日常に天使と堕天使と悪魔が割り込んできてなんか言い寄ってくる話 (known giil)
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プロローグ

初投稿です。


 

 

 

鼻歌でも歌いたい気分だ、実に。

今日はスーパーで半額シールの貼られた牛肉を入手するのに成功した。

しかも2パックもだ。

良い日にはいい飯を。

そう自分に言い聞かせ、部屋に臭いが染み付くのを無視し、焼肉の準備をしている。

肉を買う時に着いてきた脂身を鉄板に塗り、温まった事を確認して肉を載せた。

ああ、何時聞いてもいい音だ。

 

「ええ、そう思うわ。」

 

肉とは、世界で最も人気の食物とも言えるのではないか?

香辛料が黄金と同じ扱いを受けていた時代もあったのだし。

人の形をした者全ては肉を欲していると思う。

少なくとも私はそうだ。

 

「でも、スイーツやワインも捨て難いわよ?」

 

ワインか、私は酒は苦手なのだ。

どうも酒に酔う感覚が合わないらしく嗜んだ事はあるが、呑んだ時の記憶はまるで無い。

 

「あら、勿体無いわね…」

 

好き嫌いや、得手不得手くらい人には一つや二つくらいある物だ。

…おっと、肉が焼けた。

やはり肉はミディアムレアが1番だ。

滴る血も、噛みごたえのある肉も悪くは無いが、やはりはミディアムに完結する。

タレは要らない、塩とレモンでいい。

 

「ステーキソースは使わないのね…」

 

あれも嫌いではないが塩とレモンに勝る物には出会った事が無いのだ。

冷蔵庫で冷やしてあったレモンを包丁で真っ二つに切断する。

綺麗な断面図だ、さぞいい風味を出してくれるだろう。

塩コショウを肉に振り掛け、レモンを絞る。

仄かに黄色を交ぜた透明な汁が胡椒を浮かせて肉に纏われた。

レモンを口にせずともヨダレが溢れるというものだ。

 

「…へえ、これもアリねぇ…」

 

無論だ。

美味くない訳がないだろう。

丁度炊けたご飯を盛り付けて、箸を握った。

半額シールを貼ってくれたおばちゃんに誠心誠意、感謝を込めてのいただきますである。

…やはり美味い。

良い感じの焼き加減から生まれる、黄金の肉汁が口の中で溢れる。

ご飯をすかさず掻き込むと、天にも登る心地だ。

 

「…あら、ほんとね、美味しいわ。…所で、こっちには」

 

行かない、堕ちない。

絶対にだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ

 

少なくとも私は人間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私も生を受けて17年、様々な事を経験したと言えるだろう。

快楽も、理不尽も、酸いも辛いも深く味わってきたつもりだ。

少なくとも私は1人の人間として、この15年ちょっとを生きてきた。

 

ある日を境に、私の日常は崩れた。

 

そう、あれは曇り空でありながら、私の気分はアゲアゲだったあの日である。

 

 

 

駒王学園。

偏差値高め、アクセス良好、しかもサポートが厚く、部活も沢山あると言う。

学費も特待生ならば免除、補助金も出るとの事。

色々あって親が存在しない私には渡りに船、と言ったところである。

受験は地獄だったが、何とかして入学。

特待生首席としての入学である。

中学の頃、オカルト部で大真面目に書いた論文が駒王学園長を名乗る人に大絶賛を受け、それがきっかけとなって首席となった…らしい。

伝聞系なのは、面接の時にそれを面接官に質問され、「え、はいそうです…?」と答えたからだ。

結果面接はその質問のみでスルー。

30時間近い面接の練習は無に帰した訳だ。

 

そして入学式の日、それは起こった。

 

朝、いい気分で目を覚まし、私より後に起きたアラームをなった瞬間に止めた。

トースターに安売りしていた食パンを放り込み、目玉焼きと焼きベーコンをつくる。

パンが上に吹き飛ぶ瞬間に皿を出し、その上に着地させる。

更にその上に目玉焼きとベーコンを載せると、朝食の出来上がりである。

ペロリと平らげるとオシャレな制服に着替え、バックを背負い、玄関から家を出る。

…無論、鍵も閉めた。…ハズだ。

家の外に停めてあった自転車に跨り、立ち漕ぎで駆け出す。

スカートがめくれるのが気になるが、ぱんつではない(スパッツ)なので恥ずかしくはない。

だが、やはりと言うべきか、私のお腹はたかがパン1枚で満足しなかったらしい。

そこらのコンビニで菓子パンを購入。

公園でパッケージのカロリー表記をなるべく無視しながら食べて小休止していた時である。

すんごい美女に話し掛けられたのである。

 

「はあい」

 

「あ、どうも。…?」

 

その時の私の心境は、(誰だ…?知り合いにこんな美人いたか…?)

やら、(随分と馴れ馴れしいな…?これが噂に聞くナンパか…?)

等々、下らない事を考えている最中、その美女の右腕が光り輝く。

鏡でも取り出したのか、この美女は、と自分の中の美女像のなかにあったイメージを思考に貼り付けたが、違った。

 

「悪いけど、その心臓。ちょうだい?」

 

その色白の腕にはいつの間にか槍が握られており、私の心臓()を穿とうと迫る。

普通の人間ならばこんな美人がアクティブに殺しにくるとは思うまい。

まあ、なぜ襲って来るかはその美女の背中に付いている黒く染まった天使の翼が物語っている。

冗談ではない、こんなとこで死ぬモノか。

しかし、このままでは死あるのみだ、普通なら逃れられず倒れるだろう。

普通、なら。

そして、日常(デコイ)は塗り変わる。

 

起動(Start-up)展開(Deploy)始動(It begins)検査(Inspect)問題ナシ(All…OK)。」

 

『Please Password』

 

「復讐を、(Code:Nemesis)。」

 

鉄屑は動き出し、廃棄品は踊り出す。

少なくとも、私をすっぽり囲える位には。

 

「なっ…!!」

 

槍が鉄に阻まれる音、驚愕の声。

間違いなく隙が生まれた音だ。

腕にスクラップを巻きつけて、鉄クズバリアを解除した。

荒っぽい事は嫌いだし、その綺麗な顔を傷付けるのも気が引けるが、仕方ない。

 

「必殺!スクラップパーンチ!!!!」

 

 

 

 

使ったスクラップを元の場所に戻す。

美女はベンチでぐっすりだろう、頬に青アザがあるだろうが。

しかし無常にも時間はもう1時間の半分くらい刻まれていた。

それが指すのはほぼ遅刻寸前。

全力疾走で間に合うかどうか。

やるしかない。

自転車のギアを普段の物から2つ上げて、全力で漕ぐ。

足が鉛のように重いが、鉛の方が思いなと思い直して疾走する。

幸いルートは住宅街を通る為交差点や信号はほぼ無い。

初日遅刻の悪名だけは付けてはいけない、ぜったいにだ。

 

 

 

何とか間に合わせ、教室へ向かう最中、またまたものすごい美女に遭遇する。

今度は私と同じ制服を着ている、同級生だ。

しかし、その真紅の髪は何処か見覚えのあるような気がするし、今日は美女にはいい事が無い。

何となくではあったが、そこからさっさと去ろうとすると、前からもすごい美女が。

こっちは和風の美女である。

長くたなびく黒髪は男子を魅了して止まないだろう。

なんとまぁ、美しい絵面に私を放り込んだのか、神に問いただしたい所だ。

そして、後ろの赤髪の美女からの一言は、正気を疑う物であった。

 

「あなた、人間?」

 

「少なくとも人間ですね。」

 

「…そう。なら、私の配下になる気は無い?」

 

そう、とんでもない事である。

本当に周りに人が居なくて良かった。

人間云々も訳が分からないし、答えを返せた私を褒めたいが、極め付きは二言目だ。

どうやったらその一言が初対面に話せるのか、聞いてみたい衝動に襲われるが、我慢した。

配下、配下である。

SMプレイか何かであろうか?

私には全く理解ができない。

取り敢えず赤髪の美女はお嬢様っぽいので私もお嬢様っぽく断ろう。

 

「…すみませんが…お断りさせていただきますので、ではオホホホ」

 

「あなた、神器持ちでしょう?レーティングゲームで活かす気はない?」

 

「神器?」

 

「ええ、そうよ。…申し遅れたわね、私はリアス・グレモリーよ。そしてこっちは私の友人の姫島朱乃。よろしくね。」

 

「あっはい、よろしくお願いします…」

 

何が申し遅れた、だろうか、対話が苦手なのだろうか、この美女は。

赤髪の美女…もといグレモリーさんは「悪魔」らしく、眷属になって欲しいそうだ。

その友人と称された黒髪ロングの美女…姫島さんも配下らしい。

この学園も悪魔の物…いや、この街全体が、だそうだ。

気が狂いそうな話である。

私は人間として生きてきたのだ、少なくとも。

それを急に悪魔になれ、と。

まあ楽しそうな話ではあるが断らせてもらった。

そこまで言い寄ってくる訳でも無かったのでそのまま帰ったが、確認すると彼女たちとは同じクラスなのが発覚してしまった訳である。

 

これが事の顛末だ。

駒王町の情報を知ってしまった私はどうやら口止めの代わりにオカルト研究部、通称オカ研に入る事になった。

それから約3年、特に目立った事も無く…

無く…

 

 

「毎日刺激的な日々でしょう?」

 

そう、先程まで一緒に肉を食べていたのは顔面を殴り抜いてしまった彼女である。

あの後帰る時に公園に寄り道しておにぎりを頬張っているとまた彼女が現れたのだ。

そしたら私をずっと狙い続ける、と宣言されてしまい、今では私の住む家の隣に住み込み、ずっとこんな感じだ。

 

「…ねーえ?あなた、堕天使になりましょうよ?」

 

「嫌ですよ。何をどうすればなれるか分かんないし。」

 

「天使になってから堕天すればいいの…堕ちる時、ホント最高よ♡」

 

実に嫌な響きである、絶対になりたくない。

天使なら知り合いにいるが、彼女はグレモリー達を毛嫌いしている。

よって私をグレモリーから剥がすために天使に勧誘しに来ている。

 

楽しい毎日なのはみとめるが、どうも私には厳しい毎日だ。

 

 

 

ピロン♪

 

リアス「新しい眷属を作ったわ!」

リアス「それも、貴女と同じ神器持ちよ!」

リアス「貴女もいつか私の眷属になりなさいよ!」

 

携帯のメールに沢山通知が来ている。

…何となくだが、何かの物語が始まった気がした。

 

 



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