双子に愛されてしまった男 (主義)
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序章

2095年度の九校戦は色々と波乱があった。だけどその中でも一番観客を驚かせ沸かせたのはなんと言っても第四高校の快進撃だろう。今まで第四高校が九校戦に勝ったという歴史は存在しない。それは今回も達成する事は出来なかったが例年の第四高校の結果を見れば今回の結果は良いものだろう。では何でそんな事が行ったのかと言うとそれは一重に……一人の一年生の快進撃が故だろう。一年生の部において出場した競技は全て優勝を掴んだ男。その男の出ている種目を見ていたものは誰もが凄さ故に言葉を忘れてしまうほどにその男は凄かった。

そしてその男の快進撃が周りの者たちにも影響を与えたのだろう。そして最終的には良い結果に結びついたのであろう。

 

この年、第四高校は……歴代の九校戦の中で最高順位である第二位をつかみ取ったのである。

 

 

 

 

そしてその場に姉を見に来ていた瓜二つの双子はその少年に釘付けになってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーー

2096年度 4月上旬 ある家

 

 

僕は面倒な事をこの上なく嫌う。何もしなくても良いのなら何もしないに越したことは無い。無駄な体力は態態、使う必要性はない。

だから今の状況を早く抜け出したい。

 

「聞いているんですか!!!??」

 

 

目の前に座っている四十代の女性が声を張り上げた。何でこの人は無駄に大きな声を出すのだろう。そんなに大きな声を出さなくても聞こえる事ぐらい分かるだろうに。

 

 

「聞いています。母上」

 

 

「それなら良いですが………それでさっきの話に戻りますが一条家のご子息であり次期当主である一条将輝さんからお会いしたとの連絡を受けているので今月の末にこの屋敷でお会いする事になりましたから知っておいてください」

 

そう言って母上は僕の前から去っていった。

 

一条くんと会うのは一か月振りぐらいか。最近はかなり頻繁なペースで会っている気がする。まあ、会って何をするかというと遊ぶだけなんだけなんだよね。具体的な内容としては将棋をやったりチェスをやったりするだけ。

 

 

極まれに真面目な話をする時もあるけどほとんどない。

 

何で僕のような人が一条家の次期当主である一条将輝くんと知り合いなのかと言うとそれは……僕が二木舞衣の子供だからだ。幼い頃の交流があってもう物心が付く前から知り合いだった。その縁が今でも続いており、たまに遊ぶこともある。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 同時刻 七草家 ある部屋

 

 

「お父様も頑固ですね」

 

 

 

「そうだよね~私たちは只、第四高校に通いたいって言っているだけなのに……」

 

普通であればお姉さまが通っていた第一高校に通うのが普通。確かにボクたちも昨年の7月の中旬ぐらいまではそう思っていた。だけどお姉さまの活躍をこの目に焼き付けるために行った九校戦でボクたちは見てしまった。華麗に競技をこなして全ての競技で優勝を掴み取るあの人の姿に一瞬で心を奪われてしまった。逆にあんなものを見せられて何も思わない人は絶対にいないと思うな。

 

それからは彼の素性を調べ上げた。七草家の力を行使すれば素性を調べるのも楽だからね。

 

「一度でも良いからあの方とお話をしてみたいです!」

 

 

「そうだよね~どんな風に話すのかな?普段どんなものを食べているのかな?学校以外でよくいる場所はどこなのかな?」

 

気になりだすと気になって仕方がない。こんなにも誰かの事を考えたのは生まれて初めてかもしれない。食事を食べている時も学校にいる時も寝る前もいつでも彼の事が頭から離れない。まるであの人の事しか考えられない頭にさせられたかのようだ。

 

 

「家は特定出来てるけど……さすがに何もアポも取っていなのに訪問なんかして第一印象が悪くなるのだけは避けたいですしね」

 

 

「そうだね。だけどアポを取るといってもお父様がそれを許してくれるかな」

 

 

「それは確かにそうですね。でも、何か適当な理由を考えていえば案外騙せるかも」

 

 

泉美はこういう時はボクよりも行動力がある。それを去年の九校戦の終わりから実感するようになった。普段はおとなしくて自分の意見をあまり言う事もないし周りに合わせている感じなのにあの人の事になるとまるで性格が変ってしまったかのうように思ってしまうほどだ。

 

 

ボクも泉美もこういう気持ちになるのは初めてだからまだ確実には分からないけど多分、これは……世間一般で言う………「恋」なのかな。

 

 

 

小学校の頃に友達が「恋」とか何とか話していてあの頃は一生ボクはそんな事を思う事はないだろうと思っていた。

 

 

 

「早くあの人に会って話したいな~……」

 

 

 

 

 

 

 




二木家は何の魔法を得意とする魔法だったか………


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生徒会への勧誘

僕はこれでも第四高校の生徒会長。本当はやりたくなかった。面倒なのは目に見えているからね。だけど第四高校では生徒会長だけは立候補では無く生徒の投票なのだ。だから立候補者とかではなく全生徒が生徒会長に適していると思う人間を全校生徒の中から選ぶ。だから必ずしも意欲のある人間がやるとは限らない。

 

その良い例が僕だ。僕は決して生徒会活動に関しては意欲的とはお世辞にも言えないし辞められるのなら今からでも辞めたいくらいだ。でも、生徒会長に任命された生徒に拒否権というのは存在しない。全校の投票で選ばれるというのは光栄な事であり断る何て事はあり得ないだそうだ。これは僕が生徒会の顧問に辞めたいと言った時に言われた言葉だ。

 

 

 

 

 

そして今は入学式が無事に終わり生徒会室でため息をついている。

 

「別に入学式で生徒会長がお祝いの言葉とか言わなくても良い気がするけど。そろそろこの悪しき習慣を無くして欲しいものだよ」

 

 

僕は誰もいない生徒会室でそう呟いた。新入生に贈る言葉なんてないよ。別に普通に過ごしてくれれば良いし、一つ新入生に言う事があるとすれば....問題だけは起こさないでくれ。これはかなり切実な問題だ。問題を起こされるとその解決に生徒会も動かなくちゃいけない場合もあるしそうなると僕の時間が消費される。それだけは避けてほしい。

 

でも、それ以外の事は別に良い。

 

「新入生は帰っていくのに何で僕は残らなくちゃいけないんだろう」

 

 

僕が生徒会室にいるのにはちゃんとした理由がある。それはこれから新入生の中で特に優秀なものを生徒会に招き入れる。まあ、招き入れると言っても勧誘に近いんだけどな。別に新入生側は嫌だったら断れるしこの委員会に行きたいと言えばそれを斡旋する事だってできる。これは所謂、優秀なものを委員会に入れておきたいだけなので別に生徒会でなくてもいい。

 

 

今年の新入生から二人。その二人は双子らしい。双子でどちらも優秀だとはもう遺伝だろうか。両親が二人とも優秀な魔法士とかなのかもしれない。

 

 

「確か.....「黒羽」とかいう苗字だった。あまり耳にしない苗字だけど...僕が知らないだけでもしかしたら名家なのかもしれないな。後で調べて見るか」

 

 

コンコン

 

 

「入って良いよ」

 

 

僕がそういうとドアが開き男女で合計三人が入ってきた。

 

「会長。お連れしました」

僕の側近である生徒会副会長がそういった。

 

「ありがとう。それじゃ面倒だけどもう一度挨拶をするとしようか。僕は二木久遠と言って第四高校の生徒会長をやっている。それで何で君たちをここに呼んだかというと.....勘の良い君たちなら気付いているだろうが生徒会への勧誘をするため。僕としてはこんな事はどうでも良いし早く家に帰って休みたいところ何だけど一応、これでも生徒会長だから聞いておくね。君たちは生徒会に入りたいと思うかい?別に強制じゃないから入りたくないと思ったら入らなくても良いよ」

 

 

生徒会は優秀な人間を欲しているが別にそれは誰でもない。生徒会に入りたいと思う奴が入れば良いし入りたくなければ入らなくても良い。第四高校は生徒会長以外に関しては立候補で入れたりする。誰でもとはいかないけどそれなりの成績を収めている生徒であれば誰も入れると言っても過言じゃない。

 

 

新入生の二人の方向を見ると二人はどうやら答えを決めたような顔をしていた。

 

 

「「丁重にお断りします(わ)」」

 

 

二人はほぼ同時に僕の方を見て言った。さすが双子だな~。こんなに息の合った事が出来るのは血を分け合っている双子だからと言える。

 

 

「そうか。じゃ生徒会以外で入りたい委員会はある?」

 

 

「そちらもないです」

 

 

迷うことなく双子の少年の方が答えた。まあ、委員会とか生徒会なんて時間を取られるのは目に見えている。そういう自分の時間が無駄に消費されるのを嫌う奴なのかもしれないな。この双子は。

 

 

「分かった。それじゃ呼び出して悪かったね。帰ってくれて良いよ」

 

これで新入生の中からまた生徒会入りをさせる者を選別しないといけないけど仕方ないな。本人たちがやりたくないと言っている以上は無理やりやらせるわけにもいかないしな。

 

 

「それでは失礼します(わ)」

 

そう言って出ていくのかと思いきや男の方が振り返り僕の方を見つめてきた。

 

 

「何か僕の顔についているか?まだ昼食を取っていないからご飯粒とかは付いていないとは思うけど.....」

 

 

「いや、何か付いているとかではなくて...一つだけやって欲しい事があるんですけど」

 

やって欲しい事......?

 

 

「僕に何をして欲しいんだ?」

 

 

「あの二木先輩は九校戦の試合をする前にいつもやるルーティンがありますよね?」

 

こいつ.....まさかそれをやって欲しいとかいうんじゃないだろうな。それに何でこいつはそれを知っているんだ。

 

 

「あると言えばあるかな。それがどうした?」

 

 

「いや、生徒会の誘いを断っておいてこんな事をお願いするのもあれなんですが..やっていただけたりしませんか?」

 

少年僕に近づいてきて両手を合わせて上目遣いをしながらお願いをしてきた。見た時から思っていたが美形で事前から特徴を知らされてなければ男だと分からなかったぐらいだ。そんな少年が僕に向かって上目遣いをしながらお願いをする姿は....凄い破壊力だった。僕は別に変な性癖があるわけではないけど...可愛いとは不覚にも思ってしまう。

 

 

「....ダメだ。やらない」

 

あれは九校戦や闘う相手がいる時にやるルーティンだ。それにあんなの試合前のようなハイテンションになってなければ恥ずかしくて死んでしまいたくなってしまう。

 

 

「..どうしてもダメですか?」

 

僕は上目遣いの少年を見ないように天井を見上げた。だって見ちゃったらやってしまう気がする。あんな可愛い顔で見られたら何でも許しちゃう気がする。

 

 

「.ダメだ。あれは九校戦とか何かの試合でもなければやらないと決めているんだ」

 

 

「そうですか...残念です。じゃあ次の九校戦の時までのお楽しみにしておきます」

 

そう言いながら少年は生徒会室から少女と共に出て行った。

 

 

 

 

 

 

「会長。...やってくれませんか?」

 

 

「いくらお願いしてもやらないよ。それより君も見たかったの?あれは別に人に見せるようなものではないんだけどな」

 



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選択

………


黒羽姉弟に生徒会入りを断られてから急いで次の生徒会の候補生を絞り出してリストにした。これが予想以上に時間が掛かってしまい帰るのが日が暮れてからとなってしまった。

 

 

 

そしてそれから四日後

 

新入生は順調に第四高校に慣れてきているようで今では初日の時に感じた緊張しているような雰囲気は感じなくなった。さすがに問題がまだ起こらずに穏やかな日常を過ごしていた。まあ、さすがに始まって四日で問題が起こるようならかなりヤバいけどね。

 

そんな感じで平和に過ごしていると昨日の晩に母上から端末に連絡がきていた。母親からの連絡なんて珍しくて端末に連絡をするぐらいなら会いに来てしまうような人だからね。

 

 

その連絡の内容は僕が思わず「はぁ?」と声を漏らしてしまうほどだった。この連絡を見たのが外とか学校じゃなくて家でよかった。そうじゃないと学校では絶対に見せないような顔をしてしまっていると思うから。

 

 

 

 

その内容は「明日、第一高校に行ってください」というたった一言だった。だけどその一言だけで僕が驚くには足りた。明日って言ったら平日の木曜日だ。普通に僕だって高校がある。なのに何故僕が第一高校に行かなければならないんだ。

 

それにこの時期は僕も暇じゃない。金曜日から四日連続で部活動の勧誘期間が待っている。この勧誘期間はいつも問題が激増する。これは去年も荒れに荒れた。

そんな日の一日前が忙しくない訳がない。それは母上も知っているはずだ。僕の学校の予定に関しては誰よりも詳しいあの人が....だとしたら何でこのタイミングでそれを言ったのだろうか。まるで理解が出来ない。

僕は一先ず埒が明かないので母上に連絡をしてみる事にした。

 

 

「母上ですか?」

 

 

「そうだけど急にどうしたんですか?」

 

 

「どうしたじゃありませんよ。さっきメッセージを見たんですけどあれはどういう意味ですか?」

 

 

「そのままの意味よ。あなたには明日第一高校に行ってほしいの」

 

 

「いや、それはメッセージを見てわかりますけど何で僕が第一高校に行く必要があるんですか?それに母上もご存じのはずですがこの時期は僕も忙しいという事を」

 

 

「それは重々承知しています。ですけどあなたは生徒会長になって新入部員勧誘週間を経験するのは初めてです。一度ぐらいは他の学校の運営方法を見ておいて損はないはずよ。それに第一高校と言えば九校の中で一位、二位を競うほどの優秀な者が揃っていると聞きます。その人たちの運営方法を見てそれを自分たちの時に活かせるでしょ」

確かに第一高校の新入部員の勧誘週間は僕たちよりも一日早い。

 

 

「.....確かにそれはそうですけど明日だって明後日のために用意がたくさんあるんです。ここで生徒会長の僕が抜ける訳にはいかないんですよ」

 

 

「それに関してはリモートでもどうにかなるでしょ。こんな機会、普通はないんだから経験しておくのも良いんじゃないの?」

 

 

「...どうせ母上の事ですからもう手をまわしてしまったんでしょ?」

 

 

「うん。もう手筈は全て整っているわ」

 

この人は人に選択肢を持たせているようで持たせていない。だってもう全ての手筈が整った後に聞いてくるんだから。

 

 

「はぁ~そういう事をするなら前々から連絡をしておいて欲しいです。次からは手筈を整えるより前に一度僕に言ってくださいね」

 

 

「分かったわ。次からはそうするわ」

 

 

 

僕はその後少し話して電話を切った。

 

「母上には「分かった」なんて言ったけど..本当にこれで良いのか?さすがに一日前に抜けるなんて考える必要もなくマズイはずだ。それにこれでも僕は生徒会長という肩書がある。この忙しい時に生徒会長が居ないと言うのは.....」

何でこんな選択を母上も僕に迫るんだか...。

 

僕は三十分ぐらい考え抜いてついに結論を出すことにした。これ以上に時間を費やしても多分朝方まで悩んでしまうだろう。だとしたらここで潔く決めておいた方が良い。それにどちらにするにせよ色々としなくてはならない事が多いし。

 

 

「......行くか」

 

行かない方が良かったかもしれないけど..この決断で人生が決まる訳でもないしな。それにこれで幻滅されて生徒会長を辞められるのなら辞めたいしな。僕だって何の策もなく「行く」を選んだわけじゃない。副会長は僕よりも優秀だと近くで見てきた僕が思うぐらいに優秀な人間だ。普通だったらこんな奴が生徒会長になるのが普通なのではないだろうかと思うほどにね。だけど副会長に全てを任せるのはさすがに難しいだろうから補佐としてあいつらを付ければ良いだろう。

 

でも、あいつらに苦労を掛けると後々僕が面倒な事になるかもしれないけど背に腹は代えられない。何を代償として要求されるか分かったもんじゃないけどな。

 

 

 

僕は急いで明日僕が諸事情でいないので全権限を副会長に託す事を連絡をした。副会長は案外、「何で来れないんだ?」とか聞いてくるかと思いきや素直に受け入れてくれた。何でと聞かれたら答える気でいたんだけどそんな事を聞いてくる人は僕が連絡をした人の中にはいなかった。

 

最後に僕は...助っ人を頼むためにある人に連絡をする。もしかしたらこの時間だったら出ないかもと思っていたけど四コール目ぐらいに出てくれた。

 

 

「二木先輩から電話なんてどうしたんですか?」

 

 

「..まあ、電話をかけておいて今更、君にお願いするのはどうなんだろうと考えてしまうけど今は時間もないし仕方ないか」

 

 

「僕に頼み事ですか?」

 

 

「うん。明日は明後日の部活動勧誘週間の用意とかで本当は僕が行かなくちゃならないんだけど、諸事情があって明日は行けなくなったんだ。それで副会長に僕の替わりを託すんだけど..さすがに全部の仕事を副会長がやるとなるとかなりの負担が掛かるのはいつも仕事をやっている僕が一番わかっている。過労で倒れられても困るし助っ人を用意しようと思って考えたんだけどその末に君たちならと思ったんだ。どうかな?」

 

 

「別に良いですよ」

 

 

「やっぱり君が簡単に良いよと言ってくれるわけ........って良いの!!!」

「はい。別に手伝うぐらいなら良いですよ」

 

 

「まさか君がこんな簡単にOKをくれるとは思っていなかった。もっとダメですとか無理ですとか言うかと想像していたんだけどね」

 

 

「僕はどんな人だと先輩は思っているんですか....でも、これを引き受ける代わりとしては何ですけど..」

 

 

「僕に試合をする前のルーティンをやって欲しいという事か...」

 

 

「はい!!やってくれませんか?」

 

 

「.良いよ」

 

これに関しては死ぬほど恥ずかしくなるからやりたくないんだけど..仕方がない。折角僕が留守中の間手伝ってもらんだから何も渡さない訳にはいかないだろう。

 

「じゃあ、次に会った時にでもやるよ...」

 

 

「え!!!!本当にやってくれるんですか!????だったら姉さんも手伝ってもらうので姉さんにもやってあげてくれないですか?」

 

 

あれを....女子の前でやるのか。それも一対一や二対一の状況でやるのか。

 

「それは...君的にはどう思う?あれを女子の前でやるというのは...」

 

 

「確かに普通の男子がやっていたらかなりマズイかもしれませんけど二木先輩なら大丈夫ですよ!それに姉さんも僕もファンなんですよ」

 

それは初耳.....それに普通、魔法師にファンなんて付くものなのか。そんな話あまり聞いた事がないけど。

 

 

「はあ....まあ別に手伝ってくれるならやっても良いけど......」

 

 

「本当ですか!????なら急いで姉さんに知らせないと」

 

 

 

そう言い残して電話は切れた。

 

 

 

疲れたけどこれで明日の事に関してはどうにかなるだろう。あの双子は予想以上に力になってくれるはずだ。それにまだ学校が始まって三日しか経っていないけどあの二人は新入生の中でも僕たちのような先輩の中でも話の話題に入ったりする。お互いに容姿端麗、眉目秀麗、文武両道。これだけ揃えば噂にならないはずがない。

二人はもう第四高校のアイドルのようなものになってきている。そんな二人が協力をもし、全校生徒にお願いをすればほとんどの生徒が手伝い、迅速に事を進められるだろう。

 

 

 

それにもしもの緊急事態が起こった場合は僕に連絡をするように副会長には言ってあるから大丈夫だろう。

 




新入生勧誘習慣のようなものは第四高校にもあるのだろうか………………ここまで書いてしまってから言うのもあれだけど


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見学(前編)

そして次の日、僕は始発の新幹線に乗り東京に向かった。久しぶりに東京に行くから予想以上に時間を食ってしまったがそれでも八時過ぎには第一高校に着くことが出来た。

辺りを見渡してもまだ生徒の影はない。それはそうか。まだこの時間じゃ登校するには早すぎるからな。それにしてもなら良かった。

 

 

第四高校の制服と第一高校の制服は勿論違う。一人だけ違うと目立ってしまうのは必然だ。それはさすがに避けたかったからな。注目されるのはあまり好きじゃない。

 

 

 

 

 

このまま入ってしまって良いものだろうか。母上からはそこら辺の事に関しては何も言われてないんだよな。だけどまだ春とはいえ外は寒い。僕は冷たい風をあびながら十秒ぐらい思考して答えを出した。この寒い中、外にいたらいつか凍え死ねかもしれない。そんなことにだけはなりたくない。

 

そう思い僕は第一高校の校門を潜り校舎へと向かった。見る感じ敷地に関しては第四高校とそれほど大きな違いがあるわけでもなさそうだな。さすがに静かだな。そんな事を思っていると校舎からこちらの方に走ってくる人影が見えた。遠くから見ているからかわからないけど..とても小さい。

 

近づくにつれて大きく見えるようにはなってはきているがそれでも小さい。

 

 

 

 

 

そして僕のところに着いた時に思ったがとても小さい。小柄という言葉で片づけられるのかと思ってしまうほどに小さい。そしてここまで走ってきたからかとても息を切らしている。僕の方が心配になってしまうほどに。

 

 

「...はぁはぁはぁ......」

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「あ.....は....い....だいじょう...ぶです」

 

全然大丈夫そうに聞こえない。息を切らしすぎて過呼吸になりそうな感じだ。本当に目の前に来て思うが....小さいな。小動物のようだな。

 

 

「息を整えてからでいいから。今は息を整えて」

 

整えてもらえなければ会話すらままならないだろう。

 

 

 

待つこと二分

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「はい...ご心配をおかけてしまってすみませんでした..」

 

本当に小動物のように見えてしまう。それほどまでに可愛い。こんなことを女子相手に正面切って言えるような人間ではないため心の中で呟く。

 

 

「大丈夫ですよ。それで僕は第四高校生徒会会長の二木久遠です。それで君は?」

 

 

「あ..自己紹介がまだでしたね。私は三年の中条あずさです。第一高校の生徒会会長をしています。よろしくお願いします」

 

 

「先輩ですから僕に敬語なんて使わなくても良いですよ」

 

 

「...これはいつもの事なので気にしないでください」

 

 

「そうですか。それでもしかして僕の事を出迎えるために態態、来たんですか?」

 

 

「そうです」

 

 

「はぁ~....」

 

母上から連絡がいった学校側が生徒会長の中条先輩に知らせて出迎えるように言ったといったところか。そうなると中条先輩には悪い事をしてしまった。態態、出迎えるためにいつもより早く来させてしまったのだから。

 

 

「本当にすみません。態態、僕なんかのために早く来させてしまって...」

 

 

「謝らないでください!!今日から新入部員勧誘週間が始まるのでそのためにも生徒会は早く来ないといけないので.」

 

 

「なら尚更、こちらに来させてしまってすみません!準備が忙しいでしょうに..」

「..もうほとんど準備は完了してますし大丈夫です。それに私も二木さんには会ってみたかったので」

 

 

「僕に?」

 

 

「はい。昨年の九校戦では自らCADのメンテナンスから全てを行い出場した競技では全て一位を取った人。歴代を見てもそこまでやった生徒は少ないと思います。そんな事を成し遂げた人が一体どんな人なのか興味があったんです」

 

僕はそんな大層な人間ではない。決して誇れるような人間ではないし中条さんに興味を持たれるような人間ではないと少なくとも僕は思っている。

 

 

「幻滅しましたか?」

 

 

「いや、そんな事はありません!」

 

 

「それは良かった...さすがにここで幻滅しましたと言われたらかなり落ち込む」

 

面と向かって言われるののはかなりくるものがあるからな。

 

 

 

 

「...あ...長話をしてしまいましたね。話の続きは生徒会室にいった後にしましょう」

「そうですね」

 

 

そして中条先輩に案内をしてもらい僕は生徒会室の目の前まで来た。校舎内に関しては第四高校とさほど大きな違いは無いように見えた。

 

 

 

「そう言えば、聞きそびれていたんだけど生徒会メンバーはもう来てるんですか?」

 

 

「はい!今日は色々と忙しいんですから七時には全員が揃っていました」

 

予想よりも早いな。だけどそれぐらい前に来ないといけないのかもしれないな。

 

 

 

「僕が来ることは言ってありますか?」

 

 

「...はい。一応、昨日急に学校側から連絡が私にきたので目を通してこれは一応、生徒会のメンバーにも知らせておいた方が良いと思って連絡しておきました」

 

 

「...これこそ生徒会長ですね」

 

でも、それなら僕が入ったとしてもそこまで驚かれはしないか。それにこの扉の先にいる人たちは今回が初対面だ。さすがに何も連絡もしていないのにこの忙しい日に知らない奴が来たなんてどんな印象を持たれるか分からない。

 

 

「それで思い出しましたけど七草泉美さんと知り合い何ですか?」

 

七草泉美.....聞いた事がない。僕が会った事をある人が忘れるなんてことはないと思うんだよ。僕はこれでも物覚えは良い方だと思ってからな。それに「七草」なら尚更、忘れるなんてことはないと思う。

 

 

 

「知らないな....何で中条先輩はその七草泉美さんと僕が知り合いだと思ったんですか?」

 

 

「昨日、連絡をした時にとても喜んでいましたから。てっきり知り合いだと思っていたんですけど」

 

何か中条先輩が伝える事を間違ったんじゃないか。僕はそんな喜ばれるような人間ではないんだけどな。

 

 

「...何でか分かりませんけどそれは会った時に聞けたら聞けば良いんじゃないでしょうか?」

 

 

「それでは開けますね」

 

 

 

 

扉は開かれると中に居たのは合計で五人。

笑顔が優しそうな人、イケメン、美女、茶髪の可愛い人、品行方正そうな人。中々の個性のメンツだ。うちの生徒会とは間反対と言っていいかもしれない。うちの生徒会は僕以外は皆、真面目な感じだ。僕はルーズで何事も適当に済ませてしまうけどな。

 

 

「みなさん、この方が昨日、話した第四高校生徒会会長の二木さんです」

 

 

「このお忙しい時期にお邪魔してしまいすみません。少し見させていただくだけなのでどうかお気になさらないでください」

 

この時期に来られて迷惑をしてしまうかもしれないしな。

僕が言い終わるのとほぼ同時にイケメンそうな人が僕の方へと一歩、一歩と近づいてきた。背も大きいし体も大きい。こんなに体格に恵まれている人は軍人とかでぐらいしか見たことがない。それに制服の外からでも分かるほどに体を鍛えている。こんな人、本当に高校生か.......。

 

 

「俺は生徒会副会長をやっている二年の司波達也だ。よろしく」

 

僕に向かって握手を求めるように手を差し出してきたのでそれに合わせるように僕も手を差し出し握手をした。

 

 

この人、同い年かよ。三年生かと思っていたんだけど。

 

 

「よろしくお願いします。僕は第四高校、二年の二木久遠です」

 

 

「別に敬語を使わなくても良いんだが」

 

 

「これは僕の性分ですから。初対面の人は敬語を使っちゃうんです。それにここはいつもの第四高校じゃないですから余計に敬語が出るんです」

 

 

第四高校でなら初対面の人でもほとんどは敬語を使わずに喋る事が出来るけど....ここはいつもの場所じゃない。そうなるとやはり無意識にでも緊張してしまうものだ。黒羽の双子の時は最初からため口でいけたけどあれはかなり稀な例だ。

 

 

 

 

その後、他の人たちとも挨拶を交わして残りは品行方正そうな人だけだ。

 

 

「あの....」

 

 

「はぁい!!!」

 

 

「...一応、第四高校から来た二木久遠です。よろしく」

 

 

「............」

 

何故か経ち尽くしてしまっている。何でだ......何か立ち尽くすほど驚くような事をした覚えはないんだけどな。それから少しの間、沈黙が続きこのまま沈黙が続くのはマズイと思い僕は彼女の肩に手をのせてみるとビクッとした。

 

 

 

そんなに怯えられているのか.....。もしかして髪か。今まであまり触れられてこなかったから大丈夫だと思っていたけどやっぱり僕の髪って怖い印象を与えてしまうのだろうか。僕としては黒羽たちにも触れられなかったから大丈夫だと思ってたんだけどな。

 

 

 

僕の髪は所謂、金髪だ。そして金髪を後ろで一つに縛っている。僕としてはあまり気にしていないんだけどさすがに...怖いのかな。僕もあまり笑顔が得意な方ではないからな。それも相まって怖がってしまっているのかもしれないな。

 

「すまない!怖がらせてしまっているようだな。...後でまた落ち着いたら挨拶するよ」

 

 

さすがに今、挨拶をしたところで意味がないだろう。それに怯えている感じだしこの場に僕があまりいない方が良いかもしれないな。少し見たら校内でも見て回ってくるか。

 

 



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見学(中編)

そして時刻は九時になり第一高校の新入生勧誘週間が始まった。中条先輩が言うには昨年も乱闘騒ぎになりそうなのもたくさんあったりしたらしい。でも、第四高校に比べると規模や生徒数は圧倒的に第一高校の方が多いから騒ぎも多いのかもしれない。人が密集すれば争いが起こってしまうのは仕方のない事だから。

 

そんな感じで僕も生徒会役員の動きやどういう風に運営を行っているのかを聞き、ある程度の情報収集が出来たために少しぐらい回ってこようかと思うようになった。どんな感じなのかはやっぱり目で確かめないと分からないものもあるしな。

 

 

「中条先輩。少しそこら辺を見て回って来て良いですか?」

 

 

僕はパソコンと向かい合っている先輩に向かってそういった。新入生勧誘週間が始まってからというものずっと中条先輩はパソコンと睨めっこをしている。

 

 

「...あ......はい。大丈夫ですよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

僕はそう言って生徒会室を後にした。あの場に長い間、いるのもさすがに気まずいしね。

 

 

 

 

------------------

 

生徒会室を出た僕は校内を少し回ってから外に出た。外に出ると生徒で溢れかえっていた。こんなにたくさんの生徒が外に出ているのを見るのは初めてだな。こんな機会でもなければないだろうからな。

今頃、第四高校の方は大丈夫だろうか。やっぱり託しては来たけど心配だ。別に信用をしていない訳じゃないけど....。

 

 

 

そんな事を頭の片隅で考えながら適当に歩いていると近くにベンチがあったので座る事にした。それにしてもこの学校は本当に広いな。生徒数も九校の中でも一番だろうからな。

 

 

「ここに座ってもいいかしら?」

 

 

「別に構いませんよ」

 

この人は制服を着ていないから生徒ではないんだろうけど...じゃ一体何者なのだろうか。だからと言って教師のようには見えないんだよな。

 

 

「不躾な質問をしてしまうんですがあなたは何をしている方なんですか?」

 

普段なら初対面の人間にこんな質問はしないけど今回は好奇心の方が買ってしまった。だってこの人は少し普通の人間と違う気がするんだよな。

 

 

「そうね.....只の大学生かな」

 

隣に座っている女性は少し微笑みながらそんな事を口にした。大学生が高校生の新入生勧誘週間に来るものなのか。僕は昨年の第四高校のを経験しているけど少なくともそんな事は無かったと記憶しているんだけどな。

 

 

「大学生は来るものなんですか?」

 

 

「いいえ、私はお忍びで来ているの。後輩たちがうまくやれているかね」

 

 

「という事は第一高校の卒業生なんですか?」

 

 

「うん。二か月ぐらい前まで私も第一高校の生徒だったの」

 

 

「そうなんですか......」

 

 

「私の話ばかりでなくてあなたの話も聞いてみたいわ。第四高校生徒会長二木久遠くん」

 

一瞬、何でバレたのかと思ったが第一高校の中で第四高校の制服を着ていれば目立つ分かるだろうからな。僕の名前に関してはどこかで見たことがあったのか...それとも生徒会との繋がりがあって知っているのかもしれないしな。

 

 

「僕の話なんてつまらないですよ。僕は只、どんな風に第一高校は新入生勧誘週間を運営しているのかを見に来ただけですよ」

 

 

「そうなの。それにしても昨年の九校戦では大活躍だったわね」

 

 

「そうですか?僕としてはやれることをやっただけなのでそんな事は思いませんでしたけど。去年の結果は第四高校が全体で力を合わせた結果だと思っていますよ」

 

 

僕は凄い事をやったわけじゃなくて只、勝っただけだ。僕より凄い人なんてこの世界には多くいる。その人たちに比べれば僕なんて大したことがない人間だ。

 

 

「そう。だからあなたが生徒会長に選ばれたのかもしれないわね。妹たちが夢中になった理由も少し分かるかもしれないわね」

 

 

「僕としては生徒会長なんて面倒な仕事はやりたくなかったですけど...第四高校は第一高校と違って選挙というより全校生徒の中から一人を選ぶという感じなので一番多く投票されてしまったら嫌でもやらなくちゃならないんですよ」

 

 

もしかしたら九校戦に出なければ僕が生徒会長になる事もなかったかもしれない。そう考えると昨年の九校戦に出場してしまったのが全ての始まりなのかもな。

 

「そうなの。でも、それは凄い事だと思うわ。だって過半数の生徒が君の事を生徒会長に相応しいと言ってくれているわけでしょ。私たちみたいに選挙活動のようなものがない分、これまでの行いで全てを決める。その行いを振り返って見て生徒会長に相応しい人間を決める。それで選ばれる人は本当の意味で生徒会長に相応しい人だと私は思うけどな」

 

そうかな....皆は案外、九校戦の結果だけで全てを決めてそうだけどな。

 

「そうですかね....」

 

 

 

 

 

 

その後も三十分ぐらいの間話し続けた。

 

 

「そろそろ私はいくわ」

 

 

「そうですか。かなり長い時間、話してしまいましたからね」

 

 

「あなたとの話は面白かったわ。また機会があったら話しましょ。次に会う時はお互いに十師族の一員としてかもしれないわね」

 

そう言って女性はベンチから立ち上がり去っていった。

 

 

 

あれ....十師族....

 



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見学(後編)

折角、話せるチャンスだったのに私は緊張してそのチャンスを見す見す逃してしまった。先輩が第一高校に来たのは新入部員勧誘週間を観察して自分の学校の運営にそれを活かすために来ただけ。今日を逃せば、もう暫くの間は会う期間が少なくなる。ここで話しかけられなかったら後悔するのは目に見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄ちゃん見たいに行動的なタイプではない私が彼に話しかけるにはやっぱりそれなりの用が必要。用がないと話しかけちゃいけない訳ではないけどやっぱり用があった方が話しやすいし、用でも無ければ話が持ちそうにない。先輩が私に自己紹介に来た時ですら一言も喋る事ができなかった。

 

友達とかが好きな人を前にすると緊張して喋れないとか言っていたけど……本当だったんだ。聞いた時はそんな事ないだろうと思っていたけどいざ自分がその状況に遭遇すると目に占めて分かる。

 

 

 

 

 

 

だけど、ここで手をこまねていても何も進まない。少しでも先輩に私の事を覚えてもらうためにも。

 

 

 

 

 

------------------

 

 

女性と別れた僕は適当に散策をしながら第一高校を見学した後に生徒会室に戻る事にした。するとさっきまでが嘘のように張り詰めた空気はなくて穏やかな空気が漂っていた。この感じから察するにどうやらひと段落はしたようだ。

 

 

 

 

 

「あ、二木くん。第一高校の新入部員勧誘週間はどうでしたか?」

 

 

 

「やっぱり第四高校よりも活気がありますね。人が多いからと言ってしまえばそうですが、それだけじゃないと思いました。人が多ければ多いほどにそれを運営する方はとても忙しくなる。これは生徒会の人たちの技量があってこそ成り立っているものだと思いましたよ」

 

 

 

 

「そんな!!そんな!!私たちは皆が少しでも安全に新入部員勧誘週間を過ごせるように微力ながら自分たちの出来る事をしているだけですよ…」

 

 

 

今日、初めて中条先輩とはお会いしたけど大体、この人の事は分かった気がする。普段はおっとり系のような人だけどやる時はやる人なのだろう。でも、そうでなければ第一高校の生徒会長に選ばれたりはしないはずだしね。

 

 

 

 

「今は落ち着いてきたので一休みをしているので二木くんも一緒にどうですか?」

 

 

 

 

「ご迷惑でなければ」

 

 

 

 

その後は生徒会メンバーと他愛もないような話をしたり九校戦の話をしたりと色々と話した。こんなに他校の生徒と話したのは初めてかもしれない。他校の友達と言ったら一人ぐらいしか居ないからね。その人とも最近は会っていない。

 

 

 

 

 

「二木さん。おひとつお聞きてしも良いですか?」

 

 

 

 

「どうぞ。僕に答えられるような事であれば」

 

 

 

 

「では、なぜ九校戦の時にあんな事をしたんですか?」

 

 

 

「あんな事?」

 

 

 

 

「深雪が言ってるのはルーティンの事だよ。その事に関しては俺も興味があった。お前の試合は九校戦の時に何度か見たけど試合の前によくやるものがあったからルーティンだと思ったんだが間違っていたか?」

 

 

どの人もあれにそんなに興味があるのかな。ここ最近、ルーティンの話を何度しただろうか。人のルーティンについて聞いても別に楽しい話は出てこないけど。

 

 

 

「いや、ルーティンだよ。あれをやると気合が入るから九校戦とか気合を入れてやる時はやるんだけど…あのルーティンは対人戦でも無ければ出来ないから、気合を入れるときでもやらない事があるんだけどね」

 

 

 

それにあれを相手も居ないのにやろうものならおかしな人だと思われてしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

「でも、あのルーティンは凄いですよね!!あれをやったら二木くんは全試合、勝利を収めてますから」

 

 

 

 

「別にルーティンをしたから勝ったわけでもないと…思いますよ…………中条先輩」

 

 

 

 

「……それもそうですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々と話し込んでいたら新幹線の時間が近づいてきているのを気付いた。この新幹線を逃すと夜7時までに帰る事が出来なくなってしまう。夜7時までに帰らないと色々と準備があるからね。

 

 

 

 

「それじゃ、そろそろ」

 

 

 

 

「そうなんですか?」

 

 

 

 

「はい、情報収集は出来ましたし、運営方法に関してもある程度は学ぶことが出来ましたからね」

 

 

 

それに午後七時ごろに僕の家に来るように黒羽兄弟を呼んである。高校生をあんまり夜遅くに呼び出すのはどうだろうと考えてしまったがあの二人の実力は確かだからもしもの事があったとしてもどうにかするだろう。それに本当にもしものために密かにボディーガードの方も派遣してある。

 

 

 

「それでは校門までお送りします」

 

 

 

 

「いえ、大丈夫ですよ。ここで。生徒会の皆様はまだ仕事が残っているでしょうから」

 

 

 

 

「ですが………」

 

 

 

 

「急な訪問にも対応していただき本当にありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

挨拶をした僕は校門への道を進んでいた。それにしてもここにも良い人が多くいたな。元々、僕は第一高校に入学するはずだったけど急な事情によって第四高校に入学する事になってしまった。今まで第四高校に行った事を後悔する事はなかったけど…今日、第一高校に来てみて思うことがある。

 

 

 

 

「こっちに入学していたらまた違う道があったのかもしれない」

 

 

 

でも、だからと言って第四高校を入学する事を後悔はしない。どこに入学しようとその場所で何をするかが重要だと僕は思うから。

 

 

 

「……あの!!!!」

 

 

 

「え…………君は確か……七草……泉美だったかな」

 

 

 

「はい」

 

 

 

「僕に何か用かな?」

 

 

さっきは怖がっているようでまるで会話に入って来る事がなかった。まあ、初めて僕を見るんだとしたら金髪に恐怖を抱いたとしても仕方ないかもしれない。

 

 

 

 

「……ふぁ…なんです

 

 

 

「…え、すいません。もう一度、お願いします」

 

 

すると七草さんは深く息を吸い込み始めて、吐き出す当時に大きな声で七草さんは僕の目を見ながら言った。

 

 

 

 

二木先輩のファンなんです!!!!

 

 

 

「え………」

 

 

何を言っているのか理解できなかった。

 

 

 

「………ファンなんです!!!」

 

 

 

「あ……僕のファン?」

 

 

 

「はい」

 

七草さんはもしかしたら僕を誰かと勘違いしているのかと思ったがさすがに『二木』なんて名前はそう多くはないはずだしな。

 

 

 

 

「一応、聞いておいとくけど……誰かと間違っていないかな?」

 

 

 

「間違ってないです。あなたのファンなんです」

 

 

 

「あ…はい……ありがとうございます」

 

 

 

「その………じゃあ、お気をつけて」

 

 

それだけ言うと七草さんは全速力で帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体、何なんだったんだろうか?」

 

 

 



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来客(前編)

第一高校の新入部員勧誘週間の運営方法を見れたお陰でこちらの部活動勧誘週間も滞る事なく終わりを告げる事が出来た。結果としては成功と言っても差し支えのない程度には出来ていたと思っている。

第一高校ほど多くの生徒を抱えているわけではないのでそこまで大きな問題は起こらなかったけど小さな事件ならそれなりに発生した。どこの部活も人員が欲しいのは分かるけど………騒ぎだけはあまり起こさないで欲しかったね。

 

 

 

 

 

そして新入部員勧誘週間が終わってから一週間近くが経った。今日は学校が休みなので家に僕は滞在している。

 

 

態態、外に出て体力を消費するようなことはしたくないしね。それに来週からは少しずつ九校戦のことについても進めていかなければならないのは目に見えている。こんなに早く用意する必要はないと思うけど……生徒間の間で九校戦への意欲が湧いており、優勝を目指そうとする気持ちが高まっている。

 

それは確実に昨年の二位という順位が影響しているのは言うまでもないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

やる気にあるのは良い事だよ……だけど闘志は秘めておいた方が僕としては良いと思うけどね。

 

今年は期待の新人がいるからね。その期待の新人とは黒羽姉弟のこと。あの二人は一年生の中でもTOPクラスの実力を結果として残している。実技に関しても筆記に関しても良い成績が残っている。

 

 

 

 

 

今年は昨年よりも良い結果が出るかもしれないと密かに僕は思っていたりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで話は変わるが……………………

 

 

先ほど家にいると言ったがそれは決してだらけているとかではなく、ある人の訪問を待っている。

 

 

 

 

 

 

 

丁度、第四高校の部活間勧誘週間が終わった日に僕の端末にある人からメッセージが届いた。メッセージを開くとそこにはこう書かれていた。

 

来週の日曜日に久しぶりに君に会いに行こうと思うんだけど、どうかな?

 

この人とは最近あんまり連絡を取っていなかったな。それは別に仲が悪いとかではなく僕も生徒会長としての仕事が本格的に増え始めたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別に忙しくなったからと言って連絡をしてはいけないとかではないが相手の方が気を使って僕に連絡をしないでくれたんだろうな。この人はそういう人だからね。優しくて誰よりも頼りになる人。

 

 

僕は別に予定もなかったし、久しぶりに会いたいと思って肯定的な返事を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた時間は戻り、今

 

 

 

約束の時間まで後、一時間はある……午後二時には到着すると連絡が来ていたし、今の内に昼食を食べておこうかな。両親は二人とも仕事で外に出ているから自分で作るしかないね。

僕はキッチンに向かい、冷蔵庫を開けて中を見ながら何を作るか考える。

 

 

 

 

 

そして数分、悩んだ末に何を作るかある程度決まって来て調理に取り掛かろうとした瞬間にインターホンが鳴った。

 

まだ予定の時間まで全然あるから彼ではないだろう……だとしたら何かお届け物かな。そんな事を考えながら誰がインターホンを鳴らしたのか確認するために映像を見るとそこには………約束の時間までまだあるはずなのに……彼がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで玄関に向かってドアを開けた。

 

 

「……ごめん」

 

 

 

「え……何で謝っているのか分からないんですけど?」

 

 

別に彼に謝られるようなことをされた覚えはないんだけどな。

 

 

 

 

「約束の時間よりかなり早く来ちゃったからね。それに連絡をした時は一人で行くと言ったんだけど君のところに行くと言ったら聞かない人がいて………」

 

 

 

「別に大丈夫ですよ。五十里先輩が家に来ると分かった時から二人で来ると言うのは分かってましたから」

 

僕が約束していたのは五十里先輩。僕より一つ上の世代でとても優しい人なのだ。

 

五十里先輩とは僕が物心つく前から付き合いがあってその繋がりが今でも続いている。『五十里家』『二木家』は昔から長い付き合いがあるらしい。

 

 

 

「……まあ、久遠くんとも長い付き合いだからね。花音も後ろに隠れてないで挨拶をしてよ」

 

 

 

すると五十里先輩の後ろから真っ赤な髪色をした女性が出て来た。この人の名前は千代田花音さん。「千代田家」のご令嬢で五十里先輩の許嫁。とても感情が表に出てしまう人でギャンブルとかには絶対に向いていないであろう人。

 

 

 

 

 

 

「……久しぶり…」

 

 

 

 

「はい、お久しぶりですね。千代田先輩」

 

 

 

僕のイメージは大人しいイメージの方が大きいのだけど…五十里先輩と二人で話す機会があってその時に千代田先輩の話が出たときに五十里先輩が言っていた。『普段の花音に比べて久遠くんと会う時は抑えめだと思うな。久遠くんの前だと借りてきた猫みたいに大人しい』と。僕としては騒がしい千代田先輩というのが逆に想像できない。それに何で僕の前だと凄く大人しいのだろうか。

 

 

 

 

 

「……それじゃ立ち話もなんですし、お入りください」



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