とかいたりすんの?」
「私ですか? そうですね、私も楽郎さんと同じ感じですかね」
「だよなぁ」
「あれ、僕には聞かないのかい楽郎?」
「いやお前の恋人『幕末』ってわかりきっている事を聞く意味よ」
「よくわかったね! 御礼にあとで天誅してあげるよ!」
「御礼参りはノーセンキュー。初詣なら一緒に出かけてやるよ。紅音、今日何か用事あったか? なけりゃ一緒にどうだ?」
「なにもないので行きましょう! 是非!」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録②
「寒い…風呂入るか…」
「じゃあすぐお風呂沸かしますね!」
「こたつが僕を呼んでいる…!」
「おい待て京極。せめて足洗ってからこたつに入ってくれ」
「あまり僕を見縊らないでもらえるかな。最低限のマナーは守れるからね?」
「うがい手洗いもちゃんとするんだぞ」
「楽郎って時折僕の事を子供扱いしてない?」
「家事出来なくてゲームばっかやってる奴を子供以外になんと呼べと?」
「……、僕このシェアハウスで最年長なんだけど」
「最年長だから大人って認識がもう子供なんだよなぁ」
「お湯張りしてきました! 楽郎さん! コート預かりますね!」
「おー、助かる」
「京極さん! シワになるのでコートは出来ればすぐハンガーにかけてくださいね!」
「あ、うん、ごめん」
「……、最年少の紅音の方がよっぽど大人な気がするのは俺の気の所為か?」
「その哀れみの目やめて……!」
「? お二人共、どうかされました?」
「年齢で威張る奴はたいていろくでもないなぁって話」
「年齢は生きていれば誰でも勝手に増えますからね!」
「うっ」
「それな、ホントそれ」
「でも生きているのは凄いことなので、それで威張るのはちょっと違うと思いますけど、誇るのはいいと思います!」
「紅音ちゃん大好き…ッ!!」
「きょ、京極さん!?」
「甘やかすとロクなことにならんから、言う時はちゃんと言わないと駄目だぞ紅音」
「……前々から思ってたんだけど、楽郎は僕に対して敬意が足りてないよね? うん、足りてないと思う! だから敬って! もっと僕を敬って!」
「俺より高い勝率維持してたら敬ってやるんだけどなぁ。それと京極お前、新人の頃の勝率が紅音より低いの気づいてるか?」
「アー、アー、ナニモキコエナイナー」
「今季の勝率も新人の紅音とそんな差がな」
「バーカ! バーカ! 楽郎のバーカ!」
「ボキャブラリィ貧弱過ぎるだろ。イマドキ小学生でもそんな煽りしねぇよ」
「私はまだ一年目で対戦相手が持つデータが少ないお陰で運良く勝ててますけど、お二人は沢山研究されてますからね…。私は運がよかっただけです!」
「ゲームにおいてリアルラックが強いのはオンリーワンの才能なんだよなぁ」
「……んんっ、こほんっ。そういえば紅音ちゃん初詣に行った神社でしれっと大吉引き当ててたね」
「凶極センパイちーっす」
「ははは、そうやって簡単に越えたらいけないライン越えたね楽郎? 鯉口切るよ?」
「上等だ。返り討ちにしてご自慢の刀を質屋に叩き込んでやるよ」
「あー、いつものですね? じゃあ私は軽く夜食でおにぎりを作っておきますね!」
「「助かる(ありがとう)」」
◇◇◇◇
「レイドボスさんとログイン時間が被って死合いどころじゃなくなった件」
「僕と楽郎のプロゲーマー二人がかりでも未だに勝てないのは、何かもう謎の力が働いているとしか思えないなぁ…」
「チートにすら完勝する上位ランカー勢は人間やめてるから仕方ない」
「僕、風の噂で金色の彗星が刀の錆になったって聞いたことあるんだけど」
「奇遇だな俺も獅子の女王が三枚卸になったって聞いたことあるぞ」
「「HAHAHAHAHA」」
「お二人ともお疲れ様でした! お夜食のおにぎりです! あとごめんなさい! 先にお風呂頂いちゃいました…!」
「いや全然。あ、おにぎり助かる、ありがとな」
「紅音ちゃんの握るおにぎりはホント絶品。何か秘訣ってあるのかな?」
「そうですね、お婆ちゃ…祖母からは「食べる相手のことを思いながら真心込めて作れば、どんな料理も美味しくなるよ」って教わりました!」
「なるほど」
「まあどんなに真心込めたところで炭は食べられないんだけどな」
「僕を見ながら言うのやめてくれるかい? 事実だけれども」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録③
「楽郎知ってるかい? カップ麺は二分半が最強なんだよ?」
「へぇ。紅音、味噌汁おかわり貰える?」
「わかりました! ごはんのおかわりはどうしますか?」
「このあと練習するからごはんはいいや」
「じゃあご飯のお茶飯は洗っちゃいますね! はいどうぞ楽郎さん、お味噌汁です!」
「ん、サンキュー」
「楽郎知ってるかい? カップ麺は二分半が最強なんだよ?」
「いや二回も繰り返すなよ。聞こえてるよ、聞いた上で『へぇ』なんだわ」
「なんで毛程も興味がなさそうな生返事が出来るんだい…? 最強の食べ方なんだよ?」
「食事に最強も最弱もないんだよなぁ。少なくとも俺は美味いか美味くないか、食えるか食えないかくらいしか食事には求めてない」
「むぅ……」
「いつもの京極さんの〆用にご飯を残して、あとはおにぎりにしちゃいますね。小腹が空いた時に食べてください!」
「「いつも助かる(ありがとう)」」
◇◇◇◇
「練習終わってリビングに来てみたらなんか魚介が生えている件」
「サンラク、俺一応お前の先輩だからね? あんまり舐めた口は叩かない方がいいよ?」
「お茶の間で醜態晒してトレンド入りした男のどこを敬えばいいのか教えてくださいよKパイセーン」
「くっ…、公式垢使ってわざわざ凸ってくるのはレギュレーション違反でしょ」
「違反するつもりなら撮影後のオフショを魔境に流してるんだよなぁ」
「え゛。お前まさか……アレ撮ってたの?」
「さてなんのことやら。少なくとも毎年司会を務める姉御に共有したら爆笑してたぞ」
「肖像権!!」
「魚介類に肖像権なんてあるわけないじゃん。お前は存在がフリー素材だよ」
◇◇◇◇
「あれ、魚臣さん。こんにちは」
「やあ。京極ちゃんもいたのか。そうなると、紅音ちゃんは?」
「この時間なら買い出しに行ってると思うぞ。何、なんか用事? つーかなんでここにいんの? ナツメグ氏とシルヴィア氏との愛の巣に早く帰れよ」
「俺と彼女達とはそういう関係じゃないからね? あとお前も傍から見たら人のこと言えた義理じゃないからね?」
「おいおいついに目まで腐り落ちたのかよカッツォ先輩、炎上した時に焼け落ちちゃったか?」
「僕も魚臣さんは一度眼科で診てもらった方がいいと思う。VRゲームのやりすぎで視神経に甚大なダメージが蓄積されているんじゃないかな」
「あー、うん。そうだね」
「「何か言いたいことあるなら聞くが?(聞きますよ?)」」
「暖簾に腕押しするだけ無駄だからいい。えっと、スポンサーから蟹が贈られて来たんだけど、流石に一人じゃ食べ切れない量だから人集めてここで蟹鍋でもどうかなって提案なんだけど」
◇◇◇◇
「頼もーう! 女三人でーす!」
「私トワ先輩の司会補助でいただけなんですけど本当によかったんですかね?」
「ヘーキヘーキ。ね、夏目ちゃん?」
「まあ一人二人増えたところで食べ切れる量じゃないからいいと思うけど」
「おいカッツォ、なんか見えちゃいけないモンが見えるんだが?」
「奇遇だねサンラク、俺もだよ。あとやっぱり眼科で診てもらった方がいいのかもしれない」
「ヘイヘイそこのバード&フィッシュメーン? こんな絶世の美女を悪霊扱いなんていい度胸してるねぇ?」
「悪霊なんて生易しいものじゃなくて魑魅魍魎の間違いだろ」
「違いないね」
「蟹鍋に焼き鳥と鰹のタタキを追加注文だよやったね!」
「酒瓶で殴ろうとするんじゃねぇバカ野郎!?」
「仕事現場で偶然見かけたから誘ったけど、やっぱり呼ばない方がよかったかしら……」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録④
「楽郎さん、テーブル空けてもらっていいですか?」
「了解。京極ほらお前いつまでこたつ占領してんだはよ出ろ」
「いたっ!? 蹴ったね!? 何も蹴ることないじゃないか!!」
「んなところで寝っ転がってテレビ見てる方が悪い。へいカッツォパイセン、そこの棚にガスボンベ入ってるから取ってくんね?」
「これか?」
「いやそれ機材掃除用のエアダスターなんだが。んなもん使ったら爆発するでしょうが。違うわその上の棚」
「ああ、こっちか。はい」
「サンキュー」
「ヘーイ陽務選手ー? ひとつ屋根の下で美女二人とシェアハウスはどんな気持ちかなぁー? ねぇどんな気持ちー?」
「とりあえずお前の鼻っ面にエアダスター吹き付けたい気持ちかな」
「ノンフロンでも人体に向けるのはやめようねぇー!?」
「プロゲーマーのシェアハウスだからもっとこう、VR機材が大量に置いてあるのかと勝手に想像してたんですけど、言われなければ普通のマンションとの違いがわからないですね」
「割り当てられた個室は機材が置かれているけど、共有スペースはあくまで生活がメインだから当然よ。まあちょっと生活感が溢れ過ぎてる子がいるみたいだけど…」
「京極さん! ちょっと手伝ってもらっていいですか! お湯を沸かして欲しいです!」
「任せて紅音ちゃん。それは僕の得意分野だ」
「それはも何もお前はそれしか取り柄がないんだよなぁ」
「僕の取り柄はこれしかないから、このあと楽郎に向けて熱湯溢したら許してくれるかい?」
「いいぜ。傷害罪で訴えてやるから覚悟の準備をしておいてくれよな」
◇◇◇◇
「蟹鍋、完成しました!」
「「「いえーい!!」」」
「はいはいはーい! じゃあ鍋奉行は司会進行を務めた私がやりまーす!」
「ごめんペンシルゴン待って、ホント待って。なんか君に任せたらいけない気がする」
「トワ先輩、お願いですからその真っ赤を通り越して黒に近いデスソースは絶対に鍋に入れないでくださいね?」
「なんつーもんを買ってきてんだお前」
「えー? 皆辛いの好きでしょ? 隠し味にピリッとして丁度いいと思ったんだけど?」
「いくら料理に関して壊滅的になった僕でも隠し味の概念くらいは知ってるよ。それどう考えても隠せないよね?」
「なんかドクロマークが見えるんだけど…」
「んー、じゃあ後でお酒飲んで酔い潰れたサンラクくんの鼻にでも塗りたくって遊ぼうっと」
「食べ物を粗末に扱うんじゃねぇ」
「というかそれは食べ物に分類していいのかい?」
「広義的な意味では摂取出来れば食べ物に分類されるとは思うけどね」
「辛いものが食べたい方には個別に小皿を用意しました! あとつけダレで『ピリ辛醤油ダレ』と『ねぎ塩レモンダレ』と『胡麻ダレ』もあるので希望があれば言ってくださいね!」
「圧倒的女子力」
「隠岐紅音の女子力は五三万あるぞ」
「ねぇカッツォ君、紅音ちゃん貰っていい?」
「俺に聞かれても困るんだよね…」
「ごめんね永遠さん、紅音ちゃんは僕のものだから」
「お前のものでもねーんだよなぁ」
「あ、あはは…」
「隠岐さんってとても出来た子なんですね」
「ウチの自慢の後輩よ。別の後輩に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいにね」
「楽郎言われてるよ」
「いやお前だお前。何食わぬ顔でキラーパスをスルーしてんじゃねぇ。そのまま刺されろ」
「僕あまりサッカー得意じゃないんだよね。迫りくるのは斬り伏せるか回避するかの二択だから」
「誰かこの頭幕末引き取ってくれねぇかなぁ…」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録⑤
「蟹の殻はあとで出汁を取るのでこっちにください!」
「紅音は再利用の鬼だなぁ」
「楽郎、蟹剥いてもらえるかい?」
「お前は再利用不可のゴミだなぁ」
「おやおやカッツォ君、グラスが空じゃないか。どーれ、お姉さんが注いであげようじゃないか」
「俺明日仕事だからそんなに飲めないんだよ…!」
「キョキョキョキョキョ!!」
「ちょっ、天音さん!? 笹原さんが壊れたんだけど大丈夫なの!?」
「あー、大丈夫! いつものことだから! おや、サンラクくんもグラスが空だねぇ? ほらほら、サンラクくんのちょっといいとこ見てみたいなー?」
「いつものことなの!?」
「新型の征服人形のお披露目会って何ですか知らないですよそんなのなんでよりにもよってまた私のイベントの日とだだかぶりしてライブとかやるんですかもおおおおおお!!」
「あっ……、そういえばそんなイベントがあったような……」
「はいイッキ、イッキ」
「ええいやめろ飲酒強要すんな大酒喰らいのウワバミめ」
「うーん……駄目だ、紅音ちゃん、蟹剥いてもらえるかい?」
「剥いた蟹ならここにあるので食べていいですよ!」
「紅音ちゃんは女神……っ! どこかの薄情な男とはえらい違いだよほんとに」
「聞こえてんだよなぁポンコツほうれん草。おいペンシルゴン、酒飲ませるなら京極にしろ、あいつそこそこ酒飲める口だから」
「えー? お酒強い人にお酒飲ませても面白くないでしょ?」
「おいその曇りなき眼やめろ。自分がいかに最低な事言ってるか自覚あるか?」
「お酒飲んでるからちょっとよくわからないんだよねぇー!」
「これだから酒飲みは…!!」
「(……メグ、そこのデスソース取ってくれる?)」
「(……ちょっとケイ何するつもりなのよ)」
「(……ペンシルゴンのヘイトがサンラクに向いてる間に仕返しする)」
「(……あー、どうなっても知らないわよ私)」
「ペンシルゴン、お酒ばかりじゃなくて蟹も食べるといいよ」
「おやおや、気が利くねぇカッツォ君。そんじゃあお言葉に甘え――ッッッ!?」
「イエーイ!! 大成功!!」
「カッツォくぅぅぅぅぅぅぅんんんんん!?」
「なんか知らんがよくやったカッツォ! あとで褒美をくれてやるぜ!」
「じゃあ今度の試合でシルヴィ相手から勝ち星貰える?」
「お前それ自分がGGC以降一度も達成してないことを俺に要求するとか、いかに無謀な挑戦叩きつけてるか理解して言ってんのか? ライオットブラッド一年分用意して首洗って待ってろ!!」
「さっすが未来のエース様は言うことが違うね!」
「全米一位がなんぼのもんじゃーい!!」
「いいぞー万年敗北者!!」
「お前にだけは言われたくねぇなー!?」
「あれこれ楽郎、お酒が回り始めたパターンだね」
「ケイも同じね」
「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこかかかか――――!!」
「うわっ!?」
「おっとこのパターンは私も初めて見るぞ?」
「ヘイヘイ、エイトちゃんステーイ、ステーイ。……っ、あー、だめひゃ舌ヒリヒリしてきひゃ、ごめん紅音ひゃんお水貰えりゅ?」
「わかりました! 取ってきます!」
「オイオイ呂律回ってねぇなぁペンシルゴンさんよぉ!?」
「水が欲しいなら水風呂に顔から突っ込んであげよっか!?」
「いいどひょうひてるねきみたひぃ…!?」
「蟹おいしいなぁ」
「キョキョキョキョキョ! くか! きこかくきかここ!?」
「京極貴女よくこの状況下で食べられるわね!?」
「蟹は熱い内に食せっていうからね」
「初耳なんだけど!?」
「天音さん! お水持ってきました!」
「ありひゃとうあかねひゃん……! …………っぷはぁ! よーし第二ラウンドいこっか!? 覚悟してよねぇー!?」
「「望むところだオラァ‼」」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録⑥
「酒は飲んでも呑まれたら駄目なんだよねぇー!?」
「「全然酔ってないんだよなぁ!」」
「千鳥足でタップダンスしておいてよくそんな威勢張れるねぇ!?」
「言われてるよサンラク」
「そのセリフ、のしつけて返してやるよ」
「ケイの方がどちらかと言えば酷いんだけど?」
「ほら言われてるぞ。明日仕事ならさっさとナツメグ氏の膝枕でおねんねしてな」
「ちょっ! 貴方ホント何言ってんの!? 私とケイは別にそんな」
「はは。サンラクも明日雑誌の取材あるんだからさっさと寝た方がいいんじゃない?」
「(……流されるのもそれはそれでなんか複雑ね……)」
「紅音ちゃん、ごはん貰える?」
「はい!」
「ありがとう。……さてと、僕もそろそろ何か飲もうかな」
「うぅ…ぐすっ…私だって…私だって…頑張ってるんですよぉ…!」
「えっと、さ、笹原さん! 蟹おいしいですよ! 食べましょう! 食べて元気になりましょう!」
「お、隠岐さん……っ!」
「あわわっ!? だ、抱きつかれるのはちょっと…!」
「んー、どれにしようかな。最初は軽めで……ん? なにこれ『スタッグJr.』…? 聞いたことないな、飲んでみようっと」
「というか二人共、私に対して無駄に虚勢を張りたがるのはやめた方がいいと思うんだよねぇ。いくら私が世界が羨む絶世の美女だからって、酒で酔い潰れてお持ち帰りなんてワンチャンないよ?」
「目尻の化粧が濃くなってるのによく言うぜ」
「人間、寄る年波には勝てないんだよね」
「それは『禁句』でしょうが!! 腎臓不全予備軍!!」
「「合法なんだよなぁ!?」」
「――不毛な争いしてるね? 僕も混ぜてよ、愉しそうだ。……ひっく」
「…………オイ、待て誰だ京極に酒あそこまで呑ませたヤツ」
「え? 京極ちゃんってお酒強いんじゃなかったの?」
「強いのは強いが、度数が高い奴を飲むと一気に酒乱になるんだよ…!」
「というか多分アレ自分で飲んだんじゃない? 今の面子で飲酒強要するのなんてペンシルゴンくらいでしょ」
「ものすごい酷い謂われようだけどまあ概ね同意……って、あー!? 私が楽しみにしてた『スタッグJr.』が空けられてる!?」
「天音さん、そのお酒の度数は?」
「六七度だったかな? ストレートでも以外とイケるんだよ」
「アルコール消毒液か何かかな?」
「普通その度数なら割るだろ…」
「鍋ときたらお酒なんだからしょうがないでしょぉー!? 京極ちゃんも成人してるからセーフ!」
「それを決めるのはお前じゃないんだよなぁ!?」
「ああ、身体が温まってきた…。脳が心地良い高揚感で包まれるのを感じるね」
「チクショウ面倒な乱数引いたな恨むぞ乱数の女神ィ……! ――紅音! 鍋をリビングに退避させろ!」
「ハイ! 前回のアレですね! さ、笹原さんちょっと離れて…って寝てますねっ!?」
「……うーん……お母さん……むにゃむにゃ……」
「前回?」
「前も似たようなことがあったんだよ」
「サンラク君、三行で解説出来る?」
「酒乱京極 大暴れ 額に擦り傷」
「前にサンラクが額に絆創膏貼ってたのってそれが理由だったんだ…」
「ああ、だから同じ日にこの子死んだような顔してたのね…」
「京極の土下座写真、あとで一緒に見るか?」
「いや、たぶんこの流れだと翌朝見れそうだからいいかな」
「ヘイちなみにサンラク君。酒乱状態の京極ちゃんの戦闘力は如何程かな?」
「龍宮院流剣術使う剣道四段の女剣士の理性のリミッターが外れてるって言えばそのヤバさがわかるか?」
「ごめん私剣道知らないから全然ピンとこない」
「んじゃ〇.四ウェザエモン」
「本当にヤバイねぇ!?」
「え、サンラクそれどうやって攻略したの? 実質ソロでしょ?」
「あー、まあ色々やったんだよ。気合入れないとマジでオチるからしっかり頼むぜ?」
「今日のステージは屋内戦か……ひっく、素手でも、僕は負けないよ…!」
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『爆薬分隊』シェアハウス 会話記録⑦
「……ひっく、……多人数との戦闘は……まず倒せる相手から仕留めるべしッ!」
「――させねぇんだよなぁ!」
「ぐっ!?」
「ヒュー! サンラク君カッコイイー!」
「動体視力に関して言えばホント並外れてるよねサンラク」
「それに即応出来る反射神経と身体能力もなかなかよね」
「くっ……この……!」
「盛り上がってるところ悪いんだけど、雑誌縛る紐が棚の中に入ってるから、それでこいつ縛ってく――ぐおっ!」
「うわぁ膝蹴り」
「アレは痛い」
「けど手は封じたままなのは流石というか」
「……京、極……! お前あとでマジで覚えておけよ……!」
「っ! 脚が……!」
「すかさず両足を踏んで足技使えないようにしてるね」
「実況解説してないでマジで誰か縛ってくれ……! 酒で力が抜けてくんだよ……!」
「ケイ、お願い」
「後輩の尻拭いをするのも先輩の務めか。サンラク、貸し一つね」
「どちらかというとペンシルゴンに貸しじゃねぇかなぁ!?」
◇◇◇◇
「……なあカッツォ」
「なんだいサンラク」
「確かに俺は縛れって言ったけどさ? 言ったけどさ?」
「何か言いたいことでも?」
「言いたいことしかねぇんだが?? なんで俺も一緒に縛り上げてんだ??」
「暴れる人間を縛り付けるなら柱に括り付けた方がいいと思ってね」
「人柱じゃねぇんだよなぁ!」
「むぐー! むぐー!」
「京極ちゃんの口はタオルで猿轡噛ませたけどまだ暴れるねぇ。……面白いから写真撮っとこ」
「天音さん、一応世間体もあるからSNSとかには掲載しないでもらえるかしら…?」
「大丈夫大丈夫、その辺りは流石に心得てるって。私も報復されたらたまったもんじゃないからねぇ」
「ならいいけど」
「いやいやナツメグ氏、よくねぇ、まったくよくねぇ」
「さーてと、レイドボスの処理は終わったから鍋再開しよっか!」
「処理されたか? 戦闘途中で放置してるよなコレ?」
「あれ蟹が…もうほぼない?」
「京極さんがかなり食べていたので…」
「抜け目ないのよねこの子…」
「むーっ! むーっ!」
「蟹がないならそろそろシメかな? 雑炊? ラーメン? 私は雑炊がいいんだけど」
「俺はどっちでもいいかな」
「右に同じく」
「私もどちらでもいいので雑炊にしちゃいますね! あ、あと笹原さんは私の部屋で寝かせてます!」
「ああ、ごめんね紅音ちゃん。あとで回収して帰るから」
「お構いなく! じゃあちょっと作ってきますね!」
「……カッツォ君、やっぱり紅音ちゃん頂戴?」
「だから俺に言われても困るって」
◆◆◆◆
「あいつら放置して鍋再開しやがった…」
「むむー」
「いや何言ってるかわからねぇよ。あと暴れんな、紐が喰い込んできて痛いんだわ」
「むむっ」
「あー、とりあえずアレだ京極」
「むー?」
「京極お前は二度と酒を飲むな」
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