ラノベなんてオワコンですぜィ旦那~ (銀魂今までありがとう)
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なろうのランキングは当てにならない

「あらすじ:「こんな使えないのが仲間だと思うと虫唾がはしりますわね」回復術士は一人で戦えない。そんな無力な存在だからこそ勇者や魔術師に利用され、奪われ続けた少年・ケロロ。しかし彼はある日、回復《ヒール》を極めた先にあるものに気付き、世界そのものを再構築し四年前からやり直すことを決意する。「これで世界は俺様の思い通りになる……、さぁ、復讐《パーティ》のはじまりだ! ……ねぇ……?」*1

 

「ちっ、またつまらなそうなラノベ出しやがって。いい加減にしろよ。まだ異世界系から抜け出してねえのかよこいつら。一体いくつ低レベルな作品を世の中に出せば気が済むんだよ。いい加減出版社も気付けよ。異世界ブームなんてもんはとっくに過ぎ去ってんだよ」*2

 

 男は電車の中で苛立っていた。この男、ラノベ歴10年の貫禄からか電車の中でブックカバーも付けずに恥ずかしがらずに読みながら現在のラノベ界に対して愚痴を言っていた。誰が聞いている訳もない。ただの迷惑客であった。

 

「大体なぁ、この作品なんだよ。この何も考えてない奴が書いたようなゴミみたいな小説はよぉ。復讐が出来たんならそれで良いだろ。なんでわざわざ過去に戻った? しかも、回復<<ヒール>>てなんだよ。もはやヒールの定義が意味分からねえよ。なんでヒールで模倣して敵の動きを見切ることが出来るんだよ。なんでヒールで敵の攻撃を改悪して防げるんだよ。ふざけんじゃねえよ。もはやそれヒールじゃねえだろ。別の何かだよ。主人公チート作品書くにしても馬鹿過ぎんだろ! まずは日本語から学び直してこいよ!!」*3

 

 男の愚痴はまだとどまることを知らない。それほどこの男にとってラノベとは素晴らしいものだったのだ。

 

 この男としてはこのままラノベ業界がレベルの低い作品のせいで衰退していくのに我慢ならなかったのである。それこそ、公務執行妨害になり兼ねないほど電車の中で愚痴を言いだすほどにはだ。

 

「そろそろさ、ラノベ業界もテンプレを真似るのではなく作りだす時期だよ? いつまでもイラストレーターの絵による釣りだけじゃ絶対限界来るよ。そろそろ涼華ハルキの憂鬱*4が出版された時のような社会現象を作り出す人材をどっかから見つけて来いよ。じゃねえと映像も絵もないラノベなんてマジで売れなくなるぞ。俺みたいなコア層が居たとしても意味ねえんだよ。今を生きるガキ共仕入れないと意味ねえんだよ」

 

「少し良いかな? それだけ文句を言うだけなら誰にだって出来る。なら、君はどんなラノベを求めているんだい? 教えてみてくれよ」

 

 そんな男の文句に対して耳を傾ける人間が1人現れる。スーツ姿でスマホを見ている眼鏡をかけた男性が男に話しかけてきた。

 

 単純な興味本位なのだろうか。男はそうは思ったが、せっかくだから更に今のラノベ業界自体に文句を言うことにした。この男からしたら今現在のラノベ業界全てに嫌気が指していたのだ。

 

「ああ? んなもん決まってんだろ。昔みたいに想像したことも無いようなワクワクする世界観だとか、ゲームっぽくない全く新しい戦闘。他には主人公と周りとの友情物語とかね。今のラノベにはそんなのが一切詰まってねえんだよ。あるのは神からチートを持らって、女に出会ってすぐにチヤホヤもてはやされるのとか。スローライフと銘打っておきながら自分から余計なことに首突っ込んで解決してやれやれ系主人公を気取ったり、日本の物を異世界で売りつけて大金持ち! なお、異世界側の経済や日本円で換金した結果、間違いなく起こるであろう被害は発生しないこととして考えるとかそんなクソみてえな小説が量産されまくってんだよ! 異世界系じゃねえにしてもあるのは学園生活物で恋愛ばっか。中には百合メインのものが存在する始末だ。確かに恋愛もののラノベは良い。だがな、多すぎるんだよ! ここ最近どんだけ恋愛押しなんだよ!! 恋愛するにしてももっとハチャメチャな設定の物があって良いだろうが! ただ、現実にも普通にいるであろう女との恋愛だったら普通に恋愛小説読むわ。ラノベである意味がねえんだよ」

 

「はぁ……。これだから懐古厨は。どうせ君あれだろ? ソードアーツオンライン*5のアイーンクラッド編*6が好きだったとかそういうの言うタイプでしょ? ハルキを例に出してた時点で大体察してたよ。分かってないな~。それは編集部がおかしいんじゃない。……君がただ時代の波に乗り遅れているだけだというものだよ」

 

 そんな男を嘲笑うかのように眼鏡をかけた男性は眼鏡をクイッ! とワザとらしく眼鏡を動かす。というのも、この眼鏡をかけた男。全くもってラノベなどに興味は無かった。ただ、〇witter*7に上げるネタが出来て喜んでいたクソ野郎であった。ラノベの名前を知っているのも〇witterを見ていた時に偶々目に映っただけである。

 

 その男が『すげえ頭おかしい奴見つけた。マジでヤバいんだけど(笑)』という〇イート*8を投稿しようとしたところである男が声を上げた。

 

 バァン! 

 

 何かが床に叩きつけられる音がした。何か紙のような物が叩きつけられた音が。

 

 2人ともその大きな音がした方向を見てみるとそこには目にクマが出来ていてどこかその内倒れるのではないかと思わざるを得ない中年男の姿だった。歳は大体40後半に見える。

 

「やりたくても出来ねえんだよっっ!!!」

 

 その気迫に2人は思わず身震いした。それほどこの男の言葉には……このたった一言だけでこの男の人生……修羅の道を垣間見たからだ。

 

「言いたい放題しやがって!! 俺だってなぁ!! 俺だってなぁ!! そんなラノベの担当者になりたかったよ!!」

 

 男は涙を流していた。それこそ、彼ら以外の周りの人間が引くほどには。

 

「ある意味そこの眼鏡が言ってることも間違ってねえんだよ! こっちだってなぁ……挑戦したいんだよ!! だけどな? 今のガキってのはラノベになんて眼も向けねえの。今やガキたちの眼に映ってるのはソシャゲとフォールアウト*9と荒野起動*10とItuber*11なんだよ!! そっちに時間も金も使っちまってんの!! ラノベに使う時間も金もあいつらからしたらねえんだよ……」

 

 男がそう悲痛な表情で語るのを見て男は己を恥じた。文句を言うのは良いが、自分は本当に時代についていけていないのかもしれないと。

 

「出版社側だってなぁ!! 苦渋の決断なんだよ。若者たちから金を巻き上げることが出来ない以上、俺たちがターゲットにすべきなのは正にお前や俺のような30代~40代の人間だよ。不況の煽りを受けて仕事に就けず、日本の新卒主義等も相まってキャリアも積めなかった就職氷河期世代の人間たち。世界や社会が悪いのであって俺たちは悪くない。この世界では幸せになれない。世界が悪いのだから俺たちが努力しても意味はない。上位者からの施しで状況を変えてもらうか、何かしらの一発逆転以外に道はないとか抜かしてるそんな社会のゴミども相手に商売しねえと金稼げなくて会社潰れちまうんだからしょうがねえだろ!!」*12

 

「だからってあんな質の悪いラノベなんて出さなくったって良いだろ! 金稼ぐにしたって同じ小説家になります*13のサイトの中でももっとマシなのぐらい持ってこれるだろうが!! イライラすんだよ。あんな長文タイトルばっかの作品ばっか出しやがって! 一々虫唾が走るんだよ。タイトルだけで説明されたら読む気なんて一気に失せるわ!*14 ここ最近はな、こっちだって少しは試しに読んでみようと思ったよ! 俺が面白くなさそうと思っているだけで本当は面白いんじゃないかってな? その結果が冒頭のあれだよ!! なんだアレ!? いつからラノベ業界はあんな酷い惨状なんだ!? そもそも、そんな奴ら相手に商売してるなら尚更、努力だとか友情とかの大切さについて教えてやった方が良いだろうが!!」

 

「あんな犬の糞みたいな小説でも小説家になりますではランキング上位に入ってたんだよ!! 今の世の中な無駄に拗らせてる奴らばっかでそういったことを説こうとするとすぐに低評価付くんだぞ!! 電光文庫*15だとかNJ文庫*16みてえなところならまだしも、バーバーラップ文庫*17みてえな弱小はこうでもしねえと生き延びれねえんだよ!! いつもいつもあんな犬の糞みたいな小説ばっか担当させられる気持ちがお前みたいなただただ気楽に過ごしてるオタク程度に何が分かるってんだよ!!」

 

 言いたいことを取り合えず言い切り、力が抜けたのか男は膝から崩れ落ちる。その様子を気の毒に思ってしまった男は男に近づいて励ましの言葉をかけることにした。

 

「あ~その……落ち着けよ。ああ……そっか、おたく、バーバーラップところの編集だったんだな……。いや、あの、うん。ありふれた職業で地下最強*18は俺割と好きだった方だよ……。あの時追放系はまだ珍しい部類だったから……」

 

「うるせえよ! 何の励ましにもなってねえよ! あの作品のアニメ化が失敗した以上もう未来なんてねえよ!! 原作で一番面白いって言われてる1巻は雑に処理されたし、そこから2巻、3巻ってドンドン進んでいって、新規さんお断り状態だったよ!! アニメ自体のクオリティがただでさえ低かったのにそこから話も理解出来ないとか完全に終わってるよ!! 2期製作決定とか言ってるけど最終的に世間からそんな戯言忘れ去られるに決まってるよ!!」

 

「だ……大丈夫だって。きっとありふれファンの皆が応援してくれる以上放送してくれるよ。……放送枠1分とかで……」

 

「ショートアニメにすらならねえじゃねえか!! かなり時間が短いゆーきゅう*19ですら3分あるんだぞ!? 1分とかAnitube*20で十分と言われて断られるに決まってんだろうが!!」

 

 少し時間が経ち、息を整え落ち着いた男は立ち上がり、椅子に座って語りだす。

 

「オレはこの仕事に向いてない。分かってる。分かってるさ。本当は俺だってもともと小説家になりたかった。大学生になった時にラノベに出会った俺は小説家を目指した。でもなれなかった。独自の世界観を作りだすなんて想像力がない俺には無理だったし、戦闘描写だって斬新なものは俺の発想力の無さじゃ何も思いつかなかった。小説を書くことに途中で挫折した人間が有名になるような小説を出版社から出すことなんて出来ない。ラノベ業界自体が衰退するのだけは予想外だったが……こうなるのは必然だったのかもなぁ……」

 

 そんな男の姿を見て男は思った。この男となら自分たちが想像する最高のラノベを作り出せるのではないかと。俺たちはこのラノベ業界に不満を持っている。なら、自分たちでそれをぶっ壊しちまえばいい。そんな単純でアホな考えが浮かんできたのは……この男がろくに人生経験も積んでいないニートだからだったのだろう。

 

「だったら、俺と一緒に起こそうぜ、革命を」

 

「えっ?」

 

「お前と俺、今のラノベ業界に嫌気が指しているのは同じだ。文句ばっか言ってた俺の言えたことじゃねえが、あんたみたいなまともな編集もいるんだなと思ったからな。少しはやる気が出てきたぜ。そろそろ本腰入れるか! ラノベ歴10年の俺がこの腐れ切ったラノベ業界に革命を起こしてやらぁ!」

 

 そう言った男の眼を見て……中年オヤジは……夢を追い求めることにした。人生最大の第博打。この選択が彼を破滅に陥れるのか……それとも本当に栄光を手に入れるのか……それが分かるのはまだ先の話だ。

 

 

 

 

 因みにこの電車内での出来事はクソ眼鏡のせいでネット上に拡散されてしまったのを彼らはまだ知らない……。

 

 

 

 

*1
回復術師のやり直しのあらすじ

*2
異世界スライムが流行りだしたあたりかその前あたりから全てが狂いだした……

*3
回復術師のやり直しのツッコミどころ

*4
涼宮ハルヒの憂鬱

*5
ソードアートオンライン

*6
アインクラッド

*7
Twitter

*8
ツイート

*9
フォートナイト

*10
荒野行動

*11
Vtuber

*12
日本経済新聞曰くそうらしい

*13
小説家になろう

*14
ここ最近のなろうはタイトルで大体説明しないと読んですらくれないらしい

*15
電撃文庫

*16
MJ文庫

*17
オーバーラップ文庫

*18
ありふれた職業で世界最強

*19
てーきゅう

*20
YouTube



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