路地裏の空も雑踏の中の空も色は同じ (古時雨)
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プロローグ

初投稿なのでお見苦しい点があるかと思います。
それでも見ていってくださる方は暇潰し程度に読んでください。
それでは、どうぞ。


四年前、異世界からの侵略者が現れ、街を蹂躙した大災害。

当時、小学六年生だった少年には行き過ぎたトラウマを植え付けたであろう惨劇が窓の外側に広がっていた。

「……はっ?」

反射的に口から絞り出された無意識の言葉。

人は目の前の状況を飲み込むために何かしらアクションを起こすという条件反射がある。

そのため今しがた少年がした行為も何かを理解する為であったと言えるだろう。

目の前では自室のベットの上で目覚めたはずが曇り淀んだ空が確かに見える。

意識が覚醒し周りの状況がよく知覚できるように、否できるようになってしまったがためか悲鳴が鼓膜を揺らす。

首はぎこちなさを残しつつそちらへと向く。

それが忘れもしない初めて見た第一次近界民侵攻(悪夢)である。

 

 

 

 

「………。」

珍しく朝早く目が覚めたはいいものの決して目覚めの良いものではなく、むしろ強制的に起こされたような感覚を感じていた。

「…………ケッ。まじで最悪だな。神とやらが居るならをブン殴りてぇな。」

まさに地獄と呼べるような出来事を夢とはいえまた体験してしまった。

朝というのはその後一日に影響する時間であるため、当然彼のテンションは駄々下がり真っ只中。

ただでさえ朝は低血圧であり、その為友人たちからも朝はあまり話しかけてこない程機嫌が悪いのだが今の状態はさらに上をゆく。

部屋にかけられた時計を見るとまだ五時半を過ぎていない二度寝をするには半端な時間であった。

とりあえず味噌汁に目玉焼きそしてコーヒーという和風と洋風のミスマッチの朝食を作る。

いつもより量を増やし食べ終わる頃にちょうど良い時間になっていた。

「……行ってきます。」

その声は無人のリビングに響いた。

彼の家族構成は父、母、妹からなる。

四年前の侵攻を機に全てが変わってしまった。

母は近界民(ネイバー)の侵略により延髄付近を負傷してしまい当時から今にかけて未だに意識である。

当時は怪我人も多く、病院は野戦病院のように満足に治療できないでいたため、後頭部を強く打った母は治療を受けられないでいた。

しかしやっと順番が回ってきた時に金持ちの息子が腕を骨折したのだろう、親子が担当の医師に多額の金を渡し先に治療を受けさせた。

そのため、母は重症化してしまいそれからは寝たきりになり、父は金に執着した。

家族のことは後回しにし、自身が経営している大手の企業の経営を優先するように。

毎月金だけを振り込むようになり声すら聞くことがなくなってしまった。

それから何事にも妹と2人で過ごしてゆくようになってしまった。

嫌なことを思い出し頭を切り替えるように歩きながらスケジュールを思い出す。

「防衛任務に静奈の迎えか。」

毎回部活関係で夜遅くなる妹、静奈を迎えに行くのが日の終わりである。

気付いたら正門をくぐり下駄箱についていた。

「ん、おはよ。」

後ろから声をかけれそちらを向くと一つ上の学年の熊谷友子がいた。

「……………あぁ。」

先輩に対していかがな返事であるが朝に声を返すことは珍しいことである。

「ねぇ、先輩に対して……、ん?目つきがいつも以上に悪いけど何かあった?」

八つ当たり気味に返事をしてしまったが逆に心配されてしまい顔を逸らす。

「なんでもねぇよ。」

一言を吐き捨てるように教室へと向かい始める。

「あそ。ま、無理はだめよ。」

そういうと熊谷はさっさと教室へ向かった。

むず痒さから思わず舌打ちが漏れる。

他人から心配されるのにあまり慣れていない故の反応だった。

いつもより明るくない?瀬荻君、ほんとだ。目元柔らかいかも、と後ろから聞こえてきた話し声に居た堪れなく教室へと逃げるように階段を上がった。

「悠貴、おはよう。」

教室のドアを開け、席に着くと前からモサモサした男前こと烏丸京介が挨拶をしてくる。

「……あぁ、京介。」

窓際の列の前後という席であるため悠貴と烏丸は仲が良い。

「今日は防衛任務何時からだ?」

「……17時半から。お前はバイト入ってんのか?」

「まあ、俺は今日は飯番なんだ。だから今日は19時までだけど。」

「お、じゃあ妹も連れてっていいか?俺も遅くなるし。飯作ると夜遅くなっちまう。」

「わかった。玉狛で待ってる。いつぐらいになる?」

血圧がってきたのか饒舌になった悠貴は世間話を始業時間まで鳥丸とした。

ソレは突然訪れた。

烏丸はバイトのため学校で別れ1人で本部へ向かっているとスパーク音ともに黒い(ゲート)がその口を開ける。

「おいおい今日は厄日かなんかか?」

警報が鳴り響くなか穴から這い出るように出てきた見慣れた白一色の()()は不気味な目を市民がいる街へ向けた。

「クッソタレが…!トリガー起動(オン)!!」

悪態をつきながらトリガーを起動。

換装されている時間さえ惜しいと走りながら状況を把握すべく街へと目を向ける。

「あの新型……周回爆撃しているのか。」

街は川を挟んだ対岸に位置しているため、グラスホッパーを起動し、移動を開始する。

「…あ?木虎か?」

川の上を跳ねながら近界民(ネイバー)へ目を向けると木虎が乗り込むところだった。

「おい前髪右。気をつけろよ。弱点ゆえに対策してあるかもしれないからな。」

無線で木虎に独特なネーミングセンスのあだ名で呼ぶ。

「…その声は瀬荻先輩?ていうか言われなくてもわかっています。先輩は街に行って三雲くんのサポートしてください。」

生意気な口調と高いプライドを窺わせる返答を返す。

「……あとで覚えとけよ。」

「なんならメモしときましょうか?」

「………」

イラつきを表すように無言で通信を切り悠貴は街へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(………確かに瀬荻先輩の言うことは正しい。てかああいう人は普通馬鹿なんじゃないの?なんであんなに頭の回転が早いのよ!ムカつく!!)

心の中で瀬荻への八つ当たりを済ました木虎が近界民(ネイバー)の上に降り立ち周りを確認していると先に電球をつけたような無数の突起物が生成される。

忠告を受けていた木虎は慌てることなくシールドを周囲に展開した。

張り終わった瞬間に先の電球のようなものが激しく発光し、連続的に爆発を始める。

爆発が終わると同時に手の中に生成したブレードで装甲を剥がす。

発砲、発砲、発砲。

もう片方の手で腰のベルトのホルスターに収められていた拳銃で内部を破壊する。

ボンッ!と小気味いい音と共に新型はその高度を落とし始めた。

しかし変化は他にも起きた。

高密度な突起物が木虎の周囲に生成された。

「……!?何!?」

明らかに普通ではない変形に困惑が隠せない。

「なんなのこれ!?。これ……。!!まさかこいつ……このまま街に落ちるつもり!?」

混乱が全身を巡り冷静な判断を奪い去る。

冷や汗が止まらない。

呼吸も荒くなる。

「止まって!止まりなさい!」

声を聞く機能がないトリオン兵にも関わらず呼びかける。

(駄目… …!!止められない…!!)

諦めかけた時、大きくその巨体が揺れ動き、空中に取り残されるように飛ばされる。

強大な力に引っ張られ川に落ちたトリオン兵は、轟音を立て川の中で吹き飛んだ。

 

 

修と合流し街の避難誘導を行いながら人より優れた感覚を使い木虎の戦闘を確認する。

(……ただ爆撃するだけじゃ無いハズだ。一体だけっつうのも気になる。…何かこう大打撃を与えるような秘密がありそうだな。)

2人でしていても所詮2人だけ。

避難はいずれもまだまだ完了していない。

「……オイ。メガネ。役割分担だ。お前は崩落した建物内に残されている奴らを助けてこい。」

「わかりました。しかし先輩の方が正規隊員なので瓦礫の除去は「めんどい。それに俺の方が従わせれる。」……わかりました。終わり次第戻って来ます。」

そういった修に返事をし何気なく戦闘している方角に目を向けると。

「ヤベェな。やっぱ何か仕組みあったか。地下へ急げ!!!」

逃げ惑う人たちはこちらへ向かって落ちてくるトリオン兵に気付きさらに混乱が加速した。

「チッ!!間に合わねぇ!!!」

避難している人たちに最後尾につき、シールドを張り始める。

しかしまだ広がりきっていないシールドをよそにその巨体は川へと引っ張られるように落ちていった。

「あ?なんかケツに付いてたなァ…。」

土手を上り川へと近づく。

対岸の河川敷を見るとそこには白い髪の毛の見慣れない黒服に身を纏った外見は小学生に見える者がいた。

奇しくも悠貴とそのその少年は目があう。

これがその後の未来に変化をもたらすものであるのは1人の男を除いてまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

「……お?未来が変わった?」

数十体のトリオン兵の残骸の上に無傷で座っていた男がつぶやく。

未だそこら一帯の戦闘特有の緊張感が漂う中、それを感じさせない口調の男は感慨深げにため息をつく。

耳につけている通信機から呼び出しの声がかかった。

「はいはいもしもし?」

どうやら召集の命令がかかったらしい。

男は軽口を叩きながらその腰を上げる。

「ほう。本部司令直々に……この実力派エリートをお呼びとは。」

薄く笑うその長身痩躯の青年はボーダーきっての実力者、迅悠一が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
また次の文面で。


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邂逅

恋愛描写が苦手なくせに展開をもっていく。
上手く描ける人が羨ましいです。
では、どうぞ。


当然目があったままと言うのはないわけであり、対岸にいた少年は換装を解いた。

話を聞こうとするがそれより先に街の人々が街に対する被害の説明を求めた。

「なんだあれは!?街には開かなかったんじゃないのか!?」

「そうよ!うちの息子だって怪我したのよ!!どう説明してくれるの!?」

瓦礫の除去などで様々な助けをしていた三雲が責められる。

人々は悲しい何かがあった時には自分以外の何かを責めたくなってしまう。

親父も同じか、と心の中で呟いた悠貴は三雲のところへ足を向ける。

が、必要なくなった。

近界民(ネイバー)による新手の攻撃です。現在ボーダーでは原因追求に当たっています。」

木虎が三雲のカバーに入ったからだ。

木虎はA級隊員に恥じぬ受け答えをしていた。

やはりその場には三雲には荷が重かったのか木虎に何か言われこちらへやってくる。

「すみません、瀬荻先輩…。お役に立てなくて…。」

はぁ、とため息を吐きながら三雲へと目線を移した。

「お前。変なところでバカだよな。」

「なっ…!!」

「この後のことだけ考えてりゃいいんだよ。お前の始末を決めるんだろ?」

「…はい。ありがとうございます?」

高圧的でありそれでいて頼りになる人、それが三雲から見た瀬荻悠貴の印象であった。

「おら、ぼさっとすんな。木虎がエスコートしてくれるって。」

後ろを見ると換装を解きこちら絵向かってくる木虎が見えた。

「基地までデートしてこいや。」

無駄に整った顔がニンマリとして見てくる。

…前言撤回したい気持ちとこの後の処分会議で三雲はお腹が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三雲たちと別れた後何をするも手持ち無沙汰な時間ができてしまった。

街へ行くも買い物するものはないし、かといって娯楽に行くも微妙な時間だ。

そう思って本部へ行きロビーの人をダメにするソファーでぼーっとしていると、

「よう。悠貴。」

後ろから声がかかりそちらを見ると迅がいた。

「……なんだよ。エリートか。」

「どうした。お疲れかな?何かあったが聞きたいがちょっと付き合ってもらえるかい?」

「まじ?俺この後防衛任務が入ってるけど。」

「あー、そのうち通達来ると思うけど今日はないよ。イレギュラー門があるから今はトリオン障壁で封鎖されてるって。」

「……ふぅ。ま、ええよ。」

玉狛までは結構な道のりがあり支部本部間は車両での移動が普通となる。

しかしあえて歩いたのは何か人に聴かれたくないことがあるのだろう。

「で、なんだ?」

「直球だねぇ。少しはクッション挟まない?」

「うっせはよはよ。」

「オーケー。実はさ近界民(ネイバー)の子が近々玉狛に配属されるんだけど。その子ブラックトリガー持ちなんだよね。」

怒気が含まれた言葉が迅を突き刺すように放たれた。

「……オイ。まさか俺に守れって言わないよな…?()。」

形相が怒りに塗れた顔に変化していく中、迅は飄々とした態度で再度言葉を発す。

「そうだよ。そいつはこの世界には害がない。そしてお前の家族をああしたのもやつでもqない。」

少しは冷静を戻した悠貴は迅に話を催促した。

「そいつはお前とは違うがまた同じような悩みを抱えているんだ。そいつの未来のために手伝ってくれないか?」

瀬荻は玉狛と本部との仲を知っている。

たかが一個のトリガーが増えるだけの事態だ。

しかしそれは大きな戦力差になる事を悠貴を含めボーダー関係者は知ってる。

それがブラックトリガーというものだ。

その力を内包しているものは例に漏れずバランサーとして働くことが多い。

それを求め本部が強奪しにくるのは火を見るより明らかであった。

それを()()人は見ず知らずのましてや近界民(ネイバー)なろうもののために目の前で悠貴に頭を下げる。

その姿を見てマグマのように煮えたぎっていた頭は冷め同時にそうさせてしまったことに対し罪悪感を感じた。

「……わかった。時間はいつだ。」

こうなることもこうなることも視ていたのだろうか。

憎たらしいニヤけた顔でこちらを見てくる。

「早く言えっての。俺も手伝ってやる。」

そしてそういう話も聞くと断れないことを迅は知っていた。

 

 

 

 

 

 

明後日だよ。

その言葉が何度もリフレインする。

ただでさえうちの隊長が目をつけられているのに俺もマークされたらたまんねぇな、と考えて憂鬱な気持ちになっているがその実すでにその戦い方や頭の回転の早さ、トリオン量によって目をつけられているのは本人が知るのは少し先。

「お兄ちゃん、何考えてんのさ。さっきから無言でつまんないんだけど。てか今日は玉狛でご飯でしょ?みんなに心配されちゃうよ?」

「あーそうなんだけどさ…、いや本部の連中と戦うかもしんねぇから少し気張ってるだけだ。気にすんな。」

「え゛っ、まじ?大丈夫なのそれ?」

「まぁ未来見れるやついるから大丈夫やろ。あ、そうえば陸上の方はどう?調子いい?」

「何それ未来とか……。あ、そうそう!最近またタイム上がったんだ!今年も全国で優勝狙らうよ!」

サイドエフェクトのことは静奈は知らない。

外部にはトリガー関連の話は秘匿にされているためだ。

「おお、そうかい。楽しみにしてんぞ。」

「うん!」

悩みは頭の隅におき、世間話を興じる2人はゆっくり歩く。

一通り話がすみ少し無言になったところで玉狛支部のすこし手前に差し掛かると、静奈は兄に言う。

「……さっきの話さ、お兄ちゃんは…どっか行かないよね…?」

不安そうな瞳が悠貴を写す。

きっとさっきの話をされた時から表面上は気にしていないように取り繕っていたのだろう。

「………あぁいかねぇよ。まだ1人じゃ生活していけないような奴をおいてったりは出来ねぇからな。」

「あ!今私のこと馬鹿にしたでしょ!!卵焼きくらい作れるもん!」

「へいへい、えらいえらい。」

心配された照れ隠しか素直にお礼を言えない悠貴はその言葉を背中で受け流す。

「あ!待ってよー!」

そんなようなことを言う妹を置いてさっさと歩き始めた。

その足取りは少しだけ軽い。

翌日、いつものように隊室に向かうと珍しい人に会った。

「お、みんなのアイドルじゃん。」

「その言い方やめてよ!ちゃんと挨拶してよっ!もうっ!」

みんなのアイドルこと綾辻遥だ。

彼女は嵐山隊のオペレーターを担当している。

「へいへい。」

「絶対適当な返事だよっ!!ちゃんと言ってよー!」

悠貴は綾辻とは仲が良くボーダーでは一緒に行動していることが多いほどである。

災害時家がなくなり父は県外にある会社に寝泊まりして、母は怪我によってとこに伏せたままであったため日常生活能力が大きく低下していた。

当時は小六と小4であったため何をするにも大人は必要不可欠である。

その時に親代わりになってくれたのが綾辻家だったのだ。

接点は同じ小学校に通ってて、母が知り合いというなんとも薄い理由であるのにも関わらずその役を買ってくれた。

「あ、そういや頼みがあんだけどいい?」

「なあに?」

あくまでもこの作戦は秘密であるのだが、迅の未来視では嵐山隊も参戦するらしくオペレートを頼んでも大丈夫だろうと踏んでいた。

「明後日の夜空いてる?」

あくまでもストレートに言ったつもりだ。

つもりなのだがいかんせんストレートすぎたのかかえって意味が婉曲してたわってしまったようで、綾辻は真っ赤になってフリーズしてしまう。

「あー、多分忍田さんからも何かあるから細かいところは省くわ……大丈夫?」

妄想にトリップしたままの綾辻は当然返事を返せるはずもなく、しばらく2人の間では沈黙が生まれた。

 

 

あの後自分の言葉足らずに気づいた悠貴は綾辻に再度説明をしなんとか意味が婉曲せずになった。

「えーっと、とりあえずこれってみんなに言っといた方がいいよね?」

「おん、そうすると助かる。」

実は悠貴が所属している影浦隊には秘密にしておりそのため自身の隊のオペレーターには補助を頼めないのでこうして頼んでいる。

昔から悠貴があまり人に

頼らないことを知っている綾辻はそれでもなお頼まれてることについて少し嬉しく感じた。

とはいえそのしおらしい態度ができるのに自分の気持ちには気づかない悠貴に悪戯をしたくなった綾辻は

「今日暇?」

と悠貴に予定を聞いた。

実は悠貴はボーダーない問わずかなりモテるのだ。

両親と同じようにかなり整った顔、そしてほぼなんでもこなすセンスによってモテないはずもなくボーダー内でも多数好意を寄せられているのだが、いまだに彼女ができたことがないという鈍感ぶり。

しかし本人は彼女がいないことに少し残念がっているため日々アプローチがファンによってなされている。

「うーん、まぁ暇だよ。お買い物?」

「ううん、デートしたいなーって。」

「ん、じゃあ行くか。………ん?」

何を隠そう、いや隠す気も本人にはないようだが綾辻もまた好意を寄せる1人である。

綾辻が中三の時、その容姿からかナンパをされやすくその日も運悪くされてしまう。

しかし、いつもと違うのは相手が複数人でありそれも無理矢理連れて行こうとする輩だったため連れ去られそうになってしまったことがあった。

が、運よく1人の青年がそこにはいたのだ。

4人を相手に全く手こずることなく次々と倒し制圧を完了させる。

その青年は見慣れた顔でありそれと同時に見たことのない顔をしてこちらに向かってきた。

怒った口調で自分の容態を確認し何事もないと安心し切った笑顔が溢れていた。

きっかけはそんなものだ、我ながらちょろすぎるとは思ったが後悔も気持ちに後ろめたさもない。

そんな過去を思い出し歩を止めた悠貴を見て綾辻はとうとう吹き出してしまった。

「どうしたの?お疲れかな?」

「………冗談はよくないな。そのうち俺も勘違いしちまうぞ。」

間違いなく本心を言ったその言葉はうまくかわされてしまったようだ。

「ふふっ。じゃあ17時くらいにロビーでいい?」

「……おん。」

それを言い残し綾辻は去った。

なぜか恥ずかしくなった悠貴は足早にそれでいて目線を合わせないように隊室へ向う

なお、その一部始終を見ていた米屋がボーダー内に話を広めたことをのちに知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この次の次ぐらいでやっと戦闘が出ます。
おせーよと思うかもしれませんが温かい目で見ていてくれると幸いです。
では、また。


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百聞は一見にしかず 百見は一触にしかず

主人公スペックです。
173cm
若干筋肉質の体
頭は良いが逆に馬鹿
トリオン量28(暫定)と取り分け多く、サイドエフェクトホルダー
チートではない
本職がスナイパー
初対面にコミュ症で硬い口調になる

トリガーチップ構成
メイン         サブ
                        
イーグレット改     バックワーム
バイパー        グラスホッパー
アイビス        スコーピオン      
シールド        シールド


では、どうぞ。







空閑遊真は困惑していた。

朝のまだ昼には達しないほどの時刻で迅と初めて顔あわせが済んだところであり、同伴していた三雲とともにイレギュラー門について話していたに青年がやって来た。

その青年は自分よりは身長は高いが日本人平均程度の大きさ、顔が非常に整っているのが目立つが別にそれよりももっと気になることがある。

昨日、川を挟み目があった青年がこちらを見ており無言であるからだ。

「えーっと、迅さん。あちらの方は?」

と、言いながら指を指す。

「悠貴。自己紹介しなくていいの?」

「……俺はまだそこのやつを知らない。てかあんたもすんなり受け入れるなよ…。」

人に向かって愚痴を話し始めた青年の名は悠貴というのか、と頭の中で情報を収集する。

「そいつの前で名前を呼ぶなよ。名前バレんだろ。」

「えー、いいじゃん。ならおれが紹介するね。こいつの名前は瀬荻悠貴。ボーダーの隊員だよ。」

「ふむ。」

悠貴と肩を組み始めた迅を横目に質問を重ねる。

「お前がネイバー…か?」

否、実際には重ねようとしたところに自分の正体が見抜かれ、相棒とともに警戒を始める。

(レプリカ。合図をしたら逃げるぞ。)

心得た、と相棒の返事を受け換装準備を行う。

「あんたも……迅さんみたいに何か見えてるの?」

「あー…いや、俺は。」

チラッと迅の方をみた悠貴は続けて話す。

「見えてない。そこのエリートに教えてもらっただけだ。話は聞いてるから警戒しなくていいぞ。」

「ふむ。……瀬荻、サンは信用できるの?」

「大丈夫だ、空閑。瀬荻先輩は信用できる。」

三雲の言う通り自分の正体を知ってもなおポケットに手を突っ込んだまま体制を崩さない様子を見てことを事を荒立てるような人ではないのが見受けられる。

「では、初めまして。瀬荻先輩。空閑遊真ともうします。」

「悠貴でいい。まぁ話は後だ。今から本部に報告しなくちゃいけんからな。行くぞ。」

「へいへい。もうちょっと話していくなくていいのかい?」

「それよりも先にイレギュラー門閉めるのが先だろ。それに……。」

迅の返事を流した悠貴は遊真を見て続ける。

「こいつは害をなすようなやつじゃない。そこはあったばかりでも信用できる。」

「ほほう。」

「えっ………なんでですか?」

三雲はまだ空閑を手放しで入れるほど信用はしてなかったみたいだ。

証拠にさっき遊真が警戒し始めた時ポケットの中にあるトリガーに触れていた。

「こいつは自分の立場を分かってやがる。それが一番信用できて………一番気に食わない。」

そのまま本部の方へと歩き始めた。

「ま、またあいつとは会うことになるよ。なんせ俺のサイドエフェクトがそう言ってるからな。」

迅はそう言って笑い、瀬荻の後を追う。

「こっから先はボーダーの仕事だ。」

そう言って手の中のラットを弄んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦しゅーりょー!!みんなお疲れ様!!」

迅の言葉で全てのラッドを駆除できたことがわかった。

無線で何か話している迅にタイミングを見計らい悠貴は尋ねる。

「…あいつ、目的なんなん?」

「さーね。まだ視れてないよ。」

「…そうやって独り占めか。セクハラで訴えられてろ、クソ。」

ぶつくさ言いつつ一度隊室に戻ろうか迷う悠貴に迅は声をかけた。

「まぁ心配すんなよ。この先あいつが裏切るなんて未来は一切見えてない。」

俺の全てをかけるよ、と迅は付け加え誰かと連絡を取り始め悠貴の方に振り返る。

「俺は一回メガネくんと本部へ行くけど悠貴はどうする?」

「あー…。俺は遊真と話すよ。」

「わかった。」

どうやらラッドを見つけた手柄を三雲につけるらしい。

そのため三雲と迅は本部に行く必要があった。

2人とも共に行動していた人物がいなくなってしまったためその場の雰囲気で一緒に街を歩く。

「おい、チビ。この前の話の続きすんぞ。」

「いきなりだね…、悠貴先輩。…レプリカ。」

《心得た。初めまして、ユウキ。私の名はレプリカ。ユーマのお目付役だ。》

「おっとと、これはこれはご丁寧に。俺は…説明はいらねぇか。まぁ、一応お前の目的を聞こうと思って。」

「……親父が言ってた。死んだらニホンに行けって。だから来たんだ。」

少し面食らって止まってしまった悠貴に気づかず先に行ってしまった遊真。

《……ユーマの父、ユーゴはユーマのブラックトリガーになった。》

レプリカの話を聞くと、どうやら向こうの戦争で一度遊真は死んだ、いや死んだはずだったらしい。

ブラックトリガーとは非常に優れたトリオン能力を持つ人物が全トリオンを注ぎ込むことで自らの命と引き換えに強力なトリガーを作成するものだ。

(話の流れから推測するに、)

「……親父さんは命を救うためにブラックトリガーになったのか。」

《そうだ。が、それは遊真の肉体をリング状のトリガーに封印しているだけだ。ユーマの肉体は今もゆっくり死に近づいている。ユーゴでさえ治すのには至らなかった。》

「…そうか。すまなかった。ズカズカと踏み込んでしまって。」

《……それを言うのは私にではない。ユーマにだ。…もっともユーマは気にしなくていいと言うだろうがな。だがありがとう。》

立ち止まった2人に気づいた遊真が向かってくるのが悠貴の目に映る。

「……遊真。」

「む?なんだね?」

戻ってきた遊真に一言いう。

「すまなかった。正直理由もなくこちらにきたのかと思ってた。すまない。」

急に謝られなんのことかさっぱりわからないまま遊真は言葉を続ける。

「先輩って意外と礼儀正しんだね。てっきりヤンキーみたいなものだと思ってたよ。」

暗い雰囲気を感じ取った遊真は負い目を感じさせないように返答を返した。

「……ヤンキーは礼儀正しいぞ?お前が言う礼儀の正しくないヤンキーはチンピラって言うんだ。」

「へぇー。じゃあ、あれは?」

矢継ぎに疑問を投げかける遊真に悠貴は次々と答えてゆく。

明るく彩られた商店街、淡く光る月、その両方はどこか暖かさを感じさせ、2人の輪郭を暈し、ゆっくりと優しく溶け込むよう2人の未来を照らしてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださった皆様ありがとうございます。
感想があることに気づき年甲斐もなく喜んでしまいました。
描いてくださった方々もありがとうございます。
今回はいつもより短めになってしまいました。
戦闘様式は決まっておりますがうまく表現できるかわかりません。
それでも読んでくださる方がいらしたらまた、次の文面で。


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