犬寄しのぶと幼馴染くん (水城伊鈴)
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犬寄しのぶ

趣味で投稿しているので投稿期間など開く可能性があります。予めご了承ください。
しのぶには兄妹とかがいる設定ですがそこら辺は全て無視しています。

しのぶって可愛いよね。


幼なじみを好きになるのはアニメや漫画の世界でしかあり得ないと思う。昔から一緒に遊んでも、どれだけ可愛いと思っても現実では好意の対象にはならない。何故なのかは俺にもよくわからないし、俺、藤原和也も幼なじみの事を好きと言って良いのかわからない。

 

「お邪魔しまーす。」

 

そう言い俺はドアを開ける。今日は休日で友達の家に遊びに来た……訳でなく、とある家に手伝いに来たのだ。

 

「お、いらっしゃーい。今日もお願いね。」

 

どこか気怠げにゆる〜くとある少女が返事をした。その少女は犬寄しのぶ俺の幼なじみだ。

 

幼なじみの家にお手伝いってどゆこと?って思ってる人のために説明すると、しのぶの家は親が遅くまで帰って来れず、しのぶ自身も家事の能力がからっきしで彼女の親から「あのままだときっとコンビニだけで済ませちゃうから和也くんにご飯を作ってもらいたいの。」

と親公認でしのぶの世話をしている。しのぶもそれにはあまり否定的ではなく、むしろ肯定的なので最近は毎日彼女の家に通っている。

 

「なぁ和〜。」

 

俺が夕飯を作っている後ろで机に座っているしのぶが話しかけてきた。

 

「なに?」

 

「和ってピキピキのライブ来たことあったよね。」

 

「うん。この前のやつ行ったよ。」

 

ピキピキとは、しのぶの所属しているDJ集団のグループ名peaky p-keyの略である。女の子がDJなんて珍しいなと言ったところ、しのぶの学校では一大コンテンツとのこと。でピキピキはその学校一人気のグループらしい。しかもメジャーデビューも出来ているそうな。

 

「じゃあさ、この中で誰が可愛いと思う?」

 

「……は?どしたの急に。」

 

突然すぎては?とか言ってしまった。

 

「いや気分で聞きたいなってね。」

 

「そもそもしのぶ以外人柄とか知らないし、無理があるだろ。」

 

「じゃあこれ見て考えてみな。」

 

そう言いスマホを差し出した。その中には遠くからだけど見たことある四人が見える、ピキピキのメンバーか。

これを見て決めろと言われても……。

 

「見た目だけでいくとこの子かな……。」

 

「へぇー由香が好みなんだ。」

 

由香さんって言うのかこの人。スタイルも良いし顔も可愛いし、モデルかなんかだろうか?

 

「まぁでも。」

 

「でも?」

 

「やっぱこの中でしのぶが一番好きかも。思い出補正とか多少乗ってるけど。」

 

急に打ち明けられしのぶは少しびっくりした様子を見せた

 

「以外だなぁ。お姉さんみたいな見た目のが好きだと思ったのに。」

 

「いや、俺童顔の子の方が好きだから……。」

 

「それって私のこと子供扱いしてないか?」 

 

「し、してないって。」

 

実際しのぶは可愛いと思う。クールな性格だけど所々子供っぽくて、誰とでも分け隔てなく接することができてて……。まぁ以下略。

 

「ふーん。まぁいいや情報提供ありがと。」

 

なんの情報だよ……つい心の中でそう呟いてしまった。

 

「あ、そうそう。和、明日暇?」

 

「ん?まぁ割と。」

 

「じゃあさ、明日もご飯作りに来てくれるかな?四人分。」

 

「別に良いけど四人?誰か来るのか?」

 

「うん。ピキピキのみんなと家で文化祭ライブの予定を決めるんだ。」

 

「決めるってしのぶたちが主催なのか?」

 

「学校側にお願いされてやる事になったんだ。まぁ安心してよ、基本アタシの部屋で作業するから和に迷惑にはならないと思う。」

 

「そっか。じゃあ明日もう一回いくよ。」

 

「うん。ご飯、ありがと」

 

優しくそう微笑む。しのぶのこう言う顔は好きだ。心が落ち着くし、感謝されてるんだって直接感じれるから。

 

「おう。夜更かしするなよ。」

 

「こっちの台詞。」

 

その言葉を最後にパタンと扉を閉めた。うーむピキピキの人たちが明日しのぶの家に来るのか……。ちょっと緊張する、みんな初めましての人だし何よりライブで見ていた人たちがすぐ目の前にまで来るのだ。緊張しないって方が難しい。

 

楽しみではあるが不安でもある。なんかやらかさないと良いが、俺……。

 



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ピキピキ集合!

言い忘れてましたがタグにピキピキのメンバーしかいませんが、必ずしもピキピキだけしか出てこないわけではないです。主要なキャラがピキピキなだけです。

しのぶが一番だけどたまに由香って可愛くね?って思ってしまう……。お互い声優も可愛いってずるいよね。


翌日日曜日、俺はしのぶの家の前に来てインターホンを鳴らしていた。

 

「……でねぇ。」

 

はぁ、とため息をつき鞄から鍵を取り出して自分で家の玄関を開けた。

なんでしのぶの家の鍵なんて持ってんだよって思うかもしれない。まぁしのぶのお母さんに「これからもちょくちょく来るだろうから渡しておくね。」と合鍵を渡されたのだ。

少しは警戒しろよ……と思う俺はドアをくぐる。

 

「ん?あぁごめん。自分で入ってきたのか……ふわぁ。」

 

玄関を開けると眠そうに欠伸をしながら目を擦るしのぶの姿があった。

 

「また夜更かししたのか?昨日あれだけ言ったろうに……。」

 

「ピキピキのセットリストを考えてたら遅くなっちゃったんだよ。仕方ないだろ?」

 

「まぁそれなら良いかもしれないけど10時から来るんだろ。準備はしておきな。」

 

「はーい。」と今だに眠そうな顔をして洗面所へ入って行った。

その後朝ごはんを作り、雑談をしているとインターホンが鳴り、しのぶが応答しに行く。

 

「「「お邪魔しまーす。」」」と言う声と同時に三人ほど家に入ってきた気配を感じる。その人たちがきっとピキピキのメンバーさんなのだろう。

 

彼女らがリビングの前を通り過ぎようとした瞬間、一人の少女と目があってしまった。

 

「しのぶー誰あの子?」

 

「ん?あぁーアタシのご飯とか作りに来てくれる幼馴染だよ。お昼もあいつに作ってもらうし……まぁ世話役だな。」

 

そう言うと他三人が驚いた表情をしながら声を上げた。

 

「え、しのぶ幼馴染いたの?」

 

「あれ言ってなかったっけ?」

 

「それにお世話係をやらせてるだなんてしのぶちゃん大胆ね〜♪」

 

「?。何言ってるんだ絵空。ただ親がいないと栄養偏るから料理が得意なこいつに任せてるだけだぞ?」

 

……あんまりこっちを見ないでいただきたい。なんか恥ずかしい。

 

「じゃあ今日のお昼も彼に作って貰うの?」

 

「うん。了承は取ってある。」

 

「そっか。じゃあ自己紹介しないとね。」とこっちを振り返り、帽子を被った少女が口を開いた。

 

「私、山手響子よろしくね。」

 

響子さんがそう言うと続いて二人も自己紹介を始めた。

 

「はーい私笹子・ジャニファー・由香デース!気軽に由香で良いよ。」

 

「最後は私ね。清水絵空と申します♪よろしくね。」

 

写真、及びライブ会場で観てた人が今目の前で会話してる……。アイドルに会う時ってこう言う感情なのかな?

 

「あっ、俺も名乗らなきゃだね。えっと藤原和也。俺も和也で良いよ。」

 

「よろしく、和也。ところで料理得意なの?」

 

「あぁ、小学生の頃から趣味でやってるんだ。まぁでもしのぶのご飯を作るようになったのは高校入ってからだけどね。」

 

「へぇ〜自炊できるようにしてるなんて偉いね。」

 

「いや、それほどでも……。」

 

笹子さんに褒められてつい照れてしまった。写真で見てたけど実際目の前で見ると……やっぱ可愛い。

 

「ほら、早くしないと時間なくなっちゃうぞー。アタシの部屋上だから早く行く。」

 

「それもそうだね。じゃあ和也お昼、よろしくね。」

 

そう言い残し、上の階へと上がっていった。

ふぅ、と改めてソファーに腰を下ろすとしのぶの愛犬であるハンゾウが隣にやってくる。

 

「ハンゾウ、お前も一人なのか……。」

 

ワフと一言鳴いて俺の横に包まった。あの僅か数分だけでめちゃくちゃ濃い時間を過ごした気がする。

 

「ふわぁ……。眠い。」

 

しのぶに夜更かしするなとか言ってたけどそんなこと言えないな。少し横になろうかと俺はソファーに寝転がる。ハンゾウの体温もあってか、そのまま意識を落としてしまった。



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しのぶとの関係

もうここに書くことが無くなりました。
今回はちょっと長めです。

因みに無料100連は大爆死でした(☆4すら来ない)
まぁしのぶの誕生日当てるからいいもん!


ふにっ……

 

ん……誰かに頬を突かれている?そういや俺しのぶの家に手伝いに来て、それで……。

 

「お、やっと起きた。」

 

「あぁ?しのぶ……って!悪い俺、寝ちゃってた。」

 

びっくりして身体を起こすと優しく微笑んでしゃがんでいるしのぶがいた。

 

「いや今降りてきたばっかだけどさ、和がすごい気持ちよさそうに寝てたからつい、ね。」

 

「そ、そうか。じゃあ今から作るから少し待っ……て……。」

 

ソファーから立ち上がりリビングに視線を向けると、机に三人の少女、もといピキピキのメンバーがニヤニヤしながらこっちを見つめている。

 

「へぇ、なかなか熱々だね。」

 

「うんうん!熟年夫婦って感じ!」

 

「そ・れ・に〜しのぶちゃんも自覚ないみたいよねぇ♪」

 

「い、いやこれは違っ……。」

 

カァ……っと顔を赤らめると、山手さんたちは可笑しそうに笑った。

 

「ふふっ、和也女の子みたい。」

 

「あはは、確かに!かわい〜!」

 

「か、からかわないでよ……。」

 

俺は恥ずかしさが限界を超えて顔を逸らした。

 

「冗談だって。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。」

 

「……。」

 

「あら?怒っちゃったかしら?」

 

「いや怒ってないよ全然。ちょっと気持ちの整理がつかないって言うかなんと言うか……。」

 

「そんなに恥ずかしかったのかな?」と首を傾げているような三人を見ながら心の中で少し否定した。

 

笹子さんに……可愛いって言われた……。

 

正直今はそれしか頭に無かった。笹子さんは俺が今まで関わってきた女の子の中で一番可愛いと思う。そんな子に「可愛い」なんて……もう死んでも良い、それくらい嬉しいことだ。

 

って、そんな事今考えてる場合じゃないか。

一通り会話を終えた俺は急いでキッチンへ向かい、手早くお昼の用意を始めた。

 

「簡単なものだけどお昼、できたよ。」

 

そう報告するとソファーで会議の続きをしていたしのぶ達が続々と机に座る。

 

「へぇ、炒飯を作ったんだ。」

 

「うん、急いで作ったから少し雑かもしれないけど召し上がれ。」

 

そう言うと彼女らは「「「「いただきます!」」」」と合掌し、スプーンを口に運んだ。

 

「……おぉ、美味しい!」

 

「ホントだ!好きなパラパラ具合かも!……それに普通炒飯って牛肉だよねなんで鶏?」

 

笹子さんが炒飯に入っていた鶏肉に目線をやって質問した。

 

「あぁ、この前しのぶに"由香は筋トレ大好きなんだよ"って言ってたから効果あるか知らないけど少しの気遣いで牛肉から鶏肉に変えてみたけど、どうかな?」

 

「うん!すっごく嬉しい!ありがとね和也くん。」

 

純粋に褒められ恥ずかしくなってしまった。恥ずかしいのがバレないように別の方を見るとしのぶが声には出さないが、とても満足しているように黙々とスプーンを進めていた。

 

気に入って貰えたみたいで良かった。

 

しばらくスプーンが皿をコツコツと叩く音だけが響き、その音が無くなると「「「「ごちそうさまでした。」」」」と手を合わせた。

 

「あぁ、アタシが皿洗いするから和は休んでていいよ。」

 

「おう。ありがとじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。」

 

俺が承諾するとしのぶは重ねてある食器を流しへと持って行った。

 

「それで〜和也くんはしのぶちゃんとどういう関係なの♪」

 

ふぅ、と息を着くと清水さんがニヤニヤと楽しそうな顔をしながらそう聞いてくる。

 

「確かに、ここで確かめておかないとね。」

 

「き、響子さんまで……。ただの幼馴染ですよそれ以上でもそれ以下でも無いですって。」

 

「隠してないで〜言っちゃった方があとが楽よ?」

 

「そもそも急にどうしたんですか?しのぶとの関係って……。」

 

「だって和也くん、しのぶちゃんと仲良さそうにしてるしお世話もしてあげてるんでしょ?気になるわよ〜。」

 

え、えぇどうしよう。困ったな、もうこうなったら清水さん止まらなさそう……。真面目役っぽい響子さんも乗り気だし……。

 

「もうだめよー絵空!和也くん困ってるじゃん。」

 

まさかの由香!?と言わんばかりに清水さんは目を見開いた。

 

「いつもこう言うのにノリノリな由香がストッパーになるなんて珍しいね。」

 

やっぱ珍しいんだ……。

 

「響子の言う通りかもしれないけどあんまり言及するのはよくないわよ。」

 

人差し指を立ててダメだよと言うようにズイッと前へ突き出した。

 

「えぇ〜?由香は気にならないの?しのぶとの関係。」

 

「気になるけど初対面の子にそんなグイグイ話しかけたらかわいそうよ。……まぁその代わり、」

 

「そ、その代わり……?」

 

なんだその代わりって……?なんか無理難題でも押し付けられたりするのか?

どことなく張り詰めた空気になぜか清水さんや響子さんまで息を呑んでいた。

 

「私のこと由香って下の名前で呼んで欲しいな。」

 

え……。

 

「……はぁ?」

 

数秒の沈黙の後、清水さんが気の抜けた声を出して、響子さんも苦笑いをしながら頬を掻いている。

 

「それってどう言う意味ですか笹子さん。」

 

「響子のことはちゃんと響子さんって呼ぶんだから由香って呼んでも良いじゃない。笹子じゃもう反応してあげないからね!後、しのぶについても言及するよ。」

 

「……ゆ、由香さん。」

 

「うん、それで良し。」

 

笹子……由香さんはそう言って腕を組み肯いた。

 

「はぁ、お前らさっきから騒々しいと思ったら何やってるの……。」

 

やれやれ、と言いながらお皿を洗い終えたしのぶが戻って来る。

 

「お帰りしのぶ。今和也が私たちの呼び方を考えていたところだよ。」

 

自然としのぶについての話をなかったかのように響子さんがフォローしてくれた。

 

「呼び方ねぇ、なんでも良い気がするけど。」

 

「そういえばしのぶ、和也くんのこと和って呼んでるわよね。何か理由でもあるの?」

 

「え?いや、幼馴染だから?まぁナギと理由は同じだよ。」

 

月見山渚、しのぶはナギと呼んでいて彼女の従姉妹で俺も昔よく遊んだし、今も度々会う機会が多い。聞いた話だと燐舞曲と言うDJグループでギターを持っているそうな。あいつと同じ理由なのか……。

 

「呼び方の話はここまでにして、どうしよっか。あらかたライブの方向性も固まったしもうここで解散でも良いんだけど……。」

 

流石にもう収集がつかなくなると思ったのか響子さんがそう提案する。

 

「じゃああそこに行きましょう♪」

 

「あそこじゃ分からないんだけど。」

 

そう提案する清水さんにしのぶは冷たく返事を返している。仲のいい証拠なんだろうか……。

 

「ほら、駅前にできたショッピングモール!色々売ってるらしいし、せっかくだから行ってみない?」

 

「えぇやだよ。めんどくさい……。」

 

「でもピキピキでショッピングモールなんて珍しいし良い機会かもね。」

 

「げっ……響子もか……。」

 

常日頃から家から出ないしのぶは否定しているも、響子さんが肯定的な返事をしていて、しのぶの顔がさらに苦い顔をする。

 

「じゃあけって〜い!早速行きましょ!」

 

「そっか、行ってらっしゃい。」

 

俺がそう言うと四人が何を言ってるの?と言わんばかりにこちらを振り返った。

 

「和も行くに決まってるでしょ?」

 

「え、なんで!?ピキピキだけで楽しんできなよ。俺は家で留守番してるから。」

 

「せっかくだしって言ったでしょ?和也くんももちろん一緒にって意味よ♪」

 

「そうだよ。それに荷物持ちって言う大事な仕事もあるしね。」

 

おい……と心の中でそうツッコんだ。……まぁちょっと嬉しいかも。初めてあった人たちとここまで仲良くなって、それで……。

 

「おーい!早く行くよー。」

 

「由香準備はや!?ってほら、和〜行くぞ。」

 

「あ、うん!」

 

そうして俺はピキピキのメンバーたちとしのぶの家を出た。



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ショッピングモールにて

ここにもう書くことがないから僕のグルミクの近情報告でもしようと思います。需要あるかわかんないけど。


忙しくて全然周回できず、いつの間にかモンハンコラボの順位が二万位まで落ちてしまった……。


しのぶの家を出てから10分程、俺らは駅前にできたと言うショッピングモールに着いた。

 

「はぁ……なんでこんなことに。」

 

意外と広いんだなとモール内を見回す中、一人だけ気怠そうな声をあげている。

 

「普段運動もしないんだから良い機会じゃないか?」

 

「学校までいつも歩いてるしDJで体動かしてるから別にこんな動く必要ない。それに和も運動なんて滅多にしないでしょ。」

 

「うっ、そう言われると耳が痛いな……。」

 

そう、俺はしのぶと一緒で重度のインドアなのだ。元々割とアウトドアだったのだが、しのぶが勧めてきたFPSを触ってみたところまぁ見事にハマってしまい、今では家にいる方が多い。

 

「ま、今日ぐらいは我慢しても良いかな。」

 

そう言って俺らは響子さんらの背中をついて行った。

 

ショッピングモールについてから15分くらい経過しただろうか。清水さんは服を、響子さんは帽子やバーガーショップ、由香さんは筋トレ器具、俺としのぶはゲームやPCと順番に見て回り、最終的に買う人もいれば「お金が……」と断念する人もいた。

 

「結構いろんなものが置いてるんだね。」

 

「そ、そうですね。」

 

気さくに話かけてくれる響子さんに対して、少しぎこちない返事をしてしまった。なぜぎこちないかと言うと、今響子さんと二人きりだからだ。しのぶたちはトイレに行ってくると言っていたが俺と響子さん自分は大丈夫だと三人がトイレを済ませるのを待っていると言う状態なのだ。

 

「どうしたの?なんか表情硬くない?」

 

「い、いや響子さんと二人だけってはじめてだからなんか改めて緊張しちゃって……。」

 

「まぁそれについては徐々に慣れて行こうか。それより話があるんだけど……。」

 

「話?なんですか?」

 

俺はさっき買った飲み物を口に含んだ。

 

「しのぶとの関係について。」

 

「ブフォッ!?」

 

いきなり耳元でささやき気味に言われて飲んだ直後の飲み物でむせてしまった。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「ゴホッ!ゴホッ!は、はいなんとか……ちょっとびっくりしただけです。で、なんて言いました?今。」 

 

「あんまり無理はしないでね。……そう、しのぶとの関係、実際のところはどうなの?」

 

「え……その話はもう終わったことじゃ……。」

 

「そう思ったんだけどね。この30分くらいの間考えてたんだけどなんか和也、嘘をついている気がしたからさ。」

 

「嘘……ですか?」

 

「もしかして本当はしのぶのこと"好き"なんじゃないかなって。」

 

そう告げられた瞬間心臓が跳ね上がるようにを感じた。それが何故なのかわからない。ただ何かがこみ上げてくるような気がした。

 

「……どう?正解かな?」

 

「……正直よくわからないです。」

 

「と言うと?」

 

「しのぶと一緒にいても話していても"好き"とはならないと言うか。でも一緒にいると少し幸せになれると言うか……。」

 

しばらく沈黙が続いた。響子さんも顎に手を当て考え込んでいる様子だ。……なんか重い空気にしちゃったかな。俺はショッピングモールの天井を見上げていると、響子さんがこの沈黙を断ち切るように口を開く。

 

「ありがとう。もう十分だよ、ごめんね無理させて。」

 

「こっちこそ。ちょっと曖昧な返事しちゃってごめん。」

 

「私は全然、複雑な気持ちなんだってことが分かっただけで良い収穫だよ。」

 

「そっか……。」

 

「いつかはっきりできれば良いねその気持ち。私もできる限りサポートするよ。」

 

「うん、いつかは解りたいって思ってます。っあ、それと。」

 

「わかってる、この事は私たちだけの秘密ね。」

 

響子さんは俺の思ってることを見透かしているようにそう言った。彼女には嘘を言っても無駄らしい。

 

「本当に気を遣わせてごめん。」

 

「へ、平気だって。そんな申し訳なさそうに言われるとこっちも照れるな……。」

 

そう言って頭の後ろに手を置いて「あはは……。」と笑っている。

 

「ただいま〜、ってどうしたの響子?」

 

「なんか私たちがいない間に仲良くなってるみたいねぇ。」

 

響子さんと話しているとあっという間に時間が過ぎて、しのぶたちもトイレから帰って来た。

 

「さすがにこれ以上いると遅くなっちゃうしもう少し回ってから帰ろうか。」

 

由香さんの提案に俺らは頷きこの場から離れようとした。その時……。

 

「あぁ〜!しのぶちゃん!」



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遭遇、Photon Maiden!

ネギさんの素材で銅チケ交換するの最高に楽しいですよね。ネギさん周回、おすすめですよ。

アニメ見るとピキピキ一択だった筈なのにフォトンよくね?って心が揺らいでしまう……。乙和がね、可愛いんですよ。もちろんしのぶが一番ですけどね。


「あぁ〜!しのぶちゃん!」

 

声が聞こえたその時にはしのぶにギュッと抱きついている少女がいた。

 

「げっ!ノア、なんであんたがここにいるのよ!?」

 

「そんな顔したら可愛い顔が台無しよ。……いや、これはこれで可愛いかも。」

 

「変な妄想してないでアタシの質問に答えろー!」

 

しのぶとノアと言う少女が抱きつこう抱きつきまいと格闘しているともう一人、別の少女が割って入ってくる。

 

「やっほ〜!ピキピキちゃん。奇遇だねぇここで会うなんて。」

 

「そうですね。あれ?今日はノアさんと乙和さんだけなんですか?」

 

響子さんが敬語……しかもさんってこの人たちって先輩なんだろうか?

 

「今日のレッスンがオフって聞いたから新しいショッピングモールに行こうって提案したんだけど咲姫ちゃんも衣舞紀も家の用事がーって。だから暇そうだったノアを連れて来たの。」

 

レッスンとか咲姫とか衣舞紀とか……俺からしたら訳の分からない話をしていて頭がこんがらがってしまう……。

 

「ところでその男の子誰?まさか、響子ちゃんの彼氏!?」

 

「ち、違いますよ!今日初めて会ったしのぶの幼馴染です。私たちからしたら友達ですかね。」

 

響子さんは顔を少し赤くし、そう否定した。恥ずかしがってる響子さんなんて初めて見た……。知らないのも無理ないか、今日がはじめましてだし。

 

「はっ……!幼馴染……!」

 

ん?今誰かがボソッとそう呟いた気がする。

 

「そうなんだ〜どおりで見ない顔だと思ったよ。あっ、私、花巻乙和!Photon Maidenのパフォーマンスだよ!」

 

Photon Maiden、この前しのぶが話してた気がするな……。手強そうな相手が二グループ参入して来たとか。その中の一つに確かいた気がするな……。確かもう一つはHappy……思い出せないや。

 

「えっと、藤原和也です。さっき言った通りしのぶの幼馴染……!」

 

俺が名乗るとさっきまでしのぶと戦っていた少女が俺の前までスタスタと早足で歩いて来て俺の手を両手で握り出す。   

 

「しのぶちゃんの幼馴染……!お初にお目にかかります!私、しのぶちゃんのお友達の福島ノアと言います。こんな所でしのぶちゃんの幼馴染くんに会えるだなんて光栄です!」

 

そう言うと、握っている手をブンブンと振る速度が加速していく。

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

「ところで……お宅のしのぶちゃんを私に……。」

 

「ちょっと待て。和はアタシの親じゃないっつーの!そもそもそんな頼まれ方しても許す奴いるわけないでしょ!」

 

「和……!あなたの名前は確か和也くんと言ってましたよね、つまりしのぶちゃんからは和くんと呼ばれているんですよね!?あぁ……想像しただけで可愛いがすぎる!」

 

こ、この人止まらなすぎる……。と内心思っているノアさんの頭に乙和さんが手刀を一発入れて、恥ずかしそうな顔をしている。

 

「ノアやめて!和也くんドン引きしてるじゃん。身内ならまだしも初対面の人にグイグイ行き過ぎ!もう恥ずかしいなぁ……。」

 

「うっ!乙和に正論言われた……。ご、ごめんね、私可愛いものに目がなくって……しのぶちゃんの幼馴染って聞いてつい気持ちが高ぶってしまいました。」

 

乙和さんになだめられ、しゅん……と頭を下げる。

 

「ほら行くよ。ピキピキちゃんたちのお買い物に私たちがいたらお邪魔でしょ。」

 

「それもそうだね。っあ!それと和也くん……。」

 

「は、はい?」

 

「今度二人きりでお話ししましょうね。しのぶちゃんの可愛さについて語り……。」

 

「ノア〜!逆ナンしてないで早く〜。」

 

「逆ナンなんてしてない!それじゃあね。」

 

そう言って乙和さんの後を追うべく早足でこの場を去っていった。

 

「嵐のように来て嵐のように去ったな……あいつら。」

 

「そうね。私たちほとんど喋ってないもの……。」

 

「……帰ろうか。」

 

「「「「賛成」」」」と声をそろえ俺らはショッピングモールを出た。喋ってない由香さんと清水さんも疲れた顔をしている。ノアさん……恐るべし。

 

それからしばらく歩き、道の分岐地点で「私たちこっちだから!」と響子さんらと分かれた。

 

「なんかいつも以上に疲れたなぁ。」

 

「ほんと、和もノアにはあんまり関わんないほうがいいぞ?ああなるから。」

 

「あはは……。でもしのぶは仲良いんだろ?」

 

「まぁ、放課後ゲーセン行くのについて来てくれるってだけだけどね。」

 

「あんな忙しない人と一緒に行くのか。」

 

「リミットが外れるとああなるだけで普段は割と付き合いやすいんだよ、ノアは。」

 

「そ、そっか……。」と受け答えしたと同時に家の前に着き、別れの言葉を口にする。

 

「明日明後日は親いるし、大丈夫。今日はいろいろありがとね。」

 

「おう。じゃあね。」

 

それを最後にお互い家の中へ入った。はぁ、今日はほんといろいろありすぎた……。今日だけで知り合いが五人も増えるとは、怒涛の一日過ぎる。まぁ、ここ最近で一番楽しかったかも。ボソッと呟き部屋のベッドに横になった。




ノアって大体こんな感じですよね?あんまりノアが出てるストーリーを見たことがないから少しキャラ崩壊してるかもです。


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近づく陽葉学園文化祭

イベント前半お疲れ様でした〜!
モンハンコラボ、ギリギリ一万位以内に入れました。


再来週にはしのぶの誕生日が控えてる……当てるぞ。金の貯蔵は十分だ。


ピキピキのメンバーたちと初めて会ってから次の日月曜、俺は教室でスマホをいじっていると近くで話をしていた男子集団の会話を小耳にする。

 

「来週の陽葉学園の文化祭!ピキピキが主催ライブするんだってよ。行ってみない?」

 

陽葉学園って女子校なのになんでこいつらが知ってるんだろうか?ホームページかなんかに記載されてたりするのかな。

 

「おーい和也!早くしねぇと置いてくぞ。」

 

「お、おう、悪い。」

 

帰ってからしのぶに聞けばいいか。そう考え、俺は次の授業を受けるべく友達の後を追った。

 

放課後

 

「はぁ……疲れた。」

 

最近夜遅くまで起きることが多いせいか、疲れが溜まりやすくなってる。ん……?俺の家の前に誰かいる?

あっちもこちら側に気づいたのか「よっ」っと片手を上げている。

 

「なんでしのぶが俺の家の前にいるんだ?」

 

「ちょっと話したいことがあったから来たんだけど、お姉さんしか居ないっぽかったから。」

 

「じゃあ家の中で待っててくれても良かったのに……。」

 

「いや、そんな長居するような事じゃないし。」

 

「そっか。……で?何の用だ?」

 

そうそう、と制服のポケットからとある紙切れを取りだした。

 

「なにこれ?ピキピキ主催ライブ招待券……?」

 

「そう、主催者と出演者は招待券を一人一枚まで配れるんだよね。」

 

「それを……俺に?」

 

「ピキピキのメンバー全員で決めたんだ。昨日のお昼とか、買い物に付き合ってくれたお礼だって。」

 

「え!?いいのに……そんな気遣わなくっても……。」

 

俺が申し訳ないよと手のひらを突き出そうとすると、無理やり俺の手にチケットを入れ込んだ。

 

「和はそうやってすぐ謙遜するから。素直に受け取って。」

 

し、しのぶは眉間に皺を寄せてそう俺に訴えかけた。

 

「う、うん。じゃあありがたくもらおう……かな。」

 

そう言えばしのぶ、出演者がいるって言ってたよな?

 

「出演者がいるって、他に誰が出るんだ?」

 

「ん?ホームページ見てないのか。ほら、これ。」

 

スマホを少し触り、画面を見せてくる。

 

「あ、Photon Maidenさんも出るんだ。それに……Happy Around?」

 

……!思い出した。しのぶがこの前言ってた手強いグループって、この人達か……。

 

「陽葉学園の中ではかなり有名なグループ揃いだよ。」

 

「へぇ、ピキピキはそんな有名なグループの中で勝つ自信あるの?」

 

少し煽りを含んだ言い方でしのぶに聞くと「ふん」と鼻で笑い答える。

 

「当たり前でしょ?響子とアタシがいるんだから負けるわけないっつーの。まぁ、別に勝負ではないんだけど。」

 

「勝負じゃないのか?」

 

「最近、陽葉学園のDJ活動が近所でも話題らしくてね。サンセットステージだけだと味気無いからって試験的に午前にもサンセットステージとは違って勝敗関係なくやってみようってなったの。」

 

「じゃあ、このライブはパフォーマンス目的でやるってこと?」

 

「まぁそうなるね。」

 

サンセットステージ、聞いた事しかないけど陽葉学園の文化祭において、一大イベントらしい。トーナメントで勝ち上がったチームが夕陽をバックにライブのトリを担当するとか。陽葉学園でDJをやる生徒なら誰もが憧れるステージってネットかなんかで書いてあったな。

 

「因みに、そのチケットサンセットステージでも適応されてるから、いい席でライブを見れるらしいよ。」

 

「らしいってどうゆう事だ?」

 

「絵空がこのチケット印刷してる先生から聞き出したんだって。あの子、話術に関して右に出る者はいないからね。」

 

恐るべし、清水さん……。そういやショッピングモールに行った時も店員となんか喋って安めに物を買取ってた気がする……。響子さんと言い由香さんと言い、ピキピキはなにかに突出したメンバーが多いな。しのぶも含めて。

 

「まぁ話したかったことはそんなこと。用事があるなら無理に来なくても良いよ。」

 

「何も無いし確実に行くけどな。……サンセットステージ、頑張ってね。」

 

「当たり前でしょ。アタシたち優勝しか狙ってないから。」

 

強がったこと言ってるけど、やっぱりPhoton MaidenさんやHappy Aroundさんを少し警戒してるような。そんな気がする。でもそう言う時、しのぶは今よりもっと強くなってる気もする。

 

「楽しみにしてるよ、DJしのびん。」

 

お互い家へ入ろうかと思うその時ボソッとその名前を出すとしのぶが大きな声を上げる。

 

「ちょっ!?その名前どこで聞いたの!?」

 

「この前ナギに聞いた。」

 

ニヤッとしてそう答える。

 

「ナギ……!その時まだ和にミックスをネットに投稿してること知られてなかったのに……。」

 

顔を赤くし、また眉間に皺がよる。

 

「いい!このこと絶対に誰にも言わないでよ!」

 

「お、おう……。」

 

ナギが「この名前で呼ぶとシノ、すっげー怒るんだぜ?」と言っていたがここまで取り乱すとは……。久しぶりに見たなこういうしのぶ。

 

「それじゃあね!」

 

そう言ってスタスタと家へと入って行ってしまった。……いい名前だと思うんだけどなぁ。

 

俺も家に入るとメールで、"絶対ライブで、そんな口聞けなくなるぐらいビビらせてやるから!"と送られてきた。"楽しみにしてるよ。"と俺は一言だけ送って電源を落とす。

なんか予期せぬ気合いの入れ方をさせてしまったが、まぁいいか。本気になってくれたなら。

 

文化祭、楽しみだ。




前半に出てきた男たちは完全にモブなんで忘れてしまっても構いませんよ(ボソッ)


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ジェニ由香と二人きり

今回しのぶはほとんど出て来ません。オニイサンユルシテ。

普通に誕生日までに間に合っちゃった。




モンハンコラボ、600位から上がれる気がしない……。


「行ってきます。」

 

「いってらっしゃい、寄り道するなよ〜。」

 

文化祭の開始三日前、しのぶに出迎えられ家を出た。親か、お前は。しのぶに出迎えられる理由、それは夕飯の買い物。たまたま家の冷蔵庫に何も残ってなく、親にあらかじめ渡されたお金で買いに行くことになったのだ。

 

「何作ろうかな……。昨日カレー作ったし、肉じゃがで良いか。」

 

ある程度何を作るかのメニューを決め、商店街まで足を運んだ。

 

「後、肉と……じゃがいもと……っ!」

 

家を出てから15分くらい経ち、順調に買い物をしていると、後ろから人とぶつかってしまった。

 

「ご、ごめんなさい!って……。」

 

「こっちこそごめんね。……てなんだ、和也くんじゃん!」

 

ぶつかってしまい、謝ろうと思い振り向くとその人はまさかの由香さんだった。てか由香さんの制服姿、初めてみた……。可愛いな……。

 

「どうしてこんなところにいるの?」

 

「いや、しのぶの夕飯の買い出しをと思って。そう言う由香さんは制服のままカメラなんか持って、何をしてたんですか?」

 

しのぶはもう帰って来てると言うのに由香さんはまだ制服の状態で見かけたため、不思議に思いそう聞いた。

 

「今日ニュースで、綺麗な夕陽が見えるって言ってたからいてもたってもいられなくって。」

 

「カメラ、趣味なんですか?」

 

「そうなの〜!写真を撮るのが好きなんだよね。カメラのアルバイトとかもするんだよ〜!」

 

ズイッと顔を近づけ、カメラについて饒舌に語り出したが、すぐにハッと何かを思い出したかのように話を変える。

 

「あっ!そうそう。私、和也くんと少し話したいことがあったんだった。今時間空いてる?」

 

「後、肉とじゃがいもを買えば時間空きますけど……。」

 

じゃあ手伝うよ!と由香さんは率先して肉屋へと案内をしてくれた。そして俺は夕飯に必要である食材を手に入れ、由香さんととある公園のベンチでさっきの話の続きを始めた。

 

「そう言えば、なんで和也くんがしのぶの代わりに買い物なんかしてるの?それくらいならしのぶでもできるでしょ?」

 

「しのぶ、文化祭で使う曲のミックスするからって俺に買い物を任されたんです。」

 

「そう言うことね〜。そうだ!ライブのチケット、もらってくれた?」

 

「はい、しのぶからピキピキのみんなでって聞きました。」

 

「良かった〜!実はあれ、私が根本なんだよね。」

 

「え?なんで由香さんが……?」

 

「正確に言うと、日曜日のことについて私が話し始めたら響子が、和也くんを誘ってみないかって言い始めたんだよね。そしたらみんな大賛成って。」

 

と言う事は、由香さんが日曜日のことを話さなかったら俺はライブを見れなかった可能性があるのか……。そう考えると由香さんと響子さんには感謝しないとな。

 

「それに、しのぶも和也くんについて喋るようになって、"和のやつ、由香が一番可愛いとか言ってたんだぞ?"って。」

 

「はぁ!?あいつ、なんて事を……!」

 

あの時のことバラしたのか……。今日の肉じゃがにピーマンでも入れてやろうか。

 

「ちょっとびっくりしちゃったけど嬉しいな、そう言ってもらえて。」

 

そう言うと由香さんは、少し頬を赤くし照れたように俺の顔を見つめる。やめてください、こっちもなんか恥ずかしくなってくる……。しばらく、お互い恥ずかしくなり無言の時が続いた。辺りはすっかり暗くなり、住宅街からカレーやらなんやらの良い匂いが立ち込めて来る。

 

「あ、あの……っ!」

 

俺が決死の思いで話しかけようとすると、スマホが勢いよくバイブしだした。

 

「す、すみません!」

 

「あはは!全然オーケーだよ!早く出てあげな。」

 

すみませんと頭を下げ、電話に出る。

 

"もしもし……。"

 

"和、大丈夫か?帰りが妙に遅かったから心配なんだけど。"

 

"ちょっと話が長引いちゃった。悪い、すぐ帰るから。じゃあね。"

 

短い会話を済ませ、由香さんの方を見てもう一度頭を下げる。

 

「本当にごめん!しのぶに心配させちゃってたらしいからすぐ帰らないと……。」

 

「良いよそんな謝らなくて。私もジムの手伝いがあるの思い出したし、キリもいいから今日はここで解散しようか。」

 

「は、はい……それじゃあ。あ!後、ライブ楽しみにしてます!」

 

「期待しててよ。和也くんの予想を超えるようなライブ見せてあげるから!」

 

その言葉を最後に、早足でしのぶの家に帰った。あの時俺、由香さんになんて言おうとしたんだっけ……?しかし、それを思い出す前にしのぶの家に着いてしまった。まぁ、時期に思い出すか。

 

----------------------------------------

 

「和也くん、やっぱりしのぶのことが一番好きなんじゃない。」

 

ボソッと呟き微笑んだ。和也くん、自分じゃ分かんないって言ってるけど、しのぶって言葉に付くと素直に行動しちゃって。自覚も無いらしいしほんと、面白い子だなぁ!和也くんには少し悪い気もするけど、気になっちゃったから仕方ないよね。

 

「やば!」

 

私もそろそろ帰らなくちゃ!お客さん待たせちゃってるかも。そう思い私も早足で家へ帰った。

 

 

 

 

 




和也視点だけじゃなくて、由香視点を試験的に導入してみたけどどうでしょうか。こっちの方が互いの気持ちが分かり易いかなって思ったんですけど、余計ですかね?是非感想で聴かせてもらえれば!



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【番外編】二月四日、しのぶの誕生日

しのぶの誕生日が来たということでね。せっかくだから書こうかなと。スタンプ貰えるだけでも嬉しいですよね。

「犬寄しのぶと幼馴染くん」の続きを全然出せなかった理由はこの小説を二月四日に間に合わせるためにこれに力を注いでたのが理由です。これからは普通に出していくのでお楽しみに。


二月四日、ココ最近その日付を意識するようになった。そう、しのぶの誕生日なのだ。高校に入ってから家の手伝いで、しのぶと関わることが多くなってせっかくだしお祝いしてやろうと考えたのがきっかけだった。

 

ピンポーン

 

インターフォンを鳴らしてからしばらくしてドアが開く。

 

「あれ?今日はうち来れないって言ってなかったっけ?」

 

「ちょっとしたサプライズだよ。誕生日おめでとう。」

 

「う、うん。ありがと。」

 

しのぶは少し驚いたように目を見開いく。そしてしばらく玄関で話をしていると、しのぶの家の中からもう一人別の少女が顔を出した。

 

「しのぶ〜インターフォン出てから遅くない?……って和也くん!」

 

「うぇ!?ゆ、由香さん!?なんでここに……。」

 

「アタシの家で誕生日パーティーするって言って聞かなくってさ。仕方ないからうちに入れてやってるんだよ。」

 

「そ、そうなのか……。じゃあ他のメンバーも?」

 

「当然でしょ?」

 

まじか……。まさか先客がいたとは。「むむむ……」と先を越されたことを悔やんでいると、由香さんが手を合わせ提案する。

 

「そうだ、和也くんも参加する?」

 

「え、いいんですか?」

 

「全然オーケーだよ!それに人数は多いことに越したことはないしね。」

 

「いやアタシの家の広さも考慮してくれよ……。まぁ、和なら良いけど。」

 

「そっか。じゃあ俺もお邪魔させてもらおうかな。」

 

そう言いしのぶらの後を付いて行った。

 

「あら〜なんだか人数が増えてるわね〜♪」

 

「ほんとだ、和也も来てくれたんだ。」

 

「サプライズで来てみたらみんないるって言われてせっかくだし参加させてもらおうかなと。」

 

「そっか。……じゃあ和也も来てくれたし、みんな揃ったから始めようか。」

 

そう言うとみんな一斉にコップを手に持ち、「「「「しのぶ、誕生日おめでとう!!」」」」と乾杯をした。

 

それから数時間、誕生日ケーキを囲んで俺らは注文したピザなどを食べ、夜まで過ごした。

 

「ありがとね和。急遽参加しただけじゃなくお皿まで洗わせちゃって。」

 

今の状況として、響子さんたちも帰り、後片付けとして俺が皿洗いをしてあげている。

 

「全然平気だよ。響子さんたちにやらせるのも申し訳ないだろ?それに、俺なら家もすぐ前にあるからこのくらいやらせてくれよ。」

 

「なんか今日、妙に優しくないか?」

 

いつもこんな感じだろ……失礼しちゃうなぁ……。と心の中で少し不満を口にする。

 

「誕生日だからな。主役に雑用やらせるわけにはいかないだろ。」

 

そう言ったタイミングで、あらかたの皿を洗い終わり、しのぶと向き合うような位置で腰を下ろした。

 

「……なに?」

 

何かを察したのかしのぶは警戒した様子を見せる。

 

「誕生日プレゼント、まだ渡してないなって。」

 

「響子たちが渡してくれた時に渡してくれれば良かったのに。」

 

「いや、響子さんたちがいる場所じゃできないと言うか。言ってもすぐにできるような事じゃないから。」

 

しのぶの顔がさらに警戒心を増している。こう言うことに関しては、しのぶって察し悪いよなぁ……。

 

「はぁ……ゲームだよ、ゲーム。」

 

「げ、ゲーム?」

 

「最近、タイマンする相手が欲しいとか言ってただろ?だから俺がタイマン相手になってあげるってのが俺からの誕生日プレゼント。」

 

「私が欲しいのは張り合いある相手って意味なんだが……。和、私とFPSもTPSも五十戦近くやって全敗じゃん。張り合いないよ、そんなんじゃ。」

 

「誰がFPSって言ったよ。格ゲーに決まってるだろ?」

 

「か、格ゲー……!?」

 

「格ゲーやった時しのぶ、俺に全敗だったよな〜。」

 

そう、俺としのぶは強が付くほどのヘビーゲーマーなのだ。だが、やってる種類は全くと言っていいほど違く、しのぶはFPS、俺は格ゲーを主にプレイし続けていて実力も最上位でも戦えるほどの実力を持っている。そのせいか無駄にプライドが高く、お互い煽り合いが止まらない。

 

「格ゲーは専門外だし……。」

 

「だったら俺もFPSは専門外だっての。」

 

このままだと埒が明かないな……。

 

「じゃあこうしよう、FPSならしのぶが、格ゲーだったら俺が勝つ度にハンデをつけてって先に負けた方が罰ゲームで、どうだ?」

 

「本気でやるつもり?アタシ、負ける気ないんだけど?」

 

「それはこっちのセリフだ。せっかくだし、どっちがゲームが上手いか白黒ハッキリつけようか!」

 

臨むところだ!とゲームの電源を入れた。まだまだ俺らの夜は長そうだ。

 

因みにこの後普通に負けて、罰ゲームとしてピキピキのメンバー全員に一週間タメ口と言う罰を背負わされたのはまた別のお話。格ゲーのしのぶと俺の差より、FPSの実力差の方が広かったようだ。

 

まぁしのぶも楽しそうだったし良いか……。いや、良くはないか。

 

 

 

 




番外編なのでこのストーリーが本編に引き継ぐ事はありません。


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やって来たぞ陽葉祭!

投稿が遅くなってますね。ごめんなさい……。文化祭の話はアニメの最終回が終わったあとに描こうと思ってたので少し遅れてしまいました。
陽葉祭の話は2,3話続けるつもりです。目印は「!」の数で。

ちなみにしのぶの誕生日☆4は天井まで回してようやく出ました。やったぜ。


週末の日曜日、いつもは寝ている時間だが今日は柄にもなく朝の9時に起きていた。その理由……そう、今日は陽葉祭なのだ。しのぶの前ではあんな反応をしていたが、実はめちゃくちゃ楽しみなのである。ピキピキのライブなんてそうそう行かないし、やるとしても学園内のライブだからみようにも見れないからな。

 

「うっ……いつ見てもでかいな、この学園……。」

 

陽葉学園の前に着き、改めてこの学園のデカさ少し目移りしてしまう。まぁこんなとこで立ち止まってるわけにはいかないかと、受付の生徒に会いに行く。

 

「陽葉祭へようこそいらっしゃいました!こちら学園内の地図です。迷ったら使ってくださいね!」

 

「ど、どうも。」

 

こう言うテンションの人に慣れてないからか、少しぎこちない反応をしてしまったが、まぁこれで入れるっぽいし別に良いか。

 

……誰かとくれば良かったかな。入ってしばらくした時の感想がそれだった。よく考えればピキピキのライブを見る以外の目的を何も考えてないことに気づいた。体験型の出し物に行っても良いけど、一人でやると虚しくなるだけだし……。屋台で買い食いして時間潰すか。そう思い屋台をぶらぶら見回してると、幸運か、すでに見慣れてしまった顔の集団を見つけた。

 

「よう。」

 

「おー和、もふ来ててゃのか。」

 

しのぶは口に食べ物を詰めながらそう言う。

 

「……ところで、何食べてんの?」

 

「カロリー爆弾。」

 

横から割って入るように、由香さんがしのぶと響子さんが頬張っている食べ物の名を答える。揚げ物でカロリー高めか……。

 

「カロリー爆弾ですか?……あぁ、ライスコロッケのことか。」

 

「なんで伝わるのよそれで……。」

 

「普段、料理作ってんだからこれぐらいはね。」

 

「それにしても早いね。午前のライブまでまだ結構あるけど。」

 

「いや、楽しみであと先考えずに早く来すぎちゃったんですよね。」

 

「そんなに私たちのライブ楽しみにしてくれてるのね♪」

 

「そうだね。そう言われたらこっちもその期待に応えられるようにしなくちゃね。」

 

響子さんがそう言うと、ピキピキのみんなが静かに顔を合わせ頷いた。……仲良いな、そう思い俺までも少し微笑んでしまった。

 

「あっ!響子ちゃん!」

 

その声と同時にさっきまで顔を合わせていた五人(俺も含む)が声のなる方を見ると、綺麗な赤目に金色の髪の少女が、半強制的に青目の少女を引っ張ってやって来る。

 

「りんくちゃん、おはよう。」

 

「うん!おはよぉ!何食べてるの?」

 

「カロリー爆弾。」

 

また何を食べてるかという問いに由香さんが淡々と答える。ライスコロッケに恨みでもあるのだろうか……。というか、りんくって……確かHappy Aroundの……。

 

「りんく!ピキピキも忙しいんだから急に話しかけちゃダメでしょ!」

 

「あはは!全然平気だよ。私たちも今この子と話してたから。」

 

「あ!確か前に響子ちゃんが話してたしのぶちゃんの幼馴染って子?」

 

「響子さん、俺のこと話してるんですか……?」

 

「この前、和也にチケットを渡そうかどうかの話をしてる時にたまたまりんくちゃんが私たちのとこに来たんだよ。それで知られちゃったって感じ。」

 

そ、そう言うことか。てっきり俺のこと言いふらしてるのかと……。まぁ言いふらしたとこで何にも無いけど。そう頭の中で独り言をしていると、青目の少女が俺の方を向き口を開いた。

 

「私、明石真秀、でこっちが愛本りんく。よろしくね、えっと藤原くんだっけ?」

 

「うん合ってますよ。よろしく。」

 

ライブのホームページを見た時ハピアラの紹介欄でDJマッシュとか書いてあったけど多分真秀さんのことだろう。つまりしのぶと同じ立ち位置の人か……。素人目に偏見だけどすごく手強そうだ。

 

「んで?何しに来たわけ?」

 

しのぶが冷たい雰囲気を出しそう言う。

 

「たまたま響子ちゃんが居たから話し掛けただ……。」

 

「あたし達、勝ちますから。サンセットステージで。」

 

りんくさんが言葉を言い切る前に真秀さんが挑発的に宣戦布告をする。

 

「へぇーじゃあやってみなよ。」

 

バチバチと火花を散らすように、お互い睨み合う。しのぶがいつに無くまじな顔で睨んでいたのを見て、こちらまでも張り詰めた空気になってしまった。

 

「じゃああたし達はこれで。ほら、行くよりんく!」

 

「あぁ!待ってよ真秀ちゃん!」

 

真秀さんはピキピキに宣戦布告をしてその場を去った。

 

「やけにしのぶ、やる気だったね。」

 

「もしかしてハピアラちゃんのこと気に入っちゃったのかな〜?」

 

「違うから!あそこまで言ってくんないとアタシたちも火つかないでしょ?」

 

「おぉーしのぶが珍しく本気だ!」

 

「あんだけ言ったんだ。アタシたちの音楽で完璧に叩きのめしてアタシたちの強さを思い知らしてやろう。」

 

「悪役っぽいこと言ってるな、お前。」

 

「和も見てなよ。アタシたちが最強だってとこ。」

 

しのぶの言葉に響子さんたちも頷いて、本気を見せる顔をしている。これが圧倒的強者ってやつなのか……。

 

「おっ、もうそろそろ時間だね。」

 

時計を見た響子さんはそう言いベンチから立ち上がる。

 

「じゃあ俺もここで、あとは客席から見てますね。」

 

俺もベンチから立ち上がり、ピキピキさんたちと手を振り別れを告げた。

よし!俺もライブ会場に行くか!

 

「あ、あの……っ!」

 

ん?今誰かに呼ばれた?しかし後ろを振り返ってもそこに俺を呼んだと思われる人は見当たらない。気のせいかな?そう思い、改めてライブ会場へと向かった。



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やって来たぞ陽葉祭!!

しのぶ好き!乙和好き!ノア好き!由香好き!絵空好き!響子好き!とグルミクやる度に推しが増えていきます。こんなこと滅多になかったからD4DJのキャラと相性いいのかもしれないですね。


時刻は11時30分、ほぼ開園と同時の9時から来た俺にとっても一大イベントであるピキピキの主催ライブ、それの公演時間だ。俺は貰ったチケットを受付の生徒に渡して観客席へと入る。受付の子が「あの人、ピキピキさんに招待されたの!?一体何者……。」と後ろでコソコソしてたのが少し恥ずかしい。

 

ガヤガヤ……。

 

辺りの席は既に満員に近いぐらいの人が座っており、ますますこの学園内でのピキピキらの知名度を理解させられる。それに俺の席……真ん中の最前列って予想以上に豪華過ぎないか?ちょっといい席って言ってたが、まさかここまでとは……。

 

「みんな、今日は来てくれてありがとう!」

 

急に音楽が流れだし、響子さんたちが舞台袖から出てきた。その瞬間、観客の黄色い声でステージは埋まってしまう。

 

「ライブを始める前に今日陽葉祭に来てくれた人達に自己紹介をしようか。」

 

「まず最初に、私たちの最強のDJ、DJクノイチこと犬寄しのぶ!」

 

「……よろしく。」

 

「次、ピキピキ唯一のラブリー担当、清水絵空!」

 

「みんな〜サンセットステージ前にこのライブで体力を使い果たしちゃダメよ?」

 

「次は、私たちのライブをさらに盛り上げるVJ、笹子・ジェニファー・由香!」

 

「今日は最高に上げていこうね!」

 

「最後は〜?我らPeaky P-keyの無敵のボーカル、山手響子〜!」

 

「絶対に後悔させないから、みんな着いてきてね。」

 

さっきまで目の前に居たはずなのに自己紹介の合間の「響子さ〜ん!」などの歓声もあってか、いつもとは別人みたいだ……。何も変わってないはずの彼女らを見て少し呆然としていると、響子さんが俺の顔を見て微笑んだ気がする。こ、これか!ネットとかで噂になってる、女も惚れる微笑み。確かに今のはドキッとした……。

 

「それじゃあ、そろそろ始めようか。」

 

自己紹介も済ませ観客も落ち着いたタイミングで響子さんがそう言う。

 

「まず一曲目、聞いて下さい。電乱★カウントダウン。」

 

その一声と同時に曲のイントロが流れ始めた。

 

……………………

 

「め、めちゃくちゃ楽しかった……!」

 

ライブの終了後、空いてる席に座り一人で感銘を受けて一人で呟いていた。電乱★カウントダウンからの無敵☆momentへの繋ぎで観客も盛り上がったし、あの後のハピアラさんやフォトンさんも最高に楽しかった。とにかく言葉で表しきれない興奮だ。これ以上のものをサンセットステージで見れるんだろ?楽しみすぎるだろ!

 

「あ、あのすみません。ちょっと良いですか?」

 

 

「へっ!?な、なんですか?」

 

後ろから不意に話しかけられてついびっくりしてしまう。

 

「って、Photon Maidenの……。」

 

「はい、出雲咲姫です。知っててくれたんですね。」

 

「そりゃあさっきのライブ見てましたし……。あ、俺の名前は……。」

 

「藤原和也さんですよね?」

 

俺が答えようとすると割って入るように、咲姫さんが答えてしまう。

 

「なんで俺の名前知ってるんですか?まさか、ストーカー!?」

 

「ち、違います!さっきライブが始まる前、ピキピキとハピアラとお話してたのをたまたま耳にしてしまって……。」

 

「それでですか。あぁ!そんなに凹まなくていいですよ!全然気にしてないので。」

 

しゅんとしてしまった咲姫さんを必死でなだめるように全力でフォローする。

 

「そ、それでなんですか?咲姫さんが、俺に用って?」

 

「はい。私、和也さんがライブを見ていたのを知っていたのでピキピキの番の時、舞台袖から見てたんです。そしたら他の人達とは違う色が見えて。」

 

「い、色?」

 

「他のお客さんは楽しいを表す様な綺麗な黄色に光ってました。だけど、和也さんだけ黄色だけじゃなくてどこか儚げのあるピンク色が見えたんです。初めて見る色だったから、どんなことを表しているのかわからなくて……本人なら何か知ってるかと。」

 

「は、はぁ……。」

 

何を言っているんだ?色?そんなこと言われても色なんて俺には見えないし。どういうこと?と頭がこんがらがって言葉を詰まらせていると、もう一人少女が俺に説明をするかのように現れる。

 

「咲姫ちゃんはね〜共感覚って言う特殊な感覚を持ってるんだよ。」

 

「乙和さん!どうしてここに?」

 

「やっほー!和也くん。咲姫ちゃんを探してたら和也くんと話してるとこを見つけたからね〜。」

 

「なるほど……。それで、咲姫さんが持ってる共感覚って……?」

 

「そうそう、咲姫ちゃんは音に色が見えるんだよね。」

 

「お、音に……色……?」

 

「その色を見ることで人の感情を知ることができるんだよ。」

 

なんだその能力……。咲姫さんってそんな凄い感覚を持っているのか。だから音に関係のあるDJをやっているのかな?理由はどうであれ凄いことは確かだ。

 

「それで!咲姫ちゃん、一体何色が見えたの?」

 

そこからかくかくしかじかと咲姫さんが説明をする。

 

「へぇ〜ピンク色かぁ……。それは初めて見る色なの?」

 

「はい。今まで見た事がないです、あんな儚げのあるピンク色は……。」

 

「うーん、見えてない私たちからしたらさっぱりだね。」

 

「ですね……。」

 

ピンク色、儚いピンク色……。その時、何故か一瞬だけショッピングモールでの響子さんの言葉を思い出す。

 

"本当はしのぶのこと好きなんじゃない?"

 

それを思い出すと、少し心の奥がざわめいた。ピンク色って……。

 

「どうしたの?さっきから黙り込んで?もしかして、分かった!?色の正体。」

 

「い、いえ!さっぱりですね……。」

 

つい分からないと誤魔化してしまった。いや、実際これが本当なのかも分からないけど。

 

「これじゃあ埒が明かないね……。咲姫ちゃん、どお?」

 

「はい。私もさっぱりです。けど時期に分かりそうな気がします。」

 

「そっか、じゃあその時までゆっくり考えよう。和也くんもありがとね!一緒に考えてくれて。」

 

「私からもありがとうございます。」

 

「そんな!平気ですよ。困った時はお互い様ですし。」

 

「和也さんは優しいんですね。……そう言えば、乙和さん私のこと探してたって何を……?」

 

「あぁ!そうだった!屋台でやってるクレープ屋さんが本格的で美味しいんだって!だから一緒に食べようって探してたんだった……。衣舞紀とノアに並ばせてるの忘れてた……。これは怒られるやつだ……。」

 

乙和さんは思い出したかのように咲姫さんを探してた理由を話す。実質的に約束事をすっぽかしたみたいになってるけど大丈夫なのか……?

 

「という事で、和也くんごめんね!もう少し話してたいけど私たち行かないと。」

 

「私も、和也さんと話してると楽しいからもっとお話したかった。」

 

「そんな、メンバーさんとの約束の方が大事ですよ。気にせず行ってください。」

 

ほんとごめんね!と手を振りながら咲姫さんを引っ張って走って行った。ライブの感想、言えなかった……。まぁまた会えた時に言えばいいかな。また会えるか分からないけど。

 

俺もお昼食べに行くか、少し喉に突っかかるものもあるけど取り敢えず今は忘れとこう。いずれ分かるはずなんだ。




今回はフォトンメインっぽくなりましたね。咲姫が見た儚げのあるピンク色とはなんなのか……乞うご期待ですね。


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ついにラストだサンセットステージ

一日二本投稿です〜。取り敢えずの一区切りまであと少しの予定となってます。和也の持っている本当の気持ちとは如何に……!


二本投稿なので誤字や読みづらい点もあると思いますが、ご了承ください。


お昼を食べ終わり、一人で学園内をぶらぶら散策していると時刻はあっという間に十六時と、少しずつ日が傾いていた。途中、何度かピキピキを見つけたがライブにのみ集中して欲しかったから、自ら遭遇しないように別の道を歩いていた。

 

「さぁ!今年もやってきたぞ!陽葉祭の一大イベントのサンセットステージの始まりだ〜!」

 

ライブ会場に着き、しばらく待っていると司会の人がステージの真ん中までやってきて、そう宣言する。会場もそれに合わせてさらに声を張り上げた。

 

「今回は!Photon Maidenとの死闘を繰り広げ、見事勝利したHappy Aroundがこのサンセットステージに初参戦!前回に引き続き参加しているメンバーを押し退けて見事優勝なるか!?それじゃあ、まず一回戦の対戦カードを紹介しちゃうよ!」

 

ハピアラさん、サンセットステージ初めてなのか……。初めてであの実力って、やっぱり陽葉学園はDJの強豪揃いだなぁ。しのぶたちは何処と対戦するんだろうか。

 

「はい、出ました!どれどれ……。おーっとこれはなんと言う熱い展開!一回戦目は、ピキピキVSハピアラ〜!!」

 

げっ!マジか……。もうここでどっちかが落ちちゃうのか……。ピキピキを応援してるけど、ハピアラさんにも頑張って欲しい!

でもしのぶも完璧に叩きのめすとか言ってたし……大丈夫だろうか。

 

「それじゃあ先行は、Happy Around〜!」

 

司会者の掛け声と同時にハピアラさんのライブがスタートした。

 

…………………………………………

 

「「「ハピアラ〜!!!!」」」

 

ハピアラの番が終わると観客席の人達は興奮のあまりかそう歓声をあげる。HONEST……ここで新曲を出してくるのか!このままじゃピキピキが勝つのは難しそうだけど……。響子さんたちも言ってたが、そんな期待はずれなことしては来ないだろう。

 

「うーん!最高に盛り上がったね!じゃあ次にライブをしてくれるのは、Peaky P-key!」

 

ピキピキが出てくると観客は一転して、シーンと静かになる。そして曲のイントロが流れるとあることに気がついた。

聞いたことの無いイントロ……。ピキピキも新曲で対抗してきたのか!それは最高に熱い、熱すぎだろ!

 

…………………………………………

 

「「「「ピキピキ〜!!!」」」」

 

こちらもライブが終わると盛大に歓声が上がった。感覚だが、ピキピキの方が僅かに盛り上がりを見せている気がする。

 

「どっちも最高にフロアを沸かせてたね〜!それじゃあ早速、投票タイムと行こうか!良いと思った方のグループカラーに今腕に着けてるこのバンドの光の色を変えて手を挙げてね。じゃあ投票〜開始!」

 

ハピアラと声を上げる人もいたが、多くはピキピキと言う歓声に押し負けてしまい微かに聞こえるかぐらいまで掻き消されてしまう。

 

「ふむふむ……。おっけー、投票終了!結果発表をするよ!一回戦の勝者は……。」

 

「Peaky P-key!!!」

 

良かった〜。ここで負けてたらなんて声を掛けたらと思った……。ん?しのぶが俺の存在に気付いたかのように俺の顔を見て「ふんっ!」と鼻で笑っていた。俺もせめて反応しようと、頷き拍手をして素直に称えた。まだ初戦なのにこんな熱気……。凄いなサンセットステージ。

 

「それじゃあ、どんどん行くよ〜!」

 

………………………………………

 

あの後、あっという間にピキピキが優勝してしまい、サンセットステージは幕を閉じた。サンセットステージに優勝するとD4FESと言う幻のDJ大会に出場する権限が与えられるらしいが、またそれは別のお話。

 

「……あぁ。後夜祭ライブ見たかったなぁ……。」

 

サンセットステージ終了後、しのぶたちはフォトンさんやハピアラさんたちと仲良く話していたので、中に入るのはどうかと一足先に家へ帰ってしまった。後夜祭ライブも学園の生徒じゃないと参加出来ないらしいので見たかったけどまぁ、ちょうど良かったか。それに今日もしのぶの夕飯作るんだし。

 

「ただいま〜。」

 

「おかえり。サンセットステージお疲れ様。最高に楽しかった。」

 

「だろ?期待は裏切らないって言ったし、本気出しちゃった。」

 

それから数時間、しのぶと陽葉祭のライブについて沢山語り合った。

 

「……それで話は変わるんだけどさ。」

 

「どうしたの?急にそんな改まって?」

 

今日聞かなきゃいつ聞けばいいのか分からないんだ。男になれ、俺。いつまでもこのモヤモヤした気持ちを胸に抱えていたくない。

 

「しのぶ、俺のことどう思う……?」

 



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きっとしのぶのこと……

あと二,三話で終わりの予定ですけど、その後編も書いていくつもりですので良ければこれからも読んでいただけると嬉しいです。


モチベ向上のためにもコメントも欲しいなぁ?(強欲)


「しのぶ、俺のことどう思う?」

 

「なにそれ?」

 

突然改まった雰囲気でそう言うので、しのぶはきょとんとした顔で聞き返して来る。

 

「ピキピキさんたちと会う前、しのぶも自分のことどう思うか的なこと聞いて来ただろ?お前だけ聞くのってなんか不平等だなって今になって思っただけだよ。」

 

「うーん、そう言われてもなー……。」

 

しばらく沈黙が続き、時計の針の音だけが辺りに響く。しのぶの答え次第でこの気持ちを伝えるか、胸に秘めておくかを決めている俺からしたらまだかとドキドキしてしまう。

 

「……一緒に居れたら楽しい、くらいかな。」

 

「DJの話しててもピキピキの話してても、全部興味持って聞いてくれるから話してて楽しいし、嬉しい。」

 

数分後、沈黙を破りしのぶは言葉を紡ぐ。

 

「そ、そっか……。照れるな、これ。」

 

「和から聞いて来たんだから勝手に恥ずかしがらないでよ……。」

 

しのぶの答えも分かった。なら俺もこれを伝えなければならない。そう思い口を開く。

 

「俺からも一ついいかな。」

 

「ここ数週間でピキピキに出会って、響子さんと二人で話して、今日陽葉祭で咲姫さんに俺の色についての話を聞いて分かったことがあるんだ。」

 

「……。」

 

しのぶは俺の話を静かに聞いていてくれる。

 

「俺多分だけど、しのぶのこと……す……っ!」

 

「シノ〜!今日の文化祭のライブ凄かったな!」

 

俺が大事な一言を伝えようとしたその時、バンッ!と勢い良く扉が開き、渚が部屋へ入ってきた。

 

「な、渚!?なんでお前がここに、」

 

「あれ?カズも来てたのか?いやーたまたま家の近くに来ててな、せっかくだし寄ろうかなって。」

 

「ノックしてって何回言えばわかるのよ……。アタシたちなんか真剣に話してたんだけど。」

 

「あれ?そうなのか?なんの話をしてたんだ?」

 

しのぶと渚は話の続きを期待したようにこちらを見つめて来る。

 

「な、なんでもない……。」

 

「なんだよそれ〜。もしかしてあたしがいると話しづらいことなのか?」

 

「なんでもないから!用事思い出したからもう帰る。しのぶ、今までの話忘れてくれ。……じゃあね。」

 

その場にいづらくなってしまったので俺は適当な理由をつけて家へ帰った。

 

「カズのやつ、なんか怒ってそうだったな。喧嘩でもしたのか?」

 

「いや、確実にナギのせいだと思うんだけど……。和、なんて言おうとしてたのかな、」

 

数分もしないうちに家に着き、自分のベッドに頭から倒れ込んだ。

 

「渚のやつ……!タイミング完璧かって。こんな漫画じみた展開、リアルで起こるとは……。」

 

はぁ、今日伝えようと思ったのに……。先送りになってしまった。もう今日は寝よ。そう思いそのまま意識を落とした。

 

………………………………………………

 

「はぁ……。」

 

お昼、食堂でいつものように響子たちと話していると、無意識にため息が出てしまう。

 

「どうしたの?しのぶがため息なんて珍しいね?」

 

「もしかして、和也くんと喧嘩でもした?」

 

「ん〜、絵空の言う喧嘩ってこう言うものなのか知らないけど、まぁ喧嘩なのかな?」

 

「なにそれ?どう言うこと?」

 

「なんか文化祭が終わってから三日間、顔もろくに合わせてくれないし話しかけても"はぁ"とか"うん"とかしか言わないし……。」

 

そうここ三日、和の様子が変なのだ。いくら話しかけても少し返事しかしないし、アタシから出かけないかと聞いても「用事が……」と言って断られてしまう。

 

「文化祭の日になにかあったの?」

 

「うーんなにも……。あ、あれかな?」

 

「思い出した?」

 

響子が少し興味深そうに聞いて来た。響子がこう言うことに強く関心を示すの珍しいな……。

 

「多分……。文化祭が終わった後アタシの家で和が"俺のことどう思う"って聞いて来たんだよ。それで一緒に居れたら楽しいなって答えたら和が"す……"って何か言いかけた時ナギが急に入って来て、なんでもないって恥ずかしそうな顔して帰っちゃったんだよな。」

 

そう言うと、絵空と由香の顔がパッと明るくなり楽しそうに二人で話し出した。

 

「あら〜和也くんついに決意したのね♪」

 

「うんうん!ようやく自覚持てたんだね!」

 

「お、おい!どう言うことだ?説明を……。」

 

「しのぶ、そこまで言われてまだ分からないの……?」

 

き、響子まで……。分からないのアタシだけなの?

 

「ふふ♪しのぶったら思った以上にピュアなのね。」

 

「ヒントだけでも教えてよ。」

 

ヒントを求めようとすると、由香が私の肩に手を置きそれを拒否した。

 

「これはしのぶと和也くんの問題でしょ?私たちが教えたら和也くんの気持ち、無駄になっちゃう。」

 

「で、でも……。」

 

「しのぶは和也のこと大切に思ってる?」

 

響子が突然、そんなことを聞いて来る。

 

「え?そりゃあ大切だと思ってるけど……幼馴染だし。」

 

「じゃあ尚更自分で気付かなきゃ。和也のことそう思ってるなら、きっと分かるよ。」

 

「そっか……。」

 

響子がそう言うなら大丈夫、なのかな。




今回、しのぶ視点多めに書いてみましたが語彙力がいつも以上に欠如してる可能性があるので温かい目でみていただけると幸いです。

読みにくいところ等があったらコメントなどで教えてくれると嬉しいです。


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戸惑う気持ち

ついに次が一旦最終回!和也はしのぶに気持ちを伝えられたのか否か!是非お楽しみに。

最終回後はその後編としてピキピキのしのぶ以外の子との話やちょっと甘めの話を書いていく予定なので楽しみにしていただけたらなと。


陽葉祭が終わった三日後の夕方、俺は一人で商店街をぶらりと歩いていた。

 

「はぁ〜……。」

 

最近しのぶとろくに顔も合わせられなくなってしまった……。理由は明白で、三日前のあの夜、しのぶにこの気持ちを伝えられなかったことが影響している。幸いしのぶは俺が言おうとしてたことを理解してなさそうだったけど、それはそれで気まづい……。早くこの気持ちを伝えないと一生しのぶと話せない気がする。

 

「……て、ノアさん?」

 

「ぬ、ぬっこ……!」

 

どうしようかとため息をつきながら歩いていると、ノアさんと思われる人が道端にしゃがみ込んで何かを呟いている。

 

「どうしたんですか?こんなところで。」

 

「に"ゃぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!?」

 

不意に話しかけてしまったからか、身体がビクッ!と跳ねて猫のような奇声を上げた。

 

「……って、和くんじゃないですか。びっくりさせないでくださいよ。」

 

「ご、ごめんなさい。と言うかどうして道端でしゃがみ込んでるんですか?」

 

「へ?あぁ、猫がいたから眺めてただけだよ。そう言う和くんは何しにここへ?」

 

「い、いや特に理由は……。」

 

取り敢えず誤魔化しておこう。そう思い理由は無いと逃げの選択肢を取る。すると、猫が嘘は良く無いと言わんばかりに「にゃー」と鳴き俺の方へすり寄って来た。

 

「はわわ……!か、かわいい……!」

 

俺のズボンに顔を擦る猫に対して、ノアさんは無言でスマホのカメラのシャッターを切っている。と言うか今ここでノアさんに会えたのは案外ラッキーかも知れない。

 

「あの、ノアさん。ちょっと良いですか?」

 

「はっ!ごめんね、急に肖像権ガン無視して写真撮っちゃって。」

 

「いや、それは別に良いんですけど。今から少し相談に乗って欲しいって言ったら迷惑ですかね……?」

 

「そんな全然!むしろノアさんに任せて!」

 

胸に拳を掲げ、快く承諾してくれた。話がついた俺たちは、猫を元いた場所に置いていき近くにあったカフェで話の続きをすることにした。

 

「ようやく果たせたね!和くんと二人で話し合うって。それで?どんな相談?」

 

席に座り、「私、アイスティーで。」と手早く注文したノアさんは、俺の相談に興味津々で聞き返した。

 

「恋愛相談、って言ったらなんか気持ち悪いですかね……。」

 

「へぇ〜、和くん好きな人できたの?もしかして、しのぶちゃん?」

 

「エ"ッ!?なんで知ってるんですか。」

 

「この前乙和がさ、"和也くんには気になる子がいる気がする。乙和ちゃんの目はごまかせないぞ。"とか言ってたんだよね。確かにいそうだなぁって思ってたけどまさか正解だったとは。」

 

「俺の顔ってそんなわかりやすいんですかね……。」

 

「和くんって言うより乙和の異常な勘の鋭さのせいな気がするけどね。あの子普段はバカなのにこう言うことに関しては的確なんだから。」

 

バカって……はっきり言うなぁ。それほど仲がいいってことでもある……のか?

 

「な、なるほど……。えっと、話を戻すと、」

 

それから少し、陽葉祭の日の夜に何があったかを話した。

 

「ふむふむ……つまり、和くんは彼女が好きってことをしのぶちゃんが理解してくれなかったから、余計に恥ずかしさを感じて話し出すことが出来ないのね?」

 

「はい、ある程度はそれであってます。……俺はどうすればいいんですかね。このまま言わなくてこんな関係続けてたらいつか本当に嫌われちゃうかもしれない。」

 

「意外と簡単なことだと思うよ。」

 

「ほ、ほんとですか!?じゃあ俺はどうすれば。」

 

「勇気を出す!それだけ。」

 

「え……。」

 

予想外の答えを聞いてつい意味わかんないんだけど、と言わんばかりの返事をしてしまった。

 

「その悩み、自分だけだと思ってない?きっとしのぶちゃんも気にしてる。好きな子をずっと心配させるのはフラれた和くんよりかわいそうだと思う。特にしのぶちゃんは、そんなことあっても今までの関係を崩したりするほど和くんのこと一般人として見てないと思うし、しのぶちゃんにとって和くんは"特別"なんじゃ無いかな?」

 

「俺が……特別……。」

 

「そうだよ。しのぶちゃん、ピキピキとお昼食べてる時も前までずっとDJの話か響子ちゃんの話しかしてなかったのに最近は和くんのこといっぱい教えてくれる。それって特別に思ってないとできないことだと思わない?」

 

ノアさんは少し微笑み俺の顔を見る。そっか……俺、知らないうちにしのぶのこと心配させてたのか。自分のことで精一杯すぎて周りのこと見えなかったみたいだ。

 

「俺、伝えます。この気持ち……。」

 

「うん。しのぶちゃんを取られるのは少し嫉妬しちゃうけど、頑張ってね。」

 

俺の相談が終わると、今度はノアさんがしのぶの可愛さについて語り尽くしてくれた。所々頷ける点も多く、人のことよく見てるんだなって。

 

明日は都合よく休み、絶対に言うんだ"好き"だって。

 

 

 

 

 



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好き

めちゃくちゃ投稿遅くなってすみません!その代わり最終回なので沢山書いたのでぜひ隅から隅まで読んでいただけるとありがたいです!

また誤字や読みにくい点があったらコメント等でぜひ教えてください!


放課後、響子たちと別れてアタシはいつもは通らないはずの商店街を一人で歩いていた。響子も由香も自分で気付くべきって……どう言うことなのか未だにわからない。絵空も「しのぶはこう言うの、やっぱり疎いのね♪」と半ば楽しそうに言ってて頼れそうに無いし、どうしたものか。

 

「あれ?和……。」

 

和と……あれはノアか。珍しい組み合わせだな。なんで二人でいるのだろうか……?

 

「っ!」

 

二人で微笑みながら何か話しているだけなのに、なんだこのモヤモヤした気持ち……。

 

「しのぶさん?」

 

和とノアを見て立ち尽くしていると、見知った声の少女が話しかけてくる。

 

「咲姫か、こんなところでどうしたの?」

 

「なんだかしのぶさん、怒ってた気がしたから話しかけてみたんですけど。」

 

そう言いながらアタシの肩からひょこっと顔を出し、アタシが向いていた方に視線をやる。

 

「和也さんがいますね。彼と何かあったんですか?」

 

「いや、それがアタシにも分からないんだよ。」

 

「分からない、ですか……。」

 

「うん、なんか和が別の女の子と楽しそうにしてるの見てるとモヤモヤすると言うか。」

 

「それは恐らく"恋"じゃないでしょうか?」

 

しばらく咲姫は顎に手を当て、何かを思い出すような仕草をとると急にそのような事を口にした。

 

「こ、恋?アタシ、別に和のこと好きなんて思ってないんだが……?」

 

「いえ、間違いなく恋だと思います。この間、乙和さんが教えてくれました。"胸がぽっかりと空いた気分になるのは恋してるって証拠なんだよ"って。」

 

「乙和の言葉にそこまで自信持てるのすごいな……。」

 

恋、か……。考えたこともなかった。確かに最近和を見てると妙に胸がざわついたり、響子たちと話してるとき、不意に和のことを話題に出してしまっている気がする。これも恋してるってことなのか?

 

そう感じた途端、数日前に和が言っていた言葉の意味が少しづつわかったような気がする。

 

「ど、どうしたんですか!?急に顔が赤く……早く病院に……。」

 

「い、いや大丈夫、風邪じゃないから。ちょっと恥ずかしかったこと思い出しただけ。」

 

「そうですか……ならいいんですけど。」

 

「ちょっと用事思い出したから先行くね。」

 

そう言い、咲姫の返事を聞く前にその場から逃げるように去った。その途中でスマホの通知音が鳴り、手に取って送信されたメールの内容を見る。

 

"明日、休みだろ?どっか出かけないか?"

 

そこにはたった一行の短い文が届いていた。何故呼び出されているのか何となくわかってしまった私は少し動揺してしまい、

 

"いいよ"

 

と少し返事で済ませてしまった。うぅ……顔が熱い。和、アタシのこと好きだったってことでいいんだよな……響子たちもこの事を知ってて自分で考えろって言ってたのか。こんな恥ずかしくなったのはハロウィンライブ以来かもしれない。

 

そうなるってことは、アタシも和のことを……。

 

………………………………………………

 

翌日、朝早く起きてしまった俺は目を覚ますべく洗面台へ顔を洗いに行く。いつもなら"めんどくさい"と返されていたメールも昨日は珍しく肯定的な返事をされて余計にドキドキしてあまり眠れなかったのだ。顔を洗ってからしばらく、服を着替えて家を出る準備を進めていた。告白すると考えると無意識のうちに少し周りの目を気にして柄にもなくおしゃれしてしまう。

 

「あれ、和也どっか行くの?」

 

「ちょっとしのぶと出かける。」

 

「へぇ〜珍しいね、気をつけなよ。」

 

「そんな遠出する気ないし大丈夫だと思う。じゃあ行ってきます。」

 

姉ちゃんと軽い会話をして俺は家を出た。

 

ピンポーン

 

しのぶの家の前に着き、インターホンを鳴らすとしばらくしないうちにしのぶが出てきた。

 

「……おはよう。」

 

「おはよ。」

 

しのぶは相変わらず眠そうに答えた。

 

「そ、それじゃあ行こうか。」

 

少しの沈黙が生まれ気まずくなったので、話題を変えるべくそう言った。しのぶは何も言わずにコクッとうなずき俺の横にくっつくように歩いた。

 

それからしばらく歩き、目的地が何となくわかったのかしのぶが不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。

 

「もしかしてあの公園行くの?」

 

「うん、あそこなら人も少ないしちょうどいいかなって。」

 

あの公園とは、俺やしのぶ、渚がまだ小学生とかの頃によく来ていた公園なのだ。ここは公園として珍しく、人通りも少ないし一日通して何故か人が全くと言っていいほどいない。だから俺らはここを「秘密の公園」と呼んで度々遊びに来ていた。

 

「相変わらず全く人いないな。」

 

しのぶが誰もいない公園に目線をやりそう言う。

 

「昔から変わってないって考えるとどうしてここ潰れないんだろうな。」

 

俺も少しディスリ混じりの言い方で呟き、子供の頃よく座っていたドーム状の遊具の上に座る。

 

「懐かしい……。」

 

しのぶは俺が座ってる光景を見て言葉をこぼし、俺の隣に座った。目的の場所にも着けたし、話すか。

 

「なぁ、しのぶ。」

 

「ん?」

 

「この前の続き、今話そうかなって。いいかな……?」

 

「……。」

 

俺がそう言うとコクッと静かに頷いた。

 

「単刀直入に言う、」

 

「俺、しのぶのことが好きだ。」

 

しのぶは俺が言おうとしていたことを知っていたかのように俺の目を見つめる。

 

「……驚かないんだな。知ってたのか?」

 

「まぁね、つい昨日だけど。」

 

しばらくしのぶは俺を見つめ、俺は恥ずかしくなってしまい顔を逸らしたまま聞く。

 

「で、答えは……?」

 

「……いいよ。」

 

しのぶは下を向きながら少し顔を赤くしてそう返事をした。

 

「えっ?マジで?」

 

「和から聞いてきたのにその反応なんなの……。」

 

「いや、まさかOK出るとは思わなくて。てっきりDJが忙しいからとかの理由で断られるのかと。」

 

「アタシもさ、昨日色んな人と話したんだよ。和が他の女の子と話してると心臓が締め付けられるような感じがするって。最初はこの気持ち、さっぱり分からなかったけど、最後に咲姫と話して分かったんだ。アタシも和のこと好きなんだなって。」

 

「そう……なのか。」

 

お互い恥ずかしくなり、沈黙になる。俺らしかいないこの公園で鳥のさえずりだけが響き渡る。

 

「その代わり条件がある。」

 

しのぶはこの沈黙を破り声を出した。

 

「じ、条件……?」

 

「アタシと関わりのある人以外に付き合ってるってこと教えるのやめて。もし知られたりしたら、ピキピキとしての活動もしにくくなっちゃうでしょ。」

 

「元より言いふらす気ないっての……。」

 

「それはそうか、和にそんなこと言いふらす勇気ないだろうしね。」

 

「はぁ!?んなことないし!」

 

ふん!と鼻で笑うしのぶに対してそう声を荒らげた。そうするとしのぶは楽しそうに笑う。

 

ようやく仲直り出来たみたいだ。

 

「ねぇ和。」

 

公園からの帰り道、付き合えたと言う事実をまだ理解しきれず戸惑っていると、しのぶが話しかけてくる

 

「なに?」

 

「これからもさ、彼女としてじゃなくて"幼馴染"として付き合ってよ。」

 

「当たり前だ。しのぶはしのぶだから、付き合い方を変えることはしない。」

 

「……っ、ありがと。」

 

改めて二人で見つめ合い笑いあった。

 

 

俺はこの時、幼馴染を好きになると言う漫画でしかないと思っていた感覚を初めて知った。



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ピキピキとその先へ
【おまけ】ピキピキ大驚愕


今回はおまけなので完全しのぶ視点の話です。しのぶと和也が付き合うことになって……。ぜひ続きを読んで確かめてください。

絵空って良いキャラしてて文に書いてるの楽しいんですよね。


「しのぶ、なんか良いことでもあった?」

 

次の日の昼休み、いつものよう響子たちと昼を食べていると由香がアタシの顔を見て聞いてくる。

 

「いや別に、何も無いけど。」

 

「嘘〜しのぶさっきからずっと口角上がってるじゃん!絶対何かあったでしょ。」

 

そう言うと由香は私の頬をふにふにと触り出す。

 

「ほんとに何も無いから!ほっぺ触るな!」

 

「もしかして、和也くんと仲直りできたとか?」

 

「でも仲直りできただけでこんなに口角上がったりはしないと思うな。」

 

「絵空も響子も二人して変な考察するなっての!」

 

「はっ!ふふ♪」

 

何かを感づいたのか絵空は目をキラキラと輝かせながら微笑んだ。

 

「絵空、何かわかった?」

 

「ええ、恐らくだけどしのぶ、和也くんからの告白受け入れちゃったりして♪」

 

「……!?」

 

「あっ!今ビクッてした!てことは本当に……!?」

 

「あぁ!わかったよ全部話すから!」

 

このままダンマリを続けたら絵空がとんでもない妄想をしかねない。それにメンバーなんだからここは大人しく話しておくべきか……。そう思いしばらく昨日あったことを話した。

 

「きゃ〜!すごくおめでたいわね!」

 

「うん!私、身内で彼氏ができたなんて報告受けるの初めてだからなんか嬉しくなっちゃう。」

 

「ちょ!あんま大声出さないでよ!周りにバレたらどうすんのさ……。」

 

「確かに、バレたらまずいかも。……って響子?どうしたのそんなに黙り込んで。」

 

「うん、確かにおめでたいことだけどさ。しのぶ、和也のことばっかりでDJの方を疎かになっちゃわないか、ちょっと心配だな。」

 

「そこら辺は大丈夫だと思う。和にも今までと関わり方は変えるなって言ってあるし、DJがアタシの本分でもあるから怠るつもりは無い。」

 

「そっか、なら安心だ。」

 

アタシがそう言うと、響子は安心したように微笑む。

 

「じゃあじゃあ!今夜は何処かで夕飯を食べに行かないかしら?もちろん、和也くんも呼んでね。」

 

響子が話終えると、絵空は待ってましたと言わんばかりにそう提案する。

 

「いや、アタシたち来週ライブでしょ?そんなことしてる時間はないだろ。なぁ、響子?」

 

「私はいいと思うな。」

 

「えっ!さっきDJを疎かにするなとか言ってたじゃん!」

 

さっきの発言と矛盾したことを言ったため、アタシは驚きを口にしてしまった。てか響子も少しテンション高そうにしてる……。さては一番喜んでるな?

 

「わかってるよ。でもしのぶと和也が付き合うことになったいい機会だし。その代わりその時間までみっちり特訓すればいいでしょ?」

 

「はぁ……わかったよ。和にメールしてみるから、ちょっと待って。」

 

そう言い、和にメールを送ると一分としないうちに既読がつき、"全然平気だよ"と短い返事が返ってきた。

 

「OKみたい。」

 

「やったね!それじゃあどこへ食べに行こうか。あっ!カメラ持ってきて和也くんとしのぶの写真たくさん撮りたいなぁ!」

 

「せっかくだもの!私がちょっと豪華なレストラン、取ってあげるわ♪」

 

「いいね!じゃあ絵空、よろしく。」

 

アタシが和からの返事を声に出すとみんなしてワイワイと話し始める。……これ、和とアタシの付き合い祝いなんだよな?お前らだけで楽しんでるのなんなの……。まぁ、こう言うのも悪くないかもだけど。

 

「しのぶ〜どこがいいとかある?」

 

「急にアタシに振るなっての……。」

 

その後、レッスンを終えた私たちは和と合流してお付き合いおめでとうと称し、レストランで夕飯を食べることになった。



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絵空さんに任せなさい♪

今まで書いてなかった絵空単独話です!書くタイミングを失いに失った結果結構遅いタイミングでの絵空回となってしまった……。

プロフィールにも書いてますが、Photon Maidenがメインの小説を現在試行中なので、近々投稿するかも。期待しない程度に期待しといてください。


どうしてこうなったのだろうか。俺はスマホのメール画面を見るとそこには"由香さん"、"絵空さん"、"響子さん"としのぶ以外のピキピキの人たちが登録されている……。ことの発端は昨日の夜、しのぶに彼氏ができたとか言う理由で夕飯を食べに行くことになった。その時に、「しのぶの彼氏になったからには私たちと関わりも増えるわよね〜。」と言う声から流れでなぜか連絡先の交換をしてしまった。……まぁ連絡なんてされることないだろう。

 

プルルルル……。

 

そんなことを考えているとタイミングよく着信音がなった。はは、まさかね。と思いスマホの画面を見ると"絵空さん"と表記されていた。

 

「も、もしもし。」

 

「あっ、和也くんですよね?今時間あります?」

 

「はい。ありますけどどうしたんですか?」

 

「たまたましのぶの家の近くに来る用事があったからついでに和也くんともお話ししたいなと思って。なんならすぐそこにいるから、できれば顔を合わせながら話せないかしら?」

 

マジかと窓の外を見ると耳にスマホを当てた清水さんがこちらに気づき、ニコニコと手を振ってきた。

 

「わ、わかりました……。ちょっと待っててください。」

 

そう言うとさっくりと身支度を整え、玄関を開ける。

 

「こ、こんにちは。」

 

「こんにちは。どうしたの?なんか硬くないかしら?」

 

「清水さんと二人なの地味に初めてだし、ちょっと緊張しちゃって……。」

 

「そう言うことねぇ。じゃあ、呼び方を変えてみれば?」

 

「呼び方ですか?」

 

「呼び方を変えた方がよりフランクになれるし、何より響子たちだけ下の名前で私だけ清水って上の名前はなんだか不平等じゃない?」

 

「ま、まぁ確かに。」

 

なんだろう、この圧倒的乗せられてる感。単純に自分も下の名前で読んで欲しいって圧を感じる。しのぶもこの前話術がどうこうって言ってたし、こう言うことなのだろうか。

 

「じゃあ、絵空さんで。」

 

「ふふ♪本当に和也くんは素直なのねぇ。」

 

「このくらいは……。減るものでもないですし。それで、俺と話したいってなんですか?」

 

「そうそう、彼女ちゃんとはどこまで進展あったのかしら?」

 

「え、しのぶのことですか?」

 

「えぇ、せっかく付き合ったんですもの!展開の一つや二つ進んでるんじゃないかなって。」

 

「いや特に……これと言ったことは起きてないですけど。」

 

「デートも!?」

 

「はい。」

 

「じゃあ手を繋いだりするのも?」

 

「そりゃあ、しのぶとの関わり方は変えないって約束ですし。」

 

「ほ、ほんとに人の言葉に素直なのね……。」

 

絵空さんは額に汗を浮かべ、半ば呆れた顔をしている。

 

「あのね、付き合った以上このまま現状維持なんて良くないわよ。少しぐらい進展しないと。」

 

「そんなこと言われても、しのぶそう言うのあんま好きそうじゃないし……。」

 

デートと言ってもどうせしのぶは家に出ることが嫌いだから言っても出てきてくれないだろうし、手を繋ぐなんて恥ずかしすぎてしようにもできない。

 

「それもそうよねぇ……。あっ!」

 

絵空さんは少し残念そうな表情を見せたと思ったら、何か思いついたらしくすぐに晴れやかな笑顔に変わる。

 

「なにか良い案でも思いついたんですか?」

 

「えぇ、それもとっておきの策が!とりあえず来週のライブが終わるまで待っててくれるかしら?」

 

「分かりました?なんでライブが終わるまで……。」

 

「それはその時になったらわかるわ。まぁ、絵空さんに任せなさい♪それじゃあね。」

 

そう言った絵空さんは、離れたところに停めてあった車に乗り、帰ってしまった。「絵空さんに任せなさい♪」って同い年なのになんでそんな大人っぽさを出せるんだろうか……。てか、つまりはこれからしのぶと手を繋いだりデートするってことになるのか!?う、嬉しいけどそう考えるとなんか恥ずかしい……。

 

絵空さんのセリフのせいか、興奮冷めやまずその後の記憶はほとんど残ってなかった。




私情によりしばらく投稿できないと思うので次回を首を長くして待っていてください。
恐らく二週間は投稿できないです。


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絵空さんの計画

諸事情も無事終わり、時間が出来たので投稿再開します!

この前までは「書いて欲しいストーリー」のアンケートに参加してくれた方はありがとうございます!最終結果が同点になってしまったので、Twitterの方で決選投票を行った結果「ちょっとえっ○」が一位となってしまいました。次回からその片鱗を見せて行けたらなと思うので、ぜひお気に入り登録をお願いします!


「今日で一週間以上はたってるよな……。」

 

俺はベッドの上に仰向けで寝転がりながらスマホの画面を見る。その画面には"絵空さん"と表示されていた。「絵空さんに任せなさい♪」と言われてから約一週間、音信不通……というか単に連絡がない、それが今俺がため息をついている理由なのだ。ライブはもう終わってるはずだろうに……。

 

プルルル……

 

っ!?ビックリした……って絵空さんからだ。いつもタイミングいいなぁ。てかメールでくれればいいのになぜいつも電話なのだろうか?そう思いながらも俺は絵空さんからの電話に応答する。

 

「もしもし。」

 

「こんばんは。こんな時間にごめんなさい。」

 

「いや全然。むしろ今、絵空さんとあの話してからメール全く来ないなぁって思ってたとこです。」

 

「その話、覚えていてくれたのね♪ちょうどその話について伝えようかと電話したの。」

 

「なにかいい案でも思いついたんですか?」

 

「えぇ、和也くんも今週末から夏休みになるでしょう?」

 

「そうですね。確か陽葉学園も夏休みってしのぶが……。」

 

「そうなの!だから夏休みに入ったらピキピキのみんなと和也くんで旅館に泊まりに行こうって計画を立てて見たのだけど、どうかしら?」

 

「……ってえええ!?なんでそんな話が通ったんですか!」

 

「響子と由香にも手伝ってもらって立てたのよ?」

 

「いや、響子さんも由香さんもなんで俺がいることに乗り気なんですか……。」

 

「彼女たちも和也くんのこと気に入ってるらしいわ。この話をしたら真っ先に承諾してくれたし。」

 

俺いつの間に気に入られてたのだろうか。別に気に入られるようなことした記憶ないんだがなぁ……。

 

「というか最近いつもピキピキの輪の中に俺が入っちゃってるけど良いんですかね……?俺なんて部外者除いて、ピキピキはピキピキで楽しんだ方がいいのに。」

 

「そう思うのも無理ないわ。でも実は、しのぶが言ってたのよ?"和は一応、アタシの彼氏なんだ。もう少し距離は縮めたいかな"って。」

 

し、しのぶがそんなこと思ってたのか。俺のいないとこでそんなぶっちゃけたこと言ってるのなんかしのぶらしくないな……。普段は割と抱え込むタイプなのに。

 

「そのせいかしのぶを説得させるの、ちょっと苦労するかなぁと思ってたんだけど、あっさり承諾してくれたのよね。だからどうかしら?」

 

「そこまで用意されて拒否なんてこと出来ませんよ。良いですよ、俺も行きます!」

 

「そう♪しのぶもきっと喜んでくれるわ!それじゃあ予定は決まり次第連絡するから気長に待っててちょうだい♪」

 

「分かりました。それじゃあまた連絡ください。」

 

プツ……

 

俺はそう言い、電話を切った。

 

……おい、何やってんだ俺!あそこ絶対承諾すべきじゃなかっただろ!女の子四人の中に男の俺が入って旅館に泊まる?そんなハードルの高いこと、俺に乗り越えられるわけないだろ!……いやまぁ、ここはしのぶともっと距離を近づけるチャンスって開き直るべきか……。

 

うむむ……これ以上悩んでも結果は変わんないし、諦めて行くしかないか。絵空さんたちも善意あってやってくれてるんだし、無下にはできないよな。一旦気持ちをリセットしようと、俺はベッドに横になり寝ることを決めた。

 

翌日、しのぶの家にて

 

「なぁ和、絵空から夏休みに何やるかって話聞いた?」

 

「旅館に泊まりに行くって話か?俺も行くことになったやつ。」

 

「それそれ。でも珍しいね、和が女の子しかいないプチ旅行に参加しようなんて気が起きるの。」

 

「いやまぁ、しのぶがなんか来てくれた方がいいかも的なこと言ってたって絵空さんから聞いたから、そこまで言うなら行こうかなって。」

 

さすがにしのぶの言ってたらしいことを直接伝えるのは可哀想かと俺は少し言葉を濁すが、当の本人はキョトンと首を傾げた様子を見せた。

 

「なにそれ?アタシそんなこと言ってないんだけど?確か絵空には"別にいいんじゃない?"って言ったと思うんだけど……。」

 

「え、でも絵空さんがそう言って……っ!」

 

まさかとは思うが絵空さん、俺が断るかもってのを加味してわざと嘘の情報を伝えたのか……!?いやそんなわけ……確かに絵空さんなら有り得るかもだけど……くっそ!はめられた!

 

「まぁ、来るなら来るで楽しそうだしアリだと思うけどね。……そうそれで話を戻すと、8月7日の朝8時30分に行くことになったから、それまでに私の家に来といてね。」

 

「わ、分かった……。」

 

絵空さんに騙されていたことを内心ショックを感じていた俺にしのぶは淡々と出発日の予定を話し出した。

 

「……急に落ち込んだ様になってどうしたの?」

 

「なんでもねぇ……。」

 

「何でもはあるだろその顔。そんな顔されたらさすがにアタシも気になるんだけど。」

 

「ほんとになんでもないから!」

 

そこからの記憶はあんまり無い。ただ、ゴリ押しで何も無かったことにしたのだけは覚えている。

 

数日後、俺たちは夏休みに入った。




投票に書いてあった「お泊まり」というのはしのぶの家に和が泊まり込みになるという意味で追加してました。ですので「ちょっとえっ○」のストーリーはストーリーで旅館に泊まるという話にしてます。記述不足で申し訳ないです。


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車の中は荒れ模様

移動中の話は書きたいことが多く、文字数がいつもより多いかつ語彙力が無いかもしれません。


数週間後、俺らは本格的に夏休みに入り、旅館に向かうべく朝早くからしのぶの家でのんびりしていた。

 

「そういや俺、まったくパンフレット読んできてないけどどのくらい離れたとこにあるの?」

 

俺がそう聞くと、しのぶは欠伸を噛み殺しながら応える。

 

「そんな離れてないはず。二、三時間もあれば着くって言ってたと思う。」

 

「そっか……って、来たみたいだね。」

 

相槌を打つタイミングでインターホンがピンポーン……と鳴り響いた。それが絵空さんたちだと察した俺たちは、荷物を持って家を出る。

 

「おはよう♪しのぶ、それに和也くんも!」

 

「「おはよう(ございます)。」思ってたより早かったじゃん。」

 

「響子も由香も思ってたより早く準備が終わってたらしいから真っ直ぐ来れたのよね。早速行くから乗ってちょうだい♪」

 

絵空さんが手招きした先には、少し小さなリムジンが停められていて、窓から響子さんと由香さんがこちらに向かって手を振っている。てかリムジンとかリアルで初めて見た……洋画とかでしか見ないからなんか違和感だ。

 

「おはよう和也にしのぶ。」

 

「おはようデース!」

 

俺らは絵空さんに同様、「おはようございます。」と言って席に座ろうとすると、絵空さんがこれを止める。

 

「ごめんね、座る席はもう決めてあるの。ほら、しのぶちゃんはこっち♪」

 

「えっ、ちょ……!」

 

しのぶは首根っこを掴まれ、絵空さんの横になるように座らせられる。

 

「あれ?その場合俺って……。」

 

「はい、和也くんはここね♪それじゃあ早速しゅぱーつ!」

 

俺としのぶの質問を全無視して、そそくさと車を発進させた。

 

……………………………………………………

 

「……。」

 

「和也、ここのハンバーガー屋さん美味しそうじゃない?」

 

「ねぇ、和也くん!ここ楽しそうだね!」

 

響子さんと由香さんが俺のほうを振り向くと、フワッと髪の毛の良い匂いが理性を誘惑し、少し動けば彼女らの柔肌に触れることになってしまうこの状況に、俺は黙って硬直するしか出来なかった。そう、察しの悪い人でも大体わかると思うが、今の席順はL字状にしのぶと絵空さんが隣になり、残りに響子さん、俺、由香さんと言う順で座っている。つまり俺は、響子さんと由香さんに挟まれる形で座らせられている。……確実に絵空さんが意図した席順なのだが、少し愉悦も感じるし言わないでいいか……。

 

「……ずや!和也!」

 

「うぇ!?響子さん……な、なんですか?」

 

「ようやく反応した。私と由香が話しかけてるのに微動だにしなかったからどうしたかと思っちゃった。」

 

「あぁ、今ちょっと考え事を……。」

 

「考え事って何!?私が相談乗ろうか?」

 

「ありがとうございます、って!由香さん!?ち、近い……。」

 

由香さんの顔が目と鼻の先まで来ており、俺はつい頬を赤らめ、顔を逸らした。

 

ふにっ……

 

っ!!?由香さん……今、俺の腕に胸当たってるんですよ……。しかしそんなことを言い出す勇気が出るわけもなく、俺はそのまま黙ることしか出来なかった。

 

〜しのぶ視点〜

 

「……。」

 

和が響子たちとなんか楽しそうに話してる……。なにしてんだろ?

 

「あっれ〜?しのぶちゃん、まさか和也くんたちの会話気になっちゃってる?」

 

「は、はぁ?そんなわけないし……。」

 

「じゃあさっきからそのムスッとした顔はなんなのかしら?」

 

ぐっ……ほんとに良い性格してるなぁ……良い意味でも悪い意味でも。

 

「はぁ……てか、この席順どう見ても悪意があるだろ。」

 

「なんでそう思ったの?」

 

「絵空のことだ、和を無理矢理にでも連れてこうとしたのはどうせアタシと和の間をもっと縮ませるためとかそんな理由だろ?」

 

「あら、バレちゃってたんだ♪だったら和也くんとしのぶを隣にすればよかったろってことね。」

 

「そう言うこと。で?実際のとこはどう考えてるの?」

 

見抜いて見せたとジッと絵空を見つめると、少しため息をつきながら説明をする。

 

「車の中はあくまで確認よ。和也くんがしのぶ以外の女の子となにかしてたらしのぶはどう言う反応するかのね。」

 

「それ意味あるのか?」

 

「あるわよ!しのぶが響子たちに対して嫉妬するか、興味なく無視するかで旅館で二人にどういう行動させるかって考えるために必要なの。」

 

旅館でアタシと和は、絵空になにかされること確定なのか?いやまぁ、和と距離を縮められるならそれでも良いのかな……?などと考えていると、絵空は言葉を続ける。

 

「それに旅館には三日泊まるつもりなのよ?全然時間あるし、なんなら"えっちなことも出来ちゃうかもしれないわね"。」

 

「えぁ!?」

 

最後の一文だけ誰にも聞かれぬよう、アタシの耳元で囁きかけてきた。そしてアタシは、予想外の発言に変な声を出してしまった。え、えっちってアタシと和がってことか……?

 

「へっくしゅん!!」

 

「和也、大丈夫?車の冷房つけすぎちゃってるのかも。」

 

「確かに少し冷えてるかもね。和也くん、ティッシュいる?」

 

「は、はいありがたく貰います……ってしのぶ、顔真っ赤だけどどうしたの?」

 

「……!!なな、なんでもない!」

 

「ちょっと私と話してたら恥ずかしかったこと思い出しちゃっただけよ。気にしなくていいわ♪」

 

絵空はさっきまでの会話を感ずかれないように話を逸らす。てかこんなになったの絵空のせいなんだが……。

 

「ならいいんですけど……。」

 

和に変な気を使わせてしまった……なんか申し訳ない気持ちになってしまう。

 

それからもうしばらく車での移動だったが、これ以上の話題が出ることはなく目的地の旅館へと着いた。




次回からしっかりと旅館に着くのでそろそろ来るかもしれません……。


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お、お風呂はまずい……。

良い感じの文章が思いつかず、投稿が遅くなってしまいました。常習犯ですみません……。
どこまでがR-18でどこまでがR-15なんだと言うラインが分からないからかなり苦戦してます。


「とうちゃ〜く!!」

 

旅館に到着し、真っ先に車を降りた由香さんはそう言い「くぅ〜」っと背を伸ばす。

 

「由香、途中から座りっぱなしで辛そうだったからね。」

 

「そうなんだよ〜。ずっと座ってると体がなまっちゃうんだよね。」

 

「体がなまるって、途中パーキングエリアで休憩しただろ……。」

 

背を伸ばす由香さんを見て、しのぶは呆れながらもそう言った。

 

「まぁまぁ……それにしても意外とこの旅館、こじんまりとしてるんですね。」

 

「えぇ、ここは施設の充実具合に反して通の人でもあまり存在を知られていない秘境的な旅館なのよ♪」

 

「そんなとこ良く見つけられたな。どうやって見つけたんだ?」

 

「この前、家族旅行に行った時たまたま見つけてすっごく良かったからみんなも誘いたかったのよね。」

 

絵空さんはニコニコと楽しそうな顔をしながらそう言う。その後、俺らはチェックインを済ませて自分らの部屋へと向かった。

 

「「なんで同じ部屋なの(なんですか)!?」」

 

廊下をしばらく歩いている時から「あれ?なんでこんな同じ道ばっか通るんだ?」と思っていたが、まさか同じ部屋であるということに俺としのぶは声を合わせ驚きを口にする。

 

「あれ、言ってなかったかしら?他のお客さんに迷惑をかけないためにも、和也くんで一部屋丸々借りるのはやめようってなったのよ。」

 

「そんな話一ミリも聞いてないんだが……。てか、響子と由香はそれでいいわけ?」

 

「まぁ和也なら何もしないだろうし、ね?」

 

「うんうん!それに寝る時は襖で場所を分けるんだし平気じゃん!」

 

「ら、楽観的すぎるだろ……。」

 

「私はいいと思ったんだけどな。しのぶは嫌なの?」

 

えぇ……と困惑するしのぶに響子さんは優しい顔をしながらそう言った。

 

「え……いや。ま、まぁ響子がいいなら別にいいけど……。」

 

「じゃあ決まりだね。」

 

しのぶ!?まんまと響子さんに流されやがって……。確かに響子さんのことを最も信頼してるなって前々から思ってたけど、まさかここまで信頼するとは……もはや好きだろしのぶ、響子さんのこと。

 

て言うか、俺の意見は?

 

「そもそも、もうこう言う部屋でチェックインしちゃったんだし、今から変えることは出来ないんだけどね♪」

 

「そ、そうでした……。」

 

俺が呆然と立ち尽くしていると、心を読んだかのように絵空さんが俺の肩に手を置き、諦めなさいと言うように俺を諭した。

 

かくして俺は、美少女四人(その内一人は彼女)の部屋に突っ込まれて理性を保てるのだろうか……。

 

…………………………………………

 

カポーン

 

そんな音が聞こえてくる気がするこの状況。そう、今俺はお風呂に入っているのだ。

 

結局あの後、部屋でだら〜と過ごしたり、旅館内の散策を兼ねて散歩をしたりなど時間を潰していると、あっという間に日が暮れ、夕飯の前に風呂に入ってしまおうと話し合った結果、今に至る。

 

「ラッキー誰もいないや。」

 

入る時間が少し早かったためか、辺りを見回しても人の気配を感じない。まぁゆっくり入れるしこれはこれで良……

 

「あれ?誰もいないじゃん。」

 

「夕飯前だし、今入ろうとする人はあんまりいないんだろうね。」

 

「それにしても広いね〜!露天風呂なんて久々だからなんか楽しくなっちゃうな!」

 

「ふふ♪この旅館は温泉が一番の売りだから、効能とかも結構いいのよ?」

 

まさかとは思うがこの旅館、男風呂と女風呂繋がってるのか!?今の声、完全にしのぶたちの声だし……。しかも男女の風呂が隣り同士っていつの時代の旅館だよ。「うーむ……」とどうすべきか悩んでいると、隣から続きの会話が聞こえてくる。

 

「……由香、相変わらず腹筋すごいな。」

 

「でしょ!いつも鍛えてるからね。しのぶも付けてみる?腹筋!」

 

「い、いや私はいいや。」

 

「えぇ〜じゃあ二人はどう?」

 

「私も遠慮しときま〜す……。」

 

「みんな嫌なんだ。私、結構興味あるけど。」

 

「ほんと!?じゃあ今度うちのジムに……」

 

「響子は今のままでいいだろ。てかこれ以上ピキピキに筋肉オタクはいらないから!」

 

「そ、そう?」

 

「なんで〜?絶対楽しいのに。それに筋トレすればスタイルだって良くなるし、バストアップ効果も見込めるのよ?」

 

バ!?思いもよらない単語が出てきて、俺はつい驚きの声を漏らしてしまう。

 

「あ!今しのぶちゃん、ピクッてしたわね〜。まさか"バストアップ"に興味あるの?」

 

「あ、あるわけないでしょ。んん……おい、触るなー!」

 

「あぁ〜響子の背中に隠れちゃった……。」

 

「まぁ、今のは自業自得だと思うけどねぇ。」

 

「よしよし、今のしのぶにも十分魅力あるんだし、気にしなくてもいいって。」

 

「そうよ?今のしのぶちゃんの方がずっとラブリーだから気にしなくていいんだから。ちょっとイタズラしたくなっちゃっただけだから、ね?」

 

「シャー……!」

 

「ほ、ほら!揉んだら大きくなるって言うじゃない?気を使ってやっただけよ……。」

 

「ほお〜、じゃあ私も気使ってやるよ!」

 

「ちょ//や〜ん、しのぶちゃんそんながっつかないで〜。」

 

「絵空も!こんなこと!してただろ!」

 

「わぁ〜///!しのぶ大胆!」

 

「見てるこっちも恥ずかしくなってくるね……。」

 

「あはは!じゃあ私たちもやっちゃう?それ!」

 

「えぇ!あっ、ちょっと由香!」

 

プシュ〜……。

 

や、やばい……顔が熱い。この熱さは間違いなくお風呂の熱のせいではなくいかがわしい会話に動揺してしまってるせいだ。女の子同士だと、お風呂でこういう事するって漫画とかでは見た事あるけど、リアルでもそうなのか。あぁ、鼻血で出てきそう……。

 

……………………………………………

 

「和、顔真っ赤だけどどしたの?」

 

「まさかのぼせちゃった?」

 

「い、いやまぁ……そんな感じです。」

 

「ほんと?じゃあ安静にした方がいいよ。」

 

響子さんは心配そうに俺の顔を覗き込む。

 

「その、響子さん。ちょっと顔近いです……。」

 

その言葉を聞いて目を見開く響子さんと、「何があった?」と首を傾げる由香さん、絵空さんを後目に一つの誓いを立てた。

 

"お風呂の件は流石に黙っておこう……。"

 

その時の俺はあまりに動揺しすぎて、響子さんに少し酷いことを言ってしまったと気づくことが出来なかった。




一日目だけで何話書くんだこいつって思ってる方もいると思います。僕も思ってます。ネタが尽きたら二日目以降のネタをアンケート取るかもしれないので把握よろしくお願いします。


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朝も元気なPeaky P-key

一ヶ月も小説投稿を放置したこと、本当にごめんさい。
少しモンハンにハマりすぎた結果がこれですね笑
またTwitterを見てた人なら知ってると思われますが、D4DJのこんなシチュあったらな妄想が楽しくてなかなか小説に時間を避けなかったのが原因です。気をつけます……。


「ふわぁ〜……。」

 

次の日、俺は朝早くに目覚めてしまってあくびを噛み殺す。部屋分けのための襖を少し開けて向こう側を覗くと、しのぶたちはまだ寝ているらしい。一人を除いては……。

 

「おはよう。和也、意外と起きるの早いね。」

 

俺側の部屋から女性の声がして、後ろを振り向くと椅子に座って窓から光を浴びている響子さんがいた。響子さんパジャマだ……かわいい……。

 

「おはようございます。じゃないでしょ……なんで響子さんがこっち側の部屋にいるんですか?」

 

「私も早くに目が覚めちゃってさ、陽を浴びようにも和也側にしか窓がないから仕方なく入ったんだけど……迷惑かな?」

 

「迷惑なんてそんな!ただ一言かけて欲しかったなって。」

 

「あはは!そう言うことね。ごめん、和也すっごく気持ち良さそうな寝顔してたから起こそうにも起こせなくなっちゃって。」

 

「んな!?」

 

自分の寝顔見られたのかと顔を赤くすると響子さんはさらに可笑しそうに笑い出す。

 

「な、なんでそんな笑うんですか!」

 

「ふふ、和也やっぱり女の子みたいで。つい可笑しくなっちゃった。」

 

俺が少し声を荒げると、涙を拭いながらそう言った。

 

「と言うか前にもこんなことあったよね。ほら、私たちが初めて和也と会った時。」

 

「しのぶとの絡みで夫婦みたいって言われた時のやつですか……。」

 

「そうそれ!懐かしいね……。」

 

「ですね。俺、響子さんたちとここまで仲良くなるなんて当時は考えてもなかったです。」

 

「私もまさかしのぶが付き合うなんて思ってもなかったよ。一番そう言うのに興味のない子だと思ってたから。」

 

「俺もそう思います……。」

 

「でも良かったな、しのぶの彼氏が和也で。」

 

「な、なんでですか?」

 

「和也いい子だもん。しのぶが振ってたら私が付き合っちゃってたかも。」

 

「何言っt……!!」

 

恥ずかしくなり、つい大声で反応しそうになると響子さんは唇の前に人差し指を立てて「しーっ」と言う。

 

「しのぶたち起きちゃうよ。あくまで例えばの話しだから、動揺させちゃってごめんね。」

 

そう言った響子さんは優しく微笑み俺を見る。陽の光のせいか少しだけキュンとしてしまった。その後、少し沈黙が続くと襖が静かに開く音が聞こえてきた。

 

「あれ〜?響子、もう起きてたんだ……。」

 

「あっ由香、おはよう。和也も起きててさ、ちょっと話してただけだよ。」

 

「おー和也くんもおはようデース!それで、なんの話をしてたの?」

 

「ふふ、それは私と和也の秘密だよ、ね?」

 

「そうですね……。」

 

「えぇ〜なんで〜?」

 

響子さんと俺が見つめ合い微笑むと由香さんは、残念そうに不満を口にする。

そこからしばらく三人で話しているとしのぶと絵空さんも起きてくる。

 

「朝から元気だな……ふわぁ〜。」

 

「私たちが起きるの最後なのね。」

 

「おはよう。大丈夫だよ、私たちが早かっただけだから。」

 

「しのぶも絵空もすっごい眠そう。時間もあるし、もう少し寝てれば?」

 

由香さんが心配そうにしのぶたちの顔を見ると、しのぶは大丈夫と言わんばかりに言葉を返す。

 

「由香が朝から元気すぎるだけな気がするんだけど……。その元気、もらいたいぐらいなんだが。」

 

「たしかに由香さんっていつでも元気ですよね。何か秘訣でもあるんですか?」

 

「やっぱり日々のトレーニングが秘訣かな。ところでさ!筋トレ、興味ない?うちのジム、今会員登録無料なんだけど……。」

 

しのぶの言葉を聞いてたしかにと思った俺は、由香さんに理由を聞くと目を輝かせて顔を詰め寄せてくる。

 

「えっ!ま、まぁ最近流石に運動しないとまずいとは思ってますけど……。」

 

「じゃあうちのジムに今度来てみてよ!来てくれたら特別サービスで私がサポーターとしてついてあげる!そうそう、これパンフレットなんだけど……。」

 

「あらあら、由香のスイッチ入っちゃったわねぇ……。」

 

「こうなったらもうアタシたちも止められないから和、大人しく言うこと聞くしかないぞ。」

 

「いや、俺は全然行っても良いんだけど……由香さんがサポートしてくれるって言ってるし。」

 

「マジか……初めて由香がジムの勧誘に成功してるの見た……。」

 

「「たしかに」」

 

しのぶがそう言うと、響子さんや絵空さんも頷いていた……てかその言い方だともうすでに何回か勧誘してるのか……?

 

「由香、その話は後でしましょ?今日の予定を決めないと日が暮れちゃうわ。」

 

流石に収集がつかなくなるのを見かねて、絵空さんが由香さんの一人喋りを止めに入る。

 

「ご、ごめん!たしかにそうかも……。」

 

「でもどこ行こっか?いまだに何も決めてなかったけど。」

 

「希望がある人の所行けば良いんじゃない?ちなみにアタシはどこもないよ。強いて言えばこの地名産の美味い食べ物屋に行きたいなくらい。」

 

「おっけーお昼はそこで食べようか。和也は?」

 

「うーん……あっ、あの神社行きたいです。ほら、響子さんが車の中で教えてくれた。」

 

「え?なんであそこに?私は趣味で行きたいけど和也が行きたくなる理由って何かあるっけ?」

 

「え、えっとここじゃあんまり言いにくいって言うか……。」

 

「……あぁ!そう言うことね。うん、たしかに良いかも!」

 

しばらく「うーむ」と考える素振りをしていると、俺が行きたい理由に気づいたのか笑顔になり優しく肯定してくれる。

 

「由香と絵空も何か行きたい所ある?」

 

「私はちょっと先のショッピングモールでお買い物したいくらいかしら。由香は?」

 

「私もそこに用事があるから行きたい場所は一緒だよ!」

 

「じゃあ先にショッピングモールから行こうか。神社もそこから結構近いところにあるし。」

 

響子さんの一言に俺らは「「「賛成」」」と声を合わせ、着替えを始めた。俺は温泉の脱衣所で着替えを済ませて先にエントランスで待ち、しのぶたちと合流して旅館を出た。




俺も響子さんに「寝顔可愛かったから」とか言われてみたいな……。
絶対恋するね!

【次回】はぐれたの子猫たち


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はぐれたの子猫たち

一度投稿するとモチベが出てきて投稿が早くなる人間です。多分そろそろまた無くなってきます。次回辺りは由香がメイン、その中に何人かゲストキャラを織り交ぜたものを投稿すると思います。ぜひお楽しみに〜


旅館を出た俺たちは、バスに揺られショッピングモールへとやって来る。まぁショッピングモールでの話はこの前もあったから以下省略……。お昼も食べ、ひと休憩を終えると俺が昨日提案した神社に行こうと少し歩いた。

 

「結構混んでんな……。」

 

「うん、はぐれないようにみんな出来るだけくっついて移動しましょ?」

 

由香さんの言葉に従い、夏休み特有の人混みの波に逆らって神社の鳥居を潜る。ここの神社、有名故に夏休みにもなると人で溢れかえってしまうのだ。

 

「うおぁ!?」

 

「し、しのぶ!」

 

少し人にぶつかり、よろけた瞬間にしのぶは人混みの波へと呑まれてしまう。俺は腕を伸ばし、手を繋ぐよう促すと俺もそれに巻き込まれて響子さんたちと離れ離れになってしまった。

 

…………………………

 

「大変なことになったな……。」

 

「……か、和。」

 

人混みから抜け出して、響子さんたちとはぐれたことに頭を抱えていると、しのぶは顔を赤くし俺に何かを訴えてくる。

 

「なに?」

 

「手、いつまで繋いでんの?」

 

「へ?あぁ!!」

 

さっきしのぶが呑まれた時に離れないように繋いだ手を今の今まで繋ぎっぱなしで行動していたことを思い出し、ついびっくりしてパッと手を離す。

 

「ご、ごめん……。」

 

「……別にいいよ減るものでもないし。それより響子たちと連絡取ろう?」

 

「そ、そうだね。」

 

なんともないような顔しているけど、結構動揺してるなこれ……。ま、まぁそれはさて置いて俺は携帯を取り、響子さんへメールを送った。

 

"大丈夫ですか?"

 

"和也、しのぶと一緒にいる?"

 

"俺らは無事ですよ。ただちょっと結構奥の方に入っちゃったみたいで……合流するのは少し難しそうです。"

 

"そっか……。じゃあ二人で回ったら?"

 

"でも響子さんたちは……?"

 

……

 

"絵空も由香も二人で行けだってさ。"

 

"な、なんでですか。"

 

"せっかくの旅行なんだからしのぶと二人っきりで楽しんできなよ。それに、ここの神社のご利益恋愛成就でしょ?"

 

"あぁー、そう言うことですか。"

 

"そう、なおさら二人でね。私たちは別で回るから夕方くらいには空いてくるだろうし、その時合流しよう。"

 

"わかりました。何から何までほんとになんて言ったらいいか……。"

 

"問題ないよ。その代わり、しのぶのことよろしくね。"

 

"もちろんです!"

 

「話ついた?」

 

メールを終わらせ、携帯の画面を切るとしのぶは待ちかねたかのように聞いてくる。

 

「まぁ大体のことは。てかしのぶが連絡すれば良かったのに……。」

 

「アタシがしようとした時にはもう和がスマホ開いてたんだろ?だからもう良いかなって。」

 

「そう言うことか。」

 

「んで?響子、なんて言ってた?」

 

「あぁ、まだ入り口の方でもたついてるらしくて先に二人で回っといてってさ。」

 

「マジか……面倒なことになったな。」

 

「こうなったからには仕方ないよ、先に行こう。夕方くらいには合流できるはずだから。」

 

響子さんたちにここまでお膳立てしてもらったんだ。勇気を出せ……!そう思い俺はしのぶの一歩前に出て手を差し出した。

 

「な、なに?」

 

「ま、まだ全然人多いし、俺らがはぐれたら余計厄介なことになるからさ……もうちょっとだけ手繋いで行かないか?」

 

うぅ〜恥ずかしすぎる!なんだこの臭い台詞……言わなきゃ良かったかも。しのぶも無言だし……。

 

「嫌なら別に良いんだぞ。い、嫌だよな俺と手繋ぐなん……」

 

俺が言いかけると、キュッと手に温かい感触を感じた。

 

「し、しのぶ……?」

 

「和とはぐれたら響子たちとも合流するの遅くなるだろうし、仕方ないから繋いであげる……。」

 

しのぶは顔が赤くなったのを見せたくないのか、そっぽを向きながら俺の手を握る。

 

「……じゃあ行こうか。」

 

俺の言葉にコクッと頷き、歩き出した。周りからの視線が痛い……絶対ラブラブカップルみたいな目で見られてんだろうなぁ……。あんま悪い気はしないけど、恥ずかしい……。てかしのぶの手、温かいし柔らかい。まるで子供の手を握ってるみたいだ。

 

「和の手、でかいな。」

 

しばらく本堂への道を並んでいると、しのぶがふとそう呟いた。

 

「そりゃあ男だし、こんなもんじゃないか?」

 

「そっか、和と手繋ぐの幼稚園以来だからそう感じるのかも。」

 

「なんだそれ?」

 

「さぁね、アタシにも分からない。」

 

他愛もない話でもやっぱりしのぶと二人でいる時がなによりも心が落ち着く。だんだん手を繋ぐことにも慣れてきたし、ちょうど良いタイミングで本堂に到着した。

 

カランカラン……

 

「しのぶ、なんてお願いした?」

 

「教えるわけないっつーの。そう言う和は?」

 

「しのぶが教えてくれないなら俺も秘密。」

 

お参りも済ませて俺らは人混みのない脇の方へと抜けると、どんなお願いをしたかについて話し合う。……まぁこんなお願い、しのぶに聞かせられるわけないんだけど。もし知られたら恥ずかしすぎて死んでしまうかもしれない。

 

"これからもしのぶ(和)とずっと一緒にいたい"なんてお願いを……。

 

………………………………

 

夕暮れ時、俺らはあれから適当に辺りを散歩しているとまだ何人か残ってはいるが、あれだけいた人の束があっという間に少なくなっていた。そうすると、向こうから手を振ってこちらに向かってくる人影が見えた。響子さんたちだ。

 

「おーい!」

 

「ふぅ……やっと合流できた。」

 

しのぶは響子さんたちの顔を見ると疲れたように息をつく。

 

「色々アクシデント続きだったからな。しのぶが疲れるのも分かるよ……。」

 

できることなら早く帰って寝たいくらい今日は疲れた。体力的にも精神的にも。ん?精神的って俺、まだしのぶと……!!左手に残る柔らかい感触に俺は冷や汗が止まらない。これ、響子さんたちに見られたら……。

 

「あら〜♪しのぶちゃんたち大胆ねぇ♪」

 

「ほんとだ!いつにも増してラブラブだね!」

 

と思った時にはもう手遅れで、絵空さんたちは目をハートにしたように見惚れていた。

 

「っ!?」

 

しのぶはようやく気づいたのか、顔を若干赤くしてパッと手を離す。

 

「良いのよカップルなんだし、もっとイチャイチャしていても♪なんならここからキスまでやっちゃう?」

 

「うがー!やるわけないだろ!特にお前らの前では絶対しないからな!!」

 

パシャ!

 

顔を真っ赤にしたしのぶが、怒りに任せ絵空の頬をグニグニ引っ張っているとどこからともなくシャッター音が聞こえる。

 

「ゆ、由香……!?」

 

「いや〜良い絵が撮れたよ!まさに思い出の一枚だね!」

 

「なぁ、それってアタシと和が手繋いでる写真もあるのか……?」

 

「もちろんあるに決まってるじゃない!あんな最高のシャッターチャンス、私が逃すわけないでしょ?」

 

「今すぐ消せー!!」

 

そう声を荒げるとしのぶは、由香さんのカメラを奪い取ろうと二人で格闘し始めた。身長差のせいで一向に取れる気配がないけど……。絵空さんは絵空さんで、しのぶの引っ張られた頬をさすりながら涙目を浮かべている。まさにカオスと言うべきか……。

 

「あはは……もうめちゃくちゃだね。」

 

「は、ははは……。」

 

響子さんと俺は額に汗を浮かべながら笑うことしかできなかった。

 

と言うか手繋いでた写真撮られてたのか。ちょっと欲しいけど俺が言ったらまたカオスになりそうだし……。

 

「私が貰っといて後で渡そうか?」

 

言い出すべきかどうかを悩んでいると、響子さんが心を読んだかのように俺に微笑みかける。

 

「やっぱり分かっちゃうんですね。」

 

「和也のことは顔を見てるだけでなんとなく分かるんだよね。」

 

「さ、さすがカリスマ……。」

 

「褒め言葉として受け取っとくよ。それで?どうするの?」

 

「はい、できればお願いします。」

 

「オーケー、じゃあ貰ったらまた教えるよ。」

 

俺と響子さんがコソコソ話をしていると、争いが終わった様子でしのぶが息をあげる。

 

「はぁ……はぁ、もう限界……。」

 

「しのぶバテるの早いすぎ〜。私と体力勝負なんて百年早いんだから!」

 

「こ、この体力お化けめ……。」  

 

「争いは終わったっぽいね。じゃあ、日暮れも近いし帰ろうか。」

 

しのぶの体力限界を見兼ねて、響子さんがそう言い旅館へ戻ることを決めた。

 

帰りのバスではみんな(俺としのぶ)疲れて旅館に着くまでたっぷりと寝てしまった。その時の寝顔を撮られて俺も加わり、由香さんのカメラを奪いに行くのはまた後の話。




あんま!って自分で書いてて思っちゃうほどのものになってしまった……。しのぶは赤面させると可愛いと思うんですよね。だから赤面多めで書きました。


【次回】初のジム通い?


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初のジム通い?

最近投稿ペースが爆速になってます。それに伴い語彙力もないと思います。


めちゃくちゃ濃い時間だった二日目に対し、三日目は特に何も起きず家へと帰ることができた。

 

旅館から帰ってきた次の日、俺はベットに座りながら由香さんが撮ってくれた写真を眺めていた。

 

「ん?なんだこれ……?」

 

写真を見ていると、旅館へ持って行っていたバッグから一つのチラシが落ちてくる。その内容は、ジムの案内パンフレットと書いてある。

 

「由香さん、いつの間に……。」

 

俺がいない間に入れたのだろうか……?何はともあれ後の休みは基本暇だし、一ヶ月無料なら行ってみるか。行きたいって約束もしたしな。そう思い着替えを済ませ、日照りの激しい外に出てジムへと向かった。

 

……………………

 

「いらっしゃいませ〜!」

 

「あの、このパンフレットを見て来たんですけど……。」

 

「おぉー!君が由香が言ってた子だね!ちょっと待ってて、おーい!由香〜!」

 

「え、ちょっと……。」

 

俺が何かを言おうとする前に、その女性は由香さんの名前を呼びながら裏の方へ入っていく。……俺、どうすれば良いんだ?

 

数分後……

 

「オー!和也くん!来てくれたんだ!」

 

しばらく待っていると私服姿の由香さんが同じところから出てきた。

 

「はい、一応約束でしたし、運動したいのは本心なので。」

 

「そっか!じゃああそこの更衣室で着替えておいで!私も着替えて準備するからさ。」

 

そう言うと更衣室のある方を指差し、そこに入り俺は着替えを始めた。

 

……………………

 

「お待たせしました……って!!」

 

「ん?あぁ大丈夫大丈夫!私もさっき終わったとこだし!」

 

俺が着替え終わった時には、由香さんはアップをしていたのか背中をグイーッと伸ばしていた。てか、動きやすい服を着るべきなんだろうけど流石に露出が激しすぎるんじゃないですか……?へそ出しのノースリーブにめっちゃ短い短パン……。思春期男子には破壊力が高すぎる……。

 

「どうしたの?」

 

「い、いや!なんでもないです!」

 

「そう?じゃあ早速だけど始めようか!っとその前に……。」

 

「その前に?」

 

「和也くん、腹筋見せてくれないかな?」

 

「え?まぁ、良いですけど。」

 

突然の発言に疑問を抱きながらも、俺は素直に服をたくし上げた。

 

「……。」

 

「えっと、由香さん……?」

 

俺が腹筋を見せると、由香さんはしばらくジーッと俺のお腹を見つめる。割と腹筋には自信あったんだけど、なんか変なのかな……。

 

「おぉ〜……!育て甲斐のありそうな腹筋ちゃんだ……!!」

 

「ふ、腹筋ちゃん……?」

 

黙りこくったのを心配に思い、由香さんの顔を見るといつの間にか目を輝かせて見入っていた。

 

「っあぁ!ごめんごめん!意外と筋肉あったからトレーナー魂が疼いちゃって。」

 

「なんですかそれ?」

 

「感覚的なものだから気にしないで!それにしても、運動してないって言う割に結構筋肉あるじゃん!」

 

「まぁ、中学の頃までは運動してましたし、多少はありますよ。」

 

「へぇ〜、どんなスポーツ?」

 

「バドミントンです。一応、部長もやってました。」

 

「ワーオ!和也くんが部長やってたって意外だね。」

 

「あ、あはは……。」

 

絶対言えない……上級生の男子が俺しかいないから強制的に部長やらされてたなんて、由香さんの前で言えるわけない……。

 

「お、俺の話なんかより!早くやりませんか?」

 

「たしかに長話しすぎちゃったね。とりあえずベンチプレスからやってみようか。和也くん、ベンチプレスって知ってる?」

 

「名前は知ってますけど、やったことはないです。」

 

「そっか!じゃあ私がサポートするから、一緒にやってみようか!」

 

由香さんに場所を案内され、うわー……見たことあるこれなどと思いながら俺はベンチプレスに寝転がる。

 

数十分後……

 

「はい、三セット目ラスト〜!9……10!おつかれ和也くん、ナイスバルク!」

 

「はぁ……はぁ……つら……!!」

 

自分の体力の衰え方に半ば恐ろしささえ感じる。ベンチプレスってこんなキツいのか……?ボディビルダーの人ってすごいな。 

 

「一応、初心者用の重さでやったけど、しばらく運動してないとやっぱりキツそうだね?」

 

「こ、これで初心者用……!?」

 

「無理するのも良くないし、一旦休憩しようか。」

 

「ほんとすみません。やるって言ったのにすぐ休憩になっちゃって……。」

 

「全然平気だよ!初心者ってみんなこうなるものだし、無理するのは怪我の元よ?」

 

「た、たしかに。」

 

「それに、筋肉は嘘をつかないわ。継続して続ければ、絶対にこの重さも嘘のように簡単になるよ!」

 

しのぶがいつも「由香は筋肉バカだから。」とか言っていたが、実際に筋トレ会話になると、思っている以上に言ってることがボディビルダーのそれみたいだ。

 

しばらく休憩を兼ねて由香さんと話していると、見知らぬ女性がこちらに向かってきた。

 

「やっほー由香!今日はサポーターの仕事?」

 

「衣舞紀!ううん、私が連れてきた子を特別にサポートしてあげてるだけだよ。」

 

「そう言うことなんだ。」

 

「そう言えば、今日はPhoton Maidenのレッスンの日じゃないの?」

 

「えぇ、そうだったんだけどトレーナーの人が急に休まなきゃいけなくなったらしくて、時間も余っちゃったからレッスンの代わりに鍛えようかなって。」

 

「へぇ〜それは残念だったね……。」

 

「うん、っとその子、由香が誘ったって言ってたわよね?てことはもしかして和也って子?」

 

「正解!ほんと和也くん有名人だね!」

 

「いや、広め始めたの由香さんたちじゃないですか……。まぁいいや、藤原和也です。Photon Maidenのリーダーの……あなたが衣舞紀さん、でしたっけ?」

 

「私のこと、知ってるんだ!」

 

「文化祭のライブ見てましたから。」

 

ほんとは乙和さん、咲姫さん辺りに聞いたけど、引き合いに出すと長引きそうだからそう言っておく。

 

「へ〜見ててくれたんだ!ありがとう!」

 

衣舞紀さんはそう言ってニカッと笑った。由香さんたちと違い、大人びた微笑み方で少しドキドキしてしまう。

 

パン!

 

「はい!もっと話したいけど、とりあえずここまで!これ以上の休憩は筋肉に逆効果よ?」

 

止めどころがない会話だと思った由香さんは、手を叩き一時的に会話を中止させる。

 

「ご、ごめんね。急に割って入って邪魔しちゃって。」

 

「そんなことないよ!なんなら和也くんと私と一緒にやる?」

 

「良いの?じゃあ私も参加しちゃおうかしら!」

 

心強い仲間ができたと思っていたこの時の俺を殴ってやりたい。更なる地獄はここからだった……。

 

…………………………

 

「やるわね、由香!」

 

「衣舞紀こそ!」

 

あれから数分後、俺らはランニングマシンをやろうと場所を移し、走り出してはや一時間、未だに二人は止まることなく、なんならどんどんスピードを上げて走り続けていた。ちなみに俺はと言うと、四十分くらいで息を上げ少し休憩、また走って少し休憩を何回か繰り返していた。

 

「よ、よくそんなに走り続けてられますね……。」

 

「日頃から鍛えてるからね!和也くんも慣れればこのくらい余裕だよ!」

 

「えぇ、意欲があることだけでもすごい進歩よ。そう言う子は早く上達するわ。」

 

「そうだと良いんですけど……。」

 

到底あなたたちみたいになるのは難しいと思うんですが。

 

「聞き慣れた声がすると思ったら、やっぱりね。」

 

俺がボソッと呟くと、後ろから大人びた声が聞こえて来た。




これ以上は分量がえげつなくなるので一旦次回に回します。


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【番外編】四月二十七日、山手響子の誕生日

今の話夏休みなのに四月ってどういうことだ!と思っている方、あくまで番外編です。パラレルワールド的に見てくれたら嬉しいです。

ピキピキの子達の誕生日は小説にしていこうと思うので悪しからず。


今日、四月二七日。響子さんの誕生日らしい。しのぶも昼過ぎぐらいになると、「響子の誕生日だから」と言って由香さん、絵空さんと共にとある喫茶店へと行ってしまった。今日はマジで何もないっぽいし、一人でどっか行くかな。

 

…………………………

 

「って、なんで響子さんがここに……?」

 

「和也、奇遇だね。」

 

家から出てしばらく、商店街をぶらついていると、何故か響子さんと出会った。

 

「あ、あれ?今、しのぶたちと誕生日会やってるはずじゃ……?」

 

「終わったんだよ。十一時くらいに始めたからさ、もう三時間くらい経っちゃってるってね。」

 

たしかに、いま時計を見たら十四時を指している。流石に夜までパーティーするほどみんな、時間に余裕があるわけないか。

 

「それじゃあ、響子さんは今帰りってことですか?」

 

「そう言うことになるね。でも、もう予定変わったかな。」

 

「どういうことですか?」

 

「和也に会ったからには、和也にもお祝いしてもらわなきゃ。」

 

「あっ、ごめんなさい言い忘れてた。誕生日、おめでとうございます。」

 

ハッと忘れていたことを思い出す俺は、謝りつつ誕生日をお祝いする。しかし、響子さんはわずかに頬を膨らませジッと俺を見つめる。

 

「ど、どうしたんですか……?」

 

「言葉も嬉しいけど、そうじゃなくて行動で祝ってほしいな。」

 

「えぇ、行動で祝うってどうすれば……。」

 

「じゃあ今からちょっと付き合ってよ。誕生日だからさ、私のわがまま聞いてくれる?」

 

「当たり前ですよ!響子さんにはお礼になりっぱなしだし、喜んで聞きます!」

 

「ありがとう、じゃあ行こうか。」

 

響子さんは俺の横につき、指を刺して行きたい場所へと連れて行ってくれた。

 

「いらっしゃいませ〜!ご注文はお決まりですか?」

 

「このスペシャルバーガーってやつとアイスティーで。和也も同じやつでいい?」

 

「はい、俺もそれで。」

 

「かしこまりました!スタッフがお運びするので、席でお待ちください。」

 

手早く注文してを済ませた響子さんは、ナンバープレートをもって空いている席へと向かう。

 

「ディグドナルドっていつも響子さんが通ってる所なんじゃないんですか?俺と来た理由って……?」

 

「今日、ちょうど新しいバーガーの発売日でさ!和也とそのバーガーの美味しさを共有したいなって。ほら、しのぶたちとは放課後とかにも来れるけど、和也はなかなか二人きりになる機会なんてないからね。」

 

「なるほど。あれ?それって俺が施されてる側になってませんか……。」

 

嬉しいことはたしかだが、俺が祝う側なのになんか祝っている感覚がないのはちょっと……などと考えていると、響子さんはおかしそうに笑う。

 

「あはは!たしかに!でも私は和也と共有し合えるってだけで十分幸せだよ。」

 

「あ、ありがとうございます……。」

 

急にそんなことを言われ、つい気恥ずかしくなった。すると、タイミング良く注文した品が届く。

 

「おぉ〜!これが、スペシャルバーガー……!!」

 

さっきまで大人びた雰囲気だったのと裏腹に、ハンバーガーが届いた途端、子供のように目を輝かせ始める。

 

「いただきます。はむっ、ん〜♪」

 

お、美味しそうに食べるなぁ……。マジで別人みたいな顔してる。響子さんの幸せそうな顔にこっちまで幸せな気分になってしまう。っと、俺も食べなきゃか。

 

「いただきます。……!?うま……!!」

 

それからしばらく俺らは、夢中でそのハンバーガーにかぶりついていた。

 

「「……!」」

 

食べ終わると、俺と響子さんは、無意識のうちに顔を合わせ微笑んでしまう。

 

「ほんとに美味かったです!こんな美味いハンバーガー初めて食べました!」

 

「うん、私もこんな美味しいなんて予想以上だったよ!」

 

「はい!響子さんがすっごい幸せそうな顔してたから俺も続けて食べてみたらびっくりしましたよ。」

 

熱くハンバーガーの感想を語り合うとつい口が滑って、思っていたことを口にしてしまった。

 

「へ?」

 

「あぁ!いや、悪気はないんですよ!ただいつもクールな雰囲気なのにギャップが凄かったからつい……。」

 

顔を赤くした響子さんに全力で言い訳をするとボソッと何かを呟き、ジーッと睨む。

 

「また私たちだけの秘密、出来ちゃったね。」

 

「は、はい。これは流石にそう言わざるを得ないです……。」

 

ピキピキの人たちは知ってるんだろうが、他の人には絶対に言えないな。特にノアさんとか。もし知られたら、響子さんが大変な目に遭いそうだ。

 

数十分後……

 

俺らは、流石に日が傾いてきたし帰ろうと話し合い、帰路に着く。

 

「今日はありがとね!私のわがままに付き合ってもらって。」

 

「そんなことないですよ。俺もあのハンバーガー食べれて良かったですし、響子さんといると楽しいので。」

 

「和也はほんとに良い子だね。嫌味ひとつ言わないし。」

 

「これが本心ですから、響子さんも楽しんでくれたなら嬉しいです。」

 

「うん、すごく楽しかった!また一緒に出かけようね。」

 

「はい、今度は俺から誘いますよ。……っと、俺こっちなので。」

 

「おっけー、楽しみにしてる。」

 

響子さんはニコッと微笑み、俺に背を向けその場を去って行った。

 

……よし。

 

〜翌日〜

 

私は学校で新曲を考えていると、しのぶが横から私を呼びかける。

 

「響子〜これ、和が渡しといてくれって言ってたんだけど。」

 

「ん?なんだろう?」

 

しのぶから小包を受け取り、不思議に思いながらそれを開封すると、"誕生日おめでとうございます"と言う文字と共に、少し高そうな帽子封入されていた。

 

「帽子?誕生日プレゼントなんだろうけど和って響子の誕生日知ってたんだ。それにしてもなんで急に渡してくれって言われたんだろ……?」

 

「ふふ♪」

 

「響子?どうしたんだ、急に笑い出して?」

 

「いや、しのぶは優しい良い子と付き合えたみたいで羨ましいなって思っただけだよ。」

 

「何だそれ?」

 

「これ以上は秘密。」

 

帽子の中の手紙に"これ読んで怒るかもしれないですけど昨日の響子さん、ほんとに可愛かったです"と添えられていてつい笑ってしまった。

 

今度、和也と出かけるときは、この帽子かぶって行こうかな。




とある響子のセリフが意味深に見えた方は心が汚れているのでしょう。ちなみに書いてる本人は「これ意味深だな……」と思いながら書いてたので心が汚れてるっぽいです。

ディグドナルド、天才じゃない?()


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筋肉集団と一般人

毎回言ってる気がするけど、投稿遅れてすみません。他作品を考えたり、モチベが出なかったりと散々ありましてこんなことになってしまいました……。

次回は早く出せる、はず……。



「聞き慣れた声がすると思ったらやっぱりね。」

 

急に後ろから大人びた声が聞こえ、俺らは同時に後ろを振り向く。

 

「「ダリア!」」

 

「こんにちは、たまたま来たんだけどみんな居るみたいで良かったよ。」

 

(由香さん由香さん)

 

(どうしたの?)

 

(この女性、誰ですか?明らかに年上っぽいですけど……)

 

「あの……コソコソ喋ってるけど何について話してるかバレバレよ。」

 

コソコソとダリアさんと言う女性について誰なんだと話していると、それを察したのかダリアさんは苦笑いしながら俺の顔を覗く。

 

「ご、ごめんなさい!見たことない方だったから、誰なのか気になっちゃって……。」

 

「確かに。じゃあ、軽く自己紹介しようか。松山ダリア、Merm4idって言うグループでダンスをやってるよ。由香や衣舞紀とは、このジムでよく顔を合わせるから仲が良いんだ。」

 

「なるほど……そのMerm4idって言うのもDJユニットなんですか?」

 

「うん、今日はうちのDJの子も連れて来たんだけど、まだ着替えてるみたい。」

 

「な、なんか人増えてるんだけど。」

 

「あ、さおり!ようやく来た。」

 

ダリアさんの所属してるユニットのDJの話をしていると、タイミングよく、自信のなさげな声が聞こえてくる。

 

「見覚えある子しかいないと思ったら、男子も混ざってるし……どう言う集まりなのこれ?」

 

「和也も自己紹介した方がいいんじゃないかしら?」

 

「はい、衣舞紀さんの言う通りかもですね。えっと、藤原和也です。犬寄しのぶって子の幼馴染で、それ繋がりで由香さんとは仲良いです。衣舞紀さんは今日初めましてだけど前々から知ってたって感じですかね。」

 

「へぇ〜あの子の幼馴染なんだ。」

 

「さおりさん、しのぶのこと知ってるんですか?」

 

さおりさんはしのぶのことを"あの子"とあたかも知っているかのように言っていたので、つい気になって聞き返す。

 

「ん?あぁ、実際会ったことはあんまりないんだけど、渚から耳にタコが出来るぐらい聞いてるからさ。」

 

「な、渚……。」

 

「そこら辺も込み込みで私も自己紹介しなきゃか。日高さおり、大学生でDJやってます。さっきも言ったけど、渚とは同じ大学通ってるから割と仲良くしてる。だからしのぶのこともある程度は知ってるよ。」

 

「だから渚のことも知ってるんですね。」

 

大学生か……。やっぱり俺の見立て通り年上だったらしいけど、そこまで上の人だったとは。由香さんや衣舞紀さんは呼び捨てで呼び合っているし、本当に仲が良いんだろうなぁ。

 

「じゃあせっかくだし、ダリアとさおりも一緒にやる?」

 

「うん、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな。」

 

「急に人が増えた気がするわね。」

 

「ですね。」

 

二人から三人へ、三人から五人へと、たった数分でここまで増えたことに、衣舞紀さんは苦笑いしつつ、トレーニングを再開するのだった。

 

………………………………

 

「「……。」」

 

更に数時間後、俺とさおりさんは、彼女たちのありえない体力にただ放心していた。

 

「あの人たち、何分動き続けてるの……。」

 

「分かんないです……。ただ、分じゃなくて時間は経ってると思いますよ……。」

 

「マジか……元気すぎる人たちの見過ぎで時間感覚狂ってきたのかな……。」

 

そう言うのも無理はない。なんせあれから一度も休憩せずに動き続けてるのである。ダリアさんが混ざったこともあり、勝負心に火がついたのか、衣舞紀さんと筋トレしてた時よりも更に熱気を増している。

 

「私もう動けないのに、良くあんなに動けるね……。」

 

「ハハハ……ですよね。俺も一時間ぐらいは耐えれましたけど、これ以上は動ける気しないです……。」

 

「はぁ、和也が常識ある人でよかったよ。」

 

さおりさんは安堵したようなため息をつき、そう言う。

 

「なんですかそれ?」

 

「いやさ、最近何かと変に癖の強い人としか絡んでないからさ、和也みたいな常識の通じる人と話すの久しぶりだなって。」

 

「癖の強いって、俺もある方じゃないですかね?」

 

「Merm4idのメンバーに比べたら何倍もマシ。」

 

「あ、はい……。」

 

謎の圧力を感じてつい押し黙ってしまった。Merm4idのメンバーさんって、そんなに癖の塊なのだろうか……?

 

「はぁ……はぁ……やるわね!由香、衣舞紀。」

 

「「ダリアこそ……!」」

 

「あ、やっと終わった。」

 

勝負に一段落着いたのか、額に汗を浮かべ気持ち良さそうな顔をして、三人で見つめ合っていた。

 

「ふぅ〜!良い汗かいたよ〜!」

 

由香さんはタオルで汗を拭いながら、俺の横に座る。てかなんであれだけの運動量でこんな気持ちいい顔できるんだ……?俺だったら絶対、白目向いてると思う……。

 

「キリも良いし、日も暮れてきたから、ここで終わりでも良いと思うけど、和也とかは平気?」

 

「はい、全然良いですよ。むしろダリアさんたちがどうするかによります。」

 

「私、そろそろバイトがあるからここでお暇させてもらうけど……さおりは?」

 

「だ、大丈夫。て言うかしばらくジムは行かなくて良いや……。」

 

さおりさんはげっそりとした顔でそう言う。その時、俺は苦笑いしていたが、さおりさんの言ってることも一理ある……。

 

「じゃあ、今日はここでお開きにしましょうか。」

 

「由香さんはどうするんですか?」

 

「うん、和也くんを見送るだけして私も仕事に戻ろうかなって思うよ。」

 

それから、俺らは着替えを済ませ、由香さん以外の三人と別れた。

 

「今日はありがとね!わざわざうちのジムに来てもらっちゃって。」

 

「そんなことないですよ。俺も久しぶりに運動できて楽しかったですし。」

 

「でも、途中から私たちだけで燃え上がって、さおりも和也くんも置いてけぼりにしちゃったのは本当にごめんね……。」

 

「ちょっ!?そんな顔やめてください!由香さんらしく無いですよ!本当に楽しかったし、衣舞紀さんたちとも知り合えたのは由香さんのおかげだから、気にすることじゃ無いですよ。」

 

反省しているように、しゅん……と悲しそうな顔をする由香さんを励ます。

 

「和也くんはやっぱり優しいね。」

 

「由香さんはそうでなきゃ……っ!?」

 

由香さんはいつもの笑顔に戻り安堵したが、急に俺の頭を撫で出し、言葉が詰まってしまった。

 

「ちょ、ちょっと……恥ずかしいからやめてください……///」

 

「ふふ♪アメリカではこうやって友達のことを褒めるのよ?」

 

「しのぶから聞いてますけど、由香さん、ほぼ日本にしか住んで無いんですよね……。」

 

「そうだけど、パパが昔からこうやって褒めてくれてたからきっと正解デース!」

 

「う、う〜む……。」

 

由香さんの手、暖かくてすごく落ち着く。めっちゃ恥ずかしいけど、悪く無いかも……。

 

「由香〜?お母さんちょっと出掛けるから受付、任せても良いかな〜?」

 

悪く無いかもなどと感じ始めると、タイミングが良いのか悪いのか、由香さんのお母さんが彼女のことを呼ぶ。

 

「は、はーい!ごめんね?もう行かなくちゃ。」

 

「じゃあ、俺もこれでさようならで。」

 

「うん!また時間が空いた時、うちに寄ってね〜!」

 

俺らは手を振り合って、別れることになった。さおりさんも言ってたけど、ジムはしばらく行かなくて良いや……。でも、由香さんにあんな笑顔で言われちゃったらな〜……。

 

「ただいまーって、しのぶ?」




前回今回としのぶが全くで出来ませんでしたね。やっちゃった☆

次回「彼女と初デート」


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彼女と初デート

今日はD4DJFESですね!こういう日に投稿します。
行く人、見る人は存分に楽しみましょー!


「ただいまーって、しのぶ?」

 

「やっと帰ってきた。」

 

俺がジムから帰ってくると、リビングのソファに腰をかけ、若干ソワソワとした様子を見せるしのぶがいた。

 

「珍しいな、しのぶがうちに来るって。何か用事?」

 

「ん、まぁそんなとこ。」

 

しのぶは、小さく頷き、隣に座ってくれと促すように、手をトントンと叩く。

 

「よいしょ。んで、用事ってなに?」

 

「う、うん。その……明日暇?」

 

「あぁ、暇だけど。どうしたんだよ?そんな恥ずかしそうにして。」

 

「だから……その……暇ならデ、デート行かないか……?」

 

「っ!?」

 

ま、まさかしのぶからそう言う誘いを受けるとは……。初めは俺から誘いたかったものだけど、言い出すのが遅かったか。

 

「嫌ならいいんだけど、どうすんの?」

 

「嫌なんてことないよ。俺もしのぶとデートしてみたかったし。」

 

「じゃあ決まり。明日、とりあえずうちまで来てよ。行先はその時考えよう。」

 

「おっけー。」

 

しのぶはそれを伝えると、そそくさと家へ帰っていった。

 

「……。し、しのぶとデート……!!めっちゃ楽しみなんだが!?」

 

「和〜うるさい。」

 

俺は部屋に戻って、今の気持ちを純粋に叫び、姉に叱られた。しかし、そんな声は聞こえることも無く、しばらくニヤけた口を戻すことが出来なかった。

 

〜翌日〜

 

「おはよ。」

 

「うん、おはよう。寝不足か?」

 

「うっ……」

 

図星である。昨日、デートが楽しみすぎてなかなか眠れなかったのだ。

 

「まぁ、いいや。どこ行こっか。」

 

「そうだな〜……とりあえずこの前のショッピングモール行くか。」

 

「それもそうだね。」

 

そう話をつけ、俺らは響子さんたちと初めて出会った時に行ったショッピングモールへと足を運んだ。

 

………………………………

 

「相変わらず人多いな。」

 

夏休みだからってのもあるんだろうが、いつ来ても一定以上混んでるのは、さすが大型ショッピングモールって感じだな。

 

「まぁ、この前の旅行と違って割と道は空いてるし、迷子になることは無いだろ。」

 

しのぶはそう言うと、俺の手を引き、行きたい所へと連れていく。平然と俺としのぶは手を繋いでいるが、迷子になったあの日が理由か、手を繋ぐことに少し抵抗が無くなったのである。まだちょっと恥ずかしいけど……。

 

「って、ゲーセンかい。」

 

「べ、別に良いだろ!和と一緒にゲーセン行く機会なんて滅多に無いから……。」

 

そ、そう言うことか。学校帰りにいつも行ってるって聞いてたから、行くとこは変わらんのかと思ったけど、俺と行きたかったのか……。な、なら付き合ってやっても良いかな。

 

「和、何一人でニヤニヤしてんの……。」

 

「んんっ、なんでもない。じゃあ何からやろうか?」

 

ジトーっとした表情で俺の顔を見てきたので、咳払いをし、話を逸らすようになんのゲームからやるか聞いてみる。

 

「んーなんでもいいけど、せっかくなら対戦ゲーやりたいよな。」

 

「だね。まぁ、最初は無難に音ゲーからやるか。勝負もスコアで決められるし。」

 

「おっけー、やってやろうじゃん。」

 

急にゲーマーの目するなぁ……。まぁ、いつも負け続きだし、今日は勝たせてもらうぞ!

 

………………………………

 

「やっぱり負けた……。」

 

「当たり前だろ?和がアタシに勝つなんて百年早いっつーの。」

 

あの後音ゲーの他に、格ゲー、シューティングゲーと色々やり漁ったが、結果格ゲー以外全敗と言う惨敗具合……。でも、しのぶは楽しそうだったし、今日のところは許してやる。い、言い訳してるわけではない。

 

「ゲーセンはもう良いか。次どこ行く?」

 

「うーん、そうだなぁ……って」

 

俺が答えようとすると、目先のお店に見慣れたツインテールの少女、絵空さんの姿が見えた。しかも今、完全に目があってしった。

 

「っ!?ちょ、和!?」

 

何故かは俺にもわからない。絵空さんと合流して一緒に回ることもできたのに、気づいたら俺は、しのぶの手を取り、絵空さんから見えないところへと逃げていた。

 

「むぐー///!?」

 

「ちょっとだけ我慢して。」

 

自動販売機と曲がり角にある絶妙な隙間に隠れ、姿がバレないように、背中を向けながらしのぶを抱きしめる。

 

「こっちにしのぶと和也くんがいた気がしたのだけど……気のせいだったかしら?」

 

背後から絵空さんの声が聞こえ、横目で見ると、来た道と逆方向に歩いていくのが見える。

 

「ご、ごめん。急にこんなことして。」

 

「平気だけど、絵空なら話をつければ別行動してくれたんじゃないのか?」

 

「そ、そうかもしれないけど、今日は俺としのぶのデートだからさ、他の人と会いたくないなって。」

 

「……。」

 

なんでこんななろう系主人公みたいなこと言ってんだろ……。しのぶも黙りっぱなしだし、絶対キモがられてるよな、これ……。

 

「なにボサッとしてんの?」

 

「……?」

 

「あ、会いたくないなら早く行かないと絵空、また戻ってくるぞ。」

 

「わ、わかってる。」

 

お互い顔を赤らめ、若干ぎこちなくも俺らはその場を後にした。

 




今回は甘々、ベタベタな恋愛小説です。


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デートも終わり……

私的には早く投稿出来ました^^
だけど今回はかなり短めです。前回の続きから終わりまでって感じで書いたのが原因です。そして、前回以上に甘々な話になってます。自分で書きながら「あっま!」とか言ってました笑


絵空さんから隠れた後、流石にここには居づらいと、俺らはクレープなどと言ったスイーツを食べてから帰路に着く。最悪、日も傾き始めているのでちょうど良いか……。

 

「今日はありがとね。アタシのわがままみたいのに付き合ってもらって。」

 

「全然、言ったろ?俺もしのぶとデートしたかったって。こっちこそ、今日はありがとう。」

 

「そっか、なら良かった。」

 

帰り道をゆっくりと並んで歩く俺らは、そう言い微笑みあう。だけど、行きの頃と違い、手は繋いでいない。理由としては、俺が絵空さんからバレまいと、しのぶに抱きついたことが原因で、恥ずかしさが限界突破したからだ。

 

「な、なぁ和……。」

 

「どうした?」

 

家の前に着いたタイミングで、しのぶは少し、モジモジとした様子で俺の顔を見る。

 

「ちょ、ちょっとだけ目閉じてて欲しい。」

 

「へ?う、うん。良いけど……。」

 

そう言い、俺は目を瞑った。おいおい、マジか?これってもしかして、"キス"する流れじゃないのか!?流れに任せて承諾しちゃったけど、どうしたr……。

 

ぎゅっ

 

目を瞑って、変なことを妄想していると、温かい何かに包まれた感じがした。ついびっくりしてしまい、目を開くと、俺の胸に顔を埋めて抱き締めているしのぶの姿があった。

 

「し、しのぶ……?」

 

俺が困惑したようにしのぶの名を呼ぶと、ハッと我に帰ったかのように、俺から離れ、背を向け、ボソボソと何かを話しだす。

 

「い、今はまだこれだけで我慢して……。」

 

「が、我慢って……。」

 

「とりあえず!今はキ、キス……とかは出来るアレじゃないから……。」

 

しのぶの口から"キス"と言う単語が出てきて、少し動揺する。やっぱり、本来はキスするつもりだったのか……///

 

「う、うん……。俺も今は心の準備が出来てないから、賛成するよ。」

 

「なら良かった。……じゃあ、今日はほんとにありがと。」

 

「うん、じゃあね。」

 

心の距離が近づいたのか遠のいたのかわからないが、更にぎこちないまま、それぞれの家へ帰った。

 

バタン

 

「……。」

 

ドアを閉めると、俺は走るように自室に戻った。

 

し、しししのぶに抱きつかれた……!?いや、もう俺から抱きついたこともあるし、今更って話なんだけど。それでも、しのぶからあんなことされるの初めてだし……あぁ、思い出しただけで恥ずかしくなってきた……。しのぶもおんなじこと思ってるのかな。

 

〜しのぶ視点〜

 

「……。」

 

か、和に抱きついてしまった……。ちょっと良いムードだったからつい、その場のノリであんなことをしてしまうとは……。

アタシもだいぶ恋愛って言う感情に毒されてきたな……。まぁでも、最近DJの腕は落ちるどころか向上してる気もするし、平気……なのかな?和が原因でどうこうって話ではないと思うけど。

 

「和もおんなじふうに思ってるのかな。」

 

あぁ〜!口にするだけで恥ずかしくなってきた。はぁ、気分転換に曲のリミックスでもするか。そう思い、アタシは机に向かい、パソコンの電源を入れた。




めっちゃ甘いですよね。書いてて楽しいけど、それと同時に胃もたれもしちゃう……。

次回「潮風香る電車の一時」


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潮風香る電車の一時

ようやく投稿出来ました!なんもネタが浮かばないブランクから解放されて、モチベが少し上がりました。

百合小説も考えつつ書いてたので、文の書き方が変わってたりしてる場合がありますが、読みやすい、読みにくい等感じたらご感想くれるとありがたいです。


……暇だ。俺はベッドに横になり、そう呟く。しのぶとデートしてから早三日、あの時のドキドキが少しおさまってきたと同時に、焦燥感に駆られ始めていた。宿題も終わらせてるし、本当にやることが無い。

 

「ん?なんだこれ……。」

 

脳死でスマホの画面をスクロールしていると、気になるツイートを見かけた。"Photon Maiden主催の海の家DJライブ!"って、フォトンさんライブやるのか。しかも主催で。詳細を見ようと、公式のリンクに飛んで、俺はつい声を出してしまう。

 

「ピキピキとハピアラさんも出んの?」

 

マジ?なにそれ、俺得じゃん。開催日時は……明後日か。電車で簡単に行けるし、行ってみようかな。しのぶに連絡は……しなくていいや。たまには一客として参加したいし、何よりライブの邪魔はしたく無い。さっきまでの焦燥感が嘘みたいに、今はやる気に満ち溢れ出した。久しぶりにライブ見に行くし、楽しみなんだろう。俺は心を躍らせながら、今日明日を過ごした。

 

〜二日後〜

 

何だこの電車……。海の見える電車って初めて乗ったな。朝早いのもあるし、ほとんど人はいなかった。今なら電車の中歩き回っても誰にも見られてないよね。そう思い、俺は電車内を歩き回る。

 

「「あ……。」」

 

電車を歩こうと立ち上がると、斜め向かいの席に見慣れた集団がいた。ま、まさかね……と思い、再度振り向くと、やはり聞き慣れた声が俺の耳に突き刺さる。

 

「和がなんでここにいるの?」

 

「え、えっと……それじ……」

 

「あぁ!和也くんじゃん!」

 

生憎、しのぶにしかバレてないらしい。ここは一旦逃げようと踵を返したが、由香さんに見つかってしまった。

 

「お、おはようございます……。」

 

「もしかして、私たちのライブ、見に来ようとしてくれたのかな?」

 

「……。」

 

図星すぎてなにも言えなかった。本当に響子さんは察しがいいな……。今から逃げたってもう手遅れだろうし、俺は諦めて、座っている彼女らの前に立つ。

 

「図星っぽいな。来るんだったら連絡の一つくらいしてくれたっていいのに。」

 

「私たちの邪魔をしたくなかったとかそう言う理由よね?」

 

「まぁ……」

 

「和也くんらしいわね♪」

 

「邪魔なんてことないのに。むしろ和也がいてくれたほうがしのぶの緊張もほぐれるからね。」

 

「はぁ!?アタシを理由にするなっての!」

 

「でも事実でしょ?」

 

「うっ、まぁ……。」

 

響子さんの言葉になにも言い返せなくなったしのぶは、スンと押し黙る。すると、少し遠くから、こちらに向かう久しい声が聞こえた。

 

「やっと見つけた〜って、和也くんだ!久しぶり〜!」

 

「ちょっとりんく!まだ電車動いてるんだから、あんまり走らないの!っと、藤原くん久しぶり。」

 

「ひ、久しぶりです。」

 

「麗、あの男だれ?りんくとどう言う関係なわけ?」

 

「い、いえ、私にも分かりません……。」

 

ピキピキと俺を見つけるや否や、りんくさんは全力ダッシュでこちらに向かってくる。てか、真秀さんはわかるけど、後ろの子たち誰?文化祭のライブで見たことあるけど、名前までは流石に覚えてない。めっちゃ失礼なこと言ってそうだけど、向こうも「こいつ誰?」感出てるし、平気だよね。

 

「ここにいるってことは、私たちのライブ見に来てくれたってことだよね!くぅ〜、ハッピーアラウンド!」

 

「ハ、ハッピー……え?」

 

「気にしないで。りんくってテンション上がると、癖でああなるんだよね。」

 

「な、なるほど。」

 

「りんくちゃんたちもこの電車だったんだ。」

 

「そうなの!真秀ちゃんが出来るだけ早く着いたほうがいいって、この時間に設定してくれたんだ!」

 

「真秀って意外と時間に厳しいんだね!偉いなぁ。」

 

「い、いや!そんなことないですよ……。」

 

「ちょっとちょっと!私たちだけ置いてけぼりなんですけど!?まずこの男誰なわけ?」

 

由香さんに褒められ、真秀さんは少し赤面していると、痺れを切らしたツインテールの少女が、声を上げた。てか、初対面の人にこの男って、なかなかぶっちゃけた子だな……。

 

「えっと、藤原和也って言います。一応、しのぶの幼馴染です。」

 

「幼馴染!?犬寄しのぶ、あんた幼馴染がいたの……!?」

 

「別にいたっていいだろ。何か不満?大鳴門むに」

 

なんでこの人たちフルネームで呼び合ってんだろうか。謎にバチバチした喋り方だし、ライバルかなんか?でも、しのぶからそんなオーラ感じられないし、一方的にライバル視してるだけなのかな。

 

「別に何か不満ってわけじゃないけど……。」

 

「とりあえず、お前らも名前ぐらいは言っときなよ。」

 

「言われなくたってわかってるわよ!……大鳴門むによ。よろしくね。」

 

「渡月麗って言います!よろしくお願い致します、和也さん。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「麗ちゃんはね、お嬢様でピアノも弾けるんだ〜!それにむにちゃんはVJオンリーって呼ばれてて、すっごい絵が上手なんだよ!」

 

「ちょ、その話あんまりしないでって言ったでしょ!」

 

へぇー、むにさんってVJなのか。……待てよ、オンリー?絵が上手い?その時、俺が前々から応援してた絵師の名前が頭に浮かぶ。確か、あの人もオンリー先生って名前じゃなかったっけ。まさかとは思うが、もしかしてむにさんってあのオンリー先生!?え、嘘でしょ?サイン欲しいんだけど。でも、初対面でいきなり「サインください!」って厚かましいし、仮に人違いだったら恥かくだけだし……。

 

「和也さん、どうしたんですか?もしかして乗り物酔い……?」

 

「い、いやなんでもないです。心配してくれてありがとうございます。」

 

「そんな!当然のことをしただけですよ。」

 

麗さんは、心配そうに俺の背中をさすろうとしてくれたので、大丈夫と微笑み、感謝すると、恥ずかしそうに俯く。……ちょっと可愛くてドキッとしてしまった。……なんか、しのぶに睨まれた気がする。

 

「む、むにさ……」

 

"まもなく、○○海公園前〜○○海公園前〜お出口は……"

 

「あっ!そろそろ着くみたい!」

 

「とりあえず、ハピアラとはここで一旦お別れだね。」

 

「うん!ライブ頑張ろうね!」

 

りんくさんはニコッ!と元気のあふれる笑顔でハピアラの面々と共に、その場を後にした。事実確認出来なかった……。まぁ、いつか聞けるでしょ、多分……。

 

「じゃあ、私たちはどうしようか。始まるの夕方からだし、結構暇な時間できちゃったよね。」

 

「結構って、今まだ八時とかですよ?めちゃくちゃあるじゃないですか……。」

 

「行きたいところがないのなら、私、海に行きたいわ!」

 

「はぁ?どうせ、ライブの時に行くんだから、わざわざ今行かなくても良くないか?」

 

「えぇ〜でも、せっかく水着を持ってきたんだもの!泳ぎに行きたくなるじゃない!」

 

「なるほどね。まぁ、アタシは響子たちがどうするかでいいや。任せる」

 

「うん!私も行ってもいいよ。今年、海に行くの初だし。」

 

「私もさんせー!夏っぽい写真撮りたかったから丁度いいわ!みんなの水着姿、たくさん撮っちゃうぞ〜♪」

 

「和也くんもそれでいいわよね?」

 

「え!?俺も別行動ってのは……?」

 

「ここまで来て別行動はないだろ。それに、見た感じ行く宛てないだろ。」

 

「グッ……ま、まぁ」

 

「じゃあ、決定ね♪それじゃあ、海へしゅっぱーつ!」

 

もう、いくら言い訳しても無理やり連れてくつもりだろう。ここで行かないって断ったら、あとが怖そうだし、大人しく従うか……。まぁ、しのぶたちの水着姿が見れるって考えたら、メリットしかないし別にいいのかな?問題は俺の理性が保てるかなんだけど……。

 

「和!置いてくぞ〜。」

 

「ご、ごめん!」

 

そして俺らは、電車に乗っている時から見えていた海へと向かうのだった。




和也は昔からオンリー先生のイラストの大ファンだったのですね。描くイラスト描くイラスト、尊すぎて毎回悶えていたそうです。果たしてこれからむにちゃんとの絡みはあるのでしょうか。Awesome!Awesome!

次回「スタイルだけじゃありません!」


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スタイルだけじゃありません!

久しぶりの投稿ですね(定期)
最近某ウマにハマってしまった所存でございまして……笑
ちょっとずつ書いてはいたんですが結果的にかなり遅れてしまいました。


「夏だ!海だ!砂浜だ〜!」

 

「由香、テンションたっか……」

 

駅を降りた俺たちは、歩いて二、三分ほどの距離にある海へやって来た。由香さん、両手を広げて大声出してる……。楽しそうで何より。

 

「それにしてもよかったわね。売店に男性用の水着があって♪」

 

「ですね。海で遊ぶなんて想定してなかったんで、持って来てない身としてはかなりありがたいです。」

 

俺が今着ている水着は、直ぐそこの浮き輪などが置いてある売店で買って来たのだ。柄はちょっと地味だけど、その方が落ち着くから俺的には結構好きな見た目である。

 

「ん〜!海なんて本当に久しぶりだな。」

 

響子さんは両手をグーッと上にあげ、背筋を伸ばす。……案の定だけど、水着姿可愛い……。露出多いってだけで男の理性をくすぐり出せるのは、正直ずるい。

 

「どうしたの和也、なんか目合わなくない?」

 

「き、気のせいです……」

 

「まぁ、和也くんも男の子だものねぇ♪」

 

絵空さんには完全に勘づかれてるらしい。てか、揃いも揃ってスタイル良すぎだろ……。しのぶは……まぁ、うん。大事なのはスタイルだけじゃない。そんなしのぶも、俺は好きだから。

 

「おい、なんだよその目。」

 

「な、なんでもない。」

 

しのぶにバレたら絶対ぶん殴られる。心の中にしまっておこう。

 

「いや、絶対嘘だろそれ。」

 

「まぁまぁ、和也くんも悪気があったわけじゃないし、いつか私たちに追いつけると思うわよ!」

 

「……?っはぁ!?うるっさいな!別に胸の大きさで心配される義理もないっつーの!」

 

俺の考えを察した絵空さんは、自分の胸をしのぶに見せつけるかのように両腕で強調する。一瞬、なんの話か気付いてなさそうだったが、これはさすがにキレていい。事の発端は俺なんだけどね。はは……。

 

「おーい!早く行こうよ〜!」

 

「ほら、いつまでも喧嘩してないで。置いてっちゃうよ?」

 

少し先に進んでいる由香さんは俺らを見て不満そうに声を上げ、響子さんもそれに賛同するかのように俺らをなだめる。

 

「「「……はい。」」」

 

初っ端からこの言い合い……先行き不安だ……。

 

……………………………………

 

「キョーコ!こっちにトスおねがーい!」

 

「おっけー!それ!」

 

ん〜青春だなぁ。ほんとに楽しそうでなによりだ。あの二人を見ているとバレーボールってすごく簡単そうに見えてしまう。

 

一方俺らは……

 

「あづ〜……」

 

「わかる、動きたくねぇ……。」

 

響子さんたちと打って変わって、俺、しのぶ、絵空さんはパラソルの下でブルーシートを敷き、ネガティブなセリフを吐いていた。

 

「和、この前ジム行ってたんだろ?体力付いただろうし、アイツらと遊んでこいよ。」

 

「あのなぁ、ジムに行ったの一回だけだし、なんならお前とか絵空さんの方がライブで体力付いてんだろ。」

 

「私はそう言うキャラじゃないので〜……」

 

「……アタシも」

 

あ、目逸らした。まぁ、この人たちが由香さんたちみたいなアウトドアガチ勢じゃないのは知ってるけどね。

 

「……いつまでパラソルの下でぬくぬくしてるの?」

 

俺らで足の引っ張り合いをしていると、響子さんは痺れを切らし、バレーボールを一旦やめて俺らのもとにやって来た。

 

「と言うか、海に行こうって言ったの絵空だよね?まだ一回もそこから出てこないじゃん。」

 

「いや〜私は水着を着て海に入りたいなぁって思っただけなのよねぇ〜……。」

 

「じゃあ今から入ろうよ、ほら!」

 

「え!?ちょ、キョーコ!」

 

手を取り、強引にパラソルから引き剥がされた絵空さんは「いや〜ん!」と言いながら響子さんと共に走りさっていった。

 

「絵空……安らかに眠れ……」

 

「う、うん」

 

「何言ってるの!しのぶたちも行くよ!」

 

「な、なんでだよ!??絶対行きたくない!いーやーだー!!」

 

「…………。」

 

「和也くんも!どさくさに紛れて逃げようとしないで!」

 

「っ!?」

 

バレた……。これもう行かなきゃいけない展開か……。由香さんは手を取り、絵空さんと同じように連れて行かれた。と言うか、こんな百合百合しいところに俺を置くのは間違いだろ……。

 

その後、なんだかんだで楽しそうに水をパシャパシャとかけ合い、その場は終わったのだった。




だんだん和也がハーレム主人公になってしまうのではないかとヒヤヒヤしてます。ちなむとしのぶ以外は特別和也に好意などはありません。「おもしろい子」と称されてからかわれてるだけです。現状はそのつもり(変わるかもね)
何はともあれ、少しでも気に入ったらコメント・お気に入り登録等々よろしくお願いします

次回「お昼も平和じゃ終わらない」


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【番外編】九月九日、絵空の誕生日

約2ヶ月ぶりの投稿が番外編で申し訳ないです。
本編は書いてますがまだ少し先になりそうなのでもうしばらく待っていてください。


9月9日、たまたま学校が休校となり、暇だなと俺はベッドの上でスマホを触っていた。

 

ピロン♪

 

「こんな昼間にメール?誰だろ……」

 

いきなり通知音が鳴り、不思議に思いながら通知欄を開くと、どうやら送り主は絵空さんだったらしい。今日、彼女らは学校だろうと言うのになぜ今メールをよこすのだろうか?それだけ大事な話ってことかな。

 

"今日、和也くんの学校お休みってしのぶちゃんに聞いたのだけど、今大丈夫?"

 

"はい、全然平気ですよ"

 

"それと、この後暇かしら?"

 

"まぁ、やることは無いですけど"

 

"それなら家に遊びに来ない?"

 

"なんで急に……?"

 

また何か企んでるのか?ついつい俺は絵空さんの言葉を勘ぐってしまう。

 

"実は今日、私の誕生日なのよね。だから和也くんにもお祝いしてもらいたいなって"

 

"そう言うことですか。なら是非行きたいです"

 

"良かったわ♪じゃあ、今日の放課後に和也くんのお家まで迎えに行くから待っててね"

 

"了解です"

 

俺の一言に既読が付くのを最後に、絵空さんとのやりとりは終わった。ってか今日、絵空さんの誕生日だったのか。響子さんの時もそうだったけどお世話になってる人たちの誕生日知らないってのは失礼だよな……。後でしのぶに由香さんの誕生日聞いとこうかな。

 

放課後までまだ時間あるし、今のうちに誕生日プレゼント買ってこよ。そう思い、俺は誕生日プレゼントを求めて、商店街まで足を運んだ。

 

……………………………………

 

「お待たせしました」

 

「良いのよ、そんな急ぎでもないし。さ、行きましょう♪」

 

日が若干傾き始めた頃、絵空さんが送迎の車と共に俺の家までやって来た。そこでの会話はそれだけで車に乗り込み、絵空さん宅まで向かう。

 

「あの、一ついいですか」

 

「えぇ、何かしら?」

 

「しのぶたちは?絵空さんの誕生日なら彼女らも来ると思ったんですけど……。」

 

「ピキピキの子とはまた別日に誕生日会をしようって決めてあるのよね。でもせっかくなら和也くんにも祝ってもらいたかったし、みんなに内緒で誘っちゃった♪」

 

「は、はぁ……」

 

しのぶたち、俺が絵空さん家に行くこと知らないってわけか。てことは完全に絵空さんと二人きり……。お祝いするだけってか分かってはいるけど、なんか緊張して来た……。

 

「もしかして緊張してる?」

 

「っ!」

 

「図星みたいね♪」

 

心を読まれたのか、絵空さんは俺の顔を覗き込み、「ふふ♪」っと小さく笑う。

 

「異性の家に遊びに行くって初めてなので……」

 

「しのぶちゃんの家に行ってるじゃない」

 

「しのぶは……一応幼馴染ですし」

 

「そう言うことね。まぁ、あまり緊張しなくてもいいわよ」

 

そう言うと、車は急ブレーキで止まり、俺は少しよろける。

 

「ど、どうしたんですか?なんかトラブルでも……」

 

「着いたから止まったのよ?」

 

え、着いたって絵空さんの家?窓の外に目線を向けるとめちゃくちゃ広い庭園が広がっている。

 

「まさかここが絵空さん家……?」

 

「えぇ♪びっくりした?」

 

「そりゃあ、もう」

 

家の庭に噴水がある時点で俺からしたらもう信じられない。てっきり行き先を公園に変えたのかと思っていたが……さすがお嬢様……スケールが違うな。

 

「庭に感動するのもいいけれど、早く中へ入りましょう?私のお部屋、案内するわ。」

 

庭を見渡し、空いた口が塞がらないでいると、絵空さんはそう告げ俺の手を取り、家?屋敷?にグイグイと連れて行かれた。

 

……………………………………

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい♪」

 

うへ〜、ここが絵空さんの部屋か……。庭から気付いてはいたけど、部屋が広いのももはや当たり前な環境なんだな。絵空さんの部屋だけでパーティー出来ちゃうぞこれ。

 

「じゃあ早速だけどお祝いしてもらっちゃおうかな♪」

 

私服に着替え終わった絵空さんは両手を合わせ、ニコニコと可愛く笑う。

 

「俺に出来ることならなんでもやりますよ。あ、後これ誕生日プレゼントです。」

 

「これは……アロマキャンドル?」

 

「絵空さんの趣味とかよく知らなかったんで好きそうなもの買ってみました。……合ってますかね?」

 

「えぇ!とっても嬉しいわ♪今度お風呂に入る時使ってみるわね。」

 

俺からのプレゼントを目の前にし、パーッと明るい顔をする。喜んでもらえたみたいで良かった。

 

「それで?俺は何をしたら……」

 

「そうねぇ……せっかく二人きりなのだから二人で出来ること……っあ!あれ良いかも♪」

 

「なんですか?」

 

「膝枕、させてくれないかしら?」

 

「……へ?」

 

脈絡の無さに、俺は思わず腑抜けた声を上げる。

 

「出来る範囲でお願い事を叶えるって話ですけど……そんなことで良いんですか?」

 

「えぇ♪」

 

「ま、まぁ出来なくはないですけど……」

 

「決まりね!じゃあ……」

 

そう言うと、絵空はカーペットの上にちょこんと正座し俺を誘うように膝をトントンと優しく叩く。

 

「ほら、早く♪」

 

「……し、失礼します」

 

承諾した以上、もう断ることはできないよな……。俺は諦めて絵空さんの膝上にそーっと頭を乗せる。

 

「……///」

 

暖かい……。絵空さんの体温が直に伝わるのを感じる。そして絵空さんにこれほど近づいたのはこれが初めてだ。女の子特有の甘い匂いが至近距離で鼻腔を攻撃し、段々と瞼を重くする。

 

「よしよし……♪」

 

絵空さんは追い討ちをするかの如く俺の頭をぽんぽんと撫でる。あぁ、やばこれ寝ちゃ……う……。

 

………………………………………

 

「う〜ん……」

 

「あら?お目覚め?」

 

あれ……俺いつの間に寝て……。てかなんで絵空さんの声が上から聞こえてくるんだ?しかも暖かく柔らかいものが俺の顔を包んでいる。何してたんだっけ?確か、絵空さんのお願い事で……ひ……ざ……!?

 

「うわぁぁぁ!!ご、ごめんなさい!俺つい寝ちゃって」

 

俺は大声を上げ、絵空さんから急いで数メートル離れる。

 

「おはよう、良く眠れた?」

 

「そりゃあもう……ってそうじゃなくて!」

 

パニックになりすぎてついノリツッコミみたいなことをしてしまう。そんな顔を真っ赤にした俺を見て、絵空さんは「ふふ♪」と可笑しそうに笑う。

 

「と言うか起こしてくれても良かったのに……」

 

「あまりにも気持ち良さそうに寝てたから起こそうにも起こせなかったのよねぇ」

 

「だからって……」

 

「まぁまぁ、日も暮れて来たしそろそろお開きにしましょうか。」

 

「え、寝ちゃったせいで俺全然お祝い出来てないですけど……。」

 

「良いのよ、やりたいことはやらせてくれたもの。十分すぎるほど色々貰ったわ。」

 

「そう……ですか。なら良いんですけど。」

 

「それじゃあ家まで送ってあげるから行きましょうか。」

 

喜んでくれたなら良いんだけど、こちらとしてはただ膝枕して貰っただけなんだよなぁ。どっちかと言うと俺のご褒美になってないか?う〜ん複雑な気分だ。

 

……………………………………

 

「今日はありがとうございました。わざわざ家に上がらせてもらっちゃって」

 

「良いのよ。こちらこそありがとう!楽しかったわ♪」

 

俺の家の前に到着し、俺は送ってくれた絵空さんと運転手さんにお礼を告げる。わお、急に庶民的な家が並んでいて現実に帰って来た感じする。感覚狂って来たなこれ。

 

「じゃあ、また何かで会う時はよろしくね♪」

 

「はい、こちらこそ」

 

絵空さんを乗せた送迎の車はその場を後にした。ふ〜、短いようで長い1日だったなぁ。なんか膝枕してもらったおかげかちょっと元気出て来た。久しぶりに勉強でもしようかな。などと考え、俺も家に入るのだった。

 

……………………………………

 

「ふふ♪和也くんの寝顔、後でしのぶちゃんに送ってあげなくっちゃね♪」

 




ガチャ石?知らない子ですね(血涙)


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遭遇Photon Maiden!そして終わる夏

失踪気味でしたが出せましたね笑
投稿開けている間お気に入り数150到達してました!ほんとにありがとうございます!!

もう読んでない人、最近読み始めた人もこんなマイペース投稿ですが末永くよろしくお願いしますm(_ _)m


あの後、一通り遊んだ俺らはお腹が空いたなと、海の家へと向かう。

 

「和は何食べる?」

 

「どうしよっかな〜……まぁ、無難にカレーライスとかにするよ。しのぶたちは?」

 

「アタシも同じので。」

 

「私ラーメンにしようかな。」

 

「私イカ墨パスタ食べたいな〜!」

 

「私も由香と同じので良いかしら?」

 

「了解です。じゃあ、俺注文してくるんで席取っててもらってもいいですか?」

 

「分かった。よろしくね、和也。」

 

「はい」

 

「……。」

 

「どうしたの?しのぶちゃん?」

 

「や、やっぱりアタシも行く!」

 

店に向かい足を進めると、後ろからしのぶが駆け寄って来る。

 

「お、助かる。」

 

「まぁね、和だけだと持てないだろうしアタシもついてってあげる。」

 

「あらあら、しのぶちゃんも素直じゃないわね。」

 

「あはは……まぁ、しのぶらしいよね。」

 

ん?なんか言われた気がするけど気のせいかな……。まぁどうせ絵空さん辺りが何か言ったのだろう。

 

……………………………………………………

 

「ご注文は以上でよろしいですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ありがとうございます。こちらで少しお待ちください。」

 

カウンターに着き、先程言われた注文品を手早く頼んだ。

 

「それにしても、海なんて久々だな。」

 

「なんなら和と来るのは初めてなんじゃないか?」

 

「あれ?そうだっけか」

 

「ナギも一緒にプールとかはあったけどな。海は初めてなはず」

 

「よく覚えてるな。」

 

しのぶってこう言う思い出系、意外にもちゃんと覚えててくれるんだよなぁ……。表面上じゃ嫌がってるけど、案外好きなのかもな。こうやってみんなで遊びに行くの。

 

「もしかして和也さんにしのぶさん?」

 

待ち時間の雑談に割り込むように、聞き覚えある声が俺らを呼びかける。

 

「あれ、咲姫じゃん。偶然だね」

 

「こんにちは」

 

「はい、こんにちは」

 

咲姫さんはニコッと微笑みながら挨拶を返してくれる。白を基調としたパレオ……とか言ったっけ?そんな水着を着ていて、とても大人びた格好だ。

 

「水着、似合ってますね!」

 

「ふふ、ありがとうございます♪ところで、お二人はデートですか?」

 

「いや、響子たちの代わりにお昼買いに来ただけだっての」

 

「そう言うことです。咲姫さんはどうしてここに?」

 

「私も衣舞紀さんたちのためにお昼を買いに来たんですけど……。」

 

「けど?」

 

「一緒に来てくれるはずのノアさんの姿が無いんですよ。」

 

「マジか……。まぁ、ノアのことだしどっかで可愛いもの見つけて、それに目が離せなくなってるだけだろ。」

 

「ほんとにやりそうで反応に困るんだが……」

 

「……か〜ずくん!」

 

「っ!?」

 

ノアさんが消えたことに若干あきれつついると、誰かに後ろから目を覆われる。

 

「だ〜れだ♪」

 

「……ノ、ノアさん」

 

「あちゃ〜やっぱり分かっちゃうか」

 

「だって、和って呼んでくれるのしのぶかノアさんしか居ないですし……。」

 

「それもそっか。」

 

ノアさんは残念そうな顔をしながらもクスクスと笑う。なんか今日のノアさん、テンション高いな。

 

「……。」

 

「どうしたの?しのぶ、なんか顔色悪いけど」

 

「……何でもない。で、ノアは咲姫を置き去りにして一体どこ行ってたんだよ?」

 

「置き去りなんてそんな!私が咲姫ちゃんを置いてけぼりになんてするわけないよ!」

 

「でも実際、咲姫一人でここにいたけど?」

 

「衣舞紀からお金受け取るの忘れちゃったんだよ。でも咲姫ちゃん、私の呼びかけに気付いてくれなくって仕方なく私だけ戻ったの。」

 

「……。」

 

ノアさんの一言を受け、二人で咲姫さんに目を向ける。ノアさんが置いてったと思ってたけど、真に置いてったのは咲姫さんの方ってことか……。クールな見た目してて意外とポンなんだな……。

 

「ま、まぁ事情は分かったしとりあえずこの件は不問にするか。」

 

「う、うん」

 

「十七番でお待ちの方〜」

 

何とも言えない空気になり、しばらく沈黙が続くと、それを断ち切るように店員が俺らを呼び出してくれる。

 

「ご注文の品、ご用意できました」

 

「は、はい!それじゃあ、俺らはこの辺で。」

 

「うん、またね。和くん、しのぶちゃん」

 

気まずい状況の中、店員のおかげもあってか俺らはその場を去った。

 

その後俺らは昼食を取り、また少し遊ぶと、彼女らはライブの機材確認をするために俺とはここで別れることになった。

 

………………………………………

 

無事Photon Maiden&Peaky P-key&Happy Around!!の合同ライブも成功し、俺とピキピキの子らは電車に揺られていた。

 

はぁ〜今日のライブも良かったな……。

 

心の中で感嘆していると横から小さな寝息が聞こえる。どうやらみんな寝てしまったらしい。あんだけ遊んだ後にライブしてんだからそりゃ疲れるよな。俺の肩にもたれかかって寝ているしのぶを見てそう呟く。乗り換え先で起こさなきゃな。

 

窓の外を見ると、俺らの乗っている電車は夕日で綺麗に照らされていた。




これ以上書こうとしたらマジで失踪する気がしたのでだいぶはしょりました。

本当はフォトンの子たちも混ぜてお昼食べる予定だったけど思いつかなかったので全カットです


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